■CALENDAR■
  1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30     
<<前月 2019年04月 次月>>
■NEW ENTRIES■
■CATEGORIES■
■ARCHIVES■
■OTHER■
左のCATEGORIES欄の該当部分をクリックすると、カテゴリー毎に、広津もと子の見解を見ることができます。また、ARCHIVESの見たい月をクリックすると、その月のカレンダーが一番上に出てきますので、その日付をクリックすると、見たい日の記録が出てきます。ただし、投稿のなかった日付は、クリックすることができないようになっています。

2019.4.15 新技術の普及と銀行・産業界における本物のリーダーシップの必要性 (2019年4月17、18、19、20、22、23、24日追加)

    フクイチ3号基      2019.4.15東京新聞     2019.4.3東京新聞

(図の説明:左図は、フクイチ3号基の爆発直後と現在の画像で、中央の図は、使用済核燃料を敷地内で移動させる仕組みだ。また、右図は再稼働しているか否かを示す全国の原発の様子だが、フクイチの影響がなかった西日本で危機感が薄いため、最悪の事態にならないことを祈る)

(1)再エネの普及を妨げている原発
1)経団連の原発推進提言について
 原発メーカーである日立出身の中西氏を会長とする経団連が、*1-1のように、「①原発は脱炭素社会に不可欠なエネルギーであり、再稼働・新増設が必要」「②最長60年の既存原発の運転期間を延長し、審査等で停止していた期間を運転期間に含めない事実上の延長をすべき」「③政府のエネルギー基本計画は2030年度の原発発電割合を20~22%とする目標を掲げているのに、廃炉が進めば目標達成が困難」等々、世界に逆行した先見の明のない提言をしている。
 
 しかし、①は、二酸化炭素以外の公害を無視しており、②は会計・税務の常識から大きく外れている。何故なら、60年という運転期間は機械装置の中では異常に長く、例えば非常用発電機の法定耐用年数は15年だ。そのため、延長前の40年ならまあいいかという程度であるのに、原発事故後に耐用年数を20年延長して60年にするなど狂ったとしか思えない。さらに、稼働せずに停止していればさびつくため、稼働していないのは運転期間の延長理由にはならない。

 また、③については、再エネが急速に普及してコスト低減している中、政府の2030年度の原発発電割合20~22%という目標は根拠もなく高すぎる設定をしているため、この目標を達成するために原発の再稼働・新増設を進めるなど思考停止も甚だしい。

 さらに、使用済核燃料は行き場がなく、核燃料サイクルは破綻し、高レベル放射性廃棄物の処分場もなく、安全強化や事故対応でコストが高騰した原発は低コストでもないため、世界の潮流に逆らってまで原発を推進するのは無責任である。それより、経産省や経団連が取り組むべき課題は、再エネを活用して0エミッション社会を作り、その技術を世界に売り出すことだろう。

2)やっと核燃料の取り出しを始めたフクイチ
 東京電力は、事故後8年経過した2019年4月15日、*1-2のように、フクイチ3号機の原子炉建屋上部にある使用済核燃料プールから冷却保管中の核燃料を取り出し始めたそうだが、その間には屋根を取り外して強い放射線を拡散し続けていた時期もあり、その無神経さには呆れる。

 そして、取り出した核燃料は2年もかかって敷地内の共用プールに移すだけであり、クレーンなどの機器に不具合が相次ぐなど、日本の中でも低い技術で形だけの原発事故処理をして、危機感もなく遊んでいるように見える。

3)フクイチ近海の水産物について
 韓国だけでなく、被災地付近からの水産物の輸入を禁止している国は多いが、*1-3のように、日本政府は福島など8県からの全水産物の禁輸措置を行っている韓国をWTOに提訴し、WTO上級委員会が禁輸を容認する報告書を出した。

 私は、安全性の確保は自由貿易に優先するため、これらの禁輸措置を行っている国々を「科学的根拠が無い」としてWTOに提訴すること自体に見識が伺われず、それでは日本国民も困るのだが、取り出した使用済核燃料を敷地内の共用プールに移して冷やし続ける行為は、汚染水の流出防止や水産業の復興には何ら寄与しないことを付け加えなければならない。

(2)再生医療は時間をかければ犠牲者が増えること
1)再生医療の普及について ← 「焦らず安全重視で丁寧に」という言葉は意味不明
 *2-1に、「再生医療で病気やけがを治す試みが大学病院などで相次いでいるが、期待が大きい一方、実用化のペースが速すぎると危ぶむ声もある」と書かれている。しかし、遅ければその患者さんが治療不能になるため、「安全重視で焦らず丁寧に治療法を確立する」というのは、言葉だけが踊っている意味不明の文章だ。

 そもそも、医療は時間を争って治療すべきもので、ゆっくりすればひどくなったり、治らなくなったり、命を失ったりする。また、従来の治療法ではうまく治らず、それよりよい方法だと考えられるからこそ、新しい治療法である再生医療を開発しているのであるため、「速すぎるのがいけない」という主張は全くおかしい。

 また、海外には、脊髄損傷を本人の脂肪幹細胞で治療したと言っていた権威もおり、幹細胞を使うのは正解だが、日本のように早々にiPS細胞のみに特化したのは他の可能性を封じ込めたという意味で愚かな決定だった。

 そして大切なことは、一定数以上の治験をしなければ、安全性・有効性に関するデータの裏付けもとれないため、意味も分からずに変な論理で先進治療を妨害するのは止めた方がよい。そのため、メディアには各学会に行って内容を理解して取材し、正しい記事を書く能力のある記者を置いておいたらどうかと考える。

2)腎臓病の例で説明する
i) 人工透析について
 公立福生病院で、*2-2のように、本人の意思を十分確認した上で人工透析を中止し、44歳の女性が死亡したため、病院は「問題なし」としているものの、離脱判断が正しかったか否かが問題になった。人工透析はシャントを永久に作ったまま、1回4時間・週3回くらいのペースで透析しなければならないため、透析から離脱したくなるのもよくわかるが、現在はそれを我慢して人工透析で現状維持するか腎移植するかしかなく、提供される腎臓は少ないわけである。

ii) 腎臓の再生医療について
 そのような中、*2-3のように、ES細胞(胚性幹細胞)を使って、ラットの体内にマウスの腎臓を作ることに自然科学研究機構や東京大らのグループが成功し、ES細胞やiPS細胞などの多能性幹細胞から腎臓という複雑で大型の臓器の再生に世界で初めて成功したそうだ。これは、種の近さから言えば、ヒトの腎臓をサルの体内に作ったのと同じくらいだが、将来はヒトの臓器をブタなどの動物の体内で作ろうとする研究が進められている。

 このほか、*2-4のように、徳島大学の安部准教授らが、腎臓を形成する複数の細胞を混合する共培養により、生体に近い腎臓の特性を持った立体的なKLSの作製に成功し、KLSは24時間の培養ででき、低コスト・短期間での作製が可能だそうだ。

 私は、このやり方で純粋な本人の腎臓を作った方がうまくでき、慢性腎不全で新たに人工透析を受ける患者は日本国内で毎年4万人おり、世界ではもっと多いため、速やかに創薬すべき実用化の段階に入っていると思う。そして、これが実用化されれば、患者さんの苦しみが本当の意味で緩和されると同時に、現状維持するだけの苦しくて高額な医療費の削減ができるわけだが、それには資金が必要で、まずはクラウドファンディングや銀行貸付が考えられるわけである。

3)白血病の例でも説明する
 競泳女子の池江璃花子選手の白血病が公表された後、*3-1のように、骨髄移植のドナー(提供者)登録に関心が集まっているそうだが、ドナーになるのも大変で、適合しても移植が実現するのは6割程度だそうだ。
  
 私の東大の友人にも35歳で白血病になり、弟さんに骨髄を提供してもらって6カ月の入院治療後に回復した人がいるが、彼は「だんだん弟の体になっていくような気がする」と言っていた。血液を作る骨髄細胞の多くが弟さんの細胞に変わっているのだから、確かにそうなるのだろう。

 そのため、池江璃花子選手のように、身体能力が才能にあたる人は、他の人の細胞が入ると今まで通りの強い選手ではいられないかも知れない。そのため、*3-2のような自分の免疫細胞の攻撃力を高める「CAR―T細胞」を利用した新型がん免疫製剤や、自分の骨髄細胞の健康な部分を使って治療できれば一番よいと思われる。しかし、これらの治療も、早く実用化して価格を下げなければ、使えずに亡くなる人が増えるわけだ。

(3)ゲノム編集食品について
 ゲノム編集された生物を使った食品の扱いについて、*4-1のように、厚労省がパブリックコメントを実施し、有識者調査会がまとめた報告書は「開発中の大半のゲノム編集食品は安全性審査を必要とせず、国への情報提供だけで販売を認めてよい」とする内容で、安全管理の杜撰さが浮き彫りになった。
 
 そのゲノム編集は未知の部分が大きいからいけないというよりは、①害虫がつかなくなる遺伝子を入れたり ②筋肉が多くなる遺伝子を入れたりして、それが食べた人に与える影響は検証されていないことが問題なのである。また、害虫は、虫の方も進化して耐性ができるため、より強い遺伝子を入れなければならなくなり、それが自然界に拡散すれば環境にも悪影響を与える。

 そのため、少なくとも消費者が選択可能なように、ゲノム編集食品の表示は不可欠だ。また、報告書では、その生物にはない遺伝子を導入する場合は遺伝子組み換え食品と同様の安全性審査が必要と判断したそうだが、食べ物でない場合は検証の仕方が異なるし、遺伝子の入れ方によっても異なるため、薬と同様、個別にしっかり検証されていることを条件とすべきだ。

 このような中、*4-2のように、「ゲノム編集食品は、予防原則で安全徹底を」と日本農業新聞が書いているとおり、買う側の選ぶ権利を保障するための食品表示は不可欠であり、顧客ファーストの精神がなければ消費者に選ばれないため、どんな産業も成功しない。作る人も、それがわかっているのである。

(4)事業承継について


      2018.7.31産経新聞          事業承継税制の2018年改正

(図の説明:左図のように、中小企業の経営者も高齢化し、後継者がいないため廃業して技術が失われるケースが増えた。そのため、中央と右の図のように、2018年改正で10年間の特例として贈与税・相続税免除の要件が大幅に緩和された。これにより、後継者は複数でも親族外でも税制優遇を受けられるようになり、多様な形の事業承継が考えられるようになった)

 これまで、オーナー経営の中小企業の株式を後継者に移して代替わりしようとすると、オーナーの生前なら贈与税、死後なら相続税が発生し、事業承継する後継者に不利な点が多いため、黒字でも廃業して技術が廃れる事例が少なくなかった。

 そこで、*5-1のように、事業承継を円滑に進められるよう、政府が2018年度に「事業承継税制」を改正し、納税猶予割合が8割から全額になり、対象株式も発行済株式総数の3分の2から全てに拡大され、事業承継時の税負担をゼロにすることが可能になった。また、孫の代まで経営を引き継げば、猶予されていた税負担は免除されるそうだ。

 さらに、*5-2のように、個人事業主が事業承継しやすい環境をつくるため、子が事業を継ぐ時に土地・建物にかかる贈与税支払を猶予する「個人版事業承継税制」も作り、2025年までに70歳を超える約150万人の個人事業主が引退で廃業を迫られるのを防ごうとしている。その制度の対象になるのは、地方の旅館・町工場・代々続く酒蔵などの家族経営をしている個人事業主で、新制度では土地・建物・設備にかかる税金の支払いが猶予されることになるそうだ。

(5)地銀を含む銀行の役割と今後の展望
 金融庁が、*6-1のように、地方銀行の監督指針を見直して、収益が低迷する地銀の逃げ道を断って経営改革を促す方向へかじを切るそうだが、人口減少や高齢化には対応できるものの、金融緩和と超低金利が銀行の利益にマイナスであることは明らかだ。

 しかし、経済活動を行っている企業である以上、一つの「特効薬」があるわけではなく、顧客ファーストで考えた時に必要とされるサービスを安く提供しているか否かが分かれ目になる。

 もちろん、*6-2のように、店舗・人員配置の合理化などで生産性を上げ、高付加価値化することは必要だが、人口減少は産業構造改革を通じてビジネスチャンスになる上、上記(1)~(4)に関するサービスもまさにニーズであるため、次の有望企業(=融資先)を育てて将来の自己資本比率や収益力を改善する手段にできる筈だ。

 農林中央金庫は、*6-3のように、ベトナム、フィリピンの大手銀行と包括的な業務提携を結び、現地銀行ならではの情報やネットワークを生かして日本の農業法人等の販路開拓や食農関連企業の海外進出・事業拡大の支援を本格化させるそうだ。また、オランダの協同組合金融機関「ラボバンク」とも既に提携しており、農業法人やJAグループ、食品関連企業に対する現地情報の提供・ビジネスマッチング・現地での協調融資・企業の合併・買収(M&A)への助言、現地通貨の供給などを目指すそうだ。

 このうち、国際化・ビジネスマッチング・M&Aの助言・事業承継の相談などは、地方銀行もできなければならない時代になっている。

・・参考資料・・
<再エネの普及を妨げる原発>
*1-1:https://www.hokkaido-np.co.jp/article/295255 (北海道新聞 2019.4.11) 経団連の提言 身勝手な原発擁護策だ
 構造的な問題を度外視した身勝手な原発回帰論と言うほかない。経団連が電力政策に関する提言を2年ぶりに発表した。原発を脱炭素社会に不可欠なエネルギーとし、再稼働や新増設を求めた。最長60年となっている既存原発の運転期間の延長や、審査などで停止した期間を運転期間に含めないで運転できる期間を事実上延ばすことも新たに盛り込んだ。東京電力福島第1原発事故は、原発がひとたび事故を起こせば取り返しがつかない現実を突きつけた。その教訓を生かす方策が見当たらない。再生可能エネルギーが急速に普及する中、安全基準の強化でコストが高騰した原発は、もはや有望なビジネスでもない。国民の不安に応えようとせず、世界の潮流に逆らって原発を推進するのは理解に苦しむ。安倍晋三政権や経済産業省は再稼働推進の姿勢を取るが、経団連の提言に乗って原発回帰を加速させることがあってはならない。提言は、温室効果ガスを排出する火力発電への依存度が8割を超え、再生エネで賄うにも限界があり、原発が不可欠だとした。政府のエネルギー基本計画で2030年度の原発の発電割合を20~22%とする目標を掲げたことにも触れ、「廃炉が進めば達成が困難」と再稼働の必要性を訴えた。だが計画は原発依存度を低減すると明記している。目標達成のために再稼働するのは本末転倒だ。原発の大きな問題は使用済み核燃料の行き場がないことである。核燃料サイクルは事実上破綻し、高レベル放射性廃棄物の処分場選定も進んでいない。福島の事故原因は解明されておらず、廃炉のめども立たない。こうした負の側面をどう克服するか説明を尽くさず、再稼働や新増設を訴えるのは無責任である。提言を主導したのは原発メーカー、日立製作所出身の中西宏明会長だ。中西氏は「再稼働をどんどんやるべきだ」と発言し、原発と原爆が混同されて再稼働が進まないとの認識を示したこともある。日立は英国の原発建設計画を凍結したばかりで、原発ビジネスの行き詰まりを中西氏は分かっているはずだ。経団連会長の立場を利用して原発産業を守ろうとしているとの疑念も招きかねない。経団連が取り組むべきは、再生エネを有効活用して原発依存を脱する道筋を示すことだ。政治への発言力をそのためにこそ生かさなければならない。

*1-2:https://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2019041590135634.html (東京新聞 2019年4月15日) プール核燃料、搬出開始 福島第一事故8年 3号機566体
 東京電力は十五日、福島第一原発3号機の原子炉建屋上部にある使用済み核燃料プールから、冷却保管中の核燃料の取り出しを始めた。事故から八年、炉心溶融(メルトダウン)を起こした1~3号機でプールからの核燃料取り出しは初めて。現場は放射線量が高く人が長時間いることができない。ほとんどの作業が遠隔操作であるため、難航することが予想される。3号機プールには、使用済みと未使用の核燃料計五百六十六体を保管。使用済み核燃料は長期間、強い放射線と熱を発するため、水中で冷やしている。東電は四月中に未使用の七体を取り出し、六月下旬から作業を本格化させる方針。核燃料は敷地内の共用プールに移す。取り出しを終えるまでに約二年かかる見込み。作業は午前八時半すぎに開始。建屋から五百メートル離れた免震重要棟内の操作室で、作業員がモニターの画面を見ながら取り出し機器を操作した。燃料取扱機で核燃料を一体(長さ四・五メートル、十五センチ四方、重さ約二百五十キロ)ずつ持ち上げ、水中に置いた専用容器(重さ約四十六トン)に七体入れる。一体を入れるのに二、三時間かけ、この日は午後八時まで作業する。一体目は、一時間半ほどで容器に入れることができた。その後、容器をクレーンで三十メートル下の一階に下ろし、トレーラーで共用プールに運び出す予定。3号機の核燃料取り出しは当初、二〇一四年末にも始める計画だったが、高線量が作業の壁となった。外部に放射性物質が飛び散らないよう、建屋上部にドーム型カバーを設置。東電は昨年十一月に取り出しを始める計画を示したものの、クレーンなどの機器に不具合が相次ぎ、点検や部品交換のため延期していた。4号機では、一四年末にプールから核燃料千五百三十五体を取り出し済み。地震発生時は定期検査で停止中で原子炉内に核燃料がなく、炉心溶融を免れた。水素爆発で建屋上部が吹き飛んだが線量は低く人が中で作業して一年程度で終えた。
◆解説
 福島第一原発3号機のプールからの核燃料取り出し作業は、同じく炉心溶融が起きた1、2号機の核燃料取り出しの行方を左右する。いずれも建屋内の放射線量が高く、人が中で長時間作業できず、遠隔操作で進めざるを得ないからだ。3号機プール周辺の線量は毎時五四〇マイクロシーベルトで、二時間で一般人の年間被ばく線量限度に達するレベル。プールに残る細かな汚染がれきを、アーム型機器で取りながらの作業だ。クレーンなどでトラブルが起きれば、人が建屋内で修理しなければならない。これら未経験の作業をこなし、ノウハウを積む必要がある。東電は1、2号機のプール内の核燃料取り出しを二〇二三年度に始める計画を立てたが、両号機は3号機よりも線量が高く厄介だ。特に1号機は建屋最上階に大きながれきが積み重なり、原子炉格納容器上のコンクリート製の巨大なふたがずれ落ちている。ふたのずれを元に戻さなければ、3号機同様の取り出し機器は設置できない。1号機は三百九十二体、2号機は六百十五体の核燃料がプールに残る。これらを高台の共用プールに移すことはリスク軽減のため不可欠。ただ3号機の作業次第では、1、2号機の取り出し計画の大幅な見直しが迫られる。

*1-3:https://digital.asahi.com/articles/DA3S13975075.html (朝日新聞 2019年4月12日) 日本の水産物、禁輸容認 韓国が逆転勝訴 WTO上級委
 韓国が東京電力福島第一原発事故の被災地などから水産物の輸入を全て禁止していることについて、世界貿易機関(WTO)の紛争を処理する上級委員会は11日、判決に当たる報告書を公表した。韓国に是正を勧告した第一審を大幅に修正して禁輸を容認し、事実上、日本の逆転敗訴となった。これで韓国の禁輸はしばらく続くとみられる。勝訴を追い風にほかの国・地域にも輸入規制の緩和を求める予定だった日本の戦略が狂う可能性が高い。日本政府関係者によると、上級委の報告書は、第一審の紛争処理小委員会による判断の主要部分が「誤りだった」と認定。その上で、福島など8県の全水産物の禁輸を「恣意(しい)的で不当な差別」として是正を求めた判断の主要部分を覆したという。上級委が第一審の判断を変えるのは異例だ。WTOの紛争処理は二審制のため、これで禁輸を容認したWTOの判断が確定するとみられる。ある政府関係者は「日本にとって残念な結果」と話した。韓国は2013年9月、同原発から汚染水が流出しているとして輸入規制を強化した。青森、岩手、宮城、福島、茨城、栃木、群馬、千葉の8県の水産物については輸入禁止の対象を一部から全てに拡大した。これに対し日本は15年8月、「科学的な根拠が無い規制だ」とWTOに提訴。18年2月、紛争処理小委員会では日本が勝訴したが、韓国が「国民の健康保護と安全のため」として上級委に上訴していた。今回の上級委の報告書は30日以内に正式に採択される見込みだ。農林水産省によると、原発事故後、一時54カ国・地域が日本産食品の輸入を規制した。撤廃が進む一方、いまも23カ国・地域で規制が続く。政府は、規制緩和の見通しを示さず、逆に規制を大幅に強化した韓国を提訴したが、ほかは訴えていない。政府は、今回の上級委の報告で勝訴を確定した上で、ほかの国・地域とも規制撤廃に向けた交渉を加速させていく戦略を描いていた。
■韓国による日本食品輸入規制をめぐる動き
<2011年3月> 東日本大震災で東京電力福島第一原子力発電所の事故が発生
<13年5月ごろ> 原発事故を理由とした輸入規制が韓国を含む54カ国・地域に拡大
<9月> 韓国が輸入規制を強化。8県産の全水産物を禁止に
<15年6月> 日韓の二国間協議が平行線に
<8月> 日本がWTOに提訴
<18年2月> WTO紛争処理小委員会(一審)で、日本が勝訴
<4月> 韓国が上級委員会(二審)に上訴
<19年4月> 上級委員会が報告書を公表

<再生医療は時間をかければ犠牲者が増えること>
*2-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190220&ng=DGKKZO41468640Z10C19A2EA1000 (日経新聞社説 2019年2月20日) 再生医療の普及焦らず丁寧に
 iPS細胞などを使う再生医療で病気やけがを治す試みが大学病院などで相次いでいる。期待が大きい一方、実用化のペースが速すぎると危ぶむ声もある。医師も患者も焦ることなく安全重視で丁寧に治療法を確立してほしい。厚生労働省の専門部会は18日、他人のiPS細胞をもとにした神経細胞で脊髄損傷の患者を治療する計画を、承認した。慶応大学が世界で初めて実施する。iPS細胞による再生医療は、2018年に京都大学のパーキンソン病治療や、大阪大学の心臓病治療の計画も認められた。理化学研究所などは神戸市で実施した目の難病のiPS細胞治療を、全国の病院に広げる計画だ。他の細胞を使う再生医療も実用化が進んでいる。骨髄液から得た細胞による脊髄損傷治療や、足の筋肉の細胞をもとにした心臓病治療の薬が、既に医薬品医療機器総合機構から「条件付き・期限付き承認」を取得している。この制度では、少人数の患者で安全性と一定の効果を確認した段階で市販を認め、その後は使いながら効果を確かめていく。量産が難しい細胞を使う薬の承認に適しており、新しい治療法を素早く患者に届けられる利点がある。今後、再生医療は条件付き・期限付き承認が主流になろう。ただ海外からは、臨床応用を急ぎすぎではないか、との声も出ている。英科学誌「ネイチャー」は最近、同制度による承認はデータの裏付けが不十分で慎重さに欠ける、とする批判記事を載せた。実際には、市販から数年間すべての利用データを集めて安全性と有効性を詳しく調べ、結果を公表する仕組みである。厚労省や開発者は説明を尽くし、理解を促していかなくてはならない。過去の臓器移植や遺伝子治療の例からもうかがえるように、いったん不信感が広がると先端医療が再び受け入れられるのは容易でない。再生医療が普及期に向かう今こそ、多くの人の納得が得られるよう最大限の努力が必要だ。

<腎臓病について>
*2-2:https://digital.asahi.com/articles/ASM3X53TKM3XULBJ00K.html?iref=comtop_8_03 (朝日新聞 2019年3月28日) 透析中止で死亡、病院「問題なし」 判断は正しかったか
 昨年、当時44歳の女性が人工透析をやめ、公立福生(ふっさ)病院(東京都福生市)で亡くなった。病院は28日、初めて報道各社の取材に応じ、女性の意思を十分確認した上で中止し、手続きなどに問題はなかったとの認識を示した。患者が透析中止を希望した場合、医療者はどのように対応すべきか。今回の件をふまえて学会で議論している。治療にあたった外科医(50)と松山健院長らが女性の治療経過を説明した。説明によると、糖尿病による腎不全や心筋梗塞(こうそく)などを起こし、人工透析をしていた女性は、左腕につくった透析用の血液の出入り口(シャント)の状態が悪化。血管の状態も悪く、新しくシャントをつくるのは難しい状態だった。昨年8月9日、女性はシャントが閉塞(へいそく)し、同病院を受診。外科医は首周辺に管を通す透析治療を提案したが、女性は「シャントがだめだったら透析をやめようと思っていた」と話し、拒否した。女性は透析の針を刺す際の痛みがつらいなどと語ったという。外科医は透析をやめると2週間くらいで死に至ると説明、女性は「よくわかっている」と答えたという。女性と女性の夫、外科医と看護師、ソーシャルワーカーを交えて再度話し合ったが、女性の意思は変わらず、夫も女性に同意した。外科医は透析からの「離脱証明書」に女性に署名してもらった。翌10日も、看護師、センターの内科医、ソーシャルワーカーが女性と夫に確認したが、意思は固かった。女性は14日に呼吸が苦しくなり入院。16日未明、呼吸の苦しさや体の痛みを訴え、看護師に「こんなに苦しいなら透析した方がいい。撤回する」と発言したことが記録に残っている。しかし、16日昼前に女性の症状が落ち着き、外科医が呼吸の苦しさや体の痛みが軽減されればよいか、それとも透析の再開を望むかと尋ねると、「苦しさが取れればいい」と答えたという。外科医は女性の息子2人にも説明して理解を得たうえで鎮静剤を増やし、女性は同夕に亡くなった。
●外科医「特異なケースだが丁寧に対応」
 外科医は「透析を続けるための措置を拒否したために透析が出来なくなった特異なケースだが、丁寧に対応し、出来ることはやらせてもらった」と述べた。今月6日に病院に立ち入り検査をした東京都は当初、外科医が透析をやめる選択肢を示した、と説明していた。この点について外科医は「中止の選択肢は示していない」と否定した。透析中止の判断をめぐり、都は、日本透析医学会の提言を踏まえて第三者も入る倫理委員会に諮るべきだったのに行わなかったとして、病院を口頭指導した。しかし、松山院長は「病気の進行や患者の透析離脱の強い希望などがあった。学会の提言には違反していない」と述べ、対応に問題はなかったとした。都の調べで、同病院では女性のほかに透析を始めなかったり、中止したりした患者20人が亡くなったことが判明している。病院側は「確認が取れていない」として説明しなかった。病院側の弁護士は、取材対応が問題の表面化から3週間以上後になったことについて、学会の調査や見解を待っていたため、などと説明した。都のほか、日本透析医学会と日本腎臓学会も調査を進めており、近く指導したり、見解を示したりする予定だ。
●「つらさ和らげる努力」必要
 日本透析医学会は2014年、どのような場合に透析を中止するかについての提言を示した。中止の検討対象を、がんを併発するなど終末期の患者に限定。終末期でない患者が強く中止を望む場合は、透析の効果を丁寧に説明し、それでも意思が変わらなければ判断を尊重するとしている。また、患者の意思が変われば透析を始めたり、再開したりすることも盛り込んだ。木澤義之・神戸大特命教授(緩和支持治療科)は、「病院側の説明では、本人の意向を何度も確認し、誠実に対応した印象だ」と話す。その上で、透析中止の判断後の重要性を指摘する。「がん以外の他の病気では家族への対応が不十分な場合も少なくない。今回、適切な苦痛緩和や家族の十分なケアが行われたのかという視点での検討も必要だ」と話す。JCHO(ジェイコー)千葉病院(千葉市)の室谷典義院長も「つらさを和らげる努力をどれだけしたかが大切だ」と指摘する。「つらさから逃れるために鎮静剤を使って結果的に患者が亡くなることはあるが、末期腎不全の患者の苦痛は透析をすることで和らぐことも少なくない」と話す。人工透析は週2~3回、1回で4~5時間かかり、身体的にも精神的にも負担が大きい。少数だが、脚の血管が詰まり透析の度に激痛が走る例もある。透析開始年齢が平均約70歳と高齢化して合併症を持つ人も少なくない。このため、透析をしたくない、やめたいという患者もいる。だが、多くの場合透析をすれば、何年も生きることができる。藤田医科大の稲熊大城教授(腎臓内科)は「心臓などに問題がなければ、透析を始めれば、その時点での平均余命の半分は生きられる」と説明する。70歳男性なら7年超にあたる。透析をしながら旅行やスポーツなどを楽しむ患者も少なくない。透析医学会は25日、透析をしているだけでは終末期に含まないとの見解を示した。患者の命にかかわる透析の中止などについては、慎重な検討が必要だ。清水哲郎・岩手保健医療大学長(臨床倫理学)は「方針決定には本人の意思の尊重が大前提だが、医学や生活への影響についての知識が不十分なままでの意思決定は必ずしも本人にとって最善とは限らない」と話す。患者が透析で余命が何年も見込めるのに透析を望まない場合や、透析の実態や費用などについて誤解している場合は、医療従事者は透析の効果やリスク、公的助成などについて十分に患者に説明し、理解してもらうことが欠かせない。清水さんは「医療従事者も含めて本人やチーム全体が合意に至らなければ、本人の人生観や価値観を踏まえた上で、何度も話し合いを繰り返すことが大切だ」と強調する。
●透析治療をめぐる女性患者(44)の経緯
1998年      糖尿病の指摘を受ける。その後、治療を始める
2007年      心筋梗塞(こうそく)で、東京都内の病院で治療
2015年12月   透析治療で通院していたクリニックの紹介で、福生病院を初めて受診
2018年 8月9日 透析に使うシャントが詰まり、福生病院を受診。女性は透析治療をしない意思を病院に告げる
       14日 福生病院に入院
       16日 女性は苦しくなり透析再開を希望。病院側は、女性が落ち着いたときに改めて意思を確認し、透析を再開しないことを確認。女性は夕方に死亡
2019年 3月6日 東京都が病院に立ち入り検査を実施
※福生病院の説明をもとに作成

*2-3:https://digital.asahi.com/articles/ASM266X2RM26UBQU01B.html (朝日新聞 2019年2月7日) ラットの体内にマウスの腎臓 ヒトの再生医療応用に期待
 ES細胞(胚(はい)性幹細胞)を使い、ラットの体内に別の種であるマウスの腎臓を作ることに、自然科学研究機構や東京大らのグループが成功した。将来的に、移植用のヒトの臓器を動物の体内で作る研究に応用したいという。研究成果は6日、ネイチャーコミュニケーションズに掲載された。自然科学研究機構生理学研究所の平林真澄准教授らのグループは、腎臓を作るのに不可欠な「Sall1」という遺伝子をなくした状態にしたラットの受精卵をつくり、そこにマウスのES細胞を注入。生まれたラットの体内に別の種であるマウスの細胞に由来する腎臓を作った。この遺伝子は他の臓器が機能するのにも必要なため、生まれたラットの多くは数時間しか生きられなかったという。今回のように、本来臓器ができる場所に空きを作り、ES細胞やiPS細胞などの多能性幹細胞由来の臓器を作る方法を応用し、将来的にヒトの臓器をブタなどの動物の体内で作ろうとする研究が進められている。今回の成果は「腎臓という大型主要臓器の再生に、世界で初めて成功した」としている。同グループは、膵臓(すいぞう)がないラットの体内でマウスの膵臓を作り、糖尿病にしたマウスに移植することに成功している。腎臓は血液中の老廃物を濾過(ろか)し、体の外に出す機能を持つ。慢性腎不全で透析治療が必要になった際、根本的な治療は腎移植だが、ドナー不足のため移植を受けられる患者は希望者の1~2%という。平林さんは「将来的にこの方法でヒトの腎臓を作り、移植で実用できる可能性を示せた」と話す。

*2-4:https://newswitch.jp/p/15569 (ニュースイッチ 2018年12月10日) “ミニ腎臓”作製成功、実用化へクラウドファンディング
 徳島大学の安部秀斉准教授らは、腎臓を形成する複数の細胞を混合する共培養により、生体に近い腎臓組織の特性を持った立体的な組織様構造体「KLS」の作製に成功した。KLSは24時間の培養で作製可能で、尿を濾過する糸球体と糸球体を保護する細胞「ポドサイト」も再現していた。均質なミニ腎臓を低コストかつ短期間で作製が可能になり、創薬への活用が期待される。実用化に向け、不特定多数から資金を集めるクラウドファンディング(CF)を通じて資金調達する。こうしたバイオ系の創薬技術でCFを実施するのは珍しいという。KLSは、腎臓の細胞3―6種類を3次元的に共培養して作製する。培養中に細胞は自然に集まって丸い構造をとる。作製したKLSは、糸球体とそれを保護する重要な組織であるポドサイトを有していた。また、発現している遺伝子を調べると生体内の腎臓の細胞と同様であった。KLSをマウスの皮下に移植すると血管の管腔構造ができたことから、生体内に近い培養条件でKLSを作製すれば血管の構造も作れる可能性も示された。慢性腎不全で新たに人工透析を受ける患者は日本国内で毎年4万人と言われる。高齢化に伴って腎機能は低下する傾向にあり、透析に移行する前に使える治療薬の開発が求められている。現在、創薬には高速で化合物の評価ができる「ハイスループット」という手法が用いられるが、これには実験用の均質な細胞や組織が大量に必要となる。KLSは分化細胞から作るため品質にばらつきが少なく、わずか24時間でできるため低コストで大量に製造できる。CFを通じて調達した資金はKLSの有用性を示すデータを取得するための実験や、KLSの実用化に向けたベンチャー設立に充てる。国の補助金の獲得を待たず、実用化を加速する。目標金額は数百万円規模と低めに設定する。多くの人に技術を認知してもらい、実用化へのアイデアを募る狙いもある。

<白血病の治療>
*3-1:http://www.tokyo-np.co.jp/article/living/life/201902/CK2019021902000181.html (東京新聞 2019年2月19日) 池江選手白血病公表 骨髄移植ドナーに関心 適合でも実現6割
 競泳女子の池江璃花子選手の白血病公表後、骨髄移植のドナー(提供者)登録に関心が集まっている。ただ、ドナーの辞退などもあり移植が実現するのは、六割程度。ドナーになれるのは五十五歳までで、若い世代を増やすことも急務となっている。日本骨髄バンク(東京)によると、登録できるのは、十八~五十四歳の健康な人(提供は二十~五十五歳)で、体重制限もある。献血ルームや保健所などで受け付け、約二ミリリットルを採血。後日、型が患者と適合すると、候補者に選ばれる。健康の確認検査などで計四回医療機関に行き、家族同席で最終同意書に署名した後は撤回できない。骨髄は全身麻酔で採取する。採取部位の痛みや発熱、まれにしびれなどの合併症が出ることがあり、最高一億円の補償制度がある。二〇一七年三月までに実施された二万二百六十六件のうち、入通院して保険金が支払われたケースは百七十一件(0・8%)。いずれも回復している。移植を待つ患者は昨年末現在、二千九百三十人。登録者は約四十九万人で、適合率は95%になったが、移植できたのは57%。健康上の理由や、仕事などで辞退したり、連絡が取れなかったりするドナーも少なくない。登録者の半数が「定年」に近い四十~五十代で、ドナー不足は続いている。
<骨髄移植> 白血病などの患者に、ドナーの骨髄液を点滴し、造血機能を回復させる治療。白血球の型はきょうだい間で4分の1、他人では数百から数万分の1の確率で一致するとされる。池江選手は骨髄移植が必要なケースかは、明らかになっていない。
◆命の重みを知り、大きな達成感 「体験に感謝」
 東京都の田中紀子さん(54)=写真=は7年前、骨髄を提供した。1995年にドナー登録し、忘れかけていた2012年夏。日本骨髄バンクから、白血球の型が一致する患者が見つかったと連絡を受けた。家族同席で弁護士から全身麻酔による事故の確率や採取後の痛みなどについて詳しく説明され、同意書に署名。「もうキャンセルできない」と念を押された。ところが、入院前日に、療養中の義父が死去。葬儀の準備で慌ただしい中、義理の母や姉が「生きている人を助けることを優先して」と背中を押してくれた。入院翌日に採取。マスクを着けられ、再び名前を呼ばれたときには終わっていた。採取した腰の部分は内出血で変色し、強く痛んだが、1週間で治まった。体験を通じ、命の重みを知り、大きな達成感を得た。知らないだれかを救うために仕事を調整し、家族を説得し、義父の葬式に出ないことを決めた。「困難に挑戦する自分を好きになれた。ドナーは患者さんのためだけでなく、むしろ自分のためにある」。提供相手は「九州在住の男性」とだけ知らされ、バンクを通じ、家族から感謝の手紙が届いた。若い時期にギャンブル依存の問題を抱えていた田中さんは今、「ギャンブル依存症問題を考える会」(東京)の代表として患者や家族の支援に飛び回る。その原点は「ドナー体験での達成感」という。9月でドナーの年齢上限を迎える。「夫や子どもがもし、『ドナーになる』と言ったら動揺すると思う。でも、反対はしない。自分はドナーをさせてもらい、本当に感謝しているから」

*3-2:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/340090 (佐賀新聞 2019年2月20日) 新型がん免疫製剤を了承、人工遺伝子で白血病治療
 厚生労働省の専門部会は20日、一部の白血病を治療する新型の細胞製剤「キムリア」の製造販売を了承した。人工遺伝子で患者の免疫細胞の攻撃力を高める「CAR―T細胞」を利用した国内初の治療法で、3月にも正式承認され、5月にも公的医療保険が適用される見通し。臨床試験(治験)で既存の治療法が効かない患者にも効果が得られたことから注目を集めている。
欧米では既に承認されているが、米国では1回の治療が5千万円以上に設定され、高額な費用が問題となっている。日本でも今後、価格が決定されるが、高額薬として知られるがん治療薬「オプジーボ」よりも高くなる可能性がある。

<ゲノム編集食品>
*4-1:https://www.kobe-np.co.jp/column/shasetsu/201902/0012083416.shtml (神戸新聞 2019/2/21) ゲノム編集食品/国の方針は拙速に過ぎる
 ゲノム編集された生物を使った食品の扱いについて、厚生労働省がパブリックコメントを実施している。有識者調査会が取りまとめた報告書は、開発中の大半のゲノム編集食品は安全性審査を必要とせず、国への情報提供だけで販売を認めてよいとする内容だ。厚労省は本年度中に結論をまとめ、具体的な仕組みをつくる方針を示しているが、議論が不十分で拙速に過ぎる。ゲノム編集はまだ未知の部分が大きい。なにより人が食べた場合の影響はどうなのか。審査を求める消費者団体などは、調査会の検討がわずか3カ月だったことを批判している。ゲノム編集食品の表示が要らない仕組みになれば、消費者に情報が伝わらず、食べる人の知る権利、選ぶ権利を奪うことになりかねない。ゲノム編集食品は、遺伝子を切断する酵素を使って効率よく改変できる。従来の遺伝子組み換え技術に比べて開発期間が大幅に短縮される。肉付きのいいマダイや収量の多いイネなどが開発されている。報告書では、その生物にない遺伝子を導入する場合は、遺伝子組み換え食品と同様の安全性審査が必要と判断した。一方、特定の遺伝子を壊した食品は審査を不要とした。国への情報提供は問題発生時の対応などのためで、法的な義務化はしない。従来の品種改良との違いがあまりないとの推論が根拠だが、そう言い切れるのか。編集された細胞ががん化する恐れが高まるなど、新たな報告や知見がもたらされている。一度に多くの遺伝子を改変した際のリスクも不透明だ。自然界に拡散した場合、悪影響が判明しても取り返しがつかない。審査も表示もない緩い規制の下で生産が広がり、予期せぬ問題が起きたら、誰がどう責任をとるのか。影響が予測しきれない新しい技術である。人の健康と環境に関わる問題として、安全を最優先に考えるべきだ。欧州連合(EU)では、予防原則の立場から遺伝子組み換え作物として規制すべきとの司法判断が下されている。各国の状況も参考にしながら、国会でもしっかりと時間をかけて議論する必要がある。

*4-2:https://www.agrinews.co.jp/p47358.html (日本農業新聞 2019年4月13日) ゲノム編集食品 予防原則で安全徹底を
 生物の遺伝子を効率的に改変できるゲノム編集。この技術を使って品種改良した農水産物の多くは厳格な安全性審査をせずに、今夏にも食品として販売できる見通しとなった。安全性について不安視する消費者は少なくない。買う側の選ぶ権利を保障するためにも、食品表示は不可欠である。ゲノム編集は新しい技術で、もともとある特性を消すため遺伝子の一部を削ったり、他の生物の遺伝子を導入したりする。目的の遺伝子をピンポイントで改変でき、開発期間を大幅に短くできるのが特徴。交配による育種や遺伝子組み換え(GM)技術に比べて簡単で間違いが少なく、汎用(はんよう)性がある。農業分野でも多収性の稲や日持ちするトマトなどの研究が進んでいる。農水省は2019年度から5年間で、ゲノム編集作物を五つ以上開発する「次世代バイオ農業創造プロジェクト」を始めた。19年度当初予算で1億100万円を計上。需要が見込め、収益性の高い品種をつくるのが目的だ。開発に取り組む研究機関を公募する。厚生労働省は報告書を3月にまとめ、開発者側は国に届け出れば販売してもよいとした。ただ届け出に法的な義務はなく、制度の実効性に疑問を投げ掛ける向きもある。安全性の審査が必要なのは新しい遺伝子を追加する場合だけ。もともとの遺伝子を取り除くなど改変する場合は不要とした。「従来の品種改良や自然界で起きる変化と区別がつかない」(同省)からだ。この報告書案について一般に意見を募集したところ、約700件が集まった。大半が「長期的な検証をしてから導入すべきだ」「自然界で起きる突然変異と同じとは思えない」など、安全性を懸念する声だった。この声は無視できない。「遺伝子」という命に関わる新技術の開発で賛否が分かれるのはやむを得ない。問題は、このような国民生活に影響を及ぼす重要課題について議論が不十分な上、1年足らずで方針をまとめてしまう拙速さにある。これは主要農作物種子法(種子法)が廃止されたのと同じ構図だ。作る側、食べる側の不安に応えようとしない国の姿勢が問われている。日本と同様、米国も技術開発や商品化の速度に法整備が追い付かない中、欧州司法裁判所は「自然には発生しない方法で生物の遺伝子を改変して得られた生物はGMに該当する」と判断した。疑わしいものは規制するという予防原則の立場を崩していない。生産現場への影響についての実証も十分とはいえない。技術を通して多国籍企業による種子の独占、支配が進むのではないかという見方もある。食の安全についてどう考えるか。いま一度、議論をする必要がある。その上で、消費者が食べる、食べないを選択できる表示を求めたい。これは国民の権利である。

<事業承継について>
*5-1:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO34657360X20C18A8EA2000/ (日経新聞 2018/8/27) 事業承継税制とは 孫まで円滑に引き継ぎ
▼事業承継税制 オーナー経営の中小企業の株式を後継者に移して代替わりをしようとすると、オーナーの生前なら贈与税、死後なら相続税が発生する。日本の産業を支える中小企業の技術・ノウハウが失われるのを防ぐには事業承継を円滑に進める必要があり、政府は2018年度に「事業承継税制」を大きく改正した。改正では納税が猶予される割合が8割から全額になり、対象となる株式も発行総数の3分の2から全てに拡大された。承継時点での税負担をゼロにすることが可能になっている。孫の代まで経営を引き継げば、猶予されていた税負担は免除される。優遇を受けるには都道府県知事に承継計画を提出しなければならないが、改正前に年500件ほどだった利用件数は大幅に増えると見込まれている。一方、法人を設立せず商売をしている個人事業主は長らく、商売用の土地の相続時に大幅に税額を減らす「小規模宅地等の特例」を活用してきた。ただ店舗に使う建物や設備は優遇対象外だったため、個人事業主でつくる納税者団体などが、対象に含めるよう求めてきた経緯がある。

*5-2:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO38283570Y8A121C1MM8000/ (日経新聞 2018/11/28) 個人事業主の事業承継支援へ税優遇 政府・与党検討
 個人事業主が事業承継をしやすい環境をつくるため、政府・与党は新たな税優遇制度を作る方針を固めた。子供が事業を継ぐとき、土地や建物にかかる贈与税などの支払いを猶予する「個人版事業承継税制」を作る。2025年までに70歳を超える個人事業主は約150万人いるとされる。引退期を迎えた個人事業主が税金を理由に廃業を迫られるのを防ぐ狙いだ。与党の税制調査会で制度の詳しい設計を議論したうえで、2019年度の税制改正大綱に新制度の創設方針を盛り込む方向だ。新制度の主な対象になるのは、地方の旅館や町工場、代々続く酒蔵などを家族経営しているような個人事業主。土地や建物などを含めて跡継ぎに事業承継する際は、控除を超える分に生前なら贈与税、死後なら相続税がかかる。政府・与党が検討している新制度は、土地や建物、設備にかかる税金の支払いを猶予する仕組み。10年程度の時限的な制度にすることで調整している。中小企業庁によると、個人事業主全体のうち相続税が実際にかかりそうなのは1割程度を占める。新制度が悪質な節税に利用されることを防ぐ対策も同時に設ける。個人事業主が事前に事業承継計画を都道府県に提出し、認可を受けることを条件にする。法人と違い、個人事業主は私用と事業用の資産の線引きが曖昧。資産の切り分けを第三者が確認することや、跡継ぎが承継後すぐに事業をやめないことを義務づける案を検討する。税優遇が過剰にならないようにもする。個人の土地の相続では今も「小規模宅地特例」と呼ばれる税優遇制度がある。土地の価格を8割減額して相続税を減らせる仕組みで、新制度の創設後はこの特例は税優遇を受けにくくする。現在は事業用の土地を買うために借金をした場合に私用の資産と相殺して節税したり、跡継ぎでない親族まで税優遇のメリットを受けたりできる。政府・与党は条件の厳格化でこうした問題点を解消し、個人事業主への税優遇が過剰にならないよう配慮する方針だ。

<地銀の役割と今後の展望>
*6-1:http://qbiz.jp/article/150743/1/ (西日本新聞 2019年3月23日) 地銀引き締め、再編頼み 金融庁監視強化 改善不十分で退場も 地元密着合理化に限界
 金融庁が地方銀行の監督指針を見直し、収益が低迷する地銀の逃げ道を断って経営改革を促す方向へかじを切る。人口減少や超低金利という「構造不況」が続く中で、特効薬のような事業戦略は見当たらない。圧力が行き過ぎれば、店舗の統廃合など無理なリストラで金融サービスが損なわれ、地域経済に禍根を残す懸念もはらんでいる。店舗などの減損処理で計約6800億円を損失計上−。みずほフィナンシャルグループ(FG)が6日に発表した2019年3月期連結業績予想の下方修正を、ある地銀幹部は「衝撃だった」と振り返る。頭をよぎったのは昨年5月、金融庁から業務改善命令を受け、収益力の抜本改革を迫られた福島銀行の事例だ。福島銀は収益力が下がった店舗の評価を低く見直す減損処理などにより、18年3月期決算で7年ぶりの赤字に転落した。処理の背景には、金融庁検査による厳しい追い込みがあったとささやかれる。「みずほFGと同様の損失処理を迫られれば、いきなり赤字に陥りかねない」。別の地銀幹部も首筋が寒くなった。金融庁は昨年、地銀が1行しかなくても単独での存続が難しい地域が青森、富山、島根など23県あるとの試算を公表。収益改善が見込めない地銀の市場からの「退出」に関する制度見直しにまで言及した。「環境を言い訳にする経営者は失格だ」。幹部は監督指針見直しの先に地銀の「廃業」さえも見据えている。昨年4月以降、新潟県や三重県、関西圏で地銀再編が進んだ。業界の耳目を集めたふくおかフィナンシャルグループと長崎県の十八銀行の再編は、公正取引委員会の審査を巡り混迷したが、ようやく来月実現する。政府は経営統合基準を緩和してさらに再編を促す構えだが、もはや再編相手をつかまえる体力すらないほどに弱体化した地銀もある。店舗や人員配置を大胆に見直して経営改革を急ぐメガバンクとは違い、過疎地も含めてネットワークを張り巡らせ、地域経済や雇用を支える役割を担う地銀の多くは、激しいリストラには二の足を踏まざるを得ないのが実情だ。金融庁が業務改善命令を連発すれば、経営トップの辞任ドミノが起こる可能性があるが、再建が進む保証はない。
*金融庁検査:金融機関が健全で適切な業務運営をしているかを金融庁と地方の財務局が協力して調べる仕組み。大手銀行や地方銀行、信用金庫などが対象。本支店への立ち入りに加え、書類提出や聞き取りなどを組み合わせる。内部管理体制や法令違反の有無を厳しくチェックする。人口減少に伴う地銀の存続可能性も重視している。

*6-2:http://qbiz.jp/article/150744/1/ (西日本新聞 2019年3月23日) 金融庁、地銀の監視強化 収益低迷に改善命令 月内にも指針
 金融庁は地方銀行など地域金融機関への監督指針を見直し、監視を強化する。「自己資本比率」の水準など財務の健全性を重視する考え方から、将来の収益力など事業の「存続可能性」の向上に軸足を移す。貸し出しなどの本業が赤字で業績が低迷する地銀に対し、店舗や人員の縮小などの速やかな改革を求める。月内にも公表する。今夏、問題があるとみられる地銀への検査に着手する見通しで、対応が遅れれば業務改善命令を出し、経営責任を明確化する。地銀の経営環境は、人口減少や日銀の大規模金融緩和に伴う超低金利の長期化で、収益力低下に歯止めがかからない。金融庁は厳しい経営環境でも存続できるビジネスモデルを構築するよう求めている。従来の監督指針では、不良債権問題を念頭に現在の自己資本比率が重要な指標だったが、新指針では将来の自己資本比率や収益力に着目する。自己資本比率が財務の健全性を示す国内基準の4%を上回っていても、本業で赤字を出し続けている地銀には、経営の改善を求める。地域の人口や企業数の増減、融資先の動向について分析し、経営陣から経営計画などについて聞き取り調査を行った後、立ち入り検査の必要性を検討する。金融庁が2018年3月期決算を分析したところ、全国の地銀106行のうち約半数の54行が本業で赤字になり、うち23行は5期以上連続で赤字だった。ある金融庁関係者は「日銀の超低金利政策の終わりは見通せない。経営者は背水の陣に立つ覚悟で改革に挑むべきだ」と強調する。金融庁は指針の見直しを前に一部の地銀に立ち入り検査を実施。福島銀行(福島市)に収益力強化を求める業務改善命令を出したほか、島根銀行(松江市)への対応も検討している。
   ◇   ◇
●生き残り模索、九州でも 
 九州の地方銀行も収益環境は厳しさを増している。2018年9月中間決算では九州の18行・グループ中、13行・グループが最終減益となった。各行とも店舗、人員縮減によるコスト削減や業務効率化に取り組むが、抜本的な改善は難しい。今回の指針見直しは、地銀に再編を迫る「布石」になる可能性もある。西日本シティ銀行(福岡市)は昨年1月、業務見直しと効率化を図る「業務革新室」を設置した。20年までに業務効率化などで事務量の3割を削減、現金自動支払機(ATM)の2割に当たる300台を減らすという。ふくおかフィナンシャルグループ(FFG、福岡市)傘下の熊本銀行(熊本市)は無人の4店舗を導入。佐賀銀行(佐賀市)も福岡県内の7支店1事業所を今月中に移転統合する。ただ店舗削減などは一時的な対策で、将来的な業績向上につながるとは言えない。4月のFFGと十八銀行(長崎市)の経営統合後も、地銀再編の動きが続くとの見方は根強い。九州フィナンシャルグループ(熊本市)社長で鹿児島銀行頭取の上村基宏氏は昨年末のインタビューで「単独で生き残れる状況ではない。結論の先送りはその分後れを取ることになる」と指摘した。

*6-3:https://www.agrinews.co.jp/p47146.html (日本農業新聞 2019年3月23日) アジア2銀行と提携 輸出や海外進出支援 農林中金
 農林中央金庫は22日、ベトナムとフィリピンの大手銀行と包括的な業務提携を結んだと発表した。現地銀行ならではの情報やネットワークを生かし、農林中金として日本の農業法人などの販路開拓や、日本の食農関連企業の海外進出などを支援する。他のアジアにある複数の国の銀行とも同様の連携を始め、食農分野での海外進出・事業拡大への支援を本格化させる。農林中金は2019年度から5カ年の次期中期計画で、国内の農家所得増大などにつなげるため、アジアの食農バンクとしての機能を発揮し、アジアの成長を取り込む方向を示している。今回提携を結んだのは、ベトナム投資開発銀行とフィリピンのBDOユニバンク。農林中金は、オランダの協同組合金融機関「ラボバンク」とも既に提携。ラボバンクもアジアの情報は持っているが、現地銀行と連携することで、より地域のきめ細かい情報やネットワークが活用できる。具体的には、農業法人やJAグループ、食品関連企業に対し、現地情報の提供やビジネスマッチング、現地での協調融資、企業の合併・買収(M&A)への助言、現地通貨の供給などを目指す。例えば、農業法人などが日本産農産物の販路を探している場合は、提携銀行からの情報やネットワークを生かして売り先を見つけ、商流を構築することなどが考えられる。輸出ではJA全農とも連携。農業生産資材企業の販路開拓のための出資や企業買収、低温のまま輸送するコールドチェーン構築のための現地企業との連携への支援なども想定できるという。こうした情報を生かし、各種サービス提供を進めるため、農林中金は4月から海外展開を支援するための専門チームを立ち上げ。シンガポール支店の人員も増強する。農林中金は「現地からの日本の農業や食品に対する関心は高い。農業法人に加え、食品企業を支援することで、国内の農林水産物の消費を増やすことにつながる」(営業企画部)と説明する。

<疑問を感じる思考法>
PS(2019年4月17、18日追加):*7-1に、「①福島県産の野菜・果物・魚の放射性物質検査で、2018年度に国の食品基準(1kgあたり100ベクレル以下)を上回ったのは約1万6000点のうち0.04%の6点だった」「②福島県は原発事故のあと県産の野菜・果物・魚 の一部で放射性物質の検査を行っている」「③国の基準を超える食品は、肉類は2011年度、野菜・果物は2013年度、穀類は2015年度から出ていない」としており、*7-2は、「④WTOで敗訴したが、風評被害を広げぬようにしよう」「⑤残念だが、食の安全で消費者の関心は国を問わず極めて高い」「⑥23カ国・地域で続いている輸入規制撤廃と風評被害の払拭をねばり強く進めたい」「⑦生産者、消費者への十分な説明が必要」としている。
 しかし、このブログに何度も書いたように、このうち①③は、国の食品基準(1kgあたり100ベクレル以下)なら無害だとする科学的根拠はないため、説明もされていない。また、基準以下の場合には反応しないように測定器が設定されており、“食べる部分”とする一部を測定しているに過ぎないとも聞いているため、「安全」という方が風評にすぎない。さらに、②のように、ごく一部しか測定せずに全体を推測して安全性を強調するのはリスクが高い。
 また、⑤のように、食の安全性に関する消費者の関心が高いことを残念だとしている点は根本的姿勢が間違っており、④のようにWTOで敗訴し、⑥のように23カ国・地域で輸入規制が続いているのは「日本基準以下なら安全なのだから、外国の輸入規制の方が風評被害にすぎず、ねばり強く撤廃しよう」としている点で、科学的な説明もできないくせに傲慢極まりない。そして、生産者、消費者の方が詳しいのに、⑦のように説明不十分としている点は呆れるのである。
 なお、上記のように、「国の食品基準(1kgあたり100ベクレル)以下なら安全だから、いくらでも食べよ」と根拠も示さずに主張しながら、*7-3に書かれているように、「⑧経団連は再稼働や新増設の推進を掲げ」「⑨福島事故で表面化した原発の問題点には触れず」「⑩最大81兆円の廃炉等事故対応費を税金と電気料金で国民に負担させ」「⑪世界で斜陽化する原発産業にこだわり続け」ようとしている。残念ながら、これは客観的数字を無視して何が何でも日本の主張が正しいと信じ、メディアも加担して誤った政策につき進んで行った過去を思い出させる。
 このような中、*8のように、2018年の農林水産物は、輸出額9,068億円・輸入額9兆6,688億円・貿易赤字8兆7,620億円で、輸出額に対して輸入額が10倍という圧倒的輸入超過の状況で貿易赤字が拡大しているそうだ。値段が高くて安全性に「?」がつくのでは当然とも言えるが、解決策は国民が需要していないものを供給してそれを食べるように強制することではなく、これまで(安倍政治ではなく戦後政治)の政策の失敗を含めて悪い点を一つ一つ変えていくことしかない。なお、うぬ惚れの結果、自動車もJapan Passingが始まっており、いつまで貿易黒字が続くかわからないため、このままでは米国のように双子の赤字になる可能性が高い。



(図の説明:1番左の図のように、牛白血病が増加しており、左から2番目の図のように、日本では東日本に出ている。右から2番目の図に書かれている症状は人間の癌に似ており、1番右のように、感染症だとされているものの癌免疫薬が効くそうだ。何故か?)


  宝島2015.3.24    宝島2015.3.9      宝島2015.3.25    宝島2015.3.24

(図の説明:この記事を掲載した雑誌宝島は、「風評被害」「差別」などと叩かれて廃刊に追い込まれたが、書かれている統計データや内容は常識的だった。放射線に当たるとDNAが壊されるため、白血病や癌が増えたり、生殖細胞や胎児に悪影響を与えたりする。また、心臓病の増加も報告されており、フクイチ事故で増えた分は、本当は原発被害や原発のコストにあたる)

*7-1:https://www3.nhk.or.jp/lnews/fukushima/20190417/6050005159.html (NHK 2019年4月17日) 放射性物質 基準超の食品は6点
 福島県産の野菜や果物、魚などの放射性物質の検査で、昨年度国の食品の基準を上回ったのはおよそ1万6000点のうち6点でした。基準を超えたのはイワナとヤマメ、たらの芽でした。福島県は原発事故のあと県内でとれた野菜や果物、魚などの一部で放射性物質の検査を行っています。昨年度は492品目、1万5941点を検査し、国の食品の基準の1キロあたり100ベクレルを超えたのは0.04%にあたる6点で、10点だった前の年度に比べ、4点減りました。基準を超えたのは、福島市、伊達市、桑折町の阿武隈川水系でとれたイワナ2点とヤマメ3点、北塩原村でとれた野生のたらのめ1点でした。基準超えの食品は原発事故の直後に比べ大幅に減少していて、肉類は平成23年度から、野菜や果物は25年度から、コメなどの穀類は27年度から、国の基準値を上回るものは出ていません。県環境保全農業課は、「安全安心を確保するにはこうしたデータがベースになるので、品目や検体の数も含めてこれまでと変わらず検査を徹底するとともに正確に情報発信していきたい」としています。

*7-2:https://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2019041702000164.html (東京新聞社説 2019年4月17日) WTO逆転敗訴 風評被害を広げぬよう
 福島県産などの水産物輸入禁止をめぐる韓国との貿易紛争で日本は敗訴した。残念だが、食の安全で消費者の関心は国を問わず極めて高い。ねばり強い対応で規制撤廃と風評被害の払拭(ふっしょく)を進めたい。一審は二〇一八年二月に日本の主張を認めただけに、最終判断の二審での逆転敗訴は想定外で、産地の漁師に落胆が広がっている。経緯をたどると、一一年三月の福島原発の事故後、放射性物質への懸念から日本の水産物の輸入規制が各国に広がった。このうち韓国は、一三年九月に汚染水流出を受けて規制を強化し、福島、宮城、岩手など八県の水産物の輸入を全面禁止した。安全対策に取り組んできた日本はこれを不当として、一五年八月、世界貿易機関(WTO)に提訴していた。WTOは貿易紛争を扱う唯一の国際機関。機能の低下も指摘されるが、外務省は「中立的な専門家の判断」としている。日本の食品の安全性を否定しない一方で、韓国の主張を認めた判決をよく分析してほしい。生産者、消費者への十分な説明が必要だ。原発事故から八年。輸入規制は五十四カ国・地域から二十三に減った。勝訴をてこに規制撤廃と輸出拡大を目指した政府の戦略は練り直しが必要だ。養殖ホヤの生産量全国一位の宮城県では原発事故前、七、八割を韓国に輸出していた。厳しい基準での放射性物質検査に協力し、規制解除を待ち望んできた生産者、産地の漁師らの落胆は察するに余りある。ただ日本でも過去、内外の食品、食物の安全性でさまざまな問題が起きている。牛海綿状脳症(BSE)では、今回とは逆に、米国から輸入禁止の条件が厳しすぎると批判を受けた。消費者が政府に慎重すぎるくらいの対応を求めるのは国ごとの面もある。ふたつ指摘しておきたい。まず、WTO改革による紛争処理機能の強化。多国間の枠組みであるWTOの権威が揺らげば、紛争は激化しかねない。二審を担当する委員七人のうち四人が空席という事態を早く解消すべきだ。そして原発事故の影響の大きさにあらためて向き合わなければいけない。輸入規制は二十三カ国・地域で続いている。風評被害を防ぎ、すべての消費国、消費者に受け入れられるには科学的なデータの蓄積と提供、丁寧で根気強い説明が不可欠となる。

*7-3:https://www.kobe-np.co.jp/column/shasetsu/201904/0012248199.shtml (日経新聞 2019/4/17) 経団連と原発/次代への開かれた議論を
 経団連の中西宏明会長がエネルギー政策の提言を発表した。自然エネルギー拡大に必要な送配電網や蓄エネ技術の開発など、重要な指摘が多数ある。ところが、肝心の原発については首をかしげる部分が多い。安全性確保や国民の理解を前提に、再稼働や新増設の推進を掲げている。だが福島事故が示したさまざまな問題に触れていないのは不自然だ。エネルギーの在り方は日本の命運を左右する。中西会長は、次代への責任として開かれた場で疑問に答え、幅広く議論してもらいたい。中西会長は年初のインタビューで、「国民が反対するものはつくれない」「理解を得るために一般公開の討論をすべき」と発言した。その後、「再稼働をどんどんやるべきだ」と積極姿勢を打ち出し、物議を醸した。経済界トップの呼び掛けに応じて、「原発ゼロ・自然エネルギー推進連盟」が公開討論を申し込んだが、経団連はずっと拒否している。今回の提言は化石燃料の依存度を下げるために原発再稼働の必要性を主張し、60年運転延長にまで踏み込んだ。中西会長は原発メーカーの日立製作所会長でもある。福島の事故で多くの人々が苦しんでいる中、原発の負の部分を語らないのは無責任ではないか。民間シンクタンクが最大81兆円とした廃炉など事故対応費は、税金と電気料金で国民が負担している。事故から8年経っても収束までの時期も費用も全く見通せない。こうした膨大な社会的費用を無視した主張は、国民の支持は得られない。もう一つ気掛かりなことは、世界で斜陽化する原発産業にこだわり続けることのリスクだ。政府が成長戦略とした原発輸出は総崩れの状況にある。巨額の安全対策費が必要で高リスクの原発と、世界の投資が集中する自然エネルギーでは競争力の差が広がり続ける。世界の潮流は自然エネルギーを中心に、蓄電池や電気自動車、住宅などをつないだ自立・分散型社会へと加速している。提言は、電気や関係業界のビジネスモデルが一変する可能性も指摘した。原発に固執せず本音で話し合ってほしい。

*8:https://www.agrinews.co.jp/p47405.html (日本農業新聞 2019年4月18日) 18年貿易赤字 農林水拡大 8・7兆円で1958億円増
 農林水産物の貿易赤字が拡大している。農水省のまとめによると2018年は、輸出額9068億円に対し、輸入額は9兆6688億円となり、貿易赤字は8兆7620億円と前年に比べ1958億円(2%)増えた。輸出額が約1000億円伸びたものの、輸入額の伸びがそれを大きく上回った。輸入額は過去最高を更新した。農産物(食品を含む)が6兆559億円(2%増)と貿易赤字の多くを占めている。ホームページで公表する03年以降で輸入額は最大。輸出額に対し、輸入額が10倍という圧倒的に輸入超過の状況だ。赤字額は林産物が1兆2182億円、水産物が1兆4879億円となっている。農産物の輸入品目を輸入額で見ると、豚肉、牛肉、トウモロコシ、生鮮・乾燥果実、鶏肉調製品、冷凍野菜が上位に並ぶ。19年は赤字幅がさらに拡大するとの懸念が強い。TPPや日本と欧州連合(EU)との経済連携協定(EPA)が相次いで発効。牛肉などの輸入が増えるなど、貿易収支悪化の懸念材料は多い。貿易協定交渉が始まった米国は、農林水産物輸入の最大の相手国。18年の輸入額は1兆8077億円で、トウモロコシや食肉が中心だ。それに対し、輸出額は1176億円にとどまる。1兆6901億円の赤字で、農林水産物全体の貿易赤字の2割を占める。

<思考するには基礎知識が必要であること>
PS(2019年4月19、20、22日追加):*9-1に、地球環境工学が専門で東大学長を勤められた小宮山氏が「①3・11以降、原発のコストが上がり、再エネは下がって逆転が早かった」「②送電線は国民が払った電気料金で整備してきたので単に電力会社のものではなく、公共事業で増強して社会の所有物にすべき」「③世界の潮流は完全に再エネシフトしており、欧州の再エネ比率は30%超、中国は25%、米国も30%程度で、日本の16%は完全に出遅れている」「④現在は、石油・石炭・天然ガスを輸入するため20兆~30兆円が海外に流れているが、再生エネで自給するようになれば、この金は国内に流れ地域の産業に変わるので地方の活性化という日本の根本的な課題の解決に繋がる」「⑤原発ゼロは必然で、再生エネ負担は後世への贈り物」と明言しておられるが、このようにわかりやすくポイントを必要十分に語れる背景には、工学・環境・政治(社会インフラ)・経済(地方活性化)などの幅広い知識と経験の裏打ちがある。
 そのような中、*9-2に、「イ. 小学6年と中学3年全員を対象として、文科省の全国学力テストが4月18日に行われた」「ロ.中3で初めて行われる英語では発信力を重視した」「ハ.国語と算数・数学は日常生活に関わる場面設定に基づく出題が中心になった」「ニ.佐賀県教育委員会は独自に小5、中1、2で国語、算数・数学の2教科のテストも実施した」「ホ.佐賀県内は前年度、小中学ともに漢字の読みや計算など基礎の正答率は高かったが、実験結果を考察するなどの応用問題を解く力に課題があった」等が書かれている。
 このうち、イについては、全国では小6と中3しか学力テストを行わないことに呆れ、佐賀県教育委員会がニのように独自に小5、中1、2でもテストを実施したことに賛成だが、思考するには理科・社会の知識も使うため、国語・算数(数学)と英語のみに限定した科目選択を行い、これだけが重要であるかのようなメッセージを与えるのはよくないと思う。また、ロのように、中3で初めて英語のテストを行って発信力を重視するというのも考え方が安易で、意味のある内容を説得力をもって発信するには背景となる知識が重要なので、小5から数国理社英の5科目はテストをして確実に身に着けさせた方が良く、そうしなければプアー日本人を生産してしまうだろう。また、ハの日常生活の場面における応用は、理科・社会・その他の知識も組み合わせて使うので意外と簡単ではなく、義務教育では幅広い基礎知識を確実に身に着ける方が重要だと考える。
 なお、地球温暖化対策に関する「パリ協定」は、このブログに記載してきたとおり、原発の欠点により、原発回帰ではなく再エネシフトを奨めている。そのため、*10-1のように、日本政府が原発を「実用段階にある脱炭素化の選択肢」などとG20サミットまでに正式決定して国連に提出するのは、ただイノベーションという言葉を繰り返しているだけで諸問題の解決はできておらず、外国の首脳はそれぞれ優秀であるため、日本政府の環境に関する知識や意識の低さをアピールして失笑を買うと思う。さらに、日本国民の金を湯水のように使うのも大きな問題だ。
 このような状況の下、*10-2のように、衆院沖縄3区と大阪12区の補欠選挙でいずれも自民党候補が敗れ、朝日新聞は、その原因を「①首相が沖縄に入らなかった」「②首相への忖度発言で塚田氏が国交副大臣を、復興に絡む失言で桜田氏が五輪相を辞任し、首相の任命責任が問われた」「③選挙期間中に首相側近が10月に予定される消費増税の延期に言及した」などとしているが、沖縄3区は米軍普天間飛行場移設に伴う名護市辺野古への土砂投入に対する批判であり、大阪12区は維新の党のこれまでの実績を評価したもので、どちらも有権者が地元を守るため地元に関する政策を判断したものであって、①②③のように、無理に安倍首相の人格や過失に問題をすりかえても当たらない。地方の有権者は、まじめに考えており馬鹿ではないのである。
  
*9-1:https://genpatsu.tokyo-np.co.jp/page/detail/969 (東京新聞 2019年3月11日) 「原発ゼロは可能だ」小宮山宏・三菱総研理事長インタビュー
 三菱総合研究所理事長の小宮山宏氏(74)は東京電力福島第一原発事故の前後に東電で監査役を務め、原子力業界を間近で見てきた。近年は再生可能エネルギーの推進を訴え、経済界に身を置きながら「原発ゼロは可能だ」と明言する数少ない一人。その真意を聞いた。(伊藤弘喜)
●3.11機に原発はコスト高く
−東電監査役時代からの考えが変わったのですか。
 あまり変わっていません。東電でも再生エネと省エネの重要性を主張し続けた。1990年から一貫して「温暖化の解決策となるエネルギー源は、再生エネと原子力しかない。ただし原子力には安全性の問題がある」と言ってきました。90年代、再生エネのコストはまだ高かった。技術的な見通しが完全には立っていなかったから。でも技術が進めば下がり、2050年ごろには安全対策でコストが上がる原子力と逆転すると思っていた。ところが3・11がきっかけとなり原子力のコストは上がり、再生エネはがんがん下がった。(逆転は)予想よりはるかに早かったです。
●送電線は公共事業で増強を
−なぜ日本で再生エネが拡大しないのでしょうか。
 背景に大手電力10社による地域独占体制がある。地域間をつなぐ送電線が細く、電力が足りなかったり余ったりした時、融通できる余地が少ないのです。送電線は誰のものか。国民が払う電気料金で整備してきたのだから、単に電力会社のものではありません。公共事業で増強し、社会の所有物にすべきです。昨年、世界で新設された発電所の70%は再生エネで火力が25%、原子力が5%。こうした傾向は近年、一定しており、世界の潮流は完全に再生エネにシフトしている。欧州では再生エネの比率は30%を超えた。中国でも25%、米国が3割ほど。日本は16%で完全に出遅れています。
●再生エネは地方を変える
−再生エネはどんな効果をもたらしますか。
 地方の活性化という日本の根本的な課題の解決につながります。今は石油や石炭、天然ガスを輸入するため20兆~30兆円が海外に流れている。再生エネで自給するようになれば、このお金は国内に流れ、地域の産業に変わります。間伐材や家畜のふん尿で発電するバイオマスの推進は、農林業の再生につながる。水が豊富な地域は水力を、風が強い地域は風力を−といった具合に、地域に合った再生エネに取り組めばいいのです。
−現状は、政府も経済界も原発再稼働に積極的です。
 20年後には原発はほとんど動いていないでしょう。新しい原発をつくるのは極めてコストが高い。長期的には、全てを再生エネでまかなうことに多くの人が合意できると思います。一番安いのだから。
●再生エネは後世への「贈り物」
−再生エネ電力を買い取る固定価格買い取り(FIT)制度は電気料金で下支えしています。それにより、国民負担が膨らんでいるという指摘があります。
 FITは再生エネを普及させるために、現世代が負担する制度です。原発が放射性廃棄物の負担を次世代に回していることとは逆の構造なのです。FITでの買い取り期間は10~20年。何万年も保管する必要がある放射性廃棄物と比べれば、FITの負担は我慢できる範囲だと思います。温室効果ガスを出さず、後世に負担を残さない「贈り物」となるエネルギー源は、再生エネ以外にありません。
【略歴】こみやま・ひろし 1944年、栃木県生まれ。東大大学院博士課程修了。工学博士。専門は地球環境工学。東大教授、東大学長などを経て、2009年から現職。09年6月~12年6月まで東電監査役。

*9-2:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/364133 (佐賀新聞 2019年4月19日) 全国学力テスト、県内は255校 中3で初の英語、発信力重視
 小学6年と中学3年の全員を対象とした文部科学省の「全国学力・学習状況調査」(全国学力テスト)が18日、一斉に行われた。中3で初導入の英語では自分の考えを書いたり話したりする発信力を重視。学習指導要領改定を踏まえ、基礎知識と活用力を一体的に問う新形式に変更された国語と算数・数学は、日常生活に関わる場面設定に基づく出題が中心となった。佐賀県内では、国公立の小中学校と特別支援学校、私立中の計255校、約1万5500人が試験に臨んだ。結果は7月に公表される。英語は「読む・聞く・書く・話す」の4技能を問い、このうち「話す」は、パソコンの画面の映像を見て英語で説明させる形式。生徒の声の録音データを基に採点を行う。テレビ局から将来の夢を聞かれたという設定で、内容を1分間考えた後に30秒で答える出題などがあった。国語と算数・数学はこれまで、基礎知識を問う「A問題」と活用力を測る「B問題」に分かれていたが、今回から統合し、活用力を意識した設問をそろえた。日常生活と結び付いた場面設定が多く、小学校国語では、畳職人へのインタビューのやりとりから自分の考えをまとめさせた。佐賀県教育委員会は独自に小5、中1、2で国語、算数・数学の2教科のテストも実施した。対象は公立の小中学校258校、約2万3千人。県教委は、7月末をめどに国から結果が届くことを受けて、前年度まで実施してきた独自の採点は行わない。県独自の調査分については6月下旬までに各学校に集計結果を送る。県内は前年度、小中学ともに漢字の読みや計算など基礎の正答率は高かった一方で、実験結果を考察するなどの応用問題を解く力に課題があった。県教委は、基礎学力の定着に向けた補充学習の実施や、家庭学習の定着に向けた手引を小中学の保護者に配布するなど五つの柱に沿って学力アップに取り組んでいる。今回の全国での参加は小学校1万9496校の約107万6千人、中学校1万22校の約104万5千人。国公立は全校、私立の参加率は50・1%だった。

*10-1:https://digital.asahi.com/articles/DA3S13985037.html (朝日新聞 2019年4月20日) 温暖化の対策案、「原発推進」鮮明 政府、国連に提出へ
 地球温暖化対策の国際ルール「パリ協定」に基づき、政府が国連に提出する長期戦略案が19日わかった。焦点の一つである原発は「実用段階にある脱炭素化の選択肢」とし、安全性・経済性・機動性に優れた炉を追求するとの目標を掲げた。政府の有識者懇談会の提言より、原発推進に前のめりな姿勢を鮮明にした。23日に公表し、国民から意見を募った上で6月に大阪である主要20カ国・地域首脳会議(G20サミット)までの正式決定をめざす。パリ協定は2015年に採択され、21世紀後半に温室効果ガスの排出を「実質ゼロ」にすることをめざしている。各国は20年までに国連に長期戦略を提出する必要がある。日本は「50年までに温室効果ガスを80%削減」との目標を掲げており、長期戦略は実現に向けたシナリオとなる。安倍晋三首相の指示で、政府の有識者懇談会が基本的な考え方を議論してきた。今月2日に公表した提言では、原発について省エネルギーや再生可能エネルギー、水素などとともに技術的な選択肢の一つとし、「安全性確保を大前提とした原子力の活用について議論が必要」だとして、推進までは踏み込んでいなかった。一方、長期戦略案では、原発を二酸化炭素(CO2)大幅削減に貢献する主要な革新的技術の一つとして取り上げ、「可能な限り原発依存度を低減する」としつつも、「安全確保を大前提に、原子力の利用を安定的に進めていく」とした。「もんじゅ」(福井県)で失敗した高速炉のほか、小型炉、高温ガス炉など具体的な技術例を挙げたうえで、「原子力関連技術のイノベーションを促進する観点が重要」とも言及した。

*10-2:https://digital.asahi.com/articles/ASM4P76P2M4PUTFK007.html?iref=comtop_8_01 (朝日新聞 2019年4月21日) 政権与党、参院選へ痛手 忖度・復興失言… 補選2敗
 衆院沖縄3区と大阪12区の補欠選挙が21日、投開票され、沖縄では野党系新顔、大阪では維新新顔が初当選し、自民党新顔がいずれも敗れた。与野党ともに夏の参院選の前哨戦と位置づけたが、政権与党は大きな痛手を受け、大阪で大敗した野党も連携が不発に終わった。2012年の政権復帰以降、国政選挙で強さを見せてきた安倍政権が補選でつまずいた。国政選挙にもかかわらず、安倍晋三首相は沖縄に入らず、大阪入りは投票前日。選挙の顔として不安を残した。「オール沖縄」や維新が、政権に対する批判票の受け皿になった形だ。新元号「令和」への好感から一部には内閣支持率が上昇した世論調査もあったが、首相らへの「忖度(そんたく)」発言で塚田一郎氏が国土交通副大臣を、復興に絡む失言で桜田義孝氏が五輪相を相次いで辞任。首相の任命責任が問われた中での選挙戦だった。大阪は維新のダブル選で圧勝した勢い、沖縄では米軍普天間飛行場移設に伴う名護市辺野古への土砂投入を強行してきた政権に対する厳しい批判の逆風にさらされた。大阪12区はもともと自民の議席のため、自民や公明の幹部は「せめて1勝」と口をそろえていたが、両選挙区とも自公協力がうまく機能しなかった。首相は投開票日前日に同じ選挙区内で異例という3カ所の街頭演説をこなしたが、自民幹部が一度は公言した公明党の山口那津男代表とのそろい踏みは実現しなかった。選挙期間中に首相側近が10月に予定される消費増税の延期に言及。政権内には、夏の参院選に合わせた衆参同日選論がくすぶる。しかし、公明は同日選に強く反対しており、自公の選挙協力がきしむ中で踏み切れるか不透明な状況だ。対する野党は、「辺野古移設反対」で一致した沖縄3区では連携を成功させた。しかし、大阪12区では共産党現職が辞職して無所属で立候補し、他党が協力する方式が不発に終わった。参院選で32ある1人区の候補者調整で、共産系候補が立候補するケースは限定的になりそうだ。

<高齢者・障害者差別から課題解決へ>
PS(2019年4月22、23日追加): *11-1・*11-2のように、「①高齢ドライバーが自動車事故を起こした」「②従って80代以上は免許返納を」「③地方では車がないと生活できない」「④犠牲者が気の毒」などという議論がよく起こるが、④だからといって、①②のように、「高齢になると判断能力が衰え、事故を起こしやすいので、80代以上は全員免許を返納せよ」というのは、「女性は運転能力がないので、女性には自動車免許を取らせない」というのと同様に属性に基づく根拠なき差別であり、人によって異なる。また、③のように、地方では車がないと生活できない上、都会でも運転が必要不可欠な場合もあるため、人権侵害にもなる。
 そして、*11-3のように、年代別の事故率は、20代・40代・30代が多く、80歳以上による交通事故は最も少ないそうで、データを読む場合は感情論に走らず、「母集団の数」「運転時間(あまり運転しない人は事故も少ないから)」などを揃えて正確に考察すべきだ。
 なお、障がい者はむしろ自動車が不可欠な場合もあるため、障がい者が運転できない自動車の構造は変えるべきであり、バリアフリーを実現するためにも自動運転や運転支援機能が重要なことは、前から指摘されていた。にもかかわらず、*11-4のように、未だに「CASEの重圧」などと記載されているのは、日本の自動車会社の決断の遅さを示しており、これについては既に進路が明確になっているため、ディーゼル車やハイブリッド車に経営資源を振り向けるよりも、EVや自動運転車に経営資源を集中した方が無駄なく競争できるわけである。
 このように、ともかく高齢者の能力を低く見たり、差別したりするキャンペーン発言が多い中、*12のように、佐賀県鹿島市に91歳で初当選した市議がおられ、「イ. 年寄りとは思っておらず、老け込むには早過ぎる」「ロ. 4年間やっていく自信がある」「ハ. 老人のことを専門にする人が、議会に1人くらいいてもいいのではないか」と言っておられるのは頼もしい。確かに、若くさえあればよいわけではなく、高齢者だからこそわかることも多いため、人口構成を反映した議員構成が必要だろう。


アウディの自動運転車 ベンツの自動運転車  ヤマトのEV配送車    日本郵便のEV

(図の説明:日本では、1995年前後からEVの市場投入をめざして研究開発してきたにもかかわらず、実用化はEUや中国の方が早く、それを見て後を追いかけることしかできていない。また、自動運転や運転支援も高齢化・運転手不足・バリアフリー等の視点から2000年代には言っていたのに、他国に後れをとってから慌てる構図が変わらないのは何故だろう?)

*11-1:https://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201904/CK2019042002000261.html (東京新聞 2019年4月20日) 池袋暴走 「80代以上 免許返納を」 「地方暮らし 車が必須」
 東京・池袋の乗用車暴走事故があった現場では二十日午前、亡くなった母子を悼む人たちが次々と訪れ、花などを供えて手を合わせた。横断歩道のそばに設けられた献花台には、数十もの花束や人気アニメのキャラクターが描かれたお菓子などが並べられた。亡くなったのは、現場近くに住む松永真菜(まな)さん(31)と長女莉子(りこ)ちゃん(3つ)。近くのマンションに住む福沢有希子さん(40)は、花束の前で自転車を止め、後ろに乗った次女(4つ)と一緒に手を合わせた。「とても人ごととは思えない。無念と思いますが、天国で安らかに過ごしてほしい」と声を落とした。青信号の横断歩道を渡っていた人たちが巻き込まれた今回の事故。福沢さんは「青信号でもしっかり安全確認しよう」と家族で話し合ったという。近くの女性看護師(39)は「事故の時に近くにいれば。何かの助けになりたかった…」と悔やむ。八十七歳の高齢ドライバーによる事故を受け、栃木県で暮らす六十代の両親に電話で「運転に気を付けようね」と伝えたという。「地方では車がないと生活できない。実家に帰ったらタクシー代を渡したい」と話した。追悼に訪れた人たちの中には、高齢者の姿も。二歳の孫がいるという千葉県成田市の男性(75)は花束の前で手を合わせ、「あまりに悲しすぎる」と何度もハンカチで目を拭った。男性は毎日のように車を運転しているが、衰えも感じるという。「赤信号を漫然と見過ごさないよう意識しているが、高齢者講習を強化しないといけないのでは」と指摘した。三歳の孫がいるという近くに住む女性(66)は「亡くなった子と同じ公園で遊んだこともあったかもしれない。かわいい盛りなのに」と涙ぐんだ。痛ましい事故を受け、「八十代ぐらいで免許は返還してほしい」と語った。

*11-2:https://www.hokkaido-np.co.jp/article/298364 (北海道新聞 2019年4月20日) 82歳運転の乗用車、店舗入り口に突進 むかわ 2人軽傷 アクセルとブレーキ踏み間違えか
 20日午後2時5分ごろ、胆振管内むかわ町美幸4のホームセンター「ホーマックニコットむかわ店」の入り口付近に、同町穂別の会社役員男性(82)の乗用車が突っ込んだ。入り口前の園芸コーナーで作業をしていた店長の男性(53)と女性従業員(30)がはねられ、腰などを打つ軽傷を負った。乗用車は建物には衝突しなかった。苫小牧署によると、会社役員男性は駐車場に車を止めようとしていたという。同署はこの男性がアクセルとブレーキを踏み間違えたとみて調べている。

*11-3:https://news.yahoo.co.jp/byline/mamoruichikawa/ (Yahoo 2016/11/20) 高齢ドライバーの事故は20代より少ない 意外と知らないデータの真実
 10月、11月と高齢のドライバーによる交通死亡事故が相次いで報道されています。「登校の列に車、小1男児が死亡 横浜、児童8人けが」(朝日新聞 10月28日)。「駐車場のバー折って歩道の2人はねる…車暴走」(読売新聞 11月13日)。実際に統計上、高齢ドライバーによる死亡事故の件数は増加しているようです。「2014年に約3600件あった死亡事故のうち、65歳以上の運転者が過失の重い「第1当事者」になったケースは26%だった。約10年間で10ポイント近く増えている。 出典:北海道新聞11月17日社説『高齢ドライバー 事故防ぐ対策急ぎたい』」でも考えてみると、いま日本では急速に高齢化が進んでいます。それとともに65歳以上の人口が増えているわけですから、事故の件数が増えてしまうのはある意味で当然のことです。では高齢化の影響を除いた場合、高齢ドライバーによる事故は増えているのでしょうか?
●高齢ドライバーが起こす交通事故は20代より少ない
 上の図は、交通事故を起こした人(第1当事者)の数を年代別に、平成17年から27年まで見たデータです。ポイントは、年代別の「全件数」ではなく、「その年代の免許者10万人当たり、どのくらい事故を起こしているのか?」を調べていることです。こうすることで、より正確に「その年代の人が、どのくらい事故を起こしやすいのか」を知ることができます。(※16歳からのデータがあるのは、原付やバイクを含むからです。)まずわかることは、全年代でゆるやかに減っていることです。全体で見ると、10年前のおよそ半分になっています。では、どの年代がもっとも交通事故を起こしやすいのでしょうか?上から順番に見ていくと、「16~19歳」が傑出して多く、それに続くのが「20~29歳」。その次に来るのが「80歳以上」です。70代となると、他の年代とほとんど差はありません。とはいえ、高齢者になるとペーパードライバー(免許を持っているけれど運転しない人)の割合が多くなりそうです。そこで念のため、年代別の「全件数」のデータも調べてみました。驚いたことに、20代・40代・30代が多く、80歳以上による交通事故が最も少ないことがわかりました。少なくとも上記のデータからは、高齢者が若者と比べて特に交通事故を起こしやすいとは言えないのではないか?という気がしてきます。
●死亡事故は80歳以上で起こしやすいが、トップではない
 では、「死亡事故」に限定した場合はどうなるでしょうか?年代別の免許者10万人当たりの件数を見たデータです。まずわかることは、死亡事故も大幅に減っているということです。80歳以上に限定すると、10年前の半分程度に減っています。死亡事故の場合、確かに80歳以上の危険性が高いことがわかります。ただし「16~19歳」も高く、去年のデータでいえばわずかに80歳以上を上回っています。その次は、20代と70代が同じくらい。とはいえ、その他の年代と比べて、それほど多いとは言えないようです。上記のデータからは、「16~19歳と80歳以上の運転者は、死亡事故を起こしやすい」のではないか?ということがわかります。なおせっかくですから、年代ごとの交通死亡事故の「全件数」を見てみます。全件数でみると、やはり20代や40代が多く、80歳以上が起こす死亡事故は少ないことがわかります。この年代で運転している人が、そもそも少ないのかもしれません。
●データをもとに議論する大切さ
 いま高齢ドライバーが起こす死亡事故が急増していることが強調され、免許返納や認知機能検査などの重要性が指摘されています。確かにデータからも、件数としては少ないですが、80歳以上で死亡事故を起こす危険性が高いことが示されています。今後、高齢化のなかでこの年代のドライバーの絶対数が増えるのは確実ですから、対策が急務なことは間違いありません。ただ心配なのは、高齢ドライバーへの風当たりが必要以上に強まることです。例えば下記の報道で「高齢ドライバー」とされているのは、67歳の男性です。「高齢ドライバーにはねられ男性死亡 長崎」(日テレNEWS24・11月18日)65歳以上の人は「高齢者」とされるので、この男性を「高齢ドライバー」と呼ぶのは間違っていないかもしれません。でも実際の統計データは、60代のドライバーは20代より交通事故を起こしにくいことを示しています。わざわざ上記の事故を「高齢」と付けて報じることで、誤ったイメージが広がってしまう危険があります。繰り返しますが、死亡事故を減らすために、増え続ける高齢ドライバー(75歳以上)、とくに認知症に気づかないまま運転してしまう人への対策は有効だと考えられます。一方で高齢者にとって、自動車の運転が自立した生活の生命線であったり、「誇り」の象徴だったりするケースも少なくありません。いま対策が急務だからこそ、「なんとなく危なそう」というイメージではなく、データに基づいて「どんな年代の人に、何をすべきか」を冷静に考えていくことこそが大事なのではないでしょうか。
【注】第1当事者とは、事故当事者のうちもっとも過失の重い者のことを言います。

*11-4:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190421&ng=DGKKZO43942810Z10C19A4MM8000 (日経新聞 2019年4月21日) 自動車産業にCASEの重圧、直近ピーク比、時価総額57兆円減
 自動運転など新しい技術の潮流「CASE(ケース)」が、世界の自動車産業を揺さぶっている。ソフトウエアなど不慣れな領域で投資・開発の負担が膨らみ、IT(情報技術)大手など異業種との競争も激化する。「100年に一度の大変革期」に突入した自動車産業。投資マネーは離散し、自動車株の時価総額は2018年1月の直近ピーク比で約57兆円(21%)減少した。「(CASE対応で)毎年1000億円以上の開発費が必要。営業利益は大きなマイナスのリスクを抱えている」。トヨタ自動車の白柳正義執行役員は18年12月の労働組合員向けの説明会で述べた。春季労使交渉は13年ぶりに回答日までもつれ、賃上げ額は組合要求を下回った。アイシン精機の社内でも危機感は強い。主力製品の自動変速機(AT)は「自動車がすべて電動化されれば、不要になってしまう」(幹部)。ハイブリッド車向けにモーターを組み込んだATの生産を拡大するなど生き残りを懸命に探る。曙ブレーキ工業が私的整理の一種、事業再生ADR(裁判以外の紛争解決)を申請した背景にもCASEの重圧があった。業績が悪化するなかでも電動化を見据えた新しい構造のブレーキの開発を継続し、18年3月期の研究開発費は総額103億円と純利益の13倍に膨らんでいた。自動車産業の競争力を支えてきたのはエンジンなど「機械」の技術だ。しかし、CASE対応にはソフトウエアや半導体など別の技術が必要で、その領域ではIT大手など異業種勢が先行する。米グーグルは約10年前に自動運転車の開発に着手。手元資金も12兆円強と巨大で、有望な新技術を総ざらえするだけの財力もある。規制面での逆風も強く、英国とフランスはガソリン車・ディーゼル車の国内販売を40年までに禁止する方針だ。経営環境が悪化する自動車業界を投資マネーは回避している。主要自動車株の動きは世界の株式相場との連動性が薄れ、下振れが鮮明だ。15年末比で世界株が30%上昇しているのに対し、自動車株は4%安に沈む。同期間に米フォード・モーターや独ダイムラー、日産自動車の株価は2~3割下落。トヨタ、ホンダも1~2割下げた。半面、米ゼネラル・モーターズ、独フォルクスワーゲン(VW)は2割弱上昇。両社とも人員削減を含むリストラ策を決め、CASE対応の資金を捻出しやすくなったと市場で評価されている。部品メーカーでは世界大手の独コンチネンタルや仏ヴァレオが約3割下落。エンジンや変速機などの駆動系部品を手掛け、CASEに伴う事業規模の縮小が懸念材料だ。一方、電動車にも必要なシートなどの内装部品を扱う米リア・コーポレーション、ライト専業の小糸製作所は3~4割程度上昇している。トヨタが米配車サービス大手ウーバーテクノロジーズの自動運転部門への出資を決めるなど、既存勢力も巻き返しを急ぐ。自動車産業は裾野が広く、販売なども含めれば日本の全就業者の1割弱が従事するほどだ。「CASE革命」の帰結は、日本経済にも大きなインパクトを与える。

*12:https://digital.asahi.com/articles/ASM4N3RN9M4NUTPB008.html (朝日新聞 2019年4月21日) 市議初挑戦の91歳当選 マハティール氏復帰に押され
 静岡県熱海市議選(定数15)では、山田治雄氏(91)が1975年の初当選から連続で12回目の当選を果たした。全国市議会議長会などによると、昨年8月時点で全国最高齢の市議だった。選挙戦では1日数回~10回ほどの街頭演説をするなど精力的に活動。当選を重ねるにつれて、支持者も高齢化し、亡くなったり投票に行けなくなったりする人が増えた。議会の定例会ごとに出す1400枚の報告はがきや市民相談で支持者とつながり、今回も議席を守った。当選後、「活動を評価してもらえた。山積みの高齢者の問題に取り組む」と力を込めた。佐賀県鹿島市議選(定数16)では、山田氏より8カ月若い無所属新顔の電気事業会社会長、高松昭三氏(91)が初当選を果たした。取材に「年寄りと思っていない。4年間やっていく自信がある」と語った。市の老人クラブ連合会長と県の連合会副会長を務める。独り暮らしのお年寄りに対する見回り活動などに力を入れる中で、県や市の高齢者支援の予算が不十分だと感じ、「老け込むには早過ぎる」と初めて立候補した。マレーシアのマハティール氏が昨年5月、当時92歳で首相に返り咲いたことも背中を押したという。健康には自信があり、「80歳ぐらいにしか見えないとみんな言う」と話す。告示日の14日の出陣式で、「老人のことを専門に(対応)する人が、議会に1人くらいいてもいいのではないか」と演説。選挙戦では、高齢者に優しいまちづくりや地元の桜の名所の整備などを訴えた。一方、埼玉県北本市議選(定数20)では、無所属元職の神田庄平氏(94)が落選。20年ぶりの返り咲きはならなかった。

<環境税・自然エネルギー・道路の進歩など>
PS(2019年4月24日追加): *13-1のように、EUは2030年までに域内(加盟国28カ国)で販売するトラックやバスのCO₂排出量を2019年比で30%削減する方針を固め、温室効果ガスを出さない(水素や電気で走る)トラックの製造に向けた刺激にするそうだ。
 一方、日本は、*13-2のように、2030年度までの燃費規制で2020年度目標から約3割の改善を義務付け、EVは走行に必要な電気をつくる際に化石燃料などを消費してCO₂を排出するので“電費”という概念を設けるそうだが、自然エネルギーを使って発電すればCO₂を全く排出しないため、化石燃料の使用時にCO₂排出量に応じて課税するのが合理的であり、そうするとCO₂等の排出に対して課す環境税になるわけである。
 また、*13-3のように、小樽にある道路用資材製造販売の理研興業が、LEDで帯状に光るワイヤロープをネパールやインドネシアの街灯のない道路に試験設置してアジア市場の開拓を目指すそうだが、日本国内でも太陽光発電や蓄電池と組み合わせてLEDを使用したり、自動運転に必要な道路の設計や道路用資材の進歩があったりしてもよいと思われる。
 なお、*13-4に、政府が定めた5年間の農協改革集中推進期間の期限が2019年5月末で、JAの自己改革が一定の成果を上げていると記載されているのは喜ばしいことだが、次の5年間は再エネ電力を副産物として収入を増やし、農業機械を電動化してコストを下げることにより、農家所得を増やすことも加えてはどうかと考える。何故なら、そのための補助金をつけてもらって金銭分配による補助金をなくせば、TPPやFTAに対抗しつつ、環境・財政・経済のすべてに貢献できるからだ。


 2019.3.15東京新聞    環境税がCO₂を減らす仕組み  各国の環境税導入年と概要

(図の説明:左図のように、エネルギー基本計画は恣意的な印象操作の上に成り立っている。また、中央の図のように、環境税を導入するとCO₂削減効果・財源効果・アナウンス効果があり、ヨーロッパでは、右図のように、1990年~2000年代前半に環境税か炭素税が導入されている)

*13-1:http://qbiz.jp/article/149068/1/ (西日本新聞 2019年2月20日) トラックのCO2排出30%減へ EUが基本合意、30年まで
 欧州連合(EU)は2030年までに、域内で販売するトラックやバス(新車)の二酸化炭素(CO2)排出量を19年比で30%削減する方針を固めた。全28加盟国で組織する閣僚理事会と欧州議会が基本合意したと両機関が19日発表した。合意内容が両機関で承認されれば正式合意となる。排出削減は2段階で実施し、25年までに15%削減を目指す。法令として法的拘束力を持つ。トラックはEU域内全自動車のCO2排出量の27%を占めるが、日米などと違い、排出制限がない。EU欧州委員会は昨年5月、30%削減を提案していた。合意へ向けて協議を主導した緑の党のエイカウト欧州議員は同日、ツイッターで「温室効果ガスを出さない(水素や電気で走る)トラック製造に向けた刺激となる」と述べた。大手自動車メーカーを抱えるドイツは野心的目標に難色を示したが折れた形。欧州自動車大手などで組織する欧州自動車工業会は、欧州にはトラック用の充電施設や水素ステーションが皆無だと指摘。こうした状況で「電気や通常の燃料以外で走るトラックを運送業者が急に買い始めるとは想定できない」と訴えた。EUは乗用車を巡っても、30年までにCO2排出量を21年目標と比べ、37・5%削減する方針で基本合意している。

