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2021.4.3~12 日本は無駄遣いの許されない財政状態だが、何が無駄遣いに当たるのか? (2021年4月15日に追加あり)
   
   MOF        2021.1.29北海道新聞        2020.12.21時事  

(図の説明:左図が、2020年度二次補正予算まで入れた日本の歳出・歳入・国債残高で、新型コロナによる散財でわにの口が上に折れた。これに、中央の図の第三次補正予算も加わり、2020年度の総歳出額は170兆5,512億円となる。そして、2021年度も、106兆6,097億円の歳出と43億5,970円の新規国債発行を見込んでいる)


   President図1、図2      President図3    President図4  President図5

(図の説明:Presidentの図1、図2のように、日本における新型コロナの感染者数・死者数は欧米の1/100だが、発生数は世界中で頭打ちになっているのに、日本だけ漸増している。そして、Presidentの図3、4、5のように、日本では大都市圏に感染者数が多く、いずれも頭打ちではなく右肩上がりという特殊な動きをしているのである)

(1)日本の財政
1)2021年度予算について
 2020年度の本予算は102兆6,580億円で9兆2,047億円の債務純増だったが、さらに、コロナ禍の克服対策として第1次補正予算16兆8,057億円(うち9兆5,000億円あまりが自粛で困った企業の救済資金)、第2次補正予算31兆9,114億円(すべて自粛による倒産危機に備える支出)だった。さらに、2021年になってから第3次補正予算19兆1,761億円が組まれ、2020年度分の支出合計は170兆5,512億円になった。

 しかし、新型コロナの検査と隔離を徹底し、新型コロナ関係の機器・治療薬・ワクチンの開発と承認を速やかに行えば、ずっと少ない支出で新型コロナを止めて国民の命と生活を守り、産業の高度化にも繋がって、経済効果はよほど大きかった。にもかかわらず、検査をケチり、検疫や隔離も不完全にして、国民に自粛を促したり、緊急事態宣言を出したりした結果、その後のバラマキが多すぎて賢い支出とは言えない状況になった。

 2021年度予算(106兆6,097億円)は、*1-1のように成立し、グリーン化・脱炭素社会の実現・デジタル化とそれらを支える大学の研究を促す基金への支出をするのはよいが、新型コロナで大学への立入を禁止したのは、大教室で行う文系の講義とその遠隔化(デジタル化)しか眼中になく、理系の実証的な教育研究を妨害することになって教育・研究を疎かにすることとなった。そして、この1年間の遅れは大きい。

 また、「“災害”と名がつけば、いくら予算を付けてもよい」とばかりに、効果の薄い公共工事に減災・防災と称して多額すぎる資金を投じるのは無駄遣いである。国民の血税を投じる公共工事は、少子高齢化で人手不足となっている日本では、雇用の確保やバラマキのために行うのではなく、最小費用で最大効果を出すように設計にすべきだ。

 なお、環境に適応してヒトの人種が次第に変わっていくのと同様、ウイルスの変異もウイルスがいる限りどこででもアット・ランダムに起き、環境に適合してより生存しやすくなったものの割合が次第に増えていく。しかし、種が変わるほどの大きな変異でなければワクチンが効かなくなるわけではないのに、「外国由来の変異型」を口実に愚策を正当化しているのは見苦しい。

2)日本の借金について
 このように、農業でやってきたのと同様、働くことを禁止して働かなかった人に補助金を出したため、国と地方が抱える長期債務残高は著しく膨らんで、今ではGDPの2倍に当たる1200兆円にのぼり、年60兆円前後の税収ではとうてい賄えない金額になった。

 しかし、日本のように、インフレ目標を立ててインフレで借金を目減りさせるのは、法律によらずに全国民に見えざる負担を押し付け、支出の割合が大きい貧しい人から土地・株式を持つ富む人へ財産の移転が行われる所得の逆再配分であり、本末転倒のやり方である。

 また、*1-2のように、単純に「将来世代につけを回してはいけない」とするのも正しくない。何故なら、公共事業の中にも将来世代にとっても役立つ資本的支出(投資)に当たるものが多く、この資本的支出部分と無駄遣いのバラマキ部分をしっかり区別することが大切なのだが、国はこれをやらずにバラマキを多くしているのが問題だからである。

 なお、新型コロナ対策を例にとれば、関係する機器や治療薬・ワクチンの開発は資本的支出にあたる投資部分が大きく、国民に自粛を促したり、緊急事態宣言を出したりして企業が立ち行かなくなったため出す補助金は、無駄遣いのバラマキ部分が殆どである。しかし、米国のように、失業した人を雇用吸収するために行うグリーンニューディールは、適正な価格で行う範囲において資本的支出の部分が大きい。

 社会保障については、4)の消費税に関する項目で同時に記載する。

3)飲食店への営業時間短縮協力金、雇用調整助成金、GoToトラベルは賢い支出か?
 政府は、*1-3-1のように、新型コロナ感染収束と経済正常化に向けると称して、2021年度も巨額の財政出動を続けることとした。

 このうち、①自治体が営業時間短縮に応じた飲食店に1日4万円配る協力金の財源 ②広く経済活動を止めたために必要となった雇用調整助成金 ③自粛を要請して必要になった消費喚起策 などを、いずれも○兆円単位で支出しているが、これらは国が検疫・検査・隔離などの予防的処置と治療行為をしっかり行っていれば不要だったものである。

 また、日本の感染者は、*1-3-2のように、欧米の1/100程度だったが、それでも医療が対応しきれないとされ続けたのは、これまでの政治・行政のミスと言わざるを得ない。さらに、対数グラフで各国の感染者数・死者数の推移を比較すると、中国・韓国などの東アジアでは早期に横ばいになり、欧米でも次第に横ばいになっているのに、日本だけが右肩上がりなのである。

 ドイツは、感染者数は他の欧米諸国と殆ど同じパターンだが、死亡者数はかなり早い段階で拡大テンポが落ち、他の欧米諸国より良好なパターンを示した。その理由は、感染拡大の地域的偏りが小さく、医療体制が充実し、PCR検査の充実等により感染者が高齢者に偏らなかったこと等が指摘されている。そのため、今後、あるべき医療・介護制度を整備したい地方自治体は、自治体の担当者・医師会・介護担当者が、ドイツ・スウェーデン・イギリスなどのヨーロッパ諸国を視察して、よいところは参考にし、国に要望しながら整備していくのがよいと思う。

 つまり、医療システムや検疫システムの充実は将来世代のためにもなる資本的支出だが、単なる景気刺激策は賢くないバラマキであり、特定地域の飲食店全店に科学的な理由の説明もなく営業時間の短縮を求めたのは、政治・行政の不作為のツケを国民に皺寄せする不公平・不公正なやり方だったのである。

 なお、脱炭素は研究開発ではなく実用化の時代であり、今は公共に環境関連のインフラ整備が求められている時なので、肝心な時に「財政に余力がない」と言うのは、日本の愚かさだ。

4)消費税と社会保障がセットである必要はないこと

      
2021.3.31日経新聞

(図の説明:左図のように、高齢者の70歳までの雇用を努力義務化することによって年金支給を減らし、同一労働同一賃金によって低賃金労働者を減らそうとしているのは理に適っているが、高齢者の健康状態を考えれば75歳定年制でもよいと思う。しかし、公立小学校で2年生までをやっと35人学級にするというのは、教育が大切な割には小出しである。なお、公的年金引き下げや介護報酬引き上げは、低所得の高齢者を直撃するため賛成できない。そのため、国や地方自治体は、税収だけでなく税外収入を増やす努力もすべきだ。また、下に書いたように、価格を総額表示しただけでは買い手の購入判断や会計処理に不便であるため、中央の図のインボイス制度開始時には、ヨーロッパ型の適格請求書を義務化し、これからはそれに沿った設備投資をした方がよいと思う。中小企業者でも、右図のように、領収書様式に明細欄をつければすむことだ)

イ)消費税について
 2021年4月1日から、*1-4-1のように、消費税の総額表示が義務化された。支払金額が分かりやすいように、2004年に税込価格の総額表示が義務化されていたが、2014年の税率アップ前に税抜価格表示が認められていたのだそうで、「消費税額を書かなければ、消費税の痛みを感じないだろう」と思ったとは、あまりに国民を馬鹿にしている。また、値札の表示と実際の支払金額が異なるのは詐欺だし、買い手に暗算で真の支払金額を計算させるのは不親切だ。

 そのため、領収書は、前にもこのブログに記載したとおり、商品毎に税抜価格・消費税率・消費税額・税込価格を記載し、総合計欄に税抜価格合計・消費税率・消費税額合計・税込価格合計を記載すべきだ。そうしなければ、売り手に手を省かせて優しくしたつもりでも、買い手が領収書を見て会計処理する際に総額から消費税額を割り戻して計算した上、端数処理まで気にしなければならず、いたずらに煩雑化させ無駄な時間をとらせて生産性を下げる。

 しかし、支払総額だけを表示したからといって消費者が値上げと錯覚して、さらに個人消費(売上)が落ち込むことはない。何故なら、どんぶり勘定の人でも、値札が税込表示か税抜表示かにかかわらず、支払後の残額は同じで(ここが重要)、消費税分だけ値上げされたのと効果が同じであることは変わらないからである。

 *1-4-2も、総額表示が義務化され、値上げの印象に懸念を示しており、農業系は殆どの商品が税率8%かもしれないが、今後のインボイス制度導入も視野に入れ、商品毎に税抜価格・消費税率・消費税額・税込価格を記載し、総合計に税抜価格合計・消費税額合計・税込価格合計を記載するのが、買い手が会計処理するのに親切でよいと思う。

 現在の消費税法は、簡便さを目的として推定や割り戻し計算を多く採用しており、かえって複雑で不正確になっている。そのため、複数税率にも難なく対応できるヨーロッパと同じ形式のインボイス制度(https://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/consumption/110.htm 財務省:主要国の付加価値税におけるインボイス制度の概要 参照)を早急に取り入れ、公正・中立・簡素な制度にしながら、標準化した領収書を使うことによって、正確で素早い自動会計処理ができるようにした方がよいと思う。

ロ)社会保障について
 *1-4-1に書かれているとおり、消費税法1条2項に「消費税の収入は、制度として確立された年金・医療・介護の社会保障給付及び少子化に対処するための施策に要する経費に充てるものとする」と明記されている(https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=363AC0000000108 消費税法 参照)。

 これに対する疑問は、「①消費税は、本当に目的通り社会保障のみに使われているのか」だけでなく、「②何故、社会保障給付には、消費税を充てなければならないのか」の2つがあり、①については、社会保障だけに使われているのではないと言われている。また、②については、そもそも社会保障も国の重要な支出であるため、所得税・法人税・相続税等の他の国税収入から充当しても差し支えない筈なのだ。

 さらに、公的医療保険はリスクの低い人と高い人が混在して支える保険制度なのだが、リスクの低い期間(被用者として就業している期間)に入る健康保険・船員保険・共済組合には退職してリスクが高くなった後は入らないため、健康保険・船員保険・共済組合は黒字になるのが当然ということになる。その反面、被用者としての就業が終わった退職者や自営業者・農業従事者・フリーターが入る国民健康保険は、所得の低い人やリスクの高い人の割合が高くなるため、当然のことながら赤字となり、これに税金で補助している。しかし、被用者としての就業期間が終わった退職者は、元の健康保険に入り続けるのが保険の理論にあっているのだ。

 また、介護保険制度は、40歳以上の人の加入が義務付けられ、被用者は健康保険料と一緒に介護保険料を徴収されて事業主が保険料の半分を負担する。被用者でない国民健康保険加入者は、自治体が計算して介護保険料を徴収し、65歳以上の人は原則として年金から天引きして市区町村が徴収する。

 ここで不自然なのは、65歳以上の人だけが介護サービスの対象者で、40歳以下の人は介護保険料を徴収されないが介護サービスも受けられないこと、40~64歳の人は介護保険料の支払義務はあるが、老化に起因するとされた特定疾病により介護認定を受けた場合しか介護サービスを受けられないことだ(https://kaigo.homes.co.jp/manual/insurance/about/ 参照)。しかし、65歳未満の人でも、出産や自宅療養時には介護を受ける必要があるため、医療保険に入った時から介護保険にも加入することを義務付けて、介護サービスの対象者にするのがよいと思う。

 このような不合理を包含しながら、「社会保障に投入されることになる税金は、景気に左右されない安定財源だから消費税から賄う」としているが、これは、消費税が所得に関係なく税を徴収していることの裏返しであり、さらに消費支出割合の大きな低所得者の方が消費支出割合の小さな高所得者よりも税負担率が高くなるという逆進性を持つ負担力主義に反する税であるということなのだ。そのため、消費税に頼る姿勢は、小さければ小さいほどよいのである。

(2)人口を分散した方が、ゆとりある暮らしができること

   

(図の説明:左図のように、日本の人口密度は、東京・大阪・神奈川・埼玉・愛知・千葉・福岡で高く、中央の図のように、人口密度と新型コロナの人口当たり患者数は相関関係がある。つまり、大都市は、一人当たり専有面積が狭く、混み合っているということで、右図のように、公園における1人当たりの占有面積にも大きな違いがあり、自宅・保育園・学校・列車における一人当たり専有面積も同じだ。つまり、人口の集中しすぎは、住環境の悪化を招くことがわかる)

 一番上の下段・中央の図のように、新型コロナの感染者数が多かったのは、東京・大阪・神奈川・埼玉等の大都市圏と北海道・北陸などの特定地域で、これらは人口の密集や観光地であるなどの条件から納得できる。しかし、日本には、鉄道・上下水道等の基礎的インフラすら維持管理しにくくなっている過疎地も存在し、*2-1のように、過疎地域には日本の全人口の1割しか住んでいないのに、その面積は国土の約6割を占めるのである。

 そのため、*2-3のように、2021年3月26日に、議員立法で「過疎地域の持続的発展の支援に関する特別措置法」が成立し、「東京一極集中の是正」と「地方の活性化」を国づくりの車の両輪としながら、国土全体を活かし切って日本の持続可能性を徹底的に追求し、国民の安全安心を確固としたものにするための法律ができたのは歓迎だ。

 確かに、過疎地は人口減少・少子高齢化をはじめ課題先進地であるため、これを解決することは、これから日本に起こるさまざまな課題を解決するためのヒントになる。また、一極集中しないことは、国全体として災害に強く、ゆとりある住環境を提供できる上、国内で食料・エネルギーを作ることにも資する。さらに、自然の近くで生物や環境に関する感受性を育てることによって、地球温暖化の防止や水源の涵養に資する人材を育てることにもなるのである。

 そのため、私も、*2-1に書かれている分散型社会は必要で、その分散型社会への受け皿となる過疎地域の持続的な発展も重要であり、成立した新過疎法で地域公共交通網・医療機関・介護施設・教育施設・デジタル社会向けのインフラ整備などを行い、農林漁業はじめ地場産業を振興して雇用を創出し、人口密度が低く十分な生活空間を提供できる過疎地域を、環境がよくて住みやすい地域にすることは、将来の国民の利益に繋がると考える。従って、これらは決して無駄遣いではなく、資本的支出(≒投資)になるように計画しなければならない。

 なお、一極集中している大都会は、エネルギーも食料も水も作れない。国連は、2020年9月に食料システムサミットを開き、貧困・飢餓の撲滅・気候変動対策等の持続可能な開発目標(SDGs)達成に向けた方策を議論し、各国に食料の生産、加工、輸送、消費の一連の活動を変革する取り組みを示すよう求めたそうだ。また、EUは既に新戦略「農場から食卓へ」で、2030年を期限に化学農薬使用量の半減・有機農業面積の25%への拡大などの目標を設定し、米国のバイデン政権も、農業での温室効果ガス排出量を実質ゼロにすると宣言している。

 日本は、*2-2のように、農水省が2021年3月中に、温室効果ガスの削減などを目指す農業の政策方針「みどりの食料システム戦略」の中間取りまとめを行い、2050年までに、①化学農薬使用量を半減 ②化学肥料3割減 ③有機農業を全農地の25%に拡大 ④化石燃料を使用しない園芸施設に完全移行 などを目標に掲げたそうだが、それならEUと同様、2030年までには行うべきだし、そうすることによって新しい方法への研究と実用化が進む。

 *2-2に書かれているとおり、確かに、日本の政策は、機械・施設の開発に力点を置く技術革新を重視しており、生態系の機能を回復・向上させる技術開発が手薄だ。そして、環境負荷を軽減する農業を点から面に広げる地域ぐるみの後押し政策も貧弱な場所が多いが、これらは、教育において生物系の勉強を疎かにしていることが原因だろう。

(3)エネルギーの自給率を上げて、豊かな国になろう
1)環境税(炭素税)
 *3-1のように、温暖化対策が不十分な国からの輸入品に国境炭素税を課す多国間協議が始まるそうだ。私は、炭素(or排気ガス)排出量に応じて環境税を課すべきだと思っていたが、これまで経産省と産業団体の反対で導入できず、またまたEUなどの外圧に頼ることになった。

 それでも、この環境税(炭素税)を、「事実上の関税になる」「対立の少ない制度づくりができるか」などと言っているようでは、環境分野での日本のリーダーシップや信用は壊滅する。何故なら、これは自由貿易以前の地球環境を護る取組だからで、各国は歩調を合わせて環境税(炭素税)を導入するようにし、環境税(炭素税)を導入しない環境軽視国に対しては、地球環境を護る国が損をしないように国境調整するしかないのである。

 もちろん、温暖化ガス排出量の計算と炭素への価格付けは、環境税(炭素税)によって化石燃料から再エネへの移行に資するものにしなければならない。また、データは客観性の持てる集め方をして、第三者の検証を可能にしておかなければならない。さらに、集めた税収は、再エネ普及のためのインフラ整備に使うのがよいと思う。

 「日本は脱炭素への寄与度が高い製品の輸入にかかる関税を引き下げる案も各国に提案する方向だ」とも書かれているが、環境税(炭素税)は化石燃料から再エネへの移行が進む単価にしなければならないし、そうすれば回り道をせずに優れた再エネ製品に移行するため、日本政府のこういう意図的な取引はむしろ邪魔になる。また、関係国で対話をし、回り道をさせることによって、日本が再エネ機器でも自動車と同じ轍を踏まないようにしてもらいたい。

2)再エネ



(図の説明:水素は再エネ由来でなければ意味がなく、左図のように、水を電気分解して水素を作るさまざまなシステムができている。できた水素は、中央の図のように、移動手段用・産業用・家庭用の燃料電池として使うことができ、右図のように、水素を使わずに効率良く蓄電する全固体電池もできているため、後は、これらを安価で速やかに普及することが重要なのだ)

イ)国産・再エネ由来の電力を使おう
 米アップルが、*3-2-1のように、2021年3月31日、アップルに納める製品の生産に使う電力を全て再エネで賄うと表明したサプライヤーが110社を超えたと発表し、日本企業は村田製作所・ツジデン・日本電産・ソニーセミコンダクタソリューションズなどが、アップル向け製品生産で消費する電力を全て再エネに切り替えると約束している。

 アップルは2030年までに自社の全製品の生産から利用を通じて排出するCO₂を実質0に抑える方針を2020年7月に表明し、アップルの呼びかけに応じた取引先数は2020年7月の約70社から8カ月間で1.6倍に増えたのだそうだ。影響力は、このように、世界をリードする方向で使いたいものである。

ロ)水素も国産・再エネ由来にすべき
 *3-2-2のように、政府は国内の水素利用量を、2030年時点で国内電力の1割分にあたる1000万トン規模とする目標を設ける調整に入ったそうだ。

 その内容は、発電や燃料電池車(FCV)向けの燃料として利用を増やしてコストを引き下げ普及に繋げるとのことだが、移動手段のエネルギーは燃料電池か電気に変え、ビルや住宅の電力自給率をスマートな機器で引き上げた上、再エネで発電した電力を送電すれば、水素を発電所の燃料に使ってエネルギー変換を繰り返し、エネルギーロスを出すよりずっと効率的だ。そのための送電線敷設費用や充電設備設置費用などを、環境税収入から支出すればよいと、私は思う。

 前から、「①太陽光や風力等の再エネは天候に左右される」「②再エネはコストが高い」という話は何度も聞いたが、①については、再生エネ発電で余った電力を使って水素を作って貯めておく蓄電システムにすれば蓄電コストが安くなるし、②については、石炭や液化天然ガス(LNG)などの化石燃料を外国から輸入し、原発に膨大な国費を投入しているので、再エネや水素のコストが高いと言うのは質の悪い世論の誘導にすぎない。

 また、製鉄は、鉄鉱石の還元を石炭由来から水素に切り替えなければ製品を使えなくなるので、2050年までの技術の実用化では遅いだろうし、発電も同じだ。このような中、オーストラリアの「褐炭」から水素を製造し、運賃をかけて船で日本に運ぶシステムを思いつくとは、何を考えているのかと思う。

 しかし、東芝エネルギーシステムズは、*3-2-3のように、水を電気分解して作るグリーン水素を作る次世代型水素製造装置を開発中だそうだ。グリーン水素を製造する水電解装置の開発も欧州メーカーが先行しているそうだが、何でも外国が開発した技術の追随と改良しかできないのではなく、この分野の技術開発や研究に環境税収入から奨励金を出して特許をとれるようにすることも資本的支出(≒投資)であり、現在及び将来の国民のためになることである。

3)今から原発にテコ入れするのは、馬鹿としか言えないこと
イ)原発に対する国の姿勢


                                  2021.3.14日経新聞
(図の説明:左図のように、日本は、ユーラシアプレート・太平洋プレート・フィリピン海プレートが押し合い、隆起・火山の噴火・地震・津波・浸食などを繰り返しながらできた陸地だ。そのため、中央の図のように、すぐ近くに海溝や海底山脈があり、断層が多くて地震多発地帯でもあり、原発の立地には全く不向きなのである。しかし、海底火山が多いため、右図のように、日本の排他的経済水域にはレアアース等の地下資源が豊富だということもわかっているのだ)

 フクイチ原発事故で明らかなように、原発事故は、広範囲の住宅や田畑を使えなくすることによって先祖が長期間かけて作りあげてきた膨大な資産の価値を無にする。また、「今後も、原発事故の発生確率は0ではない」と、原子力規制委員会は明言している。

 さらに、原発は、事故を起こしていない時でも、稼働すれば使用済核燃料を作り出し、使用済核燃料は発電しなくなってから10万年もの管理が必要だ。そのため、原発の稼働は、将来に膨大な負の遺産を残すことになる上、そもそも、日本には、これを埋設する適地もない。

 にもかかわらず、*3-3-4のように、国は運転開始から40年を超える原発1カ所当たりに最大25億円を県に交付し、老朽原発を動かそうとしている。原発の耐用年数は40年であるため、原発の耐用年数を65年に延長するのは、原発の建設当初よりも安全意識が薄くなっているということだ。

 さらに、「立地地域の将来を見据える」「国・電力会社による地域振興」「原子力研究・廃炉支援・新産業創出等について議論する会議を創設する」等と言っても、わざわざ0リスクではない原発近くに移住する企業や個人はないだろうし、原発付近の農水産物もできるだけ避けることになる。そのため、このような負の効果のある原発を、国から県に一基当たり最大25億円も交付金を出して稼働させるというのなら、原発のどこが安いのかについて、きっちりした説明を要する。決して、できないと思うが・・。

ロ)避難は可能か?

      
   玄海原発       福島第一原発  使用済核燃料貯蔵    廃炉予定   

(図の説明:1番左の図は、SPEEDIで示された玄海原発で事故が起こった際の放射性物質の拡散の様子で、左から2番目の図が、風向きに応じて変えるべき避難方向だが、風向きは季節や昼夜によって変わり一定ではない。中央の図は、福島第一原発事故による実際の汚染で、SPEEDIで示された予想図と似ているため、SPEEDIは正確な予想をしていたことになる。右から2番目の図が、各原発の使用済核燃料貯蔵の余裕で、玄海原発は詰めて並べ替えをしなければ3年分しか残っていなかった。また、玄海1、2号機は、40年の耐用年数で廃炉が決まっているが、他の原発は耐用年数を65年に延長することさえやっているのだ)

 *3-3-5の原子力災害対策特別措置法は、第3条で、原子力事業者は「①原子力災害の発生の防止に関し万全の措置を講ずる」「②原子力災害の拡大防止と原子力災害からの復旧に関して誠意をもって必要な措置を講ずる責務を有する」と規定しており、原子力災害の発生が前提となっている。

 第4条では、国は③原子力災害対策本部の設置 ④地方公共団体への必要な指示その他緊急事態応急対策の実施のために必要な措置 ⑤原子力災害予防対策・事後対策の実施に必要な措置を講ずる 等として、原子力災害の発生を前提としているが、大した予防策はできそうもない。

 また、⑥国は大規模な自然災害・テロリズム等の犯罪行為による原子力災害の発生を想定し、警備強化・深層防護の徹底・被害状況に応じた対応策の整備・その他原子力災害の防止に関し万全の措置を講ずる責務を有するとも規定されているが、東電柏崎刈羽原発では対応できていなかったし、他の原発も大差ないだろう。

 さらに、第27条の2では「⑦原子力災害事後対策実施区域で放射性物質による環境汚染が著しいと認められた場合、市町村長は区域内の必要と認める地域の居住者・滞在者・その他に対し、避難のための立退き・屋内退避を勧告し、急を要すると認めるときは、指示することができる」とし、第27条の6で「⑧原子力災害事後対策実施区域の放射性物質汚染が著しいと認められた場合は、当該原子力災害事後対策実施区域内に警戒区域を設定し、原子力災害事後対策に従事する者以外の者の立入りを制限・禁止・退去を命ずることができる」とも規定している。

 しかし、原発事故が起きれば放射性物質による環境汚染は広範な地域に及び、復旧には数十年単位の長時間かかるため、「避難する」といっても、(何年も体育館に居続けるわけではないだろうが)どこにどういう形で避難でき、復旧にいくらかかるかはフクイチ事故を見れば想像できる。つまり、他の地域で原発事故がもう一度起これば、日本が終るくらいの重大事なのだ。

 このような中、*3-3-1のように、佐賀市議会議員の質問でわかったのだが、「⑨原発周辺自治体の避難計画は約30キロ圏になっている」が、その人口は2020年5月現在18万人を超え、このうち「⑩佐賀市が受け入れる分は約7万7千人であるのに対し、受け入れ可能な人数約5万6千人だけを避難者数として認識」していて、予想避難者数が約2万人もずれていたそうだ。

 このうち、⑨については、風向きによっては30キロを超える地域も汚染されるため、30キロ圏の人が近くの市町村に避難すればよいわけではないことが、フクイチ事故時に飯館村の例で明らかになった。その教訓を忘れたのか? また、⑩については、避難を真剣に考えていないということだろうが、風向きによっては佐賀市も避難対象地域になるため当然ではある。

 さらに、「⑪原発事故が発生した際、まず屋内退避・その後に自家用車・それが難しい場合はバスでの避難になる」としているが、屋内退避で防げないほど放射性物質による汚染が進んだ地域に、誰が運転するバスで、どういう順番で迎えに行き、バスに乗るまでに暴露される放射線量は許容範囲なのか否かは考えられていないようだ。それは、「ともかく避難さえすればよい」という発想が、甘すぎる新しい安全神話になっているということだろう。

ハ)原発立地自治体の本当の望みは?

      

(図の説明:1番左の図は日本にある原発の運転開始年で、2021年3月現在、1981年3月以前に運転を開始した原発は40年の耐用年数を過ぎている。左から2番目は、それらの原発の稼働状況で、耐用年数を超えて稼働中の原発はない。右から2番目の図が、原発の運転差し止めを巡る司法判断だ。1番右の図は、原発事故の被害者が起こした集団訴訟の結果だが、国に責任があるとしたものは少ない。今後は、国は「100%の安全はない」と明言した上で、地方自治体がそれを承知で原発を稼働させるのだから、さらに国には責任がないという構造になる)

 「耐震設計の目安となる基準地震動の妥当性」と「阿蘇カルデラの破局的噴火リスク」の2点を争点として、*3-3-6のように、九電玄海原発の周辺住民ら559人が国と九電に対して、玄海3、4号機の設置許可取り消しと運転差し止めを求めた訴訟の判決が、2021年3月12日に佐賀地裁で行われ、達野ゆき裁判長が、「①新規制基準に適合するとした原子力規制委員会の審査に看過しがたい過誤や欠落は認められない」とした。

 このうち、基準地震動については「②規制委の内規『審査ガイド』に記載された平均値を超える地震データ『ばらつき』」が焦点となり、大阪地裁は「ばらつき分の上乗せ要否を検討しなかった規制委の判断過程は『審査すべき点を審査しておらず違法』」としたが、佐賀地裁は「③規制委は原発の安全性に関して高度の専門性を有する機関」「④規制委が専門的知見に基づき策定した新規制基準や同基準による原発の設置許可は合理的」「⑤ばらつきは基準地震動を導く計算式の『適用範囲を確認する留意点』にすぎず、上乗せを要求する記載はない」とした。

 しかし、私は、大阪地裁の「ばらつき分の上乗せ要否を検討しなかった規制委の判断過程は『審査すべき点を審査しておらず違法』」という判決の方が正しいと思う。何故なら、平均という揺れは存在せず、平均とは、大から小までの地震動の値を合計して地震の発生回数で割ったものにすぎないため、最大地震動に対応していなければ原発が地震で壊れるからだ。わかりやすく言えば、かもいの高さは、人の身長の平均値ではなく最大値より高くなければ、平均以上の身長の人はかもいを通る時に頭をぶつけ、人が歩く時には背のびをして身長より高くなる瞬間があるため、かもいはゆとりを持って身長が最大の人より高くなければならないのと同じである。

 佐賀地裁は、また「③規制委は原発の安全性に関して高度の専門性を有する機関」だとしているが、専門性を有する機関でも不都合なことを想定しなかったため事故を起こしたのがフクイチであるため、④の規制委が策定した新規制基準やそれに基づく原発の設置許可だからといって合理的であるとは限らず、それを第三者の立場で判断してもらうために提訴しているのだから、佐賀地裁の判決は役に立たないのである。

 なお、⑤の「ばらつきは基準地震動を導く計算式の留意点にすぎず、上乗せを要求する記載はない」というのは、いくら裁判官でも数学・統計学に弱すぎる。これについて、京都大複合原子力科学研究所の釜江特任教授(地震工学)が、*3-3-3のように、「基準地震動の策定過程をきちんと理解しており、納得できる判決だ」としておられるが、原告の中にも専門家はおり、使用済核燃料のプールを高い場所に造り、細かい配管の多い原発が、最大の地震動にも対応可能だとは、私には思えない。

 この佐賀地裁判決は、四国電力伊方原発を巡る1992年の最高裁判決「原発は専門性が高いため裁判所は安全性を直接判断せず、審査基準や調査に不合理な点や重大な過ちがあった場合のみ違法とすべきだ」という判決を踏襲したのだそうだ。しかし、それなら裁判所は高度な専門性を持つ医療過誤に関する訴訟判断もできない筈だが、第三者である他の専門家の意見を参考にすることによって、これを可能にしているのである。

 「阿蘇カルデラの破局的噴火リスク」については、2016年4月に九電川内原発を巡る福岡高裁宮崎支部が、「⑥どのような事態にも安全を確保することは現在の科学では不可能」「⑦破局的噴火など発生頻度が著しく小さいリスクは無視できるものとして容認するのが社会通念」と決定している。

 しかし、⑥であっても、原発は、一度事故を起こすと長期間にわたって先祖が築いてきた膨大な資産を無価値にしたり、膨大な負の遺産を作ったりするため、一度の事故も許容できない。従って、⑦のように、発生頻度が著しく小さい(これも疑わしいが)からといってリスクを無視することはできないというのが、現在の社会通念だ。だからこそ、九電玄海原発の周辺住民ら559人もが、住民を代表して国と九電に対し、玄海3、4号機の設置許可取り消しと運転差し止めを求めたのである。

 このような原発であるため、*3-3-2のように、「これ以上、市民に不安を押しつけるのはやめてほしい」として、廃炉を求めるのが本音だ。玄海原発から11キロしか離れていない唐津市の人口は11万人を超えるが、佐賀県や玄海町のように「事前了解」をする権限もない。

 しかし、 “準立地自治体”として何でもいいから発言をし、原発関連の交付金をもらえばいいのかと言えば、既にそういう時期ではない。玄海町と一緒になって産業・観光・教育・福祉を新興し、周囲の膨大な数の人にリスクを押し付ける迷惑施設の原発をなくして如何にやっていくかを考え、国や県にそのための支援を頼むべき時なのである。

(4)教育と研究の重要性
1)イノベーションには、知識に裏打ちされた考察力とチャレンジ精神が必要なのである

 
                                 2018.12.6毎日新聞 

(図の説明:1番左の図のように、中国のGDPは、1992年の改革開放後から、経済が市場化によって急速に伸び、2027年には米国を抜く勢いだ。日本は、左から2番目の図のように、景気対策という名のバラマキ《無駄遣い》ばかりしていた結果、財政が困窮した割には名目経済成長率が1~2%に留まっており、実質経済成長率は0%近傍だ。経済を高付加価値化するための科学技術関係予算も、右から2番目の図のように、中国は急速に伸びているが、日本は人口規模以上に低迷している。また、一番右の図のように、世界の主要企業の研究開発費と学術論文数も、日本は次第に振るわなくなっており、正確な原因究明と根本的な解決が必要だ)

 政府は、3月26日、*4-1のように、社会変革・研究力強化・人材育成の3つを柱とする第6期科学技術・イノベーション基本計画を閣議決定し、脱炭素やデジタルトランスフォーメーションなどの社会変革に向けて、2021年度からの5年間で研究開発投資を総額30兆円とする目標を掲げたそうだ。

 また、日本は研究論文の質・量ともに国際的地位が低下し、その理由には、①研究者の任期付き雇用増 ②大学院博士課程への進学者減 等があるため、新計画では、博士過程の学生への生活費支援等の研究力強化と人材育成に抜本的な取り組みを盛り込むとのことである。

 さらに、予算の拡大で企業にも研究開発投資を促し、今後5年間で官民で総額120兆円の研究開発投資を行う目標を掲げて、*4-4のように、2050年までに温暖化ガスの排出量を実質0にする政府目標に向け「グリーン投資」に踏み切る企業を後押しし、脱炭素に繋がる製品の生産拡大を促して設備投資額の最大1割を法人税から税額控除する税優遇策を与党税制改正大綱に盛り込むそうだ。しかし、グリーンとデジタルの2分野は、世界では既に常識となっているため、(いつもながら)研究としては日本は周回遅れなのである。

 このように、○兆円単位で予算をつけているが、やる内容は周回遅れで、日本の研究論文は質・量ともに国際的地位が低下している。その理由は、①②だけではなく、研究者になる人を育てたり、そのチャレンジ精神をバックアップしたりせず、理不尽な批判をして研究の邪魔をする土壌が社会にあることが、まず1つ指摘できる。

 しかし、知識に基づく考察力やチャレンジ精神を持ち、科学技術の担い手となる研究者を増やすことが最も重要であり、そのために世界の英知を集める「千人計画」を作った中国は、基本を行って結果を出しているのである(https://www3.nhk.or.jp/news/special/nobelprize2018/tokushu/tokushu_01.html 参照)。

2)高校・大学の教育について
 文科省は、*4-3のように、来春から主に高校1年生が使う教科書の検定結果を発表し、多くの科目が新設されて、生徒同士の議論や課題の探究を重視する内容となったそうだ。

 もちろん、主権者教育や男女平等教育は重要で、週に何時間かは議論するのもよいが、生徒同士が議論しながら勉強する科目が多すぎると、グループの他のメンバーのレベルに勉強の達成度が依存してしまう。そのため、基礎知識をマスターさせるには、やはり教科書に書いて教師が教えるしかなく、これを「一方通行型の詰め込み教育」と批判するのは考察力の基礎となる知識をマスターしてからで遅くない。何故なら、議論する基礎とするために教える知識の量を減らすと、研究どころか大学教育や社会生活にも耐えない生徒が増えてしまうからである。

 しかし、教師は、背景にある理論を含めてわかりやすく教えられるようなレベルの高い人でなければ、生徒にとっては授業時間が無駄になってしまう。そのため、大学院卒業者や技術者がプログラミングや一般科目を教えられるよう、教師の採用方法を見直す方法もある。また、最近は大画面テレビでYouTubeを見ることができるので、ダンス・音楽・映画だけでなく外国語・議論の仕方・一般科目にも強力なツールとして使えるようになった。なお、国会議員や地方議員の議論も、生徒たちがYouTubeで見て勉強になるようなレベルの高いものにすべきである。

 新型コロナウイルスの感染拡大が続く中、*4-2のように、米国の一部の大学では、学生に週2回のPCR検査を実施し、閉鎖した大学を再開させた。一方、日本では、東大でさえ、研究者や学生の大学内への立入を禁止した。

 日本の新型コロナウイルス対策は、ほかにもおかしな点が多く、その1は、中国が最初から「無症状の感染者がいる」と言っていたのに、日本は発熱したり濃厚接触者になったりしなければ(しても!)検査をしなかったことだ。その2は、研究者や学生の大学内への立入を禁止したため、PCR検査機器の進歩・ロボットの活用・ゲノム解析・プール方式の採用といった安全で正確に数をこなすための検査方法の進歩が遅れ、ワクチンもできなかったことだ。

 初めての感染症であっても、他の知識や経験を応用すれば素早く解決法を見出すことができる。そのため、日本の対応の遅れは、メディアによって作られた世論とそれを意識する意思決定権者の能力の差が、結果に出たと言える。そして、このようなことばかり起こさないためにも、基礎教育を疎かにしてはならないのである。

3)どういう人に育てるかも重要だ
 もちろん、教育は知識だけでなく、どういう人物に育てるかの検討が重要だ。その中で、「これはいけない」と気付いた点を挙げると、以下のようである。

イ)他人に対する人権侵害を気にも留めない人を育ててはいけない
 「デジタル改革関連法案」が、*4-5のように、与党等の賛成多数で衆院を通過し、このまま成立すれば、地方自治体ごとに整備してきた個人情報保護のルールが白紙となってデータ利用の推進を掲げる国の規定に一元化され、行政機関が持つ膨大な情報をデジタル庁が一手に収集でき、「監視社会」「商業利用」といった多くの懸念を抱えたまま、首相に強大な権限を集めることになるそうだ。

 そのデジタル関連法案は、60本以上もの法改正を一括して審議し、この間、メディアは新型コロナ報道・野球中継・ぼやっとしたニュースなどに専念し、デジタル関連法案の内容を国民に知らせることはなかった。これは、議論や民主主義以前である。

 特に、マイナンバーと預貯金口座のひも付けは、将来は個人の権利を制限することを視野に入れているので要注意であり、データを民間のビジネスに容易に利用できるようにするという個人情報保護法の変更は、プライバシー保護が徹底せず人権侵害に繋がり易いため、国会審議を疎かにしてよいような問題ではない。そのため、私も、個別の法案として提案し直し、論議を尽くす必要があると思う。

ロ)公正さを重視する人に育てるべきである

 
       2021.4.11日経新聞              2021.2.1時事

(図の説明:日経新聞は、左図のように、EVは製造時にガソリン車よりもCO₂排出量が多いため、何万キロも走らなければガソリン車の方がCO₂排出量が少ないと印象付ける記事を書いている。しかし、中央の図のように、車体製造時のCO₂排出量は同じで、エンジン製造時のCO₂排出量は少なく見積もり、蓄電池の製造のみを問題にしている点が事実に反している。そして、このように、誤った印象を流布することによって、新しい製品の実用化や普及を阻害し、右図のように、日本の実質GDP成長率を0近傍にしているのだ)

 *4-6-1に、「①EVは走行時にCO₂を排出しないが、生産時のCO₂排出量はガソリン車の2倍を超える」「②その半分を占めるのが電池で、材料に使う化合物などの製造に多くのエネルギーを使う」「③EUは2024年から電池の生産から廃棄まで全過程で出る温暖化ガスの排出量を申告するよう義務付ける」と書かれている。

 また、*4-6-2には、「④充電する電気がクリーンでなければ充電する度に温暖化ガスを排出するので、EVの普及は温暖化ガス排出量を実質0のイメージだけになりかねない」「⑤製造工程全体では、EVはガソリン車の2倍を超えるCO2を排出する」「⑥EVは充電の電気がクリーンかどうかも問われるが、電力会社から届く電気は化石燃料を使って発電している」「⑦走行距離が長ければEVが有利だが、米国では6万キロ、欧州では7万6千キロ、日本では11万キロ走って、やっとEVのCO2排出量がガソリン車を下回った」と書かれている。

 これを読むと、生産から廃棄までの全工程を見れば、あたかもEVの方がガソリン車よりもCO₂を多く排出するかのような印象を与えるが、①②で比較しているのは電池だけだ。また、ガソリン車はEVの3倍の部品を使うため、車体と部品全体を合計すれば、ガソリン車の方が車体製造時にEVよりも多くのCO₂を排出するのは明らかで、⑤は真実性が疑わしい。

 さらに、③でEUが2024年から電池の生産から廃棄まで全過程で出る温暖化ガスの排出量を申告するよう義務付けるのは、主要国では既にガソリン車の販売が眼中にないからである。

 その上、発電も化石燃料から再エネに変更することが前提なので、④⑥も、早晩、解決される問題だ。さらに、EVを使う人は、自宅や駐車場の屋根に太陽光発電機器を設置して燃料代0で乗るのが賢い方法であるため、⑦は、「EVが温暖化ガス排出量を実質0にするというのはイメージだけにすぎない」と強調するために、現実的でない仮定を積み重ねて導いた結果である。

 そして、この手法は、「原発の発電コストは安い」と強弁した時と同じであり、コストの一部だけを抜き出して比較することによって、読者に、あたかも従来品の方が有利であるかのような誤った印象を与えている。しかし、このように中立でなく不公正な判断を積み重ねてきた結果が、マクロでは現在の日本の経済成長率に現れていることを忘れてはならない。

ハ)「差別」の意味すら知らないような人を育ててはいけない
 EUは、*4-7のように、新型コロナワクチンを接種したことを公的に示す「ワクチン証明書」の導入を進めているそうだ。私は、ワクチン接種証明書やPCR検査の結果を入国制限の緩和に結びつけたり、観光旅行や日常生活で利用したりするのは、「差別」ではないと思う。

 何故なら、「差別」とは、人種や性別など特定の集団に属する個人に対し、その属性を理由として主に不利益な行為を行うことであり、ワクチンを接種したか否かは、属している集団を変更できないものではないからだ。もちろん、ワクチンを接種したくてもまだ接種できていない人はいるだろうが、その数は次第に減っていく。

 また、何かの病気でワクチンを接種できない人も、大部分の人がワクチンを接種していれば、(全くとは言わないが)新型コロナに感染する心配なく外出できるようになる。さらに、病気でワクチンを接種できない人がいるから、健康な人もみな外出を自粛して何もしないのが差別なき平等な社会というわけではない。

 なお、「承認済のワクチンが変異株に効くか?」という疑問もよく聞くが、それは治験をすればわかることだ。しかし、ウイルスが少し変異しただけで効かなくなるようなワクチンは適用範囲が狭すぎるし、そういうことはないだろう。

・・参考資料・・
<日本の財政>
*1-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20210327&ng=DGKKZO70411470X20C21A3EA1000 (日経新聞社説 2021.3.27) 予算成立後の財政運営はより慎重に
 2021年度予算が成立した。菅義偉政権は20年度第3次補正予算も含めた「15カ月予算」を着実に執行し、コロナ禍の克服と日本経済の底上げを目指す。財政出動の役割はなお大きいが、コロナの感染状況や景気動向を見極めながら、さじ加減を調整すべき局面に入りつつある。政府・与党はより慎重な姿勢で今後の財政運営に臨んでほしい。21年度予算の一般会計総額は106兆円で、20年度3次補正を加えると122兆円にのぼる。一連の予算措置でコロナ対策や家計・企業の支援を急ぎ、グリーン化やデジタル化を促すのはいい。だが不要不急の支出を排除できたとは言い難い。21~25年度の5年間に総額15兆円を投じる減災・防災事業は、不断の見直しが必要だ。脱炭素社会の実現や大学の高度な研究を促す巨額の基金も、丼勘定になるのでは困る。財政運営の真価が問われるのは、むしろこれからだ。緊急事態宣言が全面解除されたとはいえ、変異型ウイルスの流行でコロナ禍が悪化する恐れがある。国民の命と生活を守るため、必要な財政出動をためらうべきではない。しかしワクチンの接種が進むにつれて経済活動が正常化に向かい、消費や投資が予想以上のペースで回復する可能性も残る。米国では1.9兆ドルの追加経済対策が景気の過熱やインフレを助長するとの懸念が浮上しており、日本も神経質にならざるを得まい。政府・与党内には今秋までに実施される衆院選をにらみ、追加経済対策の策定を求める声がくすぶる。政治的な思惑で過剰な財政出動に踏み切り、日本経済を危険にさらしてはならない。財政悪化の現状も直視する必要がある。国と地方の基礎的財政収支を25年度までに黒字化する目標は遠のくばかりだ。国と地方が抱える長期債務残高も膨らみ続け、国内総生産(GDP)の2倍に当たる1200兆円にのぼる。こうした状態を懸念し、日本国債の格付け見通しを引き下げる動きもあった。すぐに実行するのは難しくても、財政再建の目標や手段を考えておいた方がいい。英国はコロナ対策の費用を賄うため、23年4月から法人税率を引き上げると発表した。米国もインフラ・環境投資の財源確保や格差是正を目的とする増税を検討中だ。日本も欧米の動きから学べる点があるのではないか。

*1-2:https://www.tokyo-np.co.jp/article/94237 (東京新聞 2021年3月27日) 国の借金1000兆円超え 長期債務残高コロナで膨張、将来世代につけ回し
 国債や借入金といった将来税収で返済しなければならない国の借金「長期債務残高」が、3月末に1千兆円の大台を超える見通しとなった。新型コロナウイルス対策の巨額支出を賄うため新規国債を大量に発行したことも加わり、債務残高はここ10年で約1・5倍に急増した。単純計算で国民1人当たり約800万円となり、つけは将来世代に回ることになる。国の長期債務残高は借金全体から、貸し付けの回収金を返済に充てる「財投債」や、一時的な資金不足を補う「政府短期証券」などを除いた額。2020年度はコロナ対策で3度の補正予算を組んだため、財務省の見通しでは今年3月末時点の残高は前年3月末から100兆円近く増え、1010兆円に達する。既にコロナ感染拡大前から、当初予算の一般会計の歳出は100兆円を上回り、年60兆円前後の税収では到底賄えない。不足分は新規の国債発行で穴埋めするほか、満期を迎えた国債の返済に充てる「借換債」も発行し、借金で借金を返す構図だ。

*1-3-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20210327&ng=DGKKZO70412110X20C21A3EA4000 (日経新聞 2021.3.27) コロナ持久戦で巨額予算 感染収束・経済正常化 問われる歳出効果
 26日成立した2021年度予算は一般会計総額が106.6兆円と過去最大になった。政府は新型コロナウイルスの感染収束と経済正常化に向けた巨額の財政出動を続ける。財政の持続性を高めるためにも、効果的な感染防止や将来の経済成長につながる「賢い支出」が課題になる。予算規模は20年度当初の102.6兆円から4兆円ほど膨らんだ。柔軟に使途を決められるコロナ対策予備費を5兆円盛り込んだ。感染拡大の「第4波」に機動的に対応できるように備える。予備費の使い道で主に想定されるのは自治体が営業時間短縮に応じた飲食店に1日4万円を配る協力金の財源だ。首都圏の1都3県や大阪府などが4月21日まで継続する方針で出口は見えない。感染拡大する宮城、山形、愛媛の3県も相次ぎ時短要請に踏み切った。厚生労働省は感染再拡大に備え、病床の確保計画を見直すよう都道府県に要請した。患者受け入れや検査の体制強化に向けた費用も必要になる。コロナ第1波の1年前とは状況が異なる。20年4月の緊急事態宣言後は製造業を含め幅広い経済活動が止まり、2度の補正予算で57兆円を計上した。2年目の現在は主に飲食に絞った感染対策を講じ、直接関係しない業種は回復の動きもある。麻生太郎財務相は26日夜の記者会見で「当面、予想を上回るほどひどいことになる感じはないので、いますぐ21年度補正を考えているわけではない」と述べた。政府は危機対応の出口も探る。雇用調整助成金を上乗せする特例措置は5月以降、感染拡大地域や業況が厳しい企業を除いて段階的に縮減。実質無利子・無担保融資は民間金融機関で3月末、日本政策金融公庫は21年前半までを期限とする。感染拡大で支出を止めている消費喚起策を投入する時期も焦点になる。国内旅行支援策「Go To トラベル」は20年度分の予算を1.4兆円ほど繰り越す。当面は全国での再開を見送り、感染状況や病床が逼迫していない県内での旅行割引を支援する。4月から1人あたり1泊7000円を上限とする。文化芸術公演やイベント開催への支援も時期を見極める。過度な財政悪化を防ぐには、財政支出を成長力の底上げにつなげる必要もある。脱炭素の研究開発を支援する2兆円の基金も運営を始める。世界でも危機対応の先を見据えた動きが広がる。バイデン米政権は3月、家計への現金給付を柱とする1.9兆ドル(約200兆円)の経済対策を成立させ、さらに環境関連のインフラ整備を含む総額3兆ドルの対策を提示する見込みだ。欧州連合(EU)は7500億ユーロ(約97兆円)の復興基金創設で合意し、環境投資などを促進する。国際通貨基金(IMF)によると、21年の一般政府債務残高は日本が国内総生産(GDP)比で258.7%に上る。米国の132.5%、ドイツの69.9%などと比べて突出している。財政に余力がない日本はより効果的な歳出が求められる。

*1-3-2:https://president.jp/articles/-/35219?page=1 () 世界中で日本だけ「コロナ感染のグラフがおかしい」という不気味、絶対的な死者数は少ないのだが…
PRESIDENT 
 新型コロナウイルスによる日本の死者数は欧米に比べて少ない。だが感染者数と死亡者数を「対数グラフ」で分析すると、日本だけが異常な推移をたどっている。統計データ分析家の本川裕氏は、「他国のように収束へ向かう横ばい化への転換が認められず、増加ペースが落ちていない。そこには3つの理由が考えられる」という——。
●世界中で日本だけ「コロナ感染のグラフがおかしい」
 新型コロナウイルスは、海外でも日本でも「感染爆発」と呼ばれた一時期ほどの急拡大は見られなくなってきた。だが、それでもなお深刻な感染状況が続き、医療が対応しきれないこともあって各国で死者が増えている。1月に中国・武漢ではじまった新型コロナの感染拡大は、その後、韓国、イラン、イタリアなどと広がり、また、さらに欧州各国や米国などを中心に全世界に拡大してきている。この4カ月余りを過ぎた時点で、地域によって感染拡大のテンポや規模がどのように違っているかを、世界各国と日本の国内で振り返ってみたい。感染拡大を表すデータとしては、「累積の感染者数の推移」を折れ線グラフで表すことが多かった。その後、感染拡大のピークを過ぎたかどうかに焦点が移り、「毎日の新規感染者数の推移」の棒グラフをみる機会が増えている。本稿では、地域間の比較に重点をおいて、「累積の感染者数の推移」の折れ線グラフ、しかも「対数」でのグラフを使用する。対数グラフは、データの大きさが大きく異なる系列の比較に適しており、また指数関数的な拡大のテンポを傾きで表現できることから、欧米メディアでは定番になっている。また欧米メディアでは、グラフの時間軸の起点を「累積感染者数が100人を超えた時点」とするのが通例だ。これは、感染拡大の時期が大きくずれている中国とイタリア、英国などを比較するうえで適切だからである。
●コロナ感染者数・死者数、日本だけ「増加ペース」が一向に落ちない
 主要感染国の感染者数推移の対数グラフをまとめたのが図表1だ。Y軸(縦軸)の目盛りが100人、1000人、10000人と10倍ずつ増えていくのが対数グラフの特徴だ。米国と日本では感染者数の規模は大きく異なっている。グラフの最終日である5月4日時点で米国が118万人に対して日本は1万5000人と100倍違う。普通のグラフでは米国の推移は追えても、日本の推移はX軸(横軸)に張り付いた横ばいの線にしか見えないだろう。対数グラフの場合、軌跡線の傾きが直線の場合は、指数関数的な増加、すなわち、ねずみ算式の倍々ゲームで増えていることを示している。図表中に、参照線として「黒の点線」で、累積感染者数が「1日目100人から始まって、2~3日に2倍のペースで増え、25日目からは1カ月に2倍のペースで増えるようにペースダウンした場合」の軌跡線を描いた。この参照線より傾きが急であるなら拡大テンポもより高いことを示し、より緩やかなら拡大テンポもより低いことを示す。こう理解した上で各国の軌跡を追うと、欧米諸国(米国、スペイン、イタリア、ドイツ、フランスなど)では感染拡大と収束へ向かう右方向に折れ曲がる動きが相互に非常に似ており、参照線に近い形で推移していることが分かる。もちろん、米国は人口規模が3億3000万人と6000万~8000万人の欧州諸国の数倍大きいので感染者数の規模も異なっているが、拡大テンポと収束へ向かう横ばい化傾向はよく似ているのである。
●世界で日本だけ「横ばい化」せず、「右肩上がり」の不気味
 さらに興味深いのはこうした欧米諸国と東アジア諸国との対照的な推移パターンである。感染の発生地である中国、そして次に感染が拡大した韓国は、感染100人を超えてからの経過日数別の推移でみると、当初はほぼ欧米諸国と同様の拡大テンポが続いたが、欧米諸国よりかなり早い段階で横ばいに転じている点が目立っている。中国の人口規模は特段に大きいので人口当たりの感染者数の推移で見れば、感染拡大と収束へ向かうパターンについては中国と韓国は見かけよりもっと似ているということになろう。一方、これらの海外諸国の推移と全く違うパターンで進んでいるのが日本である。日本の感染拡大のペースは、これまでのところ、他国のように当初急速に拡大(いわゆるオーバーシュート)、そして一定の日数を経て、伸びが急速に落ちるといったパターンでなく、一貫して、「9日間に2倍ぐらいのテンポ」(図表1のグレーの点線)で増加している。他国のドラスチックな変化とは明確に異なっているのである。
●日本の感染者数・死亡者数が「横ばい化」しない3つの理由
 次に、累積死亡者数の数について、同様の対数グラフにまとめたのが図表2だ。こちらでは感染拡大の起点を累積死者数が10人に達してからの経過日数にしている。グラフを見れば、感染者数の推移グラフと似たようなパターンが認められるが、各国のばらつきはより大きいことが分かる。例えば、ドイツは、感染者数は他の欧米諸国とほとんど同じパターンだが、死亡者数はかなり早い段階で拡大テンポが落ち、他の欧米諸国より良好なパターンを示している。理由としては、感染拡大の地域的な偏りの小ささ、ベッド数など医療体制の充実、PCR検査の充実により感染者が高齢者に偏っていない点などが指摘される(『The Ecomist』March 28th 2020)。韓国なども早い段階で増加ペースが落ち、ある時点から日本を下回る良好な推移を示している。日本は死亡者数自体の規模は大きく他国を下回っているものの、推移パターンはかなり日数が経過しているのに、他国のように収束へ向かう横ばい化への転換がなかなか認められない点が懸念される。感染者数の推移にせよ、死亡者数の推移にせよ、日本の感染拡大のパターンが諸外国と大きく異なっていることは、この2つのグラフから明らかだ。問題は、その理由である。考えられるのは、以下の要因、あるいはその組み合わせであろう。
①感染拡大抑止対策の違い
 「クラスターつぶし」など個別ケースに密着したきめ細かな感染拡大抑止策が、当初、功を奏して感染拡大を低く抑えることができたが、ある一定レベルの累積数に至ると、この対策では限界が生じ、一方で当初の成功体験から別個の対策へと大きくシフトできず、ジリジリと感染拡大を許してしまっているのかもしれない。もっとも対策の差が、感染拡大パターンの差につながっているのではなく、逆に、感染拡大パターンの差が対策の差につながっているという考え方もありうる。
②もともとの体質や生活習慣の差
 BCG接種を行っているかどうかが欧米と東アジアの感染率の差になっているという説があるが、それに加え、お酒に弱いといった日本人がもっている遺伝的な体質が逆に新型コロナには強いといった可能性も考えられる。体質的な差ではなく、日本には、ハグやキスなど個々人が身体を密着させる習慣がない、風呂によく漬かる、家の中では靴を脱ぐといった独自の生活習慣があるため、感染拡大に差が生じたという可能性もあろう。
③ウイルスの変異
 国立感染症研究所によるウイルス検体の検査・分析によると、国内で初期に発生した複数のクラスターやダイヤモンドプリンセス号の患者から検出されたウイルスは、1月初旬に中国・武漢市で検出されたウイルスと関係が深く、これは3月以降、国内で広がることはなく、終息したとみられるという。一方、これに代わって国内で確認されるようになったウイルスは、武漢市で確認されたウイルスよりも、欧州各国で感染を広げたウイルスの遺伝子に特徴が近く、3月以降、欧州など海外からの旅行者や帰国者を通じて全国各地に広がった可能性があるという。こうしたウイルスの変異が、①と組み合わさって、なかなか感染拡大が収束へと向かわない理由になっているのかもしれない。
●都道府県別の感染者数と感染率(人口10万人当たり感染者)
 次に、国際比較から国内の地域差に目を転じよう。まず、都道府県別の感染状況のランキングを感染者数自体と人口10万人当たりの人数とで16位まで掲げたグラフを図表3に掲げた(いずれも5月4日確定分までの累計、以下同)。感染者数そのものについては、1位の東京が4708人と2位の大阪の1674人の2倍以上となっている。東京、大阪といった大都市圏の中心地域で特別に感染率が高くなっている。3位以下、10位までの上位地域としては、北海道を除くと東西の大都市圏の近郊地域や愛知、福岡といった中枢都市が占めており、概して都市部の感染がウエートとして大きいといえる。ところが、人口当たりの感染者数(感染率)の都道府県ランキングは実数規模のランキングとはかなり様相を異にしている。1位は34.3の東京であるが、2位の石川も23.5人、3位の富山も19.7人で高い値を示している。今は6位の福井は一時期1位だったこともある。首都圏近郊の神奈川、埼玉は、実数規模では3~4位と大きいが、感染率のランキングについてはずっと低くなる。神奈川は11位であるし、埼玉は13位である。感染率は両県の場合、全国平均と同水準である。そして、飲み会、ライブ、高齢者施設、医療機関などを通じた特定の感染集団によるクラスター感染が偶発的に発生し、それが連鎖的にある程度の広がりをもった特定感染地域ともいうべき都道府県がむしろ上位を占めているのである。しかし、石川、福井、富山といった北陸3県が人口当たりでそろって上位なのはなぜだろうか。偶発的にしては地域的なまとまりがあるのが気になるところである。
●東京は他地域と比べ、感染拡大の規模とテンポが群を抜いている
 こうした状況を踏まえ、国際比較と同様に対数グラフで主要な都道府県の感染者数の推移パターンを比較してみよう(図表4参照)。前出の各国の動きを表した対数グラフと同じように、主要都道府県別に感染拡大経過日数別の対数グラフを描いてみると感染拡大傾向の地域別の違いが明らかになる。東京は他地域と比べ、感染拡大の規模とテンポが群を抜いていることがわかる。埼玉、神奈川などの東京圏の近郊県も100人超過後15日ぐらいは、東京とほぼ同様の軌跡を描いていたが、それ以降は、やや横ばい方向に転じており、大きな都心部を抱える東京とはその点が異なっている。実は福岡はこうした東京近郊県と同様のパターンをたどっている。これら地域に対して、大阪、兵庫、京都といった大阪圏の府県は拡大のテンポが一段低くなっていることがわかる。名古屋圏の愛知、あるいは北海道は拡大ペースではさらにゆるやかである。ただし、北海道については、ゆるやかだったと過去形で言わなければならない。最近の北海道は再度拡大テンポが上がっており、第二波に襲われているという印象が強い。
●政府は都心部特有の感染拡大要因をどう抑えたらよいかわからない
 図表4をよく見ると、東京と大阪では感染拡大のレベルでは違いがあるが、最初はやや遅くはじまり、一気に加速し、最近やや拡大テンポが落ちているという感染拡大のカーブでは、お互いに似通っている点に気づく。東京・大阪以外では、クラスター連鎖の勃発による急拡大と、その後、それを強力に抑えて収束へと向かう、という動きが認められるが、大きな都心部を抱える東京や大阪では、都心部特有の感染拡大要因が作用して、どう抑えたらよいかわからないような感染拡大の軌跡を描いているのではないかと思われる。この都心部特有の感染拡大要因は、
 ① 接待を伴うような飲食店が多い大きな繁華街からの波及
 ② 海外赴任や海外旅行からの帰国者が多く海外からのウイルスの持ち込みが多い
 ③ 都心に居住することが必要な職業人が抱えるその他の感染拡大要因
といったものが可能性として考えられるが、いまだ定かではない。
●「繁華街&富裕層」中央区、港区、世田谷区、渋谷区に感染者が多いワケ
 最後に最も感染拡大が突出している東京について、都内の地区別のこれまでと同様な対数グラフを描いてみた。都内でも感染拡大が大きく進んでいるのは、銀座、新宿、赤坂、六本木といったわが国の代表的な繁華街を有する「都心地区」(中央区、港区、新宿など)、および富裕層も多い住宅地域である「西部地区」(世田谷区・渋谷区など)であり、この2地区が感染者数規模においても、また感染拡大のテンポにおいても他地区を圧倒している。他方、感染拡大のテンポが緩やかなのは、「下町地区」と「東部地区」であり、累積感染者数100人以上の本格的感染拡大がはじまる時期も遅かったし、その後の拡大規模も比較的小さい。こうした「都心・山の手方面」と「下町方面」との間の地域的な傾向差からも、偶発的なクラスター感染の連鎖とは異なる上述のような都心部特有の構造的な感染拡大の要因が作用しているはずだと感じられる。ともあれ、都道府県別に見ても都内の地区別に見ても、エリアによって感染者数の偏りはあるものの、全体として数の「横ばい化」は認められず、日本国内において予断を許さないことは確かだ。

*1-4-1:https://www.tokyo-np.co.jp/article/95108?rct=editorial (東京新聞社説 2021年4月1日) 消費税総額表示 柔軟対応で混乱避けよ
 消費税の総額表示が一日から義務化された。今後、表示価格の変更が「値上げ」との誤解を招く恐れもある。消費者や事業者双方に無用な混乱を招かぬよう国には柔軟で慎重な運用を求めたい。総額表示は、消費者が払う額を分かりやすくする狙いで二〇〇四年にいったん義務化された。だが一四年の税率アップの前、特例として「千円(税別)」といった表示が認められた。支払総額だけの表示だと消費者が「値上げ」と錯覚し、個人消費の足かせ要因となる恐れがある。このため影響を緩和する時限措置が取られた。今後は商品やサービスの税抜き価格が一万円の場合、「一万一千円(税込み)」あるいは「一万一千円(税額千円)」などとなる。消費者が払う総額が明示されるため、以前と比べ価格が引き上げられたとの誤解が一時的に生じるのは避けられないだろう。ただ実際の値上げではないのに売り上げが大きく落ち込む事態は極力避けたい。国も事業者側も仕組みの変更について誠実かつ丁寧に説明し、誤解を解くよう最大限の努力をする必要がある。消費税増税をめぐっては過去、大手事業者が値下げ分の負担を小売店などに強要する事例も相次いだ。今回も悪質な行為が起きないよう国はきめ細かくチェックすべきだ。義務化による納税意識への影響についても指摘したい。支払う総額だけがクローズアップされると、この中に税が含まれているという認識は当然弱まる。痛税感が薄まれば安易に消費税増税を行う機運をつくり、財政支出のさらなる膨張につながりかねない。「税を払っている」という認識を持ち続けるためにも、価格の総額と共に具体的な税額を併記する方法を定着させるべきである。消費税による財源は、年金や医療、介護、少子化対策を軸とした社会保障に充てることが法に明記されている。だが「本当に目的通り使われているのか」といった疑問は納税者の意識の底に沈殿している。消費税は富裕層も所得の低い層も同様に負担せざるを得ない「逆進性」という不公平な特徴も持つ。税の最重要課題は目的の明確化と公平性の担保だ。税収増や徴税の利便性を優先するあまり、一部の納税者や事業者にしわ寄せが及ぶことは許されない。より配慮の行き届いた税制を強く求めたい。

*1-4-2:https://www.agrinews.co.jp/p53924.html (日本農業新聞 2021年4月1日) 「総額表示」きょうから義務化 値上げ印象に懸念
 商品やサービスの価格で消費税を含む「総額表示」が1日から義務化される。表示の移行に伴って外食が値上げで、小売りは税込み・税別価格の併記で対応するケースが目立つ。だが、税別表記に慣れた消費者には、表示の変更が値上がりとも映りかねず、米など単価の高い商品では、消費が冷え込む懸念も出ている。動きが大きいのは外食だ。ハンバーガーのモスフードサービスは1日、表示を税別から税込みに改めると同時に、店内飲食と持ち帰りの価格を統一する。看板商品「モスバーガー」は税込み390円とし、店内飲食は13円、軽減税率対象の持ち帰りは20円それぞれ値上げした。回転ずしのくら寿司は店舗外の看板の「一皿100円」を、「一皿100円(税込み110円)」に変える。店内メニューは税別、税込みを併記。「『100円』の訴求力を残し、総額表示に対応する」(広報)。日本フードサービス協会は「総額表示には一貫して反対してきた。価格設定は高度な経営判断。かつての牛丼戦争では10円の差が各社の業績に影響を与えた。売れ筋を値上げし、販売てこ入れしたい商品は値下げするなど、各社が苦労している」と指摘する。スーパーでは首都圏に展開するサミットが1月から順次、本体価格と税込み価格の併記に切り替えた。ニラ2分の1束など、消費者ニーズに合う量目や加工度合いを上げた商品を充実。担当者は「店頭価格が上がったと誤解を与えないように努めたい」と話す。マルエツは31日までに青果物の値札を差し替えた。その他、ライフやイオンリテール、ヤオコーは「3月までに対応済み」と回答。日本スーパーマーケット協会は「衣料品などと比べて利益率が低い食品は、事実上の値下げ対応が難しい」と指摘する。他の食品に比べて1回の買い物金額が大きくなる精米では、5キロ商品だと税別と税込みの表示の違いで100円以上価格差がある。併記するスーパーが多いが、米の業界団体は「総額表示で価格は高く映り、販売に影響が出ないか心配だ」と指摘する。

<人口の分散>
*2-1:https://www.agrinews.co.jp/p53856.html (日本農業新聞 2021年3月27日) 新過疎法成立 分散型社会の受け皿に
 新型コロナウイルス感染症の流行で、十分な生活空間の必要性が高まっている。東京一極集中から分散型社会への受け皿として、過疎地域の持続的な発展が重要だ。成立した新過疎法での支援強化を求める。過疎地域は全人口の1割に満たないが、国土面積の約6割を占める重要な地域だ。少子高齢化と人口減少が著しく、集落の消滅が続いている。政府は、これまで4次にわたる過疎法で財政的な支援を行ってきたが、全国的に見て社会インフラなどで格差がある。現行法は3月末で期限を迎え、その後の対応が課題になっていた。法律に基づく過疎支援が継続されることは歓迎である。10年を時限とする新法は、過疎対策事業債や税制特例などによる財政支援を拡充する。指定要件は見直したが、対象は現行を上回る820市町村が見込まれる。対象外となるところには6年間の経過措置などを設ける。丁寧な説明が必要だ。新法の目的に「持続的発展」という新たな理念を掲げた。人口密度が低く十分な生活空間を提供できる過疎地域の維持は、国民的利益につながるという考え方だ。都市への過度な人口集中が大きなリスクを伴うことは、コロナ禍や豪雨災害などで明らかだ。人口の分散が必要で、過疎地域はその受け皿となる。過疎地域にとっても、特定の地域と継続的に関わる「関係人口」をはじめ、若者の田園回帰の機運が高まっている今が、再生の絶好のチャンスだ。都会からの移住者も含めて安心して生活できるように、地域公共交通網や医療機関、介護施設、教育施設などのインフラ整備を急ぐべきだ。また農業など地場産業の振興による雇用創出に加え、遅れている、デジタル社会に対応するインフラ整備も重要だ。これらは、財政基盤が脆弱(ぜいじゃく)な過疎地域の「自助」では難しい。新法に基づく十分な財政支援が必要だ。地域の活性化には人材が必要だ。注目したいのは、「地域おこし協力隊」である。総務省の2020年度の調査によると、全国で1065の地方公共団体が受け入れ、過去最多の5464人の隊員が活躍し、元隊員の約6割がそのまま定住した。同省は、24年度までに8000人を目指す。期待は大きい。同省はまた、地域住民や企業、外部の専門人材と連携しながら地域振興を推進する「地域プロジェクトマネジャー」を創設する。農水省の「新しい農村政策の在り方に関する検討会」でも、地域づくりをサポートする人材の重要性が指摘されている。過疎地域の維持・活性化に取り組む人材確保への支援を強化すべきだ。新法では、総務相、農相、国土交通相だった主務大臣に、文部科学、厚生労働、経済産業、環境の各大臣を追加した。関係省が連携し、疫病や災害などに強く、持続可能で均衡ある国づくりを政府一体で目指すべきだ。

*2-2:https://www.agrinews.co.jp/p53840.html (日本農業新聞論説 2021年3月26日) みどりの食料戦略 具体策検討 現場基点で
 農水省は月内に、温室効果ガスの削減などを目指す農業の政策方針「みどりの食料システム戦略」の中間取りまとめを行う。農業は地球温暖化の被害を被っており、環境負荷の軽減は農業の持続性の確保には不可欠である。農業者が積極的に取り組めるよう、生産現場を基点とした具体策の検討が求められる。中間取りまとめ案では、2050年までに①化学農薬使用量を半減②化学肥料を3割減③有機農業を全農地の25%(100万ヘクタール)に拡大④化石燃料を使用しない園芸施設に完全移行――することなどを目標に掲げた。農業の在り方を巡る世界的動向が戦略策定の背景にある。国連は9月、食料システムサミットを開き、貧困・飢餓の撲滅や気候変動対策など持続可能な開発目標(SDGs)の達成に向けた方策を議論。各国には食料の生産、加工、輸送、消費の一連の活動を変革する取り組みを示すよう求めている。欧州連合(EU)は既に新戦略「農場から食卓へ」で、30年を期限に化学農薬使用量の半減や有機農業面積の25%への拡大などの目標を設定。加盟国に計画策定と進捗(しんちょく)管理を徹底する。米国のバイデン政権も、農業での温室効果ガス排出量を実質ゼロにすると宣言。こうした情勢から日本も戦略をつくり、これを軸にサミットで表明する。サミットを機に国際的ルール作りの動きも起こり得る。高温多湿なアジアモンスーン気候に適した取り組みを反映させなければならない。具体策で同省は、農業の持続性と生産力の向上を両立させるとの方針の下、技術革新を重視。スマート農業などの機械・施設の開発に力点を置いているとの印象だ。日本有機農業学会は、課題として生態系の機能を向上させる技術開発が手薄だと指摘。有機農業は農家が開発した技術が大部分で、農家の技術交流や試験研究機関との共同研究などボトムアップ型の技術創出の仕組みづくりも提起する。環境負荷を軽減する農業を点から面に広げるには、地域ぐるみの取り組みの後押しが不可欠だ。土台は新技術の導入などの負担に見合った収入の確保、所得の向上である。必要なのは補助金など国による直接支援だけではない。消費者、食品・外食産業や、学校など公的機関による適正価格での積極的な購入の促進策が鍵となる。担い手の確保など生産基盤の強化や地域振興にどう結び付けるかも課題だ。また、環境に配慮せずに生産・輸入された安い農産物の流通を放置すれば、国産の適正価格の実現や需要拡大が困難になる恐れがある。これまで同省は生産者や企業、団体などと意見交換をしてきた。中間取りまとめ後は一般から意見を募集し、5月に決定したい考え。30年間の長期戦略である。より幅広い対話を通じて施策の総合化・体系化を図り、短期目標を含め、途中で検証可能な工程表を策定すべきだ。

*2-3:https://www.zck.or.jp/uploaded/attachment/3757.pdf (全国町村会長 荒木泰臣 令和3年3月26日)「過疎地域の持続的発展の支援に関する特別措置法」の成立について
 本日、「過疎地域の持続的発展の支援に関する特別措置法」が成立しました。議員立法の実現にご尽力いただいた国会の皆様をはじめ関係の皆様には、全国各地の過疎地域に足を運び、現場の声をしっかりと汲み取っていただきました。新たな過疎法は、人口減少・少子高齢化をはじめとする課題先進地である過疎地域の持続的発展に大きく貢献するものと期待しており、新たな過疎地域の指定要件のもとで支援措置の継続・拡充が図られるとともに、いわゆる卒業団体に対する経過措置にもきめ細かくご配慮をいただくなど、関係の皆様に心から感謝申し上げます。過疎地域を取り巻く環境は、多くの地域課題とともに新型コロナ感染症という未曾有の国難に直面し、極めて厳しい状況が続きますが、「東京一極集中の是正」と「地方の活性化」を国づくりの車の両輪にして、過疎地域も含めて国土全体を活かし切り、我が国の持続可能性を徹底的に追求し、国民の安全安心を確固としたものにしていかなくてはなりません。政府におかれましては、過疎地域の持続的な発展は、我が国の今世紀を見通して最大の課題ともいえる人口減少・少子高齢社会を克服し、自然災害や新型コロナウイルス等の災禍に強く、持続可能な国づくりを推進するうえで必須の取組であるとの認識のもと、「過疎地域の持続的発展の支援に関する特別措置法」に基づく万全の措置を講じていただくようお願いします。多様な過疎地域を抱える私たち町村は、本会が繰り返し主張するように、我が国の文化・伝統の継承の場であるとともに、食料やエネルギーの供給、水源かん養、国土の保全、地球温暖化の防止、都市と農山漁村の交流など、国民生活にとって欠くことのできない重要な役割を担い続けており、新たな過疎法による力強い支援を一層の推進力にして、持続可能な地域づくりに全力で取り組んでまいる決意であります。

<エネルギー政策>
*3-1:https://www.nikkei.com/article/DGKKZO70224300S1A320C2EE8000/ (日経新聞 2021年3月23日) 国境炭素税 WTO協議へ、事実上の「関税」紛争の火種 欧州前向き、日本も提起
 温暖化対策が不十分な国からの輸入品に価格を上乗せする「国境調整措置」をめぐる多国間協議が始まる。国境炭素税とも呼ばれ、事実上の関税となる制度が各国・地域で乱立すれば貿易戦争に発展する懸念があった。欧州連合(EU)が多国間協議に前向きで、日本も22日に開く世界貿易機関(WTO)の有志国会合で協議に着手するように提起する。対立の少ない制度づくりができるか、国際協調が試される。国境調整はEUなどが単独で制度設計に向けた考えを表明するにとどまっていた。各国・地域がそれぞれの産業に有利になる恣意的な措置をとると、反発した国が対抗措置を打ち「脱炭素」を名目とした通商問題が勃発するおそれがあった。こうした状況に危機感を強める日本は、国境調整を含む環境分野の貿易制度についてWTOで本格的な議論に着手するよう働きかける。米国にも参画を求めるほか、炭素の排出が多い新興国との橋渡し役も担う考え。EUも非公式にWTOで環境分野でのルールづくりに着手すべきだと主要国に打診しており、WTOが議論の主戦場になる流れになってきた。WTOなど多国間で話し合い、公平で透明性のある制度設計ができれば、世界全体での脱炭素に貢献できるとの期待がある。日本政府内には日米欧3極での検討の枠組みを模索する動きもある。多国間協議では、WTOルールに違反しない制度設計、温暖化ガス排出量の計算法、炭素への価格付けの手法、データの透明性の確保などが論点になる。関税のような仕組みにする場合、具体的にどのような製品を対象にするかも問題。EUが鉄鋼や石油化学品に課税するとの警戒論もある。日本は脱炭素への寄与度が高い製品の輸入にかかる関税を引き下げる案も各国に提案する方向だ。風力や燃料アンモニア、蓄電池、太陽光といった分野で数百以上の品目を念頭に置く。国境調整を巡っては、このほど経済協力開発機構(OECD)でもEUを中心に有志国での非公式会合が始まったことが分かった。OECD幹部は「気候変動問題ではこれまで以上に多国間協調が重要。関係国が対話する機会を増やしていく必要がある」と語り、議論を加速させる考えを示した。世界では先行するEUを中心に国境調整措置の検討を表明した国・地域が増えている。日本は経済産業、環境両省を中心に政府内での検討が始まったものの、実際に導入するかの判断はしていない。主要な貿易国である中国や米国との通商問題に発展するリスクもあり、まずはEUなどの動向を注視する構え。一部の国・地域が先行して制度設計を進めると、日本など取り残された地域は不利な制度での貿易を余儀なくされる懸念もある。EUがWTOでの国境調整のルールづくりを働きかけるのも、議論を主導し、EUに有利な制度を世界標準にする狙いもあるとみられる。日本は脱炭素をめぐるルール形成で存在感を発揮できるかどうかが課題になる。

*3-2-1:https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN313BE0R30C21A3000000/ (日経新聞 2021年3月31日) Apple、取引先の半数が再エネ100%を表明 村田製作所も
 シリコンバレー=白石武志】米アップルは31日、同社に納める製品の生産に使う電力をすべて再生可能エネルギーでまかなうと表明したサプライヤーが110社を超えたと発表した。同社の主な取引先の約半数に相当する。アップルは取引の条件として環境対策を重視しており、残るサプライヤーも対応を迫られる。日本企業では村田製作所とツジデンの2社が、米企業では電子部品メーカーのマリアンなどが新たにアップル向け製品の生産で消費する電力を全面的に再生可能エネルギーに切り替えると約束した。すでに日本電産やソニーセミコンダクタソリューションズ、台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業や台湾積体電路製造(TSMC)などがアップルに対し同様の取り組みを約束している。アップルの呼びかけに応じた取引先の数は2020年7月の約70社から8カ月間で1.6倍に増えた。アップルは30年までに自社の全製品について、生産と利用を通じて排出する二酸化炭素を実質ゼロに抑える方針を20年7月に表明した。同社製品の生産を担うサプライヤーには今後、再生可能エネルギーへの移行をより強く求めるとみられ、対応できない企業はアップルと取引ができなくなる恐れもある。再生可能エネルギーの利用経験が乏しい企業には、調達ノウハウなどを提供しているという。中国ではサプライヤーとともに3億ドル(約330億円)規模の基金を設立し、湖南省などで風力発電や太陽光発電プロジェクトにも投資している。アップルは31日、再生可能エネルギーの安定供給のため、カリフォルニア州で米国最大級の蓄電施設を建設していることも明らかにした。同社の太陽光発電施設で日中に発電した電力をためるため、約7000世帯が1日に消費する電力に相当する240メガ(メガは100万)ワット時の蓄電容量を持たせる。

*3-2-2:https://www.nikkei.com/article/DGXZQODC07348007122020000000/ (日経新聞 2020年12月8日) 水素を30年に主要燃料に 目標1000万トン、国内電力1割分
 政府は国内での水素利用量を2030年時点で1000万トン規模とする目標を設ける調整に入った。2050年の温暖化ガス排出実質ゼロを実現するには二酸化炭素(CO2)を出さない水素の活用が不可欠で、欧州や中国も力を入れ始めた。発電や燃料電池車(FCV)向けの燃料として利用を増やし、コストを引き下げて普及につなげる。政府が17年にまとめた水素基本戦略では、30年時点で30万トンの水素を使う目標を立てている。30万トンは原子力発電所1基分に相当する100万キロワットの発電所をほぼ1年間稼働させられる量になる。1000万トンなら30基以上を稼働できる。稼働率を考慮しない単純計算で国内全体の設備容量の1割強にあたる。電力の脱炭素では太陽光や風力など再生可能エネルギーの活用が進んでいるが、天候に左右されるため既存の発電所も必要だ。二酸化炭素(CO2)を出さない水素を発電所の燃料に使えば温暖化ガスを減らせる。再生エネの発電で余った電力を活用し水素を作ってためておくこともできる。課題はコストの高さだ。現在は1N立方メートル(ノルマルリューベ=標準状態での気体の体積)あたり100円程度とみられ、液化天然ガス(LNG)の同13円程度を大幅に上回っている。政府は同等に抑えるために必要な年500万~1000万トン程度を将来的な目標に据えていた。今後見直す水素基本戦略では30年と目標時期を明確にすることを検討する。実証実験が進む水素発電の実用化を急ぎ、FCVの普及も加速させる。新設する2兆円の基金を活用したり設備投資への税優遇などで支援する。再生エネの拡大や石炭などの化石燃料の使用削減と合わせて推進する。民間も動き出した。トヨタ自動車や岩谷産業など88社は7日、水素インフラの整備を進める「水素バリューチェーン推進協議会」を立ち上げたと発表した。水素では14年に世界で初めて量産型FCV「ミライ」を発売したトヨタが民間の主導役を果たしてきた。ミライは9月までの世界販売が1万千台どまり。19年度の日本でのFCV販売はトヨタを含め約700台でEVの約2万台と比べ小さい。打開策として水素のフル充塡での航続距離を現在の約650キロメートルから約3割伸ばした新型ミライを12月中に発売する予定だ。決まったルートを走り水素を定期充塡しやすい商用車でも活用を促す。協議会は自動車以外でも水素の利用を進める。製鉄では鉄鉱石の還元を石炭由来から水素に切り替える。日本製鉄など高炉大手は50年までに水素を使ってCO2排出を減らす技術の実用化を目指す。東京電力ホールディングスと中部電力が折半出資するJERAも発電燃料を水素に変え50年にCO2排出量を実質ゼロにする。一方でこうした水素を使った発電や製鉄の実現には大量の水素エネルギーを安く調達する必要がある。川崎重工業や岩谷産業、丸紅などは18年からオーストラリアで「褐炭」と呼ばれる低品位炭から水素を製造、液化し、日本に船で運び、発電などに使う輸送する実証事業を始めている。21年までに最初の水素製造・輸送試験を行う計画だ。川重はLNG運搬船の技術を生かし、液化水素を運搬する専用船の開発で先行している。30年には大型の水素運搬船の商用化を目指している。岩谷産業や関西電力なども25年に向けて水素で動く船の実用化を検討する。燃料電池を搭載し、水素と空気中の酸素を反応させてつくった電気で動かす。蓄電でも水素は有用だ。東芝は太陽光発電などによる電力をいったん水素に変えて保存・運搬し、再び電力などとして活用する技術を持つ。天候に左右されやすい再エネを安定的に供給できるようになる。協議会は21年1~2月に水素の普及に向けた議論を進め、2月中に政府に提言する方針だ。協議会の記者会見で梶山弘志経済産業相は「幅広いプレーヤーを巻き込みコスト削減を進める」と述べた。日本独自の技術があるとされる水素だが、普及への取り組みでは海外も無視できなくなっている。ドイツ政府は6月に国家水素戦略を発表、新型コロナウイルスからの復興策の一環として1兆円を超える予算を盛り込んだ。とくに製鉄や化学などの産業分野、船舶や航空機などの長距離・重量輸送の分野といった電動化が難しい分野での水素活用を推進する。ドイツが日本と違うのは、乗用車に活用の多くを委ねない点だ。独ダイムラーは小規模生産していた乗用車のFCVの生産を年内で終了し、開発をトラック部門に集約した。そのトラック部門では、燃料電池スタックの開発を競合のボルボ(スウェーデン)と統合し効率化、25年以降に航続距離1千キロメートルを超えるFCVトラックを量産する。中国も商用車を中心にFCVのサプライチェーン(供給網)を構築する。モデル都市群を選定し、都市群が技術開発を手掛ける企業を支援する仕組みを導入する。35年までに100万台前後の保有台数をめざす。中国政府は9月にFCVの販売補助金制度を撤廃し、FCVのモデル都市群を選定して技術開発企業に奨励金を与える制度を導入すると発表した。都市群に4年間でそれぞれ最大17億元(約260億円)の奨励金を支給する仕組みだ。

*3-2-3:https://www.nikkei.com/article/DGXZQODZ231ZP0T20C21A3000000/?n_cid=NMAIL006_20210402_H (日経新聞 2021年4月2日) 「グリーン水素」へ東芝系など挑む 脱炭素の切り札に
 燃焼時に二酸化炭素(CO2)を排出しない水素は、カーボンゼロ実現に向けた有望なエネルギーだ。その製造過程でもCO2を一切、排出しない水素が「グリーン水素」だ。製造に必要な電力は再生可能エネルギーを使う。グリーン水素を作り出す水電解装置の開発・製造では日本、欧州を中心に世界各社がしのぎを削る。
●従来型より電力を3割削減へ
 横浜市の臨海工業地帯にある東芝エネルギーシステムズの京浜事業所。ここでは燃料電池の技術を応用した次世代型の水素製造装置の開発が進む。目指しているのは省電力だ。装置が完成すれば、従来型より電力を3割削減できるようになる。水素には様々な製造法があるが、グリーン水素は水を電気で分解して作る。水電解の方法は、水素の取り出しにイオン交換膜を使う「固体高分子形(PEM形)」と強アルカリの水溶液に電流を流す「アルカリ形」の2つが主流だ。一方、東芝エネルギーシステムズが開発を進めるのは燃料電池の技術を応用した「固体酸化物形(SOEC)」と呼ぶ方式。水素と酸素を反応させて電気を生み出すのが燃料電池だ。これを逆にして水蒸気と電気から水素を作るのがSOEC方式の水電解装置だ。エネルギーシステム技術開発センター化学技術開発部の長田憲和氏は「PEM形やアルカリ形に比べ省電力に優位性がある。20年代後半には実用化したい」と話す。製造システムの低コスト化を目指すのはPEM形を製造する日立造船だ。構造を簡素化し部材を減らすなどして、従来品よりも製造費用を抑える製品を開発している。
●相次ぐ大規模プロジェクト
 グリーン水素を製造する水電解装置の開発では、欧州メーカーが先行している。装置を大型化し、大規模なグリーン水素の製造プロジェクトを次々と打ち出している。独シーメンス・エナジーは15年から欧州などで大型の水素製造装置の出荷を始めた。19年にはオーストリアで6000キロワットの再エネ電力を使った水素製造装置を納入した。現在は1万7500キロワットの電力で年間約2900トンの水素を製造できる装置の開発に着手している。対応する電力容量が増えれば増えるほど大量の水素を製造できる。英ITMパワーは、2万4千キロワットの電力で水素を製造する装置を22年後半にも稼働させると発表。ノルウェーのネルもスペインなどで太陽光発電を利用した大規模な製造拠点を展開している。一方、日本でもグリーン水素の大規模製造プラントの建設が始まっている。旭化成は福島県浪江町の「福島水素エネルギー研究フィールド」で1万キロワットの太陽光発電の電力に対応した製造設備を納入。年間900トンの水素を製造でき、現時点では世界最大規模だ。地熱発電を利用する取り組みも始まる。21年7月をめどに大林組は大分県九重町で実証プラントを設置する。ただ、日本国内ではプラントの大型化に課題がある。ボトルネックになるのが再生エネ電力の価格だ。火力発電が主力の日本では再生エネ電力の価格が高止まっている。一方、メガソーラーや大規模な洋上・陸上風力発電設備の設置が進んでいる欧州では安価で再生エネ電力が調達できる。建設費などを含めた再生エネの発電コストを比べると日本は英国やドイツの2~3倍にもなる。一方、日欧メーカーでタッグを組む事例も出てきた。三菱重工業は20年10月、ノルウェーのハイドロジェンプロに出資。ハイドロジェンプロは、1日あたり水素を4.4トン製造できる9000キロワット級の水電解装置を開発している。欧州が先行し、日本が技術に磨きをかけている水電解装置だが、北米でもグリーン水素製造に動き始めた。20年11月、エンジンメーカーの米カミンズはカナダの水素製造装置メーカー、ハイドロジェニックスを買収。今後は中国メーカーの本格参入も見込まれる。上海電気は中国科学院大連化学物理研究所と提携してPEM形のR&Dセンターを新設すると発表。中国では大型プラントの開発計画もある。
●日本政府も重視
 日本政府は20年12月に発表した「グリーン成長戦略」で水素を重要な産業の一つに位置づけた。経済産業省は水電解装置は50年までに年間で約8800万キロワットの導入が進み、年間の市場規模が約4兆4000億円にまで及ぶと予測する。日本よりも再生エネの導入が先行する欧州市場への日本企業の参入を促す政策も打ち出している。世界に先駆け水素に着目し、技術開発を続けてきた日本メーカー。だが実用化・大型化では欧州に遅れをとっている。今後は技術力を生かし、海外勢にない製品をスピーディーに市場に投入する開発体制が求められる。
注)水素は無色透明な気体だが、カーボンゼロの観点から色分けされている。製造過程で完全に二酸化炭素(CO2)を排出しないのがグリーン水素。水を電気分解して水素を取り出す過程だけでなく、使用する電気も再生可能エネルギーを使う。もし火力発電など化石燃料由来の電力を使うとグリーン水素とは呼べなくなる。一方、現在世界で作られる水素の9割以上は、もっともレベルの低いグレー水素だ。天然ガスや石炭など化石燃料を燃やしガス化して抽出する。その際、CO2が発生し、大気に放出するとグレーとなる。CO2を地中に埋めてとじ込め、大気中に放出しなければブルー水素になる。ほかにターコイズ水素もある。天然ガスなどに含まれるメタンを電気で熱分解する製法で、炭素を固体化することでCO2を排出しない。使用する電気は再生エネルギーを使う。さらにはグリーン水素と同じ水電解で、原子力の電力を使うイエロー水素もある。水素自体はエネルギー源として使うため燃焼させてもCO2を発生しない。だが、その製造過程でCO2を排出してしまってはクリーンエネルギーとは呼べない。最終的にはグリーン水素の製造を目指す動きが欧州を中心に活発になっている。

*3-3-1:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/651651 (佐賀新聞 2021.3.30) <原発と暮らすということ>(4) 自治体の避難計画 形骸化、実効性に懸念、東日本大震災10年さが
 佐賀市の3月議会一般質問。議員は納得のいかない表情で、九州電力玄海原発(東松浦郡玄海町)の重大事故に備えた避難計画について質問を重ねた。「(佐賀市の住民は)施設や避難住民をどの程度受け入れるのか、ご存じないのでは」。担当部長は「唐津市から佐賀市に避難して来られる住民がいらっしゃることはご理解いただいていると思っている」と答弁する一方、こうも述べた。「(避難所の管理者に)通知、説明をしたかについて、書類は残っていない」
●2万人のずれ
 原発周辺の自治体には、重大事故に備えて避難計画の策定が義務付けられている。10年前の東京電力福島第1原発事故では広範囲の住民が避難を強いられた。これを教訓に、国は策定する範囲をそれまでの約10キロ圏から約30キロ圏に広げた。玄海原発の場合、玄海町だけでなく唐津市のほぼ全域と伊万里市の一部が入る。範囲内の人口は2020年5月現在、18万人を超える。避難先は範囲の外にある県内の全17市町になる。このうち佐賀市は、旧唐津市、相知町、厳木町の避難者を受け入れる。ただ、2人の議員が避難計画を取り上げた3月議会の質疑では唐津市から受け入れる避難者数について「約5万6千人」と「約7万7千人」の大きく異なる二つの数字が議論のベースとなった。大前提になる「避難者数」が約2万人もずれ、議論がかみ合わない場面もあった。市消防防災課は議会前、避難者数は約7万7千人との認識だったが、一般質問前のヒアリングで議員から「5万6千人では」と問われ、県や唐津市に確認。受け入れができる最大収容人数を、避難者数と勘違いしていた。同課課長は「正しい数字は恥ずかしながら、そのときに知った」と明かした。「市は受け入れる人数さえ分かっていない。お粗末な対応で、避難計画が形骸化している」。質問した議員は憤りを隠さない。このやり取りの直後、今月18日、水戸地裁は日本原子力発電東海第2原発(茨城県)の運転差し止めを命じた。広域的な避難計画の見通しが立っていないことを問題視した。原発の稼働に、避難計画に関わる自治体にも一定の責任を負わせた形だ。
●「正しく理解を」
 玄海町は昨年から、防災専門官を採用し、原発事故を含めた避難計画の策定などを担っている。塚本義明専門官は「自然災害が激甚化し、町民の避難の意識は高まっている」とした一方、原子力災害では「どの時点で何をするかを伝えきれていない」と苦慮する。原発事故が発生した際、まずは屋内退避が基本。その後に自家用車、それが難しい場合はバスでの避難になる。ただ年1回の原子力防災訓練ではバス移動だけを行うケースが多い。塚本専門官は「事故が起きたらバスで避難だと思っている町民もいる。避難の流れを正しく理解してもらう必要がある」と頭を悩ませる。原発そのものの安全対策と「車の両輪」になる避難計画について、水戸地裁はこう要求する。「避難の実現が可能な計画で、実行できる体制が整備されていなければならない」

*3-3-2:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/652391 (佐賀新聞 2021/3/29) <原発と暮らすということ>(6)“準立地自治体”として 「原発議論の場」へ正念場、東日本大震災10年さが
 東京電力福島第1原発事故から10年となった今年の3月11日、唐津市の大手口バスセンター近くでは、市内四つの市民団体が交代でマイクを握った。「これ以上、市民に不安を押しつけるのはやめてほしい」。行き交う人たちに九州電力玄海原発(東松浦郡玄海町)の廃炉を訴えた。団体の代表として参加し、市内で薬局を営む北川浩一さん(74)は約5年前から、原発の情報を市民に伝え続けようと、平日に市役所前などに立ち続けている。「事故はいつ起きるか分からないからね。ここは玄海原発から11キロしか離れていないんですよ」。外津湾を隔て、玄海原発が目と鼻の先にある唐津市。避難計画が必要になる半径5~30キロ圏内(UPZ)の人口は11万人を超え、玄海町のUPZ人口2057人よりけた違いに多い。しかし、佐賀県や玄海町のように、再稼働や廃炉などの重要事項について「事前了解」をする権限はない。
▽“もの申す”権利
 原発建設以降、“蚊帳の外”だった唐津市はプルサーマル計画を転機に、県と交渉を始めた。2006年に確認書を交わし、市の意向に十分配慮することや必要に応じて連絡内容を市に通知することを盛り込んだ。3・11を受け、12年には九電とも協定書を締結する。九電が原発の重要な事項について県と玄海町に説明するときには市にも説明し、市は九電に意見の申し出ができると明記した。事前了解はできなくても、九電に“もの申す”ことができる枠組みを自ら勝ち取ってきた。市幹部は「市は意見ができる権利がある。プルサーマル、3・11を経て、県と九電には必ず確認書や協定書を守ってもらいたいというスタンスでやっている」と説明する。
▽交渉のテーブル
 「市民の立場を考えると“準立地自治体”として何かしらの施策、発言する場が必要」。唐津市議会の特別委員会は18年7月、玄海町の脇山伸太郎町長の就任を機に、玄海原発に特化した協議会の設置を峰達郎市長に申し入れた。福島の事故では被害が広範囲におよび、市民と近い議会側が動いた。念頭には日本原子力発電東海第2原発(茨城県)の再稼働を巡り同年3月、立地する東海村と周辺5市に事前了解を認めた「茨城方式」があった。ただ、2年にわたる話し合いの末、峰市長は20年9月、原発に特化した協議会設置は「困難」と説明。玄海町側の難色を理由にゼロ回答だった。市議会特別委は同年12月、産業や観光、福祉なども含む包括的な形に「ハードルを下げた」(議員)報告書をまとめた。何とか玄海町をテーブルにつかせたい思惑がにじんだ。「議論の場を望む声は強い」。ある議員は議会側の雰囲気を明かす。事務レベルでは現在、協議会設置に合意しており、原発の議論ができるかどうかが焦点になる。「市長がどこまで腰を据えて交渉するのか。原発の話ができなければ、これまでと何も変わらない」。市民の声を代弁する議員の一人はくぎを刺した。

