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2020.9.18~20 菅首相と政策、衆議院解散など (2020年9月21、22、23、24、25、26、29、30日に追加あり)
  
   日本の人口推移       産業別就業者数(2018年)  基幹的農業従事者の年齢

(図の説明:左図の合計特殊出生率は、1970~2005年の35年間は下がり続け、2005年《私が衆議院議員になった年》に本格的に保育所等の整備を始め、児童手当も払うようにして少し上がったが、この間に高齢化率は30%近くになっていた。就労者数は、2019年には平均6,724万人おり、中央の図のように、第一次産業3.5%、製造業15.9%、建設業7.5%以外の73.1%はサービス業に従事している。また、サービス業のうち医療・福祉は12.5%と、それだけで製造業に迫るニーズの高い産業だ。なお、右図のように、基幹的農業従事者の平均年齢は65歳を超えて70歳に迫っており、これで日本のモノ作りが続けられると考えるのは甘いだろう)

  
 日本の名目賃金と実質賃金  OECD加盟国 名目GDPと購買力平価によるGDPの順位    
               の労働生産性

(図の説明:左図のように、金融緩和と財政支出により、名目賃金は少し上がったが、実質賃金は大きく下がった。しかし、中央の図のように、2014年のOECD加盟国における労働生産性の順位も、日本は21位でかなり低いので、仕方ないのかもしれない。右図は、2011年時点の名目GDPと購買力平価に基づくGDP《本当の豊かさを示す》の順位で、購買力平価に基づくGDPは、日本はインドより低い4位だ。ただし、1人当たりではなく、国全体のGDPである。現在は、どうなっているだろうか?)

(1)菅政権の政策について
 菅政権になるとどうなるのかと思っていたが、仕事師の多い本気度の高い内閣ができた。しかし、最も重要なのは、その内閣で、何をどういう方向で改革するかだ。しかし、メディアには、「派閥の力が弱いから、議員の教育ができない」「派閥があるから、密室だ」などの事実ではない矛盾する批判をよく見かけ、派閥ばかりに焦点を当てることこそが前時代的である。

1)規制改革
 菅首相が、*1-1のように、規制改革を「政権のど真ん中に」と初の記者会見で述べられたのに私は賛成だが、①どの規制をどういう方向で改革するか ②それは国民のためになるのか が、最も重要である。

i)規制改革と既得権益について
 縦割行政は、他省庁に端を発した変な政策を阻止するというメリットはあるが、省庁間に落として誰もやらず、誰も責任をとらないというディメリットも大きいため、既得権益改革と規制改革をど真ん中に据えて合理化するのはよいことだと思う。

 実際に、省庁は既得権益を守るために既に古くなった規制を残存させていたり、各省庁が同じ名目の重複した予算をとって無駄遣いしたりもしているため、菅首相が行政改革・規制改革相に河野氏を起用されたのは本気度が見えて期待できる。

 しかし、国民に対する管理強化ではなく、国民の幸福を増すための合理的な改革を進められるか否かは、今後の注目点になる。

ii)衆院解散
 メディアは、新内閣が発足した途端に「解散」「解散」と騒ぎ始め、解散すると選挙費用がばら撒かれたり、視聴率が上がったりするのが目的なのかと思うくらいだが、メディアが深くて正確な情報を伝えない限り、何度解散しても国民の選択による民主主義が正しく機能するわけはない。そして、メディアのレベルの低さが、日本の民主主義の弱点になっているのだ。

 さらに、まだ新型コロナが収束したわけではなく、治療薬やワクチンが承認されたわけでもないため、国民は安心できず、国民が一番望んでいるのは、感染拡大防止と経済の両立だ。

iii)デジタル庁の新設とデジタル化の推進
 平井大臣はデジタルに詳しい人であるものの、民間企業はデジタル化を1990年代から進めており、2000年代に入って以降は遅れていた政治・行政も旗振り役をしてきたというのが事実であるため、既に20~30年も経過して言い古された課題を今さら推進でもないだろう。

 さらに、少子化で支え手が不足する時代に、「デジタル庁」等の名目で次々と恒久的な省庁をつくり、税金で養われる生産性の低い役人を増やすのはよくない。そのため、私は、内閣府の中に担当大臣とデジタル化推進のための組織を置くことで足りると思った。

 また、オンライン診療は、長所だけでなく短所もあるため、「オンライン診療をしないのは遅れた医師である」という誤解の下、政治・行政が無理にオンライン診療を進めるのはよくない。そのかわり、専門家である医療提供側が必要に応じて設備投資し、オンライン診療を採用することができるよう、高すぎない機材を準備すべきだ。何故なら、オンライン診療は、「長所-短所=純メリット>価格」の場合のみ、採用に値するからである。

 さらに、マイナンバーカードが普及しない理由は、ビッグデータとして個人データの使用を推進するようなプライバシー・セキュリティー・人権に疎い政府が多くの情報を連結したマイナンバーカードを普及させれば、国民にとってはメリットよりディメリットの方が大きくなることを、国民が見抜いているからである。そのため、マイナンバーカードを普及させるためにデジタル庁を新設して歳出を増やし、複数の省庁に分かれている税と社会保障を一体改革して増税した上、社会保障を減らすことになれば、国民にとってはトリプル・ディメリットになる。

 結局、経済再生は、マネーサプライを増やすだけの金融緩和と生産性の低い場所に金をばら撒く財政投資ではできなかったが、これは当然のことである。何故なら、経済成長は、国内で産業が成立するように高コスト構造を改革し、生産性を上げるための投資を行い、教育・研修によって人材を磨くことによってしか達成されないからだ。従って、経営感覚がないため、経済成長率も実質賃金も振るわないのに日本を世界一の赤字国家にした政治・行政主導の“改革”を、「ポストコロナ」として民間に押し付けるのは、マイナスであるためやめるべきである。

 なお、デジタル化については、*1-2にも「コロナで行政の目詰まりが露呈した」等が述べられているが、①緊急時に ②にわか組織を作り ③業務委託を重ねて慣れない人に仕事をさせた のが間違いで、慣れた人(金銭の配布:財務省・厚労省・地方自治体、医療:保健所ではなく医療機関)に仕事をさせればよかったのである。

 また、「新型コロナ禍にファクスで情報をやりとりした行政機関があったことに驚きが広がった」ともよく言われるが、デジタル化してメールを使ったから正確で迅速になるとは限らず、ファクスであれメールであれ、目的を正確に理解し、やる気を持ってやれば、迅速かつ正確にできるものだ。

 さらに、長期間にわたってこのような失政を重ねた政府が、運転免許証・健康保険証・年金番号・納税者番号などをデジタル化し一体化したマイナンバーカードを、プライバシー・セキュリティー・人権などを考慮して管理できるわけがないため、国民は、それぞれを別番号にして、リスク分散しておくべきということになる。

iv)最優先は新型コロナ
 「最優先課題は新型コロナ対策」と言うのは正しいが、日本等の東アジア諸国は、交差免疫があるせいか、欧米諸国のような爆発的な感染拡大はしないようだ。しかし、未だに、治療薬もワクチンも承認されておらず、「医療崩壊させないため、病院に行くな(これ自体が医療崩壊)」とか「高齢者にうつすな」と言ってきたため、医療はあてにできず、自分も決して感染することができない。そのため、のびのびと旅行、観光、飲食等に行ける状況ではないのである。

 従って、検査を充実し、治療や予防もできるようにして初めて、経済のダメージが回復に向かうのであり、原因を取り除かずにカンフル剤ばかり投与しても、金を使う割に効果が薄いのだ。

v)待機児童問題「終止符打つ」
 待機児童問題に終止符を打つことには、もちろん私も賛成だ。しかし、「保育園が質・量ともに不満足だ」というのは、50年以上も前から言われており、戦後世代が出産適齢期になった1970年代には既に少子化が始まっていた。それでも、未だに希望しても保育所等に入れない待機児童がいるというのが、生産性の低いこれまでの政府(特に厚労省)のやり方なのであり、長く政治・行政に携わった人ほどこの責任は重い。ここに、反省すべき点はないのだろうか?

 また、少子高齢化の原因を保育サービス不足と分析せず、不妊が原因だとするのは、生物的に一定割合で存在する不妊の夫婦に不要なプレッシャーをかけるため、方向が違う。出産を希望する世帯のハードルを下げるためなら、不妊治療への保険適用までとし、政府による子づくり奨励はやめるべきである。

vi)機能する日米同盟
 「①我が国を取り巻く環境はいっそう厳しくなる」「②機能する日米同盟を基軸とした政策を展開する」「③自由で開かれたインド太平洋を戦略的に推進する」「④中国・ロシアを含む近隣諸国と安定的な関係を築く」「⑤北朝鮮による日本人拉致問題の解決に全力を傾ける」というのはよいと思うが、④にかかわらず、日本の領土に関する争いには妥協しないで欲しい。日本政府は、内弁慶で困るのである。

vii)「桜を見る会」来年以降中止
 モリ・カケ・サクラについては、法令違反ではない重箱の隅をつつくような事象を、安倍前首相を追及する手段として野党が延々と使ったことに、「政治家は法令違反でなくても、何を言われるかわからない」という意味で嫌な気がした。そのため、「桜を見る会」を来年以降に中止するのはよいと思う。

 日本のメディアは、「政治とカネ」の話題にはフィーバーして飛びつくが、昔のように、億単位のカネが政治家個人に献金されたり、有力政治家の地元に駅が造られたりしていた時代とは異なり、今は、そういうことはできない。そのため、首相になっても支援者を「桜を見る会」に招待し、誰とでも写真撮影し、愛想をよくして票を集めているくらいなので、批判している方が古い感覚のままだと思う。そして、そこに、違法行為はなかった筈だ。

(2)憲法への緊急事態条項の新設は危険であること
 安倍前首相は、*2-1のように、新型コロナウイルス感染拡大を受け、「憲法を改正して、『緊急事態条項』の創設が必要だ」と訴えられたそうだが、私は、今でも先進的と言える日本国憲法の理念に、それとは矛盾する条項を加えてつぎはぎだらけにされた日本国憲法を美しいとは思わない。しかし、自民党内には、憲法改正が立党以来の党是だとする人も多いのは事実だ。

 そのため、自民党改憲案に書かれているような内容に、①すべての与党議員が賛成なのか否か ②その意見の理由 ③他党の議員はどうか などについて、メディアは大学の憲法学教室などと組んで正確な意識調査を行い、総選挙までに公表すべきだ。何故なら、次に与党が2/3を超えて大勝すれば改憲圧力が増すことは間違いなく、採決時には与党議員の賛成が推測されるからだ。しかし、私は、「他の政策に賛成で与党議員になっている人に、党議拘束をかけて無理に憲法変更に賛成させるのは本当の民主主義ではない」とも考えている。

 なお、自民党が憲法改正条文案に緊急事態条項の創設を盛り込み、内閣の権限を一時的に強化する案と、選挙が実施できない場合に国会議員の任期を延長する案を併記しながら、新型コロナが終息していない現在、衆議院を解散するというのは矛盾が大きすぎる。

 そのため、*2-2のように、「新型コロナ感染拡大を受けて、憲法に緊急事態条項を設けるべきだ」という意見が自民党内にあることについて、毎日新聞の全国世論調査で全体の45%もの人が「賛成」と答えたのは(自民党支持層:賛成63%、無党派層:わからない40%・賛成38%、反対:17%)、緊急事態条項を用いて行われる他の権利制限の可能性について考慮していないからだと考える。

 首都大学東京の憲法学教授である木村草太氏は、*2-3のように、「緊急事態条項の創設によって、内閣総理大臣は「緊急事態宣言」を発することができるようになり、その時、内閣は法律と同一の効力を有する政令を制定したり、財政上必要な支出・その他の処分・地方自治体の長に対する指示を行ったりすることができるが、発動要件が曖昧で国会承認は事後でも良いとされているため、恣意的な緊急事態宣言を出すこともでき、内閣独裁権条項になり得る」と書いておられる。私も、そのとおりだと思う。

(3)新型コロナ対策における私権制限の妥当性について
 新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づく緊急事態宣言の下、*3-1のように、政府・都道府県知事などが、新型コロナウイルス感染防止のためとして不要不急の外出自粛や休業を要請したため、市民や企業は移動制限・集会中止・営業停止等の自粛をせざるを得なくなった。

 しかし、このような事態が長期間続いた理由は、PCR検査をして感染者と非感染者を分け、感染者を隔離・治療しなかったため、全ての人を感染者と見做して、全ての人に外出自粛や休業を要請せざるを得なくなったからである。そして、日本中の活動を止めるという誤った政策選択により、自由や権利の制限が生活苦に結び付いた人は多く、補償金額は日本全体としては莫大だったが、損害を受けた人にとっては「焼け石に水」にすぎなかった。

 このような中、「緊急事態宣言を出すにあたり、憲法に緊急事態条項を新設する必要がある」という意見はあるが、「緊急事態」は、その時の政府によってどうにでも定義でき、変な使い方をすれば国民の自由や権利を不当に侵害するため、憲法に緊急事態条項を新設してはならないと、私は考える。

 ただし、憲法への緊急事態条項新設に対する反論として、「立憲主義」「立憲主義に逆行」というフレーズを使うのは、憲法変更阻止の盾として機能しない。何故なら、「立憲主義」は、既に誰もが当然のこととして受け入れており、立憲主義に反対している人はおらず、それだからこそ憲法への緊急事態条項新設を画策しているからである。

 なお、*3-2のように、長野県の阿部知事が新型コロナ感染症対策で、県民への協力要請の根拠となる条例制定を検討していく考えを示されたそうだが、その条例には、県民や事業者が今後取り組むべき内容を盛り込むため、一定の行動規範として私権の制限にも繋がりかねず、感染症対策を大義名分に行政権限の強化することになりそうだとのことである。

 このように、「緊急事態」とは、感染症対策や災害を大義名分にすることもできれば、高齢化による年金制度崩壊を大義名分にすることもできるものだ。つまり、政府・行政が、自分たちの責任を棚に上げ、国民の私権制限を行って都合よく解決する手段に使うこともできるものであるため、憲法への緊急事態条項の新設は決して行ってはならないのである。

・・・参考資料・・・
<菅政権の政策>
*1-1:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO63932370W0A910C2000000/?n_cid=DSREA001 (日経新聞 2020/9/16) 規制改革「政権のど真ん中に」 菅首相が初の記者会見
 菅義偉首相は16日夜、首相官邸で首相就任後初めての記者会見に臨んだ。「政治の空白は決して許されない。全国民が安心して生活を取り戻すため、安倍政権の進めてきた取り組みを継承していく。そのことが私に課せられた使命だ」と述べた。
■規制改革「政権のど真ん中」
 規制改革について「官房長官を7年8カ月務めるなかで、なかなか進まない政策課題は省庁の縦割りが壁になった」と指摘した。ふるさと納税の創設など省庁が抵抗した例を挙げて「こうした例は探せばいくらでもある。縦割りと既得権益、悪しき前例を打破して規制改革を進める」と強調した。首相は行政改革・規制改革相に河野太郎氏を起用した。「自民党でも行革をやっていたので任命した」と説明した。河野氏に「『縦割り110番』のような、国民から現実に起きているものを参考にしたらどうか、と指示した」と明らかにした。「私自身が規制改革をこの政権のど真ん中に置いている」と唱えた。
■衆院解散「時間の制約視野に考える」
 衆院解散・総選挙の時期に関して「(任期)1年以内に解散・総選挙はある。時間制約も視野に入れ考える」と語った。「新しい内閣に国民が求めているのは新型コロナウイルス収束を何とか早くやってほしい、同時に経済をしっかり立て直してほしい(ということ)」と話した。「感染拡大防止と経済の両立を国民は一番望んでいる」と述べ、新型コロナの収束に全力を挙げる考えを示した。
■デジタル庁新設明言
 オンライン診療は「今後も続ける必要がある」と語った。マイナンバーカードの普及推進などを念頭にデジタル庁の新設を明言した。普及が遅れるマイナンバーカードの推進に向け「複数の省庁に分かれている関連政策をとりまとめて強力に進める体制としてデジタル庁を新設する」と表明した。「経済再生は引き続き政権の最重要課題だ」と強調した。「金融緩和、財政投資、成長戦略の3本を柱とする『アベノミクス』を継承し一層の改革を進める」と述べた。「この危機を乗り越えた上で『ポストコロナ』の社会構築に向けて集中的に改革し、必要な投資をして、再び強い経済を取り戻す」と力説した。サプライチェーン(供給網)の見直しなどを進めると説いた。
■最優先は新型コロナ
 最優先課題は新型コロナウイルス対策と言明した。「欧米諸国のような爆発的な感染拡大は絶対に阻止し、国民の命と健康を守り抜く」と強調した。「そのうえで社会経済活動との両立を目指す」と言及した。来年前半までに国民に行き渡るように「ワクチンの確保を目指す」と述べた。持続化給付金や雇用調整助成金、無利子・無担保融資など一連の経済対策を挙げて「必要な方々に届ける」と説明した。国内旅行の需要喚起策「Go To トラベル」などのキャンペーンを通じて「観光、飲食、イベント、商店街などダメージを受けた方々を支援する。今後も躊躇(ちゅうちょ)なく対策を講じる」と力説した。
■待機児童問題「終止符打つ」
 少子化対策に関して「長年の課題だ。若い人たちが将来も安心できる全世代型社会保障制度を構築していく」と語った。希望しても保育所などに入れない待機児童問題について「今後、保育サービスを拡充し、終止符を打っていく」と解決に意欲を示した。「出産を希望する世帯を支援する」と話し「ハードルを少しでも下げるために不妊治療への保険適用を実現する」と訴えた。
■外交「機能する日米同盟を」
 外交・安全保障では「我が国を取り巻く環境がいっそう厳しくなるなか、機能する日米同盟を基軸とした政策を展開していく」と述べた。「自由で開かれたインド太平洋を戦略的に推進すると共に、中国・ロシアを含む近隣諸国と安定的な関係を築いていきたい」と語った。北朝鮮による日本人拉致問題について「解決に全力を傾ける。米国をはじめとする関係国と緊密に連携し、全ての拉致被害者の1日も早い帰国を実現すべく引き続き全力で取り組む」と話した。
■「桜を見る会」来年以降中止
 首相主催の「桜を見る会」を巡り「首相に就任したこの機に来年以降、中止したい」と明言した。「安倍政権発足以来、政権が長くなる中で招待客が多くなったのも事実だ」と説明した。学校法人「森友学園」や「加計学園」を巡る問題などへの見解を問われ「安倍政権に様々な指摘をいただいた。客観的にみて、おかしいことは直していく」と語った。「今後、ご指摘のような問題がずっと起こることがないよう、みなさんの声に謙虚に耳を傾けながらしっかりと取り組みたい」と話した。

*1-2:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO63944950X10C20A9EA2000/?n_cid=NMAIL006_20200917_A (日経新聞 2020/9/17) デジタル化、全閣僚で推進 菅内閣が発足、コロナで露呈した行政目詰まり打開狙う
 16日夜に発足した菅義偉内閣は新型コロナウイルスの感染拡大で露呈した行政や社会の古い規制、デジタル化の遅れに対処するのが喫緊の課題になる。行政改革・規制改革相、デジタル改革相、厚生労働相の3閣僚がカギを握る。首相はデジタル化を全閣僚で推進するよう指示した。スピードと実行力が問われる。「行政の縦割り、既得権益、あしき前例主義、こうしたものを打ち破って規制改革を全力で進める」。首相は16日夜の記者会見で明言した。「規制改革を政権のど真ん中に置いている」と述べた。新型コロナの感染拡大を受け、今年春以降、PCR検査がなかなか増えなかった。安倍晋三前首相が具体的な検査能力の数値目標を掲げても達成まで時間がかかる。実行が遅れる「目詰まり」の理由も判然としない。国と地方自治体、保健所、医療機関の連携がうまくとれない「縦割り」の弊害がうかがえた。首相の指示ですら簡単には変わらない実態も浮き彫りになった。1人あたり10万円の現金給付は事務手続きが煩雑なうえ、米欧に比べると迅速に受け取れない。新型コロナ禍で在宅勤務を進めようにも、行政手続きや企業の決裁はいまだにハンコ文化、紙文化が残る。休校に見舞われた学生にオンライン授業をすべきだと意見が出ても十分に環境が整っていない――。首相は安倍政権の官房長官として様々な問題に直面した。「行政の縦割り打破」「規制改革の徹底」。就任前の自民党総裁選ではこう訴えた。一連の問題には幅広い分野で行政改革と規制改革をしなければならないとの判断だ。「1カ月で何ができるかまとめさせたい」。菅氏は周囲にこう漏らしている。対応が遅れれば、新型コロナの収束だけでなく経済にもさらに悪影響が出る。短期決戦だ。成果を出すには担当閣僚の突破力が必要になる。自身とタッグを組み、専門分野で経験を持つ人材を要所に配置した。目玉が行革・規制改革相の河野太郎氏だ。「行政改革と規制改革をしっかりやってくれ」。首相は組閣前日の15日夜、河野氏に伝えた。河野氏はいずれもかつて閣僚として担当した経験がある。次期首相候補の一人として人気を集め、直前までは外相、防衛相を務めていた河野氏には軽量級の閣僚にも見える。新内閣の閣僚をみると再任が8人、閣内横滑りが3人、再入閣が4人と刷新感は乏しい。学習院大の野中尚人教授は「目新しさよりも手堅さで選んでいる」と話す。河野氏のような経験者が多く入閣したからだ。首相は2009年の総裁選で立候補した河野氏を支持した。選挙区は同じ神奈川で1996年衆院選に初当選した当選同期組だ。安倍政権で外相や防衛相に起用されたのも「官房長官の菅氏の後押しがあった」ともいわれ、関係は近い。突破力はどうか。河野氏は党内では「異端児」「破壊者」「改革原理主義者」と呼ばれてきた。強固な規制を打ち破るには適任との声もある。首相は16日夜の記者会見で「規制改革は河野氏と首相でしっかりやっていきたい」と強調した。とはいえ、規制改革も行政改革も足場となる強固な官僚組織があるわけではない。全閣僚・全行政組織を相手にする「改革の司令塔」の位置づけだが、乏しい戦力で巨大な行政組織に切り込めるのかが問われる。行政の縦割り打破には古い政官業の関係にメスを入れなければならない。デジタル化はその契機にもなる。デジタル改革相になった平井卓也氏は党内ではデジタル・IT政策の第一人者と呼ばれる。今回兼務するIT相も経験済みで河野氏と同様「首相が信頼を置く経験者」だ。新型コロナ禍では危機下でもファクスで情報をやりとりする行政機関があったことに驚きが広がった。感染状況の把握や分析、迅速な対応が難しくなる理由の一つだった。給付金の支給ではマイナンバーカードを使う手続きに十分に対応できない自治体が多く、支援が遅れる問題もあった。いずれもデジタル化の遅れが原因だ。社会保障や税の手続きを効率化するため導入したマイナンバーカードの状況は象徴的だといえる。首相は官房長官時代に機能や利用範囲の拡充に取り組み始めたが、いまだに普及率は2割弱にとどまる。首相は16日夜の記者会見で「行政デジタル化のカギはマイナンバーカードだ。役所に行かなくてもあらゆる手続きができる社会を実現するには不可欠だ」と訴えた。運転免許証や健康保険証などをデジタル化して一体化する案がある。新型コロナ禍で在宅勤務を広げるための書面、押印、対面作業の削減も課題になる。企業の契約や行政手続きに残る法規制を改める必要がある。デジタル化を進めるため、首相は「デジタル庁」の創設を掲げる。関係省庁のデジタル政策を一元化する構想だ。菅氏は「法改正に向け早速準備したい」と唱えており、平井氏が総務省、経済産業省を筆頭に全省庁と話をつける必要がある。短期で実績を出せるかが問われてくる。切り込まれる側になる厚労相には調整力に定評がある田村憲久氏を充てた。田村氏も厚労相経験者だ。やはり菅氏の初当選同期で菅氏が総務相の時に総務副大臣で一緒に仕事をした仲だった。厚労相は今冬にインフルエンザと新型コロナが同時流行になった場合の備えが急務になる。両者は症状だけで判別しにくく、見分ける検査体制が不可欠だ。足りないといわれていた検査をさらに増強しなければならない。改革と危機対応に並行して臨む難しさがある。コロナ禍では初診からのオンライン診療が解禁された。とはいえ日本医師会などが反対姿勢をとり、コロナ収束までの時限的な措置にとどまった。首相は16日夜「ようやく解禁されたオンライン診療は今後も続けていく」と説いた。政官業の関係も課題だ。

<憲法への緊急事態条項の新設は危険であること>
*2-1:https://www.sankei.com/politics/news/200502/plt2005020009-n1.html (産経新聞 2020.5.2) 「緊急事態条項」の必要性に言及 安倍首相の「改憲メッセージ」判明
 安倍晋三首相(自民党総裁)が、ジャーナリストの櫻井よしこ氏らが主催する3日の憲法フォーラムに寄せたビデオメッセージで、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、憲法を改正して「緊急事態条項」を創設する必要性を訴えていることが2日、わかった。フォーラムは、櫻井氏が共同代表を務める「美しい日本の憲法をつくる国民の会」などが開催する。首相はビデオメッセージで、憲法改正が立党以来の党是だと強調。「時代にそぐわない部分と不足している部分は改正していくべきではないか」と訴える。新型コロナ対応をめぐって、「現行憲法では緊急時に対応する規定は『参議院の緊急集会』しか存在していない」と指摘。その上で、「緊急事態において国民の命や安全を守るため、国家や国民がどのような役割を果たし、憲法にどう位置付けるかは極めて重く、大切な課題だ」と述べる。首相は自民党がまとめた改憲案4項目で緊急事態対応を掲げていることも触れ、「まずは国会の憲法審査会の場で議論を進めていくべきだ」と呼びかける。一方、首相は新型コロナの感染者の救護などで自衛隊が尽力していることを紹介。「自衛隊の存在を憲法上、明確に位置付けることが必要だ」とも述べ、憲法に自衛隊を明記する9条改正に改めて意欲を示す。また、平成29年のメッセージで「2020年を新しい憲法が施行される年にしたい」と述べたことに関し、「残念ながら、実現に至っていない」とする。

*2-2:https://mainichi.jp/articles/20200502/k00/00m/010/188000c (毎日新聞 2020年5月2日) 憲法に「緊急事態条項」創設に「賛成」45%、機運高まらず 全国世論調査
 日本国憲法は3日、1947年の施行から73年を迎えた。新型コロナウイルスの感染拡大を受け、憲法に緊急事態条項を設けるべきだとの意見が自民党内にあることについて、毎日新聞が4月18、19日に実施した全国世論調査では45%が「賛成」と答えた。「反対」は14%、「わからない」が34%だった。自民党は大地震などの大災害に対応するためとして、2018年にまとめた4項目の憲法改正条文案に緊急事態条項の創設を盛り込んだ。そこには、内閣の権限を一時的に強化する案と、選挙が実施できない場合に国会議員の任期を延長する案を併記している。新型コロナの問題で政府の緊急事態対応に注目が集まる中、自民党内には改憲機運を盛り上げたい思惑もあるようだが、議論が活発化しているとは言い難い。自民党の政党支持率は29%で、支持層の63%が「賛成」。一方で全体の43%を占める無党派層では「わからない」の40%と「賛成」の38%がほぼ並び、「反対」は17%だった。野党の多くは「国民の権利制限に歯止めが掛からない懸念がある」と慎重で、その支持層では「反対」が多いか賛否が拮抗(きっこう)している。安倍晋三首相の在任中に憲法改正を行うことには「反対」が46%で、「賛成」の36%を上回った。昨年4月の調査でも同様の質問に「反対」48%、「賛成」31%だった。自民党の改憲条文案のうち、自衛隊の存在を明記する案には「賛成」34%、「反対」24%、「わからない」33%だった。質問の仕方が異なるため単純に比較はできないが、昨年の調査でも「賛成」27%、「反対」28%、「わからない」32%と回答が割れていた。

*2-3:https://webronza.asahi.com/politics/articles/2016030100008.html (論座 2016年3月14日) 緊急事態条項の実態は「内閣独裁権条項」である、自民党草案の問題点を考える、木村草太 首都大学東京教授(憲法学)
1 自民党草案の緊急事態条項とは
 今年に入り、安倍首相や一部の自民党議員は、憲法改正に強い意欲を示しており、参院選の争点にしようとする動きもある。特に注目を集めているのが、緊急事態条項だ。
自民党は2012年に発表した憲法改正草案で、戦争・内乱・大災害などの場合に、国会の関与なしに内閣が法律と同じ効力を持つ政令を出す仕組みを提案している。具体的な条文は次の通りである。
○第98条(緊急事態の宣言)
 1 内閣総理大臣は、我が国に対する外部からの武力攻撃、内乱等による社会秩序の混乱、地震等による大規模な自然災害その他の法律で定める緊急事態において、特に必要があると認めるときは、法律の定めるところにより、閣議にかけて、緊急事態の宣言を発することができる。
 2 緊急事態の宣言は、法律の定めるところにより、事前又は事後に国会の承認を得なければならない。
 3 内閣総理大臣は、前項の場合において不承認の議決があったとき、国会が緊急事態の宣言を解除すべき旨を議決したとき、又は事態の推移により当該宣言を継続する必要がないと認めるときは、法律の定めるところにより、閣議にかけて、当該宣言を速やかに解除しなければならない。また、百日を超えて緊急事態の宣言を継続しようとするときは、百日を超えるごとに、事前に国会の承認を得なければならない。
 4 第二項及び前項後段の国会の承認については、第六十条第二項の規定を準用する。この場合において、同項中「三十日以内」とあるのは、「五日以内」と読み替えるものとする。
○第99条(緊急事態の宣言の効果)
 1 緊急事態の宣言が発せられたときは、法律の定めるところにより、内閣は法律と同一の効力を有する政令を制定することができるほか、内閣総理大臣は財政上必要な支出その他の処分を行い、地方自治体の長に対して必要な指示をすることができる。
 2 前項の政令の制定及び処分については、法律の定めるところにより、事後に国会の承認を得なければならない。
 3 緊急事態の宣言が発せられた場合には、何人も、法律の定めるところにより、当該宣言に係る事態において国民の生命、身体及び財産を守るために行われる措置に関して発せられる国その他公の機関の指示に従わなければならない。この場合においても、第十四条、第十八条、第十九条、第二十一条その他の基本的人権に関する規定は、最大限に尊重されなければならない。
 4 緊急事態の宣言が発せられた場合においては、法律の定めるところにより、その宣言が効力を有する期間、衆議院は解散されないものとし、両議院の議員の任期及びその選挙期日の特例を設けることができる。
●発動要件は曖昧で、歯止めは緩い
 98条は、緊急事態宣言を出すための要件と手続きを定めている。具体的には、法律で定める緊急事態」になったら、閣議決定で「緊急事態の宣言」を出せる(98条1項)。また、緊急事態宣言には、事前又は事後の国会の承認が要求される(98条2項)。何げなく読むと、大した提案でないように見えるかもしれないが、この条文はかなり危険だ。まず、緊急事態の定義が法律に委ねられているため、緊急事態宣言の発動要件は極めて曖昧になってしまっている。その上、国会承認は事後でも良いとされていて、手続き的な歯止めはかなり緩い。これでは、内閣が緊急事態宣言が必要だと考えさえすれば、かなり恣意的に緊急事態宣言を出せることになってしまう。
●効果は絶大な緊急事態宣言
 では、緊急事態宣言はどのような効果を持つのか。要件・手続きがこれだけ曖昧で緩いのだから、通常ならば、それによってできることは厳しく限定されていなければならないはずだ。しかし、草案99条で規定された緊急事態宣言の効果は強大である。四つのポイントを確認しておこう。
第一に、緊急事態宣言中、内閣は、「法律と同一の効力を有する政令を制定」できる。つまり、国民の代表である国会の十分な議論を経ずに、国民の権利を制限したり、義務を設定したりすること、あるいは、統治に関わる法律内容を変更することが、内閣の権限でできてしまうということだ。例えば、刑事訴訟法の逮捕の要件を内閣限りの判断で変えてしまったり、裁判所法を変える政令を使って、裁判所の権限を奪ったりすることもできるだろう。
第二に、予算の裏付けなしに、「財政上必要な支出その他の処分」を行うことができる。通常ならば、予算の審議を通じて国会が行政権が適性に行使されるようチェックしている。この規定の下では、国会の監視が及ばない中で不公平に復興予算をばらまくといった事態も生じ得るだろう。
第三に、「地方自治体の長に対して必要な指示をすることができる」。つまり、地方自治を内閣の意思で制限できるということだが、これも濫用の危険が大きい。例えば、どさくさに紛れて、首相の意に沿わない自治体の長に「辞任の指示」を出すような事態も考えられる。実際、ワイマール憲法下のドイツでは、右翼的な中央政府が、緊急事態条項を使って社会党系のプロイセン政府の指導者を罷免したりした。今の日本に例えると、安倍内閣が、辺野古基地問題で対立する翁長沖縄県知事を罷免するようなものだろうか。第四に、緊急事態中は、基本的人権の「保障」は解除され、「尊重」に止まることになる。つまり、内閣は「人権侵害をしてはいけない」という義務から解かれ、内閣が「どうしても必要だ」と判断しさえすれば、人権侵害が許されることになる。これはかなり深刻な問題だ。政府が尊重する範囲でしか報道の自由が確保されず、土地収用などの財産権侵害にも歯止めがかからなくなるかもしれない。
以上をまとめるとこうなる。まず、内閣は、曖昧かつ緩やかな条件・手続きの下で、緊急事態を宣言できる。そして、緊急事態宣言中、三権分立・地方自治・基本的人権の保障は制限され、というより、ほぼ停止され、内閣独裁という体制が出来上がる。これは、緊急事態条項というより、内閣独裁権条項と呼んだ方が正しい。
2 多数の国が採用?
 このように見てくると、憲法に強い関心を持っていない人でも、この条文は相当危険だと言うことが分かるだろう。しかし、安倍首相は、こうした緊急事態条項は、「国際的に多数の国が採用している憲法の条文」であり、導入の必要が高く、また濫用の心配はないと言う(1月19日参議院予算委員会)。これは本当だろうか。外国の緊急事態条項と比較してみよう。一般論として、戦争や自然災害が「いつ起こるか」は予測困難だが、「起きた時に何をすべきか」は想定可能だ。そうした予測を基に、誰が、どんな手続きで何をできるのかを事前に定めることは、安全対策としてとても重要だろう。そして、警報・避難指示・物資運搬等の規則を細かく定めるのは、国家の基本原理を定める憲法ではなく、個別の法律の役割だ。したがって、外国でも、戦争や大災害などの緊急事態には、事前に準備された法令に基づき対応するのが普通だ。例えば、アメリカでは、災害救助法(1950年)や国家緊急事態法(1976年)などが、緊急時に国家が取りうる措置を定めている。また、1979年に、カーター政権の大統領令により、連邦緊急事態管理庁(FEMA)という専門の行政組織が設置された。FEMAが災害対応に関係するいろいろな機関を適切に調整したことで、地震やハリケーンなどの大災害に見事に対処できたと言われている。フランスでは、1955年に緊急事態法が制定されており、政府が特定地域の立ち入り禁止措置や集会禁止の措置をとることができる。後述するように、フランスには憲法上の緊急事態条項も存在するが、昨年末のテロの際には、憲法上の緊急事態条項ではなく、こちらの法律を適用して対処した。
●慎重な議会手続きを要求
 では、憲法上の緊急事態条項は、どのような場合に使われるのか。まず前提として、多くの国の憲法は、適正な法律を作るために、国会の独立性を確保したり、十分な議論が国会でなされたりするなど、立法に慎重な議会手続を要求していることを理解せねばならない。逆にいえば、通常の立法手続きは面倒くさいということだが、政府の意のままに国会が立法したのでは、権力分立の意義が失われ、国民の権利が侵害される危険が高まる。もしも柔軟な立法を可能にするために議会手続きを緩和しようとするなら、憲法の規定が必要になる。例えば、アメリカ憲法では、大統領は、原則として議会招集権限を持たないが、緊急時には議会を招集できる(合衆国憲法2条3節)。また、ドイツでは、外国からの侵略があった場合に、州議会から連邦議会に権限を集中させたり、上下両院の議員からなる合同委員会が一時的に立法権を行使したりできる(ドイツ連邦共和国基本法10a章)。これらの憲法は、政府に立法権を直接に与えているわけではない。大統領に議会召集権を与えることで国会の独立性を緩和させたり、立法に関わる議員の数を減らすことで迅速さを優先させたりしているに過ぎない。また、フランスや韓国には、確かに、大統領が一時的に立法に当たる権限を含む措置をとれるとする規定がある。しかしその権限を行使できるのは、「国の独立が直接に脅かされる」(フランス第五共和制憲法16条)とか、「国会の招集が不可能になった場合」(大韓民国憲法76条)に限定される。あまりに権限が強いので、その権限を行使できる場面をかなり厳格に限定しているのだ。フランスは昨年末のテロの際に緊急事態宣言を出しているが、それが憲法上の緊急事態宣言ではなかったのは、こうした背景による。つまり、アメリカ憲法は、大統領に議会招集権限を与えているだけだし、ドイツ憲法も、議会の権限・手続きの原則を修正するだけであって、政府に独立の立法権限を与えるものではない。また、フランスや韓国の憲法規定は、確かに一時的な立法権限を大統領に与えているものの、その発動要件はかなり厳格で、そう使えるものではない。これに対し、先ほど述べたように、自民党草案の提案する緊急事態条項は、発動要件が曖昧な上に、政府の権限を不用意に拡大している。他の先進国の憲法と比較して見えてくるのは、自民党草案の提案する緊急事態条項は、緊急時に独裁権を与えるに等しい内容だということだ。こうした緊急時独裁条項を「多数の国が採用している」というのは、明らかに誇張だろう。確かに、憲法上の緊急事態条項は多数の国が採用しているが、自民党草案のような内閣独裁条項は、比較法的に見ても異常だといわざるを得ない。
3 日本国憲法には緊急事態条項がない?
 また、日本国憲法には、緊急事態条項がなく、満足な対応ができない可能性がある、と指摘されることもある。もしそれが本当なら、自民党草案のような条項になるかどうかはともかくとして、緊急事態条項の導入を検討しても良いようにも思われる。しかし、憲法とは、国民の権利を守り、権力濫用を防ぐために、国家権力を規制する法だ。権力者から、憲法を変えたいと提案されたときは、警戒して内容を吟味した方が良い。まず、そもそも、現行憲法に緊急事態条項がない、というのが誤りである。戦争や災害の場合に、国内の安全を守り、国民の生命・自由・幸福追求の権利を保護する権限は、内閣の行政権に含まれる(憲法13条、65条)。したがって、必要な法律がきちんと定められていれば、内閣は十分に緊急事態に対応できる。また、緊急事態対応に新たな法律が必要なら、内閣は、国会を召集し(憲法53条)、法案を提出して(憲法72条)、国会の議決を取ればよい。衆議院が解散中でも、参議院の緊急集会が国会の権限を代行できる(憲法54条2項)。参議院は半数改選制度を採っているので、国会議員が不在になることは、制度上ありえない。誰もが必要だと思う法案なら、国民の代表である国会が邪魔をすることもないだろう。実際、東日本大震災の時には、当時の野党だった自民党や公明党も、激しく対立していた菅民主党政権に相当の協力をした。アメリカの憲法が緊急事態時に大統領に例外的に認めている議会召集権は、すでに、日本国憲法に規定されていると評価できるのだ。また、緊急事態については、既に詳細な法律規定が整備されている。侵略を受けた場合には武力攻撃事態法、内乱には警察官職務執行法や自衛隊の治安出動条項、災害には災害救助法や災害対策基本法がある。災害対策基本法109条には、状況に応じて、供給不足の「生活必需物資の配給又は譲渡若しくは引渡しの制限若しくは禁止」や「災害応急対策若しくは災害復旧又は国民生活の安定のため必要な物の価格又は役務その他の給付の対価の最高額の決定」、「金銭債務の支払」延期などに関する政令制定権限までもが定められている。これらの規定は、かなり強力な内容だ。過剰だという評価はあっても、これで不足だという評価は聞かれない。さらに、これらの法律ですら足りないなら、不備を具体的に指摘して、まずは法改正を提案すべきだ。その上で、必要な法案が現憲法に違反するということになって初めて、憲法改正を争点とすべきだろう。具体的な法令の精査なしに、漠然と「今のままではダメなのだ」という危機感をあおる改憲提案に説得力はない。
4 おわりに
 もちろん、以上の議論は、日本国の非常事態への備えが十分だということを意味しない。いくら法律があっても、政府や自治体、国民が上手に使いこなせなければ、絵に描いた餅だ。また、ミサイルだろうが、大地震だろうが、それに対応するには、食糧の備蓄や緊急用の非常電源が欠かせない。こうした非常事態への備えの中で、特に、考えてほしいのが居住の問題である。早川和男教授は、阪神大震災について、次のように述べている。1995年1月17日、阪神・淡路を大震災が襲った。この震災は多くの問題をあらわにしたが、とりわけ人間が生きていくうえでの住居の大切さを極端なかたちで示した。……この地震は強度からいえば中規模であったといわれる。それがなぜこのような大災害につながったのか。死亡原因は、家屋による圧死・窒息死88%、焼死10%、落下物2%。家が倒れなければなかった犠牲である。出火も少なかったはずである。どこからか火が押し寄せてきても逃げることができたであろう。道路が広くても家が倒れたならば助からない。(早川和男『居住福祉』岩波新書18頁)。阪神大震災の一年前に戻れるなら、自民党草案のような憲法条項を作るよりも、個々の住居を災害に強いものにする方が、はるかに多くの命を救えるだろう。となると、非常事態に強い国を本気で作りたいなら、今取り組むべきは改憲論議ではない。法律を使いこなすための避難訓練の実施、食糧備蓄・発電設備の充実、各自治体への災害対策用の予算・設備の援助、居住福祉の確保だろう。緊急事態を本気で憂うるなら、緊急時に漠然とした強権に身を委ねるのは得策ではない。強権に頼って思考停止することなく、緊急事態対応に必要な予算・設備をどんどん提案すべきだ。首相が本気なら、積極的に提案を取り入れるだろう。そうでないなら、「憲法の文言を変えた」という実績がほしいだけ、と評価されるだろう。ただし、内閣独裁権条項の提案は、提案としては問題外だが、緊急事態への備えを議論する良いきっかけになると思う。この提案に反対する市民は、内閣独裁権条項の危険性を指摘するのと同時に、「本当に必要な緊急事態対策」をどんどん提案し、「対案」をぶつけて行くべきだ。緊急事態条項を提案する人たちは、自分たちで緊急事態対応が必要だと言い出した手前、「対案」を出されたら真剣に検討せざるを得ないだろう。そして、その「対案」が一つ一つ実現して行けば、将来の犠牲者を確実に減らすことができるだろう。

<新型コロナ対策による私権制限の妥当性>
*3-1:https://www.nichibenren.or.jp/document/statement/year/2020/200503.html (日本弁護士連合会会長 荒 中 2020年5月3日) 憲法記念日を迎えるに当たっての会長談話
 本日は、日本国憲法が施行されてから73年目の憲法記念日です。本年は、新型コロナウイルスの感染が拡大し、新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づく緊急事態宣言の下でこの日を迎えることになりました。政府及び都道府県知事は、新型コロナウイルスの感染防止のため、不要不急の外出自粛や休業などを要請し、市民や企業などの多くも、移動を制限し、集会などを中止し、営業を停止するなど、自粛を行うことによってその要請に対応している状況にあります。しかし、そのような感染防止策を講ずる場合であっても、個人の権利は最大限尊重される必要があり、権利制限により生活が脅かされるときには、その補償も課題となります。報道によると、首相は衆議院の議院運営委員会において、緊急事態宣言を踏まえ、憲法に緊急事態条項を新設する改正議論への波及に期待感を表明したとのことです。しかしながら、感染防止は市民の協力を得ての法律上の対応で十分可能です。感染防止の必要性を過度に強調して憲法に緊急事態条項を新設することは、個人の権利規制が必要以上に強化される危険があります。このような危険を防ぐためには、政府に情報を開示させて説明責任を果たさせ、政府の施策を民主的に監視することが重要です。また、政府の適切な説明と十分な経済的支援があってこそ、市民の理解に基づく効果的な感染防止が期待できます。当連合会は、立憲主義を堅持し、国民主権に基づく政治を実現することにより個人の人権を守る立場から、効果的な感染防止のためには、政府による適切な説明と十分な経済的支援により市民の理解と協力を得ることの重要性を訴えるとともに、立憲主義に逆行する動きに対する警戒を怠ることなく、人権擁護のための活動を続けてまいります。

*3-2:https://www.shinmai.co.jp/news/nagano/20200521/KT200520ETI090010000.php (信濃毎日新聞 2020年5月21日) コロナ対策条例 なぜ必要か分からない
 阿部守一県知事が新型コロナウイルスの感染症対策で、県民への協力要請の根拠となる条例の制定を検討していく考えを示した。県内の新規感染者数は落ち着いてきたものの、緊急事態宣言の解除で国内の感染が再び広がる恐れもある。県はコロナ対策が長期に及ぶことを前提に、6月定例会以降の県会に条例を提案する方向だ。条文には、県民や事業者が今後取り組むべき内容が盛り込まれるとみられる。一定の行動規範として私権の制限にもつながりかねない恒久的な条例にすることが今、なぜ必要なのか。条例は行政権限の強化に結び付く。感染症対策を大義名分に推し進めれば、県民の権利とのバランスを崩しかねない。行動の制約が伴うと、解釈によっては住民の相互監視を強めてしまう恐れもある。これまで休業要請に応じない店舗や、事情があって外出せざるを得ない人に対する批判や嫌がらせ、差別的行為なども起きている。不安や混乱を招かないために、県会とも慎重に議論を進めていく必要がある。県内の新規感染者は今月10日以降の10日間で1人。外出の自粛、「3密」回避の行動など県民による予防策の徹底もあり、感染拡大は抑えられてきたと言える。今後は地域経済の再生を図ると同時に、移動の活発化による再度の感染拡大に注視していかなくてはいけない。いったん沈静化しながら都市部で再び広がった韓国のような例もある。知事が説明する通り、まだ気を許せる状況になく「第2波、第3波への備え」が必要なことは理解できる。それでも、政府方針に沿って進めてきたこれまでの対応だけでは、どういった点が課題や不備なのかがはっきりしない。県は感染リスクを避けるため、外出自粛要請を解除した上で基本的に身近な場所にとどまり、東京など特定警戒都道府県との往来を避けるよう県民に求めている。休業要請を全面解除する一方、観光・宿泊施設には特定警戒区域から人を呼び込まない運営を検討するよう依頼する。条例は新型コロナ特措法に基づかない、こうした県独自の対策の根拠としたいのだろう。だとすれば今後どのようなことを想定しているのか明らかにすべきだ。対策を進めていくには県民の協力が欠かせない。条例を作る理由について明確な説明がなければ、県民の理解も得られない。

<やるべきことは、産業と人材の地方分散である>
PS(2020年9月21、22、23、26日追加):*4-1・*4-2のように、菅首相が総務大臣時代の2008年に「ふるさと納税制度」が創設されたが、それを最初に提案したのは私で、形にしてまとめられたのは自民党税調会長だった大蔵省出身・青森県選出の津島元衆議院議員だった。提案理由は、首都圏への勤労者の集中により、地方は企業や被雇用者が少なく、教育費・医療費・介護費はかかるのに税収が限られていることだった。その後、地方の産品を返礼品とすることにより、地方には美味しい食があることを皆に気付かせ、地方の生産者が質の良い新製品を作ることも促して、一村一品どころか多数の地場産品が生まれた。地方が、弱者として国からの交付金を待つだけではこうはいかないのである。また、無駄な歳出の多い都市部から、良い政策を掲げる地方に税を納める選択肢ができたのも、国民にとっては大変良かったと思う。
 しかし、現在、都市への人口集中は進みすぎ、①都市は子育てもできないほど不動産価格が高く、1人当たりの占有面積が狭い ②都市は通勤に時間をとられて生活時間が短い ③都市は自然から遠い ④都市は感染症が流行しやすい ⑤首都圏には大地震が来そうだが、その時は被害が大きすぎて、日本が持続可能でなくなる可能性もある などの問題が起こっている。一方、地方は、税を払う産業や年齢層が少ないため、産業の再生を中心とした計画的な「地方創生」によって、人口を集めることが必要になっている。そして、デジタル化・スマート化・地方移住への関心の高まりは、そのチャンスだろう。
 また、菅首相が首相就任会見で、総務相時代にできた「ふるさと納税」と合わせ、地方活性化策を推進する方針を示されたが、農業は伸びしろが多いので成長産業になりうると、私は思っている。農家の高齢化で農家数は減少するものの、そのために農業生産法人の導入・大規模化・自動化などの手が既に打ってあるため、今後は、大規模スマート農業をしたり、労働者を雇ったりしながら、生産性の高い農業を目指すとよい。農業も、いつまでも政府の交付金を待つ“弱者”では困るが、地方の産業を壊したり、食料自給率を下げたりする“改革”も困るのである。
 では、農業は、「どうすれば補助金を当てにせず、国際競争力のある価格で農業生産を継続できるか?」については、*4-3の再生可能エネルギーによる電力生産とのハイブリッド経営も解の一つだ。何故なら、NTTが送電を行うとしても、再生可能エネルギーによる発電主体がなければ電力は作れず、それには、農地・離島・海上にたつ風力発電・農業用ダムを利用した水力発電・畜舎の屋根に設置した太陽光発電などが有力だからである。
 なお、2020年9月23日、日本農業新聞に、*4-4のように、「中山間地域は高齢化と人手不足で畦畔管理の困難さが増しているので、事業として請け負う人材や組織・会社の育成・支援など、踏み込んだ施策を求めたい」と書かれているが、中山間地域農業の不利と環境保全の必要性については、平成17年度(2005年度)に私が衆議院議員になってすぐに伝え、平成19年度(2007年度)から「農地・水・環境保全向上対策交付金」が施行された。また、平成26年度(2024年度)に、新たに「多面的機能支払」が創設されたそうなので(https://www.maff.go.jp/j/nousin/kankyo/nouti_mizu/index.html 参照)、その交付金をどう使ったかについての検証が欲しい。さらに、水田でなければ環境保全ができないわけでもないため、費用対効果を考えた方針策定が望まれる。例えば、下図のように、里山に豚・山羊・羊・牛などを放牧すれば、草採り不要で価値の高い生産物も作れるため、まず専門家としての工夫が欲しいわけだ。
 農水省は、2020年9月24日、*4-5のように、①農産物輸出拡大のための施策や規制緩和交渉を担う「輸出・国際局」 ②米・麦・大豆と園芸作物を一体的に担当する「農産局」 ③畜産の生産基盤強化に向けた「畜産局」 の3局を新設し、④新たに食品産業振興を専門とする「新事業・食品産業部」も設けるそうだ。農業の成長産業化・基盤整備・食品加工との連携はよいが、局を分けると本当にこれができるのかについては、それぞれの局の視野が狭くなるためそうはならないし、むやみに食品安全に関する規制緩和を要求すると、日本産全体の安全性に関する信頼が損なわれると、私は思う。
 分けるとよくない理由は、②③は、常に①④を視野に入れて行う必要があり、別れて存在するものではないからだ。また、*4-6のように、②③は連携することによって省力化しながら高品質のものを安価に作れるが、局を分ければそれぞれの局が突っ走って予算をとり、無駄遣いが増えるばかりで工夫がなくなるからである。つまり、役所が「課」でできることに新組織を作って定員増を図るのは、本当に付加価値の高い安全・安心なものを安価に作って国際競争力をつけることが目的ではないように思える。具体的には、米・麦・大豆や園芸作物は、効率的な農地の使い方を通して、二毛作や複数同時作がこれまでも行われてきたのであり、そもそも分ける必要がない。また、畜産も、餌や肥料を通じて「耕種農業」と密接に繋がっており、狭い場所に閉じ込められて輸入穀物で太らされた日本の畜産物は、脂肪が多くて蛋白質が少なく健康食ではないと言わざるを得ないのだ。


  無人トラクター   佐賀マイヤーレモン    豚の放牧      りんごの花


  蜜柑の蜂蜜   小豆島オリーブ    放牧地の風力発電   牛舎の太陽光発電  

*4-1:https://www.chugoku-np.co.jp/column/article/article.php?comment_id=682498&comment_sub_id=0&category_id=142 (中国新聞 2020/9/20) ≪菅政権の課題≫地方創生 持続可能な社会支えよ
 「秋田の農家の長男」と言う菅義偉首相なら、地方の実情を分かってくれるはず―。そんな期待感も、世論調査の高い支持率につながったに違いない。首相は就任後初の記者会見で「地方を大切にしたい、日本の全ての地方を元気にしたい、こうした気持ちが脈々と流れております」と述べた。一方で、「安倍政権の継承」を打ち出している。看板政策だった「地方創生」も、そのまま受け継ぐつもりだろうか。2014年に掲げられた地方創生の総合戦略は「20年に東京圏への転入と転出を均衡化」するとし、東京一極集中の是正を目指してきた。しかし、集中の度合いはむしろ加速し、中央省庁の移転も文化庁の京都移転などにとどまる。結果は、竜頭蛇尾と言わざるを得ない。北村誠吾・前地方創生担当相の発言も、安倍政権のなおざりだった姿勢を映している。後任の坂本哲志氏に引き継ぐ際、全都道府県を視察に回ったことに触れ、「相当、ほら吹いてきましたから。後の始末をよろしく」と述べた。視察の応対に振り回された現場の苦労をどう思っているのだろう。それだけに新政権での仕切り直しが望まれる。これまでは「人口急減・超高齢化」を直面する課題とし、「各地域がそれぞれの特徴を活(い)かした自律的で持続的な社会を創生することを目指す」とうたってきた。しかし、実際には国が市町村を選別して補助金の交付を増やし、中央集権的な支配は強まった。地方交付税が削減されたまま、税財源の移譲は進んでいない。まずは、これまでの地方創生を検証してもらいたい。人口減少時代に大事なのは、地方への人材還流だろう。希望はある。新型コロナウイルスの感染拡大で密を避ける新しい生活様式が求められ、地方移住への関心は高まる。テレワークが進み、都心部にいなくても仕事ができるようになった。定年後のシニアばかりでなく、仕事のため東京にいた若い世代が拠点を移す例も増えている。例えば、人材派遣大手パソナグループは東京の本社機能を担う社員のうち、3分の2に当たる1200人程度を兵庫県の淡路島へ移す計画を持つ。こうした動きをさらに広げ、一極集中の流れをどう変えられるかが問われよう。新設のデジタル庁にも、そんな発想を求めたい。地方自治体のIT活用やテレワーク推進など、後押しできることは多いはずである。首相は自身の実績の一つに「ふるさと納税」を挙げ、官僚の反対を押し切って導入したと胸を張る。確かに多くの国民が利用し、産品を通して各地の魅力に気付く契機になっている。半面、古里を応援する本来の趣旨を忘れ、「官製通販」と批判される現実もある。過熱する返礼品競争に、国が規制強化などの対応に追われた。地方が競い合い、活性化を図るという制度の意義は理解できる。ただ、パイの奪い合いに熱を上げ、負けたら切り捨てられるシステムを、もしも「自助」と呼ぶなら違うだろう。新型コロナの影響で疲弊した地方の立て直しは急務である。実情を最もよく知る自治体や地域が、自ら持続可能な社会をつくっていく。それを支える政策こそが求められている。 

*4-2:https://www.agrinews.co.jp/p51930.html (日本農業新聞 2020年9月19日) [菅農政 見直しか継承か](上) 「地方重視」どう反映 規制改革 見えぬ矛先
 「秋田の農家の長男に生まれた。日本の全ての地方を元気にしたい」。菅義偉首相は就任会見でこう語り、圧勝した自民党総裁選の期間中から示していた地方重視の姿勢を改めて印象付けた。安倍政権で官房長官として、インバウンド(訪日外国人)や農林水産物・食品輸出の拡大に力を入れた。首相就任会見では、総務相時代に創設した「ふるさと納税」と合わせ、内閣の地方活性化策の「3本柱」として推進する方針を示した。だが、菅政権が直面する農政課題は、これらとはやや別のところにある。例えば、2020年産米の需給緩和。長期的な需要の減少に新型コロナウイルスの影響が加わり、平年作でも供給過剰となる可能性がある。和牛枝肉の価格低迷など、米以外にもコロナの影響は長期化する。農水省は飲食店の需要喚起策「GoToイート」を近く始めるが、感染防止策との両立が課題だ。菅首相は安倍政権の「継承」を旗印とするが、その安倍政権では農業の成長産業化を目指した。しかし、農家数や農地面積が減るなど生産基盤の弱体化は止められなかった。首相は農相に、安倍政権で官房副長官として自身を3年間補佐した野上浩太郎氏を起用した。53歳での初入閣で「省持ち」の閣僚は「首相の期待の高さ」(政府筋)も見えるが、国政で農林関係の要職の経験はない。実力派として政界で定評はあるものの、農政の手腕は未知数。地方重視の首相の期待に応えて、直面する課題に対応できるか。野上農相は就任早々、正念場を迎える。内外に課題が山積する中、首相が「政権のど真ん中」に置くのが規制改革だ。発信力の高い河野太郎氏を担当相に再登板させ、司令塔に据えた。安倍政権で農協改革や生乳流通改革など、農業分野の規制改革に深く関与してきた“ツートップ”に、農業関係者は警戒感を隠せない。規制改革推進会議では生産現場の意向を反映しない議論も相次ぎ、「地に足が着いているのか。現場をもっと見てほしい」(中国地方の集落営農組織代表)といった声が噴出した。一方で、規制改革の矛先はまだ見えない。野上農相によると、首相から農業で具体的な指示はなかった。現時点で首相が強い意欲を示すのは、行政の「縦割り」や前例主義の打破で、どちらかといえば「行政改革」の分野だ。「農業改革はかなりの数をこなした。残る分野は少ない」(自民党農林幹部)との見方があるものの、来春には農協法改正5年後の見直しや、JA准組合員の事業利用規制の在り方の検討が始まる。一般企業の農地所有など、長年指摘されてきたテーマもある。河野氏は就任会見で、対象分野を示さなかったものの「全方位でやる」と語った。「悠長なことをやるつもりはない、さっさとできるものをやる」と鼻息を荒げる。
 ◇
 地方重視と規制改革──。相反するような両面を持つ菅内閣が発足した。7年8カ月続いた安倍農政をどう改め、どう引き継ぐのか。内外の農政課題を探る。

*4-3:https://www.newsweekjapan.jp/kaya/2020/07/ntt.php (NewsWeek 2020年7月28日号掲載) NTTの「殴り込み」で、日本の電力業界に起きること
<NTTによる再生可能エネルギー事業への参入は、電力業界と消費者にどう影響するのか>
 NTTが再生可能エネルギー事業に本格参入する。同社はかつて官営の通信事業者だったこともあり、各地に旧電話局をはじめとする大型施設を数多く保有している。アナログ時代に電話局に収容されていたクロスバー交換機は巨大な装置だが、通信網がIP(インターネットで使われる通信規格)化されたことで機器の小型化が進み、施設には多くの空きスペースが存在する。このスペースをフル活用し、施設内に大量の蓄電池を設置。地域における電力ステーションとして官庁や事業者などに電力を供給する方針だ。発電については三菱商事と提携し、風力発電や太陽光発電の事業開発を行い、再生可能エネルギーを使った大型発電施設から電力供給を受けることになる。日本では巨大な発電所で集中的に電力を生み出す集中電力システムが主流となっており、各地に太陽光パネルや蓄電池を設置してネットワークで結ぶという分散型電力システムについては懐疑論が多かった。今でも電力は集中型でなければ安定供給できないと思っている人も多いかもしれないが、それは昭和時代までの古い常識である。再生可能エネルギーや蓄電、電力管理に関するイノベーションは想像を絶するスピードで進化しており、分散型電力システムの構築は既に現実的な局面に入っている。NTTはお役所仕事の象徴とされ、良くも悪くも新しい技術の導入には常に慎重なスタンスで知られてきた企業だが、そのNTTが分散型電力システムに本格参入するという現実こそが、全てを物語っている。
●災害時の停電リスクを軽減
 近年、地球温暖化の影響で日本の気候が激変し、従来では考えられなかったレベルの災害が多発している。災害時に携帯電話が不通となる原因の7割は停電で、電力系統が複数存在すればリスクを大幅に軽減できるだろう。同社では保有する約1万台の社用車を電気自動車(EV)化する計画も進めており、大規模停電時には移動式非常用電源としての活用も期待できる。ほぼ同じタイミングで経済産業省は、非効率な石炭火力発電所の削減を進める方針を打ち出しており、NTTの再生可能エネルギー電力網はその有力な代替手段となる。だが、NTTが電力事業に参入する最大の意義は、硬直化した日本の電力事業に風穴を開けることである。もともと日本の電力供給は民間が担う形でスタートしており、市場メカニズムによって電力システムの運営が行われてきた。戦争遂行に伴う国家総動員体制で電力会社は国有化され、戦後は発送電一体となった地域電力会社が独占的に電力を供給するという特殊な形態となった。これはあくまで戦争がもたらした結果で、決して普遍的なものではない。政府は電力の自由化政策を進めているが、巨大な設備を持つ地域独占企業が存在している以上、完全な競争環境を構築するのは難しい。全く新しい電力網を新規に構築する大規模事業者が出てくる意味は大きいだろう。かつてNTTは独占企業として通信業界において圧倒的な影響力を持っていた。だが、東西への分割や、新規参入の促進政策によって完全とはいえないまでも市場メカニズムが機能するようになった。今回のNTTによる新規参入は、かつて通信事業者が経験した変化を、最後の独占事業者となった電力会社に対して強く促す結果となるだろう。

*4-4:https://www.agrinews.co.jp/p51959.html (日本農業新聞 2020年9月23日) 中山間農業の支援 畦畔管理に焦点当てよ
 高齢化と人手不足で、中山間地域では畦畔(けいはん)管理の困難さが増している。ロボット農機など技術革新は進む。しかし、小規模で未整備の水田をはじめ同地域の農業の課題は、科学の力だけでは解決できない。洪水防止を含む農業の多面的機能を正しく評価し、受委託の体制づくりなど畦畔管理に焦点を当てた施策が必要だ。農水省によると、耕地面積に占める畦畔率は2019年が全国平均で4%。大規模化が進む茨城県は1・4%、北海道は1・6%と低い一方、中山間地域が多い中国地方は5県平均が8・9%で、岡山、広島、山口の3県は9%を超える。畦畔率が高いほど作物を育てる面積は減る。10ヘクタール規模の経営なら農地に占める畦畔は北海道では16アールだが、広島県は94アールだ。規模は同じでも耕作面積に大きな差が出る。畦畔率が高いほど1区画当たりの圃場(ほじょう)も小さい。管理する圃場が多ければ、農機の出し入れなど作業の連続性が妨げられる。除草など管理にも多くの労力が必要だ。中山間地域の畦畔は急傾斜が多く、農作業事故のリスクも高い。非効率で労力、時間、コストがかかる畦畔。企業なら一番に切り捨てられる不採算部門だが、自分の経営だけでなく地域社会にも影響し、管理は手抜きができない。雑草繁茂は病害虫の発生源になるばかりか、鹿やイノシシの隠れ場所として鳥獣害を助長する。畦畔がもろくなり、保水力の低下や土砂災害などの危険性も生じる。中山間地域等直接支払いをはじめ日本型直接支払いの加算措置の拡充や、棚田地域振興法の制定など、中山間地農業の支援政策は進んできた。しかし畦畔管理にかける労力が不足している。特に地権者に管理を頼っていた集落営農組織では深刻だ。日本版衛星利用測位システム(GPS)の整備などにより、農機が自動で高精度な作業を行うスマート農業が国の主導で実用化され、日本の農業は大変革期を迎えた。農業者が高齢化、減少する中、正しい選択の一つと言える。ただ、農業の課題の全てを解決するのは難しい。また、利益追求型の企業的農業を志す農業者もいれば、伝統や文化、先祖から受け継いできた土地を守り、家族と過ごすことを大切したいと考える農業者もいる。求められるのは、どこでも農業が続けられる環境だ。農地は、食料生産の他、国土の保全、水源の涵養(かんよう)、環境保全、良好な景観の形成、文化の伝承など多面的機能を持つ。局地的な豪雨や台風の大型化など自然災害が常態化している中、貯水をはじめ水田の機能は、水害の緩和など防災の観点からも注目されている。中山間地域の畦畔管理は、もうかる農業の追求だけでは難しく、地域住民の努力だけでは限界がある。災害が多い今こそ、事業として請け負う人材や組織・会社の育成・支援など、踏み込んだ施策を求めたい。

*4-5:https://www.agrinews.co.jp/p51980.html (日本農業新聞 2020年9月25日) 輸出、畜産の局新設 農水省が組織再編案
 農水省は24日、三つの局を新設する組織再編案を明らかにした。①農産物輸出拡大のための施策や規制緩和の交渉を担う「輸出・国際局」②米・麦・大豆と園芸作物を一体的に担当する「農産局」③畜産の生産基盤強化に向けた「畜産局」──の3局。輸出拡大による成長産業化や、それを支える生産基盤の強化が狙いだ。食品産業振興を専門とする「新事業・食品産業部」も新たに設ける。2021年度の組織・定員要求に盛り込み、同日の自民党農林合同会議に示した。組織名はいずれも仮称。政府内の調整を経て年末までに決定し、同年度からの実施を目指す。同省には現在、大臣官房と、局級の組織が六つある。実現すれば、局級の組織再編は15年度に政策統括官を新設して以来となる。輸出・国際局は、輸出を担当している食料産業局と、貿易交渉や国際協力などを担当する大臣官房の国際部を統合する。農産物輸出の拡大は菅義偉首相が地方活性化策の柱と位置付け、政府は30年に輸出額5兆円の目標を掲げる。実現に向け、同省の輸出関連施策を一元的に担い、貿易交渉とともに輸出入規制に関する各国との交渉も担当する組織とする。農産局は、水田・畑作政策を担当している局級ポストの政策統括官と、生産局の園芸作物部門などを再編する。米・麦・大豆と園芸作物を「耕種農業」として一体的に政策を展開し、収益性を高める狙いがある。畜産局は、生産局の中にある畜産部を格上げする。同省は和牛など畜産物を輸出拡大の柱とみており、体制を強化する。新事業・食品産業部は大臣官房に置く。現在は食料産業局にある食品産業部門を切り離す格好だ。国産農産物の利用拡大に向け、大きな需要先である食品産業の振興を専門的に担当する。組織再編は江藤拓前農相の肝いりで、退任直前の15日の記者会見で提起していた。組織・定員要求には、農村振興局に「農福連携推進室」を設置することも盛り込んだ。

*4-6:https://www.agrinews.co.jp/p51984.html (日本農業新聞 2020年9月26日) 特産ミカンで 離島元気に 協力隊員がけん引 広島県の佐木島
 瀬戸内海に浮かぶ広島県三原市の佐木島で、特産のミカンを軸にした地域おこし「鷺島みかんじまプロジェクト」の活動が活発だ。活動を引っ張るのは20代の地域おこし協力隊員。摘果ミカンを鶏に与えてブランド卵を作ったり、ミカン園の“草刈り隊”に羊を導入したりと、島に人を呼ぶアイデアを次々に取り入れている。島外の住民も巻き込み、離島を盛り上げようと奮闘する。
●摘果品餌に ブランド卵
 周囲18キロという小さな島では高齢化が進み、人口も660人と減少傾向にある。何とか活性化しようと、2016年に三原観光協会がプロジェクトを開始。19年4月に任意団体を設立し、地域おこし協力隊員の松岡さくらさん(26)が団体の代表に就いた。縮小しつつあるミカン園の復活や空き家活用、観光イベントに取り組む他、ミカンの他に目立った特産品がなかったことから商品開発に力を入れる。かつて養鶏農家だった堀本隆文さん(68)と共に1年かけて作り上げ、19年10月に販売を始めたのが「瀬戸内柑太郎(かんたろう)島たまご」だ。プロジェクトが管理するミカン園で摘果した青ミカンと海藻、カキ殻などを配合して採卵鶏に給餌する。餌作りには、これまでも島の活動を応援してきた精肉店など島外の関係者も助言。島由来の素材にこだわった餌とストレスの少ない平飼いで、一般の鶏卵に比べてビタミンAが1・3倍という高い栄養価に仕上げた。市内の道の駅などで1パック (6玉)361円(税別)で販売し、観光客にミカンを生かした新たな特産品としてアピールしている。
●「草刈り隊」羊2頭出動
 5月から、省力化を兼ねて羊を飼い始めた。東広島市の牧場から2頭をリースし、耕作放棄地に放す。木の芽を食べてしまう恐れがあったが、「おとなしい性格で、ミカンの葉も食べない」(松岡さん)という。10月からはミカン園30アールでも試験的に放牧を始め「草刈り要員として活躍してもらい、農作業の負担を減らしたい」。島内の生産者に羊を貸し出す「出張放牧」にも取り組む予定だ。松岡さんは「島を訪れた観光客を楽しませる存在になってほしい」と期待する。

<無駄遣いの主役は、社会保障ではないこと>
PS(2020/9/24追加):*5-1のように、メディアは「①安倍政権の社会保障政策は、担い手の増加に力点を置き高齢者や女性の働く場を拡大した」「②5年後には75歳以上が人口の2割近くを占め、担い手増だけでは到底追いつかないため、給付と負担のバランス見直しは避けて通れない」「③20年後の社会保障給付費は現行より60兆円以上膨らむので、所得税・資産課税・社会保険料も含めた制度を全面的に見直す必要がある」というように、負担増・給付減の必要性ばかりを述べている。しかし、①の担い手を増やすことは正解であるものの、働いている人は健康寿命が長くなるため、②は根拠がない。さらに、③は、社会保障サービスは、現在では日本で最も大規模な産業になっており、社会保障を単なるお荷物と認識していること自体が誤りだ。
 それでは、どうすればよいかと言えば、社会保障以外の無駄遣いを徹底的になくし、「社会保障は消費税からしか支出してはならない」という根拠なき説明をやめるのが、最大の財源になる。さらに、厚労省は、医療費・介護費に含まれる薬剤や機材を言い値で購入して国際標準よりも高価格になっているものが多いため、国際標準まで落とせば社会保障における無駄はなくなる。しかし、必要な人にサービスを行うのは決して無駄ではなく、給付減を行えば命にもかかわる。なお、医療・介護は、自由診療・自由介護と併用できるようにすれば便利で、自由診療・自由介護のものでも、誰もが必要とすることがわかれば、その価格で保険適用にすればよい。さらに、政府は、国民負担ばかりに頼るのではなく、資産からの税外収入を増やすべきだ。
 なお、*5-2のように、厚労省は、2019年12月25日、「④厚生年金の加入義務がある企業規模の要件を2022年10月に従業員101人以上、2024年10月に51人以上まで引き下げる」「⑤公的年金を受給開始年齢の選択肢を60~75歳の間に増やす」などを決めた。しかし、④は、企業中心の発想で、本来は企業規模と関係なく従業員全員が対象になるべきで、その方が従業員のためになる。そして、それによる人件費の上昇は、生産性の向上で賄うべきだ。また、⑤は、年金より高給の仕事があれば問題ないが、一定以上の収入のある高齢者の厚生年金を減らすと就業意欲が下がるのは、「月収28万円超」でも「月収47万円超」でも同じだろう。

  
    財務省        2019.12.21毎日新聞      2018.4.19日経新聞  

(図の説明:左図のように、日本の財政状態はイタリア以上に悪いが、これは、1989年《平成元年》に消費税が導入された後に起こったことだ。また、中央の図のように、社会保障関連支出が34.9%あるために、社会保障が無駄遣いであるかのように言われることが多いが、もともと社会保険料を支払って賄っていたのに立ち行かなくなって税金投入しているのは、制度設計と管理の悪さが原因だ。しかし、無駄遣いをやめ、税外収入を増やし、エネルギー自給率を上げれば、今なら何とかなるだろう。さらに、右図のように、介護保険料を高齢者のみに負担させて導入当初の2倍に上げ、介護サービスは抑制するというのは問題であると同時に、介護保険制度を人口構成の異なる地域別にしているのも不公平・不公正である)

*5-1:https://www.kobe-np.co.jp/column/shasetsu/202009/0013723562.shtml (神戸新聞 2020/9/24) 新政権と社会保障/60兆円増にどう備えるか
 幼稚園や保育所に無償化制度が導入され、低所得世帯では大学の授業料も減免される-。安倍晋三前首相は「全世代型社会保障」と銘打ち、高齢者医療や年金が主体だった社会保障を子育てや教育支援に拡大した。7年8カ月に及んだ長期政権の実績とも指摘される。だがその財源は、降って湧いたわけではない。消費税率を8%から10%に引き上げるに際して、高齢者向けが主体だった社会保障費の一部を振り替えた結果である。2017年の解散総選挙では消費税の使途変更を大義名分に掲げ大勝を収めた。しかし社会保障のメニュー拡大を力説する一方で、財源や負担のあり方には大胆に踏み込まないまま、政権の幕は閉じた。少子高齢化の加速や、国の債務が膨らみ続ける状況は容易に変わらない。その中で国民が安心して老後を過ごせる社会の姿を示すのが、菅義偉首相の責務である。安倍政権の社会保障政策は、担い手の増加に力点を置き高齢者や女性の働く場を拡大した。経済政策アベノミクスが成長をもたらせば、賃金や雇用の増加で社会保障の充実強化に結びつくとも唱えた。ただ5年後には75歳以上が人口の2割近くを占め、社会保障費の増加に拍車がかかる。担い手増だけでは到底追いつかず、給付と負担のバランス見直しは避けて通れない。昨年末、政府の全世代型社会保障検討会議は75歳以上の医療費負担割合について、一定以上の所得のある人は22年度までに1割から2割に引き上げると明記した。今年6月に最終報告をまとめる予定だったが、新型コロナウイルスの感染拡大のあおりを受け、議論は中断している。懸念するのは、負担増から目を背け給付拡大を唱えた安倍政権の姿勢を、菅首相も継承しようとしている点だ。総裁選で将来的な消費税率引き上げに言及したものの、批判を浴びると火消しを図った。政府予測では、20年後の社会保障給付費は現行より60兆円以上膨らむ。だが衆院議員の任期を来年10月に控え、総選挙が近づく中、国民に耳の痛い議論は棚上げされる可能性が否めない。高齢社会に必要なサービスはしっかり確保する。同時に公平な負担の実現に向け、所得税や資産課税、社会保険料も含めた制度を全面的に見直し、国民の理解と納得を得る。そのための作業を早急に始めねばならない。菅氏は目指す社会像として「自助、共助、公助」を掲げる。これは社会保障で自助努力の拡大を意味するのか、発言の真意もきちんと説明する必要がある。

*5-2:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/470360 (佐賀新聞 2019年12月25日) 厚生年金、中小企業に義務拡大、受給開始60~75歳で選択
 厚生労働省は25日、年金制度改革案の全容を社会保障審議会(厚労相の諮問機関)の部会に示した。将来の低年金を防いだり高齢者の就業を促したりする内容。厚生年金の加入義務がある企業規模要件を2022年10月に従業員101人以上、24年10月に51人以上まで引き下げ、中小企業に広げる。公的年金を受け取り始める年齢の選択肢を60~75歳の間に増やす。厚労省はこの日、公的年金に上乗せする私的年金に関し、自力での資産形成を後押しする見直し案を別の会合に提示。併せて来年の通常国会に関連法案を提出する。改革案を実施すると、現役世代の平均手取り収入に対する年金給付水準は約30年後の時点で0・2%上昇するという。政府は部会で年金改革の具体案を議論してきた。今月19日にまとめた全世代型社会保障検討会議の中間報告にも主要論点を明記した。厚生年金の対象拡大は、パートなど非正規で働く人たちの加入を進めて年金を手厚くするほか、保険料を払う支え手も増やすのが目的。企業でフルタイムとして働く人は規模にかかわらず厚生年金の加入義務があるが非正規の場合は現在、501人以上の企業で週20時間以上働くことなどが要件となっている。厚生年金の保険料は労使折半。51人以上に引き下げた場合は新たに65万人が加入する見通しで、企業負担は年間1590億円増える。公的年金の受給開始年齢は65歳が基本だが、現状は60~70歳の間で自由に選べる。働く高齢者が増えていることを踏まえ75歳にまで選択肢を広げる。65歳から繰り上げると月当たり0・4%減額、遅らせると0・7%増額とする。75歳から受け取り始めると65歳と比べ毎月の年金額は84%増える。働いて一定以上の収入がある高齢者の厚生年金を減らす在職老齢年金制度は、60代前半の減額基準を現行の「月収28万円超」から、65歳以上と同じ「月収47万円超」に引き上げる。就業意欲を損なっているとの指摘があるためだ。また「在職定時改定」と呼ばれる仕組みを導入し、60代後半で働く人の年金を毎年増額する。

<乗り物や機械のエネルギー変換>
PS(2020/9/25追加):*6-1のように、欧州エアバスが航空機のパラダイムシフトに乗り出し、世界初の水素燃料によるZE航空機を2035年までに商業化する方針を発表した。欧州連合(EU)は脱炭素技術として水素に本腰を入れており、エアバスのCEOは「航空業界の最も重要な転換点だ」としている。このうち、主翼が機体と一体になった全翼型は、これまで多くの航空機が鳥を真似た形をして翼のみで揚力を出していたのに対し、マンタを真似た形をして機体全体で揚力を出すものだ。これは、空間利用に無駄がないのが長所で、欠点は窓側座席の割合が少ないことだが、それは貨物機なら問題にならず、乗客でも眼下の景色の高精度画像が各座席に配信されれば足りるだろう。そのため、この技術革新の時代、ボーイングも技術革新しなければ中国の競争相手でさえなくなるだろうし、日本の航空機業界も同じである。
 このような中、*6-2のように、2020年9月25日、米カリフォルニア州のニューサム知事が「2035年までに州内で販売される全ての新車を、ゼロエミッション(ZE)車にするよう義務付ける」と発表したため、「脱ガソリンで日本勢に逆風か」という記事が日経新聞に掲載された。これに対し、トヨタ・スバルが対応を急いでいるそうだが、EVは日本が1995年前後から開発を始め、日産が世界のトップランナーだったのに叩いて駄目にし、日産までがHVにシフトするアホぶりで、情けないにもほどがあった。また、未だに車両価格・充電施設・水素インフラ整備などの課題を並べているが、私は、PHVはガソリンエンジンを使う上、ガソリンエンジンを搭載する分だけ価格が高くなるので、新エネ車に入れる必要はないと考えている。

  
                       2020.9.22朝日新聞
(図の説明:左の2つが、エアバスの全翼型航空機で、右が通常型航空機だが、いずれも水素燃料を動力とする)

*6-1:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO64156040T20C20A9X13000/ (日経新聞 2020/9/24) エアバスが35年に水素旅客機 欧州水素戦略、陸も空も
 欧州エアバスが航空機のパラダイムシフトに乗り出した。21日、世界初となる水素を燃料とし、二酸化炭素(CO2)を排出しないゼロエミッション(ZE)航空機を2035年までに事業化する方針を発表した。3種類のコンセプト機のデザインも披露した。欧州連合(EU)は脱・炭素の技術として水素戦略に本腰を入れている。コロナ禍で足元は厳しいが、技術革新の種をまき、未来の航空機市場で覇権を狙う。
■エアバスCEO、「最も重要な転換点」
 「航空業界はこれまで様々な変化を経験してきたがその中でも最も重要な転換点になる取り組みの旗振り役を担う」。エアバスのギョム・フォーリ最高経営責任者(CEO)は、次代の航空機産業を先導する意志を宣言した。国境を越えた移動が制限され、航空機産業は厳しい環境に置かれている。米ボーイングが次世代の中型機の開発を見直すなど、新造機開発がコロナ禍で滞るなか、エアバスはあえて技術革新を前面に出した。ZE航空機はジェット燃料の代わりに水素を燃料とし、改良したガスタービンエンジンで燃焼して動力を得る仕組み。エアバスは今回、3種類のコンセプトを披露した。一つは主翼が機体と一体となった「全翼型」と呼ぶ軍用機でよくみられるデザインを採用した。最大100席が乗員可能で、航続距離は約3700キロメートル以上とした。胴体が非常に幅広く、水素の貯蔵や供給方法で多様な手法を選べるうえ、客室も柔軟にレイアウトできるという。さらに現在の航空機でも使われる「ターボファン型」と「ターボプロップ(プロペラ)型」のコンセプトも出した。ターボファン型は約3700キロメートル以上の航続距離で、大陸間も飛行できる。座席数は120~200席を想定する。後部圧力隔壁の後ろに設置されたタンクを使用し、液体水素を貯蔵・供給する。プロペラ型は近距離飛行を想定し、航続距離は約1852キロメートルで座席数は最大100席とした。エアバスは航空機の脱・炭素に力を入れてきた。独シーメンスや英ロールスロイスとは、ハイブリッド電気推進システムを採用した実証試験機「E-FanX」を共同開発してきた。E-FanXは20年4月に開発プログラムを終えたが、CO2排出量を劇的に下げる手法を3社で引き続き探求するとしている。ZE航空機の開発でも再び協力する可能性がある。
■航空機ABC時代、将来の覇権争いに先手
 コロナ禍でエアバスが打ち出した野心的なZE航空機の構想は、今後の航空機業界の競争に波紋を広げそうだ。航空機メーカーはあまたの再編を経て、エアバスとボーイングの2強体制となったが、足元では中国が台頭してきた。着々と国産化を進め、機内の通路が1本の単通路型(ナローボディー)の機体を開発し、試験飛行に入った。中国は将来、世界最大の航空機市場になる見通し。米中摩擦の影響は懸念されるが、巨大市場を背景に中国が航空機産業でも存在感を高め、2強を脅かす可能性が高い。「ABC(エアバス、ボーイング、中国)」の3強時代を見据え、エアバスは技術革新で競争の土俵を変えようとしているとも言える。エアバスの水素燃料を使ったZE航空機の動きは、欧州の水素戦略の一翼を担う側面である点も見逃せない。欧州委員会は7月、水素戦略を発表し、生産過程でCO2を排出しない再生可能な水素の推進などを示した。さらにエネルギー効率性向上に向けた政策もまとめ、再生可能な水素燃料をEUにおけるエネルギーシステム統合戦略の核となる技術と位置付けた。エアバスも政府支援を働きかける。フォーリ氏は「水素の輸送や供給のための大規模なインフラが必要だ」と指摘し、「さらに研究開発、持続可能な燃料の利用に配慮した航空機への入れ替えを支える仕組み作りで政府支援が重要だ」と訴える。
■欧州、脱・炭素へ 水素戦略に本腰
 水素は生産、貯蔵、輸送、使用などのバリューチェーンで様々な産業への波及効果が大きい。使用の面においては独ダイムラーが燃料電池分野でスウェーデンのボルボと提携し、燃料電池トラック推進に向けた欧州連合を形成した。空でもエアバスが主体となって水素戦略を加速する。欧州の産業政策の中心となるドイツは、6月にまとめた国家水素戦略で多数の施策を打ち出した。そのうち、交通分野の施策で「モビリティー分野における水素・燃料電池システムの国際標準化」を明確にしている。日本の航空機産業では宇宙航空研究開発機構(JAXA)が中心となって、航空機の脱・炭素戦略を進めている。18年には民間企業も募って、コンソーシアムを立ち上げた。ただ、技術ロードマップでは30年代に小型旅客機に電動化技術の適用範囲を広げ、50年代に「電動化の理想形に到達」とした。35年にZE航空機の事業化を目指すエアバスとの差は歴然だ。産学官の連携で新たな技術を標準化し、市場を作り上げていくのは欧州のお家芸だ。コロナ禍で厳しい環境下だが、エアバスが動いた以上、日本の航空機産業も脱・炭素戦略を悠長に構えてはいられない。

