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2020.7.25~28 世界における科学の進歩と固定的な考え方に固執する日本の遅れ (2020年7月29日、8月3、6、8、12、13日追加)

                   2020.7.9毎日新聞  厚労省  2020.4.5朝日新聞

(図の説明:1番左の図は、東京都の《検査で確認された》新規感染者数だが、左から2番目の図のように、検査数が少ないため確認されていなかった感染者が多く、検査数を少し増やしたら確認された新規感染者が増えたというのは、当たり前なのである。この間、検査もせず、まともな医療行為もしないまま、厚労省が国民に押し付けたのが、右から2番目の「新しい生活」の図だ。このうち、手洗いや咳エチケットは新型コロナ対策に限らず前から必要だったことで、全員を新型コロナ感染者と見做した身体的間隔の維持や換気は現代生活にマッチしない。また、働き方改革も現実的でない職種が多く、1番右の要請を護らない企業があるとして新型コロナ特別措置法改正を望む声があるが、国民の権利制限をする前に、行政はミスなく仕事すべきだ)

(1)日本政府が新型コロナで無策を通した本当の理由は何か?
1)本気になっていない新型コロナ対策
 東京都で、*1-1のように、「7月20日、新型コロナ感染者が新たに168人確認され、7月の累計が3354人に上って、入院・療養先が調整中の患者が501人に上った」等々の報道が繰り返されているが、ダイヤモンドプリンセス号の時から既に6カ月も経過しているため、この間、何をやっていたのかと思うだけだ。

 今でもPCR検査数を抑えており、早期診断・早期治療の努力はなく、軽傷者の隔離のために抑えていたホテルは6月末で契約解除したというから、「①行政は妨害こそすれ協力はしない」「②新型コロナ感染のモデルはスペイン風邪と同じ」「③国民はアマビエにでも助けてもらって団結して頑張れ」と言っているのと同じであって、これは、ウイルスや人間の全遺伝子が簡単に読めるようになった現代の医療から程遠い。

 そして、それを、病床不足や医療崩壊という医療側の責任にしているのも問題だ。仮に医療崩壊が起これば、それは、これまで的外れた抑制ばかりしてきた厚労省・財務省の医療行政の失敗であるため、政府・与党(特に厚労族議員)・行政は、その責任をどうとって、どう改善するかを問題にしなければならないのである。

2)新型コロナ特措法の改正は不要である
 政府は、*1-2のように、全国知事会の緊急提言を受けて休業要請と補償をセットで実施すべく、休業要請に従わない事業者への罰則規定を含む新型コロナ特別措置法改正を行う国・地方自治体の権限強化を行う検討に入ったそうだが、検査をして陽性患者を特定することもなく、特定業種で働く人全体を感染力のある陽性患者と看做して休業要請するのは、予防ではなく差別に由来した暴力である。

 そのため、検査数を増やして通常の医療を行わなかった目的の一つは、この新型コロナ特措法の強化で、ひいては緊急事態条項を加える憲法改悪を行うことだと思わざるを得なくなった。従って、このような無茶を可能にする新型コロナ特措法変更や緊急事態条項を加える憲法改悪には徹底して反対しなければならない。

3)保健所職員の増員は不要である
 保健所は、*1-3のように、「新型コロナ感染者の急増で行動履歴確認や濃厚接触者調査に追われ、感染を疑う市民からの健康相談も増えて業務が急増し、増強した職員分の倍くらい業務が増えたので、今後さらに職員を増やしたい」とのことだが、検査をするか否かの判断に保健所を通すのがネックであり、他の検査能力を眠らせたままでもあるため、これを解消するのが本質的解決である。

 つまり、これまで効率の悪い仕事をしてきた保健所職員の増員は、役所によくある焼け太りであり、さらに血税を使って効率の悪い役所に人員増強を行って無駄遣いするのではなく、まともな医療に戻すことこそ最も重要なことである。

(2)世界は火星探査の時代になったが、日本は?



(図の説明:1番左は、水をたたえていた太古の火星と現在の火星の様子、右の2つは、NASAが発表した現在の火星表面で、土や水の凍った場所が見られる)

1)火星探査機の打ち上げ
 アラブ首長国連邦(UAE)初の火星探査機「Hope」を搭載した三菱重工のH2Aロケットが、*2-1のように、2020年7月20日、鹿児島県の種子島宇宙センターから打ち上げられ、火星に向かう軌道に予定通り投入されて打ち上げが成功した。アラブ首長国連邦と三菱重工の両方に祝意と敬意を表する。

 Hopeは2021年2月に火星に到達する予定で、UAEの先端科学相でHopeミッションを率いるサラ・アル・アミリ氏は、「全世代にとって支えとなる出来事」「UAEの子どもたちが、自分にとって支えとなる計画・新たな現実・新たな可能性を持って目覚め、さらに貢献して世界に大きな影響を与えることができるようになることを嬉しく思う」とBBCニュースに述べられたそうで、その理想も素晴らしい。その点、日本は、子どもたちに、どういう教育をしているのか、大いに疑問である。

 この後、中国が、7月23日に火星探査機「天問1号」の打ち上げ、アメリカも、火星探査機「パーサヴィランス」を打ち上げる予定だそうで、その探査結果に注目したい。

2)火星への興味の数々
 UAEが火星を目指す理由は、「①火星の大気の仕組みを解明して今までにない科学を生み出すこと」「②火星がどのように大半の大気や水を失ったかの理解を深めること」「③UAEやアラブ地域全体で、より多くの若者に学校や高等教育で科学を学びたいと思わせること」などだそうで、これは日本でも重要なことである。

 また、UAEは「まね事」の科学をするのではなく、火星でエネルギーが大気中をどのように移動するかを上から下まで一日中全ての季節を通じて調べ、大気の温度に大きな影響を与えるちりなどの特徴を追跡し、大気の上部にある水素と酸素の中性原子の動きについても調べるそうだ。

 これらの原子は、太陽からのエネルギー粒子によって火星の大気が侵食されていく過程で重要な役割を果たしている疑いがあり、火星史の初期には明らかに存在していた水のほとんどが失われている理由を説明できるからだそうだが、地球に近くて似ている火星への興味は尽きない。

3)火星の移住に必要な人数は何人か
 アメリカの起業家イーロン・マスク氏が率いる民間宇宙企業スペースXは、*2-2のように、火星の植民を視野に入れた宇宙船「スターシップ」の開発を進め、火星で入植者が自立して生活するために最低必要な人数は110名であることを導き出したそうだ。これは、仏ボルドー工科大学のジャン-マルク・サロッティ教授の“100名規模”とほぼ一致しており、かなり正確だ。

 そして、諸外国はここまで考えて試算しているということを、日本人は忘れてはならない。

(3)遺伝子の変異と生物の進化
 新型コロナで一般の人にもなじみになったウイルスは、*3-1・*3-2のように、人類の祖先の細胞に入り込んで一体化し、「進化の伴走者」にもなったそうだ。確かに、母親のおなかの中で、母親にとっては「異物(本人以外の細胞)」であるはずの赤ちゃんを守る胎盤は、ウイルスの身の守り方に似ている。

 ウイルスは、生物の免疫細胞の攻撃を避けて縄張りを作れるため、これをやられると、生物のゲノムの一部と化した「内在性ウイルス」にまではならなくても、しばらく人体の中で静かにしていたウイルスが、免疫が弱くなった時に活発に活動し始めるということもありそうだ。

(4)それでは、恐竜は絶滅したのか?

 
      デイノケイルス(恐竜)            ハシビロコウ(鳥)
(図の説明:左の3つは、恐竜のデイノケイルスだが、重心の位置から考えて1番左の立ち方が自然で、左から2番目・3番目の立ち方では、重心が地についた足の上に来ないため、長時間立っていることは不可能だ。また、左から3番目の図のサイズの筋肉では、大きな骨格を動かすのに不十分であるため、筋肉の量や付き方も考え直す必要がある。これに対し、右から2番目のハシビロコウの骨格は重心が地についた足の真上に来る自然な立ち方で、1番右の生きたハシビロコウは鳥であり、顔は恐竜並みに怖いが、長い腕は翼になっている)

    
  ダチョウ     フラミンゴ      タンチョウヅル     ハクチョウ

(図の説明:鳥には、恐竜と同様に首が長く頭の小さいものが多い。また、立っている時は、地につく2本の足の上に重心がくる姿勢だ。そして、水中の獲物をとっている姿勢は、左から2番目のフラミンゴが典型的で、泳ぐハクチョウも首が長い)

 進化は、DNAの変異がランダムに起こって多様な生命が生まれ、そのうち子孫を残すのにより適した個体が多くの子孫を残す形で次第に種を形成するものである。従って、種の形成は、一つの個体内ではなく、多くの世代交代が行われる間に起こるものだ。

 それなら、恐竜はどうかと言えば、水の中を中心に生活した種は、水の中で捕食して子孫を残すのに適した身体の構造を持ち、陸上で生活するものは、そこで捕食して子孫を残すのに適した身体の構造を持ったに違いない。そして、その中には、寒冷地や空に進出してそれに適応した身体を持ったものもいるだろう。

 そのうち空に進出したものが飛ぶ鳥であり、陸上だけで通せた種が飛ばない鳥やハ虫類になったと思われるため、*4の恐竜研究も、化石だけでなく遺伝子を比較して系統樹を作るべき時代になった。そのため、法医学やDNAの専門家が恐竜を研究すると新発見できるかもしれない。

 私自身は、骨格の比較をすれば、大きさや洗練度は異なるものの、恐竜と鳥類は類似点が多いと前から思っていた。つまり、“恐竜”という命名が、生物の分類を誤らせたのである。

 私は、恐竜は、鳥の骨盤を持つ鳥盤類とトカゲの骨盤を持つ竜盤類の2つ(もしくはもっと多く)のグループに分かれると思うが、ティラノサウルスは手足の形から羽の生えた飛べない鳥類に近い恐竜だったと思う。中国で発掘された化石のティラノサウルスの祖先には羽毛が生えており、それはティラノサウルスの標本の首、腰、尻尾にウロコがあることを否定すべきものでもなく、その部分はウロコの方が便利だったか、まだ明確に分かれていなかったのだと思われる。なお、鳥類の羽には、どうみてもウロコから進化したように見えるものがよくある。

 「鳥は恐竜そのものであり、恐竜は絶滅したという考えは捨てなければならず、恐竜は絶滅していないことを受け入れなければならない」というのに、私は賛成だ。つまり、約6600万年前の隕石衝突により白亜紀を終焉に導いた大量絶滅時代を生き延び、その後、多様化した恐竜の中に鳥類がいたのだ。

・・参考資料・・
<日本が新型コロナで無策を通した理由は?>
*1-1:https://digital.asahi.com/articles/ASN7N71Y8N7NUTIL027.html?_requesturl=articles%2FASN7N71Y8N7NUTIL027.html&pn=4 (朝日新聞 2020年7月20日) 東京、501人が療養先「調整中」 宿泊施設不足も一因
 東京都では20日、新型コロナウイルスの感染者が新たに168人確認され、12日連続で100人を超えた。7月の累計はすでに3354人に上る。感染者数が高止まりする中、都が入院・療養先を「調整中」として計上する患者が20日時点で501人に上り、1日時点の5・1倍に膨れ上がっている。都は毎日、入院患者や重症者、宿泊療養、自宅療養、退院者の人数を公表している。どの項目にも属さない場合、都は「調整中」として人数を公表している。調整中の増加について、都は「行き先が決まっているが、事務手続き上、公表に至っていない感染者が多い」と説明する。都によると、感染確認の報告を受けた保健所と、感染者の居住地の保健所との間でやり取り中で、事務手続きが終わっていないケースが多いことに加え、ホテルを活用した宿泊療養施設の不足も一因だという。都は5ホテル(約1150人分)を確保していたが、6月の感染者は減少傾向にあり、ホテルとの契約を一部、6月末で終了した。だが、7月に一気に増加に転じ、新たな契約も結んだが、現在の受け入れは2ホテル(約260人分)にとどまり、156人分は埋まっている。入院患者も20日時点で920人に上り、1日(280人)の3・3倍まで増えている。都が入院患者向けに確保できている病床数は15日時点で約1500床にとどまり、都が13日までに確保を目指していた2800床には遠く及ばない。多くの病院ではすでに入院中の患者の病棟を移すなどして対応中だ。都の担当者は「2800床を確保するにはまだ時間がかかるが、病床が不足している状態ではない」と強調する。感染者を受け入れている都内の病院の医師の一人は「民間病院は人手も限られ、都が公表している病床数すべてが迅速に受け入れられるわけではない。数字以上に都内の医療現場は逼迫(ひっぱく)し始めている」と警鐘を鳴らす。

*1-2:https://www.chugoku-np.co.jp/news/article/article.php?comment_id=663481&comment_sub_id=0&category_id=1206 (中国新聞 2020/7/19) 新型コロナ特措法改正へ 政府、国と地方の権限強化
 政府は新型コロナウイルスの感染拡大に対応する新型コロナ特別措置法を改正する方向で本格的な検討に入った。菅義偉官房長官が19日のフジテレビ番組で法改正の必要性を明言した。東京などでの感染者急増を踏まえ、予防のため国と地方自治体の権限を強化する判断に傾いた。菅氏は最終的には特措法に基づく休業要請と補償をセットで実施すべきだとの考えを表明。全国知事会も緊急提言で、休業要請に従わない事業者への罰則規定を含む法改正を要請した。菅氏が法改正や補償の必要性を公言するのは初めて。早ければ次期国会で、国や知事の休業や検査に関する権限を強める可能性がある。

*1-3:https://mainichi.jp/articles/20200710/k00/00m/040/320000c (毎日新聞 2020年7月10日) 連日200人超は第2波か 保健所「手いっぱいだ」 病院「もう少し先か」
 新型コロナウイルスの感染者が急増している。東京都内では2日連続で200人を超え、過去最多を更新した。これは「第2波」の始まりなのか。病院や保健所は危機感を強める。「想像以上に増えている。今は目の前の仕事で手いっぱいだ」。新宿区保健所の担当者は10日、逼迫(ひっぱく)しつつある状況を明かした。歌舞伎町など「夜の街」では、ホストクラブなどによる集団検査が進み、同区ではすでに900人の感染が確認された。保健所はそのたびに行動履歴の確認や濃厚接触者の調査に追われる。区役所の別部署や都から応援を受けて職員を増員してきたが、感染を疑う市民からの健康相談も増え、業務は急増しているという。担当者は「(人員を)増強した分の倍くらい(業務が)増えている。今後さらに職員が増えればいいが……」と不安げだ。東京23区内の別の保健所では、先月に1日20~30件程度だった健康相談が、7月に入って3倍以上に増えた。(以下略)

<火星探査の時代>
*2-1:https://www.bbc.com/japanese/53460998 (BBC 2020年7月20日) UAEの火星探査機、種子島から打ち上げ成功 アラブ諸国初
 アラブ首長国連邦(UAE)初の火星探査機「Hope」を搭載したH2Aロケットが20日午前6時58分、鹿児島県の種子島宇宙センターから打ち上げられた。火星に向かう軌道に予定通り投入され、打ち上げは成功。火星の気象や気候を調査するための約5億キロの旅が始まった。火星探査機「Hope」の打ち上げは先週、悪天候のため2度中止されていた。HopeはUAEの建国50周年となる2021年2月に火星に到達する予定。UAEの先端科学相でHopeミッションを率いるサラ・アル・アミリ氏は、ロケットが無事に上空へ上っていくのを見たときの興奮や安堵(あんど)感を述べた。また、51年前のこの日にアポロ11号が月面着陸した時にアメリカに与えたのと同じ影響を、UAEにもたらしたと述べた。「目の当たりにしたすべての人を、さらに前進しさらに大きな夢を描くよう刺激する、全世代にとって支えとなる出来事だった」と、アル・アミリ氏はBBCニュースに述べた。「UAEの子どもたちが7月20日の朝、自分にとって支えとなる計画や新たな現実、新たな可能性を持って目覚め、子どもたちがさらに貢献し、世界に大きな影響を与えることができるようになることを、本当にうれしく思う」。UAEの探査機は、今月に火星へ向かう3つのミッションのうちの1つ。アメリカと中国はいずれも、表面探査機の準備の後期段階に入っている。
●なぜUAEは火星を目指すのか
 UAEは宇宙探査機の設計や製造の経験が少ないにも関わらず、アメリカやロシア、欧州諸国、インドだけが成功していることに挑戦している。あえてこれに挑戦したことにUAEの野心が表れている。アメリカの専門家の指導を受けたUAEのエンジニアたちは、わずか6年で非常に高度な探査機を完成させた。この探査機が火星に到達し、火星の大気の仕組みを解明して今までにない科学を生み出すことが期待されている。特に、科学者たちは火星がどのように大半の大気や水を失ったのか理解を深めることにつながると考えている。火星探査機Hopeは、インスピレーションを得るための手段と捉えられている。UAEやアラブ地域全体で、より多くの若者に学校や高等教育で科学を学びたいと思わせることが期待されている。Hopeは、UAE政府が石油とガス依存から脱却し、知識経済を基盤とした未来に向けて国を動かしていく意図を示しているとする多数のプロジェクトのうちの1つ。しかし火星となると、相変わらずリスクは高い。これまでに火星を目指した全てのミッションの半数は失敗に終わっているからだ。Hopeプロジェクト・ディレクターのオムラン・シャラフ氏は、危険性を認識しているものの、自分の国が挑戦するのは正しいことだと主張する。「これは研究開発ミッションであり、もちろん失敗はつきものだ」と、シャラフ氏はBBCニュースに述べた。「しかし国家としての進歩に失敗するという選択肢はない。ここで最も重要なのは、UAEがこのミッションから得た能力と可能性、そしてこの国にもたらした知識だ」
●UAEはどうやってプロジェクトを進めたのか
 UAE政府はプロジェクトチームに対し、外国の大企業から宇宙探査機を購入せず、自分たちで作らなければならないと指示した。つまり、必要な経験を持つアメリカの大学と提携することを意味していた。UAEとアメリカのエンジニアや科学者たちは一緒に、宇宙探査機システムと、火星を調査する3つの搭載機器の設計と製作を行った。探査機の製作の大半が米コロラド大学ボルダー校の大気宇宙物理学研究所(LASP)で行われた一方で、ドバイのモハメド・ビン・ラシドスペースセンター(MBRSC)でもかなりの作業が進められた。LASPのブレット・ランディン氏は、UAEが今や自分たちで別のミッションを行える素晴らしい状態にあると考えている。「探査機への燃料補給のプロセスは教えられるが、自分で脱出用スーツを着て、重さ800キロの揮発性の高いロケット燃料を貯蔵タンクから探査機へ運ばない限り、実際にどういうものなのかは理解できない」と、シニア・システムエンジニアのランディン氏は述べた。「UAEの推進エンジニアたちは今やそれを成し遂げ、次回宇宙探査機を作る際にどうすればいいのかをわかっている」
●Hopeは火星で何をするのか
 UAEは「まね事」のような科学をしたいわけではなかった。火星へ行って、他国がすでにしてきた測定を繰り返したくはなかった。だからUAEは火星探査計画分析グループ(MEPAG)と呼ばれるアメリカ航空宇宙局(NASA)諮問委員会を訪れ、UAEの探査機が現在の知識にどんな有益な研究を加えられるのかを尋ねた。MEPAGの助言はHopeの目的を形作った。UAEの探査機は火星でエネルギーが大気中をどのように移動するかを、上から下まで、一日中、全ての季節を通じて調べることになっている。Hopeは火星で、大気の温度に大きな影響を与えるちりなどの特徴を追跡する予定。また、大気の上部にある水素と酸素の中性原子の動きについても調べる。これらの原子が、太陽からのエネルギー粒子によって火星の大気が侵食されていく過程で、重要な役割を果たしている疑いがあるからだ。火星史の初期には明らかに存在していた水のほとんどが失われている理由を説明できるだろう。観測データを収集するために、Hopeは火星の高度約2万2000キロから約4万4000キロの赤道に近い軌道に入ることとなる。「1日のどの時間帯にも火星のあらゆる部分を見てみたいという強い望みが、この巨大な楕円形の軌道へたどり着くこととなった」と、Hopeミッションのコア・サイエンスチームを率いるLASPのデイヴィッド・ブレイン氏は説明した。「このような選択をすることで、例えば異なる時間帯に活動するオリンポス山(太陽系最大の火山)の上を飛行できるようになる。またある時には火星が私たちの下で自転しているのを見られるようになる。「火星の円形画像を撮影できるだろう。カメラにはフィルターがついているので、こうした画像を科学的に分析できる。言うなれば、異なるゴーグルをかけて全体像を見るようなものだ」
(英語記事 UAE launches historic first mission to Mars)

*2-2:https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2020/07/post-93885.php (Newsweek 2020年7月6日) 火星の移住に必要な人数は何人だろうか? 数学モデルで算出される
<「他の惑星で自立的に生活するためには、何人が必要か」という問いに仏ボルドー工科大学の研究者は、独自の数学モデルによって算出した......>
 アメリカの起業家イーロン・マスクが率いる民間宇宙企業スペースXでは、火星の植民を視野に入れた宇宙船「スターシップ」の開発がすすめられている。言うまでもなく、他の惑星への植民はたやすいことではない。入植者が自活するために、どのように現地の資源を取り出すのか、そのためにはどのような設備やスキルが必要となるのか、といった様々な課題を解決する必要がある。
●火星で入植者が自立して生活するために最低必要な人数は110名
 仏ボルドー工科大学のジャン-マルク・サロッティ教授は、その第一段階として「他の惑星で自立的に生活するためには、何人が必要か」という問いにフォーカスし、独自の数学モデルによって、火星で入植者が自立して生活するために最低必要な人数は110名であることを導き出した。この算出結果は、100名規模の搭乗を想定しているスターシップともほぼ一致している。サロッティ教授の数学モデルは「現地で利用可能な資源」と「入植者の生産キャパシティ」という2つの要素をベースとしている。マスク氏が主張するように「宇宙船を通じて資源を火星に継続的に届けられる」との楽観的な見解もあるが、サロッティ教授は「資源や技術をどれだけ地球から火星に運び込めるかを予測するのは不可能だ」との考えから、この数学モデルでは、火星外からの資源の供給を考慮していない。
●タスクを複数の人々で分担して1人あたりに必要となる時間を減らす
 また、この数学モデルでは、タスクを複数の人々で分担して1人あたりに必要となる時間を減らす「シェアリング・ファクター」を前提とし、自立して生活するための人間活動を、生態系マネジメント、エネルギー生産、冶金や化学といった工業、建設およびメンテナンス、育児や家事、教育などの社会活動という5つのドメインに分類したうえで、自立した生活を維持するために必要な時間と入植者が実際に利用できる時間を比較した。その結果、110名いれば、時間の半分を、育児や健康管理、文化的な活動といった社会活動に充てられることがわかった。サロッティ教授は、2020年6月16日に「サイエンティフィック・リポーツ」で公開された研究論文で「火星を例にあげ、数学モデルを用いて、他の惑星で生存に必要な入植者数と生活様式を導き出すことができた。この手法によって、生存のために最適な戦略の評価、比較、議論ができるようになるだろう」と述べている。(以下略)

<遺伝子の変異と生物の進化>
*3-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200531&ng=DGKKZO59745450Z20C20A5MY1000 (日経新聞 2020.5.31) 驚異のウイルスたち(2)人類と共存「進化の伴走者」、感染で遺伝子内に 胎盤や脳発達
 地球上にはいろいろなウイルスがいる。人類の進化にもウイルスが深くかかわってきた。太古のウイルスが人類の祖先の細胞に入り込み、互いの遺伝子はいつしか一体化した。ウイルスの遺伝子は今も私たちに宿り、生命を育む胎盤や脳の働きを支えている。新型コロナウイルスは病原体の怖さを見せつけた。過酷な現実を前に、誰もが「やっかいな病原体」を嫌っているに違いない。ウイルスが「進化の伴走者」といわれたら、悪い印象は変わるだろうか。母親のおなかの中で、赤ちゃんを守る胎盤。栄養や酸素を届け、母親の「異物」であるはずの赤ちゃんを育む。一部の種を除く哺乳類だけが持つ、子どもを育てるしくみだ。「哺乳類の進化はすごい」というのは早まった考えだ。この奇跡のしくみを演出したのはウイルスだからだ。レトロウイルスと呼ぶ幾つかの種類は、感染した生物のDNAへ自らの遺伝情報を組み込む。よそ者の遺伝子は追い出されるのが常だが、ごくたまに居座る。生物のゲノム(全遺伝情報)の一部と化し、「内在性ウイルス」という存在になる。内在性ウイルスなどは、ヒトのゲノムの約8%を占める。ヒトのゲノムで生命活動などにかかわるのは1~2%程度とされ、ウイルスが受け渡した遺伝情報の影響は大きい。見方によっては、進化の行方をウイルスの手に委ねたといっていい。哺乳類のゲノムに潜むウイルスは注目の的だ。東京医科歯科大学の石野史敏教授は、ヒトなど多くの哺乳類にある遺伝子「PEG10」に目をつけた。マウスの実験でPEG10の機能を止めると胎盤ができずに胎児が死んだ。PEG10は、哺乳類でも卵を産むカモノハシには無く、どことなくウイルスの遺伝子に似る。状況証拠から「約1億6000万年前に哺乳類の祖先にウイルスが感染し、PEG10を持ち込んだ。これがきっかけで胎盤ができた」とみる。胎盤のおかげで赤ちゃんの生存率は大幅に高まった。ウイルスが進化のかじ取りをしていた証拠は続々と見つかっている。哺乳類の別の遺伝子「PEG11」は、胎盤の細かい血管ができるのに欠かせない。約1億5000万年前に感染したウイルスがPEG11を運び、胎盤の機能を拡張したようだ。ウイルスがDNAに潜むのには訳がある。「生物の免疫細胞の攻撃を避け、縄張りも作れる」(石野教授)。ウイルスは生きた細胞でしか増えない。感染した生物の進化も促し、自らの「安住の地」を築きたいのかもしれない。東海大学の今川和彦教授は「過去5000万年の間に、10種類以上のウイルスが様々な動物のゲノムに入り、それぞれの胎盤ができた」と話す。ヒトや他の霊長類の胎盤は母親と胎児の血管を隔てる組織が少ない。サルの仲間で見つかる遺伝子「シンシチン2」は、約4000万年前に感染したウイルスが原因だ。さらにヒトやゴリラへ進化する道をたどった一部の祖先には、3000万年前に感染したウイルスが遺伝子「シンシチン1」を送り込んだ。初期の哺乳類はPEG10が原始的な胎盤を生み出した。ヒトなどではシンシチン遺伝子が細胞融合の力を発揮し、胎盤の完成度を高めた。本来のシンシチン遺伝子はウイルスの体となるたんぱく質を作っていたが、哺乳類と一体化すると役割を変えた。父親の遺伝物質を引き継ぐ赤ちゃんを母親の免疫拒絶から守る役目を担っているとみられる。石野教授は「哺乳類は脳機能の発達でもウイルスが進化を助けた」と指摘する。「複雑になった脳の働きを、ウイルスがもたらす新たな遺伝子が制御しているのだろう」。ウイルスが「進化の伴走者」と言われるゆえんだ。ウイルスの影響がよくわかる植物の研究がある。東京農工大学や東北大学などのチームはウイルスがペチュニアの花の模様を変える様子をとらえた。花びらの白い部分が、ゲノムに眠るパラレトロウイルスが動き出すと色づく。ダリアやリンドウでも似た現象がある。東京農工大の福原敏行教授は「一部はウイルスの仕業かもしれない」と語る。哺乳類のように進化の一時期に10種類以上の遺伝子がウイルスから入った例は見つかっていない。哺乳類も、形や機能の進化にウイルスを利用してきたのだろう。進化の歴史を隣人として歩んできたウイルスと生物の共存関係は今後も続く。

*3-2:https://www.nikkei.com/paper/related-article/?b=20200531&c=DM1&d=0&nbm=・・ (日経新聞 2020.5.31) 内在性ウイルス、進化研究の手掛かりに
 生物の生殖細胞に入ったウイルスがDNAの一部となった塩基配列。「内在性ウイルス様配列」とも呼ぶ。遺伝情報として子孫に伝わり、進化の過程で体の形や色、臓器や組織の機能を変える役割を果たしてきた。脊椎動物の場合、レトロウイルスがもとになった内在性レトロウイルスが多い。レトロウイルスは感染した動物のDNAに組み込まれやすい。他にもボルナウイルスなどが脊椎動物のDNAで見つかっている。様々な動物の間で特定の内在性ウイルスの有無を比べれば、そのウイルスが侵入した時期が分かる。そのため内在性ウイルスは「ウイルスの化石」とも呼ばれ、ウイルスの進化を研究する手掛かりになる。

<“恐竜”は絶滅したのか>
*4:https://books.j-cast.com/2019/07/21009447.html (Bookウォッチ 2019/7/21) 恐竜はいまも身近なところで私たちと同居している!
 NHKがこのところ、恐竜をテーマにした番組を相次いで放送している。東京・上野公園の国立科学博物館で開催中の「恐竜博2019」(2019年10月14日まで)のプロモーションの一環でもあるが、日本が実は「恐竜王国」であったという新事実を知り、興味を持った人も多いだろう。本書『恐竜の教科書』(創元社)は、イギリスの恐竜研究者であるダレン・ナイシュ(サイエンスライター、古生物学者)とポール・バレット(ロンドン自然史博物館研究員)が執筆。北海道で発見された「むかわ竜」などの発掘調査で有名な小林快次・北海道大学総合博物館教授らが監訳した最新の「恐竜の教科書」である。
●最新研究で覆る定説
 小林さんが「監訳者序文」で、最近の恐竜研究のスピードの速さについて、こう書いている。「これまで『定説』とされてきたことが、あっという間に古くなり、これまで考えもつかなかった恐竜の新しい像が唱えられる。そうかと思うと、2つの説を行ったり来たりして、いつまでたっても決着がつかないものもある」。恐竜は鳥の骨盤を持った鳥盤類とトカゲの骨盤を持った竜盤類の2つのグループに分かれるという定説があったが、2017年にイギリスの研究チームから異論が出たという。かなり専門的なことになるのでここでは触れないが、小林さんは「恐竜の進化の大きな流れを解釈する上での定説が根本から覆ったことになり、衝撃的な提案だった」としている。一方、2つの説を行ったり来たりしている例に、ティラノサウルスの羽毛問題があるという。中国で発掘された化石からティラノサウルスの祖先には、羽毛が生えていることが分かった。しかし、ティラノサウルスの標本の首、腰、尻尾にウロコが生えている研究成果が2017年に発表され、まだ羽毛問題は決着がついていないそうだ。本書の構成はこうなっている。第1章「歴史、起源、そして恐竜の世界」、第2章「恐竜の系統樹」、第3章「恐竜の解剖学」、第4章「恐竜の生態と行動」、第5章「鳥類の起源」、第6章「大量絶滅とその後」。
●鳥は恐竜である
 本書が強調するのは恐竜と鳥との関係である。著者はこう断言している。「鳥が恐竜そのものだということは、研究上重要な知見である。恐竜は絶滅したという考えは捨てなければならず、恐竜は絶滅していないということを受け入れなければならない」。恐竜の3つのグループのうち獣脚類に含まれるグループの1つが、約6600万年前に白亜紀を終焉に導いた大量絶滅を生き延び、その後爆発的に多様化した。その生き残りが鳥類だというのである。第5章、第6章でこのことを詳しく説明している。そしてこう結んでいる。「今日、私たちは、恐竜が現在も生息している動物であることを知っている。この数十年間の恐竜研究で明らかになった重要な事実の1つが、恐竜は6600万年前に絶滅していないということだ。彼らは、私たちのそばで暮らしており、私たちを取り巻く環境の中で重要な存在だ。そして、いくつかの種は、私たちがペットとして飼ったり、食料にしたりしていて、日常生活において重要な位置を占めている」。今日から、鳥を見る目が変わってきそうだ。疑問を持つ人にはぜひ本書を読んでいただきたい。豊富な写真と図版はオールカラーなので、小学生が見ても楽しめる。本欄では、小林さんが書いた『ぼくは恐竜探険家!』(講談社)、『モンゴル・ゴビに恐竜化石を求めて』(東海大学出版部)などを紹介済みだ。

<1枚309円の布マスク配布と感染症が想定外だった病院再編計画 ← 厚労省>
PS(2020年7月29日追加):*5-1のように、政府(厚労省)は、7月下旬から介護施設等に布マスク約8千万枚を配るそうだが、その費用は247億円に上るため、単価は309円/枚になり、これは使い捨てマスクの3倍以上する(現在は、50枚入使い捨てマスクが2,000円以下)。さらに、その布マスクは、海外生産したものを随意契約で購入しているため、国内の景気や技術力の向上には全く役に立たず、単なる大きな無駄遣いになっている。
 一方で、新型コロナのPCR検査や医療保険は変にケチっているため、国民全員を陽性と看做して自粛・休業させることとなり、これによる倒産回避のための莫大な無駄遣いも発生した。さらに、検査の技術開発を妨げ、治療薬の承認も行わず、日本の医療産業の質の向上を阻んでいるのが厚労省なのだ。
 その上、昨年は、*5-2のように、「病院再編で虎の尾を踏んだ」として厚労省に同情的な記事が少なくなかったが、厚労省は地方自治体が経営する公立病院や日赤などの公的病院を、心疾患、脳卒中、救急など9分野の高度医療について、2017年6月のレセプト(診療報酬明細書)データを分析し「診療実績が乏しい」「代替する民間病院が近くにある」などの基準を基に、統廃合の必要があるとして、424の病院を公表したのだそうだ。確かに、感染症は医療の「基本のキ」であるため、高度医療には入らないが、「基本のキ」であるからこそ感染症も考慮して病院に余裕を持たせておかないのは驚くばかりだ。また、普段は需要が小さくても必要な診療科もあり、それを置いておけるのが公的病院であり、さらに、団塊世代のすべてが75歳以上の後期高齢者となる2025年を睨めばこそ、リハビリテーションに進む前に高度急性期・急性期の医療が必要なのであるため、ここまで愚かな厚労省が企画しては困るわけである。

*5-1:https://www.tokyo-np.co.jp/article/45197 (東京新聞 2020年7月28日) 布マスク8千万枚配布へ 介護施設対象、厚労省
 新型コロナウイルスの感染拡大防止策として、政府が布マスク約8千万枚を7月下旬から介護施設などに配ることが27日、厚生労働省への取材で分かった。春から続く布マスク配布事業の一環で、9月までの配布完了を目指している。厚労省によると、対象は介護施設や障害者施設、児童施設、幼稚園、保育所などで、職員や利用者が使うことを想定。4月から約2千万枚、6月から約4千万枚を配布しており、今回は第3弾に当たる。「アベノマスク」とやゆされた全世帯向けとは別の事業だが、素材や形状は同じだ。

*5-2:://www.nikkei.com/article/DGXMZO51218300R21C19A0000000/ (日経新聞 2019/10/23) 「オレは聞いてない」 病院再編、虎の尾踏んだ厚労省
 宮仕えの身なら一度や二度は覚えがあろう。そんな話は聞いていないという上役のひと言で、実現間近だと思っていたプロジェクトが仕切り直しになる――。9月下旬、厚生労働省は地方自治体が経営する公立病院と日赤などの公的病院について、再編や統廃合を議論する必要があるとみている424の病院を名指しして公表した。心疾患、脳卒中、救急など9分野の高度医療について、2017年6月のレセプト(診療報酬明細書)データを分析し「診療実績が乏しい」「代替する民間病院が近くにある」などの基準をもとに選び出した。これが文字どおり「聞いていない」問題を引き起こした。名指しされた側の大半が424の名前を唐突に出してきたと受けとめたのだ。再編や統廃合について、各病院をかかえる自治体や医療圏での議論の材料にしてほしいという厚労省の意図は、たちどころに吹き飛んでしまった。「ウチは閉鎖対象なのか」(リストに載った病院の院長)、「なぜ民間病院の名前は出さないのか」(該当する自治体の首長)、「地域住民や患者に説明できないじゃないか」(地方議会の議員)といった抗議の声が同省に相次いだ。名指しされた側の被害者意識は、今なお増幅している。たしかに唐突感はあった。筆者も日経電子版が424病院のリストを載せたのをみて初めて知り、取るものも取りあえず担当課に取材に行った。だが説明を聞くと、準備を重ねて公表にいたった経緯がみえてきた。安倍政権は6月に閣議決定した骨太の方針2019に次のような趣旨を盛り込んでいた。「すべての公立・公的病院に関する具体的な対応方針について、診療実績のデータを分析し、その内容が民間病院に担えない機能に重点化され、(中略)医療機能の再編や病床数の適正化に沿うよう国が助言や集中支援する」。高度急性期・急性期という病院機能に着目した客観的なデータは、関係者を交えた同省主宰の「地域医療構想に関するワーキンググループ」の議論に基づくものだった。ワーキンググループに出された資料は厚労省のウェブサイトに掲載されているし、公表までに時間がかかる難点はあるが議事録も公開している。問題意識をもって一連の議論をフォローしてきた関係者にしてみれば、出るべくして出てきたリストだった。戦後ベビーブーム期に生を受けた団塊世代のすべてが75歳以上の後期高齢者になる2025年をにらみ、病院の機能を高度急性期・急性期主体から、リハビリテーション向けの回復期や長期入院の慢性期主体に移行させる必要性は、多くの医療関係者が意識している。リストの公表はその導火線になるはずだったが「聞いていない」問題に発展した以上、厚労省の意図は二の次にされ、一気に政治的な色彩を帯びてしまった。慌てた同省は、10月中に全国5ブロックで説明会を開くべくセットした。「意見交換会と言わなければおしかりを受ける」という気の使いようだ。11月には特に強い要望が出た県の担当部局に、手分けして個別に説明に赴くことにしている。17日に福岡市内で開いた九州ブロックの説明会では、橋本岳副大臣が冒頭にあいさつし「住民のみなさまの不安を招いてしまったことを、われわれとしても反省しています」と低姿勢で臨んだ。それでも「聞いていない」側は収まる風がない。18日付の本紙九州経済面は、名指しされた国立病院機構大牟田病院(大牟田市)の関係者が「職員や患者は病院がなくなるのではないかと不安に思っている。風評被害を払拭するメッセージを出してほしい」と求めたと伝えている。また公立種子島病院(鹿児島県南種子町)の担当者は「医師不足で困っているのに、若い医師が来てくれるか」などと訴えた。公立病院再編の必要性を唱えてきたある識者は「たしかに名指しされた病院は若くて腕がいい医師を集めにくくなるかもしれないが、それによって自治体の首長は再編・統廃合にいや応なく向き合わざるを得なくなるのではないか」と語る。リストの公表にはショック療法の意味合いがあるとみているわけだ。もちろん厚労省は再編を押しつける立場にない。民間病院では代替機能を果たしにくい災害医療やへき地医療を担っている公立・公的病院もあり、一律に再編対象にするのが難しいケースも出てくるだろう。議論の素材として出したリストだったが、地方政界や医療界を巻きこむ事態に発展し、戸惑いが隠せないといったところだ。心配なのは、厚労省がめっぽう政治に弱い官庁である点だ。行政官として理にかなった政策だと信じて出したものも、与党幹部や首相官邸がダメを出すと、たちどころに萎縮してしまう傾向が否めない。消費税収を積み立てたファンドを使ってリストラされる関係職員の退職金を割り増しするのも、政治的な妥協ではないか。公立・公的病院の再編・統廃合はほとんどの自治体の首長が遅かれ早かれ直面する難題だ。高齢化は待ってくれない。「聞いていない」と言われてひるむのではなく「いま聞いたのだから、いいじゃないですか」と言い返すくらいの気概を厚労省に持ってほしい。

<賢い選択をすべき>
PS(2020年8月3日追加):*6-1のように、沖縄県は新型コロナの感染拡大を防ぐために、8月1日~15日の期間に緊急事態宣言を出し、①沖縄本島全域で不要不急の外出 ②県境をまたぐ往来 ③観光による県外からの来県 を自粛し、④県内でのイベントの開催も中止・延期などをするように県民に求めたそうだが、検査・隔離・治療などの最も重要な医療行為を行わず、漠然と全員の活動を縮小させるのは経済の疲弊が大きい割に効果が薄い。特に沖縄の場合は、移動に航空機か船を使わなければならないため、空港や港で乗客全員に短時間で結果の出る検査を行えば、陽性者を隔離して治療することが可能なのである。さらに、イベントも入る前に短時間で結果の出る検査を行い、受益者が自費負担すればよく、検査もせずに莫大な協力金を支給して、営業時間を短縮させたり、接待・接触を伴う夜の街を標的に休業要請したりするのは、科学的根拠は乏しく経済的負担が大きい。また、携帯アプリを活用して自由な筈の個人の行動を追跡するのも、それ自体が目的なのではないかと思うくらい不合理だ。
 また、*6-2-1のように、ダイヤモンドプリンセス号の時から既に6カ月も経過しているのに、未だに「国内のPCR検査が目詰まり」などと言っているのは、クラスター以外は検査や治療をしない方針を決めた専門家会議と厚労省の政策の誤りであるため、それによって被害を受けた国民は責任追及した方がよいくらいで、そのくらいしないと厚労省の方針は変わらない。さらに、「唾液の方が鼻の粘液より5倍もウイルスが多い」というのは、米国で3月に発見されていたのに、日本ではまだ「唾液による検査は精度が低い」などと言って今でも防護服を着て鼻の粘液で検査しているのなら、日本は技術革新を牽引するどころかキャッチアップすらできずに無駄遣いしている国なのである。 
 民間企業では、*6-2-2のように、医師の判断に縛られずに自前で従業員に検査を受けさせる動きが広がり始めたそうだが、安全に働くためには定期的なPCR検査か抗体検査が必要であるため、会社が負担して検査拠点と連携し、検査結果を速やかに出せる体制を整えるのがよい。さらに、GoToキャンペーンなどによる国間・県間移動時も、空港や駅でチェックインする前に速やかに結果の出る検査を行うことを条件にするのがよいと思う。
 このような中、6カ月も検査数を制限したまま、*6-3-1のように、「休業要請に罰則と補償の規定を加えるべきだ」という大きな声に押されて、政府は新型コロナ対策の特別措置法を改正する検討に入ったそうだが、職業差別的な営業停止を要請する前に、的を得た予防を徹底し、私権を制限せずに経済を廻した方が、国民の福利が大きく、財政への負担は小さい。
 また、*6-3-2のように、埼玉県知事は新型コロナウイルスのPCR検査について、学校・病院・接待を伴う飲食店等のうち複数の感染者が発生して集団感染の可能性が高いと判断された施設は検査対象を拡大する方針を出したが、これはクラスター対策であってこれまでと同じだ。3~4月に速やかに陽性者を隔離しなかったため、無症状の新型コロナ患者が市中に多くいる現在では、健康診断にPCR検査を取り入れ、陽性者は陰性になるまで隔離して治療する対応が必要なのである。


   2020.7.10東京新聞  2020.7.24朝日新聞     2020.6.25Qtere

(図の説明:左と中央の図のように、関東で再燃し始めた新型コロナによる死者数は、右図のように、日本・韓国・中国などの東アジアでは著しく低い。そして、検査不足のため、仮にこの10倍の死者数がいたとしても欧米よりかなり低く、その理由は生活習慣・交差免疫・遺伝的特質などだと推測されている。そして、この大騒ぎの中、2018年に日本におけるインフルエンザ死者数が3,325人だったのと比較して、2020年7月20日に1,000人を超えたと言われる新型コロナ死者数は約1/3なのである)

*6-1:https://ryukyushimpo.jp/news/entry-1166374.html (琉球新報 2020年8月1日) 沖縄県が緊急事態宣言 本島全域で外出自粛要請、15日まで 那覇飲食店は時短営業
 玉城デニー知事は31日、新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため、県の警戒レベルを4段階中の第3段階「感染流行期」に引き上げ、県独自の緊急事態宣言を出した。緊急事態宣言の期間は8月1日から15日。期間中は沖縄本島全域で不要不急の外出を自粛するよう県民に求める。県境をまたぐ不要不急の往来も自粛するよう要請し、観光など県外からの来県は慎重な判断を求めた。医療体制を守るため、離島への移動も最小限にし、期間中の県内イベントの開催についても中止や延期、規模縮小の検討を呼び掛けた。緊急事態宣言は4月に引き続き2回目。玉城知事は31日の新たな感染者数が過去最多の71人を確認し、7月に入ってからの累計感染者数が253人になったことを挙げ、「爆発的な感染拡大がみられる」と述べた。感染拡大のスピードが想定を上回っており、感染者を受け入れる病床数が逼迫(ひっぱく)していることから、玉城知事は「重大な局面を迎えていることを県民に伝え、感染拡大防止に取り組むため宣言を発出した。何としても医療崩壊を食い止めなければならない」と訴え、県民一人一人の感染防止策の徹底を呼び掛けた。中南部を中心に感染が広がっており、特に那覇市の感染者数が115人に上ることなどから、接触や「3密」の場を減らすために、期間中は市内の飲食店の営業時間を午前5時から午後10時までにするよう求めた。営業時間短縮に協力する店舗には10万円の協力金を支給する。県はこれまでクラスター(感染者集団)が発生している那覇市の松山地域に店舗を構える接待・接触を伴うスナックなどに同期間、休業要請を実施することを決めている。キャバレーやナイトクラブ、ライブハウス、スナックなどを対象とし、応じた事業者には協力金20万円を支給する。20、30代以下の若年層への感染が多いことから、携帯電話のアプリなどを活用した感染防止対策や新しい生活様式の実践を呼び掛けた。

*6-2-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200801&ng=DGKKZO62191010R00C20A8EA2000 (日経新聞 2020.8.1) PCR 目詰まり再び、感染急増、拡充求める声
 新型コロナウイルスの感染が再拡大するなか、国内のPCR検査の拡充が進まない。1日の検査能力は4月に比べて2倍超の約3万5千件にとどまる。医師が感染の疑いが強いと判断しなければ検査できない「第1波」と同じ状況では、経済活動などの本格回復はおぼつかない。「また検査に目詰まりが出てきている。経済にも影響する」。31日、政府のコロナ対策の分科会後の記者会見で、尾身茂会長は政府に検査能力のさらなる向上を求めた。4月ごろの第1波では発熱などの症状が続いても保健所などが検査を断る事例が問題になった。当時は検査能力が1日1万件程度に限られ、検査対象を感染の疑いが強い人に絞り込んでいた。その後に検査能力は高まったが、7月に入って感染者は急増。再び検査の上積みを求める声が強まっている。日本臨床検査医学会で新型コロナ対策を担当する柳原克紀・長崎大教授は大規模クラスター(感染者集団)の発生に備え、「今の10倍以上に能力を高めるべきだ」と語る。目詰まりの根本には医師の判断を前提とした国の方針がある。唾液によるPCR検査が可能になり、医師が関与しない検査もしやすくなっている。唾液の採取は医師でない人もできるからだ。ただ鼻の粘液に比べて唾液による検査は精度が低いとされ、実施件数は広がりを欠く。保健所や地方衛生研究所の1日あたりの検査能力も4月から7月までで約2千件しか増えていない。民間検査会社の能力も増えたとはいえ1万8千件超にとどまり、欧米には見劣りする。

*6-2-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200801&ng=DGKKZO62191070R00C20A8EA2000 (日経新聞 2020.8.1) 企業、自前で検査の動き
 企業の間では医師の判断に縛られず、自前で従業員に検査を受けさせる動きが広がり始めた。日本ペイントホールディングスは31日、国内の全社員約4千人のうち希望者にPCR検査を順次実施すると発表した。検査費用は会社が負担する。伊藤忠商事は東京女子医科大病院と連携し、検査結果を即日に出せる体制を整えた。「関東地方の社員を対象に安心して働ける体制を整えた」という。日立製作所は一部の社内診療所で、業務で海外に渡航する社員に検査ができる体制を構築した。三菱商事も社内診療所に加え、外部の検査機関も活用して社員に対する検査を実施している。保健所による感染症法に基づく検査や、医師による医療保険での検査は感染の疑いが強い人に限られ、公費が投入される。一方、企業が安全目的などで従業員に行う検査は全額自己負担で公費はゼロだ。それでも自前の検査が広がるのは、無症状を含めた感染者が全国で急増する中、「社員の安心・安全を確保する」(日本ペイントホールディングス)ためだ。こうした対応をできる企業は多くない。6月下旬に日本経済新聞社が85社を対象にした調査では、全体の約7割の60社が社員向けPCR検査の「実施の予定がない」と答えた。理由は「検査費用が高い」「検査を受ける場所が見つからない」が多かった。コンビニエンスストアの店舗従業員を含め約20万人が働くローソン。検査の重要性は認識しているが現時点では検討しない。「検査費が廉価になることや公的補助が出ることを望む」(同社)。介護や保育など日常生活の維持に必要な従事者(エッセンシャルワーカー)はより切実だ。「職員が公費で検査を受けられる体制を整えてほしい」。高齢者向け福祉施設、こぐれの里(東京・練馬)の担当者は訴える。入居者への感染を防ぐため約40人の職員の一部は普段から外出を控える。施設側が検査を受けさせることを検討したものの、費用負担の重さから二の足を踏む。

*6-3-1:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/554680 (佐賀新聞 2020.7.31) コロナ特措法改正、早急に国会で議論を
 政府は新型コロナウイルス対策の特別措置法を改正する検討に入った。感染拡大防止のための休業要請に罰則と補償の規定を加えるべきだとした全国知事会の要請に呼応した。緊急事態宣言なしで知事が営業停止を要請できるようにすることなども検討するという。私権制限を強める内容で慎重な吟味が必要だが、第2波と呼ぶべき局面を迎え時間の余裕はない。法改正できるのは唯一の立法機関である国会だけであり、野党4党は憲法53条に基づき臨時国会召集を要求する方針だ。政府は「新しい法律は必要」(菅義偉官房長官)と言うなら早急に国会での議論に応じるべきだ。現行法の問題点は(1)要請・指示に強制力がなく私権制限への補償もない(2)国と都道府県の権限・役割の分担が不明確―に集約される。緊急事態宣言を発令するのは国(首相)で各種要請をするのは知事だ。特措法45条は、宣言を受けて知事が個人に外出自粛、店舗などに休業を要請、指示できると規定。従わない場合は店舗名などを公表できる。一方、24条は宣言なしでも知事が団体や個人に協力要請できると定めている。知事の要請には二つルートがあるわけだが、いずれも従わない場合の罰則、従った際の補償はない。知事会の要求は第一に、罰則を設けて権限を強化し、国が財政支援する休業補償を明文化することだ。次に、緊急事態宣言なしで知事が営業停止を要請できるようにすること。これに関しては、知事が独自に実施を判断するのは難しいため、統一基準を政府がつくるべきだとする一方、知事に国との事前協議を求めている現行の対処方針は知事権限を形骸化するとして見直しを主張している。3点目は、緊急事態宣言の対象を都道府県ではなく市町村単位に細分化することだ。いずれも知事の法執行を後押しするため、都道府県が希望するのは一定の合理性があるとも言える。だが、これら知事会の要求を全て盛り込んだ法改正が妥当なのかは疑問がある。例えば、緊急事態宣言対象の市町村は国が決め、休業要請の対象期間・業種は知事が決めるというのは、すみ分けが難しくないか。宣言なしで知事が営業停止を求める権限を持てば、国と知事の「二重権力」になりかねない。逆に言えば、出ても出なくても効果は同じとなり、緊急事態宣言が有名無実化しかねない。一方で、宣言発令の権限を知事に移譲すればいいとの議論にもなり得る。百出する議論をきちんと整理して法律に落とし込まなければ、法改正によって、かえって混乱が増しかねない。また政府が進める特措法以外の現行法の積極適用による対策強化も議論が必要だ。「警察が足を踏み入れる形で厳しくやる」(菅官房長官)として警察が風営法に基づきホストクラブの時間外営業などを取り締まる際、コロナ予防の点検も行うという。厚生労働省も建築物衛生法による立ち入り調査を検討する。こうした法執行は越権行為、公権力乱用につながり社会を萎縮させかねない。政府は直ちに国会で野党のチェックを受けるべきだ。さらに言えば、議論の混迷はリーダーシップ不在の証左だ。安倍晋三首相は「緊急事態宣言を出す状況にはない」と立ち話で言うだけでなく、政府方針をきちんと説明し疑問に答えてほしい。

*6-3-2:https://www.saitama-np.co.jp/news/2020/07/28/08_.html (埼玉新聞 2020年7月28日) <新型コロナ>集団感染の可能性…施設の検査対象を拡大へ 市長会議で方針 別の店や利用者らにも
 県内各市長と知事、県幹部が行政課題について意見交換する市長会議が27日、さいたま市内で行われた。会合で大野元裕知事は新型コロナウイルスのPCR検査について、学校や病院、接待を伴う飲食店などで複数の感染者が発生し、集団感染の可能性が高いと判断された施設では、検査対象を拡大する方針を明らかにした。これまでは感染が確認された場合、原則として濃厚接触者に限り検査を実施してきたが、大野知事は取材に対し「市町村や県が迷いなく、効果的に検査を行える体制を作る」と話した。無症状者の検査は県ではこれまで、原則として濃厚接触者に限定し、保健所が濃厚接触者を特定し、PCR検査を実施してきた。厚労省は今月15日、都道府県などに対し、感染症法に基づく新たな検査の対象者として、濃厚接触やクラスター(感染者集団)連鎖が生じやすいと考えられる特定の地域や集団、組織などを含めることを通知している。県はこの指針に基づき新たに対象となる例として、医療機関や高齢者施設であれば職員や入院患者、入所者まで広げ、保育所や幼稚園であれば職員や園児、小・中学校、高校では同じ学級やクラブに所属する職員や児童生徒、職場では感染者と同じ部署(フロア)に属する職員や利用者らまで拡大する。接待を伴う飲食店では同じビルの別の店の従業員、利用者にも実施する。会議には県内40市の全市長が参加。県から、新型コロナウイルスの県内の発生動向や検査体制強化や病床確保計画など、第2波への備えが説明されたほか、「疑い患者」の円滑な救急搬送受け入れ体制構築による「たらい回し」防止への県独自の取り組みなどが紹介された。出席した市長からは県に対し、家族に感染者、濃厚接触者がいる人を集団でどう扱うかといったことや、集団検査が始まった際の情報管理、県と市の個人情報保護と発表の在り方などについて質問や意見が出された。会議後、県市長会会長で熊谷市の富岡清市長は記者団に対し「新型コロナウイルス対策を含め意見交換し、検査枠拡大などコンセンサスが得られた。県と市町村が一体となり、課題に取り組む土台ができた」と話した。

<メディアの意図的な誤報は何故か?>
PS(2020年8月6、8、12、13日追加):大阪府、大阪市、府立病院機構大阪はびきの医療センターが、8月4日、新型コロナウイルス感染者が殺ウイルス効果のあるポビドンヨードを含むうがい薬でうがいをしたら、唾液検査で陽性となる割合が減ったという研究結果を発表すると、*7-1をはじめとして、メディアで言いがかりのような非難が始まった。しかし、「厚労省が承認していないから、効果がない」とは言えず(そのような薬は多い)、唾液の中にウイルスがおり、味覚障害を起こすのなら、口腔内だけでもウイルスを減らせば自分の免疫への負荷を減らせるので、予防効果も治療効果もあるだろう。また、「完全に効かないから、効かない」とも言えず、買い占めをするのは人の倫理の問題であって発表者の責任ではない。さらに、イソジンは、あわてて買わなくても普段から置いてあってよいようなうがい薬であり、これに加えてアルコールを含む口腔洗浄液も効果があると思われる(やりたくない人には、決して薦めない)。
 このような中、*7-2のように、アビガン投与の臨床試験結果についても、マスコミは意図的に有効性が確認できないというニュースを流したが、情報発信元の藤田医科大学の発表は、「入院初日から投与したグループと6日目から投与したグループとの間に有意差が見られない。両方のグループも全員ウイルスが2から3日後に消失した」「投与と非投与との比較はしていない」ということだったそうだ。中等症・重症の患者に偽薬を服用させる研究など人道的にできないため、投与と非投与との比較をしていないだけであり、それによって「アビガンの有効性は示されなかった」という結論にはならない。これについては、東大病院の観察研究に基づいた「重症コロナ患者へのフサン・アビガン併用療法の有効性示唆(日本医事新報社)」という記事が自然で、軽症ならアビガンだけでもよさそうだ。
 それでは、何故、メディアが前向きの予防薬・検査・治療薬を否定ばかりして後ろ向きの自粛を求め続けるのかを考えれば、①『必ず第2派が来る』とした専門家会議の予言をあてさせたい ②家にこもってTVを見ていて欲しい ③新型コロナにかこつけて「新しい生活様式」を普及させたい ④私権の制限をしたい ⑤何でもいいから首相はじめ政治家を批判したい など、新型コロナの鎮静化(これが国民の利益)とは異なる目的があると考えざるを得ない。
 なお、2020年8月7日、*7-3のように、厚労省は「①都道府県が推計した今後の流行時に必要となる1日あたりの最大検査件数は全国で計約5万6千件にのぼる」「②検査可能な件数は7月末時点で少なくとも30都道府県が最大想定を下回っている」「③民間機関等への外部委託や近隣自治体との連携で対応してほしい」等と発表したそうだが、①については、最大検査件数が全国で計約5万6千件になるというのはむしろ甘い。何故なら、人口84百万人のドイツは、感染者の早期発見に繋げるため、*7-4のように、7月9日時点でPCR検査を週110万件行えるまでの検査態勢強化を続け、他の国も検査を増やしており、これが現代の正攻法だからだ。そのため、②については、3月初旬ならまだわかるが、それから5ヶ月も経過した今では何を言っているのかと思われ、③の民間機関等への外部委託が可能であることも2、3月から言われていたのだ。さらに、近隣自治体との連携は、2月に和歌山県が行ったことだ。にもかかわらず、日本では融通をきかせず検査をケチったため、市中に蔓延させてかえって莫大な費用がかかった。そのため、市中蔓延は、厚労省と保健所の責任であって、国民の責任では全くない。
 さらに、*7-5のように、新型コロナウイルスの有無を調べる検査は、「①検査機器で分析するには専門技術が必要だが、対応できる人材が限られる」「②検査機器で分析する能力があっても、検体が十分に採れる態勢がないと検査できない」「③濃厚接触者にあたらない接触者にも検査を広げる必要があり、全国で約30万件の検査が必要」「④無症状の濃厚接触者まで積極的に検査しており、おおむね適切な範囲」「⑤PCR検査では、検査精度の限界から偽陰性が生じる」「⑤偽陰性の人が外出すれば、本当は陽性であるため感染を広げる」などが、未だに言われているそうだ。このうち、①②については、既に検査機器の改良ができているため、③の濃厚接触者ではない人に検査を広げることは可能だ。さらに、⑤の偽陰性・疑陽性のような問題は、感度の高い(低い)他の検査と併用したり、複数回検査したりすれば解決できる上、④のような不徹底な検査と隔離が現在の波を引き起こしたのであるため、これを解決することが重要なのであり、そのために検体の研究や機械の改良を世界で進めているのである。
 琉球新報は、2020年8月11日、*7-6のように、沖縄県議会が、「沖縄を訪れる観光客などの往来者に対して空港内で唾液による抗原検査を促す条例制定を行い、陰性となった往来者には『検査済証』を発行して本人とホテルの双方が安心できる環境づくりを目指す」と記載している。内外の他の空港でも飛行機にチェックインする時に検査を行い、手荷物検査終了時に「陰性証明書」も発行できるようにしておけば、全員自粛ではなく経済活動を行うことが可能だ。これは船舶にも応用でき、検査費用は運賃に含めて航空会社や船会社が支払ったらどうだろうか?

*7-1:https://www.asahi.com/articles/ASN8465THN84PTIL01M.html (朝日新聞 2020年8月4日) 「うがい薬で唾液中のコロナウイルス減少」吉村知事会見
 大阪府と大阪市、府立病院機構大阪はびきの医療センター(大阪府羽曳野市)は4日、新型コロナウイルスの感染者に殺ウイルス効果のあるうがい薬でうがいをしてもらったところ、唾液(だえき)の検査で陽性となる割合が減ったとの研究結果を発表した。府などは肺炎などの重症化の予防につながる可能性があるとして、本格的な研究を始める。政府が効果などを認めていないため、吉村洋文知事は「薬事法(現・医薬品医療機器法)上、効果があるとはいえない」とした上で、「(殺ウイルス効果のある)『ポビドンヨード』を含むうがい薬は『イソジン』などとして市販されているので、うがいを励行してほしい」と呼びかけた。センターの松山晃文・次世代創薬創生センター長によると、研究は府内で宿泊療養している軽症や無症状の患者41人を対象に実施。ポビドンヨードを含んだうがい薬で1日4回うがいした人の唾液のPCR検査の陽性率は、1日目は56・0%で、4日目は9・5%に減った。うがいをしなかった人は、それぞれ68・8%、40・0%だったという。松山氏は「コロナは鼻やのどの奥で増える。今回、唾液だけでやっているので、これで患者を治せるわけではない」とした。「ウイルスを含んだ唾液が肺に入ることで肺炎を起こすケースがある。唾液中のウイルス量を減らすことで重症化が抑制され、人にうつしにくくなるのではないか」とも説明。今後は対象者2千人を目指して研究を続けるとした。効果が薄い場合の責任について記者団に問われると、吉村知事は「僕が責任を取るのは研究結果。結果は保証したい。コロナに完全に効く薬はなく、それに対して責任取るとか取らないとか、そういうものじゃない」とした。会見で吉村知事は「買い占めはしないでください」と訴えたが、大阪市中央区のドラッグストアでは会見後の午後4時半過ぎ、イソジンを含むうがい薬を置く棚だけが空になっていた。男性店長は「1時間ほど前に売り切れました」。約30個あったうがい薬が10分ほどの間に売り切れたという。「本来は風邪が流行する冬場に売れる商品。コロナの予防にはなるかもしれないですが……」。新型コロナウイルスの影響で1家族に1個と限定して販売していたという。自転車で店に駆けつけた男性(40)は、売り切れた棚の前で立ち尽くし、「テレビ番組でうがい薬が取り上げられているのを見た妻に頼まれて買いに来た。本当に効くのか分からないが、念のため、あれば安心できるかなと思って」。肩を落とし、携帯電話で妻に報告した。

*7-2:https://ameblo.jp/study-houkoku/entry-12610511562.html (Ameblo) アビガン投与の臨床試験結果に関するマスコミの誤報
 7月10日の各報道はアビガン投与の臨床試験の結果、有効性が確認できないとニュースを流していた。情報発信元の藤田医科大学の発表を読むと、記者は取材していないが読解力不足なのだろうと思われる。または意図的な捏造か?
 下記藤田医科大学の発表を読めば、「入院初日から投与したグループと6日目から投与したグループとの間に有意差が見られない。両方のグループも全員ウイルスが2から3日後に消失していた。」「投与と非投与との比較はしていない」と言うことだろうと解釈できる。各報道は、この発表を「有効性確認できず」と発表していた。共同に至っては「投与した感染者と未投与の感染者で投与6日目までを比較したところ」と完全に読み間違っている。NHKは「臨床研究は「初日から最長で10日間アビガンを投与するグループ」と、「最初の5日間は投与せず入院6日目以降に投与するグループ」で比較して調べています。」と正しく理解しているが「明確な有効性確認できず」と誤った印象のタイトルを付けている。以前より、アビガンの臨床試験については、否定的な論調の記事が多い。なお、7月6日の東大の発表では、アビガンとフサンの併用により、集中治療室で治療を受けた11人のうち10人が平均16日で人工呼吸器が不要になったと有効性を示唆している。(日本医事新報社)
*藤田医科大学発表:ファビピラビル(アビガン)特定臨床研究の最終報告について(https://www.fujita-hu.ac.jp/news/j93sdv0000006eya.html)
<報道>
○共同:アビガン、有効性示されず
 藤田医大(愛知県)は10日、全国の医療機関が参加した新型コロナウイルス感染症の治療薬候補アビガンの臨床研究で、投与した感染者と未投与の感染者で投与6日目までを比較したところ、回復が早い傾向はみられたものの、統計的に明らかな差はなかったと発表した。この研究では、明確な有効性は示されなかった。ウェブ上で記者会見した研究責任者の土井洋平教授は「ウイルス消失や、解熱しやすい傾向はみられた」と説明。研究参加者が89人と少なかったため統計的な差が出なかったのではないかとした上で「日本の流行状況では、この規模の研究が限界」との見解を示した。(https://www.47news.jp/news/new_type_pneumonia/5000060.html)
○NHK:「アビガン」明確な有効性確認できず 藤田医大など 新型コロナ
 新型コロナウイルスの治療薬の候補として期待されている「アビガン」について、患者に投与する臨床研究で明確な有効性は確認できなかったなどとする結果を愛知県にある藤田医科大学などのグループが発表しました。藤田医科大学などのグループは、ことし3月からインフルエンザ治療薬の「アビガン」を軽症や無症状の入院患者、88人に投与し、有効性や安全性を確かめる臨床研究を行っていて、10日、オンラインでの会見で結果を公表しました。臨床研究は「初日から最長で10日間アビガンを投与するグループ」と、「最初の5日間は投与せず入院6日目以降に投与するグループ」で比較して調べています。発表によりますと、「初日から投与したグループ」では6日目までにウイルスが検出されなくなった患者は66.7%でしたが、「5日間投与しなかったグループ」では56.1%でした。また熱が下がるまでにかかった平均の日数は、初日から投与すると2.1日、5日間投与しなかった場合は3.2日だったということです。研究グループは、入院初日から投与した方がウイルスがなくなったり、熱が下がったりしやすい傾向は見られたものの、統計的に明確な有効性は確認できなかったとしています。一方、重大な副作用は確認できなかったということです。土井洋平教授は「早く改善する傾向はあり、有効性がなかったという結論ではないと思う。国には依頼があればデータを提供していきたい」と話しています。
○厚労省「申請するかどうかは製薬企業の判断」
 「アビガン」について藤田医科大学の臨床研究の結果が示されたことを受け、厚生労働省は、「今回の結果をどう扱うのかや、新型コロナウイルスの治療薬としての承認を今後申請するかどうかは製薬企業の判断だ。申請された場合は厚生労働省として改めて審議する必要がある」とコメントしています。
○富士フイルム「発表内容を精査 治験は継続」
 「アビガン」については、薬を開発した富士フイルムのグループ会社が新型コロナウイルスの治療薬として、国の承認を目指した治験を進めています。今回の臨床研究の結果について、富士フイルムは「藤田医科大学の発表内容を精査しています。企業として行っている治験は現在も継続していて、引き続き行っていきます」とコメントしています。(https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200710/k10012508371000.html)
○日経
 アビガン「有効性確認できず」藤田医科大、新型コロナ(https://www.nikkei.com/article/DGXMZO61378960Q0A710C2I00000/)
○ロイター
 アビガンの臨床研究、統計的な有意差みられず=藤田医科大学(https://jp.reuters.com/article/avigan-idJPKBN24B0R0)
○日本医事新報社
 重症コロナ患者へのフサン・アビガン併用療法の有効性示唆─東大病院の観察研究で(https://www.jmedj.co.jp/journal/paper/detail.php?id=15071)

*7-3:https://www.asahi.com/articles/DA3S14579954.html (朝日新聞 2020年8月8日) 検査能力不足、30都道府県 7月末時点 全国、最大5.6万件必要 新型コロナ
 新型コロナウイルスのPCRなどの検査について、厚生労働省は7日、都道府県が推計した今後の流行時に必要となる1日あたりの最大検査件数は、全国で計約5万6千件にのぼると発表した。朝日新聞の調査では、検査可能な件数は7月末時点で、少なくとも30都道府県が最大想定を下回っていた。
厚労省は6月、検査体制の強化が欠かせないとして、3~5月の国内の流行時の患者数、重症化率などをもとに患者の推計モデルを提示。それに基づき、都道府県が流行時に必要な最大の検査数を推計し、体制を整えるよう求めていた。厚労省によると、最大検査件数の推計は計5万5933件(豪雨災害の影響で熊本県は含まず)。朝日新聞が各都道府県に7月末時点での検査能力を聞いたところ、回答があった46都道府県で計4万2203件(民間検査機関の活用を含む)。4月7日に東京都などに緊急事態宣言が出た時点の検査可能件数の1・1~23・9倍と、各地で検査能力は強化されていた。ただ、7月末時点で検査可能件数が、推計された最大必要件数以上だったのは15県。今春の流行時には、検査能力の限界のためにPCR検査を受けられない例が頻発したが、感染者が急増すると今後も同様の事態が起こる懸念がある。厚労省は、機器の導入などにより9月末までに全国で最大計約7万2千件のPCR検査や抗原検査ができるようになると見込む。だが都道府県への取材では、全国の自治体が一斉に機器導入を目指していて納期が遅れているケースもあり、備えには課題が残る。厚労省の担当者は、現状で検査能力が足りていない自治体について「民間機関などへの外部委託や近隣の自治体との連携で対応してほしい」と求めている。

*7-4:https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200709/k10012505371000.html (NHK 2020年7月9日) 独研究所所長「PCR検査は週110万件に態勢強化」新型コロナ
 ドイツ政府の新型コロナウイルス対策を担当する国立ロベルト・コッホ研究所の所長が日本メディアの取材に応じ、感染者の早期発見につなげるためPCR検査を週に110万件行えるまでに検査態勢の強化を続けてきたことを強調しました。ドイツの国立ロベルト・コッホ研究所のロタール・ウィーラー所長は、8日、都内の日本記者クラブで開かれたドイツ大使館の記者会見に、オンラインで参加しました。ドイツでは日本時間の8日午後6時現在、新型コロナウイルスへの感染が確認された人が19万人に上り、死者は9000人を超えていますが、一時は1日で6000人を越えていた新たな感染者数は最近では数百人の水準で推移しています。会見でウィーラー所長はドイツの施策について説明し、感染者の早期発見につなげるため現在ではPCR検査を週に110万件行えるまでに検査態勢の強化を続けてきたことを強調しました。また、ウィーラー所長は「追跡アプリなどのデジタル技術を駆使しながら、地域の状況を把握している保健所の態勢を強化することが非常に重要だ」と述べ、地域の機関も含めて国全体で対応能力を向上させ対策を進めて行くことが必要だと指摘しました。

*7-5:https://digital.asahi.com/articles/DA3S14581160.html?_requesturl=articles/DA3S14581160.html&pn=3 (朝日新聞 2020年8月9日) PCR拡充、急ぐ自治体 関東へ検体、結果まで数日 検査可能件数1日90件の島根
 新型コロナウイルスの流行時に必要となる、ウイルスの有無を調べる検査の最大想定は、全国で1日計5万6千件にのぼるとの推計を、厚生労働省が公表した。都道府県は検査体制の拡充を急ぐが、7月以降の全国的な感染拡大に直面するなか、課題も浮かぶ。島根県雲南市では7月21日、市役所の職員1人の感染が分かり、その3日後に職員2人の陽性が判明。市役所の職員約300人のPCR検査をすることになったが、県内の1日あたりの検査可能件数は90件。県の担当者は「あわてて民間の検査機関と契約を結びました」。ただ、検体の送り先が関東だったため、結果がわかるまでに数日かかった。契約は今年度末まで結んでいるが、検査結果はなるべく早く欲しい。島根県は流行時に必要となる最大想定の1日400件分を、地方衛生研究所など県内で分析できるよう、PCR検査や抗原検査の機器を増やす予定だ。県内に分析できる民間の検査機関がない地方だと、民間を活用しても結果が出るのに時間がかかる。自前の検査機器の調達に力を入れる自治体は複数ある。機器の導入をめぐっては「納入まで時間がかかっている」と取材に答えた自治体が愛知県など複数あった。国の補助金を利用して全国の自治体が一斉に導入を進めているからだ。検査機器で分析するには専門技術が必要で、対応できる人材は限られる。検査が自動化された機器に期待を寄せる声も兵庫、徳島、愛媛県などから聞かれる。一方、検査機器で分析する能力がいくらあっても、検体が十分に採れる態勢がないと数多く検査はできない。検体を採る際に作業する人が感染してしまう恐れがあるため、感染症対策の設備が整った場所で防護具をつける必要があるなど、慎重な作業が求められる。青森県の担当者は「検査能力に対しての検体採取能力の不足」を課題に挙げる。一つの医療機関で1日に採取できる検体数は限られ、大幅に増やすのは難しい。県内の医療機関で可能な最大採取数は、分析可能な検査数よりも大幅に少ないという。こうしたなか、京都府は7月、府医師会と契約し、唾液(だえき)を採取できるクリニックを140以上にまで増やした。担当者は「検査能力と検体採取能力の両方がないとだめ」とし、検体が採れる医療機関をさらに広げていく予定だ。近隣の自治体で連携し、検査をこなす動きもある。大分県では3月下旬、県の1日最大可能件数約130件を大きく超える数の検査が必要となった。そこで、九州・沖縄・山口の9県が締結している災害時応援協定を使い、福岡県や長崎県でPCR検査を行った。逆にその後、大分県が他県の検査を引き受けたこともあるという。
■陽性者隔離、歯止めに効果 検査増求める声、根強く
 PCR検査をめぐっては「第1波」の流行が起きた3~4月、全国で検査を受けられない人が続出した。安倍晋三首相は4月6日、検査能力を1日2万件に倍増すると表明。その後、国は保健所や地方衛生研究所でできる検査数を増やすため、検査機器の導入を促し、民間の検査機関の設備投資も支援している。医師が必要と判断した場合は保健所を介さず検査ができる「PCRセンター」の設置が各地で進むなど、「目詰まり」を解消するための対策が打ち出されている。朝日新聞が各都道府県に聞いた7月末時点の検査能力は、回答があった46都道府県で計約4万2千件(民間検査機関の活用を含む)にのぼる。ただ、今後の流行時に必要になる最大想定を少なくとも30都道府県が下回っている状況だ。人口10万人あたりの検査可能な件数をみると、4月より増えているものの、都道府県ごとに差がみられる。感染者の急増を受けて日本医師会が8月、医師が必要と認めれば確実に検査できるよう、検査のさらなる充実を求める緊急提言を発表するなど、PCR検査を増やすよう求める声はいまも強い。検査はどこまで増やすべきなのか。一般的に検査可能件数を増やすほど、陽性の人が多く見つかる。その人を隔離すれば感染拡大に歯止めがかかる。検査待ちも起こりにくい。日本臨床検査医学会理事の柳原克紀・長崎大教授(臨床検査医学)は「濃厚接触者にあたらない接触者にも検査を広げる必要があると考える。長崎県でクラスター(感染者集団)が発生したときに必要だった検査件数や、諸外国の状況を踏まえ、全国で約30万件が必要だ」と語る。
■「偽陰性」、感染拡大懸念も
 一方、むやみに検査を広げる必要はないと主張する専門家もいる。山形大病院の森兼啓太・検査部長(感染制御学)は「3~4月は症状のある人にも検査できず明らかに検査数は不足していたが、いまは無症状の濃厚接触者まで積極的に検査している。対象はおおむね適切な範囲になっている」と話す。PCR検査では、採取した検体に偶然ウイルスが含まれないなど検査精度の限界から、本当は陽性なのに陰性と判定される「偽陰性」が生じる。約3割と言われており、本来10人が陽性なのに3人の感染を見逃している計算だ。その人たちが陰性判定によって安心して外出すれば、本当は陽性のため、気付かないまま感染を広げかねない。「検査があったら安心という問題ではない」と森兼部長は語る。民間検査機関による検査は増えている。自費検査による社員や顧客への感染拡大防止や、海外出張への備えなどビジネス上のニーズが増えており、民間機関も設備投資を進めている。一方で、民間機関は公的検査も請け負う。保健所からは、民間機関で私的な検査が増え続ければ、公的検査に時間がかかるなどの影響が出ないか心配する声も出てきている。

*7-6:https://ryukyushimpo.jp/news/entry-1171940.html (琉球新報 2020年8月11日) 空港でコロナ唾液検査 沖縄県議会が条例検討 陰性の来県者に「検査済証」発行
 沖縄県内で新型コロナウイルスの感染拡大が続く中、水際対策を強化するため沖縄を訪れる観光客などの往来者に対して、空港内で唾液による抗原検査を促す条例制定に向けた動きが県議会内で始まっている。条例の内容は強制力を持たすものではないが、検査で陰性となった往来者には「検査済証」を発行することで、本人だけではなく観光客らを受け入れるホテル業者など双方が安心できる環境づくりを目指す。現在、県議会の赤嶺昇議長と中立会派・無所属の会の當間盛夫代表ら県議有志が素案を作成しており、早ければ週内にも各会派に条例制定に向けた議論に参加するよう呼び掛ける方針。検査の実施は那覇空港など県内の各空港を想定する。検査にかかる費用や人員規模については今後、県を交えて検討する考えで、當間氏は条例制定の意義について「本来、国が法改正などを行い実施すべきだが国の動きを待っていては感染拡大は止められない」と語った。条例制定に向けては、6月定例会で可決した新型コロナウイルス感染症対策に関する条例を改正する案も検討されたが、他の条文との整合に時間をかけるよりも新たな条例を制定した方が早いと判断した。精度の高いPCR検査の実施も検討しているが、結果判明に1日程度かかることなどから、30分程度で結果が分かる抗原検査が「より現実的な手段」(赤嶺氏)とみている。空港での抗原検査を巡っては、県が政府の観光支援事業「GO TO トラベルキャンペーン」が始まった7月22日から独自に那覇空港で実施しているが、現在は医師の確保ができないため検査ができない状況が続いている。県内の医療提供体制が逼迫(ひっぱく)し、医療従事者数が不足する中、与党内には「法的にも財政的にも検査の拡充などは政府の責任でやるべきだ」との声も根強く、条例制定に向けては不透明な要素もある。

<教育・自然科学研究・特許>
PS(2020年8月13日追加):*8-1のように、中国は、米国留学等で研究者の育成を進め、現在は研究者数が最多で、研究開発費も米国を猛追しており、自然科学分野の論文数は、2017年《2016~18年の平均》で、中国(1位:30万5927本)と米国(2位:28万1487本)は、ドイツ(3位:6万7041本)や日本(4位:6万4874本)を大きく上回っているそうだ。論文の質(引用数で比較した場合)は、2017年の1位は米国24.7%、2位は中国22.0%で、米国は臨床医学・基礎生命科学が高く、中国は材料科学・化学・工学・計算機・数学などで高いそうだが、世界の工場と言われるほど製造業が盛んな中国で関係分野の研究が優れるのは当然で、単に研究開発費を増やせばよいという問題ではない。中国は、米国への留学を増やし、優秀な研究者に帰国を促し、質の高い論文を生み出す大学に多く投資している点で、視野の長い戦略的投資をしていると言える。人口当たりの論文数は、まだ日本が中国の2倍以上だが、日本はドイツより少なく、教育・研究を重視しない国が産業で退潮傾向になるのは当然と言わざるを得ない。
 なお、(1995年前後から私が提言して進めてきた)再生医療は、現在では、*8-2のように、京都大学iPS細胞研究所の研究チームが、「①ヒトの人工多能性幹細胞(iPS細胞)から腎臓の一部の基になる胎児期の組織『尿管芽』を大量に作製する方法を開発」「②再生した尿管芽を集合管のような構造に変えることもできた」と発表するに至っているが、未だに最終目的の「透析がいらない状態」にはなっていない。「再生医療=iPS細胞」と考える必要はなく、空気(狭い範囲の常識に支配される)を読んだら先端研究はできないのに、誰かがやるのを見て追随することしかできない人をつくる教育をしていては、日本の展望は暗いのである。
 このような中、*8-3のように、コロナ禍で学校現場の教育実習の受け入れが難しくなっているとして、文科省は「真にやむをえない場合、教育実習なしで教員免許の取得を認める」としたそうだが、(教育実習にどれほどの効果があるかはさておき)実習前に陰性証明書をとれば教育実習しても問題はない筈であるにもかかわらず、新型コロナを理由に、検査もせず全員に行動を自粛させ、「何でもあり」にするのは日本の学校教育の質を下げると思う。

*8-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200808&ng=DGKKZO62428000X00C20A8MM8000 (日経新聞 2020.8.8) 中国、科学論文数で首位、研究開発でも米と攻防
 自然科学分野の論文数で中国が米国を抜いて1位になったとする報告書を、文部科学省の研究所が7日公表した。中国は研究開発費(総合2面きょうのことば)でも米国を猛追。研究者数は最多で、米国留学などで育成を進めた。貿易や安全保障の分野で対立が目立つ米中間の攻防は、軍事や企業活動の根幹をなす科学技術の分野も含めて激しくなっている。科学論文の数は国の研究開発の活発さを測る最も基本的な指標だ。文科省科学技術・学術政策研究所は米調査会社クラリベイト・アナリティクスのデータを基に主要国の論文数などを分析した。年による変動が大きいため3年平均で算出した。中国の17年(16~18年の平均)の論文数は30万5927本。米国の28万1487本を上回り1位となった。3位はドイツで6万7041本。日本は6万4874本で前年と同じ4位だった。米中2強時代は鮮明だ。論文の世界シェアをみると中国は19.9%、米国は18.3%。3位は4.4%にすぎない。これまでに全米科学財団の報告書で、中国が米国を抜いたとするものはあった。今回は、査読などで一定の質があると判断される学術誌に掲載された論文のデータベースを使い算出したという。中国は論文数を年々伸ばしてきた。論文数は20年前(1996~98年の平均)の18倍、10年前(06~08年の平均)の3.6倍になった。中国は論文の質でも米国に迫る。優れた論文は引用数の多さで評価される。被引用数が上位10%の注目論文のシェアをみると、17年の1位は米国の24.7%、中国は2位で22.0%。さらに注目度が高い上位1%の論文では米国は29.3%、中国は21.9%となった。米中の得意分野は分かれる。中国は材料科学、化学、工学、計算機・数学で高いシェアを誇る。米国は臨床医学、基礎生命科学が高い。中国の躍進を支えたのは積極的な研究開発投資や研究者の増加だ。18年の研究開発費(名目額、購買力平価換算)は前年比10%増の約58兆円。米国は同5%増の60兆7千億円で1位を保ったが、中国が肉薄している。特に論文を主に生み出す大学への投資の伸びが著しく、18年は00年の10.2倍に増加。1.8倍の米国などと比べて突出している。中国は鄧小平時代の1982年、科学技術の近代化推進を国家目標として憲法に盛り込んだ。93年には投資の推進を示した「科学技術進歩法」を公布。第10次5カ年計画(2001~05年)では、それまで1%以下だった国内総生産(GDP)に対する研究開発投資の比率を1.5%にする目標を掲げた。その後も目標を上方修正しており、20年は2.5%以上に拡充する方針だ。中国の研究者数は約187万人で、米国(約143万人)を上回り世界1位。米国際教育研究所のまとめでは、米国で学ぶ中国人留学生は5年前に30万人を突破。その後も増え、18年度(18年8月~19年7月)には約37万人に達した。日本は退潮傾向だ。論文数は20年前には世界2位だったが17年は4位。注目論文は20年前の4位から17年には9位に沈む。政府は研究開発投資の目標額を示してきたが96~00年度の期間以外は達成していない。研究者数は横ばいにとどまる。

*8-2:https://www.jiji.com/jc/article?k=2020072900016&g=soc (時事 2020年7月29日) 腎臓の基を大量作製 iPS細胞から誘導―京大
 ヒトの人工多能性幹細胞(iPS細胞)から、腎臓の一部の基になる胎児期の組織「尿管芽」を大量に作製する方法を開発したと、京都大iPS細胞研究所の研究チームが発表した。論文が29日、米科学誌セル・リポーツの電子版に掲載される。尿管芽は分岐を繰り返して成熟し、尿の排せつ路である腎臓内の集合管やぼうこうの一部になる。研究チームは既に、ヒトのiPS細胞から尿管芽のような組織を作製していたが、内部空間がなく、分岐はわずかにとどまっていた。今回は、iPS細胞から内部空間を持つ尿管芽を作製することに成功。尿管芽の先端部を細胞一つずつに分離して培養したところ、尿管芽を再生し、分岐を繰り返した。再生した尿管芽を集合管のような構造に変えることもできた。研究チームの長船健二京大教授は「病気になった腎臓のモデルや腎臓の再構築に多くの細胞を供給できるのではないか」と話した。

*8-3:https://digital.asahi.com/articles/DA3S14583994.html (朝日新聞 2020年8月12日) 教育実習「なし」も容認 文科省、コロナ禍で特例措置 今年度限り、座学で代替可能
 学校現場での教育実習の受け入れがコロナ禍で難しくなっていることを受け、文部科学省は11日、今年度に限り、大学の授業などを代わりに単位として認める特例措置を発表し、全国の教育委員会などに通知した。実習の実施を原則としつつ、「真にやむをえない場合」のみ、「教育実習なし」でも教員免許の取得を認めるとしている。教育実習は、教員をめざす学生が幼稚園や小中学校で3~4週間、高校などでは2週間程度、現場で学ぶ。受け入れ校は大学が割り当てたり、学生が母校に依頼したりする。しかし、休校による学習の遅れへの対応や感染症対策のため、各地の教委からは、実習生の受け入れが困難との声が出ていた。そのため文科省は5月、実習期間の3分の1までは、模擬授業など大学の実習や授業で代替できるとする通知を全国の教委などに出した。学校での補習の支援などをする学習指導員の活動も、大学の判断で「代替授業」にできるとした。その後の感染拡大などを受け、今回の通知では、大学の実習などで代替できる期間を「全部または一部」に拡大し、可能な限り教育実習と組み合わせるよう求めた。その上で、大学による実習での代替も含め、教育実習が全くできない場合も想定。教員免許法の省令を改正し、座学など教職課程の認定を受けた他の授業で代替ができるとした。萩生田光一文科相は11日の閣議後会見で、教育実習なしでの教員免許取得について「究極はその選択肢も一応認める」としつつ、「今年の(教員採用試験の)採用者は質が低下しているというそしりを受けないよう、原則はやってもらう」と強調し、大学や学校現場に実習機会の確保を促した。また、文科省は通知で、来年度以降の新人教員に教育実習を受けられなかった人がいることを念頭に、採用後の研修などで十分配慮するよう求めた。文科省によると、教員免許法が施行された1949年以降、教育実習なしでの免許取得に道を開く制度改正は初めて。通知はこのほか、小中学校の教員免許取得に必須の「介護等体験」についても特例措置を設けた。計7日間、特別支援学校や福祉施設で介護を学ぶ実習だが、学校や施設による受け入れが難しいため、福祉関係の授業や実習で代替できるとした。
■文部科学省通知(骨子)
 ◆教育実習の期間の全部または一部を、大学による実習などで代替できる(可能な限り、
  教育実習と組み合わせる)
 ◆大学による実習も困難な場合、教職課程の認定を受けた教育実習以外の科目で代替
  できる 
 ◆特例措置を活用する学生がいることを念頭に、都道府県教育委員会は初任者研修など
  で十分に配慮する

| 教育・研究開発::2016.12~ | 12:47 PM | comments (x) | trackback (x) |
2020.7.8 スマートシティーが備えるべき条件は何か? ← 環境が良く安全な場所で安心して豊かな生活を送れる国がスマートなのであり、ITやAIはそのツールの一つに過ぎない。まして我慢の強制などは、工夫のない政治がすることだ (2020年7月9、10、12、14、17、18、19日追加)
   
  2020.7.7    2020.7.7     2020.7.5      2020.7.6日経BZ
  中日新聞    日本農業新聞    毎日新聞    浸水想定区域と実際の浸水域

(図の説明:1番左の図は、2020年7月7日までの豪雨被害地域だ。左から2番目は、人吉市の電線に流れてきた植物がからまっている状態で、水深がここまであったことを示す。右から2番目は、球磨村の特別養護老人ホームが水に沈んでいる様子で、1番右の図は、球磨川流域の浸水想定区域と実際の浸水域を示した地図である。これらによると、球磨村の特別養護老人ホームが著しく浸水することは前からわかっており、他の住宅は一段高い場所にあるため浸水していない)

(1)2020年梅雨時期の九州豪雨とその被害
 熊本県南部の豪雨では、*1-1のように、特別養護老人ホームの浸水によって入所者14人が亡くなったが、私は、その高齢者施設が地価が安いという理由からか、氾濫の恐れがある川の傍の低い場所に造られているのに驚かされた。特に、千寿園はその危険性が知られていた地域に立地しているのに、上層階のある頑丈な建物でもなく、エレベーターもないそうで、まるで三途の川の畔に建てられたような建物だったと言わざるを得ない。

 何故なら、高齢者は避難困難者であるため、浸水の恐れのある場所に高齢者施設を建設すること自体が危険であり、避難計画を作成したから命を守れることにはならないからだ。そのため、突きつけられた重い課題は、「日本は、高齢者を粗末にする国だ」ということであり、「(毎年、どこかで起こっている)○○年に一度の想定を超える豪雨」「水位が急激に上がって対応が追いつかなかった」というのは、言い訳にもならない。

 また、熊本県人吉市や球磨村では、*1-2のように、屋根と同じ高さにある電線に氾濫した川の水が運んだ木の枝や草がぶら下がり、屋根の高さまで水が押し寄せ、JAくま管内の支店建物や農地でも大きな被害が出ているそうだ。それでも、農地はまだ回復が早いが、住宅はそうはいかないため、今後の地方自治体の仕事は、避難を促すだけでなく、危険な地域には人が住まないよう土地利用を規制することである。そのためには、既に使われている土地・建物を交換したり、収用したりするなどの方法がある。

 福岡、佐賀、長崎三県でも、*1-3のように、大分県日田市で筑後川が氾濫し、熊本・大分県境の下筌ダムは基準水位を越えたため緊急放流したそうだ。また、大牟田市では避難所が周辺の冠水で孤立し、そこには200人以上が身を寄せていたそうだ。福岡・佐賀・長崎で被害が大きかったのは、有明海沿岸の海抜0mに近い地域で、有明海の満潮時に排水不良が起こったようだが、地球温暖化で海面が上がるにつれ海抜はさらに低くなるため、ここでも土地利用の見直しが必要である。

 また、ダムや河川は、底に泥が溜まって浅くなっても浚渫せず、本来の能力を維持できていない場合が多いそうだ。そのため、人口減の現在は、新しいダムを作るより現存するダムや河川を適格に管理し、できれば強化して(水力発電等の)多目的で使えるようにするのが経済的だ。

 このように事前の災害防止を怠り、国民の命を粗末にしながら、*1-4のように、防衛省は九州の豪雨被害に自衛隊員を2万人派遣して人命救助や土砂の撤去に当たらせるそうで、現在はそれが必要だが、まるで賽の河原の石積みのように思える。

 そのため、*1-5のように、激甚災害に指定するのなら、“復旧”して元の場所に同じ建物を建て、毎年同じことを繰り返して国民の血税を使うのではなく、適格な住居規制を設けて街づくりをやり直し、安全な街を作れるように復興を手伝うことが重要であり、それには、(戦争中でないため時間がある)自衛隊の労働力も使えばよいと思う。

(2)リスクを考慮した街づくりと既存施設の維持管理
1)住宅ゾーンの規制
 朝日新聞は、2020年3月22日、*2-1のように、「①政府が土地利用規制に乗り出し、都市計画法等の改正案を閣議決定して国会に提出する」「②ダムや堤防などハード面の整備だけに頼らず、街づくりから変えるという考えは理にかなう」「③レッドゾーン・イエローゾーンでの住宅開発の許可を厳しくする」「④権利の制限に繋がるので、どこから網をかけるかは難しい」「⑤被害をうけた工場が移転して地価が下がった場所で宅地開発が進むのを目にする」「⑥浸水想定区域に住む人は、2015年時点で20年前に比べて4%増、世帯は25%増だ」としている。

 このうち①②③はそうすべきだが、④を気遣って⑤⑥を野放しにすることが住民の権利保護に繋がるのかと言えば、自治体がその土地の安全性に関する情報を開示し、安全を守れる都市計画を作って住民に安全を保障することが、自治体の仕事でもあり住民の権利を護ることだと、私は思う。つまり、これをやらないことこそ、必要な仕事をしない不作為である。

2)ダムや河川への土砂の堆積
 ダムに土砂が堆積して貯水量が減り、本来の治水機能を発揮していないダムが全国に100カ所以上あることを、会計検査院が、*2-2のように、2014年に指摘している。これでは多発している豪雨に対応できないとして、会計検査院は国土交通相に改善を求めた。中には、堆砂量が計画堆砂量の3倍以上に達しているダムも2カ所あったそうだ。

 放流して人災を起こしたダムには、このような問題があったのではないか検証すべきで、設定貯水量が建設当時のままで、現在の堆砂量をダムの貯水量に反映していないなどというのは、論外だ。さらに、地震計が故障しているのに気づきながら3年以上も放置していた3県が管理する5ダム、地震計とダム管理者への自動通報装置を接続していないため地震発生時に速やかに臨時点検ができない状態のダム、非常用発電設備の燃料が規定を満たす備蓄量に達していないダムも数多く見られたそうで、それこそ国民の命を守るという意識に欠けている。

 そのため、会計検査院は国交省に対し、3つの改善処置と自治体等への周知徹底を求めたそうだが、2014年に指摘されてから6年後の現在、まだ改善されていなかったとすれば人災である。

3)まだ台風ではなく、梅雨なのだ
 政府は、*2-3のように、2019年12月20日、地方自治体が河川やダムにたまった土砂やヘドロを取り除く作業を総務省が支援することとし、当初予算案で900億円を計上したそうだ。

 しかし、他の無駄遣いが多い割には、土砂の浚渫を地方債の起債対象として起債額の70%を地方交付税で措置する政策で、それを行うことができない自治体は多く、起こった災害に対して、このように膨大な予備費を使わなければならなくなるのである。そして、今回の豪雨は、まだ台風ではなく梅雨であるため、早急に対策を実施できるようにすべきだ。

(3)地域エネルギー
 日経BPが、2015年6月29日、*3-1のように、「①日本各地で、地域新電力(地域密着型のエネルギー事業)が立ち上がっている」「②背景は電力小売りの全面自由化」「③再生可能エネルギーなどの地域資源を活用した電力を購入して小売りすることに多くの事業者が名乗りを挙げている」「④地域資源を生かしてエネルギーを生み出し、それを地域内で消費すればエネルギー資金が地域内で還流し、地域活性化に繋がる」「⑤事業が活性化して市外にも流通すれば収益が膨らむ」と記載しており、これは事実だったのだが、原発の再稼働とともに送電線が満杯という理由で話が下火になってしまった。

 しかし、*3-2のように、熊本県南阿蘇村で豊富な湧水を活用した小水力発電施設が整備されることになっており、水力発電なら治水ダムや利水ダムも利用できる筈だ。

 このように全く工夫が足りない中、*3-3のように、取引条件として環境対応を重視する顧客の要望があり、事業に必要な電力を100%再エネで賄うことを目指す国際的企業連合の「RE100」に加盟する日本企業は、30社に達したそうだ。

 しかし、実績では欧米勢に大きく後れを取っており、その理由は、日本では太陽光17.7円/kwh(2017年)、陸上風力15.8円/kwh(2017年)と未だに再エネ調達コストが高いからで、これは、世界の太陽光9.1円/kwh、陸上風力7.4円/kwhを大きく上回っている。ここでも、世界は既に、日本政府が2030年に実現を目指す目標を達成済であり、日本はどうしてこのように何でも遅いのかを、猛烈に反省すべきだ。

・・参考資料・・
<2020年九州豪雨>
*1-1:https://www.shinmai.co.jp/news/nagano/20200708/KT200707ETI090007000.php (信濃毎日新聞 2020年7月8日) 高齢施設の被災 突きつけられた重い課題
 熊本県南部の豪雨による特別養護老人ホーム「千寿園」の浸水被害で、入所者14人の死亡が確認された。
自力避難の困難な高齢者が犠牲になるケースは、過去の水害でも繰り返されてきた。命を守るために何が必要か。突きつけられた重い課題に改めて向き合わねばならない。濁流が押し寄せる中、職員は地域住民の協力も得て入所者の救出に奮闘した。だがエレベーターもなく、一人一人を抱えて階段を上るのに時間がかかり、全員を救うことはできなかった。熊本日日新聞の報道によると、施設長は当時、増水より土砂崩れを心配していたという。近くの球磨川と支流の合流点に数年前、水位の急上昇を防ぐ「導流堤」が完成していたこともあった。水位が急激に高まり、対応が追いつかなかった経緯が浮かぶ。早く避難に踏み切っていれば救えたのではないかと悔やまれる。国の調査では、浸水の恐れがある場所に立つ全国の高齢者施設などのうち、避難計画を作成済みなのは昨年3月時点で36%にとどまる。千寿園は作成していた。作成を促すと同時に、既存の計画に見落としている点はないか、見直しを進めるべきだ。早めの避難が大切なことは確かだ。ただ、高齢者の移動は心身に与える負担も大きい。人手や時間もかかる。踏み切るタイミングの判断は簡単ではない。避難を促す上で欠かせないのは地元自治体の役割だ。避難の勧告や指示は適切に出て正確に伝わっていたか。検証が必要だろう。2016年の台風で入居者9人が死亡した岩手県岩泉町の高齢者グループホームの事例では、当時の町長が迷いながら結局、避難指示を出せなかった。河川や気象の情報を集めているのは、国土交通省や気象庁など国の機関だ。それが自治体の判断を支えられる態勢になっているかどうかが重要なポイントだ。昨年秋の台風19号災害では、千曲川の堤防が決壊したとの情報が国交省から長野市に伝わっていなかった。情報共有や行政の連携態勢を整える必要がある。高齢者施設は、広い面積が取れて地価が安いなどの理由から、必ずしも安全な場所に立地してはいない。千寿園の地点は、以前からその危険性が知られていた。氾濫の恐れが高い地域への建設を規制するよう求める専門家もいる。災害に強い高齢者施設の在り方は、まちづくりの観点からも考えていかねばならない。