*13-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190424&ng=DGKKZO44097710T20C19A4MM8000 (日経新聞 2019年4月24日) 車燃費3割改善義務 30年度目標、EV普及2~3割へ 走行電力も抑制
 経済産業省と国土交通省は自動車メーカーに対し、2030年度までの燃費規制(総合2面きょうのことば)を課し、20年度目標から約3割の改善を義務付ける方針だ。現在は主にガソリン車やハイブリッド車を規制するが、電気自動車(EV)も同じ基準で位置づけ、メーカーに技術革新と販売車種の見直しを迫る。この規制で、EVを2~3割普及させる目標の達成を図る。燃費規制は個別の車種が対象ではなく、メーカーとして全販売台数の平均で達成しなければならない。11年に定めた現行の燃費規制は20年度にガソリン1リットルあたりの走行距離で約20キロメートルとした。09年度実績比で24.1%の改善を義務付ける内容だ。国内メーカーはこの基準を前倒しで達成できる見通しだ。新基準は両省が5月の大型連休明け後にも原案を示し、今夏をめどに決定する。これまでEVはガソリンを使わないため、燃料消費をゼロとして計算してきた。この方針を転換し、今後は走行に必要な電気をつくる際に化石燃料などを消費して二酸化炭素(CO2)を排出することで環境に負荷をかけているという概念を入れる。具体的にはEVが1キロメートル走るのにどれだけ電力を消費するかを示す「電費」という数値を消費燃費に換算し、電力使用量の削減に向けた技術革新を促していく。政府は今回の燃費規制を用い、次世代自動車の普及を進めていく方針だ。17年度時点でEVやプラグインハイブリッド車は新車販売台数の1%程度にすぎないが、30年に20~30%に高まる可能性がある。一方、従来のガソリン車は63%から30~50%に下がる見通しだ。一般的にEVはハイブリッド車やガソリン車に比べ環境負荷が小さく、燃費規制を達成するうえで有利とされる。一方で本格的な普及にはさらなる技術革新が必要だ。トヨタ自動車幹部は「ガソリン車だけで規制を満たすのは限界があり、当面の『現実解』であるハイブリッド車中心に電動車で対応することになる」と話す。三菱UFJモルガン・スタンレー証券の杉本浩一アナリストは「各社は電動車比率など従来掲げてきた数値目標の前倒しが求められるだろう」と指摘する。政府は基準達成を判定する際、燃費に加え、省エネ性能の高いエアコンなどを搭載していれば基準を緩和することも検討する。30年度までに中間評価をして新制度の目標が適正か検証もする。世界でも30年前後の燃費規制の検討が進む。欧州連合(EU)はCO2排出量を30年までに21年目標に比べて37.5%削減する案をまとめた。ただしEUは日本の目標と異なり、EVが走行のために使う電気の環境負荷を考慮しない仕組みだ。EVの普及を強力に迫る規制で、ハイブリッド車などには距離を置く政策といえる。中国政府は19年から国内で年3万台以上を生産・輸入する自動車メーカーに対し、EVなど一定割合の「新エネルギー車」の生産・販売枠を義務付ける新規制を導入した。目標は19年に10%、20年には12%とする方針で、欧州と同様にEVシフトを強力に進める。

*13-3:https://www.hokkaido-np.co.jp/article/282374 (北海道新聞 2019年3月3日) 光るワイヤロープ海外展開 小樽・理研興業 ネパールやインドネシア 街灯ない道路に
 道路用資材製造販売の理研興業(小樽、柴尾耕三社長)は、同社の看板商品である、発光ダイオード(LED)で帯状に光るワイヤロープの海外展開に本格的に取り組む。まずはネパールの街灯がない道路に試験設置し、車が安全走行できるかを検証。インドネシアを含め、経済成長で交通安全対策の需要が高まっているアジア市場の開拓を目指す。同社は防雪柵で約5割の道内シェアを持つ。今後の国内、道内市場の縮小を見込み、海外の開拓を今後の中核事業に位置づけた。2017年、中央アジア・キルギスの山岳道路に防雪柵を設置し、海外に初進出した。光るワイヤロープは、ロープに取り付けたLEDが明るく点灯し、暴風雪時でも視認性を確保できる商品。太陽光が電源で、18年に国際特許を出願した。同社は、売り込み先として人口の多いインドに隣接するネパールに着目。国際協力機構(JICA)の協力を得て、今夏から20年冬まで、首都カトマンズ近郊と南部を結ぶ幹線で、夜間は通行止めになっている街灯のない山岳道路約160キロに試験設置し効果を探る。

*13-4:https://www.agrinews.co.jp/p47455.html (日本農業新聞 2019年4月24日) 改革期限1カ月 JAの成果 発信の好機
 政府が定めた農協改革集中推進期間期限の5月末まで、あと1カ月。JAグループの自己改革の成果や今後の計画を発信する好機としたい。JAグループが地域に根差す協同組合であることを含め、理解を広げるきっかけにしよう。JAの自己改革は一定の成果を上げているが、3月の第28回JA全国大会で掲げた「自己改革の継続」も必要だ。同期間の期限を視野に、これまでの成果やこれからの計画の発信に力を入れるべきだ。2014年6月に政府が定めた「規制改革実施計画」では、「今後5年間を改革の集中推進期間」とし、JAグループに自己改革を求めた。規制改革推進会議は今年2月、「期間の最終年を見据え、さまざまな仕組みを徹底的に活用した自己改革がなされるよう促す」とし、重点フォローアップ事項の一つに据えた。組合員の声を踏まえた自己改革は着実に進展している。JA全中の18年4月時点の全JA調査によると、90%のJAが生産資材価格の引き下げや低コスト生産技術の確立・普及に取り組んでいる。この2年で9ポイント伸びた。第27回JA全国大会で決議した自己改革の「重点実施分野」に取り組むJAの割合は9分野全てで伸びた。「マーケットインに基づく生産・販売事業方式への転換」など4分野では10ポイント以上伸びている。全国連も成果を上げている。JA全農は17年3月に農家所得の増大に向けた事業改革方針と年次計画を策定。これまでの2年間は、米穀や園芸品目での直接販売金額、農薬の担い手直送規格の普及面積、肥料の銘柄集約・共同購入の仕組み作りなど、多くの項目で計画通り進んでいる。当初は、政府などから取り組みの具体化や高い目標の着実な実行を求める声があったが、順調に改革が進んでいることがうかがえる。JA全国大会では、JAグループ一体となって自己改革を継続することを決議した。それぞれのJAが組合員らの声を丁寧に聞きながら地域の課題に対応した改革を継続するとした。農水省調査によると、自己改革の進展について、JAと認定農業者の認識には依然として差がある。JAは組合員をはじめ広く国民に対し、これまでの成果や今後の取り組みについて発信し続けることが重要だ。全国大会では、改革の一つの節目としてこれまでの成果を広くアピールした。農協改革集中推進期間については、この間の改革の状況を政府が検証することになるが、JAとしては残り1カ月を有効に活用し、改革の成果などを対外的に発信する機会とすべきである。発信方法は多様だ。4、5月はイベントも多く、地域住民にJAの役割を知ってもらうチャンスとなる。トップ広報や組合員らの戸別訪問、マスコミへの発信など、さまざまな機会を捉えて情報発信を強化しよう。

| 経済・雇用::2018.12~ | 10:14 PM | comments (x) | trackback (x) |
2019.4.6 日本は人権を大切にしない国である ← ゴーン氏逮捕事件から日本の司法を評価する (2019年4月8、9、10、11、12、13、15日に追加あり)
    
2019.4.4朝日新聞 2018.12.19    2019.1.6産経新聞     2019.4.5Yahoo
          東京新聞
(図の説明:左図のように、最初のゴーン氏の逮捕・拘束は108日間続き、10億円もの保釈金を払って保釈されたのに、保釈から1か月後に再逮捕された。しかし、検察が指摘する罪状は、日産が協力しているにもかかわらず、まだ「ゴーン氏に証拠隠滅の恐れがある」と言っているほど証拠を押さえられていないらしい。さらに、ゴーン氏の罪の内容は、左から2番目、右から2番目、1番右と、実力派経営者の高額報酬にケチをつけたり、とにかくゴーン氏個人の不正を探したりしているもので、批判している人の方が見苦しいのである)

(1)刑事事件に関する日本国憲法の規定
 日本国憲法は、*1のように、「①33条:理由となる犯罪を明示する裁判所の令状によらなければ逮捕されない」「②34条:理由は直ちに告げられ、直ちに弁護人に依頼する権利を与へられなければ拘禁されず、要求があれば、理由は直ちに本人と弁護人の出席する公開の法廷で示されなければならない」「③37条:すべて刑事事件で、被告人は公平な裁判所の迅速な公開裁判を受ける権利を有する」「④38条:不当に長く拘禁された後の自白を証拠とすることはできず、自己に不利益な唯一の証拠が本人の自白である場合は、有罪とされたり刑罰を科せられたりしない」と規定している。

 これを、ゴーン氏の逮捕と勾留に当てはめると、①については、裁判所の令状があったので満たされているが、②については、有価証券報告書虚偽記載という逮捕理由は告げられたものの逮捕するような罪ではなく、ゴーン氏のみを悪人に仕立てるにも都合が悪かった。そのため、検察は、ゴーン氏の特別背任罪を言い立てるために不正捜しを行い、直ちに本人と弁護人の出席する公開の法廷で逮捕理由を示すどころか、逮捕から半年たっても証拠隠滅の恐れがあるなどとして再勾留した。しかし、逮捕は証拠を揃えてからすべきものであるため、これは憲法違反である。

 また、③についても、被告人は公平な裁判所の迅速な公開裁判を受ける権利を有するにもかかわらず、裁判もせずに懲罰的拘束を行っているので、人権侵害が甚だしい。これに加え、日本の司法は、④の「不当に長く拘禁された後の自白を証拠とすることはできない」「自己に不利益な唯一の証拠が本人の自白である場合は、有罪とされたり刑罰を科せられたりしない」という日本国憲法の規定を無視している。

(2)日本の司法の問題点
 東京地裁は、2019年1月15及び22日、*2-1・*2-2のように、証拠隠滅の恐れがあるとしてゴーン氏の保釈請求を却下した。しかし、日産の代表取締役社長兼最高経営責任者は西川氏(1953年11月14日生まれ、開成高校・東京大学経済学部卒業、1977年日産入社)で、現在の日産はゴーン氏ではなく西川氏の指示で動くため、ゴーン氏は既に日産内外で影響力は持っておらず、証拠隠滅の恐れはない。だからこそ、2018年4月頃から、ゴーン氏を日産の会長職から追い落とすための証拠集めができたのだ。

 それどころか、*2-3-4のように、「ゴーン氏が中東の子会社からオマーンの販売代理店に『販売促進費』として送金させた資金は不要な支出だった」と日産関係者が証言しているように、現在は、西川氏をトップとする日産が組織的に口裏合わせをする方が容易だ。また、中東日産に100億円規模の販売奨励金があって半分ほど余っていたとしても、例えば権力者にエコカー優遇の働きかけをするために、販促費をゴーン氏がCEOリザーブから支出していても全くおかしくなく、CEOリザーブはルーチンワークではないCEOの判断で使ってよい金であるため、不正ありきでステレオタイプの論理を組み立てるのは、無知と悪意の両方が原因のように見える。

 また、検察が日産との司法取引で最初にゴーン氏を逮捕(2018年11月19日)してから既に2カ月も経っているため、検察は(あるのなら)既に書面で証拠を入手しているのが当たり前であり、今さら、ゴーン氏が口裏合わせによって証拠を隠滅できる可能性はない筈だ。

 さらに、特別背任罪起訴内容の「①私的通貨取引のスワップ契約の日産への移転」「②サウジアラビアの知人に日産子会社から約12億8千万円支出させた」というのは、①は実際には日産に損をさせていないし、②は販促費として支出されているわけである。

 そのため、検察は、①②だけでは特別背任罪として弱すぎると考えたのか、*2-3-1・*2-3-2のように、ゴーン氏が中東オマーンの販売代理店に送金した約5億6300万円の日産の資金を自らに還流させたとして特別背任容疑で再逮捕した。これについて、ゴーン氏は、「CEOリザーブは、各国の幹部がサインしており、ブラックボックスではない」「容疑に根拠はなく無実だ」としている。

 そして、*2-3-3のように、ゴーン氏は「真実をお話しする準備をしています。4月11日に記者会見をします」という記者会見予告をした途端に再逮捕された。これについて、ゴーン氏の弁護士は「普通に追起訴すればよく、何のために身柄を取るのかわからない。非常に不適当な方法だと思う」と批判しており、ゴーン氏の再逮捕は、2019年4月11日のゴーン氏の記者会見の妨害であるように思える。

(3)ルノー・日産の行動からわかるゴーン氏逮捕の背景
 ゴーン氏は、倒産しかかった日産自動車をルノーの資金援助で立ち直らせ、電気自動車を最初に市場投入し、世界第二位の自動車メーカーに育てた。その実績と環境車の縁があったからこそ、日産・ルノー組は、水素燃料電池車を最初に開発した三菱自動車と連合を組むことができたのだと、私は考える。

 そこで、仮にゴーン氏がいなかったら、日産は電気自動車を最初に市場投入したかと言えば、「決してしなかった」と私は明確に言える。私は、佐賀県唐津市にある日産のショールームに行って、「リーフを見せて下さい」と言ったことがあり、そのショールームのスタッフは「ああ、リーフね。ないよ」と吐き捨てるように言ったからだ。そして、バルセロナでゴーン氏が宣伝に出ていた動画は「Tecnology is Excellent!」として、電気自動車と自動運転車をアピールしていた。ゴーン氏と日産の一般スタッフはそれだけの意識の違いがあり、ゴーン氏は強力なリーダーシップを発揮したと思われ、これは日本に多い調整型のサラリーマン経営者にはできないからこそ、ゴーン氏は価値があったのである。

 しかし、*3-1のように、保釈されたゴーン氏が取締役会への出席を要求すると、裁判所は「証拠隠滅の恐れがあるから」として、ゴーン氏の取締役会への出席要求を退けた。そして、検察幹部は「関係者だらけの取締役会に出ていいわけがない。出席を希望するなんて、どこまで思い上がっているのか」と批判したそうだが、この状況でゴーン氏が証拠隠滅などできるわけがなく、それでもゴーン氏の話に感じ入ってゴーン氏側につく取締役がいるとすれば、それは人間力の差である。そのため、そんなことしか言えない検察の方がよほど思い上がっており、「検察は、そこまで経済や経営に疎いのに、なぜ威張っているのか?」と思う。

 なお、ゴーン氏逮捕の背景には、ルノーの大株主である仏政府がルノーと日産の経営統合を求めており、それを恐れる人が日産にいたことがある。そして、ゴーン氏逮捕後、仏ルノー、日産、三菱自動車を統括するための新組織を近く立ち上げ、新組織はルノーのスナール会長とボロレCEO、日産の西川社長兼CEO、三菱自の益子会長兼CEOが率いるそうだ。そして、日産は、4月8日の臨時株主総会で、ルノーと三菱自動車は6月の株主総会でゴーン前会長を取締役からも外して経営から全面的に排除する予定だったわけである。

 さらに、*3-2のように、日産が設置した企業統治改革の専門委員会は、日産の経営体制の見直しのため、①取締役会議長に社外取締役をあてる等の執行と監督の分離 ②取締役会の過半を、独立性を持つ社外取締役にする ③人事の決定権集中を防ぐため過半を社外取締役で占める指名委員会を設置する ④経営陣の報酬を決める報酬委員会は全員を社外取締役で構成する3~5人の組織を作る ⑤特別委は各取締役が経営会議体に関するすべての資料やデータにアクセスできる体制の構築 ⑥日産会長職の廃止 などを提言し、日産の西川社長兼CEOは同日夜、「大変重い提言だった。これから取締役会で検討し、できる限り実現したい」と述べたそうだ。

 しかし、取引相手である東レに入社して現在は東レ相談役である榊原氏が提言を出すと、日産に有利な提言が出るとは思えない。また、①③⑤は、経営戦略・特許戦略・販売戦略が外部に漏れ漏れになり、日産は私企業として成立しなくなる。さらに、社外取締役だから独立性を持てるとは言えないため、②は誤りである。そして、③④は、経営戦略に従って柔軟に人をスカウトできず、硬直した組織になる。また、⑥の会長職は、会長の権限の強さにもよるが、会長がいてもいなくてもあまり変わらない企業が多い。そのような提言に、西川社長兼CEOが賛同し、西川氏の責任論が早々に封印されたのは、日産にとってプラスではないと思う。
 
 そして、*3-3のように、ルノーは取締役会を開き、ゴーン氏に対して昨年の業績連動型報酬と年間約77万ユーロ(約9600万円)の年金支給を認めないことを決めたそうだが、懲戒解雇の場合以外は年金受給権はあるのが当然だ。また、退職に伴う報酬の支給は認めない方針ということなので、退職金は受領するまで確定債務でないことが、再度、明らかになっただろう。

 なお、*3-4のように、ゴーン氏は「イ.私は無実だ」「ロ.大量の間違った事実や恣意的な解釈によって絶えず名誉毀損が起きている」「ハ.日産自動車の一部の人間が日本でもフランスでも私をおとしめようと働きかけた」「ニ.2018年の4月か5月に、日産の会長職から追い落とせる証拠を集める動きが起きた」「ホ.日産内部での陰謀が背景にある」「ヘ.アライアンスは3、4人で行うクラブではないので、日産、ルノー、三菱自動車のアライアンスの将来を心配している」「ト.利害の対立で重要な決定がなされなくなり、あっという間にアライアンスが消え入ってしまうのを恐れている」という見解を語ったそうだ。

 このうち、ヘ. ト.について、私企業の経営は、サークル活動ではないため、私はゴーン氏と同じ意見だ。また、ロ. ハ.については、報道を見ていれば賛成できるし、*3-5のサッカー日本代表監督であったハリルホジッチ氏が解任された時と同じだ。つまり、名誉を剥奪する数々の行為を行って解任し、それまでの実績に対するリスペクトが全くないのだ。そして、この一部の日本人の性癖は、人間として本当に失望すべきものである。

 また、ニ.の2018年4月、5月に日産の会長職から追い落とせる証拠を集める動きが起きたのは、その時にはゴーン氏が怖くなくなっていたからで、ゴーン氏に権力が集中していたという説明は嘘である。また、ホ.の日産内部での陰謀が背景にあったのも、ゴーン氏逮捕後のあらかじめ計画されていたように速やかなゴーン氏追い出しの経緯を見ればよくわかる。

 さらに、イ.の無実かどうかは、私は証拠資料を見ていないので何とも言えないが、このように日産の権力闘争と一緒になって日本の司法が動いている以上、日本の司法に公正で迅速な裁判は期待できない。そのため、仏政府は仏市民を護るために動いた方がよいし、このような恣意的な司法では日本人も困るわけである。

・・参考資料・・
<日本国憲法>
*1:http://www.japaneselawtranslation.go.jp/law/detail_main?id=174 (日本国憲法抜粋) 昭和二十一年十一月三日
第三十二条 何人も、裁判所において裁判を受ける権利を奪はれない。
第三十三条 何人も、現行犯として逮捕される場合を除いては、権限を有する司法官憲が発し、且つ理由となつてゐる犯罪を明示する令状によらなければ、逮捕されない。
第三十四条 何人も、理由を直ちに告げられ、且つ、直ちに弁護人に依頼する権利を与へられなければ、抑留又は拘禁されない。又、何人も、正当な理由がなければ、拘禁されず、要求があれば、その理由は、直ちに本人及びその弁護人の出席する公開の法廷で示されなければならない。
第三十六条 公務員による拷問及び残虐な刑罰は、絶対にこれを禁ずる。
第三十七条 すべて刑事事件においては、被告人は、公平な裁判所の迅速な公開裁判を受ける権利を有する。刑事被告人は、すべての証人に対して審問する機会を充分に与へられ、又、公費で自己のために強制的手続により証人を求める権利を有する。刑事被告人は、いかなる場合にも、資格を有する弁護人を依頼することができる。被告人が自らこれを依頼することができないときは、国でこれを附する。
第三十八条 何人も、自己に不利益な供述を強要されない。強制、拷問若しくは脅迫による自白又は不当に長く抑留若しくは拘禁された後の自白は、これを証拠とすることができない。何人も、自己に不利益な唯一の証拠が本人の自白である場合には、有罪とされ、又は刑罰を科せられない。
第三十九条 何人も、実行の時に適法であつた行為又は既に無罪とされた行為については、刑事上の責任を問はれない。又、同一の犯罪について、重ねて刑事上の責任を問はれない。
第四十条 何人も、抑留又は拘禁された後、無罪の裁判を受けたときは、法律の定めるところにより、国にその補償を求めることができる。

<日本の司法の問題点、ゴーン氏の長期勾留から>
*2-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190116&ng=DGKKZO39997400V10C19A1EA2000 (日経新聞 2019年1月16日) ゴーン元会長の保釈認めず 地裁 勾留さらに長期化も
 日産自動車元会長のカルロス・ゴーン被告(64)を巡る一連の事件で、東京地裁は15日、ゴーン元会長の保釈請求を却下する決定をした。証拠隠滅の恐れがあるなどと判断したもようだ。弁護人は不服として準抗告するとみられる。勾留は2018年11月19日の最初の逮捕から2カ月近くに及んでおり、さらに長期化する見通しとなった。海外メディアなどの批判の声が高まる可能性もある。弁護人はゴーン元会長の公判が始まるまで少なくとも半年程度かかるとみており、準抗告が退けられても保釈請求を続けるとみられる。公判前整理手続きで争点や証拠が絞り込まれた段階、初公判で罪状認否が終わった段階で、裁判所が「証拠隠滅などの恐れが低下」と判断すれば保釈が認められる可能性はある。東京地検特捜部は11日、ゴーン元会長を会社法違反(特別背任)と金融商品取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)の罪で追起訴。弁護人は即日、保釈を請求した。ゴーン元会長はいずれの起訴内容も否認し、8日の勾留理由開示手続きでも「私は無実です」と意見陳述。従来、特捜部の事件で起訴内容を否認する被告については早期の保釈が認められないケースが多い。地裁は18年12月、ゴーン元会長と共に金商法違反罪に問われた元代表取締役、グレッグ・ケリー被告(62)の保釈を認めた。ゴーン元会長については、特別背任罪にも問われた点、日産内外で大きな影響力を持っている点などを重視し、証拠隠滅の恐れが強いと判断したとみられる。特別背任罪の起訴内容は▽08年10月、私的な通貨取引のスワップ契約を日産に移転し、評価損約18億5000万円の負担義務を負わせた▽09~12年、サウジアラビアの知人側に日産子会社から約12億8千万円を支出させた――の2つの行為で日産に損害を与えたとされる。金商法違反罪の起訴内容は、18年3月期までの8年間、退任後に受け取る予定の報酬計約91億円を有価証券報告書に記載しなかったとされる。

*2-2:http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2019012201001706.html (東京新聞 2019年1月22日) ゴーン被告保釈再び認めず 証拠隠滅の恐れ理由か、東京地裁
 東京地裁は22日、会社法違反(特別背任)などの罪で起訴された日産自動車の前会長カルロス・ゴーン被告(64)側の保釈請求を認めない決定をした。理由は明らかにしていないが、証拠隠滅の恐れがあると判断したとみられる。弁護人が18日に2回目の請求をしていた。勾留はさらに長期化する。最初の保釈請求は15日に却下され、準抗告も17日に退けられていた。ゴーン被告は昨年11月19日に金融商品取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)の疑いで東京地検特捜部に逮捕されて以降、2カ月余り東京拘置所に勾留されている。特別背任罪と金融商品取引法違反罪のいずれも無実だと訴えている。

*2-3-1:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO43283380T00C19A4CC1000/ (日経新聞 2019/4/3) ゴーン元会長立件へ オマーン・ルート、特別背任容疑
 日産自動車元会長のカルロス・ゴーン被告(65)が同社の資金をオマーンの知人側に不正流出させた疑いが強まったとして、東京地検特捜部が会社法違反(特別背任)容疑での立件に向け、詰めの捜査を進めていることが3日分かった。関係者が明らかにした。最高検などと協議し、最終的に判断するとみられる。関係者によると、資金の流出先とされるのはゴーン元会長の知人がオーナーを務めるオマーンの販売代理店「スヘイル・バウワン・オートモービルズ」(SBA)。同社には2009年以降、日産の「CEO reserve」(CEO予備費)から、販売促進費名目で計約35億円が支払われた。CEO予備費は当時、日産の最高経営責任者だった元会長が使途を決めることができた。一方で、ほぼ同時期にゴーン元会長が、このオーナーから約30億円を借り入れていたことを示す文書が残っている。SBAの別の幹部が、元会長の妻が代表を務める会社のクルーザー購入代金約16億円を負担していた疑いも浮上している。特捜部は1月のゴーン元会長の追起訴後も捜査を継続。中東各国に捜査共助を要請するなどしていた。SBAに支払われたCEO予備費は販売促進費ではなく、元会長個人のための不正な支出だったとみている。ゴーン元会長は1月30日に勾留先の東京拘置所での日本経済新聞との単独インタビューで、CEO予備費について「各国の幹部がサインしており、ブラックボックスではない」と主張。「他の地域でも同じように予備費からインセンティブが支払われているのに問題視されていない」などと説明していた。ゴーン元会長は▽退任後に受け取る予定の報酬計約91億円を有価証券報告書に記載しなかった金融商品取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)▽サウジアラビアの知人側に日産子会社から約12億8千万円を支出させるなどした特別背任――の罪で起訴されている。3月6日に保釈され、現在は事前に裁判所に届け出た東京都内の住居で生活を送っている。

*2-3-2:https://digital.asahi.com/articles/DA3S13965319.html (朝日新聞 2019年4月5日) ゴーン前会長、4回目逮捕 5.6億円、自らに還流容疑 保釈から1カ月
 日産自動車の前会長カルロス・ゴーン容疑者(65)が、中東オマーンの販売代理店に送金した約5億6300万円の日産資金を自らに還流させたとして、東京地検特捜部は4日、ゴーン前会長を会社法違反(特別背任)容疑で再逮捕した。関係者によると、前会長は販売代理店の口座から、自身が実質的に保有する「GFI」社(レバノン)の預金口座に送金させ、自身に還流させていたという。前会長の逮捕は4回目。特捜部の事件で、保釈中の再逮捕は異例だ。弁護団の弘中惇一郎弁護士は記者会見を開き、「合理性も必要性もなく逮捕に踏み切ったのは暴挙だ」と批判した。弘中氏によると、特捜部はこの日早朝、前会長が3月6日の保釈後に暮らしてきた東京都内の住居内で逮捕状を執行。家宅捜索で、裁判準備のための書類や前会長の妻の携帯電話、パスポートなどが押収されたという。弘中氏は「明らかな防御権侵害で弁護権侵害だ」と訴えた。ゴーン前会長も米国の代理人を通じて「容疑に根拠はなく無実だ」などとする談話を公表した。特捜部などによると、ゴーン前会長は2015年12月~18年7月、日産子会社「中東日産」(アラブ首長国連邦)からオマーンの販売代理店「スヘイル・バウワン・オートモービルズ」(SBA)に計1500万ドル(当時のレートで約16億9800万円)を送金。うち計500万ドル(同約5億6300万円)をGFIに送金させていた疑いがある。特捜部は、前会長がGFIを実質的に保有していたとみて調べている。SBAのオーナー、スヘイル・バウワン氏はゴーン前会長の長年の友人。SBAのインド人幹部がGFIの大株主となっている。GFIは15~18年、前会長の息子が米国で起業した会社に計2750万ドル(現在のレートで約30億円)を資金援助していたという。特捜部は1月、サウジアラビアの実業家に日産の資金を不正送金した特別背任罪で前会長を追起訴した。サウジに加えて「オマーンルート」も立件することで疑惑の全容解明をめざす。
■オマーンルート、友人無言 「送金先」に現地で接触
 2月上旬、中東オマーンの首都マスカット。民族衣装を身につけた老齢の男性が建物から出てきた。「日産からどういうお金を受け取ったのですか?」「ゴーン氏個人とはどういう金のやり取りがあったのですか?」。男性は歩きながら、そう質問を投げかける朝日新聞記者をちらっと見ただけで一切答えなかった。運転手に促されてドイツ製の高級車に乗り込み、去った。スヘイル・バウワン氏。現地の富豪で、日産と仏ルノーの販売代理店のオーナーを務める。中東レバノン育ちのゴーン前会長の長年の友人。今回の事件の「オマーンルート」で不正資金の送金先になったとされる。記者は代理店や関連会社、自宅などを訪ねたが一切取り次いでもらえなかった。地元の有力者から、ようやく同氏が訪れる場所と時間を聞くことができた末の接触だった。関係者によると、バウワン氏は、1月に起訴された「サウジアラビアルート」でゴーン前会長から不正送金を受けたとされる富豪ハリド・ジュファリ氏らとともに、日産社内で中東の「GF」(ゴーン・フレンズ)と呼ばれている。オマーン関連の会議を、中東諸国ではなくゴーン前会長がいるパリで開催し、ともに夕食を取るなど親密な関係だったという。オマーンで1970年代から日産代理店だった会社関係者によると、2004年ごろに契約を突然打ち切られたという。不可解に思っていたところ、バウワン氏の会社が新たに代理店となった式典にゴーン前会長が出席した。「ゴーン氏が来るなんて」と驚いたといい、「それほど個人的なつながりがあるのだろう」と感じたという。

*2-3-3:https://digital.asahi.com/articles/ASM4435GCM44UTIL00F.html?iref=comtop_8_01 (朝日新聞 2019年4月4日) 弁護団「意味わからない」 ゴーン前会長、異例の再逮捕
 108日間の勾留後に保釈され、作業着姿で東京拘置所から出て30日目。東京地検特捜部が4日、日産自動車の前会長、カルロス・ゴーン容疑者(65)の4度目の逮捕に踏み切った。前日にゴーン前会長自ら記者会見を予告した矢先の再逮捕に、弁護団は「意味がわからない」と特捜部の対応を批判した。4日午前6時前、東京地検の係官らがゴーン前会長が保釈後に過ごしていた都内の制限住居に入った。住居前に集まった報道陣は約50~60人。現場での混乱を避けるため、東京地検は規制線を敷く異例の対応を取った。約50分後、ゴーン前会長を乗せたとみられるワゴン車が住居を出発。車の窓はカーテンで覆われ、車内の様子を確認することはできなかった。車は午前7時ごろに東京・霞が関の東京地検の敷地に入った。その約30分後、特捜部は前会長を再逮捕したと発表した。特捜部の捜査対象は、政治家や企業の経営者などが多く、早朝の逮捕は極めて異例だ。ゴーン前会長の弁護人を務める弘中惇一郎弁護士は午前8時50分ごろ、事務所前で報道陣の取材に応じ、「普通に(再逮捕せず)追起訴すればいいわけであって、何のために身柄を取るのか意味がわからない。非常に不適当な方法だと思う」と批判した。弘中氏は、前夜までに特捜部からゴーン前会長への聴取要請はなかったとし、今回の再逮捕容疑についてゴーン前会長とは「突っ込んだ話をしたことがない」と明かした。ただ3日に「再逮捕へ」「立件へ」などとする報道を目にしたゴーン前会長は、不愉快そうな様子だったという。ゴーン前会長は3日に自身のツイッターのアカウントを開設し、「真実をお話しする準備をしています。4月11日木曜日に記者会見をします」と発信。弘中氏はその会見について、「逮捕はされたが、裁判所が勾留を認めるかどうかわからないので、勾留されなければ予定通り11日にやろうと思っている」と話した。再逮捕の発表から約3時間後の午前10時15分ごろ、ゴーン前会長を乗せたとみられる車が、昨年11月の逮捕から3月6日まで108日間過ごした東京拘置所に入った。制限住居を家宅捜索した東京地検は、関係する資料を押収したとみられる。

*2-3-4:https://digital.asahi.com/articles/ASM462T3GM46UTIL002.html?iref=comtop_8_04 (朝日新聞 2019年4月6日) ゴーン前会長送金「不要な支出」 中東日産、奨励金余る
 日産自動車の前会長カルロス・ゴーン容疑者(65)をめぐる特別背任事件で、前会長が中東の子会社からオマーンの販売代理店に「販売促進費」として送金させた資金について、日産関係者が「不要な支出だった」と証言していることが関係者への取材でわかった。前会長は自分の裁量で使える予備費から支出していたが、子会社の予算は余っていたことが判明。東京地検特捜部は、前会長が資金の還流を隠すために送金目的を偽ったとみている。特捜部の調べでは、ゴーン前会長は2015~18年、アラブ首長国連邦にある日産子会社「中東日産」からオマーンの販売代理店「スヘイル・バウワン・オートモービルズ(SBA)」に約17億円を送金。そのうち約5億6千万円を、自らが実質的に保有するレバノンの投資会社「GFI」に還流した疑いがあるという。原資はCEO(最高経営責任者)の裁量で使える「CEOリザーブ(予備費)」で、ゴーン前会長は「販売促進費」名目で支出していた。一方、複数の関係者によると、中東日産には、自分たちで予算化した100億円規模の販売奨励金があったという。各国の販売店と決めた年間の販売目標などに基づき、中東日産の判断で支出するが、使い切れずに半分ほど余るような状況だったという。日産関係者は特捜部にこうした実態を説明。ゴーン前会長からのCEOリザーブについて「自分たちの裁量で出す奨励金が余っており、不要だった」と指摘し、SBAへの送金は「中東日産の判断ではない」と供述しているという。一方、関係者によると、ゴーン前会長は、CEOリザーブは正当な販売促進費で「問題ない」と主張しているという。

<ルノー・日産の行動からわかるゴーン氏逮捕の背景>
*3-1:https://digital.asahi.com/articles/ASM3C5JJ6M3CUTIL01T.html?iref=comtop_8_02 (朝日新聞 2019年3月12日) 日産が恐れた取締役会出席 検察は「思い上がり」と批判
 保釈された勢いそのままに、取締役会に乗り込んで反転攻勢に出るのではないか――。日産関係者が恐れた前会長カルロス・ゴーン被告(65)の取締役会への出席要求は退けられた。裁判所は今回、証拠隠滅の恐れを重視した模様だが、前例のない判断が続くことになりそうだ。「(日産に)ここまで強く反対されるとは思わなかった。非常に残念だ。取締役の責任を果たしたいというつもりであり、証拠隠滅する意思なんて全くない」。ゴーン前会長の弁護団の弘中惇一郎弁護士は、検察の意見書に添付されていたという日産の「反対」意見書に不満をにじませた。検察側は、地裁の判断を「妥当」と評価する。一連の事件では、勾留延長の却下や公判前整理手続きが始まる前の保釈と、検察の意に反する判断が続いていただけに、「もはやどんな判断でも動揺はしない」(検察幹部)と構えていた。この幹部は「前会長の発言が取締役個人にどう影響するか分からない。裁判所もさすがにまずいと思ったのだろう」と語った。取締役会には、保釈の条件として接触禁止となっている「事件関係者」とされる西川(さいかわ)広人社長らが出席。事件も議題になる可能性がある。別の検察幹部は「関係者だらけの取締役会に出ていいわけがない。出席を希望するなんて、どこまで思い上がっているのか」と批判した。日産幹部の一人は、東京地裁の判断に「正直言ってひと安心」と胸をなで下ろした。ゴーン前会長が取締役会に出席すれば、他の日産幹部の疑惑への関与などについて、持論を展開する可能性があったからだ。元刑事裁判官の水野智幸・法政大法科大学院教授は「ゴーン前会長に敵対的な人がいる中で簡単に証拠隠滅はできないと思うが、影響を受ける人もいると地裁は懸念したのだろう」と指摘する。一方で、テーマによって判断は変わりうるとし、「取締役会の都度、許可を求めれば、出席が実現することもあるのではないか。前例がなく、裁判官も手探りだろう」と述べた。日産と同様、取締役の職にとどまる三菱自動車や仏ルノーは「事件との関係は希薄になってくる」(弘中氏)。両社の取締役会への出席を求めた場合の判断も注目される。
●3社連合、新組織設立へ
 仏ルノーは11日、3社連合を組む同社と日産、三菱自動車を統括するための新組織を近く立ち上げる方針を明らかにした。新組織の設立により、ゴーン前会長との決別と、3社の連携が強固であることを社内外にアピールする狙いがあるとみられる。新組織はルノーのジャンドミニク・スナール会長とティエリー・ボロレCEO(最高経営責任者)、日産の西川(さいかわ)広人社長兼CEO、三菱自の益子修会長兼CEOが率いる。新組織のトップにはスナール氏が就任する方向で調整している。4人は12日、横浜市の日産本社でそろって記者会見し、新組織などについて説明する。ルノーは11日に出した声明で、新組織の設立はルノーと日産の持ち株比率の変更や、両社のアライアンス(提携)に関する合意文書「RAMA(ラマ)」には影響しないとも明らかにした。ただ、ルノーの大株主の仏政府は両社の経営統合を求めており、今後の協議の行方はなお不透明だ。新組織の設立に伴い、オランダにある統括会社「ルノー・日産BV」と「日産・三菱BV」は機能を停止させる。日産・三菱BVからゴーン前会長が非公開の報酬約10億円を受け取っていたことが判明するなど、二つの統括会社を巡る不透明な資金の流れが問題視されていた。日産は4月8日の臨時株主総会で、ルノーと三菱自も6月の株主総会で、それぞれゴーン前会長を取締役からも外して経営から全面的に排除する予定だ。

*3-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190328&ng=DGKKZO43006590Y9A320C1MM8000 (日経新聞 2019年3月28日) 日産会長職「廃止を」 経営体制見直し 特別委提言、監督・執行分離促す
 日産自動車が設置した企業統治改革の専門委員会は27日、経営体制の見直しへ提言をまとめた。元会長のカルロス・ゴーン被告に権限が集まり不正を防げなかった反省から、取締役会の議長に社外取締役をあてるなど執行と監督の分離を明確にするよう求めた。仏ルノーとの間で指名を巡り対立点になった日産会長職は廃止を提言。日産は提言を基に新たな体制作りに着手する。有識者らで組織する「ガバナンス改善特別委員会」の榊原定征共同委員長らは27日夜、横浜市内で記者会見した。榊原委員長は「(経営の)執行と監督の長が同じ人物であることが不正を招いた。執行の長は最高経営責任者(CEO)、監督機関の長は議長とすべきだ」と述べ、会長職の廃止など経営体制の見直しを求めた。特別委は報告書の中で、カルロス・ゴーン被告に権限が集まった反省から、取締役会の議長に社外取締役をあてるなど執行と監督の分離を明確にするよう提言した。取締役会は過半を独立性を持つ社外取締役にした上で、今年6月末までに「指名委員会等設置会社」に移行するよう促した。具体的には、人事の決定権が集中するのを防ぐため、過半を社外取締役で占める指名委員会を設置。経営陣の報酬を決める報酬委員会については、全員を社外取締役で構成する3~5人の組織をつくるよう求めた。日産では意思決定の権限がゴーン元会長に集中していた。特別委は各取締役が経営会議体に関するすべての資料やデータにアクセスできる体制の構築も提言した。特別委は27日、日産の取締役会に提言内容を説明した。日産の西川広人社長兼CEOは同日夜、「大変重い提言だった。これから取締役会で検討し、できる限り実現したい」と述べた。
●西川氏の責任論、早々に封印
 企業統治(ガバナンス、総合2面きょうのことば)改革の専門委員会の焦点は経営の監督と業務執行の分離が主なテーマになった。約100日に及んだ議論を検証すると、ゴーン元会長の暴走を許した西川広人社長兼最高経営責任者(CEO)ら現経営陣の個人の責任には当初から踏み込まない方向が決まっていた。日産の現経営体制の安定を優先した面が浮かび上がる。「ガバナンス改善特別委員会」の発足は2018年12月。日産がゴーン元会長の一連の問題の原因を分析し、企業統治の改善策を提言してもらうのが目的だった。筆頭株主の仏ルノーが日産会長職の指名を要求し対立が激しくなる中、日産が19年3月末に設定した特別委の提言まで時間稼ぎする効果もあった。「ルノーとの関係を含め考えないといけない。まず第三者の観点から問題を明確に指摘してもらう」。12月17日に記者会見した西川社長は特別委に幅広く議論してもらう考えを示した。「ルノーとの資本関係がいびつ」「現経営陣の責任をどう考えるか」。各委員らは1月に開いた会合で何を討議の対象とするか意見を交わした。共同委員長に就いた榊原定征・前経団連会長が議論を主導し、「この委員会は個人の責任追及のためにあるわけではない。人が代わっても企業統治で問題が生じないようなシステムにしないと意味がない」との意見で一致。早々に、ゴーン体制を支えた西川社長ら個人の責任論は議論の対象から除外された。当初は一部委員から「ルノーとの資本関係についても言及すべきだ」との意見が出たが、「ルノーを刺激する必要はない」との意見が多数派を占めた。議論はいかに権限を分散させるかが中心で、日産の現体制を安定させる方向で進んだ。紛糾したのが日産会長職の扱いだ。「取締役会の議長でない会長職は欧州では聞いたことがない」。本格的な討議が始まり会長と議長の分離が議論になった2月15日の会合。委員の一人であるルノー出身の日産社外取締役、ジャンバプティステ・ドゥザン氏から強い異議が出された。欧米で会長は監督トップを指す議長とほぼ同義。議長と分離しては会長の役割が曖昧になる。別の委員は反論する。「ルノーは権限集中を続けたいと思われていいのか」。ある委員は「監督と執行が同じなんて警察と泥棒が同じようなものだ」と例える。理由はある。ゴーン元会長時代の日産取締役会の平均会議時間は20~30分で短いときは9分。「これで異議はないですね」。ゴーン元会長が鋭いまなざしで取締役メンバーを一瞥(いちべつ)し発言すると周囲はうなずく。議論は深まらない。監督機能の不全に対する委員の問題意識は強く、公表された報告書がその一端を示している。「ゴーン氏は取締役会において質問や意見が出ることを嫌い、意見などを述べた取締役や監査役を会議後自室に呼んだり、いわゆる『うるさい監査役』については再任しなかった」。一方、紛糾した2月の会合後、委員は非公式の会合を重ね「日産に会長はいらない。取締役会議長は社外から」との認識でまとまった。この話を聞いたルノーは会長職の指名にこだわらない方針に傾く。ジャンドミニク・スナール会長は3月12日の記者会見で「日産の会長になろうとは思っていない」と明言した。特別委は日産がルノーの要求をかわし、結果的に両社の直接の対立を緩和する役割も果たした。ルノー側もスナール氏が日産の代表権を持つ取締役に就き、副議長という新設ポストに就く実利をとった。報告書は「活動は社内では不可侵領域化していた」とゴーン元会長を批判した。だが元会長は強力なリーダーシップで「ぬるま湯」だった日産の系列解体を迫り、業績をV字回復をさせたのも事実。日産に来た当初は現場の意見を拾い上げ改革プランを実行したが、途中から独裁的に振る舞うようになった。西川社長らの責任を不問にしたまま新体制に動く日産に対し、業界内では「不正を見逃した人物が新体制の中心にいることには違和感がある」との批判が残る。企業統治を機能させながら迅速に意思決定する必要もある。仕組みはできても、経営幹部らがどう運用するかが重要だ。27日にルノーとの提携合意から20年の節目を迎えた日産。カリスマ退場後の道筋はまだ見えない。

*3-3:https://ryukyushimpo.jp/kyodo/entry-898421.html (琉球新報 2019年4月3日) ルノー、年金と一部報酬を不承認 ゴーン前会長巡り
 フランス自動車大手ルノーは3日、取締役会を開き、ロイター通信によると、前会長カルロス・ゴーン被告に対し、昨年の報酬のうち業績などに応じた分の支払いや年間約77万ユーロ(約9600万円)の年金支給を認めないことを決めた。フランス・メディアによると固定給100万ユーロは既に支払われているという。公共ラジオ、フランス・アンフォは、前会長が1月に辞任した際、年金受給権を主張したと報道。生涯受け取れることになっているとしていた。ルノーは2月の取締役会で、退職に伴う報酬などは支給を認めない方針を既に決定していた。

*3-4:https://digital.asahi.com/articles/DA3S13966549.html (朝日新聞 2019年4月5日) 資金還流、複数口座を経由 ゴーン前会長、隠す意図か 14日まで勾留決定
 日産自動車の前会長カルロス・ゴーン容疑者(65)がオマーンの販売代理店に不正に支出させた日産資金を私的に流用したとされる会社法違反(特別背任)事件で、販売代理店からレバノンの投資会社「GFI」に送金する際、複数の口座を経由させていたことが関係者への取材でわかった。東京地検特捜部はこの投資会社を前会長が実質的に保有していたとみており、資金の還流を隠すための偽装工作だったとみている。関係者によると、還流した資金の一部は、GFIからゴーン前会長の息子が起業した米国の会社に流れていたとみられる。特捜部は、米国司法当局に捜査共助を要請し、検事を派遣。米当局を通じて息子の会社の口座を解析するなどし、資金の流れを調べるとみられる。特捜部などによると、前会長は2015年12月~18年7月、日産子会社「中東日産」(アラブ首長国連邦)からオマーンの販売代理店「スヘイル・バウワン・オートモービルズ」(SBA)に計1500万ドル(当時のレートで約16億9800万円)を送金させ、そのうち計500万ドル(同約5億6300万円)をGFIに還流させていた疑いがある。関係者によると、SBAからGFIへの送金は、複数の口座を経由。資金の流れを複雑にし、送金先がわからなくなるようにしていたという。GFIは15~18年、ゴーン前会長の息子が米国で起業した会社に計2750万ドル(現在のレートで約30億円)を資金援助していたという。SBAのインド人幹部がGFIの大株主となっていた。前会長は、GFIの株主や役員に名前を連ねていない。自身とGFIの関わりも隠そうとしていたとみて、特捜部はGFIの実態解明を進めている。ゴーン前会長は「容疑に根拠はなく、無実だ」などと主張。弁護人も、前会長に証拠隠滅や逃亡の恐れはなく、逮捕は不当だと主張している。
     ◇
 東京地裁は5日、ゴーン前会長に対する特捜部の勾留請求を認め、14日まで10日間の勾留を決定した。弁護側は決定を不服として準抗告する方針。
■仏政府に権利擁護求める 「日本人、外国からどう言われるか気にする」仏民放に語る
 仏民放ニュース局LCIは4日、ゴーン容疑者に対し、再逮捕直前に行ったとするインタビューを放映した。ゴーン前会長は日本の弁護士事務所から、インターネット電話を通じて記者の質問に約20分間、応じたという。
ゴーン前会長はインタビューで、「私は無実だ」と強調し、「外国で恐ろしい状況に巻き込まれている」と訴えた。「大量の間違った事実や(恣意〈しい〉的な)解釈によって絶えず名誉毀損(きそん)が起きている」と主張した。また、「日産自動車の人間が、日本でもフランスでも(ゴーン前会長をおとしめようと)働きかけてきた」と述べ、「2018年の4月か5月に、日産の会長職から追い落とせるような証拠を集める」動きが起きたと振り返り、日産内部での陰謀が背景にあるという見解を語った。被告として臨む裁判については「どう展開するのか、疑問を持っている」と語った。「日本人は外国からどう言われるかをとても気にする」とし、「仏市民としての私の権利が擁護されるよう、仏政府に訴えた」と述べた。日産、ルノー、三菱自動車のアライアンス(提携)にも触れ、その「将来を心配している」と話した。自身が3社の会長として束ねた体制に代わり、合議制が採用されたことを「アライアンスは3、4人で行うクラブではない」と語り、利害の対立で重要な決定がなされなくなる可能性に言及。「あっという間にアライアンスが消え入ってしまうのを恐れている」と語った。

*3-5:https://www.jiji.com/jc/v4?id=201804vahid0001 (時事 ) サッカー日本代表監督解任 ハリルホジッチ氏会見
●「誰とも何の問題もなかった」
 サッカー日本代表前監督のバヒド・ハリルホジッチ氏(65)が4月27日、東京都内の日本記者クラブで会見し、2018年ワールドカップ(W杯)ロシア大会開幕2カ月前の電撃解任について「日本をこんな形で去ることになるとは考えたことはなかった。私自身が考えつく限りの最悪の悪夢。リスペクトがないのではないか。人間として深く失望している」と語った。同氏が記者会見するのは、今月7日にパリで解任通告を受けてから初めて。会見には報道関係者約330人が集まり、同氏は予定を30分上回り、約1時間半語り続けた。会見の主な内容は次の通り。
 ◇ ◇ ◇
 (解任を通告された)7日以来、初めて私の口から話す機会となった。日本という素晴らしい国を初めて体験してきた。いろいろな物を敬う日本という素晴らしい国に来たのは、観光客、物見遊山ではない。私の手で日本のサッカーに何かをもたらせるのではないか、という気持ちで来た。日本をこんな形で去ることになると考えたことはなかった。人間として、深く失望した。日本にW杯の準備のために来て、しっかり予選を通過させた。ハイレベルなサッカーの世界で45年仕事をしてきて、監督という職業ははかないもので、どんな時だろうと何が起こるか分からない。私に通告されたことに対しては、大変失望した。私に対するリスペクトがなかった。3年間、日本代表チームのためにいろいろな仕事をしてきた。それを説明したい。しっかり誇りを持って仕事をしてきた。(就任)最初の日に、日本サッカー協会のJFAハウスに行った時、こう聞いた。「どこにオフィスがありますか?」と。「あなたのオフィスなんてありませんよ」ということなので、すぐにお願いした。日本のサッカーの歴史で初めてだったようだ。毎日オフィスに出勤した。代表チームのセレクションだけでなく、毎日ミーティングをしたり、テクニカルスタッフと選手の試合の視察もした。選手一人一人の報告書、レポートをつくる。毎週月曜日は、スタッフ全員とミーティングをした。故障した選手とはすぐ連絡を取り、どういう状況かを聞いた。一人一人に、3年間ありがとうと言いたい。私の人生で、ここまでやる気があって、みんなが規律正しくやってくれるのを見たことがない。練習の中身も、選手の集中度、質の高さも本当に素晴らしく、ビッグなブラボー、ビッグなメルシーを申し上げたい。3年前から、私は誰とも何の問題もなかった。特に、選手との問題はなかった。常にコンスタントに選手たちと連絡を取り合っていた。何度、海外組の選手と電話で話しただろうか。国内組もそうだ。合宿、公式戦でもオフィスをしつらえてもらって、選手たちに来てもらって、話し合いができる場をつくった。皆さんは証人になってもらえると思うが、人前で誰か一人の選手を批判したことは一度としてない。いつも「悪いのは私、批判するならハリルを批判してくれ」と言っていた。実際、ピッチで選手たちと1対1で話す時は、ちょっと違っていた。私が何かを言いたい時は、ちゃんと面と向かって言うようにしている。こんなにストレートな物言いに慣れていない選手もいたかもしれない。でも、私はこの選手、チームに対する思い入れは強かった。

<日本版司法取引について>
PS(2019年4月8日追加):ゴーン氏逮捕事件で日産の他の関係者が罪に問われない理由は、*4-1のように、司法取引を導入した改正刑事訴訟法が2018年6月1日に施行され、日産がそれを使ったからである。司法取引とは、共犯者が犯罪解明のため警察官・検察官に対し、供述や証拠提出などの協力をすると、その見返りに検察官が、①起訴見送り ②起訴取り消し ③より軽い罪での起訴 ④より軽い求刑 等ができる制度だ。しかし、誰かを陥れるために虚偽の供述を行って冤罪を生む危険性も孕んでおり、日本の裁判所は迅速で公正な裁判を行わないため、最後に冤罪であることが証明され無罪が確定したとしても、既に数年~数十年間の不名誉な期間が経過して取返しがつかなくなっており、重大な人権侵害を引き起こす。この刑事訴訟法改正は、もともとは厚労省局長であった村木氏の無罪が確定した文書偽造事件を機に議論が始まり、冤罪を防ぐことが目的だったが、それとは逆行した改革になったものである。
 そして、*4-2のように、日本版司法取引の最初の適用事例は、三菱日立パワーシステムズと東京地検特捜部間で行われた「タイの発電所建設事業をめぐる不正競争防止法違反(外国公務員への贈賄)に関し、会社が刑事責任を免れる見返りに賄賂を支払った社員への捜査に協力する」というものだった。私は、受注に贈賄が必要な国もあるため、受注で利益を得た会社が賄賂を支払った社員を刑事罰に処する司法取引を行い、日本の検察や裁判所が国内法や国内の“社会通念”に照らして捜査や審判を行うのは、理不尽が過ぎると思う。

*4-1:https://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-728536.html (琉球新報社説 2018年5月30日) 司法取引導入 冤罪防止目的に逆行する 
 司法取引を導入する改正刑事訴訟法が6月1日に施行される。逮捕された容疑者や起訴された被告が共犯者らの犯罪解明のために警察官や検察官に対して、供述や証拠提出などの協力をした見返りに、検察官は(1)起訴の見送り(2)起訴の取り消し(3)より軽い罪での起訴(4)より軽い求刑―などができる。罪を犯した人は適正に処罰されるべきである。他人の犯罪を明かしたからといって、償うべき罪を軽減されるなどの恩恵を与えられるのはどう考えてもおかしい。対象となる犯罪は改正法で定めている薬物・銃器関連、詐欺、横領、贈収賄などのほか、3月に閣議決定した政令で独占禁止法違反や金融商品取引法違反などを加えた。薬物事件など組織犯罪捜査での効果が期待される一方、虚偽の供述で冤罪えん(ざい)を生む危険性がある。逮捕された後、刑を逃れたり、軽減させたりするために、虚偽の供述をすることは十分あり得る。検察官がうそを全て見破ることができるとも限らない。実際、共犯者とされた人物の虚偽供述が重要な証拠となり、身に覚えのない罪に問われた例がこれまでもあった。名古屋市発注の道路清掃事業を巡る談合事件で2003年、名古屋地検特捜部に逮捕、起訴された男性は虚偽の証言によって巻き込まれた。業者に予定価格を漏らしたとして逮捕された男性の部下が男性に報告し、了承を得ていたとのうその供述をしたため逮捕された。無罪が確定し、男性が非常勤顧問として職場に戻ったのは逮捕から7年が経過してからである。09年に東京都内の民家に男2人と共に押し入り、現金を奪ったとして、強盗致傷罪などに問われた男性は「身に覚えがない」と否認した。だが、共犯者とされた男が「男性から話が持ち込まれた」と供述したため逮捕された。男性が無罪を勝ち取るまでに6年もかかった。司法取引の導入によって自らの罪が軽減されることが期待されれば、冤罪の危険性がこれまで以上に高まることは否定できない。そもそも刑事訴訟法などの改正は、大阪地検特捜部が押収したフロッピーディスクの内容を改ざんし逮捕した厚生労働省元局長の無罪が確定した文書偽造事件を機に議論が始まった捜査・公判改革の一環である。冤罪を防ぐことが大きな目的だったはずだが、司法取引はそれに逆行する。検察が起訴権限を独占し、容疑者らに対して圧倒的な影響力を持っている現状で、司法取引を導入するのは危険である。検察の意に沿うストーリーを受け入れれば、起訴しないと誘導する捜査手法につながる恐れがあるからだ。司法取引はあまりにも問題点が多い。新たな冤罪を生みかねないとの懸念を払拭できない以上、司法取引制度は廃止すべきだ。

*4-2:https://www.huffingtonpost.jp/nobuo-gohara/mhps-20180718_a_23484212/ (HUFFPOST 2018年7月18日) (2018年7月17日郷原信郎が斬る!より転載) 「日本版司法取引初適用事例」への“2つの違和感” ~法人処罰をめぐる議論の契機となる可能性
 今回の事例には、二つの面で違和感を持たざるを得ない。タイの発電所建設事業をめぐる不正競争防止法違反(外国公務員への贈賄)事件で、事業を受注した「三菱日立パワーシステムズ」(MHPS)と、捜査している東京地検特捜部との間で、法人の刑事責任を免れる見返りに、不正に関与した社員への捜査に協力する司法取引(協議・合意)が成立し、今年6月に施行された刑訴法改正で導入された「日本版司法取引」(捜査公判協力型協議合意制度)の初適用事件になったと報じられている。MHPSは、三菱重工業と日立製作所の火力発電事業部門が統合し2014年2月に設立した会社であり、事業を受注したのは、統合前の三菱重工業だったとのことだ。「日本版司法取引」は、検察官と被疑者・被告人およびその弁護人が協議し、被疑者・被告人が「他人」の刑事事件の捜査・公判に協力するのと引換えに、自分の事件を不起訴または軽い求刑にしてもらうことなどを合意するものだ。導入の目的については、「組織犯罪の末端の関与者に刑事責任の軽減の恩典を与えることで、組織の上位者の犯罪について供述しやすくすること」と説明されてきた。ところが、その初適用事例が、「外国公務員贈賄」という犯罪に関して、事業上の利益を得る「会社」が免責されるのと引き換えに、犯罪行為に関わった「社員」の刑事責任を追及する方向での「取引合意」だった。「想定とは逆」であることに、違和感が生じるのも当然と言えよう。今回の事例には、二つの面で違和感を持たざるを得ない。
●法人免責が「取引合意」の対象となったことへの「違和感」
 第一の「違和感」は、MHPSと検察官との間で、「法人」の刑事責任を免れることと引き換えに、贈賄行為に関わった「社員」が刑事処罰されることに協力するという「合意」が行われたことだ。日本での法人処罰は、刑法以外の法律の罰則に設けられた「両罰規定」に基づいて行われる。両罰規定とは、「法人の役職員が、その業務に関して、違反行為を行ったときは、行為者を罰するほか、法人に対しても各本条の罰金刑を科する」という規定に基づき、行為者個人だけではなく、法人も処罰されるというものだ。この「法人の処罰」は、法人の役職員が法人の業務に関して犯罪を行った場合に、法人にも刑事責任を問うもので、行為者の責任とは別個のものと考えられている。理論上は、法人にとって、その役職員の刑事事件を「他人の刑事事件」ととらえることは可能だ。しかし、その前提は、あくまで、行為者の役職員「個人」について犯罪が成立する、ということであり、アメリカのように、行為者が不特定のままでも「法人の行為」について犯罪成立を認め、法人を処罰するというのではない。自然人個人に対する「道義的非難」が中心の日本の刑事司法では、「意思も肉体も持たない抽象的存在」の「法人」に対する処罰は、重要視されてはこなかった。日本法での法人処罰は、法人の役職員個人について犯罪が成立することを前提に、副次的に行われるものに過ぎず、法人に対する罰金の上限も、3億円から5億円程度にとどまっている(昔は個人の上限と同じ500万円程度だったが、90年代から、独禁法等でようやく「行為者個人と法人との罰金額の上限の切り離し」が行われ、数億円への引き上げが進められていった)。法人に対して数百億円、時には数千億円もの罰金が科されることもある米国などとは大きく異なる。今回問題になっている「外国公務員贈賄」の不正競争防止法違反の法人に対する法定刑の上限も3億円に過ぎない。「法人処罰」を、行為者個人の処罰とは独立したものと位置付けるのであれば、当然、その責任の根拠も異なるはずである。従来の見解では、法人の責任の根拠は、行為者に対する選任監督上の過失とされてきたが、実際に、行為者の犯罪行為が認められた場合に、法人については選任監督上の過失がないとして免責された例はほとんどない。実際には、両罰規定がある罰則によって役職員が処罰されると、ほぼ自動的に法人も処罰されてきたのである。つまり、「個人処罰」中心の考え方の日本法による「法人処罰」は、独立した制裁としての位置づけが十分なものではなく、それ自体の制裁機能も、決して十分なものではなかった。「司法取引」によって処罰が軽減されることの理由は、他人の犯罪への捜査・公判に協力することで、その責任が軽減されるということであろう。「法人」としてのMHPSが捜査・公判に協力することで法人の責任が軽減され、一方で行為者「個人」が処罰されるというのであれば、MHPSの捜査・公判への協力を、「法人自体の責任を軽減する要素」として評価したことになる。そのような「法人固有の責任の評価」は、少なくとも、これまでの法人処罰では、ほとんど行われて来なかった。このような日本法による「法人処罰」の実情からは、法人の処罰を免れることと引き換えに、行為者たる役職員「個人」の刑事責任の追及に協力する「取引合意」が成立するというのは、想定し難いことだった。しかし、今回の件は「両罰規定によって処罰され得る『法人』」が、役職員「個人」の処罰に協力することの見返りに、法人の処罰を免れさせてもらうという取引だ。MHPS側が、法人に対する処罰を免れることを優先したのは、僅か上限3億円に過ぎない法人処罰自体より、法人が処罰されることに伴って国際協力銀行(JBIC)等の融資が停止されるなど、他の制裁的措置がとられることを恐れたからだと考えられる。しかし、そのような「企業そのものが被る事業上の不利益」を免れるために、行為者の役職員「個人」が刑事処罰を受けることに積極的に協力する「取引合意」を行うことが、果たして、企業として適切な対応と言えるのだろうか。
●外国公務員贈賄の処罰をめぐる特殊な問題
 もう一つの「違和感」は、法人に対する処罰を免れさせる見返りに、行為者たる社員の側の刑事責任を追及することに協力する「取引合意」が、「東南アジアの国での外国公務員贈賄」という「特殊な事情から発生することが多い犯罪」について行われたことだ。東南アジア諸国では、古くから、公務員が公務の受益者から直接報酬を受け取る慣習がある。それは、米国等でのレストラン等で従業員が客からチップを受け取るのが慣習化しているのと同様に、その国の公務員制度に深く根差しているもので、それを禁止する法律があっても容易に解消できるものではない。そのような慣習が存在するところで行う事業のために現地に派遣される社員は、事業を進める中で、現地の公務員から賄賂を要求された場合に、極めて辛い立場に立たされることになる。要求どおり賄賂を支払わなければ、有形無形の不利益が課され、事業の大幅な遅延というような事態に追い込まれることは必至だ。海外での事業では、契約時に「履行遅延の場合の損害賠償の予定」(リキダメ)が合意されていることが多く、事業が遅延すると、そのリキダメの発生が予想されることで、その会計年度末に多額の損失引当金を計上せざるを得ないことになる。現地に派遣されている社員は、事業の遅延を生じさせないよう、本社側から強く要求され、一方で、現地の公務員から賄賂を要求され、それに応じないと事業が遅延するというジレンマに立たされることになる。社員に「コンプライアンスの徹底」を指示しても、社員を窮地に陥れるだけだ。贈賄リスクを低減するために、現地のコンサルタントを活用して、「賄賂の支払」が直接的にならないようにする弥縫策がとられることもあるが、それは、根本的に問題をなくすものではない。結局のところ、そのような東南アジアの国で事業を行う場合には、公務員側から賄賂を要求されるリスクが相当程度あることを前提に事業を行うか否かの意思決定を行わざるを得ないのである。今回のMHPSの事件に関しては、2013年に、三菱重工業が、タイの民間の発電事業者から発電所建設事業を受注し、その後、同社と日立製作所の火力発電事業部門が統合されて2014年にMHPSが設立された後、同社の社員が、現地の公務員から現金を求められ、担当社員らが数千万円を支払ったということのようだ。まさに、タイという東南アジアの国で、そのような事業を行うのであれば、意思決定を行う際に、当然、現地公務員による賄賂要求のリスクを認識した上で決定する必要があったのであり、事件は、そのような当然のリスクが顕在化したものに過ぎない。発生することが分かっていたリスクにさらされ、ジレンマに悩んだ末に、賄賂を贈った社員を処罰することと引き換えに、会社に対する制裁を免れさせるというのは、納得できることではない。今回の「取引合意」によって、今後、贈賄の実行行為者の社員側に対する捜査が行われることになるが、最終的にどのような刑事処分が行われるか、現時点ではわからない。担当取締役も贈賄を承認していたという報道もあり【(日経)海外贈賄疑惑、元取締役が承認か 納期遅れ回避で】、「末端の社員」ではなく、取締役クラスが処罰されることになるかもしれない。「トカゲのしっぽ切り」にはならない可能性もある。しかし、担当取締役が承認したとしても、それも、上記のようなジレンマに悩んだ末で判断したことは同様であり、その取締役も、贈賄行為によって個人的利益を受ける立場ではないはずだ。本来処罰すべきは、利益が帰属する法人自体であるのに、逆に役職員個人が処罰されることに問題があるのである。
●日立製作所の南アフリカでのFCPA違反との関係
 MHPSがこのような「取引合意」を行ったことの背景に、経営統合前に日立製作所が起こした南アフリカでのFCPA(Foreign Corrupt Practices Act、海外腐敗行為防止法)違反の事件の影響が考えられる。外国公務員贈賄問題の専門家である北島純氏の【北島 純の「外国公務員贈賄罪研究会」ブログ】によると、この事件は、日立製作所の南アフリカ法人が、南アフリカの与党「アフリカ民族会議」(ANC)のフロント企業と合弁で現地子会社を設立し、その後、日立製作所は二つの発電所建設を政府系企業から受注することに成功、フロント企業に「配当」として500万ドル、「成功報酬」として100万ドルを支払った。このうち「consulting fees」名目で計上した「成功報酬」分は、実質的には「外国政党」への支払いであったのに、適切に会計処理をしなかったということで、FCPAの会計条項違反で日立製作所は起訴され、1900万ドル(約23億円)の制裁金を払う和解に合意したというものだ。この日立製作所の事業を引き継いだのが、三菱重工業の発電事業部門との経営統合で設立されたMHPSだった。この事件は、「企業の外国の政党への支払」がFCPAの会計条項違反とされたもので、日本の「外国公務員贈賄罪」には当たらない。ただ、今回のタイでのMHPSの贈賄事件も、その支払の会計処理が、FCPAの会計条項違反となる可能性もあり、同社としては、FCPA違反も含めて企業としての責任追及を最小限にするため、日本法での法人処罰を免れようとした可能性もある。しかし、今回の「取引合意」で法人が処罰を免れることができるのは、あくまで日本法に関するものであり、FCPA違反も含めて免責されるのではない。日本法で役職員が起訴された場合、それを受けて米国司法省の捜査が行われ、法人がFCPA違反で起訴される可能性は残る。
●「司法取引」初適用事件の「法人処罰」をめぐる議論への影響
 今回、MHPSが検察官との「司法取引」に応じたことが、企業の利益を優先して社員を検察に売り渡したようなイメージを持たれたことで、社会にマイナスのイメージを与えたことは否定し難い。そして、それによって守ろうとした「企業の利益」も、FCPA違反も含めて考えた場合に、最終的に、本当に利益になるのかは疑問だ。また、検察にとっても、今後の捜査の結果が、懸念されているような「トカゲのしっぽ切り」で終わった場合には、経済界にも注目されて導入した「日本版取引」のデビュー戦としては、お粗末極まりないものとなり、制度自体のイメージダウンにつながりかねない。しかし、一方で、今回、「日本版司法取引」の初適用事例で「法人処罰」が対象となったことは、これまで、ほとんど注目されて来なかった日本法における法人処罰に初めて焦点が当たるという面では、大きな意義を持つものと言えよう。前述したように、「法人処罰」は、自然人個人に対する道義的責任が中心の日本では、これまで、あまり注目されて来なかった。個人の行為を離れた「法人自体の犯罪行為」は認められず、法人固有の責任を評価することも殆ど行われて来なかった。そうした中で、今回の「司法取引」で「法人が免責された」ということは、まさに、法人が自社の事業に関して発生した犯罪について積極的に内部調査を行って事実を明らかにし、その結果に基づいて捜査当局に協力することが法人の責任を軽減するものと評価されたことになる。それは、「法人処罰」に対する従来の運用を大きく変える可能性につながるものと言える。本来、違法行為や犯罪行為に対する制裁・処罰は、全体として、その責任の程度、悪質性・重大性のレベルに応じたものでなければならない。しかし、日本では、企業や法人に対する制裁は、「行政上の措置としての課徴金」と「刑事罰」が併存し、その関係についての理論的な整理も必ずしも十分ではなく、制裁の在り方についての総合的な研究は、これまで殆ど行われて来なかった。(行政上の制裁を含む法人に対する処罰の在り方についての殆ど唯一の著作と言えるのが、刑法学者の佐伯仁志教授の【制裁論】(有斐閣2009年))。
●「組織罰」としての「業務上過失致死傷罪」への両罰規定の導入をめざす動き
 今回の事件が、法人に対する制裁の在り方についての議論の契機になるとすると、そこで避けては通れないのが、従来、特別法犯に限定されてきた「両罰規定」を、刑法犯にも導入することの是非の検討である。例えば、「談合罪」など、刑法犯の中にも「法人の利益」のために行われることが多い犯罪があるが、それらについても法人を処罰する規定がないことが、かねてから問題とされてきた。それに関して、既に、具体的な動きとなっているのが、重大事故の遺族の方々が中心となって行っている、「業務上過失致死傷罪」に対する「組織罰」実現をめざす活動である。2005年の福知山線脱線事故、2012年の笹子トンネル事故など、多くの重大事故の遺族の方々が中心になって、当初、イギリスで導入された「法人故殺罪」のような「法人組織自体の行為についての刑事責任」を問うことをめざして、2014年に「組織罰を考える勉強会」が立ち上げられた。2015年10月、その会に私が招かれた際、日本の刑法体系からは実現が容易ではない「法人処罰」ではなく、現行法制上可能な、業務上過失致死傷罪についての「両罰規定」を導入する刑事立法を行うことを提案したところ、その趣旨が理解され、それ以降の会の活動が、「両罰規定」によって重大事故についての企業の責任を問うことをめざす、「組織罰を実現する会」に発展していった。現在も、立法化をめざす積極的な活動が続けられている。この「業務上過失致死傷罪」への「両罰規定」の導入に関して最も重要なことは、法人の業務に関する事故について、法人役職員に同罪が成立する場合には、法人にも両罰規定が適用されるが、「当該法人における安全確保のためのコンプライアンス対応が事故防止のために十分なものであったにもかかわらず、予測困難な逸脱行為によって事故が発生した場合には、法人を免責する」ということである。事故防止のための安全コンプライアンスが十分に行われていたことを、法人側が立証した場合には免責されるとすることで、刑事公判で、企業の安全コンプライアンスへの取組みが裁かれることになるのである。今回の司法取引初適用事例での法人の免責は、内部調査によって犯罪事実を明らかにし、捜査・公判に協力するという「法人の事後的なコンプライアンス対応」を評価し、責任の軽減を認めるものであり、法人の固有の責任を独立して評価するという発想に基づくものだ。それは、事故に至るまでの加害企業の安全コンプライアンスへの取組みを実質的に評価して法人の責任の減免を決するという、「組織罰を実現する会」がめざす両罰規定の導入にとって、追い風になるものと言えよう。今回の司法取引初適用事例が、あらゆる面で「法人処罰」をめぐる議論を活性化することにつながることを期待したい。

<監査のビッグ4について>
PS(2019年4月9日追加):「マッケソン・ロビンス会社事件(米国で1938年に発覚した巨額粉飾決算事件)」は、これを機に現金等の実査、棚卸資産の立会、売掛金の確認等の外部証拠の入手を法定監査に義務付けた監査史に残る事件で、この会社の法定監査を行っていた監査人はPW(PwCの合併前の名称)だった。英国発祥のPWはそれだけ歴史と由緒のある老舗監査法人で、私はフィーリングも一致したので公認会計士二次試験合格後にPWに入ったが、現在は、グローバルネットワーク世界158カ国・721拠点、従業員250,930人、業務収入41,280百万米ドルの大法人となっている。また、ずっと昔、ある銀行がPWに監査を依頼したところ、監査が厳しいので自らは翌年から監査法人を変更し、PWにはその銀行の貸出先を次々と紹介したため、PWの関与先には製造業が多く、KPMGの関与先には銀行が多いというエピソードもある。
 そのような中、*5に「①『監査ビッグ4』の解体論が英で浮上」「②企業の会計監査からコンサルティングまで幅広く手掛ける巨大法人の寡占が監査不信や会計不祥事の一因」「③監査と非監査業務を完全な別法人として解体することを提言」「③大手4グループの寡占が問題なので占有率に上限を設けるなどの競争政策を提言」 「④外部監査人KPMGが『無限定適正意見』を出し続けながら経営破綻した建設大手カリリオン事件が改革論に火を付けた」「⑤こうした動きの背景には利益相反のリスク軽減や監査レベルの向上に厳しい競争が不可欠という視点がある」「⑥経営サイドに立って経営や税務戦略を支えるコンサルティングを同時に行えば、外部からのチェック役であるべき財務監査が甘くなる」などが書かれている。
 このうち①②③については、ビッグ4は日本でも世界でも監査・税務・コンサルティングサービスは別会社で行っており、出資者兼経営者のパートナーも別の人であるため、誤った指摘だ。また、私自身は、監査・税務・コンサルティングの全部を経験したが、これは勉強のために別会社間を移動して経験させてもらったからであり、こういう公認会計士はむしろ少ない。
 また、④については、KPMGが何らかの理由で甘かったのかもしれないが、それとPwCなど他の監査法人とは別であるため、全体を改悪するのは止めるべきである。例えば、⑤については、分割して競争が激しくなれば監査レベルの向上に繋がるわけではなく、小さくて被監査会社との間の力関係が弱く、少ない被監査会社に利益を依存している監査法人ほど、被監査会社を失いたくないため、監査が甘くなるという実情がある。
 さらに、⑥については、債権者・株主・投資家に向けて財務諸表を作成する責任は経営者にあり、監査は経営者が作成した財務諸表がお手盛りでないことを証明して被監査会社から報酬をもらうもので、その産業の背景・経営者の考え方・組織の動きなどがわかっていなければ、監査上のリスクもよくわからない。そのため、経営者はじめ担当者とのコミュニケーションや経験の積み重ねは大変重要であり、それと監査が甘くなることとは別なのである。

*5:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190406&ng=DGKKZO43418360V00C19A4DTA000 (日経新聞 2019年4月6日) 「監査ビッグ4」 英で解体論、議会が寡占問題視 質向上へ競争促す
 「ビッグ4」と呼ばれる巨大監査法人の改革論議が英国で山場を迎えている。英議会の委員会はこのほど監査と非監査業務を完全分離する「解体」に踏み込んだ提言をまとめた。大手4グループの寡占を問題視し、占有率に上限を設けるなどの競争政策への支持も表明した。相次ぐ企業の大型破綻や会計不祥事を踏まえて抜本改革に動く。英国の方針は世界の監査業界に影響を与えそうだ。「監査と非監査事業の分離へ、ビッグ4の完全な組織的解体を推奨する」。英下院の民間企業・エネルギー・産業戦略委員会は、改革を提言するリポートで言い切った。企業の会計監査からコンサルティングまで幅広く手掛ける巨大法人による寡占が、監査不信や会計不祥事の一因になっていると指弾した。英国で改革論に火を付けたのが建設大手カリリオンの経営破綻だ。2017年7月、通期決算の発表から約4カ月で巨額損失が表面化し、18年1月に破産申請した。財務諸表に注意喚起なしのお墨付きである「無限定適正意見」を出し続けた外部監査人のKPMGに対して批判が噴き出た。同社を含む4大法人をめぐっては、日本の公正取引委員会にあたる英競争・市場庁が、寡占を問題視する報告書を18年12月に発表。組織内で監査・非監査業務を分離したり、大企業に2社以上の監査を義務付けたりする改善案を挙げた。今回の英下院委の発表は、分離についてより強く踏み込んだのが特徴だ。競争・市場庁はグループ内で財務や報酬などを切り分け、運営面も分離する形態を提言した。下院委は完全な別法人として解体することも視野に入れるべきだとした。こうした動きの背景には利益相反のリスク軽減や、監査レベルの向上に厳しい競争が不可欠という視点がある。経営サイドに立って経営や税務戦略を支えるコンサルティングを同時に行えば、外部からのチェック役であるべき財務監査が甘くなるとの疑念は根強い。解体論のカギは、監査業務より非監査業務の方が総じて採算が良いという、大手グループの収益構造にある。コンサルでの稼ぎを前提として、採算割れで監査を受注していることが質の悪化や競争阻害につながっていると問題視している。英下院委の調べによると、PwCの場合、17年の英事業収入30億200万ポンド(約4400億円)のうち、監査は6億7600万ポンドと約2割にとどまる。予算比で約1割の採算割れを承知で受注した監査は約5割に上ったという。英メディアによると競争・市場庁は今後数週間で監査法人の寡占問題に関する最終報告書を公表する見通し。それを基に政府が法制化に動く。議会は大手監査法人の「解体」が今回見送られる場合も、3年後をめどに状況を見極めて再検討すべきだと提唱した。監査法人側は質を高める必要性は認めつつ、完全分離論には反発している。PwCは分離は英国の競争力をそいで「かえって監査の質の低下につながる」との声明を出した。各社は同じ企業に監査・非監査を同時に提供しないなど自主的に信頼回復に努める構えだが、当局側には自助努力は限界との認識が広がっている。日本では規制で大手監査法人は税務や戦略的なコンサルティングなどを別法人で展開している。日本での議論は監査法人の説明責任などに向けられることが多い。東芝の不正会計などを受けて金融庁は有識者の懇談会を設置。今年1月にはその提言を公表するなど監査の質向上に向けた取り組みが続いている。

<ゴーン氏の映像を見て>
PS(2019年4月10日追加):再逮捕された場合に備えてゴーン氏がとった映像を、弁護団が2019年4月9日に公開し、その動画が掲載されているHP(https://www.youtube.com/watch?v=zLRsvAjW1bI 参照)は多い。そして、①現経営陣のビジョンのなさ ②ゴーン氏逮捕は、日産・仏ルノー統合に向けた動きを恐れた幹部による「陰謀」「謀略」「中傷」であること ③現在の3社連合のリーダーシップの欠如 ④リーダーシップは必要で、妥協か独裁のどちらかしかないと考えている人はリーダーシップを理解していないこと 等が述べられ、納得できた。
 しかし、従来のメディアは、*6のように、必ず④を述べず、故意にゴーン氏に悪いイメージをつけようとしている。そして、映像を見た日産幹部は「相次ぐ不正発覚にもかかわらず一度も記者会見に出なかった」としているが、本当に必要な検査要件を無視したのなら技術部門トップと工場長の責任であり、必要でない要件を国から課されているのなら国交省・経産省に交渉してその要件をなくしてもらうのが社長と技術部門トップの仕事である。つまり、トップが頭を下げる係になり下がり、トップが頭を下げるのを見て民衆が喜ぶ姿は日本の悪しき特徴なのだ。

*6:https://digital.asahi.com/articles/DA3S13971856.html (朝日新聞 2019年4月10日) ゴーン前会長、経営陣批判 「ビジョンない。悲しくうんざり」
 日産自動車の前会長カルロス・ゴーン容疑者(65)=会社法違反(特別背任)容疑で再逮捕=の弁護団が9日公開した映像で、ゴーン前会長は発言の大半を日産の現経営陣への批判に費やした。事件は、日産と仏ルノーの統合に向けた動きが進むと恐れた幹部による「陰謀」「謀略」「中傷」だと主張。日産の業績低迷や株価下落、三菱自動車を交えた3社連合のリーダーシップの欠如を嘆いた。
■日産幹部「業績低下の責任棚上げ」
 ゴーン前会長は、逮捕前の昨年9月の日産の取締役会で、3社連合の「アライアンス(提携)を深める議論を進めていきたい」と発言。これを機に日産側は独立性を脅かされることへの危機感を強めたとされる。ゴーン前会長は映像で「統合、すなわち合併に向けて進むことが、ある人たちに確かな脅威を与え、それがゆくゆくは日産の独立性を脅かすかもしれないと恐れたのです」と分析し、この「恐れ」が「陰謀」につながったと主張した。約7分半の映像のほぼ半分、約3分50秒を費やして日産の現経営陣への批判を展開。「この2年で3回の業績の(下方)修正があり、何度も不祥事(検査不正問題)があった」とも指摘し、「現経営陣に問題があった」からだと断じた。「株価の下落と業績の低迷を目にしながらも、幹部たちは『あれはしない、これはしない』と言って、今後何をするのかも言わない」「業績を向上させるビジョンもなく、自らを誇っている幹部たち。それを見ることは非常に悲しい。うんざりさせられる」と嘆く一方で、自らを「20年かけて企業価値を創造し、ブランドを強化してきた人間」だと表現。経営陣が「退廃して無頓着になっているのを目にすることは本当につらい」とも述べた。撮影時には経営幹部の実名を挙げて批判していたが、映像では「自分勝手な恐れを抱いたために、会社の価値を毀損(きそん)している人たち」と述べるにとどめた。3社連合はゴーン前会長に権限が集中していた統治を改め、3社連合を統括する新組織を設立して12日にパリで初会合を開く。3社の首脳の合議による運営に移行することに対し、「テーブルを囲んでコンセンサス(合意)で意思決定していくのは、自動車業界ほど競争の激しい産業においては何らのビジョンも生み出さない」と述べ、リーダーシップの必要性を訴えた。映像を見た日産幹部は「想定の範囲内で影響はゼロ。業績低下の責任はゴーンにもあるのに、それを棚上げするあたりが、いかにも言いたいことだけ話すゴーンらしい」と冷ややかに受け止めた。検査不正に触れた発言にも反論。相次ぐ不正発覚にもかかわらず一度も記者会見に出ず、「対応に追われている最中に、レバノンの高級住宅の改装費用を早く送れと幹部にメールしていた。批判する資格はない」と憤った。
■ゴーン前会長の発言のポイント
 ・全ての嫌疑について私は無実だ
 ・事件は、日産とルノーの経営統合に恐れを抱いた日産経営陣による「陰謀」だ。数人の
  幹部が「汚いたくらみ」を実現させた
 ・日産の業績低下を心配している。経営陣には業績を向上させるビジョンがない
 ・3社連合の提携を強化するビジョンもない。合議による意思決定はビジョンを生み出さ
  ない。リーダーシップの発揮が必要だ
 ・公正な裁判を強く望む。裁判で無実を証明したいと切に願っている

<乗り物は電動化すること>
PS(2019年4月11日):日本の批判的世論は、①報酬が高すぎるからいけない ②ヨットを持っているからいけない ③ヴェルサイユ宮殿で挙式したからいけない など、「個人の生活が質素でないからいけない」という価値観に端を発したものが多い。
 しかし、①の報酬は成果に連動するのが世界の常識で、その人の実績に応じて決めるのが当たり前であるため(そうでなければ勤務年数や学歴で報酬を決めざるを得なくなる)、高報酬や好待遇を求めるのに実績を主張するのは当然であり、報酬がその人の評価なのである。また、(サラリーマンには覚えがあると思うが)従業員毎に報酬を開示すれば会社がひっくりかえるのと同様、取締役の報酬を個人毎に開示するのも有害な面が多いと、私は考える。
 そして、②については、ルノー・日産・三菱グループなら、会社所有の航空機・ヨット・船舶を持ち、取締役や技術者を載せて、それらを電動化しながら乗り心地をよくするよう、センスを磨いて頭を絞れば、次の人気商品になって世界で売れるだろう。そのため、日本の一般人にとって贅沢に見えることでも、商品開発に有意義なことは多々ある。
 なお、③については、特にプライバシーであり、めざしを食べようとヴェルサイユ宮殿で再婚の挙式をしようと個人の自由であるため、報道する必要もない。つまり、誰にでも「質素がよい」というワンパターンの価値観を押し付けるのはよくないと思うのである。


中国のEVタクシー BMWのEV  ジャガーのEV  ホンダのFCV   日産リーフ

(図の説明:左の写真は、整然と並んでいる中国の現役EVタクシーで、日本も営業車は早くEVにすべきだ。また、中央の2つのように、BMWやジャガーもスマートなEVを出しているし、右から2番目のように、ホンダもFCVを出した。しかし、1番右の日産リーフは、いつまでも後部が短く、エコなだけでスマートではない。さらに、このような中、「ツール・ド・九州2019 in 唐津」が開催されるそうだが、ラリーも排気ガスを出すガソリン車ではなく、EVかFCVの競技にすべき時代だ。そのため、夏に世界のEV・FCVを招いて北海道の名勝を周るラリーを行い、世界に放映したらどうかと思う)


   EVバス       燃料電池航空機   蓄電池電車  ゴーン氏のシャチョウ号

(図の説明:1番左は、既に実用化されているEVバスである。また、左から2番目は、IHIが米ボーイング社と共同で開発した燃料電池航空機で、右から2番目は、蓄電池電車で電車の脱電線化を実現できそうなのだが、今一つデザインが悪い。一方、1番右のゴーン氏所有のクルーザーはイタリアのアジムット・ベネッティ社製で、動力は軽油だがデザインは完璧だ。そのため、このようなクルーザーを燃料電池や蓄電池で動くようにすると、ヨーロッパ・アメリカ・オーストラリアはじめ世界で売れそうだ)

*7:https://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201904/CK2019040902000126.html (東京新聞 2019年4月9日) 還流資金で私的投資か ゴーン前会長 息子の投資会社利用?
 日産自動車の資金約五億六千万円を自身に還流させたとして、会社法違反(特別背任)容疑で再逮捕された前会長カルロス・ゴーン容疑者(65)が、自身のペーパー会社を介して日産資金を流入させたとされる息子の投資会社(米国)の資金で、私的な投資をした疑いがあることが関係者への取材で分かった。東京地検特捜部は、実質的に日産の資金で個人的な投資をしたとみている。ゴーン容疑者は、日産子会社「中東日産」から二〇一五~一八年、中東オマーンの販売代理店「SBA」に千五百万ドル(約十七億円)を支出し、うち五百万ドル(約五億六千万円)を自身が事実上保有するレバノンのペーパー会社「GFI」に還流させ、日産に損害を与えたとして逮捕された。関係者によると、SBAから別の複数のペーパー会社を経由してGFIに還流された資金は、息子が最高経営責任者(CEO)を務める米投資会社「ショーグン・インベストメンツ」や、妻が代表を務める英領バージン諸島の会社「ビューティー・ヨット」などに流れたとされる。ビューティー社の資金は高級クルーザー「SHACHOU(社長号)」の購入費に充てられた疑いが持たれている。ショーグン社の資金の一部は、ゴーン容疑者の投資に充てられていた可能性があるという。特捜部は経緯を把握するため、息子に説明を求める検討をしているが、米国在住で日本の司法権は及ばない。そのため米国に捜査共助を要請し、任意で事情聴取をしてもらいたい意向だが、実現は不透明という。

<リーダーもワンパターンではないこと>
PS(2019年4月12日追加):*8は、「①ゴーン氏が強欲で自己中心的だとして、推定無罪の慎重性に欠けている点」「②リーダーは、自己中心的かサーバント型の二者択一しかないとしている点」「③会社によって、必要なリーダーシップは異なることを無視している点」「④日本企業は世界の中で、社員の経営参加や従業員の支援をよく行っている方であることを知らない点」「⑤自分の結論を導くために、状況の異なる外国の大家の理論を都合よく引用し、引用する際に歪めた解釈をしている点」で誤っている。
 このうち①については、これまで述べてきたとおりなので詳細を省くが、こんなことも知らないとは見識が低い。また、③については、専門能力の高い社員を活用する知識生産型のビジネスで、構成メンバーが意見を聞くに足る人である場合には重要だが、業種・メンバー構成・その時の状況によってこの加減は異なり、それを判断するのも経営者やリーダーの能力だ。
 そのため、②の「リーダー(経営者)は、自己中心的かサーバント型の二者択一」としているのは全くの誤りで、経営者は生産物の付加価値を上げ、従業員に相応の給与を支給しつつ利益も挙げ、会社が存続できるようにすることが重要で、すべてはそのために行われるのである。
 従って、④のように、単に社員の経営参加や部下の支援を提唱すればよいのではなく、これらは会社の製品の付加価値と生産性を上げるために行われなければならないし、日本企業は基本的には参加型である。そして、自動車産業などの製造業には階層の多すぎないヒエラルキーが必要で、ヒエラルキーがあっても現場との情報のやりとりは重要なのである。これは、公務員にはピンとこないかも知れないが、経営学の基本だ。
 なお、⑤は、「日本では上意下達傾向が強いが、新たなリーダー像には部下の支援が不可欠で、経営に参加し支援する従業員で業績が向上するので、浸透に工夫が必要だ」という自分の結論を合理化するために、日本の現状や企業毎に異なる実態を無視し、これまでトップダウンの傾向が強かった外国の大家の理論を都合よく引用している。しかも、歪んだ解釈をしているので科学的とは言えず、私に反論したければ、日本企業に関してどういう調査を行い、外国企業とどう比較してこの結論を導き出したかを明らかにすべきだ。何故なら、私は経営学・経済学を勉強した上で、日本の大中小企業や外国企業を数多く見て言っているからだ。そのため、もし「女は経済・経営・ビジネス・リーダーシップについて知らず、論理に弱くて感情的だ」などと思っていたとすれば、それは女性蔑視そのものである。
 さらに、有能な個人は上から一方的に指導するというのも変な決めつけであり、再生医療・電気自動車・ネットなどの新しい事業は最初は一人の思いつきから始まったもので、思いついた人は各方面の勉強をし情報も収集した筈だ。が、そのシーズを日本は育てられず、外国に持って行かなければ形にならないのは、このような変な言動が足を引っ張るからにほかならない。

*8:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190412&ng=DGKKZO43619610R10C19A4KE8000 (日経新聞 2019年4月12日) 従業員視点の新リーダー像、京大教授 若林直樹氏
○新たなリーダー像には部下の支援不可欠
○経営に参加し支援する従業員で業績向上
○日本では上意下達傾向強く浸透に工夫も
 昨今の経営者の不祥事を見るにつけ思うのは、リーダーは有能であれば、自己中心的で良いのだろうかということだ。事実、研究の世界でも経済や社会の変化の中でリーダーシップのあり方について反省が進んでいる。有能な個人が上から一方的に指導するスタイルから、社員の参加や支援を求めるスタイルへと関心が変わってきているのだ。英ダーラム大学教授のロバート・ロード氏らによると、リーダーシップ研究としては従来型は多くはなく、社員の経営参加や部下の支援を求める参加型・支援型リーダーシップへの注目が高まってきている。
背景には、先進国での産業が大量生産型から知識集約型へと転換する中で、企業組織も構造転換を迫られている現実がある。米アリゾナ州立大学名誉教授のロバート・クレイトナー氏らは、リーダーシップの見直しを促す組織変化の要因として3つを挙げる。第一に、チームで行う業務が増えてきたため、チーム全体として業績を上げる仕組みが重要になった。第二に、事業がヒエラルキー組織ではなくプロジェクト組織で行われるようになり、社員や関係者の関与が重要になった。第三に、専門能力の高い社員を活用する知識生産型のビジネスが増えてきた。コンサルティングビジネスや製造業のサービス化はその典型である。そのため、部下や同僚たちが創造性や専門性を発揮し、経営や事業、製品・サービスの革新に主体的に取り組むことを勧めるリーダーシップへの関心が高まっているのだ。参加型・支援型のリーダーシップの研究者は、従来型のリーダーシップが個人に頼りすぎていると問題視している。表のように、従来型リーダーの研究では有能な個人の特性や能力、働きに注目しているが、個人の価値観で意思決定することや上意下達であることは前提条件となっていた。そこでは、リーダーの動機付けが利己主義的であることも暗に認められてきた。そもそもリーダーの機能は、目的達成のために組織やチームをまとめて動かすことにある。だがリーダーがあまりに強い利己主義を表した場合、社員も会社も本当についていくだろうか。参加型・支援型のモデルはこうした反省から、フォロワーシップ研究と関連して、従業員視点に立つ水平的なリーダーシップのあり方を示そうとしている。米デポール大学准教授のグレース・レモン氏らは、リーダーは本来、組織や社員の能力の発揮や成長を推進するという利他的な動機を持っているとする。その上で社内コミュニティーの発展に貢献するような行動分析の重要性を指摘した。これはリーダーが社員から支持を得て、自分のリーダーシップに正統性を得る仕組みの検討でもある。参加型・支援型の典型的なリーダーシップ理論として、シェアード・リーダーシップ、サーバント・リーダーシップの二つのモデルがある。それぞれの研究を検討しながら、水平的で利他的なリーダーシップのモデルの特徴を見てみよう。シェアード・リーダーシップは、チームのメンバーに意思決定や貢献への積極参加を促す、参加型リーダーシップの代表的モデルである。もともとはチーム、特に自己管理型チームの業績を上げるメカニズムの研究から発展してきた。経営コンサルタントであるクレイグ・パース氏らによると、チームのメンバーが組織やチームの目的達成のために、チーム内で相互に導き合うように影響し合う活動の仕組みであるとする。米ワシントン大学教授のブルース・アボリオ氏らによれば、集団の結束力、組織におけるメンバーの利他的貢献(組織市民行動)、チーム業績への貢献を引き出すことができる。米サザンメソジスト大学客員教授のジェイ・カーソン氏らは、こうした参加型リーダーシップがチームの業績を上げる条件として、チームを指導する外部の上司の役割も重視する。内部で目標の共有や相互支援、発言を促進するだけではなく、チームを管理する外部の経営者や管理職のコーチングも業績に影響する。近年の経営者や管理職の不祥事の多発は、リーダーの態度の個人中心性、利己性、独善性の批判につながっている。こうした態度のリーダーは、トラブルの際に、自己保身のために粉飾決算、社内不正、品質偽装を積極的に進めてしまう誤った姿勢を取りがちだ。国際団体である公認不正検査士協会の2006年の調査によると、社内不正の2割が経営者であるが、その1件の損失額は極めて大きく深刻である。また経済広報センターの調査でも、経営者の自己中心的な態度・発言が、消費者や市民の企業イメージ悪化に影響している。経営者がリーダーとして、会社や社会に貢献する意識が期待されるゆえんである。一方、サーバント・リーダーシップは自己よりも社員や他者に対する配慮を優先する利他的リーダーのモデルである。米AT&T出身の経営者であるロバート・グリーンリーフ氏が主唱したリーダーの経営倫理から始まる。米国でもエンロン疑惑など企業不祥事が多発した反省から、実務家を中心に発展した。このモデルでは、リーダーは従業員に対して、意見に耳を傾け、共感、配慮をするだけではなく、従業員の能力や幸福増進を支援するための積極的な取り組みを行い、社会や会社のコミュニティーづくりに貢献する。1970年代以降、米ハーバード大学などでの経営倫理の講演活動を通じて発展してきたが、近年、利他的リーダーシップモデルとして再注目されている。サーバント・リーダーシップの研究は21世紀に入り本格化している。主に、従業員の成長を支援することを通じて、組織やチームの業績を上げる効果が重視されている。米イリノイ大学准教授のジョン・ピーチー氏らの研究では、組織活動へのメンバーの利他的貢献を促進する面や、経営品質の向上、長期的な視点、部下の創造性の活性化、従業員の幸福感促進といった効果が検証されている。米ビラノバ大学教授のジョナサン・ドーハ氏らによると、サーバント型のリーダーは、利己的なリーダーよりも株主や会社の外部利害関係者への配慮が強くなるとの指摘もある。さらにピーチー氏らによると、米国だけではなく中国やインドネシアにおいても同モデルは受容可能であり、国際的な期待も高い。参加型・支援型リーダーシップは日本企業にも定着するのだろうか。国際比較組織調査のグローブによると、日本での参加型リーダーシップ浸透は世界平均より低い。コーチング会社コーチ・エィの国際リーダーシップ調査でも、米国に比べると日本と中国での上司と部下のコミュニケーションは上意下達傾向が強い(図参照)。定着には工夫が必要であろう。

<脱原発・再エネへの転換を解くのを感情論とは!>
PS(2019年4月13日追加):*9-1のように、日本がWTOに提訴していた韓国の水産物禁輸撤廃要求は逆転敗訴だったが、日本政府関係者は「①韓国の禁輸措置がWTO協定に整合的だと認められたわけではない」「②WTOの上級委は日本産食品の安全性について一審の判断を変更していない」「③一審の判断の仕方に瑕疵があったと上級委が認定したのである」「④日本産食品は科学的に安全で、日本の食品の安全性を否定したものではない」等と述べている。
 しかし、④の「科学的に安全」の根拠は、「食品に含まれる放射性物質が基準値以下」という意味しかなく(https://www.r-info-miyagi.jp/r-info/kiseichi/ 参照)、基準値以下ならいくら食べても安全と言える根拠は科学的に示されていないため、今度は“基準値以下”が安全神話を作っている。そのため、国民の安全を第一に考えれば韓国の禁輸措置は妥当で、その禁輸措置がWTO協定違反だとして提訴したり、政府高官が敗訴後に①②③④の弁を発したりするのは、日本産食品全体の安全性に関して世界の信用をなくし、国民の安全をも脅かす。つまり、原発事故を起こせば付近の農林漁業が壊滅するのも、原発のコストに入れるのが当然なのである。
 このような中、*9-2のように、経団連の中西会長は「i)感情的な反対をする人たちと議論しても意味がない」「ii)原発と原爆が結びついている人に違うというのは難しい」「iii)再エネだけで日本の産業競争力を高められればいいが、技術開発が失敗したらどうするのか。いろんな手を打つのがリーダーの役目だ」などと語られたそうだが、i)については、民間企業だけでは採算すらとれず、国の予算を湯水のように使わなければならない原発に固執する方がよほど非論理的かつ感情的である上、それでも原発に固執するのはii)以外には考えられない。また、iii)の再エネは日本は資源豊富で、エネルギー自給率を100%にしながら産業競争力を高められるので、「何をおかしなことを言っているのか」と思うわけである。
 そこで、2019年4月11日、*9-3のように、原発立地県の佐賀新聞が、「脱原発を志向する流れは変わらない」として国民的議論を呼びかけている。経産省は、エネルギー基本計画で原発を「重要なベースロード電源」と位置づけ、2030年度の電源構成における割合を20~22%としているが、これこそ理念も根拠もなく決めた国民の安全を犠牲にする机上の“エネルギーミックス”にすぎず、原発論争は、既に「神学論争」から「安全神話の崩壊」にかわったため、時間と金の無駄使いをしてまた世界に後れを取る前に、早々に終わるべきである。



(図の説明:1番左の図のように、太陽光発電設備の価格は普及とともに下落している。また、左から2番目の図のように、薄膜型太陽光発電設備もできたため、設置可能な場所が増えた。さらに、右から2番目の図のように、駐車場に太陽光発電設備を設置してEVと組み合わせれば、燃料代が0になる。にもかかわらず、右図のように、急速充電器もできているのに、いつまでも価格を高くしていたり、設置が難しいと言っていたりするのは理解不能だ)