*6-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200925&ng=DGKKZO64215050U0A920C2EA2000 (日経新聞 2020/9/25) 脱ガソリンで日本勢に逆風 米加州が全新車に義務付けへ トヨタ・スバル、対応急ぐ
 自動車業界に「脱ガソリン」を求める動きが米国でも本格化してきた。米カリフォルニア州のニューサム知事がガソリン車の販売を禁止する方針を明らかにした。厳格な環境規制は欧州などが先行してきたが、米国は日本メーカーのシェアも大きい。規制強化で各社の戦略見直しが一気に進みそうだ。ニューサム知事は23日、2035年までに州内で販売される全ての新車を、排ガスを出さない「ゼロエミッション車」にするよう義務付けると発表した。州知事権限に基づく命令を通じ、州の大気資源局(CARB)に具体的な規制づくりを指示した。米国内でガソリン車の販売禁止時期を示したのは加州が初めて。排ガス規制は欧州が進んでおり、欧州連合(EU)は21年に大幅な二酸化炭素(CO2)排出削減を求める新規制を本格導入する。英国がガソリン車やディーゼル車の新規販売を35年に禁止すると表明したほか、フランスも40年までに同様の規制を設ける方針だ。この流れに加州が加わることで、脱ガソリンを掲げる市場の範囲が大きく広がる。同州は全米最大の自動車市場で、19年の販売台数は189万台を超える。19年実績ではトヨタ自動車やホンダなど日本勢のシェアが47%と高く、米国メーカー(30%)よりも多かった。加州だけで日本勢はEU市場で売る半分程度の台数を扱っておりグローバルでも重要市場だ。米国内の規制は原則として連邦政府が策定するが、環境関連は加州に独自のルールづくりが許されている。他州が加州の規制にならうことも認められている。ニューサム知事は23日の記者会見で「これはほかの州や国が従うべき政策」と述べた。
●車業界は反発
 突然の規制強化案に、業界は反発している。ゼネラル・モーターズ(GM)など米大手3社と日欧の主要メーカーが加盟する米国自動車イノベーション協会(AAI)は同日、「規制による市場構築は成功しない」との声明を出した。ただ、連邦レベルでの環境規制にも影響力を持つ加州の方針厳格化は重みを持つ。特に電気自動車(EV)を持たないメーカーへの影響は大きい。SUBARU(スバル)にとって米国は約7割を占める最大市場だが、消費者に「水平対向エンジン」が支持されてきた経緯もありEVを展開していない。まずは20年代前半にトヨタと共同開発したEVの発売を進める構え。スバル幹部は「環境規制で顧客の嗜好が変わることもある。大きな問題で動きを注視している」と懸念を強めている。マツダも現時点で米国でEVを販売していない。今秋から順次自社で開発したEV「MX-30」を欧州や日本で発売するが、米国展開についてはまだ決定しておらず出遅れている。ハイブリッド車(HV)を軸に北米でエコカーを販売してきたトヨタも戦略転換を迫られる可能性がある。加州の規制はHVをゼロエミッション車と見なさないとされる。19年にトヨタが米国で販売した新車のうち電動車は11.5%だが、EVはなくほとんどがHVだ。同社が中長期的なエコカーの本命と位置づける燃料電池車(FCV)も「販売台数はわずか」(トヨタ幹部)。車両価格や水素インフラ整備などで普及に課題は多い。同社は加州で現在シェア1位だが、EVを含めたゼロエミッション車の販売拡大が急務となる。
●欧州勢が先行
 投資家も今回の規制方針を逆風と見ており、スバルとマツダの終値は前日比でそれぞれ2.95%、3.65%下げた。欧州メーカーは対応で先行している。独ダイムラーは39年にすべての新車をゼロエミッション車とする方針を決めた。独フォルクスワーゲン(VW)も時期は明確にしていないが「40年前後が最後の内燃機関車を販売する時期になる」(幹部)としてEVへの移行を急いでいる。部品メーカーでは、独コンチネンタルが19年、30年までに内燃エンジン関連部品の開発を打ち切ることを明らかにした。 米国メーカーで最も恩恵を受けるのはテスラだ。米国の新車市場約1700万台のうちEVのシェアは1%強の24万台にすぎないが、テスラ車が8割のシェアを握っている。そのほかフォード・モーターがVWと提携しEVの共同開発に取り組む。GMも全車の電動化を目指しており、このほどホンダと北米での協業を決めた。自動車の環境規制の強化は中国でも進む。同国では19年、EVやプラグインハイブリッド車(PHV)などの新エネルギー車(NEV)の普及を促す「NEV規制」を導入した。

<農業と行政におけるスマート化>
PS(2020年9月29、30日追加):*7-1に、「①政府は2025年までに、担い手のほぼ全てがデータを活用した農業を実践することを成長戦略に掲げる」「②農水省はデジタル技術を活用した生産現場の課題解決に乗り出し、農家の高齢化や人手不足を補う導入の判断材料として費用対効果の分析データを農家に提供して普及を推進する」「③かかった費用・伸びた所得・削減できた労働時間等をデータで示して農家に提供する」「④行政手続きも、スマートフォンやインターネットで補助金申請ができるようにする」などが記載されている。
 このうち、①②については、徹底して自動化した方がよいのは大規模少品種生産の農家で、小規模多品種生産の農家は小回りのきく機械にした方がよさそうに思う。しかし、機械化すれば従業員を減らせる場合は、人件費より機械の方が安い。また、③については、法人化して青色申告すれば、機械の減価償却費を計上して税負担を減らすことができるのでそれだけ費用対効果が高くなり、特別償却できるとなおさらだ。また、④については、行政手続きが簡素化されると迅速になるが、早い分だけ考える時間が短いのでミスも起こり易いと思う。
 しかし、*7-2に「⑤行政手続きでの印鑑廃止」「⑥ペーパーレス化」「⑦オンラインで情報を集めることができれば利便性が高まる」と書かれていることについては、「ハンコを押すためだけに会社に行く人がいた」というのは、本当はおかしい。何故なら、稟議書にハンコを押すことの意味は、上司が、①妥当性を判断し ②承認して責任を持つこと であり、部下の側からは「保証」と「根回し」になるからで、物理的にハンコを押すだけの管理職なら不要だからだ。ただ、⑦のように、インターネットで必要な人に同時に情報を送ることができれば、稟議書を廻す必要がなく、組織もフラットにできる。しかし、⑥のペーパーレス化が進みすぎると、保証人等になる場合に責任を持てるのか疑問であるなど、行為の重要性によっては書面を見ながら相手の説明をじっくり聞き、考えて印鑑を押すことが必要な場合もある。
 なお、2020年9月30日、*7-3のように、10~30haで経営する担い手の利用を想定し、施設内作業もしやすく無給油で8時間稼働できる中型トラクターを共同購入して低価格にする仕様を全農が発表したのはよいが、農機具も電動化し、再エネで自家発電した電力を使った方が環境に良い上に費用対効果も上がるので、メーカーに働きかけて、電動トラクターと農業施設の発電システムを作ってもらった方がよいと思う。

  

(図の説明:農業地帯は自然再生可能エネルギーが豊富なので、農家は、エネルギーを消費だけするより、生産しながら消費した方が、あらゆる意味でよいと思う)

*7-1:https://www.agrinews.co.jp/p52013.html (日本農業新聞 2020年9月29日) デジタル活用 農家手助け 「スマート」=コスパ提示 補助金=ネット申請加速 農水省が方針
 政府がデジタル庁の創設を検討する中、農水省はデジタル技術を活用した生産現場の課題解決に乗り出す。農家の高齢化や人手不足を補うスマート農業では、導入の判断材料として費用対効果の分析データを農家に提供し、普及を推進。補助金の申請手続きは、2022年度までに全てオンラインでできるよう、取り組みを加速させる。政府は25年までに「担い手のほぼ全てがデータを活用した農業を実践」することを成長戦略に掲げる。3月に閣議決定した食料・農業・農村基本計画でも、デジタル技術を活用した新たな農業への変革を提示。具体的に取り組む分野として、スマート農業、行政手続きの簡素化を挙げる。スマート農業は農作業の負担軽減の効果がある一方、導入コストに対するメリットが分かりづらい課題がある。同省と農研機構は今後、19年度から始めた実証プロジェクトの費用対効果の分析に入る。かかった費用、伸びた所得、削減できた労働時間などをデータで示し、農家に提供。導入する際の判断基準にできるようにする。農水省は21年度予算概算要求に、20年度当初予算比で40億円増の55億円を計上する「スマート農業総合推進対策事業」などを盛り込む。同事業では高価なスマート農機のシェアリング(共有)など、新たなサービスの実証も進める。行政手続きは、スマートフォンやインターネット上で補助金申請ができる同省の「共通申請サービス」の運用を進める。20年度は、認定農業者制度や経営所得安定対策の一部で運用を開始。22年度までに全ての申請で使えるようにする。21年度の概算要求にも、同86億円増の93億円を計上する。同省は、申請作業の簡素化によって「農家は経営に、JAは営農指導に集中できるようになる」(大臣官房デジタル戦略グループ)との考えだ。使い勝手を良くするため、簡潔で分かりやすい画面などを工夫するという。取り組みは、デジタル庁とも連携していく。同庁創設に向けて準備を進める内閣官房は農業分野について「これまで農水省が進めてきたスマート農業、行政手続きの簡素化を継続して進めていくことになる」(官房副長官補室)と話す。

*7-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200928&ng=DGKKZO64303030X20C20A9PE8000 (日経新聞 2020.9.28) 行革相、ペーパーレス化に意欲 印鑑廃止に続き
 河野太郎行政改革・規制改革相は27日、行政手続きでの印鑑廃止に続き、ファクスの使用もやめてペーパーレス化に取り組む意向を明らかにした。北海道根室市で記者団に「電子メールやオンラインで情報を集めることができれば、より民間企業や各自治体の利便性も高まる」と強調した。

*7-3:https://www.agrinews.co.jp/p52021.html (日本農業新聞 2020年9月30日) 新・低価格トラクター 「中型」用途幅広く 全農
●施設内作業しやすく、無給油で8時間
 JA全農は29日、注文を取りまとめて低価格にする「共同購入トラクター」の第2弾、中型トラクターの仕様を発表した。標準的な同クラスに比べ2割安く、ハウス内作業がしやすいノークラッチ変速や、無給油で8時間の作業ができる燃料タンクを搭載した。用途が幅広く、担い手の収益を高める多角経営にも貢献する。全農の農家所得増大に向けた事業改革の一環。10月からJA経由で注文を受け12月に出荷を始め、3年間で2000台の取り扱いを計画する。機能を絞るのに加え、まとめて注文する共同購入でメーカーの製造・流通を効率化し、価格の引き下げにつなげる。今回の製造元はクボタで、型式は「SL33LFMAEP」(33馬力)。メーカー希望小売価格は285万円(税別)だ。生産者の要望を基にして機能を厳選し、2019年6月にメーカー4社に開発を要請した。実機やデータを基にクボタ製を選んだ。全農によると、今回は第1弾の大型ほど機能をそぎ落としていないが、購入数が見込めることで値下げにつながった。要望の強いノークラッチ変速と大きな燃料タンクの他、自動水平制御、自動耕深制御、倍速ターン、オートブレーキなどを備える。キャビンやハイスピード、半クローラーのオプションもある。水田農業だけでなく園芸にも向く。低価格のため、ハウス内作業や野菜栽培など特定の作業用に、追加で導入するのにも向く。10~30ヘクタールで経営する担い手の利用を想定している。全農耕種資材部は「あらゆる作業ができ、水田と園芸など多角経営に役立つ。前回の大型は関東、東北、九州で人気だったが、今回は西日本を含む全国で需要が見込める」と強調する。共同購入トラクターの第1弾は、18年に取り扱いを始めた60馬力の大型トラクター(ヤンマーアグリ製)。これまで1845台(8月末時点)と、目標の2倍近い取扱数となっている。

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2020年8月31日~9月8日 安倍首相の辞任・モーリシャス沖での日本の貨物船座礁・環境とエネルギー・本当の無駄遣いと財政法など (2020年9月12、13、15日追加)
 
   日本の経済成長率推移   日本の電源別発電コスト  世界の電源別発電コスト

(図の説明:左図のように、日本の経済成長率は第1期《発展途上期:1956~1972年》に平均9.1%あったが、これは現在の発展途上国と同じく「低賃金」で「低価格」の製品を作って先進国に輸出した経済モデルによっており、今後はこのモデルを採用することはできない。また、第2期《バブル期:1974~1990年》は、平均4%の経済成長率があるが、これはオイルショックで原油価格が上がって不況に陥りそうだったため、カンフル剤として著しい金融緩和を行ったからだ。また、第3期《成熟期:1991年~現在》に平均1%の経済成長率しかないのは、日本は大競争が始まった世界の変化についていかず、過去を継続しようとする圧力が強かったためである。その一例として、中央の図のように、日本の電源別発電コストは、2014年のモデルプラントでも原発が最も安価な電源とされ、原発に税金を投入してもそれをコストに加えていない。一方、合理的な選択をした世界の電源別発電コストは、右図のように、原発が最も高く太陽光発電は等比級数的にコストが下がって、2018年には地上風力とともに最も安い電源となっている)

(1)安倍首相の辞任について
1)安倍首相の辞任とその理由
 安倍首相が、2020年8月28日、*1-1のように、首相官邸で辞任する意向を表明する記者会見をされたのは、私にとっては予想外で残念だったが、首相の在任期間が最長記録を更新し、国会を開いても全体から見れば重箱の隅をつつくようなモリ・カケ・サクラの追及ばかりで本来の予算審議ができないのなら、今が新体制に移行するBestのタイミングだったのかもしれない。

 辞任理由は、①持病の潰瘍性大腸炎の再発 ②7月中ごろから体調に異変が生じ、体力をかなり消耗する状況だった ③体力が万全でない中、政治判断を誤ってはならないから辞任する ④潰瘍性大腸炎の再発が確認されて投薬を始め、継続的な処方が必要で予断を許さない と説明されており、多くのメディアが「待ってました!」とばかりに、首相の退陣報道をしたのは、国益を無視しており、眉を顰めさせられた。

 新型コロナウイルス感染症は、2020年2月1日に指定感染症に指定され、1類感染症(エボラ出血熱、痘そう、ペストなど)、2類感染症(ポリオ、結核など)より厳しい制限をかけられた。しかし、日本における実際の致死率は、3類感染症(コレラ、赤痢)や4類感染症(E型肝炎、A型肝炎、マラリア、日本脳炎)より低く、5類感染症(インフルエンザ、麻しん)に近かった。

 我が国は、中国(武漢)の状況に驚いて新型コロナウイルス感染症を重すぎるランクに位置づけ、それにより対応の不合理を招いたのであるため、「検査」・「陽性者の隔離」・「治療」・「予防」を行いながら、指定感染症のレベルを3類か4類あたりに下げるのがよいと思われる。

 なお、安倍首相が担当しておられた「北朝鮮による日本人拉致問題」は、選挙前になるとクローズアップされるが、普段は北朝鮮を見下した批判ばかりしているため、拉致問題を第一に考えているようには見えなかった。しかし、「北方領土問題を含むロシアとの平和条約締結」は、エリツィン大統領の時代がチャンスだったにもかかわらず先送りして機を逸してしまったので、誰が首相でもうまくいかなかったと思われ、安倍首相はよくやった方だと思う。

 また、「憲法改正」については、改正の必要性が国民に納得されるものでなければならず、「これまで改正しなかったから」というのは、改正理由にはならない。さらに、「環境権を明記するため」というのも、憲法第13条の「幸福追求権」に既に書かれており、環境基本法もあるため、既に実践の段階になっているのである。

 私も、安倍政権で行われた政策には賛成の部分も反対の部分もあるが、江戸の敵を長崎で打つかのように、安倍首相などの政治家をモリ・カケ・サクラのような(不法行為にもならない)矮小化した論点で追い詰めたのは、国民のためにも、民主主義のためにも、また底の浅さを感じさせたメディアのためにもならなかったと思う。

2)病人を差別する国、日本
 人が何らかの理由で誰かを差別するのは、それによって自分が優位に立つためと考えられるが、それによって、差別する人の底の浅さや見識の低さが感じられることは多い。そして、日本は、女性・高齢者・外国人だけでなく、病人も差別する人権後進国なのである。

i) 潰瘍性大腸炎について
 安倍首相が「潰瘍性大腸炎の再発で、政治判断を誤ってはならないから退陣する」とされた後、「治療に専念したらどうか」という報道も多く、下の③の同じ潰瘍性大腸炎を持病に持つ人はいたたまれなかっただろう。つまり、病気を理由として発表し、メディアが悪のりして拡大解釈すると、同じ病気の人が困ったことになるのだが、メディア自身には人権に関する配慮がない場合が多いのである。

 このような中、*1-2-1は、「①潰瘍性大腸炎は、大腸に炎症が起こり、大腸粘膜が傷ついて、ただれたり、はがれたりする難病」「②原因不明」「③約22万人の患者がいる」「④ストレスは再発に繋がりやすい」「⑤薬物療法では炎症を抑える薬を使う」「⑥血球成分除去療法という治療法もある」と記載している。しかし、①②については、胃潰瘍に原因があったように潰瘍性大腸炎にも原因があってよいと思われるのに、いつまでも⑤⑥のような対症療法ばかりをやっているようでは、医学の進歩はおぼつかない。また、④も、大いに考えられるが、疫学調査による裏付けが欲しいところだ。

ii) 新型コロナの感染者に対する差別的言動
 新型コロナの感染者に対する差別的言動が後を絶たず、*1-2-2のように、運動部で起きた集団感染を公表した高校・大学が理不尽な非難を浴び、島根県の私立高は関係のない生徒の写真もネットに掲載された。また、奈良県の私大の学生は、教育実習の受け入れ先やアルバイト先から、参加や出勤の見合わせを求められたそうで、検査をさせないため誰が陽性かの判別もつかなかったのが、この問題の本質である。

 しかし、これには、症状のある人がいても、(無症状の)濃厚接触者や帰国者に積極的疫学調査と称してPCR検査を行い、夜の街が感染の温床と触れ回るなど、感染者に対する差別を生む社会的土壌もあった。これなら事実を隠す方向に流れるのは当然で、それだからこそ、一般に病名はプライバシーなのである。

 新型コロナ感染症の場合は、2類相当とされながら1類以上の厳しい制限がなされ、感染情報が公開され、濃厚接触者がすべて明るみに出されて検査されて、差別やプライバシーの侵害に繋がった。しかし、感染する可能性は誰にでもあることを、決して忘れてはならない。

iii)精神障害者差別
 福岡市の商業施設で女性が殺害された事件では、*1-2-3のように、逮捕された自称15歳の少年は女性を刺したあと、6歳の女の子も襲っていたそうだ。この事件が最初に報道された時、「意味不明の奇怪な行動をするのは、また精神障害者の仕業か」と思った人は少なくない。

 しかし、この事件は、未成年者という責任能力のない者の犯行だった。にもかかわらず、一般の人が「意味不明の奇怪な行動をするのは精神障害者か」と思う理由は、刑法39条が「心神喪失者・心神耗弱者(≒精神障害者?)は責任能力がない」として、違法行為を行っても犯罪の責任を免除しており、罪を軽減する手段としてこの条文はよく使われ、メディアも人権に配慮することなく、大々的にそれを報道しているからである。

 そして、「責任を免除すべき心神喪失者・心神耗弱者の定義は何か」「本当に責任能力がないのか」については議論も説明もなく、「意味不明の奇怪な行動をするのは精神障害者だ」という“常識”を一般の人に植え付けているのは、憲法違反の法律に基づく精神障害者差別であり、精神障害者はたまったものではないだろう。また、「女性を刺し殺せるほど力の強い15才でも、責任能力がないと言えるのか」についても、私は疑問に感じる。

3)批判の妥当性
1)モリ・カケ・サクラ
 安倍首相は記者会見で7年8カ月の実績を強調されたが、*1-3-1・*1-3-2のように、「森友・加計学園問題や『桜を見る会』問題(以下“モリ・カケ・サクラ”)で、「政権の私物化」との批判がつきまとった」と記載する記事は多い。しかし、前に何度も書いたとおり、これらは重箱の隅をほじるような言いがかりを、国会期間中の長時間にわたって延々と続けたもので、聞いている私も「どこが法令違反なのか」とうんざりしたものである。

2)その他の政策
 保育や介護の重要性については、新型コロナによって明らかになったのではなく、30~50年も前から言ってきたにもかかわらず整備されていなかったのを、安倍首相が(私の提案で)女性活躍という視点から、さらに進めてくださったというのが事実だ。そのため、これらの政策は、首相がかわっても言い続けなければ進まないのが、男性中心の政治なのである。

 集団的自衛権については、私もやりすぎだと思ったが、その割には尖閣諸島問題は「力による現状変更を認めない(永遠に現状維持するつもりか)」としか言っておらず、領土を守る意識が薄く感じられた。これでは、いくら日米同盟が強化されても、米国が守ってくれるわけはないだろう。その上、拉致問題は、それを話し合っている最中に、仮想敵国として北朝鮮を批判していたのだから、解決するわけがない。

 カジノを含む統合型リゾート施設は、せっかくそういうものがない日本に、わざわざ外国のカジノ会社を誘致する必要は全くないと私は思うが、これは、自民党か維新の会の政策であって、*1-3-3で安倍首相が言っておられるように、安倍首相が政権を私物化した結果ではない。

 また、批判することが目的で批判しているメディアは、出演しても重要な発言がカットされて歪んだ像しか報道されないため、出るメディアを選ぶのは正当な注意であり、事前に質問を提出した社に当てて正確な回答をするのも当然だ。そのため、「知らなかったのなら・・」などと推測するのは失礼だと思う。

(2)モーリシャス沖の貨物船重油流出事故による公害

 
               2020.8.14BBCより
1)船の船籍と運行
 インド洋のモーリシャス沖で、*2-1のように、①岡山県の長鋪汽船が所有し ②商船三井が運航する貨物船が座礁し、燃料が大量に流出して、③モーリシャスのジャグナット首相が環境緊急事態宣言を出す という事態になったが、④この船の船籍はパナマで、⑤船長はインド人、副船長はスリランカ人だった。

 そして、④⑤のように、日本の多くの船舶が所有・置籍に課される税金を低く抑え、乗員の国籍要件を緩やかにするため、パナマ・バハマ・リベリアなどに置籍を置いており、この船舶事故に関しても、日本は国としては関係ない。海難事故が発生した場合は、①②の会社が、加入した損害保険から支払うのが原則だ。

 船内に残った燃料の大半は既に回収され、これ以上の燃料流出はないそうだが、付近のサンゴ礁やマングローブが広く汚染され、モーリシャス政府が環境緊急事態宣言を出すほどの環境汚染があるため、損害保険でカバーできない範囲については、日本が道義的に資金提供したり、技術協力したりすることはあり得る。

 しかし、注意すべきは、商船三井は2013年にもインド洋沖でコンテナ船の船体が真っ二つに折れて沈没する大事故を起こしており、日本は船籍から船員まで外国に頼っているため、既に造船技術の進歩・船員の技術向上・船舶の管理などが容易でない状況に陥っているということだ。

2)燃料による環境汚染を防ぐための燃料転換
 モーリシャスの重油流出事故では、*2-2のように、海岸沿いのマングローブ林が大きな被害を受け、複雑に重なる根の部分についた重油の除去が難しいとされたが、私は、「高圧洗浄機で温水を吹きかけてマングローブの根を洗い、汚れた水をポンプで吸い取ればマングローブは助かるだろうに、本気で回復しようとしているのか?」と思った。

 なお、近隣のレユニオン島を領有するフランス政府は、船内の有害物質が海に漏れ出す恐れがあるとして難色を示したが、8月24日、モーリシャス政府は、*2-4のように、真っ二つになって沖合に曳航した船体の前方部を海に沈めて処分する作業が完了したと発表したそうだ。
 
 しかし、巨大な船舶を運航するには数十トン/日の燃料を消費するため安いC重油が使われ、C重油を燃焼する際に排出される硫黄酸化物(SOx)などは海水汚染の原因になっているため、船舶も自然エネルギー由来の燃料電池で動かす時代を早急に到来させるべきである。

3)船舶の装備
 モーリシャス沖で座礁して重油が流出した貨物船の船長が、*2-3のように、島に近づいた理由を「家族と通話したくて、WiFiに接続するためだった」と話しているそうだ。もちろん、「安全な航行を怠った」疑いもあるだろうが、「インマルサット(衛星)」、「WIDESTARII(衛星)」、「モバイル(LTE)無線LANルータ」などを使って、海上でも安全に通信する手段があるため、日本所有の船舶の装備は遅れているのではないか?

 SOMPOホールディングス(HD)は、*2-5のように、自動運転システム開発のティアフォー(名古屋市)に98億円を出資して自動運転分野に進出し、自動車保険の販売から事故防止という安全対策までビジネスの領域を広げるそうだ。

 保険で得た事故データをフル活用して自動運転を進化させるのはよい考えだと思うが、船舶でもこれを進めるのが、安全とコスト削減の両立にプラスだと思う。

(3)原発による公害と使用済核燃料の保管
                ← これ以上、国民に負担をかけずに環境を護るべき
1)電気事業法の改正について
 安倍首相の大きな実績で言われないのが、(私の提案で)2013年に行われた電力システム改革(①広域系統運用の拡大、②小売及び発電の全面自由化、③法的分離の方式による送配電部門の中立性の一層の確保)のための電気事業法改正(https://www.enecho.meti.go.jp/category/electricity_and_gas/electric/system_reform.html 参照)だ。

 このうち①は、フクイチ事故後、地域間の電力融通が非常に限られていることが明らかになったことから必要となり、②は、大手電力会社(以下“大手電力”)の地域独占を基盤として行われてきた総括原価方式が電力会社同士の競争やコスト削減努力を阻んでいるため、発電と小売りを自由化して電力市場に競争を持ち込もうとしたものだ。そのため、これらをしっかりやれば、原発はコスト高で自然淘汰される電源の筈だったが、途中で経産省等の干渉が入ったため、どちらも不完全に終わっている。

 また、③は、新しい電力会社(以下“新電力”)が大手電力の送電システムを利用する際に、大手電力に都合の悪い新電力が排除される可能性があったことから、大手電力の送配電部門を分離し、2020年4月からは法的分離することにしたものだ。しかし、法的分離をしても、大手電力の送電子会社と配電子会社はグループ会社であるため、新電力の不利は変わらない。そのため、送電子会社を上場して独立させるか、別系統の独立的な送電会社を作るかすることが必要だ。

2)原発事故の賠償費用に対する積立不足額の処理について
 政府(経産省)は、*3-1のように、原発事故の賠償費用に対する積立不足(見積額:約2.4兆円)を回収する新制度を固めて、過去の積立不足額を2020年度以降に全国の電気料金に上乗せして回収する方針とした。これは、「原発事故は想定外」としてきた長年にわたる失政のつけで、本来なら原子力事業者が全額負担すべき費用を2020年度以降の電力料金として国民に転嫁することとしたものだ。そして、会計の大原則である費用収益対応の原則を無視していると同時に、過去費用が判明した場合には速やかに償却するという保守主義の原則にも反している。何故、大手電力だけ問題にしないのか?

3)高レベル放射性廃棄物の最終処分場について
 高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の最終処分場も未だ定まっておらず、*3-2のように、北海道寿都町のような自治体財政の弱い町が手を上げようとするのは、交付金目当てである。つまり、国は、高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の最終処分場となる地域に、その危険に見合った交付金を出すのであり、これは国民負担になるのである。本来は、ここまで原発のコストに加えるのが当然で、その結果、どの電源が高いか安いかを比較しなければならない。

 また、高レベル放射性廃棄物の最終処分場について、国は地下300mより深くに数万年埋めておく計画を立てているが、地下でなくても人間が近づかない場所ならよいため、高温のガラスと融かし合わせてステンレス製容器で固めたガラス固化体を厳重に外部と遮断される形にして、①使わなくなったのトンネル ②無人の離島 などに置いて厳重に管理するか、③数千メートルの深い海の底に捨てる という方法が考えられる。そして、日本の地形や状況なら、①②③の方が安全で安価かも知れないが、何よりもまず、脱原発を解決の起点にすべきである。

4)まとめ
 以上により、2)3)の費用は、本来は発生主義で認識して原発のコストに入れるべきものだったため、未だに、i)原子力はコストが安く ii)安定的な電源であるため iii)ベースロード電源にする としているのは、嘘も甚だしい。

(4)日本に存在する資源 

   
    国際通貨基金    2020.2.18東京新聞 2020.5.18毎日新聞   財務省

(図の説明:日本は時代の要請に基づく技術進歩や構造改革に力を入れず、長期間にわたりカンフル剤と称して税金を無駄遣いしてきたため、1番左の図のように、1990年には購買力平価で世界第3位だったGDPが、約30年後の2019年には世界第7位になった《この間、他国はまじめにやっていた》。さらに、左から2番目の図のように、「福祉財源=消費税」と主張して消費税増税を行ってきたため、国民の可処分所得の減少により国内需要と国内投資が減少し、実質GDP成長率が落ちた。これは、右から2番目の図のように、消費税増税後、「内需寄与度」が大きくマイナスになったことで証明される。しかし、財務省は、1番右の図のように、日本は歳出が歳入より大きく借金が世界1であるというグラフを示し、メディアを総動員して「消費税増税反対は、ポピュリズムだ」と主張してきた。そのため、「本当にそうか?」について、下に述べる)

1)教育を受けた人材
 日本は、1872年に最初の学校制度を定めた『学制』の公布により義務教育が推進され、戦後は小学校6年・中学校3年の合計9年間を義務教育とし、現在では高校3年間の中等教育を受ける人も多数を占めるため、識字率が100%に近く、基礎的知識のある良質な勤労者を得やすい。そのため、情報やマニュアルを徹底させやすく、これは、先人が残した遺産と言える。

 しかし、時代の要請に気付いて速やかに技術進歩を進められる人材を育てるには、①高等教育 ②仕事を通じた教育・訓練 ③メディアから得る良質な情報 ④新技術を受け入れる社会の土壌 等が必要であるのに、①の進学先は、法学部・経済学部・文学部等の文系が多く、新技術を作ったり使ったりする理系が少ないため、社会全体が理系音痴になっているのが問題なのだ。

 また、②③④については、社会全体として、「周囲の空気を読んで目立たず、現状維持して新しいことにチャレンジしない」ことを推奨する人や組織が多くなったらしく、これでは狭い範囲で勝手に決めた予定調和に基づいた行動しかしないため、新しい要請に気付いてそれを進める人材は育ちにくいだろう。これは、質の低いメディアを含む日本社会全体の問題である。

 つまり、教育に投資してよい人材を育成することは、本人だけでなく日本経済にとっても大きなプラスなのである。そのため、近年、教育が疎かにされているのはよくない。

2)自然エネルギー
 日本は、自然エネルギーが豊富な国なので、2015年に「国連気候変動枠組条約締約国会議(通称COP)」で合意されたパリ協定は、日本にとっては、環境技術をテコに世界をリードできるまたとない機会だった(https://www.enecho.meti.go.jp/about/special/tokushu/ondankashoene/pariskyotei.html 参照)。しかし、日本政府がとった行動は、原発と化石燃料にしがみつき、自然エネルギーを軽視して、これまでどおりエネルギーを大きく海外依存することであり、このビッグチャンスを逃した。

 このように、日本が時代に合わない意思決定をして技術進歩とエネルギー構造改革の両方に失敗した理由は、自然エネルギーを軽視する理系音痴の発想が優先され、既得権益者への“バランスのよい”配慮が重視されて、国民の利益を犠牲にすることについては顧みられなかったからである。そして、これは、与野党を問わない。

 このようにして、日本は、長期間にわたってカンフル剤と称する税金の大きな無駄遣いを許しながら、自然エネルギーを使うためのインフラ整備などの価値ある投資を行わず、高いエネルギー代金を支払わせて国民をさらに貧しくさせ、日本の製造業をも海外に追い出した。このような不合理な意思決定の連続が、1990年には購買力平価で世界第3位だった日本のGDPを、それから約30年後の2019年に世界第7位まで落とした原因なのである。

3)先進国の消費者
 日本は、先進国の期間が長いため、消費者の選択が洗練されてきている。このため、この消費者によって磨かれた製品の多くが海外でも通用するが、日本は構造改革の遅延による高コスト構造の継続により、農林漁業だけでなく製造業の多くも失った。これは、政府が補助金で助ければ何とかなるというものではなく、消費者が本当によいものを選択し、よくない点についてはクレームを言うことによって、磨かれていく技術なのだ。

 つまり、消費者とは、生産者に感謝さえすればよい存在ではなく、洗練された消費者がその購買力を使って賢い選択を続けることが、技術進歩の源になるのである。しかし、政府(特に財務省)は、「福祉財源=消費税」と主張して消費税増税を行ってきたため、消費者は可処分所得の減少により購買力が減少した。

 また、財務省は、「①福祉財源=消費税」「②消費税増税反対は、ポピュリズム」等々を、メディアや御用学者を総動員して広報してきたが、①を言う国は日本のみであり、福祉はどの税収から支出してもかまわないのである。また、いくらでもある大きな無駄遣いをやめて必要な福祉に支出すれば、財源はあるのである。

 さらに、②は、財務省内だけで考えれば、「歳出と歳入を一致させるためには、増税しかない」という算術になるが、歳出を投資効果の高いものに替えて次の歳入源を増やすようにしたり、エネルギーの転換・自給で外国に支払う莫大なエネルギー代金を節約して歳入を増やしたりなど、方法はいくらでもある。

4)日本の排他的経済水域内にある資源 (海洋基本法 https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=419AC1000000033 参照)

 
    排他的経済水域内のレアメタル     排他的経済水域内のメタンハイドレート

 「日本は資源のない国」という決まり文句は何度も聞かされたが、*4-1のように、日本の排他的経済水域(EEZ)内の南鳥島海底に、リチウムイオン電池の原料となるコバルトを多く含むマンガンノジュールの塊があり、その分布面積は四国と九州を合わせた広さで、埋蔵量は日本のコバルト需要の約300年分に相当するそうだ。

 また、*4-3のように、次世代資源として海に埋蔵するメタンハイドレートの商業化に向け、高知県・高知大学・地元経済団体が高知沖の資源量を評価してもらうために国の探査候補地に応募し、2020年に産官学で新会社を設立して、2027年度以降の事業化を目指すそうだ。メタンハイドレートは、「メタンガス」が水分子と結びついてできた氷状の物質であるため、エネルギーとしてだけではなく化学製品の原料としても使える。

 そして、これらEEZに存在する資源は国の所有物であるため、大切に税外収入に結び付けて国民を豊かにし、間違っても二束三文で払い下げることのないようにすべきだ。

 さらに、太陽光も重要なエネルギーで、*4-2のように、東京都小笠原諸島の母島では、島内の電力を太陽光発電だけで賄う実証実験を始めるとのことである。小笠原諸島は、東洋のガラパゴスと呼ばれるほど多様な固有生物が生息しており、この世界自然遺産の島が自然エネルギーに切り替えると、世界に影響を与えられそうだ。

(5)歳出を随時見直して無駄を排除することができない日本


2019.12.21毎日新聞   低インフレ批判   複式簿記・発生主義会計導入国(緑部分)  

(図の説明:左図のように、新型コロナの補正予算計上前の2020年度予算は102兆6,580億円で、そのうち社会保障が35兆8,608億円《34.9%》あるため、高齢者に対する社会保障が無駄遣いだと主張する人は少なくない。しかし、年金、医療・介護は、厚労省の管理の仕方に問題があるため、丁寧な検証が必要なのだ。また、中央の図のように、実質年金や実質賃金を下げる目的でインフレ政策を主張する人も多いが、実質収入が減れば消費を減らさざるを得ないため、インフレにはならず、国民を貧しくするだけである。そのため、右図のように、多くの国と同様、複式簿記・発生主義に基づいた公会計を導入して、予算委員会・決算委員会では歳出の費用対効果を見ながら検討できるようにすべきなのだ)

1)日本の本当の無駄遣いは何か
 財政法は、1947年(昭和22年)3月31日に公布され、同年4月1日に施行されたため、*5-1のように、公債や借入金を制限することによって、戦争放棄を保証する意図があったのだそうだ。それはよいのだが、財政法が建設国債だけを例外として認め、今年度新たに発行される国債が90兆円あっても、「高齢者への社会保障は無駄遣いだ」として、年金支払債務を正確に認識して国債を発行するのを赤字国債として禁止しているのは、人権侵害である同時に、高齢者の購買力を損なって、高齢化社会で必要とされる財・サービスを磨くのを妨げている。

 一方、普天間飛行場の危険除去は、辺野古に新基地を建設しなくても他に合理的な方法がいくらでも考えられるため、大きな無駄遣いの1例が、*5-2の辺野古新基地建設だ。例えば、米軍の1部を台湾やフィリピン(海外)に移動させたり、日本国内の空港のある過疎の離島に自衛隊基地を作って米軍と共用したりすることもできる。

 そのため、沖縄県内の選挙や県民投票で辺野古新基地建設反対の民意が出ているのに、それを無視して「辺野古新基地建設を、粛々と進める」と言うのは融通が利かなすぎ、特殊な人以外は誰も喜ばず、費用対効果も悪い硬直した支出で、大きな無駄遣いなのである。

2)仏政府の随時歳出見直し
 フランス政府は、*5-3のように、新型コロナウイルスの追加経済策として、2年でGDPの4%に当たる1千億ユーロ(約12兆5500億円)を投じると発表し、その3分の1の300億ユーロを温暖化ガス排出の少ない交通手段整備などの環境配慮型経済に切り替えるためにあてるそうで、これは、近未来に向けての投資効果がある賢い選択だ。

 また、フランスの借金は2020年にGDP比121%に悪化する見通しだが、仏政府は増税を否定し、随時歳出を見直して対策による財政悪化を2025年までに吸収するとしており、これは、どこの組織でも当たり前のやり方だ。

 しかし、日本の借金は、2020年には先進国最大のGDP比237.6%になるが、日本政府は、予算の獲得(=歳出)が各省庁の既得権益となっているため、首相であっても、随時歳出を見直すことはできず、ばら撒くことしかできない(https://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/condition/a02.htm 参照)。また、野党やメディアも歳出圧力と増税圧力しかかけない。では、どうすれば、これを治すことができるかについて、3)に記載する。

3)日本の財政法の問題点と改善策
 予算委員会で、全体から見れば重箱の隅をつつくような政治家のスキャンダルばかりが取り上げられるのは、政権闘争にすぎない国民不在の議論だ。しかし、日本の財政法は、歳出のうちの①どれが無益で無駄遣いなのか ②資本生産性が低いのか ③よりよい代替案はないのか などを、予算委員会で議論するための基礎資料を迅速に提供していない。

 そのため、(元衆議院議員・公認会計士・税理士の)私が2日で書ける範囲で、以下に「日本の財政法の問題点と改善策」について記載するので、会計の専門家は、グループで議論して民主主義に資する世界に恥じない現代版の財政法を作って欲しい。

イ)利用できる直近の財務諸表と財務省の処理スピード(https://www.mof.go.jp/budget/report/public_finance_fact_sheet/index.htm 参照)
 2020年9月7日現在、国の直近の財務諸表は、平成30年度(2018年4月1日~2019年3月31日)分だが、これでは、2020年1月~3月に行われる予算委員会で、前年度(2019年4月1日~2020年3月31日)の決算書を見ながら議論することはできない。

 しかし、地方議会が、2020年4月以降の予算を議論する時には、国の予算を前提にしなければならないため、国の本予算決定のための予算委員会は、遅くとも1月~3月に終了しなければならないわけである。

 そのため、①国の会計年度を1月1日~12月31日として迅速に決算を行い、翌年の1月下旬~3月に行われる予算委員会に提示できるようにする ②国の会計年度は4月1日~2020年3月31日のままにしておき、1月~3月には前年12月31日までの決算から暫定予算を決め、5月末頃に3月31日までの決算書を見ながら本予算を確定する などの方法が考えられる。

 どちらにしても、財務省は今より迅速に決算を行わなければならないが、民間企業は多国籍企業でも2カ月以内に決算を終わらせ、納税もしているため、財務省が「できない」とは言えない筈だ。実際、複式簿記・発生主義会計を使っても、取引はクラウドで現場から逐次入力しておき、暇な時に国有財産等の棚卸をしておけば、正確な決算書を時間内に作ることは可能だ。

ロ)現金主義から発生主義、単年度主義から複数年度主義へ
i)日本の財政法は現金主義であること
 日本の財政法の財政総則(第1条~第10条)は、*5-4のように、第一章会計総則の第2条に、「①収入とは国の需要を充たすための支払財源となるべき現金の収納をいい、支出とは国の需要を充たすための現金の支払をいう」「②現金の収納には債務の負担に因り生ずるものをも含み、現金の支払には債務の減少を生ずるものをも含む」と規定しており、現金主義を明記している。このため、国の正式の財務書類は、キャッシュフロー計算書のみであり、その他は調書の位置づけとなっている。

 また、第2条に「③歳入とは、一会計年度における一切の収入をいい、歳出とは、一会計年度における一切の支出をいう」と単年度主義を明記し、第6条は「④各会計年度の歳入歳出の剰余のうち1/2以上を、翌翌年度までに公債又は借入金の償還財源に充てなければならない」としている。さらに、第41条に、「毎会計年度において、歳入歳出の決算上剰余を生じたときは、これをその翌年度の歳入に繰り入れるものとする」という規定もあるため、同じ事業でも節約して剰余金を残すよりは、無駄遣いしてでも使いきるのが得だという動機づけになっている。

 なお、第4条で「⑤国の歳出は、公共事業費・出資金・貸付金以外は、公債又は借入金以外の歳入を財源としなければならない」としているため、公債を発行して過去勤務債務の年金支払に当てることはできなくなっている。しかし、年金・医療・介護など国民から保険料を徴収して支払っている国の債務のうち、発生主義で費用計上していなかったために引当金不足が生じたものは、本来は支払うべきものであるため、基金を作ってそこに国から出資することはできそうだ。

 第9条の「⑥国の財産は、法律に基く場合を除く外、これを交換しその他支払手段として使用し、又は適正な対価なくしてこれを譲渡し若しくは貸し付けてはならない」「⑦国の財産は、常に良好の状態においてこれを管理し、その所有の目的に応じて、最も効率的に、これを運用しなければならない」というのは適切であり、EEZでの採掘権を譲渡又は貸し付けする場合には、適正な対価を得て福祉財源の補充に充ててもらいたい。また、⑦は、国の財産を棚卸して金額で表示することによって、重要性や残存耐用年数が明確になり、適切な維持管理に結び付くものだ。

ii) 日本の財政法は単年度主義であること
 日本の財政法の会計区分のうち第11条・12条は、*5-4のように、「⑧国の会計年度は、毎年4月1日に始まり、翌年3月31日に終わるものとする」としているが、これはイ)に記載したとおり、予算委員会で利用できる直近の財務諸表を前年度のものにするために工夫を要する。

 また、「⑨各会計年度における経費は、その年度の歳入を以て、これを支弁しなければならない」というのは単年度の現金主義に基づくものであり、かなり前に発生した実際の費用を把握することができないため、発生主義に変更する必要がある。

ハ)日本の財政法による予算
 *5-4の第14条~36条に予算に関する規定があり、「①歳入歳出は、すべて予算に編入する」「②工事・製造・その他の事業で、完成に数年かかるものは国会の議決を経て原則5年の年限を延長することができる」「③国が債務負担するには、予め国会の議決を経なければならない」「④災害復旧その他緊急の必要がある場合は、国は毎会計年度、国会の議決を経た金額の範囲内で債務を負担する行為を行うことができ、次の国会に報告しなければならない」と規定されており、国の歳入歳出はすべて予算として国会決議を通らなければならない。そして、この議論をするのが、衆議院・参議院の予算委員会である。

 そのため、金額の大きな重要課題について、国民が支払った税金が資本生産性よく支出されているのか否かについて検討するのが、国民の代表である国会議員で構成される予算委員会の役割だが、効果的に議論するためには、前年度の反省を踏まえつつ検討できるための正確でわかりやすい財務情報がなければならないのだ。

 また、「⑥各省大臣は、毎会計年度、管轄省庁の歳入・歳出等の見積に関する書類を作製して、財務大臣に送付する」「⑦財務大臣は、歳入・歳出等の概算を作成して閣議決定を経る」「⑧予見し難い予算不足に充てるため、内閣は予備費を計上することができる」等とされており、予算は各省庁で積算して見積もられたものが、大臣を通して内閣から国会に提出される。そして、この過程で、既得権益の死守や予算の分捕り合戦が起こるわけである。

ニ)日本の財政法による決算
 *5-4の第37条~40条には、国の決算に関する記述があり、「①各省庁の長は、毎会計年度、関係する歳入・歳出の決算報告書と国の債務に関する計算書を作製して、財務大臣に送付しなければならない」「②財務大臣は、この歳入歳出の決算報告書に基いて、歳入歳出の決算を作成しなければならない」等が書かれている。そのため、各省庁の決算報告書(事業部の決算報告書に相当)に基づいて、財務大臣が総括決算書(会社全体の決算報告書に相当)を作成する流れになっているが、日常の取引は同時に記録してよいので、処理を迅速化することは可能だ。

 また、「③内閣は、会計検査院の検査を経た歳入歳出決算を、翌年度開会の常会において国会に提出するのを常例とする」とも定められているが、民間企業の場合は多国籍企業の有価証券報告書でも3月末決算のものを5月末に監査済で株主総会に提出しており、それは期中から計画的に監査を行っていればできるため、予算委員会や決算委員会には、会計検査院の検査報告をつけた正確な財務諸表を出すべきである。

・・参考資料・・
*1-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200829&ng=DGKKZO63201200Y0A820C2MM8000 (日経新聞 2020年8月29日) 安倍首相が辞任 持病再発で職務困難、「政治判断誤れない」 来月中旬までに総裁選
 安倍晋三首相(自民党総裁)は28日夕、首相官邸で記者会見し、辞任する意向を表明した。持病の潰瘍性大腸炎が8月上旬に再発し「体力が万全でない中、政治判断を誤ることがあってはならない」と説明した。新総裁が決まり次第、内閣総辞職する。自民党総裁選(総合2面きょうのことば)は9月中旬までに実施する。首相は自身の体調に関し「7月中ごろから体調に異変が生じ、体力をかなり消耗する状況となった」と話した。8月上旬に潰瘍性大腸炎の再発が確認され、投薬を始めたと明らかにした上で「継続的な処方が必要で予断は許さない」と語った。首相は8月17、24両日に都内の病院を訪れ、24日の診断を受けて辞任の意向を固めたと述べた。「新型コロナウイルスの感染が減少傾向に転じ、実施すべき対応策をまとめたことから、新体制に移行するならこのタイミングしかないと判断した」との認識を示した。首相は第1次政権で、2007年に持病の悪化を理由に突如退陣した。「政権の投げ出し」などの批判を受けた。今回も任期途中での辞任に関し「他の様々な政策が途上にある中、職を辞すことに国民に心よりおわび申し上げる」と陳謝した。「国民の負託に自信を持って応えられる状態でなくなった以上、総理大臣の地位にあり続けるべきではないと判断した」とも表明した。北朝鮮による日本人拉致問題やロシアとの平和条約締結、憲法改正などの政治課題を挙げ「志半ばで職を去るのは断腸の思いだ」と訴えた。首相は近くトランプ米大統領と電話協議し、辞任する経緯を説明する見通しだ。自民党は次期総裁選びの手続きに着手した。28日の緊急役員会合で党総裁選の時期、形式について二階俊博幹事長に一任した。9月1日の党総務会で正式に決める。党幹部は28日夜、「遅くとも9月15日までに新総裁を決める」と明言した。新型コロナの対応が欠かせないため、党大会に代わる両院議員総会で後任を選ぶ方式を視野に入れて調整する。衆参両院の国会議員と都道府県連代表による投票となる。選出後に衆参両院で首相指名選挙を実施し、新内閣を発足させる。新総裁の任期は安倍首相の残りを引き継ぐため21年9月末までとなる。石破茂元幹事長、岸田文雄政調会長の出馬が有力視される。菅義偉官房長官を推す動きがでる可能性がある。河野太郎防衛相も取り沙汰される。石破氏は28日、総裁選出馬について国会内で記者団に「そう遅くない時期に判断したい。逃げることはあってはならない」と意欲を示した。岸田氏も都内で「次を担うべくしっかり努力をしていく気持ちは変わっていない」と強調した。首相は記者会見で、石破、岸田、菅各氏らについて「それぞれ有望な方々だ」とした。総裁選には「影響力を行使しようとは全く考えていない。そうすべきではない」との考えを示した。首相は12年12月に旧民主党から政権を取り戻して第2次政権を発足させた。官邸主導の体制を確立し第1次政権を含めた通算在任日数は桂太郎氏を超えて最長を記録した。連続在任日数でも24日に2799日に達し、歴代トップとなった。日本の首相が健康問題で退陣するのは在任中に死去した大平正芳氏を含めて戦後6例目となる。

*1-2-1:https://digital.asahi.com/articles/DA3S14602509.html (朝日新聞 2020年8月29日) 「潰瘍性大腸炎」とは―― 難病指定、患者22万人
 潰瘍(かいよう)性大腸炎は大腸に炎症が起こることで大腸の粘膜が傷つき、ただれたり、はがれたりする病気だ。下痢や血便、腹痛などの症状が出る。原因ははっきりせず、厚生労働省から難病に指定されている。厚労省の研究班によると国内では現在、約22万人の患者がいるとみられている。完治は難しいが、薬物療法が進み、日常生活が送れる「寛解」状態まで回復する人は多い。ただし、個人差はある。久留米大病院炎症性腸疾患センターの桑木光太郎医師は「ストレスは再燃(再発)につながりやすい。寛解時にも投薬治療を続ける必要があり、一生つきあっていくことになる病気だ」と話す。薬物療法では、様々な種類の炎症を抑える薬を使う。ステロイド薬は長期間使うと副作用がある。中等症以上では、点滴や注射などで投与する生物学的製剤と呼ばれる薬もある。官邸関係者によると、安倍晋三首相はこのタイプの一つ「レミケード」を使い始めたという。血球成分除去療法という治療法もある。人工透析のようにいったん血液を体外に出し、炎症の要因となる活性化した白血球を取り除いてから体内に戻す。週1回約1~2時間の治療を10回ほど続ける必要がある。炎症が続くことで大腸がんを発症したり、大腸に穴があいたりすることもある。この場合は大腸の全摘手術をすることが多い。ただし、小腸を肛門(こうもん)につなげることで、人工肛門になる人はほとんどいないという。手術後は、排便の回数は増えるものの、仕事などを続けることは可能という。

*1-2-2:https://digital.asahi.com/articles/DA3S14603708.html (朝日新聞社説 2020年8月31日) コロナと中傷 差別許さぬ姿勢を共に
 コロナ感染者に対する差別的な言動が後を絶たない。人権を傷つける見過ごせない行いであるだけでなく、感染拡大を防ぎ社会経済活動を維持していくうえでも大きな障害になる。最近では、運動部などで起きた集団感染を公表した高校と大学が理不尽な非難を浴びた。島根県の私立高では、関係ない生徒の写真もネットに掲載され、奈良県の私大の学生たちは、教育実習の受け入れ先やアルバイト先から参加や出勤の見合わせを求められたという。この2校に限らず、施設や企業などが感染者が出たことを明らかにするのは、接点があった人々に注意を促し、拡大を抑えるためだ。だが公表すると激しい攻撃にさらされるとなれば、事実を隠す方向に流れ、感染経路の追跡もできなくなる。オンライン講義を続ける大学からは「こんなふうに袋だたきにされては、感染リスクを引き受けて対面授業を再開することなど、とてもできない」との声も聞かれる。学校の正常化を妨げ、若者の日々の生活、そして将来にも暗い影を落とす。奈良の大学の地元首長は「世間さまに謝れという圧力が、私たちの心をむしばんでいく」と述べ、萩生田光一文部科学相は感染者や学校を責めないよう求めるメッセージを出した。危険と隣り合わせで患者の治療にあたる医療従事者を、周囲から排除する動きや風評被害も続く。感染者の多い地域からふるさとに帰った人が、帰省した事情などお構いなしに批判される事例も見られた。大切なのは、差別や中傷を許さない姿勢を社会全体で示し、必要な手当てを講じることだ。岩手県では、感染した個人を特定したり非難したりするSNS上の投稿を見つけると、その画像を人権侵害の「証拠」として保存している。長崎県は相談窓口を設け、必要に応じて弁護士を紹介して費用を支援するほか、悪質な書き込みがないかを調べるネットパトロールを始める。差別を禁じる条例を制定する動きも各地に広がる。コロナ対策にあたる政府の分科会もワーキンググループを作り、この問題にどう対処していくか議論することを決めた。自治体の取り組みとの連携も求められよう。感染情報の公開が差別・偏見やプライバシー侵害につながっているとの指摘もあるが、だからといって過剰な縛りをかければ、別の不安や行政への不信を引き起こしかねない。慎重な検討が必要だ。感染する可能性は誰にでもあり、感染者を責めたところで何の安心も安全も得られない。コロナの時代にどう向き合うか、一人ひとりが問われている。

*1-2-3:https://www.fnn.jp/articles/-/79432 (テレビ西日本 2020年8月31日)逮捕の少年 6歳女児も刃物で襲う 福岡 女性殺害事件
 福岡市の商業施設で女性が殺害された事件で、逮捕された自称15歳の少年が、女性を刺したあと、6歳の女の子を襲っていたことが新たにわかった。この事件では、吉松弥里さん(21)が刃物で襲われた現場近くで、銃刀法違反の現行犯で逮捕された自称15歳の少年が、吉松さんを包丁で刺したことを認める供述をしている。捜査関係者によると、少年は、その後、6歳の女の子に馬乗りになって、刃物で襲いかかっていたことが新たにわかった。女の子にけがはなかったが、少年は、人質を取ってでも捕まりたくなかったという趣旨の供述をしているという。一方、吉松さんの通夜には、多くの友人らが訪れ、別れを告げた。吉松さんの友人は「わたしたちが想像できないくらい痛かっただろうし、怖かっただろうし...」、「本当に何も関係ない人から、何で、そんなことをされなきゃいけないのかわからない」などと話した。

*1-3-1:https://www.tokyo-np.co.jp/article/51818 (東京新聞 2020年8月29日) コロナ対策・モリカケ・桜…疑惑や難題積み残し 安倍首相辞任表明に関係者ら困惑
 「国民の負託に自信を持って応えられなくなった」。新型コロナウイルスの収束がいまだ見通せない中、第1次政権に続き健康問題で辞任を表明した安倍晋三首相。記者会見では7年8カ月の実績を強調したが、森友・加計学園問題や「桜を見る会」問題では「政権の私物化」との批判がつきまとった。コロナ禍での突然の退場に「こんな中で国の責任者が退くのは残念」などと困惑や冷ややかな声が上がった。
◆「現場の声聞く姿勢が希薄」―コロナ対策
 東京都内で認可保育所を運営する社会福祉法人の臼坂弘子理事長(73)は「現場では『3密』になりやすい状況の中、保育士たちが工夫しながら必死に頑張っている。こんな中で国の責任者が退くのは残念」と話した。新型コロナによって、子どもの育ちを守る保育の必要性が明らかになったといい、「保育行政を見直してほしかった」。江戸川区の介護施設で働く40代女性職員は「正直、首相が代わっても現場は変わらない」と冷めた見方を示す。施設では、消毒や新型コロナによる面会制限で入居者のケアなど職員の業務が増え、マンパワーが足りていないといい、次の首相には「もっと介護現場に目を向けてほしい」と求めた。夏休み明けの小学校で、児童の学習や新型コロナの感染対策に追われる都内の公立小学校教員宮沢弘道さん(43)は「さまざまな問題が総括されないまま、体調を理由に辞任することになり、残念。モヤモヤした気持ちが残る」。安倍首相が2月にトップダウンで打ち出した「一斉休校」要請などで「教育の独立性が軽んじられていると感じることが多かった」と明かす。「教員は疲弊し、子どもたちはストレスを抱えている。首相は現場の声を吸い上げようとする姿勢が希薄ではなかったか」と指摘した。首相と付き合いがあった元日本医師会常任理事の伯井俊明さん(76)は「医療者の立場からすると、もう少し社会保障政策に目を向けてほしかった」と語る。新型コロナへの対応ではPCR検査の不足など不十分な面があったとしつつ、「総理大臣として、経済・社会活動と感染拡大防止の両立に努めた」と評価した。
◆「真実明らかにする努力を」―モリカケ・桜
 国会で足かけ2年にわたり追及された学校法人「森友学園」の国有地売却問題。疑惑の端緒をつかんだ大阪府豊中市議の木村真さん(55)は「首相への忖度そんたくが働き、国有地のたたき売りや公文書改ざんが起きた。この責任は免れない」と批判した。一連の問題では、決裁文書の改ざんを強制された財務省近畿財務局職員の赤木俊夫さん=当時(54)=が命を絶った。国会で安倍首相の責任を追及した宮本岳志前衆院議員(60)は「赤木さんの妻が真実を知りたいと声を上げている」と強調。「首相は自ら再調査を指示したり、昭恵氏を国会で証人に立たせたりするなど、真実を明らかにする努力をしてほしい」と訴えた。税金の私物化との批判を浴びた「桜を見る会」を巡り今年1月、首相に対する告発状を提出した沢藤統一郎弁護士は「本来は選挙で『ノー』の民意を示し、退陣させる形が望ましかった」と複雑な思いをのぞかせる。桜を見る会の問題などについては「ずさんな公文書管理や説明責任を果たさない姿勢など、負の遺産を積み残されたままだ」と疑惑解明が道半ばだとした。
◆「責任は曖昧なまま」―集団的自衛権
 他国を武力で守るなど戦争参加への道を開いた集団的自衛権についての憲法解釈を変更し安全保障関連法を整備した安倍首相。法案に反対した学生グループSEALDs(シールズ)の元メンバー、元山仁士郎さん(28)は「デモなどで声を上げ続け、自分が対峙たいじしていた安倍さんがついに辞めるのは、にわかには信じ難い感覚。あくまで体調不良ということなので、責任は曖昧なままだ」と話す。一方、日米同盟の強化が進んだ防衛省幹部は北朝鮮の弾道ミサイル開発などを例に挙げ「新たな安全保障環境に対応する基盤ができた」と評価する。ある幹部自衛官は「安倍政権になって自衛隊と官邸の距離は縮まった」と振り返るが、一方で「それが良いのか悪いのかは分からない」とも。自衛隊を憲法に明記する改憲も掲げていたが実現しなかった。幹部自衛官は「今、それが必要だとは思わなかった」とも話した。
◆「成果なく評価しようもない」―拉致問題
安倍首相が最重要課題としていた北朝鮮による日本人拉致問題は在任中、解決の糸口をつかめなかった。拉致被害者の兄で家族会元事務局長の蓮池透さん(65)は「成果は何もなく、評価のしようもない。任期中に解決する雰囲気を演出して『やってる感』を見せただけで、金正恩キムジョンウン朝鮮労働党委員長との会談も実現せず、米国のトランプ政権に丸投げしていたのが実態だった」と指摘した。安倍政権が推進してきたカジノを含む統合型リゾート施設(IR)。横浜市への誘致に反対してきた広越由美子さん(40)は「首相一人が辞めてもIR問題の解決にならない」と冷静に受け止めた。市内のJR東戸塚駅近くで街頭活動中、ニュースで辞任を知ったといい、「次の首相が推進派だと横浜への影響も大きい。警戒している」と話した。

*1-3-2:https://news.yahoo.co.jp/articles/a9a174f0e468be56f5bdc322b38815f9ac3721eb (Yahoo、J-CASTニュース 2020/8/28) 「政権私物化の批判どう思うか」→「私物化したというつもりは...」 安倍首相会見で問答
 辞任を表明した安倍晋三首相に対し、森友学園問題など政権の私物化批判をどう考えているかと記者が質問したことをめぐり、ネット上で様々な意見が出ている。安倍首相は、国会などでの説明ぶりに反省すべき点はあるとしながらも、「私物化したことはない」と全否定した。
■「森友学園問題や加計学園問題、桜を見る会の問題など...」
 この質問は、2020年8月28日夕に安倍首相が行った1時間の会見のうち、最後から2番目に出た。質問したのは、西日本新聞の女性記者だ。「歴代最長の政権の中で、多くの成果を残された一方で、森友学園問題や加計学園問題、桜を見る会の問題など国民から厳しい批判に晒されたこともあったと思います。コロナ対策でも、政権に対する批判が厳しいと感じられることも多かったと思うんですが」。こう続けたうえで、記者は、次のような問いを投げかけた。「こうしたことに共通するのは、政権の私物化という批判ではないかと思います。こうした指摘は、国民側の誤解なんでしょうか? それについて、総理がどう考えられるのか、これまでご自身が振り返って、もし反省すべき点があったとしたら、それを教えて下さい」。安倍首相は、会見終盤の疲れもあってか、渋い顔で質問を聞いていたが、批判についてはこう反論した。「政権の私物化はですね、あってはならないことでありますし、私は、政権を私物化したというつもりはまったくありませんし、私物化もしておりません。まさに、国家・国民のために全力を尽くしてきたつもりでございます」。そのうえで、自らの反省点についても述べた。「その中で、様々なご批判もいただきました。ご説明もさせていただきました。その説明ぶりについてはですね、反省するべき点もあるかもしれないし、そういう誤解を受けたのであれば、そのことについても反省しないといけないと思いますが、私物化したことはないということは、申し上げたいと思います」。私物化は誤解だとするだけに、最後はややムッとした表情になっていた。このやり取りは、ツイッター上などで話題になり、特に安倍首相に批判的な人が相次いで紹介した一方、これに反発する声も出ていた。

*1-3-3:https://mainichi.jp/articles/20200828/k00/00m/010/248000c?cx_fm=mailhiru&cx_ml=article&cx_mdate=20200829 (毎日新聞 2020年8月28日) 政権を私物化したつもりは全くないし私物化もしていない 安倍首相の辞任表明会見(8)
 安倍晋三首相は28日午後5時から首相官邸で記者会見し、健康状態を理由に辞任する意向を表明した。一問一答の詳報は以下の通り。
―ちょっと立ち入ったことになりますが、安倍政権は、これまでの政権に比べて、非常に徹底したメディア対策というものがなされた政権だというふうに思っております。例えば個別のメディアに出演されて、今まで輪番で出てきたものを個別のメディアに一本釣りのような形で出演されるとか、あるいは質問を事前に取りまとめて、それを出した社にしか記者会見で質問を当てないとかですね。かなり徹底したメディア対策というのをされた。それ自体が悪いと言ってるわけではないんですが、それは総理ご自身の指示によるものだったのでしょうか。それともワーキングレベルで行われたものが、総理は知らずにやってたものなのか、あるいは総理が仮に知らなかったとしたら、総理は記者会見でですね、質疑の場面なのに、なぜか質問と答えが目の前のメモに書いてあるという状況をご覧になって、何か違和感を覚えられなかったのか。また、そのような関係がメディアと政治という関係において、民主主義において、総理はどのようにお考えになっているのか。お聞かせください。(以下略)

<モーリシャス沖の貨物船重油流出事故による公害>
*2-1:https://news.yahoo.co.jp/articles/9325eb8b5c3c4be429aaac0b267ebb31706d33a4 (Yahoo 2020/8/13) モーリシャス沖の貨物船座礁事故 商船三井の船との報道も実は船主は別 複雑な海運業界
 インド洋のモーリシャス沖で、商船三井が運航する貨物船が座礁し、燃料が大量に流出。モーリシャスのジャグナット首相が環境緊急事態宣言を出すという事態となりました。船内に残った燃料の大半はすでに回収されており、これ以上、燃料が流出するという事態は回避されましたが、付近のサンゴ礁は広範囲に汚染されており、回復に20~30年かかるとの指摘も出ているようです。今回の事故について、多くのメディアが商船三井の船が座礁したと報道していますが、事故を起こした船の船主は商船三井ではなく岡山県にある長鋪(ながしき)汽船で、しかも船籍は日本ではなくパナマとなっています。複数の会社名や国名が出てきたことで混乱した人もいるようですが、いったいこれはどういうことなのでしょうか。
●徹底的な役割分担
 海運は、世界でもっともグローバル化が進んでいる業界のひとつと言われており、コストを削減するため徹底的な役割分担が行われています。この船を所有している(船主)のは長鋪汽船ですが、顧客(荷主)から荷物の運送を受託したのは長鋪ではなく商船三井です。商船三井は長鋪から船をチャーター(用船)して、荷物を運んでいるという関係になります。商船三井は自社で船舶を保有していますから、船主でもありますが、今回の業務については自社の船は使わず用船する立場として業務を行っています。船主と船員についても役割分担が行われており、今回、事故を起こした船は、たまたま長鋪が自社で船員を管理していましたが、船員の管理についても別会社に依頼するケースが多いと言われています。また多くの船舶がそうですが、船舶登録が簡便なパナマやバハマ、リベリアなどに船籍を置いていますから、実質的には日本の船であっても、名目上の船籍は外国となります。船を所有しているのは長鋪汽船ですから、事故についての責任はまずは長鋪汽船が負うことになります。ジャグナット首相も同社に対して損害賠償を求める考えを示しました。一方、今回の事故対応については、用船側である商船三井も記者会見に同席するなど、用船側にもある程度の責任が生じるというのが業界の一般的な考え方のようです。
●7年前にも…
 今回は美しいサンゴ礁が汚染される事態になったことから、日本でも大きく報道されましたが、実は商船三井は2013年にもインド洋沖で コンテナ船の船体が突然、真っ二つに折れて沈没するという大事故を起こしています。海外ではこの事故は大きく報道されましたが、日本ではあまり報道されませんでしたので、記憶にない人も多いかもしれません。船はひとたび事故を起こすと周辺の環境に大きな影響を及ぼしますから、海運業界には、事故を最小限にする努力が求められるでしょう。

*2-2:https://news.yahoo.co.jp/articles/c237e5dc6d6c875ea4649c7fba88f5b3e06d50a0 (Yahoo、朝日新聞 2020/8/22) マングローブが重油まみれ、回復に30年? 貨物船座礁
 インド洋のモーリシャスで起きた油の流出事故では、海岸沿いに広がるマングローブ林が大きな被害を受けた。複雑に重なる根の部分にこびりついた油の除去は難しく、回収時期は見通せていない。貨物船のタンクの一部が破損し、約千トンの重油が流出したのは8月6日。油は透き通った海を汚染し、南北10キロにわたる海岸線に漂着。魚や鳥に被害が出た。汚染は、湿地保全を定めたラムサール条約に指定された地域が含まれ、サンゴなど海中の被害調査はこれからだ。環境団体は生態系などの回復に30年前後はかかるとみている。地元の当局者やボランティアらによる清掃が進み、海岸線のうち、砂浜での油の回収はおおむね終了した。作業が難航しているのがマングローブ林だ。日本の国際緊急援助隊によると、長鋪(ながしき)汽船所有の貨物船が座礁した場所から約2キロのマエブール地区周辺にあるマングローブは、水面から高さ20~30センチほどのところにも黒い油が付着しているという。隊員の1人は「根が複雑なのでポンプで吸い取るのも難しい。植物相手なので、高圧洗浄機や薬剤の使用も難しいのではないか。手作業が中心になるだろう」と話した。マングローブ保全を進めてきた地元環境活動家、スニル・ドワルカシン氏(62)は、少なくとも10キロの範囲に育つマングローブが被害を受けたと分析。「マングローブは繊細で、作業前に訓練が必要だ」と話し、有志の住民たちも回収を担った砂浜などとの状況の違いを指摘した。

*2-3:https://news.yahoo.co.jp/articles/cec7b3f9dda68d9e4d06df2637335037237e3fb9 (Yahoo、テレビ朝日 2020/8/25) モーリシャス座礁 船長“島に近づいた”理由語る
 モーリシャス沖で日本の貨物船が座礁して重油が流出した事故で、貨物船の船長が島に近づいた理由について「家族と通話する目的だった」と話していることが分かりました。地元の関係者によりますと、貨物船「WAKASHIO」のインド人の船長は警察の取り調べに対し、「家族と通話がしたくてインターネットに接続したかった」と話しているということです。地元メディアはこれまでにも複数の乗組員の話として「Wi-Fiに接続するため島に近づいた」と伝えていて、私的な理由で島に近づき座礁し、1000トンを超える重油の流出につながった可能性があります。この事故を巡っては、インド人の船長とスリランカ人の副船長の合わせて2人が「安全な航行を怠った」疑いで逮捕されていて、25日に裁判が行われる予定です。

*2-4:https://news.yahoo.co.jp/articles/cf3d00195472c4db0166fa7ae33460f85a3150e7 (Yahoo、共同 2020/8/24) 座礁船の海中処分完了 モーリシャス沖、前方部
 モーリシャス沖で発生した日本の貨物船の重油流出事故で、モーリシャス政府は24日、真っ二つになり沖合にえい航した船体の前方部を海に沈めて処分する作業が完了したと発表した。地元当局などは19日、2隻の作業船で沖合13.8マイル(約22キロ)、水深3180メートルの地点までえい航していた。この場所に処分したとみられる。現地で撮影された写真によると、船体は白いしぶきを上げながら沈んだ。海中で処分する計画を巡り、近隣のレユニオン島を領有するフランス政府は当初、船内の有害物質が海に漏れ出す恐れがあるとして難色を示していた。

*2-5:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO63113430X20C20A8EE9000/?n_cid=NMAIL006_20200827_Y (日経新聞 2020/8/27) SOMPO、自動運転分野に進出 ティアフォーに18%出資
 SOMPOホールディングス(HD)が自動運転システム開発のティアフォー(名古屋市)に98億円出資し、18%を保有する持ち分法適用会社にする。グループに組み込むことで、自動運転分野へ進出する。自動車保険の販売から事故防止という安全対策までビジネスの領域を広げる狙い。保険で得た事故データをフル活用すれば、自動運転普及の起爆剤となる可能性がある。自動運転技術は人手不足の解消や事故の減少に期待が高く世界中で開発が進む。米アルファベット傘下のウェイモなどがライバルだ。対抗するには安全設計やトラブル時の対応力の高さがカギを握る。ティアフォーは国内最大の自動運転システム会社で、大手損保と協力して技術開発を加速させる。ティアフォーは名古屋大学などの研究成果をもとに自動運転の頭脳である基本ソフトを開発するため、2015年に創業した。基本ソフト「Autoware(オートウエア)」は10カ国以上で数百社以上が採用する。国内でも自動運転の実証実験が各地で進み、そのおよそ半数で使われている。トヨタ自動車が東京五輪の選手村の送迎に使う予定の自動運転バスでも導入が決まった。SOMPOは自動運転の安全・安心の確保を3段階で行う。第1段階はティアフォーの自動運転を導入する自治体などに対し、損保ジャパンが安全なルートを提案する。自動車保険で培った事故履歴などのデータを生かし、事故が起きづらい道順を提案する。第2段階は走行中の安全の確保だ。「コネクテッドサポートセンター」を損保ジャパンとティアフォーが共同で展開する。トラブル時には遠隔で操作して安全な場所に停車させ乗客を誘導する。第3段階では損保ジャパンが自動運転の専用保険を開発する。適切な保険料を設定し事故のときの補償や事故対応を担う。損害に備えるために自動運転の研究・開発に保険会社が加わることは海外でもある。ただ、システム開発会社をグループに組み込んで、安全なルートの設計に関与したりする例は珍しいという。SOMPOが参入を決めた背景には自動車保険の市場縮小への危機感がある。損保ジャパンは全国に約300の保険金サービス拠点を持ち、国内の損保の売り上げの約6割を自動車関連が占める。自動運転が普及すると主力の自動車保険が変革を迫られる。人の不注意やミスによる事故が減るとみられるためだ。自動運転の普及を見据え、事故に備える保険から事故の防止へビジネス領域を広げる。損害保険ジャパンとティアフォーは2017年から共同研究を進めてきた。損保ジャパンが2019年に一部出資しているが、今回は持ち株会社SOMPOHDの出資に切り替え、資本業務提携という形を取る。自動運転で収集するデータをより広範に利用できるようにする。SOMPOはデータ解析大手の米パランティア・テクノロジーズ(カリフォルニア州)に出資するなどしてデータ事業の収益化を急いでいる。

<原発事故費用・使用済核燃料保管費の国民負担>
*3-1:https://www.itmedia.co.jp/smartjapan/articles/1702/10/news108.html (スマートジャパン 2017年2月10日) 電気料金に上乗せする賠償費用、2020年度から標準家庭で年間252円に
 政府は原子力発電所の事故の賠償費用に対する積み立て不足を回収する新しい制度の骨子を固めた。過去の積み立て不足を総額で約2.4兆円と見積もり、2020年度から全国の電気料金に上乗せして回収する方針だ。電力1kWhあたり0.07円になる見込みで、標準的な家庭で年間に252円の負担になる。福島第一原子力発電所の事故によって浮き彫りになった巨額の損害賠償費用の問題は、その一部を電力の利用者が負担する方法で解決する。政府は2月9日に開催した「電力システム改革貫徹のための政策小委員会」において、各種の新制度と合わせて損害賠償費用の負担スキームを提示した。本来ならば原子力事業者が全額を負担すべき費用を国民に転嫁する形になり、大きな反発を招くことは必至だ。原子力発電所に事故が発生して損害賠償が必要になった場合には、当然ながら発電所を運営する事業者が賠償費用を負担する。ところが福島の事故が発生する以前には、原子力発電所を運営する事業者も政府も賠償費用の発生を想定していなかった。政府は事故から5カ月後の2011年8月に「原子力損害賠償・廃炉等支援機構法(原賠機構法)」を施行して、遅まきながら「一般負担金」の名目で一定額の拠出を原子力事業者に義務づけた。一般負担金の総額は原子力事業者11社(沖縄電力を除く電力会社9社、日本原子力発電、日本原燃)で2015年度に1630億円である。このうち原子力発電所を保有していない日本原燃の30億円を除いた1600億円を、事故の賠償費用に備えて必要な年間の積立金と位置づけた。この金額をもとに、原賠機構法の施行前に積み立ておくべきだった一般負担金を過去にさかのぼって回収する。原子力事業者10社が2015年度に保有している発電所の設備容量の合計を1.5億kW(キロワット)として、設備容量1kWあたりに必要な一般負担金の単価を1070円と算定した。日本で最初の原子力発電所は1966年に運転を開始した日本原子力発電の「東海発電所」である。そこを起点に原賠機構法を施行する以前の2010年度までに各事業者が保有した設備容量を積み上げると35億kWにのぼる。1kWあたり1070円で、一般負担金の必要額を約3.8兆円と見積もった。政府は発送電分離(送配電部門の中立化)を実施する2020年度から、過去の不足分を電気料金に上乗せして回収する方針だ。一般負担金の徴収を開始した2011年度から2019年度までの約1.3兆円を差し引いた約2.4兆円(四捨五入によるずれを含む)を利用者から徴収する。総額で約2.4兆円を40年間で回収する方法が政府の原案だ。原子力発電所の運転期間を原則40年間と決めているためだが、すでに大半の原子力発電所は運転開始から相当な年数を経過している。この点を含めて政府が示した回収方法には論理的につじつまの合わない部分があるものの、何かしらの理屈をもって利用者の負担額を決める必要があった。その結果、年間で約600億円に相当する一般負担金の不足分を販売電力量(全国の合計で約8500億kWh)に応じて回収するために、電力1kWhあたり0.07円を利用者の負担額として算定した。標準的な家庭の電力使用量(年間3600kWh)では1年間で252円の負担になる。さらに大量の電力を使用する企業になると負担額は膨大である。たとえば年間に20億kWh以上の電力を購入しているJR東日本の負担額は1億円を超える見通しだ。その費用は電車の運賃を上昇させる要因になり、われわれ消費者の負担が拡大する。実際のところ、過去の不足分を含めて原子力事業者に負担させる方法はないのか。電力会社は長年にわたって地域独占と規制料金を通じて多額の利益を蓄積してきた。東京電力と同様に原子力発電所を数多く保有する関西電力の2016年12月末の財務状況を見ると、資産から負債を差し引いた純資産が1兆3495億円もある。関西電力は他の電力会社よりも原子力発電所の設備容量が大きいため、かりに不足額の2割を1社で負担すると想定しても4800億円で済む。その全額を減損処理しても純資産は9000億円以上を確保できる。電力会社の自己負担で過去の不足分を回収すれば、国民の多くも納得できるはずだ。にもかかわらず電気料金に上乗せして回収することは、電力会社を優遇する措置とみなされて当然だろう。政府は2020年度の発送電分離までに、さまざまな新制度を導入する予定だ。賠償費用の不足分を電気料金(実際には小売電気事業者が送配電事業者に支払う託送料金)で回収する制度に加えて、原子力発電所の廃炉費用も同様の方法で電気料金に上乗せする。このほかに電力会社の発電事業を支援する意味合いが大きい新市場を創設することも決めた。「電力システム改革」の名のもとに、自由化に向けて電力会社の経営を助ける施策が数多く見受けられる。発送電分離によって発電事業と小売事業を自由競争の状態へ変革するためには、電力会社に対する過度な保護は不要である。電力会社の自助努力に委ねるべきで、現在の政府の方針は自由競争を妨げる方向に働きかねない。

*3-2:https://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-1180304.html (琉球新報社説 2020年8月27日) 核のごみ最終処分場 脱原発が解決の起点だ
 北海道の寿都町が原発から出る高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の最終処分場選定に向けた文献調査への応募を検討している。文献調査は候補地選定の3段階のうちの第1段階だ。過去の地震の履歴などを資料に基づき調べる。調査を受け入れると2年間で最高約20億円の交付金が支給される。町は「人口減少や財政的課題を踏まえ、解決手段として調査応募を検討している」と言う。原発から出る核のごみを最終的にどこで処分するのか。国民に突き付けられた課題であることは間違いない。とはいえ町の判断は地域の行く末を委ねる手段としては余りに安易ではないか。米軍基地を巡る「アメとムチ」の構図と同じだ。交付金をもって自治体財政の弱みに付け入るような国側の手法は見下した対応にしか見えない。まして住民や近隣地域が負う代償は大きく看過できない。明らかなことは現行の原発政策に終止符を打たない限り、核のごみはたまり続ける現実だ。脱原発へ政策のかじを切り、際限のない健康被害の脅威に歯止めをかける。それが最終処分場問題の解決に向けた国民議論の最低条件だ。核のごみは、原発の使い済み核燃料を再処理し、ウランやプルトニウムを取り出した後に残る廃液をいう。極めて強い放射線を出す。この廃液を高温のガラスと融かし合わせ、ステンレス製容器に流し込んで固め、ガラス固化体という形にして処分する。原子力発電が始まって半世紀以上がたつ。これまでにたまった使用済み燃料は既に1万8千トンにおよび、ガラス固化体にすると2万5千本に相当するという。深刻なのは処分方法が明確になっておらず、再処理工場などに保管されたままであることだ。国は地下300メートルよりも深くに数万年埋めておく計画を立てている。廃棄物の行き着く先がどこにもないために原発は「トイレなきマンション」とも表現される。こうした核のごみの持ち込みを規制したり、最終処分場となるのを拒否したりする条例が、北海道をはじめ少なくとも全国24自治体で制定されている。国は17年に処分の適地を示した「科学的特性マップ」を公表したが、それ以降も10市町村が条例を制定している。住民本位の自治を考えれば当然だろう。このマップでは沖縄も大半が適地に挙がっているが、北海道の適地の一つが寿都町だった。3月末の人口は2893人、65歳以上の高齢者の割合は40・4%。町は40年には2千人を下回り、25年からは財政の悪化を試算している。人口減少や財政悪化といった難問は、少なからぬ自治体が頭を抱えている。しかし自治の運営が、「経済」か、「安心安全」かの選択を迫るようであってはいけない。住民の分断を促すような交付金というアメで誘導するような施策を国側も改めるべきだ。

<日本に存在する資源>
*4-1:https://news.tv-asahi.co.jp/news_society/articles/000171430.html (テレビ朝日 2019/12/11) 300年分のレアメタルわがEEZに“四国+九州”に分布
 希少金属の埋蔵量が日本の消費量の300年分あることが分かりました。南鳥島の海底にはリチウムイオン電池の原料となるコバルトを多く含むマンガンノジュールと呼ばれる希少金属の塊があることが分かっていました。千葉工業大学などの研究チームは今回、南鳥島周辺の日本のEEZ(排他的経済水域)内にある希少金属の塊が分布する範囲などを世界で初めて確認しました。分布面積は四国と九州を合わせた広さに匹敵し、埋蔵量は日本のコバルト需要の約300年分に相当するということです。希少金属の塊はEEZの外にもあるとみられ、すでに中国が一部のエリアで採掘権を獲得しています。コバルトのほとんどが中国やコンゴ共和国で産出されていて、価格は安定していません。

*4-2:https://enechange.jp/articles/solor-power-hahajima (エネチェンジ 2019.7.2) 母島の電力を太陽光発電で、東京都と小笠原村、東京電力パワーグリッドが実証実験へ、エネルギー自由化コラム
 東京都は小笠原諸島の母島で島内の電力を太陽光発電だけでまかなう実証実験を始めることを決め、東京都小笠原村、東京電力パワーグリッドと協定を締結しました。自然環境調査や専門家への意見聴取を進め、順調に進めば2022年度末から実証実験に入りたい意向です。小池百合子東京都知事は記者会見で「自然や景観に配慮しながら、事業を進めたい」と意欲を示しました。
●母島に太陽光発電を設置して3年間実験
 東京都環境局によると、想定している実証実験の実施期間は3年。母島に太陽光発電施設と蓄電池などを設置、1年のうち半年程度を視野に入れて太陽光発電だけで電力をまかないます。残りの期間はディーゼル発電などを併用する方針です。太陽光発電だけで半年間、島内で必要な電力を供給できれば、その他の再生可能エネルギーも活用してすべての電力をまかなうことを目指すことにしています。その後は伊豆諸島など東京都下の他の島でも、再生可能エネルギーの利用を促進する考えです。小池知事は2018年7月に母島で開かれた小笠原諸島返還50周年を記念した式典で「4年後には実証実験を開始できる」との見通しを明らかにしていました。
●施設の設置や運用は東京電力パワーグリッドが担当
 今後、3年かけて自然環境調査や専門家への意見聴取を進めたうえで、具体的な事業計画をまとめます。3者の役割分担は東京都と小笠原村が太陽光発電施設を置く土地を提供し、東京電力パワーグリッドが施設の設置、運用を受け持ちます。太陽光発電施設の設置場所や設置する機器の詳細などは未定ですが、国際教育科学文化機関(ユネスコ)の世界自然遺産に登録されている母島の環境に配慮し、世界自然遺産区域を避けて都有地や村有地に置く方針です。東京都環境局は設置候補地として母島の南部にある評議平畜産指導所跡地、旧ヘリポート周辺の畜産指導所跡地(ともに都有地)、中ノ平農業団地の研修圃場(村有地)の3カ所を太陽光発電施設設置候補地に、母島発電所(東京電力パワーグリッド用地)を蓄電池設置候補地に挙げています。
●小笠原諸島は冬でも過ごしやすい亜熱帯気候
 母島がある小笠原諸島は東京23区から南へ約1,000キロの太平洋上に浮かぶ30余りの島で構成されます。総面積は100平方キロメートル余りで、全体が小笠原村の行政区画。海洋性の亜熱帯気候に属し、真冬でも平均気温が18度前後と過ごしやすい場所です。民間人が居住しているのは、父島と母島の2島だけ。このほか、硫黄島と南鳥島に自衛隊など公務員が常駐していますが、それ以外はすべて無人島です。空港はなく、片道24時間かけて東京港の竹芝桟橋と父島の二見港を貨客船が運航しています。父島と母島間も片道約2時間の貨客船で結ばれています。戦前はサトウキビの生産が主産業でしたが、現在は就業者の3割を公務員が占め、観光業が基幹産業です。ほかに亜熱帯気候でなければ栽培しにくいパッションフルーツやコーヒーなどが育てられています。[面積 19.88平方キロメートル、人口 470人、山 乳房山(標高462メートル、島の最高峰)、主な施設 小笠原村母島支所、東京都母島出張所など、特産品 パッションフルーツ、希少生物 ハハジマメグロ、ワダンノキ]
●東洋のガラパゴスと呼ばれるほど固有生物が多様
 生物地理上の区分では日本で唯一、オセアニア地域に属しています。長く大陸と隔絶して独自の進化が進んだため、島の生物は「東洋のガラパゴス」と呼ばれるほど固有種が多いのが特徴です。主なものは植物ではキク科の小高木ワダンノキ、ツツジ科のムニンツツジ、ノボタン科のハハジマノボタンなどが挙げられます。動物だとオガサワラオオコウモリ、ハハジマメグロ、オガサワラトカゲなどが生息しています。1972年に小笠原国立公園に指定されたほか、2011年に世界自然遺産に登録され、貴重な自然の保護が図られていますが、人間が持ち込んだ外来生物や島の開発などからオガサワラオオコウモリなど多くの生物が絶滅の危機に直面しています。
●母島は人口470人、ラム酒やカカオも有名
 小笠原諸島のうち、母島は父島の南約50キロにあり、広さが約20平方キロメートル。姉島、妹島などと母島列島を形成しています。島の南部の沖村が唯一の集落で、人口は約470人。国産のラム酒製造やカカオの栽培が進められていますが、北部はうっそうとした森が広がっています。太平洋戦争中の1944年に住民が強制疎開させられたあと、20年以上にわたって無人島でしたが、米国から施政権が返還されて5年後の1972年から定住が始まりました。現在は自然を求めて東京など大都市圏から移り住み、観光ガイドなどをして暮らす若者もいます。食料品や日用品など生活物資は父島経由で東京から運ばれてきていますが、島内の電力は最大出力960キロワットのディーゼル発電所「母島発電所」でまかなっています。
●ゼロエミッション・アイランドの目玉事業に
 東京都は世界最先端の環境先進都市を目指し、温室効果ガス削減について2030年までに2000年比で30%減という国を上回る高い目標を環境基本計画で掲げました。これを実現するために、電気自動車や燃料電池自動車の普及、ゼロ・エネルギー・ビルの促進などを打ち出しています。小笠原諸島や伊豆諸島などには、「ゼロエミッション・アイランド」を掲げ、再生可能エネルギーの普及を進展させる考え。東京都次世代エネルギー推進課は「母島は人口が少なく、日照条件も良い。太陽光発電だけで島内の電力をまかなえるのではないか。今回の実証実験を通じ、環境にやさしい島の魅力を母島からアピールしていきたい」と力を込めました。一方、小笠原村は第4次小笠原村総合計画で村を豊かな自然と共生し、持続可能な島とする方針を打ち出しています。今回の太陽光発電導入に向けた実証実験は、その前段階に位置づけられます。小笠原村環境課は「再生可能エネルギーの推進は村のエネルギービジョンでも掲げている。自然とともに歩む島として太陽光発電の実証実験に取り組みたい」と意欲的に話しました。
●温暖化防止へ世界自然遺産から一石
 地球温暖化は現在も進行を続けています。ツバルなど太平洋の島国の中には国土消失の危機に直面しているところがあるほか、台風の巨大化、熱帯性伝染病の拡大、砂漠化などさまざまな悪影響が広がろうとしており、国際社会が早急に対応しなければならない課題に浮上しているのです。人口約470人の母島での取り組みは温室効果ガス削減の面からすると微々たる量でしかありませんが、世界自然遺産の島が再生可能エネルギーに切り替えることは世界に一石を投じることになるかもしれません。