*1-2:https://www.agrinews.co.jp/p51285.html (日本農業新聞 2020年7月7日) 九州豪雨 電線にごみ、屋根に流木「水位ここまで」 熊本県人吉市・球磨村
 JAくま人吉支所球磨村店の屋根と同じ高さにある電線には、氾濫した川の水が運んだ木の枝や草などがぶら下がっていた。球磨川の氾濫で5日まで水に漬かっていた人吉市や球磨村では6日、一夜明けて変わり果てた光景が広がった。屋根の高さまで水が押し寄せ、JAくま管内の支店建物や農地などでも大きな被害が出ている。JA本店の職員らは、5日朝から被害を受けた支所に集まり支援を始めたが、6日も雨は降り続いており、予断を許さない状況が続いている。「普段見慣れている分、余計に衝撃的な光景だ」。JAくま本所から人吉支所に向かう道中、同行したJA職員はつぶやいた。JAくま本所から国道219号を西に進むと球磨川に着く。川を渡ると「九州の小京都」と呼ばれることでも有名な人吉市の変わり果てた光景が広がる。頻繁に行き交う自衛隊の車両や木や電柱には、泥が付着。住宅街には動かなくなった車が点在する。JAでは5日朝、「手の空いている職員は人吉支所に集合」と指示が出て、JA役職員や女性部の部員らが大勢集まった。支所での清掃作業や移動店舗車による臨時の窓口業務を行う。同JAには県内のJAから支援物資を送りたいとの連絡が来ているが、JAの尾方朝則参事は「JAからの協力は非常にうれしい。ただ6日も雨が降り続き、順調に到着できない」と話す。球磨村でも、大きな被害が出ている。JA人吉支所球磨村店には水が屋根の高さまで押し寄せた。店舗から道路の電柱までつながる電線には川から流れ着いた草や、ごみ、布などが付着。押し寄せた水の水位を物語っている。店舗の隣で地元の住民2家族が自宅内の泥のかき出し、水に漬かった家具を外に運び出していた。コンビニには、自衛隊の復旧作業車が10台近く止まっていた。水田には、大量の泥が流れ込んだまま。水田の隣の畑にはトウモロコシが植えてあるが、水の勢いで倒壊寸前まで曲がっている。軒高2メートル以上の2棟のハウスの屋根にも流木や草が付着している。付近の住宅は無残な形で潰れ、原形をとどめていない。JAによると、人吉市や球磨村は5日中に水が引かなかった。さらに6日も雨が降り続いており、被害の実態把握には、時間がかかる見通しだ。

*1-3:https://www.chunichi.co.jp/article/84866?rct=national (中日新聞 2020年7月7日) 九州の豪雨被害拡大 死者52人に、筑後川氾濫
 停滞する梅雨前線の影響で九州は七日も北部を中心に猛烈な雨が降った。気象庁は福岡、佐賀、長崎三県の一部自治体への大雨特別警報を警報に切り替え、引き続き警戒を呼び掛けた。大分県日田(ひた)市では筑後川が氾濫。熊本、大分県境の下筌(しもうけ)ダムは基準水位を越え、緊急放流に踏み切った。福岡県で初めて死者一人を確認。大牟田市では避難所が周辺の冠水で孤立し、県は陸上自衛隊に災害派遣を要請した。熊本県ではこれまでに全県で五十一人が死亡、二人が心肺停止。行方不明者十一人の捜索が続いた。武田良太防災担当相は九州の豪雨について行政上の特例措置を通じて被災者を救済する特定非常災害の指定を検討すると明らかにした。福岡県によると、死亡したのは大牟田市の田中春子さん(87)。六日夜に冠水した自宅で見つかり、病院で死亡が確認された。同市で冠水した避難所は二カ所で、七日午前四時の時点で計二百人以上が身を寄せていたという。筑後川の氾濫を受け、福岡管区気象台と国土交通省は午前八時三十五分、大雨・洪水警戒レベルで最高のレベル5に当たる氾濫発生情報を発表した。

*1-4:https://www.tokyo-np.co.jp/article/40712 (東京新聞 2020年7月7日) 災害派遣2万人態勢に増強 自衛隊、被害拡大のため
 防衛省は7日、九州の豪雨被害に対処する自衛隊の災害派遣の規模を、現行の1万人態勢から2万人態勢に拡大すると発表した。自衛隊は4日から熊本県で人命救助や土砂の撤去に当たっており、九州北部にも被害が広がったため増員が必要と判断した。防衛省によると、7日時点で、熊本県に加え、避難所が水没した福岡県大牟田市や大分県にも部隊を派遣した。これまでは九州を拠点にする部隊が活動してきたが、今後は他の地域の部隊を活用することも検討する。河野太郎防衛相は7日午後、ツイッターで「(熊本県)球磨村の孤立が深刻で、隊員が徒歩で水、食料を届け、安否確認をしている」と投稿した。

*1-5:https://jp.reuters.com/article/suga-kyushu-disaster-idJPKBN2490EL (Reuters 2020年7月8日) 九州での豪雨、激甚災害に指定の見通し=官房長官
 菅義偉官房長官は8日午前の会見で、九州の豪雨被害について、被災した自治体が復旧事業を行う際に国から財政的な支援を受けられる「激甚災害」に指定する見通しだと明言した。同長官は「被災地の早期復旧のために、財政面で不安を持つことなく復旧に取り組むことが大事であり、基準を満たしたものから速やかに行いたい」とした。東京都内で新型コロナウイルスの新規感染者が連日100人超確認されていることについては、3週間ごとの見直しに沿って専門家に議論してもらった上で、都外への外出に気を付けてもらうという中で、予定通り次の段階に制限を緩和する方針だと述べた。

<リスクを考慮した街づくりと既存施設の維持管理>
*2-1:https://digital.asahi.com/articles/DA3S14412053.html (朝日新聞社説 2020年3月22日) 災害と住まい 危ない土地には規制を
 大きな自然災害が近年相次いでいるのに対応するため、政府が土地の利用規制に乗り出すことになった。都市計画法などの改正案を先月閣議決定し、この国会に提出している。ダムや堤防などハード面の整備だけに頼らず、まちづくりの思想から変えていこうという考えは理にかなう。行政はもちろん、住民が認識を深めるのに役立つ審議を期待したい。検討されているのは、▽出水や土砂災害などの危険性が高い「レッドゾーン」は、居住をすすめる区域から除くことを徹底する▽そこでは事務所や店舗、ホテルなどの開発を原則として禁止する▽市街化調整区域内にあって浸水被害が予想される「イエローゾーン」で、住宅開発の許可を厳しくする―などだ。行政の勧告に従わない事業者の氏名を公表できるようにすることも盛り込まれている。がけの下や地盤の弱い土地、川沿い・海沿いの低地、遊水池跡といった危険な地域に、住宅や人が集まる施設がなければ、災害が起きても被害を抑えることができる。だが権利の制限につながるため、どこまで個人や企業の判断に任せ、どこから網をかけるかの線引きが難しく、結果として野放図ともいえる開発が進んできた。しかし気候は激甚化し、地震も頻発する。手をこまぬいているわけにはいかない。被災地でよく目にするのは、被害をうけた工場などが移転して地価が下がった一帯で、宅地開発が進む現象だ。山梨大の調査によると、国や県の浸水想定区域に住む人は、2015年時点で20年前に比べて4%増、世帯は25%も増えている。法改正はこうした動きへの一定の歯止めにはなろう。だが、同じイエローゾーンでも規制強化措置がとられるのは市街化調整区域に限られるなど、踏み込み不足と思える点もある。政府は、宅建業法も今後見直し、不動産取引の際に水害リスクを告げるよう、業者に義務づけることを検討中だ。議論を重ね、危ない土地への居住を減らす方策を広げてほしい。参考になるのは滋賀県が14年に定めた流域治水推進条例だ。リスク告知を努力義務とし、200年に1度の大雨で3メートル以上浸水する土地では、新改築時に地盤をかさ上げしたり2階建て以上にしたりするよう求める。対象エリアに指定するには地域の合意が必要で、県内に50ある候補地区のうち、実現したのはまだ2カ所にとどまる。それでも地域で話し合うことで、リスクの認識は深まる。20年先、30年先を見越して安全なまちをどう築くか。旧来と異なる発想で考えたい。

*2-2:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO78834440U4A021C1000000/ (日経新聞 2014/10/24) 堆砂で機能低下のダム100カ所以上、検査院が指摘
 ダム内に土砂が堆積して貯水量が減り、本来の治水機能を発揮できない恐れのあるダムが全国で100カ所以上あることが2014年10月21日、会計検査院の調査で分かった。このところ多発している突発的な局地的豪雨などに対応できないとして、検査院は国土交通相に改善を求めた。検査院が検査したのは、国交省が管理する29ダムと21道府県が管理する182ダムの合計211ダム。検査における着眼点は、点検や計測の実施状況、堆砂への対応状況、緊急時への備えなどだ。
■計画堆砂量の3倍以上に達しているダムも
 指摘が最も多かったのは堆砂への対応状況で、主に3つのケースが見られた。1つ目は、実際の堆砂量が計画堆砂量を上回る状況。計画年数に達していないのに、既に堆砂量が計画堆砂量を上回っている事例が、9府県管理の20ダムに見られた。中には、堆砂量が計画堆砂量の3倍以上に達しているダムも2カ所あった。検査院は、実際に利用できる貯水容量が減少するのに加え、貯水池の上流部に土砂が堆積した場合には、貯水池上流の河川などに影響を及ぼす場合もあると指摘している。2つ目は、土砂が洪水調節容量内に入り込んでいるケースだ。たとえ堆砂量が計画堆砂量に達していなくても、洪水時に本来、貯留できる水量を貯留できなくなり、ダムの下流の河川に影響を及ぼす恐れがある。検査院によれば、国交省所管の14ダムと16道県所管の92ダムでこうした状態になっていた。このほか、11道県所管の48ダムはそもそも洪水調節容量内の堆砂量を算出せず、状況を把握していなかった。3つ目は、現在の堆砂量をダムの貯水量に反映していない例だ。国交省が管理する22ダムと20道府県が管理する130ダムでは、設定貯水量が建設当時のままで、堆砂の測量結果と連動していなかった。検査院はこれらのダムでは貯水位が建設当時よりも速く変化するため、貯水池への水の流入量を正確に測れない可能性があると指摘。放流のタイミングなど、ダムの操作を誤る恐れがあるとしている。
■地震計が壊れていても放置
 河川法に基づく操作規則に定められた点検や計測の履行については、漏水量の計測や設備の点検などが規則どおりに行われていなかった。例えば9県が管理する25ダムでは、「計測値に大きな変化がみられない」ことを理由に、一部の項目について3年以上にわたって計測を止めていた。さらに、3県が管理する5ダムでは点検の際、堤体下部に設置された地震計が故障しているのに気づきながら3年以上も放置していた。このほか、地震計とダム管理者への自動通報装置を接続していないため、地震発生時に速やかに臨時点検ができない状態のダムや、非常用発電設備の燃料が規定を満たす備蓄量に達していないダムも数多く見られた。検査院によると、維持管理に不備のあるダムは、合計201カ所あった。以上の調査結果を踏まえ、検査院は国交省に対して以下の3つの改善処置と自治体などへの周知徹底を求めた。
 1)維持管理に必要な計測を適切に行い、必要に応じて設備の修繕などを施す。
 2)計画堆砂量を大きく上回るなど、堆砂に関わる問題を抱えている場合は適宜、対策を
   検討する。また、堆砂量の測定結果は、ダム操作などに関わる情報に反映させる。
 3)地震発生時に速やかに臨時点検が行える体制を整えるとともに、緊急時に所要の連続
   運転可能時間を確保できるように、非常用発電設備の燃料調達などに万全を期す。

*2-3:https://digital.asahi.com/articles/DA3S14302512.html (朝日新聞 2019年12月21日) 河川やダム氾濫、防止支援900億円 予算案
 10月の台風19号で東日本の広い地域で洪水被害が出たことを受け、地方自治体が河川やダムにたまった土砂やヘドロを取り除いて氾濫(はんらん)しにくくする作業を総務省が支援する。政府が20日に閣議決定した当初予算案で900億円を計上した。来年の通常国会に地方財政法改正案を提出し、土砂の浚渫(しゅんせつ)を地方債の起債対象にする一方、起債額の70%を地方交付税で措置する。事業は2024年度までの5年間の予定で、事業費は計4900億円を見込む。

<地域エネルギー>
*3-1:https://project.nikkeibp.co.jp/atclppp/PPP/061800007/062500005/ (日経BP 2015.6.29) ■総論■地域エネルギービジネス、動く
 日本各地で、地域密着型のエネルギー事業が立ち上がっている。大きな流れの一つが地域新電力(特定規模電気事業者、PPS)である。背景にあるのは、電力小売りの全面自由化。再生可能エネルギーなど地域の資源を活用した電力を購入し、小売りすることに新たなビジネスチャンスを見出し、数多くの事業者がPPSに名乗りを挙げている。地域の資源を生かしてエネルギーを生み出すとともに、その電力を地域で消費すれば、エネルギーに関わる資金は地域内で還流する。そして資金の動きが活発になれば、地域の活性化につながる――。地域エネルギービジネスの根底にある、この地域活性化の効果に目をつけているのはPPSだけではない。地方自治体の中にも、地方創生に向けてエネルギービジネスに取り組む例は少なくない。PPSの動きの中にも、自治体が関与しているケースがいくつかある。再生可能エネルギーなど地域の資源を生かした電力は、燃料の製造、配送をはじめ、地域の雇用を生み出す。事業が活性化して市外にも流通すれば、収益が膨らむ。加えて、再生可能エネルギー固定価格買取制度(FIT)により、電力会社に売電できれば、新たな収入源になる。とはいえ、エネルギー産業は多額の初期投資が必要になる。地域内で安定的に燃料を確保し、配信できる体制づくりも欠かせない。しかも、その仕組み・体制づくりやノウハウは、太陽光・バイオマス・風力・小水力など、発電の方式によって全く異なる。そこで一部の自治体は、地元企業とタッグを組んで課題解決に挑んでいる。

*3-2:https://topics.smt.docomo.ne.jp/article/nishinippon/region/nishinippon-1000574509 (西日本新聞 2020年1月10日) 南阿蘇で小水力発電着工 湧水生かし21年春から事業開始
 熊本県南阿蘇村に豊富な湧水を活用した小水力発電施設が整備されることになり、8日に現地で起工式があった。棚田を潤す農業用水を発電にも有効利用する県内初の試み。来年4月から事業を始め、一般家庭350戸分を発電する計画。売電収入の一部は地元の農業団体に還元され、農業振興にもつなげていく。施設が整備されるのは、緩やかな棚田が広がる久木野(くぎの)地区。全長約1キロの地下導水路を整備し、36メートルの高低差を利用してタービンを回し、最大出力199キロワットを発電する計画。売電収入は年間4600万円の見込み。このうち400万円は利水料として、地元農家でつくる久木野村土地改良区(567人、580ヘクタール)に配分される。小水力発電を巡っては、地域に眠る自然エネルギー活用に向け、県とNPO法人・くまもと温暖化対策センターが2009年から事業候補地を検討。36カ所から南阿蘇村が選ばれ、14年に事業認可された。ところが、東日本大震災後に太陽光発電施設が急増して送電トラブルが生じていたほか、16年の熊本地震で建設用地が被災し、着工が遅れていた。この日は、村と関係団体、運営会社の協定調印式もあった。総事業費は3億8千万円で運営会社が全額負担する。旧清和村長で同センター副理事長の兼瀬哲治さんは「農山村は、豊かな自然エネルギーの供給基地でもある。発電収益を地域に循環させることで、持続可能な農業や景観保全につなげていってもらいたい」と話した。

*3-3:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO53748060U9A221C1TJ3000/?n_cid=DSREA001 (日経新聞 2019/12/25) 事業電力を100%再エネに 日本企業、欧米勢に後れ
 事業に必要な電力を100%再生可能エネルギーでまかなうことを目指す、国際的な企業連合「RE100」に加盟する日本企業が30社に達した。背景には、取引条件として環境対応を重視する顧客の要望がある。ただ実績では欧米勢に大きく後れを取る。再生エネの調達コストが高い日本で、どうやって実効性を高めるかが課題になっている。楽天は17日、RE100に加盟し、2025年までに事業活動の電力を100%再生エネにすると発表した。データセンターや物流拠点で多くの電力を消費する同社だが、近年は再生エネ関連サービスにも注力する。同社の小林正忠常務執行役員は「イノベーションによる気候変動対策への貢献を目指す」とコメント。今後は本社だけでなく、楽天市場の出店店舗や楽天トラベルの加盟宿泊施設に対しても、再生エネの導入を支援していく方針だ。14年に発足したRE100は世界約220社が加盟、売上高合計は5.4兆ドル(約590兆円)に達する巨大連合だ。日本企業は17年のリコーを皮切りに、今秋以降にも東急やLIXILグループなどが参加。小売りや金融など幅広い業種に広がり、楽天の参画で加盟数は30社になった。数では一定の存在感を持つ日本勢だが、肝心の再エネ利用率では欧米勢に大きく後れを取る。RE100を主導する英国の非政府組織(NGO)によると、18年に再生エネの比率が95%を超えたのは45社で、ほぼ全てが欧米企業。日本企業のほとんどは25%未満(73社)のグループに属する。19年7月に再生エネ100%を実現した城南信用金庫など一部を除き、大半の企業にとって目標達成は遠い。取り組みの遅れは、企業の競争力に影響を与えはじめた。グローバルでの商取引では「再生エネの導入が前提条件になりつつある」(公益財団法人・自然エネルギー財団の石田雅也氏)ためだ。リコーは19年度から、国内外の5工場を対象に、主力製品のA3複合機の組み立てに使用する電力を100%再生エネに切り替えている。欧州を中心とした海外の大口顧客は、再生エネの利活用を購買判断の基準にしているためだ。「商談などでも重視され、未対応はリスクでしかない」と同社は説明する。今年RE100に加盟したパナソニックも、年内にも国内外の4工場で電力を100%再生エネにする計画だ。だがこうした動きは、有力企業の一部にとどまる。先進的とされるリコーでも全社の再エネ比率は18年時点で9%。19年度中に多少高まるが、100%を実現するのは50年になる見通しだ。一方で海外大手ははるかに先を行く。米アップルは世界中のサプライヤーに再生エネの導入を推奨。既に40社以上がアップル向け生産ラインで再生エネ100%を実現した。日本でも日本電産など3社が対応している。原動力はESG(環境・社会・企業統治)投資の動きだ。米ゴールドマン・サックスは12月中旬に、石炭火力発電や石炭採掘事業への融資を削減することを表明。環境対策を強化する企業に多くの投資資金が流れ込む。その象徴が資金の使い道を環境事業に絞った環境債(グリーンボンド)の急増だ。19年は2500億ドル(約27兆円)を超え、過去最高を更新した。アップルは11月、20億ユーロ(約2400億円)の環境債を発行した。環境意識の高い大企業がマネーを呼び込み、再生エネの「経済圏」を拡張し企業価値を高めていく。再生エネの導入に二の足を踏んでいては、この流れに乗り遅れかねない。RE100を推進する業界団体「JCLP」の石田建一・共同代表(積水ハウス常務執行役員)は、「日本企業も再生エネの利活用方針を明確に打ち出し、具体的な実効策に着手する段階に来ている」と強調する。
■太陽光、風力 高コストがネック
 企業が再生可能エネルギーの利活用を進めるには、「理念」だけでは不十分だ。経済合理性を度外視した取り組みは株主の理解を得られず、持続性もないためだ。その点で日本企業は大きなハンディを背負っている。経済産業省の資料などによると、日本における太陽光発電のコストは17年に1キロワット時あたり17.7円で、陸上風力発電は15.8円。一方、世界の平均コストは太陽光が9.1円、陸上風力が7.4円だ。日本政府が30年に実現を目指す水準を、既に達成している。再生エネ比率を高める上では再生エネ価値を取引する「証書」を購入する手法も有効だが、通常の電力調達より割高になる。証書による調達に加え再生エネ電源への直接投資などを進めなければ、日本企業が海外勢に追いつくのは難しい。再生エネ価格の高止まりは、海外企業が日本進出をためらう原因にもなる。米グーグルは千葉県に日本初のデータセンターを開設する計画だが、再生エネの調達で難航する可能性もある。仮に化石燃料由来の電力を使うようなら、再生エネ比率が下がってしまう。「日本への直接投資の広がりにも水を差しかねない」(業界関係者)。アップルやソニーなど、RE100に加盟する大手20社は6月、日本の電力に占める再生エネ比率を30年に50%に引き上げるよう求める提言を発表した。政府は30年にこの比率を22~24%に引き上げる目標を掲げ企業への支援を強化する方針だが、今後はより踏み込んだ環境整備も重要になりそうだ。

<では、どうするべきか?>
PS(2020年7月9日追加):*4-1は、熊本県南部を中心とした豪雨により、球磨川の12カ所が氾濫・決壊し、土砂崩れも続いて犠牲者が増えているため、国交省が打ち出している「流域治水」を球磨川はじめ河川ごとに急いで計画策定するべきだとしている。具体的には「①土砂災害の危険性がある地域の開発規制や住宅移転」「②雨水をためる遊水地、ビルの地下貯水施設整備」「③ため池や田んぼの貯水機能の活用」「④高架道路の避難所活用」「⑤鉄道橋の流失防止のための補強」などを進めるそうで賛成だ。特に、川底やダムの掘削は、掘削された土砂を使って堤防のかさ上げや埋め立てができるため、同時に行った方が効率的である。また、*4-2のように、中部地方でも豪雨被害で、岐阜県・長野県で4,300人が孤立し、下呂市小坂町で飛騨川沿いの国道41号が約300mにわたって崩落したほか、道路の崩壊や冠水が相次いでいるそうだ。
 日経新聞も、*4-3のように、2020年7月9日、「⑤九州や岐阜県を襲った豪雨で8日までに115河川が『氾濫危険水位』を超えた」「⑥梅雨末期の豪雨が広範囲に及んで氾濫危険水位を超えた河川数はこの5年間で5倍に増加した」「⑦気候変動で豪雨が増え、河川の安全度が下がっている恐れがある」「⑧ハード整備だけでなく、流域全体の治水対策が急務だ」「⑨地球温暖化などの影響で河川の氾濫リスクが高まっている」「⑩国交省は20年度から行政・民間企業・地域住民らが連携して『流域治水』を進める」としている。私も、避難ばかりしており、体育館等で長期間を過ごすのは文明国の国民のすることではないため、早急にITや5Gの普及だけではない安心して暮らせるスマートな街づくりを企画すべきだと考える。
 なお、*4-4のように、EUの欧州委員会は、2020年7月8日、水素を脱炭素計画の中心に据えて、運輸や産業でも排出ゼロをめざし、景気浮揚にも繋げ、世界をリードするための水素戦略を公表したそうだ。「パリ協定」は地球規模のCO₂排出量を実質0にすることをめざしており、EUは2050年までに域内の温暖化ガス排出を実質0にする目標を掲げているため、コストは下げられるだろうし、これなら投資価値がある。水素燃料電池は日本で開発されたのだが、おかしな批判や対応が多くて日本では普及せず、これもEUで先に市場投入されることになったわけだ。

  
    2020.7.9朝日新聞            2020.7.9中日新聞

(図の説明:1番左の図のように、岐阜県・長野県でも豪雨被害があり、右の3つの図のように、河川の氾濫やがけ崩れによる被害となっている)

*4-1:https://kumanichi.com/column/syasetsu/1518004/ (熊本日日新聞 2020年7月9日) 流域治水 球磨川でも新たな計画を
 県南部を中心とした3日からの豪雨では、球磨川の12カ所が氾濫・決壊した。土砂崩れも相次ぎ、犠牲者は日を追って増えている。活発化した梅雨前線はさらに福岡や大分県など九州北部、中部地方にも被害を及ぼした。人命のみならず、家屋の浸水、橋の流失、道路や堤防の崩壊など、各地に大きな爪痕を残している。今年に限ったことではない。日本列島は、死者が数十人を超えるような風水害に毎年のように見舞われている。そうした現状を踏まえ、国土交通省が防災・減災の新たな在り方として打ち出したのが「流域治水」である。ダムや堤防だけに頼るのではなく、流域のあらゆる力を集めて豪雨災害を防ぐ、という考え方だ。地球規模の気候変動の影響で、水害を含めた自然災害は大規模化・頻発化している。もはや従来のやり方では対処できず、国交省の方向性は間違っていないだろう。球磨川をはじめ、河川ごとの計画を急いで策定するべきだ。これまで治水は、主に国管理の多目的ダム(治水・利水)や河川の堤防を中心に考えられてきた。だが、ハード整備には時間がかかり、それだけに頼るのは限界がある。このため新たな考え方では、国、自治体、企業、住民など流域のあらゆる関係者に協力を求め、ソフトを含め対策を総動員する。具体的には(1)土砂災害の危険性がある地域の開発規制や住宅移転(2)雨水をためる遊水地、ビルの地下貯水施設整備(3)ため池や田んぼの貯水機能の活用(4)高架道路の避難所活用(5)鉄道橋の流失防止のための補強-などを進める。農業や発電用の利水ダムについても、大雨を予想して事前放流し、雨水のせき止めに役立てる。多くは自治体や電力会社の運営だが、国は全国955カ所のダムと既に協定を結んでおり、事前放流が可能になっている。国交省は全国109の1級水系について、地域の実情に応じた「流域治水プロジェクト」を策定するとしている。一刻も早く実行してもらいたい。1級河川の球磨川水系では、1963年から3年続けて大きな洪水が発生。国は66年、治水目的の「川辺川ダム」建設計画を発表した。しかし流域に賛否もあって事業は進まず、2008年に蒲島郁夫知事が建設反対を決めた。その後、国、県、流域自治体で「ダムによらない治水」の在り方を協議。川底掘削、堤防かさ上げ、遊水地の整備などを組み合わせた10案が候補に挙がった。だが現在までに決定には至らず、その中で今回の豪雨災害が起きた。また、球磨川流域では県営市房ダムなど6ダムで事前放流が可能となっていた。だが、豪雨の予測が難しいこともあって現実には実行されず、今後に課題を残した。国、県、自治体は今後、「流域治水」の考え方も踏まえて球磨川水系の新たな治水プロジェクトを策定すべきだ。その根底には当然、今回の被害の検証がなければならない。

*4-2:https://www.chunichi.co.jp/article/85971 (中日新聞 2020年7月9日) 岐阜・長野で4300人孤立 中部でも豪雨被害、9日以降も大雨警戒
 梅雨前線に暖かく湿った空気が流れ込んだ影響で、中部地方は八日、各地で大雨となった。岐阜県では下呂市や高山市で道路が寸断されるなどし約四千人が孤立。長野県でも観光地の上高地につながる国道で土砂崩れが起き、宿泊客ら三百人以上が孤立している。岐阜、長野両県に一時、大雨特別警報が出され、その後解除されたが、気象庁は九日以降も大雨を予想。これまでの雨で地盤が緩んでいる所もあり、引き続き厳重な警戒を呼び掛けている。岐阜県では下呂市萩原町の飛騨川と、白川町河岐の白川と飛騨川の合流地点で氾濫が発生した。同県は大雨特別警報が出された下呂、高山、中津川など六市に対し、災害救助法の適用を決めた。六市ではピーク時に計二十一万九千人に避難指示が出た。八日午後十一時半現在、下呂市など四市町で百九十六人が避難している。けが人は見つかっていない。下呂市小坂町で、飛騨川沿いの国道41号が約三百メートルにわたって崩落したほか、道路の崩壊や冠水などが相次ぎ、高山、下呂、郡上の三市の計十七集落で約四千人が孤立。九日にはいずれも解消される見通し。

*4-3:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200709&ng=DGKKZO61296530Y0A700C2CC1000 (日経新聞 2020.7.9) 115河川「氾濫危険水位」、増える豪雨、広域で被害 流域全体で対策急務
 九州や岐阜県などを襲った今回の豪雨で、8日までに115河川が「氾濫危険水位」を超えた。梅雨末期の豪雨は近年、広範囲に及び、氾濫危険水位を超えた河川数は5年間で5倍に増加。気候変動で豪雨が増え、河川の安全度が下がっている恐れがある。堤防建設などのハード整備だけでなく、流域全体の治水対策が急務だ。8日は岐阜県で非常に激しい雨が降り、山間部の下呂市で飛騨川が氾濫。大分県でも日田市の筑後川と由布市の大分川が氾濫した。国土交通省によると、8日午後2時時点で氾濫危険水位を超えていたのは長野県の木曽川や犀川など7。今回の豪雨で一時、氾濫危険水位を超え、すでに下回った河川も108に上った。地球温暖化などの影響で河川の氾濫リスクは近年高まっている。国交省によると、氾濫危険水位を超えた河川数は2014年に83だったが、19年は403と5年で5倍に増加した。17年の九州北部豪雨や18年の西日本豪雨など、梅雨末期の豪雨が広範囲で河川氾濫を引き起こすケースも多い。増える災害に対して、堤防建設などのインフラ整備はコストと時間がかかるため、国交省は20年度から行政や民間企業、地域住民らが連携してインフラ整備に頼らない「流域治水」を進める。戦後最大の洪水と同規模の災害を想定し、流域ごとに雨水貯留施設やため池の活用、工場の浸水対策などを検討する。同省担当者は「河川管理区域内だけの対策では限界があり、行政だけでなく関係者全体を巻き込みたい」と話す。福島、宮城両県を流れる阿武隈川、新潟、長野両県にまたがる信濃川など、昨年の台風19号による河川氾濫の被害が大きかった9都県の7水系で計画が進んでいる。埼玉県の入間川流域では県や市町、河川事務所が連携し、1月末に計画を公表した。20年度は決壊箇所の災害復旧や遊水池の整備に取り組む。プロジェクトには避難行動を時系列で示す「マイ・タイムライン」の普及などのソフト対策も盛り込んだ。治水対策に詳しい京都大の今本博健名誉教授(河川工学)は「国内ではダムによる治水が重視され、堤防の補強や川底を掘削して流量を増やすなどの対策が遅れてきた」と指摘。一方で「従来の治水対策の範囲では今回の雨量で洪水を防げなかった可能性がある。避難計画やまちづくりも含めた幅広い視点で、被害を減らす取り組みが必要だ」と話している。

*4-4:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200709&ng=DGKKZO61293600Y0A700C2FF8000 (日経新聞 2020.7.9) EU、脱炭素の柱に「水素」 戦略公表、景気浮揚狙う
 欧州連合(EU)の欧州委員会は8日「水素戦略」を公表した。燃焼しても温暖化ガスを排出しない水素を脱炭素計画の中心に据え、運輸や産業でも排出ゼロをめざす。景気浮揚にもつなげる。世界での脱炭素競争をリードする考えだが、コストが課題となる。「この戦略の狙いは(温暖化ガスの)排出ゼロ達成と、新型コロナウイルスが経済に与えたダメージの克服だ」。欧州委員会のティメルマンス上級副委員長(気候変動担当)は8日の記者会見で力説した。EUは2050年までに域内の温暖化ガス排出を実質ゼロにする目標を掲げている。これまで力を入れてきた再生可能エネルギー普及は排出のない電力を通じ、家庭やオフィスの脱炭素に貢献しているが、排出ゼロには産業や運輸部門の脱炭素化が欠かせない。だが大型の飛行機や船舶、トラックの電化は難しい。鉄鋼やセメントなどの産業でも現状は石炭を使う必要がある。水素を活用すれば、こうした課題を解決できると期待されている。水素を使う燃料電池車は一部で実用化されている。50年には世界のエネルギー需要の24%を水素がまかなうとの分析もある。水素戦略によると、域内で24年までに水を電気分解して水素をつくる装置を6ギガワット分整備。30年までに40ギガワット超に拡大する。実現に向け、「水素版エアバス」とも言える官民の「クリーン水素連合」を設ける。複数の欧州企業が知見を共有し、水素の生産から輸送、利用までを手掛ける企業連合をつくる。20年に500社が参加し、24年に1千社の参加を見込む。欧州委は50年までの累計投資額は1800億ユーロ(約21兆円)から4700億ユーロにのぼるとみている。関連事業を手掛ける企業を資金面などで支援する仕組みを設け、新技術導入を阻みかねない規制の緩和を検討。21年までにルールを改正し、車や船のための水素充填施設の整備を加速させる。EUとは別に、7月からEU議長国となったドイツも総額1兆円を超える投資計画を発表。内閣改造があったフランスも一段と新エネルギー開発を強化する見通しだ。温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」は、地球規模での排出を将来、実質ゼロにすることをめざす。水素は次世代エネルギー源の一つとして注目される。日本や中国のほか、石炭産出国のオーストラリアや産油国のサウジアラビアなども研究。国際エネルギー機関(IEA)は2日公表の報告書で排出ゼロのカギを握る技術に水素、CO2回収、電池などをあげた。当面はコスト引き下げが重要になる。EUによると、水素生産装置の価格は過去10年間で6割下がったが、30年までにさらに5割減らす。

<原発と安全保障>
PS(2020年7月10、12、14日追加):*5-1のように、政府は、中国を意識して敵基地攻撃能力の保有に踏み切るかどうかの検討を始めたそうだが、「①先制攻撃との線引きができなければ、専守防衛からの逸脱になる」「②平和主義や戦争放棄という憲法の理念に背く」というのはもちろんのことだが、敵基地として攻撃されて黙っている国はないため、原発を早々に手じまって使用済核燃料もどこかの地下深くもしくは海底の深い場所に始末しておかなければ、動けない原発を狙った数発のミサイルで、日本中が住めない国になる。
 日本政府は、③科学的検証力の弱さ ④後進性(航空機の時代に巨艦主義採用、国際法から逸脱した野蛮な行為、戦略なき進軍、運と精神論への依存、国家のためとした国民への死の強制など) ⑤縦割行政による無責任体制 があって第二次世界大戦に負け、これに懲りて戦争放棄を日本国憲法に入れたにもかかわらず、③④⑤は今でも変わらないのに、日本国憲法の戦争放棄部分をなし崩し的に変えるのは歴史の歯車を逆に回す危険な行為だ。また、サイバー攻撃やバイオ兵器も使える現代は、原爆も過去の兵器となりつつある。
 しかし、*5-2は、「⑥低効率の石炭火力発電所を休廃止する」「⑦2030年度の電源構成は原子力20~22%、再エネ22~24%、残り56%は石炭・石油などの化石燃料」「⑧これはフクイチ事故後の2014年に定められ、2018年の見直しでも据え置かれた」「⑨20~22%の電力を確保するためには約30基の原発が必要だが、再稼働した原発は9基に留まる」「⑩原発は重要なベースロード電源」等としている。これは、⑦⑧のように、人為的に電源構成を定めた点が誤りなのであり、⑨⑩は原発を護り、⑥は化石燃料を護っている。地球温暖化にはCO₂だけ削減すればよいというのも③の典型例で、原発が温排水により海を温めていることは周知の事実だ。また、「世界の潮流だから逃れられない」としているのも、自分でよいものへの改革ができない③④の事例だ。さらに、省庁横断的に見れば矛盾だらけで、二重三重に計上され無駄遣いの多い政策や予算は、⑤が変わっていないことを意味する。つまり、再エネを猛烈に伸ばせば全エネルギーを代替できるため、エネルギー源を人為的に配分して原発や化石燃料を市場淘汰から護る「エネルギーミックス」により、公害を出すエネルギーを温存する必要はない。そして、日本における再エネ資源の膨大さや分散発電の有効性については、*5-3・*5-4のように、国内でも既に言い古されたと思われるほど指摘されているのである。
 なお、「石炭から水素燃料を取り出す」などというアホなことを書いている新聞記事をよく見かけるが、水を電気分解すれば水素と酸素ができるため、電力が豊富なら水素は安価に作れる。それを小学校で習わなかったのだろうか?

   

(図の説明:1番左は、科学技術予算のGDP比で、日本の地位低下が目立つ。また、左から2番目は農業地帯で利用できる小水力発電の全体像で、右から2番目は山の尾根沿いに設置された風力発電だ。1番右は、漁業地帯の養殖施設に併設された風レンズ風車で、一般の風車より効率的に発電できる)

*5-1:ttps://www.chugoku-np.co.jp/column/article/article.php?comment_id=658905&comment_sub_id=0&category_id=142 (中国新聞 2020/7/5) 敵基地攻撃能力 専守防衛からの逸脱だ
 政府は、山口、秋田両県で進めてきた地上配備型迎撃システム「イージス・アショア」の計画断念を受け、敵基地攻撃能力の保有に踏み切るかどうかの検討を始めた。国家安全保障会議(NSC)で議論して、9月にも方向性を出すという。北朝鮮や中国を仮想敵として日本に向けてミサイルが発射される前に、弾道ミサイル発射基地やミサイルを攻撃しようというのだ。相手国の基地の場所を確認し、防空能力を無力化しておく必要があり、十分な打撃を与える力も欠かせないなど、実現には高いハードルがある。先制攻撃との線引きができなければ、自衛とはいえなくなるだろう。戦後、堅持してきた専守防衛からの逸脱になりかねない。平和主義や戦争放棄という憲法の理念に背くことにもなる。看過できない。自民党は既に前のめりだ。防衛相経験者らを中心に検討チームを設け、論議を始めた。提言をまとめ、政府のNSCの議論に反映させる考えだ。「北朝鮮よりも中国を意識している」(党幹部)という。背景には、沖縄県の尖閣諸島周辺で領海侵入を繰り返すなど、海洋活動を活発化させる中国に対する警戒感の高まりがある。党内にも慎重論はある。岩屋毅前防衛相は「地上イージスが難しいからといって、一足飛びに敵基地攻撃能力を考えるのは論理の飛躍だ」と強調する。連立を組む公明党は否定的である。山口那津男代表は「武力行使を未然に防ぐ外交的な取り組みに力を入れるべきだ」と指摘する。当然だろう。政府はこれまで、米国との役割分担として、敵基地攻撃能力は米側に依存するとしてきた。なぜ今、抜本的に方針転換するのか。地上イージス断念を受け安倍晋三首相は「防衛に空白が生じてはならない」と言う。しかし地上イージスの配備は計画では5年後の2025年以降。それまではイージス艦で対応する方針だった。敵基地攻撃能力の保有を巡り、今秋までに急いで方向性を出す必要性があるのか。地上イージス断念の経緯の検証こそ急務のはずだ。敵基地攻撃能力の論議は1956年にさかのぼる。当時の鳩山一郎首相が「座して自滅を待つというのが憲法の趣旨とは考えられない」と指摘。攻撃を防ぐのに他に手段がないと認められる限り、法理的に自衛の範囲との見解を示した。以来、政府は憲法上可能との考えを踏襲しつつ、専守防衛の観点から保有しない立場を取ってきた。2006年、北朝鮮が相次いで弾道ミサイルを発射したのを受け、当時の防衛庁長官が必要性を表明した。しかし小泉純一郎首相は「憲法上の問題がある」と否定した。ところが安倍首相は政権に返り咲いた12年末以降、保有論議を再燃させた。ただ当時のオバマ米大統領から、中国などを刺激するとして懸念を示された。妥当な指摘だろう。核実験やミサイル発射実験を繰り返す北朝鮮には、国際社会と連携して非核化するよう説得を続ける必要がある。近隣諸国との有効な関係づくりに努めれば、敵基地攻撃能力は不要だ。武力に武力で対抗するだけでは平和で安全な地域づくりには、つながらない。政府は肝に銘じるべきである。

*5-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200710&ng=DGKKZO61341880Z00C20A7EA2000 (日経新聞 2020.7.10) エネ政策、不作為に限界 脱炭素、原発に国の関与不可欠
 脱炭素のうねりが迫るエネルギー転換や電力・ガス市場の自由化など、エネルギーをめぐる環境が内外で変わりつつある。速度を上げる変化に日本がのみ込まれようとしているときに、エネルギー政策は不作為とも言える思考停止が続く。現実を直視した計画に作り直すときだ。梶山弘志経済産業相は9日、洋上風力発電を拡大させる方針を表明した。3日には低効率の石炭火力発電所を休廃止する考えを示している。エネルギー政策を担う経産省は長期指針である「エネルギー基本計画」の見直しに向けた地ならしを急ぎ始めた。現行の計画は2030年度の電源構成について、原子力を20~22%、再生可能エネルギーを22~24%、残り56%を石炭や石油などの化石燃料でまかなうとする。東京電力福島第1原子力発電所の事故後の14年に定められ、18年の見直しでも据え置かれた。この比率実現が、温暖化ガス排出を30年度に13年度比で26%減らす国際公約の前提になっている。しかし、目標年度と定める30年度まで残り10年に迫り、掲げる数字の非現実性があらわになりつつある。なかでも原発だ。20~22%の電力を確保するためには約30基の原発が必要だが、再稼働した原発は9基にとどまる。福島原発事故から来年で10年、国民の原発に対する信頼回復は進まない。関西電力で発覚した原発立地をめぐる金品受領問題は不信を増幅した。金品の渡し手となった元助役のような人物がどうして影響力を持つようになったのか。「重要なベースロード電源」と位置付けながら、立地対策を含め、運営を電力会社に丸投げしてきた国策民営の限界がある。原発は有力な脱炭素の手段となりうる。国民が受け入れて使い続けるには、立地対策や使用済み燃料の処理、核燃料サイクルなど、国がもっと前に出て関与しなければならない。それは政治と行政の責任でもある。国際エネルギー機関(IEA)によれば、世界の発電量に占める太陽光や風力など再生エネの比率は40年に44%となり、石炭や天然ガスを上回る最大の電源になる。日本もこの潮流から逃れられない。石炭より発電コストが高くても伸ばすなら、国民に受け入れてもらうよう説明を尽くす必要がある。広大な海洋をいかした洋上風力を増やす。導入拡大のネックとなる送電線利用のルールを見直す。発電した場所で電気を使う分散型システムの導入を促す。原発に温暖化ガス削減を期待できないとすれば、あらゆる政策を動員して再生エネを主力電源に育てていかねばならない。ただし、エネルギー政策は温暖化対策だけでない。安全や供給の安定性、経済性などの要素を考慮する必要がある。国際的に割高な電気料金をどう下げるのか。地政学リスクに伴う供給途絶をどう回避するのか。エネルギー戦略の立案とはこうした要素の最適バランスを見つける作業だ。現行のエネルギー基本計画では30年度に電源構成の56%を化石燃料でまかなう。再生エネを最大限伸ばしても、すべてを代替するには力不足だとすれば、脱炭素に配慮しながら化石燃料を使い続ける方法を考えるしかない。石炭に比べて、温暖化ガスの排出が少ない液化天然ガス(LNG)の利用拡大が現実解になるとしても、輸入頼みのLNGには地政学リスクがつきまとう。これをどこまで増やせるのか。現実を見据えたエネルギーの最適組み合わせ、いわゆる「エネルギーミックス」の議論を早急に始めなければならない。

*5-3:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20191001&ng=DGKKZO50386330Q9A930C1KE8000 (日経新聞 2019年10月1日) 再生可能エネルギーの未来(中)電源の地産地消 目指せ 泉井良夫・金沢工業大学教授(1959年生まれ。東京大工卒、同大博士(工学)。専門はエネルギーマネジメント)
<ポイント>
○地方は再エネを利用した分散型電源が解
○太陽光と中小水力や地熱の組み合わせを
○電気自動車は動く蓄電池として活用せよ
 本稿では再生可能エネルギー(再エネ)の未来を、地方から、エネルギーマネジメントの視点で考察したい。再エネは主に脱炭素社会実現のための電源として議論されるが、それ以外にも分散型電源、地域による多様性、電源の国産化など様々な視点がある。中でも地方は、人口密度が疎で分散的であることから再エネとの整合性が高く、地産地消に適している。実現のためには、おのおの地域ごとの再エネによる創エネとエネルギー消費を結びつけるエネルギーマネジメントが重要である。今般、千葉県で起きた長期間の送電停止は示唆的であり、こうした地域の小規模分散型電源の重要性を図らずも実証したといえそうだ。まず、地産地消における再エネ=分散型電源という視点を考察する。再エネは、設置場所の自由度が高い。たとえば太陽光発電は日射があればよいので、日本全国どこでも設置可能である。風力発電は風況の制約などがあるものの同様である。地熱に至ると、我が国は世界第3位のポテンシャルを持ち、掘ればどこでもエネルギー利用が可能である。これらの再エネは密度が低いといわれるが、地方は人口密度も低いため、この点での親和性もある。一般に生産(発電)と消費はできるだけ近い方が、コストや電力損失などの点で有利であるが、地方は人口が少なく分散的であるため、電力を配るための配電線が長い。たとえば総発電出力あたりの配電線長(架空線)を比較すると、北海道電力は東京電力の約2倍である。つまり、地方においては再エネを活用した分散型電源によるコミュニティーが合理的であり、さらにオフグリッド(電力自給)化が実現すると、地震や台風などからのレジリエンス(復元力)の観点からも有利となる。次に、再エネの地域による多様性の視点を考察する。科学技術振興機構低炭素社会戦略センター調査報告(2018年1月)によると、出力変動型再エネである太陽光発電は、おおむね日本全体に均一分布している。一方、地域的な分布の違いが見られる再エネも多く、中小水力発電は北陸・甲信越、地熱発電は九州・東北・北陸に多い。これらは出力安定型再エネであり、うまく組み合わせるとベストミックスになる。我が国は、地域間、季節間の寒暖差が大きく、冷暖房など空調設備が必須であり熱需要が存在する。しかし、熱は輸送や貯蔵が難しく、生産と消費が近接している必要がある。ドイツの自治体によるインフラ運営公社・シュタットベルケでは、約900社が電気事業を手掛けており、電力小売市場で20%以上のシェアがあるといわれる。ドイツは比較的寒冷であり、熱の生産と消費が近接しリンクしているのが主な理由である。我が国でも、地産地消での再エネ熱活用により、同様のビジネスモデルが成立する可能性がある。次に、地方におけるEVなどモビリティーによるエネルギー利用について考察する。地方は自動車の保有率が高く、運輸部門における二酸化炭素排出量比率が高い。たとえば東京都は10%前後であるが、金沢市は20%を超えている。さらに、ガソリンスタンドの減少、少子高齢化を背景に、地方における自動運転関連技術の期待が一層高まってくることを考えると、これと親和性の高いモビリティーの電動化は必然となる。移動体の電動化には蓄電池は必須であり、電気視点では「動く蓄電池」と言える。太陽光発電や風力などの出力変動型再エネは電気のバッファリング(緩衝)が必要であるから、これら動く蓄電池の活用が可能となる。動く蓄電池はモビリティーと電気のデュアルユースであることから、定置型蓄電池に比べてコスト面でも有利である。さらに、停電時などのエネルギーレジリエンスにも有効である。将来は再エネ由来の水素活用も考えられる。さて、上記のように再エネは地方の特性と様々な整合性を有するが、これをシステム的にどのように活用してエネルギーサービスとして提供するかは別の議論が必要である。究極は分散型電源として、地域で作った再エネを地域で使う、地産地消による小規模電力システム(マイクログリッド)化が考えられる。さらに今後は、電気ばかりでなく熱エネルギーも含めた熱電一体のエネルギーシェアが、地産地消におけるエネルギーサービスの軸になると考える。我が国においては、既に膨大な資本を投下した電力システムが存在する。転換コストを考えると、これを直ちに小規模電力システム化して地産地消することは現実的ではない。しかし、新たな消費者地域の構築や固定価格買い取り制度終了を見据え、既存の再エネ設備を地産地消化するために再構築するときには十分検討に値する。地産地消の実現に必要な技術は、大きく分けて「需要家資源活用技術」「直流給電技術」「システム・オブ・システムズ(SoS)技術」「決済系技術」の4つがある。エネルギー創出や電力消費の予測、さらにその制御を行うのが需要家資源活用技術である。また、太陽光発電など再エネは効率の観点から直流給電技術で構築すると都合が良い。交流で構築されている商用の電力システムには、周波数を一定に維持する高度な需給制御技術が必須である一方、直流システムは創エネと消費のアンバランスに非常にロバスト(頑健)であり、制御が容易で停電しにくい特徴がある。さらに、動く蓄電池としてのEVなどのモビリティーシステム、再エネ発電量予測のため衛星システムと連携するSoS技術も必要である。地産地消では、電気ばかりでなく熱を含めた多種少量のエネルギーをシェアするが、そのシェアに逐一人手を介在させることは事実上不可能である。このため、セキュリティーやプライバシーの保持はいうまでもないが、ブロックチェーン(分散型台帳)などの低コストでスマートな決済系技術が必須である。このようなエネルギーマネジメントを活用した地産地消システムは、各所で活発に実証実験が行われている。筆者が所属する金沢工業大学においても、18年4月にオープンした白山麓キャンパス地方創生研究所で、熱を含む多様な再エネを活用した「再生可能エネルギーベストミックスの地産地消コミュニティモデル」という、50年の地方におけるエネルギー縮図モデルとして実証評価を行い、その実現を目指している。再エネは今後、脱炭素化を主目的に導入がさらに加速すると考えられる。その際、地域による多様性への配慮は欠かせない。都市には都市の特性、地方には地方の地域特性があり、これらと再エネの多面的な視点の整合化が望まれる。地方においては、「分散」をキーワードに、地域特性を生かし、熱・電気エネルギーの地産地消を実現するエネルギーマネジメント技術の確立が求められよう。

*5-4:http://www.tokyo-np.co.jp/article/economics/list/201808/CK2018082002000139.html (東京新聞 2018年8月20日) 猛暑こそ太陽光発電 最高気温更新でも安定
 記録的な猛暑が続いたこの夏、冷房を使う機会が増える一方で、東京電力管内の電力需給は、深刻な逼迫(ひっぱく)に陥った日がまだないことが分かった。太陽光発電の発電量が増え、節電の浸透で電力消費自体も減っていることなどが要因だ。東電管内で稼働している原発はゼロでも猛暑の日を乗り切っており、「電力の安定供給には原発が不可欠」とする政府や電力業界の主張はその根拠が薄らいでいる。電気の使用可能量(供給)に占める実際の使用量(需要)を示す「使用率」について、東電は安定的(93%未満)、やや厳しい(93~95%未満)、厳しい(95%以上)、非常に厳しい(97%レベル)の四段階に区分する。一般的に暑い日ほど冷房が使われ使用率は上昇。97%を超えると停電の可能性も生じるとされる。だが、この夏の使用率は、埼玉県熊谷市の気温が四一・一度と国内最高記録を更新し、東京(千代田区)で史上三位の三九・〇度に達した七月二十三日でも92%と「安定的」だった。ほかの日をみても、94%となって「やや厳しい」となった七月二日以外は、すべて「安定的」だ。電力不足が避けられているのは、「気温が高い」との予報がある日に、東電が火力発電の発電量や他の電力会社から融通してもらう電力を増やしていることが要因になっている。さらに午前十時~午後三時ごろに増える太陽光の発電量が、電気の使用がピークになる午後二時ごろと重なることも大きい。太陽光発電は、再生可能エネルギーで発電した電気をすべて電力会社が買い取る制度が二〇一二年に導入されてから増加。東電管内でも供給力の一割超を占めるようになっている。節電や省エネで、電力の消費量自体も減っている。七月二十三日には、東電管内の電力使用量が午後二~三時に五千六百万キロワットと震災後最大を更新。それでも〇一年七月二十四日に記録した過去最大量よりも13%少なかった。事前に契約した企業への一時的な節電要請や、他の電力会社に電力を融通してもらう仕組みが整備されたことも、供給安定の要因に。日没以降も高温が予想された八月の一日と二日、東電は夕方にかけて大口顧客に節電を要請した。今年一月も厳しい寒さで暖房の利用が急増したが、電力会社間の融通によって電力不足は回避された。

<災害レッドゾーンとイエローゾーンの定義は?>
PS(2020年7月12日追加):*6-1のように、九州を襲った記録的豪雨で熊本・福岡・大分の3県で身元が発表された犠牲者57人のうち、少なくとも3/4にあたる43人が氾濫した川沿いに住み、そのうち約9割の38人が65歳以上の高齢者だったそうだ。住民の年齢分布も上に偏っているため、約9割が65歳以上でもおかしくはないが、高齢者だけでは避難も後片付けも容易でないと思う。さらに、近年は、100mm/時間超や400mm/24時間超という雨は珍しくないため、避難を前提としていては安心して生活することができない。
 そこで、*6-2・*6-3のように、国交省が都市計画法や都市再生特別措置法などを6月4日に改正し、①「災害レッドゾーン」「災害イエローゾーン」などの「災害ハザードエリア」における新規開発の抑制 ②災害ハザードエリアからの移転促進 ③立地適正化計画と防災の連携強化 で安全な街づくりを促し、土砂災害の危険性が高い「災害レッドゾーン」は、オフィス・店舗・病院・社会福祉施設・旅館・ホテル・工場・倉庫・学校などの施設開発を原則禁止することになった。しかし、浸水想定区域の「災害イエローゾーン」は、住宅の開発許可を厳格化するだけで、病院・社会福祉施設・旅館・ホテルなどの営業施設開発は禁止されておらず、今回の河川の氾濫はこちらに当たるが、危険は土砂災害だけでなく津波・洪水でも大きく、新都市計画法の弱点を突いて起こっている。つまり、浸水想定区域は「災害レッドゾーン」に入れて安全な場所に移転させる必要があり、危険性がわかっていても住民自身が禁止区域に住み続けたい場合は、全国民ではなく、「災害レッドゾーン」「災害イエローゾーン」の危険度に応じて保険料を上げ、災害が起こった際にはなるべく多くを私的保険で賄うようにすべきだ。そして、自治体の都市計画と保険料により、都市を安全な方向に誘導すべきだと思う。

   
                              2020.1.20読売新聞

(図の説明:左図のように、災害の起こり易い地域をレッドゾーン・イエローゾーンとし、安全な地域に住宅を誘導することになった。レッドゾーンに入るのは、中央の図のような土砂災害の起こり易い地域で、住宅・オフィス・店舗・病院・社会福祉施設・旅館・ホテル・工場・倉庫・学校などの施設開発が原則禁止だが、浸水想定区域のイエローゾーンは低層住宅だけが禁止だ。また、右図のように、イエローゾーンには、鉄筋コンクリートの頑丈で高い建物は建設可能だが、このような建物も機器は地下に設置してある場合が多いため、建て方に要注意だ)
 
*6-1:https://mainichi.jp/articles/20200711/k00/00m/040/215000c(毎日新聞 2020年7月12日)犠牲者の4分の3は川沿い居住、約9割が高齢者 逃げ遅れた可能性 九州豪雨
 九州を襲った記録的豪雨の犠牲者で、熊本、福岡、大分3県で身元が発表された57人のうち、少なくとも4分の3にあたる43人が氾濫した川沿いの地区に住んでいたことが、毎日新聞のまとめで判明した。43人のうち約9割の38人が65歳以上の高齢者だった。3日夜から4日朝にかけた豪雨の中で多くの人が逃げ遅れた可能性があり、高齢者避難の課題が改めて浮かんだ。熊本県では、2012年7月12日未明から阿蘇地方などで1時間100ミリ超の記録的な雨が降り、県内で23人が死亡した。この反省から県は、明るいうちに避難を呼びかける「予防的避難」を目標に掲げ、市町村が避難所を開設する経費の一部を負担するモデル事業を実施したこともある。しかし今回、気象庁の予想雨量は県内の多いところで24時間200ミリで、モデル事業で予防的避難をする基準としていた値(24時間雨量250ミリ以上など)にも満たなかった。実際は400ミリ以上の雨となり、人吉市では「避難準備・高齢者等避難開始」の情報を出せないまま、最初の避難勧告が3日午後11時となるなど住民の明るいうちの避難は難しい状況だった。県の防災担当者は「答えの見えない重い宿題だ」と語る。静岡大防災総合センターの岩田孝仁特任教授は「夜になれば大雨の中で高齢者は動けない。一方で、雨量予測が難しい中では行政の対応に限界もある。行政に頼りすぎず、住民自ら早めに避難することが世の中の常識にならなければ被害は減らせない」と訴える。

*6-2:https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/00154/00783/ (日経クロステック 2020.2.5) 都市計画法改正で「原則禁止」となる建物は? 防災重視に転換する街づくり
 国土交通省は都市計画法や都市再生特別措置法などを改正し、激甚化する自然災害に対応した安全な街づくりを促す。開発許可制度を厳格化し、災害危険区域や土砂災害特別警戒区域といった「災害レッドゾーン」における自社オフィスなどの開発を原則禁止する。今通常国会に提出する改正案の概要を、2020年1月27日の都市計画基本問題小委員会で示した。改正のポイントは「災害レッドゾーンや災害イエローゾーンなどの『災害ハザードエリア』における新規開発の抑制」、「災害ハザードエリアからの移転の促進」、「立地適正化計画と防災の連携強化」の3つだ。企業にとって最も影響が大きそうなのが、都市計画区域全域を対象とした、災害ハザードエリアの開発抑制。「災害レッドゾーン」と呼ぶ災害危険区域、土砂災害特別警戒区域、地すべり防止区域、急傾斜地崩壊危険区域の4区域で、自社のオフィスや店舗、病院、社会福祉施設、旅館・ホテル、工場、倉庫、学校法人が建設する学校などの「自己の業務の用に供する施設」の開発を原則禁止とする。現行の都市計画法では、分譲住宅や賃貸住宅、賃貸オフィス、貸店舗などを開発する際に、区域内に災害レッドゾーンを原則として含まないよう規制している。一方で、開発事業者が自ら使用する施設については規制対象としていない。近年の自然災害で、こうした施設が被災して利用者に被害が及ぶケースが発生しているため、法改正による規制強化に乗り出す。国交省が16年4月~18年9月の2年半を対象に、開発許可権者である590自治体に調査したところ、災害レッドゾーンにおける自己業務用施設の開発行為は合計47件。土砂災害特別警戒区域内に小学校・中学校が含まれるケースもあった。災害ハザードエリアのうち、浸水想定区域などのいわゆる「災害イエローゾーン」についても、市街化調整区域における住宅などの開発許可を厳格化する。現行の都市計画法では、市街化調整区域内であっても自治体が条例で区域を指定すれば、市街化区域と同様に開発できる。指定に当たっては原則として「溢水、湛水、津波、高潮等による災害の発生のおそれのある土地の区域」などを除外する必要がある。しかし現実には災害レッドゾーンが含まれているケースがあるほか、浸水想定区域についてはほとんど考慮されていないのが実情だ。19年10月の台風19号でこうした区域を含む市街化調整区域で浸水被害が発生したことを受けて、開発許可の厳格化に踏み切る。

*6-3:https://www.sankeibiz.jp/macro/news/200604/mca2006040500003-n1.htm (産経BZ 2020.6.4) 開発規制強化 災害に備え 改正都市計画法が成立
 まちづくりで防災を進める改正都市計画法などが3日、参院本会議で可決、成立した。土砂災害などの危険が高い地区の開発規制を強化し、自ら店舗を経営する目的でも建設を禁止する。浸水などの恐れがある地区からの住宅移転を促すため、市町村が移転先などを調整する制度も導入。最大2年程度の周知期間を経て施行する。大きな被害が出た昨年の台風19号をはじめ多発する自然災害に備えるのが狙い。崖崩れや地滑りなどで建物が壊れたり、身体に危害が及んだりする「レッドゾーン」に指定されているエリアでは現在でも賃貸、分譲目的の住宅、貸店舗は建設できない。しかし、自分が経営する目的で店舗やホテル、学校、事務所などが建設されているケースがあり、規制対象を広げる。移転の調整は、住宅や施設を集約する「コンパクトシティー」を目指し、立地適正化計画を作っている市町村が対象。開発規制の有無にかかわらず浸水などの恐れがある場合は、市町村が移転対象の住宅や施設、移転先、時期などを盛り込んだ計画を作成する。昨年の台風19号では居住誘導区域でも浸水被害が起きており、安全を確保する。国土交通省は「住民の代わりに、自治体が安全な移転先を見つけて紹介できる」と利点を説明する。立地適正化計画には防災対策を明記することも市町村に求める。避難施設整備、宅地のかさ上げや耐震化が想定され、具体策は国交省がガイドラインの形で示す。国交省は今後、関連する政令も改正。適正化計画で住宅の集約を目指す「居住誘導区域」から、危険性の高いレッドゾーンは除外するよう明示する。

<新型コロナでも非科学的なTV報道が多いのは何故か?>
PS(2020年7月14、17、18日追加):*7-1のように、東京都で200人以上の感染者が4日間も出て、7月13日(月)に5日ぶりに119人になり新規感染確認者数が200人を下回ったと一喜一憂する報道が多いが、この論調なら検査を抑制して新規感染者の確認を止めればよいことになってしまい、本質的な解決にならない。そして、このような反応の中で、無症状者・軽症者・中等症者をウイルスを排出しなくなるまで隔離して治療しなかったことが、新型コロナを市中に蔓延させた直近3カ月の最大の失敗であるため、まずこれを反省すべきだ。また、「新型コロナ≒夜の街」という新型コロナがまるで性病ででもあるかのような病人差別も見られるが、先進国とは思えない非科学的な行為だ。正確には、精密抗体検査や新型コロナウイルスのDNA解明などを行った東大先端研の児玉名誉教授が、YouTubeで検査・症状・治療・ウイルスの変異・ワクチン等について話しておられる(https://search.yahoo.co.jp/video/search?p=%E5%85%90%E7%8E%89%E9%BE%8D%E5%BD%A6+%E3%82%B3%E3%83%AD%E3%83%8A&tid=d83a8d062f1c155c7e68c92f3f94dca0&ei=UTF-8&rkf=2&dd=1 参照)。
 その中で、*7-2・*7-3の内容も話されており、「死者数/人口100万人」は、欧米では300~800人であるのに対し、日本では約6人と50~100倍以上の差があり、これだけの違いは生活様式や医療格差だけでは説明できない。そのため、「人種によって異なる遺伝子で免疫応答の違いが生じているのではないか」との仮説を立て、ゲノム解析で確かめようとしているそうだ。また、BCG接種と感染者数・死者数の間にも強い相関関係があるが、私自身は、BCG接種との直接因果関係というよりは、類似のウイルスに対して多重に免疫を持っているのではないかと思っており、類似のウイルスが存在する地域の発酵食品も、ペニシリンと同じ原理でこれらのウイルスに抵抗力があると考えている。
 これまでの政府の対策の失敗により(これは認めるべき)、新宿が日本独特の遺伝子配列を持つ新型コロナの東京型エピセンターとなり、*8-1のように、東京都内の感染者が17日の発表で過去最多の293人となったが、メディアはまた同じようにボケたことを言っている。そして、*8-2のように、「GoToトラベル」事業も東京を目的とする旅行と東京居住者の旅行が対象外になったのだが、本来はPCR検査で陰性なら行動制限をする必要がないため、「GoToトラベル」事業を行う必要もなかったのに、容易に検査できない仕組みにして国民全員を自粛させたのが問題だったのだ。そのため、それぞれの地域は、他の地域から入ってくる人にPCR検査の陰性証明書提示を義務付け、陰性なら入れるようにした方がよいと思う。まして、被災地に入るボランティアは受入自治体でPCR検査してもよいくらいで、厚労省は、*8-3のように、唾液を使って迅速に結果の出るPCR検査を無症状の場合でも認めると発表している。しかし、やはり検疫や濃厚接触者に限っているため、無症状でも希望する人は自費で受けられるようにすればよいだろう。その検査は、大学や検査センターを使えば大量にできるそうなのでやってもらえばよく、それでも検査させない理由が他にあるのだろうか?
 この新型コロナへの対応の誤りから発生した巨額の無駄遣いで、*9のように、2021年度予算編成の指針となる「骨太の方針」は、①国債の大量発行 ②財政再建目標削除 ③国内総生産(GDP)600兆円達成目標の取り下げ を行い、④「プライマリーバランス(PB)」を2025年度に黒字化する目標が棚上げされた。この新型コロナの長期化により、財政のさらなる悪化が見込まれているが、対応によっては逆の効果を生むこともできた。つまり、政府が検査・診断・隔離・治療・ワクチン開発を推進し、それを可能にするツールを日本で開発・製品化すれば、高度なバイオ産業となって次の経済成長に繋がった筈なのだ。しかし、日本政府は、馬鹿の一つ覚えのように、「テレワーク」「働き方改革」と連呼して人を自宅から出さないようにしたため、テレワークでは不可能な調査研究・開発・製品化などもできなくなった。また、日本中で長期に自粛させたことにより、国内総生産が落ち、財政再建ができないばかりか、やっていけなくなった個人や企業を救うための後ろ向きの支出が増えて、国債の大量発行を余儀なくされた。これは、与野党・メディアが協力して行ったことであり、「何故、ここまでの愚策しか思いつかないのか?」と、私は呆れながら見ているしかなかったのである。


     2020.7.9朝日新聞        2020.7.9  2020.6.25  2020.7.18
                      毎日新聞   朝日新聞   東京新聞

(図の説明:1番左の図のように、東京都の新規感染者数は増えているが、その理由は、左から2番目の図のように、PCR検査数を増やしているからであり、検査数が減る週末には新規感染者数も減る。また、今のところ、重症患者も漸減している。なお、新型コロナの本質的解決には、検査数を増やして治療と隔離をすることが必要であるため、新規感染者数の増減だけを問題にするのはおかしい。また、右から2番目の図のように、日本はじめアジア諸国は新型コロナによる死亡率が低いため、その原因究明も行われている。しかし、1番右の図のように、新型コロナ対策に関する愚策とそれを尻拭いする膨大な支出のため、日本の財政状態は危うい状態になった)

*7-1:https://www.tokyo-np.co.jp/article/42142 (東京新聞 2020年7月13日) 東京都で新たに119人の感染確認 5日ぶりに200人下回る
 東京都の小池百合子知事は13日、都内で新たに確認された新型コロナウイルス感染者は119人だったと明らかにした。1日当たりの新規感染者数が200人を下回るのは今月8日以来、5日ぶり。都内の累計感染者数はこれで8046人となる。小池知事は13日午前、都庁で報道陣の取材に応じ、都内の感染者数が多い日が続いていることを菅義偉官房長官が「東京問題」と発言したのに対して「圧倒的に検査数が多いのが東京。それによって陽性者があぶり出てきて、その中には無症状の方もかなり含まれているということが分かってきた」と述べた。

*7-2:https://digital.asahi.com/articles/ASN5P5KCKN5PUCFI003.html?iref=pc_rellink_01 (朝日新聞 2020年5月21日) なぜ人種で差 コロナ重症化、遺伝子解析で探る研究開始
 新型コロナウイルス感染症が重症化する仕組みを、患者の遺伝子解析を通じて解き明かそうというプロジェクトが始まった。人口100万人当たりの死者は米英で300~500人なのに対し、日本では約6人で大きな差がある。研究グループはこの差が生活様式や医療格差だけでは説明できないと考え、人種ごとに異なる遺伝子によって免疫応答に違いが生じているとの仮説を立て、ゲノム解析で確かめることにした。重症化因子が判明すれば、今後のワクチン開発に生かせるという。東大や阪大、京大など7大学の研究者と研究機関などが参加。日本医療研究開発機構(AMED)から研究資金を得た。国内の約40の医療機関と連携、無症状から重症者まで、少なくとも600人の血液を調べ、9月までに報告をまとめる。慶応大の金井隆典教授が研究責任者を務める。特に注目しているのが、免疫反応をつかさどる司令塔の役割を果たすHLA(ヒト白血球抗原)。これを重症患者と無症状患者とで比較し、重症患者に特有の遺伝子を見つける。欧米でも進む同種の解析結果と照合すれば、日本人の死者数が少ない原因の解明にもつながるとしている。遺伝子解析が専門で東京医科歯科大特命教授の宮野悟・同大M&Dデータ科学センター長は「ウイルスの遺伝子解析だけでは『半分』しか調べたことにならない。宿主である人間の遺伝子も解析することでワクチン開発を補完できる」と話す。新型コロナウイルス感染症への抵抗性に関わる遺伝子が見つかれば、健康な時から血液検査でリスクを判定したり、ワクチンや治療薬の開発に貢献したりできるという。遺伝子と感染症には密接な関係があり、エイズウイルスに耐性を持つ遺伝子変異や、インフルエンザや肺炎に対して免疫が働かなくなる遺伝子病が見つかっている。かつてのシルクロード周辺に住む民族がかかりやすいベーチェット病など、遺伝子の違いによって、特定の病気になりやすい民族があることも知られている。

*7-3:https://digital.asahi.com/articles/ASN6V5CY7N6TUCLV00V.html (朝日新聞 2020年6月29日) BCG接種? 交差免疫? 日本のコロナ死者なぜ少ない
 新型コロナウイルス感染症が世界に広がる中、日本を含むアジア地域(中東を除く)の人口当たり死者数は欧米に比べ非常に少なく、驚きを持って受け止められている。世界中の研究者が原因を注目しているが、生活習慣や文化、医療体制の差だけでは最大100倍の差は説明しにくく、獲得した免疫の強さなど、根本的な違いがあるという見方が強くなっている。
●「世界の研究者が困惑」
 人口100万人当たりの死者数は、800人を超すベルギーを筆頭に欧米の先進国が上位に並び、中南米も100人を超す。一方、日本の7・7人などアジアは10人以下が多い。5月28日付の米紙ワシントン・ポストはこの現象を「新型コロナのミステリーの一つ」と紹介。特に世界有数の高齢社会で、検査数が少なく、外出自粛という欧米に比べて緩やかな対策で死者数を抑え込んだ日本に「世界の研究者が困惑している」と伝えた。背景に何があるのか。まず指摘されるのは生活習慣や文化の違いだ。花粉症が広がり、感染拡大前からマスクを着用する習慣は根付いていた。「病人の証し」としてマスクを避け、義務づけなければ着用が進まなかった欧米各国とは異なる。感染防止に効果がある手洗いをする習慣も身についている。海外の病院で、ウイルスが靴に貼り付いて移動しているという研究結果もあり、室内で靴を脱ぐ文化が感染拡大を抑えたという見方もある。ハグやキスなど体の接触を伴うあいさつが少ないのも、接触感染、飛沫(ひまつ)感染を抑えた。またロックダウン(都市封鎖)など強権的な対策を採らなくても、補償なしの自粛要請だけで休業し外出を控える「従順な国民性」がプラスに働いたという指摘もある。「きれい好き」「衛生、栄養状態が全般的によい」だけでは答えにはならない。過密都市を抱え衛生状態が良くないバングラデシュやインドと日本は人口比死者数はほぼ同じだ。
●遺伝子から違いを探る
 「生活習慣や文化の違いが有利に働いた面はあるが、2けたの差はもっと根本的な違いがなければ説明できない。ポイントはヒトが持つ遺伝子では」と話すのは慶応大学の金井隆典教授。遺伝子によって免疫反応に違いが生じているとの仮説を立て、7大学が共同研究中だ。重症、中軽症、無症状各200人の感染者の血液を集め、全ゲノムを解析して9月までに報告をまとめる。特に注目しているのが、免疫反応をつかさどるHLA(ヒト白血球抗原)で、重症患者と無症状患者とで比べ、重症患者特有の遺伝子を見つける。欧米でも同種の解析が進んでおり、照合すれば、東アジアで死者が少ない原因の解明につながる可能性がある。にわかに注目を集めたのが結核の予防ワクチンBCGだ。世界で比較すると接種している国はしていない国より死者数が少ない傾向がある。藤田医科大学の宮川剛教授はBCGと結核に注目。結核蔓延(まんえん)国は接種国より一段と死者数が少ない。さらに平均寿命や高齢化率、人口密度、肥満率、病床数、喫煙率など結果に影響を与える恐れがある因子を除いて解析しても、接種国の死亡率が低い傾向は変わらなかった。宮川教授は「BCGと感染者数や死者数の間に強い相関関係があることを示すだけで、因果関係があることを示すデータではない」と語る。イスラエルの研究チームが5月にBCGの効果に否定的な研究結果を発表したが、宮川教授は「接種率についての事実関係の誤りがあるなど問題が多い」と指摘する。一方で、オーストラリア、ニュージーランドは接種していないのに人口比死者は少なく、BCG仮説だけでは説明できない。
●注目の「交差免疫」説
 交差免疫説も注目の的だ。過去に似たウイルスに感染して出来た免疫が、新型コロナも排除する仕組みのこと。東京大学の児玉龍彦名誉教授が都内の感染者の血液を調べたところ、すでに部分的な免疫も持っているとみられる人が多数確認された。「風邪を引き起こす一般的なコロナウイルスと新型コロナは、塩基配列のほぼ半分が同じ。コロナウイルスは絶えず進化し、日本にも流入している。そのため新型コロナへの抵抗力を持っている人が一定数いて、重症化率の抑制につながっているのではないか」という。米ラホイヤ免疫研究所が、感染拡大前に採取した血液を調べた研究で、約半数から新型コロナを認識する免疫細胞が検出された。これも、新型コロナに似たウイルスがすでに存在し、交差免疫を起こしたことを示している。免疫学の第一人者である大阪大学免疫学フロンティア研究センターの宮坂昌之招聘(しょうへい)教授はこう分析する。①BCGは「訓練免疫」という仕組みで人体に備わっている自然免疫を活性化させ、重症化抑制に寄与している可能性がある②交差免疫も働いているが、重症化を抑える貢献度の大きさは正確には分かっていない③遺伝子の差異も因子の一つだが、同じアジア人でも住む場所によって重症化する割合は異なり、決定要因とは思えない④アジアの方が肥満や生活習慣病の程度が欧米より低く、これも重症者の数を抑え込む因子の一つだろう。「一つが決定的に重要というより、交差免疫、BCG、遺伝子などの因子が相互補完的に働き、重症化率を大きく押し下げている」
※ 人口100万人当たり死者数の出典は、https://web.sapmed.ac.jp/canmol/coronavirus/death.html 札幌医科大学医学部 附属フロンティア医学研究所 ゲノム医科学部門(畑川剛毅)

*8-1:https://digital.asahi.com/articles/ASN7K4RKKN7KUTIL01L.html?iref=comtop_8_01(朝日新聞 2020年7月17日)東京都の感染者、最多の293人 「これからも増える」
 東京都内で17日、新たに新型コロナウイルスの感染者が293人確認されたことがわかった。小池百合子知事が同日、報道陣に対し、明らかにした。16日の286人を上回り、過去最多を2日連続で更新した。都内の感染者は9日連続で100人超となった。都が感染者数を集計して発表するまでには3日ほどかかる。14日の検査件数は過去最多だった13日の約4700件に続き、4千件ほどと高い水準を維持。都幹部は「検査を積極的にしているので、これからも感染者数は上がり続けるだろう」と見通しを語っていた。感染者数の急増を受け、都は15日、感染状況に関する4段階評価の警戒度を最も深刻な「感染が拡大していると思われる」に引き上げていた。7月は20~30代の若い世代の感染が約7割を占めているが、ここ1週間では10歳未満や重症化しやすい60歳以上にも感染の幅が広がっている。感染経路も施設や同居の家族、職場、劇場、会食など多岐にわたっている。

*8-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200717&ng=DGKKZO61617330W0A710C2MM8000 (日経新聞 2020.7.17) GoTo 東京発着除外 新型コロナ急増、全国一律から転換
 赤羽一嘉国土交通相は16日、国内旅行の需要喚起策「Go To トラベル」事業について「東京を目的とする旅行、東京居住者の旅行を対象から外す」と述べた。東京都で新型コロナウイルスへの感染を確認された人が急増したためだ。22日に全国一斉に始める予定だったのを改めた。安倍晋三首相と赤羽氏らが16日に首相官邸で協議して判断した。首相は記者団に「現下の感染状況を踏まえてそういう判断になった」と語った。都内の感染拡大を受け、各地の首長から全国一斉の開始などに反対する声が上がっていた。同事業は新型コロナによって大きく落ち込んだ旅行需要を回復させる目的で、22日以降に始まる国内旅行を対象に代金の半額を補助する。1人あたり1泊2万円を上限とし、補助の7割は旅行代金の割引、3割は旅行先で使える地域共通クーポン(9月以降)とする。東京以外に住む人の東京以外への旅行については、予定通り22日以降の旅行分から補助する考えだ。政府は16日、新型コロナの専門家会議に代わって設置した分科会で説明した。西村康稔経済財政・再生相は分科会後の記者会見で「東京を対象外とすることで了解をいただいた」と述べた。東京だけ除外した理由としては、直近1週間の累積陽性者数が1216人となり、隣接県とは1桁違うことを挙げた。国交省の旅行・観光消費動向調査によると、2019年に東京を訪れた国内居住者は約9千万人に達した。消費額は約1.8兆円で、千葉県や大阪府がそれぞれ1兆円程度だったのを上回った。事業に参加する宿泊事業者に対しては、同省は感染拡大を防ぐ対策として、宿泊客の検温や保健所との連絡体制づくりを求める。浴場や飲食などの共用施設は人数や利用時間を制限してもらう。

*8-3:https://www.jiji.com/jc/article?k=2020071700550&g=soc (時事 2020.7.17) 無症状も唾液診断可 PCR・抗原検査拡充―厚労省
 新型コロナウイルスへの感染の有無を調べるPCR検査と抗原検査について、厚生労働省は17日、唾液を使った診断を無症状の場合でも認めると発表した。空港での検疫や感染者の濃厚接触者らが対象。東京都などで感染者増が続く中、検査体制の拡充を目指す。

*9:https://www.tokyo-np.co.jp/article/43279 (東京新聞 2020年7月18日) コロナ禍の「骨太方針」、財政再建棚上げ 膨らむ借金、将来のツケに
 安倍政権が17日、2021年度予算編成の指針となる「骨太の方針」と、中長期的な経済成長を目指す「成長戦略」を閣議決定した。新型コロナウイルス対策で政府の借金に当たる国債を大量に発行する一方、今回は骨太の方針から例年盛り込んでいる財政再建目標を削除し、成長戦略でも大々的に掲げていた20年ごろの名目国内総生産(GDP)600兆円達成目標に触れなかった。実現が難しくなると、十分な説明もせず「なかったこと」にするような対応が目立つ。
◆消えた「25年度黒字化目標」
 「今は財政のことを考えている場合ではない」。西村康稔経済再生担当相は17日の記者会見でこう述べ、骨太の方針に具体的な財政健全化目標を掲げなかったことを正当化した。従来の骨太では、名目国内総生産(GDP)に対する国と地方の借金残高の比率を安定的に引き下げるとともに、借金に頼らずにまかなう政策経費の収支「プライマリーバランス(PB)」を25年度に黒字化する目標を掲げていた。西村氏は今回も「中長期的に持続可能な財政を実現すると書いてある」と強弁するが、事実上、棚上げにしているのは明らかだ。
◆コロナ長期化でさらに悪化も
 ただでさえ深刻な財政状況は新型コロナの流行で一層悪化している。みずほ証券の末広徹氏によると、GDPに対する債務残高は20年度、政府見通しの189%から225%に急伸し、PB赤字も約15兆円から約64兆円に拡大するとみられる。しかも、この試算は今後予想される税収減を反映しておらず、収束に時間がかかれば再び補正予算を組む必要に迫られ、借金が膨らむ可能性もある。法政大の小黒一正教授(財政学)は政府の対応について「財政再建の目標は明確に書くべきだった。なし崩し的に規律が失われて予算の無駄遣いにつながり、将来世代にツケが回りかねない」と強調した。
◆成長戦略も目標触れず
 新型コロナの陰に隠れ、記述がなくなったのは、これまでの成長戦略の目玉だった20年ごろの名目GDP600兆円目標も同じだ。「戦後最大の名目GDP600兆円の実現を目指す」という一節が登場したのは、第2次安倍政権が16年につくった成長戦略。19年でも554兆円にとどまり、達成は難しい情勢だったが、新型コロナを受けて策定された今回は「名目GDP」という言葉すら出てこない。多くの内閣が掲げてきた名目GDP成長率を平均3%程度に高める目標についても、10~19年の平均は1・25%にとどまる。安倍政権は十分な説明もないまま、目指す対象を600兆円という「金額」に切り替えたが、成長率に関する目標設定の妥当性や実現に向けた課題などを検討した形跡はない。第1生命経済研究所の熊野英生首席エコノミストは「成長戦略は政権の理想像を示す側面があるため高い目標になるのは仕方ないが、実現に向けた検証や努力が十分とは言い難く、形骸化して実効性が疑われる傾向がある」と指摘。「特にコロナ後の社会変容を目指すなら、国民に信用してついてきてもらう必要があり、政策を検証し反省を生かすプロセスが必要だ」と語った。

<外国人労働力の必要性と外国人差別の撤廃>
PS(2020年7月19日追加):*10-1のように、新型コロナの影響で、2019年に農業分野で3万人を突破した外国人技能実習生が、*10-2のように、来日できなくなったり、失業した人が他の仕事につけなかったりして、農業は外国人に支えられている現実があぶり出されたそうだ。そのため、形だけ“国際貢献”としている技能実習制度を廃止し、安価な期限付き労働力ではない「農業の後継者」としても希望の持てる迎え入れ方をすべきだ。これは、食料だけでなく多くの財・サービスを国内生産し、マスクや防護服すら他国に頼らなければ手に入らない国ではなくするために、必要不可欠なことである。そのためには、経済発展したアジア諸国の労働者が日本を選ばなくなった理由である ①外国人の労働条件の悪さ ②外国人差別を前提とした不利益の強要 は、必ず変えなければならない。
 さらに、*10-3のように、世界の難民が約7950万人(昨年末時点)に上り、コロナ対策もできない場所で暮らすことを余儀なくされているのに、日本は資金拠出程度でお茶を濁しているが、もともと普通に暮らしていたのに移動を強いられた難民を受け入れ、農林水産業・製造業・サービス業などの必要な分野で募集して家族で日本に来られるようにすれば、人手不足が解消され、国内生産を進めることもできる。もちろん、日本国内では、日本国憲法はじめ日本の法律が適用されることを前提としてである。



(図の説明:何歳まで元気に働けるかは人によって全く異なるが、左図のように、日本が高齢化しているのは間違いなく、中央の図のように、出生数も減っているため、このままでは支える側の労働力が減るのも確かだ。実際、右図のように、農業者の平均年齢は2010年時点で65.8歳であるため、それから10年後の現在は70歳以上だろう。そのため、労働力として外国人を招きいれることは必要であり、《長くは書かないが》工夫すればそれは容易だ)

*10-1:https://www.agrinews.co.jp/p51354.html (日本農業新聞 2020年7月15日) [農と食のこれから 人手不足の産地 1][解説] 外国人労働力頼みの日本 問われる自給の未来
 新型コロナウイルス禍は、農業が外国人に支えられている現実をあぶり出した。国際貢献と国際協力を目的に1993年導入された外国人技能実習制度は、農水省によると、2019年に農業分野で3万人を突破し、雇い入れ農家も10年間で2倍近くに増えた。技能実習生の在留資格は「研修」であり、出稼ぎ目的の就労ではないとの前提がある。このため、都道府県の最低賃金水準にある実習生がほとんどで、多くは中国やベトナム、フィリピン、カンボジアといったアジアの発展途上国からだ。一方、アジア各国の経済成長に伴い、人集めは年々厳しさを増している。ある監理団体の責任者は「日本で実習生として働く魅力が薄れ、どの国も都市部では人が集まらない。人探しは地方から地方へ行き詰まりを見せている」と語った。政府は2年前、技能実習制度に屋上屋を架す形で、「就労」目的を明確にした特定技能制度を新設した。農業や介護など14分野で働く外国人を対象に、試験などを課すことで最大5年の就労を可能にした。だが、全分野を通じた新制度利用者は「5年で34万人」の政府目標の1%。長期滞在の条件となる通年雇用は、農業分野では群馬県嬬恋村や北海道などの雪国では困難で、技能実習制度と同様に単年ごとの人探しと信頼関係の構築が迫られる。人手不足に悩む農家の多くが、同一人物の長期雇用を強く望み、農業の現実を反映した制度作りを求めている。外国人に頼れなくなった時、日本の農と食をどう守るのか。頼り続けるのであれば、安価な期限付き労働力でなく、「農業の後継者」として迎え入れる施策も必要な時代が来る。コロナ禍で問われたのは食料自給の未来図だ。

*10-2:https://www.agrinews.co.jp/p51349.html (日本農業新聞 2020年7月15日) [農と食のこれから 人手不足の産地] 「働かせて」悲痛な叫び
 新型コロナウイルス禍に伴う政府の入国規制で、外国人技能実習生221人が来日できなくなった群馬県嬬恋村。嬬恋キャベツ振興事業協同組合事務局長の橋詰元良さん(57)は、これを補完するための人探しに追われた一方で、仕事を失った人々の悲痛な叫びを聞いた。「工場から派遣(社員)契約を切られた。会社の寮から出ていかなくてはならず、住む所もない。すぐにでも嬬恋で働きたい」。4月中旬、切羽詰まった若い男性の声で協同組合の事務所にかかってきた電話は大阪の市外局番だった。
●コロナ禍で求職相次ぐ
 人手不足を解消するため、「商系」農家でつくる協同組合や「系統」農家のJA嬬恋村、村観光協会、村商工会が「農家の仕事を紹介します」と記したちらしを作ったのは、東京都など7都府県で緊急事態宣言が出された4月7日だった。県境をまたぐ移動が控えられ、村内のホテルや旅館の休業状態が決定的となり、仕事を休まざるを得ない従業員らに農家で働いてもらおうと考えたのだ。ところが、農家の紹介が「職業あっせん」と解釈されれば職業安定法に抵触しかねないとの指摘があった。調べると、協同組合の定款を変更すれば限定的にできると分かったが、手続きに時間も必要だった。橋詰さんは東京の専門家に問い合わせ、「農家支援なら問題ない」との見解を得て、ちらしの問い合わせ先を協同組合にした。同村では感染者ゼロが続く。村外から不特定多数が来ればウイルスが持ち込まれる恐れがあったため、ちらしの配布先を村内に限った。ところが電話は北海道から九州まで全国からかかってきた。ちらしを見た村民が善意からインターネット交流サイト(SNS)に投稿し、拡散され、コロナ禍で職を失った人々の目に留まったのだ。
●県外の電話鳴りやまず
 岡山に住む派遣社員の30代シングルマザーは「契約を切られてお金がない。育児があるので土日だけでも農家で働かせて」と望んだ。岩手のタクシー運転手は「乗客がおらず、収入がない。実家が農家だったから心得はある」と願った。受話器を置けば電話が鳴り、トイレにも立てなかった。橋詰さんは勤務時間を終えた後、携帯電話に転送して自宅でも問い合わせに応じた。「1万人を超える派遣社員らが契約を解除されたというニュースを見たが、一人一人の状況がこれほど深刻だとは想像できなかった」。橋詰さんは、県外の求職者には「全国の農家が今、人手不足で困っている。お住まいの近くで見つかるかもしれない」と励まし、農業求人サイトなどを伝えた。5月の連休を過ぎた頃、休業状態となった村内のホテル従業員らの申し出などから、人手不足は解消に向かい始めた。その対応に追われながら、橋詰さんは、幾多の人が「働きたい」と望んだ農業の意義を考え、求人と求職がかみ合わなかったコロナ禍の皮肉を呪い、電話をかけてきた派遣社員たちがどこかで働けていることを祈った。

*10-3:https://digital.asahi.com/articles/ASN6N5W9TN6NUHBI01F.html (朝日新聞 2020年6月20日) 世界の難民など、過去最多8千万人 「コロナ対策重要」
 20日の「世界難民の日」に合わせ、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)は紛争や迫害で家を追われたり、移動を強制されたりした人々が約7950万人(昨年末時点)に上り、過去最多と発表した。グランディ国連難民高等弁務官は19日、世界保健機関(WHO)で会見し、新型コロナウイルスの世界的流行を受けて、難民や国内避難民も「各国の保健対策の対象にすべきだ」と訴えた。UNHCRによると、他国に逃れた難民は約2600万人。出身国で最も多いのは内戦が続く中東シリアで、約660万人だった。シリア難民を最も多く受け入れていたのは北隣のトルコの約360万人だった。また、国内避難民は約4570万人、難民申請者は約420万人だった。移動を強いられた人々の総計約7950万人は、2010年末に比べると倍増しており、18年末に比べても約1千万人の大幅増だった。グランディ氏は会見で、新型コロナ対策で難民や国内避難民が対象外にされれば、地域全体の感染リスクを減らせないと強調。社会・経済の回復策に難民や国内避難民を含めることが重要だと訴えた。

| 資源・エネルギー::2017.1~ | 09:30 PM | comments (x) | trackback (x) |
2020.6.23~28 女性がリーダーになるための妨げは何か? (2020年6月29、30日、7月2、3、4、5日追加)

2019.12.18産経BZ   Goo                 2018.10.10朝日新聞

(図の説明:1番左の図のように、2019年の男女格差報告で、日本は同じ儒教国である中国《106位》・韓国《108位》より低い121位で、仏教国インド《112位》・イスラム教国のアラブ首長国連邦《120位》よりも下だった。また、左から2番目の図のように、他国は努力しているのに日本は形だけの対応をしているため、順位が毎年下がっている。それでは何が低いのかといえば、右から2番目の図のように、政治が世界の中でも低く、経済はまあ世界並の低さだ。教育は、世界の中でもよいとされるが、実際には1番右の図のように、女性は短大や大学でも職業に結び付きにくい文学・芸術への進学が多いため、政治・経済への参画が不利になる。しかし、これらは、現在の国民全体の平均的な意識である“常識”を現していると思う)

(1)国民に根付いている女性蔑視の偏見と
             女性蔑視発言をする人がよく使う“言論の自由”“表現の自由”
 テレビ番組での言動を巡り、SNS上で匿名の誹謗中傷をされていた女子プロレスラーが、*1-1・*1-2・*1-3のように自殺して亡くなった。亡くならなければクローズアップされないのも問題だが、SNS上の匿名での卑怯な発信は他人の人生や職業人生を狂わせたり終わらせたりする効果があるため、発信者が“言論の自由”や“表現の自由”として罪の意識もなく発信していたとしても、やはり人権侵害である。

 SNS上の匿名での発信については、プロバイダー責任制限法により、被害者が損害賠償を求める場合に発信者情報の開示を事業者に請求できるようにはなったが、「権利の侵害が明確でない(この判断にも女性蔑視や企業側の論理が多く存在する)」などとして開示されないことが多い上、裁判に訴えると費用や時間もかかりすぎるため被害者が泣き寝入りせざるを得ない局面が多い。さらに、弁護士や裁判官などの司法関係者も潜在的女性蔑視から自由ではないため、権利の侵害があってもそれを過小に評価したり、権利の侵害による逸失利益自体を過小評価したりして、女性に不利な判決が出やすいのである。ちなみに、交通事故で死亡した男児と女児の間でも、逸失利益とされる金額は女児の方が少ないそうだ。

 そのため、高市総務相が、スムーズな情報開示で悪意ある投稿を抑止するために発信者の特定を容易にする制度改正の検討を本格化させるのはよいことだ。また、私は、政治家として、“言論の自由” “表現の自由”と称する女性蔑視に満ちた嘘のキャンペーンを張られたことがあり、その被害は今でも続いているため、“正当な批判”と称する偏見に満ちた“表現”に対して、政治家も発信者の開示を求められるようにするのが公正だと考える。

 つまり、“言論の自由”とは、嘘でも何でもいいから言いがかりをつけて政治家を失脚させる権利ではなく、権力に抗することになるかもしれない本物の主張を言うことができる権利であるため、対象が政治家であっても言いがかりまで“言論の自由”として護ってはならない。また、メディアが使う“表現の自由”も“常識”と呼ばれる国民の心の底に潜む女性蔑視を含んでいたり、利用したりしており、人権侵害に繋がっていることが多い。そして、日本には、この“言論の自由” “表現の自由”をわざと誤って使う人も多いため、人権侵害や差別を横行させ、民主主義が正常に機能しない状態になっているのである。

(2)女性差別の多い日本の“常識”
1)女性の政治参画への遅れ
 ジェンダーギャップ(男女格差)の大きさを国別に順位付けした世界経済フォーラム(WEF)の2019年の報告書で、*2-1-1のように、日本は153カ国中121位で過去最低だったそうだ。日本は衆院議員は女性が10.1%で、閣僚は9月の内閣改造前まで19人中1人の5.3%で、女性の政治参画の停滞が順位を下げる要因になった。

 政治への女性進出が遅れているため、男女の候補者を均等にするよう政党に求める候補者男女均等法が施行されて初めての国政選挙となった2019年7月の参院選でも自民党の女性候補の割合は15%で、衆議院議員も女性候補を大幅に増やす具体策がないようだが、これは、現職を優先して候補者に立てるため、現在の男女比がなかなか変わらない上、有権者の意識がかわらなければ女性が候補者となっても当選しにくいからである。

 ただし、空白区の多かった野党は参院選で女性候補者の擁立を進め、立憲民主党候補者の女性比率は45%、国民民主党は36%、共産党は55%だった。確かにジェンダー平等は国際的な潮流なのだが、日本には根底に戦前からの男尊女卑思想があり、この女性差別と偏見が“常識”や“良識”という形で有権者の意識も支配しているために、何人の有権者が投票したかを競う民主主義では女性が当選しにくいわけである。

 日本と同じく東アジアに位置して儒教・仏教の男尊女卑思想が広がっている韓国は、2019年に108位となり、初めて121位の日本を抜いた。これには、政治分野(日本144位、韓国79位)でフェミニスト大統領を名乗る文在寅大統領が2017年の就任時に女性を一気に5人閣僚に起用し、任期終了(2022年)までに「男女半々」にすると約束していることが大きいそうだ。このように、諸外国は多様性を尊重して女性にチャンスを与えようと具体的なしくみを整えつつあるそうだが、同じ東アジアに位置する中国の全人代を見ると、一般議員にも女性が著しく少なく、舞台の上のお偉方は全部男性のようだった。

 列国議会同盟(IPU)とUNウィメンは、2020年3月10日、*2-1-2のように、「今年1月1日時点で閣僚ポストに女性が占める割合は21.3%で過去最高だったが、15.8%の日本は113位で、先進7カ国(G7)では最下位だった」という女性の政治参画に関する報告を発表した。また、国家元首または行政の長を女性が務める国は20カ国あり、そのうち4カ国はスウェーデンを除く北欧諸国で、議会で議長に女性が占める割合は20.5%あり、これは25年前と比較すれば倍増だそうだ。

2)経済分野における男女格差解消の遅れ
 世界経済フォーラムが2019年12月に発表した各国のジェンダーギャップ(男女格差)で、日本は153カ国中121位と過去最低であったことを、*2-2-1のように、共産党の大門氏が取り上げ、「男女格差の原因はどこにあるのか。日本は女性の閣僚と国会議員の比率があまりにも低い。経済でも男女の所得格差が大きい」と、安倍首相に見解を求められたそうだ。

 それに対し、安倍首相は「我が国の順位が低いのは、経済分野の女性管理職の割合が低いことなどが主な要因だ」と指摘し、女性活躍推進法の整備や女性の就業人口増などの格差解消に向けた安倍内閣の実績を強調されたが、質問にあった国会議員や閣僚の女性比率の低さには言及されなかったそうだ。安倍首相は、確かに女性活躍推進法の整備や女性の就業人口増などに尽力されたのだが、女性の就業人口の増加は、派遣やパートなどの補完的非正規労働者の増加が多かったように見える。

 派遣やパートなどの補完的非正規労働者は、男女雇用機会均等法で護られないため、男女の別なく採用・研修・配置・昇進させて女性管理職や女性役員にする義務がなく、企業は女性を補助的な立場のままで働かせることができる。この結果、*2-2-2のように、女性役員ゼロや女性管理職割合の少ない会社が多く存在するのだ。

 また、朝日新聞が国内主要企業のうち「女性役員ゼロ」の14社に取材したところ、「経営トップより女性本人の意識改革が必要だ」と考えている企業が多かったそうだが、日本企業のリーダー層に女性が少ない理由は、女性の能力を信じてリーダー候補として研修や配置を行わないため、昇進意欲のある女性はつぶされ、その結果として「管理職経験や役員適性のある役員候補の女性がいない」か「いても、いないということにされている」のだと思われる。

3)この無意識の差別や偏見が存在する理由は何か?
 21世紀職業財団が、2020年6月22日、*2-2-3のように、「『重要な仕事は男性が担当することが多い』と思っている人が総合職の正社員で男女とも過半数に上る」という調査結果を公表したそうだが、これは、「過半数の人が重要な仕事は男性が担当した方がよい」と思っているわけではなく、「現在、重要な仕事は男性が担当することが多い」と過半数の人が認識しているということではないかと思う。

 しかし、性別に基づく無意識の偏見が、仕事を割り振ったり能力評価をしたりする立場の経営者・管理職だけでなく、平社員や家庭に至るまで根強く残っており、これが職場における女性の活躍を妨げているのは事実だ。

 では、どうして女性に対し、無意識の偏見を持っているのかといえば、儒教国の女性たちは、*2-3-1のように、儒教によって“良妻”か“悪妻”かの二者択一の生を生きることを強制され、殆どの女性は男性が作り上げた“良妻”としての「婦道」を守ろうとし、その生き方に疑問を抱いて抵抗した人は“悪女”として厳しく罰せられ、“悪女”が“良妻”の価値を高めるために利用されてきたからだそうだ。言われてみれば、確かに日本にもそういうところがある。また、儒教の中の『礼記』は、女性に受動的に行動することを強要する「三従の道」などを示している。