*3-3-3:https://www.nishinippon.co.jp/item/n/706425/ (西日本新聞 2021/3/13) 原発リスク評価、割れ続ける司法 玄海訴訟判決
 九州電力玄海原発3、4号機(佐賀県玄海町)の運転を「容認」した12日の佐賀地裁判決は、国の安全審査に「ノー」を突き付けた昨年12月の大阪地裁判決とは対照的な結論を導いた。東日本大震災に伴う東京電力福島第1原発事故から10年。各地で多くの訴訟が起こされ、なお司法判断が揺らぎ続ける現状は、改めて事故の深刻さと共に、今後原発エネルギーとどう向き合うのかを社会に問い続ける。「基準地震動(耐震設計の目安となる揺れ)の策定過程をきちんと理解しており、納得できる判決だ」。京都大複合原子力科学研究所の釜江克宏特任教授(地震工学)は、この日の判断を評価した。判決が踏襲したのは、四国電力伊方原発(愛媛県)を巡る1992年の最高裁判決が示した司法判断の枠組み。「原発は専門性が高いため裁判所は安全性を直接判断せず、審査基準や調査に不合理な点や重大な過ちがあった場合のみ違法とすべきだ」とする見解だ。多くの原発訴訟で、この枠組みに沿った「行政追認型」の判断が示されてきたが、裁判官の意識に変化が見られるようになったとの指摘もある。
   ◆    ◆ 
 福島原発事故後、初めて原発の運転差し止めを命じた2014年5月の福井地裁判決は「福島原発事故後、同様の事態を招く具体的な危険性が万が一でもあるかという判断を避けることは裁判所に課された最も重要な責務を放棄するに等しい」と言及。最高裁枠組みにとらわれず地震対策に「構造的欠陥がある」とした。「想定を超える地震が来ないとの根拠は乏しい」「過酷事故対策や緊急時の対応方法に危惧すべき点がある」。その後も原発の運転を禁じる判断は相次いだ。高裁レベルでも17年12月と20年1月、四国電力伊方原発3号機を巡り、広島高裁が「火山の噴火リスクの想定が不十分」として運転差し止めを命じた。最高裁は12年1月、各地の裁判官を集め、原発訴訟をテーマにした特別研究会を開いていた。関係者によると、研究会では92年の最高裁判決の枠組みを今後も用いるとの方向性を確認。一方で、裁判所も原発の安全性について、より本格的に審査すべきだという意見も相次いでいたという。以降、個々の裁判体によって、原発の「リスク評価」の判断は割れ続ける。
   ◆    ◆
 「どのような事態にも安全を確保することは現在の科学では不可能」(16年4月、九電川内原発を巡る福岡高裁宮崎支部決定)。破局的噴火など「発生頻度が著しく小さいリスクは無視できるものとして容認するのが社会通念」とする姿勢も根強い。原発の運転を禁じる判断はいずれも上級審や異議審で覆され、確定した例はない。原発の安全性に司法はどう向き合うべきか。中央大法科大学院の升田純教授(民事法)は「原発は非常に高度かつ総合的な科学技術。関連した専門性がない裁判官は、審査の手続きなどに看過できない誤りがある場合にのみ介入すべきだ」とし、最高裁判決の枠組みを尊重すべきだとする。一方、06年に金沢地裁裁判長として北陸電力に原発の運転差し止めを命じた井戸謙一弁護士(滋賀県)は「専門的で難しい内容はあるが、国や行政、学者の意見を丸のみしては司法の役割は果たせない」と指摘。この判決後、原発の耐震指針は強化されており「運転を認める場合でも安全性を高めるためのチェック機能を果たさなければ、司法は国民から見放されてしまう」と述べた。
●原子力規制庁「厳格審査認められた」
 九州電力玄海原発3、4号機の原子炉設置許可取り消しを求める訴えを退けた12日の佐賀地裁判決を受け、原子力規制委員会は「東京電力福島第1原発事故を踏まえて策定された新規制基準により、厳格な審査を行ったことが認められた結果と考えている。引き続き新規制基準に基づき、適切な規制を行ってまいりたい」とのコメントを出した。
●妥当な結果、安全性確保に万全期す
 九州電力のコメント 国と当社の主張が裁判所に認められ、妥当な結果と考えている。今後ともさらなる安全性・信頼性向上への取り組みを自主的かつ継続的に進め、原発の安全性確保に万全を期していく。

*3-3-4:https://www.tokyo-np.co.jp/article/96184 (東京新聞 2021年4月6日) 40年超原発、国が県に交付金 福井知事「再稼働の議論を」
 福井県の杉本達治知事は6日、畑孝幸・県議会議長と面談し、運転開始から40年を超えた原発1カ所当たり最大25億円が国から県に交付されると明らかにした。国や関西電力による地域振興策や、住民への理解活動を説明した上で「県議会で(40年超原発の)再稼働の議論を進めてほしい」と改めて要請した。県内には関電の高浜原発(高浜町)と美浜原発(美浜町)に40年超の原発があり、県への交付金は最大50億円となる見通し。国は、立地地域の将来を見据え、原子力研究や廃炉支援、新産業創出といった振興策を関電や自治体で議論する会議を創設し、秋にも結果をまとめるという。

*3-3-5:https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=411AC0000000156 平成11年法律第156号、平成24~30年6月改正までを含む「原子力災害対策特別措置法」より抜粋
(原子力事業者の責務)
第三条 原子力事業者は、この法律又は関係法律の規定に基づき、原子力災害の発生の防止に関し万全の措置を講ずるとともに、原子力災害(原子力災害が生ずる蓋然性を含む。)の拡大の防止及び原子力災害の復旧に関し、誠意をもって必要な措置を講ずる責務を有する。
(国の責務)
第四条 国は、この法律又は関係法律の規定に基づき、原子力災害対策本部の設置、地方公共団体への必要な指示その他緊急事態応急対策の実施のために必要な措置並びに原子力災害予防対策及び原子力災害事後対策の実施のために必要な措置を講ずること等により、原子力災害についての災害対策基本法第三条第一項の責務を遂行しなければならない。
2 指定行政機関の長(当該指定行政機関が委員会その他の合議制の機関である場合にあっては、当該指定行政機関。第十七条第七項第三号を除き、以下同じ。)及び指定地方行政機関の長は、この法律の規定による地方公共団体の原子力災害予防対策、緊急事態応急対策及び原子力災害事後対策の実施が円滑に行われるように、その所掌事務について、当該地方公共団体に対し、勧告し、助言し、その他適切な措置をとらなければならない。
3 内閣総理大臣及び原子力規制委員会は、この法律の規定による権限を適切に行使するほか、この法律の規定による原子力事業者の原子力災害予防対策、緊急事態応急対策及び原子力災害事後対策の実施が円滑に行われるように、当該原子力事業者に対し、指導し、助言し、その他適切な措置をとらなければならない。
第四条の二 国は、大規模な自然災害及びテロリズムその他の犯罪行為による原子力災害の発生も想定し、これに伴う被害の最小化を図る観点から、警備体制の強化、原子力事業所における深層防護の徹底、被害の状況に応じた対応策の整備その他原子力災害の防止に関し万全の措置を講ずる責務を有する。
(地方公共団体の責務)
第五条 地方公共団体は、この法律又は関係法律の規定に基づき、原子力災害予防対策、緊急事態応急対策及び原子力災害事後対策の実施のために必要な措置を講ずること等により、原子力災害についての災害対策基本法第四条第一項及び第五条第一項の責務を遂行しなければならない。
(関係機関の連携協力)
第六条 国、地方公共団体、原子力事業者並びに指定公共機関及び指定地方公共機関は、原子力災害予防対策、緊急事態応急対策及び原子力災害事後対策が円滑に実施されるよう、相互に連携を図りながら協力しなければならない。
第一章の二 原子力災害対策指針
第六条の二 原子力規制委員会は、災害対策基本法第二条第八号に規定する防災基本計画に適合して、原子力事業者、指定行政機関の長及び指定地方行政機関の長、地方公共団体、指定公共機関及び指定地方公共機関その他の者による原子力災害予防対策、緊急事態応急対策及び原子力災害事後対策(次項において「原子力災害対策」という。)の円滑な実施を確保するための指針(以下「原子力災害対策指針」という。)を定めなければならない。
2 原子力災害対策指針においては、次に掲げる事項について定めるものとする。
一 原子力災害対策として実施すべき措置に関する基本的な事項
二 原子力災害対策の実施体制に関する事項
三 原子力災害対策を重点的に実施すべき区域の設定に関する事項
四 前三号に掲げるもののほか、原子力災害対策の円滑な実施の確保に関する重要事項
3 原子力規制委員会は、原子力災害対策指針を定め、又はこれを変更したときは、遅滞なく、これを公表しなければならない。
第四章 緊急事態応急対策の実施等
(原子力事業者の応急措置)
第二十五条 原子力防災管理者は、その原子力事業所において第十条第一項の政令で定める事象が発生したときは、直ちに、原子力事業者防災業務計画の定めるところにより、当該原子力事業所の原子力防災組織に原子力災害の発生又は拡大の防止のために必要な応急措置を行わせなければならない。
2 前項の場合において、原子力事業者は、同項の規定による措置の概要について、原子力事業者防災業務計画の定めるところにより、内閣総理大臣及び原子力規制委員会、所在都道府県知事、所在市町村長並びに関係周辺都道府県知事(事業所外運搬に係る事象の発生の場合にあっては、内閣総理大臣、原子力規制委員会及び国土交通大臣並びに当該事象が発生した場所を管轄する都道府県知事及び市町村長)に報告しなければならない。この場合において、所在都道府県知事及び関係周辺都道府県知事は、関係周辺市町村長に当該報告の内容を通知するものとする。
(緊急事態応急対策及びその実施責任)
第二十六条 緊急事態応急対策は、次の事項について行うものとする。
一 原子力緊急事態宣言その他原子力災害に関する情報の伝達及び避難の勧告又は指示に関する事項
二 放射線量の測定その他原子力災害に関する情報の収集に関する事項
三 被災者の救難、救助その他保護に関する事項
四 施設及び設備の整備及び点検並びに応急の復旧に関する事項
五 犯罪の予防、交通の規制その他当該原子力災害を受けた地域における社会秩序の維持に関する事項
六 緊急輸送の確保に関する事項
七 食糧、医薬品その他の物資の確保、居住者等の被ばく放射線量の測定、放射性物質による汚染の除去その他の応急措置の実施に関する事項
八 前各号に掲げるもののほか、原子力災害(原子力災害が生ずる蓋然性を含む。)の拡大の防止を図るための措置に関する事項
2 原子力緊急事態宣言があった時から原子力緊急事態解除宣言があるまでの間においては、指定行政機関の長及び指定地方行政機関の長、地方公共団体の長その他の執行機関、指定公共機関及び指定地方公共機関、原子力事業者その他法令の規定により緊急事態応急対策の実施の責任を有する者は、法令、防災計画、原子力災害対策指針又は原子力事業者防災業務計画の定めるところにより、緊急事態応急対策を実施しなければならない。
3 原子力事業者は、法令、防災計画、原子力災害対策指針又は原子力事業者防災業務計画の定めるところにより、指定行政機関の長及び指定地方行政機関の長並びに地方公共団体の長その他の執行機関の実施する緊急事態応急対策が的確かつ円滑に行われるようにするため、原子力防災要員の派遣、原子力防災資機材の貸与その他必要な措置を講じなければならない。
第五章 原子力災害事後対策
(原子力災害事後対策及びその実施責任)
第二十七条 原子力災害事後対策は、次の事項について行うものとする。
一 原子力災害事後対策実施区域における放射性物質の濃度若しくは密度又は放射線量に関する調査
二 居住者等に対する健康診断及び心身の健康に関する相談の実施その他医療に関する措置
三 放射性物質による汚染の有無又はその状況が明らかになっていないことに起因する商品の販売等の不振を防止するための、原子力災害事後対策実施区域における放射性物質の発散の状況に関する広報
四 前三号に掲げるもののほか、原子力災害(原子力災害が生ずる蓋然性を含む。)の拡大の防止又は原子力災害の復旧を図るための措置に関する事項
2 指定行政機関の長及び指定地方行政機関の長、地方公共団体の長その他の執行機関、指定公共機関及び指定地方公共機関、原子力事業者その他法令の規定により原子力災害事後対策に責任を有する者は、法令、防災計画、原子力災害対策指針又は原子力事業者防災業務計画の定めるところにより、原子力災害事後対策を実施しなければならない。
3 原子力事業者は、法令、防災計画、原子力災害対策指針又は原子力事業者防災業務計画の定めるところにより、指定行政機関の長及び指定地方行政機関の長並びに地方公共団体の長その他の執行機関の実施する原子力災害事後対策が的確かつ円滑に行われるようにするため、原子力防災要員の派遣、原子力防災資機材の貸与その他必要な措置を講じなければならない。
(市町村長の避難の指示等)
第二十七条の二 前条第一項第一号に掲げる調査により、当該調査を実施した原子力災害事後対策実施区域において放射性物質による環境の汚染が著しいと認められた場合において、当該汚染による原子力災害が発生し、又は発生するおそれがあり、かつ、人の生命又は身体を当該原子力災害から保護し、その他当該原子力災害(原子力災害が生ずる蓋然性を含む。)の拡大を防止するため特に必要があると認めるときは、市町村長は、当該原子力災害事後対策実施区域内の必要と認める地域の居住者、滞在者その他の者に対し、避難のための立退き又は屋内への退避を勧告し、及び急を要すると認めるときは、これらの者に対し、避難のための立退き又は屋内への退避を指示することができる。
2 前項の規定により避難のための立退き又は屋内への退避を勧告し、又は指示する場合において、必要があると認めるときは、市町村長は、その立退き先又は退避先として第二十八条第一項の規定により読み替えて適用される災害対策基本法第四十九条の四第一項の指定緊急避難場所その他の避難場所を指示することができる。
3 前条第一項第一号に掲げる調査により、当該調査を実施した原子力災害事後対策実施区域において放射性物質による環境の汚染が著しいと認められた場合において、当該汚染による原子力災害が発生し、又は発生するおそれがあり、かつ、避難のための立退きを行うことによりかえって人の生命又は身体に危険が及ぶおそれがあると認めるときは、市町村長は、当該原子力災害事後対策実施区域内の必要と認める地域の居住者、滞在者その他の者に対し、屋内での待避その他の屋内における避難のための安全確保に関する措置(以下「屋内での待避等の安全確保措置」という。)を指示することができる。
4 市町村長は、第一項の規定により避難のための立退き若しくは屋内への退避を勧告し、若しくは指示し、若しくは立退き先若しくは退避先を指示し、又は前項の規定により屋内での待避等の安全確保措置を指示したときは、速やかに、その旨を原子力災害対策本部長及び都道府県知事に報告しなければならない。
5 市町村長は、避難の必要がなくなったときは、直ちに、その旨を公示しなければならない。前項の規定は、この場合について準用する。
(警察官等の避難の指示)
第二十七条の三 前条第一項又は第三項の場合において、市町村長による避難のための立退き若しくは屋内への退避若しくは屋内での待避等の安全確保措置の指示を待ついとまがないと認めるとき、又は市町村長から要求があったときは、警察官又は海上保安官は、当該原子力災害事後対策実施区域内の必要と認める地域の居住者、滞在者その他の者に対し、避難のための立退き若しくは屋内への退避又は屋内での待避等の安全確保措置を指示することができる。
2 前条第二項の規定は、警察官又は海上保安官が前項の規定により避難のための立退き又は屋内への退避を指示する場合について準用する。
3 警察官又は海上保安官は、第一項の規定により避難のための立退き若しくは屋内への退避又は屋内での待避等の安全確保措置を指示したときは、直ちに、その旨を市町村長に通知しなければならない。
4 前条第四項及び第五項の規定は、前項の通知を受けた市町村長について準用する。
(指定行政機関の長等による助言)
第二十七条の四 市町村長は、第二十七条の二第一項の規定により避難のための立退き若しくは屋内への退避を勧告し、若しくは指示し、又は同条第三項の規定により屋内での待避等の安全確保措置を指示しようとする場合において、必要があると認めるときは、指定行政機関の長若しくは指定地方行政機関の長又は都道府県知事に対し、当該勧告又は指示に関する事項について、助言を求めることができる。この場合において、助言を求められた指定行政機関の長若しくは指定地方行政機関の長又は都道府県知事は、その所掌事務に関し、必要な助言をするものとする。
(避難の指示等のための通信設備の優先利用等)
第二十七条の五 災害対策基本法第五十七条の規定は、市町村長が第二十七条の二第一項の規定により避難のための立退き若しくは屋内への退避を勧告し、若しくは指示し、又は同条第三項の規定により屋内での待避等の安全確保措置を指示する場合について準用する。
(市町村長の警戒区域設定権等)
第二十七条の六 第二十七条第一項第一号に掲げる調査により、当該調査を実施した原子力災害事後対策実施区域において放射性物質による環境の汚染が著しいと認められた場合において、当該汚染による原子力災害が発生し、又は発生するおそれがあり、かつ、人の生命又は身体に対する危険を防止するため特に必要があると認めるときは、市町村長は、当該原子力災害事後対策実施区域内に警戒区域を設定し、原子力災害事後対策に従事する者以外の者に対して当該警戒区域への立入りを制限し、若しくは禁止し、又は当該警戒区域からの退去を命ずることができる。
2 前項の場合において、市町村長若しくはその委任を受けて同項に規定する市町村長の職権を行う市町村の職員による同項に規定する措置を待ついとまがないと認めるとき、又はこれらの者から要求があったときは、警察官又は海上保安官は、同項に規定する市町村長の職権を行うことができる。この場合において、同項に規定する市町村長の職権を行ったときは、警察官又は海上保安官は、直ちに、その旨を市町村長に通知しなければならない。
3 第二十七条の四の規定は、第一項の規定により警戒区域を設定しようとする場合について準用する。

*3-3-6:https://www.nishinippon.co.jp/item/n/706523/ (西日本新聞 2021/3/13) 玄海原発設置許可取り消し認めず 佐賀地裁、規制委審査「合理的」 
 九州電力玄海原発(佐賀県玄海町)の周辺住民ら559人が国と九電に対し、玄海3、4号機の設置許可取り消しと運転差し止めを求めた二つの訴訟の判決が12日、佐賀地裁であった。達野ゆき裁判長は、新規制基準に適合するとした原子力規制委員会の審査について「看過しがたい過誤や欠落は認められない」と述べ、いずれも請求を退けた。原告側は判決を不服として控訴する方針。原告は「玄海原発プルサーマルと全基をみんなで止める裁判の会」。主な争点は、原発の耐震設計の目安となる基準地震動の妥当性と、阿蘇カルデラ(熊本県)の破局的噴火リスクだった。同様の訴訟では昨年12月、大阪地裁が関西電力大飯原発3、4号機(福井県)の設置許可を取り消す判決を出しており、佐賀地裁の判断が注目されていた。判決は規制委について「原発の安全性に関して高度の専門性を有する機関」と説明。規制委が専門的知見に基づき策定した新規制基準や同基準による原発の設置許可も合理的だと述べた。基準地震動については、規制委の内規「審査ガイド」に記載された平均値を超える地震データ「ばらつき」の考慮が焦点となった。大阪地裁判決は、ばらつき分の上乗せの要否を検討しなかった規制委の判断過程を「審査すべき点を審査しておらず違法」と断じたが、佐賀地裁判決はばらつきは基準地震動を導く計算式の「適用範囲を確認する留意点」にすぎず、上乗せを要求する記載はないとした。阿蘇カルデラの噴火リスクに関しては「原発の運転期間中に破局的噴火を起こす可能性は十分に小さい」と指摘。このような噴火を想定した法規制などが原子力安全規制分野の他に行われていないことを踏まえ「リスクは社会通念上容認されている」と結論付けた。
*玄海原発 九州初の原発。1975年に1号機、81年2号機、94年3号機、97年4号機が運転開始。3号機は2009年から使用済み核燃料を再処理したプルトニウム・ウラン混合酸化物(MOX)燃料を使うプルサーマル発電をしている。11年の東京電力福島第1原発事故を踏まえた新規制基準による審査を経て18年3月に3号機、同6月に4号機が再稼働。1、2号機は廃炉が決定した。

<教育・研究>
*4-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20210327&ng=DGKKZO70407180W1A320C2EA3000 (日経新聞 2021.3.27) 社会変革へ30兆円投資 科技基本計画 進学者減り弱る研究現場
 政府は26日、科学技術政策の方針を示す「第6期科学技術・イノベーション基本計画」を閣議決定した。脱炭素やデジタルトランスフォーメーション(DX)といった社会変革に向け、2021年度から5年間で政府の研究開発投資を総額30兆円とする目標を掲げた。新型コロナウイルスの感染拡大でリモートワークやオンライン教育など日本のデジタル化や社会変革の遅れが浮き彫りとなった。20年度までの第5期基本計画でも目指す社会像として「ソサエティー5.0」と名付けた「超スマート社会」を提唱したが、実現にはほど遠い。第6期基本計画は社会変革、研究力強化、人材育成の3つが柱となる。日本は研究論文の質・量ともに国際的地位が低下。研究者の任期付き雇用増加や大学院博士課程への進学者減少など研究現場は危機的な状況にある。新計画は博士学生への生活費支援など研究力強化と人材育成には抜本的な取り組みも盛り込んだが、社会変革に向けた道筋は明確でない。政府は科技予算の拡大を呼び水に、企業にも研究開発への投資を促す。今後5年間で官民合わせた研究開発投資で総額120兆円との目標も掲げた。規制緩和や税制なども含む政策の総動員とともに、産官学が一体となってイノベーションを生み出し、普及させる必要がある。

*4-2:https://digital.asahi.com/articles/DA3S14864870.html?iref=comtop_Opinion_01 (朝日新聞 2021年4月8日) 米は学生に週2回PCR、日本は根本的対策なし 宮地ゆう
■大学での検査、安心のために整備を
 新型コロナウイルスの感染拡大が続く昨年6月ごろ、米国の一部の大学で学生に週2回、定期的にPCR検査を実施する「サーベイランス検査」の態勢を作ろうとしていると聞いた。学内で1日数千件の検査をすることで感染を抑え、一度閉鎖した大学を再開させるという。折しも、日本では発熱したり濃厚接触者になったりしても検査が受けられないという悲痛な声があがっていたころだ。どうしたら、そんなことが可能なのか。米国のいくつかの大学を取材すると共通点があった。無症状の感染者を見つけて隔離する重要性に早期に気付いたこと。そして、どれだけ検査をすれば「科学的に安全」と言えるのかを計算し、その態勢を目指したことだ。とはいえ、前代未聞の試みに、どの大学も試行錯誤だったようだ。研究用に使っていたPCR検査機に加え、ロボットを自作して検査数を増やしたり、複数の検体をまとめて検査する「プール方式」を採用したり。保健当局と折衝をしつつ、数をこなすために独自の検査方法を編み出した大学もある。こうして1日数千件という検査態勢を作り上げた。その背景には、「学生間や地域への感染を広げないことは大学の責務」(コーネル大副学長)との考えがあったようだ。日米では大学の置かれた環境も財政規模も違い、容易に比較はできない。だが、日本では「若者が感染を広げている」と、大学生らに厳しい目が向けられる一方で、若者の間の感染を抑える根本的な対策はほとんどない。文部科学省は大学での対面授業を促しているが、多くの大学は教室の人数制限や換気といった対策がメインだ。ある私大の教授は「検査などの基本的な態勢がないのに対面授業を拡充しろと言われ、しわ寄せは現場の教員にくる」と訴える。研究室にPCR検査機を持つある国立大の教授は「学内の検査だけでも感染抑止には意味がある。設備も人材もあるのに、大学はなかなか動かない」と嘆いた。学内の検査態勢を整えることは、学生や教職員の安心につながる。長期化するコロナ禍の大学生活を乗り切るために、考えるべきではないだろうか。

*4-3:https://mainichi.jp/articles/20210401/ddm/005/070/115000c (毎日新聞社説 2021/4/1) 新しい高校教科書 探究支える体制づくりを
 来春から主に高校1年生が使う教科書の検定結果が発表された。新しい学習指導要領に対応した初めての教科書となる。多くの科目が新設され、生徒同士の議論や課題の探究を重視する内容となった。「現代社会」に代わる「公共」は、政治や社会への関わり方を考える主権者教育に重点を置いた。大学入試で女性の受験者が不利な扱いを受けていた問題を、男女平等に関する議論の題材にするなど、身近な事柄を通じて社会の課題を考えさせる工夫が凝らされている。高校の授業は、教師による一方通行型の詰め込み教育と批判されてきた。そこから転換を図る方向性は間違っていない。だが、課題も多い。教えるべき知識の量はさほど減っていない。そのため、授業で議論に多くの時間が割かれるようになると、知識を定着させるために長時間の家庭学習が必要となる可能性がある。生徒の負担が過重にならないよう配慮することが不可欠だ。新たな必修科目や、探究型の学習への対応を求められる教師自身の負担も小さくない。プログラミングなどを教える「情報Ⅰ」も必修となる。だが、免許を持つ教師は少なく、現在は専門外の教師が教えているケースが多いのが実情だ。教師の指導力の差が広がれば、生徒がそのしわ寄せを受ける心配がある。できるだけ多くの教師が専門性を高められるように、研修の充実が欠かせない。今回、「公共」や、近現代の日本史と世界史を統合した「歴史総合」では、領土問題に関する記述に多くの意見がつき、政府見解に基づく表現に修正された。探究型の学習を重視するのなら、多様な意見を知ったうえで、議論を交わし、問題の本質を理解する過程を大事にすべきだろう。大学入学共通テストも2025年から、新学習指導要領に応じた形で編成が変わる。入試に備える点からも、生徒と教師が新しい教科書を十分に活用できるようにすることが大切だ。国は自治体と連携し、探究型の学習を実現できる体制づくりを進めなければならない。

*4-4:https://www.nikkei.com/article/DGXZQODF075O6007122020000000/ (日経新聞 2020年12月8日) 脱炭素、投資額の1割税額控除 政府・与党最終調整
 政府・与党は脱炭素につながる製品の生産拡大を促すために検討している税優遇策について、最大で設備投資額の1割を法人税から税額控除する方向で最終調整に入った。製造設備への投資を促す減税としては過去最大の控除率となる見通し。2050年までに温暖化ガスの排出量を実質ゼロにする政府目標に向け「グリーン投資」に踏み切る企業を後押しする。近く決定する与党税制改正大綱に盛り込む。次世代型のリチウムイオン電池や燃料電池、電圧制御に使うパワー半導体、風力発電機など、脱炭素を加速すると見込める分野を政府が指定し、製造設備の増強や生産プロセスの省エネルギー対応などを税優遇の対象とする。さらに対象分野を増やすことも検討する。税優遇を受けるには企業が国に対し、投資を通じた脱炭素への貢献を示す事業計画を提出する。認定を受ければ税額控除を活用できる。国が定める脱炭素への貢献度の指標に応じ、5%か10%を法人税から差し引ける仕組みで調整する。来年の通常国会に産業競争力強化法改正案を提出し認定制度を設ける。21年度から3年間の税制とする。菅義偉首相は4日、脱炭素に向けた研究・開発を支援する2兆円の基金創設を表明した。グリーンとデジタルの2分野を成長の源泉と位置づけており、予算と税制の両面で支援策を講じる。

*4-5:https://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-1301211.html (琉球新報社説 2021年4月9日) デジタル法案衆院通過 拙速な手続き許されない
 デジタル庁創設を柱とした「デジタル改革関連法案」が6日、与党などの賛成多数で衆院を通過した。このまま成立すれば、地方自治体ごとに整備してきた個人情報保護のルールが白紙となり、データ利用の推進を掲げた国の規定に一元化されてしまう。「監視社会」の到来や、企業による商業利用といった多くの懸念を抱えたまま、首相に強大な権限を集め、行政機関が持つ膨大な情報をデジタル庁が一手に収集できるようになる。数の力で成立を押し切ることは、将来に必ず禍根を残す。日程ありきの手続きは拙速であり、許されない。デジタル関連法案は、60本以上もの法改正を一括して審議するよう求める「束ね法案」だ。本来であれば法案の一つ一つを審議し、相応の審議時間が必要になる。しかし、衆院内閣委員会で関連法案の審議時間は30時間にも満たず、過去の重要法案と比べてもあり得ない短さだ。熟議とは程遠く、国会審議が形骸化していると言わざるを得ない。60を超える法案には、「脱はんこ」として話題を集めた押印手続きの削減もあれば、マイナンバーと預貯金口座のひも付け、個人情報保護法の見直しなど、個人の権利との関わりで慎重な議論を要するものまで一緒くたになっている。一括審議で国会審議を進めていい案件ではない。これまで個人情報の保護は、住民に近い自治体がそれぞれで条例を制定し、思想信条や病歴・犯歴などの要配慮情報の収集は禁じるなどの慎重な取り扱いを定めてきた。何の目的に使うかという住民本人の合意を得た上で、個人情報を取り扱うことが自治体では原則となっている。これに対し政府は、膨大なデータを民間のビジネスにも容易に利用できるようにするという目的を掲げ、規制が緩い国のルールに自治体まで組み込んでしまおうとしている。本人同意による直接収集という個人情報保護の原則はなし崩しとなり、本人の同意なく個人情報を吸い上げることも可能となる。企業による個人情報の収集では、就職情報サイトの「リクナビ」が、サイト閲覧履歴のデータなどから学生の「内定辞退率」を予測し、企業に販売したことが問題となった。世界的にも「GAFA」と呼ばれる大手IT企業が大量の個人データを独占し、規制の難しさに国際社会が直面している。デジタル化の推進はプライバシー保護との間で慎重な議論が求められる。当事者のあずかり知らないところで情報がやり取りされる状況がある中で、国民の権利として「自己情報コントロール権」を確立し、保障することこそ、これからの時代に政府が果たす役割だ。「木を隠すなら森の中」と言わんばかりの、束ね法案による乱暴な手続きは認められない。個別の法案として、提案をし直すことだ。

*4-6-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20210411&ng=DGKKZO70895430R10C21A4MM8000 (日経新聞 2021.4.11) EV製造時のCO2削減 ホンダなど検討 部品ごと排出量公開
 ホンダや独BMWなど世界の自動車大手が電気自動車(EV)向けの電池で、生産段階から温暖化ガスの排出量を減らす取り組みに着手する。素材や部品ごとの二酸化炭素(CO2)排出量の公開を検討し、取引先に対策を促す。環境対応力による選別が進むことになる。EVは走行時にCO2を排出しないが、生産時の排出量はガソリン車の2倍を超える。その半分を占めるのが電池だ。材料に使う化合物などの製造に多くのエネルギーを使う。今後は管理が強まる。欧州連合(EU)は2024年から、電池の生産から廃棄まで全過程で出る温暖化ガスの排出量を申告するよう義務付ける。自動車メーカーが対応に動き始めた。ホンダやBMWは世界経済フォーラムの傘下組織である「グローバル・バッテリー・アライアンス(GBA)」に加盟し、GBAが準備を進める新たな仕組みの活用を検討する。GBAのベネディクト・ソボトカ共同議長は「(ホンダ以外にも)多くの企業に参加を呼びかけている」と話した。GBAは電池の生産工程などに関するデータベースを立ち上げる計画だ。生産履歴を遡り、部品や素材ごとに産出地のほか生産や輸送で発生したCO2の排出量なども調べられるようにするものだ。22年にも試験運用を始める。自動車メーカーは自社が使う電池の情報を登録する。データベースを通じ、より環境負荷の低い製品を選べるため、電池メーカーは対策を迫られる。情報の正確性はGBAが企業に裏付けを求めるなどして担保する。ホンダは日本経済新聞の取材に「GBAに参画するのは事実。データベースの活用はまだ決めていない」と答えた。BMWからは回答がなかった。

*4-6-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20210411&ng=DGKKZO70853300Z00C21A4MY1000 (日経新聞 2021.4.11) 電気自動車が「排ガス」、電池製造でCO2、再エネに期待
 電気自動車(EV)は「排ガス」を出さず脱炭素にうってつけの技術に思えるが、死角がある。製造時にガソリン車を上回る二酸化炭素(CO2)が出る。さらに、充電する電気がクリーンでなければ、電気を使うたびに温暖化ガスを排出しているようなものだ。2050年までに温暖化ガス排出量を実質ゼロにしようと、日本などの主要国は30年代にガソリン車の新車販売を禁じる。EVの普及は切り札になるのか、それともイメージ先行なのか。20年12月、欧州連合(EU)の欧州委員会がEVなどの電池の生産に環境規制を課す案を公表した。24年7月から、製造から廃棄までのCO2排出量の報告を義務付け、27年7月には排出上限を定める。工業製品の環境負荷を評価するライフサイクルアセスメントに詳しい日本LCA推進機構の稲葉敦理事長は「欧州の規制に対応できるように日本の規制の枠組みも考えないといけない」と指摘する。なぜEVにも規制が必要なのか。ガソリン車はガソリンをエンジンで燃やし、CO2などを出して走る。EVは電池にためた電気で必要な運動エネルギーを得る。電気でモーターを動かし、走行時にCO2を出さない。だからこそクリーンな車とされてきた。盲点は動力源の電池だった。EVにも力を入れるマツダは19年、工学院大学教授だった稲葉理事長と共同で、先行研究も参考にして分析した。製造工程全体でEVはガソリン車の2倍を超えるCO2を排出する計算になった。EVは電池をつくるだけでエンジン製作の4~5倍となる約6トンのCO2を出すという。主流のリチウムイオン電池は多様な金属の化合物を使い、金属の製造や化学工程で大量のエネルギーを消費する。米アルゴンヌ国立研究所の研究者が19年に公表した論文によると、リチウムイオン電池の製造ではリチウムやマンガンなどでできた正極材料の作製に最も多くのエネルギーを費やす。全体の4割を占めるという。リチウムイオン電池に使うアルミニウムの製造にも大量の電気が要る。EVは充電の電気がクリーンかどうかも問われる。自宅や充電ステーションの電気は多くが電力会社から届く。太陽光、水力、風力など再生可能エネルギーや原子力発電の電気であればCO2排出は抑制される。化石燃料を燃やす火力発電の電気なら、CO2を出しているとみなされる。再生エネの割合は国によって違う。マツダと稲葉理事長は日米欧中豪の5カ国・地域について、「製造」「使用」「廃棄」などを通じたEVとガソリン車のCO2排出量を比べた。充電の電気がCO2と関わっていても、走行距離が長ければEVが有利になる。だが米国では6万キロ、欧州では7万6千キロ走って、やっとEVのCO2排出量がガソリン車を下回った。日本では11万キロの走行が必要だった。米国はガソリン車の燃費などが悪く、EVが有利になりやすい。欧州は再生エネや原子力発電の割合が高く、CO2をともなう発電が少ない。日本はガソリン車の燃費が良いうえに火力発電頼みが裏目に出る。結果として、EVが多くのCO2を出す。マツダは研究を踏まえ、あえて電池の容量を抑えた同社初の量産型EVを1月に発売した。EVは真の温暖化対策になり得るのか。京都大学の藤森真一郎准教授らは、世界で50年にEVが100%導入された場合の未来をコンピューターで描き出してみた。CO2排出量の削減効果をシミュレーションしたところ、火力発電に依存した現状のままでは、EVを大量導入してもCO2排出量はほとんど減らず、増加する可能性すらあった。藤森准教授は「EV製造時の排出量削減やエネルギー効率の向上、供給する電気の再エネ化などを進めないとEV導入の脱炭素効果は上がらない」と指摘する。EVとガソリン車の比較を巡っては英国で20年に「EVがガソリン車よりCO2の排出を減らすには5万マイル(約8万キロ)も走る必要がある」との趣旨の試算を自動車会社と関わる団体が公表し、一部報道で「(ガソリン車を有利に見せる)誇大広告だ」との批判も出た。製造時のCO2の排出量については研究によってまちまちで評価が定まっていない面もある。それでもEVの導入がムダだという専門家は少ない。EVが切り札になるかどうかは国を選ぶ。EVは各国・地域が再生エネの導入や製造工程の脱炭素化に真摯に取り組んでいるかを映す鏡なのだ。

*4-7:https://www.asahi.com/articles/ASP313HVBP2VUHBI002.html (朝日新聞 2021年3月2日) EU、ワクチン証明書導入へ 「差別につながる」懸念も
 欧州連合(EU)は、新型コロナワクチンを接種したことを公的に示す「ワクチン証明書」の導入を進めているとし、技術面だけで少なくとも3カ月かかるとの見通しを2月25日に示した。ただ、観光旅行や日常生活などでの利用については、ワクチン接種が進んでいない現状では「差別につながる」との懸念も強く、慎重に議論を続ける。オンライン形式で開いた首脳会議後の記者会見でフォンデアライエン欧州委員長が説明した。証明書はデジタル化を想定し、接種したワクチンの種類やPCR検査の結果といった基本的なデータを盛り込んでEU共通の仕様にする。各国のシステムの連携などに時間がかかるという。観光への依存度が高いギリシャなどでは、証明書を「ワクチンパスポート」として入国制限の緩和などに結びつけ、観光業の再興につなげたい考えだ。ただ、EU内でワクチンを1回でも接種した成人は、まだ5%どまり。フォンデアライエン氏は、証明書の夏までの実用化も念頭に、「どう使うかは各国の判断だ」としつつも、バランスの取れた対応が必要だとした。EU域内では、変異ウイルスが広がりを見せており、加盟27カ国のうち7カ国で感染が増える傾向にあるという。このため、承認済みワクチンの変異株対応の審査を迅速化したり、域内での治験がスムーズに進むよう連携を深めたりする方針だ。

PS(2021年4月15日追加): *5-1のように、米アップル・グーグル・ネスレ・コカコーラ・ウォルマート・ナイキ・GE・エジソンインターナショナル等の米国企業310社が、4月13日、「①2030年までに温暖化ガスを2005年比で半減する目標を掲げるよう求める」「②クリーンエネルギーに投資してエネルギー効率を高めることは米経済をより包括的で公正にする」「③2030年の高い目標設定が力強い景気回復をもたらし、何百万もの雇用を生み出す」「④耐久力あるインフラ・排気ガス排出0の車・建物などの構築にも繋がる」という書簡をバイデン米大統領に送ったそうだ。また、欧州議会の環境委員会も、自動車大手ルノー・家具のイケアなど多くの企業の支持を得て、「⑤欧州連合(EU)は2030年に1990年比で温暖化ガスの排出量を55%減らす目標を掲げている」「⑥一緒に行動することで変化を起こせる」として脱炭素に向けて協調するよう求める書簡を米政府に送っている。これらは、日本にも完全に当てはまることだが、地球温暖化を止め持続可能性を維持することが目標であるため、平時でも温排水やトリチウムなどの放射性物質を海洋に放出している原発は、クリーンエネルギーに含まれない。
 なお、*5-2-1のように、「⑦フクイチは2011年の津波で炉心の溶融事故を起こし、高濃度の放射性物質を含む汚染水が今も発生している」「⑧汚染水は、専用装置(アルプス?)で主な放射性物質を取り除いた後も放射性物質のトリチウム(三重水素)を含む」「⑨その放射性物質が残る汚染水を海洋放出することが決まった」「⑩配管の設備工事などを終えて実際に放出できるのは2年後になる」「⑪風評被害が起きた場合は、東電が被害の実態に見合った賠償をする」とのことである。
 ここで、第1の問題点は⑦で、まだ高濃度の放射性物質を含む汚染水が発生しているのなら、大金をかけて凍土壁を作ったのは無駄遣いだったのではないかという点だ。また、第2の問題点は⑧で、*5-2-2に書かれているとおり、トリチウムだけでなく他の放射性物質も残っていることは隠されていた上、現計画でもトリチウムの分離等の他の方法は検討されていないことだ。さらに、第3の問題点は、⑨⑩の根拠として、100倍以上に薄めてWHOの飲料水水質ガイドラインの7分の1程度にトリチウムの濃度を下げて海洋放出すれば、放出する総量が変わらなくても問題ないと強弁している点である。第4の問題点は、「⑫廃炉を円滑に進めるためには保管施設として6万平方メートルの土地が必要でタンクが減らなければ廃炉に支障が出る」と言うが、それなら始めから海洋放出することを前提にタンクを建設して無駄遣いしていただけではないかという点だ。その上、⑪のように、「⑫売れなくなったら風評被害だ」「⑬関係者が理解していない」として福島県や近隣県の農産品の販路拡大の支援をするというのは、公害による汚染に無頓着な人が、気にしている人を馬鹿にするという本末転倒の状況なのである。
 それでは、専用装置(ALPS《アルプス》)で再処理してトリチウム以外の放射性物質が含まれない“処理水”にすれば安全なのかと言えば、*5-2-3のように、「体内に取り込まれたトリチウムが遺伝子の構成元素になると、放射線(β線)を出してトリチウムがヘリウムになる時に遺伝子(DNA)が壊れる」のである。しかし、その前に水や食品に含まれて体内に入ったトリチウムはβ線を出すときに消化管の細胞を傷つけ、その後に、血液中に移って体中を巡り、体中の細胞を傷つける(これが内部被曝だ)。そして、100倍以上に薄めてWHOの飲料水水質ガイドラインの7分の1程度にトリチウムの濃度を下げたとしても、EUの水質基準の26倍の濃さであり、総量を海洋放出すれば魚介類等の海産物はトリチウムを含む水の中に住み、その水を体内に取り込んで暮らすことになり、食物連鎖で次第に濃縮する。そのため、「風評被害だ」「販路拡大だ」と言っている人こそ、この生態系の仕組みを理解していないと思う。
 なお、*5-2-2・*5-2-4に書かれている中国・台湾・韓国による汚染水の海洋放出批判は尤もだが、これらの国の排他的経済水域に至るには、海流に乗って太平洋全域を汚染した後に東シナ海や日本海に入るため、太平洋でかなり薄まり、北太平洋の公海で獲る魚以外は汚染がないだろう。それより、中国や韓国にある原発が同じ事故を起こせば、太平洋よりもずっと狭い日本海が汚染されるため、中国や韓国も早々に卒原発に舵を切ってもらいたい思う。

*5-1:https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN13E7L0T10C21A4000000/ (日経新聞 2021年4月14日) 米の温暖化ガス「30年に半減を」 Appleなど310社要望
 米アップルやグーグル、ネスレなど米国で事業を展開する企業310社が13日、バイデン米大統領に対し、2030年までに温暖化ガスで05年比で半減とする目標を掲げるよう求める書簡を送った。欧州議会も同様の書簡を送付。米国が22日から開催する気候変動サミットを前に、50年の排出ゼロに向け具体的な道筋を求める動きが強まっている。書簡に署名した企業はコカ・コーラやウォルマート、ナイキなど製造業から小売業まで多岐にわたる。ゼネラル・エレクトリック(GE)やエジソン・インターナショナルなどエネルギー関連企業も含まれる。声明では30年の目標設定が「力強い景気回復をもたらし、何百万もの雇用を生み出す」と強調した。「クリーンエネルギーに投資し、エネルギー効率を高めることは、米経済をより包括的で公正なものにするだろう」とつづり、耐久力のあるインフラ、排出ゼロの車や建物などの構築にもつながるとした。さらに記録的なハリケーンや山火事などが「天災に耐えることが困難な低所得層を直撃している」との懸念を示した。米国が30年の目標を約束することは「他の先進国を刺激し、野心的な目標の設定につながるだろう」と国際協調における意義も示した。欧州議会の環境委員会は13日、自動車大手ルノーや家具のイケアなど多数の企業の支持を得る形で米政府に対し書簡を送った。「一緒に行動することで変化を起こせる」として脱炭素に向けて協調するよう求めた。欧州連合(EU)は30年に1990年比で温暖化ガスの排出量を55%減らす目標を掲げている。バイデン米政権は22日に、主要な排出国を集めて気候変動サミットを開催する。バイデン氏に対して「国としての目標を引き上げるなら、我々自身の目標も厳しくする」とつづったグローバル企業からの書簡は、米政府の気候変動対策の具体策を後押しするとともに圧力にもなる。

*5-2-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20210414&ng=DGKKZO70976330U1A410C2MM8000 (日経新聞 2021.4.14) 福島第1 廃炉へ一歩 処理水の海洋放出決定 風評被害、東電が賠償
 政府は13日、東京電力福島第1原子力発電所の敷地内にたまり続ける処理水を海に放出する方針を決めた。東京電力ホールディングスは原子力規制委員会の認可を受けて2年後をめどに放出を始める。風評被害が起きた場合は、東電が被害の実態に見合った賠償をする。廃炉作業の本格化に一歩前進となる。同日開いた福島第1原発の廃炉や処理水に関する関係閣僚会議で決めた。梶山弘志経済産業相は福島県を訪ね、同県庁で面会した内堀雅雄知事に「徹底した風評対策に取り組む」と伝えた。内堀氏は「福島県の復興にとって重く困難な課題だ。(政府の)基本方針を精査し、県としての意見を述べる」と答えるにとどめた。会談は6分間で終わった。政府の決定を受けて、東電は処理水の海洋放出に向けた対応方針を定める。放出の手順について原子力規制委の手続きを進め、配管の設備工事などを終えて実際に放出できるのは2年後になる。福島第1原発は2011年3月の東日本大震災の津波で炉心の溶融事故を起こし、高濃度の放射性物質を含む汚染水が今も発生している。専用装置で主な放射性物質を取り除いた処理水も放射性物質のトリチウムを含む。この処理水を100倍以上に薄めて海へ流す。世界保健機関(WHO)の飲料水水質ガイドラインの7分の1程度にトリチウムの濃度を下げる。東電はこれまで処理水を原発の敷地内のタンクにため続けてきた。タンクは3月時点で1061基に上る。50年ごろの完了をめざす廃炉作業の山場は事故で溶けた燃料が固まったデブリの取り出しだ。デブリは放射線量が高い。作業員の安全を確保しながら、放射性物質を外に漏らさない厳重なデブリの保管が求められる。東電の計画では一時保管施設に6万平方メートルの土地が必要となる。政府と東電は海洋放出でタンクを減らしてスペースを確保し、廃炉を円滑に進める方針だ。海洋放出は長期にわたるためタンクはすぐ減らず、廃炉に支障が出る可能性は残る。東電の小早川智明社長は13日、記者団に「タンクで敷き詰められた敷地でこれからより厳しいデブリの取り出しなどを行っていく」と強調した。政府と東電は周辺海域の海水のモニタリングを強化する。福島県と近隣県の農産品の販路を拡大する支援にも取り組む。基本方針には風評被害が発生した際に東電が「被害の実態に見合った必要十分な賠償を迅速かつ適切に実施する」とも記した。風評被害対策などを進めるための新たな関係閣僚会議も近く開く。それでも原発事故とその後の汚染水の漏出など度重なる不祥事を受け、地元関係者らの不信感は強い。安全性の確保を政府と東電が慎重に確認し、関係者の理解を得ながら放出していく姿勢が求められる。

*5-2-2:https://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-1304270.html (琉球新報社説 2021年4月14日) 原発処理水放出決定 最善の選択と言えない
 東京電力福島第1原発で増え続ける処理水の処分に関し、政府は海洋放出の方針を正式決定した。放射性物質の海洋放出によって海の環境や人体に与える影響はないと断言できるのか。漁業など風評被害はどのように払拭(ふっしょく)するのか。中国、韓国、台湾など近隣諸国は決定を非難している。国際社会の理解は得られるのか。これらの疑問に政府は答えているとは言い難い。海洋放出は実行可能な最善の選択とは言えず、政府決定は容認できない。原子力発電推進という国策の結果、事故を招いた。事故のつけを国民に押し付けてはならない。これまで社説で主張してきたように、トリチウム分離など放射性物質を取り除く技術が開発されるまで地上保管を選択すべきだ。第1原発では溶融核燃料(デブリ)を冷やすための注水が、建屋に流入する地下水などと混じり汚染水が発生する。東電は浄化した処理水を敷地内のタンクに保管している。来年秋以降、タンクの容量が満杯になるとみている。なぜ他に増設場所を確保する努力をしないのか。処理水には技術的に除去できない放射性物質トリチウムが含まれており、海水で十分に薄めた上で海に流すと説明している。しかし、濃度を下げたとしても、トリチウムの総量は莫大な量に上るはずだ。全量放出すれば海を汚染しないと断言できないだろう。浄化後の水にトリチウム以外の放射性物質が除去しきれず残留し、一部は排水の法令基準値を上回っていたことも判明している。トリチウム以外の放射性物質の総量はどれだけなのか。トリチウム水の取り扱いを巡っては、経済産業省の専門家会合が、薄めて海洋放出する方法が、より短期間に低コストで処分できるとの内容を盛り込んだ報告書をまとめた。コストを優先し、海洋放出ありきだったと言われても仕方ない。なぜ他の実現可能な選択肢を検討しないのか。手続きも不十分だ。放出について東電は「関係者の合意を得ながら行う」と明言していたはずだ。国も関係者の理解なしにいかなる処分も行わないと説明していた。全国漁業協同組合連合会(全漁連)は放出に反対し、抗議声明を発表した。到底理解を得たとは言えない。福島や隣県の漁業関係者が「原発事故の風評に悩まされてきた10年間に積み重ねてきた努力が無駄になる」と憤るのは無理もない。国連の人権専門家は3月、処理水は環境と人権に大きな危険を及ぼすため「太平洋に放出するという決定は容認できる解決策ではない」との声明を発表した。海洋放出は子どもたちの将来的な健康リスクを高めるなど、人権侵害に当たると警告している。中国や韓国、台湾は相次いで批判している。政府は国際社会の警告を真摯(しんし)に受け止めなければならない。

*5-2-3:http://tabemono.info/report/former/genpatu5.html (NPO法人食品と暮らしの安全基金) トリチウム(三重水素)、浄化水を放出するな!水蒸気も怖い!
●基準以下のトリチウム
 「体内に取り込まれたトリチウムが遺伝子の構成元素になると、放射線を出してトリチウムがヘリウムになったとき、遺伝子DNA そのものが壊れるのです」。槌田敦先生にインタビュー(2012年3月号8ページ)しているとき、こう伺いました。トリチウムは、先月号、先々月号でお知らせしたより、もっと怖い放射能でした。トリチウムは三重水素ですが、たいていは水として存在します。口や鼻、皮膚から吸収されると、 ほとんどが血液中に取り込まれ、体内のどこにでも運ばれ、水や水素として体の構成要素になります。 このトリチウムは、基準が非常に緩いので、世界中の原発から放出され続けています。まれにしか検査されませんが、検出されても「基準以下」と報道されることがほとんど。処理して取り除くことができないため、問題にしても仕方ないという雰囲気なのです。原発推進を掲げた新聞では、トリチウムの危険性が取り上げられることはありません。反原発派もあまり問題にしていません。
●コップの水はEU 水質基準の26 倍
 それでも原発事故後、大きな話題にかかわったことがあります。10月31日、内閣府の園田康博政務官が、5、6号機から出た汚染水の純水をコップに入れて、 報道陣の前で飲み干した水に含まれていた放射能がトリチウムです。原発事故後、伐採した樹木が自然発火することを予防するために散布されていた水の危険性が問題になりました。「東京電力が『飲んでも大丈夫』って言ってるんですから、コップ1杯ぐらい、どうでしょう」と、 記者会見でフリージャーナリストの寺澤有さんが質問。会見後、寺澤さんは「絶対飲まないほうがいいです」と園田政務官に言ったのですが、 「飲めるレベルの水であることを言いたかった」と飲んでしまったのです。その前に公表されていた東電の資料を見ると、ヨウ素131、セシウム134、セシウム137は「不検出」で、 トリチウムは1リットル当たり2,600ベクレル(Bq)とありました。下欄に、WHO 基準が10,000Bq/リットルとあったので、「飲めるレベル」と思ったのでしょう。しかし、アメリカではトリチウムが原発周辺でガンを起こして問題になっていることを、 月刊誌「食品と暮らしの安全」の2011年8月号「アメリカの市民生活」で取り上げています。アメリカの飲用水のトリチウム基準は2万ピコキュリー(740ベクレル)/ リットル。コップの水は飲用水基準の3.5 倍だったのです。EUの水質基準はもっと厳しく、100Bq/ リットルなので、コップの水は26 倍になります。知っていたら、この水は飲めないでしょう。やはり東電にだまされていたわけで、園田政務官が白血病にかからないことを祈ります。
●蒸発濃縮装置から水もれ
 12月8日、10万トンのトリチウム汚染水を海洋に放出することを東電が検討していることが判明。 全漁連(全国漁業協同組合連合会)と鹿野農林水産大臣が反対したので、東電はいったん海洋放出案をひっこめました。 その直前の12 月3日、汚染水処理施設の蒸発濃縮装置から水漏れが発覚しましたが、 この装置から蒸発させているのがトリチウムを含む水蒸気でした。3.11 以降に原発が次々と爆発しましたが、水素爆発の「水素」には多量のトリチウムが含まれていました。ただ、当時は半減期の短いヨウ素が危険な放射能の主役だったので、トリチウムの危険性が報道されなかったのは仕方ありません。
●DNA の中に入ると危険
 トリチウムは、弱いベータ線を出します。このベータ線は細胞内では1ミクロン(1000分の1mm)ぐらいしか飛ばないので、 血液として全身をめぐっている間は、遺伝子DNA をほとんど攻撃しません。ところが、トリチウムが細胞に取り込まれ、 さらに核の中に入るとDNA までの距離が近くなるので、 ここからは、放射性セシウムや放射性ストロンチウムと同じようにDNA を攻撃するようになります。トリチウムには、この先があります。化学的性質が水素と同じなので、水素と入れ替わることができるのです。DNAの構造には、水素がたくさん入っていて、トリチウムがここに入っても、DNAは正常に作用します。問題は、放射線を出したときで、トリチウムはヘリウムに変わります。そうなると、放射線で遺伝子を傷つけるのに加えて、ヘリウムに変わった部分のDNA が壊れて、遺伝子が「故障」することになります。この故障がリスクに加わるので、トリチウムはガン発生確率が高くなるのです。遺伝子が故障した細胞は生き残りやすいので、ガン発生率が高いとも考えています。そのことを裏付けるような訴訟がアメリカで起きています。シカゴ郊外で100 人以上の 赤ちゃんや子どもがガンにかかった(先月号P6)のは、事故を起こした原発から放射能が出たことが原因ではありません。正常に運転されている原発から出ているトリチウムが、飲み水を汚染し、放射能の影響を受けやすい赤ちゃんや子どもにガンを発生させたとして、訴訟が起きているのです。
●原子力ムラがNHKに抗議
 放射能の国際基準はいい加減に作られているという当事者の証言と、 シカゴ郊外で子どもにガンが多発している事実を放送した 『追跡!真相ファイル 低線量被ばく 揺らぐ国際基準』(NHK、2011年12月28日放送)に対して、 原発推進を訴える3団体のメンバーがNHKに抗議文を送っていたことを、2月1日に東京新聞が明らかにしました。事故までは「原発事故は起きない」と抗議活動をしていた団体が、少なく見ても5000人をガンで殺すような大事故が起きたにもかかわらず、1年もたたないうちに原発利権を守る抗議活動を再開したわけです。私たちは、この番組を応援する必要があります。
●福島県民が危ない
 爆発した福島原発は、炉の下に落ちた核燃料を水を入れて冷やしているので、トリチウムの大量生成装置になっています。トリチウムの検査データを調べると、2011年9月に2号機のサブドレンの水から2,400Bq/リットル検出されていました。取水口内の海水では、2011年9月に470Bq/ リットル、2011年10月に920Bq/リットルのトリチウムが検出されていましたが、 これは、海水で薄まった値と考えられます。これ以外のデータが見つからないので、トリチウムの検査結果はまだすべて隠されたままです。原発の汚染水を浄化しても、トリチウムだけはまったく除去することができません。それは最初からわかっていたので、問題にならないようにトリチウムの基準を緩くして、 水蒸気として大気中に放出したり、海に流してきたのです。今でもトリチウムは、毎日、原発から水蒸気として放出され続けています。 それに加えて、「いつまでもタンクを増設することはできないでしょう」と言って、 東電は近いうちに10 万トンを超えるトリチウム汚染水を海に流そうとしています。 これを止めないと、福島県と周辺の県民に被害者が出ます。トリチウム汚染水は、海水より軽いので、海面から蒸発し、それが雨になって陸にも落ちてくるからです。すでにトリチウム汚染は広がっていると考えられますが、それがさらに広範囲になるので、原発の浄化水の放出を止めるように世論を形成していく必要があるのです。水道水にトリチウムが含まれるようになると、白血病や脳腫瘍が多発します。 トリチウムは、水素と化学的性質がほぼ同じですが、まったく同じではなくて、脳の脂肪組織に蓄積しやすいことが判明しています。 だから、トリチウムがつくるガンでは、脳腫瘍がもっとも多いようです。 トリチウムによる被害が出ないようにするには、タンクを造り続けるしかありません。トリチウムの半減期は12.3 年なので、120年ほど貯蔵すれば、トリチウムは1000 分の1になって汚染水を放出できるようになります。

*5-2-4:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/661564 (佐賀新聞 2021.4.15) 韓国で処理水放出への批判強まる
 日本政府による東京電力福島第1原発処理水の海洋放出決定を受け、韓国で日本に批判的な世論が強まっている。一方、15日付の韓国紙は韓国政府の作業部会が昨年「科学的に問題ない」との趣旨の報告書をまとめていたと報道。文在寅大統領の強硬姿勢とのちぐはぐさを非難する声も上がっている。大手紙の中央日報によると、海洋水産省など政府省庁による作業部会は昨年10月の報告書で、放出された処理水が韓国国民と環境に及ぼす影響を分析。数年後に韓国周辺海域に到達しても「海流に乗って移動しながら拡散・希釈され、有意な影響はない」と判断した。処理水に含まれる放射性物質トリチウムについても「生体に濃縮・蓄積されにくく、水産物摂取などによる被ばくの可能性は非常に低い」とした。韓国首相室は「一部専門家の意見」だったと釈明した。最大野党「国民の力」の報道官は「作業部会は問題ないとの趣旨の報告書を出す一方、大統領府は(国際海洋法裁判所に)提訴するというなら国民は誰の言葉を信じればいいのか」と批判した。ソウルの日本大使館前では、15日も市民団体が放出に反対する集会を開催した。日本の方針を支持している米国や国際原子力機関(IAEA)への批判の声も上がっている。

| 経済・雇用::2021.4~ | 10:25 PM | comments (x) | trackback (x) |
2021.3.10~17 平等な女性登用の効果 (2021年3月18、19、20、21日追加)
  
  日本が契約済のワクチン   ワクチン開発状況  国内使用薬剤  開発中薬剤 

(図の説明:1番左の図のように、日本が契約済みのワクチンは米国製と英国製だけで、日本製はない。また、承認済や開発中のワクチンも、左から2番目の図のように、アジアでは中国のみが承認済で、日本は下の方におり、これを慎重と言うのかは大いに疑問だ。さらに、治療薬は、右から2番目の図のようになっており、日本国内で承認されているのは上の2つだけだ。なお、効きそうな中和抗体も、1番右の図のように、米国のみで緊急使用許可が出ており、日本政府《特に厚労省》は新型コロナの治療や予防に積極的ではないようだ)

(1)政治に女性登用を増やすと、何が変わるのか
1)日本人男性を優遇するジェンダーの存在
 沖縄県と同県内の全11市へのアンケート調査をした結果、*1-1-1のように、全自治体で総務・企画に関する部署には男性が男性が67%を占め、介護・子育て・保健衛生などの福祉・医療などの部署に女性が59%配置され、管理職になると総務・企画部署の女性比率は12%とさらに低くなり、福祉医療系は34%だったそうだ。

 その背景は、「男性は企画立案が得意、女性は家事や育児に適する」というジェンダーに基づく固定観念が反映されており、行政の中でも固定化されたジェンダーバイアス(性に基づく差別や偏見)で配置先を決めることが当たり前のように行われているということが明らかになり、沖縄県内41市町村の管理職に占める女性割合は14%と全国平均の15%を下回るそうだが、これは、沖縄県に限らず地方に特に多いことだろう。

 さらに、採用でも全自治体の職員に占める男女比率は6対4と女性が少なく、非正規職員は男性が約24%で女性は約76%、配属も女性は福祉医療系に偏っており、男性にはさまざまなポジションや選択肢が用意されているのに、女性には男性より不利で限られた選択肢しか与えられていない。しかし、これが女性の方が大きな割合で都市や外国に移住する原因となっているのだ。

 具体例としては、*1-1-2のように、行政や企業のトップに上り詰めた横浜市の林文子市長が、自らの人生を「『忍』の一字で生きてきた」「1965年当時は、女性が意思決定することを誰も考えていなかった」「ほんとに日本は変わらない。企業の役員レベルに(女性が)入れるかというと、いま立ち止まっている」等と述べておられるが、忍の一字で生きたい人はいない。

 しかし、今でも、*1-1-3のように、日本経済新聞の外部筆者コラムに「女性が主婦業を徹底して追求した方がいい」などとする記述があり、男女共学の教育システムと男女雇用機会均等法の下であるにもかかわらず、「女性は、主婦業以外はにわか知識だ」などと言われることがあるわけだが、こういうことを言われる理由は重要なポイントだ。

 ちなみに、私自身は、小学生だった1965年頃から、女性差別やジェンダーに基づく固定観念は受け入れ難かったため、かなり勉強して仕事でも実績を作ることにより、ジェンダーによる固定観念は覆してきたつもりだが、それでも言って受け入れられる範囲は時代によって異なり、先入観による女性差別も受けたことがある。それでも男女平等を前に進め続け、現在は思っていることを言っても理解する人の方が多くなったという状況なのである。

 なお、2021年3月8日の国際女性デーを前に、*1-1-4のように、電通総研が男女平等やジェンダーに関する意識調査を行ったところ、「男性の方が優遇されている」と答えた女性は計75・0%に上ったのに対し、「男性の方が優遇されている」と答えた男性は54・1%で、性別によって経験に差があり、男性と女性で見えている景色に違いがあると言う結果だったそうだ。これは、私の実感とも合っているが、「女性首相の誕生は、27.9年後」というのは、そこまで遅くはないと思う。

2)政治に女性登用を増やすと、外国人(=マイノリティー)への人権侵害も減るだろう
 出生数が多く十分な雇用が準備できなかったため、日本人男性を優遇して女性を雇用から排除するジェンダーは、団塊の世代でその前の世代より大きくなった。そのため、企業戦士の父とそれを支える母の下で育った50代の団塊ジュニア世代は、私たちの世代よりむしろ性的役割分担意識が大きいのである。

 つまり、十分な雇用を準備できず、日本人男性を優遇して雇用するために使われたのが戦後の女性差別なのだが、これが生産年齢人口割合が減っている今でも続いているのだ。

 そして、帰国すれば身に危険が及ぶ難民や亡命者を国外退去処分や送還処分にすることは人道に反しているのに、難民や亡命者はなかなか受け入れないという*1-2-1のような外国人差別もある。また、日本に家族のいる人が帰国を拒むのも当然であるため、入管難民法は同じ人権を持つ人間に対する適切なものに改正すべきであるのに、これらのマイノリティーの人の痛みがわからないような行動は、自分が優遇されるのが当然だという環境の中で育った日本人男性の特性ではないかと思うわけである。

3)ワクチンも科学技術の賜物なのだが・・
 河野規制改革担当相は、*1-2-2のように、「欧州連合(EU)が承認すれば、ファイザー製ワクチンを高齢者全員に2回打てる分だけ6月末までに各自治体に供給できる」とされたが、6月末に高齢者分だけでは7月21日に始まる東京オリンピックに間に合わない。

 遅くなる理由は、EUはファイザーとドイツのビオンテックが共同開発したワクチンやアメリカのモデルナ製ワクチン、イギリスのアストラゼネカ製ワクチンを契約していたが、いずれも供給が遅れ、EUがEU製造のワクチンをEUの承認なしにEU域外に持ち出せない輸出規制をかけたからだそうだ。

 そのため、EUのハンガリーは中国のシノファームが開発した新型コロナワクチンを2月16日に入手して接種し始め、ロシアのスプートニクVワクチンの購入にも同意しており、スペインもロシア製ワクチンを拒まないとしている。

 英医学誌ランセットは、*1-2-3のように、ロシアが2020年8月に承認した新型コロナワクチン「スプートニクV」について臨床試験の最終段階で91.6%の効果が確認されたとする論文を2021年2月2日に発表し、「2020年9~11月に治験に参加した約2万人のワクチン投与後の発症数等を調べて、ワクチンが原因とみられる重大な副作用は報告されず、60歳以上でも有効性は変わらなかった」「発症した場合も重症化しなかった」としており、EUの欧州医薬品庁(EMA)への承認申請も進めるそうだ。

 日本は、残念なことに、*2-2-1・*2-2-2のように、科学技術立国をうたいながら新型コロナワクチンの開発・製造・接種でとても先進国とは言えない状況になっている。その理由は、日本では遅いことが慎重でよいことであるかのような世論形成が行われるからだが、製法も新技術を使っている上、遅いことと正確であることとは全く異なる。さらに、日本は自ら実用化したワクチンはないのに、ロシア製などのワクチンを小馬鹿にした報道がしばしばあり、製造した国や人によってワクチンの良し悪しを評価するのではなく科学的治験に基づいて評価するのが、科学を重視する国の基本的姿勢である。

(2)日本における科学の遅れは、何故起こるのか
1)東北の復興における土地利用計画から
 *2-1-1で述べられているように、首都直下地震や南海トラフ巨大地震の襲来が確実視され、新型コロナ新規感染者数は人口密度に比例しており、日本における過度な一極集中は致命的弱点を抱えていることが明らかなのに、わが国の国土政策は現状維持圧力が大きい。

 災害防止の視点からは、過去に起こった災害の理由を直視して国土計画を作らなければならないが、*2-1-2のように、東日本大震災後に高台等に集団移転する住民から市町村が買い取った跡地の少なくとも27%に当たる計568haは用途が決まっていないとのことである。しかし、東日本大震災は、街づくりを考え直す千載一遇のチャンスでもあった。

 にもかかわらず、「同事業で買い取りできるのは主に宅地で企業の所有地などは対象外であり、まとまった土地の確保がしづらかった」「危険区域からの移転を第一にした制度で、跡地利用のことは考えられていなかった」などという間の抜けたことを言い、買い取った土地を点在させて一体的利用を困難にしたまま、自治体が空き地管理の維持費支出を余儀なくされているというのは、10年もかけた復興に計画性もフィードバックもなかったということにほかならない。

 被災から10年間も大規模な復興工事をし続けているのに、土地を買い取りながら農地・林地・工業地帯などに区分けしていなかったのがむしろ不思議なくらいで、区分けしなければそれにあった防災設備を造れない筈だ。そのため、いくらかけてどういう復興を行い、どういう防災設備を作ったのかに関する内訳を、復興税を支払った国民としては聞きたいし、開示できる筈だ。この10年間、何も考えずに震災復興も費用対効果の薄い公共工事にしてしまったのでは、今後10年間復興税を支払っても同じだろう。なお、(女性の)私なら(料理と同様)出来上がりを想定しながら仕事をするため、そういう無計画で無駄なことはしないのである。

2)フクイチ原発事故の後始末と原発の廃炉から

     
 事故前のフクイチ  津波来襲   爆発直後の原発   除染土   汚染水のタンク   

(図の説明:1番左の図の事故前のフクイチは、土台を高くすることもできたのにわざわざ削って低くしていたそうで、これが最初の防災意識の欠如だ。また、左から2番目の図のように、津波が襲った時に予備電源も水没するような場所に置いていたのが2番目の防災意識の欠如だ。これらの積み重ねによって、中央の図のように、激しい爆発事故が起きて周囲を汚染したため、右から2番目の図のように、土をはぎ取る除染をしたが、これも一部だけ不完全な形で行っており、さらに除染土をフレコンバッグに入れて積んだままにしているため効果が著しく低い。さらに、1番右の図のように、デブリを冷やした汚染水を浄化した後にタンクに溜めているそうだが、トリチウム以外の放射性物質も残っており、トリチウムは除去できないとして、そのまま海洋放出すると言っているのである。つまり、リスクを認識して対応することができないのだ)

 フクイチ事故では、*2-1-3のように、爆発で原子炉建屋の上半分が吹き飛んだが、炉心溶融は長いこと認めず、また、溶融して燃料デブリは落下したままだという報道を、未だに行っている。しかし、①3号機建屋上部のプール内にあった使用済燃料の取り出しが、10年後の2021年2月にやっと終わり ②原子炉内の状態は、今でもわからないことが多く ③デブリの取り出しは、2022年に開始予定で ④機器の不具合や管理の不徹底が頻発して、3号機の地震計が故障したまま放置され2021年2月の強い地震を測れず ⑤流入する地下水等から大半の放射性物質を除去した処理水に放射性トリチウムが残っており、タンクに保管しているのが作業の大きな障害となる可能性がある 等と記載されている。

 そして、①③は、残っていた使用済燃料の取り出しを10年後にやっと終えたということであり、安全第一は重要だが、ここで考えられているのは作業員の安全だけであって地域住民や国民の安全ではない。何故なら、地域住民や国民の安全を重視すれば、速やかに処理することが最優先になるからだ。

 ②は、火星の地形さえわかる時代に、目と鼻の先にある燃料デブリの状況がわからないわけがなく、わかっても言えない状態なのだろう。さらに、④は論外で、地震計を設置していることの意味すら理解していないと推測される。

 また、⑤については、凍土壁を作って地下水が流入するのを防いだ筈なので、その工事にいくらかかって、効果がどうだったかも明らかにすべきだ。このような国民の安全をかけた緊急事態に、まさか費用対効果の低い遊びをしていたのではあるまい。

 それでも、原発汚染水のタンクが1000基を超える状態になったのであれば、チェルノブイリのように石棺にするしかなかったのではないか、日本の対応が間違っていたのではないかを検証すべきだ。また、デブリに触れた汚染水は、処理後もトリチウム以外の放射性物質を含んでいたことが長く隠されていたので、フクイチの事故処理が地域住民や国民の安全を重視して行われていたとは考えにくい。

 なお、経産省の委員会がどういう結論を出そうと、トリチウムだけしか含まない状況でも、処理水の海洋放出が水産物に対して安全とは言えない。何故なら、「希釈して基準以下にすれば安全だ」という発想をしており、安全基準を下回りさえすればよく、総量はどうでもよいと考えているからだ。わかりやすく例えれば、血圧の高い人が味噌汁が辛すぎる場合に、それを薄めて全部飲むのと同じで、その上、他の料理にも塩分が含まれすぎていれば、脳卒中になる確率が上がるのと同じだ。

 そして、これを「風評被害(事実でない噂による被害)」と強弁するのなら、「総量がどれだけ多くても希釈して基準以下にすれば害がない」ということを科学的に証明すべきだが、絶対にできないと思う。また、農水産物などの食品についても、基準値以下だから単純に安全とは言えず、多くの食品に放射性物質が含まれていれば総量が多くなるため安全ではない。そして、科学的証明もなく百万回無害だと言っても無意味なのである。

 これまでの対応を見ると、すべて、*2-1-4にも書かれているように、「処理を先送りし続けるわけにはいかない」という「仕方がない」の論理と「福島の人が可哀そう」という上辺だけの優しさ(感情論)で構成されており、地域住民や国民の安全性を科学的に立証してはいない。そのため、汚染水の海洋放出も単に漁業者に補償すればすむという問題ではなく、為政者やメディアの言うことを信じる方がむしろ愚かだということになっている。

 なお、「フクイチの廃炉は半世紀先を見据えて世界有数の廃炉技術拠点として生かす発想が必要だ」とも書かれているが、日本の対応はチェルノブイリと比較しても巨額の税金を使った割には「安全だ」と強弁して国民の人権を侵害するものでしかないため、よい見本にはならない。

 ただ、*2-1-5のように、東洋アルミと近畿大学が、「アルミニウム粉末焼結多孔質フィルター」を使って汚染水からトリチウムを60℃・低真空で分離する技術を開発した。そのため、汚染物質を外部に捨てない原則を守り、東電と政府が責任を持って汚染水からトリチウムや他の放射性物質を完全に取り除く処理を行えば、処理後の汚染水は海洋放出が可能だ。従って、放射性物質を完全に取り除く処理をした水をプールに溜め、そこで魚を飼ってしばしば魚の放射線量を計測しながら、そのプールの水を海に放出すればよいだろう。

3)新型コロナの治療薬・ワクチンの開発から
 日本は労働生産性を上げるためには付加価値の高い産業を起こしていかなければならず、そのためにも科学技術立国を目指しているのだが、*2-2-1のように、日本での新型コロナワクチンの開発は世界に大きく出遅れて実用化のメドも遠い。

 そして、治療薬もワクチンも人間の身体に入れるものであるため、「有事だから品質が悪くてもよい」というわけではないが、先進国は新型コロナの感染予防に役立つスピードで治療薬を承認し、ワクチンも開発・実用化させた。一方、日本は、100年前のスペイン風邪の時代と同じ対策しか行えなかったが、これは、著しく単純化したルールを護ることを自己目的化した融通の効かない人たちの責任である。

 実際には、日本の製薬会社も、新薬の開発・治験は日本ではなく米国で行い、そこで流通させてから日本に逆輸入することが多い。その理由は、日本は、新しいものに抵抗する国で、治験は行いにくく、新薬の承認にも長い時間がかかるため、多額の投資を要する新薬開発を国内で行うと費用対効果が悪すぎるからである。

 そのため、新しいものを評価して実用化しやすい国にしなければ、外国に追随することしかできず、付加価値の高い仕事はできない。まして、厚労省のように、旧態依然として科学の進歩についていっていないのは論外だが、日本は下水道整備も遅れており、未だに整備されていない地域も多いし、古くなりすぎていて人口増加に間に合っていない東京のような都市もある。

 ただし、子宮頸癌は、ワクチン以外にも予防手段があるため安全性の方がずっと重要になるが、新型コロナは誰もがかかりやすくワクチン以外に予防手段がない感染症はワクチンの重要性が高まる。そのため、その違いのわからない人が判断するのは困ったものである。

 なお、記事は、前例踏襲の限界として「無謬性の原則」を挙げているが、科学の進歩や環境変化を認識できずに、前例を踏襲すること自体が大失敗である。

 *2-2-2のように、新型コロナワクチンは人類が使っていなかった新技術を使って素早くできたが、私も、不活化ワクチンではなく、mRNAをチンパンジーのアデノウイルスに組み込んだワクチンを免疫力の弱い人に接種するとどうなるかわからないため不安だ。しかし、体力に自信のある人なら大丈夫だろう。

 が、新型コロナのワクチンを毎年7000億円もかけて海外から買い続けるようでは先進国とは言えず、*2-2-3のように、大阪市内にある治験専門の病院で塩野義製薬製ワクチンの治験が行われているものの、流行が収まってから完成するのでは意味がない。

 このような中、オンライン形式の総会で、*2-2-4のように、IOCのトーマス・バッハ会長が「2021年の東京オリ・パラと2022年の北京冬季オリ・パラ参加者のために、中国五輪委員会の申し出により新型コロナの中国製ワクチンをIOCが購入する」と発表された。日本はワクチンもできず、海外からの観客を受け入れない決定をするような情けない有様なので、中国製ワクチンを有難く使わせていただくしかないだろう。

(3)観光の高度化へ
1)医療ツーリズム
 このように、さまざまな理由で工場の海外移転が続いて製造業が振るわない中、観光業は海外移転のできない産業であり、期待したいところだった。そのため、*3-2のように、既に日本にある高度医療サービスと観光を結び付け、観光の付加価値を上げる「医療ツーリズム」を私が衆議院議員時代に提唱して始め、中国等のアジア圏から客が来始めていた。

 高齢化と医療の充実により、日本が先行しているのは成人病(癌、心疾患、脳血管疾患)の治療・リハビリ・早期発見のための人間ドッグで、成長産業として政府も後押ししていた筈だった。しかし、馬鹿なことばかり言っている間に、他国の医療も進歩したのである。そして、今では、癌治療に副作用ばかり多くて生存率の低い化学療法を標準治療とするなど、率先して先進医療を採用して人の命を助けようとしなかった厚労省の対応によって、日本の医療は世界の中でも高度とは言えなくなってきているのだ。

 この状況は、新型コロナで白日の下に晒された。自国の高度医療を武器に「医療ツーリズム」を行おうとしている国なら、乗客の中に新型コロナ感染者がいれば入港を促して完全なケアを行うのが当然であって、患者の存在を理由に入港を拒否するなどという選択肢はない。さらに、世界が注視している中でのダイヤモンドプリンセス号への対応も、全力を尽くしてやれることをすべてやったのではなく、杜撰きわまりない失敗続きだったのである。

 その上、*3-1のように、世界は、①ウイルスの18万3000近い遺伝子配列を分析して ②ウイルスの自然な進化(=変異の連続)をつきとめ ③進化を通じた感染力の変化 を分析する時代になっているのに、日本では、イ)PCR検査すらまともに行えず ロ)病床数が足りないからとして病院にアクセスできない患者が自宅で亡くなるケースまで出し ハ)ワクチンや治療薬も作れず 二)変異株の存在も外国から言われなければわからず ホ)ウイルスがいる限り場所を問わずに起こるのに「変異株はどこの国由来か」ばかりを問題にしている という有様だ。

 これは、日本にある高度医療サービスと観光を結び付けるどころか、日本人が他の医療先進国に治療に行かなければならないくらいの深刻な問題で、早急な原因究明と解決が必要である。

2)観光ルートへの災害と復興史の織り込み
イ)ふるさとに帰れる人、帰れない人、新しく来る人
 東日本大震災は、*4-1のように、死者・行方不明者・震災関連死者が計約2万2千人に上る大惨事だったが、これに東京電力福島第1原発(以下、“フクイチ”)事故が加わり、16万人以上が避難を余儀なくされ、今も避難中の人が約4万1千人いる。

 日本政府は、原発事故の賠償や除染費用が21.5兆円にも上るとしており、除染作業は2051年まで完了しない可能性もあるそうだ(https://www.bbc.com/japanese/video-56356552 参照)。しかし、現在は帰還困難区域でなくなった場所も、避難指示解除基準が放射線管理区域並みに高い年間20mSV以下であるため帰還できない人も多く、この人たちは“自主避難者”として自己負担になっている。

 仮に、フクイチ事故がなければ、道路・防潮堤・土地のかさ上げをすれば、もっと早く現在のニーズに沿った街づくりを行い、前より住みやすい街を作ることができただろう。そのため、37兆円(うち被災者支援は2.3兆円。生活再建支援は3千億円余り)の復興予算を投入したというのは、何に、いくら使ったかについて、国民への正確な報告を行って反省材料にすべきである。

 また、3県42市町村の人口減少率は全国の3.5倍のペースで、街づくりの停滞や産業空洞化に直面しているとのことだが、廃炉の見通しも立たないフクイチ周辺は仕方がないとしても、そこから距離のある地域でも企業誘致・帰還・移住が進まないのは何故だろうか? 国民全体への所得税の2.1%分上乗せは2037年まで続くそうなので、予算が正しく被災地の再建に繋がっているか否かを監視するのは国民の責務である。

 なお、*4-1・*4-2のように、フクイチ事故は、日本における原発の危険性とこれまでの安全神話を白日の下に晒した。電力会社と経産省が原発の構造に疎く、事故時に無力であることも明らかになった。そのため、日本では、エネルギーのあらゆる視点から、脱原発と再エネへの移行が求められるのである。

 嬉しいのは、東日本大震災の津波で壊滅的な被害を受けた仙台市東部に、*4-3のように、災害復旧と区画整理を一体的に進める国直轄事業によって農地の再生と担い手への集約が破格の規模とスピードで実現し、大区画化による大型機械の導入で作業が効率化され、受委託を含む農地集約も進み、コメや野菜を組み合わせた複合経営に取り組む農業法人も相次いで発足して、法人への就職が若者の新規就農の窓口として機能し始め、農業に新たな活力を吹き込む担い手も現れたことである。

ロ)災害と復興史として伝承すべきこと

  
                         2021.3.14日経新聞
(図の説明:1番左の図のように、日本は、ユーラシアプレート・太平洋プレート・フィリピン海プレートが押し合い、隆起・火山噴火・地震・津波を繰り返しながらできた陸地で、左から2番目の図のように、すぐ近くに海溝や海底山脈があり、地震多発地帯であることが、東日本大震災によって明らかになった。そして、これらの現象と海底地形・GPSによる測定値などを組み合わせれば、大陸移動説を目に見える形で証明できそうである。また、右から2番目の図のように、次の巨大地震や津波も予測できるようになり、海底火山が多いため、1番右の図のように、日本の排他的経済水域にはレアアース等の地下資源も豊富だということがわかってきている)

 「伝承」するにあたっては、綺麗事を並べてもすぐに実態が見破られ、リピーターは来ない。日本だけでなく世界の関心を集めるには、知る価値のある伝承にすべく、21世紀に起こったが故に残された迫力ある映像やそれが起こった原因に関する深い考察が必要だ。

 そして、東日本大震災をきっかけとしてわかったことは、上の図のように、日本はユーラシアプレート・太平洋プレート・フィリピン海プレートが押し合って火山噴火・隆起・地震・津波などを繰り返しながらできた陸地で、次の巨大地震や津波も予測できるようになり始め、日本の排他的経済水域内には海底火山が多いので、レアアースやメタンハイドレートなどの地下資源が豊富だということだ(海洋基本法:https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_housei.nsf/html/housei/16620070427033.htm 参照)。

 そのため、伝承館に残してもらいたいものは、日本で火山の噴火・地震・津波が周期的に起こった歴史的事実(歴史書・神社の記録・地層などから組織的に集める)とそのメカニズムに関する科学的な説明であり、それによって、*4-5のような、次の大地震に関する想定も信憑性を持つ。さらに、海底の地形も含めてこれらの事実をしっかり解析すれば、大陸移動説や地球の営みまで証明され、ノーベル賞級の研究になることは確実だ。また、21世紀ならではの映像と記録のものすごさもあり、世界の観光客や研究者が注目すると思われる。

 しかし、*4-4には、「黒い湖」として枯れ田に置かれた黒いフレコンバッグの山のことが書かれており、10年間も仮置き場としてフレコンバッグを積んだままにしていること、雨風に晒され続けてフレコンバッグが傷み、汚染水や内容物が外部へ漏れそうなことが書かれている。そのため、3兆円以上もかけて、何のために除染作業をしたのか疑問に思う。

 私は、ずっと前にもこのブログに記載したのだが、仮置きや中間貯蔵を行って意味のないことに多額の費用を使うのではなく、直ちに最終処分法を決めて最終処分するのがよいと考える。それには、放射線量の高い帰還困難区域にコンクリートで除染土を入れるプールを作り、そこに除染土が入ったフレコンバッグを集めてかさ上げとし、コンクリートの蓋を被せて密閉し、その上に汚染されていない土を盛って自然公園や災害記録館などを作るのが唯一の解だと思う。

 「東日本大震災・原子力災害伝承館(双葉町)」は、フクイチから北へ3キロほど離れたところに建てられたそうだが、この伝承館は、東日本大震災・原発事故・復興の真実を21世紀らしい映像と考察を持って地元住民の率直な解説とともに開示して欲しい。そして、原発事故から再エネへの移行も含む壮大な展示をして初めて、大きな付加価値を生むと考える。

3)観光ルートへの歴史の織り込み
イ)弥生時代(約12,000年前~250年頃)の遺跡


吉野ヶ里の位置 付近の路線図  吉野ヶ里復元図     復元された吉野ヶ里遺跡

(図の説明:1番左の図に、吉野ヶ里遺跡の場所が記載されているが、ここは佐賀県鳥栖市・福岡県太宰府市・福岡県久留米市に近い。左から2番目の図に、近くの鉄道路線が書かれており、鹿児島本線の二日市駅の近くに太宰府がある。また、筑肥線は、福岡市営地下鉄との直通運転があり、福岡駅・福岡空港に直結しており、筑肥線の駅名には、日本語かなと思われるものもある。中央の図が、吉野ヶ里遺跡の復元図・右の2つが復元された吉野ヶ里遺跡で環濠集落になっている。そして、弥生時代の食事も結構グルメだ)

 「博多⇔姪浜」間は福岡市営地下鉄だが、上の左から2番目の図の「姪浜⇔下山門⇔周船寺⇔波多江⇔筑前前原⇔加布里⇔筑前深江⇔唐津⇔伊万里」は、*5-1に記載されているJR九州のJR筑肥線で相互乗り入れをしている。そして、「乗降客が少ない」という理由で、JR筑肥線は、現在、単線・ディーゼルカー・15~60分に一本 である。

 しかし、*5-2の①にあたる地域は、近畿ではなく(魏志倭人伝の方角を変更して、この倭国を近畿に誘致すべきではない)、九州北部のこの地域だということだ。②に、倭の北岸として帯方郡から倭に至る道筋に書かれている狗邪韓国は朝鮮半島にある釜山だ。

 その後、③で始めて海を渡って対馬に至り、④でまた海を渡って壱岐に着く。そして、⑤でさらに海を渡って末盧国(唐津市、九州本土)に着いており、山と海すれすれに住んで魚やアワビを捕っていたのは呼子付近だろう。魏の使者はさらに進み、⑥の伊都国(現在の筑前前原付近)が帯方郡の使者が常に足を止める場所であり、その後、⑦の奴国(福岡市)に着いている。そして、ここまでの地理には誰も異論がなく、魏の使者は、筑肥線に沿って進んでいるのだ。

 次に、⑧の不弥国(フミ国、現在の宇美町?)から水行二十日で、⑨の投馬國(投与國《豊国、大分県中津市or宇佐市》の書き違いではないかとも言われている)に着き、そこから水行十日陸行一月で、⑩邪馬壹國(女王が都とする所)と書かれているため、女王国は近畿にあるとする説が出ているが、急に近畿になるのは不自然だ。また、方角は正しく、距離の方が日数で示されて一定の基準があったわけではないため、邪馬台国は九州北部にあったと中国の学者が断言している。さらに、近畿説では、㉘の女王国の東に海を渡って千余里行く国が有って倭種だという記録とも合わないため、この海を渡って千余里というのが瀬戸内海のことだと考えられる。

 また、⑫の女王国の南にある狗奴国(クナ国、クマ国《熊本県、熊襲》の聞き違いではないか?)は卑弥弓呼素という男子が王で、㊱のように、倭女王の卑弥呼と争っていた。そして、倭女王の卑弥呼は、㉜のように、魏に献上品を送って親魏倭王として金印を紫綬されている。その後、㉟のように、245年に倭の難升米に黄色い軍旗が与えられ、㊲のように、247年に卑弥呼は亡くなって大きな塚が作られたとのことだ。

 その後に男王を立てたが国中が争ったので、十三歳の壱与(トヨ《豊、大分県》の書き違いではないかとも言われている)を立てて王と為し、国中が安定したそうだ。

 詳しく書くと長くなるため結論だけ書くと、邪馬台国は現在の山門もしくは吉野ヶ里にあり、科学的な証拠を示した上で筑肥線を日本海側のリアス式海岸を走る列車(小田急線のように、急行や特急のロマンスカーがあってもよい)にすればよいと思う。この時、伊万里を含め、それより西の松浦市、平戸市行きなども相互乗り入れして、EVかFCV電車を直通運転させれば、どこも史跡に事欠かず、リアス式海岸がきれいで、魚の美味しい地域である。

ロ)縄文時代(約16,000年前~約3,000年前 )の遺跡

     
  山内丸山遺跡(縄文時代の遺跡)       縄文時代の土器・土偶・埴輪

 「北海道・北東北の縄文遺跡群」が、*5-3のように、青森県など4道県が2021年の世界文化遺産登録をめざしているそうだ。青森市の三内丸山遺跡では、ユネスコの諮問機関「国際記念物遺跡会議(イコモス)」の調査員が、政府提出の推薦書の内容を確認し、調査した結果をもとにしたりして、2021年5月に4段階評価のいずれかを勧告し、この勧告をもとにユネスコの世界遺産委員会が登録の最終判断をするそうだ。

 三内丸山遺跡は縄文人の生活に関してこれまでの常識を覆し、縄文人は意外にグルメな生活をいしていたのだそうで、世界文化遺産に登録されればまた新たな付加価値が加わる。

・・参考資料・・
<政治に女性登用を増やすと、何が変わるか>
*1-1-1:https://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-1278848.html (琉球新報社説 2021年2月28日) 自治体人事に性差 女性登用へ組織改革を
 男性は企画立案が得意、女性は家事や育児に適する―というような固定観念が人事配置に反映されているのか。本紙が男女共同参画について沖縄県と県内全11市に聞いたアンケートで、全自治体で総務や企画に関する部署に男性が多く配置される一方、福祉や医療などの部署には女性が多い傾向にあることが分かった(23日付)。財政や人事、総合計画などに関わり「行政の頭脳」とも称される総務や企画系部署は男性が67%を占める一方、介護や子育て、保健衛生などを扱う部署は女性が59%と半数を超えた。管理職で見ると、総務企画部署は女性比率がさらに低くなる。総務企画に所属する女性管理職はわずか12%だったが、福祉医療系は34%だった。行政の中で性別が人事配置の判断材料になっている証左ではないか。子育てや介護を含めた「妻・嫁」の役割と結びつけ、固定化されたジェンダーバイアス(性に基づく差別や偏見)で配置先を決められてしまうことが当たり前のこととして行われてきた。県内41市町村の管理職に占める女性の割合は14%で、全国平均の15%を下回る。うち7村は女性管理職ゼロだ。政府が目標として掲げる「指導的地位に占める女性比率30%」の半分にも届かない。公平な採用と人事配置が当然とされる行政機関でも、女性から見ると壁があることが分かる。そもそも採用面から不利な立場に置かれている。全自治体の職員に占める男女比率はおおむね6対4と女性が少ない。ただし非正規職員は男性が約24%なのに、女性は約76%に上る。配属も福祉医療系に偏り、昇進についても同様だ。男性にはさまざまなポジションへの門戸が開かれているが、女性は男性よりも限られた選択肢しか与えられていない。自治体職員からは、激務で残業の多いイメージの職場は子育て中の女性が希望しないなどの声が上がっているが、それでは、女性医師は出産などで離職するからと女子に不利な得点操作をしていた東京医科大の発想と変わらない。男女ともに長時間労働の解消が先決で、それを理由に女性を閉め出すことはあってはならない。男性は仕事、女性は男性を支えて家事や育児を担うという性別役割分担は長く強いられてきた。それは育児休業の取得率が女性はほぼ100%だったのに、石垣と名護、宮古島の3市は取得した男性職員が1人もいなかったことにも現れている。仕事第一で激務や残業を男性側に強いるということで、男性にとっても不公平な社会ではないか。ジェンダーバイアスによる人事配置は企業や大学を含め至るところにある。行政機関が率先して長年続く不公平な仕組みを認識し、組織の中核を担う部署や女性が少ない部署での女性の配属や登用を進め、組織構造を変えていかなければならない

*1-1-2:https://digital.asahi.com/articles/ASP2J72SYP2JULOB00J.html (朝日新聞 2021年2月17日) 「ほんとに日本は変わらない」 林文子市長、森氏発言に
 東京五輪・パラリンピック大会組織委員会の森喜朗会長=辞任表明=による女性蔑視発言をめぐり、横浜市の林文子市長(74)は16日の記者会見で、行政や企業のトップに上り詰めた自らの人生を「『忍』の一字で生きてきた」と振り返り、「意思決定の現場に女性がいるのは大変重要。男性の意識改革が必要だ」と述べた。市長就任前にダイエー会長などの要職を務めた林氏は、自身が社会人になった1965年当時を「女性が意思決定することを誰も考えていなかった」と振り返ったうえで「ほんとに日本は変わらない。(女性の)中間管理職がある程度の仕事ができるところまでは来たが、ほんとに意思決定の、企業の役員レベルに(女性が)入れるかというと、いま立ち止まっている状態だ」と話した。また、「私は我慢してうまくいった例」とし、自らの課題として「言いたいことをガーンと言わない癖が付いてしまっている。バーンと言うべきですね」とも語った。組織委の新会長選びについては「(五輪までの)時間がない中で男尊女卑とかの言葉が飛び交って、重要なポスト(を誰が務めるか)が議論されているが、これはいいことかもしれない。みんなが、おかしいということに耳を傾けることが大事だ」と話した。

*1-1-3:https://www.asahi.com/special/thinkgender/?iref=kijiue_bnr (朝日新聞 2021年3月3日) 「女性が主婦業を追求した方が」日経、コラムを一部削除
 日本経済新聞の電子版で2日に配信された外部筆者のコラムに「女性が主婦業を徹底して追求した方がいい」などとする記述があり、日本経済新聞社は「不適切な表現があった」として一部を削除した。
削除されたのは、IT企業「インターネットイニシアティブ」(IIJ)の鈴木幸一会長(74)がコラム「経営者ブログ」に「重要な仕事、『家事』を忘れている」と題して書いた文章の一部。鈴木氏は東京都が審議会の委員の女性の割合を4割以上にする方針を掲げたことについて、「変な話」とし、「男女を問わず、にわか知識で言葉をはさむような審議会の委員に指名されるより、女性が昔ながらの主婦業を徹底して追求したほうが、難しい仕事だし、人間としての価値も高いし、日本の将来にとっても、はるかに重要なことではないかと、そんなことを思う」などと記していた。「口にしようものなら、徹底批判されそうだ」とも書いた。この部分は2日午後に削除され、コラムの冒頭に「一部不適切な表現があり、筆者の承諾を得て当該部分を削除しました」と追記された。日経広報室は削除の経緯について、朝日新聞の取材に「筆者とのやりとりや編集判断に関する質問には答えられない」とコメントした。IIJ広報部によると、2日午後2時ごろに日経側から「SNSなどで批判的な意見が出ているので削除したい」と鈴木氏に連絡があり、受け入れたという。広報部の担当者は取材に「社としては、女性が長期的に活躍できる環境の整備に取り組んでいる」とした。日経電子版では「経営者ブログ」について、「著名な経営者が企業戦略や日常的な発想など幅広いテーマで本音を語り、リーダーの考え方や役割も学べるコラム」と紹介している。鈴木氏の「経営者ブログ」は日経電子版で10年以上にわたって続いている。一部が削除された回では、掃除や洗濯などの家事に追われていた母親の姿を回想するなかで、家事の大変さに触れていた。鈴木氏は2月16日に配信された同じコラムで、東京五輪・パラリンピック大会組織委員会の森喜朗前会長(83)が「女性がいる会議は長くなる」などと発言し、その後辞任したことについて、「『女性蔑視』と騒ぎ立てる話なのだろうか」「女性にとっては、聞き捨てならない話だと、大問題になったのだろう」と書いていた。

*1-1-4:https://digital.asahi.com/articles/ASP334Q0FP32ULFA016.html?iref=comtop_Business_03 (朝日新聞 2021年3月3日) 「日本は男性優遇」 女性75%、男性54% 電通調査
 8日の国際女性デーを前に、電通総研が実施したジェンダーに関する意識調査で、男女の意識差が浮き彫りになった。社会全体が男女平等になっているかを尋ねたところ「男性の方が優遇されている」「どちらかというと優遇されている」と答えた女性は計75・0%に上ったのに対し、男性は54・1%だった。調査は、全国の18~79歳の3千人にインターネットで実施し、項目ごとに男女が平等になっているかなどを尋ねた。「社会全体」については「男性の方が優遇」「どちらかというと優遇」との回答が、男女あわせた全体で64・6%だった。「慣習・しきたり」では64・4%、「職場」では59・6%だった。「男性の方が優遇」「どちらかというと優遇」と答えた人の割合は、男女の間で差が目立った。「法律・制度」については女性では60・6%に上ったのに対し、男性では32・7%。「職場」については女性70・2%に対し男性48・8%、「家庭」は女性44・0%に対し男性22・7%だった。いずれも20ポイント以上の差が開いた。自由回答の欄では「婚姻に関わる制度が平等でない」「夫婦別姓が認められていない」といった意見があった。調査にあたった電通総研の中川紗佑里氏は「自由回答で、女性は不利な思いをしたことを書く例が多かった。性別によって経験に差があり、男性と女性で見えている景色に違いがあるようだ」と話した。政府の男女共同参画基本計画では「指導的地位にある女性」の割合を、2020年代の可能な限り早い時期に30%程度とする目標を掲げている。企業の管理職の女性比率が30%になる時期を尋ねると、平均で「24・7年後」だった。女性首相の誕生は平均で「27・9年後」、国会議員の女性比率が50%となるのは「33・5年後」だった。

*1-2-1:https://www.chugoku-np.co.jp/column/article/article.php?comment_id=730999&comment_sub_id=0&category_id=142 (中国新聞 2021/3/1) 入管法の改正案 難民認定の見直しこそ
 政府は、入管難民法の改正案を閣議決定した。国外退去処分となった外国人の入管施設への収容が長期化している問題の解消を図るのが狙いという。退去命令を拒む人への罰則規定を設けるなど、在留資格がない人の速やかな送還に主眼を置く内容となっている。不法滞在が発覚した人の大半は自らの意思で帰国している。一方で長期収容者の多くは帰国を拒んでいる。帰国すれば身に危険が及ぶ恐れがあったり日本に家族がいたりするためだ。もちろん国外退去処分となった外国人には速やかに出国してもらうのは当然である。しかし何年も収容されながら帰国を拒み続けている人に、厳罰化の効果があるかどうかは疑問だ。長期化する収容の背景にあるさまざまな事情に目を向けなければ、問題の解決にはつながるまい。人権上の観点から収容・送還制度を見つめ直し、慎重に国会審議を行う必要がある。不法残留して摘発された外国人は、送還されるまで原則として入管施設に収容される。2019年末の収容者は942人に上った。このうち462人は収容期間が6カ月以上に及び、3年以上の人も63人いた。長期収容が常態化する中、ハンガーストライキで抗議する外国人が相次いでいる。2年前には長崎県の施設でナイジェリア人男性が餓死した。これをきっかけに出入国在留管理庁が有識者会議を設け、法改正に向けて検討を進めてきた。改正案でとりわけ懸念されるのは、難民認定申請の回数制限だ。政府は、認定申請中は母国に送還しないとする現行法の定めに基づき、申請を繰り返す人が多いとみている。送還逃れを目的にした申請の乱用が収容の長期化を招いているとし、3回目以降の申請で原則送還できるようにする。自ら早期に帰国すれば、再来日できるまでの期間を短縮して優遇するという。だが日本は諸外国に比べて難民の認定率が極端に低い。19年には1万375人が申請したが、44人しか認められなかった。何度も申請してようやく認定されるケースも少なくない。本来は保護されるべき人が強制送還され、本国で弾圧を受ける恐れもある。日本が加わる難民条約にも反し、看過できない。難民認定制度の見直しこそ必要ではないか。収容の在り方にも大きな問題がある。国連の委員会などは、収容の必要性が入管の裁量で決められ、無期限の収容が可能になっていることを問題視し、繰り返し指摘している。改正案では、現行の「仮放免」に加え、一時的に施設外での社会生活を認める「監理措置」が新設される。支援者らが「監理人」として状況を報告する義務を負い、就労したり逃げたりすれば罰せられる。しかし外部のチェックが一切ないまま、入管の裁量権がブラックボックス化している根本的な問題は何も変わっていない。政府の改正案に先立ち、野党も対案を国会に提出している。難民認定のための独立機関を置き、収容は裁判官が判断することなどを盛り込んでいる。一定の透明性や人権への配慮などは評価できる。政府案の問題点を修正するためにも、積極的に取り入れるべきだ。