*9-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190412&ng=DGKKZO43659910S9A410C1MM0000 (日経新聞 2019年4月12日) 韓国へ水産物禁輸の撤廃要求 日本、WTO逆転敗訴で
 河野太郎外相は12日未明、韓国による福島など8県産の水産物輸入禁止措置をめぐる世界貿易機関(WTO)の判決を受け談話を発表した。「韓国の措置がWTO協定に整合的であると認められたわけではないが、わが国の主張が認められなかったことは誠に遺憾だ」と表明。「韓国との協議を通じ措置の撤廃を求めていく」とした。韓国は東京電力福島第1原子力発電所の事故を受け、放射性物質の漏出を理由に福島県など8県産の水産物の輸入を禁止してきた。日本は韓国の輸入禁止は不当だとしてWTOに提訴した。WTOは一審の紛争処理小委員会(パネル)では日本の主張を認め、韓国に是正を求めた。だが最終審にあたるWTOの上級委員会は11日、一審の判断を取り消し、韓国の措置を妥当とする最終判決を下した。WTOの紛争処理は二審制のため、上級委員会の決定が「最終審」の判断となり、韓国の禁輸措置は継続する。一審の判断を取り消した理由について、政府の担当者は同日、「一審の判断の仕方に瑕疵(かし)があったと上級委が認定した」と説明した。一方で「上級委は日本産の食品の安全性について、一審での判断を変更していない」とした。河野氏は12日午前、外務省内で韓国の李洙勲(イ・スフン)駐日大使と会い、輸入規制の撤廃に向けた2国間協議を呼びかけた。吉川貴盛農相は12日の閣議後の記者会見で「復興に向けて努力してきた被災地を思うと誠に遺憾だ」との認識を示した。その上でWTOの今回の判断は「日本の食品の安全性を否定したものではない」と語り、風評被害の払拭に取り組む考えを述べた。菅義偉官房長官は同日の閣議後の記者会見で「日本産食品は科学的に安全で、韓国の安全基準を十分クリアするとの一審の事実認定は維持されている。敗訴という指摘は当たらない」と強調した。輸入規制をかける他国にも緩和を働きかけ続ける考えを示した。

*9-2:https://digital.asahi.com/articles/ASM3C663FM3CULFA01Q.html?iref=comtop_8_06 (朝日新聞 2019年3月11日) 経団連会長「感情的な人と議論意味ない」原発巡る議論に
 経団連の中西宏明会長(日立製作所会長)は11日、自ら必要性を訴えていたエネルギー・原発政策に関する国民的な議論をめぐり、「エモーショナル(感情的)な反対をする人たちと議論をしても意味がない。絶対いやだという方を説得する力はない」と語った。原発の早期再稼働を求める立場から国民的議論を呼びかけた中西氏は2月、脱原発を求める民間団体から公開討論を求められたのに対し、「反原発を通す団体で議論にならない。水と油だ」などとして断った。「原発と原爆が結びついている人に『違う』ということは難しい」とも発言し、釈明に追われている。11日の定例会見で中西氏は、記者団から「東日本大震災以降、原発に関する国民の意識が変わったのでは」と問われたのに対し、「再生エネルギーだけで日本の産業競争力を高めることができればいいが、技術開発が失敗したらどうするのか。いろんな手を打つのがリーダーの役目だ」と指摘。「多様なエネルギー源を確保しなければ日本は立ちゆかなくなる。福島の事故から何年たとうが変わらない」と話し、電力業界への積極的な投資を呼びかけた。

*9-3:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/360766 (佐賀新聞 2019年4月11日) 平成と原発 次代へ責任ある政策論議を
 新元号「令和」が決まり、5月1日の新天皇即位まで3週間となる中、紙面では「平成」を振り返る企画が続く。歴史を時間の連続性で考える時、「一世一元」の元号で区切ることへの異論もあろう。ただ、明治、大正、昭和、と改めて時代に思いをはせると、その時どきの国家、社会像が浮かんでくる。それは次代への教訓となり、指針となる。平成の31年間で強く印象に残る出来事を聞いた世論調査の結果(3月31日付)では「東日本大震災と福島第1原発事故」が70%(複数回答可)で最も多く、「オウム真理教事件」(50%)、「阪神大震災」(40%)と続いた。後年、回顧する時、震災と原発事故はどう教訓化されているのだろうか。原発立地県で暮らす私たちにとっても大きな命題だ。被爆国日本の原子力政策は戦後10年をおかず「核の平和利用」のかけ声で始まり、高度経済成長以降、需要予測をもとに各地に原発が建設された。その後、スリーマイル島原発事故などで世界は停滞期に入るが、日本は拡大路線を続けてきた。しかし8年前の2011年、福島第1原発事故が発生し「安全神話」は根底から崩れた。玄海原発3号機再稼働から1年の3月、県内の首長に聞いたアンケート調査では7割超が運転継続を是認しつつ、6割超が「将来的に廃止」と答えた。再稼働という現実を前にしてか、前回「即時に廃止」と答えた2人の首長はトーンダウンしたが、脱原発を志向する流れは変わらないと言えよう。そこで気になるのは国民を巻き込んだ幅広い議論がないことだ。政府はエネルギー基本計画で原発を「重要なベースロード電源」と位置づけ、2030年度の電源構成における割合を20~22%とする。そのためには新増設が必要とされるが、具体的な言及はない。一方、経団連は原発の再稼働や新増設、リプレース(建て替え)を真剣に推進すべきとする政策提言を発表した。エネルギーは生活と経済の基盤であり、安定供給と経済性、そして温暖化など環境への対応が不可欠だ。提言は進展なき現状への危機感の現れだろう。ただ、どういうエネルギーを選ぶかは、私たちがどのような社会、どのような未来を選ぶかという、社会設計そのものである。だからこそ中長期的な視点が必要だ。平成は55年体制が終焉しゅうえんした時代でもある。戦後の保守と革新のイデオロギー対立の中で原発をめぐる議論は堂々巡りの「神学論争」とも言われたが、東日本大震災と福島第1原発事故を経験した今、諸課題を正面から見据えた国民的議論が必要だ。政府が具体的な政策を提示し、多面的な観点からエネルギー構成を考え、最大限の合意点を見いだしていく。平成から令和を生きる私たちの責務である。

<日本の産業が劣化した理由は?>
PS(2019年4月15日追加):*10-1のように、仏紙が「日本の経産省が2018年春、日産・ルノー間の経営統合を阻止しようと関与を試みていた」と報道したそうだ。西川社長の経歴から、経産省・法務省にも同窓生が多く歩調を合わせやすいと想像できるが、この面からの指摘は日本メディアはやりにくいため、外国メディアが活躍すべきだ。経営統合については、ゴーン氏は動画で「私は、持株会社方式を支持していた」「独立的に運営するかどうかは実績により、独立的に運営することが目的になってはいけない」と言っておられたが、私もそう思う。
 なお、*10-2のように、日立、東芝、ソニーの事業を統合した「日の丸液晶連合」のJDIが中国と台湾の企業連合の傘下に入り、日本の液晶産業が消滅するそうで困ったことだが、一瞬の売上高最大化を目指す政府主導の統合はうまくいかないことが明らかになったわけだ。
 うまくいかなかった理由は、①内部の主導権争いにエネルギーを使い ②巨大化・官僚化で、課題を先送りして変化の遅い経営になり ③政府の関与で意思決定が遅れ ④顧客ファーストでなくなり ⑤日本経済全体の物価上昇でさらに国際競争力をなくした などが挙げられるが、②③④は、まさに共産主義経済が遅れた原因であり、中国・ロシア・東欧が1990年代に日本を含む西側諸国の援助を受けながら修正したことなのである。

*10-1:https://digital.asahi.com/articles/ASM4H26J6M4HUHBI004.html?iref=comtop_8_03 (朝日新聞 2019年4月15日) 日産・ルノーの統合案、経産省が阻止へ関与か 仏紙報道
 仏日曜紙「ジュルナル・デュ・ディマンシュ」は14日、日本の経済産業省が2018年春、日産自動車と仏ルノーの間で持ち上がっていた経営統合案を阻止しようと関与を試みていた、と報じた。日本政府はこれまで、両社の提携について「政府が関与するものではない」との立場を表明していた。同紙は同年4~5月に日産の幹部が、当時両社の会長だったカルロス・ゴーン容疑者(65)=会社法違反(特別背任)容疑で再逮捕=らにあてた電子メールを入手したとしている。同年4月23日に日産幹部がゴーン前会長にあてたメールでは、経営統合をめぐって同社と仏政府で直前に行われた議論を報告していた。日産側は統合への慎重論を表明したほか、ルノーが日産に43%を出資する一方、日産のルノーへの出資は15%にとどまる関係の見直しを優先するよう求めたことを報告。仏政府側の意見として、「日産の経営統合に向けた歩みが確かでない以上、(日産の要求は)ルノーにとってあまりに大きな犠牲を払うことになる」と反発があった様子を伝えている。5月21日に別の日産幹部がゴーン前会長や西川広人社長に送ったメールには、経産省が準備したという「覚書案」が添付され、そこには「両社のアライアンス(提携)強化は、日産の経営自主性を尊重することによってなされること」などと、日産の懸念に沿って、統合を阻むような文言が並んでいた。ただ、この幹部は同じメールの中で「日本政府の支持はありがたいが、これは民間企業の問題だ」とも指摘。経産省の関与を必ずしも歓迎していなかったという。両社の関係をめぐっては安倍晋三首相が18年12月、マクロン仏大統領と会談した際に「民間の当事者で決めていくもので、政府が関与するものではない」との考えを伝えていた。

*10-2:https://www.kochinews.co.jp/article/269288/ (高知新聞 2019.4.14) 【日本の液晶消滅】国策再編の検証が必要だ
 国内電機産業の衰退を改めて印象付ける出来事だ。中小型液晶パネル大手、ジャパンディスプレイ(JDI)が中国と台湾の企業連合の傘下に入る。JDIは日立製作所、東芝、ソニーの事業を統合した「日の丸液晶連合」。これにより日本の液晶産業は事実上消滅することになる。日の丸連合の立ち上げを主導したのは経済産業省だ。その見通しの甘さも問われかねない頓挫である。2012年に発足したJDIは、中小型液晶の出荷額で世界首位となった。ところが海外勢との価格競争が激化。主要顧客の米アップル社の需要低迷も響いた。液晶より薄く画質が鮮明な有機ELの開発も後手に回り、業績は急速に悪化。19年3月期まで5年連続の連結最終赤字となる見込みだ。この間、経産省の意を受けた官民ファンドの産業革新機構(現INCJ)が出資や融資などで計約4千億円を支援してきた。さらに支援を続ければ、本来淘汰(とうた)されるべき「ゾンビ企業」の救済と批判されよう。一方で税金も投入されている以上、破綻させれば国民負担の議論は避けられなくなる。海外へ日本の技術が流出する恐れがあるにしても、外資による再建に委ねるのはやむを得ない。かつて日本企業が世界市場をけん引したテレビやパソコンも、現在は韓国や中国などのメーカーが上位を占めている。産業界に「栄枯盛衰」はつきものだ。ただしそれとは別に、日の丸連合によって液晶産業を再興しようとした官製シナリオはなぜ狂ったのか。そこはきちんと検証しなければならない。JDIは3社の寄り合い所帯であることから内部で主導権争いが起きたり、課題を先送りにしたりする経営体質が問題視されていた。「政府の関与によって意思決定が遅れるなど、経営が振り回された面もある」といった指摘もある。実際、JDI同様の「国策再編」は失敗続きだ。公的資金を投入した半導体大手のエルピーダメモリは12年に破綻し、外資傘下となった。エルピーダも三菱電機、NEC、日立の事業の寄せ集めだった。同じ3社の半導体部門を統合したルネサスエレクトロニクスも13年に産業革新機構が出資。こちらも人員削減や工場閉鎖を重ねるなど苦戦している。こうした事例が今後もなくならなければ、国の産業政策の失敗を指摘する声はますます強まるだろう。現在のINCJも経営陣の報酬水準を巡って政府と対立し事実上、機能停止に陥っている状態だ。組織を立て直すのであれば官民ファンドの在り方や政府の関与の度合いなど、根本的な議論が欠かせない。日本の電機産業の復権は喫緊の課題だ。なぜ世界市場で埋没してしまったのか。ニーズを見極めることができていたか。顧客ファーストの原点に戻って考える必要がある。

| 司法の問題点::2014.3~ | 07:20 PM | comments (x) | trackback (x) |
2019.3.31 消費税と教育や社会保障をひも付きにしている国は、日本以外にないこと (2019年4月1、2、3、4、5日に追加あり)
   
 2018.5.26日経新聞                   2019.1.6毎日新聞

(図の説明:左図のように、2019年10月から3歳以上の子がいる世帯と0~2歳の子がいる住民税非課税世帯の幼児教育・保育料が無償化されることになった。また、中央の図のように、高等教育への進学率も上がっているが、現在は公立も授業料が高すぎるという問題がある。そのため、世帯年収380万円未満の学生を対象に高等教育も無償化することになったのは一歩前進だが、それだけでは足りない。そのような中、右図のように、日本の財政は世界最悪であるとして消費税増税が声高に叫ばれているが、日本の財政は消費税が導入された後に悪化したのであり、消費税は解決策ではない。根本的には、複式簿記による公会計制度を国にも導入し、国民が予算の使い方を速やかにチェックして正確な対応策を出せるようにすべきだと考える)

(1)教育は投資である
1)幼児教育・保育の無償化について
 1953年にWatsonとCrickがDNAの二重らせん構造を発見し、生物学が科学としてかなり系統的に説明できるようになり、私が東大理科2類の教養過程でノーベル賞候補と言われた教授から習ったことまでが、現在の高校生物学にはさらりと包含されるようになった。それは、生命科学の原理が多くの人の常識となり、物事の考え方の基本として定着すると言う意味で良いことなのだが、高校生は消化するのに苦労するだろう。

 しかし、生物学だけではなく、(宇宙・地球・生物・人類の)歴史で新しく解明された事実も増え、国際化で英語や他の外国語の重要性も増し、音楽・ダンス・スポーツ等の授業も充実できるようになると、生徒がこれまでと同じ授業時間数でこれらを消化するのは本当に困難になる。そのため、無理なく面白く身につけられるために、私は小学校の入学年齢を3歳にして、語学はじめ前倒しできる科目はできるだけ前倒しして教えるのがよいと考える。

 そのような中、*1-1のように、消費税率が10%になる2019年10月から、「①増収分を財源に幼児教育・保育の無償化を実施する」「②高齢者向けに偏った社会保障を見直して子育て中の現役世代に財源を回し、全世代型社会保障に転換する」として、3~5歳児を持つ全世帯の幼児教育・保育の無償化が行われることになったが、それに対して、*1-2のように、「③無償化の恩恵が比較的所得の高い世帯に偏る」「④その前に誰でも希望の保育園に入れるようにして、待機児童を無くして欲しい」「⑤無償化はそれほど急ぐべき政策か」という反対がある。

 私は、①②については、景気対策という名目で山ほど無駄遣いしながら、福祉財源は消費税でなければならないと説明している点は誤りであるものの、「教育・保育の無償化」は小学校の入学年齢を3歳にする前段階としてGoodだと思う。しかし、厚労省が作った政策らしく、厚労省所管の範囲内(現役世代と高齢者福祉)でのゼロサムゲームにしている点で発想が小さく、理念を欠いている。なお、高齢者は既に物価高・低金利・消費税増税に加え、年金・医療・介護の負担増・給付減で生きていけるか否かというぎりぎりの生活を強いられている人が多いため、次世代のためなら高齢者を犠牲にしてもよいという理屈は成立しない。

 また、③については、必ず「所得の高い世帯に恩恵があってはいけない」かのような反対論が出るが、所得税・相続税で累進課税にし、社会保険料の掛金も所得に応じて差を付けることによって、所得の再配分は終わっているため、受けるサービスの値段まで所得で変えれば、その所得を境に可処分所得に逆転が生じる。さらに、市場主義経済では、交通費や食品の価格を買う人の所得に応じて変えてはいけないのと同様、保育料・授業料・医療費・介護費などのサービスの値段も、所得に応じて変えると経済を歪めるのである。

 なお、④⑤については、安倍首相が「無償化と待機児童解消は二者択一ではない。どちらも優先的に取り組む」とされており、私もそれがよいと思うし、首相がそう言っておられるのだからできるだろう。さらに、地方には保育所の待機児童はいない自治体もあり、保育所の待機児童は都市に人口を集中させ過ぎた結果として出ている面があるため、都市計画・産業の再配置・教育システム改革などを含めた複数の改革で待機児童問題を解決した方が効果的だ。そのため、日本の将来像を正確に描いて、それに向かって進んだ方が無駄のない変革ができると考える。

2)高等教育の無償化について
 *1-1は、2020年4月から「⑥世帯年収の目安が380万円未満の低所得世帯の学生を対象として大学等の高等教育も無償化する」「⑦高等教育無償化の柱は、授業料減免と給付型奨学金の拡充」「⑧生活費を補助する給付型奨学金も用意する」「⑨学業成績が悪い場合は支援を打ち切る」とされており、⑥以外は妥当だと思う。

 ⑥については、世帯年収が380万円以上であっても、複数の子を大学にやるには学費も生活費も高すぎる上、女子学生の場合は低所得でなくても親の反対に合って希望の大学に行けないケースがあるため、親の世帯年収は参考資料の一つに留めるべきだ。

 東大の場合は、女子生徒が保護者に反対されても東大受験を躊躇しなくてすむように、女子の同窓会である「さつき会」が、会員からの寄付を元手として受験前に奨学金対象者を選抜し、合格を条件として奨学金を支給している。しかし、個人会員からの寄付だけでは支給できる金額も支給対象人数も限られるので、国・地方自治体・企業などの取り組みが望まれるわけである。

3)教育が投資である理由
 *1-3に書かれているとおり、「子どもの貧困」は世代を超えた貧困の連鎖を生むとともに、未来の労働力の質を低下させるため、まず公立学校の授業料は安くするとともに、公立学校に通っても受験に不利にならないような教師陣や教育内容の充実が不可欠だ。

 また、学童保育等の「子どもの居場所設置」や「学習支援」も不可欠で、親から子への虐待を防ぐためにも、母親が働いていなくても保育園に預けられたり、親が病気や出産などで子の世話ができない場合には介護制度を利用したりできるよう、既存の制度を改善することが必要だ。そのほか、「労働環境の改善」などの社会全体での雇用の質を底上げすることも重要である。

 一方で、政府は、*1-4のように、AIを使いこなす人材を年間25万人育てる新目標を掲げ、文系・理系を問わず全大学生にAIの初級教育を受けさせることを大学に要請し、社会人向けの専門課程も大学に設置するそうだ。私は、ビッグデータ等として個人のデータを黙って収集するのは人権侵害だと思うが、AIやITなどによるイノベーションは不可欠であるため、幅広い人材が使いこなせるよう、98.8%の人が進学する高校までに基礎を教えておくのがよいと考える。

 このように、産業を維持・発展させるためには、教育を受けた良質の労働力が必要であるため、教育は福祉ではなく投資の性格も持っており、(単なる景気対策のための支出は削って)一般会計から堂々と支出すればよいだろう。

(2)消費税増税について
1)消費税増税の是非について
 「①消費税はヨーロッパで課されている税制」「②税のバランスが大切」「③消費税は安定財源」等と説明されることが多いが、①については、ヨーロッパで課されるのは、企業に対する付加価値税であり、必ず消費者に転嫁しなければならないとする消費税を課しているのは世界中で日本だけである。また、消費税は消費に対するペナルティーとして働く。そして、ヨーロッパで付加価値税を課している理由は、法人税や所得税の徴収率が悪いからだと言われており、付加価値税の徴収には完全なインボイス方式を採用して正確な計算を行っている。

 ②については、法人税や所得税の徴収率が日本と同様によい米国は、国としては付加価値税を課しておらず、州のみが課しているため、税率は州によって異なる。私は、個人に対して所得税を課した上、所得に応じて増える社会保険料を課し、さらに消費税を課すのは同じ所得に対する三重課税であり、これに加えて保育サービス等を提供する場合にも所得によって対価が異なれば四重課税になると考える(参考:企業の場合は二重課税も排除している)。

 さらに、③については、所得税は景気が良くなれば増え、景気が悪くなれば減るため、自動的に景気を調整するビルト・イン・スタビライザーの機能を持っているが、消費税はそうでないため財源が安定しているのであり、負担力主義で税を支払うという原則に照らせば、消費税財源の安定性は短所なのである。

 しかし、*2-1・*2-2のように、メディアは消費税増税がよいことであるかのように大々的に宣伝し、消費税増税に反対する市民や政治家を「ポピュリズム」「ポピュリスト」と呼んで馬鹿にしている。「何故、そういうことが言えるのか」については、そういうことを言う人が経済・税法・家計のことをあまりわかっておらず、アンプの役割を果たしている財務省の言うことを、スピーカーのように拡散しているだけだからである。従って、多くの市民の方が、彼らを馬鹿にしている人よりも、肌で感じる真実に気が付いているわけだ。

 実は、消費税増税は財務省の政策であり、財務省は自らの政策実現のために、メンツをかけてメディア対策も行っている。ただし、財務省は財務省の権限内で物事を解決しようとしがちで、全貌を見渡してよりよい方法を考えているわけではない。本当は、全貌を見渡して省庁横断でよりよい政策を考えるのが政治の役割なのだが、政治家にも経済・税法・家計の関連がよくわかっている人が少なく、財務省より弱いわけである。

 その財務省は、「消費税率の引き上げによる安定的な財源がどうしても必要だ」と主張しており、安倍首相もそう言っておられる。しかし、辺野古の新基地造成を止めて離島の空港を使ったり、莫大な原発補助金や農業補助金を止めて自然エネルギーとEVに変えたり、海底資源や国有林等の国有資源を有効に使うよう速やかにアレンジしたりすれば、消費税増税を行って「個人消費が減るから(物価が上がるため当然なのである)」などとして、一時的なポイント還元やプレミアム商品券配布のため消費税1%分の約2兆円を使う必要はない上、次の時代に向けてのイノベーションを進めることもできるのだ。

 つまり、「日本の国の借金はGDPの2倍超と先進国最悪の水準」というのは事実だが、「増税が延期されれば財政健全化の道は遠くなり、将来世代へのツケが重くなる」というのは、消費税増税のための理屈付けにすぎない。しかし、財務省は、既に税率引き上げの準備を完了しているため、この説明を押し通して変更することはないだろう。

2)軽減税率について
 私は、消費税そのものにも消費税増税にも反対だが、消費税増税を行うとすれば、逆進性を緩和するために軽減税率は必要だと考える。これに対して、*2-3-1・*2-3-2・*2-3-3のように、軽減税率対象の線引きのみがマニアックに議論されているが、これは小売店の工夫次第で解決できる。

 例えば、*2-4のように、課税後の価格を同じに設定し、持ち帰りの場合は包装代金を取る方法もあるし、店の外に休憩スペースを作って椅子や自動販売機を置いておき、そこで食べるのは持ち帰りと判定してもよいわけだ。しかし、共働き社会・高齢化社会で、外食を贅沢として増税対象とするのは、確かに現実に合っていない。

3)ポイント還元について
 2019年10月の消費税増税と同時に始めるキャッシュレス決済のポイント還元制度は、*2-5のように、消費者がICカード等で支払えば中小の小売店・飲食店なら5%、コンビニ等のチェーン店なら2%のポイントがもらえ、割引や割引分を銀行口座等に振り込む方法も認められて、その対象金額には上限がつき、還元方法・上限は決済事業者ごとに決まるという、複雑な上に公正性の感じられない恣意的なものだ(税法の基本は「公正」「中立」「簡素」)。

 また、増税後に消費の底上げさえすればよいというのは消費者を食い物にしており、中国や韓国でキャッシュレス化が進んでいるからといって日本の全店でキャッシュレス化を推進する必要もなく、スマホですべてができるようになればスマホを落としたら万事休すであり、リスクは分散するのが基本なのである。

4)消費税に関するその他の重要な論点
 消費税は、医療費を非課税にしており、非課税収入に対する仕入れにかかる消費税はどこにも転嫁できずに病院や診療所の負担となるため、今でも苦しい病院や診療所の中には、消費税増税後に赤字となって、耐え切れずに倒産する経営体も出ると言われている。

 そもそも、「医療費は非課税にせず、0税率にすればよいだろう」というのが、消費税導入当初からの税務専門家の意見であり、私もそう考える。

・・参考資料・・
<教育は投資である>
*1-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190329&ng=DGKKZO43038560Y9A320C1M10600 (日経新聞 2019年3月29日) 幼児教育・保育を無償化 300万人が対象に
 消費税率が10%になる10月から、増税の増収分を財源に幼児教育・保育の無償化が実施される。高齢者向けに偏った社会保障を見直し、子育て中の現役世代に回すもので、「全世代型社会保障」への転換を掲げる安倍政権の目玉施策となる。2020年4月からは低所得世帯の学生を対象として、大学などの高等教育も無償化される。幼児教育・保育の無償化は、3~5歳児は原則として全世帯が対象だ。幼稚園や認定こども園、地域型保育などが全額無料になり、0~2歳児は住民税が非課税の低所得世帯が対象になる。認可外の保育施設は0~2歳児が月4万2千円、3~5歳児は月3万7千円を上限に利用料が補助される。約300万人の子供が対象になる見通しで、費用は年間7764億円を見込み国と都道府県、市町村で分担する。ただ、無償化をきっかけとして利用希望者が大幅に増えれば、保育施設や保育士の不足に拍車がかかる懸念がある。20年4月から実施する高等教育の無償化は、授業料の減免と給付型奨学金の拡充の2つが柱になる。対象は世帯年収の目安が380万円未満の層で、年収によって支援金額が異なる。20年4月の新入生だけでなく在校生も利用できる。授業料減免の上限は国公立大が年間54万円、私立大が同70万円など。学生が学業に専念できるよう生活費も補助する給付型奨学金も用意する。金額は国公立の自宅生が年間35万円、私立大に自宅外から通う学生は同91万円など。低所得世帯の進学率が8割まで上がった場合の費用は年約7600億円で、最大70万人ほどが対象になる見通し。学業成績が悪い場合は支援を打ち切るほか、経営難の大学は対象から外す。

*1-2:https://digital.asahi.com/articles/DA3S13947484.html (朝日新聞社説 2019年3月24日) 幼保無償化 政策の優先度見極めを
 10月から幼児教育・保育を無償化するための子ども・子育て支援法改正案が、衆院内閣委員会で審議中だ。子どものための予算を増やすことには、野党も反対していない。だが、2年前の衆院解散・総選挙で安倍首相が唐突に打ち出した無償化には、疑問や懸念が尽きない。政策の優先度をしっかり見極めるべきだ。多くの野党が批判するのは、無償化の恩恵が比較的所得の高い世帯に偏る点だ。例えば認可保育園の無償化に必要な4650億円のうち約半分は年収640万円以上の世帯に使われ、住民税非課税世帯に使われるのは1%程度だ。認可施設の保育料は所得に応じた負担になっているためだ。政府は、これまでの負担軽減分も合わせれば「高所得者優遇」ではないと反論する。しかし問われているのは、やるべき多くの政策の中で、無償化はそれほど急ぐべきものか、ということだ。子育てにかかる費用の軽減はありがたい。でもその前に、誰でも希望の保育園に入れるようにしてほしい。そんな声は、今年も各地に広がる。待機児童が多い自治体などを対象にした朝日新聞の調査でも、4月の入園に向け認可施設に申し込んだのに1次選考から漏れた人は4人に1人。前年からほとんど改善していない。首相は「無償化と待機児童解消は二者択一ではない。どちらも優先的に取り組む」として、保育の受け皿を今後32万人分増やすとアピールしている。だが、この計画は無償化の方針が出る前のものだ。潜在的な需要も見込んで、計画を作り直すべきだ。国の指導監督基準を満たさない認可外施設やベビーシッターの扱いも揺れている。希望しても認可保育園に入れない人への配慮から、国は5年間、無償化の対象にするとしていたが、「安全面が心配」との自治体側の反発を受け、条例で独自に対象外にできるようにした。あまりに泥縄の対応だ。消費増税を決めた12年の「税と社会保障の一体改革」では、保育士の処遇改善や職員の配置を手厚くするなどの「質の向上」を約束したが、それも置き去りのままだ。子どものための政策分野では、虐待防止のための児童相談所の体制強化や子どもの貧困対策など、予算の拡充が必要なものが多い。限りある予算をどう効果的に使うのか。無償化ありきでない、建設的な議論が必要だ。

*1-3:https://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-895577.html (琉球新報社説 2019年3月29日) 県民意識調査 子の貧困解消に全力を
 沖縄戦で焦土と化し、無から復興せざるを得なかった沖縄社会が抱え続ける課題を今、克服しなければならない。県民の強い決意にも思える。県が昨夏、実施した第10回県民意識調査で、県が取り組むべき施策として「子どもの貧困対策の推進」を挙げた人が42%に上り、最多となった。子育て世代の生活の厳しさと、育児環境の整備に県民が強い関心を寄せている表れだ。世代を超え連鎖した貧困を断ち切り、未来を担う子どもを育む必要がある。調査は県民の価値観やニーズを捉えて県政運営に生かそうと、3~5年ごとに実施される。今回、県が重点施策の選択肢に初めて「子どもの貧困対策の推進」を入れたところ、過去3回の調査で1位だった「米軍基地問題の解決促進」の26%を抑え、最も多かった。行政が特に力を入れるべきこととして「子どもの居場所の設置」37%、「学習支援」36%の二つが3割を超えた。貧困により孤独や学習不足に陥らないよう、子どもに寄り添う支援が求められている。次いで「ひとり親家庭への支援」29%、「労働環境の改善」28%と、経済的な支援策を求める意見が続いた。行政以外に期待する役割は「企業による雇用促進」が48%と5割に近く、「労働関係団体による労働条件改善に向けた取り組み」39%と、保護者の就労関連が上位となった。社会全体で雇用の質の底上げを図らねばならない。暮らし向きが「良くなった」が3年前の前回調査より3・5ポイント上がった23・2%で、好況の実感が見られるとはいうものの、自らの生活を「中の下」「下」とした人は34%に及び、全国の25%を上回っている。県民が望む施策の2番目に挙げられた「基地問題の解決促進」だが、全国の米軍専用施設の7割が沖縄に集中する状況に、66%が「差別的だ」と感じている。沖縄の負担軽減が進まない状況に「差別」を見る人は依然として多い。離島住民対象の調査では8割が島に誇りを感じ、7割超が「島に生まれて良かった」と答え、強い愛着がうかがえる。一方34%が、20年先に今より発展し、輝いているとは「思わない」と不安視する。施策要望の生活必需品の価格や島外へ出る際の交通費、ガソリン価格の安定への対応も求められる。県民の要望は次世代育成や生活の質の向上、基地問題の解決に向けられている。国、県、市町村は生活に根差した県民の不安に耳を傾け、子どもの貧困の解消、非正規雇用の多い雇用環境の改善、真の基地負担軽減に取り組んでほしい。意識調査では85%が「幸せ」と感じ、82%が沖縄に生まれて「良かった」と回答している。幸福感をより多くの人に広げるためにも、私たちにもゆいまーるの助け合いの心が求められる。

*1-4:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190327&ng=DGKKZO42932250W9A320C1MM0000 (日経新聞 2019年3月27日) AI人材、年25万人育成、政府戦略、全大学生に初級教育
 政府が策定する「AI戦略」の全容が分かった。人工知能(AI)を使いこなす人材を年間25万人育てる新目標を掲げる。文系や理系を問わず全大学生がAIの初級教育を受けるよう大学に要請し、社会人向けの専門課程も大学に設置する。ビッグデータやロボットなど先端技術の急速な発達で、AI人材の不足が深刻化している。日本の競争力強化に向け、政府が旗振り役を担う。政府の統合イノベーション戦略推進会議(議長・菅義偉官房長官)で29日に公表する。あらゆるモノがネットにつながる「IoT」の普及やビッグデータの活用に伴い、AIを必要とする事業は、IT業界にとどまらず様々な分野に広がっている。高度な専門技術者に加え、今後は幅広い人材がAIの基礎知識を持っていなければ、競争力ある製品の開発や事業展開は難しい。一方、急速な実用化の速度に、大学や企業の人材育成は追いついていない。大学のAI教育の規模はまだ小さく、政府の調べでは修士課程を修了する人材は東大や京大、早大などの11大学で年間900人弱。全国でも2800人程度にとどまる。一般学生への対応はさらに遅れており、経済産業省によると、AIなどのIT知識を持つ人材は日本の産業界で2020年末には約30万人不足していると試算する。政府は今の教育制度では十分に対応ができないとみて体制づくりに乗り出す。様々な分野で活躍する人材が「ディープラーニング(深層学習)」の仕組みやAIを使ったデータ分析のやり方といった基礎知識を持てるようにし、日本の産業競争力の底上げを図る。目玉に据えるのが高等教育へのAI教育の導入だ。年間1学年あたり約60万人いる全大学生や高等専門学校(高専)生に初級水準のAI教育を課す。最低限のプログラミングの仕組みを知り、AIの倫理を理解することを求める。受講した学生には水準に応じた修了証を発行し、就職活動などに生かしやすくする。そのうち25万人は、さらに専門的な知識を持つAI人材として育成する。初級水準の習得に加え「ディープラーニング」を体系的に学び、機械学習のアルゴリズムの理解ができることを想定する。「AIと経済学」や「データサイエンスと心理学」など文系と理系の垣根を問わずAIを活用できるよう教育を進める。現状、4年制大学では各学年文系が42万人、理工系が12万人、保健系が6万人いる。このうち理工系と保健系を合わせた18万人に加え、文系の15%程度にあたる7万人がAI人材となる想定だ。社会人の学び直しもテコ入れする。22年までに大学に専門コースを設置し、政府が費用の一部を支援する。年間2000人を教育する目標だ。AIの活用に必要な「ディープラーニング」などの習得を目指す。教員については、まずはAI分野で修士課程や博士課程を終えた人材の協力を求めながら、将来の人員増に向けて育成する。処遇などの詳細は今回の政府の戦略を示した後に具体的に検討する。政府は大学側に一連の改革案を順次、カリキュラムに反映するよう求める。企業にはインターンシップなどを通じてAIの技能を持つ学生の受け入れ環境を整えるよう促す。企業側がAI技能を持った学生を高待遇で受け入れるようになれば、大学側も積極的に教育課程に反映していくことが見込まれる。

<消費税増税>
*2-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190329&ng=DGKKZO43038360Y9A320C1M10600 (日経新聞 2019年3月29日) 10月の消費増税まで半年 何が変わる? 消費急変回避へ全力 首相「三度目の正直」へ
 2019年10月に予定する消費税率10%への引き上げまで残り半年となった。安倍晋三首相はこれまで2度にわたり10%への増税を見送ったが、手厚い消費下支え策で「三度目の正直」を目指す。少子高齢化が急速に進み、財政再建は待ったなし。中国など海外経済に陰りが見える中で、国内経済への悪影響を抑えられるかが焦点だ。「消費税率の引き上げによる安定的な財源がどうしても必要だ」。1月末、衆参両院での施政方針演説で、首相はこう述べ、理解を求めた。首相は14年に消費税率を8%に引き上げた後は、同年11月と16年6月に増税延期を表明してきた。だが、政権中枢では「今回は予定通り実施する」との見方が支配的だ。背景には増税が「安倍カラー」を強く帯びてきたことがある。12年6月、当時与党の民主党と、野党だった自民党、公明党の3党合意では消費税の増税分を社会保障に限っていた。首相はこれを変更し、税収の使い道を教育などに拡大。幼児教育の無償化などは10月から始まる予定で、延期すれば自身への批判にもつながりかねない。増税対策も積み増した。14年の消費増税時は個人消費が急減し、その後も景気低迷が長引いた。この反省を踏まえ、住宅・車の購入支援策に加え、キャッシュレス決済した場合のポイント還元、低所得者層へのプレミアム商品券など約2兆円の対策をまとめた。増税対策費用などを計上した2019年度予算案が27日に国会で成立したことで、住宅・保育など民間の活動は動き出しつつある。財務省幹部は「増税への条件は整った。後戻りするコストの方が大きい」と話す。消費税率10%への引き上げによる増収は政府による最新の見積もりでは年約5.7兆円。首相は約1.7兆円を教育・子育てなどに回し、半分を借金の返済に回す考え。残るリスクは海外景気だ。米中貿易戦争などの影響で中国景気は減速感が強まる。内閣府が3月に公表した景気動向指数は3カ月連続で低下した。首相は「リーマン・ショック級の事態が起きない限り予定通り増税する」と繰り返す。政権内でも「金融機能の破綻や東日本大震災並みの災害がなければ引き上げる」との意見が強い。ただ7月に予定される参院選をにらみ、景気動向を慎重に見極める動きは続きそうだ。日本の国の借金は国内総生産(GDP)の2倍超と先進国で最悪の水準。国と地方の基礎的財政収支(プライマリーバランス)の黒字化は、すでに25年度に先送りされている。増税が延期されれば、さらに財政健全化の道は遠くなり、将来世代へのツケが重くなる。

*2-2:https://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201901/CK2019010302000121.html (東京新聞 2019年1月3日) <こう動く2019日本>(2)消費税増税 3度目の延期 否定できず
 消費税は十月一日から、税率が10%に上がる。政府は経済危機や大災害が起こらない限り、予定通り増税すると説明するが、安倍晋三首相はかつて、増税による景気の冷え込みを懸念して、引き上げ時期を二度延期した。世界経済の悪化で日本の成長が大きく鈍るなら「二度あることは三度ある」というシナリオも否定はできない。今月召集の通常国会へ提出される二〇一九年度予算案には、消費税率引き上げによる増収を活用した幼児教育・保育無償化や社会保障の充実策などが盛り込まれた。さらに、キャッシュレス決済時のポイント還元や低所得者ら向けのプレミアム商品券発行など、景気の下支え対策としても二兆円超を計上。価格が高い車や住宅の購入を中心とした減税策も加えれば、一連の対策の規模は、増税による家計の実質的な負担増二兆二千億円を上回る。政府が増税に向けて手厚い支援を講じるのは、一四年四月に税率を5%から8%に上げた際のトラウマ(心的外傷)が残っているためだ。当時、大規模な経済対策を組んだものの、いったん冷え込んだ個人消費はなかなか回復しなかった。「財務省は景気が落ち込むのは一・四半期だけと言っていたが、実際には長引いた」(政府高官)と官邸の不興を買ったことも、税収増を相殺するほどの大盤振る舞いにつながった。消費税増税を織り込み、当初段階で初めて百兆円を超えた予算案と税制改正大綱が閣議決定されたことから、財務省では今のところ、「税率引き上げのプロセスが進んでいる」(岡本薫明次官)という見方が支配的だ。しかし、三たびの延期が完全にないとは言えない。昨年末にかけ日米の株価が急落。米中の貿易摩擦や英国の欧州連合(EU)離脱の行方など、日本経済に影響を及ぼす海外景気の不安材料が今年も多いからだ。 首相は景気重視を鮮明にしている上、「消費税率10%への引き上げを決めた一二年の民主、自民、公明の三党合意にかかわっておらず、(消費税への)こだわりが小さい」(財務省幹部)とされ、増税からの方針転換も抵抗なく決断できるとみられている。一方、三度目の正直で増税するとしても、景気の動向によっては追加の財政支出が浮上する可能性はある。夏の参院選を控え、首相が「バラマキ」の誘惑に打ち勝つことは容易でない。

*2-3-1:https://digital.asahi.com/articles/ASLDK51VQLDKULFA01C.html (朝日新聞 2018年12月21日) 飲料水やケータリングは何%? 難しい軽減税率を解説
 来年10月から消費税率がいまの8%から10%に上がり、同時に飲食料品などの税率を8%に据え置く軽減税率も導入される。増税の影響を和らげるため、来年度予算案には総額2兆280億円の臨時の対策が盛り込まれた。5年半ぶりとなる消費増税で、私たちの暮らしにはどのような影響があるだろうか。
●軽減税率のわかりにくい線引き
 消費増税にあわせて、初めて導入される軽減税率は、消費税率が10%に引き上げられた後も、酒類や外食を除く飲食料品と、週2回以上発行され、定期購読されている新聞の税率を8%に据え置く。生活に欠かせない飲食料品を中心に税率を抑えることで、低所得者の負担を軽くするねらいがある。お金持ちも低所得者も一律にかかる消費税は、低所得者ほど負担が重いとされているからだ。しかし、ひとくちに「飲食料品」と言っても、日々の買い物ではどちらの税率が適用されるのかがわかりにくいものもある。例えばみりん。アルコール分が1%以上の本みりんや料理酒は酒税法上の「酒類」に該当するため、軽減税率は適用されず、税率は10%となる。ところが、同じ棚に並んでいても、アルコール分が1%未満の「みりん風調味料」は軽減対象となり、税率は8%だ。このほか、飲料用のミネラルウォーターは軽減税率の対象だが、水道水は風呂や洗濯といった生活用水としても使われるため、飲食料品とみなされず、税率は10%になる。軽減税率の対象外となる外食の範囲も線引きが難しい。原則として、事業者がいすやテーブルなどの飲食設備のある場所で客に飲食させた場合は「外食」となり、税率は10%。例えば、コンビニエンスストアで弁当を買い、店内のイートインコーナーで食べる場合は、外食扱いだ。一方、買った弁当を客が持ち帰り、自宅で食べる場合は8%となる。レジで会計する際、従業員から店内で食べるのか、持ち帰って食べるのかを聞かれる場面が出てきそうだ。外食と同様、客が指定した場所で料理を温めたり、配膳したりする「ケータリング」も軽減税率の対象外だ。企業がパーティーなどでケータリングサービスを頼む場合は、税率は10%となる。ただ、同じケータリングでも、有料老人ホームで入居者に提供される食事や学校給食など、それ以外の方法で食事をとることが難しい場合には、8%が適用される。このほか、ピザやそばなどを出前で取った場合は単なる飲食料品の販売とみなされ、8%が適用される。こうした複数の税率に対応するため、事業者側はレジの改修などが必要になるが、対応は遅れている。導入後、店頭で混乱が生じる可能性がある。
●プレミアム商品券で低所得者へ支援
 軽減税率に加えて実施する低所得者対策が「プレミアム商品券」だ。市区町村が売り出す商品券を購入すると、購入額より25%高い商品と換えられる。購入額との差額の上乗せ分(プレミアム分)の費用を、国が負担する仕組みだ。低所得者への支援策のため、商品券を買えるのは、住民税の非課税世帯と0~2歳児がいる子育て世帯に限る。世帯内の人数(子育て世帯はこどもの人数)1人あたり2万円(2万5千円分)まで買える。1枚ごとの商品券の価格は自治体が決めるが、政府は400円(500円分)を想定している。この場合、最大50枚まで買える計算だ。使えるお店は原則、商品券を発行した地方自治体の中の小売店で、使用期限は増税後から2020年3月末までの半年間とする。政府は15年にも前回の消費増税の対策として同様の商品券を発行したが、消費の押し上げ効果は限定的だったとの指摘もある。
●税金の使い道は
 消費税率の10%への引き上げは2012年、旧民主党、自民党、公明党による3党合意で決まった。14年4月にいったん8%に引き上げた後、もともとは15年10月に10%にする予定だったが、2度にわたって延期に。来年10月の増税は5年6カ月ぶりとなる。2%分の増税で、消費税の税収は5・7兆円増える見込みだ。3党合意ではこの増収分の使い道を社会保障に限り、5分の4を既存の社会保障費の財源に充てて国の借金を減らすことに使い、残りを社会保障の充実に充てるとしていた。ところが、安倍晋三首相は昨年、この使い道を変更。一部を教育無償化などに使うことを決めた。この結果、借金減らしに充てられる額は増収分の半分の2・8兆円程度に。安倍首相が打ち出した教育無償化などには、1・7兆円程度が使われることになった。幼児教育の無償化は来年10月1日から実施予定で、幼稚園や認可保育所、認定こども園に通う3~5歳児の利用料が原則無料になる。0~2歳児は住民税の非課税世帯が無償化の対象になる。これにより、待機児童が増える可能性もあるため、同時に保育の受け皿づくりを加速。保育士の処遇改善も進める。20年4月からは大学や短期大学、専門学校などの高等教育について、住民税非課税世帯を対象に入学金・授業料を減免。生活費は返還の必要がない給付型奨学金で賄えるようにする。非課税世帯だけでなく、年収380万円未満の世帯も2段階に分けて支援する。増税分の使途変更前から決まっていた措置として、低所得の高齢者向けの支援も拡充する。住民税非課税世帯で、年金を含む所得が老齢基礎年金の満額以下の高齢者に対し、年金保険料の納付期間に応じて月最大5千円を支給。この措置によって、保険料の納付期間が短い人の方が優遇されることにならないよう、一定の所得以下の人にも補足的に給付金を支給する。所得が低い65歳以上の高齢者を対象に、部分的に実施されてきた介護保険料軽減策の拡充をさらに進める。1人あたりの平均で月約1千円が軽減される。また、人材不足となっているベテラン介護福祉士の賃金も大幅に引き上げる。政府はこうした施策により、増税による増収分の半分を「国民に還元する」とアピール。増税への反発を和らげるねらいもある。

*2-3-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190329&ng=DGKKZO43038410Y9A320C1M10600 (日経新聞 2019年3月29日) 軽減税率で対応急ぐ 飲食料品8% 外食10%
 消費増税では新たに軽減税率制度が導入される。日々の生活に欠かせない飲食料品(お酒や医薬品は除く)と定期購読の新聞に限り消費税率を今のまま8%に据え置く。低所得者の負担増に配慮するためだが、店頭では8%と10%の商品が混在することになる。小売店の担当者や消費者が判断に迷うケースが出てくる恐れもある。お酒や雑貨も売るスーパーやコンビニエンスストアなどの小売店の現場は、対策としてレジや受発注システムなどの改修に動き出している。軽減税率は企業間の取引にも適用されるため、商社の食糧部門なども取引先との契約書の見直しなどの対応に動いている。商品が8%か10%かを見極めて分類をする必要があるが、線引きに迷うものもある。例えばアルコール度数が1度以上の「みりん」はお酒なので10%だが、それより度数が低い「みりん風調味料」は8%になる。ドリンク剤なども医薬部外品なら10%だが、清涼飲料水であれば8%になる。軽減税率は「外食」は対象外で、レストランで食事をすれば10%のままだ。スーパーのイートインコーナーなどの場合は、同じ商品でも「持ち帰り」の場合は8%になるが、店内で食べれば10%と税率が変わる。自分が指定した場所でサービスを受けるケースも外食と同じ扱いになる。例えば肉の専門店のスタッフにパーティー会場まで肉を運んで焼いてもらった場合は10%だ。価格表示の仕方はばらつきが出そうだ。日本経済新聞社が大手23社を対象に2018年12月にまとめたアンケートでは、4割が持ち帰りも店内飲食も同一の税込み価格で表示すると回答した。一方、日本KFCホールディングスのように2通りの税込み価格表示を検討しているケースもある。

*2-3-3:https://www.nikkei.com/paper/related-article/tc/?b=20190329&bu=BFBD9496EABAB5・・ (日経新聞 2019年3月29日) 軽減税率 適用対象か否か周知急ぐ
 消費税率を8%から10%に引き上げるのに合わせ、飲食料品や定期購読の新聞の税率を8%に据え置く軽減税率制度が導入される。円滑な導入には、小売店や流通に携わる事業者にしっかり準備してもらうことが重要だ。政府は税率を判断するための事例集を公表するなど周知活動を急ぐ。外食や酒、医薬品は「飲食料品」に当たらず税率は10%だ。飲食スペースを持つ小売店やテークアウトができる外食店では、同じ商品でも店内飲食かどうかで異なる税率になる。こうした店や、食品とそれ以外の商品を扱う小売店などでは、2つの税率を打ち分けられるレジの導入や価格表示の見直しが必要になる。顧客とのトラブルを避けるためには従業員向けマニュアルの作成といった対応も欠かせない。政府が10月にとりまとめた飲食料品を扱う事業者への調査によると、レジの改修など準備を始めているとの回答は37%だった。政府は特に、街の青果店といった専門の小売店の対応がカギとみる。軽減税率に対応したレジへ買い替える際の補助金の活用を促すなど、早めの準備を呼びかける。生活に密接に関わる分野なだけに、軽減税率と関係する経済活動は幅広い。一見すると食品には関係のない事業者も帳簿を付ける際などの対応が必要になる。23年10月には、事業者が商品ごとの消費税率を記録するインボイス(税額票)制度が導入される。現在は消費税の納付が免除されている売上高が1千万円以下の事業者も、大企業や中堅企業と取引するためには対応が求められる。軽減税率は生活必需品の税率を抑えて低所得者の負担を軽くする目的だが、高所得者の方が食品への支出額が大きく恩恵があるとの指摘がある。現場からは制度がわかりにくいとの声や、自分は対応が必要なのかどうか分からないといった声もいまだに強い。円滑な実施に向けては、的確な情報発信が急がれる。ペットフード(10%)、自動販売機のジュース(8%)、みりん(10%)――。事業者から相次ぐ疑問に答えるべく、国税庁は軽減税率の適用対象になるかを事例ごとに解説する「Q&A」の改定を重ねてきた。具体的な例を示して判断に役立ててもらう。軽減税率の導入には約1兆円の財源が必要だ。このうち4千億円分は低所得者の医療や介護の負担を軽くする「総合合算制度」の創設を見送った分を充てる。3千億円程度はたばこ増税と給与所得控除の縮小で確保し、残りの3千億円分は免税事業者への課税による増収と社会保障改革の余剰分を充てる方針だ。

*2-4:https://www.nikkei.com/paper/related-article/tc/?b=20190329&bu=BFBD9496EABAB5E6B39・・ (日経新聞 2019年3月29日) 店内・持ち帰り「同価格」も 軽減税率対応 外食大手が検討
 2019年10月の消費増税と同時に導入される軽減税率をめぐり、外食大手の対応が割れる可能性が出てきた。日本経済新聞社が実施したアンケートで、同一商品でも税率が異なる店内飲食と持ち帰りの扱いを聞いたところ、回答企業の4割が同一価格で提供を検討していると答えた。外食チェーンによって対応が異なれば、消費者の混乱を招く恐れもありそうだ。軽減税率は消費税率が10%に引き上げられても、食料品などに限り税率を8%に据え置く制度。外食は軽減対象にはならないため、店内で飲食した場合は10%だが、同じ商品を持ち帰った場合は8%と税率が異なる。例えば本体価格が500円の食事は税込み価格は店内550円、持ち帰り540円となる。ただ、包装代などを加味して持ち帰りの本体価格を510円にすれば税込み価格は550円になり消費者が払う額は同じになる。アンケートは、持ち帰りが一定割合以上あるファストフードやカフェなど外食大手23社に実施し、20社から回答を得た。「店内飲食と持ち帰りで同一価格を導入するか」と聞いたところ、4割にあたる8社が「検討している」と答えた。「導入には消極的」と答えた企業も8社で、「導入しない」は1社だった。姿勢が分かれるものの、現時点では最終的な対応を決めかねているようだ。同一価格を検討する企業に複数回答で理由を聞くと、「消費者にわかりやすい価格体系にするため」(87.5%)が最多で、「店頭で会計作業が煩雑にならないようにするため」「告知や店員の説明を簡潔にするため」が62.5%で続いた。

*2-5:https://digital.asahi.com/articles/DA3S13932271.html (朝日新聞社説 2019年3月14日) ポイント還元 見切り発車するのか
 懸念は解消されないどころか、ふくらむばかりだ。この状況のまま、政府は本当に実行に移すつもりなのか。10月の消費税増税にあわせて始めるキャッシュレス決済でのポイント還元策について、安倍首相は「事業者に混乱が生じないよう、また消費者が安心して購買できるよう、きめ細かな対応を行う」と述べてきた。ところが、制度の細部が明らかになるにつれ、不安は増す。この制度では、消費者がクレジットカードやICカードなどで支払うと、中小の小売店や飲食店では5%相当分、コンビニなどのチェーン店なら2%分のポイントがもらえる。買ったその場での割引や、割引分を銀行口座などに振り込む方法も認められる。不正利用を防ぐために、対象金額には上限がつく。還元方法や上限は、クレジットカード会社といった決済事業者ごとに決まる。消費者は「対象の店はどこか」「還元率は5%か2%か」「自分のカードは使えるか」「ポイントか即時割引か、振り込みか」「上限額はいくらか」を見極めねばならない。こんな複雑なしくみで、最大の目的のはずの増税後の消費の底上げに、つながるのか。制度づくりを担う経済産業省によると、店ごとのポイント還元に関する情報を載せたスマホ用の地図アプリをつくり、使える決済手段のロゴつきのポスターを店頭に貼る。「店の人に聞かなくてもわかる」というが、ある店主は、同時に始まる軽減税率の対応もあり、「困った客に質問されても、答えられない」と不安をみせる。中小企業者支援もポイント還元の目的の一つだが、これでは店主に負荷がかからないか。三つ目の目的であるキャッシュレス化の推進も、費用に見合う効果があるのか、疑問だ。2019年度予算の2798億円のうち、ポイントなどで消費者に還元されるのは1786億円。残りの1千億円強はコールセンターやポスターに使われるほか、加盟店の勧誘支援としてカード会社などにも渡る。これだけの税金を使って、中小の小売店での支払いに占めるキャッシュレスの割合は、約14%から17%程度に上がるという想定にすぎない。実施ありきで議論が進み、費用対効果の検討がおざなりではないか。財務省の査定責任も重い。参院の審議は、問題点を洗い出す最後の機会だ。予算審議の最中でも決済事業者の募集を始め、見切り発車しようとする政府に、再考を迫るべきだ。

<新元号と民主政治>
PS(2019年4月1、2日追加):*3-1・*3-2のように、2019年4月30日に天皇陛下が退位され、皇太子殿下が新天皇に即位される5月1日から施行される新元号は「令和」と発表された。出典は万葉集の梅花の歌「初春の令月にして気淑く風和ぎ、梅は鏡前の粉を披き、蘭は珮後の香を香らす」から引用したと説明されているが、その説明を聞く前、私は「令は命令、させること」「和は和やかなこと」を意味し、奈良時代の「大宝律令」の令と「和を持って尊しとなす」の和がイメージされて、「国民は命令に従い、和を持って尊しとなせ」という現在の国民主権国家からは程遠い元号のように思えた。そのため、そういう価値観を持っていないのに、現皇太子の時代として歴史に残るのは、現皇太子に気の毒だと思ったわけである。私自身は、次は「光」という字を用いて、「光和」「光久」「光輝」などの明るい元号がよいと思っていたが、こうなったら計算しやすいので西暦で通すことにする。
 なお、新元号「令和」の出典となった万葉集の一節は、*3-3のように、730(天平2)年に大宰府の大伴旅人の邸宅で催された「梅花の宴」で詠まれた32首の序文にある「令月」「風和」から取ったものだそうで、大宰府は博多港から20km程度の地域にあり、鳥栖や吉野ヶ里にも近く、古代史のKeyと言える場所だ。

*3-1:https://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2019032901001500.html (東京新聞 2019年4月1日) 新元号は「令和」、5月1日施行 出典は「万葉集」、日本の古典初
 政府は1日、「平成」に代わる新元号を「令和(れいわ)」と決定した。今の天皇陛下が改元政令に署名され、同日中に公布。4月30日の天皇陛下退位に伴い、皇太子さまが新天皇に即位する5月1日午前0時に施行される。皇位継承前の新元号公表は憲政史上初。出典は「万葉集」で、中国古典でなく、国書(日本古典)から採用したのは確認できる限り、初めて。「大化」(645年)から数えて248番目の元号で、1979年制定の元号法に基づく改元は「平成」に続いて2例目となる。改元は明治以降、天皇逝去に伴う皇位継承時に行われてきた。今回は退位特例法に基づき、逝去によらない改元となる。

*3-2:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO43166560R00C19A4000000/?nf=1 (日経新聞 2019年4月1日) 新元号は「令和」 官房長官が公表
 政府は1日午前、平成に代わる新元号を「令和」と決定した。「れいわ」と読む。菅義偉官房長官が記者会見し、墨書を掲げて公表した。出典は「万葉集」と説明した。日本最初の元号「大化」から数えて248番目にあたる。新元号は天皇陛下の退位に伴い5月1日午前0時から施行する。安倍晋三首相は正午ごろから記者会見を開き、首相談話を読み上げて新元号に込めた意義などを説明する。元号に用いる漢字が日本の古典から採用されたのは確認される限り初めて。これまでは中国古典(漢籍)を出典としてきた。令和は万葉集巻五、梅花の歌三十二首の序文、「初春の令月にして気淑く風和ぎ、梅は鏡前の粉を披き、蘭(らん)は珮(はい)後の香を香らす」から引用した。政府は今回、漢文学や東洋史学だけでなく、国文学や日本史学を専門とする学者にも考案を委嘱したことを明らかにしている。関係者によると、平成への改元時に委嘱した考案者にも国文学者が含まれていたが、日本古典を出典とする案は「平成」を含む3つの最終案に残らなかった。政府は4月1日午前9時半から首相官邸でノーベル生理学・医学賞受賞者の山中伸弥京大教授ら計9人の有識者による「元号に関する懇談会」を開き、原案について一人ひとりから意見を聞いた。その後、衆参両院の正副議長に意見を聴取。首相官邸で開いた全閣僚会議を経て閣議で新元号を定めた政令を決定した。天皇陛下が署名し、4月1日中に公布する。3月14日に複数の学者らに新元号の考案を正式に委嘱し、それぞれ2~5つの案の提出を求めた。官房長官の下で絞り込み、5つ以上の原案から新元号を選んだ。天皇陛下は4月30日に退位、翌5月1日に皇太子さまが新天皇に即位される。「退位礼正殿の儀」は4月30日午後5時からで、三権の長や地方自治体の代表ら338人が参列する。皇太子さまは5月1日午前10時半から歴代天皇に伝わる神器などを引き継ぐ「剣璽等承継の儀」に、午前11時10分から即位後初めて国民代表の前でお言葉を述べる「即位後朝見の儀」に臨まれる。天皇陛下は2016年8月、国民向けのビデオメッセージで象徴天皇としての務めに関する考え方についてお言葉を述べ、退位の意向を示唆された。政府は天皇の公務の負担軽減等に関する有識者会議を設置。17年6月、現天皇一代限りで退位を認める特例法が国会で成立した。

*3-3:https://www.nishinippon.co.jp/nnp/culture/article/499075/ (西日本新聞 2019年4月2日) 典拠序文は大宰府ゆかり 新元号「令和」
 新元号「令和」の出典となった万葉集の一節は、730(天平2)年に大宰府の大伴旅人の邸宅で催された「梅花(ばいか)の宴(えん)」で詠まれた32首の序文。宴では、対馬や鹿児島など九州各地から集められた官僚たち計32人が、「梅」をテーマに1人1首歌を詠んだ。歌は万葉仮名で序文は漢文。作者は旅人や山上憶良などと推測されている。宴の開かれた前年、時の左大臣が自死に追い込まれる「長屋王の変」が発生。「政変が起きたため、九州の引き締めを図り各地の官僚を集めたのだろう」と福岡女学院大の東茂美教授(日中比較文学)は解説する。緊張した政策議論が行われ、その後に催されたのが梅花の宴だった。令和は、序文にある「令月」と「風和」から取られた。東教授は「『令』は『好(よ)い』という意味。平成は大災害で多くの命が奪われた。不幸な時代を超え『好い和』という穏やかな時代になってほしいという願いが込められているのではないか」と話す。

<外国人の受け入れについて>
PS(2019年4月1、4日追加):*4-1のように、「外国人受け入れ拡大の準備が整わないまま、新制度がスタートした」という批判が多いが、制度が導入されたからやるべきことが具体的にわかったという面もあるので、制度を導入したのはよいことだ。そして、外国人を受け入れたいが未経験の自治体は、先行する自治体から準備に必要な情報を聞き、議会で話し合って予算を作り、次第に受け入れていけばよいだろう。また、多言語対応は、すべての自治体で11言語すべての翻訳を正確にできなければならない理由はなく、来日する外国人の母国語に翻訳できればよい筈だ。大切なのは、母国で既に教育投資を受けた外国人が日本で労働を提供し、日本社会の支え手になってくれることであり、日本人よりハングリー精神があるかもしれないことである。
 また、*4-2のように、熊本県では、第2次ベビーブーム時に多く採用された教職員が退職期を迎え、教職員の約4割が今後10年で定年退職する予定だそうだが、経験豊富で授業力のあるベテラン教員が学校現場を去る前に、①定年年齢を引き上げて働き方改革を実行したり ②小学校の入学年齢を3歳に引き下げたり ③クラスに副担任を置いて教員を支援したり ④学童保育の学習支援員として働いてもらったり 等々を、正当な報酬を支払って行えばよいと思う。
 なお、外国人技能実習制度は、*4-3のように、外国人から搾取する手段となっていたケースが多かったため、3年間の実習を終えると無試験で1号の新資格を取得でき、資格を変更したい人は本人の意思で変更できることをアナウンスしておけば、劣悪な労働環境にある技能実習生は変更すると思われる。なお、外国人労働者に慣れておらず言語対応に不安がある自治体は、フィリピンやインドの人から始めると英語を話せるため対応しやすい。

*4-1:https://digital.asahi.com/articles/DA3S13959827.html (朝日新聞 2019年4月1日) 外国人受け入れ拡大、準備整わぬまま 新制度スタート
 新たな在留資格「特定技能」を創設し、外国人労働者の受け入れを拡大する新制度が1日に始まる。政府は、技能実習生からの資格変更を含めて今後5年間で最大約34万5千人を見込む。労働政策の転換点だが、4月の制度導入ありきで進められたため、現場の準備が整わないなかでの「見切り発車」となる。政府は昨年12月、新制度の目玉として、行政サービスや生活情報の相談に原則11言語で対応する「多文化共生総合相談ワンストップセンター」を全国に約100カ所整備することを打ち出した。法務省が地方自治体に対し、多言語対応などに向けた整備費の交付金申請の受け付けを始めたのは2月中旬。補助対象は、47都道府県と20の政令指定市、さらに外国人住民が1万人以上、または5千人以上で全住民に占める割合が2%以上(東京23区は1万人以上で6%以上)の44自治体とした。だが地方議会に諮る時間が足りないなどの理由もあり、申請は37自治体にとどまった。法務省は4月1日の時点で何カ所にセンターが整備されるか明らかにしていない。来日する人から多額の保証金を徴収するような悪質な仲介業者の排除についても、政府は2018年度中に、送り出し国として想定されるベトナム、フィリピン、カンボジア、中国、インドネシア、ミャンマー、タイ、ネパール、モンゴルの9カ国と協力覚書の締結を目指していた。だが3月29日の時点で締結に至ったのはフィリピン、カンボジア、ミャンマー、ネパールの4カ国だけだ。
■窓口整備、足りぬ財源・人材 11言語「翻訳の正確さ心配」
 改正出入国管理法の施行に合わせて、朝日新聞は外国人が多く住む全国の74自治体を対象にアンケートを行った。共生に向けた対応策の目玉となるワンストップセンターについては、過半数が財源不足などを理由に開設予定がないと回答。受け入れ拡大に戸惑う現場の姿が浮き彫りになった。ワンストップセンターの補助対象となった自治体には、人口規模の小さい市町村は入らない。今回のアンケートは、外国人が多い地域の実態把握に努めるため、外国人住民が1万人以上か、全住民に占める外国人の割合が5%以上の74市区町村を対象とし、都道府県は除いた。3月中旬から下旬に調査し、70自治体から回答を得た。回答率は94・6%。今回のアンケートでは、「ワンストップセンターを開設する予定があるか」との問いに、55・7%(39自治体)が「いいえ」と回答した。理由の多くは財源不足だ。補助の対象でも「開設場所や人材の確保にめどが立たない」(東京都北区)との声が出た。大きな課題は、多言語対応だ。国はセンターで原則11言語に対応することを求めている。通訳が配置できなければタブレット端末などで対応する必要がある。岐阜県可児市は翻訳機を導入する予定だが「細かな行政用語をどこまで正確に翻訳できるのか心配。例えば日本の『住民票』という概念は外国と一致するのか」と気をもむ。

*4-2:https://kumanichi.com/column/syasetsu/922837/ (熊本日日新聞 2019年3月27日) 教員の大量退職 教育の質低下防ぐ対策を
 公立の小中学校や高校などに勤める県内の教職員の約4割が、今後10年で定年退職することが明らかになった。この事態に対応するため、県教委や熊本市教委は採用数を増やしているが、授業力のあるベテラン教員が学校現場を去る一方、現場経験の少ない若手の教員が増えることになる。両教委には教育の質の低下を招かない取り組みが求められている。大量退職の要因は、1970年代の第2次ベビーブーム時に多数採用された教職員が退職期を迎えるためだ。両教委によると、2018~27年度に定年を迎える教職員は5033人で、現在の教職員全体の37・7%に当たるという。一方、採用増に志願者の減少もあって、教員採用試験の志願倍率は、小中学校を中心に低下している。小学校の場合、両教委がそれぞれ採用試験をするようになった13年度と19年度を比べると、県教委分が5・1倍から2・3倍に、熊本市教委分が13・7倍から3・2倍に落ち込んだ。志願倍率の低下が、教育の質の低下につながるとは一概に言えないが、「高い倍率を勝ち抜き、合格した」という思いは、採用後のモチベーションになることは確かだ。また、以前と比べ臨時任用教員として数年間学校現場を経験した後、本採用されるケースも減ったため、「即戦力の若手が少なくなった」という声もある。両教委は20年度の採用試験から小学校教諭の実技試験を全廃、または一部の廃止を決めた。受験要件緩和で志願者を増やすのが狙いだが、「単に採用のハードルを低くするだけでは質の低下を招きかねない」とも指摘されている。志願者減の要因の一つとして、「教員は授業や部活動で多忙。保護者対応も重なりストレスが大きい」とのイメージが定着していることがあるのではないか。両教委はタイムカード導入などで、教職員の労働時間管理の徹底を試みているが、さらに抱え込み過ぎているとされる学校や教員の業務の明確化・適正化にも力を入れ、本来の教えるという業務に専念できるようにすることが必要だろう。既に教員の年齢構成はいびつになっている。熊本市教委のまとめでは、18年度に市内の小中学校で働く教員約3千人のうち、51~60歳が半数近くを占め、若手と中堅をつなぐ世代の31~40歳は15%ほどとなっている。経験の少ない若手が増える中、身近な手本となる世代が少ないのも問題だ。「技術の伝承」に悩む民間企業に通じる課題だろう。熊本市教委は退職後に再任用された教員が若手をマンツーマンで指導する事業を実施している。県教委も優れた指導力を持つ中堅教員をスーパーティーチャーとして選び、若手の指導力向上を支援している。こうした経験豊富なベテラン世代を活用して世代をつなぐ取り組みをさらに拡充し、若手も余裕を持って児童、生徒に対応できる環境づくりを進めてもらいたい。それが教育の質の維持、向上にもつながるはずだ。

*4-3:https://www.toonippo.co.jp/articles/-/174288 (Web東奥 2019年4月4日) 廃止含め抜本策の検討を/技能実習制度
 外国人就労を拡大する新制度で、新たな在留資格「特定技能1号」の取得を目指す外国人向けに受け入れ業種別の日本語・技能試験が国内外で始まる。今月中旬からフィリピンで介護、東京や大阪などで宿泊、外食と続く。これとは別に外国人技能実習制度で来日した実習生は3年間の実習を終えると、無試験で1号の資格を取得できる。政府は新制度により5年間で14業種に最大34万5千人の受け入れを見込む。試算では、2019年度は6割弱が実習生からの移行組。その後、試験の合格者は徐々に増えていくものの、5年たってもなお5割は移行組という。技能実習制度と新制度とは切っても切れない関係にある。その実習制度を巡り新制度スタート目前の先月末、賃金や残業代の不払い、長時間労働から実習中の事故死まで、過酷な労働実態が改めて浮き彫りになった。昨年の国会で野党から実習制度の問題点を追及され、山下貴司法相は17年に技能実習適正化法が施行され、それ以降は「適切な運用」が図られていると反論する一方、法務省に調査を指示していた。それ以前の実態調査がずさんだったことも明らかになり、法務省は10項目の改善策を示した。しかし、どれもやって当たり前のことばかりだ。技能実習は末期的な状況にあり、制度の廃止も含め、抜本策の検討に取り組まなくてはならない。法務省の調査では、実習先から失踪して17年1月~18年9月に不法残留などで摘発された5218人のうち759人が最低賃金以下の給料や食費名目などによる過大な控除、時間外労働の割増賃金不払い、違法な時間外労働などを強いられていた疑いがあった。このうち今回の調査以前に把握し対応していた事案は38人分にすぎなかった。例えば、縫製業の実習生は月給6万円で働かされて月60時間の残業をしても割増賃金をもらえず、建設機械施工の2人が実習計画にない家屋の解体などをさせられた。さらに12~17年に実習生171人が死亡、うち43人はこれまで把握できていなかった。実習中の事故死28人、病死59人、自殺17人など。病死の3人は違法な時間外労働をさせられ、自殺の1人は3カ月半で休みが4日だけだった疑いがある。だが不正行為はもっとあるとみた方がいいだろう。調査対象となった企業など実習先は4280に上るが、そのうち383は協力拒否や倒産などで調査できずじまい。賃金台帳やタイムカードの写しなど詳細な資料を集められたのは7割弱にとどまっている。17年11月、実習生に対する人権侵害に罰則を設け、受け入れ先への監督を強化する適正化法が施行された。しかし失踪者は年々増え続け、昨年は9052人に達した。調査結果を踏まえ、法務省は報酬支払いは支払額を確認できる口座振り込みなどで行うよう義務付けるのをはじめ、初動対応の強化や実習生の支援・保護の強化、厳正な審査・検査など改善策を提示した。ただ実効性がありそうなのは口座振り込みくらいだ。日本で働く外国人は昨年10月時点で146万人。それがこれまでにないペースで増えていく。政府は「共生社会の実現」に向け技能実習制度が障害とならないよう早急に手を打つべきだ。

<森林環境税と環境税>
PS(2019年4月2、3日追加):*5-1のように、2018年に森林の適切な維持管理を目的とする森林経営管理法(「①森林の持ち主は適時に木を植えて育て、伐採する経営管理の責務がある」「②適切に手入れされていない森林は、経営管理権を市町村に集める」等を規定)ができ、2019年4月1日から施行されている。そして、「③まとめて経営すれば利益が出ると見られる森林は意欲と能力のある林業経営者に伐採や造林を委託」「④採算がとれない森林は市町村が管理して複層林化」するとされ、④には、2024年度から住民税に上乗せして徴収する森林環境税を充てるとのことだ。私は、森林はCO₂吸収源であるだけでなく、水源や自然環境の源泉でもあるため、都市部の住民も森林整備の負担を担うのは当然だと思うが、②のように、所有者が手入れすらしない森林を市町村が無償で管理をするのはどうかと思われ、管理するにあたっては相応の受託料をとるべきだと考える。また、管理委託さえしたくないような所有者には、所有権を放棄もしくは売却してもらってから公的管理に入るのが公正だろう。さらに、③については、民民の取引であるため適切な受委託関係があると思うが、状況はどうなっているのだろうか。
 私は、*5-2のように、既に地方で導入されている森林環境税よりも、CO₂排出抑制効果を持ち、森林だけでなく農地・藻場・公園・緑地帯等のCO₂吸収源の保全すべてに役立てることが可能な炭素税の導入を行い、他の税収からの環境対策支出は減らせばよいと考える。
 なお、林業は、*5-3のように、長野県や信州大などがドローンやICTを活用した林業の効率化に取り組んで「スマート林業」を進めているほか、林野庁が航空レーザーなどによる計測で詳細な森林情報(立木、地形など)を把握してデジタル化し、一元管理(全都道府県で導入済)する取組を推進しているので、次第にスマート化して面白い産業になることが予想される(https://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/miraitoshikaigi/suishinkaigo2018/nourin/dai9/siryou4.pdf#search=%27%E3%82%B9%E3%83%9E%E3%83%BC%E3%83%88%E6%9E%97%E6%A5%AD+%E8%A8%98%E4%BA%8B%27 参照)。ただし、林野庁の見解とは異なり、林業における生産とは、植林・育成(間伐や害虫駆除を含む)・伐採の一連の行為を含むものだ。


2018.2.1朝日新聞  
                    
(図の説明:左図のように、2024年から全国規模で森林環境税が課されることになっている。しかし、私は、森林環境税は既に地方自治体が課しているため、環境税を課してCO₂対策や他の環境関係支出に充てるのがよいと思う。また、左から2番目の図のように、都市の納税者は、現在は森林の効用を無料で享受しているが、森林の手入れにも費用がかかるため、環境税には理解を示すべきである。なお、右から2番目の図のように、日本は森林資源に恵まれており、森林は財産としての価値もあるため、森林資源を無駄にせず有効に使うように工夫すべきだ。そのような中、右図のように、林業の高齢化率は他産業より高く、若者の参入が望まれている)

*5-1:https://digital.asahi.com/articles/DA3S13420454.html (朝日新聞社説 2018年3月26日) 森林経営管理 課題の検討を丁寧に
 政府が、森林の適切な維持を目指す法案を国会に提出した。スギやヒノキを植えたまま、手入れされていない森林が増えているためだ。ただ、法案が描く仕組みの実行には課題が多く、丁寧な議論と検討が必要だ。提出したのは森林経営管理法案。森林の持ち主には適時に木を植え、育てて伐採する経営管理の責務があると規定した。市町村にも大きな役割を求める。適切に手入れされていない森林は、経営管理の権利を市町村に集める。そのうち、まとめて経営すれば利益が出ると見られる森林は、意欲と能力がある林業経営者に伐採や造林を委託する。採算がとれない森林は市町村が管理し、広葉樹などを交えた「複層林」に誘導する。目的は二酸化炭素(CO2)の吸収促進や土砂災害の防止、水源の維持などとされる。林野庁は管理が不十分な人工林を約400万ヘクタールと推定。人工林全体の約4割、国土面積の1割強で、放置できないのは確かだ。新制度の方向性は支持できる。農業にも、土地を集めて貸し出す「農地バンク」の仕組みがある。だが、林業は植林から伐採までの期間が数十年に及び、それだけハードルは高い。まず、長期にわたり経営管理をきちんと担える林業経営者を十分に確保できるか、そうした業者を行政が選定できるかという問題がある。木材の需給や経済状況次第で、経営者の意欲がなえたり有能な人材が集まらなくなったりしかねない。市町村には、森林の実情を把握して計画をたて、適切な委託先を選ぶ能力も必要になる。きちんと対応できなければ、森林所有者の意欲や責任感をそぐだけに終わりかねない。所有者が不明の場合や、市町村に経営管理を委ねたがらないときは、一定の手続きで同意とみなす仕組みも設ける。適正に運用できるかも大きな課題だ。一時的に伐採が進んでも、森林管理の成否が最終的に確認できるのはかなり先になる。官民ともに責任の所在があいまいになるリスクがあり、継続的に点検することが不可欠だ。市町村による複層林化には、2024年度から住民税に上乗せして徴収する予定の森林環境税をあてる。森林の機能からみて、都市部の住民も負担するという考え方は理解できる。だが、個別施策の目的税を安易に設けると「予算ありき」の無駄遣いを助長しかねない。CO2吸収源への対策なら、排出抑制効果を持つ炭素税などの導入と一体の議論が望ましい。財源については再考を求めたい。

*5-2:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO24437540Y7A201C1L31000/ (日経新聞 2017/12/9) 長野県、森林税5年継続を正式決定 説明責任重く
 長野県議会は8日の本会議で、森林づくり県民税(森林税)を2018年度~22年度も続ける条例案を可決した。今年度で2期目(計10年間)の課税期間が終わり、さらに5年間継続する。森林税を巡っては税収の余剰や里山整備の目標未達成などが問題視されていた。県は景観整備などに使途を広げると活用策を打ち出したが、従来以上に説明責任を問われる5年間になりそうだ。阿部守一知事は本会議後の記者会見で「新しい形で森林づくり県民税を有効に生かしていくことができるように、体制整備・準備をしていきたい」と述べた。森林税は、森林保全などを目的として通常の税金とは別に住民から徴収する超過課税の一種。長野県では08年に導入し、個人から年500円、法人からは資本金に応じて同1000~4万円を徴収する。17年度の税収見込みは6億6000万円。森林税を活用した里山整備事業の実施面積は17年度末までの10年間で当初目標の84%(3万2210ヘクタール)にとどまる見通しだ。所有者が不明確なことなどを理由に未整備のまま残された森林がある。余った税収を積み立てた基金は同年度末に4億9000万円となり、来年度の歳入となる法人税収分を含めれば6億円にのぼる見込みだ。1年分の森林税収に匹敵する額となる。間伐面積の目標未達成に加え、大北森林組合の補助金不正受給問題を受けて予算を抑制したことも要因だ。県は3期目の新たな使途として、街路樹などの景観整備、県産材を活用した道路標識の設置、河畔林整備などの事業を追加した。市町村に自由度の高い形で森林税収から年1億3000万円拠出していた森林づくり推進支援金は県地方税制研究会の指摘を受けて年9000万円まで縮小し、市町村に事業内容や成果の詳細な説明を求めていく。税制研究会などが重視したのは県の説明責任だ。推進支援金など使途が明確でないものがあったほか、大北森林組合が不正受給した補助金に森林税が含まれていたことも県民の不信を招いた。県はみんなで支える森林づくり県民会議などで事業の評価・検証をして毎年度初めに知事が公表することを新たに条例案に盛り込んだほか、透明性向上のための庁内組織を立ち上げるとしている。国が1人当たり年1000円の徴収で導入を検討している森林環境税との関係について県林務部は「県税とは目的が違うため明らかな重複はない。もし重複する部分があれば設計を見直す」と説明している。国は24年度から導入する方向で検討を進めているため3期目とは時期が重ならない公算が大きいが、「二重取り」にならないよう慎重な検討が必要となる。県は継続の根拠の一つとして、県民・企業へのアンケートで継続賛成が7割を上回ったことを挙げる。ただ、同時に行った森林税の使途の認知度を調べるアンケートでは7割が「使い道がよくわからない」と答えた。県民の理解を深め、納得を得られる説明をしていくことが一層求められそうだ。

*5-3:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO31787370U8A610C1L31000/ (日経新聞 2018/6/14) 長野県や信州大など、スマート林業普及促進
 長野県はドローンや情報通信技術(ICT)を活用して林業の効率化を進める。同県や信州大学、林業事業者などが参加する協議会を始め、2018~20年度にレーザーやドローンを使った森林資源の把握や木材の需給状況がネット上で分かるシステムを開発する。県の林業に先進技術を導入する「スマート林業」で競争力を高める。協議会の名称は「スマート林業タスクフォースNAGANO」で、14日に南箕輪村の信州大で最初の会議を開いた。森林資源の把握では林業事業者にドローンを保有してもらい、信州大の技術を活用して木の本数や位置、高さを測定して伐採の計画・調査を省力化する。伐採した木材のデータはネット上で林業事業者や運送事業者、木材を求める事業者で共有する仕組みをつくる。リアルタイムで出荷情報を更新し、必要な材を適切に納入できるようにする。運送も効率化して費用を削減する。県の事業費は18年度が1583万円。19年2月まで効果を検証し、19年度以降の具体的な施策を決める。

<事業承継税制の大改正>
PS(2019年4月5日追加):働き方改革で従業員は働き易くなるが、その皺寄せは、中小企業の場合には経営者にかかるため、事業主は大変になるだろう。しかし、*6-2のように、需要の少ない時間帯や曜日はCloseしたり、週4日勤務(週休3日)の1日10時間労働にして従業員をローテーションしたりする方法もある。
 そのような中、高齢で事業承継の時期にある個人事業主が多くなっているが、後継者がおらず、良い技術を持っていたり、黒字であったりするにもかかわらず、廃業になるケースは多い。そのため、相続争いを防ぎ、個人企業が事業承継をやりやすくするために、*6-1及び下図のように、個人事業を後継者に譲るときのルールが見直されるのはよいことである。

  

(図の説明:左と中央の図のように、代替わりで事業の継続が困難にならないよう、2018年度から10年間の特例で事業承継時の相続税軽減要件が緩和され、2019年中に先代が早く事業資産を贈与すれば相続対象から外すことができる制度に改めるそうだ。しかし、右図の「働き方改革」は悪くはないが、役所や大企業をモデルにしているため、ぎりぎりで経営している不安定な中小企業を承継するよりサラリーマンになった方がよいと考える次世代は多いと思われる)

*6-1:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO41271940U9A210C1EE8000/ (日経新聞 2019/2/15) 個人事業主、土地など承継しやすく 相続争い防ぐ
 政府は個人事業を後継者に譲るときのルールを見直す。先代が生きている間に事業を引き継いだ場合、後継者の譲り受けた土地や建物などの事業資産が、一定の条件の下で他の法定相続人の手に渡らないようにする。経営者の高齢化に伴う個人事業の廃業が増える中、相続争いを防ぐことで代替わりを進めやすくする。今国会に提出する承継円滑化法改正案に盛り込んだ。2019年中の新ルール実施を目指す。現行では生前に事業を譲り受けても、先代が亡くなった後、他の相続人に資産を「遺留分」として取得され、事業の権利が分散する余地が残る。本人の兄弟を除く遺族には原則、全体の2分の1の遺産を受け継ぐ権利があるからだ。後継者に土地や建物などの事業資産を集中して贈与しても、他の相続人が主張すれば、資産が複数の相続人に分散してしまう可能性がある。他の法定相続人の「遺留分」について、相続開始前の10年間に限定した基礎財産から算定する仕組みに改める。先代が早い段階で事業資産を贈与すれば、相続対象から外すことができる。他の相続人に渡す「遺留分」についても、相当額の金銭で支払えるように改める。土地や建物、設備を現物で返還しなくても済むようになる。19年度から始まる個人版事業承継税制では、先代が生きている間に事業を引き継ぐと、相続税や贈与税の納付が猶予される。政府は今回の新ルールが加わることで、さらに代替わりがしやすくなるとみる。中小企業には既に同様のルールが適用される。帝国データバンクによると、18年(1~12月)に「休廃業・解散」した企業(個人事業主を含む)は、全国で2万3026件(前年比5.6%減)ある。中小企業系の団体から生前贈与分の事業資産の権利を確保できるよう求める声があがっていた。

*6-2:https://mainichi.jp/articles/20190316/dde/001/040/043000c (毎日新聞 2019年3月16日) 働き方改革、宿泊業だって休みたい 人材確保へ週休3日 従業員「プライベート充実」
 年中無休のイメージが強い旅館やホテルで週休3日制導入など、働き方改革の動きが出ている。外国人観光客の増加や2020年東京五輪・パラリンピックに向け宿泊業界は活況だが、長時間労働が敬遠され、人手不足は深刻。労働環境の見直しで、優秀な人材確保につなげる狙いがある。「月、火、水は宿泊がお休みになります」。将棋、囲碁のタイトル戦の舞台にもなっている神奈川県秦野市の旅館「元湯 陣屋」は週3日、宿泊客を取らない。(以下略)

| 経済・雇用::2018.12~ | 11:09 PM | comments (x) | trackback (x) |
2019.3.25 日本における女性差別の実態とその原因について (2019年3月26、27日追加)
   
2018.12.18朝日新聞     日本における女性管理職の推移    2019.3.8琉球新報

(図の説明:左図のように、日本の2017年ジェンダーギャップ指数は、総合でも110位で先進国中最低だ。また、中央の図のように、女性管理職割合の推移も低迷している。そして、右図のように、沖縄の小学校教諭は70%が女性であるのに、管理職になると女性は22%しかおらず、中学・高校では、さらに低くなっているそうだ)

(1)日本における女性差別の実態
 日本国憲法は、*1のように、「第13条:すべて国民は個人として尊重される」「第14条:すべて国民は法の下に平等であつて、人種・信条・性別・社会的身分・門地により、政治的、経済的又は社会的関係において差別されない」等を定めており、この憲法で新しく定められた内容だけが太平洋戦争のプラスの遺産だったと、私は考える。

 しかし、「女性が平等に個人として尊重され、基本的人権を有すると認められているか」については、*2のジェンダーギャップ指数を見れば、日本は戦後70年以上経過しても149か国中の110位であり、G7では最下位で、達成に程遠い。特に、経済分野の117位、政治分野の125位が低く、教育分野は初等・中等教育では1位で男女平等と評価されているものの、大学等の高等教育では103位となり、多くの女性が高度な仕事や意思決定の場で、未だに閉ざされている状況が現れている。

 また、*5-3のように、2018年に明るみに出た大学医学部入試における女性差別は、教育段階から女性が高度な仕事に就くことを妨げている一例であり、あるべき姿から程遠いが、これは大学だけでなく、高校以下の教育や(社会の価値観を反映した)家庭教育にも原因がある。

(2)高校教育における女性差別
1)男女共学高校での女性差別の刷り込み
 私自身は、東京大学を卒業するまで機会の与えられ方について女性差別を感じたことは全くなかったが、*5-1のように、東京医大だけでなく都立高校入試でも、男女別募集定員によって女子学生は男子合格者より高い点数を取っても不合格になっているそうだ。
 
 そして、「男女別募集定員の緩和措置すら必要でない」と答える中学校長が2割おり、その理由を「①東京都には私立女子高が多く、教育の支えの一つだが、男女別定員制の緩和の結果、私立の女子高から生徒を奪う」「②成績上位には女子の方が多いので、全てを男女合同定員制として合否を判定すると男女比が大きく女子に偏り、学校施設等に影響が出る」「③結果的に男子生徒の進学先が決まらない」などとしており、「他を配慮するために、女子生徒を犠牲にするのは、何でもないことだ」とする呆れた考え方を持っている。

 だが、公立学校が性別を理由に女子生徒から教育機会を奪うと、*1のように、日本国憲法「第99条:公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ」という規定に違反し、「第17条:何人も、公務員の不法行為により損害を受けたときは、法律の定めるところにより国又は公共団体に賠償を求めることができる」という規定によって、損害を受けた女子生徒は損害賠償請求することができる。そして、これが、戦後、公立で男女共学が進んだ理由である。

 しかし、*5-2のように、福岡県立高校の入学式では、前列に男子、後列に女子が並ばされたそうだ。私が卒業した佐賀県立唐津東高校は、男女別でも左右に分かれて並ぶため並び方では女性蔑視は感じられなかったが、名簿は男子が先、卒業アルバムも男子の写真が先に掲載されており、確かに「男子が主で重要」「男子の方が上」というような刷り込みをしている。

 このような中、教育で大切なのは教員や保護者の意識である。その理由は、私は実力テストでは殆ど学年1番、(文系科目も90点代後半だったが)理数系科目はだいたい満点で、それに関して「男子がやる気をなくす」「女子は、今はできても先では伸びない」「ガリ勉」「カカア天下」などと聞こえよがしに言う人が少なからずいたからだ。これは、小学校時代から教員や友達の保護者まで含めて同じだったが、私はそういう“空気”を無視できたから道が開けたのである。

 従って、「ジェンダーチェック」は、先生だけでなく保護者や生徒にも必要で、小学校入学時に配布して保護者や生徒の意識からも女子への偏見や差別を徹底的になくすべきなのだ。

2)男女別学高校での男女差別の刷り込み
 *6-1に、「公立高校といえば共学のイメージですが、北関東には男女別学の公立高校がまだ残っている」「②数学・科学は男子の方が得点高く、読解力は女子が得点高いので、男女の違いを活かした教育ができるのが男女別学男女別学の強み」「③別学は勉強に集中しやすい環境と言える」「④男子任せや女子任せにせず、いろんなことに挑戦できる」「⑤別学は異性と出会うチャンスがない」などと書かれている。

 しかし、①は憲法違反で、②は平均が個人を表すわけではないので偏見による差別であり、まさにジェンダーの根源である。さらに、③⑤のように、多感な時期に異性から隔離されて育った人は、その後も異性に対して先入観を持ちがちで、職場ではジェンダーの温床となる。また、④は、男女一緒にいる中でもいろいろなことに挑戦できなければ、男女別になっていない社会ではさらに挑戦することができないので、男女共学の中で鍛えるべきなのである。

 私は関東に住んで、都立高校は特に優秀ではなく、私立は殆ど男女別学なのに驚くとともに呆れた。しかし、その周辺は公立高校も男女別学であり、これは憲法違反だと思った。しかし、*6-1に書かれているとおり、北関東に残っている男女別学は「旧制中学校・高等女学校を前身とする伝統ある高校だから」なのだそうだ。しかし、冗談いっちゃいけない。私が卒業した佐賀県立唐津東高校も、元は小笠原氏の志道館という藩校だった立派な伝統校だが、戦後に男女共学になった学校なのである。

3)男子校と女子高の教育理念の違い ← 生徒がよく歌う校歌で比較する
 そこで、旧制中学・高等女学校を前身とする伝統ある高校だとして、男女別学を譲らなかった埼玉県立浦和高校(*6-2-1、東大合格者数22人)と同浦和第一女子高校(*6-2-2、東大合格者数4人)の校歌で教育理念を比べると、以下のとおりだ。

 *6-2-1の男子校の方は、「①国家に望みある学生」「②広き宇内に雄飛せん」と生徒に国家への貢献や宇宙への雄飛を鼓舞している。しかし、*6-2-2の女子高の方は、「①三年の春秋を選ばれてすごす喜び」「②三年の青春を選ばれて誇る幸い」「③三年の教えを選ばれて受ける楽しさ」などと選ばれて入学してきたことのみを誇って卒業後の活躍を鼓舞しておらず、選ばれたレッテル付きの女性が、卒業後は家庭で子育てし、真心を込めて夫や家庭を支える良妻賢母を目指す「女子教育」を行っているのだ。

 一方、私が卒業した佐賀県立唐津東高校(*6-3、東大合格者数1人)の校歌は、下村湖人作で「天日かがやき・・光の学徒」「はてなく広ごる眞理の海を抜き手をきりつつ泳ぐ力の学徒」「平和と眞理に生命を享けた希望の学徒」「われらの理想は祖国の理想、祖国の理想は世界の理想、理想を見つめて日毎に進む」と、東大合格者数は浦女より少ないが崇高な理念を述べている。そして、これが、女性が男女共学校で教育を受ける最も大きな意味なのである。

(注)1つの指標として2019年3月の東大合格者数を比較すると、東京都立日比谷高校(男女共学)47名、埼玉県立浦和高校(男子校)22名、埼玉県立浦和女子高等学校(女子高)4名、東京にある私立中高一貫女子高のうち①桜蔭高等学校66名 ②女子学院高等学校33名 ③しらゆり学園高等学校7名、東京にある私立中高一貫男子高のうち④開成高校(男子校)187名 ⑤麻布高校(男子校)100名など、男女とは関係なく早くから計画的に勉強した方がよい成績を納めている。そのため、地方の学校は、これ以上のんびりしている場合ではなく、親の所得や教育観が子に悪い影響を与えないためには、子が行きたい大学に行けるシステムの構築が不可欠だ。

(3)女性差別は大学だけの問題ではないこと
       ← 「女性の教育」と「女子教育」の違い、メディアの表現
 女性差別は、高校・大学の入試だけでなく、メディアも含めた社会全体の問題である。その良い例は、*3-1・*3-3のように、女性が教育を受ける権利を訴えてノーベル平和賞を受賞したマララさんが、3月22日に来日して首相官邸を訪れ、安倍首相に「①G20で全ての国の指導者に女性の教育に投資するよう働きかけてほしい」「②女性も仕事ができるようにして欲しい」と語ったにもかかわらず、まず安倍首相が勘違いして「女子教育(良妻賢母養成型教育)」と表現し、その後、日本のメディアは、*3-2のように、一貫して「女子教育」と表現し続けて、マララさんが英オックスフォード大で学んでいることには殆どが触れなかったことだ。

 しかし、本当にすごいのは、パキスタン出身で女性が教育を受ける権利さえおぼつかないにもかかわらず、それを訴えて銃撃されたマララさんに、世界はノーベル平和賞を与え、英国は英オックスフォード大で学ぶ機会を与え、その人が日本の首相にG20での働きかけを頼みに来たことであり、マララさんが自分の理想を祖国や世界の理想にしようとしていることなのである。

(4)社会における女性差別
 学校を卒業して社会に出ると、*4-1のように、「小学校の先生は70%が女性なのに管理職はわずが22%」「中学・高校はさらに低い」というコンクリートの天井があり、その理由はいつも「長時間労働」と「女性の家事・育児負担」と説明される。そして、「女性への重圧が大きく、管理職を勧めるのも躊躇する」となる。しかし、自ら「家事育児を負担したいので、管理職にはならない」と希望する人以外は、何らかの形で乗り切って上に行きたいのだから、そうする機会を差別なく与えるべきであり、「平均」をもって管理職に登用しないのを差別と呼ぶのだ。

 また、*4-2に「性別役割分業の転換が急務」と書かれているが、これは教育段階でジェンダー教育が行われ、女性は家事育児が得意となるための、また男性は生計を支えるための、中等・高等教育を受ける例が多いため、ここから変えなければならないのである。

・・参考資料・・
<日本における男女平等の理想と現実>
*1:http://www.japaneselawtranslation.go.jp/law/detail_main?id=174 (日本国憲法抜粋) 第三章 国民の権利及び義務
第十一条 国民は、すべての基本的人権の享有を妨げられない。この憲法が国民に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利として、現在及び将来の国民に与へられる。
第十三条 すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。
第十四条 すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。
第十七条 何人も、公務員の不法行為により、損害を受けたときは、法律の定めるところにより、国又は公共団体に、その賠償を求めることができる。
第九十九条 天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ。

*2:https://www.nichibenren.or.jp/activity/document/statement/year/2019/190117.html (2019年1月17日 日本弁護士連合会会長 菊地 裕太郎) 世界経済フォーラムのジェンダーギャップ指数に対する会長談話
 2018年12月19日、世界各国の男女平等の度合いを指数化した「ジェンダーギャップ指数」について、世界経済フォーラムから報告書が発表された。日本は149か国中110位であり、主要7か国(G7)中最下位である。ジェンダーギャップ指数は、女性の地位を、経済、政治、教育、健康の4分野で分析し、ランク付けをしているが、日本は、経済分野は117位、政治分野125位、教育分野65位、健康分野は41位である。前年と比較すると、教育分野がわずかに順位を上げただけで、その他の3分野についてはいずれも前年より後退している。経済分野においては、同種業務での賃金格差、専門的・技術職の男女比など5項目全てにおいて指数自体は改善されたにもかかわらず、順位は前年の114位から117位に後退している。これは、他国の男女格差の改善の度合いが我が国よりも進んでいるためと考えられ、経済分野における世界的な男女格差の解消に日本が追い付いていないことがうかがえる。また、政治分野が125位と上記4分野の中でも最も低い順位であったことは憂慮すべきことである。女性の政治参加は、あらゆる分野における女性の地位向上のための必須の条件というべきであり、国政の場においても地方政治の場においても、女性議員の増加を図るなど、女性の政治分野への進出が強く望まれる。教育分野については、識字率や初等・中等教育は1位で男女平等と評価されているものの、大学などの高等教育の就学率は103位と、他の項目と比して極端に低く、是正が求められる。昨年明らかとなった複数の大学医学部入試における女性差別は、この点からしてもあるべき姿に逆行しているといえる。以上から、当連合会は、日本政府に対し、職場における男女格差を解消し、女性の活躍を更に推進するために、働き方改革の取組にとどまらず、女性の政治参加や高等教育における男女格差の解消を重点課題とし、加えてこれらの課題実現に向け、速やかに具体的措置・施策を講じるよう強く求めるものである。

<女性教育と女子教育の違いとメディアの表現>
*3-1:https://digital.asahi.com/articles/DA3S13945827.html?iref=pc_ss_date (朝日新聞 2019年3月23日) 「女性の教育へ投資、呼びかけて」 マララさん、首相訪問
 女性教育の権利を訴えてノーベル平和賞を受賞したマララ・ユスフザイさん(21)が22日、初めて来日した。首相官邸を訪れ、安倍晋三首相と会談。6月に大阪で主要20カ国・地域(G20)首脳会議が開かれることから、「安倍首相と日本には全ての国の指導者に女性の教育に投資するよう働きかけてほしい」と語った。マララさんは首相と会談後、共同記者発表に臨み、世界中の学校に通えない女性のために「個人、企業、政府の支援が必要だ」と訴えた。首相は「マララさんが武装勢力からの脅迫に屈せず女性が教育を受ける権利を訴え続けたことは、世界中の人々に勇気を与えた」と話した。マララさんは23日、東京都内で開かれる政府主催の「第5回国際女性会議WAW!」で講演するため、来日した。

*3-2:https://www.jiji.com/jc/article?k=2019032200903&g=pol (時事ドットコム 2019年3月22日) 安倍首相、ノーベル平和賞マララさんと会談=女性活躍、G20で議題に
 安倍晋三首相は22日、初来日したノーベル平和賞受賞者マララ・ユスフザイさんと首相官邸で会談した。首相は「圧力や暴力に屈せず、女子教育の重要性を世界に訴えたマララさんに敬意を表したい」とたたえた。会談後、マララさんと共同記者発表に臨み、6月に大阪で開かれる20カ国・地域(G20)首脳会議で「女性が輝く社会の実現」を重要議題の一つに位置付ける考えを示した。女性教育活動家のマララさんは記者発表で「G20の議長国として、女子の教育について率先して各国リーダーに働き掛け、女子が将来の仕事に備えることを支援すべく新たな資金をコミットするよう奨励していただきたい」と語った。マララさんは23、24両日に東京都内で開催される「国際女性会議WAW!」に出席し、同会議で基調講演を行う。