 さらに仏教も、*2-3-2のように、「測り知れないほどの理知を持っていても、女性は完全な悟りの境地を得がたい」「女性は女性のままでは仏になれない」「女性のままでは救われない」などと説いており、ひどい女性蔑視の思想である。

 そのため、第二次世界大戦後、日本国憲法24条で男女平等が定められ、民法でおおかた男女を区別しなくなっても、(理由は多々あるものの)根底にある人々の意識が十分に変わっていないというのが現実のようだ。

(3)出生率の低下を女性の責任にした日本の愚行



(図の説明:左図のように、合計特殊出生率は1975年以降ずっと2.0以下である。しかし、中央の図のように、人口が減り始めたのは2008年からであり、この間は、人口置換水準が2.0以下だったことを意味する。しかし、右図のように、日本の人口ピラミッドは第二次世界大戦後のベビーブームと第二次ベビーブームで二ヵ所の突起があるため、これが次第になくなるのは必然である。また、長寿命化に伴って生産年齢人口の定義を変えなければ、短い労働期間で長い老後の分まで貯蓄しなければならず、これは無理である)

 「母親に育児を押し付け、保育園・学童保育・病児保育などの整備を怠ったため、仕事を大切にする女性ほどDINKSや独身を選ぶ人が増えて少子化した」と1995年頃に最初に言ったのは私で、それをきっかけに男女雇用機会均等法が改正され、雇用における女性差別禁止が義務になったと同時に、育児・介護休業制度も入った。

 しかし、これは、「少子化自体が悪いことだから、産めよ、増やせよ」とか「産まない女性は、怠慢だ」などと言ったのではなく、「仕事と子育てを両立できる環境がなければ、仕事を大切にする人ほど子育てはできない」と言ったのである。

 が、何故か、*3-1・*3-2などいろいろな場所で、「①昨年の合計特殊出生率は1.36で、前年より0.06ポイント下落した」「②人口置換水準(人口維持に必要とされる合計特殊出生率)は2.07だ」「③死亡数は戦後最多の138万人で、自然減が52万人の過去最大を記録した」「④政府は少子化社会対策大綱の見直しで、希望出生率1.8を2025年までの目標とした」など、少子化自体が問題であるかのように書かれている。

 しかし、①は、教育を受け、仕事をして稼ぐことができ、キャリアを積んで昇進したい女性が増える中で、安心して子育てを外部化できる状態になければ出生率が下がるのは当然だ。さらに、教育費も高いため、女性が子育てのために仕事を辞めることになれば、子育てはダブルパンチの経済負担となり、出産祝い金程度では到底カバーできない大きな損失になる。

 また、②も、日本では1975年以降の合計特殊出生率はずっと2以下であるにもかかわらず、日本の人口が減少し始めたのは2008年からで、これは寿命が延びて2世代ではなく3世代以上が同時に生きられるようになったことから当然であり、人口置換水準は2以下だったのだ。そして、「現在は、人口置換水準が2.07」という主張についても、Evidenceがあるわけではない。

 さらに、③のように、死亡数が最多になって自然減が出始めることは、第二次世界大戦後に出生率が急激に上がってできた団塊の世代が死亡し始める時期であることから当然だ。これからしばらくは、医学の進歩による乳児死亡率の低下・少子化・長寿命化によって高齢化率も上昇するが、その条件の下で年金制度や定年年齢を考えておくべきだったし、日本の国土における適正人口も考慮すべきなのである。

 しかし、*3-3のように、まだまだ不十分ではあるものの、最近は病児保育施設ができているのはよいことだ。これは必要なインフラであるため、黒字経営か赤字経営かにかかわらず、補助金を使っても維持しなければならない。何故なら、なければ子育てができないからである。

 私は、少子化を問題視しすぎて、子ができない人に1回15万円の支援金を出し、*3-4のような不妊治療を奨励することには賛成しない。何故なら、ダウン症の発生が増えるのは35歳からで、「43歳未満」や「44歳未満」など一応の年齢制限はあるものの母体によくないことは明らかだからだ。また、生まれてくる子も、自然受精なら何億もの精子の中から元気で幸運な1個が卵子と結びつくのでかなりの選別が行われるが、人工授精の場合はこの競争と選別がないのだ。

 つまり、子どもが欲しい人は35歳までか、少なくとも自然妊娠可能な時期までに出産するのが母子のためによく、そのためには出産・育児で休暇をとってもクビにならない程度には、出産までに仕事や生活を安定させておかなければならない。また、そうでなければ、子が生まれても育てることができないのである。

 そのため、④の希望出生率1.8を現実にしたければ、それができる環境を作らなければならないわけである。

(4)女性差別の結果
1)家計を考慮しない男性が作った消費動向を顧みない経済政策と消費税の導入
 私は、1989年の消費税導入の議論当初から、消費税は消費を抑制する税制だと感じていた。そして、国内の消費に支えられて新しい製品を開発しなければならない時代に国内消費を抑制すれば、国内供給も減り、輸出で稼がない限りは景気が悪くなるに違いないと思ったが、税制や経済に詳しいと自負する多くの男性たちは、自分は生産者であって消費者ではないから自動車と家以外は消費税がかかってもよいと思っていたらしく、無駄遣いはそのままにしつつ、社会保障を人質にして消費税を上げることに余念がなかった。

 ちなみに、消費税導入にあたって日本が手本にしたとされる欧州は、企業の売上に対して課税する売上税や企業がつけた付加価値に課税する付加価値税はあるが、消費者に転嫁する消費税はないし、社会保障は消費税で賄わなければならないとしている国もない。

 また、その後の東西冷戦終結・中国の市場開放などにより、賃金の安い国が次々と市場に参入して製品を作り始めたため、既に賃金が上昇した日本で作るよりも、それらの国で作って輸入した方が企業経営上合理的となり、日本企業も海外で生産するようになって現在に至っている。そして、現在のところ、日本で有望な産業は需要地でしか供給できない第三次産業しかなくなったと言わざるを得ないのだ。

 消費税の引き上げは、財務省が主導して行っており、メディアもそれに歩調を合わせているため、それに反対すれば国会議員でも「ポピュリズム」などと揶揄されるため、消費税を引き上げるしか方法がなくなっていたらしく、*4-1のように、教育無償化を目的として2019年10月1日から消費税が10%に引き上げられた。

 そして、当然のことながら、2019年10~12月期の国内総生産(GDP、季節調整値)は、物価変動を除いた実質で前期比1.8%減(年率換算:1.8x4=7.1%減)となった。新型コロナの影響以前でこれなのだが、消費税を増税すれば消費が減るため、企業の設備投資が減るのも当然だ。なお、財布の中身で買えるものが実質であるため、名目GDPの方が景気実感に近いという意見に、私は同意しない。

2)男女平等に機会を与えた方が、全体の福利を増やすこと
 2020年3月8日、*4-2のように、国連の「国際女性デー」記念行事が、ニューヨークの国連本部で行われ、フィンランドのマリン首相(34歳)ら世界の各分野で活躍する女性が「男女平等は女性のためだけでなく、全体の利益になる」と不平等を是正する社会的・経済的な意義を訴えられたそうだ。

 私もこれに賛成で、(4)1)のような「家計を考慮せず、消費動向も顧みず、国民を豊かにする意志のない経済政策」や「消費税導入や税率アップ」が行われるのは、家計を担当したことがなく、観念的に経済を論じることしかできない男性だけで政策を作っているからだと考える。しかし、経済学で男性の経済学者を公に論破できる女性経済学者は、いろいろな理由で、今のところ少ないのが現状だ。

 また、環境活動を引っ張っている人の多くが女性である理由は、女性の方が環境に敏感で、ガソリン車やガソリンエンジンへの郷愁で動くのではなく、クリーンで燃費の安い車を求める合理性があるからだと思う。

3)女性の生き方に中立で公正・公平な税制の必要性
 「少子高齢化で生産年齢人口の割合が減少するため、“高齢者”を支えられない」という論調が目立つが、現在は金融緩和や景気対策なしで雇用が十分にあるわけではなく、生産年齢人口の人でも実は養われている場合が多い。さらに、女性や高齢者にはまっとうな仕事が少ないため、まずは職につきたい人が国の補助なしで職につけるようにしてから少子化を論じるべきである。

 日本で、就職時の女性差別を厳しくして性的役割分担を特に強力に進めるようになったのは、団塊の世代が生産年齢人口に加わり始めた頃で、仕事の方が働き手の数より少なかったため、男性には下駄をはかせ、女性には言いがかりをつけて仕事を譲らせたという経緯がある。

 そのため、それを埋め合わせるかのように、*4-3の「①所得税の配偶者控除」「②年金の3号被保険者」「③企業の扶養手当」など、奥さんに仕事を辞めさせた男性と仕事を辞めた既婚女性を優遇する制度が設けられた。しかし、1982年から公認会計士として外資系Big8(働いているうちに合併してBig4までなった)で働いていた私は、この制度で恩恵を受けることがなかっただけでなく、働く女性に対する強い逆風の中で苦労して稼いで納税したり社会保険料を納めたりした金を原資として①②③の制度を支えさせられて、とても納得できなかった。

 また、パート勤務の女性は、夫の扶養控除や扶養手当の上限を超えないように時間調整して働いているため、所得税改革は必要だったものの、働きたくても男性に仕事を譲らされて職場で男女平等の採用・研修・配置・昇進がかなわなかった女性にも同じ論理を適用するのは酷である。

 そのため、男女雇用機会均等法が義務化されて以降に就職した世代から、イ)所得税は原則として個人単位とするが ロ)本人が望めばフランスと同じN分N乗方式(https://kotobank.jp/word/N%E5%88%86N%E4%B9%97%E6%96%B9%E5%BC%8F-183863 参照)を選択できるようにする(=世帯単位となる) のが、公正・中立・簡素の税の基本に沿った上で、個人を尊重しつつ子育てに必要な資金まで税や社会保険料として取り上げない仕組みだと思う。

 なお、「⑥働いて稼いでもらいたい人に光を当てる」「⑦豊かな人に負担させる」等の恣意的なことをすると、2019年分の所得税法のように複雑な計算をさせた上に、公正・中立・簡素という税の基本から外れるものとなる。

(5)人種や性別による差別をなくすには・・
  
    旭化成          東洋経済            Goo

(図の説明:日本の男女雇用機会均等関係法の歴史は、左図のようになっている。しかし、現在は、右図のように、子育て世代の女性を非正規労働者として女性の労働参加率を上げ安価に使っているため、そのような立場になりたくない女性が著しく少子化し、2005年の合計特殊出生率は1.25まで下がった。また、中央の図のように、日本には、社会保障の整ったスウェーデンにはない著しいM字カーブが存在し、それが少しづつ解消されている状況だ)

1)日本にける男女平等の歴史
 日本における女性差別は、戦後、日本国憲法で両性の平等や職業選択の自由が決められた後も、民間の隅々にまで張り巡らされた女性蔑視を前提とする仕組みによって維持されてきた(http://www.jicl.jp/old/now/jiji/backnumber/1986.html 参照)。

 そのため、1979年に国連で女子差別撤廃条約が成立した後、1985年に日本がこれに批准し、同年に最初の男女雇用機会均等法が制定されて1986年に発効したのが、最初の雇用における男女平等である。しかし、この男女雇用機会均等法は、採用・研修・配置・退職の機会均等などが努力義務とされていたため、発効後も女性を補助職として昇進させない日本企業が多かった。

 そこで、(1995年前後の私の提案で)1997年に男女雇用機会均等法が改正され、採用・研修・配置・退職の機会均等が義務化されたのだが、今度は多くの女性を非正規労働者や派遣労働者として男女雇用機会均等法の対象から外し、今に至っているのである。

 このようにして、女性差別の禁止や各種改革は、敗戦によって制定された日本国憲法や国連女子差別撤廃条約の批准に伴って行われた男女雇用機会均等法制定など、黒船を利用して法律を制定することにより行われたものが多い。しかし、内部の抵抗によって不完全に終わっているため、今後の改善が望まれるわけである。

2)米国における黒人への人種差別
 日本人男性は女性差別には鈍感だが、人種差別には敏感な人が多い。そのため、人種差別の例を出すと、*5-1・*5-2のように、アメリカでは、2020年5月25日に、ミシガン州ミネアポリス警察の警察官が暴行によって46歳の黒人男性ジョージ・フロイドさんを殺害した事件の映像が放映されたのち、Black Lives Matter(黒人の命も重要だ)という運動が起こっている。

 フロイドさんは偽札を使用したとされるが、それが事実か否か、故意か否かもわからないのに暴行を加えて殺害した警官の行動は、アメリカ合衆国の黒人が数百年間に渡って直面してきたリンチや黒人差別そのものだそうだ。また、フロイドさんが偽札を使用したとされる疑惑は、事実の検証や裁判もなく、警官が勝手に人を殺してもよい根拠にはならない。

 しかし、警察も含めたアメリカの司法システムは、軽犯罪から重犯罪まで、同じ罪を犯しても黒人には白人よりもはるかに重い刑罰を課しており、いずれも刑法に則った量刑だが全体の統計を見れば明らかに量刑に人種差別が現れており、人口当たりの受刑者の比率は、ラテン系男性は白人男性の2倍、アフリカ系男性はさらに5倍に上るそうだ。

 アメリカは、1950年代以降に国内で活発化した公民権運動により、1964年に合衆国連邦議会で公民権法成立させ、合衆国内において職場・公共施設・連邦から助成金を得る機関・選挙人登録における差別を禁じ、白人と黒人の分離教育を禁じてハードコアな人種差別は数十年前に撤廃しているが、人種差別自体は社会制度、行政制度などに染み付いた慣習として今も続いており、特に問題なのはSystemic racism, institutional racism (機関的、制度的人種差別)だそうだ。

3)日本にもある人種差別・外国人差別
 日本でも、*5-1のように、警察はじめ司法システムによる差別に基づく暴力は日常的に行われており、日本の場合は、「人種」ではなく「外国人」や「民族」というくくりの差別だ。確かに、入管は入所者の人権を無視した肉体的精神的暴力を日常的に振るっており、メディアも「外国人が増えて犯罪が増えた」などという偏見に満ちた報道を平気で行っている。

4)では、どうすればよいのか?
 日本における人種差別・外国人差別は、日本人男性を優遇する点で日本人女性に対する差別と同根だ。そのため、まず、国連で差別撤廃条約を作り、それに批准する国は、国内で公民権法を作って人権を護り、あらゆる差別を禁止するようにすればよいと思う。

(参考資料)
<女性蔑視発言は“言論の自由”“表現の自由”に入らないこと>
*1-1:https://www.shinmai.co.jp/news/nagano/20200527/KT200526ETI090005000.php (信濃毎日新聞 2020.5.27) ネット中傷 幅広い観点から抑止策を
 痛ましい出来事である。22歳の女子プロレスラーが亡くなった。出演したテレビ番組の言動を巡ってSNS上で誹謗(ひぼう)中傷の集中砲火を浴びていた。遺書のようなメモが見つかっており、自殺とみられる。死を前にした「愛されたかった人生でした」とのツイートに胸が痛む。心無い言葉を個人に浴びせかけるネットの暴力がなくならない。投稿している人は匿名をいいことに日頃の鬱憤(うっぷん)を晴らしているだけの気軽さかもしれない。それが一人に集中した時、有名人であれ、一般人であれ、痛みや疎外感は極めて大きい。特に若い世代は社会との「つながり」の相当部分をネットで築いている。命を絶つほどの苦しみを覚える危険がある。発信者には罪の意識はないのだろうか。誰も助けられなかったのだろうか。日本は海外に比べ、SNSの匿名利用が突出して多いとされている。匿名の投稿が言葉の暴力や人権侵害の温床となっている側面は否定できない。プロバイダー責任制限法では、被害者が損害賠償を求める上で発信者情報の開示を事業者に請求できるが、「権利侵害が明確でない」と開示されないことも多い。訴訟は被害者の負担も大きい。高市早苗総務相は悪意ある投稿を抑止するため、発信者の特定を容易にする制度改正の検討を本格化させる考えだ。確かにスムーズな情報開示は暴力の抑止を期待できる。半面、社会に与える副作用にも注意深く目を向けねばならない。例えば、政治家や利害関係者が正当な批判に対しても安易に発信者情報の開示を求め、圧力をかける心配はないか。言論全体を萎縮させる懸念も考えられる。表現の自由とのバランスが絡む。短兵急な対応でなく、幅広い観点から抑止策の検討を重ねたい。ネット事業者は人権侵害を放置してはならない。出演したのは、若い男女の共同生活を記録する「リアリティー番組」だった。「台本のないドラマ」として近年人気がある。視聴者は恋愛を中心とした人間関係の展開に一喜一憂し、知人の出来事のように共感する。番組内の言動から出演者のSNSが炎上することは過去にもあったはずだ。テレビ局側も、出演者の保護などについて省みるべき点があるのではないか。自由かつ安全で、責任ある発言が交わされるネット空間を実現したい。待ったなしの問題だ。

*1-2:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO59930380T00C20A6SHF000/ (日経新聞社説 2020/6/3) ネット中傷の撲滅へまず民間が動こう
 SNS(交流サイト)で誹謗(ひぼう)中傷を受けていたプロレスラーの木村花さん(22)が亡くなった。ネットはいじめの道具ではない。同じ悲劇を繰り返さず、政府の過度の介入を避けるためにも、まず民間の企業や利用者が真剣に解決策を考えてほしい。テレビ番組での木村さんの言動を巡り、人格をおとしめるような匿名投稿が相次いでいた。姿が見えない無数の相手からの攻撃だ。木村さんの自宅には、遺書とみられるメモが残っていた。どんなにつらかっただろう。匿名を盾にした言葉の暴力は許されるものではない。番組を盛り上げるためにSNSを使うケースは多いが、出演者の保護は十分だったのか。制作側はこうした点を徹底的に検証すべきだ。日本ではプロバイダー責任制限法に基づき、事業者にネット中傷の削除や投稿者情報の開示を請求できる。だが裁判に訴えても費用や時間がかかり、泣き寝入りを迫られる個人被害者は多かった。悪意ある匿名の投稿を防ぐため、政府は開示の手続きを簡素化する法改正を進める考えだ。発信者を特定しやすくなれば、安易な匿名投稿の抑止力となろう。ネット中傷の相談件数は年々増えており、誰がいつ被害者になってもおかしくはない。SNS各社に厳しいヘイトスピーチ対策を課す欧州などに比べ、日本の対応はむしろ遅すぎたぐらいだ。だが過剰な規制が自由な言論を妨げるのでは困る。そうならぬよう民間がやるべきことは多い。SNS各社は実名登録を促したり、利用規約で他人への中傷を明確に禁じたりする手立てが欠かせない。SNSは現代社会を支えるインフラだ。重大な権利侵害には相応の対策を取る責任がある。すでに各社は悪質投稿者の利用停止などを始めたが、企業任せでもいけない。第三者による自主規制団体を立ち上げるのは一案だ。学界や法曹界、報道機関などから幅広く知恵を募り、ネット中傷を巡る権利侵害の指針をつくれば、事業者側も情報開示に応じやすくなる。政治家や公人への批判まで封じられていないかを確認する一方、弱者を救済する相談窓口を設けることも必要だろう。若年層も含め、誰もが情報の送り手になれる時代だ。家庭や学校の役割も増す。自由で安全なネット社会を育めるかは、使い手一人ひとりの行動にかかっている。

*1-3:https://www.tokyo-np.co.jp/article/33268 (東京新聞 2020年6月4日) 総務省、投稿者の電話番号開示へ 要件緩和検討、ネット中傷対策で
 総務省は4日、インターネット上で匿名による誹謗中傷を受けた際に、投稿者を特定しやすくするための制度改正に向けた有識者検討会を開いた。被害者がサイト運営者や接続業者(プロバイダー)に開示を求める情報の対象に、氏名などに加えて電話番号を含める方向でおおむね一致した。7月に改正の方向性を取りまとめる。論点の一つとして、発信者情報の開示を定めるプロバイダー責任制限法に基づき匿名の投稿者を特定する際の要件緩和も検討する方針を示した。投稿による権利侵害が明らかな場合とする要件はハードルが高く、被害者救済の壁となっている。

<女性差別の多い日本の“常識”>
*2-1-1:https://digital.asahi.com/articles/ASMDK4SHTMDKUHBI01J.html?iref=pc_rellink_02 (朝日新聞 2019年12月18日) ジェンダーギャップ、政治参画に遅れ 自民に薄い危機感
 ジェンダーギャップ(男女格差)の大きさを国別に順位付けした世界経済フォーラム(WEF)の2019年の報告書で、日本は153カ国中121位で過去最低だった。女性の政治参画の停滞が順位に影響した。日本は調査対象の衆院議員で女性が10・1%。閣僚は9月の内閣改造前まで19人中1人の5・3%で、順位を下げる要因になった。政治への女性進出があまりに遅れている状況が、浮き彫りになった。だが、6割の議席を持ちながら女性比率は7%という自民党に、危機感は薄い。二階俊博幹事長は17日、記者会見で、日本の低迷ぶりを示す結果について感想を聞かれ、「いまさら別に驚いているわけでも何でもない」としたうえで、「徐々に理想的な形に直すというか、取り組むことが大事だ」と述べるにとどめた。男女の候補者を均等にするよう政党に求める候補者男女均等法の施行後、初めての国政選挙となった7月の参院選。自民の女性候補割合は15%で、安倍晋三首相(自民党総裁)も当時、「努力不足だと言われても仕方がない」と反省を口にしていた。菅義偉官房長官は17日の記者会見で、「各政党への取り組みの検討要請も進める」と語ったが、衆院議員の任期満了まで2年足らず。女性候補を大幅に増やす具体策は、打ち出せていない。自民の世耕弘成・参院幹事長は会見で「地方議員を経たり、企業や社会のいろんな組織における経験を経たりして国会議員になる。そういったところで、(女性の)層が厚くなっていくことによって、最終的に国会でも女性の数が増えるということになるのではないか」として、ある程度の時間が必要との認識を示した。鈴木俊一総務会長は「議員は国民が投票によって選ぶ。政治だけの責任のみならず、国民がどういう意識で選挙に臨むのかもあると思う」と語り、有権者の意識にも要因があるとの見方を披露した。一方、野党は参院選で女性候補の擁立を進めた。立憲民主党の候補者の女性比率は45%、国民民主党は36%だった。55%を女性にした共産党の小池晃書記局長は、会見でこう踏み込んだ。「ジェンダー平等は国際的な潮流だ。日本はその流れに背を向けている。根底にあるのは戦前からの男尊女卑という古い政治的な思想。こういったものを克服する取り組みを強めたい」
●韓国の取り組み「フェミニスト大統領の閣僚起用」
 具体的な取り組みで男女格差を縮めた国もある。日本が昨年の110位から121位に順位を落とした一方、共に下位が定位置だった韓国は115位から108位に上がり、2006年の調査開始以来、初めて日本を抜き去った。差がついたのは政治分野(日本144位、韓国79位)。女性閣僚の割合が影響した。申琪栄(シンキヨン)・お茶の水女子大院准教授(比較政治学)によると、「フェミニスト大統領」を名乗る文在寅(ムンジェイン)大統領は17年の就任時、女性を一気に5人閣僚に起用した。文氏は、任期終了(2022年)までに「パリテ(男女半々)」にすると約束していて、実現できるか注目を集めているという。また、韓国は00年から、議員選挙で比例名簿の奇数順位を女性にするなどのクオータ(割り当て)制も導入。法改正を重ね、強制力を強めてきた。国会の女性議員の割合は16・7%で、日本の衆院の10・1%を上回る。申准教授は「日本でも首相の意思さえあれば、女性閣僚は増やせる。女性議員が少ないことを言い訳にせず、民間から登用しても良い。経済界に女性管理職を増やすよう言う前に、まず政治の世界で示すべきだ」と指摘する。日本は今回、女性管理職比率など評価がやや改善した項目もあったが、全体の順位が大きく後退した。上智大の三浦まり教授(政治学)は「平成の30年間、日本は男女格差を放置してきた。他方、諸外国は多様性を尊重し、女性にチャンスを与えようと、具体的なしくみを整えてきた。このままでは、日本は国際社会から取り残される一方だ」と指摘する。

*2-1-2:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/498406 (佐賀新聞 2020.3.10) 女性閣僚率、日本はG7で最低、世界は過去最高の21%
 列国議会同盟(IPU)とUNウィメンは10日、女性の政治参画に関する報告を発表し、今年1月1日時点で閣僚ポストに女性が占める割合は21・3%で、過去最高となったことが分かった。15・8%の日本は113位で、先進7カ国(G7)では最下位だった。66・7%のスペインが首位で、61・1%のフィンランド、58・8%のニカラグアが続く。女性閣僚率は、同報告が最初に出た2005年には14・2%だった。今回の調査で、女性閣僚がいない国はベトナムなど9カ国にとどまったが、閣僚の半数以上が女性の国もわずか14カ国だった。また女性の財務相は25人、国防相は22人にとどまる一方、若者や高齢者、社会問題や環境といった分野の閣僚は女性が占める率が高くなっている。調査は190カ国を対象に実施され、北朝鮮、リビア、ハイチなどは含まれていない。国家元首または行政の長を女性が務める国は20カ国に上り、うち4カ国はスウェーデンを除く北欧諸国。世界の議会で議長に女性が占める割合は20・5%で、25年前と比較すると倍増した。

*2-2-1:https://digital.asahi.com/articles/ASN366RWVN36UTFK02R.html?iref=comtop_list_pol_n01 (朝日新聞 2020年3月7日) 男女格差、経済分野に原因? 首相答弁「政治」はスルー
 男女格差解消の遅れは企業に主な原因がある――。そう受け取られかねない答弁を、安倍晋三首相が6日の参院本会議で繰り広げた。世界経済フォーラムが昨年12月に発表した各国のジェンダーギャップ(男女格差)では、日本は153カ国中121位と過去最低。共産党の大門実紀史氏がこの順位を取り上げ、「男女格差の原因はどこにあるのか。日本は女性の閣僚と国会議員の比率があまりにも低い。経済でも男女の所得格差が大きい」と見解を求めた。首相は「我が国の順位が低いのは、経済分野の女性管理職の割合が低いことなどが主な要因だ」と指摘。そのうえで、女性活躍推進法の整備や女性の就業人口増など、格差解消に向けた安倍内閣の実績を強調した。ただ、質問にあった国会議員や閣僚の女性比率の低さには直接言及しなかった。わずかに決意表明の部分で、「政治分野も含めて女性の活躍を促す政策を推し進める」と触れただけだった。世界経済フォーラムは毎年、政治、経済、教育、健康の4分野を調査し、順位を発表している。日本の順位を押し下げた大きな要因は政治分野。日本の衆院議員で女性が占める割合は10・1%。調査時点で女性閣僚は1人だったことも響き、前年の125位から144位に後退した。一方、前年117位だった経済分野は115位とほぼ横ばい。首相が言及した企業の女性管理職の割合に関する指数は、前年よりも上昇していた。
    ◇
第201回通常国会。国会や政党など政治の現場での様子を「政治ひとコマ」としてお届けします。

*2-2-2:https://digital.asahi.com/articles/DA3S14394789.html (朝日新聞 2020年3月8日) (Dear Girls)女性役員ゼロ、自己責任? 全て男性の主要企業に聞く
 世界経済フォーラム(WEF)の男女格差(ジェンダーギャップ)の最新の報告書で日本は過去最低の世界121位に沈んだ。その大きな要因が、政治や経済のリーダー層における女性の少なさだ。8日の国際女性デーを前に、朝日新聞が国内主要企業のうち「女性役員ゼロ」の14社に取材したところ、経営トップよりも女性本人の意識改革が必要だと考えている企業が多かった。日本の経済分野でのジェンダーギャップ指数は世界115位。なかでも女性の管理職割合での順位は131位と低い。指数の対象ではないが、日本の上場企業の2019年の女性役員比率(内閣府まとめ)は5・2%にとどまる。なぜ日本企業のリーダー層に女性が少ないのか。朝日新聞社が国内主要100社に年2回行っているアンケート対象企業のうち、最新の有価証券報告書などで取締役・監査役に女性がゼロだった企業14社に質問状を送り、11社から回答を得た。どんな条件が整えば女性役員が誕生しやすくなるかを聞いた質問(複数回答)で、最も多かったのは「女性社員の昇進意欲の向上」と「女性採用者数の増加」で各5社。これに対し「経営層の意識改革」と答えたのは2社、「男性社員の意識改革」は1社だった。女性役員がいない理由(複数回答)は、「役員は適性で選ばれるべきでジェンダーは指標にならない」「役員候補の世代は女性が少なく、管理職経験や役員適性のある女性がいない」が共に最多で6社だった。100社アンケート対象企業全体でみると、各社の女性役員の合計は153人(全体の9・3%)。このうち131人は社外取締役か社外監査役で、日本の主要企業ではほとんど「生え抜き」の女性役員を生み出せていない。このため日本の経済団体の役員構成も圧倒的に男性に偏り、大企業でつくる経団連では、正副会長計19人が全員男性だ。世界では、経営陣の構成は性別や人種が多様性に富んでいる方が、投資家から高い評価を得る傾向が強まる。米フォーチュン誌500社にランキングされる大企業の女性取締役比率は17年で22・2%に達する。内閣府が18年、機関投資家を対象に行ったアンケートでは、投資判断に女性活躍情報を活用する理由として7割近くの機関投資家が「企業業績に影響がある情報と考えたため」と答えた。多様性の確保が働き方改革による生産性の向上やリスクの低減につながるとみている投資家が多いという。「身内の男性ばかり」という日本企業の経営陣の構成自体がリスクになりかねない状況といえる。
■「女性役員ゼロ」の14社
 ニトリHD、近鉄グループHD、サントリーHD、スズキ、キヤノン、大日本印刷、JR東海、シャープ、信越化学工業、東レ、TOTO、DMG森精機、ミズノ、セコム

*2-2-3:https://digital.asahi.com/articles/DA3S14522465.html (朝日新聞 2020年6月23日) 「重要な仕事は男性」男女とも半数超 無意識の偏見根強く 21世紀職業財団調査
 「重要な仕事は男性が担当することが多い」と思っている人が、総合職の正社員では男女とも半数超に上るとの調査結果を、21世紀職業財団が22日公表した。性別などに基づく「アンコンシャスバイアス(無意識の偏見)」が、仕事を割り振る立場の経営者や管理職に根強く残っている可能性があるとしている。同財団が今年1月、女性活躍の実態を把握するため、男女計4500人を対象にウェブで調査した。「重要な仕事は男性が担当することが多い」と思っている割合は、総合職の正社員でみると、大企業(従業員300人以上)は男性50・7%、女性55・5%。中小企業(100~299人)は男性56・5%、女性58・1%だった。総合職以外も含めた大企業の女性正社員でみると、2018年の53・7%から60・3%に増えていた。調査を担当した山谷真名・主任研究員は「アンコンシャスバイアスの存在を管理職向けに研修し、仕事の与え方を変えようとしている企業は増えているが、全体ではまだ難しい面がある」と指摘している。

*2-3-1:https://uuair.lib.utsunomiya-u.ac.jp/dspace/bitstream/10241/9105/1/32-7-Women.pdf#search=%27%E5%84%92%E6%95%99%E3%81%AE%E4%B8%AD%E3%81%AE%E5%A5%B3%E6%80%A7%E8%A6%B3%27 (東アジアの近代と女性、そして「悪女」 :金 多希 より抜粋)
儒教理念の中の東アジアの女性たちは「良妻」か「悪妻」かの二者択一の生しか生きられず、殆どの女性は男性が作り上げた社会規範「婦道」を守ることによって「良妻」になろうとしたが、そのような生き方に疑問を抱き、抵抗した人も存在し「悪女 」として厳しく処罰された。つまり、「悪女」は「良妻」の価値を高めるために利用されたのである。また、『礼記』は、女性は本来他人に服従する者として定めており、女性には自主的に行動する本分がないことを提示し、受動的に行動することを強要している。そして、「三従の道」として広く知られているのは、女性は幼い頃は父兄に従い、結婚後は夫に従い、また、夫が亡くなったら息子に従うべきであり、それ以外の女性の人生は主張できないように示されている。

*2-3-2:http://www2.biglobe.ne.jp/~remnant/bukkyokirisuto08.htm (仏教の「女性」、キリスト教の「女性」より抜粋) 仏教では「女性は女性のままでは仏になれない」。キリスト教では?
仏教とキリスト教の大きな違いの一つは、女性に対する考え方でしょう。仏典に、「女性は女性のままでは仏になれない」と書いてあるのを、あなたは知っていますか。女性は救われない、というのではありません。女性は女性のままでは成仏できない、女性のままでは救われない、というのです。女性は女性のままでは仏になれない。「仏教の女性観は、いささかひどい女性蔑視だと思います」こう語るのは、仏教解説家として知られる、ひろさちや氏です。氏自身は仏教徒ですが、続けてこう言っています。「というのは、仏教においては、まず女性は、女性のままでは仏や菩薩(仏の候補生)になれない、とされているのです。仏や菩薩になるためには、女性は一度男子に生まれ変わらなければなりません。それを、『変成男子』(へんじょうなんし)と言います。……これは、どうにも言い逃れのしようのない女性差別です」。この「変成男子」とは、どういうことでしょうか。仏教には、もともと女性は修行をしても仏になれない、という考えがありました。仏典にはこう書かれています。「悟りに達しようと堅く決心して、ひるむことなく、たとえ測り知れないほどの理知を持っているとしても、女性は、完全な悟りの境地は得がたい。女性が、勤め励む心をくじくことなく、幾百劫(一劫は四三億二〇〇〇万年)・幾千劫の間、福徳のある修行を続け、六波羅蜜(修行の六ヶ条)を実現したとしても、今日までだれも仏になってはいない」(法華経・堤婆達多品)。さらに、「なぜかというと、女性には"五つの障り"があるからだ」と述べ、女性がなれないものを五つ列挙しています。それらは、①梵天王になることはできない ②帝釈天になることはできない ③魔王になることはできない ④転輪聖王になることはできない ⑤仏になることはできない です。1~4の「梵天王」「帝釈天」「魔王」「転輪聖王」は、いずれもインドの神々を仏教に取り入れたものですから、現実には問題ないでしょう。しかし最後の「女性は仏になることができない」は、女性信者にとって大問題であるはずです。この「女性は仏になれない」という考えは、仏教の創始期からありました。実際仏典には、あちこちに女性を劣等視した言葉が見受けられます。なかには露骨な表現で、「女は、大小便の満ちあふれた汚い容器である」というような、耳を覆いたくなるような表現さえ少なくありません(スッタ・ニバータ)。「汚い容器」であるのは男も同じなのですが、どういうわけか仏典には、男については決してそのような表現がないのです。女性が劣った者であり、仏になる能力のない者であるという考えは、仏教の創始者シャカ自身が持っていたようです。実際、シャカは従者アーナンダに対して、「女は愚かなのだ……」と語っています。仏教は、インド古来の階級制度である「カースト制」は否定しましたが、女性差別の考えは捨てきれなかったようです。

<出生率の低下を女性の責任にした日本の愚行>
*3-1:https://digital.asahi.com/articles/DA3S14503438.html (朝日新聞 2020年6月6日) 昨年出生率1.36、大幅下落 出生数は最少86.5万人 人口動態統計
図:出生数と死亡数、合計特殊出生率の推移
 1人の女性が生涯に産むと見込まれる子どもの数を示す「合計特殊出生率」は、2019年が前年より0・06ポイント低い1・36と、8年ぶりに1・4を割り込んだ。低下は4年連続。厚生労働省が5日発表した人口動態統計で明らかになった。出生率はここ3年、毎年0・01ポイントずつ低下していたが、19年は大幅な下落となり、人口の維持に必要とされる2・07からさらに遠ざかった。都道府県別では沖縄県の1・82が最高で、東京都が1・15と最低だった。19年に国内で生まれた日本人の子どもの数(出生数)は86万5234人と、前年を5万3166人下回り、統計がある1899年以降で最少となった。死亡数は戦後最多の138万1098人にのぼり、出生数から死亡数を引いた自然減は51万5864人と、過去最大の減少幅を記録した。出生率が下がり続ける背景には、親になる世代の減少や晩婚化などが挙げられる。25~39歳の女性人口は1年で2・0%減った。平均初婚年齢は夫31・2歳、妻29・6歳と夫妻とも6年ぶりに上昇した。第1子の平均出産年齢は15年以降、30・7歳で推移する。厚労省はまた、18年の結婚件数が前年よりも2万471組(3・4%)減ったことが翌年の出生率に影響したとの見方を示す。19年の結婚件数は59万8965組と、7年ぶりに増加した。改元に合わせた「令和婚」が増えたためとしている。政府は少子化対策の指針となる「少子化社会対策大綱」で20年までの5年間を「集中取組期間」と位置づけるが、出生数の減少に歯止めがかからない。今年5月に5年ぶりに見直した大綱では、25年までの目標として子どもがほしい人の希望がかなった場合に見込める出生率「希望出生率1・8」の実現を掲げた。人口問題に詳しい鬼頭宏・静岡県立大学長は「子育て世帯への経済的支援は大事だが、時間がかかっても男女格差のない社会に作り直す覚悟で臨まなければ、出生数増加にはつながらない」と話す。

*3-2:https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/580749 (沖縄タイムス社説 2020年6月4日) [少子化対策大綱]拡充の道筋が見えない
 思い切った施策と、その施策を具体化する財源をセットで示さなければ、同じ轍(てつ)を踏むことになる。今後5年間の少子化施策の指針となる政府の「少子化社会対策大綱」が閣議決定された。昨年生まれた赤ちゃんの数が、統計開始以来初めて90万人を割る「86万ショック」という危機感を背景にまとまった指針である。大綱が目標とするのは安倍政権が掲げる「希望出生率1・8」。子どもの数や年齢に応じた児童手当の充実▽大学無償化制度の中間所得層への拡充▽育休中に支払われる給付金の在り方-などの支援策を提言する。子育てにお金がかかるため2人目、3人目を諦めたという夫婦は少なくない。多子世帯へ児童手当を手厚く配分するのは必要な支援だ。教育費に関しては、大学無償化の範囲を現在の低所得世帯から拡大するよう求めている。コロナ禍で学業継続への不安を訴える声が示すように、大学進学にかかる費用は中間層にも重くのしかかっている。育休中に雇用保険から支払われる給付金の充実は、男性の育休を取りやすくするための政策である。いずれも実現すれば一歩踏み込んだ対策といえる。しかし児童手当の充実も、大学無償化の拡充も、財源の裏付けはなく「検討」段階でしかない。目玉の育休給付金の引き上げは、当初、休業前の手取りと変わらない水準を目指す考えだったというが、大綱に具体的文言は盛り込まれなかった。
■    ■
 合計特殊出生率が戦後最低となった1990年の「1・57ショック」を契機に、少子化は社会問題化した。政府はエンゼルプランに始まる支援策を次々と打ち出したが、対策は失敗続きで、少子化に歯止めをかけることはできなかった。安倍晋三首相はことあるごとに少子高齢化を「国難」と強調する。大綱も冒頭に「国民共通の困難に真正面から立ち向かう時期に来ている」と記す。にもかかわらず財源については「社会全体で費用負担の在り方を含め、幅広く検討」とぴりっとしない。国難という認識に立つのなら、施策を具体化する道筋を示すべきである。日本の「家族関係社会支出」がGDPに占める比率は低水準で欧州諸国に比べ見劣りしている。もう小手先の対応では、どうにもならないところまで来ているのだ。
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 出生率全国一の沖縄でも少子高齢化は着実に進行している。80年代半ばまで2万人前後で推移してきた出生数が、今は1万5千人台。2012年には老年人口が年少人口を上回った。結婚や出産は個人の自由な意思に基づくものだ。ただ非正規で働く男性の未婚率が顕著に高いなど、経済的理由が少子化に影響を与えている側面は見過ごせない。県内男性の未婚率と県の非正規雇用率が全国一高いことは無関係ではない。若い世代の雇用の安定を図ることも必要不可欠な対策だ。

*3-3:https://www.nishinippon.co.jp/item/n/614803/ (西日本新聞 2020/6/7) 病児保育、コロナ直撃で経営危機 働く親「なくなると困る」
●3密回避で受け入れ制限
 急な風邪や発熱で保育園や学校に行けない子どもたちを一時的に預かる「病児保育」の施設が、新型コロナウイルスの影響で利用が激減し、経営危機に直面している。全国病児保育協議会(東京)によると、病児保育施設は元々約6割が赤字経営だが、コロナ禍が追い打ちを掛けた形。一方、仕事を休めない親にとって「駆け込み寺」のような存在なだけに、存続を求める切実な声が上がっている。病児保育施設は、病気になった子どもたちを保育士や看護師が一時的に保育する施設。厚生労働省によると、病児保育施設は全国に1068カ所(2018年度)あり、多くが医療機関に併設されている。福岡市の施設を利用している保育士(40)は、インフルエンザが流行する冬に病気がちな息子(2)を預けることが多く、3日連続で利用することもあるという。「仕事をどうしても休めないときに心強い存在。病児保育がないと、仕事を辞めざるを得ない」と必要性を強調する。
●「コロナかも」
 全国病児保育協議会によると、新型コロナの感染拡大に伴い、インフルエンザや溶連菌といったコロナ以外の疾患だと確定できる場合のみ受け入れる施設や、呼吸器疾患以外を預かるといった基準を設ける施設が増加。休業した施設もある。福岡県内の企業主導型保育園に併設する病児保育施設では「インフルエンザだとしても、コロナがひも付いているかもしれない」(園長)として、3月から受け入れを事実上ストップした。6月に各種自粛が緩和されたため、基準を厳しくして徐々に受け入れ始める予定だ。小児科に併設した「ベビートットセンター」(福岡市)は三つある個室に最大計6人までを受け入れていたが、感染防止の観点から3月以降は1室につき1人の計3人に縮小。3月下旬から利用者は激減し、4月は前年同期の82人から21人と4分の1。5月は4人のみと厳しい状況が続く。預け先での感染を恐れ、利用を躊躇(ちゅうちょ)する保護者もいるという。
●実績基に補助
 施設にとっては利用者が減っても保育士などは確保しなければならず、人件費が経営を圧迫する。頼みの綱の補助金の一部も年間の延べ利用人数に応じて交付されるため、本年度は落ち込みが予想される。ベビートットセンターを運営する小児科医の米倉順孝さん(45)は「病児保育はセーフティーネット」と施設を続ける決意だが、経営の先行きは見通せないのが現状だ。緊急事態宣言は解除されたが、全国病児保育協議会に加盟する約750施設の多くで、利用者は定員を大きく下回っている。大川洋二会長は「本年度の実績にとらわれず、十分な交付金をお願いしたい」と訴える。

*3-4:https://www.jiji.com/jc/article?k=2020040900569&g=soc (時事 2020年4月9日) 不妊治療助成、1歳緩和 コロナ影響で時限的に―厚労省
 厚生労働省は9日、不妊治療に臨む夫婦が新型コロナウイルスの影響で治療を延期するケースに対応するため、治療費の助成対象となる妻の年齢要件を時限的に緩和する方針を決めた。今年度に限り、現在の「43歳未満」を「44歳未満」にする。同省は近く通知を出す。日本生殖医学会は1日付の声明で、妊婦が新型コロナに感染すると重症化する恐れがあることなどを挙げ、産婦人科などに不妊治療の延期を選択肢として提示するよう求めた。医療物資や医療従事者が不足し、延期を余儀なくされる夫婦が増えることも懸念されている。体外受精や顕微授精を行う不妊治療は高額なことから、厚労省は患者の経済的負担を減らすため、助成制度を設けている。現行では一定の所得以下の夫婦に対し、治療開始時の妻の年齢が▽40歳未満なら通算6回まで▽40歳以上43歳未満なら同3回まで、原則1回15万円を支援している。今回の要件緩和は、新型コロナ感染防止を理由に、今年度は治療を見合わせる夫婦が対象。今年3月31日時点で妻の年齢が42歳である場合、延期後44歳になる前日までを助成対象とする。同じ時点で妻が39歳の場合は、従来40歳未満としていた通算6回の助成対象を1歳緩和し「41歳になる前日まで」にする。

<女性差別の結果>
*4-1:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/497750 (佐賀新聞 2020.3.9) GDP、年7・1%減に改定、10~12月期、下方修正
 内閣府が9日発表した2019年10~12月期の国内総生産(GDP、季節調整値)改定値は、物価変動を除いた実質で前期比1・8%減、このペースが1年続くと仮定した年率換算は7・1%減となり、速報値の年率6・3%減から下方修正した。企業の設備投資が落ち込んだことが要因。マイナス成長は5四半期(1年3カ月)ぶり。新型コロナウイルス感染症の拡大で、20年1~3月期も2四半期連続のマイナス成長となる可能性が高まっており、日本経済は長期停滞入りの瀬戸際に立っている。年率の減少幅は前回消費税増税時の14年4~6月期(7・4%減)以来、5年半ぶりの大きさだった。増税に伴う駆け込み消費の反動減や世界経済の減速、台風19号など経済を押し下げる要因が重なった。改定値は最新の法人企業統計などを反映して2月に公表した速報値を見直した。設備投資は前期比4・6%減と、速報値の3・7%減から下方修正した。減少幅は09年1~3月期(6・0%減)以来の大きさ。消費税増税対応の投資が一時的に増えた反動も影響した。個人消費は速報値の2・9%減から2・8%減に上方修正した。住宅投資は2・5%減、公共投資は0・7%増だった。輸出は速報値と変わらず0・1%減、輸入は2・6%減から2・7%減に小幅に下方修正した。景気実感に近いとされる名目GDPは1・5%減、年率換算で5・8%減だった。速報値の年率4・9%減から下方修正した。

*4-2:https://www.tokyo-np.co.jp/article/world/list/202003/CK2020030702000255.html (東京新聞 2020年3月7日) <女性に力を>「男女平等は世界全体の利益に」 国連「国際女性デー」記念行事
 国連が定める「国際女性デー」(八日)の記念行事が六日、ニューヨークの国連本部であった。フィンランドのサンナ・マリン首相(34)ら世界の各分野で活躍する女性が「男女平等は女性のためだけでなく、全体の利益になる」などと不平等を是正する社会的、経済的な意義を訴えた。一九〇六年に世界で初めて女性の完全参政権を認め、男女平等の先進国として知られるフィンランド。マリン氏は国連加盟百九十三カ国中、女性の大統領や首相が計二十人(一月時点)にとどまる現状を指摘し、「この国連総会議場は世界各国が意見を聞いてもらう場だが、大抵の場合、それは男性の意見だ」と切り出した。フィンランドが女性政治家らの提案で四〇年代に無償の学校給食を導入し、共働きを支えて発展を遂げた実績などを例に「男女平等の実現には、政治的な意思決定をする立場に一層多くの女性を置くのが最良だ」と主張。「女性や女の子の権利を前進させてきた強い女性指導者らの努力と模範がなければ、きょう私が皆さんの前に立つこともなかったでしょう」と話した。一方、スウェーデンの環境活動家グレタ・トゥンベリさん(17)らに感化されて国連本部前でデモを続ける米国のアレクサンドリア・ビラセナーさん(14)は「世界の仲間と出会い、面白いことに気付いた。みんな女性。女性が環境活動を引っ張っている」と強調。その半面、読み書きできない人の三分の二を女性が占める実態に触れ、「地球を救うために変えなければならない」と女性が教育を受ける機会の重要性を説いた。

*4-3:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20160930&ng=DGKKZO07810310Z20C16A9EE8000 (日経新聞 2016.9.30) 中里税調会長「所得税改革、複数案を提示」
 政府税制調査会の会長の中里実東大教授は日本経済新聞のインタビューで、所得税改革の方向性について、複数案を提示し与党の判断をあおぐ可能性があると語った。
―配偶者控除の見直しが焦点です。
 「(改正前後の税収が同じになる)税収中立が条件のため、改革すると得する人と損する人がでてくる。損する人の声が大きくなれば民主主義では改革は実行に移しづらい」「働き方への中立性を阻害しないようにするには税制だけでは無理だ。一番は社会保険料の問題だ。年収が130万円を超えると社会保険料の負担が突然、生じる。また多くの企業が扶養手当を103万円や130万円を基準に支払っている。今回の議論をきっかけに社会保険料や手当のあり方を見直すきっかけになれば意義がある」
―なぜ所得税改革が必要なのでしょうか。
 「昨年、長い時間をかけて政府税調が実施した経済・社会の実態調査で、所得税制が現在の経済・社会の実態に合わなくなっていることがわかった。負担軽減のターゲットは若い低所得者だ。働いて稼いでもらいたい人達に光を当てる。女性が働きたいのに家に閉じこもるのもよくない」「増税じゃないかと疑う人がいるが、そうではない。豊かな人に負担をお願いするという方向は考えている。どの程度の所得以上かとなると調整は難しい」「税は利害調整だから、今回のような改革はソフトランディングもありえる。改革案を松竹梅と用意して、徐々に梅から竹という方向でもいいかもしれない。様々な改革メニューをだすのが政府税調の仕事だ。(政治が)必要な改革なら必要な時期に対応をとるのではないか」

<人種や性別による差別をなくすには・・>
*5-1:https://news.yahoo.co.jp/byline/furuyayukiko/20200614-00183211/ (Yahoo 2020.6.14) ブラックライブスマター運動から考える警察の暴力と人種差別 (社会学博士 古谷有希子)
 この数週間、アメリカではコロナウイルス以上にBlack Lives Matter(黒人の命も重要だ)運動がトップニュースを占めている。日本でも報道されているようだが、かなり偏った伝え方をしているように思う。たとえばNHKはアフリカ系の人々に対する偏見に満ちた動画を配信してしまい、各国のニュースで批判され、更には駐日米大使も苦言を呈すという事態に陥った。また、ワシントン州シアトル市で抗議運動の一環として警察が立ち入らない「自治区」が立ち上がった経緯についても不正確な報道がなされているように思う。元々、シアトルの抗議活動は許可を得たものと得ていないものが混ざっていた(いずれも平和的デモ)。だが警察が暴力的、強制的に無許可デモを排除しようとしたことで、抵抗したデモ参加者たちにパトカーを燃やされ、更には混乱に乗じた略奪などが起こった。平和的デモ参加者まで逮捕し、催涙ガスを使用し、暴力的に対応し、街のあちこちを封鎖したからだ。結果として警察の暴力に対する市民の批判が更に強まり、警察はそのエリアからの撤退を決定した。警察が撤退した後、そのエリアをアーティストやアクティビストが「自治区」として掲げ、人種差別問題や警察の暴力の問題を壁画や音楽で訴える平和的抗議運動の中心地となっているのが現状だ。トランプ大統領は一連の活動を「テロリスト」と呼んで非難し武力行使を示唆しているが、シアトル市長は「政府の権威、権力に挑むのは市民の権利だ」として「自治区」や一連の抗議活動を擁護している。
●抗議活動の発端となった警察による黒人男性殺害事件
 そもそも、こうした抗議活動の発端となったのは5月25日にミシガン州のミネアポリス警察の警察官が暴行により46歳の黒人男性ジョージ・フロイドさんを殺害した事件である。フロイドさんがコンビニで偽札を使ったとして店員が通報し、駆け付けた警官によって殺害された。警官に首を後ろから押さえつけられたフロイドさんが「息ができないんです…」「ママ、ママ…」とうめき声を上げながらと死亡していく映像がSNSに流れ、多くの人がショックを受けた。8分46秒に渡りフロイドさんに暴行を加え窒息死させた警官の行動は、まさにアメリカの黒人が数百年間に渡り直面してきたリンチ、黒人差別そのものであり、人を人とも思わない白人警察の暴力性まざまざと見せつけた。フロイドさんが実際に偽札を使用したのか、もし使っていた場合それが故意だったのかどうかはわかっていない。仮に彼が偽札を故意に使用してたことが事実だったとしても、その程度の軽犯罪を犯した人を警官が不法かつ不当に殺害してよい根拠にはならない。殺害に関与した四人の警察官は全員懲戒免職となり、主犯のデレク・ショウビン元警察官は第二級殺人罪、第三級殺人罪、第二級過失致死罪で起訴されている。
●警察の黒人差別
 これまでもアメリカの警察はアフリカ系の人々を不当に扱ってきた。そのうちの殺害ケースの多くは射殺だが、警官が殺人罪で起訴されることは稀で、せいぜいが過失致死、多くの場合は何の罪にも問われずそのまま警官として働き続けている。アメリカの警察は「黒人は犯罪者が多い」「黒人は乱暴」といった人種的偏見に基づいた対応(racial profilingという)をしていると批判されている。黒人であるというだけで頻繁に職質を受けたり、車を止められたりすることは当たり前で、ひどい場合にはいきなり銃を向けられる、いきなり発砲されるということがずっと続いてきたからだ。近年も、おもちゃの銃で遊んでいた黒人の子どもが警官に射殺された事件、看護師志望の二十代の黒人女性が自宅で警官に射殺された事件など、警官による黒人の不当な暴行や殺害は枚挙に暇がない。それ以外にもトレイボン・マーチン殺害事件、アフムード・オーブリー殺害事件など、「自警」「自衛」と称して何の罪もないアフリカ系の人をリンチ殺害する事件も後を絶たない。そのため、アフリカ系の家庭では子どもがまだ小さいうちから「警官に呼び止められたら両手を挙げて動きを止めること」「必ずサーの敬称をつけて丁寧に話すこと」などを教える。特に男の子の場合にはこれを徹底して身につけさせなければ、その子の命に関わる。
●今も残る人種差別
 警察も含めアメリカの司法システムは、軽犯罪から重犯罪まで、同じ罪を犯しても黒人には白人よりもはるかに重い刑罰を課してきた。いずれも刑法に則った量刑であり、個々の逮捕や裁判の不当性は見えにくいが、全体の統計を見たときに明らかに量刑に人種差別が現れている。そもそも歩いているだけ、車で走っているだけで黒人だからと目をつけられて職質されるのだから、どんなささいな不法行為でも黒人の方が白人よりも捕まりやすいのは当然だ。たとえばアメリカではマリファナは州によっては娯楽使用も合法で、誰でも一度は吸ったことがあるような気軽なものだ。場合によってはたばこよりありふれているくらいなので、使用率は黒人も白人も変わらない。だが黒人は白人の四倍近くも「ただ持っているだけ」で逮捕されている。人口当たりの受刑者の比率は、ラテン系男性は白人男性の二倍、アフリカ系男性はさらに五倍にも上る。連邦刑務所の受刑者の八割、州刑務所の受刑者の六割はアフリカ系かラテン系である。運良く不起訴となっても、逮捕歴が残るので就職、住居、銀行ローンなどで生涯にわたる差別を受けることになる。黒人を完全に分離し、同じ学校に通うことを禁じたり、白人との結婚を禁じるようなハードコアな人種差別は公民権運動を通じて数十年前に撤廃された。しかし人種差別は社会制度、行政制度などに染み付いた慣習として今日も続いている。特に問題なのはSystemic racism, institutional racism (機関的、制度的人種差別)だ。
●制度的人種差別
 社会制度(法律、警察、役所や学校などの行政機関、行政・社会制度、教育機関、社会慣習まで様々なものを含む)には人種差別がこびりついている。「黒人だから」という理由で頻繁に職質をされたり、いきなり銃を向けられたり、重い量刑を課されるのは、司法や行政を担う担当者が人種的偏見に基づいた行動や決定を意識的、無意識的に行なっているからだ。こうした個人レベルの人種差別的行動や偏見が積み重なって社会や行政の様々なレベルでの白人と黒人との膨大な格差や差別となる。個人レベルで「黒人は凶暴だ」とヘイトスピーチをする人の数は減ったかもしれないが、社会全体での制度的人種差別は根強い。そして、個人レベルで差別行為を行わなくとも、差別を内包した社会で生活しているだけで、こうした制度的差別に加担することになる。アメリカには長きにわたる人種隔離政策の影響が色濃く残っており、その最たるものが居住区域と学区分けである。まず、アメリカの公立学校の財源は学区ごとの固定資産税に大きく依拠しているので、貧困層が多い学区は常に財政難に直面しており、教師や教材も揃えられないということもままある。そして、学区と居住区域が連動しているので白人中流家庭の多い区域は黒人貧困家庭の多い区域と学区が重なることを決して許さず、そのような状況になると猛抗議を行い阻止しようとする。白人中流層の多い区域でアフリカ系の人が家を購入しようとすると不動産屋や大家は白人相手よりも高い値段を提示する。黒人が流入するとその区域の白人が流出して地価が下がるため、それを避けようとするのだ。つまりジム・クロウ法(人種隔離法)が行なっていたことと同じことが、白人中流層居住地域では現在も事実上続いているのである。また、エボニーやジャマルなど「黒人に多い名前」で求人に応募すると面接に呼ばれにくいが、全く同じ履歴書を送っても名前が白人的だと面接に呼ばれやすいという研究もある。こうした差別や偏見、不当な暴力に立ち向かっているのが、今起こっている Black Lives Matter 運動なのである。コロナ渦にあって大規模な抗議運動などしてはコロナウイルスをさらに拡大させるという懸念もあるが、黒人を取り巻く人種差別の恐怖はコロナウイルスの恐怖を凌ぐ。黒人であるというだけで暴力を受ける社会で、アフリカ系の人々は安心してマスクも付けられない。顔を隠した強盗と間違われて即射殺などということになりかねないからだ。アフリカ系の人々が日常的に直面している不当な差別、暴力、偏見はコロナウイルス以上に多くのアフリカ系の人々を精神的に肉体的に傷つけ命を奪っている。
●抗議活動の「暴徒化」は本当か?
 抗議活動の一部が暴徒化しているという報道もあるが、前述したように「混乱に乗じて略奪などが起こっている」のであり、抗議活動が過激化して暴徒化するというのは必ずしも正確な表現ではない。そもそも、警察が暴力的な対応をしている結果として混乱が生じているのである。また、略奪や放火などの過激な行動を取っているのもアフリカ系の人々に限ったことではない。そもそも略奪などが起こる背景には、必要なものも手に入らない苦しい生活と厳しい経済格差がある。収入、雇用、財産、教育、ありとあらゆる面で、制度的人種差別を背景とした白人と黒人の歴然とした格差があり、その差は1960年代からほとんど変わっていない。暴動だと非難するだけではなく、異常なまでの富の不均衡、機会の不平等、人種差別の問題にこそ目を向ける必要がある。そもそも今日のアメリカの富の礎は奴隷制の上に築かれたものだ。アフリカ系の人々が何百年も耐え忍んできた暴力、差別、圧政、搾取に比べれば、暴動でほんの一部を取り返したとしても何の足しにもならない。社会運動において平和的抗議運動と暴力は容易に分離できるものではない。歴史を見ても、世界中で人権や独立などを求める平和的抗議運動はあったが、それだけで社会は動かなかった。インドでもフランスでもアメリカでも、非暴力運動と前後あるいは並行して暴力を否定しない社会運動があったことを忘れてはならない。今回の抗議運動も平和的デモだけではなかったからこそ、ネガティブな反応も含めて、より大きな注目を集めたという側面もある。注目を集めれば、当事者だけではなく問題意識を持つ多くの人が参加して、社会を動かす大きなうねりを生み出すことにつながる。たとえば今回の抗議活動にはアフリカ系以外にも多くの人が老若男女問わずに幅広く参加している。筆者の知人にも「自分は白人だからこの抗議運動に参加する社会的義務がある」と言って、参加している人がいる。抗議に参加していた白人女性や白人高齢男性が、デモを抑えようとする警察に暴行を加えられて重傷を負っている映像なども流れており、一連の抗議活動の発端となった警察の暴力性を更に強調する結果となっており、抗議活動はまだまだ収束する気配が無い。
●日本にもある人種差別
 黒人人口が非常に少ない日本で Black Lives Matter 運動や現在の警察に対するの抗議運動に対する関心が低いのは仕方のない面もあるだろう。しかし、同様の差別や警察をはじめとする司法システムによる暴力は日本でも日常的に起きている。日本では「人種」という括りよりも「外国人」「民族」のくくりで差別が行われることが多い。最近では渋谷警察がクルド人の男性に不当な暴力を振るっている映像がSNSに流れ、渋谷警察署前に200人が集まる抗議活動があった。そして、入管は入所者の人権を無視した肉体的精神的暴力を日常的に振るっている。日本でよく聞く「外国人が増えて犯罪が増えた」などというのも全く根拠の無い偏見だが、こうした差別的思考を持つ人は警官も含めて多い。外国人であるというだけで頻繁に職質されるのは、警察が外国人に対する強い偏見を持っているからだ。司法システム以外でも日本の外国人差別は根深い。たとえば「外国人お断り」を平然と掲げている賃貸物件は多いが、外国人だからお断りというのは差別以外の何ものでもない。また、高校無償化制度からの朝鮮学校除外、朝鮮学校に対する街宣、公然と繰り広げられるヘイトスピーチなど、在日コリアンに対する差別も深刻だ。そして、日本にも黒人差別はある。数年前には、新宿でナイジェリア人男性に対して「黒人は怖いからな」などと言いながら警察が暴行を加え、膝を複雑骨折させ重篤な傷害を負わせる事件があった。昨年は、大坂なおみ選手の肌の色を白くした日清のCMや「黒すぎる」などと揶揄する漫才が問題となった。いずれも「良かれと思って」「面白いと思って」行ったことだろうが、その背後にあるのは「黒い肌は醜い」という侮蔑的心情だろう。意識的であろうと無意識的であろうと、肌の白さこそ美しさの象徴であるとばかりに、異なる人種の人の肌を白く見せようとしたり、肌の色を嘲笑したり蔑むのは人種差別にほかならない。また、近年日本で台頭してきている「黒人ハーフ」アスリートについて、ポジティブな論調で彼らの成功を筋肉やバネなどの「人種的特徴」と結びつける評価を目にするが、それが生物学やスポーツ科学の皮を被った人種的偏見でないか批判的に考えるべきだ。大阪なおみ選手やサニブラウン選手を見て、彼らの成功を「黒人だから」と考えているとすれば、それは彼らの努力や個人の資質を無視する、人種的偏見以外の何物でもない。そもそも「人種」というのは科学的、生物的分類ではなく社会的分類である。アフリカ大陸は多種多様な人種・民族を抱える地域であり、いわゆる「黒人」とされる人たちの中にも、背の低い人もいれば高い人もいるし、太った人も痩せた人も、農耕民族も狩猟民族も牧羊民族もいる。アフリカ系の人々の肌の色もいわゆる白人のような色からチョコレート色まで多種多様だ。このように多様性に富んだ地域に住む人々を「アフリカ系」「黒人」と一括りにして、共通の「資質」「特徴」を論じること自体が非科学的である。また、アフリカの人々以上にアメリカの「黒人」は民族的にも、いわゆる人種的にも混血している(白人奴隷所有者は日常的に奴隷女性をレイプしていたから)。スポーツにせよ、社会、文化、経済面での成功にせよ、或いは失敗にせよ、それを安易に「人種」と結びつけることは人種的偏見に他ならない。スポーツが「黒人だから」成功できる程度のものならば、世界のアスリートは黒人だけで占拠されていなければおかしいが、現実にはそうではない。むしろ「運動に素質がある黒人の子ども」がいた場合、「黒人だからバネがいい」などという安易な人種的偏見がその子を特定のスポーツに誘導することになっていないか、その子から勉強や芸術など、他の分野のことを学ぶ機会を奪っていないか、親や教師は考慮する必要がある。たとえばアメリカではアメフト、バスケットボール、陸上競技はアフリカ系の選手が非常に多い一方で、ウィンタースポーツや水泳は極端に少ない。個々人の資質以上に、スポーツがレッスン費用や周辺のスポーツ施設の有無など「始めやすさ」「アクセスのしやすさ」、あるいは人種的偏見に基づいた周囲の期待などに大きく影響されるものだからだ。一見すると黒人差別とは無縁に見えるかの日本社会にも、アフリカ系の人々に対する偏見や差別は存在する。アメリカの抗議活動を「人ごと」「対岸の火事」と傍観するのではなく、警察の暴力と人種差別の問題を考えるきっかけとして捉えるべきである。

*5-2:https://digital.asahi.com/articles/DA3S14526552.html (朝日新聞 2020年6月26日) 黒人の兄と白人の弟、同じ国、違う世界 米ミネアポリスルポ
■兄は職を転々、警官からの尋問絶えず 弟は博士号「差別で恩恵、責任感じた」
 黒人男性のジョージ・フロイドさん(46)が亡くなった米ミネアポリスの現場に6月14日、ある兄弟が並んで立った。「人種を超え、共に祈りを捧げられ、うれしかった」と話した兄のチャド・リンダマンさん(52)は、褐色の肌。「黒人の声に耳を傾けたかった。差別の仕組みから恩恵を受ける立場として、責任を感じた」と語った弟のデイナ・リンダマンさん(49)は白人だ。黒人の父と白人の母の間に生まれたチャドさんは1歳のとき、ミネアポリス郊外の白人家庭に養子として迎えられた。2年後、デイナさんが生まれ、兄弟として同じ家庭で育った。チャドさんが小学校に上がると、学年120人で黒人は1人。同級生から「ニグロ」(黒人)と呼ばれ、好きな女子とダンスをすることもかなわなかった。先生は「勉強には向いていないから、スポーツをがんばりなさい」と言った。デイナさんは運動神経抜群の兄を「ヒーロー」と慕った。だが、11歳のとき、兄をイメージしてつくったのは肌が黒く、囚人服のような白黒の服を着た人形。無意識の差別の表れだと気づいたのは、大学で人種について学んだ後だった。兄弟は次第に、別々の道を歩んだ。野球の投手として頭角を現したチャドさんはマイナーリーグでプレーしたが、肩を壊し、3年で引退。貸金業などで働いた。一方、幼い頃から成績優秀だったデイナさんはハーバード大学院で仏文学の博士号を取得し、研究者となった。「黒人と、白人の子どもがなりたい職業のステレオタイプをなぞるようだった」と振り返る。チャドさんの人生に影を落とし続けたのは、警察との関係だった。白人が多いミネアポリスで警官に車を止められて尋問されることに嫌気がさし、黒人が多い南部アトランタに移ったが、そこでも尋問は絶えなかった。バーで運転免許証の提示を求められて断り、警官からスタンガンで撃たれて留置所に入れられたことや、スピード違反を理由に、拳銃を頭に突きつけられたこともあった。11年前にミネアポリスへ戻ってからは、奨学金ローンの取り立てや造園業など時給制の仕事を転々としてきたが、昨年に建設現場で大けがし、ホームレスになった。5月からは、市が提供する施設に身を寄せる。入居者の半数が黒人だ。5月25日、そこからわずか5キロ先で、白人警官がフロイドさんの首を約8分間押さえつけ、死亡させた。食料品店でたばこを買うために払った20ドルが偽札だったとして、店員が通報したことがきっかけだった。無言のまま、フロイドさんをひざで押さえ続ける警官の動画を見て、チャドさんは体が震えた。「黒人というだけで警官に疑いの目を向けられる。自分の経験がよみがえった」。米国では、黒人の方が警察から暴力を受けやすい傾向が顕著だ。米メディアの統計によると、年間で約1千人が警察に射殺されているが、黒人が射殺される率は白人の約2・5倍だ。ミネアポリスでは、黒人が人口の約2割にとどまるが、市警が押さえつけたり、たたいたりする「有形力の行使」の件数は、約6割が黒人を対象としていた。ミネソタ大准教授になったデイナさんは、「フロイドさんに起きたことは、兄に起きても不思議はなかった」と話す。自身は警官に職務質問されたことも、交通切符を切られたこともない。事件をきっかけに、久しぶりに兄と連絡を取り、現場を訪れた。白いメッセージボードに追悼の言葉を書き込むと、2人の影が映った。そこには、肌の色が映らない。「その瞬間、黒人と白人ではなく、ただの兄弟だと実感できた」と、デイナさんはシャッターを切った。
■「白人、もはや国の代表でない」 デモ、人種・世代超え
 米メディアによると、フロイドさんの事件に端を発した抗議デモは、全米の2千カ所以上で行われてきた。公民権運動を率いたキング牧師が1968年に暗殺されて以来の規模ともいわれる。警察による黒人の殺害を抗議するデモは、これまでもあった。ただ、今回は白人の若い世代が多く加わっているのが特徴だ。6月上旬にニューヨーク、ワシントン、ロサンゼルスで行われた調査では、参加者の6割以上が白人で、4分の3が34歳以下だった。フロイドさんの事件にかかわった4人の元警官がすぐに起訴されたのは、デモのうねりが影響しているとみられる。また、人種差別や奴隷制度に関連した人物の像が撤去されたり、企業が「差別的」とされた商品を見直したりするなどの動きも出ている。最後まで拘束されていた奴隷に、制度の廃止が告げられたことから「奴隷解放記念日」とされる19日は、デモの人数が特に膨れあがった。ニューヨークで加わったエリザベス・チャパさん(20)は、インスタグラムでデモを知ったという。「選挙で存在感を発揮してきた白人、富裕層、年配の人たちはもはや、この国を代表しているわけではない。フロイドさんの事件は、政治が我々の生活の一部なのだと、気づかせてくれた」。このエネルギーが11月に行われる大統領や議会の選挙にどうつながるのかも、注目される。上院選に向け、23日にケンタッキー州であった民主党の予備選では、差別の解消を訴えた35歳の黒人男性が予想以上の健闘を見せるなど、影響は既に出始めている。

<農業・製造業における男女共同参画>
PS(2020年6月29、30日、7月2日追加):日本農業新聞が、*6-1のように、「①新型コロナ対策では世界で女性リーダーの手腕が際立った」「②性別に拘らず個性と能力を十分に発揮できる社会を目指して1999年に施行された男女共同参画社会基本法の施行から20年たっても、日本は男女格差が根強く残っている」「③誰もが働きやすく暮らしやすい農業・農村を作りたい」「④2019年度の『農業白書』は、『輝きを増す女性農業者』を特集した」「⑤生産者と生活者・消費者の視点を併せ持つ女性農業者が農業経営に関与しているほど利益増加率が高い」「⑥ 2019年までの20年間に農業系は女性の割合が10%増えて半数になった」「⑦農村地域の女性の人口は子育て世代の25~44歳で特に減少率が大きい」「⑧仕事に家事・育児を加えた労働時間は農林漁業者では女性が長く負担が大きい」「⑨収入を含め魅力的な職場を増やしていかなければならない」「⑩ライフステージに合わせて勤務時間や業務などを選べるようにする」等を記載している。①②は紛れもない事実だが、農業分野における③④⑤の認識があれば、農業に従事する女性の地位向上に大いに資するだろう。しかし、⑥にもかかわらず、⑦になる理由は、⑧のように農村では特に女性の地位が低く、女性にとっては住む魅力に欠けるからである。しかし、⑨を実現させれば、⑩のようにライフステージに合わせて勤務時間や業務を選ぶには、職住が接近し家族労働を中心とする農業の方が他の業種より優位だ。
 また、*6-2のように、日本政府が「食料安全保障強化」を打ち出し、外国産から国産への原料切り替え等による国内生産基盤の強化や国民の理解醸成を進めるようにしたことは、国内農業に追い風になる。そして、農林水産物や食品の輸出も含めて加工食品や外食・中食向けの原料を国産に切り替えれば、国内での加工が増えて女性や外国人労働者の必要性はさらに高まる。
 そのような中、外国人労働者の子どもは、教育すれば両国の文化を理解し日本をふるさととする貴重な人材になるにもかかわらず、日本には外国人労働者の子どもを邪魔者のように扱ったり、無視したりする見方がある。そのため、*6-3のように、国際人権規約や子どもの権利条約に従って外国籍を含めた子どもの「学ぶ権利」を保障する必要があり、これは不就学児を作らないために、早急にやるべきだ。
 なお、*6-4のように、日産自動車(以下“日産”)は、①新型コロナによる販売不振 ②巨額の構造改革費用 で純損益が6,712億円の赤字に転落し、内田社長が6月29日の定時株主総会で「必ず成長軌道に戻す」と述べられたそうだが、①の販売不振は新型コロナ以前から起こっており、日産はEVや自動運転の強みを活かしてその中心顧客である女性や高齢者が気に入るデザインの車にそれらを組み込めばよかったのに、そうしなかったため不振に陥っているのであり、これは、日産が比較的若い男性を中心とする会社であることに原因があるだろう。また、②の構造改革は、グローバルな視野を持った外国人経営者ゴーン氏に対する反発にすぎず、経営の正攻法ではないため、そのまま進めば業績回復は難しいと思われる。
 また、*6-5のように、2008年に開発を始めた三菱航空機の国産ジェット(MRJ)が航空会社への納入を6度も延期したのは、日本の技術力の低さを露呈した深刻な事態だ。先進国より遅れて開発し始めたジェット機なら、既存のものより何かで優れているか、今までにない航空機(例えば、燃料電池を動力とするとか)で代替品がないか、価格が安いかでなければ買う理由がないのに、三菱重工は価格が安いわけではない日本製品の技術力が劣っていることを世界中に見せつけてしまったのだ。従って、新型コロナは言い訳にすぎず、2番手なのに納入延期ばかりしている従来型航空機には期待できない。これは、少子化した日本で日本人男性に下駄をはかせて雇用した結果、創造力や技術力などの能力が落ちているということではないのか?

   

(図の説明:1番左の図のように、農林水産地帯は自然エネルギーの宝庫であるため、発電は半農半Xの強力なXになりうる。また、左から2番目の図のように、農地は集積され担い手に集まってきているため、大規模農業も可能になりつつある。しかし、女性は、担い手の妻ではなく担い手になれるのかと言えば、右から2番目の図のように、2019年でもJAの正組員に占める女性の割合は23%程度で、担い手に占める女性の割合はもっと低い。さらに、JAの役員に占める女性の割合も10%以下だ。なお、1番右の図のように、外国人労働者は増加し続け、2018年には260万人を超えて重要な労働力になっているが、まだ外国人差別は多い)

*6-1:https://www.agrinews.co.jp/p51148.html (日本農業新聞論説 2020年6月23日) 男女共同参画週間 多様性で魅力ある農を
 今日から男女共同参画週間。新型コロナウイルス対策では世界で女性リーダーの手腕が際立ったが、男女共同参画社会基本法の施行から20年たっても日本では男女格差は根強く残る。コロナ禍で、働き方の多様性への意識が高まった。この風に乗って、誰もが働きやすく暮らしやすい農業・農村をつくりたい。同基本法は、性別にかかわらず個性と能力を十分に発揮できる社会を目指し1999年に施行された。同年施行の食料・農業・農村基本法も男女共同参画を規定。女性の社会参画を後押しする法が整備された。2019年度の「農業白書」は、両基本法施行から20年の節目として「輝きを増す女性農業者」を特集した。そこで紹介している調査結果が、女性の活躍の進展と、依然として参画を阻む要因を浮き彫りにしている。農業経営に女性が関与しているほど経常利益の増加率が高い。また、学科別高校生の男女比では、19年までの20年間に農業系は女性の割合が10ポイントほど増え半数になった。加工・販売など幅広い科目設定が奏功した。一方で、農村地域の女性の人口は、子育て世代の25~44歳で特に減少率が大きい。また「医療・福祉分野での需要増加で、女性労働力確保に関する競合が強まっている」(白書)。学ぶ段階で農業分野に意欲的な女性を得ながら、就職の過程で都市や他分野へ流出している。収入を含めて、魅力的な職場を増やしていかなければならない。女性の社会参画を阻む要因の一つは、今も家事・育児・教育・介護の負担だ。仕事に家事と育児を加えた労働時間は、農林漁業者では女性が長く、負担が大きい。女性活躍の指標として役員や管理職の数と割合を話題にしがちだが、労働を男女で分かち合うことが女性の参画の土台である。大事な視点は二つ。一つは、家庭内の役割分担の割合を可視化すること。家庭も組織である。特定の人の労働が過重なら全体が回らない。まずは家族会議から始めよう。もう一つは、ライフステージや能力に合わせて勤務時間や業務などを選べるようにすること。柔軟な勤務体系で従業員が定着している農業経営がある。また、得意分野で業務を分担し、妻が経営・販売を、夫が生産部門を担い収益を上げている事例もある。多様な働き方を可能にすることで、男女ともに働きやすくなる。全てをこなす女性のロールモデル(模範となる人物像)には無理がある。仕事と家事や育児などの役割全てを女性に求めるのはやめよう。頑張り過ぎて心身に不調を来たしたり、寿命を縮めたりする女性は多い。コロナ禍で国民が気付いたのは、農業や医療・福祉といった「生命産業」の大切さだ。これらを重視する経済・社会に変えていかなくてはならない。それには、生産者と生活者・消費者の視点を併せ持つ女性農業者の能力発揮は欠かせない。

*6-2:https://www.agrinews.co.jp/p51190.html (日本農業新聞 2020年6月27日) [新型コロナ] 政府、食料安保を強化 コロナ対応 国産切り替え推進
 政府は26日、農林水産業・地域の活力創造本部(議長=安倍晋三首相)を開き、新型コロナウイルスによる食料供給リスクの高まりを踏まえ、農林水産政策の展開方向として「食料安全保障の強化」を打ち出した。外国産から国産品への原料切り替えなどによる国内生産基盤の強化、国民理解の醸成を進める。各施策で検討を進め「農林水産業・地域の活力創造プラン」や2021年度予算概算要求に反映する。安倍首相は「食料の安定供給は政府が果たすべき最も重要な責務。国内の生産基盤を強化し、食料自給率や自給力の向上を図ることが必要」だとし、関連政策の見直しを関係閣僚に指示した。同省は、新型コロナ発生後、中国産野菜の輸入が一時的に滞ったことなどを受け、日本にも影響が及んだと指摘。欧米では労働力不足で収穫などが停滞し、物流が混乱する恐れもあるとした。アフリカ豚熱や中東などで猛威を振るうサバクトビバッタなども挙げ、「食料供給を脅かす新たなリスクが発生」と分析。半面、国民の食料供給への関心が高くなっているとし、食料安保を今後の政策の柱に据えた。食料・農業・農村基本計画に盛り込んだ内容などを踏まえて取りまとめた検討事項のうち、「国内生産基盤の強化」では、加工食品や外食・中食向け原料の国産への切り替えを重視する。生産現場を支える取り組みとして、スマート技術の開発・普及や農業支援サービスの育成を挙げた。さらに、食料安保や農林水産業の役割への理解を促す国民運動を展開するとした。今後の政策課題のうち「農産物検査規格の高度化」は、穀粒判別機の導入拡大などを念頭に置く。一方、規制改革推進会議も農産物検査の見直しを検討事項に挙げており、近く政府への答申を取りまとめる。「セーフティーネットの見直し」では、収入保険について、野菜価格安定制度など関連制度全体を検証し、総合的な対策の在り方を検討する。農林水産物・食品の輸出額を30年に5兆円とする政府目標の実現に向け、中国向けの輸出などを強化することも盛り込んだ。

*6-3:https://www.kochinews.co.jp/article/377797/ (高知新聞 2020.6.29) 【外国人の就学】「学ぶ権利」を保障したい
 日本も批准している国際人権規約や子どもの権利条約では、外国籍を含めた子どもの「学ぶ権利」を保障している。にもかかわらず、日本にいる外国籍の子どもは、その恩恵を十分受けることができなかった。やっとというべきだろう。政府が閣議決定した日本語教育推進の基本方針に、外国籍の子ども全ての就学機会確保を目指して状況把握を進めたり、日本語教育の水準向上を図ったりすることが明記された。さらに、外国人への日本語教育は国や自治体の責務とも記された。基本方針は、昨年施行された日本語教育推進法に基づいた指針だが、まだまだ第一歩にすぎない。就学していない子どもの詳しい状況確認を国は急ぐとともに、「学ぶ権利」が保障されるよう予算措置を含めた体制整備を進めるべきだ。文部科学省の昨年の調査で、本来なら小中学校に通っている年齢にもかかわらず外国人学校などを含めて不就学の可能性がある子どもは全国に約1万9千人いた。調査自体が初めてで、対象となる子ども全体の16%近くを占めたという。文科省によると、外国籍の子どもが公立小中学校への就学を希望すれば、国際人権規約などにより無償で教育が受けられる。しかし、日本人と違って外国人には就学義務がなく、それが不就学が増える理由の一つとされる。また、保護者や子どもが日本語を十分理解できなかったり、住んでいる自治体のサポートが整っていなかったりすると学校に行かないケースがあるという。在留外国人は、30年前の約108万人と比べて3倍近くの約290万人に増えている。昨年4月には外国人材を受け入れる新たな制度も始まり、家族を含めて外国人がさらに増加することが見込まれる。就学していない児童生徒を増やさないためには実態把握に加えて、自治体などによるきめ細かい日本語教育が大事になる。基本方針では、状況把握のために自治体の関連部署の連携を促した。例えば住民基本台帳や福祉、国際交流を担当する部署などが連携して就学状況を調べ、保護者に学校の情報を提供するよう求めている。日本語がよく分からない子どもや保護者らには、レベルに応じた語学教育が大切になる。基本方針では、日本語教育に関わる全ての人が参照できる学習や教育、評価の指標を作る計画も確認した。さまざまな施策に対して日本語教育推進法は国による財政措置を求めている。外国人のニーズにあった日本語教育が円滑に進むよう自治体への支援を急いでほしい。先進地の例を共有することも大切だ。外国人の働く工場が多い岐阜県可児市では、NPO法人と行政が連携した就学支援を長年続けている。「子どもは環境を選べない」。そんな思いで関係者は活動しているという。共生社会を支えていくには地域の協力が大切だ。

*6-4:https://www.chugoku-np.co.jp/news/article/article.php?comment_id=656964&comment_sub_id=0&category_id=1206 (中国新聞 2020/6/29) 日産社長「必ず成長軌道に戻す」 株主総会、巨額赤字を謝罪
 日産自動車は29日、横浜市の本社で定時株主総会を開いた。2020年3月期連結決算は、新型コロナウイルスの影響による販売不振や、巨額の構造改革費用で純損益が6712億円の赤字に転落。内田誠社長兼CEOは業績悪化を謝罪し「必ず成長軌道に戻す。この危機を乗り越えたい」と述べ、株主の理解を求めた。赤字額は前会長カルロス・ゴーン被告が大規模リストラを実施した00年3月期(6843億円)に迫る。内田氏は「株主の皆さまには大変申し訳ない」と陳謝した。業績悪化に伴う株価低迷に関する株主の質問に対し「株価を健全なレベルに戻すことは経営層の使命だ」と強調した。

*6-5:https://digital.asahi.com/articles/ASN6H5RP6N6HOIPE01D.html (朝日新聞 2020年6月15日) 国産ジェット、開発態勢を大幅に縮小 コロナが追い打ち
 三菱重工業傘下の三菱航空機は15日、国産初のジェット旅客機「スペースジェット(旧MRJ)」の開発態勢を大幅に縮小すると明らかにした。開発に向けた作業は一部中断され、いっそうの遅れは避けられない。これまで航空会社への納入を6度も延期したことで三菱重工本体の経営を圧迫。そこへ新型コロナウイルスが追い打ちをかけた。三菱重工は、新型コロナによる収益悪化を背景に、今年度のスペースジェットの開発費を約600億円と前年から半減させた。そのため三菱航空機は現在約1600人いる国内の従業員を段階的に半分ほどまで減らす。米国とカナダにある開発拠点3カ所のうち、米ワシントン州にある飛行試験拠点を除く2カ所を閉鎖することも決めた。実用化の大前提となる「型式証明(TC)」を取得するために昨年始めた米国での飛行試験も中断。新型コロナの影響で最新の試験機を日本から持ち込めないことなどを踏まえ、当面試験はせず、今年度中は過去の試験データの検証などにあてる。人員削減は近年積極的に採用してきた外国人技術者にも及ぶ。海外航空機メーカーでの経験が豊富なアレックス・ベラミー最高開発責任者は6月30日付で退任。後任は置かず、技術トップのチーフエンジニアに川口泰彦氏を据える。スペースジェットをめぐっては、2008年に始めた開発作業が難航し、航空会社への納入開始は度々延期されてきた。今年2月にはそれまでの「20年半ば」から「21年度以降」へ6度目となる延期を発表。現在開発する「M90」の後発機となる、より小型の「M100」の計画をいったん凍結することも決めている。新型コロナはスペースジェットを購入する立場の航空会社も直撃している。すでに約300機を受注済みだがキャンセルが発生する可能性もある。積極的な営業活動も見あわせている。コロナの沈静化まで開発も「足踏み」状態となる。

<変だった専門家会議と厚労省の論調>
PS(2020年7月2、3日追加):PCR検査を抑制し、人との接触を避けて国民に我慢を強いることばかりを推奨した専門家会議と厚労省は、科学的にも人道的にもおかしかった。そのため、*7-1のように、厚労省と専門家会議が「①感染症予防の観点から、すべての人にPCR検査をすることはウイルス対策としては有効でない」「②設備や人員の制約のため、限られたPCR検査の資源を重症化の恐れのある方に集中させる」「③相談や受診の基準(目安)は37.5度以上の発熱が4日以上続いた場合」として、それを何カ月も改善しなかったことは、「④誰が、どういう目的で、そうしたのか」を専門家会議の議事録から明らかにすることが最も重要だと思う。この間、「⑤帰国者・接触者相談センターに電話しても基準にあわない」などとして患者が検査を受けられず、感染者を隔離しないことで感染が広がり、感染者自身も重症化して自宅で亡くなり、先進国とは思えない医療となっていた。さらに、トップが専門家会議のメンバーである日本感染症学会と日本環境感染学会は、「⑥PCR検査は早期に検査しても精度の点で頼りにならない」「⑦軽症例にはPCR検査を奨励しない」とPCR検査抑制を打ち出し、理由として「⑧患者が殺到して医療体制が混乱するのを防ぐ」とした。しかし、日本は多数の検査可能な施設があり、技術開発もできるため、PCR検査を増やそうと思えば増やせたのだ。
 この専門家会議は、「⑨人と人との接触8割減」「⑩新しい生活様式」など医学的evidenceの示されないことを次々に発表していたため、6月24日に「十分な説明ができない政府に代わって前面に出ざるを得なかった」「コミュニケーションの専門家が必要」などと東京都内で会見していたのを見た時、私は専門家として責任逃れをしているように感じた。わかりやすい説明やコミュニケーションとは、根拠を示して明確に行う説明であるため、*7-2の西村経済再生担当相の会議廃止表明にもあまり違和感は感じなかった。にもかかわらず、メディアが途中経過の検証もせず、政治家のみを批判して専門家会議や厚労省の方針にメスを入れないのは、本当の批判機能を果たしていない。
 なお、最近、換気が必要とも言われているが、窓を開けられないビルも多く、関東は放射性物質が飛んでいるため窓を開けるのも必ずしもよくない。そのため、私は、従来のエアコンの空気取り入れ口に換気扇のフィルターを張っているが、これでかなりの埃がとれる。本当は、*7-3の「空気清浄機付きエアコン」に変えるのがよいが、エアコンの中でプラズマや紫外線を発生させて殺菌した空気を出すようにすればさらによい。そして、これはすぐ製品化できて、食品工場・病院・学校・オフィス・家庭などで空気の流れを考慮して設置すれば効果的だろう。
 結局、日本の新型コロナ死亡率は5.1%(死者数977人/感染者数19153人、7月2日現在)で、世界の新型コロナ死亡率は4.79%(死者数521,298人/感染者数10,869,739人、2020年7月3日現在)であり、統計の取り方に違いがあるので単純比較はできないものの、日本の死亡率は世界より高く、日本が低いとは決して言えなくなった。

*7-1:https://webronza.asahi.com/business/articles/2020061600003.html (論座 2020.6.16) PCR検査抑制論者たちの責任を問う、国民に我慢を強いた政府、専門家会議、医学会の役割と責任を検証する、木代泰之 経済・科学ジャーナリスト
 新型コロナの第1波は、東京都で依然くすぶっているものの、2~5月に比べれば全国的に落ち着きを見せている。こういう時期にこそ第1波における課題を検証し、第2波、第3波に備えるべきだと考えるが、「それは収束後でよい」というのが、安倍首相の見解である。そこで筆者なりに、第1波でもっとも問題となった「PCR検査抑制論」について、政府の新型コロナウイルス感染症対策専門家会議、日本感染症学会、日本環境感染学会などの資料をもとに、検証してみたい。
●専門家会議は「すべての人にPCR検査はできない」
 PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)検査法とは、ウイルス遺伝子の特徴的な一部を切り取り、特殊な液体の中で増幅させる検査法である。2月24日の専門家会議の見解は「PCR検査は新型コロナウイルスを検出できる唯一の検査法であり、必要とされる場合には適切に実施する必要がある」とし、PCR検査実施の意義を強調している。ところが、それに続けて「感染症予防の観点からは、すべての人にPCR検査をすることはウイルス対策としては有効ではない。産官学で努力しているが、設備や人員の制約のため、すべての人にPCR検査をすることはできない。限られたPCR検査の資源を、重症化の恐れのある方に集中させる必要がある」と述べている。つまり、コロナ感染を検出するにはPCR検査しかないが、PCR検査の能力が足りないので、重症化しそうな人以外は検査するなとブレーキをかけている。厚労省は2月17日に、相談や受診の基準(目安)を「37.5度以上の発熱が4日以上続く」と公表しており、24日の専門家会議はその方針を裏打ちした。このPCR検査抑制論が噴き出してきた2月は、冒頭のグラフのように検査体制が機能しなかった時期に当たる。
●帰国者・接触者相談センターに電話しても相手にされず
 この頃、医療の現場では混乱が始まっていた。千葉県のある開業医はこう振り返る。「千葉で最初の感染者が出たのは1月31日。2月に入ると、コロナを心配する発熱患者が訪れ始めた。肺炎患者では喀痰検査、採血、画像診断などの結果を見て総合的に診断するが、コロナでは早期発見のためにPCR検査が必須。火事と同じで初期消火が一番大事なのです」。患者は窓口の帰国者・接触者相談センターに検査を依頼したが、症状が基準に達していないとして相手にしてもらえない。「そこで自分が直接電話したら、センターは『依頼が多すぎて対応できない』と断ってきた。第一線にいる医師として、なぜ診断=PCR検査ができないのか、憤慨にたえなかった」。一刻も早いPCR検査を望む患者や医師と、できるだけ検査をさせまいとする厚労省や専門家会議。そのギャップはあまりにも大きかった。
●2009年に掲げた「PCR検査体制の強化」は実現されず
 PCR検査の必要性は、2009年の新型インフルエンザ(パンデミック2009)の流行時から強く認識されていた。厚労省が翌10年にまとめた報告書は、PCR検査体制の強化、危機管理の専門体制強化などを反省点として挙げている。しかし、それは文章に書いただけであって、PCR検査体制の強化は10年後の今年に至っても実現していなかった。台湾や韓国との違いはそこにあった。
●「PCR検査は限界があり万能ではない」と抑制に動いた2つの学会
 今回の緊急事態に、医学会はどのように対応していたのだろうか。日本環境感染学会は2月13日、PCR検査に関する最初のコメントを出した。検査の対象者を「37.5度以上の発熱や呼吸器症状があり、湖北省への渡航歴がある人、その濃厚接触者など」に絞っており、その後の感染急拡大について、今から言えば「甘く見ていた」ことは否定できない。2月21日には、日本環境感染学会と日本感染症学会が連名で声明を出した。「ウイルス検出のための検査(PCR法)には限界があります」という見出しの下、「新型コロナはインフルエンザに比べてウイルスが1/100~1/1000と少なく、検査結果の判定を難しくしています。特に早い段階でのPCR検査は決して万能ではないことをご理解下さい」と述べている。つまりPCR検査法は、早期に検査しても精度の点で頼りにならないとして、はっきりPCR検査抑制論を打ち出している。
●更に「軽症例にはPCR検査を奨励しない」と踏み込む
 更に4月2日、両学会は連名で臨床対応についての声明を出した。「PCR検査の対象者は原則、入院治療の必要な肺炎患者でウイルス性肺炎を強く疑う症例とする。軽症例にはPCR検査を奨励しない」と述べ、一段とPCR検査の抑制に踏み込んだ。「患者が殺到して医療体制が混乱するのを防ぐ」というのが理由だが、この10年間、厚労省がPCR検査の体制整備を怠り、そのしわ寄せが国民に来ていることへの言及はない。感染症の2学会が患者の殺到を抑える方向で政府と足並みをそろえたことで、大学や医療機関の研究者は委縮し、一部の人を除いて異論を述べる勇気を失ってしまった。この両学会のトップ(理事長)は専門家会議のメンバーでもある。
●PCR検査が広く行えるよう政府に働きかけるのが学会の役目
 先の千葉県の開業医は、第一線の医療現場の声として、「両学会は、政府のやり方を補完するのではなく、早期段階でもPCR検査が広く行えるよう、政府に対して人員や物資の動員、体制整備、予算確保などに全力を尽くすよう強く求めるべきだった」と、疑問を投げかける。加藤厚労大臣は5月8日、「37.5度以上の発熱が4日以上」という相談・受診の基準について、「目安だったのに基準のように誤解されていた」と述べ、勝手に「誤解」した国民や保健所に責任があるとした。上記の基準は、検査を望む国民や医師に抑制の圧力をかけ、PCR検査体制の不備という厚労省の失態を隠すことに本当の狙いがあったのだろうと、今にして納得がいく。
●PCR検査が広く行えるよう政府に働きかけるのが学会の役目
 先の千葉県の開業医は、第一線の医療現場の声として、「両学会は、政府のやり方を補完するのではなく、早期段階でもPCR検査が広く行えるよう、政府に対して人員や物資の動員、体制整備、予算確保などに全力を尽くすよう強く求めるべきだった」と、疑問を投げかける。加藤厚労大臣は5月8日、「37.5度以上の発熱が4日以上」という相談・受診の基準について、「目安だったのに基準のように誤解されていた」と述べ、勝手に「誤解」した国民や保健所に責任があるとした。上記の基準は、検査を望む国民や医師に抑制の圧力をかけ、PCR検査体制の不備という厚労省の失態を隠すことに本当の狙いがあったのだろうと、今にして納得がいく。
●委員の発言記録がない専門家会議の議事録
 今、PCR検査は従来の保健所、地方衛生研究所、国立感染症研究所という行政ルートの他に、地元医師会や自治体が民間検査会社と組んで独自に検査体制を整えつつあり、ようやく改善の方向に向かっている。もっと早い段階でそう動くべきだった。政府の専門家会議については、委員発言の議事録がなかったことが最近明らかになった。内部でどんな議論があったのか、PCR検査抑制には誰がどんな意見を言ったのか、不透明なままだ。政府に助言する専門家会議の議事録は、後日、政府の対応を検証するための重要な資料である。議事録が政府や官僚に都合よく作文されないためにも、委員発言は正確に残しておかなくてはならない。

*7-2:https://www.jiji.com/jc/article?k=2020062700143&g=pol (時事 2020年6月27日) 専門家会議、唐突に幕 政権批判封じ?政府発表前倒し―新型コロナ
 新型コロナウイルス対策の方向性を主導してきた政府の専門家会議が突如、廃止されることとなった。政府が廃止を発表したのは、折しも会議メンバーが位置付けの見直しを主張して記者会見していたさなか。あっけない幕切れには、政権批判と受け取られかねないその提言を打ち消す思惑がにじむ。一連の経緯を検証した。
◇苦い経験
 「え?もう1回言って」。24日夕、東京都内で会見していた専門家会議の尾身茂副座長は、記者から西村康稔経済再生担当相が会議廃止を表明したことを問われ、戸惑いをあらわにした。専門家会議の見直し自体は、5月の緊急事態宣言解除前後から尾身氏らが政府に打診していたこと。この日の会見では、政府の政策決定と会議の関係を明確にする必要性を訴えていた。背景には「十分な説明ができない政府に代わって前面に出ざるを得なかった」(会議メンバー)ことによる苦い経験がある。会議は国内で流行が広がった2月、感染症専門家を中心に置かれ、「人と人の接触8割減」「新しい生活様式」などを次々と発表。政府は提言を「錦の御旗」とし、国民に大きな影響を及ぼす対策を実行に移した。その結果、専門家会議が政府のコロナ対応を決めているように映り、メンバーは批判の矢面にも立つことに。5月4日の安倍晋三首相の会見では、同席した尾身氏がPCR検査の少なさについて説明に追われた。会議の存在感が高まるにつれ、経済・社会の混乱を避けたい政府と事前に擦り合わせる機会が拡大。5月1日の提言では緊急事態宣言の長期化も念頭に「今後1年以上、何らかの持続的対策が必要」とした原案の文言が削られた。関係者は「会議の方向性をめぐりメンバー間でもぎくしゃくしていった」と明かす。
◇高まる相互不信
 揺れる専門家を政府は「どうしても見直すなら政府の外でやってもらう」(内閣官房幹部)と突き放していた。亀裂を表面化させない思惑が働いたことで最近になってから調整が進み、(1)会議の廃止(2)法的な位置付けを持つ新型コロナ対策分科会への衣替え(3)自治体代表らの参加―が固まった。当初は尾身氏らの提言を受け、25日に発表する段取りだった。それが覆ったのは24日の尾身氏らの会見直前。「きょう発表する」。西村再生相の一声で関係職員が準備に追われた。ある政府高官は西村氏の狙いを「専門家の会見で、政府が後手に回った印象を与える事態を回避しようとした」と断言する。専門家会議の脇田隆字座長や尾身氏には連絡を試みたが、急だったため電話はつながらないまま。「分科会とは一言も聞いてない」とこぼす専門家らに、内閣官房から24日夜、おわびのメールが送られた。後味の悪さが残る最後のボタンの掛け違い。会議メンバーの一人は「政治とはそういうもの。分科会で専門家が表に立つことはない」と静かに語った。