*1-2-2:https://toyokeizai.net/articles/-/414397 (東洋経済 2021/3/2) 日本も無視できず「EUでワクチン遅延」の大問題、域内生産しているにもかかわらず接種率が低い
 河野太郎規制改革担当相によれば、日本の最新の新型コロナウイルスのワクチン入手に関して、アメリカの製薬大手ファイザー製のワクチンが今年6月末までに高齢者全員が2回打てる分量を各自治体に供給できるとしている。ただし、欧州連合(EU)の承認次第だと付け加えた。6月末とは東京五輪・パラリンピックを控えた国とは到底思えない遅さだ。世界的に見て感染者数や死者数が少ないとはいえ、五輪開催への日本政府の本気度が海外からはまったく見えない。一方、日本のワクチン確保のカギを握るEUも、ワクチン接種は進んでおらず、批判の声が上がっている。
●ファイザー製ワクチンの供給に遅れ
 EUは2020年6月にコロナ対策の新制度を設立。加盟国に代わり、EUがワクチン購入の交渉をすることになった。これは交渉コスト削減と加盟国間の争奪戦を回避するためだった。加盟国はこの制度に参加する義務はないものの、全27加盟国が参加することを選択した。EUはファイザーとドイツのビオンテックが共同開発したワクチンやアメリカのモデルナ製ワクチン、イギリスのアストラゼネカ製ワクチンをそれぞれ契約している。ところが、ファイザー・ビオンテック製ワクチンについては、ファイザーがベルギー工場の能力を増強する間、配送が一時的に減少し、契約どおりの供給ができなくなった。さらにファイザーは契約順に供給するとして、契約が遅れたEUは後回しにされた。EUは契約違反と批判したが、ファイザー側は、納期は努力目標にすぎないと反発し、いまだに両者はかみ合っていない。フランスのサノフィがファイザー・ビオンテック製ワクチンの製造支援に手を挙げたものの、製造態勢を整えるのに夏までかかるという見通しを明らかにしている。ファイザー・ビオンテック製だけではなく、モデルナ製ワクチンにも供給に問題が発生し、フランスとイタリアでは予想を下回る供給しか受けられていない。加えて、英アストラゼネカ製ワクチンもベルギーとオランダの工場での生産が遅れており、供給は不足状態だ。実は、今年1月にEUを離脱したイギリスは、EU域内で製造しているアストラゼネカ製ワクチンを最優先に入手している。EUはおひざ元で製造されるワクチンが注文通りに供給されないことにいらだち、EU製造ワクチンをEUの承認なしに域外に持ち出せない輸出規制をかけた。例えば、日本国内にワクチンの製造工場があるにもかかわらず、そのワクチンが韓国や台湾、東南アジアに優先的に供給されれば、日本国民は不快感を持つだろう。EUの規制は当然ともいえる。ところが、この輸出規制は思わぬところでイギリスとの摩擦を生んだ。イギリス領北アイルランドとアイルランドの国境に定められたアイルランド議定書に抵触したのだ。アイルランドと国境を接するイギリス領アイルランドは、ブレグジット後も物流でEUのルールに従うことで国境検問の復活を回避している。ワクチンの輸出規制で検査が必要になれば、国境検問復活につながるとしてイギリス政府は猛反発した。
●EU域外への輸出差し止めの懸念も
 EUは2月25日の首脳会議で新型コロナの問題を集中協議し、製薬会社からのワクチン供給が契約より大幅に削減されている問題について、「企業はワクチン生産の予測可能性を確保し、契約上の納期を守らなければならない」とあらためて訴え、安定供給するよう企業側に圧力をかけた。さらにフォンデアライエン欧州委員長は「必要なワクチンを確保するためにEU製ワクチンの域外輸出を禁止する措置は取らないことにしたが、EUとの契約に背くような域外流出の監視を続ける」と説明した。つまり、ファイザー・ビオンテック製やアストラゼネカ製のワクチンがEUの署名した契約の量を満たしていない現状を考えれば、実質的には製薬会社の輸出差し止めを警告できるという理屈になる。EUを離脱したイギリスにとっては不満だ。これは日本も無視できない。冒頭の河野規制改革担当相の「ワクチン輸入はEU次第」という発言を踏まえると、日本にも調達の不確実性があることを示している。そうなると今度は交渉力が物をいうことになり、製薬会社とEU双方に日本政府がどれだけ交渉できるかに供給は左右される。ここで浮かび上がるのが、ワクチン接種にスピード感のあるイギリスと遅れるEUとのギャップだ。イギリスがファイザー・ビオンテック製ワクチンを承認したのは11月で、ワクチンの安全性を確認するEUの欧州医薬品庁(EMA)が承認した3週間前だった。アストラゼネカ製に関しても、イギリスでは昨年12月30日に1週間で承認したが、EUの承認はその1か月後の1月末だった。ワクチン獲得スピードの遅延で、ドイツのビルト紙は、メルケル独政権に対して「予防接種のカタツムリ」とノロノロぶりを揶揄している。
●EUの官僚主義に原因
 EUのワクチン接種の遅延には、ワクチン承認の厳格さと煩雑な承認プロセスが大きく影響していることは否定できない。ただ、イギリスのワクチン専門家は、EMAのアストラゼネカワクチンの承認基準は、イギリスの基準と変わらないことを明かし、単にEUの官僚主義による承認の事務的遅れが影響していると指摘している。また接種の実施に関しても、EUは事情の異なる27カ国間の調整に手間取っている。これもやはりEUの強烈な官僚主義が原因の1つだ。それを嫌って離脱したイギリスの接種が、圧倒的なスピードで進んでいるのは当然ともいえる一方、EUは激しい争奪戦の敗者となりかねない。イギリスは、ワクチンを少なくとも1回接種した人の人口に占める割合は2月26日時点で29%とイスラエルに次ぐ世界2位だ。イギリスに住む筆者の友人家庭は、同居中の30歳の息子を含め、全員が1回目の接種を済ませ、2回目ももうすぐだと言う。それに対して、EUでは最も接種人数が多いデンマークで7.1%、ドイツ4.6%、フランス4.3%と圧倒的に低い。EUによるワクチン供給の遅れに業を煮やし、独自に調達を始めた加盟国もある。日頃から独裁統治と独自路線でEUから批判されるオルバーン・ヴィクトル首相率いるハンガリーは、中国の製薬会社シノファームが開発した新型コロナウイルスワクチンを2月16日に入手し、接種を始めた。というのも、加盟国はEUが合意していないワクチンメーカーとの個別交渉が許可されている。ハンガリーはロシアのスプートニクVワクチンの購入にも同意している。スペインもロシア製ワクチンを拒まないとしている。
●ワクチンに対する不信感も
 接種遅延には、ワクチンへの不信感の広がりもある。例えば、今年1月、EUの医療規制当局は、すべての年齢層にアストラゼネカワクチンを使用することを承認した。それにもかかわらず、フランス、ドイツ、イタリアを含む多くのEU諸国の規制当局が、65歳以上の人々に使用すべきではないと勧告したことで、ワクチンへの不信感が高まった。フランスのマクロン大統領は、アストラゼネカ製ワクチンは高齢者には効果がないと発言。アストラゼネカ社は「なんの科学的根拠もない発言」と強く批判し、発言は撤回されたものの、一度広まった噂は今も影響を与えている。イギリスではワクチンに関する情報開示を随時行い、透明性を高めるだけでなく、不必要なネガティブ情報を流さないようメディアが気を付けている。一方、EUのメディアは科学的根拠のないネガティブ情報も流す。EUの官僚主義を一朝一夕に変えることは難しい。とはいえ、今回の新型コロナのような、人の生命がかかっているときのリスク対応という点では、大きな足かせとなっている。

*1-2-3:https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR02EHO0S1A200C2000000/ (日経新聞 2021年2月3日) ロシア製ワクチンに91%の効果確認、英誌論文
 英医学誌ランセットは2日、ロシアで開発された新型コロナウイルスのワクチン「スプートニクV」について臨床試験(治験)の最終段階で91.6%の効果が確認されたとする論文を発表した。ロシアは疑問視する意見があがっていたワクチンの安全性を強調し、外国への供給拡大を目指す。スプートニクVはロシアが2020年8月に承認し、世界初のコロナワクチンだと主張した。治験の完了を待たずに承認して接種を始めたため、安全性が懸念されていた。米欧製のワクチンに続いて主要な医学誌で最終段階の治験での効果が指摘されたことで、期待が高まる可能性がある。論文では20年9~11月に治験に参加した約2万人についてワクチン投与後の発症数などを調べた。ワクチンが原因とみられる重大な副作用は報告されず、60歳以上でも有効性は変わらなかった。発症した場合も重症化はしなかったという。ロシアはスプートニクVで「ワクチン外交」の攻勢を強めている。海外供給を担うロシア直接投資基金のドミトリエフ総裁は2日、スプートニクVを承認した国がロシアを含めて16カ国にのぼり「来週末までに約25カ国になる」と述べた。ドミトリエフ氏はスプートニクVが変異ウイルスにも効果があると主張した。欧州連合(EU)で医薬品を審査する欧州医薬品庁(EMA)への承認申請も進める。ランセットでは20年9月にもスプートニクVの初期段階の治験で抗体をつくる効果を確認したとの論文が発表された。欧米の複数の科学者から検証が不十分だとの指摘があがっていた。

<科学の遅れは、何故起こる?>
*2-1-1:https://kahoku.news/articles/20210306khn000042.html (河北新報社説 2021年3月7日) 東日本大震災10年/危機回避の鍵は分散にあり
 かつて東日本大震災の被害に関し「まだ東北で良かった」と発言し、引責辞任した復興相がいた。弁解の余地などない失言ではあるが、発言の後段はこう続く。「もっと首都圏に近かったりすると莫大(ばくだい)な、甚大な被害があったと思っている」。人口密集地帯が大地震に見舞われた場合に増大する危険性を指摘した。事は人命。東北と首都圏の単純な比較は非難に値するが、危機管理意識としては見逃せない視点を提供している。首都直下地震や南海トラフ巨大地震の襲来が確実視されている。新型コロナウイルスの新規感染者数は、可住地人口密度にほぼ比例することが知られている。大災害やウイルスのパンデミック(世界的大流行)に、一極集中が致命的な弱点を抱えていることが明白なのに、わが国の国土政策は旧態依然のままだ。地方分権とセットで国土構造を分散型に転換しなければならない。首都機能移転論議が熱を帯びていた1990年代、「財界のご意見番」といわれた故諸井虔さんは「防災第一」を理由に小規模な首都機能移転を提唱。最高裁判所の移転先候補地として、仙台市を例示した。阪神大震災(95年)があり新都建設の機運が盛り上がったが、景気低迷などもあり移転論は急速にしぼんだ。関東から近畿に至る大都市圏には国内GDPの7割を超える生産機能が集中している。とりわけ首都東京には国会、中央省庁、本社、大学などが軒先を並べ、有事の際に中枢機能が失われる危険性は何度も指摘されてきた。にもかかわらず、中央省庁の地方移転は文化庁の京都移転にとどまっている。90年代の首都移転論議では政官業の癒着を物理的に断ち切ることもサブテーマの一つだったが、総務省の高級官僚が霞が関周辺で利害関係者の放送関連会社から夜な夜な高額接待を受けていた不祥事が明るみに出た。一極集中は密談の培地でもある。一方で、パソナグループが東京の本社から経営企画や人事、財務などの機能を兵庫県淡路島に段階的に移すなど、事業継続計画(BCP)の観点から本社機能の分散を目指す動きが加速している。リモートワークの普及や働き方改革の必要性から、民間ベースでの「地方創生」は避けて通れない経営課題になっている。新型コロナウイルスのワクチン接種を巡っても、国の迷走を尻目に東京・練馬区や三重県桑名市などが独自の「モデル」を提示し地方自治体の力量を示している。新型ウイルスの感染拡大からわれわれが学んだのは過密のリスクだったはずだ。社会的距離の確保を国土政策に落とし込めば、出てくる解は「分散」「分権」になる。大地震と疫病の教訓から学び、行動を起こすための時間はさほど残されていない。

*2-1-2:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/639144 (佐賀新聞 2021/3/1) 震災移転跡地27%用途決まらず、細かく点在、一体利用困難
 東日本大震災後、岩手、宮城、福島3県の市町村が高台などに集団移転する住民から買い取った跡地のうち、少なくとも27%に当たる計568ヘクタールの用途が決まっていないことが1日、共同通信のアンケートで分かった。買い取った土地が点在して一体的利用が難しいのが要因。自治体は空き地管理の維持費支出を余儀なくされている。専門家は、災害に備え事前に土地の利用方法を検討するよう呼び掛ける。昨年12月~今年2月、土地を買い取り、津波で被災した地域の住民らに移転を促す国の防災集団移転促進事業を実施した26市町村に尋ねた。計約2131ヘクタールが買い取られていた。利用状況の集計結果がない宮城県山元町を除き、用途未定地が最も広いのは60ヘクタール程度と回答した宮城県石巻市。55ヘクタールの福島県南相馬市は維持管理に年約1千万円を要しているという。約10ヘクタールを買い取った同県いわき市は78%が未定で、率としては最大だった。岩手県では6市町それぞれで3~4割超が未定のままだ。宮城県名取市など大半の自治体が「跡地が点在し、一体的利用が難しいこと」を理由に挙げた。同事業で買い取りできるのは主に宅地。企業の所有地などは対象外で、まとまった土地の確保がしづらい。岩手県大船渡市は地権者と協力し、民間の所有地と隣接する跡地を一体化して大規模化、事業者を募る取り組みを2017年度に始めた。岩手県釜石市や宮城県岩沼市は民有地と跡地の交換による土地集約化を検討。釜石市の担当者は「民有地を買収する方法もあるが、明確な利用計画がないと難しい」と吐露する。東北大大学院の増田聡教授(地域計画)は「危険な区域からの移転を第一にした制度なので、跡地利用のことは考えられておらず、このような問題に陥りやすい」と指摘。「南海トラフ巨大地震のような災害が予想される地域では、被災後の土地利用法を事前に検討しておくことも一つのやり方だ」と話す。

*2-1-3:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20210309&ng=DGKKZO69788760Z00C21A3EA1000 (日経新聞 2021.3.9) 〈3.11から10年〉半世紀先を見据え廃炉の道筋描け
 東京電力福島第1原子力発電所で爆発が起き、原子炉建屋の上半分が吹き飛ぶ。日本科学未来館で開催中の「震災と未来」展の記録映像からは、すさまじい地震と事故の記憶がよみがえる。炉心溶融(メルトダウン)で大量の放射性物質を出した原発を解体し、溶け落ちた燃料デブリを安全に取り出して管理する。除染を徹底する。一連の廃炉作業がいかに困難かは容易に想像がつく。
●やむを得ぬ計画の遅れ
 政府と東電は事故から30~40年で廃炉を終える目標を定め、今も毎日4000人前後が作業にあたる。事故直後、防護服に身を包み密閉度の高いマスクを着けないと立ち入れなかった敷地内は、大部分普段着で歩けるようになった。だが、計画は遅れ気味だ。3号機の建屋上部のプール内にあった使用済み燃料取り出しは4年半遅れて始まり、今年2月に終えた。最難関とされるデブリの取り出しは当初計画より1年程度遅く、2022年内に開始の予定だ。原子炉内の状態は今なお、わからないことが多い。スケジュールありきではなく安全第一に、段階的かつ柔軟に作業を進めるのは現実的だ。遅れはやむを得ない。ただ、頻発する機器の不具合や管理の不徹底は、大事に至っていなくても見過ごせない。3号機の地震計が故障したまま放置され、今年2月の強い地震の揺れを測れなかったのは反省を要する。今後、作業の大きな障害となる可能性があるのが、流入する地下水などから大半の放射性物質を除去した後の処理水の扱いだ。放射性トリチウムが残っているため、すべてタンクに保管している。その総数は1000基を超え、このままでは22年夏~秋には増設余地がなくなる。デブリ取り出し用の機材やデブリを保管する場所を確保できなくなるからだ。トリチウムは正常な原発からも出ており、基準濃度まで薄めて海などに放出している。経済産業省の委員会は20年2月、処理水の海洋放出が他の方法に比べ「より確実」とする報告書をまとめた。だが、水産業を営む人たちの反対は根強い。処理水はもともとデブリに触れた水で、他の原発とは違うと受け止めている。海洋放出が始まれば風評被害で再び打撃を受け、10年間の再建努力が水泡に帰すとの懸念はもっともだ。それでも、処理を先送りし続けるわけにはいかない。政府と東電は一体となって地元と向き合い、不安の払拭に全力をあげるべきだ。相応の補償措置も必要だ。時間はかかっても、信頼関係なしに問題解決はない。国内外の消費者に対しても水産物の検査数値などを示し、安全性について理解を得なければならない。「廃炉完了」がどんな状態を指すのかについても、そろそろ議論を始めるときだ。最終的に安全できれいな更地になれば理想的だ。一部除染しきれず、立ち入り禁止区域を残す道なども考えられる。政府も東電もデブリに関するデータや情報の不足などを理由に、検討は時期尚早だという。しかし、考え得るシナリオから遡り、集めるべきデータをはっきりさせる進め方もあろう。
●最終状態の議論開始を
 最終状態のあり方は避難した人たちの帰還判断にかかわり、復興計画に影響する。あらゆる可能性を排除せず、避難者も含めて率直かつ継続的に議論することが不可欠だ。福島第1の廃炉は単なる後片付けに終わらせず、半世紀先を見据えて世界有数の廃炉技術拠点として生かす発想が必要だ。世界では約500基の原発が稼働または建設中だ。万が一の事故や廃炉の際、福島の経験は役立つ。日本原子力研究開発機構は福島県内に、遠隔操作技術の開発やデブリの分析用の先端機器を備えた施設をつくった。これから魂を入れていかねばならない。新型コロナウイルス感染症のためすぐには難しいが、海外の研究者らが長期滞在し活発に国内の研究者と交流できるのが望ましい。廃炉の解析データは世界からアクセスできるようにすべきだ。政府の福島・国際研究産業都市(イノベーション・コースト)構想とも連動させたい。復興推進会議が決めた、省庁の縦割りを排した分野横断的な国際教育研究拠点の計画は検討に値する。若い世代が輝ける環境を整えてほしい。

*2-1-4:https://digital.asahi.com/articles/DA3S14827738.html (朝日新聞 2021年3月10日) 原発汚染水、先送り続く 政府、復興方針で時期示さず
 東日本大震災から10年を前に、政府は9日、2021年度以降の復興の基本方針を改定し、閣議決定した。懸案となっている東京電力福島第一原発の処理済み汚染水の処分方法については「適切なタイミングで結論を出す」などと記すにとどまった。漁業者らとの調整が進まず、決定の先送りを続けている状態だ。改定は19年12月以来。21年度以降の5年間を「第2期復興・創生期間」と位置づけ、福島の復興・再生には「引き続き国が前面に立って取り組む」とした。住民が戻らない地域に移住を促す対策などを進める。一方、処理済み汚染水の対応は「先送りできない課題」としながらも、「風評対策も含め、適切なタイミングで結論を出していく」としただけで、具体的な決定の時期は示せなかった。汚染水問題では昨年2月、専門家による経済産業省の小委員会が、放出基準以下に薄めて海洋放出する方法を有力と提言していた。これを受け、福島県大熊、双葉両町は、処分方針の「早期決定」を政府に要望。菅義偉首相も昨年9月に「できるだけ早く処分方針を決めたい」と明言していた。だがその後、海洋放出に反対する全国の漁協などとの交渉が難航している。

*2-1-5:https://www.toyal.co.jp/whatsnews/2019/06/post.html (東洋アルミ 2019.6.3) 「アルミニウム粉末焼結多孔質フィルターによるトリチウム水の回収技術」の 日本アルミニウム協会賞技術賞受賞のお知らせ
 当社および近畿大学が共同研究したアルミニウム粉末焼結多孔質フィルターによる放射性物質を含んだ汚染水から放射性物質の一つであるトリチウムを含むトリチウム水を回収する技術が『2018年度日本アルミニウム協会賞技術賞』を受賞しました。
【背景】
 東京電力福島第1原子力発電所では地下水の流入により放射性元素を含んだ汚染水が発生し続けておりますが、汚染水中に含まれるトリチウムは除去が困難であるため、保管する貯蔵タンクを増設し、広大な保管場所を確保する必要があります。このため、汚染水問題解決のために実用的なトリチウム除染技術の開発が望まれています。
【技術の概要】
 従来は、水の電気分解や高温高圧が必要でしたが、60℃・低真空での分離を実現しました。
【展望】
 現在も発生し続けている汚染水からトリチウムを除去できれば、処理後の汚染水の海洋放出も可能となり、汚染水を保管するタンクを減らすことができるため、タンクの設置・維持管理コストを削減でき、廃炉作業に必要なスペースを確保できることが期待されます。授賞式は5月29日に行われ、受賞者として当社の先端技術本部から藤本和也研究員が出席し、「我々の取り組みを評価いただき、光栄に思います。」と受賞の喜びを語りました。

*2-2-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20210307&ng=DGKKZO69747560X00C21A3EA2000 (日経新聞 2021.3.7) コロナ医療の病巣(5) ワクチン行政、時代錯誤の罪 内向き志向、革新を阻む
 日本での新型コロナウイルスのワクチン接種は世界に大きく出遅れた。科学技術立国をうたいながら国内で実用化のメドも立っていない。時代錯誤なワクチン行政に根深い病巣がある。国内でワクチンを流通させるには「国家検定」という関門をくぐりぬけなければならない。国立感染症研究所による抜き取り検査で、品質が保たれているかどうかを出荷ごとにチェックする。製品によっては2カ月ほどかかる。日本製薬工業協会は昨年9月、ワクチンの早期実現に向け提言書を公表した。世界を見渡せば、国が威信をかけ前例のないスピードで開発競争が進む折だった。承認審査の迅速化や包装表示の簡略化に加え、焦点だった国家検定も書面審査で済むよう求めた。パンデミック(世界的大流行)という一刻を争う際に、有事向けの「ワクチンルール」が示されていなかった日本。製薬会社が多額の投資を要する開発に二の足を踏むのも無理はない。
●担当は「結核課」
 日本の感染症対策、ならびにワクチン行政は、戦後の一時期、死因トップだった結核という国民病を克服した成功体験から抜け切れていない。厚生労働省の担当窓口が今も「結核感染症課」を名のっているのもそのあらわれ。要は下水道整備など公衆衛生向上の一手段として予防接種を位置づけてきた。しかし、ワクチンを巡る世界の潮流はこの10年余で変わった。バイオ技術の進展とともに肺炎やがんを予防する製品も普及。従来型の子供向けの予防接種だけでなく、成人になってからの重い病気を防ぐことで、結果的に医療費を抑制する効果も見込めるようになってきた。子宮頸(けい)がん向けはその代表例だが、国内では安全上の問題を解消しようとしない行政の不作為で、事実上、接種は7年間も止まったままだ。新しい感染症向けのワクチンは開発に10年かかるといわれるが、新型コロナワクチンは感染拡大から1年足らずで実現した。わずか3カ月の間に世界の累計接種回数は2億6千万回を超えた。ワクチンは今や国の安全保障上でも欠かせぬ切り札である。「ワクチン外交」という言葉が飛び交い、確保と接種の進み具合が世界経済の行方を占う。投資家の大きな関心事にもなっている。時代にあったワクチン行政と改革の必要性を求める声は日本にもあった。政府内にもその認識はあり、2016年10月には、当時の塩崎恭久厚労相に対し「タスクフォース顧問からの提言」も出された。特定の製薬会社が国の主導下で生産する「護送船団方式」から抜けだす。中長期を見据えた国家戦略のもと、ワクチン産業を強化していく。さもないと世界の趨勢に取り残され、安定供給もこころもとない。まさに今の危機を予言する内容だが、政策に魂を入れることはなかった。
●前例踏襲の限界
 霞が関の官僚組織には「無謬(むびゅう)性の原則」がある。政策を遂行する際、失敗を前提にした議論が行われないというものだ。リスクをとらなくなり、建設的な政策立案が遠のく。コロナではその副作用が露呈した。流行拡大当初に大きな問題となったPCR検査体制もそうなのだが、要は、ワクチン行政では、医療という枠組みのなかで安全性が金科玉条となり、リスクを避けながら失敗を認めない姿勢を貫こうとする。正解のないコロナとの闘いに前例踏襲主義は通じない。このパンデミックはいつか必ず終息する。が、グローバル社会で新たな感染症の脅威はまたやってくる。確率は万が一でも、起きてしまえば国家的な危機を招く「テールリスク」にこの国が向き合うには、ワクチン行政を厚労省から切り離すぐらいの劇薬が必要だ。この1年、後手に回ることの多かった日本のコロナ対策から得られた教訓といえる。

*2-2-2:https://www.nikkei.com/paper/related-article/?R_FLG=1&b=20210307&be=NDSKDBDGKKZO6878523003022021TCS000%5CDM1&bf=0&c=DM1&d=0&n_cid=SPTMG002&nbm=DGKKZO69747560X00C21A3EA2000&ng=DGKKZO68785230T00C21A2TCS000&ue=DEA2000 (日経新聞 2021/2/4) 欠かせぬ国防の視点 塩野義製薬社長 手代木功氏
 米ファイザーや米モデルナのワクチンは人類が活用できなかった新技術を使っており、治験期間が半年、申請後2週間~1カ月で承認にこぎ着けた。このスピード感は製薬企業の安全性確認の常識からいえば、まだ怖いというのが本音だ。この1年、世界は大混乱に陥った。進行形で起きている難題を何とかしなければならない。ワクチン接種はとにかく「やってみよう」という段階なのだと思う。50カ国以上でワクチン接種が実施されている。日本はまだかという指摘もあるが、リスクとベネフィットとを見極めながら進めるとなれば、日本の感染状況、保健体制などを総合的にみると、そんなにおかしなことになっていない。平時と戦時の違いだとしても、何を重要と考えるかだ。例えば、ワクチン接種で因果関係のある死者が出たとしよう。99.9%の人を助けるために、1人の犠牲は仕方ない。緊急時のワクチンだからそういうこともありうるよ、といえば日本の社会は許すだろうか。10年に1度、いや100年に1度かもしれないが、パンデミック(世界的大流行)が起きたら世界が翻弄されるということをわれわれは実感したはずだ。ならば発生に備え、すみやかに対応できるような平時からの積み上げをやろうよ、というコンセンサスが要る。国家安全保障の観点からの新たな社会契約を築けるかが、今回のパンデミックで日本が問われていることだ。国はコロナのワクチンを来年も再来年も年7000億円かけて海外から買い続けるのか、と言いたい。塩野義は昨年12月に臨床試験を始めた。国から約400億円の援助を受け、リスクをとって今年末までに3000万人分を目標に工場を整備し、並行してワクチン開発を進めている。さらに1億人分まで能力をあげる。ヒトとカネとについて国レベルでコミットしてもらわないと難しい。ワクチン対策費はまさに国防費の一部。備蓄や民業とのアライアンス、国際協力も必要になる。アジアで一定の存在感を示すためにもワクチンを供給される側でなく供給する側にならないといけない。

*2-2-3:https://www.sankei.com/west/news/210217/wst2102170022-n1.html (産経新聞 2021.2.17) 「周回遅れ」国産ワクチンの実用化が急務 政府は支援を強化
 新型コロナウイルスのワクチン接種が17日から始まった。この日接種されたのは米ファイザー製。国はこの後も英アストラゼネカ製など海外産ワクチンの調達を進めており、国産ワクチンの開発遅れが指摘されている。同日開かれた衆院予算委員会でも国産ワクチンに関して質問が相次ぎ、菅義偉首相は国内生産に向けて関連産業を支援する方針を示した。国際的なワクチン争奪戦も想定される中で、国産ワクチンの実用化が急がれている。
●既存の技術を活用
 大阪市内にある治験を専門的に行う病院で、塩野義製薬(同市中央区)が開発中のワクチンの治験が行われている。214人の参加者に3週間の間隔をあけて2回投与し、安全性や、抗体ができるかどうかなどを確認中で、データは今月下旬から集まる予定だ。開発中のワクチンは「組み換えタンパクワクチン」と呼ばれるタイプで、すでにインフルエンザワクチンとしても実用化されている技術を活用。木山竜一医薬研究本部長は「副反応や安全性のデータなどについて、医療関係者もある程度把握できる利点がある」と強調する。同社は年内にも3千万人分のワクチン製造ができる生産体制の構築を進めており、「国産ワクチンの技術を確立すれば、変異種や他の感染症の発生にも対応できる」と話す。世界保健機関(WHO)のデータによると、世界で60種以上の治験が進んでおり、中でも最終段階である第3相試験に入っているワクチンは15種以上になる。「日本の開発は周回遅れ」という指摘もある。国内企業で最も進んでいるのがアンジェス(大阪府茨木市)で第2/3相試験、次に第1/2相の塩野義が続く。第一三共とKMバイオロジクス(熊本市)は、今年3月にようやく治験を始める状況だからだ。ただ、大阪健康安全基盤研究所の奥野良信理事長は「実用化の時期に遅れがあったとしても国内企業は着実に開発を進めるべきだ。国内で安定供給される多様なタイプのワクチンの中から国民が接種を選択できるのがベスト」と話す。国内では今、組み換えタンパクワクチンや不活化ワクチン、さらにメッセンジャーRNA(mRNA)、遺伝子を使った先駆的ワクチンといった複数タイプの開発が進む。第一三共も「メード・イン・ジャパンのワクチン品質は必要だと考えている」(広報)とする。
●慎重な国民性も影響
 国内のワクチン産業は長く「世界の潮流から取り残されている」と指摘されてきた。日本はこれまでSARS(重症急性呼吸器症候群)などの脅威にさらされなかったことから、国による長期的なワクチン政策や経済的支援が示されず、製薬企業も開発に時間がかかり、副反応のリスクも高いワクチン事業に力を入れてこなかったためだ。加えて安全性に対する慎重な国民性もあり、平成元年ごろから十数年間、新しいワクチンの承認が世界に比べて停滞する「ワクチン・ギャップ」も起きた。一方、現在、新型コロナワクチンとして世界で接種が進むファイザー製やアストラゼネカ製は、それぞれmRNAや、チンパンジー由来の「アデノウイルス」を活用した先駆的なワクチン技術としても注目されている。北里大の中山哲夫特任教授は「世界ではSARSなどの経験から新技術の研究を続けた国や企業があった。その延長線上に革新的なコロナワクチンの実用化がある」と指摘する。しかし、かつて日本でもワクチン研究が活発に行われていた。今も世界中で使われている水痘ワクチンは日本発だ。中山特任教授は「ワクチン研究が途絶えたわけではない。日本から新しいワクチンが出る可能性はまだある」と期待する。
●最終治験が課題、海外での実施も
 国産ワクチンの今後の課題は、治験の最終段階である第3相試験だ。数万人の参加が必要な場合もあるこの治験では、副反応の発生頻度や、発症や重症化がどのくらい抑えられるのかを確かめるため、発症者が一定程度いる流行地域で行う必要がある。しかし、日本は海外に比べて発症者が少ないため、日本だけでなく海外の流行地域での治験も想定されている。

*2-2-4:https://www.yomiuri.co.jp/olympic/2020/20210311-OYT1T50258/ (読売新聞 2021/3/11) IOC、五輪・パラ参加者のため中国製ワクチン購入へ…バッハ会長が表明
 国際オリンピック委員会(IOC)のトーマス・バッハ会長は11日、オンライン形式での総会で、東京五輪・パラリンピックと2022年北京冬季五輪・パラリンピックの参加者のため、新型コロナウイルスの中国製ワクチンをIOCが購入すると発表した。中国五輪委員会が提供を申し出たという。ワクチンの数量や金額は明かさなかった。東京五輪調整委員長のジョン・コーツ氏は、海外からの観客受け入れの可否について、「日本政府がどのような決定をしても、それを支持する」と述べた。海外客を受け入れない場合に備え、大会組織委員会とチケット代の返金などの検討を進めていることも明らかにした。バッハ氏は10日、会長選で再選された後の記者会見で、東京大会の観客数の上限については決定を出来るだけ遅らせたい意向も示した。コロナの感染状況が改善されることを期待し、「可能なら5、6月まで、状況の変化に対応できる余地を残しておく必要がある」と述べた。バッハ氏だけが立候補した会長選は、IOC委員による投票が行われ、有効票94のうち、賛成93票、反対1票でバッハ氏が選ばれた。2期目の任期は東京五輪の閉会後から4年間。再選は1度のみ認められている。1期目の任期は8年間で、バッハ氏は五輪での既存・仮設施設の活用や男女平等の推進、難民選手団の参加など様々な改革に取り組んだ。

<観光の高度化:医療ツーリズム>
*3-1:https://ryukyushimpo.jp/news/entry-1281173.html (琉球新報 2021年3月4日) コロナ起源巡り新たな手掛かり、ヒトへの感染でカギに【2021年3月2日WSJより】
 世界保健機関(WHO)が新型コロナウイルスの起源に関する全容解明を目指す中、ウイルスが自然な進化を通じてヒトへの感染力を獲得したことを示唆する新たな手掛かりが浮上してきた。直近の少なくとも4つの研究から、東南アジアや日本に生息するコウモリやセンザンコウが持つウイルス株と、今回の新型コロナに密接な関係があることが判明した。これは病原体が従来の想定よりも広範囲に広がっており、ウイルスが進化する機会が豊富にあったことを示している。別の研究では、ウイルスの重要な構成要素である単一アミノ酸が変化することにより、ヒトへの感染を可能にする、もしくは少なくとも手助けするとみられることが分かった。アミノ酸はタンパク質を形成する有機化合物だ。これら最新の研究結果は、コウモリを起源とするウイルスが、おそらく仲介役となった動物を通じて自然に進化することで、ヒトへの感染力を獲得したとの見方を一段と裏付けるものだ。パンデミック(世界的な大流行)の再来を回避するには、ウイルスの起源を特定することが重要だと考えられているが、全容解明には何年もかかるかもしれない。2月に中国・武漢で4週間にわたり現地調査を実施したWHOのチームは、中国に加え、特に同国と国境を接する東南アジア諸国でもウイルスの起源特定に向けた調査を求めている。今回の新たな研究結果により、WHOがなぜ調査範囲の拡大を唱えているのかについても、これで説明がつく。バージニア工科大学のウイルス学者、ジェームズ・ウィジャールカレリ氏は、アミノ酸の変化がウイルスの自然な進化を示唆していると話す。同氏が主導したアミノ酸の変化に関する研究結果は、査読前の論文を掲載するサイトで共有された。それによると、同氏のチームはヒトへの感染を後押ししたとみられるウイルスの変化について、18万3000近い遺伝子配列を分析した。その結果、スパイクタンパク質の単一アミノ酸を変化させるウイルスの変異を特定。それが人間の細胞を感染させ、複製できることを示した。米当局者や科学者の一部は、研究室で起きた事故でウイルスが流出した可能性を完全に排除することはできないとの考えを示している。武漢ウイルス研究所は厳重に警備された施設の中で、コウモリが持つコロナウイルスについて研究を実施している。だが、パンデミック(世界的な大流行)以前に今回の新型コロナに関する研究を行っていた、もしくは保管していたとの見方を否定。最も厳格な安全基準を維持しているなどと主張している。だが、一部の科学者や米当局者は、研究所のこれまでの安全記録に加え、自然に変化したウイルスと「機能獲得」実験の双方の研究について、加工前の生データを共有するよう求めている。機能獲得とは、ウイルスがヒトへの感染や拡散する能力を強化できるか分析するために、科学者がウイルスの遺伝子を操作した実験のことを指す。専門家で構成されるWHOの調査団はこれまで、研究室内の事故が原因となった可能性は極めて低いとの考えを示している。だが、調査団のトップ、ピーター・ベンエンバレク氏は先週、研究室の仮説についても「まだ選択肢として消えたわけではない」としており、チームとしてすべての可能性を評価するだけの情報が得られていない点を認めている。WHOは近く、武漢入りした調査団が策定した報告結果の要旨を公表する見通し。ただ、報告書の全文が公表されるのは数週間先となるとみられている。

*3-2:https://www.data-max.co.jp/article/34958 (IBNews 2020年4月2日) 日本でも拡大する「医療ツーリズム」の現状
 日本の高度な医療サービスを求め、外国人が観光と合わせて訪れる「医療ツーリズム」が新たな市場として成長している。主に中国を始めとしたアジア圏を中心に、引き合いが増加。その市場規模は、2020年で5,500億円と見込まれている。
●成長産業として政府が後押し
 がんなどの生活習慣病は世界的に増加傾向にあり、その対策として、自国より高度かつ高品質な医療サービスを受けられる国に行くという「医療ツーリズム」が、1990年代から広まり始めた。医療ツーリズムを受け入れている国は、先進国だけでなく新興国も多く、外貨獲得のために国策として取り組んでいるところも少なくない。医療ツーリズムによって、自国よりも割安で受診できることや、手術など早期の治療に対応できることも利点であり、とくにアジア圏では、民間病院の新たな収益源として医療ツーリズムを積極的に導入する傾向が強くあり、市場拡大に寄与している。そのなかで日本は、優れた医療技術に加え、世界屈指の医療機器保有率から、治療・健診・検診を目的に、中国を始めとするアジア諸国からの来訪者数が年々増加している。政府も2010年6月に新成長戦略における「ライフ・イノベーションによる健康大国戦略」として、医療ツーリズム(医療観光)の積極的な受け入れを推進。11年1月に医療滞在のビザを解禁したことで、最長6カ月間の滞在が可能なうえ、3年以内なら何度でも入国することができるようになるなど、入国に関するハードルを低くした。日本の医療機関にとっても医療ツーリズムは、医療資源の稼働率向上や、より高度な医療機器・サービスを導入する契機となるほか、海外に日本の医療を展開するアウトバウンドの取り組みにつながることが期待されている。昨今のインバウンド需要拡大とともに、医療ツーリズム市場は年々拡大している。日本政策投資銀行では10年5月に医療ツーリズムの市場予測として、20年時点で年間43万人程度の需要が潜在的にあるとし、市場規模は約5,500億円、経済波及効果は約2,800億円まで伸長すると試算していた。現状では新型コロナウイルス感染症の影響で来訪する外国人が激減していることもあり、そこまでの成長は難しい様相だが、すでに市場としては成熟化が進んでおり、事態が収束すれば再び市場は戻ると見られている。一方で、医療ツーリズム推進の政策に対して、「国民皆保険制度の崩壊につながりかねない」として懸念を示しているのが日本医師会だ。一般企業が関与する組織的な活動を問題視し、「医療ツーリズムが混合診療解禁の後押しになる」と指摘する。つまり、医療に一般企業が参入することで、営利を追求した医療が一部の富裕層のためだけの混合診療を含めた医療サービスにつながることを強く懸念しているのである。
●参入増で競争激化 コーディネートに課題も
 医療ツーリズムは、観光と合わせて高度な医療サービスを受診することを目的としており、受診先となる医療施設には最先端の医療設備が完備されているのはもちろんのこと、主に富裕層を対象にしていることから、豪華さや快適さも備えていることが大きな特徴。かかる費用も1人30万円から100万円超と幅広い。たとえば、人間ドックの場合、基本的な検診のほか、がん検診でPET(※)を実施する「VIPコース」などと呼ばれる高額な検査を実施する施設も多い。また、温泉療養と合わせた医療ツーリズムが、食事と運動をバランス良く組み合わせることで心身をリフレッシュし、生活習慣病の改善と自然治癒能力を高める効果に期待が寄せられ、人気を博している。これら観光主体型の医療サービスは、その多くは地方の旅行会社が企画するもので、より多くの外国人来訪者の獲得に向けた企業間競争も激化しているようだ。ある医療ツーリズムの企画会社は、「数年前までは、反対する日本医師会の影響もあったのか、検査枠の空きがあれば受け入れる程度で、積極的に確定診断から治療へ取り組む施設は多くなかった。しかし、最近は医療施設からの問い合わせが非常に増えている」と話す。また、「現状は新型コロナウイルスの影響で受け入れを止めているが、その間に東京大学や北海道大学など著名な国立大学病院との独占的な提携を進めており、より高いレベルの医療サービスを提供する体制を敷くことで差別化を図る」と続けた。このように拡大傾向にある医療ツーリズム市場だが、課題がないわけではない。現状は検診以外の治療を目的とする場合、医療従事者がコーディネートをしているという企業は少なく、医療施設が必ずしも患者と合致しない場合もあり、治療におけるリスクがともなう可能性がある。今後、医療ツーリズム市場がさらに成長していくためには、医療機関とコーディネートする民間企業の連携の部分を、さらに深めていくことが求められる。

<観光の高度化:観光ルートへの災害と復興史の織り込み>
*4-1:https://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-1285134.html (琉球新報社説 2021年3月12日) 東日本大震災10年(4) 真の復興へ不断の検証を
 東日本大震災の発生から11日で10年がたった。死者、行方不明、震災関連死は計約2万2千人に上り、残された人々が歩む人生にも震災は大きく影響している。東京電力福島第1原発事故などで今も避難中の人が、沖縄を含め約4万1千人いる。追悼式で菅義偉首相は、地震・津波被災地は「復興の総仕上げの段階」に入ったとした。しかし、10年は通過点にすぎない。真の復興に向け不断の検証が必要だ。政府は2011~15年度を「集中復興期間」、16~21年度を「復興・創生期間」と位置付けてきた。この10年で国が投入してきた復興予算は約37兆円に上る。道路や防潮堤、土地のかさ上げなど、被災地のインフラの整備は進んだ。一方で、予算の大半はハード整備に使われ、日本経済再生の名目で被災地と関係の薄い補助金などに流用された事例もある。被害が大きかった3県42市町村の人口減少率は全国の3.5倍のペースといい、街づくりの停滞や産業空洞化の課題に直面する。地域のつながりが薄れ、高齢者の見守りや心のケアも課題となる。用地取得や合意形成の難航もあって大型公共工事は長期化し、転出先での生活が定着した人々が古里に戻る機会を逸した。ハード整備に傾倒した復興のマイナス面だろう。被災者支援に充てられたのは2.3兆円にすぎない。それも仮設住宅の整備費などを除くと、生活再建支援として被災者に直接支給されたのは3千億円余りにとどまる。廃炉の見通しが立たない福島原発事故も、復興に深刻な影を落としてきた。首都圏へのエネルギー供給の役割を東北に担わせ、原発を推進してきた国の責任は重い。政府の新たな復興基本方針案は、津波被災地の復興は今後5年間での事業完了を目指し、福島原発事故の被災地再生に国の支援を重点化する方向性だ。だが、復興予算の使途や効果を十分に検証せず、復興支援からフェードアウトしていくことは許されない。復興財源は、国民全てで支えている。所得税の2.1%分上乗せは2037年まで続く。予算が本当に被災地の再建につながっているかを注視することは、納税者の責務であると同時に、東北の復興に関わり続けることになる。東北地方はアジアの中で自然景観や文化、食料供給など、比較優位を有する。そのポテンシャルを引き出し、交流人口の拡大につなげることが真の復興の道筋になる。岩手県の県紙、岩手日報社の東根(あずまね)千万億(ちまお)社長は、節目の日を地元ではなく、沖縄で迎えた。沖縄県民をはじめ復興を支える国民に向けて「県外に出向き、岩手の復興がここまで来たことを報告する行動を起こした」と語り、震災復興の今を伝える特別号外を那覇市内で配布した。震災被災地との心の距離を縮め、交流を広げたい。

*4-2:https://digital.asahi.com/articles/DA3S14830432.html?iref=comtop_Opinion_04 (朝日新聞社説 2021年3月12日) 福島の事故から10年 いま再び脱原発の決意を
 「原発に頼らない社会を早く実現しなければならない」。朝日新聞は東京電力・福島第一原発の事故を受けて、2011年7月、「原発ゼロ社会」をめざすべきだと提言した。その後も社説などで、原発から段階的に撤退する重要性を訴えてきた。主張の根底にあるのは、「再び事故を起こしたら、日本社会は立ち行かなくなる」という危機感である。最悪の場合、止めたくても止められない――。福島の事故では、原発の恐ろしさをまざまざと見せつけられた。生々しい記憶が10年の歳月とともに薄れつつあるいま、脱原発の決意を再確認したい。
■廃炉への険しい道
 原発が事故を起こせば、後始末がいかに困難をきわめるか。目の前の厳しい現実もまた、この10年の苦い教訓である。つい最近、廃炉作業中の2号機と3号機で、原子炉格納容器の真上にあるフタの部分が高濃度の放射性物質に汚染されていることがわかった。周辺の放射線量は、人間が1時間で死にいたるほど高い。炉心で溶け落ちた核燃料(燃料デブリ)の取り出しについて、原子力規制委員会の更田豊志委員長は「作戦の練り直しが必要になるだろう」と述べた。1~3号機には800~900トンの燃料デブリがあるとみられる。だが、炉内のどこに、どんな形で残っているのか、いまだに全容をつかめていない。新たに見つかった2、3号機の高濃度汚染で、取り出し作業はいっそう難しくなるだろう。以前の工程表は「20~25年後に取り出しを終える」としていたが、いまでは年限が消えてしまった。燃料デブリが残ったままでは、建屋や設備の解体と撤去が進まない。冷却用の注水にともなって高濃度の汚染水が生じ続け、それを浄化した処理水もたまっていく。国と東電の掲げる「30~40年で廃炉完了」は不可能ではないのか、との疑念が膨らむばかりだ。廃炉の終着点が見えないと地元の復興もままなるまい。原発の事故は地域社会を崩壊させ、再構築にはきわめて長い年月がかかる。この悲劇を繰り返すわけにはいかない。
■安全神話は許されぬ
 しかし、7年8カ月にわたった安倍政権をへて、流れは原発回帰へ逆行している。事故の翌年、討論型世論調査などの国民的な議論をへて、当時の民主党政権は「30年代の原発ゼロ」を打ち出した。だが同じ年の暮れに政権を奪還した自公は、さしたる政策論争もなく原発推進に針を戻してしまう。古い原発の廃炉などで20基ほど減ったものの、安倍政権の下で総発電量に占める原発の比率は事故前に近い水準が目標とされた。事故後に設けられた「原発の運転は40年」の原則をよそに、20年延長の特例も相次いで認められている。菅政権はこの路線を継承し、「引き続き最大限活用する」との方針を示している。「原発の依存度を可能な限り低減する」といいつつ、具体策を示さぬまま再稼働を進める。その姿勢は不誠実というほかない。政府は再稼働にあたり、原発の新規制基準は「世界で最も厳しい」と不安の解消に努めてきた。これが新たな安全神話を醸成していないか気がかりだ。電力会社の気の緩みも見すごせない。福島の事故の当事者である東電も、原発中枢部への不正入室を許し、重要施設の耐震性不足の報告を怠るなど、安全に対する姿勢に問題がある。にもかかわらず、産業界を中心に原発への期待は大きい。「原子力はエネルギー自立に欠かせない」「原発の運転期間を80年に延ばすべきだ」。エネルギー基本計画の改定を議論する経済産業省の審議会では、原発推進論が相次いでいる。事故の痛みを忘れたかのようだ。破綻(はたん)した核燃料サイクルまでも「推進してほしい」という要望があることに驚く。使用済み核燃料を再処理してプルトニウムを取り出しても、高速炉の開発が頓挫したため大量消費は望めない。そんななかで核燃料サイクルを進めたら、原爆の材料にもなりうるプルトニウムの保有量が思うように減らず国際的に批判されよう。安全神話の上で国と業界がもたれあう。事故前と変わらぬ構図を解消すべきだ。
■再エネの拡大こそ
 原子力ばかりに力を注いでいては、再生可能エネルギーや水素を柱とした脱炭素時代の技術革新に乗り遅れてしまう。地球温暖化を防ぐには、安全で低コストの再エネを広げるのが筋だ。原発利用は再エネが拡大するまでの一時的なものにとどめ、できるだけ早く脱原発のシナリオを固める必要がある。40年たった原発を引退させ、新増設や建て替えをしない。そう決めれば、おのずと原発ゼロへの道筋は見えてこよう。原子力からの撤退へ向け、着実な一歩を踏み出して初めて、福島第一原発事故の教訓が実を結ぶことになる。

*4-3:https://kahoku.news/articles/20210311khn000047.html (河北新報社説 2021年3月12日) 東日本大震災10年-宮城/農業の可能性を探る好機だ
 東日本大震災の津波で壊滅的な被害を受けた仙台市東部に、豊かな耕土と生産者の力強い営みがよみがえりつつある。災害復旧と区画整理を一体的に進める前例のない国直轄事業により、農地の再生と担い手への集約が破格の規模とスピードで実現した。一連の事業の総仕上げとなる区画整理が完了し、地区の生産基盤は震災前に比べてもより強固になったと言える。大都市として成熟していく仙台圏にふさわしい、多様な農業の可能性を探るチャンスととらえたい。仙台市東部を襲った津波は海岸線から約4キロまで達し、約1800ヘクタールの農地に土砂やがれきが流入した。藩制時代からの美田地帯は、施設の損壊と地盤沈下で排水能力を失い、まるで海水の沼のような無残な姿になった。農地の災害復旧を巡っては当時、除塩の実施や国庫負担率のかさ上げに関する制度がなかった。農林水産省は(1)農地・農業施設の復旧(2)除塩の実施(3)復旧後の区画整理-を継ぎ目なく行うため、土地改良法の特例法案を国会に提出。発災から2カ月足らずで成立した。全ての事業を通じて、約9割を国庫負担とする異例の枠組みだった。特に農地復旧に合わせて順次進められた区画整理は、通常であれば生産者に生じる受益者負担をゼロとし、ためらうことなく、農地の大区画化に応じられる環境を整えた。事業対象は被災を免れた農地を含む約1900ヘクタール。地域営農の方針に沿って高砂、七郷、六郷の三つの換地区に分け、1区画10~30アール規模だった農地を50アール~1ヘクタールに拡大していった。大型機械の導入で作業が効率化される一方、受委託を含む農地集約も進み、コメや野菜を組み合わせた複合経営に取り組む農業法人が相次いで発足。ユニークな戦略で仙台の農業に新たな活力を吹き込む担い手も現れてきた。「仙台井土ねぎ」のブランド化に成果を上げる「井土生産組合」(若林区)や、野菜の生産・販売を通じて食農教育や農福連携など多彩なコミュニティーづくりに挑む「平松農園」(同)などが典型例と言えるだろう。法人への就職が若者の新規就農の窓口として機能し始めたこともあり、担い手の多様化は今後さらに進みそうだ。ただ生産現場では、なかなか回復しない地力や耕作を妨げるがれき片との苦闘が今も続いている。引き続き国や自治体の支援は不可欠だ。コメ需要が減少する中、非主食用米への転換に向けた貯蔵施設の整備や園芸・果樹の振興など関係機関が連携し、知恵を出し合うべき課題も多い。一連の事業には約865億円もの国費が投じられた。私たちは、仙台平野に本来の生産力を取り戻し、多様な価値を産み出す営農モデルを確立する責任を負っていることも自覚しなくてはなるまい。

*4-4:https://mainichi.jp/premier/health/articles/20210310/med/00m/100/010000c?cx_fm=mailhealth&cx_ml=article&cx_mdate=20210313 (毎日新聞 2021年3月11日) 記憶と伝承~東日本大震災から10年  野澤和弘・植草学園大学教授/毎日新聞客員編集委員
 時間とはただ流れ去っていくのではなく、ある場所においては積み重なっていくものだ。1万6000人近い死者、約2500人の行方不明者を出した東日本大震災から10年。目まぐるしく世界は動き、震災の記憶は時とともに風化していく。しかし、いつまでも癒えない傷を抱えて生きている人たちがいる。福島第1原発周辺の7市町村にまたがるエリアは現在も放射線量が高く、住民が住めない帰還困難区域となっている。福島県内外に避難している人は現在も約3万6000人に上る。今の私たちの日常の幸福は、あの日からの連続の上にある。原発の街は傷痕をさらけ出したまま、2021年の日本の風景の中に存在している。
●「黒い湖」の正体
 風に舞う枯れ葉が秋の光にキラキラと輝いていた。福島市から飯舘村を通り山間の県道を南相馬へ。さらに福島第1原子力発電所のある双葉町・大熊町へと向かう。20年11月、南相馬市に住む知人に案内されて被災地を訪ねた。枯れ田に黒い塊が広がっている。晩秋の日を浴びて、黒光りする塊の表面が躍っている。湖面にきらめく波のようだ。県道の右や左の風景に現れるのは、黒いフレコンバッグの山だった。おびただしい数の袋が整然と並べられている。福島第1原発の事故で飛散した放射性物質に汚染された土壌が黒い塊の正体である。放射性セシウムは原発周辺地域の森林や草地、農地を広く汚染した。木々や草に付着した放射性物質は時間とともに次第に下方へ落ちていき、土壌の表層に集積するものもある。土壌では粘土質などが放射性セシウムを吸着するので、雨や雪が降っても、容易には流れないとされる。全国各地から集められた作業員が、放射性物質を含んだ表土を薄くはぎ取る作業を行ってきた。それが「除染」だ。人体に害を及ぼす放射能を含んだ土を取り除き、フレコンバッグに詰めて、住居や農作業をする場所から人里離れた仮置き場に隔離する。薄くはぎ取るといっても、放射性物質が降りそそいだのは広大な地域に及ぶため、はぎ取って集められた土の量は想像をはるかに超える。汚染土を詰めるフレコンバッグはどれだけあっても足りなくなる。当初はあまり人目に付かない場所が仮置き場として指定されたが、すぐにあふれるようになり、県道沿いの目立つ場所にもフレコンバッグの「黒い湖」が次々と現れるようになった。除染を実施する地域は、汚染の程度などによって「除染特別地域」「汚染状況重点調査地域」に指定されている。環境省は、フレコンバッグなどの保管物については17年3月ごろをピークに、仮置き場数については16年12月ごろをピークに、それぞれ減少しているとしている。しかし、避難期間が長びくにつれて、農業を続けることをあきらめる人が増えてきたこともフレコンバッグが人目に付く場所の農地に進出してきた背景にあると思う。先祖から受け継いできた農地ではあるが、農業ができない以上、汚染土の仮置き場として提供することで安定収入を得る方を選ぶ人もいる。農家の人々の無念さや先の見えないことによるあきらめが想起される。仮置き場のフレコンバッグは当初、福島第1原発が立地する双葉町や大熊町の中間貯蔵施設へと搬出されることになっていたが、地権者との用地交渉が難航して搬出は進んでいないものもあるという。雨風に長期間さらされているとバッグが傷み、汚染水が外部へ漏れることも懸念されている。実際、環境省の調査では福島県内の市町村が管理する仮置き場の半数以上でフレコンバッグやバッグを覆う防水シートの破損が見つかった。耐性の劣るバッグの方が安いために業者に選ばれているとの指摘もある。除染作業だけでも3兆円以上が投じられている。元請け・下請け・孫請けを通じて法外な費用が吸い取られていく「除染ビジネス」には灰色のうわさが絶えない。財務省と復興庁は7省庁が管轄する全国向けの23事業に配分された総額1兆1570億円の基金が被災地と関係の薄い使途にも充てられているとして返還を請求しているが、除染のような復興に直接関係している作業にも一般国民にはわかりにくいさまざまな利権が存在することをうかがわせる。人の気配が消えた農村の風景に広がっていく黒い塊は、故郷を追われた人々の不安や絶望をのみ込んで膨れ上がる「復興」という巨大事業の実像を暗示しているようだ。
●何を伝承しようとしているか
 東京電力福島第1原発から北へ3キロほど離れたところに「東日本大震災・原子力災害伝承館」(双葉町)は建てられた。20年9月に開館したばかりで、真新しい建物の駐車場に大型観光バスが数台止まっていた。この伝承館は福島県が建設し、指定管理者の公益財団法人「福島イノベーション・コースト構想推進機構」が運営している。総工費は約53億円、全額が国の交付金で賄われた。地上3階建て、延べ床面積約5300平方メートル。震災や原発事故関連の資料約24万点を所蔵し、うち約170点が展示されている。「原子力発電所事故後の避難、避難生活の変遷、国内外からの注目など、原子力発電所事故発生直後の状況やその特殊性を、証言などをもとに振り返ります」とホームページにはうたわれている。ガラス張りの外壁の建物に入ると、1階の左手にドーム形をした天井の高いスペースがある。展示の導入部として、震災前の地域の生活、地震と津波、原発事故の発生から住民避難、復興や廃炉に向けた取り組みに関する映像が、床面を含めた7面のスクリーンに映し出される。日曜日のわりには見学客の姿はまばらだ。最新の技術が詰め込まれている設備の印象ばかりが浮き上がって感じられる。展示スペースには、子どもたちのランドセル、学級新聞、消防服などが写真とともに並べられている。「震災前の平穏な日常が原発事故を機にどのように変わってしまったのか、さまざまな県民の思いを、証言や思い出の品などの展示を組み合わせて発信している」という。原発事故の悲惨さや放射能の恐ろしさについても解説するコーナーはあるが、進路を行くに従って「困難を乗り越えて復興に挑戦する福島県」にスポットを当てた展示物や説明が目立つようになる。廃炉作業の進捗(しんちょく)状況や福島イノベーション・コースト構想については特に力を入れてPRしていることが伝わってくる。伝承館を運営する公益財団法人の名前にもなっている「福島イノベーション・コースト構想」とは、東日本大震災や原発事故で失われた浜通り地域などの産業を回復する巨大事業だ。廃炉、ロボット、エネルギー、農林水産などの分野におけるプロジェクトの具体化を進め、産業集積や人材育成、交流人口の拡大などに取り組むという。原発事故で大きな打撃を受けた福島県のイメージを一新しようという思惑が痛いほど伝わってくる。同館には30人近い語り部がいる。自らの被災体験を見学者に語る役割を担っている。被災した地域に出向くフィールドワークと並ぶ、伝承館ならではの取り組みと言える。ただ、案内をしてくれた地元の住人は顔を曇らせる。「国や県に批判的なことを言わないように監視されている。それで本当の被災体験を伝承することになるのか」というのである。語り部が話す内容を「監視」するとは穏やかなことではない。行政に対する不信感の根強さが地元で暮らす人々にそう思わせるのだろうか。しかし、「県が語り部に、国や東電など特定の団体への批判や中傷をしないよう求め、話す内容も事前にチェックして修正してもらっている」という報道(20年11月4日、東京新聞)もある。福島から県外へ避難している住民たちが国や東電を相手に損害賠償を求める訴訟が各地で起きており、訴訟への影響を考慮してのことかもしれない。全額を国の交付金で建てられた施設であり、運営する側が細かいところまで神経を使うのもわからなくはない。しかし、未曽有の原発事故による被害の甚大さを伝承するのに、大事なものを忘れてはいないか。大震災と津波は避けられなかったかもしれない。不幸な運命にめぐり合わせたが、「困難を乗り越えて挑戦する」。そういう福島県の人々や行政の姿を伝承しようというのだろうか。それも必要かもしれないが、その前に伝えなければならないものがある。「教訓が分からなかった」「何を伝えたいのかよく分からない」。ロビーのノートには来館者の厳しい意見が書き込まれている。2月末までに約3万7000人が訪れたというが、福島の事情を知る人々からは批判的な意見が聞かれる。国会事故調査委員会などが「人災」と結論づけた原発事故についての国や県、東電の責任に関する説明がほぼないからだ。放射性物質の拡散方向を予測する「緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム(SPEEDI)」について、データが政府から届きながら県が削除して市町村に伝えず、放射線量の高い方向へ住民を避難誘導した自治体があることにも触れていない。「SPEEDIの取り扱いを明確に定めたものはなく、情報を共有できませんでした」との記述があるだけだった。同館を建設した県が自らの責任を覆い隠すような姿勢に批判はやまず、震災から10年を前にした今月初め、県は約30カ所で資料の追加や展示パネルの差し替えをすると発表した。SPEEDIの不手際についても国会事故調査委員会の報告を基に認めることになった。
●国と東京電力の責任
 昨年11月に伝承館を訪れた当時、私が展示のコンセプトに何か引っかかりを感じたのは、その1カ月前、仙台高等裁判所で福島第1原発事故での国の損害賠償を認める判決が出たからかもしれない。 全国で起こされている約30の集団訴訟のうち、国に損害賠償を命じた全国初の2審判決だった。福島地裁での1審判決に続いて国と東京電力の主張を退け、賠償額は総額約10億1000万円と、第1審の約5億円から倍増したことが特筆される。この訴訟で東京電力が問われたのは、原発の全電源喪失を引き起こして原子炉の冷却を不能にする津波の予見可能性および重大事故を回避できたかどうかだ。判決では、国の地震調査研究推進本部が02年7月に策定した日本海溝沿いの地震の可能性に関する「長期評価」に基づき、遅くとも同年末ごろまでには福島第1原発の原子炉の敷地の高さを超える津波が到来する可能性について東電が認識できたはずだと判断した。必要な対策を講じていれば、浸水による非常用ディーゼル発電機や配電盤など重要機器の機能喪失を防げた可能性が高いにもかかわらず、東電が対策を怠っていたことを重く見たのである。東電の安全対策義務違反の程度が決して軽微とは言えず、対策を怠ったことが「原告に対する慰謝料算定に当たって考慮すべき要素の一つとなる」として、原子力損害賠償法で定められた無過失責任原則に基づく中間指針や東電の自主賠償基準に基づく金額よりも損害賠償額を上積みし、1審判決の2倍の賠償額の支払いを命じたのだ。国に対しては、電気事業法などの法令に基づき必要な規制権限を行使せず、事故防止の努力を怠った点を「違法」だと認定した。「保安院(旧原子力安全・保安院)の対応は……東電による不誠実ともいえる報告を唯々諾々と受け入れることとなったものであり、規制当局に期待される役割を果たさなかったものと言わざるをえない」。1審は国の責任について東電の2分の1と判断したが、仙台高裁は国に東電と等しい賠償義務を認定した。「一般に営利企業たる原子力事業者においては、利益を重視するあまり、ややもすれば費用を要する安全対策を怠る方向に向かいがちな傾向が生じることは否定できないから、規制当局としては原子力事業者にそうした傾向が生じていないかを不断に注視しつつ、安全寄りの指導、規制をしていくことが期待されていたというべきであって、上記対応は規制当局の姿勢として不十分なものであったとの批判を免れない」。仙台高裁の訴訟の原告は約3650人にのぼる。最大規模の訴訟でもあり、ほかの訴訟へ与える影響も大きいとされた。事実、21年2月に千葉県に避難した住民らによる訴訟の東京高裁判決は「対策を取れば事故に至らなかった。国の規制権限不行使は違法」として、国に東電と同等の責任があると認定した。東電に計約2億7800万円の賠償を命じ、控訴審での請求額に応じ、このうち約1億3500万円は国も連帯して支払うべきだとした。1審の千葉地裁は国の責任を認めておらず、原告の逆転勝訴となった。国が被告となった避難者訴訟の高裁判決は3件目。国の責任を認める判断は、仙台高裁に続き2件目となった。
●揺らぎ、消えていく記憶
 大震災と津波は避けられなかったが、福島第1原発の爆発事故は安全対策を怠った東電の怠慢と、それをチェックしなかった国の背信行為によってもたらされた。多くの命が失われ、人々が故郷をなくした東電と国の責任は重大だ――。仙台高裁の判決はそう言っているのである。「東日本大震災・原子力災害伝承館」は、被害の実態と回復の過程について伝承はしているが、それが何で起きたのかということは抜け落ちていると思う。原発事故の原因に関する展示や説明を避けているというだけでなく、「語り部の口をふさぐ」という指摘においては覆い隠していることになる。仙台高裁やそれに続く東京高裁の判決の文脈に従えば、国や東電は原発事故を防ぐことができなかった(引き起こした)加害者であり、原発事故によって被災した語り部は被害者にほかならない。全額を国の交付金で建設された伝承館という「装置」には、理不尽な構造が潜んでいるように感じられてならない。人は誰しも過去からの連続した記憶によって自らのアイデンティティー(存在証明)を保っている。揺らいだり、薄れたり、変容したりする、蜃気楼(しんきろう)のような不確かさをかろうじて形にして残すのが言葉や文字である。原発事故で原告団に加わった被災者は年を経るにつれて亡くなっていく。語り部たちも減っていき、いずれは誰もいなくなる。原発事故の地獄を体験した生々しい記憶は語り伝えておかなければ、歴史のかなたへと消えていく。今のうちに被災した人々の記憶をありのまま残していかなければならないと思う。
●場所と記憶
 晩秋の日が静かにあるじのいない家屋に注いでいる。誰かに見られるということもなく10年もの歳月をただ太陽に焼かれて過ごしてきたのだ。戸を閉め、シャッターを下ろす余裕もなかったのだろう。洋品店はガラス戸が開いたまま、商品が店内にぎっしりと陳列されている。消防署分署の事務所は戸が開け放たれ、中には机やいすが雑然と置かれたままになっていた。ソファの表面を白いちりが覆っている。オープンしたばかりの伝承館の周辺を歩くと、10年前の震災の日のままの姿で家屋や店舗が残っていた。薬局もガソリンスタンドも、そこに人がいないというだけで、何かの拍子に止まっていた時が動き出しそうな気がしてくる。どんな傷も時間が立てば血が乾き、色が変わり、かさぶたとなるものだが、むき出しのまま変わることのない傷が目の前にある。印画紙に焼き付けた写真ならセピア色にもなろう。しかし、かつての平穏な日常は腐食して骨になることも、朽ち果てることも許されず、無残なままさらけ出されている。住みなれた家の戸を閉める余裕すらなく逃げていかざるを得なかった人々の慟哭(どうこく)が聞こえてきそうだ。個々の被災者の救済について仙台高裁の判決が大きく踏み込んだのは、この街の風景と関係している。同高裁判決は「帰還困難区域」や「旧居住制限区域」、「旧避難指示解除準備区域」など原発から近い旧避難指示区域に住居があった原告への損害賠償額について、国の中間指針や東電の自主賠償基準を超える損害額を認めた。裁判の過程で、裁判長が「現地進行協議」と称して帰還困難区域や旧居住制限区域の現状を視察したことが大きく影響したといわれる。荒廃した家屋や元に戻らない生活の実態を裁判長が自らの目で確認したことが賠償額の上積みにつながったというのである。避難指示が出なかった地域に住んでいた子どもや妊婦の原告について新たに損害を認定したのも、今回の高裁判決の特徴とされる。「過去は流れ去ってしまうのではなく、現在のうちに積み重なり保持されている」。哲学や社会学の領域では19世紀のころからそのような時間と記憶をめぐる考え方がある。E・フッサールやM・アルバックスらが提唱している。過去は空間のうちに痕跡として刻まれ、その痕跡を通して集合的に保持される。時間が場所と結びつき、記憶が空間と結びつく。「そこに近代的な時間と空間の理解とは異なる<記憶と場所>という時間と空間のあり方が見いだされる」。福島県出身の社会学者、浜日出夫・慶応大名誉教授は論文でそう述べている。風の音すら聞こえない街に立ち尽くしていると、どこからともなく恐怖が忍び寄ってくるのを感じた。「復興に挑戦する」という掛け声のかなたに忘れ去ってきた街に対するやましさなのか、被災者の記憶を封じ込めてきた後ろめたさなのか。そうしたことに気づかず安穏とこの10年を生きてきた自分自身の無為からくるおびえなのかもしれないと思った。置き去りにされた街の「場の記憶」が、ここを訪れた裁判長の心証に大きな影響を与えたに違いない。
●「そこにある事実」を見よう
 政府は13年までに原発事故に伴う避難指示区域(福島県の11市町村の計1150平方キロ)を被ばく線量に応じて再編し、「避難指示解除準備区域」「居住制限区域」「帰還困難区域」の三つに分けた。比較的線量が低い「避難指示解除準備区域」や「居住制限区域」を対象に優先的な除染作業が進められ、これまでに避難指示を解除してきた。現在残っているのは「帰還困難区域」だが、面積は337平方キロと広い。17年に成立した改正福島復興再生特別措置法では、帰還困難区域の8%にあたるエリアを復興拠点とし、除染やインフラ整備に乗り出すことになった。だが、復興拠点以外は避難指示解除の時期が見通せず、帰還困難区域の避難者は今も2万人を超える。毎日新聞と社会調査研究センターが今月実施した全国世論調査では、被災地の復興状況について、「復興は順調に進んでいる」と答えた人は20%にとどまり、国民の被災地に対する関心について「薄れた」と感じる人は79%に上った。県別では福島が84%で、宮城や岩手に比べても高かった。どんな出来事も時間とともに生々しい記憶は薄れ、忘れ去られることは避けられない。しかし、先人たちが後世に残そうとしてきたものがあり、今私たちはそれを「歴史」として知ることができている。自らの存在に永続性を求める本能かもしれないし、教訓を語り継ぐ使命感のようなものが人間には備わっているのかもしれない。いずれにせよ、伝承はどんなものであれ、伝えようとする側の意図や感情が込められる。文章でも口伝えでも映像でも。展示物でさえ、どこにどのように展示するかで、伝える側の価値観が反映される。そうした思惑や意味づけから免れているのは、「そこにある事実」だけだ。あらゆる思想性や価値観に染められるのを拒み、福島第1原発の周辺の街は時のなかにたたずんでいる。そこに足を踏み入れた人の想像力と感受性に、自らの存在する意味を投げ出しているように思えてくる。
●そこにある事実を見よう。
 巨額の復興費用を投じて建設された伝承館が何を伝えようとしているのか、置き去りにされてきた街が無言のうちに何を物語ろうとしているのかを考えよう。時間とはただ流れ去っていくだけではない。場に積み重なっていくものでもある。場の記憶」が何か質感を持ったエネルギーとなって、その場を訪れた人の感性に働きかけてくるものがあるはずだ。

*4-5:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20210314&ng=DGKKZO69965090T10C21A3EA1000 (日経新聞 2021.3.14) 大地震想定海域を探査 東北大など無人船、地殻変動を観測 予兆つかみ備え厚く
 巨大地震を捉える調査や観測が本格化する。東北北部・北海道沖の海底は、東日本大震災で地震が起こらず、ひずみがたまって巨大地震が発生しやすいといわれる。東北大学などは無人船で予兆を探る観測調査を4月に始める。防災科学技術研究所も、被害が甚大になると懸念される南海トラフ巨大地震の発生を瞬時につかむ海底観測網の整備に着手した。日本周辺でリスクが高まる大地震への備えを加速する。内閣府の有識者会議は20年に、複数の巨大地震の発生が、日本海溝と千島海溝がある東北北部・北海道沖で「切迫している」とする想定を発表した。過去の記録などから、同地域で将来発生する地震の規模として、日本海溝の北海道沖でマグニチュード(M)9.1、千島海溝の十勝・根室沖でM9.3と想定している。いずれも東日本大震災級の大きさで、30メートル級の津波がくる地域もあると予想されている。宮城県沖が震源だった東日本大震災では、岩手県沖より北の日本海溝で断層がずれなかったため「割れ残り」と呼ぶ状態でひずみが蓄積し、巨大地震が発生しやすいとされる。地震発生前の一定期間には、海底の地殻が平時とは違う動きをすると考えられているが、具体的なデータがほとんど取れていなかった。東北大の日野亮太教授らは、無人で海底の様子を探るシステムを開発した。米ボーイング子会社の無人探査船「ウエーブグライダー」に小型装置を搭載。海底のセンサーに向けて音波を出して、海底プレートの位置の変動を把握する。地震はプレートが大きくずれて引き起こされることが多く、長期観測で地震の前触れとなる「異常」な動きを探る。初回は、4月2日に北海道根室市沖で探査船を放流して千島海溝を観測した後、南下して岩手県沖などの日本海溝を観測する。5月半ばに宮城県沖で回収する。2回目は10月にも実施し、以降継続する計画だ。無人観測船は、太陽電池で機器のエネルギーをまかなうことから、観測コストを10分の1以下に抑えられる。数カ月間連続で観測もできる。日野教授は「平時のデータを集め、異常の兆候をすぐに観測できるようにしたい」と話す。一方、防災科研は、南海トラフ巨大地震の発生を瞬時に捉えるため、海底域の観測網を拡充する。想定される震源域の西側がこれまでは観測できていない空白域であることから「南海トラフ海底地震津波観測網(N-net)」の工事に着手した。高知県沖から日向灘にかけて地震計や津波計を組み込んだ総延長1600キロメートルの光海底ケーブルで結んだ観測システムを敷設する。23年度に完成させ運用する予定だ。N-netの構築によって震源により近い海底で揺れを捉えられるため、地震は最大で20秒、津波は20分、それぞれ従来よりも早く検知できることを見込む。即時に気象庁に伝送し、緊急地震速報や津波警報に活用する計画だ。防災科研の青井真・地震津波火山ネットワークセンター長は「巨大地震が起きた時に迅速に適切な防災情報を出せる社会を目指す」と話す。

<観光の高度化:観光ルートへの歴史の織り込み>
*5-1:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/634077 (佐賀新聞 2021/2/17) <運行情報>JR筑肥線の一部区間で運転を見合わせ
 JR九州によると、断続的な強風で、17日午前8時ごろ、JR筑肥線の加布里―筑前深江間で風規制を行っている影響で、筑前前原―筑前深江間の上下線で運転を見合わせている。また、筑前深江―西唐津間では遅れが発生している。

*5-2:http://www.eonet.ne.jp/~temb/16/gishi_wajin/wajin.htm 魏志倭人伝(原文、書き下し文、現代語訳)、解説は「魏志倭人伝から見える日本」へ、(百衲本。国名や官名は漢音で読む) より編集
①倭人在帶方東南大海之中 依山㠀為國邑 舊百餘國 漢時有朝見者 今使譯所通三十國  「倭人は帯方東南、大海の中に在り。山島に依り国邑を為す。旧百余国。漢の時、朝見する者有り。今、使訳通ずる所は三十国。」
 倭人は帯方郡の東南、大海の中に在る。山島に依って国邑を作っている。昔は百余国あり、漢の時、朝見する者がいた。今、交流の可能な国は三十国である。
②從郡至倭 循海岸水行 歴韓国 乍南乍東 到其北岸狗邪韓國 七千餘里  「郡より倭に至るには、海岸に循いて水行し、韓国を歴て、たちまち南し、たちまち東し、その北岸、狗邪韓国に到る。七千余里。」
(帯方)郡から倭に至るには、海岸に沿って水行し、韓国を通り過ぎ、南へ行ったかと思うと、いきなり東へ行ったりしを繰り返しながら、その(=倭の)北岸の狗邪韓国に到着する。七千余里。
③始度一海 千餘里 至對海國 其大官日卑狗 副日卑奴母離 所居絶㠀 方可四百餘里 土地山險多深林 道路如禽鹿徑 有千餘戸 無良田食海物自活 乗船南北市糴  「始めて一海を度る。千余里。対海国に至る。その大官は卑狗と曰い、副は卑奴母離と曰う。居する所は絶島、方四百余里ばかり。土地は山険しく深林多し。道路は禽鹿の径の如し。千余戸有り。良田無く、海物を食し自活す。船に乗り、南北に市糴す。」
 始めて一海を渡り、千余里で対海国に至る。その大官はヒコウといい、副官はヒドボリという。居する所は絶海の孤島で、およそ四百余里四方。土地は、山が険しくて深い林が多く、道路は鳥や鹿の道のようである。千余戸の家がある。良田はなく海産物を食べて自活している。船に乗って南や北(九州や韓国)へ行き、商いして米を買い入れている。
④又南渡一海 千餘里 名日瀚海 至一大國 官亦日卑狗 副日卑奴母離 方可三百里 多竹木叢林 有三千許家 差有田地 耕田猶不足食 亦南北市糴  「又、南、一海を渡る。千余里。名は瀚海と曰う。一大国に至る。官は亦た卑狗と曰い、副は卑奴母離と曰う。方三百里ばかり。竹木叢林多し。三千ばかりの家有り。やや田地有り。田を耕すも、なお食するに足らず。亦、南北に市糴す。」
 また(さらに)、南に一海を渡る。千余里。名はカン海という。一大国に至る。官は、また(対海国と同じく)、ヒコウといい、副はヒドボリという。およそ三百里四方。竹、木、草むら、林が多い。三千ばかりの家がある。いくらかの田地がある。田を耕しても、やはり、住民を養うには足りないので、また(対海国と同じく)、南北に行き、商いして米を買い入れている。
⑤又渡一海 千餘里 至末盧國 有四千餘戸 濱山海居 草木茂盛行不見前人 好捕魚鰒 水無深淺皆沉没取之  「又、一海を渡る。千余里。末盧国に至る。四千余戸有り。山海に浜して居す。草木茂盛し、行くに前人を見ず。魚鰒を捕るを好み、水、深浅無く、皆、沈没してこれを取る。」
 また、一海を渡る。千余里。末盧国に至る。四千余戸があり、山と海すれすれに沿って住んでいる。草木が盛んに茂り、行く時、前の人が(草木に隠されて)見えない。魚やアワビを捕ることが好きで、水の深浅にかかわらず、みな、水に潜ってこれを取っている。
⑥東南陸行 五百里 到伊都國 官日爾支 副日泄謨觚柄渠觚 有千餘戸 丗有王 皆統屬女王國 郡使往來常所駐  「東南陸行。五百里。伊都国に到る。官は爾支といい、副は泄謨觚、柄渠觚という。千余戸有り。世、王有り。皆、女王国に統属す。郡使往来し常に駐する所。」
 (末盧国から)東南に陸上を五百里行くと伊都国に到着する。官はジシといい、副はエイボコ、ヘイキョコという。千余戸が有る。代々、王が有り、みな女王国に従属している。(帯方)郡の使者が往来し、常に足を止める所である。
⑦東南至奴国 百里 官日兕馬觚 副日卑奴母離 有二萬餘戸  「東南、奴国に至る。百里。官は兕馬觚と曰い、副は卑奴母離と曰う。二万余戸有り。」
 (伊都国から)東南、奴国に至る。百里。官はシバコといい、副はヒドボリという。二万余戸が有る。
⑧東行至不彌國 百里 官日多模 副日卑奴母離 有千餘家  「東行、不弥国に至る。百里。官は多摸と曰い、副は卑奴母離と曰う。千余家有り。」
 (奴国から)東に行き不弥国に至る。百里。官はタボといい、副官はヒドボリという。千余りの家がある。
⑨南至投馬國 水行二十日 官日彌彌 副日彌彌那利 可五萬餘戸  「南、投馬国に至る。水行二十日。官は弥弥と曰い、副は弥弥那利と曰う。五万余戸ばかり。」
 (不弥国から)南、投馬国に至る。水行二十日。官はビビといい、副はビビダリという。およそ五万余戸。
⑩南至邪馬壹國 女王之所都 水行十日陸行一月 官有伊支馬 次日彌馬升 次日彌馬獲支 次日奴佳鞮 可七萬餘戸  「南、邪馬壱国に至る。女王の都とする所。水行十日、陸行一月。官は伊支馬有り。次は弥馬升と曰う。次は弥馬獲支と曰う。次は奴佳鞮と曰う。七万余戸ばかり。」
 (投馬国から)南、邪馬壱(ヤバヰ)国に至る。女王の都である。水行十日、陸行ひと月。官にイシバがある。次はビバショウといい、次はビバクワシといい、次はドカテイという。およそ七万余戸。
⑪自女王國以北 其戸數道里可得略載 其餘旁國遠絶 不可得詳 次有斯馬國 次有巳百支國 次有伊邪國 次有都支國 次有彌奴國 次有好古都國 次有不呼國 次有姐奴國 次有對蘇國 次有蘇奴國 次有呼邑國 次有華奴蘇奴國 次有鬼國 次有為吾國 次有鬼奴國 次有邪馬國 次有躬臣國 次有巴利國 次有支惟國 次有烏奴國 次有奴國 此女王境界所盡  「女王国より以北、その戸数、道里は略載を得べきも、その余の旁国は遠くして絶へ、詳を得べからず。次に斯馬国有り。次に巳百支国有り。次に伊邪国有り。次都支国有り。次に弥奴国有り。次に好古都国有り。次に不呼国有り。次に姐奴国有り。次に対蘇国有り。次に蘇奴国有り。次に呼邑国有り。次に華奴蘇奴国有り。次に鬼国有り。次に為吾国有り。次に鬼奴国有り。次に邪馬国有り。次に躬臣国有り。次に巴利国有り。次に支惟国有り。次に烏奴国有り。次に奴國有り。ここは女王の境界尽きる所。」
 (ここまでに紹介した)女王国より以北は、その戸数や距離のだいたいのところを記載出来るが、その他のかたわらの国は遠くて情報もなく、詳しく知ることは出来ない。次にシバ国が有る。次にシハクシ国がある。次にイヤ国がある。次にトシ国がある。次にミド国がある。次にカウコト国がある。次にフウコ国がある。次にシャド国がある。次にタイソ国がある。次にソド国がある。次にコイフ国がある。次にカドソド国がある。次にキ国がある。次にヰゴ国がある。次にキド国がある。次にヤバ国がある。次にキュウシン国がある。次にハリ国がある。次にシユイ国がある。次にヲド国がある。次にド国がある。ここは女王の境界の尽きる所である。
⑫其南有狗奴國 男子為王 其官有狗古智卑狗 不屬女王 自郡至女王國 萬二千餘里  「その南、狗奴国有り。男子が王と為る。その官は狗古智卑狗有り。女王に属さず。郡より女王国に至る。万二千余里。」
 その(女王国の)南に狗奴(コウド、コウドゥ)国があり、男子が王になっている。その官に狗古智卑狗(コウコチヒコウ)がある。女王には属していない。郡より女王国に至るまで、万二千余里。
男子無大小 皆黥面文身 自古以來 其使詣中國 皆自稱大夫 夏后少康之子封於會稽 斷髪文身 以避蛟龍之害 今 倭水人好沉没捕魚蛤 文身亦以厭大魚水禽 後稍以為飾 諸國文身各異 或左或右 或大或小 尊卑有差 計其道里 當在會稽東治之東(東治は東冶の転写間違いと考える)  「男子は大小無く、皆、黥面文身す。古より以来、その使中国に詣(いた)るや、皆、自ら大夫と称す。夏后少康の子は会稽に封ぜられ、断髪文身して、以って蛟龍の害を避く。今、倭の水人は沈没して魚、蛤を捕るを好み、文身は、亦、以って大魚、水禽を厭(はら)う。後、稍(しだい)に以って飾と為る。諸国の文身は各(それぞれ)に異なり、或いは左し、或いは右し、或いは大に、或いは小に。尊卑差有り。その道里を計るに、まさに会稽、東冶の東に在るべし。」
 男子はおとな、子供の区別無く、みな顔と体に入れ墨している。いにしえより以来、その使者が中国に来たときには、みな自ら大夫と称した。夏后(王朝)の少康(五代目の王)の子は、会稽に領地を与えられると、髪を切り、体に入れ墨して蛟龍の害を避けた。今、倭の水人は、沈没して魚や蛤を捕ることを好み、入れ墨はまた(少康の子と同様に)大魚や水鳥を追い払うためであったが、後にはしだいに飾りとなった。諸国の入れ墨はそれぞれ異なって、左にあったり、右にあったり、大きかったり、小さかったり、身分の尊卑によっても違いがある。その(女王国までの)道のりを計算すると、まさに(中国の)会稽から東冶にかけての東にある。
⑬其風俗不淫 男子皆露紒 以木緜招頭 其衣横幅 但結束相連略無縫 婦人被髪屈紒 作衣如單被 穿其中央貫頭衣之  「その風俗は淫ならず。男子は、皆、露紒し、木綿を以って頭を招(しば)る。その衣は横幅、ただ結束して相連ね、ほぼ縫うこと無し。婦人は被髪屈紒す。衣を作ること単被の如し。その中央を穿ち、頭を貫きてこれを衣る。」
 その風俗はみだらではない。男子は皆、(何もかぶらず)結った髪を露出しており、木綿で頭を縛り付けている。その着物は横幅が有り、ただ結び付けてつなげているだけで、ほとんど縫っていない。婦人はおでこを髪で覆い(=おかっぱ風)、折り曲げて結っている。上敷きのような衣をつくり、その中央に穴をあけ、そこに頭を入れて着ている。
⑭種禾稻紵麻 蠶桑 緝績出細紵縑緜 其地無牛馬虎豹羊鵲 兵用矛盾木弓 木弓短下長上 竹箭或鐵鏃或骨鏃 所有無與儋耳朱崖同  「禾稲、紵麻を種(う)え、蚕桑す。緝績して細紵、縑、緜を出す。その地には牛、馬、虎、豹、羊、鵲無し。兵は矛、盾、木弓を用いる。木弓は下を短く、上を長くす。竹箭は或いは鉄鏃、或いは骨鏃。有無する所は儋耳、朱崖と同じ。」
 稲やカラムシを栽培し、養蚕する。紡いで目の細かいカラムシの布やカトリ絹、絹綿を生産している。その土地には牛、馬、虎、豹、羊、カササギがいない。兵器には矛、盾、木の弓を用いる。木の弓は下が短く上が長い。竹の矢は鉄のヤジリであったり、骨のヤジリであったり。持っている物、いない物は儋耳、朱崖(=中国・海南島)と同じである。
⑮倭地温暖 冬夏食生菜 皆徒跣 有屋室 父母兄弟卧息異處 以朱丹塗其身體 如中國用粉也 食飲用籩豆 手食  「倭地は温暖にして、冬夏生菜を食す。皆、徒跣。屋室有り。父母、兄弟は異所に臥息す。朱丹を以ってその身体に塗る。中国の紛を用いるが如し。食、飲には籩豆を用い、手食す。」
 倭地は温暖で、冬でも夏でも生野菜を食べている。みな裸足である。屋根、部屋がある。父母と兄弟(男子)は別の場所で寝たり休んだりする。赤い顔料をその体に塗るが、それは中国で粉おしろいを使うようなものである。食飲には、籩(ヘン、竹を編んだ高坏)や豆(木をくり抜いた高坏)を用い、手づかみで食べる。
⑯其死有棺無槨 封土作冢 始死停喪十餘日 當時不食肉 喪主哭泣 他人就歌舞飲酒 已葬 擧家詣水中澡浴 以如練沐  「その死には、棺有りて槨無し。土で封じ冢を作る。始め、死して喪にとどまること十余日。当時は肉を食さず、喪主は哭泣し、他人は歌舞、飲酒に就く。已に葬るや、家を挙げて水中に詣(いた)り澡浴す。以って練沐の如し。」
 人が死ぬと、棺に収めるが、(その外側の入れ物である)槨はない。土で封じて盛った墓を造る。始め、死ぬと死体を埋めないで殯(かりもがり)する期間は十余日。その間は肉を食べず、喪主は泣き叫び、他人は歌い踊って酒を飲む。埋葬が終わると一家そろって水の中に入り、洗ったり浴びたりする。それは(白い絹の喪服を着て沐浴する)中国の練沐のようなものである。
⑰其行來渡海詣中國 恒使一人不梳頭不去蟣蝨衣服垢汚不食肉不近婦人如喪人 名之為持衰 若行者吉善 共顧其生口財物 若有疾病遭暴害 便欲殺之 謂其持衰不謹  「その行来、渡海し中国に詣るに、恒に一人をして、頭を梳らず、蟣蝨を去らず、衣服は垢汚し、肉を食らわず、婦人を近づけず、喪人の如くせしむ。これを名づけて持衰と為す。若し、行く者に吉善ならば、共にその生口、財物を顧す。若し、疾病が有り、暴害に遭うならば、便(すなわ)ち、これを殺さんと欲す。その持衰が謹まずと謂う。」
 その行き来し海を渡って中国にいたる際は、常に一人に、頭をくしけずらせず、シラミを取らせず、衣服をアカで汚したままにさせ、肉を食べさせず、婦人を近づけさせないで喪中の人のようにさせる。これをジサイという。もし無事に行けたなら、皆でジサイに生口や財物を対価として与えるが、もし病気になったり、危険な目にあったりすると、これを殺そうとする。そのジサイが慎まなかったというのである。
⑱出真珠青玉 其山有丹 其木有枏杼橡樟楺櫪投橿烏號楓香 其竹篠簳桃支 有薑橘椒襄荷 不知以為滋味 有獮猴黒雉  「真珠、青玉を出す。その山には丹有り。その木には枏、杼、橡、樟、楺櫪、投橿、烏號、楓香有り。その竹は篠、簳、桃支。薑、橘、椒、襄荷有り。以って滋味と為すを知らず。獮猴、黒雉有り。」
 真珠や青玉を産出する。その山には丹がある。その木はタブノキ(枏=楠)、コナラ(杼)、クロモジ(橡)、クスノキ(樟)、?(楺櫪)、?(投橿)、ヤマグワ(烏號)、フウ(楓香)がある。その竹はササ(篠)、ヤダケ(簳)、真竹?(桃支)。ショウガや橘、山椒、茗荷などがあるが、(それを使って)うまみを出すことを知らない。アカゲ猿や黒雉がいる。
⑲其俗 擧事行來 有所云為 輒灼骨而卜 以占吉凶 先告所卜 其辭如令龜法 視火坼占兆  「その俗、挙事行来、云為する所有れば、すなわち骨を灼いて卜し、以って吉凶を占う。先に卜する所を告げる。その辞は令亀法の如し。火坼を視て兆しを占う。」  その風俗では、何かをする時や、何処かへ行き来する時、ひっかかりがあると、すぐに骨を焼いて卜し、吉凶を占う。先に卜する目的を告げるが、その言葉は中国の占いである令亀法に似ている。火によって出来た裂け目を見て、兆しを占うのである。
⑳其會同坐起 父子男女無別 人性嗜酒  「その会同、坐起では、父子、男女は別無し。人性は酒を嗜む。」
 その会合での立ち居振る舞いに、父子や男女の区別はない。人は酒を好む性質がある。
㉑(裴松之)注…魏略曰 其俗不知正歳四節 但計春耕秋収 為年紀  「魏略(*)いわく、その習俗では正月(陰暦)や四節を知らない。ただ春に耕し、秋に収穫したことを数えて年紀としている。」《*/「魏略」…魏の歴史を記した書、現存しない》
㉒見大人所敬 但搏手以當跪拝 其人寿考 或百年或八九十年  「大人を見て敬する所は、ただ搏手し、以って跪拝に当てる。その人は寿考、或いは百年、或いは八、九十年。」
 大人を見て敬意を表す場合は、ただ手をたたくのみで、跪いて拝む代わりとしている。人々は長寿で或いは百歳、或いは八、九十歳の者もいる。
㉓其俗国大人皆四五婦 下戸或二三婦 婦人不淫不妬忌 不盗竊少諍訟 其犯法 軽者没其妻子 重者没其門戸及宗族 尊卑各有差序足相臣服  「その俗、国の大人は、皆、四、五婦。下戸は或いは、二、三婦。婦人は淫せず、妬忌せず。盗窃せず、諍訟少なし。その法を犯すに、軽者はその妻子を没し、重者はその門戸、宗族を没す。尊卑は各(それぞれ)差序有りて、相臣服して足る。」
 その習俗では、国の大人はみな四、五人の妻を持ち、下戸でも二、三人の妻を持つ場合がある。婦人は貞節で嫉妬しない。窃盗せず、訴えごとも少ない。その法を犯すと軽いものは妻子を没し(奴隷とし)、重いものはその一家や一族を没する。尊卑にはそれぞれ差や序列があり、上の者に臣服して保たれている。
㉔収租賦有邸閣 國國有市 交易有無 使大倭監之  「租賦を収め、邸閣有り。国国は市有りて、有無を交易す。大倭をして之を監せしむ。」
 租税を収め、高床の大倉庫がある。国々に市があって有無を交易し、大倭にこれを監督させている。
㉕自女王國以北 特置一大率檢察 諸國畏憚之 常治伊都國 於國中有如刺史 王遣使詣京都帶方郡諸韓國及郡使倭國 皆臨津捜露 傳送文書賜遺之物詣女王 不得差錯  「女王国より以北は、特に一大率を置き検察し、諸国はこれを畏憚す。常に伊都国に治す。国中に於ける刺史の如く有り。王が使を遣わし、京都、帯方郡、諸韓国に詣らす、及び郡が倭国に使するに、皆、津に臨みて捜露す。文書、賜遺の物を伝送し女王に詣らすに、差錯するを得ず。」
 女王国より以北には、特に一人の大率を置いて検察し、諸国はこれを恐れはばかっている。常に伊都国で政務を執っている。(魏)国中における刺史の如きものである。(邪馬壱国の)王が使者を派遣し、魏の都や帯方郡、諸韓国に行くとき、及び帯方郡の使者が倭国へやって来たときには、いつも(この大率が伊都国から)港に出向いて調査、確認する。文書や授けられた贈り物を伝送して女王のもとへ届けるが、数の違いや間違いは許されない。
㉖下戸與大人相逢道路 逡巡入草 傳辭説事 或蹲或跪 兩手據地 為之恭敬 對應聲曰噫 比如然諾  「下戸、大人と道路に相逢えば、逡巡して草に入る。辞を伝え、事を説くには、或いは蹲り、或いは跪き、両手は地に拠る。これが恭敬を為す。対応の声は噫と曰う。比して然諾の如し。」
 下層階級の者が貴人に道路で出逢ったときは、後ずさりして(道路脇の)草に入る。言葉を伝えたり、物事を説明する時には、しゃがんだり、跪いたりして、両手を地に付け、うやうやしさを表現する。貴人の返答の声は「アイ」という。比べると(中国で承知したことを表す)然諾と同じようなものである。
㉗其國本亦以男子為王 住七八十年 倭國亂相攻伐歴年 乃共立一女子為王 名日卑弥呼 事鬼道能惑衆 年已長大 無夫婿 有男弟 佐治國 自為王以来少有見者 以婢千人自侍 唯有男子一人 給飲食傳辭出入居處 宮室樓觀城柵嚴設 常有人持兵守衛  「その国、本は亦、男子を以って王と為す。住むこと七、八十年。倭国は乱れ、相攻伐すること歴年、乃ち一女子を共立して王と為す。名は卑弥呼と曰う。鬼道に事え能く衆を惑わす。年すでに長大。夫婿なく、男弟ありて、佐(たす)けて国を治める。王と為りてより以来、見有る者少なし。婢千人を以(もち)い、おのずから侍る。ただ、男子一人有りて、飲食を給し、辞を伝え、居所に出入りす。宮室、楼観、城柵が厳設され、常に人有りて兵を持ち守衛す。」
 その国は、元々は、また(狗奴国と同じように)男子を王と為していた。居住して七、八十年後、倭国は乱れ互いに攻撃しあって年を経た。そこで、一女子を共に立てて王と為した。名は卑弥呼という。鬼道の祀りを行い人々をうまく惑わせた。非常に高齢で、夫はいないが、弟がいて国を治めるのを助けている。王となってから、まみえた者はわずかしかいない。侍女千人を用いるが(指示もなく)自律的に侍り、ただ、男子一人がいて、飲食物を運んだり言葉を伝えたりするため、女王の住んでいる所に出入りしている。宮殿や高楼は城柵が厳重に作られ、常に人がいて、武器を持ち守衛している。
㉘女王國東 渡海千餘里 復有國皆倭種 又有侏儒國在其南 人長三四尺 去女王四千餘里 又有裸國黒齒國 復在其東南 船行一年可至  「女王国の東、海を渡ること千余里。復(また)国有りて、皆、倭種。又、侏儒国有りて、その南に在り。人長は三、四尺。女王を去ること四千余里。又、裸国、黒歯国有りて、復、その東南に在り。船行一年にして至るべし。」
 女王国の東、海を渡って千余里行くと、また国が有り、皆、倭種である。また、侏儒国がその(女王国の)南にある。人の背丈は三、四尺で、女王国を去ること四千余里。また、裸国と黒歯国があり、また、その(女王国の)東南にある。船で一年行くと着く。
㉙参問倭地 絶在海中洲㠀之上 或絶或連 周旋可五千餘里  「倭地を参問するに、絶えて海中の洲島の上に在り。或いは絶え、或いは連なり、周旋五千余里ばかり。」
 倭地を考えてみると、遠く離れた海中の島々の上にあり、離れたり連なったり、巡り巡って五千余里ほどである。
㉚景初二年六月 倭女王遣大夫難升米等詣郡 求詣天子朝獻 太守劉夏遣吏将送詣京都 其年十二月 詔書報倭女王曰  「景初二年六月、倭女王は大夫、難升米等を遣わして郡に詣り、天子に詣りて朝献せんことを求む。太守、劉夏は吏を遣わし、将(ひき)い送りて京都に詣る。その年十二月、詔書が倭女王に報いて曰く。」
 景初二年(238)六月、倭の女王は、大夫の難升米等を派遣して帯方郡に至り、天子にお目通りして献上品をささげたいと求めた。太守の劉夏は官吏を派遣し、難升米等を引率して送らせ、都(洛陽)に至った。その年の十二月、詔書が倭の女王に報いて、こう言う。
㉛制詔 親魏倭王卑弥呼 帶方太守劉夏遣使 送汝大夫難升米 次使都市牛利 奉汝所獻 男生口四人 女生口六人 班布二匹二丈以到 汝所在踰遠 乃遣使貢獻是汝之忠孝 我甚哀汝 今以汝為親魏倭王 假金印紫綬 装封付帶方太守假綬 汝其綏撫種人 勉為孝順 汝來使難升米 牛利 渉遠道路勤勞 今以難升米為率善中郎將 牛利為率善校尉 假銀印靑綬 引見勞賜遣還 今以絳地交龍錦五匹 絳地縐粟罽十張 蒨絳五十匹 紺青五十匹 答汝所獻貢直 又特賜汝紺地句文錦三匹 細班華罽五張 白絹五十匹 金八兩 五尺刀二口 銅鏡百枚 真珠鈆丹各五十斤 皆装封付難升米牛利 還到録受 悉可以示汝國中人使知國家哀汝 故鄭重賜汝好物也  「制紹、親魏倭王卑弥呼。帯方太守、劉夏が使を遣わし、汝の大夫、難升米、次使、都市牛利を送り、汝が献ずる所の男生口四人、女生口六人、班布二匹二丈を奉り、以って到る。汝の在る所は遠きを踰(こ)える。すなわち、使を遣わし貢献するは、これ汝の忠孝。我は甚だ汝を哀れむ。今、汝を以って親魏倭王と為し、金印紫綬を仮し、装封して帯方太守に付し、仮授する。汝は其れ種人を綏撫し、勉めて孝順を為せ。汝の来使、難升米、牛利は遠きを渉り、道路勤労す。今、難升米を以って率善中老将と為し、牛利は率善校尉と為す。銀印青綬を仮し、引見して、労い、賜いて、還し遣わす。今、絳地交龍錦五匹、絳地縐粟罽十張、蒨絳五十匹、紺青五十匹を以って、汝の献ずる所の貢の直に答う。又、特に汝に紺地句文錦三匹、白絹五十匹、金八兩、五尺刀二口、銅鏡百枚、真珠鉛丹各五十斤を賜い、皆、装封して難升米、牛利に付す。還り到らば、録して受け、悉く、以って汝の国中の人に示し、国家が汝を哀れむを知らしむべし。故に、鄭重に汝の好物を賜うなり。
㉜制詔、親魏倭王卑弥呼。  帯方太守、劉夏が使者を派遣し、汝の大夫、難升米と次使、都市牛利を送り、汝の献上した男の生口四人、女の生口六人、班布二匹二丈をささげて到着した。汝の住んでいる所は遠いという表現を越えている。すなわち使者を派遣し、貢ぎ献じるのは汝の忠孝のあらわれである。私は汝をはなはだいとおしく思う。今、汝を以て親魏倭王と為し、金印紫綬を仮し(与え)、装封して帯方太守に付すことで仮(かり)に授けておく。汝は種族の者を安んじ落ち着かせるそのことで、(私に)孝順を為すよう勉めよ。汝の使者、難升米と牛利は遠くから渡ってきて道中苦労している。今、難升米を以って率善中郎将と為し、牛利は率善校尉と為す。銀印青綬を仮し(与え)、引見してねぎらい、下賜品を与えて帰途につかせる。今、絳地交龍錦五匹、絳地縐粟罽十張、蒨絳五十匹、紺青五十匹を以って、汝が献じた貢ぎの見返りとして与える。また、特に汝に紺地句文錦三匹、細班華罽五張、白絹五十匹、金八両、五尺刀二口、銅鏡百枚、真珠、鉛丹各五十斤を下賜し、皆、装封して難升米と牛利に付す。帰り着いたなら記録して受け取り、ことごとく、汝の国中の人に示し、我が国が汝をいとおしんでいることを周知すればよろしい。そのために鄭重に汝の好物を下賜するのである。
㉝正始元年 太守弓遵 遣建中校尉梯儁等 奉詔書印綬詣倭国 拝仮倭王 并齎詔 賜金帛錦罽刀鏡采物 倭王因使上表 答謝詔恩  「正始元年、太守、弓遵は建中校尉、梯儁等を遣わし、詔書、印綬を奉じて倭国に詣り、倭王に拝仮す。並びに詔を齎(もたら)し、金、帛、錦、罽、刀、鏡、采物を賜う。倭王は使に因りて上表し、詔恩に答謝す。」
 正始元年(240)、(帯方郡)太守、弓遵は建中校尉梯儁等を派遣し、梯儁等は詔書、印綬(=親魏倭王という地位の認証状と印綬)を捧げ持って倭国へ行き、これを倭王に授けた。並びに、詔(=制詔)をもたらし、金、帛、錦、罽、刀、鏡、采物を下賜した。倭王は使に因って上表し、その有り難い詔に感謝の意を表して答えた。
㉞其四年 倭王復遣使大夫伊聲耆掖邪拘等八人 上獻生口倭錦絳青縑緜衣帛布丹木拊短弓矢 掖邪狗等壱拝率善中郎將印綬  「其の四年。倭王はまた使の大夫伊聲耆、掖邪拘等八人を遣わし、生口、倭錦、絳青縑、緜衣、帛布、丹、木拊短弓、矢を上献す。掖邪狗等は率善中郎将と印綬を壱拝す。」
 その(正始)四年(243)、倭王はまた大夫伊聲耆、掖邪狗等八人を派遣し、生口や倭の錦、赤、青の目の細かい絹、綿の着物、白い布、丹、木の握りの付いた短い弓、矢を献上した。掖邪狗等は等しく率善中郎将と印綬を授けられた。
㉟其六年 詔賜倭難升米黄幢 付郡假授  「其の六年、詔して倭、難升米に黄幢を賜い、郡に付して仮授す。」
 正始六年(245)、詔して倭の難升米に黄色い軍旗を賜い、帯方郡に付して仮に授けた。
㊱其八年太守王頎到官 倭女王卑弥呼與狗奴國男王卑弥弓呼素不和 遣倭載斯烏越等 詣郡 説相攻撃状 遣塞曹掾史張政等 因齎詔書黄幢  拝假難升米 為檄告喩之  「其の八年、太守、王頎が官に到る。倭女王、卑弥呼は狗奴国王、卑弥弓呼素と和せず、倭、載烏越等を遣わし、郡に詣り、相攻撃する状を説く。塞曹掾史、張政等を遣わし、因って詔書、黄幢を齎し、難升米に拝仮し、檄を為(つく)りて之を告諭す。」
 正始八年(247)、(弓遵の戦死を受けて)帯方郡太守の王頎が着任した。倭女王の卑弥呼は狗奴国の男王、卑弥弓呼素と和せず、倭の載斯烏越等を派遣して、帯方郡に至り、戦争状態であることを説明した。(王頎は)の張政等を派遣し、張政は詔書、黄幢をもたらして難升米に授け、檄文をつくり、これを告げて諭した。
㊲卑弥呼以死 大作冢 徑百餘歩 徇葬者奴婢百餘人 更立男王 國中不服 更相誅殺 當時殺千餘人 復立卑弥呼宗女壹與年十三為王 國中遂定 政等以檄告喩壹與  「卑弥呼以って死す。冢を大きく作る。径百余歩。徇葬者は奴婢百余人。更に男王を立つ。国中服さず。更に相誅殺し、当時、千余人を殺す。復(また)、卑弥呼の宗女、壱与、年十三を立てて王と為す。国中遂に定まる。政等は檄を以って壱与に告諭す。」
 卑弥呼は死に、冢を大きく作った。直径は百余歩。徇葬者は男女の奴隷、百余人である。さらに男王を立てたが、国中が不服で互いに殺しあった。当時千余人が殺された。また、卑弥呼の宗女、十三歳の壱与(イヨ)を立てて王と為し、国中が遂に安定した。張政たちは檄をもって壱与に教え諭した。
㊳壹與遣倭大夫率善中郎將掖邪拘等二十人 送政等還 因詣臺 獻上男女生口三十人 貢白珠五千孔 青大句珠二枚 異文雑錦二十匹  「壱与は倭の大夫、率善中郎将、掖邪拘等二十人を遣わし、政等の還るを送る。因って、臺に詣り、男女生口三十人を献上し、白珠五千孔、青大句珠二枚、異文雜錦二十匹を貢ぐ。」
 壱与は大夫の率善中郎将、掖邪拘等二十人を派遣して、張政等が帰るのを送らせた。そして、臺(中央官庁)に至り、男女の生口三十人を献上し、白珠五千孔、青大句珠二枚、模様の異なる雑錦二十匹を貢いだ。