*4-3:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO53230880R11C19A2LA0000/ (日経新聞 2019/12/12) 新エネ メタンハイドレート、「オール高知」で挑む
 次世代資源として海に埋蔵するメタンハイドレートの商業化に向け、高知県で本格的な取り組みが始まる。高知大学と地元の経済団体が高知沖の資源量を評価してもらうため、国の探査候補地に応募。2020年に自治体を交えた産官学で新会社を設立し、27年度以降に事業化を目指す。調査支援などで国とパイプを築き、壮大な計画にオール高知で挑む。探査を求めるのは足摺岬から50キロ先の海域(1800平方キロメートル)。高知大の徳山英一センター長は「高知沖ではメタンハイドレートの存在が確認されている。今回の海域は(陸地から比較的近く)資源開発しやすいので調査海域として応募した」と説明する。天然ガスの主成分であるメタンガスを得られるメタンハイドレートは海底の表層付近で取れる「表層型」と海底からさらに地下深くの地層に含まれる「砂層型」がある。高知沖は砂層型。JOGMECの探査船は海底に音波を発するなどの手法で海底地層のデータを集めて砂層の構造を3次元解析し、精度の高い埋蔵量の情報を取得できる。この3次元評価は高知の隣の宮崎沖など全国10カ所ですでに行われている。調査により高知沖の可能性を探りながら自助努力として、20年中に調査支援や今後、国の各地での開発動向を情報収集する新会社を設ける。株主への配当がない目的会社で資本金にあたる出えん金は500万円。18年3月、県内企業や四国電力、高知大などで立ち上げた「土佐沖メタンハイドレート実用・商用化プラットフォーム研究会」の参加企業や高知県、高知市に出資を募る。産官学によるオール高知の目的会社が目標。この会社で国に本気度をアピールする。同研究会は商業化に向けた工程表をまとめている。それによると27年度までに国による採取を伴うサンプル調査を通じて実用化を検証する。メタンハイドレートは固体で石油のように井戸を掘れば噴き出すわけではないため、メタンガスを取り出すには新技術が必要で輸送も難題だ。これらを同年度までにクリアし、商業化できるほど埋蔵量が確認されれば商業生産に向け開発会社を設ける。国費による日本のエネルギー事業なので全国から出資を募り27年度以降に事業を始める。工程表通りに進むかは不透明だが、高知ニュービジネス協議会の小川雅弘会長は高知県経済にも恩恵をもたらすとしてこう意欲を示す。「県内で地産地消のエネルギー源として農業用加湿や地域内の暖房に応用できるようにしたい」
▼メタンハイドレート(methane hydrate) 天然ガスの主成分でエネルギー資源である「メタンガス」が水分子と結びついてできた氷状の物質。火を近づけると燃えるため「燃える氷」と呼ばれる。燃やしたときに排出される二酸化炭素(CO2)は石炭や石油を燃やすよりも少ないため、次世代エネルギー資源として期待されている。 日本が採掘や調査を自由にできる排他的経済水域(EEZ)内に、国内で消費する液化天然ガス(LNG)の100年分に相当するメタンハイドレートが眠っているとの試算もある。日本の研究開発は世界の先端を走るといわれる。JOGMECは2013年と17年、愛知・三重県沖で産出試験を実施。いずれの年も採掘や設備トラブルなどがあったもののメタンガスの産出を確認した。

<日本の財政法の問題点>
*5-1:https://digital.asahi.com/articles/DA3S14599880.html (朝日新聞社説 2020年8月27日) 財政法と戦後 歴史的意味を忘れるな
 増え続ける財政赤字は政府の懐事情だけでなく、日本の民主主義の危うさをも表している。1947年に施行された財政法は4条で「国の歳出は、公債又(また)は借入金以外の歳入を以(もっ)て、その財源としなければならない」と定めた。この条文ができたのは、単に健全財政を義務づけるためだけではない。法施行直後に出版された「財政法逐条解説」にはこう記されている。「公債のないところに戦争はないと断言し得るのである。従って、本条は新憲法の戦争放棄の規定を裏書き保証せんとするものである」。序文では財政法に「幾多の抜け道」があるとしたうえで、運用次第では「意味をなさない」恐れも指摘していた。著者の懸念どおり、財政の縛りは次第に骨抜きにされていく。均衡財政は20年弱しか続かず、財政法が例外として認めた建設国債ばかりか、禁止したはずの赤字国債すら、特例法による発行が常態化した。今年度新たに発行される国債は空前の90兆円にのぼる。中央大学の関野満夫教授によると、真珠湾攻撃があった41年度の借金への依存度は56・4%(一般会計と、廃止された臨時軍事費特別会計の合算)。今年度の56・3%はこれとほぼ並ぶ。今年度末の政府債務残高は国内総生産の2・6倍。44年度末の2倍を上回る。まさに異常としか言いようがない。無論、いまの借金まみれの財政は戦争のせいではない。高齢化で社会保障費がかさむうえ、バブル崩壊やリーマン・ショック後の経済対策、震災復興、新型コロナウイルス対策と続いたことが一因だ。ただ、借金に歯止めがないと権力が暴走しかねないことを、心にとどめておく必要がある。戦時中は軍への文民統制が機能しなかった。満州事変後、議会の承認無しで使える予備費を乱用したことも、その一例だ。財政法が健全財政とともに財政民主主義を柱に据えたのは、当時の教訓からだ。戦後75年の今、この原則も骨抜きの危機にさらされている。政府はコロナ対策を柔軟に行うためとして今年度、総額12兆円を予備費として計上した。一般会計に占める比率は7・5%。42年度の9・1%に迫る。コロナ対策が必要であれば、補正予算として国会に議決を求めるのが筋だ。だが、与党ばかりか多くの主要野党も、この巨額の予備費を認めた。財政法の規定には、戦火や、戦後の預金封鎖などの混乱で、国民生活を困窮させたことへの反省が込められている。国会と政府は、条文の歴史的な意味を忘れてはならない。

*5-2:https://ryukyushimpo.jp/news/entry-1184499.html (琉球新報 2020年9月3日) 菅氏「辺野古しっかり進める」 総裁選出馬 基地負担軽減で成果強調
 菅義偉官房長官は2日の自民党総裁選への出馬会見で、辺野古新基地建設について「辺野古に移設することで普天間飛行場の危険除去が実現できる。そうした中で進めていることもぜひ理解いただきたい」と述べ、首相に就任した場合でも引き続き建設を進める意向を強調した。名護市辺野古への移設に加え「米軍の3分の1が沖縄から海外に出て行く。そうしたことをしっかり進めていく」と決意を示した。県内の選挙や県民投票で辺野古新基地建設に反対の民意が出ており、新基地建設を中止する考えはないかとの質問には「(辺野古新基地建設計画は)SACO(日米特別行動委員会)合意によって日米で合意し、沖縄の地元の市長、県知事とも合意した中で辺野古建設は決まった」と答え、辺野古新基地に理解を求めながら、合意当時の条件が変わったことには触れなかった。また沖縄の基地負担軽減担当相としては「7年8カ月の間に、北部訓練場、最も大規模な返還をはじめ目に見える形で実現をした」と取り組みを強調。さらに「基地負担軽減担当相になって始めたのが(那覇空港の)第2滑走路建設だ。このことも先般、完成したのではないか」とし、沖縄振興策の取り組みを基地負担軽減の成果としてアピールした。

*5-3:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200904&ng=DGKKZO63426700U0A900C2EAF000 (日経新聞 2020.9.4) 仏、コロナ追加経済対策に12兆円 欧州主要国で最大 、環境配慮型社会へ転換
 フランス政府は3日、新型コロナウイルスの追加経済策として2年で1千億ユーロ(約12兆5500億円)を投じると発表した。国内総生産(GDP)の約4%に当たり「欧州主要国で最大」規模だとしている。約3分の1を、温暖化ガスの排出が少ない交通手段の整備など経済を環境配慮型に切り替えるためにあてる。環境への負荷を減らすため300億ユーロをあてる。交通が最大の110億ユーロを占め、鉄道やエコカーの利用促進に使う。再生エネルギーへの転換などに90億ユーロを投じる。競争力の強化には350億ユーロを配分した。企業の生産活動に関わる減税200億ユーロが柱だ。若者の雇用対策や研究開発などにも同額の350億ユーロをつぎ込む内容だ。財源のうち、400億ユーロは欧州連合(EU)首脳が合意した7500億ユーロの復興基金から受け取る。残りについて仏政府は増税を否定しており、GDP比でみた国の借金はコロナ禍前の約100%から20年の121%に悪化する見通しだ。随時歳出を見直し、対策による財政悪化の影響を25年までに吸収するという。大規模な経済対策は仏政府の危機感の表れだ。カステックス首相は3日の記者会見で「危機をきっかけとしてフランスは競争力を高め、脱炭素社会をつくり、結束を強める」と語った。仏ラジオの取材には「失業率は爆発的に高まる」との見方も示した。国内の失業率は現在の7%から年内に10%を超えるとの予想があり、若者が大きな影響を受ける。仏政府は20年の仏経済が前年比11%縮小するとみており、EU平均の8.7%より悪くなる。環境配慮を前面に打ち出したのは、6月の統一地方選で環境政党の欧州エコロジー・緑の党(EELV)が大躍進したのが一因だ。有権者の関心が環境に向いており、マクロン大統領も意識せざるをえない。

*5-4:https://www.ron.gr.jp/law/law/zaisei.htm (財政法 昭和22年4月1日施行)
             <目次>
       第一章 財政総則(第一条-第十条)
       第二章 会計区分(第十一条-第十三条)
       第三章 予算
         第一節 総則(第十四条-第十五条)
         第二節 予算の作成(第十六条-第三十条)
         第三節 予算の執行(第三十一条-第三十六条)
       第四章 決算(第三十七条-第四十一条)
       第五章 雑則(第四十二条-第四十七条)
第一章 財政総則
 第一条 国の予算その他財政の基本に関しては、この法律の定めるところによる。
 第二条 収入とは、国の各般の需要を充たすための支払の財源となるべき現金の収納をいい、
   支出とは、国の各般の需要を充たすための現金の支払をいう。
 2 前項の現金の収納には、他の財産の処分又は新らたな債務の負担に因り生ずるものをも
   含み、同項の現金の支払には、他の財産の取得又は債務の減少を生ずるものをも含む。
 3 なお第一項の収入及び支出には、会計間の繰入その他国庫内において行う移換による
   ものを含む。
 4 歳入とは、一会計年度における一切の収入をいい、歳出とは、一会計年度における一切
   の支出をいう。
第三条 租税を除く外、国が国権に基いて収納する課徴金及び法律上又は事実上国の独占に
   属する事業における専売価格若しくは事業料金については、すべて法律又は国会の議決に
   基いて定めなければならない。
第四条 国の歳出は、公債又は借入金以外の歳入を以て、その財源としなければならない。
   但し、公共事業費、出資金及び貸付金の財源については、国会の議決を経た金額の範囲内
   で、公債を発行し又は借入金をなすことができる。
 2 前項但書の規定により公債を発行し又は借入金をなす場合においては、その償還の計画を
   国会に提出しなければならない。
 3 第一項に規定する公共事業費の範囲については、毎会計年度、国会の議決を経なければ
   ならない。
第五条 すべて、公債の発行については、日本銀行にこれを引き受けさせ、又、借入金の借入に
   ついては、日本銀行からこれを借り入れてはならない。但し、特別の事由がある場合に
   おいて、国会の議決を経た金額の範囲内では、この限りでない。
第六条 各会計年度において歳入歳出の決算上剰余を生じた場合においては、当該剰余金の
   うち、二分の一を下らない金額は、他の法律によるものの外、これを剰余金を生じた
   年度の翌翌年度までに、公債又は借入金の償還財源に充てなければならない。
 2 前項の剰余金の計算については、政令でこれを定める。
第七条 国は、国庫金の出納上必要があるときは、財務省証券を発行し又は日本銀行から一時
   借入金をなすことができる。
 2 前項に規定する財務省証券及び一時借入金は、当該年度の歳入を以て、これを償還しな
   ければならない。
 3 財務省証券の発行及び一時借入金の借入の最高額については、毎会計年度、国会の
   議決を経なければならない。
第八条 国の債権の全部又は一部を免除し又はその効力を変更するには、法律に基くことを
   要する。
第九条 国の財産は、法律に基く場合を除く外、これを交換しその他支払手段として使用し、
   又は適正な対価なくしてこれを譲渡し若しくは貸し付けてはならない。
 2 国の財産は、常に良好の状態においてこれを管理し、その所有の目的に応じて、最も
   効率的に、これを運用しなければならない。
第十条 国の特定の事務のために要する費用について、国以外の者にその全部又は一部を
   負担させるには、法律に基かなければならない。
第二章 会計区分
第十一条 国の会計年度は、毎年四月一日に始まり、翌年三月三十一日に終わるものとする。
第十二条 各会計年度における経費は、その年度の歳入を以て、これを支弁しなければ
   ならない。
第十三条 国の会計を分つて一般会計及び特別会計とする。
 2 国が特定の事業を行う場合、特定の資金を保有してその運用を行う場合その他特定の
   歳入を以て特定の歳出に充て一般の歳入歳出と区分して経理する必要がある場合に
   限り、法律を以て、特別会計を設置するものとする。
第三章 予算
第一節 総則
 第十四条 歳入歳出は、すべて、これを予算に編入しなければならない。
第十四条の二 国は、工事、製造その他の事業で、その完成に数年度を要するものについて、
   特に必要がある場合においては、経費の総額及び年割額を定め、予め国会の議決を経て、
   その議決するところに従い、数年度にわたつて支出することができる。
 2 前項の規定により国が支出することのできる年限は、当該会計年度以降五箇年度以内と
   する。但し、予算を以て、国会の議決を経て更にその年限を延長することができる。
 3 前二項の規定により支出することができる経費は、これを継続費という。
 4 前三項の規定は、国会が、継続費成立後の会計年度の予算の審議において、当該継続費
   につき重ねて審議することを妨げるものではない。
第十四条の三 歳出予算の経費のうち、その性質上又は予算成立後の事由に基き年度内に
   その支出を終らない見込のあるものについては、予め国会の議決を経て、翌年度に
   繰り越して使用することができる。
 2 前項の規定により翌年度に繰り越して使用することができる経費は、これを繰越明許費と
   いう。
第十五条 法律に基くもの又は歳出予算の金額(第四十三条の三に規定する承認があつた
   金額を含む。)若しくは継続費の総額の範囲内におけるものの外、国が債務を負担する
   行為をなすには、予め予算を以て、国会の議決を経なければならない。
 2 前項に規定するものの外、災害復旧その他緊急の必要がある場合においては、国は
   毎会計年度、国会の議決を経た金額の範囲内において、債務を負担する行為をなす
   ことができる。
 3 前二項の規定により国が債務を負担する行為に因り支出すべき年限は、当該会計年度
   以降五箇年度以内とする。但し、国会の議決により更にその年限を延長するもの並びに
   外国人に支給する給料及び恩給、地方公共団体の債務の保証又は債務の元利若しくは
   利子の補給、土地、建物の賃料及び国際条約に基く分担金に関するもの、その他法律で
   定めるものは、この限りでない。
 4 第二項の規定により国が債務を負担した行為については、次の常会において国会に
   報告しなければならない。
 5 第一項又は第二項の規定により国が債務を負担する行為は、これを国庫債務負担行為
   という。
第二節 予算の作成
第十六条 予算は、予算総則、歳入歳出予算、継続費、繰越明許費及び国庫債務負担行為
   とする。
第十七条 衆議院議長、参議院議長、最高裁判所長官及び会計検査院長は、毎会計年度、
   その所掌に係る歳入、歳出、継続費、繰越明許費及び国庫債務負担行為の見積に
   関する書類を作製し、これを内閣における予算の統合調整に供するため、内閣に送付
   しなければならない。
 2 内閣総理大臣及び各省大臣は、毎会計年度、その所掌に係る歳入、歳出、継続費、
   繰越明許費及び国庫債務負担行為の見積に関する書類を作製し、これを財務大臣に
   送付しなければならない。
第十八条 財務大臣は、前条の見積を検討して必要な調整を行い、歳入、歳出、継続費、
   繰越明許費及び国庫債務負担行為の概算を作製し、閣議の決定を経なければならない。
 2 内閣は、前項の決定をしようとするときは、国会、裁判所及び会計検査院に係る歳出の
   概算については、予め衆議院議長、参議院議長、最高裁判所長官及び会計検査院長に
   対しその決定に関し意見を求めなければならない。
第十九条 内閣は、国会、裁判所及び会計検査院の歳出見積を減額した場合においては、
   国会、裁判所又は会計検査院の送付に係る歳出見積について、その詳細を歳入歳出
   予算に附記するとともに、国会が、国会、裁判所又は会計検査院に係る歳出額を修正
   する場合における必要な財源についても明記しなければならない。
第二十条 財務大臣は、毎会計年度、第十八条の閣議決定に基いて、歳入予算明細書を
   作製しなければならない。
 2 衆議院議長、参議院議長、最高裁判所長官、会計検査院長並びに内閣総理大臣及び
   各省大臣(以下各省各庁の長という。)は、毎会計年度、第十八条の閣議決定のあつた
   概算の範囲内で予定経費要求書、継続費要求書、繰越明許費要求書及び国庫債務
   負担行為要求書(以下予定経費要求書等という。)を作製し、これを財務大臣に送付
   しなければならない。
第二十一条 財務大臣は、歳入予算明細書、衆議院、参議院、裁判所、会計検査院並びに
   内閣(内閣府を除く。)、内閣府及び各省(以下「各省各庁」という。)の予定経費
   要求書等に基づいて予算を作成し、閣議の決定を経なければならない。
第二十二条 予算総則には、歳入歳出予算、継続費、繰越明許費及び国庫債務負担行為に
   関する総括的規定を設ける外、左の事項に関する規定を設けるものとする。
  一 第四条第一項但書の規定による公債又は借入金の限度額
  二 第四条第三項の規定による公共事業費の範囲
  三 第五条但書の規定による日本銀行の公債の引受及び借入金の借入の限度額
  四 第七条第三項の規定による財務省証券の発行及び一時借入金の借入の最高額
  五 第十五条第二項の規定による国庫債務負担行為の限度額
  六 前各号に掲げるものの外、予算の執行に関し必要な事項
  七 その他政令で定める事項
第二十三条 歳入歳出予算は、その収入又は支出に関係のある部局等の組織の別に
   区分し、その部局等内においては、更に歳入にあつては、その性質に従つて部に
   大別し、且つ、各部中においてはこれを款項に区分し、歳出にあつては、その目的に
   従つてこれを項に区分しなければならない。
第二十四条 予見し難い予算の不足に充てるため、内閣は、予備費として相当と認める
   金額を、歳入歳出予算に計上することができる。
第二十五条 継続費は、その支出に関係のある部局等の組織の別に区分し、その部局
   等内においては、項に区分し、更に各項ごとにその総額及び年割額を示し、且つ、
   その必要の理由を明らかにしなければならない。
第二十六条 国庫債務負担行為は、事項ごとに、その必要の理由を明らかにし、且つ、
   行為をなす年度及び債務負担の限度額を明らかにし、又、必要に応じて行為に
   基いて支出をなすべき年度、年限又は年割額を示さなければならない。
第二十七条 内閣は、毎会計年度の予算を、前年度の一月中に、国会に提出するのを
   常例とする。
第二十八条 国会に提出する予算には、参考のために左の書類を添附しなければならない。
  一 歳入予算明細書
  二 各省各庁の予定経費要求書等
  三 前前年度歳入歳出決算の総計表及び純計表、前年度歳入歳出決算見込の
   総計表及び純計表並びに当該年度の歳入歳出予算の総計表及び純計表
  四 国庫の状況に関する前前年度末における実績並びに前年度末及び当該年度
   末における見込に関する調書
  五 国債及び借入金の状況に関する前前年度末における実績並びに前年度末及び
   当該年度末における現在高の見込及びその償還年次表に関する調書
  六 国有財産の前前年度末における現在高並びに前年度末及び当該年度末に
   おける現在高の見込に関する調書
  七 国が、出資している主要な法人の資産、負債、損益その他についての前前年度、
   前年度及び当該年度の状況に関する調書
  八 国庫債務負担行為で翌年度以降に亘るものについての前年度末までの支出額
   及び支出額の見込、当該年度以降の支出予定額並びに数会計年度に亘る事業に
   伴うものについてはその全体の計画その他事業等の進行状況等に関する調書
  九 継続費についての前前年度末までの支出額、前年度末までの支出額及び
   支出額の見込、当該年度以降の支出予定額並びに事業の全体の計画及び
   その進行状況等に関する調書
  十 その他財政の状況及び予算の内容を明らかにするため必要な書
第二十九条 内閣は、次に掲げる場合に限り、予算作成の手続に準じ、補正予算を
   作成し、これを国会に提出することができる。
  一 法律上又は契約上の国の義務に属する経費の不足を補うほか、予算作成後に
   生じた事由に基づき特に緊要となつた経費の支出(当該年度において国庫内の
   移換えにとどまるものを含む。)又は債務の負担を行うため必要な予算の追加を
   行う場合
  二 予算作成後に生じた事由に基づいて、予算に追加以外の変更を加える場合
第三十条 内閣は、必要に応じて、一会計年度のうちの一定期間に係る暫定予算を
   作成し、これを国会に提出することができる。
 2 暫定予算は、当該年度の予算が成立したときは、失効するものとし、暫定予算に
   基く支出又はこれに基く債務の負担があるときは、これを当該年度の予算に
   基いてなしたものとみなす。
第三節 予算の執行
第三十一条 予算が成立したときは、内閣は、国会の議決したところに従い、各省各庁
   の長に対し、その執行の責に任ずべき歳入歳出予算、継続費及び国庫債務負担
   行為を配賦する。
 2 前項の規定により歳入歳出予算及び継続費を配賦する場合においては、項を目に
   区分しなければならない。
 3 財務大臣は、第一項による配賦のあつたときは、会計検査院に通知しなければ
   ならない。
第三十二条 各省各庁の長は、歳出予算及び継続費については、各項に定める目的の
   外にこれを使用することができない。
第三十三条 各省各庁の長は、歳出予算または継続費の定める各部局等の経費の
   金額又は部局等内の各項の経費の金額については、各部局等の間又は各項の
   間において彼此移用することができない。但し、予算の執行上の必要に基き、
   あらかじめ予算をもつて国会の議決を経た場合に限り、財務大臣の承認を経て
   移用することができる。
 2 各省各庁の長は、各自の経費の金額については、財務大臣の承認を経なければ、
   目の間において、彼此流用することができない。
 3 財務大臣は、第一項但書又は前項の規定に基く移用又は流用について承認した
   ときは、その旨を当該各省各庁の長及び会計検査院に通知しなければならない。
 4 第一項但書又は第二項の規定により移用又は流用した経費の金額については、
   歳入歳出の決算報告書において、これを明らかにするとともに、その理由を
   記載しなければならない。
第三十四条 各省各庁の長は、第三十一条第一項の規定により配賦された予算に
   基いて、政令の定めるところにより、支出担当事務職員ごとに支出の所要額を
   定め、支払の計画に関する書類を作製して、これを財務大臣に送付し、その承認を
   経なければならない。
 2 財務大臣は、国庫金、歳入及び金融の状況並びに経費の支出状況等を勘案して、
   適時に、支払の計画の承認に関する方針を作製し、閣議の決定を経なければならない。
 3 財務大臣は、第一項の支払の計画について承認をしたときは、各省各庁の長に
   通知するとともに、財務大臣が定める場合を除き、これを日本銀行に通知しなければ
   ならない。
第三十四条の二 各省各庁の長は、第三十一条第一項の規定により配賦された歳出予算、
   継続費及び国庫債務負担行為のうち、公共事業費その他財務大臣の指定する経費に
   係るものについては、政令の定めるところにより、当該歳出予算、継続費又は国庫債務
   負担行為に基いてなす支出負担行為(国の支出の原因となる契約その他の行為をいう。
   以下同じ。)の実施計画に関する書類を作製して、これを財務大臣に送付し、その
   承認を経なければならない。
 2 財務大臣は、前項の支出負担行為の実施計画を承認したときは、これを各省各庁の
   長及び会計検査院に通知しなければならない。
第三十五条 予備費は、財務大臣が、これを管理する。
 2 各省各庁の長は、予備費の使用を必要と認めるときは、理由、金額及び積算の基礎を
   明らかにした調書を作製し、これを財務大臣に送付しなければならない。
 3 財務大臣は、前項の要求を調査し、これに所要の調整を加えて予備費使用書を作製し、
   閣議の決定を求めなければならない。但し、予め閣議の決定を経て財務大臣の指定
   する経費については、閣議を経ることを必要とせず、財務大臣が予備費使用書を決定
   することができる。
 4 予備費使用書が決定したときは、当該使用書に掲げる経費については、第三十一条
   第一項の規定により、予算の配賦があつたものとみなす。
 5 第一項の規定は、第十五条第二項の規定による国庫債務負担行為に、第二項、第三項
   本文及び前項の規定は、各省各庁の長が第十五条第二項の規定により国庫債務負担
   行為をなす場合に、これを準用する。
第三十六条 予備費を以て支弁した金額については、各省各庁の長は、その調書を作製して、
   次の国会の常会の開会後直ちに、これを財務大臣に送付しなければならない。
 2 財務大臣は、前項の調書に基いて予備費を以て支弁した金額の総調書を作製しなけれ
   ばならない。
 3 内閣は、予備費を以て支弁した総調書及び各省各庁の調書を次の常会において国会に
   提出して、その承諾を求めなければならない。
 4 財務大臣は、前項の総調書及び調書を会計検査院に送付しなければならない。
第四章 決算
第三十七条 各省各庁の長は、毎会計年度、財務大臣の定めるところにより、その所掌に
   係る歳入及び歳出の決算報告書並びに国の債務に関する計算書を作製し、これを
   財務大臣に送付しなければならない。
 2 財務大臣は、前項の歳入決算報告書に基いて、歳入予算明細書と同一の区分により、
   歳入決算明細書を作製しなければならない。
 3 各省各庁の長は、その所掌の継続費に係る事業が完成した場合においては、財務大臣
   の定めるところにより、継続費決算報告書を作製し、これを財務大臣に送付しなければ
   ならない。
第三十八条 財務大臣は、歳入決算明細書及び歳出の決算報告書に基いて、歳入歳出の
   決算を作成しなければならない。
 2 歳入歳出の決算は、歳入歳出と同一の区分により、これを作製し、且つ、これに左の
   事項を明らかにしなければならない。
 (一) 歳入
  一 歳入予算額
  二 徴収決定済額(徴収決定のない歳入については収納後に徴収済として整理した額)
  三 収納済歳入額
  四 不納欠損額
  五 収納未済歳入額
 (二) 歳出
  一 歳出予算額
  二 前年度繰越額
  三 予備費使用額
  四 流用等増減額
  五 支出済歳出額
  六 翌年度繰越額
  七 不用額
第三十九条 内閣は、歳入歳出決算に、歳入決算明細書、各省各庁の歳出決算報告書
   及び継続費決算報告書並びに国の債務に関する計算書を添附して、これを翌年度
   の十一月三十日までに会計検査院に送付しなければならない。
第四十条 内閣は、会計検査院の検査を経た歳入歳出決算を、翌年度開会の常会に
   おいて国会に提出するのを常例とする。
 2 前項の歳入歳出決算には、会計検査院の検査報告の外、歳入決算明細書、各省
   各庁の歳出決算報告書及び継続費決算報告書並びに国の債務に関する計算書を
   添附する。
第四十一条 毎会計年度において、歳入歳出の決算上剰余を生じたときは、これをその
   翌年度の歳入に繰り入れるものとする。
第五章 雑則
第四十二条 繰越明許費の金額を除く外、毎会計年度の歳出予算の経費の金額は、
   これを翌年度において使用することができない。但し、歳出予算の経費の金額の
   うち、年度内に支出負担行為をなし避け難い事故のため年度内に支出を終わら
   なかつたもの(当該支出負担行為に係る工事その他の事業の遂行上の必要に
   基きこれに関連して支出を要する経費の金額を含む。)は、これを翌年度に繰り
   越して使用することができる。
第四十三条 各省各庁の長は、第十四条の三第一項又は前条但書の規定による
   繰越を必要とするときは、繰越計算書を作製し、事項ごとに、その事由及び金額を
   明らかにして、財務大臣の承認を経なければならない。
 2 前項の承認があつたときは、当該経費に係る歳出予算は、その承認があつた
   金額の範囲内において、これを翌年度に繰り越して使用することができる。
 3 各省各庁の長は、前項の規定による繰越をしたときは、事項ごとに、その金額を
   明らかにして、財務大臣及び会計検査院長に通知しなければならない。
 4 第二項の規定により繰越をしたときは、当該経費については、第三十一条第一項の
   規定による予算の配賦があつたものとみなす。この場合においては、同条第三項の
   規定による通知は、これを必要としない。
第四十三条の二 継続費の毎会計年度の年割額に係る歳出予算の経費の金額のうち、
   その年度内に支出を終わらなかつたものは、第四十二条の規定にかかわらず、継続
   費に係る事業の完成年度まで、逓次繰り越して使用することができる。
 2 前条第三項及び第四項の規定は、前項の規定により繰越をした場合に、これを準用する。
第四十三条の三 各省各庁の長は、繰越明許費の金額について、予算の執行上やむを
   得ない事由がある場合においては、事項ごとに、その事由及び金額を明らかにし、
   財務大臣の承認を経て、その承認があつた金額の範囲内において、翌年度に
   わたつて支出すべき債務を負担することができる。
第四十四条 国は、法律を以て定める場合に限り、特別の資金を保有することができる。
第四十五条 各特別会計において必要がある場合には、この法律の規定と異なる定めを
   なすことができる。
第四十六条 内閣は、予算が成立したときは、直ちに予算、前前年度の歳入歳出決算
   並びに公債、借入金及び国有財産の現在高その他財政に関する一般の事項に
   ついて、印刷物、講演その他適当な方法で国民に報告しなければならない。
 2 前項に規定するものの外、内閣は、少くとも毎四半期ごとに、予算使用の状況、
   国庫の状況その他財政の状況について、国会及び国民に報告しなければならない。
第四十六条の二 この法律又はこの法律に基づく命令の規定による手続については、
   行政手続等における情報通信の技術の利用に関する法律(平成十四年法律
   第百五十一号)第三条及び第四条の規定は、適用しない。
第四十六条の三 この法律又はこの法律に基づく命令の規定により作成することと
   されている書類等(書類、調書その他文字、図形等人の知覚によつて認識する
   ことができる情報が記載された紙その他の有体物をいう。次条において同じ。)に
   ついては、当該書類等に記載すべき事項を記録した電磁的記録(電子的方式、
   磁気的方式その他人の知覚によつては認識することができない方式で作られる
   記録であつて、電子計算機による情報処理の用に供されるものとして財務大臣が
   定めるものをいう。次条第一項において同じ。)の作成をもつて、当該書類等の
   作成に代えることができる。この場合において、当該電磁的記録は、当該書類等と
   みなす。
第四十六条の四 この法律又はこの法律に基づく命令の規定による書類等の提出に
   ついては、当該書類等が電磁的記録で作成されている場合には、電磁的方法
   (電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法で
   あつて財務大臣が定めるものをいう。次項において同じ。)をもつて行うことが
   できる。
 2 前項の規定により書類等の提出が電磁的方法によつて行われたときは、当該書類
   等の提出を受けるべき者の使用に係る電子計算機に備えられたファイルへの記録が
   された時に当該提出を受けるべき者に到達したものとみなす。
第四十七条 この法律の施行に関し必要な事項は、政令で、これを定める。

<離島の価値と使い方>
PS(2020年9月12、13、15日):李登輝元台湾総統も「尖閣諸島が台湾領だったことはない」と言っておられたので、*6-1のように、石垣市が尖閣諸島の名称を「石垣市登野城尖閣」に変更し、尖閣諸島の有効支配が強化されることに、私は賛成だ。何故なら、国境離島の有効支配は、日本の排他的経済水域の面積に影響するため、重要だからである。そのため、付近を通行する漁船等のために、速やかに港・灯台・休憩所などを造り、「領土・主権展示館」分館も整備して、石垣市は固定資産税を徴収すればよいと思う。
 また、*6-2のように、宮古島市の下地島空港には3千m滑走路があり、有翼型宇宙往還機で2025年に年間100人、30年には年間千人の宇宙旅行者を下地島空港から送り出すことを目標としているそうだ。それならば、月や火星と往復する日もそう遠くないと思われ、美しい離島空港のしゃれた使い方だと感心した。
 そのような中、*6-3のように、IHIが火星探査機用の低燃費エンジンを開発し、2023年度をメドに納入するそうで頼もしいが、世界各国が火星移住を視野に火星探査プロジェクトを進めており、日本企業も技術で貢献しているのに、日本政府・JAXA組は火星の衛星しか探査する気がないのは残念だ。
 なお、離島の使い方には、*6-4のように、「伝染病から護りやすい」「害獣が少ない」「環境汚染がない」などの特色を利用した農業もあり、管理を徹底して“○○島育ち”をブランドにすることも可能だ。


   尖閣諸島         宮古島・周辺の島・連絡橋     波照間島、ヤギ放牧

*6-1:https://ryukyushimpo.jp/news/entry-1184681.html (琉球新報 2020年9月3日) 尖閣諸島の体制強化、提言まとめる考え 自民議連が議論
 自民党の国防議員連盟(会長・衛藤征士郎元防衛庁長官)は2日に勉強会を開き、尖閣諸島の有効支配について議論した。石垣市議の砥板芳行氏らが出席し、6月の市議会で尖閣諸島の字名を「登野城」から「登野城尖閣」に変更した経緯を報告。固定資産税を評価するための尖閣での実施調査や、東京都にある「領土・主権展示館」の分館を石垣市に整備することなどに関して検討を求めた。国防議連は尖閣諸島に関する勉強会を重ねており、海保や警察、自衛隊の体制強化などについて政府の2021年度予算編成に間に合わせる形で提言をまとめる考え。議連事務局長の佐藤正久参院議員によると、出席議員からは領土・主権展示館の分館の整備について、東京都が尖閣諸島購入のため積み立てた基金(約14億円)の活用を提案する声があった。石垣市内の海上保安庁の施設を中国人がドローンで撮影した事例があったとして、ドローン規制法の対象に海保の施設が含まれていないことを指摘する意見も出た。

*6-2:https://ryukyushimpo.jp/news/entry-1188816.html (琉球新報 2020年9月10日)下地島空港で宇宙機の技術実証 愛知のPDエアロスペース、実験機の開発拠点に
 宇宙機開発などを手掛けるPDエアロスペース(愛知県)と県は10日、宮古島市の下地島空港と周辺用地の利活用事業実施に向けた基本合意書を締結した。同社は今後、宇宙機の技術実証や実験機の開発拠点として下地島空港を利用する。2025年に年間100人、30年には年間千人の宇宙旅行者を下地島空港から送り出すことを目標としている。同社は07年に設立。全日空(ANA)などが出資している。有翼型宇宙往還機による有人宇宙旅行を目標としており、現在は無人の宇宙往還機を開発中で、22年中に高度100キロメートルまで到達することを目指している。計画では、スペースシャトルなどの打ち上げ型とは異なり、飛行機のように水平に離陸し、高度15キロからロケットのように垂直方向で上昇する。同社はジェット燃焼とロケット燃焼を切り替えられる独自のエンジンを開発中で、完成すれば着陸の際にもエンジンを再点火して飛行機のように安全に着陸ができるようになるという。3千メートルの滑走路があり、気候的にも年間を通じて飛行試験ができる下地島空港が適していると判断した。宇宙旅行者向けの訓練事業や、飛行実験などを見せる観光事業も展開する。

*6-3:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200913&ng=DGKKZO63780830S0A910C2MM8000 (日経新聞 2020.9.13) IHI、火星探査機向け低燃費エンジン 23年度めど納入
 IHIは火星探査機用の低燃費エンジンを開発した。宇宙航空研究開発機構(JAXA)などが進めるプロジェクト向けに、2023年度をメドに納入する。火星探査は打ち上げから帰還まで往復約5年がかかるが、少ない燃料での飛行を可能とした。長距離の飛行を支える技術開発が進めば、各国が取り組む宇宙探査の領域を広げそうだ。政府とJAXAが24年度に打ち上げる火星の衛星探査計画「MMX」の探査機向けに供給する。世界では米エアロジェット・ロケットダインや欧州アリアン・グループなどが衛星向けのエンジンで先行しており、IHIが火星関連プロジェクトでエンジンを提供するのは初めてとなる。地球からの距離が月に比べて100倍以上と遠い火星は、長期間の飛行に耐えられるエンジン性能が不可欠だ。IHIのエンジンは独自の技術で燃焼効率の改善を進め、欧米の競合よりも燃費性能を高めた。MMXは火星研究の一環として周辺衛星の地表の物質を採取して地球に持ち帰る。火星軌道への投入や離脱、衛星への離着陸には繊細な制御技術が不可欠となる。IHIは国際宇宙ステーション(ISS)の無人輸送機「こうのとり」向けエンジンでドッキングなどのノウハウを積み上げており、制御面でも火星探査が求める仕様に対応しやすいという。世界各国では火星探査プロジェクトが相次ぐ。7月に米国が探査機打ち上げを成功させ、中国やアラブ首長国連邦(UAE)も参入した。インドと欧州連合(EU)も探査事業を進めており、火星移住でも米スタートアップのスペースXが大型宇宙船の開発を急ぐ。日本企業の参入機会も広がっており、三菱重工業は7月にUAEの火星探査機の打ち上げを担った。帝人は米国の火星探査機に使う着陸用パラシュートで鉄の8倍の強度を持つ繊維を提供した。IHIは今回のプロジェクトを足がかりに、他の宇宙事業への参画を狙う。

*6-4:https://www.agrinews.co.jp/p51889.html (日本農業新聞 2020年9月15日) 衛生基準設定後、東京都区内で初 放牧養豚を再開 世田谷区の吉岡さん
●ブランド力 高めたい
 東京都世田谷区の吉岡幸彦さん(74)は、約2万平方メートルの敷地で造園業と養鶏業の傍ら、念願かなって7月下旬から放牧で豚を飼い始めた。豚熱などの予防に向けて農水省が6月に新たな飼養衛生管理基準を設けて以降、都区内では初の放牧養豚だ。管理を徹底してブランド力を高め、11月ごろの出荷を目指す。吉岡さんは、2年ほど前まで都の銘柄豚「TOKYO―X」などをアニマルウェルフェア(快適性に配慮した家畜の飼養管理)にのっとり放牧で飼っていたが、全国で豚熱発生が相次いだためやむなく中断した。しかし、鶏も放し飼いにするなどできるだけ自然な形の農業を目指す吉岡さんは「もう一度豚を放牧で飼いたい」との思いが強まり、日本放牧養豚研究会の山下哲生理事長に相談。以前養豚で使っていた約660平方メートルで再開することを決めた。導入したのは、東京都心から南に120キロ離れた、イノシシがすんでいない伊豆諸島の豚。ちょうど出荷先を探していた大島町の農家を知り、バークシャー種15頭を7月に運び込んだ。豚熱のワクチン接種は済ませたが、万一の事態に備え農場はフェンスで囲い、屋根がある避難スペースを確保。見学に来た人が豚に近づかないよう貼り紙やカラーコーンで注意を呼び掛ける。近くに保育園が20ほどあり、今では子どもたちが1日に1回は豚を見に来るなど、都市化が進んだ東京で貴重な食育の場になっている。11月に最初の出荷をした後は、都立瑞穂農芸高校(瑞穂町)で飼う豚を導入することも考える。吉岡さんは「都内で生まれた豚を都内で放牧することで付加価値を高めたい」とする。

| 資源・エネルギー::2017.1~ | 08:59 PM | comments (x) | trackback (x) |
2020.8.15~20 差別なき社会と本当の女性活躍を実現するには (2020年8月21日《図》、22、24、27日追加)

    Wikipedia    2020.7.30日本放送  Wikipedia   2020.7.31産経新聞
    台湾の地図     李登輝元総統    蔡英文総統   中国・米国との関係

(https://search.yahoo.co.jp/video/search?rkf=2&ei=UTF-8&dd=1&p=%E6%9D%8E%E7%99%BB%E8%BC%9D&st=youtube 台湾・李登輝元総統の日本外国特派員協会での記者会見《動画》 2015/7/23 参照)

(1)李登輝元台湾総統のご冥福を祈りつつ
1)李登輝元台湾総統を追悼して
 「台湾民主化の父」と呼ばれた李登輝元総統(1923年《大正12年》1月15日 - 2020年《令和2年》7月30日)が、*1-1のように、7月30日に97歳で亡くなられた。惜しみつつ、ご冥福を祈る

 日本は、太平洋戦争敗戦までの約50年間、台湾を植民地支配し、李元総統は日本の植民地時代に台湾で生まれて京都帝大で学び、日本軍人として終戦を迎えて、「自分は22歳まで日本人だった」と言っておられた。その流暢な日本語で、「日本の政治家は、小手先のことばかり論じている」等と語られていた言葉は、見識の深さを感じさせるものだった。

 台湾大手紙、蘋果日報は、7月31日付の社説で、*1-2のように、李登輝元総統は「政治家」「哲学者」「宗教家」の3つの顔を持つ「類いまれなリーダーだ」と総括し、「台湾に民主主義を残したことは彼の最大の業績だ」と高く評価している。

 李元総統の業績は、民意を反映させる議会改革を断行し、初の総統直接選挙を実現させ、台湾政治の自由化を加速させたことだ。これについては、李元総統が、日本の大正デモクラシー時代に生まれて教育を受けられた影響もあると思う。

 何故なら、女性の私を教育で差別しなかった私の父も大正12年生まれの九州帝大卒で自由平等の思想を持つ人だったし、職場で最初に私を引っ張ってくれたトップも大正12年生まれの陸士出身の人で、戦前生まれにもかかわらず女性を差別することなく、仕事で多くの機会を与えてくれた。皆、時代の激しいうねりの中で戦争に巻き込まれつつも、心には自由・平等・独立の精神を持っていたと思う。

2)台湾と中国の関係
 天安門事件の後、中国共産党が民主化の芽を武力で封じ込めたのとは反対に、李元総統率いる台湾は、民主化路線を歩んで高い経済力を身につけたが、台湾と中国の関係は悪化し、1990年代の半ばには台湾海峡危機が起き、中国は台湾に激しい統一攻勢をかけた。

 このような中、*1-3のように、1972年の「日中国交正常化」時の日中共同声明が、「中華人民共和国政府は,台湾が中華人民共和国の領土の不可分の一部であることを重ねて表明する。日本国政府は,この中華人民共和国政府の立場を十分理解し,尊重し,ポツダム宣言第八項に基づく立場を堅持する」としたため、日本は台湾を見捨てて国としての交流を絶つこととなり、中国の圧力によって台湾の国旗や総統府をTV画面で流すことすら難しい状況になった。

 そして、*1-4のように、日本からの李元総統の弔問団には、①安倍政権の閣僚はおらず ②人数も簡素で ③台湾に4時間しか滞在しなかった ため、台湾の学者からは、「日本は台湾との友好より、対中関係を気にしている」と指摘されている。私もそう思うが、我が国の「寄らば大樹の陰」「弱者切り捨て」の態度はあまりに見苦しく、民主主義の理念も感じられないため、少なくとも内政干渉せず、独立国には敬意を持って接するよう、日中共同声明を変更すべきだと考える。

 米国の方は、*1-5のように、李元総統が強化した対米関係を蔡総統が引き継ぎ、中国からの統一圧力に直面する台湾にとって安全保障の最大の後ろ盾となっている。台湾の民主化を進めた李元総統は、「自由と民主主義」を旗印に米国との関係強化に取り組み、李氏が切り開いた米台関係の道筋を現在の蔡英文政権は引き継いでいる。私は、蔡総統が低姿勢だから米国の支持を得ているのだとは思わず、米議会とトランプ政権は、民主主義を護ることに関して日本よりずっと筋が通っているのだと思う。

3)台北での思い出 ← 台湾人は韓国人と異なり、日本を恨んでいなかった! 
 私は、1990年代の前半に台北大学で開催された夫の学会に同伴して、台北に行ったことがある。昼間、1人で大学の近くを歩いていたら、台湾人の品のいい男性から「この台北大学は、日本が作ったことを知っていますか?」と、日本語で声をかけられた。

 外国で外国人から流暢な日本語で声をかけられたことにまず驚いたのだが、中国や韓国の反日ばかりが報道される中で、太平洋戦争後に日本に好意を持つ国があることも予想外だったため、「知りませんでした」と答えるのがやっとだったが、私の2重の驚きは顔に書いてあったようで、その方は笑顔で去って行かれた。

 その夜の懇親会に、白大島の着物に真っ白の帯を組みあわせ、紫とこげ茶の模様が入った帯揚げ・帯締めをして、夫と同伴で出席したところ、私が入っていった時に拍手が起こり、多くの人が立ち上がってこちらを向いて拍手してくれたのにも驚いた。深く考えて選んだわけではなかったが、台湾に近い奄美大島の本場大島紬を着たのがよかったかも知れない。

(2)日本における女性活躍
1)職場での女性差別解消はどこまで進んだか
 台湾では、李元総統に見いだされた女性初の蔡総統が活躍している。日本で初の女性首相はまだ誕生していないが、私は、日本で女性初の首相になる人は伊藤博文・李登輝級であって欲しいと思っている。

 そのような中、*2-1のように、日本では「①高賃金の男女間で説明できない格差が拡大している」「②昇進に伴う昇給格差にもガラスの天井がある」「③外形的なポストの差解消だけでは不十分」という記事があり、ジェンダーも、やっとこういう分析が行われるところまで来たかと思った。

 経験的には、「ガラスの天井」と「床への張りつき」は確かにあり、日本は両方が観察される先進国では特殊な国というのも事実だ。そして、これは女性の管理職への昇進が難しいことが一因だが、昇進に伴う昇給でも男女間格差は大きく、同じ役職でも女性は基幹的でないポスト(名ばかり管理職)に配置されている可能性が高いと分析されており、実際に日本企業ではよくあることだ。

 日本では、女性活躍推進法が施行され、常時雇用する労働者が301人以上の事業主は、女性従業員の勤務状況を数値で把握し、改善のための数値目標を立てて実行に移すことが義務付けられている。そして、2022年4月には101人以上の事業主に拡大適用されるそうだが、女性は中小企業で働いている割合が高いため、101人以上の事業主に拡大適用しても多くの女性の実態がつかめないままだろう。

2)男女間の人的資本量蓄積の差異
 *2-1に書かれているとおり、女性労働者への①教育 ②勤続年数 ③労働市場での経験 などの人的資本量は、生産性の違いから合理的な賃金格差を生む。

 そのため、②③を経るためのパスポートとなる①について男女間格差を比較すると、*2-2のように、東大学部学生の女性比率は、2019年5月現在で19.3%だそうだ。ちなみに、京都大の22.3%、大阪大の34.3%となっており、大学全体では学部生の45.4%が女性であるため、難関大学ほど女子学生の割合が低いと言える。また、大学全体ではなく、学部毎に女子学生の割合を比較すると、東大最多の2千人超が籍を置く工学部で女子は1割に満たないなど、社会で人的資本量にカウントされる学部の男子学生の割合が高いという結果が出ている。

 つまり、教育段階で既に、社会や家庭の圧力によって女性差別が生じているため、職場における男性優位の構図も変わりにくいのだろう。

3)農業における女性活躍
 農業は、家族労働が主であるため女性が働くのは当たり前なのだが、働いても女性の地位は低く、「床への張りつき」の典型だっただろう。

 しかし、*2-3のように、近年は、日本農業新聞が「①内閣府は、第5次男女共同参画基本計画の素案への意見募集を始めた」「②同計画素案では農業の持続性の確保に女性の活躍支援が欠かせないと明示している」「③地方では固定的な性別役割分担の意識が根強く、若い女性が大都市圏に転入する要因になっている」「④農業でも女性の都市流出で基幹的従事者に占める女性の割合が低下している」「⑤農業委員やJA役員の女性登用を一層進める」「⑥女性が働きやすい環境づくりをする」などのアナウンスをしているため、まだ男女共同参画の段階でしかないものの、今後に期待したい。

(3)女性を軽視する会社の業績は悪いことを実績で示す 
1)日産自動車のケース
 経営の立て直しを進める日産自動車は、*3-1のように、今期(2021年3月期)の年間配当を見送る見通しだそうで、販売低迷の理由は必ず①カルロス・ゴーン元会長を巡る一連の問題 ②新型コロナウイルス感染拡大の影響による世界的な新車需要の急減 などとして、現経営陣は誰も悪くないというスタンスをとる。

 しかし、①については、カルロス・ゴーン氏を追い出すために検察を利用して行った捜査に問題があることは多くの人の目に明らかで、その汚い手法によって、これまで培われた日産ブランドが見放されたと考えた方がよいだろう。

 また、②の新車需要減は新型コロナウイルス感染拡大以前から起こっており、その理由は、EV需要は環境意識の高い女性に多いにもかかわらず、ターゲットを女性に当てず、女性が好きそうなスタイルの車を売らなかったことにあると考える。つまり、社内に発言力のある人的資本量の大きな女性がいなかった(又は、少なかった)ことが販売低迷の理由である。

2)三越伊勢丹のケース
 三越伊勢丹も、*3-2のように、最終赤字600億円で2021年3月期の最終損益が600億円の赤字(前期は111億円の赤字)だそうだ。しかし、赤字は前期にも出ているため、新型コロナウイルスの感染拡大による消費低迷だけでなく、構造的な売上減少がある。

 何故か。確かにスーパーよりよいものを置いているが、その良さ以上に値段が高いため、買い物客が三越伊勢丹ブランドを過度に評価しなくなった現在では、客離れが進んでいるのだろう。

 そして、三越は、就職時には女性を多く採用するが、「床への張りつき」を前提としているため、顧客には女性が多いにもかかわらず、人的資本量が多くて発言力のある女性役員や女性管理職が少ない。また、消費者としての女性も馬鹿にした値付けをしているように思うのだ。

(4)政治分野における女性の登用の遅れ
1)政治分野で女性の登用が遅れる理由
 安倍首相は、*4-1のように、確かに女性活躍を推進して下さったが、「指導的地位に占める女性を2020年までに30%とする」という目標が先送りされたことについては、私もそれでは目標にならないと思った。しかし、このように、メディアも含む社会全体に女性蔑視がある時に、「達成できなかったのは政府の責任」として、少なくともやろうとした人に責任を押し付けても何の解決にもならない。

 何故なら、女性閣僚が少ないのは女性議員が少ないことが発端で、女性議員が少ないのは男女間の人的資本量蓄積に差があると同時に、同じ人的資本量を蓄積している男女間での社会的評価にも差があるからである。そして、民主主義の下では、一般社会の評価が現実するため、①候補者になる女性数 ②勝つ候補として政党が公認する女性数 ③候補者のうち当選できる女性の割合 が女性に不利に働いて、女性議員が少ない状態になっているからだ。

 ただし、「指導的立場に着く層に、女性の人材が十分でなかった」というのは、前からよく使われる言い訳で、女性に対して極めて失礼である。何故なら、才能ある女性の割合は男性と変わらず、教育や仕事の経験を通して蓄積された人的資本量で差が出るのであり、人的資本量の蓄積が同じ男女でも男女間で一般社会の評価が異なり、評価は女性蔑視側に傾くのを、私は経験済だからだ。この状況は、「女性の就業率は伸びたが、賃金は男性の74%しか得ていない」という統計データにも出ている。

 なお、マッキンゼー・レポートが「男性は可能性を買われて昇進するが、女性は過去の実績で昇進する」と指摘しており、これは昇進するには女性は実績を示す必要があるという意味だが、女性が実績を言うと今度はそれが悪い評価に繋がるため極めてやりにくい。つまり、「女性は表に立たず、控えめにして男性を立て、男性を支えるのがよいことだ」という古い時代の美徳や先入観が日本社会に存在し続けていることが、現代の積極的な女性の邪魔をしているのである。

2)女性登用の壁を取り払う手段としてクオータ制は必要か
 指導的地位は、*4-2のように、国会・地方議会議員、企業・公務員の管理職などを指し、いずれも目標との隔たりが大きいが、その理由は、これまで書いてきたとおり、①人的資本量蓄積の差 ②人的資本量蓄積が同じ男女に対する女性蔑視に傾いた評価 にある。

 その結果、世界経済フォーラムの男女格差指数で、日本は2019年に調査対象の153カ国中121位になった。日本女性は、そこまで人的資本量の蓄積ある人材がいないのかといえば、そうではなく、人的資本量蓄積が同じ男女に対する女性蔑視に傾いた評価に原因があるだろう。

 そのため、阻んでいる壁を低くするには、特に政治分野で一定割合を女性に割り当てるクオータ制を導入するのに、私は賛成だ。クオータ制は「逆差別」という批判もあるが、男性は①の人的資本量蓄積時点と②の人的資本量蓄積が同じ男女に対する女性蔑視に傾いた評価によって既に優遇されているため、「逆差別」という苦情は当たらない。

 つまり、皆さんもお気づきのとおり、男性は「あんな人が?」というような人も重要な意思決定をする地位についているが、女性は「もったいない!」と思う人でもそういう地位につけないでいるのは、女性側の性格の問題ではなく、女性の努力だけでは解決できないからである。

(5)政治で女性登用が進むと何が変わるのか
   
           2020.5.27時事   2020.6.13毎日新聞  2020.7.18東京新聞

(図の説明:日本は、検疫が不十分でPCR検査もケチったため、新型コロナの陽性者を陰性になるまで徹底して隔離することができず、国民全員に営業自粛・外出自粛を要請して経済を停止させた。そして、これによって破綻する中小企業や解雇される労働者を出さないよう、膨大な補正予算を組まざるを得なくなった。具体的には、右から2番目の図のうち地方自治体の医療体制強化交付金だけは後に残る投資にもなりうるが、持続化給付金・家賃支援・GoToキャンペーン・雇用調整助成金・10万円の特別定額給付金は、その場限りのバラマキと言わざるを得ない。補正予算は、1番左の図の1次補正16兆8,057億円、左から2番目の図の2次補正31兆9,114億円の合計48兆7,171億円を計上しており、当初予算102兆6,580億円との総合計は151兆3,751億円にもなる。その結果、1番右の図のように、日本の債務残高は名目GDPの225%と世界1の借金大国になり、国民をさらに貧しくすることなく借金を返すには、財政支出の優先順位変更・徹底した無駄遣いの排除・税収及び税外収入を合わせた歳入増加の取組が欠かせないのである)

 ざっくり言うと、日本は教育や社会を通じて性的役割分担が大きくなっているため、政治で女性登用が進むと、女性が担当している場合が多い子育て系(保育・教育)、介護系(介護・医療)、家事系(年金・消費税・家族の安全保障・栄養・環境)などの政策が国民本位に変更され、財政支出の優先順位が変わると思う。

 もちろん、女性なら誰でも政策が同じということはないが、私だったら、財政法を改正して発生主義に変更し、決算を迅速にして前年度の決算書を見ながら次年度の予算を作成できるようにして、資本生産性(支出あたりの効果)を上げる。また、年金支給額がその時の為政者の判断で変わることがないよう、また誰も損せず不満が出ないように、年金積立金を発生主義で積立てる積立方式にする。また、下の事例でも発想が異なる。

1)新型コロナの対応から見た医療
 世界主要国の2020年4~6月期のGDPは、*5-1-1のように、前年同期比で9.1%減少し、これはリーマン危機時の約3.5倍の落ち込みだそうだ。しかし、感染を早期に抑えて経済活動を始めた中国はプラス成長を達成し、ワクチンなどの研究も活発だ。

 感染抑制のために厳しく行動制限すれば生産や消費も抑制することになるため、GDPが落ち込むのは当然だ。そのため、他国が有効な手を打っていない早期に防疫と3週間の外出制限を行って、経済をプラス成長に導いたベトナムも立派で、対応の優劣は経済再生に明確に出ている。

 このような中、PCR検査をケチって感染者を重症化させ、検査方法のイノベーションも行わせず、治療薬も変なことを言って承認させず、ワクチン開発ものんびりしてきた日本で、*5-1-2のように、さらに、「新型コロナウイルスの『弱毒化』は、根拠が乏しい」という否定的な記事が掲載されたのには呆れた。

 しかし、「弱毒化した」らしいのは、各国で新型コロナの致死率が下がっていることからわかる。そして、ウイルス(生物)は変異しながら進化していくもので、変異そのものには意図がないため強毒化と弱毒化の両方の変異がありうるが、弱毒化して宿主を自由に行動させなければ他の宿主にうつって生き残っていくことができないため、弱毒化への自然淘汰圧がかかる。

 この淘汰を人為的に起こしているのは、*5-1-3の鶏卵を使って作る生ワクチン(病原ウイルスを数十代以上にわたって培養を繰り返すことによって弱毒化する)で、培養を繰り返しているうちに強毒化する株も弱毒化する株も現れるが、強毒化して鶏卵を殺してしまう株は捨て、弱毒化して抗体を作るものを残して、弱毒株を作るのである。また、人工的に淘汰して短い期間で目的に合った生命体を作るのは、農作物や家畜などで頻繁に行われている。

 なお、日本で致死率が下がったのは、重症化しにくいとされる若者の陽性者の発見が増えたこともあるだろうが、これは検査数が増えたことを意味するだけで、ウイルスが弱毒化しない証拠にはならない。

 つまり、女性は、(本能の違いからか)強制力を行使すること自体に快感を感じるわけではないため、経済を停滞させず、的確に予防や治療を行うことによって乗り越え、生活を防衛しようとする。これは、命と生活を第一に考えるからだ。

2)浸水想定区域に立地する介護施設
 浸水想定区域内の特養が浸水して多数の犠牲者が出たのは熊本県だけではなかったが、東京23区内の特養は、*5-2-1のように、その約4割が国や都の想定で洪水時に最大3メートル以上の浸水が見込まれる場所に立地しているというのに驚く。つまり、多くの地域で低地に建つ特養は多く、これらは浸水リスクを抱えている。

 誰が考えても避難弱者の高齢者を護る筈の特養が、高齢者をあの世に送るための特養になってはならない。そのため、水防法が、浸水想定区域に立地する高齢者施設などを「要配慮者利用施設」として、避難計画の策定や避難訓練の実施を義務付けているだけというのは、どこに避難して、どれだけの期間、どういう生活を送らせるのかを配慮しておらず、要するに親身になって考えていない。

 跡見学園女子大の鍵屋教授(福祉防災)は、「急速な高齢化を背景に施設の用地確保が優先され、災害リスクのある場所でも建てざるを得なかった」としておられるが、これらは速やかに安全な場所に移設すべきである。何故なら、そうしなければ、そこに居住する高齢者が危険なのはもとより、福祉人材や福祉設備も失うこととなり、結局は大きな無駄遣いになるからだ。

3)浸水エリアへの居住誘導
 国交省は、*5-2-2のように、自治体が住宅の立地を促す「居住誘導区域」を浸水想定区域内に設定している問題で、これを避けられない問題として、堤防整備などの水害対策と土地利用を一体的に進めて被害を防ぐ方針を固めたそうだ。

 しかし、それでは賽の河原の石積みのように、膨大な労力と費用をかけて、壊されては作り直し、また壊されては作り直すという、危険な上に無意味な作業を続けなければならない。それなら、高台を整地して21世紀の需要にマッチした居住区域を整備した方が、長期的にはずっと安上がりで意味ある投資になるだろう。

 そして、いつ浸水するかわからない地域は、田畑・牧場・森林・公園・運動場などとして、自然環境と融合させながら安全な街を造っていった方が、街の価値も上がる。そのため、浸水想定区域などのハザードエリアを公表し、計画的に安全な場所に街を移転するのがよいと考える。

4)エネルギーの選択とモビリティーの電動化
 日本は資源のない国と自らを定義づけて存在するエネルギー資源を利用せず、1973年のオイルショックの後に燃料価格が高騰し、1974年には消費者物価指数が23%も急騰したにもかかわらず、エネルギーを原油から切り替えようとしなかった。なお、原発による発電は始まったが、(既に何度も理由を書いたので長くは書かないものの)これも著しく高コストの電源だ。

i)使用済核燃料の保管場所にもなる原発運用の変更
 原発は、建設当初の方が現在より安全に配慮していた状態だ。その理由は、①2006年にモックス燃料を使ってプルサーマル発電を始めたが、これは原子炉内の圧力のゆとりが減るものであること ②2011年の世界最悪のフクイチ事故の後、原発の耐用年数を40年から65年に延ばしたこと ③*5-3-1のように、使用済核燃料の貯蔵容量を「リラッキング(原発の建屋内近くにある貯蔵プール内の核燃料の間隔を詰めて保管量を増やす操作)」して狭い場所により多くの使用済核燃料を詰め込むようにしたこと などである。

 九電の玄海原発で使用済核燃料の保管を現状の1050体から1672体に増えると、事故が起こった時の爆発力や被害はそれだけ大きい。そのほか、原発の敷地内に乾式貯蔵施設も作れば、原発は使用済核燃料の保管施設にもなるため、近隣住民の安全はさらに脅かされる。

ii)原発の立地
 日本原電が、*5-3-2のように、敦賀原発2号機の地質データを再稼働に有利なように書き換えていたことが発覚し、原子炉の真下に活断層のある可能性が高いそうだ。2011年の東日本大震災以前は活断層や大地震の影響をあまり考えず、ここに原発を建設したのだろうが、原発の安全性の問題に加え、原発を稼働させるためなら何でもやる電力会社の資質も問題だ。

iii)解決策 ← 自然エネルギーによる安価な電力とモビリティーの電動化
 日本がエネルギーを自給できれば、外国に支払う高額なエネルギー代金が原因で高コスト構造になっている部分が解決し、農業地帯で発電すれば農業の副収入となって農業補助金をカットできる。また、国内の製造業も息を吹き返すので、福祉財源が出て、消費税も下げることができ、その経済効果は大きい。また、日本が得意とする自給できるエネルギーは自然再生可能エネルギーであるため、世界の環境志向にも合致する。

 しかし、自然エネルギーでものを動かすには、自然エネルギーを電力に換え、モビリティーを電動化しなければならない。実は、これも1995年前後に、私が経産省に提案して手が付けられたので、それから25年経過した現在は、電動モビリティーが普通に走っていてもおかしくない時期なのである。

 なお、EVの普及で、埋蔵量が少なく精錬が難しいとされるレアメタルの需要が拡大する見通しで、レアメタルは中国からの輸入が多く中国は輸出規制もするため、日本政府は「①資源獲得競争激化を見据えて、安定供給確保と中国依存脱却を進める」「②60日分の備蓄を行う」としている。このうち①は、中国の輸出規制の影響は受けにくくなるが、資源代金が外国に支払われることに変わりはない。また、②の60日分の備蓄は、しないよりはよいという程度の対策だ。

 しかし、実際には、*5-4-1のように、世界で6番目に広い日本のEEZからはレアメタルも採掘でき、2020年代後半の商業化を目指しているそうだ。が、技術は生産現場で磨かれるものであるため、「高い技術力」などと威張る前に、輸出することも視野に早く実用化すべきで、経産省が「海底資源を有効利用できるのは数十年先」などと言っているのは、「やる気がない」と言っているのと同じである。

 また、1995年前後に、私は経産省に電動モビリティーの提案も同時に行っており、その後、トヨタはハイブリッド車、日産はEV、三菱自動車は燃料電池車を開発した。私は、ハイブリッド車は繋ぎでしかなく、EVと燃料電池車が本命だと思っていたが、EVは、日本では周囲から変な悪評を立てられて振るわなかった。

 今度、日産は、*5-4-2のように、2021年に10年ぶりにEVの新型車「アリア」を市場投入するそうだが、EVは米中欧で近未来の標準車として既に市民権を得ている。にもかかわらず、先行していた日産は、EVに研究資源を集中せず、新興企業の米テスラにも及ばなくなってしまった。私は、EVの構造はガソリンエンジンやハイブリッド車よりもずっと単純であるため、日本での新車販売価格は約500万円どころか200~300万円代にしてよいくらいだと思っている。

・・参考資料・・
*1-1:https://digital.asahi.com/articles/DA3S14570856.html (朝日新聞社説 2020年8月1日) 李登輝氏死去 築き上げた民主の重み
 台湾の李登輝(リートンホイ)元総統が亡くなった。97歳だった。独裁から民主への制度転換を平和裏に進めた業績は、歴史に深く刻まれる。強大化した中国が民主主義に逆行するなか、台湾の自由は、その重みをいっそう増している。1980年代後半、中国大陸出身者が中心だった国民党政権で、初めて台湾出身の総統となった。その後、政治の自由化を加速させた。民意を反映させる議会改革を断行し、初の総統の直接選挙を実現させた。米国を引き寄せ、台湾での権力闘争を勝ち抜く上で改革を推進力にしたとの見方もあろう。だが随所で国際潮流を読み、社会を混乱させることなく、民主化を軟着陸させた手腕は高く評価されるべきだ。中国共産党政権が同じころ、天安門事件で民主化の芽を武力で封じ込めたのとは対照的だった。台湾はいまやアジアの代表的な民主社会であり、高い経済力も身につけた。中国のような弾圧などしなくとも、安定した発展が可能であることを中国の人々に証明してみせた。ただ、中国との関係は悪化した。90年代半ばには台湾海峡危機が起き、緊張も高まった。人口2300万の台湾にとって、14億人の中国はあまりにも巨大だ。国防費は台湾の約15倍、経済規模は二十数倍に上る。圧倒的な力を持った共産党政権は政治改革を口にすることもなくなり、「一国二制度」を約束した香港では、自治の権利を強引に奪おうとしている。いまでは台湾の存在感の最大のよりどころは、民主と自由という理念にほかならない。コロナ禍でも、それは如実に示された。当局の積極的な情報公開によって市民が自発的に感染防止に動いたことが世界の注目を集めた。個の自由に否定的な中国の強権と比べ、個の自主と活力を尊ぶ文化が台湾の強みとして根付きつつある。日本は先の大戦に敗れるまで半世紀、台湾を植民地支配していた。その歴史を背景に、李氏は日本にとって特別な政治家だった。植民地時代の台湾で生まれ、京都帝大に学んだ。日本軍人として終戦を迎えた。流暢(りゅうちょう)な日本語で「22歳まで自分は日本人だった」などと語る言葉が、当時を肯定するかのように受け止められることもあった。だが、本人は動じることなく、ときに日本の政治家について「小手先のことばかり論じている」と厳しかった。日本は台湾との歴史にどう向き合ってきたのか。これからどんな関係をめざすのか。そんな重い問いを、日本人に静かに考えさせる存在でもあった。

*1-2:https://news.yahoo.co.jp/articles/910a1cdadb5c8634773df473e277e8e6b0902ea1 (Yahoo 2020/8/10) 李登輝元総統死去 台湾紙「流血なき民主革命を実現」 中国紙は「台湾化」の礎にいらだち
 「台湾民主化の父」と呼ばれた李登輝元総統が97歳で死去した。外省人(中国大陸出身者)の支配が長く続いた台湾で、本省人(台湾出身者)として初の総統になった李氏は民主化を強力に推進。本省人主導の政治を目指す台湾本土化(台湾化)路線をとり、中国と一線を画した台湾人意識を根付かせた。台湾紙は、今日の礎を築いた李氏を称賛して追悼。中国紙は李氏を「中華民族の罪人」などと痛罵した。
■台湾 流血なき民主革命を実現
 7月31日付の台湾大手紙、蘋果(ひんか)日報は社説で、前日夜に死去した台湾の元総統、李登輝氏について「政治家」「哲学者」「宗教家」の3つの顔を持つ「類いまれなリーダーだ」と総括し、「台湾に民主主義を残したことは彼の最大の業績だ」と高く評価した。同社説は、前任者の蒋経国の死去を受けて急遽(きゅうきょ)、総統に就いた李氏の政権が、当初はきわめて不安定だったことに言及。その上で「権威主義時代に頭角を現した李氏自身にも、強権政治家の側面があった。彼にとって民主主義は自らの理念であると同時に、政敵と闘争する際の武器でもあった」と指摘した。民主化を求める民意を背景に政敵を失脚させ、憲法改正によって立法委員(国会議員に相当)の全面改選や総統の直接選挙を実現した手腕が念頭に置かれている。「李氏には、同世代の政治家にない高い見識と行動力があり、彼の選択が結局、台湾を正しい方向に導いた」。こう述べる同紙は、李氏が台湾で成功させた民主化は「民主主義が欧米など西側社会のみならず、華人社会でも十分実現可能であることを証明した」とし、「中国大陸の人々も李氏に感謝し、敬意を払うべきだ」と主張した。別の台湾大手紙、自由時報の社説は、李氏が推進した台湾本土化(台湾化)路線を詳しく振り返った。李氏が総統だった当時、日本人作家、司馬遼太郎との対談で「台湾人に生まれた悲哀」について語ったことを紹介。さまざまな外来政権によって支配されてきた台湾人は長年、自分で自分の運命を決められなかったが、「李氏は生涯をかけてそれを変えた」と評した。本土化路線の推進により、中国からやってきた支配者たちの特権をなくし、台湾の価値観を重視する政治が実現した。李氏の最も素晴らしいところは、その過程で流血も大きな混乱もなしに「最も低コストで静かな革命を実現した」ことだと同紙は絶賛する。台湾がその後、中国の激しい統一攻勢に耐えてこられたのも李氏の民主化と本土化路線のおかげであり、台湾は「今も民主主義陣営の先頭として、独裁政権(中国)に対抗している」と同紙は誇った。これらの李氏を礼賛する論評に対し、中国寄りの新聞、中国時報は別の見方を示している。同紙は、李氏が台湾の民主化に果たした功績を評価しながらも、政治家としての李氏は「功罪相半ばする」と評した。李氏が晩年、両岸関係を「特殊な国と国の関係」とする「2国論」を提唱したことで、「中国大陸の強烈な反発を招き、両岸の対立関係を深化させた責任がある」と論じた。
■中国 「台湾化」の礎にいらだち
 このほど死去した李登輝氏について、中国官製メディアは死者に鞭(むち)打つような言葉を連ねた。中国共産党機関紙、人民日報系の環球時報(電子版)は7月31日の社説で「疑いなく中華民族の罪人だ」と罵倒した。なぜ、中国側にとって李氏は「罪人」とまでいうべき存在なのか。環球時報は「台湾の民主主義に祖国分裂の根を植え付けた」と一方的に断ずるが、その意味を理解するには中台両岸にまつわる歴史を振り返る必要がある。1949年、中国共産党との内戦に敗れた蒋介石(しょう・かいせき)率いる中国国民党政権が台湾に移った。国民党政権は台湾を「大陸反攻(中国大陸奪還)」の拠点と位置付けて一党独裁体制を続けたが、88年に本省人(台湾出身者)として初の総統となったのが李氏だった。民主化を進めた李氏は、その功績から「台湾民主化の父」と台湾内外で広く称される。民主化と同時に進めたのが、中国全土の統治を前提に国民党政権がとってきた政治体制を改めることだった。実効支配する台湾本島と周辺島嶼(とうしょ)に見合った体制へと改編し、「台湾化」を強力に推進。教育改革で「台湾人」意識も向上させた。これら李氏が進めたことは「台湾は中国の領土の不可分の一部」とする中国側には、中台両岸の「分断」を図るものにほかならなかった。環球時報は「李登輝が推進した台湾式民主主義は、最初から『台湾独立』に乗っ取られていた。そのため台湾の近年の政治の主軸は決して純粋な民主主義ではなく、その衣をまとった『台湾独立』なのだ」という主張を展開する。李氏が「民主主義を歪曲(わいきょく)した」がゆえに、「両岸には徐々に距離ができ、危機と対立が発展と協力に取って代わった」。中台両岸に距離が生じた責任をこう李氏に押し付けた。李氏が総統時代に取り組んだ「台湾化」は、現在の蔡英文政権に至る台湾の礎を築いたといえる。この現実が中国側をいらだたせている。日本との関係も糾弾の材料となった。国営新華社通信は7月31日に配信した論評記事で、李氏が「22歳までは日本人だった」などと語っていたことについて「植民統治を被った屈辱感が完全にない」と批判。台湾も領有権を主張する尖閣諸島(沖縄県石垣市)について李氏が「日本の領土だ」と公言したことも、「台湾当局の元指導者だったが、日本の利益を守るのに尽力した」との不満を呼んだ。官製メディアが痛罵を浴びせる様を通じ、李氏がなしたことに対する共産党政権のいらだちの大きさが改めて明白になったといえよう。

*1-3:http://www.cl.aoyama.ac.jp/history/sodaishi/t_links/shomondai/taiwan/kokko30.html (東洋史学の諸問題) 日中国交正常化・残された課題
~「正常化」の裏にある「不正常化」・今後の問題点を考える~
 1972年9月29日、日本の田中角栄首相、大平正芳外相、および中国の周恩来総理・姫鵬飛外相らの間において、日中共同声明が署名され、日中の国交は回復されることになった。この国交回復は、通常「正常化」と呼ばれる。では、正常化以前はどうであったか。正常でない、異常な状態であったということか。確かに、ある意味で異常であった。すなわち、まったく大陸を支配していない国民党政府(国府)を全中国の代表と認め、実質的に大陸を統治している共産党政府の支配権を認めていなかったのであるから、これは異常であったと言わざるを得ない。この意味において、まさに国交回復は「正常化」であり、これが1972年までずれ込んだことは、遅すぎたとも言える。フランスなどは、すでに1964年から北京との国交を回復していたのである。しかし、日本と中国の関係のみならず、アジア全体を考えたときに、1972年以降がまったく「正常」であったのか、といえば、決してそうとはいえない。むしろ、1972年以降、かえって異常な状態になってしまった面もある。「台湾問題」だ。日中の関係は、このとき「正常化」し、両国の関係は安定化へ向かった。だが、台湾は見捨てられ、日本と台湾が国としての交流が絶たれただけではなく、中国の圧力によって、台湾の国旗や総統府をTV画面で流すことすら難しいといった、極めて不健全、かつ「不正常」なものとなってしまったのである。「台湾問題」とは何か。私が報道等を総合的に見て感じることは、日本の立場から見れば、事実上(de facto)台湾が中国の一部分とはなっておらず、主権独立国家を構えているにも関わらず、中国がこれを承認せず、急速な軍備拡張を続け、戦争をも辞さない非平和的姿勢を取っていること、これが「台湾問題」の核心である。だが一方、中国の立場としては、日本(米国も同様)がこの中国の姿勢に必ずしも同意せず、台湾併合という現状変更には積極的ではなく、むしろ台湾の民主化を歓迎している点、さらに中国の武力行使に断固反対の立場をとっている点が、「台湾問題」なのである。また、「台湾問題」という言い方自体、若干の政治的偏向でもある。なぜなら、台湾の立場としては、問題の核心は中国の覇権主義であるから「中国問題」であって、台湾側の問題ではない、ということにもなる。一般に「台湾問題」と言わず、「両岸問題」と称する所以である。日中共同声明中において、日中両国は、「中華人民共和国政府は,台湾が中華人民共和国の領土の不可分の一部であることを重ねて表明する。日本国政府は,この中華人民共和国政府の立場を十分理解し,尊重し,ポツダム宣言第八項に基づく立場を堅持する。」(外交青書17号) 。と宣言している。この表現は、日本では通常、中国政府に譲歩しすぎであると批判されるが、ただそう簡単に言い切れない点もある。現実には他の西側諸国と中国との間の取り決めの表現も大差なく、しかも「承認」という言葉を日本が決して使わなかった点において、かならずしも日本が突出して中国に譲歩したとは言えない。また、台湾の帰属に関してはまだ未決定という議論も存在し、少なくとも日本が積極的に台湾の中華人民共和国への編入を促進する内容とはなっていないのである。しかしながら、この声明と続く台湾断交以降、日本と台湾という二つの国家が相互に承認を取りやめるという、新たな「異常」状態が発生してしまったのは確かであり、最低限、台湾関係法を整備して時間をかけて国交を回復した米国と比べれば、田中・大平は長期的見通しなく拙速であったとも言える。中共・国府両方とは同時に国交を維持しないのは、北京の要請であったのみならず、「一つの中国」を堅持しようとした蒋介石の望みでもあった。しかしながら、断交とは、そもそも戦争を行うか、国家の消滅といった事態を前に行われるものであり、台湾という一国家と主要国が次々断交してしまうということ自体、地域に大きな不安定要素を抱え込むことになることは、明らかだったはずだ。日中国交正常化は、東アジアにおける安全と経済的繁栄を確実にしてゆく契機として、貴重な一歩であり、慶賀すべきであることに、間違いはない。しかし、それが台湾という事実上の一国家との「断交」の上に成り立っていることは、やはり現在の東アジアが内包する歪みであり、安全保障上の不安定要因である。多くの人々の犠牲の上にではあるが、日朝関係が、相互に国家承認していない、という異常状態を脱しつつあり、安全が確保されつつある現在、東アジアにおいて次に求められるのが台湾海峡の安定であることに、異論はないであろう。筆者は歴史研究者であって、政治家でも外交官でもないし、国際政治専門家ですらないから、その最も良い具体的な道筋を描くことはできない。また、台湾が今後、主権独立国家としての道を歩むのか、あるいは中国との一体化を選択するのかは、当事者たる台湾人自身の選択に委ねられるべきことであって、決して部外者である我々が口を挟むべき問題ではない。しかし、1972年の日中国交回復という、アジアにとっての安定化の大きな画期が、実は多くの課題を残したものであり、そのときから30年を経た現在、それらの課題をどう解決してゆくかが問われているのは確かであり、これは我々アジア研究に携わるもの一人ひとりが考えなくてはならない、問題である。

*1-4:https://news.biglobe.ne.jp/international/0812/rec_200812_0445300575.html (Biglobe 2020年8月12日) 森元首相の台湾滞在はわずか4時間、台湾学者「日本は台日友好よりも対中関係」—中国紙
 中国紙・海峡導報は12日、森喜朗元首相が亡くなった李登輝氏の弔問のために台湾を訪れたことについて、台湾の学者から「日本は台湾との友好よりも対中関係を気にしている」との指摘が出たと伝えた。記事によると、台湾中興大学国際政治研究所のアシスタントプロフェッサー・劉泰廷氏は森氏の訪台が日台関係に与える影響について、「マイナスではないがプラスでもない」と評価。日本からの弔問団に安倍政権の閣僚がいなかったことや、人数が極めて簡素だったこと、森氏ら一行が台湾に「4時間しか」滞在しなかったことに言及し、これらは3つのことを明らかにしていると指摘した。それは、「日本政府が訪台において『官』の色合いをできる限り抑えたかったこと」「弔問の目的をはっきりさせ、かつスピーディーに終わらせることで、政治的な意味を薄めたかったこと」「森氏の談話では日台協力などについて一切触れられず、(弔問という)訪台の焦点がずらされたくないことが明らかだったこと」だと説明。「森氏と日本政府の接点は安倍晋三首相から依頼されたという点だけであり、その他は基本的に民間の訪問団と言っていい。政府を代表しない訪問団(の派遣)で『台日友好』と言えるだろうか。疑問が残る」とした。劉氏はこの背景に、日本が中国との関係を気にしたことがあると指摘。「日本は新型コロナウイルスの影響で経済的損失を、中国との経済協力によって回復する必要がある。米国など主要な同盟国は中国に強硬な姿勢を示しているが、日本は両者の間でバランスを取っている」との見方を示した。

*1-5:https://jp24h.com/post/106474.html (JPnews August1.2020) 登輝氏が強化した対米関係 蔡総統引き継ぐ
 中国からの統一圧力に直面する台湾にとり、安全保障を依存する米国は最大の後ろ盾だ。台湾の民主化を進めた李登輝(り・とうき)元総統は、「自由と民主主義」を旗印に米国との関係強化に取り組んだ。李氏が切り開いた米台関係の道筋は、現在の蔡英文(さい・えいぶん)政権にも引き継がれている。後に「ミスター・デモクラシー(民主化の父)」と称される李氏の政界進出も、米国の存在と無縁ではなかった。1979年の米台断交とそれに伴う米華相互防衛条約の失効は、独裁体制の蒋経国(しょう・けいこく)政権に衝撃を与えた。外憂を抱えた蒋経国は足下の体制安定のため、人口で多数を占める李氏ら「本省人」を政権に登用、李氏の総統就任に道を開いた。また、米議会などから批判を受け、38年間続いた戒厳令の解除や野党・民主進歩党の結党容認など、民主化の基礎となる自由化を進めた。蒋経国の死去で総統に昇格した李氏は民主化を進める一方、社会主義の中国と対峙(たいじ)する上で、米国との関係強化に「民主主義」を利用した。95年6月には、対中融和的なクリントン政権を窓口とせず、自由と民主主義という理念への共感を得やすい米議会から支持を取り付け、現職総統として初の訪米を実現した。初の政権交代を実現した民進党の陳水扁(ちん・すいへん)氏は、2期目に「台湾独立」志向を強めて米国に「トラブルメーカー」とみなされ、国民党の馬英九(ば・えいきゅう)氏に政権奪還を許す一因となった。馬氏も政権発足当初は「親米・和中」路線が米国に歓迎されたが、対中傾斜を強めて米国との距離感が目立つようになった。特に南シナ海問題で中国と歩調を合わせたことで、欧米から批判を招いた。現在の民進党の蔡総統は、陳、馬両政権の反省から、中国と距離を保つ一方で、中国を挑発せず低姿勢を取る「優等生」的な対応で、米国の支持を得ている。李氏を彷彿(ほうふつ)させる「理念の近い民主主義国家との連携」を強調する姿勢は、米議会、トランプ政権の双方から支持されている。

<日本女性は?>
*2-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200730&ng=DGKKZO62037690Z20C20A7KE8000 (日経新聞 2020.7.30) 女性活躍どこまで進んだ(下)「昇進」は改善も なお賃金格差、原ひろみ・日本女子大学准教授(1970年生まれ。東京大経卒、同大博士(経済学)。専門は労働経済学、実証ミクロ経済学)
<ポイント>
○高賃金の男女で説明できない格差が拡大
○昇進に伴う昇給の格差もガラスの天井に
○外形的な働き方の差解消だけでは不十分
 日本の男女間賃金格差は改善されてきている。厚生労働省「賃金構造基本統計調査」によると、労働の対価である賃金の男女差は30年間で約23%も縮小した。だがこれは女性の教育水準や勤続年数の上昇が反映された結果でもあるので、手放しで評価できない。女性労働者の教育や勤続年数は上昇しているが、今でも男性労働者の水準には届いていない。教育、勤続年数、労働市場での経験などの人的資本は生産性ひいては賃金を規定するので、人的資本量が異なる労働者の間に発生する賃金格差は合理的な範囲といえる。よって私たちが注目すべきなのは、人的資本量に男女差があることを考慮しても残される男女間賃金格差、すなわち人的資本の男女差では説明できない格差だ。この説明できない格差は「目には見えない障壁」の存在を示唆する。「ガラスの天井」はその一つで、企業や官公庁、アカデミアなどで女性が地位の高い仕事に就くことを阻害する見えない障壁のことだ。人的資本の男女差をコントロールしたならば、男性の中での高収入と女性の中での高収入に違いはないはずだ。例えば人的資本の差をコントロールしても、女性の中で上位10%である女性の賃金が、男性の中で上位10%である男性の賃金よりも低いという状態が起きているとしよう。この状態は人的資本の男女差以外の理由で、女性の中では高賃金だとしても、男性ほどには高賃金の仕事には就けていないと解釈できる。よって賃金分布の上位で説明できない男女間格差が観察される場合、ガラスの天井があるととらえられる。逆に賃金分布の低位で説明できない格差が観察される場合、「床への張りつき」があると考えられる。低賃金の女性は低賃金の男性と比べても、低い賃金しか得ていないことを意味する。こうした説明できない格差は、要因分解という計量経済学的手法を用いることで推定できる。分析手法の発展のおかげで、賃金分布を通じた要因分解が可能となり、平均だけでは把握できなかったことが分かるようになってきた。例えばジェームス・アルブレヒト米ジョージタウン大教授らが、女性が働きやすいとされるスウェーデンですら、ガラスの天井が強く観察されることを発見した。これをきっかけに、世界各国で同様の分析が競って進められている。以下では、筆者による日本の分析結果を紹介したい。図は1980~2015年のうち5カ年分のデータを使い、人的資本の男女差では説明できない男女間賃金格差を分位数(パーセンタイル)ごとにプロットしたものだ。縦軸の値が大きくなるほど説明できない男女間賃金格差が大きいことを意味する。なお短時間労働者は分析から除外した。まず15年のラインの左側に着目すると、賃金が下位20%の男女の間の説明できない格差は15.4%で、中央での格差12.5%より2ポイント以上大きい。このことから、低賃金の男女の賃金格差が相対的に大きいことがわかり、床への張りつきが起きていると解釈できる。次に15年のラインの右側では、分布の中央から高位に向けて加速度的に男女間格差が大きくなっている。上位10%の男女の賃金格差は25.7%で、中央での格差との差は13.2ポイントとなる。高賃金の男女の賃金格差も相対的に大きいことがわかり、ガラスの天井の存在を強くうかがわせる。時系列で比較すると、90年から15年に向かうにつれて、分布の低位と中央での男女間格差の差は小さくなっている。近年では床への張りつき現象は弱まっていると解釈できる。逆に分布の高位と中央での男女間格差の差は拡大し、ガラスの天井現象はより強く観察されるようになっている。諸外国の研究から、発展途上国の多くで床への張りつきが観察される。一方、先進国の多くでガラスの天井が観察される。欧州では床への張りつきが観察される国はイタリアやスペインなどに限られることが明らかにされている。日本はガラスの天井と床への張りつきの両方が観察される先進国では特殊な国といえる。本稿では詳細な説明は省略するが、床への張りつきとガラスの天井は、事業所間よりも事業所内で強く観察される。つまり女性が賃金の低い企業に配置されることから生まれる男女間格差よりも、企業内で女性が賃金の低い仕事に配置されることから生まれる男女間格差の方が大きいわけだ。ではガラスの天井は何に起因するのだろうか。当然、女性の管理職への昇進が難しいことが一因と考えられる。以前と比べれば、管理職の女性は公表統計を見ても増えている。だが学歴や勤続年数などの男女差をコントロールしたうえで管理職への昇進確率を計算しても、部長・課長・係長のいずれの職位に関しても、90年と15年の両年で男性より女性の昇進確率が低いことに変わりはない。一方、女性の昇進確率を両年で比較すると、90年より15年の方が昇進確率は高いことが明らかにされている。にもかかわらず、近年ガラスの天井が強く観察されるのはなぜだろうか。女性の管理職への昇進確率が高まると同時に、昇進に伴う昇給の男女間格差が大きくなっていると考えられる。90年と15年の昇進に伴う昇給を推定すると、男性では部長・課長・係長のいずれの職位に関しても、90年よりも15年の方が高くなっている。一方、女性ではどの職位に関しても、15年の方が低くなっている。企業には同じ役職でも基幹的なポストとそうではないポストがある。例えば将来の幹部候補が配属される花形のポストがある一方、さほど重要ではないポストや名ばかり管理職のようなポストもある。分析結果を踏まえると、女性は後者のポストに配置されている可能性が高いと考えられる。女性は以前より教育や勤続年数を高めて職位も上がっているが、賃金という処遇の最終段階では必ずしも報われていない。この状況は、比喩的に「swimming upstream現象」と呼ばれる。流れに逆らいながら懸命に上流に向かって泳いでも、逆流に押し戻されてしまい最後まで登り切れない状況だ。こうした現象は日本だけでなく米国、英国、カナダでも観察されている。職位などの働き方や仕事の男女差が縮小しても、労働の対価である賃金の男女差が解消されなければ、労働市場での男女間格差が解消されたとはいえない。日本では女性活躍推進法が施行され、常時雇用する労働者が301人以上の事業主は、女性従業員の勤務状況を数値で把握し、改善のための数値目標を立て、実行に移すことが義務付けられた。22年4月には101人以上の事業主に拡大適用される。そこでは、管理職に占める女性労働者の割合や平均勤続年数の男女差などが必ず把握すべき項目とされる。だが男女間賃金格差の解消には、外形的な働き方の男女差の解消を目指すだけでは不十分であることが、この分析結果から示唆される。