*7-3:https://www.bcnretail.com/news/detail/20191126_146567.html (BCNOR 2019/11/26) シャープ、業界唯一の「空気清浄機」付きエアコン 従来比99%ホコリ侵入抑制
 シャープは11月26日、業界で唯一、空気清浄機を搭載したプラズマクラスターエアコンの新シリーズ「Airest(エアレスト)」4機種を12月19日に発売すると発表した。「室内の空気清浄」と「本体内部の清潔性」を徹底的に追求し、空気清浄機の業界基準をクリア。従来比99%ホコリの侵入を抑制するなど、業界No.1の空気清浄力を持つ独特な今回の製品は、年末商戦の目玉になるかもしれない。Airestシリーズは、従来のエアコンの本体構造を抜本的に見直し、空気の吸い込み口全てを集じんフィルターで覆った新構造を採用。これにより、空気清浄機の業界基準をエアコンで唯一クリアした。税別の実勢価格は22万円前後からとしている。室内の空気だけでなく、集じんフィルターがカビ発生の原因となるホコリや菌を除去するので、本体内部を清潔に保つことができる。フィルターで除去できない、付着したにおいやカビ菌にも効果を発揮する「プラズマクラスターNEXT」も搭載し、最適な空気環境を実現する。掃除をする際は、引き出して手入れできる。吹き出し口には、シャープ独自の上下両開きロングパネルで気流を制御。大きなパネルで、風を感じにくい快適な気流を遠くまで届ける。暖房時はパネルを下から開き、風を抑え込んで足もとに暖かい風を送る。冷房時はパネルを上から開き、天井方向へ風を持ち上げて、風が直接体に当たらないように制御する。Smart Appliances&Solutions事業本部の中島光雄副本部長は、「『空気の浄化』がエアコンの基本機能として求められている。ただ、従来の構造では、空気清浄機を搭載するとそれが抵抗になり、風量が低下してしまう。しかし、新製品は当社の空気清浄機に搭載されている機構を採用したことで、フィルターを搭載しても風量を低下させないようにした。空気清浄機と呼ばれる唯一のエアコン」と紹介した。このほか、気象予報を活用したクラウドAIによる運転制御により、日中から睡眠時まで快適さを保つ機能などを搭載。気象予報で得られたデータを基に、花粉やPM2.5への対策として風量/センサーの感度を最適化する。また、COCORO AIRアプリと連携すれば、フィルターなど消耗品の状況や部屋の汚れ度合を確認することができる。

<電通への委託の意味は・・>
PS(2020年7月3日追加):新型コロナによる自粛で収入が減った中小企業に最大200万円支払う持続化給付金は、対象事業者が約200万もあるので、総額2兆円超の巨大事業だ。しかし、これは、経済波及効果のある前向きの投資ではなく、大損した人々にちょっと補填する程度の補助金で、そんなことをするよりも、ダイヤモンドプリンセス号への対応や検疫でしっかり防御し、技術力で検査数を増やして自粛に至らせなかった方が、よほど安上がりで今後の新製品開発に資したことは言うまでもない。
 そういう持続化給付金だが、*8-1のように、経産省は業務を(社)サービスデザイン推進協議会(以下“協議会”)という電通関連のトンネル会社を通じて丸ごと電通に委託した。その委託費は、協議会が経産省から769億円で受注し、97%にあたる749億円で電通に再委託し、電通は業務の大部分をその子会社5社に外注し、子会社のうち電通ライブはさらに協議会設立に関わったパソナやトランスコスモス等に外注した。つまり、協議会から再委託された費用749億円は、電通とその子会社及び協議会設立に協力した会社が入手したことになる。検査数を増やして陽性者だけ隔離すれば一斉自粛などする必要がなかった上、市役所や税務署を使うなど持続化給付金を支払う他の効率的な方法もあるのに、経産省は電通関係に749億円も支払ったわけだ。
 何故、こういう不合理な無駄遣いが起こるのかが最も重要で、それを解決しなければ国が破綻するまでこの無駄遣いは続くと思うが、経産省は多額の金を払って電通を味方につけておく必要があったようだ。その理由は、*8-2のように、新型コロナ騒動の間に原子力規制委員会が、2020年6月13日、日本原燃の使用済み核燃料再処理工場の事故対策が新規制基準に適合しているとする「審査書案」をひっそり了承し、本格稼働の前提となる新基準に事実上適合しているというお墨付きを与えたことだ。この間、メディアは電通の広告を通じた圧力が効いていたらしく、新型コロナに関する非科学的な報道を繰り返し、政治家の確定でもない買収疑惑に時間をさいたりしながら、原発には全く触れなかったが、このようなことは他にも多々あるのである。

   
 2020.4.15毎日新聞                        2020.6.4朝日新聞

(図の説明:1番左の図のように、日本は能力があったのにPCR検査を増やさず、左から2番目の図のように、感染者が増えて緊急事態宣言を出すことになった。そのため、営業自粛によって固定費を賄えない企業が続出し、企業が、右から2番目の図のような雇い止めや倒産に至るのを防ぐため、持続化給付金等が支払われることになった。しかし、コロナ関係支出は、1番右の図のように、第1次・第2次補正予算で総額約57.6兆円、持続化給付金だけで約4.3兆円にもなった)

*8-1:https://digital.asahi.com/articles/ASN6X5597N6XULFA008.html (朝日新聞 2020年6月29日) 問題だらけの持続化給付金 経産省と電通へ疑念止まらず
●経済インサイド
 新型コロナウイルスの問題で収入が減った中小企業などに最大200万円を払う持続化給付金。対象の事業者は約200万、予算総額は1次補正予算で2兆円超の巨大事業だ。新型コロナによるダメージが深刻になった3月末から、ばたばたと準備が進んだ。経済産業省は事業の手続き業務を民間に丸ごと委託することにした。事業者の公募を前に、経産省の担当者が複数回接触していたのが一般社団法人サービスデザイン推進協議会や電通の関係者だ。協議会は2016年に電通が中心となり立ち上げた。設立から経産省の事業を10件以上受注していた。経産省はコンサルティング会社「デロイトトーマツファイナンシャルアドバイザリー」などとも接触しており、協議会や電通側だけ優遇したものではないと説明する。だが、経産省の担当者が面会した回数や時間などを比較すると、協議会がデロイトなどより上回っていた。公募には協議会とデロイトが参加した。締め切り直前の4月13日、両者は企画提案書を経産省に提出。分量は合計400ページ近い。経産省はその翌日の午後2時に、協議会を落札予定者と決めた。持続化給付金をめぐる疑問が強まっている。経産省が事業を民間委託するやり方や、電通への再委託などについて多くの問題点が浮上した。経産省は改善するとアピールしているが、情報開示は不十分で、多くの疑問は解けないままだ。入札における評価指標でもある「等級」は、落札できなかったデロイトは最高の「A」、協議会は「C」。経産省中小企業庁の職員5人で提案内容を採点し、協議会を選んだという。外部の専門家らに意見は求めていなかった。
●電通のための「トンネル団体」?
 経産省は採点結果など、選んだ理由について詳しく説明していない。入札予定価格やデロイトの入札価格も非公表だ。経産省が選んだ協議会は、東京・築地のビルに拠をかまえる。この事務所の電話番号は非公開で、事務所の入り口にあったインターホンは取り外された。野党の国会議員らが訪れても職員らの応答はなかった。設立以来、法で義務づけられている「決算公告」もしていなかった。協議会は経産省から769億円で事業を受注した。委託費の97%分にあたる749億円で、業務の大半を電通に再委託した。電通は業務の大部分を子会社5社にそれぞれ外注。子会社の電通ライブはさらに業務を、大手人材サービス会社のパソナやITサービス大手トランスコスモスなどに外注していた。協議会設立に関わった企業だ。実態のない団体が利益を抜いて仕事を丸投げしたのではないか――。こんな疑問が広がった。国会では野党側が、協議会は電通が公的事業を担うための「トンネル団体」だと追及を続ける。経産省は民間委託にあたって、なぜこんなやり方をしたのか。電通に直接発注しなかった理由について経産省は「どのような態勢で事業を受託するかは事業者側の判断」との立場だ。その上で、梶山弘志経産相は会見などで、支給対象者に電通が給付していると勘違いされかねないこと、電通の経理上好ましくないことなどを挙げてきた。こうした説明は、野党側や識者から反論された。支給対象者への振り込み名義は電通ではなく、勘違いされる恐れは少ない。経理上好ましくないといっても、企業の会計処理上の問題であり、直接発注できない理由にはならないとの見方がある。電通側は直接受注しなかったことについて、6月8日の会見で「協議会が給付金事業の経験を持っていた」などと説明している。経産省や電通の説明は説得力に乏しい。協議会を挟むことで、電通が業務を担っていることや利益や経費の内訳を見えにくくする狙いがあったのではないか――。こんな疑念が生じている。野党側は経産省へのヒアリングを重ねた。協議会や電通の担当者を出席させることも求めたが、経産省は拒否した。
●電通はいくらもうかったのか
 大きな「なぞ」は、電通がいくらもうかっているのかだ。電通は749億円で協議会から再委託された業務を、子会社5社へ645億円で外注していた。電通本体の主な利益になるのが「一般管理費」だ。経産省の規定により、まず外注費645億円の10%の64・5億円が計上できる。そこに、電通本体が担う広報費や人件費計36億円の10%にあたる3・6億円も加算できる。合わせると約68億円に上る。ここから家賃や光熱費などの支出、消費税分などを引いて余ったお金が電通本体のもうけになる。広報など実際の業務でも、手数料などとして利益が出ている可能性がある。外注先の子会社5社の利益も考えられるため、電通グループ全体でいくらもうかるのか具体的な金額はわからない。電通の榑谷(くれたに)典洋・取締役副社長執行役員は6月8日の会見で、最終的な利益を見通すのは難しいとしながら、「我々が通常実施する業務と比較すると、低い営業利益になる。不当な利益を狙うのはルール上、不可能な構造だ」などと主張した。経産省が事業をきちんと把握できていないのではないかといった懸念もある。経産省と協議会が結んだ契約では、再委託先などを含む事業の実施体制を記した「履行体制図」を出すルールがある。実施体制が変わればすぐに届け出なければならない。契約当初の体制図には協議会を含め、経産省から見て3次下請け相当までの11事業者が記されている。実際にはコールセンター業務などで何段階にもわたって、委託・外注が重ねられていた。協議会は経産省に体制図の変更をすぐに届け出ないといけないのに、していなかった。5次下請けくらいまでの60以上の事業者を記した体制図が出されたのは、事業開始から1カ月半以上経った6月23日夜。関わる事業者はさらに増える可能性もあるという。契約では、個人情報や情報セキュリティーについて、委託・外注先を含めて責任者名や管理体制を届けることになっている。これも、きちんと行われていなかった。
●税金の無駄遣い、チェックできず
 経産省が事業の全体像を把握しておかないと、税金が無駄なく使われているのか、業務が適切に行われているのかチェックできない。給付が一部で遅れたが、多重下請け構造もあって経産省の監視は十分には機能せず、責任の所在もあいまいになっている。経産省は事業について「中間検査」をする方針だ。事業終了後には精算をして「無駄なお金が出ていれば返還要求をしていく」(梶山氏)という。だが、末端の下請け企業の業務内容まで見るのは難しい。支出した金額が、適正な水準なのかどうか判断するのも困難だ。全国の中小企業などにいち早く給付金を届けなければいけないこの事業。経産省には民間に頼らざるを得ない事情がある。経産省は地方に経済産業局があるものの、拠点数は比較的少ない。ハローワークがある厚生労働省や、税務署がある財務省など他の省庁に比べ、対応能力に余裕はない。民間への業務委託先として、経産省が頼りにしてきたのが電通だった。ある広告業界関係者は、電通の企画力の高さや仕事の速さは「図抜けている」とし、こう話す。「いざとなれば電通に頼めばいいという考えがあるのではないか」
●「前田ハウス」でパーティー
 民間委託そのものが悪いわけではない。ほかの省庁や自治体などでも取り入れられているし、行政の効率化につながるとの見方もある。委託する場合は公平に業者を選び、税金を適切に使って、国民から理解されることが大前提だ。ところが、今回の事業では、国民が疑問を持つようなことが次々に発覚している。事業の責任者である前田泰宏・中小企業庁長官が、2017年に米国でのイベントを視察した際に、会場近くに借りたアパートを「前田ハウス」と称して連日パーティーを開いた。そこには、電通出身で、当時は協議会理事だった平川健司氏も同席していた。前田長官は国会で平川氏との関係を聞かれ、このパーティーとは別に2回ぐらい食事をしたことがあることも明らかにしている。野党側は経産省と電通の「蜜月ぶり」を示すものだと追及している。持続化給付金とは別の経済対策「家賃支援給付金」をめぐっては、電通の圧力問題が波紋を広げる。電通の管理職で持続化給付金の事業を担当していた社員が、イベント会社テー・オー・ダブリュー(TOW)の社員に、ライバルの広告大手博報堂に協力しないよう発言していた。持続化給付金で電通から仕事を請け負うTOWの社員は、発言をまとめ下請け企業の担当者に対話アプリで送っていた。「事業に協力をした場合、給付金、補助金のノウハウ流出ととらえ、言葉を選ばないと出禁レベルの対応をする」「すいませんが、強制的にお願いしたい次第です」などの内容だ。家賃支援事業の公募には博報堂も参加したが、経産省が選んだのはリクルート。博報堂は落選した。
    ◇
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*8-2:https://www.tokyo-np.co.jp/article/16839 (東京新聞 2020年5月13日) 青森・六ケ所村 核燃再処理 新基準「適合」 規制委了承 稼働は見通せず
 原子力規制委員会は十三日の定例会合で、日本原燃の使用済み核燃料再処理工場(青森県六ケ所村)の事故対策が新規制基準に適合しているとする「審査書案」を了承した。本格稼働の前提となる新基準に事実上適合した。今後、一般からの意見公募や経済産業相への意見照会などを経て、正式適合となる。再処理工場では、原発の使用済み燃料から、再利用できるプルトニウムやウランを取り出す。燃料を繰り返し使う国の「核燃料サイクル政策」の中核施設とされ、適合は稼働に向けた一歩となる。ただ、適合後も設備の工事計画の審査が続くため、稼働時期は見通せない。核兵器に転用可能なプルトニウムの大量保有は国際社会から懸念を招きかねず、工場が完成しても、どれほど稼働できるかは不透明だ。原燃は二〇一四年一月に審査を申請した。耐震設計の目安となる揺れ(基準地震動)を最大加速度七〇〇ガルと想定。海抜五十五メートルにあり、津波の影響は受けないとした。再処理の工程で発生する溶液や廃液が蒸発し、放射性物質が拡散する事故などに備え、冷却設備や電源を強化したとしている。十三日の会合では、規制委事務局の担当者が審査内容を説明し、五人の委員がそれぞれ重大事故対策などについて問いただした。最後に更田豊志(ふけたとよし)委員長が「審査結果に異存はないと考えてよいか」と問い掛け、委員から異論は出なかった。
◆「核燃サイクル」必要性に疑問
 建設費は当初計画の四倍の約三兆円、完成延期は二十四回、着工して二十七年でも未完成-。原発の使用済み核燃料の再処理工場(青森県六ケ所村)。民間企業ならば断念していたはずの施設が、稼働の条件である原子力規制委員会の審査を事実上通過した。繰り返し核燃料を再利用できるかのように宣伝してきた「核燃料サイクル」という夢のような政策を実現する要の施設は、稼働の必要性に大いに疑問がある。東京電力福島第一原発事故後、五十四基稼働していた原発は廃炉が相次ぎ、規制委の審査で再稼働したのは九基。今後再稼働する原発が増えたとしても、再処理で取り出したプルトニウムとウランを混ぜて作るMOX燃料を使える原発は限られ、消費量が少ない。また、MOX燃料のみを使うはずだった高速増殖原型炉もんじゅ(福井県)は廃炉。再生可能エネルギーが台頭する中、政府は原発の新増設を打ち出しておらず、高コストのMOX燃料を使う経済性に欠ける。消費者が支払う電気代が元となった約十四兆円という巨費が投じられてきた核燃料サイクルは、実現困難で破綻が明らかだ。ただ、再処理撤退も簡単ではない。最大の壁は、六ケ所村内に貯蔵されている大量の使用済み核燃料が「核のごみ」になること。青森県との取り決めで県外に運ぶ必要があるものの、各原発に置き場がなく、最終処分場は確保の見通しすらない。夢に固執したツケが重くのしかかる。
<核燃料サイクル政策> 原発の使用済み核燃料からプルトニウムやウランを化学処理(再処理)で抽出し、混合酸化物(MOX)燃料として再利用する政策。燃料の有効利用が目的で高レベル放射性廃棄物の量も少なくなるとされるが、中核となる再処理工場の完成が遅れ、各地の原発で使用済み燃料がたまり続けている。政府、電力業界は普通の原発でMOX燃料を使うプルサーマル発電を進めるが、東日本大震災以降、実施したのは4基にとどまる。

<ふるさと納税訴訟の最高裁判決は当然だった>
PS(2020年7月4日追加):*9-1のように、(私が提案してできた)ふるさと納税制度から除外した総務省の決定は違法として、泉佐野市が決定取り消しを求めていた訴訟の上告審判決で、最高裁第3小法廷(宮崎裕子裁判長)が、6月30日、国側勝訴とした大阪高裁判決を破棄して総務省の決定を取り消すよう命じた。宮崎裕子裁判長の判決は法治国家なら当然のことであり、これまで国側勝訴としていた大阪高裁の男性裁判長は法律に遡及効がないことを知らなかったのかといぶかしく思い、いくつもの行政訴訟でまともな判決を出された宮崎裕子裁判長には敬意を表する。この訴訟の内容は、*9-2のように、「①総務省が『寄付額の30%以下の地場産品』」を返礼品の基準とする地方税法を2019年6月から開始し」「②法施行前に遡って、基準外の返礼品で寄付を集めていた泉佐野市などをふるさと納税制度から締めだした」ことが妥当か否かであり、法律に遡及効はないため、宮崎裕子裁判長が「総務省の決定を違法として取り消す」としたのは筋の通った、しかし勇気のいる判決なのだ。
 泉佐野市は、*9-3にも書かれているように、i)地元関西空港に拠点を置く格安航空会社(LCC)の航空券購入に使えるポイント ii)アマゾンのギフト券 などを返礼品とすることによって寄付額を伸ばし、2017年度から2年連続で全国一の寄付を集めたことが問題視されたが、私は、i)については地場産品と見做してよいと考える。
 それよりも、工夫して寄付金を集めると「③返礼品競争の過熱がいけない」「④高所得者ほど得をする仕組みがいけない」「⑤ランキング形式で返礼品を紹介する仲介サイトの存在がいけない」「⑥制度を廃止せよ」など、無駄遣いが多くて工夫のない都市部から苦情が起こり、そちらが優先されたことの方がよほど大きな問題だ。何故なら、③の返礼品については、それぞれの自治体が自慢できるものを出して地場産を磨いた方が国全体のGDPが上がる上、その中には、農水産物だけでなく、LCC航空券や音楽会への入場券等があっても不思議ではないからだ。また、④の高所得者ほど得をするというのも変で、高所得者を大人になってから受け入れた自治体の方がずっと得しており、高所得者になるまで育てたふるさとが、個人住民税所得割額の約20%(https://furusatoplus.com/info/003/ 参照)を上限としてふるさと納税を受けても全くおかしくなく、その高所得者の老親もふるさとでケアされているのに、何と利己主義なことを言っているのか。さらに、⑤の競争がいけないというのは共産主義経済が破綻した理由そのものであり、⑥の制度廃止を唱える人やメディアがあるのは、逆切れとしか言いようがない。なお、「返礼品を廃止せよ」という声もあったが、そう言った本人は九州豪雨などに返礼品なしでいくら寄付するのか、また全体でいくら寄付が集まるのか見ものだ。

*9-1:https://www.sankeibiz.jp/workstyle/news/200630/cpd2006301615002-n1.htm (産経BZ 2020.6.30) 泉佐野市の除外決定を取り消し ふるさと納税訴訟の最高裁判決
ふるさと納税制度から除外した総務省の決定は違法だとして、大阪府泉佐野市が決定取り消しを求めた訴訟の上告審判決で、最高裁第3小法廷(宮崎裕子裁判長)は30日、除外に違法性はないとして国側勝訴とした大阪高裁判決を破棄し、総務省の決定を取り消すよう命じた。泉佐野市の逆転勝訴が確定した。高裁判決などによると、泉佐野市は地場産品以外の返礼品に加えアマゾンのギフト券を贈る手法で寄付を募り、平成30年度に全国の寄付総額の約1割にあたる約497億円を集めた。総務省は昨年6月の改正地方税法施行に伴い「返礼品は寄付額の3割以下」などの基準を設定した新制度をスタート。法改正前に高額な返礼品で多額の寄付を集めた泉佐野市など4市町の参加を認めなかった。

*9-2:https://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-1148085.html (琉球新報社説 2020年7月2日) ふるさと納税国敗訴 後出しルール許されない
 ふるさと納税の新制度から大阪府泉佐野市を除外した総務省の決定を巡る裁判で、最高裁は6月30日、国勝訴とした大阪高裁判決を破棄し、総務省の決定を違法として取り消した。泉佐野市の逆転勝訴が確定した。特定の地方自治体を排除しようとした国の強権的な手法を厳しく批判した内容であり、妥当な判決だ。法廷闘争の原因は、ふるさと納税を巡る自治体間の寄付獲得競争の過熱だ。豪華な返礼品を呼び水に寄付を集める自治体が相次ぎ、制度の本来の趣旨とは違う運用のゆがみが目立っていた。こうした過度な競争を防ぐ目的で、国は2019年3月に地方税法を改正する。総務省は「寄付額の30%以下の地場産品」を返礼品の基準とする新制度を同年6月から開始し、それまでに基準外の返礼品で寄付を集めていた泉佐野市などをふるさと納税の制度から締めだした。国の方針に従わなかった自治体に対し、新たな法制度を作り、施行前にさかのぼって責を負わせることが許されるのかが裁判の焦点になった。最高裁の示した判決は明確だ。「新制度移行前の募集実態を参加可否の判断材料にするといった趣旨はない」と改正地方税法の解釈を示し、過去の多額な寄付金集めを理由とした総務省の除外決定は違法と結論付けた。新しく作ったルールを過去にさかのぼって適用することを認めてしまえば、国の意に沿わない自治体を「後出しじゃんけん」でいくらでも狙い撃ちできることになる。2000年施行の地方分権一括法で、国と地方の関係は「上下・主従」から「対等・協力」へと改められている。国の技術的助言に従わないからといって、地方自治体に不利益な取り扱いをすることは許されない。寄付集めをエスカレートさせた泉佐野市に眉をひそめる部分があるとはいえ、自治体に対する国の関与は法的な根拠が厳格でなければならない。今回の判決は、地方自治や分権改革の成果を保持したという観点で評価できる。ふるさと納税制度も本来は、東京一極集中の税収格差を是正する地方自治の仕組みとして導入された。だが、自治体同士で税を奪い合い、地方間で新たな格差や分断を生むという矛盾を来している。泉佐野市はインターネット通販大手アマゾンのギフト券などを贈り、18年度に全国一の498億円の寄付を集めている。地域外の特産品や高額な返礼品でなりふり構わず寄付を集める手法に、最高裁も「社会通念上、節度を欠いていたと評価されてもやむを得ない」と苦言を呈している。制度導入時から想定されていた弊害を放置し、制度を進めてきた国の責任は大きい。ふるさと納税制度の見直しとともに、地方自治を保障する税制の在り方について本質的な議論を進めたい。

*9-3:https://kumanichi.com/column/syasetsu/1510003/ (熊本日日新聞 2020年7月2日) ふるさと納税判決 国と地方の関係再確認を
 ふるさと納税の新制度から除外された大阪府泉佐野市が起こした訴訟の上告審判決で、最高裁は請求を棄却した大阪高裁判決を破棄し、国の除外決定を取り消した。返礼品を巡る法規制が始まる昨年6月より前に、市が国の基準に従わず多額の寄付を集めてきた点を国が除外の理由としたことが争点となった。国側は過去の実績を判断材料とすることには合理性があると主張したが、最高裁は新制度が始まる以前の寄付金の集め方を問題にしたのは違法とし、除外決定は無効と判断した。確かに、寄付を“荒稼ぎ”する市の手法は、生まれ故郷などを応援するというふるさと納税制度の趣旨から外れている。とはいえ、意に沿わない自治体を狙い撃ちするかのように排除した国の姿勢は、地方分権の方向性を自ら打ち消すようなもので、あまりに強権的だった。国と地方は「対等・協力」の関係である。最高裁の判断を、そのことを再確認する機会としたい。ただ、市の寄付集めを巡っては、国が懲罰的に実施した特別交付税減額の取り消しを求める訴訟もあり、対立はなおも続く。制裁と反発を繰り返す実りなき対立は速やかに終わらせ、制度の立て直しを図るべきだ。2008年創設のふるさと納税制度で、泉佐野市は地元の関西空港に拠点を置く格安航空会社(LCC)の航空券購入に使えるポイントや、ネット通販大手のギフト券を返礼品とすることで寄付額を伸ばし、17年度から2年連続で全国一となった。こうした動きを問題視した総務省は返礼品の規制を本格化。17年4月には「調達費は寄付額の3割以下」、18年4月には「地場産品に限る」とする基準を設け、自治体に通知した。市は「一方的な押し付け」と反発。地場産品に限定すると自治体間に格差が生じるとして「自治体や有識者らを交えて議論すべきだ」と訴えた。だが総務省は耳を貸さず市への交付税を減額。基準に従う自治体だけを参加させる新制度から市を除外した。市も返礼品にギフト券を上乗せし、駆け込みで多額の寄付を集めて対抗した。その後、国地方係争処理委員会が除外決定の再検討を勧告したが、総務省は応じなかった。税収の奪い合いをここまで過熱させた責任の一端は国にもある。15年に減税対象となる寄付の上限を2倍にしたが、返礼品競争への対応では後手に回った。制度設計が甘かったと言わざるを得まい。税収の東京一極集中を是正し、高齢化や財政難にあえぐ地方の自治体を支援するという制度の趣旨に異論はない。ただ、返礼品に限らず、高所得者ほど得をする仕組みや、ランキング形式で返礼品を紹介する仲介サイトの存在など、現行の制度が多くの課題を抱えていることも事実だ。国は一方的に地方を従わせるのではなく、独自性を尊重し、不満の声にも耳を傾けながら最良の道を探るやり方で制度を立て直してもらいたい。

<人口分散と高速鉄道の必要性>
PS(2020年7月5日追加):関東はじめ都市に人口が集中し、混雑・地価の高騰・水不足・保育所不足などの問題が起こっている理由は、日本政府が多額の資本を投下してこれらの地域を整備し、工場や企業がこの地域に立地して雇用吸収力が高くなったため、生産年齢人口がここに流入したからである。一方、地方は育てた子どもを都市に送り出し、生産年齢人口が減少して平均年齢が上がったのであるため、地方で税収が伸びない理由は、その地方の努力不足というより政府の資本投下の結果なのだ。そのため、私は、既に人口が集中して混雑し、地価高騰・水不足等が起こっている地域に追加投資するよりは、ゆとりのある地方に資本投下した方が、日本全体としては資本効率がよいと考える。
 そのような中、*10-1のように、新型コロナ禍を契機に、中国山地への移住者を増やして都市への一極集中を是正しようというウェブ会議がインターネット上で開かれ、「①小規模分散型の社会を中国山地から構想する」「②住民の繋がりが強いのが地域の魅力」「③里山の恵みや自然に囲まれて子育てできることも魅力」とアピールしているのは面白い。
 地方の産業には、農業・漁業のほか、最近は森林管理や林業も加わっているが、それに加えて、*10-2の北フランスのように、日本企業や海外企業の進出を促すのもよいと思う。北フランス地方は、地理的優位性・豊かな生活・「TGV」を使ったアクセス・(フランスで最上級の病院を含む)あらゆるインフラの整備・コストの安さが強みだそうだ。日本の地方にも、これに似た地域は多く、バイオ・健康産業・栄養関連・デジタル産業や最先端の研究施設も、豊かで雑音が少なく環境の美しい田舎にあった方が働きやすそうだ。
 また、いつもウェブ会議やリモートワークばかりでは足りないものがあるため、高速鉄道によるアクセスの良さも重要だ。しかし、*10-3のリニア中央新幹線は、工事に伴う大井川の流量減少のみならず、陸上を走るのに地下ばかりで魅力に乏しい上、地震や噴火の際に危険だ。なお、リニアは地下しか走れない乗り物ではないため、「富士山を見つつ」「大井川を渡りつつ」など、高架を走って東海道の美しい景色を見せた方が、大井川の流量減少も起こらず、楽しみながら移動できると思われる。

  
     リニア中央新幹線(予定)     ゆりかもめ   上海のリニアモーターカー

(図の説明:1番左の図のように、リニア中央新幹線は東海道新幹線に似たルートの地下を走る予定なので、大井川の流量減少問題が出た上、左から2番目の図のように、窓が少なくて速いだけの乗り物となっており、地下を走ることによる危険性もある。しかし、リニアは、右から2番目の図の「ゆりかもめ」のように高架を走ることもでき、1番右の図のドイツの技術を採用した上海のリニアモーターカーは、「浦東国際空港⇔上海の地下鉄2号線『龍陽路駅』」間の陸上30kmを約8分で結んでおり、私も乗ったことがあるが快適だった)

*10-1:https://www.agrinews.co.jp/p51262.html (日本農業新聞 2020年7月5日) 中国山地移住者増へ 「魅力発信」ネットで議論
 新型コロナウイルス禍を契機に、都市への一極集中を是正し、中国山地への移住者を増やしていこうというシンポジウムが4日、インターネット上で開かれた。中国地方各地で活動するパネリストが、地域の魅力をどう発信するかなどについて議論した。中国山地に関する雑誌を製作する中国山地編集舎が主催した。ビデオ会議アプリを使い、約200人が参加した。持続可能な地域社会総合研究所の藤山浩所長は基調報告で、コロナ禍で都市に一極集中した大規模経済のもろさが露呈したと指摘。地域の魅力である「地元の力」を見直し、「小規模分散型の持続可能な社会を中国山地から構想していこう」と呼び掛けた。「地元から暮らしと世界をつなぎ直す」をテーマにした座談会では、鳥取県智頭町で森の中で園児を育てる幼稚園職員や山口市で小さな拠点づくりに取り組むNPOの事務局長ら7人が議論。都市住民がコロナの影響が少ない地方への移住に関心を寄せているとして、住民のつながりが強い地域の魅力をどんどん発信すべきだといった声が出た。アピールする中国山地の魅力として、里山の恵みや自然に囲まれながら子育てできることなどの意見が挙がった。

*10-2:https://toyokeizai.net/articles/-/9341 (東洋経済 2012/6/8) 年間3000人の雇用創出目指し海外企業誘致に傾注、北フランス地方投資促進開発局CEOに聞く
 北フランス(ノール・パ・ドゥ・カレ)地方には多くの海外企業が進出。トヨタ自動車がヴァランシエンヌに工場を構えるなど、日系企業の拠点立ち上げも目立つ。来日した北フランス地方投資促進開発局のヤン・ピトレ最高経営責任者(CEO)に直接投資誘致の現状などを聞いた。
●北フランス地方の最大の強みはなんですか。
 地理的な優位性でしょう。欧州でも非常に生活が豊かであり、経済発展を遂げた地域の中心に位置しています。アクセスの面でも恵まれており、仏の新幹線「TGV」を使えば、中心都市のリールからロンドンまで80分。ベルギーのブリュッセルまで35分。ドイツのケルンまでは2時間35分で行くことができます。リール~シャルル・ド・ゴール空港間は50分。「成田エクスプレス」に乗車すると、JR東京駅から成田空港までの所要時間は59分でしょう。それよりも短い。とても便利ですよ。日系企業が北フランスへ進出を考えているのであれば、パリ、ロンドン、ドイツのフランクフルトなどの代替地としても最適です。生活の質は高く、しかも、あらゆるインフラが整備されている。フランスで最上級の病院もあります。にもかかわらず、コストは欧州の他の主要都市に比べて低い。北フランスが「欧州の玄関口」と称されるゆえんです。
●北フランス地方の従業員の給与水準や賃料はパリよりも低いようですが、フランス国立統計経済研究所(INSEE)のデータによると、北フランス(ノール・パ・ドゥ・カレ)の失業率は10%を超えています。2011年10~12月期は12.7%に達し、フランス全国の平均や(パリのある)イル・ド・フランス地方、(フランス第2の都市リヨンがある)ローヌ・アルプ地方の水準を上回っています。これらの地域に比べて給料が安いのは、失業率が高いからではないですか。
 北フランス地方の失業率が高いのは若い人たちが多く住んでいるためです。人口の34%が25歳以下。仏国内では1位です。全国平均だと、25歳以下の人たちは31%にとどまっています。フランスでは若者の職探しが難しくなっています。だから、どうしても北フランスの失業率は高くなる。フランスでも南の地域へ行けば、退職者が多く暮らしているでしょう。失業者は少ないから問題ない。数字はそうした状況を反映しているにすぎません。パリで暮らせば賃料はリールの2倍。オフィスを借りると4倍です。生活費などが高い分、雇っている人には余計に給料を払わなければならない。イル・ド・フランス地方にはさまざまな企業が本社を構えている。リールもそう。でも、パリに比べて従業員の質が劣っているわけではありません。それなのに、給与水準は低い。失業率と給与水準はパラレルな関係ではないと思います。マクロ経済の観点からすれば、失業率が高ければ給料は下がるかもしれません。しかし、現実は違う。ベルギー南部の(フランス語圏の)ワロニー地域の給料は北フランスよりも20%程度高い。でも、失業率もそんなには低くないのです。雇用環境の厳しさは北フランスよりもはるかに深刻。失業率と給与水準に相関関係はないと見ています。
●北フランス地方への直接投資の現状は。
 海外からの投資誘致ではずっと追い風が吹いています。直接投資の受け入れではフランスで(イル・ド・フランス、ローヌアルプに次ぐ)第3の地域。北フランスは欧州随一の購買力を備えています。テクノロジーの面でも大きな可能性があります。研究開発には積極的です。今日では直接投資の中身も徐々に多様化が進んできました。この地域は伝統的に多くの産業の投資を受け入れてきました。自動車、鉄道などの分野です。そうした領域の投資は今も続いています。一方、最近は第3次産業、特にサービスセクターの投資も増えてきました。最先端のセクターでの投資もあります。(製薬会社の)英国グラクソ・スミスクラインの研究施設もつい最近、オープンしました。
●北フランスの産業には栄枯盛衰があったと聞きました。
 歴史を話そうとしたら1日経ってしまうかもしれません(笑)。19世紀には炭鉱がありました。製鉄や繊維産業の中心としても栄えていました。「繊維」といっても、生地製造というクラシックな分野です。今日では忘れられてしまいましたが、実はフランスで最初に航空機製造を手掛けたのもこの地域なのです。だが、1914年から4年にわたって続いた第1次世界大戦では戦場と化してしまいました。ベルギーとの国境に位置し、侵略を受けた地域でした。これを受けてフランス政府は第1次大戦後、軍需、航空機、機械など戦略的産業を南へ移転させました。トゥールーズが航空機産業の中心都市になったのもそのときからです。第2次大戦後は旧ソビエト連邦の脅威にさらされました。1970年代に入ると、大きな経済構造の変化に直面しました。炭鉱の閉山や繊維産業の移転。そして、鉄鋼業の斜陽化に伴う大規模なリストラの実施。このため、別の成長のタネを探し出さなければならなかったのです。目を向けたのは新しい産業。ただ、伝統的な領域でも大きな雇用吸収力を有する産業が残っています。鉄道がその一つ。自動車産業も工場の進出が加速するなど賑わいをみせています。鉄道産業では現在、フランス第1の地域。自動車では2番目の地域です。ロジスティクスやバイオテクノロジーでは3番目。農産物加工品では第4の地域です。一方で、新興型の産業も台頭しました。バイオテクノロジー、健康産業、栄養関連…。ただ、その歴史は古く、19世紀末にはパスツール研究所が設立されました。フランスの偉大な研究者パスツールの研究所です。今は健康関連のクラスターや大規模な大学病院のコンプレックスが存在しています。リールには「ユーロ・リール」と呼ばれるオフィス街もあります。パリの「デファンス」に次いで開発が行われた2番目のオフィス街です。フランスの第3次産業にとっては極めて重要な場所です。さまざまな企業の地方統括機能が集中しているうえ、保険会社や銀行もあります。繊維産業は進化し、先端製品を製造する会社が増えています。ただ、伝統的なテクノロジーに依存した会社が消えてしまったわけではありません。英国のウィリアム王子と結婚したキャサリン妃のウェディングドレスを作った「ダンテル・ドゥ・カレー」の生産拠点もありますよ。彼女は英国ではなく、北フランスで注文を出したんですよ(笑)。
●テレビゲームや3D技術などデジタル関連の企業も多いですね。
 トヨタの工場があるヴァランシエンヌには、「スプインフォコム」というデジタル産業で世界中に名の知られた学校があります。ヴァランシエンヌの商工会議所は「デジタル作品やビデオゲームの領域で世界ナンバーワンの学校を作った」と言っています。「スプインフォゲーム」という名の学校もあります。ピクサー、ドリームワークス、ソニー、イルミネーション・スタジオなど米国を代表するスタジオが学校の卒業生を採用しています。オンラインゲームの運営などを手掛ける「アンカマ」は4人の社員で立ち上げましたが、今では500人規模の会社に成長しました。リールに程近いところに「プレーヌ・イマージュ」というデジタル産業の集積するクラスターがあります。赤レンガ造りの建物で、「アンカマ」の本社もそこにあります。かつて工場があった場所で、敷地は2万5000平方メートル。リール市が誘致を決めました。「レイルニウム」という鉄道インフラを研究するための機関もあります。これも行政がイニシアチブを発揮。未来の鉄道インフラ作りを考えようという野心的なプロジェクトで、2017年の利用開始を目指しています。予算は5億ユーロ超。政府や地方自治体が資金を拠出。仏アルストム、カナダのボンバルディエ、独シーメンスなど鉄道関連の企業がこのプロジェクトに着目、拠点を設けています。
●海外企業の誘致で数値目標はありますか。
 日系企業は現在、49社が進出しています。これを何社にするといった目標を掲げるのは難しい。海外企業誘致の面でフランス第3の地域の座を維持するのが目標です。雇用面では日系を含めた海外企業を迎え入れることで、年間3000人に新たな職場を提供したいと考えています。
●オランド氏が大統領に就任しましたが、海外企業の誘致政策になんらかの変化は。
 それを語るのは早過ぎます。就任してからまだ、数週間です。選挙戦でも直接投資の受け入れ方針をめぐって何らかの発言があったとは聞いて言いません。

*10-3:https://www.at-s.com/news/article/topics/shizuoka/781771.html (静岡孫文 2020/7/2) トップ会談後ネットに相次ぐ静岡県批判 「駅ないからごねてる」、リニア不要論も 大井川水問題
 リニア中央新幹線工事に伴う大井川の流量減少問題を巡って26日に行われた川勝平太静岡県知事とJR東海の金子慎社長による初のトップ会談の後、インターネット上で「静岡県がごねている」と批判するコメントの書き込みが相次いでいる。県や流域市町はJRの対応が着工を遅らせているとの立場だが、ネット上では県側が着工を妨げているとの論調が目立ち、水問題を巡る地元の認識との隔たりが浮き彫りになっている。「ごねている」と書き込んだ人の多くが「静岡県にはリニアの駅がない」ことを理由に挙げる。中には県内に駅が造られないため、JRへの報復で水問題を使っているという趣旨の書き込みも。全国の注目を集めたトップ会談で、2027年のリニア開業延期が不可避となったため「静岡県のせいでリニア開業が遅れた」との主張も多数あった。一方「JR自身が着工を遅らせているように見える」などJRへの批判も以前より目立つ。新型コロナウイルスの影響でテレワークやテレビ会議が普及する中、「リニア自体が不要」の声も少なくない。「自然破壊するリニアは今や時代遅れ。リモートはリニアより速い」とのコメントは多くの支持を集めた。トップ会談でも川勝知事が「静岡県が27年開業の足を引っ張っているかのごとき発言を繰り返されている」と金子社長を非難する場面があった。金子社長は「静岡県のせいと言っているのではない」としながらも「最初に(静岡工区の工事の)締め切りが来てしまう」と静岡工区の着工遅れが開業遅れに直結する点を指摘した。

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2020.6.9~15 日本の医療・社会保障と消費税 (2020年6月16、18、21、22日追加)
    

(図の説明:左と中央の図のように、米国とフランスでは、新型コロナの流行期に超過死亡率が発生している。これは、検査数が足りず、患者の把握が不十分であれば当然生じるものだが、日本では、右図のように、3月以降の超過死亡率は公表されていない)

(1)医療崩壊を加速させた消費税制 ← 医療費を消費税非課税取引とした失政
 健康保険等の保険が適用される医療費・薬代は非課税取引とされているため、患者が医療機関で保険を使って診療を受けた場合に支払う医療費には消費税が加算されない。しかし、病院が購入した財・サービスの仕入れには普通に消費税がかかり、非課税売上に対する仕入税額控除はできないため消費税を転嫁できず、消費税分をすべて医療機関が負担することになっている。(https://www.nta.go.jp/m/taxanswer/6205.htm 参照)

 これは他産業と比較して著しく不公平・不公正であるため、「保険が適用される診療だから消費税を課さない」ということを貫徹するのなら、非課税取引ではなく0税率の課税取引か免税取引として医療機関が支払った消費税は医療機関に還付すべきだ。この不公平・不公正税制により、コロナ禍以前から病院経営は圧迫され、医療機関の弱体化や危機は起こっていたが、これが続くと、既にある医療システムが崩壊するとともに、医療従事者の質が落ち、国民の命がさらなる危険に晒される。

 この点について、*1-1のように、日本病院会が、「(現場を知らない素人の思い付きで部分的に行われる)診療報酬への上乗せでは不公平・不公正を解消できないため、課税化への転換などの抜本的措置を2020年度の税制改正で行うべきだ」と2019年8月7日に、2020年度税制改正要望を根本匠厚生労働大臣に宛てて提出したが、今のところ無視されている。

 なお、一つの医療法人が、「医療福祉」と「その他の産業」の双方を事業として行っている場合は、他の産業と同様、仕入れを売り上げに紐づけしたり、案分したりして計算するのが適切だと考える。そのほか、(何故か)著しく高価な医療器械の購入や個室・陰圧を標準とした病室への設備投資を促進する税制を拡充し、特別償却や加速償却を可能にすることも重要だ。
 
 さらに、基幹病院として公的運営が担保された医療法人は、赤字になっても維持しなければならない診療科や病床があるため、国もしくは地方自治体からの補助金や寄付制度が必要である。

 このように、不公平・不公正な消費税制のため、*1-2のように、全国の国立大病院42カ所で、高度な医療機器やベッド等の購入時に支払った消費税を診療費に転嫁できず、2014~18年の5年間に計969億円を病院側が負担していることがわかったそうだ。このほか、診察に使う機器やガーゼなどの消耗品は病院が購入時に消費税も支払うが、病院の負担になっている。私大の付属病院はじめその他の病院でも同じことが起こっている。そのため、病院側はコスト削減の工夫を重ねているそうだが、医療器具は日本とは思えない粗末なものが多く、衛生器具を節約するのは危険であるため、まずは消費税制の不公平・不公正を解消すべきだ。

 JA厚生連の病院も、*1-3のように、経営状況が厳しいそうだが、消費税10%への増税で医業収益が減っていたことに加えて、新型コロナの影響で予定した手術や入院の延期、一般外来診療の縮小などで医業収益が減収になっているのだ。基幹病院は、いつでも満床では困るのであって、普段から空床確保分も含めた診療報酬を支払っておくべきだ。そのため、新型コロナで初めて思ついたように、減収支援・医療従事者への危険手当・医療物資や機器の配給体制・病院が赤字続きで地域医療が崩壊しないようにしなければならない等々と言っているのは、近年の厚生行政の失敗にほかならない。

(2)新型コロナの検査抑制による医療崩壊
1)人命よりも行政の組織防衛優先の考え方
 確かに、安倍首相や官邸は「しっかりやります」と繰り返したが、*2-1のように、厚生労働省の動きは一貫して鈍く、PCR検査は1日2万件に届かなかった。その背景にあったのが国立感染症研究所が感染症法15条に基づいて2020年1月17日に出した新型コロナの「積極的疫学調査実施要領」で、「患者(確定例)」と「濃厚接触者」のみが検査対象とされた。

 検査体制への不満が広がると、2月6日に出した要領の改訂版で初めて対象者に「疑似症患者」が加わったが、「確定例となる蓋然性が高い場合には積極的疫学調査の対象としてもよい」という限定付きで、その姿勢は2020年5月29日の最新版でも変わらないそうで、非科学的この上ない。しかし、厚労省が実質的に所管する各地の保健所などもこの要領に従い、濃厚接触者に検査の重点を置いたため大都市中心に経路不明の患者を増やし、日本全国で外出を自粛しなければならない羽目になった。

 厚労省は、自らが適当に作ったルールにこだわり、現実との齟齬を無視するような感染症対策の失敗は今回が初めてではなく、2009年の新型インフルエンザ流行時も疫学調査を優先してPCR検査を感染地域からの帰国・入国者に集中して、いつの間にか国内で感染が広がり、神戸で渡航歴のない感染者が見つかって関西の病院を中心に人々が殺到し、2010年にまとめた報告書で反省点を記した。

 その内容は、「保健所の体制強化」と「PCR強化」だそうだが、保健所を通したことがPCR検査が目詰まりになった原因だ。官邸で「大学病院も検査に使えば」との声が出ても、厚労省は文科省が絡む大学病院での検査拡充に及び腰で、首相が「使えるものは何でも使えばいいじゃないか」と語っても組織防衛の方が優先する意識では、厚労省は命を託すに足りない組織なのである。さいたま市の保健所長は、「病院があふれるのが嫌でPCR検査は厳しめにやっていた」と話したが、これは事実だろう。

 19世紀に始まった日本の官僚機構は、日本が後進国で先進国の欧米諸国を目標にして駆け抜ければよかった時期には強力に機能したが、日本が先進国となり自らがモデルを作らなければならなくなってから機能しなくなった。その理由は、官僚機構は、前例や既存のルールにしがみつきがちで、目の前の現実を把握し、それに対応しながら工夫して新しいものを作りだすことが苦手な組織だからである。

 政府が有効な対策を打たなかったため、コロナ第2波に備えて必要なのは「日本モデル」の解体だと、*2-2は主張している。ただし、原因は、安倍首相ではなく、厚労省はじめ行政であり、わずか1か月半で今回の流行をほぼ収束させることができたのは、検査すら十分に行わないため国民が危機感を感じて自粛したという「日本ならではのやり方」だったのだ(!)。

 こうなった理由は、COVID-19が指定感染症に指定されたためで、これにより「①感染者は無症状でも強制入院となり」「②厚労省はこの時COVID-19の無症状感染者の存在を想定しておらず」「③厚労省が指定感染症に指定する4日前の1月24日には、『ランセット』が無症状の感染者の存在を報告する香港大学の研究者たちの論考を掲載していた」のだそうだ。さらに、「④無症状者も入院させなければならないため早くから病院体制の崩壊が心配され」「⑤これがPCR検査の大幅抑制に繋がり」「⑥厚労省担当課の勉強不足と不作為が国家的悲劇を生み、国立感染症研究所・保健所・地方衛生研究所が束になって行ったのが『日本モデル』」なのである。

 また、「⑦新型コロナ襲来に、国立感染研と保健所、地方衛生研究所の体制は殆ど歯が立たず、多くの『超過死亡』を出したが根拠となる数字の説明がなく」「⑧PCR検査による新規感染者数はCOVID-19の感染の勢いを正確に映していない恐れがあるため、『ランセット』が単純な超過死亡数をリアルタイムで活用することを求めており」「⑨体制としての保健所の限界は、PCR検査体制についても、発熱してからPCR検査を受けるまでに10日間を要し、指定された保健所に電話しても何日間も繋がらないという状況だった」のだ。従って、保健所の人員を増やすのではなく、検査に保健所の仲介をなくすことが必要不可欠なのである。

2)検査抑制による医療機関の外来診療拒否と重症化は、医療崩壊そのものである
 PCR検査が抑制されたことによって、*2-3にも、「⑩留学先のカナダから帰国して間もない女性が39度近い熱を出したが、医療機関4カ所から外来受診を断られ、保健所の相談電話も繋がらず、内臓疾患だったことが判明した」「⑪日本は諸外国と比べて検査数が少ないと批判が高まり」「⑫政府は検査能力を増強したが、目標の『1日2万件』を達成したが、実際の検査数は半数にも満たなかった」「⑬同様の事例が各地で相次ぎ、相談してもPCR検査まで至らないケースも多かった」という状況になった。

 重症化リスクのない人にはPCR検査は不要だと何度も聞かされたが、*2-4のように、新型コロナの感染者が心臓・脳・足などの肺以外で重い合併症を患う症例が世界で相次ぎ報告されており、回復した人も治療が長期化したり後遺症が残ったりするリスクが指摘されている。しかし、ウイルスは診療科に分かれて感染するわけではないため、重症化するにつれて身体全体に症状が出るのは当然なのである。

 また、検査しなかったために新型コロナと判定されずに亡くなった方は、*2-5のように、「超過死亡」に入るが、今年は偶然では起こり得ないほど肺炎の死者が多く、毎週20〜30人の超過死亡が起きていたのに、データを発表した感染研は「原因病原体が何かまでは分からない」としている(??)。

(3)新型コロナの病院への一撃
 日経新聞は、*3-1のように、「①不要不急な診療は控えて、医療費を節約せよ」「②軽い風邪や腹痛、花粉症は通院を控え、薬局で薬剤師や登録販売者に相談し処方箋がなくても買える一般用医薬品で凌ぐことができたのだから、風邪なら自力で治そう」「③高度医療を提供する大学病院や専門病院は、高額な医療費がかかる治療をさほど減らさなかった結果、件数の急減に対し医療費はさほど減らなかった」などの呆れる医療政策を書くことが多い。

 そのうち、①については、先延ばしが可能だということと不要であるということは違う上、②については、軽い風邪や腹痛なのか重い病の前兆なのかを自分で勝手に判断することほど危ういものはないため、まずあらゆる検査のできる基幹病院で診断を確定してから、そこで治療を受け続けるか、近くの医院に紹介してもらうか、売薬ですませるかを決めなければ、病を重症化させてしまってあらゆる方面で被害甚大になる確率が高くなる。そのため、国民皆保険を自慢している日本で何を言っているのかと、私は常日頃から思っている。

 さらに、③についても、高度医療を提供する大学病院や専門病院も、PCR検査を自由にできなかったばかりに、新型コロナの院内感染を恐れて患者が減ったり、手術を先延ばしせざるを得なくなったりして損失を蒙っているのである。

 なお、病院経営に悪影響を与えているのは、新型コロナの流行以前からの消費税の満額負担と現場の真実をチェックしない観念的な医療改悪政策によるものであるため、コロナ対応病院への資金援助も必要だが、その後は改悪ではない地域医療の再構築を進めるべきである。無医村ではあるまいし、セルフメディケーションしなければならないようでは困る。

 また、馬鹿の一つ覚えのようにオンライン初診・再診とも言っているが、オンラインでは得られる情報量が少ないため、補助的にしか使えないことも何度も書いた。さらに、“軽症”の定義もおかしく、“軽症のコロナ感染者”とはどの程度の人を言うのか。定義を曖昧にしたまま、どこで治療するかや医療資源を最適配分するにはどうするかなどは語れないのである。そして、医療保険の加入者や納税者としては、受診や検査を小さくケチって命を危険に晒された上、何十兆円もの補助金を使われる羽目になったようなことこそ、やめてもらいたいのである。

 自民党医師議員団本部長の冨岡氏は、*3-2のように、「④日本は米欧や中韓に比べ検査体制の整備が遅れたので、第2波に備えて体制の拡充が急務だ」「⑤これまで検査せずに医療費を抑えた面はあったが、かえって医療費が増える」「⑥政府は民間の検査機関が参入しやすくなる支援策を講じてほしい」「⑦最短2~3時間で終わるLAMP法も導入すべきだ」「⑧抗原検査や抗体検査は学会で診断の評価が十分に定まっていないため、明確な症状がある人らに対象を限るのが望ましい」と述べておられる。

 このうち、④⑤はやはりそうだったかと思われ、⑥⑦はそのとおりだが、⑧は妊婦・医療従事者・教員・その他の必要な人には行うべきだ。そうして検査数を重ねるうちに、特徴がわかり評価が確定するものだ。

 また、*3-3のように、「37.5度以上の発熱が4日以上続く」などとした他に類を見ない受診目安を作り、小さくケチってPCR検査が遅れた結果、重症化したり死亡したりした人が出て大きな損害になったことについては、その妥当性について十分な検証が必要である。

 従って、*3-4のように、厚労省が再編統合の必要性を打ち出した全国の公立・公的病院については、病気の基本である感染症を考慮するのは当然のことであるため、感染症病床の有無を考慮しないような人が医療再編や医療制度について語ること自体が間違いなのである。

 なお、*3-5のように、新型コロナ対策でコストがかさんだり、一般患者が感染を恐れて受診を控えたりして病院経営が揺らいでおり、医療従事者へのボーナスなどの一時金をカットせざるを得ない病院や施設が相次いでいるそうだ。つまり、感染拡大前から病院にぎりぎりの経営を強いて経営を脆弱にし、すでにあった医療制度という重要なインフラを壊しかけていたのが、厚労省・財務省の病院いじりであり、その結果、国民に重大な損失を蒙らせているのである。

(4)新型コロナの経済対策
1)新型コロナを利用した無駄遣い
 加藤厚労大臣は、5月22日、*4-1のように、新型コロナ関連の解雇や雇い止めが5月21日時点で10,835人に上り、雇用情勢が日を追うごとに悪化していることを明らかにした。しかし、業績が悪化した企業が従業員を休ませた場合に支給される筈の雇用調整助成金も、なかなか振り込まれず困っている事業者が多いそうだ。

 持続化給付金も、民間委託して目的外の経費を多く使った上に守秘義務も危うい方法を取るよりも、税務署か地方自治体に一括委託すれば、税の支払いは普段から自動振替にしている人が多いため、預金口座の問題が生じず、還付金や給付金の支払いにも慣れている。そのため、退職者を臨時雇用して仕事をこなせば、正確で早く、年金も節約できるだろう。

 なお、*4-2の観光割引予算1兆6,794億円とその約2割を占める外部委託の事務費3,000億円も無駄が多すぎる。そのため、PCR検査・抗体検査・治療薬・ワクチンなどを充実して早く正常な状態に戻すことが重要なのだ。

2)政府による布マスクの全戸配布
 安倍首相が全戸配布された布マスクは、6月になってうちにも届いた。しかし、*4-3のように、「質か量か」という選択をさせられ、検品もしていなかったため、質の悪すぎるものが散見されたようだ。

 私は、マスクと言えば、使い捨ての不織布マスクしか知らない世代が、布マスクでは防御できないなどと言っていた中で、10枚重ねのガーゼマスクは、私の子どもの頃には標準的だったし、洗って繰り返し使える製品でもあるため、親近感を感じた。また、その後、よい布マスクが出てくるきっかけにもなったが、支出金額は多いのに品質が悪すぎたのはよくない。

 しかし、この布マスクを作るにあたっては、「①生地は中国・ベトナム・スリランカなどのアジア各国で探して集めた」「②タイとインドネシアで生地を加工した」「③縫製は中国の加工業者に依頼した」「④検品も中国」「⑤興和の国内検品は1ミリ程度の縫い目のずれすら不良品として取り除くもので、それでは期日までに調達できない恐れがあるので政府側が断った」「⑥介護施設など向けの布マスク21.5億円分の契約書には不具合が見つかっても興和の責任を追及しない条項が入った」「⑦配布計画を担う政府のマスクチーム担当者は、緊急を要する発注だったのでこのような契約を結んだ」と書かれている。

 このうち、①②③④については、マスク一つを作るのに、生地も加工も検品も外国で行い、それも運賃をかけて数か国を渡り歩いている点で無駄が多い。この頃、日本国内では休業や自粛で人が余っていた筈なのに、国民の税金が海外で使われたことは情けない。また、⑤のような縫い目のずれはどうでもよいが、マスクは徹底的に清潔に作られたか否かが最も重要なのに、そこが危うい。さらに、⑥⑦のように、緊急を要するから不具合が見つかっても興和の責任を追及しないという契約は、一見優しそうだが、国民を愚弄している。そのため、このような国になっては、日本製は終わりだと思う。

(5)新型コロナだけが原因ではない介護崩壊
 特別養護老人ホーム・老人保健施設・有料老人ホーム・グループホームなど入所系の高齢者施設で、*5のように、4月末までに利用者380人余り、職員170人の合計550人余りが感染し、このうち約10%の60人が死亡したそうだ。欧米では死者の多くを高齢者施設の入所者が占めており、専門家は「日本でも感染者や死者がさらに増えていくおそれがある」と指摘しているとのことである。

 富山市の老人保健施設の例では、介助が必要だったり認知機能が衰えていたりする入所者が多く、深刻な人手不足で最低限の食事や水分をとらせるだけで着替えをしたり体を拭いたりすることが殆どなく、入所者の間で発熱などの症状が相次いだ後も適切な対応を取らず、多くの入所者が相部屋を利用するなど感染が広がりやすい構造だったそうだ。個室ですらない高齢者施設は設備が悪くてプライバシーにも欠けるため、高齢者施設を全室個室にし、身体の清潔を保ち、栄養をとれる食事を出すくらいの福祉は、憲法第25条に基づいて行うべきである。

(6)(じわじわ続く)年金崩壊
     
                      2020.5.21朝日新聞 2019.12.25毎日新聞

(図の説明:現在の年金制度は、左図のようになっている。これについて、高齢化社会と健康寿命の延びを踏まえて、中央及び右図のように、年金改革が行われた)

 年金改革関連法が、*6のように成立したが、その主な内容は「①非正規雇用労働者への厚生年金の適用」で、「②現在は週20時間以上30時間未満働く労働者は従業員数501人以上の企業のみで厚生年金への加入が義務づけられているが、2022年10月からは101人以上、2024年10月からは51人以上に改める」というものだ。

 ①②により、新たに約65万人が厚生年金に加入すると見込まれるが、「小規模企業で働く労働者は老後の生活保障がなくてもよい」ということになる理由は、年金保険料支払者の増加のみを目的にして厚生年金への加入要件を決めているからだ。これは、国民の立場から社会保障の必要性を定めている日本国憲法第25条の「1項 すべて国民は,健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」「2項 国は,すべての生活部面について,社会福祉,社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない」に反する。従って、憲法は変更する前に守るべきだ。

 また、「③年金制度は、少子高齢化の進行に合わせて給付を抑える仕組みで収支を均衡させることになっている」「④今は物価などに連動して給付が伸びるのを抑えるやり方のため、デフレが続くとこの機能が働かない」「⑤しわ寄せを受けるのは、将来年金を受け取る世代だ」「⑥全ての世代で痛みを分かち合いながら、どのような経済環境になっても年金制度が揺るがないようにするには、この仕組みの見直しが避けられない」「⑦国民年金の加入期間を40年から45年に延長すると、基礎年金の底上げ効果が大きいという試算も示された」「⑧基礎年金の半分を賄う国庫負担分の財源確保の議論が進まない」については、年金資産管理で失敗した省庁の説明を鵜呑みにして書いているだけであり、メディアとしてレベルが低い。

 具体的には、③は途中から賦課課税方式に変更した政策の失敗によるもので、年金保険料を支払ったのに受給する段階になって反故にされる世代が出ていることこそ年金崩壊である。また、④によって実質年金が減らされ、これまで日本を支えてきた高齢者が生活できなくなる事態を生んでおり、これこそ憲法25条違反だ。⑤⑧については、現役世代への(買収すれすれの)膨大な補助金や無駄遣いをやめて自ら稼がせることを考えるべきで、日本で実質GDPが増えないのは、⑥のような「痛みの分かち合い」ばかりを主張する価値観によるところが大きいのだ。なお、⑦はよいことだが、定年延長や定年廃止とセットでなければ議論できない。

(7)日本における経済分析の問題点


(図の説明:左図のように、2000年に導入された介護はニーズの高いサービスだったため、2020年には12兆円市場に伸びたが、政府は供給を抑制し続けている。また、中央の図は、「年代別1人当たり所得は、70歳以上で20代・30代より高く、高齢者は金持ちだ」という主張に資するものだが、年金だけで年間192万円/人の所得のある高齢者は滅多にいないため、このグラフの下になった数字の出所が重要だ。また、保育サービス不足は1970年代から言われているが、今でも充実しておらず、右図のように、教育費の高騰とあいまって少子化の原因となっている)

 豊かな高齢化社会で共働きが主流になった日本では、医療・介護・保育・家事支援サービスやその関連製品が必要不可欠で付加価値も高い。しかし、政府(厚労省・財務省)は一貫してこれを抑え、従来型の加工貿易(特にガソリン車の輸出)に固執した(経産省)。そのため、日本は経済成長率も出生率も上がらなかったが、それでもこういう政策を維持してきた。何故か?

1)経済分析と呼ぶに値しない“経済分析”
 内閣府が、*7-1のように、2020年5月18日に発表した2020年1~3月期の国内総生産(GDP、季節調整値)は、物価変動の影響を除いた実質成長率は前期比0.9%減、このペースが1年続くと仮定した年率換算は3.4%減だったそうで、これには2019年10月からの消費税増税・新型コロナに対応した外出自粛による個人消費の低迷・訪日外国人客の減少等の影響がある。

 しかし、現在の日本は、安い賃金を活かして国内で製造し輸出して、国民は貧しい生活を耐え忍ぶ人件費の安い開発途上国を卒業した。そして、国内の個人消費がGDPの6割近くを占め、世界に先駆けて高齢化して人口に占める65歳以上の高齢者割合が30%を超える国なのである。そのため、実質年金額を減らし、消費税増税を行って高齢化社会で必要とされる財・サービスへの消費を抑えたのは、国民の福利を削ったと同時に、高齢化社会で求められる財・サービスの開発にもマイナスになったのである。

 この現状を直視せずに、100年1日の如く、従来型の自動車輸出や住宅投資に依存しようとし、原油や天然ガスの輸入を景気のバロメーターにしていることが経済分析を意味の薄いものにし、とるべき政策を誤らせている。こうなる理由は、日本の経済学者が統計学(数学の中の微分・積分を使う)・社会学(実地調査をする)・人間行動学(行動を決める要素を調べる)に弱く、欧米で作られた公式を丸暗記しているだけで現在のミクロの実態を反映した新しいマクロ経済学の公式を作ることができず、現在の日本及び世界の現実に合った経済分析ができないため、「従来どおり」を繰り返して誤った政策に導くからである。

 そのため、このまま進めば、新型コロナで外食や宿泊に関連した消費が落ち込んだのは一時的であるものの、長期的にも日本経済は下降するだろう。

2)政府が進めるインフレ政策
 *7-2には、「①生鮮食品を除く全国消費者物価指数は、前年同月より0.2%下がり101.6だった」「②新型コロナの感染拡大による原油価格の急落や個人消費の低迷が押し下げ要因となった」「③市場では指数が前年実績に比べマイナス圏で推移するとの見方が多い」「④物価が持続的に下がるデフレに再び陥る懸念が高まった」「⑤品薄が続いたマスクは5.4%上昇した」「⑥増税の影響で外食が2.7%上がった」「⑦外出自粛による需要の高まりを背景に生鮮野菜は11.2%上がり、キャベツは48.2%上昇した」「⑧損害保険各社が値上げした火災・地震保険料は9.3%上昇した」「⑨増税に伴う無償化で私立の幼稚園保育料は94.0%下がった」などが記載されている。

 この記事は、インフレがよいことでデフレが悪いことであるかのような論調で書かれているが、本来の中央銀行の仕事は、貨幣価値を安定させて国民の財産を守ることであり、意図的にインフレを起こして国民の財産を目減りさせることではない。

 さらに、物価は、⑤⑦⑧のように需要が多ければ上がり、①②③のように消費者の財力やニーズの低下があれば下がるという現象であるため、④のように、デフレだから金融緩和して物価を上げようとすると、国民の財力がますます低下して節約を強いられるので、やはり物価は上がらない。そして、こうした国では、企業の投資も起こりにくい。なお、需要が増えないのに原油価格の上昇などのコスト要因で物価が上がるのをスタグフレーションと呼び、悪いインフレである。また、⑥⑨のように、政府の政策によって物価が著しく変動することもあるわけだ。

3)“新自由主義”は悪いとする歪んだ論理
 個人の諸自由を尊重して封建的共同体の束縛から解放しようとする価値観に反対する人は現在の日本にはいないと思うが、その理由は、*7-4のように、自由を至上の価値とする近代西欧社会で育まれた自由主義が、現在では日本国憲法の中で「人が生まれながらに持っている人権」「人間がかけがえのない個人として尊重され、平等に扱われ、自らの意思に従って自由に生きるために必要不可欠な権利」として明記されているからだ。それには、私も120%賛成である。

 日本国憲法第12条は「この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によつて、これを保持しなければならない。又、国民は、これを濫用してはならないのであつて、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負ふ」と明記し、具体的には「精神的自由権:思想・良心の自由(19条)、信教の自由(20条1項前段)、集会・結社、表現の自由(21条)、学問の自由(23条)」「経済的自由権:居住・移転、職業選択の自由(22条)、財産権の不可侵(29条)」「身体的自由権:奴隷的拘束や苦役からの自由(18条)、法定手続の保障(31条)、住居の不可侵(35条) 被疑者・被告人の権利保障(33条、36~39条)」等の条文がある。

 これに対し、*7-5は、新自由主義とは20世紀の小さな政府論のことで、「①政府の規制を緩和・撤廃して民間の自由な活力に任せ成長を促そうとする経済政策」「②緊縮財政や外資導入、国営企業の民営化、リストラのほか、公共料金の値上げや補助金カットなどを進めるため、貧困層の生活を直撃し国民の反発が強い」「③アダム・スミスは、経済は個人や企業の自由に任せることによって繁栄すると主張し、政府の役割を治安維持や防衛などに限定する必要性を説いた」「④20世紀に大恐慌や戦時動員体制の経験を経て、政府が完全雇用を目指して需要を管理するケインズ主義政策が一般的となった」「⑤1980年代に入って政府における財政赤字の深刻な累積、官僚主義的な非能率が大きな問題となり、小さな政府への改革が広まった」「⑥日本も80年代の第2次臨時行政調査会による行政改革以来、新自由主義的な政策転換が進められてきた」「⑦日本では公共事業や規制に関して既得権を持つ官僚組織、利益団体、族議員が、小さな政府の徹底に反対している」「⑧小泉政権は新自由主義改革を推進し、郵政民営化・社会保障費の抑制などが遺産となっている」としている。

 しかし、1995年前後以降は私が関与しているので知っているのだが、このうち①は、現場を知らない省庁が自らの権力を維持するために細かい規制を作って意地悪く運用すれば、民間も新しいことができなくなり経済発展を阻害するため、重要なことなのだ。また、国が破綻しないためには、膨大な無駄遣いを排除する必要があり、②の緊縮財政・外資導入・国営企業の民営化・適切な補助金カットなどは進めたが、そのために必要なリストラならともかく、公共料金の値上げや本当に必要なセーフティーネットの削減を意図したことはない。まして夜警国家になるなど前近代的で、これらは将来大きな政府に戻したい官僚が企んだことだろう。

 また、③のアダム・スミスが言う「神の見えざる手」とは、「市場における需要と供給が生産調整をすすめ、市場の自由を徹底することが経済発展を進める」と説いているもので、これは共産主義・社会主義経済が失敗し、市場主義に移行してから復活したことで歴史的に検証済だ。ただし、市場の失敗もあるため、補足的に④のケインズ主義政策が行われたのであり、ケインズ主義政策ばかりでは国家財政が破綻するのは時間の問題で、社会保障もできなくなる。

 日本では、1980年代に、⑥の第2次臨時行政調査会による行政改革が行われ、⑦のように、無駄遣いが多く効率の悪い官僚的性格を廃し始め、小泉政権は⑧のように郵政民営化を進めた。しかし、私が自民党内でいくら反対しても社会保障費抑制を進めたのは、財務省と厚労省である。

 つまり、私は、ここでいう“新自由主義改革”を推進してきたので知っているのだが、社会保障はもともとは保険で行われており、管理の杜撰・給付の不合理以外は主張したことがない。また、政府の役割を治安維持や防衛に限定することは、歴史的教訓を踏まえない愚行だと思う。

 しかし、*7-3のように、新自由主義という言葉が、ニュースや論説で批判のためによく登場するのは事実で、その内容については「国民の多数が実際に怒り、抗議しているのは増税や金融機関救済という大きな政府路線なのに、一部のメディアや知識人がそれを新自由主義のせいにしたがっている」「物事を正しく理解し、議論するには明確な言葉を使うことが必要不可欠である」「新自由主義などという定義と正反対の使用がまかり通る言葉を使っていては、経済問題の本質について考えることはできない」というのは、全くそのとおりだと思う。

 なお、マクロン政権が環境政策の一環としてガソリンと軽油を増税したように、環境問題を税制で解決することは大きな政府とは関係なく、私は“アリ”だと考えている。何故なら、政府が放っておけば外部不経済として環境を汚した者が得する場合に、政府が介入して無料のものを有料にし、望ましい方向への切り替えを促すことができるからだ。しかし、これが適切に行われるためには、政府の見識の高さが必要なのである。

(8)資源の使い方と財源
1)国有林の民間による伐採
 2019年5月16日に、全国の国有林で最長50年間、大規模に伐採・販売する権利を民間業者に与える国有林野管理経営法改正案が、*8-1のように、衆院農林水産委員会で可決され、6月5日に参議院も通過した。

 しかし、国有林・民有林の両方とも先祖が大切に育てた木材資源であり、特に全国の森林の3割を占める国有林は国民の財産だ。そのため、「低迷する林業の成長を促す」という建前の下、特定の民間に大きく開放することは、対価として徴収する権利設定料や樹木料の安さから、せっかくある国民の財産を叩き売りすることとなり、「森林を守る」「資源を活かす」などの発想がないことも明らかである。

 さらに、伐採後の植え直し(再造林)は別の入札で委託して国民の血税を使って行うとのことであり、金を使うことしか考えない政治と行政では、国の財政破綻による緊急事態で、イタリア・ギリシャのように社会保障が削減されるのは時間の問題となるわけだ。

2)放牧の中止
 山の多い日本では、山を賢く使って放牧すれば、家畜を畜舎に閉じ込め、外国から餌のトウモロコシを輸入して、脂肪の多すぎる肉を作る必要はない上、食料自給率も上がる。

 しかし、*8-2のように、農水省は、豚や牛などの放牧制限をしようとしており、何をしているのかと思う。豚熱でもワクチン接種すれば放牧して問題ない上、それ以外の地域まで畜舎の整備を義務化する科学的根拠もないだろう。

 オーストラリア・アメリカ・カナダ・ヨーロッパでは当然の如く放牧している。そして、その方が家畜のストレスが少なく、家畜の免疫力が向上して病気にも強いため、薬の使用減少や耕作放棄地の解消、飼養コストの低減などに繋がるのである(まさか、これが困るのではないでしょうね)。そのため、雨風に備えて一定の畜舎はあった方がよいものの、舎外飼養の中止要請は非科学的だ。つまり、農水省は科学的根拠もなく、農家への影響調査もしていないようなことを、改正案に盛り込むべきではない。

3)地方創成
 新型コロナ以前から、*8-3のように、東京圏在住者は地方暮らしに関心があると答えており、コロナ後は、さらに都市住民の田園回帰志向が強くなっている。

 「やりたい仕事」は、「農業・林業(15.4%)」が最多で、「宿泊・飲食(14.9%)」「サービス業(13.3%)」「医療・福祉(12.5%)」が続き、若い世代ほど移住の意向が強い傾向も分かったそうだ。これらは、今後のニーズを考えれば自然であるとともに、東京一極集中を解消するためにも有効である。

 しかし、地方圏暮らしへのネガティブイメージに「公共交通の利便性が悪い(55.5%)」「収入の減少(50.2%)」、「日常生活の利便性が悪い(41.3%)」などが挙がっているのも当たっており、農林漁業等々で稼げなければ夢破れて二度と田園回帰志向は起こらないだろう。さらに、教育・医療・公共交通の充実による生活の利便性は、人口が増えればある程度はよくなるものの、意識的な充実が不可欠だ。

4)公立病院などの基幹病院を中心とした医療圏の構築
 厚労省は、*8-4のように、新型コロナで入院病床が逼迫したのを受け、感染症対応の視点が欠如していた約440の公立・公的病院の再編・統合について都道府県から検討結果報告を受ける期限を当初の9月から先延ばしするそうだ。

 しかし、地域で重複している診療機能を役割分担して効率化したり、社会的入院をなくして高齢者施設を充実しながら、医療提供体制の無駄をなくしたりすることは重要だが、団塊世代が75歳以上となり医療費が急増するから、2018年に全国で124万6千床あった病床を119万1千床まで減らすというような単純な医療費・病床数削減を目的とした病院統合なら1人当たりの福祉が小さくなるだけであるため賛成しない。

 また、近隣に競合病院があっても、セカンド・オピニオンを得るために重複して受診することもあるため、新型コロナの検査基準のように「非科学的でも、ともかく病院には行かないで欲しい」などという価値観を持って医療体制の再構築をしようとしている厚労省は、命を託せる省庁ではないことが明らかになったのだ。

 さらに、少子高齢化で、急病・大けがで入院する「高度急性期」「急性期」病床の必要性が低くなるというのもおかしく、高齢になると多発する脳血管疾患や心疾患は「高度急性期」「急性期」そのものであり、そこで命が助からなければリハビリといった「回復期」病床に行くこともないため、結論ありきの非科学的な議論はやめるべきだ。

 最後に、病院は重要なインフラであり、病院がなくなれば、都会から移住するどころか、現在住んでいる人もその地域に住めなくなる。そのため、厚労省が狭くて短い視野で考えた無茶な病院再編や効率化を実現させないために、公立病院などの基幹病院を中心とした医療圏の構築に関わる意思決定は地域が行うべきだ。そして、その財源は、資源を安くたたき売ったり投げ捨てたりせずに、有効に使うことによって出る。

(9)研究と特許の意義
 経済学の公式が「与件」として「一定で変わらない」と仮定している要素に、「技術進歩」がある。1953年にワトソン・クリックがDNAのらせん構造を発見して以来、目覚ましい進歩を遂げている生命科学の進歩も無視されており、今回の新型コロナ騒動に際して100年前のスペイン風邪と同じ公式を使っていたというのは、聞いて呆れた。

 そして、日本では、政府もメディアも、生命科学者が瞬く間にウイルスの遺伝情報を読み、その弱点を突いたワクチンや治療薬を作れることを無視していたため、人材はいるのに技術開発で先んじて特許権を得ることを放棄させた。また、国内外の経済封鎖を続けることによって経済に大きなダメージを与え、それをカバーするために血税から多大な支出をしている。どうして、こういうことが起こるのかといえば、そういうことの全体を瞬時に考慮できる専門家をリーダーにしていないからである。

1)新型コロナのワクチン・治療薬に対する他国と日本の対応
 米国は、*9-2のように、米国民の生命を守るため治療薬やワクチンの開発・生産を支援し、自国での供給・備蓄を目的に1千億円超を投じて欧米医薬企業の実用化を後押ししている。中国や欧州も国を挙げて開発を強化している。

 日本の政府及びメディアは、ワクチンや治療薬の開発と実用化に消極的で、「ワクチンができるには数年かかる」「国民は我慢して自粛せよ」「安全性が・・」と繰り返した。そして、「ワクチンができたら国際協調で、分けてね」という態度だが、そんな先進国に優先的に分けてやる国などない。このようにして、世界は「Japan Passing」になりつつある。

2)癌の免疫薬に対する日本の情けない態度
 日本人の死因トップになった癌の治療は、今でも外科的手術・放射線治療・化学療法が標準療法と定められているが、*9-1-2のように、本庶京都大学特別教授が最初に癌免疫治療薬「オプジーボ」を開発・実用化しようとした時は、日本では製薬大手も消極的で、米国のブリストル・マイヤーズが先に実用化に手を貸してくれたと聞いている。

 そして、日本で癌免疫治療薬「オプジーボ」が有名になったのは、本庶教授がノーベル賞を受賞した後だった。さらに、オプジーボはじめ免疫薬は革命的な薬で副作用が小さく、さまざまな癌に効き始めているのに、日本では厚労省が頑なに癌の標準治療を「外科手術」「抗癌剤による化学療法」「放射線療法」として免疫療法を厳しく制限している。これによって、日本国民は免疫薬による治療を著しく受けにくいと同時に、免疫薬の開発者も年間数百億円にのぼるロイヤルティーを逸した。厚労省のこの非科学的態度は、国民の命よりも既に抗癌剤を売っている製薬大手の利益を重視するものではないのか?

 このような環境の中では、免疫療法を開発してきた研究者も厳しい環境に耐えなければならなかったし、開発後もロイヤルティーで被害を受けている。つまり、リスクをとったのは製薬会社だけでなく、一生をかけたリスクをとって先頭に立っている研究者もであるため、本庶教授が「オプジーボ」の特許収入として小野薬品工業に約226億円の支払いを求めて大阪地裁に提訴された気持ちはよくわかる。この場合、組織を重視して個人の貢献を軽視する日本の風土もまた、日本の研究開発人材を生きにくくしているのである。

 なお、*9-3のように、日本農業新聞が2020年6月8日の論説で、「コロナ危機と文明、生命産業へかじを切れ」と題して記事を書いているのは、生命産業に従事する多くの労働者が関心を持って読むのでよいと思うが、ここでも「消費をあおり、資源を乱費する欲望の新自由主義」と記載しているのは、新自由主義の定義を誤っている。もう少し勉強してから記事を書かないと、国民を誤った方向に誘導することになるが、日本農業新聞は自由主義から封建制・官僚制に戻したいのだろうか?

3)自動運転車及びサポカー開発の遅れ
  

(図の説明:左図のように、近年は交通事故による死者数が減少傾向で、よいことだ。右図の年齢階級別の「死亡事故件数/免許人口10万人」では、確かに75歳以上で死亡事故が多いように見えるが、①85歳~100歳をひとくくりにしているため、この階級は他の3倍の年齢層が入っている ②高齢者は地方に多く都市部の生産年齢人口より運転時間が長いため、運転免許を持つ人を分母にするのではなく運転時間を分母にしなければならないのではないか と思う)

 近年、誰か一人が重大な事故を起こしたとして、そのグループに属する人全員に運転免許を返納させることが流行しているが、特定のグループの人に運転免許を持たせないことは、外出の機会や就職の機会を奪うため人権侵害になる。

 東京都池袋で高齢運転者の運転する車が暴走したケースでは、松永真菜さんと長女の莉子ちゃんが死亡した事故を受けて、*9-4-1のように、夫の拓也さんが事故5日後に「運転に不安がある人は運転しないでほしい」と訴え、その結果、*9-4-2のように、家族などから年齢を理由に運転しないことを強制される高齢者が増えた。しかし、これは年齢による差別であり、自分の家族が身体の不自由な高齢者の運転で交通事故に遭ったからといって、全高齢者の運転を禁止する資格にはならない。

 高齢者の運転では他にも事故が起こっているが、その割合が若者より高いかといえばそうでもないし、コロナ自粛で誰もがわかったように、外出できないことは高齢者にとってもストレスであり、不便にしたり身体を悪くさせたりする。そのため、私は、高齢者のみに限定免許創設するよりも、さっさと安全運転サポートを進歩させ、それを標準装備にすればよかったと思う。

 なお、自動運転車や安全運転サポカーについても、技術開発の遅さ・国民への我慢の強制・国の対応の遅さは、新型コロナのワクチン・治療薬や癌の免疫療法と同じで、これは、国民の福利を押し下げながら、今後は世界でニーズが見込まれる日本の技術を収益に結び付けることを不可能にしているので賢くない。

4)EV活用の遅れ
 EVもまた、日産自動車が世界で初めて市場投入したにもかかわらず、*9-5-1のように、2020年6月3日現在、日本は重要市場になっておらず、重要市場になっているのは中国で、日本電産は中国東北部の遼寧省大連市で約1千億円を投じて建設中の工場内に駆動モーターの開発拠点を新設し、成長の柱と位置づけるEVの開発を2021年には稼働させるそうだ。

 独コンチネンタルも2021年に天津市に開発センターを設置する予定で、独ボッシュもまた現地企業と合弁を組んでEV用駆動モーターの供給を目指すそうなので、環境とエネルギーの両面からEVが主役になった時には中国が自動車先進国になるだろう。

 また、日本電産は、5月27日、*9-5-2のように、同社のEV用駆動モーターシステム「E-Axle」が中国の吉利汽車の新型EVに採用されたことを喜んで発表しているが、当然だ。

・・参考資料・・
<医療崩壊を加速させた消費税制>
*1-1:https://gemmed.ghc-j.com/?p=27985 (Gem Med 2019.8.15) 病院の消費税問題、課税化転換などの抜本的解決を2020年度に行うべき―日病
 病院の消費税問題について、診療報酬の上乗せでは不公平等を解消することはできない。課税化転換などの抜本的措置を2020年度の税制改正で行うべきである。日本病院会は8月7日に、こうした内容を盛り込んだ2020年度税制改正要望を根本匠厚生労働大臣に宛てて提出しました。
●診療報酬プラス改定では、個別病院の消費税負担の不公平等を解消できない
 日病の税制改正要望は次の8項目(国税5項目、地方税2項目、災害医療拠点としての役割と税制1項目)で、このうち▼消費税関連(国税の(1))▼診療報酬の事業税非課税(地方税の(1))▼固定資産関連(地方税の(2))の3点を「優先」的に措置すべき項目として強調しています。
【国税】
 (1)控除対象外消費税について、個別病院ごとの解消状況に不公平や不足などが
   生じないよう、税制上の措置を含めた抜本的措置を講じる
 (2)医療法人の出資評価で「類似業種比準方式」を採用する場合の参照株価は、
   「医療福祉」と「その他の産業」のいずれか低いほうとする
 (3)医療機関の設備投資を促進するための税制を拡充する
 (4)資産に係る控除対象外消費税を「発生時の損金」とすることを認める
 (5)公的運営が担保された医療法人に対する寄附税制を整備する
【地方税】
 (1)医療機関における社会保障診療報酬に係る事業税非課税措置を存続する
 (2)病院運営に直接・間接に必要な固定資産について、▼固定資産税▼都市計画税
   ▼不動産取得税▼登録免許税―を非課税あるいは減税とする
【ほか】
 激甚災害に相当するような地震・台風・噴火などの大規模災害が発生した場合に、地域医療の重要な拠点としての役割を果たす医療機関・介護施設に関しては、その機能復旧を支援するための税制上の特段の配慮を行う。
 要望内容を少し詳しく見てみましょう。まず国税(1)の「消費税」については、現在、保険診療(言わば診療報酬)については「非課税」となっています。したがって、医療機関等が物品購入等の際に支払った消費税は、患者・保険者負担に転嫁することはできず、医療機関等が最終負担しています(いわゆる控除対象外消費税)。この医療機関等負担を補填するために、特別の診療報酬プラス改定(消費税対応改定)が行われていますが、当然、「医療機関等ごとに診療報酬の算定内容は異なる」ことから、どうしても補填の過不足が生じます。2019年10月に予定される消費税対応改定では、病院の種類別に補填を行うなどの「精緻な対応」が図られますが、「病院の種類による不公平」是正にとどまり、個別病院の補填過不足を完全に解消することはできません。このため、昨年(2018年)夏には四病院団体協議会(日本病院会、全日本病院協会、日本医療法人協会、日本精神科病院協会)と三師会(日本医師会、日本歯科医師会、日本薬剤師会)とが合同で、▼消費税非課税・消費税対応改定による補填は維持する▼個別の医療機関ごとに、補填の過不足に対応する(不足の場合には還付)―という仕組みの創設を要望しました(関連記事はこちらとこちら)。「消費税非課税制度の中で個別医療機関等への還付を認めよ」との要望ですが、与党の税制調査会は「税理論上、非課税制度を維持したまま税の還付を行うことはできない」とし、事実上のゼロ回答を突きつけました(関連記事はこちら)。日本医師会は、このゼロ回答に対し、なぜか「消費税対応改定の精緻化により、消費税問題は解消した」としています。しかし病院では▼物品購入量が多く(特に急性期病院)、補填不足が生じやすい▼クリニックと異なり、いわゆる四段階制(社会保険診療報酬の所得計算の特例措置で、概算経費率を診療報酬収入が2500万円以下の医療機関では72%、2500万円超3000万円以下では70%、3000万円超4000万円以下では62%、4000万円超5000万円以下では57%の4段階とする)などの優遇措置もない―という事情があることから、四病院団体協議会では「補填の解消に向けた更なる対応が必要」と判断(関連記事はこちら)。今般、日病では、この四病協判断に則り、さらに「診療報酬での対応は、最終的に消費税負担を患者・保険者に求めることとイコールである」点も考慮し、「病院」について、消費税問題の抜本的措置(課税化転換や、保険診療設備・材料の仕入れを非課税とするなど)を講じるべきと強く要望しているのです。また国税(3)では、地域医療構想の実現や地域包括ケアシステムの構築に向けた設備投資を国全体で促す必要があるとし、具体的に▼病院用建物・医療機器・医療情報システム等に関する法定耐用年数の短縮▼地域医療構想や医療計画に沿った病院の機能分化を行うための設備投資に対する税制負担軽減制度の充実―などを行うよう求めています。一方、国税(5)では、社会医療法人や特定医療法人などの「公的運営が担保された医療法人」について、「寄附」を▼所得税法上の寄付金控除の対象▼法人税法上の損金―とすべきと要望。あわせて、公的医療法人へ不動産を贈与する場合、「贈与税」という障害をなくすため、租税特別措置法第40条の「譲渡所得税非課税申請」を当然に受けられるようにすべきとも求めています。また優先項目にも盛り込まれた地方税(2)では、一般の医療法人においても、国公立・公的病院や社会医療法人と同様に、病院運営に直接関係する不動産について「固定資産税・都市計画税を非課税」とすることを提案。あわせて看護職員等の職員寮などの病院経営に間接的に必要な不動産について、固定資産税などの非課税・減税措置を設け、病院経営の安定等を図るべきと切望しています。

*1-2:https://digital.asahi.com/articles/ASM8L4G3QM8LULBJ003.html (朝日新聞 2019年8月19日) 消費税分969億円、国立大病院が負担 経営を圧迫
 全国の国立大病院42カ所で、高度な医療機器やベッドなどの購入時に支払った消費税を診療費に十分転嫁できず、2014~18年の5年間に計969億円を病院側が負担していることがわかった。診療報酬制度の仕組みによるもので、病院の経営を圧迫しているという。診察に使う機器やベッド、ガーゼなどの消耗品は、病院が購入時に消費税も支払う。一方、公的保険の医療は非課税のため、患者が支払う初診料や再診料などの診療報酬点数に消費税の相当分も含めることで、病院側に補塡(ほてん)する仕組みになっている。だが、初診料や再診料はすべての医療機関でほぼ同額で、高額化が進む手術ロボットなどの先進機器を購入することが多い大学病院などでは消費税分の「持ち出し」が大きいという。全国の国立大病院でつくる「国立大学病院長会議」の試算によると、1病院あたりの補塡不足は平均で年約1・3億円(17年度)。税率が8%になった14~18年の5年間で計969億円に上った。私大の付属病院などでも同様の傾向と見られるという。医療の進歩にともない、高精度な放射線装置、全身のがんなどを一度に調べることができるCT、内視鏡手術支援ロボットなど、1台数億円する医療機器が登場した側面もある。ある大学病院の医師は「医療機器の更新ができなくなると、患者さんにしわ寄せがいく」と嘆く。厚生労働省は「おおむね補塡されている」としてきたが、16年度のデータを調べたところ、補塡率は病院全体で85%にとどまり、国立大病院を含む68カ所の特定機能病院では平均62%だった。同省は、税率が10%になる際は、病院の規模を考慮して、入院基本料などの点数を上げることで対応することにしている。同会議の山本修一・常置委員長は「厚労省に検証を要請するとともに、補塡が十分にされるか注視していきたい」と話している。
●増税分は節約で対応
 病院側はコスト削減の工夫を重ねている。米国製の手術支援ロボット「ダヴィンチ」は、難しい手術にも対応できるが、価格は約3億円。がん治療用の高精度な放射線装置は1台3億~5億円など、このような機器を導入すると、消費税分だけで数千万円かかる。国立大学病院長会議の小西竹生・事務局長は「こうした高度な医療を提供する大学病院ほど赤字幅が大きくなる」と話す。コスト削減の一環として東大病院(東京都文京区)など39カ所が取り組んでいるのが、入院用ベッドのリサイクルだ。病院の地下の一室には、予備のベッドや乳幼児用のベッドなど、数多くのベッドが保管されている。その片隅にはリモコンや手すりなど、一部が故障したものもある。ベッドは1台数十万円するため、更新が滞っている。同会議が大学病院にある2万8千床を調べたところ、耐用年数の8年を超えて使われていたベッドは約7割にのぼった。15年以上使われていたものも3割弱あった。大学病院は平均700床以上あり、消費税の補塡(ほてん)不足などで経営は苦しく、手術や検査に使う医療機器と比べて更新は後回しにされがちだ。ただ、病院関係者は「整備が不十分だと転倒事故などにつながるおそれもある」と話す。従来は一部が壊れると廃棄していたが、部品を修理したり、まだ使える部品を専門業者がメンテナンスしたりした後、別の病院に融通する仕組みだ。新品は1台数十万円だが、部品なら数万円で済む。病院で使うガーゼや手袋などを複数の病院で共同調達する試みも始めた。カテーテルやアルコール綿など多くの製品について、現場の看護師がサンプルを比べて品質を確認。品目を絞ったり大量購入したりすることで、価格を下げてもらっている。2016年度に始め、導入前と比べて数億円の削減につながったという。東大病院の塩崎英司・事務部長は「消費税の補塡(ほてん)不足で経営が苦しい中、今後も知恵を絞って取り組みたい」と話す。

*1-3:https://www.agrinews.co.jp/p50985.html (日本農業新聞 2020年6月5日) [新型コロナ] 厚生連病院支援を 自民議連で要望相次ぐ
 自民党の議員連盟「農民の健康を創る会」(宮腰光寛会長)は4日、東京・永田町で幹事会を開き、新型コロナウイルス対策について議論した。新型コロナによる影響でJA厚生連の経営状況が厳しいことを受け、出席した議員からは、地域医療を守る厚生連の一層の経営支援を訴える声が相次いだ。JA全中やJA全厚連の役員らが出席。厚生連病院は、新型コロナの影響で予定した手術や入院の延期、一般外来診療の縮小などで医業収益が減収となっていることを全厚連が報告。医業収益が前年同期比で、半分になった病院もある。病院への財政的な支援を早急に確立することや、空床確保分の減収に対する支援拡充、医療従事者などへの危険手当の支給、医療物資や機器を国が責任を持って供給体制を整備することなどを求めた。宮腰会長は「地域医療崩壊は何としても避けなくてはならない。第2波、第3波に耐えられる医療提供体制を整えていく必要がある」とあいさつ。三ツ林裕巳衆院議員は一層の経営支援を求め「新型コロナ対策を一生懸命整えた厚生連の経営が滞ることは避けなければならない」と、訴えた。永岡桂子衆院議員は厚生連が感染者数を抑える役割を果たしてきたとし「赤字続きで倒れることはあってはならない」と支援を求めた。野村哲郎参院議員は新型コロナ患者を受け入れていない病院も経営は厳しいと見解を示し「地域医療を守るため、全ての厚生連の経営状況のチェックをするべきだ」と呼び掛けた。

<検査抑制による医療崩壊>
*2-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200609&ng=DGKKZO60128210Y0A600C2MM8000 () 検証コロナ 危うい統治(1)11年前の教訓放置 、組織防衛優先、危機対応阻む
 新型コロナウイルスの猛威に世界は持てる力を総動員して立ち向かう。だが、日本の対応はもたつき、ぎこちない。バブル崩壊、リーマン危機、東日本大震災。いくつもの危機を経ても変わらなかった縦割りの論理、既得権益にしがみつく姿が今回もあらわになった。このひずみをたださなければ、日本は新たな危機に立ち向かえない。日本でコロナ対応が始まったのは1月。官邸では「しっかりやります」と繰り返した厚生労働省の動きは一貫して鈍かった。「どうしてできないんだ」。とりわけ安倍晋三首相をいらだたせたのが自ら打ち出した1日2万件の目標に一向に届かないPCR検査だった。その背景にあったのが感染症法15条に基づく「積極的疫学調査」だ。病気の特徴や感染の広がりを調べるのが疫学調査。「積極的」とは患者が病院に来るのを待たず、保健所を使い感染経路やクラスター(感染者集団)を追うとの意味がある。厚労省傘下の国立感染症研究所が今年1月17日に出した新型コロナの「積極的疫学調査実施要領」では「患者(確定例)」と「濃厚接触者」のみが検査対象とされた。検査体制への不満が広がると、2月6日に出した要領の改訂版で初めて対象者に「疑似症患者」が加わった。とはいえ「確定例となる蓋然性が高い場合には積極的疫学調査の対象としてもよい」の限定付き。その姿勢は5月29日の最新版の要領でも変わらない。厚労省が実質的に所管する各地の保健所などもこの要領に従い、濃厚接触者に検査の重点を置いた。それが大都市中心に経路不明の患者が増える一因となった。疫学調査以外にも検査を受けにくいケースがあり、目詰まりがようやく緩和され出したのは4月から。保健所ルートだけで対応しきれないと危機感を募らせた自治体が地元の医療機関などと「PCRセンター」を設置し始めてからだ。
●疫学調査を優先
 自らのルールにこだわり現実を見ない。そんな感染症対策での失敗は今回が初めてではない。2009年の新型インフルエンザ流行時も厚労省は疫学調査を優先し、PCR検査を感染地域からの帰国・入国者に集中した。いつの間にか国内で感染が広がり、神戸で渡航歴のない感染者が見つかると、関西の病院を中心に人々が殺到した。厚労省は10年にまとめた報告書で反省点を記した。「保健所の体制強化」「PCR強化」。今に至る問題の核心に迫り「死亡率が低い水準にとどまったことに満足することなく、今後の対策に役立てていくことが重要だ」とした。実際は満足するだけに終わった。変わらない行動の背景には内向きな組織の姿が浮かぶ。厚労省で対策を仕切るのは結核感染症課だ。結核やはしか、エイズなどを所管する。新たな病原体には感染研や保健所などと対応し、患者の隔離や差別・偏見といった難問に向き合う。課を支えるのは理系出身で医師資格を持つ医系技官。その仕事ぶりは政策を調整する官僚より研究者に近い。専門家集団だけに組織を守る意識が先行する。官邸で「大学病院も検査に使えば」との声が出ても、厚労省は文部科学省が絡む大学病院での検査拡充に及び腰だった。首相は周囲に「危機なんだから使えるものはなんでも使えばいいじゃないか」と語った。誰でもそう思う理屈を組織防衛優先の意識がはね返す。
●「善戦」誇る技官
 「日本の感染者や死亡者は欧米より桁違いに少ない」。技官はコロナ危機での善戦ぶりを強調するが、医療現場を混乱させたのは間違いない。「病院があふれるのが嫌でPCR検査は厳しめにやっていた」。4月10日、さいたま市保健所長がこう話し市長に注意された。この所長も厚労省技官OB。独特の論理が行動を縛る。02年の重症急性呼吸器症候群(SARS)、12年の中東呼吸器症候群(MERS)を経て、韓国や台湾は備えを厚くした。対照的に日本は足踏みを続けた。厚労省に限らない。世界から一目置かれた日本の官僚機構は右肩上がりの成長が終わり、新たな危機に見舞われるたびにその機能不全をさらけ出してきた。バブル崩壊後の金融危機では不良債権の全容を過小評価し続け、金融システムの傷口を広げた。東日本大震災後は再開が困難になった原発をエネルギー政策の中心に据え続けた。結果として火力発電に頼り、温暖化ガス削減も進まない。共通するのは失敗を認めれば自らに責任が及びかねないという組織としての強烈な防衛本能だ。前例や既存のルールにしがみつき、目の前の現実に対処しない。グローバル化とデジタル化の進展で変化のスピードが格段にあがった21世紀。20世紀型の官僚機構を引きずったままでは日本は世界から置き去りにされる。