*5-3:https://www.asahi.com/articles/ASN946Q7CN94ULUC00D.html (朝日新聞 2020年9月5日) 青森)世界遺産へ正念場 縄文遺跡群でイコモス調査
 青森県など4道県が来年の世界文化遺産登録をめざす「北海道・北東北の縄文遺跡群」が、世界遺産にふさわしいか評価するユネスコの諮問機関による現地調査が4日、始まった。海外の専門家が全17遺跡を回る現地調査は4道県にとって登録の判断に直結する「正念場」。青森市の三内丸山遺跡では、この日に備え準備を進めた関係者が真剣な表情で遺跡の価値や保存状況の説明にあたっていた。現地調査に訪れたのは、ユネスコの諮問機関「国際記念物遺跡会議(イコモス)」の調査員で、オーストラリア人の専門家。県内を皮切りに15日までの期間中、4道県の各遺跡で政府が提出した推薦書の内容を確認し、調査結果をもとに来年5月にもイコモスが「登録」や「登録延期」など4段階ある評価のいずれかを勧告する。さらにこの勧告をもとに来夏に予定されるユネスコの世界遺産委員会が、最終的に登録するかどうか判断する。現地調査に向け、4道県は調査員役をたてて各遺跡でリハーサルを行うなど、入念な準備を進めてきた。この日、三内丸山遺跡では調査員が発掘された土坑墓や復元した大型掘立柱建物など大規模集落跡を丹念に見て回り、同行した県世界文化遺産登録推進室の岡田康博室長らに質問したり写真を撮影したりして遺跡の様子を確認していた。調査の一部は報道陣に公開されたが、審査の中立性を保つため、調査の内容や詳しい日程は非公表。イコモスの要請で、調査員への取材は認められず、調査中のやりとりが聞こえない距離からの撮影だけが許可される徹底ぶりだった。現地調査の開始を前に、三村申吾知事は3日の定例記者会見で「本当に待ちに待って準備してきて、いよいよという場面。とはいうものの、私どもは会いに行っちゃいけないし、頼むという感じ」と登録への期待を語っていた。現地調査の様子は、6日に秋田県鹿角市の大湯環状列石、13日に北海道伊達市の北黄金貝塚、15日に岩手県一戸町の御所野遺跡でも報道陣に公開される。

<無知や意識の低さは罪つくりであること>
PS(2021年3月18日追加):*6-1に、法相の諮問機関である法制審議会親子法制部会が民法の嫡出推定の見直しのための中間試案で、「①離婚後300日以内に生まれた子を『前夫の子』とみなす民法規定に例外を設け、母親が出産時点で再婚していれば『現夫の子』とみなす規定を設ける」「②女性に限り離婚後100日間、再婚を禁じる規定を撤廃する」「③見直しは離婚も再婚も成立した後に生まれた子に限られ、離婚協議もままならないケースは対象にならない」「④明治時代から続くこの規定は、母親が出生届を出さずに無戸籍者を生じさせる要因とされてきた」「⑤嫡出推定は、生まれた子と戸籍上の父親の関係を早く確定させて養育・相続等で子の利益を図る目的の制度である」などが書かれている。
 しかし、今はDNA鑑定で本当の父を特定できる時代であるため、①②は論外であるものの、③⑤も推定を根拠にしている点で誤りの可能性を残し、これでは父子ともに納得できないと思われるので、要請がある場合にはDNA鑑定で本当の父を特定することを原則にすべきだと思う。鑑定の結果、再婚相手の子でなかった場合は、親権の所在を確定した上で、養子縁組などの対応をとればよいだろう。なお、④については、前夫との離婚が成立するまでは再婚相手の子を作らないなど、女性も自分のことだけでなく子の気持ちや生育環境も考えて子づくりすべきだ。
 そのような中、*6-2のように、東京オリ・パラの開閉会式の演出を統括する佐々木氏が、開会式に出演予定だった太めの女性タレントの容姿を侮辱する内容の演出を提案したのだそうだ。開閉会式の演出をめぐって、組織委は2020年末に狂言師の野村萬斎氏を統括とする7人のチームを解散し、佐々木氏を責任者として権限を一本化していたとのことだが、佐々木氏が演出したとされるリオデジャネイロでの2016年の閉会式は、一国の首相をスーパーマリオに扮して登場させ、大人も多く見ているのに内容のない演出だと思っていた。そもそも、蔑みや侮辱で笑いをとろうとするのは見識が低いが、こういう人が日本のCM業界を代表する作り手で東京オリ・パラの開閉会式の演出統括責任者に選ばれていたというのでは、日本のTVのレベルが低いのも理解でき、選んだ人もまた意識が低い。

*6-1:https://373news.com/_column/syasetu.php?storyid=133827 (南日本新聞 2021/3/7) [嫡出推定見直し] 無戸籍者生まぬ制度へ
 婚姻を基準に子どもの父親を決める民法の「嫡出推定」の見直しに向け、法相の諮問機関である法制審議会の親子法制部会が中間試案をまとめた。離婚後300日以内に生まれた子どもを「前夫の子」とみなす規定の例外を設け、母親が出産時点で再婚していれば「現夫の子」と新たに規定する。併せて女性に限り離婚後100日間、再婚を禁じる規定も撤廃する。明治時代から120年以上続く現行のルールは、母親が出生届を出さずに無戸籍者が生じる大きな要因とされてきた。試案は現代の家族観を反映した法律の転換点と評価できよう。ただ、見直しは今のところ離婚も再婚も成立した後に生まれた子どもに限られ、家庭内暴力で離婚協議もままならないケースなどは対象とならない。制度を充実させるために議論を深めていく必要がある。嫡出推定は本来、生まれた子どもと戸籍上の父親との関係を早く確定させて、養育や相続などで子どもの利益を図る考えに基づく制度である。海外でも採用している国は少なくない。しかし近年、離婚直後に別の男性との子どもを産んだ場合などに、前夫の子どもとみなされるのを避けるため、母親が出生届を出さないケースが増えてきた。法務省が市区町村などを通して把握した無戸籍者は1月時点で901人おり、このうち73%がこうした事例に当たる。支援団体によると、行政が捉えられていない潜在的な無戸籍者も多く、少なくとも1万人に上るという。無戸籍者は住民票の作成や運転免許の取得、銀行口座の開設などが難しく、進学や就職、結婚でも深刻な影響を受ける。本人に落ち度がないのに多大な不利益を強いられる現実を考えれば、民法の規定見直しは急務だ。中間試案は、夫にだけ認められていた父子関係を否定する「嫡出否認」の訴えを、未成年の子どもと、子の代理の母親もできるようにすることも示した。当事者への配慮がうかがえる。とはいえ、なかなか離婚できなかったり、再婚に至らなかったりした場合の対応が不十分との指摘が出ている。300日規定そのものの撤廃を求める声も根強い。事実婚など家族の在り方が多様化する中、さらにさまざまな要請に応えなければならない。例えば、科学技術の進歩を生かし、今では民間機関も手掛けているDNA鑑定で血縁上の父親と判定できれば、出生届を受け付ける仕組みなども検討するべきではないか。法制審部会が方向性を示したことで、法改正に結びつく可能性は高くなってきた。現在、生活に支障を来している無戸籍者への支援を含め、救済の枠からこぼれ落ちる子どもが出ないよう知恵を絞りたい。

*6-2:https://digital.asahi.com/articles/DA3S14836892.html (朝日新聞 2021年3月18日) 「女性容姿侮辱の演出提案」 統括者退任へ 五輪開会式巡る報道
 今夏に延期となった東京オリンピック・パラリンピックの開閉会式の演出を統括するクリエーティブディレクターの佐々木宏氏(66)が、開会式に出演予定だった女性タレントの容姿を侮辱するようなメッセージをチーム内のLINEに送っていたと、文春オンラインが17日報じた。佐々木氏は退任する方向で、大会組織委員会の橋本聖子会長が18日に記者会見し、問題の経緯や佐々木氏の処遇について説明する見込み。記事によると、佐々木氏は昨年3月、開閉会式の演出を担うチーム内のLINEに、女性タレントの容姿を侮辱するような内容の演出を提案したという。メンバーから反発があり、この提案は撤回されたという。組織委の広報担当は文春の記事について「佐々木氏本人から事実関係を確認中。事実とすれば、不適切で大変遺憾に思う」と述べた。組織委では、森喜朗前会長が自身の女性蔑視発言の責任をとって2月に退任している。開閉会式の演出をめぐっては、組織委は昨年末、狂言師の野村萬斎氏を統括とする7人のチームの解散を発表した。コロナ禍に伴う式典の簡素化や演出変更を短期間で進めるため、佐々木氏を責任者に据え、権限を一本化していた。佐々木氏は広告大手の電通出身。安倍晋三首相(当時)をサプライズ登場させた2016年リオデジャネイロ五輪閉会式での引き継ぎ式や、水泳の池江璃花子さんを起用した昨夏の五輪1年前イベントの演出を担当。日本のCM業界を代表する作り手とされる。

<これから夫婦別姓を認める必要はあるか?>
PS(2021年3月19日):私(戸籍名:平林、通称:広津《旧姓》)は、公認会計士・税理士の登録に際して戸籍名しか認められず、仕事上は戸籍名を使うしか選択肢がなくて不便だと思ったため、1995年前後に「選択的夫婦別姓制度にして欲しい」と言っていたが、その後、公認会計士・税理士は旧姓を通称として使用することを認めたため、後は銀行・公文書への記載・法律行為などに通称使用が認められるようになればよいと思っている。何故なら、ここで選択的夫婦別姓制度も取り入れると、*7-1のように、①夫婦別姓を選択しなかった人は旧姓を使えない もしくは、②旧姓の通称使用も認めると「同氏夫婦」「別氏夫婦」「通称使用夫婦」の3種類の夫婦が出現して制度が複雑化し ③ファミリー・ネームが機能しなくなり ④「子の姓の安定性」が損なわれる などのディメリットがあるからだ。また、今では、⑤殆どの専門資格(士業・師業)で旧姓の通称使用や資格証明書への併記が認められるようになり ⑥マイナンバーカード・免許証・住民票は戸籍名と旧姓の併記が認められている ため、後は、銀行口座・公文書・法律行為などで通称使用が認められればよいだろう。
 そのため、*7-2のように、選択的夫婦別姓に反対する人は「⑦望まない人にも改姓を強要している」「⑧偏見と無根拠に満ちている」「⑨選択的夫婦別姓の意味がわかってないから反対しているに違いない」と言われるのは全く事実と異なり、私自身は、妹のピアノの先生の不便を見て子供の頃(1960年代)からわかっていたため、結婚時に戸籍名が変わっても個人のキャリアの連続が示されるよう、機会がある度に旧姓で活動できるようにしてきたのである。

*7-1:https://www.tokyo-np.co.jp/article/88122 (東京新聞 2021年2月25日) 【全文】夫婦別姓反対を求める丸川大臣ら自民議員の文書、議員50人の一覧
丸川珠代・男女共同参画担当相や高市早苗・元男女共同参画担当相ら自民党の国会議員有志が、埼玉県議会議長の田村琢実県議に送った、選択的夫婦別姓の反対を求める文書は以下の通り。
◆◇◆◇◆
 厳寒のみぎり、先生におかれましては、ご多用の日々をお過ごしのことと存じます。貴議会を代表されてのご活躍に敬意を表し、深く感謝申し上げます。
 本日はお願いの段があり、取り急ぎ、自由民主党所属国会議員有志の連名にて、書状を差し上げることと致しました。
 昨年来、一部の地方議会で、立憲民主党や共産党の議員の働き掛けにより「選択的夫婦別氏制度の実現を求める意見書」の採択が検討されている旨、仄聞しております。
 先生におかれましては、議会において同様の意見書が採択されることのないよう、格別のご高配を賜りたく、お願い申し上げます。
 私達は、下記の理由から、「選択的夫婦別氏制度」の創設には反対しております。
1 戸籍上の「夫婦親子別氏」(ファミリー・ネームの喪失)を認めることによって、家族単位の社会制度の崩壊を招く可能性がある。
2 これまで民法が守ってきた「子の氏の安定性」が損なわれる可能性がある。
※同氏夫婦の子は出生と同時に氏が決まるが、別氏夫婦の子は「両親が子の氏を取り合って、協議が調わない場合」「出生時に夫婦が別居状態で、協議ができない場合」など、戸籍法第49条に規定する14日以内の出生届提出ができないケースが想定される。
※民主党政権時に提出された議員立法案(民主党案・参法第20号)では、「子の氏は、出生時に父母の協議で決める」「協議が調わない時は、家庭裁判所が定める」「成年の別氏夫婦の子は、家庭裁判所の許可を得て氏を変更できる」旨が規定されていた。
3 法改正により、「同氏夫婦」「別氏夫婦」「通称使用夫婦」の3種類の夫婦が出現することから、第三者は神経質にならざるを得ない。
※前年まで同氏だった夫婦が「経過措置」を利用して別氏になっている可能性があり、子が両親どちらの氏を名乗っているかも不明であり、企業や個人からの送付物宛名や冠婚葬祭時などに個別の確認が必要。
4 夫婦別氏推進論者が「戸籍廃止論」を主張しているが、戸籍制度に立脚する多数の法律や年金・福祉・保険制度等について、見直しが必要となる。
※例えば、「遺産相続」「配偶者控除」「児童扶養手当(母子家庭)」「特別児童扶養手当(障害児童)」「母子寡婦福祉資金貸付(母子・寡婦)」の手続にも、公証力が明確である戸籍抄本・謄本が活用されている。
5 既に殆どの専門資格(士業・師業)で婚姻前の氏の通称使用や資格証明書への併記が認められており、マイナンバーカード、パスポート、免許証、住民票、印鑑証明についても戸籍名と婚姻前の氏の併記が認められている。
 選択的夫婦別氏制度の導入は、家族の在り方に深く関わり、『戸籍法』『民法』の改正を要し、子への影響を心配する国民が多い。
 国民の意見が分かれる現状では、「夫婦親子同氏の戸籍制度を堅持」しつつ、「婚姻前の氏の通称使用を周知・拡大」していくことが現実的だと考える。
※参考:2017年内閣府世論調査(最新)
夫婦の名字が違うと、「子供にとって好ましくない影響があると思う」=62.6%
 以上、貴議会の自由民主党所属議員の先生方にも私達の問題意識をお伝えいただき、慎重なご検討を賜れましたら、幸甚に存じます。
 先生のご健康と益々のご活躍を祈念申し上げつつ、お願いまで、失礼致します。
令和3年1月30日
衆議院議員(50音順):青山周平 安藤裕 石川昭政 上野宏史 鬼木誠 金子恭之 神山佐市 亀岡偉民 城内実 黄川田仁志 斎藤洋明 櫻田義孝 杉田水脈 鈴木淳司 高市早苗 高木啓 高鳥修一 土井亨 中村裕之 長尾敬 深澤陽一 藤原崇 古屋圭司 穂坂泰 星野剛士 細田健一 堀井学 三谷英弘 三ツ林裕巳 宮澤博行 簗和生 山本拓
参議院議員(50音順):赤池誠章 有村治子 磯崎仁彦 岩井茂樹 上野通子 衛藤晟一 加田裕之 片山さつき 北村経夫 島村大 高橋克法 堂故茂 中西哲 西田昌司 丸川珠代 森屋宏 山田宏 山谷えり子 

*7-2:https://www.tokyo-np.co.jp/article/88547 (東京新聞 2021年2月27日) 丸川大臣「残念すぎる」選択的夫婦別姓、反対議員50人へ質問状 市民団体
 自民党の国会議員有志が選択的夫婦別姓の導入に賛同する意見書を地方議会で採択しないよう求めた文書を巡り、市民団体「選択的夫婦別姓・全国陳情アクション」は26日、文書に名を連ねた国会議員50人に公開質問状を送った。事務局は「困り事を抱える国民の声を水面下で押しつぶそうとする行為だ。望まない人にも改姓を強要する合理的な根拠を明らかにしてほしい」と話す。回答結果は3月9日に公表する。文書は1月30日付で、地方議会の議員に送られた。選択的夫婦別姓の実現を求める意見書を採択しないよう促す内容で、閣僚就任前の丸川珠代男女共同参画担当相のほか、高市早苗前総務相、衛藤晟一前少子化対策担当相ら計50人が名前を連ねていた。市民団体は、国会議員50人が連名で文書を送付したことは、「国会議員が水面下で地方議会に圧力をかけて阻む行為に等しい」と問題視。さらに、文書に書かれた選択的夫婦別姓に反対する理由が「偏見と無根拠さに満ちている」と感じ、質問状を送ることを決めた。質問は、文書に名前を連ねた経緯や夫婦別姓制度への賛否、反対する理由など11問をたずねた。丸川氏など旧姓で活動する議員には、旧姓使用を続ける理由も聞いている。(記事最後にすべての質問項目を掲載)。事務局長の井田奈穂さんは「望まない改姓は、イデオロギーの問題ではない。現実的な生活上の困りごと」と指摘。別姓を選べないために結婚しないカップルもいるといい、事務局には多くの相談が寄せられているという。反対議員による文書送付について、「生活上の困りごとを抱える市民の声を、制度設計をする人たちに届かないよう封じるための行為だと感じる」と話す。
◆丸川氏「おかしい」といっていたのに…
 井田さんは昨年2月、葛飾区議の区政報告会で、出席していた丸川氏と話す機会があったという。井田さんによると、丸川氏は、選択的夫婦別姓について「2つの名前を使えるのは私は便利だと思ってますが、公文書に皆さんが投票して下さった丸川姓で署名できず戸籍姓必須はおかしいと思う」と力説。閣議決定の署名で「丸川」を使えないなど、旧姓使用の限界を身をもって理解していると感じたという。
丸川氏が文書に名前を連ねていたことについて、井田さんは「男女共同参画担当大臣として残念すぎます。職務上氏名を名乗れないことに忸怩たる思いを持つ方が、同じ思いを持つ人たちの声をつぶすことは、『個人的な信条』とは矛盾しているのではないか」と疑問を投げかけた。「選択的夫婦別姓は、選択肢を増やすだけで、みんなが別姓になるわけではない。議員の方には、これを機に勉強会を開いて当事者の声を聞いてほしい。呼んでいただければ喜んで出席する」と話した。選択的夫婦別姓・全国陳情アクションのサイトで反論なども掲載している。
◆議員への質問
1・今回の「お手紙」に名を連ねた経緯についてお聞かせください。
2・国民主権の国で、国民が国会に意見を届けるための制度が地方議会での意見書です。今回の「お手紙」は、「国会議員が生活上の困りごとを抱えた当事者の意見を国会に届けさせないようにする圧力ではないか」という意見について、先生はどのようにお考えですか。
3・選択的夫婦別姓制度に反対ですか?
4・反対であれば、それはなぜですか。お手数ですが、今回の「お手紙」に至った発端(埼玉県議会への相談)を作った当事者である井田奈穂の意見、法学者・二宮周平教授の解説を踏まえた上でご回答ください。
5・反対の根拠とされている「ファミリー・ネーム」の法的定義について、立法府の議員としてお教えください。
6・第5次男女共同参画基本計画に対するパブリックコメントに400件以上、切実に法改正を望む声が寄せられました。旧姓使用の限界やトラブル事例も多く報告されています。「旧姓使用ではなく生まれ持った氏名で生きたい」と訴える当事者が目の前にいたら、どのように回答されますか?
7「お互いの氏名を尊重しあって結婚したいが、今後も法的保障のない事実婚を選ぶしかないのですか?」と訴えるカップルが目の前にいたら、どのように回答されますか?
8・夫婦別姓を選べない民法の規定について、国連女性差別撤廃委員会から再三改善勧告を受けていることについて、どのように対応すべきとお考えですか?
9・旧姓使用に関して、法的根拠のない氏名を、今後あらゆる法的行為、海外渡航、海外送金、登記、投資、保険、納税、各種資格、特許などにおいても使えるようにしていくべきと思いますか?
10・以下は、旧姓使用をされている議員の方にお伺いします。なぜ旧姓使用をしておられるのですか?
11・「3種類の夫婦の出現に第三者は神経質にならざるを得ない」と主張する先生が、自ら旧姓を通称使用をし、社会的に生来姓を名乗っておられるのは甚だしい自己矛盾ではないかという意見があります。そのお考えであれば、生来姓を変えないのが一番ではないでしょうか?

<女性の働きやすさ・生きやすさ>
PS(2021年3月20日追加):英誌エコノミストが、*8-1のように、主要29カ国の女性の働きやすさでランキングした結果、北欧のスウェーデンが1位・アイスランドが2位・フィンランドが3位で、日本は下から2番目の28位・韓国が最下位の29位だったそうだ。そのランキングは、管理職に占める女性の割合・女性の労働参加率・男女の賃金格差などの10の指標に基づいており、18位の米国は女性の労働参加は進んでいるが政治参加が少なく、日本は、管理職に占める女性の割合・衆議院の女性議員割合が最低で、世界経済フォーラムの2019年ランキングでも153カ国中121位だったそうだ。
 国連は、*8-2のように、2021年のテーマを「リーダーシップを発揮する女性たち―コロナ禍の世界で平等な未来を実現する」に定めたそうだ。しかし、*8-3のように、日本国憲法は、1947年の施行以来、第22条で「職業選択の自由」を規定しているにもかかわらず、女性の職業は「働いていない」と言われる専業主婦以外の選択肢が狭かったり、選択できる職業は賃金が安かったり、身分が不安定だったりしてきたため、*8-1の状況は国内的にも憲法違反であることが明らかだ。まして、「子を1人も作らない女性が、年取って税金で面倒見なさいというのは、本当はおかしい」などと言われるのは論外で、この発言は女子差別撤廃条約違反でもあるが、その前に、DINKSで働いた私は、専業主婦と2人の子を持つ男性とは比較にならないくらい多額の所得税や社会保険料を支払ってきたため、そのようなことを言うのなら、税金から支出した子の教育費・保育費・医療費と専業主婦の医療費・年金支給額等を返還して欲しい。
 このように、日本社会のジェンダーに基づく人権侵害で不快な女性差別発言には事欠かないが、メディアもまた「表現の自由」「言論の自由」と称して、差別を助長するドラマの筋書きや間抜けな聞き役の女性を配した報道番組が多いため、気を付けてもらいたい。


                               2020.3.6朝日新聞

(図の説明:1番左の図は、2019年のジェンダーギャップ指数で、日本は153か国中121位であり、2018年より下がっている。左から2番目と右から2番目の図は、2020年のジェンダー・ギャップ指数で、2019年と殆ど同じだ。さらに、1番右の図は、入社1年目と4年目で管理職を目指す男女の割合を示したもので、ハードルが多いせいか女性の割合が著しく低い)


                   2017.7.28朝日新聞   2017.8.24朝日新聞

(図の説明:左図のように、出生数も合計特殊出生率も戦後は下がり続けており、1970年以降は子育てのやりにくさを反映していたのだが、著しく女性割合の小さな政治・行政は的確な対応をしなかった。また、女性の上昇志向の持ちにくさ、働きにくさ、子育てを含む生きにくさを作る原因は、右の2つの図が示すように、メディア等によって発せられ、国民の常識となっていく、ジェンダーを含む発言・世論操作・行動の影響が大きい)

*8-1:https://digital.asahi.com/articles/ASP396RLDP39UHBI028.html (朝日新聞 2021年3月9日) 女性の働きやすさ、日本はワースト2位 英誌ランク付け
 英誌エコノミストは、8日の国際女性デーに合わせ、主要29カ国を女性の働きやすさで指標化したランキングを発表した。1位は北欧のスウェーデンで、日本は昨年に続き下から2番目の28位。最下位は韓国だった。ランキングは、管理職に女性が占める割合や女性の労働参加率、男女の賃金格差など10の指標に基づき、エコノミストが独自にランク付けした。ランキングでは2位がアイスランド、3位がフィンランドと北欧の国々が上位を占めた。米国は女性の労働参加が進む一方、女性の政治参加は少なく、ランキングは18位だった。日本は管理職の女性の割合や、下院(日本での衆院)での女性議員の割合がそれぞれ最も低かった。同誌は、東京五輪・パラリンピック大会組織委員会の会長だった森喜朗元首相による女性蔑視発言を受けて、橋本聖子氏が後任となったことに触れ、「日本のように伝統的に遅れている国でさえ、少なくとも進歩の兆しがみられる」と指摘した。2位だったアイスランドは、世界経済フォーラムが発表している男女平等ランキングでも11年連続で1位を維持している。直近の2019年のランキングで、日本は153カ国中121位だった。英誌エコノミストが発表した女性の働きやすさのランキングは、以下の通り。
1位 スウェーデン 、2位 アイスランド 、3位 フィンランド 、4位 ノルウェー 、5位 フランス 、6位 デンマーク 、7位 ポルトガル 、8位 ベルギー 、9位 ニュージーランド 、10位 ポーランド 、11位 カナダ 、12位 スロバキア 、13位 イタリア 、14位 ハンガリー 、15位 スペイン 、16位 オーストラリア 、17位 オーストリア 、18位 米国 、19位 イスラエル 、20位 英国 、21位 アイルランド 、22位 ドイツ 、23位 チェコ 、24位 オランダ 、25位 ギリシャ 、26位 スイス 、27位 トルコ 、28位 日本 、29位 韓国

*8-2:https://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-1282908.html (琉球新報社説 2021年3月8日) 国際女性デー 遅れた「平等」直視したい
 きょう3月8日は国際女性デー。女性への差別に反対し、地位向上を求める日である。国連は2021年のテーマを「リーダーシップを発揮する女性たち―コロナ禍の世界で平等な未来を実現する」に定めた。女性はリーダーシップを発揮できているだろうか。そしてコロナ禍で平等な労働環境と政治参加を手に入れているだろうか。東京五輪・パラリンピック組織委員会の森喜朗会長(当時)が「女性の入っている理事会は時間がかかる」などと発言し、辞任に追い込まれた。日本オリンピック委員会(JOC)が女性理事を増やす方針を掲げたことに関連しての発言だった。政府はあらゆる分野で「指導的地位に占める女性の割合30%」を目標とするが、達成には遠く及ばない。JOCも女性理事は20%だ。森氏の発言は困難を越えてようやく発言権を得た女性たちをけん制するメッセージだった。男性の多数決に従い、立場をわきまえておとなしくしていろと、女性たちを従来の、男性主体の社会の枠に押し込めようとした。森氏は過去に「子どもを一人もつくらない女性が、(略)年取って税金で面倒見なさいというのは、本当はおかしい」と言ったこともある。子どもを産まない女性は国のためになっていない、価値がないという発想は女性の人格すら否定している。しかし当時、問題にはなったが、進退にはつながらなかった。今回、辞任に至ったのは女性たちが世論をつくり、五輪開催すら危ぶまれたからだ。変化の兆しが感じられる。ただし、日本の女性の地位は国際的にみれば大きく立ち遅れている。世界経済フォーラムが発表した19年の「男女格差報告」で日本は153カ国中、過去最低の121位だ。特に政治分野は144位と深刻で、衆院議員10%、参院23%、閣僚も20人中2人にとどまる。沖縄でも県議会は14%にすぎない。男女の候補者数をできる限り均等にするよう求める法律が施行されたが、効果ははかばかしくない。女性候補者の割合を義務づけるクオータ制や割合に応じた政党助成金の配分など諸外国の制度を参考に導入を議論すべきだ。コロナ禍は雇用の不安定な女性を追い詰めている。働く女性の半数以上は非正規労働者だが、昨年、同じ非正規でも女性のほうが男性の2倍、減少している。正社員は増えておらず、真っ先に解雇されるのは女性だと考えられる。男性との給与格差も大きい。コロナ禍で大きな影響を受ける層に焦点を当てた支援策を講じなければならない。日本社会の男女格差は根深い。男は仕事、女は家庭などの性別役割意識が強く残り、男性に長時間労働を強い、女性の社会参画を阻んでいる。現状を直視し、いかに男女が平等な社会を築けるか、男性も共に考える日にしたい。

*8-3:http://law.main.jp/kenpou/k0022.html (日本国憲法逐条解説) 
第3章 国民の権利及び義務
第22条 【居住、移転及び職業選択の自由、外国移住及び国籍離脱の自由】
 第1項 何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する。
 第2項 何人も、外国に移住し、又は国籍を離脱する自由を侵されない。
<解説>
 1項は、自己の従事する職業を決定し、遂行する自由を定めています。ただし、政策的な見地から、一定の制限を受けることがあります。例えば、開業するにつき許可制がとられている場合 ( 交通、電気、ガスなど ) がありますが、 これは合理的な制限であり憲法には反しません。
 2項は、外国移住及び国籍離脱の自由を定めています。外国へ移住する自由とともに、強制的に外国へ移住させられない自由なども含まれています。国籍については、国籍法に詳しく規定されており、国籍法11条によると国籍を離脱するには外国籍の取得が必要とされています。

<日本は感染症対策も153か国中121位程度では?>
PS(2021年3月21日追加):*9-1のように、東京オリ・パラは海外の一般観客の受入断念をすることとなったそうで、日本側は海外での変異株の出現を理由とした。しかし、ウイルスの変異はウイルスが存在する限りどこででも(日本国内でも)起き、変異したからといって従来のワクチンが効かなくなるとは限らないため、徹底した検査・治療薬の承認・ワクチン開発が重要なのであり、ワクチン接種済の外国人とワクチン未接種の日本人を比較すれば、ワクチン未接種の日本人の方がずっと感染リスクが高いのである。従って、*9-2のように、ワクチン接種済の選手を行動制限したり、ワクチン接種済の海外からの観客を排除したりするのは、非科学的すぎて誰も支持しないだろうし、五輪の精神にも反する。
 なお、厚労省主導での①検査渋り ②治療薬未承認 ③ワクチン未開発 など、感染症対策で失政をやり続けた日本政府が、海外在住者購入チケットの払い戻しやGo Toキャンペーンで莫大な予算を使うのは、国民にとっては「メンツをつぶされた」程度ではすまされない問題である。
 さらに、*9-3は、「新型コロナ変異株の広がりで、現在は変異株流行国から入国した人に要請している検査や待機の対応を、全ての国からの入国者に広げる」としているが、ワクチン接種済証明書や陰性証明書のある人の検査はどの国からの入国者であれ簡便でよく、それがない人はどの国の人であっても徹底した検査と14日間の隔離が必要なのである。そのため、これまでの水際対策もおかしかったことがわかり、このようなザル対策では国民が何度自粛してもリバウンド(再拡大)は起きるだろう。
 このような中、*9-4のように、東京都から新型コロナ改正特別措置法に基づく時短営業の命令を受けた飲食チェーン「グローバルダイニング」が、「時短命令は違法」として東京都に損害賠償を求める訴訟を東京地裁に起こすそうだ。私も、「命を守るため」とか「緊急事態」とさえ言えば何をやってもよいとばかりに失政を積み重ねた政治・行政が、国民に過剰な権利の制約を行うのを見逃しては今後のためにならないと考える。これは、*9-5のように、東京オリ・パラで海外からの観戦客受け入れを見送るとされ、ホテルや観光業者が厚労省の不作為によって梯子を外されて大打撃を受けることとも同源であり、ここで「予約キャンセル料」等を国が税金から補填するのは一般国民が納得できないため、ワクチン接種済証や陰性証明書を持つ外国人は入国できるように、集団で提訴もしくは交渉したらどうかと思った。

怒 緊急事態の定義:東電福島第一原発事故を受けて政府が発令した「原子力緊急事態宣言」
  は、10年後の現在も解除されていない。しかし、会計での短期と長期の境界は1年で、
  人命がかかわる「緊急」は、分単位からせいぜい1ヶ月~6ヶ月だ。それ以上の期間は、
  「慢性」や「長期」と呼ぶのである。

*9-1:https://www.tokyo-np.co.jp/article/92715 (東京新聞 2021年3月20日) 東京五輪の海外観客受け入れを断念、チケットは払い戻し IOCなど5者協議で決定
 東京五輪・パラリンピックの海外からの一般観客を巡り、大会組織委員会、政府、東京都、国際オリンピック委員会(IOC)、国際パラリンピック委員会(IPC)の代表による5者協議が20日、オンラインで開催され、受け入れを断念すると正式決定した。新型コロナウイルスは変異株の出現などで厳しい感染状況が続き、国民の不安も強いことから、受け入れを見送る方針で一致。海外在住者が購入したチケットは払い戻す。新型コロナで史上初の延期となった大会は、これまでにない異例の方式での開催となる。協議には組織委の橋本聖子会長、丸川珠代五輪相、小池百合子都知事、IOCのバッハ会長、IPCのパーソンズ会長が参加。終了後に橋本氏らが会見した。政府や組織委などは、海外在住のボランティアの受け入れについても原則的に見送る方針を固めた。観客数の上限は、政府のイベント制限の方針に準じ、4月中に判断する。

*9-2:https://mainichi.jp/articles/20210320/k00/00m/050/185000c (毎日新聞 2021/3/20) 「ワクチン=切り札」のIOC、日本に不満 五輪開催へ頭越し提案
 今夏の東京オリンピック・パラリンピックの海外からの観客受け入れを見送ることが20日、政府、東京都、大会組織委員会に国際オリンピック委員会(IOC)、国際パラリンピック委員会(IPC)の代表者を交えた5者による協議で正式に決まった。新型コロナウイルスの感染が続く中、開催の成否を握るのがワクチンだが、関係者間には大きな溝が横たわる。
●「日本のメンツ丸つぶれ」の理由
 ある国際競技団体の幹部が解説する。「国際オリンピック委員会(IOC)のお膝元の欧州ではワクチン接種が前提となりつつある。接種や確保の進まぬ開催国の日本で、接種を受けた選手の行動が制限されることにIOCは不満がある」

*9-3:https://www.tokyo-np.co.jp/article/92816 (東京新聞 2021年3月21日) 新型コロナ変異株の検査や待機、全入国者への拡大の意向示す 田村厚労相
 田村憲久厚生労働相は21日のNHK番組で、新型コロナウイルス変異株の広がりを受け、現在は変異株の流行国から入国した人に要請している検査や待機の対応を、全ての国からの入国者に広げたい考えを述べた。水際対策を強化する狙い。変異株流行国からの入国者は、出国前と入国時、入国後3日目の計3回の検査を求められている。田村氏は、入国者が待機期間中に宿泊施設などから出て行方不明になった場合は「民間の警備会社と契約して対応することも考えている」とした。首都圏1都3県の緊急事態宣言の解除を巡り「感染リスクの高い行動を避けてもらうのが重要だ」と強調。新型コロナ感染症対策分科会の尾身茂会長は「これから1、2カ月はリバウンド(再拡大)が起きやすい。高齢者のワクチン接種が始まるまで何が何でも防ぐことが重要だ」と語った。

*9-4:https://www.tokyo-np.co.jp/article/92736 (東京新聞 2021年3月20日) 「コロナ時短命令は〝違法〟」「狙い撃ちされた」 飲食チェーンが都を提訴へ
 東京都から新型コロナウイルス対応の改正特別措置法に基づく時短営業の命令を受けた飲食チェーン「グローバルダイニング」が、命令は違法だとして、都に損害賠償を求める訴訟を東京地裁に起こすことが20日、分かった。時短命令の違法性を問う提訴は初とみられる。22日に提訴する方針。代理人の倉持麟太郎弁護士は取材に「緊急事態宣言下で、行政による過剰な権利制約が続いている。訴訟で問題提起をしたい」と話した。東京都は18日、全国で初めて、時短要請に応じなかった27店舗に21日までの4日間、午後8時以降の営業停止を命じた。うち26店舗を経営するグローバルダイニングは命令を受け、営業時間を短縮すると発表した。都は19日、追加で5店舗に時短命令を出した。倉持弁護士は「時短要請に応じなかった店舗は他にも多くあるのに、グローバルダイニングだけが狙い撃ちにされた印象だ。都がどのような経緯で命令対象を決めたのかも訴訟で明らかにしたい」と話した。

*9-5:https://www.tokyo-np.co.jp/article/92740?rct=coronavirus (東京新聞 2021年3月21日) 「五輪で回復できると思ったのに‥」 海外客の見送り決定、宿泊・観光に追い打ち
 東京五輪・パラリンピックで海外からの観戦客受け入れを見送ることが20日、正式に決まった。インバウンド(訪日外国人旅行者)を当て込んでいた都内のホテルや観光業者からは「大打撃だ」とため息が漏れる。
◆「『おもてなし』はどこに行ってしまったのか」
 「五輪で少しでも原状回復できると思っていたのに…。招致時に掲げた『おもてなし』はどこに行ってしまったのか」。浅草寺(台東区)のすぐ脇で旅館「浅草指月」を経営する飛田克夫さん(83)が肩を落とす。和風の客室やお風呂が売りで、コロナ禍前は外国人客であふれていたが、現在は客室の稼働率が1割を下回る。「もともと日本人が魅力を持つような造りではない」と、国内の観戦客の利用はあまり期待できず、「五輪特需」は望み薄という。「海外に『日本は危険』という印象を与えてしまう。コロナが収束し、観光客の受け入れが再開した後も当分人は戻ってこないかもしれない」。飛田さんは影響が長引かないかも気掛かりだ。
◆「予約キャンセルどうなる」
 観客とは異なり、各国の要人や競技団体の役員は大会関係者として入国が可能となっているが、それに対しても組織委員会は人数を最低限にするよう求めている。中央区日本橋の「住庄ほてる」は組織委と契約し、五輪期間中に全83室のうち約30室に関係者が宿泊する予定。角田隆社長(52)は「こんな状況で本当に開催できるのか。予約のキャンセルはどうなるのか」と不安を隠さない。
◆「暗闇は今後も続きそう」
 コロナ禍前は海外からの観戦客は100万人規模と想定され、観光地への波及効果も期待されていた。東京都ホテル旅館生活衛生同業組合の須藤茂実事務局長(68)は「感染状況が悪い東京への観光は国内でも敬遠されている。コロナ禍で廃業が既に40件に上った。暗闇が今後も続きそうだ」と見通す。「インバウンドを見越してインストラクター増員や施設拡充など投資をしてきた。延期になり、今年こそはと思っていた」。浅草などで人力車ツアーや日本文化体験講座を企画する「時代屋」の藤原英則代表(65)もそう残念がる一方、「最悪、無観客でも開催すればムードが盛り上がるので、国内客向けの企画を考えたい」と前を向いた。

| 経済・雇用::2018.12~2021.3 | 12:43 AM | comments (x) | trackback (x) |
2021.2.8~15 経済から見た日本の医療・介護制度は、重荷ではなく成長産業である (2021年2月18、19、20、22、24、27日、3月1、4、5日に追加あり)
 
2019.12.21毎日新聞 2020.4.8 2020.5.27時事   2021.1.29北海道新聞 

(図の説明:1番左の図のように、2020年度の本予算は102兆6,580億円で、消費税を増税したのに、9兆2,047億円は債務純増だった。さらに、左から2番目の図のように、新型コロナ対策として第1次補正予算が16兆8,057億円組まれたが、そのうち9兆5,000億円あまりは国民に自粛を求めたため成り立たなくなった企業の救済資金だった。また、右から2番目の図のように、第2次補正予算が31兆9,114億円組まれ、そのすべてが自粛による倒産危機に備える支出だった。さらに、一番右の図のように、19兆1,761億円の第3次補正予算が組まれて、2020年度の支出合計は170兆5,512億円になった。しかし、しっかり検査と隔離をし、新型コロナ関係の機器・治療薬・ワクチンの開発をした方が、少ない支出でその後の経済効果が大きかっただろう)

  
  2020.12.21時事      2020.12.21毎日新聞   2020.12.21毎日新聞

(図の説明:現在、審議中の2021年度予算案は、左図のように、5兆円の新型コロナ対策予備費を計上して、総額106兆6,097億円となっており、このうち43兆5,970億円を新規国債発行で賄っている。また、中央の図は、2020年度第3次補正予算と合わせて、もう少し詳しく使途と財源を記載したグラフだが、より詳しい内訳があった方が本当の姿が見えやすい。しかし、これらの歳出の結果、右図のように、2020年度は歳出と国債残高が跳ね上がり、2021年度の財政も赤字続きになりそうである)


    FeelJapan         2021.2.1時事      2019.10.16みんなの介護   

(図の説明:左図のように、日本の名目経済成長率の大きな流れは、低賃金を武器に加工貿易で欧米先進国に輸出しながら戦後の荒廃した国土を復興していた第1期の9.1%から、オイルショックを境に第2期の4.2%に下落し、バブル崩壊を境に第2期の4.2%から第3期の1.0%に下落したことがわかる。これは、まずエネルギー価格が日本経済の大きな弱点であり、バブルで膨らませていた名目経済成長率もバブルが消えると1.0%前後になったということを示す。それに加え、中央のように、消費税増税による物価上昇や非正規化・高齢化による低所得者割合の増加があり、近年の実質経済成長率は0%近傍だった。しかし、右図のように、実質所得が減少しているのは日本だけで他の先進国は大きく増加しており、その理由は、日々、製品の高付加価値化や本物の生産性向上に取り組んでいるからである)

(1)医療崩壊の理由は、政治・行政・メディアの不勉強と無知にあること
1)2021年度当初予算の肥大と税収源
 現在、予算委員会で議論している2021年度当初予算案は、*1-1のように、2020年度補正予算と連動し、歳入の40・9%を新規国債発行(借金)に依存しながら肥大化している。これは、新型コロナ禍で歳出拡大圧力が強まり続けたせいとのことだが、コロナ対策として強制的に休業させ損害を出させた上に税収を落とし、日本経済の起爆剤などとして生産年齢人口に対するばら撒きを続けるのはあまりに愚かだ。

 また、「日本における財政事情の悪化は、高齢化に対する社会保障費の伸びによる歳出拡大の影響が大きい」などと必ず言われるが、これは予測可能で現在の高齢者が保険料を支払っていた期間に引当金を積んでおくべきだったのに、国は現金主義会計を変更せずにひたすら浪費してきたために起こった国の責任なのである。そのため、政治・行政・メディアが、まるで高齢者に責任があるかのようなことを言うのは、いっさい止めるべきだ。

 さらに、日本経済が低迷して税収が回復しないのは生産年齢人口の生産性の低さによるのであり、そうなった理由は、①エネルギー ②資源 ③賃金 等の高コスト構造をいつまでも変えずに現状維持に汲々としていたことが原因だ。私は、①②については、1990年代から解決策を提示していたが、外国だけが2000年代から本気で始めて日本を追い抜いた事実があるのだ。

 なお、③の賃金は、イ)付加価値を上げるか ロ)生産性を上げるか ハ)賃金を下げるか しか選択肢はないので、例えば新型コロナを例にとれば、イ)については、役に立つ期間内に検査法・治療薬・ワクチンを開発・実用化・販売する方法があるが、先進諸外国はそうしているのに日本は大学への立入を禁止して試験研究を行えなくしたという政治・行政の愚かさがある。

 ロ)についても、新型コロナを例にとると、米国の地方大学が唾液を使った検査法の開発を行い、唾液の方がウイルスを多く含むという結果を出したにもかかわらず、いつまでも唾液では結果が疑わしいかのような非科学的な報道をメディアが行い、日本における検査の生産性を低いままにしておく世論形成を行ったのは生産性の向上に逆行していた。

 ハ)については、日本では物価を上げて実質賃金を下げており、このようにして実質賃金を下げている国は日本だけなのだが、これは政治・行政の失敗を国民に皺寄せしているということだ。このような事情があるため、消費が減って法人税・所得税の税収が減るのは当然で、それをカバーするために消費税で薄く広く課税すれば所得に反比例して課税することになって、さらに消費が減る。従って、私は、消費税増税のような筋の悪い法案に賛成したことは一度もない。

2)新型コロナの影響による税収大幅減
 1)で述べた通り、日本の新型コロナ対策は問題を解決するための努力をせず、時短や休業を進める宣伝ばかりをこぞって行ったため、*1-2のように、所得が減少したのに応じて各税収が大きく減少し、2020年度は63・5兆円見込んでいた税収が50兆円台前半に落ち込むそうだ。

 しかし、それだけではなく、国の愚策によって国民に人為的にもたらされた減収は、全額を国が負担して還付すべきで、2020年度の法人税や2020年の所得税申告書とそれ以前(前年又は過去3年分で既にある)の申告書、同期間に受けた支援金額をまとめた書類を準備すれば、要還付額の計算は正確で容易なのである。

 また、減収分の全額が還付されることが明らかになれば、銀行から借り入れを行うこともでき、「GoToキャンペーン」などで不公平に特定の業種だけを支援する必要はなくなる。そして、そのくらいのことを要求しなければ、国の不作為とその結果の国民への皺寄せは、今後も続くと思われるのだ。

3)医療崩壊は、なぜ起こったのか
 新型コロナ感染拡大の第3波で医療提供体制逼迫・医療崩壊の危機という声が、*1-3はじめ知事会やメディアで大きかったが、医療提供体制逼迫・医療崩壊の危機が本当に新型コロナ感染拡大によって起こったのかと言えば、そうではない。

 具体的には、*1-3に、①緊急事態宣言が出された都府県でコロナ用病床の使用率が高止まり ②重症者の多い東京都で入院先や療養先が決まらない人が多い ③救急患者の搬送困難事案が多発 ④コロナ患者受け入れに伴って通常医療の入院・手術を減らした医療機関も ⑤日本の人口当たり病床数は世界のトップ水準でコロナ患者数は欧米に比べて圧倒的に少ないのに医療崩壊が危惧される原因の1つは、コロナ患者の受け入れが公立・公的病院に偏っている ⑥民間病院は中小規模が多く感染症対応が難しいという事情あり ⑦中小民間が回復期の患者を引き受けるといった役割分担に積極的に取り組んでほしい ⑧軽症・無症状者は自宅や宿泊施設で療養するが、容体が悪化し死亡する事例が昨年末から増え、自宅療養中だった男性の容体が急変して死亡した と書かれている。

 このうち①②③④は、軽症者・無症状者の隔離に病院を使っていることが原因であり、⑧の軽症者・無症状者は医師・看護師の関与の下、宿泊施設で隔離・療養させる必要があるのだ。また、家庭の事情があって軽症以上でも自宅療養する場合には、その人は患者であって(電話の繋がらない)保健所への連絡や家事は負担になるため、訪問介護(家事支援)・訪問看護・往診などのサポートを受けることができなくてはならないのである。

 また、⑤⑥⑦については、(文科省管轄の)大学病院は大規模でエリア分けが可能であるため、中小の民間病院より先に大学病院で中等症・重症の患者を受け入れるようにすべきで、そうした方が研修医の経験にも資する。さらに、疾病は新型コロナだけではないため、「病院に入院したら新型コロナに感染した」という状態では困るのであり、病院の得意分野に応じて役割分担すべきなのだ。

 なお、感染症は新型コロナだけではないのに、病気になると大部屋で空気や共同トイレから感染しやすい入院施設に入らなければならないのでは、免疫力の強い人しか入院できない。しかし、病気になると誰でも免疫力が落ちるため、入院施設はすべて陰圧の個室にし、酸素吸入機器等の必要な設備をつけておけば、新型コロナでもこれほど大騒ぎする必要はなかった筈である。

 つまり、⑤の「日本の人口当たり病床数は世界のトップ水準で、コロナ患者数は欧米に比べて圧倒的に少ないのに、医療崩壊が危惧された」というのは、異なる診療科なので感染症に対応できなかったり、病室が粗末でスタッフも少ないため感染力の強い感染症患者を受け入れられなかったりしたということで、普段からやっておくべき地域医療計画ができておらず、いざという時の入院施設がお粗末だったということなのである。

4)本来やるべきだった新型コロナ対策と検査
 広島県の湯崎知事は、1月29日、*1-4-3のように、広島市中心部4区の全住民と就業者合わせて最大80万人を対象とする新型コロナウイルスの無料PCR検査を実施すれば死者や重症者の発生が減り、結果として11~19億円の医療費を節約できるとの試算を発表されたそうだが、私もそのとおりだと思う。

 この検査は、無症状者・軽症者が対象で任意だが、少なからぬ死者・重症者・中等症者の発生を予防でき、「プール方式」を利用すれば比較的迅速かつ安価で検査を行うことができる。他の地域も、同様に検査を行って無症状の陽性者に一定期間の自宅待機を要請すれば、早めに感染拡大の芽を摘み取り、経済的な損失を最小限に抑えることができると、私も考える。

 そのような中、*1-4-1のように、医師・歯科医師・薬剤師・看護師・理学療法士等の国家資格を持つ国会議員が参加する自民党新型コロナ対策医療系議員団の本部長を務めておられる冨岡衆議院議員が、「①コロナによる医療体制の逼迫は、東京はじめ3大都市圏はパンク状態で限界」「②人工心肺装置(ECMO)をつけると必要な人手が倍になる」「③過重労働で人手が足りず、勤務日程が組めない事態が危惧される」「④感染拡大状況は地域によってバラツキがある」「⑤全体を見渡して空いているところに素早く患者さんを搬送するシステムが必要」「⑥全国各地の自衛隊病院を専門病棟として活用する工夫も必要」「⑦経済状況の悪化に伴う自殺者の増加も起きる可能性がある」「⑧LAMP法(*1-4-2参照)などの短時間検査を導入し、検査数を増やして無症状の若年感染者の発見に全力をあげるべき」「⑨オゾン・紫外線・高機能フィルターなどで汚染された空気の除菌をすべき」等と言っておられる。

 しかし、⑧の導入も含め、早急になるべく簡便で早く結果の出る検査を充実していれば、①②③④⑤⑥⑦の状態は防げた筈なので、「まだこんなことを言っているのか」と私は思った。また、⑨は世界で需要があるのに、日本にはこれを作れる会社がないのだろうか? そして、②のECMOや酸素吸入は対症療法でしかないため、抗体医薬を含む治療薬を素早く承認すれば治療期間が短くなり、ECMOを使わなければならない患者は増えず、助かる人が増えて、病院の負担は減った筈である。

 さらに、⑤の空いているところに素早く患者さんを搬送するシステムは、私が衆議院議員だった2005~2009年に、夫(脊椎・脊髄外科医)のアドバイスを受けて全国にドクターヘリのシステムを導入したため、既にある。従って、搬送時の工夫さえすれば、都会・離島・山間部を問わず④⑤はすぐできる筈で、⑥の自衛隊病院も使えばよいため、何故、迅速にそういう対応をしなかったのか不思議なくらいだ。

5)物質を介する感染と変異株
 島津製作所が、*1-5のように、ノロウイルス向けの検査キット技術を応用して物質の表面に付着した新型コロナウイルスを検出する試薬キットを発売し、PCR検査法により100分でパソコン・ドアノブ・水道の蛇口などを調べて衛生管理に役立てられるそうでよいことだ。

 ウイルスの変異株はウイルスが存在する限り常に発生しており、多くの人がマスクをして混雑を避けていれば、空気感染は減少するので物質に付着して長く生存する能力がウイルスの感染力になり、その方向に変異した株が増えることになるだろう。そのため、物質の表面に付着した新型コロナウイルスを検出する試薬キットはより重要になると思われる。

 また、私は、外国に行った時は、その国の人の生活を感じられる市場やデパートに必ず行くのだが、欧米で日本よりも新型コロナの感染者が多い理由の1つに、食品の売り方があると思う。例えば、果物などを沢山積み誰もが触って選べる売り方は普段なら豊かな感じがするが、ここに新型コロナウイルスが付着して感染する確率は高い。その点、日本のスーパーはパッケージに包装して販売しているため、洗剤で洗えない食品にウイルスが付着する機会が少ないのである。

(2)社会保障は無駄遣いではなく、他に多額の無駄遣いをしながら社会保障給付を抑制することこそ愚策である
1)国の会計処理について
 国立社会保障人口問題研究所は、*2-1-1のように、2018年度の社会保障給付費(社会保険料と税金を主財源とした医療・年金・介護等の給付合計)が121兆5408億円で過去最高を更新したと発表したそうだ。

 しかし、まず、2020年10月16日に書かれた記事に利用できる財務情報が2019年度のものではなく2018年度のものだという事実が、国民が支払った金に対する政府のAccoutability(説明責任ではなく受託責任)と使途に関する開示が如何に軽視されているかを示しているのである。

 一般企業の決算なら、各国に多数の子会社を持つ多国籍企業でも、2019年度(2019年4月~2020年3月)の決算なら3カ月以内の2019年6月末までに終了して株主総会まで終わっていなければならない。また、法人税申告書の提出期限は決算日から2カ月後の5月末で、延長可能な期間は最大でも4カ月であるため、遅くとも9月末が提出期限になる。

 また、内訳を細かく書かずに単に総額が増えた減ったと言っているにすぎないため、①当然増えるべくして増えた金額 ②政策の誤りによって支出した金額 ③運用時に無駄遣いをして支出した金額 の区別がつかない。これは、為政者にとっては責任逃れに都合がよいが、国民にとってはいくら負担しても「足りない」と言われる不都合な状態を作っており、一般企業なら、財務管理ができずに必要な支出と放漫経営による支出を混同しながら倒産していくケースだ。

2)年金について
 年金については、*2-1-2のように、0.8%増の55兆2581億円などと増えたこと自体を問題視し、高齢者への給付削減という「痛み」を伴う改革への踏み込みの甘いのが大きな課題とするメディアの論調が多い。

 そして、その帰結として、政府は、*2-3-2のように、「マクロ経済スライド」と称する年金支給額の伸びを物価や賃金の伸びより抑制する仕組みを作り、実額年金額を国民に気付かれないように次第に目減りさせるという悪知恵を働かせて、*2-3-1のように、厚労省が現役世代の賃金水準を年金受給額に反映させるルールを適用し、2021年度の公的年金受給額を20年度比で0.1%引き下げると発表したのだ。

 さらに、その理由を「日本の公的年金は現役世代の保険料を高齢者の給付に充てる仕送り方式で、少子高齢化が進むと現役世代の負担が増えるから」などとしているが、定年年齢は55歳だったころから60歳・65歳へと上昇しているため、その高齢者が働いていた間に引当金を積んでいれば寿命が10年くらい伸びても全く問題はなかった筈だ。にもかかわらず、いつまでも賦課課税方式を改めず、付加価値や生産性を上げる努力もせずに、大きな無駄遣いをしながら、働かないことを推奨してきた政府の責任は重く、その結果を高齢者に皺寄せしようなどというのは筋違いも甚だしいのである。

 なお、*2-1-2に、「2018年度に121.3兆円だった年金・医療・介護等の社会保障給付費は、団塊世代が全員75歳以上になる25年度には140兆円を超え、2040年度には190兆円近くまで膨らむ見通しだ」などと書かれているが、ある年の出生数はその年が終ればわかるため、これらは、今初めてわかることではない。

 だからこそ、現役世代が支払った保険料を引退世代の給付に充てる賦課課税方式ではなく、自分のために積み立てる積立方式に変更しておかなければならないと私は1990年代から言っており、民間企業は退職給付会計を導入して積立不足額の積み立てもとっくに終わっているのだが、日本政府は賦課課税方式を維持して無駄遣いを続けつつ現在に至り、「高齢者への給付と負担を見直さなければ現役世代の負担が重くなる」などと未だに言っているのだ。ちなみに、米国で退職給付会計が導入されたのは1980年代であり、国際会計基準もすぐに採用している。

 そして、高齢者に皺寄せする現在の日本のやり方は、高齢者に低所得者の割合を増やすため、高齢者割合が増すにつれて、生産年齢人口で賃上げしても日本経済の需要が減ることになる。そのため、悪知恵に基づく変な変更をせずに、真の需要であり今後は世界でも需要が増える高齢者向けのサービスを充実すべきだったのだ。

 また、少子化がよく理由に挙げられるが、年金等の高齢者への支出が削られれば、子どもを増やせば自分たちの老後の準備ができず、ますます惨めな老後を過ごさなければならないことになる。そのため、高齢者に対する社会保障の減額という老後不安は、生涯所得と生涯支出を考えれば出生数を減らすことになり、女性はそこまで考えて行動しているのである。

3)医療費について
 *2-1-1に書かれているとおり、2018年度は医療費が0.8%増の39兆7445億円だったが、診療報酬をマイナス改定して伸びを抑えたために医療機関はゆとりがなくなり、消費税増税分はすべて医療機関の負担になっていた。さらに、合理的な地域医療計画もできていない地域が多かったためか、欧米と比べてほんの少しの感染者数で医療が逼迫し、緊急事態宣言を発して国民に迷惑をかける事態となった。これらは全て政治・行政の責任であり、一方で厚労省が定める薬価が国際価格より高すぎたり、よりよい治療法への変更が行われていなかったりなど、官製市場に起因する無駄遣いも多い。そのため、保険診療と自由診療との併用は不可欠なのである。

 なお、*2-2-1のように、(生活保護給付程度の)200万円以上の所得がある75歳以上の医療費窓口負担は2割に引き上げることになり、これに加えて資産の多い(具体的にいくらを言うのか不明)高齢者にも一定の負担を求める案が出ている。しかし、一つの課税所得に対して何重もの負担を課すのは不公平で非常識な政策で、そのためにマイナンバーカードを使おうというのだから、マイナンバーカードは危険なのである。

4)介護について
 *2-1-1によれば、介護を含む「福祉その他」が2.3%増の26兆5382億円だったそうだが、金額だけが大きくても介護サービスは未だ必要な人に十分に届いているわけではなく、例えば新型コロナで自宅療養する人に介護の手は届かなかった。そして、家事を担う人(主に女性)に過重労働の負担をかけながら、40歳未満の人は介護保険制度に加入不要などという変則的な制度にしているが、これこそ全世代型社会保障にして働く人全員で負担すべきなのである。

 また、医療保険・介護保険等の社会保険料から補填される部分は、税金から支出される社会保障給付費とは区別して考えなければならないが、これも故意か過失か、ごっちゃになっている。

 なお、*2-2-2には、「当事者・事業者・研究者、識者3人に聞く」として、「①家族支える視点を大切に」「②現場の魅力を高めて人材確保(=賃金を上げる必要性)」「③サービスと負担の議論必要」「④65歳以上の保険料の全国平均は月5,869円。2040年度には9,200円に達するという推計」「⑤2015年度に一律1割だった利用料が一定円以上の所得のある人は2割、2018年度からは特に所得の高い層は3割に上がった」と書かれている。

 ここで大きく抜けているのは、「介護の当事者は被介護者であって被介護者がQOL(Quality of life)を下げずに療養できなければならない」という介護の理念だ。しかし、①は「家族を支えるべき」とするに留まり、②は「介護スタッフの賃金を上げるべき」としか言っておらず、③は④⑤のように、これまで「介護サービスの削減と高齢者の負担増」ばかりを言ってきており、介護の理念からほど遠いものだったのである。

 しかし、(あなたを含めて)誰もが被介護者になる可能性があり、高齢になって驚くほど少ない年金から毎月5~9千円も取られた上、少ない所得を高所得と言われてサービスの値段を上げたり、サービスの内容を制限されたりしたら、あなたならどう思うだろうか。その時の被介護者の驚きと落胆を、相手の身になって思いやるべきだ。

(3)中途半端で妥協したため、金ばかり使って意味のない政策になった事例
1)東日本大震災のかさ上げ造成について
 2011年の東日本大震災で、岩手県大槌町の中心部は、*3-1のように、10mを超す津波にのまれて壊滅状態となったが、町は161億円かけて2.2mかさ上げした。しかし、町が土地取得や住宅建設に200万円以上の補助金を出しても空き地が埋まらないそうで、当然のことである。

 何故なら、10mを超す津波に襲われた地域での2.2mのかさ上げは、次の津波の備えにならず、就労先となる産業や住宅を作れないからで、岩手・宮城・福島3県のかさ上げ地域は総事業費が2020年6月時点で4,627億円に上り、ほぼ全額が復興交付金等の国費で賄われたにもかかわらず、活用不能で未活用となってしまったのだそうだ。

 しかし、このように安全対策が不十分で住めないような場所なら、震災後に内陸部に移った地権者の多くが戻らないのは当たり前であり、「右肩上がりの時代に確立された復興のあり方が、現状にそぐわない」のではなく、安全対策が不完全なら日本人だけでなく難民を誘致することすらできないのである。

 そのため、2013年~2037年までの25年間にわたり、納税者が「復興のためなら」と黙って所得税の2.1%を納税した復興特別所得税の多くを無駄遣いにしてしまったわけだが、このように不完全な造成工事を、同調して進めてしまうのは男性の発想ではないのか? 

 私は、東日本大震災後、被災地で話をするのは男性ばかりで女性は後ろにいて意見を言わず、東北はジェンダー平等に遅れていることに気がついていたのだが・・。

2)エネルギーの選択について
イ)原発について
 東日本大震災後、納税者が黙って支払っている復興特別所得税や電気料金に含まれる原発関連費用は、*3-2に書かれている原発事故の後処理にも使われている。

 しかし、根拠もなく30~40年で完了するとされた廃炉作業は限界に近づいており、屋根を解放したまま800~900tもそのままにしている燃料デブリ(溶け落ちた核燃料)の取り出しすらできないとは呆れる。国と東電が2011年12月に廃炉工程表を掲げてから工程が遅れを重ねているのは、新型コロナよりも過度な楽観主義に基づく非科学的な対応に原因があるだろう。

 このように、散々無駄遣いしながら懸命につなぎとめてきたという目標について、原子力損害賠償・廃炉等支援機構の山名理事長は、「1年の遅れは、全体の遅れに比べたらたいしたことはない」「今の時点で『40年は無理』なんてとても言えない」「40年を目指して全力でやること自体が、難しい仕事を進める一つの原動力」などと述べているが、そこまで何もできないのに原子力発電などよく始められたものだ。

 その上、再稼働・新型原子炉などと言っているのだから、生活や安全を軽視して遊びのようなことばかりしている男性の極楽とんぼには、呆れ果てる。

ロ)発電用アンモニアについて
 それに加えて、東電ホールディングスと中部電力が出資するJERAが、*3-3-1のように、「CO2を出さない」という理由でアンモニアを発電燃料とするのも、不合理で筋が悪い。

 何故なら、排気ガス公害はCO2だけではないのに、「CO2排出量の削減だけが課題で、2050年までにCO2排出量さえ実質0にすればよい」などと公害を小さく考え、*3-3-2のように、着火しにくく、燃焼速度も遅く、燃焼時にNOxを出すアンモニアを、わざわざ海外から輸入して発電燃料にしようとしているからである。

 日本は再エネが豊富な国であるため、この試みは、エネルギーの自給率を下げて環境だけでなく安全保障の役にも立たず、もちろん地方創成の役には立たず、事故原発の後処理と同じように無駄が多く、後ろ向きで馬鹿なガラ系の寄り道にしかならない。

3)森林環境税について

   春の森   森林育成会社もあるが・・         2月の梅林


  水仙の咲く森      北アルプスの春     わさび田の春    所沢ゆり園

 2019年3月に成立・公布された「森林環境税及び森林環境譲与税に関する法律」により、*3-4のように、日本の森林の保護・保全・活用に必要な財源を確保するためとして、年額1000円/納税者が各市町村を窓口として国税として2024年から徴収され、一旦国へ納められた後、国から都道府県・市町村に「森林環境譲与税」として交付されるのだそうだ。

 その「森林環境譲与税」は、2019年度から都道府県を経由して市町村に既に交付されており、①人口比率 ②木材使用施設・公園などの木材利用率 で交付額が決められるため、実際に森林の維持管理を生業にしている市町村に少なく、人口の多い都市部の市町村に多く支払われるというおかしな結果となっている。

 しかし、私は2005~2009年の衆議院議員時代に、国で環境税を導入するように提唱したが国では導入できず、最初に森林環境税が日本の資源でCO₂吸収源でもある森林の手入れをするために地方自治体で創られたのであり、これは木材の利用促進のために創られたものではない。

 そして、木材利用の推進は、森林の手入れを促すために副次的に行っているのであり、森林を手入れすることもない人口の多い都市部に多額の「森林環境譲与税」が支払われるのは、はげ山を増やすだけなので本末転倒である。

 さらに、森林の間伐のみを目的としてそれに費用をかけ、間伐した木材を打ち捨てておくなどというのは、あまりにもったいなく、その傲慢さは山の神様の怒りを買うだろう。そのため、間伐材を有効利用したり、植林の際に苗を詰め過ぎて植えないようにしたりして、間伐費用そのものは削減を考えるべきだ。

 もちろん林業活性化は重要だが、森林の育成・維持管理には、ボランティアではなくプロの森林・林業専門家が関わる必要がある。また、地方が森林環境税を新たな財源として森林の育成・維持管理以外の目的に目的外使用をしないようにしなければ、森林環境税の本来の目的が達せられないため、国民は一人当たり年額1000円の森林環境税を支払う理由がないのだ。

 つまり、遊びや無駄遣いではなく、まじめに森林の育成・維持管理という本来の目的に合った使い方をしないのであれば、国民が森林環境税を払う理由はなくなるので、これを絶対に忘れず使途を開示してもらいたいわけである。

(4)女性差別の政策への悪影響
1)オリ・パラ関連団体と五輪33競技中央競技団体の女性理事割合と日本社会
 「女性がたくさん入っている理事会は時間がかかる」とした森氏の女性蔑視発言を受け、毎日新聞が、国内のオリ・パラ関連団体と五輪で開催される33競技の各中央競技団体における女性理事の比率を調べたところ、*4-1-1のように、五輪選手の5割前後が女性であるにもかかわらず、競技団体の全理事に占める女性割合は、3割超えはテコンドーのみで、女性理事ゼロの団体もあり、女性が会長を務めるのは日本バスケットボール連盟のみであり、全体の平均は16.6%だったそうだ。

 また、日本オリンピック委員会(JOC)と森氏が会長を務めるオリ・パラ組織委員会には女性理事が20%いるものの、森氏の差別発言があったJOC評議員会には3.2%しかいなかった。

 そして、そういう状況を変えるために、2019年6月にスポーツ庁が、中央競技団体向けの運営指針で各組織の女性理事割合を40%以上と設定し、女性評議員の目標割合を設定することなども提示していた中、女性の発言機会を制限するような森氏の女性蔑視発言「女性を増やしていく場合は、発言時間をある程度、規制を促しておかないとなかなか終わらないので困る」が飛び出したのだそうだ。

2)森氏の女性蔑視発言に対する周囲の反応
イ)スポーツ界トップの空気
 東京オリ・パラ組織委員会の森氏の女性蔑視発言に周囲から笑いが起こり、それを報じると、*4-1-2のように、複数のスポーツ関係者が「森会長の冗談じゃないか」と言ったそうだ。

 しかし、冗談なら面白くなければならないが、この発言は誰にとって面白いのか? 答えは明らかで、同じような女性蔑視の価値観を持つ人(多くは男性だが、女性にもいる)にとっては面白いが、事実でもないのに批判された人は侮辱を感じつつ笑ってごまかしていただけだ。そのため、そんなことも推測できないような人に調整役ができていたのは、一重に日本女性の忍耐の賜物なのである。

ロ)組織委の対応
 国際オリンピック委員会(IOC)は、最初、「森会長は発言について謝罪した。これで、IOCはこの問題は終了と考えている」と言っておられたが、*4-2-2のボランティアの大量辞退・*4-2-3の小池東京都知事の対応・協賛する企業からの苦言を受けて、*4-1-1のように「東京大会組織委員会も会長の発言を不適切と認め、ジェンダー平等に向かう決意を再確認した」という公式声明を発表し、森氏は2月12日の組織委の臨時会合で辞任を表明した。

 しかし、*4-3のように、IOCのバッハ会長は森会長に対し、森会長と並ぶ女性の共同会長を置く案を提案しておられたのだそうで、森氏の辞任後は、川淵氏が東京オリ・パラ組織委員会の新会長に就任する見通しと伝えられたが、さすがに、これはなくなった。

 私は、森氏の女性蔑視発言がきっかけで会長が変わる以上、会長は女性でなければならないと思う。しかし、政治家が会長になると、東京オリ・パラが政争の具にされて失敗する可能性が高くなるので、会長は政治と無関係な人がよい。

 そのため、既に大枠は決まっており、副会長などの補佐が複数いれば具体的な活動は可能であるため、雅子妃殿下に会長になっていただき、東京オリ・パラでは日本語だけでなく英語等の外国語を交えて、オリ・パラ精神にのっとった今後の世界を見渡す挨拶をしてもらってはどうかと思う。雅子妃殿下なら、世界の人が見たいと思っている顔である上、先輩のおじさま方も協力して支えることができるのではないだろうか。

ハ)自民党政治家の反応
 自民党政治家の反応は、萩生田文科相が、「『反省していないのではないか』という意見もあるが、森氏は最も反省しているときにああいう態度を取るのではないかという思いもある」と言って森氏をかばったが、苦しい弁解だった。

 また、二階幹事長は、*4-2-1で「①森会長には周囲の期待に応えてしっかりやっていただきたい。辞任は必要ない」「②ボランティアの辞退は、即座にそういう反応もあっただろうが、お互い冷静に考えたら落ち着いた考えになっていくんじゃないか」「③どうしてもおやめになりたければ新たなボランティアを募集する」と言っておられ、さらに、*4-2-2では「④男女平等で一貫して教育を受けてきた。女性は心から尊敬している」と言っておられた。

 しかし、①は森氏の女性蔑視発言を軽く考えすぎている。また、②は「ボランティアが瞬間的に感情的な行動をとったのだから、落ち着けば変わる」という意味で、「(女性の多い)ボランティアが、軽率な行動をとったのだ」と言っているのだから、やはり女性蔑視だ。その上、③は、「ボランティアなんか、いくらでも集まる」と言っているのだから失礼だ。

 それでは、④の「女性は心から尊敬している」という言葉は、本当であれば女性の何を尊敬していると言うのか? 森氏に抗議している女性は、優しさや忍耐強さで尊敬されたいとは思っておらず、公正かつ正当に評価された上で尊敬されたいのだということを忘れてはならない。

二)政財界、メディアの遅れ
i)スポーツ・政治・メディアの遅れ 
 スポーツ・政治・メディアで意思決定層に女性が少ない理由を、*4-1-1は、①女性への家事労働負担の偏在 ②社会に根付く強固な性別役割分業意識 ③その中での女性のキャリア蓄積の困難 と記載しているが、どの分野であっても第一線にいる女性は既に①②③をクリアしているのに(そうでなければ第一線にいられない)、このようにして割り引いて考えられるから意思決定層に行けないのであり、決して日本女性に人材がいないわけではない。

 なお、*4-2-4に、クリエーティブディレクターとして社会派の広告やイベントの企画などで活躍する辻愛沙子さんの話として、「④この発言を薄めたような出来事は、社会に多い」「⑤森さんの発言は言葉のあやではなく、価値観の根底に根付いている本音だ」「⑥勝手に作られた想像上のヒエラルキーがある」「⑦いつの時代にも『わきまえない女』がいたから、今の私たちに参政権があり仕事もできる」「⑧黙っている方が楽で声を上げる人にヤジを飛ばす方が簡単だけど、連帯したいアクションに対して賛意を伝える言葉を選ぶ人が多かったのはポジティブな動きだった」と記載されており、賛成だ。

 これに付け加えれば、短期的には黙っている方が楽かもしれないが、声を上げて社会を変えなければ意思決定層に女性は増えず、そのことは長期的には自分に降りかかってくるのである。

ii)国・地方自治体における女性登用の遅れ
 沖縄タイムスは、2月10日の社説で、*4-4のように、「①市民のニーズを把握し地域の実情に応じた政策に取り組むべき地方自治体職員も管理職が男性ばかりでは女性の利益が反映されにくい」「②沖縄県内41市町村の管理職に占める女性割合は14.0%と低く、全国平均の15.8%を下回る」「③部局長・次長級は11.7%(全国10.1%)と1割程度」「④政府が掲げていた『指導的地位に占める女性の割合を2020年までに30%程度」とする』という目標からほど遠い」「⑤『幹部候補になるまで育っていない』『昇進に消極的』といった声を未だに聞くが、そもそも候補となるための経験やチャンスを男性と同じように与えていない」「⑥昇進への尻込みは、家事や育児の負担が女性だけに偏っている現状や残業を前提とした長時間労働の問題でもある」「⑦地域による登用率のばらつきもある」「⑧政治・行政分野では30%がクリティカルマスとされている」などを記載しており、心強い。

 このうち①は全くそのとおりで、保育・介護などのサービスを女性に押し付けて、女性を過重労働にしながら社会のニーズを汲み取らなかった経緯がある。また、女性が関わることの多い教育・医療・年金等の社会保障も同様で、これだけの無駄遣いをして借金を積み重ねながら改善どころか改悪してきたのであり、その責任は長く(実質的)権力の座にいた人ほど重いだろう。

 また、⑧については、政治だけでなくどこでも最低30%は必要で、その理由は、10人の会議体に女性が1人しかいないのに女性のニーズを口にすれば、残りの9人から「会議が予定どおりに進まない、変わっている」等と言われるが、女性が3人いて女性のニーズを言えば、残りの7人(それでも女性の2倍以上いる)も「そうか」ということになるからだ。しかし、30%というのは、女性が⑥の理由で仕事からドロップアウトしがちである(何を重要と考えるかの問題なので、それも自由)ため謙虚に設定した数字で、本来は50%いても不思議ではないのだ。

 そのため、②③は、女性の割合が低すぎるため沈黙する女性もいるだろうし、④のように目標を達せられずに取り下げるなどというのは論外なのである。そして、⑤は昔から言われていたため、(私が提案して)1997年に男女雇用機会均等法を改正して採用・配置・昇進・退職に関する差別を禁止し、それが1999年4月1日から施行されて20年以上も経過しているため、未だに女性の幹部候補が育っていないのなら、20年以上も法律違反をしていたことになる。

 なお、⑥については、仕事を続けている女性は解決しているケースが多いにもかかわらず、これを理由に幹部候補の道を閉ざされた上、「昇進しないのは本人の希望」とされているケースが少なくない。そして、⑦は、女性に能力がないからではなく、受け入れ体制が不備であるため意思決定する立場の女性割合が低くなっている証拠なのである。

・・参考資料・・
<医療崩壊の理由は政治・行政・メディアの無知にあること>
*1-1:https://mainichi.jp/articles/20201221/k00/00m/010/225000c (毎日新聞 2020年12月21日) 肥大予算、さらに借金依存 歳入の40.9% 財政再建目標、絶望的に
 菅義偉首相にとって初となる2021年度当初予算案は異例ずくめの編成作業をたどった。「菅カラー」の打ち出しに腐心したが、新型コロナウイルス禍で歳出拡大圧力は強まり続け、補正予算と連動した「15カ月予算」は肥大化した。時限的な政策の財源を手当てする補正と違い、当初予算は暮らしやビジネス活動に直結する国家の絵姿。コロナ後の日本経済の起爆剤となるか、それとも将来に禍根を残す結果を招くのか。新型コロナウイルス対応で借金が膨らんだ2020年度に続き、21年度当初予算案も歳入の40・9%を新規国債発行(借金)に依存する編成となったことで、日本の財政悪化は一層、厳しい状況に追い込まれた。政策経費を税収などでどれだけ賄えるかを示す基礎的財政収支(プライマリーバランス=PB)の赤字規模は、20年度当初段階から10兆円超増えて20兆3617億円。政府は25年度にPBを黒字化させる目標を掲げているが、実現は絶望的な状況だ。日本の財政事情は、高齢化による社会保障費の伸びに伴い歳出の拡大が続く一方、経済の長期低迷で税収の回復は鈍く、歳入不足を国債で補う構図が続いてきた。10年代は税収が徐々に持ち直し、PBの赤字幅も縮小傾向にあったが、コロナ禍で状況が一変した。20年度は3回にわたる補正予算を通じ、歳出総額が175兆円に膨張。一方、歳入は税収が当初見込みより8兆円超下振れして55兆1250億円にとどまったこともあり、国債を大量発行。20年度の新規国債発行額は112兆円に達し、それまでで最悪だった09年度(52兆円)の倍以上に肥大化した。国と地方の長期債務残高は、20年度末に1200兆6703億円となる見込みで初めて1200兆円に到達。国民1人あたり960万円程度に上る危機的な状況にある。政府は「経済再生なくして財政健全化なし」として、まずは経済を回復して税収を増やし、PBの赤字幅を縮小させる従来型の財政改善策を維持する方針だ。しかし、三菱UFJリサーチ&コンサルティングの小林真一郎主席研究員は「政府の方針はあまりに楽観的だ」と警告する。政府は一連の経済対策の効果も織り込み、21年度は4・0%程度の経済成長を達成し「経済をコロナ禍前の水準に戻す」としている。だが、「第3波」の拡大など経済への逆風は強まっており、民間シンクタンクの21年度予測は平均3・42%とより慎重な見方が強まっており、税収の回復には時間がかかる恐れもある。これまで積み上げてきた債務のため、21年度当初歳出の22・3%に当たる23兆7588億円は借金の利払いなど「国債費」に消えていく。借金が急増した20年度分の影響は22年度予算から反映される見通しで、国債費はさらに1兆円以上増える見通しだ。小林氏は「将来的には金利上昇のリスクもあり、債務拡大はいつか限界が来る。コロナ終息後は世界的に財政再建の流れが強まることが予想され、日本もたがを緩めず、予算の使い道をしっかりチェックしていくべきだ」と指摘している。

*1-2:https://mainichi.jp/articles/20201127/k00/00m/020/003000c (毎日新聞 2020年11月27日) 国の財政運営にコロナ直撃 税収大幅減 「緊急事態」再発令ならさらに下振れ
 新型コロナウイルスの影響で国に入ってくる税金(税収)が大きく減りそうだ。2020年度は63・5兆円の税収を見込んでいたが、民間からは50兆円台前半に落ち込むとの予測も出ている。コロナ対策で今後も歳出の拡大は避けられず、借金頼みに拍車がかかるのは確実。社会のあり方を大きく変えた新型コロナは財政運営の形も変えようとしている。現在、国に入ってくるお金は、税金が約6割、国の借金である公債金などがその他を占める。コロナ禍で経済が失速する中、政府はこれまでに2度の補正予算で計57兆円超を支出した。財源は借金で賄っており、当初予算から合わせた20年度の新規国債発行額は過去最大の90兆円超。政策経費を税収などでどれだけ賄えるかを示す「基礎的財政収支(プライマリーバランス)」の赤字は当初予算段階の9兆円余から66兆円に増えている。税収は時の経済状況に大きく左右される。リーマン・ショック時は51兆円(07年度)から38・7兆円(09年度)へ、ショックの前後2年間で25%近くも下がった。企業業績や雇用情勢に左右される法人税と所得税が減少したためだ。その後は景気回復に伴い、18年度に過去最高の60・4兆円に到達したものの、19年度は米中貿易摩擦による世界経済の減速に加え、年度末になってコロナショックが深刻化。結局、税収は58・4兆円にとどまった。20年度は4~5月に緊急事態宣言が発令され、4~6月期の国内総生産(GDP)は戦後最悪の前期比28・8%減(年率換算)を記録した。その後も経済の持ち直しは緩やかで、7~9月期のGDP(速報値)は年率換算で21・4%増と大幅なプラス成長になったが、コロナ前の水準には戻っていない。第一生命経済研究所の星野卓也副主任エコノミストは、税収は50兆円台前半まで落ち込む可能性があると推計しており、「法人税の下振れが最も大きな要因。緊急事態宣言が再度発令されるようなことになれば、見通しがつかなくなる」と指摘する。国に入ってくる税収は財務省が毎月公表しており、9月末時点での20年度税収実績は、前年同期比0・3%増の16・8兆円。見かけ上は前年と同じ水準を維持しているが、これには法人税のコロナ禍の影響が反映されていない。法人税や消費税には、事業年度の途中に税金を分割前払いする中間納付制度がある。分割・前払いしておいて払い過ぎた分を後から払い戻しを受ける仕組みだ。3月期決算法人の中間納付は11月に集中するため、財務省は「影響が出始めるのはそれからだろう」とみる。税収の内訳をみると、すでにコロナ禍の影響が顕在化している税目もある。外出自粛の影響でガソリン消費が減った結果、揮発油税は10月時点で前年同月比13・6%減。航空需要が蒸発した航空機燃料税は96・2%減となった。酒税(12・4%減)とたばこ税(3・9%減)も低調に推移。消費量の低下で、ただでさえ税収減が続いていたところに、コロナ禍で嗜好(しこう)品を楽しむ機会が減ったことが追い打ちをかけた形だ。政府は「経済再生なくして財政健全化なし」の方針の下、当面は積極財政で景気の下支えを優先する構えだが、足元では感染拡大が再び進行。頼みの需要喚起策「GoToキャンペーン」も運用の見直しを迫られており、財務省幹部は「税収の見通しを立てるのが非常に難しい」と頭を抱える。星野氏は「政策の下支え効果が今後切れてくると、来年以降、所得税収の落ち込みも本格化する恐れがある」と警告する。政府は追加の経済対策のために20年度3次補正予算案を年末に編成する方針だが、税収が減る中でいつまで歳出を増やし続けるのか。厳しい財政運営を迫られている。

*1-3:https://www.nishinippon.co.jp/item/n/685121/ (西日本新聞社説 2021/1/27) 医療崩壊の危機 病床確保に民間と連携を
 新型コロナウイルス感染拡大の第3波はピークを越えたようにも見えるが、警戒を緩めるわけにはいかない。特に医療提供体制は依然として逼迫(ひっぱく)した状況が続いている。命を救う態勢を早急に立て直す必要がある。緊急事態宣言が出された福岡県を含む11都府県の多くで、コロナ用病床の使用率は高止まりしている。深刻なのは重症者が多い東京都だ。調整が難航し、入院先や療養先が決まらない人が大勢いる。九州では病床使用率の高い水準が継続している熊本県なども心配だ。病床逼迫を背景に救急患者の搬送先がすぐに決まらない搬送困難事案が多発しており、九州も例外ではない。コロナ患者受け入れに伴い、通常医療の入院や手術を減らした医療機関もある。甚大な影響が医療全般に広がっていると考えるべきだ。日本の人口当たりの病床数は世界のトップ水準にある。一方でコロナ患者数は欧米に比べて圧倒的に少ない。なのに、なぜ医療崩壊が危惧されるのか。原因の一つに、コロナ患者受け入れが公立・公的病院に偏っていることが指摘されている。日本は民間病院は中小規模が多く、感染症対応が難しいという事情はある。だが民間の力も結集しなければ、国全体のコロナ対応は立ちゆかなくなる。厚生労働省や専門家は以前から把握していた課題のはずだ。日本医師会や日本病院会など医療関係6団体が先日、コロナ患者の病床確保に向けた対策会議を開いた。今後は公立、民間を問わず協力するという。中小民間が回復期の患者を引き受けるといった役割分担に積極的に取り組んでほしい。コロナ専門病院を指定するのも一策だ。迅速に実効性のある対策を打ち出すことが肝要だ。民間病院が患者受け入れに慎重なのは、院内感染防止の負担や風評被害などで収益の悪化が懸念されることも一因だ。政府の感染症法改正案は国などが医療機関に受け入れの協力を「勧告」できる内容だが、まずは財政支援のさらなる拡充などで受け入れを促すべきだろう。軽症者や無症状者は自宅や宿泊施設で療養する。限られた医療資源を有効活用するにはやむを得ない面もあるが、容体が悪化し死亡する事例が昨年末から増えている。福岡県でも自宅療養中だった男性の容体が急変して死亡した。自宅療養者へのケアは大きな課題だと言える。冬場の患者増は、昨年から多くの専門家が指摘してきた。にもかかわらず、医療崩壊の危機を招いた国の責任は重い。政府は現状の問題点を洗い出し、あらゆる策を尽くして患者の受け皿を増やすべきだ。

*1-4-1:https://mainichi.jp/premier/politics/articles/20210201/pol/00m/010/003000c?cx_fm=mailpol&cx_ml=article&cx_mdate=20200207 (毎日新聞 2021年2月2日) コロナ社会を考える医療従事者の重い負担 医療崩壊防ぐ支援を、冨岡勉・衆院議員
 医師の経験、知識を生かし、自民党の新型コロナウイルス対策医療系議員団本部の本部長を務めている。国会議員であると同時に、医師、歯科医師、薬剤師、看護師、理学療法士など国家資格を持つ専門家が参加している。2020年3月初旬にスタートし、これまで35回の研究会を行った。各種学会長、製薬・医療機器メーカーなどからヒアリングを行ってきた。政府や専門家会議と党の間をつなぐことが我々の役割だ。
●「もう限界」
 コロナによる医療体制の逼迫(ひっぱく)は、実感としては東京をはじめとする3大都市圏はパンク状態、日本医師会の先生たちの言葉を借りれば「もう限界」だと言える。病床数のような数字からは見えない部分がある。一般の人の目には入りにくい部分に相当、エネルギーの負荷がかかっている。
たとえば防護服の着用一つとっても、勤務時間の前後、あるいは休憩をとるごとに医療用帽子、マスク、手術衣、すべて着替えなければならない。汗もかくし、時間もかかるし、その上なんとしても自分が感染してはならないと思い、非常に神経を使う。通常ならば3日も耐えられないようなことが、毎日続く。
人手の部分でも、勤務日程が組めない事態が危惧されている。救急患者は昼夜問わずやってくるので、過重労働に陥ってしまう。人工心肺装置の「ECMO(エクモ)」がよく知られるようになったが、これをつけるとそれだけで必要な人手は倍にはねあがる。重症者数の増加は現場の人手不足に直結する。医療従事者が持たなくなれば医療は破綻する。手厚い支援体制が必要だ。また感染拡大の状況は地域によってかなりバラツキが出ている。私の地元の長崎では指揮系統を一本化している。通常の医療体制では重症者が周囲の病院から集まる中核病院に負担がかかってしまう。作戦会議場の地図上のランプではないが、全体を見渡して空いているところに素早く患者さんを搬送するシステムが必要だ。自衛隊からの医師や看護師の派遣は行われているが、全国各地の自衛隊病院を専門病棟として活用する工夫も必要だ。ロックダウンなどの厳しい措置をとれば感染拡大防止には有効だが、経済に深刻な影響が出ることが危惧される。経済状況の悪化に伴う自殺者の増加も起きる可能性がある。放任すれば経済は回復するかもしれないが、感染は拡大する。政治は常にこの相反する政策のバランスをいかにとるかを迫られている。重症化を防ぎ、医療崩壊を防ぐことで経済活動を止めないようにするしかない。今回の緊急事態宣言の発令は遅きに失した感は否めないが、1都3県に限定せず、大阪、京都、兵庫、愛知、岐阜、栃木、福岡の7府県を追加し、計11都府県に対象を広げた。現時点では第1回目の緊急事態宣言を解除した際のような急激な感染レベルの低下は見られず、さらなる延長をする必要がある。
●短時間検査の導入を
 検査体制の充実も必要だ。PCR検査は時間がかかることが問題だ。より簡易で短時間で終わる「LAMP法」などをドライブスルー方式や専門外来病棟などで導入し、検査数を増やし、無症状の若年感染者の発見に全力をあげて取り組むべきだ。検査時間が短ければ再検査も容易だ。東京オリンピック・パラリンピックでも活用できる。体操の内村航平選手の場合は、2日後に3カ所で別々に行ったPCR検査で陰性となり、大会に参加できるようになった。仮に選手が偽陽性だった場合でも、再検査や再々検査に時間がかかると試合に参加できない場合も出てくる。短時間で結果が出る検査法を用いて早く再検査できれば、影響を最小限にできる可能性がある。
●空気の除菌と「ゾーニング」に関する法改正
 手洗いをしたり、机の上を消毒したりはしているが「空気」の除菌については何もしていないのが現状だ。無症状感染者が大声を出したり、せきやくしゃみをしたりして、エアロゾル化した飛沫(ひまつ)粒子が部屋のなかに蔓延(まんえん)する。「オゾン」「紫外線」「高機能(HEPA)フィルター」。主にこの三つを使って、汚染された空気の対策もしなければならない。これまで現代都市のウイルス等感染症に対する対策は非常に脆弱(ぜいじゃく)で、無関心、手を抜いてきたと言わざるを得ない。例えば高層マンションビルの地下飲食店街でクラスターが発生した場合、以後その地下街に客は行くことを敬遠する。場合によっては地下街全体の除菌を考える必要が出てくる。

*1-4-2:http://loopamp.eiken.co.jp/lamp/index.html (栄研科学株式会社) LAMP法とは
 LAMPとはLoop-Mediated Isothermal Amplificationの略であり、栄研化学が独自に開発した、迅速、簡易、精確な遺伝子増幅法です。
標的遺伝子の6つの領域に対して4種類のプライマーを設定し、鎖置換反応を利用して一定温度で反応させることを特徴とします。サンプルとなる遺伝子、プライマー、鎖置換型DNA合成酵素、基質等を混合し、一定温度(65℃付近)で保温することによって反応が進み、検出までの工程を1ステップで行うことができます。増幅効率が高いことからDNAを15分~1時間で109~1010倍に増幅することができ、また、極めて高い特異性から増幅産物の有無で目的とする標的遺伝子配列の有無を判定することができます。
特徴
◆2本鎖から1本鎖への変性を必ずしも必要としない。
◆増幅反応はすべて等温で連続的に進行する。
◆増幅効率が高い。
◆6つの領域を含む4種類のプライマーを設定することにより標的遺伝子配列を特異的に増幅できる。
◆特別な試薬、機器を使用せず、Total コストを低減できる。
◆増幅産物は同一鎖上で互いに相補的な配列を持つ繰り返し構造である。
鋳型がRNAの場合でも、逆転写酵素を添加するだけでDNAの場合と同様にワンステップで増幅可能。

*1-4-3:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/627740 (佐賀新聞 2019.1.29) 医療費19億円節約と試算、広島、大規模PCR検査で
 広島県の湯崎英彦知事は29日、広島市中心部4区の全住民と就業者合わせて最大80万人を対象とする新型コロナウイルスの無料PCR検査について、実施すれば死者や重症者の発生が減り、結果として11億~19億円の医療費を節約できるとの試算を発表した。検査は原則として無症状者や軽症者が対象で、任意。県は実際に検査を受けるのは約28万人と想定している。これまでの市内の陽性率などを参考に、最大3900人の感染者が新たに判明すると推定。30~50人の死者と50~80人の重症者、110~190人の中等症者の発生を予防できると見積もった。複数の検体を同時検査する「プール方式」を利用し、2月中旬から数週間で終わらせたい考え。予算は10億3800万円と見込み、国の地方創生臨時交付金を充てる。広島市内の新規感染者数は減少傾向にあり、専門家や県議会から大規模検査を疑問視する声も上がる。湯崎氏は記者会見で「市中感染は継続している」と反論。「早めに感染拡大の芽を摘み取ることで、経済的な損失を最小限に抑えることができる」と強調した。