*2-2:https://digital.asahi.com/articles/DA3S14385475.html?iref=comtop_list_gold_n04 (朝日新聞 2020年3月1日) 東大、「2割の壁」を破れるか 男社会の偏り、学生も大学も「変えたい」
■〈Dear Girls〉東京大学の学部学生の女子比率19.3%(2019年5月)
 東京大学の学部生に占める女性の割合は、一度も2割を超えたことがない。東大の女子学生がつくるフリーペーパー「biscUiT(ビスケット)」は昨秋、「女子2割の壁」を特集した。代表で2年の徳永紗彩(さあや)さん(20)は「女性差別的だ、嫌だよね、という会話が増えた。女子が少ないことの背景や影響について、調べてみようと思った」と話す。最近では、東大男子と他大女子が入る「東大女子お断り」のサークルが、学内外から批判を浴びた。キャンパスでも、そうしたサークルの男子学生が、他大女子の話題で盛り上がる会話が聞こえてくる。「アタマが弱い」「あの子はかわいい」。見下したり、外見を「品評」したり。徳永さんは「女性をモノのように扱っている。差別意識がにじみ出ていて苦痛」と話す。
     *
 日本の大学全体では学部生の45・4%が女子だが、東大は19・3%。京都大の22・3%や大阪大の34・3%と比べても低い。昨年の入学式の祝辞で、社会学者の上野千鶴子・東大名誉教授は「2割の壁」や、女性教授が1割に満たないことなどを挙げ、男性優位の構図が変わっていないことを批判した。「biscUiT」の特集は、進学校とされる各地の共学高校に取材。東大の受験者数に明らかな男女差があると伝えた。東大生と高校3年生、計約1千人へのアンケートでは、親元から通える大学に行くよう親などから言われたことがある高校生のうち、7割が女子だった。徳永さんは「社会が変わるのは難しい。社会のトップ層になりうる人が多く輩出する大学だからこそ、東大が先に変わるべきだと思う」と話す。女子の受験生を増やそうと活動する学生団体もある。「女子高校生のための東大オリエンテーションキャンプ」は、女子高校生向けのキャンパスツアーなどを企画してきた。前代表で2年の山田碩人(ひろと)さん(20)は「女子には上京や浪人をさせたくない、高学歴は必要ないという考えは根強い。男子とはスタートラインに立つまでに越える壁の数が違う」と話す。男子学生にも「自分たちの問題」ととらえてほしくて、2月に団体名を「polaris(ポラリス)」に変えた。
     *
 東大当局は「2割の壁」をどう考えているのか。「グローバルに活躍する人材を育てるにあたり、こうした環境は問題だ」。東大の松木則夫理事はそう話す。「女子比率の低さは将来にわたり、『男社会』の偏りを助長してしまう。海外の大学改革のアドバイザーからは、まずジェンダーバランスの悪さを何とかしろと言われた」。学内最多の2千人超が籍を置く工学部では、女子は1割に満たない。女子の受験者数が増えないのは、周囲の期待に男女差があり、「最難関」をめざすモチベーションに影響しているからだとみる。学内広報も昨年12月、「2割の壁」を特集。大学の公式サイトのトップページに「未来の形:女子のちから」と掲げ、「志ある女子の力に期待します」との五神(ごのかみ)真総長のメッセージも添えた。上京の負担を軽くしようと、女子学生向けに家賃補助制度をつくり、昨年新設した寮でも、今春入学する女子学生向けに50室の枠を用意した。しかし、女子の受験者は目立って増えてはいない。海外では差別是正や多様性の確保のため、人種や性別に応じて枠を設ける大学がある。ただ、松木さんは、一般入試に女子枠を設けることについては慎重だ。「大学内外の理解を得るのは難しい。社会の側の意識も変わってもらわないと……」。この春、「2割の壁」はどうなるか。2020年度入試の志願者9259人のうち、女子は20・5%だった。
◇「ジェンダーギャップ(男女格差)」の大きさを国別に順位付けした世界経済フォーラムの昨年の報告書で日本は153カ国中121位。過去最低の順位でした。この社会はどのような男女格差を抱えているのでしょうか。現在地を4回の連載で報告します。次回以降のテーマは「賃金」「家事・育児」「メディア」です。

*2-3:https://www.agrinews.co.jp/p51520.html (日本農業新聞 2020年8月2日) 女性参画へ意見募集 基本計画策定で素案 内閣府
 内閣府は、女性の社会参画の拡大に向けて今後5年間の政府方針を示す「第5次男女共同参画基本計画」の素案に関する国民への意見募集を、1日から始めた。同計画素案では、農業の持続性の確保には女性の活躍支援が欠かせないと明示。「田園回帰」で都市部の女性が農山漁村に関心を示す動きを後押しする。親元や結婚による就農に加えて雇用や新規参入など女性の農業への関わり方が多様化し、それぞれの立場に合わせた細やかな支援が必要とした。有識者会議がまとめた新たな基本計画の素案は、「2020年までに指導的地位に占める女性の割合を30%にする」としていた政府目標の到達が見通せないことから、「20年代の可能な限り早期に30%を目指す」と先送りした。地方では固定的な性別役割分担の意識が根強く、若い女性が大都市圏に転入する要因になっていると指摘。農業でも女性の都市流出で基幹的従事者に占める女性の割合が低下していることに危機感を示した。地方公共団体や経済界、農林水産団体と連携して意識改革を求めていく。具体的には、農業委員やJA役員の女性登用を一層進める。地域ごとの女性グループ形成に加えて、全国規模で女性グループ間のネットワークを作る。女性が働きやすい環境づくりで、「農業女子プロジェクト」の企業や教育機関との連携を強化。労働時間の管理や経験を積む道筋の提示、コミュニケーションの充実を推進する。政府は意見募集を経て秋ごろに有識者会議で計画案を取りまとめる。12月にも具体的な目標数値を盛り込んだ基本計画を閣議決定する予定だ。意見募集は、9月7日まで。内閣府男女共同参画局のホームページからインターネットで送信するか、郵送する。8月25、29の両日にはオンラインで公聴会を開く。希望者は同局のホームページから事前に申し込む。

<女性蔑視する会社の業績>
*3-1:https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2020-07-28/QE5T47DWRGG201 (Bloomberg 2020年7月28日) 日産は今期無配の方向、業績悪化でコスト削減なども加速-関係者
 経営の立て直しを進める日産自動車は今期(2021年3月期)の年間配当を見送る見通しだ。28日午後の決算発表時に公表する。事情に詳しい複数の関係者が明らかにした。未公表の情報だとして匿名を条件に話した関係者らによると、5月の決算発表時点では「未定」としていた今期の年間配当をゼロとするとの見通しを示す方向だ。日産はカルロス・ゴーン元会長を巡る一連の問題で販売が低迷していたところに、新型コロナウイルス感染拡大の影響による世界的な新車需要の急減が追い打ちをかけて業績が悪化。前期(20年3月期)はリストラに伴う固定資産の減損などで、6712億円の純損失と2000年3月期以来の規模に拡大していた。前期の年間配当は期初に40円を見込んでいたが、結果的には前の期比47円減となる10円まで減少した。アライアンスのパートナーで日産と同様に業績が悪化している三菱自動車も今期の年間配当をゼロとする方針を示した。日産の株価はこの日の取引開始直後に一時前日比4.8%安となる408.9円の日中安値を付けた。その後、下げ幅を縮小していたが午後に今期の無配方針の報道が出たことで再び下落幅が拡大、4.3%安の410.8円で取引を終えた。日産広報担当の百瀬梓氏はコメントを控えた。ブルームバーグが集計した第1四半期(4-6月期)の営業赤字額のアナリスト予想平均値は2529億円となっていたが、関係者によると、日産が進めてきたコスト削減の進展などが奏功して実際の赤字額は1500億円程度にとどまる見通し。関係者によると、きょう午後5時に発表を予定している決算では、5月の時点では新型コロナが事業に与える影響が未確定なため合理的に算定するのが困難として公表していなかった今期の業績予想も発表する見通し。ブルームバーグが集計したアナリスト15人の今期の純損失の予想平均値は3124億円となっている。

*3-2:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO62036490Z20C20A7I00000/ (日経新聞 2020/7/29) 三越伊勢丹、最終赤字600億円 21年3月期消費低迷続く
 三越伊勢丹ホールディングスは29日、2021年3月期の最終損益が600億円の赤字(前期は111億円の赤字)になりそうだと発表した。赤字額は店舗閉鎖で損失を出し、過去最大だった10年3月期(635億円)に並ぶ規模となる。新型コロナウイルスの感染拡大による消費低迷が長引き、売り上げが減る。業績悪化を受け、未定としていた年間配当を前期比3円減の9円と10年ぶりに減らす。新型コロナで4~5月にかけて主要店舗での休業が相次いだ。再開後も回復が鈍く、7月以降の売上高も平常時の15%減で推移するとみている。三越銀座店(東京・中央)などのけん引役となっていた訪日客需要はゼロになる見込み。売上高は26%減の8230億円、営業損益は380億円の赤字(同156億円の黒字)に転落する。10年3月期の巨額赤字は伊勢丹吉祥寺店や三越池袋店など3店舗を閉店したのに伴う特別損失が主因で、営業損益は黒字だった。今期は収入が落ち込んでおり、新型コロナ影響による消費の落ち込みの深刻さが際立つ。同日発表した20年4~6月期の連結決算は最終損益が305億円の赤字(前年同期は60億円の黒字)だった。店舗休業で売上高は前年同期比53%減の1316億円に落ち込んだ。営業再開後の6月も売上高は休業前の8割弱にとどまった。

<政治分野における女性の登用>
*4-1:https://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-1162740.html (琉球新報社説 2020年7月26日) 女性登用未達成 看板倒れの責任は政府に
安倍政権が成長戦略の柱とした「指導的地位に占める女性を2020年までに30%とする」目標を先送りした。「女性が輝く社会」をうたってきた安倍晋三首相だが、現在の女性閣僚はわずか3人、衆院議員は9・9%だ。主要政策ですら達成できていない。看板倒れと言われても仕方がない。達成できなかった責任を問われるのは政府であるはずだが、そう受け取ってはいないようだ。自民党の世耕弘成参院幹事長は目標の先送りに関し「指導的立場に着く層に、女性の人材が十分ではなかったのが要因だ」と述べた。未達成の責任を女性に押しつけている。男女雇用均等法から35年、採用差別は少なくなったかもしれないが、待機児童問題に代表されるように女性が働きながら子育てをする環境はいまだ整っていない。女性が出産や育児によって職を離れ、30代を中心に働く女性が減少する「M字カーブ」は日本に特徴的な現象だ。政府は03年に「20年までに30%」の目標を掲げ、13年には成長戦略に位置づけた。女性の就業率は伸びたものの、賃金は男性の74%しか得ていない。非正規労働の比率も女性が圧倒的に多い。雇用の格差は歴然としている。加えて女性登用に社会のためらいはないだろうか。11年のマッキンゼー・レポートは「男性は可能性を買われて昇進するが、女性は過去の実績で昇進する」と指摘した。昇進に当たって女性は実績を示す必要があるという意だ。多くのハードルに管理職予備層は育ちにくい。その結果、企業の役員や課長相当職以上の女性は14・8%にとどまる。米国やスウェーデンの40%超、英国やノルウェー、フランスの30%超と、先進国と比べても開きは大きい。18年に選挙で男女の候補者数を均等にする努力義務を課した「政治分野の男女共同参画推進法」が誕生したが、直後の参院選では女性候補者の大きな増加につながらず、県内でも法成立後初の県議選で候補者64人中、女性は8人、12・5%でしかなかった。女性登用を巡る障壁を除くことが「女性が輝く社会」には必須だ。世界的なコロナ禍で対策に手腕を発揮したのは台湾やドイツ、ニュージーランドなどの女性首脳だった。日本で、準備もなく全国一斉の休校要請が出され大混乱を引き起こした時には政権に生活者の目線が薄いことが露呈した。意志決定の場に女性が圧倒的に少ないことが背景にあると考えざるを得ない。政府は30%目標を「20年代の可能な限り早期に」と改めた素案を公表したが、そこにも到達するための具体的な道筋や手法は示されていない。単に数値目標の旗を振るだけでなく、女性が活躍するために求められる環境など、土台づくりから始め、実効性のある施策に取り組むべきだ。

*4-2:https://www.shinmai.co.jp/news/nagano/20200727/KT200723ETI090001000.php (信濃毎日新聞 2020年7月27日) 女性の登用 壁取り払う手だてが要る
 2020年までに、各分野で指導的地位に占める女性の割合を3割にする―。政府が03年に掲げた女性登用の目標は実現が遠い。だからといって、いつまでに達成するかをぼやかす形で先送りしていいはずがない。21年度から5年間の男女共同参画基本計画である。内閣府が有識者会議に示した素案は、新たな目標時期を明示せず、「20年代の可能な限り早期に30%程度を目指す」とした。姿勢を後退させるのはあべこべだ。指導的地位は、国会や地方議会の議員のほか、企業や公務員の管理職などを指す。いずれも、目標との隔たりは大きい。国会は参院で2割を上回るものの、衆院は1割に届かない。地方議会も14・3%と少なく、女性が一人もいない議会もある。企業や公務員の管理職も15%ほどで、4割を超す米国や3割台の英国、フランスとは開きがある。世界経済フォーラムが発表している男女格差の指数で、日本は昨年、調査対象の153カ国のうち121位と過去最低に沈んだ。アジアでもタイやベトナム、中国、韓国に後れを取る。議員や管理職が少ないほか、賃金格差が大きいことが反映しているという。「女性活躍」は、安倍政権が成長戦略の柱と位置づける看板政策だ。15年に成立した女性活躍推進法は、企業に女性登用の目標や計画の策定を義務づけ、取り組みを促してきた。ただ、政策の軸足は労働力不足を補う経済対策にあり、賃金格差をはじめ働く場での不平等の是正はなおざりだ。「家庭を守るのは女性」といった意識も根強く、家事や育児、介護の負担は依然、女性に偏っている。掛け声をかけて自主的な取り組みに任せていても、女性が置かれた状況は大きく変わらない。阻んでいる壁をなくし、参画を後押しする具体的な手だてが要る。その一つが、一定の割合を女性に割り当てるクオータ制だ。既に多くの国が議員選挙で取り入れ、企業の役員についてもノルウェーやオランダが制度化している。アイスランドは、中規模以上の企業に取締役の4〜6割を女性とするよう定めているという。日本の政府、与党は後ろ向きだ。経済界からも「逆差別になる」といった声が聞こえてくる。けれども、女性への構造的な差別をなくしていくには、制度の後ろ盾が欠かせない。あらためて目標年度を明確にし、クオータ制を含め、踏み込んだ議論をすべきだ。

<女性政治家が増えると何が変わるか>
*5-1-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200818&ng=DGKKZO62731860X10C20A8MM8000 (日経新聞 2020.8.18) 主要国経済1割縮小 リーマン時の3.5倍、4~6月 GDP前年同期比 感染早期抑制が左右
 世界の主要国の2020年4~6月期の実質国内総生産(GDP)は前年同期比9.1%減少した。リーマン危機時の約3.5倍の落ち込みで、コロナ禍の傷の深さが鮮明になった。それでも感染を早期に抑え、経済復調に動いた中国やベトナムはプラス成長を達成した。感染抑制と経済活動の両立の重要性を改めて浮き彫りにした。世界GDPの3分の2を占める日米英中とカナダ、ユーロ圏の計24カ国を「主要国」として集計した。GDP統計では変化を早く捉えられる前期比を使うことが多いが、コロナ禍で経済規模が平常時に比べてどれだけ縮んだかをみるため前年同期と比べた。リーマン危機の影響がピークだった09年1~3月期は2.6%減だった。米グーグルがスマートフォン利用者の位置情報をもとに移動先を分析したデータでみると、感染抑制のために厳しい行動制限を導入して人出が少なかった国・地域ほど、GDPの落ち込みが大きい。4~6月期の人出(中央値)が52%減と主要国で最も減ったスペインと英国はGDP減少率も上位2位を占めた。世界旅行ツーリズム協議会によると、主要経済国でGDPに占める観光の割合が最も高いのがメキシコ(15%超)、2位がスペイン(14%超)。観光依存が高いほどGDPも落ち込んだ。スペインは6~9月に国外から多数の観光客が訪れるが、今年は6月下旬まで受け入れを停止。6月の国外からの来訪者は前年同月比97.7%減った。英国は新型コロナウイルス対策が遅れ、他国よりロックダウン(都市封鎖)が長引いた。日米欧の大半は5~6月初旬に段階的に再開したが、英国は飲食や宿泊の休業解除が7月にずれ込んだ。主要国で4~6月期に唯一、プラス成長となったのが中国(3.2%増)だ。企業活動が先導する形で、2四半期ぶりにプラス成長に戻した。国の政策頼みの面が強く、民間投資はマイナスのまま。力強さを欠く家計や民間に恩恵が波及するかが持続力のカギを握る。主要国以外ではベトナムもプラス成長だった。早期のコロナ防疫で外出制限を4月の約3週間にとどめたことが奏功し、4~6月期の人出はコロナが本格化する前に比べて3%減まで戻った。英エコノミスト誌の調査部門のエコノミスト・インテリジェンス・ユニットによると、日米欧7カ国(G7)は7~9月期にすべて前期比プラスに戻る見通し。それでもGDPの規模は米国が17年、英独仏とカナダが16年、日本が12年、イタリアは1997年の水準にとどまる。正常化には時間がかかりそうだ。

*5-1-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200816&ng=DGKKZO62692910V10C20A8EA1000 (日経新聞 2020.8.16) 新型コロナウイルス「弱毒化」根拠乏しく 変異で感染力に影響も
 新型コロナウイルスの変異に関する研究が注目されている。英メディアで「ウイルスは弱毒化している」とみる専門家の意見が紹介されたことなどがきっかけだ。現時点でウイルスの危険性の低下を示す科学的な裏付けはない。ウイルスの変異は一定の確率で起こる。病原性や感染力がどう変化するか、世界規模の継続的な分析が重要だ。英テレグラフ紙で6月中旬、イタリアの医師による「弱毒化」の発言が掲載されて話題となった。各国で発表される新型コロナの致死率が地域や時期ごとに違うことなどから、ウイルスの変異に注目が集まる。しかし病原性の低下を示す科学的な根拠は無く、あくまでも期待を含んだ臆測にとどまる。それでもウイルスの新たな変異が見つかったとの報告はある。米ロスアラモス国立研究所などの研究チームは7月上旬、特定の変異を持つウイルスが世界中に広がったとする論文を米科学誌セルに発表した。感染時に働くウイルス表面のたんぱく質のうち、1カ所だけ構造が変化していた。米国や欧州、アジアで見つかっている。このウイルスは変異前より感染力が増している恐れがある。米スクリプス研究所などの研究チームは実験室内でこの変異を再現し、構造が変化したたんぱく質の方が安定性が増したと報告した。安定性が増すと感染力も高まると考えられる。論文は査読前だが、動物のコロナウイルスを研究する北里大学の高野友美教授は「手法も結論も信頼性は高い」と評価する。一般的にウイルスは一定の確率でランダムに変異を繰り返す。しかしゲノム(全遺伝情報)が変異しても性質は変化しない場合がほとんどだ。まれにウイルスの構造や機能が変わり、危険性が増す「強毒化」や、減る「弱毒化」につながる。このためウイルス学などの研究者らは、流行当初から新型コロナウイルスの変異を追跡している。世界各地の研究機関から集まった新型コロナの遺伝子配列情報を解析し公表する国際プロジェクト「ネクストストレイン」は、ウイルスのゲノムに1年間で24個の変異が生じると見積もる。ただウイルスの性質が変化しているかどうかをゲノムのみから判断するのは難しい。高野教授は「実際にそれぞれの変異をもつウイルスで培養細胞や実験動物に感染させる実験が必要だ」と話す。そもそも、ウイルスの「弱毒化」には医療関係者らも懐疑的だ。日本でも直近の致死率は低下する傾向にあるが、ウイルスの性質の変化よりも重症化しにくい若者の患者が多いこととの関連性が指摘されている。けいゆう病院(横浜市)感染制御センターの菅谷憲夫センター長は「高齢者の患者が占める割合が小さいため弱毒化しているように見えるだけ」と指摘。「家庭内や施設内の感染で高齢者の患者が増えれば致死率は上がる。油断は禁物だ」と注意を呼びかける。

*5-1-3:https://www.pharm.or.jp/dictionary/wiki.cgi?%E7%94%9F%E3%83%AF%E3%82%AF%E3%83%81%E3%83%B3 (日本薬学会 2006.10.24) 生ワクチン
 病原ウイルスを初代培養細胞または培養細胞などで数十代以上にわたり継代培養を繰り返すことにより、病原性を弱毒化して、ヒトへの感染力と感染防御に必要な抗原(感染防御抗原)を持つ安定な弱毒株を作る。これを生ワクチン製造用株として培養を重ね調整されたものが弱毒性ウイルスワクチンである。一方、細菌の中で唯一の生菌ワクチンであるBCGワクチンは、弱毒ウシ型結核菌を230代培養することによって弱毒化されたものである。また、経口生ポリオワクチンはポリオウイルス1型、2型、3型の弱毒株を混合した多価ワクチンである。他には麻疹、風疹、おたふくかぜ、水痘などの生ワクチンがある。生ワクチン製剤はその有効性を維持するため、ワクチン微生物が死滅しないように、安定剤を加えた凍結乾燥製剤にしてある。生ポリオワクチンは、凍結乾燥でワクチンウイルスが死滅するので、液状製剤である。そのため、凍結保存が要求されている。最終製品はすべて製品ロットごとに、国立感染症研究所において国家検定が実施され、適合するものだけが出荷される。

*5-2-1: https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200816&ng=DGKKZO62692170V10C20A8EA1000 (日経新聞 2020/8/16) 特養4割に浸水リスク 洪水時に最大3メートル以上 、東京23区、避難対策の強化急務
 東京23区内にある特別養護老人ホーム(特養)の約4割が、国や都の想定で洪水時に最大3メートル以上の浸水が見込まれる場所に立地していることが分かった。7月の豪雨では熊本県で浸水想定区域内の特養が浸水し、多数の犠牲者が出た。水害が各地で頻発するなか、避難対策の強化が急務だ。
厚生労働省によると、特養は全国に1万502施設(2019年9月末時点)ある。今回の調査は東京23区を対象にしたが、他地域でも低地に建つ特養があり、浸水リスクを抱えるとみられる。7月1日時点で23区内で運営する特養319施設を対象に、国や都が想定する最大規模での洪水時の状況を調べた。調査には住所から災害の被害想定を検索できる国土地理院の「重ねるハザードマップ」を活用した。最大で3メートル以上の浸水が想定されるのは319施設中128施設あり、定員の合計は約1万1千人に上った。内訳は最大3メートルが63施設、同5メートルが56施設、同10メートルは9施設だった。一般的に3メートルの浸水で1階の天井付近まで水没し、10メートルでは3~4階まで水につかる計算になる。大規模浸水が見込まれる東部の区で最大3メートル以上の浸水が見込まれる施設が多い。2017年の九州北部豪雨、18年の西日本豪雨、九州を中心とする今年7月の豪雨など、近年は大規模な水害が相次いでいる。厚労省によると、今年7月の豪雨では高齢者施設91カ所が浸水被害に遭った。入所者14人が犠牲になった熊本県球磨村の特養「千寿園」は、国が洪水時に10~20メートルの浸水を想定する区域にあった。水防法はこうした浸水想定区域に立地する高齢者施設などの「要配慮者利用施設」に対し、避難計画の策定や避難訓練の実施を義務付けている。具体的な訓練内容は各施設に任され、備えは施設によって差がある。江戸川区のある特養は最大5メートルの浸水が見込まれるものの、年2回実施する避難訓練は、地震や火災の想定にとどまる。担当者は「車いすで生活する利用者が多く、職員が階上まで運ぶのは大変。洪水時については机上で避難の流れを確認するだけになってしまっている」と話す。最大10メートルの浸水が想定される北区の特養では19年10月の台風19号の際に近くの川の水位が上がり、1階にいた利用者約20人を職員4人で2階以上に避難させた。担当者は「当時はエレベーターを使えたが、浸水で停電すると避難が難しくなる」と懸念する。国が「高齢者保健福祉推進10カ年戦略」(ゴールドプラン)を策定した1989年以降、全国各地で高齢者施設の建設が相次いだ。跡見学園女子大の鍵屋一教授(福祉防災)は「急速な高齢化を背景に施設の用地確保が優先され、災害リスクのある場所でも建てざるを得なかった」と解説する。今回調査した東京23区の特養でも、最大10メートルの浸水を見込む9施設はすべて、90年代以降に事業を開始していた。鍵屋教授は「高齢者施設では利用者を別の場所に移動させることで症状が悪化したり、十分なケアができなくなったりするリスクがあり、早めの避難に踏み切りにくい事情もある」と指摘する。中長期的には福祉施設を安全な市街地に移設することが必要だとしたうえで「国や自治体は、避難が必要になった施設の利用者を福祉施設が連携して受け入れる仕組み作りや、安全な避難場所の確保を急ぐべきだ」と話している。

*5-2-2:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO60690050T20C20A6000000/?n_cid=SPTMG002 (日経新聞 2020/6/26) 浸水エリアへの居住誘導やむなし 国交省が指針作成へ
 自治体が住宅の立地を促す「居住誘導区域」を浸水想定区域内に設定している問題で、国土交通省は両区域の重複は避けられないとみて、堤防整備などの水害対策と土地利用などのまちづくりを一体的に進めて被害を防ぐ方針を固めた。水害対策に貢献する再開発ビルの容積率を緩和する制度も創設する。
■「除外すると、まちが成り立たない」
 2019年10月の東日本台風(台風19号)では、浸水したエリアが居住誘導区域に設定されているケースが少なくなかった。全国でも、浸水想定区域を居住誘導区域に含めている自治体は多い。防災やまちづくりの専門家の間では、「浸水が想定されるエリアに居住を誘導するのはおかしい」との声が上がっていた。そこで、国交省は20年1月、都市、水管理・国土保全、住宅の3局合同で有識者会議を設置。そうした区域設定の問題も含め、水害対策とまちづくりの連携を検討してきた。6月12日に開いた第3回会合では、5月に実施した自治体への聞き取り調査の結果を公表。自治体からの意見を紹介した。ある自治体は、交通事業者と連携して、居住や医療、商業などの都市機能を中心部に集約する「コンパクト・プラス・ネットワーク」のまちづくりを推進。都市の成り立ち上、中心部にある鉄道駅や高次医療施設(大学病院)を浸水深3メートル以上の浸水想定区域に含めている。「浸水想定区域を都市機能・居住誘導区域から除外するのは厳しい」とみる。別の自治体は、「(浸水想定区域など)ハザードエリアに既成市街地が多く存在し、誘導区域から除外すると、まちが成立しなくなる。一方、ハザードエリアを誘導区域として公表することにも抵抗がある」と打ち明ける。そのため、国交省の有識者会議は、「多くの都市部が水災害ハザードエリア内にあるなか、居住や都市機能を誘導する区域から完全にハザードエリアを除外することは困難だ」と指摘。河川や下水道などの治水施設の整備と併せ、水害リスクの低い地域への居住・都市機能の誘導、地形に応じた住まい方の工夫、避難体制の構築など、水害対策とまちづくりが一体となった取り組みを推進する必要があるとの認識を示した。国交省は、有識者会議が7月初旬までにまとめる提言を受け、8月にモデル都市を複数選定。その取り組みを踏まえ、21年3月にガイドラインを作成し、自治体などに通知する。
■防災貢献で容積率緩和の新制度
 有識者会議の第3回会合で示したガイドラインのイメージでは、水害対策とまちづくりの連携を促進する考え方を提示。自治体は、防災・治水部局が提供する水害情報を基に、まちづくり部局が地域の水害リスクを評価し、防災目標を設定したうえで、地域の危険度に応じて居住誘導区域などの指定を判断することが重要だと述べている。区域設定のための考え方も提示した。特にリスクが大きい地域(災害レッドゾーン)は原則、立地や開発を規制し、居住誘導区域から除外する。よりリスクが小さい地域(災害イエローゾーン)は、浸水深や建物倒壊の恐れ、避難の容易さなどに応じて、居住誘導区域に含めるか否かを判断する。さらに、浸水深をベースに、浸水継続時間や洪水到達時間、流速、避難時間など他要素も考慮して、区域を設定する。区域設定の具体例も紹介。福島県郡山市は原則として、氾濫水の流れが激しい「家屋倒壊等氾濫想定区域」(L2)と浸水深1メートル以上の区域(L1)を居住誘導区域から除外している。埼玉県志木市は、既成市街地の大部分が浸水想定区域と重なっているが、災害避難場所から1キロの範囲(徒歩10~15分圏内)に含まれるため、居住誘導区域に設定している。一方、まちづくりの防災・減災対策も例示した。土地のかさ上げや緑地・農地の保全など災害発生を未然に防ぐ手法の他、避難路の整備や浸水深以上への居室の配置など災害発生時の人的被害を最小化する手法、宅地や基礎のかさ上げなど災害発生時の建物被害を最小化する手法を列挙。さらに、まちづくりと連携した水害対策として、遊水機能の強化や下水道の整備など内水氾濫を防ぐ手法を挙げている。この他、都市開発プロジェクトで民間事業者が地域の水害対策に貢献する施設整備などに取り組む場合、新築する再開発ビルの容積率を緩和する制度を創設する方針を示した。国交省は、有識者会議の提言を受け、早ければ20年夏にも新制度を導入する。新制度で容積率緩和の対象となるのは、民間事業者が再開発ビルの最上階などに近隣住民が避難できるスペースを設けたり、周辺街区に避難路や避難地などを整備したりする場合だ。都市再生特別措置法に基づく都市再生特別地区で実施する再開発事業では、河川の上流域など離れた場所に仮設住宅用地などを確保すれば、容積率緩和の対象となる。

*5-3-1:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/445208 (佐賀新聞 2019年10月24日) <玄海原発>リラッキング、規制委が了承
 原子力規制委員会は23日、九州電力玄海原発(東松浦郡玄海町)3、4号機の使用済み核燃料の貯蔵容量に関し、貯蔵プール内の核燃料の間隔を詰めて保管量を増やす「リラッキング」で増強する計画を了承した。事実上の審査合格となり、九電は2024年度の工事完了を目指している。計画は乾式貯蔵施設との併用を前提とし、乾式貯蔵の審査は継続している。3号機でリラッキングを実施し、貯蔵設備の一部を3、4号機で共用する。貯蔵能力は、現状の1050体から1672体に増える。工事費見込みは約70億円。九電は10年に計画を申請し、今年1月22日に補正書を提出していた。九電はこれまでの審査で、貯蔵プールで15年以上冷却した使用済み核燃料を、今後整備する乾式貯蔵施設に貯蔵する方針を示しており、規制委はこの方針を了承している。審査書の取りまとめで意見募集するかどうかについて、委員長含む5委員の意見が分かれた。「リラッキング自体は技術的に新しくない」として不要とする意見と、「規制委がリラッキングの審査書を取りまとめるのは初めてなので実施すべき」との意見が出た。多数決の結果、3対2で意見募集しないことを決めた。経済産業相の意見聴取などを経て、約1カ月後に正式許可となる見通し。リラッキングと併用する乾式貯蔵施設は、使用済み核燃料を特殊な金属容器(キャスク)に入れて空気で冷やす施設。リラッキングの補正書提出と同じ日に申請し、審査が続いている。リラッキングを巡っては、田中俊一前委員長が安全性の観点から否定的な見解を示していた経緯がある。更田豊志委員長は会合で「プールの貯蔵量が増えることをよしとしないことは規制委で明確にしている。乾式貯蔵施設が整うことがいたずらに遅れないことが重要」と発言した。

*5-3-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200301&ng=DGKKZO56242840Z20C20A2EA1000 (日経新聞社説 2020.3.1) 原発を運転する資質を疑う
 日本原子力発電が敦賀原発2号機の地質データを再稼働に有利な方向に勝手に書き換えていたことが発覚した。原子力規制委員会が規制基準に適合するかどうかを判断するのに重要なデータで、言語道断の行為だ。原発事業者としての資質を疑う。敦賀2号機は原子炉の真下に活断層がある可能性が高く、このままだと廃炉に追い込まれる。原電は規制委の審査会合で、活断層でないと繰り返し反論してきた。そして2月7日、提出した資料のなかの地質データが過去に示したものと10カ所以上も書き換わっていることが、わかった。事態を重くみた規制委が審査を中断し、解析に使った元データの提出を求めたのは当然の対応だ。なぜこうした書き換えが起きたのか。徹底的に追究し、明らかにしてもらいたい。責任の所在も明確にすべきだ。意図的ではなかったと原電は釈明するが、それで許される次元の話ではない。新たな解析で結果が変わったのなら、併記するなどして修正がわかるようにするのが、データを扱う際の初歩だ。それを知らない会社に原発を動かす資格があるのか。こんなことでは18年夏に適合審査に合格した東海第2原発の再稼働も遠のくだろう。地元の合意形成がさらに難しくなる。1966年に国内初の商業用炉となる東海原発を動かした原電は、国策民営で歩んできた「日本の原発」の象徴的な存在だ。主要株主の電力9社にとっても今回の問題は人ごとではない。昨年秋には関西電力で金品受領問題が表沙汰になった。時代錯誤というべき地元との癒着を、東京電力福島第1原発事故後も断ち切れていなかった。四国電力の伊方3号機でも今年1月、信頼を損なう深刻なトラブルが続いた。東日本大震災からもうすぐ9年。電力会社の安全・安心への姿勢は何も変わっていないのではないか。原発の安全性に加え各社の資質も規制委は問うべきである。

*5-4-1:https://www.sankeibiz.jp/macro/news/171017/mca1710170500004-n1.htm (Sankeibiz 2017.10.17) 日本のEEZは資源の宝庫 海のレアメタル、高い採掘技術で国産化前進
 日本にとって“夢”だった国産資源開発の扉が開かれようとしている。経済産業省と石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)が9月下旬、金や銅などのレアメタル(希少金属)を含む海底の鉱石を安定的に引き揚げる実験に世界で初めて成功。2020年代後半の商業化を目指している。日本は海に囲まれ、世界有数の広さの排他的経済水域(EEZ)を持つ。商業化が実現すれば、外交上の弱点補強にもつながる。成功したのは、マグマで熱せられた海水が海底から噴き出した際、海水に含まれる金属が冷えて固まってできる「海底熱水鉱床」から鉱石を連続して大量に引き揚げる実験だ。鉱石にはレアメタルや鉄のメッキに欠かせない亜鉛などを多く含むとされる。8月中旬から9月下旬まで、JOGMECなどが沖縄県近海で実施した。水深約1600メートルの鉱床に投入した掘削機で鉱石を直径約3センチに砕き、水中ポンプで引き揚げた。重い鉱石を海水とともに目詰まりなく吸い上げるのが課題で、実験では、期間中に数十分間に渡る連続採掘を16回実施し、計16.4トンを引き揚げた。鉱石には7~8%程度鉱物資源が含まれているとみられる。これまでは海底熱水鉱床から鉱石を引き揚げる手段がなく、潜水艇で採掘するしかなかった。
●高い技術力武器
 今回、世界に先駆けて海底鉱石の連続採掘に成功したのは、日本の企業が高い掘削技術を持つからだ。掘削機やポンプは“機械のデパート”とも呼ばれる三菱重工業が手がけた。加えて、海流がある中で船を停止して掘削する高い操船技術もあった。商業化には、ポンプの大型化や掘削機の低価格化など技術革新に取り組まなければならないが、かつて油田開発が盛んだったこともあり、もともと技術水準が高く日本は他国より優位だ。経産省はEEZの他海域での資源量などを調査し、18年度に商業化できるかどうか判断する。海底熱水鉱床は沖縄県近海のほか、小笠原諸島近海など8カ所で確認されている。沖縄本島から北西に約110キロの海底にある伊是名海穴(いぜなかいけつ)の資源量は740万トンで、このうち国内の年間消費量と同等の亜鉛が埋蔵されているとみられている。また、日本のEEZは世界6位の広さで、海底熱水鉱床だけでなく、より深海には、コバルトやニッケル、白金などレアメタルを多く含んだ岩石の集まり「コバルトリッチクラスト」、レアメタルが含まれる球状の岩石「マンガン団塊」など有力な海底資源が存在するといわれている。これらには、高性能モーター用磁石の原料となるレアアース(希土類)なども含まれているとされる。本州から約1800キロ離れた日本最東端の南鳥島周辺からはレアアースを含む泥(レアアース泥)も発見されている。世耕弘成経済産業相は「日本近海では、国内の年間消費量を上回る鉱物の存在が見込まれている。今回の成功を踏まえて国産資源の開発を進め、わが国の鉱物資源の安定供給体制のさらなる強化を主導したい」と語る。ただ、これらの海底資源の開発を成功させるにはいくつもの壁が立ちはだかる。まずは水深だ。比較的浅い海底熱水鉱床でも水深700~2000メートル。マンガン団塊やレアアース堆積物は4000~6000メートル、コバルトリッチクラストも800~5500メートルと深海の底に眠る。採掘機器は海底熱水鉱床でも重要だが、さらに高い耐圧性や密閉性が求められる。また、不純物と有用鉱物を分離する「選鉱」の手法が海中鉱物と陸上鉱物では異なるため、海中鉱物に適した選鉱方法を確立する必要がある。国内ではほとんどの鉱山が閉鎖され、かつては鉱山とともにあった選鉱施設がなくなったことも障害の一つだ。
●有効利用は数十年先
 「登山に例えるなら、ようやく装備が整って、登山口に立てたところ」。経産省幹部はこう打ち明ける。全ての海底資源を有効利用できたとしても、数十年先の未来になりそうだ。ただ、国産資源を持つことは、「生き馬の目を抜く資源外交」(関係者)において、有力な交渉材料となる。10年9月に尖閣諸島(沖縄県石垣市)沖で海上保安庁の巡視船と中国漁船が衝突。海保が船長を逮捕すると、中国のレアアース対日輸出が停滞した。当時、日本のメーカーは、レアアースを使わないモーターの開発を目指したが、国産資源を持てば対抗できるようになるかもしれない。今回の実験成功を受け、経産省幹部は「何はともあれ、1つの壁を越えた感はある」と安堵(あんど)の表情を浮かべる。JOGMECの辻本崇史理事は「海底資源開発の転機になる」と太鼓判を押す。日本は資源がない国ではない。光が届かない海の底に、日本の希望の光が眠っている。

*5-4-2:https://www.nikkei.com/article/DGKKZO61563740V10C20A7TJ2000/ (日経新聞 2020/7/16) 日産EV、10年ぶり新型 SUV「アリア」21年投入、航続距離強み、米中勢追う
 日産自動車は15日、10年ぶりに電気自動車(EV)の新型車を発表した。かつて米テスラと並ぶEVの先駆者だったが新型車を投入できず、販売シェアは4位に沈む。走行距離の長さなどを武器に巻き返しを図るが、シェアの6割を占める米テスラや中国勢の牙城を崩すのは一筋縄ではいかない。「新しい時代を象徴する『アリア』には我々の決意が表れている」。日産の内田誠社長兼最高経営責任者(CEO)は15日、21年から発売する新型EV「アリア」をお披露目した。SUV(多目的スポーツ車)で、日本の実質価格は約500万円から。航続距離は90キロワット時の電池を搭載した二輪駆動タイプで最大610キロメートルと、10年に発売した初代EV「リーフ」に比べ約3倍に伸びた。新型EVは中国専売車を除くとリーフ以来10年ぶりだ。当時リーフはテスラの初期モデル「ロードスター」と並んで量産型EVの草分けだった。日産は当時、仏ルノーと合わせて16年度までに累計150万台のEVを販売する計画を掲げたが、リーフの販売は足元で計45万台超にとどまる。日産は航続距離の短さや充電設備の不足などでEVの普及は限定的とにらみ、独自のハイブリッド車(HV)技術「eパワー」に注力するなど、EVに研究資源を集中しなかった。英LMCオートモーティブによると、19年のEVの世界販売台数は167万台。新車販売全体に占める割合は2%だが、4年で5倍に増えた。けん引したのがテスラだ。廉価車「モデル3」の量産で世界首位に躍り出た。ナカニシ自動車産業リサーチの中西孝樹代表はテスラの強みを「米アップルのiPhoneのように洗練されたイメージでファンを増やしてきた」と分析する。中国も新エネ車を普及させたい政府による補助金を背景に市場が急拡大。北京汽車集団など現地メーカーが躍進した。いまや、世界のEV販売でテスラは37万台と22%を占めるまで成長したのに対し、日産とルノー、三菱自動車を合わせた日仏連合は13万台と8%にとどまる。日産はアリアをてこに巻き返しを図る。社内測定で単純比較はできないが、アリアの最大610キロメートルの航続距離はテスラの「モデル3」の上位モデル(560キロメートル)を上回る。内田CEOは「今後はEV含めて年間100万台の電動車を販売する」と意気込む。日産以外の日本車メーカーもEVに本腰を入れ始めた。トヨタ自動車は高級車ブランド「レクサス」初のEVを今春、中国で先駆けて発売した。欧州は今夏、日本は21年前半に発売する。ホンダとマツダも初の量産型EVを年内に欧州で販売し、その後国内で投入する。21年に欧州連合(EU)が自動車の環境規制を強めるなど、EVはさらなる市場拡大が見込まれるためだ。ただ、テスラは先を行く。21年にドイツに欧州初の完成車工場を稼働させる予定だ。中国、欧州の2大市場で製造・販売する体制を築き、米国工場を含む同社の年産能力は現状の1.4倍の100万台に増える。日産のアリアやトヨタの中国で発売済みのレクサスはともに500万円台からと、テスラの「モデル3」と同価格帯の高価格戦略で挑む。ただ「売れるEVを作れるのはまだテスラだけ」(ナカニシ自動車産業リサーチの中西代表)。テスラに匹敵する魅力を消費者に伝えられなければ、苦戦は避けられない。トヨタ幹部は「環境対応車のどれが本命になるかまだ分からない。当面は全方位の対応を続けざるを得ない」と話す。独フォルクスワーゲンなど欧州勢は「EV重視」の戦略を明確化し始めている。国内勢が資源配分に悩んでいるうちに、手遅れになる恐れがある。

<農業の前進>
PS(2020年8月22日追加):*6-1のように、新型コロナウイルスの感染拡大で大阪・山梨のワイナリーの3~6月の売り上げが前年の半分以下に減少し、今年の仕込み量が減らされるそうだ。それなら、新型コロナウイルスに耐性のあるワイン酵母を使ってワインを作れば、付加価値がついて高く売れるので、速やかに新型コロナ耐性ワイン酵母を作ったらどうか? 欧米輸出用は欧米型新型コロナ株、国内用は日本型新型コロナ株に感染させて生き残ったワイン酵母を使えばできると考える。そのため、「新型コロナの影響でマイナスだった」として何でも補助の対象にするのではなく、それを逆手にとって儲かることを考えて欲しい。美味しいワインで新型コロナウイルスを撃退できれば、一石二鳥だ。
 このような中、*6-2のように、JA全中の新執行部は「①JA自己改革の継続や経営基盤強化が重要課題」「②准組合員に運営参画をさせ、関係を強化し、理解・評価を得て准組合員規制を阻止したい」「③食料安全保障と食料自給率向上には食料・農業・農村基本計画の実践が最重要」「④新型コロナの影響で対話の機会が減っているが、可能な限り機会を設けて取り組む必要がある」等と述べておられる。
 このうち①は、農協をあげてならできる新商品の開発やグリーン発電事業を追加して農家と社会のニーズに応えたらどうかと思う。また、②の規制は、いたずらに農協の営業を妨害する望ましくない規制であるためはねつけた方がよく、準組合員の中に食品・ワイン・ジュースの加工業者やグリーン発電事業者を加えれば、農家と一体になって品質のよいものを作ることが可能だ。さらに、③は、これまでの政府のやり方では食料自給率は向上せず、食料安全保障も達成できなかったのであるため、悪かった点をリストアップして変更する必要がある。また、④については、農協もZOOMのようなツールを使って会議をすれば、どこからでも参加できるので必要な人を参加させやすい上、インターネットになじみができてスマート農業に資すると思う。なお、外国の農協ともZOOMのようなツールを使って会議をすれば、参考になる点が多いと思われる。

   
   ブドウ       ロボットで収穫  ドローンで自動化       水田

*6-1:https://www.agrinews.co.jp/p51678.html (日本農業新聞 2020年8月20日) [新型コロナ] 日本ワイン コロナ打撃 醸造用ブドウ豊作も…仕込み減 苦渋の決断 大阪
 新型コロナウイルスの感染拡大で、日本ワインの苦戦が続いている。大阪や山梨のワイナリーでは、3~6月の売り上げは前年の半分以下に減少。宴会やイベント、インバウンド(訪日外国人)需要の減少などにより、需要が戻らない。2020年産醸造用ブドウは豊作傾向の一方で、今年産の仕込み量を減らすワイナリーも出ている。昭和初期に全国屈指のブドウ産地だった大阪府。100年以上ワイン醸造を続ける大阪府柏原市のカタシモワインフードでは、宴会やイベント向けの需要が落ち込み、3~6月上旬の売り上げは前年と比べ約5割減った。いまだに需要回復の傾向はみられないという。同社は約14万リットル分のタンクを抱える。本来なら今年産の仕込みのためにタンクを空にして準備しているところだが、需要が落ち込んだため、ワインの半分ほどがタンクに残ったままだ。ワインを瓶に移してしまうと半年~1年以下で劣化してしまう。新型コロナ禍で個人消費の減退も予測される中で、早めに売り切れる見込みもない。廃棄するにも費用がかかる。こうした状況から同社では、今年産の仕込み量を減らす予定だという。近年の大阪ワインの人気の高まりから、同社では醸造用ブドウの不足が続いていたという。2019年には20カ国・地域(G20)大阪サミットで大阪ワインが提供されたのをきっかけに知名度が一気に向上し、売り上げは急増。同社では現在の3・5ヘクタールまで「デラウェア」の栽培面積を拡大し続けていた。他にも、同社など府内のワイナリーでつくる大阪ワイナリー協会では、JA大阪中河内や府などとともに「デラウェア」の契約栽培に今年3月から乗り出していたところで「増産に向けて動いていたところに急ブレーキをかけられたような状況だ」(同社)という。同社は「契約栽培分は何としても買い取りたい」とするが、他産地からの購入は減らさざるを得ないという。同協会では、オンラインによるワイナリー見学や、クラウドファンディングなどにも取り組み始めた。消費拡大に向けて試行錯誤を重ねているが「需要の回復にはまだまだ遠い」(同社)。同協会会長で同社の高井利洋代表取締役は「待ったなしで秋が来るが、手の打ちようがない」と葛藤する。
●「全国一」の山梨 需要最大8割減 3~6月
 18年度の国税庁調査で全国一の日本ワイン生産量を誇る山梨県でも、需要が大きく落ち込んでいる。山梨県ワイン酒造組合は、3月中旬から6月にかけて県内のワイナリーで最大で前年比8割減少したとみる。山梨県のJAふえふき直営のワイナリー「ニュー山梨ワイン醸造」では、首都圏からの観光需要の落ち込みで宴会向けや土産向けで大きく減らし、3~5月の売り上げは約5割下がった。県外への移動自粛要請の解除後も、大きな回復はまだみられないという。イベントなどの中止で今後の消費PRも見込めないため、今年産の仕込み量は前年比6割ほどに落とす予定だ。日本ワイナリー協会は「飲食店向けやインバウンドなどの需要が戻らない以上、今後も同様の状況が続く。このまま今年産の仕込みが進んでいけば、在庫処分せざるを得ないワイナリーも出てくるのではないか」と指摘する。
●輸入も1割減
 輸入ワインもコロナの影響を受けている。財務省貿易統計によると、1~6月のぶどう酒の輸入金額は、前年同期比で9%減少した。日本洋酒輸入協会によると「昨年は日欧経済連携協定(EPA)の影響で輸入が伸びていた分、コロナの影響はかなり大きく、前年割れが続いている」。特に、宴会の自粛などでスパークリングワインなどの需要が大きく落ち込んでいるという。

*6-2:https://www.agrinews.co.jp/p51687.html (日本農業新聞 2020年8月21日) 全中・中家会長2期目始動 改革継続へ決意
 JA全中は20日、東京都内で通常総会を開き、中家徹会長(JA和歌山中央会会長)を再任した。2期目をスタートさせた中家会長は総会後の記者会見で、JA自己改革の継続や経営基盤強化などが重要課題になると指摘。「いつまでもJAは必要な組織だと評価してもらうため、自己改革に終わりはない」と決意を示した。准組合員の事業利用規制に関する調査期限が2021年3月に迫る問題では、引き続き准組合員の運営参画が重要だと強調。「関係を強化し、理解・評価を得て規制を阻止したい」と訴えた。経営基盤の確立・強化は「組合員の負託に応え続けるために不可欠」とした。現場実態に応じた改革に向け「組合員と徹底的に対話することが重要だ」と表明。新型コロナウイルスの影響で対話の機会が減っているが、「可能な限り機会を設けて取り組む必要がある」との考えを示した。食料安全保障の重要性にも言及。19年度の食料自給率は38%で目標の45%の達成は「非常に厳しいという見方もある」と指摘した。自給率向上には食料・農業・農村基本計画の実践が最重要とし、行政と協力し対応を進めるとした。この他、新型コロナの影響への万全な対策なども重要課題に挙げた。副会長にはJA佐賀中央会会長の金原壽秀氏を再任、JA福島中央会会長の菅野孝志氏を新任した。会見で菅野副会長は「食料自給率は、地域が自らの課題としてどう高めるかが重要。全国のJAや県連と連携し精力的に取り組みたい」と語った。金原副会長は「農家・組合員の生活を守り地域活性化のために尽力したい」と述べた。通常総会後の理事会で新専務に馬場利彦氏、新常務には山下富徳氏を選んだ。

<中山間地・離島の高校過疎化>
PS(2020年8月24日追加):*7-1に、「①公立高のない市区町村が3割あり、特に中山間地・離島などで『高校の過疎化』が進んでいる」「②農山村の教育力は大きく、(そこでの体験は)高校生にとって大きな財産になる」「③高校・地域社会の協働で地域密着教育を行い、人材育成・地域の課題解決に繋げて高校を核に地方創生に取り組みたい」「④高校との連携には、産業界・自治体・自治会、住民グループ、地域運営組織、NPOなどが参画して、地域づくりの大きな可能性が芽生えた」「⑤大分県の県立久住高原農業高校は全国から生徒を募集する仕組みを作り、新規就農者や地元の農家も集う場と位置付けて地域や農業に活気を呼び込む」「⑥人口減少が進む中、財政事情や効率化だけを考えれば過疎地域の高校は統廃合を迫られるが、過疎地域の高校だからこそできる教育がある」「⑦オンライン教育を過疎地域と都会の高校の連携に活用したい」等が書かれている。
 このうち、②③④は貴重で、農山漁村は、コンクリート造りの都会で勉強していても決して得られない豊富な体験をすることができるという長所があり、農業高校だけでなく普通高校の生徒も、豊かな自然の中で住民と近い関係から得られる体験は大きい。そのため、⑤の全国から生徒を募集する仕組みは、農業高校に限らずよいと思う。また、①⑥のように、過疎化が進んだから現在ある学校を統廃合するというのはもったいなく、例えばスイスのル・ロゼ校(小3~高3、名門寄宿学校)は、世界から生徒を集めている。つまり、校舎や寄宿舎の改修・整備の仕方によっては、学校の足りない国や女子が学ぶと危険な国から生徒を集めたり、都会から生徒を集めたり、企業の研修施設にしたりすることが可能なのだ。さらに、⑦のオンライン教育を取り入れると、中山間地や離島の短所を補うこともできる。
 このような中、*7-2のように、台風8号で沖縄県本部町130世帯、久米島町60世帯、大宜味村10世帯で停電が発生したそうだが、太陽光発電機や風力発電機をつけていれば、停電は問題にならなかったと思う。



(図の説明:1番左の図は、令和3年度に離島留学を募集している離島で、左から2番目の図は、長崎県の離島。離島は狭い範囲に山・田畑・海が1セット揃っているため、容易に多様な自然と触れ合うことができ、放課後に山までマラソンしたり、海で泳いだり、ヨットやボート・釣りなどをすることもできる。右の2つは、洋上風力発電機と尾根などに設置された風力発電機だ)


    

(図の説明:1番左は、養殖場に設置された風リング風車の風力発電機で、左から2番目は、手入れの行き届いた森林だ。右から2番目は、巣箱でかえったフクロウの雛で、1番右は沖縄県慶良間の海中の様子だ。例えば、雪国の野球部の生徒が、冬は雪のない地域の学校で勉強や練習をするのもありだろう)

*7-1:https://www.agrinews.co.jp/p51611.html (日本農業新聞 2020年8月12日) 地域の高校魅力化 農村再生の拠点になる
 公立高校がない市区町村が3割に上る。特に、中山間地や離島では「高校の過疎化」に歯止めがかからない。財政事情や効率化といった基準だけで統廃合を進めるべきではない。高校を核に地方創生に取り組む「高校魅力化」を広げたい。農山村の教育力は計り知れない。高校生にとっても大きな財産になる。公立高校の立地状況は2019年度で、文部科学省が今年7月に初めて公表した。ゼロもしくは1校の割合も6割を超えた。割合は10年度より高まっている。全国で高校が消えていく一方、政府は「高校魅力化」を地方創生政策の柱に据える。高校と地域社会との協働で地域密着での教育を行い、人材の育成や地域の課題解決などにつなげる。高校との連携には、農業をはじめとした産業界や自治体・自治会、住民グループ、地域運営組織、NPOなどが参画。各地で実践が進み、地域づくりに大きな可能性が芽生えている。例えば大分県竹田市久住地区の県立久住高原農業高校。70年以上も分校だったが、19年度に単独校として再スタートした全国でも珍しい農高だ。地域住民と手を取り合って、地域づくりを進める。農高は全国から生徒を募集する仕組みを作り、新規就農者や地元の農家も集う場と位置付け、地域や農業に活気を呼び込む考えだ。「地域にかっこいい大人がたくさんいる」「先進的で地域密着の農業を学べる環境は他にない」など、農高の生徒は地域密着で学べる意義を実感する。人口減少が進む中で、財政事情や効率化だけを考えれば過疎地域の高校は統廃合を迫られる。しかし、地方創生の柱と位置付ける一方で、生徒が減ったから閉校するというのは矛盾だ。高校は、地域を担う人材育成の拠点として捉えるべきだ。地域の教育力も評価すべきである。高校を進学や就職のための通過点とはせずに、生徒が地域の魅力を学ぶ価値を見直したい。農家らから直接教わったり、地域課題の解決策を共に考えたりするなど過疎地域の高校だからこそできる教育がある。新型コロナウイルスの影響により、オンライン教育も一般的になりつつある。これを過疎地域と都会の高校の連携に活用したい。19年度の高校数は全国4887校で09年度から296校も減った。農業系学科がある高校は19年度792校で10年間で53校も減ってしまった。高校の価値を再考し、オンライン教育の活用も進めれば、高校をなくすだけではない選択肢も出てくるはずだ。文科省は22年の春から、都道府県など学校設置者の判断で新しい学科の新設や再編ができるようにする方針だ。農業や地域を包括的に教えることも可能になる。地域に密着した魅力ある高校づくりに、JAや農家などは積極的に関わってほしい。高校は、農山村再生の拠点になる可能性を秘めている。

*7-2:https://ryukyushimpo.jp/news/entry-1178919.html (琉球新報 2020年8月24日) 台風8号で停電発生、本部町130世帯、久米島町60世帯、大宜味村10世帯
 沖縄電力によると、24日午後12時21分現在、本部町の130世帯、久米島町の60世帯、大宜味村の10世帯で停電が発生している。

<日本の産業と外国人の雇用>
PS(2020年8月27日追加):*8-1-1のように、ミャンマー国軍がロヒンギャを迫害し、74万人のロヒンギャが命からがら隣国のバングラデシュに逃げ込んだ。日本の政府・メディアは、「ロヒンギャの祖国への帰還」をミャンマー政府に働き掛けただけだが、政権トップがアウン・サン・スー・チー氏であっても軍と対立してまで戻すことができない状況は想像に難くない。また、ロヒンギャの方も、再度迫害を受ける可能性のある危険な“祖国”に帰れないのは当然であるため、私は、数多く日本にある(国境離島ではない)離島に公営住宅を建て、企業を誘致して、ロヒンギャの子どもを教育し、若者を就業させるのがよいと考える。何故なら、ある程度、独立したコロニーを作って生活できるからだ。
 しかし、日本には、*8-1-2のように、まだ「①外国人受け入れ、是か非か」という議論があり、「②社会構造の持続へ不可避」という意見がある一方、「③日本人の賃金が安くなるから反対」という意見もある。私は、難民の受入を増やすことは、②に加えて人権侵害されている人に手を差し伸べるという国際貢献にもなる。また、③については、日本人労働者の賃金が生産性と比較して高止まりしすぎていることが、日本企業が海外に逃げ出す原因の1つとなっており、さらに非正規労働者やフリーターも人手不足の業種には行きたがらず、地方は地域を支える力が不足している現状もある。そのため、「人口維持の目的」というより、国際競争力のある生産性に見合った賃金で働く人材としても難民の受入は必要不可欠なのだ。このような中、*8-2-1のように、愛媛県のJAにしうわは、ミカン収穫の作業手順を分かりやすくまとめた動画の作成を進め、熟練アルバイターの獲得が不透明な中で県内のアルバイターの募集を始めるそうだ。しかし、これなら難民や外国人労働者にもわかりやすいだろう。
 なお、*8-2-2のように、日本はLowTech産業による個人用防護具の輸入に占める中国比率が8割、マスクの同比率は96%で、需要急拡大に輸出拡大で応えた中国は偉いが、日本は情けないと言わざるを得ない。また、価格競争になると負けるのが中国依存度を上げた理由だが、これを続けると日本から輸出するものはなくなり、輸入するものばかりになる。何故なら、HighTech産業による新型コロナの予防薬・治療薬も、*8-3-1のように外国頼みであり、日本はビッグチャンスに大学の研究室が自粛させられ、米バンダービルト大学・英オックスフォード大学・アストラゼネカなどのように迅速に結果を出せないからだ。
 このように何でも遅い理由は、*8-3-2のように、「ワクチンは安全性最優先を忘れるな(そんなこと、専門家は百も承知)」などとメディアが足を引っ張るからで、実際には、④不確定な要素があるから研究するのであって(確定していれば研究する必要はない) ⑤遅いから着実とは限らず(単なる怠惰の場合も多い) ⑥初めから透明だったら治験する必要はない わけである。なお、近年起こった子宮頸癌ワクチン接種の副作用とは異なり、新型コロナワクチンは多くの人の目前に迫る感染症リスクを軽減するために行うものであるため、接種したい人も多く、接種に不適当な人や接種したくない人に摂取する必要はないのだ。

   
 2018.12.6産経新聞 2019.5.11東京新聞    法務省     2017.6.16東洋経済       

(図の説明:政府は2019年4月に入管法を改正して在留資格に「特定技能」を創設したが、これは、人手不足に対応するため一定の専門性・技能を有して即戦力となる外国人材を受け入れる制度であるため、1番左と左から2番目の図のように、難民は対象外である。そして、右から2番目の図のように、日本は難民申請者と比較して難民認定者が非常に少ない。さらに、次の先進技術を獲得する手段となる論文数も、1番右の図のように、日本より人口の少ないドイツ・英国以下であり、全く振るわない。何故だろうか?)

*8-1-1:https://www.tokyo-np.co.jp/article/51157 (東京新聞 2020年8月26日) ロヒンギャ迫害 政権は差別解消率先を
 ミャンマー国軍が、イスラム教徒少数民族ロヒンギャを大量に隣国へ流出させた迫害から三年。祖国への帰還はいまだ実現せず、コロナ禍が追い打ちをかける中、難民長期化の弊害が拡大している。二〇一七年八月二十五日、過激派アラカン・ロヒンギャ救世軍との軍事衝突がきっかけとなったミャンマー国軍の暴力は、酸鼻を極めた。同国西部で住民への無差別殺害やレイプ、放火を起こし、国連によると少なくとも住民一万人が死亡。七十四万人が隣国バングラデシュに逃げ込んだ。国軍兵士らによる迫害は、一一年まで半世紀間の軍事政権時代から始まった。一九七八年、九一〜九二年などに数度、計約五十万人がバングラに逃れている。これらを合わせ、現在の難民は百万人を超えているとみられる。ロヒンギャにはミャンマー国籍がない。軍政下の改正国籍法で、正規国民になれる百三十五民族から除外されたためである。一一年の民政移管後も無国籍のままだ。実は、一七年の軍事衝突の数時間前、アナン元国連事務総長らによるミャンマー政府の諮問委員会が「国籍付与を検討せよ」と政府に勧告する報告書を出していた。諮問委をつくったのは、民政移管後の一六年に国家顧問に就任したかつての民主化指導者アウン・サン・スー・チー氏だった。しかし、報告書提出直後からの軍事衝突の大混乱で勧告は放置された。政権の事実上のトップは文民のスー・チー氏である。半面、憲法では国軍や警察、国境治安の管理などロヒンギャに直結する分野の権限は軍部が握り「スー・チー氏はロヒンギャに無策」との国際社会からの批判につながっている。同国では十一月に総選挙を控える。スー・チー氏の与党国民民主連盟(NLD)が過半数を維持できるかが焦点だが、政権はこの問題を先送りする可能性があり、看過できない。背景にはロヒンギャを「無国籍の不法移民だ」「仏教徒でない」「人種が違う」「ミャンマー語を話せない」と突き放す冷淡な世論がある。再びの迫害を恐れ、帰還は進まない。難民キャンプでは子どもへの教育や若者への職業訓練の不足で「失われた世代」化への懸念が広がる。コロナ禍で死者も出た。政権は、国際司法裁判所(ICJ)に「迫害停止」を命じられてもおり、諮問委勧告の実施と差別意識の解消に動くべきだ。日本など国際社会も、ミャンマーに救済を強く働き掛け続けてほしい。

*8-1-2:https://www.chugoku-np.co.jp/column/article/article.php?comment_id=598319&comment_sub_id=0&category_id=1153 (中国新聞 2019/12/20) 外国人受け入れ拡大、是か非か
 外国人労働者の大幅な受け入れ拡大を図る改正入管難民法が昨年12月に成立してから1年。政府が「移民政策はとらない」との立場を取る中、なし崩し的に地域や職場で国際化が進む。外国人労働者や移民の受け入れについて賛否の立場の識者に意見を聞いた。
◇社会構造の持続へ不可避 日本国際交流センター執行理事・毛受敏浩氏
―外国人労働者の受け入れの拡大は必要ですか。
 多様な価値観の人が集まり、独自の人脈を生かすことで新しいビジネスが起こる。移民300万人を受け入れた場合の経済効果は20兆円に上るとの試算もある。地方が国際的に発展する起爆剤になる。今後10年ぐらいは本格的な移民受け入れの準備期間と考えるべきだ。どんな人を受け入れるか入り口が大事。学歴や日本語ができるかなどで国に必要な人材を選択すれば、教育などの受け入れコストは下がる。日本は制度と意識の転換期を迎えた。
―新しい在留資格「特定技能」をどうみますか。
 外国人労働者の受け入れが前進した。しかし、手続きが煩雑で人数はまだ少ない。一方で技能実習は急増している。受け入れ企業の本音ではコストが安い技能実習生を使いたい。日本人並みの給料で転職が可能な特定技能が健全に発展するのか注視している。技能実習制度は根本から見直すべきだ。1993年から続け、中小零細企業に「外国人は安い」という考えが染みついてしまった。制度の目的である技術移転による国際貢献に限定すれば1割も残らないのではないか。就労目的の外国人は特定技能で受け入れるべきだ。
―日本人の仕事が奪われると批判もあります。
 今の日本は景気が良くなって人手不足になっているのではない。少子化が急速に進み、人口の減少が止まらない。地場産業が衰退し農業や介護の現場が回らなくなる可能性がある。社会構造を持続させるために移民の受け入れは避けて通れない。
■地域支える力に
―外国人に期待する役割は。
 これまで「いつか帰る労働者」と過小評価されてきた。しかし、地域には国籍を問わず若い人が必要だ。災害時、高齢者ばかりでは命を助けるのは難しい。半面で一時的に受け入れる今の政策では災害が起きれば出稼ぎ労働者が一斉に帰国するリスクもある。定住外国人は消防団員や伝統文化の担い手として地域を支える力になる。人口減少から外国人の定住政策を積極的に掲げる安芸高田市のような自治体も出てきた。同じような相談が多く寄せられている。自治体間で外国人材の獲得競争が激しくなるだろう。
■国民の意識変化
―政府は「移民政策はとらない」との方針です。
安倍政権を支持する保守層が拒絶している。移民が増えると治安が悪くなるという国民の先入観にも配慮しているのだろう。しかし、ここ数年で国民の意識は大きく変わっている。外国人と交流している人は受け入れに前向きな傾向がある。国のトップにこそ地域で活躍する外国人を表彰するなど多文化共生の先頭に立ってほしい。
◇日本人の待遇改善遠のく 久留米大教授(日本経済論)・塚崎公義氏
 ―人手不足から外国人労働者の受け入れ拡大が進んでいます。
反対だ。日本人労働者、特に非正規雇用やフリーターなどが影響を受ける。人手不足とは経営者側の視点の言葉。裏を返せば労働者側には「仕事がある」ということ。賃上げが期待できる素晴らしい状態だ。人手不足になると、ブラック企業のホワイト化も期待できる。これまで「辞めたら失業者だ」と思って退職をとどまっていた社員も転職先が見つけやすいので踏み切りやすい。そうなると、ブラック企業はホワイト化しないと存続できない。外国人労働者を受け入れることでこうした日本人労働者の待遇改善の機会が遠のいてしまう。不況時の失業リスクも高まる。
■企業にだけ恩恵
 ―一般的には人手不足は悪いことのように捉えられていますが。
 労働者だけでなく、日本経済にもメリットがある。景気対策の公共投資は不要になるし、失業手当の申請も減るだろう。労働力が不足すると、企業も省力化の投資を始める。例えばアルバイトに皿洗いをさせていた店で食洗機を購入すると労働生産性が高まる。外国人労働者の受け入れは企業側にメリットはあるが、日本人労働者や日本経済にはデメリットでしかない。
―そうは言っても介護業界などは人材難が深刻です。
 介護士不足の解消には介護保険料を値上げするしかない。今の介護業界は待遇が悪すぎるから人材が集まらないだけだ。安価な外国人労働者を受け入れるのではなく、日本人の介護士の賃金を上げるべきだ。
―行政は外国人労働者との「共生」に向けた受け入れの準備を進めています。
 日本人労働者が支払った税金で行政コストが賄われているのに対し、外国人労働者の受け入れでメリットを得る企業はコストを支払っていない。これは著しい不公平だ。受益者である企業が負担するべきだ。日本で働く外国人が家族を連れて来られない点を問題視する意見もある。ただ、そうなると行政コストはさらに膨れ上がる。家族帯同を認めると、外国人労働者の子どもに日本語を教えるための費用なども必要になる。そうしたコストに税金を使うのはおかしい。
■人口減やむなし
―人口減少が進む中、将来的に移民を認めるべきだとの声もあります。
 何を大事に考えるかだ。国家の維持か、国民の幸せか。日本の国内総生産(GDP)を守るために人口を維持するなら、大量の外国人を受け入れる必要がある。ただ、GDPが減ること自体は深刻な問題ではない。人口が半分になり、GDPが半分になっても、1人当たりのGDPが変わらなければ、日本人の生活水準は変わらない。私は移民を受け入れてまで人口を維持する必要はないと思う。

*8-2-1:https://www.agrinews.co.jp/p51713.html (日本農業新聞 2020年8月25日) ミカン収穫手順を動画に コロナ受け新規アルバイター獲得へ 愛媛・JAにしうわ
 JAにしうわは、ミカン収穫の作業手順などを分かりやすくまとめた動画の作成を進めている。新型コロナウイルスの影響で県外在住の熟練アルバイターの来県が不透明なことを受けた取り組み。県内アルバイターの募集を始める9月上旬から、ホームページなどで公開することにしている。ミカンの収穫や出荷が集中するのは11、12月。JA管内の八幡浜市、伊方町では昨年度、全国から約350人のアルバイターらが収穫や運搬の作業を手伝い、高齢化が進む産地の貴重な戦力として活躍した。JAは今年度、新型コロナの影響で県外のアルバイター募集を中止。県内での募集に注力し、100人の受け入れを目標に掲げる。過去に何回も収穫作業を経験している熟練アルバイターは、県外在住者が多い。今年は作業に不慣れなアルバイターも増えることが予想されるため、動画を使って収穫方法の周知や産地をPRすることにした。派遣会社などで説明用としての活用も期待されている。JA農業振興部は「新型コロナの感染状況を見極めながら、安心して今シーズンを乗り切れるようにJAとしてあの手この手で支援したい」と強調する。

*8-2-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200824&ng=DGKKZO62961000T20C20A8MM8000 (日経新聞 2020.8.24) 医療防護具 中国頼み 輸入急増、8割に、マスクなど4品 日米欧、対応に限界
 世界で医療防護具の輸入における中国依存が高まっている。個人用防護具(PPE、総合・経済面きょうのことば)の輸入に占める中国比率は1月の6割弱から8割強まで上昇した。急増した世界の需要に、中国が輸出拡大で対応した。日本の医療用マスクの同比率は96%だ。日米欧は命綱を中国に握られるリスクを警戒し国内生産や調達先の多様化を目指すが、ハードルは高い。国連貿易統計によると、医療従事者が感染を防ぐために身につける主な4品目(マスク、ガウン、防護服、メガネ)の世界貿易額は直近のデータを取得できる5月にかけて急増した。新型コロナウイルス感染者の拡大でPPEの需要が高まった。航空便への切り替えに伴う輸送費も上がった。並行して輸入における中国依存度も1月の平均59%から5月は同83%に上昇した。例えば医師や看護師が使う医療用マスクの世界貿易額は1月に約9億ドル(約950億円)だったが、5月には約10倍の92億ドルまで膨らんだ。日本の5月の輸入に占める中国の割合は96%と1月に比べて16ポイント上昇した。米国は92%で20ポイント増、欧州連合(EU)は93%で45ポイントも高まった。医療用ガウンは5月の日米欧の輸入での対中依存度は8~9割で、1月の4~6割から大幅に増えた。防護メガネの輸入に占める対中比率は日本が73%で1月に比べて2ポイント下がったものの依然として高水準だ。防護服関連も5月時点で7~9割と中国に頼る構造が鮮明になっている。対中依存度が高まったのは、世界の需要急拡大に、感染拡大が一服した中国が輸出拡大で応えた結果だ。主要国はPPEを確保するため中国に頼った。中国からの輸入を増やす一方、輸出を抑えた。米政府は医療用マスクなどPPEの輸出規制を4月から続けると同時に、中国製PPEに課していた制裁関税を特例で解除して輸入を後押ししている。ただ中国は尖閣諸島で対立した日本へのレアアース(希土類)の輸出を絞るなど、貿易を外交の武器に使うことがある。このため各国は国産化と調達先の分散を目指している。バイデン前米副大統領は「必要な医療品や防護具を米国内で生産する」と公約に掲げる。米国は朝鮮戦争下に制定された国防生産法を活用し、米スリーエム(3M)に「N95マスク」の増産を命じるなど国内生産の拡充を急ぐ。それでも高い対中依存度をすぐゼロに近づけるのは難しい。州政府は独自に安価な中国製品の調達に動き足並みもそろわない。世界保健機関(WHO)でPPEなどの物流を指揮するポール・モリナロ氏は「(各国の)増産体制が整ったため現在のPPE供給は大流行開始当初と比べ安定している」と話す。ただ感染再拡大が止まらず「非常に警戒している」と気を緩めない。供給国の1国集中の回避と「第2波」への対応力向上には各国の地道な生産と備蓄の積み増しが欠かせない。WHOはメーカーとの協力で「供給網が止まっても1カ月程度を在庫から各国に供給できるようにしたい」(モリナロ氏)という。日本政府は国産化を後押ししている。18日には興研とサンエムパッケージの2社が国内に設ける「N95マスク」の製造ラインへの助成を決めた。興研は来年1月までに生産能力を月60万枚超上積みする。医療用ガウンは、帝人や東レなどが国内生産を増やす。ワールドは5月に国内の6工場で生産を始めた。ただ中長期的には供給過剰で価格競争に巻き込まれるリスクがあり、新規の設備投資に慎重な企業も少なくない。

*8-3-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200826&ng=DGKKZO63050910W0A820C2EAF000 (日経新聞 2020.8.26) コロナ抗体薬の治験開始、英アストラゼネカ、予防や症状抑制
 英製薬大手アストラゼネカは25日、新型コロナウイルスの予防・治療薬である抗体医薬の初期臨床試験(治験)を始めたと発表した。特定の細胞に作用する抗体によってウイルスを抑える効果が期待され、安全性や有用性を調べる。英国の18~55歳の健康な被験者を対象に、開発中の候補薬「AZD7442」の投与を開始した。最大48人を対象に検証する。初期治験であるフェーズ1(第1相)で有用性が認められれば、より大規模なフェーズ2以降に移る。この薬は特定の抗原に反応する「モノクローナル抗体」を2種類組み合わせたものだ。がん治療薬にも応用されている抗体の仕組みで新型コロナウイルスを攻撃する。感染の予防に加え、既に感染した患者を治療したり症状の進行を抑えたりする可能性があるという。AZD7442は米バンダービルト大学が発見し、6月にアストラゼネカがライセンス供与を受けた。治験には米政府傘下の国防高等研究計画局(DARPA)と、生物医学先端研究開発局(BARDA)が資金を拠出している。アストラゼネカはこれとは別に、英オックスフォード大と共同で新型コロナワクチンの開発も進めている。抗体医薬は人間の免疫細胞が外敵を攻撃する抗体を人工的につくる。効果が高く副作用が少ないとして期待されている。

*8-3-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200826&ng=DGKKZO63031550V20C20A8EA1000 (日経新聞 2020.8.26) ワクチンは安全性最優先を忘れるな
 新型コロナウイルスのワクチン接種について、政府の分科会が提言をまとめた。医療従事者、高齢者、基礎疾患がある人を優先対象とする一方で、安全性や効果の両面で理想的なワクチンができる保証はないとの考えも盛り込んだ。今回の提言をもとに政府は秋ごろをメドに接種に関する方針をまとめる。ワクチンへの期待が先行するが、不確定な要素が多い。安全性を最優先することを忘れずに着実に進めてほしい。接種のあり方を議論した21日の分科会では「安全性や有効性についてわからないことが多すぎる」との慎重な意見が相次いだ。米中を軸にしたワクチン開発レースがかつてないスピードで進み、5~10年かかる実用化までの期間を大幅に短くしようとしている。自国ワクチンを世界に広め影響力を強める「ワクチン外交」の動きも活発で、ロシアは今月、最終の臨床試験(治験)を経ずに承認した。安全性を軽視しているともいえ、不安や懸念が広がる。世界保健機関(WHO)によると、6つが最終治験に入っている。英米が手掛ける3つは遺伝子技術を使っており、こうした新タイプのワクチンは医療現場での実績がない。効果があったとしてもどれほど持続するかも不透明だ。ワクチンは治療薬と違って予防を目的に健康な人に接種する。何より安全性が大事になる。深刻な副作用がでると、大きな社会問題にもなりかねない。政府は米ファイザーと英アストラゼネカから供給を受けることで基本合意している。接種によって健康被害が出た場合に、製薬会社の責任を問わない方針だ。通常とは異なる措置で、交渉の経緯や免責判断に至った経緯をきちんと説明すべきである。コロナのワクチンは実現できたとしても当初は感染を防ぐのではなく、発症や重症化を予防するものになりそうだ。流行状況に合わせて、効果と感染リスクや重症化リスクとのバランスを吟味して使い方を判断する必要がある。当面、供給量が限られる中、接種の順位を決めるのは当然の対応である。高齢者の年齢をどこで線引きするか、救急隊員、高齢者施設や保健所の職員も「医療従事者」に含めるかは今後の検討課題になった。詳細を詰める議論の内容もすみやかな公開が求められる。パブリックコメントを募ったうえで政府は方針を決定すべきだ。

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2020.7.25~28 世界における科学の進歩と固定的な考え方に固執する日本の遅れ (2020年7月29日、8月3、6、8、12、13日追加)

                   2020.7.9毎日新聞  厚労省  2020.4.5朝日新聞

(図の説明:1番左の図は、東京都の《検査で確認された》新規感染者数だが、左から2番目の図のように、検査数が少ないため確認されていなかった感染者が多く、検査数を少し増やしたら確認された新規感染者が増えたというのは、当たり前なのである。この間、検査もせず、まともな医療行為もしないまま、厚労省が国民に押し付けたのが、右から2番目の「新しい生活」の図だ。このうち、手洗いや咳エチケットは新型コロナ対策に限らず前から必要だったことで、全員を新型コロナ感染者と見做した身体的間隔の維持や換気は現代生活にマッチしない。また、働き方改革も現実的でない職種が多く、1番右の要請を護らない企業があるとして新型コロナ特別措置法改正を望む声があるが、国民の権利制限をする前に、行政はミスなく仕事すべきだ)

(1)日本政府が新型コロナで無策を通した本当の理由は何か?
1)本気になっていない新型コロナ対策
 東京都で、*1-1のように、「7月20日、新型コロナ感染者が新たに168人確認され、7月の累計が3354人に上って、入院・療養先が調整中の患者が501人に上った」等々の報道が繰り返されているが、ダイヤモンドプリンセス号の時から既に6カ月も経過しているため、この間、何をやっていたのかと思うだけだ。

 今でもPCR検査数を抑えており、早期診断・早期治療の努力はなく、軽傷者の隔離のために抑えていたホテルは6月末で契約解除したというから、「①行政は妨害こそすれ協力はしない」「②新型コロナ感染のモデルはスペイン風邪と同じ」「③国民はアマビエにでも助けてもらって団結して頑張れ」と言っているのと同じであって、これは、ウイルスや人間の全遺伝子が簡単に読めるようになった現代の医療から程遠い。

 そして、それを、病床不足や医療崩壊という医療側の責任にしているのも問題だ。仮に医療崩壊が起これば、それは、これまで的外れた抑制ばかりしてきた厚労省・財務省の医療行政の失敗であるため、政府・与党(特に厚労族議員)・行政は、その責任をどうとって、どう改善するかを問題にしなければならないのである。

2)新型コロナ特措法の改正は不要である
 政府は、*1-2のように、全国知事会の緊急提言を受けて休業要請と補償をセットで実施すべく、休業要請に従わない事業者への罰則規定を含む新型コロナ特別措置法改正を行う国・地方自治体の権限強化を行う検討に入ったそうだが、検査をして陽性患者を特定することもなく、特定業種で働く人全体を感染力のある陽性患者と看做して休業要請するのは、予防ではなく差別に由来した暴力である。

 そのため、検査数を増やして通常の医療を行わなかった目的の一つは、この新型コロナ特措法の強化で、ひいては緊急事態条項を加える憲法改悪を行うことだと思わざるを得なくなった。従って、このような無茶を可能にする新型コロナ特措法変更や緊急事態条項を加える憲法改悪には徹底して反対しなければならない。

3)保健所職員の増員は不要である
 保健所は、*1-3のように、「新型コロナ感染者の急増で行動履歴確認や濃厚接触者調査に追われ、感染を疑う市民からの健康相談も増えて業務が急増し、増強した職員分の倍くらい業務が増えたので、今後さらに職員を増やしたい」とのことだが、検査をするか否かの判断に保健所を通すのがネックであり、他の検査能力を眠らせたままでもあるため、これを解消するのが本質的解決である。

 つまり、これまで効率の悪い仕事をしてきた保健所職員の増員は、役所によくある焼け太りであり、さらに血税を使って効率の悪い役所に人員増強を行って無駄遣いするのではなく、まともな医療に戻すことこそ最も重要なことである。

(2)世界は火星探査の時代になったが、日本は?



(図の説明:1番左は、水をたたえていた太古の火星と現在の火星の様子、右の2つは、NASAが発表した現在の火星表面で、土や水の凍った場所が見られる)

1)火星探査機の打ち上げ
 アラブ首長国連邦(UAE)初の火星探査機「Hope」を搭載した三菱重工のH2Aロケットが、*2-1のように、2020年7月20日、鹿児島県の種子島宇宙センターから打ち上げられ、火星に向かう軌道に予定通り投入されて打ち上げが成功した。アラブ首長国連邦と三菱重工の両方に祝意と敬意を表する。

 Hopeは2021年2月に火星に到達する予定で、UAEの先端科学相でHopeミッションを率いるサラ・アル・アミリ氏は、「全世代にとって支えとなる出来事」「UAEの子どもたちが、自分にとって支えとなる計画・新たな現実・新たな可能性を持って目覚め、さらに貢献して世界に大きな影響を与えることができるようになることを嬉しく思う」とBBCニュースに述べられたそうで、その理想も素晴らしい。その点、日本は、子どもたちに、どういう教育をしているのか、大いに疑問である。

 この後、中国が、7月23日に火星探査機「天問1号」の打ち上げ、アメリカも、火星探査機「パーサヴィランス」を打ち上げる予定だそうで、その探査結果に注目したい。

2)火星への興味の数々
 UAEが火星を目指す理由は、「①火星の大気の仕組みを解明して今までにない科学を生み出すこと」「②火星がどのように大半の大気や水を失ったかの理解を深めること」「③UAEやアラブ地域全体で、より多くの若者に学校や高等教育で科学を学びたいと思わせること」などだそうで、これは日本でも重要なことである。

 また、UAEは「まね事」の科学をするのではなく、火星でエネルギーが大気中をどのように移動するかを上から下まで一日中全ての季節を通じて調べ、大気の温度に大きな影響を与えるちりなどの特徴を追跡し、大気の上部にある水素と酸素の中性原子の動きについても調べるそうだ。

 これらの原子は、太陽からのエネルギー粒子によって火星の大気が侵食されていく過程で重要な役割を果たしている疑いがあり、火星史の初期には明らかに存在していた水のほとんどが失われている理由を説明できるからだそうだが、地球に近くて似ている火星への興味は尽きない。

3)火星の移住に必要な人数は何人か
 アメリカの起業家イーロン・マスク氏が率いる民間宇宙企業スペースXは、*2-2のように、火星の植民を視野に入れた宇宙船「スターシップ」の開発を進め、火星で入植者が自立して生活するために最低必要な人数は110名であることを導き出したそうだ。これは、仏ボルドー工科大学のジャン-マルク・サロッティ教授の“100名規模”とほぼ一致しており、かなり正確だ。

 そして、諸外国はここまで考えて試算しているということを、日本人は忘れてはならない。

(3)遺伝子の変異と生物の進化
 新型コロナで一般の人にもなじみになったウイルスは、*3-1・*3-2のように、人類の祖先の細胞に入り込んで一体化し、「進化の伴走者」にもなったそうだ。確かに、母親のおなかの中で、母親にとっては「異物(本人以外の細胞)」であるはずの赤ちゃんを守る胎盤は、ウイルスの身の守り方に似ている。

 ウイルスは、生物の免疫細胞の攻撃を避けて縄張りを作れるため、これをやられると、生物のゲノムの一部と化した「内在性ウイルス」にまではならなくても、しばらく人体の中で静かにしていたウイルスが、免疫が弱くなった時に活発に活動し始めるということもありそうだ。

(4)それでは、恐竜は絶滅したのか?