*2-2:https://webronza.asahi.com/politics/articles/2020060700001.html?page=1 (論座 2020年6月7日) 何一つ有効な対策を打たなかった安倍首相が言う「日本モデルの力」とは?、コロナ第2波に備え必要なのは「日本モデル」の解体だ!、佐藤章 ジャーナリスト 元朝日新聞記者 五月書房新社編集委員会委員長
 未曽有のパンデミック状況を呈するコロナウイルスがこの秋から冬にも大きい第2波となって襲い来る予測が広まる中、対策を立てるべきはずの安倍内閣からは危機感がまったく伝わってこない。この原稿を書いている6月6日の首相動静は以下の通りだった。<午前8時現在、東京・富ケ谷の私邸。朝の来客なし。午前中は来客なく、私邸で過ごす。午後4時9分、私邸発。午後4時20分、官邸着。同30分から同50分まで、加藤勝信厚生労働相、菅義偉官房長官、西村康稔経済再生担当相、西村明宏、岡田直樹、杉田和博各官房副長官、北村滋国家安全保障局長、和泉洋人、長谷川栄一、今井尚哉各首相補佐官、樽見英樹新型コロナウイルス感染症対策推進室長、森健良外務審議官、鈴木康裕厚労省医務技監。午後5時10分、官邸発。午後5時27分、私邸着。《時事通信より》>土曜日だから夕方に職場に着くこともあるが、午後4時30分から始まった会議の顔ぶれから推して、政府のコロナ対策会議であることは間違いないだろう。だが、職責上これだけのメンバーを集めておいてわずか20分しか情報を交換しなかったということは、どう考えればいいのだろうか。まず、現在の仕事環境の常識を考えれば、わずか20分の会議はオンラインで済ませるべきものだ。しかし、20分という時間をよく考えてみれば、本当はメール連絡だけで済む話かもしれない。司会役が発言し、数人の事務連絡、報告があって終わりだ。対策などについて議論し合うことなどはこの短い時間では不可能だ。
●緊急事態宣言は「緊急手段」であって「対策」ではない
 「日本ならではのやり方で、わずか1か月半で、今回の流行をほぼ収束させることができました。正に、日本モデルの力を示したと思います」。安倍首相は5月25日、緊急事態宣言解除の記者会見の冒頭、こう発言した。「今回の流行をほぼ収束させること」など本当にできたのか。安倍首相のこの発言に関しては様々な疑念が湧いてくるが、最も驚くべき発言は「日本モデルの力を示した」という言葉だろう。時事通信の6月6日の世論調査では、コロナウイルスに対する安倍政権の対応について60%の人が「評価しない」と答えている。この世論調査通り、安倍政権はコロナウイルス対策については何一つ有効な対策を打ち出せなかったと言っていいだろう。もちろん、緊急事態宣言を対策と呼ぶ人はいないだろう。あらゆるレベルの経済を痛めつける緊急事態宣言は対策と呼べるようなものではなく、感染の波及を食い止める最後に残された緊急手段に過ぎない。何一つ有効な対策が打てなかった安倍首相が発言した「日本モデルの力」とは一体、どういうものなのだろうか。コロナウイルスに対して安倍政権が最初に打った「日本モデル」の対策を振り返ってみよう。
●COVID-19を指定感染症に指定した愚策
 1月28日に厚労省はCOVID-19を感染症法に基づく指定感染症に政令指定。この指定のために、感染者はたとえ無症状であっても強制入院させられることになった。厚労省はこの時、COVID-19の無症状感染者の存在を想定していなかった。無症状者や軽症者は病院以外の企業療養所などで静養隔離するという韓国が取った賢明な政策への道は、これによって閉ざされてしまった。無症状者でも入院しなければならないために早くから病院体制の崩壊が心配され、PCR検査の大幅抑制につながった。ところが、厚労省がCOVID-19を指定感染症に指定する4日前の1月24日、世界の医学界で注目されているイギリスの「ランセット」誌は、無症状の感染者の存在を報告する香港大学の研究者たちの論考を掲載していた。指定感染症担当の結核感染症課の担当者たちがこの論考をいち早く読んで対応を考えていれば、COVID-19の無症状者の存在を重視し、指定感染症には指定しなかっただろう。厚労省担当課の勉強不足と不作為が生んだひとつの国家的悲劇だ。そして、この感染症法に基づく指定感染症に政令指定したために、基本的な「日本モデルの力」が働くことになった。国立感染症研究所と保健所、地方衛生研究所が束になった「日本モデルの力」である。
●「日本モデル」への大きな思い違い
 コロナウイルス第2波の襲来を前に私が訴えたいのは、この「日本モデルの力」の解体である。恐ろしいことだが、安倍首相は本当に心から「日本モデルの力を示した」と思っているのかもしれない。しかし、これは大変な思い違いである。コロナウイルスの襲来の前に、国立感染研と保健所、地方衛生研究所の体制はほとんど歯が立たなかったのである。このままの体制で第2波の襲来を迎えれば惨憺たる結果を招くだろう。それを示すにあたって、まず5月27日の佐藤章ノート『「超過死亡グラフ改竄」疑惑に、国立感染研は誠実に答えよ!』で指摘した国立感染研公表の「超過死亡」グラフ問題の再取材結果を報告しよう。この問題は、有効なコロナウイルス対策を進める上で国際的に注目されている「超過死亡」統計のグラフが大きく変化していた疑惑で、公表している国立感染研と並んで統計を担当している厚生労働省の健康局結核感染症課が取材に応じた。まさに指定感染症を担当する課だ。この問題を簡単に復習しておくと、国立感染研のHPに5月7日に公表されていた「超過死亡」のグラフが、緊急事態宣言が解除された日の前日の5月24日、まったく違う形のグラフに変わっていたという問題だ。この変化によって、5月7日公表グラフでは2月中旬から3月終わりにかけて大きい「超過死亡」が見られたのに、5月24日公表グラフではその「超過死亡」分がそっくり消えていた。あまりに大きく変動していたために、「超過死亡」記事を紹介した私のツイートに対して、私のフォロワーの方々から「改竄されたのではないか」との声が多く寄せられたが、統計数値を直接取りまとめている国立感染研は、私の問い合わせに素っ気ない回答しか与えなかった。この国立感染研に代わって直接取材に答えたのは、感染研とともに「超過死亡」統計を担当する厚労省結核感染症課に所属する梅田浩史・感染症情報管理室長と、同室の井上大地・情報管理係長。6月2日、取材に応じた。
●厚労省結核感染症課の主張
 取材の結論をまず示しておくと、梅田、井上両氏は「超過死亡」統計グラフの作り方を懇切丁寧に説明したが、最終的に誤解を解くデータについては最後まで明らかにしなかった。梅田、井上両氏の説明を噛み砕いてシンプルに示しておこう。二つのグラフの間で大きく変化していたのは2月17日から3月29日にかけての死亡数。厚労省は東京都23特別区の保健所に対して、死亡小票を作った時点から2週間以内に死亡者や死因などを報告するように通知しているが、今年の場合、コロナウイルスへの対応に忙しく、「週によっては三つか二つの保健所からしか報告が来ない時もあった」(梅田感染症情報管理室長)という。23特別区からの報告がそろわない時には、仕方なく「報告保健所数の割合の逆数を乗じて」(国立感染研HP)いる。つまり、例えば23区のうちひとつの保健所からしか報告がなく、その報告が死亡者数5人であれば、「報告保健所数の割合」23分の1の「逆数」である1分の23に5人を乗じて、死亡数を115人と推定する、という計算法だ。これが厚労省の通知通り2週間以内に報告が出そろえば大した問題は生じないが、今回のように、1か月以上過ぎても報告がほとんど来ない事態ともなれば大変な問題となる。グラフのあまりの大きな違いに「改竄ではないか」という疑念まで生んでしまう。グラフが大きく変化していた論理はわかった。では、この厚労省結核感染症課の説明は正しいのだろうか。
●根拠の数字は頑なに示さず
 理由を述べたこの論理については、私はもちろん説明を受ける以前から知っていたが、その根拠となる数字については最後まで「公表していない」という返事しか聞けなかった。何月何日にどの保健所が何人の死亡者数を報告という数字をすべて明らかにすれば、先ほど紹介した計算をしてすぐに結果が出るのだが、なぜか明らかにされなかった。「新型コロナに対する超過死亡の数字が重要だということは我々も理解しています」。こう語った梅田感染症情報管理室長は、COVID-19対策が注目されている現在、第2波の襲来が予想されている今年秋までにCOVID-19対策専用の「超過死亡」統計を作ることを私に明言した。しかし、1か月以上経っても、東京都23特別区内にある保健所から死亡者数の報告さえ上がってこない現状で、そのようなCOVID-19対策専用の「超過死亡」統計など作って運用できるのだろうか。井上情報管理係長によれば、保健所は、報告書の死因欄に「肝臓癌」や「肺炎」などと手書きで書き、OCR(光学的文字認識)機械にかけるという。だが、OCRにかけようとパソコンに直接入力しようと、まず「2週間以内」という時間は遅すぎる。「ランセット」はCOVID-19対策のためにリアルタイムでの「超過死亡」数値の活用を訴えている。「ランセット」は、PCR検査による新規感染者数がCOVID-19の感染の勢いを正確に映していない恐れがあるために、単純な「超過死亡」数をリアルタイムで活用することを求めているのだ。PCR検査数が極端に少ない日本にこそ求められるリアルタイム統計だが、「2週間以内」ではあまりに遅すぎるし、コロナ対応に忙殺されていたとはいえ、1か月経っても死亡者数さえ報告されない現行の保健所体制ではまったく意味をなさない。未知のウイルス襲来に忙殺奮闘された保健所職員の方々の努力を軽視しているわけではない。COVID-19のようなパンデミック・ウイルスを迎え撃つ体制としては、保健所には限界があると言っているのだ。
●保健所の仲介をなくせ!
 体制としての保健所の限界は、「超過死亡」統計の問題だけではない。基本的なPCR検査体制については、さらに明確に指摘できる。私自身、発熱してからPCR検査を受けるまでに10日間を要し、指定された保健所に電話しても何日間も繋がらなかった(佐藤章ノート『私はこうしてコロナの抗体を獲得した《前編》保健所は私に言った。「いくら言っても無駄ですよ」』参照)。私のような事例は特別なものではなく、社会的には「検査難民」という言葉まで生まれた。これは文字通り保健所のキャパを超えていることを表している。しかし、例えば、ここで発想を変えて、保健所の仲介をまったくなくしてみたらどうだろう。何か困るようなことはあるだろうか。毎年のインフルエンザの検査は保健所などは通さない。かかりつけの開業医から民間検査会社にまっすぐ検査依頼が行くだけだ。だが、そうなるとPCR検査依頼が殺到して医療崩壊を招きかねないという心配の声が出てくる。その問題の対策には二つの方法が考えられる。まず、COVID-19を感染症法に基づく指定感染症から外して、無症状者や軽症者は医療機関以外の施設に大量に入所できるようにする。次に、韓国が全国69の既存病院をコロナ専用病院に転換させたように、COVIDー19を迎え撃つ医療体制の再構築を進めることだ。
●医系技官の天下り問題
 このような政策転換は努力すれば可能だが、実は問題は簡単ではない。保健所体制の問題には、厚労省や国立感染研などを含む医系技官の人事問題、つまり天下りの問題が絡んでいるからだ。この問題に関しては、医系技官問題を細大漏らさず知り尽くす上昌広・医療ガバナンス研究所理事長が懇切丁寧に解説してくれた。その説明に耳を傾けよう。戦前にできた保健所は元来、徴兵制度のサポートシステムだった。強兵養成のために栄養失調などを事前にチェックする役目を負い、戦後はGHQの下で、性病検査やチフス、コレラ、結核対策に活用された。GHQは保健所長に医師を充てる政策を採り、食中毒取り締まりなどの「衛生警察」の役割も担わせた。このため、保健所は戦後に特殊な権限を持つ役所に生まれ変わり、同時に厚労省の前身である厚生省もGHQの指揮下で、高等文官試験(現在の国家公務員試験)を通らなくても同省の官僚となれる医系技官制度を採用する。この医系技官官僚が独特の人脈を形成し、厚労省と国立感染研、そして保健所や地方衛生研究所との間で独自の人事交流、つまり天下りのネットワークを形作っていく。ところが、保健所そのものは中曽根康弘政権時代以来、行財政改革の主要な標的とされ、その存廃問題が常に医系技官たちのトラウマとなってきた。1990年代のエイズウイルスやO157、あるいは2000年代に入ってからのSARSや新型インフルエンザなどはそのような心配から医系技官たちを解放してくれた。しかし、COVIDー19の場合はPCR検査のキャパがあまりに大きく、放っておくと保健所体制をはるかに超えるPCR検査の流れができてしまう。そうなると、保健所不要論の声がまた大きくなり、再び悪夢の行財政改革の標的とされてしまう。保健所がPCR検査仲介の権限をしぶとく手放さない深い理由はそこにある。
●第2波に備えてPCR検査拡充を!
 中国は5月14日から6月1日の19日間で、武漢市民の「全員検査」を実施し、約990万人にPCR検査を受けさせた。1日あたり約52万人の計算だ。これにはかなり劣るがニューヨーク市は1日あたり4万件のPCR検査が可能になった。翻って日本の場合は、全国で1日あたり2万2000件のPCR検査が可能になったと厚労省が5月15日に発表している。この差は、アイロニカルに表現すれば、まさに安倍首相の言う「日本モデル」から来ている。つまり、日本独特の保健所体制に絡む医系技官の人事問題に由来しているのだ。PCR検査自体は難しい検査ではない。民間検査会社や大学の研究室ではまだまだキャパが余っている。人の手を介さない全自動機械も日本のメーカーが開発製造している。しかし、保健所が検査仲介の権能を手放して検査会社に検査の自由を認めない限り、検査会社も全自動機械などは導入しない。安倍首相は現在のところ、PCR検査拡充を阻むこのような問題に取り組む姿勢を微塵も見せていない。医療体制の再構築なども念頭にはないようだ。このままでは第1波と何ら変わらない体制のまま大きい第2波を迎えることになるだろう。安倍首相は本来、中曽根元首相や小泉純一郎元首相の流れを汲み、積極的な行財政改革に取り組むのではないかと見られていた。トラウマを抱える医系技官人脈にとっては警戒すべき政権だった。ところが、当の安倍首相にはそのような問題意識はまるでないことがまもなく明らかになり、天下りを夢見る医系技官にとっては夢を紡ぐ安全安心の政権と転じることになった。COVIDー19第2波の危機的な状況を前にしても、そのような問題に気が付いている節は安倍首相にはまるで見えない。「第2波の危機を前に、基本的なPCR検査の拡充などはまったく絶望的ですね」。私の問いかけに上昌広・医療ガバナンス研究所理事長は深く頷いた。この記事の筆者であるジャーナリストの佐藤章さん、記事に登場する医療ガバナンス研究所理事長の上昌広さん、東京都世田谷区長の保坂展人さんをオンラインでつないだ論座主催の公開イベント『「私はコロナから生還した」~感染したジャーナリストが語る検査の実態。医師は、行政はどうする?』を無料で公開しています。新型コロナウイルスに感染した佐藤さんの体験をもとに、医師である上さん、首長である保坂さんがコロナ対策の課題について語り合う内容です。ぜひご覧下さい。

*2-3:https://www.nishinippon.co.jp/item/n/610611/ (西日本新聞 2020/5/23) 帰国後に39度の熱…PCRなぜ受けられない? 検査なおハードル高く
 新型コロナウイルス感染が急速に広がった際、自らの症状に不安を感じて行動しながらも、感染の有無を調べるPCR検査を「受けられなかった」という不満がくすぶった。日本は諸外国と比べて検査数が少ないと批判が高まり、政府は検査能力を増強。目標の「1日2万件」を達成したとするが、依然として実際の検査数は半数にも満たない。「次女が急に高熱を出した。もしかしてコロナかもと不安になりました」。福岡県北部に住む男性(61)は5月上旬、留学先のカナダから帰国して間もない次女(23)が39度近い熱を出したと明かす。医療機関4カ所から外来受診を断られ、保健所の相談電話もつながらない。やむなく自宅療養を続けたという。発熱5日目、クリニックの医師が保健所に連絡し、次女はようやくPCR検査を受けた。結果は陰性だったが、男性は「家族は不安で仕方なかった」と話す。次女は内臓疾患と判明した。同様の事例は各地で相次ぎ、相談してもPCR検査まで至らないケースもある。厚生労働省によると、国内のPCR検査能力は3月上旬の1日約4200件から2万3139件(5月17日現在)に伸びた。ただ、実際の検査数は平日で1日5千~8千件ほどで推移する。感染者の減少傾向を踏まえても、検査能力と検査数に大きな隔たりがあるのはなぜか。改めて検証した。 

*2-4:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200606&ng=DGKKZO60063940V00C20A6EA1000 (日経新聞 2020.6.6) コロナに後遺症リスク 重篤な合併症 治療長期化も 「肺以外に影響」報告相次ぐ
 新型コロナウイルスの感染者が重い合併症を患う症例が、世界で相次ぎ報告されている。心臓や脳、足など肺以外で重篤化するケースが目立つ。世界では300万人近くが新型コロナから回復したが、一部で治療が長期化したり後遺症が残ったりするリスクも指摘され始めた。各国の研究機関は血栓や免疫システムの異変など、合併症のメカニズム解明を急ぐ。
●俳優が右足切断
「きょう右足が切断されます」。米演劇界最高の栄誉とされるトニー賞にノミネートされたブロードウェー俳優、ニック・コーデロさん。新型コロナに感染して4月上旬、集中治療室(ICU)で治療を受けていた。重い肺炎症状に加えて表れたのが、右足の異変だ。血液の塊である血栓が生じ、つま先まで血液が行き渡らなくなった。血栓を防ぐため抗凝血剤が投与されたが、血圧に影響を及ぼし腸の内出血を併発、切断を迫られた。妻はインスタグラムで「ニックは41歳で持病もなかった。どうかみなさん、新型コロナを甘くみないで」と訴えた。新型コロナが肺以外に影響を及ぼす合併症の症例は、欧米をはじめ世界各国で報告されている。原因の一つとみられるのが、ウイルスが血管に侵入して形成する血栓だ。英医学誌ランセットに掲載された研究で、ウイルスが血管の内膜を覆っている内皮細胞を攻撃する証拠を発見。著者の一人、米ブリガム・アンド・ウィメンズ病院のマンディープ・メウラ医師は日本経済新聞の取材に「(攻撃が)心臓や脳、腎臓など複数の臓器で起きている」と指摘する。オランダの医師らの研究によると、新型コロナに感染してICUに入った患者184人のうち、31%で血栓を伴う合併症がみられた。多くが血栓が肺動脈を塞ぐ「肺塞栓症」で、一部の患者は「脳梗塞」も併発した。本来はウイルスの侵入から体を守る免疫システムが、正常な細胞まで攻撃してしまう現象も合併症を引き起こす一因とみられている。この過剰な免疫反応は「免疫暴走」とも呼ばれ、何らかの理由で過剰に反応し臓器や血管を傷つける。乳幼児が発熱や発疹など「川崎病」に似た症状を引き起こすケースも、米国だけで5月中旬までに約200の症例が報告された。
●正常機能戻らず
 重い合併症の広がりは治療の長期化や後遺症リスクを高める。中国・武漢の医者団が新型コロナを克服した25人の血液サンプルを調べたところ、ほとんどが重症度合いにかかわらず正常な機能を完全に取り戻していなかった。国際血栓止血学会は、回復した患者に退院後も抗凝血剤の服用を勧めるガイドラインを発表した。イタリアの呼吸器学会は新型コロナから回復した人のうち、3割に呼吸器疾患などの後遺症が生じる可能性があると指摘。地元メディアによると、少なくとも6カ月は肺にリスクがある状態が続く懸念があるという。「最初の症状から69日が経過したが、倦怠(けんたい)感が残る。目が痛くて断続的な頭痛がある」(カナダの男性)。重症化は免れても後遺症や長期化に悩む人は多い。米ボディー・ポリティックが感染者640人を対象に4月下旬から5月上旬に行った調査によると、9割が完全に回復しておらず、症状は平均して40日間続いていると回答した。もっとも、ウイルスが血栓の形成や過剰な免疫反応を引き起こすメカニズムは解明されていない。メウラ医師は「内皮細胞にどのように侵入するのか、抗凝血剤の投与が役立つのかまだはっきりしていない」と話す。コーデロさんのように抗凝血剤が機能しない場合もあり、医療現場では手探りの治療が続く。米ジョンズ・ホプキンス大によると、650万人を超えた新型コロナの感染者のうち約280万人がすでに回復した。だが治療の長期化や重症化に悩む患者は多く、医療保険など各国のセーフティーネットや医療インフラへの負担も深刻だ。治療薬やワクチンの開発と並び、重症化に至る仕組みの解明や対策が不可欠になる。

*2-5:https://gendai.ismedia.jp/articles/-/72582 (現代 2020.5.17) 東京の3月のコロナ死者、発表の10倍以上?「超過死亡」を検証する、国立感染研のデータから 長谷川学
●「少なすぎる」疑いの目
 5月11日、小池百合子東京都知事は、都の新型コロナ陽性者数公表に関して、過去に111人の報告漏れと35人の重複があったことを明らかにした。保健所の業務量の増大に伴う報告ミスが原因だという。同じ日の参院予算委員会。政府の「新型コロナウイルス感染症対策専門家会議」の尾身茂副座長は、「確認された感染者数より実際の感染者数がどれくらい多いか」と聞かれ、「10倍か、15倍か、20倍かというのは今の段階では誰も分からない」と “正直” に答弁した。先進各国に比べ、PCR検査件数が格段に少ないのだから、感染者数を掴めないのは当たり前のことだ。小池、尾身両氏の発言は、いずれも新型コロナの「感染者数」に関するものだ。だが実は、東京都が発表した今年3月の新型コロナによる「死亡者数」についても、以前から「あまりに少なすぎる。本当はもっと多いのではないか」と、疑惑の目が向けられてきた。東京都が初の新型コロナによる死亡を発表したのは2月26日。その後、3月中に8人の死亡が発表されている。この頃、東京都ではまだPCR検査を積極的に行っておらず、2月24日までの検査数はわずか500人余りにとどまっていた。このため「実際は新型コロナによる肺炎で死亡した人が、コロナとは無関係な死亡として処理されていたのではないか」という疑いが、以前から指摘されていたのだ。
●「超過死亡」とは何か
 これに関連して、国立感染症研究所(以下「感染研」)が興味深いデータを公表している。「インフルエンザ関連死亡迅速把握システム」(以下「迅速把握システム」)のデータである。この迅速把握システムは、約20年前に導入された。少し前置きが長くなるが、概要について述べよう。東京(23区のみで都下は対象外)など全国の21大都市における「インフルエンザ」による死者と「肺炎」による死者の数を合計し、毎週、各地の保健所から集計する。この2つの死者数の変化を追うことを通じて、全国のインフルエンザの流行状況を素早く把握しようという狙いだ。なぜ「インフルエンザ」だけでなく「肺炎」による死者もあわせて集計しているのか。例えば、お年寄りがインフルエンザ感染をきっかけに入院しても、そのまま亡くなってしまうケースは少なく、実際にはさまざまな治療の結果、最終的に「肺炎」で亡くなることも多い。そうした死者も漏らさず追跡し、インフルエンザ流行の影響を総合的に捉えようという考え方だからだ。専門的には、このような考え方を「インフルエンザ流行による超過死亡の増加」という。今回注目すべきは、迅速把握システムの東京都のデータ(次ページの図「東京19/20シーズン」)である(注・19/20とは19年から20年のシーズンという意味)。
●インフルは例年より下火だったのに
 図の「-◆-」で示された折れ線は、保健所から報告されたインフルエンザと肺炎による死者数を示している。ご覧のように、今年の第9週(2月24日〜)から第13週(〜3月29日)にかけて、それまでに比べて急増していることが分かる。この急増の原因は、いったい何なのか。この時期、東京ではインフルエンザは流行していなかった。1月、2月のインフルエンザ推定患者数は、前年同時期の4分の1程度。今年は暖冬で、雨も多かったこと、そして国民が新型コロナを恐れて手洗いを良くしていたことも影響したと考えられている。インフルエンザが流行っていなかったのに、なぜ、この時期に肺炎による死者が急に増えたのか。医師でジャーナリストの富家孝氏はこう推測する。「まず考えられるのは、新型コロナによる肺炎死でしょう。警察が変死などとして扱った遺体のうち、10人以上が新型コロナに感染していたという報道もありました。2月、3月は、まだ東京都はPCR検査をあまり行っていませんでした。検査が行われなかったら、当然、新型コロナの死者数にはカウントされません。実際にはコロナによる重症肺炎で亡くなっていた人が、コロナとは無関係な死亡と扱われていた疑いがあります」
●偶然とは思えない多さ
 金沢大学医学部の小川和宏准教授もこう話す。「今年はインフルエンザの感染者数が少なかった上に、2月末から3月末はインフルエンザのピーク(毎年1月末から2月初めの時期)も過ぎている。この超過死亡は、新型コロナによる死亡を反映している可能性が高いと思います」。では、「隠れた死者」は何人いたのだろう。再び図をご覧いただきたい。「超過死亡」とされるのは、図の赤線(閾値)を超えた部分だ。江戸川大学の隈本邦彦教授が解説する。「東京23区内で過去のデータから予測される死者数がベースライン(緑線)です。どうしても年によってバラツキがありますから、そのベースラインに統計誤差を加えた閾値(赤線)を設定し、それを超えた分を “超過死亡” と判定しています。つまり今年は、偶然では起こり得ないほど肺炎の死者が多かったということです。それが5週連続、しかも毎週20人以上というのは異常だといえます」。図のように、超過死亡は今年第9週(2月24日〜)に約20人にのぼった。その後も、第13週(〜3月29日)まで毎週20〜30人の超過死亡が起きていた。合計すると、およそ1ヵ月の間に100人以上。東京都が発表した3月中の新型コロナによる死亡数8人の10倍を超える。
●「原因病原体はわからない」
 データを発表した感染研は、この超過死亡をどう捉えているのだろうか。感染研に質問したところ、「このシステムは超過死亡の発生の有無をみるものですが、病原体の情報は持っておりませんので、その原因病原体が何かまでは分かりません」と、木で鼻をくくったような回答だった。なお感染研発表の過去の東京都のデータを調べると、前シーズン(18-19年)と前々シーズン(17-18年)にも超過死亡はあったが、これについて感染研は「インフルエンザの流行が非常に大きかった」と回答した。なぜ去年の出来事はインフルエンザとわかるのに、今年は不明という回答になるのだろう。とはいえ、この超過死亡が新型コロナによるものかどうかは、遺体がPCR検査もされずに荼毘に付されてしまったいまとなっては、実証する手立てがない。一方、感染研発表の東京都のデータからは、死者数とは別の大きな問題も浮かび上がる。図のように2月24日以降、東京23区で超過死亡が急増していた。新型コロナウイルス発生を中国政府が正式に発表したのは、今年1月9日。同23日には武漢市が都市封鎖された。日本でも1月下旬以降、徐々に感染者が確認され、2月13日には国内初の死者が出て、人口が密集する東京での感染爆発は不可避とみられていた。そうした状況下で、2月24日以降5週間にわたって、人知れず週20〜30人もの超過死亡が確認されていたのである。なぜ、この重大なサインに当局は目を留めず、活かそうとしなかったのか。「原因病原体が何かまでは分かりません」で片づけられる話ではない。
●今にして思えば…
 前出の隈本氏が首を傾げる。「インフルエンザが流行していないのに、2月下旬に東京23区で週に約20人の超過死亡が発生していた事実は、通常なら2週間後の3月上旬には感染研の迅速把握システムに届いていたはずです。その時点で、感染研の担当者や厚労省の専門家会議のメンバーの誰かが気付いて、“東京が大変なことになっているかもしれない” と警鐘を鳴らしていたら、PCR検査態勢の拡充を含め、より早期の対応が可能だったはずです」。だが実際には、小池東京都知事が新型コロナ対策で本格的に動き始めたのは、3月24日に東京オリンピックの延期が正式に決まってからだった。そして東京都の新型コロナ感染者数は、先に感染が広がった北海道に比べてずっと少なかったのに、東京オリンピック延期が決まった後から、急激に右肩上がりで増えていった。「もし2月下旬に発生し始めた週20人以上の超過死亡が新型コロナのためだとなると、その時点でオリンピックどころではなくなったでしょう。しかし、もしそうした “忖度” のために、税金を使って集めている迅速把握システムが捉えたデータが生かされなかったとしたら、何のためのシステムなのか。東京都や国の責任は重いと思います」(隈本氏)。なぜこの貴重なデータが早期に検証され、コロナ対策に生かされなかったのか。今後、経緯を厳しく検証していく必要があるだろう。

<病院への新型コロナの一撃>
*3-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200522&ng=DGKKZO59429720S0A520C2EA1000 (日経新聞 2020.5.22) コロナ禍で通院激減 「不要不急」が問う医療、医療資源、最適配分に一石
 新型コロナウイルスが猛威をふるい始めてこの方、私たちは「不要不急」という言葉を幾度となく聞かされてきた。この四字熟語は医療にもあてはまるのだろうか。企業の健康保険組合と協会けんぽ、公務員などの共済組合や船員保険を合わせた被用者保険の3月の医療費動向が判明した。総額は1兆1257億円、患者が医療機関にかかった件数は9415万件。前年同月と比べると、医療費の1.3%減に対し、件数は11.5%減と大きく落ち込んだ。何が読み取れるか。
●風邪なら自力で
 3月は初旬こそ外出を自粛する空気は強くなかったが、半ば以降はイベントや会合の中止が相次いだ。通院の見合わせや先送りをする患者が目立ちはじめたのは、この頃だ。こんな仮説は成り立たないだろうか。軽い風邪や腹痛、花粉症などにかかった人は通院を控え、薬局で薬剤師や登録販売者に相談し処方箋がなくても買える一般用医薬品(OTC医薬品)でしのいだ。従来は地域の診療所や病院の外来診療に頼っていた軽い病の治療が、自分で手当てをするセルフメディケーションに取って代わった。感染症の専門家は軽い風邪症状の人には自宅療養を呼びかけていた。手洗いや消毒の徹底による予防効果もあろう。一方、高度医療を提供する大学病院や専門病院は、高額な医療費がかかる治療をさほど減らさなかった。この結果、件数の急減に対し医療費はさほど減らなかった―。医療関係者の多くは、医療に不要不急はあり得ないという。慢性疾患を抱えた高齢者には、待合室で長時間すごすのを避けようと、通院を見合わせた人もいる。それが原因で病状が重くなることがあってはなるまい。半面、自らの体調を知り、調子が悪ければ自己判断・自己負担で薬をのんで治すのも医療のひとつのかたちだ。「不要」ではなくとも受診が「不急」であるケースはあろう。健康保険証があれば医療機関へのアクセスが原則自由な日本は、主要国で最も医師にかかりやすい国のひとつだ。早期治療を促す利点があるが、そのぶんコロナ禍による受診抑制を招きやすいのではないか。英国営医療制度(NHS)が採用した人工知能(AI)診断アプリのようなしくみを日本でも保険適用すれば、受診抑制による治療の遅れをくい止める効果が期待できよう。むろん同国とは医療費の負担構造が違うので、一概には比べられないが。
●病院経営に影響
 注目すべきは緊急事態宣言下の4月の動向だ。厚生労働省は重篤・重症のコロナ感染者を受け入れ専門治療にあたっている大学病院などに対し、特例としてICU(集中治療室)の入院料を2倍に上げた。だが採算は改善せず、コロナ対応病院の経営はおしなべて苦しい。隔離用の陰圧病室を新設したり空き病床を確保したりするコストがかさむからだ。政府・与党が編成に着手した2020年度第2次補正予算案は、コロナ対応病院への資金援助が欠かせまい。地域の診療所などはどうするか。日本医師会は2次補正に資金援助を計上すべく厚労省への働きかけを強めている。省内には初診・再診料の加算を模索する動きがある。セルフメディケーションへの移行や予防の徹底が効いているとすれば、医療機関の減収分をほかの患者や健康保険が負担する診療報酬で補填するのは筋が通るまい。診療報酬を上げるなら、オンラインの初診・再診料を増やし、コロナ後も見すえた新しい医療態勢に誘導するのが望ましい。4月に入り、規模の大きな総合病院にも、外来患者が急減したり不急の手術を先送りしたりし、収入の落ち込みが目立つようになったところがある。コロナ禍という特異な状況のもとで、専門性や診療科の違いによる繁閑の差が広がっている。軽症のコロナ感染者は感染予防を徹底させた地域の診療所で治療する選択肢もあろう。そのための設備や資材を国費で援助するのは、納税者の納得を得やすい。人材配置を含め、医療資源を最適配分するにはどんな資金援助が効くか。データをつぶさに読み取り、根拠に基づく政策立案を徹底するときである。

*3-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200606&ng=DGKKZO60069950V00C20A6EA3000 (日経新聞 2020.6.6) 新型コロナ 政策を聞く〈検査体制〉民間機関、参入しやすく 自民・医師議員団本部長 冨岡勉氏(長崎大院修了。医学博士。衆院厚労委員長など歴任。党政調副会長。石原派。衆院比例九州、71歳)
 日本は米欧や中韓に比べ検査体制の整備が遅れた。第2波が起こりかけた時に正確に把握できるよう体制の拡充が急務だ。再流行の予兆を感知したらすぐにクラスター(感染者集団)対策を強化し、小さな流行に抑えるためだ。これまで過剰に検査せず医療費を抑えた面はあったが、再流行の兆しをつかめずに大規模な感染拡大につながればかえって医療費は増える。PCR検査の体制を強化するには米国や韓国で普及するドライブスルー方式の検査センターを増やす必要がある。短時間で検体を採取できるため効率がよい。病院で医師や患者が集団で感染するリスクを減らせる。ドライブスルー方式は日本の医師会や自治体で導入が増え始めている。政府は民間の検査機関が参入しやすくなる支援策を講じてほしい。PCR検査に類似し最短2~3時間で終わる簡易な「LAMP法」もドライブスルー方式で導入すべきだ。無症状者らを対象にコロナの感染の有無を一定の精度で早く判定できると期待する。抗原検査や抗体検査は学会で診断の評価が十分に定まっていないため、明確な症状がある人らに対象を限るのが望ましい。無症状者らが診断後にPCR検査も受けたら二度手間になる。

*3-3:https://www.nikkei.com/paper/related-article/?b=20200606&c=DM1&d=0&nbm=・・ (日経新聞 2020.6.6) PCR遅れ 国会検証を 立民・幹事長 福山哲郎氏(京大院修了。民主党政権で外務副大臣や官房副長官など歴任。参院京都選挙区、58歳)
 感染の実態を十分把握しているとは言いがたい。検査のために保健所などに設置した帰国者・接触者相談センターは電話がつながらないケースが相次いだ。「37.5度以上の発熱が4日以上続く」とした受診目安も壁となった。軽症、無症状者を含めた感染者数の全体像を把握しなければ必要な対策は打てない。PCR検査を増やすべきだ。ドライブスルー方式は院内感染を防ぎ、検査数を増やせるメリットがある。韓国やドイツなどではドライブスルー方式を2~3月に導入した。感染者を早期に発見し隔離することで感染防止につなげようとしたのだろう。日本も自治体が積極的に導入したのは評価できる。国が経費を負担するのが不可欠だ。第2波に備え、抗体検査も組み合わせ検査数を増やしていくのが欠かせない。妊婦や医療従事者、教員などに優先的に受けさせるべきだ。屋外拠点や電話ボックス型の検査ブースの活用も有効だろう。医療機関とは空間を別にして数多く検査ができるシステムを開発せねばならない。PCR検査がなぜ進まなかったのか十分な検証が必要だ。国会にコロナ問題検証委員会を設け、要因を分析すれば今後の検査拡充につながる可能性がある。(随時掲載)

*3-4:https://digital.asahi.com/articles/DA3S14502069.html (朝日新聞 2020年6月5日) 病院再編、感染症考慮
 厚生労働省が再編統合の必要性を打ち出した全国の公立・公的病院について、安倍晋三首相は4日の参院厚生労働委員会で「感染症病床を担い、感染症対策において重要な役割を果たしていることは認識している」と述べ、今後は感染症対策も考慮して議論を進める方針を示した。厚労省は昨年9月、再編統合の必要があるとして424の公立・公的医療機関を名指ししたが、感染症病床の有無などは考慮していなかった。しかし、新型コロナウイルスの患者を多く受け入れている感染症指定医療機関の多くは公立・公的病院で、病院団体などから見直しを求める意見が示されていた。

*3-5:https://digital.asahi.com/articles/DA3S14496109.html (朝日新聞 2020年5月31日) 医療担い手、待遇悪化 ボーナス3分の1に/給料10%減… コロナ恐れ受診減
 新型コロナウイルスで、医療や介護の働き手の待遇が悪化している。感染対策のコストがかさみ、患者や利用者が減って、経営が揺らいでいるためだ。一時金をカットせざるを得ない病院や施設も相次ぐ。国は医療・介護従事者へ最大20万円を配る予定だが、減収分を補うのは難しい。一部では雇い止めや、休みを指示する一時帰休などもみられ、雇用をどう守るかも課題だ。医療機関のコンサルティングを手がけるメディヴァによると、一般の患者が感染を恐れて受診を控える動きがめだつ。同社が全国約100の医療機関に感染拡大の前後で患者数の変化を聞いたところ、外来患者は2割強、入院患者は1~2割減った。首都圏では外来は4割、入院は2割減。とくにオフィス街の診療所では、在宅勤務の定着で会社員らの患者が落ち込む。メディヴァの小松大介取締役は「非常勤医師の雇い止めも出ている。夏のボーナス支給見送りを検討している施設も散見される」と話す。実際、看護師らの給料や一時金が下がるケースが続出している。日本医療労働組合連合会(医労連)が28日にまとめた調査では、愛知県の病院が医師を除く職員の夏の一時金を、前年実績の2カ月分から半減させることを検討。神奈川県の病院では夏の一時金カットに加え、定期昇給の見送りや来年3月までの役職手当の2割カットなどを検討しているという。医労連の森田進書記長は「職員の一時金1カ月分はだいたい30万円。コロナ患者を受け入れている医療機関の勤務者には最大20万円が支給されることになったが、賃下げ幅が上回る可能性がある」と話す。職員の夏の一時金を、当初想定していた額の3分の1に引き下げる病院もある。埼玉県済生会栗橋病院(同県久喜市、329床)は、新型コロナの入院患者も受け入れている。4月の病院収入は前年同月より15%減で1億2千万円減った。院長は経営環境について「つぶれるんですか、というレベルだ」と打ち明ける。看護師や臨床検査技師ら職員の夏のボーナスについて、感染拡大前に想定した額の3分の1にまで減らさざるを得ないという。全国医師ユニオンが都内で16日に開いたシンポジウムでも、懸念の声があがった。千葉県内の民間病院に勤める研修医は「すでに給料が10%カットされた病院もある。現場でのストレスが強くなるなかで給料まで下がったら、もうやっていられないという人も出てくる」と訴えた。大病院のなかには、業務が減っている一部の職員について、一時帰休を検討するところも出てきた。今後予想される「第2波」に向け、医療従事者の雇用の安定が求められる。
■経営、もともと脆弱
 背景には、感染拡大前から病院がぎりぎりの経営を強いられ、脆弱(ぜいじゃく)だったことがある。病院の収入は診療報酬制度に基づく。手術や入院などの診療行為ごとに値段(点数)が決められている。国は医療費が膨らみすぎないように点数を抑制してきた。厚労省の医療経済実態調査によると、精神科を除く病院の2018年度の損益率(収入に対する利益の割合)は、マイナス2・7%の赤字。利益を出しにくい構造で、患者が少しでも減れば経営が揺らぐ。介護の分野でも構造は同じ。国が定める介護報酬も抑制されていて、事業者には余裕が少ない。感染対策の費用がかさむ一方で、サービスの利用者が減り経営を圧迫している。国は診療報酬の上乗せやデイサービスの条件緩和など対策をとろうとしているが、実態の把握は十分ではない。厚労省の医療経営支援課は「病院団体が調べたデータなどを踏まえて経営支援に何ができるか考えていく」という。
■病院や介護施設における待遇悪化の主な事例
【病院】
 <愛知> 医師以外の固定給職員の夏の一時金が前年から半減の1.0カ月分
 <沖縄> 正規、臨時職員の夏の一時金が前年の約3割減の0.8カ月分
 <神奈川> 定期昇給見送り。正規職員の夏の一時金が前年の約3割減の
       1.0カ月分+3万円。6月から来年3月まで役職手当2割カット、
       管理職手当1割カット
 <東京> 一部の職員に一時帰休を実施
【介護施設】
 <和歌山> 夏の一時金が前年の約2割減の1.5カ月分
 <神奈川> 基本給を平均約2割減らし、定昇は見送り。年間一時金が前年から
       半減の2.0カ月分
 (日本医療労働組合連合会調べ。労使交渉は継続中で支給内容は変わる可能性がある)

<新型コロナの経済対策>
*4-1:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/526293 (佐賀新聞 2020.5.23) コロナ解雇1万人超
加藤勝信厚生労働相は22日の記者会見で、新型コロナウイルス関連の解雇や雇い止めが21日時点で1万835人に上ったと明らかにした。政府が緊急事態宣言を発令した4月から急増し、5月だけで全体の7割近い7064人を占める。雇用情勢が急速に悪化している実態が浮き彫りになった。厚労省は2月から、解雇や雇い止めについて見込み分も含めて都道府県労働局の報告を集計している。月ごとに見ると、2月が282人、3月が835人、4月が2654人。5月は20日時点で5798人だったが、21日には7064人となり、千人以上増えた。加藤氏は「日を追うごとに増加している」と懸念を示した。業績が悪化した企業が従業員を休ませた場合に支給する雇用調整助成金などを利用して、雇用維持に努めてほしいと強調。大規模な解雇や雇い止めの情報を把握した場合は「ハローワークの職員が企業に出向き、雇用調整助成金の活用を働き掛ける」と述べた。厚労省は解雇や雇い止めの集計に関し、現在は正社員と非正規労働者を区別しておらず、加藤氏は「(今後は)正社員と非正規労働者の動向が分かるよう事務方に指示している」と語った。パートら非正規労働者は正社員に比べて解雇されやすく、労働組合関係者の間では派遣社員の大量雇い止めなどへの懸念が広がっている。

*4-2:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/528535 (佐賀新聞 2020.5.29) 観光割引、事務費が3000億円、「高すぎる」と野党が問題視
 新型コロナウイルス感染拡大で打撃を受けた観光・飲食業を支援する政府のキャンペーンを巡り、外部への事務委託費が最大約3千億円と見込まれることが分かった。予算総額1兆6794億円の約2割を占める可能性があり、立憲民主、国民民主などの野党会派が29日開いた合同部会では「事業者に恩恵が行き届かない恐れがある」と問題視する声が出た。政府は新型コロナの収束を見据え、本年度第1次補正予算にキャンペーン費用を計上。旅行商品を購入した人に半額相当を補助したり、飲食店のインターネット予約などにポイントを付与したりする。事務作業は外部に委託するが、費用の上限は3095億円に設定。人件費、広報費に充てることを想定している。事務局の公募を既に開始、6月中に選定する。赤羽一嘉国土交通相は29日の衆院国交委員会で、関係業界が多岐にわたるため、事務局の作業は「時間とコスト、手間が相当かかる」と指摘。上限額の設定は適正との認識を示した。その上で、最終的な委託費用は「絞られる」とも述べた。野党の会合では「事務局への費用がかかりすぎると、本当に必要な事業者の支援が不十分になる」「地域の消費を喚起できるような仕組みにしてほしい」といった意見が出た。

*4-3:https://digital.asahi.com/articles/DA3S14496375.html (朝日新聞 2020年6月1日) 布マスク「質より量」、迷走 政府、早さ重視 国内検品断る
 4月1日の安倍晋三首相の全戸配布の表明から2カ月。いまだ大半の世帯に届いていない「布マスク」は、安倍政権の迷走の象徴となっている。マスク不足の中、調達の現場ではなにが起きていたのか。「3月中に1500万枚、4月中に5千万枚ほしい」。2月後半、最大の受注企業となる「興和」(名古屋市)の三輪芳弘社長は政府からの依頼に驚いた、と振り返る。枚数の桁が違った。「量ですか、質ですか」。納期を考えて優先事項を尋ねる三輪氏に政府の担当者は言った。「量だ。とにかく早くほしい」。医薬品や衛生品などをつくる同社が生産するマスクは不織布の使い捨てが主流だったが、布マスクも少数ながら取り扱っている。政府は生地の調達を含めて一貫した生産ができるとみて依頼した。だが、この時点で、政府の担当者も同社も、のちに「アベノマスク」とも言われる全戸配布の布マスクになるとは想像していなかった。課題は山積みだった。ガーゼの生地は中国やベトナム、スリランカなどアジア各国で探し、かき集めた。ただ、その時点では政府の発注書もない、いわば「口約束」だった。つくった布マスクを政府が買い取るという確約もない中で作業は始まった。生地はタイとインドネシアで加工。縫製は中国の加工業者に依頼し、約20カ所を確保した。2週間で急きょ集めた作業員は計1万人以上。日本人社員は感染を避けるため赴任先から帰国させており、日本語が分かる現地スタッフを通じて加工業者らとやりとりした。これとは別に検品場所も中国で約20カ所探し、ピーク時には数千人が作業にあたった。同社は当初、品質を担保するため国内での検品を強く希望。しかし、同社の国内検品は1ミリ程度の縫い目のずれすら不良品として取り除くというもので、「それでは期日までに目標の半分も調達できないおそれがあるということで、政府側が断った」(政府関係者)という。同社は日本から検品の担当者を現地に行かせ、監督させようとしたが、出入国制限などのため断念した。こうした経緯は異例の契約にもつながった。3月17日に結ばれた介護施設など向けの布マスク、21・5億円分の契約書には、隠れた不具合が見つかっても興和の責任を追及しないとの条項が入った。配布計画を担う政府のマスクチーム担当者は「緊急を要する発注だったためにこのような契約を結んだ」と話す。縫製作業が始まったのは3月21日ごろ。同月26日、三輪氏は首相官邸で開かれた会議に出席。最初につくったサンプルを持参した。首相が全世帯に2枚ずつ布マスクを配ると表明したのは、その6日後だった。布マスク計画に関わった政府関係者は言う。「マスクが国民に行き渡るようにしろ、というのが官邸の意向だったが、これほどの量を短期間で確保するなんて元々厳しい目標だった」。前例のない計画に、やがてほころびが出た。

<介護崩壊>
*5:ttps://www3.nhk.or.jp/news/html/20200508/k10012422701000.html (NHK 2020年5月8日) 新型コロナで“介護崩壊”の危機? 高齢者施設で いま何が
 老人ホームなどの入所系の高齢者施設で、4月末までに少なくとも550人余りが新型コロナウイルスに感染し、このうち10%にあたる60人が死亡したことが全国の自治体への取材でわかりました。欧米では死者の多くを高齢者施設の入所者などが占めていて、専門家は「日本でも感染者や死者がさらに増えていくおそれがあ

(図の説明:左の図は米国、中央の図はフランスの超過死亡数のグラフで、このような事態の中で、山形の超過死亡数が出るのは極めて自然なのだが、右図のように、日本はこれまでカウントしていた超過死亡数の公表を3月以降、中止している)

(1)医療崩壊を加速させた消費税制 ← 医療費を消費税非課税取引とした失政
る」と指摘しています。
●高齢者施設関連 国内死者の15%
 新型コロナウイルスの感染が先に深刻化した欧米では、死亡した人の多くを高齢者施設の入所者などが占める事態となっていて、NHKは全国の自治体に4月末時点での高齢者施設での感染状況を取材しました。その結果、特別養護老人ホームや老人保健施設、それに有料老人ホームやグループホームなど入所系の高齢者施設では、少なくとも利用者380人余り、職員およそ170人の合わせて550人余りが感染し、このうち10%にあたる利用者60人が死亡していたことがわかりました。このほか、デイサービスなどの通所系施設やショートステイなどの短期入所系施設でも利用者と職員合わせておよそ190人が感染し、このうち利用者6人が死亡していたほか、訪問介護事業所でも利用者と職員だけで合わせて30人余りが感染していました。さらに愛知県では、デイサービスに関連して2つのクラスターが発生し、利用者と職員、それに利用者の家族や接触者などを含めて合わせて90人余りの感染が確認され、このうち20人が死亡しています。これらをすべて合わせた高齢者施設関連の死者は少なくとも86人で、国内で感染が確認され死亡した人のおよそ15%を占めています。
●感染拡大が続く高齢者施設
 各地の高齢者施設では5月に入ってからも利用者や職員の間で感染が広がり続けています。
▽札幌市の介護老人保健施設
  集団感染が発生。新たに利用者と職員合わせて30人の感染が明らかに。
▽京都市内2つの有料老人ホーム
  利用者と職員、合わせて12人の感染が確認。
▽千葉県市川市の介護老人保健施設
  集団感染が発生。新たに利用者と職員合わせて3人の感染が明らかに。(いずれも7日
  までの1週間)。感染者が出たことを受けて休業を余儀なくされている施設も出ています。
  福島県古殿町の介護施設では、5月3日にデイサービスを利用している90代の女性の
  感染が確認されたため、14日まで休業する措置をとり、消毒作業を行いました。
●なぜ消毒難しい? 特有の事情とは
 新型コロナウイルスの感染者が出た高齢者施設の消毒作業を手がけている団体が、認知症の高齢者が入居するグループホームで行った消毒作業の動画を公開し、入居者の一部が部屋にとどまったまま作業をせざるをえない高齢者施設特有の難しさを証言しました。消毒作業を手がける全国の24の企業で作る団体「コロナウィルス消毒センター」は、依頼者の許可を得て、4月13日に北海道千歳市にある認知症のある高齢者が入居するグループホームで行った消毒作業の動画をインターネットの動画投稿サイトで公開しました。3階建ての建物の中にあるこのグループホームは、1階の入居者と職員の合わせて10人が感染し、このうち入居者1人が死亡しました。センターによりますと、感染していない入居者は避難できる場所がないため部屋にとどまっていました。このため、まず感染者が出た1階の消毒作業を行い、次に2階の入居者を消毒が済んだ1階に移して2階の消毒を行うといった形で、各階ごと順番に作業を進めなければならなかったということです。消毒作業は、次亜塩素系薬剤、アルコール製剤、それに抗菌剤をそれぞれ噴霧するなどして拭く三段階の方式で行い、共有スペースや入居者の個室のほか、布団などを含め部屋に置かれているすべての物を念入りに消毒したということです。コロナウィルス消毒センター事務局の春日富士さんは「グループホームの運営会社の代表は、消毒を依頼する電話をかけてきた際、開口一番『助けてください』と話し、非常に切迫した様子だった。高齢者施設の場合、感染していない入居者はその場所に残るという選択肢しかなく、入居者も職員も不安を感じている。特に職員は非常に疲弊している印象を受けた」と話していました。
●対策も防ぎきれぬ
 集団感染が発生した高齢者施設の中には、感染者が全員入院し再発防止策が取られて事態が収束に向かったと見られていたのに、再び感染者が出たケースもあります。東京 大田区の特別養護老人ホーム「たまがわ」では、4月1日に職員の感染が明らかになり、入所者79人と職員52人がPCR検査を受けました。その結果、職員は全員陰性でしたが、入所者12人の感染が確認されました。しかし、入院先はすぐに確保できず、数十キロ離れた武蔵野市や立川市などまで範囲を広げて病院を探し、ようやく1週間後に感染した入所者全員が入院できました。それまでの間は、感染した入所者を一部の部屋に集め、医療機関で使うような防護服がない中で、簡易的な予防衣を着てゴーグルと手袋をつけて食事や排泄の介助などを続けました。感染者が出たため、作業を委託していた清掃や給食、それに警備の会社が従業員を派遣できなくなり、施設内の清掃なども職員がやらざるを得ない状況になったということです。施設を運営する社会福祉法人「池上長寿園」の杉坂克彦常務理事は、「感染した入所者が入院するまで1週間もかかるとは思わなかった。感染に気をつけながら1日中入所者の介助をして、職員は精神的にも肉体的にも、かなり疲弊していた」と話しました。保健所からは、調査の結果、現段階で感染経路はわかっていないと連絡があったということです。その後、施設内の消毒を行うとともに、食堂でとっていた食事を居室でとるように変更するなど、感染防止策を徹底しましたが、感染した入所者が全員入院してから1週間余りたち事態が収束すると思われた4月18日、新たに職員1人の感染が確認されました。さらに12日後の先月30日、今度は入所者1人の感染が確認されました。この入所者の濃厚接触者と判断された入所者3人は、症状が出ていないとしていまだにPCR検査を受けられず、施設内で隔離する対応を続けているということです。杉坂常務理事は、「通常の体制に戻そうかと考えていた矢先に、職員と入所者の感染が新たに判明し、まだ続くのかと感じました。感染防止策をさらに徹底していくが、これ以上施設内で感染を広げないためにも、防護服の確保やPCR検査の拡充を進めてもらいたい」と話していました。
●欧州 死者の半数近くが介護施設で暮らす人
 日本よりも先に新型コロナウイルスの感染が深刻化した欧米では、死亡した人の多くを高齢者施設の入所者などが占める事態となりました。感染者や死者が最も多いアメリカでは、ジョンズ・ホプキンス大学のまとめで、これまでに7万3000人余りが死亡しています。高齢者施設での死者をまとめている民間の財団によりますと、情報が公開されている23の州の高齢者施設だけで、合わせて1万人以上が死亡したということです。このうちおよそ半数が、死者数が最多のニューヨーク州に集中していて、今月4日までに5000人近くが高齢者施設で死亡したとみられています。こうした状況はヨーロッパも同じで、死者3万人余りとアメリカに次いで死亡した人が多いイギリスでは、当初集計が困難だとして統計に含めていなかった高齢者施設など病院以外の場所で死亡した人を含めるよう変更した結果、死者数が4400人余り増えました。フランスではおよそ7000ある高齢者施設の半分近くで感染者が確認されていて、2万5000人を超える死者のおよそ4割、9600人余りが高齢者施設で死亡しています。ドイツでも7000人を超える死者のうち少なくとも2500人が高齢者向けなどの福祉施設で死亡していました。WHO=世界保健機関のヨーロッパ担当の専門家は4月23日の会見で「各国の推計によると、ヨーロッパで亡くなった人の半数近くが長期滞在型の介護施設で暮らしていた人たちだと見られる」と指摘しています。
●専門家「日本でも感染者や死者 さらに増えるおそれ」
 国内の高齢者施設での感染状況について、高齢者の介護や施設に詳しい東洋大学の早坂聡久准教授は「現段階でも大変高い死亡率になっていると受け止めているが、欧米では死者に占める高齢者施設の入所者の割合が高いことを考えると、日本でも感染者や死者がさらに増えていくおそれがある」と指摘しました。そのうえで今後の対策について「今は医療崩壊を招かないよう病院については大変多くの対策がとられているが、介護施設はどうしても二の次になっていて、感染が広がっている中でも具体的な支援策が十分講じられていないのが現状だ。国や自治体は最低限、マスクや消毒液、防護服の確保など、感染を拡大させないための手当てをしたうえで、職員や入所者が早い段階でPCR検査を受けられるようにするとともに、施設内で集団感染が発生しても介護の質が落ちないよう職員のバックアップ体制を作る方策を早急に考えていく必要がある」と述べました。そして「介護崩壊を起こさないよう、長期的に新型コロナウイルスがある生活の中で介護サービスを維持していく仕組みを検討していくべきだ」と話しました。
●老人保健施設でクラスター いったい何が 富山
 人口10万人当たりの新型コロナウイルスの感染者が全国で3番目に多い富山県。富山市の老人保健施設で発生したクラスターが、220人近くいる感染者の4分の1以上を占めています。この施設では入所者だけでなく施設の職員の感染も相次ぎ、“介護崩壊”直前の状況になっていました。富山市の老人保健施設「富山リハビリテーションホーム」では、4月17日に入所者の感染が初めて確認されて以降感染が広がり、これまでに入所者と職員合わせて58人が感染、このうち入所者8人が死亡しています。施設には県から、診療や感染拡大の防止にあたる医療チームが派遣されていて、このうちの1人、富山大学附属病院の山城清二教授がNHKの電話インタビューに応じました。山城教授は4月23日と24日に施設内を視察したあと、25日から診療にあたり、入所者の健康状態を確認したうえで重症者を搬送するなどの対応をとったということです。施設で勤務している介護士や看護師にも感染が広がったため、5人程度の職員で40人余りの入所者のケアに当たっていたということで、山城教授は「非常に少ない人数で対応していてケアが行き届いていなかった。“介護崩壊”直前のぎりぎりのところでやっていて、あと1人職員が感染すれば完全に崩壊していた」と指摘しました。施設には介助が必要だったり認知機能が衰えていたりする入所者も多くいますが、深刻な人手不足のため、最低限の食事や水分をとらせるだけで、着替えをしたり体を拭いたりすることはほとんどできていなかったということです。“介護崩壊”を防ぐため、富山市などが富山県内の老人介護施設でつくる協議会に対して介護士の派遣を要請した結果、今月2日以降介護士と看護師合わせて6人が応援に入り、体を拭くなどのケアをカバーできるようになって、状況は徐々に改善されているということです。
●症状相次いでも 適切な対応とらず…
 一方、この施設では、入所者の間で発熱などの症状が相次いだ後も適切な対応を取らなかったことや、多くの入所者が相部屋を利用するなど感染が広がりやすい構造がクラスターを引き起こしたとみられることが市の関係者への取材で分かりました。市の関係者によりますと、この施設では入所者の間で発熱などの症状が相次いだあとも感染を疑わず、保健所に相談してPCR検査を受けさせるなどの適切な対応を取っていませんでした。施設で最初に感染が確認された80代の女性のケースでは、4月7日に熱が出て、10日にはしゃがれ声、13日にはせきやたんといった症状も出ていましたが、症状が悪化して救急搬送された指定医療機関でPCR検査を行ったのは、発熱の9日後の16日でした。女性と同室だった90代以上の入所者は、4月9日に熱が出て、14日にはせきやたん、しゃがれ声の症状も出ていましたが、指定医療機関に搬送されて検査を受けたのは16日でした。この女性は翌日に死亡し、その後、感染が確認されました。さらにこの施設では、入所者の多くが相部屋で、部屋や風呂を共同で利用するなど、感染が広がりやすい構造になっていることがクラスターを引き起こしたとみられることも分かりました。
●高齢者施設は どうすればいいのか?
 感染症が専門の厚生連高岡病院の狩野惠彦医師は、高齢者が入所する施設の中で感染が広がるリスクについて「人と人との距離が近く接触度の高い生活をしているので、一度ウイルスが持ち込まれるとクラスターが発生しやすくなる。感染が収束に向かうような流れがあっても、最後の最後まで気が抜けない環境であることに変わりはない」と指摘しています。そして、施設内で感染者や疑わしい人が出た場合は、個室に移動させて隔離し対応する介護職員を限定することや、入所者や職員が食事する際、換気のいいところでなるべく離れて食べるといった対応を速やかにとることが大切だとしています。一方で、人手や施設の構造など施設ごとの事情があるとしたうえで「個室が難しければ、カーテンで仕切ってそこから出ないようするなど、感染リスクを下げるために与えられた環境で可能な対応を考えていく必要がある」と話しています。そのうえで、今後高齢者が入所する施設の中でクラスターを防ぐために必要なこととして「クラスターの発生には1つのことが理由になっていることもあれば、いくつかの事情が重なっていることもある。海外や国内で起きた事例から学んで、対策の見直しを行うことが求められる」と話しています。

<年金崩壊>
*6:https://digital.asahi.com/articles/DA3S14494753.html?iref=comtop_shasetsu_01 (朝日新聞社説 2020年5月30日) 年金改革 残る課題の検討を急げ
 年金改革関連法が成立した。非正規雇用で働く人たちに厚生年金の適用を広げることなどが柱だ。適用拡大は長年の懸案で、今回の見直しは半歩前進だ。ただ、積み残しとなった課題も多い。制度の安定と将来不安解消のため、次の改革に向けた議論を急がねばならない。雇われて給料をもらう人は厚生年金に入るのが原則だ。しかしパートなどで週の労働時間が20時間以上30時間未満の短時間労働者は、「従業員数501人以上」の企業で働く人にだけ加入を義務づけている。この要件を22年10月に「101人以上」、24年10月に「51人以上」に改める。約65万人が新たに厚生年金に加入すると見込まれる。本人の年金が充実するのに加え、厚生年金の支え手が増え、年金財政の改善にもつながる。新たに保険料の負担が生じる中小企業への支援、当事者への丁寧な説明を通じて理解を得つつ、着実に進めたい。そもそも厚生年金に加入するかどうかが、勤め先の規模で異なるのは不合理だ。野党は24年10月に企業規模要件をなくす修正案を提出し、安倍首相も「撤廃を目指すべきだ」と述べた。にもかかわらず今回、廃止時期を示せなかったのは遺憾だ。いつまでにこの要件を撤廃し、それを実現できる環境をどのように整えるのか。議論を深める必要がある。コロナ禍で経済が打撃を受け、今後の景気の動向は見通しにくい。年金制度は、少子高齢化の進行に合わせて給付を抑える仕組みで収支を均衡させることになっている。ただ、今は物価などに連動して給付が伸びるのを抑えるやり方のため、デフレが続くとこの機能が働かない。しわ寄せを受けるのは、将来年金を受け取る世代だ。全ての世代で痛みを分かち合いながら、どのような経済環境になっても年金制度が揺るがないようにするには、この仕組みの見直しが避けられない。参院では、コロナ後の経済・社会の動向も踏まえた年金財政の検証を求める付帯決議がつけられた。作業の前倒しも含め、検討を急ぐべきだ。昨年の財政検証では、国民年金の加入期間を40年から45年に延長すると、基礎年金の底上げ効果が大きいという試算も示されたが、これも付帯決議で、今後の課題として先送りされた。政府・与党内で、基礎年金の半分を賄う国庫負担分の財源確保の議論が進まないためだ。今は65歳まで働くことも一般的になっており、見直しは待ったなしだ。財源の議論も含め、これ以上の先送りはできない。

<日本における経済分析の問題点>
*7-1:https://www.tokyo-np.co.jp/article/economics/list/202005/CK2020051802000225.html (東京新聞 2020年5月18日) <新型コロナ>GDP年3.4%減 2期連続マイナス 1~3月期
 内閣府が十八日に発表した二〇二〇年一~三月期の国内総生産(GDP、季節調整値)速報値は、物価変動の影響を除いた実質成長率が前期比0・9%減、このペースが一年続くと仮定した年率換算では3・4%減だった。新型コロナウイルスの感染拡大を受け、政府が緊急事態宣言を発令する前だが、外出自粛で個人消費が低迷。訪日外国人客の減少も響き、約四年ぶりに二・四半期連続のマイナス成長となった。項目別に見ると、GDPの六割近くを占める個人消費が前期比0・7%減。政府による二月末のイベント自粛要請で「自粛ムード」が広がったため、外食や宿泊に関連した消費が落ち込んだほか、自動車や衣服の消費も振るわなかった。外食や宿泊などのサービス消費額は今回、外出自粛の影響をより正確に反映させるため、業界統計を基に推計する異例の手法を採った。従来は一~二月の実績から三月分を推計していたが、これではサービス消費が急減した状況を織り込めず、実態と懸け離れると判断した。輸出は6%減で一一年四~六月期以来のマイナス幅。統計上は輸出にカウントされる訪日客の消費が減り、世界経済の減速で半導体製造装置の出荷が滞ったことも響いた。一方、輸入も国内消費の弱さを背景に原油や天然ガスの減少などで4・9%減となった。企業の設備投資は0・5%減。新型コロナ感染拡大の収束が見通せない中、先行きの不透明感から投資を先送りする企業が増えたとみられる。住宅投資も4・5%減った。この他、物価の変動を反映し、生活実感に近いとされる名目GDPの成長率は0・8%減。年率で3・1%の減少となり、実質と同じく二・四半期連続のマイナスだった。一九年度のGDPは、実質が前年度比0・1%減と五年ぶりにマイナス。名目は同0・7%増と八年連続のプラスだった。

*7-2:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/525813 (佐賀新聞 2020年5月22日) 消費者物価が3年4カ月ぶり下落、4月0・2%、コロナで原油安
 総務省が22日発表した4月の全国消費者物価指数(生鮮食品を除く)は、前年同月より0・2%下がり101・6だった。下落は2016年12月以来、3年4カ月ぶり。新型コロナウイルスの感染拡大による原油価格の急落や個人消費の低迷が押し下げ要因となった。市場では当面、指数が前年実績に比べマイナス圏で推移するとの見方が多い。物価が持続的に下がるデフレに再び陥る懸念が高まってきた。3月は0・4%の上昇だった。昨年10月の消費税増税の影響を除いた4月の下落率は0・6%となった。品目別ではガソリンが9・6%、灯油が9・1%それぞれ下落した。いずれも原油価格がすぐに反映されやすい。ホテルなどの宿泊料は訪日外国人の激減で7・7%下がった。新型コロナでイベント中止や冠婚葬祭の縮小の動きが出て、切り花は1・9%下落した。総務省の担当者は「電気代やガス代は(原油安の影響が)少し遅れて数カ月後に出てくる」と、ガソリンなどを含めたエネルギー価格が一段と下がる可能性を指摘した。一方、品薄が続いたマスクは5・4%上昇し、上げ幅は3月よりも1・3ポイント拡大した。増税影響で外食が2・7%上がった。生鮮食品を除いた指数には含まれないものの、外出自粛による需要の高まりを背景に、生鮮野菜は11・2%上がり、キャベツは48・2%も上昇した。新型コロナと関係なく価格変動が大きかった品目では、損害保険各社が値上げした火災・地震保険料は9・3%上昇。増税に伴う無償化で私立の幼稚園保育料は94・0%下がった。生鮮食品とエネルギーを除いた4月の指数は0・2%の上昇で、伸び率は0・4ポイント縮小した。

*7-3:https://bizgate.nikkei.co.jp/article/DGXMZO4170568025022019000000/ (日経BizGate 2019/3/6) 「新自由主義」という謎の言葉~「小さな政府」という意味ではないの?~
 「新自由主義(ネオリベラリズム)」という言葉がニュースや論説によく登場します。最近では、フランスで反政府運動「黄色いベスト」の抗議デモにさらされるマクロン政権の政策路線が新自由主義的だと言われます。けれどもこの新自由主義という言葉、なんとも正体不明です。いちおうの定義はあるものの、実際には、どう考えても定義と正反対の意味で使われることが少なくありません。たとえるなら、赤は「血のような色」と説明された後で、青空を指差して「ほら、赤いでしょう」と言われるようなものです。これでは頭が混乱します。たとえだけではわからないでしょうから、新自由主義がどのように正体不明で、人を混乱させるのか、具体的に見ていきましょう。まず、新自由主義の定義を確認しましょう。辞典では「政府などによる規制の最小化と、自由競争を重んじる考え方」(デジタル大辞泉)、「20世紀の小さな政府論」(知恵蔵)などと説明されています。これらの定義は明確です。言い換えれば、経済に対する政府の介入を否定する考えです。ところが実際には、この定義に当てはまらない政策や考えを新自由主義と呼び、批判するケースをしばしば目にします。
●「小さな政府」をめざしているのに増税や金融機関救済
 たとえば、冒頭で触れたマクロン仏政権です。マクロン大統領は、企業活動の活性化のため雇用・解雇をしやすくしたり、財政赤字の削減のため公務員を減らしたりする策を打ち出しています。なるほど、これらの政策は「小さな政府」をめざすという新自由主義の説明に素直に当てはまります。しかし、マクロン政権に抗議する「黄色いベスト」運動が広がったきっかけは、これらの新自由主義的な政策ではありません。政府が環境政策の一環として今年1月から実施する予定(抗議を受け今年は見送り)だった、ガソリンと軽油の増税です。増税は、政府が経済への介入を控え、小さな政府をめざす新自由主義の定義には当てはまりません。予算規模の拡大につながりますから、むしろ正反対の「大きな政府」の政策です。最近では燃料増税だけでなく、雇用・解雇の規制緩和や公務員削減といった新自由主義的な政策に対しても抗議が広がっているのは事実です。けれども、そもそも増税という大きな政府路線への反対からデモが始まったのに、それが小さな政府をめざす新自由主義に対する抗議だと報じられてしまうと、読者や視聴者は混乱しますし、事実の本質をゆがめかねません。似た例は、米国でもあります。2008年にリーマン・ショックと呼ばれる金融危機が起こったときのことです。当時はブッシュ(子)政権で、英国のブレア政権や日本の小泉政権と並び、新自由主義の権化のように言われていました。しかしリーマン・ショックで米国経済への不安が広がると、ブッシュ大統領は総額7000億ドル(約70兆円)の総額不良資産救済プログラム(TARP)法案に署名し、金融機関の救済に乗り出します。もちろん、政府が経済への介入を控える新自由主義の定義とは正反対です。税金を投入したこの救済策に対しては、米国内で強い批判が巻き起こりました。けれどもなぜか、今でもブッシュ政権は新自由主義だと言われます。オンライン百科事典のウィキペディアでは、ブッシュ大統領の政策について、新自由主義、小さな政府の方針と重なるところが多いと記しています。同じ政権の政策に、新自由主義的なものとそうでないものが混在することはあるでしょう。けれどもリーマン・ショックのような重大な出来事に対し、明らかに新自由主義の定義に反する対応をしたにもかかわらず、その政権の性格を新自由主義という言葉で表現するのは、適切とは言えません。青空を「赤い」と言うようなものです。ブッシュ政権は自由貿易を信奉すると言いながら、国内の鉄鋼業を保護するため、鉄鋼輸入に対し関税や数量制限をかけたりしました。この点からも新自由主義というレッテルは疑問です。
●都合が悪くなると放棄されるか、ねじ曲がる程度の「原理」に基づく?
 マクロン、ブッシュ両政権の例から気づく点があります。国民の多数が実際に怒り、抗議しているのは増税や金融機関救済という大きな政府路線であるにもかかわらず、一部のメディアや知識人はそれを新自由主義のせいにしたがることです。そうした解説は現実と食い違うので、無理が目立ちます。たとえば、新自由主義批判の代表的な論客であるデヴィッド・ハーヴェイ氏は著書『新自由主義』(作品社)で、新自由主義は市場への国家の介入を最低限に保つ理論だと述べる一方で、現実には「新自由主義的原理がエリート権力の回復・維持という要求と衝突する場合には、それらの原理は放棄されるか、見分けがつかないほどねじ曲げられる」と言います。苦しい説明です。都合が悪くなると放棄されたり、ねじ曲げられたりする程度の「原理」は、そもそも原理と呼ぶに値しません。「建前」とでも呼ぶのが適切です。経済への介入を控えるというのはあくまで建前にすぎず、本音では増税や企業救済、輸入制限といった大きな政府路線をためらわない。こう説明するほうが、はるかにすっきりします。そう言われても、新自由主義を批判する知識人は、すんなり従うわけにはいかないでしょう。ハーヴェイ氏を含め、彼らの多くはマルクス主義を信奉する左翼やそれに賛同する人々で、大きな政府を支持するからです。政治的な敵として攻撃する相手は、たとえ現実と食い違っても、小さな政府をめざす新自由主義者でなければ都合が悪いのです。明治学院大教授(社会学)の稲葉振一郎氏は、新自由主義といわれる経済学の諸学派には、ひとくくりにできるような一貫性のある立場は見出せないと述べます。そのうえで、あたかも実体のある新自由主義というイメージの「でっち上げの主犯」は、批判すべきわかりやすい対象を見出したい、マルクス主義者たちなのではないかと厳しく問います(『「新自由主義」の妖怪』、亜紀書房)。以上の説明で、新自由主義とは表面上の定義と実際の意味が食い違う、謎の言葉である理由がわかったのではないでしょうか。物事を正しく理解し、議論するには、明確な言葉を使うことが欠かせません。新自由主義という、定義と正反対の使用がまかり通るような言葉を使っていては、経済問題の本質について考えることはおぼつかないでしょう。

*7-4:https://kotobank.jp/word/%E8%87%AA%E7%94%B1%E4%B8%BB%E7%BE%A9-77046 (自由主義)
 個人の諸自由を尊重し,封建的共同体の束縛から解放しようとした思想や運動をいう。本格的に開始されたのはルネサンスと宗教改革によって幕をあけた近代生産社会においてであり,宗教改革にみられるように,個人の内面的自由 (信教の自由,良心の自由,思想の自由) を,国家,政府,カトリック,共同体などの自己以外の外在的権威の束縛,圧迫,強制などの侵害から守ろうとしたことから起った。この内面的諸自由は,必然的に外面的自由,すなわち市民的自由として総称される参政権に象徴される政治的自由や,ギルド的諸特権や独占に反対し通商自由の拡大を求め,財産や資本の所有や運用を自由になしうる経済的自由への要求へと広がっていった。これらの諸自由の実現を求め苦闘した集団や階級が新興ブルジョアジーであったため,自由主義はしばしばそのイデオロギーであるとみられた。しかし各個人の諸自由を中核とした社会構造は,その国家形態からみれば,いわゆる消極国家,中性国家,夜警国家などに表象されるように,自由放任を生み,当然弱肉強食の現象を現出させることになり,社会的経済的に実質的な平等を求める広義の社会主義に挑戦されることになった。しかし,20世紀に出現した左右の独裁政治の実態は,自由主義が至上の価値としてきた内面的自由,政治的社会的諸自由などが,政治体制のいかんにかかわらず,普遍的価値があることを容認せしめ,近代西欧社会に主としてはぐくまれてきた自由主義は再評価されている。

*7-5:https://kotobank.jp/word/%E6%96%B0%E8%87%AA%E7%94%B1%E4%B8%BB%E7%BE%A9-298677 (新自由主義)
 政府の規制を緩和・撤廃して民間の自由な活力に任せ成長を促そうとする経済政策。債務危機の解決をめぐって国際通貨基金(IMF)など国際金融機関が融資の条件として債務国に採用を求めたこともあって、急速に中南米各国に広まった。緊縮財政や外資導入、国営企業の民営化、リストラのほか、公共料金の値上げや補助金カットなどを進めるため、貧困層の生活を直撃し国民の反発が強い。ベネズエラ大統領選でのチャベス政権誕生やエクアドル政変、アルゼンチン、ボリビアでの暴動など、新自由主義への反対を掲げた市民の動きが目立ち、南米の左派政権誕生の原因となった。 20世紀の小さな政府論を新自由主義と呼ぶ。18世紀イギリスの思想家、アダム・スミスは『国富論』で、経済は個人や企業の自由に任せることによって繁栄すると主張し、政府の役割を治安維持や防衛などに限定する必要を説いた。その後20世紀に入ると、大恐慌や戦時動員体制の経験を経て、政府が完全雇用を目指して需要を管理するケインズ主義政策が一般的となった。しかし、1980年代に入って政府における財政赤字の深刻な累積、官僚主義的な非能率などが大きな問題となり、イギリスのサッチャー政権、アメリカのレーガン政権を皮切りに、減税、規制緩和、民営化を軸とする小さな政府への改革が広まった。日本でも80年代の第2次臨時行政調査会による行政改革以来、新自由主義的な政策転換が進められてきた。ただ、日本では公共事業や規制に関して既得権を持つ官僚組織、利益団体、族議員が、小さな政府の徹底に反対してきた。つまり、日本の場合、保守の自民党の中に小さな政府と大きな政府という相対立する思想が同居しており、政策が円滑に決定されない。「官から民へ」というスローガンを唱えて登場した小泉政権も、新自由主義改革を推進するために、党内の抵抗勢力との間で複雑な駆け引きを繰り返してきた。結果的には、郵政民営化や社会保障費の抑制など新自由主義的政策が小泉政権の遺産となった。

<資源の使い方と財源>
*8-1:https://mainichi.jp/articles/20190516/k00/00m/040/193000c (毎日新聞 2019年5月16日) 国有林、過剰伐採の恐れ 民間開放拡大 法改正案衆院委可決
 全国の国有林で最長50年間、大規模に伐採・販売する権利を民間業者に与える国有林野管理経営法改正案が、16日の衆院農林水産委員会で自民、公明両党と国民民主党、日本維新の会の賛成多数で可決された。21日の衆院本会議で可決されて参院へ送られる見通し。全国の森林の3割を占める国有林の伐採を民間へ大きく開放し、低迷する林業の成長を促すとしているが、伐採後の植え直し(再造林)が進まなければ国土の荒廃につながりかねないなどの懸念も浮上している。現行の国有林伐採は農林水産省が数ヘクタール程度について1~数年単位で入札。再造林は別の入札で委託している。同案はこれに加え、数百ヘクタール規模の「樹木採取区」で公募した業者に「樹木採取権」を付与。大規模集約化による効率化を図り、対価として一定の権利設定料と樹木料を徴収する。

*8-2:https://www.agrinews.co.jp/p51016.html (日本農業新聞 2020年6月8日) 放牧経営どうなる 中止、畜舎義務化 懸念広がる 農水省基準案に「唐突」「根拠は」
 農水省が7月決定を目指す家畜の「飼養衛生管理基準」の改正案に、豚や牛などの放牧制限につながる事項が盛り込まれたことで、放牧で豚を飼育する農家に波紋が広がっている。豚熱のワクチン接種地域の24都府県で豚の放牧が実質できなくなり、それ以外の地域でも豚や牛は畜舎の整備などを義務化する。長年の経営を抜本的に見直さなければならない農家もいる中、科学的根拠を示さず案を示した同省の姿勢に疑問の声が相次ぐ。全国で放牧に取り組む養豚農家は140戸。自然に近い形で育て、薬の使用減少や耕作放棄地の解消、飼養コストの低減などにつなげてきた。一方、基準案は「放牧の停止又は制限があった場合に備え、家畜を使用できる畜舎の確保又は出荷もしくは移動のための準備措置を講じること」「大臣指定地域に指定された場合の放牧場、パドック等における舎外飼養の中止」などと明記。11日まで国民からの意見を募集しており、7月までの決定を目指す。放牧中止を余儀なくされる養豚農家らは「根拠を示してほしい」「国は放牧を推進してきたのに矛盾する」などと基準案の内容を疑問視する。長野県安曇野市で40年前から放牧豚を飼育してきた藤原喜代子さん(59)は「根本的に経営が変わる。理由を教えてほしい」と話す。畜産試験場で豚熱が発生しても、放牧で150頭を飼育する藤原さんは防疫と放牧を両立させて発生を防いできただけに、放牧を危険視する根拠の提示を求める。同省は5月13日に改正案をホームページなどで周知したが、理由は明記していない。事実上の放牧中止にまで踏み込んだ内容にもかかわらず、農家への影響調査はしていないという。同省の対応に静岡県富士宮市の「朝霧高原放牧豚」代表、関谷哲さん(45)は放牧豚ができなくなれば経営が成り立たなくなるだけに「どういう状況を放牧というのか、屋外に豚を出してはいけないのかなど、全く説明がない」と困惑する。大臣指定地域の豚熱のワクチンを接種する24都府県以外にも波紋は広がる。熊本県山都町で120頭を飼養する坂本幸誠さん(62)は、豚熱対策として4月に700万円かけて放牧場に550メートルのフェンスを設置した。「放牧でストレスのない環境で免疫力が向上し、病気にも強い。10年かけて、やっとここまできた」と坂本さん。顧客は放牧で飼育する希少種だから取引しているという。簡易畜舎はあるが、放牧中止の準備を求める同省の基準案に「寝耳に水。防疫と放牧は両立できるはず」と訴える。鹿児島県伊佐市で黒豚1000頭を飼育している沖田健治さん(61)も「豚熱はいつどこで発生してもおかしくなく、ワクチン接種地域以外にも影響は大きい」と指摘する。熊本県天草市で50頭の豚を飼育する大橋範子さん(46)は「放牧する養豚農家は、誰もが伝染病対策の大切さを考えている。突然案を示すのではなく、どんな対策ができるのか農家と考えてほしい」と要望する。

*8-3:https://www.agrinews.co.jp/p50881.html (日本農業新聞 2020年5月24日) 東京圏在住 半数「移住に関心」 農業人気 田園回帰志向強く
 内閣官房まち・ひと・しごと創生本部は、東京・埼玉・千葉・神奈川の1都3県在住者を対象に行ったアンケートの結果を公表した。東京圏在住者の半数が地方暮らしに関心があると答え、都市住民の田園回帰志向が浮き彫りになった。「やりたい仕事」の最多は「農業・林業」だった。j調査は、東京一極集中の解消に向けて移住を促進するために、同本部が今年1月、東京圏在住の20~59歳の男女1万人を対象にインターネットで実施した。東京圏在住者全体の49・8%が、1都3県以外の地方圏暮らしに関心があると回答した。出身別では東京圏出身者は45・9%、地方圏出身者では61・7%に上った。「やりたい仕事」では「農業・林業」が15・4%で最多。「宿泊・飲食サービス」(14・9%)、「サービス業」(13・3%)「医療・福祉」(12・5%)が続いた。また、若い世代ほど移住の意向が強い傾向も分かった。一方、地方圏暮らしへのネガティブイメージは、「公共交通の利便性が悪い」(55・5%)が最も多く、「収入の減少」(50・2%)、「日常生活の利便性が悪い」(41・3%)などが挙がった。同本部は「新型コロナウイルスの影響が及ぶ前の調査だが、コロナ禍で地方への関心層は一層、高まる可能性もある。新型コロナウイルスが収束し、都道府県をまたいで行き来ができるようになれば、地方暮らしをPRしていく」と説明する。

*8-4:https://www.yamagata-np.jp/shasetsu/index.php?par1=20200612.inc (山形新聞社説 2020.6.12) コロナと公立病院再編 危機に強い医療構築を
 厚生労働省は新型コロナウイルス流行で入院病床が逼迫(ひっぱく)したのを受け、約440の公立・公的病院の再編・統合について都道府県から検討結果報告を受ける期限を当初の9月から先延ばしする。同省が主導した従来の検討では、感染症対応の視点欠如が明らかだ。経済合理性を優先して病床削減を進めれば国民の生命を守れない。コロナの教訓を生かし、効率的かつ危機に強い病院再編に向けて仕切り直しをすべきだ。病院再編は、団塊世代が75歳以上となり医療費が急増する2025年を見据え病院の統合や診療機能の役割分担、病床数削減も含めて医療提供体制を見直す。厚労省は再編に向けた議論を促すため昨年秋、診療実績が乏しいか、近隣に競合病院があり、再編・統合が必要と判断した約440の公立・公的病院を都道府県に伝え、地域で結論を出すよう求めた。本県では県立河北、天童市民、朝日町立、寒河江市立、町立真室川、公立高畠の各病院が該当し、県は四つの2次医療圏に設置した地域医療構想調整会議で議論を促している。寒河江市は来月、市立病院と県立河北病院の統合を軸とした検討を進めるよう県に要望する。病院再編の検討は少子高齢化に伴うものだ。急病や大けがで入院する「高度急性期」「急性期」病床の必要性は低くなる一方、高齢者のリハビリといった「回復期」病床のニーズが高まる。厚労省はこれらを調整し、18年に全国で124万6千床あった病床を119万1千床まで減らす方針だ。だが地方側は、赤字が深刻な公立病院改革の必要性は認めつつ、病院名を挙げての再編要請には「地域医療の最後の砦(とりで)だ。個別事情を評価していない」と反発し、議論が難航していた。そのさなかに新型コロナの感染拡大が起きた。2月時点で全国の感染症指定医療機関の病床は約2千床。政府は当初、5千床の緊急確保を表明したが、とても足りず、5月末で1万8千床をようやく確保できた。一時は東京、石川で用意した病床の約9割が埋まり、感染症への危機対応の弱さが浮き彫りになった。しかも公立病院は感染症病床の約6割を担っている。再編が必要とされた公立・公的病院約440の中には感染症指定医療機関53病院が含まれ、コロナ対応の拠点となっており、それを考慮しない病床削減は地域の理解を得られない。厚労省の有識者会議で有事対応への余力維持を求める意見が出ているのも当然だろう。公立・公的病院は過疎地での医療や、救急、小児医療など採算が取りにくい部門を引き受けている。だが少子高齢化で医療や病床のニーズが変わるのに合わせ病院、病床の機能を効率化していかなければ将来の医療費負担は重くなる一方だ。同時に、コロナの教訓を踏まえ、感染症流行拡大に即応できる体制を強化しなければならない。ただし未知のウイルスに備え常時多くの空きベッドを抱えれば人件費など医療機関の経営コストが過重になりかねない。しかもコロナ患者を受け入れた公立病院の9割以上が通常の診療ができず減収に苦しむ問題も起きた。複雑な連立方程式であり最適の解を見いだすのは容易ではないが、官民とりわけ地域の英知を結集し展望を開きたい。

<研究と特許>
*9-1-1:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/531307 (佐賀新聞 2020.6.5) ノーベル賞本庶佑氏が法廷闘争へ、がん免疫薬の特許巡り小野薬品と
 本庶佑京都大特別教授は5日、自身の研究チームの発見を基に開発され、ノーベル医学生理学賞の受賞にもつながったがん免疫治療薬「オプジーボ」の特許収入として、小野薬品工業に約226億円の支払いを求め、今月中旬にも大阪地裁に提訴すると発表した。新たながん治療薬の種を見つけた研究者と、リスクを取って実用化に結びつけた製薬企業の収入配分を巡る対立は法廷に持ち込まれる。本庶氏は収入を若手研究者の支援のため設立された京大の基金に充てる考え。本庶氏は記者会見し「話し合いで解決したかったが誠意ある回答が得られず、やむなく訴訟を決意した」と説明。「アカデミアの成果を社会がきちっと評価することが必要だ」と訴えた。小野薬品の広報担当者は「内容を正確に把握できておらず、コメントは差し控える」と話した。本庶氏は2006年、小野薬品と収入配分に関する契約を締結。だが「金額が著しく低く不当だ」として11年以降、見直しを求め交渉していた。本庶氏は、14年に小野薬品から「特許を巡る米国の製薬会社との訴訟に協力すれば条件を見直し、その会社から得られる特許使用料の40%を配分する」と提案され、協力。しかし裁判終了後にほごにされたと主張する。一方の小野薬品は、この提案内容で両者が合意したとは認めていない。今回求める約226億円は、17~19年に米国の製薬会社から小野薬品に入った特許使用料の約39%。本庶氏によると、小野薬品は40%ではなく「1%分を支払う」と通知してきており、その差額に当たる。小野薬品は19年、本庶氏が求めてきた料率の引き上げではなく、京大への最大300億円の寄付を提案。だが本庶氏は受け入れず、協議を続けていた。オプジーボは体内の免疫細胞に作用し、がんへの攻撃を継続させる薬。14年に国内で発売され、皮膚のがんから肺、腎臓などへと用途が拡大してきた。

*9-1-2:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO78790300T21C14A0X11000/ (日経新聞 2014/10/24) 15年間諦めなかった小野薬品 がん消滅、新免疫薬
 日本人の死因のトップであるがん治療には、外科的手術や放射線治療、最後の手段として化学療法があるが、今この構図が大きく変わる可能性が出てきた。免疫を使ってがん細胞を攻撃する新たな免疫治療薬「抗PD-1抗体」が実用化されたからだ。世界に先駆けて実用化したのが関西の中堅製薬、小野薬品工業だ。画期的な免疫薬とは――。
■「オプジーボは革命的なクスリ」と高評価
 「がん研究、治療を変える革命的なクスリだ」。慶応義塾大学先端医科学研究所所長の河上裕教授は9月から日本で発売が始まった小野薬の抗PD-1抗体「オプジーボ」(一般名ニボルマブ)をそう評価する。ニボルマブは難治性がんの1つ悪性黒色腫(メラノーマ)の治療薬として小野薬と米ブリストル・マイヤーズスクイブ(BMS)が共同開発した新薬だ。がんは体内の免疫に攻撃されないように免疫機能を抑制する特殊な能力を持つ。ニボルマブはこの抑制能力を解除する仕組みで、覚醒した免疫細胞によってがん細胞を攻撃させる。世界的な革命技術として、米科学誌サイエンスの2013年の「ブレークスルー・オブ・ザ・イヤー」のトップを飾った。今や米メルク、スイスのロシュなど世界の製薬大手がこぞってこの仕組みを使った免疫薬の開発を加速させている。悪性度が高いメラノーマは5年後の生存率は1割前後という極めて危険ながんだが、米国、日本での臨床試験(治験)では「増殖を抑えるだけでなく、がん細胞がほぼ消えてしまう患者も出た」(河上教授)。米国での他の抗がん剤と比較する治験では既存の抗がん剤を取りやめ、ニボルマブに切り替える勧告も出たほどだ。肺がんや胃がん、食道がんなど他のがん種に対する治験も進んでいる。世界の製薬大手が画期的な新薬開発に行き詰まるなか、なぜ小野薬が生み出せたのか。1つは関西の1人の研究者の存在がある。「PD-1」という分子を京都大学の本庶佑名誉教授らの研究チームが発見したのは1992年だ。小野薬もこの分子に目をつけ、共同研究を進めた。PD-1が免疫抑制に関わっている仕組みが分かったのは99年で、創薬の研究開発が本格的に始まるまでにおよそ7年。実際の治療薬候補が完成し治験が始まったのは2006年で、開発から実用化までにおよそ15年かかったことになる。当時は「免疫療法は効果が弱い」「切った(手術)方が早い」など免疫療法に対する医療業界の反応は冷ややかだった。医師や学会だけでなく、数々の抗がん剤を実用化した製薬大手も開発に消極的だった。そんな中で小野薬だけが"しぶとく"開発を続けてきた背景には「機能が分からなくても、珍しい機能を持つ分子を見つけ、何らかの治療薬につなげるという企業文化があった」(粟田浩開発本部長兼取締役)という。もともと小野薬は極めて研究開発志向の強い会社だ。売上高(14年3月期は1432億円)に対する研究開発比率は国内製薬メーカーでは断トツの30%台だ。しかもがん治療薬は初めて参入する分野で、「かならず成果を出す」という研究者の意欲も高かった。小野薬は血流改善薬「オパルモン」とアレルギー性疾患治療薬「オノン」の2つの主要薬で高収益を維持した。だが、特許切れや後発薬の攻勢で陰りが出てきたところでもあった。免疫療法に対する風向きが変わり始めたのは米国で抗PD-1抗体の治験が始まった06年からだ。一般的な抗がん剤はがんの増殖を抑える仕組みのため数年で耐性ができ、結局は延命効果しかない。しかし抗PD-1抗体で「がんを根治できる可能性も出てきた」(河上教授)。
■年間数百億円のロイヤルティー効果
 副作用が少ないうえ、がんの増殖を止める、小さくする、消滅させる――。そうした治験結果が出始めたことで、国内外の研究者、製薬企業の免疫療法に対する見方が大きく変わった。ただ、効果が出ていない人も一定の割合で存在する。その場合は「他の抗がん剤や免疫療法と組み合わせれば、効果が上がる可能性がある」(粟田本部長)という。足元の業績が低迷するなか、ニボルマブ効果で小野薬の市場評価は高まっている。昨年10月時点で6000円前後だった株価は今年に入って急騰。23日の終値は9340円とわずか1年足らずで3000円以上伸びた。アナリストも「今後数年でロイヤルティーだけで年数百億円は堅い」と分析する。小野薬の相良暁社長も「10年先を支える薬になるだろう」と自信をみせる。ただメルク、ロシュなどが同じ仕組みの抗PD-1抗体の治験を拡大しており、国際競争に巻き込まれる可能性も高い。一方で他の製薬大手から小野薬がM&Aの標的となる懸念もある。その意味で同社が置かれている環境は必ずしも楽観視できない。がんの新たな治療法の扉を開けた小野薬。日本発の免疫薬に世界の目が注がれている。

*9-2:https://www.nikkei.com/paper/related-article/?R_FLG=1&b=20200523&be・・ (日経新聞 2020.5.23) ワクチン量産 設備が壁 特殊な技術 欧米勢が先行 日本、資金支援を検討、 ワクチン、国家の争い激化 国際協調に課題 、 米、コロナ関連に1300億円/中国、年内に実用化めざす
 新型コロナウイルスのワクチン開発を巡り各国が激しい主導権争いを演じている。先行する米国は自国での供給・備蓄を目的に1千億円超を投じて、欧米医薬企業の実用化を後押しする。中国も国を挙げて開発を強化しており、欧州勢も世界競争に割って入る。国際協調でワクチン開発を支援する動きもあるが、国主導の開発スピードが加速している。米国で新型コロナワクチン開発を支えるのが、米生物医学先端研究開発局(BARDA)だ。BARDAはバイオテロなどに対応するために2006年に設立。米保健福祉省(HHS)の傘下組織で国の予算で運営されている。米国民の生命を守るため治療薬やワクチンの開発・生産を支援する。BARDAは米でコロナ感染が深刻化した3月初旬以降、新型コロナ案件に集中している。投じた金額は12億ドル(1300億円)を超える。BARDAは開発を支援するだけでなく、開発を終えてすぐに供給できるように生産体制の構築まで視野に入れ巨額資金を投じる。すでにジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)と設備投資費用10億ドル(約1千億円)を折半して、10億回分の新型コロナワクチン供給契約も締結した。BARDAは米バイオ企業モデルナにも約4億3000万ドル(約460億円)を投じる。ワクチンの有効性を確認する前から投資を決断し、同時に大量に買い取る契約も結んだとされる。4月30日、国立アレルギー感染症研究所のファウチ所長は21年1月までにワクチンを数億本供給する計画の存在を明らかにした。「有効かどうか答えが出る前に、リスクをおかして生産増強を進める」(ファウチ所長)。詳細は明らかになっていないがBARDAの存在が見え隠れする。米国は自国への供給を最優先としているが同様の動きは広がっている。中国では政府と関係の深いバイオ企業や研究所で3つのワクチン治験が進む。開発費用や治験の設計、製造体制まで政府の支援を受けていると言われる。安全性重視の欧米と違い有効性確認を優先するため実用化スピードは速い。支援を受けるカンシノ・バイオロジクスが手掛けるワクチンは世界で初めて有効性を確認する治験まで進んでおり、年内実用化を目指す。中国は自国だけでなく、途上国にも供給することで外交的な影響力拡大も狙う。ワクチン開発を急ぐのは米中だけではない。英国でワクチン治験を始めたオックスフォード大学は4月30日、製薬大手の英アストラゼネカ(AZ)との提携を発表した。英国政府も同大に2000万ポンド(27億円)を助成。年内に1億回分のワクチン製造体制を構築し英国民への供給を急ぐ。欧州連合(EU)もドイツの有力ワクチンメーカーに8千万ユーロ(約94億円)の研究助成を決めたのも、優先供給を狙う米国から同メーカーを防衛するためとされる。ただ、仏製薬大手サノフィのポール・ハドソン最高経営責任者(CEO)は「(ワクチン開発支援で)欧州委員会がBARDAレベルに達していない」と指摘し、開発スピードなどで遅れかねないと懸念する。国際的な官民連携組織である感染症流行対策イノベーション連合(CEPI)は「平等なアクセス」を理念とする。支援を受けた企業は手ごろな価格で分け隔てなく供給することが求められる。ただ、CEPIの支援は研究開発が中心で、BARDAのように供給体制構築まで踏み込まない。日本もCEPIに資金拠出している。国内では内閣府などが所管する日本医療研究開発機構(AMED)がワクチン開発を支援する。支援規模は小さく、治験などの助成に限る。世界がワクチン開発で覇権争いを繰り広げるなか、海外製ワクチンが日本に速やかに輸入されるという保証はない。国産ワクチン開発を急ぐためにも、制度、資金だけでなく生産体制にそそぐ必要がある。

*9-3-1:https://www.nishinippon.co.jp/item/n/613631/ (西日本新聞 2020/6/3) 高齢運転対策「終わりはない」池袋暴走の遺族訴え 改正道交法成立
 高齢者運転対策を盛り込んだ改正道交法が2日、衆院本会議で可決、成立した。契機となったのは昨年4月、東京・池袋で高齢運転者の車が暴走し、松永真菜さん=当時(31)=と長女莉子ちゃん=当時(3)=が死亡した事故だった。悲しみの淵にありながら事故防止を訴え続けた夫拓也さん(33)は、法改正を「大きな一歩だけど、終わりではない」と語る。都市と地方の格差、免許返納者の生活支援など課題は残されている。インターネットのビデオ会議アプリ「Zoom(ズーム)」で思いを聞いた。事故の5日後、拓也さんは会見で涙ながらに訴えた。「運転に不安がある人は運転しない選択を考えてほしい」。犠牲者を減らしたい一心だった。6月には福岡市早良区で80代男性の車が逆走し、10人が死傷する事故も発生。「また起きた。もっと伝えられることがあったのでは」と自分を責めた。妻子が事故に遭った時間に手が震え、見ていない事故の瞬間の光景が目に浮かんだ。同様の経験をした遺族たちと出会い、交通政策の勉強を始めた。東京生まれ、東京育ちの拓也さん。車でないと買い物や病院さえ行けないという地方の窮状を知った。免許が自尊心そのものという人もいる。「『運転しない選択』を迫った発言は短絡的だった」と省み、今はこう考える。「高齢者を切り離して事故は防げるが、今生きてる命を見放すことになる。事故で奪われる命も、車を手放すことで脅かされる日常も望まない」。高齢化に伴い、75歳以上の運転免許保有者数は昨年までの10年間で140万人も増えた。改正道交法は、一定の違反歴がある75歳以上への実車試験の義務付けや安全運転サポート車(サポカー)の限定免許創設を定める。「従来の免許更新は足が不自由など体の機能を調べていなかった。一定の効果は出る」と期待する。一方、サポカーへの過信が事故につながらないか懸念する。自動ブレーキの作動には多くの条件があり、池袋の事故もサポカーで防げなかった。「技術を過信しないよう正確な情報発信が必要」と求める。拓也さんの活動は世の中を動かした。運転免許の返納件数は昨年、過去最多の約60万件に上った。「高齢の親の説得などそれぞれの家庭の頑張りに支えられた結果」と受け止める。事故は高齢者だけが起こすものではない。誰もが加害者にも被害者にもなる。高齢者運転対策が「若年者と高齢者の対立構造になってほしくない」と願う。「1人でも命が守られれば、2人の命を無駄にしないことにつながる」と一周忌を機に実名を公表し、会員制交流サイト(SNS)などでも発信を始めた。「僕の寿命が尽きたとき、2人に『生ききったよ』と言えるようにしたい」。事故のない社会のために、前を向く。