*1-5:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/631023 (佐賀新聞 2021.2.8) 島津製作所、物質表面コロナ検出、試薬キット、100分で作業完了
 島津製作所は8日、物質の表面に付着した新型コロナウイルスを検出する試薬キットを発売した。PCR検査法でパソコンやドアノブ、水道の蛇口などを調べ、衛生管理に役立てる。検出作業は100分で完了する。こうした試薬キットの発売は世界初としている。物質の表面を拭った綿棒を生理食塩水などに浸し、専用濃縮液を加えて検査装置でウイルスの有無を調べる。ノロウイルス向けの検査キットの技術を応用した。公共交通機関や商業施設、介護施設から検査を受託する事業者や、医療機関への提供を想定している。1キットで100回の検査ができ、価格は30万2500円。年間千キットの販売を目指す。島津製は唾液から新型コロナウイルスを検出する試薬キットを既に販売している。担当者は「今回の試薬キットと合わせて総合的に感染対策を提供したい」と述べた。米国立衛生研究所の実験によると、新型コロナウイルスが感染力を維持する最長時間は付着した物質によって異なる。プラスチックは72時間、ステンレスは48時間、段ボールは24時間という。

<社会保障は無駄遣いか>
*2-1-1:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO65123410W0A011C2EA4000/ (日経新聞 2020/10/16) 社会保障給付費,過去最高の121兆円 2018年度
 国立社会保障・人口問題研究所は16日、2018年度の社会保障給付費が121兆5408億円だったと発表した。前年度から1.1%増えて過去最高を更新した。国内総生産(GDP)に対する比率も22.16%で最も高くなった。金額は社会保険料や税金を主な財源とした医療や年金、介護などの給付の合計。患者や利用者の自己負担は含まない。高齢化や医療の高度化に加え、子育て支援策の充実もあって増加が続く。18年度は医療が0.8%増の39兆7445億円だった。診療報酬のマイナス改定で伸びが抑えられた。年金は0.8%増の55兆2581億円。介護を含む「福祉その他」は2.3%増の26兆5382億円だった。GDPに対する社会保障給付費の比率は09年度に20%を超えた。18年度は前年度より0.21ポイント高まり22.16%になった。

*2-1-2:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO63348940S0A900C2EE8000/ (日経新聞 2020/9/3) 社会保障給付の抑制進まず 賃上げ推進も将来不安
 先進国最速で進む少子高齢化にどう対処するか。第2次安倍政権は働き方改革によって働く女性や高齢者を増やし、社会保障の支え手を増やすことに注力した。ただ高齢者への給付削減という「痛み」を伴う改革への踏み込みは甘く、大きな課題を残している。若年人口の減少で日本は2010年代に入ると構造的な人手不足が強まった。こうした背景から安倍政権は就業者を増やす働き方改革を推進。残業規制の強化、仕事と育児の両立支援、女性の活躍推進などに取り組んだ。女性の就業率は19年に52.2%となり、在任中に右肩上がりで上昇した。65歳以上の就業者も増え、60歳代後半は約半数、70歳代前半でも約3分の1の人が働くようになった。12年12月の安倍政権誕生時に4.3%だった失業率は2%台まで低下。政権が産業界に賃上げを強く促す「官製賃上げ」の効果もあり、大手企業は14年から7年連続で2%台の賃上げとなった。20年5月に成立した年金改革法で、501人以上の企業で働く人に限定されていたパート労働者の厚生年金適用を50人超の企業に拡大していくことを決めた。また60~64歳で働く人に支給する在職老齢年金について、支給が停止される賃金と年金の合計額の基準を現在の月28万円から22年4月に47万円に上げる。働くことで年金が減る仕組みを見直し、より長く働きやすくする。働き手を増やして社会保障の基盤を強くする改革で一定の進展があった一方で、負担増という「痛み」を国民に求める動きは鈍かった。18年度に121.3兆円だった年金、医療、介護などの社会保障給付費は、団塊の世代が全員75歳以上になる25年度には140兆円を超える。40年度には190兆円近くまで膨らむ見通しだ。医療や年金などは現役世代が払った保険料を引退世代の給付に充てる仕送り方式が基本。高齢者への給付や負担を見直さなければ現役世代の負担はどんどん重くなる。会社員の健康保険料率(健康保険組合平均)は政権発足前の11年度に年収の8.0%(これを労使折半)だったが18年度には9.2%まで上がった。いくら賃上げが続いても保険料のアップで相殺されれば現役世代の将来不安は払拭されない。19年12月にとりまとめた全世代型社会保障検討会議の中間報告には、一定以上の所得がある75歳以上の医療費窓口負担を2割に引き上げる案を盛り込んだが、所得の線引きなど制度の具体的な設計は終わっていない。年金や介護で年収や資産の多い高齢者に一定の負担を求める案も議論を避けた。大正大の小峰隆夫教授は安倍政権下の社会保障政策について「高齢者の給付と負担の見直しが手つかずだったことが問題だ」と指摘する。現役世代の将来不安は少子化につながる。19年の出生数は最少の86万人台に落ち込んだ。結婚・出産をしない選択をする若年層が増えている。高齢者から若年層へと給付の配分を見直さなければ少子化のスパイラルは止まりそうにない。新型コロナウイルスの影響で足元の雇用情勢は悪化し始めており、今後は就業者の裾野を広げてきた改革の効果にも影を落としかねない。巨額の政府支出で財政も悪化しており、税金で社会保障の給付を支える力も弱くなることが懸念される。与野党の議論は有権者の受けの良い給付の充実に集中しやすい。日本総合研究所の西沢和彦主席研究員はポスト安倍に対し「国民に対し、社会保障全体のビジョンを自ら語り、粘り強く受益と負担の関係を説明する必要がある」と要望する。

*2-2-1:https://digital.asahi.com/articles/ASNDG5TP9NDGUTFL008.html (朝日新聞 2020年12月14日) 75歳以上の医療負担増や児童手当で結論 政府検討会議
 政府の全世代型社会保障検討会議(議長・菅義偉首相)は14日、最終報告となる「全世代型社会保障改革の方針」をまとめた。75歳以上の医療費の自己負担割合について、単身世帯は年間の年金収入200万円以上(夫婦2人世帯は計320万円以上)を対象に、2022年度後半から2割に引き上げることなどを明記した。報告は基本的考え方として「現役世代への給付が少なく、給付は高齢者中心、負担は現役世代中心というこれまでの社会保障の構造を見直す」とした。菅首相は「少子高齢化が急速に進む中にあって、現役世代の負担上昇を抑えながら、全ての世代が安心できる社会保障制度を構築し、次の世代に引き継ぐことが我々の世代の責任だ」とあいさつした。15日にも方針を閣議決定し、必要な法案を来年の通常国会に提出する。医療費窓口負担の2割引き上げの対象は約370万人。窓口負担を増やすことで、75歳以上の医療費の4割(自己負担を除く)を負担する現役世代の負担軽減につなげる。実施後3年間は、1カ月あたりの負担増が3千円を超えない経過措置を講じる。75歳以上の自己負担額は平均すると今より3・4万円多い年間11・5万円となるが、経過措置の期間は年間10・6万円に抑えられるという。待機児童対策として21年度から4年間で約14万人の保育の受け皿を整備し、財源として児童手当の高所得者向けの特例給付を縮小する。子ども2人の専業主婦家庭の場合、いまは夫の年収が960万円以上なら月5千円の特例給付が支給されているが、22年10月分以降は年収1200万円以上だと、特例給付が支給されなくなる。一方、所得基準の算定基準を現在の「世帯で所得が最も高い人」から「世帯合算」に変更する見直しについては、世代間の公平性の観点などから「引き続き検討する」とした。22年度から不妊治療を保険適用とすることも明記し、20年度中にいまの助成制度の拡充を始める、とした。所得制限の撤廃や毎回30万円といった助成の増額を行う。男性の育児休業取得を促進するため、企業に休業制度の周知を義務化することなどを検討する。
●全世代型社会保障の方針(要旨)
・不妊治療を2022年度から保険適用。実現までの間、20年度内に今の助成制度を拡充
・待機児童解消へ21~24年度の4年間で保育の受け皿を約14万人分整備
・児童手当を22年10月から縮小し、待機児童解消策の財源に。子ども2人世帯なら年収1200万円以上の場合、特例給付の対象外に
・男性の育児休業取得へ、出生直後の休業を促す新たな枠組み導入
・22年度後半から75歳以上の医療費窓口負担を1割から2割に。単身世帯の場合、年金収入200万円以上が対象
・紹介状なしで大病院を受診する場合、定額負担(5千円)を2千円以上引き上げ

*2-2-2:https://www.chugoku-np.co.jp/living/article/article.php?comment_id=628548&comment_sub_id=0&category_id=1124 (中国新聞 2020/3/31) 介護保険20年、増える高齢者 制度を維持するには
▽当事者・事業者・研究者、識者3人に聞く
 2000年に始まり20歳を迎えた介護保険制度は、支える高齢者の数が膨らみ続け、このままでは立ちゆかなくなりそうだ。制度を維持していくためには、どんな視点が必要なのだろう。家族、事業者、研究者として介護に向き合ってきた3人に聞いた。
▽家族支える視点を大切に NPO法人家族介護者 サポートネットワーク・はぴねす 北川朝子代表(60)=広島市安佐北区
 介護する家族としては、介護保険制度があって大変ありがたかったと感じています。要介護5の母と2人暮らしでした。最期まで自宅で一緒に過ごせたのは、通所介護や訪問介護のサービスを使えたからです。ただ制度は十分ではありません。要支援1や2では、使えるサービスが限られてしまう。要介護3以上でないと、特別養護老人ホームにも入れなくなった。この20年間、私たちが負担する保険料や利用料は増える一方で、使えるサービスは絞られる方向に進んでいるように感じます。「認定が軽ければ介護は楽」という見方は間違っています。介護は育児と違って、入学や卒業のような区切りがない。介護する側、される側は大人同士で、互いに疲弊する。社会保障費が膨らむ中、在宅介護にシフトする政策が進むのは仕方がないし、施設に入るよりも最期までわが家で過ごしたい人は多いでしょう。それならもっと、介護する家族を支える視点を大事にするべきです。その対策も社会の意識も不足しています。例えば介護離職の問題。私自身、介護のために正社員の職を手放さざるを得なかったし、復職もできなかった。介護しながら仕事を続けられる環境づくりが必要です。介護者が多様化した実態にも目を向けてほしい。介護保険ができて「お嫁さん」に負担が集中することは少なくなりました。でも、家族介護が前提なのは変わっていません。男性の介護者が増え、老老介護は当たり前。声を上げにくい人も多く、支援につながらずに高齢者の虐待や殺人に至った事例も少なくありません。一人親世帯の増加などで、10代の「ヤングケアラー」も増えています。厚生労働省が2018年にようやく家族介護者支援マニュアルを作り、条例で人材育成など支援の仕組みをつくる自治体も出てきました。この動きが広がってほしい。私たちは介護者がやり場のない思いを吐き出せるよう、安佐北区に常設のケアラーズカフェを開いています。こういった居場所が学区ごとにあるのが理想です。
▽現場の魅力高め人材確保 全国老人福祉施設協議会 平石朗会長(65)=尾道市
 介護の現場が抱える一番の問題は人材不足です。全国では、介護施設のベッドは空いているのに、職員を確保できずに入居を断ったり、人手の減った施設に職員を回すためにヘルパーステーションを閉めたりすることが起きています。職員を確保できない最も大きな理由は、働く世代の人口の減少です。介護保険がスタートしたときは、急激な人口減少社会が来るという想定が欠けていました。低賃金で重労働という仕事のイメージも拭い去れていません。でも実際は、大変さもありますが、人生終盤の生活を支える素晴らしい仕事です。経験を積めば給料も上がるようになってきました。ただ、これから人手がもっと足りなくなることを考えると、さらに賃金を上げる必要があります。介護現場の魅力を高める革新も求められています。私が理事長を務める尾道市の法人では、トヨタの元社員の指導で業務改善を進めました。介護に生産性はそぐわないと思うかもしれませんが、合理化が進むと、時間や気持ちの余裕が生まれます。職員の離職を防ぐことにつながり、利用者の満足度も高まります。介護職員がくたびれるのは夜間です。情報技術を活用した利用者の見守りがあれば安心して働けます。専門性を生かした仕事に専念するため、地域の高齢者らに食器洗いやシーツ交換などの仕事で活躍してもらうのも一つの方策です。外国人材の活用も進めるべきですが、日本人と同じように能力に応じて給料を支払うのが正しい姿でしょう。これからも高齢者は増え、介護にかかる費用はさらに膨らんでいくでしょう。放っておけば介護保険制度は破綻し、低所得や身寄りのない人の安全網でなくなってしまう。それは避けるべきです。介護ニーズの的確な把握が欠かせません。安易に「箱物」を増やすと、間違いなく将来の重荷になります。持続可能にするためには、現在の利用料の1割負担を見直し、経済力のある人には負担していただくという考えが必要ではないかと思います。
▽サービスと負担、議論必要 県立広島大 地域医療経営プロジェクト研究センター 西田在賢センター長(66)
 介護保険にかかる費用は制度開始から20年で3倍に膨らみました。これで終わりではありません。高齢者の数がピークになる2040年度にはさらに、今の2倍以上になる見通しです。平均寿命が延びて高齢者の数が増え続けているためです。ただ高齢者を支えていくためには、介護の支出が増えるのは避けられません。一方で、国の借金は昨年末の時点で1110兆円に達し、介護保険制度が始まった00年の2倍になりました。介護や医療にかかる社会保障費が国の借金を押し上げています。このまま「将来へのツケ」が際限なく増え続けていいわけがありません。サービスと負担について議論を進める必要があります。では、どうすればいいでしょうか。医療と介護を一体として考える必要があります。医療費の無駄を削減し、介護にお金を回すという発想が欠かせません。日本の病床数は今も英国の5倍、米国の3倍もあります。医療をほとんど必要としない人が、コストが掛かる病院に入院しているケースがまだ多いのです。その費用を削減し、自宅や介護施設で訪問医療を利用しながら過ごす方に、もっとお金を振り向けることが必要でしょう。医療と介護はもともと連続したものです。関連した保障として社会が理解するべきです。国も「医療と介護を切れ目なく」という政策を打ち出しています。地域ごとに異なる医療と介護の資源をどうやりくりし、高齢者を含む地域住民の生活をどう支えていくかを考えなければいけません。また、介護保険制度を維持していくためには、市民の発想の転換も重要です。サービスは費用がかかるので、あればあるほどいいというわけではありません。住み慣れた地域の中で暮らし続けるためにどんな医療や介護の保障が必要かを考えてほしい。そのために、誰がどれだけ負担をすればいいのかも意識してほしい。現在は40歳以上が介護保険料を払っていますが、医療を支える健康保険と合わせて20歳以上に広げるべきでしょう。
■財政厳しく見直し重ね 予防重視への転換/右肩上がりの保険料
 家族頼みから、社会全体で支える介護へ―。そんな理念で介護保険が誕生してから20年が経った。高齢者が増えて介護保険財政が厳しくなるにつれ、サービスの縮小や、保険料の引き上げを繰り返し、紆余曲折の道のりを進んできた。最初に制度を見直した2005年度には、健康寿命を延ばし、介護サービスに頼らなくていい期間を長くしようと「介護予防の重視」に舵を切った。食費・居住費は保険給付の対象外となった。07年度には、訪問介護大手のコムスンによる介護報酬の不正請求事件が発覚し、事業者の在り方が問われた。15年度は特別養護老人ホームの入居は原則、要介護3以上に狭まった。さらに、要支援1、2の人向けの訪問介護とデイサービスを市町村の事業とし、地域住民の協力を求めるようになった。介護の総費用が増える中で、保険料は右肩上がりを続けている。65歳以上の保険料の全国平均は月2911円から5869円と倍増。40年度には9200円に達するという推計もある。15年度には、利用者の自己負担の公平化も打ち出された。一律1割だった利用料は一定以上の所得のある人は2割に。18年度からは、特に所得の高い層は3割に上がった。

*2-3-1:https://www.nikkei.com/article/DGXZQODF221L30S1A120C2000000/ (日経新聞 2021/1/22) 21年度の年金0.1%減額 4年ぶりマイナス、賃金下落反映
 厚生労働省は22日、2021年度の公的年金の受給額を20年度比で0.1%引き下げると発表した。現役世代の賃金水準を受給額に反映させるルールを適用したもので、減額は4年ぶり。厚生年金を受け取る夫婦2人のモデル世帯では228円減の月額22万496円になる。4月分から適用する。自営業者らが入る国民年金は40年間保険料を納めた満額支給の場合で66円減の月額6万5075円になる。年金の受給額は物価や賃金の変動を反映させる形で毎年度見直している。物価は前年の消費者物価指数の「総合指数」が参考指標で、20年は前年と同水準だった。2~4年前の変動率を元に計算する賃金水準は0.1%のマイナスだった。21年度からは賃金変動率が物価変動率を下回って下落した場合、賃金変動率に合わせて年金額を改定する新ルールが導入される。このため、賃金に合わせて年金額が0.1%の減額となる。また人口動態を反映し、年金額の伸びを物価や賃金の伸びよりも低く抑えるマクロ経済スライドは、年金の改定率がマイナスになったため発動しない。20年度までは2年連続で発動していた。

*2-3-2:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO63400350T00C20A9PPE000/ (日経新聞 2020/9/6) 年金「実質目減り」続く マクロスライドで給付抑制、人生100年お金の知恵(22)
「単純に『年金が増えた』と思っている人は少なくない」。年金セミナーで講師を務める機会が多い社会保険労務士の森本幸人氏はこう話す。セミナーで毎年度実施される年金改定を取り上げると、実額は増えても「実質目減り」になっていることを知らない人が目立つという。
■物価や賃金より伸びを抑制
 年金の実額は確かに増えている。2020年度の受給額は前年度比プラス0.2%の改定だった。厚生労働省がモデルとして示した夫婦世帯の厚生年金(夫婦2人の基礎年金を含む)は月22万724円と458円、国民年金は満額で月6万5141円と133円増えた。実額が増えても実質目減りなのは、物価や賃金の伸びより年金の支給額を抑える「マクロ経済スライド」が適用されたからだ。年金額は物価や賃金の変動率に応じて決まる。20年度の改定率は本来であればプラス0.3%だが、マクロスライドの発動で0.2%になった。森本氏の概算によると金額ベースで厚生年金は約688円、国民年金は200円増えるはずだった。日本の公的年金は現役世代の保険料を高齢者の給付に充てる「仕送り方式」だ。少子高齢化が進むと現役世代の加入者が減る一方で、年金を受け取る人は増える。物価や賃金の上昇率に合わせて年金額を引き上げていくと年金財政が行き詰まりかねないため、マクロスライドが04年の制度改革で導入された。マクロスライドは賃金や物価に基づく本来の改定率から、現役の加入者数と平均余命をもとに算出したスライド調整率を差し引く。景気拡大期などは調整率をフルに差し引くが、原則として年金の名目額を前年度より減らさないという条件がある。
■「マイナス改定でも発動」議論も
 このため物価や賃金が下落するデフレ下では実施しない。景気後退期など物価や賃金の上昇率が小さいときは年金額が前年度と同じになるように調整率を一部差し引く。未調整分は翌年度以降に繰り越し、景気回復期などに調整率に上乗せして差し引く。「キャリーオーバー制度」といい18年度に導入された。年金の専門家の間では「マイナス改定となってもマクロ経済スライドを無条件で実施できるよう制度を見直すべきだ」(大和総研の是枝俊悟主任研究員)との声は多い。デフレや低インフレが続けば年金財政が行き詰まる懸念が高まるためだ。年金受給者からの反発が予想されるためマイナス改定が導入されるかどうかは不透明だが、老後の生活設計ではマイナス改定の議論があることも頭に入れておいた方がよさそうだ。
■ここがポイント
高齢者就労、調整率抑制も
 20年度のスライド調整率は0.1%と低い水準だった。「60歳を超えても年金に加入して働く人が当初の想定を上回ったことが一因」(社労士の井戸美枝氏)という。加入者の増加は保険料収入の増加を意味する。1961年4月2日生まれ以降の男性は65歳になるまで公的年金を受け取れない。企業の雇用延長や再雇用など制度も整いつつあり、60歳以降の加入者増加は続く公算が大きい。「加入者の増え方によっては調整率が当面抑えられる可能性がある」と森本氏は指摘している。

<その他の中途半端にして意味がなくなり、無駄遣いになった事例>
*3-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20210210&ng=DGKKZO68992370Q1A210C2MM8000 (日経新聞 2021.2.10) 東日本大震災10年 検証・復興事業(3) かさ上げ造成、3割空き地 まち再建、定石のその先に
「176平方メートル、795万円」「217平方メートル、990万円」――。岩手県大槌町の「空き地バンク」のサイトに載った町役場周辺の区画図に、売却・賃貸物件の赤い印が30個近く並んでいる。町は土地取得や住宅建設に200万円以上の補助金を出すが「住宅再建のニーズは一段落し、空き地はなかなか埋まらない」と担当者はこぼす。2011年の東日本大震災で町の中心部は高さ10メートルを超す津波にのまれ、壊滅状態となった。前年に過疎地域に指定されていた町は、役場周辺の地区を震災前の半分以下に集約し、161億円かけて2.2メートルかさ上げした。
●原点は関東大震災
 その間にも人口減は加速し、20年春の段階で造成地の3分の1は使う当てがないままとなっている。15年まで町長を務めた碇川豊氏は「町内に就労先となる産業が少なかったことも影響した」と話す。岩手、宮城、福島3県の津波被災地では、浸水した地域をかさ上げし、土地や道路の形を整える「土地区画整理事業」が広く行われた。対象は沿岸部の21市町村、計1890ヘクタールで東京都新宿区の面積に匹敵する。総事業費は20年6月時点で4627億円に上り、ほぼ全額が復興交付金などの国費でまかなわれた。区画整理による「復興」の原点は1923年の関東大震災に遡る。震災で旧東京市の4割強の面積が焼失した後、帝都復興院総裁に就いた後藤新平を中心に、復興事業として初めて大規模な区画整理が行われた。靖国通りや昭和通りなどの幹線道路と共に街並みが整備され、東京は10年足らずで近代都市に生まれ変わった。そのノウハウは戦後、空襲で焼けた各地の市街地整備にも生かされ、区画整理は復興事業の定石となってきた。国土交通省の2020年5月時点の調査によると、3県で区画整理が行われた65地区の宅地の32%は未活用の状態だった。未活用が5割を上回る地区も6つあり、岩手県陸前高田市の今泉地区では7割近かった。
●止まらぬ人口減
 岩手県沿岸部の12市町村の人口は、震災前年から20年までで17%減少。震災後に内陸部に移った地権者の多くは、仕事や子どもの通学を理由に戻っていない。固定資産税の負担などを懸念して土地を売りに出すケースも相次ぐ。「右肩上がりの時代に確立された復興のあり方が、現状にそぐわなくなっている」と、日本大の大沢昌玄教授(都市計画)は指摘。「将来像を複数の自治体で共有し、広域的な視点で復興事業の対象を精査すべきだ」と話す。今回も区画整理によって街の魅力が高まった例はある。宮城県名取市の閖上地区では区画整理とともに小中一貫校や保育所が重点的に整備され、宅地の分譲希望者が殺到して若い世代も増えた。震災の痛手を乗り越え、かさ上げによって安全性を高めた土地をどう生かすか。国全体が人口減に直面するなか、定石にとらわれない新しい街づくりの模索はこれからも続く。

*3-2:https://digital.asahi.com/articles/DA3S14796615.html (朝日新聞 2021年2月11日) (東日本大震災10年 3・11の現在地)40年で廃炉、無理と言えず 前提のデブリ除去、年内の着手断念
 あと1カ月で事故発生から10年を迎える東京電力福島第一原発。敷地内の放射線量はかなり下がったが、廃炉作業は大幅に遅れ、30~40年で完了する目標はかすんできた。廃炉の最終的な姿を語らずに時期だけを掲げるこれまでのやり方は、限界に近づいている。「目標通りできないのはじくじたるものがある」。国と東京電力は昨年12月24日、福島第一原発で2021年中に予定していた溶け落ちた核燃料(燃料デブリ)の取り出し着手を1年程度延期すると発表した。東電の廃炉部門トップの小野明氏は、記者会見で無念さをにじませた。直接の理由は新型コロナウイルスだった。英国で開発中の専用ロボットアームの動作試験が、工場への出勤制限などの影響で滞った。英国では変異ウイルスも猛威を振るい、日本へ運ぶめどもたたなくなった。未曽有の原発事故を受けて、国と東電が11年12月に廃炉工程表を掲げてから、工程は遅れに遅れを重ねてきたが、今回の延期には特別な意味がある。「30~40年後に廃炉完了」と並んでずっと堅持してきた「10年以内のデブリ取り出し着手」という重要目標を断念したことになるからだ。デブリは、溶けた核燃料が周りの金属などと混ざりあって固まった物質。強い放射線を放ち、ロボットすら容易に近づけない。硬さも成分も、どこにどれだけあるかも詳しくは分からない。1~3号機に残る総量は推定で約800~900トン。その取り出しは、前人未到の最難関の事業だ。当初の工程表では、取り出し前に遠隔でデブリを切断・掘削して性状を調べることも想定していた。だが、カメラ調査すら予定通り進まず、進むほどに困難さがみえてきた。国と東電は改訂にあわせ、着手時の取り出し規模を「小規模」から「試験的」へと後退させたが、「10年以内」だけは変えなかった。「30~40年」の全体シナリオを守るための一線だったからだ。今回延期された「2号機での試験的取り出し」で取るデブリの量は数グラム程度。実際の作業は、長さ約22メートル、重さ約4・6トンの特殊鋼製ロボットアームの先端に付けた金属ブラシでデブリの表面を拭ったり、小さな真空容器でチリを吸い取ったりするだけだ。懸命につなぎとめてきた目標が、コロナ禍でついに取り繕いきれなくなったのが実情だ。それでも、廃炉を技術面で率いる原子力損害賠償・廃炉等支援機構の山名元・理事長は「1年の遅れは、全体の遅れに比べたらたいしたことない」と話す。廃炉完了の時期を見直す気もない。「今の時点で『40年は無理』なんてとても言えない。もうちょっと調べさせて欲しい。40年を目指して全力でやる。これ自体は、難しい仕事を進める一つの原動力なんです」

*3-3-1:https://www.nikkei.com/article/DGXZQODZ05C4L0V00C21A2000000/ (日経新聞 2021年2月8日) 発電用アンモニア自社生産 東電・中電系JERA、脱炭素へ
 東京電力ホールディングスと中部電力が出資するJERAは、二酸化炭素(CO2)を出さない発電燃料であるアンモニアの生産に乗り出す。マレーシアの国営企業と提携し、水力など再生可能エネルギーを使って製造する。2040年代にはアンモニアだけを燃料とする発電設備を稼働させる考え。CO2排出量削減が課題の電力業界で、燃料から脱炭素化する流れが広がりそうだ。JERAは国内最大の発電事業者でガスや石炭を燃料とする火力発電所を持ち、国内のCO2総排出量の1割強を占める。2050年までにCO2排出量を実質ゼロにする目標を掲げており、発電燃料としてアンモニアに加え、水素を段階的に活用する方針だ。発電事業者が自ら脱炭素燃料の製造に乗り出すのは珍しい。このほどマレーシアの国営石油大手ペトロナスと協業に向けた覚書を締結した。生産場所や規模は今後詰める。アンモニアは天然ガスから水素を取り出して製造するが、その過程で大量のCO2が発生する。JERAはCO2排出をなくすため、再エネ由来の電力によるアンモニア製造に取り組む。将来的に水素燃料の製造も目指す。21年度には石炭とアンモニアを混ぜて燃料とする実証実験を愛知県の火力発電所で始める。知見を蓄えながら40年代にはアンモニアだけで燃焼する発電設備を実用化する計画。水素についても、ガス火力の燃料として活用することを目指す。アンモニアは需要の8割ほどが肥料向けに利用されている。CO2を出さない燃料として期待が高まっているが、発電向けの新規需要が増えると供給不足に陥る恐れもある。JERAは発電事業者として自ら燃料開発・製造を手掛けることで、必要量を確保したい考えだ。課題は採算性だ。アンモニアを発電燃料として利用すると、石炭より5割ほどコストが高くなるとみられる。アンモニアを再生エネで製造した場合はさらに割高になる可能性が高い。水素ではアンモニア以上にコストは膨らむとされる。JERAでは開発から調達、発電まで一括で担うことでコストを引き下げることを狙う。政府が50年に目標とする温暖化ガス排出量の実質ゼロに向けては、国内のCO2排出量の4割近くを占める電力分野での脱炭素化が不可欠になっている。アンモニアや水素燃料の活用は、再生エネの導入と並んでCO2排出量の削減効果が大きい。発電事業者が自ら次世代燃料を開発・製造する動きが広がれば、脱炭素化の道筋も見えてきそうだ。

*3-3-2:https://www.keyman.or.jp/kn/articles/1412/17/news169.html (キーマンズネット 2014年12月17日) CO2排出ゼロの新エネルギー「アンモニア発電」とは?
 強い刺激臭を持つアンモニアが燃料の「アンモニア発電」はエネルギーに革命を起こすのか。次世代クリーンエネルギー最先端に迫る。
今回のテーマは、CO2を排出しないアンモニアを利用した直接発電技術「アンモニア発電」だ。産業技術総合研究所(産総研)が世界で初めてアンモニアをガスタービンで燃焼させて発電に成功した。化石燃料や原子力への依存から脱却を目指す、低環境負荷の新エネルギー創出への現実的な第一歩だ。
●「アンモニア発電」とは?
 食物に含まれるタンパク質などを微生物が分解する際に発生するアンモニア。アンモニア発電とは、この強い刺激臭を持つアンモニアを燃料とする発電技術のことだ。現在は、アンモニアを直接燃焼させる発電技術と、アンモニアの熱触媒接触分解反応と燃料電池を組み合わせた発電技術とが研究される。今回紹介するのは前者のアンモニアを燃焼させる技術だ。アンモニアは着火しにくく、燃焼速度も遅く、さらに燃焼時に有害なNOx(窒素酸化物)を発生するため、発電に用いる燃料としては不向きとみなされた。しかし2014年9月、産総研 再生可能エネルギー研究センター(福島県)の水素キャリアチーム、辻村拓研究チーム長、壹岐典彦研究チーム付および東北大学との共同研究チームが、定格出力50キロワットのガスタービン発電装置を用い、灯油とアンモニアを燃料にして、約40%の出力にあたる21キロワットの発電に成功した。灯油の約30%相当をアンモニアに置き換えて燃焼させたところ、灯油だけを用いた場合とほぼ同じ出力で発電でき、しかもアンモニアを燃焼させるときに排出される有害なNOx(窒素酸化物)を、やはりアンモニアを使用する触媒(脱硝装置)により10ppm未満にまで抑制することに成功し、環境基準に照らして十分低い環境負荷でのアンモニア発電に見通しが立った。これはアンモニアを利用したガスタービン発電として世界初の成果だ。

*3-4:https://forest-journal.jp/market/23067/ (Foest Journal 2019/11/18) 2024年スタートの“森林環境税”って? 意外と知らない“森林環境譲与税”との違いとは?
 国税として2024年から徴収が決まっている森林環境税。あまり話題に上がらないこの税金の正体は何か?林野庁の発表資料を基にわかりやすくまとめてみた。
●1000円を森林のために負担?
 2019年3月に新しく成立、公布された「森林環境税及び森林環境譲与税に関する法律」によって、日本の国土を覆う森林の保護、保全、活用に必要な財源を確保するために納税者一人ひとりから徴収されることになる。環境保護や市町村の森林活用、木材利用を促すことが目的だ。林野庁の発表によると徴収開始記事は2024年から、各市町村が窓口となり国税として納税者一人あたり年額1000円が徴収される。林野庁の発表によると、徴収した森林環境税は一旦国へ納められ、国から都道府県と各市町村に「森林環境譲与税」となり交付される。
●森林環境税の仕組みと使いみち
 実は2019年度からすでに、「森林環境譲与税」は各都道府県を経由して市町村に交付されている。人口比率や木材の使用施設、公園などの木材利用率から交付額が決められたようだが、森林を生業にする市町村に交付金割合が低く、人口の多い都市部の市町村に交付金が多く支払われるなど、まだまだ問題も多いのが現実だ。また、交付を受けた市町村はその使用目的を明確に自身のホームページに公開しなければならない。筆者の住んでいる市では森林の間伐費用や、間伐林の管理委託費などにあてられており、財源が確保されているため概ね好評であると市の土木課の担当者は話してくれた。他にも、使いみちが森林の管理、運営やボランティアへの慰労費に当てられている市町村もあるようだ。使用目的を国が定めるのではなく、市町村が独自で決められるという動きは、林業の活性化にも繋がるだろう。
●森林を身近に感じるチャンス
 交付は2019年度より始まっており、納税義務は2024年から始まる。先にも述べたが森林の管理運営だけがこの税金の目的にあらず、地方は新たな財源として地域活性化のために使うことができる。例えば森を使った生涯学習は森林そのものを学習の場としてワークショップや間伐体験を市民向けに発信する財源にあてることができる。森林管理にきちんとお金を掛けることができればレンジャー隊員を養成できて、もしもの災害に備えることもできる。新たな雇用がそこで生まれ、これまで見向きもされなかった事業に陽の光を当てることも可能だ。木材を活用して公園を新たに作ったり、鉄の遊具から木の遊具への交換の財源にしてもいい。使いみちを市町村に託すことで、アイディア次第でできる選択肢が増える。納税する我々はイベントや森林政策に「税金を払っているから参加する」ではなく、近所の森や林業とは何かを知る機会を得るチャンスだと捉えるのが良いだろう。「また増税か?」とうんざりした目で見るのではなく、その使いみちに注目してほしいと切に願う。

<女性蔑視の政策への悪影響>
*4-1-1:https://mainichi.jp/articles/20210211/k00/00m/040/081000c?cx_fm=mailyu&cx_ml=article&cx_mdate=20210213 (毎日新聞 2021年2月13日) 声をつないで 女性理事わずか16.6% 森氏発言があぶり出す社会のいびつさ
 東京オリンピック・パラリンピック組織委員会の森喜朗会長(83)=12日に辞任表明=による女性差別発言を受けて、毎日新聞は、国内のオリ・パラ関連団体と、五輪で開催される33競技の各中央競技団体における女性理事比率を調べた。各競技団体の全理事に占める女性の割合は、平均16.6%にとどまり、女性理事ゼロの団体もあった。「女性がたくさん入っている理事会は時間がかかる」などの森氏の発言の背景に、女性が意思決定の場に参加することが難しいスポーツ界と社会全体の課題が浮かび上がる。3月8日は「国際女性デー」。この記事を皮切りに、国内外の女性が置かれた状況について幅広く考えたい。(文末に各団体の女性理事割合の一覧を掲載)【塩田彩、藤沢美由紀/統合デジタル取材センター】
●3割超えはテコンドーのみ、女性理事ゼロは……
 調査は2月6~9日、国内オリ・パラ関連の中央団体3団体と五輪開催競技の中央競技団体35団体に電話とメールで実施した。日本オリンピック委員会(JOC)の女性理事は25人中5人で20%。森氏が会長を務めるオリ・パラ組織委員会でも20%だった。一方、森氏の差別発言があったJOCの評議員会)は、女性は63人中2人で、3.2%にとどまった。中央競技団体の中で女性理事が3割を超えたのは全日本テコンドー協会のみで36.4%。次いで日本体操協会28.6%、日本バレーボール協会27.8%――だった。女性理事がゼロの団体は日本サーフィン連盟で、13人の理事全員が男性だった。女性の競技者割合が比較的高い陸上や水泳の低さも目立ち、日本陸上競技連盟は7.1%、日本水泳連盟は13.8%。リオデジャネイロ五輪で女子選手4人が金メダルを獲得したレスリングは女性理事が1人でわずか4%だった。ソフトボールは五輪競技としては女子種目しかないが、女性理事は24人中5人で20.8%にとどまった。会長職を女性が務めるのは日本バスケットボール連盟のみだった。森氏に「今までの倍時間がかかる」と名指しされた日本ラグビーフットボール協会は、女性競技者が比較的少ないものの、2019年に女性理事が5人に増え20.8%だった。ジェンダーの視点からスポーツ史を研究する中京大の來田(らいた)享子教授は、毎日新聞の調査結果について「少しずつ改善されてきてはいるが、女性の競技人口を考えると、まだまだ不十分。人材が不足し、特定の女性が複数の団体の役職を兼務する状況もある」と指摘する。
●五輪選手の5割は女性なのに
 男女共同参画白書によると、日本の五輪出場選手に占める女性の割合は、04年のアテネ大会(54.8%)で初めて半数を超え、北京大会(49.9%)、ロンドン大会(53.2%)、リオ大会(48.5%)と5割前後で推移している。にもかかわらず、なぜ女性理事の割合は、多くの中央競技団体で2割にも届かないのか。來田教授は、要因の一つとして、指導者としての経験を積む機会が男性と比べて限られることを挙げる。「女子選手を男性指導者が指導するケースは多くありますが、逆はほとんどありません。『女性には男子選手の指導はできない』という偏見がある。けれど、年配の指導者が多く存在するように、指導者には選手と同等のパフォーマンスは求められていないはずです」。中央競技団体には、指導者を経て理事となる人も多い。キャリアを積み上げる際の機会の不平等が、意思決定層に女性が少ない大きな要因となっているのだ。こうした状況の中、スポーツ庁は19年6月、中央競技団体向けの運営指針「ガバナンスコード」で、各組織の女性理事の割合を40%以上と設定し、女性評議員の目標割合を設定することなども提示した。「女性を増やしていく場合は、『発言の時間をある程度、規制を促しておかないと、なかなか終わらないので困る』と言っておられた」など、女性の発言機会を制限するような森氏の差別発言は、この目標に言及する中で飛び出した。実は、国際オリンピック委員会(IOC)はこれまでも、女性参画に向けたさまざまな提言を各国に示してきた。20年以上前の00年にはすでに、「05年までに意思決定層における女性の比率を20%にする」という目標が掲げられている。18年3月には「ジェンダー平等に関する報告書」を発表し、ジェンダー平等促進への取り組みに財源を割り当てることや、「排除のない組織文化を維持、導入すること」などの必要性を指摘した。來田教授は「組織委は報告書を受け、東京大会に向けて具体的に踏み込んだ施策を実施する必要がある。スポーツ界だけで達成できないなら、社会や政府に協力を仰ぎ、社会全体でこの問題と向き合おうと声をかけなければならなかった」と語る。一方、そのIOCも、メンバーリストを見る限り103人のうち女性は38人で36.9%。「平等」には遠いのが現状だ。
●「森会長の発言は不適切」と組織委が声明
 「多様性と調和」を掲げる東京大会の組織委の長が発した女性差別発言。謝罪記者会見を開いて以降も、国内外から批判はやまず、森氏は2月12日の組織委の臨時会合で、辞任を表明した。組織委は7日、公式サイトで「森会長の発言はオリンピック・パラリンピックの精神に反する不適切なものであり、会長自身も発言を撤回し、深くお詫(わ)びと反省の意を表明致しました」とする声明を発表。その中で「『多様性と調和』は東京大会の核となるビジョンの一つ」「ジェンダーの平等は東京大会の基本的原則の一つであり、東京大会は、オリンピック大会に48.8%、パラリンピック大会では40.5%の女性アスリートが参加する、最もジェンダーバランスの良い大会となります」としていた。來田教授は「森氏の発言を『不適切』とするだけでなく、ジェンダー平等のためにどのような施策を講じてきたのか、今後さらに何が必要なのか、組織委やJOCは明示すべきです」と指摘する。「スポーツ界の意思決定層に女性を増やすことは、同質的な集団によって物事が決定される状況を変化させます。女性も男性も一枚岩ではないし、障害のある人やセクシュアルマイノリティーなど、あらゆる人を排除しないスポーツが目標とされている。男性だけの構成を変えることは、より小さな声に気づく組織の入り口になるはずです」
●政財界、メディアでも女性登用遅れ
 さらに來田教授は「スポーツ界は社会を映す鏡。社会との関係性の中で改善していく必要性がある」と指摘する。指導者になれば試合や合宿での遠征がついて回る。女性にだけ家事労働の負担が偏っていたり、強固な性別役割分業意識が社会に根付いていたりする状況のまま、女性がキャリアを積むことは難しい。これは社会全体に共通する課題だ。意思決定層に女性が少ない現状は他分野でも同様だ。国会議員に占める女性割合(20年6月時点)は、衆議院9.9%、参議院22.9%。上場企業の女性役員比率(20年7月時点)は6.2%にとどまる。森氏の発言を追及するメディア業界も取り組みが遅れている。新聞労連の調査によると、全国の新聞社38社の役員319人中、女性はたった10人(19年4月時点)。毎日新聞社の役員も女性0人。新聞労連などのメディア労組は9日、業界団体と加盟各社に対し、女性役員比率を3割以上に上げることを要請したと明らかにした。
●オリンピック・パラリンピック関連中央団体/役員(理事)・委員に占める女性比率
 日本オリンピック委員会 20%
 日本オリンピック委員会評議員会 3.2%
 東京オリ・パラ組織委員会 20%
 東京オリ・パラ組織委員会評議員会 16.7%
 日本パラリンピック委員会 18.2%
 国際オリンピック委員会 36.9%
●五輪開催競技の中央競技団体で会長以下理事職に占める女性比率
 陸上競技 7.1%
 水泳競技 13.8%
 サッカー 16.7%
 テニス 21.2%
 ボート 17.9%
 ホッケー 13%
 ボクシング 4.5%
 バレーボール 27.8%
 体操競技 28.6%
 バスケットボール 25%
 レスリング 4%
 セーリング 25%
 ウエートリフティング 13.6%
 ハンドボール 18.5%
 自転車 10%
 卓球 17.4%
 馬術 20%
 フェンシング 15%
 柔道 13.3%
 ソフトボール 20.8%
 バドミントン 10%
 射撃(ライフル) 19.2%
 射撃(クレー) 10.5%
 近代五種 5.3%
 ラグビー 20.8%
 スポーツクライミング 8.7%
 カヌー 20.8%
 アーチェリー 15.8%
 空手 13%
 野球 11.1%
 トライアスロン 27.6%
 ゴルフ 21.9%
 テコンドー 36.4%
 サーフィン 0%
 スケートボード 26.1%

*4-1-2:https://digital.asahi.com/articles/ASP2F54QYP2FUTQP008.html?iref=comtop_7_04 (朝日新聞 2021年2月13日) 「森会長の冗談じゃないか」 スポーツ界トップの空気感
 「83歳の会長の冗談じゃないか」。東京オリンピック(五輪)・パラリンピック大会組織委員会の森喜朗会長の女性蔑視発言を報じたとき、複数のスポーツ関係者からいわれた言葉だ。今も、そう考えている人はいると思う。問題に感じたのは、一般企業の感覚と離れた「冗談」が公の場のあいさつで通用してしまうスポーツ界トップの会議の空気感だ。背景には、競技団体の意思決定に女性や若い世代が関わりづらかった構造がある。この発言があった3日の日本オリンピック委員会(JOC)臨時評議員会はまさに、「女性理事を40%以上にする」などの方針を確認しあう場だった。なのに、最後にあいさつをした森会長の言葉は、JOCが進める方向とは正反対だった。「これはダメだよな」。一緒に発言を聞いていた同僚記者も、私と同じ受け止めだった。JOCが女性役員を増やす方針を示したのは17年4月。スポーツ庁などと「ブライトン・プラス・ヘルシンキ宣言」に署名した。女性枠を設けた日本セーリング連盟など、一部では意識も変わったように思う。それでも、昨年11月の笹川スポーツ財団の調査では女性役員は15%にとどまる。背景はさまざまだ。
 ・出産などのライフプランを支える仕組みが確立されておらず、女性が競技から離れて
  しまう。女性指導者もまだ少ない。
 ・そもそも幹部が男性中心で、関わりづらい。
 ・子育てや企業で働く若手は休日にある会議や仕事の負担が大きい――など。
 JOCをはじめ、これまでの日本の競技団体が選んできた「スポーツを理解している人材」の定義は狭かった。JOC理事を選ぶ選考委員が「選びたいけど、女性がいない」と嘆くのを聞いたことがある。候補に並ぶのは、元金メダリストなど選手時代の肩書や「結果を出した元監督」という強化の実績。自戒を込めていえば、我々メディアも、この構造をあおってきた。もちろん、スポーツ界の「顔」は必要だ。だけど、強化や肩書を重視するあまり、「バリバリとスポーツをしてきた人、続けられる環境にある人」しか関われない世界になっていなかっただろうか。建設的な意見を言える若手や外部の人材を「経験不足」と遠ざけ、社会と離れた特殊な世界になっていなかったか。組織委は辞任を表明した森会長の後任を選ぶため、候補者検討委員会を設置した。「透明性の高いプロセス」をうたうのであれば、検討委が複数の候補者を挙げたうえで、候補者の「公開討論会」をオンラインなどで開き、見識を世に問えばいいと思う。会長を決める権限は理事会だけにある。討論会での発言や、発言に対する社会からの反応が、理事の判断の一助になればいい。「女性だから」「アスリートだから」という固定観念でくくらず、会長にふさわしい能力をもった人を選ぶべきだ。それができて、今後のスポーツ界に浸透するのであれば、今回の問題も意味がある。

*4-2-1:https://www.asahi.com/articles/ASP296F00P29UTFK01G.html?iref=comtop_ThemeLeftS_01 (朝日新聞 2021年2月9日) 森会長発言、二階氏が火に油 若手「公然と批判できず」
 東京五輪・パラリンピック大会組織委員会の森喜朗会長の女性蔑視発言をめぐり、批判の声が相次いでいる。政府・与党は沈静化を図るが、二階俊博幹事長が会見で森氏を擁護し、火に油を注いだ格好となった。与党内にも発言への批判はあるものの、強い影響力を持つ2人の責任を正面から問う声は出ていない。萩生田光一文部科学相は9日の閣議後の記者会見で、こう言って森氏をかばった。「『反省していないのではないか』という識者の意見もあるが、森氏の性格というか、今までの振る舞いで、最も反省しているときに逆にああいう態度を取るのではないかという思いもある」。しかし、森氏の発言が引き起こした批判の嵐を沈静化しようという政府・与党の狙いはむしろ裏目に出ている。最大派閥出身の森氏や幹事長として権勢をふるう二階氏の影響力を恐れる声もあります。自民党の二階俊博幹事長は8日の会見で、「森会長には周囲の期待に応えてしっかりやっていただきたい」と語り、辞任は必要ないと強調。さらに森氏の発言を受けたボランティア辞退の動きを「瞬間的」とし、「どうしてもおやめになりたいということだったら、また新たなボランティアを募集する、追加するということにならざるを得ない」と語った。この二階氏の発言は、SNS上などで激しい反発を浴びる。共産党の志位和夫委員長は「どこまで国民をなめたら気がすむのか」とツイッターに投稿した。それでも二階氏は9日の会見で、自らの前日の発言について「特別深い意味はない」。改めて森氏の発言は不適切か問われたが、「内閣総理大臣を務め、党の総裁であられた方のことをあれこれ申し上げることは適当ではない」と答えるにとどめた。森氏や二階氏の発言については、政府・与党内からも苦言が出ている。麻生太郎財務相は9日の衆院予算委員会で、森氏の発言について「国益に沿わないことははっきりしている」と指摘。橋本聖子五輪担当相も同じ委員会で、二階氏の発言について「不適切だった」と述べた。とはいえ、野党などから出ている森氏の辞任要求について、政府・与党内に同調する動きは見えない。世耕弘成参院幹事長は9日の会見で「五輪が直前に迫っている。森会長でなければなかなか(難しい)」と語り、森氏の続投を支持。二階氏についても「適切、不適切という立場にありません」と述べた。最大派閥出身の森氏や幹事長として権勢をふるう二階氏の影響力を恐れる声もある。ある自民党若手議員は「本当は森氏は辞任した方がいい」と漏らすものの、公に発言することは避けているという。「党内の立ち位置を考えると、自分が公然と批判するのはこわい」と明かす。閣僚経験者の一人は「森さんや二階さんにお世話になった人ばかりだから、みんな何も言えないんだろう」と話す。こうした姿勢に対し、立憲民主党の辻元清美衆院議員は9日、記者団に与党側から、進退を問う声があがらないことを批判したうえで、「政治が根っこまで腐ってきているように私には見えた」と語った。

*4-2-2:https://www.tokyo-np.co.jp/article/84974 (東京新聞 2021年2月10日) 二階氏、閣僚からの苦言「論評しない」 ボランティア大量辞退招いた森会長発言で
 自民党の二階俊博幹事長は9日の記者会見で、東京五輪・パラリンピック組織委員会の森喜朗会長の女性蔑視発言がボランティアの大量辞退を招いたことを巡り、「静かになったら、その人たちの考えも変わるだろう」と表現したことについて「特別深い意味はない」と釈明した。閣僚から苦言が相次いだことには「いちいち論評を加える必要はない」と語った。
◆性差別への意識問われ「女性は心から尊敬」
 二階氏は、ボランティア辞退への自身の発言に関して「即座にそういう反応もあっただろうが、お互い冷静に考えたら、また落ち着いた考えになっていくんじゃないかということ」だったと真意を説明。性差別への意識を問われて「男女平等で一貫して教育を受けてきた。女性は心から尊敬している」と強調した。二階氏の発言を巡り、橋本聖子五輪相は衆院予算委員会で「ボランティアの不快な思いを真摯しんしに受け止めなければいけなかった。不適切だった」と指摘。麻生太郎財務相も「ボランティアは大会に必要な大きな力。敬意を欠いているのではないか」と苦言を呈した。二階氏は8日の記者会見で、森氏の発言を受けたボランティア辞退の動きについて「そんなことですぐ辞めると瞬間には言っても、協力して(大会を)仕上げましょうとなるのでは。どうしても辞めたいなら新たなボランティアを募集、追加せざるを得ない」と話した。党はその後、「そんなこと」という表現を「そのようなこと」に訂正すると発表した。

*4-2-3:https://mainichi.jp/articles/20210210/k00/00m/050/236000c (毎日新聞 2021年2月10日) 森氏発言に4者協議欠席で「ノー」 小池劇場再び 自民は警戒
 東京オリンピック・パラリンピックの開催都市である東京都の小池百合子知事の発言が波紋を呼んでいる。国際オリンピック委員会(IOC)が提案した4者協議を欠席する意向を表明し、女性蔑視発言をした大会組織委員会の森喜朗会長の対応にノーを突き付けた。小池氏の動きに、政府や自民党、組織委関係者には動揺が走る。
●遺恨ある森氏との綱引きに「デジャブ」
 「きちんと落ち着いて進めていく方が良いのではないかと考えております」。小池氏は10日夜の退庁の際、報道陣にこう述べ、4者協議は状況が落ち着いてから開くべきだと指摘した。都幹部は「いま出席したら現在の状況を容認していると受け取られかねない」と説明する。森氏の女性蔑視発言に対する世論の反発は大きく、都幹部の間では「問題が収まらないうちは出席は見合わせた方がいい」というのが共通認識だった。国や組織委にもこうした考えを伝えていたといい、10日朝に「17日開催で調整」とのニュースが流れ、立場を明確にするために欠席の発言をしたとみられるという。女性蔑視発言に対する抗議が都庁に殺到していることも影響している。10日までに寄せられた抗議の電話やメールなどは計1690件、都市ボランティアの辞退が126件。都オリンピック・パラリンピック準備局の担当者が「まさかここまで抗議が来るとは想像以上だ。(森氏について)都に言われてもどうしようもないが、傾聴に徹するしかない」と驚くほどで、4者協議への出席はリスクが極めて高いと判断したとみられる。これまで小池氏は、森氏の会長辞任を求めるかについては「誰がふさわしいかは組織委員会の判断も必要だ」などと述べるにとどめていた。2019年に五輪のマラソン・競歩の札幌移転案が浮上した際、森氏は水面下で国内調整をし、根回しは自民党都議にまで及んだともされるが、直前まで小池氏には知らされなかったなど遺恨がある。それでも都議の一人は「小池さんにとっては、森さんがこのままの状態でいてもらった方がいい。引きずり下ろすメリットは何もない」との考えを示す。ただ、開催都市トップが森氏の発言に厳しい態度を取ったことは重く、大会関係者からは「辞任」圧力になるとの見方が出ている。組織委幹部は「辞任を求めているようなものだ」と語り、政府関係者は「森さんが辞めるしかないという雰囲気になるかもしれない」と警戒を強める。ある都議は「ここで意思を表明するのは衝撃的。知事らしいカードの切り方だ」と話した。大会関係者の間では、森氏の続投はこれまで揺るがなかった。政府や都などの各自治体、IOCとの交渉が求められる組織委の会長職には確かな政治的手腕が求められるためだ。調整や根回しを得意とする森氏が最も手を焼いたのが小池氏で、五輪競技会場の見直しや経費負担の問題では綱引きを繰り返してきたこともあり、五輪関係者の間では「またか」との思いもある。ある政府関係者は「まるでデジャブ(既視感)」と表現しつつも、こう続けた。「小池知事が表に出てきたことで、森会長も簡単に引き下がれなくなった。徹底抗戦するだろう」。(以下略)

*4-2-4:https://digital.asahi.com/articles/ASP2471QPP24UTIL057.html?iref=pc_rellink_04 (朝日新聞 2021年2月5日) 女性蔑視発言、ごまかす笑いが社会の現実 辻愛沙子さん
 東京オリンピック(五輪)・パラリンピック大会組織委員会の森喜朗会長(83)による女性蔑視発言に、強い批判が集まっています。クリエーティブディレクターとして社会派の広告やイベントの企画などで活躍する辻愛沙子さん(25)は、この発言に「見覚えがある」と言います。記者は4日午後、音声型のSNS「Clubhouse(クラブハウス)」を通じ、辻さんに「公開取材」。一時は1千人を超えるリスナーがその様子を傍聴しました。辻さんが取材に語った内容は次の通り。
     ◇
 今回の発言はあまりにひどいですが、これを水で薄めたような出来事は社会にたくさんあり、思い当たる光景がいくつもあります。「これ、ちょっとやばいな」と思ってもごまかすための笑い―。記事の後半では、今回の問題が映した「社会の現実」について語ります。例えば、年上の男性ばかりの会議で女性は私だけだった時。疑問や意見を口にすると、話を途中で遮られ「若いから分からないかもしれないけど」と内容を聞く前に否定される。でも、私と同じことを別の男性が発言したら手のひらを返して称賛される。若い女性は「教える対象」で、対等な議論ができる相手とは思っていないのだと感じました。役職とはまた別に、勝手につくった想像上のヒエラルキーがあるのでしょう。森さんの発言は、ただの言葉のあやではなく価値観の根底に根付いているリアルな本音なんだろうと思います。思っていたとしてもせめて心の中でとどめるのが普通で、それを公の場で言うところに感覚のズレがある。今回の発言があった時、笑いが起こったと聞きます。いまの社会の現実だなと思いました。「これ、ちょっとやばいな」と思ってもごまかすための笑い。そもそも危機感すらないのかもしれません。森さん自身の問題でもありますが、あんな浮世離れした発言を許容してきた側近、メディア、世論も学び、変わっていかなければいけない。4日の謝罪会見で「発言を撤回する」とおっしゃいましたが、「謝罪」はできても、一度発した言葉は事実として多くの人の記憶に残りますから、本当の意味で撤回なんてできません。今回は失言や言葉の選び方のミスではなく、思想そのものから生まれた蔑視発言。もちろん一度の間違いですぐにアウト、とは思っていません。人は誰しも無自覚な偏見を持っていますから、私自身も常々、人はいつからでも気づけるし、学べると肝に銘じています。でも、謝罪会見では記者の言葉を遮ったり、笑いながら答えたり。自身の失言を謝罪する場のはずが「あの場で一番偉い人」として振る舞っていた。間違いに気づき、学び、何もアップデートする気などないんだなという印象でした。一方でツイッター上では3日夜から、森氏が組織委の女性理事について述べた「みんなわきまえておられて」という言葉を逆手に取り、「#わきまえない女」というハッシュタグが盛り上がっています。単なる言葉遊びではありません。いつの時代にも「わきまえない女」がいたから、今の私たちには参政権があり仕事もできる。それに対するリスペクトとシスターフッド(女性同士の連帯)の表れです。黙っている方が楽だし、声を上げている人にヤジを飛ばす方が簡単だけれど、人を黙らせる言葉よりも、連帯したいアクションに対して賛意を伝える言葉を選ぶ人が多かったのは、すごくポジティブな動きでした。今回の発言は、スポーツ界のジェンダーギャップを表したものであり、社会を反映した問題でもあります。スポーツ界は外から見ているととても閉鎖的。中からのアクションだけでなく、外からも変えていけるように声をあげていきたいと思います。

*4-3:https://digital.asahi.com/articles/ASP2C7GYCP2CUTQP01Q.html?iref=comtop_7_02 (朝日新聞 2021年2月11日) バッハ氏が女性共同会長提案 川淵氏「森氏から聞いた」
 東京オリンピック(五輪)・パラリンピック大会組織委員会の新会長に就任する見通しとなった川淵三郎氏は11日、「森会長から聞いた話」として、国際オリンピック委員会(IOC)のバッハ会長が森会長に対し、森会長と並ぶ女性の共同会長を置く案を提案していたと明らかにした。また、「菅(義偉首相)さんあたりは、もっと若い人を、女性はいないか、と言ったそうだ」とも語った。森会長はどちらの提案も受け入れず、川淵氏に就任を要請した。川淵氏は「菅さんが若い人を、というのは当然の話だと思う」とした一方で、「森さんが83(歳)、俺は84、またお年寄りかと言われるのは不愉快。年寄りだろうが、何だろうが、良い仕事ができるぞ、といいたい」と話した。

*4-4:https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/705266 (沖縄タイムス社説 2021年2月10日) [市町村女性登用14%]積極的に不均衡なくせ
 市民ニーズを把握し、地域の実情に応じた政策に取り組むのが地方自治体の職員だ。管理職になると、意思決定に関わる機会が増える。その幹部が男性ばかりでは、女性の利益は反映されにくい。内閣府によると2020年4月1日現在、県内41市町村の課長相当職以上の管理職に占める女性割合は14・0%と低かった。全国平均の15・8%を下回っている。さらに部局長・次長級では11・7%(全国10・1%)と1割程度だった。政策に多様な視点を反映させる重要性が増す中、最も住民に身近な自治体で女性の登用が進んでいないことが分かる。政府が最近まで掲げていた「指導的地位に占める女性の割合を20年までに30%程度」とする目標からも、ほど遠い数字だ。なぜ女性管理職は少ないのか。「幹部候補になるまで育っていない」「昇進に消極的」といった声をいまだに聞くことが多い。もちろん女性自身が力をつけることは大事だが、「適材適所」で片づけるのは、必ずしも的を射ていない。そもそも候補となるための経験やチャンスを男性と同じように与えてきたのか。昇進に尻込みするのは、家事や育児の負担が女性だけに偏っている現状や、残業を前提とした長時間労働の問題でもある。男女共同参画社会づくりに関する県民意識調査で、職場での男女の待遇について「平等」と答えた人は約5割にとどまった。 
   ■    ■
 地域による登用率のばらつきも気になる。市町村の課長級以上の割合は南風原町の30・0%がトップで、浦添市の22・8%と続き、一方、いまだゼロが8村もあった。県レベルでは鳥取県の20・9%が最も高く、沖縄県は13・3%、全国平均は11・1%だった。南風原町の赤嶺正之町長は「実力本位で選んだら、女性が多かった」と話している。正規職員の男女比がほぼ半々というのも、女性が活躍する土台となっているのだろう。都道府県で全国一の鳥取県は、約20年前から知事が登用に積極的な姿勢を示し、その結果、女性の視点を生かして働く幹部が次々と生まれているという。不均衡是正に向けては、指導力を発揮すべき自治体トップの意識も問われてくる。
   ■    ■
 集団の中で変化をもたらすために最低限必要な数を「クリティカルマス(臨界質量)」と呼んでいる。政治・行政分野では30%が急激に影響力を及ぼす分岐点とされている。政府は第5次男女共同参画基本計画で「20年までに30%」とする女性登用目標を後退させ、「20年代の可能な限り早期」に先送りした。コロナ禍による影響は女性や子どもなど立場の弱い人たちにより深刻に表れている。行政分野での女性の視点はますます重要になっており、不均衡をなくすことが急務である。

<再エネの時代へ → 原発立地自治体へのアドバイス>
PS(2021年2月18、20、27日、3月2日追加):*5-1-2のように、運転開始から40年過ぎて停止中の関西電力高浜1、2号機と美浜3号機で、再稼働に必要な地元自治体の同意手続きが進んでいるが、耐用年数を延長して運転するのは、原子力規制委員会が承認したとしても同委員会の感覚がおかしいという証明にしかならず、原発建設当時より安全に無関心になっているということだ。核燃料サイクル政策は既に破綻し、原発敷地内に保管する使用済核燃料の中間貯蔵施設は県外に確保する約束をしていたそうだが、そもそも中間貯蔵と最終処分を分けて放射性物質を何度も移動させるのは金とリスクが二重にかかり、この費用も国民が負担しているのだ。
 佐賀新聞は、*5-1-1のように、「①原発立地23市町村で老朽化する公共施設・インフラの維持管理や建て替えに今後40年間で計約4兆円が必要になる」「②玄海町は660億円見込んでいる」「③フクイチ事故後の原発再稼働・新増設停滞で立地自治体は収入減に直面し、さらなる財政悪化の懸念がある」「④原発誘致による町づくりは転機を迎えている」としている。私は、最終処分方法を早急に決めて原発を卒業するのがBestだと思うので、原発立地自治体がどうすればよいかについて玄海町の例で説明すると、既に交通の便はよくなっているため、i)再エネ関連の産業を誘致する ii)EVやFCVの部品工場を誘致する  iii)近隣の農林漁業地帯で行った再エネ発電の電力で水素を作る iv)バイオ産業を誘致する v)西日本新聞や佐賀新聞の印刷部門を誘致する などが考えられる。しかし、それには環境整備が必要で、速やかに廃炉を終えて使用済核燃料も最終処分し、その土地の安全性に懸念のなくなることが必要条件であるため、国の協力が必要だ。また、既に建設されているインフラを有効利用するには、唐津市と合併して玄海町側の施設を使ったり、民間に売却したりするのがよいと思う。
 なお、*5-2-1のように、再エネは地域再生の旗手となり得るのであり、日本生命などの機関投資家は2021年4月からすべての投融資判断に企業の環境問題や社会貢献への取り組みなどを考慮するそうだ。そのため、再エネ利用がさらに高まることは確実で、投資家や消費者が選別する時代も近づきつつあり、経産省は「エネルギー基本計画」を早急に見直して再エネを主電源とする政策に変換すべきなのだ。ここで、温室効果ガスの排出を抑制するという名目で原発の再稼働や新増設を後押しするのは、「温暖化や公害の原因はCO₂だけである」と矮小化して考える非科学的で筋の悪い発想だ。
 さらに、所沢・飯能・狭山・入間・日高の埼玉県西部5市は、*5-2-2のように、地球温暖化防止に向けて二酸化炭素(CO2)排出を2050年までに実質ゼロにすることを目指す「ゼロカーボンシティ」を共同で宣言し、森林の活用や再エネ普及で連携し、再エネの利用・促進に関する啓発活動や豊かな森林資源を生かした環境学習などに取り組むそうだ。また、埼玉県内では、他に、さいたま市・秩父市・深谷市・小川町が「ゼロカーボンシティ」を宣言している。そして欧州では、*5-2-3のように、ダイムラーAG社のトラック部門とバス部門が2039年までに欧州・日本・北米の主要3市場で全ての新型車両をCO₂ニュートラルにする目標を発表し、「我々は大型トラックの電動化に初めて真剣に取り組み、今では顧客が使用するEVの全てでパイオニアとなっている」としているが、日本はどうか? 
 このように、*5-3-1の再エネ拡大のための送電網強化は重要で、私も電力は再生エネで100%を賄えるため、くだらないばら撒きはやめてそのためのインフラ整備を行うべきだと考える。また、*5-3-2のように、バイデン次期大統領は環境インフラに4年間で2兆ドル(2021年2月18日現在の1$≒106円で換算すれば約212兆円)投じる公約を掲げたため「ブルーウエーブ」ができているが、日本の有権者・投資家・消費者はどう考えるだろうか?
 なお、*5-4に、「⑤自動車がガソリン車からEVに切り替わると、国内部品メーカーの雇用が30万人減る」「⑥メーカー各社は新たな事業創出に向け研究開発を加速している」「⑦バッテリーや駆動用モーターなどのEV化で新たに必要となる部品もあり、各社はその開発に力を入れている」「⑧地方自治体も雇用を維持するため、中小企業のEV化対応を支援する動きが出ている」等が書かれている。⑤については、同じ機能の製品を作るなら少人数で作れる方が生産性が高く、排気ガスを出さないのでEVの方が付加価値も高い。そのため、⑥⑦は当然の方向性なのだが、⑧についても、日本にはEV・自動運転・再エネに関する特許が多く、中小企業も参入しやすいため、地方自治体が本気で支援して輸出も視野に大量生産できる体制を整えれば、ピンチに見えた情景はチャンスに替わると思う。
 再エネには、*5-5のように、佐賀市が清掃工場から出るごみ焼却熱を利用して年間約3万2千メガワット時を発電しているように、これまで廃棄していたエネルギーを電力に変えるものもある。佐賀市は、2023年度以降は7~8円/kwhになる余剰電力をどうするか考えているそうだが、九電の業務用電力は最安値でも10円以上するため、9円で市の財政に寄与する重要な産業に販売すればよいだろう。例えば、市内の企業や農業などの産業に販売すれば、電力料金が地元で廻り、産業も電力料金が安い分だけ競争上有利になる。これは、ゴミ発電だけでなく、既存ダム等の市有財産に水力発電機を設置して発電しても同じことで、送電線を水道管に沿って埋設し他の再エネ発電事業者の電力も送電すれば、送電料を徴収することも可能だ。そして、多くの市町村がこれを行えば、原発はすぐに廃止でき、化石燃料や原発由来でない確かな再エネ由来の電力を送電することで消費者も選択しやすくなる。さらに、電線の地中化も進むが、これらが電力自由化の効果であり、いつまでも電力安定供給を振りかざしてニーズにあった電力供給を行わず、エネルギー代金を高止まりさせてきた大手電力へのよい刺激になる。
 また、送電網は、現在は大手電力のものを使っており、大手電力の都合によるため、独立性も競争もない。そのため、個別の企業や住宅への配電は地方自治体が水道管の近くに電線を埋設して行うのが最も中立的でコスト削減になるだろう。また、地域間融通は、鉄道や高速道路に沿って(なるべく超電導)電線を設置するのが、最低コストになると思われる。送配電設備を持つ組織が配電料や送電料を徴収することができるのは、もちろんのことだ。
 そして、COP26の議長国である英政府は、*5-6のように、再エネやEVのインフラ投資を進めるために個人投資家と機関投資家向けに環境債を発行して脱炭素化を加速させるそうだ。環境債は右肩上がりの環境分野への資金調達に限定した債券で、比較的高い利子率に設定できるため、佐賀市のような地方自治体が公債として発行しても支持されると思う。

 
2020.10.31、2020.12.14    次世代の太陽光発電機       各種風力発電機
   日経新聞

(図の説明:左2つの日経新聞の図のように、地方では再エネ電力が余っているのに送電網が不十分で他のエリアに送電できていないが、送電網ができれば、自然エネルギー財団の見解どおり、再エネ100%で電力供給ができる。また、中央の2つの図のように、太陽光発電機器も進歩して軽さ・機能性・美しさを兼ね備えたものができている。さらに、右図のように、風力発電機も進歩して従来型の欠点を克服したものも多く出ている)


燃料電池トラック   EVトラック   燃料電池都バス   EVバス  全自動木材運搬EV


   
 燃料電池航空機   燃料電池船  燃料電池漁船   燃料電池列車   EV列車

(図の説明:上段のように、交通機関も燃料電池・EVによるトラック・バス・木材運搬機などができており、下段のように、燃料電池・EVによる航空機・船舶・列車もできた。後は、大量生産によってコストと価格を落としながらラインナップを増やすことが課題だが、作って使い始めなければ改良もない)

*5-1-1:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/631470 (佐賀新聞 2021.2.10) 原発立地23市町村、公共施設維持に4兆円 玄海町は660億円
 原発や関連施設が立地するか建設計画がある全国23市町村で、老朽化する公共施設やインフラの維持管理、建て替えに今後40年間で計約4兆円が必要になることが9日、各自治体への取材で分かった。原発関連の交付金や税収を原資に建設されたものが多く、住民1人当たりの負担額は全国平均を大きく上回る。東京電力福島第1原発事故後の原発再稼働や新増設の停滞で、立地自治体は収入減に直面している。さらに財政が悪化する懸念があり、施設の統廃合や建設抑制などで負担軽減を目指している。原発誘致による町づくりは転機を迎えている。各自治体は2015年以降、維持更新費用を試算。総額は市町村の規模により異なるため、住民1人当たりの負担額を見た。総務省がまとめた全国平均は年6万4000円。これに対し、23市町村のうち福井県おおい町が46万7000円と最も多く、17市町村は平均の2倍を超え、最も少ない茨城県東海村でも6万9000円と平均を上回った。学校や医療機関などの公共施設や道路や水道などのインフラの保有量について、19市町村は「過大」「やや過大」と回答。保有量が増えた原因として、9市町村は原発関連の収入増と関係があると答えた。松江市や鹿児島県薩摩川内市などは原発とは関係なく、市町村合併の影響を挙げた。23市町村ごとに、規模の大きい公共施設10施設について原発関連交付金の活用の有無を尋ねると、全230施設のうち136施設が該当。過剰な施設を抱える一因となったことがうかがえる。維持更新費は、18市町村で通常の建設投資の予算額を超え、他の分野の予算にしわ寄せが及びかねない。ほとんどの市町村が施設の統廃合などで負担軽減を進める方針を示した。今回の集計で、第1原発事故の影響で維持更新費を試算していない福島県大熊町と双葉町は対象外とした。費用総額は茨城県東海村が60年間、福井県美浜町が30年間で計算している。
●玄海町は660億円見込む
 九州電力玄海原子力発電所が立地する東松浦郡玄海町は、公共施設やインフラの維持管理などに今後40年間で660億4000万円を見込む。住民1人当たりの年間負担額は29万4000円と、全国平均を23万円上回った。公共施設の保有量は「やや過大」と回答した。保有量と原発関連の収入増とは関係があるとみている。規模が大きい10施設のうち、原発関連交付金を活用したのは8施設に上った。維持更新費については試算していない。

*5-1-2:https://digital.asahi.com/articles/DA3S14803656.html?iref=comtop_Opinion_03 (朝日新聞社説 2021年2月18日) 老朽原発延命 無責任の上塗りやめよ
 核燃料サイクル政策の破綻(はたん)から目をそらし、「原発の運転は原則40年まで」というルールの骨抜きに突き進む。そのうえ電力会社と立地自治体の長年の約束をうやむやにしようとする動きを後押しする。とりわけ国の無責任ぶりが目に余る。運転開始から40年を過ぎ、現在は停止中の関西電力高浜1、2号機と美浜3号機で、再稼働に必要な地元自治体の同意手続きが進んでいる。原子力規制委員会の審査を終えた後、既に高浜、美浜両町の町長と議会は同意し、福井県の知事と議会の対応が焦点となっている。関電は1990年代末、福井県知事の要求に応え、原発の敷地内に保管する使用済み核燃料の中間貯蔵施設を福井県外に確保することを約束した。しかし、いまだに果たせていない。最近では18年、20年と期限を区切りながら実現できず、福井県側は「再稼働に向けた議論に入れない」と反発していた。ところが、である。関電の森本孝社長がこのほど福井県の杉本達治知事を訪れ、23年を最終期限としつつ青森県むつ市を候補地としてあげた。同市には東京電力などが整備する中間貯蔵施設があり、電力各社からなる電気事業連合会が昨年末、それを業界で共用すると表明。関電はそこへの参画を選択肢の一つにするという。むつ市が関電の考えに「あり得ないこと」と激しく反発しているにもかかわらず、杉本知事は「覚悟が示された」と評価し、県議会に議論を促した。一連の動きは、福井県民に示してきた方針を先送り・あいまいにする対応と言うほかない。関電と福井県のトップ会談には、経済産業省資源エネルギー庁の保坂伸長官が同席し、支援を表明。オンラインで参加した梶山弘志経産相は再稼働への協力を知事に要請した。原発政策が「国策民営」と評されるのを地でいく構図である。核燃サイクルは、使用済みの燃料を再処理して再び発電に使う仕組みだが、計画は行き詰まっている。このままでは使用済み核燃料は行き場を失いかねず、その現状への不安が、むつ市や福井県の姿勢の根底にはあろう。そうした根本的な問題に向き合わず、原発の温存へ再稼働を急がせる国の対応は、無責任に無責任を重ねるものだ。原発の40年ルールは、東電福島第一原発の事故を受けて設けられた。電力不足などに備えるため「1回だけ、最長20年延長可」とされたが、その例外規定が次々と適用されている。先行きのない政策に見切りをつけ、現実的な解を探る。その決断と実行が、国と電力会社、自治体のすべてに求められる。

*5-2-1:https://www.jacom.or.jp/column/2020/10/201021-47242.php (JAcom 2020年10月21日) 再生可能エネルギーで地域再生
<日本生命保険は2021年4月から、すべての投融資の判断に、企業の環境問題や社会貢献への取り組みなどを考慮した「ESG」の考え方を採用する。独自に策定した評価基準を用い、経営の透明性や持続可能性の高い企業などへの投資を増やすことで、利回り向上とリスク低減を目指す。(読売新聞10月20日付)、ESGとは、投資環境(Environment)・社会貢献(Social)・企業統治(Governance)に配慮している企業を重視・選別した投資>
●再生可能エネルギーの利用高まる
 西日本新聞(10月17日付)は、国連が掲げる「持続可能な開発目標(SDGs)」や、環境や社会的責任を重視する「ESG投資」が注目を集める中、二酸化炭素(CO2)排出量を減らす取り組みで企業の社会的評価を高めるため、使用電力をすべて再生可能エネルギー(太陽光、風力、水力、バイオマス、地熱など)で賄うことを目指す企業が増えてきていることを報じている。そして「電気を使う企業も、CO2削減の取り組みによって投資家や消費者から『選別』される時代が近づきつつある」とする。日本農業新聞(10月18日付)の論説も、「農地に支柱を立てて架台を載せ、農地の上で太陽光発電をしながら農業生産にも取り組む営農型太陽光発電の面積が増えている。当初の設備に資金が必要なため、農家が単独で発電事業に参入するのは難しい。優良な連携相手を仲介する仕組みづくりが求められる」と、営農型太陽光発電(ソーラーシェアリング)の広がりを取り上げている。
●「エネルギー基本計画」の見直しと再生可能エネルギー
 国の中長期的なエネルギー政策の指針となる「エネルギー基本計画」について、経済産業省が見直しに向けた議論に着手した。これを受けて、山陽新聞(10月18日付)の社説は、「二酸化炭素(CO2)を出さず環境に優しい再生エネを最大限活用し、主力電源として機能するよう意欲的な目標に見直すことが求められる」とし、「再生可能エネルギーの拡大」をそのポイントとする。しかし18年度の再生エネ比率は16.9%で、脱炭素で先行する欧州各国は30%前後と比べると、「日本の立ち遅れは否めない」とし、事業者への支援の必要性を訴えている。また、固定価格制度による買い取り費用が電気料金に上乗せされ、家庭や企業の負担が増大していることから、「再生エネの強化と国民負担とのバランスを考慮した議論」を求めるとともに、「原発に対する国民の不信や不安は根強い」ことから、「将来的に原発比率を下げていく道筋を示すべきだ」とする。期せずしてこの7月に「経済同友会」から出された『2030年再生可能エネルギーの電源構成比率を40%へ』と、「自然エネルギー協議会(会長 飯泉嘉門 徳島県知事)」から出された『自然エネルギーで未来を照らす処方箋』が、30年に再生エネの比率を40%まで引き上げることなどを提言していることを紹介し、「天候に左右されがちな再生エネが主力電源となるには、蓄電池の性能向上や送電線網の拡充なども必要となる。技術開発を促し、設備投資の呼び水となるよう、政府は野心的な目標を掲げ、政策誘導することが欠かせない」とする。
●原発の再稼働、さらには新増設までも後押しする読売新聞
 読売新聞(10月17日付)の社説は、「温室効果ガスの排出を抑制しながら、電力の安定供給を確保するという課題にどう対処するか。冷静な議論を通じ、現実的な道を探るべきだ」と、再生可能エネルギーの利用促進にくぎを刺す。再生可能エネルギーの問題点として、「買い取り費用が転嫁された結果、家庭や企業の電気代の負担」が増えることと、発電量の不安定性を指摘する。その不安定性を補うための電源として、「原子力の活用が最も有効だろう」とする。そして、「政府は、新計画で原発の必要性を国民に説明し、責任を持って再稼働を後押しせねばならない。同時に、国民の原発に対する信頼を取り戻すため、官民で安全を一段と高める技術開発を加速させるべきだ。古くなった施設も多く、原発の新増設についても、論議を深めてもらいたい」とまで述べている。
●中国新聞の見識
 中国新聞(10月21日付)の社説は、18年度の電源構成実績が6.2%の原発を、30年度に20~22%程度とした18年7月の閣議決定を取り上げ、「福島の事故を受けて安全対策費がかさみ、『安い』というメリットも失われた。(中略)原発ゼロを望む国民の多さを考えると、そもそも達成不可能な目標だったのではないか。依存度の引き下げが進む国際社会の潮流にも逆行している」と、指弾する。「脱炭素を進めるためにも、再生エネルギーの大幅拡大が必要だ」が、日本は後れを取っている。「発電量が天候に左右されるほか、ドイツなどに比べコスト低減も進んでいない」と、問題点を読売新聞同様認める。だが、「政府の意識は経済界より遅れているようだ」とし、前述の経済同友会提言が、30年の再生エネルギーの比率を、太陽光・風力で30%、水力や地熱などで10%と具体的に示したことを、「欧州各国にも引けを取らない高い目標」と評価する。実現に向けた、政府による明確な意思表示と政策誘導、積極的で継続的な民間投資等々の条件がそろえば、「国民の意識変革や行動変容がさらに進み、道筋も見えてこよう。エネルギー自給率の引き上げや、温暖化対策の国際公約達成にもつながるはずだ」として、新たな基本計画で、再生エネルギーの拡大へと大きくかじを切ることを政府に求めている。その背景として、「私たちは、風水害や地震が頻発する災害列島に住んでいることも忘れてはならない。甚大な被害が懸念される南海トラフ巨大地震や首都直下地震が、30年以内に70%前後の確率で起きると予測されている」ことをあげ、「災害に備えて、小規模分散型発電の可能性も各地域で考え」ることを、我々に訴えている。
●再生可能エネルギーで地球も地域も持続する
 「化石燃料のほぼ全量を輸入に頼る我が国では、温室効果ガス削減のためだけでなく、エネルギーの安定供給と自給率向上のためにも、再エネの大量導入と主力電源化が有効有益であることは論を俟たない。その実現に向けては、さまざまな課題があり、また一朝一夕で解決できるものではない。しかしながら、再エネの主力電源化は、地球の持続可能性の確保、そして日本の経済発展のために、官民が一体となって知恵を絞り、課題解決に取り組むべき最優先課題である」で、経済同友会の提言は終わっている。ソーラーシェアリングが、十数年間耕作放棄地だったところを発電所と優良農地に変えた事例を最近見学した。再生可能エネルギーは、地域再生のエネルギー源となる可能性も秘めている。「地方の眼力」なめんなよ

*5-2-2:https://digital.asahi.com/articles/ASP2H7FHYP2HUTNB006.html (朝日新聞 2021年2月16日) 県西部5市が「ゼロカーボンシティ」共同宣言
 所沢、飯能、狭山、入間、日高の埼玉県西部5市は15日、地球温暖化防止に向けて二酸化炭素(CO2)排出を2050年までに実質ゼロにすることを目指す「ゼロカーボンシティ」を共同で宣言した。歴史的、地理的に関係が深い近隣5市が、森林活用や再生可能エネルギーの普及などで連携していくという。所沢市役所で宣言文に署名する際、市長らは「自然環境、産業、文化、歴史などそれぞれの市の特長を生かしながら、互いに協力していく」と表明。市ごとの取り組みや、目指す方向性にも言及した。連携する具体的な取り組みは、5市で構成する「県西部地域まちづくり協議会」にプロジェクトチームを設置して、今後検討していく。再生可能エネルギーの利用・促進に関わる啓発活動や、飯能市や日高市が抱える豊かな森林資源を生かした環境学習などを想定しているという。所沢市は昨年11月に市単独で「ゼロカーボンシティ」を宣言しており、他の4市がこれに歩調を合わせた。県内ではほかに、さいたま市、秩父市、深谷市、小川町が、それぞれ宣言をしている。

*5-2-3:https://www.lnews.jp/2019/10/l1028307.html (Lnews 2019年10月28日) ダイムラーAG/2039年までにトラック・バスのCO2排出ガス0へ
 ダイムラーAG社のトラック部門とバス部門は10月28日、2039年までに欧州、日本及び北米地域の主要3市場で全ての新型車両をCO2ニュートラル(燃料タンクから走行時まで)化する目標を発表した。両部門は2022年までに主要市場である欧州、日本及び北米地域において、車両ポートフォリオにバッテリー式電気自動車(EV)の量産車を含める計画を立てている。また、2020年代の終わりまでに、水素駆動の量産車により航続距離の拡大を目指。第46回東京モーターショーでは、三菱ふそうトラック・バスのブランドであるふそうの燃料電池小型トラックのコンセプトモデル「Vision F-CELL」を世界初公開し、水素分野における活動強化をアピールした。さらに、2022年までに欧州の生産工場をCO2ニュートラル化し、その後他のすべての工場にも拡大する計画を掲げた。ダイムラーAG社のマーティン・ダウム取締役兼トラック、バス両部門代表は、ベルリンで開催した国際サプライチェーン会議の基調講演で「ダイムラーのトラックとバス部門は、パリ協定の目標に明確にコミットしており、業界の脱炭素化に取り組んでいる。2050年までに道路上でCO2ニュートラルの輸送を実現することが、究極の目標。これはコストとインフラの両方の観点において、顧客にとって競争力のある商品の提供を実現出来た時初めて達成できる」。「2050年までに全ての車を完全に刷新するには約10年を要するが、私たちの目標は、2039年までに欧州、日本そして北米地域にて、”燃料タンクから走行まで(Tank to Wheel)”CO2ニュートラルの新しい車両を提供すること。真のCO2ニュートラルの輸送は、バッテリー式電動運転システムまたは水素ベースの運転システムだけの場合に実現する。我々は、大型トラックの電動化に初めて真剣に取り組んだメーカーであり、今日では、顧客が使用する電気自動車の全てのセグメントでパイオニアとなっている」と述べている。なお、「メーカーのあらゆる努力の一方で、2040年時点でも、電気駆動のトラックとバスの総所有コストは、ディーゼル車よりも依然高いことが予想されるため、CO2ニュートラルのトラックとバスの誕生だけでは、普及拡大には至らない。したがって、CO2ニュートラルなトラックとバスの競争力を高めるには政府によるインセンティブが必要。CO2ニュートラルの車両が大幅な救済を得るためにはCO2値に基づいてヨーロッパ全体の通行料を変換、調整することが必要であり、バスに対する補助金プログラム、また全国的な充電および水素インフラ構築、ならびに水素の輸送および燃料補給のための統一基準を構築する補助金プログラムがとりわけ必要」としている。

*5-3-1:https://www.nikkei.com/article/DGXZQODF143CB0U0A211C2000000/ (日経新聞 2020年12月14日) 再エネ拡大へ送電網の強化を 排出ゼロで研究機関提言
 総合資源エネルギー調査会(経産相の諮問機関)の分科会は14日、官民の研究機関の報告を交えて再生可能エネルギーの普及に向けた課題や方策を議論した。各機関とも2050年の温暖化ガス排出量実質ゼロに向けて再生エネの導入拡大の重要性に触れたが、不安定な発電量への対応や送電網の強化などが必要になるとした。報告をしたのは国立環境研究所、自然エネルギー財団、日本エネルギー経済研究所、電力中央研究所の4機関。最も意欲的な目標を示したのは自然エネルギー財団だ。人口減や省エネで50年までにエネルギー需要が20~30%減るなどと見込んだ上で、電力は再生エネで100%をまかなえるとした。導入拡大には広域的な送電網を整備することで発電量の変動や事故に対応することが必要になると主張した。日本は欧米に比べて再生エネの設置に適した場所が少ないという見方に対し、耕作放棄地や空き地などを考慮すれば、地上設置型の太陽光だけでも原発や大型火力およそ100基分にあたる1億キロワット超の設備を置く土地があると指摘した。国立環境研究所は、脱炭素社会を目指す上では自動車や産業部門の電化と再生エネの最大限の活用が必須だと強調した。太陽光と風力は設置の余地が大きいものの、資源が地域的に偏在していることや天候による出力変動を踏まえ、高度なエネルギー需給の調整の仕組みが必要になるとした。再生エネの大量導入に向けた課題を指摘したのが日本エネルギー経済研究所だ。大量に導入された場合、発電している時間帯の電力価格が低下し、投資回収の見込みが立ちづらくなる可能性を指摘した。極めて高い再生エネ比率を目指す場合は、電力供給の途絶リスクに対処するために数十年以上の気象データを使った分析が必要になるほか、適切な導入量は設置の可能性や地元合意、環境への配慮などを評価して決めることが重要になると主張した。電力中央研究所は再生エネの導入拡大は「極めて重要」としたが、排出量の実質ゼロは再生エネ比率100%が前提ではないと指摘。原子力などの既存電源に加えて、水素や温暖化ガスの回収・貯留などの技術も組み合わせて費用の最小化を目指す必要があるとした。その上で陸や海で法規制による設置への影響が少ない地域で優先的に導入が進む場合、50年に発電量に占める再生エネ比率は38~50%になると指摘した。

*5-3-2:https://www.nikkei.com/article/DGXZASFL06HRM_W1A100C2000000/ (日経新聞 2021年1月7日) <米国>太陽光発電関連が急伸、バイデン政権で環境投資拡大に期待
 6日の米株式市場で太陽光発電関連株が急伸している。ソーラーエッジ・テクノロジーズは一時、前日比18.4%高の375.00ドルを付けた。ジョージア州の上院決選投票で民主党が2議席とも獲得し、上院で過半数を握るとの見方が強まった。同党が大統領と上下両院を制する「ブルーウエーブ」となり、太陽光関連株は公約に掲げる環境インフラ投資の恩恵を受けるとの見方が広がった。住宅用太陽光発電パネルのサンランは13.6%高の83.00ドル、太陽光電池のファースト・ソーラーは8.3%高の99.85ドルまで買われる場面があった。民主党のバイデン次期大統領は環境インフラに4年間で2兆ドルを投じる公約を掲げる。太陽光など再生可能エネルギーへの設備投資を促進し、2050年までに温暖化ガスの排出ゼロを目指す。ブルーウエーブが誕生すれば政策の実現性が高まると市場でみなされた。

*5-4:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/635489 (佐賀新聞 2021年2月20日) EV普及で雇用30万人減も、部品減で、メーカー苦境
 自動車がガソリン車から部品数の少ない電気自動車(EV)に切り替わることで、国内の部品メーカーの雇用が大きく減少する恐れがあることが20日、明らかになった。現在300万人程度とされる関連雇用が30万人減るとの試算もあり、メーカー各社は新たな事業創出に向け研究開発を加速。地方自治体も雇用維持するための支援を模索している。EVはモーターでタイヤを駆動して走るため、エンジンなどに関係する部品が不要となり、部品数はガソリン車の3万点から2万点程度に減るとされる。一方でバッテリーや駆動用モーターなどEV化で新たに必要となる部品もあり、各社はその開発に力を入れる。トランスミッションメーカー、ジヤトコ(静岡県富士市)の現在の主力商品はエンジン車向け無段変速機(CVT)だ。「エンジン車があっという間になくなることはない」(中塚晃章社長)としつつ、「イーアクスル」と呼ばれるEVの高速性能を高める新製品の開発を進めている。トヨタ自動車系の部品メーカー、デンソーは昨年、電動化に関連する研究開発などを行う「電動開発センター」を愛知県内に新設した。地方自治体でも中小企業のEV化対応を支援する動きが出ている。静岡県や浜松市でつくる浜松地域イノベーション推進機構が2018年に立ち上げた「次世代自動車センター浜松」は、大学や完成車メーカーなどと連携し、中小企業にEVなどの次世代技術を提供している。担当者は「準備は1年や2年では間に合わない。会員企業が脱ガソリン車に対応できるよう支援したい」と話す。アーサー・ディ・リトル・ジャパンの経営コンサルタント祖父江謙介氏は、自動車部品に関連する雇用は国内で300万人程度とした上で、EV化で1割の約30万人の雇用減少につながる恐れがあると指摘。「海外メーカーはEV開発に経営資源を集中している。日本メーカーが負ければ海外で日本車が売れなくなり、それ以上の雇用減が起こる」と警鐘を鳴らす。

*5-5:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/636772 (佐賀新聞 2021.2.27) 佐賀市清掃工場電力の利活用を調査 固定買い取り終了で
 再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度が2023年度に終了することを受け、佐賀市は4月から、市清掃工場(高木瀬町)のバイオマス発電の利活用策を検討する。現行の売却価格が半額近くになることが見込まれており、対応策の調査研究を民間に委託する。関連予算1170万円を盛り込んだ新年度当初予算案を、3月1日開会予定の定例議会に提案する。調査研究の期間は7月から来年2月までの予定で、4月に業者を公募する。先進事例も踏まえ、一定程度の価格で販売できる仕組みづくりを22年度から計画する。バイオマス発電は、ごみ焼却の熱を利用した蒸気でタービンを回し、年間約3万2千メガワット時を発電する。電気は、焼却炉の運転や隣接する健康運動センタープールの温水などに使っている。余った電力約1万8千メガワット時は現在、東京都の新電力会社に1キロワット時当たり最大17円で販売しているが、23年度以降は7~8円になるという。市循環型社会推進課は「地域内で電力を回す方法、売り先などを幅広く検討していきたい。脱炭素社会に向けた取り組みにもなれば」と話す。

*5-6:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/639156 (佐賀新聞 2021/3/1) 英政府が個人投資家向けに環境債、脱炭素化加速、年内発行へ
 英政府が個人投資家向けに、環境債を発行することが1日までに明らかになった。ジョンソン政権が掲げる脱炭素化の動きを加速させるもので、年内の発行を目指す。環境債は欧州を中心に既に各国で発行されているが、政府が個人を対象に販売するのは珍しい。英メディアは「世界初」の取り組みと伝えている。ロイター通信によると、英政府は調達した資金を活用し、再生可能エネルギーや電気自動車(EV)のインフラ投資などを進める。個人向け環境債の発行は英国の公的金融機関、国民貯蓄投資機構(NS&I)が担う。3日に正式に発表する。同時に、機関投資家向けの環境債発行も明らかにする見通しだ。英国は11月に開かれる気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)の議長国。既にガソリン車の新規販売を2030年までに禁止することも発表しており、新たな環境債発行で、脱炭素化の議論をリードしたい思惑があるとみられる。環境債は使い道を環境分野への資金調達に限定した債券で、企業を中心に世界で発行する動きが広まっている。

<オリ・パラは普通に開催すべきで、できるのだが・・>
PS(2021年2月19日、3月4日追加):*6-1-1に、「①タクシー運転手が自費でPCR検査を受けて『陰性証明』を取るまで職場復帰させないと会社に言われた」「②家族を含め全員が陰性にならないと復帰させないと会社から言われた」「③日本渡航医学会・日本産業衛生学会は『感染者は発症後1週間程度で感染性がほぼ消失する』と考えられている」「④光永弁護士は労災保険の申請を提案している」等が記載されている。不特定多数の客に接する職業は、頻繁にPCR検査をして陰性証明書がなければ就業できないというのは正しいし、①②は妥当だと思う。ただし、発症した運転手本人は、④のように労災を申請すべきだし、発症していない場合もPCR検査費用は接客によるリスクを課している会社負担で行うのが当然だが、③は不確実である。
 なお、*6-1-2のように、新型コロナウイルスのワクチン接種も始まっており、ワクチンを接種した人の接種済証明書はPCR検査をした人の陰性証明書に代替できる。そして、これは医療関係者・介護職員・公共交通の運転手だけでなく、不特定多数の客と接する美容師・理容師・宅配配達員・スーパー店員なども同じ状況であるため、職場でまとめてワクチン接種やPCR検査をするのが有効だと思う。
 なお、*6-2-1のように、日本医師会の中川会長が、「⑤東京オリ・パラ開催時の外国人受け入れは不可能」「⑥外国の選手団だけでも大変な数で、外国から多くの客が来る」「⑦緩みをつくる政策があったかもしれないが、現状のまま感染者が増えると助かる命に優先順位を付けなければならなくなる」と述べられたそうだ。また、*6-2-2のように、「⑧島根県の丸山知事が、島根県内で実施予定だった東京五輪の聖火リレーに中止の意向を表明」「⑨新型コロナウイルス感染拡大を封じ込めるための政府や東京都の対応に不満があり、中止を引き合いにして改善を促すのが狙い」とされている。また、国民も、*6-2-3のように、「⑩東京オリ・パラは中止・延期すべきとの回答が世論調査で全体の7割超を占めた」「⑪世界中から人が来るのは感染拡大に繋がるという理由が最も多かった」とのことだ。
 これらのうち、医師会会長の⑤⑥⑦の意見については、不完全な上に外国人差別に繋がる現在の検疫制度を改めさせることも可能な立場の人であるため、何を言っているのかと思った。また、⑧⑨の島根県知事の発言は察するところがあり、知事が国(特に厚労省)に物申すにはこういう言い方しかないのかもしれない。⑩⑪の世論は、メディアの報道を通して形づくられたものであるため、メディアの責任が大きい。
 現在、外国から日本に到着した際は、*6-3のように、「⑫日本への入国時は、国籍を問わず出国前72時間以内の検査証明書の検疫所への提出が必要」「⑬検査証明書を提出できない人は検疫所が確保する宿泊施設等で待機」「⑭待機後、入国後3日目に改めて検査」「⑮検査証明書を提出できなかった人は陰性と判定された後も位置情報の保存等について誓約を求める」「⑯検査証明書を提出できなかった人は、陰性と判定された後、検疫所が確保する宿泊施設を退所し入国後14日間の自宅等での待機を求める」「⑰緊急事態宣言解除まで、全ての対象国・地域とのビジネストラック・レジデンストラックの運用を停止し、両トラックによる外国人の新規入国は認めない」「⑱ビジネストラックによる日本人・在留資格保持者も、帰国・再入国時の 14 日間待機の緩和措置は認めない」となっている。
 このうち、⑫は、出国前72時間以内の検査証明書ではなく、陰性証明書の提出が必要なのだ。しかし、⑬のように、陰性証明書の提出ができない人が航空機に搭乗していれば搭乗前に陰性だった人にも感染する可能性が高いため、陰性証明書を提出できない人を航空機に搭乗させてはならないのである。そのため、航空会社が搭乗前に空港で検査して陰性証明書を提出できるようにもすべきで、これができていれば、⑭⑮⑯のように、屋上屋を重ねる不要な規制をして外国人を差別的に扱う必要はない。なお、⑰⑱のように、平時はビジネストラック・レジデンストラックによる日本人・外国人の新規入国者を例外としているのであれば、屋上屋を重ねる規制をして外国人を差別的に扱っている反面、一部はザルになっているのである。
 そのため、緊急事態宣言解除後も、ビジネストラック・レジデンストラックによる日本人・外国人にも陰性証明書かワクチン接種証明書の提出を義務付けるべきで、これらを徹底していれば、外国人が大量に来日しても問題はないため、オリンピックを通常通り開催できる。また、オリ・パラ選手に母国もしくは日本でワクチンを優先接種しても、リスクの高さとイベントの重要性から考えて不公平にはならないだろう。このような中、日本では、できない理由を並べてワクチンの開発・生産・接種が遅れ、未だに「数が足りない」「オリンピックも完全な形では開けない」等と言っているのは、非科学的で情けない。そのため、何故こういうことになったのかを、全員でまじめに反省すべきである。
 なお、*6-4のように、日本航空が、3月15日から6月20日まで国内線に搭乗する希望者に2千円で新型コロナのPCR検査サービスを始めるそうだ。しかし、海外の航空会社とも協力して、航空機への搭乗前にワクチン接種者と感染回復者が持つ抗体保持証明書かPCR検査の陰性証明書のどちらかを提示することを義務付ければ、オリンピックに外国人客が来ることに何の問題もない。そのため、無策の対応をしながら、オリンピックから外国人客を締め出そうと考えるのは、開発途上国でもやらない驚くべき発想だ。