*3-3:https://digital.asahi.com/articles/DA3S13947532.html (朝日新聞 2019年3月24日) マララさん「女子教育へ投資、未来作る」 国際女性会議で講演
 女性が教育を受ける権利を訴えてノーベル平和賞を受賞したマララ・ユスフザイさん(21)が23日、東京都内で開かれた政府主催の第5回国際女性会議と主要20カ国・地域(G20)に政策提言を行う「Women 20(W20)」の合同セッションで講演した。マララさんは「今、女子教育に投資すれば、想像できないほどの未来を作ることができる」と訴え、各国に支援を求めた。マララさんはパキスタン出身。女性が教育を受ける権利を訴え、2012年10月にイスラム武装勢力に銃撃された。現在は英オックスフォード大に通う。講演で「過激派は教育の権利を訴えた私を攻撃した。でも失敗した」と主張。「私の声は大きくなっている。今、学校に行くことのできない1億3千万人の子どもを代表してここにいる」と語った。また、全ての女子が中等教育を受けられれば、30兆ドルの経済効果があるとの試算を紹介。「我々は行動を起こさなければいけない」と呼びかけた。安倍晋三首相は国際女性会議のあいさつで、日本政府として途上国での女子教育の支援を表明。「20年までの3年間で、少なくとも400万人に上る途上国の女性たちに質の高い教育、人材育成の機会を提供して参ります」と述べた。
■男女の労働参加、格差縮小へ提言
 W20は23日、今年6月に大阪で開かれるG20首脳会議を前に、安倍首相に女性に関する経済政策の提言を手渡した。企業のリーダーや研究者の女性たちでつくるW20はG20の公認グループで、2015年に発足した。経済発展には男女平等が不可欠として、政策を女性の視点で捉え直そうという取り組みだ。日本で初のW20開催となった今年は、「労働」「デジタル」「投資」など計7項目の提言をまとめた。重視したのは、労働参加率の男女格差の縮小。14年にG20が採択した「25年までに各国の労働参加率の男女間格差を25%減らす」という目標を達成するため、20年のG20で中間報告を行うことを求めた。企業や役所の管理職を30年までに男女同数にするとした国連による目標の達成に向けてG20が各国の進み具合を確認する仕組みも求めた。

<社会における女性差別>
*4-1:https://ryukyushimpo.jp/news/entry-885652.html (琉球新報 2019年3月8日) 小学校の先生70%が女性なのに、管理職はわずが22%  2018年度沖縄県内 中学・高校はさらに低く
 沖縄県内の小学校教諭は女性が70.2%を占めるにもかかわらず、教頭以上の管理職は女性が22.0%と低く、男女比率が逆転していることが2018年度学校基本調査から分かった。長時間労働が常態化する中で家事・育児まで負担する女性教諭は管理職に挑戦しにくく、数が伸び悩んでいると見られる。管理職経験者も「女性への重圧は大きく、管理職を勧めるのもちゅうちょする」と話す。女性管理職の割合は中学16.2%(女性教諭割合50.0%)、高校10.4%(同45.3%)とさらに低い。国が掲げる指導的地位にある女性の割合「2020年までに30%」は現実的に不可能だ。全国平均は県内よりさらに少なく、中学は県内より6.5ポイント低い9.7%、高校は1.6ポイント低い8.8%にとどまる。小学校は22.9%で県内より0.9ポイント高かった。1986年の男女雇用機会均等法の施行後、県内の女性管理職は小中学校は90年代前半、高校は半ばごろから増え始めた。小学校は2001~06年に3割を超えたが、その後減少に転じ、ここ数年は20%前半で横ばいだ。学校管理職は、年齢や教職経験などの条件を満たした教諭が試験を受けて昇任する。県教委は「試験は公平に行うため性別で区別していない」とし、女性比率の目標値は設定していない。19年度選考試験で小中高と特別支援学校を合わせた受験者は604人で、うち女性は104人と17.2%にすぎず、受験する人数自体が少ない。合格者は210人で女性は50人(23.8%)だった。多くの教員が長時間労働を強いられる中、現場からは「家事や育児もある女性が男性と同じように管理職を目指すのは難しい」との声が上がる。女性の退職教諭は「社会の変化は遅い。男性は家事・育児を引き取り、女性を解放して」と訴えた。

*4-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190322&ng=DGKKZO42704410Q9A320C1KE8000 (日経新聞 2019年3月22日) 働き方改革 今後の課題(上)雇用慣行見直し 抜本的に、性別役割分業の転換が急務 永瀬伸子・お茶の水女子大学教授 (1959年生まれ。東京大博士(経済学)。専門は労働経済学)
<ポイント>
○若年人口減で日本的雇用慣行の矛盾拡大
○女性の賃金底上げへ正社員比率上げ必要
○父親の帰宅なお遅く子育て参加は限定的
 2019年4月から働き方改革法のうち残業の上限規制が実施される(中小企業は20年4月から)。時間外の上限について「月45時間、年360時間」を原則とし、臨時的な事情がある場合でも年720時間、単月100時間未満(休日労働含む)、複数月平均80時間(同)が限度となる。また20年以降に施行される正規・非正規雇用労働者間の不合理な待遇差の禁止も重要だ。働き方改革は、日本経済にとって次の点から必要だ。第1に日本的雇用慣行のひずみが拡大している。企業側が長期雇用を保障し、年功的な賃金制度をとる代わりに、企業側に強い残業命令権や配転命令権が与えられる。景気が悪いときも解雇しないで済むようコア社員数を少なく採用する。このため景気が良くなると残業が発生しやすい。さらに長期雇用なので、その時々の仕事内容よりも、年功的な職能資格で賃金が決められてきた。しかし若年人口が少数となり、中高齢人口が多数を占めるような人口構造では、中年期に賃金が大きく上がる賃金制度の維持は難しくなっている。そのため企業は正社員採用を絞り、非正社員の採用を増やしていった。こうした中で、正社員の仕事負担が増えて長時間労働が恒常化する一方、非正社員の賃金は低く、若年男女の一部には貧困が拡大している。第2にグローバル競争の中で、どの先進国でも平均的な男性の年収は下落傾向にあるが、女性の稼得賃金の上昇が家計の豊かさに貢献している。しかし日本では男性が長時間労働をする一方で、女性は出産を機に離職し、その後は最低賃金近くで働く者がいまだ多い。女性の稼得能力を引き上げるには、長時間労働を当然とする働き方を改革したうえで、女性の正社員の就業継続の奨励や、非正社員と正社員の賃金格差を縮小させることが重要となる。第3に「長時間労働だが高賃金」もしくは「労働時間の自由度は高いが低賃金」という働き方の二分化は少子化を促進する。たとえ長時間働いても、男性が1人で家族を支える生涯賃金を得られる見通しを持ちにくくなった。また未婚男女に後者の働き方が広がっているが、金銭面からも、育児休業制度などの社会的保護が不十分なことからも、家族形成が困難だ。女性が稼得能力を持続しつつ子どもを持てる働き方と社会保障をつくり出すには、男性を含めた働き方の見直しが必要だ。つまりこれまでの日本的雇用慣行の大改革が必要だ。日本的雇用では、家族のケアは無職の妻が担うことが暗黙の前提とされてきた。給料に配偶者手当を上乗せする企業が多いことも、サラリーマンの被扶養配偶者を保護する社会保険での第3号被保険者制度も、こうした背景から維持されてきたのだろう。男女雇用機会均等法が施行されて30年になるが、これまでは働き方改革を伴っていなかった。このため女性にとって相対的に高賃金を得られる未婚期を延ばすインセンティブ(誘因)にしかならず、家族形成を機に「長時間労働が前提で高賃金」な仕事を離職する者が多数だった。総務省「労働力調査」によれば、17年の35~39歳層の女性正社員比率は35%程度にとどまり、有配偶に限定すれば29%で、40歳代も同程度だ。07年の35~39歳層の29%、有配偶の21%からは上昇しているが、中年期の女性正社員割合は3割程度にとどまる。また女性正社員の平均年収は300万円を超えるが、パートは100万円台、契約社員・嘱託社員でも200万円前後だ(労働力調査から所得階級の中位数を使って金額を推計)。女性の賃金の底上げには、正社員比率を上げるか、非正社員の立場でも経験とともに賃金が上がるような働き方をつくり出すしかない。ここまでの働き方改革は成功しているのだろうか。正社員女性の出産離職が大卒中心に減っているほか、女性正社員だけでなく男性正社員の労働時間についても、特に子どものいる層を中心に安倍政権下で減少しており、一定の成功を収めたといえる。労働力調査によれば、労働時間は一貫して減少している(図参照)。育児休業取得が増え育児短時間勤務も法制化されるなど、特に幼い子どものいる女性正社員の労働時間は目立って減った。変化は比較的小さいが、男性正社員の労働時間も減っている。幼い子どもを持つ男性の労働時間はより大きく減っている。しかし事業所に対する調査である厚生労働省「賃金構造基本統計調査」でみた傾向は異なる。25~34歳男性の所定内労働時間と残業時間の合計は、世界金融危機後の09年に下落した後、緩やかな増加傾向にある(図参照)。図には示していないが、10~99人企業の月間所定内労働時間は1千人以上の企業よりも10時間ほど長い。一方、1千人以上企業は景気動向とともに残業時間が最も伸びる。景気が良いときに残業が増えるのは通常の景気循環の動きだ。ではなぜ両調査の傾向はかい離しているのか。労働力調査は月末1週間の労働時間を個人に尋ねたものだから個人の記憶による。一方、賃金構造基本統計調査は常用労働者10人以上の企業で賃金台帳に記録され、賃金が支払われた労働時間だ。労働力調査はサービス残業を含めた正社員の労働時間が減少傾向にあることを示す。賃金構造基本統計調査は、最近の景気回復による需要増で残業が増加傾向にあることを示すとみられる。全般に、個人対象の調査からは依然男性の労働時間が長い実態が見えてくる。16年の総務省「社会生活基本調査」によれば、小学校在学の10歳未満の子どものいる父親は、午後7時には半数、8時には37%、9時には25%がそれぞれ仕事をしている。専業主婦世帯と夫婦共働き世帯を比較すると、8時に父親が仕事をしている割合はそれぞれ43%と35%で、共働き世帯の父親はやや帰宅時間が早い。しかし夕食時間の6時をみると、どちらの世帯の父親も7割超が仕事をしている。一方、共働きの母親は、6時を過ぎると1割未満しか仕事をしておらず、子育てへの父親参加はまだ限定されている。賃金面では、一般雇用男性の40~44歳層の所定内賃金は07年からの10年で33万円ほど減ったが358万円だ。一方、同年齢の正社員女性の賃金は13万円ほど上昇したとはいえ262万円にとどまる。なお賃金構造基本統計調査から、月間労働時間が205時間(週40時間労働で4週働き、時間外上限の原則である月45時間を足した水準)を超える者の割合を計算すると、景気回復とともに上昇しており、20歳代~40歳代の男性正社員の2割弱、女性正社員では6%程度にのぼる。特に男性については今後も仕事の効率化など工夫が求められる。残業規制の強化により、疾病やメンタルヘルス悪化の緩和が期待される。しかし男性が家庭時間を持ち、女性が働きやすくなるにはまだ道は遠い。同時に正社員と非正社員の格差縮小も重要だ。日本企業の強みは人材育成にあったとされるが、非正社員は企業内の人材育成の仕組みから外れてしまっている。同一労働同一賃金ガイドラインでは、仕事の差と賃金差について納得できるものとするよう求めている。筆者は今後の日本経済を考えれば、納得性に加えて、人材育成に寄与するステップアップ可能な働き方とすることが重要だと考える。

<男女共学高校での女性蔑視の刷り込み>
*5-1:https://news.yahoo.co.jp/byline/sendayuki/20180803-00091738/ (Yahoo 2018/8/3) 東京医大だけではない。女子中学生も入試で不当に落とされているー都立高校の入試
●東京医大以外にも、女性枠はある。
 東京医大では、2011年以降、女性が入学者の3割を超えないように入試の点数を操作していたという。女子の受験生のペーパーテストの点数を一律に減点し、男子の小論文に加点していたというのだ。酷い話である。しかし、女性がテストで優秀な点をとっても入学が許可されないことは、大学入試だけではない。実は都立高校の入試もそうである。女子学生は男子の合格者よりも高い点数を取っていても、不合格になっているのである。その理由は、男女別募集定員の存在である。
●男女別募集定員の緩和措置すら必要でないと答える中学校長が2割
 男女別定員があることによって割を食っているのは、成績優秀者が多いほうの女子である。1998年から、この男女別に募集人員を定めている都立高校の「男女間の合格最低点における著しい格差を是正するため」、募集人員の1割だけは男女に関係なく、成績順に合否を決めることで、少しでもこの不平等を是正する制度を始めている。全定員のなかのたった1割だが、それでもこの制度すら不要だと考えているひとはいるようだ。アンケートに答えた中学校の校長53人のうち、約2割程度はこの是正措置すら不要だと考えているようだ(平成30年度東京都立高等学校入学者選抜検討委員会報告書。以後、この報告書を紹介する)。
●男女別定員を緩和すべきではない理由
 それでは、中学校長が男女別定員を緩和すらすべきでないと考える理由はなんだろうか。
○ 男女別定員制の緩和により合格するのは、ほとんどが女子である。東京都には私立の女子高等学校が多く、東京都の教育の支えの一つであると考えるが、男女別定員制の緩和の制度により、結果的に女子を多く入学させることになり、私立の女子高等学校から学生を奪う形となってしまう難しさがある。
○ 成績の上位には女子の方が多い傾向がある。そのため、全てを男女合同定員制として合否を判定したとすると、今以上に男女比に大きな偏りが生じ学校施設等に影響が出ることが懸念される。
○ 実際に男女別定員制の緩和を行うと、多くの場合、女子の入学者数が増加する。私立高等学校でも女子の定員の方が多いため、結果的に男子生徒の進路先が決まらない状況が生まれてしまう。つまり、女子を入学させると、私立の女子校から生徒を奪ってしまう、男性生徒が進学できなくて困ってしまう、学校の施設に影響がでる、というのである。これに対して、現場の高校の校長は、また違った意見を持っている。
○ 男女間の学力差が縮まることで授業効率が良くなり、生徒の学力向上につながっている。
○ 男女別定員制の緩和により、総合成績が同じでも性別によって合否の結果が異なってしまうことに対する不公平感を緩和することができる。
○ 男女別定員制の緩和によって女子が多く入学し、男女の生徒数のバランスを欠く状況にある。体育の授業や学校行事を実施する際の不都合や、部活動等への影響が生じる場合がある。性別ではなく学力で選抜することにより、生徒の学力向上につながっていること、不公平感が緩和されることである。他方、体育の授業や学校行事、部活動等への影響が生じるという意見もある。私自身は高校のときに男子に較べて女子の比率は半分、大学に至っては男女比が9対1(それでも女子合格者が、1割を超えたとニュースになった)、その後の仕事も男性が圧倒的に多い人生を生きている。そこまで熱心に、男女同数に配慮してもらったという記憶もない。何よりも都立高校は、定員は男女同数ですらなく、どの学校も男子の定員のほうが多い(かろうじて数校が、男女同数だ)。男女枠の緩和をこれから導入する高校もあれば、廃止する高校も同じくらいある。
○ 男女別定員制の緩和については、男女間の合格最低点を是正する点で一定の成果があるため、現行どおり、真に必要と認められる高等学校に限定して実施する。「真に必要と認められる高等学校」がどのようなものかは分からない。しかし、公立の学校が性別を理由に、女子生徒から教育機会を奪っていいのだろうか。とくに親の子に対する進学期待は、いまだ男女で違いがある。女子の進学を妨げる方向で、定員を決めることの妥当性は、何だろうか。少なくとも私には、事前に告知してあること以外、東京医大との違いは見つけられない。

*5-2:https://digital.asahi.com/articles/DA3S13912705.html (朝日新聞 2019年2月28日) (サヨナラしたい8つの呪縛:2)「男が上」、学校の刷り込み
■Dear Girls
 「なんで女子が後ろなの?」。昨春、福岡県立高校から早稲田大学に進学した女性(19)は、高校の入学式でそう思った。前列に男子、後列に女子が並ばされた。担任の女性教諭に理由を尋ねたが、教室も男子、女子と分かれた名簿順に座っており、「前からこうなっている」と返された。卒業式でもこの構図は変わらなかった。女性は「女子は男子の陰に隠れていろということか、と思えた」と振り返る。
■「差別を再生産」
 学校の中に潜む性差別を指す「隠れたカリキュラム」の事例だ、と女子栄養大の橋本紀子名誉教授(教育学)は指摘する。「例えば校長の男女比をみると、圧倒的に男性が多く、いびつだ。『上に立つのは男性』といったメッセージを子どもに伝える。学校が差別の再生産装置になっている側面もある」。橋本名誉教授によると、日本では1985年に発効した国連の女子差別撤廃条約を受け、「男女平等教育」が注目され始めた。90年代には隠れたカリキュラムへの関心が高まり、性別に関する固定的な見方から解放された教育が提唱されるように。だが、02年ごろから「伝統文化を破壊する」などとしてバッシングが始まった。
■平等めざす試み
 ただ、遅れの中にも、男女平等をめざす取り組みは重ねられてきた。滋賀県は、性別による偏見や思い込みにとらわれず、進路選択や指導ができるようにと、20年前から小中高校向けに独自の教材を作り、全校に配っている。小学生向けの教材では、学校生活の中で起こりうる場面を想定し、かける言葉を考えたり、性別による決めつけがないかを振り返ったりするページがある。「調理クラブのメンバーに、男の子は1人だけ。その子に向かって『女子の中に男子が1人だな』と言った友だちに、あなたはどんな声をかけますか――」。指導の手引には、「先生のためのジェンダーチェック」の一覧表もある。「男子に対しては女子に比べると少々厳しく指導した方がよいと思う」「生徒会や応援団長は男子がなるべきだと思う」といった意見への賛否を書き込みながら、思い込みや偏見がないか見つめ直せる作りになっている。福岡県では今年度、県教委が県立高校に男女混合名簿の導入を促した。新年度には、95校中80校近くが取り入れる。その一つの県立須恵高校の教頭は「男子が前、女子が後ろの式典風景も変わるだろう」と言う。「これまで違和感を感じる生徒もいたはずで、その気持ちにも思いを巡らせた」
■偏見知り、進む学び
 ある高校を取材した時のこと。家事分担をめぐり険悪になっている、保育士とトラック運転手の夫婦に助言を――。課題に取り組む生徒たちに先生が「ちなみに夫が保育士、妻が運転手だよ」と伝えると、「マジか!」と声が上がった。思い込みに気づいた瞬間の輝くような表情が印象的だった。無意識の偏見に気づくことは様々な学びの基礎になる。ジェンダーは格好の材料だと思う。

*5-3:https://digital.asahi.com/articles/DA3S13918841.html (朝日新聞 2019年3月5日) (Dear Girls)下げられた女性のスタートライン 医学部生、差別体験
 入試面接で「出産したらどうやって育てていくのか」と聞かれた。女子は外科に興味がないだろうからと、手術を見学させてもらえなかった――。複数の医学部入試で女子受験生が不利な扱いを受けていた問題を受け、医学生の団体が行ったアンケートには、性別を理由に差別された体験が多く寄せられた。男女のスタートラインは、女性に対する「減点」や「女性だから」という決めつけによって、一直線ではなくなっている。不正入試問題の発覚から半年あまり。現役医学部生からも、変革を求める動きが活発になっている。全日本医学生自治会連合(医学連)は先月、全国の医学生を対象にしたアンケートの中間集計と提言をまとめた。不正入試問題の受け止めや、入試や大学で性差別を受けた体験を尋ねる内容で、昨年12月から今月末まで実施中。2月1日時点で2186人(男性57・5%、女性40・7%、性別無回答1・8%)が答えた。入試に関しては「医師という職業に就く権利は最大限尊重されるべきであり、医師の多様性は社会の要請するところだと考える」(男性、3年)などの回答があった。入試の面接で、結婚や出産などに関する質問を受けた人は14%。主に女性から「妊娠はあなたにとってメリットかデメリットか」(2年)といった質問を受けた経験談が寄せられた。入学後も「『女子は外科に興味が無いだろ』と言われ、手術見学の機会を与えられなかったことがあった」(5年)など、性別を理由に学ぶ機会を奪われたという声もあったという。不正入試の背景として、医師の過重労働の問題が指摘されていることに関しては、約7割が「将来の働き方を不安に思っている」と答えた。医学連は調査結果を踏まえ、大学や自治体、病院に対して、性別・年齢を理由にした不公正な扱いを禁止することや、医師の労働環境の改善、医師の多様性を確保することなどを求める提言をまとめた。一方、先月27日、東京・永田町では、医療系学生団体「入試差別をなくそう!学生緊急アピール」の集会が開かれた。あいさつに立った医学部3年の女子学生は「受験生の時から疑問だったことが、やっと公になった。行動し、社会で問題を共有したい」と訴えた。団体は、問題発覚後の文部科学省の対応は不十分だとし、完全な差別撤廃などを求めている。
■「生きにくそう」海外志望も
 「在学中に感じていた違和感は、気のせいではなかったんだ」。20代の女性医師は昨年、医学部の不正入試問題が発覚したとき、そう思ったという。文科省の調査で、出身大学でも男女の合格率に差があったことがわかった。在学中、複数の教授らがこう発言しているのを耳にした。「最近、女子学生が増えてきて大変なんだよね、『調整』が」。めざす医師像を語っても、担当教授に「今はそう言っていても、女医さんは家庭をもったら考えが変わっちゃうから」と返された。女性は「入試でも、入学後も、医師になってからも、女性というだけで結婚・出産とひもづけられ、マイナスとみなされる。世の中の半分の人の道を閉ざすような仕組みを、残していいはずがない」と憤る。「それでも」と、女性は付け加えた。「医師の仕事にはやりがいを感じているし、経済的にも自立できる。海外で学ぶ手だってある。医師になりたい女の子たちは、どうかあきらめないでほしい」。実際、海外で医学を学ぶ女子学生もいる。千葉県出身の吉田いづみさん(24)は、2013年にハンガリーへ渡った。現在、医大4年生。留学を考えている日本の女子高校生から相談が寄せられることもある。なかには「日本だと、女子の自分は医学部への入学が難しいのではないか」という声もあるという。海外の医大を志望する都立高校1年の女子生徒(16)も「日本の医学部だと、『女子はこの診療科』と言われることがあると聞く。生きにくそう」と話す。
■浪人・地方…受験前にも壁
 18年度の学校基本調査によると、医学科の入学志願者の男女比は6:4。差があるのは、女子がそもそも受験に至る前にあきらめてしまっている面もあるのではないか。都内で医師の夫と、3人の子を育てる消化器外科医で漫画家の「さーたり」さん(41)は、そう思う。周囲には、「女の子なんだから」に続く言葉があふれていた。「多浪は恥ずかしい」「薬学部も受けておいたら?」「体力ないよね」。こうした風潮が、「女性のスタートラインを下げることにつながってきた」と感じている。「機会の不平等は医学部入試に限らない」。ジェンダー論が専門の瀬地山角(かく)・東大教授はそう話す。英国の教育専門誌タイムズ・ハイヤー・エデュケーション(THE)の世界大学ランキング2019によると、米ハーバード大の男女比は52:48で、中国・北京大も52:48とほぼ半々だ。選抜の仕方の違いはあるが、東大の資料(18年)によると、女子は24・3%。学部生に限ると19・5%に落ち込む。同様の傾向は京大や阪大にもあり、THEによると、男女比はそれぞれ76:24、69:31だ。東大は女子学生を歓迎するというメッセージを強く打ち出すために、17年度から女子学生向け家賃補助制度を始めた。「研究や教育の更なる向上のため、多様な学生が活躍するよう支援したい」という。ただ、なかなか「成果」は出ない。学部生に占める女子の割合は09年も19・0%で、横ばいで推移する。瀬地山教授によると、東大の合格者と受験生の男女比はほぼ同じ。「理系に進む女子が少ないのは一因だが、それだけではない。受験というスタートラインにすら立てない女子がいる」と指摘する。北日本の国立大の女性教授は「地方に優秀な女子が残る傾向にある」と打ち明ける。「経済状況が悪くなると、なかなか東京に子どもを出せなくなる。息子と娘がいて『1人だけなら出せる』となると、息子を行かせる傾向がある」。東大の瀬地山教授は言う。「地方出身、浪人の二つの属性を持つ女子は、東大では極めて少なくなる。社会は、自分の能力の限界まで努力する自由が制限されるのは深刻な差別だと認識し、女子をディスカレッジ(やる気をそぐ)しないでほしい」

<男女別学の公立・私立高校>
*6-1:https://mikata.shingaku.mynavi.jp/article/22791/ (進路のミカタ 2016.6.23) 栃木はなぜ公立校の男女別学が多い?
 公立高校といえば共学のイメージですが、北関東には男女別学の公立高校がまだ残っています。埼玉県に16校、群馬県に17校、栃木県に11校の別学校があるそう(2015年次のデータ)。この3県の教育委員会が、いまだに別学を存続させているのは、なぜでしょうか?まず、男女別学・共学のメリットをそれぞれ整理してみましょう。この記事をまとめると
○別学のメリットがわかる
○共学以外に併学というシステムもある
○栃木県にはいまだに公立校の別学が残っている
●男女別学の特色
 男女別学の強みは、男女それぞれの違いに応じた指導を受けられること。別学は勉強に集中しやすい環境と言えるでしょう。2012年のPISA(生徒の学習到達度調査)を見ると、読解力・数学的リテラシー・科学的リテラシーすべての面において、男女の得点に差があるのです。数学的リテラシーと科学的リテラシーにおいては男子の方が得点高い一方、読解力においては女子の方が得点高いことが明らかに。やはり、男子は女子に比べて生まれつき脳の空間認知中枢が大きいけれど、言語中枢が小さいため言語能力の発達が遅いという特徴を表していますね。このように、男女の違いを活かした教育ができるのが、男女別学なのです。男女別学のメリットを挙げてみると……
・男女の違いに応じた教育ができる
・異性の目を気にすることなく伸び伸びとできる
・男子任せになったり女子任せにすることがないので、バランスよくいろんなことに挑戦できる
などがあります。
ただ、高校生といえば、学校で異性とおしゃべりするのも楽しみな年ごろではあります。実際に、別学の高校だと異性と出会うチャンスは、ほとんどありません。文化祭だけが他校の異性と交流できるチャンス!と思わず力が入ってしまう学生も多いのでは? もちろん出会いは共学に比べたら圧倒的に少ないですが、それでも異性がいない気楽さや、同性ならではの団結力は魅力の一つと言えるでしょう。
●共学の特色
 一方、共学の特色を挙げて見ると……
・男女問わず友だちがたくさんできる
・学園祭や運動会が盛り上がる
・恋愛のチャンスも多い
勉強面でも、男女が共に机を並べることで、刺激し合えることもあります。別学出身の人は、いまだに共学に憧れるという声は少なくありません。一方で、恋愛に夢中になり、学業や部活がおろそかになってしまうケースもあるようです。同級生だけでなく、先輩の男子と付き合うこともあるとか。そして、別学と共学のいいところをミックスしたのが、「併学」というスタイルです。東京や神奈川にある私立のある学校3校では、校舎やクラスなどは男女別々、行事やクラブ活動を男女合同で行うことで、学習面では男女それぞれの個性を伸ばしクラブ活動では互いに刺激し合うことができます。実際に、その私学の学校は3校とも、「文部両道」の私学として全国的にも知られています。
●北関東の公立高校には男女別学が多い?
 別学、共学そして併学の特色を挙げてみましたが、実際のところほとんどの公立高校は共学で、別学か共学かという選択肢がないのが現状です。ほとんどの公立高校が共学になったのは、こんな時代背景があります。戦後新たな民主主義教育が導入されたことで、公立中学校はすべて共学になり、公立高校も北関東から東北エリアの一部を除いてほとんどが共学に。そして1970年代には、別学校が多かった東北地方や中部地方でも、共学校への移行や共学校を新設する動きが多かったようです。これは、男女共学の高校を増やすことが目的でした。男女差別撤廃条約が批准された1980年代には、さらにこの動きが加速し、1989年3月には学習指導要領が改訂され、家庭科が1994年度から男女共修になっています。こうした時代の流れで、別学はどんどん減少していく一方。それにも関わらず、北関東の埼玉県・群馬県・栃木県の3県では、別学校の共学化が議論されたことはあっても、存続されているのです。なぜかというと、北関東に残っている男女別学は、もともとは旧制中学校・高等女学校を前身とする伝統ある高校だったこともあり、歴史を重んじるという意味でも、別学を残したかったのです。特に栃木県においては、県政世論調査によると、8割近くの生徒・保護者や6割の県民が共学校と別学校の共存を望んでいることがわかります。栃木県民が、男女別学に関心があることは、ツイッターでも明らかになりました。2015年地元の新聞(下野新聞)ホームページ「SOON」のツイッターで、編集部が「全国でも屈指の『別学県』である栃木県。時代の流れか、それとも『伝統』か」と意見を求めたところ、これまでにない盛り上がりを見せ、「維持」60%、「原則禁止」26%、「分からない・その他」14%という結果になっています。栃木県民は、男女別学への想いが人一倍あることが、一目瞭然と言えるでしょう。北関東に別学が残っていたのは、偶然ではなく、きちんと意味があるのですね。地域の歴史を勉強すると、さまざまな発見があります。歴史を知ることで、より自分が住んでいるところに興味を持てるようになるかもしれません。自分が住んでいる地域に興味がある方は、地域の歴史を学んでみてはいかがでしょう。

*6-2-1:http://www.urawa-h.spec.ed.jp/index.php?page_id=189 (浦和高等学校校歌)
一、 校舎の礎動きなき       我が武蔵野の鹿島台
    朝に望む富士の嶺の      雪千秋の色清く
   夕にうたふ荒川の        水万歳の声高し
二、 将来国家に望みある       一千有余の学生が
   守る倹素と廉潔の          美風示して春ごとに
   大和心の香も深く         匂ふや庭の桜花
三、 花あり実ある丈夫が        堅忍不抜の精神を
   川ゆく水の末絶えず        高嶺の雪と磨きつつ
   雲井に続く武蔵野の         広き宇内に雄飛せん

*6-2-2:http://www.geocities.jp/musichall_8888/kouka.html (浦和第一女子高等学校校歌)
一  アカシアはもえ さみどりの           二  流れたゆとう 荒川の
   広き野をとぶ 綿雲に               朝もやをつく せきれいの
   望みはわきて かぎりなく             うたごえひびく たまゆらも
   わが胸にあふる                  清らかな空に
   思いみよ 心ひそめて               乙女子のゆめは はてなし
   ここに三年の春秋を                ここに三年の青春を
   えらばれてすごす よろこび            えらばれて 誇るさいわい
   ああ 浦和第一女子高校              ああ 浦和第一女子高校
三  夕月匂う つくばねを             四  枯葉とび散る 木枯しに
   はるかにあおぐ ひとときも            山脈 雪をかつぐとき
   瞳をあげて 祈らまし               日ざしはとおる おおらかさ
   あつき心に                    生命もあらたに
   花ひらく 遠きみらいを              まごころをこめて いそしめ
   ここに三年を学び舎に               ここに三年の御教えを
   えらばれて集う さだめを              えらばれて うけるたのしさ
   ああ 浦和第一女子高校               ああ 浦和第一女子高校

*6-3:http://cms.saga-ed.jp/hp/karatsuhigashikoukou/home/template/html/htmlView.do?MENU_ID=18744 唐津東高等学校・唐津東中学校校歌(併設型中高一貫校)
           「天日かがやき」(昭和二十五年)
                           下村湖人作詞 諸井三郎作曲
一. 天日かがやき大地は匂ひ        二. はてなく廣ごる眞理の海に
    潮風平和を奏づる郷に            抜手を切りつつ浪また浪を
   息づくわれらは松浦の浜の           こえ行くわれらは松浦の浜の
    光の学徒                  力の学徒
   光 光 光の学徒              力 力 力の学徒
三. 平和と眞理に生命を享けて       四.われらの理想は祖国の理想
    久遠の花咲く文化の園を          祖国の理想は世界の理想
   耕すわれらは松浦の浜の           理想を見つめて日毎に進む
    希望の学徒                われらは学徒
   希望 希望 希望の学徒           光 力 希望の学徒

<女性の政治参画について>
PS(2019年3月26日追加):*7に、「①朝日新聞社が2007~18年の47都道府県議選を4年ずつ1~3期に分けて分析したところ、1人区では無投票が35%から49%に広がっていた」「②候補者の中で女性が占める割合は1~3期いずれも11~12%と低い」「③特に1人区で女性候補者が少なく、3期とも6~7%」「④当選者の中での女性の割合も、1人区は3%→2%→2%と極めて低く、3期はわずか8人だった」と記載している。
 私は、佐賀三区を地元として、2005~2009年の間、自民党衆議院議員をしていたので理由がわかるのだが、①は、確かに無投票は有権者の選択機会を奪うため望ましくないが、メディアが権力と闘っている姿を演出するために薄っぺらな理由で議員を叩きすぎるので、仕事と比較して議員が尊敬されず、4年毎に選挙があるため安定しないのに報酬は低く、勤め人から議員になると損失の多いことが、まず男女共通の問題である。さらに、②③④の女性については、1人区なら男性を出して地元に強く利益誘導して欲しいという住民の願いから女性の当選率は男性より低くなり、既に男性の現職県議がいる場合は現職有利で公認されるため女性が公認されず、女性が候補者になると良妻賢母をよしとする人から「でしゃばり」「目立ちたがり」「性格が悪い」等々の罵詈雑言を浴びせられ、その結果、家族にも迷惑をかけることになるからで、つまりメディアはじめ有権者(男女とも)も女性に対して差別意識を持っているからである。

*7:https://digital.asahi.com/articles/DA3S13949873.html (朝日新聞 2019年3月26日) 無投票が半数/女性当選わずか 都道府県議選1人区、課題の山 統一地方選
 朝日新聞社が2007~18年の47都道府県議選を4年ずつ1~3期に分けて分析したところ、無投票の選挙区が1期(07~10年)の24%から、3期(15~18年)には32%に増え、なかでも1人しか当選しない1人区では無投票が35%から49%に広がっていた。1人区では、女性当選者が極端に少ない状態も続いている。1人区を見直す必要性を指摘する専門家もいる。
■07~18年分析
 1期と3期を比べると、全国の総定数は98減って2686に、総候補者数は252人減って3922人に。無投票の選挙区は、275から356に増えた。県議選は選挙区ごとに定数が決められており、1人区が全体の4割を占める。その1人区では、1期から3期にかけて無投票が166選挙区(1人区の35%)→179(同39%)→212(同49%)と急増。3割ある2人区でも、無投票は23%→25%→32%と拡大した。29日告示の統一地方選道府県議選でも、神奈川(前回11)や埼玉(前回9)などで増え、全国の無投票選挙区は過去最多だった前回を超えそうな情勢だ。候補者の中で女性が占める割合は1~3期いずれも11~12%と低い。特に1人区で女性候補者が少なく、3期とも6~7%。当選者の中での女性の割合も、1人区は3%→2%→2%と極めて低く、3期はわずか8人だった。1人区は複数が当選する中選挙区・大選挙区に比べ、「死票」も多くなり、得票率と議席占有率にズレが生まれる場合もある。3期の愛知では、選挙戦になった1人区12選挙区で、自民の得票率が49%だったが、自民の議席占有率は75%。1人区が多い埼玉でも得票率50%に対し、占有率は70%だった。
■「選択機会奪う」
 地方選挙に詳しい関西大・名取良太教授(現代政治分析)の話 無投票は有権者の選択機会を奪い、政治的関心を低下させるので望ましくない。抜本的な対策ではないものの、選挙区の区割りを変えて1、2人区を減らせば無投票は減るだろう。ただし制度だけの改革でなく、無投票を減らすには自民に対抗できる政党の存在が必要だろう。

<女性の登用について>
PS(2019年3月27日追加):*8は、見えない壁ではなく明確に見えている壁であり、その内容は1985年に制定された最初の男女雇用機会均等法で努力義務を課し、1997年の改正で禁止した女性差別そのものである(https://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-11902000-Koyoukintoujidoukateikyoku-Koyoukintouseisakuka/0000087683.pdf 参照)。
 そのため、現在もそのような女性差別が続いているのなら、その地域は日本の先端より35年も遅れていることになるが、世帯の貧しさは女性が相応の給料で働かなければ改善せず、地域の貧しさも女性を教育して質のよい労働力を多く作らなければ改善できないため、早急に変える必要があることは明白だ。また、男女が結婚相手を選ぶ基準も、時代とともに変わる。
 なお、*9については、私も「女性の地位向上は今一つ」「強く印象に残ったのは東日本大震災と福島第1原発事故」「好きな歌謡曲は『世界に一つだけの花』」「平成は戦争のない良い時代だった」と思うし、「ネットは悪事に使う人もいるが、生活や社会を便利な方に一変させる効果があった」と考える。

*8:https://digital.asahi.com/articles/DA3S13953008.html?iref=pc_ss_date (朝日新聞 2019年3月27日) 女性ゼロ、市議も管理職も 出る杭打たれる風土 鹿児島・垂水
 女性市議が一度も存在したことがないまちがある。鹿児島県垂水(たるみず)市。4月に行われる市議選では2人の女性が立候補を予定するが、見えない壁がそびえ立つ。意思決定の場に女性がいないという現実。そして、その背景にあるものは。2月の定例会の本会議場で、議長席と議員席に12人の男性が陣取った。答弁に備える市長、副市長、各課の課長の席も男性一色。全国1788地方議会のうち、「女性ゼロ議会」は339。その一つが垂水市議会で、1958年の市制施行以来、女性議員が誕生したことはない。市役所の管理職に女性が就いたこともない。市総務課によると、昨年4月現在の職員数は男性139人に対し、女性47人。管理職にあたる課長級以上の17人は全員男性だ。森山博之総務課長(60)は「結果的にそうなっているだけ」と話した。一方、15年以上勤める女性職員は「女性に管理職を任せる下地ができていないと感じる」と言う。その象徴とみるのが、「総財企」と呼ばれる総務、財政、企画政策の3課の人事だ。この3課は市政の中枢を担い、職員数も多いが、係長級には男性が就くのが常。この女性職員は「部下の多い重要ポストに配属して育てないと、管理職も見えてこない」と漏らす。内閣府の2017年調査によると、鹿児島県の43市町村のうち、課長級以上の女性職員がいないのは、3割弱の12市町村。市区町村の管理職に占める女性比率も、鹿児島県は7・8%で、7・3%の愛媛県に次ぐ全国ワースト2だ。来月1日付の人事で、垂水市役所初の女性課長が誕生することが決まったが、変革は簡単ではない。民間での管理職経験がある市内の女性は「会社で男性社員が女性の上司に指示されると落ち込んで辞める、ということも目にしてきた」と証言する。「女性が上に立ちにくい。出る杭は打たれる風土が残っている」
■進学率、男子と開き
 女性の政治進出を阻む壁の一つが、「女性は教育水準が低いという意識」(県内の女性市議)。その根っこには、性別で教育投資が左右される現実がある。鹿児島市の女性公務員(24)は学生時代、九州大理学部を目指した。前期試験は不合格。後期は親に黙って熊本大を受験。合格を聞いた母に入学を猛反対され、地元の短大に進んだ。悔しい思いは今も残る。県内の20代の女性公務員は「女だから」「県内で就職するなら有利」と両親に言われ、短大を出た。弟は県外の4年制に通った。「女子は短大でいい、という風潮を感じる」。文部科学省の「学校基本調査」をもとに18年度の都道府県別進学率(浪人を含む)を算出すると、鹿児島県の4年制進学率は男子が43・4%で全国35位なのに対し、女子は34・1%(全国平均50・1%)で最下位。だが、女子の短大進学率は15・1%(同8・3%)で1位だ。県内で約20年短大講師をしている50代の男性は「優秀な旦那さんと結婚し、次世代を担う子を育てるという女性の役割は大きい。学生にもその思いを伝えている」と持論を述べた。鹿児島国際大の山田晋名誉教授(ジェンダー論)は、1人当たり県民所得が全国44位(15年度)という経済的な厳しさと男性優先の社会の二つが、「男女に能力差がある」との固定観念を生む「負の両輪」だと指摘。「希望する進学を妨げられて女性が負うハンデが、学歴に対する偏見と相まって、女性議員の誕生も阻んでいる」

*9:http://qbiz.jp/article/150916/1/ (西日本新聞 2019年3月27日) 平成は「良い時代」7割超が評価 女性の地位は低評価、世論調査で
 天皇代替わりに伴って、間もなく幕を閉じる平成の時代に関する郵送世論調査(3千人対象)の結果、「どちらかといえば」を含め、73%が「良い時代」と評価していることが分かった。57%が他者に対し「不寛容になった」と回答。女性の地位については「ほとんど向上していない」「まだ不十分」を合わせると86%を占めた。調査は共同通信社が2〜3月に実施した。経済が停滞し、大災害が相次いだが、戦争のない平和な時代であり、多くの人が日々の暮らしに一定の充足を感じていたといえそうだ。一方でインターネットを中心に、弱者への攻撃や排外主義的な主張が勢いを増している世相を懸念する姿も浮かぶ。強く印象に残る国内ニュース(三つまで)は、「東日本大震災と東京電力福島第1原発事故」が70%で最も多く、「オウム真理教事件」50%、「阪神大震災」40%が続いた。国際ニュースは「米中枢同時テロ(9・11テロ)」が44%でトップだった。業績を評価する歴代首相(3人まで)は、「自民党をぶっ壊す」と訴えて国民を熱狂させた小泉純一郎氏が77%の支持を得た。現首相の安倍晋三氏が38%、消費税導入を断行した竹下登氏が22%だった。平成を代表するスポーツ選手(3人まで自由回答)は、米大リーグで数々の記録を打ち立てたイチロー元選手が1位。フィギュアスケートの羽生結弦選手と浅田真央元選手が2位と3位で続いた。芸能分野では、2016年末に解散した国民的アイドルグループ「SMAP」が1位。代表曲の「世界に一つだけの花」は、好きな歌謡曲でも圧倒的に支持されてのトップだった。ネットの普及が生活や社会を一変させたことについては、「良かった」41%、「どちらかといえば良かった」45%で肯定的な意見が優勢だった。

| 男女平等::2019.3~ | 04:41 PM | comments (x) | trackback (x) |
2019.3.19 春は来たか? ← 地方の主産業としての農林漁業と農業政策について (2019年3月20、21、22、23日に追加あり)
 
  梅の花     桃の花    瀬戸内の桜  アーモンドの花 レモンの花と蜂蜜

(図の説明:春は梅の花に始まり、桃・アーモンド・桜・レモンと続き、花があるからには蜂蜜がとれて実がなる。掲載の写真は、どれも日本国内で、日本産のレモンは美味しい)

(1) 日本の食料政策について
1)食料自給率が低い理由は?
 我が国の食料自給率は、*1-1-1のように、38%と先進国の中でも最低である上、耕地面積はこの10年で4%減り、農業現場は高齢化が進んで労力不足が深刻となり、生産基盤の弱体化がさらに進みかねないが、そうなった理由は、戦後の農業政策に失敗が多すぎたからだと言わざるを得ない。

 失敗の原因は、主に「①主食とされる米麦の価格や供給を政府が管理する制度(食管法)が、太平洋戦争中の食料不足だった1942年に制定され、それが1995年に『主要食糧の需給及び価格の安定に関する法律(食糧法)』が施行されるまで続いたこと」「②1970年代になると米が余って備蓄米が年間生産相当量まで達したため、政府主導で減反政策を推進して耕作放棄地を増やしたこと」である。これは、時代が変わっても既得権を離さず管理を続けたがる役所の性格によるものだが、政府が管理しすぎると、よい意味での市場原理が働かず産業に競争力がつかないため、成長が遅れる。これは、昔の社会主義・共産主義経済の行き詰まりと同じ現象だ。

 また、「③2004年に『主要食糧の需給及び価格の安定に関する法律等の一部を改正する法律(食糧法を大幅に改正)』を施行して誰でも自由に米を販売・流通させることが出来るようにした」「④輸入も一定額支払えば自由に行うことができるようにした(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%A3%9F%E7%B3%A7%E7%AE%A1%E7%90%86%E5%88%B6%E5%BA%A6 参照)」などの改正もあったが、これらは1970~1980年代にはやっておかなければならなかった改革で、時代に合わせて変化しなかった結果、農業は所得が低いため次世代が参入しにくく、衰退が続く産業になった。そのほか、「⑤農業は製造業と比較して、大切にされなかった」という経緯もある。

2)貿易自由化は正しい意思決定だった?
 そのため、TPP11やEUとのEPAの中で日本の農業は生き残れるのか心配だが、世界の人口は確実に増えており、中長期的には食料が逼迫するので、農業はじめ食品産業に追い風が吹くのは間違いない。その時、IT・データ・自動車を食べることはできないため、国民の食料確保(食料自給率)は、まじめに考えておかなければならない重要な課題である。

 なお、まじめに取り組んでいる地域JAも多いが、これまでの経緯から、*1-2-1・*1-2-2のように、米の補助金政治・補助金行政に頼りがちな地域も多い。こうなると、*1-2-4のように、国産米が高値となり、安価な米を求める消費者は豪州産米を使わざるを得ない変なことになる。

 このような政府の政策に翻弄されない農業を行うには、生産性を向上させ、*1-1-2のように付加価値を上げ、補助金に頼らない農業を作るのが正攻法で、そうなると財政の無駄遣いもなくなる。

3)農家所得を高める方法について
 農家所得は、「ア.農業収入 – イ.農業経費[i)機械の減価償却費 ii)エネルギー代金 iii)資材購入費 iv)労務費 v)販促費等)] + ウ.補助金」であるため、農家所得を増やすには、アの農業収入を増やし、イの農業経費を減らして、ウの農業補助金もできれば増やしてもらう方法しかない。

 そして、アの農業収入を増やす方法は、付加価値の高いものを多く作ることしかないため、①栽培面積を増やす ②他では作れないものを作る ③品種改良する ④自然エネルギーを使った自家発電電力や副産物を販売する 等々の方法がある。

 イのうち、機械の減価償却費を減らす方法は、「(生産国にかかわらず)安い機械を選択する」「農業生産法人や集落営農等の集団で機械を購入して、一人あたりの負担を軽くする」などが考えられるが、日本では製造業のために農業が犠牲にされ続けた。また、エネルギーは、「自然エネルギーを使って自家発電する」「動力は電力にして自家発電で賄う」「エネルギー会社に交渉する」等が考えられる。

 さらに、資材購入費は、独占や寡占になると価格をつり上げられるので、JAだけでなく、その他の資材販売会社とも価格を比較し、安くて品質のよいものを選択できるようにすればよい(既にそうなっている)。また、労務費は、今回JAがセッティングした外国人労働者を繁忙期だけ雇えるシステムや農福連携、繁忙期のアルバイト雇用など、栽培面積の増加に労務費が比例しない人の使い方もある。販促費は、これまでは農協による国内販売が殆どだったが、他産業のように商社等を使って輸出する方法もある。

 ウの農業補助金を増やしてもらう方法は最も安易だが、国が農業に口や手を出しすぎると統制経済となり、よい意味での市場原理が働かなくなるため、日本の農産物の競争力を弱める。

 なお、農水省は、*1-1-3のように、中長期的な農政の方向性を示す食料・農業・農村基本計画の見直しについて、秋から有識者らで構成する審議会での議論を始め、生産現場の声をより反映させようと農業者から意見聴取するそうだが、物は消費者がいて初めて売れ、消費者によって磨かれるため、政府が生産者の意見だけを重視しているのは間違いだ。

 もちろん、何も聞かずに「えいやっ」と政策にするよりは農業経営の現状・課題に関して農家や食品事業者の声を聴いた方がよいが、全方位の要望を聞いた上で客観的な市場調査による裏付けをしていなければ、いくら丁寧な言葉で議論しても的外れの政策ができる可能性が高い。

(2)中山間地政策について 



(図の説明:中山間地の定義は不明だが、中山間地に合わないのは穀物の大規模生産だけで、高度・気温・傾斜・草地を利用するなどの工夫によって、他ではできない生産方法があるだろう)

 農水省は、*1-2-3のように、農地保全協定を集落等で作成すれば①外部からの人材確保 ②住み続けられる地域づくりに向けた生活環境の充実 ③農作業の効率を高めるためのスマート農業推進 に、2019年度の中山間地域等直接支払制度で加算措置を設けるそうだ。もちろん、中山間地の農業も継続が望まれ、そのためには①②③が必要だが、次第に自立して欲しい。

 なお、*1-3-1の鶏卵・養鶏は、中山間地でもでき、物価の優等生で輸出競争力もあるのに生産調整を優先するのでは、米と同じ過ちを繰り返す。さらに、*1-3-2の牛乳・乳製品も、日欧経済連携協定(EPA)で輸出関税が即時撤廃されたのに、牛乳や卵の使用割合が合わせて50%以下の加工食品しか輸出可能にならないというのは、かなり情けない。

(3)スマート農業

 
ジャガイモの花 大豆の花  カボチャの花   ナスの花      蕎麦の花と蜂蜜

(図の説明:大豆はマメ科なので、スイートピーのような花が咲いて実がなり、青いうちにとった実が枝豆だ。カボチャやナスの花も意外と美しい。広い畑にジャガイモや蕎麦の花が咲くのは壮観で、蕎麦の花の蜂蜜もある。写真はもちろん日本国内だ)


 スイカの花   イチゴの温室栽培  ヒートポンプの仕組み     地熱発電所  

(図の説明:左はスイカの花で、やはり美しい。また、左から2番目の図のようなハウスでのイチゴ栽培もあり、施設園芸で加温するにも右から2番目の図のようなヒートポンプは有用だ。そして、右図のように、中山間地には地熱発電が可能な地域も多い)

1)CO₂の利用
 *2-1のように、地球温暖化に伴う気候変動が起こり、農業は世界の温室効果ガスの1割以上を占めるため、環境保全型農業実践の時だそうだ。そのような中、農研機構は大気中のCO₂濃度が高い中で水稲を栽培することで収量が16%増えたという研究結果を発表し、農家が環境に配慮した農業(減農薬・減化学肥料栽培と堆肥の使用)を行うことで温室効果ガスが削減でき、昆虫や魚類などの生物多様性の保全に繋がるそうだ。

2)ICT・IoTの利用
 なお、*2-2のように、総務省がICT・IoTを活用した農業の省力化を、2030~40年頃までに実現を目指すとしたのは、5年後ではなく10~20年後としたところが日本独特の遅さで、これでは使い物にならないのである。

3)衛星の利用
 北海道は、*2-3のように、「北海道衛星データ利用ビジネス創出協議会」を組織し、農業分野ではトラクターの自動走行や農作物の生育、品質把握などで衛星データの利用が進みつつあることを踏まえて、道内に多い大規模経営に役立つ方法を検討するそうだ。

 しかし、GPSを使って自動走行する田植え機やトラクター、人工衛星が撮影した農地の画像を使って作物の生育や品質を把握するリモートセンシング技術などは、北海道だけでなく大規模栽培する米・畑・牧草での利用が期待され、現代的でスマートである。

4)品種改良とライセンス(許諾使用料)収入

     
     リンゴの花と蜂蜜         みかんの花と蜂蜜    オリーブの花

(図の説明:リンゴの花は美しく、蜂蜜もとれる。みかんはレモンと同じ柑橘類なので、レモンと似た花が咲いて蜂蜜がとれる。それぞれの蜂蜜は、ほのかにその果物の香りがして美味しい。近年は、日本でもオリーブを作り始めており、写真はすべて日本国内だ)

 *2-4のように、長野県はイタリアの生産者協同組合2組織と長野県育成のりんご「シナノゴールド」について新たなライセンス契約を結び、既に栽培されている北半球のEU加盟国に加えて、両組合を通じ主に南半球の5カ国での栽培を許諾することで海外での生産・販売を拡大し、通年販売も可能になるそうだ。こうするとライセンス使用料収入が入る上、「yello」の商標と「日本の長野県」が有名になる。

 なお、日本のミカンも美味しいのだが、これまで輸出や外国での栽培実績が低いため、あの形のミカンが、すっぱいものも含めてすべて「マンダリン」と呼ばれてユーラシア大陸で流通しているのに驚いたことがある。そのため、ミカンやレモンの産地も、長野県を参考にすべきだ。

 そのような中、*2-6のように、佐賀県が開発した新品種のイチゴ苗が県農業試験研究センター元職員によって無断で県内の農家に譲渡されていたそうだが、これは開発にかかったコストを認識しておらず、コストを回収しようという意思もないことを意味している。また、「いちごさん」という名前もブランド確立に資するとは思えず、長野県のように、日本だけでなく世界市場を視野に入れた名称にした方がよいと思う。その点、ユーラシア大陸の国々は、いつも大陸全体を視野に取引を行っている点でスケールが大きいと感じる。

5)ゲノム編集による品種改良
 厚生労働省と環境省各審議会の調査会と検討会は、*2-5のように、①動物や植物に新しい特性を持たせるため他の生物の遺伝子を導入するのは、既存の遺伝子組換技術と同じ扱いで安全性審査などの規制対象 ②もともとある特性を消し去るため遺伝子の一部を削るのは、自然界でも起こり得る変化の範囲内として規制の対象外 としたそうだ。

 本当は、他の生物の遺伝子を導入するものでも、殺虫効果を持たせてヒトに無害であることが証明できていないものはNOで、無害であることが証明済ならOKなのである。そして、もともとある遺伝子の一部を削るだけでも、それまで発現していなかった毒性を発現し始める生物もいないとはいえず、いずれも安全性が証明されていればOK、証明されていなければ不明も含んでNOというのが正しい。しかし、検証もせずに安全だと言われても障害が出るまではわからないため、いずれも消費者が選択できるよう遺伝子組替表示は明確に行うべきだ。

・・参考資料・・
<日本の食料政策>
*1-1-1:https://www.agrinews.co.jp/p44742.html (日本農業新聞 2018年7月30日) JA食料安保提案 連携広げて国民理解を
 JAグループは、食料安全保障の確立に向けた基本政策や自らの行動計画の検討を始めた。食料自給率が低迷し、生産基盤の弱体化がさらに進みかねない中、政策への反映や行動の具体化には国民理解が欠かせない。検討段階から消費者や他の団体などと幅広く連携し、国民的な議論を巻き起こしたい。食料安全保障は大きな岐路に立っている。食料自給率は38%と低迷を続け、耕地面積は444万ヘクタールと、ここ10年で4%減った。食料の潜在生産能力を示す「食料自給力指標」も2015年、16年と大きく下がった。農業現場では高齢化が進み、労力不足が深刻だ。一方、米国を除く環太平洋連携協定(TPP11)や欧州連合(EU)との経済連携協定(EPA)の発効が迫る。国際化が進む中、世界の食料需給は、人口増や異常気象の多発などで中長期的に逼迫(ひっぱく)する可能性は高い。食の未来に不安を感じる国民は多い。14年の内閣府世論調査によると、将来の食料供給に「不安がある」としたのは回答者の83%に上った。理由は「農地減少や高齢化で、国内の食料供給能力が低下する恐れがある」(82%)、「異常気象や温暖化の進行で国内外で不作の可能性がある」(62%)などが挙がった。今、行動を起こさなければ将来の食料の安定確保は危うい――。そんな危機感を持って食料安全保障の大切さを共有し、行動を自ら打ち出し、国の政策に反映させようというのがJAグループの取り組みの狙いだ。食料自給率低迷と自給力の低下について、JA全中は国内生産の減少が大きな要因とみる。生産減をもたらしているのは、農業の担い手・労働力不足と分析する。政策提案では品目別の農地面積や農業者数で、政府が数値目標を立てることを提起。「農」だけでなく「食」「地域」「世論形成」の観点から具体的な施策を検討し、19年にも審議が始まる政府の次期食料・農業・農村基本計画への反映を目指す。JAグループも自己改革を実践しながら、食料自給率・自給力向上につながる取り組みを実践する行動計画をつくる。全中は9月に基本的考え方、来年1月にも素案をまとめる。検討過程を含めて地方自治体や他の協同組合、経済団体との意見交換や共同提案も模索する考えで、より開かれた形で議論することが欠かせない。政策提案、行動計画というと堅いイメージになりがちだが、鍵はいかに多くの人の共感を得られるかだ。幅広い連携を生かし、分かりやすい数値目標やキャッチフレーズを打ち出すことが重要となる。さらに目標達成に向けて、国民一人一人がどんな行動をすればいいか、分かりやすく訴求する必要がある。JAグループが中心となって、さまざまな知恵を集めて議論を盛り上げたい。

*1-1-2:https://www.agrinews.co.jp/p47022.html (日本農業新聞論説  2019年3月13日) 食の簡便化 産地発の6次化商品を
 日本人の食生活は、平成の30年間で大きく変わった。家庭の食卓は洋風化とともに、準備にかける時間を短縮する「簡便志向」が顕著だ。高齢化が進み、単身世帯や共働き世帯も増加する中、今後も簡便化の流れは加速するだろう。食の動向を把握し、産地ならではの商品を提案していくべきだ。食の簡便化は、総務省発表の家計調査から読み取れる。2018年と1989(平成元)年の1世帯(2人以上)当たりの食品年間支出額を比べると、生鮮品から調理済み食品へのシフトは鮮明だ。特に生鮮品の中で魚介と果実の支出減が著しい。一方で乳製品は倍増し、調理食品は7割増となった。品目別に見ると、支出額の増加率トップとなったのはサラダの3・3倍で、生鮮野菜の2%減と対照的だ。次いで洋食になじみやすいヨーグルトやチーズ、ワインが続いた。逆に減少率でトップとなったのは米の6割減。主食で競合するパンは2割増え、18年の支出金額は3万円超と米を3割近く上回った。米の需要は冷凍チャーハンなど加工米飯に移ってきたとはいえ、主食の座をパンに奪われた格好だ。ご飯を主食とした和食が減り、パンに乳製品、サラダなど洋食の場面が増えた食卓の姿がうかがえる。和食でも米はパック米飯や冷凍米飯で、総菜はコンビニなどの中食を購入するケースが増えている。日本政策金融公庫の調べでは、4割の人が週2日以上は市販の弁当や中食を購入しており、需要はさらに増えると予測する。少子高齢化に伴って高齢者の割合は今後さらに高まり、家計を支えるために夫婦共働きの家庭は増えることが予想される。これは、食材を買って調理し、食事を作る時間的な余裕がさらになくなることを意味する。調理も、生協の宅配で伸びている下ごしらえ済みの「ミールキット食材」の需要が増えそうだ。食品メーカーは、モヤシなどの野菜の上にかけて電子レンジで温めるだけで一品料理ができる時短調味料を相次いで発売している。産地は、こうした動向を捉えて商品を提案する必要がある。需要が伸びている業務用米もその一つだ。家庭用と比べて単価は安いが、多収で一定の収入を見込める。生鮮果実の消費は減っているが、皮ごと食べられるブドウ「シャインマスカット」のように比較的高値でも消費を伸ばしている品目もある。缶詰や乾燥品などの果実加工品は5割増の伸びで、ケーキなどに使われる果実も増えている。産地が6次化商品を開発して売り込むことができれば、高い付加価値が見込め、収入増につながる。加工品のブランド化は生鮮品の知名度アップと販促につながる。手軽さ、健康、安全・安心、国産原料への信頼などのキーワードを手掛かりに、6次化を視野に入れて簡便化の時代を乗り切ろう。

*1-1-3:https://www.agrinews.co.jp/p46474.html (日本農業新聞 2019年1月19日) 基本計画 審議会 秋から議論 現場の声反映へ聴取 農水省
 農水省は18日、中長期的な農政の方向性を示す食料・農業・農村基本計画の見直しについて、有識者らで構成する審議会での議論を秋から始めることを明らかにした。生産現場の声をより反映させようと、農業者らの意見聴取をした上で、議論を本格化させることが必要と判断した。1月末に諮問し、1年程度の期間をかけて議論するのが通例だっただけに、安倍政権の農政改革に対する十分な検証が担保できるかが課題となる。同日の食料・農業・農村政策審議会企画部会で同省が説明した。基本計画は食料・農業・農村基本法で「おおむね5年ごと」に見直すと定める。現在の基本計画は同省が2014年1月に同審議会に見直しを諮問後、企画部会で議論し、15年3月末に決定した。同省は、施策の効果や次期基本計画に盛り込む施策などを審議会に説明し、議論を開始するという従来の進め方では、前もって生産現場の意見を聞く機会が乏しいと判断。今回は農業経営の現状や課題について、農家や食品事業者らの声を聴取した上で、審議会には見直し議論を「秋ごろをめどに諮問」すると提案した。意見聴取は、年度内にも始まる見込みだ。諮問後の同部会での議論の期間は半年間程度になる見込みだ。審議会への諮問時期の先送りについて、政府内には、首相官邸主導の農政運営や参院選などの政治日程が影響したとの見方もある。基本計画の見直しの焦点の一つが、食料自給率の目標設定だ。現行はカロリーベースで45%だが、17年度の実績は38%と低迷。農家の減少など生産基盤の弱体化が懸念され、相次ぐ大型の経済連携協定の発効も抱える。食料安全保障確立へ重要局面での基本計画の見直しとなるだけに、農政改革の検証や今後の施策について、丁寧な議論ができるかが問われる。

*1-2-1:https://www.nikkei.com/article/DGKKZO41679330T20C19A2EA1000/ (日経新聞 2019/2/24) 備蓄米、高値で買い入れ 政府、TPP11理由に上限拡大
 主食のコメを政府が高値で買い入れ、備蓄に回している。需給を引き締めたいJAグループの要望に応え、今年買い入れ上限を拡大。11カ国による環太平洋経済連携協定(TPP11)への対策で国産米を市場から吸い上げる。安いコメがほしい食品業界は反発。4年連続の米価上昇でコメ離れが進むなか、小売店も「店頭価格がさらに上がりかねない」と懸念する。農林水産省は2019年から備蓄米の買い入れ上限を前年より5%多い年間20万9140トンとした。TPP11では日本がオーストラリア産米の輸入枠を設定。豪州産米が増える分、国産米を政府が買えば需給が締まり、民間取引を高値で維持できるとの算段だ。4年連続の米価上昇を映し、代表銘柄の新潟産一般コシヒカリ(魚沼産など除く)の全国平均の店頭価格は上昇前の14年産より2割以上高い水準が続く。19年秋にとれる新米を対象に、農水省はこれまでに2回の買い入れ入札を実施。買い入れ額は1俵(60キロ)1万3800円前後と前年より6%高かった。安い価格帯のコメを作る生産者には卸などに売るのと同水準。「こんなに高くなるとは想定外」(大手コメ卸)と驚きが広がった。現時点での落札量は9万7千トン。上限までの残り約11万トンが今後の焦点となる。高値買い取りの背景には全国農業協同組合中央会(JA全中)の要望がある。農業改革で地方農協への指導権限がなくなり19年秋に一般社団法人になるJA全中にとって、米価上昇は各産地に示せる「存在意義」。「着実に全量を買い入れる」(JA全中幹部)よう政府に申し入れていた。備蓄米は「平成のコメ騒動」と呼ばれた1993年の大凶作がきっかけ。作況指数(100で平年並み)は74まで落ち、民間取引で米価は急騰した。政府は米国、豪州、タイ、中国から計259万トンを緊急輸入した。現在の年間消費の4割近い量だ。95年に始まった食糧法で「コメが不足する事態に備えて」備蓄米を制度化し、約100万トンを常備している。ただ目的とは別に、米価対策の思惑で備蓄を増やすよう政府に圧力がかかる。農水省は各地の農協に政府にコメを売るようビラで呼びかけている。中食・外食業者は「減反が終わったのに国産米を使わせない政策だ」と反発する。安価な銘柄が備蓄に回れば、さらにコメを仕入れづらくなる。

*1-2-2:https://www.agrinews.co.jp/p46925.html (日本農業新聞 2019年3月3日) 備蓄米 主食用より高収入 生産2割増2400トンへ 多収性品種で奨励 宮城・JA栗っこ
 宮城県のJA栗っこは今年、政府備蓄米の生産量を前年比2割増の2400トンに拡大する。多収性品種の栽培で10アール当たりの収入は主食用米を上回るとの試算を示し、作付けを促す。JAは、米1俵(60キロ)当たりの価格から、10アール当たりの収入に着目した米作りを農家に推奨。業務用向けの多収性品種の契約栽培も同4割増の1000ヘクタールに拡大する。JAの試算によると、10アール当たり収量が630キロ程度の多収性品種で備蓄米に取り組んだ場合、同13万円程度の収入が見込める。JA管内の栗原市の平均収量は同526キロ。主食用の「ひとめぼれ」を作付けした場合は同11万円程度の収入となり、備蓄米の方が上回る。備蓄米の入札はJA全農みやぎに委託。2400トンは同県への「優先枠」の5分の1に当たる。生産量が2400トンを超えても応じられるよう、調整している。JAの前年の備蓄米生産量は1980トン。栗原市では、2019年産米の生産の目安が前年比554トン(1・2%)減ったため、JAは非主食用米への転換で生産調整を進める。輸出用米や飼料用米についても、水田活用の交付金や産地交付金などで10アール当たりでは主食用米と遜色のない収入が見込めると試算し、集落座談会などを通じて農家に周知する。「各県の生産の目安や備蓄米の落札状況を見ると、19年産米の需給は緩和しかねない」と、JAの大内一也専務は備蓄米などによる生産調整の必要性を強調する。「どれを作るのが得か、1反(10アール)当たりでよく考えてほしい。飯米以外は主食用米を作らない米農家がいても不思議ではない」と、経営面でも非主食用米のメリットは大きいとする。10アール当たりの収入を重視する方針から、JAは業務用向けの多収性品種「萌えみのり」の作付けも増やす。米卸との契約栽培で、平均収量は10アール当たり630キロ程度。管内の水稲作付面積は約9000ヘクタールだが、多収穫米生産部会を中心として、18年産の作付面積は約700ヘクタール、19年産では1000ヘクタールを目指す。同品種としては全国一だという。10アール当たり収入は13万円程度が見込め、主食用「ひとめぼれ」を上回る。栗原市若柳新田地区の農家80戸でつくり、米や大豆を約80ヘクタールで栽培する営農組合「新ファーム田(でん)」は今年、備蓄米を6・5ヘクタール、業務用の「萌えみのり」を14ヘクタール作付けする。組合長の小野寺克己さん(58)は「JAの試算を見て、しっかり収入が確保できると判断した」と話す。

*1-2-3:https://www.agrinews.co.jp/p46910.html (日本農業新聞 2019年3月2日) 19年度中山間直払い 「モデル」加算措置 人材確保住環境向上 次期対策につなぐ
 農水省は、2019年度の中山間地域等直接支払制度で、モデル地区を対象にした新たな加算措置を設ける。外部からの人材確保と、住み続けられる地域づくりに向けた生活環境の充実、農作業の効率を高めるためのスマート農業推進の3項目で、加算単価を設定。営農、生活両面の条件を向上させ、地域の活性化につなげる。20年度から始まる同制度の第5期対策に反映させたい考えだ。同制度を受けるには、農地保全といった協定を集落などで作成することが必要となる。同省によると協定を作っている組織数は、17年度時点で2万5868。14年度には2万8078にまで増えたが、第4期対策に入った15年度に2万5635と9%減って以来、微増にとどまる。同省は、協定の廃止、縮小を避け、農地の保全活動を続けていくには、新たな人材の確保や住民の定着、作業の効率化が必要と判断。第5期対策を見据え、19年度は試行的にモデル地区向けの加算措置を設けた。三つの新たな加算措置のうち、「人材活用体制整備型」は、地域おこし協力隊や都市部の若者など新たな人材を確保した場合、200万円を上限に、協定面積に基づき10アール当たり3000円交付する。従来も、活動の中心となる人材確保に対する支援はあった。今回は中心メンバーに限らず、営農や草刈りの手伝い、事務作業など幅広い関わり方を想定し、人材不足を補ってもらう。「集落機能強化型」では、営農以外に高齢者の見守りや買い物支援など、住民の生活を支える活動を後押し。新たに来た人材や住民にとって、より暮らしやすい環境を整え、協定への参加にもつなげる。地域運営組織との連携なども想定。200万円を上限に、同3000円を交付する。「スマート農業推進型」は草刈りロボットやドローン(小型無人飛行機)などの導入を支援。小規模な農地が多く、大型機械を使った省力化が難しい中山間地の地形条件に配慮し、先端技術を生かして作業効率を高め、営農を続けやすくする。400万円を上限に、同6000円を交付する。対象地区には、定期的に活動状況を同省に報告することを求める。18年度中に都道府県からモデル地区の推薦を受け、予算成立を受けて正式決定する。同省は「モデル地区での実践例を分析し、改善点を明らかにした上で第5期対策につなげたい」(地域振興課)と展望する。

*1-2-4:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO39913990R10C19A1EA5000/?n_cid=SPTMG002 (日経新聞 2019/1/11) 豪州産米、国産米高値で人気 TPP11も追い風
 外食やスーパーなど流通小売りでオーストラリア産のコメの利用が広がっている。国産米の取引価格が4年連続で上がっているためだ。一部の小売店では2~5割安い輸入米が目立っている。豪州産は11カ国による環太平洋経済連携協定(TPP11)で輸入枠ができた。人件費上昇に悩む飲食業を中心にコスト低減策の一環として調達拡大をめざす動きも出てきた。「つゆとの相性も良いので使い始めた」。ロイヤルホールディングス傘下で天丼チェーン「てんや」を展開するテンコーポレーション(東京・台東)は、1年前から店によって豪州産米を5割混ぜて提供している。豪州産米はコシヒカリに似た短粒種が主力。アジアで主流の長粒種と異なり、ご飯としてそのまま食べるのにも適している。豪州産は明治時代に日本人が種を持ち込み、稲作を始めたのがきっかけ。現在はサンライス社(ニューサウスウェールズ州)がコメ輸出を一手に担い、日本の精米技術も採り入れている。日本は1993年のウルグアイ・ラウンド貿易交渉を受け、年間77万トン(うち主食用は約10万トン)のコメ輸入枠を設けた。コメ貿易の規制緩和を当初拒否したことで懲罰的に課されたものだ。ただ低価格な輸入米は次第に定着。国産米が高値になると割安な輸入米が増えるのが一般的になった。国産米が豊作で安かった2014年度は豪州産の輸入量は少なかったが、18年度までに国産米の取引価格は4割上昇。輸入量は55倍の3万トン超に増えた。主食用輸入米でのシェアは1割から3割へ上がり米国産に次ぐ2位となった。実施中の18年度入札でも3割を維持している。ユーザー側はコストに敏感だ。社員食堂を含め約1900店を展開する西洋フード・コンパスグループ(東京・中央)は18年から一部で豪州産米を使い始めた。定食店を営む大戸屋ホールディングスも昨秋、国産米の高騰でご飯大盛りの量を減らす一方、健康志向に応えた「五穀ご飯」に豪州産米も使いコストを抑えた。「小諸そば」の三ッ和(東京・中央)もどんぶりなどで使っている。住友商事は「うららか」という豪州産米を輸入し、18年は西友にも並んだ。都内の業務用スーパーでは豪州産米「オーパス」が5キロ1350円と、青森産「まっしぐら」より20%安い。18年末に発効したTPP11で、日本は豪州産米に特化した輸入枠(最終的に年8400トン)を設けた。この結果、主食用のコメ(各国産の総量)は1割多く輸入できるようになる。増える輸入米対策として、農林水産省は国産米の備蓄を増やす。全国農業協同組合中央会(JA全中)の要望に応え、国内各地からの政府買い入れを今までより5%多い年間約21万トンにする。国産米の需給が締まり、価格の維持につながるという目算だ。ただ「値ごろな国産米が足りないのに、さらに市場から奪うのはコメを使うなということか」(中食企業)と批判的な声も多い。国産米が高値のままなら、外食や流通小売業の目は輸入米に向く。TPP交渉から離脱した米国も日本市場開拓をもくろむ。米国はTPPで7万トンの日本向けコメ輸出枠を得るはずだった。現在は日米の新貿易交渉でコメの輸出増を狙う。18年夏にはUSAライス連合会(バージニア州)のサラ・モラン副会長が来日し、中食・外食企業の責任者にコメ需要を聞いて回っている。日本の食を巡る攻防が激しくなる。

*1-3-1:https://www.agrinews.co.jp/p46535.html?page=1 (日本農業新聞 2019年1月25日) 鶏卵 生産調整を優先 経営安定対策事業 財源枯渇 回避へ
 日本養鶏協会が、今年度の財源が枯渇する恐れのあった鶏卵農家向けの国の経営安定対策事業について、対応策を決めたことが24日、分かった。需給調整を進めて低迷する鶏卵価格の回復を優先させるなど、限られた財源を適正に振り分けることで枯渇を回避する。価格下落の補填(ほてん)は1月分に限り引き下げるが、「実質は通常(下落幅の9割)の大半に相当する水準を確保できる」と見通す。同対策事業は鶏卵価格や生産者の経営安定が目的。鶏卵価格が基準価格を下回ったとき差額の9割を補填する価格補填事業と、成鶏の更新で長期の空舎期間を設けた生産者に奨励金を交付する生産調整事業の二段構え。財源は生産者の負担金と国の助成金(2018年度予算は約49億円)で、同協会が事業主体となる。今年度は価格低迷が続き、補填などの判断に使う標準取引価格は、今年の初取引に1キロ96円の異例の安値を付けた。24日現在は133円と持ち直したが、補填基準価格(185円)や生産調整事業発動の基準価格(163円)を下回る。今年度は補填事業が4~8月に、生産調整事業は4月下旬~6月下旬に発動した。このまま相場低迷が続き、手を打たなければ、「事業の財源が枯渇する」との懸念が生産現場に広がっていた。協会は16日の緊急理事会で対応策を決定。対応策では、従来通り生産調整事業を発動し、需給改善により価格回復を優先させる。その場合、10万羽以上の大規模生産者は価格補填事業の対象から外れる仕組みになっている。補填事業は相場動向を見通しながら2、3月分の必要最大額を試算した上で確保した。残りの財源を1月分に充てる。ただ、生産調整に伴って大量の成鶏処理が発生し、作業が追い付かなくなる課題が残る。24日に農水省や日本成鶏処理流通協議会との3者会合を開き、協力して対応することを確認した。

*1-3-2:https://www.agrinews.co.jp/p46982.html (日本農業新聞 2019年3月9日) 牛乳・乳製品 EU輸出26日解禁
 吉川貴盛農相は8日の閣議後会見で、欧州連合(EU)向けの牛乳、乳製品の輸出が26日から解禁されると発表した。EUの輸入承認リスト(第三国リスト)に掲載された。ただ、実際に輸出するにはEUが認める基準の施設や農場で生産する必要がある。一部の加工食品については、同日から輸出できる。
2月に発効した日欧経済連携協定(EPA)では、食肉や乳製品などの輸出関税が即時撤廃されたが、主要品目で実際に輸出しているのは牛肉だけ。輸出拡大には品目ごとの解禁の動向が焦点になっている。EUは施設の衛生管理や温度管理、アニマルウェルフェア(快適性に配慮した家畜の飼養管理)への対応など、より高い基準を求めている。日本政府はEU当局と協議し、施設の認定や農場の登録に必要な条件を盛り込んだ「対EU日本産畜産物輸出取扱要綱(仮称)」を決める。事業者は要綱に沿って施設や農場を管理し、認定取得を目指す。牛肉が輸出解禁された際は、第三国リストの掲載から施設認定や輸出開始まで1年以上かかった。牛乳や卵の使用割合が合わせて50%以下の加工食品は、解禁と同時に輸出が可能になる。鶏卵、卵製品は既に第三国リストに掲載された。

<スマート農業>
*2-1:https://www.agrinews.co.jp/p45474.html (日本農業新聞 2018年10月14日) 気候変動と農業 環境保全しリスク減を
 地球は一体、どうなってしまうのだろう。巨大台風や豪雨など甚大な 災害が世界で相次いで起きている。地球温暖化に伴う気候変動とどう向き合うかが問われている。世界の温室効果ガスの1割以上は農業が占める。環境保全型農業の実践の時だ。温暖化が止まらない。今夏、日本を襲った40度超えの酷暑をはじめ世界で気温が上がり続けている。8日まで韓国で開かれていた国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は、早ければ2030年にも気温が1・5度上昇するとの特別報告書をまとめた。20年からの温暖化防止の国際ルールを定めた「パリ協定」では今世紀末までに気温を2度未満、できれば1・5度に抑えるとの目標を掲げる。だが、その達成は、もはや危ういことを今回の報告書は示した。同協定の詳細は、ポーランドで12月に開く国連気候変動枠組条約締約国会議(COP24)で決めるが、その前に各国に対策の一層の加速を促した格好だ。1・5度上昇で地球はどうなるのか。報告書によると、100年までに海水面は26~77センチ上昇し、昆虫の6%、植物の8%、脊椎動物の4%で生息域が半減。海洋生態系に重要な役目を果たすサンゴの生息域は70~90%減る。これが2度になると深刻度は増す。水面はさらに10センチ上昇。昆虫の18%、植物の16%、脊椎動物の8%で生息域は半減。サンゴの生息域は99%以上消失。熱波や極度の干ばつ、洪水のリスクも一段と高まる。農業への影響はどうか。100年には米やトウモロコシなど主要穀物の収量が20~40%減少。米に含まれるタンパク質やミネラル、鉄分などの栄養素も減り、アジアを中心に約6億人に影響が及ぶという。一方、対策を取ることで農業生産を高めることもできる。農研機構は大気中の二酸化炭素(CO2)濃度が高い中で、水稲のもみ数を育種で増やすことで、収量が16%増えたという研究結果を発表した。農家は何をすべきか。鍵となるのは環境に配慮した農業だ。農水省によると減農薬・減化学肥料栽培や堆肥の施用などで15万トンの温室効果ガス削減が見込め、昆虫や魚類など生物多様性の保全につながることが分かった。環境省の地球温暖化対策計画では、農地が炭素を吸収する対策として30年度に696万~890万トン(CO2換算)の土壌吸収を目標にしており、一定の貢献度がうかがえた。国連国際防災戦略によると、ここ20年間の自然災害による経済損失額は約329兆円。このままでは異常気象はさらに頻発し犠牲者は増え、損失額は増える。次世代に“ツケ”を持ち越さないために、持続可能な社会に向けて環境に配慮した農業の実践は欠かせない。異常気象を肌で感じ取る農家だからこそできる取り組みはある。

*2-2:https://www.agrinews.co.jp/p44873.html?page=1 (日本農業新聞 2018年8月12日) 農業省力化へIoT 人口減、高齢化に対応 総務省検討委
 総務省の情報通信審議会IoT新時代の未来づくり検討委員会は、情報通信技術(ICT)を活用し、2030~40年ごろの実現を目指す「未来をつかむTECH戦略」をまとめた。地方の人口減・高齢化が加速する中、IoT(モノのインターネット)を利用した農業の省力化、人工知能(AI)を生かした住民の健康状態把握などを挙げる。各分野で最新技術を取り入れ、地域の働き手や高齢者を含めた住民の生活を支えることを目指す。同戦略は、将来に日本が直面する問題に対し未来の理想の姿を描き、そこから逆算して長期的に取り組むべき政策を提言することが目的。同省は、働き手となる生産年齢人口の急減や独居高齢者世帯の急増、医療介護の需要増加が一層進むと見込む。30年代までには現在の社会の仕組みが立ち行かなくなると懸念。ICTの活用を進める方針を打ち出し、①人づくり②地域づくり③産業づくり──のテーマに基づき、同検討委で戦略をまとめた。産業づくりでは、時間当たりの労働生産性を現在の1・5倍超にまで高める目標を掲げた。このうち、農業では耕作などでIoTやドローン(小型無人飛行機)、ロボットを導入し、遠隔管理ができるようにするアイデアを挙げた。人づくりでは、高齢者の長寿命化と生活のサポートを重視。100歳まで健康に暮らせるよう、体に装着して自動制御で歩行を助ける補助装置の開発を挙げた。地域づくりでは、高齢者を含む住民の見守り体制の整備を目指す。AIを活用して健康状態を24時間見守り、問診や検査を省力化する健康管理サポートなどを提起した。同省は、同戦略について、審議会での承認を得た後、来年度からの予算編成などに反映させる考えだ。

*2-3:https://www.agrinews.co.jp/p44429.html (日本農業新聞 2018年6月23日) 衛星データ 農業活用 官民で協議会 大規模経営支援へ 北海道
 北海道は、農業などの産業振興を目的に人工衛星から得たデータの活用に乗り出す。最新技術の活用に向けて官民で「北海道衛星データ利用ビジネス創出協議会」を組織。農業分野ではトラクターの自動走行や農作物の生育、品質把握などで衛星データの利用が進みつつあることを踏まえ、道内に多い大規模経営に役立つ方法などを検討する。協議会内に農業など分野ごとにプロジェクトチームを設け、来年度にもモデル事業を始める。協議会の幹事会には、道や道立総合研究機構などが参加。アドバイザーとして、情報通信技術(ICT)に詳しい北海道大学の野口伸教授らが就任した。どの分野で衛星データをどのように活用できるか今後、検討する。道は「北海道のように土地の面積が広い地域ほど、多くの衛星データが得られ、農業などさまざまな分野で有効に使える」(科学技術振興室)と有望視する。農業分野では現在、衛星から得たデータの利用が広がっている。衛星利用測位システム(GPS)を使って位置情報を把握し、自動走行する田植え機やトラクターの開発が進む。大規模経営の作業効率の向上につながるとして注目されている。人工衛星が撮影した農地の画像を使い、米の登熟など、栽培している作物の生育や品質を把握するリモートセンシング技術の導入も盛んだ。北海道ならではの大規模で栽培する米や畑作、牧草での利用が期待される。今後、IT企業や自治体、JAや研究者など多方面からの会員参加を呼び掛け、8月にも農業を含め、分野別のプロジェクトチームを発足させる。衛星データを使った新規事業について効果やコストなども含め検討する。来年度にも国の補助事業を活用した上で、モデル事業として着手。将来の普及の足掛かりにする考えだ。

*2-4:https://www.agrinews.co.jp/p47024.html (日本農業新聞 2019年3月13日) シナノゴールド 南半球で栽培許諾 長野県が新たに契約 世界的リンゴ銘柄に
 長野県は12日、イタリアの生産者協同組合2組織と、県育成のリンゴ「シナノゴールド」について新たなライセンス契約を結んだ。既に栽培されている北半球のEU加盟国に加え、両組合を通じて主に南半球5カ国での栽培を許諾することで海外での生産・販売を拡大。通年販売も可能になる。契約を結んだのは、イタリア南チロル地方の「南チロル果物生産者協同組合(VOG)」と「ヴァルヴェノスタ協同組合(VI・P)」。長野県庁で阿部守一知事とVOGのゲオルグ・ケスラ社長が契約書に署名した。同県は2007年、「シナノゴールド」の栽培を許諾する契約を両組合と締結済み。16年にはEU加盟国での生産、販売などに関するライセンス契約を結んだ。両組合は欧州で主流の黄色系「ゴールデンデリシャス」の後継を視野に、商品名を「yello(イエロ)」として販売してきた。今回両組合と交わした契約により、EU加盟国に加え南アフリカ、ニュージーランド、オーストラリア、チリ、米国の5カ国の、各国1社が「シナノゴールド」を栽培できる。販売地域も「yello」の商標を取得した全ての国に拡大。これまではEU、北欧、北アフリカの諸国、スイス、ロシアに限られていた。品種名「Sinano Gold」は、販売時の包装容器などに記載される。両組合はパンフレットなどで「日本の長野県が育成」と明示する。県は、各国の生産者から売り上げに応じた許諾使用料を得るとともに、「シナノゴールド」を世界的なブランドへ育て、将来的な輸出増につなげたい考えだ。日本への輸出はしない契約。阿部知事は「販路が飛躍的に拡大した。世界にしっかり発信していきたい」と意欲を示した。ケスラ社長は「栽培地域の拡大で、各国の最高の生産者によって育てられるシナノゴールドを紹介していきたい」と応じた。

*2-5:https://www.agrinews.co.jp/p46490.html (日本農業新聞 2019年1月21日) ゲノム編集 不安に応え議論慎重に
 消費者から不安の声が上がっている。ゲノム編集で作り出した作物やそれを使った食品などの規制について、厚生労働省と環境省各審議会の調査会と検討会は、半年にも満たない議論で結論を急ごうとしている。農業への影響も大きい。新しい技術だけに、より慎重に検討すべきである。ゲノム編集は、遺伝子を効率良く改変する技術だ。既存の遺伝子組み換え(GM)技術に比べて簡単で間違えが少なく、汎用(はんよう)性があり、開発期間を短くできる特徴がある。主に①動物や植物に新しい特性を持たせるため、他の生物の遺伝子を導入する②もともとある特性を消し去るため、遺伝子の一部を削る──などの手法がある。これらの技術を活用し農研機構などは、従来の育種なら10年以上かかる小麦で、穂発芽を促進する機能のない品種を1年ほどで開発した。他にも超多収稲や日持ちが良いトマト、毒素を作りにくいジャガイモなどの開発が期待できるという。規制の検討は食品衛生法とカルタヘナ法に基づくもので、政府の「2018年度内に規制の在り方を明確化する」との方針を受けて、昨年夏から始まった。半年間の議論で両省はほとんど同じ結論を導いた。他の生物の遺伝子を導入する①については既存のGM技術と同じ扱いで、安全性審査など規制の対象とした。遺伝子の一部を削る②については「自然界でも起こり得る変化の範囲内」として規制の対象外とした。研究者や企業側からの安全性などの情報提供は「任意」とし、届け出を行わなかった場合も罰則規定はないとした。こうした両省の方針に対する消費者の不安は大きい。厚労省の調査会はこれまで4回しか開かれず、関係団体へのヒアリングは1回にとどまった。消費者団体側は「GMもゲノム編集も、遺伝子を操作するという点で同じ」「アレルギーや毒性など安全性に懸念がある」と問題視する。同省は17日に開いた審議会部会で、無届けのゲノム編集を用いた食品が確認された場合、届け出がないことを含めて情報を公開するとしたが、これで問題は解決されるのだろうか。農業への影響もある。遺伝子の一部を削るゲノム編集で開発した農作物は、規制の対象外となるだけに知らないうちに栽培していたという事態が起こりかねない。多国籍企業による種子の支配が一層強まる恐れもある。欧州司法裁判所は昨年7月、「自然には発生しない方法で生物の遺伝子を改変して得られた生物はGMに該当する」と判断し、ゲノム編集に慎重な姿勢を示した。日本とは対照的だ。両省は今年度中に規制の在り方をまとめる予定だが、残された課題は多い。政府はまず、国民の不安を取り除くべきである。結果を急がず、丁寧に審議を進める必要がある。

*2-6:http://qbiz.jp/article/150570/1/ (西日本新聞 2019年3月20日) 佐賀県新イチゴ、無断で苗を譲渡 元研究センター職員
 佐賀県は19日、県農業試験研究センターの60代の元職員が県産イチゴ「いちごさん」の品種登録前に無断で苗を持ち出し、県内の農家に譲渡していたと明らかにした。苗は別の農家にも渡り、5株を販売。県は二つの農家が所有する苗を全て廃棄させたが、5株の流出先は不明という。いちごさんは20年ぶりに県が開発。昨年8月に国が品種登録を認め、県と契約したJAさがが栽培や販売を独占的に担うことになった。県によると、元職員は在任中の2017年春、知人農家に頼まれ、県が試験栽培中の苗6株を譲渡。知人は苗を増やし、別の農家に15株を渡した。今年1月、この農家は近所の直売所で鉢植えの苗5株やパック詰めのいちごさんを販売。苗が販売されていることを不審に思った農業関係者の連絡で発覚した。県によると、元職員は昨年3月に退職、「いずれ新品種が出回るので大丈夫と思った」と謝罪しているという。県は「誠に遺憾。いちごさんのブランド確立に努めたい」と話している。

<農業の6次産業化>
PS(2019年3月20、23日追加):私も原発事故後に西日本産のお茶や水を買うことから始めて、①小売店の選別を得ずに広い範囲の品物から選択できる ②価格の比較もできる ③重たいものでも文句を言わずに持ってきてくれる などが理由で、アマゾンなどの宅配をよく使うようになった。また、ふるさと納税でお礼の品として並んでいる商品も、その自治体が自慢の品を選んで掲載しているため、参考にしている。従って、共働きや高齢世帯の増加に伴って食品の宅配市場が伸びている時に、*3-1のように、農家・JA(農協)・FA(漁協)などが宅配事業に参入すれば、採れたての新鮮なうちに調理された食品を最小の仲介手数料で入手できるため重宝だと思う。この時、せっかく商品を間近で見て選ぶスペースがあるのに、イトーヨーカドー等のスーパーが流行らなくなるのは、かさばるもの・重たいものを買っても自宅に届けるのを嫌がったり、消費者が望んでいる商品を置かなかったりなど、現在の消費者ニーズに応えていないことが原因であり、過去の成功に甘えた油断の結果だと考える。
 なお、*3-2の多収で難消化性でんぷんを含む「あきたさらり」は、栽培コストが低減できるだけでなく、糖尿病予備軍やダイエット志向の消費者に便利だ。しかし、米粉の使い方については、うどんだけでなくフォー(ベトナムの人気麺料理)など米作地帯の料理を作った方が、本物の美味しさで食べられるのではないかといつも思う次第である。
 また、*3-3のように、JA全農が、JR品川駅構内に弁当・総菜店「みのりみのるキッチン」をオープンして国産活用のノウハウを中食でも生かすそうで、これは全国の駅で沿線の農産物を使って展開すると面白い。例えば、地域ブランドのPRは、鉄道なら使った食材の生産現場の写真や生産過程の話を包装紙等に印刷してあると、これから行く地域や今通っている地域のことであるため、より消費者の関心を引いて印象に残ると考える。

*3-1:https://www.agrinews.co.jp/p46450.html (日本農業新聞論説 2019年1月17日) 伸びる食品宅配 JAらしい地域貢献を
 食品の宅配市場が伸びている。共働きや高齢世帯の増加に伴い、買い物に手軽さを求める消費者が増えているためだ。特に次代の消費を担う若い世代ほど宅配の利用に関心が高い。農家やJAも宅配事業の可能性を探り、参入を考える時だ。調査会社の矢野経済研究所の推計では、2018年度の食品宅配市場は2兆2000億円を超える見込みだ。12年度以降、毎年3%前後の成長が続く。スーパー270社の総売上高10兆円超(17年)には及ばないが、スーパーの売上高が4年ぶりに前年を割り込んだことと比べると勢いの差は明らかだ。生協は「共同購入」から組合員宅に届ける「個配」への転換が進む。日本生活協同組合連合会に所属する地域生協では個配が全体の7割に達する。昨年は有機食材を手掛ける宅配大手3社が合流して「オイシックス・ラ・大地」が発足、物流を効率化して事業を拡大している。異業種の参入も相次ぐ。17年にインターネット通販最大手のアマゾンジャパンが「アマゾンフレッシュ」を立ち上げ、昨年は「楽天西友ネットスーパー」が誕生した。事業伸長の理由は明らかだ。買い物に行くのが難しい高齢者や日中忙しい共働きの世帯が増え、食材調達と調理の簡便化が求められているためだ。中でも、伸びが著しいのが「ミールキット」だ。1食分の献立に必要な下ごしらえが済んだ野菜や肉などの食材と調味料、レシピをセットして家庭に届ける。包丁を使わず簡単に調理でき、材料を余らせることもない。ミールキットは若い世代ほど魅力を感じている。タキイ種苗によると20、30代の4割が「興味がある」と答え、50代(2割以下)とは対照的だった。食品卸大手の19年の消費トレンド予想でもミールキットの需要は今後も拡大し、月額制で多様な料理を楽しむサービスが増えると分析する。「食の簡便化」という消費動向に、産地側も乗り遅れてはならない。地産地消を広げ、地域貢献につなげたい。JA全農とちぎは、昨年からJAふれあい食材の配達員による高齢者の「見守りサービス」を始めた。配達中に独居高齢者宅などを訪問し、会話を交わし安否を確認する。食材宅配サービスと合わせると利用料金が割安になる。地域貢献を兼ねたJAならではの宅配事業だ。JA静岡経済連も昨年から、地元の生協と協業しJA組合員に宅配利用を勧めている。組合員のニーズに応え、生協に県産食材を提供する機会を増やす。阪神・淡路大震災が発生してきょうで24年。大震災以降、防災の備えや被災時の救出活動など、地域住民の「共助」を呼び掛ける声が強まった。住民と触れ合う機会が増える宅配事業は共助の意識を高めるきっかけになるはずだ。地域の連帯を促すJAらしい事業に育てよう。

*3-2:https://www.agrinews.co.jp/p46461.html (日本農業新聞 2019年1月18日) 米粉用で多収品種 難消化性でんぷん豊富 ダイエット食材に 秋田県立大など
 秋田県立大学などが、多収で消化しにくいでんぷん(難消化性でんぷん=RS)を含む新たな米粉向け品種「あきたさらり」を育成した。10アール当たり収量が800キロ程度と多収で、栽培コスト低減が期待できる。RSの含量は3%で、「あきたこまち」の3倍以上と多い。ダイエットなど健康志向の消費者にPRできることから、県内企業と、同品種の米粉を使ったうどんなどの商品開発を進めている。「あきたさらり」は同大と県農業試験場、国際農林水産業研究センター(JIRCAS)などが育成。2018年秋に農水省に品種登録出願を申請し、出願が公表された。米粉は製粉費用がかかるが、多収で栽培コストを下げることでカバーする。熟期は「あきたこまち」より1週間遅く、作業分散が期待できる。同大と企業の共同研究で、米粉を小麦粉に20%ほど混ぜてうどんを作ると、腰が強く、ゆでた後もべたつきにくい麺が作れることが分かった。「あきたさらり」はアミロース含量が高く、大粒で米粉適性が高い。同大生物資源科学部の藤田直子教授は「小麦アレルギーの人向けに、グルテンフリーのうどんなども作れる可能性がある。水田転作にも役立つ」と期待する。現在の栽培面積は約1ヘクタールだが、さらに拡大する見込みだ。

*3-3:https://www.agrinews.co.jp/p47152.html (日本農業新聞 2019年3月23日) 中食もっと国産活用を 全農が初の弁当店
 JA全農は22日、東京都港区にあるJR品川駅構内に初の弁当・総菜店「みのりみのるキッチン」をオープンした。全農は食料自給率向上などを目指す「みのりみのるプロジェクト」の一環で、全国にレストランやカフェを展開。外食で培った国産活用のノウハウを需要が急拡大している中食でも生かす。今後も同様の店舗を広げる考えで、国産農畜産物の消費拡大と、中食での国産100%活用のモデル店舗を目指す。みのりみのるプロジェクトは、原料原産地表示の普及や地域ブランドのPR、国産消費拡大などを狙いに開始。2010年に初のレストランを出店し、現在、カフェを含め全国に15店舗を展開。外食店舗では、旬の野菜を使ったり、直売所と連携したりする工夫を重ねる。他社にも、外食で国産を活用するノウハウを提供している。一方、中食の市場規模は17年に10兆円を超えた。今後も大きな伸びが見込まれるが、中食では輸入食材が多く使われていることから、全農は国産100%の弁当・総菜店の開店に踏み切った。食材は一部の香辛料などを除き全て国産。ご飯に加え、複数から主菜1品、副菜2品を選べる弁当も用意。この弁当の米には開店当初は山形県産「雪若丸」を使うが、定期的に変えていく構想だ。約33平方メートルの店舗では、JAの加工品などを売るスペースも設ける。全農は「外食、中食での取り組みを通じ、日頃食べているものの産地を意識してもらうきっかけにしたい」(リテール事業課)と強調する。営業時間は午前9時から午後10時まで。エキュート品川内にある。

<多様な担い手の活用>
PS(2019年3月21日追加):*4-1のように、農業界全体では経営・地域社会・方針決定への女性参画が十分でないが、1974年には「めんどり(発言する女性)のさえずる家は栄えた試しなし」と言われていたが、現在では「農山漁村女性の日、活躍なくして発展なし」と言われるようになったため、かなり変化したと言える。実際に、農業は消費の意思決定の多くを女性が行う食品産業であるにもかかわらず、男性優位で意思決定の場に女性が少ないことが衰退の一因だろう。そのため、性別・年齢・国籍・障害の有無にかかわらず、多様な人のアイデアを活かすことが次の発展の糸口になると思われる。
 このような中、*4-2のように、49歳以下の新規就農者が2017年で2万760人となり、4年連続で2万人を超えて、都市から農山村に移住して農業を営む流れが若年層の間に続いているが、政府は農業生産の継続に必要な農業就業者数を約90万人と推計し、これを60代以下で担うため、49歳以下の農業従事者を2023年度までに40万人にする目標を掲げているそうだ。
 しかし、*4-3のように、先端技術を活用したスマート農業に脱皮しなければ、一人当たりの生産性が上がらないので、一人当たりの農業所得も上がらない。また、障害者は安すぎる賃金で働かされていることが多いが、働きに見合った労賃とやり甲斐を得られなければ不幸だ。そのため、「スマート農業」や「農福連携」は重要なテーマである。
 2019年度の都道府県の予算(案)では、*4-4-1のように、約8割の28都府県が農林水産予算を増やし、中でも外国人労働者受入拡大に向けての環境整備を進める労働力確保対策やスマート農業の導入支援が目立つそうだ。私は、スマート農林水産業の技術開発は、各大学やメーカーの自動運転・ロボットなどの研究チームが研究室から現場に出て、現場のニーズを把握しながら行うのがよいと考える。何故なら、農林水産業は自動運転やロボットを使える局面が多いが、研究室の中だけではそのニーズを把握できないからだ。
 また、国は、*4-4-2のように、外国人労働者がすべての金融機関で口座を開設できるようにしたり、日常生活の相談に応じる「多文化共生総合相談ワンストップセンター」を全都道府県に設けたりするそうだ。しかし、*4-4-3のように、「日本で働く外国人が増えると不正に医療保険を利用する」という見方があるのは残念で、外国人労働者も公的社会保険料の支え手であることを忘れてはならず、政府がやるべきは、加入すべきなのに未加入・未徴収の企業への指導や周知の徹底だろう。 