*9-3-2:https://www.nishinippon.co.jp/item/n/613906/ (西日本新聞 2020/6/4) 高齢運転者の免許返納急増 10人死傷の多重事故から1年
 福岡市早良区で高齢ドライバーの車が逆走して10人が死傷した多重事故から4日で1年。事故を機に高齢者を中心に運転免許証の自主返納が急増していることが西日本新聞の調べで分かった。昨年、九州7県の返納件数は5万6578件と2018年の1・3倍。今年も新型コロナウイルスの影響が本格化した4月以外は高止まりが続いている。警察庁によると、昨年は75歳以上のドライバーによる死亡事故件数は401件。免許人口10万人当たりの件数は6・9件で、75歳未満の2・2倍だった。九州7県の昨年1月以降の月別返納件数(西日本新聞調べ)は、東京・池袋で男性=事故当時(87)=の車が暴走して母子2人を死亡させた事故が同4月に起き、同5月は全県で増加。福岡市の逆走事故があった同6月は、福岡(2381件)▽佐賀(418件)▽熊本(786件)▽鹿児島(804件)の4県で最多になった。今年1月には大分(628件)▽宮崎(520件)の両県で最も多くなり、免許返納に対する意識が浸透していることをうかがわせる。年齢別では75歳以上が6~7割を占めた。各県警もあの手この手で高齢運転者の対策を進めている。福岡県警は3月に交通安全を啓発する専用車を導入。認知機能や体力が低下した高齢者の運転を疑似体験し、身体能力を測定できる機器を備える。公共施設などを巡回し、運転を見つめ直すきっかけにしてもらう狙いだ。佐賀県警は、運転寿命を延ばす一方、免許証を返納しやすい環境づくりを進める。昨年4月に「シルバードライバーズサポート室」を設置し、70歳以上を対象にした無料の運転技能教習には昨年5~12月に87人(平均年齢78・6歳)が参加。今年4月からは基山町役場でも返納ができるようにした。久浦厚室長は「知恵を出しながら高齢運転者に寄り添った対応を進めたい」と話した。 

*9-4-1:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO59924040T00C20A6MM8000/?n_cid=NMAIL006_20200603_Y (日経新聞 2020/6/3) 日本電産、中国にEVモーター開発拠点 日本級の規模
 日本電産は中国に駆動モーターの開発拠点を新設する。成長の柱と位置づける電気自動車(EV)用が中心で、2021年に稼働させる計画。人員規模は約1千人と日本の中核拠点と同規模になる見通し。米国との政治対立や新型コロナウイルスの感染問題で中国展開に慎重な企業も増えるなか、日本電産は中国を重要市場と位置づけている。米国も含めた複数の拠点整備で、現地の需要を取り込む。中国東北部の遼寧省大連市で約1千億円を投じて建設中の工場内に設ける。EV用の駆動モーターに加え、家電製品などに使うモーターの開発にあたる。人員規模は滋賀県の開発センターと同程度になる。このうち、300~400人程度がEV用駆動モーター専任となる予定。中国に設置済みの2拠点でも増員し、EV関連の技術者は現状の約100人から数年後に650人に増やす。競合も中国での拠点開設を急いでいる。独コンチネンタルが21年に天津市に開発センターを設置する予定。独ボッシュも現地企業と合弁を組み、EV用駆動モーターの供給を目指す。日本電産はシェア拡大とコスト競争力を高めるうえで、現地で開発強化が欠かせないと判断した。米中が貿易問題で対立を深めており、米国が中国製品への制裁を強めるとの懸念から、外資企業が中国の拠点を他国に移す動きが広がるとの見方も出ている。ただ、日本電産は米国でもエンジン冷却用などの車載用モーター拠点を抱えるほか、米中西部のセントルイスには家電や産業用モーターの事業拠点を持つ。米中は世界の二大消費国でもあるだけに、両国に拠点を構えることで、さらなる成長につなげる。

*9-4-2:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO59635330X20C20A5000000/?n_cid=DSREA001 (日経新聞 2020/5/27) 日本電産のEV用モーター、吉利汽車が採用
 日本電産は27日、同社が手掛ける電気自動車(EV)用駆動モーターシステム「E-Axle」が中国の吉利汽車の新型EVに採用されたと発表した。2019年4月に量産を始めた最大出力150キロワット型を吉利汽車向けに改良し、新型のインバーターを採用するなどして走行性能を高めた。E-Axleは内燃自動車のエンジンにあたる駆動用モーターにインバーターやギアなどを組み合わせた基幹部品。吉利汽車のハイエンド新型EV「Geometry C」に採用された。既に量産している150キロワット型のE-Axleを、吉利汽車向けに改良し供給する。同社のEV用駆動モーターの受注見込みはE-Axleやモーター単体を合わせて4月時点で26年3月期までに1600万台と、中国や欧州を中心に採用が増えている。日本電産はEV用駆動モーターを今後の成長を担う中核製品と位置づけており、30年に世界シェア35%の獲得を目指す。

<日本の教育について>
PS(2020年6月16日追加):米国は世界から留学生を受け入れ、比較的差別なく要職にもつけており、中国人も同様に扱ったため、*10-1-1のように、「①テキサス州にある世界有数の癌研究機関が、疫学・分子生物学の研究を手掛ける3人の中国系研究者(教授も含む)を追放した」「②ジョージア州のエモリー大学が、2人の中国系米国人の神経科学の研究者夫妻(教授を含む)を解雇した」「③ナノ化学の世界的研究者でノーベル賞候補でもあったハーバード大学のチャールズ・リーバー教授が、中国政府が進める『千人計画』に協力して年間15万ドルに加えて毎月5万ドルの報酬を受け、中国の大学でも研究室を主宰する予定だったにもかかわらず、NIHと米国防総省に虚偽の説明をしていたため逮捕された」等のことが起きている。米国は、これまで世界の優秀な頭脳が米国内で働き、研究して特許を得ることによって利益を得てきたのだが、中国が「千人計画」で優秀な中国人研究者を呼び戻して飛躍的に研究開発力を高め始め、世界の新技術の覇権争いに負ける可能性すら出てきたことから、これらの行動に踏み切ったものだ。中国人の方は、母集団の多さや勤勉さもあって、世界のどの国に行っても活躍しているため、市場主義に変革した中国に帰っても活躍できるだろう。
 一方、日本は、優れた人材が新市場を作りだして富を生みだすにもかかわらず、*10-1-2・*10-2のように、研究者等の育成を疎かにしている。研究者だけでなくビジネスパースン(businessperson)も、少ない母集団から選ばれた人材よりも留学生も加えた多くの人材から選ばれた方が優秀になるのは当然である上、留学生は2つの文化を理解して擦り合わせることができるため、気付くことが多いのである。にもかかわらず、日本が今の段階で、学生給付金等々で留学生差別を行うのは、人材確保・国際戦略の両面で誤っている。
 さらに、日本では、いつまでたってもできない理由を並べて解決せず、*10-3-1のような保育士不足や、*10-3-2のような教員不足・学童保育施設不足が言われるが、子どもは生まれた時から周囲の環境を感じながら1人の人間としての美意識や価値観などの感性を形づくっていくものであるため、教育投資を疎かにすべきではない。従って、私は、コロナ危機を境に、*10-3-3のように、9月入学制度を採用するか否かにかかわらず、義務教育開始を5歳か3歳からにするのがよいと思う。何故なら、できるだけ前倒しして教育することによって無駄な時間を過ごさせず、無理なく楽しく必要な知識や理解力・判断力などを身に着けさせるのが、日本に住む子どものためだからだ。


    2017.3.28毎日新聞    アフリカ諸国の人口ピラミッド 2020.5.5佐賀新聞

(図の説明:左図のように、日本の1950年の人口ピラミッドは、中央の現在のアフリカの人口ピラミッドと似た二等辺三角形の多産多死型だったが、現在は少産少死化が進んで人口構造が変わった。そして、日本では、生産年齢人口や教育期間人口の割合が減ったため、学校にはゆとりがあり、留学生や移民を受け入れる余地は大きくなった筈である)

*10-1-1:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO60224600R10C20A6000000/?n_cid=DSREA001 (日経バイオテクオンライン 2020年6月10日) ワクチン開発競争 実力増す中国、いらだつ米国
 新型コロナウイルス感染症を契機に、米国と中国の対立が深まっている。その主戦場の1つがワクチン開発だ。製薬業界で新しい医療用医薬品(先発医薬品、いわゆる新薬)を生み出した経験を持つのは、これまで欧州や米国、日本ばかりだった。しかし中国は近年、新薬の研究開発力を飛躍的に高めている。中国が米国に先んじてワクチン開発に成功する可能性も否定できない。「最初にワクチン開発に成功した国が世界に先駆けて、その国の経済と世界的な影響力を回復するだろう」――。4月末、米国で医薬品の審査・承認を担当する米食品医薬品局(FDA)の元長官であるスコット・ゴットリーブ氏は、新型コロナウイルス感染症に対するワクチン開発の重要性について、こう見解を述べた。米国がワクチン開発に血眼になるのは、世界で最も感染者数の多い自国民を救うのにとどまらず、ゴットリーブ氏が言及したように、世界の覇権争いの行方を左右すると考えるからとみられる。とりわけ意識するのが中国だろう。トランプ米大統領が「中国ウイルス」と連呼するほどに「敵視」するのが中国だ。一昔前であれば、創薬大国の米国に中国がワクチン開発で先着する可能性はゼロだった。これまで中国が得意としてきたのは、生薬や後発医薬品(特許切れした先発医薬品と同等の医薬品)の開発・製造であり、新薬の研究開発経験はほとんど無かった。しかし、「過去10年で、中国の新薬の研究開発力は飛躍的に高まっている」と製薬業界の関係者は口をそろえる。世界に先駆けて、中国が新型コロナウイルス感染症のワクチン開発に成功する可能性もある。
■中国、新薬・ワクチン開発に軸足
 これまで中国は海外留学から帰国した研究者などに多額の研究費を投じ、大学・研究機関のレベルの底上げを図ってきた。近年は最先端のiPS細胞や間葉系幹細胞、胚性幹細胞(ES細胞)などを用いた細胞医薬や遺伝子治療などを含め、新薬の研究開発を手掛ける中国のスタートアップが続々誕生。中国政府が、医薬品の規制をグローバルの規制に近づけたり、医薬品の臨床試験の環境を整えたりしたこともあり、中国企業は、「中国での後発医薬品の開発」から、「世界での先発医薬品の開発」へと軸足を移している。2019年11月には、スタートアップの中国ベイジーンが米国で悪性リンパ腫というがんの治療薬「BRUKINSA」(一般名ザヌブルチニブ)の承認を獲得。先端的な創薬技術や開発力が求められるがん領域の新薬を、中国企業が生み出せることを世界に印象付けた。同様に中国は感染症領域のワクチンの研究開発にも力を入れてきた。一般的にワクチンは健常者に打つため高い安全性が求められ、種類によっては製造が難しく、開発・製造するのは簡単ではない。ただ、中国企業がワクチンを開発・供給できれば、自国のためだけでなく、公衆衛生上、感染症が大きな課題であるアジアやアフリカなどで存在感を増すことにもつながるという、中国政府の戦略もあるのだろう。13年10月には、中国生物技術集団傘下の成都生物制品研究所が開発・製造した日本脳炎ワクチンが、世界保健機関(WHO)の事前認定基準に準拠していると認められた。同基準はWHOが途上国などへ医薬品を供給するに当たって、医薬品の品質、安全性、有効性などを事前に確認するためのもの。中国製のワクチンがWHOの認定を受けるのは初めてのことだった。最近では、アフリカで問題になっていたエボラ出血熱に対して、欧米企業に並んで、中国スタートアップのカンシノ・バイオロジクスが独自技術を活用したワクチンを開発し、中国政府から緊急時と国家備蓄向けの承認を獲得。同ワクチンは国連の下、アフリカに派遣された中国の平和維持軍や中国の医療専門家などに投与されている他、アフリカでの臨床試験が計画されていた。今回、新型コロナウイルス感染症に対しては、世界で100品目超のワクチンの開発が進められている。その中で、スタートアップである米モデルナ、英オックスフォード大学と英製薬大手アストラゼネカと並び、先頭を走っているのがカンシノだ。同社はエボラ出血熱に対するワクチンと同じ基盤技術を活用。ウイルスのたんぱく質(具体的にはスパイクたんぱく質)の遺伝子を、風邪の原因の1つであるアデノウイルスからつくった、人に害のないアデノウイルスベクター5型というウイルスの運び屋に搭載し、体内でウイルスのたんぱく質をつくらせるワクチンを開発した。このワクチンに関しては、「もともとアデノウイルスベクター5型に免疫のあるヒトには効きにくいのでは」といった懸念が挙がっているものの、カンシノは着々と開発を進めている。既に少数の被験者を対象に安全性を確認する第1相臨床試験を終え、最適な投与量を決める第2相臨床試験を500人を対象に進めているところだ。さらに今後カナダで同ワクチンの臨床試験や製造を行うことも計画している。ワクチンが実用化されるまでには、新型コロナウイルス感染症が流行している地域で数多くの被験者を対象に第3相臨床試験を実施して、安全性、有効性の確認が必要となる。いずれにせよ、現状では中国のスタートアップが新型コロナウイルス感染症のワクチン開発の先頭集団にいることは間違いない。もっとも、新型コロナウイルス感染症に対しては相当数のワクチンが開発されていることから、複数のワクチンが実用化される可能性が高く、「ワクチンの製造能力や特徴に応じて、高齢者向け、小児向けなど、使い分けが進むのではないか」と業界関係者はみている。そのため、カンシノのワクチンも、(仮に臨床試験がうまく行ったとして)製造能力がどの程度あるか、副反応など安全性がどの程度か、どの国で承認を得られるかなどによって、世界で使い分けられるワクチンの1つになるだろうと考えられる。
■FBI、中国を名指しで異例の警告
 中国が新型コロナウイルス感染症のワクチン開発で存在感を増していることについて、いら立っているのが米国だ。20年秋に大統領選を控えるトランプ大統領が、対中強硬姿勢を先鋭化させている影響もあるにせよ、米国政府が以前にも増して、中国の動きに神経を尖らせていることは間違いない。米連邦捜査局(FBI)と米国土安全保障省傘下のサイバーセキュリティー専門機関(CISA)は5月13日、新型コロナウイルス感染症の研究を手がける米国の大学・研究機関や企業に対して共同で警告を発出した。警告では、中国を名指しした上で「中国政府とつながりのあるハッカーが、米国の研究機関から新型コロナウイルス感染症のワクチン、治療薬、検査に関するデータを不正に取得しようとしているケースが、複数回確認されている」と指摘。疑わしい活動があれば、積極的に報告するように呼びかけた。米国は以前から、中国によるサイバースパイ活動を批判してきたが、FBIとCISAが共同で警告を出すのは異例のことだという。なお中国政府は今回の警告について、「米国による中傷だ」として反論している。もっとも、バイオ・医学分野での米中対立は最近始まった話ではない。米国では数年前から公的資金で実施されたバイオ・医学分野の研究成果が、中国に不当に利用されているのではないかという懸念が強まっていた。それを印象付けたのは18年夏、著名な研究者でもある米国立衛生研究所(NIH)のフランシス・コリンズ所長が、全米の大学や研究機関へ送付した1枚の書簡だ。NIHは米保健福祉省(HHS)傘下で様々な医学研究を手掛ける研究所の集合体であるとともに、年間300億ドル(約3兆2000億円)以上という莫大な研究費をバイオ・医学分野の研究者に配分している政府機関である。米国でバイオ・医学分野の主要な研究を手がけるアカデミアの研究者で、NIHからの研究費を得ていないものはほとんどいない。コリンズ所長は公表した書簡の中で、「残念ながら、米国のバイオ・医学分野の研究の清廉性を脅かす存在がある」と明らかにしたのだ。清廉性を脅かす存在が誰なのか、書簡では具体的な国名などには言及しなかったが、「NIHが支援した研究に基づく知的財産を、一部の研究者が他国政府など外部組織へ盗用している」「NIHが支援した研究者が、他国政府など外部組織から相当な研究費を得ているにもかかわらず、情報を開示していない」といった違反行為の具体例を挙げ、他国政府が関与している可能性を示唆。違反行為を減らすため、NIHとして政府機関や研究コミュニティと協力して取り組みを進める方針を示した。
■米で相次ぐ中国系研究者の追放
 さらに19年春、NIHは米国の大学や研究機関に対し、他国政府など外部組織とのつながりを開示していない研究者について、情報提供するよう要請したとされる。これまでの事態の推移をみると、研究の清廉性を脅かす存在として、NIHの念頭にあったのは、やはり中国ということになるだろう。19年春以降、米国では、「中国と関わりがあるにもかかわらず、その事実を開示していなかった」などとして、バイオ・医学分野の研究者が何人も大学から解雇されたり追放されたりしている。19年4月、テキサス州にある世界有数のがん研究機関MDアンダーソンがんセンターが、疫学や分子生物学の研究を手掛ける3人の研究者を追放した。3人はいずれも中国系で、中には教授も含まれていた。また、19年5月には、ジョージア州にあるエモリー大学で、神経科学の研究を手掛けていた、教授を含む2人の中国系米国人の研究者夫妻が突然解雇された。研究室はその日のうちに閉鎖され、研究室のウェブサイトにもつながらなくなった。20年1月には、ハーバード大学のチャールズ・リーバー教授が逮捕された。逮捕の理由は、中国政府が進める「千人計画」に協力し年間15万ドルに加えて毎月5万ドルという莫大な報酬を受け、中国の大学でも研究室を主宰する予定だったにもかかわらず、NIHと米国防総省に対し虚偽の説明をしていたため。これまで数々の受賞歴を持つ、ナノ化学の世界的な研究者であり、ノーベル賞の受賞者候補の1人でもあったことから、全米で大きく報道された。バイオ・医学分野ではこれまで、直接的なスパイ活動をしたというよりも、「中国との関係を開示していなかった」ことを理由に研究者が追放・解雇されたり逮捕されたりするケースが相次いでいるのが実態だ。しかし今回、FBIとCISAが警告を出したことで、今後、中国絡みのバイオ・医学分野のサイバースパイ活動に関しても、具体的なケースが出てくる可能性がありそう。新型コロナウイルス感染症のワクチン開発競争が決着しても、バイオ・医学分野での米中対立は続くことになりそうだ。

*10-1-2:https://digital.asahi.com/articles/ASN6F7F61N69PLZB01M.html (朝日新聞 2020年6月14日) 京大総長、学生給付金を批判 「留学生差別、おかしい」
 新型コロナウイルスの影響で困窮する学生を対象にした国の「学生支援緊急給付金」が、外国人留学生だけ成績の良さを申請要件にしている問題で、京都大の山極寿一(じゅいち)総長(68)が9日、朝日新聞のインタビューに応じた。要件を「差別的だ」と批判した上で、留学生を排除しない姿勢を取ることが「日本が国際社会をリードしていく一番大きな力になる」と訴えた。同給付金を外国人留学生が申請する場合、「成績が優秀」「出席率が8割以上」といった日本人学生にはない要件を満たす必要がある。批判の声が出ており、山極氏はネット上の反対署名運動の呼びかけ人の一人にもなった。インタビューで山極氏は「(同給付金は)生活困窮者への支援だ。成績を重んじる奨学金とは目的が違う」と述べ、成績要件を批判。「日本人学生の要件は基本的に経済的な事情だけ。留学生も、経済事情が逼迫(ひっぱく)している人に支給するのが本筋だ」と指摘した。留学生に対する日本政府の方針について、「日本も少子高齢化でだんだん労働者人口が減っていく。外国の優秀な学生を頼らなければいけなくなる時代が目の前に来ている」「優秀な留学生を集めるには、日本の学生と留学生を差別しないという態度が一番、魅力的だ」と述べ、「差別するのはおかしい」と批判した。留学生の自主性を尊重することの重要さも強調。「(在学中の数年間に)どう教育を得るかは、学生が自分でスケジュールを立てるべきだ」とし、文部科学省が前年度の成績を申請要件にしたことに疑問を呈した。国立大の総長が国の仕組みに反対する運動に加わった理由については、「だいたいいつも、教員の立場に立っている」として、「現場の教員が『留学生と日本人を、我々は差別したくない』という声を上げることが大事だ。直接留学生と向き合う現場の教員が出すメッセージは強い」と話した。山極氏は、野生ゴリラ研究の第一人者として知られる。「私は、アフリカ赤道直下の『ゴリラの学校』に留学した」と自らの経験を紹介。「(ゴリラは)決して排除することなく私に接してくれた。それはゴリラの社会を知る上で大変に役立った。現場に行って、いろんな人と付き合って、様々な知識を学ぶのが留学の良さだから」とも述べ、留学生を排除せず、多くの人を受け入れる姿勢が大事だと訴えた。京都市立芸術大も同様の方針を示していることについても触れ、「個性を開花させる芸術家養成の大学であることを考えれば、そういう認識を持ったのはごく当然と思う」とも発言。「京都は文化や芸術に特化する大学が多い。留学生も多く、国際感覚を持った大学や教員も多いのではないか」との考えを示した。この問題をめぐり、要件に反対する大学教員らがネット上で賛同署名を呼びかけたところ、10日午前0時の締め切りまでに1701筆が集まった。うち大学教員は1100人を超えた。署名は5月26日から集め、呼びかけ人には京都大の山極氏ら約40人が名を連ねた。15日にも文部科学省に結果を届ける。
       ◇
 学生支援緊急給付金 新型コロナウイルスの影響でアルバイト収入が減るなど、困窮した学生に対する国の給付金。大学が学生から申請を受け付けて推薦者リストを作り、リストに基づいて日本学生支援機構(JASSO)が最大20万円を支給する。外国人留学生にだけ「成績優秀」の申請要件が設けられた。
●山極総長への単独インタビュー
 山極寿一・京都大総長との主なやりとりは以下の通り。
―京都大は留学生に成績要件を付けないことにしましたね
 「今回は生活困窮者への支援だ。日本人学生にも(給付金の支給)条件が六つあるが、基本的に経済的な事情だけだ。だから、留学生も、成績のいい人だけというのでなく、生活困窮者、経済事情が逼迫(ひっぱく)している留学生に支給するのが本筋だと思う。奨学金とは目的が違う」「英国のオックスフォード大では、自国民の学生の年間授業料は130万円なのに、アジアの学生は390万円と3倍を要求している。日本は決して高いお金を払ってもらうことを目的に『大学ビジネス』として留学生を集めているわけではない。その意味では、日本は他の国に比べて、留学生と日本人とを差別していない」「このコロナ騒ぎで国境を越えた移動が制限され、オンラインの遠隔授業が組み合わされる形式になり、さらに激しい留学生獲得競争にさらされている。日本に来てくれる優秀な学生、日本を好きになり日本で働いてくれる、あるいは自国に帰っても日本のために尽くしてくれる留学生を育てるためには、またとないチャンス。この好機をとらえて国際的に発信しなければ、英語圏になかなか太刀打ちできない。大学ランキングは英語圏(の大学)が強いわけですから」「英語を母国語としない国として、優秀な留学生を集めるためには、日本人の学生と留学生を差別しないという態度が一番、魅力的だと思う。(政府は)なぜそれをやらないのか」
―大学教員による署名の呼びかけ人の一人になりましたね
 「文部科学省と話をしても、『各大学に最終的な判断をお任せしている』と言われて終わり。やっぱり現場の教員が声を上げていくことが大事なんです。留学生と向き合う教員が、『日本人学生と留学生を一緒に教育しようとしてるんだ』という態度を出す。このメッセージが強い。文科省の態度がひっくり返らなかったとしても、そういうメッセージが伝わればいいと思っている」「成績が良い悪いに関係なく、みんな一生懸命に生活を成り立たせ、学問に励んでいる。そのバランスのとり方によって成績が良くなったり悪くなったりするわけじゃないですか。そこで各大学がその成績上位を選ぶ(給付金)というのは、やっぱりおかしいわけでね。だって、4年間、あるいは2年間、学生が大学に在籍する中で、どういうふうに教育を得ていくかは、学生が自分自身でスケジュールを立てるわけだから。そこまで我々が介入するものではない。我々が今するべきは、本当に今、学業を続けられなくなって困っている学生をきちんと選別して、支給してあげられるようにすることだ」「(大学としての方針を決める前に署名を呼びかけたのは)僕はだいたいいつも、教員の立場に立っているからです」
―自身の留学体験は
 「私は『ゴリラの学校』に留学したからね。アフリカの赤道直下の」「今はインターネットを使えば、既存の知識は何でも手に入る。現場に行って、いろんな人と付き合って、伝統知など様々な文字になっていない知識を学ぶっていうのが留学の良さだから。私はゴリラの知識まで学ばせていただいた。それはもうすごく、私の中では貴重な体験です」
―そういう体験をより多くの人にしてほしいと
 「学生個人が金太郎あめみたいになってもらっては困るわけです。我々は工業製品を作っているわけじゃない。それぞれが個性を持った、違う育ち方をする学生を相手にしている。違う目標を持ち、個性を持った学生に育ってほしいと思っているわけですよ。だから、日本人は日本人だけでいてはいけないし、いろんな国の学生と入り交じってほしい。その時に、彼らが対等に付き合うことが重要。我々が対等な扱い方をしなければ、そういう環境は生まれません」
―ゴリラは対等に扱ってくれましたか
 「まあねえ、出来の悪いゴリラとしてなあ、扱ってくれたと思うよ。もちろん、ゴリラとして認めてくれたわけじゃなくて、やっぱり外部者なんだけど、決して排除することなく、ゴリラの流儀で、私に接してくれた。それはゴリラの社会を知るうえで、大変役に立ったね」
―日本も留学生に対してそういう社会であるべきだと
 「それが日本が国際社会をリードしていく一番大きな力になると思う。日本は軍事力もなければ、いまは経済力も弱っている。日本が今、示すべき大きな力は、学術と教育力だと思う」「日本政府にとって、お金をかけずに国際戦略として一番有効なのは、大学や教育を通じてアフリカやアジアの国と手を結ぶこと。日本の大学で学んだ人たちが日本のファンになってくれるネットワークを作るべきなんですよ。留学生をこれまでも大事にしてきたんだから、同じように大事にしてよ、ということです。今度だけ差別するっていうのはおかしいじゃない、ってことです」(聞き手・小林正典)
     ◇
〈やまぎわ・じゅいち〉 1952年生まれ。京都大の大学院理学研究科長・理学部長などを経て、2014年から総長。日本学術会議会長も務める。専門は人類学・霊長類学。著書に「ゴリラ」「暴力はどこからきたか」など。

*10-2:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO54653250R20C20A1MM0000/ (日経新聞 2020/1/22) 「ポスドク」支援へ奨学金拡充・採用増 政府が総合対策
 政府がまとめる若手研究者支援の総合対策案が明らかになった。博士課程の大学院生を対象に、希望すれば奨学金などで生活費相当額を支給して研究に集中できるようにする。企業に協力を求め、理工系の博士号取得者の採用者数を2025年度までに16年度比で1千人増やす。若手研究者ら「ポスドク」を取り巻く環境を改善し、研究力の強化につなげる。23日に開く総合科学技術・イノベーション会議(議長・安倍晋三首相)で決める。日本で若手研究者を取り巻く環境は厳しい。博士号の取得後、大学の教員になれず企業にも就職できない「ポスドク」問題が指摘されている。企業でも博士号取得者は他国に比べて少なく、100万人あたりの人数は米国やドイツ、英国、韓国の半分以下とされる。優秀な研究者が日本での研究を見切って海外留学をめざす人材流出の問題もある。政府は今後の目標として、修士課程から博士課程に進学した大学院生のうち約5割が、学内奨学金などで月15万~20万円の生活費相当額を受給できる状況の実現を盛り込んだ。博士課程の大学院生は18年度は約7万4000人で、このうち修士課程からの進学者は約3万2000人に上る。博士号取得者の企業への橋渡しも支援する。博士号取得者の採用者数は16年度は産業界全体で約1400人だった。これを25年度までに65%増やす目標を明記した。企業には博士課程の大学院生を対象とする長期有給インターンシップの設置を促し、官民連携による若手研究者の発掘にもつなげる。政府も博士号を持つ国家公務員の待遇改善を検討する。若手研究者向けに大学教員の採用の間口も広げる。今回まとめた支援策では40歳未満の大学教員の割合を3割以上に高める目標を盛り込んだ。16年度は23.5%だった。若手研究者を巡っては大学内の事務作業に煩わされ、十分な研究時間を確保できないとの声もある。25年度までに学内事務の半減を求め、政府側も関連する手続きの簡素化に取り組むとした。

*10-3-1:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/524492 (佐賀新聞 2020.5.19) 保育士1万7000人不足 9月入学で政府試算
 政府は、新型コロナウイルス感染拡大を受け、9月入学制を来年導入した場合、未就学児が一時的に増えるため保育士が約1万7千人不足するとの試算をまとめた。都市部を中心に保育施設の確保が困難になることも指摘した。関係者が18日、明らかにした。安倍晋三首相が学校休校の長期化を踏まえ、各府省に課題の洗い出しを指示していた。政府はこれを基に、6月上旬にも論点整理をまとめる。試算では、来年9月の小学校新入生は4月入学の場合より約40万人増える。この学年は17カ月の年齢差が生じるため「発達段階の差が大きい」として指導の工夫や学校、教員への支援も必要とした。夏場の入試の熱中症対策も課題に挙げた。

*10-3-2:https://digital.asahi.com/articles/ASN5J5W43N5GUTIL052.html (朝日新聞 2020年5月17日) 9月入学で教員2.8万人不足の推計 待機児童も急増
 新型コロナウイルスの感染拡大で政府が検討している「9月入学」を来秋から実施した場合、学校教育や保育などにひずみを生みかねないことが、苅谷剛彦・英オックスフォード大教授の研究チームの推計でわかった。新1年生を4月生まれから翌年9月生まれまでの17カ月に再編し、特に施策を取らなければ、初年度は、教員は約2万8千人が不足し、保育所の待機児童も26万人超に上り、地方財政で3千億円近くの支出増が見込まれると試算した。
●教員不足、大都市で深刻に 9月入学「教育の質低下も」
 研究チームは、教育社会学の研究者やシンクタンク代表ら計7人。地方教育費調査や学校基本調査、社会福祉施設等調査などをもとに推計した。9月入学は、緊急事態宣言の対象が全国に広がり、休校が長期化するなか、学習の遅れを取り戻す時間を確保するために一部の高校生や東京都、大阪府などの知事が導入を求めた。安倍晋三首相も14日の記者会見で「有力な選択肢の一つだ」と言及している。政府は6月上旬をめどに来秋からの9月入学について論点や課題を整理する方針で、自民党が設置した「秋季入学制度検討ワーキングチーム(WT)」は5月末~6月初旬に政府への提言をまとめるという。文部科学省が主に検討しているのは、小学校開始年齢の遅れを解消するために、2021年9月の新入生を14年4月2日生まれから15年9月1日生まれまでと5カ月分増やす案だ。研究チームの推計では、この場合、新入生は例年より42万5千人増え、1・4倍になる。14年4月2日生まれから15年4月1日生まれの児童は保育所に5カ月長くいることになるため、初年度、地方財政支出は2640億円、教員は2万8100人が追加で必要になり、保育所は新たに26万5千人、学童保育は16万7千人の待機児童が生まれる。一方、文科省は、現行の学年の区切り(4月2日生まれから翌年4月1日生まれまで)を変えずに、新学年を9月1日から始める案も検討する。ただ、この場合、児童全体の教育が5カ月後ろ倒しになり、小学校の開始が遅い児童で7歳5カ月からとなる。欧米は6歳が主流で、韓国や中国も6歳。日本の児童はそれよりさらに1年以上遅れることになる。推計では、学校教育の支出や教員、学童保育の待機児童の大きな増加は見られないものの、保育所の待機児童26万5千人は初年度だけでなく毎年生まれ続ける。苅谷教授は推計をふまえ、来秋からの9月入学について「学校教育だけでなく保育などのシステムを崩壊させ、子育て世代の働き方に大きな影響を与える。エビデンスに基づいた冷静な議論が必要だ」と話す。

*10-3-3:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200603&ng=DGKKZO59886200S0A600C2EA2000 (日経新聞 2020.6.3) 9月入学、「義務教育5歳から」軸 政府・自民検討 首相「来年度は難しい」
 始業や入学の時期を9月に変える「9月入学」を巡り、政府は2022年度以降の課題として検討を始める。義務教育の開始年齢をいまの6歳から半年ほど前倒しして国際標準に合わせる案が軸だ。幼稚園の入園時期を早める構想もある。20~21年度の導入は見送り、中期的に検討する。9月入学を議論する自民党のワーキングチーム(WT)は2日、安倍晋三首相に21年度までの導入は見送るべきだと提言した。首相は「法律を伴う形で改正するのは難しい」と述べた。WTの柴山昌彦座長は記者団に「国民に理解をいただける形でじっくり検討するのがふさわしい」と語り、9月入学は中期的に議論する意向を表明した。新型コロナウイルスの感染拡大に伴う休校を受け、提言では「学びの保障は一刻の猶予も許さない喫緊の課題」と明記した。9月入学に関しては「国民的合意や実施に一定の期間を要する」と指摘し「今年度・来年度のような直近の導入は困難」と結論づけた。9月入学の検討は続ける。提言は「秋季入学制度の導入の方式について」と題した文書を添付した。小学校の入学年齢を前倒しするか遅らせるかなどの違いで5案を示した。政府・自民党では、6歳0カ月からの就学年齢を5歳5カ月に前倒しする案を軸に検討する。同案では現行制度と同様に4月2日から翌年4月1日生まれを一学年にするものの入学は9月にする。4月2日以降に6歳になる児童は前年9月に小学校に入学するため、就学年齢は最年少で5歳5カ月になり、現行制度より7カ月早まる。「前倒し」をすれば義務教育が早まり、現在より若い年齢で学力が上がる期待がある。米国の一部の州や英仏独、オーストラリアは5歳で小学生になる子どもがいる。新型コロナに伴う休校で今年の4月入学を9月に遅らせる案があがった際も、政府・自民党内では「義務教育の開始が遅れる。国際競争を考えれば米欧にあわせて『前倒し』にすべきだ」との声が根強かった。提言では幼稚園の入園を前倒しする案も示した。課題もある。移行期の年は小学1年生が大幅に増え、教員や教室を増やす必要がある。移行期の1年生は数が多いまま進級する。受験や就職で他の世代より激しい競争を強いられる懸念がある。前倒し案への賛成論は多い。経団連の井上隆常務理事は「義務教育の開始年齢や入学時期を欧米とそろえれば、大学の国際化に直結して産業界の人材獲得にプラスとなる」と語る。9月入学に反対する声明を5月に出した日本教育学会の広田照幸会長(日大教授)も「国際的にも幼児教育の開始時期は早まっている。選択肢の一つとして議論する価値はある」と話す。新型コロナで当初浮上した9月入学論は、4月の入学を同じ年の9月に遅らせて休校による授業不足を補うものだった。海外の秋入学に足並みをそろえれば留学生の派遣や受け入れが進み、国際化につながるとの意見があった。最年少の入学者は6歳5カ月になり、義務教育の開始が米欧主要国より大幅に遅れる。提言は「影響が大きいため、就学年齢を後ろ倒ししないことを基本に考えるべき」と記した。提言に示した5案には文部科学省の案も含めた。(1)1年で移行するために最初の1学年だけ対象を広げる(2)対象を段階的に変えて5年かけて移行する――の2つだ。提言は「首相の下の会議体で各省庁一体となって、専門家の意見や広く国民各界各層の声を丁寧に聴きつつ、検討すべき」と促した。提言を参考に政府は今夏までに今後の方針を示す見通しだ。

<地方では、“高齢者”の就労は普通であること>
PS(2020年6月18日):*11-1のように、農業分野では新型コロナの影響で日本酒の消費が落ち込み、原料の酒造好適米「山田錦」の産地に影響が表れているそうだが、「酒は百薬の長(適量の酒はどんな良薬よりも効果がある)」と言われているように、麹菌は他の菌を殺して自身が生き残るためにアルコールを作っているのだと思われるため、新型コロナウイルスの抗体を作らせることもできそうだ。そして、これは甘酒・味噌・醤油・酢・ワイン・ヨーグルト・納豆・チーズ等でも起こり得るため、近くの大学と共同研究して新型コロナはじめ各種ウイルスへの抗体を持つ発酵食品を作れば世界で売れると思う。そうすると、*11-3のように、減少するばかりだった地方の生産年齢人口も増加に転じるのではないか?
 なお、生命科学は、現在のところ、漁業で、*11-2のように、1匹の雄の幹細胞から卵や精子を作り、1700匹のニジマスをふ化させるところまで進歩している。
 さらに、*11-4のように、70歳まで働く機会の確保を企業の努力義務とする改正高年齢者雇用安定法などの関連法が2020年3月31日に参院本会議で成立し、政府は将来的な義務化も視野に入れている。しかし、70歳まで働く機会を確保できるようにするのはよいが、働き手の保護に欠けるのはよくない。では、65歳以上の高齢者は働く能力が低いのかといえば、*11-3のように、基幹的農業従事者の平均年齢は2019年には66.8歳となり、農業は「生産年齢人口」「高齢者」の定義を変えなければならないくらい高齢者に支えられている。もちろん、次世代の人材確保や若者の地方移住は喜ばしいことだが、主たる生産者としての女性や“高齢者”の存在にも気がついてもらいたい。

   

(図の説明:左図は、実った稲で、中央は、農業就業人口とその平均年齢の推移だ。また、右図は、林業の従事者数と林業及び全産業の高齢化率・若年者率の推移だ)

*11-1:https://www.agrinews.co.jp/p51077.html (日本農業新聞 2020年6月14日) [新型コロナ] 日本酒低迷、米産地を直撃 契約3割見直しか 需要回復いつ… 兵庫
 型コロナウイルスの影響で日本酒の消費が落ち込む中、原料の酒造好適米の産地に影響が表れている。酒造好適米の生産量日本一の兵庫県では需要が3割落ち込むとの想定もあり、契約予定数量の見直しを迫られている。来年産以降の生産計画に影響する可能性があり、生産者に不安が広がる。
●来年産計画に影響も
 酒造好適米「山田錦」の作付面積が、地域の水田面積の8割を占める兵庫県三木市吉川町。県内の主力品種「コシヒカリ」から遅れること約1カ月後の5月30日、「山田錦」の田植えが本格的に始まった。生産者の表情は険しく「収穫する頃、世間はどうなっているのか」。苗を見つめながら同町冨岡地区で水稲15ヘクタールを手掛ける冨岡営農組合の西原雅晴組合長は出来秋を不安視する。産地関係者の「悩みの種」は、新型コロナ禍に伴う日本酒の消費減だ。日本酒造組合中央会によると、出荷量は2月が前年同月比9%減、3月が同12%減、4月が同21%減と月を追うごとに落ち込む。5月は集計中だが、4月と同水準とみられる。同中央会は「流通在庫が積み上がっているところもあり、事態は数字以上に深刻」と分析する。産地にも影響が出始めている。JA全農兵庫では4月中旬以降、今秋収穫される2020年産の契約数量の見直しを求める問い合わせが、取引先から相次いだ。「当初の契約予定数量(約1万5000トン)の3割の見直しを迫られるとの想定もあり、現在協議を進めている」(全農兵庫の土田恭弘米麦部長)。深刻な事態を受け、全農兵庫は4月下旬、県内のJAみのり、JA兵庫みらい、JA兵庫六甲と共同で、県内生産者に緊急通知を発出。酒造好適米から主食用品種などへの転換を呼び掛けた。ただ、多くの農家が苗作りを始め「変更できない農家が大半。問題が表面化した時点で手遅れだった」(JA関係者)。当初の生産計画から減産できたのは「数%」(同)だった。冨岡営農組合は緊急通知を受け、酒造好適米の作付面積を1割減らし、主食用品種に切り替えた。「山田錦」に比べ10アール当たり収入は半減する見込みだが、西原組合長は「産地と酒造メーカーは一蓮托生(いちれんたくしょう)。酒造メーカーが苦しむ中、産地も減産に協力したい」と覚悟を決める。兵庫県も独自支援に動く。20年度6月補正予算案に酒造好適米の産地支援を盛り込んだ。余剰在庫の解消に向け、米粉など日本酒以外の用途向けに19年産の酒造好適米を販売する際、販売価格の下落補填(ほてん)に60キロ1万800円を支給。20年産の作付け転換や消費喚起にも取り組む。ただ、影響の長期化は避けられない見通しだ。「自粛ムードが続き、日本酒の需要はすぐに回復しない」(同中央会)とみられるためだ。土田部長は「来年産以降の生産計画の見直しも避けられない」と肩を落とす。西原組合長は「日本酒を飲んで、産地を応援してほしい」と呼び掛ける。

*11-2:https://www.chunichi.co.jp/article/73300 (中日新聞 2020年6月15日) ニジマス、試験管で大量増殖 東京海洋大が世界初、養殖に貢献
 ニジマスの卵や精子のもとになる生殖幹細胞を、試験管で大量に増殖させることに世界で初めて成功したと、東京海洋大の吉崎悟朗教授(魚類養殖学)のチームが15日付の国際的な科学誌の電子版に発表した。たった1匹の雄の幹細胞から卵や精子を作り、1700匹がふ化した。順調に成魚に成長しており、貴重な水産資源の魚を保護しつつ、大量生産を可能にする技術として期待される。吉崎教授は、養殖生産や絶滅危惧種の保全に貢献したいと説明し「ニジマスに近いサケやマスの仲間ならば、数年で保全事業に活用できる。クロマグロへの応用も5年程度で実現化を目指したい」と話した。

*11-3:https://www.agrinews.co.jp/p51096.html (日本農業新聞 2020年6月17日) 担い手さらに減少 60代以下100万人割れ続く
 担い手を含め農業に携わる人材の減少と高齢化に歯止めがかからない。販売農家の世帯員のうち主な仕事を農業とする「基幹的農業従事者」は2019年時点で140万人と5年間で27万人減った上、60代以下は100万人を割り込んだ状態が続いていることが農水省のまとめで分かった。一層の減少・高齢化が見込まれる中、生産基盤を維持するには、60代以下の人材をどう確保していくかが喫緊の課題となる。基幹的農業従事者は、1995年に256万人いたが、05年に224万人、15年に175万人、19年に140万人と大幅な減少が続いている。若年層の減少が止まっておらず、60代以下は95年の205万人から05年には135万人に減少。その後、15年は93万人と100万人を割り、19年はさらに81万人にまで落ち込んだ。高齢化も進展。平均年齢は95年に59・6歳だったが、05年に64・2歳に跳ね上がった。15年は67歳、19年は66・8歳と依然として高い水準で推移する。同省は、農地の維持、活用策などを検討するため5月に新設した「長期的な土地利用の在り方に関する検討会」で、基幹的農業従事者は「今後一層の減少が見込まれる」との見方を示した。農業生産を支える層の減少に伴い、「農業の持続可能性が確保できない地域が増加する可能性がある」と指摘する。人材確保に向けて、同省は、新規就農や第三者も含めた経営継承を引き続き推進する方針だ。新型コロナウイルス感染拡大の中で「食の大切さに改めて気付いたり、地方への移住を希望したりといった動きもある」(就農・女性課)とし、若年層の参入・定着に一層力を入れる方針。農業の働き方改革や地域の受け入れ態勢の整備も重視する。新たな食料・農業・農村基本計画は、基幹的農業従事者数と農業法人の従業員・役員らを合わせた「農業就業者数」を30年に140万人確保する方針を掲げる。同省は、現状の傾向が続けば30年に131万人に減ると見込む。人材確保に結び付く実効性のある対策を講じることができるかが問われる。

*11-4:https://digital.asahi.com/articles/ASN306GWKN30ULFA010.html (朝日新聞 2020年3月31日) 70歳まで働けるよう、改正法が成立 企業に努力義務
 70歳まで働く機会の確保を企業の努力義務とする改正高年齢者雇用安定法などの関連法が31日、参院本会議で可決、成立した。来年4月から適用され、政府は将来的な義務化も視野に入れる。健康な高齢者の働き手を増やし、人手不足に対応するとともに、年金などの社会保障の担い手を厚くする狙いがある。いまの法律は企業に対し、定年廃止、定年延長、再雇用などの継続雇用といった対応をとることで従業員が65歳まで働ける機会をつくることを義務づけている。改正法はこれを70歳まで延長し、現在の三つの対応に加え、別の会社への再就職、フリーランス契約への資金提供、起業の後押し、社会貢献活動への参加支援の四つも選択肢として認める。企業には七つのうちのいずれかの選択肢を設けるよう努力義務を課し、どれを選ぶかは企業と労働組合が話しあって決める。起業の後押しといった雇用契約を結ばない選択肢をとる場合、従業員の収入が不安定になるおそれがあるため、改正法は企業に従業員や勤め先と業務委託契約を継続的に結ぶよう求める。厚生労働省は今後つくる指針の中に働き手の保護策を盛り込む方針だ。新型コロナウイルスの感染拡大が企業業績を急激に悪化させるなか、今回の見直しは企業の人件費負担を増やす要因になりうる。現在は約8割の企業がいったん退職してから賃金水準が低い契約社員などで再雇用する方法をとっているが、70歳に延長した場合も、多くの企業は同じように契約社員などでの再雇用を選ぶとの見方がある。この日成立した関連法には、兼業や副業をする人の労働災害を認定するしくみを見直す改正労災保険法や、定年後に再雇用されて賃金が大きく下がった人に65歳まで支払われる「高年齢雇用継続給付」を縮小する改正雇用保険法なども含まれる。

<遺伝子から人類の進化を辿る>
PS(2020年6月21日):*12-1のように、 中国公安当局が“犯罪捜査を名目に”、全国で血液を採取してDNAをデータベース化し、中国人男性約7億人の「遺伝子地図」作成を進めているそうだ。もちろん、①遺伝子を調べて犯罪を起こしやすい人をあらかじめ逮捕するのは人権侵害である ②遺伝子による判定は、第三者の検証が入りにくいため日本の捜査でも冤罪を生んでいる などの理由で、国民統制や犯罪捜査に使われれば悪である。
 しかし、純粋に科学的に調査すれば、中国のようなユーラシア大陸の人類の交差点で男性7億人分の「遺伝子地図」を作成すれば、人類の進化の過程を辿ることができるため興味深い。また、*12-2のウイルスが、③どの民族に ④いつ感染して ⑤どういう理由で優位性を持って人類の進化を演出したか を解明することができ、東アジア人が新型コロナウイルスに強い理由も人間側の遺伝的要素からわかるかもしれない。また、日本でも地域ごとに調査すれば、⑥どういう民族が ⑦いつ ⑧どこから ⑨どのくらいの人数 ⑩日本列島に移住してきたか がわかると思う。
 このように、新型コロナ致死率・その他の死亡率等を比較すればいろいろな調査に役立つため、*12-3・*12-4の原因別死亡数は、WHOで統一した基準を作って国際比較できる形で正確に出した方がよいと思われる。

   
    2020.5.11毎日新聞     *12-4より    2020.6.12西日本新聞
    
(図の説明:左図は、2020年5月4日現在の各国の新型コロナによる「死亡率/人口100万人」の推移で、欧米が高い。中央の図は、2020年5月16日現在の各国の新型コロナによる致死率「死亡者数/感染者数」「死亡者/人口10万人で、検査数や死亡原因の特定に違いはあるが、やはり欧米で高い。右図は、2020年6月11日現在の日本の死亡率だが、日本全体では中央の図の4.4%より高い5.2%《938/18,008X100》で、中国の5.5%に近い)

*12-1:https://www.sankei.com/world/news/200618/wor2006180033-n1.html (産経新聞 2020.6.18) 中国、男性7億人分の「遺伝子地図」作成 国民統制を強化
 中国公安当局が犯罪捜査を名目に全国で血液を採取してDNAをデータベース化し、中国人男性約7億人の「遺伝子地図」作成を進めていると、米紙ニューヨーク・タイムズが17日、オーストラリアの研究機関の調査を基に報じた。国民統制が一層強まる恐れがあり、外国の人権団体だけでなく中国内でも一部当局者が反対しているという。中国では既に人工知能(AI)による顔認識技術などを駆使した捜査による人権侵害が指摘されているが、DNAのデータベースの一部も既に犯罪捜査に利用され始めているという。公安当局は2017年、小学生男児を含めた全国の男性を対象に血液採取を開始。3500万~7千万人のサンプルを採取し、それを基に全男性の遺伝子地図作成を目指している。データベースを使えば男性1人の遺伝子情報で、その親族も特定が可能。対象を男性に絞っているのは犯罪率が高いためとしている。犯罪と無関係の親族らの人権が損なわれる恐れや当局が情報を乱用する懸念もあり、人権活動家らは遺伝子地図により公安当局が「空前の権力」を手にすると批判している。

*12-2:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO59746430Z20C20A5MY1000/?n_cid=SPTMG053 (日経新聞 2020/5/30) 人類に宿るウイルス遺伝子、太古に感染 進化を演出、驚異のウイルスたち(2)
 地球上にはいろいろなウイルスがいる。人類の進化にもウイルスが深くかかわってきた。太古のウイルスが人類の祖先の細胞に入り込み、互いの遺伝子はいつしか一体化した。ウイルスの遺伝子は今も私たちに宿り、生命を育む胎盤や脳の働きを支えている。新型コロナウイルスは病原体の怖さを見せつけた。過酷な現実を前に、誰もが「やっかいな病原体」を嫌っているに違いない。ウイルスが「進化の伴走者」といわれたら、悪い印象は変わるだろうか。母親のおなかの中で、赤ちゃんを守る胎盤。栄養や酸素を届け、母親の「異物」であるはずの赤ちゃんを育む。一部の種を除く哺乳類だけが持つ、子どもを育てるしくみだ。「哺乳類の進化はすごい」というのは早まった考えだ。この奇跡のしくみを演出したのはウイルスだからだ。レトロウイルスと呼ぶ幾つかの種類は、感染した生物のDNAへ自らの遺伝情報を組み込む。よそ者の遺伝子は追い出されるのが常だが、ごくたまに居座る。生物のゲノム(全遺伝情報)の一部と化し、「内在性ウイルス」という存在になる。内在性ウイルスなどは、ヒトのゲノムの約8%を占める。ヒトのゲノムで生命活動などにかかわるのは1~2%程度とされ、ウイルスが受け渡した遺伝情報の影響は大きい。見方によっては、進化の行方をウイルスの手に委ねたといっていい。哺乳類のゲノムに潜むウイルスは注目の的だ。東京医科歯科大学の石野史敏教授は、ヒトなど多くの哺乳類にある遺伝子「PEG10」に目をつけた。マウスの実験でPEG10の機能を止めると胎盤ができずに胎児が死んだ。PEG10は、哺乳類でも卵を産むカモノハシには無く、どことなくウイルスの遺伝子に似る。状況証拠から「約1億6000万年前に哺乳類の祖先にウイルスが感染し、PEG10を持ち込んだ。これがきっかけで胎盤ができた」とみる。胎盤のおかげで赤ちゃんの生存率は大幅に高まった。ウイルスが進化のかじ取りをしていた証拠は続々と見つかっている。哺乳類の別の遺伝子「PEG11」は、胎盤の細かい血管ができるのに欠かせない。約1億5000万年前に感染したウイルスがPEG11を運び、胎盤の機能を拡張したようだ。ウイルスがDNAに潜むのには訳がある。「生物の免疫細胞の攻撃を避け、縄張りも作れる」(石野教授)。ウイルスは生きた細胞でしか増えない。感染した生物の進化も促し、自らの「安住の地」を築きたいのかもしれない。東海大学の今川和彦教授は「過去5000万年の間に、10種類以上のウイルスが様々な動物のゲノムに入り、それぞれの胎盤ができた」と話す。ヒトや他の霊長類の胎盤は母親と胎児の血管を隔てる組織が少ない。サルの仲間で見つかる遺伝子「シンシチン2」は、約4000万年前に感染したウイルスが原因だ。さらにヒトやゴリラへ進化する道をたどった一部の祖先には、3000万年前に感染したウイルスが遺伝子「シンシチン1」を送り込んだ。初期の哺乳類はPEG10が原始的な胎盤を生み出した。ヒトなどではシンシチン遺伝子が細胞融合の力を発揮し、胎盤の完成度を高めた。本来のシンシチン遺伝子はウイルスの体となるたんぱく質を作っていたが、哺乳類と一体化すると役割を変えた。父親の遺伝物質を引き継ぐ赤ちゃんを母親の免疫拒絶から守る役目を担っているとみられる。石野教授は「哺乳類は脳機能の発達でもウイルスが進化を助けた」と指摘する。「複雑になった脳の働きを、ウイルスがもたらす新たな遺伝子が制御しているのだろう」。ウイルスが「進化の伴走者」と言われるゆえんだ。ウイルスの影響がよくわかる植物の研究がある。東京農工大学や東北大学などのチームはウイルスがペチュニアの花の模様を変える様子をとらえた。花びらの白い部分が、ゲノムに眠るパラレトロウイルスが動き出すと色づく。ダリアやリンドウでも似た現象がある。東京農工大の福原敏行教授は「一部はウイルスの仕業かもしれない」と語る。哺乳類のように進化の一時期に10種類以上の遺伝子がウイルスから入った例は見つかっていない。哺乳類も、形や機能の進化にウイルスを利用してきたのだろう。進化の歴史を隣人として歩んできたウイルスと生物の共存関係は今後も続く。

*12-3:https://www.yomiuri.co.jp/national/20200614-OYT1T50084/ (読売新聞 2020/6/14) 「コロナ死」定義、自治体に差…感染者でも別の死因判断で除外も
新型コロナウイルス感染症の「死者」の定義が、自治体ごとに異なることが、読売新聞の全国調査で分かった。感染者が亡くなった場合、多くの自治体がそのまま「死者」として集計しているが、一部では死因が別にあると判断したケースを除外。埼玉県では10人以上を除外したほか、県と市で判断が分かれた地域もある。専門家は「定義がバラバラでは比較や分析ができない。国が統一基準を示すべきだ」と指摘している。
■全員精査 厳しく
 読売新聞は5月下旬~6月上旬、47都道府県と、県などとは別に独自に感染者集計を発表している66市の計113自治体に対し、集計方法などを取材した。これまでに感染者の死亡を発表したのは62自治体。このうち44自治体は、死因に関係なくすべて「死者」として集計していた。その理由として、「高齢者は基礎疾患のある人が多く、ウイルスが直接の死因になったのかどうか行政として判断するのは難しい」(東京都)、「全員の死因を精査できるとは限らない」(千葉県)――などが挙がった。感染者1人が亡くなった青森県は「医師は死因を老衰などと判断した。感染が直接の死因ではないが、県としては陽性者の死亡を『死者』として発表している」と説明している。
■「区別は必要」
 一方、13自治体は、「医師らが新型コロナ以外の原因で亡くなったと判断すれば、感染者であっても死者には含めない」という考え方で、埼玉県と横浜市、福岡県ではすでに除外事例があった。埼玉県は12日時点で13人の感染者について、「死因はウイルスとは別にある」として新型コロナの死者から除外。13人はがんなどの死因が考えられるといい、県の担当者は「ウイルスの致死率にもかかわるので、コロナなのか、そうでないのかを医学的に区別するのは当然だ」と話す。横浜市でも、これまでに死亡した感染者1人について、医師の診断により死因が別にあるとして、死者から除外したという。
■県と市でズレ
 福岡県では、県と北九州市で死者の定義が異なる事態となっている。北九州市では、感染者が亡くなればすべて「死者」として計上している。これに対し、県は、医師の資格を持つ県職員らが、主治医らへの聞き取り内容を精査して「コロナか否か」を判断。この結果、これまでに4人の感染者について、北九州市は「死者」として計上し、県は除外するというズレが生じている。また、62自治体のうち残る5自治体は「定義は決めていないが、今のところコロナ以外の死因は考えられず、死者に含めた」などとしている。厚生労働省国際課によると、世界保健機関(WHO)から死者の定義は示されていないといい、同省も定義を示していない。だが、複数の自治体からは「国が統一的な定義を示してほしい」との声が上がっている。
●国「速報値と捉えて」
 厚労省は12日現在、「新型コロナウイルス感染症の死亡者」を922人と発表している。都道府県のホームページ上の公表数を積み上げたといい、この死者数をWHOに報告している。一方で同省は、新型コロナによる死者だけでなく国内のすべての死亡例を取りまとめる「人口動態統計」を毎年公表している。同統計は医師による死亡診断書を精査して死因が分類されるため、新型コロナの死者は現在の公表数よりも少なくなるとみられる。国として二つの「死者数」を示すことになるが、同省結核感染症課の担当者は「現在の公表数についての判断は自治体に任せており、定義が異なっていることは承知している。現在の数字は速報値、目安として捉えてもらいたい。統一された基準でのウイルスによる死者数は、人口動態統計で示される」と話している。
●識者「統一すべきだ」
 大阪市立大の新谷歩教授(医療統計)は「死者数は世界的な関心事項で、『自治体によって異なる』では、他国に説明がつかない。国際間や都道府県間での感染状況を比較するためにも、死者の定義を国が統一し、明示すべきだ」と指摘する。患者の治療に当たっている国立国際医療研究センター(東京)の大曲貴夫・国際感染症センター長も「医療従事者にとって、死者数は医療が適切に行われているかどうかを見定める指標の一つ。第2波に備える意味でも、ぜひ定義を統一してほしい」と求めた上で、「迅速性が重要なので、『陽性判明から4週間以内に死亡したケース』など、人の判断を挟まない方法が良いのではないか」と提案している。

*12-4:https://www.jmedj.co.jp/journal/paper/detail.php?id=14724 (Web医事新報No.5014 2020年5月30日発行) [緊急寄稿]日本の新型コロナ対策は成功したと言えるのか─日本の死亡者数はアジアで2番目に多い(菅谷憲夫) 、菅谷憲夫 (慶應義塾大学医学部客員教授,WHO重症インフルエンザガイドライン委員) 、登録日:2020-05-20、最終更新日: 2020-05-20
1.SARS-Coronavirus-2(SARS-CoV-2)の日本の流行
 世界保健機関(WHO)は,本年3月11日に新型コロナウイルス〔SARS-Coronavirus-2(SARS-CoV-2)〕のパンデミックを宣言し,日本国内でも,2020年3月から流行が本格化した。4月7日に,東京,神奈川,千葉など7都府県に緊急事態宣言が出て,4月16日には,宣言が全国に拡大された。5月に入り,日本の流行も終息傾向が見られるようになった。Social Distancingや休校の効果が出てきたものと思われる。
2.緊急事態宣言解除の影響
 これからの問題は,休校,外出やイベントの自粛,飲食店の休業,テレワークなどの対策が解除されると,流行が再燃する可能性が大きいことである。今,欧米諸国では,ロックダウンの解除,reopeningが課題となっている。国によって差はあるものの,5月中旬から徐々に厳しい外出禁止措置が解除されつつある。これがどのような影響をもたらすかは注目されるところである。ロックダウン期間中に人々が免疫を獲得したわけではなく,またSARS-CoV-2が完全に消失するとは考えられず,単に厳しい外出制限により人と人の接触が減ったので,患者数が一時的に減少したに過ぎない。夏になると,気候により流行が下火になると期待する向きもあるが,インドやフィリピンの流行状況を見ると,インフルエンザほどの季節性は望めないのではないかという意見もある。
3.日本のSARS-CoV-2対策は優れていたか
 政府を中心に,日本の死亡者の絶対数が欧米に比べて少ないから,日本のSARS-CoV-2対策は優れていたとか,成功したという論調が,最近多く聞かれる。ところが,アジア諸国は欧米諸国に比べて,感染者数も死亡者数も圧倒的に少ない事実がある。そして,アジア諸国間で,人口10万人当たりに換算した死亡者数を比較すると,日本は,フィリピンに次いで2番目に多く,日本の対策が優れていたとは言い難い(表1)。欧米諸国での人口10万人当たりのSARS-CoV-2感染者数は,アジア諸国に比べて10倍から100倍以上も多い。スペイン,イタリア,フランス,英国での感染者数は,10万人当たり275〜492人にもなるが,インド,中国,日本,韓国,台湾では,10万人当たり1.9〜21.5人に過ぎない。日本は,10万人当たり感染者数では,シンガポール,韓国,パキスタン等に次いで,5番目に位置する。シンガポールでは,最近,外国人労働者の宿舎で集団発生が起きたために,例外的に感染者数が488人と急増した。現時点での日本の感染者数は1万6203人,死亡者数は713人である(5月16日)。致死率を計算すると,4.4%(713/1万6203)と,かなり高率である。日本の例年の季節性インフルエンザの致死率は,1000万人のインフルエンザ患者数で,5000人の死亡者が出ていると仮定すると,0.05%(5000/1000万人)程度であるから,その約100倍の致死率となる。いずれにしろ,日本の感染者数は,国際的にも批判されたが,RT-PCR検査数が異常に少ないことが影響し,信頼できる数値とは言えない。
4.世界各国のSARS-CoV-2致死率
 世界各国の致死率(死亡者数/感染者数)は,欧米諸国では極めて高く,英国,フランス,イタリア,スペインなどでは,12〜15%となる(表1)。これは,1918年のスペインかぜの欧米の致死率1〜2%をはるかに超えて,驚くべき高値である。不明の点も多いが,欧米での高い致死率は,長期療養施設での流行により,多数の高齢者が死亡したためとも報道されている。アジア諸国の致死率は,インドネシアとフィリピンは6%台と高いが,中国が5.5%,日本は4.4%である。韓国が2.4%,台湾が1.6%と低い。表1を見ても,アジア諸国の致死率は,欧米諸国よりも明らかに低い。欧米よりもアジア諸国の死亡者数が少ないという現象は,スペインかぜの経験とは真逆であり,説明が困難である。例えば,スペインかぜの死亡者数は,アジア全体で1900万から3300万人で,欧州全体で230万人と報告されている(表2)。1918年当時は,アジアに比べて欧州諸国が社会経済的に圧倒的に優位だった影響と説明されてきた。社会経済的な格差は大幅に改善されたとはいえ,現在も欧州諸国が優位であると考えられるにもかかわらず,アジア諸国の死亡者数が少ない理由は説明がつかない。
5.人口10万人当たりSARS-CoV-2の死亡者数
 欧米諸国とアジア諸国での,SARS-CoV-2流行のインパクトの違いは,10万人当たりの死亡者数で比較すると,一段と明確となる(表1)。スペイン,イタリア,フランス,英国での死亡者数は,10万人当たり40〜60人にもなる。欧米諸国の中で,流行を徹底的に抑え込んだと高く評価されるドイツでも,10万人当たり死亡者数は9.5人であるが,対照的に,アジアで最も死亡者数の多いフィリピンでも,10万人当たり0.77人に過ぎない。インド,中国,日本,韓国,台湾などでは,10万人当たり0.03〜0.56人となる。欧米諸国とアジア諸国との差は明らかである。日本とドイツの人口10万人当たりの死亡者数を比べると,0.56人対9.47人で17倍差があり,特に多くの死亡者が出ているスペインと比べると,0.56人対58.75人で,実に105倍となる。まさに,欧米諸国ではSARS-CoV-2流行のインパクトは桁違いに大きい。欧米とアジアとの死亡者数には,100倍の違いがあるが,原因は不明である。可能性として考えられるのが,①人種の差,②年齢構成の違い,すなわちアジア諸国では若年層が多い,③BCG接種の影響,④欧米諸国では,高い感染力を持ち病毒性の強い,アジアとは別のSARS-CoV-2流行株が出現した─等が考えられる。
6.日本の死亡者数はアジアでワースト2
 欧米諸国と比べて死亡者数が少ないというだけで,日本のSARS-CoV-2対策が成功したという報道は誤りである。人口10万人当たりの死亡者数をアジア諸国で比べると,1位はフィリピン,2位が日本であり,日本は最も多くの死亡者が発生した国の一つである。注目されるのは,医療崩壊した武漢など,SARS-CoV-2の発生源とされた中国を上回っている点である(表1)。最も死亡者が少ない国・地域は台湾で,感染者数440人で死亡例はわずかに7人である。台湾の人口は2370万人なので,この割合を日本に当てはめると,患者数2350人,死亡者数は37人と驚異的な低値となる。日本では700人以上の死亡者が出たが,対策によっては,まだまだ多くの命を救えた可能性がある。
7.今季は大規模なインフルエンザ流行が予測される
 2019/20年シーズンの日本のインフルエンザ流行は,例年よりも数週早く,11月中に各地で注意報が出て大流行が懸念されたが,結局,A/H1N1pdm09による流行のみで,A/香港型(H3N2)の流行はなく,2020年1月には終息した。また,2018/19年シーズンに流行がなかったB型インフルエンザも出現せず,2年連続して流行がなかった。約700万人程度の患者数と言われ,小規模の流行に終わった。したがって,2020/21年シーズンは,A/香港型(H3N2)とB型による,大規模な混合流行の可能性が高い。
8.おわりに
 日本では,欧米と比較してSARS-CoV-2死亡者数は少ないことは事実である。しかし,それは日本の対策が成功したとか,優れていたわけではない。アジア諸国の感染者数,死亡者数は,欧米に比べて,圧倒的に少ないのであり,その中では,最大級の被害を受けているのが日本である。今,第2波の問題が世界のトピックとなっているが,日本を含めたアジア諸国では,第2波は,欧米諸国と同じような激甚な流行となる危険性もある。そのため,日本の第2波対策は,欧米の被害状況を詳しく分析して,慎重に立案,準備する必要がある。特に今季は,A/香港型とB型の大規模なインフルエンザ混合流行が予測され,インフルエンザとSARS-CoV-2の同時流行にも備える必要がある。

<地方住まいの長所と短所>
PS(2020年6月22日):*13-1のように、2019年度の「森林・林業白書」は、2015年の国連サミットで採択され①気候変動対策 ②森林の持続可能な管理等の17目標を掲げた国連の持続可能な開発目標(SDGs)達成への貢献を特集したそうだ。森林は、地球温暖化防止・水源涵養、国土保全、教育など幅広い機能があり、日本は国土の2/3を森林が占め収穫期でもあるため、大切に使えば大きな資源になる。しかし、そのためには、「スマート林業」「3Kからの脱却」「若者に魅力ある産業への脱皮」を急いで山村を再生する必要があり、国民は一部の企業を潤わせるために森林環境税を支払うのではないため、山から得られる「富」を地元に還元して魅力ある山村造りに役立てることが重要だ。また、せっかく育てた国有林を、民間企業に皆伐させ、造林は国が環境税を使って責任を持って行うなどという呆れた政策を作らない国民を育てるためには、子どもをコンクリートで作られた都市ではなく、自然の近くで育てて自然の美しさ・素晴らしさ・すごさ・貴重さを肌身で感じさせる必要がある。そこで、地方の学校では、*13-2のように、近くの森林や農園に児童の手で巣箱を設置し、森や農園や巣箱の中の変化の様子をカメラで撮影し、ITを使って学校のパソコンに映し出せる仕掛けをしたらどうかと思う。なお、現在の科学は、*13-3のように、太陽系外に地球に似た公転軌道をもつ第2の地球をすばる望遠鏡が発見し、太陽系内でも火星や月には人間が住めそうとのことだ。
 しかし、地方に住むにあたって不便なのは、*13-4・*13-5のような公共交通機関における赤字路線の存在と廃止の危機だ。私は、工夫すればいろいろなやり方があると思うが、人口減少や運転手不足に悩む地方の交通網を守る改正地域公共交通活性化再生法が5月27日に成立し、国交省は、路線維持への自治体の関与を強めることで影響を最小限にとどめたい考えだそうだ。路線廃止だけでなく、多様な利用をして黒字化したり、自治体の総合戦略とあわせて駅ビル・駅前の街づくり・産業・住宅地などとセットで考える必要があるため、確かに自治体主導にするのがよいだろう。

 

(図の説明:1番左は十勝千年の森、左から2番目は人間がかけた巣箱で子育て中のフクロウの雛だ。また、右から2番目は、手入れされた森林で、1番右は、庭にかけた巣箱で子育てしているシジュウカラだ)


  EV電車      燃料電池電車       貨客混載     超電導電線敷設

(図の説明:電車だけ考えても、1番左のEV電車、左から2番目の燃料電池電車などに変更して電力を自ら作る方法がある。また、右から2番目のように、宅急便などと組んで貨客混載したり、1番右のように、線路に超電導電線を敷設し、地方から都市への送電を担って稼ぐ方法もある。なお、電車は自動運転にすれば、人件費が節約できるだろう)

*13-1:https://www.agrinews.co.jp/p51121.html (日本農業新聞論説 2020年6月20日) 林業白書 成長と循環で再生促せ
 政府が閣議決定した2019年度の「森林・林業白書」は、国連の持続可能な開発目標(SDGs)達成への貢献を特集した。時代の要請に沿った役割発揮への期待を込めたが、成否の鍵は山村の再生が握る。SDGsは、2015年の国連サミットで採択された。持続可能な世界を実現するため、貧困や飢餓の撲滅、気候変動対策、森林の持続可能な管理など17の目標を掲げた。2030年までの実現に向けて、世界的な取り組みが始まっている。森林は、地球温暖化防止や水源のかん養、国土保全、教育など幅広い公益的機能がある。日本の森林は、国土面積の3分の2を占め、公益機能の発揮に期待が高まっている。白書は「伐(き)って、使って、植える」という循環利用を基本にした管理が、SDGsの実現に貢献することを示した。特集で取り上げたのは、政府が掲げる森林・林業の成長産業化と、SDGsに沿った管理の両立を目指す決意表明とも言えよう。ただ森林・林業の現状は楽観できるものではない。木材の自由化政策と木材価格の低迷で、山村は廃れ、所有者や境界が分からない森林、手入れの届かない森林が目立つ。担い手不足と高齢化も深刻で、このままでは、成長産業化どころか、森林を維持することも危うくなる。林野庁は、所有者が放置している森林を林業経営者の管理に委ねる森林経営管理制度や森林環境税の導入で、循環利用にてこ入れをする。白書は、そうした政策の背景と狙いを詳しく示した。国民理解には必要なことだろう。難問は山村の再生である。若者が定住できるように魅力ある山村の創造が必要だ。機械化による「スマート林業」を進め、「きつい、汚い、危険」の「3K」イメージを払拭(ふっしょく)し、男女を問わず若者に魅力ある産業への脱皮も急ぐ必要がある。「担い手」である森林組合の活性化を促し、林家や林業従事者の経営と生活を安定させる環境がなければ、成長産業化と循環利用との両立は困難だろう。日本の森林は、戦後に植えた人工林を中心に主伐期を迎えている。いわゆる収穫期だ。国産材の利用も増えている。SDGsへの貢献と併せて、森林・林業に追い風が吹いていると言える。これを、山村再生につなげる必要がある。宝の持ち腐れにせず、計画的で適切な伐採と活用を進めるべきだ。その際に、山から得られた「富」をきちんと地元に還元し、魅力ある山村づくりに役立てることが肝心だ。一部の木材企業だけが潤って、森林を守る人たちが暮らす山村が衰退するようでは、循環利用の森林・林業を展開することはできない。白書は、「山村の活性化」を巡って地元に利益を還元する必要性を示した。しかし、山村社会のインフラ整備や就業機会の創出などに関する記述は厚みに欠ける。今後の課題である

*13-2:https://www.agrinews.co.jp/p51141.html (日本農業新聞 2020年6月22日) 絶滅危惧「ブッポウソウ」 ブドウ園に巣箱 害虫駆除で一石二鳥 広島県世羅町のワイナリー
 絶滅危惧種の渡り鳥「ブッポウソウ」を利用してブドウの害虫を駆除するプロジェクトが広島県世羅町で始まった。ワインブドウを栽培する園地に巣箱を設置して繁殖を促し、葉を食害するコガネムシ類を捕食してもらう。薬剤防除を減らすことで、生産者の負担を減らしながら、鳥の生育数の増大、良質なブドウで地域の特色を打ち出したワイン作りを目指す。ブッポウソウは、羽が青色でハトより小さい夏鳥。越冬場所の東南アジアから4月末~5月上旬に、本州や四国、九州に飛来する。昆虫を食べ、コガネムシなど甲虫類を好む。ただ、営巣場所が減り、急激な生息数の減少で、近い将来絶滅の可能性が高いとされる環境省のレッドリストでIB類に指定される。電柱などにも営巣することから、生息数の回復に巣箱の設置が有効という。プロジェクトは町産ブドウでワインを造る「せらワイナリー」を経営するセラアグリパークが始めた。三原野鳥の会の指導を受け、同社にブドウを出荷する世羅ブドウ生産組合と連携する。せらワイナリーと隣接するせら夢公園自然観察園では、野鳥の会が昨年初めて巣箱を設置し、ひなが巣立ったことを確認した。今年は組合員19戸が、園内や周辺の柱に巣箱30個を設置した。セラアグリパークは、巣箱を設置した園のブドウで造った商品をブランド化する計画だ。 

*13-3:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200531&ng=DGKKZO59745590Z20C20A5MY1000 (日経新聞 2020.5.31) 「第2の地球」公転軌道 地球に似る 太陽系外惑星 すばる観測
 太陽系外で生命が存在できる領域にあり「第2の地球」の候補とされる惑星が、地球と似た公転軌道をもつことが、国立天文台のすばる望遠鏡による観測でわかった。この領域にある惑星の軌道が詳しくわかったのは初めてで、生命の生息条件を探る一歩になるという。東京工業大学や自然科学研究機構アストロバイオロジーセンターなどのチームが、みずがめ座の方向、約40光年の距離にある赤色わい星「トラピスト1」を観測した。周囲には少なくとも7つの惑星が公転し、うち3つは生命がすめる領域「ハビタブルゾーン」にあり岩石でできている。このゾーンは恒星から適度に離れていて熱すぎたり冷たすぎたりせず、液体の水が存在できる。研究チームは、米ハワイ島にあるすばる望遠鏡に搭載した観測装置でトラピスト1を調べた。観測中にハビタブルゾーンにある2つの惑星を含む3つの惑星が、トラピスト1の前面を横切るように通過した。トラピスト1が放つ光の変化を詳細に調べたところ、自転軸の傾きが判明。惑星の公転軌道面に対してほぼ垂直であることがわかった。太陽系の惑星は太陽の自転軸に対しほぼ垂直の軌道で回っているが、太陽系外では軌道が傾いた惑星もある。軌道の傾きは、恒星から受ける放射線や紫外線の変化を通じて環境を左右している可能性がある。成果は軌道の傾きと環境を探る研究の出発点になるという。

*13-4:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/527823 (佐賀新聞 2020.5.28) 伊万里-唐津、1億9300万円赤字 JR九州、線区別収支公表
 JR九州は27日、1日1キロ当たりの平均通過人員が2千人未満だったのは2018年度に17線区あり、営業損益が全て赤字だったと発表した。佐賀県内の線区の赤字額は筑肥線(伊万里―唐津)が1億9300万円、唐津線(唐津―西唐津)は2億2900万円で、ローカル線の厳しい現状が改めて浮き彫りになった。同社が線区別の収支を幅広く公表したのは初めて。沿線の自治体や住民に利用促進の手だてを考えてもらいたいとして、青柳俊彦社長が福岡市での会見で説明した。「将来的な鉄道網の維持可能性を高めるために知恵を出し合いたい」とし、複数の線区で立ち上げた自治体との検討会で対策を講じる考えを示した。運賃などの営業収益から、運行にかかる人件費や燃料代などを営業費として差し引いた金額を公表した。伊万里―唐津では営業収益3900万円に対し、営業費は2億3200万円、唐津―西唐津は営業収益3300万円、営業費2億6200万円だった。筑肥線の唐津―筑前前原(福岡県)と筑前前原―姪浜(同)、唐津線の久保田―唐津は2千人以上で、公表の対象外としている。JR九州管内には全59線区があるが、公表対象を限定した点について青柳社長は「ローカル線では30年前と比べて平均通過人員が7割以上減っているところもある。まずスポットを当て、一企業だけで維持するのは大変だということを理解いただく」と述べた。17線区を廃止したり、バスなど別の交通形態に転換したりする可能性に関しては「結果としてあるかもしれないが、今の段階でそれらを前提に議論することは考えていない」と話した。赤字額が最大だったのは日豊線の佐伯(大分県)―延岡(宮崎県)間の6億7400万円。災害の影響があった日田彦山線などは公表していない。

*13-5:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/527934 (佐賀新聞 2020.5.28) 地域の足、自治体主導で、改正地域公共交通活性化再生法が成立
人口減少や運転手不足に悩む地方の交通網を守る改正地域公共交通活性化再生法が27日、参院本会議で可決、成立した。過疎地域などでバス路線の存続が難しくなる前に、自治体が後継事業者を公募するなど、対策を早期に検討する制度を創設。住民の足が途切れないようにする。バス事業は、新型コロナウイルス感染拡大に伴う外出自粛で乗客が大幅に減少しており、路線撤退が増える恐れもある。国土交通省は、路線維持に対する自治体の関与を強めることで、影響を最小限にとどめたい考えだ。新制度では、採算割れなどを理由にバス事業者が路線廃止を想定し始めた段階で、自治体が対策に着手する。人口や住民の年齢層など地域の実態に応じて(1)コミュニティーバス(2)乗り合いタクシー(3)マイカーを使う自家用有償旅客運送―といった存続の選択肢を検討。事業者を公募するか、自治体が直接運営する。一方、地方都市を念頭に、路線バスの参入審査に地元自治体の意見を反映させる仕組みも設ける。新規参入により、客を奪い合って経営が悪化したり、通勤・通学など利用客が見込める時間帯だけに運行が集中して不便になったりする恐れがあるためで、国は自治体の意見を参考に、認可するかどうか決める。

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2020.5.11~13 日本の情けない遅れは、どうして起こったのか?(2020年5月14、16、17、18、19、20、21、22、23、24、26、27、28、30、31日、6月1、3、4、6、7日追加)
   
2020.3.6  2020.3.24   2020.3.2           2020.5.2朝日新聞
東京新聞   朝日新聞    毎日新聞   

 
          テレビ朝日              新型コロナウイルスの治療薬

(1)新型コロナウイルスの検査について
1)PCR検査について
 日本は、上の1番左の図のように、2020年3月5日まで、「①37度5分以上の発熱が4日以上続く場合」「②保健所などの帰国者・接触者相談センターに電話で相談し」「③帰国者・接触者外来などを受診し」「④そこの医師から依頼を受けて」「⑤保健所が必要性を判断すれば」「⑥各都道府県の地方衛生研究所などで検査を受けられる」ことになっていたが、検査を受けるまでの関門が5つもあるため、実際には検査を受けにくい仕組みになっていた。3月6日以降は、保健所を通さずに医師の判断で検査を実施し、民間の検査会社などが検体を調べることができるようになっていた。

 3月24日以降は、左から2番目の図のように、症状の要件は緩和されたものの、検査を受けるにはどこかで保健所を通さなければならなかった。しかし、具合が悪ければ、病名を特定するために、まず医療機関を受診して該当しそうな病気に関する検査を受けるのが当然なのである。にもかかわらず、①などの要件をつけて待機させたため、その期間中に重症になったり、死亡したり、保健所で事務的に排除されてPCR検査に辿りつけなかったり、検査後も結果が出るまでに3~7日かかったりなど、これまでの日本の医療ではあり得ないことが続いたわけだ。

 しかし、予算委員会では、上の右から2番目の図のように、安倍首相や加藤厚労相は、なるべくPCR検査をしようとする発言をし、検査を妨害する意図はなかったように見える。それでは、誰が、何の目的で、実質的にPCR検査を邪魔していたのかについては、読者の皆さんは、既にそれぞれの解答を持っておられるだろう。

 そのような中、2020年5月6日、*1-1-1・*1-1-2のように、加藤厚労相は、これまで「37度5分以上の発熱が続く場合」などとしてきた相談・受診の目安を「息苦しさや強いだるさがある場合、高熱が出た場合、基礎疾患がある人などは軽い発熱でも相談できるよう見直す」という考えを示されたが、“基礎疾患(そもそも範囲不明)”がなくても、高熱(定義できない)でなくても、高齢者(定義不明)でなくても、陽性であれば他人に感染させる可能性があり、リスクが高いとされるグループ以外の人でも場合によっては体調が急速に悪化することもあるため、受診に勝手な要件を設けて受診しにくくすること自体が問題なのである。

 従って、私は、*1-1-3の「ウイルスの有無を調べるPCR検査が日本は際立って少なく、人口10万人当たり検査数は、日本187.8人、韓国1198人、米国1752.3人、イタリア3159人、ドイツ3043.5人である」「国内の正確な感染実態を把握せずに、どうして社会経済活動の再開を判断できるのか」「政府の戦略には科学的根拠がない」等の指摘に賛成だ。

 しかし、政府が検査を増加するという説明を繰り返しているのに、検査が抑えられる運用が続いていたのは、政治家よりも厚労省(+専門家会議)の主導であるため、政治家が責任をとったり政権を変えたりしても状況は変わらないと思う。従って、本質の方を変えなければならないのだが、行政の言う通りにしか動けない政府や与党も、識見に基づく指導力がなさすぎるだろう。

2)PCR検査を倍にすれば、接触「5割減」でも収束可能
 厚労省と専門家会議が、PCR検査を渋って軽度及び中等度の感染者を市中に放置した結果、新型コロナウイルスが市中に蔓延することになったが、*1-1-4の九州大学の小田名誉教授(社会物理学)の「検査数を2倍にすれば接触機会が5割減でも14日で収束し、検査数が4倍なら接触機会を全く削減しなくても8日で収束するなど、接触機会の削減より検査と隔離の拡充の方が対策として有効である」としている。

 私は、モデルを使うのなら、小田名誉教授のモデルの方が、スペイン風邪流行時のモデルを使っているらしい専門家会議のモデルよりも、現代の医療に適合しており正しいと思う。さらに治療薬を使えば、回復が早くなり、隔離を要する病気でもなくなるだろう。

 なお、国は1日のPCR検査の能力を2万件まで拡充できるとしているので、少なく見積もっても検査数を2倍にすることはでき、さらに、*2-1のように、唾液でPCR検査を行ったり、全自動の機械を使ったりすれば、その他のネックもなくなるため4倍以上にすることも可能だ。そして、これらの工夫を最初の1カ月で行えば、「Good Job!」と言うことができて、日本医療の信頼を損なわずにすんだ筈だった。

(2)不十分な検査体制は日本医療の恥だが、それによる被害者は誰か?
1)政府の方針
 厚労省で感染症対策などを担当してきた自民党衆議院議員の国光氏は、*1-2-1のように、「①日本のPCR検査数が海外に比べて少ないのは、欧州などが軽症者を対象とするのに対し、日本は重症者から検査するためだ」「②国が37.5度以上の発熱が4日以上続くとしてきた受診の目安を緩めるのは評価するが、実際に検査するかは医師の判断なので、国は他の病気と同様に医師の検査基準を示してほしい」「③医師が検査すべきと判断したら保健所につなぐ」「④保健所は4日以上の発熱などの症状がなければ検査しない例があり、保健所が医師の判断を尊重する仕組みも必要だ」「⑤米国や韓国などで普及するドライブスルー方式は短時間で効率は良い」 「⑥国が地域ごとのPCRセンターを指定して検査を集約し、かかりつけ医がそこを紹介する体制がより効率的だろう」「⑦民間の検査機関を使う場合は病院から検体を送るのに2日など時間がかかる。民間は国指定のPCRセンターに協力すべきだ」「⑧PCR検査以外でも最低3~4時間で終わる『LAMP法』などの導入を支援すべきだ」「⑨関連法令を緊急に改正し条件や期限付きで担い手を広げるのも一案だ」などとしている。

 このうち、①②については、軽症者も時々刻々と症状が悪化するケースがあることを考えれば、医師の判断で他の病気も含めて速やかに検査する必要があり、検査するかしないかの判断に保健所をかませたことが失敗の始まりなのである。従って、③④の保健所との関係は、事後報告でよいこととするように、⑨の関連法を変えるべきである。

 さらに、⑤⑥⑦⑧については、工夫はいろいろとあるため、医療機関や民間検査センターよりも行動の遅い厚労省や保健所をカットするのが、最善の方法に思える。

 具体的に、保健所を通す方法は、*1-2-2のように、⑩検査の実施が滞って、発症から陽性確定まで7日間など長期化させ ⑪検査の機能不全を背景にした陽性判明の遅れが重症化リスクを高め ⑫陽性と判明していない感染者と他者との接触機会を増やしていた。そのため、“医療崩壊”を避けながら感染拡大を防ぐには、大学・研究所・民間検査機関を含めて検査機関を増やしたり、簡易検査キットを使ったりするなどの改善が必要なことは明らかだ。発熱から4日以上たってPCR検査を受け、7日も結果を待っていれば、その間に悪化する人は多い筈である。

 さらに、⑬PCR検査の実施数は全国で1日8000件前後が続くが、民間検査会社の受託は2000件ほどで、残りは国立感染症研究所(東京・新宿)や地方衛生研究所などの公的機関であり ⑭民間検査数は2月下旬まではゼロの日もあったし ⑮熱が出て気分が悪いといった程度ではすぐに検査を受けてもらえない状況で ⑯京都大学病院は、院内感染予防の視点から、無症状でも公費でPCR検査を受けられるようにすべきとの声明を出していたそうだ。

 しかし、日本は世界でも類を見ないクラスター潰しに専念し、クラスターに入ると見做された無症状者や軽症者を優先して入院させていたため、“孤発例(誰かから感染しているので、そんな筈はないが・・)”という非科学的な呼び名の経路不明な症状のある感染者の検査や治療に医療資源が廻らなかったそうなのである。

 なお、宮城県内で確認された新型コロナ感染者88人は、*1-2-3のように、感染経路不明な人ほど検査まで時間を要し、発症からPCR検査の結果が出るまでの最長は16日かかっており、最長の20代の男性は、4月9日に家族の感染が分かって11日に陽性と判定され、家族の感染がなければ検査すら受けられなかった可能性が高いそうだ。

 また、経路不明の仙台市の50代の女性は、医療機関を2カ所回った後、相談センターから紹介された一般医療機関の求めで検査を受け陽性判明まで9日かかったそうだが、感染者の初期症状は多様であるため、国が目安としていた「37.5度以上の熱が4日以上」「高熱・・」等に当てはまらない感染者は少なくない筈だ。

2)まとめ
 私も、*1-2-4のように、不十分なPCR検査体制は日本の恥であり、日本で新型コロナによる死者数が少ないのは、検査数が少ないため死因を新型コロナに分類されず、肺炎等の他の病気に分類されたり、原因不明とされたりしている人が多いという理由があると思う。

 さらに、新型コロナウイルスは肺炎だけがクローズアップされているが、味覚だけでなく、消化器にも異常をきたしたり、ウイルス性髄膜炎になったりなど、時間の経過とともに人間の免疫の方がウイルスに負け、ウイルスが増殖して全身に広がるにつれて、身体へのダメージは大きくなる。そのため、検査数を増やして早期発見・早期治療することが必要だったのであり、死んでから冥福を祈られても浮かばれないのである。

(3)日本における実用化の壁は何か?
 日本医師会の横倉会長は、*2-1のように、唾液で判定するPCR検査法の実用化を訴えられたそうだ。これは、米国で開発され、北海道大学で試験が進められており、鼻の奥や喉から粘液を採取する方法と同じ結果が出る上、手軽で医療関係者への感染リスクを減らすことが期待できるそうだ。よいものは、欠点を探して停止させるのではなく、早々に採用して欠点を補いながら使った方がよいと私も考える。

 また、スイス製薬大手のロシュは、*2-2のように、新型コロナウイルスの抗体検査薬が米食品医薬品局(FDA)から緊急使用許可を得たと発表し、判定確率は100%に近いそうだ。日本でも5月中に承認申請する方針で、抗体検査の精度が高まれば、免疫を持つ可能性のある人を特定しやすくなり、経済活動の正常化に役立ちそうである。

 そのほか、*2-3のように、「富士レビオ」が新型コロナ患者の検体から15~30分で検出できる「抗原検査キット」を開発し、医療現場において15分程度で判定可能となるので、政府は5月13日に薬事承認する方針だそうだ。私も、PCR検査などとの組み合わせで活用すれば、医療現場でのツールとして価値が大きいと考える。

 しかし、*2-4は「①日本も東京と東北地方で調査が進むが、検査キットの精度などを巡り課題が指摘されている」「②『大規模な抗体検査と診断で市民は安全に仕事に戻れる』とNY州のクオモ知事が抗体検査の意義を強調したが、精度に難点がある」「③そもそも免疫できない?」と記載しており、日本では、無理に欠点を探して実用化を阻む後ろ向きの声が多く、開発者に非生産的な時間と苦労をかけるのである。

 例えば、①②の検査キットや抗体検査の精度が仮に90%しかなかったとしても、90%の確率では当たって傾向がわかるため、何もせず傾向を全く把握していないよりはずっと良い。さらに、使いながら改良すれば精度は上がるため、何もせず、いつまでも0の状態でいるよりも始めた方がずっとよいのである。

 また、③の免疫ができないというのは、想像によるいちゃもんに過ぎない。何故なら、新型コロナから回復した人の血漿で重症患者が回復したという事実は、血液中に抗体ができ、それが新型コロナウイルスを打ち負かしたからにほかならないからだ。これを戦国時代に例えると、自分の兵隊(免疫)が新型コロナウイルスという敵に負けて全滅しかかっている時に、他国から強い援軍をさしむけてもらったようなものなのである。

 なお、新型コロナ感染者が多い米東部ニューヨーク州のクオモ知事は、*2-5のように、州内の医療従事者に対して感染歴を調べる抗体検査を行った結果、陽性割合が一般市民より低く、医療従事者が着用しているマスクや防護服に感染防止の効果が見られるということを明らかにしたそうだ。そのためにマスクや防護服を身に着けるので当たり前なのだが、抗体検査によって数量的なエビデンスを得た点が新鮮だ。

(4)あるべきスケジュールはこうだった
1)大型クルーズ船の扱いは失敗だったこと
 大型クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」の乗客は、2020年2月5~19日の14日間の隔離を終了して、*1-3-1のように、新型コロナの感染が確認されなかった約500人が下船したが、船内の感染対策が不十分であったため、隔離期間に感染を広げて乗客乗員542人を感染させたのが第1の不手際だ。

 そのため、アメリカ、カナダ、オーストラリア、イギリスの各国政府は、ダイヤモンド・プリンセスから政府チャーター機などで帰国した人たちに対し、さらに14日間の隔離措置をとり、韓国は自国民以外はダイヤモンド・プリンセス号の乗客の入国を禁止する方針を示した。しかし、日本の当局者は、「自分たちの対応は適切だった」と主張している。

 日本は、日頃からクルーズ船を誘致しているため、いざという時には適切なケアができなければならないし、そういう実績を積み重ねていくことによって初めて、クルーズ船の誘致が容易になったり、日本の医療水準の高さが認められて医療観光が視野に入ったりするのだ。そのため、大型クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」への対応は、今後の日本経済にとって大きなマイナス(成績なら“不可”)になった。

2)医療現場は仕方なくCTで判定
 PCR検査ができなかったため、*1-3-2のように、医療現場では、新型コロナ感染症の重症度判定にCTの画像診断を使い始めた。そのため、「肺炎を起こすような重症例についての見落としは少ない」と、政府専門家会議の尾身副座長が述べている。

 しかし、重症(既に免疫が負けてウイルスが増えた状態)になってから、人工呼吸器やECMOを使っても患者に負担をかける割に回復の見込みが小さいため、CT検査で肺に影が出る前に検査して治療するのが正攻法であり、その準備は、「ダイヤモンド・プリンセス」に対応していた2月中に、情報をかき集めて行っておかなければならなかったし、やろうと思えばできた筈だ。

(5)ワクチンの開発
 米政府は、*3-1のように、新型コロナウイルスのワクチン開発を急ぎ、米国生物医学先端研究開発局がJ&Jに約10億ドル投じて開発を本格化させているほか、米バイオ企業モデルナにも最大4億8000万ドル拠出してワクチンの開発と生産体制の整備を支援し、承認されたワクチンを早急に量産できるよう後押しし、年内に数億本の量産体制を目指すとのことだ。

 ここで、日本人には、「ワクチンの安全性・有効性を確かめる臨床試験は通常1年~1年半を要するのに、約8カ月で医療現場に投入する計画は安全性を無視している」などと言う人が少なくないが、安全性・有効性とスピードは両立できないものではないため、ピンチをチャンスに変えて利益を出すためには、安価で質の高いものを作って最初にゴールすることが必要だ。
 
 その理由は、世界で需要のある新型コロナワクチンは、安全性・有効性と世界一のスピードが達成できれば大きな利益を生むが、そうでなければ設備投資が無駄になって大きな損失を抱え込む可能性が高いからだ。新型コロナのワクチン候補は現在約50あり、ワクチンや特効薬の開発に成功すれば経済活動を停滞させる外出制限などの対策をとる必要がなくなるため、欧州や中国も国力をあげて開発を進めているそうだ。

 また、*3-2のように、世界では70を超えるワクチンの開発プログラムが進んでおり、日本では大阪大学と大阪大学発バイオベンチャーが、「DNAワクチン」という新しい手法を用いたワクチン開発に取り組むことを表明し、3月24日には動物実験用の原薬開発に成功している。

 これは、大腸菌を培養することで得られる「プラスミドDNA」に新型コロナウイルスの表面にあるタンパク質の一部を作り出す遺伝子を組み込んで体内に投与すると、体内で目的のタンパク質が作られ、免疫システムがそのタンパク質を排除対象として認識し、ウイルスが体内に侵入した時にウイルス表面にあるそのタンパク質を目印として排除する仕組みで、増産が簡単なので値段を安くでき、年内に医療従事者を中心に十数万人に接種することを目標にしているとのことだ。

 そのような中、*3-3のように、欧州委員会の呼びかけで国際会議が開かれ、ワクチン開発に世界が協力するとして、参加者が総額80億ドル以上の拠出を約束し、欧州委員会のライエン委員長は、これらの資金が前例のない国際協力の端緒になるとし、資金はさらに必要になるだろうと警告したそうだ。日本はこの中に入っているが、アメリカ・ロシアは参加せず、中国はEU大使が儀礼的に参加したのみで、ワクチン開発が進んで既に実用化が視野に入っている国は、自国のワクチン候補に資金を投じた方がメリットが大きいのである。

(6)治療薬
1)抗ウイルス薬の重要性
 新型コロナウイルスの治療薬としては、さまざまな薬が候補にあがっており、抗ウイルス薬「レムデシビル」は5月7日に承認され、抗ウイルス薬のアビガンも5月内に承認されそうだ。

 福岡県医師会は、*4-1のように、新型コロナウイルス感染症への効果が期待される新型インフルエンザ治療薬「アビガン」を、主治医が重症化の恐れがあると判断した場合は軽症でも早期投与できる独自の体制を整え、このように「主治医等が重症化の可能性を憂慮する患者」を対象に明記したことで、主治医が必要と判断すれば軽症でも早期投与が可能になった。

2)他の病気との類似性 ← 一致しているのでは?
 米ニューヨーク市保健局は、*4-2のように、5月4日、2~15歳の15人で「多臓器炎症型疾患」が確認され、それは、高熱や発疹、腹痛、吐き気、下痢などがみられる川崎病に似た症状で、うち10人が新型コロナのPCR検査や抗体検査で陽性が判明し、感染歴があることが分かったと発表した。

 新型コロナ感染拡大に伴い、同じような症例が英国・フランス・スペイン・イタリアなど欧州でも相次いで報告されており、「免疫の過剰反応で血管に炎症が起き、血栓ができやすくなった状態」と説明されているが、多臓器炎症は、免疫が負け始めてウイルスが増殖し、血管を通じて体中に廻った状態ではないかと、私は思う。

 実際、*4-3のように、敗血症(感染症を起こしている細菌・ウイルス・真菌・寄生虫等が増殖して炎症が全身に広がり、重大な臓器障害が起きて重篤になっている状態)は、感染症がきっかけとなって起きる症状で、その原因となる菌を見つけて、それに対する治療を早期に開始しなければ命に関わる。

 そして、どんな感染症でも、免疫の方が負ければ敗血症を起こす可能性があり、特に免疫力がまだついていない乳幼児や、高齢者、糖尿病などの慢性疾患やがんなどの基礎疾患がある人や、病気治療中で免疫力が低下している人は、感染症から敗血症を起こすリスクが高いのである。

 そのため、治療には、その感染症の原因となっている病原体を早急に特定して治療を開始することしかない。薬物治療であれば、細菌の場合は抗菌薬、ウイルスの場合は抗ウイルス薬、真菌の場合は抗真菌薬、寄生虫の場合は抗寄生虫薬を用いる。そして、発見が遅れるほど死亡リスクが高まり、助かった場合でも後遺症が残ることが多いのである。

(7)教育について

    

(図の説明:1番左は幅120cmの机、左から2番目はそれに合わせる引き出しで、並べ方によって人と人の距離を調節することができる。また、右の3つは、アクリル板を使った透明なパーティションで、学校・オフィス・役所などで自然な形で使うことが可能だ。そのため、こういうものを作れる会社は、結果的にビジネスチャンスになった)