*6-1-1:https://www.nishinippon.co.jp/item/n/693719/ (西日本新聞 2021/2/17) 職場復帰にPCR検査必要? 会社と国で割れる見解
 「自費でPCR検査を受けて『陰性証明』を取るまで、職場復帰はさせられないと会社に言われた」。新型コロナウイルスに感染した福岡市のタクシー運転手の男性から戸惑いの声が、西日本新聞「あなたの特命取材班」に届いた。厚生労働省は「職場復帰に検査や証明は不要」と通知するが、会社側は「従業員の安心」を理由に検査を求めている。取材班は1月下旬、事案の概要をウェブで公開し、意見を募った。運転手、会社側双方に理解を示す投稿が集まった。果たして専門家の見解は-。ウェブには30件以上の投稿が寄せられた。「会社から、家族を含めて(全員が検査で)陰性にならないと、復帰させないと言われた」。家庭内感染の経験をこう語る投稿名「ぱぱぱぱぱ」さん。「国の通知をもっと広めてほしい。保健所からは再検査しないようきつく言われた」という。一方、会社側に理解を示す意見も。「狭い車内でお客さんと接点があるし、安心のためにも陰性証明はあった方がいい」と「匿名」さん。会社側は男性に検査費用の自己負担も求める。「の」さんは「会社が負担すべきではないか。仕事復帰の条件にするなら、当たり前だと思う」との考えだった。
                   ◆
 国の見解はどうか。感染症法はまず、新型コロナの患者や無症状病原体保有者に対し、就業を制限している。退院基準について、厚労省は「発症日から10日間経過し、かつ症状が軽快(解熱剤を使用せず熱が下がり、呼吸器の症状が改善傾向にある状態)となり、さらに72時間経過した場合」などと説明している。原則、ホテルでの宿泊療養や自宅療養も同じ。この時点で就業制限も解除となり「PCR検査は必須ではない」とされている。日本渡航医学会と日本産業衛生学会は「感染者は発症2日前から発症直後が最も感染性が高く、発症後1週間程度で感染性がほぼ消失すると考えられている」との見解を示す。
                   ◆
 陰性証明を求める会社の姿勢をどう考えるべきか。労働問題に詳しい福岡市の光永享央(たかひろ)弁護士は「従業員らの安全衛生を考えると、必ずしも不当な要求とは言えない」とみる。国は「必須ではない」とするが、会社側にも証明を求める理由がある。こうした場合、光永弁護士は労災保険の申請を提案している。国は感染拡大に伴い、仮に経路がはっきりしなくても、リスクの高い業務であれば特例的に労災認定するよう通達。厚労省によると、全国で医療従事者やサービス業など約2千件がコロナ関連で認定され、タクシー運転手も含まれる。光永弁護士は「認定されれば休業補償が得られ、『治癒』と診断されるまでは、検査や診断書に関わる費用が労災保険の対象となる」と解説する。仮に会社が申請に協力しなかったり、当事者が退職したりしていても、労働基準監督署に相談し、自ら申請することが可能という。
【事案の概要】意見の相違、復職果たせぬまま
 男性は1月上旬に38度の発熱があり、感染が判明。直前までタクシー乗務を続けており、保健所や医師からは「勤務中に乗客から感染した可能性がある」と言われている。軽症だった男性は保健所の指示通りに自宅療養し、10日間の経過観察が終わった。保健所から「職場復帰しても問題ない」と言われ、勤め先に報告した。ところが、会社側は復帰前にPCR検査による陰性証明の提出を指示。費用は自分で負担するよう求めてきた。男性が保健所の担当職員にあらためて相談すると、「経過観察期間を過ぎており、職場復帰前の検査は不要。仮に陽性反応が出ても、人に感染させる恐れはない」と説明された。保健所職員も見解を会社側に伝えたが、会社側は「社内で感染者が出ればバッシングを受けるかもしれない。従業員の安心のためにも必要」と認めなかったという。「保健所が不要と言うのに、自費の検査を強要されるのはおかしい」と男性。今も職場復帰は果たせていない。

*6-1-2:https://www.pref.saitama.lg.jp/a0710/covid-19vaccination.html (埼玉県) 
●新型コロナウイルスワクチン接種について
 新型コロナウイルスワクチンの接種に関する情報を随時掲載していきます。
《留意事項》
 「やさしく解説!大野知事の新型コロナ対策」で県民の皆さんからの新型コロナに関する様々な疑問に、大野知事が分かりやすくお答えしています。「やさしく解説!大野知事の新型コロナ対策」
1 接種スケジュール
 国がワクチンを準備し、接種の順番を定めることとなり、まずは医療従事者、次いで65歳以上の高齢者、基礎疾患を有するかた、高齢者施設等の従事者、一般の県民のかたの順に接種します。2月の中旬から医療従事者のかたの接種が開始される予定ですが、接種は市町村が、その支援と副反応などの相談は県が受け付けることとなっています。65歳以上の高齢者のかたに対しては、3月にお住いの市町村から接種券が届き、4月から接種が開始される予定です。それ以外のかたには、4月以降に接種券が届く予定です。具体的な接種時期についても追ってお住いの市町村からお知らせが届く予定ですので、いましばらくお待ちください。なお、接種費用は、全額国が負担します。自己負担はありません。
2 ワクチンや副反応について
 新型コロナウイルスワクチンのうち、最初に接種を行うことになるファイザー社のワクチンは筋肉内注射のため、接種後に接種部位の痛みや腫れなどの軽い副反応が頻繁に出現するとされています。これらの症状が出たときは、慌てず様子を見ていただければと思います。 他の予防接種と同様、まれに、接種後にけいれんなどのアナフィラキシーショックを起こすことがありますが、その場合は接種会場の医師がすぐに応急処置を行います。また、接種会場から帰宅した後、その日の夜などにショック症状が出現した場合には、24時間対応の県の専門相談窓口にお電話いただければ、看護師と医師が対応いたします。さらに、接種後、徐々に麻痺やしびれ症状などが出現し、かかりつけ医等に受診しても対応が難しい場合には、専門医療機関にスムーズにつなぐ体制を整えています。県民のみなさまに安心して接種していただけるよう、ワクチンの安全性や相談・受診体制に関する情報を広く周知します。(「専門相談窓口」の設置と「専門医療機関」の指定について、3月1日頃に開始を予定しています。)

*6-2-1:https://www.jiji.com/jc/article?k=2021012200902&g=pol (時事 2021年1月22日) 外国人受け入れ、現状では困難 東京五輪、「医療崩壊が頻発」―日医会長
 日本医師会の中川俊男会長は22日、東京都内で開かれた内外情勢調査会で講演した。新型コロナウイルスの感染者数が高止まりする中、「医療崩壊が頻発している」と強い危機感を表明。その上で、東京五輪・パラリンピック開催時の外国人受け入れについて、「受け入れ可能かというと可能ではない」と述べ、現在の感染状況では困難との認識を示した。中川氏は「外国からたくさんのお客が来て、選手団だけでも大変な数だ」と指摘し、患者数のさらなる増加を懸念。五輪開催の可否については明言を避けた。また、年末年始以降の感染者数の急増にも言及。政府の「Go To キャンペーン」などを念頭に「いろいろな緩みをつくる政策があったかもしれない」とした上で、「現状のまま感染者が増え続けると、助かる命に優先順位を付けなければならない状態になる」と警鐘を鳴らした。

*6-2-2:https://www.tokyo-np.co.jp/article/86465 (東京新聞 2021年2月17日) 「協力難しい」島根県知事が東京五輪の聖火リレー中止の意向 政府や都のコロナ対策に不満…大会開催も反対
 島根県の丸山達也知事は17日、県内で実施する予定だった東京五輪の聖火リレーについて、「開催すべきでない」と中止の意向を表明した。県の聖火リレー実行委員会で明らかにした。五輪のリレーは5月15、16日に実施し、パラリンピックは日程調整中だった。「今の時点で中止をお願いするわけではない。状況を見て、(政府と東京都の対応が)改善するかどうかあらためて判断したい」とも述べた。委員会終了後の記者会見で、五輪自体の開催にも反対する考えを表明した。丸山氏は委員会に先立ち、取材に「新型コロナウイルス感染拡大を封じ込めるための政府や東京都の対応に不満がある」などと理由を明かした。中止を引き合いに、改善を促すのが狙い。丸山氏は記者会見で「五輪と聖火リレーの開催に協力していくことは難しい」と語った。丸山氏は10日の記者会見でも政府や都を批判していた。丸山氏は2019年4月の知事選で初当選した。

*6-2-3:https://www.jiji.com/jc/article?k=2021012400086&g=soc (時事 2021年1月24日) 東京五輪「中止・延期」が7割 感染拡大を懸念―新聞通信調査会
 公益財団法人「新聞通信調査会」(西沢豊理事長)は23日、今夏の東京五輪・パラリンピックに関し、「中止、延期すべきだ」との回答が全体の7割超を占めたとする世論調査の結果を公表した。理由は「世界中から人が来ることは感染拡大につながる」が最も多かったという。調査は昨年10月30日~11月17日、18歳以上の男女を対象に実施し、約3000人から回答を得た。五輪・パラリンピックの開催については、「中止すべきだ」との回答が37.9%で最も多かった。「さらに延期すべきだ」が34%で続き、「開催すべきだ」は26.1%だった。「開催すべきだ」とした理由(複数回答)は、「選手が出場に向けて準備している」(67.3%)、「選手の活躍や五輪の活気に元気づけられる」(49.3%)、「誘致や会場建設などの準備が無駄になる」(44.8%)などの順だった。中止や延期すべきだと回答した理由(複数回答)のうち、最も多かったのは「世界中から人が来ることは感染拡大につながる」で83.4%。次いで「コロナ流行が収束する見込みがない」(64.3%)だった。

*6-3:https://www.iace-usa.com/pcr_test (厚労省 2021年2月5日最終更新より抜粋) 日本到着時の最新の検査状況
※検疫措置の内容・所要時間は流動的であり、予告なく変更となる場合があります。
日本ご帰国のお客様へ 重要なお知らせ
・国籍を問わず、日本への入国に際し(入国・再入国・帰国する者全てに対し)、検疫所へ「出国前72時間以内の検査証明書」の提出が必要です。
・「出国前72時間以内の検査証明書」が提出できない場合、検疫所が確保する宿泊施設等で待機となります。(検疫官の指示に従わない場合は、検疫法に基づく停留措置の対象となる場合がございます。) さらに、入国後3日目に改めて検査を行い、陰性と判定された場合、位置情報の保存等(接触確認アプリのダウンロード及び位置情報の記録)について誓約が求められるとともに、検疫所が確保する宿泊施設を退所し、入国後14日間の自宅等での待機が求められます。
・緊急事態解除宣言が発せられるまでの間、全ての対象国・地域とのビジネストラック及びレジデンストラックの運用は停止され、両トラックによる外国人の新規入国が認められません。また、ビジネストラックによる日本人及び在留資格保持者についても、帰国・再入国時の 14 日間待機の緩和措置は認められません。
その他の関連情報、詳細は外務省ホームページまで。

*6-4:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/639074 (佐賀新聞 2021/3/1) 日航、希望者に2千円でPCR、国内線の客、15日から
日本航空は1日、国内線に搭乗する希望者向けに2千円で新型コロナウイルス感染の有無を調べるPCR検査サービスを始めると発表した。日航が費用の一部を負担する。対象となる搭乗期間は今月15日から6月30日まで。搭乗日の7日前までの申し込みが必要。春にかけて転勤や進学で人の移動が多くなるため、安心して飛行機を利用してもらうのが狙い。日航の公式サイトで申し込むことができ、マイレージ会員の登録が必要となる。旅行会社などを通じた団体旅行は対象外。自宅に検査キットが届き、採取した唾液を指定の検査機関に返送する仕組み。返送費用は自己負担となる。結果はメールで本人に通知する。陽性判定が出た場合は搭乗できず、予約した航空券は手数料なしで取り消すことができる。日航は国際線の全乗客を対象に、渡航先で新型コロナの陽性と判定された際の検査や治療、隔離にかかった費用を補償するサービスも無償で提供している。

<女性蔑視の結果である日本の遅れ>
PS(2021年2月22日):*7-1に、九電が経産省と同じ見解の原発の必要性を記載しており、「①エネルギーセキュリティ:日本のエネルギー自給率はわずか7%程度しかなく、殆どを海外からの輸入に頼っているため、エネルギーの多様性が重要」「②地球温暖化対策:原発はウラン燃料が核分裂した時に発生する熱を利用して発電しており、発電時にCO₂を排出しない」「③資源の安定供給:ウランは世界各地に分布しているので安定確保が可能で、使い終わったウラン燃料も再処理して燃料として再使用可能」「④地球環境への影響:発電時にCO₂を発生しない」「⑤太陽光は悪天候時・夜間は発電できず、風力は無風時には発電できないなど出力が不安定」「⑥安定的出力を見込めない電力は、ベース電源である原子力の代替として考えることが難しい」「⑦九電はエネルギーの長期安定確保・低炭素社会の実現に向け、国のエネルギー政策の動向を踏まえてバランスのとれた電源開発を行う」としている。
 このうち、①②③④は、再エネこそ100%国産化可能で国富を失わずに安定供給でき、CO₂は排出せず、発電時に原発のように温排水や放射性物質を排出することもないため、環境にも地球温暖化にも原発より優れている発電方法だ。その上、原発のような電源地域への交付金の必要性や廃炉・最終処分場等の問題もないため、国民負担が非常に少ないのである。さらに、⑤⑥はスマートグリッドの使用・蓄電技術・広域送電等によって簡単に解決できるため、⑦の結論は発電時にCO₂を排出しないことだけを掲げて原発維持を主張しているにすぎない。
 一方で、経産省や電力会社は意思決定層に女性が殆どおらず、非常に狭い視野に基づく理由を並べて現状維持(何も考えなくてよいため最も簡単な政策)を意図してきた。この傾向は、*7-2の森前会長の女性蔑視発言に「日本社会の本音が出た」などと述べた経団連会長にも現れており、再エネ推進・脱原発を主張してきた私に、日本の経済社会は「経済・物理に弱い女は黙っていろ」という馬鹿にした態度の人が少なくなかったのである。しかし、戦後の男女共学の下で同じ勉強をし仕事で経験を積んできた女性を馬鹿にしていたことが、日本の再エネ・電動化技術を遅れさせた原因であり、*7-3の経済同友会の桜田代表幹事は、「⑧女性側にも原因がないことはない」「⑨チャンスを積極的に取りにいこうとする女性が多くない」「⑩多様性を重視しない企業は存続すら危うい」等と言っておられるが、⑧⑨については、このように女性の能力を割引いて考え、女性の実績を認めない日本社会で、チャンスを積極的に取りに行くのはハイリスク・ローリターンもしくはハイリスク・ノーリターンなのである。そのため、⑩を徹底した上でも女性が尻込みしていれば、初めて「女性の側にも原因がある」と言えるわけだ。
 そして、このような経験は、どの女性も持っており、それぞれのやり方で解決してきたため、*7-4の東京オリ・パラ組織委員会の森前会長の女性蔑視発言に多くの女性が怒ったのだが、これまで「わきまえて」きた女性は、女性の能力を割引いて考え、女性の実績を小さく評価する日本社会の“常識”を覆すのには貢献しなかったと言える。

*7-1:http://www.kyuden.co.jp/notice_sendai3_faq_necessity.html (九州電力より抜粋) 原子力発電の必要性
●原子力発電は、なぜ必要なのですか。
 原子力発電については、エネルギーセキュリティ面や地球温暖化対策面などで総合的に優れていることから、安全・安心の確保を前提として、その重要性は変わらないものと考えています。
・エネルギーセキュリティ面
 日本のエネルギー自給率はわずか7%程度しかなく、エネルギー資源のほとんどを海外からの輸入に頼っています。その輸入元を見ても、一次エネルギー供給の約40%を占める石油は政情が不安定な中東に大きく依存しているなど、日本のエネルギー供給構造は極めて脆弱な状況にあります。エネルギー供給構造が脆弱な日本では、特定のエネルギーに依存せず、エネルギー資源の多様性を確保しておくことが重要です。日本は2度のオイルショックの経験から、省エネルギーに努めるとともに、原子力や石炭・天然ガスなど、石油に代わるエネルギーの開発・導入を進めてきました。エネルギー資源の多様性を確保する観点からも、原子力発電は必要な電源です。
・地球温暖化対策面
 CO2などの温室効果ガスは、地球温暖化の原因と言われています。原子力発電は、ウラン燃料が核分裂した時に発生する熱を利用して発電しているため、発電時にCO2を排出しません。原子力発電は地球温暖化防止の観点で、優れた発電方法の一つです。
●原子力発電所の特長は。
・資源の安定供給
 燃料となるウランの供給先が、カナダ、オーストラリアなど世界各地に分布しているので安定した確保が可能です。一度使い終わったウラン燃料は、再処理して再び燃料として使うことが可能です。石油資源の節約になります。ウランは少ない量で大きなエネルギーを発生します。輸送・貯蔵も容易です。原子炉に一度入れた燃料は、1年間は取り替えずに発電できるので、燃料を貯蔵しているのと同じ効果があります。
・地球環境への影響
 発電時にCO2が発生しません。
●風力や太陽光発電を推進すれば、原子力発電は必要ないのではありませんか。
 当社は、国産エネルギーの有効活用、並びに地球温暖化対策面で優れた電源であることから、太陽光・風力・バイオマス・水力・地熱等の再生可能エネルギーを積極的に開発、導入しています。しかしながら、太陽光は悪天候時及び夜間は発電できず、風力は無風時には発電できないなど、気象状況や時間帯によって出力が左右される不安定な電源です。また、太陽光・風力は、雲の状況や風況により、時々刻々の出力変動が大きいことから、その変動を吸収する調整電源が必要です。一方、原子力は、年間を通じてフル出力で運転が可能な電源です。従って、安定的な出力を見込めない太陽光・風力は、ベース電源である原子力の代替として考えることは難しいと考えており、原子力・火力・水力などの電源と組み合わせることにより、電力の安定供給を確保していきます。
●九州電力における電源開発の考え方は。
 当社は、エネルギーの長期安定確保及び低炭素社会の実現に向けて、安全・安心の確保を前提とした原子力の推進や、風力や太陽光などの再生可能エネルギーの積極的な開発・導入、および火力の高効率化などを推進してきました。当社の今後の電源開発計画については、国のエネルギー政策の動向などを踏まえ、バランスのとれた電源開発を検討していきます。

*7-2:https://digital.asahi.com/articles/DA3S14794861.html (朝日新聞 2021年2月9日) 経団連会長「日本社会の本音出た」 森会長の女性蔑視発言
 経団連の中西宏明会長(日立製作所会長)は8日の会見で、東京五輪・パラリンピック大会組織委員会の森喜朗会長の女性蔑視発言について問われ、「コメントは差し控えたいなと思います」と断った上で、「日本社会っていうのは、そういう本音のところが正直言ってあるような気もします。(それが)ぱっと出てしまったということかも知れませんけど、まあ、こういうのをわっと取り上げるSNSってのは恐ろしいですよね。炎上しますから」と語った。問題になっている森氏の発言は「女性がたくさん入っている理事会の会議は時間がかかります」というもの。中西氏は「本音」の意味を問われると、「まず、女性と男性と分けて考える、そういう習性が結構強いですね」とし、「長い間、男は男、女は女で育てられてきましたし、それ以外のいろんな意味でのダイバーシティー(多様性)に対する配慮ってのは、まだまだ日本は課題があるんだろうなっていうのは思っていますが、それが、ぱっと出るか出ないか、そんな意味で申し上げました」と説明した。

*7-3:https://www.tokyo-np.co.jp/article/86349?rct=economics (東京新聞 2021年2月16日) 積極的な女性「まだ多くない」 経済同友会の桜田代表幹事
 経済同友会の桜田謙悟代表幹事は16日の定例記者会見で、企業で女性の役員登用が進んでいない理由を問われ「女性側にも原因がないことはない」とし、「チャンスを積極的に取りにいこうとする女性がまだそれほど多くないのではないか」との認識を示した。一方「生産性向上のための技術革新には人材の多様性が必要だが、経営者にはその危機感が足りない」とも指摘。多様性を重視しない企業は「存続すら危うい」と警鐘を鳴らした。辞任表明した東京五輪・パラリンピック組織委員会の森喜朗会長の女性蔑視発言については「コメントするまでもなく論外」と批判した。

*7-4:https://digital.asahi.com/articles/DA3S14806227.html?iref=comtop_Opinion_02 (朝日新聞 2021年2月19日) 森前会長発言、女性たちに広がった怒り 性差別の社会へ「もうわきまえない」 伊木緑
 東京五輪・パラリンピック組織委員会の森喜朗会長(83)による女性蔑視発言があった翌日。「女性が入ると会議に時間がかかる」実例として挙げられた日本ラグビー協会で、女性で初めて理事を務めた稲沢裕子・昭和女子大特命教授(62)に取材した。発言の報道に触れた時、「私のことだ、と思った」と言う。発言の後に起きた笑いについて尋ねた時の答えに、胸が締め付けられた。「私も笑う側でした」。稲沢さんが読売新聞記者になったのは、1985年の男女雇用機会均等法の制定前だ。「男社会の中で女性は自分だけという場が多く、笑うしか選択肢がなかった。笑いを笑いで受け流していた」。今回の発言を受け、ツイッターでは「#わきまえない女」のハッシュタグを添えた投稿がわき起こった。森氏が言った「組織委員会に女性は7人くらいおりますが、みなさん、わきまえておられて」にちなんだものだ。稲沢さんも「わきまえて」きたのだろう。ツイッターの声も「わきまえてなんかいない」という反論よりも、「わきまえてしまったこともあったが、もうわきまえない」という決意が目立った。怒りと共感が広がったのは、大きな組織の役員に就くような女性に限った話ではないからだ。たとえば新型コロナウイルス対策の給付金が世帯主にまとめて振り込まれたために自分で手にできなかった人。勤め先の客が激減し、補償もなくシフトを大幅に減らされた人。結婚後も自分の姓を名乗りたかったのに周囲を説得しきれずあきらめた人。いずれも最近、取材した女性たちの声だ。疑問や怒りを感じながらも、声を上げられなかったり、上げても聞き入れられなかったりして、結果的に「わきまえ」させられた経験のある女性は多い。男性だって同じだ、と思うかもしれない。でも考えてみてほしい。官民ともに意思決定層の大半を男性が占める社会で、女性たちの声が軽んじられ、意見しようものなら疎まれてきたことを。ジェンダー格差を意識せずに生きてこられたこと自体が特権であると、男性はまず自覚するべきだ。

<「うーまんちゅ《Woman衆》応援宣言」は有難い>
PS(2021年2月24日追加):日本弁護士連合会会長も、*8-1のように、東京オリ・パラの組織委員会の前会長発言について、「①性別による差別を禁止する憲法14条1項違反」「②女性差別撤廃条約違反」「③男女共同参画違反」「④オリンピック憲章の精神違反」「⑤東京オリ・パラの多様性と調和という基本コンセプト違反」「⑥政府や民間企業が取り組んでいる男女共同参画社会の推進に逆行」「⑦日本社会に厳然と存在する性に基づく偏見、差別、不平等な取扱いを露呈」「⑧さらに女性に『わきまえる』ことを求め、意見表明を控えよと言わんばかりだが」「⑨意思決定過程において多様な意見が忌憚なく述べられ反映されることは国内外で広く推進されつつあるガバナンスの根本原理」「⑩少数者が意見を述べることを制止するような風潮は健全な民主主義にも疑問が呈される」と、国際条約・法律・オリンピック精神・民主主義の理念からパーフェクトな批判をしておられる。今後は、裁判官・検事・弁護士・警察官・法律自体に潜む女性蔑視や女性差別にも注目して変えていただきたい。
 また、組織や社会の意識改革を行い、幅広い分野で女性登用を推進するために、*8-2のように、沖縄県が「うーまんちゅ応援宣言」に賛同する企業を募集しておられるそうで有難い。さらに、少子化で“生産年齢人口”が減る中、年齢や性別で差別すればそれだけ有能な人材を逃すため、高齢者や女性を公平・公正に登用する機会均等は必要条件であることを加えたい。
 なお、*8-3は、「⑪女性蔑視を批判する人からも女性蔑視を感じる」「⑫女性蔑視は、それを見過ごしてきた社会全体の問題である」「⑬舛添前東京都知事の『気配りの達人だからこそ失言も多くなる』という擁護はズレている」「⑭別の属性を根拠とした抑圧を持ち出すのは女性蔑視問題の矮小化だ」「⑮『女性が生きやすい社会は男性も生きやすい』という説明は男女間に存在する量的・質的な抑圧の差を矮小化し、女性の人権や尊厳に理解が及んでいない」「⑯男性中心社会は女性たちが訴える機会を散々奪ってきた」等と記載された掘り下げた記事だ。⑪⑫⑭⑮⑯は全くそのとおりで、そこまで言及できるようになったのかと思うが、舛添氏はキャリア・ウーマン好みだそうで私は女性蔑視を感じたことがないので、⑬は苦しい擁護だと思う。



(図の説明:左図のように、女性の賃金は2019年でも男性の74.3%で、中央の図のように、格差が縮まっているといっても、あらゆる勤続年数で女性の平均給与は男性より低い。また、学歴別に比較しても、あらゆる学歴で女性の年収は男性の年収より低く(70%超程度)、人生の後半に行くほど差が大きい。これにより、女性差別は、女性を低賃金労働者に据え置き、女性から搾取する手段として使われてきたのだということがわかる。これは、女性にとっては「心を傷つけられた」という精神的被害だけではなく、経済的損失という大きな実害があるのだ)

*8-1:https://www.nichibenren.or.jp/document/statement/year/2021/210219.html (2021年2月19日 日本弁護士連合会会長 荒 中) 性差別を許さず、男女共同参画の実現を推進する会長談話
 2021年2月3日、公益財団法人東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会(以下「組織委員会」という。)の会長(当時)は、公益財団法人日本オリンピック委員会(以下「JOC」という。)の臨時評議員会において、スポーツ団体ガバナンスコード(スポーツ庁・2019年6月10日策定)が設定した女性理事の目標割合(40%以上)の達成に関連して、「女性がたくさん入っている理事会は時間がかかる」、「私どもの組織委員会…(の女性は)みんなわきまえておられて」などと発言した。全世界が注目する東京オリンピック・パラリンピックの組織委員会の長であり、しかもかつて我が国の内閣総理大臣の立場にあった人物が、公式の場で平然と女性蔑視・差別を内容とする発言を行ったことは社会に大きな衝撃を与え、国内外から厳しい非難の声が上がった。かかる一連の発言が、性別による差別を禁止する憲法14条1項及び日本が批准する女性差別撤廃条約の理念に反し、男女共同参画の理念にも悖ることは、改めて指摘するまでもない。さらに、オリンピック憲章は「権利および自由は人種、肌の色、性別、性的指向、言語、宗教、政治的またはその他の意見、国あるいは社会のルーツ、財産、出自やその他の身分などの理由による、いかなる種類の差別も受けることなく、確実に享受されなければならない。」と定め、2020年東京オリンピック・パラリンピック大会は多様性と調和を基本コンセプトとしている。上記発言は、オリンピック憲章の精神にも真っ向から反するものである。また、JOC及び組織委員会は、本件に対し、直ちに問題点を明らかにするとともに、差別を許さない組織への具体的な改善策を示す等すべきであった。しかし、適時に適切な対応が取られることはなく、むしろJOC会長は「(謝罪、撤回したのだから会長職を)最後まで全うしていただきたい」などと述べ、擁護の姿勢さえ示していた。性差別解消や健全な民主主義発展のため、意思決定過程により多くの女性が関与すべきことは、現代社会における普遍的価値である。上記一連の事象は、政府や民間企業が挙げて取り組んでいる男女共同参画社会の推進に逆行することはもちろん、今なお日本社会に厳然と存在する性に基づく偏見、差別、不平等な取扱いの露呈にほかならない。さらに、同会長の発言は、女性に「わきまえる」ことを求め、意見の表明を差し控えよと言わんばかりであるが、意思決定過程において多様な意見が忌憚なく述べられ反映されることが必要であることは、国内外で広く推進されつつあるガバナンスの根本原理である。女性に限らず少数者が意見を述べることが制止されるような風潮があるならば、多様性と調和を基本コンセプトとする東京オリンピック・パラリンピックの存在意義が問われるだけでなく、ひいては我が国の健全な民主主義にも疑問が呈される問題である。当連合会としても、かかる事態を座視することはできない。当連合会は、JOC及び組織委員会に対し、多様性と調和の実現を目的としつつ、効果的な再発防止策の作成と実施、ガバナンスの見直し、前掲のスポーツ団体ガバナンスコード(女性理事の目標割合40%)達成等に向けて、いち早く取り組むことを望む。当連合会も、「第三次日本弁護士連合会男女共同参画推進基本計画」を策定し、性別による差別的取扱いを厳しく禁止するとともに、男女共同参画実現のための目標を定めて取組みを続けているが、今後も性差別を許さず、男女共同参画社会の実現に向けた活動を積極的に展開していく所存である。

*8-2:https://ryukyushimpo.jp/news/entry-1276386.html (琉球新報 2021年2月23日) 女性登用促進、沖縄県が賛同企業募集「うーまんちゅ応援宣言」
 組織内の改革や社会の意識改革を図り、幅広い分野での女性登用を推進するため、県は県内の企業や団体から「Womanちゅ(うーまんちゅ)応援宣言」を募集している。来年度の第6次県男女共同参画計画策定に先駆けてジェンダー平等の実現に取り組むのが狙い。宣言者は女性活躍を推進する県内各分野のリーダーが対象。県女性力・平和推進課が郵送やメール、ファクシミリで受け付けている。申請書は県ホームページ(HP)からダウンロードできる。企業や団体の宣言内容は県ホームページ(HP)などで公開する予定。

*8-3:https://webronza.asahi.com/culture/articles/2021021100002.html?iref=comtop_Opinion_06 (朝日新聞 2021年2月12日) 辞任表明、森喜朗氏的な女性蔑視は、男性誰もが持っているのだから、批判する人々からも感じる女性蔑視を掘り下げてみた
 東京オリンピック・パラリンピック組織委員会会長の森喜朗氏が、「女性がたくさん入っている理事会は時間がかかります」「私どもの組織委員会にも、女性は(中略)7人くらいおられますが、みんなわきまえておられて」などと女性蔑視発言をしたことが、大きな問題となりました。これに対して抗議の意を込めた「#わきまえない女」がTwitterのトレンド1位になったり、各国の在日大使館が「#don't be silent」というハッシュタグを付したムーブメントを展開するなど、連帯も生まれています。その後、「逆ギレ」とも言われた森氏の会見や、「余人をもって代えがたい」(自民党の世耕弘成参院幹事長)といった言語道断な擁護論もありましたが、国内外からの厳しい批判を受けて、2月12日、森氏はとうとう辞意を表明するまでに追い込まれました。女性蔑視は発言した本人だけではなく、それを見過ごしてきた私たち社会全体の問題でもあるという認識も広がりつつあるように思います。多くの世論調査で、「辞任すべきだ」という声が多数を占めたように、女性蔑視に関する社会の問題意識が、確実に変化しているように感じます。
●森氏を批判しつつもどこかズレている人たち
 その一方で、森氏を批判する著名人(主に男性)の中には、女性に矛先を向けたり、「ズレている」と思われる意見も散見されます。舛添要一前東京都知事は、自身のTwitterで「森会長の女性蔑視発言は批判に値する」と言いつつも、「気配りの達人だからこそ失言も多くなる」と擁護したり、アメリカの女性参政権運動を模倣して野党の女性国会議員が白いスーツを着用した「ホワイトアクション」に対して、「失笑を禁じえない」と見下すような投稿もしていました。衆院予算委で東京五輪・パラリンピック大会組織委員会の森喜朗会長発言に抗議の意を表すため、白いジャケットを着る立憲民主党の女性議員ら=2021年2月9日
●「#わきまえない男」は「#わきまえない女」と対にはならない
 ここまであからさまではなくとも、「#わきまえない女」の波に乗るように一部の男性著名人が投稿した「#わきまえない男」も誤った批判だと思います。彼らはおそらく自分よりも権力を持つ者から「わきまえろ」と言われて忸怩たる思いをした経験があり、「自分もそのような権威主義的抑圧には反対だ!」と言いたいのでしょう。それにNOを言うこと自体は大切です。しかし、森氏の発言で問題になったのは、あくまで女性蔑視です。確かに、男性にも「わきまえろ」という圧力はあるものの、それは主に「年下のくせに」「役職が低いくせに」「新参者のくせに」といったように、別の属性を根拠とした抑圧であって、「男のくせに」という性を理由とした抑圧は、この男性中心社会にはほぼ存在しないのではないでしょうか。つまり、彼らが言いたいのはあくまで「わきまえない年下」「わきまえない部下」「わきまえない新参者」であり、それを「#わきまえない女」と並列するのは不適切です。むしろ、「#わきまえない女」を“中和”させ、「女性」を理由とする強烈な抑圧という今回の問題の本質を見えなくしています。それは女性蔑視問題の矮小化に他なりません。仮に、ここで「#わきまえない女」と対にするのであれば、「#女性に対して性別を理由にしたわきまえる態度を一切求めも期待もしないし、そのような男性を公然と批判できる男」だと思います。
●「男性の利益」を根拠に説得してはいけない
 次に、「女性が生きやすい社会は、男性も生きやすいのです(なので、森氏は辞任しなければならない)」といった発言も、問題を同様に矮小化する危うさがあります。「男性の生きづらさ」という問題は確かにあるものの、それは量・質ともに女性の問題とは大きく異なります。確かに、両者に等しく圧がかかる部分もありますが、基本的には非対称なはずです。つまり、正確に言えば、「女性が生きやすい社会=男性も生きやすい社会」ではなく、「女性が生きやすい社会∩男性も生きやすい社会(両者に共通する部分がある)」です。それにもかかわらず、まるで片方が成立すればもう片方も成立するかのように規定すれば、男女間に存在する量的かつ質的な「抑圧の差」を見えにくくしてしまいます。このような主張は、その正当性を訴えるために、「男性の利益」を根拠としています。ですが、「あなたにも利益があるから」という形で説得をして、仮に森氏のような人たちが賛成に回ったとしても、彼らは自分の利益目当てで賛成したに過ぎません。女性の人権や尊厳の問題には何も理解が及んでいないのです。それでは意味がありません。環境や非正規雇用の問題も含め、企業や自分たちの利益ベースで物事を判断してきことが様々な社会問題を招いてきたのです。ですから、なるべく利益を根拠とした説得は行わないほうがよいでしょう。
●わきまえない女を「わきまえた女」にしたいのか?
 では、なぜ彼らはわざわざ「男性の利益」を持ち出すのでしょうか? おそらく、「男性と女性が対立している今の状況が嫌だから、女性にわきまえた態度を求める男性たちにも、彼女たちを受け入れてほしい」と思っているのでしょう。その解決策を考えた時に、「男性のメリットにもしっかりと配慮できる女性なんです!とアピールすれば受け入れてもらえるに違いない!」と考えた結果のように思います。ですが、「男性のメリットにもしっかりと配慮できる女性」というのは、結局「“わきまえた女”」に他なりません。「私たちはわきまえない女です」と言っている女性たちのすぐ横で、「彼女たちはわきまえた女です!」と否定しているわけで、結局森氏の女性蔑視と大きなくくりでは同類に思えて仕方ありません。もちろん、絶対に「男性の利益」を持ち出してはいけないとは思いません。ですが、その際は「両者の利益には共通する部分“も”ある」と正確な言い回しをすべきであって、「女性の主張を男性に受け入れてもらえるための説得材料」としては用いるべきではないでしょう。
●男性を出すことで女性をまた“バーター”扱いしている
 そもそも、私たちが暮らす男性中心社会は、これまで女性たちが訴える機会を散々奪ってきました。そしてようやく議題として取り上げられたとしても、結局「男性が抱える課題と抱き合わせにされる」という、まるで“バーター”のような扱いが少なくありません。いつまでたっても一人前の主張として単独では扱われなかったわけです。日本の行政が低用量ピルを何年も認可しなかったにもかかわらず、バイアグラはすぐに認可され、それが批判されるとようやくピルが認可されたという歴史に残る女性差別は、まさにその典型例でしょう。そのような歴史を振り返れば、今回の森氏の件についても、いま「男性の生きづらさ」の問題を同列に机上に乗せるタイミングではありません。まずは当事者である女性の問題に限定するべきだろうと思います。
●「娘のために」という父親はなぜ「妻のために」とは言わない?
 3つ目は、記者会見で森喜朗氏に鋭い切り込みを入れて、多くの人から称賛されたTBSラジオの澤田大樹記者の発言についてです。彼の権力者と対峙する姿勢はとてもすばらしかったのですが、彼がその後にTwitterに投稿した「自分の娘たちが大人になったときに『わきまえろ』と言われたら、どう思うか」という発言には、少々違和感を覚えました。というのも、母親だって、妻だって、(場合によっては)姉や妹だって、同世代の女性の友人たちだって、「わきまえろ」という抑圧の言葉を既にたくさん浴びせられてきたはずだからです。それなのに、どうして真っ先に思いを馳せた対象が娘さんだったのでしょう?確かに、「娘のために」という父親は少なくありません。でも、娘が受けるであろう「未来の不利益」は想像できるのに、自分の周りにいる大人の女性が既に受けた(or受けている)であろう莫大な「過去や現在の不利益」に対して、今なぜ想像力が向かないのでしょうか。そこに、森氏のような女性蔑視の残滓が残っていないか、「娘のために」と言う男性たちは自身に問うて欲しいのです。
●自分の周りにいる女性に「わきまえろ」と思っていないか
 娘という存在は否応なしに親に庇護されている立場であり、多少の口答えをしても、子として“わきまえた女”にならざるを得ない存在です。一方で、大人になれば、個としての意思や論理を持ち、精神的にも経済的にも自立をして、時として男性たちと利害が対立し、批判や非難の矛先を男性に向けることもあります。そのような“わきまえない態度”に対する嫌悪感や忌避感がどことなく存在している男性は少なくないのではないでしょうか。「自分に矛先を向けられるのは嫌だから、彼女たちにはわきまえていて欲しい」と期待している部分があるのかもしれません。このように、男性中心社会で暮らしている私たち男性には、多かれ少なかれ、森氏のような女性蔑視が心の中に潜んでいるように思います。人によって、“大森”なのか、“中森”なのか、“小森”なのかは分かれるでしょう。森氏の発言のような酷いケースには批判を加えつつも、合わせて自らを顧みるきっかけにしたいところです。もちろん私自身も含めて。

<投資は、ESG企業に行うべき>
PS(2021年3月5日追加):*9-1のように、ドイツでは、メルケル首相が2011年に日本で起こったフクイチ原発事故を受けて即断した脱原発が支障なく進み、2022年末には全17基の原子炉廃止が計画通り実現するそうだ。日本は、再エネが豊富であるのに、事実ではないできない理由を並べて原発活用を推進し、*9-5のように、アンモニアの輸入まで行おうとしているのだから、エネルギーの高コスト化で経済の停滞を招き、エネルギーの自給率を下げて国力を落とすことを望んでいるかのようである。
 また、*9-2のように、①世界の資産運用会社は投資先の温暖化ガス排出量を2050年までに実質ゼロにする目標を掲げ始めており ②2050年排出ゼロの達成に向けて新たな運用商品の提供を始め ③「排出ゼロ」を目指すマネーは約2000兆円と世界の投資マネーの2割に達して ④排出削減に消極的な企業は投資対象から外されるリスクが一段と高まったそうだ。また、米カリフォルニア州職員退職年金基金などは「ネットゼロ・アセットオーナー・アライアンス」を設立し、スウェーデンの公的年金AP4は2040年までの排出実質ゼロを打ち出し、米ニューヨーク州退職年金基金も2040年までの排出ゼロを掲げているが、日本勢の動きは鈍いのだそうで、日本の対応には相変わらずキレがない。
 世界最大の年金基金である日本の年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は、*9-3のように、2019年度運用実績は4期ぶりとなる損失(8兆2831億円の赤字)を計上し、赤字幅はリーマン・ショックのあった2008年度以来の大きさを記録している。GPIFは、国民年金と厚生年金の積立金を国内外の株式や債券に分散投資しており、運用実績は国民の年金資金を直撃するため、有望企業に投資して儲かってもらわなければ困るのであって、ゾンビ企業の救済に使われるのは目的外使用である。有望企業の要件が、ESG(環境:Environment、社会:Social、ガバナンス:Governance)を考慮した経営を行う企業であることは既に間違いないため、投資家は投資先の決定にあたってESGを考慮すべきことになっている。
 なお、国際エネルギー機関(IEA)が、*9-4のように、日本政府が掲げる2050年の温室効果ガス排出実質ゼロ実現に向け、2030年までに脱炭素電源の比率を現行計画より一段と引き上げる必要性を指摘しており尤もだが、この脱炭素電源に原発やアンモニアが含まれないのは当然のことである。

*9-1:https://www.tokyo-np.co.jp/article/89289 (佐賀新聞 2021年3月3日) ドイツ、来年末に脱原発を実現 環境相、再生エネルギーへ集中
 ドイツのシュルツェ環境相は3日までに、2011年の東京電力福島第1原発事故を受けて決めた脱原発が「全く支障なく進んでいる」と強調、22年末に全17基の原子炉廃止が計画通り実現するとの自信を示した。事故から10年になるのを前に共同通信の書面インタビューに応じた。事故で原発の危険性を確信し、現在は再生可能エネルギー拡大に集中しているとし、「原子力は危険かつ高コストで、各国に利用中止を呼び掛けたい」と指摘。原発活用政策を維持する日本と一線を画した状況が浮き彫りになった。シュルツェ氏は原発の安全対策を統括している。

*9-2:https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGD292C30Z21C20A2000000/?n_cid=NMAIL006_20210302_Y (日経新聞 2021年3月2日) 世界の投資マネー、2割が脱炭素へ 投資先の選別厳しく
 資産運用会社の間で投資先の温暖化ガス排出量を2050年までに実質ゼロにする目標を掲げる動きが広がっている。世界最大の運用会社ブラックロックも目標設定を検討。「排出ゼロ」を目指すマネーは約2000兆円と世界の投資マネーの2割に達する見通しだ。排出削減に消極的な企業は投資対象から外されるリスクが一段と高まってきた。運用資産8.7兆ドル(約930兆円)の米ブラックロックは2月、脱炭素社会の実現に向けた取り組みを公表した。気候変動に影響を与える主要企業など世界1100社を対象に対話や議決権行使を通じて一段の対策を求める。50年排出ゼロの達成に向け新たな運用商品の提供も始める。ブラックロック・ジャパンの有田浩之社長は「ネットゼロ社会に向かうのを投資の面でサポートするのが使命」と語る。ブラックロックはネットゼロ・アセット・マネジャーズ・イニシアチブへの参加も検討する。同組織は投資先全体の温暖化ガス排出量を50年までに実質ゼロにすることを目指す運用会社の団体。20年12月に仏アクサ・インベストメント・マネージャーズやアセットマネジメントOneなど30社が共同で設立し、運用資産合計は9兆ドルにのぼる。約1.3兆ドルの運用資産を持つ米インベスコやニッセイアセットマネジメントなども参加を検討中。排出ゼロを明確に目指すマネーは少なくとも約19兆ドルにのぼり、今後もさらに増えるとみられる。投資先の排出実質ゼロをめざす動きは、年金基金や保険会社など資金の出し手(アセットオーナー)が先行してきた。米カリフォルニア州職員退職年金基金(カルパース)や独保険大手アリアンツなどは19年に「ネットゼロ・アセットオーナー・アライアンス」を設立。参加は当初の12社から33社に広がり、運用資産は合計5.1兆ドルにのぼる。スウェーデンの公的年金AP4は今年2月、40年までの排出実質ゼロを打ち出し、米ニューヨーク州退職年金基金も40年までの排出ゼロを掲げる。投資家の脱炭素志向が強まり、排出削減に消極的な企業は投資対象から外されるリスクが高まっている。45年までに投資先の脱炭素化を目指すスウェーデンの公的年金AP2は2020年12月、外国株式と社債運用で新たに約250社からの投資撤退(ダイベストメント)を決めた。ブラックロックも温暖化ガス排出量が多く気候変動対応が不十分な企業を、運用担当者が投資先を選ぶアクティブ運用の投資対象から外す可能性に言及した。ネットゼロ・アセットオーナー・アライアンスは20年11月、投資先に対して石炭火力発電所の新規建設に加え、すでに決まった建設計画もすべて撤回するよう要請した。こうした世界的な潮流の中で、日本勢の動きは鈍い。国内の運用会社で排出ゼロ目標を打ち出したのはアセットマネジメントOneのみ。ニッセイアセットマネジメントなどが検討中だが、出遅れ感は否めない。年金や保険など運用会社の顧客であるアセットオーナーは排出ゼロの方針を明確にしていないところが多い。国内で排出ゼロ方針を明らかにしたオーナーは日本生命保険のみ。運用会社は顧客の意向をつかみ切れていない。機関投資家はESG(環境・社会・企業統治)の観点から投資先企業に排出削減を求めてきた。だが、それで削減量が大きくなったわけではない。対策が遅れれば2100年に世界の国内総生産(GDP)の25%が失われるとの試算もある。脱炭素目標を掲げた投資家の動きが企業をどう変えるかに注目が集まる。

*9-3:https://moneyworld.jp/news/05_00029063_news (Quick Money World 2020/7/6) 世界最大の年金基金・GPIFが高めるESG投資の比率
世界最大の年金基金である年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が7月3日発表した2019年度運用実績は厳しいものだった。4期ぶりとなる損失(8兆2831億円の赤字)を計上し、赤字幅はリーマン・ショックのあった08年度以来の大きさを記録。期間損益率は-5.20%(前期は+1.52%)で過去3番目に悪い数字となった。コロナ禍が直撃した運用成果となったが、ESG(環境・社会・ガバナンス)投資のウエイトが大幅に上昇していることに留意したい。
■四半期として過去最大となる損失
 GPIFは19年4~12月期に9兆4241億円の黒字を計上していたが、新型コロナウイルス感染症の影響を受けた20年1~3月期に17兆7072億円の赤字(損益率-10.71%)に転落し、四半期として過去最大となる損失・損益率の計上を余儀なくされた。1~3月期は外国株式が10兆2231億円の赤字、国内株式が7兆4185億円の赤字と国内外株式の急落が収益を圧迫した。
■ESG投資のウエイト上昇
 GPIFは国民年金と厚生年金の積立金を国内外の株式や債券に分散投資している。運用資産額は20年3月末時点で150兆6332億円となり、19年3月末(159兆2154億円)に比べて約5.4%減少した。積立金全体の資産構成は、国内株が22.9%(前年同月は23.6%)となり、基本ポートフォリオの中央値(25%)を大きく下回ったが、ESG投資の割合が増加していることが特筆されよう。国内株式に占めるESG投資の割合は11.3%(前年同月は6.0%)にほぼ倍増し、スマートベータや伝統的アクティブ運用の割合を上回った。GPIFは17年度に日本株の3つのESG指数(FTSE RussellによるESG全般を考慮に入れた総合型指数である「FTSE Blossom Japan Index」、MSCIによる総合型指数「MSCIジャパンESGセレクト・リーダーズ指数」、MSCIによる性別多様性に優れた企業を対象とする「MSCI日本株女性活躍指数」)を選定し、同指数に連動したパッシブ運用を開始した。さらに、18年度にはESGのうちE(環境)に特化したS&Pダウ・ジョーンズ・インデックス社による炭素効率性等に優れた企業を対象とする「S&P/JPXカーボンエフィシエント指数」に連動するパッシブ運用も開始。これら4つの指数に連動する運用残高は20年3月末時点で4兆155億円(前年同月比1兆7060億円増)となった。野村証券によれば、20年3月末時点でGPIFの保有比率が高い業種は銀行、建設、電気機器などで、資金純流入が大きかった個別銘柄として東京精密(7729)、ニフコ(7988)、ネットワン(7518)、島忠(8184)などを挙げた。19年度にGPIFがESG投資を積極的に進めたことを踏まえると、これらの銘柄に向けられた資金の多くがESG投資によるものだった可能性があると指摘している。
■その他年金でもESG投資開始
 ESG投資に関して、短期的に運用収益の向上につながるか懐疑的な見方が少なくない。ただ、GPIFの年金運用は、長期的な観点から安全かつ効率的に行うことが求められていることから、長期のリスク管理としてESGを考慮した投資活動が行われている。GPIFが19年度に運用リスク管理ツールを新たに選定するなど、リスク管理を一層強化しており、しばらくは国内株に占めるESG投資の割合が高まる傾向が続くきそうだ。また、GPIF以外の年金ではESGに消極姿勢が目立っていたが、地方公務員の年金を運用する地方公務員共済組合連合会は20年度にも日本株のパッシブ運用でESG投資を開始するもよう。今後もESG関連の動きから目が離せなそうだ。
<金融用語>GPIFとは
 正式名称は年金積立金管理運用独立行政法人。日本の公的年金の積立金の管理・運用を行う独立行政法人のこと。世界最大規模の運用資産(2016年末時点で約145兆円)を保有し、英語表記「Government Pension Investment Fund」の頭文字をとって「GPIF」と呼ばれる。 国内債券中心に運用を開始したが、デフレ脱却後の経済環境の変化に対応し収益向上を目指すため、2014年に基本ポートフォリオを見直した。 2017年7月時点の基本ポートフォリオは、国内債券35%、国内株式25%、外国債券15%、外国株式25%。また2017年7月からは国内株式運用の一環としてESG投資を開始した。 前身は1961年に設立された年金福祉事業団で、2001年の特殊法人改革により年金資金運用基金が設立。2006年には年金積立金の運用改革で年金積立金管理運用独立行政法人へ改組した。

*9-4:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/640544 (佐賀新聞 2021/3/4) 日本、一段の脱炭素電源増が必要、30年までに、IEAの報告書
 国際エネルギー機関(IEA)は4日、日本のエネルギー政策に関する審査報告書を公表した。日本政府が掲げる2050年の温室効果ガス排出実質ゼロの実現に向け、30年までに脱炭素電源の比率を現行計画より一段と引き上げる必要性を指摘した。現行計画は30年度の発電量に占める比率について、再生可能エネルギーが22~24%程度、原発が20~22%程度、火力が56%程度と設定。夏ごろに政策指針「エネルギー基本計画」の改定を予定している。報告書は、日本が依然として二酸化炭素(CO2)を排出する化石燃料に大きく依存していると説明。排出実質ゼロの実現には低炭素技術の普及の大幅な加速や、規制緩和が必要だとした。原発再稼働が想定より遅れた場合の電力不足分を埋める方法の検討も訴えた。CO2に課税する炭素税などの活用も選択肢の一つだと指摘。企業の技術開発を促すことにつながるとした。ビロルIEA事務局長はテレビ会議方式で資源エネルギー庁の保坂伸長官と会談し「エネルギーの転換を進め、持続可能な経済成長をしてほしい」と述べた。IEAは加盟国のエネルギー政策を審査しており、日本の報告書の発表は16年9月以来、約4年半ぶり。IEAは4日、排出実質ゼロに関する国際会議を31日に開催し、米国のケリー大統領特使(気候変動問題担当)や梶山弘志経済産業相らが参加予定だと明らかにした。

*9-5:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20210305&ng=DGKKZO69681670V00C21A3MM8000 (日経新聞 2021年3月5日) 大電化時代(5)サウジからアンモニア 再生エネ輸入に熱視線
 国土の狭い日本で再生可能エネルギーをかき集めても限界がある。ならば国境を越え、世界の力を借りる。輸入がカーボンゼロのカギを握る。2020年秋、サウジアラビアを出た貨物船が日本に到着した。積み荷は40トンのアンモニア。国営石油会社サウジアラムコの関連設備で、天然ガスから作った。国内3カ所の施設に運び込み、火力発電での燃焼実験をした。石炭や天然ガスに混ぜても、アンモニアだけでも燃やせた。「既存の火力発電所を使えて大きな追加投資もいらない。アンモニアは脱炭素の切り札になる」。実験に関わった三菱商事の松宮史明・石化事業統括部長は話す。
●グリーン水素に
 アンモニアは燃やしても二酸化炭素(CO2)を出さない。石炭や液化天然ガス(LNG)に混ぜた分だけCO2を減らせる。肥料や冷媒として広く流通し、貯蔵や輸送も容易。政府は30年に年300万トンのアンモニア燃料を導入することにしている。石炭火力で燃料の20%に混ぜると、100万キロワットの大型設備6基分に相当する。オーストラリアでは風力や太陽光で水を電気分解し、CO2を排出しないグリーン水素を作る。日本に運び、燃料電池車や水素発電に生かす。岩谷産業は水素の製造や輸出で豪クイーンズランド州の州営電力会社スタンウェルと提携した。30年代初頭までに年間28万トンの水素を生産する計画。約30万トンの水素があれば、原子力発電所1基分にあたる100万キロワットの発電所を動かせる。スタンウェルのリチャード・バン・ブレダ最高経営責任者(CEO)は「シンガポールなどからも引き合いがある」と話す。水素やアンモニアの国際争奪戦が始まり、日本も国を挙げた対応を迫られる。
●地元理解難航も
 政府は50年までに再生エネが電源に占める比率を現状の3倍近い50~60%に高める。障害は地理的な制約だ。太陽光パネルを置ける森林を除く土地面積はドイツの半分。洋上風力も適した海の面積は英国の1割強だ。あつれきも出始めた。九電工などが長崎県佐世保市の離島で進める太陽光発電。一般家庭約17万世帯に電気を供給する「日本最大規模」の計画だが、地元の合意形成が難航する。目標の年度内の着工は難しそうだ。千葉県銚子沖の洋上風力事業では、地元が設置する漁業振興などの基金への拠出を事業者に求める。輸入に活路を見いだすのは資源小国・日本の伝統でもある。戦後の高度経済成長も、原動力は原油の輸入にあった。物価上昇や労使紛争の増加で石炭に見切りをつけ、石油にカジを切った1950年代。中東の油田開発にも関与し、エネルギーの安定供給につなげた。エネルギー自給率は1割程度で、輸入依存は国家の安全保障を危うくしかねない。環太平洋経済連携協定(TPP)などをテコに国際協調を進め、供給網を整える努力が欠かせない。原油や天然ガスと同じく、再生エネもまた戦略的な海外調達の腕が問われる。「80%まで再生エネを導入すると、太陽光パネルを日本中の建築物に設置し、船の航行に支障があるところにも洋上風力を設置することになる」。政府が昨年末にまとめたグリーン成長戦略。できない理由を並べたようで、さすがに政府も消去したが、当初はこんな表現が検討された。世界の視線は異なる。エネルギー調査会社を営むヤラン・ライスタッド氏は「ダムに太陽光パネルを浮かべ、田んぼにパネルを並べる。日本で再生エネを増やす方法はまだある」と話す。限界まで導入し、足りなければ海外に頼る。輸入は再生エネ不足を埋める最後のピースになる。

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2021.1.13~15 年が明けても明けなかったコロナ禍と分散型社会の必要性 (2021年1月17、18、20、21、22、24、28、29《図》、31日、2月7日に追加あり)

  2021.1.7Reuters       2020.12.16NHK       2021.1.7NHK

(1)都市と新型コロナ
1)伝染病の感染拡大は人口密度との相関関係が大きいこと
 新型コロナの感染拡大に歯止めがかからないとして、*1-1のように、東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県の首都圏1都3県に対し、1月7日に緊急事態宣言の再発令が決定された。

 そして、1月9日には、*1-2のように、大阪府・京都府・兵庫県の関西圏が緊急事態宣言の要請を決定し、*1-3のように、政府は1月13日に、中部の愛知、岐阜2県と福岡、栃木両県を緊急事態宣言に追加するそうだ。

 緊急事態宣言による規制内容は、*1-5に記載されているが、その是非については、これまでも記載してきたので省略する。しかし、新型コロナは全国的に都市部を中心に新規感染者数が増加して医療提供体制が逼迫すると言われているが、都市部には大病院もホテルも多いため、この数カ月、政府や地方自治体は何をしていたのかと思う。

 なお、日本の都道府県別人口・面積・人口密度のランキングは、*1-7のとおりで、最初に緊急事態宣言の再発令が決定された首都圏1都3県の人口密度は、1位:東京都・3位:神奈川県・4位:埼玉県・6位:千葉県だ。次に、緊急事態宣言の要請を決定した関西圏は、2位:大阪府・8位:兵庫県で、その次に中部圏の5位:愛知県が続く。そのほかに感染者が多い県は、7位:福岡県・9位:沖縄県だ。

 そのため、(当然ではあるが)人口密度と感染症は密接な関係のあることがわかり、そうなると都道府県でひとくくりにして緊急事態宣言を行うのもやりすぎで、医療圏(or生活圏)を構成する市町村単位でよさそうだ。例えば、東京都にも小笠原村や伊豆大島があり、北海道にも札幌市(その一部「すすきの」)があるという具合である。

 しかし、人口密度の高い都市部には大病院やホテルも多いため、これまで何の準備もしていなかったのでは不作為と言わざるを得ない。また、都市部には、節水しすぎて流水でまともに手も洗えないような施設が多いが、「流水と石鹸でよく手を洗わず、アルコールを手にこすりつけさえすればよい」などというメッセージを発しているのは異常であり、そのような手で触った食品や食器は不潔なのである。

2)人口の集中しすぎがいけないので、分散型社会へ
 都市部に異常なまでの節水をして流水でしっかり手を洗えないような施設が多いのは、節水をよいことであるかのように思っているふしもあるが、人口増による水不足で水道水の単価が高くなっているせいもある。その一方で、地方には、せっかくある水道事業が成り立たなくなるほど過疎化した地域もあり、もったいない。

 そのため、*1-6のように、「東京一極集中をコロナを機に是正する」というのに、私は賛成だ。人口が集中し過ぎているのが首都圏だけでないことは、関西圏・中部圏の人口密度を見てもわかり、過度な人口集中は是正すべきだ。そして、それは、住民を誘致したい地方自治体が国に働きかけながら、仕事やインフラを準備しつつ行うのが効果的だと考える。

 なお、地方の仕事には、企業や工場の誘致だけでなく、*1-8のように、農業や食品加工業もある。また、*1-4のように、外国人のビジネス関係者もおり、全入国者に出国前72時間以内の陰性証明書を求めて空港での検疫も強化すればかなり安全だが、これまで空港では検査しなかったり、検査で陽性が判明しても行動制限をしなかったりしたのが甘すぎたと思う。

(2)地方と仕事
 *2-1も、「①大都市圏への人口集中を是正し、地方に人が住み続ける分散型社会を構築することは、持続可能な国土づくりに不可欠」「②都市を志向する価値観が変化し、自然豊かな環境や人との繋がりを求めて地方移住を考える人が増加」「③移住促進で必要なのは仕事の確保」「④政府は分散型社会の姿を描き、実効ある施策を講じるべき」としており、このうち①については、全く賛成だ。

 地方には豊かな資源を利用した農林漁業や食品加工業などの重要な産業があるのに、人手不足の危機に瀕している。また、観光・体験・研修等の分野と連携した新しいビジネスの展開もでき、再エネ発電を農林漁業地域で展開すれば、その地域に仕事ができると同時にエネルギー自給率が上がるため、②③も自然な人の流れにできるのである。従って、④のように、国や地方自治体が福祉・教育・交通などのインフラ整備を後押しして、地方分散を進めるべきだ。

 なお、都市から農村への移住は、移住者を受け入れた側がよそ者として排除するのを辞め、都市育ちの人のセンスを活かしながら共生すればよい。そもそも、戦後教育を受けて農村から都市に移住した世代には、ムラ社会の封建性から逃れて自由になり、新しい挑戦をするために都市に出た人が多い。しかし、今では農村でもその世代が“高齢者”と呼ばれているので、都市の若者が農村に移住しても楽しく共生できると思うのである。

 2021年1月9日、日本農業新聞が論説で、*2-2のように、「⑤自立する地域を協同組合が主導しよう」というメッセージを発信している。確かに、「⑥地方への移住者の定着支援」「⑦仕事づくり」「⑧安心して暮らせる地域社会づくり」などで農業協同組合にできることは多く、地元自治体と連携して全国から多くの新規就農者を呼び込んでいるJAもある。これは、多くの地域で参考にしたいことである。

(3)エネルギーも分散型へ
1)エネルギーの変換
 毎日新聞が、*3-1のように、「脱炭素は社会貢献でなくなった」と題して、「①アップル向け製品には、再エネ使用が最低条件」「②恵和は和歌山の製造拠点で使用電力の3分の1を再エネに切り替え、電気代が1割程度上がった」「③アップルは2030年までに、サプライチェーンを含む事業全体でカーボンニュートラルを達成すると宣言した」と記載している。

 私は、③の宣言をしたアップルは偉いが、②のように、アップルから言われて仕方なく使用電力の3分の1を再エネに切り替えた日本企業やいつまでも再エネに切り替えると電気代が上がると言っている日本政府・メディアは情けないと思う。そして、これも、新型コロナと同様、不作為によるものなのだ。

 このように、環境意識の低い日本政府や日本企業に対し、取引先の海外企業から再エネ導入圧力が強まるのは大変よいことで、これまでの誤った政策により、出遅れた日本の再エネによる発電コストは下がっていないのだ。これには、産業だけでなく、国民も迷惑している。

 そのため、取引先企業だけでなく、投資家も再エネ使用を進めている企業に投資するような投資判断をすれば、企業の行動は大きく変わる。そして、これは、日本にとって、エネルギー自給率を上げ、エネルギーコストを下げる成長戦略そのものなのである。

2)移動網について
 ヨーロッパ横断特急が復活し、*3-2のように、2020年12月、欧州4カ国の鉄道事業者が13都市を結ぶ夜行列車ネットワークをつくることで合意して、順次整備を進めるそうだ。その理由は、航空機のCO₂排出量は、鉄道の5倍に達するからだそうだが、ヨーロッパ横断特急も楽しみではあるものの、航空機も水素で動かすべきであり、欧州の航空機大手エアバスは、2035年には温暖化ガス排出ゼロの液化水素を使う航空機を実用化すると既に宣言している。

 日常生活を支える自動車についても、2025年には電動の垂直離着陸機が商用化されるそうだ。また、2030年以降にEVが過半数になればガソリン車より部品が4割減少して参入障壁が下がり、他産業からの参戦も増えて、自動車の価格は現在の5分の1程度になるとのことである。そのため、このリセットの時代に、従来の方法を守り続けるだけの企業に投資していれば、元手を紙くずにすることになるため、機関投資家も投資先をよく選別しなければならない筈だ。

3)原発について
 このような中、*3-3のように、原発の再稼働を画策している経産省と大手電力は、未だに「原発はコストが安い」と言っているが、日本の商業原子力発電は日本原発(株)が1966年7月に東海発電所で営業運転を開始し、それから54年半も経過しているのに、まだ1974年に制定された「電源開発促進税法」「電源開発促進対策特別会計法」「発電用施設周辺地域整備法」などの電源三法交付金制度により、立地自治体に電力使用者の負担で補助金を支払っているのだ。

 原発の立地自治体は、原発が危険だということはわかっているから補助金をもらわなければ立地させないのだが、補助金をもらっても見合わないことはフクイチで既に証明済で、そのような状況は早く卒業するにこしたことはないのである。電力の使用者にとっても、余分な負担だ。

 その上、耐用年数が40年とされていた原発を65年に延長したり、新しい原発を建設したりする動きがあるが、「原発はコストが安い」と主張する以上は電源三法交付金を廃止した上で、それでも稼働させる自治体を探すべきであり、そうしなければ再エネと公正な競争にはならない。

 現在稼働している九電の玄海原発と川内原発も、周囲は豊かな農林漁業地帯であり、事故を起こせばそれらの財産をすべて失うリスクを背負っている。にもかかわらず、まだ稼働させるという意思決定をしたいのなら、(最初の商業運転から54年半も経過している原発であるため)すべてを自己責任で行うこととして、その結果によりエネルギーの選択と集中を進めるべきである。

(4)再生医療
1)日本における再生医療研究の経緯
 1995年頃、私は、JETROの会合で、当時、日本では行われていなかったゲノム研究が海外では行われているのを見て、種の進化から考えればヒトの再生医療もできる筈だと思い、経産省(当時は通産省)に再生医療の研究を提案した。そして、日本でも遺伝情報や再生医療の研究が始まり、2005~2009年の私の衆議院議員時代に、文科省、厚労省、経産省などの省庁が協力して再生医療の研究を進めることになったのである。

 そして、この経過の中で、山中伸弥氏が2006年にマウスで、2007年にヒトでiPS細胞の作製に成功され、2012年10月8日に、ノーベル賞受賞が決まった(https://www.cira.kyoto-u.ac.jp/j/pressrelease/other/121008-183500.html 参照)。

 なお、理論上は、ヒトES細胞からクローン人間を作成することもできるが、それを行うためには他のヒト胚の核を抜いて使うため、人の生命の萌芽であるヒト胚を滅失させるという問題があるとされる。しかし、私は、受精後のヒト胚は生命の萌芽と言えるが、未受精卵は体細胞の一種であり生命の萌芽とは言えないため、治療用に使うのはアリだと考える(https://spc.jst.go.jp/hottopics/0812saisei/report05.html 参照)。ただし、本人の同意もなく、同じ遺伝情報を持つ別の人を作るのは、倫理上の問題が大きいので禁止すべきだ。

 一方、家畜の場合は、ES細胞を使って、1997年に英国で世界初の体細胞クローンヒツジ「ドリー」が誕生したのをきっかけに、日本でも体細胞クローン生物の研究が牛を中心に進んでおり、1998年に世界初の体細胞クローン牛が誕生し、現在までに約360頭の体細胞クローン牛が誕生したそうだ(http://ibaraki.lin.gr.jp/chikusan-ibaraki/16-06/04.html 参照)。

2)再生医療から再生・細胞医療・遺伝子治療へ
 私が考えていた再生医療は、「大人になると、再び増殖して回復することはない」とされる臓器を再生することで、例えば、心臓・腎臓・脊髄・永久歯などが典型的だが、研究が進むにつれて応用範囲が広がるのは当たり前であるため、倫理上の問題がなければ、最初の定義以外のことはやってはいけないなどということはない。

 しかし、日本では再生医療の研究開始から20年も経たないうちに、「選択と集中」としてiPS細胞の研究のみに限ったのが、間違いだった。商業運転が開始されてから54年半も経過している原発とは異なり、再生医療の研究は基礎研究が始まったばかりでわかっていないことの方がずっと多いのに、原発には未だに膨大な国費を投入しながら、再生医療には「選択と集中」を適用したのが大きな誤りで、何をやっているのかと思った。

 そして、*4のように、他人のiPS細胞から作った「心筋シート」も使えるかもしれないが、「心筋シート」は本人の足の筋肉やES細胞を使っても作ることができ、こちらの方が遺伝情報が同じで拒絶反応がないため、より安全なのである。

 また、免疫細胞による癌治療も、癌細胞だけを選択的に攻撃するので化学療法や放射線治療より優れた可能性を持ち、大量に作って使えば薬の値段は下がるのに、厚労省は未だに副作用が強すぎる上に生存率の低い化学療法・放射線治療・外科療法を標準治療とし、免疫療法は標準治療では効かなくなった人にのみ適用するなどという本末転倒のことをしている。

 そのため、必要で成功確率の高い研究に国費を投入するのは、国民を幸福にしながら行う成長戦略であるにもかかわらず、役に立つことをしないで起こった不幸な出来事に血税から無駄金をばら撒くことばかりを考えているのは、どうしようもない政府・議員・メディアであり、これは首相を変えれば解決するというような生易しい問題ではない(https://spc.jst.go.jp/hottopics/0812saisei/report05.html 参照)。

・・参考資料・・
<都市と新型コロナ>
*1-1:https://jp.reuters.com/article/japan-state-of-emergency-idJPKBN29B315 (REUTERS 2021年1月7日) 緊急事態宣言、1都3県に再発令へ 東京1日500人が解除基準と西村氏
 新型コロナウイルスの感染拡大に歯止めがかからない中、政府は7日夕に緊急事態宣言の再発令を決定する。対象地域は首都圏の1都3県で、期間は1カ月。飲食店を中心に営業時間の短縮を要請するほか、大規模イベントの開催条件も厳しくする。西村康稔経済再生担当相は、東京なら1日の新規感染者が500人まで低下することが解除の判断基準とした。政府は7日午前、専門家に意見を聞く諮問委員会を開催。西村康稔経済再生相は宣言の対象を東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県にし、期間は1月8日から2月7日とする方針を諮り、諮問委で了承された。午後に衆院議院運営委員会で説明した西村氏は、解除の判断基準について、「東京に当てはめると新規陽性者が1日500人」と述べた。東京都が発表した7日の新規感染者は2447人と、初めて2000人を超えた。政府は夕方に対策本部を開き、菅義偉首相が発令を宣言する。その後に記者会見を開いて理由などを説明する。7都府県で開始した昨春の緊急事態宣言とは異なり、今回は感染者が特に急増している首都圏の1都3県に対象を絞る。菅政権は飲食時の感染リスクが高いとみており、飲食店に対し午後8時までの営業時間短縮を要請する。酒類の提供は7時までとする。国内メディアによると、協力に応じた店舗への補償金を現在の最大4万円から6万円に上積みする一方、政令を改正し、知事の要請に応じない店の名前を公表できるようにする。劇場や遊園地には午後8時の閉園を求め、スポーツやコンサートなど大規模イベントは最大5000人に制限する。昨年4月7日に始まった前回は、途中から全国へ対象を拡大。5月25日の全面解除まで、テレワークの徹底や外出自粛が呼びかけられ、百貨店や映画館などが休業、イベントも中止された。西村担当相は7日午前の諮問委員会で、解除基準について、最も深刻な現状のステージ4から「ステージ3相当になっているかも踏まえ総合的に判断する」と説明したが、政府分科会の尾身茂会長は5日夜の会見で「宣言そのものが感染を下火にする保証はない。1カ月未満でそこ(ステージ3)までいくことは至難の業だと思う」と指摘している。国内の新型コロナ感染者は昨年末から急増。厚生労働省によると、今月5日には4885人、6日には5946人の感染が新たに確認され、連日最多を更新している。

*1-2:https://www.nikkei.com/article/DGXZQOHC080QK0Y1A100C2000000/ (日経新聞 2021/1/8) 大阪・京都・兵庫、緊急事態宣言要請を決定 9日にも伝達
 吉村洋文知事は8日午後の対策本部会議で「この2日間で急拡大している。首都圏と同様の対策を今の時点でとるべきだ」と述べた。京都府の西脇隆俊知事は8日の記者会見で「人口10万人あたりの新規感染者数は京都も高水準にあり、早めの手を打つ必要がある」と話した。年末の忘年会などで若者を中心に感染が広がったことへの危機感を背景に、要請に慎重姿勢を示していた吉村氏は一気に方針転換に傾いた。大阪府内の新規感染者数は8日まで3日連続で過去最多を記録した。12月上旬から年末までは減っていた1週間の累計感染者数は年明けに一変。1月1~7日は前週比1.38倍に急増した。クリスマス会や忘年会など、年末年始のイベントによる感染事例が多かったという。特に感染が広がったのは20代だ。人口10万人あたりの20代の新規感染者数は、大阪市内では約5人(4日時点)から約17人(7日時点)に増えた。行動範囲が広い若者への感染拡大は、さなる感染拡大の「火種」となる。府内ではもともと高齢者の感染者が多く、重症病床の使用率は7割と高止まりしており、府は事態悪化になんとか歯止めをかけたい狙いがあったとみられる。一方で、大阪府内では東京都よりは感染拡大が抑えられているとも言える。政府の分科会が感染状況を判断する6指標では、府は6日時点で陽性率の指標を除いて5指標が最も深刻な「ステージ4」の段階だ。東京都は全てで「ステージ4」を上回っている。療養者数や1週間の感染者数では、大阪府は東京都の6割程度の水準だ。政府はこうした状況も踏まえ、府などと協議を進めるとみられる。

*1-3:https://www.nikkei.com/article/DGXZQODE1234V0S1A110C2000000/?n_cid=BMSR3P001_202101122212 (日経新聞 2021/1/12) 緊急事態、福岡・栃木も 関西・中部5府県と13日発令
 政府は13日、新たに7府県を緊急事態宣言に追加する。関西圏の大阪、兵庫、京都の3府県と中部の愛知、岐阜2県、福岡、栃木両県だ。8日から宣言期間に入った首都圏とあわせて対象は11都府県になる。新型コロナウイルスの感染が広がっているため。対象自治体の知事は午後8時以降の営業や外出の自粛を要請する。全国的に都市部を中心に新規感染者数が増加し、医療提供体制が逼迫する懸念が出ている。政府は宣言への追加を要望した自治体について、13日に専門家の意見を聞いた上で対象に加える。福岡は要請していないが感染拡大の懸念が強いため追加する。期間は7日に宣言を発令した東京、神奈川、埼玉、千葉の1都3県と同じ2月7日までにする。対象地域の知事は新型コロナに対応する新型インフルエンザ対策特別措置法に基づき、法的根拠を持って様々な要請ができる。対象地域では感染リスクが高いとされる飲食店の時短や、不要不急の外出の自粛を徹底する。首都圏と同様に営業時間は午後8時まで、酒類の提供は午前11時から午後7時までとするよう求める。従わない店舗は特措法に基づき、知事が店舗名を公表できる。要請に応じた店舗には1日最大6万円まで協力金を支払う措置を講じる。菅義偉首相は12日、宣言の対象地域では飲食店の時短、午後8時以降の不要不急の外出自粛、イベントの人数制限、テレワークによる出勤7割削減をするよう求めた。「4点セットの対策で感染を抑え込んでもらいたい」と述べた。スポーツやコンサートなどのイベントは参加者数を最大5千人、収容人数では50%を上限に定める。自治体によっては、劇場や映画館、図書館や博物館といった大規模施設にも午後8時までとするよう呼びかける。宣言解除の基準も首都圏と同じにする予定だ。専門家で構成する政府の新型コロナ対策分科会がまとめた4段階の感染状況のうち最も深刻な「ステージ4」から「ステージ3」への脱却が目安となる。新規感染者数や療養者数、病床の逼迫度合いなど6つの指標を総合的に判断する。感染者数は「直近1週間の人口10万人あたり25人以上」を下回る必要がある。首相は12日、首相官邸で1都3県知事と会談し「迅速に情報共有し具体的な要望などに対して調整していく」と表明した。1都3県と事務レベルの連絡会議を設置する。首相は医療提供体制にも言及し、各知事に国の支援策を活用するよう求めた。新型コロナに対応する病床を増やすため「医療機関への働きかけなど先頭に立ってほしい」と訴えた。東京都の小池百合子知事は「1都3県は海外からの流入も多い」と指摘し、水際対策の厳格化を政府に要望した。政府は13日午後に専門家による基本的対処方針等諮問委員会に地域の追加を諮る。諮問委が妥当だと判断すれば、同日中に西村康稔経済財政・再生相が衆参両院の議院運営委員会に報告した後、政府の対策本部で首相が対象地域の追加を決める。再発令から1週間足らずで対象地域が拡大し、期限の2月7日に予定通り解除できるかは見通せない。昨年春に初めて発令した際は4月7日に発令後、同月16日に対象を全国に広げた。5月4日に期限を一度延長したうえで、全面解除は5月25日までかかった。都市部以外での感染が広がれば、対象地域はさらに増える可能性もある。

*1-4:https://digital.asahi.com/articles/ASP187R6HP18UTFK01B.html?iref=comtop_7_04 (朝日新聞 2021年1月8日) 全入国者に陰性証明求める 中韓などは入国継続維持
 菅義偉首相は8日夜、テレビ朝日の番組で中韓を含む11カ国・地域を対象にしたビジネス関係者などの入国継続を表明した。政府はこれにあわせて、日本人を含めた全入国者に出国前72時間以内に陰性を確認した証明書を求める、空港での検査を強化するといった検疫強化策を発表した。これにより全入国者について、それぞれの国・地域の出国前と日本への入国時の2回、陰性を確認することになる。首相の入国継続方針に対しては、与野党に加えSNS上でも批判が殺到していた。このため入国継続は維持する一方、検疫強化に乗り出した格好だ。首相は番組で11カ国・地域からの入国を止める考えはないか問われ、「安全なところとやっている」と強調。そのうえで新型コロナの変異ウイルスの市中感染が確認されるまで、受け入れを続ける方針を示した。空港検査の強化は、入国拒否対象以外からの入国者にも、空港での検査を実施するというもの。政府は約150カ国・地域を入国拒否とし、全入国者に空港で検査している。11カ国・地域のうちマレーシア以外は11月に入国拒否対象から除外され、空港での検査をしていなかった。

*1-5:https://www.agrinews.co.jp/p52857.html (日本農業新聞 2021年1月8日) [新型コロナ] 緊急事態再宣言 1都3県、来月7日まで 飲食店午後8時まで一斉休校は要請せず
 政府は7日、新型コロナウイルス感染症対策本部を首相官邸で開き、東京都と埼玉、千葉、神奈川の3県を対象に、コロナ特別措置法に基づく緊急事態宣言の再発令を決めた。期間は8日から2月7日までで、感染リスクが高いとされる飲食店などへの営業時間の短縮要請が柱。小中高校の一斉休校は求めないが、外食やイベント需要の減少などで農産物の価格に影響が出る可能性がある。宣言発令は昨年4月以来2回目。首都圏の感染拡大が止まらず、医療提供体制が逼迫(ひっぱく)していることを踏まえた。菅義偉首相は対策本部後の記者会見で「何としても感染拡大を食い止め、減少傾向に転じさせるため、緊急事態宣言を決断した」と述べた。コロナ対策の新たな基本的対処方針では、飲食店に対し、営業時間を午後8時までに短縮し、酒類の提供は午前11時から午後7時までとするよう要請。応じない場合は店名を公表する一方、応じた場合の協力金の上限は、現行の1日当たり4万円から6万円に引き上げる。宅配や持ち帰りは対象外とした。大規模イベントの開催は「収容人数の50%」を上限に「最大5000人」とする。午後8時以降の不要不急の外出自粛も求める。出勤者数の7割削減を目指し、テレワークなどの推進を事業者らに働き掛ける。宣言解除は、感染状況が4段階中2番目に深刻な「ステージ3」相当に下がったかなどを踏まえ「総合的に判断」するとした。西村康稔経済再生担当相は同日の衆院議院運営委員会で、東京に関しては、新規感染者数が1日当たり500人を下回ることなどが目安との認識を示した。政府は対策本部に先立ち、専門家による基本的対処方針等諮問委員会を開き、西村氏が宣言の内容などを説明し、了承された。その後、西村氏は衆参両院の議院運営委員会で発令方針を事前報告した。政府は昨年4月7日、東京など7都府県を対象に緊急事態宣言を発令し、16日には全国に拡大した。5月25日に全面解除したが、農畜産物では、飲食店やイベントの需要の激減で、牛肉や果実、花などの価格が下落した。政府は、コロナ対策を強化するため、特措法の改正案を18日召集の通常国会に提出する方針だ。
●業務需要減加速の恐れ
 緊急事態宣言が再発令されることを受け、流通業界や産地では農畜産物取引への影響が懸念されている。飲食店向けや高級商材はさらに苦戦する様相。一方、家庭消費へのシフトが進んでおり、対象地域が限られることから、前回宣言時ほどの打撃にはならないとの声もある。品目、売り先で影響の大きさが異なる展開になりそうだ。米は、春先のようなスーパーでの買いだめは現状、起きていない。しかし、飲食店の営業縮小で業務用販売は厳しさが増す見通しで、JA関係者は「今も前年水準に戻り切れていない。在宅勤務が増え、米を多く使う飲食店の昼食需要までなくなる」と警戒する。青果物は、飲食店の時短営業で仕入れに影響が出てきた。東京都の仲卸業者は「7日から注文のキャンセルが出た。多くの店が休んだ前回の宣言時ほどでなくても、1件当たりの注文量はがくっと減る」と懸念する。果実は、大手百貨店が営業縮小する方針で、メロンなど高級商材を中心に販売が厳しくなるとの見方で出ている。鶏卵は加工・業務需要が全体の5割を占めるため、飲食店の時短営業の拡大による販売環境の悪化が予想される。切り花は、葬儀や婚礼の縮小、飲食店の休業や成人式などイベントの中止で業務需要が冷え込むため、「相場は弱もちあいの展開が避けられない」(花き卸)見通し。長引けばバレンタインデーの商戦に影響するとの懸念もある。一方、牛乳・乳製品は家庭用牛乳類の販売好調が続く。緊急事態宣言再発令で業務需要はさらに減少する恐れがある。だだ、「前回のような全国一斉休校がなければ加工処理量の大幅な増加はない」(業界関係者)との観測も広がる。食肉は各畜種ともに内食需要の好調が継続しそうだ。豚肉、鶏肉は前回の緊急事態宣言以降、価格が前年を上回って推移しており「国産は在庫も少なく、引き続きスーパー向け中心に引き合いが強まりそう」(市場関係者)。和牛は外食から内食へのシフトが進んでおり、「外食向けの上位等級は鈍化するものの、3、4等級は前回のような大きな落ち込みはない」(都内の食肉卸)との見通しだ。

*1-6:https://digital.asahi.com/articles/DA3S14754956.html?iref=comtop_Opinion_04 (朝日新聞社説 2021年1月7日) 東京一極集中 コロナ機に是正に動け
 新型コロナ禍は日本が抱える多くの問題を改めて浮き彫りにした。そのひとつに都市部、とりわけ東京への一極集中が生み出すひずみがある。人が大勢いるところで感染症は猛威をふるう。この災厄を、かねて指摘されてきた過度な人口集中の是正に、社会全体で取り組むきっかけとしたい。変化のきざしはある。総務省によると、東京都から転出した人は昨年7月から5カ月連続で転入者を上回り、計約1万7千人の転出超過となった。全体からみればまだ微々たる数字でしかない。しかしテレワークが普及し、仕事の内容によってはあえて過密の東京に住む必要がないこと、通勤に要する時間を家族や地域の人々との交流、趣味などにあてれば人生が豊かになることを、多くの人が身をもって知った。人口集中がもたらす最大のリスクが災害だ。東京の下町で大規模洪水があれば250万人の避難が必要となる。おととしの台風19号の際、広域避難の呼びかけが検討されたが、これだけの人数を、どこへどうやって移動させるか、改めて課題が浮上した。その後、政府の中央防災会議の作業部会も具体的な答えを示せていない。30年以内に70%の確率で起こるとされる首都直下地震や、南海トラフ地震などへの備えも怠れない。一方で人口の分散は、近隣自治体にとっては住民を呼び込み、まちに活気を取り戻す好機でもある。例えば茨城県日立市は、市内への移住者に最大約150万円の住宅費を助成するなど、テレワークの会社員をターゲットに優遇措置を講じる。県が都内に設けた移住相談窓口の利用は前年比で5割増えたという。昨年8月に合同でテレワークセミナーを開いた山梨、静岡両県は首都圏と名古屋圏双方への近さをアピール。移住者の経験談を織り交ぜながら「心のゆとりや歴史、文化との出会いを」と呼びかけた。脱東京といっても行き先は周辺県にとどまる例が多いが、視線をもっと遠くに置いてもいいのではないか。内閣府が昨年5~6月に行ったネット調査によると、3大都市圏に住む人で地方移住への関心が「高くなった」「やや高くなった」と答えた人は、東京23区の20代で35・4%、大阪・名古屋圏の20代でも15・2%にのぼった。こうした声に合致する施策の展開が求められる。一極集中の是正こそ多様なリスクの低減につながるとの視点に立ち、防災すなわちインフラ整備といった旧態依然の政策のあり方を見直す。そのための議論が国会、自治体、企業などの場で深まることを期待したい。

*1-7:https://uub.jp/rnk/chiba/p_j.html (都道府県の人口・面積・人口密度ランキングより抜粋)
<人口,人>           <面積,km²>        <人口密度, 人/km²>
1 東京都 13,971,109      1 北海道 78,421.39      1 東京都 6,367.78
2 神奈川県 9,214,151      2 岩手県 15,275.01      2 大阪府 4,627.76
3 大阪府 8,817,372       3 福島県 13,784.14      3 神奈川県 3,813.63
4 愛知県 7,541,123       4 長野県 13,561.56      4 埼玉県 1,933.63
5 埼玉県 7,343,453       5 新潟県 12,583.96      5 愛知県 1,457.77
6 千葉県 6,281,394       6 秋田県 11,637.52      6 千葉県 1,217.90
7 兵庫県 5,438,891       7 岐阜県 10,621.29      7 福岡県 1,024.12
8 北海道 5,212,462       8 青森県 9,645.64       8 兵庫県 647.41
9 福岡県 5,106,774       9 山形県 9,323.15       9 沖縄県 639.12
・・
41 佐賀県 808,821       41 鳥取県 3,507.14      41 青森県 127.57
42 山梨県 806,210       42 佐賀県 2,440.69      42 山形県 114.23
43 福井県 762,679       43 神奈川県 2,416.11      43 島根県 99.43
44 徳島県 721,269       44 沖縄県 2,282.59      44 高知県 97.10
45 高知県 689,785       45 東京都 2,194.03      45 秋田県 81.81
46 島根県 666,941       46 大阪府 1,905.32      46 岩手県 79.36
47 鳥取県 551,402       47 香川県 1,876.78      47 北海道 66.47

*1-8:https://www.agrinews.co.jp/p52864.html (日本農業新聞 2021年1月9日) 緊急事態宣言 ガイドライン順守を コロナ感染防止で農水省
 農水省は緊急事態宣言の再発令を受け、農家に新型コロナウイルス感染拡大防止に向けた業種別ガイドラインの順守を呼び掛ける。ガイドラインは大日本農会のホームページに掲載。日々の検温や屋内作業時のマスク着用、距離の確保などの対策をまとめている。感染者が出ても業務を継続できるよう、地域であらかじめ作業の代替要員リストを作ることも求める。ガイドラインは①感染予防対策②感染者が出た場合の対応③業務の継続──などが柱。予防対策では、従業員を含めて日々の検温を実施・記録し、発熱があれば自宅待機を求める。4日以上症状が続く場合は保健所に連絡する。ハウスや事務所など、屋内で作業する場合はマスクを着用し、人と人の間隔は2メートルを目安に空ける。機械換気か、室温が下がらない範囲で窓を開け、常時換気をすることもポイントだ。畑など屋外でも複数で作業する場合は、マスク着用や距離の確保を求める。作業開始の前後や作業場への入退場時には手洗いや手指の消毒を求めている。人が頻繁に触れるドアノブやスイッチ、手すりなどはふき取り清掃をする。多くの従業員が使う休憩スペースや、更衣室は感染リスクが比較的高いことから、一度の入室人数を減らすと共に、対面での会話や食事をしないなどの対応を求める。感染者が出た場合は、保健所に報告し、指導を受けるよう要請。保健所が濃厚接触者と判断した農業関係者には、14日間の自宅待機を求める。保健所の指示に従い、施設などの消毒も行う。感染者が出ても業務を継続できるよう、あらかじめ地域の関係者で連携することも求める。JAの生産部会、農業法人などのグループ単位での実施を想定。①連絡窓口の設置②農作業代替要員のリスト作成③代行する作業の明確化④代替要員が確保できない場合の最低限の維持管理──などの準備を求める。

<地方と仕事>
*2-1:https://www.agrinews.co.jp/p52851.html (日本農業新聞論説 2021年1月8日) 地方分散型社会 持続可能な国土めざせ
 大都市圏への人口集中を是正し、地方に人が住み続ける分散型社会を構築することは、持続可能な国土づくりに不可欠である。地方、特に農村への移住をどう促すか。政府には、新型コロナウイルス禍を踏まえた分散型社会の姿を描き、実効ある施策を講じることが求められる。都市を志向する価値観が変化し、自然豊かな環境や人とのつながりを求め地方移住を考える人が増えている。総務省の地域おこし協力隊の任期終了者で、活動先に定住した人が2019年度時点で2400人を超え、5割に上るのもその兆候だ。移住の促進で必要なのは仕事の確保である。新たな食料・農業・農村基本計画で政府は、農村を維持し、次世代に継承するために地域政策の総合化を打ち出し、柱の一つに「所得と雇用機会の確保」を掲げた。観光や体験、研修など、さまざまな分野と連携した新しいビジネスの展開などを想定している。しかしコロナ禍で人を呼び込むのが難しくなり、外食や農泊、農業体験を含む観光産業など農業との連携が期待される分野は苦境が続く。半面、家庭需要が高まり、直売所の利用など地産地消の動きは活発化。また起業や事業承継、農業と他の仕事を組み合わせた半農半X、複数の業種をなりわいとする多業など、移住者らによる多様な仕事づくりや働き方がみられる。政府は農業・農村所得の倍増目標も掲げてきた。達成のためにも事業の継続を支える一方、新たな動きや、コロナ禍の中での経済・社会の変化を捉え、所得確保と雇用創出の政策を構築すべきだ。また東京一極集中の是正を、地方創生や国土計画の中心課題に据えてきた。しかし一極集中に歯止めがかからず、農村の高齢化・過疎化が進んだ。政策の実効性が問われる。移住者と地域の融和も重要である。地域の一員として溶け込むには移住前から住民と対話・交流し、心を通わせる必要がある。しかしコロナの感染拡大で現地を訪れ、対話する機会を設けるのが難しくなっている。一方、新しい対話の手法として移住者と地域をオンラインでつなぎ、説明会や就農座談会を開く動きが増えている。自治体や先輩移住者が暮らしや仕事などについて説明。ふるさと回帰支援センターが昨年10月、オンラインで開いた全国規模の移住マッチングイベントには1万5000人超の参加があった。移住希望者と地域がオンラインで対話し、信頼関係を育む。その上で感染防止対策を徹底し、現地を訪れるなど新様式が一般化する可能性がある。多くの地域で実践できるようノウハウの共有や費用支援が重要だ。地方への人の流れをつくる方策として政府は、テレワークの推進などを念頭に置く。併せて説明会から移住、定着までを段階を追って、また所得・雇用機会の確保から生活環境整備まで幅広く支援する重層的、総合的な政策体系を構築すべきだ。

*2-2:https://www.agrinews.co.jp/p52861.html (日本農業新聞論説 2021年1月9日) 自立する地域 協同組合が主導しよう
 新型コロナウイルスの感染拡大を契機に、「3密」を回避できるとして地方への関心が高まっている。地方への移住者の定着支援では、仕事づくりや安心して暮らせる地域社会づくりなどで、協同組合にこそ役割発揮が求められる。都市集中型から地方分散型への社会転換を協同組合の力で後押ししたい。
都市での生活は、満員電車での通勤をはじめ、密閉、密集、密接が避けられない環境にある。コロナ禍を契機にテレワークが広まり、一部業種では都市にいなくても働けることが分かった。観光地などで休暇を過ごしながら働くワーケーションを実践する人も増えている。JA全中の中家徹会長は2020年の総括として「3密社会の回避へ東京一極集中から分散型社会への潮流が生まれている」と指摘した。今後、地方に移住し、地域に根付いて働きたいというニーズも高まってくるだろう。協同組合として何ができるか。徳島県JAかいふは地元自治体と連携して、全国から多くの新規就農者を呼び込んでいる。農業と合わせて、豊かな自然でサーフィンや釣りなどが楽しめるとしてアピール。栽培を1年間学べる塾や、環境制御型ハウスの貸し出しなど手厚く支援する。15年度から始め20年度までに24人を受け入れ、20人が就農したという。総合事業を手掛けるJAは新規就農者に農地や住居、営農指導、労働力など多様な支援を用意し、定着を後押しできる。医療や介護といった暮らしや、組合員組織を通じた仲間づくりなどにも貢献できる。生協など他の協同組合と連携すれば支援の幅はさらに広がる。地方に移住してくる人に対して、協同組合が仕事や生活を丸ごと支援する仕組みの構築も考えられる。また今後期待されるのが、組合員が出資・運営し、自ら働く労働者協同組合だ。各地域での設立を後押しする法律が20年に成立。たとえ事業は小さくても地域の課題を解決しつつ、自ら経営する新しい働き方として地方にも広がる可能性がある。コロナ禍の収束は依然見通せない。仮に収束してもグローバル化が進み、今後も感染症が世界を脅かす懸念は強い。都市から地方への単純な人口移動にとどまらず、大都市圏を中心に他の地域と激しく人や物が行き来する社会の在り方が見直される可能性もある。そこでは、経済や生活、文化が地域ごとに一定程度自立する「地域自立型社会」とも呼べる国の在り方が構想できる。そうなれば先に挙げた役割を果たすため、地域に根差す協同組合の役割はより大きなものになるだろう。また、それぞれの協同組合には全国ネットワークがあり、地域間の連携にも取り組みやすいと考えられる。感染症を含め近年増えている災害などの危機の際には、協同組合の基本である助け合いが求められる。協同組合の役割と実践内容を改めて発信したい。