*4-1:https://www.agrinews.co.jp/p46992.html (日本農業新聞論説 2019年3月10日) 農山漁村女性の日 活躍なくして発展なし
 農業界全体で経営や地域社会、方針決定の場への女性参画が十分とは言えない。業界を挙げた意識改革と環境整備、支援が不可欠だ。きょうは「農山漁村女性の日」。「農山漁村女性の日」は、1987年度に農水省が制定。農林漁業の重要な担い手として、女性の能力発揮を進めるのが狙いだ。関連行事として行われた2018年度の農山漁村女性活躍表彰は、農山漁村男女共同参画推進協議会が主催。17年度に「女性・シニア活動表彰」と「男女共同参画優良活動表彰」を一本化。地域社会や法人への参画、起業・新規事業開拓、若手の参入など6部門を設けた。女性活躍法人部門で農水大臣賞に輝いた岩手県一関市・かさい農産は、役員4人のうち2人、構成員全体の8割近くが女性。それぞれの家庭状況に合わせ、子育て中の女性だけではなく高齢者や障害者にとっても働きやすい職場を実現した。若手女性チャレンジ部門農水大臣賞の福島県二本松市・菅野瑞穂さんは13年に、20代で会社を設立。大手旅行会社と連携し、東日本大震災からの復興を目指す生産現場を自分の目で見てできることを考える「スタディーツアー」を始めた。毎年100人近くが参加している。女性地域社会参画部門で農水大臣賞を受賞した熊本県菊陽町の那須眞理子さんは、74年に結婚を機に就農。当時は「めんどり(発言する女性)がさえずる家は栄えた試しなし」といわれていたが、「ようやく時代が追いついた」と振り返る。40年間、地域や経営で男女共同参画へ活動した努力が実を結んだ。審査委員長を務めた福島大学の岩崎由美子教授は「個人の活動や仕事づくりが地域の課題を解決している」と共通点を指摘、女性が輝く社会は「地域全体の活性化につながっている」と評価した。こうした取り組みを全国に広げていくことが重要だ。今、家庭で、職場で、地域で発言しにくかったり、働きにくかったりする場面はないだろうか。女性の参画は確実に進んではいるものの、男性優位の社会構造は続いている。JA全中によると、「1JA当たり役員2人以上の登用」という目標は2年連続で達成したが、全役員に占める女性の割合は8%。農業委員会に占める女性の割合は12%。市議会は14%、町村議会は10%といずれも1割程度にすぎない。男女が対等に運営に携わる社会は程遠い。旧態依然とした体制を続けていても未来は開けない。時代の変化に対応するには、性差にとらわれない意識改革が必要だ。目指すべきは年齢や性別、障害の有無にかかわらず、多様な人の発言やアイデアを受け止められる社会をつくることだ。労働力不足の中で、人生のどのステージにあっても無理なく自分らしく働ける地域づくりも欠かせない。女性の活躍なくして農業界と地域の発展はない。

*4-2:https://www.agrinews.co.jp/p44887.html (日本農業新聞 2018年8月15日) 49歳以下の新規就農者 4年連続2万人超え 田園回帰流れ続く 後継者育成課題も
 49歳以下の新規就農者が2017年で2万760人となり、4年連続で2万人を超えたことが農水省の調査で分かった。農業以外から就農する新規参入者が、49歳以下では調査開始以来、最多となるなど、若年層の田園回帰の動きが続いている。だが、新規就農者全体では5万5670人で前年比7%減。生産力の維持には、農家子弟の経営継承への支援をはじめ、一層の担い手の確保、育成が求められる。49歳以下の新規就農者は14年に2万1860人となって以降、2万人台を保っている。農地などを一から確保し経営を始めた新規参入者は、49歳以下は17年で前年比10%増の2710人で、07年の調査開始以降で最多。同省は「都市から農山村に移住し農業を営む田園回帰の流れが、若年層の間に続いている表れ」(就農・女性課)と指摘する。農業への定着を促すため、就農前後に補助金を交付する農業次世代人材投資資金(旧・青年就農給付金)も下支えしたとみる。新規参入者は50歳以上も含めた全体でも6%増の3640人で、14年の3660人に次ぐ多さとなった。一方、実家の農業を継いだ新規学卒者ら新規自営農業就農者は4万1520人で10%減、うち、49歳以下は1万90人で12%減となった。高齢化を背景に農家全体が減る中で、後継者数も減っている状況だ。農業法人への就職者など新規雇用就農者にもブレーキがかかった。14年以降伸びていたが、17年は1万520人で1%減、うち、49歳以下は7960人で3%減だった。国内全体で労働力不足が進む中、他産業に人材が流れたとみられる。政府は農業生産の継続に必要な農業就業者数を約90万人と推計し、これを60代以下で安定的に担うために、49歳以下の農業従事者を23年度までに40万人にする目標を掲げる。49歳以下の農業従事者数は、17年度は前年比8000人増の32万6000人。目標達成には、さらに新規就農者を増やし、従事者確保のペースを上げる必要がある。また、認定農業者に占める49歳以下の割合を見ると、06年3月には4割近くあったが、15年3月では約2割に低下している。若年層の新規就農者が認定農業者など地域の担い手として定着できるよう、支援を強化する必要性も高まっている。

*4-3:https://www.agrinews.co.jp/p46476.html?page=1 (日本農業新聞 2019年1月19日) 農水省 白書作成へ議論着手 先端技術、農福連携が柱
 農水省は18日、食料・農業・農村政策審議会の企画部会(部会長=大橋弘東京大学大学院教授)を開き、2018年度の食料・農業・農村白書の作成に向けて議論を始めた。重点的に取り上げる項目として、先端技術を活用したスマート農業などを提示した。委員からは、全国的な普及が進むよう求める声が出た。白書は3月に骨子案を示し、5月の閣議決定を予定する。同省は、同部会で白書の構成を説明。特集のテーマに「スマート農業」「農福連携」を挙げた。これらとは別に、18年度の特徴的な動きとして取り上げる項目に①多発した自然災害②農産物・食品の輸出拡大に向けて③規格・認証・知的財産の活用④消費が広がるジビエ(野生鳥獣の肉)──を挙げた。スマート農業を巡り、同審議会会長を務める東京大学大学院の中嶋康博教授は「農業団体や集落などの組織をどう変えていくかの議論ができないか」と提起。技術導入に合わせて組織の体制を整えていく必要性を挙げ、議論を呼び掛けた。JA全中の中家徹会長は、スマート農業について「平地や大規模というイメージが先に浮かぶ。中山間地でもやってみようと思える視点が必要だ」と指摘した。家族農業など中小規模の農家も活用できるよう、技術の導入費用に関する議論も進めるよう求めた。全国農業会議所の柚木茂夫専務は、18年度からの米の生産調整見直しに対し「米政策の転換期だった。点検や評価を丁寧に記述するべきだ」と強調した。

*4-4-1:https://www.agrinews.co.jp/p47115.html (日本農業新聞 2019年3月20日) 28都府県が増額 労働力対策を拡充 本紙調べ 19年度農林水産予算
 2019年度の都道府県予算(案)が出そろった。日本農業新聞の調べでは、知事選のため骨格・暫定予算を組んだ11道県を除く36都府県のうち、約8割の28都府県の農林水産予算を増やした。国の防災・減災緊急対策に伴い、公共事業費などが増えていることに加え、農政改革に対応し、予算を手厚くした。担い手の高齢化を受け、労働力の確保対策や、省力化に向けたスマート農業の導入支援対策の新規事業が目立っている。農林水産予算が最も伸びたのは広島県の39%。西日本豪雨の復興事業を計上し、大きく増加した。岩手県は、東日本大震災からの復興事業で、沿岸部の防潮堤工事の支払いがピークを迎え22%増。宮城県、福島県も、震災からの復興事業により増減が大きくなっている。奈良県は18年度、国営水利事業の地元負担金を計上したため、大きく減った。農林水産予算の内訳を見ると、労働力確保に向けた事業が目立つ。4月からの外国人労働者の受け入れ拡大に向け、環境整備を進める狙いだ。茨城県は、県内の外国人労働者数が過去最多の3万5062人(18年10月末時点、茨城労働局調べ)に上る。外国人労働者が農業に従事しやすいよう「農業労働力確保総合支援対策事業」(700万円)に新規で取り組む。農業生産法人などが受け入れに向けた住環境整備で融資を受けた場合に、その利子補給を行う。外国人労働者が農耕用の大型特殊免許やフォークリフトなど農作業に必要な資格取得費用も負担し、人材育成につなげる。秋田県は新規で「外国人材の受入体制整備事業」(1050万円)を展開。外国人技能実習生などの活用方法の検討や農業法人などを対象とした研修会を開く。長野県は、JAグループと連携して、外国人材を含めた労働力確保推進の体制整備を支援。「JA長野県農業労働力支援センター」の取り組みを後押しする。農業労働力の安定確保支援事業費を計上した。省力化に向けたスマート農業の導入支援も加速する。作業の省力化と生産性向上につなげる。新潟県は「スマート農業加速化実証プロジェクト」を立ち上げる。4億円を計上し、農機具メーカーなどと連携して実証研究を実施。ロボットや人工知能(AI)、モノのインターネット(IoT)などの先端技術を水田作や園芸分野で導入する。京都府は、AIや情報通信技術(ICT)などを活用する「スマート農林水産業加速事業」を2億1200万円計上。モデルとなる経営体で技術を展示・実証することで、普及を後押し。導入する生産者の費用を一部補助する他、産官学連携でスマート農業技術のメニュー開発に取り組む。高知県は「Next次世代型施設園芸農業の推進」として、8億4900万円を計上し、AIによる作物の生理・生育情報の可視化と利活用などの研究を進める。省力化により担い手の経営高度化につなげる考えだ。

*4-4-2:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO38788160R11C18A2MM8000/?n_cid=NMAIL006 (日経新聞 2018/12/11) 外国人労働者 口座開きやすく 生活相談など支援拡充へ
 政府は改正出入国管理法に基づき、2019年4月に新設する在留資格「特定技能」を巡り、まずはベトナムやフィリピンなどアジア8カ国から外国人労働者を受け入れる。19年3月までに情報共有などを定める2国間協定を結ぶ。来日した労働者の銀行口座の開設を容易にするなど働き手の不安を緩和し、日本での生活になじむよう最大限の環境整備に取り組む。19年4月の新制度開始時は8カ国のうち、ベトナム、中国、フィリピン、インドネシア、タイ、ミャンマー、カンボジアの7カ国が決まっており、残り1カ国は調整を続けている。専用の日本語試験を設けて、新たな労働者の受け入れを始める。4月以降、順次拡大する。技能実習制度で日本に在留している外国人は今年6月時点で約28万5千人。ベトナムは最も多い約13万4千人を占め、新制度でも柱となる。中国は約7万4千人、フィリピンも約2万8千人が在留する。現在、技能実習を受けている実習生は8カ国以外でも新資格に移行する場合がある。外国人労働者の受け入れ拡大では、賃金の未払いなど劣悪な労働環境に陥ることもある働き手が安心して暮らせる基盤をつくることが急務となっている。日本と相手国政府の双方が、言語や風土が異なる場所で働くことになる外国人の生活環境に配慮し、公的関与のもとで情報共有する。受け入れ側と送り手側の双方のメリットとなる仕組みづくりをめざす。そのためにまずは受け入れの前提として、8カ国とは労働者の権利保護などを目的とした2国間協定を結ぶ。国会での批准手続きは必要としない形式をとる。ベトナムなどは日本滞在中の労働者としての権利保護を求めていた。受け入れる外国人の身元や生活実態などを把握しながら就労環境を整える。技能実習制度では、就労前に多額の手数料や保証金を支払わせるといった悪質ブローカーが相次ぎ、実習生の失踪などにつながっていた。2国間協定を結ぶと警察当局が捜査情報を互いに共有し、悪質な業者の摘発につなげやすくなる。年内に決める「外国人材の受け入れ・共生のための総合的対応策」には生活環境の改善策も明記する。金融庁が金融機関向けの指針をつくる。外国人労働者がすべての金融機関で口座を開設できるようにして、給与を管理しやすくする。これまで技能実習生は銀行口座の開設が難しく、給与を現金で受け取る例が目立っていた。銀行口座があれば、支払額を客観的に把握することも可能になる。政府は新資格での労働者は日本人と同等以上の給与水準を支払うよう求めており、係争時に国が適正に支払われているかチェックすることができるようになる。日常生活の相談に応じる「多文化共生総合相談ワンストップセンター」も全都道府県に設ける。政令指定都市などにも置き、全国で約100カ所程度を想定する。全ての医療機関で外国人が医療行為を受けられるような体制も整える。公共機関の窓口には翻訳システムを導入する。住宅を確保しやすくするため、外国人の入居を拒まない賃貸住宅の情報を提供する仕組みもつくる。複数の言語で賃貸借契約書の書式をつくり、賃貸人や仲介事業者向けには外国人対応の実務マニュアルを配る。生活で使う言葉に重点を置いた日本語教育へ全国に教育施設を展開する。19年度予算案に200億~300億円の関連予算を計上する。不法残留などの問題を減らすため、日本語教育機関への定期的な点検や報告を義務付ける。いまは日本語学校へ留学目的で入国した外国人が就労し、不法残留するケースが目立っている。新資格の就労により門戸を広げる一方で、不適切な就労の根絶を目指す。こうした対策について、安倍晋三首相は法務、外務、厚生労働など関係省庁による外国人受け入れに関する閣僚会議を年内に開き、8カ国の受け入れ方針などを正式決定する見通しだ。

*4-4-3:http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2018121402000165.html (東京新聞社説 2018年12月14日) 外国人の医療 不正ありきは差別生む
 「日本で働く外国人が増えると不正に医療保険を利用する」-。政府はそんな見方を前提に医療保険制度の改善を考えているようだ。外国人への差別や偏見を助長しかねない議論は慎むべきだ。まるで性悪説に立つような議論は、外国人労働者を隣人として受け入れる姿勢に欠ける。今後、年金制度も含め社会保障の適用ルールの議論が始まるが、監視する相手としか見ないのなら共生はおぼつかない。外国人労働者の受け入れ拡大を目指す改正入管難民法が成立した。その中で出てきた議論が、来日した外国人が公的健康保険を不適切に利用する懸念からの防止策である。日本の企業で働く外国人は主に健康保険(健保)に入る。母国にいる家族も被扶養者と認められれば母国や日本で健保を利用できる。受診のために来日して高額医療を受けることもできる。こうなれば外国に住む家族のために費用がかさみかねないという。また、日本への留学生は国民健康保険(国保)に加入するが、偽りの在留資格で加入したり、複数の人が同じ保険証を使い回す「なりすまし」の懸念がある。本人確認の必要性を政府は言い始めた。こんな点が問題視されている。社会保障は支え合いの制度だ。不適切な利用は許されないし制度の穴はふさがねばならない。日本人との公平性に配慮しながら制度改善を進めることは必要である。だが、外国人という理由でこうした不適切利用が横行するかのような前提で議論がされている。厚生労働省は昨年三月、日本で高額医療を受けた外国人について、医療費の使われ方を調べた。国保加入から半年以内に高額医療を受けた人の中で明確な不適切利用は見つからなかった。政府は一月から、国保へ加入間もない外国人が高額医療を申し込む際、窓口となる自治体が在留資格と実態を確認する調査を試験的に始めた。資格と実態が違う場合は自治体から入管当局に通報する仕組みで違和感を覚える。しかもこの調査も九月に法相が、在留資格を取り消した事案はないと説明した。不正が続出するとの懸念は取り越し苦労だろう。むしろ働く外国人は医療保険の保険料を払う貴重な存在になる。政府がやるべきは、加入すべきなのに未加入の企業への指導や制度の周知ではないのか。外国人を信頼しない姿勢では、前向きな制度議論はできない。 

<日本人も感じる銀行の不便>
PS(2019年3月22日追加):*5のように、大手3銀行が先端IT技術を導入して新卒採用を抑制し、組織のスリム化を進めて経営効率化を加速するのは、新卒者数も限られ、ITでもできる業務よりは稼げる熟練業務を行う方が担当者も遣り甲斐があると思われるのでよいと思う。しかし、私は佐賀県を地元として衆議院議員になった時、大手銀行の支店が限られた場所にしかなく、あわてて佐賀銀行に口座を作った経緯がある。しかし、佐賀銀行の支店は埼玉県の自宅付近にはなく、自宅付近では通帳記帳ができない。
 そのため、この際、銀行通帳の規格を統一し、別の銀行に行っても持っている通帳で引き出し・払込・通帳記帳等ができるようにして欲しい(通帳交換の時には表紙を印刷できるようにしておけばよい)。その点、ゆうちょ銀行は日本中どこにでもあり、通帳のみで引き出し・払込・記帳等ができる点が便利だが、まだ銀行機能をすべてはもっていない欠点がある。

*5:http://qbiz.jp/article/150659/1/ (西日本新聞 2019年3月21日) 大手3銀行が合理化加速 IT導入で業務量削減
 三菱UFJ銀行が、2023年度末までに9500人分の業務を削減する計画を大幅に積み増すなど、大手3銀行が先端のIT技術の導入を進め、経営効率化を加速することが21日、分かった。新卒採用数を抑制し、組織のスリム化も進める。20年度の採用数は4年連続で減少し、リーマン・ショック以降で最少になる見通しだ。業務量削減は、手作業で処理していた単純な業務の自動化が柱だ。支店や事務部門の行員数を減らすなどしてコスト削減を図り、稼げる分野に人材を配置転換する狙いもある。三菱UFJ銀は、住宅ローン審査の一部を人工知能(AI)に肩代わりさせたり、複数拠点に分散していた業務を集約したりすることで削減幅を拡大する。必要な人員は減る見込みで、20年度の採用数を19年度の950人から2割以上減らす方針だ。三井住友フィナンシャルグループは19年度末までに4千人分の業務量削減を目指すが、当初計画から上回る見込み。傘下の三井住友銀行の20年度の採用数は19年度の650人から1割程度減らす方向で検討している。みずほフィナンシャルグループは、人員削減を26年度末までに1万9千人行う方針だったが、前倒しを視野に計画を練り直し始めた。19年度は700人だった採用数も減らす予定だ。超低金利の長期化による収益悪化やIT企業など異業種の参入が相次いでいることで、銀行業界を取り巻く環境は厳しさを増している。変化の速度は想定以上で、生き残りに向けてさらなる効率化を徹底する。

<化石燃料由来の水素と原発補助金とは、どこまで馬鹿なのか>
PS(2019年3月22、23日追加):*6-1のように、「東電が水素事業に参入して2020年に稼働する」というので「やっとそうなったか」と思ったら、「水素を都市ガスから生産する」と書かれていたので呆れた。何故なら、都市ガスから生産した水素による燃料電池車なら、それは輸入エネルギーである上、CO₂削減もおぼつかず、燃料電池車が増えれば増えるほどその付近の空気中の酸素が薄くなるという新しい公害が起こるため、費用が課題だと言っていることまで含めて、どこまで馬鹿かと思うからだ。一方、自然エネルギー由来の電気で水を電気分解して水素を作れば、同時に酸素もできるため、車内に酸素を吹き出して酸素不足を解決することもできるので、化石燃料由来の水素はボイコットしたい。そのため、東電・中電の株主や投資家は、この投資の意義について、株主総会で追及した方がよいと思う。
 さらに、*6-2のように、経産省は、温室効果ガス対策を名目に、原発由来の電気について電力小売事業者と発電事業者間の市場価格に一定価格の上乗せ(原発に対する新しい補助金)を認めようとしているそうだ。そして、その理由を「原発は環境への貢献で付加価値をもたらしているから」としているが、実際には放射線公害という大きな負の付加価値をもたらしているため、それをこそ反映すべきだ。また、経産省が「原発には競争力がある」として原発を「ベースロード電源」と位置づけ、2030年度の電源構成で20~22%に引き上げる目標を掲げたのは、「バランスよくエネルギーミックスを決める」という名目で、市場を無視して盲目的に決めた統制経済そのものであり、このように特別扱いしてまで原発を維持したい理由は原爆の開発以外に考えられない。しかし、ミサイルが主役となる時代に原爆を開発するのは、戦闘機が主役となる時代に戦艦を重視したのと同じくらい時代遅れの発想なのである。



(図の説明:左図のように、2015年の日本全体のCO₂排出量は世界第5位で、左から2番目の図のように、一人当たり排出量は世界第4位だが、右から2番目の図のように、削減目標は低い。そのような中、無公害車と期待している右図の燃料電池車の水素を化石燃料から作ったり、原発に補助金を出したりなど、どこまで環境に無神経なのかと呆れるわけである)

*6-1:http://qbiz.jp/article/150686/1/ (西日本新聞 2019年3月22日) 東電が水素事業参入、2020年稼働 中部電力と折半のJERAに継承
 東京電力ホールディングス傘下で火力発電を担う東京電力フュエル&パワー(FP)が水素事業に参入することが22日分かった。石油元売りのJXTGエネルギーと共同で水素の製造設備を造り、2020年中に稼働させる。中部電力と折半出資して設立した火力発電会社JERA(ジェラ)に継承する。22日午後に正式発表する。製造設備は、東電FPの東京都品川区にある大井火力発電所の敷地内に新設し、都市ガスから水素を生産する。水素で走る燃料電池車への供給設備も併設する。投資額は数十億円となる見通し。JXTGは既に水素事業に参入しており、水素の製造や供給設備の運用の知見を持つ。東電と協力することで生産費を減らせるとみる。東電FPは今年4月にJERAへの全事業の移管が完了する。水素事業も同時に移す。燃料電池車は水素を酸素と反応させて発電して走行し、二酸化炭素を排出しない。水素は太陽光や風力で発電した電気で水を分解して生産することも可能だ。ためることのできない電気を水素に転換して貯蔵できるという利点もあるが、費用が課題となっている。

*6-2:https://digital.asahi.com/articles/DA3S13945799.html (朝日新聞 2019年3月23日) 原発支援へ補助制度案 売電価格上乗せ 経産省検討
 経済産業省が、原発で発電する電力会社に対する補助制度の創設を検討していることが分かった。温室効果ガス対策を名目に、原発でつくった電気を買う電力小売事業者に費用を負担させる仕組みを想定しており、実現すれば消費者や企業が払う電気料金に原発を支える費用が上乗せされることになる。2020年度末までの創設をめざすが、世論の反発を浴びそうだ。経産省の内部資料や複数の関係者によると、省内で検討されている仕組みは、原発については、発電事業者と電力小売事業者との間で取引する際の市場価格に一定の価格を上乗せすることを認めるものだ。原発を温室効果ガスを排出しない「ゼロエミッション電源」と位置づけ、環境への貢献で付加価値をもたらしている、との理屈だ。発電事業者は原発の電気をより高い価格で買ってもらえるため収入が増える。これが事実上の補助金になるという想定だ。モデルにするのは、米国のニューヨーク州が導入する「ゼロ・エミッション・クレジット(ZEC)」という制度で、原発の電気について市場価格への上乗せを認める。経産省が検討を進める背景には、東京電力福島第一原発事故を受けた規制基準の強化で安全対策費用が高騰し、原発でつくった電気の価格競争力が低下していることがある。それでも政府は原発を「ベースロード電源」と位置づけ、30年度の電源構成に占める原発の割合を20~22%に引き上げる目標を掲げており、特別扱いしてでも原発の競争力を維持するねらいがある。政府は30年度から、電力小売事業者に原発や再生可能エネルギーなどの「非化石エネルギー源」の電気を販売量の44%にするよう義務づける。小売事業者は、補助制度で原発の電気が割高になっても、一定程度は買わざるを得なくなる可能性がある。その負担は基本的に消費者や企業に回ることになる。だが、こうした制度は「原発の電気は安い」としてきた政府の従来の説明と矛盾する。原発事故後、再稼働に反対する世論は賛成の倍近い状況が続いており、経産省の思惑通りに実現するかは見通せない。
■競争力あるなら政府支援いらぬ
 元原子力委員会委員長代理で長崎大核兵器廃絶研究センター長の鈴木達治郎さんの話 経済産業省は今でも数値を示して、原発は競争力があると言っている。原発に競争力があるなら政府の支援はいらないはず。2050年までに温室効果ガスを80%削減するために支援の必要性を示すなら、長期目標を達成する明確な道筋を示してからだ。

| 農林漁業::2015.10~ | 02:53 PM | comments (x) | trackback (x) |
2019.3.12 日本は人権を大切にしない国である ← 災害後は速やかな復興と災害前以上の生活水準にすることが必要なのに、時間ばかりかけて「心のケア(心の問題)」としていることから (2019年3月14、15、16、18、25日に追加あり)
 

(図の説明:左図のように、東日本大震災の津波遡上高は地形が狭くなるところで高くなるので、地域によって異なる。中央は宮城県女川町、右は岩手県陸前高田市を襲った津波の様子だ)

 

(図の説明:左の2つは、東日本大震災被災地の地形と被災状況、右の2つは、南三陸町と宮古市の津波後の状況である)

(1)東日本大震災と原発事故から8年後の復興状況
 2011年3月11日2時46分、私が埼玉県の自宅マンション倉庫にあるゴミ置き場でゴミの分別をしていたところ、激しい揺れが来てそれが長く続いたため、倉庫にいては危ないと思って駐車場に出て座り込み、このような激しい地震の中で10階建てのマンション全体がどう揺れるかを、しっかり見ることとなった。その結果、当たり前だが、中央部はあまり揺れず端が激しく揺れて、その揺れは上階に行くほど著しかった。

 揺れが収まってからマンションの自室に戻ってTVをつけると、津波の恐れはあるが6m程度だと言っていた。これが、津波を過小評価して避難を遅らせた原因だろう。くぎ付けになってTVを見ていると、津波は15時過ぎから到達し始め、地形によって遡上高が変わり、居住地の最大遡上高は宮古市の40.5mというすごいものだったことを、決して忘れてはならない(https://news.yahoo.co.jp/byline/nyomurayo/20170311-00068495/参照)。

 復興庁は、このブログで私が提案してできた省庁だが、①1カ所で総合的復興計画を立てて速やかに復興を進めること ②復興にかかった費用をすべて集計すること がその目的だった。そのうち、①については、*1-1-1・*1-1-2のように、東日本大震災から8年経ってもまだ復興途上で避難生活を強いられ、仮設住宅で暮らす人が現在でも岩手県2,156人、宮城県453人、福島県809人もおり、他県も含めると全体で5万2千人に上るというので、決して速やかとは言えない。原発事故で戻れない人には、帰還を無理強いするのではなく、1~2年以内に「できないことは、できない」と明らかにして移住してもらうべきだったのだ。また、②については、本来は毎年集計して費用対効果を開示すべきだったが、今からでもやってもらたい。

 もし復興庁を作らず各省庁が別々に関与していれば、復興がもっと速かったとは思わないが、仮設住宅で我慢させるのはせいぜい1~3年にしなければ、健康を害したり気力を失ったりするのは当然だ。そして、これは誰かが話を聞いたり、心のケアをしたりすればすむ心の問題ではなく、解決すべき実在する問題なのである。

 さらに、「福島県の農水産物の風評被害・・」などと書かれているが、風評被害と強弁して無理に食べさせようとしたり、除染土が置きっぱなしになっていたりする限り、安全を第一に考える人は福島県に寄り付けないだろう。つまり、災害後の誤った意思決定の一つ一つが、すべて人災となって加わっているのである。

 なお、*1-1-2には、「津波被害を受けた3県の沿岸部を中心に人口減少が加速し、地域コミュニティーの再生どころか、存続の危機を迎えているところも少なくない」と書かれているが、津波被害を受けた同じ場所に前と同じ街を造って地域コミュニティーを復活すればよいわけではなく、安全性を考えて産業を含めた再配置を行うのが当たり前である。

 また、*1-1-3に、「i)被災者の生活再建にめどが立ったわけではない」「ii)原発事故に見舞われた福島県で、政府は一通りの除染で帰還を促すが殆どの避難者が被曝の不安、医療・介護、商業施設再開見通しのないことで帰れない」「iii) 福島県沿岸部でイノベーション・コースト構想があり、帰還者でも避難者でもない新たに来る人たちを対象に年700億〜900億円が投じられている」などが書かれているが、どの地域であっても働く場所や収入がなければやりがいを持って生きられないため、いつまでも「可哀想の論理」で被災者を支援するだけでは、被災者も救われないし、国の財政も破綻するわけである。

 なお、*1-1-4に、「復興住宅で高齢者の孤独死が急増した」と書かれているが、これは災害公営住宅(復興住宅)に、誰でも来やすいレストランやショートステイ・診療所・訪問介護などを付設する方が、ボランティアが時々訪問するより効果的だろう。そして、現在50~70代くらいの男性が「復興期弱者」になっているのは、いつまでも生活の目途が立たず、仕事がないから(つまり、復興が遅すぎるから)ではないかと考える。

(2)原発事故のあった福島の復興状況
 *1-2-2のように、東日本大震災から8年経っても避難者が5万人超もいるのは、事故を起こしたフクイチの立地自治体付近が、避難指示区域だったり、帰還困難区域だったりするという理由も大きい。

 そのフクイチは、8年経ってもまだ原子炉内の燃料デブリが取りだされていないばかりか、取り出す目途もたっておらず、100万トンを超える汚染水処理もまた見通しが立たない。*1-2-1によれば、原発事故対応費は総額81~35兆円になるとの試算を「日本経済研究センター」がまとめており、これは経産省の約22兆円という試算を大きく上回っているが、経産省との違いは、汚染水の浄化処理費用を約40兆円と大きく見積もり、除染で発生する土壌などの最終処分費用を算入したことなどだそうだ。

 そもそも、「水で冷やしさえすればよい」というのは平時の発想で甘すぎると、私は事故当時から思っており、ロシアのように最初から石棺方式を採用すれば汚染水も出なかった筈だが、本当に「復興やふるさとへの帰還をあきらめることに繋がる」という声だけで40兆円の国民負担をさせることになったとすれば誤った意思決定も甚だしい。むしろ、空いた農地も多い中、移住すべき人たちにはその費用を出した方がずっと賢く、この誤った意思決定による損失は、本当に全国民が負担すべきものなのか疑問に思う。

 そして、このように国民負担を増やすが生産性は増さない変な意思決定を続けている人たちの予測は全く当てにならないため、*1-2-3のとおり、史上最悪の原発事故を起こした日本は、原発をベースロード電源などにするのではなく、早々にゼロにすべきである。これは、単なる不安ではなく、正当なリスク管理だ。

(3)戦中・戦後の日本
 女学校の前半まで満州で育ち、戦争中に佐賀市に引き上げてきて女学校(佐高女)の後半は飛行機の尾翼を作らされていた私の母が、「長崎に原爆が落ちた時は、佐賀からもキノコ雲が見えて新型爆弾だと言われていた」「飛行機の尾翼を作っていた工場に低空飛行の米軍戦闘機から機銃掃射を受け、逃げ回りながら見上げたら米軍機のパイロットが笑いながら撃っていた」と語っていた。現在は、パイロットも乗らないミサイルのボタンを押すだけで攻撃できるため、攻撃して人を殺すことに対する抵抗はもっと小さい(攻撃:ローレンツ《行動学者》著 参照)。

 そして、日本では、太平洋戦争中に、*2-1・*2-2のように、無差別爆撃が行われ、1945年3月10日未明の東京大空襲では、約300機のB29が33万発の焼夷弾を投下して10万人近くが犠牲になったと言われるが、既に70年以上も前のことなので、身内からこういう体験談を聞ける人は私たちの世代が最後なのかもしれない。そのため、早くそれぞれの学校で同窓会HPを立ち上げ、戦中・戦後に生徒だった人のエッセイを掲載すると、生きた資料になると思う。

 東日本大震災の後、その母が「私たちは、焼け出されても誰も何もしてくれないから自分たちで立ち上がったのに、ふるさとを失ったって贅沢ね。大災害の後、あれだけやってもらえばいいでしょう」と言っていた。私も「災害で失ったものは仕方がないので、(復興に国の力は借りても)故郷やコミュニティーは新しく作るしかないじゃない」と思う次第だ。

 なお、第二次世界大戦では、*2-3のように、国策として満州開拓に出ていた人たちも多くが棄民され、日本に帰りついた人はむしろ幸運な方だったそうだ。私の祖母は、叔母を妊娠していた昭和7年(1932年)に上海事変が起こり、鉄砲の玉が家の中に飛び込んでこないように窓に布団をぶら下げていたという壮絶な経験をしており、(それと比べる必要はないが)生きていくのに心配のない現在の日本の礎を作った人々を、決して疎かにしてはならないと思っている。

・・参考資料・・
<東日本大震災と原発事故から8年後の復興進捗状況>
*1-1-1:https://www.kahoku.co.jp/editorial/20190311_01.html (河北新報 2019年3月11日) 東日本大震災8年/歳月を経ても復興は途上だ
 突如としてあの日、私たちはすさまじい揺れに突き動かされた。異常なほど長くそれは続き、やがて、真っ黒な巨大津波が沿岸を覆い尽くすように襲った。濁流が家々をきしませ、押し流し、瞬く間にがれきに変えていく。陸では打ち上げられた大小の船が転覆し、数え切れない車が横転し、自販機や家電品が散らばっている。ささくれ立った無数の家屋の柱、引きちぎられた防潮林の木々。見渡す限り、どれもが汚泥にまみれていた。破壊の限りを尽くした津波が引いた直後の惨憺(さんたん)たる光景-。かけがえのない生命を救い得なかった悔恨、あるいは不条理な自然災害への痛憤。家族や友人を亡くした人たちはもろもろの思いにさいなまれながら、感情を覆い隠すようにして生きてきた。そうした日々を重ね、被災地は東日本大震災から8年を迎える。ひと頃に比べると先細りした支援の中で、孤立感に耐えながらプレハブの応急仮設住宅で暮らす人は、今でも岩手県が2156人、宮城県453人、福島県809人。借り上げ住宅など、みなし仮設住宅に住む人を加えると、3県で1万人を超える。応急仮設住宅で生活しなければならない被災者がこれほど多いという事実だけで、震災がまだ進行中なのは明らかである。震災からの復興は文字通り道半ばである。8年という歳月を数えてなお、復興は途上である。次の数字も忘れてはならないだろう。他県への避難者数は47都道府県に広がり、約5万2000人に迫る。最多は福島県から他県への避難者で3万2631人、さらに福島では、県内避難者が9322人。避難先不明者も含め、福島は計4万人以上が震災時の居住地を離れたままだ。それを余儀なくさせている東京電力福島第1原発の廃炉作業は、最難関とされる溶融核燃料(デブリ)の取り出しにようやく一歩を踏み出したばかり。廃炉完了までに要する時間はどれほどなのか、予測はつかない。震災から8年の歳月を経るこれが被災地の惨たる現状である。被災3県、特に福島の農水産物の風評被害は依然として残る。かつて年間70万人の子どもたちが修学旅行などで宿泊した福島は、震災で激減し、徐々に回復してはいるが、まだ7割にすぎない。冒頭に書いたような震災直後の風景は、じかに体験した人々にとっては、忘れようにも忘れられない。あの被災体験は生々しく記憶に突き刺さったまま、心に深く負った痛みとして残り続ける。この震災は言語に絶する被害を受けた災厄であり、いずれ自力で歩み続けなければならないとしても、まだ被災地は病んだ状態にある。時の経過とともに各種の支援が途絶え、厳しい現実が忘れられるような事態だけは、どうしても避けなければならない。

*1-1-2:https://kumanichi.com/column/syasetsu/898828/ (熊本日日新聞 2019年3月11日) 東日本大震災8年 地域再生はまだ道半ばだ
 東北地方を中心に死者1万5897人、行方不明者2533人、関連死3701人という甚大な被害を出した東日本大震災はきょう、発生から8年を迎えた。国が想定している復興期間の終了が2年後に迫る中、インフラの整備などは進んだが、被災地の人口減少は止まらず、最大の課題である地域コミュニティーの再生はまだ道半ばだ。津波や東京電力福島第1原発の事故により避難生活を余儀なくされている人は、ピーク時の約47万人から減ったもののなお約5万2千人に上る。被害が大きかった岩手、宮城、福島3県での、プレハブ仮設住宅への入居世帯も1573戸を数える。一方で、災害公営住宅は約3万戸の計画戸数のうち95%以上が完成した。道路、港湾、鉄道といった交通インフラの復旧もほぼ完了。農地の92%、水産加工施設の96%で、営農・業務の再開が可能となった。
●加速する人口減少
 しかし、3県では津波被害を受けた沿岸部を中心に人口減少が加速し、地域コミュニティーの再生どころか、存続の危機を迎えているところも少なくない。3県のまとめなどによると、42市町村のうち25市町村で震災前から10%以上人口が減少。仙台市周辺などの一部を除き高齢化率も30%超となっている。人口減少は学校、病院など住民の生活基盤にも影響を及ぼし、今後の復興の行方を左右する大きな課題だ。産業面では、3県の製造品出荷額はおおむね震災前の水準まで回復した。しかし、グループ補助金を受けて事業再開した企業を対象に、東北経済産業局が行ったアンケート(2018年6月)によると、売り上げが震災直前の水準以上にまで回復していると回答したのは46・4%にすぎない。人口減少は地元での売り上げや人手確保の面でも影を落としている。
●福島はさらに深刻
 原発事故に見舞われた福島県の状況はさらに深刻だ。県全体で人口は震災前から1割近く減少。避難者数は約4万2千人と全体の約8割を占める。農地の復旧もまだ67%にとどまる。福島第1原発から北西方面に広がる帰還困難区域では、今も立ち入りが原則禁止のまま。このうち同区域面積の約8%の地区を再び人が住めるようにする「特定復興再生拠点区域」(復興拠点)として整備しているが、復興拠点の避難解除は早くても22年春。古里に戻れる日は遠い。さらに、原発に近い双葉、浪江、富岡3町では、40代以下の住民の半数以上が帰還しない意向を示していることが、昨年の復興庁などの調査で判明した。避難生活が長引き、原発事故の収束も見通せず、若い世代が帰還に見切りをつけた状況が読み取れる。政府は8日、復興期間が終了する21年度以降も復興庁の後継組織を置くことを盛り込んだ復興基本方針の見直しを閣議決定した。残り2年の復興期間内で、津波被災地の「復興の総仕上げ」に取り組みながら、21年度以降に必要な支援事業についても詳細な検討を進めるという。原発事故の対応も中長期的に国が責任を持つとした。
●意見踏まえ方針を
 地域再生がなお見通せない現状からいって、後継組織設置は当然の判断だろう。共同通信が2月に実施した被災3県の市町村長アンケートでも9割が後継組織が必要と答え、中でも人口減少対策を求める声が多かった。期限付きの増税などで賄っている財源確保策が課題となるが、被災地の意見を十分に踏まえた上で、後継組織の在り方など復興基本方針の見直しを急ぎ、詳細を示してもらいたい。同時に10年間で総額約32兆円を費やす復興関連事業効果の検証も求めておきたい。

*1-1-3:https://www.shinmai.co.jp/news/nagano/20190312/KT190311ETI090010000.php (信濃毎日新聞 2019年3月12日) 復興基本方針 形よりも大切なことが
 形にとらわれて国が先走る構造こそ変えなくてはならない。安倍晋三政権が、東日本大震災被災地の復興基本方針を改めた。2020年度で廃止となる復興庁の後継組織の設置を明記。21年度からは、被災者の心のケアといったソフト事業を中心に展開するという。震災からの8年で防潮堤や災害公営住宅の整備は進んだものの、被災者の生活再建にめどが立ったわけではない。国は当事者の声をしっかりくみ取り、事業の中身を固めるべきだ。首相直属の復興庁の後継組織は形態が定まっていない。内閣府に移管する案、金融庁や消費者庁のような外局とする案、「防災省」への改編を求める声が政府・与党内で上がっている。検討が遅れていたのに方針に盛ったのは、統一地方選や参院選を意識してのことだろう。政府は11〜15年度を「集中復興期間」、16〜20年度を「復興・創生期間」とし、10年間で32兆円の予算を確保した。道路や鉄道、住宅、堤防などの復興工事はほぼ終える見通しとなっている。半面、なお5万2千人が避難生活を強いられている。この4月以降もプレハブの仮設住宅に残る被災者がいる。賠償も住宅支援も仮設の提供さえも打ち切られ、生活保護を受けざるを得ない人たちも増えている。原発事故に見舞われた福島県の状況は特に深刻だ。政府は一通りの除染で帰還を促すものの、ほとんどの避難者が「帰れない」。被ばくの不安に加え、医療や介護、商業施設に再開の見通しのないことが妨げになっている。心のケアは大切だけれど、未解決の問題は山積している。それなのに基本方針は、21年度からの財源に言及さえしていない。被災地の懸念をよそに、国は一方的な「復興策」を続ける。象徴的なのが、福島県沿岸部での「イノベーション・コースト構想」だろう。ロボットや自然エネルギーの開発、廃炉研究の拠点化を図っている。帰還者でも避難者でもない、新たに来る人たちを対象にした構想に年700億〜900億円が投じられている。人口が流出し、高齢化が速まっている被災自治体の多くが、合併や広域連携の強化を模索し始めている。国がなすべきは、多様な状況に置かれた被災者個々を支援しながら、地域の立て直しに取り組む自治体の下支えだ。復興のあり方を決めるのは地元であることを忘れてはならない。

*1-1-4:https://digital.asahi.com/articles/DA3S13929196.html (朝日新聞 2019年3月12日) 復興住宅、孤独死が急増 昨年68人、仮設の最多年の倍以上 東日本大震災
 東日本大震災で被災した岩手と宮城両県で、災害公営住宅(復興住宅)での孤独死が仮設住宅と比べて大幅に増えている。2018年は前年の47人から68人となり、仮設住宅での孤独死が最多だった13年(29人)の倍以上に。復興住宅は被災地の住宅政策のゴールとされてきたが、新たな課題に直面している。朝日新聞が、復興住宅の独居世帯でみとられず亡くなった人数を集計していた両県を取材し、分析した。復興住宅は年度内にほぼ完成予定で、孤独死対策の強化が求められそうだ。復興住宅(計画戸数2万1677戸)での孤独死(岩手は自殺を除く)の数は13~18年の6年間で、宮城120人、岩手34人の計154人。16年19人、17年47人、18年68人と急速に増えている。仮設住宅の孤独死は11~18年の8年間で、宮城109人、岩手46人の計155人。仮設入居戸数が3万940戸と多かった13年は29人で、18年(1385戸)は6人だった。孤独死は全国的に懸念されている。例えば宮城県内全体の18年の孤独死数は982人で、前年比で1割増だった。ただ県内の復興住宅では18年に50人で前年と比べ、2割増えている。また男女別でみると、岩手、宮城両県では昨年までの6年で男性の孤独死が113人と女性の41人の3倍近い。特に50代以上の男性が全体の7割。一部の専門家はこうした層を「復興期弱者」と呼び、支援の必要性を訴えている。

*1-2-1:https://digital.asahi.com/articles/DA3S13926965.html (朝日新聞 2019年3月10日) 原発事故の費用「最大81兆円」 経産省公表は22兆円 民間シンクタンク試算
 東京電力福島第一原発事故の対応費用が総額81兆~35兆円になるとの試算を民間シンクタンク「日本経済研究センター」(東京都千代田区)がまとめた。経済産業省が2016年に公表した試算の約22兆円を大きく上回った。81兆円の内訳は、廃炉・汚染水処理で51兆円(経産省試算は8兆円)、賠償で10兆円(同8兆円)、除染で20兆円(同6兆円)。経産省試算との大きな違いは、汚染水の浄化処理費用を約40兆円と大きく見積もったことや、除染で発生する土壌などの最終処分費用を算入したことなど。また、この汚染水を、水で薄めたうえで海洋放出する場合は、廃炉・汚染水処理の費用が11兆円になり、総額も41兆円になるとした。これに加えて事故で溶け落ちた核燃料(デブリ)を取り出さずにコンクリートで封じ込める、いわゆる「石棺」方式を採用した場合は、廃炉・汚染水の費用が4・3兆円になり、総額も35兆円になるとした。ただ、「石棺」方式は、かつて「復興やふるさとへの帰還をあきらめることにつながる」などと問題になったことがある。同センターは2年前、総額70兆~50兆円に膨らむとの試算を出したが、その後の汚染水処理や除染などの状況を踏まえ、再試算した。試算を示したリポートはこの費用の増加を踏まえ、「中長期のエネルギー計画の中で原発の存否について早急に議論、対応を決めるときではないか」と指摘した。

*1-2-2:https://digital.asahi.com/articles/DA3S13928097.html (朝日新聞 2019年3月11日) 東日本大震災8年 避難なお5万人超、原発廃炉難題
 死者、行方不明者、関連死を含め、2万2131人が犠牲になった東日本大震災から11日で8年になる。今も約3100人がプレハブ仮設住宅で過ごし、約5万2千人が避難生活を続ける。東京電力福島第一原発事故が起きた福島県では今春、原発立地自治体の避難指示が一部の地域で初めて解除される。復興庁によると、新たな宅地を造る「高台移転」は93%、災害公営住宅は98%が完成した。住宅再建が進み、最大47万人いた避難者は5万2千人まで減った。ただ津波被害が甚大だった地域は遅れており、今も仮設住宅が残る。震災前から進んでいた人口減も歯止めがかからず、岩手、宮城、福島3県の人口は8年で計30万人減少した。福島県ではこれまで、10市町村で避難指示が解除され、原発が立地する大熊町の一部で4月にも解除される見通し。住民の帰還や定住を促す施策が進められることになる。原発の廃炉作業は、100万トンを超える汚染水や原子炉内の燃料デブリ処理など、難しい工程が控える。東日本大震災の復興期間は10年と定められ、復興庁は21年3月末に廃止されるが、原子力災害への対応や産業の再生といった課題が残る。政府は8日、復興庁の後も新たな組織を設置する方針を示した。平成の30年余、列島は阪神・淡路大震災、東日本大震災という峻烈(しゅんれつ)な災害に見舞われた。次世代に向け、教訓をいかす取り組みが求められている。

*1-2-3:https://www.nishinippon.co.jp/nnp/syasetu/article/493257/ (西日本新聞 2019年3月11日) 原子力政策 国民的議論から逃げるな
 東日本大震災の発生から8年の節目を迎えた。避難者はなお5万人を超える中、東京電力福島第1原発事故の後始末が被災地復興の足かせとなっている。史上最悪レベルとされる原発事故の反省と教訓は、国の原子力政策に十分に生かされているのか。国民の間では、原発を減らして将来的にはゼロを目指すべきだとの意見が多い。なし崩しの「原発回帰」は許されない。安倍晋三政権は、原子力規制委員会が新規制基準に適合したと判断した原発は再稼働させる方針を堅持している。原発への不安がぬぐえない中で、これまでに九州電力川内原発(鹿児島県薩摩川内市)1、2号機、玄海原発(佐賀県玄海町)3、4号機など9基が再稼働した。新規制基準は、「安全神話」に陥り過酷事故を防げなかった反省から、地震や津波、テロなどに備え安全対策の強化を求めている。九電の場合、再稼働した原発4基に投じる安全対策費は九千数百億円に達する見通しだ。「想定外」の事故を再び起こさないための費用が膨らむ。
●「玉虫色」の基本計画
 政府は既存原発の活用には積極的なのに、原子力政策を正面から語りたがらない。昨年7月に閣議決定したエネルギー基本計画も、原発については「玉虫色」の取り扱いとなった。同計画はエネルギー政策の基本的な方向性を示している。風力や太陽光など再生可能エネルギーの主力電源化を打ち出した。原発については「可能な限り原発依存度を低減する」としつつも、安定性や地球温暖化対策の視点から「重要なベースロード電源」と位置付けた。2030年度の電源構成は再生エネ22~24%に対し、原発は20~22%とした。この実現には30基程度の再稼働が必要とされる。運転期間が原則40年と定められた原発を延命して再稼働させなければ達成できない。ベースロード電源として活用するなら新増設が必要なのに、政府は中長期的な議論を避けてきた。新増設問題が選挙の争点になるのを嫌って課題を先送りしているのなら、この国の将来に責任ある姿勢とは言い難い。原発について政府が幅広く国民の声を聴いたことがある。原発事故でエネルギー政策の仕切り直しを迫られた当時の民主党政権は、12年に討論型世論調査や意見聴取会を実施した。30年の原発比率について0%、15%、20~25%の3案を示し意見を求めたところ、0%支持が最多だった。これを受けて政府は「2030年代に原発稼働ゼロを可能とする」とする、革新的エネルギー・環境戦略を打ち出した。安全確認を得た原発は重要電源として活用しつつ、新増設は認めないとの原則を明示して、「脱原発」にかじを切った。それを見直し「脱原発依存」に転換したのが、その年の12月に誕生した安倍政権だ。以来、「可能な限り低減する」との曖昧な態度を貫いている。官民一体で進めた原発輸出も行き詰まっている。安全対策費がかさんだこともあり、ベトナムや英国への輸出計画が頓挫した。しかし、政府は原発技術輸出の旗を振り続けている。国内と海外で態度を使い分けるようでは、国民の信頼は得られない。
●経済界もメッセージ
 原発について幅広い議論を求める声は、経済界からも上がっている。経団連の中西宏明会長(日立製作所会長)は1月の記者会見で、エネルギー全体に対する国民的議論が必要との認識を示した。なかなか再稼働が進まない現状への危機感が背景にあるが、原発の将来像を語らない政府へのメッセージとも受け取れる。産業界には、エネルギー安全保障や地球温暖化対策の観点から原発活用を求める声もある。確かに原発は二酸化炭素(CO2)は出さないが、廃炉や使用済み核燃料の再処理で放射能を帯びた核のごみが出る。危険物は地下に埋めて隔離しなければならないが、そうした処分場所の選定は手付かずだ。安全対策費や廃炉費用を考えれば、原発は低コストとの説明には疑問が生じている。私たちは、再生エネの開発と導入をもっと積極的に進め、「脱原発」への道筋を具体的に描くべきではないかと主張してきた。ここで改めて、原発事故で古里を奪われた人たちのことを心に刻み、必要十分な判断材料を示した上で国民的議論を始めるよう、政府に求めたい。

<戦後復興期の日本>
*2-1:https://digital.asahi.com/articles/ASM2W7292M2WUEHF00S.html (朝日新聞 2019年3月8日) 「負の連鎖」エスカレートした無差別爆撃 空襲とは何か
太平洋戦争末期、日本全土が標的となり、大規模な無差別爆撃が繰り返された。空襲による民間人の死者は少なくとも40万人以上、米軍が本土に投下した爆弾は約16万トンとされる。
●じゅうたん爆撃、東京大空襲を皮切りに
 広島、長崎と並ぶ大きな被害となったのが、1945(昭和20)年3月10日未明の東京大空襲だ。約300機のB29爆撃機が33万発の焼夷(しょうい)弾を投下。人口密集地帯だった東部の下町は火の海となり、10万人近くが犠牲になった。被害家屋は約27万戸、推計100万人が焼け出されるなどした。編隊を組んだB29が低空から隙間なく焼夷弾を落として街全体を焼き払う「じゅうたん爆撃」の始まりだった。3月12日には名古屋、13日には大阪、17日は神戸と、大都市が軒並み空襲を受けて壊滅状態に。次第に地方都市も標的となり、空襲は全土へと広がっていった。
●真珠湾攻撃から4カ月、初の本土空襲
 米軍による初めての日本本土空襲は、日米が開戦した真珠湾攻撃からわずか4カ月後の1942年4月18日にあった「ドーリットル空襲」だ。空母から飛び立ったB25爆撃機16機が東京、横須賀、川崎、名古屋、神戸などを襲った。その後、米軍は「超空の要塞(ようさい)」と呼ばれた、当時としては最大級の爆撃機B29を完成させ、1944年に実戦投入。6月16日、中国・成都の基地を飛び立ったB29が初めて日本本土を爆撃した。北九州の八幡製鉄所を狙って高高度から爆弾を落とし、300人以上が犠牲になった。米軍は7月、マリアナ諸島のサイパン島を日本から奪い、周辺の各島に飛行場の建設を進めた。B29の航続距離は6千キロ。成都からだと九州北部までが限界だったが、東京から約2400キロのサイパンを拠点にすれば、日本全域を攻撃目標にできた。11月から、本土空襲が本格化していった。
●精密爆撃から無差別爆撃へ
 当初の空襲は、軍需工場や港などの軍事拠点を狙った「精密爆撃」。昼間に、高射砲を避けて1万メートルの高高度から爆弾を落としたが、風で流されるなどして攻撃目標を外れることが多く、目立った戦果は挙げられなかった。45年1月、欧州戦線でドイツの都市への爆撃を指揮したカーチス・ルメイ少将がマリアナ諸島を基地とする第21爆撃機軍団の司令官になる。早期終戦を目的に、日本の厭戦(えんせん)気分を高めるため都市への焼夷弾攻撃を求める軍上層部の意向を受けて着々と準備を進めていった。そして、3月10日の東京大空襲をきっかけに、民間人を巻き込む「無差別爆撃」が繰り返されるようになった。硫黄島や沖縄の占領後は戦闘機による銃爆撃も始まり、空襲は、北海道を含む全土が対象になっていった。このうち、広島と長崎の原爆を除く通常爆弾や焼夷弾、銃撃による空襲の死者は20万人を超えるという。ただ、正確な数字を把握している自治体は少なく、国による実態調査も不十分なため、全容はいまだ明らかになっていない。
●日本の対中戦術「米が進化させた」
 軍事評論家の前田哲男さん(80)は6歳の頃、現在の北九州市戸畑区に住み、空襲を体験した。夜に警戒警報が鳴り、家族と庭に掘った防空壕(ごう)に飛び込んだ。外を見ると、八幡製鉄所が狙われているのだろうか、探照灯の光が夜空を切り裂き、高射砲の音が聞こえた。「B29だ」。防空壕の湿った土の臭いとともに記憶に残る。長崎の民放記者を経て、核問題への関心を深めた。フリーとなり、マーシャル諸島の核実験場を取材。その後、著した「戦略爆撃の思想」では、空からの無差別大量殺戮(さつりく)という視点にこだわった。スペイン内戦に介入したナチス・ドイツによる1937年のゲルニカ爆撃、そして38年から日本軍が始めた中国・国民党政府の臨時首都・重慶を狙った爆撃を、東京大空襲につながる都市への無差別爆撃の先例と位置づけた。特に、重慶爆撃は43年まで続き、200回以上の空襲で約1万2千人が犠牲になったとされる。「都市そのものを爆撃対象とみなし、戦闘員と非戦闘員の境界を取り払った戦略爆撃の思想を確固たるものにしたのが日本軍で、その戦術を進化させたのが米軍だった」。ボタン一つで爆弾を落とせる空からの攻撃は、肉体と肉体のぶつかり合いを伴わない分、人を殺したという実感がわきにくい。爆弾を落とされた側への想像力の欠如が、行為をエスカレートさせたとみる。
●ドローン爆撃、戦争はより無機質に
 焼夷弾によるじゅうたん爆撃は、やがて原子力爆弾の投下へとつながる。そして今、ドローン(無人機)の登場によって兵士は画面越しに爆弾を落とすようになり、戦争はより無機質なものへと変容した。無差別爆撃の負の連鎖は、戦後70年余を経ても止まらずにいる。
【キーワード】「超空の要塞」B29爆撃機
 太平洋戦争末期、日本上空に飛来し、多くの焼夷(しょうい)弾や爆弾を投下した米軍の大型戦略爆撃機。全長約30メートル、幅約43メートルあり、エンジン4基を備え、「超空の要塞(ようさい)」と呼ばれた。高度1万メートル以上を飛行でき、航続距離は6000キロ以上で、最大約10トンの爆弾を搭載。広島に原爆を落としたエノラ・ゲイ、長崎に原爆投下したボックス・カーも同じB29だった。

*2-2:https://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201903/CK2019031102000119.html (東京新聞 2019年3月11日) 東京大空襲74年 命の尊さ語り継ぐ
 一九四五年三月の東京大空襲から七十四年となった十日、犠牲者の遺骨が納められている東京都墨田区の都慰霊堂で法要が営まれた。秋篠宮ご夫妻も参列され、遺族ら約六百人が犠牲者の冥福と平和を祈った。遺族らは慰霊堂の前で献花し、手を合わせて犠牲者を追悼。参列した練馬区の鈴木美津恵さん(77)は、空襲で造船所に勤めていた父親を亡くした。当時の記憶はほとんどないが「空襲後、吾妻橋も隅田川も死体の山だったと聞く。母が父を捜したが結局見つからなかった」と振り返り、「父の顔も全然覚えていないのに、今でも突然帰ってくる夢を見る。もう七十年以上も前のことなのにね」と言葉を詰まらせた。小池百合子知事は「戦後生まれの世代が大半を占めるようになった今、私たちには戦争の悲惨さを風化させず、命の尊さや平和の大切さを語り継いでいく使命がある」と誓った。東京大空襲は太平洋戦争末期の四五年三月十日未明、米軍のB29爆撃機三百機以上が現在の東京都江東区、台東区、墨田区などに大量の焼夷(しょうい)弾を無差別に投下。十万人以上が犠牲になったとされる。

*2-3:https://digital.asahi.com/articles/DA3S13844038.html (朝日新聞社説 2019年1月11日) 引き揚げの苦悩は消えぬ 中野晃
 昭和の戦争は敗戦で終わったわけではない。戦争の取材を続けるなか、植民地朝鮮や旧満州(中国東北部)など海外からの引き揚げ者や遺族の話を聞くたびにそう思う。「私の心の中で、それまでの人生がまるでがれきのように音を立てて崩れました」。富山市の杉山とみさん(97)は釜山(プサン)港で引き揚げ船に乗った時の心情をこう話す。朝鮮半島の全羅南道で生まれ、1941年、大邱(テグ)の国民学校の教師になった。新入生の胸に創氏改名した日本名の名札をつけ、朝鮮語を禁じ、「皇国臣民ノ誓詞(せいし)」を復唱させた。給与は朝鮮人の先輩より高く、町の中心街は自宅をはじめ日本人家屋が占めた。45年夏。「植民地という幻」は砕け境遇は一変する。杉山さんが停留所でバスを待っていると、「もうここは日本じゃない」と列から追い出された。路上で会った教え子と話していると、朝鮮語で怒声を浴びた。「日本語を使うな」という意味だった。両親の郷里の富山に引き揚げ、教員生活を送った杉山さん。何度も訪韓して教え子と再会し、恩師を慕う手紙も届くが、子どもたちへの申し訳なさが今も心をさいなむ。明治期以来、日本はアジアで戦争を重ねて支配域を広げた。「内鮮一体」「五族協和」など融和を掲げる国策の内実は日本人優遇だった。収奪に苦しんだ地元の人々の憤怒は戦後、取り残されて逃げ惑う非力な民衆に向かう。岐阜県の山あい、旧黒川村(現白川町)に「乙女の碑」という石像が立つ。82年に建立されたが、由来を記すものが長年なかった。昨年、旧満州に渡った開拓団での「犠牲」を伝える碑文ができた。吉林省陶頼昭に入植した黒川開拓団。現地住民の蜂起におびえ、集団自決の声もあがるなか、生きのびるために団幹部はソ連軍に警護を依頼。見返りとして、数えで18歳以上の未婚女性15人が差し出され、将校の「性接待」を数カ月間強いられた。うち4人は性病などで命を落とし、日本に生きて帰った女性たちも誹謗(ひぼう)中傷に苦しんだ。黒川分村遺族会長の藤井宏之さん(66)は「つらい歴史を埋もれさせず、その上に私たちの今の暮らしがあるとの思いを共有し、二度と繰り返してはならない戦争の悲劇を後世にも伝えたい」と話す。満蒙開拓団をはじめ大勢の弱き民が戦後に死んだ。国策がうんだ「棄民」の惨禍を記録に刻む取り組みは続く。

<土地利用の変更や浚渫で解決すべき災害>
PS(2019.3.14追加): *3-1の岡山県倉敷市真備町で発生した水害も、天井川に近い小田川を浚渫し、高さのゆとりを持って水が住宅地より下を流れるようにするか、より高い場所を住宅地にしておくかするのが当たり前で、川底の方が高いのに堤防だけで住宅地を護れると考えていた点が甘すぎるという意味で重大なミスである。
 さらに、大量の水が流れれば、川が合流する地点で水が氾濫するのも当たり前であるため、今回の住宅地の水没は起こるべくして起こったと言わざるを得ない。そのため、高架鉄道が被害を受けなくて済んだのはよかったが、吉備真備を由来とする真備町にふさわしい先進的な減災型の街づくりに変更すべきで、復旧で終わらせるべきではない。
 また、浚渫が必要な川やダムは、実は日本全国に存在し、人口減するのなら考え直せる街づくりも多いため、無駄遣いなどせずに本当に必要なことに使って欲しいわけである。なお、*3-2のように、積水ハウスが、屋上に設置した太陽光パネルや家庭用燃料電池で発電し、断熱効果の高いサッシなどを使って、各戸のエネルギー消費と発電量が均衡した全戸ゼロエネのマンションを作ったそうだが、どうせ新しい街づくりをするのならゼロエネを標準にしたい。


   2018.7.14毎日新聞     2018.7.9朝日新聞    2018.7.10News24

(図の説明:左図のように、今回浸水に遭った場所は、ハザードマップで浸水想定エリアとされていた地域だが、それに対して根本的対処をしていなかったというのは、江戸時代以下ではないか? そして、中央と右図のように、想定どおり浸水したわけである)

*3-1:https://blog.goo.ne.jp/kokakuyuzo/e/6d60d424cafc3d7c30baf921ec457bd7 (Goo 2018.7.7) 水害に襲われている岡山県倉敷市真備町について
 広大な地域が水没した真備町です。WIKIをお読みください。真備町がこのような規模の災害に見舞われたことは記憶にありません。テレビの映像に出てくる高架線路は、井原鉄道井原線です。国鉄が建設を進めていたのですが中断したため、第3セクターとして建設しました。総社駅〜神辺駅(広島県)間を、今回決壊した小田川沿いに走っています。高架のため大きな被害を受けなくて済みそうです。真備町の町名の由来は、遣唐使の吉備真備です。小説家の横溝正史も滞在していました。岡山県の三大河川は、東から吉井川、旭川、高梁川です。北の中国山地に源流がある三川です。ただ、小田川は西から東に流れ高梁川に合流する県下では珍しい流れを持つ川です。その合流地点が今回の水没地域となります。小田川は天井川に近かったのだと思います。そのため水が掃けにくい土地ですが、近年開発が進んで、ロードサイドショップも増えました。それが被害を大きくしてしまったと思います。隣接する総社市の経済圏です。なぜ倉敷市と合併したのか理解できないところがあります。簡単に紹介させていただいた真備町、住民の皆様の無事をお祈りいたします。

*3-2:http://qbiz.jp/article/150297/1/ (西日本新聞 2019年3月14日) 全戸ゼロエネのマンション公開 積水ハウス、全国で初めて
 積水ハウスは14日、太陽光発電や省エネなどを組み合わせ、各戸のエネルギー消費と発電量が均衡した「ゼロエネルギー」の分譲マンション「グランドメゾン覚王山菊坂町」(名古屋市)を報道陣に公開した。全戸で国のゼロエネルギー基準を満たす全国初のマンションとなる。屋上に設置した太陽光パネルや、家庭用燃料電池(エネファーム)で発電し、断熱効果の高いサッシなどでエネルギー消費を約3割減らす。余剰電力は中部電力に販売する。光熱費は平均的な使い方で年間約6万円と通常の約3分の1になる見通し。地下1階地上3階建てで全12戸。全戸売約済みで、価格は約7千万〜1億8千万円。4月に入居が始まる。電気やガスなどのエネルギー収支が実質ゼロになる住宅は「ゼロエネルギーハウス(ZEH)」と呼ばれる。積水ハウスはZEHの一戸建てや賃貸アパートを手掛けてきた。マンションは戸数に対し太陽光パネルを置ける屋根面積が小さく、国の基準を満たすことが困難とされていた。発電効率を高めるなどして実現した。

<本質を見失うのは何故か?>
PS(2019/3/14追加):*4-1のように、東日本大震災後8年が過ぎても仮設住宅で約5千人が暮らしているそうだが、阪神・淡路大震災でも仮設は復興住宅の整備等により約5年で役割を終えた。それから16年後に起こった東日本大震災は、震災にも慣れた後の出来事であるため、3年以内に仮設を出られるようにすべきだったと思う。なお、原発事故後に帰還困難になるのは仕方ないが、移住できる土地も多いため、なるべく早く終の棲家を見つけて正常な生活に入るのが、身体的・精神的健康のためである。
 また、*4-2のフクイチ事故を東電の経営者が本当に予見できなかったかについては、元原子力規制委員の島崎東大名誉教授(地震学)が証人として出廷し、「①長期評価は福島県を含む太平洋岸に大津波の危険があるとしていた」「②長期評価を受けて東電が津波対策をしていれば、原発事故は起きなかった」等を明言しておられる。そして、歴史上も、大地震や大津波が一定周期でこの地域を襲っているという記録が残っており、東電の経営者は「予見できたが、リスクを甘く見て不都合なことには目をつぶっていた」というのが本当のところだろう。実際には、*4-3のように、福島第1原発を襲った津波は高さ14~15メートルで、5.7メートルという設計当初の想定の3倍だった。仮に直ちに原発を移転したり、防潮堤を高くしたりする余裕がなかったとしても、非常時の電源は濡れない高い場所に置き、使用済核燃料はよそにもっていくくらいの工夫があってよかったと思われる。

*4-1:https://www.kobe-np.co.jp/column/shasetsu/201903/0012144851.shtml (神戸新聞 2019/3/14) 住まいの再建/誰も取り残さない支援を
 丸8年が過ぎても、東日本大震災の被災地では、プレハブ仮設住宅で約5千人が暮らす。自治体は早期の解消を目指すが、4月以降も597世帯、1300人が残る見通しだ。阪神・淡路大震災では、仮設に約4万7千世帯が入居し、復興住宅(災害公営住宅)の整備などに伴い5年で役割を終えた。原発災害にも見舞われた東日本はより多くの困難を抱える。住まい再建も同様だ。時間がたてば、はさみを開いたように被災者間でさまざまな格差が開く。阪神・淡路でも指摘された教訓を踏まえ、一人一人に寄り添った支援を今後も息長く続ける必要がある。とはいえ支援制度にも隙間がある。枠組みから漏れる人がいないよう、目を凝らし、絶えず見直しを進めねばならない。東日本では、計画された災害公営住宅約3万戸の9割以上が完成した。ハード面の事業は「完了」に近づいている。にもかかわらず仮設に残る人がいるのは、失った家に代わる「ついのすみか」がいまだに見つからないからだろう。津波被害の地域では、土地かさ上げや区画整理などで住宅再建が遅れがちだ。仮設入居者の3割は高齢者で、その間の生活に窮する人もいる。希望を失わないよう、きめ細かなサポートや見守りが欠かせない。一方、損壊した自宅に住み続ける「在宅被災者」も、支援制度の隙間に置かれた存在だ。今もガスや水道が止まった状態で生活している人がいる。だが「一部損壊」の判定では、住宅再建に公費を支給する被災者生活再建支援法の対象とされず、改修もままならない。年金暮らしの高齢世帯などは自力での対応が困難だが、損壊しても自宅があるので災害公営住宅には入れない。そうした状況を放置すれば、復興の流れに取り残される恐れがある。兵庫県は、災害の規模などに応じて一部損壊に支援金を支給している。東日本でも独自で支援制度を導入する動きが見られたが、自治体間で対応にばらつきがある。国レベルの法制度見直しは大災害のたびに課題とされてきた。国会で真剣に議論すべきだ。

*4-2:https://www.kahoku.co.jp/editorial/20190314_01.html (河北新報 2019年3月14日) 東電公判が結審/本当に予見できなかったか
 東京電力福島第1原発事故を巡って、業務上過失致死傷罪で強制起訴された東京電力の旧経営陣3人の刑事裁判が、東日本大震災から8年を経た12日、東京地裁で結審した。判決公判は9月19日に開かれる。最終弁論で弁護側は「事故の予見可能性はなかった」として、被告の勝俣恒久元会長(78)、武黒一郎元副社長(72)、武藤栄元副社長(68)の無罪を主張した。検察官役の指定弁護士は3人に禁錮5年を求刑している。弁護側が主張してきたように、果たして東日本大震災の巨大津波を東電は予見できなかったのだろうか。37回を数えた公判を通じて、最大の争点となったのはこの点だ。検察の不起訴、検察審査会の議決、再議決を経て2017年6月、この裁判は始まった。公判には東電社員や学者ら計21人が出廷。指定弁護士側、弁護側が事故の予見可能性などを巡って激しく対立した。その過程でさまざまな事実が明らかになっている。18年5月に開かれた第12回公判には、元原子力規制委員の島崎邦彦東大名誉教授(地震学)が証人として出廷。02年、国の地震調査研究推進本部(地震本部)が公表した長期評価と、その後の研究成果を反映させた改定作業について詳細に述べた。長期評価は福島県を含む太平洋岸に大津波の危険があるとし、島崎氏は「長期評価を受けて東電が津波対策をしていれば、原発事故は起きなかった」「長期評価は当然津波に備える必要があると示している」と明言した。1年8カ月余り続いた公判で証言などから浮き彫りになったのは、電力事業者として東電が安全に細心の注意を払っていれば、やはり事故は防ぎ得たという当然すぎる事実だろう。では、なぜ津波対策は先送りされたのか。地震や津波に対応する部門を担当していた東電関係者が病気のため公判で証言できなかったのが惜しまれる。第24回公判で検察側が読み上げたこの関係者の調書には、経営を優先させ津波対策を先送りさせたと受け取れる記述があったからだ。もちろん、こうした証言の数々が被告3人の刑事責任に直ちに結びつくとは容易には言えない。巨大津波や原発事故の予見可能性、結果の回避可能性の有無などを含め今回の裁判の行方に関しては、法律の専門家でも評価は大きく分かれる。東日本大震災で福島県は他県より格段に多い2250人の震災関連死を数えた。同県内、県外への避難者は今も4万1000人を超える。福島第1原発事故は豊かな海と県土を汚染し、住民にこれほど悲惨な犠牲を強いている。裁判の結果はともかく、最終意見陳述で被告3人のいずれからも真摯(しんし)な謝罪や反省が聞かれなかったのは、極めて残念だと言っておきたい。

*4-3:https://www.nikkei.com/article/DGXNASDG0904K_Z00C11A4000000/ (日経新聞 2011/4/9) 福島第1原発を襲った津波、高さ14~15メートル 想定の3倍
 東京電力は9日午後、東日本大震災で福島第1原子力発電所を14~15メートルの津波が襲ったことを明らかにした。高台に設置された1号機から4号機までの原子炉建屋やタービン建屋を含む主要建物エリアのほぼ全域で高さ4~5メートルまで浸水しており、その状況などから判断したという。同社は、土木学会の津波の評価指針に基づいて津波の高さを想定。福島第1原発に到達する波の高さを5.7メートルとして原発を設計していたが、震災に伴う津波は約3倍の高さに到達していたことになる。一方、福島第2原発には6.5~7メートルの津波が到達したが、第1原発よりも敷地自体の高さが約2メートル高く、主要建物エリアの浸水高は最大でも2~3メートルにとどまった。第1原発の5、6号機も1~4号機の主要建物エリアに比べ、約3メートル高台にあり、比較的被害は少なかった。同日、記者会見した同社の武藤栄副社長は「土木学会の評価に基づいて津波の高さを想定したが、結果として想定以上の津波が来た」と説明。「今回の経験を踏まえ、津波の評価を再度検証する必要がある」と述べた。

<現場からの多くの記録の重み ← リケジョは感傷に終わらない>
PS(2019年3月15日追加):*5-1のように、沖縄では、沖縄戦で亡くなった沖縄県内の旧制師範学校・中等学校21校の学徒の人数を記した説明板が摩文仁の平和祈念公園内に完成したとのことだ。沖縄県では、*5-2のように、1945年3月に沖縄師範女子部と沖縄県立第一高等女学校の生徒222人、教員18人の計240人が陸軍病院に動員されて負傷兵の看護に当たり、3カ月間で136人が犠牲になったことを、1989年に両校の同窓会が「ひめゆり平和祈念資料館」を設立し、2004年からは元学徒の証言映像も加えて説明している。私は、他地域でも、亡くなった理由とその背景をできるだけ正確に記載することによって、単なる慰霊ではなく統計データとして政策や意思決定過程の欠陥に関する分析を可能にすると考える。

*5-1:https://ryukyushimpo.jp/news/entry-888960.html (琉球新報 2019年3月15日) 戦没全学徒 人数説明板除幕 1984人の実相 次世代へ
 沖縄戦で犠牲になった県内旧制師範学校・中等学校21校の学徒の人数を記した説明板が糸満市摩文仁の平和祈念公園内に完成し、14日に除幕された。10代の学徒が戦場に駆り出され、多くが犠牲となった事実を伝える「全学徒隊の碑」の横に設置した。21校の元生徒らでつくる「元全学徒の会」のメンバーらは、亡き学友をしのび「戦争の実相を伝える指標になる」と次世代への継承に思いを新たにした。説明板には同会の調査によって各校の戦没者数がそれぞれ記されており、21校で計1984人に上る。縦約90センチ、横約120センチで、約2メートルの2本の柱に支えられている。「学徒の戦没者数を記し、恒久平和を祈念する」などと記した。除幕式には約100人が参加した。平和宣言で同会共同代表の與座章健さん(90)は「(説明板は)沖縄戦の実相を如実に伝える効果的な指標となり、恒久平和のとりでとなるだろう」と完成を喜び「戦争の惨劇を二度と繰り返してはならない」と述べた。県子ども生活福祉部の大城玲子部長は「多くの方々の目に留まり、平和を希求する沖縄の心を深く理解する契機となることを切に願う」とする玉城デニー知事のあいさつを代読した。県は2017年3月14日に平和祈念公園内に「全学徒隊の碑」を建てた。石碑には21校の名前などが刻まれているが、犠牲者数には触れていない。21校の元生徒が18年4月に「元全学徒の会」を結成し、犠牲者数も記すよう県に求めていた。

*5-2:https://kotobank.jp/word/%E3%81%B2%E3%82%81%E3%82%86%E3%82%8A%E5%AD%A6%E5%BE%92%E9%9A%8A-612562 (朝日新聞 2016.5.3) ひめゆり学徒隊
 1945年3月、沖縄師範学校女子部と県立第一高等女学校の生徒222人、教員18人の計240人が陸軍病院に動員され、負傷兵の看護に当たった。米軍の攻撃を受け、本島南部に撤退。約3カ月間で136人が犠牲になった。両校の同窓会は89年、ひめゆり平和祈念資料館を糸満市に設立。2004年に展示内容を一新し、元学徒の証言映像の上映が加わった。

<高齢者の見守りついて>
PS(2019年3月16、18日追加):*6-1の集合住宅が高齢化するのは、災害公営住宅が先を行っているかもしれないが、そこに限らず日本中どこにでもあることだ。その中で高齢者の閉じこもりや孤立を防ぐためには、共同食堂で安くて充実した朝・昼食を出し、出て来ない人にだけ連絡する方が効率的で、身体的・精神的に来ることができなくなった人は「要支援」になるだろう。しかし、洗濯機を皆で使うと免疫力が低下している高齢者は特に感染が起こったり、それを防ぐためのマナーが大変だったりするため、洗濯機を共有するのに私は反対で、江戸時代の長屋でもたらいは共有ではない。そのため、いろいろな背景の高齢者が楽しめるよう、国会中継から映画・芸能まで幅広く受信できる複数のテレビや新聞・雑誌を置くなど、人が行きたくなる交流スペースを作るのがよいと考える。そして、これらを「○○社寄贈」「○○社協賛」等と書いて企業の寄付で行えば、その企業は社会的貢献をする企業だというイメージを作れるわけだ。
 なお、いろいろなことを実現するには労働力が必要だが、*6-2のように、外国人労働者の健康や報酬などの条件が決まり、受入準備はできつつある。
 さらに、信濃毎日新聞が、*6-3のように、「①人手不足に対処するため、外国人労働者の新たな在留資格が設けられ、運用の詳細を定めた政省令が公布された」「②各地の説明会で詳細について『検討中』とする場面が目立った」「③新制度では業務内容に共通性がある場合は転職を認めているので、賃金の高い都市部に集中する可能性がある」「④外国人労働者受入は、現状の検証と改善が先だ」等を記載している。このうち④については、1995年前後に私が経産省に外国人労働者受入を提案したが、高度専門職以外は技能実習生か留学生か日系人という中途半端な形でしか受入が実現しなかったため、今回の労働者としての受入拡大は一歩前進だと考える。そして、2005~2009年の衆議院議員をしていた期間に、私は佐賀県を廻って人手不足について陳情を受けたり、実際に見て納得したりしていたため、新たな在留資格を作る前に立法事実があるのだ。また、長野県も農業等に多くの外国人労働者を雇用していると聞いている。③については、外国人といえども過度の拘束をするのは人権侵害である上、母国に送金することが目的であれば所得から生活費を差し引いた残額が重要で、求められている場所にしか仕事がないため、平均賃金が高いからといって都市部に集中するとは限らず、地域の本気度によるところが大きい。そして、②については、何でも最初から唯一の完全な解があるわけではなく、地域の実情に応じた工夫もあるため、使い勝手の悪い点は次第に改善していけばよいと思われる。


   2018.11.14      2018.7.23      2019.1.24    2019.3.15
    朝日新聞       東洋経済       朝日新聞     ロイター

(図の説明:現在は、左図のような資格で、2017年に128万人の外国人労働者が就労していた。しかし、人手不足のため、左から2番目の図のように「特定技能」という資格を作って5年間で35万人まで新たに受け入れることとなり、詳細を定めた法務省令・政令が右図のように公布された。なお、右から2番目の図のように、外国人労働者が大都市に集中することを懸念する声が多いが、仕事や住居がなければ外国人も生きていけないため、大都市が受け入れを自粛しなくても、外国人労働者はよい仕事や住居のある地域に住むことになると思われる)

*6-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190316&ng=DGKKZO42556560W9A310C1CC1000 (日経新聞 2019年3月16日) 復興の実像(2)介助・共助、需要高まる 東北3県、復興住宅の高齢化率42.9%
 2月中旬、宮城県南三陸町。災害公営住宅「志津川東復興住宅」に隣接する施設「結の里」にはひきたてのコーヒーの香りが漂い、恒例のパン販売に人々が集まっていた。「ここで皆とおしゃべりするのが日課。楽しいね」。同住宅で一人暮らしをする女性(84)は笑う。結の里と同住宅はウッドデッキで結ばれ、住民が毎日気軽に立ち寄る。同住宅は住民の6割近くが65歳以上。孤立を防ごうと2018年4月、町の社会福祉協議会が結の里を開いた。デイサービス施設、交流スペースや芝生広場を併設し、周辺の復興住宅の住民や親子連れも集まる。一般に若い世代は自宅を再建できるため、復興住宅の住民は高齢者が多い。岩手、宮城、福島3県で500戸以上の復興住宅を整備した自治体を対象に入居者に占める65歳以上の人の割合(高齢化率)を調べた。18年10月~今年3月時点で岩手46.2%、宮城42.2%、福島42.6%。3県の平均は42.9%だった。18年版「高齢社会白書」によると、日本の総人口の高齢化率は27.7%。3県も人口全体では27.2~31.9%だ。復興住宅は県全体より10ポイント以上高い。高齢者が多いほどきめ細かなケアが必要になる。だが、志津川東復興住宅の自治会役員、佐竹一義さん(70)は「イベントがあっても全員が出てくるわけではない。高齢化がさらに進めば自治会活動もどこまでできるか不安だ」と語る。同住宅では平日の昼間、社協の生活援助員(LSA)4人が見回りをする。入居開始当時は6人常駐していたが、18年から2人減った。郵便物はたまっていないか、定期的に外出しているかなどに気を配る。「私たちがいなくなっても住民にバトンを渡し、支え合えるようにしたい」とLSAの三浦美江さん(53)。宮城県がまとめた17年度の調査では、復興住宅に入居する要介護・要支援認定者に占める介護サービス利用者の割合は72%。2年前から10ポイント上昇し、生活介助のニーズも高まっている。福島県では高齢化率の高さを逆手にとった試みが軌道に乗る。相馬市が市内4カ所に建設した「相馬井戸端長屋」の入居者平均年齢は78歳。「助け合って暮らせるように」と入居対象をあえて60歳以上とした。各棟の12世帯それぞれにトイレと風呂、台所があるが、洗濯機を置くスペースはない。昔の長屋の井戸のように洗濯機を皆で使うようにし、畳や共同食堂も備えた。毎日昼時には地元NPOが配達する弁当を食堂で食べる。NPOスタッフの反畑正博さん(68)は住民が体調を崩した人のため病院を手配する姿を見た。「日々コミュニケーションを取り、励まし合って暮らしている」と説明する。復興住宅で孤立死が相次いだ阪神大震災などの教訓を踏まえ、東日本大震災の復興住宅では様々な工夫がこらされた。それでも安心な暮らしには住民の共助が欠かせない。国立研究開発法人・建築研究所の上席研究員で、復興住宅に詳しい米野史健さんは「復興予算でLSAなどが手助けできるうちに、住民同士で支える仕組みの下地を作ってほしい」と話す。

*6-2:http://qbiz.jp/article/150394/1/ (西日本新聞 2019年3月16日) 外国人就労、報酬は日本人と同等以上 政令・省令公布
 政府は15日、特定技能の在留資格を創設し、外国人労働者受け入れを拡大する新制度の運用の詳細を定めた法務省令や政令を公布した。健康であることを資格取得の要件とし、受け入れ先に日本人と同等以上の報酬とする雇用契約を結ばせることなどを定めた。施行は新制度を盛り込んだ改正入管難民法と同じ4月1日。新制度に関する全ての法規定が整備された形となった。新制度は一定技能が必要な特定技能1号、熟練技能が必要な同2号の在留資格を創設。1号は介護など14業種、2号は建設と造船・舶用工業の2業種で受け入れる。新設の特定技能基準の省令では、報酬は日本人と同等以上の額とし、不正を防ぐために預貯金口座に振り込むと規定。法務省によると、報酬額は受け入れ先の賃金規定に基づく。規定がない場合、受け入れ先で同じ業務に就いている日本人の報酬額を証明する資料を使ったり、似たような業務をしている日本人と比較したりして、報酬額の妥当性を判断する。上陸基準の省令を改め、特定技能の外国人は18歳以上で、健康状態が良好であることを基準とした。母国で血液や胸部エックス線などの検査を受けてもらい、安定的に働けると医師が診断したかどうかを確認する。

*6-3:https://www.shinmai.co.jp/news/nagano/20190318/KT190315ETI090002000.php (信濃毎日新聞 2019年3月18日) 外国人受け入れ 現状の検証と改善が先だ
 円滑に始められるのか、不安が残る。外国人労働者の受け入れを拡大する新制度は、運用の詳細を定めた政省令がようやく公布された。4月の施行まで半月を切っている。準備の遅れは明らかだ。人手不足に対処するため、新たな在留資格を設けた。高度な専門人材に限ってきた受け入れを単純労働分野にも広げる。建設や介護など14業種を対象に5年間で最大約34万5千人を想定する。政省令では、報酬を日本人と同等以上の額とし、不正を防ぐため預貯金口座に振り込むことなどを定めている。各地での説明会では詳細について「検討中」などとする場面が目立った。県内でも、新たな資格で従事できる宿泊業の業務に「客室清掃は含まれるのか」との質問に国土交通省の担当者が「関係省庁で取り扱いを協議している」と述べるにとどまった。心配な点は多い。一つには、賃金の高い都市部に集中する可能性がある。新制度では、同一業務や業務内容に共通性がある場合は転職を認めているからだ。政府は1月の国会の閉会中審査で、受け入れの少ない地域があれば原因を調べ、要因に応じて調整を図るとした。今国会で山下貴司法相は安価な生活費や職場環境など地方のメリットを周知していくと述べている。どこまで効果があるか、心もとない対応である。適正な処遇も課題だ。現行の技能実習制度では劣悪な労働環境が問題になっている。政府は事業所向けの「外国人雇用管理指針」を改定するものの、差別的待遇の禁止など現在の法令に合わせて適切な対応を求める内容である。共同通信が全国の自治体を対象に行ったアンケートでは、市区町村の半数近くが懸念を示した。報酬水準の確保について「受け入れ企業の経営が厳しい」など否定的な見方が多い。生活支援も欠かせない。政府は外国人への情報提供や相談を一元的に行う窓口を全国100カ所に設けることにしている。これで十分か。国からの交付金は、英語や中国語など原則として11言語以上での対応を条件とする。通訳の確保にも懸念が残る。新たな資格への移行を見込む技能実習生についての調査結果もまとまっていない。日本で働く外国人は昨年10月時点で146万人に達し、過去最多を更新した。受け入れ拡大を急ぐより、現状をつかんだ上で必要な対策を検討、実施していくことが先決である。

<河道掘削などで出た土砂の活用>
PS(2019年3月25日追加):*7のように、福岡県を流れる遠賀川で過去最大規模の河道掘削が行われて約400万m₃の掘削土が出るそうだが、このような非汚染の土砂を船舶で運び、原発事故被害を受けた地域で土地を造成をした上に、徹底して1~2mかぶせれば、農地として使ったり、居住したりすることもできるようになると思われる。そして、このような工事を必要とする河川やダムは多く、工事中に水辺の環境は一時的に壊されるが、全体を同時に掘削するわけではないため、完成時の生態系を考えて仕上げをすれば植生・コイ・ナマズ・メダカ・フナ等の生物は次第に戻ってくると思う。なお、現在は無思慮に作っている河川内の堤をなくし、サケやウナギのように河川と海を往来する生物が住みやすくすることも、水産業と環境のために必要だ。

*7:http://qbiz.jp/article/150430/1/ (西日本新聞 2019年3月25日) 東京ドーム3・2杯分の土砂どうする 遠賀川で防災対策、全長18キロ 採石場跡などに搬入、河川の環境保全にも配慮
 福岡県直方市の国土交通省遠賀川河川事務所が、遠賀川で過去最大規模の「河道掘削」を進めている。川岸を削り、大雨が降っても水位が上がりにくくする防災対策の一環だ。範囲は直方市や小竹町、飯塚市などにまたがる計約18キロに及び、工事により東京ドーム3・2杯分の掘削土が出る見通しという。その大量の土砂をどう処分し、水辺の環境をどのようにして守るのだろう。河道掘削は昨年4月、遠賀川下流の中間堰(中間市)付近から上流に向かって始まった。飯塚市鯰田地区までの約17キロと、支流・彦山川の一部約1キロが対象。昨年7月の西日本豪雨で、堤防決壊の恐れがあるところまで水位が上昇した観測所が複数あったことから、工事を前倒しで進めようと、中間地点の日の出橋(直方市)からも掘削に着手した。事業は2028年度ごろまで続く予定という。遠賀川河川事務所は、工事で発生する約400万立方メートルもの掘削土を有効活用する方針で、受け入れ候補の一つになっているのが宮若市龍徳地区の採石場跡だ。土地を所有する宮若市が跡地を山林に戻す考えだったことから、打診した。河川事務所は、この採石場跡に約170万立方メートルの土砂の搬入を検討している。大雨の時などに土砂の崩落は起きないのだろうか−。担当者によると、土砂を積み上げてできるのり面は崩落を防ぐため、段々畑のように段差を設け、植林する。斜面下部にも擁壁を設けるなど安全対策を講じる。有吉哲信市長は、開会中の市議会3月定例会で「市の方針に合致しており、受け入れを前提に協議を進めたい」と報告。近くに住む70代男性も「特に心配はしていない」と話す。河川事務所は残りの土砂の活用方法について、直方市とも協議に入る予定という。
    ◆ ◆ ◆
 河道掘削により、水辺の環境がどう変わるのかも気になる。遠賀川の中流域にはコイやナマズなどが生息しており、下流域の水辺ではメダカなどの小魚やフナの稚魚が確認されている。魚の産卵場にもなっている水辺では、市民団体が子どもたちに生物や環境を教える活動も行っている。河川事務所は、工事後も多くの生物が生息できるよう、河道掘削を実施した後は、川岸に自然石を置いて凹凸をつくる「寄せ石」工法を用いる計画という。西日本豪雨では、遠賀川流域10カ所の観測所で史上最高水位となり、うち5カ所で堤防が耐えられる限界の「計画高水位」を超えた。堤防の決壊は起きなかったが、支流の水が本流に流れにくくなり、内水氾濫が起きて各地で浸水した。遠賀川河川事務所工務課の川辺英明課長は「河道掘削で豪雨時の河川の水位を下げられ、住宅側に降った雨水も川に長時間流すことができるようになり、浸水被害が軽減できる」と説明。その上で「土砂を安全に処理し、河川の生態系に影響が出ないよう十分な対策を取っていく」と話している。

| 日本国憲法::2019.3~ | 12:34 PM | comments (x) | trackback (x) |
2019.3.8 日本は人権を大切にしない国である ← ゴーン氏の逮捕と長期勾留から (2019年3月9、10、11、12、13日に追加あり)

    2018.11.19逮捕       2018.12.7朝日新聞    2019.3.6朝日新聞

(図の説明:左図のように、2018年11月19日、ゴーン氏とケリー氏が突然逮捕され、日産は速やかにゴーン氏を会長からケリー氏を代表取締役から解任し、中央の図のように、西川社長が記者会見した。この後、右図のように、108日後にゴーン氏は保釈されたが、保釈条件はまるで殺人犯・性犯罪者・テロリストのようなものだった)

(1)ゴーン氏が殺人犯やテロリストのような扱いを受ける理由はないこと
1)ゴーン氏の報酬は巨額過ぎ、巨額報酬は犯罪になるか? ← 報酬は雇用者と被用者の合意に基づけばよいのであり、金額が多すぎるからといって犯罪にはならない

 報酬が多額であることを理由に刑事犯として裁かれた経営者はいないだろう。株主・投資家にとって重要なのは、実績と比較して報酬が多きすぎるか否かであり、仮に株主の賛成が得られなかったとしても株主総会の決議によって否決されるだけの民事上の問題で、利害関係のない人には無関係のことである。そして、株主・投資家の判断根拠となる開示方法が、有価証券取引法で定められているわけだ。

 そのような中、*1-1のように、日産自動車元会長のゴーン氏が逮捕され、西川広人社長兼CEOが「①不正の背景としてゴーン元会長に会社全体が依存していた」「②経営手腕への期待が先行し、個人に権限が集中する企業統治の議論が不十分だった」「③昨年10月に社内調査の結果が来て、トップとして守るべきことから完全に逸脱しており、ゴーン元会長の不正自体が問題だ」「④最初うまくいっていたという見方は幻想だ」と話したそうだ。

 しかし、①②については、*1-2に「西川社長ら現経営陣の責任を問わない」と書かれており、他の人は何もしなくてよいほど権限を集中させた上で、日産・ルノー組を世界第二位の自動車会社に押し上げたのなら、ゴーン氏の報酬は20億円でも足りないくらいで、取締役はじめ他の役員は1千万円でも高すぎるだろう。また、本当に不正があったのなら、八田名誉教授の意見のとおり、上場会社である日産の経営陣はゴーン氏の不正を長年見過ごしてきたのだから、社外取締役を中心とする特別委は当事者の一部であって独立性がなく、不正の真因を突き止める役割を果たすことはできない。しかし、それなら、上場会社である日産は、内部統制に関する外部監査も通らなかった筈で、形だけの監査をしていたのでなければ、①②は成立しないのである。

 また、③については、*1-5のように、2019年1月下旬に日産のCFOが社内調査に追われていたそうだが、このような調査は外部監査法人に依頼するのが世界標準だ。その外部監査法人は、これまで監査意見を書いてきたEYではなく、PWCやトーマツのような他のBig4である。私は、PWCで外資系企業の不正の監査に携わったことがあるが、それほど難しいものではなく、このように会社が協力的である場合はなおさら容易だ。

 そして、監査(調査)結果は、不正があったとすれば「いつ」「どのようにして」「いくら」あったのかを明らかにしなければならず、「不正はない」という結論が出ることもあり、これらは利害関係のない第三者だから信じてもらえるのである。また、日本人記者の目に、「日本の大企業とは思えないずさんな資金の流れ」に見えたとしても、その国の文化に従いつつマーケティング目的を果たすために使われたのかも知れないため、直ちに不正と決めつけることはできない。そのため、正確を期すには、その国にある系列監査法人の意見を聞く必要もあるのである。

 さらに、④のゴーン氏の経営能力に関する評価は、監査手続きの一つとして外資・内資系企業の経営者と話し慣れている私には過小評価に思える。何故なら、ゴーン氏は最新技術の導入にあたって経営意思決定を誤らなかったが、ゴーン氏逮捕事件の後は、*1-2のように、日産・ルノーの売上高は、北米・中国で新車販売が大きく落ち込み、その理由は、このような司法の使い方をしたり、ガソリン車(e-Power搭載のIMQも同様)に昔返りしたりしている日産に対する失望の気持ちが加わっているからである。つまり、日産が、今になってe-Power搭載のIMQなどを作るのは、人材・資本など経営資源の無駄遣いにすぎず、企業利益率を落とすものでしかない。

 従って、*1-3の「ゴーン前会長の巨額報酬を問いたい」とする記事については、20億円/年が正当だったが、日本メディアの不合理でしつこい追及を避けるため、退職後に退職慰労金として受け取るスキームを法律・会計・税務の専門家が頭を絞って合法になるよう検討したのだろうと、私は推測する。

2)長く経営者をしているのは、逮捕されるべきことか? ← 普通は褒められることである
 *1-4には、「①ゴーン退場、長く居すぎたカリスマ、迷走する日産・ルノー」「②V字回復後に「独裁」の土壌」「③2018年12月、インドネシア日産自動車のトップが古巣の三菱自動車に戻された」「④日産が2010年に発売したEVリーフは、6年後にルノーと共同で累計150万台のEV販売目標を掲げたが、3年目で7万台と苦戦」「⑤長く居すぎたカリスマ経営者の末路」などと書かれている。
 
 しかし、②のV字回復に独裁が必要だったのなら、ゴーン氏は恨まれるリスクを犯して日産をV次回復させた英雄である。が、ゴーン氏が行った人事は、③や中国事業担当幹部のムニョス氏などの外国人幹部が主要業務から外れ、この100日間にEV系が後退したように見える。しかし、①⑤の「長く居過ぎた」というのは意味不明で、フィットした人なら長く居てもらった方がよく、実際、長くやっている経営者は多い。

 私は、③のリーフがあまり売れなかった背景は、i)電池が永く持つ改良をしなかったこと ii)リーフの名のとおり、環境に優しいことのみを前面に出して、EVの低燃費・運転支援のすごさ・(例えばélégance《エレガンス:優雅》、joie《ジュア:喜び》などの名称で)車の優雅さなどを主張しなかったこと iii)最初に出したEVだったためか、メディアをはじめとして的外れたEV批判が多かったこと などだと考える。そのため、世界にEVの潮流を作り、その流れに乗る選択と集中を行って、EVのラインアップを増やすのが正解だっただろう。

(2)これまでの日産・ルノーの実績は、誰でもできたことか? 
1)世界初のEV市場投入は、日本人経営者にはできなかった
 日産は、ゴーン氏がトップであった時代にEVに手を付け、*2-1のように、現在、中国の環境規制を追い風として中国ではEV戦略を加速している。私は、シルフィEVなら関心があるが、*2-2のジュネーブモーターショーで初披露されたというガソリン発電で動くIMQには全く興味がなく、これはどの国なら売れるのだろうかと疑問に思うくらいで、この車の制作は無駄遣いだったと思う。つまり、ゴーン氏なき日産は、このように既に目的もなく漂流し始めているのであり、これまでの日産・ルノーの実績は、誰にでもできたことではないのだ。

2)メディアの悪質な報道ぶり
 日本のメディアは、*2-3のように、ゴーン氏は光と影をもたらした(=優秀な人には必ず悪いところがあり、普通の私たちこそ模範だ)と決めつけて、ワンマン経営者の没落ぶりを報道したくて集まっていた。そこに、作業着姿で青い帽子にオレンジ色の反射ベストを身につけ、マスクをしたゴーン氏が出てきて、スズキの軽ワゴン車に乗り込んだため、「変装か」「後ろめたいところがないなら、変装などせずに堂々と出てきてほしかった」などと書いているが、このような目的で集まった報道陣の前で何を話しても悪くしか報道しないため、準備してから記者会見を開くのが正解だ(ただし、それでも主観的な感想を書かれるので危ないのである)。