 状況を理解して適切な判断をし、的確な行動に結び付けたり、主権者として政策を理解した上で選択したりできるためには、教育が重要である。  

 このような中、私は東大同窓会の会員なので、*5-1のように、東京大学総長の五神先生から、新型コロナウイルス感染症に関連する対応に関する総長メッセージが届いた。その中には、①東大は、学生の学びの機会を確保するために、オンライン授業への全面的な移行を進めた ②学生それぞれの接続環境によって不公平が生じないよう対策を講じている ③東大の研究力を活かして治療に寄与する薬剤の同定・検査技術の開発・疫学的解析など、様々な分野で研究・開発を進め、これまでにも感染阻止の効果が期待できる国内既存薬剤を同定したことを発表した ④PCR検査を迅速に行える検査機器の導入・コロナ対応ICUの整備・中等症患者に対応する病棟開設など全診療科の医師・看護師が参加して医療体制の充実を図った ⑤財政的基盤が脆弱な東大発ベンチャー企業の支援等の多数のことが必要で財政的下支えを要するため支援が欲しい ⑥東大は開学140年にわたる知の協創の拠点として、世界最高水準の学問の叡智を結集させ、この人類の新たな脅威に全力で立ち向かう所存だ 等が書かれていた。

 このうち、③④は、新型コロナに直接的に関係するものであるため頑張って欲しいし、⑤⑥も、同窓生を含めた全学の知恵を結集すれば、新たな手法が出てくるだろう。そして、これは、他大学も同じだ。

 また、①②は、オンライン授業とそれを可能にする接続環境を整備することによって、教育の新しいツールができたことを意味するが、関心のある授業を学外からオンラインで受講できるようにすると、東大の教官は優秀なので、高校生から定年後の大人にまで役立つと思う。

 一方、*5-2のように、佐賀県内の県立学校や各市町の小中学校などが14日から再開されるが、文科省ガイドラインの児童生徒同士の座席を1~2メートル離すというのが、40人規模の学級を抱える大規模校で難しいそうだ。そして、生徒一人に一台のiPadを配ってICT教育を進めている武雄市でさえ、授業を20人以下で行う方針を示しつつも、教員数の問題があって全授業での実施が難しいのだそうだ。しかし、教員数は、教員の定年を延長したり、退職した教員に復職してもらったり、ポスドクを採用したりすれば解決できると思われる。

 世界では、*5-3のように、新型コロナウイルス対策の全国的な休校で、全世界の72%、約13億人が登校できていないそうだ。私は、学力の「格差」よりも学力の「低下」の方が問題だと思うが、フランスは小学校は1学級15人以下として校内の動線を決め接触を減らすなどして感染を防ぎ、オンライン授業が広がる米国では、インターネット環境が整わない家庭の子どもの学習支援で官民が連携しているそうだ。

 日本は、2020年4月22日時点で小中の95%、高校の97%が休校していたが、公立小中高校の95%は同時双方向のオンライン指導ができていない。オンライン教育をやりたい時にはいつでもやれる体制にしておけば、それを利用したい生徒は、塾や大学の授業を聴講したり、外国の学校の授業を聴講したりもできて便利だと思う。

<参考資料>
*1-1-1:https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200506/k10012419171000.html (NHK 2020年5月6日) PCR検査 相談・受診の目安見直し 「発熱」も 近く公表
 新型コロナウイルスのPCR検査について、加藤厚生労働大臣は、これまで「37度5分以上の発熱が続く場合」などとしてきた、相談・受診の目安について、高熱が出た場合や基礎疾患がある人などは軽い発熱でも相談できるよう見直し、近く公表する考えを示しました。加藤厚生労働大臣は、6日神奈川県が進める「神奈川モデル」と呼ばれる医療体制のうち、中等症の患者が入院する「重点医療機関」に指定されている医療機関を黒岩知事と視察し、関係者と意見交換を行いました。このあと加藤大臣は記者団に対し、新型コロナウイルスのPCR検査をめぐり、これまで「37度5分以上の発熱が4日以上続く場合」などとしてきた相談・受診の目安について、「自宅で体調が急速に悪化する事例なども出てきているので、専門家や医療関係者、保健所の方々に素案を出して意見を聞いている」と述べ、見直しを進めていることを明らかにしました。そのうえで、新たな案について、「『高熱』と『発熱』という2つの概念を出す。『高熱』だと思った方はすぐ検査に行っていただく」と述べ、目安には基準とする体温の数値は明記せず、高熱が出た場合や基礎疾患がある人などは軽い発熱でも相談できるよう見直し、近く公表する考えを示しました。一方、加藤大臣は、「雇用調整助成金」の申請手続きについて、従業員20人以下の事業者については、一部簡素化して、申請に必要な平均賃金の算定を省略できるよう見直すことを明らかにしました。

*1-1-2:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO58899960Y0A500C2EA2000/ (日経新聞 2020/5/8) 「37.5度以上」削除 PCR相談目安改定 幅広い受診促す
 厚生労働省は8日、新型コロナウイルスが疑われるとして診察やPCR検査を受ける際の「相談・受診の目安」を改定し、「息苦しさや強いだるさ、高熱」がみられた場合にはすぐに相談するよう呼びかけた。これまでは「37.5度以上の発熱が4日以上」などの具体的条件を設定していたが、条件に満たない場合は検査を受けられないとの誤解が出ていた。従来の基準は検査の実施を抑える方向に働いていた可能性がある。新たな目安では、感染が疑われる人をより幅広く検査することで見落としをなくし、感染の再拡大を防ぐ狙いが鮮明になっている。新たな目安では、37.5度との数値基準を削除し、高熱など強い症状がある場合はすぐに相談してもらう。重症化しやすい高齢者や持病がある人、妊婦などは発熱やせきなど比較的軽い風邪の症状でも相談してもらう。従来の目安は厚労省が2月17日に公表。目安に当てはまると判断すれば、都道府県などが設置する「帰国者・接触者相談センター」に電話し、帰国者・接触者外来を紹介してもらう仕組みだった。だが目安に当てはまらないとして診察や検査を受けられないケースが相次ぎ、自宅療養中に容体が急変する事例も出た。同省の担当者は4日以上などとした従来の目安について「症状が短期間で治まることの多い季節性インフルエンザと区別するため、一定期間様子をみてもらう趣旨だった」と説明。インフルエンザが終息したことも受け、目安の見直しを決めたとしている。

*1-1-3:https://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-1118607.html (琉球新報社説 2020年5月8日) PCR検査の拡充 政府の無為無策問われる
 新型コロナウイルスの感染拡大で世界が出口に向けた模索を始める中で、ウイルスの有無を調べるPCR検査が日本は際立って少ない。国内の正確な感染実態を把握せず、どのように社会経済活動の再開を判断できるというのか。政府の出口戦略には、科学的根拠において不備があると言わざるを得ない。安倍晋三首相は4月6日の政府対策本部でPCR検査の実施可能数を全国で1日2万件に増やすと公言した。だが、現状の実施数は1日8千件前後と一向に増えておらず、対応の遅れが明らかだ。他国と比較したPCR検査の不十分さは政府の専門家会議も認めている。専門家会議が4日に示した資料から人口10万人当たりの検査数を見ると、日本が187・8人なのに対し、隣国の韓国では1198人、米国は1752・3人だ。イタリアは3159人、ドイツは3043・5人と3千人を超える国もあり、日本とは桁が違っている。有識者会議は、日本で検査能力が早期に拡充されなかった理由として、重症急性呼吸器症候群(SARS)や中東呼吸器症候群(MERS)の経験を踏まえて検査拡充を進めていた国々に比べ、日本では「PCR等検査能力の拡充を求める議論が起こらなかった」と指摘した。そのため、重症化の恐れがある人や濃厚接触者の診断のための検査を優先せざるを得なかったとしている。しかし、徹底したPCR検査が必要だという指摘は、新型コロナの国内での感染が始まった早い段階から上がっていたはずだ。緊急事態宣言をさらに延長する現状において、過去の感染症の経験に結び付けて検査の少なさを説明しているのは、現在進行形の対策の誤りを認めない言い逃れのように映る。新型コロナのような治療方法が確立されていない感染症については、検査で陽性者を特定し、隔離・治療して感染の拡大を封じ込めるしかない。世界保健機関(WHO)は「検査、検査、検査」と述べ、徹底的なウイルス検査を各国に求めていた。だが、日本政府は表面上検査を増加するという説明を繰り返しながら、実際には検査を抑える運用が続いてきた。軽症者が病院に殺到するのを防ぐ狙いから、感染疑いで受診する目安として37・5度以上の発熱が4日以上続いた場合などの基準を示してきたのはその一例だ。加藤勝信厚生労働相は6日になり、目安を見直す方針を示した。受診の基準を満たしていないことを理由に、検査を受けられない例が相次いでいるためだ。これまでの政府の無為無策が問われる。医療・研究機関などと連携して検査従事者の養成、機器の増産、迅速診断の確立などの課題解決に取り組み、十分なPCR検査を実施できる態勢を早急に整えるべきだ。

*1-1-4:https://digital.asahi.com/articles/ASN557T4WN54ULBJ01C.html?iref=comtop_8_03 (朝日新聞 2020年5月6日) PCR検査を倍にすれば、接触「5割減」でも収束可能?
 新型コロナウイルスのPCR検査を増やすことで自宅などで隔離療養する感染者を倍増できるなら、国民の接触機会は、国が求める「8割減」でなく「5割減」でも、感染は早期に収まるとする計算結果を、九州大学の小田垣孝名誉教授(社会物理学)がまとめた。経済活動と感染拡大防止の両立の「かぎ」はPCR検査にあることを定量的に示したもので、議論を呼びそうだ。小田垣さんは、感染拡大防止のために国が施策の根拠の一つとして活用する「SIRモデル」を改良。公表値を使って独自に計算した。SIRモデルは、まだ感染していない人(S)、感染者(I)、治癒あるいは死亡した人(R)の数が時間とともにどう推移するかを示す数式で、1927年、スペインかぜの流行を解析するために英国で発表された。疫学の専門家でなくても理解できる平易な数式で、1世紀を経た今回のコロナ禍でも国内外の多く識者がこの数式を現実に則して改良しながら、さまざまな計算結果を導いている。小田垣さんによると、このモデルの難点は、感染者を、他人にウイルスを感染させる存在として一律に扱っている点だ。だが、日本の現実の感染者は一律ではない。そこで、無症状や軽症のためPCR検査を受けずに通常の生活を続ける「市中感染者」と、PCR検査で陽性と判定されて自宅やホテルで隔離生活を送る「隔離感染者」の二つに感染者を分け、前者は周囲に感染させるが、後者は感染させないと仮定。さらに、陽性と判定されたらすぐに隔離されると仮定し、検査が増えるほど隔離感染者が増えて感染が抑えられる効果を考慮してモデルを改良し、解き直した。「接触機会削減」と「検査・隔離の拡充」という二つの対策によって新規感染者数が10分の1に減るのにかかる日数を計算したところ、検査数を現状に据え置いたまま接触機会を8割削減すると23日、10割削減(ロックアウトに相当)でも18日かかるとした。一方、検査数が倍増するなら接触機会が5割減でも14日ですみ、検査数が4倍増なら接触機会をまったく削減しなくても8日で達成するなど、接触機会削減より検査・隔離の拡充の方が対策として有効であることを数値ではじき出した。国は1日のPCR検査の能力を2万件まで拡充できるとしているが、実施数は最大9千件にとどまる。小田垣さんは「感染の兆候が一つでも表れた時点で隔離することが有効だろう。接触機会を減らす対策はひとえに市民生活と経済を犠牲にする一方、検査と隔離のしくみの構築は政府の責任。その努力をせずに8割削減ばかりを強調するなら、それは国の責任放棄に等しい」と指摘している。現実に実験したり調べたりすることが難しい状況で、モデル計算によって現実を再現するのがシミュレーションだ。一部の実測データをもとに全体を推測したり、どのような対策が最も効果的かを推定したりするのに使われる。国がコロナ禍を乗り切る政策判断にあたって根拠とするシミュレーションは、厚生労働省クラスター対策班が担う。1日の専門家会議では、同班が算出した「実効再生産数」のグラフが初めて示された。実効再生産数は、「ひとりの感染者が周囲の何人に感染させるか」を示す数字で、政策判断の目安として注目される。その数値の妥当性はどうか。シミュレーションは使うモデルやデータ、前提条件によって結果が大きく変わる。国の公表する新規感染者数や検査数などのデータは、最新の結果を反映していなかったり、すべての感染者を網羅できていない可能性があったりするなど信頼性に難がある。そのような中で、計算結果の正しさを主張するなら、計算手法や使う数値などの情報を公開すべきだが、これまで明らかにしていない。シミュレーションの妙味は、データ不備などの悪条件下でも、起きている現象の本質を捉えることにある。今回、小田垣孝・九州大名誉教授の結果は、「検査と隔離」という感染症対策の基本の重要性を示した。その徹底によって感染者数を抑え込んだ韓国の事例をみても、意義の大きさは論をまたない。PCR検査の件数がなかなか増えなかった日本では、市中感染者の実像を十分につかめていない。4月7日に緊急事態宣言が出て以降、国は「行動自粛」によって時間をかせぎ、その間に検査を拡充して医療態勢を整備し、次の波に備える作戦を取った。全国民を巻き込む施策を続ける以上、政策判断が恣意的であってはならない。西村康稔経済再生担当相が4日の会見で、今後の政策判断として「科学的根拠をもとに、データに基づいて」を強調したのはこうした理由からだろう。国のシミュレーションはクラスター対策班が一手に握る。詳しいデータの早期公開を実現し、他の専門家の試算も交えながらオープンな議論を進めるべきだ。その過程を経ずして「科学」をかたってはならない。

*1-2-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200510&ng=DGKKZO58917170Z00C20A5EA3000 (日経新聞 2020.5.10) 新型コロナ 政策を聞く〈PCR検査〉 国指定拠点に集約を 自民・衆院議員 国光文乃氏(くにみつ・あやの 東京医科歯科大院修了、内科医。厚労省で感染症対策などを担当。岸田派。衆院茨城6区、41歳)
 日本のPCR検査の数が海外に比べて少ないのは、欧州などが軽症者を対象とするのに対し日本は重症者から検査するためだ。軽症者らが受けられていない恐れはある。国が「37.5度以上の発熱が4日以上続く」などとしてきた受診の目安を緩める方針は評価するが、実際に検査するかは医師の判断だ。国は他の病気と同様に医師の検査基準を示してほしい。医師が検査すべきと判断したら保健所につなぐ。保健所は4日以上の発熱などの症状がなければ検査しない例があった。保健所が医師の判断を尊重する仕組みも必要だ。米国や韓国などで普及するドライブスルー方式は短時間で効率は良い。日本も一部の医師会や自治体が導入しており検査拡充の一助になる。国が地域ごとのPCRセンターを指定して検査を集約し、かかりつけ医がそこを紹介する体制がより効率的だろう。民間の検査機関を使う場合は病院から検体を送るのに2日など時間がかかる。民間は国指定のPCRセンターに協力すべきだ。医師ら法令で認める担い手で検査し切れない懸念はある。PCR検査以外でも最低3~4時間で終わる「LAMP法」などの導入を支援すべきだ。関連法令を緊急に改正し条件や期限付きで担い手を広げるのも一案だ。

*1-2-2:https://www.nikkei.com/paper/related-article/?R_FLG=1&b=20200510&be=・・ (日経新聞 2020.5.10)  コロナ検査 機能不全 結果まで1週間も 民間拡大カギ
 新型コロナウイルスに感染しているかどうかを判断するPCR検査の体制が感染者の拡大傾向に追いつけていない。検査の実施が滞っており、発症から陽性が確定するまでの期間が1週間と長期化し始めた。検査の機能不全を背景にした陽性判明の遅れは重症化リスクを高めるほか、潜在的な感染者と他者との接触機会を増やしかねない。医療崩壊を避けながら感染拡大を防ぐためにも、国による民間への検査委託の拡大や簡易検査の後押しが必要だ。日本経済新聞がコンサルティング会社、ジャッグジャパン(東京)が収集した陽性事例のデータを基に分析したところ、発熱やせきなど新型コロナウイルスの症状が出てから検査で陽性が確定するまでの期間は、7日移動平均で4月18日時点が7.3日と4月初旬から1.8日延びた。感染者数が拡大し検査を迅速にこなせなくなっているもようだ。厚生労働省は、重症化する人は発症から7日以降に肺炎症状が悪化するとしている。検査体制の強化が課題となるなか、民間への検体検査の委託拡大が急務だ。4月中旬以降、PCR検査の実施数は全国で1日当たり8000件前後が続く。うち民間検査会社の受託は2000件ほどで、残りは国立感染症研究所(東京・新宿)や地方衛生研究所などの公的機関だった。民間検査数は2月下旬まではゼロの日もあった。みらかホールディングス(HD)など国内の主要な検査会社の検査能力の合計は1日当たり約4000件とまだ余裕がある。各自治体の指定病院は、検査を民間ではなく地方衛生研究所に委ねる傾向が目立つ。「感染症は国が担うものだとの意識が強い」(検査会社)。長野では県が優先度に応じて民間か行政かの検査委託先を決める方針だが、こうした調整に乗り出す自治体はまだ少ない。民間が主に担ってきた軽症者の検体検査が増えにくい問題もある。現状では、熱が出て気分が悪いといった程度ではすぐに検査を受けられない。京都大学病院は15日、院内感染予防の視点から「無症状であっても公費でPCR検査を受けられるようにすべきだ」との声明を出した。香港や韓国では簡易キットも駆使した検査の大量実施が進む。日本でも楽天が20日、新型コロナウイルスの感染の可能性が分かる自宅でできる検査キットを発売した。ただ日本医師会が22日に「採取の方法が不適切であれば結果は信頼できず混乱を招く」との意見を出すなど医師を介さない検査は普及に壁がある。安倍晋三首相は6日、PCR検査の1日当たりの能力を2万件に倍増すると表明したが、進捗は遅く政府でも危機感が高まりつつある。「全国で同様の取り組みが広がるよう支援する」。加藤勝信厚労相は23日、東京都新宿区に新設されたPCR検査センターを視察した。検体検査はみらかの子会社に委託する。自民党の塩崎恭久元厚労相は「政府がクラスター(感染者集団)潰しを重視しすぎて検査体制の強化が後手に回った」と指摘している。

*1-2-3:https://www.kahoku.co.jp/special/spe1211/20200501_08.html (河北新報 2020年5月1日) PCR検査陽性判明まで最長16日 宮城県内88人、経路不明者は平均8日
 宮城県内で確認された新型コロナウイルス感染者88人を見ると、発症からPCR検査の結果が出るまでの最長期間は16日だった。発症から結果確定までをゼロ日とカウントした無症状者を含む全体の平均は6.6日。濃厚接触者は比較的早く検査を受けられたが、感染経路が不明な人ほど検査まで時間を要する傾向がある。感染経路が判明した濃厚接触者らに限れば平均5.5日(無症状者8人含む)で、経路不明者だけの平均は8.0日だった。経路不明の場合でも、東京から仙台市に引っ越した人や外国人の場合(計4人)は3~5日だった。陽性判明まで最も時間がかかったのは仙台市の20代男性。3月27日に発熱し、帰国者・接触者相談センター(保健所)の紹介で一般の医療機関を受診後、同30日に熱が下がった。4月9日に家族の感染が分かり、11日に陽性と判定された。家族の感染が判明しなければ、男性は検査を受けられなかった可能性が高い。経路不明の仙台市の50代女性は医療機関を2カ所回った後、相談センターから紹介された一般の医療機関の求めで検査を受けた。陽性判明まで9日かかった。感染者の初期症状は発熱、悪寒、倦怠(けんたい)感、せき、鼻づまり、関節痛、味覚や嗅覚の異常など多様。風邪の症状に似ており、無症状のケースもある。国が受診・相談の目安として出した「37.5度以上の熱が4日以上」に当てはまらない感染者が少なくない。

*1-2-4:https://digital.asahi.com/articles/ASN555QVWN54UTIL02Q.html?ref=mor_mail_topix1 (朝日新聞 2020年5月5日) 「不十分なPCR検査体制、日本の恥」 地方からの異論
 国の専門家会議が、対応が不十分だったとようやく認めた新型コロナウイルスのPCR検査体制。緊急事態宣言の解除に向けても、検査による現状把握は重要なカギだ。体制強化が進まず、検査を受けるべき人が受けられない状況に異を唱えてきたのは、現場をつかさどる地方のリーダーたちだった。
●国の専門家会議を痛烈に批判
 厚生労働省の発表によると、4月下旬の国内のPCR検査件数は1日約7千~9千件ほど。安倍晋三首相は4月6日に、PCR検査の実施能力を1日2万件に増やす方針を示したが、約1カ月たっても一度も1万件に達していない。4月1日の記者会見で「日本ではコミュニティーの中での広がりを調べるための検査はしない」と述べていた専門家会議の尾身茂副座長は、5月4日の会見で「確かに日本はPCRのキャパシティーを上げるということが、他の国に比べて遅れた」と認める一方で「死亡者のようなものは、だいたい正しい件数がピックアップされている」とも述べた。「PCR検査の不十分な体制は日本の恥」「惨憺(さんたん)たる状況」。現状を強く批判し、検査拡充の必要性を直言してきたのが、山梨大の島田真路(しんじ)学長(68)だ。島田学長は2002~03年の重症急性呼吸器症候群(SARS)流行の際、同大医学部付属病院の感染対策委員長を務めた。今回の新型コロナに対して、付属病院はPCR検査の態勢を強化。クルーズ船ダイヤモンド・プリンセスの乗客ら計14人の患者を受け入れてきた。3月6日に搬送された意識障害のある20代男性については、翌日のPCR検査で陽性が判明し、「髄膜炎の原因が新型コロナである可能性が極めて高い」と発表した。同31日に心肺停止で救急搬送された0歳女児の感染が判明した際は、ただちに医師や入院患者ら50人余りを検査し、救急体制も見直した。島田学長は自らの経験を踏まえ、医療関係者向けのサイト「医療維新」に3~4月に、「山梨大学における新型コロナウイルス感染症との闘い」と題した論考を計5回執筆。大学のホームページにも掲載した。検査が増えない理由について学長は、国の専門家会議が2月下旬に「限られたPCR検査の資源を、重症化のおそれがある方の検査のために集中させる必要がある」と表明したためとし、「検査上限を世界水準からかけ離れた低値にとどまり続けさせる大失態を招来した」と強く批判した。「3月下旬まで(自治体の)地方衛生研究所・保健所が検査をほぼ独占してきた」とも指摘。最前線で闘い続けている職員たちに謝意を示しつつ、週末に検査件数が下がっている事実も挙げて、行政機関のみに依存する体制を「そもそも無理筋」とした。専門家会議は5月4日の提言で保健所の体制強化を掲げたが、島田学長は論考の中で、早急な立て直しのためには、民間検査会社と地方の国立大学が大きな役割を担うべきだと主張した。さらに「未曽有の事態の今だからこそ、権威にひるまず、権力に盲従しない、真実一路の姿勢が全ての医療者に求められている」と訴えた。島田学長は4月30日の朝日新聞の取材に対して、国内の現状について「市中感染が広がり、原因不明で亡くなっている人もいるが、検査が少ないので実数がつかめていない」と指摘。「感染の疑いのある人が広く検査を受けられていない。国が検査を増やすと決めたなら、方針を変えたとはっきり自治体に伝え、マインドチェンジをする必要がある」と述べた。山梨大では、県内の検査体制拡充に向け、8日からドライブスルー方式の検査を始める予定だ。
●和歌山県、当初から異議
 「37・5度以上の熱が4日以上続くなら相談を」。新型コロナの受診について国が2月から示してきたこの目安に、当初から異を唱え、積極的にPCR検査を実施することで早期発見をめざしたのが和歌山県だ。仁坂吉伸知事は、県内の病院などで感染が確認された2月から、自ら記者会見に対応。「早期に発見し、感染が他に広がらないようにすることが大事。家にいることで、二次感染をさせてしまう可能性や重症化する可能性もある」と指摘し、自宅待機を推奨する国の姿勢に異論を唱えてきた。県では、発熱などの症状がある場合は、早めにかかりつけ医などを受診するよう呼びかけている。X線で肺炎像が確認されるなど、医師が必要と判断した場合はPCR検査を実施。陽性の場合は濃厚接触者らに対してもPCR検査し、感染者の早期発見に努めてきた。県内で確認された感染者は4日までに62人。PCR検査を受けた人は約3200人で、陽性率は約1・9%にとどまる。和歌山県では4月28日、自宅で死亡した60代男性について、死後に感染が確認された。死亡の約1週間前から親族に体調不良を訴えていたが、医療機関への相談はなかったという。仁坂知事は「『4日間は自宅待機』という情報をもとに受診をしなかったのならば、(方針を決めた専門家や、方針を流し続けたメディアに対して)怒りを感じる」と訴え、「受診を我慢しないでほしい」と改めて呼びかけた。県によると、仁坂知事は4月29日にあった全国知事会のウェブ会議でも「医療崩壊が発生していない県では、医者に行き、早期発見した方が医療崩壊を食い止めることができる」と主張した。
●山梨大学長「マインドチェンジが必要」
 山梨大の島田真路学長に4月30日、国内のPCR検査の現状についてどう見ているか聞いた。
―感染者の実態はつかめていると考えるか
 市中感染が広がり、原因不明で亡くなっている人もいるが、検査が少ないので実数がつかめていない。危機感を持っている。
―首相は検査を増やすと言っているのに、なぜ検査が増えないのか
 保健所が相談を受け、帰国者・接触者外来のドクターが診断して、という2段階の「制限」がある。ここで実質的に絞られ、感染の疑いのある人が広く検査を受けられていない。このスキームが変わっていない。国が増やすと決めたなら、自治体へはっきり方針を変えたと伝え、マインドチェンジをする必要がある。東京ではかかりつけ医の診断で検査できるような体制ができたが、医師会の協力も必要。でも、検査中に感染した場合の補償もないため、積極的にやる動きは広がっていない。
―週末や連休に検査が減ることが心配?
 そう思う。どのように医療や検査を維持するか。スタッフが減るのは事実で、役所や大きな病院では難しい面もあるが、人を増やして勤務シフトを見直すことも必要かもしれない。
―感染者が50人を超えた山梨県内の状況をどうみるか
 重症者が少なく、感染者数はやや落ち着いているが楽観できない。検査を今より10倍近く増やしてほしい。山梨大としてはドライブスルーPCR検査で貢献するが、各地域に検査場の拠点を設けてやるべきだ。

*1-3-1:https://www.bbc.com/japanese/51555374 (BBC 2020年2月20日) 「ダイヤモンド・プリンセス」から下船始まる 新型コロナウイルス陰性の乗客
 横浜港で19日午前、大型クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」で隔離されていた乗客のうち、新型コロナウイルス感染が確認されなかった約500人の下船が始まった。多くの乗客は今月5日から14日間の健康観察期間が19日で終了した。「ダイヤモンド・プリンセス」では新型コロナウイルス(COVID-19)に乗客乗員542人が感染した。中国大陸の外では最多の集団感染となった。今回下船が許可された乗客は、ウイルス検査で感染が確認されず、症状の出ていない人たち。日本メディアによると、対象者全員が下船し終わるのは21日の見通し。ただし、検査で陽性となった人と同室にいた人たちは検査で陰性となっても、健康観察期間の終了日が延びるため、隔離期間が続く。横浜港で取材するBBCのローラ・ビッカー記者によると、ダイヤモンド・プリンセスを降りた乗客たちはそのまま、待機していたバスやタクシーに乗ってその場を離れた。ダイヤモンド・プリンセスの乗客の出身地は50カ国以上で、世界的な感染拡大の発生源になる懸念が出ていると、ビッカー記者は指摘する。日本当局は18日には、船内で新たに88人の感染が確認されたと発表。これによって確認された船内の感染者数は542人になった。アメリカをはじめ複数の国はすでに、船内の自国民を政府チャーター機で帰国させたり、数日中に帰国させたりする予定。新型コロナウイルス大流行の中心地となった中国では、19日までに2004人が死亡した。感染が確認された人の数は中国大陸で7万4185人に達し、それ以外の国・地域では700例以上が確認されている。香港政府は19日、感染していた70歳男性が死亡したと発表した。香港での死者は2人目。中国大陸以外ではほかに、フランス、日本、フィリピン、台湾でそれぞれ1人死亡している。
●船内の感染対策を批判する専門家も
 ダイヤモンド・プリンセスから香港で降りた乗客の感染が確認された後、船は今月5日から横浜港で隔離状態に入った。乗客は当初、それぞれの客室内にとどまることを余儀なくされ、後に時間などを制限した状態でデッキに出ることが認められた。5日から2週間の観察期間で乗客乗員3711人のうち感染者が542人に達したことから、船内の感染対策を疑問視する専門家の声も出ている。神戸大学医学研究科感染症内科の岩田健太郎教授は18日、ダイヤモンド・プリンセスに同日に乗船して見た状況についてYouTubeに投稿したビデオで報告した。岩田教授は、ウイルスがまったくない安全区域(グリーンゾーン)とウイルスがいるかもしれない区域(レッドゾーン)を、船内で明確に区別していないと指摘。「感染対策は悲惨な状態」だと批判している。岩田教授はさらに、エボラ出血熱や重症急性呼吸器症候群(SARS)の大流行の最中に現場にいた時よりも、客船内の方が怖かったと述べた。この動画について教授は20日朝、ツイッターで「動画は削除しました」と報告したが、同日にはビデオ経由で東京の日本外国特派員協会で記者会見し、船内の感染対策の不備を重ねて指摘した。一方で、日本の当局者は自分たちの対応は適切だったと反論。感染例の大半は隔離期間の前に起きたものだろうと説明している。また、船内のゾーン区分はできているなど、岩田教授に異を唱える声も出ている。アメリカ、カナダ、オーストラリア、イギリスの各国政府は、ダイヤモンド・プリンセスから政府チャーター機などで帰国した人たちに対して、さらに14日間の隔離措置をとる。韓国は、自国民以外はダイヤモンド・プリンセスの乗客の入国を禁止する方針を示している。

*1-3-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200510&ng=DGKKZO58917950Z00C20A5EA1000 () コロナ重症度、CTで判定 肺炎の症状で見極め、態勢整わぬPCR補う
 新型コロナウイルス感染症の重症度の判定にコンピューター断層撮影装置(CT)の画像診断が威力を発揮することがわかってきた。疑わしい例や軽症でもCT画像で肺炎を早期発見できる可能性があり、重症化リスクの見極めや入院の必要性などの判断の手助けとなっている。日本ではPCR検査の拡大が最重要の課題だが、CTの有効活用も求められる。「日本はPCR検査は少ないが、CTの数は世界的にみても多い。肺炎を起こすような重症例についての見落としは少ない」。新型コロナに関する政府の専門家会議の尾身茂副座長は、緊急事態宣言の延長が正式に決まった4日の記者会見でこう説明した。重症者の把握や対応などでCT検査が重要な役割を果たしているという。PCR検査がウイルスの遺伝子を検知するのに対し、CT検査はエックス線で肺などの様子を詳しく調べる。ウイルスが見えるわけではなく感染の有無の確定的な判断には使えないが、肺炎があればその程度や特徴がわかる。PCR検査の態勢が追いつかない中、多くの医療機関がCTを活用している。聖マリアンナ医科大学病院(川崎市)は感染の疑いのある患者らに対し、CT検査を実施。陽性の可能性があれば、PCR検査の結果を待たず専用病棟に移すなどの対応を進める。同大学の松本純一講師は「患者の約半数は新型コロナ感染に特徴的な画像所見がある」と話す。専門家でつくる日本医学放射線学会がこのほどまとめた提言では、PCR検査に置き換わるものではないとしつつ、当面の対応として入院などの判断にCT検査を活用することは「許容される」とした。特に症状が重い場合などは、優先的に診る患者を判断する「トリアージ」のためのCT検査を推奨するという。CT検査はPCR検査ではわからない「重症度」の見極めに役立つ。クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」の感染者を受け入れた自衛隊中央病院(東京・世田谷)は陽性でも無症状や軽症だった人の約半数にCT検査で肺に影が見つかり、うち3分の1で症状が悪化したことを報告した。聖マリアンナ医科大学病院も一部患者の重症化の予測にCT検査を活用している。発熱から数日内にCT検査で肺に影が見られる場合などに重症化リスクが高いと判断することがあるという。日本はPCRなどのウイルス検査で後れを取ってきた。政府の専門家会議によると、人口10万人あたりの検査数は187件で、数千件にのぼる海外の主要国に見劣りする。一方、CTの数は世界有数だ。経済協力開発機構(OECD)によると日本の保有台数は人口100万人あたり約112台。50台未満の米欧各国を大きく上回り、海外に比べてもCT検査を受けやすい。画像診断の専門医が少ないのが課題だったが、足元ではオンラインのサービスの利用が拡大している。医療機関から届く画像の遠隔診断支援を手掛けるドクターネット(東京・港)では、2月中旬から新型コロナによる肺炎の疑いのある画像が寄せられ、4月にはその数が1日100件を超すようになった。CT検査には課題もある。特に要注意なのが検査室での感染拡大のリスクだ。入念な消毒などが欠かせない。新型コロナ感染症以外にもCT検査が必要な人は大勢おり、感染者が増えると対応が追いつかなくなる。日本医学放射線学会も「全ての新型コロナの患者にCT検査を勧めているわけではない」と強調する。海外では中国の医療機関などが人工知能(AI)を取り入れた画像診断を活用した。「CT大国」の利点をどう生かすか、日本の新型コロナ対応の鍵となる。

<実用化の壁>
*2-1:https://news.tv-asahi.co.jp/news_society/articles/000183477.html (テレ朝 2020/5/7) 「唾液でPCR検査を」日本医師会 実用化を申し入れ
 日本医師会の横倉義武会長は臨時の記者会見で、唾液で判定するPCR検査法の実用化を訴えました。日本医師会・横倉義武会長:「唾液を使ったPCR検査については、加藤厚生労働大臣に速やかに実用化をして頂くよう今朝、申し入れをした」。横倉会長によりますと、唾液を検体として新型コロナウイルスへの感染の有無を判断する検査方法については、北海道大学で研究が進められています。鼻の奥や喉から粘液を採取する方法よりも手軽で、医療関係者への感染リスクを減らすことが期待できるということです。

*2-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200505&ng=DGKKZO58781190U0A500C2NN1000 (日経新聞 2020.5.5) ロシュの抗体検査薬、米許可 正確性「ほぼ100%」 独が大量調達へ
 スイス製薬大手のロシュは3日、新型コロナウイルスの抗体検査薬が米食品医薬品局(FDA)から緊急使用許可を得たと発表した。同社は抗体を持っているかどうかを判定する確率が「100%に近い」とし、日本でも5月中に承認申請する方針。抗体検査の精度が高まれば、免疫を持つ可能性のある人を特定しやすくなり、経済活動の速やかな正常化に役立つとの見方がある。ロシュは約5200人分を検査し、PCR検査で新型コロナの感染が確認された人を14日後に検査したところ、100%で抗体が確認されたという。1時間当たり最大300人の測定が可能とする。各国の関心も高く、今月末にも欧米で数千万回分を提供する。ドイツのシュパーン保健相は4日、月内にロシュの抗体検査薬300万個を調達すると表明した。6月以降は月500万個ペースに増やす。簡易検査キットの場合、一般的な風邪の原因となるウイルスとコロナウイルスに対する抗体とを間違う可能性もあるが、ロシュのキットは新型コロナだけを99.8%の精度で特定できるとされる。簡易キットで生じる「見逃し」を防げれば、抗体を持った人の割合を特定でき、外出制限などの緩和も検討しやすくなる。地域ごとに事態が収束したかを判断する材料にもなる。現在、中国や英国などでは抗体検査を使って感染の広がりを調べる研究が進むが、ほとんどがイムノクロマト反応(抗原抗体反応)という仕組みを使った簡易検査キットだ。プレートの上に血液を1滴程度垂らすと、血液中の新型コロナに対する抗体の有無を調べられる。ただ精度が高くないため、なかなか経済活動の再開を判断するまでには至らないのが実情だ。

*2-3:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/520947 (佐賀新聞 2020.5.9) 抗原検査キットを13日に承認、新型コロナ、15~30分で判定
 政府は9日、新型コロナウイルスを患者の検体から15~30分で検出する「抗原検査」のキットを13日に薬事承認する方針を固めた。PCRによる検査が数時間かかるのに対し、医療現場で15分程度で判定が可能になるため、検査態勢の強化に貢献しそうだ。ただ精度はやや劣るため、陰性が出た場合は、念のためPCRによる検査を実施する見通しだ。開発した「富士レビオ」(東京)が4月に申請していた。加藤勝信厚生労働相は今月8日の衆院厚労委員会で「来週中に判断する。医療現場で使えるようになる。メーカーによると、かなりの数が提供され得る」と述べた。抗原検査はインフルエンザ検査でも広く使われる。ウイルス特有のタンパク質(抗原)を狙ってくっつく物質を使い、患者の検体に含まれるウイルスを発見する。病院で鼻の奥の粘液を取れば、装置のある地方衛生研究所などへ運ばずに、その場で調べられる。ただウイルス量の少ない患者は陰性となる可能性もある。加藤厚労相は「見落としもあるのでPCRで補っていく。一番いい組み合わせで活用を考えていく」と述べた。その上で、救急医療や手術前など、直ちに判断する必要のある医療現場ではツールとして価値があるとの考えを示した。安倍晋三首相は抗原検査についてPCR検査の前段階として活用し、検査態勢の強化を図ることに意欲を示している。

*2-4:https://mainichi.jp/articles/20200501/k00/00m/040/244000c (毎日新聞 2020.5.1) 感染全容知りたい、でも精度に難点、そもそも免疫できない? 各国で進む抗体検査、遅れる日本
 新型コロナウイルスの感染状況を分析するため、感染した痕跡を調べる抗体検査が各国で相次ぐ。米ニューヨーク(NY)州では住民の15%が感染したことをうかがわせるデータも。日本も東京と東北地方で調査が進むが、検査キットの精度などを巡り課題も指摘されている。「大規模な抗体検査と診断で、市民は安全に仕事に戻れる」。感染者が30万人にも上るNY州のアンドリュー・クオモ知事は4月19日の記者会見で、抗体検査の意義をこう強調した。同州は毎日2000人ずつ検査する予定で、トランプ米大統領も支援を表明。23日に発表された3000人分の結果では13.9%が抗体を保有していた。州全体で約270万人が既に感染している計算で、確認された感染者数の約10倍に上る。さらに、27日には保有率が14.9%に上昇。クオモ知事は「割合がどうなっていくのかを知りたい。決定を下すためのデータになる」と期待する。

*2-5:https://www.tokyo-np.co.jp/article/world/list/202005/CK2020050802000253.html (東京新聞 2020年5月8日) 医療従事者 陽性割合低く NY州抗体検査 マスクなど効果
 新型コロナウイルス感染被害が深刻な米東部ニューヨーク州のクオモ知事は七日の記者会見で、州内の医療従事者に対して感染歴を調べる抗体検査を行った結果、陽性の割合は一般市民より低かったことを明らかにした。クオモ氏は、医療従事者が着用しているマスクや防護服に感染防止の効果が見られるとして「とても良いニュースだ」と述べた。検査は約二万七千人の医療従事者に実施。ニューヨーク市では陽性の割合は約12%で、一般市民の約20%と比べて低かった。他の地域でもおおむね同様の傾向が出た。州当局によると、州内の感染による死者は前日比二百三十一人増の二万八百二十八人。入院中の患者数の減少は続いている。ニューヨーク市のデブラシオ市長は七日、来週から来月初めにかけて、希望する市民に対して十四万件の抗体検査を無料で行うと発表した。

<ワクチン>
*3-1:https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20200502-00000530-san-n_ame (産経新聞 2020.5.2) 米、年内にワクチン開発、量産計画 新型コロナ 官民で並行整備
 米国が新型コロナウイルスのワクチン開発を急いでいる。政府横断で進める「ワープ・スピード作戦」と呼ばれる計画は、有望なワクチン候補を手がける企業が、開発途中から生産体制を整備できるよう支援。年内に数億本の量産体制を目指す。世界的に競争が過熱する開発に国の威信をかけて臨む。米メディアに報じられた同作戦について、トランプ米大統領は4月30日の記者会見で、「責任者は私だ」と存在を認めた。ワクチンの安全性や有効性を確かめる臨床試験(治験)は通常1年~1年半を要するが、約8カ月で医療現場に投入する計画は「大げさではない」と述べ、スピード開発を主導する姿勢をみせた。すでに米国生物医学先端研究開発局(BARDA)がジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)と組んで、約10億ドル(約1060億円)を投じて開発を本格化させている。米バイオ企業モデルナにも最大4億8000万ドルを拠出した。米政府は資金拠出を通じて、ワクチン開発と生産体制の整備を一体的に支援。官民が連携し、医療現場への投入が承認されたワクチンを、早急に量産できるよう後押しする。企業にとっては、ワクチン投入が認められなければ設備投資が無駄になるリスクがあるが、政府支援を背景に「リスクを前提に先行して生産を始める」(米政権の新型コロナ対策チーム幹部)ことができる。J&Jは「米国内の施設の新設も含め、ワクチン生産体制を増強する」と表明した。世界保健機関(WHO)によると、新型コロナのワクチン候補は現在、約50ある。ワクチンや特効薬の開発に成功すれば、経済活動を停滞させる外出制限などの対策をとる重要性がなくなるだけに、欧州勢や中国も国力をあげて開発を進めている。医薬品の承認を担当する米食品医薬品局(FDA)のゴットリーブ元長官は、米紙への寄稿で「最初にゴールした国がいち早く経済を再建させ、国際的な影響力も高められる」として、米国が国際競争を制する必要性を強調した。

*3-2:https://www.businessinsider.jp/post-212222 (Bbusiness Insider 2020.5.1) 「早く、大量生産できる」新型コロナ国産ワクチン、年内供給を目指す。開発者に最新状況を聞いた
 世界中で流行が続く、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)。その治療薬やワクチンの開発は急務とされている。世界保健機関(WHO)の報告では、世界で70を超えるワクチンの開発プログラムが進んでいる。日本でも3月5日、大阪大学と大阪大学発のバイオベンチャー「アンジェス」が、従来のワクチンとは異なる「DNAワクチン」という手法を用いたワクチンの開発に取り組むことを表明。3月24日には、動物実験用の原薬の開発に成功している。アンジェスの創業者であり、DNAワクチンの開発に取り組む大阪大学大学院医学系研究科臨床遺伝子治療学の森下竜一教授に、DNAワクチンの開発状況、そして今後の対コロナ戦略について話を聞いた。
●世界初のプラスミドDNAを使った治療薬のノウハウを応用
— 森下先生はどのような研究をされているのでしょうか?
 森下竜一教授(以下・森下):私は、大阪大学で血管を再生させるための遺伝子治療薬を研究していました。その実用化のために設立した会社がアンジェスです。そこで2019年、大腸菌を培養することで得られる「プラスミドDNA」(環状のDNA)に、血管の再生に利用できる遺伝子を組み込んだ治療薬「コラテジェン」の実用化に成功しました。意図した遺伝子を組み込んだプラスミドDNAを体内に投与することで、体内で治療に必要とされる物質がつくられます。 厚生労働省から販売の認可が降り、世界初のプラスミドDNAを使った遺伝子治療薬となりました。他にも、プラスミドDNAをベースに、血圧を上げるホルモン(アンジオテンシンII)に対する抗体をつくるDNA治療薬の開発にも取り組んでいます。高血圧のDNAワクチンです。2020年3月には、オーストラリアで臨床試験を開始したことを報告しました。 来年には、結果が出てきます。
—なぜ、今回新型コロナウイルスのワクチン開発レースに参加できたのでしょうか?
森下:アンジェスは以前、アメリカのバイオテック「バイカル」に出資していました。バイカルは、エボラウイルスや鳥インフルエンザウイルスに対するDNAワクチンを開発しており、鳥インフルエンザウイルスが流行しかけたときに一緒に仕事をしていたんです。そのときの開発ノウハウと、アンジェスが実際に世界ではじめてプラスミドDNAを用いた遺伝子治療薬を製作したノウハウがあったため、迅速に新型コロナウイルスのワクチン開発をスタートできました。
●新型コロナウイルス用DNAワクチン
 プラスミドDNAに新型コロナウイルスの表面にあるタンパク質の一部を作り出すような遺伝子を組み込み、体内に投与する。体内で目的のタンパク質が作られると、免疫システムはそのタンパク質を排除対象として認識する。その結果、ウイルスが体内に侵入してくると、表面にあるタンパク質を目印にして排除されるようになる。生産にはタカラバイオさんにも協力いただくなど、現在は複数の企業連合のような形で開発を進めています。人工知能(AI)を利用して、第2世代のDNAワクチンの開発にも着手しています。
●パンデミックに有効なDNAワクチン
—DNAワクチンと従来のワクチンの違いはどのような点ですか?
森下:インフルエンザワクチンなどの普通のワクチンは、不活化ワクチンや生ワクチンと呼ばれ、その開発にはウイルスそのものが使われます。弱毒化(あるいは不活化)したウイルスを有精卵に接種して、「抗原」(ウイルスがもつ、免疫反応を引き起こすタンパク質)をつくります。それを体内に入れることで、免疫を担う「抗体」ができるという仕組みです。この手法は確立されたものですが、開発までにウイルスを見つけてから6〜8カ月くらいかかります。 また、有精卵を使う以上、すぐに大量生産することができません。一方で、DNAワクチンは大腸菌を増殖させれば(プラスミドDNAを増やせるので)、簡単に増産することが可能です。値段が比較的安いというのも一つの特徴です。また、ウイルスそのものを使うのではなく、ウイルスの遺伝情報をプラスミドに挿入して利用しているため、ウイルスのゲノム情報が公開されればすぐに開発に着手できる上、安全だというのも大きなポイントです。早期に大量生産でき、さらに安いという点が大きなメリットといえます。新型コロナウイルスのDNAワクチンとして、アメリカのバイオテクノロジー企業のモデルナが新型コロナウイルスのDNAデータが公開されてから42日でRNAワクチン(DNAワクチンと似たタイプのワクチン)を作りました。アンジェスは3月5日に開発を発表して、3月24日にはDNAワクチンが完成しました。20日間で作れたのは、世界最速です。
— ワクチンには副作用がつきものです。どういったものが考えられますか?
森下: 副作用は2つに分けて考えられます。1つは、ワクチンで免疫をつけること自体に対する副作用。もう1つは接種するワクチンの種類ごとに生じる副作用です。どんなワクチンでも、接種する際にADE(Antibody Dependent Enhancement)という現象が生じることがあります。ウイルスに感染しないためのワクチンを接種することで、逆にウイルスに感染しやすくなってしまう現象です。動物実験や一部のワクチンの臨床試験で報告されていますが、詳しいメカニズムは分かっていません。どういったワクチンを接種しても起こるため、そのリスクを踏まえてワクチンの接種対象を選ぶ必要があるでしょう。若い人が新型コロナウイルスに感染してもあまり重症にならないのであれば、ADEが生じるリスクを避けてワクチンを接種しないほうが良いかもしれません。一方、高齢者や合併症(既往歴)を持つ人など、新型コロナウイルスに感染した場合の致死率が高い人は、ADEが生じる割合を考慮してもワクチンを接種するメリットが大きいのではないでしょうか。また、感染する可能性が高い医療関係者に対するワクチンの接種も、デメリットを大きく上回るメリットがあるでしょう。
— 従来のワクチンとDNAワクチンで副作用に違いはありますか?
森下:生ワクチンや不活化ワクチンといった従来のワクチンは、ウイルスそのものを使うため、副作用としてウイルスの影響が出る可能性があります。また、ワクチン内にウイルスが混じる可能性もあります。一方、DNAワクチンについては、ほぼ副作用はないと思っています。2019年に販売を開始したコラテジェンという血管再生のDNA治療薬でも、今回開発しているDNAワクチンと同じ仕組みを使っています。臨床試験では、比較対象となった方々との間で、DNA治療薬を使ったことで生じる重篤な副作用はみられませんでした。
— 確認できる範囲では大きな副作用はなさそうということですね。では一方で、DNAワクチンの効果は従来のワクチンと遜色ないのでしょうか?
森下:DNAワクチンが安全なのは間違いないですが、抗体を作り出す能力が若干弱いとされるのが懸念点です。だからこそ、抗体をつくる能力を上げるために、 ほかの企業と一緒に、第2世代のDNAワクチンの開発にも力を入れています。プラスミドに組み込む遺伝子を調整したり、ワクチンと一緒に投与する「アジュバンド」と呼ばれる物質や、DNAワクチンと相性の良い抗体誘導ペプチドの研究を進めたりしています。
— ワクチンを接種したあと、効果の持続期間はどの程度になるのでしょうか? インフルエンザのように、毎年打たなければ意味がないのでしょうか?
森下: コロナウイルスに対するワクチンは前例がないため、正直、実際にやってみないと分かりません。インフルエンザワクチンの効果は大体3カ月くらいです。仮にコロナウイルスに対するワクチンが半年程度しかもたないとすると、毎年のように打たなければならなくなるので、少し厳しくなりますね。
— その場合、抗体ができやすい他のワクチンを検討しなければならないということでしょうか?
森下:正直なところ、DNAワクチンなどの新しいワクチンは、パンデミックを一時的にしのぐためのものです。恒常的に打つようなものではありません。とりあえず社会生活を維持し、その間に治療薬や通常のワクチンの開発が追いついてくるための、リリーフ役でしかありません。DNAワクチンはパンデミック対策に向いているといえば向いていると思いますが、対策のメインとして長期間据えるのは厳しいと思っています。実は、SARS(重症急性呼吸器症候群、コロナウイルスが原因の感染症)が流行した時に、従来の方法ではワクチンを作ることができませんでした。その際の経験などから、有精卵を使ってワクチンを作る手法だと、コロナウイルスに対するワクチンを作りにくいのではないかという話もあります。これがもし本当なら、先行きはかなり暗いです。
●自国のワクチンは自国で。年内に10万人分を確保へ
— 今後、どのようなステップで臨床試験が進んでいくのでしょうか?
森下:今、動物での試験を実施しているところです。その結果をもとに、7月からヒトへの臨床試験が行われます。 最終的な実用化に向けた試験も9月から実施する予定です。年内には、医療従事者を中心に十数万人にワクチンを接種することを目標としています。
— 性急な臨床試験で、安全性は十分担保されるのでしょうか?
森下:当然安全性の試験はしっかりと進めます。また、すでにある程度安全性について確認済みのものを利用しているので、その面での心配は低いと考えています。アジュバンドなどを加えるにしても、もう臨床現場で使われている物質、承認されている物質を使う予定です。
あらためて全く新しいものを開発すると、その承認に時間がかかりすぎてしまいますから。
— 臨床試験で効果が思うように出なければ、開発のやり直しになるのでしょうか?
森下: 第1世代でどの程度効果があるのかは分かりませんが、パンデミック用のワクチンの開発では、どうしてもそうした問題が起こります。また、仮に第1世代のワクチンを投与したときにできる抗体が少なかったとしても、ある程度の効果を見込んで接種を進めていくことになると思います。また、効果が思うように出なくても、バックアップとして準備している第2世代のDNAワクチンがあります。第2世代の開発は、2021年の前半に間に合えば良いかなというくらいです。
— 世界中で開発が進められていますが、日本のワクチンはどういった立ち位置なのでしょうか?
森下:モデルナやイノビオなど、アメリカの企業ではすでにヒトでの臨床試験に入っているところもあります。ただし、アメリカで仮にうまくワクチンができたとしても、それが日本にやってくるまでには時間がかかります。まずは、自国が優先になるはずです。加えて、仮に技術を提供してもらい日本で同じものをつくろうとしても、まったく同じ結果にはなりません。そういう意味では 複数のワクチンを並行して開発し続けるしかないと思います。少なくとも、自国でパンデミックに対応できる体制を整備しないといけません。

*3-3:https://www.bbc.com/japanese/52540664 (BBC 2020年5月5日) ワクチン開発で世界が協力、8500億円拠出 マドンナさんも
 新型コロナウイルスに対するワクチンや治療薬開発に向けた国際会議が4日開かれ、参加者らが総額80億ドル(約8500億円)以上の拠出を約束した。欧州委員会の呼びかけで行われた会議には30カ国以上が参加。国連や慈善団体、研究機関なども支援を発表した。欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長は、これらの資金が前例のない国際協力の端緒になると説明。一方で、資金はさらに必要になるだろうと警告した。この会議は欧州委員会のほか、イギリス、カナダ、フランス、イタリア、日本、ノルウェー、サウジアラビアが共同で主催。一方、アメリカとロシアは参加しなかった。昨年12月に新型ウイルスが発生した中国は、EU大使が代表として出席した。欧州連合(EU)によると、今回集まった資金のうち44億ドルがワクチン開発に、20億ドルが治療研究に、16億ドルが検査キットの製造に充てられるという。会議では、欧州委員会とノルウェーが共に10億ドルずつの拠出を約束。フランスとサウジアラビア、ドイツはそれぞれ5億ユーロ(約580億円)を、日本は850億円以上を支援する。また、米歌手マドンナさんも110万ドルの寄付を約束したという。開会の演説でフォン・デア・ライエン委員長は、「真の国際的な挑戦」のために誰もが資金を拠出すべきだと呼びかけた。「5月4日という日は世界中が協力した日として、新型ウイルスとの戦いの転換点になるだろう」。「協力者はたくさんいるが、目標はひとつ、このウイルスを倒すことだ」。ボリス・ジョンソン英首相も、専門知識を「共有すればするほど」、科学者はより早く「ワクチン開発に成功するだろう」と語った。自身もCOVID-19に感染し、一時は集中治療を受けていたジョンソン首相はこの席で、イギリスが3億8800万ユーロ(約515億円)を拠出すると発表した。共同声明で各国首脳は、今回の支援は「科学者と規制当局、産業と政府、国際機関、慈善団体、医療の専門家らによる前例のない国際協力の端緒になる」と説明。「世界が世界全体のためにワクチンを開発できれば、21世紀を象徴するグローバルな公益となるだろう」と述べている。この国際会議では、世界保健機関(WHO)の活動を支持する署名も行われた。WHOをめぐっては、アメリカが批判を強めている。
●ワクチンの実用化は来年半ばか
国連は、これまでの生活を取り戻すにはワクチンが不可欠だとしている。現在、世界各地でワクチンの開発プロジェクトが進められている。しかし多くの支援をもってなお、どの開発が成功し、効果を出すのかを見極めるには時間がかかる。専門家の大半は、ワクチンの実用化は、新型ウイルスが初めて確認されてから12~18カ月後に当たる2021年半ばごろになるだろうとしている。

<治療薬>
*4-1:https://www.nishinippon.co.jp/item/n/607425/ (西日本新聞 2020/5/11) アビガン投与「福岡県方式」構築 47機関、医師判断で早期対応可能に
 福岡県医師会は11日、新型コロナウイルス感染症への効果が期待される新型インフルエンザ治療薬「アビガン」を、主治医が重症化の恐れがあるなどと判断した場合、軽症でも早期投与できる独自の体制を整えたと発表した。県内47の医療機関が参加を表明しており、県医師会は「『福岡県方式』の構築で新たに投与できる患者はかなり多く、影響は大きい」としている。アビガン投与には、藤田医科大(愛知)などの観察研究への参加が必要。県医師会が一括して必要な手続きを行ったことで、これまで未参加だった27機関が加わり、計47機関で投与できるようになった。今後も増える見通し。主に重症や中等症の患者に投与されていたが、「主治医等が重症化の可能性を憂慮する患者」を対象に明記したことで、主治医が必要と判断すれば軽症でも早期投与が可能としている。投与には入院が必要という。ただ、アビガンは動物実験で胎児に奇形が出る恐れが指摘され、妊婦や妊娠の可能性がある人などには使えない。肝機能障害などの副作用も報告されており、患者への十分な説明と同意が必要となる。新型コロナ感染症の治療薬としては、厚生労働省が7日、米製薬会社が開発した「レムデシビル」を国内で初承認。安倍晋三首相はアビガンについても今月中に承認する意向を示している。

*4-2:https://digital.asahi.com/articles/ASN563RVMN55UHBI03L.html (朝日新聞 2020年5月6日) コロナ感染歴ある子どもに「川崎病」症状 欧米で相次ぐ
 新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、子どもに多い原因不明の難病「川崎病」に似た症例の報告が欧米で相次いでいる。多くが新型コロナの感染歴があり、大人でも似た症状の人がいる。新型コロナとの関連が指摘されている。米ニューヨーク市の保健局は4日、2~15歳の15人で「多臓器炎症型疾患」が確認されたと発表した。川崎病に似た症状で、高熱や発疹、腹痛、吐き気、下痢などがみられたという。そのうち10人が新型コロナのPCR検査や抗体検査で陽性が判明し、感染歴があることが分かった。いずれも亡くなってはいない。同じような症例は、英国やフランス、スペイン、イタリアなど欧州で相次いで報告されている。免疫の過剰反応で、血管に炎症が起き、血栓ができやすくなる。新型コロナに感染した大人からも見つかっている。世界保健機関(WHO)の感染症専門家マリア・ファンケルクホーフェ氏は、「新型コロナに感染した子どもの多くは症状が軽く、重症化する例は少ない。多臓器炎症を起こす例はとてもまれだ」と指摘。一方、ウイルスとの関連が疑われるため、現場の医師らで遠隔会議を開いて情報交換しているという。川崎病は1967年、旧日赤中央病院(東京都)に勤めていた小児科医の川崎富作さんが初めて報告した。全身の血管に炎症が起きる。疫学的にはアジア系、とくに日本人に多いとされている。日本での全国調査(2018年)では、患者の割合は0~4歳の人口10万人のうち360人程度で、致死率は0・03%となっている。遺伝的要因のほか、流行に地域性や季節性があるため、細菌やウイルスなどの感染が原因との説がある。

*4-3:https://doctorsfile.jp/medication/255/ (敗血症 2019/12/12) 順天堂大学医学部附属浦安病院 血液内科長 野口雅章先生
●概要
 感染症がきっかけとなって起きる、二次的な症状。具体的には、何らかの感染症を起こしている細菌などが増殖して炎症が全身に広がり、その結果、重大な臓器障害が起きて重篤になっている状態。敗血症を引き起こしたもととなる原因を見つけ、その治療を早期に開始しなければ、命に関わる危険もある。どんな感染症でも敗血症を起こす引き金になる可能性があり、特に、免疫力がまだついていない乳幼児や、高齢者、糖尿病などの慢性疾患やがんなどの基礎疾患がある人や、病気治療中で免疫力が低下している人は、感染症から敗血症を起こすリスクが高い。
●原因
 原因となる細菌として代表的なものに、連鎖球菌、ブドウ球菌、大腸菌、緑膿菌などが挙げられる。こうした細菌に感染することで、皮膚の化膿、肺炎などの呼吸器感染症や肝臓、腎臓、腸などの感染症など、さまざまな感染症が最初に起き、免疫力が低いとそこから敗血症が起きやすくなる。また、細菌だけでなく、インフルエンザウイルスなどのウイルスやカビなどの真菌、寄生虫などによる感染症も原因となり得る。カテーテルを挿入することによる尿路感染や、人工関節などを使用している場合も注意が必要。この他に、白血球の中の一種である好中球(こうちゅうきゅう)が減少する「好中球減少症」の状態だと、感染症にかかりやすくなり、敗血症を起こす可能性が高まる。好中球減少症は、遺伝性による先天的なものと、後天的なものがあり、抗がん剤による化学療法を受けているがん患者にもよく見られる。
●症状
 敗血症では何か1つの症状や兆候が出る、というようなことは基本的にはなく、障害が起きている臓器によって、さまざまな症状が起きる。初期の主な症状としては、悪寒を感じたり、全身のふるえや発熱(高熱になることが多い)、発汗などが見られたりすることが多い。症状が進行すると、心拍数や呼吸数の増加、血圧低下、排尿困難、意識障害などが生じてくる。重症化してしまうと、腎不全や肝不全といった臓器不全、敗血性ショックを招き、命を落とす危険が高まる。また、皮下出血が見られる場合は、播種性(はしゅせい)血管内凝固症候群(DIC)を併発した可能性があり、やはり重篤な状況である。
●検査・診断
 敗血症の原因となっている感染症を確認するために、胸部エックス線や全身CT検査などの画像診断を行う。また、血液検査や原因菌を特定するための培養検査も実施する。ただし、感染症治療のために抗菌薬が用いられている場合は、菌を培養できない可能性もある。感染症があり、その上で、意識障害がある、収縮期血圧が100mmHg以下、1分間の呼吸数 22回以上、の3つのうち、2つの要件を満たしていれば、敗血症の可能性が高い。確定診断のためには、さらに臓器障害の程度を調べる必要がある。
●治療
 感染症の原因となっている病原体を早急に特定して、治療を開始する。薬物治療であれば、細菌の場合は抗菌薬、ウイルスの場合は抗ウイルス薬、真菌の場合は抗真菌薬、寄生虫の場合は抗寄生虫薬を用いる。感染症の状態によっては、外科的治療が必要になるケースも。症状が進行している場合は、検査結果が出る前(原因菌が判明する前)から、抗菌薬を投与する場合も多い。その際、原因菌によって薬剤に耐性があることもあるため、どの抗菌薬を用いるかは、よく検討する必要がある。敗血性ショックが起きている場合は、血圧を上げるために大量の輸液や昇圧薬を点滴投与する。同時に酸素吸入や人工呼吸器を使って、高濃度酸素を投与するなどの全身管理を行う。この他、人工透析や、血糖値を下げる必要があれば、インスリン静脈内注射を行うなど、状況に応じた治療が行われる。
●予防/治療後の注意
 発見が遅れるほど死亡リスクが高まり、助かった場合でも後遺症が残ることが多い。後遺症は、治療後数週間を経てわかることもあるため、注意が必要。後遺症が出た場合は、それぞれの症状に応じて、リハビリテーションを行う。予防のために、乳幼児、高齢者や慢性疾患、がんなどの病気治療で免疫機能が低い人は、まず敗血症につながる感染症を起こさないことが重要となる。手洗いやうがいをこまめにして、風邪をひかないようにしたり、必要であればインフルエンザなどのワクチン接種を受けたりするなど、感染症にかかるリスクをできるだけ排除するようにしたい。

<教育>
*5-1:https://www.u-tokyo.ac.jp/ja/about/president/COVID-19-message-3.html (2020年4月21日 東京大学総長 五神 真) 新型コロナウイルス感染症に関連する対応について、総長メッセージ
●新型コロナウイルス感染症(COVID-19)緊急対策のために
 現在、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が、世界規模で爆発的に拡大しています。国内においても都市部を中心に患者が急増し、終息の見込みは立っておりません。特に海外では医療崩壊により十分な医療が受けられない状態に陥るケース等も発生し、これまでに例をみない被害が生じています。そうした困難を前に、現場で過酷な診療業務に就いている方々に、心からの敬意と感謝の意をお伝えしたいと思います。東京大学では、すべての構成員の健康を最優先するとともに、学生の学びの機会を確保するため、オンライン授業への全面的な移行を進めました。その一方で、学生それぞれの接続環境によって不公平が生じないよう対策を講じています。なによりも東京大学の学生には自立した個人として、その行動が他者や社会に与えることの自覚をもち、他者への思いやりを大切にすること、そしてこの危機は必ず終息するということを忘れず、焦らず、希望を持ち、諦めないことを伝えています。感染拡大を阻止するためには、治療薬やワクチンの開発等を進めることも喫緊の課題です。本学の研究力を活かして、治療に寄与する薬剤の同定や検査技術の開発さらには疫学的解析など様々な分野で研究・開発を進めています。これまでにも感染阻止の効果が期待できる国内既存薬剤を同定したことを発表するとともに、東京大学ではPCR検査を迅速に行うことのできる検査機器の導入、コロナ対応ICUの整備、中等症患者に対応する病棟の開設など、全診療科の医師・看護師が参加しての医療体制の充実を図ってきました。しかしながら、現時点で速やかに実行すべき取り組みは、これにとどまらず広範囲にわたります。ここに挙げた学習環境の整備や、医療体制の更なる充実はもちろんのこと、例えば財政的基盤が脆弱な東大発ベンチャー企業の支援等、それ以外にも多数考えられます。それらに対応するには、さらに充実した財政的下支えが必要不可欠です。いま、この未曾有の難局にあたり、東京大学は、開学140年にわたる知の協創の拠点として、世界最高水準の学問の叡智を結集させ、この人類の新たな脅威に全力で立ち向かう所存です。再び、安心して暮らせる日常を共に、一日も早く取り戻すべく、皆さまのご支援をお寄せいただきますよう、お願い申し上げます。

*5-2:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/522135 (佐賀新聞 2020.5.13) <新型コロナ>14日、佐賀県内の学校再開 「3密」回避に苦慮
 新型コロナウイルスの感染防止のため休校していた佐賀県内の県立学校や各市町の小中学校などが14日から、再開される。学校現場や教育委員会は、水泳の授業を中止するなど感染予防の対策を強化しているが、集団生活を送る上で密集などの「3密」を避けることは限界があり、難しい対応が迫られる。県教育委員会は、文部科学省のガイドラインに沿って換気の徹底や人数を分けた学習の検討など、再開後の感染防止対策を文書で通知した。児童生徒と教職員がマスクを着用することを明記し、給食では机を向かい合わせにせず、会話も控える。感染防止を理由に自主的に休む児童生徒は欠席扱いにしない。これらの特別措置の期限について県教委の担当者は「感染状況の見通しが立たず、当面続ける必要がある」と話した。文科省のガイドラインでは、児童生徒同士の座席を1~2メートル離すことが望ましいとしているが、40人規模の学級を抱える大規模校からは「空き教室がほとんどなくて距離を確保するのは難しく、マスク着用や換気の徹底をやるしかない」との声が漏れる。授業を20人以下で行う方針を示す武雄市は「各校で、できる限りの対応を考えているが、教員数の問題もあり、全授業での実施は難しい」としている。小城市や西松浦郡有田町などは水泳の授業について「更衣室が密集状態になり、換気も難しい」と中止を決めた。音楽では合唱や合奏を避けて鑑賞を先行させたり、家庭科の調理実習を年度後半にずらしたりするなど、各校で計画の変更を余儀なくされている。登下校時に密集する玄関やクラス単位で一斉となる教室の移動にも学校現場は気をもむ。杵島郡大町町では、保護者の意見を踏まえて集団登校を小学部と中学部で分ける。スクールバスを運行する多久市は、学校再開初日に乗車場所で座席の間隔を開けて利用するよう指導する。グループ学習など対面での学習活動も避けなければならず「密を避ける授業では話し合いなど『対話的学び』ができなくなる。これまでと違う形の授業で充実できるかどうかが心配」(大町町教委)との指摘も上がっている。

*5-3:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200511&ng=DGKKZO58922190Q0A510C2MM8000 (日経新聞 2020.5.11) 教室から消えた13億人 窮地が促す学び改革 コロナ、出口は見えるか(4)
 「多くの生徒らの学習が遅れている。学校再開の決定は簡単ではないが対応を急ぐべきだ」。国連教育科学文化機関(ユネスコ)のアズレ事務局長が4月末、声明で訴えた。新型コロナウイルス対策の全国的な休校は177カ国・地域で続き、全世界の72%、約13億人が登校できていない。学力格差への懸念が各国で強まる。11日から段階的に学校を再開するフランスのブランケール教育相は「休校を続けすぎると(自宅の学習環境の違いで)格差を助長する」と強調。小学校は1学級15人以下とし、校内の動線を決め接触を減らすなどして感染を防ぐ。オンライン(遠隔)授業が広がる米国では、インターネット環境が整わない家庭の子どもの学習支援で官民が連携する。カリフォルニア州はグーグルからパソコン4千台の提供を受け、生徒に配った。中国でもオンライン会議システムを使った授業が拡大中だ。ネット通販大手、アリババ集団のシステムの利用実績は約14万校、1億2千万人規模に上る。4月22日時点で小中の95%、高校の97%が休校していた日本。自宅学習は紙の教材が中心で、公立小中高校など約2万5千校の95%は同時双方向のオンライン指導ができていない。「子どもの勉強習慣がなくなってしまった」。夫と共働きの東京都内の女性(40)は焦りを募らせる。小5の次男が通う公立小は2週間に1度、宿題の進み具合を報告させるだけ。一方、私立中に通う長男は遠隔学習で以前と同じ時間割で勉強を続けている。足踏みの背景には教育のデジタル化の遅れがある。経済協力開発機構(OECD)の2018年調査によると日本の15歳生徒の8割が学校でデジタル機器を利用していない。学校の情報化を怠ってきたツケが出た形だ。出口に向けては重層的な戦略が要る。感染予防を徹底しての学校再開と再休校に備えた遠隔学習の環境整備は不可欠だ。政府内では学習の遅れを取り戻し、学事暦を国際標準に合わせる策として「9月入学・始業」の論点整理も進む。移行には課題もあるが、社会全体でグローバル化に向けた方策を抜本的に議論する好機だ。米ブルッキングス研究所などは学校や大学の4カ月間の休校により、若者の生涯収入減少などを通じて米国が将来的に被る経済損失が2.5兆ドル(250兆円)、年間国内総生産(GDP)の12%に上ると試算する。各国はこうした事態を懸念し、教育の再構築を進める。韓国は休校中、小中高生に情報端末など28万3千台を貸与。低所得世帯の約17万人にはネット通信費を支援した。緊縮財政で教育予算を削ってきたイタリアも遠隔教育の推進に8500万ユーロ(97億円)の予算を確保した。「危機をチャンスに変えたい」とアゾリーナ教育相。日本も社会総がかりで学びの保障に取り組む覚悟が要る。

<新型コロナの検査及び診療体制は憲法第25条違反である>
PS(2020年5月14日追加):*6-1のように、大相撲の力士、勝武士(28歳)が新型コロナに感染して体調が悪化し、4月4日頃から38度台の高熱が続いたが受入先医療機関が見つからず、4月8日夜に咳をした時に出るたんに血がまじる症状が出て初めて都内の病院に救急搬送されて入院でき、4月10日にPCR検査で陽性と確認され、4月19日からICUに入って、5月13日未明に多臓器不全で死去されたそうだが、このような人は多いだろう。
 このような診療の遅れについて、日経新聞は、*6-2のように、「①新型コロナウイルスの専門外来への窓口である帰国者・接触者相談センターのパンク状態が続いているから」「②国が相談の目安を緩めて負荷が増す恐れもある」「③帰国者・接触者相談センターで担当している看護師は、1日約2500件の電話のうち回線の制限から対応できるのは約500件までで、厚労省が5月上旬まで『37.5度以上の発熱が4日以上』等と設定していた相談目安に合致するので詳しく症状を聞く必要があると判断したのは10件ほどで、実際にPCR検査を勧めたのは1日平均3件だった」「④大半の相談はごく軽い微熱など殆ど症状がない状態で、取ることすらできない電話の中に数十人、すぐに検査が必要な人がいるのではないか」「⑤政府の専門家会議は5月4日にPCR検査の件数が十分に伸びていない理由として相談センターの業務過多を指摘し、人員の強化を訴えた」「⑥聖マリアンナ医科大の国島教授が、相談に対応できる保健師や看護師はとにかく人手不足なので、自動応答システムを使った相談の仕分けなどで、業務を効率化していくことも検討すべきだ」などと書いている。
 しかし、仕事を引き受けた以上は、①②③④のように人手不足だから命にかかわ電話の500/2500(20%)しか取れず、厚労省の目安に従って機械的に振り分けた結果、検査に至ったのはそのうち3/500(0.6%)しかなかったというのは、保健所や相談センターを通したのが間違いだったことを示しているにすぎない。従って、⑤のような焼け太りは許されず、そもそも⑥は、保健師や看護師には診断する資格や権限はないため、厚労省の目安に従って保健師・看護師・事務職などが検査の要否を判断すること自体が違法行為なのである。
 そのため、厚労省の指示は、違法行為であるだけでなく、国民の生存権を脅かしている上、国が社会保障や公衆衛生の向上・増進に努めなければならないとする日本国憲法第25条(*6-3参照)に違反している。そして、この大失敗の結果は、むしろ現場医療従事者の感染リスクを拡大させて苦労を強い、一般国民にも生命及び経済活動の両面で大きな迷惑をかけたため、この仕組みでPCR検査が遅れて重症化した人や亡くなった人の家族は、集団訴訟して実態を白日の下に晒すくらいでないと、今後も厚労省はじめ行政の態度は変わらないと思う。
 なお、このように検査が拒まれ、まともな医療も受けられない中で、埼玉市はじめ各地で、*6-4のような「こころの相談窓口」が設置されたのには呆れた。何故なら、病気になっても診療してもらえない不安や経済停止で経営破綻しかかっている事業者の不眠は、心が正常に働いている証拠であって異常ではないからで、その“処方箋”は、犠牲者が心理の専門家に相談して心理分析してもらうことではなく、病気になったら受診できる医療体制を復活し、緊急事態宣言の解除や足りない資金の補助・融資を行うことだからである。

*6-1:https://digital.asahi.com/articles/DA3S14475075.html (朝日新聞 2020年5月14日) 28歳力士、コロナで死去 勝武士 20代以下の死亡、国内初
 大相撲の三段目力士、勝武士の末武清孝さん(28歳、山梨県出身、高田川部屋)が新型コロナウイルスに感染して体調が悪化し、13日未明に多臓器不全のため死去した。日本相撲協会が発表した。協会は同日、過去の感染歴を調べる抗体検査を、約1千人いる親方、力士、裏方ら協会員の希望者全員に実施する方針も明らかにした。検査を終えるには、約1カ月かかる見通しだ。厚生労働省によると、20代以下が死亡するのは国内で初めて。新型コロナウイルス感染で亡くなったのは角界では初で、国内の主立ったプロスポーツの選手でも初めてとみられる。協会によると、勝武士は4月4日ごろから38度台の高熱が続いたが、受け入れ先の医療機関が見つからなかった。都内の病院に入院できたのは、せきをした際に出るたんに血がまじる症状が出て救急搬送された同8日の夜だった。協会は「都内の医療機関がひっぱくした時期と重なってしまいました」としている。この際に受けた簡易検査では陰性と判定されたが、同10日にPCR検査で陽性と確認され、同19日から集中治療室(ICU)に入っていた。複数の関係者によると、糖尿病の基礎疾患があったという。葬儀などは未定。勝武士が所属する高田川部屋では、師匠の高田川親方(元関脇安芸乃島)らも感染が確認されたが、いずれも軽症ですでに退院している。

*6-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200514&ng=DGKKZO59037720T10C20A5CR8000 (日経新聞 2020.5.14) コロナ相談窓口なお激務、症状と関係ない電話4割  検査の目安緩和で負荷増も
 新型コロナウイルスの専門外来への窓口である帰国者・接触者相談センターのパンク状態が続いている。全国の電話相談の件数はピーク時から減少しているものの、負担の大きい自治体からは「必要な電話が見逃されている」と不安の声が上がる。国が相談の目安を緩めたことを受け、負荷が増す恐れもある。専門家は体制強化や業務の自動化の整備を訴えている。「あんたに検査を受けられない人の気持ちが分かるのか」。北海道のある自治体の相談センターには、辛辣な言葉を浴びせる電話がしばしばかかってくる。担当する看護師によると、1日にかかってくる約2500件の電話のうち、回線の制限から対応できるのは約500件まで。厚生労働省が5月上旬まで「37.5度以上の発熱が4日以上」などと設定していた相談目安に合致するとみて、詳しく症状を聞く必要があると判断したのは10件ほど。実際に専門外来でのPCR検査を勧めたのは1日平均3件だった。この看護師は「基準に合致しない人でも不安を感じていることには変わりなく、検査が必要ないと言ってもすぐには納得してもらえない」と話す。大半の相談はごく軽い微熱などほとんど症状がない状態で、むしろ「取ることすらできない電話の中に数十人、すぐに検査が必要な人がいるのではないか」とみている。相談センターの受け付けは毎日24時間。常勤者の1人当たりの勤務は1日8~16時間で週5日間程度に及ぶ。しかも、残業が1時間ほど必要な日がほとんどだ。「帰宅しても疲れで食事すらできない日もある。心身ともに限界に近い」。厚労省は5月8日、診察やPCR検査を受ける際の「相談・受診の目安」を改めた。37.5度以上などとした従来の目安を削除した上で「息苦しさ、強いだるさ、高熱」といった症状がみられた場合はすぐに相談するよう求めている。感染者の見落としをなくして感染の再拡大を防ぐのが狙いだが、北海道地域保健課の担当者は「今後、相談センターの対応業務が増加する懸念がある」と話す。厚労省の公開資料を分析すると、全国のセンターで相談を受けた電話は、4月の1日平均で約2万3千件。直近は減少傾向にあるものの、一般的な質問など症状と関係のない相談が全体の4割近くを占め、実際に専門外来の受診に至るのは7%にとどまる。厚労省は一般的な相談の窓口を別に設けるといった体制強化を自治体に求めているが、一筋縄ではいかない。4月から一般相談窓口を開設した東京都では、一般窓口が開いていない深夜から朝に相談センターに電話が集中する。夕方以降の時間帯に200件前後で推移していた相談件数は、10日には約340件まで増加。都の担当者は「目安が変わった影響もあるだろう。質問の内容も広がり、1件あたりに応じる時間も体感的に長くなったと負担を感じる職員もいる」と明かす。政府の専門家会議は5月4日、PCR検査の件数が十分に伸びていない背景のひとつとして、相談センターの業務過多を指摘。改めて人員の強化を訴えた。聖マリアンナ医科大の国島広之教授(感染症学)は「相談に対応できる保健師や看護師はとにかく人手不足。チャットボット(自動応答システム)を使った相談の仕分けなどで、業務を効率化していくことも検討すべきだ」と指摘している。

*6-3:https://kotobank.jp/word/%E6%97%A5%E6%9C%AC%E5%9B%BD%E6%86%B2%E6%・・ より抜粋
日本国憲法第25条
1 すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。
2 国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。

*6-4:https://www.city.saitama.jp/002/001/008/006/013/002/p072196.html (埼玉市 2020年5月1日) 新型コロナウイルス感染症の拡大等に伴うこころのケアについて
 新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、わたしたちの生活にも大きな影響が出ています。環境の変化や先の見えない状況、行動の不自由さなどの中で、ストレス状態が長く続くと気持ちやからだや考え方に、様々な変化(反応)が起こりやすくなります。こうした反応は「誰にでも起こりうる自然な反応」ですが、長引くことで不調のきっかけになることもあります。(以下略)

<検査とワクチン開発>
PS(2020年5月16、18日追加):*7-1のように、東京などの8都道府県を除く全国39県で緊急事態宣言が解除されたが、8都道府県も専門家の見解を踏まえて31日を待たずに21日に解除することもあり、その条件は、①1週間当たりの新規感染者が10万人あたり0.5人以下に低下したかどうか ②医療体制 ③検査体制の整備 などを目安に判断するそうだ。が、日本は、*7-2のように、PCR検査を徹底して行い1日数千人単位で感染者が出た欧米諸国と異なり、3月から5月15日に至るまで検査数を著しく制限しているため、現在も正確な感染者数はわからず、偽の安心に陥っている可能性がある。
 ただ、原発事故後の東北・関東では、放射性物質や花粉などの有害物質を吸い込まないために、マスクをしたり、空気清浄機をつけたりする人が多く、また、上下水道が整備され、国民全体として栄養状態がよく、衛生意識も比較的高く、室内に入る時は靴を脱ぐことなどから、他国よりも感染拡大が防げたかも知れない。そのため、罰則付のロックダウンでなければ効果がないということはなかった。
 このようにPCR検査数が足りない中、*7-3のように、新型コロナの大規模抗体調査を来月から複数自治体の住民を対象に1万人規模で実施して地域の感染状況を把握するというのは興味深い。しかし、これとは別に医療関係者は優先的に抗体検査をした方がよいし、東京や東北地方だけでなく日本中で大規模に行った方がよい。また、同じ県に住んでいても、都市部と農村部・年齢・性別などによって感染率が異なるだろう。なお、昨年採取した血液も一定割合で陽性となるそうだが、本当は昨年も無症状の感染者がいたか、風邪など同種のコロナウイルスにも反応しているのではないか?
 米トランプ政権は、*7-4のように、開発期間を大幅に縮めてワクチン開発を行うそうで、未感染の人に抗体(免疫)を作るにはワクチンの接種しかなく、開発に成功すれば世界でニーズがあるため、経済に関する感性がよいと思う。WHOは、5月5日時点で開発中のワクチンが100種を超え、ヒトへの臨床試験が始まったのが8種類あるとしている。また、IMFは、2020年の世界経済の成長率予測を1月にプラス3.3%と見込んでいたが、新型コロナ感染拡大後にマイナス3%へ引き下げ、日本の経済規模に匹敵する約500兆円の経済損失が生じたそうだ。このうち1%にあたる5兆円でもワクチンの開発に充てていたら損失を回避できたため、日本の「新常態」では、医療体制・検査体制の充実やワクチン・治療薬の研究開発投資が求められるのである。
 なお、*7-5のように、福岡市教育委員会は、5月15日、市立小・中・特別支援学校の夏休みを8月7~19日の13日間とし、授業時間を短縮して授業のこま数を最大7時間に拡大するなどして、臨時休校による学習の遅れを解消させるそうだ。これは、他の地域でも参考になるが、夏休みを短くするには教室にエアコンを設置することが不可欠になるため、フィルターや殺菌機能のついた空気清浄機能付エアコンの新製品が望まれる(これも、世界にニーズがある)。
 また、*7-6に、「①新型コロナ感染症にかかった多くの重症患者にとって最大の脅威はコロナウイルスそのものではなく、人体がウイルスと闘うために立ち上げる免疫システムだ」「②免疫システムは病原体から体を守るために不可欠だが、健康な細胞を傷つける激しい凶器にもなる」「③このサイトカインストームは過剰な炎症を引き起こす免疫システムの暴走である」「④そのため、免疫反応を抑制する必要がある」等と書かれているのには、私は賛成できない。
 何故なら、①は、治療の遅れを本人の免疫システムのせいにするもので、②は、ウイルスが侵入した細胞は健康な細胞でないため免疫は細胞ごと攻撃せざるを得ず、③の、身体中で炎症を起こしているのは、重症化して身体中で細胞がウイルスに侵され、ウイルス自体もどこにでもいる状態だからだ。そのため、④の、免疫システムの“過剰”な暴走だとして免疫反応を抑制するのはウイルスの激しい戦闘中に味方の免疫細胞(兵士)に戦闘中止の命令を出すのと同じである。
 従って、「サイトカインストーム」は新型コロナ感染症の人が亡くなる原因というより、亡くなる直前の激しい戦闘であり、「サイトカインストーム」がエボラ出血熱・インフルエンザ・マラリア・エリテマトーデス・特定の種類の関節炎などでも起こる新型コロナ特有のものでないのは、自衛軍に敵の侵入を知らせる警報だからで、新型コロナの「サイトカインストーム」も不必要に警報が鳴っているのではなく、敗血症になる寸前の激しい戦闘命令なのだろう。そして、血管が大量の免疫細胞で詰まるのは、闘って死んだ免疫細胞の山であり、患者を死に至らしめるのは、サイトカインストーム自体ではなく敗血症やウイルスによる血管を含む多臓器不全が原因だ。そのため、免疫が感染症と闘っている時に免疫反応を抑制するのは逆で、「サイトカインストーム」など起こさないうちに、ウイルスそのものを退治する抗ウイルス薬(援軍)や他の細菌の増殖を抑える抗生物質(援軍)を使うべきだと、私は思う。

   
  2020.5.11   2020.5.5     2020.5.2朝日新聞     2020.5.13 
  東京新聞    中日新聞                    東京新聞

(図の説明:1番左の図のように、2020年5月14日に全国の39県で緊急事態宣言が解除され、解除条件も示された。そして、左から2番目の図のように、専門家会議が「新しい生活様式」を示しているが、一部には普段から考慮しておくべきものがあるものの、人が生活する上で長く続けることが困難なものもある。厚労省の専門家会議が意図しているのは、右から2番目の図の第2波の山を先に延ばして低くすることだが、これはウイルスに対する消極的防衛にすぎず、弱い人がいつか感染して亡くなるのを排除することができない。ゲームチェンジして攻めに転じるには、検査と治療・ワクチン接種が必要だが、日本政府はこれには消極的で、外国がやっているのを見て少し真似している程度であるため、先進国の政府とは言えないのだ)

*7-1:https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2020/05/39821.php (Newsweek Japan 2020年5月14日) 緊急事態宣言、全国39県で解除 東京など8都道府県も可能なら21日に解除=安倍首相
 安倍晋三首相は14日夕に会見し、東京など8都道府県を除く全国39県で緊急事態宣言を解除すると正式発表した。8都道府県についても21日にも専門家の見解を踏まえ、可能であれば緊急事態宣言の期限である31日を待たずに解除する意向を示した。解除に当たっては1週間当たりの新規感染者が10万人あたり0.5人以下に低下したなど医療体制、検査体制を目安に判断したと説明。39県は今後、感染者の小集団(クラスター)対策で感染拡大を防止できるとの判断を示した。もっとも、解除された地域でも、外出自粛は要請しないが「人との接触は減らして欲しい。県をまたいだ移動も控えて欲しい」と訴えた。

*7-2:https://newsphere.jp/national/20200324-2/ (Newsphere 2020.3.24) なぜ日本の感染者は少ないのか……海外が見る「日本の謎」 新型肺炎
 世界中で感染者が急増している新型コロナウイルスだが、1日数千人単位で感染者が増えている欧米諸国に比べ、日本は数十人程度と少ない。検査の数を制限し、感染の実態が明らかにされていないという見方が海外では圧倒的で、今後は感染者が急増するのではないかと指摘されている。
◆異常に少ない検査数 日本の説明は理解されず
 日本の感染者数は1110人(3月23日時点)となっている。ブルームバーグは、日本は中国以外で最も早く感染が広がった国の一つなのに、先進国のなかでは最も影響を受けておらず、公衆衛生専門家も首をかしげていると述べる。海外のほとんどのメディアや専門家が「日本の謎」の理由として、検査数が少ないことを上げている。ビジネス・インサイダー誌は、カナダのマニトバ大学のジェイソン・キンドラチュク准教授の「検査しなければ感染者の見つけようがない」という言葉を紹介し、日本が検査能力の6分の1しか検査を行っていないと指摘している。日本は医療機関に過剰な負荷をかけないために検査を絞ると説明しており、国民には症状が出るまで家にいるよう求めている。この対応は、27万人に検査をして感染拡大を阻止した韓国の対応と比較されており、WHOを含め海外では韓国式がお手本と評価されている。ビジネス・インサイダー誌の記事が出た時点では、日本で検査を受けたのは1万6484人ほどだ。これは7600人当たり1人という検査数で、韓国の185人当たり1人に比べ、著しく低くなっている。
◆文化が幸い? 感染防止に貢献か
 そもそもダイヤモンド・プリンセス号の処理もできなかった日本が上手くやれているはずはないという辛らつな意見も聞かれるが、日本がある程度感染を抑えているという見方もある。中国に近いため、まだ制御可能な時期から危機感があり、消毒剤やマスクなどが売れて、国民が公衆衛生を守る基本ステップを受け入れたことが貢献したのではないかと見られている。アメリカの科学ジャーナリストのローリー・ギャレット氏は、少数の感染が制御可能な限定された地域で起こっていることが幸いしているのではないかと述べている(ブルームバーグ)。ビジネス・インサイダー誌は、もともと日本文化においては他国よりも社会的距離が遠いこと、以前から病気やアレルギーのある場合はマスクをする習慣が根付いていたことが、感染の拡大を防いだのかもしれないとしている。
◆検査なしでは実態わからず 偽の安心を懸念
 キンドラチュク准教授は、文化的な影響を否定はできないが、それだけでは説明できないと考えている。感染者数の少なさは「偽の安心感」だとし、日本ではまだ最も弱い人々への感染が広がっていない可能性があると述べる。この層に広がれば、あっという間に感染は拡大すると見ている(ビジネス・インサイダー誌)。英キングス・カレッジ・ロンドンの教授で、元WHOの政策チーフ、渋谷健司氏は、日本では集団感染のクラスター潰しに集中した結果、感染が封じ込められたのか、まだ見つかっていない集団感染があるのかのどちらかだと述べる。どちらも妥当だとしながらも、日本は爆発的感染を迎えようとしており、封じ込めからピークを遅らせる段階にもうじき移行すると予想している。検査数に関しては、増えてはいるものの十分ではないという認識だ(ブルームバーグ)。これまで感染者が少なく、何とか持ちこたえてきた日本の新型コロナウイルス対策だが、3月下旬から感染者が急増している。日本は検査数を絞ったクラスター叩きを戦略としてきたが、もう限界だという見方が海外では優勢だ。政府は感染拡大を受け緊急事態宣言で市民の外出や店舗などの営業自粛を求めているが、罰則つきの欧米式ロックダウンではないため、効果に疑問の声が出ている。
◆感染が抑えられてきた日本 いまは危険水域に
 海外メディアは、日本は感染の第一波の悪化を何とか回避してきたという見方だ。もっとも明白な理由は指摘されておらず、さまざまな憶測が飛び交っていた。米ABCは、予定通りの五輪開催のために、政府が数字を抑えようとしていたという噂を紹介している。米ウェブ誌『Vox』は、政府が肺炎患者に十分なコロナウイルス検査をしていない可能性もあると指摘。一方で、日本はもともと挨拶としての握手やハグ、キスなどが少ない文化だったこと、マスクの着用が浸透していたこと、早めに大型イベントの自粛や学校休校などの社会的隔離措置が取られたことなどが功を奏したとも見ている。こういった日本独特の理由が感染を遅らせたという認識が海外メディアには共通だ。

*7-3:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/523140 (佐賀新聞 2020.5.15) コロナ抗体調査1万人規模実施へ、厚労省、地域で感染の広がり把握
 加藤勝信厚生労働相は15日の閣議後記者会見で、新型コロナウイルスの大規模抗体調査を、来月から複数自治体の住民を対象に1万人規模で実施すると表明した。抗体検査は、感染から一定期間たった後に体内にできる抗体を、少量の血液から検出する方法。現在主に使われているPCR検査より簡単で、短時間で結果が出る。抗体は感染直後には検出が難しいため、診断目的ではなく、過去の感染歴を調べて地域での感染の広がりを把握する使い方が想定されている。東京都と東北地方で献血された血液の抗体を試験的に調べたところ陽性率は東京の500検体で0・6%、東北6県の500検体では0・4%だった。ただし、抗体がある可能性が低い昨年採取した血液も一定程度の割合で陽性となっており、誤って陽性と判定される例が含まれていると考えられているという。

*7-4:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200514&ng=DGKKZO59065040T10C20A5MM8000 (日経新聞 2020.5.14) 待望のワクチン開発 未来への投資、今こそ コロナ、出口は見えるか(6)
 「オペレーション・ワープ・スピード」。米トランプ政権が打ち出したワクチン開発の新戦略だ。第2次世界大戦中の「マンハッタン計画」にならい、企業や政府機関を総動員。通常は数年かかる開発期間を大幅に縮める。3日、トランプ大統領はテレビ番組で「年末までにワクチンが手に入る」と説明。全国民分の数億本を供給する目標を掲げた。ワクチンは体の免疫反応を引き出し、ウイルスの感染を阻む。感染拡大を抑えつつ行動制限を緩めるには、免疫を持つ人を増やすしかない。開発の行方が世界経済の命運を握る。世界保健機関(WHO)によると5日時点で開発中のワクチンは100種類を超える。ヒトへの臨床試験(治験)に進んだのは8種類ある。今やワクチンを誰もが待ち望む。だが、感染症対策はワクチンが最後の砦(とりで)になると分かっていながら、今までは危機意識が低かった。「コロナのようなRNAウイルスはリスクが高い」。2年前、米ジョンズ・ホプキンス大学はワクチンの備えを訴えた。パンデミック(世界的大流行)に対抗する技術の芽はあった。ウイルスのRNAやDNAといった遺伝物質を合成し、体に投与して免疫を高める方法だ。ウイルスの培養がいらず、4~5年かかるワクチンの開発期間を大幅に短縮できる。米モデルナや独ビオンテックは、1カ月程度でワクチン候補を作る技術を持つ。ワクチンを供給するグローバルな生産設備や国際拠点を2年前から準備しておけば、直ちに製造に取りかかれたかもしれない。ところが各国の予算は少なすぎた。日本経済新聞社が出資するアスタミューゼ(東京・千代田)が日米英中の感染症関連の研究開発予算(2018年)を調べると、米国は75億ドル(8000億円)、中国は53億ドル(5600億円)、英国は5億8000万ドル(620億円)、日本は5億3000万ドル(560億円)だった。「今後、世界で1000万人以上を殺すなら、それはミサイルではなくウイルスだ」。米マイクロソフト創業者のビル・ゲイツ氏は15年の講演会でこんな言葉を残した。国際通貨基金(IMF)は、20年の世界経済の成長率予測を1月にプラス3.3%と見込んでいたが、新型コロナの感染が拡大した後にマイナス3%へ引き下げた。単純計算で日本の経済規模に匹敵する約500兆円の経済損失が生じる。1%にあたる5兆円でもワクチンの開発に充てていたら、損失を回避できたはずだ。新型コロナ収束後の「新常態」では、まず感染症を甘く見た過去との決別が必要だ。ワクチン開発や治療、検査体制の確立で各国は連携し、どんな感染症にも立ち向かえる国際協調の枠組みを整えるべきだ。今こそ未来への投資が求められる。

*7-5:https://www.nishinippon.co.jp/item/n/608716/ (西日本新聞 2020/5/16) 小中学校の夏休み13日間に 福岡市、授業時間は10分短縮
 福岡市教育委員会は15日、市立の小中、特別支援学校について今年の夏休みを8月7~19日の13日間とすることを明らかにした。当初予定した7月22日~8月26日(36日間)から大幅に短縮した。また、授業時間を10分短くして小学校は35分授業、中学校は40分授業に変更。1日の授業こま数を最大7時間に拡大するなどして、臨時休校による学習の遅れを解消させる。学校が再開する21日から27日までは学年別に分散登校。28日から各クラスを2グループに分けて交互に登校するが、同じ地域の子どもが同じ日に登校できるよう配慮する。入学式は新入生の人数によって時間帯をずらすなど各学校で工夫。全校生徒が通常通り登校する全面再開は未定という。授業は前年度の未履修分から実施。国語、算数・数学など主要教科を優先させ、ほかの教科の一部学習内容は次学年に持ち越すことも容認する。土曜授業は隔週で行い授業時間の確保を図る。感染防止策としては、児童生徒の机の間隔を1~2メートル空けるほか、毎朝の検温を徹底。小学校では当面、遊具の使用を禁止する。市教委ではほかに、冬休みの短縮やプール授業の見合わせも検討している。