 
      デイノケイルス(恐竜)            ハシビロコウ(鳥)
(図の説明:左の3つは、恐竜のデイノケイルスだが、重心の位置から考えて1番左の立ち方が自然で、左から2番目・3番目の立ち方では、重心が地についた足の上に来ないため、長時間立っていることは不可能だ。また、左から3番目の図のサイズの筋肉では、大きな骨格を動かすのに不十分であるため、筋肉の量や付き方も考え直す必要がある。これに対し、右から2番目のハシビロコウの骨格は重心が地についた足の真上に来る自然な立ち方で、1番右の生きたハシビロコウは鳥であり、顔は恐竜並みに怖いが、長い腕は翼になっている)

    
  ダチョウ     フラミンゴ      タンチョウヅル     ハクチョウ

(図の説明:鳥には、恐竜と同様に首が長く頭の小さいものが多い。また、立っている時は、地につく2本の足の上に重心がくる姿勢だ。そして、水中の獲物をとっている姿勢は、左から2番目のフラミンゴが典型的で、泳ぐハクチョウも首が長い)

 進化は、DNAの変異がランダムに起こって多様な生命が生まれ、そのうち子孫を残すのにより適した個体が多くの子孫を残す形で次第に種を形成するものである。従って、種の形成は、一つの個体内ではなく、多くの世代交代が行われる間に起こるものだ。

 それなら、恐竜はどうかと言えば、水の中を中心に生活した種は、水の中で捕食して子孫を残すのに適した身体の構造を持ち、陸上で生活するものは、そこで捕食して子孫を残すのに適した身体の構造を持ったに違いない。そして、その中には、寒冷地や空に進出してそれに適応した身体を持ったものもいるだろう。

 そのうち空に進出したものが飛ぶ鳥であり、陸上だけで通せた種が飛ばない鳥やハ虫類になったと思われるため、*4の恐竜研究も、化石だけでなく遺伝子を比較して系統樹を作るべき時代になった。そのため、法医学やDNAの専門家が恐竜を研究すると新発見できるかもしれない。

 私自身は、骨格の比較をすれば、大きさや洗練度は異なるものの、恐竜と鳥類は類似点が多いと前から思っていた。つまり、“恐竜”という命名が、生物の分類を誤らせたのである。

 私は、恐竜は、鳥の骨盤を持つ鳥盤類とトカゲの骨盤を持つ竜盤類の2つ(もしくはもっと多く)のグループに分かれると思うが、ティラノサウルスは手足の形から羽の生えた飛べない鳥類に近い恐竜だったと思う。中国で発掘された化石のティラノサウルスの祖先には羽毛が生えており、それはティラノサウルスの標本の首、腰、尻尾にウロコがあることを否定すべきものでもなく、その部分はウロコの方が便利だったか、まだ明確に分かれていなかったのだと思われる。なお、鳥類の羽には、どうみてもウロコから進化したように見えるものがよくある。

 「鳥は恐竜そのものであり、恐竜は絶滅したという考えは捨てなければならず、恐竜は絶滅していないことを受け入れなければならない」というのに、私は賛成だ。つまり、約6600万年前の隕石衝突により白亜紀を終焉に導いた大量絶滅時代を生き延び、その後、多様化した恐竜の中に鳥類がいたのだ。

・・参考資料・・
<日本が新型コロナで無策を通した理由は?>
*1-1:https://digital.asahi.com/articles/ASN7N71Y8N7NUTIL027.html?_requesturl=articles%2FASN7N71Y8N7NUTIL027.html&pn=4 (朝日新聞 2020年7月20日) 東京、501人が療養先「調整中」 宿泊施設不足も一因
 東京都では20日、新型コロナウイルスの感染者が新たに168人確認され、12日連続で100人を超えた。7月の累計はすでに3354人に上る。感染者数が高止まりする中、都が入院・療養先を「調整中」として計上する患者が20日時点で501人に上り、1日時点の5・1倍に膨れ上がっている。都は毎日、入院患者や重症者、宿泊療養、自宅療養、退院者の人数を公表している。どの項目にも属さない場合、都は「調整中」として人数を公表している。調整中の増加について、都は「行き先が決まっているが、事務手続き上、公表に至っていない感染者が多い」と説明する。都によると、感染確認の報告を受けた保健所と、感染者の居住地の保健所との間でやり取り中で、事務手続きが終わっていないケースが多いことに加え、ホテルを活用した宿泊療養施設の不足も一因だという。都は5ホテル(約1150人分)を確保していたが、6月の感染者は減少傾向にあり、ホテルとの契約を一部、6月末で終了した。だが、7月に一気に増加に転じ、新たな契約も結んだが、現在の受け入れは2ホテル(約260人分)にとどまり、156人分は埋まっている。入院患者も20日時点で920人に上り、1日(280人)の3・3倍まで増えている。都が入院患者向けに確保できている病床数は15日時点で約1500床にとどまり、都が13日までに確保を目指していた2800床には遠く及ばない。多くの病院ではすでに入院中の患者の病棟を移すなどして対応中だ。都の担当者は「2800床を確保するにはまだ時間がかかるが、病床が不足している状態ではない」と強調する。感染者を受け入れている都内の病院の医師の一人は「民間病院は人手も限られ、都が公表している病床数すべてが迅速に受け入れられるわけではない。数字以上に都内の医療現場は逼迫(ひっぱく)し始めている」と警鐘を鳴らす。

*1-2:https://www.chugoku-np.co.jp/news/article/article.php?comment_id=663481&comment_sub_id=0&category_id=1206 (中国新聞 2020/7/19) 新型コロナ特措法改正へ 政府、国と地方の権限強化
 政府は新型コロナウイルスの感染拡大に対応する新型コロナ特別措置法を改正する方向で本格的な検討に入った。菅義偉官房長官が19日のフジテレビ番組で法改正の必要性を明言した。東京などでの感染者急増を踏まえ、予防のため国と地方自治体の権限を強化する判断に傾いた。菅氏は最終的には特措法に基づく休業要請と補償をセットで実施すべきだとの考えを表明。全国知事会も緊急提言で、休業要請に従わない事業者への罰則規定を含む法改正を要請した。菅氏が法改正や補償の必要性を公言するのは初めて。早ければ次期国会で、国や知事の休業や検査に関する権限を強める可能性がある。

*1-3:https://mainichi.jp/articles/20200710/k00/00m/040/320000c (毎日新聞 2020年7月10日) 連日200人超は第2波か 保健所「手いっぱいだ」 病院「もう少し先か」
 新型コロナウイルスの感染者が急増している。東京都内では2日連続で200人を超え、過去最多を更新した。これは「第2波」の始まりなのか。病院や保健所は危機感を強める。「想像以上に増えている。今は目の前の仕事で手いっぱいだ」。新宿区保健所の担当者は10日、逼迫(ひっぱく)しつつある状況を明かした。歌舞伎町など「夜の街」では、ホストクラブなどによる集団検査が進み、同区ではすでに900人の感染が確認された。保健所はそのたびに行動履歴の確認や濃厚接触者の調査に追われる。区役所の別部署や都から応援を受けて職員を増員してきたが、感染を疑う市民からの健康相談も増え、業務は急増しているという。担当者は「(人員を)増強した分の倍くらい(業務が)増えている。今後さらに職員が増えればいいが……」と不安げだ。東京23区内の別の保健所では、先月に1日20~30件程度だった健康相談が、7月に入って3倍以上に増えた。(以下略)

<火星探査の時代>
*2-1:https://www.bbc.com/japanese/53460998 (BBC 2020年7月20日) UAEの火星探査機、種子島から打ち上げ成功 アラブ諸国初
 アラブ首長国連邦(UAE)初の火星探査機「Hope」を搭載したH2Aロケットが20日午前6時58分、鹿児島県の種子島宇宙センターから打ち上げられた。火星に向かう軌道に予定通り投入され、打ち上げは成功。火星の気象や気候を調査するための約5億キロの旅が始まった。火星探査機「Hope」の打ち上げは先週、悪天候のため2度中止されていた。HopeはUAEの建国50周年となる2021年2月に火星に到達する予定。UAEの先端科学相でHopeミッションを率いるサラ・アル・アミリ氏は、ロケットが無事に上空へ上っていくのを見たときの興奮や安堵(あんど)感を述べた。また、51年前のこの日にアポロ11号が月面着陸した時にアメリカに与えたのと同じ影響を、UAEにもたらしたと述べた。「目の当たりにしたすべての人を、さらに前進しさらに大きな夢を描くよう刺激する、全世代にとって支えとなる出来事だった」と、アル・アミリ氏はBBCニュースに述べた。「UAEの子どもたちが7月20日の朝、自分にとって支えとなる計画や新たな現実、新たな可能性を持って目覚め、子どもたちがさらに貢献し、世界に大きな影響を与えることができるようになることを、本当にうれしく思う」。UAEの探査機は、今月に火星へ向かう3つのミッションのうちの1つ。アメリカと中国はいずれも、表面探査機の準備の後期段階に入っている。
●なぜUAEは火星を目指すのか
 UAEは宇宙探査機の設計や製造の経験が少ないにも関わらず、アメリカやロシア、欧州諸国、インドだけが成功していることに挑戦している。あえてこれに挑戦したことにUAEの野心が表れている。アメリカの専門家の指導を受けたUAEのエンジニアたちは、わずか6年で非常に高度な探査機を完成させた。この探査機が火星に到達し、火星の大気の仕組みを解明して今までにない科学を生み出すことが期待されている。特に、科学者たちは火星がどのように大半の大気や水を失ったのか理解を深めることにつながると考えている。火星探査機Hopeは、インスピレーションを得るための手段と捉えられている。UAEやアラブ地域全体で、より多くの若者に学校や高等教育で科学を学びたいと思わせることが期待されている。Hopeは、UAE政府が石油とガス依存から脱却し、知識経済を基盤とした未来に向けて国を動かしていく意図を示しているとする多数のプロジェクトのうちの1つ。しかし火星となると、相変わらずリスクは高い。これまでに火星を目指した全てのミッションの半数は失敗に終わっているからだ。Hopeプロジェクト・ディレクターのオムラン・シャラフ氏は、危険性を認識しているものの、自分の国が挑戦するのは正しいことだと主張する。「これは研究開発ミッションであり、もちろん失敗はつきものだ」と、シャラフ氏はBBCニュースに述べた。「しかし国家としての進歩に失敗するという選択肢はない。ここで最も重要なのは、UAEがこのミッションから得た能力と可能性、そしてこの国にもたらした知識だ」
●UAEはどうやってプロジェクトを進めたのか
 UAE政府はプロジェクトチームに対し、外国の大企業から宇宙探査機を購入せず、自分たちで作らなければならないと指示した。つまり、必要な経験を持つアメリカの大学と提携することを意味していた。UAEとアメリカのエンジニアや科学者たちは一緒に、宇宙探査機システムと、火星を調査する3つの搭載機器の設計と製作を行った。探査機の製作の大半が米コロラド大学ボルダー校の大気宇宙物理学研究所(LASP)で行われた一方で、ドバイのモハメド・ビン・ラシドスペースセンター(MBRSC)でもかなりの作業が進められた。LASPのブレット・ランディン氏は、UAEが今や自分たちで別のミッションを行える素晴らしい状態にあると考えている。「探査機への燃料補給のプロセスは教えられるが、自分で脱出用スーツを着て、重さ800キロの揮発性の高いロケット燃料を貯蔵タンクから探査機へ運ばない限り、実際にどういうものなのかは理解できない」と、シニア・システムエンジニアのランディン氏は述べた。「UAEの推進エンジニアたちは今やそれを成し遂げ、次回宇宙探査機を作る際にどうすればいいのかをわかっている」
●Hopeは火星で何をするのか
 UAEは「まね事」のような科学をしたいわけではなかった。火星へ行って、他国がすでにしてきた測定を繰り返したくはなかった。だからUAEは火星探査計画分析グループ(MEPAG)と呼ばれるアメリカ航空宇宙局(NASA)諮問委員会を訪れ、UAEの探査機が現在の知識にどんな有益な研究を加えられるのかを尋ねた。MEPAGの助言はHopeの目的を形作った。UAEの探査機は火星でエネルギーが大気中をどのように移動するかを、上から下まで、一日中、全ての季節を通じて調べることになっている。Hopeは火星で、大気の温度に大きな影響を与えるちりなどの特徴を追跡する予定。また、大気の上部にある水素と酸素の中性原子の動きについても調べる。これらの原子が、太陽からのエネルギー粒子によって火星の大気が侵食されていく過程で、重要な役割を果たしている疑いがあるからだ。火星史の初期には明らかに存在していた水のほとんどが失われている理由を説明できるだろう。観測データを収集するために、Hopeは火星の高度約2万2000キロから約4万4000キロの赤道に近い軌道に入ることとなる。「1日のどの時間帯にも火星のあらゆる部分を見てみたいという強い望みが、この巨大な楕円形の軌道へたどり着くこととなった」と、Hopeミッションのコア・サイエンスチームを率いるLASPのデイヴィッド・ブレイン氏は説明した。「このような選択をすることで、例えば異なる時間帯に活動するオリンポス山(太陽系最大の火山)の上を飛行できるようになる。またある時には火星が私たちの下で自転しているのを見られるようになる。「火星の円形画像を撮影できるだろう。カメラにはフィルターがついているので、こうした画像を科学的に分析できる。言うなれば、異なるゴーグルをかけて全体像を見るようなものだ」
(英語記事 UAE launches historic first mission to Mars)

*2-2:https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2020/07/post-93885.php (Newsweek 2020年7月6日) 火星の移住に必要な人数は何人だろうか? 数学モデルで算出される
<「他の惑星で自立的に生活するためには、何人が必要か」という問いに仏ボルドー工科大学の研究者は、独自の数学モデルによって算出した......>
 アメリカの起業家イーロン・マスクが率いる民間宇宙企業スペースXでは、火星の植民を視野に入れた宇宙船「スターシップ」の開発がすすめられている。言うまでもなく、他の惑星への植民はたやすいことではない。入植者が自活するために、どのように現地の資源を取り出すのか、そのためにはどのような設備やスキルが必要となるのか、といった様々な課題を解決する必要がある。
●火星で入植者が自立して生活するために最低必要な人数は110名
 仏ボルドー工科大学のジャン-マルク・サロッティ教授は、その第一段階として「他の惑星で自立的に生活するためには、何人が必要か」という問いにフォーカスし、独自の数学モデルによって、火星で入植者が自立して生活するために最低必要な人数は110名であることを導き出した。この算出結果は、100名規模の搭乗を想定しているスターシップともほぼ一致している。サロッティ教授の数学モデルは「現地で利用可能な資源」と「入植者の生産キャパシティ」という2つの要素をベースとしている。マスク氏が主張するように「宇宙船を通じて資源を火星に継続的に届けられる」との楽観的な見解もあるが、サロッティ教授は「資源や技術をどれだけ地球から火星に運び込めるかを予測するのは不可能だ」との考えから、この数学モデルでは、火星外からの資源の供給を考慮していない。
●タスクを複数の人々で分担して1人あたりに必要となる時間を減らす
 また、この数学モデルでは、タスクを複数の人々で分担して1人あたりに必要となる時間を減らす「シェアリング・ファクター」を前提とし、自立して生活するための人間活動を、生態系マネジメント、エネルギー生産、冶金や化学といった工業、建設およびメンテナンス、育児や家事、教育などの社会活動という5つのドメインに分類したうえで、自立した生活を維持するために必要な時間と入植者が実際に利用できる時間を比較した。その結果、110名いれば、時間の半分を、育児や健康管理、文化的な活動といった社会活動に充てられることがわかった。サロッティ教授は、2020年6月16日に「サイエンティフィック・リポーツ」で公開された研究論文で「火星を例にあげ、数学モデルを用いて、他の惑星で生存に必要な入植者数と生活様式を導き出すことができた。この手法によって、生存のために最適な戦略の評価、比較、議論ができるようになるだろう」と述べている。(以下略)

<遺伝子の変異と生物の進化>
*3-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200531&ng=DGKKZO59745450Z20C20A5MY1000 (日経新聞 2020.5.31) 驚異のウイルスたち(2)人類と共存「進化の伴走者」、感染で遺伝子内に 胎盤や脳発達
 地球上にはいろいろなウイルスがいる。人類の進化にもウイルスが深くかかわってきた。太古のウイルスが人類の祖先の細胞に入り込み、互いの遺伝子はいつしか一体化した。ウイルスの遺伝子は今も私たちに宿り、生命を育む胎盤や脳の働きを支えている。新型コロナウイルスは病原体の怖さを見せつけた。過酷な現実を前に、誰もが「やっかいな病原体」を嫌っているに違いない。ウイルスが「進化の伴走者」といわれたら、悪い印象は変わるだろうか。母親のおなかの中で、赤ちゃんを守る胎盤。栄養や酸素を届け、母親の「異物」であるはずの赤ちゃんを育む。一部の種を除く哺乳類だけが持つ、子どもを育てるしくみだ。「哺乳類の進化はすごい」というのは早まった考えだ。この奇跡のしくみを演出したのはウイルスだからだ。レトロウイルスと呼ぶ幾つかの種類は、感染した生物のDNAへ自らの遺伝情報を組み込む。よそ者の遺伝子は追い出されるのが常だが、ごくたまに居座る。生物のゲノム(全遺伝情報)の一部と化し、「内在性ウイルス」という存在になる。内在性ウイルスなどは、ヒトのゲノムの約8%を占める。ヒトのゲノムで生命活動などにかかわるのは1~2%程度とされ、ウイルスが受け渡した遺伝情報の影響は大きい。見方によっては、進化の行方をウイルスの手に委ねたといっていい。哺乳類のゲノムに潜むウイルスは注目の的だ。東京医科歯科大学の石野史敏教授は、ヒトなど多くの哺乳類にある遺伝子「PEG10」に目をつけた。マウスの実験でPEG10の機能を止めると胎盤ができずに胎児が死んだ。PEG10は、哺乳類でも卵を産むカモノハシには無く、どことなくウイルスの遺伝子に似る。状況証拠から「約1億6000万年前に哺乳類の祖先にウイルスが感染し、PEG10を持ち込んだ。これがきっかけで胎盤ができた」とみる。胎盤のおかげで赤ちゃんの生存率は大幅に高まった。ウイルスが進化のかじ取りをしていた証拠は続々と見つかっている。哺乳類の別の遺伝子「PEG11」は、胎盤の細かい血管ができるのに欠かせない。約1億5000万年前に感染したウイルスがPEG11を運び、胎盤の機能を拡張したようだ。ウイルスがDNAに潜むのには訳がある。「生物の免疫細胞の攻撃を避け、縄張りも作れる」(石野教授)。ウイルスは生きた細胞でしか増えない。感染した生物の進化も促し、自らの「安住の地」を築きたいのかもしれない。東海大学の今川和彦教授は「過去5000万年の間に、10種類以上のウイルスが様々な動物のゲノムに入り、それぞれの胎盤ができた」と話す。ヒトや他の霊長類の胎盤は母親と胎児の血管を隔てる組織が少ない。サルの仲間で見つかる遺伝子「シンシチン2」は、約4000万年前に感染したウイルスが原因だ。さらにヒトやゴリラへ進化する道をたどった一部の祖先には、3000万年前に感染したウイルスが遺伝子「シンシチン1」を送り込んだ。初期の哺乳類はPEG10が原始的な胎盤を生み出した。ヒトなどではシンシチン遺伝子が細胞融合の力を発揮し、胎盤の完成度を高めた。本来のシンシチン遺伝子はウイルスの体となるたんぱく質を作っていたが、哺乳類と一体化すると役割を変えた。父親の遺伝物質を引き継ぐ赤ちゃんを母親の免疫拒絶から守る役目を担っているとみられる。石野教授は「哺乳類は脳機能の発達でもウイルスが進化を助けた」と指摘する。「複雑になった脳の働きを、ウイルスがもたらす新たな遺伝子が制御しているのだろう」。ウイルスが「進化の伴走者」と言われるゆえんだ。ウイルスの影響がよくわかる植物の研究がある。東京農工大学や東北大学などのチームはウイルスがペチュニアの花の模様を変える様子をとらえた。花びらの白い部分が、ゲノムに眠るパラレトロウイルスが動き出すと色づく。ダリアやリンドウでも似た現象がある。東京農工大の福原敏行教授は「一部はウイルスの仕業かもしれない」と語る。哺乳類のように進化の一時期に10種類以上の遺伝子がウイルスから入った例は見つかっていない。哺乳類も、形や機能の進化にウイルスを利用してきたのだろう。進化の歴史を隣人として歩んできたウイルスと生物の共存関係は今後も続く。

*3-2:https://www.nikkei.com/paper/related-article/?b=20200531&c=DM1&d=0&nbm=・・ (日経新聞 2020.5.31) 内在性ウイルス、進化研究の手掛かりに
 生物の生殖細胞に入ったウイルスがDNAの一部となった塩基配列。「内在性ウイルス様配列」とも呼ぶ。遺伝情報として子孫に伝わり、進化の過程で体の形や色、臓器や組織の機能を変える役割を果たしてきた。脊椎動物の場合、レトロウイルスがもとになった内在性レトロウイルスが多い。レトロウイルスは感染した動物のDNAに組み込まれやすい。他にもボルナウイルスなどが脊椎動物のDNAで見つかっている。様々な動物の間で特定の内在性ウイルスの有無を比べれば、そのウイルスが侵入した時期が分かる。そのため内在性ウイルスは「ウイルスの化石」とも呼ばれ、ウイルスの進化を研究する手掛かりになる。

<“恐竜”は絶滅したのか>
*4:https://books.j-cast.com/2019/07/21009447.html (Bookウォッチ 2019/7/21) 恐竜はいまも身近なところで私たちと同居している!
 NHKがこのところ、恐竜をテーマにした番組を相次いで放送している。東京・上野公園の国立科学博物館で開催中の「恐竜博2019」(2019年10月14日まで)のプロモーションの一環でもあるが、日本が実は「恐竜王国」であったという新事実を知り、興味を持った人も多いだろう。本書『恐竜の教科書』(創元社)は、イギリスの恐竜研究者であるダレン・ナイシュ(サイエンスライター、古生物学者)とポール・バレット(ロンドン自然史博物館研究員)が執筆。北海道で発見された「むかわ竜」などの発掘調査で有名な小林快次・北海道大学総合博物館教授らが監訳した最新の「恐竜の教科書」である。
●最新研究で覆る定説
 小林さんが「監訳者序文」で、最近の恐竜研究のスピードの速さについて、こう書いている。「これまで『定説』とされてきたことが、あっという間に古くなり、これまで考えもつかなかった恐竜の新しい像が唱えられる。そうかと思うと、2つの説を行ったり来たりして、いつまでたっても決着がつかないものもある」。恐竜は鳥の骨盤を持った鳥盤類とトカゲの骨盤を持った竜盤類の2つのグループに分かれるという定説があったが、2017年にイギリスの研究チームから異論が出たという。かなり専門的なことになるのでここでは触れないが、小林さんは「恐竜の進化の大きな流れを解釈する上での定説が根本から覆ったことになり、衝撃的な提案だった」としている。一方、2つの説を行ったり来たりしている例に、ティラノサウルスの羽毛問題があるという。中国で発掘された化石からティラノサウルスの祖先には、羽毛が生えていることが分かった。しかし、ティラノサウルスの標本の首、腰、尻尾にウロコが生えている研究成果が2017年に発表され、まだ羽毛問題は決着がついていないそうだ。本書の構成はこうなっている。第1章「歴史、起源、そして恐竜の世界」、第2章「恐竜の系統樹」、第3章「恐竜の解剖学」、第4章「恐竜の生態と行動」、第5章「鳥類の起源」、第6章「大量絶滅とその後」。
●鳥は恐竜である
 本書が強調するのは恐竜と鳥との関係である。著者はこう断言している。「鳥が恐竜そのものだということは、研究上重要な知見である。恐竜は絶滅したという考えは捨てなければならず、恐竜は絶滅していないということを受け入れなければならない」。恐竜の3つのグループのうち獣脚類に含まれるグループの1つが、約6600万年前に白亜紀を終焉に導いた大量絶滅を生き延び、その後爆発的に多様化した。その生き残りが鳥類だというのである。第5章、第6章でこのことを詳しく説明している。そしてこう結んでいる。「今日、私たちは、恐竜が現在も生息している動物であることを知っている。この数十年間の恐竜研究で明らかになった重要な事実の1つが、恐竜は6600万年前に絶滅していないということだ。彼らは、私たちのそばで暮らしており、私たちを取り巻く環境の中で重要な存在だ。そして、いくつかの種は、私たちがペットとして飼ったり、食料にしたりしていて、日常生活において重要な位置を占めている」。今日から、鳥を見る目が変わってきそうだ。疑問を持つ人にはぜひ本書を読んでいただきたい。豊富な写真と図版はオールカラーなので、小学生が見ても楽しめる。本欄では、小林さんが書いた『ぼくは恐竜探険家!』(講談社)、『モンゴル・ゴビに恐竜化石を求めて』(東海大学出版部)などを紹介済みだ。

<1枚309円の布マスク配布と感染症が想定外だった病院再編計画 ← 厚労省>
PS(2020年7月29日追加):*5-1のように、政府(厚労省)は、7月下旬から介護施設等に布マスク約8千万枚を配るそうだが、その費用は247億円に上るため、単価は309円/枚になり、これは使い捨てマスクの3倍以上する(現在は、50枚入使い捨てマスクが2,000円以下)。さらに、その布マスクは、海外生産したものを随意契約で購入しているため、国内の景気や技術力の向上には全く役に立たず、単なる大きな無駄遣いになっている。
 一方で、新型コロナのPCR検査や医療保険は変にケチっているため、国民全員を陽性と看做して自粛・休業させることとなり、これによる倒産回避のための莫大な無駄遣いも発生した。さらに、検査の技術開発を妨げ、治療薬の承認も行わず、日本の医療産業の質の向上を阻んでいるのが厚労省なのだ。
 その上、昨年は、*5-2のように、「病院再編で虎の尾を踏んだ」として厚労省に同情的な記事が少なくなかったが、厚労省は地方自治体が経営する公立病院や日赤などの公的病院を、心疾患、脳卒中、救急など9分野の高度医療について、2017年6月のレセプト(診療報酬明細書)データを分析し「診療実績が乏しい」「代替する民間病院が近くにある」などの基準を基に、統廃合の必要があるとして、424の病院を公表したのだそうだ。確かに、感染症は医療の「基本のキ」であるため、高度医療には入らないが、「基本のキ」であるからこそ感染症も考慮して病院に余裕を持たせておかないのは驚くばかりだ。また、普段は需要が小さくても必要な診療科もあり、それを置いておけるのが公的病院であり、さらに、団塊世代のすべてが75歳以上の後期高齢者となる2025年を睨めばこそ、リハビリテーションに進む前に高度急性期・急性期の医療が必要なのであるため、ここまで愚かな厚労省が企画しては困るわけである。

*5-1:https://www.tokyo-np.co.jp/article/45197 (東京新聞 2020年7月28日) 布マスク8千万枚配布へ 介護施設対象、厚労省
 新型コロナウイルスの感染拡大防止策として、政府が布マスク約8千万枚を7月下旬から介護施設などに配ることが27日、厚生労働省への取材で分かった。春から続く布マスク配布事業の一環で、9月までの配布完了を目指している。厚労省によると、対象は介護施設や障害者施設、児童施設、幼稚園、保育所などで、職員や利用者が使うことを想定。4月から約2千万枚、6月から約4千万枚を配布しており、今回は第3弾に当たる。「アベノマスク」とやゆされた全世帯向けとは別の事業だが、素材や形状は同じだ。

*5-2:://www.nikkei.com/article/DGXMZO51218300R21C19A0000000/ (日経新聞 2019/10/23) 「オレは聞いてない」 病院再編、虎の尾踏んだ厚労省
 宮仕えの身なら一度や二度は覚えがあろう。そんな話は聞いていないという上役のひと言で、実現間近だと思っていたプロジェクトが仕切り直しになる――。9月下旬、厚生労働省は地方自治体が経営する公立病院と日赤などの公的病院について、再編や統廃合を議論する必要があるとみている424の病院を名指しして公表した。心疾患、脳卒中、救急など9分野の高度医療について、2017年6月のレセプト(診療報酬明細書)データを分析し「診療実績が乏しい」「代替する民間病院が近くにある」などの基準をもとに選び出した。これが文字どおり「聞いていない」問題を引き起こした。名指しされた側の大半が424の名前を唐突に出してきたと受けとめたのだ。再編や統廃合について、各病院をかかえる自治体や医療圏での議論の材料にしてほしいという厚労省の意図は、たちどころに吹き飛んでしまった。「ウチは閉鎖対象なのか」(リストに載った病院の院長)、「なぜ民間病院の名前は出さないのか」(該当する自治体の首長)、「地域住民や患者に説明できないじゃないか」(地方議会の議員)といった抗議の声が同省に相次いだ。名指しされた側の被害者意識は、今なお増幅している。たしかに唐突感はあった。筆者も日経電子版が424病院のリストを載せたのをみて初めて知り、取るものも取りあえず担当課に取材に行った。だが説明を聞くと、準備を重ねて公表にいたった経緯がみえてきた。安倍政権は6月に閣議決定した骨太の方針2019に次のような趣旨を盛り込んでいた。「すべての公立・公的病院に関する具体的な対応方針について、診療実績のデータを分析し、その内容が民間病院に担えない機能に重点化され、(中略)医療機能の再編や病床数の適正化に沿うよう国が助言や集中支援する」。高度急性期・急性期という病院機能に着目した客観的なデータは、関係者を交えた同省主宰の「地域医療構想に関するワーキンググループ」の議論に基づくものだった。ワーキンググループに出された資料は厚労省のウェブサイトに掲載されているし、公表までに時間がかかる難点はあるが議事録も公開している。問題意識をもって一連の議論をフォローしてきた関係者にしてみれば、出るべくして出てきたリストだった。戦後ベビーブーム期に生を受けた団塊世代のすべてが75歳以上の後期高齢者になる2025年をにらみ、病院の機能を高度急性期・急性期主体から、リハビリテーション向けの回復期や長期入院の慢性期主体に移行させる必要性は、多くの医療関係者が意識している。リストの公表はその導火線になるはずだったが「聞いていない」問題に発展した以上、厚労省の意図は二の次にされ、一気に政治的な色彩を帯びてしまった。慌てた同省は、10月中に全国5ブロックで説明会を開くべくセットした。「意見交換会と言わなければおしかりを受ける」という気の使いようだ。11月には特に強い要望が出た県の担当部局に、手分けして個別に説明に赴くことにしている。17日に福岡市内で開いた九州ブロックの説明会では、橋本岳副大臣が冒頭にあいさつし「住民のみなさまの不安を招いてしまったことを、われわれとしても反省しています」と低姿勢で臨んだ。それでも「聞いていない」側は収まる風がない。18日付の本紙九州経済面は、名指しされた国立病院機構大牟田病院(大牟田市)の関係者が「職員や患者は病院がなくなるのではないかと不安に思っている。風評被害を払拭するメッセージを出してほしい」と求めたと伝えている。また公立種子島病院(鹿児島県南種子町)の担当者は「医師不足で困っているのに、若い医師が来てくれるか」などと訴えた。公立病院再編の必要性を唱えてきたある識者は「たしかに名指しされた病院は若くて腕がいい医師を集めにくくなるかもしれないが、それによって自治体の首長は再編・統廃合にいや応なく向き合わざるを得なくなるのではないか」と語る。リストの公表にはショック療法の意味合いがあるとみているわけだ。もちろん厚労省は再編を押しつける立場にない。民間病院では代替機能を果たしにくい災害医療やへき地医療を担っている公立・公的病院もあり、一律に再編対象にするのが難しいケースも出てくるだろう。議論の素材として出したリストだったが、地方政界や医療界を巻きこむ事態に発展し、戸惑いが隠せないといったところだ。心配なのは、厚労省がめっぽう政治に弱い官庁である点だ。行政官として理にかなった政策だと信じて出したものも、与党幹部や首相官邸がダメを出すと、たちどころに萎縮してしまう傾向が否めない。消費税収を積み立てたファンドを使ってリストラされる関係職員の退職金を割り増しするのも、政治的な妥協ではないか。公立・公的病院の再編・統廃合はほとんどの自治体の首長が遅かれ早かれ直面する難題だ。高齢化は待ってくれない。「聞いていない」と言われてひるむのではなく「いま聞いたのだから、いいじゃないですか」と言い返すくらいの気概を厚労省に持ってほしい。

<賢い選択をすべき>
PS(2020年8月3日追加):*6-1のように、沖縄県は新型コロナの感染拡大を防ぐために、8月1日~15日の期間に緊急事態宣言を出し、①沖縄本島全域で不要不急の外出 ②県境をまたぐ往来 ③観光による県外からの来県 を自粛し、④県内でのイベントの開催も中止・延期などをするように県民に求めたそうだが、検査・隔離・治療などの最も重要な医療行為を行わず、漠然と全員の活動を縮小させるのは経済の疲弊が大きい割に効果が薄い。特に沖縄の場合は、移動に航空機か船を使わなければならないため、空港や港で乗客全員に短時間で結果の出る検査を行えば、陽性者を隔離して治療することが可能なのである。さらに、イベントも入る前に短時間で結果の出る検査を行い、受益者が自費負担すればよく、検査もせずに莫大な協力金を支給して、営業時間を短縮させたり、接待・接触を伴う夜の街を標的に休業要請したりするのは、科学的根拠は乏しく経済的負担が大きい。また、携帯アプリを活用して自由な筈の個人の行動を追跡するのも、それ自体が目的なのではないかと思うくらい不合理だ。
 また、*6-2-1のように、ダイヤモンドプリンセス号の時から既に6カ月も経過しているのに、未だに「国内のPCR検査が目詰まり」などと言っているのは、クラスター以外は検査や治療をしない方針を決めた専門家会議と厚労省の政策の誤りであるため、それによって被害を受けた国民は責任追及した方がよいくらいで、そのくらいしないと厚労省の方針は変わらない。さらに、「唾液の方が鼻の粘液より5倍もウイルスが多い」というのは、米国で3月に発見されていたのに、日本ではまだ「唾液による検査は精度が低い」などと言って今でも防護服を着て鼻の粘液で検査しているのなら、日本は技術革新を牽引するどころかキャッチアップすらできずに無駄遣いしている国なのである。 
 民間企業では、*6-2-2のように、医師の判断に縛られずに自前で従業員に検査を受けさせる動きが広がり始めたそうだが、安全に働くためには定期的なPCR検査か抗体検査が必要であるため、会社が負担して検査拠点と連携し、検査結果を速やかに出せる体制を整えるのがよい。さらに、GoToキャンペーンなどによる国間・県間移動時も、空港や駅でチェックインする前に速やかに結果の出る検査を行うことを条件にするのがよいと思う。
 このような中、6カ月も検査数を制限したまま、*6-3-1のように、「休業要請に罰則と補償の規定を加えるべきだ」という大きな声に押されて、政府は新型コロナ対策の特別措置法を改正する検討に入ったそうだが、職業差別的な営業停止を要請する前に、的を得た予防を徹底し、私権を制限せずに経済を廻した方が、国民の福利が大きく、財政への負担は小さい。
 また、*6-3-2のように、埼玉県知事は新型コロナウイルスのPCR検査について、学校・病院・接待を伴う飲食店等のうち複数の感染者が発生して集団感染の可能性が高いと判断された施設は検査対象を拡大する方針を出したが、これはクラスター対策であってこれまでと同じだ。3~4月に速やかに陽性者を隔離しなかったため、無症状の新型コロナ患者が市中に多くいる現在では、健康診断にPCR検査を取り入れ、陽性者は陰性になるまで隔離して治療する対応が必要なのである。


   2020.7.10東京新聞  2020.7.24朝日新聞     2020.6.25Qtere

(図の説明:左と中央の図のように、関東で再燃し始めた新型コロナによる死者数は、右図のように、日本・韓国・中国などの東アジアでは著しく低い。そして、検査不足のため、仮にこの10倍の死者数がいたとしても欧米よりかなり低く、その理由は生活習慣・交差免疫・遺伝的特質などだと推測されている。そして、この大騒ぎの中、2018年に日本におけるインフルエンザ死者数が3,325人だったのと比較して、2020年7月20日に1,000人を超えたと言われる新型コロナ死者数は約1/3なのである)

*6-1:https://ryukyushimpo.jp/news/entry-1166374.html (琉球新報 2020年8月1日) 沖縄県が緊急事態宣言 本島全域で外出自粛要請、15日まで 那覇飲食店は時短営業
 玉城デニー知事は31日、新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため、県の警戒レベルを4段階中の第3段階「感染流行期」に引き上げ、県独自の緊急事態宣言を出した。緊急事態宣言の期間は8月1日から15日。期間中は沖縄本島全域で不要不急の外出を自粛するよう県民に求める。県境をまたぐ不要不急の往来も自粛するよう要請し、観光など県外からの来県は慎重な判断を求めた。医療体制を守るため、離島への移動も最小限にし、期間中の県内イベントの開催についても中止や延期、規模縮小の検討を呼び掛けた。緊急事態宣言は4月に引き続き2回目。玉城知事は31日の新たな感染者数が過去最多の71人を確認し、7月に入ってからの累計感染者数が253人になったことを挙げ、「爆発的な感染拡大がみられる」と述べた。感染拡大のスピードが想定を上回っており、感染者を受け入れる病床数が逼迫(ひっぱく)していることから、玉城知事は「重大な局面を迎えていることを県民に伝え、感染拡大防止に取り組むため宣言を発出した。何としても医療崩壊を食い止めなければならない」と訴え、県民一人一人の感染防止策の徹底を呼び掛けた。中南部を中心に感染が広がっており、特に那覇市の感染者数が115人に上ることなどから、接触や「3密」の場を減らすために、期間中は市内の飲食店の営業時間を午前5時から午後10時までにするよう求めた。営業時間短縮に協力する店舗には10万円の協力金を支給する。県はこれまでクラスター(感染者集団)が発生している那覇市の松山地域に店舗を構える接待・接触を伴うスナックなどに同期間、休業要請を実施することを決めている。キャバレーやナイトクラブ、ライブハウス、スナックなどを対象とし、応じた事業者には協力金20万円を支給する。20、30代以下の若年層への感染が多いことから、携帯電話のアプリなどを活用した感染防止対策や新しい生活様式の実践を呼び掛けた。

*6-2-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200801&ng=DGKKZO62191010R00C20A8EA2000 (日経新聞 2020.8.1) PCR 目詰まり再び、感染急増、拡充求める声
 新型コロナウイルスの感染が再拡大するなか、国内のPCR検査の拡充が進まない。1日の検査能力は4月に比べて2倍超の約3万5千件にとどまる。医師が感染の疑いが強いと判断しなければ検査できない「第1波」と同じ状況では、経済活動などの本格回復はおぼつかない。「また検査に目詰まりが出てきている。経済にも影響する」。31日、政府のコロナ対策の分科会後の記者会見で、尾身茂会長は政府に検査能力のさらなる向上を求めた。4月ごろの第1波では発熱などの症状が続いても保健所などが検査を断る事例が問題になった。当時は検査能力が1日1万件程度に限られ、検査対象を感染の疑いが強い人に絞り込んでいた。その後に検査能力は高まったが、7月に入って感染者は急増。再び検査の上積みを求める声が強まっている。日本臨床検査医学会で新型コロナ対策を担当する柳原克紀・長崎大教授は大規模クラスター(感染者集団)の発生に備え、「今の10倍以上に能力を高めるべきだ」と語る。目詰まりの根本には医師の判断を前提とした国の方針がある。唾液によるPCR検査が可能になり、医師が関与しない検査もしやすくなっている。唾液の採取は医師でない人もできるからだ。ただ鼻の粘液に比べて唾液による検査は精度が低いとされ、実施件数は広がりを欠く。保健所や地方衛生研究所の1日あたりの検査能力も4月から7月までで約2千件しか増えていない。民間検査会社の能力も増えたとはいえ1万8千件超にとどまり、欧米には見劣りする。

*6-2-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200801&ng=DGKKZO62191070R00C20A8EA2000 (日経新聞 2020.8.1) 企業、自前で検査の動き
 企業の間では医師の判断に縛られず、自前で従業員に検査を受けさせる動きが広がり始めた。日本ペイントホールディングスは31日、国内の全社員約4千人のうち希望者にPCR検査を順次実施すると発表した。検査費用は会社が負担する。伊藤忠商事は東京女子医科大病院と連携し、検査結果を即日に出せる体制を整えた。「関東地方の社員を対象に安心して働ける体制を整えた」という。日立製作所は一部の社内診療所で、業務で海外に渡航する社員に検査ができる体制を構築した。三菱商事も社内診療所に加え、外部の検査機関も活用して社員に対する検査を実施している。保健所による感染症法に基づく検査や、医師による医療保険での検査は感染の疑いが強い人に限られ、公費が投入される。一方、企業が安全目的などで従業員に行う検査は全額自己負担で公費はゼロだ。それでも自前の検査が広がるのは、無症状を含めた感染者が全国で急増する中、「社員の安心・安全を確保する」(日本ペイントホールディングス)ためだ。こうした対応をできる企業は多くない。6月下旬に日本経済新聞社が85社を対象にした調査では、全体の約7割の60社が社員向けPCR検査の「実施の予定がない」と答えた。理由は「検査費用が高い」「検査を受ける場所が見つからない」が多かった。コンビニエンスストアの店舗従業員を含め約20万人が働くローソン。検査の重要性は認識しているが現時点では検討しない。「検査費が廉価になることや公的補助が出ることを望む」(同社)。介護や保育など日常生活の維持に必要な従事者(エッセンシャルワーカー)はより切実だ。「職員が公費で検査を受けられる体制を整えてほしい」。高齢者向け福祉施設、こぐれの里(東京・練馬)の担当者は訴える。入居者への感染を防ぐため約40人の職員の一部は普段から外出を控える。施設側が検査を受けさせることを検討したものの、費用負担の重さから二の足を踏む。

*6-3-1:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/554680 (佐賀新聞 2020.7.31) コロナ特措法改正、早急に国会で議論を
 政府は新型コロナウイルス対策の特別措置法を改正する検討に入った。感染拡大防止のための休業要請に罰則と補償の規定を加えるべきだとした全国知事会の要請に呼応した。緊急事態宣言なしで知事が営業停止を要請できるようにすることなども検討するという。私権制限を強める内容で慎重な吟味が必要だが、第2波と呼ぶべき局面を迎え時間の余裕はない。法改正できるのは唯一の立法機関である国会だけであり、野党4党は憲法53条に基づき臨時国会召集を要求する方針だ。政府は「新しい法律は必要」(菅義偉官房長官)と言うなら早急に国会での議論に応じるべきだ。現行法の問題点は(1)要請・指示に強制力がなく私権制限への補償もない(2)国と都道府県の権限・役割の分担が不明確―に集約される。緊急事態宣言を発令するのは国(首相)で各種要請をするのは知事だ。特措法45条は、宣言を受けて知事が個人に外出自粛、店舗などに休業を要請、指示できると規定。従わない場合は店舗名などを公表できる。一方、24条は宣言なしでも知事が団体や個人に協力要請できると定めている。知事の要請には二つルートがあるわけだが、いずれも従わない場合の罰則、従った際の補償はない。知事会の要求は第一に、罰則を設けて権限を強化し、国が財政支援する休業補償を明文化することだ。次に、緊急事態宣言なしで知事が営業停止を要請できるようにすること。これに関しては、知事が独自に実施を判断するのは難しいため、統一基準を政府がつくるべきだとする一方、知事に国との事前協議を求めている現行の対処方針は知事権限を形骸化するとして見直しを主張している。3点目は、緊急事態宣言の対象を都道府県ではなく市町村単位に細分化することだ。いずれも知事の法執行を後押しするため、都道府県が希望するのは一定の合理性があるとも言える。だが、これら知事会の要求を全て盛り込んだ法改正が妥当なのかは疑問がある。例えば、緊急事態宣言対象の市町村は国が決め、休業要請の対象期間・業種は知事が決めるというのは、すみ分けが難しくないか。宣言なしで知事が営業停止を求める権限を持てば、国と知事の「二重権力」になりかねない。逆に言えば、出ても出なくても効果は同じとなり、緊急事態宣言が有名無実化しかねない。一方で、宣言発令の権限を知事に移譲すればいいとの議論にもなり得る。百出する議論をきちんと整理して法律に落とし込まなければ、法改正によって、かえって混乱が増しかねない。また政府が進める特措法以外の現行法の積極適用による対策強化も議論が必要だ。「警察が足を踏み入れる形で厳しくやる」(菅官房長官)として警察が風営法に基づきホストクラブの時間外営業などを取り締まる際、コロナ予防の点検も行うという。厚生労働省も建築物衛生法による立ち入り調査を検討する。こうした法執行は越権行為、公権力乱用につながり社会を萎縮させかねない。政府は直ちに国会で野党のチェックを受けるべきだ。さらに言えば、議論の混迷はリーダーシップ不在の証左だ。安倍晋三首相は「緊急事態宣言を出す状況にはない」と立ち話で言うだけでなく、政府方針をきちんと説明し疑問に答えてほしい。

*6-3-2:https://www.saitama-np.co.jp/news/2020/07/28/08_.html (埼玉新聞 2020年7月28日) <新型コロナ>集団感染の可能性…施設の検査対象を拡大へ 市長会議で方針 別の店や利用者らにも
 県内各市長と知事、県幹部が行政課題について意見交換する市長会議が27日、さいたま市内で行われた。会合で大野元裕知事は新型コロナウイルスのPCR検査について、学校や病院、接待を伴う飲食店などで複数の感染者が発生し、集団感染の可能性が高いと判断された施設では、検査対象を拡大する方針を明らかにした。これまでは感染が確認された場合、原則として濃厚接触者に限り検査を実施してきたが、大野知事は取材に対し「市町村や県が迷いなく、効果的に検査を行える体制を作る」と話した。無症状者の検査は県ではこれまで、原則として濃厚接触者に限定し、保健所が濃厚接触者を特定し、PCR検査を実施してきた。厚労省は今月15日、都道府県などに対し、感染症法に基づく新たな検査の対象者として、濃厚接触やクラスター(感染者集団)連鎖が生じやすいと考えられる特定の地域や集団、組織などを含めることを通知している。県はこの指針に基づき新たに対象となる例として、医療機関や高齢者施設であれば職員や入院患者、入所者まで広げ、保育所や幼稚園であれば職員や園児、小・中学校、高校では同じ学級やクラブに所属する職員や児童生徒、職場では感染者と同じ部署(フロア)に属する職員や利用者らまで拡大する。接待を伴う飲食店では同じビルの別の店の従業員、利用者にも実施する。会議には県内40市の全市長が参加。県から、新型コロナウイルスの県内の発生動向や検査体制強化や病床確保計画など、第2波への備えが説明されたほか、「疑い患者」の円滑な救急搬送受け入れ体制構築による「たらい回し」防止への県独自の取り組みなどが紹介された。出席した市長からは県に対し、家族に感染者、濃厚接触者がいる人を集団でどう扱うかといったことや、集団検査が始まった際の情報管理、県と市の個人情報保護と発表の在り方などについて質問や意見が出された。会議後、県市長会会長で熊谷市の富岡清市長は記者団に対し「新型コロナウイルス対策を含め意見交換し、検査枠拡大などコンセンサスが得られた。県と市町村が一体となり、課題に取り組む土台ができた」と話した。

<メディアの意図的な誤報は何故か?>
PS(2020年8月6、8、12、13日追加):大阪府、大阪市、府立病院機構大阪はびきの医療センターが、8月4日、新型コロナウイルス感染者が殺ウイルス効果のあるポビドンヨードを含むうがい薬でうがいをしたら、唾液検査で陽性となる割合が減ったという研究結果を発表すると、*7-1をはじめとして、メディアで言いがかりのような非難が始まった。しかし、「厚労省が承認していないから、効果がない」とは言えず(そのような薬は多い)、唾液の中にウイルスがおり、味覚障害を起こすのなら、口腔内だけでもウイルスを減らせば自分の免疫への負荷を減らせるので、予防効果も治療効果もあるだろう。また、「完全に効かないから、効かない」とも言えず、買い占めをするのは人の倫理の問題であって発表者の責任ではない。さらに、イソジンは、あわてて買わなくても普段から置いてあってよいようなうがい薬であり、これに加えてアルコールを含む口腔洗浄液も効果があると思われる(やりたくない人には、決して薦めない)。
 このような中、*7-2のように、アビガン投与の臨床試験結果についても、マスコミは意図的に有効性が確認できないというニュースを流したが、情報発信元の藤田医科大学の発表は、「入院初日から投与したグループと6日目から投与したグループとの間に有意差が見られない。両方のグループも全員ウイルスが2から3日後に消失した」「投与と非投与との比較はしていない」ということだったそうだ。中等症・重症の患者に偽薬を服用させる研究など人道的にできないため、投与と非投与との比較をしていないだけであり、それによって「アビガンの有効性は示されなかった」という結論にはならない。これについては、東大病院の観察研究に基づいた「重症コロナ患者へのフサン・アビガン併用療法の有効性示唆(日本医事新報社)」という記事が自然で、軽症ならアビガンだけでもよさそうだ。
 それでは、何故、メディアが前向きの予防薬・検査・治療薬を否定ばかりして後ろ向きの自粛を求め続けるのかを考えれば、①『必ず第2派が来る』とした専門家会議の予言をあてさせたい ②家にこもってTVを見ていて欲しい ③新型コロナにかこつけて「新しい生活様式」を普及させたい ④私権の制限をしたい ⑤何でもいいから首相はじめ政治家を批判したい など、新型コロナの鎮静化(これが国民の利益)とは異なる目的があると考えざるを得ない。
 なお、2020年8月7日、*7-3のように、厚労省は「①都道府県が推計した今後の流行時に必要となる1日あたりの最大検査件数は全国で計約5万6千件にのぼる」「②検査可能な件数は7月末時点で少なくとも30都道府県が最大想定を下回っている」「③民間機関等への外部委託や近隣自治体との連携で対応してほしい」等と発表したそうだが、①については、最大検査件数が全国で計約5万6千件になるというのはむしろ甘い。何故なら、人口84百万人のドイツは、感染者の早期発見に繋げるため、*7-4のように、7月9日時点でPCR検査を週110万件行えるまでの検査態勢強化を続け、他の国も検査を増やしており、これが現代の正攻法だからだ。そのため、②については、3月初旬ならまだわかるが、それから5ヶ月も経過した今では何を言っているのかと思われ、③の民間機関等への外部委託が可能であることも2、3月から言われていたのだ。さらに、近隣自治体との連携は、2月に和歌山県が行ったことだ。にもかかわらず、日本では融通をきかせず検査をケチったため、市中に蔓延させてかえって莫大な費用がかかった。そのため、市中蔓延は、厚労省と保健所の責任であって、国民の責任では全くない。
 さらに、*7-5のように、新型コロナウイルスの有無を調べる検査は、「①検査機器で分析するには専門技術が必要だが、対応できる人材が限られる」「②検査機器で分析する能力があっても、検体が十分に採れる態勢がないと検査できない」「③濃厚接触者にあたらない接触者にも検査を広げる必要があり、全国で約30万件の検査が必要」「④無症状の濃厚接触者まで積極的に検査しており、おおむね適切な範囲」「⑤PCR検査では、検査精度の限界から偽陰性が生じる」「⑤偽陰性の人が外出すれば、本当は陽性であるため感染を広げる」などが、未だに言われているそうだ。このうち、①②については、既に検査機器の改良ができているため、③の濃厚接触者ではない人に検査を広げることは可能だ。さらに、⑤の偽陰性・疑陽性のような問題は、感度の高い(低い)他の検査と併用したり、複数回検査したりすれば解決できる上、④のような不徹底な検査と隔離が現在の波を引き起こしたのであるため、これを解決することが重要なのであり、そのために検体の研究や機械の改良を世界で進めているのである。
 琉球新報は、2020年8月11日、*7-6のように、沖縄県議会が、「沖縄を訪れる観光客などの往来者に対して空港内で唾液による抗原検査を促す条例制定を行い、陰性となった往来者には『検査済証』を発行して本人とホテルの双方が安心できる環境づくりを目指す」と記載している。内外の他の空港でも飛行機にチェックインする時に検査を行い、手荷物検査終了時に「陰性証明書」も発行できるようにしておけば、全員自粛ではなく経済活動を行うことが可能だ。これは船舶にも応用でき、検査費用は運賃に含めて航空会社や船会社が支払ったらどうだろうか?

*7-1:https://www.asahi.com/articles/ASN8465THN84PTIL01M.html (朝日新聞 2020年8月4日) 「うがい薬で唾液中のコロナウイルス減少」吉村知事会見
 大阪府と大阪市、府立病院機構大阪はびきの医療センター(大阪府羽曳野市)は4日、新型コロナウイルスの感染者に殺ウイルス効果のあるうがい薬でうがいをしてもらったところ、唾液(だえき)の検査で陽性となる割合が減ったとの研究結果を発表した。府などは肺炎などの重症化の予防につながる可能性があるとして、本格的な研究を始める。政府が効果などを認めていないため、吉村洋文知事は「薬事法(現・医薬品医療機器法)上、効果があるとはいえない」とした上で、「(殺ウイルス効果のある)『ポビドンヨード』を含むうがい薬は『イソジン』などとして市販されているので、うがいを励行してほしい」と呼びかけた。センターの松山晃文・次世代創薬創生センター長によると、研究は府内で宿泊療養している軽症や無症状の患者41人を対象に実施。ポビドンヨードを含んだうがい薬で1日4回うがいした人の唾液のPCR検査の陽性率は、1日目は56・0%で、4日目は9・5%に減った。うがいをしなかった人は、それぞれ68・8%、40・0%だったという。松山氏は「コロナは鼻やのどの奥で増える。今回、唾液だけでやっているので、これで患者を治せるわけではない」とした。「ウイルスを含んだ唾液が肺に入ることで肺炎を起こすケースがある。唾液中のウイルス量を減らすことで重症化が抑制され、人にうつしにくくなるのではないか」とも説明。今後は対象者2千人を目指して研究を続けるとした。効果が薄い場合の責任について記者団に問われると、吉村知事は「僕が責任を取るのは研究結果。結果は保証したい。コロナに完全に効く薬はなく、それに対して責任取るとか取らないとか、そういうものじゃない」とした。会見で吉村知事は「買い占めはしないでください」と訴えたが、大阪市中央区のドラッグストアでは会見後の午後4時半過ぎ、イソジンを含むうがい薬を置く棚だけが空になっていた。男性店長は「1時間ほど前に売り切れました」。約30個あったうがい薬が10分ほどの間に売り切れたという。「本来は風邪が流行する冬場に売れる商品。コロナの予防にはなるかもしれないですが……」。新型コロナウイルスの影響で1家族に1個と限定して販売していたという。自転車で店に駆けつけた男性(40)は、売り切れた棚の前で立ち尽くし、「テレビ番組でうがい薬が取り上げられているのを見た妻に頼まれて買いに来た。本当に効くのか分からないが、念のため、あれば安心できるかなと思って」。肩を落とし、携帯電話で妻に報告した。

*7-2:https://ameblo.jp/study-houkoku/entry-12610511562.html (Ameblo) アビガン投与の臨床試験結果に関するマスコミの誤報
 7月10日の各報道はアビガン投与の臨床試験の結果、有効性が確認できないとニュースを流していた。情報発信元の藤田医科大学の発表を読むと、記者は取材していないが読解力不足なのだろうと思われる。または意図的な捏造か?
 下記藤田医科大学の発表を読めば、「入院初日から投与したグループと6日目から投与したグループとの間に有意差が見られない。両方のグループも全員ウイルスが2から3日後に消失していた。」「投与と非投与との比較はしていない」と言うことだろうと解釈できる。各報道は、この発表を「有効性確認できず」と発表していた。共同に至っては「投与した感染者と未投与の感染者で投与6日目までを比較したところ」と完全に読み間違っている。NHKは「臨床研究は「初日から最長で10日間アビガンを投与するグループ」と、「最初の5日間は投与せず入院6日目以降に投与するグループ」で比較して調べています。」と正しく理解しているが「明確な有効性確認できず」と誤った印象のタイトルを付けている。以前より、アビガンの臨床試験については、否定的な論調の記事が多い。なお、7月6日の東大の発表では、アビガンとフサンの併用により、集中治療室で治療を受けた11人のうち10人が平均16日で人工呼吸器が不要になったと有効性を示唆している。(日本医事新報社)
*藤田医科大学発表:ファビピラビル(アビガン)特定臨床研究の最終報告について(https://www.fujita-hu.ac.jp/news/j93sdv0000006eya.html)
<報道>
○共同:アビガン、有効性示されず
 藤田医大(愛知県)は10日、全国の医療機関が参加した新型コロナウイルス感染症の治療薬候補アビガンの臨床研究で、投与した感染者と未投与の感染者で投与6日目までを比較したところ、回復が早い傾向はみられたものの、統計的に明らかな差はなかったと発表した。この研究では、明確な有効性は示されなかった。ウェブ上で記者会見した研究責任者の土井洋平教授は「ウイルス消失や、解熱しやすい傾向はみられた」と説明。研究参加者が89人と少なかったため統計的な差が出なかったのではないかとした上で「日本の流行状況では、この規模の研究が限界」との見解を示した。(https://www.47news.jp/news/new_type_pneumonia/5000060.html)
○NHK:「アビガン」明確な有効性確認できず 藤田医大など 新型コロナ
 新型コロナウイルスの治療薬の候補として期待されている「アビガン」について、患者に投与する臨床研究で明確な有効性は確認できなかったなどとする結果を愛知県にある藤田医科大学などのグループが発表しました。藤田医科大学などのグループは、ことし3月からインフルエンザ治療薬の「アビガン」を軽症や無症状の入院患者、88人に投与し、有効性や安全性を確かめる臨床研究を行っていて、10日、オンラインでの会見で結果を公表しました。臨床研究は「初日から最長で10日間アビガンを投与するグループ」と、「最初の5日間は投与せず入院6日目以降に投与するグループ」で比較して調べています。発表によりますと、「初日から投与したグループ」では6日目までにウイルスが検出されなくなった患者は66.7%でしたが、「5日間投与しなかったグループ」では56.1%でした。また熱が下がるまでにかかった平均の日数は、初日から投与すると2.1日、5日間投与しなかった場合は3.2日だったということです。研究グループは、入院初日から投与した方がウイルスがなくなったり、熱が下がったりしやすい傾向は見られたものの、統計的に明確な有効性は確認できなかったとしています。一方、重大な副作用は確認できなかったということです。土井洋平教授は「早く改善する傾向はあり、有効性がなかったという結論ではないと思う。国には依頼があればデータを提供していきたい」と話しています。
○厚労省「申請するかどうかは製薬企業の判断」
 「アビガン」について藤田医科大学の臨床研究の結果が示されたことを受け、厚生労働省は、「今回の結果をどう扱うのかや、新型コロナウイルスの治療薬としての承認を今後申請するかどうかは製薬企業の判断だ。申請された場合は厚生労働省として改めて審議する必要がある」とコメントしています。
○富士フイルム「発表内容を精査 治験は継続」
 「アビガン」については、薬を開発した富士フイルムのグループ会社が新型コロナウイルスの治療薬として、国の承認を目指した治験を進めています。今回の臨床研究の結果について、富士フイルムは「藤田医科大学の発表内容を精査しています。企業として行っている治験は現在も継続していて、引き続き行っていきます」とコメントしています。(https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200710/k10012508371000.html)
○日経
 アビガン「有効性確認できず」藤田医科大、新型コロナ(https://www.nikkei.com/article/DGXMZO61378960Q0A710C2I00000/)
○ロイター
 アビガンの臨床研究、統計的な有意差みられず=藤田医科大学(https://jp.reuters.com/article/avigan-idJPKBN24B0R0)
○日本医事新報社
 重症コロナ患者へのフサン・アビガン併用療法の有効性示唆─東大病院の観察研究で(https://www.jmedj.co.jp/journal/paper/detail.php?id=15071)

*7-3:https://www.asahi.com/articles/DA3S14579954.html (朝日新聞 2020年8月8日) 検査能力不足、30都道府県 7月末時点 全国、最大5.6万件必要 新型コロナ
 新型コロナウイルスのPCRなどの検査について、厚生労働省は7日、都道府県が推計した今後の流行時に必要となる1日あたりの最大検査件数は、全国で計約5万6千件にのぼると発表した。朝日新聞の調査では、検査可能な件数は7月末時点で、少なくとも30都道府県が最大想定を下回っていた。
厚労省は6月、検査体制の強化が欠かせないとして、3~5月の国内の流行時の患者数、重症化率などをもとに患者の推計モデルを提示。それに基づき、都道府県が流行時に必要な最大の検査数を推計し、体制を整えるよう求めていた。厚労省によると、最大検査件数の推計は計5万5933件(豪雨災害の影響で熊本県は含まず)。朝日新聞が各都道府県に7月末時点での検査能力を聞いたところ、回答があった46都道府県で計4万2203件(民間検査機関の活用を含む)。4月7日に東京都などに緊急事態宣言が出た時点の検査可能件数の1・1~23・9倍と、各地で検査能力は強化されていた。ただ、7月末時点で検査可能件数が、推計された最大必要件数以上だったのは15県。今春の流行時には、検査能力の限界のためにPCR検査を受けられない例が頻発したが、感染者が急増すると今後も同様の事態が起こる懸念がある。厚労省は、機器の導入などにより9月末までに全国で最大計約7万2千件のPCR検査や抗原検査ができるようになると見込む。だが都道府県への取材では、全国の自治体が一斉に機器導入を目指していて納期が遅れているケースもあり、備えには課題が残る。厚労省の担当者は、現状で検査能力が足りていない自治体について「民間機関などへの外部委託や近隣の自治体との連携で対応してほしい」と求めている。

*7-4:https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200709/k10012505371000.html (NHK 2020年7月9日) 独研究所所長「PCR検査は週110万件に態勢強化」新型コロナ
 ドイツ政府の新型コロナウイルス対策を担当する国立ロベルト・コッホ研究所の所長が日本メディアの取材に応じ、感染者の早期発見につなげるためPCR検査を週に110万件行えるまでに検査態勢の強化を続けてきたことを強調しました。ドイツの国立ロベルト・コッホ研究所のロタール・ウィーラー所長は、8日、都内の日本記者クラブで開かれたドイツ大使館の記者会見に、オンラインで参加しました。ドイツでは日本時間の8日午後6時現在、新型コロナウイルスへの感染が確認された人が19万人に上り、死者は9000人を超えていますが、一時は1日で6000人を越えていた新たな感染者数は最近では数百人の水準で推移しています。会見でウィーラー所長はドイツの施策について説明し、感染者の早期発見につなげるため現在ではPCR検査を週に110万件行えるまでに検査態勢の強化を続けてきたことを強調しました。また、ウィーラー所長は「追跡アプリなどのデジタル技術を駆使しながら、地域の状況を把握している保健所の態勢を強化することが非常に重要だ」と述べ、地域の機関も含めて国全体で対応能力を向上させ対策を進めて行くことが必要だと指摘しました。

*7-5:https://digital.asahi.com/articles/DA3S14581160.html?_requesturl=articles/DA3S14581160.html&pn=3 (朝日新聞 2020年8月9日) PCR拡充、急ぐ自治体 関東へ検体、結果まで数日 検査可能件数1日90件の島根
 新型コロナウイルスの流行時に必要となる、ウイルスの有無を調べる検査の最大想定は、全国で1日計5万6千件にのぼるとの推計を、厚生労働省が公表した。都道府県は検査体制の拡充を急ぐが、7月以降の全国的な感染拡大に直面するなか、課題も浮かぶ。島根県雲南市では7月21日、市役所の職員1人の感染が分かり、その3日後に職員2人の陽性が判明。市役所の職員約300人のPCR検査をすることになったが、県内の1日あたりの検査可能件数は90件。県の担当者は「あわてて民間の検査機関と契約を結びました」。ただ、検体の送り先が関東だったため、結果がわかるまでに数日かかった。契約は今年度末まで結んでいるが、検査結果はなるべく早く欲しい。島根県は流行時に必要となる最大想定の1日400件分を、地方衛生研究所など県内で分析できるよう、PCR検査や抗原検査の機器を増やす予定だ。県内に分析できる民間の検査機関がない地方だと、民間を活用しても結果が出るのに時間がかかる。自前の検査機器の調達に力を入れる自治体は複数ある。機器の導入をめぐっては「納入まで時間がかかっている」と取材に答えた自治体が愛知県など複数あった。国の補助金を利用して全国の自治体が一斉に導入を進めているからだ。検査機器で分析するには専門技術が必要で、対応できる人材は限られる。検査が自動化された機器に期待を寄せる声も兵庫、徳島、愛媛県などから聞かれる。一方、検査機器で分析する能力がいくらあっても、検体が十分に採れる態勢がないと数多く検査はできない。検体を採る際に作業する人が感染してしまう恐れがあるため、感染症対策の設備が整った場所で防護具をつける必要があるなど、慎重な作業が求められる。青森県の担当者は「検査能力に対しての検体採取能力の不足」を課題に挙げる。一つの医療機関で1日に採取できる検体数は限られ、大幅に増やすのは難しい。県内の医療機関で可能な最大採取数は、分析可能な検査数よりも大幅に少ないという。こうしたなか、京都府は7月、府医師会と契約し、唾液(だえき)を採取できるクリニックを140以上にまで増やした。担当者は「検査能力と検体採取能力の両方がないとだめ」とし、検体が採れる医療機関をさらに広げていく予定だ。近隣の自治体で連携し、検査をこなす動きもある。大分県では3月下旬、県の1日最大可能件数約130件を大きく超える数の検査が必要となった。そこで、九州・沖縄・山口の9県が締結している災害時応援協定を使い、福岡県や長崎県でPCR検査を行った。逆にその後、大分県が他県の検査を引き受けたこともあるという。
■陽性者隔離、歯止めに効果 検査増求める声、根強く
 PCR検査をめぐっては「第1波」の流行が起きた3~4月、全国で検査を受けられない人が続出した。安倍晋三首相は4月6日、検査能力を1日2万件に倍増すると表明。その後、国は保健所や地方衛生研究所でできる検査数を増やすため、検査機器の導入を促し、民間の検査機関の設備投資も支援している。医師が必要と判断した場合は保健所を介さず検査ができる「PCRセンター」の設置が各地で進むなど、「目詰まり」を解消するための対策が打ち出されている。朝日新聞が各都道府県に聞いた7月末時点の検査能力は、回答があった46都道府県で計約4万2千件(民間検査機関の活用を含む)にのぼる。ただ、今後の流行時に必要になる最大想定を少なくとも30都道府県が下回っている状況だ。人口10万人あたりの検査可能な件数をみると、4月より増えているものの、都道府県ごとに差がみられる。感染者の急増を受けて日本医師会が8月、医師が必要と認めれば確実に検査できるよう、検査のさらなる充実を求める緊急提言を発表するなど、PCR検査を増やすよう求める声はいまも強い。検査はどこまで増やすべきなのか。一般的に検査可能件数を増やすほど、陽性の人が多く見つかる。その人を隔離すれば感染拡大に歯止めがかかる。検査待ちも起こりにくい。日本臨床検査医学会理事の柳原克紀・長崎大教授(臨床検査医学)は「濃厚接触者にあたらない接触者にも検査を広げる必要があると考える。長崎県でクラスター(感染者集団)が発生したときに必要だった検査件数や、諸外国の状況を踏まえ、全国で約30万件が必要だ」と語る。
■「偽陰性」、感染拡大懸念も
 一方、むやみに検査を広げる必要はないと主張する専門家もいる。山形大病院の森兼啓太・検査部長(感染制御学)は「3~4月は症状のある人にも検査できず明らかに検査数は不足していたが、いまは無症状の濃厚接触者まで積極的に検査している。対象はおおむね適切な範囲になっている」と話す。PCR検査では、採取した検体に偶然ウイルスが含まれないなど検査精度の限界から、本当は陽性なのに陰性と判定される「偽陰性」が生じる。約3割と言われており、本来10人が陽性なのに3人の感染を見逃している計算だ。その人たちが陰性判定によって安心して外出すれば、本当は陽性のため、気付かないまま感染を広げかねない。「検査があったら安心という問題ではない」と森兼部長は語る。民間検査機関による検査は増えている。自費検査による社員や顧客への感染拡大防止や、海外出張への備えなどビジネス上のニーズが増えており、民間機関も設備投資を進めている。一方で、民間機関は公的検査も請け負う。保健所からは、民間機関で私的な検査が増え続ければ、公的検査に時間がかかるなどの影響が出ないか心配する声も出てきている。

*7-6:https://ryukyushimpo.jp/news/entry-1171940.html (琉球新報 2020年8月11日) 空港でコロナ唾液検査 沖縄県議会が条例検討 陰性の来県者に「検査済証」発行
 沖縄県内で新型コロナウイルスの感染拡大が続く中、水際対策を強化するため沖縄を訪れる観光客などの往来者に対して、空港内で唾液による抗原検査を促す条例制定に向けた動きが県議会内で始まっている。条例の内容は強制力を持たすものではないが、検査で陰性となった往来者には「検査済証」を発行することで、本人だけではなく観光客らを受け入れるホテル業者など双方が安心できる環境づくりを目指す。現在、県議会の赤嶺昇議長と中立会派・無所属の会の當間盛夫代表ら県議有志が素案を作成しており、早ければ週内にも各会派に条例制定に向けた議論に参加するよう呼び掛ける方針。検査の実施は那覇空港など県内の各空港を想定する。検査にかかる費用や人員規模については今後、県を交えて検討する考えで、當間氏は条例制定の意義について「本来、国が法改正などを行い実施すべきだが国の動きを待っていては感染拡大は止められない」と語った。条例制定に向けては、6月定例会で可決した新型コロナウイルス感染症対策に関する条例を改正する案も検討されたが、他の条文との整合に時間をかけるよりも新たな条例を制定した方が早いと判断した。精度の高いPCR検査の実施も検討しているが、結果判明に1日程度かかることなどから、30分程度で結果が分かる抗原検査が「より現実的な手段」(赤嶺氏)とみている。空港での抗原検査を巡っては、県が政府の観光支援事業「GO TO トラベルキャンペーン」が始まった7月22日から独自に那覇空港で実施しているが、現在は医師の確保ができないため検査ができない状況が続いている。県内の医療提供体制が逼迫(ひっぱく)し、医療従事者数が不足する中、与党内には「法的にも財政的にも検査の拡充などは政府の責任でやるべきだ」との声も根強く、条例制定に向けては不透明な要素もある。

<教育・自然科学研究・特許>
PS(2020年8月13日追加):*8-1のように、中国は、米国留学等で研究者の育成を進め、現在は研究者数が最多で、研究開発費も米国を猛追しており、自然科学分野の論文数は、2017年《2016~18年の平均》で、中国(1位:30万5927本)と米国(2位:28万1487本)は、ドイツ(3位:6万7041本)や日本(4位:6万4874本)を大きく上回っているそうだ。論文の質(引用数で比較した場合)は、2017年の1位は米国24.7%、2位は中国22.0%で、米国は臨床医学・基礎生命科学が高く、中国は材料科学・化学・工学・計算機・数学などで高いそうだが、世界の工場と言われるほど製造業が盛んな中国で関係分野の研究が優れるのは当然で、単に研究開発費を増やせばよいという問題ではない。中国は、米国への留学を増やし、優秀な研究者に帰国を促し、質の高い論文を生み出す大学に多く投資している点で、視野の長い戦略的投資をしていると言える。人口当たりの論文数は、まだ日本が中国の2倍以上だが、日本はドイツより少なく、教育・研究を重視しない国が産業で退潮傾向になるのは当然と言わざるを得ない。
 なお、(1995年前後から私が提言して進めてきた)再生医療は、現在では、*8-2のように、京都大学iPS細胞研究所の研究チームが、「①ヒトの人工多能性幹細胞(iPS細胞)から腎臓の一部の基になる胎児期の組織『尿管芽』を大量に作製する方法を開発」「②再生した尿管芽を集合管のような構造に変えることもできた」と発表するに至っているが、未だに最終目的の「透析がいらない状態」にはなっていない。「再生医療=iPS細胞」と考える必要はなく、空気(狭い範囲の常識に支配される)を読んだら少数から始まる先端研究はできないのに、誰かがやるのを見て追随することしかできない人をつくる教育をしていては、日本の展望は暗い。
 このような中、*8-3のように、コロナ禍で学校現場の教育実習の受け入れが難しくなっているとして、文科省は「真にやむをえない場合、教育実習なしで教員免許の取得を認める」としたそうだが、(教育実習にどれほどの効果があるかはさておき)実習前に陰性証明書をとれば教育実習しても問題はない筈であるにもかかわらず、新型コロナを理由に、検査もせず全員に行動を自粛させ、「何でもあり」にするのは日本の学校教育の質を下げると思う。

*8-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200808&ng=DGKKZO62428000X00C20A8MM8000 (日経新聞 2020.8.8) 中国、科学論文数で首位、研究開発でも米と攻防
 自然科学分野の論文数で中国が米国を抜いて1位になったとする報告書を、文部科学省の研究所が7日公表した。中国は研究開発費(総合2面きょうのことば)でも米国を猛追。研究者数は最多で、米国留学などで育成を進めた。貿易や安全保障の分野で対立が目立つ米中間の攻防は、軍事や企業活動の根幹をなす科学技術の分野も含めて激しくなっている。科学論文の数は国の研究開発の活発さを測る最も基本的な指標だ。文科省科学技術・学術政策研究所は米調査会社クラリベイト・アナリティクスのデータを基に主要国の論文数などを分析した。年による変動が大きいため3年平均で算出した。中国の17年(16~18年の平均)の論文数は30万5927本。米国の28万1487本を上回り1位となった。3位はドイツで6万7041本。日本は6万4874本で前年と同じ4位だった。米中2強時代は鮮明だ。論文の世界シェアをみると中国は19.9%、米国は18.3%。3位は4.4%にすぎない。これまでに全米科学財団の報告書で、中国が米国を抜いたとするものはあった。今回は、査読などで一定の質があると判断される学術誌に掲載された論文のデータベースを使い算出したという。中国は論文数を年々伸ばしてきた。論文数は20年前(1996~98年の平均)の18倍、10年前(06~08年の平均)の3.6倍になった。中国は論文の質でも米国に迫る。優れた論文は引用数の多さで評価される。被引用数が上位10%の注目論文のシェアをみると、17年の1位は米国の24.7%、中国は2位で22.0%。さらに注目度が高い上位1%の論文では米国は29.3%、中国は21.9%となった。米中の得意分野は分かれる。中国は材料科学、化学、工学、計算機・数学で高いシェアを誇る。米国は臨床医学、基礎生命科学が高い。中国の躍進を支えたのは積極的な研究開発投資や研究者の増加だ。18年の研究開発費(名目額、購買力平価換算)は前年比10%増の約58兆円。米国は同5%増の60兆7千億円で1位を保ったが、中国が肉薄している。特に論文を主に生み出す大学への投資の伸びが著しく、18年は00年の10.2倍に増加。1.8倍の米国などと比べて突出している。中国は鄧小平時代の1982年、科学技術の近代化推進を国家目標として憲法に盛り込んだ。93年には投資の推進を示した「科学技術進歩法」を公布。第10次5カ年計画(2001~05年)では、それまで1%以下だった国内総生産(GDP)に対する研究開発投資の比率を1.5%にする目標を掲げた。その後も目標を上方修正しており、20年は2.5%以上に拡充する方針だ。中国の研究者数は約187万人で、米国(約143万人)を上回り世界1位。米国際教育研究所のまとめでは、米国で学ぶ中国人留学生は5年前に30万人を突破。その後も増え、18年度(18年8月~19年7月)には約37万人に達した。日本は退潮傾向だ。論文数は20年前には世界2位だったが17年は4位。注目論文は20年前の4位から17年には9位に沈む。政府は研究開発投資の目標額を示してきたが96~00年度の期間以外は達成していない。研究者数は横ばいにとどまる。

*8-2:https://www.jiji.com/jc/article?k=2020072900016&g=soc (時事 2020年7月29日) 腎臓の基を大量作製 iPS細胞から誘導―京大
 ヒトの人工多能性幹細胞(iPS細胞)から、腎臓の一部の基になる胎児期の組織「尿管芽」を大量に作製する方法を開発したと、京都大iPS細胞研究所の研究チームが発表した。論文が29日、米科学誌セル・リポーツの電子版に掲載される。尿管芽は分岐を繰り返して成熟し、尿の排せつ路である腎臓内の集合管やぼうこうの一部になる。研究チームは既に、ヒトのiPS細胞から尿管芽のような組織を作製していたが、内部空間がなく、分岐はわずかにとどまっていた。今回は、iPS細胞から内部空間を持つ尿管芽を作製することに成功。尿管芽の先端部を細胞一つずつに分離して培養したところ、尿管芽を再生し、分岐を繰り返した。再生した尿管芽を集合管のような構造に変えることもできた。研究チームの長船健二京大教授は「病気になった腎臓のモデルや腎臓の再構築に多くの細胞を供給できるのではないか」と話した。

*8-3:https://digital.asahi.com/articles/DA3S14583994.html (朝日新聞 2020年8月12日) 教育実習「なし」も容認 文科省、コロナ禍で特例措置 今年度限り、座学で代替可能
 学校現場での教育実習の受け入れがコロナ禍で難しくなっていることを受け、文部科学省は11日、今年度に限り、大学の授業などを代わりに単位として認める特例措置を発表し、全国の教育委員会などに通知した。実習の実施を原則としつつ、「真にやむをえない場合」のみ、「教育実習なし」でも教員免許の取得を認めるとしている。教育実習は、教員をめざす学生が幼稚園や小中学校で3~4週間、高校などでは2週間程度、現場で学ぶ。受け入れ校は大学が割り当てたり、学生が母校に依頼したりする。しかし、休校による学習の遅れへの対応や感染症対策のため、各地の教委からは、実習生の受け入れが困難との声が出ていた。そのため文科省は5月、実習期間の3分の1までは、模擬授業など大学の実習や授業で代替できるとする通知を全国の教委などに出した。学校での補習の支援などをする学習指導員の活動も、大学の判断で「代替授業」にできるとした。その後の感染拡大などを受け、今回の通知では、大学の実習などで代替できる期間を「全部または一部」に拡大し、可能な限り教育実習と組み合わせるよう求めた。その上で、大学による実習での代替も含め、教育実習が全くできない場合も想定。教員免許法の省令を改正し、座学など教職課程の認定を受けた他の授業で代替ができるとした。萩生田光一文科相は11日の閣議後会見で、教育実習なしでの教員免許取得について「究極はその選択肢も一応認める」としつつ、「今年の(教員採用試験の)採用者は質が低下しているというそしりを受けないよう、原則はやってもらう」と強調し、大学や学校現場に実習機会の確保を促した。また、文科省は通知で、来年度以降の新人教員に教育実習を受けられなかった人がいることを念頭に、採用後の研修などで十分配慮するよう求めた。文科省によると、教員免許法が施行された1949年以降、教育実習なしでの免許取得に道を開く制度改正は初めて。通知はこのほか、小中学校の教員免許取得に必須の「介護等体験」についても特例措置を設けた。計7日間、特別支援学校や福祉施設で介護を学ぶ実習だが、学校や施設による受け入れが難しいため、福祉関係の授業や実習で代替できるとした。
■文部科学省通知(骨子)
 ◆教育実習の期間の全部または一部を、大学による実習などで代替できる(可能な限り、
  教育実習と組み合わせる)
 ◆大学による実習も困難な場合、教職課程の認定を受けた教育実習以外の科目で代替
  できる 
 ◆特例措置を活用する学生がいることを念頭に、都道府県教育委員会は初任者研修など
  で十分に配慮する

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2020.7.8 スマートシティーが備えるべき条件は何か? ← 環境が良く安全な場所で安心して豊かな生活を送れる国がスマートなのであり、ITやAIはそのツールの一つに過ぎない。まして我慢の強制などは、工夫のない政治がすることだ (2020年7月9、10、12、14、17、18、19日追加)
   
  2020.7.7    2020.7.7     2020.7.5      2020.7.6日経BZ
  中日新聞    日本農業新聞    毎日新聞    浸水想定区域と実際の浸水域

(図の説明:1番左の図は、2020年7月7日までの豪雨被害地域だ。左から2番目は、人吉市の電線に流れてきた植物がからまっている状態で、水深がここまであったことを示す。右から2番目は、球磨村の特別養護老人ホームが水に沈んでいる様子で、1番右の図は、球磨川流域の浸水想定区域と実際の浸水域を示した地図である。これらによると、球磨村の特別養護老人ホームが著しく浸水することは前からわかっており、他の住宅は一段高い場所にあるため浸水していない)

(1)2020年梅雨時期の九州豪雨とその被害
 熊本県南部の豪雨では、*1-1のように、特別養護老人ホームの浸水によって入所者14人が亡くなったが、私は、その高齢者施設が地価が安いという理由からか、氾濫の恐れがある川の傍の低い場所に造られているのに驚かされた。特に、千寿園はその危険性が知られていた地域に立地しているのに、上層階のある頑丈な建物でもなく、エレベーターもないそうで、まるで三途の川の畔に建てられたような建物だったと言わざるを得ない。

 何故なら、高齢者は避難困難者であるため、浸水の恐れのある場所に高齢者施設を建設すること自体が危険であり、避難計画を作成したから命を守れることにはならないからだ。そのため、突きつけられた重い課題は、「日本は、高齢者を粗末にする国だ」ということであり、「(毎年、どこかで起こっている)○○年に一度の想定を超える豪雨」「水位が急激に上がって対応が追いつかなかった」というのは、言い訳にもならない。

 また、熊本県人吉市や球磨村では、*1-2のように、屋根と同じ高さにある電線に氾濫した川の水が運んだ木の枝や草がぶら下がり、屋根の高さまで水が押し寄せ、JAくま管内の支店建物や農地でも大きな被害が出ているそうだ。それでも、農地はまだ回復が早いが、住宅はそうはいかないため、今後の地方自治体の仕事は、避難を促すだけでなく、危険な地域には人が住まないよう土地利用を規制することである。そのためには、既に使われている土地・建物を交換したり、収用したりするなどの方法がある。

 福岡、佐賀、長崎三県でも、*1-3のように、大分県日田市で筑後川が氾濫し、熊本・大分県境の下筌ダムは基準水位を越えたため緊急放流したそうだ。また、大牟田市では避難所が周辺の冠水で孤立し、そこには200人以上が身を寄せていたそうだ。福岡・佐賀・長崎で被害が大きかったのは、有明海沿岸の海抜0mに近い地域で、有明海の満潮時に排水不良が起こったようだが、地球温暖化で海面が上がるにつれ海抜はさらに低くなるため、ここでも土地利用の見直しが必要である。

 また、ダムや河川は、底に泥が溜まって浅くなっても浚渫せず、本来の能力を維持できていない場合が多いそうだ。そのため、人口減の現在は、新しいダムを作るより現存するダムや河川を適格に管理し、できれば強化して(水力発電等の)多目的で使えるようにするのが経済的だ。

 このように事前の災害防止を怠り、国民の命を粗末にしながら、*1-4のように、防衛省は九州の豪雨被害に自衛隊員を2万人派遣して人命救助や土砂の撤去に当たらせるそうで、現在はそれが必要だが、まるで賽の河原の石積みのように思える。

 そのため、*1-5のように、激甚災害に指定するのなら、“復旧”して元の場所に同じ建物を建て、毎年同じことを繰り返して国民の血税を使うのではなく、適格な住居規制を設けて街づくりをやり直し、安全な街を作れるように復興を手伝うことが重要であり、それには、(戦争中でないため時間がある)自衛隊の労働力も使えばよいと思う。

(2)リスクを考慮した街づくりと既存施設の維持管理
1)住宅ゾーンの規制
 朝日新聞は、2020年3月22日、*2-1のように、「①政府が土地利用規制に乗り出し、都市計画法等の改正案を閣議決定して国会に提出する」「②ダムや堤防などハード面の整備だけに頼らず、街づくりから変えるという考えは理にかなう」「③レッドゾーン・イエローゾーンでの住宅開発の許可を厳しくする」「④権利の制限に繋がるので、どこから網をかけるかは難しい」「⑤被害をうけた工場が移転して地価が下がった場所で宅地開発が進むのを目にする」「⑥浸水想定区域に住む人は、2015年時点で20年前に比べて4%増、世帯は25%増だ」としている。

 このうち①②③はそうすべきだが、④を気遣って⑤⑥を野放しにすることが住民の権利保護に繋がるのかと言えば、自治体がその土地の安全性に関する情報を開示し、安全を守れる都市計画を作って住民に安全を保障することが、自治体の仕事でもあり住民の権利を護ることだと、私は思う。つまり、これをやらないことこそ、必要な仕事をしない不作為である。

2)ダムや河川への土砂の堆積
 ダムに土砂が堆積して貯水量が減り、本来の治水機能を発揮していないダムが全国に100カ所以上あることを、会計検査院が、*2-2のように、2014年に指摘している。これでは多発している豪雨に対応できないとして、会計検査院は国土交通相に改善を求めた。中には、堆砂量が計画堆砂量の3倍以上に達しているダムも2カ所あったそうだ。