 そのため、この日にはメディアの前で語ることなく、無罪の証拠を揃えるのが賢明である。弁護人の弘中氏は、*2-4のように、「ゴーン氏の変装をテレビ見てびっくりした」としているが、ゴーン氏も入社した当時は作業服を着て現場で働きつつ、厳しい競争に勝ち抜いて社長になったのだから、作業服も似合っていたし、背筋を伸ばして堂々ともしていた。この点が、現場と経営者は入社当時から異なる道を歩いていると考える日本人のおかしさなのである。

 ゴーン氏が乗車したスズキの社長は長く社長を務めた創業者だが、ガソリン車に固執しすぎたため、スズキは先が見えなくなっている。また、スズキ(https://www.suzuki.co.jp/corporate/producingbase/abroad.html 参照)は静岡県に生産拠点が多く、インドでも販売を伸ばしているが、今後は鉄道車両も蓄電池電車や燃料電池電車に行く方向であるため、ゴーン氏の保釈姿は、今後のゴーン氏の役割を示しているように、私には思われた。

 さらに、日産は、*1-6-1・*1-6-2のように、ゴーン氏の報酬約92億円分を確定報酬分としてあわてて決算計上し、有価証券報告書に記載していなかった報酬の支払いは確定していたと主張しやすくしたと同時に、報酬の支払いを凍結した。これは、ゴーン氏に対して司法判断で敵対しつつ、日産がゴーン氏に損害賠償請求しようとするものだが、まさに、このように理由をつけて凍結されたり、支払いを拒否されたりする可能性があるから、報酬は受領日まで確定しておらず、受領日の属する期に認識するのである。

 また、ルノーも、*1-6-3のように、ゴーン氏が退任に伴って受け取る金銭の約3千万ユーロ(約38億円)相当の支払いを認めないことを決め、退任時に報酬として受け取る権利のあったルノー株約46万株(約33億円相当)の支給もとりやめ、ライバル会社に退任後2年間転職しないことを条件に支給する補償金400万~500万ユーロ(約5億~6億3千万円)も支払わないそうだ。

 そのため、ゴーン氏はライバル会社に転職することも自由であり、それはスズキでもよいし、*1-6-4のテスラでもよいだろう。何故なら、米EV大手、テスラ社のイーロン・マスクCEOは、イノベーションには優れた人だが、関心が自動車だけでなく宇宙にも広がっているため、ゴーン氏が自動車部門のリーダーを引き受けて世界展開に導くのが合理的だと思われるからだ。しかし、この時ネックになるのが日本の司法は審理にも時間がかかることで、日本の司法は、*3-1のブラジル弁護士会によるゴーン元会長への「人権侵害」の指摘や*3-2・*3-5の「人質司法」だけでなく、時間を引き延ばすことによる人権侵害も重ねているのである。

(3)逮捕と懲罰用監房での勾留について
 日本は、憲法で罪刑法定主義「第31条:何人も法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪はれ、又はその他の刑罰を科せられない」「第39条:何人も実行の時に適法であつた行為又は既に無罪とされた行為については、刑事上の責任を問はれない」と定めている。

 そして、刑罰でもないのに、身体の自由を拘束したり、抑留や拘禁したりすることを禁止し、拷問や自白の強要を禁止している。当然、新しく法律を作って、過去に遡及して処罰することも禁止されている。

 にもかかわらず、ゴーン氏は、*3-6のように、有罪が確定したわけでもないのに、証拠隠滅の恐れがあるとして懲罰用の監房で108日間も勾留された。そして、①居住地の日本国内への制限 ②海外渡航の禁止 ③関係者との接触を疑われないよう住居の出入口に監視カメラを設置し、録画映像を定期的に地裁に提出する ④携帯電話の通信制限 など、まるで殺人犯か性犯罪者かテロリストのような条件で保釈されたが、その上、*3-3のように、保釈金10億円も支払わされている。そのため、ゴーン氏は、*3-4のように、この保釈条件に「嫌そうな顔」をしたそうだが尤もであり、これら一連のやり方は日本国憲法に違反している。

 そして、ゴーン氏を108日も勾留し、日産も会社として地検に協力しているのに、地検がまだ金融商品取引法違反や特別背任罪の証拠を得ていないのなら、そのような罪はないことが明らかだ。何故なら、本当に何かあれば、1~2カ月で報告書までできるからだ。さらに、日産の西川社長がゴーン氏の保釈について「経営や仕事への影響はない」と言っているように、元会長のゴーン氏は、社長を退いて以降(特に現在)は、日産に影響力を駆使して証拠を捏造することは不可能であるため、③の関係者と接触させない理由は、ゴーン氏が無実である証拠を作成して提出するのを邪魔する目的にすぎないと思われる。

・・参考資料・・
<ゴーン氏が殺人犯やテロリストのような扱いを受ける理由はないこと>
*1-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190228&ng=DGKKZO41846630Y9A220C1MM8000 (日経新聞 2019年2月28日) 日産・西川社長「あの時、議論すべきだった」、ゴーン元会長に全権 2005年が転機
 日産自動車元会長のカルロス・ゴーン被告が逮捕され、27日で100日を迎えた。西川広人社長兼最高経営責任者(CEO)は日本経済新聞の取材に応じ、不正の背景として、ゴーン元会長に会社全体が依存していたと指摘した。経営手腕への期待が先行し、個人に権限が集中するガバナンス(企業統治)十分だったと認めた。同時に「(ゴーン元会長が仏ルノーのトップを兼務した)2005年ごろに自分たちで問いかけるべきだった」と語った。ゴーン元会長は1月30日、日本経済新聞の取材に対し、自らを巡る日産社内の不正調査を「策略であり、反逆だ」と主張した。西川社長は「昨年10月頭に私に社内調査の結果が来た」としたうえで「刑事事件になるかどうかにかかわらず、トップとして守るべきことから完全に逸脱していた」と、ゴーン元会長の不正自体が問題だと反論した。ゴーン元会長は1999年、ルノーから最高執行責任者(COO)として経営危機の日産に乗り込み、V字回復をさせた。西川社長は不正が起きた背景を「99年の記憶が生々しく、トップをやってもらえると日産が成長し将来的に安定していけるという気持ちが強かった」と説明した。西川社長はCEOだったゴーン元会長がルノーCEOも兼務した05年が「大きな変化点」になったと振り返った。05年はゴーン元会長が事実上両社のトップを兼ね、日仏連合の権限の集中が始まった年になる。西川社長も「ゴーン元会長がルノーの責任者にもなってくれるなら日産の自立性を担保してくれる」と受け止めたという。同時に社内外が「祭り上げすぎたというのは正直ある」と述べ、「ガバナンスが非常に難しくなるという議論が十分でなかった」とも認めた。経営破綻の危機から脱するには権限集中がプラスに働いた面もある。ただ西川社長は「企業連合は1本のリポートラインで個人に情報がいくことを中心に考えられていた」と指摘した。企業連合を築いた先代経営者と比べ「剛腕だけでは駄目だ」と、独裁的な運営手法を批判。「当時うまくいっていたとの見方は幻想だ」と話した。日産では17年秋、完成車検査の不正が発覚し、社内で不正を申告しやすい雰囲気になっていたという。ワンマン体制を築いたゴーン元会長だが、18年春ごろから不正を巡る社内調査が始まっていた。18年11月、ゴーン元会長は東京地検特捜部に逮捕されたが、社内調査には気づかなかった。西川社長はこの理由を「本人が現場から遠くなり、幹部も含めた掌握力が弱くなっていった」と述べた。近年のゴーン元会長は1カ月に数日しか日産に出社していない。西川社長は部品などの調達畑が長く、ゴーン改革を裏側から支え、17年に社長兼CEOに就いた。実際のトップはゴーン元会長であり続けたことに対し「徐々に実力と実績ではね返していくしかないと思った」という。一方、日産の取締役会が長くゴーン元会長の不正を見抜けず、日産は有価証券報告書への虚偽記載の罪で法人としても起訴されている。西川社長は不正を見抜けなかった理由について「非常に頭が良い人」として「プロや自分の側近を使って実行し、なかなか分からない」と説明した。取締役会は「気がつかないというか、分からない」と釈明した。側近は、ゴーン元会長と同時に逮捕された元代表取締役のグレッグ・ケリー被告らを念頭においているとみられる。西川社長は自らの経営責任に関しては「トップの責任を果たしていく。社内の動揺を元に戻してまとめ、ルノーとの提携関係を前に進めることなどは自分がやるしかない」と、6月の定時株主総会以降も社長を続投する考えを示した。今後の焦点は日仏連合の運営体制だ。空席の日産会長職をルノーが指名する意向を伝え、日産は拒否してきた。ルノーでは1月下旬にジャンドミニク・スナール氏が会長に就き、2月中旬に来日し西川社長と会談した。西川社長はルノーとの関係について「普通の状態に戻りつつある。(両社の問題は)解消していく」と話した。「会長は日産内部で決めていく。スナール氏も十分理解している」と述べ、日産が会長を指名できる展開に自信を見せた。もっとも両社の資本関係は、ルノーが43%の日産株を持つ一方、日産はルノーへの15%出資にとどまる。ルノーの筆頭株主である仏政府の出方を含め流動的な面は残る。

*1-2:http://www.tokyo-np.co.jp/article/economics/list/201902/CK2019022302000150.html (東京新聞 2019年2月23日) 日産経営陣の責任問わず 特別委方針「議論の対象外」 ゴーン被告不正
 前会長カルロス・ゴーン被告の不正を許してきた日産自動車の企業統治(ガバナンス)の見直しについて有識者らが議論する「ガバナンス改善特別委員会」が、西川広人社長ら現経営陣の責任を問わない見通しであることが分かった。専門家からは、責任の所在を明確にしないままでは、実効性のある改善案にはならない、との指摘が出ている。特別委関係者は取材に「委員会の主要議題はガバナンス改革。責任を問うのは仕事ではない」と述べた。これまでの議論で、役員の人事や報酬などを社外取締役が中心となって決める「指名委員会等設置会社」への移行などを検討している。人事や報酬を決める権限がゴーン被告に集中した反省などからだ。だが、不正を見逃してきた経営陣の責任の検証については議論の対象になっていないという。特別委は昨年十二月に設置。三月末までに提言案をまとめる計画だ。委員は、弁護士ら外部有識者四人と日産の社外取締役三人の計七人。社外取締役は経営陣の一角を占め、責任検証の対象となりうるため、特別委はそもそも経営陣の責任を問いづらい体制になっている。社外取締役を委員に選んだ理由を日産は「会社の状況を把握しており、提言を速やかに行うため」としている。ガバナンスの問題に詳しい青山学院大の八田進二名誉教授は「日産の経営陣はゴーン被告の不正を長年見過ごしてきた。なぜ不正が起きたのか真因を突き止めようとすれば必然的にその責任を検証しなければならない。特別委は役割を果たしていない」と指摘している。

*1-3:https://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2019030702000191.html (東京新聞社説 2019年3月7日) ゴーン前会長 巨額報酬を問いたい
 ゴーン被告については昨日、いわゆる人質司法の問題を指摘したが、一般的に巨額すぎるような報酬についても改めて考えてみたい。富を偏らせる政治や経済の仕組みに、ゆがみはないのかと。著しい収入格差は世界に広まっている。格差を研究する国際非政府組織(NGO)、オックスファムは二〇一八年、世界の富豪上位二十六人の資産約百五十兆円と、世界人口の半分にあたる三十八億人の貧困層の資産がほぼ同額だと報告した。数字を見て資本主義の暴走を感じはしまいか。国内に目を向ければ、企業が収入を人件費に回す労働分配率は約66%で、石油ショックに苦しんだ一九七〇年代中頃の水準まで落ち込んでいる。富裕層は富を増やし続け、勤労世帯の所得が減る流れが国内外で定着している。保釈されたゴーン被告は日産会長として一時、年十億円を超す報酬をもらっていた。これに対し、株主総会で批判が出ていた。九九年以降、経営危機に陥っていた日産の立て直しに尽力したのは事実だ。彼なしに今の日産はないだろう。しかし、経営再建に際し多くの系列会社が取引を停止され、社員も大量に去らざるを得なかった。多大な犠牲を払った上での再建だ。ルノーも再三困難に直面した。雇用不安を抱える従業員や株主らが、突出した報酬を批判するのは理解できる。もちろん巨額報酬をもらっている経営者は、ゴーン被告だけではない。突出した巨額な報酬が目立ち始めたのは、九〇年代以降の米国の金融界だった。自社株による報酬支払いを巧みに使いこなし、多くの経営者が天文学的な額の報酬をもらい続けた。生産性の高い人間が高い報酬を得るのは資本主義の原則だろう。だが一握りの経営者があまりにも巨額な報酬をもらい、一般労働者は残りを分け合うという構図は、社会のあり方としてどうか。不公平は、社会全体の不安定を招きはしないだろうか。フランスの経済学者、トマ・ピケティは一三年、著書「21世紀の資本」で資産課税強化による格差の是正を唱えている。しかし、政策に反映されてはいない。ゴーン被告の巨額報酬は、格差の現実を改めて可視化し人々に提示した。それが資本主義のゆがみであるなら、たださねばならないだろう。 

*1-4:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO39977060S9A110C1EA2000/ (日経新聞 2019/1/13) ゴーン退場 長く居すぎたカリスマ、迷走する日産・ルノー(中)V字回復後に「独裁」の土壌
 「また詰め腹を切らされたか」。2018年12月、インドネシア日産自動車のトップが古巣の三菱自動車に戻された。16年10月に日産が三菱自を実質的に傘下に収めたのを機に、両社のトップを務めていたカルロス・ゴーン元会長(64)が打ち出した交流人事の目玉だったが、就任からわずか1年半で職を解かれた。ゴーン元会長は日産の第2ブランドとして「ダットサン」ブランドを14年に復活させた。新興国向けの低価格車を投入してトヨタ自動車グループの牙城切り崩しを狙ったが、18年1~11月の販売台数は1万202台、シェアは1%(マークラインズ調べ)。多目的車が主流となるなか、小型車投入があだとなった。「リーマン・ショック後の10年以降、明らかに彼は変わった」。多くの日産幹部は口をそろえる。同じく日産が世界に先駆けて10年に発売した電気自動車(EV)「リーフ」。6年後にルノーと共同で累計150万台のEV販売目標を掲げたが、発売から3年目で7万台と苦戦していた。元会長は腹心の志賀俊之・最高執行責任者(COO、当時)をEVの責任者に据えてこ入れを託したが、7カ月後の13年11月にCOOを解任する。北米戦略の失敗も重なり、2期連続で業績見通しの下方修正を迫られた。一世を風靡した「コミットメント経営」は封印、古参の日本人幹部も一斉に入れ替えた。「再建」から「成長」モードに入ったゴーン元会長は、トップダウンでロシアのプーチン大統領の要請に応じ同国最大手のアフトワズを買収。経営者同士の友好関係を生かし独ダイムラーとの提携も決めた。しかし、側近を相次いで排除していった結果、実務が滞りゴーン元会長の思った通りの成果を上げられなかった。それがまた焦りを生み、意にそぐわない幹部を次々と入れ替える「独裁」につながっていった。ゴーン元会長をはじめ、企業の危機などを乗り越え、V字復活を遂げた経営者は「カリスマ化」されることが多い。しかし、「経営が軌道にのった後の成長や新機軸を打ち出すのに苦労するケースが多い」と、ローランドベルガーの貝瀬斉パートナーは指摘する。この点で、米ゼネラル・エレクトリック(GE)のジェフ・イメルト元最高経営責任者(CEO、62)も似ている。イメルト氏は米同時多発テロやリーマン・ショックの2度の危機を放送や金融などの事業売却で乗り切り、「選択と集中」の経営手腕は高く評価された。復活を遂げたあと、さらなる成長に向け目をつけたのが電力事業だった。仏アルストムの電力事業の買収合戦で三菱重工業を制し傘下に収めたが、再生可能エネルギーの台頭を読み切れず主力のガスタービンが不振に陥った。17年の退任直前の株価は在任中最高値の半分の水準に下落した。後継CEOに再生を託したが、アルストムの事業買収で2兆円近い減損処理を迫られ、後継者は志半ばで退任する事態を招いた。20年以上、独フォルクスワーゲン(VW)の実権を握ったオーナー家出身のフェルディナント・ピエヒ氏(81)。世界一を目指す中で、ピエヒ氏にシェアの低い米国市場の攻略を求められた幹部らは、不正なソフトウエアを使い排ガスデータを改ざん。全世界で1100万台が不正の対象となる不祥事の元凶となった。ピエヒ氏は社長に引き上げたマルティン・ヴィンターコーン氏(71)の解任を画策したが、逆に辞任に追い込まれた。いずれも「長く居すぎた」カリスマ経営者の末路だ。

*1-5:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190301&ng=DGKKZO41853860Y9A220C1EA1000 (日経新聞 2019年3月1日) ゴーン退場100日(4) 「特注銘柄は避けたい」
 1月下旬、日産自動車の最高財務責任者(CFO)、軽部博(62)は社内調査に追われていた。元会長、カルロス・ゴーン(64)の役員報酬は本当はいくらだったのか。ほかに財務諸表への記載漏れはないのかも確認が必要だ。調査チームからは「事実がなかったと証明するのは至難の業。まるで悪魔の証明だ」と嘆きの声。事件の影響をできる限り示さないと市場の信頼を失ってしまう。帳簿を遡る作業は終わりが見えなかった。金融市場が日産への不信感を強めている。役員報酬の虚偽記載や親族を含む元会長周辺の不明瞭な資金の流れ。国内有数の大企業とは思えないずさんな実態が次々と明るみに出てくる。昨年11月、ゴーンが逮捕されると日本取引所グループ(JPX)は即座に動いた。内部管理に問題があると注意を促す「特設注意市場(特注)銘柄」に指定する必要があるかの調査だ。2月22日の定例会見。JPXの最高経営責任者(CEO)、清田瞭(73)は「全容が分からず情報収集の段階」と言葉を選んだ。だがJPXの幹部は「虚偽記載は投資家の判断を誤らせる重大な不正」と厳しい。「東芝にはなりたくない」と日産幹部は漏らす。トップの暴走で不適切会計に手を染めた東芝は2015年に特注銘柄に指定され2年にわたり苦しんだ。実質的に市場から資金調達できず、多くの機関投資家は内部規定に従い株を売る。50万人近い株主がいる日産にとって「何としても避けたい」シナリオだ。株主には不満が蓄積する。個人株主の石上晶敏(62)は「これほどの不正に気づかないのは会社としておかしい」と口にする。機関投資家に影響力がある米議決権行使助言会社、インスティテューショナル・シェアホルダー・サービシーズの日本法人代表、石田猛行(50)は「企業統治の仕組みが脆弱だ」と指摘する。このままなら株主総会で取締役の選任議案に反対が相次ぐ事態になりかねない。「もはやコスト削減では補えない」。2月初旬、軽部は営業報告を見てうなった。北米や中国で新車販売が大きく落ち込み、19年3月期の営業利益は900億円の下方修正を余儀なくされた。事件の影響ばかりではない。三菱UFJモルガン・スタンレー証券の杉本浩一(48)は「魅力のある新型車を増やさないと厳しい」と話す。ゆがんだ企業統治、低下する収益力。経営危機だった20年前の記憶は今も色濃く残る。ゴーン退場で日産は再び瀬戸際に追い込まれた。

*1-6-1:http://qbiz.jp/article/148306/1/ (西日本新聞 2019年2月5日) 日産、ゴーン被告の報酬凍結へ 90億円を決算計上
 日産自動車が、前会長のカルロス・ゴーン被告=会社法違反(特別背任)などの罪で起訴=に関し、有価証券報告書に記載していなかった報酬の支払いを凍結する方針を固めたことが5日、分かった。約90億円分を確定報酬分として近く決算に計上するが、ゴーン被告の報酬過少申告の事件を巡る司法判断や、日産が検討しているゴーン被告への損害賠償請求をにらみ実際の支給は見送る。関係者は「ゴーン被告が絡んだ不正の総額は、確定報酬額を上回る可能性がある」との見方を示した。報酬額が賠償額と事実上相殺され、ゴーン被告が最終的に受け取れないケースも考えられる。東京地検特捜部は、ゴーン被告の役員報酬が、2015年3月期までの5年間に計約50億円、16年3月期〜18年3月期に計約40億円それぞれ有価証券報告書に過少記載されたとして、ゴーン被告らを起訴した。法人としての日産も起訴された。日産は起訴内容を認めているが、ゴーン被告側は先送り分の報酬は金額が確定していないとして否認していることを踏まえ、裁判所がどのように認定するかを見極めたい考えだ。このほか、日産の社内調査でゴーン被告が多額の高級住宅の購入や改装費などを日産側から支出させていたことなどが判明。ゴーン被告に損害賠償請求訴訟を起こすことも検討している。ゴーン被告は1999年6月、日産の最高執行責任者(COO)として就任。業績回復に経営手腕を発揮し、2001年6月に社長兼最高経営責任者(CEO)、17年4月に会長となった。

*1-6-2:http://qbiz.jp/article/148648/1/ (西日本新聞 2019年2月12日) 日産、通期純利益半減へ ゴーン被告報酬92億円計上
 日産自動車は12日、2019年3月期の連結純利益予想を従来の5千億円から4100億円に下方修正した。前期の実績に比べ45・1%減と約半分になる。主力市場の米国での販売不振と貿易摩擦による中国の景気減速が響く。同時に発表した18年4〜12月期決算には、会社法違反(特別背任)などの罪で起訴された前会長カルロス・ゴーン被告の確定報酬分として92億3200万円を追加費用計上した。ゴーン被告が昨年11月に逮捕されて以来、初めての決算発表だった。トヨタ自動車なども通期業績予想を下方修正しており、国内基幹産業の自動車大手に影響が本格的に顕在化し始めた。フランス自動車大手ルノーなどと組む企業連合の世界販売台数2位の地位が揺らぎかねない。西川広人社長は横浜市の本社で記者会見し、ゴーン被告の確定報酬の計上に関して「大きな責任を感じている。(会社に多額の損害を与えた被告に)支払いをするという結論に至るとは思っていない」と述べた。ルノーとの連合については「われわれの大きな強みであり財産。将来的にも磨きを掛けたい」と話し、互いに自立性を尊重しながら成長を進めるとの認識を示した。業績に関しては、競争が激化する米国でセダンを中心に販売台数が減少した。値引きの原資となる販売奨励金を抑えるなど立て直しに取り組む。中国は「踊り場に来ている」(西川氏)との認識で、市場の減速により販売台数が従来の予想に届かなかったという。19年3月期予想は、売上高も4千億円少ない11兆6千億円に下方修正した。相次いで発覚した検査不正などの影響は計200億円の利益の圧縮要因となる。18年4〜12月期の売上高は前年同期比0・6%増の8兆5784億円だったが、純利益は45・2%減の3166億円だった。

*1-6-3:https://digital.asahi.com/articles/DA3S13891827.html (朝日新聞 2019年2月14日) ルノー「退職金」払わず ゴーン前会長への38億円相当
 仏ルノーは13日、同社の会長兼CEO(最高経営責任者)職を退いたカルロス・ゴーン被告が退任に伴って受け取る金銭をめぐり、約3千万ユーロ(約38億円)相当の支払いを認めないことを決めたと発表した。同日開いた取締役会で決めた。ゴーン被告は退任時にルノー株約46万株(約33億円相当)を報酬として受け取る権利があったが、ルノーは支給をとりやめる。ライバル会社に退任後2年間転職しないことを条件に支給する補償金も支払わない。仏メディアによると、400万~500万ユーロ(約5億~6億3千万円)を受け取れる規定だった。パリ郊外のベルサイユ宮殿で2016年に開かれたゴーン被告の結婚式にルノーの資金が流用されていたことなどが報じられており、世間の理解が得られないと判断したとみられる。

*1-6-4:https://www.asahi.com/articles/ASM2V36F1M2VUHBI00L.html?iref=comtop_8_04 (朝日新聞 2019年2月26日) テスラCEO、またまた舌禍ツイート 株価は急落
 米証券取引委員会(SEC)が、米電気自動車(EV)大手、テスラ社のイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)が和解条項に違反したとして、米連邦地裁に申し立てていたことが26日、わかった。テスラ株は26日の時間外取引で、4%程度急落している。マスク氏は19日夜、テスラ社の年の生産台数について「2019年は約50万台になる」とツイート。その約4時間後のツイートで、「19年末段階での生産台数ペースが年換算で50万台になるという意味だった。今年の引き渡しベースの台数は依然として約40万台だ」と修正した。マスク氏は1月末の四半期決算発表の際の説明では「19年には、36万~40万台の引き渡しを見込んでいる」としていた。マスク氏は昨年8月、テスラ社を非上場化するとツイートして株価を乱高下させた。その後、投資家から非上場化する正式な提案がなかったことも表面化して、非上場化の「断念」を表明した経緯がある。SECはこの一連の動きで、市場を混乱させたとして、マスク氏を提訴。昨年秋に多額の制裁金のほか、マスク氏が兼務していた会長職から離れることや、ツイートを含めたマスク氏の対外的なコミュニケーションを監視する態勢をつくることでマスク氏側と和解していた。

<これまでの日産・ルノーの実績と今後>
*2-1:http://qbiz.jp/article/147920/1/ (西日本新聞 2019年1月30日) 日産が中国でEV戦略加速 現地生産、販売網拡大 環境規制が追い風
 日産自動車が中国市場への電気自動車(EV)投入・販売策を進めている。中国政府が新たな環境規制を導入し、EVなどエコカー普及を促す動きに合わせたものだ。EV戦略は今後、同社が中国市場で覇権を握れるかどうかの試金石となる。現地の生産・販売現場を訪ねた。「都是奮斗出来的、加油(全ては奮闘した結果だ、頑張れ)」−。中国語の看板が掲げられた工場内で、ヘルメット姿の作業員たちがきびきびと動き回る。広東省広州市にある東風日産花都工場。これまでガソリン車のみを生産してきた組み立てラインに、12〜13台に1台の割合でエンジンの代わりにモーター、そして燃料タンク部分にバッテリーを搭載するEVが流れる。昨年9月から販売を開始した「シルフィ ゼロ・エミッション」だ。中国で人気のセダン「シルフィ」に、EV「リーフ」のシステムを応用した。同工場で1日に90台生産する。2003年に中国へ進出した日産は、地元メーカー「東風汽車集団」との合弁で事業展開。今年末までにEV5車種を市場に投入予定で、シルフィEVが先陣を切った。
■連 動
 広州市の東風日産販売店。シルフィEVが店舗入り口の“一等地”に展示され、EV売り込みへの意欲が伝わる。同店では月間販売数約200台のうち10台前後がEV。昨年末までに販売網約800店のうち約2割でEV販売を始め、さらに増やす方針という。EV普及の鍵を握るのが広州、北京、上海など主要7都市でのナンバープレート規制だ。渋滞緩和や環境対応のため、マイカー保有には抽選などによるナンバー取得が必要だが、EVなら比較的容易に入手可能。東風汽車の泉田金太郎経営企画本部長は「規制都市がEV市場を創出する。対象都市が倍以上に増える可能性もある」とみる。中国は今年から自動車メーカーに対し、一定割合でEVなど新エネルギー車(NEV)の生産を義務付ける制度を導入。こうした動きを受け、日産はEVをけん引役に22年の中国での販売台数を17年比7割増の260万台に引き上げる青写真を描く。
■懸 念
 ただ、EV戦略に動くのは日産だけではない。昨年11月に広州市で開かれた広州国際モーターショーでは、国内外のメーカーがEVを並べた。中国専用の量産EVを初公開したのはホンダ。現地法人、広汽ホンダの佐藤利彦総経理は「18年は電動車元年。今回のEVはその第1弾だ」と強調する。トヨタ自動車も来年、EV生産を開始する方針を明らかにしている。一方で中国経済は減速。中国自動車工業協会によると、18年の年間販売数は28年ぶりに前年を割った。米中貿易戦争、さらには日産固有の問題として前会長カルロス・ゴーン被告の事件も影を落とす。日産では中国事業の担当幹部だったホセ・ムニョス氏が退任するなど、ゴーン被告の信任が厚かった外国人幹部が主要業務から外れるケースも起きている。こうした内外の変化が今後のEV戦略にどう影響するかも注目される。

*2-2:https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190306-00010005-kurumans-bus_all (Yahoo 2019.3.6) 「e-POWER」搭載のコンセプトカー日産「IMQ」を発表 欧州へ「e-POWER」投入も宣言
●クロスオーバーSUVタイプのコンセプトカー「IMQ」
 日産はジュネーブモーターショー2019において、全輪駆動タイプの電動パワートレイン「e-POWER」を搭載したクロスオーバーSUVのコンセプトカー「IMQ」を世界で初めて公開。また「e-POWER」技術の欧州市場への投入も発表しました。電動パワートレインの「e-POWER」は、コンパクトカー「ノート」に搭載されて、2018年国内登録車販売で1位を獲得しています。100%電動モーター駆動システムと、モーターを駆動するための電気を発電するガソリンエンジンを組み合わせた「e-POWER」は、素早く滑らかな加速と優れた燃費性能を提供。欧州では、日産「リーフ」が販売台数トップの電気自動車となっていますが、日産は「e-POWER」を投入することで、同地域における電動車両のリーダーシップを更に強化するとしています。2022年までに「e-POWER」を欧州の量販モデルに搭載することで、欧州における日産の電動車両の販売は現在の約5倍となり、2022年度末には市場平均の2倍の規模となる見込みです。日産の常務執行役員であるルードゥ・ブリースは次のように述べています。「日産は量販EV技術におけるグローバルリーダーシップの上に、欧州における全面的な電動化を見据えています。今後2年のうちに「e-POWER」を欧州市場に投入することで、“ニッサン インテリジェント モビリティ”の提供する価値をさらに多くのお客さまにお届けしていきます」
  ※ ※ ※
 ジュネーブモーターショーで初披露された「IMQ」は、先進の技術とデザインを搭載した全輪駆動の「e-POWER」搭載車です。欧州の小型クロスオーバーの概念を超えた外観や技術が、日産のクロスオーバーセグメントにおけるリーダーシップを反映します。具体的には「e-POWER」システムは、発電専用のガソリンエンジンに加え、発電機、インバーター、バッテリー、電動モーターが搭載されます。ガソリンエンジンは発電にのみ使用され、常に最適な回転数で作動し、従来型の内燃エンジンと比べより優れた燃費と低排出ガス性能を実現。日本では「ノート」と「セレナ」に「e-POWER」が搭載されています。「ノート」は購入者の70%以上が、「セレナ」は約半数が「e-POWER」搭載車を選んでいます。なお、100%電気自動車「日産リーフ」の累計グローバル販売台数が40万台を突破し、世界販売台数No.1の地位を確固たるものにしたことも、車両の電動化における日産のリーダーシップを明確に示しています。

*2-3:https://digital.asahi.com/articles/ASM366WFCM36UTIL07Z.html?iref=pc_rellink (朝日新聞 2019年3月6日) 車はスズキ、関係ない社名が次々 ゴーン前会長保釈
 東京拘置所では200人を超える報道陣が、ゴーン前会長の保釈を待っていた。午後4時17分、保釈手続きを担当していた弁護人の高野隆弁護士らが黒塗りのワゴン車を拘置所の正面玄関前に止め、建物内に。約12分後、布団やキャリーケースなどの荷物を持って外に出て、ワゴン車に積み込み始めた。
●カルロス・ゴーン もたらした光と影
 その2分後、玄関から10人ほどの拘置所職員が出てきた。職員らに挟まれるように、青い帽子にオレンジ色の反射ベストを身につけ、マスクをした男性がいた。背筋を伸ばし、ゆっくりとした歩み。黒塗りワゴン車の前を素通りし、前方に止めてあったスズキ製の軽ワゴン車に乗り込んだ。埼玉県内の塗装会社の社名が書かれ、塗装道具が積まれた軽ワゴン車は、静かに走り出した。黒塗りワゴン車は停車したまま。弁護人も玄関付近に残っていた。だが、軽ワゴン車の後部座席に座った男性の帽子とマスクの間には、特徴的な太い眉毛と鋭い目つきが見て取れた。「えっ、ゴーン被告?」。中継中のテレビ局の記者は声を裏返し、言葉に詰まった。他の報道陣も「変装か」とざわつき始めた。軽ワゴン車が拘置所敷地内をぐるりと回って車道に出ようとすると、カメラマンたちが一斉にシャッターを切った。拘置所を出発した軽ワゴン車が行き着いたのは、東京都千代田区の弁護士事務所。車から出てきたのは、作業員風の服装から、濃いグレーのコートに着替えたゴーン前会長だった。事務所に入った後も、メディアの前で語ることはなかった。法務省関係者によると、ゴーン前会長が着ていた衣服と移動用の軽ワゴン車は弁護人が用意したという。同省幹部は「変装して保釈なんて聞いたことない」。塗装会社の関係者は「車の塗装はやっていない」と語り、ゴーン前会長との関係は「全然わからないし聞いたことがない。もしかしたら、お客さんのつてでつながりがあったのかも」と語った。青い帽子には、埼玉県内の鉄道車両整備会社の社名が書いてあった。この会社の担当者は「日産とは取引がないし、今回の件も関係がない」と戸惑った様子だった。なぜ、変装までする必要があったのか。関係者は「マスコミに追われないようにする意図があったが、確実にだますのは難しいと思っていた」と語る。日産の40代の女性社員は、「後ろめたいところがないなら、変装などせずに堂々と出てきてほしかった」と残念がった。別の30代の男性社員は「ゴーンさんは人の目を気にするタイプだから、変装してマスコミに追われないようにしたのでは」と推測した。
●妻と娘? にこやかな表情で車に
 東京拘置所には朝から、ゴーン前会長の弁護人や家族とみられる人たちが頻繁に出入りした。報道陣も朝から100人以上が詰めかけ、周囲には10段ほどの大型脚立がずらりと並んだ。午前10時40分ごろには、ゴーン前会長の妻と娘とみられる2人がフランス大使館の車で到着。約1時間半ほど、拘置所内で過ごしてからいったん離れた。報道陣は増え続け、昼過ぎには200人超に。フランスのほか、米、英、ロシア、ブラジルなどの海外メディアも並んだ。午後1時40分過ぎ、「保釈保証金の納付が完了した」と速報が流れると、カメラマンたちは地面に置いていたテレビカメラを担ぎ上げ、脚立に上って構え始めた。妻と娘とみられる2人は午後3時過ぎ、再びフランス大使館の車で姿を現した。変装したゴーン前会長が軽ワゴン車に乗って走り去ってから約10分後、にこやかな表情で車に乗り込んだ。

*2-4:https://digital.asahi.com/articles/ASM373HH2M37UTIL005.html (朝日新聞 2019年3月7日) ゴーン氏の変装、弁護人の弘中氏「テレビ見てびっくり」
 会社法違反(特別背任)などの罪で起訴された日産自動車の前会長カルロス・ゴーン被告(64)が保釈されたことについて、弁護人の弘中惇一郎弁護士が7日、記者団の取材に応じ、「人質司法がなくなるきっかけになれば」と改めて語った。前会長の記者会見については、休養や打ち合わせの必要があるため同日中はないとし、引き続き検討するという。昨年11月の逮捕後、ゴーン前会長の身柄拘束は108日間に及んだ。弘中氏は「長期勾留の状態で裁判をするのはアンフェアだ。制限付きだが、裁判所が保釈を認めたことは非常によかった」と話した。保釈の際、前会長が作業着姿に変装していたことについて、弘中氏は「ゴーンさんと現場にいた弁護士のアイデアだったと思う」と話し、「テレビを見てびっくりした」という。「無罪を訴えるならもっと堂々との意見もあるが、ユーモラスでいいという考え方もある」と語った。ゴーン前会長は保釈後、事前に定められた都内の住居で、来日した家族と過ごしているとみられる。弁護団は今後、会見の時期や内容、弁護方針などを協議する。

<日本の司法の違憲性>
*3-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190217&ng=DGKKZO41377720W9A210C1CC1000 (日経新聞 2019年2月17日) ゴーン元会長への「人権侵害」懸念 ブラジル弁護士会
 日産自動車元会長のカルロス・ゴーン被告(64)が会社法違反罪などで起訴されたことに絡み、ブラジル主要紙フォリャ・ジ・サンパウロ(電子版)は16日までに、ブラジル弁護士会が日弁連にゴーン被告への「人権侵害」への懸念を表明する文書を送ったと伝えた。クラウディオ・ラマシア会長名の文書は、ゴーン被告が「拷問による自白を得る明確な目的により、肉体と精神の状態を害する状況で不当に勾留されている」と非難し、日弁連に対処を求めた。文書はゴーン被告の家族の弁護士が要請し作成されたという。

*3-2:http://www.tokyo-np.co.jp/article/world/list/201902/CK2019022302000263.html (東京新聞 2019年2月23日) NYタイムズ、社説で「人質司法」批判 ゴーン被告勾留巡り
 日産自動車前会長のカルロス・ゴーン被告(64)が金融商品取引法違反と会社法違反(特別背任)の罪で起訴された事件で、米紙ニューヨーク・タイムズは二十二日付の社説で、自白偏重型とされる日本の司法制度を批判した。社説は「ゴーン氏は日本の“正義”と相対している」と題し、ゴーン被告が問われている罪を「深刻」としながらも「保釈を拒むべき理由にはならない」と述べ、逮捕から三カ月過ぎても拘置所に勾留されている現状を疑問視。日本では「保釈は一般的に、公判で罪を認める用意がある被告のためのものだ」と指摘し、保釈請求が繰り返し却下されているのはゴーン被告側の無罪主張が理由との見方を示した。「公判はいつになるか分からないが、裁かれるのは伝説の経営者だけではない。日本の司法制度もそうだ」と締めくくっている。

*3-3:https://digital.asahi.com/articles/ASM3544RQM35UTIL00Y.html?iref=comtop_8_01 (朝日新聞 2019年3月5日) ゴーン被告の保釈認める決定 東京地裁、保釈金10億円
 日産自動車の前会長カルロス・ゴーン被告(64)が会社法違反(特別背任)などの罪で起訴された事件で、東京地裁は5日、前会長の保釈を認める決定を出した。保釈保証金は10億円。前会長の保釈請求はこれまで2回退けられていたが、弁護人が一新した後、2月28日に3回目の請求が出されていた。検察側は決定を不服として準抗告するとみられるが、これが退けられ、前会長が保証金を納付すれば、東京拘置所から保釈される見通しだ。前会長は一貫して起訴内容を否認しており、身柄拘束は昨年11月19日に逮捕されてから100日以上に及んでいる。東京地検特捜部の事件で否認のまま、裁判の争点や証拠を絞り込む公判前整理手続き前に保釈されるのは極めて異例だ。特捜部は今年1月11日、ゴーン前会長を特別背任と金融商品取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)の罪で追起訴した。弁護人は同日、保釈を請求したが、地裁が却下。保釈後にフランスに住むなどの条件を提示したが、地裁は証拠隠滅や逃亡の恐れがあると判断したとみられる。弁護人は1月18日、再び保釈を請求し、保釈後の住居を日本国内に変更するなどしたが、これも却下された。前会長の弁護人は11月の逮捕後、元東京地検特捜部長の大鶴基成弁護士が務めていたが、2月13日付で辞任。弘中惇一郎弁護士らが新たに就任し、3度目の保釈請求をしていた。起訴状によると、ゴーン前会長は2008年10月、約18億5千万円の評価損が生じた私的な投資契約を日産に付け替えたほか、信用保証に協力したサウジアラビアの実業家に日産の子会社から09年6月~12年3月、計1470万ドル(当時のレートで約13億円)を不正に送金したとされる。また、10~17年度の役員報酬計約91億円を有価証券報告書に記載しなかったとされる。

*3-4:https://digital.asahi.com/articles/ASM355T49M35UTIL03M.html?iref=comtop_8_03 (朝日新聞 2019年3月5日) ゴーン前会長、保釈条件に「嫌そうな顔」 弁護人明かす
 「手続きをスムーズに進めたい」。東京地裁が、ゴーン前会長の保釈を認める決定をしたと速報が流れてから約4時間半後。ゴーン前会長の弁護人の弘中惇一郎弁護士は、東京都千代田区の事務所に集まった報道陣の質問に答えた。保釈決定の主な要因については「証拠隠滅、逃亡の恐れを防止できる極めて具体的な手立てを、こちらが提示したこと」と強調。ゴーン前会長の住まいに監視カメラを設置したり、携帯電話に通信制限を設けたりするほか、事件関係者との連絡も一切禁止する内容になった。こうした条件には、保釈決定の知らせ自体には喜んだゴーン前会長も「びっくりして、嫌そうな顔はした」。弁護人が条件の必要性を説得したという。横浜市西区の日産自動車グローバル本社で、帰路につく社員たちの口は重かった。30代の男性社員は「話さないように言われているので」とうつむいた。別の社員は「逮捕から3カ月以上たち、もはや過去の人という印象。資金の私的流用などの不正があったことは事実だと思うので、経営の邪魔はせず反省してほしい」と思いを明かした。東京拘置所(東京都葛飾区)には数百人の報道陣が駆けつけた。ロイター通信のティム・ケリー記者(50)は「欧米の基準からすれば、保釈までの期間が長すぎる」と日本の司法制度を批判する一方、「保釈されれば、ゴーン氏は検察や日産への批判が自由にできる。検察、日産との戦いがこれから本格化する」と注目する。さらに、「長い拘束でどれくらいやせたか、白髪が増えたのか容姿の変化も気になる」と語った。

*3-5:https://www.kyoto-np.co.jp/info/syasetsu/20190307_4.html (京都新聞 2019年3月7日) ゴーン被告保釈  「人質司法」から脱却を
 昨年11月の電撃的な逮捕以降、108日に及ぶ身柄拘束が続いていた日産自動車前会長のカルロス・ゴーン被告が保釈された。起訴内容を全て否認する被告の保釈決定は異例であり、画期的だ。冤罪(えんざい)の温床とも指摘される「人質司法」の不当性を考えれば当然といえる。会社法違反(特別背任)などの罪で起訴されていたゴーン被告はきのう、保証金10億円を納付して保釈された。保釈請求に対し、東京地裁は証拠隠滅や逃亡の恐れが大きくないと判断した。保釈決定を不服とした検察側の準抗告も棄却した。ゴーン被告は無罪を主張し、法廷で全面的に争う姿勢をみせる。米国の代理人を通じ、「私は無実であり、公正な裁判を通じ強く抗弁する」と強調した。請求は3回目で認められた。公判に向けた争点整理が進んでいない段階で、否認している被告が保釈されるケースはまれだ。事件関係者との口裏合わせなど、証拠隠滅の不安が拭えないためだ。とりわけ検察の特捜部が手掛ける複雑な事件では、保釈は珍しい。2度も請求を退けた地裁が、なぜ許可へかじを切ったのか。「人質司法」との批判が強まる中、むやみに勾留を続けたくないというのが本音ではなかろうか。「検察と一体」とみられては裁判自体の公正を損ない、国民の信頼を失いかねない。証拠隠滅の恐れなどを綿密に審査し、身柄の拘束がもたらす不利益をも考慮して問題がなければ否認でも弾力的に保釈を認めるべきであろう。新たに就任した弁護団は住居の出入り口への監視カメラ設置や携帯電話の使用制限といった厳しい行動制限を提起し、地裁も応じた。刑事弁護にたけた弁護団の手段が奏功したとみられる。ただ証拠隠滅や逃亡の防止を担保するとはいえ、過剰な保釈条件は人権侵害につながりかねない。前例として定着する懸念が残る。否認すれば罪証隠滅の恐れがあるなどとして長期にわたり勾留される「人質司法」への批判は強い。長期の拘束は日産事件で海外からも厳しい目が向けられている。日本も批准した国連の自由権規約には、無罪推定の原則とともに妥当な期間内に裁判を受ける権利や釈放される権利、起訴後の勾留原則禁止が定められ、勾留を短期間にとどめる国は多い。最近、勾留請求却下率や保釈率は上がっているが、裁判所の責任は重い。「人質司法」から脱却する契機としたい。

*3-6:https://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2019030690135519.html (東京新聞 2019年3月6日) 一貫否認、ゴーン前会長保釈へ 108日間拘束、何語る
 日産自動車の前会長カルロス・ゴーン被告(64)=会社法違反(特別背任)罪などで起訴=の弁護人は六日午前、東京地裁に保釈保証金の十億円を納付しなかった。地裁は五日夜、保釈決定に対する東京地検の準抗告も棄却しており、保釈金を納めればいつでも保釈される状況になっていた。ゴーン被告の保釈は早くても六日午後以降になる。ゴーン被告は昨年十一月十九日の逮捕後、一貫して否認。百八日間にわたる身柄拘束が解かれれば、記者会見を開く可能性があり、何を語るか注目される。地裁は五日、弁護人の保釈請求に対し、保釈を決定。居住地を日本国内に制限し、海外渡航を禁止する条件を付けたことを明らかにしていた。弁護人によると、関係者との接触を疑われないよう住居の出入り口に監視カメラを設置する案を示したところ、地裁は保釈条件に組み入れた。録画映像は定期的に地裁に提出する。東京地検は決定を不服として準抗告したが、地裁の別の部が棄却していた。ゴーン被告は、有価証券報告書に自身の役員報酬の一部を記載しなかったとする金融商品取引法違反容疑で二度逮捕され、日産に損害を与えたとする特別背任容疑でも再逮捕された。ゴーン被告の当初の弁護人は今年一月、二度にわたり保釈請求。いずれも却下され、勾留が続いていた。その後の一月二十四日、ルノーの会長と最高経営責任者(CEO)を辞任。新たに弁護人に選任された弘中惇一郎弁護士らが二月二十八日、三回目の保釈を請求していた。
   ◇ 
 ゴーン被告が勾留されている東京・小菅の東京拘置所には、六日早朝から保釈の瞬間を捉えようと、二百人以上の記者やカメラマンが詰め掛けた。現場には足の高い脚立や三脚などがずらりと並び、拘置所職員や警察官が警戒に当たった。午前中からテレビ中継が断続的にあり、上空をマスコミのヘリコプターが旋回するなど、ものものしい雰囲気となった。最初の逮捕から百八日にわたる長期間の勾留は、国際社会から「人質司法」と批判されてきた。日産自動車の経営を立て直した世界的な「カリスマ経営者」の動向をいち早く報じようと、仏国をはじめとする海外メディアの記者も多く集まった。
◆日産社長「仕事影響ない」
 日産自動車の西川広人社長は六日朝、都内で記者団にカルロス・ゴーン被告の保釈について問われ「司法手続きなので、そういうこともある」と平静を強調した。ゴーン被告は一貫して無罪を主張しているが、経営に与える影響についても「仕事への影響はない」と明言した。

<航空機や船舶にも電力を使う時代に・・>
PS(2019年3月9、11日追加): *4-1のハイブリッド内航船は、現在なら、それほど大きな期待を持てない船出だ。何故なら、太平洋等を航行する時はディーゼルエンジンを使い、港湾内では洋上充電したリチウムイオン電池をエネルギーとして使うからだ。日本人は、空気や海を汚す化石燃料を高い金を出して外国から買うのがよほど好きなのかも知れないが、私は、再生可能エネルギー由来の水素燃料を使った方が液体燃料より軽く、公害も出ないのでずっとよいと考える。また、船舶の場合は、風とのハイブリッドにもできるそうだ。さらに、船舶は自動車よりも自動運転にしやすいため、自動運転の導入が人手不足解消に繋がるだろう。
 そして、造船会社は、*4-2のように、自動車会社やIT会社からヘッドハントしてでも転職者を採用して活かせば、短時間で船舶のイノベーションを行うことができるのだが、そのためには転職が不利にならない賃金体系(年功序列ではなく能力主義)を作っておくことが必要だ。従って、今頃、「定年まで勤めあげるだけが職業人生のゴールではない(当然)」「生え抜き社員だけでなく・・(これも当然)」などと言っていること自体、かなり遅れているのである。
 なお、*4-3の記事の「①グローバル化で報酬制度改革が不可避で、役員報酬は序列から誘因型へ」「②資本生産性やESG等の指標も考慮を」と書かれているが、このうち①は、ゴーン氏の報酬が高いことを強く問題にした日本国内の批判に一石を投じるものだ。実際には、②も加味して実績を挙げた経営者の報酬が高いのは世界標準であり、経営者の多様化が進めば進むほど単純な高額報酬批判は当たらなくなる。私の経験では、報酬がその人の貢献度(=実績、価値)を表す代理変数であるのは、米国だけでなく日本以外はどこも同じで、年功序列型雇用制度を堅持している日本だけが勤務年数の代理変数になっている。そして、年功序列型雇用制度の中では、問題を先送りして静かに長く勤めた人が役員になり、中途採用は不利であるため従業員の転職も進まず、改善はできても摩擦の起きる改革ができない企業体質を作ることになるわけだ。

*4-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190309&ng=DGKKZO42076550V00C19A3QM8000 (日経新聞 2019年3月9日) ハイブリッド内航船、期待の船出 少ない騒音 労働環境改善も
 人手不足に悩む内航海運業界に一石を投じる船が走り出した。NSユナイテッド内航海運(東京・千代田)が2月に就航させた「うたしま」はリチウムイオン電池を使ったハイブリッド(HV)推進システムを搭載した新型船。騒音や振動が少ないため、環境負荷の低減だけでなく洋上の労働環境改善を後押しするモデルとして注目される。うたしまは新日鉄住金の鋼材を運ぶ。生産計画に基づき最適な航路や運航頻度を今後決める。太平洋などを航行する際はディーゼルエンジンを使うが、港湾内では洋上で充電したリチウムイオン電池から電動機に給電する。陸上の設備からも充電可能だ。船の建造にかかるコストは従来の2倍近いが、同様のシステムの内航貨物船は日本で初という。利点は二酸化炭素(CO2)排出量を削減できるだけではない。「リチウムイオン電池を使っている際の音が静かで驚いた」。船主である向島ドック(広島県尾道市)の竹嶋秋智船長は話す。内航船の船員は2~3カ月間乗船した後、1カ月ほど休暇をとるのが一般的。勤務中、エンジンの音や振動で睡眠や業務を妨げられるとの声も多い。HV船は港湾内で船を移動させる際、エンジンの温度を管理する作業も軽減できる。日本内航海運組合総連合会(東京・千代田)によると2018年の輸送量は前年並みの2億2254万トン。荷動きは総じて堅調だった。トラックから船や鉄道に輸送手段を変える荷主が増加。トラック運転手の労働環境が厳しくなる中、物流網に船を加え負荷を分散させる動きもある。だが人手不足に悩むのは海運も同じ。内航貨物船は60歳以上の船員が約3割を占めるとされる。船舶管理会社、イコーズ(山口県周南市)の蔵本由紀夫相談役は「船員を年々確保しづらくなった」と懸念する。「労働環境の改善は人手確保にもつながる」とNSユナイテッド内航海運の和田康太郎常務。洋上の働き方改革に一役買えるか、HV船の行方に期待が集まる。

*4-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190114&ng=DGKKZO39985250T10C19A1PE8000 (日経新聞社説 2019年1月14日) もっと転職者を生かす会社に
 終身雇用の慣習が崩れ、転職や起業が珍しくなくなった。でも円満退職へのハードルは高い。いまだに転職をマイナスの印象でとらえる風潮が、日本の会社に残っていないだろうか。人手の確保が難しい今こそ、転職した人材も活用する視点をもちたい。総務省の2018年7~9月の調査によると、過去1年以内に転職した経験のある人は341万人に達し、リーマン・ショック以降で最も高い水準となった。一方で民間の調査では、35歳以上の退職者の半数が「後任が不在」などの理由で強引に慰留され、円滑に辞められなかった。本人に代わって手続きをする退職支援サービスが伸びているのは、退社をめぐる会社と個人のギクシャクした関係の裏返しだろう。退職・転職は「別れ」ではなくコミュニティーの「広がり」と考えたい。退職希望者を無理に引きとめても、意欲は下がり周りの社員にも悪影響を及ぼしかねない。連帯感を持ち続けることで得られる利点に目を向けるべきだ。元社員の転職先が仕入れ先や外注先、代理店となる場合がある。一度やめて社外で経験を積んだ人材を再雇用すれば、客観的な視野から経営改善に取り組める。さらに起業が増えれば、起業家を輩出する企業として評価され、優秀な人材を獲得しやすくなる。米マイクロソフトが現役の研究者と元社員の交流の場を設け、研究分野の相乗効果を生みだそうとしている。社外の知恵を持ち寄って製品やサービスを企画・開発するオープンイノベーションの発想が、人材の確保や育成においても求められる。企業は働き手の人生設計に応じた制度を考えてほしい。転職や再雇用を含めた将来のキャリア形成について、採用時に担当者と率直に話せる企業はまだ少ない。人生100年時代には、定年まで勤めあげるだけが職業人生のゴールではない。生え抜き社員だけでなく、社外の多様な人材も生かすことが企業の成長につながる。

*4-3:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190117&ng=DGKKZO40069050W9A110C1KE8000 (日経新聞 2019年1月17日) 企業統治、何が足りないか(上)役員報酬、「序列」から「誘因」型へ、指標や開示 統合的に改革 伊藤邦雄・一橋大学特任教授(1951年生まれ。一橋大博士。専門は会計学、企業統治論、企業価値評価論)
<ポイント>
○グローバル化で報酬制度の改革不可避に
○業績連動の株式報酬は比率高める方向へ
○資本生産性やESGなどの指標も考慮を
 いま進んでいる企業統治改革は当初、取締役会の機関設計、複数社外取締役の導入、取締役会の実効性評価などに焦点が当てられたため、役員報酬の議論が比較的遅れていた。ところが、日産自動車のカルロス・ゴーン元会長の高額報酬や有価証券報告書記載漏れ、官民ファンドの「高額報酬」問題に世間の耳目が集まったこともあり、経営者報酬への関心がにわかに高まった。ただ昨今の論調は、報酬水準の多寡だけが独り歩きしており、危険でもある。皮相的な議論は統治改革の流れを逆行させる恐れもある。経営者報酬制度は本来、企業統治や企業価値の持続的向上の文脈で冷静に議論されるべきものである。本稿では、日本の経営者報酬に焦点を当て、その課題や今後のあり方をグローバルな視点も入れながら論じてみたい。日本企業の経営者報酬水準は2009年以降、上昇傾向にある(図参照)。ウイリス・タワーズワトソンの調査によれば、17年度の日本の時価総額上位100社のうち売上高1兆円以上の74社の経営トップの報酬額は1億5千万円(中央値)。米国は14億円、英国とドイツはそれぞれ6億円、7億2千万円である。この彼我の差には、経営者報酬に対する各国の経緯と基本的な考え方が投影されていることを看過してはならない。米国では、報酬を自分の価値を表す代理変数であり、自らの働きのベクトルをけん引するインセンティブ(誘因)と捉える傾向がある。将来に向けた「けん引指標」なのだ。日本では、経営陣の報酬水準は社内序列の代理変数であり、株主総会をにらんだ報酬総枠内での調整結果であり、過去の「処遇指標」の性格が強い。そこには「インセンティブ」の要素は薄い。日本では自社の報酬水準が業界内で突出するのを避け、従業員との給与格差が拡大し過ぎないよう配意してきた。また、おカネのことを言い出しにくい雰囲気の中で、過去を踏襲した、抑制型の「逆お手盛り」実務が多く見られた。経営者が自らの報酬水準を独断で設定した日産には、多くの日本人が目を疑った。日本の統治改革の狙いは、過去の慣習を問題視し、株主・投資家視点で報酬制度の透明性の向上と「攻め」の統治に基づくインセンティブとして性格づけることにある。興味深いことに、経営者報酬を巡って日本と欧米は逆の方向にある。欧米では最近、高額報酬が企業の持続的発展に寄与しているとは限らないとの認識から、株主が経営者報酬の暴走を抑止する動きが見られる。背景には、経営者が目先の利益に走る「短期主義」への反省がある。日本の報酬水準が低位にある理由は他にもある。欧米企業が高額報酬を払うのは、選任の際に経営者としての過去の実績や人脈の豊富さなどを重視するからだ。日本は内部昇格が普通で、自社の事業経験はあるが、経営者としての実績は「未知数」状態で選任されるのが通例だ。人脈も限られる。経営トップに登りつめた人材は流動性が低く、経営者市場が育たなかった。こうした実情から一見、日本の役員報酬制度をあえて変革する必然的理由は見いだしにくい。ところが急速に進む日本企業のグローバル化がこうした現状に揺らぎを与え、変革を余儀なくしているのだ。海外M&A(合併・買収)などにより、外国籍の経営人材がグループ内に流入し、かつ買収先の経営陣には日本型とは異なる報酬制度を認めざるを得ない。また、競争戦略の面からも、海外の有能な経営人材を獲得しなければならない。報酬は、数値化し比較できる重要な指標だ。見直す際の基本的視点は、「序列処遇型」から未来志向の「インセンティブ制度」に変えていくことだ。確かに「報酬の多寡で働きが変わるものではない」と喝破する日本の経営者も多い。筆者もその美意識には共感するが、報酬を競争戦略の一環と捉える限り、インセンティブを高められない報酬制度は危機的だ。今後は、以下の点に留意しながら報酬制度を設計・運用すべきである。第1はプロセスの透明性と客観性の確保。この点はコーポレートガバナンス・コード(企業統治指針)でも強調されている。最低限、任意でも報酬委員会を設置すべきだ。委員会は社外取締役が過半(社外が委員長)を占めるのが肝要だ。日産の悲劇の発端は、最低限の要件を満たさなかったことにある。要は、役員報酬について堂々と透明性をもって議論すべきだ。客観性の担保として、外部の報酬データベースを使うのもよい。その際に散見されるのが「中央値傾斜症候群」だ。確かに報酬水準の突出を回避する点では意義があるが、そこには世間相場に引っ張られた標準化志向がうかがえる。重要なのは、競争環境を視野に入れ、自社のビジネスモデルや中期経営計画の積極性などを考慮して、柔軟に報酬制度を設計することだ。報酬と指名の委員会を連携させるのも一法だ。両委員会は役割が異なる。指名委員会は、選任・昇格・降格・解任という「ゼロ・イチ」の鋭角的性格をもつ。報酬委員会は、役員のパフォーマンスを評価して報酬を決定するという「連続的」な性格をもつ。評価結果が各役員への人事的なメッセージや警鐘となる。「組織内公平性」も忘れてはならない。余りに高い役員報酬は、従業員のやる気をそぐ恐れもある。それを防ぐのが報酬決定プロセスの透明性と客観性だ。従業員にプロセスを丁寧に説明すべきだ。第2は基本報酬と中・長期インセンティブ(LTI)の組み合わせだ。LTIは中長期の業績に連動した報酬のことで、統計によれば、米国は基本報酬1割、年次インセンティブ2割で、LTIが7割である。日本は5割が基本報酬、年次インセンティブ3割で、LTIは2割だ。昨今、日本でも中長期業績に連動した株式報酬制度を導入する企業が増えている。それでもLTIの導入割合は欧米がほぼ100%に対し、日本は半分にとどまる。企業価値について経営陣が株主と利害を共通化するには、業績に連動する株式報酬の比率を高めるべきだ。大事なのは、インセンティブの構成比を自社の哲学や文化、競争環境や戦略の時間軸を踏まえて統合的にデザインすることである。第3の点は、KPI(重要経営指標)だ。三井住友信託銀行によれば、日本では中長期業績連動報酬に用いるKPIは売上高など損益計算書の項目が多い。統治改革では資本生産性の向上を課題としており、そうしたKPIを入れる必要があろう。LTIの指標と中期経営計画で掲げるKPIとの間にかい離があると、投資家から「二枚舌」と捉えられかねない。定性評価の指標にも目配りすべきだ。「持続可能性」の観点からESG(環境・社会・企業統治)や国連の持続可能な開発目標に関わる指標の導入も検討すべきだろう。最後は説明責任の問題だ。欧米の報酬水準は高額だが、一方で詳細で厳しい開示規制がある。米では最高経営責任者(CEO)と最高財務責任者(CFO)に加え報酬額上位3人の個別開示と説明、英でも「取締役報酬報告書」の作成、毎年の事前と事後の開示が要求されている。それに比べ、日本の開示は見劣りがし、改革の余地が大きい。経営者報酬ガバナンスを実効性あるものにするには、開示を通して納得性と妥当性を高めることが鍵となる。経営者報酬制度は単に欧米に追従するのではなく、企業価値を中長期で高めるよう、持続可能性の観点から統合的に設計されるべきである。

<ルノー・日産の権力闘争という背景>
PS(2019年3月9日): *5-1のように、ゴーン氏はルノー・日産・三菱自動車の業務提携の立役者で、「①自身の逮捕は策略と反逆の結果だ」「②日産の一部幹部が日産と業務提携しているルノーとの経営統合を望んでいなかった」「③自分は、3社をより緊密に統合した後、持ち株会社の傘下でそれぞれの自主性を確保する計画だった」と語っている。そして、逮捕直後に日産と三菱の会長職を追われ、2019年に入ってからルノーの会長兼CEOも解任されているため、ゴーン氏逮捕事件の背景にはルノー・日産の権力闘争があったことが明らかだ。しかし、権力闘争に役員報酬の過少記載や会社資金の不正利用などという別件逮捕を使うのは人権侵害であるため、私は、Big4で監査・税務・コンサルティングのすべてを経験しながら多くの会社を見てきた専門家として、感性の良い経営者であるゴーン氏が無罪である理由を説明しているわけである。
 なお、ゴーン氏は、執行役員の半分(25人)を日本以外から採用し、成果給の比率を高めて外国人材を獲得してきたが、ゴーン氏の逮捕後は、*5-2・*5-3のように、ゴーン氏の信任が厚く国際業務で重責を担ってきた人事統括のバジャージュ専務執行役員や中国事業担当のムニョス氏が外され、ゴーン体制は崩されつつある。そして、この3月末の人事異動で、それも完了するということなのだろう。

*5-1:https://blogos.com/article/354799/ (BBCニュース 2019年1月31日) ゴーン前会長、逮捕は「策略と反逆」の結果と 日経新聞が逮捕後初インタビュー
 金融商品取引法違反などの罪で勾留されている日産自動車前会長のカルロス・ゴーン被告(64)は、自身の逮捕は「策略と反逆」による結果だと、30日付の日本経済新聞に語った。昨年11月の逮捕以来初めてとなるインタビューでゴーン前会長は、日産の一部の幹部が日産とアライアンスを組んでいるルノーとの経営統合を望んでいなかったと話した。経営統合の計画については、日産の西川広人社長兼最高経営責任者(CEO)と協議していたという。日本経済新聞の取材に応じたゴーン前会長は、現在も東京拘置所に勾留されている。取材は20分にわたり、拘置所内で行われた。ゴーン前会長はルノー・日産アライアンスの立役者で、2016年には三菱自動車もアライアンスに組み込んだ。しかし逮捕直後に日産と三菱の会長職を追われたほか、今年に入ってルノーの会長兼CEOからも解任されている。ゴーン前会長は、アライアンスの将来について三菱自の益子修CEOにも会話に加わってほしかったが、西川社長が「一対一での会話を求めてきた」と話した。ゴーン前会長の構想では、3社をより緊密に統合した後、「持ち株会社の傘下でそれぞれの自主性を確保する」計画だったという。その上で、自身の逮捕・起訴に日産幹部が関係していたことは「疑いようがない」と話した。ゴーン前会長は昨年11月19日、役員報酬の過少記載や会社資金の不正利用など「重大な不正行為」があったとして、金融商品取引法違反容疑で逮捕された。その後、別の時期の金融商品取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)容疑および会社法違反(特別背任)の疑いで2回再逮捕・起訴されている。今年1月8日に東京地裁で開かれた勾留理由開示手続きで、多田裕一裁判官は、前会長には国外逃亡と罪証隠滅を図る恐れがあったとして、勾留は正当なものだと認めた。一方、ゴーン前会長は無罪を主張している。

*5-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190109&ng=DGKKZO39789860Y9A100C1TJ1000 (日経新聞 2019年1月9日) 日産外国人幹部、また職務外れる 中国担当に続き人事も
 日産自動車で上級外国人幹部が職務から外れる例が続いている。人事を統括するアルン・バジャージュ専務執行役員が通常業務から外れたことが8日分かった。中国事業を担当するホセ・ムニョス氏も同様に業務から離れた。ともにカルロス・ゴーン元会長の信任が厚く、国際業務で重責を担ってきた。求心力だったゴーン元会長の逮捕を受け、同様の動きが続く可能性がある。バジャージュ氏はすでに通常業務を離れ、新たな担当業務なども決まっていない。同氏は弁護士として活動し、米フォード・モーターを経て、2003年に日産カナダ法人の弁護士として入社。08年に日産本体の人事部の担当部長に就き、アジアや海外人事の要職を担った。14年に人事統括の常務執行役員に昇格すると、ゴーン元会長の右腕として人事を差配。15年から仏ルノー・三菱自動車との3社連合でも人事担当役員の職に就いていた。チーフ・パフォーマンス・オフィサー(CPO)で中国事業を担ってきたムニョス氏も通常業務から外れたことが明らかになっている。新たな担当業務は非公表。同氏は北米など主要地域を統括し、18年4月から重点地域の中国戦略を一手に任されるなど、ゴーン元会長の信任が厚かった。日産は両氏が職務から離れた理由を明らかにしていない。ムニョス氏に関しては、統括していた北米事業は採算が悪化。中国でも足元の新車販売が減速し、同氏の責任を問う声もあった。日産はゴーン元会長のもとで国籍にとらわれない「ダイバーシティー経営」を推進し、18年には執行役員の半分にあたる25人を日本以外の出身者が占めた。ルノーからの派遣に加え、グローバル企業で実績を積んだ人材を多く幹部として迎え入れてきたのが特徴だ。日産は成果給の比率を高める欧米流の給与体系などの制度を整備し、海外でも知名度が高いゴーン元会長の存在も求心力となり外国人の人材を獲得してきた。海外事業や3社連合の統括業務では、元会長の信任を得て抜てきされた外国人役員が多い。元会長逮捕による社内の動揺は大きく、こうした動きが続く可能性がある。

*5-3:http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2019011201001248.html (東京新聞 2019年2月1日) 日産ゴーン前会長の側近が辞任 執行役員のムニョス氏
 日産自動車の前会長カルロス・ゴーン被告に近い存在とされてきたホセ・ムニョス執行役員が辞任したことが12日分かった。ムニョス氏は日産の重要市場である中国を受け持ってきたが担当を外れていた。ロイター通信は11日、日産がゴーン被告に関する内部調査の対象を米国、インド、南米にも拡大すると報じた。日産はムニョス氏が中国担当を外れたことについて「別の業務に専念するため」と説明してきたが、関係者は「ゴーン被告に忠実な人間なので現経営陣に警戒されている」と指摘していた。一方、内部調査はムニョス氏が米国事業を統括していた際に行った決定などが対象になるとしている。

<足元にある未来:再生可能エネルギーと電気自動車>
PS(2019年3月10、11、12、13日):原発事故で放射性物質に汚染された地域で生産された食品は、いくら「基準値越えした食品は0だから、風評被害だ」と叫んでみても、基準値が0ではないので生産・販売を続けることが難しいが、*6-1のような再生可能エネルギーなら全く問題ない。そのため、「飯舘電力」が太陽光発電・風力発電を行って送電したり、水素を作ったりするのは、どうせ街づくりをやり直さなければならない被災地にとって大変よく、せっかくなら宮城県以北の比較的安全な場所に、BMW・6-5のフォルクスワーゲン・ポルシェなどの電気自動車や炭素繊維工場などを集積し、東北大学と組んでさらに開発を進めてはどうかと思った。
 なお、*6-2のように、宮城県東松島市赤井地区に落雷があり、赤井地区全体は停電したが、東松島市が震災後に住宅メーカーと作った「スマート防災エコタウン」の住宅街の電気は消えず、約二百人の住民は誰も停電に気付かなかったそうだ。非常時は蓄電池だけでなく、ディーゼル発電機も自動で動くそうだが、私は、これがディーゼルではなく水素か国産の天然ガスであれば、電気は100%国産にできる上、地産地消も進むと考える。
 また、*6-3のように、北海道内の酪農地帯でも自家発電機の導入が相次いでいるそうだが、広い牧場や畑に風力発電設備を設置すれば、停電の心配がなく農家が農業と売電のハイブリッドで稼げるため、外国産に負けない農産品価格にすることもできる。さらに、北海道地震におけるブラックアウトは、再エネは大地震後も稼働していたのに電力需給の調整弁を果たす火力発電所の停止で活用できなかったのであるため、道内の足元の資源を生かして100%再エネ発電をすれば停電の心配がなく、エネルギー代金も外部に流出しないわけである。
 さらに、北海道だけでなく、農業地帯はどこも再生可能エネルギーが豊富なため、発電とのハイブリッドで稼げば日本産農産物の価格を外国産農産物に負けない価格にすることができる筈だ。そのため、*6-4のように、国民のツケで既得権益にしがみつく抵抗勢力に忖度して高コストの電源にしがみつくのではなく、世界の状況と時代の要請にあった政策に大転換すべきで、そうすれば国内に製造業を戻したり、無駄な財政支出を減らしたりすることができるが、このような大転換に乗り出す政治家が現れた時に、それを支持する国民が多くなければその人は政治家たりえないという意味で民主主義の主権者は国民であるため、国民の判断を支えるメディアの普段からの表現も重要なのである。


  岩手県の復興住宅   宮城県石巻市の災害公営住宅       北欧の住宅

(図の説明:大災害の後に新しい街づくりをして復興するのなら、全住宅に太陽光発電をつけて電気代を無料にし、電線を地中化し、デザインのよい家づくり・景観のよい街づくりをすればピンチをチャンスに変えられるが、前と同じかそれより悪い家に住むことになるのなら帰還する人は少ないだろう。その点、欧米の住宅や街づくりは参考にすべきものがある)

*6-1:https://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2019031002000136.html (東京新聞社説 2019年3月10日) 3・11から8年 再生の光、復権の風
 国は福島県を「再生可能エネルギー先駆けの地」と位置付ける。でも、忘れないでほしい。太陽や風の電気には、脱原発の願いがこめられていることを。福島県飯舘村は、福島第一原発の三十キロ圏外にもかかわらず、あの日の風向きの影響で放射性物質が降り注ぎ、全村避難を余儀なくされた。おととし三月、避難指示は解除されたが、事故以前、約六千人いた村民は、一割しか戻っていない。高原の美しい風景が、都会の人に愛された。「までい」という土地の言葉に象徴される村人の生き方も。「丁寧、心がこもる、つつましさ」という意味だ。原発事故は「までい」な暮らしを引き裂いた。
◆自信と尊厳を取り戻す
 二〇一四年九月に設立された「飯舘電力」は、「までい」再生の象徴だ。村民出資の地域電力会社である。設立の理念は、こうだ。<『産業の創造』『村民の自立と再生』『自信と尊厳を取り戻すこと』をめざして飯舘村のあるべき未来を自らの手により造り成すものとする->原発事故で不自然に傷つけられたふるさとの尊厳を、村に豊富な自然の力を借りて、取り戻そうというのである。現在、出力四九・五キロワットの低電圧太陽光発電所、計四十三基を保有する。年末には五十五基に増設する計画だ。当初は、採算性の高い千五百キロワットの大規模発電所(メガソーラー)を造ろうとした。ところが設立直後、東北電力送電網が一基五十キロワット以上の高圧電力の受け入れを制限することにしたために、方針を転換せざるを得なかった。三年目には、風力発電所を建設しようと考えた。やはり東北電力に「接続には送電網の増強が必要で、それには二十億円の“受益者負担”が発生する」と言われ、断念したという。「風車が回る風景を、地域再生のシンボルにしたかった…」。飯舘電力創設者の一人で取締役の千葉訓道さんは、悔しがる。送電網が“壁”なのだ。送電線を保有する電力大手は、原発の再稼働や、建設中の原発の新規稼働も前提に、太陽光や風力など再生可能エネルギーの接続可能量を決めている。原発がいつ再稼働してもいいように、再エネの受け入れを絞り込み、場所を空けて待っている。「送電線は行列のできるガラガラのソバ屋さん」(安田陽・京都大特任教授)と言われるゆえんである。
◆原発いまだ特別待遇
 発電量が多すぎて送電網がパンクしそうになった時にも、国の定めた給電ルールでは、原発は最後に出力を制限される。あれから八年。原発はいまだ特別待遇なのである。電力自由化の流れの中で、二〇年、電力会社の発電部門と送配電部門が別会社に分けられる。しかし今のままでは一六年にひと足早く分離した東京電力がそうしたように、形式的に分かれただけで、同じ持ち株会社に両者がぶら下がり、「送電支配」を続けるだろう。大手による送電支配がある限り、再エネは伸び悩む。先月初め、「東京電力ホールディングス」が出資する「福島送電合同会社」が、経済産業省から送電事業の許可を受けた。「先駆けの地」の先行例として、福島県内でつくった再生エネの電力を、東電が分社化した子会社の「東京電力パワーグリッド」の送電線で、首都圏へ送り込む計画だ。大手による実質的な送電支配は変わっていない。「発電事業にも大企業の資本が入っており、私たちには、何のメリットもありません」と、千葉さんは突き放す。福島県の復興計画は「原子力に依存しない、持続的に発展可能な社会づくり」をうたっている。千葉さんは、しみじみ言った。「私たちがお日さまや風の力を借りて、こつこつ発電を続けていけば、いつかきっと原発のいらない社会ができるはず-」
◆再エネ優先の送電網を
 最悪の公害に引き裂かれたミナマタが、日本の「環境首都」をめざして再生を果たしたように、脱原発依存は、最悪の事故に見舞われたフクシマ再生の基本であり、風力や太陽光発電は、文字通り再生のシンボル、そして原動力、すなわちエネルギーではないのだろうか。脱原発こそ、福島復興や飯舘復権の原点なのだ。原発優先の国の姿勢は、福島再生と矛盾する。例えば飯舘電力などに、地域再生の活力を思う存分注ぎ込んでもらうべく、再エネ最優先の電力網を全国に張り巡らせる-。今「先駆け」として、やるべきことだ。

*6-2:https://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2019031190070628.html (東京新聞 2019年3月11日) <原発のない国へ すぐそばの未来>(1)停電3日 耐える街 宮城・東松島 電気を地産地消
 太平洋の海岸線から北に三キロ、宮城県東松島市を横断するJR仙石(せんせき)線の線路沿いに、平屋や二階建ての住宅八十五戸が並ぶ。この住宅街を含む赤井地区に落雷があったのは、二〇一七年七月二十五日の午前一時すぎのことだった。停電し、地区は一時間半にわたり真っ暗に。だが、この街の電気は消えず、約二百人の住民は誰も停電に気付かなかった。地元自治会副会長の相沢正勝さん(68)は「二、三日後になって、初めて知ったよ」。八年前、相沢さんは大津波で壊滅的被害を受けた海沿いの大曲(おおまがり)地区に住んでいた。自宅は流され、五人の家族や親戚を失った。停電が長引き、避難先の姉の家では、庭で火をおこして米を炊き、ドラム缶を風呂にした。記憶は鮮明に残っている。「あんな災害は二度と起こってほしくない。でも、ここでは万が一の電気の心配だけはないんだ」。この住宅街は災害などで外部からの電力供給が途絶えても、三日間は自前で電気を賄える。東松島市が震災後、住宅メーカーの積水ハウスと共に水田に開発した復興住宅で「スマート防災エコタウン」と呼ばれる。日本初の取り組みだ。街の真ん中には、太陽光発電の黒いパネル。夏なら昼間の電力需要を100%満たせる。足りない分は、電力事業を担う「東松島みらいとし機構」が東北電力の送電網を通じて市内の別の太陽光発電所から買ったり、太陽光で充電した大型蓄電池を活用したりして補う。機構の常務理事、渥美裕介さん(34)は「街の全需要の半分近くを、地元の再生可能エネルギーで満たしている」と説明した。非常時は蓄電池だけでなく、ディーゼル発電機が自動で動く。渥美さんは「二年前の停電の時、発電機が動きだして黒煙を上げたので、火事と勘違いした人もいました」と明かした。街の中の電線は自営で、東北電の送電網から独立。住宅だけでなく、近くにある仙石病院など四つの医療機関と県の運転免許センターにつながり、普段から電気を供給している。これらの施設は災害時には避難所となる。停電が四日以上となれば、街の非常用電源から最優先で電気の供給を続ける。仙石病院では八年前、長期化した停電で腎不全患者の人工透析が続けられなくなったが、これで助かる命が増えた。街の整備には約五億円の税金が投じられた。四分の三は環境省の補助金が充てられ、残りを市が負担。みらいとし機構は街の外の公共施設や漁協、農協に電気を売って利益を得ており、市が負担した一億二千五百万円を十五年ほどで回収できる見込みだという。再生エネの電気を地産地消しながら防災に生かす試みは、東京都武蔵野市など全国四十カ所以上で進む。震災の苦い経験が、その挑戦を後押ししている。
 ◇ 
 東日本大震災と東京電力福島第一原発事故から八年。原発のない国をどう実現するか。先進的な取り組みから、未来を展望する。

*6-3:https://www.agrinews.co.jp/p46981.html (日本農業新聞論説 2019年3月9日) 大地震と電力 鍵を握る再エネの活用
 北海道地震から半年が過ぎた。国内初の全域停電(ブラックアウト)の教訓から、道内の酪農地帯では自家発電機の導入が相次ぐ。ただ、自家発電は自衛手段の一つ。停電が長引けば燃料確保の問題も出てくる。災害が多発する今こそ、再生可能エネルギー(再エネ)を活用した地域分散型の電力供給システムを導入すべきだ。別海町の30代の酪農家はブラックアウトの衝撃をこう振り返った。「数分で復旧するだろうと思っていたが、朝の搾乳が夕方にずれ込んだ。牛の乳房は風船のように膨らみ噴水のように生乳が噴き出した」。乳房が張り、牛が鳴き叫ぶ声が耳に残っているという。この酪農家は、知人から大型発電機を借り、停電時も搾乳ができた。近隣の酪農家2戸と交代で使い、電気が復旧した翌日の9月7日夜遅くまで牛の命を支えた。現在は万一に備えて自家発電機を配備したという。乳業メーカーも電力確保に動きだした。よつ葉乳業は既に3工場で自家発電機を導入。他の大手メーカーでも配備に向けた検討や調査を進めている。よつば乳業の有田真社長は本紙インタビューで「非常時でも余裕があれば、他メーカーが集乳した分の処理を手伝う」と述べた。災害時の市民生活に欠かせない小売店の営業継続に向けた動きも出てきた。北海道の日産自動車の販売会社7社と、道内で1000店超のコンビニエンスストアを運営する札幌市のセコマが、電気自動車(EV)を電源に活用し、営業を続ける体制の確立へ協定を結んだ。試乗車として配備するEVをコンビニに派遣し、バッテリーの電力を供給する。今後、モデル店舗を札幌市に設ける予定で、20時間程度の給電が可能という。問われるのは、ブラックアウトを二度と起こさないための電力供給網の整備だ。北海道電力は先月末、燃料に液化天然ガス(LNG)を使う石狩湾新港発電所の営業運転を始めた。大規模停電の発端となった苫東厚真石炭火力発電所を補い、電力の安定供給を目指すためだ。それでも「集中型電力システム」の仕組みは変わらない。ブラックアウトは、電気の需給バランスが乱れたことが原因。再エネは地震後も稼働していたが、電力需給の調整弁を果たす同発電所の停止で、活用できなかったことを教訓にすべきだ。酪農や畜産から出るふん尿、林業から出る木質バイオマス、地形や気象条件を生かした風力。道内には足元の資源を生かした再エネ発電施設がある。太陽光、風力を合わせて地震前日の最大需要の4割に相当する160万キロワットの発電容量を持つ。石炭火力、LNGともに化石燃料の採掘は永遠には続かない。燃焼に伴い、地球温暖化につながる二酸化炭素(CO2)の排出も増える。今こそ環境に負荷をかけない持続可能な「地域分散型」の電力供給システムを検討すべきである。

*6-4:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/348131 (佐賀新聞 2019年3月12日) 原発とエネルギー政策、世界の現実に目を向けよ
 東京電力福島第1原発事故から8年間、世界のエネルギー情勢は大きく変わった。高コスト化が目立つ原発が低迷する一方で、再生可能エネルギーが急成長し、地球温暖化対策として脱化石燃料、特に石炭火力廃止の動きが広がった。だが、日本では、世界で進む大転換から懸け離れ、旧態依然としたエネルギー政策が続いている。このままでは、エネルギーに関するリスクが高まり、日本の産業の国際競争力が大きく損なわれることになる。政策決定者は一刻も早く現在の過ちを改め、世界の状況と時代の要請に即した政策の大転換に向けかじを切るべきだ。高コスト化が目立つ原発は事故前から停滞していたのだが、福島事故後の安全対策費用の高騰がこれを加速し、競争力を失った。東芝の子会社だったウェスチングハウス・エレクトリックは経営破綻、フランスの原発大手アレバも事実上、破綻した。トルコ、英国などで国策として進めた日本の原発輸出案件もすべて頓挫した。2015年には、「脱炭素社会」実現を掲げるパリ協定が採択された。英国、フランスなどが相次いで石炭火力の廃止を決め、石炭への依存度が高かったドイツでさえ、最近になって38年までに石炭火力発電を全廃する方向を打ち出した。一方で、世界の電力供給に占める水力を含む再生可能エネルギーの比率は17年には26・5%にまで増え、多くの国で最も低価格な電源とされるまでになった。消費電力の100%を再生可能エネで賄うとの目標を掲げる国も増えている。こんな中、日本の状況を見ると、暗い気持ちにならざるを得ない。日本でも原発事故後、太陽光発電が急成長し、国も再生可能エネルギーの主流化を打ち出した。だが、30年度の発電比率の目標は22~24%と、現在の世界平均より低い。発電と送電の分離が進まず、大電力会社が送電網を支配する状況が続いているのも、国際的には異例だ。逆に高すぎて、多くの専門家が実現の可能性が低いとするのが20~22%という原発の目標だ。電力会社は多大な労力とコストを投じて原発の再稼働を進めているが、17年の比率は3%弱だ。石炭火力の目標が26%と高いこともあって、日本は石炭火力の新設を進める数少ない国の一つになっている。20、21年にかけて建設中の100キロワット級の大型を含む10基近くが運転開始する予定だ。石炭重視の日本の政策には、外国政府からも厳しい批判が出ている。重厚長大、大規模集中型の発電技術にこだわり、「革命」とも称される再生可能エネルギーの拡大で後れを取り、脱炭素社会づくりに向けた国際競争でも劣後するとなれば、国際社会での日本の発言力は低下し、日本の産業界は多くのビジネスチャンスを失うだろう。再生可能エネルギー拡大のために政治家や官僚が口にするのは、水素や二酸化炭素の固定など画期的な技術開発の必要性だ。だが、適切な政策が社会の変革を促せば、既存の技術で原発も温暖化もない社会の実現が可能であることを、過去8年間の世界の経験は示した。日本にないのは新技術ではない。欠けているのは、既得権益にしがみつく勢力の抵抗を排して大転換に乗り出す政治家の勇気と確固たる意志である。

*6-5:http://qbiz.jp/article/150190/1/ (西日本新聞 2019年3月13日) VW、EV生産2200万台に 今後10年で、重視姿勢鮮明
 ドイツ自動車大手フォルクスワーゲン(VW)は12日、今後10年間の電気自動車(EV)の生産台数を2200万台にするとの計画を公表した。2028年までに計約70車種のEVを売り出す。従来より野心的な方針を示し、電動車重視の姿勢を鮮明にした。VW本社があるドイツ北部ウォルフスブルクで記者会見したディース最高経営責任者(CEO)は「予見可能な将来においては、道路交通分野で二酸化炭素を削減するために、EVが最良で一番効率的な方法だろう」と強調した。VWはこれまでEV約50車種を25年までに投入するとの計画を示していた。22年までに欧州と北米、中国の計18工場でEV生産を始める。ディースCEOはEVの推進で生産の省力化が進み、人員削減の必要性が生じるとも指摘した。ドイツ紙は、VWが今後数年間でドイツの2工場の従業員約7千人を削減する計画だと報じている。中国政府が外資規制の緩和方針を示したことで可能になる合弁企業への過半出資に関しては、19年中にも結論を出す考えであることを明らかにした。

<日本の司法の問題点>
PS(2019年3月13日): *7-1のように、東京地検特捜部がこれまでの逮捕容疑をすべて起訴したそうだが、有価証券報告書への役員報酬の過少記載が金融商品取引法違反に当たらない可能性が高くなると、「とことんやるしかない(検察幹部)」「何とか事件に結び付ける」として特別背任に問える疑いがないか捜査するのは、“司法の信頼を保つ”以外には何のメリットもなく、*7-2-5の松橋事件のように、司法の名誉のために無罪の人の人生を奪うことに繋がるため厳に慎むべきだ。そして、「俺が黒と言ったら白でも黒になる」という思い上がりは、日本の司法が冤罪を生む原因となっているが、いくつもの整合的な物証のない自白だけでは証拠にならないというのが、監査では基本中の基本である。
 また、*7-2-1のように、「ゴーン氏は会社を私物化した悪者」という筋書きで話が進められているが、個人企業ではあるまいし上場企業でそのようなことはできないので、検察は経済事案に疎いと考える。さらに、日産と三菱が作った統括会社からゴーン氏が報酬約10億円を受け取っていたとしても、それが日産の有価証券報告書に開示されないのは当然であるとともに、特定目的会社のように連結対象でない会社も日産の有価証券報告書に記載されない。そして、「日産がゴーン氏の姉とアドバイザリー契約を結んで毎年10万ドル(約千百三十万円)前後を支出していたのは実態がない」と決めつけるのは、日本独特のキャリアに関する女性蔑視である。なお、娘が通う大学への寄付金を日産の名前で支払ったり、*7-2-3のように、ルノーがベルサイユ宮殿と文化芸術を支援する「メセナ」契約を結んで宮殿の改修費用の一部を負担する代わりに城館を借りられるようにし、ルノーの会長だったゴーン氏がベルサイユ宮殿で結婚披露宴を無料で開催したというのも、寄付を尊ぶ文化の中では日産やルノーの名声と知名度を高める方向に働くため、ゴーン氏は家族を挙げて日産車のマーケティングに尽くしていたとも考えられ、私的流用と決めつけて批判ばかりしているのはむしろ変である。
 さらに、*7-2-2のように、ゴーン氏がオマーンの日産販売代理店オーナーから私的に3千万ドル(現在のレートで約33億円)を借り入れ、この後に日産子会社から代理店に計約3500万ドル(同約38億円)送金させていたのも、CEOリザーブから「販売促進費」として支出されており、CEOリザーブの支出について従業員の要請はいらない上、従業員がすべての必要性を把握しているわけでもない。また、損失の付け替えについては、*7-2-4のように、郷原弁護士も取引の決済期限が来て損益が確定するまで損失は「評価損」に留まり、損失を発生させることなくゴーン氏に契約上の権利が戻っているので罪に問えないとされており、私と同意見だ。

*7-1:https://digital.asahi.com/articles/ASM1C5782M1CUTIL02R.html?iref=pc_rellink (朝日新聞 2019年1月12日)「とことんやるしかない」対ゴーン氏、目算狂った特捜は
 日産自動車の前会長カルロス・ゴーン容疑者(64)をめぐる一連の捜査は11日、東京地検特捜部がこれまでの逮捕容疑をすべて起訴した。世界的な経営者に対して、前例のない容疑での着手で始まった54日間の捜査は、異例の展開をたどった。「ゴーン氏という世界的に有名な方に対する強制捜査。様々な反響があるとは考えていた」。東京地検の久木元(くきもと)伸・次席検事は11日の定例会見で、捜査に対して海外から寄せられた疑問の声についてこう答えた。特捜部が逮捕に踏み切ったのは昨年11月19日。ゴーン前会長と前代表取締役グレッグ・ケリー容疑者(62)が、2010~14年度の前会長の役員報酬を有価証券報告書に過少記載したという金融商品取引法違反容疑だった。報酬の過少記載を問うのは初めてだ。前例のない捜査が本格化した。毎年の報酬は約20億円だったが、開示するのは約10億円だけにし、差額の約10億円は顧問料など別の名目に偽装し、退任後に受け取る――。特捜部が描く「報酬隠し」はこうした仕組みだ。この「退任後支払い」の報酬が確定しており、記載義務があったかどうかが争点となった。ゴーン前会長は「退任後の報酬支払いは確定していない」と容疑を否認。ケリー前代表取締役も「役員報酬とは関係ない」と主張した。未受領の報酬の事件化には「形式犯」の批判もあり、専門家でも意見が割れる。ただ検察幹部らは「役員報酬の開示はガバナンス(企業統治)にゆがみがないかを投資家が判断するうえで重要だ」と強調する。2人の勾留期限となる12月10日、特捜部は5年分の虚偽記載の罪で起訴。15~17年度の3年分の容疑で再逮捕した。8年分の容疑を2回に分けて捜査を続ける想定通りの展開だった。このころ特捜部では、虚偽記載の解明を進める検事と別の検事たちが、前会長を特別背任に問える疑いがないか捜査していた。だが検察としてはあくまで「虚偽記載につながる予備的な主張」との位置づけ。ある幹部は「立件できるものがあればやればいい」と語り、別の幹部は「日産ほどの規模の会社で数十億円程度の損害を与えた話より、投資家を欺いた虚偽記載の方が重要だ」と話していた。検察は虚偽記載事件を「本丸」とし、捜査を進める構えだった。目算が狂ったのは再逮捕から10日後の12月20日。東京地裁が検察側の勾留延長請求を却下した。特捜部が担当する事件で勾留延長が却下されるのは極めて異例だ。地裁は5日後、否認したままのケリー前代表取締役を保釈。異例の早期保釈だった。ゴーン前会長の早期保釈の観測も広がる中、特捜部が再逮捕に踏み切ったのは、前会長の私的取引の評価損をめぐる行為だった。約18億5千万円の評価損が生じた契約を日産に付け替えた容疑と、信用保証に協力したサウジアラビアの実業家ハリド・ジュファリ氏に計約13億円を不正送金した容疑の二つだ。「もうとことんやるしかない」(検察幹部)。徹底抗戦の構えの前会長は1月8日、勾留理由の開示手続きに出廷。付け替えについて「日産に金銭的な損失を負わせない限りで、一時的に担保を提供してもらっただけ。一切損害を与えていない」と反論した。送金も「ジュファリ氏は日産に対して重要な業務を推進してくれた。関係部署の承認に基づき、相応の対価を支払った」と訴えた。特捜部はジュファリ氏の取り調べをしていない。元特捜部長であるゴーン前会長の弁護人、大鶴基成弁護士はこう古巣に疑問を呈した。「特別背任で、金の支払われた先から話を聞かずに逮捕するのは異例だ」
●「私物化」捜査は継続 4回目の逮捕は
 今後、新たな容疑での再逮捕はあるのか。特捜部はゴーン前会長による「会社の私物化」を疑わせる膨大な証拠をつかんでおり、捜査は継続するとみられる。
一連の捜査で特捜部が注目した資金の一つは、CEO(最高経営責任者)直轄の「CEOリザーブ(予備費)」だった。関係者によると、この資金から、特別背任事件でサウジアラビアの実業家へ支払った約13億円以外にも、オマーンとレバノンの販売代理店に計50億円超が支出されるなどしていた。代理店幹部は前会長の知人で、前会長に「還流」したように見える資金の流れもあるという。ただ検察幹部は「簡単にはひも付けられない。CEOリザーブが全て不正とは言えない」と慎重に見極める構えだ。またゴーン前会長は未払いの役員報酬を退任後に受け取る方法として、日産、ルノー、三菱自動車の統括会社(オランダ)や、ベンチャー投資名目で設立された子会社「ジーア」(同)からの支出を検討していた。ジーアなどが絡む資金は、租税回避地(タックスヘイブン)や実態のないペーパーカンパニーを経由しており、解明は容易ではない。特捜部は、中東各国に捜査共助を要請して協力を求めており、その回答待ちだ。日産関係者の聴取もまだ続いている。今後は、起訴された罪について弁護側への証拠開示も進む。ただ資料の英訳などが必要で、初公判までに半年~1年ほどかかるとみられている。特捜部は、初公判の冒頭陳述で描く「犯行に至る経緯」を分厚くする捜査を続けながら、別途事件化できる容疑が煮詰まれば、4回目の逮捕も排除しないとみられる。現時点では、再逮捕をにおわす検察幹部がいる一方、「すぐに事件にできる材料はない」と語る幹部もおり、見通しは不透明だ。
●広がる疑惑 「ゴーン後」へ日産混迷
 日産が特捜部に社内調査の結果を報告し、幹部が司法取引に応じた結果、経営トップらの逮捕に至った事件は、ゴーン前会長の追起訴で一区切りを迎えた。だが、日産社内の混迷は、3社連合を組む仏ルノーや三菱自動車を巻き込んで、むしろ深まりつつある。ゴーン前会長が羽田空港で身柄を確保された昨年11月19日の夜、西川(さいかわ)広人社長兼CEO(最高経営責任者)は前会長の不正行為として①役員報酬の過少記載②投資資金の不正支出③経費の不正支出――の三つを挙げた。①は特捜部による立件に至ったものの、三菱自とつくる統括会社から前会長が非開示の報酬約10億円を受け取っていたことが追加の社内調査で判明。3社連合を統治する別の統括会社から仏ルノー副社長に不透明な報酬が支払われた疑いも浮上するなど、起訴内容とは異なる不正が相次いで明るみに出ている。ゴーン前会長が私的な投資で生じた損失を日産に付け替えたなどとして起訴された特別背任事件は、社内調査が端緒ではなく、検察独自の捜査によるものだった。オランダの子会社を通じた高級住宅の購入、業務実態がない前会長の姉に対する経費の不正支出など、②③に関する疑惑も次々と発覚し、混迷が収束する兆しは見えない。裏を返せば、長年にわたる前会長の「暴走」を止められなかった深刻なガバナンス(企業統治)の不全が次々と露呈しているともいえる。西川氏ら経営陣の責任は重い。日産は先月、社外の弁護士らでつくる「ガバナンス改善特別委員会」を新設することを決めた。3月末までに抜本的な統治体制の改善策の提言を受ける予定だが、20年近く君臨した前会長に重用された「イエスマン」が多く、企業風土を刷新できるかは不透明だ。日産、三菱自と異なり、会長職の解任を見送っているルノーや、「推定無罪」の原則を主張してルノーの判断を支持する仏政府との足並みも乱れたままだ。「ゴーン後」の統治体制もなかなか定まらない。
●元検事の落合洋司弁護士の話
 日産の資金が支出されたサウジアラビアの実業家への聴取なしで違法性を裏付けられるかが焦点になる。通常は、資金の趣旨を裏付ける上で、支出先の聴取は欠かせない。公判で検察の想定しない説明がなされる可能性もあり、有罪となるかは予断を許さない。今回の捜査を通じては、経営者の暴走を、企業内部でどう解決するのかという課題も浮き彫りになった。
●元刑事裁判官の木谷明弁護士の話
 日本でこれまで当たり前だと思われてきた刑事司法が、「外圧」で変わろうとしている。従来は、否認しているうちは保釈しないという「人質司法」が当然だった。ケリー前代表取締役も従来なら、保釈されていなかったはずだ。前例ができた以上、裁判所は今後、外国人だけを特別扱いするのではなく、運用自体を変える必要に迫られるだろう。

*7-2-1:https://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201812/CK2018120202000136.html (東京新聞 2018年12月2日) 「会社私物化」疑惑続々 ゴーン容疑者
 日産自動車の前会長カルロス・ゴーン容疑者(64)を巡っては、有価証券報告書に自分の報酬を約五十億円少なく記載したとする逮捕容疑とは別に、海外社宅の無償利用や経費の私的利用などの問題も次々と持ち上がっている。カリスマ経営者として二十年近くトップに君臨する中、会社を「私物化」していた実態が浮き彫りになってきた。「『コストカッター』としてあれほど人員や経費を削ってきたのに、自分だけ私腹を肥やしていたのか…。驚いたというより、あきれたね」。ある検察幹部がこう苦笑するほど、ゴーン容疑者の会社私物化疑惑は底が知れない。その象徴的な舞台がオランダ・アムステルダムにある日産の子会社「ジーア」。日産が約六十億円出資し、二〇一〇年に投資会社として設立された。関係者によると、ジーアはタックスヘイブン(租税回避地)などの会社に約二十億円を投じ、ゴーン容疑者が出生したブラジルのリオデジャネイロ、幼少期から高校まで過ごしたレバノンのベイルートに高級住宅を相次いで購入。ゴーン容疑者が私的に無償で使っていたという。また、パリやアムステルダムにも別の会社を通じて住宅を用意し、ゴーン容疑者が私的に利用していたにもかかわらず、賃料の一部を負担していたとされる。ゴーン容疑者は逮捕後、海外住宅の私的利用疑惑について、周囲に「仕事で世界中を飛び回るので、拠点として使っていた」と正当性を主張しているという。ゴーン容疑者の指示でジーアに深く関与したとされるのが、側近の前代表取締役グレゴリー・ケリー容疑者(62)だ。ゴーン容疑者の意向をごく限られた部下に伝え、契約などの実務を担わせていたとされる。関係者によると、日産は一二~一四年、監査法人から「ジーアは設立趣旨に沿った投資活動がされていないのではないか」などの指摘を複数回受けた。しかし日産側は「ゴーン氏が戦略的投資をするための会社で問題ない」と回答。私的利用疑惑は見過ごされた。ゴーン容疑者の指示を受けたケリー容疑者が、会社の資金をゴーン容疑者個人のために使う-。こういった疑惑は、ほかにも複数持ち上がっている。ジーアを通じて購入したリオの家では、実はゴーン容疑者の姉が暮らしていた。さらに日産は姉とアドバイザリー契約を結び、毎年十万ドル(約千百三十万円)前後を支出。だが、アドバイザー業務の実態はなかったとされる。このほか家族の海外旅行費数千万円、娘が通う大学への寄付金…。日産のプライベートジェット機で、会社の拠点がないレバノンにも渡航していた。ある日産関係者は「プライベートで誰かと食事をするときも、会社のカードで支払っていた。自分に関わるものは会社に支払わせるのが当然だと思っていたのか。誰も彼に意見できない中で、公私混同が進んでいったのだろう」と話した。