<エネルギーも分散型へ>
*3-1:https://mainichi.jp/articles/20210108/k00/00m/040/237000c?cx_fm=mailasa&cx_ml=article&cx_mdate=20210109 (毎日新聞 2021年1月8日) コロナで変わる世界:脱炭素は「社会貢献」でなくなった 広まる欧州主導の国際ルール、焦る日本企業
 新作が発売されるたびに、世界が注目する米アップルのスマートフォン「iPhone」。その画面に使われる光拡散フィルムが、和歌山県にある日本企業の工場で製造されていることはほとんど知られていない。紀伊半島の先端近くに位置する南紀白浜空港から車で1時間弱の山間地に、高機能フィルムメーカー「恵和」(本社・東京)の生産拠点がある。
●「アップル製品に再エネ導入は最低条件」
 同社は2020年11月、和歌山工場のアップル向け生産ラインで使う電力を太陽光や風力などの再生可能エネルギーに切り替えた。「アップルから『あなたの企業が使うエネルギーは?』と聞かれて化石燃料を出したらその時点で終わり。再エネ導入は最低条件で、その上で技術の勝負になる」。恵和の長村惠弌(おさむらけいいち)社長は強調する。アップルは同年7月、30年までに事業全体で「カーボンニュートラル」を達成すると宣言した。サプライチェーン(部品の調達・供給網)の全てを通じて温室効果ガスの排出量を「実質ゼロ」にする野心的な目標だ。10年以内に再生可能エネルギーの100%使用を迫られた形の取引先企業にとって、脱炭素は社会貢献ではなく、経営の根幹にかかわる必須条件に変わった。恵和は1948年に加工紙メーカーとして創業。アップルとは12年ごろから取引関係にある。再エネを購入し、和歌山の製造拠点での電力使用量の3分の1を切り替えたことで、電気代は1割程度上がったという。長村社長は「コストが増えても、関係が強化されて結果的に収入が増えればいい。アップルの活動への協力は自社の事業にプラスだ」と話す。アップルの発表によると、20年12月時点で半導体大手の台湾積体電路製造(TSMC)を含む95の取引先企業が、100%の再エネ使用を目指す方針を表明した。取引先に温室効果ガスの抑制を求める企業はアップルに限らない。米IT大手マイクロソフトは30年までに排出量よりも多くの二酸化炭素(CO2)を大気中から除去する「カーボンネガティブ」の実現を約束した。自然エネルギー財団の石田雅也シニアマネジャーは今後、中小を含む日本企業に対し、海外の取引先から再エネ導入圧力が強まる可能性があると指摘する。再エネの「主力電源化」に欧米から大きく後れを取る日本の課題は、国際的にも割高な発電コストだ。「1円でも安くしないと競争できない企業もある。国全体で再エネのコストが安くならないと、間違いなく産業競争力に影響するだろう」と石田さんは懸念する。新型コロナウイルス流行後の世界で、脱炭素に向けた動きが急加速している。人類が直面するもう一つの危機である気候変動を抑止し、持続可能な社会を目指す「グリーンリカバリー」(緑の復興)に向けた挑戦が始まった。
●欧州からは「実態を超えたレベルの要求」
 「多量のCO2(二酸化炭素)を排出する石炭火力の比率が高い日本に今後も製造拠点を置くべきなのか、といった議論をせざるを得ない状況にある」。2020年11月中旬。イオンや武田薬品工業など日本を代表する有力企業の幹部が霞が関を訪れ、河野太郎行政改革担当相らに提言書を手渡した。新型コロナウイルス収束後の経済復興策に脱炭素の視点を加え、「30年までに再エネ50%」の目標設定を求めたものだ。文書をまとめたのは、09年に設立された「日本気候リーダーズ・パートナーシップ(JCLP)」。気候変動問題で、世界から取り残される危機感を共有する富士通や積水ハウスなど165社が加盟し、総売上高は125兆円に達する。設立メンバーの複合機大手リコーは17年、事業に使用する電力を100%再エネで調達することを目指す国際イニシアチブ「RE100」に日本企業として初めて参加した。阿部哲嗣・社会環境室長は「要求が高度化する顧客への対応が不可避になっている」と語る。脱炭素への取り組みで国内の先頭を走る同社でさえ、先をいく欧州の取引先から圧力にさらされている。阿部室長によると、欧州の商談では、納入する複合機の価格やサービス体制に加え、CO2削減を含むESG(環境、社会、企業統治)への取り組みが評価基準に盛り込まれる例が増えたという。受注前に気候変動への対応について監査を求められたこともあった。取引先からの「ESG要求」に応じることで成立した商談は19年度、欧州を中心に120億円。同社の欧州での売上高の約3%に過ぎないが、コロナ後は割合が確実に増えていくと見込まれている。一方、投資家などからは同社に部品を供給するサプライヤーにもESGへの取り組みを求める声があり、阿部室長は「実態を超えたレベルの要求が走り出している」と話す。再エネ100%を見据えることができない企業は、グローバル企業の取引先から外されるリスクに直面する。リコーはこの3年で再エネ比率を12・9%まで高めたが、再エネ調達価格が安い欧州事業など全体を底上げしているのが現状だ。国内に限れば、再エネ利用率は1・9%にとどまる。日本で、化石燃料由来でないことを証明する有力な手段の一つは、「非化石証書」付きの電力を購入することだ。だが証書付きの電力コストは欧州の数倍から数十倍とされる。JCLPの事務局を務める環境政策シンクタンク「地球環境戦略研究機関」の松尾雄介ディレクターは「複数の日本企業から『この10年で再エネ価格が相当下がらなければ、海外に拠点をシフトさせるかもしれない』という声が出ている」と明かす。
●「今の投資判断が未来を決める」専門家指摘
 温暖化防止の国際ルール「パリ協定」が採択されて5年。日本は主要7カ国(G7)で唯一、石炭火力の新設計画があり、そのエネルギー政策には国際社会の厳しい視線が注がれてきた。菅政権は20年10月、50年までの温室効果ガスの排出「実質ゼロ」達成を宣言したが、「周回遅れ」の日本にとってはようやくスタートラインに立ったにすぎない。政府が21年中にまとめるエネルギー基本計画の改定に向け、経済産業省は電源構成に占める再エネの割合を、50年までに50~60%に引き上げる目安を示した。だが、JCLPが河野行政改革担当相らに提言した「30年までに50%」からは20年近い乖離(かいり)がある。経済協力開発機構(OECD)の元事務次長で、世界の気候政策に詳しい玉木林太郎・国際金融情報センター理事長は「化石燃料を使わないようにすることは、(産業革命に寄与した)蒸気機関の発明以来の大きな変化だ。この変化は避けられず、早くやった方が勝者になれる。先送りして済む問題ではない」と語る。「50年『脱炭素』は、遠いようで極めて近い目標だ。社会システムを切り替えるにはインフラを中心に息の長い投資計画が必要で、40年に慌てて始めても間に合わない。今の投資判断が未来を決める」と指摘する。
●欧米主導のルールづくりに日本も重い腰上げ
 「ここで方向を変えなければ、我々は今世紀のうちに壊滅的な気温上昇に直面する」。20年12月12日。パリ協定の採択5年を記念する首脳級オンライン会合で、国連のグテレス事務総長は警鐘を鳴らした。各国が「グリーンリカバリー」(緑の復興)を掲げるのは、コロナ禍で悪化した経済の立て直しと脱炭素を両立させるためだ。パンデミック(世界的大流行)による行動制限などの影響で、20年に世界で排出されたCO2は前年と比べて7%近く減った。リーマン・ショック時を上回る記録的な減少幅だ。しかし、世界の平均気温の上昇を1・5度に抑えるパリ協定の目標を実現するには、この先10年間でCO2排出量を毎年7%ずつ減らし続ける必要がある。エネルギーや交通など、社会・経済のシステムを急速かつ大胆に変革しなければ不可能な数字だ。欧州諸国は、若者世代がけん引した「緑の波」と例えられる世論の支持を追い風に野心的な気候政策を推し進め、域内産業の成長と保護の両立をしたたかに追求する。欧州連合(EU)では「国境炭素調整措置」の導入に向けた議論が本格化する。気候変動対策が不十分な国からの輸入品に対し、製造過程などで生じるCO2に高関税をかける発想だ。脱炭素を進める欧州の製造業を不公正な競争から守る目的もあり、「保護主義」との反発もある。だが世界貿易機関(WTO)元事務局長で、EUの欧州委員(通商担当)も務めたパスカル・ラミー氏は「『保護主義』ではなく、『予防措置』だ。貿易相手をたたいて自国の産業を守るためではなく、(世界全体の排出量を減らして)気候変動の損失から人々を守るためと考えるべきだ」と欧州の「大義」を強調する。トランプ米政権はEUが国境炭素調整措置を導入した場合、報復を示唆していた。だが、気候変動を最優先課題の一つに掲げるバイデン次期米大統領はEUと同様の措置導入を目指しており、今後具体化する可能性がある。欧米主導のルール作りが進む中、日本政府も重い腰を上げた。菅政権ではCO2排出に課金して削減を促す仕組み「カーボンプライシング」(CP)の導入に向け、環境省と経済産業省が連携して議論を始める。CPは短期的には産業界や家庭の負担増につながるため、これまで本格的な議論は先送りされてきた。だが、小泉進次郎環境相は「国内で炭素に価格付けしなくても、海外で(国境調整措置などを通じて)徴収される可能性を検討せざるを得ない」と指摘。「国際情勢をみながら後手に回らないように多角的に議論の蓄積をしたい」と話す。
●日本での関心の低さ、根底に「負担意識」
 日本では世論もカギだ。「欧州は草の根の運動が社会を動かした。でも今の日本は政府から『脱炭素』が降りてきたように感じる」。京都の大学1年生、寺島美羽さん(19)はそう語る。寺島さんは高校3年生の春にスウェーデンの環境活動家、グレタ・トゥーンベリさん(18)を知り、気候変動に興味をもった。グレタさんら欧州の若者にならい、10人ほどのグループで、街頭やネット交流サービス(SNS)で大人たちに本気の対策を訴え続けてきた。しかし、周囲の反応は冷笑的で「壁」を感じることも多かったという。気候科学者で国立環境研究所地球環境研究センターの江守正多・副センター長は、関心の低さの根底には「温暖化対策を取ることへの『負担意識』」があるとみる。世界76カ国の一般市民を対象にした討論型の調査(15年)では、「あなたにとって、気候変動対策はどのようなものか」という問いに対し、「生活の質を脅かすもの」と回答した人は、世界平均27%に対して日本は60%と突出していた。「これを変えるには『新しい社会システムにアップデートする』というような前向きなメッセージを出すことが大切だろう」。江守さんは続ける。「日本でも数は多くないが、若い世代が気候変動対策の強化を求めて各地で声を上げている。こうした活動を応援することも、私たちができることのひとつだ」 年の瀬。JR京都駅前の街頭に寺島さんの姿があった。「気候危機の存在に気づいて」と書かれたプラカードを持った同世代の男女6人の前を、高校生や仕事帰りの人々が見向きもせずに過ぎ去っていく。1時間ほどたったころ、「SNSで見て活動に興味をもった」という制服姿の女子高校生2人が輪に加わった。「こんなことは初めて。本当にうれしい」と寺島さんは相好を崩した。草の根からも変化の芽が生まれつつある。

*3-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20210109&ng=DGKKZO68042480Z00C21A1MM8000 (日経新聞 2021.1.9) 一からつくる移動網 テスラ超える戦い
 夕方にベルリンをたち翌朝、目が覚めるとローマに到着。1957~95年に欧州の主要都市を結んだヨーロッパ横断特急が復活する。2020年12月、欧州4カ国の鉄道事業者が13都市を結ぶ夜行列車ネットワークをつくることで合意した。12月開通予定のウィーン~パリ間などを皮切りに順次整備を進める。
●鉄道の5倍排出
 背景には、二酸化炭素(CO2)を大量排出する飛行機に乗らない「飛び恥」という現象がある。世界のCO2排出で「運輸」は「発電・熱供給」に次ぐ2割強を占め、航空機の排出量は乗客1人の移動1キロ換算で鉄道の5倍に達する。国際航空運送協会(IATA)で環境分野を担当するマイケル・ギル氏は「旅客機では電気自動車(EV)のような技術が確立していない」と話す。それではもう、飛行機に乗れないのか。移動の選択肢を確保するため、欧州の航空機大手エアバスが立ち上がった。35年には温暖化ガス排出ゼロの航空機を実用化すると宣言。「ゼロe」と呼ばれるコンセプト機は液化水素をガスタービンで燃やして飛ぶ。実現すれば約70年前に英国でジェット旅客機の幕が開いて以来の大変革となる。日常生活を支えるクルマも変わる。ドイツ南部のミュンヘン郊外に「空のテスラ」と呼ばれる新興企業がある。電動の垂直離着陸機「eVTOL(イーブイトール)」を開発する15年創業のリリウムだ。駆動時に温暖化ガスを全く出さないのが売りで、25年の商用化を視野に入れる。機関投資家も出資し企業評価額が10億ドル(約1030億円)を超えるユニコーンとなった。こうした空飛ぶクルマメーカーが世界で続々と誕生している。脱炭素時代の移動手段は化石燃料時代とは全く違う「不連続の発想」から生まれる。技術革新に遅れると命取りになる。中国の自動車市場で、ある「逆転」が話題になた。米ゼネラル・モーターズ(GM)と上海汽車集団などの合弁で小型車を手がける上汽通用五菱汽車が、20年7月に発売した小型EV「宏光ミニ」。9月に販売台数で米テスラの主力小型車「モデル3」を追い抜いたのだ。航続距離は120キロメートルと近距離移動向けだが、価格は2万8800元(約46万円)からと安い。低価格が話題を呼び、地方都市で爆発的に売れている。
●他産業から参戦
 カーボンゼロの申し子、テスラですら安泰ではない新しい競争の時代。日本電産の永守重信会長兼最高経営責任者(CEO)は「30年以降に過半数がEVになれば、車の価格は現在の5分の1程度になるだろう」と予言する。内燃機関を持たないEVは3万点もの部品が必要なガソリン車に比べ、部品点数は4割ほど減少する。参入障壁が下がり、自動車産業以外からの参戦も増える。トヨタ自動車は街からつくる。21年2月、静岡県裾野市にある約70万平方メートルの工場跡地で、自動運転EVなどゼロエミッション車(ZEV)だけが走る実験都市「ウーブン・シティ」に着工する。豊田章男社長は「3000程度のパートナーが応募している」と力を込める。5年以内の完成を目指し、グループで開発中の空飛ぶクルマが登場する可能性もある。20世紀のはじめ、米フォード・モーターの創業者であるヘンリー・フォード氏が大量生産方式を確立した自動車産業。生産コストを大幅に下げ、人々に移動の自由を提供し、経済成長の原動力にもなってきた。いまや世界で5千万人を超す直接・間接の雇用を生み出している。カーボンゼロで産業地図は大きく塗り替わる。自動車メーカーを先頭に発展してきた日本企業も、新しい青写真を描く時だ。

*3-3:https://mainichi.jp/articles/20210110/k00/00m/040/152000c (毎日新聞 2021年1月10日) 40年超原発」再稼働へ立ちはだかる壁 安全性懸念、行き詰まる中間貯蔵先探し
 運転開始から40年を超える関西電力の美浜原発3号機(福井県美浜町)と高浜原発1、2号機(同県高浜町)の再稼働に向け、地元の同意プロセスが進んでいる。ただ、老朽原発の安全性には懸念の声が根強いほか、県が同意の前提とする使用済み核燃料の「県外」での中間貯蔵先探しも行き詰まったまま。国内初の「40年超原発」の再稼働には、高いハードルが立ちはだかる。
●「原発から抜けられない町」、本心は「ノー」
 関電は経営面から一日も早い再稼働を目指し、美浜3号機を2021年1月、高浜1、2号機を3月以降に再稼働させる工程を示しているが、実現のめどは立っていない。原発の寿命が「40年」とされたきっかけは、11年3月の東日本大震災に伴う東京電力福島第1原発事故だ。「原子炉の圧力容器が中性子の照射を受けて劣化する時期の目安」として、13年7月の改正原子炉等規制法で原発の運転期間が原則40年と定められた。ただ、基準を満たせば1度に限り最大20年の延長が認められ、美浜3号機と高浜1、2号機は原子力規制委員会の審査をクリアした。今後、30年までに全国の原発11基が運転開始から40年を迎えるため、関電3基の再稼働が試金石となる。しかし、安全面で課題も指摘されてきた。関電が09年に高浜1号機で実施した検査では、60年運転時点の脆性(ぜいせい)遷移温度(圧力容器の劣化を示す指標)の予想値が97度となり、廃炉以外の原発で最高を記録。この値が100度程度に高いと圧力容器が破損する恐れがあるとされ、長沢啓行・大阪府立大名誉教授(生産管理システム工学)は「過去の検査に比べ09年の結果を見ると脆化(もろくなる)スピードが速まり、余裕がなくなった。次の検査でさらに予想値が高くなる可能性がある」と指摘。関電は「脆化の程度が大きいのは事実だが、地震や事故に耐えられることは確認している」と反論する。再稼働には県や原発の立地自治体の首長と議会の同意が必要とされる。「再稼働への理解と協力をお願い申し上げる」。経済産業省資源エネルギー庁の保坂伸長官は20年10月16日、福井県庁などを訪れ、40年超原発3基の再稼働への協力を県などに要請した。これを受け、立地自治体である高浜、美浜両町の議会は11~12月に再稼働を求める請願を相次いで採択し、早々に同意。両町長も近く同意の意思を示す見通しだ。安全性の懸念はあるものの、生活のため、地元からは再稼働を容認せざるを得ない「嘆き」が聞こえてくる。再稼働を求める請願に賛成した高浜町議の一人は「財政の大部分を原子力が占める町では、『同意』は賛否を論じるような話ではない。もし否定して再稼働しないなんてなったら大変なことになる」と複雑な思いを吐露し、「半世紀かけて原発から抜けられない町にしてしまった。僕らも本心では『ノー』と言いたい。でも、言えないよ」と語る。一方、関電が老朽原発の再稼働にこだわるのは、発電コストの安い原発で収支を改善し、安全対策で投じた膨大な費用を回収するためだ。東電福島第1原発事故前、関電は原発11基を運転し、10年度の全発電量に占める原発の割合は51%だった。しかし、19年度は27%で、高コストの火力が59%で最多に。老朽原発を再稼働できれば1基当たり月25億円の利益増になる。福島事故後の新ルールに対応した安全対策工事の総費用は、廃炉を除く原発7基で計1兆693億円に達し、一刻も早く老朽原発を動かしたいのが本音だ。
●20年以上続く中間貯蔵施設の「県外」確保問題
 福井の老朽原発再稼働の大きな課題となっているのが、使用済み核燃料の中間貯蔵施設の「県外」確保だ。現在、使用済み核燃料は原発敷地内で保管されているが、5~9年で容量が限界に達する。関電にとって1998年7月に秋山喜久社長(当時)が県外建設の考えを初めて示して以来、20年以上続く経営課題となっている。関電は15年11月に「福井県外で20年ごろに計画地点を確定し、30年ごろに操業を開始」との計画を公表。17年11月には岩根茂樹社長(当時)が「18年には具体的な計画地を示す」と述べ、2年前倒しした。ところが18年1月、東電と日本原子力発電の中間貯蔵施設(青森県むつ市)を関電が共同利用する案が報道で表面化。むつ市は猛反発し、関電は報道を否定したが目標時期を「20年を念頭」に戻した。20年12月、事態が動いた。むつ市の中間貯蔵施設を、関電を含む電力各社で共同利用する案が浮上したのだ。全国の使用済み核燃料の負担が集中することを懸念し、むつ市の宮下宗一郎市長は12月18日、説明に訪れた電気事業連合会の清水成信副会長らに「むつ市は核のゴミ捨て場ではない」と不快感を隠さなかった。今後、電事連や国が地元の「説得」を進める模様だが、見通しは立っていない。同じ日、福井県内では、金属製容器(キャスク)に入れた使用済み燃料を空冷する「乾式貯蔵」を念頭に「県内」での貯蔵を検討する案が出た。美浜町議会の竹仲良広議長は「個人の意見」とした上で「美浜原発サイト内で乾式貯蔵を推進していきたい」と発言。同町議会は04年7月に中間貯蔵施設の誘致を決議した経緯があるが、当時は県の反発で立ち消えになった。また、衝撃的な判決も波紋を広げている。大阪地裁が20年12月4日、関電大飯原発3、4号機の想定する最大の揺れを示す基準地震動について「実際に発生する地震が平均より大きくなる可能性(ばらつき)を考慮していない」とし、国の設置許可を取り消したのだ。この判決の大きな影響を受けるのが、美浜3号機だ。40年超運転に向け、美浜3号機の基準地震動は750ガルから993ガルに大きく引き上げられた。だが、原告共同代表の小山英之・元大阪府立大講師(数理工学)は大飯と同じ評価方法が採用されていることからさらに1330ガルまで跳ね上がるとし、「安全の証明がされていない」と指摘する。福井県の杉本達治知事は判決を受け、再稼働の同意判断には規制委などによる安全性の説明が改めて必要とし、県原子力安全専門委員会でも検証する方向だ。混沌(こんとん)とする中、地元同意で事実上の最終判断を下す立場の杉本知事は慎重な姿勢を崩していない。関電が20年末までに県外候補地を示せなかったことについて、記者団に「(再稼働の)議論の入り口には入れない」とする一方、「最大限努力するということなので、それを待ちたい」とも述べた。協議を拒絶しつつ、「年内」の期限は猶予した政治判断の背景について、県幹部は「関電が『早く報告に来る』というから了とした。貯蔵プールの満杯も迫っているので、今回は期待もしていたが……」と話す。関電はどのようなボールを投げてくるのか。今後の日程が定まらないまま、県は出方をうかがっている。
●運転中は玄海3号機と川内1、2号機のみ
 建設中や廃炉決定などを除き、国内には33基の商業用原発がある。16基が東日本大震災後にできた新規制基準に「合格」したが、9日現在で運転しているのは九州電力玄海原発3号機(佐賀県玄海町)と同川内原発1、2号機(鹿児島県薩摩川内市)の3基のみ。また、合格した16基のうち、運転開始から40年を超える老朽原発は関西電力美浜原発3号機と同高浜原発1、2号機、日本原子力発電東海第2原発(茨城県東海村)の計4基となっている。

<再生医療>
*4:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20210111&ng=DGKKZO68052890Q1A110C2TJM000 (日経新聞 2021.1.11) 科技立国 動かぬ歯車(4)iPS、世界と隔たり、集中投資も存在感乏しく 柔軟な戦略修正に課題
「経過は順調だ」。大阪大学の澤芳樹教授らは2020年12月、iPS細胞から作った「心筋シート」を重い心臓病の患者に移植する世界初の手術を3人に実施したことを報告した。19年末に始めた医師主導臨床試験(治験)は前半を終えた。iPS細胞の臨床応用は広がっている。心臓病のほか加齢黄斑変性など目の病気、パーキンソン病、がんなどの治療を目指す臨床研究や治験が進む。安全性や効果を示せるかが注目されている。京都大学の山中伸弥教授がiPS細胞の作製法をマウスで発見したのは06年。山中教授は12年にノーベル生理学・医学賞を受賞した。政府は13年、iPS細胞を使う再生医療の実現に向け、10年間で1100億円という巨額の投資を決めた。皮膚などの体の細胞から胚性幹細胞(ES細胞)のような万能細胞を作るという山中教授の発想は斬新なものだった。研究計画を審査した岸本忠三・阪大特任教授が可能性に注目するなど、政府が支援したことで発見につながった。科学技術政策の成功例といえる。その後の大型投資は「選択と集中」の象徴だ。iPS細胞関連の研究者は増え、論文も増えた。だが、その課題や弊害も見えてきた。独ロベルト・コッホ研究所などのチームが人のiPS細胞に関する論文を18年に調べると、日本は論文数シェアで世界2位だった。ただ、論文を掲載した科学誌の影響度(インパクトファクター)と論文の被引用数は平均を下回った。国内で初めてES細胞を作った京都大学の中辻憲夫名誉教授は「日本は間違った過剰な選択と集中によって、投資対効果が低い結果になった」と批判する。iPS細胞に集中投資した半面、ES細胞など他の幹細胞研究の支援は手薄になった。両者は関連技術に共通部分が多いのに、日本はバランスを欠いた。世界の動きは速い。米国立衛生研究所(NIH)や米カリフォルニア再生医療機構は10年代半ばに再生医療の研究予算を減らし、遺伝子治療や細胞医療の拡充に転じた。英国も同様の傾向だ。注目するのは、人工的に機能を高めた「デザイナー細胞」の研究だ。代表的なものが、遺伝子操作した免疫細胞で血液がんを攻撃する「CAR-T細胞療法」。17年に実用化し、様々ながんで応用研究が進む。画期的な治療法と期待を集める。科学技術振興機構研究開発戦略センターの辻真博フェローは「iPS細胞中心の再生医療から軌道修正が必要だ」と提案する。集中投資で培った人材や成果を生かし、免疫学など日本が強みを持つ分野と組み合わせれば、デザイナー細胞で世界と競合できるとみる。政府も軌道修正を模索する。日本医療研究開発機構(AMED)は予算の枠組みを20年度からの第2期中期計画で変えた。第1期では「再生医療」としていたプロジェクトを「再生・細胞医療・遺伝子治療」に再編した。有識者会議で30年ごろまでの国や企業の投資対象などを工程表にまとめる検討も始めた。新型コロナウイルスのワクチンを開発した米モデルナの創業者は、iPS細胞の発見から着想を得たという。幹細胞が持つ可能性は再生医療に限られたものではない。神奈川県立保健福祉大学の八代嘉美教授は「多様な研究を支える資金制度が重要だ」と指摘する。世界の潮流に合わせた戦略的な研究と、斬新な発想の研究のバランスを取り、いかに柔軟に軌道修正するか。資金や人材が限られる中、日本のマネジメントが問われる。

<根拠なき規制は、有害無益である>
PS(2021年1月17日追加):*5-1・*5-2のように、厚労省は、「①入院勧告に従わない感染者に罰則導入」「②入院勧告の対象にならない軽症の感染者は、宿泊・自宅療養を法的に位置付け」「③保健所の『積極的疫学調査』に応じなかった感染者に新たな罰則を新設」「④知事らによる医療機関への協力要請の権限強化」などの感染症法改正案の概要を感染症部会に示して了承されたそうだ。
 しかし、②はまあよいが、①は検査も十分に行わず市中に蔓延させ、症状が出ても入院できない状況を作って、それが1年経っても改善されていないのであるため、厚労省の責任そのものである。その上、この強制によって感染が減るという根拠もないのに、国民の私権を制限する前例を作るのはむしろ有害だ。
 また、③の「積極的疫学調査」は、陽性者の数が限られており接触者の跡を追える場合には有効かもしれないが、そうでなければたまたま近くにいた人に迷惑をかけ、誰かにとって都合の悪い集会(例:選挙の対立候補の集会)が開かれた場合に悪用することさえできる。それよりも、これまで1年間も感染経路を網羅的に調査してきたのだから、感染者の年齢・性別・住所・感染経路・予後などが正確にわかっているので、大雑把に都道府県単位で私権制限を行わなくても正確にポイントをついた対応ができる筈だ。保健所は、個人の行動履歴を根ほり葉ほり聞いただけで、そのデータは積んだままにしているということは、まさかないだろう?
 なお、④についても、政治・行政は、「医療費は無駄遣い」とばかりに医療費削減を行い続け、必要な医療システムを作ることを放棄してきたため、もともと志の高い人が多い医療分野にゆとりをなくさせ、疲弊させてきた。さらに、*5-3のように、医療機関のすべてが新型コロナ患者を受け入れればよいわけではなく、基幹病院にあたる大病院が受け入れるのが適切なのだが、診療報酬を下げ続けて基幹病院にも選択と集中を迫り、対応できない状態にしてきたのだ。そのため、「入院や療養の調整中」とは、「アフリカ(失礼!)ではなく日本の話か?!」と思う。
 本来、市中で蔓延している地域で行うべきことは、*5-4で広島県が広島市内で80万人規模のPCR検査を実施しようとしているようなことで、これに加えて空港や港の検疫・陰性証明書・14日間の待機を組み合わせれば、乱暴に外国人の全入国を遮断する必要もなかった。そのため、広島市のやり方を参考にしたり、負荷が小さくて合理的な検疫方法を考えたりすべきなのだ。

*5-1:https://www.tokyo-np.co.jp/article/80153 (東京新聞 2021年1月15日) 「ほとんどの罰則が刑事罰」入院拒否の感染者などに… 感染症法改正案を了承
 厚生労働省は15日、同省感染症部会に新型コロナウイルス対策強化に向けた感染症法改正案の概要を示し、了承された。入院勧告に従わない感染者などへの罰則導入や知事らによる医療機関への協力要請の権限を強めることが柱。出席者からは罰則導入の根拠や効果を問う声が相次いだが、同省は罰則の具体的な内容やデータなどは示さなかった。政府は18日召集の通常国会に改正案を提出し、早期成立を目指す。
◆国や自治体の権限も強化
 部会で示された概要では、入院勧告を拒否した感染者に加え、濃厚接触者が誰かを追跡する保健所の「積極的疫学調査」に応じなかった感染者に新たな罰則を新設。入院勧告の対象にならない軽症の感染者は宿泊・自宅療養を行うことを法的に位置付けた。また、感染者情報の収集や民間病院によるコロナ患者の受け入れが円滑に進んでいないことを背景に、国や地方自治体の権限を強化する対策を盛り込んだ。具体的には、医療関係者らへの協力要請を「勧告」に見直し、正当な理由なく従わない場合は病院名なども公表できるとした。新型コロナウイルス感染症が「指定感染症」としての分類期限が来年1月末に切れることから、その後も濃厚接触者の外出自粛要請などの措置が継続できるよう、同法上の「新型インフルエンザ等感染症」に位置付ける改正も行う。
◆「罰則の根拠は?」疑問の声も
 入院勧告に従わない感染者への罰則について、政府は「1年以下の懲役または100万円以下の罰金」の刑事罰を検討しているが、15日の部会には示さなかった。出席者からは「罰則を導入しないと感染拡大が止まらないことを示す根拠を示してほしい」「保健所の仕事がさらに増える」などの疑問が相次いだ。さらなる議論を求める声もあったが、部会は改正案の概要を了承した。同省の正林督章健康局長は、罰則導入の根拠を示すように求められていることに対し「(根拠を)網羅的に把握するのは難しい」と説明。「感染症法は健康被害という重たいものを扱っている観点で、ほとんどの罰則規定が刑事罰だ」と理解を求めた。

*5-2:https://digital.asahi.com/articles/DA3S14765109.html (朝日新聞社説 2021年1月16日) コロナの法改正 罰則が先行する危うさ
 政治の怠慢や判断の甘さを棚に上げ、国民に責任を転嫁し、ムチで従わせようとしている。そんなふうにしか見えない。新型コロナ対策として、政府が進めている一連の法改正の内容が明らかになりつつある。共通するのは、制裁をちらつかせて行政のいうことを聞かせようという強権的な発想だ。例えば特別措置法をめぐっては、緊急事態宣言の発出前でも「予防的措置」として知事が事業者や施設に対し、営業時間の変更などを要請・命令できるようにする、応じない場合に備えて行政罰である過料の規定を設ける、などが検討されている。要請や命令の実効性を高めたいという狙いはわかる。だが倒産や廃業の危機に直面し、通常どおり仕事をせざるを得ないのが、このコロナ禍における事業者の現実ではないか。まず考えるべきは、休業や時短に伴う減収分を行政が適切に支援し、人々が安心して暮らせるようにすることであり、それを法律に明記して約束することだ。ところが政府案では、そうした措置は国・自治体の努力義務にとどまる見通しだという。本末転倒というほかない。どうしたら事業者の理解と協力を得られるかという視点から、全体像を見直す必要がある。感染症法の改正では、保健所の調査を拒む、うその回答をする、入院勧告に従わないといった行為に、懲役刑や罰金刑を科す案が浮上している。接触者や感染経路を割り出す作業はむろん大切だ。だが、いつどこで誰と会ったかはプライバシーに深くかかわる。刑罰で脅せば、市民との信頼関係のうえに成り立ってきた調査が変質し、かえって協力が得られなくなる事態を招きかねない。何より今は、一部で疫学調査が満足にできないレベルにまで感染者が増え、入院相当と診断されても受け入れ先が見つからない状態だ。いったい何を意図しての罰則の提案なのか。そもそも調査や入院勧告の拒否、無断外出などの件数がどれほどあるか、理由は何で、どんな支障が出ているか、政府は具体的なデータを示していない。罰則を必要とする事情を説明しないまま、ただ感染抑止のためだと言われても、真っ当な議論は期待できないし、社会の認識が深まるはずがない。日本にはハンセン病患者の強制隔離など深刻な人権侵害の歴史がある。医学界はおととい緊急声明を出し、感染症の制御で必要なのは国民の理解と協力であり、強制的な措置はむしろデメリットが大きいとした。ほかならぬコロナ対応の現場を担う当事者の声に、政府は真摯(しんし)に耳を傾けるべきだ。

*5-3:https://digital.asahi.com/articles/ASP1H7HC7P1HULBJ010.html?iref=comtop_7_07 (朝日新聞 2021年1月16日) 揺れる「ベッド大国」日本 医療逼迫は民間病院のせいか
 新型コロナウイルス感染症の感染拡大を受けて、各地で病床の逼迫(ひっぱく)が深刻だ。日本は世界的にみても充実した病床数を誇り、「ベッド大国」と言われるのに、なぜなのか。政府は15日、病床確保のために感染症法を見直すという強い対策を打ち出し、民間病院に新型コロナへの対応を迫った。
●人口あたりのベッド数、日本が「最多」
 新型コロナウイルスの感染拡大を受け、たとえば東京都では14日現在、「入院や療養の調整中」とされている陽性者は6500人に上る。東京だけでなく各地で病床が逼迫し、入院調整に苦しむ実態がある。13日に会合があった厚生労働省の専門家組織は、「感染者が急増する自治体では入院調整が困難となり、高齢者施設などで入院を待機せざるを得ない例も増えてきている」と指摘。通常医療との両立が困難な状況も広がる、とした。こうした状況を受けて、厚労省が病床確保策として打ち出したのが感染症法の改正だった。改正に伴い、たとえば病床の確保が必要な場合、従来だと都道府県知事らが医療関係者に協力を「要請」できたのが、「勧告」というさらに強い措置を取ることができるようになる。勧告に従わなかった場合、医療機関名などを公表できる、という規定も盛り込む案だ。狙いは、民間病院に対応を促すことにある。日本は「ベッド大国」といわれる。経済協力開発機構(OECD)の調査によると、人口千人あたりのベッド数は日本は13で最多。韓国12・4、ドイツ8と続く。米国の2・9、英国の2・5の4~5倍以上だ。さらに新型コロナの感染者は、米国で2300万人を超え英国320万人、フランス、イタリア、スペインは200万人を超す。日本は急増しているとはいえ30万人と欧米に比べると桁違いに少ない。
●民間は17%
 それなのに「入院が必要な患者が入院できない」と病床の逼迫が叫ばれるのはなぜなのか。政府は感染症法の改正で「民間」に対応を促す意向ですが、当事者からは反発の声もあがっています。記事の後半では、そうした声や改正案の背景にある官邸の意向について解説します。現在、コロナ患者が入院している医療機関は、手術や救急を行う急性期病院が多いとされる。厚労省によると、昨年11月末時点で厚労省のシステムに登録している4255の急性期病院のうち、新型コロナ患者の受け入れ実績があるのは1444病院。設立主体別に受け入れている割合を見ると、公立病院は58%の405病院、日本赤十字社や済生会など医療法で位置づけられた公的病院が75%の565病院。一方、民間病院は17%の474病院にとどまる。新型コロナ用に確保した病床は全国で2万7650床(6日時点)あるが、急性期の病床の4%程度だ。加えて、コロナ患者を診る割合が低い民間病院が、国内の医療機関の大半を占めている実態がある。厚労省の医療施設調査によると、医療法人・個人が開設する民間病院は全体の約7割。公立病院が多くを占める欧州とは事情が異なる。
●日本病院会会長「病院のせいにされている」
 民間がコロナ患者の受け入れに消極的なのには理由がある。コロナ患者を受けると、感染防御のために一人の患者のケアに必要な看護師が通常より多くなる。感染が怖い、差別を受けるといった理由で離職するスタッフもいる。ほかの診療ができなくなり減収につながる、と敬遠する施設も少なくない。また、民間は中小規模のところも多く、受け入れが難しい現状もある。医療体制を決める現行の医療法では、個別の医療機関がどのような医療を提供するか、指示や命令をする権限は都道府県知事らにもなく、民間病院に行政が介入できる余地は小さかった。ただ、民間に対策を迫る今回の改正案に実効性が伴うかは疑問も残る。そもそも新型コロナの感染拡大防止のための医療提供体制の整備は、国や地方自治体と医療関係者が連携して取り組んでいるため、法律に基づく従来の協力要請すら行われていないという実態があるという。協力要請を飛び越えて盛り込んだ「勧告」が、病床逼迫の改善に結びつくのか。相沢孝夫・日本病院会会長は今回の改正案について「勧告の前に政府は、病院間の役割分担や情報交換、連携を促し、地域でコロナを受け入れるための青写真を描くべきだ。それを踏まえて都道府県が具体的な体制をとるべきだろう。コロナ患者を受けなくても、かわりに他の病気の患者を引き受けるなど、医療機関が協力して対応する仕方はいくらでもある」と話す。
●改正案、背景に官邸の意向
 医療提供の問題については「政府や自治体が責任のなすりつけあいを続け、病院のせいにされている」とし、患者の受け入れを強く求めるだけでは差が生まれ、「病院間の分断を生んでしまう」と指摘する。厚労省の地域医療計画に関する作業部会のメンバーでもある今村知明・奈良県立医大教授(公衆衛生)は「勧告によって、コロナの受け入れをしやすくなる施設も出てくるのではないか。民間病院の場合、公的病院と異なり、職員のコロナへの抵抗感が強いと受け入れにくい面もある。厚労省や都道府県知事も勧告を出す前には事前に病院の状況を確認するだろうから、やみくもにどこにでも勧告を出すということではないだろう」と話す。今回の改正案には官邸の意向が働いた。病床確保に向け菅義偉首相は14日に日本医師会など医療団体と面会。「必要な方に必要な医療を提供させていただくために、さらなるご協力を賜りたい」と協力を求めた。首相周辺は「病院や診療所の絶対数は多いんだから、民間にもどんどん協力してもらうしかない」と、民間医療機関のさらなる協力に期待を寄せた。日本医師会などの医療団体は週明けにも、病床確保のための対策組織を立ち上げる予定だ。

*5-4:https://www.nikkei.com/article/DGXZQOJB1555G0V10C21A1000000/ (日経新聞 2021/1/15) 「80万人検査」の広島県、検体採取能力アップへ
 広島県は広島市内での最大80万人規模のPCR検査実施に向け、検査体制の拡大を進める方針だ。現在稼働している広島市内のPCRセンターで、検体を採取するラインを増設する案を軸に検討。検体採取キットを薬局などで受け渡し、採取効率を高める案も出ている。15日明らかになった広島県の方針によると、新型コロナウイルスの集中対策の一環で、広島市中心部の4区(中区、東区、南区、西区)の全住民や就業者を対象に無料PCR検査を実施する。県は具体的な実施方法などを現在詰めているが、全国でも珍しい大規模検査になるだけに、いかに体制を強化するかがカギになる。広島県は2020年12月、広島市内でPCRセンターを相次いで2カ所立ち上げた。2カ所のセンターで採取できる検体は1日あたり最大900人程度で、1月5日までに計1万1500人の検体を採った。一方、県が確保した検査能力は1日あたり最大5300人分(県外機関含む)あり、検体の採取体制を拡大して大規模検査に備える。大規模検査は任意のため、検査能力の引き上げが必要かどうかは実際の希望者数などをみて判断する。検査数が今後増えれば、陽性が確認される人数も増加する可能性が高い。県は現在819室分の宿泊療養施設を確保しているが、大規模検査が本格化すれば追加を迫られる公算が大きい。

<エネルギーの変換>
PS(2021年1月18、20日追加):*6-1のように、IMF等によれば、コロナ対策の財政支出や金融支援は世界で13兆ドル(約1340兆円)に達し、英国は、①「グリーン産業革命」として脱炭素に不可欠となる新たなインフラ整備に重点投資し ②再エネの導入を拡大して2030年までに洋上風力で全家庭の電力を賄えるようにし ③道路には自転車レーンを拡充し ④温暖化ガスを排出しないバスを数千台規模で投入して 新産業で雇用を生みながらCO₂排出ゼロに向けた布石を打つそうだ。また、ドイツは、⑤洋上風力の拡大目標を2030年に500万キロワット分引き上げ ⑥自動車向け水素ステーションを増やし、米国も、バイデン次期大統領が、⑦グリーン刺激策に2兆ドル(208兆円)を投じる計画で ⑧50万カ所に充電施設を設け政府の公用車300万台をEVにする方針 だそうだ。さらに、フランスは、⑨既存産業の支援にも脱炭素の視点を入れ ⑩エールフランスKLMの救済では運航時のCO2排出が少ない機体の導入や鉄道と競合する国内路線の廃止を条件として ⑪産業を立て直しながら社会全体で脱炭素を進める姿勢を鮮明にする。日本も、(当然)財政支出を行うならグリーンリカバリーとして環境投資で再エネや水素の導入を行って経済を浮上させるのが賢く、*6-4のとおり、原発依存はもう必要ない。
 このような中、*6-2のように、三菱地所は2022年度にも東京・丸の内に持つ約30棟で、東急不動産は2025年頃に全国の保有施設全てを再エネ仕様にし、全国には3000平方メートル以上のオフィスビルが約1万600棟あって、こうした物件が再エネ対応に変われば効果が大きいそうで期待できる。マンションも、2020年代前半にZEBによる再エネ仕様にすれば、環境によいだけでなく光熱費も下がる。しかし、メディアは必ず「再エネを使うと、火力発電より発電費用がかかるため電気利用のコストが上がる」などと書くが、これは真っ赤な嘘だ。その理由は、再エネは化石燃料を遠くから運賃を払って輸入する必要がなく、運転コストが0であるため、自然エネルギーで発電すれば発電コストが下がり、エネルギー自給率は上がるからである。
 また、自動車もEVが主流になるだろうが、その端緒を作った功績ある日産のゴーン前会長は、*6-3のように、元CEOオフィス担当のハリ・ナダ氏が「ゴーン解任計画」を取りまとめて西村氏にメールで送信していた。テレビ東京は、この極秘文書を入手したのだそうで、その極秘文書には、ゴーン氏の逮捕半年前に作られたゴーン氏解任のためのシナリオが詳細に書かれており、日産社内で周到な準備をした上で、検察・経産省を巻き込んで行われたものだったようである。私は、このブログの2018年12月4日、2019年4月6日、2020年1月11~12日に、事件の背後に見て取れる陰謀について推測して記載し、その殆どが当たっていたが、推測できた理由は、日本にある外資系企業に監査人として監査に行った時は、(外国人も含む)社長と必ず話をしてその行動様式を知っていたこと、EYなどBig4の税務部門で外資系企業の税務コンサルティングをした時は、報酬の支払い方や開示方法について関係各国の事務所の専門家から文書で、日本の金融庁・国税庁からは(文書を出さないので)口頭で必ず確認をとっていたため、日産のゴーン前会長のやり方も違法行為には当たらない筈だと思えたからである。これはプロの技術であり、決して新聞記事等の文章を読んだだけで分析できるわけではないことを付け加えておく。
 なお、*6-5のように、新型コロナ感染拡大で、政府はビジネス関係者に認めていた外国人の新規入国を全部停止したたため、農業の生産現場でも人手不足に拍車がかかった。日本の産業は、既に農業だけでなく製造業・サービス業も外国人労働者を多用しているので、技能実習生のように仕事を覚えたら帰国することを前提とした低賃金で差別的な労働条件ではなく、職務に見合った賃金で雇用し、5年在住したら永住権も認めるようにした方がよい。何故なら、そうした方が雇用する側にとって、搾取して使い捨てにするのではなく、人材に投資して回収を見込めるからだ。これに対し、日本人労働者は「賃金が下がる」として反対するケースが多いが、高コスト構造のまま日本から産業がなくなれば働く場も技術もなくなる上、日本人は母国語・教育などで有利な立場にあるため、職務に見合った賃金で雇用されれば不足はない筈だからである。
 このような中、*6-6のように、日本は難民の認定率が低く、定住や永住の在留資格を与えないことで有名だが、地方で自治体が公営住宅を準備して企業誘致を行えば、難民を労働力として国際競争力ある賃金で産業を日本に回帰させることが可能だ。日本人になって「イスラム教」「アラビア学校」等に固執しない条件でリクルートすれば、双方にメリットがあるだろう。

 
   ZEB    太陽光発電設置道路   太陽光発電屋根の駐車場 EV用ワイヤレス充電器

(図の説明:1番左は、Zero Energy Building(ZEB)で、ビルの壁面で太陽光発電を行う。左から2番目は、太陽光発電装置を埋め込んだ道路で、道路面積は広いので潜在力が大きい。右から2番目は、駐車場の屋根に太陽光発電機を設置したもの。1番右は、自動車のワイヤレス充電器で、これらは中小企業でも作れそうだ。駐車場の屋根に太陽光発電機をつけ、ワイヤレス充電器で充電するシステムで、EVがロボット掃除機のように自動的にワイヤレス充電器の上に止まって、「着きました。外の気温は○度です」と言うと便利な相棒になるのだが・・)


               2021.1.14WBSニュースより

(図の説明:2021年1月14日、テレビ東京のWBSニュースで、元CEOオフィス担当のハリ・ナダ氏が「ゴーン解任計画」として西川氏にメールで送信していた極秘文書が明らかになった。通常は、会長が逮捕されれば会社は弁護するのだが、西川氏が「待ってました」とばかりに会長を解任したため、検察・経産省を使った日産社内の内部紛争の可能性が推測された)

*6-1:https://r.nikkei.com/article/DGXZQOGE282L30Y0A221C2000000?n_cid=NMAIL006_20210117_A&disablepcview=&s=4 (日経新聞 2021年1月17日) 経済再生、脱炭素の試練 グリーン復興で欧州先行
 世界を大きな混乱に陥れた新型コロナウイルス危機には思わぬ副産物もあった。その一つが大幅な温暖化ガスの排出量の減少だ。もっとも経済活動の急収縮に頼った排出削減は経済の回復とともに後戻りしかねない。コロナ後の復興をどう脱炭素につなげていくか。グリーンリカバリーの知恵が問われている。2020年は都市封鎖や工場停止で化石燃料の需要が減った。国際共同研究グローバル・カーボン・プロジェクトによると20年の化石燃料由来の二酸化炭素(CO2)排出量は19年比で7%減少した。減少は15年以来で、単年の減少量は過去最大という。コロナ禍では経済活動停止の影響で大気汚染が改善した。「ヒマラヤ山脈をこんなきれいに見たのは初めて」。世界3位の温暖化ガス排出国のインドではこんな声が出た。しかし排出量は早くも反転の兆しが見える。20年前半に大幅減だった中国では昨秋以降、鉄鋼などの生産が回復し20年通年の排出量は19年比で1.7%減にとどまった。国際通貨基金(IMF)などによると、コロナ対策の財政支出や金融支援は世界で13兆ドル(約1340兆円)に達する。特に雇用や資金繰りの支援に重点を置く。グリーンリカバリーには大きく2つある。第1はコロナ後の経済刺激策で脱炭素に不可欠となる新たなインフラ整備に重点投資すること。第2は既存産業の立て直しで単純にコロナ前に戻すのではなく、温暖化ガスを減らす方向へ事業転換を促すことだ。第1の例には「グリーン産業革命」を唱える英国の戦略がある。再生可能エネルギーの導入を拡大し30年までに洋上風力で全家庭の電力を賄えるようにする。交通では温暖化ガスを排出しないバスを数千台規模で投入し、道路には自転車レーンを拡充する。新産業で雇用を生むと同時に将来の排出ゼロに向けた布石を打つ。ドイツは洋上風力の拡大目標を30年に500万キロワット分引き上げ、自動車向けの水素ステーションも増やす。米国も欧州を追う。環境対策に消極的だったトランプ政権から一転、バイデン次期大統領はグリーン刺激策に2兆ドルを投じる計画を表明した。50万カ所に充電施設を設け政府の公用車300万台を電気自動車などにする方針だ。第2の例では既存産業の支援にも脱炭素の視点を入れるフランスの政策がある。航空大手エールフランスKLMの救済では、運航時のCO2排出が少ない機体の導入や鉄道と競合する国内路線の廃止を条件にした。産業を立て直しながら社会全体で脱炭素を進める姿勢を鮮明にする。デンマークは老朽化が進む公営住宅を対象にする。暖房設備を環境に優しいタイプに変えた場合などに補助金を出し、20年から6年間で集中して更新を進める。日本は電力需要の逼迫への対応で重油で火力を稼働させるなど心もとない状況だ。菅義偉首相は温暖化ガス排出実質ゼロの目標を掲げた。再生エネや水素の導入拡大を加速できるかが試される。「主要25カ国・地域のコロナ対策のうち18カ国の対策は環境負荷が重い」。ロンドンに拠点を置くコンサルティング会社、ビビッド・エコノミクスは昨年12月に報告書をまとめた。財政支出を環境の視点から分類した「グリーン刺激策指数」でプラスは全体の約3割にとどまっている。08年のリーマン・ショック時も各国が環境対策をうたって財政支出を拡大したが、温暖化ガスの排出量は増え続けた。的確な対策で効果を高め、経済を浮上させながら排出量を増やさない状況を作り出せるかが課題になる。
■グリーンリカバリー 環境投資で経済浮上
 新型コロナウイルスの感染拡大による景気後退への対策で、環境を重視した投資などを通して経済を浮上させようとする手法をさす。気候変動への対応や生物多様性の維持といった課題の解決に重点的に資金を投じ、そこから雇用や業績の拡大で成果を引き出す。先進国を中心に各国がグリーンリカバリーを意識した景気刺激策を相次いで打ち出している。世界で異常気象が相次ぎ、気候変動への対応は世界共通の優先課題だ。地球温暖化対策の国際枠組みである「パリ協定」は地球の気温上昇を産業革命前から2度以内に抑えることを掲げている。日米欧のほか中国も温暖化ガス排出実質ゼロを掲げ、水素活用の推進などに巨額の資金を投じる方針だ。気候変動対策に反する活動への批判も高まっている。国が環境負荷の高い産業を支援することは投資家などから批判を浴びる。民間では石炭火力発電所からの投資引き揚げなど、より環境を配慮した行動へのシフトが進む。グリーンリカバリーは今後の経済回復の局面で、コロナ拡大前と同じ生活や企業活動に戻るのではなく、新しい形態に転換しようとする動きを加速するためのカギを握る。

*6-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20210118&ng=DGKKZO68247360Y1A110C2MM8000 (日経新聞 2021.1.18) オフィスビル電力、脱炭素、三菱地所、丸の内30棟 テナント誘致の柱に
 大手不動産会社が保有物件で使う電力を一斉に再生エネルギーに切り替える。三菱地所は2022年度にも東京・丸の内に持つ約30棟で、東急不動産も25年ごろに全国の保有施設全てを再生エネ仕様とする。入居企業が多いオフィスビルの大規模な脱炭素化は波及効果も大きい。都市部に多い金融や飲食などサービス業などの再生エネ活用を後押ししそうだ。三菱地所は「新丸ビル」「丸の内オアゾ」など丸の内地区の約30棟で切り替えを進める。対象ビルの19年度の使用電力は計約4億キロワット時で、家庭なら10万世帯強に相当する。二酸化炭素(CO2)排出量は約20万トンだった。21年4月から18棟で再生エネ由来に順次変更し、22年度にも残りのビルの電力を切り替える。当初は丸の内エリアで年数棟ずつ切り替える計画だったが、政府の方針などを受け前倒しで進める。電力はENEOSが手掛けるバイオマス発電などで調達する。東急不動産でも、21年4月に本社が入る「渋谷ソラスタ」など計15物件の電力を再生エネに変える。25年をメドにスキー場やホテルも含め、全国に保有する全施設の電力を再生エネに変更する。当初の目標達成時期の50年から大幅に早める。開発中を含め風力や太陽光など50を超える再生エネルギー発電事業に参加しており、こうした電源を活用する。再生エネを使うことで電気利用のコストは上がる。水力や風力発電は火力発電より発電費用がかかるからだ。企業が再生エネからの電力を購入する方法の1つの「非化石証書」がついた電力は、通常の電力より約1割高くなるという。両社は増加するコストをテナントに転嫁しない方針だ。政府が温暖化ガスの排出を50年までに実質ゼロにする方針を示し、オフィスの脱炭素化を立地や設備などと並ぶテナント誘致の柱と位置づける。他の不動産会社も脱炭素を急いでいる。三井不動産は「東京ミッドタウン日比谷」で再生エネを導入する。東京・丸の内の「鉄鋼ビル」を運営する鉄鋼ビルディングも1月に導入済みだ。オフィスで使われる電力は企業・事業所が使う電力の約6%を占める。三菱地所によると丸の内地区だけで金融やサービス業など千社以上が活動し、多くの企業の再生エネ利用につながる。日本不動産研究所によると全国には3千平方メートル以上のオフィスビルが約1万600棟あり、今後こうした物件が再エネ対応に変われば効果は大きい。再生エネの発電量に占める割合は19年度速報値で18%だった。経済産業省は50年の発電量に占める再生エネの割合を約5~6割に高める案を示している。安定した電力を確保しながら日本の産業全体で脱炭素を進めるために、再生エネの拡大に加え、電力を効率的に使う蓄電などの技術開発が不可欠になる。

*6-3:https://news.yahoo.co.jp/articles/8852bada16588a58cf7e94380c1ffb8696679e6c (Yahoo 2021/1/14) 日産「ゴーン解任計画」極秘文書を入手
日産自動車の前会長、カルロス・ゴーン被告のレバノンへの逃亡からおよそ1年が経ち、主役不在の裁判がヤマ場を迎えています。ゴーン被告の報酬隠しに関与したとして、金融商品取引法違反の罪に問われた元代表取締役のグレッグ・ケリー被告らの裁判がきょう東京地裁で開かれ、元CEOオフィス担当で、現在専務を務めるハリ・ナダ氏が証人として出廷しました。ハリ・ナダ氏はゴーン被告らのかつての腹心で、検察との司法取引に応じた事件のキーマンともいえる人物です。テレビ東京は今回、このハリ・ナダ氏が取りまとめていたとみられる「ゴーン解任計画」とも呼べる極秘文書を独自に入手しました。ゴーン被告ら逮捕の半年前に作られたこの極秘文書にはゴーン被告を解任するまでのシナリオが細かく記載され、社内で周到な準備の元、解任を入念に検討していたことをうかがわせるものです。

*6-4:https://www.nichibenren.or.jp/document/statement/year/2020/201216.html (日本弁護士連合会会長 荒 中 2020年12月16日) 大飯原発設置変更許可取消訴訟大阪地裁判決に対する会長声明
 大阪地方裁判所は、本年12月4日、国に対し、関西電力大飯原子力発電所(以下「大飯原発」という。)3号機及び4号機の設置変更を許可した原子力規制委員会の処分を取り消す判決(以下「本判決」という。)を言い渡した。福島第一原子力発電所事故後、原子力発電所(以下「原発」という。)の安全確保に問題があるとして民事訴訟ないし仮処分において運転差止めを認めた事例はこれまで5例あるが、行政訴訟としては初めて、原発の設置(変更)許可処分を取り消す判決が言い渡されたものであり、その意義は大きい。当連合会は、2013年に開催された第56回人権擁護大会において、原発の再稼働を認めず、できる限り速やかに廃止すること等を内容とする決議を採択した。また、2014年に福井地方裁判所が大飯原発3号機及び4号機の運転差止めを命じる判決を言い渡した際、これを評価する会長声明を公表し、同年の第57回人権擁護大会においても、行政庁が依拠する特定の専門的技術見解を尊重して判断する方法を改め、今後は、科学的・経験的合理性を持った見解が他に存在する場合には、当該見解を前提としてもなお安全であると認められない限り原発の設置・運転を許さないなど、万が一にも原発による災害が発生しないような判断枠組みが確立されること等を求める宣言を採択した。本判決は、1992年10月29日の伊方発電所原子炉設置許可処分取消請求事件に関する最高裁判決の判断枠組みに従い、原子力規制委員会の判断に不合理な点があるか否かという観点から審理、判断をしている。原子力規制委員会が制定した「基準地震動及び耐震設計方針に係る審査ガイド」(以下「地震動審査ガイド」という。)によれば、地震規模の設定に用いる経験式は平均値としての地震規模を与えるものであり、経験式が有するばらつきも考慮されている必要がある。にもかかわらず、経験式に基づき算出された地震モーメントの値に何らかの上乗せをする必要があるか否か等について何ら検討することなく、本件申請が設置許可基準規則4条3項に適合し、地震動審査ガイドを踏まえているとしたことは、原子力規制委員会の調査審議及び判断の過程に看過し難い過誤、欠落があると判示したもので、福島第一原子力発電所事故後初めて原発の設置(変更)許可処分を取り消した判決として評価に値する。当連合会は、原子力規制委員会に対し、本判決を受けて地震動審査ガイドに適合しない原発の設置許可を自ら取り消すことを求めるとともに、政府に対して、従来の原子力に依存するエネルギー政策を改め、できる限り速やかに原発を廃止し、再生可能エネルギーを飛躍的に普及させること、及びこれまで原発が立地してきた地域が原発に依存することなく自律的発展ができるよう、必要な支援を行うことを強く求めるものである。

*6-5:https://www.agrinews.co.jp/p52932.html (日本農業新聞 2021年1月15日) 実習生ら対象 外国人入国停止 人手不足深刻化も
 新型コロナウイルスの感染拡大を受け、政府は14日、ビジネス関係者らに例外的に認めていた外国人の新規入国を一時停止した。この例外措置の対象には技能実習生も含まれており、昨年11月から今月10日までにベトナム、中国などから実習生約4万人が入国していた。入国制限で生産現場の人手不足に拍車がかかる可能性があり、農水省は影響を注視している。
●農水省 支援活用促す
 政府は、コロナの水際対策の入国制限を昨年10月に緩和し、全世界からのビジネス関係者らの入国を再開。感染再拡大を受けて12月28日には一時停止したが、中国や韓国、ベトナム、ミャンマーなど11カ国・地域のビジネス関係者らの入国は例外的に認めていた。だがこの措置も14日から、宣言解除予定の2月7日まで停止した。この例外措置の対象には技能実習生も含まれる。出入国在留管理庁の統計によると、例外措置で入国したのは、昨年11月から今年1月10日までに10万9262人。うち技能実習生は4万808人で、全体の37%を占める。留学などを上回り、在留資格別で最多だった。国別に見ると、ベトナムが3万6343人、中国が3万5106人で、うち技能実習生はベトナムが2万911人、中国が9322人。農業分野の技能実習生も含まれるとみられる。11カ国・地域に限定後の12月28日~1月10日にも、技能実習生として計9927人が入国している。農水省は、農業にも影響が及ぶ可能性があるとみる。昨年3~9月は2900人の技能実習生らが来日できず、人手不足が問題となった。今年の見通しは不透明だが、「外国人を受け入れている経営は全国的に多い」(就農・女性課)として状況を注視する。一方、同省は技能実習生の代替人材を雇用したり、作業委託したりする際の労賃などを一定の水準で支援する「農業労働力確保緊急支援事業」の対象期間を3月末まで延長。農家らに活用を呼び掛ける方針だ。

*6-6:https://digital.asahi.com/articles/ASP1H7RTJNDZUHNB00B.html (朝日新聞 2021年1月16日) 迫害受ける同胞、日本から支える ロヒンギャの指導者
 「ふるさとに帰りたいけど、帰れない。殺されるかもしれないから」。群馬県館林市苗木町の会社社長水野保世(ほせ)さん(52)の本名は「アウンティン」。仏教国のミャンマーで迫害されている少数派のイスラム教徒ロヒンギャだ。来日28年。館林には1999年から住んでいる。当時、館林に住むロヒンギャは数人だった。迫害を逃れて偽造パスポートなどで来日する人が続き、「2006年までに70人のロヒンギャが住むようになった」とアウンティンさん。01年にロヒンギャの妻と結婚し、3人の子どもに恵まれた。他にもロヒンギャの女性を呼び寄せて結婚した男性は多い。子どもが増え、270人を数える日本最大のロヒンギャコミュニティーになった。立場はさまざまだ。定住や永住の在留資格を持つ人、不法滞在ながら一時的に拘束を免れている「仮放免」の人……。仮放免状態だと就労や国民健康保険への加入ができない。生活費や医療費を仲間が支える。アウンティンさんは、立ち上げに関わった「在日ビルマロヒンギャ協会」の副会長として、難民認定を日本政府に働きかけている。コミュニティーが大きくなる過程で、地域住民からは「どういう人たちなのか」と不安がる声のほか、ゴミの分別や夜間の騒音に対する指摘もあった。ロヒンギャの中には車の運転に免許が必要だと知らない人もいた。「認めてもらうにはルールを守ることが大事。そうしないと、みんな幸せになれない」。アウンティンさんは、そう仲間に説いて回った。アウンティンさんが故郷を遠く離れたのは、故国の民主化運動がきっかけだった。高校生だった88年に始まった運動に身を投じた。何人もの仲間が軍政下の弾圧で殺され、自身も3回拘束された。命の危険を悟り、90年7月に単身タイへ。マレーシア、バングラデシュ、サウジアラビアを経て、92年11月に知人を頼って来日した。茨城・日立、埼玉・大宮、そして館林。「英語はあまり通じないし、お祈りする場所もない。来てすぐのころは困ってばかりだった」。だからこそ、仲間のために尽くし続けている。工場で必死で働いてためたお金で06年、中古の車や家電を輸出する会社をつくった。07年には市内の中古住宅を購入し、イスラム教の礼拝所であるモスクに改装した。モスクでは子ども向けの「アラビア学校」も開く。平日の午後6~8時、イスラム教の教えや祈りの作法を教える。食事もイスラム教の戒律に従い、口にするのは「ハラル」と呼ばれる料理に限られる。市内にはハラル食を扱うスーパーもできた。館林市学校給食センターによると、地元の小中学校の給食には戒律で禁じられている食材が使われることもあるため、弁当を持参する子どもが多いという。故国でのロヒンギャへの迫害や差別は続く。18年にはクラウドファンディングで集めた資金と私財でバングラデシュのロヒンギャ難民キャンプに学校を建設。生活物資や新型コロナウイルス対策のためのマスクを送る活動も続ける。15年、日本国籍を取得した。「ミャンマーでは自由に活動ができない。日本人になってロヒンギャ支援とミャンマーの民主化のための活動を続けよう」。そう決意したからだ。「日本には自由がある。平和であることは、何より素晴らしいことです」

<農業について>
PS(2021年1月21、22日追加):*7-1のように、1965年に73%だった食料自給率は35年間で38%に半減し、食料安全保障に関わる重大な問題となっている。しかし、新型コロナ感染拡大で外食が減っても食べる量に大差はないので家庭向需要は増えた筈だが、こちらは所得に見合った単価の外国産を購入したり、食べたいものを我慢したりしているのだ。つまり、日本産は、日常使いには価格が高すぎ、会社が交際費か福利厚生費として支出する会食や贈答用が多かったということで、その価格を維持すれば個人消費者の需要は増えない。また、日本の農業の問題点は、生産過剰の米を作りたがって足りない農産品を作りたがらないことで、日本政府の食料自給率軽視政策も誤ってはいるが、米以外の必要なものを作って成り立つ経営改革も必要だ。
 その改革の内容は、①付加価値の増大 ②副産物の生産 ③生産性の向上 ④無駄の排除 などが考えられ、①は、的確な農産品ミックスや加工・冷凍することによる無駄の排除、②は、農地での再エネ生産などで収入を増やすことだ。そのため、*7-3の2021年度内に庁内で使う全電力を再エネにして脱炭素化する目標は、経産省・環境省だけでなく農水省・国交省も立て、農地・山林・離島・洋上などでの再エネ製造と課題解決法を省を挙げて検討すべきだ。
 また、③は、*7-2-1・*7-2-2のように、農業を全自動化することが考えられ、それができるためには全自動化に適した大区画にする必要があり、大区画化の準備は私が衆議院議員時代の2005~2009年に既に始めていた。そして、5GやGPSを使わなくても農地のポイントに電波の発信源を設置しておけば全自動化はできる筈で、大規模な農地内に農機具倉庫を作れば無人トラクターが公道を走る必要もない。なお、コンバインで刈り取り始めてからコメの食味を判定する必要はなく、1台1000万円以上になると収益から支払うことができないほど高価な機械となって使えない。農機具は使う時期が同じであるためシェアリングには向かず、価格が高すぎると農機具も機能を絞った安価なものを外国から買うしかなくなるのだ。なお、*7-2-3のような中山間地は、農地を大区画化しにくいため、それにあった作物やスマート化が必要になる。もちろん、5Gを利用できるに越したことはないが、必要な場所に基地局を建てる方法もあり、これもまた1基数千万円では、日本は何もできずに遅れた国になるしかないのである。
 なお、③の生産性の向上には、国際競争力ある賃金で働く労働者が無駄なく働ける環境づくりも必要で、*7-4のような「派遣労働」は季節によって労働力のニーズが異なる農業分野で有効だ。労働者も技術を習得するまでは多くの経営体を見た方が知識や経験の蓄積ができ、技術を習得したら帰国するのではなく地域に根付いてもらった方が労働力の質が上がる。
 2021年1月21日、日本農業新聞が、*7-5のように、「高知県がベテランの技やJAの出荷データをクラウドに集約して経営の“最適解”を計算する「IoPクラウド」を産官学連携で構築した」と記載している。知識や経験による原理の理解がなければシステムがブラックボックス化してしまうので脱知識・脱経験は無理だと思うが、多種の作物を生産する中山間地で有効なツールであり、他県も参考にできるだろう。

  

(図の説明:左図は、大豆畑のドローンによる消毒風景、中央の図は、全自動コンバインによる米の収穫、右図は、中山間地葡萄畑の自動収穫ロボットだ)

 

(図の説明:左図は、中山間地の放牧と風力発電機のある風景、右図は、カイコの付加価値の高い新しい使い方で、牛乳やカイコに新型コロナウイルスの免疫を含ませる方法もあると思う)

*7-1:https://www.agrinews.co.jp/p52822.html (日本農業新聞論説 2021年1月4日) [コロナ以後を考える] 食料自給率の向上 草の根の行動広げよう
 わずか、38%。1965年に73%だった食料自給率は35年間で半減してしまった。自給率の向上がなぜ必要か。どうすれば高まるか。農家は当事者意識を一層高め、国産回帰の大切さを改めて認識し、行動しよう。新型コロナウイルスの感染拡大で外食や土産物需要が落ち込み、小豆や酒米、乳製品などさまざまな農産物の在庫が膨らんだ。保管が可能な穀類などは過剰在庫を早急に解消しなければ、需給緩和と価格低迷は長期化する。しかし特効薬はない。食料・農業・農村基本計画は、2030年までに自給率を45%に高める目標を掲げる。一方で生産しても需要の減少で過剰在庫を抱え、一部作物では保管する倉庫すら逼迫(ひっぱく)。生産現場からは、自給率目標は「絵空事のように映る」(北海道十勝地方の農家)との声が上がる。自給率目標45%を政府は2000年に初めて設定したが、高まるどころか低下してしまった。自給率向上の糸口を今年こそ見いだしたい。異常気象や災害の世界中での頻発や、人口増加、途上国の経済発展、そしてコロナ禍で見られたような輸出規制などを踏まえれば、いつでも安定的に日本が食料を輸入できるわけではないことは明白だ。国内農業の衰退は国土保全や農村維持など多面的機能の低下も招く。自給率の低迷は、食料安全保障の観点からも国民全体の問題だ。一方、その向上には需要の掘り起こしと、それに見合った生産の増加が不可欠で、農家が一翼を担う。自給率向上のヒントとなるのが北海道の取り組みだ。道内の米消費量に占める道産は、90年台は37%だったが、19年度は86%まで高まった。道目標の85%を8年連続で上回る。生産振興とともに、地道な消費拡大の活動を長年続けてきたことが成果に表れた。小麦も外国産から道産に切り替える運動を展開。道民の小麦需要に対する、道内で製粉した道産割合は5割前後となった。地元産だけを使ったパン店などが人気で、原料供給地帯でも地産地消の流れを育む。コロナ禍でも地元消費の動きが目立つ。例えばJA浜中町女性部。脱脂粉乳の在庫問題を契機に牛乳消費拡大からバター、スキムミルクなど乳製品の需要喚起に活動の軸足を移し、乳製品レシピを町民に配布。地域内での需要拡大を目指す一歩だ。他にも施設などに道産の花を飾ったり、インターネットなどでJA組合長が牛乳や野菜の簡単調理を紹介したりといった取り組みを道の各地が進めた。地産地消を広げようと農家が知恵を絞り、消費の輪を広げる活動だ。JAグループ北海道がけん引役を担い、農家や農業のファンを増やす運動も昨年始めた。自給率向上は政府の責務であり、十分な支援が必要なことは言うまでもない。ただ、農家の草の根の行動が大きな力になる。自分や仲間でできることを実践することが一歩になる。

*7-2-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20210121&ng=DGKKZO68353050Q1A120C2TJ1000 (日経新聞 2021.1.21) クボタ、デジタル農業開拓、「考える」トラクター、作付け分析ドローン エヌビディアとAI磨く
 クボタが無人トラクターを開発し、ビッグデータを駆使したデジタル農業の実現を目指している。米半導体エヌビディアの人工知能(AI)で自動運転技術を磨く。作付けを分析するドローンや農家が経営を管理できるソフトと組み合わせ、農機を売るだけのビジネスモデルからの脱却を目指す。高齢化で働き手が不足する日本の農業も変える。
●5Gも活用
 2020年11月、北海道岩見沢市。一見すると何の変哲もないトラクターが大豆畑の農道を走る。よく見ると運転席の男性はハンドルに触れていない。トラクターは自動で動くように設定され10キロメートル離れた場所からオペレーターが遠隔監視する。クボタの農機を使った自動運転の実験だ。トラクターには高精細カメラを付け、高速通信規格「5G」も駆使する。クボタの北尾裕一社長は「10年後には、さらにレベルの高い無人自動運転を実現させたい」と話す。農機の自動運転技術は、メーカーなどの間でレベルが1から3に区分される。レベル1はハンドル操作の一部を自動化して直進をキープする技術で既に普及している。レベル2は農場で人が監視する形で自動運転する。レベル2は国内でクボタが17年にヤンマーホールディングスなど競合に先駆けて「アグリロボトラクタ」を投入し、作業時間を30%短縮できる。レベル3は人や動物、トラクターの衝突を避けるため、オペレーターが遠隔で無人運転を監視する必要がある。現在は実現しておらず、無人で公道を走行できないなどの規制もあるが、クボタは将来の規制緩和を見据えて実験などを重ねる。5GでNTTグループと連携し、自動運転に欠かせないAIでエヌビディアと組んだ。今後、自動運転に必要となる莫大な走行データを集める。自動車の場合、前方の車や横断歩道、標識など多くの目印がある。農機はぬかるんだ地面を走行し、農地は広く開けた土地のため目印も少ない。あぜ道に入り込む可能性もある。「AIでトラクターが状況を賢く判断する能力が必要だ」(クボタの佐々木真治取締役)
●スパコンで解析
 そこでクボタはエヌビディアの技術を駆使し、まず農地などの映像や画像をAIに覚えさせる。高度なディープラーニング(深層学習)が可能なエヌビディアのスパコンで解析し、トラクターが自ら状況判断できるように「頭脳」を作る。トラクターには、サーバーではなく、農機の本体側で素早く動作を指示する「エッジAI」と呼ぶ技術を搭載する。駆動部分に指示を出して「走る」「止まる」などの操作を判断するイメージだ。遠隔で監視するが、基本は「自ら考えるトラクター」を作る。クボタは無人農機を軸に、データで生産性を上げるデジタル農業を実現させる。日本総合研究所は30年の農業就業人口が123万人と15年比で4割減ると予測。単に農機を売るだけではじり貧になる。日本総研の前田佳栄コンサルタントは「自動運転の農機、ドローン、ロボット、経営管理ソフトによる農家の生産性向上が必要」と話す。クボタのコンバインは収穫したコメの水分などから食味を計測できる。収穫量とあわせクラウドにデータを自動で送信する。農家はどの田んぼからどのような味のコメが収穫されるか、全地球測位システム(GPS)で情報を整理し、ソフトで作業記録と照合して確認できる。農機の自動化が進めば、人件費の削減効果を確認し、農家の経営の見える化が進む。ドローンの活用も急ぐ。昨年、ドローンの撮影画像で作付けの状態を分析し、農家に農薬散布量などを提案するイスラエルのスタートアップに出資した。無人農機との連携が期待できる。将来は天候データの分析を視野に入れる。温暖化でコメのでんぷんの蓄積不足、果樹の着色不良といった被害が出始めている。データで原因を分析し、解決手段を探る。国内農家の平均年齢は70歳近い。コメなどを作る白石農園(北海道新十津川町)の白石学代表は「限られた人数で広い面積を耕す農業が不可欠になる」と話す。デジタル農業の実現に向け、残された時間は多くない。

*7-2-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20210121&ng=DGKKZO68353100Q1A120C2TJ1000 (日経新聞 2021.1.21) 無人農機、主導権争い
 世界では食糧不足を背景に小麦やトウモロコシの生産で大規模農地を効率良く耕す農機の需要が増える。クボタは世界のトラクター市場が27年に190万台(16年で140万台)になるとみる。世界の農機市場は10兆円を超すとの見方もある。農業では明確な自動運転のロードマップやルールがグローバルで共有されていない。無人農機で先手を取れば、主導権を握ることも期待できる。農機で世界首位の米ディア、2位の欧州CNHインダストリアルも研究開発を進め、競争は激しい。米シリコンバレーのスタートアップを中心に農作物を自動で収穫するロボットの開発も進む。課題は価格だ。クボタの自動運転農機、アグリロボトラクタは1台1000万円以上する。AIの活用で農機自体の価格が上昇する可能性もある。普及にはシェアリングの活用なども必要になりそうだ。

*7-2-3:https://www.agrinews.co.jp/p52927.html (日本農業新聞 2021年1月15日) 5G 地方展開いつ? 中山間地こそ「スマート」必要
 中山間地の農家が、スマート農業を使いこなすのに必要な第5世代移動通信システム(5G)を利用できないのではないかと、不安視している。人口が少ない地域は通信会社の実入りが少なく、電波網の整備が後手に回りがちだ。自治体主導で必要な基地局を建てる手もあるが、1基数千万円かかるなど負担が重い。「条件不利地こそ先進技術が必要だ」──農家らはスマート農業推進を叫ぶ国の姿勢をいぶかる。
●技術導入したいが 環境整わず 佐賀県嬉野市
 佐賀県嬉野市の岩屋川内地区。同地区に畑を持つ茶農家の田中将也さん(32)は、スマート農業の技術で収穫の負担が大きく減らせることに期待するが「今のままでは普及は難しい」とみる。畑に出た時に携帯電話がつながらず、連絡が取れない経験を何度もしているからだ。山間部にあるため携帯電話の基地局の電波を受信しにくく、現状でも通信環境が悪い。スマート農業で多用されるドローン(小型無人飛行機)には1~4レベルの設備環境がある。数字が大きいほど通信速度が速く安定しており、補助者がいなくても事前のプログラム通りに自律飛行できる。高解像度の画像を収集でき、利便性が高まる。高レベルの活用には最先端の5Gが必要だが、普及は始まったばかり。正確なカバー率はつかめないが、大手通信会社は5G展開の指針に、人口を基準にした目標に掲げる。そのため、大都市圏を優先した整備になり、地方は置き去りにされやすい。現在の携帯電話さえつながらない「不感地域」は全国に残っており、約1万3000人(総務省調べ、2018年度末)が不便を強いられている。総務省東北総合通信局によると、東北地方が最も不感地域が多いという。
●工事期間、費用基地局開設に壁
 嬉野市は総務省の「携帯電波等エリア整備事業」などを使いながら改善を進めるが「基地局を一つ開設するのに8000万円近くかかる」(市担当者)こともあり、早急な解決は難しい。農水省九州農政局のスマート農業担当者は「効果的に普及させるためにも高速通信は不可欠。山間部などの通信環境を整えることは必要だ」と指摘するが、通信網整備の所管は総務省となるためか、具体的な改善策については口をつぐむ。整備の遅れについて、ある通信大手は「5Gネットワークの全国整備には膨大な数の基地局が必要で、長期工事と多額の投資を伴う」とコメント。別の企業も「山間部では基地局整備に必要な光ファイバーなど伝送路の確保が難しい」とする。だが嬉野市の田中さんは「中山間農業の課題解決のためにもスマート農業は必要。本気で普及を考えるなら、通信環境を早期に改善してほしい」と訴える。
<ことば>5G
 次世代の通信規格。日本では2020年3月からサービスが始まった。大容量・高速通信が可能。最高伝送速度と通信精度は現行(4G)の10倍。一方で、5Gが使う高周波数帯は障害物に弱い。波長が短く通信範囲が狭い特性があり、従来より多くの通信基地が必要になる。

*7-3:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20210121&ng=DGKKZO68351170Q1A120C2EE8000 (日経新聞 2021.1.21) 経産省、使用電力を脱炭素 来年度、「50年ゼロ」へアピール
 経済産業省は2021年度、庁舎内で使う全ての電力を再生可能エネルギーなど温暖化ガスを排出しない「ゼロエミッション電源」に切り替える。政府は50年に温暖化ガスの排出を実質ゼロにする目標を掲げる。実現を主導する立場の経産省が率先して脱炭素化に取り組む。経産省は使用電力の少なくとも30%以上を再生エネ、残りを原子力も含めたゼロエミッション電源でまかなう。対象となる施設は東京都内にある総合庁舎と特許庁庁舎の2カ所で、使用予定の電力量は年間で計2400万キロワット時に及ぶ。一般家庭およそ7千~8千世帯分に相当する。2月下旬にも電力の供給元となる小売事業者を入札で決める。国内外の民間企業では脱炭素社会の実現に積極的な姿勢を示すため、事業に伴う電力消費を再生エネなどに切り替える動きが相次いでいる。政府は21年度から各府省庁の電力調達で再生エネ比率を3割以上に高める方針を示している。経産省は政府方針を上回る脱炭素目標を掲げることになる。オフィスなど業務部門の脱炭素化は工場のような産業部門に比べて遅れ気味だ。1990年度と2019年度の二酸化炭素排出量を比べると、業務部門は1.3億トンから1.9億トンに増えた。産業部門が5億トンから1億トン超減らしたのとは対照的だ。中央省庁では環境省も脱炭素に率先して取り組んでいる。30年までに使用電力を全て再生エネに切り替える方針を19年に示している。本省の庁舎だけでなく、地方事務所や関連施設も対象だ。脱炭素社会に向けて中央省庁が率先して取り組み、企業や家庭など社会全体の再エネ普及を促す。

*7-4:https://www.agrinews.co.jp/p52976.html (日本農業新聞 2021年1月19日) 農業の特定技能「派遣」 広がる 短期雇用も柔軟 手続き負担減
 外国人の新在留資格「特定技能」の農業分野で認められた「派遣」が広がっている。農家は直接雇用に比べ事務手続きなどの負担が少なく、雇用期間を柔軟に調整できる。農繁期が異なる北海道と沖縄など地域間で連携した受け入れも進む。派遣に参入する事業者も増え、専門家は「これまで外国人を入れてこなかった家族経営でも受け入れが広がる」と指摘する。
●外国人材 大きな力
 畑作が盛んな北海道浦幌町の選果施設。次々とコンベヤーで流れてくるジャガイモを段ボール箱に手際よく詰めるのは、カンボジア人のレム・チャントーンさん(26)だ。「将来は帰国してビジネスを立ち上げたい。分からないことも周りに聞くと、よく説明してくれる」と笑顔で話す。チャントーンさんらは特定技能の資格を得た外国人。道内各地で農業生産・販売の他、作業受託をする「北海道グリーンパートナー」が、人材派遣会社の「YUIME(ゆいめ)」から受け入れた。8~10月の農繁期には150人もの人手が必要な北海道グリーンパートナーは、YUIMEからの提案で、技能実習生だった特定技能の派遣を2019年に11人、20年に23人受け入れた。YUIMEの派遣は、夏は北海道、冬は本州や沖縄で働くのが基本だ。ジャガイモの選果など冬場でも仕事がある場合は、道内で通年で働くこともある。直接雇用では通年で仕事を用意しないと外国人の受け入れは難しいが、派遣なら必要な時期を決めて契約を結べる。北海道グリーンパートナー代表の高田清俊さん(59)は「外国人にとっても、さまざまな農家で働くことで、より豊かな経験を積むことができる」と評価する。受け入れ側は面接や入国手続きなど事務負担が少ないのもメリットだ。北海道グリーンパートナーに組合員の農作業を委託するJAうらほろの林常行組合長は「人手不足を解消し、付加価値の高い販売に力を入れたい」と期待する。
●各地で参入の動き
 一定の技能を持ち、即戦力としての労働が認められている特定技能の仕組みは、19年に始まった。農業分野では、農業者が雇用契約を結び直接雇用する方法と、雇用契約を結んだ派遣業者が受け入れ機関となり農家に派遣する方法の、2種類がある。派遣では、繁忙期の違う地域に季節ごとに人材を送り出せる。農業分野の特定技能は、制度発足から1年半の20年9月末時点で1306人。農業分野の受け入れ事業者が加入する「農業特定技能協議会」のうち、10社ほどが派遣事業者だ。YUIMEは、農業分野の技能実習生だった外国人を採用。給料や待遇は日本人と同等の扱いで、現場のリーダーになる人材を育てている。住まいは、受け入れ農家に住宅の敷地内にある持ち家などを用意してもらい、YUIMEが借り入れる。北海道以外でも派遣は進む。アルプス技研は、2019年4月から特定技能の派遣事業に参入。現在は子会社の「アグリ&ケア」が9道県に49人を派遣する。JA北海道中央会も、特定技能のあっせん・派遣をする新組織の立ち上げを目指す。北海道稚内市の酪農家・石垣一郎さん(39)が経営する「アグリリクルート」は、21年から派遣事業に乗り出す。
●家族経営も 活用しやすい 北海学園大学の宮入隆教授の話
 入国手続きや労務管理の一部を派遣事業者に任せられるため、家族経営が外国人を受け入れるハードルが下がった。季節雇用、通年雇用問わず、広がっていくことは間違いない。一方で事業者は、各地に移動する特定技能の外国人の心理的な負担を考慮すべきだ。

*7-5:https://www.agrinews.co.jp/p53011.html (日本農業新聞 2021年1月21日) ベテランの技、JA出荷データ… クラウドへ集約し経営に“最適解” 高知で始動
 高知県は20日、産官学で連携して構築を進めてきた「IoPクラウド(愛称=サワチ)」を始動させたと発表した。農家の栽培ハウスから得られる園芸作物データや環境データの他、JAからの出荷データなどを集約。人工知能(AI)を使って地域に最適な栽培モデルを示し、営農指導に役立てる。収穫量予測もでき、作物の販売にも活用する。
●脱・経験依存、収穫予測も
 IoPは、ナスやピーマン、キュウリなど園芸作物の生理・生育情報をAIで“見える化”するもの。2018年から構築を目指し、JAグループ高知や県内各大学、農研機構、東京大学大学院、九州大学、NTTドコモなどと連携している。県は当面、①データ収集に協力する農家約30戸の作物の花数、実数、肥大日数などの作物データ②約200戸のハウスの温湿度、二酸化炭素濃度などの環境データ③園芸作物主要6品目の全農家約3000戸の過去3年の出荷データ──などを収集し活用する。農家はスマホやパソコンから、クラウドに送られたハウスの環境データだけでなく、異常の監視と警報、ボイラーやかん水など機械類の稼働状況に加え、出荷状況などが確認できる。県やJAの指導員も、戸別の経営診断や産地全体の経営分析などに生かす。22年からの本格運用を目指しており、最終的には、県内の園芸農家約6000戸のデータを連係させる。県は、「経験と勘の農業」からデータを活用した農業への転換を進めるとしている。クラウドは県内の営農者、利活用を希望する企業などが利用できるが、まずはデータの収集に協力している約200戸の農家から利用を始める。3月末から、新規利用の申し込みができる予定だ。農家がクラウドの機能を活用するのは無料。通信分野でシステム構築に協力したNTTドコモは希望者に対し、JAなどに出向いた「IoP教室」を開く。JA高知県の竹吉功常務は「営農、販売でいかに活用できるかがポイント。技術の継承、出荷予測などにも使える。農家に還元できるよう、十分生かしていきたい」と強調する。

<安全保障について>
PS(2021年1月22、24日追加):エネルギーや食糧の自給率向上は安全保障の上で重要だが、経産省・メディアは“保護主義”として自給率向上を目指すことを批判してきた。そして、*8-1-1のように、日経新聞が、①米中対立が脱炭素の足かせになる ②EVや風車は高性能磁石・モーターから材料のレアアース(希土類)に至るまで中国がサプライチェーン(供給網)の要を担っている ③中国に世界のレアアースの生産の6割強、精製工程の7~8割が集中し、EV向けに限れば精製工程をほぼ独占 ④経産省は「米欧の安定調達への対策に日本も相乗りできないか」と米国防総省も絡んだレアアース精製事業への参加を働きかけている ⑤日本は2010年に尖閣諸島を巡る対立で中国がレアアースの輸出を止めて以来、中国が9割を占めた調達先の分散やリサイクルを加速してきた などと記載している。
 しかし、*8-1-2のように、中国は尖閣諸島だけでなく沖ノ鳥島のEEZでも明らかに地下資源の調査をし、いざという時には戦闘する準備も行って、必要な資源を入手する最大の努力をしているのだ。一方、日本の経産省は、「日本は資源がない国」「調達先を分散して輸入した方が安くつく」などとうそぶき続けており、資源の価値もわからず、製造業は既に海外に移転したことも認識していない状態であるため、この結果は日本政府の政策ミスなのである。
 このような中、「日本側が無断で調査を繰り返す中国に抗議した」と主張しているのは、「無断でなければ、この調査に同意することもあり得る(これが世界標準の解釈だ)」ということなのか? さらに、「尖閣諸島に領土問題はない」と言うのなら、「この状態を認めている(世界標準の解釈)」ということだ。それでも日本側が、「米中対立がいけない」などと第三者のようなことを言うのであれば、「日本は米中対立で、むしろ迷惑している(世界標準の意味)」ということだ。しかし、自国の領土を護ることを放棄するのであれば、憲法改正どころか自衛隊もいらないのではないだろうか?
 なお、*8-2のように、中国は、5Gの通信網やEV充電設備などの次世代インフラへの投資を170兆円に大幅に増やすなど、的確な判断をしている。一方、日本は、やみくもに営業時間短縮を強制して莫大なばら撒きを行っているにすぎない。そのため、これらの結果が次にどう出るかは、誰でもわかることである。
 一方、米国務省のプライス報道官が、*8-3のように、「中国の圧力が地域の安定を脅かしている」として、台湾への軍事・外交・経済的圧力を停止するよう中国に求める声明を発表し、台湾との関係強化も表明したそうだ。台湾は独立国であるため当然の対応であり、この点で中国に同調してきた日本政府は長いものに巻かれて民主主義を大切にしないように見える。さらに、日本の政府・メディアが民主主義や基本的人権を大切にしないのは、日本国民に対しても同じであるため、これについてこそ厳しく指摘せざるを得ない。

 
 2020.6.18朝日新聞  2020.7.2.20ペリカンメモ        NNN

(図の説明:左図は尖閣諸島で、中央の図は尖閣諸島に出没して領海侵犯している中国海警局の船及びそれを追尾する日本の海上保安庁の船だ。右図は南鳥島で、海底にレアアースが大量に分布していることを東大が発見した。日本政府は、ぼーっとして現状維持を決め込んでいる間に、すべてを手遅れにしそうである)

*8-1-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20210119&ng=DGKKZO68280440Y1A110C2EA1000 (日経新聞 2021.1.19) 米中対立、脱炭素の足かせ、EVや風車の部品・材料調達に影
 米中対立が各国の脱炭素の動きのアキレスけんになるとの懸念が広がっている。需要急増が見込まれる電気自動車(EV)や風車は主要部品の高性能磁石、モーターから材料のレアアース(希土類)に至るまで中国がサプライチェーン(供給網)の要を担うからだ。米欧は安定調達への対策を強化する。日本も戦略の再構築が急務だ。「何とか相乗りできないか」。経済産業省は日本の化学メーカーなどに、米国防総省も絡んだレアアース精製事業への参加を働きかけている。
●日本も対応急ぐ
 オーストラリア産のレアアース鉱石を米テキサス州の工場で処理し、磁石の性能を高めるジスプロシウムなどを取り出す計画。豪ライナスが米社と組み、中国依存を脱したい米政府が後押しする。ここに日本企業も加われば安定調達に役立つと経産省は期待する。中国には世界のレアアースの生産の6割強、精製工程の7~8割が集中し、EV向けに限れば精製工程をほぼ独占する。脱炭素による需給逼迫と米中対立のダブルパンチで供給が断たれるリスクに各国は対応を急ぐ。菅義偉首相は温暖化ガス排出量を2050年までに実質ゼロにすると表明した。30年代半ばに全ての新車を電動車にする。欧州や中国のほかバイデン政権下の米国もEV化を進める見通しだ。カナダの調査会社アダマス・インテリジェンスは世界のEVの年間販売台数は30年に3450万台と20年の7倍になり、ネオジムやジスプロシウムの需要は代替品が普及しても5倍になると予想する。風力発電などへの需要増もあり供給が慢性的に不足し、市場価格も上昇が続くとみる。危機感を強める欧州連合(EU)は昨年11月、企業と政府による「欧州原材料アライアンス」を始動させた。30の重要資源について域内外の友好国・企業と協力し調達やリサイクルを促す。米トランプ政権も9月にレアアースの自主調達を促す大統領令を発令、カリフォルニア州マウンテンパス鉱山での採掘や精製への支援も決めた。
●川下にも「急所」
 日本も10年に尖閣諸島を巡る対立で中国がレアアースの輸出を止めて以来、中国が9割を占めた調達先の分散やリサイクルを加速してきた。だが調達先のなお6割近くは中国だ。精製もほぼ中国に頼る。米テキサスの精製事業が注目を浴びるのもこのためだが、企業には中国産と比べた採算が問題になる。サプライチェーン全体をみると、レアアースの採掘や精製で中国依存を減らせても、磁石やモーター製造など下流では中国の存在感が増している。「産業のチョークポイント(急所)は川下まで及んでいる」と対中政策を担う関係者は言う。「リスクを理解しているのか」。日本電産が中国の大連市に設けるEV向けモーターの開発拠点に経産省幹部は懸念を示す。拠点は中国の顧客ニーズに迅速に応えるのが狙い。同社は「技術情報流出を防ぐべくセキュリティーを強化している」と言うが、約千人を擁する拠点だけに経産省は「先端技術が中国側に流れかねない」と気をもむ。中国は15日、レアアースの統制を強化すると発表した。昨年12月施行の輸出管理法では、戦略物資やハイテク技術の輸出を許可制にできるようにした。レアアースの禁輸に加えて、日本企業が中国で作った磁石やモーターの技術を開示するよう迫ったり、中国外での利用を禁じたりする危険すらあると専門家はみる。おりしも米中対立が深まるなか加速した脱炭素の動きは中国を起点とするサプライチェーンの脆弱性を高めた。経済への打撃を避けるには政治利用に歯止めをかけるルールづくりが課題となる。日米欧などの効果的な連携も必要だ。むろん企業自身の取り組みもカギで、レアアース不要のモーターや代替素材の開発で日本が先行するのは心強い。市場価格しだいでは近海での資源採掘やサプライチェーンの国内移転も選択肢になると専門家はみる。米中対立が脱炭素経済の足かせにならないよう、官民が柔軟な発想で戦略を練り直すときだ。

*8-1-2:https://news.biglobe.ne.jp/international/0118/sgk_210118_1746910710.html (Biglobe 2021年1月18日) 中国の狙いは尖閣諸島だけではない 太平洋に進出し不審な調査を続ける訳
 世界中でコロナ禍が続く中、中国は今年に入っても平然と海洋覇権行動を続けている。1月13日には沖縄県尖閣諸島周辺で中国公船1隻が日本の領海を侵入。日本漁船に近づく動きをしたことから、政府が中国側に厳重抗議した。だが、「中国の狙いは尖閣諸島だけではない」と指摘するのは、ジャーナリストの宮田敦司氏だ。
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 菅義偉首相が昨年12月19日、東京都内での講演で、米国のバイデン次期大統領と電話会談した際、沖縄県・尖閣諸島が対日防衛義務を定めた日米安全保障条約第5条の適用対象になると同氏が明言したことを強調した。米安全保障条約第5条とは、日米両国が、「日本国の施政の下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃」に対し、「共通の危険に対処するよう行動する」という内容である。日本のリーダーはよほど不安なのか、菅直人政権では前原誠司外相が2010年にクリントン国務長官と、安倍晋三首相は2014年にオバマ大統領、2017年にトランプ大統領と尖閣諸島が第5条の適用対象であることを確認している。講演で菅首相は、尖閣諸島が話題になった事を強調していたが、それ以外の島嶼(とうしょ)については触れなかったのだろうか? 尖閣諸島以外にも日米の安全保障のために重要な島嶼が東京都にある。日本最南端の領土・沖ノ鳥島(東京都小笠原村)である。
●中国は「島」でなく「岩」と主張
 沖ノ鳥島を中心に設定される半径200海里(約370km)の排他的経済水域(EEZ)の広さは、国土面積の約12倍に相当する(約40万平方キロメートル)。この海底にはメタンハイドレートやレアアース(希土類)が眠っているとされる。しかし、この島は無人島で満潮時に水面上に浮かぶ面積は4畳半程度に過ぎない。この沖ノ鳥島を中国が「島ではなく岩」と主張し始めたのは2004年のことだ。日本側の同意なく調査を繰り返す中国に日本が抗議したところ、中国側が沖ノ鳥島は「島ではなく岩」と主張したのだ。しかも中国は「沖ノ鳥島」の名称も「沖之鳥礁」と呼び変えている。沖ノ鳥島は満潮(高潮)時には2つの小島が海面上にわずかに頭を出すだけだが、国連海洋法条約第121条1項にいう、自然に形成された陸地で高潮時にも水面上にあることを満たしている。しかし、もともと中国は、沖ノ鳥島が日本の領土である事について問題視していなかった。それどころか、中国軍機関紙「解放軍報」は1988年、沖ノ鳥島について好意的に取り上げていた。記事のなかで、日本が沖ノ鳥島が波で削られないよう波消しブロックやコンクリートなどで保護していることを「素晴らしいことである」と評価し、「日本は港、ビル、飛行場などを作ろうとしている」とまで書いていたのだ(引用元/平松茂雄・元杏林大学教授講演、2010年2月15日)。これは、南シナ海に進出した中国が同じような事を行っていたからだった。日本が行っていることを持ち出して、南シナ海での中国の行動を正当化しようとしていたのだ。しかし、中国の好意的な姿勢は、中国海軍が東シナ海から宮古海峡を通って西太平洋に進出するようになると一変した。2010年4月には、10隻の艦隊を沖ノ鳥島周辺まで進出させ、対潜水艦戦訓練などを実施した。このような中国の行動は、沖ノ鳥島が日本の軍事拠点となることを恐れてのことだろう。レーダーや対艦ミサイルを配備されたら、中国海軍が自由に動けなくなるからだ。中国海軍が演習を行った翌年(2011年)、日本政府はEEZの権益を守る拠点として、沖ノ鳥島を「特定離島」に指定し、港湾や道路を整備するなど開発を進めることにした。
●無断で繰り返される中国の海洋調査
 中国が沖ノ鳥島周辺海域以外で海洋調査を行ったのは2001年から2003年にかけてである。この時の調査は詳細にわたり、資源探査だけでなく、海底の地形や潮流、水温、塩分濃度などの科学的データを収集していた。潜水艦を展開させるために必要となるデータだからだ。2004年以降は、沖ノ鳥島周辺で様々な調査を行っている。2020年は7月に10日連続で中国の海洋調査船「大洋号」がワイヤのようなものを海中に下ろし調査活動を行い、海上保安庁の巡視船の警告を無視して調査を続行した。国際法ではEEZ内での調査は沿岸国の同意が必要となるとしている。したがって、沖ノ鳥島周辺で海洋調査を実施するためには日本側の同意が必要となる。中国が日本のEEZ内で海洋調査を始めた2001年当時は、田中真紀子外相が衆院外務委員会で「EEZで資源調査をしてはいけないという国際法はない」と中国側を擁護する答弁を行うなど、政府内で足並みが乱れていた。中国は、こうした日本政府の混乱に乗じて違法な海洋調査を続けた。その結果、中国は西太平洋において自由に潜水艦を航行させることが出来るようになった。
●太平洋へ向かう海洋調査船が増加
 中国の海洋調査船の動向に関して、船が位置や針路などを発信する船舶自動識別システム(AIS)の公開データから、2020年11月4日までの過去1年間にわたる追跡を行った結果、情報が確認できる中国調査船34隻(総排水量307〜2万トン)のうち、4割にあたる13隻が太平洋方面に進出していたという。中国が領有権を主張する南シナ海はすでに軍事拠点化が進んでおり、次の標的として太平洋の海洋権益に狙いを定めているとみられる。それだけでなく、中国漁船も不審な動きを見せている。IHIジェットサービスによると、4月には尖閣諸島周辺に32隻の漁船団が出没した。いずれも遭難時用の識別コードを持っていたが、中には全く別のタンカーなど約150隻の中国船と同じ番号を共有している例もあったという(引用元/「日本経済新聞」2020年11月25日)。違法な中国船の動きを日本は封じ込めなければならない。しかし、このような中国船を含む、外国船や外国人を取り締まるための日本の法律は存在せず、拿捕や逮捕によって強制的に止めることはできない。このため、日本政府は2020年7月、調査船の取り締まりが可能となる法整備の検討に入った。外国船による科学的な海洋調査の場合でも、海上保安庁による拿捕や逮捕が可能となる新法制定や法改正を想定している。
●軍事的に重要な作戦海域となる沖ノ鳥島
 中国は、海軍艦艇による大規模な軍事演習も行っている。防衛省の報道資料などを見ると、東シナ海から宮古海峡を経由して太平洋へ抜けた中国海軍艦艇と爆撃機のうち、沖ノ鳥島西方の海域で訓練を行っていると思われるものがある。沖ノ鳥島周辺で訓練を行う理由は、グアム島と宮古海峡とを結ぶ直線ルートの中央に位置しているからだ。沖ノ鳥島の周囲は、急に深くなっており、水深は4000〜7000mに及ぶ。つまり、沖ノ鳥島周辺では、日本、米国、中国の潜水艦が自由に活動することができるのだ。沖ノ鳥島周辺は、将来、米中海軍力にとって非常に重要な意味をもってくる。中国海軍にとっては台湾有事などの際に出動してくる米空母機動部隊を、潜水艦や機雷で阻止するための重要な作戦海域となるからだ。中国は2040年までに、米軍が太平洋とインド洋を独占的に支配する現状を変えようとしている。そのために米海軍と対等な力を持った海軍をつくり上げるという計画を持っている。計画は時代の変化を受けて度々見直されてきたが、基本的な枠組みは今なお引き継がれている。中国が西太平洋へ進出するにあたり、沖ノ鳥島を中国の影響下に置こうとする試みには、このような中国の戦略がある。中国のやり方は、まず海洋調査船を派遣し、軍事演習を行い、段階的に既成事実を作るという手法である。つまり、沖ノ鳥島周辺での軍事演習は、中国の実効支配に向けての新たな段階に入っていることを意味する。
●南沙諸島の二の舞になるのか
 中国が南シナ海の南沙諸島などを急速に軍事拠点化しているが、これと同じ行動を沖ノ鳥島で起こす可能性は排除できない。中国に「岩」と言われるほど小さな沖ノ鳥島に対しては、尖閣諸島で想定されるような上陸作戦は不要だ。中国は南沙諸島で主権を主張し、人工島を建設して飛行場やレーダーを設置している。フィリピンやベトナム、マレーシアと領有権を争っているなかで、今年(2020年)4月には南シナ海で一方的に行政区まで設定している。防衛省が海上自衛隊の「いずも」型護衛艦を戦闘機が搭載可能な事実上の空母に改修する計画を進めているのは、これまで述べてきたような西太平洋における中国の活動を念頭に置いたものであろう。
●日本の島嶼は日本が守るべき
 人が住んでいる南西諸島の占領は、米国との戦闘に発展に進展する可能性があるが、無人島の場合は米国も簡単には中国との戦闘に踏み切れない。米国は強大な軍事力を持つ中国との戦争を望んでいない。全面戦争となれば核ミサイルの使用も考えられ、双方に甚大な損害が出ることが目に見えているからだ。無人島の争奪戦を端緒とした米中戦争に発展することを防ぐためには、自衛隊が単独で対処するしかないだろう。そもそも、中国が武力攻撃とはいえないレベルで動いた場合は、米軍は動かない。第5条云々よりも、漁民を装った私服の「海上民兵」の上陸など、「侵略」と言い切れないグレーゾーンを突いて中国に占拠された場合の措置を考えておくべきだろう。日本の領土を日本が守るのは当然のことだ。日米安全保障条約第5条は、日本に対する攻撃が自衛隊の対処能力を超えて(あるいは予想されて)、はじめて発動される性質のものではないだろうか。最初から米軍をアテにしている日本のリーダーは、自衛隊の最高指揮官であるのに自衛隊の能力をまったく信頼していないのだろうか?