*7-6:https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/20/051100281/ (National Geographic 2020.5.12) コロナ患者、本当にこわい「免疫システムの暴走」、人体が立ち上げる“戦闘部隊”、サイトカインストームとは
 新型コロナウイルス感染症にかかった多くの重症患者にとって、最大の脅威となるのはコロナウイルスそのものではない。人体がウイルスと闘うために立ち上げる“戦闘部隊”だ。免疫システムは病原体から体を守るために不可欠だが、時に健康な細胞を傷つける激しい凶器にもなる。免疫反応が暴走する例の一つが、過剰な炎症を引き起こす「サイトカインストーム」だ。集中治療や人工呼吸器を必要とする場合を含め、新型コロナウイルス感染症の最も重篤な事例において、この現象が起こっているのではないかと考えられている。サイトカインストームは「新型コロナウイルス感染症にかかった人が亡くなる原因として最も多いものの1つ」と話すのは、米国ボストン市、ブリガム・アンド・ウィメンズ病院のアナ・ヘレナ・ジョンソン氏だ。臨床医や研究者たちは、現在も、サイトカインストームがどれほどの頻度で生じているのか、何がそれを引き起こすのかについて調べているところだ。こうした過剰な免疫反応は、新型コロナウイルス特有のものではないため、既存の治療法の中で有効だと思われるものの目星はついている。こうした治療法を他の治療薬と合わせれば、回復のスピードを早められるうえ、科学者たちがワクチンの開発を急ぐ間に致死率を下げられるかもしれない。「それが、このパズルの鍵のようなものです」と、米ワシントン大学の免疫学者マリオン・ペッパー氏は言う。
●免疫システムの暴走
 人間の体には、侵入した者を発見し退治する方法が用意されている。サイトカインは、こうした防御反応を調整するにあたり極めて重要なタンパク質だ。体の防衛軍を結集するために細胞からサイトカインが放出されると、極小の防犯アラームのような役割を果たし、免疫システム全体に侵入者の存在を知らせる。通常は、サイトカインの情報伝達によって免疫細胞および分子が感染箇所に動員される。防衛軍を動員する過程で、複数の種類のサイトカインが度々炎症を引き起こす。当該箇所での脅威が小さくなり始めると、サイトカインによる情報伝達は止まり、防衛軍は撤退することになるのが普通だ。しかし、サイトカインストームが起こると、「免疫システムが狂ってしまう」と話すのは、米コロンビア大学のウイルス学者アンジェラ・ラスムセン氏だ。サイトカインのアラームは止まるどころか鳴り続け、不必要に兵士を集め続けて、病原体そのものよりも体にダメージを与えてしまうことがある。たった一人の暗殺者を捕らえるために大軍を送るようなものだ。しまいには体全体が戦場と化してしまう。サイトカインストームが起こると、血管が大量の免疫細胞で詰まって交通渋滞のようになり、臓器に酸素や栄養分が届かなくなってしまうことがある。また、感染した細胞に向けられたはずの毒性を持つ免疫関連分子が、血管から漏れ出て健康な組織を損傷してしまうこともある。場合によっては、こうした分子の渦が呼吸困難を引き起こす。サイトカインストームが止まらない限り、患者は組織を損傷し、臓器不全を起こし、そして究極的には死に向かうことになる。サイトカインストームは症状が表れてから最初の数日間で全身に広がり、驚くほどの速さで勢いを強めていく。こうした状態になるケースとしては、二つのシナリオが考えられる。一つは、免疫システムが新型コロナウイルスを体から駆逐し損ねて、サイトカインがとめどなく放出されることになってしまう場合。もう一つは、感染が収まってからもサイトカインが放出され続ける場合だ。
●“嵐”を制御する
 サイトカインストームは様々な病気で見られる。エボラウイルス病(エボラ出血熱)、インフルエンザ、マラリア、エリテマトーデス、特定の種類の関節炎などだ。症状は人によって異なり、新型コロナの重症例における特徴もまだつかめていない。どういう人で起きるのかも定かではないが、遺伝的要因と年齢はいずれも関係がありそうだ。とは言え、サイトカインストームはある程度知られているものなので、対処法が開発されている。現在は新型コロナウイルス感染症における効果が検証されているところだ。注目が集まっているのは、重症患者において高濃度で見られるインターロイキン6(IL-6)と呼ばれるサイトカインだ。これに対する効果を期待されている治療薬の一つに、免疫細胞のIL-6受容体をブロックし防犯アラームが聞こえない状態にする、関節炎用のトシリズマブという薬がある。初期の複数の報告は、トシリズマブには効果があるとしている。米ネブラスカ大学医療センターの感染症専門医ジャスミン・マーセリン氏によれば、トシリズマブを投与された重症患者たちはその後回復するようだ。しかし、これまでに行われているのは事前に計画された臨床試験ではなく、その場その場でトシリズマブを投与された患者を追跡するものに留まると言う。トシリズマブを投与された患者を投与されなかった患者と比較しない限り、新型コロナウイルス感染症に対してどれだけ効いているのか、確かな結論を導くことは難しい。「投与なしに自力で回復していたかもしれませんから」とマーセリン氏は話す。現在、答えを出すために、対照群(臨床試験において、研究中の新しい治療を受けない群)を含めた臨床試験が世界で何十と行われている。たとえばフランスで進行中のものでは、64人の「中等症から重症」の患者にトシリズマブが投与され、通常の治療のみの65人と比較して、最終的に致死率および人工呼吸器の必要性が低くなることがわかってきている。
●生死を分ける治療のタイミング
 炎症が起こる前にそれを抑える方法もありかもしれないと話すのは、米マサチューセッツ大学医学部の免疫学者、ケイト・フィッツジェラルド氏だ。治療薬としては副腎皮質ホルモンや、やはり関節炎治療薬であるバリシチニブなどがある。いずれも細胞が様々な種類のサイトカインを生成するのを止める。ほかにも、他の病気の治療法として臨床試験が行われているものに、機械で血中からサイトカインを取り除き、サイトカインストームの終結を早めるという方法がある。だが、死に至るウイルスを前にしているとあって、免疫反応を抑制する治療法に対して専門家たちは慎重になっている。「こうした治療法のリスクは、真逆の方向へ行ってしまいかねないことです」と、マーセリン氏は話す。たとえば、免疫を抑制しすぎると、新型コロナウイルスと闘うことができなくなったり、他の細菌や真菌などの病原体が加わるかもしれない。新型コロナウイルス感染症関連での死亡例において、こうした危険な感染が原因となったものは少なくない。ラスムセン氏によると、治療のタイミングも重要だ。サイトカインをブロックする治療薬の投与が早すぎれば、ウイルスが「暴走する」ことがあり得る。しかし、待ちすぎれば、患者を救うには遅すぎた、ということになりかねない。生死を分けるそのタイミングがいつなのかを示唆する研究はある。IL-6による防犯アラームを聞こえなくするケブザラという治療薬は、人工呼吸器や集中治療を必要とする「重篤」な患者には効果がありそうだが、一段階下の「重症」レベル以下の患者には、特に効果はないようなのである。
●新型コロナウイルス感染症へのワンツーパンチ
 専門家たちは、サイトカインをブロックする方法は、ウイルスそのものを狙う抗ウイルス薬と組み合わせた時に最も有効かもしれないと考えている。「免疫反応にばかり注目して、その原因となっているものを見ないのでは進展しないでしょう」とマーセリン氏は言う。先週、米国立アレルギー感染症研究所は、新型コロナウイルスの自己複製能力を弱めるレムデシビルという抗ウイルス薬が、新型コロナウイルス感染症からの回復をある程度早めるようだとの予備的な調査結果を発表した。現在、レムデシビルと組み合わせて臨床試験が行われているサイトカインストーム治療薬とのコンビネーションで、さらに成果が出るかもしれない。しかし、この戦術が万全だというわけではないと、マーセリン氏は言う。治療薬同士が干渉して効果を打ち消してしまったり、場合によっては患者の容体を悪化させることもあり得る。臨床試験が続く間もパンデミックは広がっており、「結論に飛びつきたくなるものです」とジョンソン氏は話す。「しかし、証拠が出るのを待たなければなりません。毎週毎週、新しい事実が判明するのです」

<先端技術を普及させる理系教育の重要性>
PS(2020.5.17追加):*8-1・*8-2・*8-3のように、新型コロナの影響で世界の新車市場が壊滅的な状況に陥るなか、EU域内で始まった環境規制によってEVは欧州で健闘し、2020年1~3月の欧州18カ国のEV販売台数は前年同期から6割増えたそうだ。
 EVは、*8-4の日産自動車がゴーン社長の下、世界で最初に日本で開発され市場投入されたEVだ。しかし、最初からメディアにはEV批判が多く、最後は、このブログの2018年12月4日・2019年4月6日に記載した通り、「ゴーン氏の報酬が高すぎる」「姉や妻に疑惑がある」等のいちゃもんをつけて検察に介入させ、ゴーン氏の名誉を剥奪して刑事被告人に仕立て上げたのだ。このような妨害をせずに、ゴーン氏のやり方でEVに重点を移して世界で勝負すれば、3年で3割超も販売台数が減ることはなく世界で勝てたのに、今では「過剰な生産能力を削減する」「スペイン工場を閉鎖する」等の日本でゴーン氏が行った以上の人員整理を行う羽目になった。そして、これは、検察の介入が始まった時から予想できたことであるため、経営に介入して起こった失敗の原因をコロナでごまかすことができたのは、経産省にとって幸いだっただろう。
 このように、環境問題も認識できずに環境規制を疎かにし、それをクリアするツールであるEVのトップランナーを叩き続けてつぶしている日本の政府・メディアは、見識が低く、そのため将来を見通せず、大きなビジネスチャンスを失わせた。そして、これは、まともな理系教育を受けていない文系“(自分でそう思っている)エリート”が、理念なき利害調整に走って先端技術を殺した一例にすぎないため、高校まではすべての人への充実した理系教育が必要なのである。

*8-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200517&ng=DGKKZO59215560W0A510C2EA5000 (日経新聞 2020.5.17) 欧州でEV販売快走 1~3月6割増 コロナ禍でも勢い
 新型コロナウイルスの影響で世界の新車市場が壊滅的な状況に陥るなか、欧州で電気自動車(EV)が健闘している。2020年1~3月の欧州18カ国のEV販売台数は前年同期から6割増え、販売台数に占めるシェアは5%に近づいた。域内で始まった環境規制もあり、EVが浸透する「新常態」が生まれる可能性がある。「(EVなどの投入計画は)予定通り。妥協は一切しない」。独BMWのオリバー・ツィプセ社長は5月上旬の記者会見で訴えた。同社はハンガリー工場の新設延期などコロナ禍で緊縮に動くが、23年までに25車種のEVとプラグインハイブリッド車(PHV)を投入する方針は堅持し、投資にメリハリをつける。背景にあるのは好調な販売だ。BMWの1~3月のドイツでのEV・PHVの販売は前年同期から5割伸びた。これは全体の傾向でもいえる。欧州自動車工業会(ACEA)が12日に発表した欧州主要18カ国の1~3月のEV販売台数は12万7331台と前年同期比で57%増えた。欧州連合(EU)が20年から段階的に導入した新しい二酸化炭素(CO2)排出規制も影響しているが、新型コロナの影響で新車市場全体が27%減となるなか好調さが際立つ。

*8-2:https://www.nikkei.com/paper/related-article/?R_FLG=1&b=20200517&be=NDSKDBDGKKZ・・ (日経新聞 2020.5.17) 欧州EV販売1~3月57%増
 欧州自動車工業会(ACEA)は12日、欧州主要18カ国の2020年1~3月の電気自動車(EV)販売台数が12万7331台と前年同期比57%増えたと発表した。新型コロナウイルスの影響で新車市場全体が27%減となるなか、好調さを維持した。シェアは2.5ポイント上昇し4.6%に達した。

*8-3:https://www.nikkei.com/paper/related-article/?R_FLG=1&b=20200517&be=NDSKDBDGKKZ・・ (日経新聞 2020.5.17) 欧州、電動車シェア10%に 21年予測 各社、EVシフト競う
 フォルクスワーゲン(VW)のお膝元である欧州は、世界でも環境意識が高く、二酸化炭素(CO2)の排出規制も厳しい。電気自動車(EV)の販売も急増しており、VW以外の主要メーカーもEVシフトを競っている。欧州自動車工業会(ACEA)によると、西欧17カ国の2019年1~6月のEV販売台数は前年同期から9割増え、シェアは1ポイント上がって2%になった。新車販売全体が前年割れする中で好調さが目立つ。環境シンクタンクのT&Eは9日、20年の欧州連合全域のEV・プラグインハイブリッド車(PHV)の販売台数が100万台に達するとの予測を発表した。18年の合計シェアは2%だったが、20年に5%、21年には10%まで増えるとみる。T&Eのユリア・ポリスカノバ氏は「自動車大手がようやく腰を上げた。今後1、2年で高品質や低価格のEVが登場する」と背景を説明する。ダイムラーは10日、フランクフルト国際自動車ショーで、旗艦車「Sクラス」のEV版として「EQS」のコンセプト車を発表した。記者会見でオラ・ケレニウス社長は「自動車産業が急激に変わっており、全力で変革を進める」と話した。同社は22年までに欧州の自動車生産でCO2排出実質ゼロ、30年までに販売の半分以上を電動化モデルとする目標を掲げる。

*8-4:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200516&ng=DGKKZO59206570V10C20A5EA5000 (日経新聞 2020.5.16) 日産、過剰生産力にメス 2割減へ 欧州で不振、誤算重なる
 日産自動車は世界の工場を対象に過剰な生産能力を削減する。3年後をめどに現在の年約700万台から2割程度を減らす方針だ。スペイン工場を閉鎖する調整をするなど、生産体制再編の主な舞台は欧州になる。「今回の生産体制見直しの柱は欧州だ」。日産幹部はこう語る。日産は5月下旬に新たな中期経営計画を発表する予定だ。内田誠社長兼最高経営責任者(CEO)ら新経営陣がいち早くメスを入れることを決めたのが、欧州だ。商用車などを造るスペイン工場の生産能力は年約20万台で、稼働率は3割程度にとどまる。同工場で手掛ける車種は、提携先の仏ルノーの工場に生産を移管する。一方、年約50万台の生産能力を持ち日産にとって欧州で最も大切な拠点である英国工場では、ルノー車の生産を始める方向で詰めている。19年度の生産台数はフル稼働にははるかに及ばない32万台にとどまった。ルノーと一体で欧州での生産体制を見直し、日仏連合全体で効率化する。欧州では不振が続く。ピーク時の16年度は多目的スポーツ車(SUV)を中心に約78万台を販売した。だが、19年度は52万台と3年で3割超も減った。ナカニシ自動車産業リサーチの中西孝樹代表は「トヨタ自動車のハイブリッド車のような武器を持たない日産は欧州でシェア争いに敗れてきた。地元メーカーとの優劣も鮮明で事業の縮小は避けられない」とみる。これに3つの誤算が重なった。まず英国の欧州連合(EU)からの離脱(ブレグジット)だ。英国工場は約7割を欧州大陸に輸出する。今後の交渉次第でEU向けに関税がかかり、価格競争力が低下する懸念がある。新型コロナウイルスの感染拡大も想定外だった。外出規制で3月の欧州の販売台数は、前年同月比51%の大幅減だった。3つ目はルノーとの協業が、日産にメリットがある形で進まないことだ。例えば16年にルノーの仏フラン工場で委託生産を始めた小型車「マイクラ」(日本名マーチ)。当初は日産のインド工場で造り、欧州に輸出する計画だった。予定が変わった表向きの説明はコスト削減だが、日産側には「ルノーの工場の稼働率を上げるために生産を持っていかれた」との不満がある。日産は元会長のカルロス・ゴーン被告の掲げた拡大戦略と決別し、全販売台数の7割を占める日米中の3市場に投資などを絞り込んで経営を再建する。欧州の生産体制の見直しは新生日産の試金石になる。

<行政は、新型コロナ蔓延を利用したITによる監視社会への移行を意図している>
PS(2020年5月19日追加):速やかに治療すれば入院期間が短く医療崩壊は起こらないため、検査せずに、治療薬の承認を遅らせ、ワクチン開発に消極的で、クラスターを追いかけて差別を助長する公表ばかりしているので変だと、私は思っていた。そして、*9-1のように、携帯の位置情報や検索キーワードの履歴から集団感染の発生をつかむためとして、総務省・内閣官房・厚労省・経産省が、4月31日にNTTドコモなどの携帯電話大手3社・米グーグル・ヤフーなどIT大手6社に対して保有するビッグデータを新型コロナ対策に提供するよう要請したことを知って、行政は、新型コロナを利用してITによる監視社会に道筋をつけたいのだとわかった。しかし、「集団感染の発生を封じ込める必要性」といっても、このシステムは選挙妨害・捜査・しつこい広告など何にでも使えるため、国民は、個人の自由とプライバシーを侵害し、監視社会への入り口となる(マイナンバーカードを見よ)このシステムに反対した方がよいと思う。
 また、*9-2のように、厚労省は8300万人という歴史的な規模で、新型コロナ対策のための簡単な全国健康調査を行って、「37度5分以上の発熱が4日以上続いているか否か」を重視させる誤ったキャンペーン行い、ITはプライバシー管理に弱いのに遠隔診療・AIドクター・医療ビッグデータの活用を、これを機会として強引に進めようとしている。
 そして、*9-3のように、「①徹底した検査が、早期のウイルス封じ込めに成功した韓国の感染症対策の柱のひとつになった」「②韓国は接触者の追跡にビッグデータを活用し、クレジットカードの利用履歴や携帯電話の位置情報をもとに感染者の移動経路を明らかにした」「③韓国は、携帯電話会社の位置情報と患者のカード利用履歴から、感染者と接触した人を全員追跡して隔離する態勢を整えている」「④韓国の世論は感染拡大阻止のためなら個人のプライバシーが犠牲になっても良いという回答が多い」などとして、人権に関しては後進国である韓国や中国に追随することを奨励しているわけだ。
 しかし、*9-4は、もう少しまともに、「⑤ヨーロッパ各国の研究者が横断的に協力して開発した、EUのプライバシー保護規制に準拠した接触者追跡システムを発表した」「⑥感染者の行動追跡などの極めて私的な事柄を第三者に開示することを強いるたに、接触者の追跡と正当化されるが、正当化されることと、それが適当か、あるいは期待どおりに機能するかは別問題」「⑦監視化する世界にするのか」「⑧人権は尊重されなければならない」などを検討している。が、そもそも新型コロナへの感染を早期発見・早期治療できるようにすれば、プライバシーの侵害・移動の制限・それに対する巨額の補助金支給などを行わなくてすむので、そこに全力を集中すべきなのである。

*9-1:https://digital.asahi.com/articles/ASN3074G1N30ULFA02B.html (朝日新聞 2020年4月1日) 総務省、携帯・IT大手にビッグデータ要請 コロナ対策
 総務省などは31日、NTTドコモなど携帯電話大手3社や米グーグルやヤフーなどIT大手6社に対し、保有するビッグデータを新型コロナウイルスの感染対策のために提供するよう要請した。携帯の位置情報を使った人の移動データや検索キーワードの履歴から、集団感染の発生をつかむことなどに役立てる考えだ。首都圏を中心に感染者が急増する中、集団感染の発生を封じ込める必要性が高まっている。提供されたデータを分析し、外出自粛要請などの対策の実効性を検証することも期待できるという。その他のデータについても「利用可能なものは積極的にご提案いただきたい」(総務省)としている。高市早苗総務相は同日の閣議後会見で、「感染拡大防止策のより効果的な実施が可能となる」と強調した。同省のほか、内閣官房、厚生労働省、経済産業省が連名で要請した。

*9-2:https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200415/k10012388211000.html (NHK 2020年4月15日) “ビッグデータ”でコロナと闘う
 「いま発熱はありませんか?」。ITを駆使して8300万人もの人々に健康状態を問いかける。そんな前例のない大規模な調査が行われている。新型コロナウイルスの対策に必要な“ビッグデータ”の収集。感染リスクを抱えているのは、どんな職業の人で、どこにいて、どんな予防策をとっているのか。寄せられた大量のデータを分析することで、感染拡大の抑止にどのような対策が有効なのか、その道筋が見えてくるという。私たち一人ひとりが持つ情報の集積、ビッグデータは、猛威を振るう新型コロナウイルスに打ち勝つ有効な武器となるのか。
●歴史的な規模の調査
 先月31日から始まった厚生労働省の新型コロナウイルス対策のための全国健康調査。全国で8300万人という通信アプリ「LINE」のユーザーに直接呼びかけ、いまの健康状態などを聞き取っている。質問項目は、「いまの健康状態」「年齢」「性別」「住んでいる地域」「感染の予防行動」などいくつかの簡単なもの。調査にあたって、厚労省は、集めたデータは感染者の集団=クラスターの対策のための分析だけに使用し、個人のプライバシーが特定されないよう加工を行うとして、広く協力を呼びかけた。これまでに寄せられた回答は、およそ2500万人分。国民のおよそ5人に1人が回答した計算になる。回答は自主的な申告だが、感染リスクに関する重要なデータが明らかになってきた。37度5分以上の発熱が4日以上続いていると答えた人が、全国で約2万7000人に上ったのだ。都道府県ごとに見ると、沖縄県がもっとも高く、次いで東京都、北海道、大阪府が全国平均を上回っていた。国の緊急事態宣言が出されていない自治体でも、発熱を訴える人が数多くいることが分かった。さらに、発熱を訴えている人を職業別のグループで分類したところ、▽飲食店や外回りの営業など長時間の人との接触や密集を避けるのが難しい職業のグループでは0.23%と全体の平均の2倍余りに上っていた一方、▽在宅で家事や育児をする人など人との接触を避けることが比較的容易なグループでは0.05%と、全体の平均の半分以下の割合となっていた。これらの傾向から、日頃の行動で「社会的な距離を保つこと」「密閉・密集・密接のいわゆる3密を避けること」が感染リスクを下げるうえで重要であることが、データで裏付けられるかたちになった。発熱を訴えている人が、直ちに新型コロナウイルスに感染していることを示しているものではない。それでも、現状では希望した人すべてがすぐに感染の有無を調べる検査を受けられるわけではない中で、ウイルス感染の可能性のある人がどれくらいいるのか、どんな傾向があるのかが分かったのは初めてだ。
●自粛要請 その裏側にもデータ
 LINEを通した健康状態の聞き取り調査は、国に先立って一部の都府県で始まっていた。自治体の調査では、健康状態の聞き取りだけでなく、回答された内容にもとづいて、新型コロナウイルスの感染の可能性があるかどうかや、相談窓口への連絡の必要性などを自動のチャットで回答する仕組みになっている。もっとも早く3月上旬に導入した神奈川県では、県民20万人のビッグデータの分析結果が、知事が「不要不急の外出の自粛」を呼びかける根拠の一つとなった。その分析データも、発熱を訴える人の割合だった。ことし2月末から3月中旬まで、日ごとの発熱していると答えた人の割合は横ばいだった。しかし3月20日からの3連休のあと、その割合が急激に増えていた。そして、感染が確認された人の数も、それに伴うように増え始めていた。これに、県内の人出のデータを重ねると、3連休では行楽地への人出が増加しており、自粛ムードが緩んでいたことが見て取れる。神奈川県は、そのことが感染拡大につながった可能性があると考え、「不要不急の外出の自粛」を呼びかけたのだ。
●専門家が語る“データの力”
 LINEと国や自治体を結んで、ビッグデータを利用した調査や健康サポートのシステムを作り上げたのが、医療政策を専門とする慶應義塾大学医学部の宮田裕章教授だ。クローズアップ現代+にゲスト出演している宮田教授は、新型コロナウイルスの流行の兆しが見えていたことし2月下旬、ビッグデータの活用がいかに不可欠かを指摘していた。
*慶應義塾大学医学部 宮田裕章教授
 「もしこのまま感染がおさまらなかった場合に、どういった対策を打てばいいのか、判断の根拠になるものがない。患者だけでなく、自宅に待機している潜在的な患者も含めてエリアごとに把握しながら対策を考えないといけない」。 その後、宮田教授はLINEや厚労省と協議を重ね、調査の実施へとつながっていった。感染拡大の収束がまだ見えない中、データを活用することの重要性は今後さらに高まっていくと話す。
*宮田教授
 「今後もしオーバーシュート(感染爆発)が発生するとしても、症状を訴えている人の情報をより早く集めることで、どれくらいの患者が発生しうるのか、それに備えるための現場の準備につなげることができる。データを蓄積しながら判断を重ねて、人々に還元していく、これがいちばん大事です」
●IT企業もビッグデータを提供 
 LINE以外にも、新型コロナウイルスへの対策にビッグデータを役立てようという動きは、いくつかのIT企業の間で広がっている。グーグルは、地図アプリで集めた匿名のビッグデータを使って、新型コロナウイルスの影響を受けて世界各国の人々の活動がどれほど変化したかを、今月3日からブログで公開している。それによると、3月の1か月間の人々の活動量は、厳密な都市封鎖が行われたフランスでは大幅に減少した。一方、日本では駅など交通機関への人出は減少したものの、娯楽施設への人出は、3月下旬にかけての桜の開花や3連休のタイミングで増加していた。また、IT大手ヤフーでも、アプリを通じて匿名で提供を受けた人々の位置情報や購買履歴、検索ワードなどのビッグデータを厚労省に提供すると発表していて、分析の結果が対策に活用されることが期待されている。
●AI・ビッグデータがもたらす未来の医療
 日本以上に新型コロナウイルスの感染が広がっているイギリスでは、ビッグデータとAIを活用したサービスが、急速に普及している。イギリスのベンチャー企業「Babylon Health(バビロン・ヘルス)」が運営するAIを使った遠隔診療サービス「AIドクター」は、国の保険が適用され、すでに80万人以上が登録している。ことし2月には、新型コロナウイルスの診断プログラムが追加された。利用者は、スマートフォンやパソコンによるチャットで、AIに対して現在の体調や症状を申告する。すると、AIが自動で質問を投げかけて生活習慣や持病などを聞き取り、可能性のある病名を回答するという仕組みだ。24時間365日、待ち時間なく利用することができ、チャットの開始から可能性のある病名の回答までわずか数分ですむ。医療費がほぼ無料のイギリスでは、軽い症状でも人々が病院に頼るため、受診できるまで最大2週間かかることもある。このAIドクターが、医師に代わって最初の診断を担うことで、病院に駆けつける人を減らすことができ、今回の新型コロナウイルス対策でも医療現場を支える役割を果たしているという。
●AIの可能性
 AIドクターを支えているのが、患者の症例などの膨大な医療ビッグデータだ。AIは、データの分析・学習を重ねることで診断の精度を高め続けていて、ある医療テストでは、AIドクターの診断の精度が人間の医師を上回ったという結果も出ているという。さらに、カメラに映った患者の表情をAIが読み取ることで、患者自身も気付かない病気の兆候を見つけ出す試みなども行われ、新しい医療の可能性も示している。
*バビロン・ヘルス 最高医療責任者 モブシャー・バットさん
「ビッグデータを用いた医療は、今のような集団感染が起きた時こそ本領を発揮する。AIドクターを使えば、対面による感染リスクを減らしてサポートができる。世界中の国がこれを医療に導入するまでそれほど長い時間はかからないだろう」
このAIドクターは、イギリスだけでなくアフリカなど世界17か国で導入されていて、日本でのサービス開始も検討されているという。
●一人ひとりのデータが未来を支える
 大きな可能性を持つ医療ビッグデータの活用。しかし、一人ひとりの健康状態や病歴などは、最も厳密に管理されなければならないプライバシーデータ=個人情報でもある。集められたデータが目的外に流用されたり、外部に漏えいしたりすることはあってはならない。この点に関して、宮田教授は、データ活用には「信頼」が重要だと指摘する。
*宮田教授
 「皆さんから多くのデータを集めるためには、信頼される形でデータを使うことが必要。データの十分な管理がなされているか。公共の利益のために使われているか。第三者機関の監視や複数の機関が関わることで、信頼を高める仕組みを作る。データは誰かが持っているだけでなく、共有することによって価値が高まっていく。ひとりのデータがみんなのために役立てるだけではなく、そのデータが、結局、一人ひとりを支える仕組みを作ることによって社会そのものをいい方向に向けていきい」
 厚労省のLINEを使った調査は、これまでに3回行われ、今後も続けられる予定だ。合わせて行われている自治体の健康サポートでは、長期にわたって健康状態をフォローすることで、今後、回復に向けた医療ケアにつながるような分析も可能になるのではないかと期待されている。統計的な分析やAIによる解析によってより高い価値を産み出すビッグデータ。うまく活用すれば、私たちが新型ウイルスに対して立ち向かう大きな武器となるはずだ。ビッグデータとコロナウイルスについては、15日(水)午後10時放送予定のクローズアップ現代+で詳しくお伝えします。

*9-3:https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/20/051400292/ (National Geographic 2020.5.14) 新型コロナ、韓国はいかに感染爆発を食い止めているのか、大量の検査実施とビッグデータを活用した接触者の追跡が奏功
 韓国ソウル市にあるH+(エイチ・プラス)ヤンジ病院の駐車場に設置された新型コロナウイルス臨時検査場は、外から見ると普通のプレハブ住宅とあまり変わらない。だが、そのなかには真新しい透明のプラスチック板に囲まれたブースが4つ置かれ、危険な病原体を扱う研究室にあるように、プラスチック板に開けられた穴にゴム手袋が取り付けられている。患者はブースに入ると、プラスチック板の反対側にいる医師とインターコムを通じて会話し、手袋をはめた医師が患者の鼻と喉から検体を採取する。患者と医師が直接接触することはない。ブース内は陰圧状態が保たれていて、ウイルスを含んだ飛沫がブースの外に漏れ出ないようになっている。検体の採取が終わったら、防護服を着た職員がブース内を消毒し、ゴム製のワイパーでプラスチック板を掃除する。韓国全土に設置された同様のウォークイン式検査場は、大量で迅速な検査実施を可能とし、早期のウイルス封じ込めに成功した韓国の感染症対策の柱のひとつになっている。このほかにも、人口5100万人の韓国は接触者追跡にビッグデータを活用し、クレジットカードの利用履歴や携帯電話の位置情報をもとに感染者の移動経路を明らかにした。韓国の世論調査では、感染拡大を阻止するためなら個人のデジタルプライバシーが犠牲になっても良いという回答が多数派を占めている。当局は厳しい社会的距離政策を推進したが、その多くは自粛要請にとどまり、バーやレストラン、映画館の強制的な閉鎖措置は取られなかった。その韓国でも、コロナウイルスの流行が完全に終息したわけではない。最近になって複数のナイトクラブで集団感染が発生し、5月13日の時点で新規感染者は119人に増えた。それでも、韓国政府の対応は世界のお手本となるだろう。ここまで来るのは、簡単なことではなかった。
●過去の感染症から学んだ韓国
 韓国の迅速な対応は、過去の感染症から学んだことによる。2015年に流行したMERS(中東呼吸器症候群)により、韓国では186人が感染し、38人が死亡した。流行が終息してすぐに、韓国議会は接触者の追跡を包括的に実行できるよう法律を策定し、感染者と接触した人を全員追跡して隔離する態勢を整えた。衛生当局は、クレジットカード会社に対して患者のカード利用履歴を、携帯電話会社に対しては位置情報を要請する権限が与えられた。さらに、それをもとに再現された感染者の行動経路が、本人の名を伏せて公開される。人々はこれを見て、その経路上で自分が接触したかどうかを確認できる仕組みになっている。韓国では当初、毎日のように数百人の感染が報告され、ピークに達した2月29日には、主に大邱(テグ)市の宗教団体での集団感染により、909人の感染者が出た。だが接触者の追跡と大量の検査のおかげで、制御不能になる前に初期の感染者増加をなんとか抑え込むことに成功した。その後も同じ戦略によって、教会やゲームカフェ、コールセンターでの集団感染を早期に封じ込めた。4月15日、韓国は総選挙を実施し、2900万人がマスクと手袋を着けて投票に出かけた。投票所では全員の体温を測り、発熱している人を選別した。この選挙による感染者はひとりも報告されていない。韓国のデータ収集は、一部の国からは患者のプライバシー侵害だと言われるかもしれないが、韓国国民からは広く支持されている。ソウル大学公衆衛生大学院が3月4日に実施した調査では、1000人の回答者の78%が、ウイルス封じ込め対策を強化するためなら人権の保障が多少受けられなくても仕方がないと回答した。過去の流行の経験からも、国民は政府の正式なガイドラインが発表される前から外出自粛を始め、外ではマスクを着けるようになっていた。そして何よりも、韓国は2015年のMERS流行後、診断検査能力の拡充に乗り出していた。米国は疾病対策センター(CDC)の開発した検査キットに頼っていたが、韓国は民間企業を活用した。今年1月下旬、政府は国内のバイオテク企業に検査キットの開発を要請し、それから1カ月以内には1日1万件の検査を実施していた。韓国のバイオテク産業は近年急成長し、パンデミックが始まったころには既に増産の態勢が十分に整っていたと、ソウルの南、板橋(パンギョ)にあるTCMバイオサイエンス社の最高経営責任者トーマス・シン氏は言う。「ここ5年間で、韓国では多くのバイオテク企業が生まれました」。TCMも政府の要請に応じてキットを開発し、4月に食品医薬品安全処の認可を受けた。シン氏は、検査キットの開発は企業経営の観点からは必ずしも簡単な決断ではなかったと話す。新しい感染症は予測が難しく、早期に封じ込められれば初期開発費が回収できなくなってしまう。しかし、韓国はウイルス発生源である中国と強いつながりがあったため、韓国が中国と同じ状況に陥るのは時間の問題だと、TCMは考えた。さらに、世界市場でもビジネスチャンスが生まれるだろうと予測した。これまでのところ、同社は260万ドル(約2億7700万円)相当のキットを出荷している。(以下略)

*9-4:https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20200423-00071905-gendaibiz-pol&p=5 (Yahoo 2020/4/23) 新型コロナで世界が苦悩する「監視・プライバシー」をめぐる難題
●コロナ対策とプライバシーの問題
 新型コロナ対策のために、日本でもパーソナルデータの利用や接触者追跡のシステムの導入に向けた動きは本格的に始まろうとしている。4月1日の新型コロナ感染症対策専門家会議の見解で、「パーソナルデータの活用」「アプリ等を用いた健康管理」が言及され、6日には、内閣官房で「新型コロナウイルス感染症対策テックチーム」のキックオフ会議が開催され主要なIT事業者や移動通信会社、団体が参加している。世界的な流れも、プライバシーへの介入をなるべく少なくした接触者追跡のためのアプリ導入に向けた動きが進む。3月31日にはヨーロッパ各国の研究者が横断的に協力して開発した、EUのプライバシー保護規制に準拠した接触者追跡システムを発表。4月10日には、アップルとグーグルがスマートフォンを使った接触者追跡技術の共同開発を発表し、技術文書のドラフトをリリースした。4月13日には、日本でも民間団体による接触者追跡アプリの開発を待って政府が実用実験を行うことが報道された。感染症対策は、個人情報やプライバシーの問題と、社会的な必要性との間で慎重にバランスをとることが求められる分野だ。感染者の行動追跡はその典型で、どこへどのような手段で行き、誰と会ったかなどは極めて私的な事柄だ。通常、第三者に開示することを強いられるものではないが、接触者の追跡のために情報収集が正当化される。しかし、正当化されることと、それが適当か、あるいは機能するかは別問題だ。どのような個人情報をなぜ収集するのか、収集された個人情報をどのように利用し、誰に提供され、あるいはどこまで誰に開示されるのかなど、プロセスの透明性が確保され、適切な管理と規制のもとに置かれていなければ、信頼性を欠くからだ。また、「知りたい」「知っておきたい」ではなく、私的領域に介入してまで収集する必要性があることへの理解と、提供したことにより発生する不利益(接触者の隔離による社会生活上の制約など)に対する手当の両方が、本当に機能させるには不可欠だろう。今、感染症対策の伝統的手法に加えて、私たちが日々利用しているスマートフォン、SNS、アプリ、検索エンジンなどの利用により蓄積される位置情報や利用履歴などの個人データの利用や、情報技術を使った接触者追跡などの利用が加わりつつある。政府に法的な権限や根拠を手当てすれば、信頼性や透明性、そして発生する不利益への手当てを欠いたとしても、感染症対策としてデータの収集・利用は可能となるが、それで果たして良いのかが問われている。新型コロナの感染急拡大により、新たなツールやデータの収集・利用方法の開発・実装とすでにある個人に関する情報の提供・利用――技術的イノベーションと個人の私的領域への介入――が急速に、かつ同時並行的に進んでいる。こうした中で、感染症対策という非常時の手段として、どのような条件でどこまで正当化できるのかが今、問題になっている。新型コロナ対策として、個人情報やデータの利用について世界ではどのような取り組みが行われ、何が課題・問題になっているのかをまずはまとめたい。
●データを活用した対策の効果は…
 人の日常がデジタルの痕跡で残るようになり、従来とは異なる方法で感染者の監視・管理、接触者の追跡を行おうとする試みは以前からある。2014年に主にシエラレオネ、リベリア、ギニアで発生したエボラ出血熱の地域的流行が、最初にデジタル情報を本格的に使った感染症対応といわれている。この時、携帯通話データなどの個人情報が、国際的な官民援助機関の要求により通信事業者から提供されたものの、様々な問題を引き起こした一方で、感染予測に役立ったという根拠はなく、感染症対策としての効果が薄かったという検証結果も報告されている。報告では、ツールやシステムの開発の方が成果がわかりやすいので資金がつきやすく、独自のものが乱立しがちになること、それらは十分な評価・検証されずに実験的に投入されること、データを得ても効果的な対策ができなかっただけでなく、データは特定のツールやデバイスのユーザーに偏るため、脆弱で最も支援が必要な人ではなく、支援が必要ない人を支援する結果になる可能性があることなどが指摘されている(なお、この時の経験をもとに、人道支援分野では倫理的にかつ責任ある個人データの扱いが議論され、国連やWHOの方針等にも反映されている)。当時よりも個人データの集積・利用が進み、またエボラ出血熱のような一部地域での流行ではなく、新型コロナウイルス感染症は世界的流行となった。その中で、個人データの利用・提供とツールやシステムの開発・導入は様々なレベルで加速している。これらは主に、以下のようなものに分けることができる。この中で最も論争となっていることの一つが、位置情報の扱いだ。
 (1)感染者の行動履歴を携帯の位置情報のほか監視カメラなどから特定(中国、韓国、
   イスラエルなど)
 (2)アプリを義務的導入、一部地域で人々の行動監視(中国)
 (3)無症状・軽症の陽性者の自宅隔離監視ツール(台湾、韓国、オーストラリアの一部
   の州など)
 (4)匿名加工した位置情報の提供(アメリカ、ドイツなど)
 (5)匿名加工した健康管理アプリのデータの提供(ドイツなど)
 (6)ブルートゥースを使った接触者追跡アプリ
 (7)統計情報の提供
 (1)~(3)は、感染者や接触者に対して介入的に位置情報含む個人情報を収集・管理・行動を制限するもの、(4)、(5)はビッグデータの利用で位置情報や健康情報というセンシティブな情報を吸い上げるものだが(5)は任意のアプリ、(6)は個人の自発的意思によって使うものだがプライバシーへの介入が制限的と言われているが議論のあるものだ。(7)は個人への直接の関与・介入はないが、個人のセンシティブな情報の集積であるので目的を限定する必要があり、かつバイアスや差別を排除した利用をしないと政策判断を誤る可能性のあるものだ。
●監視化する世界?
 少し具体的に見ていくと、中国は既存の社区(コミュニティ)に分割した社会管理システムによる住民同士の相互監視と、情報システムを利用した監視システムの両面で住民を管理している。ニューヨークタイムス紙によると、感染拡大が明らかになると中央政府が地方政府に対策を求めた後、居住委員会や自治体が相互に競い合って住民の移動に関する独自の極端なルールを作り、相互監視が強化されているという。フォーリン・アフェアーズ誌によれば、100万人以上が地元で監視活動を行い、それに加えて、既存のAIを用いた顔認証システムの利用、スマートフォンアプリを義務化し、人に色分けしたタグ付けをして移動範囲の制限等を行っている。韓国は、2015年のMERS(中東呼吸器症候群)の流行時に感染者の訪問先を隠したと批判されたことで、感染症法が大幅に改正され、感染者の移動履歴などの詳細情報が公開されるようになった。また、接触者追跡のための聞き取り調査に加え、監視カメラ映像、クレジットカード使用歴、GPS情報を使っている。中国もシンガポールも、同じ手法で追跡調査を行っている。MITテクノロジー・レビュー誌によると、韓国では感染者が2メートル以内にいた、あるいは咳をしたときに同じ部屋にいると、「接触者」とされ、2週間の自己検疫が命じられ、移動が法的に禁じられる。接触者はアプリか電話で毎日の健康状態を報告し、移動した場合は警報が本人とケース担当者に送信される。2月26日に感染症予防法などの改正法案が成立し、入院や隔離措置に違反した場合の罰則を強化するなどしている。イスラエルは、安全保障局が裁判所の命令なしに個人の電話を追跡できる権限をネタニヤフ首相が承認。テロリストに対する監視方法を新型コロナ感染者の追跡に利用している。また、3月22日に接触者追跡アプリHamagenの提供をはじめた。アプリユーザーの位置情報と、陽性診断前14日間の感染者の位置情報を相互参照し、一致した人に対してどのような対応をすべきかを通知する保健省へのリンクが送信され、保健省にも報告がされる。ロイター通信によると、イスラエル国防省は、スパイウェア会社が作成した携帯電話から収集されたデータを分析するソフトウェアを使って、感染が疑われるものを特定して検査を計画している。感染者数の増大とともに、国防大臣は感染の可能性のある接触者の追跡にはもはや位置情報の追跡は効果的ではないと述べたという。位置情報を利用しているものには、陽性でも無症状者や軽症者の自宅検疫監視ツールがある。BBCによると、台湾では、自宅検疫を命じられた者は「Electric Fence」を起動してスマートフォンのデータが追跡され、外出すると連絡を受けた警察や地元当局が15分以内に対応。携帯電話の電源が切れていた場合は、自宅まで警察が来る。ポーランドでは、14日間の自宅での自己検疫を確実に行うためのアプリを公開。最初にセルフィーで写真を登録し、定期的に位置情報とともにセルフィーを送る要請が届き、20分以内に送信できないと警察により警告され、従わなかった場合は罰金が科される。自己検疫対象者は、アプリをダウンロードして使用するか、警察の訪問を受けるかを選択しなければならない。また、位置情報ではないが、ロイターによると、ロシアは帰国・入国者すべてに2週間の自己検疫を求めており、モスクワ警察は顔認証技術を使用し、200人以上の自己検疫対象者を違反者として取り締まったという。匿名加工した位置情報の提供を受けているのが、ドイツ、オーストリア、ベルギー、イタリア、スイス、スペイン、ポーランドなどだ。イギリスでも通信事業者などと協議中と伝えられているほか、欧州委員会はヨーロッパ通信大手事業者に対して、欧州委員会として利用法を管理するため、数億人分になる匿名化及び集計された域内の携帯電話のメタデータの共有を要請したと報じられた。アメリカも匿名化した位置情報の提供を受けているとされるが、通信事業者ではなく広告事業者がアプリを通じて収集したもののようだ。広告事業者の活動自体が不透明であり、位置情報の収集方法に疑義があるため批判の対象になっている。
●位置情報以外で接触者を追跡する方法
 そして今、もっとも導入が広がりそうなのが、位置情報以外で接触者を追跡する方法だ。シンガポール政府は、3月20日にスマートフォン向けのアプリTraceTogetherの提供を始めた。GPSやwifiはどこにいるかという位置情報を示すが、Bluetoothは例えば接続するイヤホンなどの機器との距離がわかるので、同じアプリを入れた機器同士の距離を計測して記録する。アプリストアから自分の意思でダウンロードし、起動して携帯番号を登録する必要があり、これが政府の管理するサーバーに登録されIDも自動生成され一元的に管理される。Bluetoothをオンにしておき、同じアプリの入ったスマホが近くにあると、(1)タイムスタンプ、(2)Bluetoothの信号の強さ、(3)機種、(4)一時的なID(定期的に変更される)の4情報が交換され、それぞれのスマホに記録される。TraceTogetherのウェブサイトによると、これらの情報は外部には送信されず政府が管理しないとされ、接触情報が使われるのはアプリのユーザーが感染した場合。本人の同意で保健省の職員がアプリ内の暗号化された情報を政府のサーバーにアップロードして解読し、過去21日間に2メートル以内に30分以上いた接触者を特定し、追跡担当者から接触者に電話をする。電話を受けて本人が同意をすると、その情報もアップロードして解読するという。誰が感染者か、接触者であるかは双方に伝えられないともしている。(なお、現在、TraceTogetherはオープンソースとなっているが、それより前にリバースエンジニアリングとユーザーのトラフィックを検証した結果として公表されているレポートによると、アプリがデータを政府のアプリケーション分析プラットフォームに送信していたという報告もある)。21日間経つとデータが消去され(ただし、この自動消去は4月8日のアップデートで実装されたので、アップデートしていないと21日を超えてデータが残る可能性がある)、Bluetoothをオフにすると記録は停止、アプリを削除すると蓄積されたデータと一元管理されているIDなどの情報も削除されるという。いつでも自分の意思で利用を停止、データ利用の撤回ができるとして、シンガポール政府は国民に利用を推奨し普及をはかっている。
●ヨーロッパで起きていること
 ヨーロッパでは8ヵ国130人以上の科学者などが、EUの個人データ保護規則であるGDPRに準拠したプライバシーを保護した汎ヨーロッパの接触トレース(Pan-European Privacy-Preserving Proximity Tracing:PEPP-PT)技術の設計・開発に共同で取り組んでいると4月1日に発表した。このプロジェクトでは、Bluetoothを利用したもので、各国や民間でそれぞれのアプリを開発・使用するのではなく、EU域内での技術の標準化し、国が識別でき、各国の公衆衛生などのプロセスで機能する特徴を備えるものとされる。アプリの匿名化したユーザーIDは中央で一元的に管理され、感染が確認されるとスマートフォンに蓄積された接触情報が中央サーバにアップロードされて解読され、接触者に連絡するものになるという。プロジェクトメンバーにフランス国立情報学自動制御研究所が含まれ、フランスはPEPP-PTを用いたアプリの準備を表明している。別のイニシアティブもあり、ヨーロッパの7つの研究機関の約25人の研究者によって設計された分散型プライバシー保護接近トレース(DP-PPT)が発表された。PEPP-PTとは異なり、アプリユーザーの仮名IDは中央に一元的に保存することを要求しない。より、国家による監視システムへの転用などをしにくくするためという。これとは別に、イギリスでも接触者追跡のためのアプリの導入を現在検討している。さらに冒頭に述べた通り、GoogleとAppleは共同で接触者追跡技術の共同開発を表明した。4月8日に欧州評議会は、新型コロナ対策として汎ヨーロッパの接触者追跡アプリと、匿名化及び集計された携帯の位置情報データを利用による新型コロナウイルスの展開のモデリングと予測を二本柱とした勧告を採択しており、方向性は作られつつある。
●人権は尊重されなければならない
 こうした世界各国の前のめり気味な動きに対する警戒感や問題点の指摘が、市民社会や研究者などから表明されている。もちろん、新型コロナ対策を効果的に行い、人の命を守る必要があることについて異論を唱える人はおらず、情報やツールがあれば解決するという単純化がもたらす深刻な副作用を懸念している。その懸念に対し、WHOの3月30日の定例記者会見で、健康関連の緊急事態対応を統括するマイケル・ライアン氏は、個々の市民に関する情報の収集や位置情報の追跡には、常に非常に深刻なデータ保護、人権の原則が関係していること、開発されるすべてのものが可能な限り最も慎重な方法で行われ、個人の自由や権利の基本原則を超えないようにしたいと述べている。電子フロンティア財団(Electronic Frontier Foundation; EFF)やプライバシー・インターナショナル(PI)など、プライバシーと市民的自由の問題に取り組むNPOは、早くからこの問題に対して警告し、問題点を繰り返し指摘してきた。4月2日には人権・デジタル権の問題に取り組む世界各国100以上のPIを含むNPOが連名で、新型コロナの世界的流行に対して電子的監視テクノロジーの使用には人権が尊重されなければならない旨の声明を出した。声明では、プライバシー権や表現・結社の自由といった権利に対する脅威となるため、新型コロナ対策のための国の取り組みが、電子的監視テクノロジー能力の大幅な拡張のための口実になってはならず、現在のような非常事態であっても、政府が個人や住民監視に電子的テクノロジーを用いる場合は厳格に人権を保障して実行することを求めた。また、政府が電子的監視テクノロジーを用いる場合には、適法かつ適切な方法でなければならないこと、例外的に監視権限を強化する場合はその期限を明確にすること、健康情報を含む個人データの収集・保存・集計を強化する場合は、新型コロナ対策のみに用いること、ビッグデータやAIを含む新型コロナ対策のためのいかなる電子監視テクノロジーの利用による差別や排除のリスクを踏まえることなどを求めている。EFFは、新型コロナ対策のための手段として電子的監視を含む新たな管理権限を政府が要求する場合、政府にはその手段が新型コロナ対策に効果的であることを示したか、有効性が示せた場合、その方法がどのくらい市民的自由を侵害するのか、そしてその侵害が過度でないとすると監視手段にはセーフガードがありそれが機能するかということを明らかにすべきだとしている。そして、アプリなどによる監視は個人の任意の同意による必要があること、個人情報は必要最小限収集・保存し、利用目的を明確かつ明らかにすること、情報セキュリティの透明性が必要であること、システムの設計段階でプライバシー保護を組み込むこと、立法府が関与し政府のプライバシー影響評価とポリシーへの市民のインプットを検討すること、監視プログラムの詳細を可能な限り公開し透明性を確保すること、バイアスを排除すること、市民の思想、信条、表現及び結社の自由をターゲットにしてはならないこと、安全措置の違反があった場合に訴訟ができること、有期限の手段とすることを求めた。こうした意見や声明が出される背景には、個人データを含むデータの取得や利用、テクノロジーの利用が、どこまで効果があるのかが明確ではないまま、悪化する状況に対応するため実験的に行われており、その結果として新たなシステムや権限を政府が獲得していくことになりかねないことへの懸念がある。例えば、ヨーロッパで取得が進む匿名化した位置情報については、データの加工には24~48時間かかるため、政府が取得してもビックデータ分析にほとんど役立たず、ヒートマップの方が有効で、また匿名化しても位置情報を使って15の人口統計的特性で99.98%の個人を特定できたという、インペリアルカレッジとルーヴェン・カトリック大の研究結果があるとの指摘がある。また、シンガポールが導入し、日本を含む世界各国で導入に向けた検討・準備が始まる接触者追跡アプリについても有効性には疑問が示されている。ビジネスインサイダーによると、オックスフォード大のビッグ・データ研究所は接触者追跡アプリについて有効だとの研究結果を発表したが、どのくらいアプリのユーザーが広く広がるか、そもそも検査が幅広く行われているか次第であり、また、アウトブレイクの早い段階で使用されることに効果があるという。また、アプリはすべての感染可能性を記録しているわけではなく、ユーザーに誤った安心感情を作り出す危険があるとしている。また、WIRED誌には、感染症対策ではたまたま飛行機に隣に座っただけの人も含めて個人情報が補足され、疾病管理データベースなどに登録されるなど、多くの人の情報が含まれる可能性があるが、そのデータがいつまで利用されるのかは明らかではなく、また利用が停止されることを多くの人が信じていないと研究者の指摘がある。また、ある時点で接触者追跡は接触者が多くなりすぎて実行不可能となるともしている。追跡者接触アプリを導入すると、従来より多くの接触者が機械的に特定され、たまたま居合わせた人など広範囲かつ大量に個人情報が収集されて保存、利用される可能性がある。そうした場合にいつまでどのような利用目的で個人情報を保有するのか、目的外利用は行われないのか、そして多くの接触者にどう対応するのかといったことの準備が必要であることは明らかだろう。

<RNAウイルスに対する安価なワクチン・治療薬>
PS(2020年5月20日):新型コロナに関して、現在は必要な検査も受けられず治療薬もない状態であるため、21世紀の医療が期待できない。そのため、私は、医者いらずのアロエやヨーグルトを飲む伝統的な方法をとっているが、これが意外と効いている。そのため、新型コロナのようなRNAウイルスが細胞に感染することを利用して、乳酸菌(麹菌でも可)に感染させ、生き残った乳酸菌株でヨーグルトを作れば、RNAウイルスに対するワクチンや治療薬の働きをするヨーグルトを安価に作れるのではないかと思う。ちょうど、*10-1のように、コロナ禍で牛乳が余るくらいに牛乳の生産能力はあるため、(すぐに需給調整したり、国の補助金に頼ったりするのではなく)付加価値の高い製品を作ることを考えた方が賢明であるし、牛乳はいろいろなやり方で使えるのである。
 さらに、*10-2のミドリムシも健康食品になっているが、新型コロナに感染させた後に生き残った株を増やせば、それには抗原や抗体を含ませることができ、(燃料としては高すぎるが)治療薬やワクチンとしてならアフリカでも使える安価なものを作れるのではないかと思う。

*10-1:https://www.agrinews.co.jp/p50774.html (日本農業新聞論説 2020年5月13日) コロナ禍酪農危機 一丸で生乳需給調整を
 新型コロナウイルス感染拡大に伴う緊急事態宣言の長期化で、生乳の需給緩和が重大局面を迎えている。特に主産地・北海道での生乳処理が限界に近づき、処理不可能乳が出かねない危機的状況だ。生乳需給調整へ酪農、乳業、行政が一体となり難局を乗り切るべきである。コロナ禍による急速な需要減少は、生乳生産全体の6割近くを占める北海道で深刻な事態を招いている。Jミルクは「ミルク・サプライチェーン(供給網)が寸断され、酪農・乳業界に大打撃を与えかねない」と懸念を募らせる。一方で、こうした現状が消費者に伝わりにくい実態にあるのも事実だ。家庭内需要に限れば、牛乳は前年対比で2桁伸び、乳製品消費も堅調だ。江藤拓農相をはじめ関係者挙げて牛乳・乳製品の消費拡大を呼び掛け効果も出てきた。だが問題は、「生クリーム、バターをはじめ生乳全体の半分近い業務用需要の落ち込み量をカバーできない」(Jミルク)点だ。例えばバターは家庭需要が好調だが、全体の2割にすぎない。生乳は全国で毎日約2万トン生産される。ホクレンをはじめ各指定生乳生産者団体は懸命の配乳調整を続けているが、行き場を失った大量の生乳をどう処理、販売していくのか。コロナ禍で既に欧米各地では生乳廃棄が相次ぐ。外出自粛で外食など業務用需要が大幅に縮小する一方、北海道の生乳生産は5月後半からピークとなる。5月の全国生乳生産見込みは65万トンで、前月に比べ2万5000トンも多い。全国の大半の小中学校休校継続で、学校給食向け生乳の道外移出も激減。需給の調整弁となるバター、脱脂粉乳を製造する道内の乳製品工場での処理能力を超えた生乳が供給されつつある。現在、製造余力のあるチーズ工場に生乳を振り向けるなど綱渡りの需給調整が続く。4月下旬、関係者は相次ぎ記者会見を行った。生乳需給が重大局面を迎えていることの危機感からだ。道内の生乳生産量が最も多い5、6月を過ぎれば需給は好転に向かうとの見方も強い。それまでの間に、需給調整と消費拡大を強力に進め、どう難局をしのぐかが最大の課題だ。国内酪農は、都府県の生産基盤弱体化が深刻で、需要が生産を常時上回る状態が続いてきた。始動した新たな酪農肉用牛生産近代化方針(酪肉近)でも、基盤強化と着実な増産実現が焦点となった。乳牛増頭で増産基調を維持しながら、コロナ禍の中で需給調整を徹底し、国内酪農を守らなければならない。関係機関は、月末にも直近情勢を踏まえた生乳需給見通しの具体的数字を示す。脱粉は需要低迷から在庫が過去最高水準に積み上がっている。農水省が1月に示した今年度の脱粉輸入枠は4000トン(製品換算)だが、当初から過大な数字との指摘が出ていた。今の生乳需給重大局面の中で、同省が輸入量の修正に踏み切るか注目したい。

*10-2:https://digital.asahi.com/articles/photo/AS20200213002231.html (朝日新聞 2020年2月13日) 航空機バイオ燃料、熱い視線 国内でも開発、コスト課題
 藻の一種に含まれる油脂やごみなどを原料とする「バイオジェット燃料」を、航空機燃料に導入する動きが進みつつある。地球温暖化を防ぐため、世界が二酸化炭素(CO2)削減に取り組むなか、大量のCO2を排出する航空業界も対応を迫られている。日本で普及するには安定供給とコスト削減がカギになる。
■原料にミドリムシ、木のチップ、衣料品…
 横浜市鶴見区にある、微細藻類のミドリムシを原料に使った健康食品などで知られるユーグレナ(東京都)が運営するバイオ燃料製造プラント。ここでミドリムシからとれる油脂や廃食油を原料に、航空機やバスなどで使える燃料をつくる実証試験が進められている。植物のように光合成で栄養分を体内にためるミドリムシは、周囲に酸素がないと細胞内に油脂を蓄積する性質がある。この油脂を燃料の原料として活用する。2018年秋に竣工(しゅんこう)したプラントは敷地面積約7800平方メートル、年間125キロリットルの燃料の製造能力がある。1月、このプラントの技術が、燃料を民間航空機に導入するのに必要な国際規格を満たすと認められた。同社は今春の初出荷を目指す。ネックは製造コスト。実証プラントを製造工場としても使う前提で、計算上1リットルあたり1万円になる。普及には同100円ほどにする必要があるという。同社バイオ燃料事業課の江達(こうたつ)課長は「コストの7~8割を占める原料をいかに安く手に入れるかがポイントになる」と話す。ミドリムシを安定、大量培養するため、同社は温暖で日射量が多いインドネシアやコロンビアで試験する計画を進める。国産バイオジェット燃料の普及に向けて、経済産業省と国土交通省は15年、検討委員会を設置。東京五輪・パラリンピック期間中にバイオジェット燃料を混ぜた燃料を使った飛行を目標の一つに掲げ、官民で議論してきた。ユーグレナも今年9月までの有償飛行実現を目標に掲げる。ユーグレナ以外にも、三菱日立パワーシステムズなどは木のチップなど木質系バイオマスを原料とし、液体燃料を作り出す技術を開発。ベンチャー企業グリーン・アース・インスティテュート(GEI)などは、回収した衣料品を糖に変えて菌の力でアルコールにしてから燃料にする。
■CO2排出減へ、供給足りず
 温暖化対策として脱炭素の動きが加速し、欧州では航空機を使わず、CO2排出がより少ない鉄道で移動する「飛び恥」という動きも生まれる中、航空業界も対応を急いでいる。国際民間航空機関(ICAO)は、国際線を運航する航空会社に、21年以降、CO2排出量を増やさない目標を課す。より燃費の良い機種への変更、燃料を節約できる運航方法の導入などとともに、化石燃料の代わりにバイオジェット燃料を使うことは、排出量を減らす一翼を担う。昨年11月までに世界21カ国の空港からの商業飛行の実績がある。日本航空と全日本空輸の大手2社だけでも1年に航空機から出るCO2は計約2千万トンにのぼる。日航は、09年に仙台などの上空で、17年には米シカゴ―成田便でバイオジェット燃料を含む燃料による試験飛行を実施。今年、GEI社の国産バイオジェット燃料を使うチャーター飛行を目指す。日航戦略グループの亀山和哉マネジャーは「CO2削減を長いスパンで考えている。バイオジェット燃料の調達は経営的にも大きな意味がある」と話す。全日空はユーグレナの実証プラントに協力するほか、国内外の燃料メーカーから供給を受ける体制を築く。全日空企画部の杉森弘明マネジャーは「(バイオジェット燃料など)持続可能な航空機燃料の導入は欠かせないが、生産量は世界的にもまだ少なく取り合いになっている」と言う。

<分散型エネルギー・自給率の向上と地方創成>
PS(2020年5月21日追加):日本政府が行っている大きな無駄遣いに原発の維持があり、原発を持つ大手電力会社の都合で、豊富な自然エネルギー(太陽光・風力・水力・潮流等)による発電が進まず、分散型エネルギーも進まず、エネルギー自給率は低く、環境負荷は大きいままだ。その上、自然エネルギーの豊富な農林漁業地帯にエネルギー代金を還流させずに、海外にエネルギー代金を大盤振る舞いで支払い続けているのだから、これほど馬鹿なことはない。
 そのような中、*11-1のように、東京新聞(中日新聞東京本社)は、本社編集部門のフロアで使用する電力(年間約百万キロワット時)を再生可能エネルギーに切り替えたとみなす「グリーン電力証書」購入し、編集部門が使用する照明・空調・記者やデスクの端末などに使う電力に再生可能エネルギーを利用したことになったそうだが、本当は東京の現場で取材する記者以外は東京にいる必要がなく、編集局・技術局・東京中日スポーツ総局・電子メディア局の管理部門や経理・総務・人事部門は、土地代が安くて豊かに暮らせる地方にオフィスを持ち、ITを使って分散型ワークをした方が早い上にコストが安い。例えば、社内だけで使う非公開のHPに、取材した記者が記事の原稿をジャンル毎に次々とアップし、それを編集者が編集して校正すれば、皆がどこにいても瞬く間に仕事ができる。また、英文で出したい記事は、インドオフィスの人に翻訳・編集をしてもらうと、(時差があるので)日本の夜中に安い賃金で働いてくれ、半日遅れで(欧米ではその日のうちに)英文の記事を出せるのである。
 そして、*11-2のように、地方もテレワークを導入して地方の拠点で都市圏の仕事を行えるよう、企業のオフィスを誘致できる拠点を整え始めている。企業にとっては、自然災害の発生リスクが小さな場所に多くのものを置いた方がリスクが小さい上に土地代が安く、地方も過疎にならないので助かるわけである。
 なお、*11-3のように、日本では、耕作放棄地が増えて生産基盤が弱体化し、1965年に7割を超えていたカロリー換算の食料自給率がたった37%に落ち込み、自国民を飢えさせながら食料を輸出する国はなく品質が保証されるとも限らないため、「食の安全保障」が乏しくなった。その上、マスクさえ中国に依存しているのでは、日本から輸出する製品がなくなるのは遠い先の話ではないと思われる。

*11-1:https://www.tokyo-np.co.jp/article/release/CK2019110802000196.html (東京新聞 2020年5月1日) 再生エネ電力で新聞編集します 本社「グリーン証書」取得
 東京新聞(中日新聞東京本社)は、本社編集部門のフロアで使用する電力(年間約百万キロワット時)を、再生可能エネルギーに切り替えたとみなす認証を取得しました。再エネを調達したと認める「グリーン電力証書」を購入して、火力や原発などではない再エネ由来の電力により、環境にやさしい新聞編集を目指します。グリーン電力証書は「日本自然エネルギー社」(東京)が発行しています。同社は国内で太陽光やバイオマスなどの再生エネ事業を手掛ける四十九発電所(計約三億キロワット)に発電委託。その発電量に見合った二酸化炭素(CO2)を削減したとみなして、環境を守ることに貢献したとする「証書」を売り出しています。第三者機関の日本品質保証機構が証書の価値を認証しています。東京新聞は十一月から、編集部門が使用する照明や空調、記者やデスク端末などに使う電力量に見合った証書(バイオマス発電)購入を開始しました。これにより編集作業の電力はバイオマスを使ったとみなされます。きょう八日朝刊の紙面から証書のロゴマークを掲載します。
◆環境保護重視、広がる購入 139社・団体がグリーン証書
 「グリーン電力証書」は、国内の企業で購入の動きが広がっている。再生可能エネルギーを利用したとみなされる仕組みを使い、環境保護の取り組みに積極的だと打ち出すのが狙いだ。背景には、企業の再エネ利用や二酸化炭素(CO2)削減の姿勢に対し、市民や機関投資家らの目が厳しくなっていることがある。証書発行を手掛ける日本自然エネルギー社によると、国内でグリーン電力証書を年間契約しているのは、トヨタ自動車や順天堂大医学部附属練馬病院など百三十九社・団体。年間契約電力量は計約二億五千万キロワット時に上る。味の素AGF(東京)はグリーン電力証書を購入することによって、一八年三月末から本社と営業拠点で使用する電力のすべて(約八十万キロワット時)を再エネでまかなっている形。アサヒビールは証書を通じ、主力商品スーパードライ(三五〇ミリリットル缶)の製造に風力発電とバイオマス発電を活用している。国内外の機関投資家は近年、「ESG(環境・社会・企業統治)投資」と呼ばれる考え方を重視し、環境保護や地球温暖化防止に積極的に取り組む企業に投資する姿勢を強めている。だが、多くの企業にとって自前の再エネ発電設備を持つのは難しい。そのため、グリーン電力証書などを活用して間接的に再エネ普及の促進に努めている。
     ◇
 東京新聞(中日新聞東京本社)が購入するグリーン電力証書は年間百万キロワットで、本社編集局、技術局、東京中日スポーツ総局、電子メディア局のフロアで一年間に使用する電力の総量分に相当します。

*11-2:https://www.agrinews.co.jp/p50842.html (日本農業新聞 2020年5月20日) [新型コロナ] 進むテレワーク導入 地方拠点で都市圏の仕事 北海道で誘致盛ん
●大学多数、災害同時発生リスク少で注目
 新型コロナウイルスの感染を防ぐため注目されている、在宅勤務などの職場以外で仕事する「テレワーク」。北海道では、企業のサテライトオフィスを誘致できる拠点を整えて、地域に人を呼び込む動きが以前から活発だ。先進地域の北見市では東京のIT企業が拠点を構え、学生にテレワークの体験の場を提供。ニセコ町では旧でんぷん工場を改装した施設が注目を集める。同市の担当者は今後、東京で働く必要性を考え直す企業や人が増えると予想、新たなニーズを地域の活力にと期待する。
●学生を地元に…インターン重視 北見市
 道内の自治体は、東京と同時に災害が起こるリスクの低さや大学の多さなどを背景にテレワークに注目。インターネット環境を整えた施設を設けるなどで企業や個人を呼び込んできた。道によると、道内35市町村がテレワークできる拠点を設置。2018年度末時点で、首都圏のIT企業を中心に64企業が道内にオフィスを開設しており、徳島県と並んで全国1位の数だった。全道に先駆けテレワークを軸に企業誘致を進めてきた北見市。地元の北見工業大学と連携し、IT企業の誘致にも力を入れ、20年5月時点で、東京に本社を置くジモティーなどIT企業4社が同市内に自社で拠点を持つ。うち3社は15年から総務省が始めた「ふるさとテレワーク推進事業」を活用して同市を訪れた。同事業を活用した地域数は15年度の15から19年度で58に増えた。同市の中心商店街に設置したサテライトオフィスには、テレビ会議システムやWi―Fiを完備する。このオフィスを事務所として使ったり、一時的に利用したりする人は年間延べ3000人。地方に拠点がない企業の「出張所」としてもニーズが高い。同市で現在力を入れているのが、同市外に進学した大学生を誘致した4企業などに就職を促すことを目的にした「ふるさとインターンシップ」だ。帰省費用は同市が負担し、東京の企業の仕事をテレワークで3日間、体験してもらう。2017年に始め、3年間で25人の学生が参加。市工業振興課の松本武工業係長は「地元の学生は北見には仕事がないと漠然と思っている。北見でも東京と同じような仕事ができると伝えている」と話す。市民に知ってもらう機会も設ける。東京に子どもがいる50、60代の親に、盆や正月の前に説明会を開く他、ちらしを配る。帰省した子どもに「テレワークについて伝えてほしい」と呼び掛けてもらう作戦だ。松本係長は今後、新型コロナウイルスの感染拡大でテレワークが注目され、社会全体で勤務形態が多様化すると、地方移住が進むのではないかと予想する。「東京に会社があるため仕方なく(都心に)住んでいる人もいただろうが、本当に会社に行く必要があるかを考え始めると思う。その時に北見市が選択肢に出てきてほしい」と話す。
●観光+αの力に ニセコ町
 スキーなど世界的な観光地・ニセコ町は、国内外からの長期滞在者向けに仕事もできる場所をつくろうと、地域の交流施設「ニセコ中央倉庫群」にテレワークできる環境を整えた。JAが所有していた倉庫やでんぷん工場を町が改修し、観光だけではなく仕事でも人を呼ぶ込む拠点にした。旧でんぷん工場には作業室、倉庫にはプロジェクターなどを整備した。19年度の利用者は延べ434人で、年々増加している。同倉庫群では、4月から地域おこし協力隊が企画したお菓子「NISEKO農OKAKI」を発売。同工場をかたどったパッケージには農業の歴史が書かれ、利用者に施設を紹介している。総務省は、企業のテレワーク導入の利点として優秀な人材の確保やコスト低減などを説明する。東京が本社の企業に勤め、同施設を利用する30代の男性も「賃貸で事務所を借りるよりも柔軟に動ける」と話す。

*11-3:https://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2020051802000116.html (東京新聞社説 2020年5月18日) コロナと食料 農業再生は「安全保障」
 田植えの季節。「密」とは無縁の空の下、粛々と作業が進む。この風景が消えていき、耕作放棄地が増えている。グローバルなモノの流れが突然止まる「コロナの時代」。農業再生は急務である。国連の世界食糧計画(WFP)は、新型コロナウイルスの影響で、食料不足に陥る人が激増すると予測する。ただでさえ温暖化の進行で、高温による大規模な森林火災や干ばつが頻発し、穀物生産や畜産が、深刻な打撃を受けている。その上に、コロナ危機の拡大による物流の停滞や、農作業の人手不足などが重なって、世界全体の飢餓人口は今年、二億六千五百万人に上り、昨年から倍増する恐れがあるという。まず直撃を受けるのは、気候変動の影響を受けやすく、食料を輸入に頼るアフリカなどの途上国には違いない。だが、輸入依存は日本も同じ。一九六五年には七割を超えていたカロリー換算の食料自給率は37%に落ち込んだ。半分以上を輸入に頼るということだ。現政権は「成長戦略」の名の下で、高級農産物の輸出拡大を念頭に、農業の大規模化、効率化には力を注ぐ。しかしその陰で、農家全体の高齢化は進み、耕作放棄地は増える一方だ。生産基盤の弱体化は止まらない。コロナ禍の拡大に伴って、ロシアなどが穀類などの輸出制限に踏み切った。世界貿易機関(WTO)は、自国の食料不足が危機的状況に陥った場合には、輸出を止める権利を認めている。「ほとんど影響は出ていない」と農林水産省は言うものの、温暖化が進行し、ウイルスとの“共存”を強いられる時代である。これからも、必要な時に必要なだけ、食べ物を売ってもらえる保証はない。例えばかつて、牛海綿状脳症(BSE)の流行で牛丼が姿を消した。今、コロナのまん延する米国で食肉の生産が減少し、豚肉の輸入に支障が出始めている。中国からの野菜輸入も一部途絶えた。海外依存リスクの顕在化-。コロナ禍の教訓だ。極端なマスク不足も極端な海外依存が原因だった。農産物は自然の恵み。マスクのように、すぐには増産に転じられない特殊な商品だ。農業再生は“危急重要”の課題である。このごろ盛んに「食の安全保障」と言う。それが国民の暮らしを守るということならば、核心は豊かな田畑を守るということだろう。コロナ危機を、いびつな成長戦略をただす転機にしたい。

<新型コロナの感染率と致死率について>
PS(2020年5月22、24日追加):*12-1のように、東大の児玉名誉教授らの研究グループが、都内の医療機関で5月1、2日に採取された血液を使って新型コロナの抗体の有無や量を調べたところ、500人分という検体の少なさはあるものの0.6%が陽性で、東京都の人口(約1400万人)から計算すると都内の人のうち約8万人に感染歴があると推計されたそうだ。そのため、*12-2のように、東京、大阪、宮城で抗体検査を1万人規模で実施するのは、「今後の感染拡大防止策」に役立つとともに、より正確な感染者数の把握ができる点で興味深く、北海道や九州でも行えばよいと思う。
 この新型コロナ致死率(死亡者数/感染者数)は、*12-3のように、全世界平均4.2%、イタリア・イラン6~8%前後、ドイツ0.2%以下、韓国1.1%と、各国で大きな差があるとされている。しかし、日本を例にとれば、①PCR検査の不備により新型コロナの死亡者がすべて把握されたわけではない ②感染者数も正確には把握されていない という理由で、致死率の値は実態とは異なり、国間の比較もできないと思う。そして、この新型コロナの致死率は、抗体検査を行って分母の全感染者数を把握すれば下がるし、しっかりPCR検査を行って他の死因に分類されていた死亡者を新型コロナの死亡者と認定すれば上がるものである。(参考:2020年5月22日現在、新型コロナの国内で確認されている感染者数は16,577人、死者数は814人)
 そのため、*12-4の「③人口100万人当たりの死者は米英で300~500人に対し、日本は約6人で大きな差がある」「④生活様式や医療格差だけでは説明できないと考え、人種ごとに異なる遺伝子によって免疫応答に違いが生じているとの仮説を立てた」「⑤患者の遺伝子解析を通じて解き明かそうというプロジェクトが始まり、特に注目しているのが免疫反応の司令塔の役割を果たすHLA(ヒト白血球抗原)である」「⑥ウイルスの遺伝子解析だけでは『半分』しか調べたことにならず、人間の遺伝子も解析することでワクチン開発を補完できる」「⑦新型コロナ感染症への抵抗性に関わる遺伝子が見つかれば、健康な時から血液検査でリスクを判定したり、ワクチンや治療薬の開発に貢献したりできる」という研究は21世紀風ではあるものの、その前に国毎に異なっている新型コロナの致死率の計算を揃える必要があるわけだ。
 私の個人的見解では、人種差よりも栄養格差・衛生環境格差・生活様式の差・医療水準の差の方がずっと大きく、人間の世代交代よりもウイルスの世代交代の方が比較にならないくらい早い(=進化しやすい)ため、初期に広がったウイルスよりも後から広がったウイルスの方が弱毒性で人を死に至らしめない方向に進化しているだろう(理由:そうでないウイルスは、次次と感染して生き残ることができないから)と推測できた。
 なお、PCR検査の陽性率も、*12-5のように、地域によって異なる把握方法をとっており、正確でもないため、民間の検査件数も含めて正確に計算すべきだ。国内で統一して陽性率を把握すると、同じような生活様式の国民間での陽性率の違いがわかり、WHOが世界で統一した基準を示して陽性率・死亡率を把握すると、栄養状態・生活環境・文化の異なる国民間での陽性率・死亡率の違いがわかるため、感染症に強い生活様式を割り出すことができる。それでも、PCR検査だけでは、感染を疑って検査した集団だけを検査するため陽性率が高く出るので、過去の感染歴を調べる抗体検査も重要なわけである。なお、数字を見るのは人を見ないということではなく、状況を定量的に把握する手段なのだ。


  2020.4.3    2020.5.14  2020.4.20    2020.4.3Yahoo  2020.5.24
  朝日新聞     朝日新聞   東京新聞               朝日新聞

(図の説明:1番左の図が国別致死率だが、国によって感染者数と死亡者数の網羅性が異なるため、厳密には比較できない。左から2番目の地域別を見ると、都市部の方が密であるため感染しやすいらしく、都市部に感染者が多く特定警戒区域になっている。中央の図の東京都男女別感染者の割合は、30~70歳では男性が多く、仕事の都合で閉じこもりにくいのではないかと思われる。しかし、80代になると女性の割合の方が高く、この世代は生存者そのものに女性が多いからだろう。右から2番目の図は、PCR検査と抗体検査の比較だが、症状のない感染者数も把握するには抗体検査が不可欠だ。1番右の図は、現在使われているPCR検査の陽性率の計算だが、算入されていない患者や二重・三重にカウントされている患者がおり、不正確になっている)

*12-1:ttps://www.jiji.com/jc/article?k=2020051500892&g=soc (時事 2020年5月15日) 東京大などのグループは15日、東京都内で採取された500人分の検体を使って新型コロナウイルスの抗体検査をしたところ、0.6%に当たる3人が陽性だったと発表した。都の人口に当てはめた場合、都内の8万人に感染歴があると推計される。 東大の児玉龍彦名誉教授らの研究グループは、都内の医療機関で5月1、2日に採取された血液を使い、抗体の有無や量を調べた。10代から90代の男女500人分のうち、20代と30代、50代の男性3人に陽性反応が認められた。児玉名誉教授は「きめ細かい対策のために、感染の危険性が高い職種などを知る必要がある」として抗体検査の必要性を指摘した。抗体は以前にかかった感染症と同じウイルスが再び体内に侵入した場合、体を守る特殊なタンパク質で、過去の感染歴を知ることができる。

*12-2:https://www.jiji.com/jc/article?k=2020052200403&g=soc (時事 2020年5月22日) 東京、大阪、宮城で抗体検査 1万人規模、新型コロナ感染状況調査―厚労省
 加藤勝信厚生労働相は22日の閣議後の記者会見で、新型コロナウイルスに対する抗体をどの程度の人が持っているか調べるため、東京、大阪、宮城の3都府県で、計1万人規模の抗体検査を実施する方針を発表した。6月初旬から開始する予定だ。抗体を調べれば新型ウイルスへの感染歴が分かり、日本全国の感染状況推計に役立つ。加藤厚労相は「今後の感染拡大防止策の検討に活用していきたい」と述べた。

*12-3:https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2020/03/post-92844.php (ニューズウィーク 2020年3月25日) 新型コロナ致死率に各国で大きな格差──イタリアでは8.3%
<全世界の致死率は4.2%だが、国によって数値には大きな開きが見られる。その要因とは?>
 新型コロナウイルス感染者数は3月19日までに全世界で23万人を突破し、死者数は9840人に達した。全体の致死率は単純計算で4.2%に上るが、イタリアやイランでは致死率が6~8%前後と高く、ドイツでは0.2%以下となるなど、各国で大きな開きがある。初期に感染者数が急増しながらも致死率が1.1%に抑えられている韓国は、検査と隔離政策を徹底。また、喫煙率が男性に比べて格段に低い女性が、男性より多く感染していることも、致死率を抑えた原因の1つとみられる。

*12-4:https://digital.asahi.com/articles/ASN5P5KCKN5PUCFI003.html?iref=comtop_8_07 (朝日新聞 2020年5月21日) なぜ人種で差 コロナ重症化、遺伝子解析で探る研究開
 新型コロナウイルス感染症が重症化する仕組みを、患者の遺伝子解析を通じて解き明かそうというプロジェクトが始まった。人口100万人当たりの死者は米英で300~500人なのに対し、日本では約6人で大きな差がある。研究グループはこの差が生活様式や医療格差だけでは説明できないと考え、人種ごとに異なる遺伝子によって免疫応答に違いが生じているとの仮説を立て、ゲノム解析で確かめることにした。重症化因子が判明すれば、今後のワクチン開発に生かせるという。東大や阪大、京大など7大学の研究者と研究機関などが参加。日本医療研究開発機構(AMED)から研究資金を得た。国内の約40の医療機関と連携、無症状から重症者まで、少なくとも600人の血液を調べ、9月までに報告をまとめる。慶応大の金井隆典教授が研究責任者を務める。特に注目しているのが、免疫反応をつかさどる司令塔の役割を果たすHLA(ヒト白血球抗原)。これを重症患者と無症状患者とで比較し、重症患者に特有の遺伝子を見つける。欧米でも進む同種の解析結果と照合すれば、日本人の死者数が少ない原因の解明にもつながるとしている。遺伝子解析が専門で東京医科歯科大特命教授の宮野悟・同大M&Dデータ科学センター長は「ウイルスの遺伝子解析だけでは『半分』しか調べたことにならない。宿主である人間の遺伝子も解析することでワクチン開発を補完できる」と話す。新型コロナウイルス感染症への抵抗性に関わる遺伝子が見つかれば、健康な時から血液検査でリスクを判定したり、ワクチンや治療薬の開発に貢献したりできるという。遺伝子と感染症には密接な関係があり、エイズウイルスに耐性を持つ遺伝子変異や、インフルエンザや肺炎に対して免疫が働かなくなる遺伝子病が見つかっている。かつてのシルクロード周辺に住む民族がかかりやすいベーチェット病など、遺伝子の違いによって、特定の病気になりやすい民族があることも知られている。

*12-5:https://digital.asahi.com/articles/ASN5R66BNN5DPTIL02F.html?iref=comtop_8_04 (朝日新聞 2020年5月24日) 陽性率の計算、地域でバラバラ…専門家「正確にすべき」
 新型コロナウイルスで注目されている陽性率は、全国的に統一された計算法が存在しない。感染の有無を調べるPCR検査を受けた人に占める陽性者の割合だが、地域によって民間による検査件数を含めなかったり、同じ人が複数回検査した際の扱いが違ったりしている。政府の専門家会議も問題視。統一を求める声があがっている。陽性率は感染状況を把握する上での重要な指標と位置付けられているが、計算法に違いがある。主に①民間病院などによる検査を集計に含むかどうか②退院時の陰性確認検査などを含むかどうか――の2点だ。今も緊急事態宣言の対象となっている北海道と首都圏の4都県、21日に解除された近畿3府県でも対応はバラツキがある。東京都は当初、行政が行う検査だけを集計。民間病院などによる検査は把握していなかった。そのため陽性率も公表してこなかったが、民間分も含めて集計するように改め、今月8日に初めて陽性率を発表した。退院時の陰性検査を除き、16~22日は1・3%だった。神奈川、兵庫の両県は現在も民間分を集計していない。千葉県は民間の検査機関から提供してもらったデータに陰性検査が含まれているため、いまは民間分を集計対象外としている。陰性検査を除いて集計に加える方向で準備をしているという。大阪府と京都府は、民間検査を含めている。埼玉県は当初、ほかの自治体と異なり、県が運営する保健所13カ所分と民間分だけを集計していたが、今月15日から政令指定市と中核市が運営する保健所4カ所分も加え、県内全体の陽性率を出している。北海道では、いまのところ民間の検査はしていないという。8都道府県はいずれも、退院時の陰性検査は含めていないが、厚生労働省によると、陰性検査などを陽性率に含めている県はほかに20近くあるという。統一された基準はないが、政府の専門家会議の尾身茂副座長は「行政による検査だけだと分母が少なくなり、民間の検査も加われば分母は正確になる。入院患者は(陰性検査を含めて)何回も検査するため、ダブルカウントすれば分母が過大になってしまう」と指摘。①は全体像を把握するために集計に含めるべきで、②は陽性率とは関係ないため含めるべきではないとの立場だ。計算の仕方によって、どれぐらいの誤差があるか公表されていないが、地域によって差があり、厚労省は国内の正確な陽性率を把握しきれていない。政府の専門家会議は14日、新型コロナウイルス感染症対策の状況分析・提言で「都道府県の状況を比較できるようにすることが重要」と問題提起した。
●専門家「PCR検査だけでは不十分」
 陽性率の計算法を統一しても、それだけでは不十分との指摘もある。東京大公共政策大学院の鎌江伊三夫特任教授(医療政策)は「感染を疑って検査した集団での陽性率には統計学上の偏りがある。検査数が少ない問題もあるため、信頼できる数値を導き出すことができない」とする。厚労省は13日、「抗原検査」の検査キットを承認した。この検査は数時間かかるPCR検査に比べて精度は下がるが、30分程度で感染しているかどうかが分かるため検査体制は拡充されそうだ。過去の感染歴を調べる「抗体検査」についても、来月にも1万人規模で実施する予定だ。鎌江氏は「PCR検査だけでなく、抗原検査や抗体検査も合わせて対象範囲を広げれば、市中でどれだけ感染が広がっているか推定できる。政府は、その算出ルールと調査システムを急いで作る必要がある」と指摘する。

<遅ければ置いて行かれるだけであること>
PS(2020年5月23日追加):*13-1のように、新型コロナウイルスに関する政府専門家会議の脇田座長(国立感染症研究所長)は、5月20日の衆院予算委員会で、「①感染を予防するワクチン開発の時期は年を越える」「②その先、どの程度で可能になるか現時点で答えるのは難しい」「③ワクチンは有効性に加え安全性の確保が重要で、副作用の有無を見極める必要がある」「④日本と海外のどちらが先にゴールにたどり着けるか分からない」と述べた。また、日本のメディアも、「⑤ワクチン開発には数年かかる」「⑥少なくとも、来年以降だ」などと、まるで遅いことがよいことであるかのように偉そうに言っていて鼻についたが、「意志なきところに成果は出ない」というのが人間界の原則だ。
 一方、英製薬大手のアストラゼネカは、*13-2のように、5月21日、英オックスフォード大学と開発する新型コロナウイルスのワクチンの10億回分の生産体制を整え、4億回分の受注契約は既に結び、今年9月には供給を始めると発表した。これについて、日本のメディアは「⑦世界でワクチンの開発競争が激しくなる中、自国分の確保を優先する動きがあり、公平な普及のあり方が課題となっている」などと述べているが、意志を持って全力で開発するというリスクをとった国が、いくらで誰に供給するかは自由であり、妨害こそすれ協力しなかった人が成果配分には「公平性」などと口出しするのは論外である。
 さらに、5月23日には、*13-3のように、「⑧ワクチン量産には多額の費用がかかり、欧米では開発のゴールを前に早くも量産技術を競い合うが、日本勢は出遅れ感が否めず政府が供給能力の強化に乗り出す」「⑨ワクチンは参入障壁が高い医薬品」「⑩世界のワクチン市場は米ファイザー、メルク、英グラクソ・スミスクライン、仏サノフィで8割以上を占める」「⑪寡占の背景には各社の豊富な供給能力にあるとされる」と記載しているが、日本は欧米より早く新型コロナが流行したため、⑧はやる気のなさの証明に過ぎず、このようなビッグチャンスに政府が資金を出さなくては生産できないことが情けないのであり、⑨⑩⑪は、これらの結果にすぎない。従って、もう一度書くが、マスクは中国、ワクチンは欧米依存では、日本から他国に輸出するものがなくなるのは時間の問題なのである。

 
    2020.5.17朝日新聞            2020.5.20産経BZ

(図の説明:左図のように、国内外のワクチン開発状況は、2020.5.17に朝日新聞が報道し、2020.5.20にはそのうち主なものについて産経BZが報道している。にもかかわらず、「ワクチン開発には数年かかる」「早くて来年」などと言っているのは、認識不足も甚だしいのだ)

*13-1:https://mainichi.jp/articles/20200521/ddm/012/040/070000c (毎日新聞 2020年5月21日) 新型コロナ 「ワクチン開発 越年」 専門家会議座長「安全性重視」
 新型コロナウイルスに関する政府専門家会議の脇田隆字座長(国立感染症研究所長)は20日の衆院予算委員会で、感染を予防するワクチン開発の時期について「年を越えると思っている。その先、どの程度で可能になるか現時点で答えるのは難しい」と述べた。諮問委員会の尾身茂会長は、8都道府県で継続している緊急事態宣言に関し「仮に解除されても、(新規の感染)報告者数ゼロが短期間続いたとしても、見えない感染が続いていると考えるべきだ」と注意を促した。脇田氏は、ワクチンは有効性に加え安全性の確保が非常に重要で、副作用の有無を見極める必要があると指摘した。「日本と海外のどちらが先にゴールにたどり着けるか分からない」とも語った。

*13-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200522&ng=DGKKZO59440450S0A520C2MM0000 (日経新聞 2020.5.22) 英アストラゼネカ、コロナワクチン9月に供給へ 
 英製薬大手のアストラゼネカは21日、英オックスフォード大学と開発する新型コロナウイルスのワクチンについて、10億回分の生産体制を整えたと発表した。4億回分の受注契約を結んでおり、9月にも供給を始める。世界でワクチンの開発競争が激しくなる中で自国分の確保を優先する動きがあり、公平な普及のあり方が課題となっている。同社は米生物医学先端研究開発局(BARDA)から10億ドル(約1070億円)の支援を受けたことも明らかにした。英フィナンシャル・タイムズによると同社が受注した4億回分のうち、およそ3億回分は米国向けになるという。アストラゼネカは英国政府ともワクチンの9月からの供給に向けて協力している。

*13-3:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200523&ng=DGKKZO59490600S0A520C2EA2000 (日経新聞 2020.5.23) ワクチン量産 設備が壁、特殊な技術 欧米勢が先行 日本、資金支援を検討
 新型コロナウイルスの予防ワクチンの実用化に向け欧米企業が普及のカギを握る量産体制の整備に動き出した。英医薬大手アストラゼネカが21日、英オックスフォード大学が開発したワクチンを年間10億回分供給できる体制を整えたと発表。米新興のバイオ企業モデルナも同規模の大量供給の体制を構築する。ワクチン量産には多額の費用がかかる。欧米では開発のゴールを前に早くも量産技術を競い合うが、日本勢は出遅れ感が否めず政府が供給能力の強化に乗り出す。アストラゼネカが量産するのは、オックスフォード大学が手掛ける開発スピードの速い最新ワクチンだ。量産工程には遺伝子を組み換えたウイルスを大量培養する装置やウイルスが外部流出しないように高度に衛生管理された施設が必要。アストラゼネカは設備を改良するなどして9月からの供給に備えるもようだ。
●数百億円が必要
 大量生産するワクチンの品質検査体制も欠かせない。充実した設備・体制は大手に限られる。オックスフォードが自前で大規模生産を進めると数百億円単位の投資費用がかかり、量産開始まで1~2年はかかる。バイオスタートアップ企業のモデルナも年10億回分の大量供給を実現するため、今月1日にスイスのロンザとの提携を発表した。治験用の小規模な生産設備を持つが、モデルナに量産できる設備はない。モデルナが手掛けるRNAワクチンは鶏卵や動物細胞などでウイルスを増やす従来型のワクチンと異なり、一般的な化学物質と同様に化学合成で作る。開発時間を従来型に比べて短縮できる。物質の仕組みは単純だが、量産は技術の蓄積がないと難しい。血液中で分解されないような製剤化技術や、成分を均質に保つには特殊な技術が必要だからだ。モデルナは量産に向け医薬品受託製造会社であるロンザの設備を活用する。モデルナはロンザへの製造技術の移転を6月中にも終え、7月にも試作品の生産を始める。現在、RNAワクチンを商業生産するノウハウを持つのは、モデルナと独ビオンテック、独キュアバックの3社とされる。ビオンテックは量産化で米ファイザーと組む。
●大手4社で8割
 ワクチンは参入障壁が高い医薬品だ。世界のワクチン市場は米ファイザー、メルク、英グラクソ・スミスクライン、仏サノフィで8割以上を占める。4社は主に従来型ワクチンを開発・生産し、寡占の背景には各社の豊富な供給能力にあるとされる。ワクチンの成分は特許で公開されているが、量産化には膨大な投資とノウハウが必要だ。ワクチン事業の競争力は開発技術だけでなく、供給能力も握る。欧米各国は量産技術を評価して各社のワクチン計画に資金支援する。アストラゼネカ・オックスフォード大学のワクチン計画には英政府が約27億円の助成金を出しているが、このほど米生物医学先端研究開発局(BARDA)から約1070億円の支援を受けたことも明らかになった。オックスフォードのワクチンを年4億回分から同10億回分に引き上げることができたのもBARDAの資金が支えたとされる。BARDAはオックスフォードと同様のワクチンを開発するジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)と約1000億円の設備費用を折半する。開発の成功メドがつく前から量産まで視野に入れて、米国向けにコロナワクチン確保を急ぐ。新型コロナワクチンの実用化で欧米勢と競う中国。政府と関係の深いバイオ企業や研究所でワクチン治験が実施されている。すでに有効性を確認する治験まで進んでいるワクチンもあり、最短で今秋の実用化を目指す。ただ、中国勢のワクチン量産化に向けての技術・ノウハウについては「公開情報がなくどれだけ供給されるかも不明」(国内医療関係者)。一方、日本でワクチンを供給できる企業は、武田薬品工業やKMバイオロジクス、第一三共、阪大微生物病研究会などに限られる。今回のコロナに対応するRNAなど最先端のワクチンを量産する企業はまだない。RNAワクチンでは第一三共が東京大学医科学研究所に開発で協力するが、量産体制について明らかにしていない。大阪大学発のバイオ企業アンジェスが進める新型コロナワクチンの量産は主にタカラバイオが担う。年間20万人分のワクチン開発の準備を進めているが、モデルナやオックスフォードのワクチンの0.02%にとどまる。政府もパンデミックに対応する製造技術の開発支援を進めてきたが、最先端のワクチンの量産への取り組みは遅れていた。ただ、ここにきて世界で新型コロナワクチンの量産化に向けての動きが相次いでいるのを受け、日本政府は国内企業がワクチンを大規模に生産できるように資金支援する検討に入った。「(ワクチンは)開発できるかより、生産しなくてはならないワクチンの量を懸念すべきだ」(サノフィのポール・ハドソン最高経営責任者=CEO)。欧米企業・政府関係者の間では、新型コロナワクチン実用化の議論での焦点は、開発からいち早く大量供給できる能力に移りつつある。量産化に向けた新型コロナワクチンの供給体制について議論を日本でも深める必要がある。

<米国と中国について>
PS(2020年5月26日、6月7日追加):*14-1・*14-3のように、中国政府は、「香港の民主化運動を抑制するには『強力な措置』が必要だ」として、香港基本法の付属文書に中国の国家安全法を追加する形で香港に国家安全機関を設立することなどを全人代で決めつつあるため、香港の人権や自由は中国本土並みに制限される恐れがあり、香港の「一国二制度」は危機に直面しているそうだ。これに対し、*14-4のように、当局が集会に先駆けて ①集会が無許可である ②新型コロナに関連した条例で8人超の集会が禁止である と警告したのに、大勢の民主派のデモ参加者らが集結し、警察は催涙弾と放水銃を発射して40人が逮捕されることとなって、新型コロナにより政治集会やデモも危険な行為となってしまった。
 また、*14-2・*14-3のように、台湾は、2009年から8年連続でオブザーバーとしてWHO総会に参加してきたが、2017年以降は中国の圧力で出席できず、今年は米国の下院議員205人がWHO総会に台湾をオブザーバーとして招くよう求める連名書簡をWHOのテドロス事務局長宛てに送付し、チェコにも台湾支持の動きがあったが、やはり実現しなかった。ここで、欧米諸国は本気で人権・自由・民主主義を護るための闘いに入ったと思われるが、日本の多くのメディアは、*14-5のように、「米中が結束するのが最良の防疫策だ」など米国が中国と仲良くしさえすればよいという論調で、「自由や民主主義は、自ら護らなければなくなるものだ」という発想に欠けていると思う。
 なお、WHOへの貢献は、下の図のように、資金拠出だけでも米国が飛びぬけており、その他の貢献も加えると欧米諸国の貢献が大きいが、現在のGDPから考えると中国はじめ貢献の小さすぎる国は多い。そのため、トランプ米大統領がWHOに書簡を送り、拠出金の恒久停止や脱退まで示唆して中国からの独立を要求したのは交渉のやり方として十分あり得ることで、何でもトランプ米大統領の性格のせいにすればよいという論調は考えが浅い。
 香港への国家安全法制の導入に関し、*14-6のように、中国を厳しく批判する米国・英国などの共同声明に日本政府も参加を打診され拒否したそうだ。しかし、中国を過度に刺激するのを回避して中国との関係改善を目指すのなら、日本は新型コロナをいつまでも「武漢ウイルス」と呼んだり、「中国製は質が悪い」などと言って中国差別をするのではなく、香港での一国二制度に関する中国の契約違反や人権侵害に対する指摘をして抗議する方が筋が通っており、中国人も気持がよいと思う。そのため、この日本の選択は、単に欧米諸国に追随するか否かという問題ではなく、日本が欧米諸国と同様に(全体主義ではなく)個人の人権を大切にする価値観を持っている国か否かという問題であり、実はここが危ういのである。

   
 2019.11.12朝日新聞   2019.11.28毎日新聞  2020.4.13    2020.5.21
                          朝日新聞     毎日新聞

(図の説明:1番左の図のように、2020年1月11日に台湾総統選で当選した蔡氏は、中国が打ち出す「一国二制度」による中台統一を拒絶し、台湾への武力行使を断念するよう中国共産党及び中国政府に呼び掛けた。米国のトランプ米大統領は、左から2番目の図のように、2019年11月27日に香港の人権と自治を擁護するための「香港人権・民主主義法案」に署名し、米国で同法を成立させた。そして、右から2番目の図のように、WHOは確かに中国寄りで、今年の総会には台湾のオブザーバー参加も認めなかったが、台湾は中華民国という独立国であるため、中国の方が内政干渉の無理な主張をしている。そのため、1番右の図のように、すべての国は、独立国が世界機関に代表を送ることに反対すべきではないだろう)


   2019.6.4朝日新聞         2019.4AFP      2020.3.31FS

(図の説明:左図のように、中国と米国は力で押しあっているが、日本は民主主義国で領土問題もあるため、まるで第三者ででもあるかのように米国を批判するのはおかしい。また、中国の軍事支出は米国より小さく見えるが、人件費や物価が安いため実質では米国より大きいだろう。なお、中央と右の図は、各国のWHOへの拠出金はじめ人材での貢献度を示しており、第二次世界大戦直後と現在ではGDP比が大きく異なるため、成長した国はGDPに応じて負担すべきだ)

*14-1:https://digital.asahi.com/articles/ASN5Q42L8N5QUHBI00S.html (朝日新聞 2020年5月22日) 中国、香港に国家安全法適用へ 一国二制度の重大危機
 中国政府は22日、香港での反政府活動を取り締まるための新たな治安法制の整備に着手した。香港に中国の国家の安全を守る機関を設立することなどが柱。昨年来の抗議デモなど香港で強まる動きを封じる狙い。香港で保障される人権や自由が中国本土並みに制限される恐れがあり、「一国二制度」は重大な危機に直面している。北京で22日午前に開幕した全国人民代表大会(全人代、国会に相当)で「香港での国家の安全を守る法制度の整備」が提案された。李克強(リーコーチアン)首相は政府活動報告で「憲法によって定められた責任を香港政府に履行させなければならない」と指摘した。香港基本法の付属文書に中国の国家安全法を追加するかたちで、同法を香港で適用する。香港政府トップの行政長官に対し、国家安全に関する教育の強化などを義務づける。香港メディアによると、提案は全人代の審議を経た後、全人代常務委員会が8月にも施行を決定するとの報道もある。香港基本法は、国家分裂や政権転覆の動きを禁じた「国家安全条例」の制定を求めるが、市民の反発で頓挫。しびれを切らした中国側が直接介入に踏み切る形となる。香港の民主派は「一国二制度が崩壊する」と強く批判している。昨年来のデモで中国への反発が高まるなか、市民感情をさらに刺激するのは確実で、香港の政治危機は深刻さを増しそうだ。

*14-2:http://japan.cna.com.tw/news/apol/202005150007.aspx (CNA 2020/5/15) 台湾のWHO参加めぐり米議員205人が連名書簡 チェコでも台湾支持の動き
 米の下院議員205人が、今年の世界保健機関(WHO)総会に台湾をオブザーバーとして招くよう求める連名書簡をWHOのテドロス事務局長宛てに送付したのを受け、外交部(外務省)は15日、心からの歓迎と感謝を表明した。書簡では、新型コロナウイルス対策における台湾の対応について触れ、台湾をWHOに迎え入れる行動に価値があることを証明しているとした上で、台湾がWHOのネットワークに入れずにいることや、台湾の統計資料が誤って中国のデータとして取り扱われていることを指摘。また、中華人民共和国を「中国」の代表だと承認した国連総会2758号決議やWHO総会25.1号決議にも言及し、これらの決議はいずれも、北京に台湾人民を代表する権利を与えていないと強調している。13日に送付された。発起人は、親台派の議員連盟に所属するスティーブ・シャボット議員(共和党)、アルビオ・シラズ議員(民主党)とジェリー・コノリー議員(民主党)。リズ・チェイニー共和党会議議長や外交委員会のエリオット・エンゲル委員長(民主党)らが署名した。
▽チェコ上院の2委員会でも台湾支持の決議
 チェコ上院の外交・国防・安全保障委員会と衛生・社会政策委員会で13日、WHO総会に台湾を招くようテドロス事務局長に提言するとともに、チェコ政府に台湾のWHO参加を支持するよう求める決議案がそれぞれ可決された。外交部が14日に明らかにした。同部は、チェコ議会の委員会で近年このような決議が可決されたことはなく、大変意義深いとし、深い感謝を表明した。その上で、WHOが特定加盟国の政治的操作に振り回されず、各界の声