*7-2-2:https://digital.asahi.com/articles/DA3S13853476.html (朝日新聞 2019年1月18日) 日産資金で借金返済か ゴーン前会長、38億円送金 オマーンの友人側に
 日産自動車の前会長カルロス・ゴーン被告(64)が2009年1月にオマーンの日産販売代理店のオーナーから私的に3千万ドル(現在のレートで約33億円)を借り入れ、この後に日産子会社から代理店に計約3500万ドル(同約38億円)を送金させていたことが、関係者への取材でわかった。東京地検特捜部が、この資金の流れに焦点をあてて捜査していることも判明。貸借契約書を押収し、日産の資金を借金の返済に充てた可能性もあるとみて調べている。関係者によると、ゴーン前会長はオマーンの日産販売代理店のオーナーと長年の友人で、09年1月20日付で、個人的に3千万ドルを借りる貸借契約書を交わした。その後、子会社の「中東日産」(アラブ首長国連邦)に指示し、複数年にわたってこの販売代理店に500万ドル前後ずつを送金させ、総額は約3500万ドルに上った。原資はCEO(最高経営責任者)直轄の「CEOリザーブ(予備費)」で、「販売促進費」名目で支出された。CEOリザーブからの支出について、日産関係者は「現場は要請していない」と証言し、必要性を否定しているという。一方、ゴーン前会長はオマーンを含む中東各国の代理店への支出について「奨励金であり、問題ない」と反論。借金返済という自らの利益を図るため、業務とまったく無関係な支出をして会社に損害を与えたと立証されれば会社法違反(特別背任)に問われるが、ハードルは高い。特捜部は関係者の聴取や、日産を通じた現地での証拠集めを続け、立件の可否を慎重に検討するとみられる。ゴーン前会長は既に起訴されている特別背任事件で、リーマン・ショックの後の08年10月、約18億5千万円の評価損が生じた私的な投資契約を日産に付け替えたとされる。さらに、この契約を自分に戻す際に約30億円の信用保証に協力したサウジアラビアの実業家の会社に09~12年、中東日産からCEOリザーブで計1470万ドル(当時のレートで約13億円)を不正送金したとされる。オマーンの販売代理店オーナーからの借金は、サウジの実業家からの信用保証と同時期にあたり、特捜部は当時の前会長の資金繰りを調べているとみられる。
■準抗告を棄却
 前会長の弁護人は17日、保釈請求の却下を不服として準抗告したが、東京地裁は同日、これを棄却した。

*7-2-3:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190313&ng=DGKKZO42345310S9A310C1EA2000 (日経新聞 2019年3月13日) 仏検察もゴーン元会長捜査、国際世論に影響も
 日産自動車元会長、カルロス・ゴーン被告(65)を巡る捜査が海外にも広がりつつある。ベルサイユ宮殿で開いた結婚披露宴を巡り、ルノーの資金を不正に使用した疑惑に関して、フランス検察当局が11日、初期段階にあたる「予備捜査」を開始したことが判明。東京地検特捜部も中東ルートへの捜査を継続している。日本に続き、フランスも捜査に着手したことは国際世論に影響を与える可能性もある。ルノーなどによると、2016年10月、ベルサイユ宮殿内の大トリアノン宮殿で妻キャロルさんとの結婚披露宴を開催した。検察当局は、宮殿使用料に当たる5万ユーロ(約625万円)が、「個人的な利益」だった疑いがあるとみていると、フランスメディアが一斉に報じた。フランスでは経済事件の疑いが生じた場合、検察がまず「予備捜査」を行う。ナンテール検事局が予備捜査を始めた今回もこのケース。事件の複雑さにもよるが、年単位で行われることもあり、重大事件と判断されれば裁判官による「予審」の捜査手続きに移行する。起訴するか不起訴にするかを決めるのが予審判事だ。フランスの経済事件の場合、在宅捜査が主流だが、予審が始まれば本格的に容疑者扱いとなるため、打撃は大きい。南山大学の末道康之教授(フランス刑法)は「予審が開始される可能性がある」と話す。一方、ゴーン元会長は12日、弁護団会議に参加。弁護人によると、ゴーン元会長は記者会見について「やる以上は、自分でどういうことを言うか決めてから出たい」とし、発言内容の精査に時間が必要との考えを示したという。記者会見は来週以降になる見通し。現時点で、4月8日の日産の臨時株主総会に参加しない方針も説明したという。

*7-2-4:https://news.yahoo.co.jp/byline/goharanobuo/20181224-00108835/ (Yahoo2018/12/24)ゴーン氏「特別背任」での司法取引に関する “重大な疑問”(郷原信郎)
 日産自動車の前会長のカルロス・ゴーン氏が12月21日に特別背任で再逮捕されたが、その後の報道によれば、その逮捕容疑の概要は、以下のようなもののようである。[ゴーン氏は、10年前の2008年、リーマンショックの影響でみずからの資産管理会社が銀行と契約して行った金融派生商品への投資で18億5000万円の含み損を出したため、新生銀行から担保の追加を求められ、投資の権利を日産に移し損失を付け替えた。その付け替えが日産の取締役会の承認を経ておらず違法ではないかということが証券取引等監視委員会の新生銀行の検査の際に問題にされ、結局、この権利は、ゴーン氏の資産管理会社に戻された。その権利を戻す際に、サウジアラビア人の知人の会社が、担保不足を補うための信用保証に協力した。平成21年から24年にかけて、日産の子会社から1470万ドル(日本円でおよそ16億円)が送金された。]このうち、損失を付け替えたことが第1の特別背任、サウジの知人に送金したことが第2の特別背任だというのが検察の主張のようだ。しかし、報道によって明らかになった事実を総合すれば、二つの事実について特別背任罪で起訴しても、有罪判決を得ることは極めて困難だと考えられる。検察は、ここでも日産秘書室長との司法取引を使おうと考えているのかもしれないが、そうなると、「日本版司法取引」の制度自体の重大な問題が顕在化することになる。第1については、新生銀行側が担保不足への対応を求めたのに対して、ゴーン氏側が、「日産への一時的な付け替え」で対応することを提案し、新生銀行がこれに応じたが、証券取引等監視委員会による銀行への検査で、新生銀行が違法の疑いを指摘されて、新生銀行側が日産に対して再度対応を求め、それが日産社内でも問題となり、結局、短期間で「付け替え」は解消され、日産側には損失は発生していないようだ。それを、「会社に財産上の損害を発生させた」特別背任罪ととらえるのは無理がある。確かに、その時点で計算上損失となっている取引を日産に付け替えたのだとすれば、その時点だけを見れば、「損失」と言えなくもない。しかし、少なくとも、その取引の決済期限が来て、損益が確定するまでは、損失は「評価損」にとどまり、現実には発生しない。不正融資の背任事件の場合、融資した段階で「財産上の損失」があったとされるが、それは、その時点で資金の移動があるからであり「評価損」の問題とは異なる。ゴーン氏側が、「計算上損失となった取引を、一時的に、日産名義で預かってもらっていただけで、決済期限までに円高が反転して損失は解消されなければ、自己名義に移すつもりだった」と弁解した場合、実際に、損失を発生させることなくゴーン氏側に契約上の権利が戻っている以上、「損害を発生させる認識」を立証することも困難だ。第2については、サウジアラビア人の会社への支出は、当時CEOだったゴーン氏の裁量で支出できる「CEO(最高経営責任者)リザーブ(積立金)」から行われたもので、ゴーン氏は、その目的について、「投資に関する王族へのロビー活動や、現地の有力販売店との長期にわたるトラブル解決などで全般的に日産のために尽力してくれたことへの報酬だった」と供述しているとのことだ。実際に、そのような「ロビー活動」や「トラブル解決」などが行われたのかどうかを、サウジアラビア人側の証言で明らかにしなければ、その支出がゴーン氏の任務に反したものであることの立証は困難であり(「販促費」の名目で支出されていたということだが、ゴーン氏の裁量で支出できたのであれば、名目は問題にはならない)、そのサウジアラビア人の証言が得られる目途が立たない限り、特別背任は立件できないとの判断が常識的であろう。検察は、サウジアラビア人の聴取を行える目途が立たないことから、特別背任の立件は困難と判断していたと考えられる。サウジアラビア人の証言に代えて、検察との司法取引に応じている秘書室長が、「支出の目的は、信用保証をしてくれたことの見返りであり、正当な支出ではなかった」と供述していることで、ゴーン氏の弁解を排斥できると判断して、特別背任での再逮捕に踏み切ったのかもしれない。しかし、そこには、「司法取引供述の虚偽供述の疑い」という重大な問題がある。この秘書室長は、ゴーン氏の「退任後の報酬の支払」に関する覚書の作成を行っており、今回の事件では、それが有価証券報告書の虚偽記載という犯罪に該当することを前提に、検察との司法取引に応じ、自らの刑事責任を減免してもらう見返りに検察捜査に全面的に供述している人間だ。そのような供述には、「共犯者の引き込み」の虚偽供述の疑いがある。そのため、信用性を慎重に判断し、十分な裏付けが得られた場合でなければ、証拠として使えないということは、法務省が、刑訴法改正の国会審議の場でも繰り返し強調してきたことだ。「覚書」という客観証拠もあり、外形的事実にはほとんど争いがない「退任後の報酬の支払」に関する供述の方は、有価証券報告書への記載義務があるか否かとか、「重要な事項」に当たるのか否かなど法律上の問題があるだけで、供述の信用性には問題がない。しかし、秘書室長の「サウジアラビア人の会社への支出」の目的についての供述は、それとは大きく異なる。ゴーン氏の説明と完全に相反しているので、供述の信用性が重大な問題となる。その点に関して致命的なのは、この支払については、日産側は社内調査で全く把握しておらず、「退任後の報酬の支払」の覚書について供述した秘書室長が、この支出の問題については、社内調査に対して何一つ話していないことだ(上記朝日記事でも、「再逮捕は検察独自の捜査によるもので、社内調査が捜査に貢献するという思惑通りにはなっていない」としている。)。秘書室長は、検察と司法取引する前提で、社内調査にも全面的に協力したはずであり、もし、このサウジアラビア人に対する支出が特別背任に当たる違法行為だと考えていたのであれば、なぜ社内調査に対してそれを言わなかったのか。「その点は隠したかった」というのも考えにくい。この支出が特別背任に当たり、秘書室長がその共犯の刑事責任を負う可能性があるとしても、既に7年の公訴時効が完成しており、刑事責任を問われる余地はないからである(ゴーン氏については海外渡航期間の関係で時効が停止していて、未完成だとしても、その時効停止の効果は、共犯者には及ばない)。結局、秘書室長の供述の信用性には重大な問題があり、ゴーン氏の説明・弁解を覆して「サウジアラビア人への支出」が不当な目的であったと立証するのは極めて困難だと言わざるを得ない。以上のとおり、第1、第2について、ゴーン氏を特別背任で起訴しても、有罪に持ち込むことは極めて困難だと考えられる。勾留延長請求却下を受けて急遽、ゴーン氏を再逮捕した検察の、年末年始をはさんだ捜査には、多大な困難が予想される。(以下略)

*7-2-5:https://www.topics.or.jp/articles/-/162254 (徳島新聞社説 2019年2月14日) 松橋事件無罪へ 冤罪を防ぐ法整備急げ
 冤罪を巡るさまざまな問題が、司法と立法府に改めて厳しく突きつけられた。熊本県松橋町(現宇城市)で男性が刺殺された松橋事件で、殺人罪などに問われ服役した宮田浩喜さん(85)の再審初公判が熊本地裁で即日結審し、来月の判決で無罪になることが確実となった。なぜ宮田さんは殺人犯にされたのか。どうして、名誉回復まで何十年もかかったのか。しっかりと検証し、悲劇を繰り返さない対策を進めなければならない。事件は1985年に起きた。男性の将棋仲間だった宮田さんが、警察に任意で12日間連続で取り調べられ自供、逮捕された。否認し続けたものの「うそ発見器で陽性反応が出た」と告げられ、「自白」してしまったという。長時間の過酷な取り調べで疲弊させ、精神的に追い詰める。行き過ぎた自白偏重捜査の典型と言えよう。物証はほぼなく、この自白が唯一の証拠となった。宮田さんは一審で全面否認に転じ、必死に無実を訴えたが、聞き入れられなかった。90年に最高裁で懲役13年が確定、99年の仮出所まで服役した。自白の信頼性が揺らいだのは、判決確定から7年も後だった。再審請求に際し、弁護団が検察に開示を求めた証拠の中から、あるはずのないシャツ片が見つかったのだ。自白では「シャツから左袖を切って、凶器の小刀に巻き、犯行後に燃やした」とされていた。その左袖である。弁護団は、小刀と傷の形状が一致しないとする法医学者の鑑定書も加え、2012年に再審を請求。16年に熊本地裁が再審開始を決め、昨年10月に最高裁で確定した。不都合な証拠を検察が隠していなければ、有罪判決は変わっていた可能性がある。証拠開示については、16年の改正刑事訴訟法施行で、被告側への一覧表交付が検察に義務付けられた。しかし、それではまだ十分とは言えまい。やはり全面開示が原則だろう。一覧表の交付義務が通常の裁判に限られているのも問題だ。今回のように、再審請求の段階で「新証拠」が発見される例は少なくない。裁判官の判断に委ねている現状を改め、開示手続きの明確なルール作りを急ぐ必要がある。高齢の宮田さんは、認知症で寝たきりの状態になっているという。「生きているうちに無罪を」との願いはかないそうだが、再審請求から約7年、地裁の再審開始決定からでも2年半以上になる。明らかな新証拠が見つかったのに、検察が有罪立証に固執し、抗告を重ねたためだ。無用な引き延ばしを防ぎ、早期に名誉回復を図るには、少なくとも再審開始決定に対する検察の抗告権を制限すべきである。捜査当局はもちろん、虚偽の自白を見抜けなかった裁判所も、事件を教訓にしなければならない。法を整備する国会も対応が問われている。

| 日本国憲法::2016.6~2019.3 | 12:05 PM | comments (x) | trackback (x) |
2019.2.26 児童虐待と児童相談所など (2019年3月4、5、6、7日に追加あり)
     
 2019.2.17毎日新聞    2013.3.2Yahoo      2015.12.26産経新聞

(図の説明:左図の民法822条、児童虐待防止法、学校教育法に書かれている“懲戒”の定義は不明だが、言葉が穏やかでないため教育目的のしつけに限るべきだろう。しかし、中央の図の“懲戒”の例には、①教室への居残り ②教室内に起立 ③宿題・清掃を課す ④遅刻した子を試合に出さない などが書かれており、右のグラフには、懲戒・体罰を行ったことで処分を受けた公立学校の教員が著しく増加した様子が出ているが、この“懲戒”は、教育目的に入る例も多そうだ。なお、中央の図で、体罰の例として挙げられているものは、言語によるコミュニケーションやディスカッションなど他の方法を使うべきだ)

(1)心愛さん(10歳)のケース
 千葉県野田市で、*1-1のように、10歳の娘を虐待して死亡させた父親が、“傷害”容疑で逮捕され、その暴行を止めずに共謀していた母親が傷害容疑で逮捕され、その虐待の様子は動画で撮影され父親の記録媒体に保存されていたというから、このケースは特に父親が異常人格なのであろう。そして、母親も子どもを護るという親の役割を果していないだけでなく、父親に協力して子どもを虐待しているのが変なのである。
 
 心愛さん自身は、2017年9月以降に通っていた千葉県野田市の小学校で、「父親からいじめを受けた」「叩かれるなどの暴力を受けている」と訴え、野田市は2017年11月に学校からの連絡で虐待の疑いを確認して柏児童相談所は心愛さんを一時保護したが、家庭での養育が可能と判断して両親の元に帰してしまった。

 その後、心愛さんは殆ど学校に来ておらず、休む理由も不自然で、心愛さんの体には日常的虐待をうかがわせる複数のあざがあったというから、それでも気付かなかったというのなら児童相談所(以下“児相”)は役割を果たせていない。これに関して、「忙しかった」という弁解は、結果の重大性から見て通らないだろう。

 心愛さんは、2017年9月に沖縄県糸満市から千葉県野田市の小学校に転入し、そこで父親からの暴力を訴えて、柏市の児童相談所に一時保護された後、親族の家に預けられ、2018年3月上旬に自宅へ返されている。そして、柏児童相談所は心愛さんが自宅に戻ってから一度も面会しておらず、心愛さんが通っていた小学校の校長も、「担任の先生からあざやけがなどの報告はなかった」とし、家族関係はうまくいっていると認識していたとのことである。

 野田市の警察は、野田市からの報告で心愛さんが保護対象であることは把握していたものの、「直ちに対応するべき案件ではない」と判断していたそうで、警察が被害者を守れずに死に至らしめるケースはストーカー事件など多く、これは日本の警察の人権意識の低さに由来する。

 一方、沖縄県糸満市の記録によれば、一家は2009年に糸満市に転入して2017年8月まで住んでおり、市内に母親の実家があり、心愛さんは近くの小学校に1年~3年1学期末まで通っていた。容疑者から児相に直接電話があったのは2017年7月7日で、「祖父母が娘を返してくれない」という内容で、児相の担当者は「児相が支援できるか検討したいので来所してほしい」と求めたそうだ。この場合、糸満市の児相は、何故、祖父母が返さないのか、祖父母や心愛さんからも話を聞くのが当たり前だと考える。

 しかし、沖縄県糸満市には、*1-2のように、母親へのDV被害等について聞き取った記録はなく、当時通っていた小学校では、母親へのDV情報は校長、教頭、担任の三者に留っていたそうだ。個人情報に当たるため、ちょっと相談したら学校中(もしくは町中)に知れ渡り、永久に記録に残るのではうっかり相談もできなくなるが、相談された人は責任を持ってアクションをとる必要があったと考える。

(2)結愛ちゃん(5歳)のケース
 2018年3月に、目黒区で児童虐待によって結愛ちゃんが、*2のように、父親に虐待されて死亡した事件についても、両親は、5歳の子どもには無理なことを要求して虐待している。

 2016年12月に香川県の自宅前で結愛ちゃんが唇から出血した状態で放置されており、児童相談所は一時保護したが、2017年2月には一時保護を解除して自宅に戻している。そして、2017年3月に再度放置され、児相が2度目の一時保護を行い、2017年4月に幼稚園を退園したが、2017年7月には一時保護を再び解除している。

 2017年8月に結愛ちゃんが父親に蹴られたと病院が市に通報もしていたが、2018年1月に一家は東京に引っ越し、香川の児相から東京の児相にそれまでの経緯や情報を伝えていたにもかかわらず、結愛ちゃんは父親の暴行を受けて搬送先の病院で死亡した。

 これも、異常なのは父親と母親であって結愛ちゃんではない。また、このように明確なケースでさえ子どもを保護できずに死亡させたのは、児相の役割を果たしておらず、途中で転居があったとしても弁解の余地はない。

(3)解決策は正しいか?
 *2には、「児童虐待数は25年間で約120倍に増えているが、里親や施設数は殆ど変わっておらず数が足りない」「受け皿が増えなければ、虐待通報があっても家に戻される子どもたちは増加の一途を辿る」と書かれているが、そういうケースもあるものの、祖父母が受け皿になっていても異常な親の元に返しているケースもあり、量だけの問題ではなく質の問題も大きい。

 また、虐待を受けた子の方に精神障害・生育歴などの問題があるとしている点で、児相の構成員にも問題がある。何故なら、(1)(2)のケースは、父母が何らかの理由で異常な状態になっているので、虐待された子どもの精神分析をするよりも、子どもに対しては人権保護措置を行い、傷害罪を起こした親の方を警察に通報しなければならないからだ。

 子どもは生まれながらにしてすべてが天使というわけではないため、しつけをしなければならない局面もあり、親による体罰を法律で禁止しない方がよいという意見は、*3-2のように、子育ての当事者に近い世代の男性で高く、中でも30代と40代で半数以上が「禁止しない方がよい」としている。

 私も、*3-3のように、親の体罰を一律に禁止するより、子に対して傷害や殺人を犯すような行動をとる親を、確実に逮捕したり引き離したりしなければならないと考える。しかし、*3-4のように、児相の職員は、①教育・訓練・指導担当児童福祉司、児童福祉司、相談員 ②精神科を専門とする医師 ③心理判定員、心理療法担当職員 ④小児科を専門とする医師や保健婦 ⑤理学療法士・言語治療担当職員・臨床検査技師などの構成となっており、子どもに障害があることを前提として治療する体制になっているので、これでは目的を果たせない。

 本当は、子どもの虐待に関する証拠を把握できる人(教師・医師)の児相や警察への連絡、子どもの人権を保護するための法的措置(それができる弁護士・警察)、親の背景理解・心理分析・援助(それができるソーシャルワーカー)が必要であるため、現在と同じ構成で人員を増やしても、*3-1のように、質を上げて目的を達成することはできないのである。

・・参考資料・・
<心愛さんのケース>
*1-1:https://www.kodomowokoroshite.com/topic/case-hw0tn/ (虐待,殺人事件 2019/1/25)千葉県野田市 10歳の娘、虐待で死亡 父親を“傷害”容疑で逮捕、「暴行止めず共謀」母を傷害容疑で逮捕 千葉の女児虐待死、心愛さん虐待の様子、動画で撮影 父親の記録媒体に保存
 10歳の長女の髪の毛を引っ張り、冷水シャワーを浴びせたり、などしたとして、千葉県警野田署は2019年1月25日、傷害容疑で、父親の自称会社員、栗原勇一郎容疑者(41)=同県野田市山崎=を逮捕した。栗原容疑者は1月24日午前10時~午後11時20分ごろまでの間、自宅で千葉県野田市立小学校4年生の栗原心愛さん(10)の頭髪を引っ張って冷水を掛けたほか、首付近を両手でわしづかみにするなど暴行し、擦過傷を負わせた疑い。栗原容疑者は「事故だった。けがをさせるつもりはなかった」といった趣旨の供述をしている
24日午後11時すぎ、「風呂場でもみあいになった娘が呼吸をしていない」などと110番通報があった。警察と消防が駆けつけたところ、アパートの部屋に住む小学4年生の栗原心愛(みあ)さんが風呂場で倒れて死亡していた。死亡したのは小学4年の栗原心愛さん。体中に古いあざがあったといい、同署は日常的に暴行を受けていたとみて調べている。栗原容疑者は4人家族。当時、自宅には妻(31)と次女(1)もいたとみられる。
(続報2)一時児相の保護、近所の人は気づいていた
心愛さんが2017年に通っていた市内の小学校に「父親からいじめを受けた」と訴えていた。野田市は同11月、学校からの連絡で虐待の疑いを確認。柏児相は心愛さんを一時的に保護したが、「家庭での養育が可能と判断」し、両親の元に帰した。
■毎日のように泣き声が聞こえた
 隣のアパートに住んでいる40代の女性は、「数年前から毎日のように女の子の泣き声が聞こえた。最近はつぶれたような声になっていて怖かった。聞こえるのは決まって夕方で、24日も夕方ごろ、女の子の『ぎゃー』という泣き声と、男性の声で『うるさいって言ってんだろ』というどなり声が聞こえた。近所に住む知人は、女の子が夜中に外に1人で立って、寂しそうに携帯ゲームをしているのをよく見たと話していた。幼い尊い命が失われて本当にかわいそうです」と話していた。
■助けてあげたかった
 亡くなった心愛さんと同級生の娘を持つ女性は「あいさつができて、いつもにこにこしていてとてもかわいい子でした。学校にはほとんど来ていませんでしたが、休んでる理由はわかりませんでした。栗原さんの家は赤ちゃんがいるから、インターホンを鳴らさないでと言われていて、遊びに行ったことはありませんでした。心愛ちゃんがうちに遊びに来たときは、あざなどは見当たらず、虐待を受けているという話は聞いたことがありませんでした。亡くなったと聞いたときは信じられなかった。もし知っていたら助けてあげたかった」と話していた。
(続報3)死亡した心愛さんを数時間放置、容疑者は学校に嘘
 遺体発見時、心愛さんのあご付近に軽い死後硬直があり、栗原容疑者が暴行後、死亡した心愛さんを数時間放置した可能性が浮かび上がった。また、心愛さんの体には日常的な虐待をうかがわせる複数のあざがあった。2017年9月に沖縄から千葉県・野田市の小学校に転入。同年11月には学校のアンケート調査に「父からいじめを受けた」と回答。その後の聞き取りで「叩かれるなどの暴力を受けている」と話していた。これを受け、11月のうちに柏市の児童相談所が心愛さんを一時保護。その後、一時保護は解除され、心愛さんは親族の家に預けられたのち、2018年1月に現在の小学校に転校。3月上旬には自宅へと戻った。
-柏児童相談所は記者会見で、心愛さんが自宅に戻ってからは一度も面会はしていないとした。記者から「学校に丸投げか」との質問が出ると、「丸投げというつもりはないですが、基本的には役割分担ということで」と説明。
-心愛さんが通っていた小学校の校長は記者会見で、「担任の先生からあざ・けがなどの報告はあったか」との質問に、「そういう報告はなかった」と話した。家族関係はうまくいっているものと認識していたという。
-警察は、野田市からの報告で心愛さんが保護対象であることを把握していたものの、「直ちに対応するべき案件ではない」と判断していた。下校後には鍵を持っておらず、両親から「インターホンを鳴らすことを禁じられていた」ため家に帰ることができず、近所の同級生の家に毎日のように寄っていた。心愛さんを知る人:体操服の袖のところからあざが見えたとか、子どもがその子(心愛さん)に「どうしたの?」とは聞けなかった。心愛さんは1月7日の始業式から小学校を欠席。栗原容疑者は学校に対し「来月上旬まで沖縄に帰省している」と説明していた。児童相談所もその説明を把握していたものの、危機感は持っていなかった。沖縄県にいる心愛さんの祖母は、FNNの取材に対し、「心愛は沖縄から転居して以来、姿を見せていません。沖縄には来ていません」と否定した。1月28日に発表された司法解剖の結果では、体には複数のあざがあったものの、「死因は特定できなかった」という。
(続報4)沖縄に住んでいた、沖縄では祖父母が一時保護、妻に対するDVも
沖縄県糸満市によると記録上、一家は2009年に同市に転入し、2017年8月まで住んでいた。転出時、心愛さんは両親と生まれた直後の妹の4人家族だった。複数の関係者によると、市内に母親の実家があり、近くの小学校に1年~3年1学期末まで通っていた。沖縄県青少年・子ども家庭課によると、容疑者から児相に直接電話があったのは2017年7月7日。「祖父母が娘を返してくれない」との内容で、児相の担当者は「児相が支援できるか検討したいので来所してほしい」と求めた。容疑者は結局、来所しなかった。さらに1週間後の同月14日には糸満市から児相に対し、容疑者から妻への暴力が疑われる事案として、対応への助言を求める電話があった。児相は市の担当者に対し「情報が少なく判断が難しい。糸満市で支援体制を整えてほしい」と回答した。沖縄県が「児相との継続的な関わりはないケース」と説明する一方、糸満市は一家を巡る関係者の情報を整理中としている。心愛さんが在籍していた糸満市の小学校の校長は「積極的に授業に参加し、一生懸命頑張っていた。担任にも聞き取りをしたが、あざなど虐待の兆候は見られなかった」と話す。2017年7月、母親が心愛さんの妹を出産する前後に、学校まで心愛さんを迎えに来た容疑者に会った。「本土出身で話し上手で、気さくな人に見えた。報道を見て信じられなかった」と振り返る。担任は親から市内の別の学校に転校すると聞いていたが、同年9月に千葉へ転校したとの知らせが学校に届いたという。心愛さんは16~17年、地元の公共施設での無料塾に週2回、通っていた。講師は「こつこつと勉強を頑張る明るい子。3年生になってから『県外の学校に行く』と寂しそうに話していたのを覚えている。事件を知って驚いている」と話した。
(続報5)母親から事情聴取
傷害容疑で逮捕した、父親の栗原勇一郎容疑者について、母親(31)が事情聴取に「事件前にも夜中に娘を起こして立たせることがあった。ずっと立たせるのはやめてと言ったが聞いてもらえなかった」と話していることが分かった。事件前から母親の制止にもかかわらず、たびたび虐待をしていた疑いがあるとみて生活状況を調べる。栗原容疑者は心愛さんが死亡した1月24日に「午前10時からしつけで立たせたり、怒鳴ったりした」と説明していた。
(続報6)
容疑者が県警の調べに、死亡当日に長時間立たせたことなどについて「しつけのつもりで、悪いことをしたとは思っていない」と供述している。また、容疑者が「事件前にスクワットをさせたりした」と話していることも判明。夜中に心愛さんを起こして立たせることがあったことも分かっており、県警は虐待が続いていた疑いがあるとみて生活状況を調べている。
(続報7)
野田市の教育委員会は、心愛さんが2017年11月、学校が行ったアンケートで「父から暴力を受けている」と回答したコピーを、容疑者である父親に渡したことを明らかにした。アンケートの目的は、“いじめに関する調査”。「ひみつをまもりますので しょうじきにこたえてください」という一文も添えられ、ここに書くことは絶対に秘密だと信じたであろう心愛さんは、アンケートにこう回答していた。
<心愛さんが書いたアンケートの自由記述の部分>
「お父さんにぼう力を受けています。夜中に起こされたり、起きているときにけられたりたたかれたりされています。先生、どうにかできませんか」。市教育委員会の担当者:精神的に追い詰められて、やむにやまれず(アンケートのコピーを)出してしまったというのが正直なところです。
(続報8)2018/2/4
県警は4日、傷害容疑で逮捕した父勇一郎容疑者の暴行を制止しなかった共謀にあたるとして、同じ容疑で母親の栗原なぎさ容疑者(31)を逮捕した。なぎさ容疑者は勇一郎容疑者からドメスティックバイオレンス(DV)を受けていたことが判明している。一家が暮らしていた沖縄県糸満市には、なぎさ容疑者の親族から「勇一郎容疑者からDVを受けている」との情報が寄せられていた。また、心愛さんを一時保護した際には、千葉県柏児童相談所に、なぎさ容疑者が「今もDVを受けている」と打ち明けていた。捜査関係者は「勇一郎容疑者による虐待が常態化する中、心愛さんへの暴力がなくなったら自分に矛先が向くと考え、マインドコントロールされていたのではないか」と話している。1月28日に心愛さんの遺体を司法解剖したが、死因は分からなかった。市教育委員会は「個人情報で本人同意もない」とアンケートを渡すことを拒否したが、勇一郎容疑者が心愛さんの「同意書」を持参し、一緒にいたなぎさ容疑者も本人が書いたと話したことから写しを手渡したとしている。
(続報9)2019/2/8 虐待動画撮影
心愛さんが虐待される様子の動画データを県警が発見していたことが分かった。心愛さんが死亡した日より前に撮影されたとみられ、県警は事件に至るまでの虐待行為を解明する重要な証拠になるとみている。動画データは父親の勇一郎容疑者が所有していた記録媒体に保存されていた。県警が確認したところ、1月にスマートフォンで撮影された可能性が高いことがわかった。心愛さんが勇一郎容疑者とみられる人物から暴行を受ける様子や、ぐったりしている姿などが映っていたという。県警は勇一郎容疑者か母親のなぎさ容疑者が撮影したとみており、映像の解析などを進めている。

*1-2:https://ryukyushimpo.jp/news/entry-880780.html (琉球新報 2019年2月26日) 沖縄・糸満市、DV記録なし 小4女児死亡 学校も情報共有怠る
 千葉県野田市立小4年の女児(10)が自宅浴室で死亡した事件で、糸満市が母親へのDV(ドメスティックバイオレンス)被害などについて母親に直接聞き取ったか記録にないことが25日、分かった。当時通っていた小学校では母親へのDVなどの情報は校長、教頭、担任の三者にとどまり、養護教諭には伝えていなかったことも明らかになった。市や学校は女児本人にも聞き取りをしておらず、積極的に対応しなかったことがあらためて明らかになった。同日開かれた市議会の総務委員会と民生委員会の連合審査会で、市と市教育委員会が説明した。女児の一家は、2017年8月まで糸満市で暮らしていた。母親の親族は同年7月に市の窓口で、母親へのDVと女児へのどう喝を相談していた。神谷和男福祉部長は「母親が入院中で、本人に聞き取りできなかった」と説明。17年7月下旬に母親の入院先で母親と情報を寄せた親族、医師、市と面談した際に「母親本人が家族4人での同居を強く希望していたため、同居が望ましいと判断した。DVがあったかなかったかというのは、話し合いの中では出てこなかった」と明らかにした。市教育委員会の大城直之指導部長は学校への再度の聞き取りで、母親へのDVなどの情報が女児と同学年の教諭に「家庭内のトラブル」とだけ伝えられていたことを報告した。養護教諭は家庭内のトラブルについても知らなかったという。大城指導部長は「検証委員会で学校の対応が適切だったか検証してもらい、今後につなげたい」とした。市は、市や市教委の対応を検証する要保護児童対策地域協議会(要対協)の代表者会議を2月18日、実務者会議を21日に開いたことも報告した。構成メンバーに福祉部長や教育委員会指導部長ら市当局が入っていることも分かり、市議から中立性や客観性を疑問視する声が上がった。

<結愛ちゃんのケース>
*2:https://gendai.ismedia.jp/articles/-/56028 (現代 2018.6.9) 「もうおねがいゆるして…」目黒5歳虐待死はなぜ防げなかったのか、二度とこのようなことが起きないために、「ゆるしてください おねがいします」
 2018年3月に目黒区で児童虐待によって船戸結愛(ゆあ)ちゃん(5歳)が父親に虐待され死亡した事件について、連日ニュースで流れており、たくさんの人が結愛ちゃんの残したノートのコメントを見て心を痛めているのではないかと思います。
【残されたノートの言葉】
ママ
もうパパとママにいわれなくても しっかりとじぶんから きょうよりかもっと あしたはできるようにするから
もうおねがいゆるして ゆるしてください おねがいします
ほんとうにもうおなじことはしません ゆるして
きのうぜんぜんできなかったことこれまでまいにちやってきたことをなおす
これまでどんだけあほみたいにあそんだか あそぶってあほみたいだからやめる もうぜったいぜったいやらないからね ぜったいやくそくします
もう あしたはぜったいやるんだぞとおもって いっしょうけんめいやる やるぞ
 虐待を受けていたり、家庭環境によって社会的に孤立したりした子どもたちを支援している立場として、また一人の大人として、まだこのような事件がゼロにならない現状に無力感や苦しさを感じています。
●虐待発覚から死亡までの経緯
 報道によれば、虐待発覚から死亡までの流れは以下のようになっています。
2016年12月 香川県の自宅の前で結愛ちゃんが唇から出血した状態で放置され、児童相談所が一時保護をしていた
2017年2月 一時保護を解除され自宅に戻る
2017年3月 また放置され、児童相談所が2度目の一時保護
2017年4月 幼稚園を退園
2017年7月 一時保護を再び解除
2017年8月 結愛ちゃんが「パパにけられた」と病院が市に通報もしていた
2018年1月 東京に引っ越し。香川の児童相談所から東京の児童相談所にそれまでの経緯や情報は全て伝えていた
2018年2月9日 東京の児童相談所職員が自宅訪問したが、結愛ちゃんに会わせてもらえず
2018年2月20日 小学校の入学説明のため関係職員が自宅訪問したが、結愛ちゃんに会わせてもらえず
2018年2月下旬 父親が結愛ちゃんの顔面殴るなどの暴行
2018年3月2日 搬送先の病院で結愛ちゃん死亡。享年5歳
(引用:FNN PRIME onineより)
 つまり、本件は虐待が発見されていない状況ではなく、近所の住民や病院などから何度も通報があり、児童相談所が2つも介入しており、死に至る前に未然に防げるチャンスはあったものです。そして度重なる通報があったにもかかわらず、結愛ちゃんの一時保護は2度も解除され、家庭に戻されました。一時保護後に家庭に戻さなければ、自宅訪問した際にもっと介入していれば、死に至る前に防げたかもしれない――そう思うと、余計にやるせない気持ちを感じずにはいられません。今回の結愛ちゃんの事件に限らず、児童虐待の通報は後を絶ちません。平成28年度中に、全国210ヵ所の児童相談所が児童虐待相談として対応した件数は122,578件で、これまでで最多の件数となっています。1日に約300件以上になる計算です。さらに平成29年の厚生労働省が発表したデータによると、平成27年4月1日から平成28年3月31日までの子どもの虐待死事例は、心中以外の虐待死が52人、心中による虐待死事例は32人にのぼり、1年間で合わせて84人の子どもたちが心中または虐待死で命をなくしています。ニュースで見かけるよりもたくさんの子どもたちが、虐待によって命をなくしている現状があるのです。
●なぜ一時保護を解除し、自宅に戻したのか
 今回、多くの人が疑問に思ったのはおそらく「なぜ何度も通報があったにもかかわらず、結愛ちゃんの一時保護を解除し、自宅に戻したのか」という点ではないかと思います。実は虐待の通報があっても、そのすべてが保護されるわけではありません。平成27年度、相談対応した約10万件のうち、一時保護されたのは約17%に過ぎず、さらにその中で施設入所等に至ったのはたった4%にしかすぎません。つまり、虐待通報をしたとしても、96%は家庭に戻されているのです。
●厚生労働省「第5回子ども家庭福祉人材の専門性確保WG」
 私たちも長年児童養護施設などに保護された子どもたちの支援をしてきましたが、中には何年も虐待を受けていたにもかかわらず、発見されなかったり、保護がされず深刻な心の傷を負ってしまっていたり、長年にわたって命の危険と隣り合わせて生活していた子どもたちもいます。十分な栄養、十分な学習環境などが保障されず、施設に保護されてからそれまでできなかった支援を補う形で活動をしていますが、「もっと早く発見されていれば」「もっと早く支援ができていれば」と思わずにはいられないケースがたくさんあります。この背景の一つには、児童養護施設や里親などが足りていない問題があります。対応している児童虐待数は25年間で約120倍に増えていますが、里親や施設数はほとんど変わっていないことが以下のデータからわかります。里親・ファミリーホームは約3倍近く増えているものの、もともとの数が少ないため、約4000人分の受け皿しか増えておらず、10万件以上の虐待対応の受け皿としてはあまりにも少ない状況です。
●厚生労働省「第14回 新たな社会的養育の在り方に関する検討会」
 現在約4万5千人の子どもたちが各種施設や里親に暮らしていますが、その受け皿が増えなければ、虐待通報があっても家に戻される子どもたちは増加の一途をたどります。一方で、日本では里親・ファミリーホームの数を増やす予定ですが、乳児院をはじめとした施設形態は今後増やさない方針を掲げています。2017年7月には、厚生労働省が未就学児は施設入所を原則停止すると発表しました。今後は里親が増えない限り、受け皿は増えなくなってしまいます。受け皿自体が足りない中で、里親の増加数だけに頼っていいのか、悩ましい状況でもあるのです。
●なぜ児童相談所は家庭訪問を強化しなかったのか
 今回の事件でのもう一つの疑問は、「親が結愛ちゃんに会わせることを拒否した時点で、なぜもっと頻繁に家庭訪問をして保護にもっていけなかったのか」という点です。平成11年から平成27年にかけて、児童虐待相談対応件数は約8.9倍増えたのに対して、児童相談所と児童福祉司の数は約2.4倍にしか増えていません。児童福祉司とは、虐待の通報にあった家庭に訪問したり、近隣の住民などのヒアリングを介して、虐待保護の緊急度や必要性などを判断したりする立場にいるものです。一つの児童相談所や、児童福祉司が対応するケースは単純に考えて4倍程度に膨れ上がったことになりました。東京の八王子児童相談所のホームページによると、児童福祉司一人で担当するケースは平均80〜100件だといいます。児童虐待防止制度改正後の運用実態の把握・課題整理及び制度のあり方に関する調査研究」(平成18年、日本子ども家庭総合研究所)によれば、児童虐待以外を含めた児童福祉司一人当たりの受持ち件数は平均107件と言われています。1ヵ月に20日勤務すると考えて、1家庭に1日(約8時間)割くとしても、平均して5ヵ月に1回しか1家庭に時間を割くことができません。しかも、1家庭に8時間というのは、近隣のヒアリングから親との面談、ケース会議などを十分に行うにはあまりにも少ない時間です。そして、今回のように素人から見ても緊急度を上げて、もう一度訪問した方が良い案件についても後回しになってしまい、取り返しのつかない状況になってしまいかねない構造的問題もあります。より手厚い児童福祉司の配置、そのための児童福祉予算の増加などは、このような痛ましい事件を防ぐためには必要不可欠となっているのです。
●私たちにできることはあるのか
 では、このような事件を防ぐために、私たちはなにができるのでしょうか。虐待の背景には、親本人が困っていたり、孤立したケースが多く見受けられます。貧困や、鬱などの精神障害、虐待を受けて育ってきた生育歴。また、社会保障制度へのリテラシーも低く生活保護や困窮世帯が受けられる制度を十分に理解していなかったり、だれかに頼ることがうまくできなかったりするケースも少なくありません。もし困っている人が近くにいたら、その人を責めるのではなく、「頼りたい」と思えるひとりになり、あたたかく見守り、できることがあれば手を差し伸べ続けることが、今の社会では最も難しいことかもしれませんが、最も大切なことでもあると感じています。しかし、地域間格差や教育格差が拡がっている中で、自分の地域やコミュニティには自分自身と境遇が似ている人が多く、身近に困っている人がいない・見つからないこともあるかもしれません。そんな時にできることを紹介します。(以下略)

<解決策は?>
*3-1:https://www.nishinippon.co.jp/feature/life_topics/article/464216/ (西日本新聞 2018年11月9日) 児童相談所の課題<上>人材育成 増員で埋められない「質」
 3月、東京都目黒区で5歳の女児が虐待死した。転居によって香川県、東京都の両児童相談所(児相)が関与しながら死を防げなかったため「目黒の悲劇を起こさないために」という掛け声の下、児相の改革を求める声も上がる。11月は児童虐待防止推進月間。年間13万件超の虐待対応に追われる児相の課題を考える。2022年度までに児童福祉司を約2千人増員し、1人当たりの担当件数を40ケース相当にする-。目黒の事件を受け、政府は7月、緊急総合対策を発表した。柱は「人材」だった。対策は、虐待通告から48時間以内に面会などで安全確認ができなかった場合、児相が立ち入り調査を実施するとともに、警察との情報共有を進めることをルール化するとした。これらを実行するにも人が要る。この対策に盛り込んだ「児童虐待防止対策体制総合強化プラン」の骨子によると、現在の児相の1人当たり業務量は約50ケース。都市部では100件近くを担当する職員も珍しくない。専門家は、目黒区の事件のような「虐待疑いのある子どもが在宅しているケース」は特に注意が必要で、1人20~30件程度が理想と言う。数でみると、増員すれば1人の担当数が減り、判断ミスを減らせるように思える。しかし現場からは「増員だけでは解決しない」との声も上がる。
    *   *
 児童福祉司の仕事は、家庭の抱える問題を解決に導く「ソーシャルワーク」。貧困、親の成育歴、地域からの孤立、夫婦間のトラブル、子どもの障害など、複雑に絡み合った問題から、子どもの虐待のリスクを見立て、解決に向けて支援する。こうした技量は「現場で職務を実行しながら身に付けるしかない」と児相関係者は口をそろえるが、その経験豊富な児童福祉司が育たない、という長年の課題がある。児相以外への異動でキャリアが断たれるのだ。児童福祉法などでは、5年ほどの児相勤務経験がある児童福祉司を、指導的立場のスーパーバイザー(SV)として「5人に1人は配置する」としている。しかし熊本、鹿児島両県や熊本市など、基準を満たせていない児相もある。熊本県中央児相は「職員が3年ほどで異動となるので、5年の経験を積ませるのが難しい」と説明する。増え続ける虐待通告に追われ、子どもの命に関わる重責がのしかかるため「勤務継続を希望する職員はめったにいない」(九州のある児相幹部)実態もある。児相の相談に応じる「子どもの虹情報研修センター」(横浜市)の小出太美夫(たみお)専門相談室長は、経験ある職員を増やせない環境下で、経験ゼロの職員を増やせば「育成にさらに人手が必要になり、現場がエアポケットのような状態になるのではないか」と懸念する。
    *   *
 こうした悪循環を打破しようと、各児相も模索している。鍵は「連携」だ。福岡市は12年から、夜間の泣き声通告の安全確認をNPO法人に委託している。泣き声通告は緊急でない場合も多く、児童福祉司は負担が減り、深刻な案件に集中できるようになった。ただ、安全確認を委託しているのは全国で5件のみ。児童福祉司1人が100件ほどのケースを抱える北九州市は「誰にでも任せられる仕事ではなく、適任団体がない」と難しさを漏らす。大分県は、手作りの玄関を使った家庭訪問の模擬訓練を、市町村担当者にも頻繁に行っている。職員の技量向上とともに、市町村の対応力を上げ、軽度の案件を任せるのが狙いだ。他にも、生活保護のケースワーカーや保育士、教員を児童福祉司として配置するなどの人事上の工夫をしているところも多い。5年後10年後には、増員が功を奏してベテランが育ち、理想の体制になるかもしれない。その過渡期をどう乗り越えるか-。小出室長は、現場で育成に時間をかけられない分、虐待死亡の後に出される検証報告で学ぶ重要性を指摘する。目黒の事件でも検証報告が出され、女児の家庭に対するアセスメント(分析評価)にミスがあったと指摘。しかし、(1)児相職員の資質向上(2)転居に伴うケースの確実な引き継ぎ(3)妊娠期からの継続的な支援-などの提言は、これまでの報告の域を出ない。小出室長は「ケースが100通りあれば背景も100通り。経験の浅い職員には検証報告が経験値代わりになるので、国は加害者である親の成育歴までさかのぼるような詳細な検証を実施して公開すべきだ」と話す。 

*3-2:https://digital.asahi.com/articles/DA3S13898966.html (朝日新聞 2019年2月19日) 子への体罰禁止「法制化を」46% 朝日新聞社世論調査
 「しつけ」に名を借りた児童虐待が相次いでいることを受け、朝日新聞社は16、17両日の世論調査で、親による体罰を法律で禁じることの是非を聞いた。「禁止する方がよい」は46%で、「しない方がよい」の32%を上回った。親の子どもへの体罰禁止を明記した法律はない。相次ぐ事件を受け、国会では家庭内の体罰禁止を法制化すべきだという意見が出ている。体罰禁止の法制化の是非を男女別にみると、「禁止しない方がよい」は男性が40%と比較的高く、女性は24%だった。年代別では、子育ての当事者に近い世代で、法制化に慎重な傾向がうかがえた。40代以下は「禁止しない方がよい」が4割と高めで、中でも男性の30代と40代は半数以上が「禁止しない方がよい」と答えた。一方、70歳以上は「禁止する方がよい」が52%だった。千葉県野田市で小4女児が自宅で死亡した事件での児童相談所や教育委員会の対応には「大いに」と「ある程度」合わせて95%が「問題があった」と答えた。「大いに問題」は男性の62%と比べ、女性の72%の方が高かった。

*3-3:https://mainichi.jp/articles/20190217/k00/00m/040/001000c (毎日新聞 2019年2月17日) 親の体罰禁止へ法改正を検討 政府・与党 民法「懲戒権」削除も視野
 政府・与党は、児童虐待防止に向け、両親など家庭内の体罰を禁止する法改正の検討に入った。今国会で児童虐待防止法に体罰禁止の明記を検討。その上で、今後、親が子どもを戒めることを認める民法の「懲戒権」の削除などの見直しも目指す。民法改正には法制審議会(法相の諮問機関)の審議が必要で、法改正まで時間がかかる。このため、児童虐待防止法改正を先行させたい考えだ。児童虐待防止の観点からの体罰禁止はこれまでも議論されてきた。特に民法の懲戒権については、児童相談所(児相)の職員らに「しつけ」を理由にした虐待事案への介入をためらわせる一因にもなっていると指摘されてきた。だが、2010年の法制審での議論では「『しつけ』もできなくなると誤解される恐れがある」などの反対論が出た。このため、16年の児童虐待防止法改正では体罰禁止が議論になったが、踏み込めなかった。千葉県野田市の栗原心愛(みあ)さん(10)や東京都目黒区の船戸結愛(ゆあ)ちゃん(当時5歳)の事件はいずれもしつけ名目で暴力を受けており、社会的関心が高まった。東京都は全国に先駆けて保護者による体罰や暴言を禁止する条例案を今月20日開会の都議会定例会に提出することを決めている。さらに、国連の子どもの権利委員会も今月7日、体罰の法的禁止を日本政府に勧告したことなども踏まえ、安倍晋三首相は13日の衆院予算委員会で「懲戒権の規定の在り方について法務省に検討させる」と答弁。山下貴司法相は15日の記者会見で「具体的な検討方法やスケジュールを担当部局に検討させている」と表明し、法制審への諮問を示唆した。児童虐待防止策を検討してきた超党派の議員連盟(会長・塩崎恭久元厚生労働相)などからは「児童虐待防止法での体罰全面禁止に再挑戦すべきだ」との声が強まっている。ただ、自民党の保守派議員らには「家族の在り方に踏み込むべきでない」との声が根強く、政府は慎重に検討する意向だ。
●懲戒権
 民法822条で、親(親権者)に認められている子どもを戒める権利。2011年の民法改正で「子の利益のため」との前提を加え、児童虐待の口実にはならないことを明確にした。法務省は「なぐる」「たたく」などの体罰について「その時代の社会常識で判断される」とし、現在は「相当限定される」との立場。学校教育法は、親権者ではない校長や教員による児童・生徒への体罰を明確に禁じている。

*3-4:https://www.mhlw.go.jp/bunya/kodomo/dv-soudanjo-kai-sinkyu02.html 児童相談所運営指針 - 第2章(児童相談所の組織と職員 抜粋)
第3節 職員構成
1.規模別職員構成の標準
第1章に述べられている諸般の業務遂行のため、所長、次長(A級の場合)及び各部門の長のほか、次の職員を置くことを標準とする。
C級-教育・訓練・指導担当児童福祉司(ス-パ-バイザ-)、児童福祉司、相談員、精神科を専門とする医師(以下「精神科医」という。嘱託も可。)、心理判定員、心理療法担当職員、その他必要とする職員
C級-教育・訓練・指導担当児童福祉司(ス-パ-バイザ-)、児童福祉司、相談員、精神科を専門とする医師(以下「精神科医」という。嘱託も可。)、児童心理司、心理療法担当職員、その他必要とする職員
B級-C級に定める職員のほか、小児科を専門とする医師(以下「小児科医」という。嘱託も可。)、保健師
A級-B級に定める職員のほか理学療法士等(言語治療担当職員を含む。)、臨床検査技師

<しつけと暴行罪の境界>
PS(2019年3月4日追加): *4-1は、母親が息子を足で蹴るなどしたとして佐賀地検が暴行罪で起訴したそうだが、けがもないのに誰が通報したのだろうか? *4-2に、暴行罪は「他人の身体に対し有形力を行使し、傷害するに至らないとき成立する罪」と書かれているが、母親は息子に長時間耳もとで泣かれたかもしれず、「過ぎたるは及ばざるがごとし」に思えた。

*4-1:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/344272 (佐賀新聞 2019年3月2日) 男児蹴った母、暴行罪で起訴 佐賀地検
 2月に当時2歳だった息子を足で蹴るなどしたとして、佐賀地検は28日、容疑者の母親(26)=佐賀県東松浦郡玄海町=を暴行罪で起訴した。起訴状によると、被告は2月4日午前9時45分ごろ、当時2歳10カ月の息子の腹部付近を1回足で蹴ったとしている。唐津署などによると、男児にけがはなかったという。被告は夫と息子の3人暮らし。同5日に北部児童相談所から県警本部へ虐待についての通報があり、唐津署が関係者などに事情聴取したところ、容疑が明らかになった。

*4-2:https://kotobank.jp/word/%E6%9A%B4%E8%A1%8C%E7%BD%AA-131957 (コトバンク) 暴行罪
 他人の身体に対し有形力を行使し,傷害するにはいたらないときに成立する罪 (刑法 208) 。暴行は人の身体に物理的な力を加えることであり,その結果,普通は心理的または肉体的に苦痛をもたらす。したがって,なぐる,蹴るといった場合だけでなく,催眠術を施したり,長時間耳もとで異常な騒音を立てることも暴行になる。面前で刃物を振回す行為なども含まれる。暴行の故意のある場合のほか傷害罪の未遂も本罪となる。逆に暴行の意思で暴行を加え,結果として人を傷害するにいたれば傷害罪となり,死亡させれば傷害致死罪となる。

<子どもの人権を護るために>
PS(2019年3月4日追加):*5-1のJA保育園は、「①自然の中で美味しい食材を使って0~2歳児を保育する」「②園児の食への関心を高める工夫がある」「③木製おもちゃや絵本など園児の想像力を膨らませるアイテムが多い」「④隣りにJA直販所・JA直営レストランやカフェ・金融共済窓口があって便利」など、農業地帯の長所を活かした仕様になっているが、このような質の良い保育所が十分にあることは重要だ。
 一方、*5-2のように、学童保育は整備が追い付いていないため、運営基準を緩和して1カ所に職員1人でもよいことにするようだが、確かにサービスの質や安全性の低下に繋がり易く、例えば暴行してもチェックされず、暴行ではないが無視するということも起こりうる。そのため、0歳から学齢期の児童まで切れ目なく質の高い保育サービスを提供して子育て世帯を支援できるように、政府だけでなく地方自治体やJA・企業の工夫も望まれる。

*5-1:https://www.agrinews.co.jp/p46915.html (日本農業新聞 2019年3月2日) JA保育園開園 育休復帰支える えひめ中央
 JAえひめ中央は1日、松山市のJA本所と同一敷地内に企業主導型保育「おひさま保育園」を開園した。企業主導型保育は西日本エリアの総合JAで初の試み。同日に入園式を行い、0~2歳の子ども7人が保護者に抱かれ、元気に登園した。JAは、職員の育児休業後の復帰を支援し福利厚生を充実させようと、構想も含め約2年前から開園準備を進めてきた。「おひさま保育園」は、JA本所とJA農産物直販所「太陽市」両建物の中間地点に建つJA新施設「MATTERU(まってる)」内に設置。「おひさま保育園」の運営は社会福祉法人育和会が行い、保育対象は0~2歳、定員は18人。うち半数を地域枠とし、地域の待機児童改善や若年層のJA利用促進を図る。同園には調理室を設置。「太陽市」の食材などを使用した温かい給食が提供できるだけでなく、1、2歳の園児が過ごす部屋からガラス越しに調理する様子が見える設計にして、園児の食への関心を高める工夫を施した。木製のおもちゃやカラフルな絵本など園児の想像力を膨らませるアイテムも多く、小規模園ならではのアットホームな環境づくりで質の高い保育を目指す。入園式後、園内の利用方法の説明を受けた保護者からは「働く女性にとって、すごくありがたい保育園。布団などもすでに準備していただき、親の負担が少ない。隣りにはJA直販所もあるので、迎えついでに買い物もできて便利」と話す。「MATTERU」はJA直営レストランやカフェ、金融共済窓口やローンセンターなどを兼ね備えた複合施設。グランドオープンは4月7日。

*5-2:https://www.nishinippon.co.jp/nnp/syasetu/article/491231/ (西日本新聞 2019年3月3日) 学童保育の未来 運営の質が下がらないか
 共働き家庭などの小学生を、学校や児童館などで預かる放課後児童クラブ(学童保育)について、政府が運営基準を緩和する方針を打ち出した。現行制度では、1カ所につき職員2人以上の配置が義務付けられている。これを従うべき基準ではなく、参考とすべき基準(参酌基準)に改め、自治体の裁量を広げて、1人にもできるようにするという。学童保育は全国に約2万5千カ所あり、登録児童数は120万人を超えている。働く女性の増加とともにニーズも高まっているが、整備が追い付いていない。2018年5月時点で利用できない待機児童は、全国で約1万7千人、九州7県では約1800人を数える。国は19年度から5年で30万人分の受け皿を整備する方針を示した。これに対し、地方では職員の確保が難しいといった理由で、全国知事会などが運営基準の緩和を国に求めていた。利用者の数は確かに、地域や時間帯によって異なる。全国一律の基準が緩和され、地域の保育需要に応じて柔軟な対応が可能になれば、待機児童を減らせる自治体もあるだろう。とはいえ、児童を見守る職員の数を減らすことは、サービスの質や安全性の低下につながりはしないか。強い疑念が残る。学童保育の運営主体は自治体や社会福祉法人、保護者グループなどさまざまだ。習い事を導入するなど、多様な取り組みが評価される一方で、さまざまな問題も指摘されている。1カ所当たりの児童数の目安は40人以内とされるが、利用定員が70人を超えるケースもある。施設や設備が貧弱な所も少なくない。職員待遇は総じて低く、人材が集まらない大きな要因となっているという。運営時間の短さも利用者に不評だ。そもそも、国が15年に職員配置基準を導入した理由は、規制が緩やかな学童保育の安全性を担保することにあったはずだ。自治体の求めに応じて基準を緩める前に、国は地方の人材確保や施設整備を財政支援の拡充で後押しすべきではないか。もし、基準を緩和する場合、自治体はサービスの質と安全性の確保に重い責任を負うことを自覚する必要がある。主に子育てしながら働く女性を念頭に置いた「小1の壁」という言葉がある。学童保育に入れない、たとえ入れても運営時間が短いために、保育所を利用できていた時より仕事と育児の両立が難しくなる現状を指す。男性も女性も共に働き、子育てする時代である。0歳児から学齢期まで切れ目なく共働き世帯を支援できる体制構築へ、骨太の議論を国に求めたい。

<外国人の就学義務>
PS(2019年3月5日追加): *6の「就学させない」というのは、外国人の子どもの学ぶ権利を侵害するとともに、日本と母国の架け橋となれる将来の労働力の質を落とすため、義務教育への外国人の就学を法律に明記した方がよい。また、児童労働や(特に女子の)低年齢での結婚習慣がある地域から来る外国人労働者もいるため、これらは明文の規定で禁止した方がよいと考える。

*6:https://mainichi.jp/articles/20190304/k00/00m/010/156000c?fm=mnm (毎日新聞 2019年3月5日)就学しない外国人の子、初の全国調査へ 1万6000人以上確認できず
 日本に住民登録している義務教育年齢の外国人のうち、1万6000人以上が学校に行っているか確認できていない問題で、文部科学省は来年度、初の全国実態調査に乗り出す方針を固めた。4月の改正入管法施行で「外国籍児」がさらに増加すると予想される中、就学機会の確保を徹底する必要があると判断した。全国の1741自治体に就学不明児の人数を照会し、全体像を確認。就学状況の把握に向けた取り組みの有無も調べる。調査は4月以降、自治体の協力を得て実施する。住民登録がある6~14歳の外国籍児のうち、学校に行っているかどうか分からない就学不明児を集計すると同時に、自治体が就学状況を把握するための戸別訪問などに取り組んでいるか調査する。先進的な事例を紹介し、他の自治体に導入を促すことも検討する。日本人の場合、保護者は憲法で子どもに教育を受けさせる就学義務を負うが、外国籍は対象外で受け入れるかどうかは自治体に委ねられている。そのため就学不明や、学校に行かない不就学となる外国籍児は少なくない。毎日新聞が昨秋、外国籍児の多い上位100自治体を対象に実施したアンケートでは、外国籍児約7万7500人のうち、2割にあたる約1万6000人が就学不明だった。外国籍児の多い浜松市や岐阜県可児市などは、就学状況を把握して就学を促すため、戸別訪問や外国人学校への在籍確認、出入国履歴の確認といった独自の調査を進めてきた。一方、就学義務がないことなどを理由に、事実上、放置したままの自治体もあり、対応には温度差がある。文科省は2005~06年度、外国籍児の多かった1県11市の協力を得て、就学不明の外国籍児の世帯を戸別訪問し、112人の不就学児の発見につなげた。不就学調査はその後、希望する自治体に補助する形で断続的に行われてきたが、全国調査は実施されたことはなかった。文科省の担当者は「全国の外国籍児の就学状況を明らかにし、結果を分析することで、就学機会を確保するために何が必要か課題を見つけたい」と話している。

<日本における女性議員割合の低さ>
PS(2019年3月6、7日追加):*7-1のように、2018年における議員の女性割合は、日本は193カ国中165位、G7では日本以外に100位台の国はなく、新興国を加えたG20でも最下位だったそうだ。議会への女性進出が進めば、特に教育・保育・医療・介護等の社会保障が現実を踏まえて大きく前進すると思うが、*7-2のように、国会議員だけでなく地方議員の女性割合も著しく低い。その原因は、候補者の公認や推薦、有権者の投票行動、メディアや司法はじめ周囲で選挙を支える人々など多くの国民に女性蔑視や女性に対する偏見が潜んでいるため、(後で書くが)本当に変えるにはなかなか根深いものがあるからだ。
 なお、*7-2に、「①全国の地方議会に占める女性ゼロの割合は19.5%だが、九州は女性0議会が25%あり、全国平均にも届かず男女共同参画が進んでいない」「②現職の女性市議らが『九州の女性議員をふやす会』を設立して女性議員の割合を高めることを目指している」と書かれており、②については、良い傾向だと思うが、①については、東北地方等も同じ傾向ではないかと思う。また、「③議員の平均年齢は62.7歳で報酬格差が71万円あり、定数7の議会もある」と書かれているが、離島・過疎地は人口が少なく高齢者割合が高いため、中には住民の最低年齢が65歳以上という所もあるので、人口構成と比較する必要がある。さらに、“働けない高齢者”の定義は、2015年の65歳の日本人の平均余命が男19.57(平均寿命84.57)・女24.43(平均寿命89.43)であるため、65歳では速すぎ少なくとも男75歳・女80歳くらいになるだろう。なお、0歳児の平均余命が平均寿命で男81.29・女87.06だが、0歳児の平均寿命が65歳の平均寿命より短い理由は、65歳の人の平均寿命には0歳~64歳で亡くなった人を入れないからである。


2019.3.6           福岡県男女共同参画センター         2019.3.7
東京新聞                                 西日本新聞

(図の説明:左図のように、2018年における議員の女性割合が、日本は193カ国中165位だった。その内訳は、右の3図のように、議員・役員・管理職などリーダーシップや意思決定を要する立場でとりわけ女性の割合が低く、これはコンクリートの天井があることが理由のようだ)

*7-1:https://www.tokyo-np.co.jp/article/world/list/201903/CK2019030602000274.html (東京新聞 2019年3月6日) 女性議員割合、日本165位 G20中最低 政治参加進まず
 世界の国会議員が参加する列国議会同盟(本部ジュネーブ)は五日、八日の国際女性デーを前に、二〇一八年の各国議会の女性進出に関する報告書を発表した。百九十三カ国の中で日本は前年より七位下げ、百六十五位だった。衆院の女性議員は四十七人で、割合は10・2%。総選挙が実施されていないため前年の数字とほぼ同じだが、相対的に順位を落とした。先進七カ国(G7)では日本以外に百位台の国はなく、中国、ロシアなどの新興国を加えた二十カ国・地域(G20)でも日本は最下位。安倍政権が女性活躍推進を掲げながら、女性の政治参加が進まない現実が浮き彫りになった。一院制の議会または下院で女性議員が占める割合を比較。世界全体の女性議員の割合は24・3%で、一九九五年から13ポイント上昇した。地域別では米州がトップで、グレナダ、コスタリカなど中南米諸国の伸びを背景に地域として初めて30%を超えた。欧州(28・5%)、サハラ砂漠以南のアフリカ(23・7%)、アジア(19・6%)と続いた。報告書は、候補者や議席に占める女性の割合を一定以上にする「クオータ制」が百三十カ国以上で導入され「一八年の選挙結果から、適切に策定されれば議会の男女平等に道を開くことが示された」と指摘した。国別で一位はアフリカのルワンダで、上位には女性の社会進出が進む中南米の国が多く入った。日本より下位に位置するのは、アフリカや中東、太平洋地域の小国が目立った。

*7-2:http://qbiz.jp/article/149871/1/ (西日本新聞 2019年3月7日) 女性ゼロ議会25% 全国平均に届かず 九州の地方議会、進まぬ共同参画
 九州の7県、233市町村の議会のうち、女性議員のいない「女性ゼロ議会」が全体の4分の1(25%)となる60議会を占めている。西日本新聞の議会アンケートの集計。昨年施行された「政治分野の男女共同参画推進法」は、政党に議員選挙での男女の候補者数をできる限り均等にするよう促しており、4月の統一地方選でどれだけ解消されるか注目点になる。県別でゼロ議会が最も多いのは熊本の16議会。ゼロ議会で議員数が最も多いのは福岡県飯塚市(定数28)だった。内閣府の集計で、全国の地方議会に占める女性ゼロの割合は19・5%。九州全体のほか、熊本、鹿児島、長崎、宮崎、大分の各県で全国平均より悪かった。九州の地方議員数は4209人で、女性は398人。全議員に占める割合は9・5%で、全国平均の12・9%(内閣府集計)を下回った。県別では福岡の12・3%が最も高かった。県、市、町村議会別での女性議員の割合は県議7・1%、市議10・4%、町村議8・5%だった。統一選へ、現状打破を図る動きとして、現職の女性市議らが「九州の女性議員をふやす会」を設立。選挙や議会活動のノウハウを共有し、割合を高めることを目指す。メンバーの女性市議は「立候補を考える人の背中を押したい」と動く。熊本大の鈴木桂樹教授(政治学)は「少子高齢化社会を迎え、より生活に近い政策が求められている。女性が政策決定プロセスに入っていないのは問題。政治は男がやるものだとのイメージが強いのかもしれない」と分析。政治分野の男女共同参画推進法が努力目標であることを指摘し「増やすには(候補者や議席に占める女性の割合を一定以上にする)クオータ制の導入などが必要だろう」と話した。アンケートの実施方法  アンケートの実施方法 アンケートは昨年12月〜今年1月、九州7県と全市町村、計240議会を対象に実施した。前回、統一地方選があった2015年から18年にかけての議会活動について、ウェブ入力やメール、ファクスでそれぞれの議会事務局から回答を得た。議員数や平均年齢などは今年1月1日時点。今年あった議員選の結果は反映していない。
   ◇   ◇
●平均年齢62.7歳 報酬格差71万円 定数7の議会も 
 全議員4209人の平均年齢は62.7歳、議員定数7人の議会も−。西日本新聞が九州7県の240議会に実施したアンケートで、九州の地方議会のさまざまな姿が浮かび上がってきた。平均年齢65歳以上の議会は68あり、全体の約3割を占めた。県、市、町村別に見ると、町村議の平均年齢が最も高く、県議よりも3.9歳高かった。毎月の報酬の全議員平均は31万8574円。最高の福岡県(89万円)と最低の長崎県小値賀町(18万円)では71万円もの差があった。3番目に低い宮崎県五ケ瀬町(18万8000円)は、4月から4万円引き上げて22万8000円となる。県議と町村議の平均報酬額には約56万円の差があった。政務活動費を支給しているのは101議会だった。議員定数が最も多いのは福岡県の86で、4月の改選時には1増の87となる。最も少ないのは鹿児島県の離島、三島村の7だった。直近の議員選の平均投票率は66.90%。県議48.91%、市議62.19%で、町村議の72.60%が最も高かった。

| 教育・研究開発::2016.12~ | 05:10 PM | comments (x) | trackback (x) |
2019.1.31 EUに遠心力が働いた理由と日本の政府債務削減・自由貿易政策への呼びかけ (2019年2月2、3、4、7、9、10、12、13、16、18、19、21、22、23、24、25、26日、3月2、3《図》日に追加あり)
  
 2018.10.21朝日新聞        2017.9.1毎日新聞      2018.11.9時事

(図の説明:英国がEU離脱の国民投票を行った際、アイルランドでは反対が多く、特に北アイルランドは民族が北欧に近い。そのためか、英国は、離脱後も北アイルランドとEUを検問なしの状態にしたがっている。また、EU離脱の手切れ金は最大5.8兆円とされている)

 
  2018.7.10毎日新聞      2019.1.6毎日新聞    2018.12.21毎日新聞

(図の説明:左図のように、1年間に入国した移住者は、ドイツ・米国が多く、英国・日本・韓国は、その1/3~1/2で同程度だ。また、中央の図のように、日本の財政は悪化の一途を辿り、現在はGDPに対する債務残高が世界一である。さらに、2019年度予算案は、歳入・歳出が右図のようになっているが、地方が稼げれば地方交付税は減らせるし、借り換えすれば国債利子は減らすことができる。また、防衛費は多すぎるだろう)

(1)「保護主義」「ポピュリズム」「ナショナリズム」の定義は何なのか
 「スイスで開かれたダボス会議は、各国でポピュリズムとナショナリズムが台頭して国際協調や自由貿易の理念が揺らぎ、グローバル化の価値に関する議論が熱を帯びた」と、*1-1-1に書かれているが、トランプ米大統領が国境の壁を作ると主張したり、メイ英首相が英国のEU離脱交渉で苦労したりしているのは、反グローバル主義ではなく、国の主権が認められないほど過度な自由化を強制されることに対する国民の異議申し立てを反映したものである。

 そのため、これら多くの国民の異議申し立てを、*1-1-2のように、ポピュリズム(*1-6のうちの大衆迎合主義)として保護主義や国際協調の危機と一刀両断するのは、日本とは違って、既に徹底してグローバル化を行ってきた国の人々が到達した真理を無視する周回遅れの解釈であり、ポピュリズムなどと言っている人の方が、思考停止していると考える。

1)日本の経産省発案のTPPについて
 日本政府は、*1-1-3のように、「自由貿易の旗手として全力を尽くす」としているが、徹底したグローバル主義のEUは、*1-2-1のように、対米貿易交渉で農産品を除外した。何故なら、世界人口が爆発的に増加している中では、長期的には食糧を自給できる政策が必要であり、*1-2-2のように、狭い範囲の現在しか考えていない政策では、経済発展どころか自国民への食料確保もおぼつかなくなるからで、これもりっぱな産業政策なのである。

2)英国のEU離脱について
 メイ首相は、*1-3-1のように、国民投票で決まったEU離脱に向けた国内の合意形成に苦労しているが、その理由は、*1-3-2のように、①350億─390億ユーロ(410億─460億ドル)ものEUへの清算金支払い ②スコットランドの独立問題 ③EUの後押しを受けた北アイルランドのEU離脱反対 などだそうで、気の毒なほどの難題だ。

 そして、*1-3-3のように、2019年1月29日、英下院はEUとの離脱合意案の修正を求める議員提案を賛成多数で可決したが、EUのトゥスク大統領は、「離脱協定は再交渉しない」「英側が要求すれば離脱延期を検討する」としているそうで、私には、EUの要求は高すぎる手切れ金に思える。

 この両方を解決する方法としては、民族がヨーロッパに近くEU離脱反対が多かったことから、北アイルランド(又はアイルランド)を特区としてEUに加盟させ、その面積分の拠出金を支払い続けて、その面積に比例して手切れ金をカットしてもらうのはどうだろうか。その時、北アイルランド(又はアイルランド)と英国の間には税関が復活するのが道理で、そうなると公用語が英語というメリットがあるため、EUを視野に入れる企業は北アイルランド(又はアイルランド)に集積することになるだろう。

3)ギリシャの緊縮策について
 ギリシャは、*1-4のように、金融支援したEUの要求で、年金削減や増税などの緊縮策により財政黒字化を達成し、2017年には3年ぶりにプラス成長に転換したが、国内総生産(GDP)はギリシャ危機前に比べて約4分の3の規模に縮小したそうだ。

 EUは単一通貨ユーロを使うため、財政統合や共通予算の導入などが要求され、金融政策や財政政策の独立性が乏しい。もちろん、①速すぎるリタイアと年金受給 ②高すぎる公務員割合では、どこの国でも持続可能性がないが、国によって積極財政による投資を行うべき時期と財政黒字化に専念すべき時期に差があり、①②を解決するには、民間のよい仕事を増やして失業率を下げなければ国民が生活できなくなる。

 にもかかわらず、EUのように一律に財政規律のみを言っていると、それぞれの国の個性を活かした発展ができず、北部欧州と南部欧州の両方で不満が溜まる。そして、多くの国民が感じているこの真実を、「内向き姿勢のポピュリズム(大衆迎合主義)」として切り捨てていると、問題を深刻化させると同時に、遠心力を働かせることになるわけである。

4)イタリアの予算について
 イタリアも、*1-5のように、2019年予算案についてEUから修正を求められ、その内容は、公的債務の多いイタリアの支出増に対する懸念だそうだが、やはり失業者に対する支出を減らすには積極財政によって必要な投資を行い、失業者を減らす必要がある。そして、イタリアもギリシャも、歴史的建造物は壊れ、街が博物館のようになっているため、やるべき仕事は多い。

 なお、イタリアの公的債務残高は対GDP比131パーセントで、EU加盟国では金融支援を受けたギリシャの債務残高(GDP比179%《2016年》)に次いで2番目に多いとのことだが、これは、*2の日本の政府債務(GDP比239%《2016年》)よりずっと低い。しかし、公的債務や政府債務のみを取り上げて議論するのは間違っており、国有財産を差し引いた純債務について議論すべきであり、国有財産(資源を含む)は活かして使わなければならないのである。

(2)日本政府の債務について
 主に日本の財務省発の意見なのだが、*2は、GDP比で239%(2016年)もの世界一の借金を抱えている日本政府の財政の悪化が真の国難であり、その解決策は、①ハイパーインフレによる国の借金棒引き ②大幅増税 ③社会保障費などの国民に対するサービスの大幅削減 しかなく、①は副作用が強すぎるため、②③の併用を徐々に進める以外には処方箋はないとしている。

 この思考でおかしいのは、歴史のみを参考にし、条件は変わらないと見做して、小中学生でもできるような数字の加減乗除だけで結論を出していることだ。しかし、実際には、これまで利用していなかった資源を利用できるようになったり、生産性が飛躍的に伸びたり、それを支える国民の教育水準が上がったりしているため、それらを無駄にすることなく利用すべきなのだ。

・・参考資料・・
<国境を護ることは、大衆迎合主義か?>
*1-1-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190127&ng=DGKKZO40529660W9A120C1EA1000 (日経新聞 2019年1月27日) ダボス会議を陰らす反グローバル主義
 スイスで開いた世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)は、グローバル化をめぐる世界のきしみを色濃く映し出す会合となった。各国でポピュリズムとナショナリズムが台頭し、国際協調や自由貿易の理念が揺らぐ中で、グローバル化の価値をどう再定義するかという議論が熱を帯びた。政治ショーとして見ると、今年のダボス会議は精彩を欠いた。トランプ米大統領、メイ英首相、マクロン仏大統領らが、国内の混乱のため欠席したためだ。米国の「国境の壁」や英国の欧州連合(EU)離脱をめぐる騒動は、それぞれの国内で高まる反グローバル主義の帰結でもある。自分がグローバル化の犠牲者だと感じる人々が増え、多くの民主主義国で排外的な政治家が支持されている。この世界の現実に目を背けることはできない。グローバル化の旗を振ってきたダボス会議が、グローバル化のあり方を問い直す場に変質したといえる。だが、ダボスを悲観論が覆っていたわけではない。ショーの派手さはないが、企業経営者や学術界の重鎮が、膝を詰めて議論を深めた意義は大きい。単にグローバル化を礼賛するだけの理想論は聞こえず、課題ごとに現実的な打開策を探ろうとする声が目立った。注目を集めた個別の議題には、機能不全に陥った世界貿易機関(WTO)の改革、データ流通の国際ルールづくり、人工知能(AI)開発の指針、プラスチック環境汚染への取り組みなどがある。こうした国家単位では解決できない課題に焦点を当てて、各国の有力者が問題意識を共有すれば、反グローバル主義の抑制にもつながる。会議で浮き彫りになったのは、格差や衝突を生むのではなく多様な価値観を包み込む新しいグローバル化への期待である。米中欧の首脳がいないダボス会議は、安倍晋三首相が存在感を示す好機となった。日本が主導した電子商取引(EC)の国際ルールづくりで、中国を含む76カ国・地域が正式協議の開始で合意したのは、日本外交の成果といえる。とはいえ、6月に大阪で開く20カ国・地域(G20)首脳会議への意欲を語る首相の講演が、大きな反響を呼んだとは言い難い。米欧の指導力が衰えた今、国際秩序の再構築で日本が果たすべき役割は重い。世界に向けて語る言葉が説得力を持つには、経済と外交で着実に実績を積むしかない。

*1-1-2:http://qbiz.jp/article/147291/1/ (西日本新聞 2019年1月17日) 反保護主義へ、日本がG20主導 麻生氏「国際協調が危機」
 新興国を含む20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁代理会議が17日、東京都内で開かれ、日本が議長国を務める2019年のG20が始動した。米中貿易摩擦が深刻化する中での開催となり、麻生太郎財務相は冒頭で「国際経済秩序や国際協調は危機にひんしている」と強調。反保護主義や自由貿易体制の維持に向け、日本が議論を主導していく決意を表明した。日銀の黒田東彦総裁も「国際貿易は経済成長や生産性の向上をもたらす」と述べ、自由貿易の重要性を訴えた。代理会議は18日まで。G20は08年に起きたリーマン・ショックの克服に成果を上げたが、昨年の首脳宣言ではトランプ米政権の意向で反保護主義の文言が削られるなど、最近は協調体制の揺らぎが目立つ。米国が問題視する貿易赤字は旺盛な国内消費などの構造要因によるもので、米中や日米などの2国間交渉では解決困難だとの認識の共有を目指す。また中国を念頭に途上国融資の規模などの透明化を提案。米中に自制を促し、世界経済の安定成長への回帰を狙う。多国籍IT企業のデジタル取引への課税や仮想通貨への規制でも国際的な合意を目指す。高齢化による労働力不足などを乗り越える経済政策も議題とする。議論は、6月の財務相・中央銀行総裁会議(福岡市)や首脳会合(大阪サミット)に向けて行われる。日本はG20議長国として農相会合(新潟市)や労働雇用相会合(松山市)なども主催する。

*1-1-3:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO40223950Z10C19A1000000/ (日経新聞 2019/1/19) TPP閣僚級会合が開幕 首相「自由貿易の旗手へ全力」
 環太平洋経済連携協定(TPP)に参加する11カ国の閣僚級会合「TPP委員会」が19日、都内で開幕した。安倍晋三首相は会合の冒頭で「自由貿易の旗手として全力を尽くす決意だ」と述べた。「保護主義への誘惑が生まれているが、時計の針を決して逆戻りさせてはならない」と強調した。米中が追加関税の応酬を繰り広げるなど保護主義が世界で広がっており、首相は自由貿易圏の拡大の重要性を訴えた。TPPは昨年12月に発効した。閣僚級会合の開催は発効後初めて。茂木敏充経済財政・再生相が議長を務める。新たに加入を希望する国・地域との具体的な交渉手順などを正式に決定する。首相は「私たちの理念に共鳴し、TPPのハイスタンダードを受け入れる用意のある全ての国・地域に対し、ドアはオープンだ。自由で公正な貿易を求める多くの国々の協定への参加を期待している」と述べた。閉幕後に共同声明を発表する。

*1-2-1:http://qbiz.jp/article/147404/1/ (西日本新聞 2019年1月19日) EUが対米貿易交渉指針案を発表 農産物除外、立場に隔たり
 欧州連合(EU)欧州委員会は18日、米国との貿易交渉の指針案を発表した。工業製品の関税や非関税障壁の撤廃で合意を目指すことに集中し、農産品は交渉から「除外する」としている。ただ、米通商代表部(USTR)は11日、対EU交渉で農産品の包括的な市場開放を目指すと議会に通知。米欧の立場の隔たりは大きく、交渉入りが遅れる可能性がある。その場合、業を煮やしたトランプ米大統領が、欧州製自動車などに対する高関税導入を再び訴える恐れもありそうだ。EUの通商担当閣僚に当たるマルムストローム欧州委員は記者会見で、交渉開始時期は「(加盟国の貿易担当)閣僚理事会が決める」と述べるにとどめた。また、広範な自由貿易協定(FTA)を結ぶつもりはないと強調した。米農産品の輸入拡大はEU有力国で農業国のフランスなどが強く反対している。ユンケル欧州委員長とトランプ大統領は昨年7月、「自動車を除く工業製品」の関税撤廃協議の開始で合意。これによってトランプ氏が「本丸」と位置付ける欧州製自動車への高関税の発動をひとまず阻止した。

*1-2-2:https://www.agrinews.co.jp/p46499.html (日本農業新聞 2019年1月22日) 政治経済システムと経済学の欠陥 誤った「合理性」前提  東京大学大学院教授 鈴木宣弘氏
 日本は「保護主義と闘う自由貿易の旗手」のように振る舞っている。規制緩和・自由貿易を推進すれば、「対等な競争条件」で経済利益が増大すると言われると納得してしまいがちであるが、本質は、日米などのグローバル企業が「今だけ、金だけ、自分だけ」(3だけ主義)でもうけられるルールを世界に広げようとするたくらみである。現地の人は安く働かされ、国内の人も低賃金で働くか失業する。だから、保護主義VS自由貿易は、国民の利益VSオトモダチ(グローバル企業)の利益と言い換えると分かりやすい。彼らと政治(by献金)、行政(by天下り)、メディア(byスポンサー料)、研究者(by資金)が一体化するメカニズムは現在の政治経済システムが持っている普遍的欠陥である。環太平洋連携協定(TPP)は本来の自由貿易でないとスティグリッツ教授は言い、「本来の」自由貿易は肯定する。しかし、「本来の」自由貿易なるものは現実には存在しない。規制緩和や自由貿易の利益の前提となる完全雇用や完全競争は「幻想」で、必ず失業と格差、さらなる富の集中につながるからである。市場支配力のある市場での規制緩和(拮抗=きっこう=力の排除)はさらなる富の集中により市場をゆがめるので理論的に間違っている。理論の基礎となる前提が現実には存在しない「理論」は本来の理論ではない。理論は現実を説明するために存在する。「理論」に現実を押し込めようとするのは学問ではない。3だけ主義を利するだけである。本質を見抜いた米国民はTPPを否定したが、日本は「TPPゾンビ」の増殖にまい進している。実は、米国の調査(2018年)では、国際貿易によって国民の雇用が増えるか減るかという質問への回答は、米国が増加36%、減少34%に対し、日本は増加21%、減少31%。日本人の方が相対的に多くが貿易が失業につながる懸念を持っているのに、政治の流れは逆行している。理由の一つは、日本では国民を守るための対抗力としての労働組合や協同組合が力を巧妙にそがれてきたことにある。米国では最大労組(AFL―CIO)がTPP反対のうねりを起こす大きな原動力となったのと日本の最大労組の行動は、対照的である。 「自由貿易に反対するのは人間が合理的に行動していないことを意味する。人間は合理的でないことが社会心理学、行動経済学の最近の成果として示されている」と言う経済学者がいるが、行動経済学は人間の不合理性を示したのでなく、従来の経済学の前提とする合理性を否定したのである。3だけ主義で行動するのが「合理的」人間ではなく、多くの人はもっと幅広い要素を勘案して総合的に行動する。それが合理性である。米国でシカゴ学派の経済学をたたき込まれた「信奉者」たち(無邪気に信じているタイプも意図的に企業利益のために悪用しているタイプも)は、誤った合理性と架空の前提という2大欠陥を直視すべきだ。

*1-3-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190117&ng=DGKKZO40100720X10C19A1MM0000 (日経新聞 2019.1.17) 英議会、僅差で内閣不信任案否決 メイ首相続投、EU離脱 混迷続く
 英議会は16日夜(日本時間17日早朝)、メイ内閣の不信任決議案を採決し、与党・保守党などの反対多数で否決した。メイ首相はひとまず目先の危機を乗り切り、欧州連合(EU)からの離脱に向けた国内の合意形成に注力する。ただ15日に大差で否決された英・EUの離脱案に代わる案をまとめるのは簡単ではなく、英政治の混迷は続きそうだ。不信任決議案は英・EUで合意した離脱案の否決を受けて、野党第1党の労働党が提出した。採決には下院議員650人のうち、議長団などを除いた議員が参加。賛成306票、反対325票だった。閣外協力している北アイルランドの地域政党、民主統一党(DUP)の10人が反対に回り、DUPの支援がなければ不信任決議案が可決しかねない僅差の投票結果だった。続投が決まったメイ首相は「国民との約束であるEU離脱のために働き続ける」と語った。15日の離脱案の採決では保守党など与党内から大量の造反が出たため、政府側が230票差という歴史的な大差で敗れた。だが今回の不信任決議案では与党議員が解散・総選挙で議席を失うことを恐れ、メイ首相の支持に回った。不信任を免れたメイ英首相は今後、21日までに代替案を議会に提示する。英議会によると代替案の採決は30日までに行われる予定だ。メイ首相は英議会で支持を得られる案をつくるため、各党幹部と個別に会談を重ねる方針。そこで国内の意見を固めたうえで、EUとの再協議に臨みたい考えだ。ただ英議会ではEUとの明確な決別を求める意見もあれば、2度目の国民投票によるEU残留を求める声もあるなど議論の収拾がつく見通しは立たない。一方、EU側は離脱案の修正を認めておらず、仮に英側が超党派協議で案をまとめてもそれを受け入れるとは限らない。代替案が1つに絞れない中で経済に混乱を及ぼす「合意なき離脱」を避けるには、離脱時期の延長も視野に入る。欧州委員会の報道官は「英国が正当な理由を示せば、EU首脳は離脱時期の延期を受け入れる可能性がある」と語った。

*1-3-2:https://blogos.com/article/324715/ (ロイター 2018年9月13日) 英EU離脱交渉、合意可能だが決裂なら清算金支払わない=英担当相
 英国のラーブ欧州連合(EU)離脱担当相は12日付の英紙デーリー・テレグラフへの寄稿で、離脱後の関係を巡るEUとの合意は手の届くところにあるとの見方を示した。ただ、交渉が決裂した場合は離脱に伴う「清算金」の支払いを見送ることになると表明した。EU当局者らによる最近の発言を背景に、英国とEUが将来的な通商関係について合意することは可能との期待感が強まっており、ポンドは他通貨に対してここ数週間で上昇している。ただ、来年3月29日の離脱日が刻一刻と近づくなか、交渉はまだ決着しておらず、「合意なきブレグジット(英EU離脱)」のシナリオがなお存在している。ラーブ氏は「EUが英国に匹敵する野心と現実主義を掲げるならば、合意は手の届くところにある」と記した。EUのバルニエ主席交渉官が最近使った表現を踏襲した。ラーブ氏はまた、「合意なき」離脱は短期的な混乱をもたらすことになるが、「それを埋め合わせるだけの機会」が英国側に生じることになると指摘。「その場合は英政府はEUと合意した清算金を支払わない。全体の合意がなければ個別の合意は成立しない」と続けた。英国は既に350億─390億ユーロ(410億─460億ドル)の清算金の支払いに合意している。英国のEU離脱後、数十年間かけて支払うことになっている。

*1-3-3:http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2019013001001028.html (東京新聞 2019年1月30日) 英、離脱再交渉要求 EUは拒否、延期検討も
 英下院は29日夜(日本時間30日朝)、欧州連合(EU)との離脱合意案の修正を求める議員提案を賛成多数で可決した。EUに同案の再交渉を求める方針を示したメイ首相を支持した形だが、EUのトゥスク大統領は声明で、合意案の根幹である離脱協定は「再交渉しない」との姿勢を明確にした。離脱が3月29日に迫る中、経済や社会に大混乱をもたらしかねない「合意なき離脱」が一段と現実味を増した。
メイ氏は近くEUに再交渉を求める方針だが、局面打開の見通しは立っていない。こうした中、トゥスク氏は英側が要求すれば離脱延期を検討する用意があると表明した。

*1-4:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO34355090Q8A820C1EA1000/ (西日本新聞 2018/8/20) ギリシャ、自立へ一歩 EUの金融支援が終了
 欧州債務危機の震源地となったギリシャは20日、8年に及ぶ欧州連合(EU)の金融支援から脱却した。ギリシャは自立に向け国債市場に本格復帰し、安定発行という課題に向き合う。一方、単一通貨ユーロの改革は財政統合や共通予算の導入を巡り停滞、危機の再発防止に不安を残す。「生活が良くなる見通しがない。何も変わらない」。20日朝、アテネ中心部の議会前。5年前の失業を機に清掃の仕事を続けるユージニアさん(49)はこぼした。週5日1日12時間働くが月給は400ユーロ(約5万円)にすぎない。ギリシャは2009年に財政粉飾が発覚し、世界の金融市場を揺さぶった。10年から3次にわたった支援の融資総額は国際通貨基金(IMF)拠出分を加えると約2900億ユーロに達した。年金削減や増税などの緊縮策によって、ギリシャは財政黒字化を達成、17年には3年ぶりにプラス成長に転換した。だが、国内総生産(GDP)は危機前に比べ約4分の3の規模に縮小した。ギリシャは今後、債務の借り換えなど財政運営に必要な資金を国債市場から直接調達する。しかし金利はユーロ圏の低利融資を上回り、19年9月に任期満了が迫るチプラス政権も有権者受けを狙ったばらまき策の誘惑がつきまとう。国債の安定発行は容易ではないのが実情だ。四半期ごとに財政規律の順守を点検・監視するEUやIMFとの衝突懸念も拭えない。それでも「グレグジット」(ギリシャのEU離脱)まで取り沙汰されたギリシャ危機だったが、ユーロはひとまず生き延びた。ユーロ圏は危機時に加盟国を支援する常設基金「欧州安定メカニズム(ESM)」を創設。EU基本条約(リスボン条約)上は禁じていた加盟国への財政援助・金融支援に道を開き、危機時の耐性を強化。圏内でバラバラだった金融機関の監督なども一元化した。しかし、ギリシャ危機を結束して乗り切ったものの、平時から危機を予防するユーロ改革は道半ばだ。最たるものが「通貨はひとつだが、財政はバラバラ」という根本問題への対応。ユーロ圏の共通予算編成などを通じて、ドイツなど豊かな北部欧州から南欧への財政資金を移転する必要性が指摘されながらも、南欧のモラルハザードにつながるとの北部の懸念が強く、実現は遠い。ユーロ圏各国でも広がるポピュリズム(大衆迎合主義)の内向き姿勢もユーロ改革をさらに難しくしている。イタリアではポピュリズム政党「五つ星運動」と極右政党「同盟」の連立政権がギリシャ危機の反省で強化されたEUの財政規律ルールに反発。財政を巡る南北対立が再び深まる懸念が強まり、次の危機に結束した対応が取れるかどうかは不透明だ。19年で退任するユンケル委員長をトップとするEUの欧州委員会は現体制下での抜本的ユーロ改革を実質的に断念した。欧州が懸念するのはギリシャだけではない。米国との対立を端緒に通貨が急落したトルコの動きに神経をとがらせる。ギリシャの公的債務残高は17年末時点でGDP比約179%に達するのに対し、約28%のトルコ政府は財政体質は健全とみられるが、政権の強権化や中銀への圧力が通貨の信認低下を招いている。トルコで懸念されているのは、外貨建て債務負担の増大に苦しむ企業の破綻が相次ぎ、影響が銀行部門に及ぶ事態だ。トルコには欧州の主要行も進出している。ギリシャとは異なる種類の金融危機が欧州を襲う可能性は消えていない。

*1-5:https://www.bbc.com/japanese/45961814 (BBC 2018年10月24日) 欧州委、イタリアに予算案修正を要求 史上初
 欧州連合(EU)の欧州委員会は23日、イタリアの2019年予算案についてイタリア政府に修正を求めた。EU加盟国の国家予算案を欧州委員会が拒否したのは初めて。イタリアはユーロ圏で3番目に大きい経済規模を持つが、ただでさえ公的債務の膨らむイタリアの支出増を欧州委員会は懸念している。政権与党のポピュリスト政党「同盟」と「五つ星運動」は、失業者への最低収入保証など支出増を伴う選挙公約の実現を約束している。欧州委員会はイタリアに求める新たな予算案の提出期限を3週間とした。イタリアの予算原案は、欧州委員会の勧告に順守していない部分があり、それが「特に深刻」だと委員会は懸念を示している。欧州委員会のユーロ問題担当副委員長、バルディス・ドムブロフスキス氏は、委員会の懸念に対するイタリアの回答は、懸念緩和に「不十分」だったと指摘。ユーロの規則は全加盟国に平等だと述べた。イタリアのルイジ・ディ・マイオ副首相はフェイスブックに、「イタリア予算案が初めて、EUに嫌われた。特に驚かない。EUではなく、イタリア政府が作った初のイタリア予算だからだ!」と書いた。もう1人の副首相マッテオ・サルビーニ氏は、EUに予算を拒否されても「だからといって何も変わらない」と付け加えた。サルビーニ副首相は「欧州委員会は政府ではなく、国民を攻撃している。イタリア国民をさらに怒らせるだろう」と述べた。
●イタリアがより多くの支出を望む理由
 今年発足したイタリア新政権は、失業者への最低収入保証などによる「貧困の終結」を約束している。
他の貧困対策には、減税や定年引き上げ撤廃など、3月の選挙で重要公約を実現するための施策が含まれている。EUに反発するジュゼッペ・コンテ首相はすでに、財政赤字が国内総生産(GDP)の2.4%より大きくなることはないと主張していた。ただ、財政赤字目標は前政権が提示した予算案の3倍となっている。イタリアの公的債務残高は対GDP比131パーセントとなっており、EU加盟国では金融支援を受けたギリシャに次ぐ2番目。この債務を無理に返済すれば、10年前の金融危機からいまだ回復できていないイタリア国民を苦しめると政府は主張している。イタリア経済は依然として金融危機前の2008年の水準まで回復していない。同盟と五つ星運動は、支出増が経済成長に弾みをつけるとしている。
●劣悪なイタリアの債務状況
 ユーロ離脱について中立を保つイタリアのジョバンニ・トリア財務相と、海外アナリストは、イタリアの財政赤字が対GDP比2%以下を維持し、場合によっては1.6%の低水準にまで下がってほしいと期待していた。EUはユーロ圏の規則として、財政赤字をGDPの3%以下とするよう求めている。GDPの2.4%というイタリアの財政赤字状況はこの制限値に近づいており、同国の債務状況は警戒が必要な水準になっている。ドムブロフスキス副委員長は、「欧州委員会がユーロ圏内の国に予算案草案の修正を求めざるを得なくなったのは今回が初めてだが、イタリア政府にそう要求する以外の代替案はないと判断した」と述べた。イタリアの納税者が、教育費と同じくらいの額を公的債務返済にあてなくてはならない事態になっていると、ドムブロフスキス氏は指摘した。同氏は「ルール違反は、最初は魅力的に見えるかもしれない。自由になるという幻想を提供してくれるので」と述べた。「借金を借金で返そうとするのは、魅力的かなこともしれない。しかしいずれ、債務負担が限界を超えてしまえば(中略) 最終的には一切の自由を失ってしまう」。イタリアが予算案を9月に発表すると、市場の混乱は数週間続いた。欧州委員会が23日にイタリア予算案を拒否すると発表するまで、欧州市場の株価は過去2年近くで最低水準まで下落した。委員会の発表後、市場におけるイタリアの地位の相対基準として使われるイタリア・ドイツ10年債利回り格差は、過去最大となる314ベーシスポイントまで広がった。
<解説>イタリアは譲らない――ケビン・コノリー、BBC欧州特派員
 イタリアはEUと衝突する道に突進しており、論争はユーロ圏を未知の領域に導いている。
EU当局は予算案を拒否し、修正案を要求する権利を持つ。要求が無視されれば、罰金を科すこともできる。EUがこの段階まで進むのは初めてだ。EUの政治的エネルギーは現在、英国のEU離脱交渉に吸い取られている。その最中だというのに、EUはさらに、最大級の加盟国との対立を長引かせることと、他のユーロ圏各国にルール違反をさせないよう強硬策でにらみを利かせることの是非を、比較検討しなくてはならない。イタリア政府は、自分たちが決めた対策は成長回復に必要なものなので、譲歩するつもりはないと主張している。

*1-6:https://dictionary.goo.ne.jp/jn/205148/meaning/m0u/ (Goo) ポピュリズムの意味
 1 19世紀末に米国に起こった農民を中心とする社会改革運動。人民党を結成し、政治の
   民主化や景気対策を要求した。
 2 一般に、労働者・貧農・都市中間層などの人民諸階級に対する所得再分配、政治的
   権利の拡大を唱える主義。
 3 大衆に迎合しようとする態度。大衆迎合主義。