*8-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20210121&ng=DGKKZO68351280Q1A120C2FF1000 (日経新聞 2021.1.21) 中国、次世代インフラ170兆円 5G通信網やEV充電設備、米との対立長期化に備え 官民投資、5年で大幅増
 中国が高速通信規格「5G」の通信網、データセンターといった次世代のインフラへの投資を大幅に増やす。官民合計の投資額は2025年までの5年間で約170兆円に達する見通しだ。米国とのハイテク摩擦の長期化をにらみ、民間資金も活用しながら産業基盤を整備する狙いだ。だが必要な部品や技術を米国に頼るケースも多く、米バイデン新政権との関係改善を探る動きもある。中国は次世代のインフラを「新型インフラ」と呼び、主に7つの技術領域に分類している。5G通信網やデータセンター、人工知能(AI)などIT(情報技術)分野の基盤に加え、大容量の電力を効率的に送る超高圧送電網や、都市圏内で都市をまたがって運行する高速鉄道や地下鉄なども含まれる。
●地方政府が主導
 中国政府傘下の研究機関、中国信息通信研究院によると、21~25年の新型インフラへの投資額は官民合計で10兆6千億元(約170兆円)となる見通し。中国での社会インフラ投資の約10%を占めるという。米調査会社ガートナーの予測では、世界での通信サービスやデータセンターなどITへの支出は21年に3兆7548億ドル(約390兆円)。単純比較はできないが、中国の投資額が世界で突出しているわけではない。ただ中国銀行は20年の新型インフラへの投資額を1兆2千億元と試算しており、21年以降は毎年、20年の2倍近い資金が投じられることになる見込みだ。新型インフラへの投資を主導するのは地方政府だ。南部の広東省では今後数年間で1兆元を投じる。5Gの基地局や電気自動車(EV)の充電設備の拡充、自動運転の実験用道路の整備、燃料電池車(FCV)向けの水素ステーションの200カ所新設など、関連事業は700件を超える。東北部の吉林省でも、新型インフラ関連の投資額は25年までに1兆元を超える見通し。北京市、上海市などほかの主要都市や各省の政府もそれぞれ個別に3~5年の計画を策定済みだ。いち早く整備が進んでいるのが5G通信網だ。基地局は累計で70万カ所を超え、すでに一国として世界最大規模だが、全土をカバーするには600万カ所超が必要だとされる。現場の担い手は中国移動(チャイナモバイル)など国有通信大手だ。ネット関連の民間企業も新型インフラの建設や運営への関与を深める。騰訊控股(テンセント)は20年5月、5年間で5000億元を新型インフラの整備に投じると表明した。クラウドやAI、5Gなど幅広い領域に投資する。アリババ集団も20年4月、データセンターの建設などに3年間で2000億元を投資すると明かした。
●経済下支え狙う
 中国指導部の狙いは、新型コロナウイルスで打撃を受けた経済の下支えと、ハイテク産業の振興だ。20年5月の全国人民代表大会(全人代、国会に相当)の政府活動報告では、李克強(リー・クォーチャン)首相が消費促進や構造改革のため「新型インフラの整備を加速する」と言明した。共産党が20年11月に公表した21~25年の第14次5カ年計画の草案も、重点項目の1つに新型インフラの整備を明記した。米国のトランプ前政権は5GやAIに関連する中国企業への部品や技術の輸出規制を強めてきた。バイデン新政権も中国のハイテク育成を警戒する見通しで、規制が早期に緩むかどうか不透明だ。中国は官民挙げて次世代産業の基盤を整備し、ハイテク摩擦の長期化に備える。ただ水準の高い米国企業の半導体、ソフトウエアなどを活用する中国のハイテク企業は多い。中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席は「双循環」と呼ぶ新たな発展モデルも示し、海外依存を低めようとしているが、うまくいかなければ新型インフラの整備が遅れる可能性もある。中国の王毅(ワン・イー)国務委員兼外相は2日に報じられた国営新華社のインタビューで、米中関係には「希望の扉が開かれている」と述べ、バイデン政権に秋波を送った。中国国内では過剰投資への懸念も浮上している。共産党の幹部養成機関の機関紙、学習時報は新型インフラの整備について「政府部門は(道路など)従来型のインフラ建設と同様に主導すべきではなく、民間企業に任せるべきだ」という内容の記事を掲載した。「(地方政府が)政治的な成果やメンツのために投資を実施するのは避けるべきだ」と指摘する有識者もいる。

*8-3:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/625561 (佐賀新聞 2021.1.24) 米政権、中国に圧力停止を要求、台湾との関係強化も表明
 米国務省のプライス報道官は23日、台湾に対する中国の軍事的圧力が地域の安定を脅かしているとして、軍事、外交、経済的圧力を停止するよう中国に求める声明を発表した。台湾との関係強化も表明した。対中強硬路線を取ったトランプ前政権に続き、20日発足したバイデン政権も台湾支持を打ち出した形で、中国の反発は必至だ。台湾外交部(外務省)は24日、米国務省の声明について「バイデン政権による台湾支持と台湾防衛重視」の表れだとして謝意を表明した。台湾の専門家は「バイデン政権は前政権の方針を引き継ぎつつ、より緻密に中国対抗策を推進していくだろう」と分析している。バイデン政権の国務長官候補ブリンケン元国務副長官は19日、人事承認に向けた上院公聴会で強硬路線を維持する考えを示し、台湾について「より世界に関与することを望む」と述べていた。米国務省声明は、中国が台湾を含む近隣国・地域を威嚇しようとしていると懸念を表明し、圧力をかける代わりに民主的に選ばれた台湾の代表と対話に臨むよう要求。台湾の自衛能力を維持するため支援を続けると強調した。また、同盟・友好国と協力してインド太平洋地域の安定と繁栄を促す方針を示し、台湾との関係強化もこの動きに沿ったものだと説明した。中国は軍用機や艦船を台湾周辺に派遣するなど圧力を強めている。台湾国防部(国防省)によると、23日にも中国の爆撃機「轟6K」や戦闘機「殲16」、対潜哨戒機「運8」の計13機が台湾南西の防空識別圏に進入した。トランプ前政権は台湾支援のため武器売却を推進。バイデン政権のオースティン国防長官も就任前、台湾の自衛能力維持を後押しする考えを示していた。

<感染症に本気で取り組まない政府の長期対策には付き合えないこと>
PS(2021年1月28、29日追加):*9-1-1のように、政府は、新型コロナワクチン接種情報を国がリアルタイムで把握するため、マイナンバーを使った新システムを導入する方針を固めて取り組みを本格化させたそうだ。これは、住民が引っ越した場合の接種状況確認や接種券(クーポン券)をなくした場合の対応のためだそうだが、このように何かをする度に新システムを導入するから、*9-1-2のように、時間ばかりかかって効果が上がらないのであって、これならワクチンの接種が目的かマイナンバーカードの普及が目的かわからない。しかし、抗体を持つ人は接種不要であるため抗体検査が必要で、新型インフルエンザの予防接種が既に終わっているため、同じやり方をした方が早い。さらに、基礎疾患のある人は通院しているので、通院する医療機関で接種券を提示して優先的に接種を受け接種証明をもらえばよい。そして、マイナンバーと医療情報をひも付けることは、個人情報保護の観点から、私も問題だと思う。
 なお、*9-1-3のように、英製薬大手アストラゼネカとオックスフォード大学が開発したワクチンを国内メーカーが受託生産できることになったのはよかったが、①迅速なワクチン開発は「できないだろう」という反対の大合唱(要反省・要謝罪) ②日本の大学は入れないため開発・研究不能(要反省・要謝罪) ③できたワクチンは「公平に分配せよ」の大合唱 とは、あまりに矛盾だらけで先進国のすることではない。自分の国で研究・開発して発展途上国に配るのが先進国のすることで、それが今後の産業の高度化や国際貢献に繋がるのである。
 このような厚労省・文科省・経産省はじめ政府及びメディアの失敗のつけを、*9-2のように、「緊急事態下でも意識は低い」などと国民になすりつけるのは日本の病んだ姿だ。今回は昨春の宣言時より国民の対応が鈍い理由は、2~3カ月なら政府の戸惑った対応に忍耐し自粛しても営業を存続できるが、PCR検査は制限し、治療薬は承認せず、ワクチンの研究開発もせずに、1年以上も国民に忍耐を強いるのなら、付き合いきれないということだ。そのため、この失政の尻拭いのための営業制限をさらに行うのなら、その損害は一部ではなく全部補填されるべきで、その金額は2020年の所得と2019年(orその前3年間の平均)の所得を比較した減少分の全額であるため、その金額を還付すべきだ。また、「出勤者7割減」「テレワークの実施」「自転車通勤」「ローテーション勤務の推進」「午後8時以降の勤務抑制」なども代替案はいくらでもあるため、コロナと人命にかこつけてそれを自己目的化することこそが問題である。
 なお、*9-3-1のように、「①事業者への財政支援を義務化」「②緊急事態宣言の前段階の対策を『予防的措置』から『まん延防止等重点措置』に名称変更」「③営業時間短縮や休業命令を拒否した事業者、入院拒否した患者に罰則導入」などの感染症法・特措法の改正法案を提出したそうだが、①は屁理屈をつけてもばら撒きにすぎず、こんなことに使う金があるのなら、その1/10の金額を検査充実・ワクチン・治療薬の開発、普段からの医療システム整備に使うべきだ。そのため、自民党内の「④大学病院に重症患者を引き受けるよう法改正すべき」「⑤水際対策を徹底しなければ収束できない」という意見は尤もであり、*9-3-2の日本弁護士連合会会長荒氏の「感染症法・特措法の改正法案に反対する会長声明」は全くそのとおりだ。さらに、「オリンピックを中止すべき」という意見もあるが、引き受けたものは責任を持ってやるべきであり、水際対策・検査・隔離と治療・ワクチン接種を徹底して行えばそれは可能なのである。
 最後に、米製薬大手イーライ・リリーのコロナ抗体薬LY-CoV555は、*9-4のように、2020年11月に米食品医薬品局から軽度・中程度のコロナ感染患者向け治療薬として緊急承認されていたが、治療効果と同時に予防効果もあることがわかったそうだ。予防効果を調べる治験は、米国立衛生研究所(NIH)の協力を得て進めており、日本なら厚労省・経産省・文科省が協力して積極的に開発・治験すべきものだった。
 

 2021.1.19東京新聞  2021.1.29日経新聞  2021.1.1産経新聞  2021.1.8日経新聞

(図の説明:1番左の図のように、新型コロナ特措法と感染症法の“改正”が意図され、罰則と事業者への部分的な支援が入っていた。そして、左から2番目の与野党修正協議後の法案にも罰則が入っており、私権を制限するのにその効果への科学的根拠はない。また、右から2番目の図にワクチン接種の優先順位が書かれているが、医療・介護関係者や高齢者・基礎疾患のある人の優先順位は高くすべきで、これをマイナンバーカードでどう整理するつもりか? これらの政策から、日本のコロナ騒ぎはデジタル化・時短・テレワークを推進するためにだらだらと続けているように見え、それによる国民の損害は膨大である。なお、1番右の図は、コロナ対策と日程だ)

*9-1-1:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/626891 (佐賀新聞 2021.1.27) 政府、接種状況把握へ新システム
 政府は27日、新型コロナウイルスのワクチンの接種情報を国がほぼリアルタイムで把握することを目的に、新たなシステムを導入する方針を固め、取り組みを本格化させた。接種を行う市区町村は住民が引っ越しをした際の接種状況の確認や、接種券(クーポン券)をなくした場合に対応しやすくなる。接種状況や履歴の一元管理を図る。マイナンバーの活用を検討している。春に見込まれる65歳以上の高齢者への接種開始のタイミングでの運用を目指し、制度設計を急ぐ。ワクチン接種の総合調整を担う河野太郎行政改革担当相は27日、高齢者接種は早くても4月1日以降になると表明。当初3月下旬としていた政府方針がずれ込むとの見解を示したものだ。新システムについて、マイナンバーをひも付けることには、自治体の業務に過重な負担が掛かる懸念が出ている。個人情報保護の観点から議論も呼ぶ可能性がある。加藤勝信官房長官は27日の記者会見で、市区町村の予防接種台帳では実際の接種から情報登録まで2~3カ月のタイムラグがあると指摘して「(国が)リアルタイムに近い形で接種状況を的確に把握できるよう新たなシステムを整備する」と強調した。システムは国が開発。市区町村や医療機関などがデータを入力する仕組み。入力情報は、住民が接種した場所と年月日、接種回数、ファイザー社製など使用したワクチンの種類や製造ロット番号などが想定されている。接種会場で混乱しないよう、接種券をスマホのカメラで撮影し情報を読み取るアプリを開発する意向。住民に対してマイナンバーの提示は求めることはないとしている。接種主体の自治体の業務を巡っては、新システムとは別に、厚生労働省が新型コロナウイルスのワクチンの流通量を把握するため、自治体や医療機関が参加する「ワクチン接種円滑化システム(V―SYS)」を開発。自治体は複数のシステムへの入力が迫られる。さらにワクチン接種の会場、医師や看護師の確保が重い課題。住民への接種券発送作業に加え、超低温保管が必要なワクチンの管理も難題で一層事務作業が増え、混乱に拍車が掛かる事態も予想される。システム開発が間に合うかも焦点だ。ワクチンは21日間空け2回打つことになる。政府は約3カ月で高齢者への接種を終える日程を描いている。

*9-1-2:https://www.nikkei.com/paper/related-article/?b=20210128&c=DM1&d=0&nbm=DGKKZO68585500Y1A120C2MM8000&ng=DGKKZO68585520Y1A120C2MM8000&ue=DMM8000 (日経新聞 2021.1.28) 高齢者への接種、4月以降に 河野規制改革相
 河野太郎規制改革相は27日、新型コロナウイルスのワクチンについて、65歳以上の高齢者への接種は「最短でも4月1日以降」と表明した。全国知事会とのオンライン会議で伝えたと記者団に語った。政府はこれまで「3月下旬以降」と説明していた。遅れる理由について「医療従事者の数や米製薬大手ファイザーとのやり取りを鑑みて」と話した。接種会場を準備する地方自治体に向けて「3月におさえる必要はない」と述べた。

*9-1-3:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20210128&ng=DGKKZO68585500Y1A120C2MM8000 (日経新聞 2021.1.28) アストラゼネカのワクチン、日本で量産、9000万回分、国内安定調達へ道筋
 英製薬大手アストラゼネカは日本で新型コロナワクチンの量産準備に入る。国内メーカーが近く受託生産を始める。国内生産量はアストラゼネカの日本向けワクチンの75%に相当する9000万回分を見込む。海外での供給遅れが広がるなか、日本政府は国内のワクチン生産(総合2面きょうのことば)で一定量を確保して安定調達につなげる。アストラゼネカは2020年12月に日本政府と1億2000万回分のコロナワクチン供給契約を結んだ。近く厚生労働省に製造販売承認を申請する。コロナワクチンは完成まで3カ月程度かかるため、承認申請の手続きと並行して量産を進める。国内生産品の出荷準備が整うのは早くても5月ごろで、厚労省の承認を得たうえで出荷する。アストラゼネカのコロナワクチンは英オックスフォード大学と開発した、ウイルスベクターワクチンと呼ばれるタイプだ。風邪の原因となる「アデノウイルス」に新型コロナの遺伝情報を組み込み、体内に送り込んで免疫反応を促す。日本では20年8月から人に投与して安全性や有効性を確認する臨床試験(治験)を実施している。バイオ製薬のJCRファーマが神戸市内の工場でコロナワクチンの原液をつくる。原液はアデノウイルスを培養して抽出したものだ。JCRファーマはワクチンの生産実績はないが、細胞培養などのバイオ技術を持つ。アストラゼネカから製造技術を移管され、遺伝子を改変したアデノウイルスの提供も受けた。製造装置でアデノウイルスを培養し、精製して原液にする。培養が軌道に乗れば、原液を輸入することなく、国内でワクチン製造が完結する。できあがった原液は第一三共や明治ホールディングスが容器に充填して製品化する。アストラゼネカのコロナワクチンはセ氏2~8度の冷蔵輸送で流通できるため、コロナワクチンの中でも温度管理しやすい。新型コロナの感染者数は世界で1億人を超えた。変異種登場で、世界でワクチン争奪戦が表面化している。欧州連合(EU)はEUで製造したワクチンの域外への輸出の規制を検討している。アストラゼネカのコロナワクチンは海外では供給が計画通りに進んでいない。日本政府はアストラゼネカと契約した1億2000万回分のうち、3000万回分は3月までに輸入する考えだ。ただ現地で生産が軌道に乗らず予定通り輸入されない懸念も残る。世界各地で実施されている治験も計画に比べ遅れている。今後、調達計画や国内生産量の見直しが日本で議論される可能性もある。量産準備に入るとはいえ、実際に日本で接種が始まるまで予断を許さない状況だ。日本政府はアストラゼネカのほかに、米ファイザーから21年内に1億4400万回、米モデルナからは6月までに4000万回と9月までに1000万回を調達する契約を結ぶ。ファイザーとモデルナのワクチンはいずれも全量が輸入で、こちらも予定通り確保できるかが焦点となる。

*9-2:https://www.nishinippon.co.jp/item/n/685110/ (西日本新聞 2021/1/27) 出勤7割減、実現せず「今回は人ごと」…緊急事態下でも意識は低く
 新型コロナウイルスの感染拡大に伴う緊急事態宣言で、政府が事業者に求めている「出勤者数の7割削減」。各職場でどれくらい実施されているかを問う西日本新聞「あなたの特命取材班」のアンケートには「実現していない」との回答が大半を占め、「昨春の宣言時よりも意識が低い」という答えが目立つ。企業や官公庁でのクラスター(感染者集団)発生数は全国的に医療機関を上回っており、経済団体や自治体も警戒を強めている。アンケートには、27日までに約100件の回答があった。福岡県など緊急事態宣言が発出されている11都府県からの声が9割弱を占め、大部分は削減が実現していないと回答した。その理由(複数回答)で最多だったのは「業務の都合上」。男性公務員(44)は「仕事に必要なデータを持ち帰れないし、(家だと)上司からの指示など職場の情報が伝わらない」。勤務先の働きかけに戸惑う人も。保険営業職の女性(32)は「会社が『出勤者7割減』を『(勤務する)部屋から7割減』と独自に解釈している」と困惑。同じフロア50人を3フロアに分けたが「毎日全員出社」という。福岡県の服部誠太郎副知事は25日、県内の経済団体関係者と会合。「テレワークの実施や自転車通勤、ローテーション勤務の推進、午後8時以降の勤務抑制を」と協力を呼び掛けた。

*9-3-1:https://www.tokyo-np.co.jp/article/80639 (東京新聞 2021年1月19日) <新型コロナ>事業者への財政支援、義務化へ 新型コロナ特措法改正案 罰則も導入
 自民、公明両党は18日、新型コロナウイルス感染症対策の関連会合をそれぞれ開き、政府が開幕した通常国会に提出する新型コロナ特別措置法や感染症法の改正案を了承した。国や地方自治体は事業者に対する支援を「講ずるものとする」と明記し、先に概要で示した努力規定から義務規定に修正。緊急事態宣言の前段階の対策は「予防的措置」から「まん延防止等重点措置」へ名称を変更。営業時間の短縮や休業の命令を拒否した事業者、入院を拒否した患者らへの罰則を導入する。特措法改正案では緊急事態宣言を避けるため、前段階で対策を進めるまん延防止等重点措置を新たに規定し、都道府県知事は飲食店などの事業者に営業時間の短縮や休業を要請、命令できるとした。これに応じた事業者への支援は、当初の政府案で努力規定だったことに異論が相次いだため「必要な財政上の措置を講ずる」と義務化に変更。医療機関への支援も義務化することを盛り込んだ。
◆まん延防止段階30万円以下、緊急事態宣言下50万円以下
 知事の命令を拒否した場合、前科にならない行政罰の過料を、まん延防止等重点措置段階では「30万円以下」、緊急事態宣言下では「50万円以下」と定めた。事業者への命令前の立ち入り検査も新設し、検査拒否には「20万円以下」の過料とした。感染症法改正案では、入院を拒否したり、入院先を抜け出したりした感染者らへの刑事罰を「1年以下の懲役か100万円以下の罰金」と規定した。疫学調査の拒否などにも「50万円以下の罰金」を設けた。自民党の国会議員からは「大学病院に重症患者を引き受けるよう法改正すべきだ」「水際対策を徹底しなければ収束できない」と政府対応への批判が続出。さらなる議論を求める声もあったが、改正案の扱いは自民、公明党とも党幹部一任となって了承された。野党は罰則を新設する改正案に慎重・反対姿勢を示した。政府は22日にも改正案を閣議決定して国会に提出し、2月上旬に成立させ、同月中旬の施行を目指す。

*9-3-2:https://www.nichibenren.or.jp/document/statement/year/2021/210122_2.html (2021年1月22日 日本弁護士連合会会長 荒 中) 感染症法・特措法の改正法案に反対する会長声明
 本日、政府は、「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」(以下「感染症法」という。)及び「新型インフルエンザ等対策特別措置法」(以下「特措法」という。)の改正案を閣議決定した。新型コロナウイルスの感染が急拡大し、医療環境が逼迫する等の厳しい社会状況の中、収束のための有効な施策が必要であることは論を俟たない。しかし、今回の改正案は、感染拡大の予防のために都道府県知事に広範な権限を与えた上、本来保護の対象となるべき感染者や事業者に対し、罰則の威嚇をもってその権利を制約し、義務を課すにもかかわらず、その前提となる基本的人権の擁護や適正手続の保障に欠け、良質で適切な医療の提供及び十分な補償がなされるとは言えない。さらに、感染の拡大防止や収束という目的に対して十分な有効性が認められるかさえ疑問である。当連合会としては、以下の点について抜本的な見直しがなされない限り、強く反対する。
 まず、感染症法の目的は第一に感染症の患者等の人権を尊重するものでなければならないところ、今回の改正案は、入院措置に応じない者等に懲役刑・罰金刑、積極的疫学調査に対して拒否・虚偽報告等をした者に対して罰金刑を導入するとしている。
 しかし、刑罰は、その適用される行為類型(構成要件)が明確でなければならない。この点、新型コロナウイルス感染症は、その実態が十分解明されているとは言い難く、医学的知見・流行状況の変化によって入院措置や調査の範囲・内容は変化するし、各保健所や医療提供の体制には地域差も存在する。そのため、改正案の罰則の対象者の範囲は不明確かつ流動的であり、不公正・不公平な刑罰の適用のおそれも大きい。
 他方で、新型コロナウイルスには発症前にも強い感染力があるという特徴が認められ、入院措置・調査の拒否者等に対して刑罰を科したからといって感染拡大が防止できる訳ではない。むしろ、最近では多くの軽症者に対して自宅待機・自宅療養が指示され、症状が悪化して入院が必要となった場合にも入院できず、中には死亡に至った例も報告され、患者に対する「良質かつ適切な医療を受けられるように」すべき国及び地方公共団体の責務(感染症法前文・3条1項)が全うされていない現実がある。しかも、単に入院や調査を拒否したり、隠したりするだけで「犯罪者」扱いされるおそれがあるとなれば、感染者は感染した事実や感染した疑いのあることを隠し、かえって感染拡大を招くおそれさえ懸念される。
 新型コロナウイルス感染症は従来からのインフルエンザ感染症と比べて、無症状感染者からの感染力が強いと分析され、深刻な後遺症が残る例も報告されている。そのため国民全体に感染に対する不安が醸成され、感染したこと自体を非難するがごとき不当な差別や偏見が既に生じている。その解消を行わないまま、安易に感染者等に対して刑罰を導入するとなれば、感染者等に対する差別偏見が一層助長され、極めて深刻な人権侵害を招来するおそれがある。
 そもそも、感染症法は、「過去にハンセン病、後天性免疫不全症候群等の感染症の患者等に対するいわれのない差別や偏見が存在したという事実を重く受け止め、これを教訓として今後に生かすことが必要である」、「感染症の患者等の人権を尊重しつつ、これらの者に対する良質かつ適切な医療の提供を確保し、感染症に迅速かつ適確に対応する」などとした「前文」を設けて法の趣旨を宣言し、過去の反省等に基づき、伝染病予防法を廃止して制定された法律である。新型コロナウイルス感染症は、その感染力の強さゆえ、誰もが罹患する可能性がある疾病である。感染者は決して責められるべきではなく、その実情を無視して、安易に刑罰をもって義務を課そうとする今回の改正案は、かかる感染症法の目的・制定経緯を無視し、感染者の基本的人権を軽視するものに他ならない。
 次に、特措法の改正案は、「まん延防止等重点措置」として都道府県知事が事業者に対して営業時間の変更等の措置を要請・命令することができ、命令に応じない場合は過料を科し、要請・命令したことを公表できるとしている。
 しかし、改正案上、その発動要件や命令内容が不明確であり、都道府県知事に付与される権限は極めて広範である。そのため、恣意的な運用のおそれがあり、罰則等の適用に際し、営業時間の変更等の措置の命令に応じられない事業者の具体的事情が適切に考慮される保証はない。
 さらに、感染拡大により経営環境が極めて悪化し、休業することさえできない状況に苦しむ事業者に対して要請・命令がなされた場合には、当該事業者を含む働く者の暮らしや命さえ奪いかねない深刻な結果に直結する。もとより、主な対象とされている飲食に関わる事業者は、それ自体危険な事業を営んでいるわけではない。いかに努力しようとも、飲食の場に感染リスクがあるというだけで、死活問題となる営業時間の変更等を求められるのは、あまりにも酷である。かかる要請・命令を出す場合には、憲法の求める「正当な補償」となる対象事業者への必要かつ十分な補償がなされなければならず、その内容も改正案成立と同時に明らかにされなければならない。
 また、不用意な要請・命令及び公表は、感染症法改正案と同様、いたずらに風評被害や偏見差別を生み、事業者の名誉やプライバシー権や営業の自由などを侵害するおそれがある。
 新型コロナウイルス感染症の感染拡大を防止するためには、政府・自治体と市民との間の理解と信頼に基づいて、感染者が安心して必要な入院治療や疫学調査を受けることができるような検査体制・医療提供体制を構築すること及び事業者への正当な補償こそが必要不可欠であって、安易な罰則の導入は必要ないと言うべきである。
 以上の観点から、当連合会は、今回閣議決定された感染症法及び特措法の改正法案に対して、抜本的な見直しがなされない限り、強く反対する。

*9-4:https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN22E1F0S1A120C2000000/ (日経新聞 2021/1/23) 米イーライ・リリーのコロナ抗体薬に予防効果 治験で
 米製薬大手イーライ・リリーは、米国の高齢者施設の入居者や職員を対象に実施した臨床試験(治験)で、同社の新型コロナウイルス抗体薬「LY-CoV555」(一般名バムラニビマブ)の予防への効果が確認できたと発表した。新型コロナ患者が発生した各地の高齢者施設で、入居者や職員など約1000人にこの抗体薬と偽薬を投与し、8週間後に効果を検証した。全体では抗体薬を投与したグループのコロナ発症リスクは、偽薬を投与したグループと比べ57%低かった。同じ施設の入居者で比べた場合、抗体薬の投与を受けた方が、偽薬投与のケースよりもコロナ発症リスクが8割低かった。LY-CoV555は2020年11月、米食品医薬品局が症状が軽度から中程度のコロナ感染患者向け治療薬としての使用を緊急承認した。予防効果を調べる今回の治験は、米国立衛生研究所(NIH)の協力を得て進めた。ワクチンが体内の免疫の仕組みを利用し抗体の生成を促すのに対し、抗体薬はウイルス感染から回復した患者が獲得した抗体のコピーを作り投与することで体内に抗体を得る仕組み。予防薬としての使用が承認されれば、ワクチンに比べて短い期間で効果を得たい場合や、健康上の理由でワクチン接種できない人などに選択肢を広げることができる。

<特措法・感染症法改正による私権制限は加害者の焼け太りである>
PS(2021年1月31日追加):*10-1のように、憲法学者70人超が「改正案の罰則導入は、行政罰でも政府の失策を個人責任に転嫁するもので正当性がない」と反対声明を出しておられるのは、全くそのとおりだ。そのため、部分的で恩着せがましい“支援”ではなく、失政に対する国民への損害賠償として、逸失利益(本来なら得られた筈なのに失わされた利益)の全額を支払うべきである。
 そのような中、*10-2のように、特措法に「蔓延防止等重点措置」を新設するそうだが、ウイルステロのように故意にウイルスをばら撒いて蔓延させた人がいるのでなければ、蔓延防止を行う義務があるのは政府・地方公共団体の方である。この理念は、ハンセン病の反省を踏まえ1998年に(大学で習ったので私が関わって)できた*10-3の感染症法の前文及び第1~3条を読めば明らかなのに、感染症に関する情報収集・研究推進・病原体の検査能力向上・医薬品の研究開発推進・良質で適切な医療提供等を、政府(特に厚労省・文科省)は故意に行わず法律違反を犯したのだ。また、メディアも感染症法を守るどころか患者を差別するような報道をしていたのは「言論の自由」「表現の自由」の域を脱していた。このような中、決して忘れてはならないのは、感染症患者は悪いことをしたから患者になったのではなく、誰でも患者になる可能性があり、検査や治療を受ける権利もあるということである。

*10-1:https://www.tokyo-np.co.jp/article/83108 (東京新聞 2021年1月30日) 改正案の罰則導入「正当性ない」 憲法学者70人超が反対声明
 新型コロナウイルス特別措置法や感染症法の改正案を巡り、70人以上の憲法学者が30日、「政府の失策を個人責任に転嫁するものだ」とする反対声明を公表した。当初案で示された刑事罰の導入は見送られた一方、行政罰は残ると指摘し、罰則導入自体に「全く正当性がない」と強調した。声明を出したのは、稲正樹・元国際基督教大学教授ら。改正案は当初、入院拒否者を刑事罰の対象としていたが、行政罰の過料に修正することで自民党と立憲民主党が合意。声明は「修正がなされても、『罰則』を設ける妥当性の問題は解決されない」とした。

*10-2:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/628063 (佐賀新聞 2021.1.30) 野党、まん延防止要件の明示要求、コロナ、私権制限への一層配慮も
 新型コロナウイルス対策を強化するコロナ特別措置法と感染症法の改正案を巡り、与野党が検討している付帯決議案が判明した。特措法に新設する「まん延防止等重点措置」の実施要件に関し、客観的基準を事前に明示するよう政府に要求。私権制限が過剰に強まらないように「より一層配慮する」ことも求める。複数の与野党関係者が30日、明らかにした。与野党は文言を最終調整した上で、2月1日の改正案採決時に決議の採択を予定する。ただ、付帯決議に法的拘束力はない。決議案はまん延防止措置の判断基準について、感染者数や病床使用率など、感染状況を示す指標との関係を明確にする必要性を指摘した。措置は「学識経験者の意見を聴いた上で行う」と記し、期間の延長や区域変更、解除も含めて速やかな国会報告を訴えた。営業時間短縮などに対する支援は「要請による経営の影響度合い」を勘案するよう要求した。まん延防止等重点措置は、緊急事態宣言の前段階と位置付け、都道府県知事の権限を強化する。時短要請に応じない事業者に命令を出すことができ、拒んだ場合は過料を科す。付帯決議案は、過料を慎重に運用する必要性にも触れた。自民、立憲民主両党幹事長は改正案を巡る28日の修正協議で、国会報告と事業者支援を付帯決議に盛り込むと合意した。付帯決議案は、まん延防止措置の対象を主に営業時間変更とし、休業要請や全面的な外出自粛要請を含めないことも訴える。西村康稔経済再生担当相は29日の国会審議で、措置は特定の地域と業種に絞った時短のみを想定していると答弁した。感染者が不当な差別を受けないような相談、支援体制の整備にも言及した。

*10-3:http://www.kanazawa-med.ac.jp/~mri-cfak/yobou.html (感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律 平成10.10.2 法律114号)  
(前文)
第1章  総 則 (第1条~第8条)
第2章  基本指針等 (第9条~第11条)
第3章  感染症に関する情報の収集及び公表 (第12条~第16条)
第4章  健康診断、就業制限及び入院 (第17条~第26条)
第5章  消毒その他の措置 (第27条~第36条)
第6章  医 療 (第37条~第44条)
第7章  新感染症 (第45条~第53条)
第8章  感染症の病原体を媒介するおそれのある動物の輸入に関する措置 (第54条~第56条)
第9章  費用負担 (第57条~第63条)
第10章  雑 則 (第64条~第66条)
第11章  罰 則 (第67条~第69条)
     附 則
(前文)
 人類は、これまで、疾病、とりわけ感染症により、多大の苦難を経験してきた。ペスト、痘そう、コレラ等の感染症の流行は、時には文明を存亡の危機に追いやり、感染症を根絶することは、正に人類の悲願と言えるものである。医学医療の進歩や衛生水準の著しい向上により、多くの感染症が克服されてきたが、新たな感染症の出現や既知の感染症の再興により、また、国際交流の進展等に伴い、感染症は、新たな形で、今なお人類に脅威を与えている。一方、我が国においては、過去にハンセン病、後天性免疫不全症候群等の感染症の患者等に対するいわれのない差別や偏見が存在したという事実を重く受け止め、これを教訓として今後に生かすことが必要である。このような感染症をめぐる状況の変化や感染症の患者等が置かれてきた状況を踏まえ、感染症の患者等の人権を尊重しつつ、これらの者に対する良質かつ適切な医療の提供を確保し、感染症に迅速かつ適確に対応することが求められている。ここに、このような視点に立って、これまでの感染症の予防に関する施策を抜本的に見直し、感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する総合的な施策の推進を図るため、この法律を制定する。  
第1章 総 則
(目的)
第1条  この法律は、感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関し必要な措置を定めることにより、感染症の発生を予防し、及びそのまん延の防止を図り、もって公衆衛生の向上及び増進を図ることを目的とする。
(基本理念)
第2条  感染症の発生の予防及びそのまん延の防止を目的として国及び地方公共団体が講ずる施策は、保健医療を取り巻く環境の変化、国際交流の進展等に即応し、新感染症その他の感染症に迅速かつ適確に対応することができるよう、感染症の患者等が置かれている状況を深く認識し、これらの者の人権に配慮しつつ、総合的かつ計画的に推進されることを基本理念とする。
(国及び地方公共団体の責務)
第3条  国及び地方公共団体は、教育活動、広報活動等を通じた感染症に関する正しい知識の普及、感染症に関する情報の収集、整理、分析及び提供、感染症に関する研究の推進、感染症の病原体等の検査能力の向上並びに感染症の予防に係る人材の養成及び資質の向上を図るとともに、感染症の患者が良質かつ適切な医療を受けられるように必要な措置を講ずるよう努めなければならない。この場合において、国及び地方公共団体は、感染症の患者等の人権の保護に配慮しなければならない。
 2   国及び地方公共団体は、感染症の予防に関する施策が総合的かつ迅速に実施されるよう、相互に連携を図らなければならない。
 3   国は、感染症に関する情報の収集及び研究並びに感染症に係る医療のための医薬品の研究開発の推進、感染症の病原体等の検査の実施等を図るための体制を整備し、国際的な連携を確保するよう努めるとともに、地方公共団体に対し前2項の責務が十分に果たされるように必要な技術的及び財政的援助を与えることに努めなければならない。
(以下、略)

<女性リーダー・新型コロナ・衛生意識の関係>
PS(2021年2月7日追加):*11-1・*11-2・*11-3のように、JOC役員改選に向けた規定改正が報告され女性理事の割合を40%以上にする目標が示された時、東京五輪・パラリンピック組織委員会森喜朗会長が、「①女性がたくさん入っている理事会は時間がかかる」「②女性は競争意識が強いので、誰か一人が手を挙げて言われると自分も言わないといけないと思うんでしょう」などと女性蔑視の発言をされ、「③組織委の女性委員については、みんなわきまえておられ、発言も的を射ていてわれわれも役立っている」と述べられたそうだ。
 このうち、①については、時間の長短ではなく時間内でどういう議論や検討を行ったかが重要なのだが、男女の割合にかかわらず生産性の低い会議は多く、新型コロナの対策会議もその1例だ。また、②については、競争意識が強いのは女性だけではなく、男性の方がもっと競争意識が強いと思うが、競争は公正である限り決して悪いことではなく、スポーツはじめ市場主義経済は、競争意識を動機づけにして推進力にしているのである。さらに、③の「組織委の女性委員は、わきまえている」という言い方は、既に決定されたことを追認するのが組織委であることを暴露してしまっており、活発に議論し検討して意思決定に至るのではない上から目線の同調圧力を感じる。そのため、これらの発言は、五輪憲章に反する以前に、男女共同参画基本法・男女雇用機会均等法・民主主義の理念に反している。
 なお、*11-4のように、「④コロナ対策に成功した国の共通点は女性リーダーの存在」というのは、私もそんな気がしていた。また、「⑤女性リーダーは同等の立場にいる男性リーダーに比較して新型コロナウイルス流行の初期段階での対応が優れていた」というのは、ロックダウンに限らず、台湾の事例からも納得できる。さらに「⑥こうした女性たちの有能さは、女性がトップに上るのに非常に厳しい基準を満たす必要があった選択バイアスの結果であった可能性も排除できない」というのも確かだが、同等の経歴を持つ男性リーダーと比較しても女性リーダーの方が新型コロナ対策に成功したのは、「衛生」に関する学びの機会は女性の方が多いからではないだろうか。ちなみに、男性政治家が多い日本の新型コロナ政策は、東アジアに位置するにもかかわらず大失敗で、決して真似できるシロモノではなかった。

*11-1:https://www.kyoto-np.co.jp/articles/-/498970 (京都新聞社説 2021年2月6日) 女性蔑視発言 時流に逆行、許されぬ
 自らの立場をわきまえず、軽率極まると言うほかない。東京五輪・パラリンピック組織委員会の森喜朗会長が女性蔑視と取れる発言をした。批判を受けて発言を撤回し、謝罪したとはいえ、どこまで反省しているのか疑わしい。組織委会長は、五輪開会式で開催国を代表して国際オリンピック委員会(IOC)会長と並んで世界のアスリートを迎える要職である。「五輪の顔」としての適格性に疑問符を付けざるを得ない。森氏は名誉委員として出席した日本オリンピック委員会(JOC)の臨時評議員会で、「女性がたくさん入っている理事会は時間がかかる」などと語った。席上、JOCの役員改選に向けた規定改正が報告され、女性理事の割合を40%以上にする目標が示された。これを受けた発言で、自身が会長などを歴任した日本ラグビー協会で女性理事が増えていることを例に挙げ、「女性っていうのは競争意識が強い。誰か一人が手を挙げて言われると、自分も言わないといけないと思うんでしょうね」などとも述べた。五輪憲章はあらゆる差別を禁じており、とりわけ男女平等の理念は近年、大きな柱の一つになっている。森発言はこうした時代の流れに逆行し、国内外から厳しい批判を浴びても致し方ない。森氏が発言した際、居合わせた出席者からいさめる声はなく、笑いさえ漏れたという。JOC評議員らの見識も問われよう。森氏は翌日、記者会見に応じ、「五輪・パラの精神に反する不適切な表現だった。深く反省している」と謝罪した。だが会長辞任は「自分からどうしようという気持ちはない」と否定した。記者の質問にいらだち、開き直る場面も目立った。何が問題視され、批判を招いたのか、理解していないのではないか、と首をかしげたくなる。森氏はこれまでも度々失言癖を指摘されながらも組織の要職に就き、さまざまな意思決定に影響力を発揮してきた。議論よりも同調を良しとする日本社会のいびつさにも目を向けねばなるまい。五輪の理念を否定する発言は多言語で配信され、瞬く間に世界に広がった。新型コロナウイルスの感染拡大で開催が危ぶまれる中、自らの言動でさらに逆風を強めた森氏は辞任に値する。開幕まで半年を切ったが、世界の共感を得ずして五輪の成功は望めない。

*11-2:https://www.niigata-nippo.co.jp/opinion/editorial/20210207597443.html (新潟日報社説 2021/2/7) 女性蔑視発言 トップの資質欠く森会長
 女性を蔑視し、国際社会からの信用にも傷を付ける深刻な発言だ。撤回し謝罪したが、反省の色はまるでうかがえない。五輪精神に著しくもとる内容でもある。大会準備の中心を担う組織のトップとして資質を欠くと断じざるを得ない。東京五輪・パラリンピック組織委員会の森喜朗会長が3日、日本オリンピック委員会(JOC)臨時評議員会で、女性理事を増やすJOCの方針に、「女性がたくさん入っている理事会は時間がかかる」と発言した。国内外の批判を受け、森氏は4日に謝罪会見を開いたが、「深く反省している」という言葉とは裏腹にいら立ち、開き直るそぶりが目立った。自らの発言の何が悪かったのかをきちんと理解し、反省している態度には全く見えない。発言に対し、国内ではツイッター上などで「組織委のリーダーにふさわしくない」などと抗議の声が広がった。海外では「性差別」「時代遅れ」などと批判が噴出した。森氏の発言が女性を蔑視するだけでなく、あらゆる差別を禁じるとした五輪憲章の理念を踏まえていないことも明白だ。中でも男女平等の理念は近年の大会の大きな柱で、国際オリンピック委員会(IOC)の改革指針「五輪アジェンダ2020」は参加者の男女比率を同等にする目標を立てている。男女混合の団体種目採用を奨励して女子選手の割合を高めており、今夏の東京大会で48・8%、次回のパリ五輪で史上初の男女同数を見込む。役員の女性登用にも力を入れていた。森氏はそうした五輪精神への認識があまりに薄い。蔑視発言の中で森氏は、組織委の女性委員について「みんなわきまえておられる。発言も的を射ていて、われわれも役立っている」とも述べた。女性委員を持ち上げた発言のつもりだろう。しかし「わきまえている」という表現には、自由で活発な議論を封じ、都合の悪い発言を排除しようとする姿勢が垣間見える。森氏は以前から失言癖があり、2000年の衆院選で訪れた新潟市では「態度を決めていない有権者が寝ていてくれれば」などと発言した。蔑視発言があった評議員会では、出席者から失笑が漏れたという。「またか」と思わせたにしても、誰も異論を唱えなかったのは残念でならない。指摘がなくては、問題発言を肯定しているのと同じだからだ。東京大会は、新型コロナウイルスの感染拡大で開催自体が危ぶまれているが、森氏は2日の自民党の会合で「新型コロナがどういう形であろうと必ず開催する」と強調し、国民感情との隔たりも懸念されていた。菅義偉首相は5日の衆院予算委員会で発言を「五輪の重要な理念である男女共同参画と全く異なる」としたが、政府内に辞任を求める動きはない。このままトップを任せられるのか。政府は後手に回らぬよう冷静な判断を下すべきだ。

*11-3:https://www.ehime-np.co.jp/article/news202102070005 (愛媛新聞社説 2021年2月7日) 森氏の女性蔑視発言 五輪パラの顔にふさわしくない
 東京五輪・パラリンピック大会組織委員会の森喜朗会長が女性蔑視の発言をしたことが波紋を広げている。日本オリンピック委員会(JOC)の臨時評議員会で「女性がたくさん入っている理事会は時間がかかる」「女性っていうのは競争意識が強い」「女性を増やす場合は発言の時間を規制しないと終わらないので困ると誰かが言っていた」などと述べていた。森氏は会見を開き、発言を撤回し謝罪したが、失言で済む問題ではない。会議が長いことや競争意識が強いことは性別と関係ないのは言うまでもなく、偏見を伴う発言に国内外から批判が高まるのは当然である。多様性の尊重をうたう五輪の「顔」としてふさわしくなく、かじ取り役を任せるに値しない。問題となったのは、JOCが女性理事の割合を40%に引き上げる目標を掲げ、役員選考の見直しを進めていることを受けての発言だった。JOCの理事は25人で、うち女性は現在5人にとどまる。五輪憲章はあらゆる差別を禁じており、中でも男女平等は大きな柱である。国際オリンピック委員会(IOC)も男女同数の五輪参加を目指し、五輪を通じた理想社会の実現を目標に掲げる。森氏の発言は、これらの理念や多様性の推進に取り組んでいる人々の努力を顧みないものだ。本当に反省しているかどうかも疑問符が付く。会見で「深く反省している」と低姿勢で臨んだものの、質疑に入るといら立ちや居直りを見せる場面があった。会長としての適性を問われると「さぁ」と首をかしげるなど、重く受け止ている様子はうかがえなかった。IOCは森氏の謝罪をもって「この問題は決着したと考えている」との声明を発表した。しかし、事態が収束するかどうかは見通せない。世界のアスリートや要人らから批判の声がやまず、東京都には大会ボランティアの辞退や抗議の電話が相次いでいるという。新型コロナウイルスの感染拡大で大会の開催そのものが危ぶまれる中、政府は新たな火種が生まれたことに危機感を強めなければならない。森氏の発言について菅義偉首相は「あってはならない」と述べたが、具体的な行動で示すべきだ。ここに至って本人をその立場に居続けさせることは開催国としての見識が疑われる。森氏が発言した際、出席者からとがめる声が出ず、全員が傍観者だった。そのこと自体も問われなければならない。世界経済フォーラムが2019年に発表した男女格差を示す「ジェンダー・ギャップ指数」で日本は153カ国中121位と過去最低だった。一連の事態は図らずも日本の「遅れ」を世界に示す結果となった。性差別認識や男女の不平等を改善していくために、一人一人が現状への問題意識を持ち続けたい。

*11-4:https://forbesjapan.com/articles/detail/37299 (ForbesJapan 2020/10/4) 女性リーダーの優れたコロナ対策、実証する研究結果発表
 私が4月に公開して大きな反響があった記事「コロナ対策に成功した国々、共通点は女性リーダーの存在」を科学的に裏付ける研究結果が発表された。女性リーダーは同等の立場にいる男性リーダーと比較して、新型コロナウイルス流行の初期段階での対応が優れていたのだという。研究は英国のリバプール大学とレディング大学の研究者らが行ったもので、「Leading the Fight Against the Pandemic: Does Gender ‘Really’ Matter?(パンデミック対策の主導 性別は本当に重要なのか?)」と題した論文にまとめられた。その内容によると、女性がリーダーを務める国の方が早い段階でロックダウンを実施し、論文発表時の死者数も男性が率いる同等の国より少なかったのだという。では、その理由は一体何にあるのだろう?
●リスクマネジメント
 研究チームは第1の理由として、女性リーダーは人命を守ることに関してリスクを回避する傾向が高い点を挙げている。女性リーダーは新型ウイルスのパンデミック(世界的大流行)の厳しい現実を直視し、国民に対しても同様の姿勢を促して、経済活動よりも人命を優先した。研究チームは、この要因が女性リーダーの「リスク回避」傾向にあった可能性を主に行動学の面から示した。
●リーダーシップのスタイル
 第2の理由とされたのは、女性指導者のリーダーシップスタイルだ。多くの女性リーダーは、子ども向けの記者会見を開いたり、医療従事者の検査を優先したりと、より共感的で民主的な参加型スタイルを取ってきた。研究チームが言うように、「リスクと共感に対する姿勢や明快で断固たるコミュニケーションが重要となった今回の状況」下では、愛と慈しみをもった女性のリーダーシップが優れたコロナ対策につながったのだ。
●未来に向けて
 研究チームは、社会構造が近い国同士を比較することで交絡因子を最小限に抑え、女性がリーダーを務める国のコロナ対策の成功が単に相関関係の結果ではないということを示した。それでも、こうした女性たちが指導者に就任できたのは選択バイアスの結果であった可能性を排除するのは難しい。こうした女性たちの有能さは、女性がトップの座に上り詰めるために非常に厳しい基準を満たす必要があったことが理由である可能性があるのだ。研究チームは「多くの変数が限定的であり、完全なサンプル実現に向けた取得が困難である場合が多いため、今後も多くの研究が必要となる」と認めた一方で、統計分析には常に欠点があるかもしれないものの、新型ウイルスの流行では各国で有効だった対策を理解することが重要だとも指摘した。メディアは、パンデミックがいかに女性たちを苦しめているかをこぞって取り上げているが、それだけではなく女性の功績もたたえるべきではないか。新型ウイルスの流行は、またとない学びの機会だ。有能な女性リーダーといった明るい点に注目することで、私たちはコロナ禍から学び、リーダーシップにおけるジェンダーバランスが皆の復興に資することを世界に示すことができる。

| 経済・雇用::2018.12~2021.3 | 12:14 AM | comments (x) | trackback (x) |
2020.12.20~29 男女不平等が経済に与える悪影響と日本で女性がリーダーに選ばれにくい理由 (2020年12月30日、2021年1月2、3日追加)
  

(図の説明:左図のように、日本のジェンダーギャップ指数は、2018年の110位から2019年は121位と下がった。そして、中央の図のように、経済分野と政治分野の遅れが目立っている。特に、右図のように、政治分野が世界平均より著しく低いことがわかる)

(1)製造業における女性差別と女性蔑視
1)自動車工業会の豊田章男会長(トヨタ自動車社長)の主張について
 自動車工業会の豊田章男会長(トヨタ自動車社長)が、*1-1-1・*1-1-2のように、「①電動化車両は、EVだけでなくPHV・PHEVも含まれるのでミスリードはやめるべき」「②自動車産業はCO₂削減努力を行ってきて、平均燃費は2001年の13.2km/Lから2018年の22.6km/Lと71%向上し、CO₂排出量も2.3億トンから1.8億トンに22%減るという結果を出している」「③今の電力状況のままクルマをすべてEVに置き換えれば電力不足になるため、EVへの急激な移行に反対する」「④日本は火力発電所がメインであるため、EV化がCO₂排出量削減にはならない」「⑤50年『実質ゼロ』目標の実現には研究開発に10年~20年はかかり、個別企業として続けるのは無理なので国の支援を求める」「⑥ガソリン車比率の高い軽自動車は、地方のライフラインなので、脱ガソリンで困るのは国民だ」「⑦2030年代に新車のガソリン車販売をなくすことを検討しているのは、自動車業界のビジネスモデルを崩壊させる」「⑧EVは製造や発電段階でCO2を多く排出するので、日本で車をつくれなくなる」「⑨ガソリン車をなくすことでカーボンニュートラルと思われがちだが、今までの実績が無駄にならないように日本の良さを維持することを応援してほしい」「⑩日本はエネルギー問題の方が大きく、原発新設どころか既存施設の再稼働もできない状況であり、カーボンフリーの電力をどうやって確保するのか」等を述べられた。

 しかし、この発言には、私や小池知事などの女性政治家が作った方針はどうせ大したことはなく、理系に弱くて現状把握もしていないだろうという事実とは異なる女性蔑視を含んでいる。製造業(特に自動車)には女性管理職が少なく、それにはこのような女性蔑視が影響しており、その結果として判断の誤りも生んでいるため、その内容をここに記載する。

 まず、①については、排気ガスによる公害を出し続けてきたガソリン車からEVへの変換時における過渡的状況の下ではPHV・PHEVも認められるが、たとえ②の実績があったとしても、PHV・PHEVは排気ガスを出さず環境を汚さない車とは言えないのがFactであるため、これをEVと強弁することこそニーズを理解していないミスリードである。

 また、⑤については、1995年に私が経産省に提案して1997年にCOP3で京都議定書が採択された時に、EV化・再エネ発電・蓄電池開発の必要性が日本企業に開示されており、その時点から開発が始まっているため、10年~20年どころか25年(四半世紀)も前から始めてこれまで応援し続けてきたのだ。しかし、日産はゴーン社長の下でEVに進んで結果を出したが、トヨタはハイブリッド車と燃料電池車に進んでいつまでも資本を集中投下しなかったため、未だに⑦⑨の問題が残っているのであり、これは経営者の判断ミスに基づく経営の失敗だ。そして、日本は、リーダーに合理的判断力がないため欧米に追随することしかできず、欧米は既に米テスラのみならず、*1-3のように、独ダイムラーも本業のEVへの注力を鮮明にしている。

 なお、③④⑧⑩については、地震が多くて国土の狭い日本に原発という選択肢はなく、既に原発は進歩的な電源でもないため、私は、2011年の東日本大震災直後から再エネへのシフトを10年以上も提唱しており、あらゆる意味でその方が日本にプラスであることもずっと述べている。そして、*1-4のように、東芝の車谷社長は、再エネ関連事業の売上高を2030年度には2019年度の約3.4倍にあたる6,500億円とする目標を掲げ、達成に自信を見せている。

 また、⑥の軽自動車が地方の重要なライフラインであるというのはFactだが、軽自動車のガソリン車比率の高かったり、*1-2のように、EVにすると割安さや車体のコンパクトさが失われかねないというのは嘘だ。何故なら、EVはガソリンエンジンを作って積む必要がなく、軽自動車で往復する距離は短いためこれまでの蓄電池でも十分で、製造コストが安くなるからである。そのため、脱ガソリン・電動化シフトで困るのは、これまでガソリンエンジンだけしか視野に入れてこなかった製造メーカーであり、軽自動車のユーザーである国民ではないというのがFactだ。さらに、軽自動車のユーザーは女性が多いため、環境意識が高く、デザインのよさも求めており、EV版のVWやフィアットがあればそちらでもよいのだ。

 そのため、私は、*1-5の2030年までに都内で販売される新車すべてをEVかHVに切り替えるため、充電器などのインフラ整備向けの補助金を拡充するのはよいと思う。東京都は既にマンションの駐車場に設置する充電器への補助制度を設けているそうだが、これは、スーパー・コンビニ・事業所などの駐車場にも広げ、太陽光発電する駐車場屋根とセットで全国ベースに広げて欲しい。そうすれば、客はそのような設備のあるスーパーやコンビニを選び、自動車は無料か非常に安い燃費で動くことになる。

 なお、エンジンは水素燃料電池にも応用できるので、いつまでもガソリンにこだわる必要はない。日本自動車工業会の豊田章男会長(トヨタ自動車社長)は、2030年代半ばに全ての新車を脱ガソリン車とする目標に懸念を示し、守りの姿勢に入ってかえって守れない状況に陥っているが、これがトヨタグループの創始者で豊田自動織機製作所(現:豊田自動織機)を創業した豊田佐吉だったら、「いつまでも車だけにこだわる必要はない。もっているノウハウと人材を使って、水素燃料電池を飛行機や列車や船舶に応用しろ」と言ったに違いない。

(2)農業における女性差別と女性蔑視
 農業は主に食品産業であるため、共働きが増えても家事における性的役割分担が顕在する日本では、購入の選択をする人は女性が多い。そのため、栄養や料理に強く、女性のニーズに気付きやすい女性が活躍できる素地がもともとあるのである。

 そのような中、*2-1のように、事業の効率化や需要の拡大・新規開拓を目指して、JAグループ高知が高知市に開設する直売所「とさのさと」と同じ敷地に大型スーパーが出店し、互いの強みを活かして客を呼び込むのは良い案だと思う。

 最近は、スーパーもカット野菜・総菜・加工品・調味料を豊富に扱い、共働きの主婦や高齢者が食事の質を落とさずに家事の省力化をできる提案が多くなったが、同じ敷地内にJAの直売所があれば新鮮な地場産野菜や果物を比較的安く購入できてさらによい。ただ、それぞれの売り場で清算しなければならないのは時間がかかるため、まとめて清算できる仕組みにして欲しく、それは店や出品者に番号をつけて区別することで可能だ。

 また、JAわかやまは地域経済の活性化に向けて地元の和食チェーン「信濃路」と連携することで合意したそうだが、コロナ禍では、需要減だけではなく需要増もあり、それは中食や出前であるため、長く続いた規制のために店じまいに追い込まれたレストランとJAが組んで、新鮮な食材で美味しさに妥協しない省力化料理を販売すれば、互いの強みを生かせるだろう。

 このような新規アイデアの実現には、ポイントをついたマーケティングと結果を経営に反映できる経営者(役員)の存在が必要で、*2-2のように、JA全中では、2020年7月現在、JA役員(理事・経営管理委員・監事)に占める女性比率が9.1%と前年比で0.7%増えたそうだ。全中は、今後も目標達成に向けて、JAに働き掛けを強めるそうである。

 全正組合員に占める女性の割合が22.7%しかいないのは、前年比で増えたといっても少ないと思うが、総代は9.8%と前年比0.4%増、役員総数は1,419人で前年より53人の増加だそうだ。女性の割合を高めるために非常勤理事の定数は増やさず、地域選出の女性理事を増やしたり、地域選出の理事定数を削減して全域の女性理事枠を設定したりするなど役員選出方法の見直しを行ったりしており、製造業や政治よりも努力しているとは思う。

 しかし、会議で少数意見として無視されないためには、役員に少なくとも30%の女性が必要なので、次の男女共同参画基本計画では、正組合員に占める女性の割合を40%以上、JA役員に占める女性の割合を30%以上にするのがよいだろう。

(3)政治における男女不平等と生活関連政策の軽視・縦割行政
1)政治分野に女性議員が少ない理由
 日本では、政治だけでなく製造業・農業などの他分野でも、トヨタ自動車社長の豊田章男氏のように、創業者の直系男子が地位を受け継ぐ世襲になっている場合が多い。これは、江戸時代に成熟した封建制と儒教文化によるのだろうが、このような先入観があると、一般国民が無意識でも、民主主義に基づいて投票した筈の女性の当選確率は下がり、この結果は能力に比例するものではない。

 また、県連の推薦に基づいて党本部が公認する場合、県連でも女性蔑視が働き、地方の県連は中央よりもさらに保守的な場合が多いため、女性を公認候補として党本部に推薦することに積極的ではない。そのため、女性は、地方で推薦されるより中央で推薦される方が容易なくらいである。もちろん、男性はそうではない。

 このようなことが重なる結果、*3-1のように、小選挙区の多くに現職候補がいる自民党で特に女性議員の割合が小さく、自民党国会議員393人(衆参両院議長を除く)のうち女性国会議員は39人の約1割で、衆議院議員全体でも女性議員の割合は1割足らずになり、各国の議会と比較した世界ランキングは167位だそうだ。

 それでは、「世襲制は政治によい影響を与えるのか?」と言えば、わかりやすい例を挙げると、(1)のトヨタ自動車社長である豊田章男氏がトヨタグループ創始者で初代の豊田佐吉と比較すると、偉人ではなく普通のぼんぼんであるのと同じことが政治の世界でも起こっている。つまり、世襲の場合、(全部ではないが)選りすぐられていない普通の人が多くなるのである。

 このような中、女性蔑視の先入観というハンディを乗り越え、世襲でないのに衆議院議員になった女性は、同じく世襲でないのに衆議院議員になった男性よりも、ハンディの分だけ狭き門になっており、より選りすぐられていると言える。

 そのため、*3-1のように、①クオータ制には現職らから「議員の質が下がる」といった批判もある ②議員や候補者へのハラスメント防止 ③多様性が必要だが、明確な目標設定がないと進まない と言われているそうだが、①については、現在の現職は、男性や世襲ということで下駄をはかせてもらって当選した人が多いため、クオータ制にして女性割合を30%(50%ではない)にしたからといって、議員の質(そもそも、質の定義が不明)は下がらないと思う。

 また、②は実際に起こるため、特に女性議員や候補者に対するハラスメントは、インターネットによる女性蔑視を利用した誹謗中傷も含めて徹底して禁止すべきだ。そして、③の多様性がなければ、2)に記載するように、政策に関するあらゆる方向からの議論ができないので、明確な目標設定をした女性の政治進出を含め、多様性は維持すべきなのである。

 しかし、私は女性だが、夫婦別姓を認めない民法の規定を合憲とした2015年の最高裁判決は妥当だと思う。その理由は、憲法24条1項は、「婚姻は両性の合意のみに基づいて成立する」と規定しているだけで、夫婦の姓については規定していないからだ。

 そして、民法第750条も、「夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫又は妻の氏を称する」と規定しているので、条文上、男女不平等ではない。そのため、21世紀の現在なら、憲法と民法の理念に従って両性が平等な立場で結婚し、家族が使う「Family Name」を話し合いで決めた上、改姓する人が旧姓を使いたい場合には、戸籍法上の届け出を行えば徹底して旧姓を使えるよう、戸籍法を改正すればよいと考える。

2)女性議員が少ないことの政策への悪影響
i) 2020年度第3次補正予算について

   
2020.12.16東京新聞           2020.12.15産経BZ 

(図の説明:左図のように、新型コロナを名目とした追加経済対策や補正予算を含めて、2020年度は歳出が175.6兆円、国債発行額は112.5兆円と跳ね上がったが、これは、新型コロナへの対応失敗を原因とする人災によるものだ。また、新型コロナを名目とする追加経済対策と第三次補正予算の内訳は右図のとおりだが、普段から計画的・継続的・無駄なく行うべきものが多い)


                2020.12.15NHK

(図の説明:左図のような医療提供体制の充実は普段から行っておくべきもので、新型コロナ対策としてそこだけに焦点をあてて行うのは、お粗末すぎる。また、中央の図のような経済構造改革は、新型コロナとは関係なく、変化に伴って継続的に行っておくべきものだ。さらに、右図の国土強靭化も、計画的で無駄のないよう、普段から行っておくべきものである)

 日本政府(特に厚労省)は、初めから新型コロナウイルスに対し非科学的で誤った対応をしていたため、日本は他の東アジア諸国と比べて極めて悪い成績となり、経済を止めたので「需要不足」にもなり、何がいけなかったのかについて反省することもなく、*3-2-1のように、国民の血税をばら撒いて大きな経済対策を行う第3次補正予算案を出した。そのため、このような馬鹿なことは、今後も続くと思わざるを得ない。

 そして、年換算で34兆円になる“需要不足”を財政支出で穴埋めするそうだが、本物の需要と財政支出で無理に作り出す需要は供給者が異なる上、作り出された需要によって福利を得る者も変わり、慣れない人がもともと求められていなかった仕事をするため、生産性や意欲が低くなる。

 その財政支出による支出先は、①コロナの感染拡大防止 ②ポストコロナに向けた経済構造の転換・好循環の実現 ③防災・減災のための国土強靱化 が柱だそうだ。

 しかし、このうち、①については、無症状でも感染力のあることが最初からわかっていたので、なるべく多くPCR検査をして感染者を隔離すべきだったのに、検査をするのに何段階もの障壁を設けて感染症を市中に蔓延させ、技術力を上げる機会となる治療薬やワクチンの開発も時間のかかることがよいことででもあるかのように吹聴して外国頼みになってしまった。そのため、政府の誤った政策とメディアが発した悪いメッセージが、まず猛省されるべきなのである。

 また、②の時代に合った経済構造への転換は、コロナとは関係なくいつでも行っていなければ無駄の多いヒト・モノ・カネの使い方になるのに、日本では、それが行われない。つまり、日本の終身雇用・年功序列・一度辞めたら戻れないという雇用体系の下では、雇用調整助成金を支払ってでも人の移動をさせないことが必要になり、生産性の著しく低い人や実質的に仕事をしていない人が多くなるため、景気が好循環するわけがないのだ。従って、本当は、企業に雇用調整助成金を支払うより、失業した個人に適時に失業保険を支払う政策にした方がよく、失業しても失業保険給付ももらえないような労働者は、男女にかかわらず作ってはいけないのである。

 さらに、③の防災・減災のための国土強靱化も、景気対策ではなく、よく設計された無駄のない使い方をしなければ、失業者救済のための質の低いばら撒きに終わってしまう。そのため、失政を改めることなく、“需給ギャップ”を理由に国民につけを廻して「真水」と「財政投融資」を緩めるのは、借金を増やすだけの大きな問題である。

 結局、*3-2-2のように、閣議決定された第3次補正予算は19兆1761億円と決定されたが、日本は台湾と同じく島国であるため、科学的理論にのっとり、いい加減でない検疫や防疫措置を行っていれば、感染症を市中に蔓延させることはなく、強制力を持つ営業時間の短縮・休業・ロックダウンやそれに伴う血税の無駄遣いも必要なかった。

 そのため、新型コロナ感染拡大防止目的と称して何兆円もの予算を使い、経済対策としてグリーンニューディールを行い、無駄遣いの多い防災・減災・国土強靭化を推進して、100兆円超の国債を新規に発行し、社会保障を持続可能なものにすると称して、つけを国民負担増と社会保障削減で国民に支払わせることには憤りしか感じない。

 そして、このように、生活を無視した政策を平気で行えるのは、生活感も計画性も科学的センスもない男性が中心となって政策を決めているからであろう。

ii) 106兆円の2021年度予算案について

    
2020.12.21毎日新聞 同、北海道新聞       2020.12.15NHK 

 政府は、*3-2-3のように、12月21日の閣議で106兆6097億円の2021年度予算案を決定し、長引く新型コロナ禍の中、さらなる積極財政をとるそうだ。

 水素や蓄電池などの技術開発が進み、グリーン社会が実現して、エネルギー自給率が100%以上となり、排他的経済水域内の海底資源も掘り出して使えるようになれば、失政続きで積みあがった国債を国民に迷惑をかけずに税外収入で償還することも可能かもしれないが、支出は収入がある程度は確実になってからするもので、全く不確実な段階でするものではない。

 また、デジタル化やスマート化は、省力化に必要な手段かもしれないが、世界では既に当たり前になっているため、これが国の収入増に結び付くか否かはわからない。さらに、自治体のシステムを一つに統一してしまうと、それぞれの工夫によるその後の発展がなくなる上、マイナンバーカードや都市封鎖で国民を管理したがる国を、私はよい国だとは思わない。

 なお、NHKは、*3-2-2で、令和3年度は、①感染拡大防止 ②ポストコロナに向けた経済構造転換 ③財政健全化 という3つの課題に対し、バランスをはかりながら予算を組む必要があるとしているが、①は、感染症対策の基本を守りながら、新しい治療や予防の方法があれば積極的に取り入れることに尽き、これがすべてできなかった厚労省のレベルの低さに驚く。

 そして、“ポストコロナ”“新たな日常”などという言葉を使って、新型コロナ感染症を経済構造改革の起爆剤にしようと言うのでは、わざと新型コロナを蔓延させているのではないかとさえ思われる。しかし、構造改革は、企業や個人がContenuing Improvementを行いながら、常日頃から継続的に行っていかなければ世の中についていけなくなる当然のものなのである。
 
 従って、東アジアにある日本は、新型コロナに対して欧米とは異なる特性を持っているため、感染症対策の基本を徹底して行い、早々に新型コロナを収束させて、経済を止めずに、返す当てもない選挙対策の際限なき財政出動はやめるべきだ。

iii) 「命を守るため」と言いながらの新型コロナ蔓延政策は故意か重過失か

  

(図の説明:左図のように、人口100万人当たりの新型コロナ死者数は、中国・韓国・日本で著しく低い。また、中央の図のように、日本企業が開発したアビガンは、米国・ドイツほか20ヶ国が既に購入を決定し、イスラエルが治験を開始しているものだ。アビガンは、ウイルスの増殖を抑える機序で効くため、既にウイルスが増えてしまった重症の患者より、まだウイルスがそれほど増えていない軽症・中等症の患者に使った方が有効なわけである)

 厚労省の医薬品専門部会は、12月21日、*3-2-4のように、新型コロナ感染症治療薬候補「アビガン」の承認を見送り、その理由を、「開発した富士フイルム富山化学等から得られたデータは、アビガンを投与した患者は偽薬投与の患者よりも症状が軽快し、陰性になるのが約2.8日短くなったが、『偽薬は効かない』との先入観から医師が適切に判断できていない事例があった」としている。

 しかし、新型コロナに感染しているのに偽薬を飲まされる患者はたまったものではない上、アビガンを投与した患者は偽薬投与の患者よりも症状が軽快し、陰性になるのが約2.8日短くなり、海外では既にアビガンを使っていることから、この判断は、医師や患者の負担を顧みず、アビガンを承認しない理由を探しているにすぎない。

 一方、*3-2-5のように、政府は、12月23日、新型コロナ感染症対策分科会に特別措置法の改正に向けた論点を示し、都道府県知事が要請・指示した休業や営業時間短縮に応じない店舗などに罰則の導入を検討していることを明らかにしたそうだが、休業や営業時間短縮などの国民に対する私権制限が新型コロナ感染症拡大を止めるという証拠は示しておらず、私権を制限する特措法を作るため、故意に新型コロナ感染症を長引かせているのではないかとさえ思われる。

 その上、尾身氏が「東京、首都圏が他地域と比べて人流が減っていない」「午後10時よりも早くという意見が多く出た」と話していることから、このような休業や営業時間短縮等の強制によって損害を受けた店舗は、自分の店の時短が新型コロナ感染症拡大を止めるという根拠を、アビガンのレベルで明らかにするよう、集団訴訟して損害賠償請求を行えばよい。何故なら、そのくらいのことをしなければ、政治・行政・メディアの横暴が止まらないからである。

iv) 年収200万円(月収16.7万円)の暮らしと後期高齢者医療費の窓口負担増
 *3-2-6に、「①菅首相と公明党山口代表が、年収200万円以上の後期高齢者医療費窓口負担を1割から2割に引き上げることに合意」「②後期高齢者でも現役並みの所得がある年収383万円以上の人は3割負担」「③2022年に団塊の世代が75歳以上になり始めるのを前に、現役世代の負担を軽減する狙いで2022年10月から実施」「④厚労省は年金収入のみの単身世帯で年収240万円以上に絞る案から155万円以上まで5つの案を示し、年収200万円以上は3つ目」「⑤これにより現役世代の負担が880億円減る」「⑥首相は、将来の若い世代の負担を少しでも減らしていくのは大事だと述べた」と記載されている。
  
 そのため、年収200万円の単身年金受給者はどういう暮らしができるのか計算したところ、年間社会保険料9.41万円(=《200-120-33》X9.64%+4.88)、年間所得税3.25万円(=《200-120-38-9.41》X0.1)円、年間市県民税9.9万円(=《200-120-9.41-33》X0.10+6.2)がかかるため、手取り年収は約177万円(=200-9.41-3.25-9.9)となり、手取り月収が14.8万円となる。これは、最低生活とされる生活保護受給額(物価の低い地域13.1万円、物価の高い地域15.8万円)の中間程度だが、生活保護受給者は医療費の自己負担がない。

 そして、手取り月収が14.8万円の人の生活費を例に上げると、家賃5.3万円、食費3万円、水光熱費 1万円、通信費 1万円、交通費1万円、雑費(日用品・消耗品) 1万円、その他(交際費等々)2.5万円となり、借家の場合は、特に苦しい生活になる。

 そのため、現役世代の負担を880億円減らすために、生活保護受給者程度の所得しかない人から、後期高齢者という病気しがちな年齢になって、医療費の窓口負担を1割から2割に引き上げるのはいかがなものかと思う。何故なら、この人たちが使える1カ月分の食費は、麻生財務大臣の1回分の飲み代にも満たない金額だからだ。しかし、男性の政治家や行政官は、生活費の計算ができないらしいのだ。

 結論として、後期高齢者医療費を現役世代のために880億円節約することを考えるのは、命を大切にしない高齢者いじめに過ぎず、それより、いくらでも働ける現役世代にばら撒く何十兆円もの無駄遣いをやめるべきことは、誰が考えても当然である。

 さらに、「高齢者の方が若者より貯金があるから不公平だ」などと言う馬鹿者が少なくないが、働けなくなり病気がちになった時のために、働けるうちに一生をかけて貯金しているのだから、高齢者の方が若者より貯金があるのは当たり前だ。にもかかわらず、このようなことを言う馬鹿者がいるのは、「どういう育て方をしたのか。教育が悪い」としか言いようがない。

v)最低所得保障は、働けない人に行うべきであること
 菅政権が設けた「成長戦略会議」のメンバーの竹中氏が、*3-2-7のように、生活保護や年金を縮小して全国民を対象に1人当たり月7万円を支給する「ベーシックインカム(BI、最低所得保障)」の将来の導入に備えて議論を進めるべきだとの考えを示されたそうだが、生産年齢人口にあたる働き盛りのハンディキャップもない人に国が金を配る必要はない。

 それより、これを行う原資として生活保護や年金を縮小すれば、①本当に必要とする人への所得保障ができず ②働き盛りの人がやる気を出して頑張るのも阻害する。つまり、列車が力強く進むためには、なるべく多くの機関車を繋ぐ必要があるのに、国民を全員客車にすれば列車は動かなくなる。客車ばかりを多く繋げても、列車は決して動かないことを忘れてはならない。

 そのため、何を考えているのかと思うが、日本では、このようにわけのわからない人が一流と言われる経済学者で、首相の「成長戦略会議」メンバーであり、その発言におかしさを感じない人が多いのに、さらに驚くわけである。

vi) 縦割りとセクショナリズムは、縄張りを作りたがる男性の本能では?
イ)縦割りでは戦えない自衛隊
 菅首相が、*3-3-1のように、航空自衛隊入間基地で開かれた航空観閲式で、①組織の縦割りを排し、陸海空自衛隊の垣根を越えて取り組むことが重要 ②宇宙・サイバー・電磁波など新たな領域への対応が求められている ③個々の組織のみでの対処はより難しくなったので、知見と経験を最大限に活用し、特別チームのように新たな任務に挑戦し、自衛隊をさらに進化させることを強く望む と言われたのには賛成だ。

 太平洋戦争当時は、既に航空機の時代が到来していたにもかかわらず、日本軍は帝国陸軍と帝国海軍しかなく、それぞれが航空隊を持ち、お互いの意思疎通は悪かったと言われている。今後は、②のように、宇宙・サイバー・電磁波などを使って、自分は安全な場所にいながら、省力化した安上がりの戦闘を行うのが主流になると思われるため、①③は重要だ。

 しかし、日本は、憲法9条のおかげで幸い陸海空軍はなく、あるのは自衛隊(以下、自衛軍と呼ぶ)だけだと言える。そのため、自衛軍の組織替えを行えば、必要な場所に必要な人を配置できる。従って、新しいことは効果的なメンバーを集めてまずプロジェクトチームで行い、軌道に乗って増員が必要になれば増員すればよいが、そのメンバーも量より質の時代なのだ。そして、このような時に縦割りとセクショナリズムを振りかざして組織再編に反対すれば、合目的的でない軍隊となり、太平洋戦争と同じ結果になるだろう。

 軍隊の場合は、外国との戦争で結果が如実に出るのでわかりやすいが、日本では、省庁にも縦割り・セクショナリズム・無責任体制があり、ポジションを増やそうとして、既得権益を失わないようにしながら予算の分捕り合戦を行っている。そのため、真に国民のために使われる予算が小さくなり、合理的な配分にもならず、国民のためにならない上に国力を弱めている。

ロ)農水省と経産省を統合したらどうか?
 地方に関係している中央省庁は、通信は総務省、産業は農水省・経産省、労働は法務省・厚労省、交通は国交省だ。そして、これらが漏れなく重複なく、うまく機能しなければ、無駄が多い割に役に立たない。

 一つの例として、農業地帯は、*3-3-2のように、農地が10ha規模の場所も存在する北海道でさえ高齢化や担い手不足で離農が急速に進んで過疎地となっている。そして、農家の自助努力では農地を維持することが難しく、現場からは作業の自動化を求める声が根強いが、通信環境が未整備でスマート農業の導入が進まない現実があり、これでは、日本の食料自給率は、さらに下がるだろう。

 「このような考え方は保護主義で、食料は外国から輸入すればよい」などと考える人がいるが、外国から食料を輸入できるのは製造業が比較優位にあって輸出額が多い場合であり、日本は、既にコスト高になっている上、付加価値の高いものを作る努力もしていないため、製造業も風前の灯なのである。その上、食料自給率が低いと安全保障上の問題も大きい。

 しかし、高齢化の進行によって担い手に農地を集積することで、1戸あたりの平均耕地面積を10ha以上にできる時代は、農業も生産性の高い産業にできるため、やり方によっては、ピンチをチャンスに変えることができる有望な時代である。

 その規模拡大を実現できるためには、農機の自動化・通信基盤の整備・労働者の常用雇用・繁忙期のアルバイト雇用など、大規模経営を可能にするインフラが整っていなければならない。これに関わる省庁は、農水省だけではなく経産省・総務省・法務省・厚労省などで、地域の事情に詳しい地方自治体が必要事項を取り纏めて要求していく必要がある。この時、省庁が縦割りで全体の展望が見えておらず、おかしな判断をすると、すべてが頓挫してしまうのだ。

 なお、*3-3-3のように、「役所にとって負けず劣らず重要なのが組織定員要求」というのは農水省に限ったことではないが、これを放っておくと「税金で養っている公務員の数/生産年齢人口」や「税金で養っている公務員の数/GDP」が上がる。これがまずい理由は、税金で養われる公務員には、効率化・付加価値増大の圧力がなく、格付けを重視して仕事の柔軟性が乏しく、働いているふりをしながら後ろ向きの仕事をしていても倒産しないため、公務員の割合が高くなればなるほど国全体の生産性が下がることである。そのため、橋本内閣が行った2001年の省庁再編は重要だったのだ。

 そのような中、*3-3-3に、「①単独省として存続した農水省は、どの局が削減されるか大議論になった」「②現在、廃止された畜産局が復活するかどうかのヤマ場を迎えている」「③現在の食料産業局は新組織案では大臣官房に新事業・食品産業部が設置されるらしい」「④輸出・国際局や作物原局(農産局、畜産局、林野庁、水産庁)との連携が今以上に図られ、食料産業のますますの発展につながる組織改正となることを期待したい」などと記載されている。

 このうち①②は、元に戻そうとする後ろ向きの仕事のような気がする。しかし、農業を産業として強くしつつ、食料自給率を上げて安全保障に貢献し、余剰能力があれば輸出して外貨を稼ぐことが、現在の農林漁業に課せられたニーズであるため、より効果的にそれができる方法を考えた方がよいと思う。

 そして、より効果的にそれができる方法は、農林漁業・自然・地域に関する知識を多く持つ農水省と産業政策・輸出入・エネルギーを担ってきた経産省を統合し、農林水産品の輸出に既にある経産省の基盤を使いながら、農林漁業地帯で再エネ発電も行い、産業としても強い農業を作ることではないかと、私は思う。何故なら、経産省管轄の第二次産業である製造業は高コスト構造によって既に先細りになっているが、食品生産も製造業の一部で、民間にとってはどの省庁の管轄かよりも、既にある知識やインフラを使って効率的に発展できることが重要だからである。

ハ)エネルギーについて

  
        Goo            Jcca       WWFジャパン

(図の説明:左図のように、1973~2016年は、名目GDPは2.5倍になっているが、エネルギー消費は1.2倍にしかなっていない。その理由は、省エネが進んだこともあろうが、内訳を見ると業務他部門は2.1倍になっているのに対し、産業部門は0.8倍になっているため、第二次産業が海外に出て減り、第三次産業に移行したのではないかと考える。2018年の部門別CO₂排出量割合が中央の図で、産業関係の56.3%《35.0+17.2+4.1》が最も大きく、運輸部門が18.5%、家庭部門は14.6%である。これを右図のように次第に減らし、温暖化ガス排出量を2050年に実質0にする計画だそうだが、本気でやれば15年後の2035年でもできそうな気がする)

 日本にとって有利なエネルギーの変換なのに、仕方なく世界についていくという情けない形で、日本政府は、*3-3-4のように、温暖化ガス排出量を2050年に実質0にするというゆっくりした行動計画を公表した。

 その内容のうち、①新車は2030年代半ばに全て電動化(HVも含む)する ②2050年に電力需要が30~50%膨らむと想定し、再エネ比率を50~60%に高める ③産業・運輸・民生全体で電化を加速し、エネルギー源の電力部門は脱炭素化する ④洋上風力は40年までに最大4500万kw(原発45基分)の導入を目指す ⑤蓄電池は2030年までに車載用の価格を1万円/kwh以下に下げる ⑥住宅・建築物は2030年度までに新築平均で実質0にする などである。

 これらに成績をつけると、①は、2030年代半ばになってもHVを含むので「可」に留まる。また、②は、2050年(今から30年後)なら再エネ比率を100%にすることもできるのに、*3-3-6のように、高コストで激しい公害を出す原発にまだ固執しているため「不可」。③の産業・運輸・民生全体で電化というのは「優」だが、電力部門が激しい公害を出す原発を使うつもりなので「可」に留まる。④は、再エネは洋上風力だけではないため「良」程度だ。⑤は、安いほどよいが、まあ「優」だろう。⑥は、可能かつ重要なので「優」。これらをまとめると、経産省と大手の絡むところが、既得権を護るために改革の足を引っ張っていると言える。

 メディアの説明も、i) 風車は部品数が多く裾野が広い ii) 国内に風車は製造拠点がない iii) 燃焼時にCO2を排出しない水素を火力発電で2050年に2000万t消費する目標 iv) 需要拡大で水素でガス火力以下のコストを実現 v) アンモニアを水素社会への移行期の燃料とする vi) 軽自動車は、電動化するとコスト競争力を失う恐れがある vii) バスやトラックなどは電動化が難しい vii) 船舶は50年までに水素やアンモニアといった代替燃料に転換 となっているが、おかしな部分が多い。

 例えば、i)のように、部品数を多くし裾野を広くすると、ユーザーにとってはコスト高で管理が難しく、サプライヤーにとっては安価で柔軟な生産体制にできないため、効果が同じなら簡単な作りで部品数の少ない製品の方が優れている。

 また、ii)は、風車は紀元前から使われている道具であり、最新の材料や流体力学を駆使したとしても、作るのは容易だ。さらに、iii)は、再エネ由来の電力で水(H₂O)を電気分解すれば水素(H₂)と酸素(O₂)ができるのに、それを燃やして火力発電を行うというのは愚かである。iv) v)については、水素は燃料のいらない再エネ発電で作れるため、化石燃料由来のガス以下のコストになるのは当然で、水素の方が容易に作れるのに移行期と称してアンモニアに投資するのは資本の無駄遣いである。

 なお、vi)の軽自動車は、電動化した方が軽量で安いものができ、環境意識・コスト意識が高く、デザインも気にする女性にもっと売れるだろう。vii) のバス・トラックの電動化は外国では既にできているのに、日本では難しいと言うのか(??)。さらに、vii) の船舶は、2050年までなら水素燃料で十分で、アンモニアを使う必要などない。このように、非科学的で不合理な選択を促しているのは、無駄が多すぎて見るに堪えないのである。

 そのため、国民は、原発を使おうとしている大手電力会社の電力を使わない選択をせざるを得ず、それには、*3-3-5のように、2030年に新築住宅・建築物のCO₂排出量を0にする目標は歓迎だ。ゼロ・エネルギー・ハウスの価格は、一般国民の手の届く範囲でなければならないが、それが標準になれば大量生産でコストが下がるので、価格も下げられるだろう。

 最後に、除雪技術・高性能建材・エネルギーの最適利用システム・ビル壁面設置型太陽電池の実用化などの新しい工夫は、大いに期待できる。

(4)女性がリーダーに選ばれにくい理由と女性差別の関係
1)女性がリーダーに選ばれにくい理由と女性差別の関係の本質
 「『女性にリーダーは向かない』というジェンダー・バイアスをなくそう」として、*4-1に、「①働く女性は有償の仕事と無償のケア労働を担い、ダブルワークになっている」「②有償労働と無償労働は足して考えるべき」「③日本人女性の総労働時間は日本人男性より長く、睡眠時間は短い」「④日本人女性の総労働時間はOECD諸国の中で最長」と書かれている。

 これは、無償労働が女性に偏り、無償であることによって「大した仕事ではない」「働いていない」と誤解されていることによって起こった悲劇だ。実際には、家事は必ず結果を出さなければならない大変な仕事で、子育てを含む家事をすべて外注すれば20~30代の一般サラリーマンの給料より高くなるが、有償で働いているサラリーマンは「働いている」とされ、無償で家事と子育てを受け持つ妻は「働いていない」と言われるのである。

 それでも、女性の立場が弱くて状況を変えることができないとすれば、理由はさまざまだろうが、有償で働いて見せることができない女性が多いからだろう。

 *4-1には、「⑤2019年12月に世界経済フォーラムが発表したジェンダー・ギャップ指数で、日本は153カ国中121位」「⑥特に政治・経済分野の女性リーダーが少ない」「⑦経営陣が均質の集団だと集団浅慮が起きる」とも書かれている。

 ⑤⑥は、日本が女性の登用で非常に遅れている事実を数値で示しており、その結果、⑦のように、意思決定に関わる経営陣が均質化しすぎて多面的に議論できない状態になっているのだ

 また、*4-1は、「⑧アンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)がある」「⑨無意識の偏見により、採用、評価、昇進昇格などで差が出る」「⑩男性として望ましく、リーダーとしても望ましい特性で共通するのは『責任感がある』『行動力がある』『説得力がある』など重なりが多く」「⑪女性として望ましく、リーダーとしても望ましい特性で共通するのは『責任感が強い』『自立している』のみだった」「⑫ここから分かるのは『リーダーは男性向きで、女性には向かない』という偏見があることだ」「⑬力強いリーダーシップを発揮している女性を、『女性らしくない』とマイナス評価してしまう可能性がある」「⑭リーダーは男性向きで、女性には向かない」など、無意識の偏見による女性差別についても記載しており、その点でこれまでの記述よりずっと深く、「女性活躍→子育て支援」ばかりの記述とは雲泥の差がある。

 このうち、⑧⑨は、私の経験から見ても正しく、日本人には、女性に特に謙虚さや楚々とした態度を求め、女性が実績を示してリーダーにふさわしいことを証明することを不可能にしたがる人が多い。それでも、能力やリーダーにふさわしい事実を証明した女性には、⑪⑫⑬のように、それとは両立しない“女性らしさ”の要素を勝手に作り出して持ち出し、どうしても⑭の結果を導こうとするのである。こういう人は、男女にかかわらず多いため、教育に原因があるだろう。

 なお、メディアも、能力や体力が十分な女性には、「意地が悪い」「優しくない」などの負の印象付けをして偏見や差別を助長し固定化させている。それがフジテレビの演出で、それを間に受けて悪乗りし、ネットで中傷し続けた人によって引き起こされた女性プロレスラーの自殺事件が、*4-2だ。これは、損害賠償請求してもよい事件だが、メディアもネットも嘘であっても言いたい放題(「言論の自由」「表現の自由」には値しない)で、投稿した人が誰かもわからないようにして、ずっと残すわけである。私の場合は、名誉棄損で侮辱の週刊文春の嘘記事とそれを引用したネット記事が代表だが、決してそれだけではない。

 こんなことを放置していてよいわけがないのだが、「発信者情報の開示を求める申し立ては、不都合なことを書かれた企業などからも起こされていて、正当な批判や内部告発をためらわせる圧力になっている」などとする意見もある。しかし、正当な批判や内部告発なら、ネットを使って匿名で行うのではなく、しかるべき所に責任を持って行うべきであり、“試行錯誤”などと言っているうちは、人権侵害による損害が多発し続けているのだ。

2)夫婦別姓と通称使用
 夫婦別姓は世界の常識とまで言われるようになったが、中国・台湾・韓国で妻の姓が夫と異なるのは、子はその家の子としてその家の姓を名乗るが、妻は他家の人であり、子の母と認めるか否かは夫が決めるという超女性蔑視の名残だと、いろいろな人から聞いている。

 日本は、第二次世界大戦後、敗戦によって民主化が行われ、(3)1)に記載したとおり、日本国憲法24条1項で「婚姻は両性の合意のみに基づいて成立する」と規定され、民法第750条で「夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫又は妻の氏を称する」と規定されて、条文上は男女平等になった。

 それでも改姓するのは殆ど女性で、女性が改姓の不利益を受けがちなのは、21世紀の現在も、日本人が憲法と民法の理念に基づいて平等な立場で結婚していないからだと言える。その理由には、①女性労働には無償や低賃金が多いため、平等に交渉できない ②儒教文化の弊害 など国民に内在する本質的な問題があるからだが、少数とはいえ、改姓した場合に不利益を受けるのは女性だけではない。

 そのため、私は、家族が使う「Family Name」は平等な立場でどちらかに決め、改姓する人が旧姓を使いたい場合は、戸籍法上の届け出を行えば徹底して旧姓を使えるよう、戸籍法を改正すればよいと考えるのである。

 しかし、*4-4は、「③選択的夫婦別姓制度の導入が後退した」「④働き続ける女性が増える中、改姓で仕事に支障が生じる」「⑤1人っ子が増え、結婚しても実家の姓を残したいという希望も強い」「⑥選択的夫婦別姓はあくまで希望者に新たな選択肢を示すというものだ」「⑦今回の計画は、旧姓の通称使用拡大を強調するが、2つの姓の使い分けには限界がある」「⑧夫婦同姓を法律で義務付けているのは、主要国でも異例だ」「⑨家族の一体感のみなもとは同姓であることだけでもない」「⑩大事なのは、議論を止めず、しっかり続けることだ」としている。

 このうち、④は、徹底して旧姓を使えるようにすればよいので、③のように後退したとは言えない。⑤は、残したい姓を「Family Name」にすればよく、統一した「Family Name」を持つ意味は、子の姓の不安定性をなくし、誰も他人ではない家族の一体感を得ることだ。⑥では、夫婦別姓を選択しなかった場合にやはり改姓の不利益が残り、⑦は戸籍に記載すれば徹底して旧姓を使えるよう戸籍法を改正すれば足りる。さらに、⑧は、むしろ夫婦別姓の方に女性蔑視の歴史があり、⑨は、家族の一体感の源はもちろん同姓であることだけではないが、1要素ではあり、⑩のように、議論を続けるばかりでは改姓の不利益の被害者が増え続けるのである。

 そのため、*4-3のように、外務省が、2021年4月1日の申請分からパスポートの旧姓併記要件を緩和し、戸籍謄本、旧姓を記載した住民票の写し、マイナンバーカードのいずれかを提出すれば旧姓を明示できるようにするとしたのは当然のことだ。

 私は、2020年6月に、戸籍謄本と旧姓を記載した住民票を持って、夫とともにパスポートを更新しに行ったところ、外国での論文の発表や業務による渡航など旧姓使用の実績を証明していないから旧姓を併記させないと難癖をつけられて怒りを覚えた。何故なら、衆議院議員の間は旧姓を使い、現在の名刺も旧姓を記載しているため、実績を証明していないなどと外務省から言われる筋合いはなかったからである。

 そして、この時点で旧姓を併記させなかった省庁は外務省だけであり、総務省のマイナンバーカードも警察庁の運転免許証も地方自治体の住民票も旧姓併記できていたのだ。

・・参考資料・・
<製造業>
*1-1-1:https://news.yahoo.co.jp/articles/7545be8044b2a87b478132aa7bbd6c705869fc8d (Yahoo 2020/12/17) 自工会・豊田章男会長が大手メディアに「電動化車両はEVだけではない!」ミスリードやめてと苦言
●いまの状況でEVが増えると電力不足になる!?
 自動車工業会の豊田章男会長(トヨタ自動車社長)が、2020年12月17日に懇談会規模の記者会見をおこなった。挨拶に代表される無駄な時間を掛けず、冒頭より記者からの質問を受けるという内容です。最初に出たのは、昨今話題にあがる電動化について。記者側から「自工会としてどう考えるのか?」という茫洋とした問いだったのだけれど、熱い回答になりました。長い内容になったため概要を説明すると、まず会長自らトヨタ調べの数字で現状を紹介した。自動車産業はずっと二酸化炭素削減努力をおこなっており、その結果、販売している車両の平均燃費でいえば、2001年の13.2km/Lから2018年の22.6km/Lと71%も向上しており、自動車が排出する二酸化炭素の排出量も2.3億トンから1.8億トンへ22%も減っているという。あまり公表されていない数字だったこともあり、改めて自動車環境技術の進化に驚かされる。続けて電気自動車の話になった。多くのメディアはすべて電気自動車にすべきだというけれど、いまの電力状況のままクルマをすべて置き換えようとすれば電力不足になるうえ、そもそも日本は火力発電所がメインのため二酸化炭素の排出量削減にならないという。この件、裏を返せば、日本という国全体のエネルギー問題のほうが大きいということだと考えます。現時点でカーボンフリーの電力をどうやって確保したらいいかという論議はまったく進んでいない。原子力発電所を新設するどころか、既存の施設の再稼働すら出来ない状況。十分な安全性を担保出来なければこのまま廃炉になっていくと思う。
●「EVだけになるわけではない」大手メディアの誤認識に苦言も
 実際問題として「2050年にカーボンニュートラル」という目標を、どういった方策で実現するかまったくわからない。少なくとも現在の排出量を提示し、大雑把でいいからそれぞれの分野でどのくらいの目標設定をするか、エネルギー事情をどうするのかくらいの目安がなければ、自動車業界の対応策すらイメージ出来ないということなんだろう。どうやら2050年カーボンニュートラルや、東京都知事の電動化車両以外販売停止の件、政治家サイドで突如に決めたことらしい。いうのは簡単ながら、エネルギー政策まで考えてくれなければ対応するのも難しいと思う。そもそも、脱ガソリン車で困るのは国民です。地方で移動手段の主力となっている軽自動車もどう対応したらいいかわからず、このままだとユーザーが困る。返す刀でメディアもバッサリ切った。電動化車両のなかにハイブリッド(HV)や、プラグインハイブリッド(PHV/PHEV)も含まれているのに、報道を見ると電気自動車しか販売出来ないようなミスリードをしているという。これはもう、報道するメディア側に大きな問題があります。大手メディアの記者は勉強不足のため、電動化車両にハイブリッドやプラグインハイブリッドも含まれることを認識していない。結果、少なからずそうした報道を見た人が、東京都は2030年からすべて電気自動車になると理解している。そのほか、豊田会長はメディアの誤認識や意地の悪い報道に対し苦言を呈す。聞いていて「その通りですね!」の連続だ。これだけ率直に自分の意見をいうトップは珍しい。「これだけいうと叩かれると思います」と会長自らオチまで付けた。今後も自動車産業代表として大暴れして欲しい。

*1-1-2:https://news.yahoo.co.jp/articles/677759feaa63e0627321fc86f24f2ef515f8fb1f (Yahoo 2020年12月17日) トヨタ社長「自動車のビジネスモデル崩壊」 政府の「脱ガソリン」に苦言
 菅義偉首相が打ち出した2050年に温室効果ガス排出を「実質ゼロ」にする目標に向け、産業界の「重鎮」が苦言を呈した。日本自動車工業会(自工会)の豊田章男会長(トヨタ自動車社長)は17日、オンラインで取材に応じ、政府が30年代に新車のガソリン車販売をなくすことを検討していることについて「自動車業界のビジネスモデルが崩壊してしまう」と懸念を示した。日本は火力発電の割合が大きいため、自動車の電動化だけでは二酸化炭素(CO2)の排出削減につながらないとの認識を強調し、電気自動車(EV)への急激な移行に反対する意向を示した。原発比率が高く、火力発電が日本と比べて少ないフランスを例に挙げ、「国のエネルギー政策の大変革なしに達成は難しい」「このままでは日本で車をつくれなくなる」などと発言。EVが製造や発電段階でCO2を多く排出することに触れ、「(そのことを)理解した上で、政治家の方はガソリン車なしと言っているのか」と語気を強めた。ガソリン車の比率が高い軽自動車を「地方では完全なライフライン」とし、「ガソリン車をなくすことでカーボンニュートラルに近づくと思われがちだが、今までの実績が無駄にならないように日本の良さを維持することを応援してほしい」と述べ、拙速な「脱ガソリン車」には賛成できない考えを示した。一方、日本鉄鋼連盟の橋本英二会長(日本製鉄社長)は17日の定例記者会見で、50年「実質ゼロ」の目標の実現について、研究開発に「10年、20年はかかり、個別企業として続けるのは無理だ」と述べ、国の支援を求める考えを示した。政府の目標達成には、自動車業界や鉄鋼業界の協力が不可欠。「財界総理」と言われる経団連会長を輩出し、政府に対する発言力も強いトヨタや日鉄のトップから懸念が示されたことで首相の「ゼロエミッション」は曲折も予想される。

*1-2:https://www.nikkei.com/article/DGXZQODZ1135N0R11C20A2000000/ (日経新聞 2020/12/17) 電動化、軽・トラック遅れ ダイハツなど価格・車体が壁
 政府が自動車業界に「脱ガソリン車」への対応を迫っている。国内では新車市場の約5割を占める軽自動車やトラックが課題となりそうだ。例えば軽は約7割がガソリン車で、電気自動車(EV)にすると割安さや車体のコンパクトさが失われかねない。軽シェア首位のダイハツ工業やトラック首位の日野自動車などにとって、電動化シフトは険しい道のりとなる。政府は10月に「2050年に温暖化ガスの排出量を実質ゼロにする」との方針を発表。この達成に向け、経済産業省は具体的な工程表を年内にまとめる。30年代半ばに新車販売を全てハイブリッド車(HV)やEVなどの電動車にする目標を盛り込む見通しだ。軽やトラックがこの対象に含まれるかは未定。それでも「特別扱いは難しいのでは」(自動車メーカー幹部)と業界は身構える。日本独自の規格車である軽は、2019年の新車販売台数が148万台と全体の約3割。ただ現在は約7割がガソリンエンジンのみで動くタイプだ。軽以外の乗用車と比べて電動化が進んでいない上に、足元では燃費改善効果が小さい「マイルドハイブリッド」と呼ばれる簡易式HVしかなく、EVや燃料電池車(FCV)はまだない。首位のダイハツや3位のホンダは、現時点で軽の電動車の品ぞろえがゼロだ。電動車比率が6割以上の2位のスズキも簡易式HVしか持たない。小型・軽量化で燃費性能を高めてきた軽は、電動化に本格的に取り組んでこなかった。HVやEVに必要なモーターやバッテリーは価格が高く、軽の最大の強みである安さが失われるためだ。総務省によると19年の軽の平均価格は143万円で、一般的な小型車(217万円)よりも3割強安い。地方を中心とした重要な移動手段でもあるため、ダイハツ幹部は「電動車にすると軽の価格が上がって顧客が離れてしまう。補助金など支援策が必要だ」と困惑する。車内空間を確保するため、電池の搭載スペースが限られることも電動化の足かせとなる。ダイハツは今後は低価格のHV開発を急ぐ。一方、三菱自動車は日産自動車と共同開発する軽のEVを23年度にも投入する計画で、電動化の試金石になりそうだ。さらに厳しいのがトラックだ。国土交通省によると、19年度のトラック(3.5トン以上)販売のうちHVなど電動車は1%に満たず、大半はディーゼル車だ。電池を積んだEVだと搭載できる荷物が減ってしまう上に、充電にも時間がかかってしまうためだ。小型トラックでは三菱ふそうトラック・バスがEVを販売し、いすゞ自動車や日野自はHVを手掛ける。ただ「価格が高いのでニーズは少ない」(関係者)。それでも世界で環境規制が強まるなか、脱炭素への取り組みは不可欠だ。電動化への圧力は、協業や再編を加速させるきっかけにもなりそうだ。

*1-3:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20201219&ng=DGKKZO67507380Z11C20A2NNE000 (日経新聞 2020.12.19) ダイムラー、F1出資半減 「常勝」の自社チーム EVへ注力鮮明
 独ダイムラーは18日、自動車レースの最高峰、フォーミュラ・