 放流して人災を起こしたダムには、このような問題があったのではないか検証すべきで、設定貯水量が建設当時のままで、現在の堆砂量をダムの貯水量に反映していないなどというのは、論外だ。さらに、地震計が故障しているのに気づきながら3年以上も放置していた3県が管理する5ダム、地震計とダム管理者への自動通報装置を接続していないため地震発生時に速やかに臨時点検ができない状態のダム、非常用発電設備の燃料が規定を満たす備蓄量に達していないダムも数多く見られたそうで、それこそ国民の命を守るという意識に欠けている。

 そのため、会計検査院は国交省に対し、3つの改善処置と自治体等への周知徹底を求めたそうだが、2014年に指摘されてから6年後の現在、まだ改善されていなかったとすれば人災である。

3)まだ台風ではなく、梅雨なのだ
 政府は、*2-3のように、2019年12月20日、地方自治体が河川やダムにたまった土砂やヘドロを取り除く作業を総務省が支援することとし、当初予算案で900億円を計上したそうだ。

 しかし、他の無駄遣いが多い割には、土砂の浚渫を地方債の起債対象として起債額の70%を地方交付税で措置する政策で、それを行うことができない自治体は多く、起こった災害に対して、このように膨大な予備費を使わなければならなくなるのである。そして、今回の豪雨は、まだ台風ではなく梅雨であるため、早急に対策を実施できるようにすべきだ。

(3)地域エネルギー
 日経BPが、2015年6月29日、*3-1のように、「①日本各地で、地域新電力(地域密着型のエネルギー事業)が立ち上がっている」「②背景は電力小売りの全面自由化」「③再生可能エネルギーなどの地域資源を活用した電力を購入して小売りすることに多くの事業者が名乗りを挙げている」「④地域資源を生かしてエネルギーを生み出し、それを地域内で消費すればエネルギー資金が地域内で還流し、地域活性化に繋がる」「⑤事業が活性化して市外にも流通すれば収益が膨らむ」と記載しており、これは事実だったのだが、原発の再稼働とともに送電線が満杯という理由で話が下火になってしまった。

 しかし、*3-2のように、熊本県南阿蘇村で豊富な湧水を活用した小水力発電施設が整備されることになっており、水力発電なら治水ダムや利水ダムも利用できる筈だ。

 このように全く工夫が足りない中、*3-3のように、取引条件として環境対応を重視する顧客の要望があり、事業に必要な電力を100%再エネで賄うことを目指す国際的企業連合の「RE100」に加盟する日本企業は、30社に達したそうだ。

 しかし、実績では欧米勢に大きく後れを取っており、その理由は、日本では太陽光17.7円/kwh(2017年)、陸上風力15.8円/kwh(2017年)と未だに再エネ調達コストが高いからで、これは、世界の太陽光9.1円/kwh、陸上風力7.4円/kwhを大きく上回っている。ここでも、世界は既に、日本政府が2030年に実現を目指す目標を達成済であり、日本はどうしてこのように何でも遅いのかを、猛烈に反省すべきだ。

・・参考資料・・
<2020年九州豪雨>
*1-1:https://www.shinmai.co.jp/news/nagano/20200708/KT200707ETI090007000.php (信濃毎日新聞 2020年7月8日) 高齢施設の被災 突きつけられた重い課題
 熊本県南部の豪雨による特別養護老人ホーム「千寿園」の浸水被害で、入所者14人の死亡が確認された。
自力避難の困難な高齢者が犠牲になるケースは、過去の水害でも繰り返されてきた。命を守るために何が必要か。突きつけられた重い課題に改めて向き合わねばならない。濁流が押し寄せる中、職員は地域住民の協力も得て入所者の救出に奮闘した。だがエレベーターもなく、一人一人を抱えて階段を上るのに時間がかかり、全員を救うことはできなかった。熊本日日新聞の報道によると、施設長は当時、増水より土砂崩れを心配していたという。近くの球磨川と支流の合流点に数年前、水位の急上昇を防ぐ「導流堤」が完成していたこともあった。水位が急激に高まり、対応が追いつかなかった経緯が浮かぶ。早く避難に踏み切っていれば救えたのではないかと悔やまれる。国の調査では、浸水の恐れがある場所に立つ全国の高齢者施設などのうち、避難計画を作成済みなのは昨年3月時点で36%にとどまる。千寿園は作成していた。作成を促すと同時に、既存の計画に見落としている点はないか、見直しを進めるべきだ。早めの避難が大切なことは確かだ。ただ、高齢者の移動は心身に与える負担も大きい。人手や時間もかかる。踏み切るタイミングの判断は簡単ではない。避難を促す上で欠かせないのは地元自治体の役割だ。避難の勧告や指示は適切に出て正確に伝わっていたか。検証が必要だろう。2016年の台風で入居者9人が死亡した岩手県岩泉町の高齢者グループホームの事例では、当時の町長が迷いながら結局、避難指示を出せなかった。河川や気象の情報を集めているのは、国土交通省や気象庁など国の機関だ。それが自治体の判断を支えられる態勢になっているかどうかが重要なポイントだ。昨年秋の台風19号災害では、千曲川の堤防が決壊したとの情報が国交省から長野市に伝わっていなかった。情報共有や行政の連携態勢を整える必要がある。高齢者施設は、広い面積が取れて地価が安いなどの理由から、必ずしも安全な場所に立地してはいない。千寿園の地点は、以前からその危険性が知られていた。氾濫の恐れが高い地域への建設を規制するよう求める専門家もいる。災害に強い高齢者施設の在り方は、まちづくりの観点からも考えていかねばならない。

*1-2:https://www.agrinews.co.jp/p51285.html (日本農業新聞 2020年7月7日) 九州豪雨 電線にごみ、屋根に流木「水位ここまで」 熊本県人吉市・球磨村
 JAくま人吉支所球磨村店の屋根と同じ高さにある電線には、氾濫した川の水が運んだ木の枝や草などがぶら下がっていた。球磨川の氾濫で5日まで水に漬かっていた人吉市や球磨村では6日、一夜明けて変わり果てた光景が広がった。屋根の高さまで水が押し寄せ、JAくま管内の支店建物や農地などでも大きな被害が出ている。JA本店の職員らは、5日朝から被害を受けた支所に集まり支援を始めたが、6日も雨は降り続いており、予断を許さない状況が続いている。「普段見慣れている分、余計に衝撃的な光景だ」。JAくま本所から人吉支所に向かう道中、同行したJA職員はつぶやいた。JAくま本所から国道219号を西に進むと球磨川に着く。川を渡ると「九州の小京都」と呼ばれることでも有名な人吉市の変わり果てた光景が広がる。頻繁に行き交う自衛隊の車両や木や電柱には、泥が付着。住宅街には動かなくなった車が点在する。JAでは5日朝、「手の空いている職員は人吉支所に集合」と指示が出て、JA役職員や女性部の部員らが大勢集まった。支所での清掃作業や移動店舗車による臨時の窓口業務を行う。同JAには県内のJAから支援物資を送りたいとの連絡が来ているが、JAの尾方朝則参事は「JAからの協力は非常にうれしい。ただ6日も雨が降り続き、順調に到着できない」と話す。球磨村でも、大きな被害が出ている。JA人吉支所球磨村店には水が屋根の高さまで押し寄せた。店舗から道路の電柱までつながる電線には川から流れ着いた草や、ごみ、布などが付着。押し寄せた水の水位を物語っている。店舗の隣で地元の住民2家族が自宅内の泥のかき出し、水に漬かった家具を外に運び出していた。コンビニには、自衛隊の復旧作業車が10台近く止まっていた。水田には、大量の泥が流れ込んだまま。水田の隣の畑にはトウモロコシが植えてあるが、水の勢いで倒壊寸前まで曲がっている。軒高2メートル以上の2棟のハウスの屋根にも流木や草が付着している。付近の住宅は無残な形で潰れ、原形をとどめていない。JAによると、人吉市や球磨村は5日中に水が引かなかった。さらに6日も雨が降り続いており、被害の実態把握には、時間がかかる見通しだ。

*1-3:https://www.chunichi.co.jp/article/84866?rct=national (中日新聞 2020年7月7日) 九州の豪雨被害拡大 死者52人に、筑後川氾濫
 停滞する梅雨前線の影響で九州は七日も北部を中心に猛烈な雨が降った。気象庁は福岡、佐賀、長崎三県の一部自治体への大雨特別警報を警報に切り替え、引き続き警戒を呼び掛けた。大分県日田(ひた)市では筑後川が氾濫。熊本、大分県境の下筌(しもうけ)ダムは基準水位を越え、緊急放流に踏み切った。福岡県で初めて死者一人を確認。大牟田市では避難所が周辺の冠水で孤立し、県は陸上自衛隊に災害派遣を要請した。熊本県ではこれまでに全県で五十一人が死亡、二人が心肺停止。行方不明者十一人の捜索が続いた。武田良太防災担当相は九州の豪雨について行政上の特例措置を通じて被災者を救済する特定非常災害の指定を検討すると明らかにした。福岡県によると、死亡したのは大牟田市の田中春子さん(87)。六日夜に冠水した自宅で見つかり、病院で死亡が確認された。同市で冠水した避難所は二カ所で、七日午前四時の時点で計二百人以上が身を寄せていたという。筑後川の氾濫を受け、福岡管区気象台と国土交通省は午前八時三十五分、大雨・洪水警戒レベルで最高のレベル5に当たる氾濫発生情報を発表した。

*1-4:https://www.tokyo-np.co.jp/article/40712 (東京新聞 2020年7月7日) 災害派遣2万人態勢に増強 自衛隊、被害拡大のため
 防衛省は7日、九州の豪雨被害に対処する自衛隊の災害派遣の規模を、現行の1万人態勢から2万人態勢に拡大すると発表した。自衛隊は4日から熊本県で人命救助や土砂の撤去に当たっており、九州北部にも被害が広がったため増員が必要と判断した。防衛省によると、7日時点で、熊本県に加え、避難所が水没した福岡県大牟田市や大分県にも部隊を派遣した。これまでは九州を拠点にする部隊が活動してきたが、今後は他の地域の部隊を活用することも検討する。河野太郎防衛相は7日午後、ツイッターで「(熊本県)球磨村の孤立が深刻で、隊員が徒歩で水、食料を届け、安否確認をしている」と投稿した。

*1-5:https://jp.reuters.com/article/suga-kyushu-disaster-idJPKBN2490EL (Reuters 2020年7月8日) 九州での豪雨、激甚災害に指定の見通し=官房長官
 菅義偉官房長官は8日午前の会見で、九州の豪雨被害について、被災した自治体が復旧事業を行う際に国から財政的な支援を受けられる「激甚災害」に指定する見通しだと明言した。同長官は「被災地の早期復旧のために、財政面で不安を持つことなく復旧に取り組むことが大事であり、基準を満たしたものから速やかに行いたい」とした。東京都内で新型コロナウイルスの新規感染者が連日100人超確認されていることについては、3週間ごとの見直しに沿って専門家に議論してもらった上で、都外への外出に気を付けてもらうという中で、予定通り次の段階に制限を緩和する方針だと述べた。

<リスクを考慮した街づくりと既存施設の維持管理>
*2-1:https://digital.asahi.com/articles/DA3S14412053.html (朝日新聞社説 2020年3月22日) 災害と住まい 危ない土地には規制を
 大きな自然災害が近年相次いでいるのに対応するため、政府が土地の利用規制に乗り出すことになった。都市計画法などの改正案を先月閣議決定し、この国会に提出している。ダムや堤防などハード面の整備だけに頼らず、まちづくりの思想から変えていこうという考えは理にかなう。行政はもちろん、住民が認識を深めるのに役立つ審議を期待したい。検討されているのは、▽出水や土砂災害などの危険性が高い「レッドゾーン」は、居住をすすめる区域から除くことを徹底する▽そこでは事務所や店舗、ホテルなどの開発を原則として禁止する▽市街化調整区域内にあって浸水被害が予想される「イエローゾーン」で、住宅開発の許可を厳しくする―などだ。行政の勧告に従わない事業者の氏名を公表できるようにすることも盛り込まれている。がけの下や地盤の弱い土地、川沿い・海沿いの低地、遊水池跡といった危険な地域に、住宅や人が集まる施設がなければ、災害が起きても被害を抑えることができる。だが権利の制限につながるため、どこまで個人や企業の判断に任せ、どこから網をかけるかの線引きが難しく、結果として野放図ともいえる開発が進んできた。しかし気候は激甚化し、地震も頻発する。手をこまぬいているわけにはいかない。被災地でよく目にするのは、被害をうけた工場などが移転して地価が下がった一帯で、宅地開発が進む現象だ。山梨大の調査によると、国や県の浸水想定区域に住む人は、2015年時点で20年前に比べて4%増、世帯は25%も増えている。法改正はこうした動きへの一定の歯止めにはなろう。だが、同じイエローゾーンでも規制強化措置がとられるのは市街化調整区域に限られるなど、踏み込み不足と思える点もある。政府は、宅建業法も今後見直し、不動産取引の際に水害リスクを告げるよう、業者に義務づけることを検討中だ。議論を重ね、危ない土地への居住を減らす方策を広げてほしい。参考になるのは滋賀県が14年に定めた流域治水推進条例だ。リスク告知を努力義務とし、200年に1度の大雨で3メートル以上浸水する土地では、新改築時に地盤をかさ上げしたり2階建て以上にしたりするよう求める。対象エリアに指定するには地域の合意が必要で、県内に50ある候補地区のうち、実現したのはまだ2カ所にとどまる。それでも地域で話し合うことで、リスクの認識は深まる。20年先、30年先を見越して安全なまちをどう築くか。旧来と異なる発想で考えたい。

*2-2:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO78834440U4A021C1000000/ (日経新聞 2014/10/24) 堆砂で機能低下のダム100カ所以上、検査院が指摘
 ダム内に土砂が堆積して貯水量が減り、本来の治水機能を発揮できない恐れのあるダムが全国で100カ所以上あることが2014年10月21日、会計検査院の調査で分かった。このところ多発している突発的な局地的豪雨などに対応できないとして、検査院は国土交通相に改善を求めた。検査院が検査したのは、国交省が管理する29ダムと21道府県が管理する182ダムの合計211ダム。検査における着眼点は、点検や計測の実施状況、堆砂への対応状況、緊急時への備えなどだ。
■計画堆砂量の3倍以上に達しているダムも
 指摘が最も多かったのは堆砂への対応状況で、主に3つのケースが見られた。1つ目は、実際の堆砂量が計画堆砂量を上回る状況。計画年数に達していないのに、既に堆砂量が計画堆砂量を上回っている事例が、9府県管理の20ダムに見られた。中には、堆砂量が計画堆砂量の3倍以上に達しているダムも2カ所あった。検査院は、実際に利用できる貯水容量が減少するのに加え、貯水池の上流部に土砂が堆積した場合には、貯水池上流の河川などに影響を及ぼす場合もあると指摘している。2つ目は、土砂が洪水調節容量内に入り込んでいるケースだ。たとえ堆砂量が計画堆砂量に達していなくても、洪水時に本来、貯留できる水量を貯留できなくなり、ダムの下流の河川に影響を及ぼす恐れがある。検査院によれば、国交省所管の14ダムと16道県所管の92ダムでこうした状態になっていた。このほか、11道県所管の48ダムはそもそも洪水調節容量内の堆砂量を算出せず、状況を把握していなかった。3つ目は、現在の堆砂量をダムの貯水量に反映していない例だ。国交省が管理する22ダムと20道府県が管理する130ダムでは、設定貯水量が建設当時のままで、堆砂の測量結果と連動していなかった。検査院はこれらのダムでは貯水位が建設当時よりも速く変化するため、貯水池への水の流入量を正確に測れない可能性があると指摘。放流のタイミングなど、ダムの操作を誤る恐れがあるとしている。
■地震計が壊れていても放置
 河川法に基づく操作規則に定められた点検や計測の履行については、漏水量の計測や設備の点検などが規則どおりに行われていなかった。例えば9県が管理する25ダムでは、「計測値に大きな変化がみられない」ことを理由に、一部の項目について3年以上にわたって計測を止めていた。さらに、3県が管理する5ダムでは点検の際、堤体下部に設置された地震計が故障しているのに気づきながら3年以上も放置していた。このほか、地震計とダム管理者への自動通報装置を接続していないため、地震発生時に速やかに臨時点検ができない状態のダムや、非常用発電設備の燃料が規定を満たす備蓄量に達していないダムも数多く見られた。検査院によると、維持管理に不備のあるダムは、合計201カ所あった。以上の調査結果を踏まえ、検査院は国交省に対して以下の3つの改善処置と自治体などへの周知徹底を求めた。
 1)維持管理に必要な計測を適切に行い、必要に応じて設備の修繕などを施す。
 2)計画堆砂量を大きく上回るなど、堆砂に関わる問題を抱えている場合は適宜、対策を
   検討する。また、堆砂量の測定結果は、ダム操作などに関わる情報に反映させる。
 3)地震発生時に速やかに臨時点検が行える体制を整えるとともに、緊急時に所要の連続
   運転可能時間を確保できるように、非常用発電設備の燃料調達などに万全を期す。

*2-3:https://digital.asahi.com/articles/DA3S14302512.html (朝日新聞 2019年12月21日) 河川やダム氾濫、防止支援900億円 予算案
 10月の台風19号で東日本の広い地域で洪水被害が出たことを受け、地方自治体が河川やダムにたまった土砂やヘドロを取り除いて氾濫(はんらん)しにくくする作業を総務省が支援する。政府が20日に閣議決定した当初予算案で900億円を計上した。来年の通常国会に地方財政法改正案を提出し、土砂の浚渫(しゅんせつ)を地方債の起債対象にする一方、起債額の70%を地方交付税で措置する。事業は2024年度までの5年間の予定で、事業費は計4900億円を見込む。

<地域エネルギー>
*3-1:https://project.nikkeibp.co.jp/atclppp/PPP/061800007/062500005/ (日経BP 2015.6.29) ■総論■地域エネルギービジネス、動く
 日本各地で、地域密着型のエネルギー事業が立ち上がっている。大きな流れの一つが地域新電力(特定規模電気事業者、PPS)である。背景にあるのは、電力小売りの全面自由化。再生可能エネルギーなど地域の資源を活用した電力を購入し、小売りすることに新たなビジネスチャンスを見出し、数多くの事業者がPPSに名乗りを挙げている。地域の資源を生かしてエネルギーを生み出すとともに、その電力を地域で消費すれば、エネルギーに関わる資金は地域内で還流する。そして資金の動きが活発になれば、地域の活性化につながる――。地域エネルギービジネスの根底にある、この地域活性化の効果に目をつけているのはPPSだけではない。地方自治体の中にも、地方創生に向けてエネルギービジネスに取り組む例は少なくない。PPSの動きの中にも、自治体が関与しているケースがいくつかある。再生可能エネルギーなど地域の資源を生かした電力は、燃料の製造、配送をはじめ、地域の雇用を生み出す。事業が活性化して市外にも流通すれば、収益が膨らむ。加えて、再生可能エネルギー固定価格買取制度(FIT)により、電力会社に売電できれば、新たな収入源になる。とはいえ、エネルギー産業は多額の初期投資が必要になる。地域内で安定的に燃料を確保し、配信できる体制づくりも欠かせない。しかも、その仕組み・体制づくりやノウハウは、太陽光・バイオマス・風力・小水力など、発電の方式によって全く異なる。そこで一部の自治体は、地元企業とタッグを組んで課題解決に挑んでいる。

*3-2:https://topics.smt.docomo.ne.jp/article/nishinippon/region/nishinippon-1000574509 (西日本新聞 2020年1月10日) 南阿蘇で小水力発電着工 湧水生かし21年春から事業開始
 熊本県南阿蘇村に豊富な湧水を活用した小水力発電施設が整備されることになり、8日に現地で起工式があった。棚田を潤す農業用水を発電にも有効利用する県内初の試み。来年4月から事業を始め、一般家庭350戸分を発電する計画。売電収入の一部は地元の農業団体に還元され、農業振興にもつなげていく。施設が整備されるのは、緩やかな棚田が広がる久木野(くぎの)地区。全長約1キロの地下導水路を整備し、36メートルの高低差を利用してタービンを回し、最大出力199キロワットを発電する計画。売電収入は年間4600万円の見込み。このうち400万円は利水料として、地元農家でつくる久木野村土地改良区(567人、580ヘクタール)に配分される。小水力発電を巡っては、地域に眠る自然エネルギー活用に向け、県とNPO法人・くまもと温暖化対策センターが2009年から事業候補地を検討。36カ所から南阿蘇村が選ばれ、14年に事業認可された。ところが、東日本大震災後に太陽光発電施設が急増して送電トラブルが生じていたほか、16年の熊本地震で建設用地が被災し、着工が遅れていた。この日は、村と関係団体、運営会社の協定調印式もあった。総事業費は3億8千万円で運営会社が全額負担する。旧清和村長で同センター副理事長の兼瀬哲治さんは「農山村は、豊かな自然エネルギーの供給基地でもある。発電収益を地域に循環させることで、持続可能な農業や景観保全につなげていってもらいたい」と話した。

*3-3:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO53748060U9A221C1TJ3000/?n_cid=DSREA001 (日経新聞 2019/12/25) 事業電力を100%再エネに 日本企業、欧米勢に後れ
 事業に必要な電力を100%再生可能エネルギーでまかなうことを目指す、国際的な企業連合「RE100」に加盟する日本企業が30社に達した。背景には、取引条件として環境対応を重視する顧客の要望がある。ただ実績では欧米勢に大きく後れを取る。再生エネの調達コストが高い日本で、どうやって実効性を高めるかが課題になっている。楽天は17日、RE100に加盟し、2025年までに事業活動の電力を100%再生エネにすると発表した。データセンターや物流拠点で多くの電力を消費する同社だが、近年は再生エネ関連サービスにも注力する。同社の小林正忠常務執行役員は「イノベーションによる気候変動対策への貢献を目指す」とコメント。今後は本社だけでなく、楽天市場の出店店舗や楽天トラベルの加盟宿泊施設に対しても、再生エネの導入を支援していく方針だ。14年に発足したRE100は世界約220社が加盟、売上高合計は5.4兆ドル(約590兆円)に達する巨大連合だ。日本企業は17年のリコーを皮切りに、今秋以降にも東急やLIXILグループなどが参加。小売りや金融など幅広い業種に広がり、楽天の参画で加盟数は30社になった。数では一定の存在感を持つ日本勢だが、肝心の再エネ利用率では欧米勢に大きく後れを取る。RE100を主導する英国の非政府組織(NGO)によると、18年に再生エネの比率が95%を超えたのは45社で、ほぼ全てが欧米企業。日本企業のほとんどは25%未満(73社)のグループに属する。19年7月に再生エネ100%を実現した城南信用金庫など一部を除き、大半の企業にとって目標達成は遠い。取り組みの遅れは、企業の競争力に影響を与えはじめた。グローバルでの商取引では「再生エネの導入が前提条件になりつつある」(公益財団法人・自然エネルギー財団の石田雅也氏)ためだ。リコーは19年度から、国内外の5工場を対象に、主力製品のA3複合機の組み立てに使用する電力を100%再生エネに切り替えている。欧州を中心とした海外の大口顧客は、再生エネの利活用を購買判断の基準にしているためだ。「商談などでも重視され、未対応はリスクでしかない」と同社は説明する。今年RE100に加盟したパナソニックも、年内にも国内外の4工場で電力を100%再生エネにする計画だ。だがこうした動きは、有力企業の一部にとどまる。先進的とされるリコーでも全社の再エネ比率は18年時点で9%。19年度中に多少高まるが、100%を実現するのは50年になる見通しだ。一方で海外大手ははるかに先を行く。米アップルは世界中のサプライヤーに再生エネの導入を推奨。既に40社以上がアップル向け生産ラインで再生エネ100%を実現した。日本でも日本電産など3社が対応している。原動力はESG(環境・社会・企業統治)投資の動きだ。米ゴールドマン・サックスは12月中旬に、石炭火力発電や石炭採掘事業への融資を削減することを表明。環境対策を強化する企業に多くの投資資金が流れ込む。その象徴が資金の使い道を環境事業に絞った環境債(グリーンボンド)の急増だ。19年は2500億ドル(約27兆円)を超え、過去最高を更新した。アップルは11月、20億ユーロ(約2400億円)の環境債を発行した。環境意識の高い大企業がマネーを呼び込み、再生エネの「経済圏」を拡張し企業価値を高めていく。再生エネの導入に二の足を踏んでいては、この流れに乗り遅れかねない。RE100を推進する業界団体「JCLP」の石田建一・共同代表(積水ハウス常務執行役員)は、「日本企業も再生エネの利活用方針を明確に打ち出し、具体的な実効策に着手する段階に来ている」と強調する。
■太陽光、風力 高コストがネック
 企業が再生可能エネルギーの利活用を進めるには、「理念」だけでは不十分だ。経済合理性を度外視した取り組みは株主の理解を得られず、持続性もないためだ。その点で日本企業は大きなハンディを背負っている。経済産業省の資料などによると、日本における太陽光発電のコストは17年に1キロワット時あたり17.7円で、陸上風力発電は15.8円。一方、世界の平均コストは太陽光が9.1円、陸上風力が7.4円だ。日本政府が30年に実現を目指す水準を、既に達成している。再生エネ比率を高める上では再生エネ価値を取引する「証書」を購入する手法も有効だが、通常の電力調達より割高になる。証書による調達に加え再生エネ電源への直接投資などを進めなければ、日本企業が海外勢に追いつくのは難しい。再生エネ価格の高止まりは、海外企業が日本進出をためらう原因にもなる。米グーグルは千葉県に日本初のデータセンターを開設する計画だが、再生エネの調達で難航する可能性もある。仮に化石燃料由来の電力を使うようなら、再生エネ比率が下がってしまう。「日本への直接投資の広がりにも水を差しかねない」(業界関係者)。アップルやソニーなど、RE100に加盟する大手20社は6月、日本の電力に占める再生エネ比率を30年に50%に引き上げるよう求める提言を発表した。政府は30年にこの比率を22~24%に引き上げる目標を掲げ企業への支援を強化する方針だが、今後はより踏み込んだ環境整備も重要になりそうだ。

<では、どうするべきか?>
PS(2020年7月9日追加):*4-1は、熊本県南部を中心とした豪雨により、球磨川の12カ所が氾濫・決壊し、土砂崩れも続いて犠牲者が増えているため、国交省が打ち出している「流域治水」を球磨川はじめ河川ごとに急いで計画策定するべきだとしている。具体的には「①土砂災害の危険性がある地域の開発規制や住宅移転」「②雨水をためる遊水地、ビルの地下貯水施設整備」「③ため池や田んぼの貯水機能の活用」「④高架道路の避難所活用」「⑤鉄道橋の流失防止のための補強」などを進めるそうで賛成だ。特に、川底やダムの掘削は、掘削された土砂を使って堤防のかさ上げや埋め立てができるため、同時に行った方が効率的である。また、*4-2のように、中部地方でも豪雨被害で、岐阜県・長野県で4,300人が孤立し、下呂市小坂町で飛騨川沿いの国道41号が約300mにわたって崩落したほか、道路の崩壊や冠水が相次いでいるそうだ。
 日経新聞も、*4-3のように、2020年7月9日、「⑤九州や岐阜県を襲った豪雨で8日までに115河川が『氾濫危険水位』を超えた」「⑥梅雨末期の豪雨が広範囲に及んで氾濫危険水位を超えた河川数はこの5年間で5倍に増加した」「⑦気候変動で豪雨が増え、河川の安全度が下がっている恐れがある」「⑧ハード整備だけでなく、流域全体の治水対策が急務だ」「⑨地球温暖化などの影響で河川の氾濫リスクが高まっている」「⑩国交省は20年度から行政・民間企業・地域住民らが連携して『流域治水』を進める」としている。私も、避難ばかりしており、体育館等で長期間を過ごすのは文明国の国民のすることではないため、早急にITや5Gの普及だけではない安心して暮らせるスマートな街づくりを企画すべきだと考える。
 なお、*4-4のように、EUの欧州委員会は、2020年7月8日、水素を脱炭素計画の中心に据えて、運輸や産業でも排出ゼロをめざし、景気浮揚にも繋げ、世界をリードするための水素戦略を公表したそうだ。「パリ協定」は地球規模のCO₂排出量を実質0にすることをめざしており、EUは2050年までに域内の温暖化ガス排出を実質0にする目標を掲げているため、コストは下げられるだろうし、これなら投資価値がある。水素燃料電池は日本で開発されたのだが、おかしな批判や対応が多くて日本では普及せず、これもEUで先に市場投入されることになったわけだ。

  
    2020.7.9朝日新聞            2020.7.9中日新聞

(図の説明:1番左の図のように、岐阜県・長野県でも豪雨被害があり、右の3つの図のように、河川の氾濫やがけ崩れによる被害となっている)

*4-1:https://kumanichi.com/column/syasetsu/1518004/ (熊本日日新聞 2020年7月9日) 流域治水 球磨川でも新たな計画を
 県南部を中心とした3日からの豪雨では、球磨川の12カ所が氾濫・決壊した。土砂崩れも相次ぎ、犠牲者は日を追って増えている。活発化した梅雨前線はさらに福岡や大分県など九州北部、中部地方にも被害を及ぼした。人命のみならず、家屋の浸水、橋の流失、道路や堤防の崩壊など、各地に大きな爪痕を残している。今年に限ったことではない。日本列島は、死者が数十人を超えるような風水害に毎年のように見舞われている。そうした現状を踏まえ、国土交通省が防災・減災の新たな在り方として打ち出したのが「流域治水」である。ダムや堤防だけに頼るのではなく、流域のあらゆる力を集めて豪雨災害を防ぐ、という考え方だ。地球規模の気候変動の影響で、水害を含めた自然災害は大規模化・頻発化している。もはや従来のやり方では対処できず、国交省の方向性は間違っていないだろう。球磨川をはじめ、河川ごとの計画を急いで策定するべきだ。これまで治水は、主に国管理の多目的ダム(治水・利水)や河川の堤防を中心に考えられてきた。だが、ハード整備には時間がかかり、それだけに頼るのは限界がある。このため新たな考え方では、国、自治体、企業、住民など流域のあらゆる関係者に協力を求め、ソフトを含め対策を総動員する。具体的には(1)土砂災害の危険性がある地域の開発規制や住宅移転(2)雨水をためる遊水地、ビルの地下貯水施設整備(3)ため池や田んぼの貯水機能の活用(4)高架道路の避難所活用(5)鉄道橋の流失防止のための補強-などを進める。農業や発電用の利水ダムについても、大雨を予想して事前放流し、雨水のせき止めに役立てる。多くは自治体や電力会社の運営だが、国は全国955カ所のダムと既に協定を結んでおり、事前放流が可能になっている。国交省は全国109の1級水系について、地域の実情に応じた「流域治水プロジェクト」を策定するとしている。一刻も早く実行してもらいたい。1級河川の球磨川水系では、1963年から3年続けて大きな洪水が発生。国は66年、治水目的の「川辺川ダム」建設計画を発表した。しかし流域に賛否もあって事業は進まず、2008年に蒲島郁夫知事が建設反対を決めた。その後、国、県、流域自治体で「ダムによらない治水」の在り方を協議。川底掘削、堤防かさ上げ、遊水地の整備などを組み合わせた10案が候補に挙がった。だが現在までに決定には至らず、その中で今回の豪雨災害が起きた。また、球磨川流域では県営市房ダムなど6ダムで事前放流が可能となっていた。だが、豪雨の予測が難しいこともあって現実には実行されず、今後に課題を残した。国、県、自治体は今後、「流域治水」の考え方も踏まえて球磨川水系の新たな治水プロジェクトを策定すべきだ。その根底には当然、今回の被害の検証がなければならない。

*4-2:https://www.chunichi.co.jp/article/85971 (中日新聞 2020年7月9日) 岐阜・長野で4300人孤立 中部でも豪雨被害、9日以降も大雨警戒
 梅雨前線に暖かく湿った空気が流れ込んだ影響で、中部地方は八日、各地で大雨となった。岐阜県では下呂市や高山市で道路が寸断されるなどし約四千人が孤立。長野県でも観光地の上高地につながる国道で土砂崩れが起き、宿泊客ら三百人以上が孤立している。岐阜、長野両県に一時、大雨特別警報が出され、その後解除されたが、気象庁は九日以降も大雨を予想。これまでの雨で地盤が緩んでいる所もあり、引き続き厳重な警戒を呼び掛けている。岐阜県では下呂市萩原町の飛騨川と、白川町河岐の白川と飛騨川の合流地点で氾濫が発生した。同県は大雨特別警報が出された下呂、高山、中津川など六市に対し、災害救助法の適用を決めた。六市ではピーク時に計二十一万九千人に避難指示が出た。八日午後十一時半現在、下呂市など四市町で百九十六人が避難している。けが人は見つかっていない。下呂市小坂町で、飛騨川沿いの国道41号が約三百メートルにわたって崩落したほか、道路の崩壊や冠水などが相次ぎ、高山、下呂、郡上の三市の計十七集落で約四千人が孤立。九日にはいずれも解消される見通し。

*4-3:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200709&ng=DGKKZO61296530Y0A700C2CC1000 (日経新聞 2020.7.9) 115河川「氾濫危険水位」、増える豪雨、広域で被害 流域全体で対策急務
 九州や岐阜県などを襲った今回の豪雨で、8日までに115河川が「氾濫危険水位」を超えた。梅雨末期の豪雨は近年、広範囲に及び、氾濫危険水位を超えた河川数は5年間で5倍に増加。気候変動で豪雨が増え、河川の安全度が下がっている恐れがある。堤防建設などのハード整備だけでなく、流域全体の治水対策が急務だ。8日は岐阜県で非常に激しい雨が降り、山間部の下呂市で飛騨川が氾濫。大分県でも日田市の筑後川と由布市の大分川が氾濫した。国土交通省によると、8日午後2時時点で氾濫危険水位を超えていたのは長野県の木曽川や犀川など7。今回の豪雨で一時、氾濫危険水位を超え、すでに下回った河川も108に上った。地球温暖化などの影響で河川の氾濫リスクは近年高まっている。国交省によると、氾濫危険水位を超えた河川数は2014年に83だったが、19年は403と5年で5倍に増加した。17年の九州北部豪雨や18年の西日本豪雨など、梅雨末期の豪雨が広範囲で河川氾濫を引き起こすケースも多い。増える災害に対して、堤防建設などのインフラ整備はコストと時間がかかるため、国交省は20年度から行政や民間企業、地域住民らが連携してインフラ整備に頼らない「流域治水」を進める。戦後最大の洪水と同規模の災害を想定し、流域ごとに雨水貯留施設やため池の活用、工場の浸水対策などを検討する。同省担当者は「河川管理区域内だけの対策では限界があり、行政だけでなく関係者全体を巻き込みたい」と話す。福島、宮城両県を流れる阿武隈川、新潟、長野両県にまたがる信濃川など、昨年の台風19号による河川氾濫の被害が大きかった9都県の7水系で計画が進んでいる。埼玉県の入間川流域では県や市町、河川事務所が連携し、1月末に計画を公表した。20年度は決壊箇所の災害復旧や遊水池の整備に取り組む。プロジェクトには避難行動を時系列で示す「マイ・タイムライン」の普及などのソフト対策も盛り込んだ。治水対策に詳しい京都大の今本博健名誉教授(河川工学)は「国内ではダムによる治水が重視され、堤防の補強や川底を掘削して流量を増やすなどの対策が遅れてきた」と指摘。一方で「従来の治水対策の範囲では今回の雨量で洪水を防げなかった可能性がある。避難計画やまちづくりも含めた幅広い視点で、被害を減らす取り組みが必要だ」と話している。

*4-4:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200709&ng=DGKKZO61293600Y0A700C2FF8000 (日経新聞 2020.7.9) EU、脱炭素の柱に「水素」 戦略公表、景気浮揚狙う
 欧州連合(EU)の欧州委員会は8日「水素戦略」を公表した。燃焼しても温暖化ガスを排出しない水素を脱炭素計画の中心に据え、運輸や産業でも排出ゼロをめざす。景気浮揚にもつなげる。世界での脱炭素競争をリードする考えだが、コストが課題となる。「この戦略の狙いは(温暖化ガスの)排出ゼロ達成と、新型コロナウイルスが経済に与えたダメージの克服だ」。欧州委員会のティメルマンス上級副委員長(気候変動担当)は8日の記者会見で力説した。EUは2050年までに域内の温暖化ガス排出を実質ゼロにする目標を掲げている。これまで力を入れてきた再生可能エネルギー普及は排出のない電力を通じ、家庭やオフィスの脱炭素に貢献しているが、排出ゼロには産業や運輸部門の脱炭素化が欠かせない。だが大型の飛行機や船舶、トラックの電化は難しい。鉄鋼やセメントなどの産業でも現状は石炭を使う必要がある。水素を活用すれば、こうした課題を解決できると期待されている。水素を使う燃料電池車は一部で実用化されている。50年には世界のエネルギー需要の24%を水素がまかなうとの分析もある。水素戦略によると、域内で24年までに水を電気分解して水素をつくる装置を6ギガワット分整備。30年までに40ギガワット超に拡大する。実現に向け、「水素版エアバス」とも言える官民の「クリーン水素連合」を設ける。複数の欧州企業が知見を共有し、水素の生産から輸送、利用までを手掛ける企業連合をつくる。20年に500社が参加し、24年に1千社の参加を見込む。欧州委は50年までの累計投資額は1800億ユーロ(約21兆円)から4700億ユーロにのぼるとみている。関連事業を手掛ける企業を資金面などで支援する仕組みを設け、新技術導入を阻みかねない規制の緩和を検討。21年までにルールを改正し、車や船のための水素充填施設の整備を加速させる。EUとは別に、7月からEU議長国となったドイツも総額1兆円を超える投資計画を発表。内閣改造があったフランスも一段と新エネルギー開発を強化する見通しだ。温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」は、地球規模での排出を将来、実質ゼロにすることをめざす。水素は次世代エネルギー源の一つとして注目される。日本や中国のほか、石炭産出国のオーストラリアや産油国のサウジアラビアなども研究。国際エネルギー機関(IEA)は2日公表の報告書で排出ゼロのカギを握る技術に水素、CO2回収、電池などをあげた。当面はコスト引き下げが重要になる。EUによると、水素生産装置の価格は過去10年間で6割下がったが、30年までにさらに5割減らす。

<原発と安全保障>
PS(2020年7月10、12、14日追加):*5-1のように、政府は、中国を意識して敵基地攻撃能力の保有に踏み切るかどうかの検討を始めたそうだが、「①先制攻撃との線引きができなければ、専守防衛からの逸脱になる」「②平和主義や戦争放棄という憲法の理念に背く」というのはもちろんのことだが、敵基地として攻撃されて黙っている国はないため、原発を早々に手じまって使用済核燃料もどこかの地下深くもしくは海底の深い場所に始末しておかなければ、動けない原発を狙った数発のミサイルで、日本中が住めない国になる。
 日本政府は、③科学的検証力の弱さ ④後進性(航空機の時代に巨艦主義採用、国際法から逸脱した野蛮な行為、戦略なき進軍、運と精神論への依存、国家のためとした国民への死の強制など) ⑤縦割行政による無責任体制 があって第二次世界大戦に負け、これに懲りて戦争放棄を日本国憲法に入れたにもかかわらず、③④⑤は今でも変わらないのに、日本国憲法の戦争放棄部分をなし崩し的に変えるのは歴史の歯車を逆に回す危険な行為だ。また、サイバー攻撃やバイオ兵器も使える現代は、原爆も過去の兵器となりつつある。
 しかし、*5-2は、「⑥低効率の石炭火力発電所を休廃止する」「⑦2030年度の電源構成は原子力20~22%、再エネ22~24%、残り56%は石炭・石油などの化石燃料」「⑧これはフクイチ事故後の2014年に定められ、2018年の見直しでも据え置かれた」「⑨20~22%の電力を確保するためには約30基の原発が必要だが、再稼働した原発は9基に留まる」「⑩原発は重要なベースロード電源」等としている。これは、⑦⑧のように、人為的に電源構成を定めた点が誤りなのであり、⑨⑩は原発を護り、⑥は化石燃料を護っている。地球温暖化にはCO₂だけ削減すればよいというのも③の典型例で、原発が温排水により海を温めていることは周知の事実だ。また、「世界の潮流だから逃れられない」としているのも、自分でよいものへの改革ができない③④の事例だ。さらに、省庁横断的に見れば矛盾だらけで、二重三重に計上され無駄遣いの多い政策や予算は、⑤が変わっていないことを意味する。つまり、再エネを猛烈に伸ばせば全エネルギーを代替できるため、エネルギー源を人為的に配分して原発や化石燃料を市場淘汰から護る「エネルギーミックス」により、公害を出すエネルギーを温存する必要はない。そして、日本における再エネ資源の膨大さや分散発電の有効性については、*5-3・*5-4のように、国内でも既に言い古されたと思われるほど指摘されているのである。
 なお、「石炭から水素燃料を取り出す」などというアホなことを書いている新聞記事をよく見かけるが、水を電気分解すれば水素と酸素ができるため、電力が豊富なら水素は安価に作れる。それを小学校で習わなかったのだろうか?

   

(図の説明:1番左は、科学技術予算のGDP比で、日本の地位低下が目立つ。また、左から2番目は農業地帯で利用できる小水力発電の全体像で、右から2番目は山の尾根沿いに設置された風力発電だ。1番右は、漁業地帯の養殖施設に併設された風レンズ風車で、一般の風車より効率的に発電できる)

*5-1:ttps://www.chugoku-np.co.jp/column/article/article.php?comment_id=658905&comment_sub_id=0&category_id=142 (中国新聞 2020/7/5) 敵基地攻撃能力 専守防衛からの逸脱だ
 政府は、山口、秋田両県で進めてきた地上配備型迎撃システム「イージス・アショア」の計画断念を受け、敵基地攻撃能力の保有に踏み切るかどうかの検討を始めた。国家安全保障会議(NSC)で議論して、9月にも方向性を出すという。北朝鮮や中国を仮想敵として日本に向けてミサイルが発射される前に、弾道ミサイル発射基地やミサイルを攻撃しようというのだ。相手国の基地の場所を確認し、防空能力を無力化しておく必要があり、十分な打撃を与える力も欠かせないなど、実現には高いハードルがある。先制攻撃との線引きができなければ、自衛とはいえなくなるだろう。戦後、堅持してきた専守防衛からの逸脱になりかねない。平和主義や戦争放棄という憲法の理念に背くことにもなる。看過できない。自民党は既に前のめりだ。防衛相経験者らを中心に検討チームを設け、論議を始めた。提言をまとめ、政府のNSCの議論に反映させる考えだ。「北朝鮮よりも中国を意識している」(党幹部)という。背景には、沖縄県の尖閣諸島周辺で領海侵入を繰り返すなど、海洋活動を活発化させる中国に対する警戒感の高まりがある。党内にも慎重論はある。岩屋毅前防衛相は「地上イージスが難しいからといって、一足飛びに敵基地攻撃能力を考えるのは論理の飛躍だ」と強調する。連立を組む公明党は否定的である。山口那津男代表は「武力行使を未然に防ぐ外交的な取り組みに力を入れるべきだ」と指摘する。当然だろう。政府はこれまで、米国との役割分担として、敵基地攻撃能力は米側に依存するとしてきた。なぜ今、抜本的に方針転換するのか。地上イージス断念を受け安倍晋三首相は「防衛に空白が生じてはならない」と言う。しかし地上イージスの配備は計画では5年後の2025年以降。それまではイージス艦で対応する方針だった。敵基地攻撃能力の保有を巡り、今秋までに急いで方向性を出す必要性があるのか。地上イージス断念の経緯の検証こそ急務のはずだ。敵基地攻撃能力の論議は1956年にさかのぼる。当時の鳩山一郎首相が「座して自滅を待つというのが憲法の趣旨とは考えられない」と指摘。攻撃を防ぐのに他に手段がないと認められる限り、法理的に自衛の範囲との見解を示した。以来、政府は憲法上可能との考えを踏襲しつつ、専守防衛の観点から保有しない立場を取ってきた。2006年、北朝鮮が相次いで弾道ミサイルを発射したのを受け、当時の防衛庁長官が必要性を表明した。しかし小泉純一郎首相は「憲法上の問題がある」と否定した。ところが安倍首相は政権に返り咲いた12年末以降、保有論議を再燃させた。ただ当時のオバマ米大統領から、中国などを刺激するとして懸念を示された。妥当な指摘だろう。核実験やミサイル発射実験を繰り返す北朝鮮には、国際社会と連携して非核化するよう説得を続ける必要がある。近隣諸国との有効な関係づくりに努めれば、敵基地攻撃能力は不要だ。武力に武力で対抗するだけでは平和で安全な地域づくりには、つながらない。政府は肝に銘じるべきである。

*5-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200710&ng=DGKKZO61341880Z00C20A7EA2000 (日経新聞 2020.7.10) エネ政策、不作為に限界 脱炭素、原発に国の関与不可欠
 脱炭素のうねりが迫るエネルギー転換や電力・ガス市場の自由化など、エネルギーをめぐる環境が内外で変わりつつある。速度を上げる変化に日本がのみ込まれようとしているときに、エネルギー政策は不作為とも言える思考停止が続く。現実を直視した計画に作り直すときだ。梶山弘志経済産業相は9日、洋上風力発電を拡大させる方針を表明した。3日には低効率の石炭火力発電所を休廃止する考えを示している。エネルギー政策を担う経産省は長期指針である「エネルギー基本計画」の見直しに向けた地ならしを急ぎ始めた。現行の計画は2030年度の電源構成について、原子力を20~22%、再生可能エネルギーを22~24%、残り56%を石炭や石油などの化石燃料でまかなうとする。東京電力福島第1原子力発電所の事故後の14年に定められ、18年の見直しでも据え置かれた。この比率実現が、温暖化ガス排出を30年度に13年度比で26%減らす国際公約の前提になっている。しかし、目標年度と定める30年度まで残り10年に迫り、掲げる数字の非現実性があらわになりつつある。なかでも原発だ。20~22%の電力を確保するためには約30基の原発が必要だが、再稼働した原発は9基にとどまる。福島原発事故から来年で10年、国民の原発に対する信頼回復は進まない。関西電力で発覚した原発立地をめぐる金品受領問題は不信を増幅した。金品の渡し手となった元助役のような人物がどうして影響力を持つようになったのか。「重要なベースロード電源」と位置付けながら、立地対策を含め、運営を電力会社に丸投げしてきた国策民営の限界がある。原発は有力な脱炭素の手段となりうる。国民が受け入れて使い続けるには、立地対策や使用済み燃料の処理、核燃料サイクルなど、国がもっと前に出て関与しなければならない。それは政治と行政の責任でもある。国際エネルギー機関(IEA)によれば、世界の発電量に占める太陽光や風力など再生エネの比率は40年に44%となり、石炭や天然ガスを上回る最大の電源になる。日本もこの潮流から逃れられない。石炭より発電コストが高くても伸ばすなら、国民に受け入れてもらうよう説明を尽くす必要がある。広大な海洋をいかした洋上風力を増やす。導入拡大のネックとなる送電線利用のルールを見直す。発電した場所で電気を使う分散型システムの導入を促す。原発に温暖化ガス削減を期待できないとすれば、あらゆる政策を動員して再生エネを主力電源に育てていかねばならない。ただし、エネルギー政策は温暖化対策だけでない。安全や供給の安定性、経済性などの要素を考慮する必要がある。国際的に割高な電気料金をどう下げるのか。地政学リスクに伴う供給途絶をどう回避するのか。エネルギー戦略の立案とはこうした要素の最適バランスを見つける作業だ。現行のエネルギー基本計画では30年度に電源構成の56%を化石燃料でまかなう。再生エネを最大限伸ばしても、すべてを代替するには力不足だとすれば、脱炭素に配慮しながら化石燃料を使い続ける方法を考えるしかない。石炭に比べて、温暖化ガスの排出が少ない液化天然ガス(LNG)の利用拡大が現実解になるとしても、輸入頼みのLNGには地政学リスクがつきまとう。これをどこまで増やせるのか。現実を見据えたエネルギーの最適組み合わせ、いわゆる「エネルギーミックス」の議論を早急に始めなければならない。

*5-3:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20191001&ng=DGKKZO50386330Q9A930C1KE8000 (日経新聞 2019年10月1日) 再生可能エネルギーの未来(中)電源の地産地消 目指せ 泉井良夫・金沢工業大学教授(1959年生まれ。東京大工卒、同大博士(工学)。専門はエネルギーマネジメント)
<ポイント>
○地方は再エネを利用した分散型電源が解
○太陽光と中小水力や地熱の組み合わせを
○電気自動車は動く蓄電池として活用せよ
 本稿では再生可能エネルギー(再エネ)の未来を、地方から、エネルギーマネジメントの視点で考察したい。再エネは主に脱炭素社会実現のための電源として議論されるが、それ以外にも分散型電源、地域による多様性、電源の国産化など様々な視点がある。中でも地方は、人口密度が疎で分散的であることから再エネとの整合性が高く、地産地消に適している。実現のためには、おのおの地域ごとの再エネによる創エネとエネルギー消費を結びつけるエネルギーマネジメントが重要である。今般、千葉県で起きた長期間の送電停止は示唆的であり、こうした地域の小規模分散型電源の重要性を図らずも実証したといえそうだ。まず、地産地消における再エネ=分散型電源という視点を考察する。再エネは、設置場所の自由度が高い。たとえば太陽光発電は日射があればよいので、日本全国どこでも設置可能である。風力発電は風況の制約などがあるものの同様である。地熱に至ると、我が国は世界第3位のポテンシャルを持ち、掘ればどこでもエネルギー利用が可能である。これらの再エネは密度が低いといわれるが、地方は人口密度も低いため、この点での親和性もある。一般に生産(発電)と消費はできるだけ近い方が、コストや電力損失などの点で有利であるが、地方は人口が少なく分散的であるため、電力を配るための配電線が長い。たとえば総発電出力あたりの配電線長(架空線)を比較すると、北海道電力は東京電力の約2倍である。つまり、地方においては再エネを活用した分散型電源によるコミュニティーが合理的であり、さらにオフグリッド(電力自給)化が実現すると、地震や台風などからのレジリエンス(復元力)の観点からも有利となる。次に、再エネの地域による多様性の視点を考察する。科学技術振興機構低炭素社会戦略センター調査報告(2018年1月)によると、出力変動型再エネである太陽光発電は、おおむね日本全体に均一分布している。一方、地域的な分布の違いが見られる再エネも多く、中小水力発電は北陸・甲信越、地熱発電は九州・東北・北陸に多い。これらは出力安定型再エネであり、うまく組み合わせるとベストミックスになる。我が国は、地域間、季節間の寒暖差が大きく、冷暖房など空調設備が必須であり熱需要が存在する。しかし、熱は輸送や貯蔵が難しく、生産と消費が近接している必要がある。ドイツの自治体によるインフラ運営公社・シュタットベルケでは、約900社が電気事業を手掛けており、電力小売市場で20%以上のシェアがあるといわれる。ドイツは比較的寒冷であり、熱の生産と消費が近接しリンクしているのが主な理由である。我が国でも、地産地消での再エネ熱活用により、同様のビジネスモデルが成立する可能性がある。次に、地方におけるEVなどモビリティーによるエネルギー利用について考察する。地方は自動車の保有率が高く、運輸部門における二酸化炭素排出量比率が高い。たとえば東京都は10%前後であるが、金沢市は20%を超えている。さらに、ガソリンスタンドの減少、少子高齢化を背景に、地方における自動運転関連技術の期待が一層高まってくることを考えると、これと親和性の高いモビリティーの電動化は必然となる。移動体の電動化には蓄電池は必須であり、電気視点では「動く蓄電池」と言える。太陽光発電や風力などの出力変動型再エネは電気のバッファリング(緩衝)が必要であるから、これら動く蓄電池の活用が可能となる。動く蓄電池はモビリティーと電気のデュアルユースであることから、定置型蓄電池に比べてコスト面でも有利である。さらに、停電時などのエネルギーレジリエンスにも有効である。将来は再エネ由来の水素活用も考えられる。さて、上記のように再エネは地方の特性と様々な整合性を有するが、これをシステム的にどのように活用してエネルギーサービスとして提供するかは別の議論が必要である。究極は分散型電源として、地域で作った再エネを地域で使う、地産地消による小規模電力システム(マイクログリッド)化が考えられる。さらに今後は、電気ばかりでなく熱エネルギーも含めた熱電一体のエネルギーシェアが、地産地消におけるエネルギーサービスの軸になると考える。我が国においては、既に膨大な資本を投下した電力システムが存在する。転換コストを考えると、これを直ちに小規模電力システム化して地産地消することは現実的ではない。しかし、新たな消費者地域の構築や固定価格買い取り制度終了を見据え、既存の再エネ設備を地産地消化するために再構築するときには十分検討に値する。地産地消の実現に必要な技術は、大きく分けて「需要家資源活用技術」「直流給電技術」「システム・オブ・システムズ(SoS)技術」「決済系技術」の4つがある。エネルギー創出や電力消費の予測、さらにその制御を行うのが需要家資源活用技術である。また、太陽光発電など再エネは効率の観点から直流給電技術で構築すると都合が良い。交流で構築されている商用の電力システムには、周波数を一定に維持する高度な需給制御技術が必須である一方、直流システムは創エネと消費のアンバランスに非常にロバスト(頑健)であり、制御が容易で停電しにくい特徴がある。さらに、動く蓄電池としてのEVなどのモビリティーシステム、再エネ発電量予測のため衛星システムと連携するSoS技術も必要である。地産地消では、電気ばかりでなく熱を含めた多種少量のエネルギーをシェアするが、そのシェアに逐一人手を介在させることは事実上不可能である。このため、セキュリティーやプライバシーの保持はいうまでもないが、ブロックチェーン(分散型台帳)などの低コストでスマートな決済系技術が必須である。このようなエネルギーマネジメントを活用した地産地消システムは、各所で活発に実証実験が行われている。筆者が所属する金沢工業大学においても、18年4月にオープンした白山麓キャンパス地方創生研究所で、熱を含む多様な再エネを活用した「再生可能エネルギーベストミックスの地産地消コミュニティモデル」という、50年の地方におけるエネルギー縮図モデルとして実証評価を行い、その実現を目指している。再エネは今後、脱炭素化を主目的に導入がさらに加速すると考えられる。その際、地域による多様性への配慮は欠かせない。都市には都市の特性、地方には地方の地域特性があり、これらと再エネの多面的な視点の整合化が望まれる。地方においては、「分散」をキーワードに、地域特性を生かし、熱・電気エネルギーの地産地消を実現するエネルギーマネジメント技術の確立が求められよう。

*5-4:http://www.tokyo-np.co.jp/article/economics/list/201808/CK2018082002000139.html (東京新聞 2018年8月20日) 猛暑こそ太陽光発電 最高気温更新でも安定
 記録的な猛暑が続いたこの夏、冷房を使う機会が増える一方で、東京電力管内の電力需給は、深刻な逼迫(ひっぱく)に陥った日がまだないことが分かった。太陽光発電の発電量が増え、節電の浸透で電力消費自体も減っていることなどが要因だ。東電管内で稼働している原発はゼロでも猛暑の日を乗り切っており、「電力の安定供給には原発が不可欠」とする政府や電力業界の主張はその根拠が薄らいでいる。電気の使用可能量(供給)に占める実際の使用量(需要)を示す「使用率」について、東電は安定的(93%未満)、やや厳しい(93~95%未満)、厳しい(95%以上)、非常に厳しい(97%レベル)の四段階に区分する。一般的に暑い日ほど冷房が使われ使用率は上昇。97%を超えると停電の可能性も生じるとされる。だが、この夏の使用率は、埼玉県熊谷市の気温が四一・一度と国内最高記録を更新し、東京(千代田区)で史上三位の三九・〇度に達した七月二十三日でも92%と「安定的」だった。ほかの日をみても、94%となって「やや厳しい」となった七月二日以外は、すべて「安定的」だ。電力不足が避けられているのは、「気温が高い」との予報がある日に、東電が火力発電の発電量や他の電力会社から融通してもらう電力を増やしていることが要因になっている。さらに午前十時~午後三時ごろに増える太陽光の発電量が、電気の使用がピークになる午後二時ごろと重なることも大きい。太陽光発電は、再生可能エネルギーで発電した電気をすべて電力会社が買い取る制度が二〇一二年に導入されてから増加。東電管内でも供給力の一割超を占めるようになっている。節電や省エネで、電力の消費量自体も減っている。七月二十三日には、東電管内の電力使用量が午後二~三時に五千六百万キロワットと震災後最大を更新。それでも〇一年七月二十四日に記録した過去最大量よりも13%少なかった。事前に契約した企業への一時的な節電要請や、他の電力会社に電力を融通してもらう仕組みが整備されたことも、供給安定の要因に。日没以降も高温が予想された八月の一日と二日、東電は夕方にかけて大口顧客に節電を要請した。今年一月も厳しい寒さで暖房の利用が急増したが、電力会社間の融通によって電力不足は回避された。

<災害レッドゾーンとイエローゾーンの定義は?>
PS(2020年7月12日追加):*6-1のように、九州を襲った記録的豪雨で熊本・福岡・大分の3県で身元が発表された犠牲者57人のうち、少なくとも3/4にあたる43人が氾濫した川沿いに住み、そのうち約9割の38人が65歳以上の高齢者だったそうだ。住民の年齢分布も上に偏っているため、約9割が65歳以上でもおかしくはないが、高齢者だけでは避難も後片付けも容易でないと思う。さらに、近年は、100mm/時間超や400mm/24時間超という雨は珍しくないため、避難を前提としていては安心して生活することができない。
 そこで、*6-2・*6-3のように、国交省が都市計画法や都市再生特別措置法などを6月4日に改正し、①「災害レッドゾーン」「災害イエローゾーン」などの「災害ハザードエリア」における新規開発の抑制 ②災害ハザードエリアからの移転促進 ③立地適正化計画と防災の連携強化 で安全な街づくりを促し、土砂災害の危険性が高い「災害レッドゾーン」は、オフィス・店舗・病院・社会福祉施設・旅館・ホテル・工場・倉庫・学校などの施設開発を原則禁止することになった。しかし、浸水想定区域の「災害イエローゾーン」は、住宅の開発許可を厳格化するだけで、病院・社会福祉施設・旅館・ホテルなどの営業施設開発は禁止されておらず、今回の河川の氾濫はこちらに当たるが、危険は土砂災害だけでなく津波・洪水でも大きく、新都市計画法の弱点を突いて起こっている。つまり、浸水想定区域は「災害レッドゾーン」に入れて安全な場所に移転させる必要があり、危険性がわかっていても住民自身が禁止区域に住み続けたい場合は、全国民ではなく、「災害レッドゾーン」「災害イエローゾーン」の危険度に応じて保険料を上げ、災害が起こった際にはなるべく多くを私的保険で賄うようにすべきだ。そして、自治体の都市計画と保険料により、都市を安全な方向に誘導すべきだと思う。

   
                              2020.1.20読売新聞

(図の説明:左図のように、災害の起こり易い地域をレッドゾーン・イエローゾーンとし、安全な地域に住宅を誘導することになった。レッドゾーンに入るのは、中央の図のような土砂災害の起こり易い地域で、住宅・オフィス・店舗・病院・社会福祉施設・旅館・ホテル・工場・倉庫・学校などの施設開発が原則禁止だが、浸水想定区域のイエローゾーンは低層住宅だけが禁止だ。また、右図のように、イエローゾーンには、鉄筋コンクリートの頑丈で高い建物は建設可能だが、このような建物も機器は地下に設置してある場合が多いため、建て方に要注意だ)
 
*6-1:https://mainichi.jp/articles/20200711/k00/00m/040/215000c(毎日新聞 2020年7月12日)犠牲者の4分の3は川沿い居住、約9割が高齢者 逃げ遅れた可能性 九州豪雨
 九州を襲った記録的豪雨の犠牲者で、熊本、福岡、大分3県で身元が発表された57人のうち、少なくとも4分の3にあたる43人が氾濫した川沿いの地区に住んでいたことが、毎日新聞のまとめで判明した。43人のうち約9割の38人が65歳以上の高齢者だった。3日夜から4日朝にかけた豪雨の中で多くの人が逃げ遅れた可能性があり、高齢者避難の課題が改めて浮かんだ。熊本県では、2012年7月12日未明から阿蘇地方などで1時間100ミリ超の記録的な雨が降り、県内で23人が死亡した。この反省から県は、明るいうちに避難を呼びかける「予防的避難」を目標に掲げ、市町村が避難所を開設する経費の一部を負担するモデル事業を実施したこともある。しかし今回、気象庁の予想雨量は県内の多いところで24時間200ミリで、モデル事業で予防的避難をする基準としていた値(24時間雨量250ミリ以上など)にも満たなかった。実際は400ミリ以上の雨となり、人吉市では「避難準備・高齢者等避難開始」の情報を出せないまま、最初の避難勧告が3日午後11時となるなど住民の明るいうちの避難は難しい状況だった。県の防災担当者は「答えの見えない重い宿題だ」と語る。静岡大防災総合センターの岩田孝仁特任教授は「夜になれば大雨の中で高齢者は動けない。一方で、雨量予測が難しい中では行政の対応に限界もある。行政に頼りすぎず、住民自ら早めに避難することが世の中の常識にならなければ被害は減らせない」と訴える。

*6-2:https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/00154/00783/ (日経クロステック 2020.2.5) 都市計画法改正で「原則禁止」となる建物は? 防災重視に転換する街づくり
 国土交通省は都市計画法や都市再生特別措置法などを改正し、激甚化する自然災害に対応した安全な街づくりを促す。開発許可制度を厳格化し、災害危険区域や土砂災害特別警戒区域といった「災害レッドゾーン」における自社オフィスなどの開発を原則禁止する。今通常国会に提出する改正案の概要を、2020年1月27日の都市計画基本問題小委員会で示した。改正のポイントは「災害レッドゾーンや災害イエローゾーンなどの『災害ハザードエリア』における新規開発の抑制」、「災害ハザードエリアからの移転の促進」、「立地適正化計画と防災の連携強化」の3つだ。企業にとって最も影響が大きそうなのが、都市計画区域全域を対象とした、災害ハザードエリアの開発抑制。「災害レッドゾーン」と呼ぶ災害危険区域、土砂災害特別警戒区域、地すべり防止区域、急傾斜地崩壊危険区域の4区域で、自社のオフィスや店舗、病院、社会福祉施設、旅館・ホテル、工場、倉庫、学校法人が建設する学校などの「自己の業務の用に供する施設」の開発を原則禁止とする。現行の都市計画法では、分譲住宅や賃貸住宅、賃貸オフィス、貸店舗などを開発する際に、区域内に災害レッドゾーンを原則として含まないよう規制している。一方で、開発事業者が自ら使用する施設については規制対象としていない。近年の自然災害で、こうした施設が被災して利用者に被害が及ぶケースが発生しているため、法改正による規制強化に乗り出す。国交省が16年4月~18年9月の2年半を対象に、開発許可権者である590自治体に調査したところ、災害レッドゾーンにおける自己業務用施設の開発行為は合計47件。土砂災害特別警戒区域内に小学校・中学校が含まれるケースもあった。災害ハザードエリアのうち、浸水想定区域などのいわゆる「災害イエローゾーン」についても、市街化調整区域における住宅などの開発許可を厳格化する。現行の都市計画法では、市街化調整区域内であっても自治体が条例で区域を指定すれば、市街化区域と同様に開発できる。指定に当たっては原則として「溢水、湛水、津波、高潮等による災害の発生のおそれのある土地の区域」などを除外する必要がある。しかし現実には災害レッドゾーンが含まれているケースがあるほか、浸水想定区域についてはほとんど考慮されていないのが実情だ。19年10月の台風19号でこうした区域を含む市街化調整区域で浸水被害が発生したことを受けて、開発許可の厳格化に踏み切る。

*6-3:https://www.sankeibiz.jp/macro/news/200604/mca2006040500003-n1.htm (産経BZ 2020.6.4) 開発規制強化 災害に備え 改正都市計画法が成立
 まちづくりで防災を進める改正都市計画法などが3日、参院本会議で可決、成立した。土砂災害などの危険が高い地区の開発規制を強化し、自ら店舗を経営する目的でも建設を禁止する。浸水などの恐れがある地区からの住宅移転を促すため、市町村が移転先などを調整する制度も導入。最大2年程度の周知期間を経て施行する。大きな被害が出た昨年の台風19号をはじめ多発する自然災害に備えるのが狙い。崖崩れや地滑りなどで建物が壊れたり、身体に危害が及んだりする「レッドゾーン」に指定されているエリアでは現在でも賃貸、分譲目的の住宅、貸店舗は建設できない。しかし、自分が経営する目的で店舗やホテル、学校、事務所などが建設されているケースがあり、規制対象を広げる。移転の調整は、住宅や施設を集約する「コンパクトシティー」を目指し、立地適正化計画を作っている市町村が対象。開発規制の有無にかかわらず浸水などの恐れがある場合は、市町村が移転対象の住宅や施設、移転先、時期などを盛り込んだ計画を作成する。昨年の台風19号では居住誘導区域でも浸水被害が起きており、安全を確保する。国土交通省は「住民の代わりに、自治体が安全な移転先を見つけて紹介できる」と利点を説明する。立地適正化計画には防災対策を明記することも市町村に求める。避難施設整備、宅地のかさ上げや耐震化が想定され、具体策は国交省がガイドラインの形で示す。国交省は今後、関連する政令も改正。適正化計画で住宅の集約を目指す「居住誘導区域」から、危険性の高いレッドゾーンは除外するよう明示する。

<新型コロナでも非科学的なTV報道が多いのは何故か?>
PS(2020年7月14、17、18日追加):*7-1のように、東京都で200人以上の感染者が4日間も出て、7月13日(月)に5日ぶりに119人になり新規感染確認者数が200人を下回ったと一喜一憂する報道が多いが、この論調なら検査を抑制して新規感染者の確認を止めればよいことになってしまい、本質的な解決にならない。そして、このような反応の中で、無症状者・軽症者・中等症者をウイルスを排出しなくなるまで隔離して治療しなかったことが、新型コロナを市中に蔓延させた直近3カ月の最大の失敗であるため、まずこれを反省すべきだ。また、「新型コロナ≒夜の街」という新型コロナがまるで性病ででもあるかのような病人差別も見られるが、先進国とは思えない非科学的な行為だ。正確には、精密抗体検査や新型コロナウイルスのDNA解明などを行った東大先端研の児玉名誉教授が、YouTubeで検査・症状・治療・ウイルスの変異・ワクチン等について話しておられる(https://search.yahoo.co.jp/video/search?p=%E5%85%90%E7%8E%89%E9%BE%8D%E5%BD%A6+%E3%82%B3%E3%83%AD%E3%83%8A&tid=d83a8d062f1c155c7e68c92f3f94dca0&ei=UTF-8&rkf=2&dd=1 参照)。
 その中で、*7-2・*7-3の内容も話されており、「死者数/人口100万人」は、欧米では300~800人であるのに対し、日本では約6人と50~100倍以上の差があり、これだけの違いは生活様式や医療格差だけでは説明できない。そのため、「人種によって異なる遺伝子で免疫応答の違いが生じているのではないか」との仮説を立て、ゲノム解析で確かめようとしているそうだ。また、BCG接種と感染者数・死者数の間にも強い相関関係があるが、私自身は、BCG接種との直接因果関係というよりは、類似のウイルスに対して多重に免疫を持っているのではないかと思っており、類似のウイルスが存在する地域の発酵食品も、ペニシリンと同じ原理でこれらのウイルスに抵抗力があると考えている。
 これまでの政府の対策の失敗により(これは認めるべき)、新宿が日本独特の遺伝子配列を持つ新型コロナの東京型エピセンターとなり、*8-1のように、東京都内の感染者が17日の発表で過去最多の293人となったが、メディアはまた同じようにボケたことを言っている。そして、*8-2のように、「GoToトラベル」事業も東京を目的とする旅行と東京居住者の旅行が対象外になったのだが、本来はPCR検査で陰性なら行動制限をする必要がないため、「GoToトラベル」事業を行う必要もなかったのに、容易に検査できない仕組みにして国民全員を自粛させたのが問題だったのだ。そのため、それぞれの地域は、他の地域から入ってくる人にPCR検査の陰性証明書提示を義務付け、陰性なら入れるようにした方がよいと思う。まして、被災地に入るボランティアは受入自治体でPCR検査してもよいくらいで、厚労省は、*8-3のように、唾液を使って迅速に結果の出るPCR検査を無症状の場合でも認めると発表している。しかし、やはり検疫や濃厚接触者に限っているため、無症状でも希望する人は自費で受けられるようにすればよいだろう。その検査は、大学や検査センターを使えば大量にできるそうなのでやってもらえばよく、それでも検査させない理由が他にあるのだろうか?
 この新型コロナへの対応の誤りから発生した巨額の無駄遣いで、*9のように、2021年度予算編成の指針となる「骨太の方針」は、①国債の大量発行 ②財政再建目標削除 ③国内総生産(GDP)600兆円達成目標の取り下げ を行い、④「プライマリーバランス(PB)」を2025年度に黒字化する目標が棚上げされた。この新型コロナの長期化により、財政のさらなる悪化が見込まれているが、対応によっては逆の効果を生むこともできた。つまり、政府が検査・診断・隔離・治療・ワクチン開発を推進し、それを可能にするツールを日本で開発・製品化すれば、高度なバイオ産業となって次の経済成長に繋がった筈なのだ。しかし、日本政府は、馬鹿の一つ覚えのように、「テレワーク」「働き方改革」と連呼して人を自宅から出さないようにしたため、テレワークでは不可能な調査研究・開発・製品化などもできなくなった。また、日本中で長期に自粛させたことにより、国内総生産が落ち、財政再建ができないばかりか、やっていけなくなった個人や企業を救うための後ろ向きの支出が増えて、国債の大量発行を余儀なくされた。これは、与野党・メディアが協力して行ったことであり、「何故、ここまでの愚策しか思いつかないのか?」と、私は呆れながら見ているしかなかったのである。


     2020.7.9朝日新聞        2020.7.9  2020.6.25  2020.7.18
                      毎日新聞   朝日新聞   東京新聞

(図の説明:1番左の図のように、東京都の新規感染者数は増えているが、その理由は、左から2番目の図のように、PCR検査数を増やしているからであり、検査数が減る週末には新規感染者数も減る。また、今のところ、重症患者も漸減している。なお、新型コロナの本質的解決には、検査数を増やして治療と隔離をすることが必要であるため、新規感染者数の増減だけを問題にするのはおかしい。また、右から2番目の図のように、日本はじめアジア諸国は新型コロナによる死亡率が低いため、その原因究明も行われている。しかし、1番右の図のように、新型コロナ対策に関する愚策とそれを尻拭いする膨大な支出のため、日本の財政状態は危うい状態になった)

*7-1:https://www.tokyo-np.co.jp/article/42142 (東京新聞 2020年7月13日) 東京都で新たに119人の感染確認 5日ぶりに200人下回る
 東京都の小池百合子知事は13日、都内で新たに確認された新型コロナウイルス感染者は119人だったと明らかにした。1日当たりの新規感染者数が200人を下回るのは今月8日以来、5日ぶり。都内の累計感染者数はこれで8046人となる。小池知事は13日午前、都庁で報道陣の取材に応じ、都内の感染者数が多い日が続いていることを菅義偉官房長官が「東京問題」と発言したのに対して「圧倒的に検査数が多いのが東京。それによって陽性者があぶり出てきて、その中には無症状の方もかなり含まれているということが分かってきた」と述べた。

*7-2:https://digital.asahi.com/articles/ASN5P5KCKN5PUCFI003.html?iref=pc_rellink_01 (朝日新聞 2020年5月21日) なぜ人種で差 コロナ重症化、遺伝子解析で探る研究開始
 新型コロナウイルス感染症が重症化する仕組みを、患者の遺伝子解析を通じて解き明かそうというプロジェクトが始まった。人口100万人当たりの死者は米英で300~500人なのに対し、日本では約6人で大きな差がある。研究グループはこの差が生活様式や医療格差だけでは説明できないと考え、人種ごとに異なる遺伝子によって免疫応答に違いが生じているとの仮説を立て、ゲノム解析で確かめることにした。重症化因子が判明すれば、今後のワクチン開発に生かせるという。東大や阪大、京大など7大学の研究者と研究機関などが参加。日本医療研究開発機構(AMED)から研究資金を得た。国内の約40の医療機関と連携、無症状から重症者まで、少なくとも600人の血液を調べ、9月までに報告をまとめる。慶応大の金井隆典教授が研究責任者を務める。特に注目しているのが、免疫反応をつかさどる司令塔の役割を果たすHLA(ヒト白血球抗原)。これを重症患者と無症状患者とで比較し、重症患者に特有の遺伝子を見つける。欧米でも進む同種の解析結果と照合すれば、日本人の死者数が少ない原因の解明にもつながるとしている。遺伝子解析が専門で東京医科歯科大特命教授の宮野悟・同大M&Dデータ科学センター長は「ウイルスの遺伝子解析だけでは『半分』しか調べたことにならない。宿主である人間の遺伝子も解析することでワクチン開発を補完できる」と話す。新型コロナウイルス感染症への抵抗性に関わる遺伝子が見つかれば、健康な時から血液検査でリスクを判定したり、ワクチンや治療薬の開発に貢献したりできるという。遺伝子と感染症には密接な関係があり、エイズウイルスに耐性を持つ遺伝子変異や、インフルエンザや肺炎に対して免疫が働かなくなる遺伝子病が見つかっている。かつてのシルクロード周辺に住む民族がかかりやすいベーチェット病など、遺伝子の違いによって、特定の病気になりやすい民族があることも知られている。

*7-3:https://digital.asahi.com/articles/ASN6V5CY7N6TUCLV00V.html (朝日新聞 2020年6月29日) BCG接種? 交差免疫? 日本のコロナ死者なぜ少ない
 新型コロナウイルス感染症が世界に広がる中、日本を含むアジア地域(中東を除く)の人口当たり死者数は欧米に比べ非常に少なく、驚きを持って受け止められている。世界中の研究者が原因を注目しているが、生活習慣や文化、医療体制の差だけでは最大100倍の差は説明しにくく、獲得した免疫の強さなど、根本的な違いがあるという見方が強くなっている。
●「世界の研究者が困惑」
 人口100万人当たりの死者数は、800人を超すベルギーを筆頭に欧米の先進国が上位に並び、中南米も100人を超す。一方、日本の7・7人などアジアは10人以下が多い。5月28日付の米紙ワシントン・ポストはこの現象を「新型コロナのミステリーの一つ」と紹介。特に世界有数の高齢社会で、検査数が少なく、外出自粛という欧米に比べて緩やかな対策で死者数を抑え込んだ日本に「世界の研究者が困惑している」と伝えた。背景に何があるのか。まず指摘されるのは生活習慣や文化の違いだ。花粉症が広がり、感染拡大前からマスクを着用する習慣は根付いていた。「病人の証し」としてマスクを避け、義務づけなければ着用が進まなかった欧米各国とは異なる。感染防止に効果がある手洗いをする習慣も身についている。海外の病院で、ウイルスが靴に貼り付いて移動しているという研究結果もあり、室内で靴を脱ぐ文化が感染拡大を抑えたという見方もある。ハグやキスなど体の接触を伴うあいさつが少ないのも、接触感染、飛沫(ひまつ)感染を抑えた。またロックダウン(都市封鎖)など強権的な対策を採らなくても、補償なしの自粛要請だけで休業し外出を控える「従順な国民性」がプラスに働いたという指摘もある。「きれい好き」「衛生、栄養状態が全般的によい」だけでは答えにはならない。過密都市を抱え衛生状態が良くないバングラデシュやインドと日本は人口比死者数はほぼ同じだ。
●遺伝子から違いを探る
 「生活習慣や文化の違いが有利に働いた面はあるが、2けたの差はもっと根本的な違いがなければ説明できない。ポイントはヒトが持つ遺伝子では」と話すのは慶応大学の金井隆典教授。遺伝子によって免疫反応に違いが生じているとの仮説を立て、7大学が共同研究中だ。重症、中軽症、無症状各200人の感染者の血液を集め、全ゲノムを解析して9月までに報告をまとめる。特に注目しているのが、免疫反応をつかさどるHLA(ヒト白血球抗原)で、重症患者と無症状患者とで比べ、重症患者特有の遺伝子を見つける。欧米でも同種の解析が進んでおり、照合すれば、東アジアで死者が少ない原因の解明につながる可能性がある。にわかに注目を集めたのが結核の予防ワクチンBCGだ。世界で比較すると接種している国はしていない国より死者数が少ない傾向がある。藤田医科大学の宮川剛教授はBCGと結核に注目。結核蔓延(まんえん)国は接種国より一段と死者数が少ない。さらに平均寿命や高齢化率、人口密度、肥満率、病床数、喫煙率など結果に影響を与える恐れがある因子を除いて解析しても、接種国の死亡率が低い傾向は変わらなかった。宮川教授は「BCGと感染者数や死者数の間に強い相関関係があることを示すだけで、因果関係があることを示すデータではない」と語る。イスラエルの研究チームが5月にBCGの効果に否定的な研究結果を発表したが、宮川教授は「接種率についての事実関係の誤りがあるなど問題が多い」と指摘する。一方で、オーストラリア、ニュージーランドは接種していないのに人口比死者は少なく、BCG仮説だけでは説明できない。
●注目の「交差免疫」説
 交差免疫説も注目の的だ。過去に似たウイルスに感染して出来た免疫が、新型コロナも排除する仕組みのこと。東京大学の児玉龍彦名誉教授が都内の感染者の血液を調べたところ、すでに部分的な免疫も持っているとみられる人が多数確認された。「風邪を引き起こす一般的なコロナウイルスと新型コロナは、塩基配列のほぼ半分が同じ。コロナウイルスは絶えず進化し、日本にも流入している。そのため新型コロナへの抵抗力を持っている人が一定数いて、重症化率の抑制につながっているのではないか」という。米ラホイヤ免疫研究所が、感染拡大前に採取した血液を調べた研究で、約半数から新型コロナを認識する免疫細胞が検出された。これも、新型コロナに似たウイルスがすでに存在し、交差免疫を起こしたことを示している。免疫学の第一人者である大阪大学免疫学フロンティア研究センターの宮坂昌之招聘(しょうへい)教授はこう分析する。①BCGは「訓練免疫」という仕組みで人体に備わっている自然免疫を活性化させ、重症化抑制に寄与している可能性がある②交差免疫も働いているが、重症化を抑える貢献度の大きさは正確には分かっていない③遺伝子の差異も因子の一つだが、同じアジア人でも住む場所によって重症化する割合は異なり、決定要因とは思えない④アジアの方が肥満や生活習慣病の程度が欧米より低く、これも重症者の数を抑え込む因子の一つだろう。「一つが決定的に重要というより、交差免疫、BCG、遺伝子などの因子が相互補完的に働き、重症化率を大きく押し下げている」
※ 人口100万人当たり死者数の出典は、https://web.sapmed.ac.jp/canmol/coronavirus/death.html 札幌医科大学医学部 附属フロンティア医学研究所 ゲノム医科学部門(畑川剛毅)

*8-1:https://digital.asahi.com/articles/ASN7K4RKKN7KUTIL01L.html?iref=comtop_8_01(朝日新聞 2020年7月17日)東京都の感染者、最多の293人 「これからも増える」
 東京都内で17日、新たに新型コロナウイルスの感染者が293人確認されたことがわかった。小池百合子知事が同日、報道陣に対し、明らかにした。16日の286人を上回り、過去最多を2日連続で更新した。都内の感染者は9日連続で100人超となった。都が感染者数を集計して発表するまでには3日ほどかかる。14日の検査件数は過去最多だった13日の約4700件に続き、4千件ほどと高い水準を維持。都幹部は「検査を積極的にしているので、これからも感染者数は上がり続けるだろう」と見通しを語っていた。感染者数の急増を受け、都は15日、感染状況に関する4段階評価の警戒度を最も深刻な「感染が拡大していると思われる」に引き上げていた。7月は20~30代の若い世代の感染が約7割を占めているが、ここ1週間では10歳未満や重症化しやすい60歳以上にも感染の幅が広がっている。感染経路も施設や同居の家族、職場、劇場、会食など多岐にわたっている。

*8-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200717&ng=DGKKZO61617330W0A710C2MM8000 (日経新聞 2020.7.17) GoTo 東京発着除外 新型コロナ急増、全国一律から転換
 赤羽一嘉国土交通相は16日、国内旅行の需要喚起策「Go To トラベル」事業について「東京を目的とする旅行、東京居住者の旅行を対象から外す」と述べた。東京都で新型コロナウイルスへの感染を確認された人が急増したためだ。22日に全国一斉に始める予定だったのを改めた。安倍晋三首相と赤羽氏らが16日に首相官邸で協議して判断した。首相は記者団に「現下の感染状況を踏まえてそういう判断になった」と語った。都内の感染拡大を受け、各地の首長から全国一斉の開始などに反対する声が上がっていた。同事業は新型コロナによって大きく落ち込んだ旅行需要を回復させる目的で、22日以降に始まる国内旅行を対象に代金の半額を補助する。1人あたり1泊2万円を上限とし、補助の7割は旅行代金の割引、3割は旅行先で使える地域共通クーポン(9月以降)とする。東京以外に住む人の東京以外への旅行については、予定通り22日以降の旅行分から補助する考えだ。政府は16日、新型コロナの専門家会議に代わって設置した分科会で説明した。西村康稔経済財政・再生相は分科会後の記者会見で「東京を対象外とすることで了解をいただいた」と述べた。東京だけ除外した理由としては、直近1週間の累積陽性者数が1216人となり、隣接県とは1桁違うことを挙げた。国交省の旅行・観光消費動向調査によると、2019年に東京を訪れた国内居住者は約9千万人に達した。消費額は約1.8兆円で、千葉県や大阪府がそれぞれ1兆円程度だったのを上回った。事業に参加する宿泊事業者に対しては、同省は感染拡大を防ぐ対策として、宿泊客の検温や保健所との連絡体制づくりを求める。浴場や飲食などの共用施設は人数や利用時間を制限してもらう。

*8-3:https://www.jiji.com/jc/article?k=2020071700550&g=soc (時事 2020.7.17) 無症状も唾液診断可 PCR・抗原検査拡充―厚労省
 新型コロナウイルスへの感染の有無を調べるPCR検査と抗原検査について、厚生労働省は17日、唾液を使った診断を無症状の場合でも認めると発表した。空港での検疫や感染者の濃厚接触者らが対象。東京都などで感染者増が続く中、検査体制の拡充を目指す。

*9:https://www.tokyo-np.co.jp/article/43279 (東京新聞 2020年7月18日) コロナ禍の「骨太方針」、財政再建棚上げ 膨らむ借金、将来のツケに
 安倍政権が17日、2021年度予算編成の指針となる「骨太の方針」と、中長期的な経済成長を目指す「成長戦略」を閣議決定した。新型コロナウイルス対策で政府の借金に当たる国債を大量に発行する一方、今回は骨太の方針から例年盛り込んでいる財政再建目標を削除し、成長戦略でも大々的に掲げていた20年ごろの名目国内総生産(GDP)600兆円達成目標に触れなかった。実現が難しくなると、十分な説明もせず「なかったこと」にするような対応が目立つ。
◆消えた「25年度黒字化目標」
 「今は財政のことを考えている場合ではない」。西村康稔経済再生担当相は17日の記者会見でこう述べ、骨太の方針に具体的な財政健全化目標を掲げなかったことを正当化した。従来の骨太では、名目国内総生産(GDP)に対する国と地方の借金残高の比率を安定的に引き下げるとともに、借金に頼らずにまかなう政策経費の収支「プライマリーバランス(PB)」を25年度に黒字化する目標を掲げていた。西村氏は今回も「中長期的に持続可能な財政を実現すると書いてある」と強弁するが、事実上、棚上げにしているのは明らかだ。
◆コロナ長期化でさらに悪化も
 ただでさえ深刻な財政状況は新型コロナの流行で一層悪化している。みずほ証券の末広徹氏によると、GDPに対する債務残高は20年度、政府見通しの189%から225%に急伸し、PB赤字も約15兆円から約64兆円に拡大するとみられる。しかも、この試算は今後予想される税収減を反映しておらず、収束に時間がかかれば再び補正予算を組む必要に迫られ、借金が膨らむ可能性もある。法政大の小黒一正教授(財政学)は政府の対応について「財政再建の目標は明確に書くべきだった。なし崩し的に規律が失われて予算の無駄遣いにつながり、将来世代にツケが回りかねない」と強調した。
◆成長戦略も目標触れず
 新型コロナの陰に隠れ、記述がなくなったのは、これまでの成長戦略の目玉だった20年ごろの名目GDP600兆円目標も同じだ。「戦後最大の名目GDP600兆円の実現を目指す」という一節が登場したのは、第2次安倍政権が16年につくった成長戦略。19年でも554兆円にとどまり、達成は難しい情勢だったが、新型コロナを受けて策定された今回は「名目GDP」という言葉すら出てこない。多くの内閣が掲げてきた名目GDP成長率を平均3%程度に高める目標についても、10~19年の平均は1・25%にとどまる。安倍政権は十分な説明もないまま、目指す対象を600兆円という「金額」に切り替えたが、成長率に関する目標設定の妥当性や実現に向けた課題などを検討した形跡はない。第1生命経済研究所の熊野英生首席エコノミストは「成長戦略は政権の理想像を示す側面があるため高い目標になるのは仕方ないが、実現に向けた検証や努力が十分とは言い難く、形骸化して実効性が疑われる傾向がある」と指摘。「特にコロナ後の社会変容を目指すなら、国民に信用してついてきてもらう必要があり、政策を検証し反省を生かすプロセスが必要だ」と語った。