<日本の財政>
*2:https://blogs.yahoo.co.jp/sansantori/43451236.html?__ysp=5pel5pys44Gu5YWs55qE5YK15YuZ5q6L6auYIOWvvkdEUOavlCDoqJjkuos%3D (Yahoo 2017/10/22) 政府債務が対GDP比200%超の国の末路-(1)
 昨夜から雨。今日は衆院選の投票日。午後からは台風接近で雨に加えて強風が吹きそうなので、午前中に投票所に行く予定。安倍総理によると今回は「国難」選挙だそうだが、真の国難とは、日本政府の財政の悪化だろう。GDP比で239%(2016年)もの世界一の借金を抱えている国の国政選挙だというのに、各党の立候補者も、これについては一言も触れようとしない。このままでは、国民全体が本当に「ゆでガエル」になってしまう。書店に行くと、「国の借金をもっと増やしても日本は大丈夫だ!」と主張する本が未だに山積みされている。ということは、今までの延長線上を走っていれば問題ないと考えている日本人が、まだまだたくさんいるということを示している。この機会に、この問題について明確にしておきたい。まずは、過去の歴史のおさらいから。下に過去約130年間の日本政府債務の推移のグラフを示す。青色で示した純債務は、粗債務から政府の保有する金融資産を引いた残りを示している。小さなものも入れると粗債務のピークは三つある。1905年前後の日露戦争、1944年のピークは太平洋戦争、1990年前後のバブル崩壊であり、前の二つは戦争からの財政回復過程である。現在、急速に進行中の政府債務増加は、いつがピークになるのだろうか?さっぱり先が読めない。日露戦争の後、当時の明治政府の財政規律は厳格であった。プライマリーバランスが厳しく守られ、財政は順調に回復している。一方、先の大戦直後の急激な回復は、いわば国による債務の踏み倒しであり、国による国民財産の強奪によって成し遂げられたものである。ハイパーインフレ(消費者物価が戦前の350倍に急騰)と、新円切り替えの強行によって、銀行や国民が抱えていた発行済の国債は紙くずに化けてしまった。国家財政の破産、デフォルトにほかならない。バブル崩壊後のわずかな回復については、プライマリーバランスの健全化と若干の経済成長によるものであった。この辺は大事なところなので、このグラフの出典元である次の記事をぜひ読んでいただきたい。特に、プライマリーバランス実現の先送りを表明した安倍総理、ならびに消費税8%→10%実施の先送りを唱えている野党幹部は必読すべきだと思う。
●「政府債務の歴史に教えられること」 独立行政法人 経済産業研究所
 さて、現在の日本のように対GDP比で200%を超える政府負債を抱えた国家が、破産に陥ることなく健全に財政を回復できた例はいままでにあったのだろうか?筆者は最近、この点に興味を持って時々調べているが、現在までの調査結果によれば、デフォルトを回避できた例は過去にたった二例しかない。いずれも英国に関するものである。一方、過剰な政府債務が原因で国家破綻した例は、それこそ無数にある。下に、英国の過去300年間にわたる政府債務の推移を示す。米国と日本の推移も合わせて示している。なお、このグラフも、上に挙げた経済産業研の記事からの引用である。第二次大戦後の日本のように国家破綻した場合には、債務が急速にほぼゼロとなる。これに対して、英国・米国のように、経済成長、緊縮財政、ゆるやかなインフレによって安全に財政が改善した場合には、債務は時間をかけて徐々に下降していることがよく判る。英国の政府負債推移の中の1820年前後のピークは、1815年に終結した対仏ナポレオン戦争の戦費によるものである。この巨額負債は、大英帝国の全盛期であった19世紀末のビクトリア女王の時代までかかって返済されている。ご存知のように、19世紀の英国はインドや東南アジアなどの海外に膨大な植民地を領有していた。国内では蒸気機関を応用した鉄道や織物産業などが飛躍的に発展して産業革命が進行中であった。また、インドで栽培したアヘンを中国に売りつけるなど、軍事力を背景として弱小国から強引に利益を強奪する手法も得意技だった。これらの急速な経済発展と利益蓄積によって、対GDP比200%の政府負債を約50%まで削減できたのである。次の英国政府負債のピークは、第二次大戦中の1945年の約250%である。1914年に勃発した第一次世界大戦の戦費返済が進まないうちに、第二次世界大戦が始まってしまったのである。二度の大戦後の英国は海外植民地が次々に独立、世界経済の中心は米国に移って国内経済は疲弊した。戦後すぐの労働党による主要産業の国有化も失敗に終わり、英国の製造業はほぼ壊滅した。閉塞状況下の1950年代にはアラン・シリトーの「長距離走者の孤独」などに描写された「怒れる若者たち」が現れた。この流れを受けて1960年代にはリバプールにビートルズ(戦後の英国における最大の世界貢献?)が誕生した。この時期の英国社会の困窮については、次の記事からも読み取ることができる。
●「GDP比250%の政府債務を二度も返した英国」
 1945年から約40年をかけてぼう大な戦費をほぼ返済したわけだが、この間のインフレ率が高かったことも、国民生活では困窮したものの、負債の軽減には効果があった。英国経済が上向きに転じたのは、今世紀になってから世界経済のグローバル化によってロンドンが金融業の中心地として復活したためとされている。現在の国際社会においては、19世紀の英国のような、海外植民地からの収奪、アヘン戦争勝利などによる相手国からの賠償金獲得などは、到底、実行不可能である。日本政府がいま抱えている巨額の政府負債の解消は、次の三種類の方策のいずれかによるほかはない。
① ハイパーインフレによる国の借金棒引き、要するに国家の破産宣言
② 大幅増税
③ 社会保障費などの国民に対するサービスの大幅削減
①は政府自体が無責任極まりないし、あまりにも副作用が強く、かつ社会の大混乱は必至であり回避するのが当然である。②と③の併用を徐々に進める以外には処方箋はないはずだ。国内のエコノミストや経済誌の記事の大部分もほぼ同じ結論なのだが、一部には、「まだ国の借金を増やしても全然OK」というトンデモ論を吹聴している者がいる。「世の中には、タダのメシなどない」(There ain't no such thing as a free lunch.)。次回は、このトンデモ論の中味について調べて見たい。なお、次の資料には、世界各国で過去に発生した国家破綻・デフォルトの事例が多数挙げられています。
●「財政再建にどう取り組むか」 日本総研
 この資料の中の各先進国債務の比較図を下に示しておきましょう。ベルギーやイタリアはいったん債務が100%を超えたものの、自力での財政再建努力によっていくぶんかは回復しています。数年前には破綻が危惧されたあのギリシャも、2016年時点の債務残高はGDP比で179%と最近は債務の増加が止まっています。一貫して債務が増え続けているのは日本だけです。

<国民の資産を大切に活かそう>
PS(2019年2月2、3日追加):*3-1のように、九州・沖縄で大学発ベンチャーの育成を目指して、産学組織「九州・大学発ベンチャー振興会議」が活動しておりよいことだが、課題は「大学から良いシーズが出るかどうか」だけでなく、「良いシーズを見つける眼力」と「育てる力」もある。
 例えば、*3-2のミノムシ糸の量産は、「新たな繊維強化プラスチックとして実用化でき、飼育は温度管理などを徹底すれば場所を選ばない」とされる。また、*3-3のように、温度管理の費用を抑えるために、暑さに強い蚕の新品種を開発することも可能であり、蚕にいろいろな遺伝子を組み込めば、蚕を工場とすることもできる。そして、これらは、教育水準の低い移民の女性にもでき、付加価値の高い仕事にすることが可能だ。さらに、*3-4のように、他国と同じワインやチーズを作って価格競争に苦しまなくても、日本の自然や技術を活かした良い製品を作れば新市場が開けるだろう。例えば、ワインは葡萄を原料にしなくても、耕作放棄されたみかん畑や梨畑のみかんや梨を使って美味しいものができるし、アイスクリームのような冷凍技術を使えば、船で安価に輸送でき、日本独自の美味しさを輸出することも可能だ。そして、このように、地方にも多くのシーズが眠っているため、*3-5のように、水需要が減少していると考えるのは早計だ。近年は、特に水に関して節水を行いすぎて不潔な状況が散見されるため、まずは水不足にならず、節水しなくても流水で十分に洗える社会を作って欲しい。
 なお、*3-6のように、生産調整して作らないことに奨励金を出すやり方は、補助金を使ってやる気を失わせ、耕作放棄地を増やす結果となるなど、稲作で既に失敗している。仮に「“供給過多”で価格を押し下げている」のであれば、国産の牛乳・米粉・小麦粉などと合わせた加工品(プロも使うケーキスポンジ等)にし、国内外に新しい市場を作ればよいと思われる。
 最後に、*3-7の種子は、長年かけて作られた知的所有権の塊であるにもかかわらず、農水省があっさりと種子法を廃止して、国民の財産を投げ捨てた。それに危機感を感じて、地方自治体で種子法を事実上“復活”させたのはよいが、種子を守り育てるためには予算が必要なので、こういう投資にこそ補助金が必要なのである。

   
2018.12.6ITmedia NEWS 2016.2.25毎日新聞      2019.1.17上毛新聞

(図の説明:左図のように、みのむしから世界最強の糸を取りだすことができ、量産も可能だそうだ。また、中央の図のように、蚕は目的の遺伝子を注入することによって、さまざまな特性を持った絹糸を作ることができる。さらに、右図のように、暑さに強い蚕もできている。生物系は、物理・化学よりも科学としての研究・開発が遅れていたため、現在はシーズの宝庫になっており、やり方によっては○兆円市場が期待できそうだ)

*3-1:http://qbiz.jp/article/148161/1/ (西日本新聞 2019年2月2日) 九州の大学発ベンチャー支援、初年度は5400万円拠出 10大学から20件応募
 九州・沖縄で大学発ベンチャー企業の育成を目指す産学組織「九州・大学発ベンチャー振興会議」は1日、事業化に向けた資金を援助する「ギャップ資金」として、2018年度は20件のシーズ(種)に対し、5400万円を拠出したと発表した。18年度が初の資金提供で、10大学から20件の応募があった。5400万円のうち、会議のメンバー企業などが1700万円、ふくおかフィナンシャルグループ企業育成財団が1千万円、残りを大学が負担した。19年度は最大8千万円の拠出が目標。同会議は「メンバー企業や提供額の上積みに加え、大学から良いシーズが出るかどうかが鍵になる」と話した。ギャップ資金は、大学の研究成果の事業化に向け、試作品開発や市場調査に活用する資金。同会議は昨年3月、メンバーの大学や企業が折半し、18年度から5年間、毎年5千万円程度を拠出する計画に合意していた。

*3-2:http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1812/06/news077.html (ITmedia NEWS 2018年12月6日) 「クモの糸を凌駕する」ミノムシの糸、製品化へ 「世界最強の糸」と期待
 医薬品メーカーの興和(名古屋市)と、農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構・つくば市)は12月5日、ミノムシの糸の製品化を可能にする技術開発に成功したと発表した。ミノムシの糸はクモの糸より弾性や強度が高いことを発見。「これまで自然界で最強と言われていたクモの糸をしのぐ、世界最強」の糸だとアピール。新たなバイオ素材としての応用に期待し、早期に生産体制を構築する。ミノムシの吐く糸は、弾性率(変形しにくさ)、破断強度、タフネスすべてにおいてクモの糸を上回っていることを発見したほか、熱に対しても高い安定性を示したという。ミノムシの糸を樹脂と複合することで、樹脂の強度が大幅に改善されることも分かった。ミノムシから1本の長い糸を取り出す技術を考案し、特許を出願したほか、効率的な採糸方法も確立。ミノムシの人工繁殖や大量飼育法も確立したという。ミノムシの糸は、タンパク質から構成されているシルク繊維であるため、「革新的バイオ素材として、脱石油社会に貢献できる持続可能な製品」と期待を寄せるほか、再生医療用素材としての可能性にも期待している。

*3-3:https://www.jomo-news.co.jp/news/gunma/politics/105581 (上毛新聞 2019/1/17) 暑さに強い蚕の新品種 群馬県が開発 夏場も収量と質 維持へ
 近年の夏の猛暑による蚕の成育不良に対応するため、群馬県蚕糸技術センター(前橋市)は16日、暑さに強い新たな蚕品種を育成したと発表した。猛暑でも通常の品種に比べて高品質を維持し、1割以上多い繭の収量を見込める。昨夏の記録的猛暑で、本年度の県内の繭生産量は前年度比1割減の41.07トンに落ち込むなど、高温による障害が顕著に表れており、経営安定のため農家などから対策を求める声が上がっていた。今年夏に農家で実証飼育試験を行い、実用化されれば、9番目の県オリジナル品種となる。
◎最も過酷な7、8月に実証飼育実験へ
 同センターは2012年度から新品種の育成を始め、暑さに強い日本種原種「榛しん」と中国種原種「明めい」を交配した交雑種を生み出した。昨年夏の試験飼育は新品種と、普及している夏秋蚕用品種の「ぐんま200」「錦秋鐘和きんしゅうしょうわ」を同じ条件で育てて比較した。6月26日に掃き立てを行い、7月20日に上蔟じょうぞく。桑を与える4~5齢の12日間の蚕室の気温を調べたところ、夜間も含めて平均気温は30度前後で、日中は40度に達することもあった。飼育の結果、蚕3万匹当たりの収繭量は新品種が48.42キロに対し、ぐんま200が43.55キロ、錦秋鐘和42.62キロと1割以上の差が生じた。品質の目安であり、繭糸のほぐれやすさを示す「解じょ率」は新品種が77%に対し、他の2品種は50%台。新品種は過酷な環境でも生存でき、健全なさなぎの割合も94.30%と高かった。県蚕糸園芸課によると、本年度の蚕期ごとの繭生産量は春蚕16.10トン(前年度比10%減)、夏蚕5.66トン(同19%減)、初秋蚕2.16トン(同26%減)、晩秋蚕13.83トン(同6%減)、初冬蚕3.33トン(同1%増)と、夏の減少幅が大きい。暑さを考慮し、養蚕農家が夏の生産を控える動きもあったという。飼育量の多い春蚕の5月に気温の高い日が続き、成育不良が発生したことも響いた。同課は「猛暑でも育てられれば、養蚕農家の経営の安定を図れる。これまでより、蚕室内の気温に神経質にならずに済むので、生産者の労力軽減につながる」としている。農家での実証飼育試験は夏蚕(7月)か初秋蚕(8月)の時期に行う。その後、9月中旬のぐんまシルク認定委員会での県オリジナル品種の認定を目指す。

*3-4:https://www.agrinews.co.jp/p46610.html (日本農業新聞 2019年2月2日) [メガFTA] 日欧EPA発効 小売り先行値下げ ワイン、チーズ 国産と競合激化
 欧州連合(EU)との経済連携協定(EPA)が1日に発効したことを受け、スーパーなど小売業界でワインやチーズなどの値下げ競争が早くも始まっている。発効と同時に小売価格を1~3割引き下げることで関税削減効果を先取りし、売り上げ増を狙う。関税は、ワインが即時撤廃、チーズは段階的に下がり16年目には無税(ソフト系は枠内)になる。環太平洋連携協定(TPP)と併せ、今後多様な品目で値下げの動きは強まる。国産との競合が激しくなりそうだ。「日欧EPA発効記念・欧州ワイン一斉値下げしました」。大手スーパー・イオンの系列となるイオンスタイル幕張新都心(千葉市)の酒類売り場に大きな看板が置かれた。イタリアやフランスなどのEU産ワインがずらりと並んだ。イオンは同日、全国約3000店舗で、最大330種類のEU産ワインを平均で1割値下げした。同社で販売する輸入ワインの7割の値が下がった。関税撤廃で、1本(750ミリリットル)換算で最大約93円の関税が0円になる。同社は「関税撤廃分より値下げ幅の大きい商品もある」と明かす。値下げは期間限定ではなく継続する考え。同社は今月のEU産ワインの売り上げを前年比3割増と見込む。店舗では同日、EU産食品の特売フェアも開いた。スペイン産豚バラ薄切り肉(100グラム105円)、イタリア産のパスタやトマトソースなどを2、3割安で販売。3日までの期間限定でPRする。値下げはコンビニ業界へも広がる。セブン―イレブンは1日からEU産ワイン3品を1割値下げ。ファミリーマートは2日から14品を最大17%引きで販売する。チーズでは、ソフトチーズの値下げが早くも表面化した。西日本でスーパーを展開するイズミ(広島市)は1日から最大20品のチーズを値下げした。ドイツ産カマンベールを23%安で扱うなど、13日までの限定セールを展開する。日欧EPAでは農林水産物の82%の関税が撤廃され、大幅な自由化となった。EU産のブランド力が消費者に認知されており、「需要拡大が見込める」と大手コンビニ。多様な品目で値下げ競争が進む恐れがある。

*3-5:https://blogs.yahoo.co.jp/toshi8686/65364408.html?__ysp=5rC06YGTIOe1jOWWtumboyDoqJjkuos%3D (読売新聞 2018/11/13) 市町村の水道事業を統合へ…人口減などで経営難
 政府は、水需要の減少で経営悪化が続く市町村の水道事業について、都道府県を調整役に6580事業者の統合を進める方針を固めた。事業の広域化によって経営効率を高めるのが狙いで、2019年度から着手する。事業統合に応じた市町村に対しては、国が財政支援を手厚くする。総務省の「水道財政のあり方に関する研究会」が、こうした方針を盛り込んだ報告書を近く公表する。報告書案などによると、都道府県は域内の水道事業者である市町村と協議し、将来の人口動態などを踏まえて統合すべき市町村の組み合わせを盛り込んだ「広域化推進プラン」を策定する。国は、プランに基づいて統合を進めた市町村に対し、国庫補助金の拡充や地方交付税の増額で実現を後押しするという流れだ。統合の形態は、水道事業全体の経営統合のほか、〈1〉浄水場など一部施設の共同設置・共同利用〈2〉料金徴収や施設管理など業務ごとの共同化――などを想定している。一部の統合でも、工事の一括発注などで無駄なコストを省け、経費削減につながるという。政府が統合を推し進めるのは、人口減などで水の使用量が減り、全国的に経営難が続いているためだ。

*3-6:https://www.agrinews.co.jp/p46615.html?page=1 (日本農業新聞 2019年2月2日) 生産調整鶏卵で発動 1月補填49・418円 
 鶏卵価格が低迷した際に生産調整する国の成鶏更新・空舎延長事業が1日、発動した。実施主体である日本養鶏協会が発表した。今年度の発動は2回目。同日の標準取引価格が1キロ142円となり、発動基準の安定基準価格(163円)を下回ったことを受けた。供給過多で価格を押し下げているため、需給改善で価格安定を図る。価格下落を補填(ほてん)する事業は同日に1月分を発動した。同事業は、成鶏を出荷後、新たにひなを導入せず、鶏舎を60日以上空舎にした生産者に奨励金を交付する。成鶏が10万羽以上の場合は1羽当たり210円、10万羽未満の場合は同270円を交付する。対象期間は1月2日から、価格が安定基準価格を上回る前日まで。今年度は4月下旬~6月下旬に5年ぶりに発動していた。鶏卵価格差補填事業による1月の補填金は1キロ49・418円となった。同月の標準取引価格が111・72円と、基準価格(185円)を下回ったためだ。今年度は両事業の発動回数が多く、財源が枯渇する恐れがあった。必要な財源を確保した上で、1月分の価格差補填金を交付する。そのため、満額(65・952円)の交付とはならない。JA全農たまごの同日の東京地区のM級は1キロ145円。今年の初取引価格(100円)に比べ大きく上げたが、 前年を15%下回って推移する。

*3-7:https://www.agrinews.co.jp/p46530.html (日本農業新聞 2019年1月25日) 種子法廃止の対応 現場の危機 受け止めよ
 命の根幹である種子をなんとしても守る──。思いがうねりとなり自治体を動かしている。主要農作物種子法(種子法)廃止から1年を待たず10道県が種子法に代わる条例制定へ動く。他の県でも意見書の提出が相次いでいる。なぜ廃止したのか。現場の声に耳を傾けたのか。強引な政権運営のひずみである。日本農業新聞が47都道府県に聞き取った。種子法は廃止されたが、各地で事実上の“復活”を遂げた。既に種子の安定供給を担保する新たな条例を制定したのは山形、埼玉、新潟、富山、兵庫の5県。来年度の施行に向けて準備を進めるのは北海道、岐阜、長野、福井、宮崎の5道県。先代から受け継いできた大切な種子を失っていけないとの危機感の表れである。2017年1月から19年1月22日までに地方議会から国会に出された意見書は、衆参併せて250件を超えた。農家や消費者、識者らでつくる「日本の種子(たね)を守る会」による種子法復活を訴える署名は17万筆に達している。憤りの声は自民党の地方議員からも上がっている。福岡県の市議はこう主張する。「種子を守ることは農家の将来を守ることにつながる。党派を超えて条例の必要性を県に求めていく」。岐阜県の市議も「なぜ法律を廃止したのか、いまだに納得できない。種子の尊さに自民も野党も関係ない」。危機感は党派を超えて共有されている。種子法は、食糧の安定確保に向けて1952年に制定された。都道府県に米、麦、大豆の優良な品種を選定して生産し、普及することを義務付け、60年以上守られてきた。国民の食を支える上で、重要な法律だったためだ。だが農水省は、都道府県が自ら開発した品種を優先的に「奨励品種」に指定して公費で普及しており、種子開発に向けた民間参入を阻害していると判断。17年2月に廃止法案が閣議決定され、2カ月後の4月には、わずか12時間の審議時間であっけなく成立した。現場の農家を含め、反対の声が全く聞き入れられなかった。そもそも種子法に民間参入を阻害する規定などない。だが、民間企業の参入を推し進める政府にとって、種子も例外ではなかったといえる。規制改革推進会議に突き動かされるように、廃止在りきで審議が進んだとしか考えられない。そうした中、地方自治体で進む条例化の動きは、種子の品種開発や安定供給に自治体自らが責任を持つという強い意志の表れだ。種子法廃止に対し、地方から「ノー」を突き付けている。このうねりがさらに広がることを期待したい。政府は自治体の動きを真摯(しんし)に受け止め、現場の声を大切にした政権運営をすべきである。4月には統一地方選が行われる。種子法も争点の一つとなるだろう。改めて廃止の意味を問いたい。

<介護や社会保障に関して、軽すぎる論説が多いこと>
PS(2019年2月4日追加):サ高住は、プライバシーを害することなく介護の不要な人から必要性の高い人まで受け入れることができるため、高齢化社会の有力な解の一つであるとともに、学生・単身者・共働き・出産前後の全世代に便利な住宅である。そのため、*4-2のように、高松で老朽マンションを改修してアシストホームを作ったのは一歩前進であり、新築マンションでも家事サポートや訪問介護などのサービスを付けた方が誰にとっても便利だと、私は考える。
 しかし、日経新聞は、*4-1で、家賃の安い住戸は「要介護3以上」の入居者が5割を占め、自立した高齢者向けとの想定に反して特別養護老人ホーム(特養)が対応すべき低所得で体の不自由な人が流入し、安いサ高住は介護報酬で収入を補おうと過剰に介護を提供しがちで、特養より公費の支出が膨らむ懸念があるから問題だとしている。これは、介護制度の理念が、家族を介護に縛りつけずに自宅療養できるようにすることで、散在する自宅に住むよりはサ高住にまとまって住んでもらった方が介護者の負担が軽くなることを考えれば的外れだ。
 また、特養と老健(https://kaigo.homes.co.jp/manual/facilities_comment/list/hoken/tokuyo/hikaku_rouken/参照)の入居条件は特養が要介護3~5、老健は要介護1~5で、居室タイプはどちらも個室と多床室があって、多床室ではプライバシーが保てず、周囲が重度障害者ばかりでは居住環境が悪くなるため、「高齢者だから死ぬまで置いておけばよいだろう」という発想でなければ、要件を満たした民間賃貸住宅を自治体がサ高住として登録するのはよいことだ。
 さらに、日経新聞は、*4-3のように、医療・介護の知識のない大学教授が「①介護従事者の確保に限界がある」「②現物給付の4~6割程度を現金給付して同居家族に介護させよう」「③女性要介護者は男性より家族に大きな負担をもたらす」などと書いた記事を掲載しているが、①については、我が国は外国人労働者の導入に消極的だったため、それを改善した後の動向を見ることが必要である上、②については、家族のうちの誰かが介護を担当することを想定しており、その人は患者の症状を理解した介護ができるのか、密室で家族による高齢者いじめや不正が起こらないかについて検討していない。さらに、③については、疫学的調査に基づいて語っていないと思われ、大学教授が科学的調査に基づかず科学的根拠も示さずに語るのは言語道断である。
 このような中、*4-4のように、外国人労働者受入拡大を行う改正入管難民法施行(2019年4月1日)に合わせ、介護現場で働く外国人や外国人を受け入れる介護事業者を多方面からサポートする「就労支援センター」(ICEC)が福岡県小郡市に発足したのはよいことだが、他地域では介護現場で働く外国人の増加を予定していないと言うのだろうか。また、*4-5のように、少子化で我が国の教育施設は余剰が多くなっているため、大学・専門学校が留学生の比率を上げるのは当然であり、その中に介護や看護も入れればさらによいと思われる。 

*4-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190203&ng=DGKKZO40813420R00C19A2MM8000 (日経新聞 2019年2月3日) 高齢者向け賃貸、安いほど要介護者流入、公的支出 膨らむ懸念
 見守りなどのサービス付き高齢者向け住宅(サ高住=総合2面きょうのことば)。日本経済新聞が全国の利用実態を調べると、家賃月8万円未満の安い住戸は多くの介助が要る「要介護3以上」の入居者が5割を占めた。自立した高齢者向けとの想定に反し、特別養護老人ホーム(特養)が対応すべき低所得で体が不自由な人が流入している。安いサ高住は介護報酬で収入を補おうと過剰に介護を提供しがちで、特養よりも公費の支出が膨らむ懸念がある。サ高住は国が2011年につくった制度。バリアフリーで、安否確認などの要件を満たした民間賃貸住宅を自治体が登録する。18年末時点で全国に約7200棟、23万8千戸が存在する。法律上「住宅」なので介護は義務ではない。訪問介護などを使いたい入居者は介護事業者と契約するが、実際は介護拠点を併設し、事業者が同じケースは多い。明治大の園田真理子教授は「家賃を安くして入居者を募り、自らの介護サービスを多く使わせる動きが起きやすい」と指摘する。
●特養に入れず
 本来、要介護3以上の低所得者の受け皿は公的な色彩が濃い特養だ。毎月一定額の利用料も相対的に安く、その範囲で食事や介護を提供する。必要以上にサービスを増やして、介護報酬を稼ぐ動きは起きにくい。ただ職員不足で受け入れを抑える特養が目立ち、全国に30万人の待機者がいる。行き場を失った高齢者がサ高住になだれ込む。日経新聞はサービス費を含む家賃と入居者の要介護度のデータが公開されている1862棟を対象に、その相関を分析した。家賃の平均は約10万6千円。全戸数に占める要介護3以上の住民の比率は34%だった。家賃別にみると、8万円未満の同比率は48%に達していた。金額が上がるほど比率は下がり、14万円以上は20%にとどまった。「介護報酬を安定的に得るため、要介護度の高い人を狙い、軽い状態の人は断っている」。関東で数十棟を営む企業の代表は打ち明ける。1月に茨城県ひたちなか市のサ高住を訪ねると、併設デイサービスに約10人が集まっていた。多くが車いすに乗る。住民の4分の3が要介護3以上だ。
●介護報酬狙う
 介護報酬の1~3割は利用者負担。残りは税金と介護保険料で賄う。要介護度が進むと支給上限額は増える。介護保険受給者は平均で上限額の3~6割台しか使っていないが、同社の計画上は住民が85%を使う前提だ。「夜勤の人件費を捻出するのに必要。暴利は貪っていない」と主張する。兵庫県で家賃が安いサ高住の管理人も「上限額の90%を併設サービスで使ってもらっている」と話す。16年の大阪府調査では、府内のサ高住は上限額の86%を利用し、要介護3以上は特養より費用がかさんでいた。安いサ高住に要介護度の高い人が集まる傾向は都市圏で顕著だ。8万円未満の物件に住む要介護3以上の比率は首都圏が64%、関西圏が57%。都市圏は土地代が高く、家賃を下げた分を介護報酬で補うモデルが広がっている懸念がある。「デイサービスを『行って寝ていればいい』と職員に説得されて仕方なく使った」。サ高住の業界団体にこんな苦情も集まる。日本社会事業大の井上由起子教授は「国も学者もこれほど介護施設化すると考えていなかった。一部のサ高住が介護報酬を運営の調整弁に使うと、介護保険制度の持続性が揺らぐ」と警戒。運営費は家賃のみで吸収するのが筋だと訴える。すべてのサ高住が過剰に介護をしているわけではないが、個別の実態を捉えるのは難しい。一般社団法人の高齢者住宅協会は「介護状況の開示や法令順守を事業者に強く促していく」という。民間主導のサ高住は行政も運営・整備計画を把握していない。それがサ高住の乱立につながり、介護報酬で経営を成り立たせようとする動きを招く。介護施設との役割分担を明確にし、立地の最適配分も考えなければ悪循環は断ち切れない。(斉藤雄太、藤原隆人、久保田昌幸)
*調査概要 高齢者住宅協会が運営するサ高住の情報提供システムで2018年12月時点に公開されていた家賃と住民の要介護度のデータを抽出。家賃は共益費と見守りのサービス費を含め、同じ施設で最高と最安が異なる場合は中間値を用いた。食事や入浴の介助が必要で、特養の入所基準である「要介護3」以上の住民の割合を家賃の水準別に分析した。

*4-2:https://www.nikkei.com/paper/related-article/tc/?b=20190203&bu=BFBD・・ (日経新聞 2019年2月3日) 高齢者向け賃貸、安いほど要介護者流入 公的支出 膨らむ懸念サービス付き高齢者向け住宅 老朽マンションを改修 高松のSUN
 介護事業を展開するSUN(高松市)は老朽化したマンションを改修し、一部をサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)として提供する=写真。サ高住と賃貸マンションが同一の建物に混在するのは香川県では初めて。老朽化したマンションの空き部屋対策につながるという。1986年に完成した既存のマンションを改修し、名称を「アシストホーム」とした。一部をサ高住として提供する。部屋の広さは32~36平方メートルと全室30平方メートル以上は全国的にみても珍しく、12戸を用意した。車いすに乗ったまま使える洗面台や手すり付きのトイレなどの設備を備えている。月額の利用料は単身の高齢者が食事の提供を受ける場合、約14万円が目安となる。訪問看護ステーションや居宅介護支援事業所などと連携して、高齢者の生活を支える。

*4-3:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190204&ng=DGKKZO40775630R00C19A2KE8000 (日経新聞 2019年2月4日) 介護危機、乗り越えられるか 現金給付で従事者抑制を、外国人の安定確保厳しく 中村二朗・日本大学教授(1952年生まれ。慶応義塾大修士《商学》。専門は労働経済学、計量経済学)
<ポイント>
○従事者確保で女性や高齢者活用には限界
○現金給付を現物より抑えれば財政上も益
○保険者の広範地域への再編や連携強化を
 急速に高齢社会を迎えた日本では2000年に介護保険制度が導入された。ドイツの制度に倣いながらも、要介護対象者や提供される介護サービスを幅広く設定したことで多くのメリットがあるとされる。しかし財政的には多額の支出を余儀なくされた。団塊世代が後期高齢者になる25年には介護保険の利用者は約900万人、財政規模は20兆円前後に達するといわれる。大きな課題は財政規模の抑制と介護従事者の確保だ。介護は3K(きつい・汚い・危険)的な職場というだけでなく、現保険制度では事業所全体の収入が規定され、その範囲内で介護従事者の処遇条件を決定する必要がある。処遇改善のための加算制度はあるが介護事業者の裁量で賃金を設定することは難しい。一方で介護事業者に裁量を委ねても、事業所支出に占める人件費比率が特養で約6割、通所・訪問で7~9割と高いため、介護費用の増加を通じて介護財政をさらに逼迫させる恐れがある。介護財政の抑制と介護従事者の確保とは両立が極めて難しい課題だ。本稿では、介護財政の抑制という課題を念頭に置きながら、今後の介護従事者不足に対する解決策を検討する。問題を考えるうえで主要な前提・課題を整理しておこう(表参照)。現状の課題は、未婚者や結婚しても子供のいない高齢者(チャイルドレス高齢者)の増加と、女性要介護者の比率が全体の約7割と高いことだ。高齢者の同居比率が低下しており、居宅介護のために同居率を高めようという議論がある。しかし子供のいる高齢者の同居率はそれほど低下していない。こうした状況で介護従事者の必要性を少なくするために家族介護の拡充による居宅介護を重視する政策には無理がある。また福岡市の65歳以上の介護保険データを用いた多相生命表(健康、要介護度別平均余命)による分析では、女性の要介護者は人数が多いだけでなく、介護期間が長期にわたる傾向があり、費用も男性と比べ4割前後高くなる。今後は要介護度の高い高齢者と、都市部での要介護者の増加が予想される。現状でも要介護者の多くは女性だが、その傾向は今後も続くだけでなく都市部でより顕著に表れることが予想される。女性要介護者は男性に比べ家族に大きな負担をもたらすことが確認されている。都市部では住宅事情などにより居宅介護は難しさを増す。財政支出と必要な介護従事者の増加をもたらすだけでなく、居宅介護と施設介護のあり方を大きく変化させる可能性がある。現状および今後の問題点を考慮したうえで、必要な介護従事者をどのように確保すればよいのだろうか。対応の方向性は2点だ。一つは必要な従事者数を確保するための環境を整備することであり、もう一つは必要な従事者数の抑制策を講じることだ。以下では、今後の対応策と実現可能性について検討したい。従事者数の確保については2つの対応策に大別できる。一つは女性や高齢者のさらなる活用だ。女性の活用では介護従事者の資格要件の緩和措置などがとられているが、労働条件が悪いままでは安定的に一定量を確保するのは難しい。高齢者はボランティア的な仕事としては受け入れられる可能性は高いが、安定的に活用できる人材ではない。もう一つは外国人労働者の導入だ。日本が魅力的な国である限りは、外国人労働者は安定的に活用できる人材としてみることもできる。しかし日本人と同等の処遇ならば、介護従事者の賃金が低い現状のままでは必要な人員を確保できるかわからない。既に外国人介護福祉士としては経済連携協定(EPA)により受け入れられており、17年度までに約3500人が来日し、700人以上が介護福祉士の国家試験に合格している。こうした外国人は送り出し国で看護学校などを卒業し「N3」以上の日本語資格を持っている。また日本で介護福祉士の国家試験を受けるために受け入れ事業所などで様々な教育を受けている。事業所は1人あたり200万~300万円程度の費用を負担しているが、合格率は5割程度だ。合格後は在留資格が得られるが、他の事業所への転職も可能で、受け入れ事業所は多くのリスクを抱えている。現状のEPA介護従事者に対しては、事業者や利用者も高く評価しているケースが多い。しかし現在想定される新たな外国人労働者に対して、EPAでの受け入れと同様の手厚い対応ができるのだろうか。受け入れ人数が桁違いに増えるだけでなく、受け入れ要件もEPAに比べ緩和される可能性が高い。受け入れ態勢や教育環境の整備、それらの費用を誰が負担するのかなど慎重な議論が必要だろう。さらに今後も、日本が外国人労働者に魅力的な国であり続ける保証はない。むしろ5~10年先の本当に必要な時期に外国人労働力を確保できなくなるリスクはかなり高い。仮に介護従事者を増やすことに成功しても、財政上の問題は解決されない。両者をともに解決するには、単に必要人員の確保だけでなく必要な従事者数を抑える視点が大切だ。しかし介護現場では新技術の導入などである程度の労働生産性の向上は望めるが、大きな効果は期待できない。では、どうすればよいのか。介護サービスの提供は例外を除いて、保険制度で指定された事業所でしかできない。介護サービスが現物給付で実施されているためだ。この枠組みを外せば、介護事業所以外でも介護サービスを提供することが可能となり、必要な介護従事者数を抑制できる。そのための方策の一つは、ドイツや韓国などで採用されている現金給付もしくはバウチャー(利用券)制度の導入だ。ドイツのように介護をする家族にも保険から手当などを支払えれば、居宅介護が増えて必要な介護従事者数を抑制する効果も期待できる。保険導入時に現金給付との併用案が検討されたが、事業者の反対や不正利用の懸念などを理由に採用されなかった。確かに保険導入前の状況を考えると当時の反対理由もうなずける。しかし介護サービス需要の増加や介護関連事業所の増加により、介護市場が成長し競争メカニズムが働く余地が大きい。さらにこれまでの保険事業で蓄積されたデータを活用・分析することにより、不正利用を見つけやすくなっている。また日本独自のシステムとしてケアマネジャー制が導入されており、利用者や事業所を監視する役割を拡充することにより不正利用や不効率な利用を防止できるだろう。現金給付を選んだ場合には現物給付の4~6割程度の支給にできるならば、財政上のメリットも生じる。今後生じる様々な課題に対応するには、介護保険を運営する保険者に求められる役割はより高度なものとなる。基礎自治体をベースとした一部の保険者は難しい問題を抱えることになる。保険者については、より広範な地域への再編・連携強化や都市部と非都市部との連携などを検討すべきだ。介護施設や人材などの効率的な運用ができるだけでなく、要介護者の地域的偏在や地域間の保険料格差などを改善することができよう。従来の制度を土台としながら、現金給付の導入や保険者の枠組みなどを今後の状況に即した制度に見直すことなどを含め、人材不足の解消と財政の健全化を目指す整合的な方策を考えることが急務だ。

*4-4:http://qbiz.jp/article/148203/1/ (西日本新聞 2019年2月4日) 介護就労の外国人指導 4月 小郡に支援センター 受け入れ施設に助言も
 外国人労働者の受け入れを拡大する改正入管難民法の施行(4月1日)に合わせ、介護現場で働く外国人や、外国人を受け入れる介護事業者を多方面からサポートする「就労支援センター」(ICEC)が福岡県小郡市に発足する。同法に基づく新たな在留資格「特定技能」の労働者や技能実習生などが対象で、介護に必要な日本語教育や生活面の指導、事業者側への助言も行う。こうした包括的な支援組織は九州で珍しいという。ICECを立ち上げるのは、1998年に発足した外国人就労支援事業会社「インターアジア」(小郡市)。経済連携協定(EPA)に基づいて来日した介護福祉士候補生や、日本のフィリピンパブや飲食店などで働いた後、介護業界に新たな働き口を求める在留外国人たちを対象に、介護職員の基礎的な資格「介護職員初任者研修」の講座を行ってきた。卒業生は6カ国の300人以上に上る。017年11月に介護分野が追加された外国人技能実習生は、入国時だけでなく、来日2年目にも日本語能力試験に合格することが求められる。介護の現場では、生活指導も含めた教育をどうするか、不安視する声が上がっていた。ICECは「アルツハイマー病」「安静」「嚥下(えんげ)」など介護に必要な用語を中心に、日本語教育や文化教育、生活面もサポートする。事業者側に対しては経営者だけでなく、外国人と一緒に働く職員全員に助言する。講師は約20人。介護福祉士や看護師の資格を持つ日本人や、介護福祉士の資格を持つ同社の卒業生など、日本の介護現場で働いた経験のあるフィリピン、ベトナム、中国出身の外国人も加わるという。同社の中村政弘代表(78)は「外国人は日本を介護先進国と捉え、期待して来日する。まずは日本人職員に、介護のプロとして『外国人を育てる』という意識を持ってもらえるような助言をしたい」と言う。17年9月、在留期限を更新できる在留資格「介護」が新設され、技能実習生や特定技能の労働者も介護福祉士の資格を取得すれば「介護」に変更申請できる。ICECでは、希望者向けに介護福祉士の資格取得を目指す講座も開設する予定。中村代表は「日本に残り、日本の介護を支え続ける外国人も育てたい」と話す。
*介護と外国人労働者  厚生労働省の推計によると、2025年度に介護人材が約34万人不足する恐れがある。国は改正入管難民法に基づく新在留資格「特定技能1号」(通算で5年が上限)の介護分野で、19年度から5年間で最大6万人の外国人労働者を受け入れる方針。介護職種の外国人技能実習生(最長5年)は“第1号”が昨年7月に来日。施設が実習生を受け入れるには、日本の監督機関「外国人技能実習機構」に実習計画を申請し、認定を受ける必要がある。昨年12月末時点での申請は1516人で、うち946人の計画が認定された。

*4-5:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190202&ng=DGKKZO40806230R00C19A2EA5000 (日経新聞 2019年2月2日) 大学・専門学校の留学生比率 地方、初の5%超え 昨年、サービス人気
 地方にある大学や専門学校など高等教育機関で、2018年に留学生の比率が全学生の5%を初めて超えたことが日本学生支援機構の調査などで分かった。三大都市圏を除く39道県別では群馬や茨城で上昇が目立っており、6県が東京都の比率を上回った。少子化や東京一極集中に悩む地方の教育機関にとって、留学生の獲得は経営の要にもなりつつある。日本学生支援機構の外国人留学生在籍状況調査と文部科学省の学校基本調査を使い、高等教育機関の学生に占める留学生の割合を都道府県別に算出した。39道県で18年の留学生の総数は7万3320人。全学生数に占める割合は5.4%と、前年に比べ0.5ポイント上がった。留学生の比率は11年の東日本大震災後に停滞していたが、13年に底を打って以降は急速に上昇している。39道県のうち、13年比で最も比率が伸びたのは群馬県。13年は3%だったが、18年は15%と大幅に高まった。同県の担当者は「群馬大や上武大、高崎経済大といった以前から留学生が多かった大学ではそれほど増えていない。大幅に増えているのはNIPPONおもてなし専門学校だ」と話す。同校は群馬ロイヤルホテルグループの学校法人が13年に設立した専門学校。ベトナムやネパールを中心に約500人の留学生が日本のホテルや旅館、飲食店などのサービスを実践的に学んでいるという。群馬県内に本部を置く東京福祉大学の留学生が増えていることも比率を押し上げた。同大は留学生が約800人と学生の2割を占める。出身国別にみると、中国が最も多いが「最近はベトナム、ネパールも目立つ」(同大)。39道県で2番目に留学生比率が上昇したのは茨城県で、18年は11%とこの5年で5ポイント伸びた。国内有数の留学生数を誇る筑波大学に加え、東京家政学院大学系列の筑波学院大学などで留学生の増加が目立った。筑波学院大学によると、「留学生に人気の専攻はビジネスや情報系。18年はベトナムが一番多かった」という。留学生の生徒総数では東京都が約6万7000人と突出して多いが、全生徒の比率でみると7%。留学生の比率では大分県が16%と、全国で最も高かった。生徒数のほぼ半数を留学生が占める立命館アジア太平洋大学がある影響が大きい。このほか、山口、福岡、長崎県も東京の比率を上回った。高等教育の国際化に詳しい上智大学の杉村美紀教授は「人口減少が厳しい地方では留学生で人材を確保しようとする動きが強まっている」と指摘する。経済協力開発機構(OECD)の資料によると、欧米諸国のほとんどは高等教育機関の留学生比率が日本より高い。国際競争力を高めるためにも今後、留学生の人材育成は地方にとって重要性を増す。大学の外での交流を促すなど、地域全体で留学生を迎え入れる体制づくりがより求められそうだ。

<呆れて一言では語れないこと>
PS(2019年2月7、9、10日追加): *5-1-1のように、「厚労省の統計不正による過少給付は雇用保険・労災保険・船員保険などを合わせて564億円になり、2019年内に追加給付を開始する」とのことで、(統計は正確でなければならないものの)失った記録の復元は、新聞・TV・HP等で連絡先を示して関係する期間に受給した人に申し出てもらい、日本年金機構(旧社会保険庁)の年金記録と照合・立証して支払えばよい。つまり、雇用保険は、再就職済で困っておらず、申し出ない人まで探し出して渡す必要はないのだ。
 なお、*5-1-2のように、毎月勤労統計は不適切に調査されており、2018年の物価変動の影響を除く実質賃金の伸びが実態よりかさ上げされていたことが発覚し、民間の試算でも2018年の1人当たり実質賃金は大半がマイナスだそうだ。これには非正規の働き手が増えた要因もあり、名目賃上げ率は2%前後で2018年1~11月の実質賃金のうち9カ月分が前年を下回ったそうだが、1カ月単位の短期間かつ1%前後の賃金の増減で消費者心理が変わるわけではなく、子どもが生まれた場合の収入減・負担増・年金までを加味した生涯収支を考慮して貯蓄と消費の割合を決めているため、予算委員会で大量の時間を使うには議論が小さすぎる。そして、「消費者は名目賃金で賃金動向を実感する」というのは誰のことか不明であり、物価上昇率が名目賃金上昇率より高くて実質可処分所得が小さくなっていることにはすぐ気付くため、あまりに一般消費者を馬鹿にした見方だ。なお、今後は、企業がデータで賃金・品目毎の売上・仕入(単価と数量)を提出すれば、全数調査して毎月の平均賃金・卸売物価・消費者物価を出せそうである。
 このような中、*5-2のように、公的年金で運用損を出し、社会保障の負担増・給付減ばかりしていれば、*5-3-1のとおり、静かに少子化が進むのは当然のことで、できることとできないことを理性的に判断して行動しているのは、子どもの少ない(orいない)人の方だろう。また、*5-3-2のように、信濃毎日新聞も「少子化の責任は女性にあると言いたいようであるため、麻生氏は暮らしや人権に関わる問題について正しい理解ができない人である」として、首相の任命責任も問われると記載している。ただ、首相は子どもがおらず、どちらかと言えば被害者に当たるため、麻生氏の発言の責任まで取らせるのは酷ではないか?なお、麻生氏は、2008年、麻生内閣で内閣府特命担当大臣(男女共同参画・少子化対策)として出産したという理由で小渕優子氏を初入閣させており、出産奨励は麻生氏の本音だ。そして、これは、「女性は産む機械」「ママさんたちが『一緒に子どもを産みたい』という形で国家に貢献してくれればいい」という産めよ増やせよ論であり、時代錯誤だ。さらに、*5-3-3のように、京都新聞も「少子化となる環境こそ問題なのに、女性に責任を押し付けている」としているのは正論である。

*5-1-1:https://mainichi.jp/articles/20190204/k00/00m/040/250000c?fm=mnm (毎日新聞 2019年2月4日) 統計不正問題 年内に追加給付開始へ 延べ2000万人超に564億円
 厚労省が公表した追加給付の工程表によると、過少給付は雇用保険や労災保険、船員保険などを合わせて564億円で、対象者は延べ2000万人超。追加給付が始まる時期は、保険の種類や現時点での受給の有無などによって異なる。現行の受給者は比較的早く、雇用保険が4月▽労災保険が6月▽船員保険が4月。既に受給が終わっている人は雇用保険が11月ごろ▽労災保険が9月ごろ▽船員保険が6月――と見込む。システム改修などの都合で例外的に時間がかかる対象者もおり、労災保険の一部では追加給付の開始が12月ごろにずれ込む見通しだ。この問題では、各保険の過去の受給額だけではなく現行の受給額も過少になっている。厚労省は3~6月に、適正な受給額に是正することを既に発表している。

*5-1-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190207&ng=DGKKZO40975120W9A200C1EE8000 (日経新聞 2019年2月7日) 18年実質賃金かさ上げ 不適切統計問題、実態は非正規増え、下落圧力
 毎月勤労統計の不適切調査を受け、足元の賃上げの評価の難しさが一段と鮮明になった。2018年の物価変動の影響を除く実質賃金の伸びが実態よりかさ上げされていたことが発覚。民間の独自試算でも18年の1人当たり実質賃金は大半がマイナスだ。だが非正規の働き手が増えるなど、全体をならした賃金水準には下落圧力がかかっている。雇用者増や賃上げの効果をすべて否定する議論も乱暴だといえる。連合によると、18年労使交渉による賃上げ率は全体で2.07%。中小だけでも1.99%と20年ぶりの高水準だった。それでも野党は国会論戦などで18年1~11月の実質賃金のうち9カ月分で前年を下回ったと主張する。賃上げをしているのに、なぜ1人当たりの実質賃金は下がるのか。厚生労働省がもともと公表していたデータで実質賃金が前年を下回るのは6カ月分だった。野党の試算は同じ事業所を比べる「共通事業所」ベースで、物価上昇率を使って名目値から割り戻したものだ。みずほ総合研究所の独自試算でも18年1~11月のうち8カ月分が前年比マイナスだ。人々は物価の動きと自身の懐事情を勘案しながらモノやサービスを買うかどうか判断するので、実質賃金は消費者心理を分析するうえで重要な指標だ。ここで無視できないのは、1人当たりの実質賃金に低下圧力がかかる構造的な要因だ。総務省の労働力調査によると、18年の女性の就業者数は前年比で3%増え、男性の1%増を上回った。65歳以上の就業者数も18年は前年比7%増えた。女性や高齢者は非正規で働く人も多い。このため賃上げをしても、1人当たりの賃金にならすと、下落方向への圧力が働きやすくなる。その一方で、例えばこれまで夫だけが働いていた世帯で新たに妻も働くようになれば、家計全体としての所得は増えることが多いだろう。安倍晋三首相が「総雇用者所得は名目も実質もプラスだ」と主張するのも、消費を支える家計全体の購買力を意識したものだ。総雇用者所得は1人当たり賃金と雇用者数を掛け合わせた値だ。18年1~11月の総雇用者所得は実質で前年比1.0~3.6%増えた。第一生命経済研究所の星野卓也氏は「実質賃金が下がっても、暮らしが悪くなったとは言い切れない」と指摘する。消費動向を判断するため、所得の総量を重視するという説明には一定の説得力がある。むろん、低収入の働き手ばかりが増えて1人当たり賃金が伸びなければ、消費全体は勢いづかない。実質賃金がマイナスでも賃上げ効果をすべて否定できないのと同じく、総雇用者所得の増加だけで消費の先行きを安心できるわけではない。ニッセイ基礎研究所の斎藤太郎氏は「消費者は見た目の名目賃金でまず賃金動向を実感する。実質に加え、名目も合わせて見るべきだ」と、丁寧な議論の必要性を訴える。民間エコノミストの間では独自に賃金動向を分析する試みもある。三菱UFJモルガン・スタンレー証券の宮崎浩氏は日銀のアンケート調査などを使って分析。18年の賃金は上昇基調とみる。第一生命経済研の星野氏は雇用保険のデータから1人当たり賃金を算出し、17年度の実質値はマイナスだった。18年度分のデータはまだないが「物価上昇率が鈍く、18年度の実質賃金は上がっている可能性がある」という。

*5-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190202&ng=DGKKZO40786420R00C19A2EA4000 (日経新聞 2019年2月2日) 公的年金運用損、最大の14.8兆円 10~12月、株安が打撃
 公的年金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は1日、2018年10~12月期の運用損失が14兆8039億円だったと発表した。市場運用を始めた01年度以降、四半期ベースでは過去最大となった。GPIFは14年の運用改革で相場変動の影響をより受けやすくなった。環境や社会への貢献を重視するESG投資などの取り組みを強めて安定的な運用につなげる。米中貿易戦争や欧州政治の不透明感を背景とした世界的な株安が響いた。ただこれまでの累積の収益額は56兆7千億円に及んでおり、年金財政を維持するために必要な水準は確保している。資産別の運用損益を見ると、国内株で7兆6千億円、外国株で6兆8千億円の損失となった。

*5-3-1:https://www.ehime-np.co.jp/article/news201902070016 (愛媛新聞社説 2019年2月7日) 麻生氏「少子化暴言」 責任の国民への押し付け許すな
 不適切な発言をしては、撤回し開き直る。既視感のある光景がまたも繰り返された。麻生太郎副総理兼財務相が、少子高齢化に関し「子どもを産まない方が問題」と発言した。さまざまな理由で子どもをつくりたくてもつくれない人たちに対して著しく配慮を欠いた暴言だ。「産む・産まない」については、あくまで個人の自由意思に基づくものであることも理解できておらず、人権感覚に大いに疑問符が付く。そもそも少子化の要因は、これまでの国の見通しの甘さと不十分な政策にある。にもかかわらず今回の発言は、その責任を国民に転嫁するものだ。安倍晋三首相は発言について言及していないが、なぜ放置したままなのか理解できない。「子どもを産み、育てやすい日本」をつくるという政権の方針が、出産の「押し付け」を意味するものではないなら、麻生氏の処遇も含め、危機感を持って対処する必要がある。麻生氏の発言があったのは、地元・福岡での国政報告会。自身が生まれた頃より平均寿命が30歳長くなったと指摘し、「年寄りが悪いみたいなことを言う変なやつがいっぱいいるけど、それは間違いだ。子どもを産まなかった方が問題なんだから」と述べた。2014年にも同様の発言をしており、何の反省もしていないことは明らかだ。野党のみならず、与党からも批判を受けた麻生氏は、発言を撤回。「一部女性の方が不快に思われる。それはおわび申し上げる」とも述べたが、不妊に悩む人には男性もいることを認識しておらず、失言の上塗りでしかない。少子化を含む人口減少問題は「静かな有事」とまでいわれる状況にある。政府は、女性1人が生涯に生む子どもの数「合計特殊出生率」を1.8に引き上げる目標を掲げるが、17年で1.43と低水準のままだ。だが「子どもがほしい」「第2子、第3子を持ちたい」、との希望を抱きながらも、経済的な事情や社会的なサポートの不足から、断念する夫婦が少なくないことを忘れてはならない。現状はこうした人たちへの国からの支援が行き届いていない。長く予算を担当してきた麻生氏が少子化を語るなら、まず国の「無策」への反省からだろう。少子化を巡る失言や暴言は麻生氏に限らない。昨年も、子どもを産まないことを「勝手な考え」とした自民党の二階俊博幹事長や、「必ず3人以上の子どもを産み育てていただきたい」と結婚披露宴で呼び掛けていると発言した同党の加藤寛治衆院議員が批判された。偏った家族観への固執は、党の体質ではないかと疑わざるを得ない。子どもがいない人を一方的に断罪しかねない発言は、社会に無用の分断をもたらすものであり、国民の代表である政治家として許されない。持論を自由に発信したいなら、せめて今の立場を自ら退いてからにすべきだ。

*5-3-2:https://www.shinmai.co.jp/news/nagano/20190209/KP190208ETI090004000.php (信濃毎日新聞 2019年2月9日) 麻生氏発言 首相の責任も問われる
 暮らしや人権に関わる問題について正しい理解ができない人を、なぜ政権の中枢に起用し続けるのか。安倍晋三首相の責任も問われる事態だ。副総理兼財務相の麻生太郎氏が、支持者らを集めて開いた地元・福岡での会合で少子高齢化に関連して「子どもを産まない方が問題だ」と述べた。自身が生まれた頃と比べ平均寿命が30歳長くなったと指摘し、「年寄りが悪いみたいなことを言う変なのがいっぱいいるけど、それは間違いだ」とした上での発言だ。少子化の責任は女性にある、と言いたいかのようだ。少子化の背景には保育所不足、雇用の不安定化など産みたくても産めない事情がある。そんな世の中にした一番の責任は、長年政権の座にある自民党にある。そもそも子どもを産むか産まないかは自己決定権の問題である。産まないことを「問題」だと批判するのは人権侵害につながる。発言に弁護の余地はない。麻生氏は5年前にも同じようなことを言っている。選挙の応援演説で、少子高齢化に伴う社会保障費の増加について「高齢者が悪いというようなイメージをつくっている人が多いが、子どもを産まないのが問題だ」と述べた。麻生氏はその時は、保育施設などの不足で産みたくても産めないのが問題との趣旨であり、「誤解を招いた」と釈明した。同じ発言が繰り返されたことから見て、「問題」とするのは本音と受け止めるほかない。麻生氏はこれまで、ほかにも暴言、失言を重ねている。財務省幹部によるセクハラ問題では「はめられて訴えられているんじゃないかとか、いろいろなご意見は世の中いっぱいある」。医療費を巡る政府の会議では「たらたら飲んで、食べて何もしない人(患者)の分の金(医療費)を何で私が払うんだ」。そこには社会的弱者への共感がない。そんな人が第2次安倍内閣の発足以降、副総理兼財務相のポストに居座り続けている。足元で森友学園問題が起きても責任を取らず、留任した。「女性は産む機械」「ママさんたちが『一緒に子どもを産みたい』という形で国家に貢献してくれればいいなと思う」…。政府・自民党幹部が過去に重ねてきた発言の数々を思い出す。一人一人の個性を大切にし、権利を保障するよりも、国のために国民を動員する発想がにじむ。党の体質も問われている。

*5-3-3:https://www.kyoto-np.co.jp/info/syasetsu/20190209_4.html (京都新聞社説 2019年2月9日) 麻生氏の暴言  またか、と看過できぬ
 麻生太郎副総理兼財務相が「子どもを産まないほうが問題だ」と発言し、批判を浴びている。
発言の根底には政策の不備を女性らに責任転嫁する姿勢が見え、言葉足らずでは済まされない。
発言は3日に地元福岡県で開いた支持者向けの会合であった。少子高齢化問題を語る中、「年寄りが悪いみたいなことを言う変なのがいっぱいいるけど、それは間違いだ。子どもを産まなかったほうが問題なんだから」と言及した。麻生氏は翌日、衆院予算委員会で野党から問いただされて発言を撤回し、その後、陳謝した。予算委で批判されても、にやけるばかりの麻生氏の態度を不快に感じた国民は少なくないだろう。麻生氏は「長寿化より、少子化のほうが社会保障や財政の持続可能性の脅威となるということを申し上げた」と釈明した。だが2014年にも同様の発言をして批判を受けており、本音とも取れる。政治家の言葉には、さまざまな立場の人が耳を傾けている。弱者の痛みを共有し、発言がどう受け止められるのかと聴衆の思いをくみ取りながら話せば、暴言を発することはないだろう。安倍晋三政権は女性活躍や働き方改革を掲げている。ところが麻生氏に限らず、出産を巡って政権や与党の中枢にいる政治家の発言が物議を醸してきた。確かに日本が抱える多くの問題は高齢化と併せ、少子化が急激に進んでいることに起因している。働いて、社会を支える世代が減るから社会保障制度が揺らぎ、経済成長が低迷している。とはいえ子どもを産む、産まないは、個人の問題だ。少子化の背景には労働環境など社会的障壁があり、望んでも「産めない」環境こそが問題であるのに、女性らに責任を押し付けていないか。長時間労働の是正や育児休暇の充実、経済的不安の解消によって仕事を続けつつ希望通りに子どもを産み育てられる環境を整える―それこそが政治の責務だ。根本的な対応を怠ってきた帰結が今日の少子化であろう。麻生氏は政権ナンバー2にもかかわらず、耳を疑うような放言、暴言が目立つ。いずれも閣僚としての資質に疑問符が付く。発言の揚げ足を取る考えは毛頭ないが、繰り返される暴言を、またか、批判しても無駄だ、と寛容に受け止めてはなるまい。安倍首相は麻生氏を不問に付してきたが、「1強」のおごりが顔をのぞかせていないか。国民の理解を得られるとは思えない。

<地方創成と教育の充実>
PS(2019年2月12、13日追加):子育て世帯の負担を軽減して少子化対策に繋げるだけでなく、どの子にも3~5歳時に適した教育を与えるという意味で、義務教育で無償の小学校への入学年齢を3歳にすればよいと私は思うが、*6のように、3〜5歳児の全世帯幼保無償化を行うのも一歩前進だ。しかし、0〜2歳児は、夫婦で育休をとれば家庭で育てる選択肢もあるため、無理に預かる必要はないだろう。また、地域住民を増やすには、「教育が充実している」というのが重要な要素であるため、市長は産業振興を支える人材を創るという意味だけでなく、教育そのものの充実にも一歩進んだ取り組みを行い、恵まれた環境になったらそれを宣伝するのがよいと考える。
 また、*6-2のように、資生堂が中国を中心とする海外向け需要の急増に対応することを目的として久留米市に進出することにしたのは、九州は地の利を活かしてアジアへの輸出に熱心に取り組んでいるため的を得ている。また、久留米大学が近くにあるため、化粧品会社がバイオと結び付いて、品質の維持・向上だけでなく新製品の開発を企画できるメリットもあるだろう。また、必要な原料を、近くの農漁業で供給できるメリットもある。
 なお、*6-3のように、インターネット上の漫画・小説・写真・論文等のあらゆるコンテンツをダウンロードすることを、文化庁が著作権侵害として全面的に違法とする方針を決定したそうだが、最近は、学生でもインターネット上に掲載されている世界の論文に直接アクセスして教科書より先端の知識を入手したり、政治家が書いた政策を直接見て切磋琢磨したりしている時代であるため、文化庁のドアホな方針は、日本の論文数をさらに減らし、文化力を下げるだろう。

*6-1:http://qbiz.jp/article/148622/1/ (西日本新聞 2019年2月12日) 幼保無償化法案を閣議決定 3〜5歳児は全世帯、成立急ぐ
 政府は12日、幼児教育・保育の無償化を実施するための子ども・子育て支援法改正案を閣議決定した。今年10月から3〜5歳児は原則全世帯、0〜2歳児は住民税非課税の低所得世帯を対象に、認可保育所や認定こども園、幼稚園の利用料を無料にする。認可外保育施設などは一定の上限額を設けて費用を補助。政府、与党は今国会の重要法案と位置付け、早期成立を目指す。政府は同日、低所得世帯の学生を対象に、大学や短大などの高等教育機関の無償化を図る新たな法案も閣議決定した。授業料や入学金を減免するほか、返済不要の給付型奨学金を支給する。来年4月の施行を目指す。幼保無償化は、子育て世帯の負担を軽減し少子化対策につなげる狙い。安倍政権が掲げる「全世代型社会保障」の一環で、財源には消費税率10%への引き上げに伴う税収増加分を充てる。3〜5歳児の場合、私立幼稚園の一部は月2万5700円、認可外施設やベビーシッター、病児保育などのサービスは月3万7千円を上限とする。0〜2歳児は月4万2千円まで補助する。認可外施設は保育士の配置数などで国が定める指導監督基準を満たすことが条件だが、法施行後5年間は基準を満たさない施設も対象となる。制度の検討過程で、全国市長会が「指導監督基準を満たさない施設まで含めると、子どもの安全に責任が持てない」と強く反発。このため地域事情に応じて、市町村条例で対象施設の基準を厳格化することも認める。朝鮮学校幼稚部やインターナショナルスクールなどは、国の基準を満たさない場合は無償化の対象にならない。

*6-2:http://qbiz.jp/article/148678/1/ (西日本新聞 2019年2月13日) 資生堂の久留米進出、九州の産業に多様化期待 雇用拡大、地元企業と連携も
 九州初となる資生堂の新工場が福岡県久留米市に建設されることが決まった。訪日外国人客の増加を受け、高まる「メード・イン・ジャパン」製品への需要に応えるとともに、アジアへの輸出にも対応する。これまで自動車や半導体製造などを中心に発展してきた九州にとっても、産業の多様化につながり、雇用にとどまらない経済波及も期待されるものの、化粧品産業の裾野拡大などは未知数だ。「(バイオ産業の集積を目指す)『福岡バイオバレープロジェクト』に弾みがつく。新しい雇用も生まれ、地方創生という観点からも非常に感謝している」。福岡県の小川洋知事は12日の立地協定締結式で、資生堂の新工場進出に期待を寄せた。九州は自動車や半導体製造などを基幹産業として発展。技術や人材の移転が進み、部品メーカーなど関連産業も集まって、一大集積地を形成するようになった。ただ、輸出依存の高い九州の製造業は海外の景気悪化や国際競争の激化などのあおりを受けることもあり、より多様な産業が求められている。今回、化粧品の世界的ブランドが進出することで、九州の産業構造の重層化が進む。資生堂の魚谷雅彦社長も「地元のITベンチャーといろいろな取り組みができるのではないか。バイオ分野との連携もできれば新しい価値を生み出していける」と地元との協調にも意欲をみせた。雇用が広がる側面もある。久留米市の大久保勉市長は、大学生の地元定着率が低いことに触れ「有名企業に就職できることはすばらしい」と期待。資生堂は地元での雇用規模は今後固めるとしているが、「かなり地元の人に協力いただくことになると思う」(魚谷社長)という。高い品質の「日本ブランド」製品を維持し、地元の産業として育てるには質の高い人材の養成、確保も課題になる。一方、自動車産業のように、原料の供給などで裾野が広がるかは不透明だ。佐賀県唐津市を中心に化粧品産業の拠点化を目指す動きもあるが、資生堂側は既存取引先の九州工場からの仕入れなどにとどまる可能性もあり、供給網への参入といった進出の波及効果は、現段階では見通せない。
    ◇   ◇
●海外需要の急増に対応 品質維持、向上が鍵
 資生堂が福岡県久留米市に化粧品の工場新設を決めたのは、中国を中心とする海外向け需要の急増に対応するのが最大の狙いだ。少子高齢化、人口減少で国内市場の伸びが期待しづらい中、同社は既に連結売上高の6割近くを海外で稼いでいる。海外市場で高い人気を誇る資生堂の「メード・イン・ジャパン」。その品質とブランド力を維持することこそ、新鋭工場の使命といえる。日本製の化粧品は、2010年ごろから急増した訪日外国人による「爆買い」で人気に火が付いた。爆買いが沈静化した後も人気は持続。帰国後に通信販売で買い求める中国人も少なくない。国の統計によると、化粧品の17年の国内出荷額は約1兆6千億円で過去最高。対中輸出額は18年までの8年間で10倍に増えた。資生堂の海外市場での売れ筋は、高価格帯ブランド「SHISEIDO」「クレ・ド・ポー ボーテ」のほか、中価格帯の「エリクシール」など。「長年の研究開発の成果や最新技術を採用している点など『日本の資生堂』が信頼されている」との同社グローバル広報部の言葉を裏付けるように、数字も伸びている。18年12月期の売上高をみると、中国向けは前期比32・3%、アジア太平洋圏は13・9%それぞれ伸びた。海外からの「神風」を受け、栃木県、大阪府に続く工場新設に踏み切る資生堂。だが化粧品の世界では、欧米勢の攻勢も激しい。また最近では、日本製への信頼を失墜させる品質問題が日本企業で相次いでいる。海外市場の期待を裏切らない品質の維持、向上こそが、資生堂の勝ち残り戦略と言って過言ではない。

*6-3:https://digital.asahi.com/articles/ASM2D6F8NM2DUCVL03V.html (朝日新聞 2019年2月13日) 著作権侵害、スクショもNG 「全面的に違法」方針決定
 著作権を侵害していると知りながら、インターネット上にある漫画や写真、論文などあらゆるコンテンツをダウンロードすることを全面的に違法とする方針が13日、文化審議会著作権分科会で了承された。「スクリーンショット」も対象となり、一般のネット利用に影響が大きいことから反対意見が出ていた。悪質な行為には罰則もつける方向で、文化庁は開会中の通常国会に著作権法の改正案を提出する。早ければ来年から施行となる見込み。これまでは音楽と映像に限って違法だったが、被害の深刻な漫画の海賊版サイト対策を機に、小説や雑誌、写真、論文、コンピュータープログラムなどあらゆるネット上のコンテンツに拡大されることになった。個人のブログやツイッターの画面であっても、一部に権利者の許可なくアニメの絵やイラスト、写真などを載せている場合は、ダウンロードすると違法となる。メモ代わりにパソコンやスマートフォンなどの端末で著作権を侵害した画面を撮影して保存する「スクリーンショット」もダウンロードに含まれる。このため「ネット利用が萎縮する」と批判が起きていた。ただ、刑事罰の対象範囲については、著作権分科会の法制・基本問題小委員会で「国民の日常的な私生活上の幅広い行為が対象になる」ため慎重さを求める声が相次ぎ、「被害実態を踏まえた海賊版対策に必要な範囲で、刑事罰による抑止を行う必要性が高い悪質な行為に限定する」こととした。いわゆる「海賊版サイト」からのダウンロード▽原作をそのまま丸ごと複製する場合▽権利者に実害がある場合▽反復継続して繰り返す行為――などを念頭に、今後文化庁が要件を絞り込む。

<在留資格の根拠が不明確で恣意的である>
PS(2019年2月16、21日追加):*7-1の「高度人材ポイント制」の加点対象大学が、現在は旧帝大・早大・慶大などの13大学に限られており、地方大学に少なく、その選択に明確な基準がないのには驚いた。外国人在留資格優遇大学の拡大は、単に「高度人材の地方分散」という要請だけでなく、有用な人材を集められるか、公平性はあるかなどの視点も重要であるため、恣意性がが入らないように、各大学の申請により合理的な基準(少なくとも国立大学は入るようでなければならないし、農業・保育・介護など需要の多い科目を教えている大学も入れるべきである)に基づいて行われるべきである。
 また、*7-2のように、熊本県警は入管難民法(資格外活動・不法残留)違反で、菊池市の製造工場で働くベトナム国籍の技能実習生ら12人を逮捕し、その理由は「技能実習の在留資格を持つ人が資格外活動の許可を受けずに同工場で補助作業員として働いて報酬を受け取った」「在留期間を超えた」などだそうだ。しかし、人手が足りず、少子化を問題にしながら、日本で働いている外国人を軽微なことで犯罪者扱いするのは人権侵害も甚だしく、日本のメディアがトランプ大統領を批判するのは何かを間違えている。
 なお、*7-3のように、新しい外国人雇用制度に期待している農業は、積み残された課題をまじめに指摘しているため、一つ一つの課題を解決していくことが望まれる。

*7-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190216&ng=DGKKZO41350440V10C19A2MM8000 (日経新聞 2019年2月16日) 外国人在留資格、優遇大学を拡大 高度人材、地方へ分散促す
 政府は外国人の学歴や年収を点数にして評価する「高度人材ポイント制」の加点対象を地方大の卒業者にも広げる。地方大出身者が在留資格を取りやすくする。4月に新在留資格による外国人労働者の受け入れが始まるのを前に、相対的に賃金が高い都市部への人材の集中を避け、人手不足が深刻な地方への分散を促す。高い技能を持った外国人を地方経済の活性化に生かす狙いだ。高度人材ポイント制は2012年に導入した。学歴や年収、職歴といった項目ごとにポイントを設け、70点に達すると「高度専門職」の在留資格を与える制度。配偶者の就労や親の帯同などで優遇を受けられる。18年6月時点で約1万3千人が認定されており、政府は22年末までに2万人に増やす目標を掲げる。対象は大学教員などの研究職や企業の営業職、経営者といった人材。活動の種類によって異なるものの、例えば博士号取得で20~30点、法相が指定する大学を卒業した場合は10点を加算する。今回はこの対象校を広げる。3月をメドに地方を含む100以上の大学に拡大する。これまでは東大をはじめとする旧帝大や早大、慶大など全国13大学に限られていた。既存の対象校には広島大や九州大なども含まれていたが岡山大や熊本大など、より人口が少ない地域の大学にも広げる。加点対象大学の卒業者でなくても、職歴や年収に応じて加算されるポイントで高度専門職の在留資格を得られる。ただ加点対象の大学を卒業すれば10点を獲得でき、在留資格をより取得しやすくなる。政府は留学の段階から外国人が地方を選びやすくなるとみる。基準となるのは英教育誌タイムズ・ハイヤー・エデュケーションなどが公表する世界大学ランキングに選ばれた大学。国際化の取り組みに文部科学省が補助金を出す「スーパーグローバル大学」の指定校も対象とする。政府は4月からの外国人材の受け入れ拡大を控え、運用に関する基本方針を昨年12月に決定。外国人材が大都市圏に集中するのを防ぐため、必要な措置をとると明記した。事実上の単純労働を対象とする新在留資格「特定技能」を巡っては、先進的な取り組みを進める自治体への財政支援制度をつくる方針を打ち出した。

*7-2:http://qbiz.jp/article/149120/1/ (西日本新聞 2019年2月21日) 技能実習生ら12人逮捕 熊本の同じ工場 入管法違反容疑
 熊本県警は19日、入管難民法違反(資格外活動や不法残留)の疑いで、同県菊池市の製造工場で働くベトナム国籍の技能実習生ら12人を逮捕した。逮捕されたのは、菊池市泗水町永のチン・ヴァン・ズン容疑者(25)らで、11人が技能実習、1人が留学の資格で来日していた。逮捕容疑は、チン容疑者ら技能実習の在留資格を持つ2人が、昨年11月〜今年2月19日、資格外活動の許可を受けずに同工場で補助作業員として働き、報酬を受け取った疑い。8人が在留期間を3カ月〜3年半超えて日本に滞在した不法残留、2人が偽造在留カードを所持した疑い。県警によると、12人は一軒家2棟に6人ずつで暮らしていた。近隣住民から「不審な外国人がいる」と通報があったという。12人は同じ派遣会社から工場に派遣されたと話しており、県警は派遣元の会社からも事情を聴いている。
   ◇   ◇
●熊本で外国人労働者急増 地震後、人手足りず
 日本で働く外国人労働者は昨年10月時点で146万463人に達し、届け出が義務化された2007年以降、最多を更新した。熊本県では1万155人が働き、前年からの増加率は31・2%と全国で最も高かった。少子高齢化や景気回復に伴う労働力不足に加え、熊本県では「震災後の人手不足も要因」(熊本労働局)とみられ、外国人労働者の増加傾向は今後も続くとみられる。国籍別ではベトナムが約4割を占め、中国、フィリピンが続く。同労働局によると、資格別では「技能実習」が6295人で6割超。就労する産業別では「農業、林業」29・2%、「製造業」28・3%、「卸売業、小売業」10・8%、「建設業」8・8%の順に多かった。技能実習生が、より収入が高い職を求めるなどして失踪する事例も相次ぐ。熊本県警によると、昨年1年間の失踪者は247人に上り、15年の2・8倍となっている。

*7-3:https://www.agrinews.co.jp/p46802.html (日本農業新聞 2019年2月21日) 外国人雇用制度 課題積み残し 生活支援誰が? 派遣元のサポート期待 技能実習生受け入れ法人
 昨年の臨時国会で改正出入国管理法が成立し、4月から新たに外国人を雇用する制度がスタートする。短期間の受け入れも可能となり、農・漁業では直接雇用だけでなく派遣形態でも受け入れができるようになるため、生産現場の期待は高い。ただ、外国人労働者が地域社会になじめるような生活支援の枠組みなど不透明な部分が多く、制度開始を前に、不安を訴える声が上がる。働く外国人にとっては、家族の呼び寄せが基本的にできないなど、先送りされた課題も残る。鳥取県大山町の「当別当育苗」では、フィリピンからの技能実習生、アンジェリカ・キントさん(27)がポット苗を運ぶ作業に励む。「ここに来てよかった。親切で学ぶことが多い。ごますりじゃなくて、本音よ」。個室が整備されるなど働く環境に感謝するものの、母国に残した3人の子どもを思うと、切ない気持ちがこみ上げるという。夫と義理の母が子育てをするが「お金をためて仕送りをするの。早く会いたいわ」と話す。年間160万ポット のスイカやトマトなどの苗を専業農家向けに出荷する同社。32年前に商社マンから農家に転職した當別當英治さん(68)が経営し、5年前から技能実習生を年間4人程度受け入れる。「気持ちよく働いてもらった方が経営にプラスになる。コミュニケーション不足は仕事のミスにつながる」と考え、実習とは別に、来日後1年間は毎日、自ら日本語を教え、対話を深める。食事や旅行などイベントも欠かさず、研修生の母国の文化や国民性を勉強して理解し、日常生活をサポートしてきた。国際貢献の名の下に行う研修と、事実上は労働力として受け入れる現場の実態に「無理がある」と感じていたことから、新制度に期待は大きい。作物に応じた派遣を希望し「直接雇用ならサポートもできる限りするが、派遣で生活支援を派遣会社が担うことになれば農家の負担軽減になる」と考える。
●家族呼び寄せ 要望強く
 家族の呼び寄せや生活支援をどこが担うかなど、4月からの制度開始を前に積み残された課題は多い。新制度では、外国人から要望の強い家族の呼び寄せは原則できないが、子どもを母国に残す場合、一時帰国は可能になる。ただ、来日、帰国時と同様に、一時帰国でも飛行機代は外国人が負担することになる見通しだ。人権の観点から家族帯同への要望は強く、経済同友会も1月に必要性を提言している。新制度では、受け入れる農家や派遣会社が支援できない場合、日本語習得や社会で暮らすための教育、住宅確保や手続きのサポートといった生活支援などを国が認定する「登録支援機関」が担う。業界団体や弁護士、社会労務士などが想定される。監理団体が登録支援機関になることもできる。ただ、同機関がどの地域で、どこまできめ細かくサポートできるかは不透明だ。外国人雇用を視野に入れる関東の農家は「実習生のように、受け入れ農家が責任を問われない派遣(形態)に期待している」と本音を明かす。法務省は今月から新たな仕組みについて、47都道府県で説明会を開いている。同省は「雇用計画や支援計画の基準などを記した政省令を公表できていないが、説明できる範囲で理解を求めていく」(入国管理局)とし、細部は「検討中」を繰り返す。4月からの施行を前に、自治体担当者は「国に聞いても不明確な点ばかり。人手不足対策は切実な問題なので、走りながら課題を検証して、運用を改善していくしかない」などと説明する。全国に先駆けて外国人を派遣する「農業サービス事業体」を発足し、5月から外国人を生産現場に派遣する長崎県は「政府の方針を受けて生活支援などを決めていきたい」(農業経営課)としている。
●現行制度 教訓生かせ
 外国人技能実習生や新たな在留資格を研究する早稲田大学の堀口健治名誉教授の話
 新たな制度は4月に始まるが、仕組みが定まっておらず“生煮え”の状況だ。当面、農家やJAは技能実習生で対応を進めることになるだろう。技能実習制度では、訪れる外国人も受け入れる農家側も双方にメリットがあるよう、生活面も含めて多くの農家は配慮してきた。新制度では、技能実習制度に比べると作業に制限がないことがメリットとされるものの、トラブルも想定される。費用負担や手続きなど、どこが責任を負ってフォローするのか、派遣で支援体制が機能するのかなど、課題が残される。技能実習制度の教訓や仕組みを生かした対応が求められる。

<医療の充実も地方創成の手段の一つであること>
PS(2019年2月14、21日追加):*8-1のように、九経連が、医療機関の外国人患者受入態勢整備を進めるため、「九州国際医療機構」を設立して多言語対応やトラブル対策を支援し、「訪日客などにしっかりした医療を提供するとともに、先端医療を国際的に供給するシステムをつくりたい」としているのはよいことだが、多言語に対応するのは容易でないため、AIなど医療分野以外からの機器開発による支援も重要だ。しかし、*8-2のように、「医療ツーリズム」市場も世界で急拡大しており、環境の良い場所で高度な医療を受けて完治したいというニーズは今後も増え、2021年まで年率13%で成長が続くそうで、医療は高付加価値の“観光”の一つになりつつある。
 一方で、*8-3のように、日本にも医師不足地域があり、「年1900~2000時間」までの残業を認めるとする厚労省の原案が出ているが、これは医師を他の人の2倍働かせる内容で、よほど健康で病気になったことがなく病人の気持ちはわからないといった人しか医師を続けられないというパラドックスを作る上、医師が研鑽する時間をとるのも難しくする。厚労省は、*8-4のように、「2036年時点に各都道府県で必要とされる医師数を推計すると、最も医師の確保が進んだ場合でも宮崎など12道県で計5323人の不足が見込まれる」としているが、おおざっぱに全体数を推計するのではなく、診療科による医師の偏在もなくすよう頭を使うべきである。
 しかし、ちょっと気を付ければ無駄に医師を忙しくする必要のないことも多いのに、*8-5の事例のように、私は(いつも風邪をうつされないように自分がマスクをかけて電車に乗るのだが)、先日、マスクを忘れて電車に乗った時、隣に来た男性に咳をされ風邪をうつされてしまった。このように、みんなに迷惑をかけるのに、マスクもせずに大きな口をあけてせき込むのはマナー違反であり、まさか「こういうことを言うのが相手を傷つける」などという教育はしていないだろうが、学校での清潔・マナーに関する教育に疑問が持たれる。

  
  2018.7.28東洋経済  2018.11.15東京新聞    2019.2.18西日本新聞

(図の説明:左図のように、日本における外国人労働者数は毎年20万人ペースで増加しており、中央の図のように、人手不足はさらに増える見込みだ。また、右図のように、医師数も不足している地域があるが、診療科による医師の偏在もあるため、総量調整だけでは解決しない)

*8-1:http://qbiz.jp/article/148407/1/ (西日本新聞 2019年2月7日) 外国人診療態勢強化へ 九経連が医療機関支援組織 多言語化やトラブル対策
 九州経済連合会は6日、医療機関での外国人患者の受け入れ態勢整備を進めるため、「九州国際医療機構」を設立した。在留外国人や訪日客が増加する中、医療従事者向けのセミナーを開催するなどして、多言語対応の充実や医療費未払いといったトラブル対策を支援する。代表理事に就任した九州大病院の赤司浩一病院長は福岡市で記者会見し「訪日客などにしっかりと医療を提供するとともに、先端医療を国際的に供給するシステムをつくりたい」と抱負を述べた。九経連の麻生泰会長は「医療を通じて外国人に安心感を提供することが、観光やビジネスの面で九州の魅力アップにつながる」と強調した。法務省などによると、九州の在留外国人は13万1532人(2018年6月末)。九州の空港や港から入国した外国人は、18年に初めて年間500万人を超えたとみられる。在留外国人や訪日客の受診が増えるのに伴い、医療機関の言語対応が不十分で適切な診療ができなかったり、外国人患者が日本の公的医療保険制度を不適切に利用したりする事例も起きている。機構は九経連に事務局を置き、問診票などの多言語対応支援や医療通訳の勉強会開催、多言語で受診できる医療機関や医療保険制度など外国人向けの情報発信にも取り組む。治療目的の「医療ツーリズム」で来日する患者と受け入れ医療機関のマッチング支援も手掛ける考えだ。

*8-2:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO36751950S8A021C1MM0000/ (日経新聞 2018/10/22) 医療ツーリズム、世界で急拡大 新興国が誘致競う
 国外を医療目的で訪れる「医療ツーリズム」の市場が世界で急拡大している。主要国の高齢化や格安航空会社(LCC)など安い交通手段の発達により、タイなど新興国渡航の人気が高まる。各国で査証(ビザ)要件を緩めるなど需要取り込みの競争も激しい一方で、地元市民の医療が後回しになるとの批判も出ている。米プライスウォーターハウスクーパース(PwC)が2018年に明らかにした調査によると、医療ツーリズムの世界市場は16年時点で681億ドル(約7兆6千億円)だったという。21年まで年率13%で成長が続くと試算している。16年は世界で約1400万人が移動したとみられ、訪問先はタイ、メキシコ、ブラジルなど新興国が人気だ。医療レベルが比較的高いにもかかわらず、物価が安いため。治療費を含めた旅費は1人あたり約3千~1万ドルで、通常の観光より多い傾向にある。市場拡大の背景には高齢化がある。50年に4人に1人が65歳以上となる中国などが需要をけん引する。また国内線で成長したLCCが国際線にも広がり、移動が手軽になっている。誘致合戦も過熱する。タイは「アジアの医療ハブ」構想を打ち出し、官民で取り組んできた。調査会社によると、17年に医療ツーリズムで訪れた人はのべ330万人と世界トップのもようだ。18年には4%増の同342万人の見込みだ。タイ政府は17年、治療目的の観光客向けに査証(ビザ)の滞在許可期間を延長した。中国など周辺5カ国からの観光客はそれまでより最大76日長い90日滞在できるようにした。バンコクが拠点の富裕層向け私立病院はホテル並みと評される豪華な設備を整え、呼び込みに躍起だ。近年台頭するのがインドで、訪問者は17年に約49万5千人と15年の2.1倍に増えた。医療機器や医師が優れている割に費用が安いのが一因で、手術費は先進国の2割で済む例もあるという。医療レベルが不十分な近隣やアフリカ諸国のほか、インドの伝統医学「アーユルベーダ」を目的にした欧米や中東の訪問者も多い。インド政府は医療人材のスキルを高める研修や、外部にアピールするイベントなどに補助金を出している。病院最大手アポロ・ホスピタルズは英語やヒンディー語などが話せない患者のために通訳を置き、母国から付き添う家族のために宿泊先を探すといった手厚い対応をしている。中東からの旅行者が多いのがトルコだ。地元メディアによると医療目的の訪問者は10年間で急増し、17年に約70万人が訪れた。人気の一つが男性向け植毛で、年10万人以上が治療を受ける。予約までの日にちの短縮や通訳の手配などを官民で進めており、18年には外国人の治療費の一部を付加価値税(VAT)の対象外とした。欧州ではハンガリーやルーマニアなど東欧の人気が伸びている。メキシコも、医療費が高くなりがちな米国の旅行者を多く受け入れる。一方で問題点も指摘される。米国の疾病予防管理センターは言葉が分からない国での治療、品質が分からない薬剤に危険が伴うと指摘する。オーストラリアでは17年、マレーシアで脂肪吸引などを受けた男性が帰国後に死亡したと報じられた。たとえばインドでは医師や病床数が足りず、低所得者層や農村部には十分な医療サービスが行き渡っていない。こうした国民が置き去りにされる中、国外の高所得者が恩恵を受ける医療ツーリズムを批判的にみている個人もいる。日本政府も医療ツーリズムを成長分野と位置づけ、巻き返しをねらう。ただ、16年の医療滞在ビザ発行は1307件にとどまっている。海外での認知度が乏しいうえ、新興・途上国と比べてコストが高い点が伸び悩んでいる原因とみられる。

*8-3:https://www.nikkei.com/article/DGKKZO3981696009012019EE8000/ (日経新聞 2019/1/10) 医師不足地域「年1900~2000時間」 残業規制で厚労省原案
 厚生労働省が2024年4月から適用する医師の残業時間の上限規制の原案がわかった。医師不足の地域の病院などでは「年1900~2000時間」まで容認する案だ。連合など関係団体に示して調整を進めているが、一般労働者の上限規制を大幅に上回るため、議論は難航が予想される。4月施行の働き方改革関連法では一般労働者で年720時間以内、単月100時間未満などの残業時間の上限規制を課す。医師も規制対象だが、厚労省は医師向けの独自ルールを今年度中に固め、5年後に適用する。一般の医師の残業時間の上限は休日労働込みで960時間とする方針。その上で地域医療に欠かせない病院などに勤務する医師は特例で上限を緩める。原案では特例は35年度末までの経過措置とする方針。勤務間インターバルなどの健康確保措置も義務付ける。

*8-4:http://qbiz.jp/article/148936/1/ (西日本新聞 2019年2月18日) 医師不足12道県5000人超 36年推計 都市からの配分急務
 厚生労働省が2036年時点で各都道府県で必要とされる医師数を推計すると、最も医師の確保が進んだ場合でも、宮崎など12道県で計5323人の不足が見込まれることが17日、関係者への取材で分かった。医師確保が進まない場合、必要な人数を満たせない34道県の不足分を積み上げると、3万人超となる。東京や大阪、福岡、佐賀、長崎など13都府県では、その場合でも必要人数を上回る医師が確保できると予測されており、大都市圏から不足地域に医師を配分する施策が急務となる。厚労省は36年度までに医師が都市部に集中する偏在問題の解消を目指している。今回の集計結果を18日の有識者検討会に報告し、医師確保策の議論の材料とする。今後、医師が足りない地域に関しては、地元で一定期間勤務することを義務付ける大学医学部の「地域枠」を優先的に配分するなど、対策を強化したい考えだ。検討会では、医師が集中している現状の度合いを示す「医師偏在指標」を、都道府県が複数の市町村などをまとめて設定する「2次医療圏」ごとに提示。都道府県など3次医療圏単位でも示し、医師不足が顕著な岩手、新潟、青森など15県は「医師少数3次医療圏」とする方針。今回の推計は、患者の年齢や性別による受診率や、配置されている医師の性や年齢、将来の人口変化などを考慮し、36年時点で必要とされる医師数を算出。2次医療圏ごとでは、全国335カ所のうち約220カ所で医師が不足する結果となった。都道府県ごとの推計をみると、医師確保が最も進んだ場合でも、新潟で1534人、埼玉1044人、福島804人の不足が生じる。医師確保が進まなかった場合は、埼玉で5040人、福島で3500人、茨城で2376人と不足人員がさらに増えると推計。必要人数を満たせなかった34道県の不足分を、他の都道府県からの流入を考慮せず、単純に積み上げると、3万4911人となる。一方、その場合でも、東京で1万3295人、大阪で4393人、福岡で2684人が必要な医師数を上回ることが見込まれている。

*8-5:http://qbiz.jp/article/149044/1/ (西日本新聞 2019年2月20日) せき込む音が高速バス車内に響く・・・
 せき込む音が高速バス車内に響く。せきの主は反対側の窓側席の男性。マスクはしていないようだ。世の中ではインフルエンザが流行中。バスの中は逃げ場がない。「勘弁してほしい」と思い窓からずっと外を見ていた。近くの客は気が気じゃなかっただろう。そんな体験から10日余り。のどが痛くてせきが止まらない。鼻水が出て顔が熱っぽい。病院で検温すると38度7分。「見るからに怪しい」と医師。ウイルス検査でA型のところに赤い線が出た。ワクチンを打っていたので症状が軽くて済んだ。職場を強制退去させられ、しばらくは自宅軟禁生活だ。編集局内でインフルエンザがじわじわ広がっている。世間ではピークは過ぎたようだが、流行の終わりかけに発症するとは中年男の悲哀。今週初めからのどが痛かったのにマスクをしてなかった自分を猛省。

<地方の発展はみんなの幸福に繋がるのに・・>
PS(2019年2月19日追加):*9のように、金沢産野菜と農産加工品を東京に運ぶ貨客混載の高速バスが運航を開始したそうだ。人口の少ない地方は、バスも貨客混載しなければ走らせることができないくらいだが、それなら貨物積載部分の面積が大きな地方仕様のバスがあってもよいと思われる。このような中、2020年開催の二度目の東京オリンピック・パラリンピックに2兆円以上もかけ、東京の地下鉄工事は1路線1,000億円以上と言われながら、地方が返礼品を工夫し地場産品を開発しながら、ふるさと納税によって少々住民税を集めると東京圏から苦情が出るというのは、それこそ背景や歴史を無視したエゴ以外の何物でもないだろう。

*9:https://www.agrinews.co.jp/p46779.html (日本農業新聞 2019年2月19日) 高速バスで野菜直送 東京便スタート JA金沢市
 金沢産の野菜と農産加工品を東京に運ぶ貨客混載の高速バス「産地直送あいのり便」の初便が18日、西日本JRバス金沢営業所を出発した。バスのトランクスペースを使って生産量が少ない「加賀野菜」などを輸送し、販路拡大や運送費のコスト削減、農家の所得増大につなげる。今後、月に4便程度の運行と都内各所での即売会などを計画する。輸送されたのはサツマイモ「五郎島金時」や「加賀れんこん」「金沢春菊」などの加賀野菜と加工品各9品目の計4ケース。JA金沢市が集荷した。金沢営業所前で積み込み、JAの辰島幹博常務は「小ロットでも可能な新しい輸送事業となる。金沢産野菜の発信の広がりに期待する」とあいさつした。バスは午前9時半に金沢駅発、午後5時22分に新宿駅着の「金沢エクスプレス2号」。野菜マーケティング販売などのアップクオリティ(東京)が運営を担当し、19日、三菱地所(同)の社員に直販する。アップクオリティによると、バス会社と連携した農産物の貨客混載輸送は9県目。担当者は「都内のレストランやスーパーからも注文を取りたい」と話した。西日本JRバスでは農産物の貨客混載輸送は初めて。金沢営業所の丸岡範生所長は「バスは3列シートで定員が28人と少なく、トランク収納に余裕がある。定期便を使って輸送したい」とした。JAの辰島常務は「昨年の試験輸送では鮮度が高く、速く届くと好評だった。生産量の確保が今後の課題だ。これまで以上に、若い人にも加賀野菜を栽培してもらいたい」と期待を寄せる。

<地方創成とふるさと納税>
PS(2019年2月22、23《写真等》、24、25日追加):地方が発展するためには、*10-1のように、所得の高い仕事を増やし、地域の魅力をアピールして移住者を増やすのが最も合理的である。そのためには、今後の成長産業である農林漁業資源を活かして生産者の所得を増やしたり、製造業の事業所・本社機能が地方に移るような施策を行うことが必要だ。しかし、海外も含めて立地の選択肢が多い製造業は、税制よりも販売エリアへのアクセス・労働力の質と単価・関連産業からの調達を考慮して立地を決定するため、間違いのない意思決定と筋の通った普段の誘致努力が必要だ。一方で、*10-2の地方創生目的で文化庁などの政府機関の一部を地方移転するというのは、政府機関の生産性はもともと高くなく、分散すればさらに効率が下がるため、首都機能の一部をまとめて疎開でもさせるのでなければ、国全体としてはマイナスだろう。
 また、*10-3のように、対馬の漁業者でつくる「対馬の漁業者の所得向上を実現する会」が、①対馬市への公設市場開設 ②燃料費の高騰対策 等の要望書を提出したそうだ。しかし、①については、対馬はよい水産物を作っているため、公設市場をいくつも通すより東京・大阪・福岡の公設市場の出張所を対馬につくってもらった方が、手数料を省くことができるのではないか?また、②については、「船の燃料費が高いから補助しろ」と20年以上も言い続けるのはあまりに工夫がなく、船を電動船に変えて島で発電した自然エネルギー由来の電力で動かしたり、クロマグロの漁獲制限で所得が半減したのならクロマグロの完全養殖をしたり、船に魚を効率よく漁獲できる機材を備えたりすればよいと考える。
 *10-4-1、*10-4-2のように、ふるさと納税額は、泉佐野市が2017年に135億円を集め、2018年には360億円に達する勢いで他地域から苦情が出るほどだが、私は商才があると思った。泉佐野市は関西空港を持ち、瀬戸内海・淡路島・四国に面した美しくて歴史的交通の要衝であるため、泉佐野市にアマゾンやガリバーと同じくらい世界に通用するネット通販会社(例えば、大王《おおきみ》という名前)を作って、質の良いものを販売してはどうか? そして、地方自治体が、ふるさと納税により、一村一品のような小さな目標ではなく、自らの長所を活かして堂々と売れる物を開発してきたことは、ふるさと納税制度の大きな成果なのである。
 なお、今日(2019年2月24日)わかったのだが、*10-5のように、半島・離島・奄美群島のうち一定の基準を満たす地域は、「個人又は法人が機械・装置、建物・その附属施設及び構築物の取得等をして事業の用に供すると5年間の割増償却ができる」という税制優遇があるそうだ。

  
移住希望地域               長崎県対馬市の様子

(図の説明:左図のように、移住希望地域は長野県が連続1位で、都市部から地方への移住に抵抗感のない人は多いことがわかる。また、左から2番目の図のように、長崎県対馬市は韓国の釜山と49kmしか離れていない国境離島であり、リアス式海岸が美しい。そして、ここでは獲る漁業だけでなく、右から2番目の写真のようなマグロの養殖・1番右の写真のような真珠の養殖・その他の魚介類の養殖も盛んだ。つまり、対馬は、今後のアジアの台頭で潜在力が高くなる島であり、付加価値の高い仕事をするための資本投下や人材投入が必要な時期なのである。また、真珠も素敵なアクセサリーに加工して販売した方が付加価値が上がるし、ふるさと納税の返礼品にしてもよいと考える)

 
イタリア製   フランス製      スペイン製          日本製

(図の説明:念のため、各国の真珠のブローチを並べて見たところ、ヨーロッパ製は台座のデザインが華やかで、日本製は真珠は多くついているのだが、台座が簡素なため全体としておとなしくなっている。そのため、外国のデザイナーを入れてみるのも一案だろう)

*10-1:https://www.shinmai.co.jp/news/nagano/20190220/KT190219ATI090041000.php (信濃毎日新聞 2019年2月20日) 移住希望地 長野県1位 2年連続
 認定NPO法人ふるさと回帰支援センター(東京)が19日に発表した2018年の移住希望地ランキングによると、1位は2年連続で長野県となった。2位は前年3位の静岡県、3位は前年16位の北海道だった。長野県は年代別でも30〜50代でトップ。20代以下では新潟県、60代では北海道、70代以上では宮崎県が1位だった。長野は20代以下で2位、60代で3位、70代以上で2位。長野県楽園信州・移住推進室は、市町村と連携した情報発信などが要因と分析。阿部守一知事は「来年度は『信州暮らし推進課』を設置し、一層充実した体制の下で移住、交流の促進に取り組む」としている。18年に同法人が運営する情報センターを利用した人や、セミナー参加者に移住したい都道府県を複数回答可で質問。9776件を集計した。

*10-2:https://www.kochinews.co.jp/article/252817/ (高知新聞 2019.2.10) 【一極集中の拡大】地方創生の本気度を問う
 東京一極集中に歯止めがかからず、むしろ加速している実態があらためて明らかになった。総務省が公表した2018年の人口移動報告によると、東京圏(埼玉、千葉、東京、神奈川)は転入者が転出者を14万人近く上回る転入超過となった。前年より1万4千人以上多く、一極集中が拡大した。その半面、39道府県が人口の流出を意味する転出超過で、高知県は2300人余り。全国の市町村の7割以上で転出超過となった。日本人に限った統計でも、東京圏は23年連続で転入が上回った。安倍政権が地方創生本部を新設した14年以降の5年間は、10万人超えが続く。東京圏の吸引力が強まっているのは皮肉といえる。東京一極集中は、戦後の高度経済成長政策のひずみとして問われ続けてきた課題だ。近年は20年の東京五輪に向けた建設ラッシュや、企業の業績改善に伴う慢性的な人手不足という要因もあろう。ただ、安倍政権は地