<外国人労働力の必要性と外国人差別の撤廃>
PS(2020年7月19日追加):*10-1のように、新型コロナの影響で、2019年に農業分野で3万人を突破した外国人技能実習生が、*10-2のように、来日できなくなったり、失業した人が他の仕事につけなかったりして、農業は外国人に支えられている現実があぶり出されたそうだ。そのため、形だけ“国際貢献”としている技能実習制度を廃止し、安価な期限付き労働力ではない「農業の後継者」としても希望の持てる迎え入れ方をすべきだ。これは、食料だけでなく多くの財・サービスを国内生産し、マスクや防護服すら他国に頼らなければ手に入らない国ではなくするために、必要不可欠なことである。そのためには、経済発展したアジア諸国の労働者が日本を選ばなくなった理由である ①外国人の労働条件の悪さ ②外国人差別を前提とした不利益の強要 は、必ず変えなければならない。
 さらに、*10-3のように、世界の難民が約7950万人(昨年末時点)に上り、コロナ対策もできない場所で暮らすことを余儀なくされているのに、日本は資金拠出程度でお茶を濁しているが、もともと普通に暮らしていたのに移動を強いられた難民を受け入れ、農林水産業・製造業・サービス業などの必要な分野で募集して家族で日本に来られるようにすれば、人手不足が解消され、国内生産を進めることもできる。もちろん、日本国内では、日本国憲法はじめ日本の法律が適用されることを前提としてである。



(図の説明:何歳まで元気に働けるかは人によって全く異なるが、左図のように、日本が高齢化しているのは間違いなく、中央の図のように、出生数も減っているため、このままでは支える側の労働力が減るのも確かだ。実際、右図のように、農業者の平均年齢は2010年時点で65.8歳であるため、それから10年後の現在は70歳以上だろう。そのため、労働力として外国人を招きいれることは必要であり、《長くは書かないが》工夫すればそれは容易だ)

*10-1:https://www.agrinews.co.jp/p51354.html (日本農業新聞 2020年7月15日) [農と食のこれから 人手不足の産地 1][解説] 外国人労働力頼みの日本 問われる自給の未来
 新型コロナウイルス禍は、農業が外国人に支えられている現実をあぶり出した。国際貢献と国際協力を目的に1993年導入された外国人技能実習制度は、農水省によると、2019年に農業分野で3万人を突破し、雇い入れ農家も10年間で2倍近くに増えた。技能実習生の在留資格は「研修」であり、出稼ぎ目的の就労ではないとの前提がある。このため、都道府県の最低賃金水準にある実習生がほとんどで、多くは中国やベトナム、フィリピン、カンボジアといったアジアの発展途上国からだ。一方、アジア各国の経済成長に伴い、人集めは年々厳しさを増している。ある監理団体の責任者は「日本で実習生として働く魅力が薄れ、どの国も都市部では人が集まらない。人探しは地方から地方へ行き詰まりを見せている」と語った。政府は2年前、技能実習制度に屋上屋を架す形で、「就労」目的を明確にした特定技能制度を新設した。農業や介護など14分野で働く外国人を対象に、試験などを課すことで最大5年の就労を可能にした。だが、全分野を通じた新制度利用者は「5年で34万人」の政府目標の1%。長期滞在の条件となる通年雇用は、農業分野では群馬県嬬恋村や北海道などの雪国では困難で、技能実習制度と同様に単年ごとの人探しと信頼関係の構築が迫られる。人手不足に悩む農家の多くが、同一人物の長期雇用を強く望み、農業の現実を反映した制度作りを求めている。外国人に頼れなくなった時、日本の農と食をどう守るのか。頼り続けるのであれば、安価な期限付き労働力でなく、「農業の後継者」として迎え入れる施策も必要な時代が来る。コロナ禍で問われたのは食料自給の未来図だ。

*10-2:https://www.agrinews.co.jp/p51349.html (日本農業新聞 2020年7月15日) [農と食のこれから 人手不足の産地] 「働かせて」悲痛な叫び
 新型コロナウイルス禍に伴う政府の入国規制で、外国人技能実習生221人が来日できなくなった群馬県嬬恋村。嬬恋キャベツ振興事業協同組合事務局長の橋詰元良さん(57)は、これを補完するための人探しに追われた一方で、仕事を失った人々の悲痛な叫びを聞いた。「工場から派遣(社員)契約を切られた。会社の寮から出ていかなくてはならず、住む所もない。すぐにでも嬬恋で働きたい」。4月中旬、切羽詰まった若い男性の声で協同組合の事務所にかかってきた電話は大阪の市外局番だった。
●コロナ禍で求職相次ぐ
 人手不足を解消するため、「商系」農家でつくる協同組合や「系統」農家のJA嬬恋村、村観光協会、村商工会が「農家の仕事を紹介します」と記したちらしを作ったのは、東京都など7都府県で緊急事態宣言が出された4月7日だった。県境をまたぐ移動が控えられ、村内のホテルや旅館の休業状態が決定的となり、仕事を休まざるを得ない従業員らに農家で働いてもらおうと考えたのだ。ところが、農家の紹介が「職業あっせん」と解釈されれば職業安定法に抵触しかねないとの指摘があった。調べると、協同組合の定款を変更すれば限定的にできると分かったが、手続きに時間も必要だった。橋詰さんは東京の専門家に問い合わせ、「農家支援なら問題ない」との見解を得て、ちらしの問い合わせ先を協同組合にした。同村では感染者ゼロが続く。村外から不特定多数が来ればウイルスが持ち込まれる恐れがあったため、ちらしの配布先を村内に限った。ところが電話は北海道から九州まで全国からかかってきた。ちらしを見た村民が善意からインターネット交流サイト(SNS)に投稿し、拡散され、コロナ禍で職を失った人々の目に留まったのだ。
●県外の電話鳴りやまず
 岡山に住む派遣社員の30代シングルマザーは「契約を切られてお金がない。育児があるので土日だけでも農家で働かせて」と望んだ。岩手のタクシー運転手は「乗客がおらず、収入がない。実家が農家だったから心得はある」と願った。受話器を置けば電話が鳴り、トイレにも立てなかった。橋詰さんは勤務時間を終えた後、携帯電話に転送して自宅でも問い合わせに応じた。「1万人を超える派遣社員らが契約を解除されたというニュースを見たが、一人一人の状況がこれほど深刻だとは想像できなかった」。橋詰さんは、県外の求職者には「全国の農家が今、人手不足で困っている。お住まいの近くで見つかるかもしれない」と励まし、農業求人サイトなどを伝えた。5月の連休を過ぎた頃、休業状態となった村内のホテル従業員らの申し出などから、人手不足は解消に向かい始めた。その対応に追われながら、橋詰さんは、幾多の人が「働きたい」と望んだ農業の意義を考え、求人と求職がかみ合わなかったコロナ禍の皮肉を呪い、電話をかけてきた派遣社員たちがどこかで働けていることを祈った。

*10-3:https://digital.asahi.com/articles/ASN6N5W9TN6NUHBI01F.html (朝日新聞 2020年6月20日) 世界の難民など、過去最多8千万人 「コロナ対策重要」
 20日の「世界難民の日」に合わせ、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)は紛争や迫害で家を追われたり、移動を強制されたりした人々が約7950万人(昨年末時点)に上り、過去最多と発表した。グランディ国連難民高等弁務官は19日、世界保健機関(WHO)で会見し、新型コロナウイルスの世界的流行を受けて、難民や国内避難民も「各国の保健対策の対象にすべきだ」と訴えた。UNHCRによると、他国に逃れた難民は約2600万人。出身国で最も多いのは内戦が続く中東シリアで、約660万人だった。シリア難民を最も多く受け入れていたのは北隣のトルコの約360万人だった。また、国内避難民は約4570万人、難民申請者は約420万人だった。移動を強いられた人々の総計約7950万人は、2010年末に比べると倍増しており、18年末に比べても約1千万人の大幅増だった。グランディ氏は会見で、新型コロナ対策で難民や国内避難民が対象外にされれば、地域全体の感染リスクを減らせないと強調。社会・経済の回復策に難民や国内避難民を含めることが重要だと訴えた。

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2020.6.23~28 女性がリーダーになるための妨げは何か? (2020年6月29、30日、7月2、3、4、5日追加)

2019.12.18産経BZ   Goo                 2018.10.10朝日新聞

(図の説明:1番左の図のように、2019年の男女格差報告で、日本は同じ儒教国である中国《106位》・韓国《108位》より低い121位で、仏教国インド《112位》・イスラム教国のアラブ首長国連邦《120位》よりも下だった。また、左から2番目の図のように、他国は努力しているのに日本は形だけの対応をしているため、順位が毎年下がっている。それでは何が低いのかといえば、右から2番目の図のように、政治が世界の中でも低く、経済はまあ世界並の低さだ。教育は、世界の中でもよいとされるが、実際には1番右の図のように、女性は短大や大学でも職業に結び付きにくい文学・芸術への進学が多いため、政治・経済への参画が不利になる。しかし、これらは、現在の国民全体の平均的な意識である“常識”を現していると思う)

(1)国民に根付いている女性蔑視の偏見と
             女性蔑視発言をする人がよく使う“言論の自由”“表現の自由”
 テレビ番組での言動を巡り、SNS上で匿名の誹謗中傷をされていた女子プロレスラーが、*1-1・*1-2・*1-3のように自殺して亡くなった。亡くならなければクローズアップされないのも問題だが、SNS上の匿名での卑怯な発信は他人の人生や職業人生を狂わせたり終わらせたりする効果があるため、発信者が“言論の自由”や“表現の自由”として罪の意識もなく発信していたとしても、やはり人権侵害である。

 SNS上の匿名での発信については、プロバイダー責任制限法により、被害者が損害賠償を求める場合に発信者情報の開示を事業者に請求できるようにはなったが、「権利の侵害が明確でない(この判断にも女性蔑視や企業側の論理が多く存在する)」などとして開示されないことが多い上、裁判に訴えると費用や時間もかかりすぎるため被害者が泣き寝入りせざるを得ない局面が多い。さらに、弁護士や裁判官などの司法関係者も潜在的女性蔑視から自由ではないため、権利の侵害があってもそれを過小に評価したり、権利の侵害による逸失利益自体を過小評価したりして、女性に不利な判決が出やすいのである。ちなみに、交通事故で死亡した男児と女児の間でも、逸失利益とされる金額は女児の方が少ないそうだ。

 そのため、高市総務相が、スムーズな情報開示で悪意ある投稿を抑止するために発信者の特定を容易にする制度改正の検討を本格化させるのはよいことだ。また、私は、政治家として、“言論の自由” “表現の自由”と称する女性蔑視に満ちた嘘のキャンペーンを張られたことがあり、その被害は今でも続いているため、“正当な批判”と称する偏見に満ちた“表現”に対して、政治家も発信者の開示を求められるようにするのが公正だと考える。

 つまり、“言論の自由”とは、嘘でも何でもいいから言いがかりをつけて政治家を失脚させる権利ではなく、権力に抗することになるかもしれない本物の主張を言うことができる権利であるため、対象が政治家であっても言いがかりまで“言論の自由”として護ってはならない。また、メディアが使う“表現の自由”も“常識”と呼ばれる国民の心の底に潜む女性蔑視を含んでいたり、利用したりしており、人権侵害に繋がっていることが多い。そして、日本には、この“言論の自由” “表現の自由”をわざと誤って使う人も多いため、人権侵害や差別を横行させ、民主主義が正常に機能しない状態になっているのである。

(2)女性差別の多い日本の“常識”
1)女性の政治参画への遅れ
 ジェンダーギャップ(男女格差)の大きさを国別に順位付けした世界経済フォーラム(WEF)の2019年の報告書で、*2-1-1のように、日本は153カ国中121位で過去最低だったそうだ。日本は衆院議員は女性が10.1%で、閣僚は9月の内閣改造前まで19人中1人の5.3%で、女性の政治参画の停滞が順位を下げる要因になった。

 政治への女性進出が遅れているため、男女の候補者を均等にするよう政党に求める候補者男女均等法が施行されて初めての国政選挙となった2019年7月の参院選でも自民党の女性候補の割合は15%で、衆議院議員も女性候補を大幅に増やす具体策がないようだが、これは、現職を優先して候補者に立てるため、現在の男女比がなかなか変わらない上、有権者の意識がかわらなければ女性が候補者となっても当選しにくいからである。

 ただし、空白区の多かった野党は参院選で女性候補者の擁立を進め、立憲民主党候補者の女性比率は45%、国民民主党は36%、共産党は55%だった。確かにジェンダー平等は国際的な潮流なのだが、日本には根底に戦前からの男尊女卑思想があり、この女性差別と偏見が“常識”や“良識”という形で有権者の意識も支配しているために、何人の有権者が投票したかを競う民主主義では女性が当選しにくいわけである。

 日本と同じく東アジアに位置して儒教・仏教の男尊女卑思想が広がっている韓国は、2019年に108位となり、初めて121位の日本を抜いた。これには、政治分野(日本144位、韓国79位)でフェミニスト大統領を名乗る文在寅大統領が2017年の就任時に女性を一気に5人閣僚に起用し、任期終了(2022年)までに「男女半々」にすると約束していることが大きいそうだ。このように、諸外国は多様性を尊重して女性にチャンスを与えようと具体的なしくみを整えつつあるそうだが、同じ東アジアに位置する中国の全人代を見ると、一般議員にも女性が著しく少なく、舞台の上のお偉方は全部男性のようだった。

 列国議会同盟(IPU)とUNウィメンは、2020年3月10日、*2-1-2のように、「今年1月1日時点で閣僚ポストに女性が占める割合は21.3%で過去最高だったが、15.8%の日本は113位で、先進7カ国(G7)では最下位だった」という女性の政治参画に関する報告を発表した。また、国家元首または行政の長を女性が務める国は20カ国あり、そのうち4カ国はスウェーデンを除く北欧諸国で、議会で議長に女性が占める割合は20.5%あり、これは25年前と比較すれば倍増だそうだ。

2)経済分野における男女格差解消の遅れ
 世界経済フォーラムが2019年12月に発表した各国のジェンダーギャップ(男女格差)で、日本は153カ国中121位と過去最低であったことを、*2-2-1のように、共産党の大門氏が取り上げ、「男女格差の原因はどこにあるのか。日本は女性の閣僚と国会議員の比率があまりにも低い。経済でも男女の所得格差が大きい」と、安倍首相に見解を求められたそうだ。

 それに対し、安倍首相は「我が国の順位が低いのは、経済分野の女性管理職の割合が低いことなどが主な要因だ」と指摘し、女性活躍推進法の整備や女性の就業人口増などの格差解消に向けた安倍内閣の実績を強調されたが、質問にあった国会議員や閣僚の女性比率の低さには言及されなかったそうだ。安倍首相は、確かに女性活躍推進法の整備や女性の就業人口増などに尽力されたのだが、女性の就業人口の増加は、派遣やパートなどの補完的非正規労働者の増加が多かったように見える。

 派遣やパートなどの補完的非正規労働者は、男女雇用機会均等法で護られないため、男女の別なく採用・研修・配置・昇進させて女性管理職や女性役員にする義務がなく、企業は女性を補助的な立場のままで働かせることができる。この結果、*2-2-2のように、女性役員ゼロや女性管理職割合の少ない会社が多く存在するのだ。

 また、朝日新聞が国内主要企業のうち「女性役員ゼロ」の14社に取材したところ、「経営トップより女性本人の意識改革が必要だ」と考えている企業が多かったそうだが、日本企業のリーダー層に女性が少ない理由は、女性の能力を信じてリーダー候補として研修や配置を行わないため、昇進意欲のある女性はつぶされ、その結果として「管理職経験や役員適性のある役員候補の女性がいない」か「いても、いないということにされている」のだと思われる。

3)この無意識の差別や偏見が存在する理由は何か?
 21世紀職業財団が、2020年6月22日、*2-2-3のように、「『重要な仕事は男性が担当することが多い』と思っている人が総合職の正社員で男女とも過半数に上る」という調査結果を公表したそうだが、これは、「過半数の人が重要な仕事は男性が担当した方がよい」と思っているわけではなく、「現在、重要な仕事は男性が担当することが多い」と過半数の人が認識しているということではないかと思う。

 しかし、性別に基づく無意識の偏見が、仕事を割り振ったり能力評価をしたりする立場の経営者・管理職だけでなく、平社員や家庭に至るまで根強く残っており、これが職場における女性の活躍を妨げているのは事実だ。

 では、どうして女性に対し、無意識の偏見を持っているのかといえば、儒教国の女性たちは、*2-3-1のように、儒教によって“良妻”か“悪妻”かの二者択一の生を生きることを強制され、殆どの女性は男性が作り上げた“良妻”としての「婦道」を守ろうとし、その生き方に疑問を抱いて抵抗した人は“悪女”として厳しく罰せられ、“悪女”が“良妻”の価値を高めるために利用されてきたからだそうだ。言われてみれば、確かに日本にもそういうところがある。また、儒教の中の『礼記』は、女性に受動的に行動することを強要する「三従の道」などを示している。

 さらに仏教も、*2-3-2のように、「測り知れないほどの理知を持っていても、女性は完全な悟りの境地を得がたい」「女性は女性のままでは仏になれない」「女性のままでは救われない」などと説いており、ひどい女性蔑視の思想である。

 そのため、第二次世界大戦後、日本国憲法24条で男女平等が定められ、民法でおおかた男女を区別しなくなっても、(理由は多々あるものの)根底にある人々の意識が十分に変わっていないというのが現実のようだ。

(3)出生率の低下を女性の責任にした日本の愚行



(図の説明:左図のように、合計特殊出生率は1975年以降ずっと2.0以下である。しかし、中央の図のように、人口が減り始めたのは2008年からであり、この間は、人口置換水準が2.0以下だったことを意味する。しかし、右図のように、日本の人口ピラミッドは第二次世界大戦後のベビーブームと第二次ベビーブームで二ヵ所の突起があるため、これが次第になくなるのは必然である。また、長寿命化に伴って生産年齢人口の定義を変えなければ、短い労働期間で長い老後の分まで貯蓄しなければならず、これは無理である)

 「母親に育児を押し付け、保育園・学童保育・病児保育などの整備を怠ったため、仕事を大切にする女性ほどDINKSや独身を選ぶ人が増えて少子化した」と1995年頃に最初に言ったのは私で、それをきっかけに男女雇用機会均等法が改正され、雇用における女性差別禁止が義務になったと同時に、育児・介護休業制度も入った。

 しかし、これは、「少子化自体が悪いことだから、産めよ、増やせよ」とか「産まない女性は、怠慢だ」などと言ったのではなく、「仕事と子育てを両立できる環境がなければ、仕事を大切にする人ほど子育てはできない」と言ったのである。

 が、何故か、*3-1・*3-2などいろいろな場所で、「①昨年の合計特殊出生率は1.36で、前年より0.06ポイント下落した」「②人口置換水準(人口維持に必要とされる合計特殊出生率)は2.07だ」「③死亡数は戦後最多の138万人で、自然減が52万人の過去最大を記録した」「④政府は少子化社会対策大綱の見直しで、希望出生率1.8を2025年までの目標とした」など、少子化自体が問題であるかのように書かれている。

 しかし、①は、教育を受け、仕事をして稼ぐことができ、キャリアを積んで昇進したい女性が増える中で、安心して子育てを外部化できる状態になければ出生率が下がるのは当然だ。さらに、教育費も高いため、女性が子育てのために仕事を辞めることになれば、子育てはダブルパンチの経済負担となり、出産祝い金程度では到底カバーできない大きな損失になる。

 また、②も、日本では1975年以降の合計特殊出生率はずっと2以下であるにもかかわらず、日本の人口が減少し始めたのは2008年からで、これは寿命が延びて2世代ではなく3世代以上が同時に生きられるようになったことから当然であり、人口置換水準は2以下だったのだ。そして、「現在は、人口置換水準が2.07」という主張についても、Evidenceがあるわけではない。

 さらに、③のように、死亡数が最多になって自然減が出始めることは、第二次世界大戦後に出生率が急激に上がってできた団塊の世代が死亡し始める時期であることから当然だ。これからしばらくは、医学の進歩による乳児死亡率の低下・少子化・長寿命化によって高齢化率も上昇するが、その条件の下で年金制度や定年年齢を考えておくべきだったし、日本の国土における適正人口も考慮すべきなのである。

 しかし、*3-3のように、まだまだ不十分ではあるものの、最近は病児保育施設ができているのはよいことだ。これは必要なインフラであるため、黒字経営か赤字経営かにかかわらず、補助金を使っても維持しなければならない。何故なら、なければ子育てができないからである。

 私は、少子化を問題視しすぎて、子ができない人に1回15万円の支援金を出し、*3-4のような不妊治療を奨励することには賛成しない。何故なら、ダウン症の発生が増えるのは35歳からで、「43歳未満」や「44歳未満」など一応の年齢制限はあるものの母体によくないことは明らかだからだ。また、生まれてくる子も、自然受精なら何億もの精子の中から元気で幸運な1個が卵子と結びつくのでかなりの選別が行われるが、人工授精の場合はこの競争と選別がないのだ。

 つまり、子どもが欲しい人は35歳までか、少なくとも自然妊娠可能な時期までに出産するのが母子のためによく、そのためには出産・育児で休暇をとってもクビにならない程度には、出産までに仕事や生活を安定させておかなければならない。また、そうでなければ、子が生まれても育てることができないのである。

 そのため、④の希望出生率1.8を現実にしたければ、それができる環境を作らなければならないわけである。

(4)女性差別の結果
1)家計を考慮しない男性が作った消費動向を顧みない経済政策と消費税の導入
 私は、1989年の消費税導入の議論当初から、消費税は消費を抑制する税制だと感じていた。そして、国内の消費に支えられて新しい製品を開発しなければならない時代に国内消費を抑制すれば、国内供給も減り、輸出で稼がない限りは景気が悪くなるに違いないと思ったが、税制や経済に詳しいと自負する多くの男性たちは、自分は生産者であって消費者ではないから自動車と家以外は消費税がかかってもよいと思っていたらしく、無駄遣いはそのままにしつつ、社会保障を人質にして消費税を上げることに余念がなかった。

 ちなみに、消費税導入にあたって日本が手本にしたとされる欧州は、企業の売上に対して課税する売上税や企業がつけた付加価値に課税する付加価値税はあるが、消費者に転嫁する消費税はないし、社会保障は消費税で賄わなければならないとしている国もない。

 また、その後の東西冷戦終結・中国の市場開放などにより、賃金の安い国が次々と市場に参入して製品を作り始めたため、既に賃金が上昇した日本で作るよりも、それらの国で作って輸入した方が企業経営上合理的となり、日本企業も海外で生産するようになって現在に至っている。そして、現在のところ、日本で有望な産業は需要地でしか供給できない第三次産業しかなくなったと言わざるを得ないのだ。

 消費税の引き上げは、財務省が主導して行っており、メディアもそれに歩調を合わせているため、それに反対すれば国会議員でも「ポピュリズム」などと揶揄されるため、消費税を引き上げるしか方法がなくなっていたらしく、*4-1のように、教育無償化を目的として2019年10月1日から消費税が10%に引き上げられた。

 そして、当然のことながら、2019年10~12月期の国内総生産(GDP、季節調整値)は、物価変動を除いた実質で前期比1.8%減(年率換算:1.8x4=7.1%減)となった。新型コロナの影響以前でこれなのだが、消費税を増税すれば消費が減るため、企業の設備投資が減るのも当然だ。なお、財布の中身で買えるものが実質であるため、名目GDPの方が景気実感に近いという意見に、私は同意しない。

2)男女平等に機会を与えた方が、全体の福利を増やすこと
 2020年3月8日、*4-2のように、国連の「国際女性デー」記念行事が、ニューヨークの国連本部で行われ、フィンランドのマリン首相(34歳)ら世界の各分野で活躍する女性が「男女平等は女性のためだけでなく、全体の利益になる」と不平等を是正する社会的・経済的な意義を訴えられたそうだ。

 私もこれに賛成で、(4)1)のような「家計を考慮せず、消費動向も顧みず、国民を豊かにする意志のない経済政策」や「消費税導入や税率アップ」が行われるのは、家計を担当したことがなく、観念的に経済を論じることしかできない男性だけで政策を作っているからだと考える。しかし、経済学で男性の経済学者を公に論破できる女性経済学者は、いろいろな理由で、今のところ少ないのが現状だ。

 また、環境活動を引っ張っている人の多くが女性である理由は、女性の方が環境に敏感で、ガソリン車やガソリンエンジンへの郷愁で動くのではなく、クリーンで燃費の安い車を求める合理性があるからだと思う。

3)女性の生き方に中立で公正・公平な税制の必要性
 「少子高齢化で生産年齢人口の割合が減少するため、“高齢者”を支えられない」という論調が目立つが、現在は金融緩和や景気対策なしで雇用が十分にあるわけではなく、生産年齢人口の人でも実は養われている場合が多い。さらに、女性や高齢者にはまっとうな仕事が少ないため、まずは職につきたい人が国の補助なしで職につけるようにしてから少子化を論じるべきである。

 日本で、就職時の女性差別を厳しくして性的役割分担を特に強力に進めるようになったのは、団塊の世代が生産年齢人口に加わり始めた頃で、仕事の方が働き手の数より少なかったため、男性には下駄をはかせ、女性には言いがかりをつけて仕事を譲らせたという経緯がある。

 そのため、それを埋め合わせるかのように、*4-3の「①所得税の配偶者控除」「②年金の3号被保険者」「③企業の扶養手当」など、奥さんに仕事を辞めさせた男性と仕事を辞めた既婚女性を優遇する制度が設けられた。しかし、1982年から公認会計士として外資系Big8(働いているうちに合併してBig4までなった)で働いていた私は、この制度で恩恵を受けることがなかっただけでなく、働く女性に対する強い逆風の中で苦労して稼いで納税したり社会保険料を納めたりした金を原資として①②③の制度を支えさせられて、とても納得できなかった。

 また、パート勤務の女性は、夫の扶養控除や扶養手当の上限を超えないように時間調整して働いているため、所得税改革は必要だったものの、働きたくても男性に仕事を譲らされて職場で男女平等の採用・研修・配置・昇進がかなわなかった女性にも同じ論理を適用するのは酷である。

 そのため、男女雇用機会均等法が義務化されて以降に就職した世代から、イ)所得税は原則として個人単位とするが ロ)本人が望めばフランスと同じN分N乗方式(https://kotobank.jp/word/N%E5%88%86N%E4%B9%97%E6%96%B9%E5%BC%8F-183863 参照)を選択できるようにする(=世帯単位となる) のが、公正・中立・簡素の税の基本に沿った上で、個人を尊重しつつ子育てに必要な資金まで税や社会保険料として取り上げない仕組みだと思う。

 なお、「⑥働いて稼いでもらいたい人に光を当てる」「⑦豊かな人に負担させる」等の恣意的なことをすると、2019年分の所得税法のように複雑な計算をさせた上に、公正・中立・簡素という税の基本から外れるものとなる。

(5)人種や性別による差別をなくすには・・
  
    旭化成          東洋経済            Goo

(図の説明:日本の男女雇用機会均等関係法の歴史は、左図のようになっている。しかし、現在は、右図のように、子育て世代の女性を非正規労働者として女性の労働参加率を上げ安価に使っているため、そのような立場になりたくない女性が著しく少子化し、2005年の合計特殊出生率は1.25まで下がった。また、中央の図のように、日本には、社会保障の整ったスウェーデンにはない著しいM字カーブが存在し、それが少しづつ解消されている状況だ)

1)日本にける男女平等の歴史
 日本における女性差別は、戦後、日本国憲法で両性の平等や職業選択の自由が決められた後も、民間の隅々にまで張り巡らされた女性蔑視を前提とする仕組みによって維持されてきた(http://www.jicl.jp/old/now/jiji/backnumber/1986.html 参照)。

 そのため、1979年に国連で女子差別撤廃条約が成立した後、1985年に日本がこれに批准し、同年に最初の男女雇用機会均等法が制定されて1986年に発効したのが、最初の雇用における男女平等である。しかし、この男女雇用機会均等法は、採用・研修・配置・退職の機会均等などが努力義務とされていたため、発効後も女性を補助職として昇進させない日本企業が多かった。

 そこで、(1995年前後の私の提案で)1997年に男女雇用機会均等法が改正され、採用・研修・配置・退職の機会均等が義務化されたのだが、今度は多くの女性を非正規労働者や派遣労働者として男女雇用機会均等法の対象から外し、今に至っているのである。

 このようにして、女性差別の禁止や各種改革は、敗戦によって制定された日本国憲法や国連女子差別撤廃条約の批准に伴って行われた男女雇用機会均等法制定など、黒船を利用して法律を制定することにより行われたものが多い。しかし、内部の抵抗によって不完全に終わっているため、今後の改善が望まれるわけである。

2)米国における黒人への人種差別
 日本人男性は女性差別には鈍感だが、人種差別には敏感な人が多い。そのため、人種差別の例を出すと、*5-1・*5-2のように、アメリカでは、2020年5月25日に、ミシガン州ミネアポリス警察の警察官が暴行によって46歳の黒人男性ジョージ・フロイドさんを殺害した事件の映像が放映されたのち、Black Lives Matter(黒人の命も重要だ)という運動が起こっている。

 フロイドさんは偽札を使用したとされるが、それが事実か否か、故意か否かもわからないのに暴行を加えて殺害した警官の行動は、アメリカ合衆国の黒人が数百年間に渡って直面してきたリンチや黒人差別そのものだそうだ。また、フロイドさんが偽札を使用したとされる疑惑は、事実の検証や裁判もなく、警官が勝手に人を殺してもよい根拠にはならない。

 しかし、警察も含めたアメリカの司法システムは、軽犯罪から重犯罪まで、同じ罪を犯しても黒人には白人よりもはるかに重い刑罰を課しており、いずれも刑法に則った量刑だが全体の統計を見れば明らかに量刑に人種差別が現れており、人口当たりの受刑者の比率は、ラテン系男性は白人男性の2倍、アフリカ系男性はさらに5倍に上るそうだ。

 アメリカは、1950年代以降に国内で活発化した公民権運動により、1964年に合衆国連邦議会で公民権法成立させ、合衆国内において職場・公共施設・連邦から助成金を得る機関・選挙人登録における差別を禁じ、白人と黒人の分離教育を禁じてハードコアな人種差別は数十年前に撤廃しているが、人種差別自体は社会制度、行政制度などに染み付いた慣習として今も続いており、特に問題なのはSystemic racism, institutional racism (機関的、制度的人種差別)だそうだ。

3)日本にもある人種差別・外国人差別
 日本でも、*5-1のように、警察はじめ司法システムによる差別に基づく暴力は日常的に行われており、日本の場合は、「人種」ではなく「外国人」や「民族」というくくりの差別だ。確かに、入管は入所者の人権を無視した肉体的精神的暴力を日常的に振るっており、メディアも「外国人が増えて犯罪が増えた」などという偏見に満ちた報道を平気で行っている。

4)では、どうすればよいのか?
 日本における人種差別・外国人差別は、日本人男性を優遇する点で日本人女性に対する差別と同根だ。そのため、まず、国連で差別撤廃条約を作り、それに批准する国は、国内で公民権法を作って人権を護り、あらゆる差別を禁止するようにすればよいと思う。

(参考資料)
<女性蔑視発言は“言論の自由”“表現の自由”に入らないこと>
*1-1:https://www.shinmai.co.jp/news/nagano/20200527/KT200526ETI090005000.php (信濃毎日新聞 2020.5.27) ネット中傷 幅広い観点から抑止策を
 痛ましい出来事である。22歳の女子プロレスラーが亡くなった。出演したテレビ番組の言動を巡ってSNS上で誹謗(ひぼう)中傷の集中砲火を浴びていた。遺書のようなメモが見つかっており、自殺とみられる。死を前にした「愛されたかった人生でした」とのツイートに胸が痛む。心無い言葉を個人に浴びせかけるネットの暴力がなくならない。投稿している人は匿名をいいことに日頃の鬱憤(うっぷん)を晴らしているだけの気軽さかもしれない。それが一人に集中した時、有名人であれ、一般人であれ、痛みや疎外感は極めて大きい。特に若い世代は社会との「つながり」の相当部分をネットで築いている。命を絶つほどの苦しみを覚える危険がある。発信者には罪の意識はないのだろうか。誰も助けられなかったのだろうか。日本は海外に比べ、SNSの匿名利用が突出して多いとされている。匿名の投稿が言葉の暴力や人権侵害の温床となっている側面は否定できない。プロバイダー責任制限法では、被害者が損害賠償を求める上で発信者情報の開示を事業者に請求できるが、「権利侵害が明確でない」と開示されないことも多い。訴訟は被害者の負担も大きい。高市早苗総務相は悪意ある投稿を抑止するため、発信者の特定を容易にする制度改正の検討を本格化させる考えだ。確かにスムーズな情報開示は暴力の抑止を期待できる。半面、社会に与える副作用にも注意深く目を向けねばならない。例えば、政治家や利害関係者が正当な批判に対しても安易に発信者情報の開示を求め、圧力をかける心配はないか。言論全体を萎縮させる懸念も考えられる。表現の自由とのバランスが絡む。短兵急な対応でなく、幅広い観点から抑止策の検討を重ねたい。ネット事業者は人権侵害を放置してはならない。出演したのは、若い男女の共同生活を記録する「リアリティー番組」だった。「台本のないドラマ」として近年人気がある。視聴者は恋愛を中心とした人間関係の展開に一喜一憂し、知人の出来事のように共感する。番組内の言動から出演者のSNSが炎上することは過去にもあったはずだ。テレビ局側も、出演者の保護などについて省みるべき点があるのではないか。自由かつ安全で、責任ある発言が交わされるネット空間を実現したい。待ったなしの問題だ。

*1-2:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO59930380T00C20A6SHF000/ (日経新聞社説 2020/6/3) ネット中傷の撲滅へまず民間が動こう
 SNS(交流サイト)で誹謗(ひぼう)中傷を受けていたプロレスラーの木村花さん(22)が亡くなった。ネットはいじめの道具ではない。同じ悲劇を繰り返さず、政府の過度の介入を避けるためにも、まず民間の企業や利用者が真剣に解決策を考えてほしい。テレビ番組での木村さんの言動を巡り、人格をおとしめるような匿名投稿が相次いでいた。姿が見えない無数の相手からの攻撃だ。木村さんの自宅には、遺書とみられるメモが残っていた。どんなにつらかっただろう。匿名を盾にした言葉の暴力は許されるものではない。番組を盛り上げるためにSNSを使うケースは多いが、出演者の保護は十分だったのか。制作側はこうした点を徹底的に検証すべきだ。日本ではプロバイダー責任制限法に基づき、事業者にネット中傷の削除や投稿者情報の開示を請求できる。だが裁判に訴えても費用や時間がかかり、泣き寝入りを迫られる個人被害者は多かった。悪意ある匿名の投稿を防ぐため、政府は開示の手続きを簡素化する法改正を進める考えだ。発信者を特定しやすくなれば、安易な匿名投稿の抑止力となろう。ネット中傷の相談件数は年々増えており、誰がいつ被害者になってもおかしくはない。SNS各社に厳しいヘイトスピーチ対策を課す欧州などに比べ、日本の対応はむしろ遅すぎたぐらいだ。だが過剰な規制が自由な言論を妨げるのでは困る。そうならぬよう民間がやるべきことは多い。SNS各社は実名登録を促したり、利用規約で他人への中傷を明確に禁じたりする手立てが欠かせない。SNSは現代社会を支えるインフラだ。重大な権利侵害には相応の対策を取る責任がある。すでに各社は悪質投稿者の利用停止などを始めたが、企業任せでもいけない。第三者による自主規制団体を立ち上げるのは一案だ。学界や法曹界、報道機関などから幅広く知恵を募り、ネット中傷を巡る権利侵害の指針をつくれば、事業者側も情報開示に応じやすくなる。政治家や公人への批判まで封じられていないかを確認する一方、弱者を救済する相談窓口を設けることも必要だろう。若年層も含め、誰もが情報の送り手になれる時代だ。家庭や学校の役割も増す。自由で安全なネット社会を育めるかは、使い手一人ひとりの行動にかかっている。

*1-3:https://www.tokyo-np.co.jp/article/33268 (東京新聞 2020年6月4日) 総務省、投稿者の電話番号開示へ 要件緩和検討、ネット中傷対策で
 総務省は4日、インターネット上で匿名による誹謗中傷を受けた際に、投稿者を特定しやすくするための制度改正に向けた有識者検討会を開いた。被害者がサイト運営者や接続業者(プロバイダー)に開示を求める情報の対象に、氏名などに加えて電話番号を含める方向でおおむね一致した。7月に改正の方向性を取りまとめる。論点の一つとして、発信者情報の開示を定めるプロバイダー責任制限法に基づき匿名の投稿者を特定する際の要件緩和も検討する方針を示した。投稿による権利侵害が明らかな場合とする要件はハードルが高く、被害者救済の壁となっている。

<女性差別の多い日本の“常識”>
*2-1-1:https://digital.asahi.com/articles/ASMDK4SHTMDKUHBI01J.html?iref=pc_rellink_02 (朝日新聞 2019年12月18日) ジェンダーギャップ、政治参画に遅れ 自民に薄い危機感
 ジェンダーギャップ(男女格差)の大きさを国別に順位付けした世界経済フォーラム(WEF)の2019年の報告書で、日本は153カ国中121位で過去最低だった。女性の政治参画の停滞が順位に影響した。日本は調査対象の衆院議員で女性が10・1%。閣僚は9月の内閣改造前まで19人中1人の5・3%で、順位を下げる要因になった。政治への女性進出があまりに遅れている状況が、浮き彫りになった。だが、6割の議席を持ちながら女性比率は7%という自民党に、危機感は薄い。二階俊博幹事長は17日、記者会見で、日本の低迷ぶりを示す結果について感想を聞かれ、「いまさら別に驚いているわけでも何でもない」としたうえで、「徐々に理想的な形に直すというか、取り組むことが大事だ」と述べるにとどめた。男女の候補者を均等にするよう政党に求める候補者男女均等法の施行後、初めての国政選挙となった7月の参院選。自民の女性候補割合は15%で、安倍晋三首相(自民党総裁)も当時、「努力不足だと言われても仕方がない」と反省を口にしていた。菅義偉官房長官は17日の記者会見で、「各政党への取り組みの検討要請も進める」と語ったが、衆院議員の任期満了まで2年足らず。女性候補を大幅に増やす具体策は、打ち出せていない。自民の世耕弘成・参院幹事長は会見で「地方議員を経たり、企業や社会のいろんな組織における経験を経たりして国会議員になる。そういったところで、(女性の)層が厚くなっていくことによって、最終的に国会でも女性の数が増えるということになるのではないか」として、ある程度の時間が必要との認識を示した。鈴木俊一総務会長は「議員は国民が投票によって選ぶ。政治だけの責任のみならず、国民がどういう意識で選挙に臨むのかもあると思う」と語り、有権者の意識にも要因があるとの見方を披露した。一方、野党は参院選で女性候補の擁立を進めた。立憲民主党の候補者の女性比率は45%、国民民主党は36%だった。55%を女性にした共産党の小池晃書記局長は、会見でこう踏み込んだ。「ジェンダー平等は国際的な潮流だ。日本はその流れに背を向けている。根底にあるのは戦前からの男尊女卑という古い政治的な思想。こういったものを克服する取り組みを強めたい」
●韓国の取り組み「フェミニスト大統領の閣僚起用」
 具体的な取り組みで男女格差を縮めた国もある。日本が昨年の110位から121位に順位を落とした一方、共に下位が定位置だった韓国は115位から108位に上がり、2006年の調査開始以来、初めて日本を抜き去った。差がついたのは政治分野(日本144位、韓国79位)。女性閣僚の割合が影響した。申琪栄(シンキヨン)・お茶の水女子大院准教授(比較政治学)によると、「フェミニスト大統領」を名乗る文在寅(ムンジェイン)大統領は17年の就任時、女性を一気に5人閣僚に起用した。文氏は、任期終了(2022年)までに「パリテ(男女半々)」にすると約束していて、実現できるか注目を集めているという。また、韓国は00年から、議員選挙で比例名簿の奇数順位を女性にするなどのクオータ(割り当て)制も導入。法改正を重ね、強制力を強めてきた。国会の女性議員の割合は16・7%で、日本の衆院の10・1%を上回る。申准教授は「日本でも首相の意思さえあれば、女性閣僚は増やせる。女性議員が少ないことを言い訳にせず、民間から登用しても良い。経済界に女性管理職を増やすよう言う前に、まず政治の世界で示すべきだ」と指摘する。日本は今回、女性管理職比率など評価がやや改善した項目もあったが、全体の順位が大きく後退した。上智大の三浦まり教授(政治学)は「平成の30年間、日本は男女格差を放置してきた。他方、諸外国は多様性を尊重し、女性にチャンスを与えようと、具体的なしくみを整えてきた。このままでは、日本は国際社会から取り残される一方だ」と指摘する。

*2-1-2:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/498406 (佐賀新聞 2020.3.10) 女性閣僚率、日本はG7で最低、世界は過去最高の21%
 列国議会同盟(IPU)とUNウィメンは10日、女性の政治参画に関する報告を発表し、今年1月1日時点で閣僚ポストに女性が占める割合は21・3%で、過去最高となったことが分かった。15・8%の日本は113位で、先進7カ国(G7)では最下位だった。66・7%のスペインが首位で、61・1%のフィンランド、58・8%のニカラグアが続く。女性閣僚率は、同報告が最初に出た2005年には14・2%だった。今回の調査で、女性閣僚がいない国はベトナムなど9カ国にとどまったが、閣僚の半数以上が女性の国もわずか14カ国だった。また女性の財務相は25人、国防相は22人にとどまる一方、若者や高齢者、社会問題や環境といった分野の閣僚は女性が占める率が高くなっている。調査は190カ国を対象に実施され、北朝鮮、リビア、ハイチなどは含まれていない。国家元首または行政の長を女性が務める国は20カ国に上り、うち4カ国はスウェーデンを除く北欧諸国。世界の議会で議長に女性が占める割合は20・5%で、25年前と比較すると倍増した。

*2-2-1:https://digital.asahi.com/articles/ASN366RWVN36UTFK02R.html?iref=comtop_list_pol_n01 (朝日新聞 2020年3月7日) 男女格差、経済分野に原因? 首相答弁「政治」はスルー
 男女格差解消の遅れは企業に主な原因がある――。そう受け取られかねない答弁を、安倍晋三首相が6日の参院本会議で繰り広げた。世界経済フォーラムが昨年12月に発表した各国のジェンダーギャップ(男女格差)では、日本は153カ国中121位と過去最低。共産党の大門実紀史氏がこの順位を取り上げ、「男女格差の原因はどこにあるのか。日本は女性の閣僚と国会議員の比率があまりにも低い。経済でも男女の所得格差が大きい」と見解を求めた。首相は「我が国の順位が低いのは、経済分野の女性管理職の割合が低いことなどが主な要因だ」と指摘。そのうえで、女性活躍推進法の整備や女性の就業人口増など、格差解消に向けた安倍内閣の実績を強調した。ただ、質問にあった国会議員や閣僚の女性比率の低さには直接言及しなかった。わずかに決意表明の部分で、「政治分野も含めて女性の活躍を促す政策を推し進める」と触れただけだった。世界経済フォーラムは毎年、政治、経済、教育、健康の4分野を調査し、順位を発表している。日本の順位を押し下げた大きな要因は政治分野。日本の衆院議員で女性が占める割合は10・1%。調査時点で女性閣僚は1人だったことも響き、前年の125位から144位に後退した。一方、前年117位だった経済分野は115位とほぼ横ばい。首相が言及した企業の女性管理職の割合に関する指数は、前年よりも上昇していた。
    ◇
第201回通常国会。国会や政党など政治の現場での様子を「政治ひとコマ」としてお届けします。

*2-2-2:https://digital.asahi.com/articles/DA3S14394789.html (朝日新聞 2020年3月8日) (Dear Girls)女性役員ゼロ、自己責任? 全て男性の主要企業に聞く
 世界経済フォーラム(WEF)の男女格差(ジェンダーギャップ)の最新の報告書で日本は過去最低の世界121位に沈んだ。その大きな要因が、政治や経済のリーダー層における女性の少なさだ。8日の国際女性デーを前に、朝日新聞が国内主要企業のうち「女性役員ゼロ」の14社に取材したところ、経営トップよりも女性本人の意識改革が必要だと考えている企業が多かった。日本の経済分野でのジェンダーギャップ指数は世界115位。なかでも女性の管理職割合での順位は131位と低い。指数の対象ではないが、日本の上場企業の2019年の女性役員比率(内閣府まとめ)は5・2%にとどまる。なぜ日本企業のリーダー層に女性が少ないのか。朝日新聞社が国内主要100社に年2回行っているアンケート対象企業のうち、最新の有価証券報告書などで取締役・監査役に女性がゼロだった企業14社に質問状を送り、11社から回答を得た。どんな条件が整えば女性役員が誕生しやすくなるかを聞いた質問(複数回答)で、最も多かったのは「女性社員の昇進意欲の向上」と「女性採用者数の増加」で各5社。これに対し「経営層の意識改革」と答えたのは2社、「男性社員の意識改革」は1社だった。女性役員がいない理由(複数回答)は、「役員は適性で選ばれるべきでジェンダーは指標にならない」「役員候補の世代は女性が少なく、管理職経験や役員適性のある女性がいない」が共に最多で6社だった。100社アンケート対象企業全体でみると、各社の女性役員の合計は153人(全体の9・3%)。このうち131人は社外取締役か社外監査役で、日本の主要企業ではほとんど「生え抜き」の女性役員を生み出せていない。このため日本の経済団体の役員構成も圧倒的に男性に偏り、大企業でつくる経団連では、正副会長計19人が全員男性だ。世界では、経営陣の構成は性別や人種が多様性に富んでいる方が、投資家から高い評価を得る傾向が強まる。米フォーチュン誌500社にランキングされる大企業の女性取締役比率は17年で22・2%に達する。内閣府が18年、機関投資家を対象に行ったアンケートでは、投資判断に女性活躍情報を活用する理由として7割近くの機関投資家が「企業業績に影響がある情報と考えたため」と答えた。多様性の確保が働き方改革による生産性の向上やリスクの低減につながるとみている投資家が多いという。「身内の男性ばかり」という日本企業の経営陣の構成自体がリスクになりかねない状況といえる。
■「女性役員ゼロ」の14社
 ニトリHD、近鉄グループHD、サントリーHD、スズキ、キヤノン、大日本印刷、JR東海、シャープ、信越化学工業、東レ、TOTO、DMG森精機、ミズノ、セコム

*2-2-3:https://digital.asahi.com/articles/DA3S14522465.html (朝日新聞 2020年6月23日) 「重要な仕事は男性」男女とも半数超 無意識の偏見根強く 21世紀職業財団調査
 「重要な仕事は男性が担当することが多い」と思っている人が、総合職の正社員では男女とも半数超に上るとの調査結果を、21世紀職業財団が22日公表した。性別などに基づく「アンコンシャスバイアス(無意識の偏見)」が、仕事を割り振る立場の経営者や管理職に根強く残っている可能性があるとしている。同財団が今年1月、女性活躍の実態を把握するため、男女計4500人を対象にウェブで調査した。「重要な仕事は男性が担当することが多い」と思っている割合は、総合職の正社員でみると、大企業(従業員300人以上)は男性50・7%、女性55・5%。中小企業(100~299人)は男性56・5%、女性58・1%だった。総合職以外も含めた大企業の女性正社員でみると、2018年の53・7%から60・3%に増えていた。調査を担当した山谷真名・主任研究員は「アンコンシャスバイアスの存在を管理職向けに研修し、仕事の与え方を変えようとしている企業は増えているが、全体ではまだ難しい面がある」と指摘している。

*2-3-1:https://uuair.lib.utsunomiya-u.ac.jp/dspace/bitstream/10241/9105/1/32-7-Women.pdf#search=%27%E5%84%92%E6%95%99%E3%81%AE%E4%B8%AD%E3%81%AE%E5%A5%B3%E6%80%A7%E8%A6%B3%27 (東アジアの近代と女性、そして「悪女」 :金 多希 より抜粋)
儒教理念の中の東アジアの女性たちは「良妻」か「悪妻」かの二者択一の生しか生きられず、殆どの女性は男性が作り上げた社会規範「婦道」を守ることによって「良妻」になろうとしたが、そのような生き方に疑問を抱き、抵抗した人も存在し「悪女 」として厳しく処罰された。つまり、「悪女」は「良妻」の価値を高めるために利用されたのである。また、『礼記』は、女性は本来他人に服従する者として定めており、女性には自主的に行動する本分がないことを提示し、受動的に行動することを強要している。そして、「三従の道」として広く知られているのは、女性は幼い頃は父兄に従い、結婚後は夫に従い、また、夫が亡くなったら息子に従うべきであり、それ以外の女性の人生は主張できないように示されている。

*2-3-2:http://www2.biglobe.ne.jp/~remnant/bukkyokirisuto08.htm (仏教の「女性」、キリスト教の「女性」より抜粋) 仏教では「女性は女性のままでは仏になれない」。キリスト教では?
仏教とキリスト教の大きな違いの一つは、女性に対する考え方でしょう。仏典に、「女性は女性のままでは仏になれない」と書いてあるのを、あなたは知っていますか。女性は救われない、というのではありません。女性は女性のままでは成仏できない、女性のままでは救われない、というのです。女性は女性のままでは仏になれない。「仏教の女性観は、いささかひどい女性蔑視だと思います」こう語るのは、仏教解説家として知られる、ひろさちや氏です。氏自身は仏教徒ですが、続けてこう言っています。「というのは、仏教においては、まず女性は、女性のままでは仏や菩薩(仏の候補生)になれない、とされているのです。仏や菩薩になるためには、女性は一度男子に生まれ変わらなければなりません。それを、『変成男子』(へんじょうなんし)と言います。……これは、どうにも言い逃れのしようのない女性差別です」。この「変成男子」とは、どういうことでしょうか。仏教には、もともと女性は修行をしても仏になれない、という考えがありました。仏典にはこう書かれています。「悟りに達しようと堅く決心して、ひるむことなく、たとえ測り知れないほどの理知を持っているとしても、女性は、完全な悟りの境地は得がたい。女性が、勤め励む心をくじくことなく、幾百劫(一劫は四三億二〇〇〇万年)・幾千劫の間、福徳のある修行を続け、六波羅蜜(修行の六ヶ条)を実現したとしても、今日までだれも仏になってはいない」(法華経・堤婆達多品)。さらに、「なぜかというと、女性には"五つの障り"があるからだ」と述べ、女性がなれないものを五つ列挙しています。それらは、①梵天王になることはできない ②帝釈天になることはできない ③魔王になることはできない ④転輪聖王になることはできない ⑤仏になることはできない です。1~4の「梵天王」「帝釈天」「魔王」「転輪聖王」は、いずれもインドの神々を仏教に取り入れたものですから、現実には問題ないでしょう。しかし最後の「女性は仏になることができない」は、女性信者にとって大問題であるはずです。この「女性は仏になれない」という考えは、仏教の創始期からありました。実際仏典には、あちこちに女性を劣等視した言葉が見受けられます。なかには露骨な表現で、「女は、大小便の満ちあふれた汚い容器である」というような、耳を覆いたくなるような表現さえ少なくありません(スッタ・ニバータ)。「汚い容器」であるのは男も同じなのですが、どういうわけか仏典には、男については決してそのような表現がないのです。女性が劣った者であり、仏になる能力のない者であるという考えは、仏教の創始者シャカ自身が持っていたようです。実際、シャカは従者アーナンダに対して、「女は愚かなのだ……」と語っています。仏教は、インド古来の階級制度である「カースト制」は否定しましたが、女性差別の考えは捨てきれなかったようです。

<出生率の低下を女性の責任にした日本の愚行>
*3-1:https://digital.asahi.com/articles/DA3S14503438.html (朝日新聞 2020年6月6日) 昨年出生率1.36、大幅下落 出生数は最少86.5万人 人口動態統計
図:出生数と死亡数、合計特殊出生率の推移
 1人の女性が生涯に産むと見込まれる子どもの数を示す「合計特殊出生率」は、2019年が前年より0・06ポイント低い1・36と、8年ぶりに1・4を割り込んだ。低下は4年連続。厚生労働省が5日発表した人口動態統計で明らかになった。出生率はここ3年、毎年0・01ポイントずつ低下していたが、19年は大幅な下落となり、人口の維持に必要とされる2・07からさらに遠ざかった。都道府県別では沖縄県の1・82が最高で、東京都が1・15と最低だった。19年に国内で生まれた日本人の子どもの数(出生数)は86万5234人と、前年を5万3166人下回り、統計がある1899年以降で最少となった。死亡数は戦後最多の138万1098人にのぼり、出生数から死亡数を引いた自然減は51万5864人と、過去最大の減少幅を記録した。出生率が下がり続ける背景には、親になる世代の減少や晩婚化などが挙げられる。25~39歳の女性人口は1年で2・0%減った。平均初婚年齢は夫31・2歳、妻29・6歳と夫妻とも6年ぶりに上昇した。第1子の平均出産年齢は15年以降、30・7歳で推移する。厚労省はまた、18年の結婚件数が前年よりも2万471組(3・4%)減ったことが翌年の出生率に影響したとの見方を示す。19年の結婚件数は59万8965組と、7年ぶりに増加した。改元に合わせた「令和婚」が増えたためとしている。政府は少子化対策の指針となる「少子化社会対策大綱」で20年までの5年間を「集中取組期間」と位置づけるが、出生数の減少に歯止めがかからない。今年5月に5年ぶりに見直した大綱では、25年までの目標として子どもがほしい人の希望がかなった場合に見込める出生率「希望出生率1・8」の実現を掲げた。人口問題に詳しい鬼頭宏・静岡県立大学長は「子育て世帯への経済的支援は大事だが、時間がかかっても男女格差のない社会に作り直す覚悟で臨まなければ、出生数増加にはつながらない」と話す。

*3-2:https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/580749 (沖縄タイムス社説 2020年6月4日) [少子化対策大綱]拡充の道筋が見えない
 思い切った施策と、その施策を具体化する財源をセットで示さなければ、同じ轍(てつ)を踏むことになる。今後5年間の少子化施策の指針となる政府の「少子化社会対策大綱」が閣議決定された。昨年生まれた赤ちゃんの数が、統計開始以来初めて90万人を割る「86万ショック」という危機感を背景にまとまった指針である。大綱が目標とするのは安倍政権が掲げる「希望出生率1・8」。子どもの数や年齢に応じた児童手当の充実▽大学無償化制度の中間所得層への拡充▽育休中に支払われる給付金の在り方-などの支援策を提言する。子育てにお金がかかるため2人目、3人目を諦めたという夫婦は少なくない。多子世帯へ児童手当を手厚く配分するのは必要な支援だ。教育費に関しては、大学無償化の範囲を現在の低所得世帯から拡大するよう求めている。コロナ禍で学業継続への不安を訴える声が示すように、大学進学にかかる費用は中間層にも重くのしかかっている。育休中に雇用保険から支払われる給付金の充実は、男性の育休を取りやすくするための政策である。いずれも実現すれば一歩踏み込んだ対策といえる。しかし児童手当の充実も、大学無償化の拡充も、財源の裏付けはなく「検討」段階でしかない。目玉の育休給付金の引き上げは、当初、休業前の手取りと変わらない水準を目指す考えだったというが、大綱に具体的文言は盛り込まれなかった。
■    ■
 合計特殊出生率が戦後最低となった1990年の「1・57ショック」を契機に、少子化は社会問題化した。政府はエンゼルプランに始まる支援策を次々と打ち出したが、対策は失敗続きで、少子化に歯止めをかけることはできなかった。安倍晋三首相はことあるごとに少子高齢化を「国難」と強調する。大綱も冒頭に「国民共通の困難に真正面から立ち向かう時期に来ている」と記す。にもかかわらず財源については「社会全体で費用負担の在り方を含め、幅広く検討」とぴりっとしない。国難という認識に立つのなら、施策を具体化する道筋を示すべきである。日本の「家族関係社会支出」がGDPに占める比率は低水準で欧州諸国に比べ見劣りしている。もう小手先の対応では、どうにもならないところまで来ているのだ。
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 出生率全国一の沖縄でも少子高齢化は着実に進行している。80年代半ばまで2万人前後で推移してきた出生数が、今は1万5千人台。2012年には老年人口が年少人口を上回った。結婚や出産は個人の自由な意思に基づくものだ。ただ非正規で働く男性の未婚率が顕著に高いなど、経済的理由が少子化に影響を与えている側面は見過ごせない。県内男性の未婚率と県の非正規雇用率が全国一高いことは無関係ではない。若い世代の雇用の安定を図ることも必要不可欠な対策だ。

*3-3:https://www.nishinippon.co.jp/item/n/614803/ (西日本新聞 2020/6/7) 病児保育、コロナ直撃で経営危機 働く親「なくなると困る」
●3密回避で受け入れ制限
 急な風邪や発熱で保育園や学校に行けない子どもたちを一時的に預かる「病児保育」の施設が、新型コロナウイルスの影響で利用が激減し、経営危機に直面している。全国病児保育協議会(東京)によると、病児保育施設は元々約6割が赤字経営だが、コロナ禍が追い打ちを掛けた形。一方、仕事を休めない親にとって「駆け込み寺」のような存在なだけに、存続を求める切実な声が上がっている。病児保育施設は、病気になった子どもたちを保育士や看護師が一時的に保育する施設。厚生労働省によると、病児保育施設は全国に1068カ所(2018年度)あり、多くが医療機関に併設されている。福岡市の施設を利用している保育士(40)は、インフルエンザが流行する冬に病気がちな息子(2)を預けることが多く、3日連続で利用することもあるという。「仕事をどうしても休めないときに心強い存在。病児保育がないと、仕事を辞めざるを得ない」と必要性を強調する。
●「コロナかも」
 全国病児保育協議会によると、新型コロナの感染拡大に伴い、インフルエンザや溶連菌といったコロナ以外の疾患だと確定できる場合のみ受け入れる施設や、呼吸器疾患以外を預かるといった基準を設ける施設が増加。休業した施設もある。福岡県内の企業主導型保育園に併設する病児保育施設では「インフルエンザだとしても、コロナがひも付いているかもしれない」(園長)として、3月から受け入れを事実上ストップした。6月に各種自粛が緩和されたため、基準を厳しくして徐々に受け入れ始める予定だ。小児科に併設した「ベビートットセンター」(福岡市)は三つある個室に最大計6人までを受け入れていたが、感染防止の観点から3月以降は1室につき1人の計3人に縮小。3月下旬から利用者は激減し、4月は前年同期の82人から21人と4分の1。5月は4人のみと厳しい状況が続く。預け先での感染を恐れ、利用を躊躇(ちゅうちょ)する保護者もいるという。
●実績基に補助
 施設にとっては利用者が減っても保育士などは確保しなければならず、人件費が経営を圧迫する。頼みの綱の補助金の一部も年間の延べ利用人数に応じて交付されるため、本年度は落ち込みが予想される。ベビートットセンターを運営する小児科医の米倉順孝さん(45)は「病児保育はセーフティーネット」と施設を続ける決意だが、経営の先行きは見通せないのが現状だ。緊急事態宣言は解除されたが、全国病児保育協議会に加盟する約750施設の多くで、利用者は定員を大きく下回っている。大川洋二会長は「本年度の実績にとらわれず、十分な交付金をお願いしたい」と訴える。

*3-4:https://www.jiji.com/jc/article?k=2020040900569&g=soc (時事 2020年4月9日) 不妊治療助成、1歳緩和 コロナ影響で時限的に―厚労省
 厚生労働省は9日、不妊治療に臨む夫婦が新型コロナウイルスの影響で治療を延期するケースに対応するため、治療費の助成対象となる妻の年齢要件を時限的に緩和する方針を決めた。今年度に限り、現在の「43歳未満」を「44歳未満」にする。同省は近く通知を出す。日本生殖医学会は1日付の声明で、妊婦が新型コロナに感染すると重症化する恐れがあることなどを挙げ、産婦人科などに不妊治療の延期を選択肢として提示するよう求めた。医療物資や医療従事者が不足し、延期を余儀なくされる夫婦が増えることも懸念されている。体外受精や顕微授精を行う不妊治療は高額なことから、厚労省は患者の経済的負担を減らすため、助成制度を設けている。現行では一定の所得以下の夫婦に対し、治療開始時の妻の年齢が▽40歳未満なら通算6回まで▽40歳以上43歳未満なら同3回まで、原則1回15万円を支援している。今回の要件緩和は、新型コロナ感染防止を理由に、今年度は治療を見合わせる夫婦が対象。今年3月31日時点で妻の年齢が42歳である場合、延期後44歳になる前日までを助成対象とする。同じ時点で妻が39歳の場合は、従来40歳未満としていた通算6回の助成対象を1歳緩和し「41歳になる前日まで」にする。

<女性差別の結果>
*4-1:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/497750 (佐賀新聞 2020.3.9) GDP、年7・1%減に改定、10~12月期、下方修正
 内閣府が9日発表した2019年10~12月期の国内総生産(GDP、季節調整値)改定値は、物価変動を除いた実質で前期比1・8%減、このペースが1年続くと仮定した年率換算は7・1%減となり、速報値の年率6・3%減から下方修正した。企業の設備投資が落ち込んだことが要因。マイナス成長は5四半期(1年3カ月)ぶり。新型コロナウイルス感染症の拡大で、20年1~3月期も2四半期連続のマイナス成長となる可能性が高まっており、日本経済は長期停滞入りの瀬戸際に立っている。年率の減少幅は前回消費税増税時の14年4~6月期(7・4%減)以来、5年半ぶりの大きさだった。増税に伴う駆け込み消費の反動減や世界経済の減速、台風19号など経済を押し下げる要因が重なった。改定値は最新の法人企業統計などを反映して2月に公表した速報値を見直した。設備投資は前期比4・6%減と、速報値の3・7%減から下方修正した。減少幅は09年1~3月期(6・0%減)以来の大きさ。消費税増税対応の投資が一時的に増えた反動も影響した。個人消費は速報値の2・9%減から2・8%減に上方修正した。住宅投資は2・5%減、公共投資は0・7%増だった。輸出は速報値と変わらず0・1%減、輸入は2・6%減から2・7%減に小幅に下方修正した。景気実感に近いとされる名目GDPは1・5%減、年率換算で5・8%減だった。速報値の年率4・9%減から下方修正した。

*4-2:https://www.tokyo-np.co.jp/article/world/list/202003/CK2020030702000255.html (東京新聞 2020年3月7日) <女性に力を>「男女平等は世界全体の利益に」 国連「国際女性デー」記念行事
 国連が定める「国際女性デー」(八日)の記念行事が六日、ニューヨークの国連本部であった。フィンランドのサンナ・マリン首相(34)ら世界の各分野で活躍する女性が「男女平等は女性のためだけでなく、全体の利益になる」などと不平等を是正する社会的、経済的な意義を訴えた。一九〇六年に世界で初めて女性の完全参政権を認め、男女平等の先進国として知られるフィンランド。マリン氏は国連加盟百九十三カ国中、女性の大統領や首相が計二十人(一月時点)にとどまる現状を指摘し、「この国連総会議場は世界各国が意見を聞いてもらう場だが、大抵の場合、それは男性の意見だ」と切り出した。フィンランドが女性政治家らの提案で四〇年代に無償の学校給食を導入し、共働きを支えて発展を遂げた実績などを例に「男女平等の実現には、政治的な意思決定をする立場に一層多くの女性を置くのが最良だ」と主張。「女性や女の子の権利を前進させてきた強い女性指導者らの努力と模範がなければ、きょう私が皆さんの前に立つこともなかったでしょう」と話した。一方、スウェーデンの環境活動家グレタ・トゥンベリさん(17)らに感化されて国連本部前でデモを続ける米国のアレクサンドリア・ビラセナーさん(14)は「世界の仲間と出会い、面白いことに気付いた。みんな女性。女性が環境活動を引っ張っている」と強調。その半面、読み書きできない人の三分の二を女性が占める実態に触れ、「地球を救うために変えなければならない」と女性が教育を受ける機会の重要性を説いた。

*4-3:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20160930&ng=DGKKZO07810310Z20C16A9EE8000 (日経新聞 2016.9.30) 中里税調会長「所得税改革、複数案を提示」
 政府税制調査会の会長の中里実東大教授は日本経済新聞のインタビューで、所得税改革の方向性について、複数案を提示し与党の判断をあおぐ可能性があると語った。
―配偶者控除の見直しが焦点です。
 「(改正前後の税収が同じになる)税収中立が条件のため、改革すると得する人と損する人がでてくる。損する人の声が大きくなれば民主主義では改革は実行に移しづらい」「働き方への中立性を阻害しないようにするには税制だけでは無理だ。一番は社会保険料の問題だ。年収が130万円を超えると社会保険料の負担が突然、生じる。また多くの企業が扶養手当を103万円や130万円を基準に支払っている。今回の議論をきっかけに社会保険料や手当のあり方を見直すきっかけになれば意義がある」
―なぜ所得税改革が必要なのでしょうか。
 「昨年、長い時間をかけて政府税調が実施した経済・社会の実態調査で、所得税制が現在の経済・社会の実態に合わなくなっていることがわかった。負担軽減のターゲットは若い低所得者だ。働いて稼いでもらいたい人達に光を当てる。女性が働きたいのに家に閉じこもるのもよくない」「増税じゃないかと疑う人がいるが、そうではない。豊かな人に負担をお願いするという方向は考えている。どの程度の所得以上かとなると調整は難しい」「税は利害調整だから、今回のような改革はソフトランディングもありえる。改革案を松竹梅と用意して、徐々に梅から竹という方向でもいいかもしれない。様々な改革メニューをだすのが政府税調の仕事だ。(政治が)必要な改革なら必要な時期に対応をとるのではないか」

<人種や性別による差別をなくすには・・>
*5-1:https://news.yahoo.co.jp/byline/furuyayukiko/20200614-00183211/ (Yahoo 2020.6.14) ブラックライブスマター運動から考える警察の暴力と人種差別 (社会学博士 古谷有希子)
 この数週間、アメリカではコロナウイルス以上にBlack Lives Matter(黒人の命も重要だ)運動がトップニュースを占めている。日本でも報道されているようだが、かなり偏った伝え方をしているように思う。たとえばNHKはアフリカ系の人々に対する偏見に満ちた動画を配信してしまい、各国のニュースで批判され、更には駐日米大使も苦言を呈すという事態に陥った。また、ワシントン州シアトル市で抗議運動の一環として警察が立ち入らない「自治区」が立ち上がった経緯についても不正確な報道がなされているように思う。元々、シアトルの抗議活動は許可を得たものと得ていないものが混ざっていた(いずれも平和的デモ)。だが警察が暴力的、強制的に無許可デモを排除しようとしたことで、抵抗したデモ参加者たちにパトカーを燃やされ、更には混乱に乗じた略奪などが起こった。平和的デモ参加者まで逮捕し、催涙ガスを使用し、暴力的に対応し、街のあちこちを封鎖したからだ。結果として警察の暴力に対する市民の批判が更に強まり、警察はそのエリアからの撤退を決定した。警察が撤退した後、そのエリアをアーティストやアクティビストが「自治区」として掲げ、人種差別問題や警察の暴力の問題を壁画や音楽で訴える平和的抗議運動の中心地となっているのが現状だ。トランプ大統領は一連の活動を「テロリスト」と呼んで非難し武力行使を示唆しているが、シアトル市長は「政府の権威、権力に挑むのは市民の権利だ」として「自治区」や一連の抗議活動を擁護している。
●抗議活動の発端となった警察による黒人男性殺害事件
 そもそも、こうした抗議活動の発端となったのは5月25日にミシガン州のミネアポリス警察の警察官が暴行により46歳の黒人男性ジョージ・フロイドさんを殺害した事件である。フロイドさんがコンビニで偽札を使ったとして店員が通報し、駆け付けた警官によって殺害された。警官に首を後ろから押さえつけられたフロイドさんが「息ができないんです…」「ママ、ママ…」とうめき声を上げながらと死亡していく映像がSNSに流れ、多くの人がショックを受けた。8分46秒に渡りフロイドさんに暴行を加え窒息死させた警官の行動は、まさにアメリカの黒人が数百年間に渡り直面してきたリンチ、黒人差別そのものであり、人を人とも思わない白人警察の暴力性まざまざと見せつけた。フロイドさんが実際に偽札を使用したのか、もし使っていた場合それが故意だったのかどうかはわかっていない。仮に彼が偽札を故意に使用してたことが事実だったとしても、その程度の軽犯罪を犯した人を警官が不法かつ不当に殺害してよい根拠にはならない。殺害に関与した四人の警察官は全員懲戒免職となり、主犯のデレク・ショウビン元警察官は第二級殺人罪、第三級殺人罪、第二級過失致死罪で起訴されている。
●警察の黒人差別
 これまでもアメリカの警察はアフリカ系の人々を不当に扱ってきた。そのうちの殺害ケースの多くは射殺だが、警官が殺人罪で起訴されることは稀で、せいぜいが過失致死、多くの場合は何の罪にも問われずそのまま警官として働き続けている。アメリカの警察は「黒人は犯罪者が多い」「黒人は乱暴」といった人種的偏見に基づいた対応(racial profilingという)をしていると批判されている。黒人であるというだけで頻繁に職質を受けたり、車を止められたりすることは当たり前で、ひどい場合にはいきなり銃を向けられる、いきなり発砲されるということがずっと続いてきたからだ。近年も、おもちゃの銃で遊んでいた黒人の子どもが警官に射殺された事件、看護師志望の二十代の黒人女性が自宅で警官に射殺された事件など、警官による黒人の不当な暴行や殺害は枚挙に暇がない。それ以外にもトレイボン・マーチン殺害事件、アフムード・オーブリー殺害事件など、「自警」「自衛」と称して何の罪もないアフリカ系の人をリンチ殺害する事件も後を絶たない。そのため、アフリカ系の家庭では子どもがまだ小さいうちから「警官に呼び止められたら両手を挙げて動きを止めること」「必ずサーの敬称をつけて丁寧に話すこと」などを教える。特に男の子の場合にはこれを徹底して身につけさせなければ、その子の命に関わる。
●今も残る人種差別
 警察も含めアメリカの司法システムは、軽犯罪から重犯罪まで、同じ罪を犯しても黒人には白人よりもはるかに重い刑罰を課してきた。いずれも刑法に則った量刑であり、個々の逮捕や裁判の不当性は見えにくいが、全体の統計を見たときに明らかに量刑に人種差別が現れている。そもそも歩いているだけ、車で走っているだけで黒人だからと目をつけられて職質されるのだから、どんなささいな不法行為でも黒人の方が白人よりも捕まりやすいのは当然だ。たとえばアメリカではマリファナは州によっては娯楽使用も合法で、誰でも一度は吸ったことがあるような気軽なものだ。場合によってはたばこよりありふれているくらいなので、使用率は黒人も白人も変わらない。だが黒人は白人の四倍近くも「ただ持っているだけ」で逮捕されている。人口当たりの受刑者の比率は、ラテン系男性は白人男性の二倍、アフリカ系男性はさらに五倍にも上る。連邦刑務所の受刑者の八割、州刑務所の受刑者の六割はアフリカ系かラテン系である。運良く不起訴となっても、逮捕歴が残るので就職、住居、銀行ローンなどで生涯にわたる差別を受けることになる。黒人を完全に分離し、同じ学校に通うことを禁じたり、白人との結婚を禁じるようなハードコアな人種差別は公民権運動を通じて数十年前に撤廃された。しかし人種差別は社会制度、行政制度などに染み付いた慣習として今日も続いている。特に問題なのはSystemic racism, institutional racism (機関的、制度的人種差別)だ。
●制度的人種差別
 社会制度(法律、警察、役所や学校などの行政機関、行政・社会制度、教育機関、社会慣習まで様々なものを含む)には人種差別がこびりついている。「黒人だから」という理由で頻繁に職質をされたり、いきなり銃を向けられたり、重い量刑を課されるのは、司法や行政を担う担当者が人種的偏見に基づいた行動や決定を意識的、無意識的に行なっているからだ。こうした個人レベルの人種差別的行動や偏見が積み重なって社会や行政の様々なレベルでの白人と黒人との膨大な格差や差別となる。個人レベルで「黒人は凶暴だ」とヘイトスピーチをする人の数は減ったかもしれないが、社会全体での制度的人種差別は根強い。そして、個人レベルで差別行為を行わなくとも、差別を内包した社会で生活しているだけで、こうした制度的差別に加担することになる。アメリカには長きにわたる人種隔離政策の影響が色濃く残っており、その最たるものが居住区域と学区分けである。まず、アメリカの公立学校の財源は学区ごとの固定資産税に大きく依拠しているので、貧困層が多い学区は常に財政難に直面しており、教師や教材も揃えられないということもままある。そして、学区と居住区域が連動しているので白人中流家庭の多い区域は黒人貧困家庭の多い区域と学区が重なることを決して許さず、そのような状況になると猛抗議を行い阻止しようとする。白人中流層の多い区域でアフリカ系の人が家を購入しようとすると不動産屋や大家は白人相手よりも高い値段を提示する。黒人が流入するとその区域の白人が流出して地価が下がるため、それを避けようとするのだ。つまりジム・クロウ法(人種隔離法)が行なっていたことと同じことが、白人中流層居住地域では現在も事実上続いているのである。また、エボニーやジャマルなど「黒人に多い名前」で求人に応募すると面接に呼ばれにくいが、全く同じ履歴書を送っても名前が白人的だと面接に呼ばれやすいという研究もある。こうした差別や偏見、不当な暴力に立ち向かっているのが、今起こっている Black Lives Matter 運動なのである。コロナ渦にあって大規模な抗議運動などしてはコロナウイルスをさらに拡大させるという懸念もあるが、黒人を取り巻く人種差別の恐怖はコロナウイルスの恐怖を凌ぐ。黒人であるというだけで暴力を受ける社会で、アフリカ系の人々は安心してマスクも付けられない。顔を隠した強盗と間違われて即射殺などということになりかねないからだ。アフリカ系の人々が日常的に直面している不当な差別、暴力、偏見はコロナウイルス以上に多くのアフリカ系の人々を精神的に肉体的に傷つけ命を奪っている。
●抗議活動の「暴徒化」は本当か?
 抗議活動の一部が暴徒化しているという報道もあるが、前述したように「混乱に乗じて略奪などが起こっている」のであり、抗議活動が過激化して暴徒化するというのは必ずしも正確な表現ではない。そもそも、警察が暴力的な対応をしている結果として混乱が生じているのである。また、略奪や放火などの過激な行動を取っているのもアフリカ系の人々に限ったことではない。そもそも略奪などが起こる背景には、必要なものも手に入らない苦しい生活と厳しい経済格差がある。収入、雇用、財産、教育、ありとあらゆる面で、制度的人種差別を背景とした白人と黒人の歴然とした格差があり、その差は1960年代からほとんど変わっていない。暴動だと非難するだけではなく、異常なまでの富の不均衡、機会の不平等、人種差別の問題にこそ目を向ける必要がある。そもそも今日のアメリカの富の礎は奴隷制の上に築かれたものだ。アフリカ系の人々が何百年も耐え忍んできた暴力、差別、圧政、搾取に比べれば、暴動でほんの一部を取り返したとしても何の足しにもならない。社会運動において平和的抗議運動と暴力は容易に分離できるものではない。歴史を見ても、世界中で人権や独立などを求める平和的抗議運動はあったが、それだけで社会は動かなかった。インドでもフランスでもアメリカでも、非暴力運動と前後あるいは並行して暴力を否定しない社会運動があったことを忘れてはならない。今回の抗議運動も平和的デモだけではなかったからこそ、ネガティブな反応も含めて、より大きな注目を集めたという側面もある。注目を集めれば、当事者だけではなく問題意識を持つ多くの人が参加して、社会を動かす大きなうねりを生み出すことにつながる。たとえば今回の抗議活動にはアフリカ系以外にも多くの人が老若男女問わずに幅広く参加している。筆者の知人にも「自分は白人だからこの抗議運動に参加する社会的義務がある」と言って、参加している人がいる。抗議に参加していた白人女性や白人高齢男性が、デモを抑えようとする警察に暴行を加えられて重傷を負っている映像なども流れており、一連の抗議活動の発端となった警察の暴力性を更に強調する結果となっており、抗議活動はまだまだ収束する気配が無い。
●日本にもある人種差別
 黒人人口が非常に少ない日本で Black Lives Matter 運動や現在の警察に対するの抗議運動に対する関心が低いのは仕方のない面もあるだろう。しかし、同様の差別や警察をはじめとする司法システムによる暴力は日本でも日常的に起きている。日本では「人種」という括りよりも「外国人」「民族」のくくりで差別が行われることが多い。最近では渋谷警察がクルド人の男性に不当な暴力を振るっている映像がSNSに流れ、渋谷警察署前に200人が集まる抗議活動があった。そして、入管は入所者の人権を無視した肉体的精神的暴力を日常的に振るっている。日本でよく聞く「外国人が増えて犯罪が増えた」などというのも全く根拠の無い偏見だが、こうした差別的思考を持つ人は警官も含めて多い。外国人であるというだけで頻繁に職質されるのは、警察が外国人に対する強い偏見を持っているからだ。司法システム以外でも日本の外国人差別は根深い。たとえば「外国人お断り」を平然と掲げている賃貸物件は多いが、外国人だからお断りというのは差別以外の何ものでもない。また、高校無償化制度からの朝鮮学校除外、朝鮮学校に対する街宣、公然と繰り広げられるヘイトスピーチなど、在日コリアンに対する差別も深刻だ。そして、日本にも黒人差別はある。数年前には、新宿でナイジェリア人男性に対して「黒人は怖いからな」などと言いながら警察が暴行を加え、膝を複雑骨折させ重篤な傷害を負わせる事件があった。昨年は、大坂なおみ選手の肌の色を白くした日清のCMや「黒すぎる」などと揶揄する漫才が問題となった。いずれも「良かれと思って」「面白いと思って」行ったことだろうが、その背後にあるのは「黒い肌は醜い」という侮蔑的心情だろう。意識的であろうと無意識的であろうと、肌の白さこそ美しさの象徴であるとばかりに、異なる人種の人の肌を白く見せようとしたり、肌の色を嘲笑したり蔑むのは人種差別にほかならない。また、近年日本で台頭してきている「黒人ハーフ」アスリートについて、ポジティブな論調で彼らの成功を筋肉やバネなどの「人種的特徴」と結びつける評価を目にするが、それが生物学やスポーツ科学の皮を被った人種的偏見でないか批判的に考えるべきだ。大阪なおみ選手やサニブラウン選手を見て、彼らの成功を「黒人だから」と考えているとすれば、それは彼らの努力や個人の資質を無視する、人種的偏見以外の何物でもない。そもそも「人種」というのは科学的、生物的分類ではなく社会的分類である。アフリカ大陸は多種多様な人種・民族を抱える地域であり、いわゆる「黒人」とされる人たちの中にも、背の低い人もいれば高い人もいるし、太った人も痩せた人も、農耕民族も狩猟民族も牧羊民族もいる。アフリカ系の人々の肌の色もいわゆる白人のような色からチョコレート色まで多種多様だ。このように多様性に富んだ地域に住む人々を「アフリカ系」「黒人」と一括りにして、共通の「資質」「特徴」を論じること自体が非科学的である。また、アフリカの人々以上にアメリカの「黒人」は民族的にも、いわゆる人種的にも混血している(白人奴隷所有者は日常的に奴隷女性をレイプしていたから)。スポーツにせよ、社会、文化、経済面での成功にせよ、或いは失敗にせよ、それを安易に「人種」と結びつけることは人種的偏見に他ならない。スポーツが「黒人だから」成功できる程度のものならば、世界のアスリートは黒人だけで占拠されていなければおかしいが、現実にはそうではない。むしろ「運動に素質がある黒人の子ども」がいた場合、「黒人だからバネがいい」などという安易な人種的偏見がその子を特定のスポーツに誘導することになっていないか、その子から勉強や芸術など、他の分野のことを学ぶ機会を奪っていないか、親や教師は考慮する必要がある。たとえばアメリカではアメフト、バスケットボール、陸上競技はアフリカ系の選手が非常に多い一方で、ウィンタースポーツや水泳は極端に少ない。個々人の資質以上に、スポーツがレッスン費用や周辺のスポーツ施設の有無など「始めやすさ」「アクセスのしやすさ」、あるいは人種的偏見に基づいた周囲の期待などに大きく影響されるものだからだ。一見すると黒人差別とは無縁に見えるかの日本社会にも、アフリカ系の人々に対する偏見や差別は存在する。アメリカの抗議活動を「人ごと」「対岸の火事」と傍観するのではなく、警察の暴力と人種差別の問題を考えるきっかけとして捉えるべきである。

*5-2:https://digital.asahi.com/articles/DA3S14526552.html (朝日新聞 2020年6月26日) 黒人の兄と白人の弟、同じ国、違う世界 米ミネアポリスルポ
■兄は職を転々、警官からの尋問絶えず 弟は博士号「差別で恩恵、責任感じた」
 黒人男性のジョージ・フロイドさん(46)が亡くなった米ミネアポリスの現場に6月14日、ある兄弟が並んで立った。「人種を超え、共に祈りを捧げられ、うれしかった」と話した兄のチャド・リンダマンさん(52)は、褐色の肌。「黒人の声に耳を傾けたかった。差別の仕組みから恩恵を受ける立場として、責任を感じた」と語った弟のデイナ・リンダマンさん(49)は白人だ。黒人の父と白人の母の間に生まれたチャドさんは1歳のとき、ミネアポリス郊外の白人家庭に養子として迎えられた。2年後、デイナさんが生まれ、兄弟として同じ家庭で育った。チャドさんが小学校に上がると、学年120人で黒人は1人。同級生から「ニグロ」(黒人)と呼ばれ、好きな女子とダンスをすることもかなわなかった。先生は「勉強には向いていないから、スポーツをがんばりなさい」と言った。デイナさんは運動神経抜群の兄を「ヒーロー」と慕った。だが、11歳のとき、兄をイメージしてつくったのは肌が黒く、囚人服のような白黒の服を着た人形。無意識の差別の表れだと気づいたのは、大学で人種について学んだ後だった。兄弟は次第に、別々の道を歩んだ。野球の投手として頭角を現したチャドさんはマイナーリーグでプレーしたが、肩を壊し、3年で引退。貸金業などで働いた。一方、幼い頃から成績優秀だったデイナさんはハーバード大学院で仏文学の博士号を取得し、研究者となった。「黒人と、白人の子どもがなりたい職業のステレオタイプをなぞるようだった」と振り返る。チャドさんの人生に影を落とし続けたのは、警察との関係だった。白人が多いミネアポリスで警官に車を止められて尋問されることに嫌気がさし、黒人が多い南部アトランタに移ったが、そこでも尋問は絶えなかった。バーで運転免許証の提示を求められて断り、警官からスタンガンで撃たれて留置所に入れられたことや、スピード違反を理由に、拳銃を頭に突きつけられたこともあった。11年前にミネアポリスへ戻ってからは、奨学金ローンの取り立てや造園業など時給制の仕事を転々としてきたが、昨年に建設現場で大けがし、ホームレスになった。5月からは、市が提供する施設に身を寄せる。入居者の半数が黒人だ。5月25日、そこからわずか5キロ先で、白人警官がフロイドさんの首を約8分間押さえつけ、死亡させた。食料品店でたばこを買うために払った20ドルが偽札だったとして、店員が通報したことがきっかけだった。無言のまま、フロイドさんをひざで押さえ続ける警官の動画を見て、チャドさんは体が震えた。「黒人というだけで警官に疑いの目を向けられる。自分の経験がよみがえった」。米国では、黒人の方が警察から暴力を受けやすい傾向が顕著だ。米メディアの統計によると、年間で約1千人が警察に射殺されているが、黒人が射殺される率は白人の約2・5倍だ。ミネアポリスでは、黒人が人口の約2割にとどまるが、市警が押さえつけたり、たたいたりする「有形力の行使」の件数は、約6割が黒人を対象としていた。ミネソタ大准教授になったデイナさんは、「フロイドさんに起きたことは、兄に起きても不思議はなかった」と話す。自身は警官に職務質問されたことも、交通切符を切られたこともない。事件をきっかけに、久しぶりに兄と連絡を取り、現場を訪れた。白いメッセージボードに追悼の言葉を書き込むと、2人の影が映った。そこには、肌の色が映らない。「その瞬間、黒人と白人ではなく、ただの兄弟だと実感できた」と、デイナさんはシャッターを切った。
■「白人、もはや国の代表でない」 デモ、人種・世代超え
 米メディアによると、フロイドさんの事件に端を発した抗議デモは、全米の2千カ所以上で行われてきた。公民権運動を率いたキング牧師が1968年に暗殺されて以来の規模ともいわれる。警察による黒人の殺害を抗議するデモは、これまでもあった。ただ、今回は白人の若い世代が多く加わっているのが特徴だ。6月上旬にニューヨーク、ワシントン、ロサンゼルスで行われた調査では、参加者の6割以上が白人で、4分の3が34歳以下だった。フロイドさんの事件にかかわった4人の元警官がすぐに起訴されたのは、デモのうねりが影響しているとみられる。また、人種差別や奴隷制度に関連した人物の像が撤去されたり、企業が「差別的」とされた商品を見直したりするなどの動きも出ている。最後まで拘束されていた奴隷に、制度の廃止が告げられたことから「奴隷解放記念日」とされる19日は、デモの人数が特に膨れあがった。ニューヨークで加わったエリザベス・チャパさん(20)は、インスタグラムでデモを知ったという。「選挙で存在感を発揮してきた白人、富裕層、年配の人たちはもはや、この国を代表しているわけではない。フロイドさんの事件は、政治が我々の生活の一部なのだと、気づかせてくれた」。このエネルギーが11月に行われる大統領や議会の選挙にどうつながるのかも、注目される。上院選に向け、23日にケンタッキー州であった民主党の予備選では、差別の解消を訴えた35歳の黒人男性が予想以上の健闘を見せるなど、影響は既に出始めている。

<農業・製造業における男女共同参画>
PS(2020年6月29、30日、7月2日追加):日本農業新聞が、*6-1のように、「①新型コロナ対策では世界で女性リーダーの手腕が際立った」「②性別に拘らず個性と能力を十分に発揮できる社会を目指して1999年に施行された男女共同参画社会基本法の施行から20年たっても、日本は男女格差が根強く残っている」「③誰もが働きやすく暮らしやすい農業・農村を作りたい」「④2019年度の『農業白書』は、『輝きを増す女性農業者』を特集した」「⑤生産者と生活者・消費者の視点を併せ持つ女性農業者が農業経営に関与しているほど利益増加率が高い」「⑥ 2019年までの20年間に農業系は女性の割合が10%増えて半数になった」「⑦農村地域の女性の人口は子育て世代の25~44歳で特に減少率が大きい」「⑧仕事に家事・育児を加えた労働時間は農林漁業者では女性が長く負担が大きい」「⑨収入を含め魅力的な職場を増やしていかなければならない」「⑩ライフステージに合わせて勤務時間や業務などを選べるようにする」等を記載している。①②は紛れもない事実だが、農業分野における③④⑤の認識があれば、農業に従事する女性の地位向上に大いに資するだろう。しかし、⑥にもかかわらず、⑦になる理由は、⑧のように農村では特に女性の地位が低く、女性にとっては住む魅力に欠けるからである。しかし、⑨を実現させれば、⑩のようにライフステージに合わせて勤務時間や業務を選ぶには、職住が接近し家族労働を中心とする農業の方が他の業種より優位だ。
 また、*6-2のように、日本政府が「食料安全保障強化」を打ち出し、外国産から国産への原料切り替え等による国内生産基盤の強化や国民の理解醸成を進めるようにしたことは、国内農業に追い風になる。そして、農林水産物や食品の輸出も含めて加工食品や外食・中食向けの原料を国産に切り替えれば、国内での加工が増えて女性や外国人労働者の必要性はさらに高まる。
 そのような中、外国人労働者の子どもは、教育すれば両国の文化を理解し日本をふるさととする貴重な人材になるにもかかわらず、日本には外国人労働者の子どもを邪魔者のように扱ったり、無視したりする見方がある。そのため、*6-3のように、国際人権規約や子どもの権利条約に従って外国籍を含めた子どもの「学ぶ権利」を保障する必要があり、これは不就学児を作らないために、早急にやるべきだ。
 なお、*6-4のように、日産自動車(以下“日産”)は、①新型コロナによる販売不振 ②巨額の構造改革費用 で純損益が6,712億円の赤字に転落し、内田社長が6月29日の定時株主総会で「必ず成長軌道に戻す」と述べられたそうだが、①の販売不振は新型コロナ以前から起こっており、日産はEVや自動運転の強みを活かしてその中心顧客である女性や高齢者が気に入るデザインの車にそれらを組み込めばよかったのに、そうしなかったため不振に陥っているのであり、これは、日産が比較的若い男性を中心とする会社であることに原因があるだろう。また、②の構造改革は、グローバルな視野を持った外国人経営者ゴーン氏に対する反発にすぎず、経営の正攻法ではないため、そのまま進めば業績回復は難しいと思われる。
 また、*6-5のように、2008年に開発を始めた三菱航空機の国産ジェット(MRJ)が航空会社への納入を6度も延期したのは、日本の技術力の低さを露呈した深刻な事態だ。先進国より遅れて開発し始めたジェット機なら、既存のものより何かで優れているか、今までにない航空機(例えば、燃料電池を動力とするとか)で代替品がないか、価格が安いかでなければ買う理由がないのに、三菱重工は価格が安いわけではない日本製品の技術力が劣っていることを世界中に見せつけてしまったのだ。従って、新型コロナは言い訳にすぎず、2番手なのに納入延期ばかりしている従来型航空機には期待できない。これは、少子化した日本で日本人男性に下駄をはかせて雇用した結果、創造力や技術力などの能力が落ちているということではないのか?

   

(図の説明:1番左の図のように、農林水産地帯は自然エネルギーの宝庫であるため、発電は半農半Xの強力なXになりうる。また、左から2番目の図のように、農地は集積され担い手に集まってきているため、大規模農業も可能になりつつある。しかし、女性は、担い手の妻ではなく担い手になれるのかと言えば、右から2番目の図のように、2019年でもJAの正組員に占める女性の割合は23%程度で、担い手に占める女性の割合はもっと低い。さらに、JAの役員に占める女性の割合も10%以下だ。なお、1番右の図のように、外国人労働者は増加し続け、2018年には260万人を超えて重要な労働力になっているが、まだ外国人差別は多い)

*6-1:https://www.agrinews.co.jp/p51148.html (日本農業新聞論説 2020年6月23日) 男女共同参画週間 多様性で魅力ある農を
 今日から男女共同参画週間。新型コロナウイルス対策では世界で女性リーダーの手腕が際立ったが、男女共同参画社会基本法の施行から20年たっても日本では男女格差は根強く残る。コロナ禍で、働き方の多様性への意識が高まった。この風に乗って、誰もが働きやすく暮らしやすい農業・農村をつくりたい。同基本法は、性別にかかわらず個性と能力を十分に発揮できる社会を目指し1999年に施行された。同年施行の食料・農業・農村基本法も男女共同参画を規定。女性の社会参画を後押しする法が整備された。2019年度の「農業白書」は、両基本法施行から20年の節目として「輝きを増す女性農業者」を特集した。そこで紹介している調査結果が、女性の活躍の進展と、依然として参画を阻む要因を浮き彫りにしている。農業経営に女性が関与しているほど経常利益の増加率が高い。また、学科別高校生の男女比では、19年までの20年間に農業系は女性の割合が10ポイントほど増え半数になった。加工・販売など幅広い科目設定が奏功した。一方で、農村地域の女性の人口は、子育て世代の25~44歳で特に減少率が大きい。また「医療・福祉分野での需要増加で、女性労働力確保に関する競合が強まっている」(白書)。学ぶ段階で農業分野に意欲的な女性を得ながら、就職の過程で都市や他分野へ流出している。収入を含めて、魅力的な職場を増やしていかなければならない。女性の社会参画を阻む要因の一つは、今も家事・育児・教育・介護の負担だ。仕事に家事と育児を加えた労働時間は、農林漁業者では女性が長く、負担が大きい。女性活躍の指標として役員や管理職の数と割合を話題にしがちだが、労働を男女で分かち合うことが女性の参画の土台である。大事な視点は二つ。一つは、家庭内の役割分担の割合を可視化すること。家庭も組織である。特定の人の労働が過重なら全体が回らない。まずは家族会議から始めよう。もう一つは、ライフステージや能力に合わせて勤務時間や業務などを選べるようにすること。柔軟な勤務体系で従業員が定着している農業経営がある。また、得意分野で業務を分担し、妻が経営・販売を、夫が生産部門を担い収益を上げている事例もある。多様な働き方を可能にすることで、男女ともに働きやすくなる。全てをこなす女性のロールモデル(模範となる人物像)には無理がある。仕事と家事や育児などの役割全てを女性に求めるのはやめよう。頑張り過ぎて心身に不調を来たしたり、寿命を縮めたりする女性は多い。コロナ禍で国民が気付いたのは、農業や医療・福祉といった「生命産業」の大切さだ。これらを重視する経済・社会に変えていかなくてはならない。それには、生産者と生活者・消費者の視点を併せ持つ女性農業者の能力発揮は欠かせない。

*6-2:https://www.agrinews.co.jp/p51190.html (日本農業新聞 2020年6月27日) [新型コロナ] 政府、食料安保を強化 コロナ対応 国産切り替え推進
 政府は26日、農林水産業・地域の活力創造本部(議長=安倍晋三首相)を開き、新型コロナウイルスによる食料供給リスクの高まりを踏まえ、農林水産政策の展開方向として「食料安全保障の強化」を打ち出した。外国産から国産品への原料切り替えなどによる国内生産基盤の強化、国民理解の醸成を進める。各施策で検討を進め「農林水産業・地域の活力創造プラン」や2021年度予算概算要求に反映する。安倍首相は「食料の安定供給は政府が果たすべき最も重要な責務。国内の生産基盤を強化し、食料自給率や自給力の向上を図ることが必要」だとし、関連政策の見直しを関係閣僚に指示した。同省は、新型コロナ発生後、中国産野菜の輸入が一時的に滞ったことなどを受け、日本にも影響が及んだと指摘。欧米では労働力不足で収穫などが停滞し、物流が混乱する恐れもあるとした。アフリカ豚熱や中東などで猛威を振るうサバクトビバッタなども挙げ、「食料供給を脅かす新たなリスクが発生」と分析。半面、国民の食料供給への関心が高くなっているとし、食料安保を今後の政策の柱に据えた。食料・農業・農村基本計画に盛り込んだ内容などを踏まえて取りまとめた検討事項のうち、「国内生産基盤の強化」では、加工食品や外食・中食向け原料の国産への切り替えを重視する。生産現場を支える取り組みとして、スマート技術の開発・普及や農業支援サービスの育成を挙げた。さらに、食料安保や農林水産業の役割への理解を促す国民運動を展開するとした。今後の政策課題のうち「農産物検査規格の高度化」は、穀粒判別機の導入拡大などを念頭に置く。一方、規制改革推進会議も農産物検査の見直しを検討事項に挙げており、近く政府への答申を取りまとめる。「セーフティーネットの見直し」では、収入保険について、野菜価格安定制度など関連制度全体を検証し、総合的な対策の在り方を検討する。農林水産物・食品の輸出額を30年に5兆円とする政府目標の実現に向け、中国向けの輸出などを強化することも盛り込んだ。

*6-3:https://www.kochinews.co.jp/article/377797/ (高知新聞 2020.6.29) 【外国人の就学】「学ぶ権利」を保障したい
 日本も批准している国際人権規約や子どもの権利条約では、外国籍を含めた子どもの「学ぶ権利」を保障している。にもかかわらず、日本にいる外国籍の子どもは、その恩恵を十分受けることができなかった。やっとというべきだろう。政府が閣議決定した日本語教育推進の基本方針に、外国籍の子ども全ての就学機会確保を目指して状況把握を進めたり、日本語教育の水準向上を図ったりすることが明記された。さらに、外国人への日本語教育は国や自治体の責務とも記された。基本方針は、昨年施行された日本語教育推進法に基づいた指針だが、まだまだ第一歩にすぎない。就学していない子どもの詳しい状況確認を国は急ぐとともに、「学ぶ権利」が保障されるよう予算措置を含めた体制整備を進めるべきだ。文部科学省の昨年の調査で、本来なら小中学校に通っている年齢にもかかわらず外国人学校などを含めて不就学の可能性がある子どもは全国に約1万9千人いた。調査自体が初めてで、対象となる子ども全体の16%近くを占めたという。文科省によると、外国籍の子どもが公立小中学校への就学を希望すれば、国際人権規約などにより無償で教育が受けられる。しかし、日本人と違って外国人には就学義務がなく、それが不就学が増える理由の一つとされる。また、保護者や子どもが日本語を十分理解できなかったり、住んでいる自治体のサポートが整っていなかったりすると学校に行かないケースがあるという。在留外国人は、30年前の約108万人と比べて3倍近くの約290万人に増えている。昨年4月には外国人材を受け入れる新たな制度も始まり、家族を含めて外国人がさらに増加することが見込まれる。就学していない児童生徒を増やさないためには実態把握に加えて、自治体などによるきめ細かい日本語教育が大事になる。基本方針では、状況把握のために自治体の関連部署の連携を促した。例えば住民基本台帳や福祉、国際交流を担当する部署などが連携して就学状況を調べ、保護者に学校の情報を提供するよう求めている。日本語がよく分からない子どもや保護者らには、レベルに応じた語学教育が大切になる。基本方針では、日本語教育に関わる全ての人が参照できる学習や教育、評価の指標を作る計画も確認した。さまざまな施策に対して日本語教育推進法は国による財政措置を求めている。外国人のニーズにあった日本語教育が円滑に進むよう自治体への支援を急いでほしい。先進地の例を共有することも大切だ。外国人の働く工場が多い岐阜県可児市では、NPO法人と行政が連携した就学支援を長年続けている。「子どもは環境を選べない」。そんな思いで関係者は活動しているという。共生社会を支えていくには地域の協力が大切だ。

*6-4:https://www.chugoku-np.co.jp/news/article/article.php?comment_id=656964&comment_sub_id=0&category_id=1206 (中国新聞 2020/6/29) 日産社長「必ず成長軌道に戻す」 株主総会、巨額赤字を謝罪
 日産自動車は29日、横浜市の本社で定時株主総会を開いた。2020年3月期連結決算は、新型コロナウイルスの影響による販売不振や、巨額の構造改革費用で純損益が6712億円の赤字に転落。内田誠社長兼CEOは業績悪化を謝罪し「必ず成長軌道に戻す。この危機を乗り越えたい」と述べ、株主の理解を求めた。赤字額は前会長カルロス・ゴーン被告が大規模リストラを実施した00年3月期(6843億円)に迫る。内田氏は「株主の皆さまには大変申し訳ない」と陳謝した。業績悪化に伴う株価低迷に関する株主の質問に対し「株価を健全なレベルに戻すことは経営層の使命だ」と強調した。

*6-5:https://digital.asahi.com/articles/ASN6H5RP6N6HOIPE01D.html (朝日新聞 2020年6月15日) 国産ジェット、開発態勢を大幅に縮小 コロナが追い打ち
 三菱重工業傘下の三菱航空機は15日、国産初のジェット旅客機「スペースジェット(旧MRJ)」の開発態勢を大幅に縮小すると明らかにした。開発に向けた作業は一部中断され、いっそうの遅れは避けられない。これまで航空会社への納入を6度も延期したことで三菱重工本体の経営を圧迫。そこへ新型コロナウイルスが追い打ちをかけた。三菱重工は、新型コロナによる収益悪化を背景に、今年度のスペースジェットの開発費を約600億円と前年から半減させた。そのため三菱航空機は現在約1600人いる国内の従業員を段階的に半分ほどまで減らす。米国とカナダにある開発拠点3カ所のうち、米ワシントン州にある飛行試験拠点を除く2カ所を閉鎖することも決めた。実用化の大前提となる「型式証明(TC)」を取得するために昨年始めた米国での飛行試験も中断。新型コロナの影響で最新の試験機を日本から持ち込めないことなどを踏まえ、当面試験はせず、今年度中は過去の試験データの検証などにあてる。人員削減は近年積極的に採用してきた外国人技術者にも及ぶ。海外航空機メーカーでの経験が豊富なアレックス・ベラミー最高開発責任者は6月30日付で退任。後任は置かず、技術トップのチーフエンジニアに川口泰彦氏を据える。スペースジェットをめぐっては、2008年に始めた開発作業が難航し、航空会社への納入開始は度々延期されてきた。今年2月にはそれまでの「20年半ば」から「21年度以降」へ6度目となる延期を発表。現在開発する「M90」の後発機となる、より小型の「M100」の計画をいったん凍結することも決めている。新型コロナはスペースジェットを購入する立場の航空会社も直撃している。すでに約300機を受注済みだがキャンセルが発生する可能性もある。積極的な営業活動も見あわせている。コロナの沈静化まで開発も「足踏み」状態となる。

<変だった専門家会議と厚労省の論調>
PS(2020年7月2、3日追加):PCR検査を抑制し、人との接触を避けて国民に我慢を強いることばかりを推奨した専門家会議と厚労省は、科学的にも人道的にもおかしかった。そのため、*7-1のように、厚労省と専門家会議が「①感染症予防の観点から、すべての人にPCR検査をすることはウイルス対策としては有効でない」「②設備や人員の制約のため、限られたPCR検査の資源を重症化の恐れのある方に集中させる」「③相談や受診の基準(目安)は37.5度以上の発熱が4日以上続いた場合」として、それを何カ月も改善しなかったことは、「④誰が、どういう目的で、そうしたのか」を専門家会議の議事録から明らかにすることが最も重要だと思う。この間、「⑤帰国者・接触者相談センターに電話しても基準にあわない」などとして患者が検査を受けられず、感染者を隔離しないことで感染が広がり、感染者自身も重症化して自宅で亡くなり、先進国とは思えない医療となっていた。さらに、トップが専門家会議のメンバーである日本感染症学会と日本環境感染学会は、「⑥PCR検査は早期に検査しても精度の点で頼りにならない」「⑦軽症例にはPCR検査を奨励しない」とPCR検査抑制を打ち出し、理由として「⑧患者が殺到して医療体制が混乱するのを防ぐ」とした。しかし、日本は多数の検査可能な施設があり、技術開発もできるため、PCR検査を増やそうと思えば増やせたのだ。
 この専門家会議は、「⑨人と人との接触8割減」「⑩新しい生活様式」など医学的evidenceの示されないことを次々に発表していたため、6月24日に「十分な説明ができない政府に代わって前面に出ざるを得なかった」「コミュニケーションの専門家が必要」などと東京都内で会見していたのを見た時、私は専門家として責任逃れをしているように感じた。わかりやすい説明やコミュニケーションとは、根拠を示して明確に行う説明であるため、*7-2の西村経済再生担当相の会議廃止表明にもあまり違和感は感じなかった。にもかかわらず、メディアが途中経過の検証もせず、政治家のみを批判して専門家会議や厚労省の方針にメスを入れないのは、本当の批判機能を果たしていない。
 なお、最近、換気が必要とも言われているが、窓を開けられないビルも多く、関東は放射性物質が飛んでいるため窓を開けるのも必ずしもよくない。そのため、私は、従来のエアコンの空気取り入れ口に換気扇のフィルターを張っているが、これでかなりの埃がとれる。本当は、*7-3の「空気清浄機付きエアコン」に変えるのがよいが、エアコンの中でプラズマや紫外線を発生させて殺菌した空気を出すようにすればさらによい。そして、これはすぐ製品化できて、食品工場・病院・学校・オフィス・家庭などで空気の流れを考慮して設置すれば効果的だろう。
 結局、日本の新型コロナ死亡率は5.1%(死者数977人/感染者数19153人、7月2日現在)で、世界の新型コロナ死亡率は4.79%(死者数521,298人/感染者数10,869,739人、2020年7月3日現在)であり、統計の取り方に違いがあるので単純比較はできないものの、日本の死亡率は世界より高く、日本が低いとは決して言えなくなった。

*7-1:https://webronza.asahi.com/business/articles/2020061600003.html (論座 2020.6.16) PCR検査抑制論者たちの責任を問う、国民に我慢を強いた政府、専門家会議、医学会の役割と責任を検証する、木代泰之 経済・科学ジャーナリスト
 新型コロナの第1波は、東京都で依然くすぶっているものの、2~5月に比べれば全国的に落ち着きを見せている。こういう時期にこそ第1波における課題を検証し、第2波、第3波に備えるべきだと考えるが、「それは収束後でよい」というのが、安倍首相の見解である。そこで筆者なりに、第1波でもっとも問題となった「PCR検査抑制論」について、政府の新型コロナウイルス感染症対策専門家会議、日本感染症学会、日本環境感染学会などの資料をもとに、検証してみたい。
●専門家会議は「すべての人にPCR検査はできない」
 PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)検査法とは、ウイルス遺伝子の特徴的な一部を切り取り、特殊な液体の中で増幅させる検査法である。2月24日の専門家会議の見解は「PCR検査は新型コロナウイルスを検出できる唯一の検査法であり、必要とされる場合には適切に実施する必要がある」とし、PCR検査実施の意義を強調している。ところが、それに続けて「感染症予防の観点からは、すべての人にPCR検査をすることはウイルス対策としては有効ではない。産官学で努力しているが、設備や人員の制約のため、すべての人にPCR検査をすることはできない。限られたPCR検査の資源を、重症化の恐れのある方に集中させる必要がある」と述べている。つまり、コロナ感染を検出するにはPCR検査しかないが、PCR検査の能力が足りないので、重症化しそうな人以外は検査するなとブレーキをかけている。厚労省は2月17日に、相談や受診の基準(目安)を「37.5度以上の発熱が4日以上続く」と公表しており、24日の専門家会議はその方針を裏打ちした。このPCR検査抑制論が噴き出してきた2月は、冒頭のグラフのように検査体制が機能しなかった時期に当たる。
●帰国者・接触者相談センターに電話しても相手にされず
 この頃、医療の現場では混乱が始まっていた。千葉県のある開業医はこう振り返る。「千葉で最初の感染者が出たのは1月31日。2月に入ると、コロナを心配する発熱患者が訪れ始めた。肺炎患者では喀痰検査、採血、画像診断などの結果を見て総合的に診断するが、コロナでは早期発見のためにPCR検査が必須。火事と同じで初期消火が一番大事なのです」。患者は窓口の帰国者・接触者相談センターに検査を依頼したが、症状が基準に達していないとして相手にしてもらえない。「そこで自分が直接電話したら、センターは『依頼が多すぎて対応できない』と断ってきた。第一線にいる医師として、なぜ診断=PCR検査ができないのか、憤慨にたえなかった」。一刻も早いPCR検査を望む患者や医師と、できるだけ検査をさせまいとする厚労省や専門家会議。そのギャップはあまりにも大きかった。
●2009年に掲げた「PCR検査体制の強化」は実現されず
 PCR検査の必要性は、2009年の新型インフルエンザ(パンデミック2009)の流行時から強く認識されていた。厚労省が翌10年にまとめた報告書は、PCR検査体制の強化、危機管理の専門体制強化などを反省点として挙げている。しかし、それは文章に書いただけであって、PCR検査体制の強化は10年後の今年に至っても実現していなかった。台湾や韓国との違いはそこにあった。
●「PCR検査は限界があり万能ではない」と抑制に動いた2つの学会
 今回の緊急事態に、医学会はどのように対応していたのだろうか。日本環境感染学会は2月13日、PCR検査に関する最初のコメントを出した。検査の対象者を「37.5度以上の発熱や呼吸器症状があり、湖北省への渡航歴がある人、その濃厚接触者など」に絞っており、その後の感染急拡大について、今から言えば「甘く見ていた」ことは否定できない。2月21日には、日本環境感染学会と日本感染症学会が連名で声明を出した。「ウイルス検出のための検査(PCR法)には限界があります」という見出しの下、「新型コロナはインフルエンザに比べてウイルスが1/100~1/1000と少なく、検査結果の判定を難しくしています。特に早い段階でのPCR検査は決して万能ではないことをご理解下さい」と述べている。つまりPCR検査法は、早期に検査しても精度の点で頼りにならないとして、はっきりPCR検査抑制論を打ち出している。
●更に「軽症例にはPCR検査を奨励しない」と踏み込む
 更に4月2日、両学会は連名で臨床対応についての声明を出した。「PCR検査の対象者は原則、入院治療の必要な肺炎患者でウイルス性肺炎を強く疑う症例とする。軽症例にはPCR検査を奨励しない」と述べ、一段とPCR検査の抑制に踏み込んだ。「患者が殺到して医療体制が混乱するのを防ぐ」というのが理由だが、この10年間、厚労省がPCR検査の体制整備を怠り、そのしわ寄せが国民に来ていることへの言及はない。感染症の2学会が患者の殺到を抑える方向で政府と足並みをそろえたことで、大学や医療機関の研究者は委縮し、一部の人を除いて異論を述べる勇気を失ってしまった。この両学会のトップ(理事長)は専門家会議のメンバーでもある。
●PCR検査が広く行えるよう政府に働きかけるのが学会の役目
 先の千葉県の開業医は、第一線の医療現場の声として、「両学会は、政府のやり方を補完するのではなく、早期段階でもPCR検査が広く行えるよう、政府に対して人員や物資の動員、体制整備、予算確保などに全力を尽くすよう強く求めるべきだった」と、疑問を投げかける。加藤厚労大臣は5月8日、「37.5度以上の発熱が4日以上」という相談・受診の基準について、「目安だったのに基準のように誤解されていた」と述べ、勝手に「誤解」した国民や保健所に責任があるとした。上記の基準は、検査を望む国民や医師に抑制の圧力をかけ、PCR検査体制の不備という厚労省の失態を隠すことに本当の狙いがあったのだろうと、今にして納得がいく。
●PCR検査が広く行えるよう政府に働きかけるのが学会の役目
 先の千葉県の開業医は、第一線の医療現場の声として、「両学会は、政府のやり方を補完するのではなく、早期段階でもPCR検査が広く行えるよう、政府に対して人員や物資の動員、体制整備、予算確保などに全力を尽くすよう強く求めるべきだった」と、疑問を投げかける。加藤厚労大臣は5月8日、「37.5度以上の発熱が4日以上」という相談・受診の基準について、「目安だったのに基準のように誤解されていた」と述べ、勝手に「誤解」した国民や保健所に責任があるとした。上記の基準は、検査を望む国民や医師に抑制の圧力をかけ、PCR検査体制の不備という厚労省の失態を隠すことに本当の狙いがあったのだろうと、今にして納得がいく。
●委員の発言記録がない専門家会議の議事録
 今、PCR検査は従来の保健所、地方衛生研究所、国立感染症研究所という行政ルートの他に、地元医師会や自治体が民間検査会社と組んで独自に検査体制を整えつつあり、ようやく改善の方向に向かっている。もっと早い段階でそう動くべきだった。政府の専門家会議については、委員発言の議事録がなかったことが最近明らかになった。内部でどんな議論があったのか、PCR検査抑制には誰がどんな意見を言ったのか、不透明なままだ。政府に助言する専門家会議の議事録は、後日、政府の対応を検証するための重要な資料である。議事録が政府や官僚に都合よく作文されないためにも、委員発言は正確に残しておかなくてはならない。

*7-2:https://www.jiji.com/jc/article?k=2020062700143&g=pol (時事 2020年6月27日) 専門家会議、唐突に幕 政権批判封じ?政府発表前倒し―新型コロナ
 新型コロナウイルス対策の方向性を主導してきた政府の専門家会議が突如、廃止されることとなった。政府が廃止を発表したのは、折しも会議メンバーが位置付けの見直しを主張して記者会見していたさなか。あっけない幕切れには、政権批判と受け取られかねないその提言を打ち消す思惑がにじむ。一連の経緯を検証した。
◇苦い経験
 「え?もう1回言って」。24日夕、東京都内で会見していた専門家会議の尾身茂副座長は、記者から西村康稔経済再生担当相が会議廃止を表明したことを問われ、戸惑いをあらわにした。専門家会議の見直し自体は、5月の緊急事態宣言解除前後から尾身氏らが政府に打診していたこと。この日の会見では、政府の政策決定と会議の関係を明確にする必要性を訴えていた。背景には「十分な説明ができない政府に代わって前面に出ざるを得なかった」(会議メンバー)ことによる苦い経験がある。会議は国内で流行が広がった2月、感染症専門家を中心に置かれ、「人と人の接触8割減」「新しい生活様式」などを次々と発表。政府は提言を「錦の御旗」とし、国民に大きな影響を及ぼす対策を実行に移した。その結果、専門家会議が政府のコロナ対応を決めているように映り、メンバーは批判の矢面にも立つことに。5月4日の安倍晋三首相の会見では、同席した尾身氏がPCR検査の少なさについて説明に追われた。会議の存在感が高まるにつれ、経済・社会の混乱を避けたい政府と事前に擦り合わせる機会が拡大。5月1日の提言では緊急事態宣言の長期化も念頭に「今後1年以上、何らかの持続的対策が必要」とした原案の文言が削られた。関係者は「会議の方向性をめぐりメンバー間でもぎくしゃくしていった」と明かす。
◇高まる相互不信
 揺れる専門家を政府は「どうしても見直すなら政府の外でやってもらう」(内閣官房幹部)と突き放していた。亀裂を表面化させない思惑が働いたことで最近になってから調整が進み、(1)会議の廃止(2)法的な位置付けを持つ新型コロナ対策分科会への衣替え(3)自治体代表らの参加―が固まった。当初は尾身氏らの提言を受け、25日に発表する段取りだった。それが覆ったのは24日の尾身氏らの会見直前。「きょう発表する」。西村再生相の一声で関係職員が準備に追われた。ある政府高官は西村氏の狙いを「専門家の会見で、政府が後手に回った印象を与える事態を回避しようとした」と断言する。専門家会議の脇田隆字座長や尾身氏には連絡を試みたが、急だったため電話はつながらないまま。「分科会とは一言も聞いてない」とこぼす専門家らに、内閣官房から24日夜、おわびのメールが送られた。後味の悪さが残る最後のボタンの掛け違い。会議メンバーの一人は「政治とはそういうもの。分科会で専門家が表に立つことはない」と静かに語った。

*7-3:https://www.bcnretail.com/news/detail/20191126_146567.html (BCNOR 2019/11/26) シャープ、業界唯一の「空気清浄機」付きエアコン 従来比99%ホコリ侵入抑制
 シャープは11月26日、業界で唯一、空気清浄機を搭載したプラズマクラスターエアコンの新シリーズ「Airest(エアレスト)」4機種を12月19日に発売すると発表した。「室内の空気清浄」と「本体内部の清潔性」を徹底的に追求し、空気清浄機の業界基準をクリア。従来比99%ホコリの侵入を抑制するなど、業界No.1の空気清浄力を持つ独特な今回の製品は、年末商戦の目玉になるかもしれない。Airestシリーズは、従来のエアコンの本体構造を抜本的に見直し、空気の吸い込み口全てを集じんフィルターで覆った新構造を採用。これにより、空気清浄機の業界基準をエアコンで唯一クリアした。税別の実勢価格は22万円前後からとしている。室内の空気だけでなく、集じんフィルターがカビ発生の原因となるホコリや菌を除去するので、本体内部を清潔に保つことができる。フィルターで除去できない、付着したにおいやカビ菌にも効果を発揮する「プラズマクラスターNEXT」も搭載し、最適な空気環境を実現する。掃除をする際は、引き出して手入れできる。吹き出し口には、シャープ独自の上下両開きロングパネルで気流を制御。大きなパネルで、風を感じにくい快適な気流を遠くまで届ける。暖房時はパネルを下から開き、風を抑え込んで足もとに暖かい風を送る。冷房時はパネルを上から開き、天井方向へ風を持ち上げて、風が直接体に当たらないように制御する。Smart Appliances&Solutions事業本部の中島光雄副本部長は、「『空気の浄化』がエアコンの基本機能として求められている。ただ、従来の構造では、空気清浄機を搭載するとそれが抵抗になり、風量が低下してしまう。しかし、新製品は当社の空気清浄機に搭載されている機構を採用したことで、フィルターを搭載しても風量を低下させないようにした。空気清浄機と呼ばれる唯一のエアコン」と紹介した。このほか、気象予報を活用したクラウドAIによる運転制御により、日中から睡眠時まで快適さを保つ機能などを搭載。気象予報で得られたデータを基に、花粉やPM2.5への対策として風量/センサーの感度を最適化する。また、COCORO AIRアプリと連携すれば、フィルターなど消耗品の状況や部屋の汚れ度合を確認することができる。

<電通への委託の意味は・・>
PS(2020年7月3日追加):新型コロナによる自粛で収入が減った中小企業に最大200万円支払う持続化給付金は、対象事業者が約200万もあるので、総額2兆円超の巨大事業だ。しかし、これは、経済波及効果のある前向きの投資ではなく、大損した人々にちょっと補填する程度の補助金で、そんなことをするよりも、ダイヤモンドプリンセス号への対応や検疫でしっかり防御し、技術力で検査数を増やして自粛に至らせなかった方が、よほど安上がりで今後の新製品開発に資したことは言うまでもない。
 そういう持続化給付金だが、*8-1のように、経産省は業務を(社)サービスデザイン推進協議会(以下“協議会”)という電通関連のトンネル会社を通じて丸ごと電通に委託した。その委託費は、協議会が経産省から769億円で受注し、97%にあたる749億円で電通に再委託し、電通は業務の大部分をその子会社5社に外注し、子会社のうち電通ライブはさらに協議会設立に関わったパソナやトランスコスモス等に外注した。つまり、協議会から再委託された費用749億円は、電通とその子会社及び協議会設立に協力した会社が入手したことになる。検査数を増やして陽性者だけ隔離すれば一斉自粛などする必要がなかった上、市役所や税務署を使うなど持続化給付金を支払う他の効率的な方法もあるのに、経産省は電通関係に749億円も支払ったわけだ。
 何故、こういう不合理な無駄遣いが起こるのかが最も重要で、それを解決しなければ国が破綻するまでこの無駄遣いは続くと思うが、経産省は多額の金を払って電通を味方につけておく必要があったようだ。その理由は、*8-2のように、新型コロナ騒動の間に原子力規制委員会が、2020年6月13日、日本原燃の使用済み核燃料再処理工場の事故対策が新規制基準に適合しているとする「審査書案」をひっそり了承し、本格稼働の前提となる新基準に事実上適合しているというお墨付きを与えたことだ。この間、メディアは電通の広告を通じた圧力が効いていたらしく、新型コロナに関する非科学的な報道を繰り返し、政治家の確定でもない買収疑惑に時間をさいたりしながら、原発には全く触れなかったが、このようなことは他にも多々あるのである。

   
 2020.4.15毎日新聞                        2020.6.4朝日新聞

(図の説明:1番左の図のように、日本は能力があったのにPCR検査を増やさず、左から2番目の図のように、感染者が増えて緊急事態宣言を出すことになった。そのため、営業自粛によって固定費を賄えない企業が続出し、企業が、右から2番目の図のような雇い止めや倒産に至るのを防ぐため、持続化給付金等が支払われることになった。しかし、コロナ関係支出は、1番右の図のように、第1次・第2次補正予算で総額約57.6兆円、持続化給付金だけで約4.3兆円にもなった)

*8-1:https://digital.asahi.com/articles/ASN6X5597N6XULFA008.html (朝日新聞 2020年6月29日) 問題だらけの持続化給付金 経産省と電通へ疑念止まらず
●経済インサイド
 新型コロナウイルスの問題で収入が減った中小企業などに最大200万円を払う持続化給付金。対象の事業者は約200万、予算総額は1次補正予算で2兆円超の巨大事業だ。新型コロナによるダメージが深刻になった3月末から、ばたばたと準備が進んだ。経済産業省は事業の手続き業務を民間に丸ごと委託することにした。事業者の公募を前に、経産省の担当者が複数回接触していたのが一般社団法人サービスデザイン推進協議会や電通の関係者だ。協議会は2016年に電通が中心となり立ち上げた。設立から経産省の事業を10件以上受注していた。経産省はコンサルティング会社「デロイトトーマツファイナンシャルアドバイザリー」などとも接触しており、協議会や電通側だけ優遇したものではないと説明する。だが、経産省の担当者が面会した回数や時間などを比較すると、協議会がデロイトなどより上回っていた。公募には協議会とデロイトが参加した。締め切り直前の4月13日、両者は企画提案書を経産省に提出。分量は合計400ページ近い。経産省はその翌日の午後2時に、協議会を落札予定者と決めた。持続化給付金をめぐる疑問が強まっている。経産省が事業を民間委託するやり方や、電通への再委託などについて多くの問題点が浮上した。経産省は改善するとアピールしているが、情報開示は不十分で、多くの疑問は解けないままだ。入札における評価指標でもある「等級」は、落札できなかったデロイトは最高の「A」、協議会は「C」。経産省中小企業庁の職員5人で提案内容を採点し、協議会を選んだという。外部の専門家らに意見は求めていなかった。
●電通のための「トンネル団体」?
 経産省は採点結果など、選んだ理由について詳しく説明していない。入札予定価格やデロイトの入札価格も非公表だ。経産省が選んだ協議会は、東京・築地のビルに拠をかまえる。この事務所の電話番号は非公開で、事務所の入り口にあったインターホンは取り外された。野党の国会議員らが訪れても職員らの応答はなかった。設立以来、法で義務づけられている「決算公告」もしていなかった。協議会は経産省から769億円で事業を受注した。委託費の97%分にあたる749億円で、業務の大半を電通に再委託した。電通は業務の大部分を子会社5社にそれぞれ外注。子会社の電通ライブはさらに業務を、大手人材サービス会社のパソナやITサービス大手トランスコスモスなどに外注していた。協議会設立に関わった企業だ。実態のない団体が利益を抜いて仕事を丸投げしたのではないか――。こんな疑問が広がった。国会では野党側が、協議会は電通が公的事業を担うための「トンネル団体」だと追及を続ける。経産省は民間委託にあたって、なぜこんなやり方をしたのか。電通に直接発注しなかった理由について経産省は「どのような態勢で事業を受託するかは事業者側の判断」との立場だ。その上で、梶山弘志経産相は会見などで、支給対象者に電通が給付していると勘違いされかねないこと、電通の経理上好ましくないことなどを挙げてきた。こうした説明は、野党側や識者から反論された。支給対象者への振り込み名義は電通ではなく、勘違いされる恐れは少ない。経理上好ましくないといっても、企業の会計処理上の問題であり、直接発注できない理由にはならないとの見方がある。電通側は直接受注しなかったことについて、6月8日の会見で「協議会が給付金事業の経験を持っていた」などと説明している。経産省や電通の説明は説得力に乏しい。協議会を挟むことで、電通が業務を担っていることや利益や経費の内訳を見えにくくする狙いがあったのではないか――。こんな疑念が生じている。野党側は経産省へのヒアリングを重ねた。協議会や電通の担当者を出席させることも求めたが、経産省は拒否した。
●電通はいくらもうかったのか
 大きな「なぞ」は、電通がいくらもうかっているのかだ。電通は749億円で協議会から再委託された業務を、子会社5社へ645億円で外注していた。電通本体の主な利益になるのが「一般管理費」だ。経産省の規定により、まず外注費645億円の10%の64・5億円が計上できる。そこに、電通本体が担う広報費や人件費計36億円の10%にあたる3・6億円も加算できる。合わせると約68億円に上る。ここから家賃や光熱費などの支出、消費税分などを引いて余ったお金が電通本体のもうけになる。広報など実際の業務でも、手数料などとして利益が出ている可能性がある。外注先の子会社5社の利益も考えられるため、電通グループ全体でいくらもうかるのか具体的な金額はわからない。電通の榑谷(くれたに)典洋・取締役副社長執行役員は6月8日の会見で、最終的な利益を見通すのは難しいとしながら、「我々が通常実施する業務と比較すると、低い営業利益になる。不当な利益を狙うのはルール上、不可能な構造だ」などと主張した。経産省が事業をきちんと把握できていないのではないかといった懸念もある。経産省と協議会が結んだ契約では、再委託先などを含む事業の実施体制を記した「履行体制図」を出すルールがある。実施体制が変わればすぐに届け出なければならない。契約当初の体制図には協議会を含め、経産省から見て3次下請け相当までの11事業者が記されている。実際にはコールセンター業務などで何段階にもわたって、委託・外注が重ねられていた。協議会は経産省に体制図の変更をすぐに届け出ないといけないのに、していなかった。5次下請けくらいまでの60以上の事業者を記した体制図が出されたのは、事業開始から1カ月半以上経った6月23日夜。関わる事業者はさらに増える可能性もあるという。契約では、個人情報や情報セキュリティーについて、委託・外注先を含めて責任者名や管理体制を届けることになっている。これも、きちんと行われていなかった。
●税金の無駄遣い、チェックできず
 経産省が事業の全体像を把握しておかないと、税金が無駄なく使われているのか、業務が適切に行われているのかチェックできない。給付が一部で遅れたが、多重下請け構造もあって経産省の監視は十分には機能せず、責任の所在もあいまいになっている。経産省は事業について「中間検査」をする方針だ。事業終了後には精算をして「無駄なお金が出ていれば返還要求をしていく」(梶山氏)という。だが、末端の下請け企業の業務内容まで見るのは難しい。支出した金額が、適正な水準なのかどうか判断するのも困難だ。全国の中小企業などにいち早く給付金を届けなければいけないこの事業。経産省には民間に頼らざるを得ない事情がある。経産省は地方に経済産業局があるものの、拠点数は比較的少ない。ハローワークがある厚生労働省や、税務署がある財務省など他の省庁に比べ、対応能力に余裕はない。民間への業務委託先として、経産省が頼りにしてきたのが電通だった。ある広告業界関係者は、電通の企画力の高さや仕事の速さは「図抜けている」とし、こう話す。「いざとなれば電通に頼めばいいという考えがあるのではないか」
●「前田ハウス」でパーティー
 民間委託そのものが悪いわけではない。ほかの省庁や自治体などでも取り入れられているし、行政の効率化につながるとの見方もある。委託する場合は公平に業者を選び、税金を適切に使って、国民から理解されることが大前提だ。ところが、今回の事業では、国民が疑問を持つようなことが次々に発覚している。事業の責任者である前田泰宏・中小企業庁長官が、2017年に米国でのイベントを視察した際に、会場近くに借りたアパートを「前田ハウス」と称して連日パーティーを開いた。そこには、電通出身で、当時は協議会理事だった平川健司氏も同席していた。前田長官は国会で平川氏との関係を聞かれ、このパーティーとは別に2回ぐらい食事をしたことがあることも明らかにしている。野党側は経産省と電通の「蜜月ぶり」を示すものだと追及している。持続化給付金とは別の経済対策「家賃支援給付金」をめぐっては、電通の圧力問題が波紋を広げる。電通の管理職で持続化給付金の事業を担当していた社員が、イベント会社テー・オー・ダブリュー(TOW)の社員に、ライバルの広告大手博報堂に協力しないよう発言していた。持続化給付金で電通から仕事を請け負うTOWの社員は、発言をまとめ下請け企業の担当者に対話アプリで送っていた。「事業に協力をした場合、給付金、補助金のノウハウ流出ととらえ、言葉を選ばないと出禁レベルの対応をする」「すいませんが、強制的にお願いしたい次第です」などの内容だ。家賃支援事業の公募には博報堂も参加したが、経産省が選んだのはリクルート。博報堂は落選した。
    ◇
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*8-2:https://www.tokyo-np.co.jp/article/16839 (東京新聞 2020年5月13日) 青森・六ケ所村 核燃再処理 新基準「適合」 規制委了承 稼働は見通せず
 原子力規制委員会は十三日の定例会合で、日本原燃の使用済み核燃料再処理工場(青森県六ケ所村)の事故対策が新規制基準に適合しているとする「審査書案」を了承した。本格稼働の前提となる新基準に事実上適合した。今後、一般からの意見公募や経済産業相への意見照会などを経て、正式適合となる。再処理工場では、原発の使用済み燃料から、再利用できるプルトニウムやウランを取り出す。燃料を繰り返し使う国の「核燃料サイクル政策」の中核施設とされ、適合は稼働に向けた一歩となる。ただ、適合後も設備の工事計画の審査が続くため、稼働時期は見通せない。核兵器に転用可能なプルトニウムの大量保有は国際社会から懸念を招きかねず、工場が完成しても、どれほど稼働できるかは不透明だ。原燃は二〇一四年一月に審査を申請した。耐震設計の目安となる揺れ(基準地震動)を最大加速度七〇〇ガルと想定。海抜五十五メートルにあり、津波の影響は受けないとした。再処理の工程で発生する溶液や廃液が蒸発し、放射性物質が拡散する事故などに備え、冷却設備や電源を強化したとしている。十三日の会合では、規制委事務局の担当者が審査内容を説明し、五人の委員がそれぞれ重大事故対策などについて問いただした。最後に更田豊志(ふけたとよし)委員長が「審査結果に異存はないと考えてよいか」と問い掛け、委員から異論は出なかった。
◆「核燃サイクル」必要性に疑問
 建設費は当初計画の四倍の約三兆円、完成延期は二十四回、着工して二十七年でも未完成-。原発の使用済み核燃料の再処理工場(青森県六ケ所村)。民間企業ならば断念していたはずの施設が、稼働の条件である原子力規制委員会の審査を事実上通過した。繰り返し核燃料を再利用できるかのように宣伝してきた「核燃料サイクル」という夢のような政策を実現する要の施設は、稼働の必要性に大いに疑問がある。東京電力福島第一原発事故後、五十四基稼働していた原発は廃炉が相次ぎ、規制委の審査で再稼働したのは九基。今後再稼働する原発が増えたとしても、再処理で取り出したプルトニウムとウランを混ぜて作るMOX燃料を使える原発は限られ、消費量が少ない。また、MOX燃料のみを使うはずだった高速増殖原型炉もんじゅ(福井県)は廃炉。再生可能エネルギーが台頭する中、政府は原発の新増設を打ち出しておらず、高コストのMOX燃料を使う経済性に欠ける。消費者が支払う電気代が元となった約十四兆円という巨費が投じられてきた核燃料サイクルは、実現困難で破綻が明らかだ。ただ、再処理撤退も簡単ではない。最大の壁は、六ケ所村内に貯蔵されている大量の使用済み核燃料が「核のごみ」になること。青森県との取り決めで県外に運ぶ必要があるものの、各原発に置き場がなく、最終処分場は確保の見通しすらない。夢に固執したツケが重くのしかかる。
<核燃料サイクル政策> 原発の使用済み核燃料からプルトニウムやウランを化学処理(再処理)で抽出し、混合酸化物(MOX)燃料として再利用する政策。燃料の有効利用が目的で高レベル放射性廃棄物の量も少なくなるとされるが、中核となる再処理工場の完成が遅れ、各地の原発で使用済み燃料がたまり続けている。政府、電力業界は普通の原発でMOX燃料を使うプルサーマル発電を進めるが、東日本大震災以降、実施したのは4基にとどまる。

<ふるさと納税訴訟の最高裁判決は当然だった>
PS(2020年7月4日追加):*9-1のように、(私が提案してできた)ふるさと納税制度から除外した総務省の決定は違法として、泉佐野市が決定取り消しを求めていた訴訟の上告審判決で、最高裁第3小法廷(宮崎裕子裁判長)が、6月30日、国側勝訴とした大阪高裁判決を破棄して総務省の決定を取り消すよう命じた。宮崎裕子裁判長の判決は法治国家なら当然のことであり、これまで国側勝訴としていた大阪高裁の男性裁判長は法律に遡及効がないことを知らなかったのかといぶかしく思い、いくつもの行政訴訟でまともな判決を出された宮崎裕子裁判長には敬意を表する。この訴訟の内容は、*9-2のように、「①総務省が『寄付額の30%以下の地場産品』」を返礼品の基準とする地方税法を2019年6月から開始し」「②法施行前に遡って、基準外の返礼品で寄付を集めていた泉佐野市などをふるさと納税制度から締めだした」ことが妥当か否かであり、法律に遡及効はないため、宮崎裕子裁判長が「総務省の決定を違法として取り消す」としたのは筋の通った、しかし勇気のいる判決なのだ。
 泉佐野市は、*9-3にも書かれているように、i)地元関西空港に拠点を置く格安航空会社(LCC)の航空券購入に使えるポイント ii)アマゾンのギフト券 などを返礼品とすることによって寄付額を伸ばし、2017年度から2年連続で全国一の寄付を集めたことが問題視されたが、私は、i)については地場産品と見做してよいと考える。
 それよりも、工夫して寄付金を集めると「③返礼品競争の過熱がいけない」「④高所得者ほど得をする仕組みがいけない」「⑤ランキング形式で返礼品を紹介する仲介サイトの存在がいけない」「⑥制度を廃止せよ」など、無駄遣いが多くて工夫のない都市部から苦情が起こり、そちらが優先されたことの方がよほど大きな問題だ。何故なら、③の返礼品については、それぞれの自治体が自慢できるものを出して地場産を磨いた方が国全体のGDPが上がる上、その中には、農水産物だけでなく、LCC航空券や音楽会への入場券等があっても不思議ではないからだ。また、④の高所得者ほど得をするというのも変で、高所得者を大人になってから受け入れた自治体の方がずっと得しており、高所得者になるまで育てたふるさとが、個人住民税所得割額の約20%(https://furusatoplus.com/info/003/ 参照)を上限としてふるさと納税を受けても全くおかしくなく、その高所得者の老親もふるさとでケアされているのに、何と利己主義なことを言っているのか。さらに、⑤の競争がいけないというのは共産主義経済が破綻した理由そのものであり、⑥の制度廃止を唱える人やメディアがあるのは、逆切れとしか言いようがない。なお、「返礼品を廃止せよ」という声もあったが、そう言った本人は九州豪雨などに返礼品なしでいくら寄付するのか、また全体でいくら寄付が集まるのか見ものだ。

*9-1:https://www.sankeibiz.jp/workstyle/news/200630/cpd2006301615002-n1.htm (産経BZ 2020.6.30) 泉佐野市の除外決定を取り消し ふるさと納税訴訟の最高裁判決
ふるさと納税制度から除外した総務省の決定は違法だとして、大阪府泉佐野市が決定取り消しを求めた訴訟の上告審判決で、最高裁第3小法廷(宮崎裕子裁判長)は30日、除外に違法性はないとして国側勝訴とした大阪高裁判決を破棄し、総務省の決定を取り消すよう命じた。泉佐野市の逆転勝訴が確定した。高裁判決などによると、泉佐野市は地場産品以外の返礼品に加えアマゾンのギフト券を贈る手法で寄付を募り、平成30年度に全国の寄付総額の約1割にあたる約497億円を集めた。総務省は昨年6月の改正地方税法施行に伴い「返礼品は寄付額の3割以下」などの基準を設定した新制度をスタート。法改正前に高額な返礼品で多額の寄付を集めた泉佐野市など4市町の参加を認めなかった。

*9-2:https://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-1148085.html (琉球新報社説 2020年7月2日) ふるさと納税国敗訴 後出しルール許されない
 ふるさと納税の新制度から大阪府泉佐野市を除外した総務省の決定を巡る裁判で、最高裁は6月30日、国勝訴とした大阪高裁判決を破棄し、総務省の決定を違法として取り消した。泉佐野市の逆転勝訴が確定した。特定の地方自治体を排除しようとした国の強権的な手法を厳しく批判した内容であり、妥当な判決だ。法廷闘争の原因は、ふるさと納税を巡る自治体間の寄付獲得競争の過熱だ。豪華な返礼品を呼び水に寄付を集める自治体が相次ぎ、制度の本来の趣旨とは違う運用のゆがみが目立っていた。こうした過度な競争を防ぐ目的で、国は2019年3月に地方税法を改正する。総務省は「寄付額の30%以下の地場産品」を返礼品の基準とする新制度を同年6月から開始し、それまでに基準外の返礼品で寄付を集めていた泉佐野市などをふるさと納税の制度から締めだした。国の方針に従わなかった自治体に対し、新たな法制度を作り、施行前にさかのぼって責を負わせることが許されるのかが裁判の焦点になった。最高裁の示した判決は明確だ。「新制度移行前の募集実態を参加可否の判断材料にするといった趣旨はない」と改正地方税法の解釈を示し、過去の多額な寄付金集めを理由とした総務省の除外決定は違法と結論付けた。新しく作ったルールを過去にさかのぼって適用することを認めてしまえば、国の意に沿わない自治体を「後出しじゃんけん」でいくらでも狙い撃ちできることになる。2000年施行の地方分権一括法で、国と地方の関係は「上下・主従」から「対等・協力」へと改められている。国の技術的助言に従わないからといって、地方自治体に不利益な取り扱いをすることは許されない。寄付集めをエスカレートさせた泉佐野市に眉をひそめる部分があるとはいえ、自治体に対する国の関与は法的な根拠が厳格でなければならない。今回の判決は、地方自治や分権改革の成果を保持したという観点で評価できる。ふるさと納税制度も本来は、東京一極集中の税収格差を是正する地方自治の仕組みとして導入された。だが、自治体同士で税を奪い合い、地方間で新たな格差や分断を生むという矛盾を来している。泉佐野市はインターネット通販大手アマゾンのギフト券などを贈り、18年度に全国一の498億円の寄付を集めている。地域外の特産品や高額な返礼品でなりふり構わず寄付を集める手法に、最高裁も「社会通念上、節度を欠いていたと評価されてもやむを得ない」と苦言を呈している。制度導入時から想定されていた弊害を放置し、制度を進めてきた国の責任は大きい。ふるさと納税制度の見直しとともに、地方自治を保障する税制の在り方について本質的な議論を進めたい。

*9-3:https://kumanichi.com/column/syasetsu/1510003/ (熊本日日新聞 2020年7月2日) ふるさと納税判決 国と地方の関係再確認を
 ふるさと納税の新制度から除外された大阪府泉佐野市が起こした訴訟の上告審判決で、最高裁は請求を棄却した大阪高裁判決を破棄し、国の除外決定を取り消した。返礼品を巡る法規制が始まる昨年6月より前に、市が国の基準に従わず多額の寄付を集めてきた点を国が除外の理由としたことが争点となった。国側は過去の実績を判断材料とすることには合理性があると主張したが、最高裁は新制度が始まる以前の寄付金の集め方を問題にしたのは違法とし、除外決定は無効と判断した。確かに、寄付を“荒稼ぎ”する市の手法は、生まれ故郷などを応援するというふるさと納税制度の趣旨から外れている。とはいえ、意に沿わない自治体を狙い撃ちするかのように排除した国の姿勢は、地方分権の方向性を自ら打ち消すようなもので、あまりに強権的だった。国と地方は「対等・協力」の関係である。最高裁の判断を、そのことを再確認する機会としたい。ただ、市の寄付集めを巡っては、国が懲罰的に実施した特別交付税減額の取り消しを求める訴訟もあり、対立はなおも続く。制裁と反発を繰り返す実りなき対立は速やかに終わらせ、制度の立て直しを図るべきだ。2008年創設のふるさと納税制度で、泉佐野市は地元の関西空港に拠点を置く格安航空会社(LCC)の航空券購入に使えるポイントや、ネット通販大手のギフト券を返礼品とすることで寄付額を伸ばし、17年度から2年連続で全国一となった。こうした動きを問題視した総務省は返礼品の規制を本格化。17年4月には「調達費は寄付額の3割以下」、18年4月には「地場産品に限る」とする基準を設け、自治体に通知した。市は「一方的な押し付け」と反発。地場産品に限定すると自治体間に格差が生じるとして「自治体や有識者らを交えて議論すべきだ」と訴えた。だが総務省は耳を貸さず市への交付税を減額。基準に従う自治体だけを参加させる新制度から市を除外した。市も返礼品にギフト券を上乗せし、駆け込みで多額の寄付を集めて対抗した。その後、国地方係争処理委員会が除外決定の再検討を勧告したが、総務省は応じなかった。税収の奪い合いをここまで過熱させた責任の一端は国にもある。15年に減税対象となる寄付の上限を2倍にしたが、返礼品競争への対応では後手に回った。制度設計が甘かったと言わざるを得まい。税収の東京一極集中を是正し、高齢化や財政難にあえぐ地方の自治体を支援するという制度の趣旨に異論はない。ただ、返礼品に限らず、高所得者ほど得をする仕組みや、ランキング形式で返礼品を紹介する仲介サイトの存在など、現行の制度が多くの課題を抱えていることも事実だ。国は一方的に地方を従わせるのではなく、独自性を尊重し、不満の声にも耳を傾けながら最良の道を探るやり方で制度を立て直してもらいたい。

<人口分散と高速鉄道の必要性>
PS(2020年7月5日追加):関東はじめ都市に人口が集中し、混雑・地価の高騰・水不足・保育所不足などの問題が起こっている理由は、日本政府が多額の資本を投下してこれらの地域を整備し、工場や企業がこの地域に立地して雇用吸収力が高くなったため、生産年齢人口がここに流入したからである。一方、地方は育てた子どもを都市に送り出し、生産年齢人口が減少して平均年齢が上がったのであるため、地方で税収が伸びない理由は、その地方の努力不足というより政府の資本投下の結果なのだ。そのため、私は、既に人口が集中して混雑し、地価高騰・水不足等が起こっている地域に追加投資するよりは、ゆとりのある地方に資本投下した方が、日本全体としては資本効率がよいと考える。
 そのような中、*10-1のように、新型コロナ禍を契機に、中国山地への移住者を増やして都市への一極集中を是正しようというウェブ会議がインターネット上で開かれ、「①小規模分散型の社会を中国山地から構想する」「②住民の繋がりが強いのが地域の魅力」「③里山の恵みや自然に囲まれて子育てできることも魅力」とアピールしているのは面白い。
 地方の産業には、農業・漁業のほか、最近は森林管理や林業も加わっているが、それに加えて、*10-2の北フランスのように、日本企業や海外企業の進出を促すのもよいと思う。北フランス地方は、地理的優位性・豊かな生活・「TGV」を使ったアクセス・(フランスで最上級の病院を含む)あらゆるインフラの整備・コストの安さが強みだそうだ。日本の地方にも、これに似た地域は多く、バイオ・健康産業・栄養関連・デジタル産業や最先端の研究施設も、豊かで雑音が少なく環境の美しい田舎にあった方が働きやすそうだ。
 また、いつもウェブ会議やリモートワークばかりでは足りないものがあるため、高速鉄道によるアクセスの良さも重要だ。しかし、*10-3のリニア中央新幹線は、工事に伴う大井川の流量減少のみならず、陸上を走るのに地下ばかりで魅力に乏しい上、地震や噴火の際に危険だ。なお、リニアは地下しか走れない乗り物ではないため、「富士山を見つつ」「大井川を渡りつつ」など、高架を走って東海道の美しい景色を見せた方が、大井川の流量減少も起こらず、楽しみながら移動できると思われる。

  
     リニア中央新幹線(予定)     ゆりかもめ   上海のリニアモーターカー

(図の説明:1番左の図のように、リニア中央新幹線は東海道新幹線に似たルートの地下を走る予定なので、大井川の流量減少問題が出た上、左から2番目の図のように、窓が少なくて速いだけの乗り物となっており、地下を走ることによる危険性もある。しかし、リニアは、右から2番目の図の「ゆりかもめ」のように高架を走ることもでき、1番右の図のドイツの技術を採用した上海のリニアモーターカーは、「浦東国際空港⇔上海の地下鉄2号線『龍陽路駅』」間の陸上30kmを約8分で結んでおり、私も乗ったことがあるが快適だった)

*10-1:https://www.agrinews.co.jp/p51262.html (日本農業新聞 2020年7月5日) 中国山地移住者増へ 「魅力発信」ネットで議論
 新型コロナウイルス禍を契機に、都市への一極集中を是正し、中国山地への移住者を増やしていこうというシンポジウムが4日、インターネット上で開かれた。中国地方各地で活動するパネリストが、地域の魅力をどう発信するかなどについて議論した。中国山地に関する雑誌を製作する中国山地編集舎が主催した。ビデオ会議アプリを使い、約200人が参加した。持続可能な地域社会総合研究所の藤山浩所長は基調報告で、コロナ禍で都市に一極集中した大規模経済のもろさが露呈したと指摘。地域の魅力である「地元の力」を見直し、「小規模分散型の持続可能な社会を中国山地から構想していこう」と呼び掛けた。「地元から暮らしと世界をつなぎ直す」をテーマにした座談会では、鳥取県智頭町で森の中で園児を育てる幼稚園職員や山口市で小さな拠点づくりに取り組むNPOの事務局長ら7人が議論。都市住民がコロナの影響が少ない地方への移住に関心を寄せているとして、住民のつながりが強い地域の魅力をどんどん発信すべきだといった声が出た。アピールする中国山地の魅力として、里山の恵みや自然に囲まれながら子育てできることなどの意見が挙がった。

*10-2:https://toyokeizai.net/articles/-/9341 (東洋経済 2012/6/8) 年間3000人の雇用創出目指し海外企業誘致に傾注、北フランス地方投資促進開発局CEOに聞く
 北フランス(ノール・パ・ドゥ・カレ)地方には多くの海外企業が進出。トヨタ自動車がヴァランシエンヌに工場を構えるなど、日系企業の拠点立ち上げも目立つ。来日した北フランス地方投資促進開発局のヤン・ピトレ最高経営責任者(CEO)に直接投資誘致の現状などを聞いた。
●北フランス地方の最大の強みはなんですか。
 地理的な優位性でしょう。欧州でも非常に生活が豊かであり、経済発展を遂げた地域の中心に位置しています。アクセスの面でも恵まれており、仏の新幹線「TGV」を使えば、中心都市のリールからロンドンまで80分。ベルギーのブリュッセルまで35分。ドイツのケルンまでは2時間35分で行くことができます。リール~シャルル・ド・ゴール空港間は50分。「成田エクスプレス」に乗車すると、JR東京駅から成田空港までの所要時間は59分でしょう。それよりも短い。とても便利ですよ。日系企業が北フランスへ進出を考えているのであれば、パリ、ロンドン、ドイツのフランクフルトなどの代替地としても最適です。生活の質は高く、しかも、あらゆるインフラが整備されている。フランスで最上級の病院もあります。にもかかわらず、コストは欧州の他の主要都市に比べて低い。北フランスが「欧州の玄関口」と称されるゆえんです。
●北フランス地方の従業員の給与水準や賃料はパリよりも低いようですが、フランス国立統計経済研究所(INSEE)のデータによると、北フランス(ノール・パ・ドゥ・カレ)の失業率は10%を超えています。2011年10~12月期は12.7%に達し、フランス全国の平均や(パリのある)イル・ド・フランス地方、(フランス第2の都市リヨンがある)ローヌ・アルプ地方の水準を上回っています。これらの地域に比べて給料が安いのは、失業率が高いからではないですか。
 北フランス地方の失業率が高いのは若い人たちが多く住んでいるためです。人口の34%が25歳以下。仏国内では1位です。全国平均だと、25歳以下の人たちは31%にとどまっています。フランスでは若者の職探しが難しくなっています。だから、どうしても北フランスの失業率は高くなる。フランスでも南の地域へ行けば、退職者が多く暮らしているでしょう。失業者は少ないから問題ない。数字はそうした状況を反映しているにすぎません。パリで暮らせば賃料はリールの2倍。オフィスを借りると4倍です。生活費などが高い分、雇っている人には余計に給料を払わなければならない。イル・ド・フランス地方にはさまざまな企業が本社を構えている。リールもそう。でも、パリに比べて従業員の質が劣っているわけではありません。それなのに、給与水準は低い。失業率と給与水準はパラレルな関係ではないと思います。マクロ経済の観点からすれば、失業率が高ければ給料は下がるかもしれません。しかし、現実は違う。ベルギー南部の(フランス語圏の)ワロニー地域の給料は北フランスよりも20%程度高い。でも、失業率もそんなには低くないのです。雇用環境の厳しさは北フランスよりもはるかに深刻。失業率と給与水準に相関関係はないと見ています。
●北フランス地方への直接投資の現状は。
 海外からの投資誘致ではずっと追い風が吹いています。直接投資の受け入れではフランスで(イル・ド・フランス、ローヌアルプに次ぐ)第3の地域。北フランスは欧州随一の購買力を備えています。テクノロジーの面でも大きな可能性があります。研究開発には積極的です。今日では直接投資の中身も徐々に多様化が進んできました。この地域は伝統的に多くの産業の投資を受け入れてきました。自動車、鉄道などの分野です。そうした領域の投資は今も続いています。一方、最近は第3次産業、特にサービスセクターの投資も増えてきました。最先端のセクターでの投資もあります。(製薬会社の)英国グラクソ・スミスクラインの研究施設もつい最近、オープンしました。
●北フランスの産業には栄枯盛衰があったと聞きました。
 歴史を話そうとしたら1日経ってしまうかもしれません(笑)。19世紀には炭鉱がありました。製鉄や繊維産業の中心としても栄えていました。「繊維」といっても、生地製造というクラシックな分野です。今日では忘れられてしまいましたが、実はフランスで最初に航空機製造を手掛けたのもこの地域なのです。だが、1914年から4年にわたって続いた第1次世界大戦では戦場と化してしまいました。ベルギーとの国境に位置し、侵略を受けた地域でした。これを受けてフランス政府は第1次大戦後、軍需、航空機、機械など戦略的産業を南へ移転させました。トゥールーズが航空機産業の中心都市になったのもそのときからです。第2次大戦後は旧ソビエト連邦の脅威にさらされました。1970年代に入ると、大きな経済構造の変化に直面しました。炭鉱の閉山や繊維産業の移転。そして、鉄鋼業の斜陽化に伴う大規模なリストラの実施。このため、別の成長のタネを探し出さなければならなかったのです。目を向けたのは新しい産業。ただ、伝統的な領域でも大きな雇用吸収力を有する産業が残っています。鉄道がその一つ。自動車産業も工場の進出が加速するなど賑わいをみせています。鉄道産業では現在、フランス第1の地域。自動車では2番目の地域です。ロジスティクスやバイオテクノロジーでは3番目。農産物加工品では第4の地域です。一方で、新興型の産業も台頭しました。バイオテクノロジー、健康産業、栄養関連…。ただ、その歴史は古く、19世紀末にはパスツール研究所が設立されました。フランスの偉大な研究者パスツールの研究所です。今は健康関連のクラスターや大規模な大学病院のコンプレックスが存在しています。リールには「ユーロ・リール」と呼ばれるオフィス街もあります。パリの「デファンス」に次いで開発が行われた2番目のオフィス街です。フランスの第3次産業にとっては極めて重要な場所です。さまざまな企業の地方統括機能が集中しているうえ、保険会社や銀行もあります。繊維産業は進化し、先端製品を製造する会社が増えています。ただ、伝統的なテクノロジーに依存した会社が消えてしまったわけではありません。英国のウィリアム王子と結婚したキャサリン妃のウェディングドレスを作った「ダンテル・ドゥ・カレー」の生産拠点もありますよ。彼女は英国ではなく、北フランスで注文を出したんですよ(笑)。
●テレビゲームや3D技術などデジタル関連の企業も多いですね。
 トヨタの工場があるヴァランシエンヌには、「スプインフォコム」というデジタル産業で世界中に名の知られた学校があります。ヴァランシエンヌの商工会議所は「デジタル作品やビデオゲームの領域で世界ナンバーワンの学校を作った」と言っています。「スプインフォゲーム」という名の学校もあります。ピクサー、ドリームワークス、ソニー、イルミネーション・スタジオなど米国を代表するスタジオが学校の卒業生を採用しています。オンラインゲームの運営などを手掛ける「アンカマ」は4人の社員で立ち上げましたが、今では500人規模の会社に成長しました。リールに程近いところに「プレーヌ・イマージュ」というデジタル産業の集積するクラスターがあります。赤レンガ造りの建物で、「アンカマ」の本社もそこにあります。かつて工場があった場所で、敷地は2万5000平方メートル。リール市が誘致を決めました。「レイルニウム」という鉄道インフラを研究するための機関もあります。これも行政がイニシアチブを発揮。未来の鉄道インフラ作りを考えようという野心的なプロジェクトで、2017年の利用開始を目指しています。予算は5億ユーロ超。政府や地方自治体が資金を拠出。仏アルストム、カナダのボンバルディエ、独シーメンスなど鉄道関連の企業がこのプロジェクトに着目、拠点を設けています。
●海外企業の誘致で数値目標はありますか。
 日系企業は現在、49社が進出しています。これを何社にするといった目標を掲げるのは難しい。海外企業誘致の面でフランス第3の地域の座を維持するのが目標です。雇用面では日系を含めた海外企業を迎え入れることで、年間3000人に新たな職場を提供したいと考えています。
●オランド氏が大統領に就任しましたが、海外企業の誘致政策になんらかの変化は。
 それを語るのは早過ぎます。就任してからまだ、数週間です。選挙戦でも直接投資の受け入れ方針をめぐって何らかの発言があったとは聞いて言いません。

*10-3:https://www.at-s.com/news/article/topics/shizuoka/781771.html (静岡孫文 2020/7/2) トップ会談後ネットに相次ぐ静岡県批判 「駅ないからごねてる」、リニア不要論も 大井川水問題
 リニア中央新幹線工事に伴う大井川の流量減少問題を巡って26日に行われた川勝平太静岡県知事とJR東海の金子慎社長による初のトップ会談の後、インターネット上で「静岡県がごねている」と批判するコメントの書き込みが相次いでいる。県や流域市町はJRの対応が着工を遅らせているとの立場だが、ネット上では県側が着工を妨げているとの論調が目立ち、水問題を巡る地元の認識との隔たりが浮き彫りになっている。「ごねている」と書き込んだ人の多くが「静岡県にはリニアの駅がない」ことを理由に挙げる。中には県内に駅が造られないため、JRへの報復で水問題を使っているという趣旨の書き込みも。全国の注目を集めたトップ会談で、2027年のリニア開業延期が不可避となったため「静岡県のせいでリニア開業が遅れた」との主張も多数あった。一方「JR自身が着工を遅らせているように見える」などJRへの批判も以前より目立つ。新型コロナウイルスの影響でテレワークやテレビ会議が普及する中、「リニア自体が不要」の声も少なくない。「自然破壊するリニアは今や時代遅れ。リモートはリニアより速い」とのコメントは多くの支持を集めた。トップ会談でも川勝知事が「静岡県が27年開業の足を引っ張っているかのごとき発言を繰り返されている」と金子社長を非難する場面があった。金子社長は「静岡県のせいと言っているのではない」としながらも「最初に(静岡工区の工事の)締め切りが来てしまう」と静岡工区の着工遅れが開業遅れに直結する点を指摘した。

| 男女平等::2019.3~ | 10:28 PM | comments (x) | trackback (x) |
2020.6.9~15 日本の医療・社会保障と消費税 (2020年6月16、18、21、22日追加)
    

(図の説明:左と中央の図のように、米国とフランスでは、新型コロナの流行期に超過死亡率が発生している。これは、検査数が足りず、患者の把握が不十分であれば当然生じるものだが、日本では、右図のように、3月以降の超過死亡率は公表されていない)

(1)医療崩壊を加速させた消費税制 ← 医療費を消費税非課税取引とした失政
 健康保険等の保険が適用される医療費・薬代は非課税取引とされているため、患者が医療機関で保険を使って診療を受けた場合に支払う医療費には消費税が加算されない。しかし、病院が購入した財・サービスの仕入れには普通に消費税がかかり、非課税売上に対する仕入税額控除はできないため消費税を転嫁できず、消費税分をすべて医療機関が負担することになっている。(https://www.nta.go.jp/m/taxanswer/6205.htm 参照)

 これは他産業と比較して著しく不公平・不公正であるため、「保険が適用される診療だから消費税を課さない」ということを貫徹するのなら、非課税取引ではなく0税率の課税取引か免税取引として医療機関が支払った消費税は医療機関に還付すべきだ。この不公平・不公正税制により、コロナ禍以前から病院経営は圧迫され、医療機関の弱体化や危機は起こっていたが、これが続くと、既にある医療システムが崩壊するとともに、医療従事者の質が落ち、国民の命がさらなる危険に晒される。

 この点について、*1-1のように、日本病院会が、「(現場を知らない素人の思い付きで部分的に行われる)診療報酬への上乗せでは不公平・不公正を解消できないため、課税化への転換などの抜本的措置を2020年度の税制改正で行うべきだ」と2019年8月7日に、2020年度税制改正要望を根本匠厚生労働大臣に宛てて提出したが、今のところ無視されている。

 なお、一つの医療法人が、「医療福祉」と「その他の産業」の双方を事業として行っている場合は、他の産業と同様、仕入れを売り上げに紐づけしたり、案分したりして計算するのが適切だと考える。そのほか、(何故か)著しく高価な医療器械の購入や個室・陰圧を標準とした病室への設備投資を促進する税制を拡充し、特別償却や加速償却を可能にすることも重要だ。
 
 さらに、基幹病院として公的運営が担保された医療法人は、赤字になっても維持しなければならない診療科や病床があるため、国もしくは地方自治体からの補助金や寄付制度が必要である。

 このように、不公平・不公正な消費税制のため、*1-2のように、全国の国立大病院42カ所で、高度な医療機器やベッド等の購入時に支払った消費税を診療費に転嫁できず、2014~18年の5年間に計969億円を病院側が負担していることがわかったそうだ。このほか、診察に使う機器やガーゼなどの消耗品は病院が購入時に消費税も支払うが、病院の負担になっている。私大の付属病院はじめその他の病院でも同じことが起こっている。そのため、病院側はコスト削減の工夫を重ねているそうだが、医療器具は日本とは思えない粗末なものが多く、衛生器具を節約するのは危険であるため、まずは消費税制の不公平・不公正を解消すべきだ。

 JA厚生連の病院も、*1-3のように、経営状況が厳しいそうだが、消費税10%への増税で医業収益が減っていたことに加えて、新型コロナの影響で予定した手術や入院の延期、一般外来診療の縮小などで医業収益が減収になっているのだ。基幹病院は、いつでも満床では困るのであって、普段から空床確保分も含めた診療報酬を支払っておくべきだ。そのため、新型コロナで初めて思ついたように、減収支援・医療従事者への危険手当・医療物資や機器の配給体制・病院が赤字続きで地域医療が崩壊しないようにしなければならない等々と言っているのは、近年の厚生行政の失敗にほかならない。

(2)新型コロナの検査抑制による医療崩壊
1)人命よりも行政の組織防衛優先の考え方
 確かに、安倍首相や官邸は「しっかりやります」と繰り返したが、*2-1のように、厚生労働省の動きは一貫して鈍く、PCR検査は1日2万件に届かなかった。その背景にあったのが国立感染症研究所が感染症法15条に基づいて2020年1月17日に出した新型コロナの「積極的疫学調査実施要領」で、「患者(確定例)」と「濃厚接触者」のみが検査対象とされた。

 検査体制への不満が広がると、2月6日に出した要領の改訂版で初めて対象者に「疑似症患者」が加わったが、「確定例となる蓋然性が高い場合には積極的疫学調査の対象としてもよい」という限定付きで、その姿勢は2020年5月29日の最新版でも変わらないそうで、非科学的この上ない。しかし、厚労省が実質的に所管する各地の保健所などもこの要領に従い、濃厚接触者に検査の重点を置いたため大都市中心に経路不明の患者を増やし、日本全国で外出を自粛しなければならない羽目になった。

 厚労省は、自らが適当に作ったルールにこだわり、現実との齟齬を無視するような感染症対策の失敗は今回が初めてではなく、2009年の新型インフルエンザ流行時も疫学調査を優先してPCR検査を感染地域からの帰国・入国者に集中して、いつの間にか国内で感染が広がり、神戸で渡航歴のない感染者が見つかって関西の病院を中心に人々が殺到し、2010年にまとめた報告書で反省点を記した。

 その内容は、「保健所の体制強化」と「PCR強化」だそうだが、保健所を通したことがPCR検査が目詰まりになった原因だ。官邸で「大学病院も検査に使えば」との声が出ても、厚労省は文科省が絡む大学病院での検査拡充に及び腰で、首相が「使えるものは何でも使えばいいじゃないか」と語っても組織防衛の方が優先する意識では、厚労省は命を託すに足りない組織なのである。さいたま市の保健所長は、「病院があふれるのが嫌でPCR検査は厳しめにやっていた」と話したが、これは事実だろう。

 19世紀に始まった日本の官僚機構は、日本が後進国で先進国の欧米諸国を目標にして駆け抜ければよかった時期には強力に機能したが、日本が先進国となり自らがモデルを作らなければならなくなってから機能しなくなった。その理由は、官僚機構は、前例や既存のルールにしがみつきがちで、目の前の現実を把握し、それに対応しながら工夫して新しいものを作りだすことが苦手な組織だからである。

 政府が有効な対策を打たなかったため、コロナ第2波に備えて必要なのは「日本モデル」の解体だと、*2-2は主張している。ただし、原因は、安倍首相ではなく、厚労省はじめ行政であり、わずか1か月半で今回の流行をほぼ収束させることができたのは、検査すら十分に行わないため国民が危機感を感じて自粛したという「日本ならではのやり方」だったのだ(!)。

 こうなった理由は、COVID-19が指定感染症に指定されたためで、これにより「①感染者は無症状でも強制入院となり」「②厚労省はこの時COVID-19の無症状感染者の存在を想定しておらず」「③厚労省が指定感染症に指定する4日前の1月24日には、『ランセット』が無症状の感染者の存在を報告する香港大学の研究者たちの論考を掲載していた」のだそうだ。さらに、「④無症状者も入院させなければならないため早くから病院体制の崩壊が心配され」「⑤これがPCR検査の大幅抑制に繋がり」「⑥厚労省担当課の勉強不足と不作為が国家的悲劇を生み、国立感染症研究所・保健所・地方衛生研究所が束になって行ったのが『日本モデル』」なのである。

 また、「⑦新型コロナ襲来に、国立感染研と保健所、地方衛生研究所の体制は殆ど歯が立たず、多くの『超過死亡』を出したが根拠となる数字の説明がなく」「⑧PCR検査による新規感染者数はCOVID-19の感染の勢いを正確に映していない恐れがあるため、『ランセット』が単純な超過死亡数をリアルタイムで活用することを求めており」「⑨体制としての保健所の限界は、PCR検査体制についても、発熱してからPCR検査を受けるまでに10日間を要し、指定された保健所に電話しても何日間も繋がらないという状況だった」のだ。従って、保健所の人員を増やすのではなく、検査に保健所の仲介をなくすことが必要不可欠なのである。

2)検査抑制による医療機関の外来診療拒否と重症化は、医療崩壊そのものである
 PCR検査が抑制されたことによって、*2-3にも、「⑩留学先のカナダから帰国して間もない女性が39度近い熱を出したが、医療機関4カ所から外来受診を断られ、保健所の相談電話も繋がらず、内臓疾患だったことが判明した」「⑪日本は諸外国と比べて検査数が少ないと批判が高まり」「⑫政府は検査能力を増強したが、目標の『1日2万件』を達成したが、実際の検査数は半数にも満たなかった」「⑬同様の事例が各地で相次ぎ、相談してもPCR検査まで至らないケースも多かった」という状況になった。

 重症化リスクのない人にはPCR検査は不要だと何度も聞かされたが、*2-4のように、新型コロナの感染者が心臓・脳・足などの肺以外で重い合併症を患う症例が世界で相次ぎ報告されており、回復した人も治療が長期化したり後遺症が残ったりするリスクが指摘されている。しかし、ウイルスは診療科に分かれて感染するわけではないため、重症化するにつれて身体全体に症状が出るのは当然なのである。

 また、検査しなかったために新型コロナと判定されずに亡くなった方は、*2-5のように、「超過死亡」に入るが、今年は偶然では起こり得ないほど肺炎の死者が多く、毎週20〜30人の超過死亡が起きていたのに、データを発表した感染研は「原因病原体が何かまでは分からない」としている(??)。

(3)新型コロナの病院への一撃
 日経新聞は、*3-1のように、「①不要不急な診療は控えて、医療費を節約せよ」「②軽い風邪や腹痛、花粉症は通院を控え、薬局で薬剤師や登録販売者に相談し処方箋がなくても買える一般用医薬品で凌ぐことができたのだから、風邪なら自力で治そう」「③高度医療を提供する大学病院や専門病院は、高額な医療費がかかる治療をさほど減らさなかった結果、件数の急減に対し医療費はさほど減らなかった」などの呆れる医療政策を書くことが多い。

 そのうち、①については、先延ばしが可能だということと不要であるということは違う上、②については、軽い風邪や腹痛なのか重い病の前兆なのかを自分で勝手に判断することほど危ういものはないため、まずあらゆる検査のできる基幹病院で診断を確定してから、そこで治療を受け続けるか、近くの医院に紹介してもらうか、売薬ですませるかを決めなければ、病を重症化させてしまってあらゆる方面で被害甚大になる確率が高くなる。そのため、国民皆保険を自慢している日本で何を言っているのかと、私は常日頃から思っている。

 さらに、③についても、高度医療を提供する大学病院や専門病院も、PCR検査を自由にできなかったばかりに、新型コロナの院内感染を恐れて患者が減ったり、手術を先延ばしせざるを得なくなったりして損失を蒙っているのである。

 なお、病院経営に悪影響を与えているのは、新型コロナの流行以前からの消費税の満額負担と現場の真実をチェックしない観念的な医療改悪政策によるものであるため、コロナ対応病院への資金援助も必要だが、その後は改悪ではない地域医療の再構築を進めるべきである。無医村ではあるまいし、セルフメディケーションしなければならないようでは困る。

 また、馬鹿の一つ覚えのようにオンライン初診・再診とも言っているが、オンラインでは得られる情報量が少ないため、補助的にしか使えないことも何度も書いた。さらに、“軽症”の定義もおかしく、“軽症のコロナ感染者”とはどの程度の人を言うのか。定義を曖昧にしたまま、どこで治療するかや医療資源を最適配分するにはどうするかなどは語れないのである。そして、医療保険の加入者や納税者としては、受診や検査を小さくケチって命を危険に晒された上、何十兆円もの補助金を使われる羽目になったようなことこそ、やめてもらいたいのである。

 自民党医師議員団本部長の冨岡氏は、*3-2のように、「④日本は米欧や中韓に比べ検査体制の整備が遅れたので、第2波に備えて体制の拡充が急務だ」「⑤これまで検査せずに医療費を抑えた面はあったが、かえって医療費が増える」「⑥政府は民間の検査機関が参入しやすくなる支援策を講じてほしい」「⑦最短2~3時間で終わるLAMP法も導入すべきだ」「⑧抗原検査や抗体検査は学会で診断の評価が十分に定まっていないため、明確な症状がある人らに対象を限るのが望ましい」と述べておられる。

 このうち、④⑤はやはりそうだったかと思われ、⑥⑦はそのとおりだが、⑧は妊婦・医療従事者・教員・その他の必要な人には行うべきだ。そうして検査数を重ねるうちに、特徴がわかり評価が確定するものだ。

 また、*3-3のように、「37.5度以上の発熱が4日以上続く」などとした他に類を見ない受診目安を作り、小さくケチってPCR検査が遅れた結果、重症化したり死亡したりした人が出て大きな損害になったことについては、その妥当性について十分な検証が必要である。

 従って、*3-4のように、厚労省が再編統合の必要性を打ち出した全国の公立・公的病院については、病気の基本である感染症を考慮するのは当然のことであるため、感染症病床の有無を考慮しないような人が医療再編や医療制度について語ること自体が間違いなのである。

 なお、*3-5のように、新型コロナ対策でコストがかさんだり、一般患者が感染を恐れて受診を控えたりして病院経営が揺らいでおり、医療従事者へのボーナスなどの一時金をカットせざるを得ない病院や施設が相次いでいるそうだ。つまり、感染拡大前から病院にぎりぎりの経営を強いて経営を脆弱にし、すでにあった医療制度という重要なインフラを壊しかけていたのが、厚労省・財務省の病院いじりであり、その結果、国民に重大な損失を蒙らせているのである。

(4)新型コロナの経済対策
1)新型コロナを利用した無駄遣い
 加藤厚労大臣は、5月22日、*4-1のように、新型コロナ関連の解雇や雇い止めが5月21日時点で10,835人に上り、雇用情勢が日を追うごとに悪化していることを明らかにした。しかし、業績が悪化した企業が従業員を休ませた場合に支給される筈の雇用調整助成金も、なかなか振り込まれず困っている事業者が多いそうだ。

 持続化給付金も、民間委託して目的外の経費を多く使った上に守秘義務も危うい方法を取るよりも、税務署か地方自治体に一括委託すれば、税の支払いは普段から自動振替にしている人が多いため、預金口座の問題が生じず、還付金や給付金の支払いにも慣れている。そのため、退職者を臨時雇用して仕事をこなせば、正確で早く、年金も節約できるだろう。

 なお、*4-2の観光割引予算1兆6,794億円とその約2割を占める外部委託の事務費3,000億円も無駄が多すぎる。そのため、PCR検査・抗体検査・治療薬・ワクチンなどを充実して早く正常な状態に戻すことが重要なのだ。

2)政府による布マスクの全戸配布
 安倍首相が全戸配布された布マスクは、6月になってうちにも届いた。しかし、*4-3のように、「質か量か」という選択をさせられ、検品もしていなかったため、質の悪すぎるものが散見されたようだ。

 私は、マスクと言えば、使い捨ての不織布マスクしか知らない世代が、布マスクでは防御できないなどと言っていた中で、10枚重ねのガーゼマスクは、私の子どもの頃には標準的だったし、洗って繰り返し使える製品でもあるため、親近感を感じた。また、その後、よい布マスクが出てくるきっかけにもなったが、支出金額は多いのに品質が悪すぎたのはよくない。

 しかし、この布マスクを作るにあたっては、「①生地は中国・ベトナム・スリランカなどのアジア各国で探して集めた」「②タイとインドネシアで生地を加工した」「③縫製は中国の加工業者に依頼した」「④検品も中国」「⑤興和の国内検品は1ミリ程度の縫い目のずれすら不良品として取り除くもので、それでは期日までに調達できない恐れがあるので政府側が断った」「⑥介護施設など向けの布マスク21.5億円分の契約書には不具合が見つかっても興和の責任を追及しない条項が入った」「⑦配布計画を担う政府のマスクチーム担当者は、緊急を要する発注だったのでこのような契約を結んだ」と書かれている。

 このうち、①②③④については、マスク一つを作るのに、生地も加工も検品も外国で行い、それも運賃をかけて数か国を渡り歩いている点で無駄が多い。この頃、日本国内では休業や自粛で人が余っていた筈なのに、国民の税金が海外で使われたことは情けない。また、⑤のような縫い目のずれはどうでもよいが、マスクは徹底的に清潔に作られたか否かが最も重要なのに、そこが危うい。さらに、⑥⑦のように、緊急を要するから不具合が見つかっても興和の責任を追及しないという契約は、一見優しそうだが、国民を愚弄している。そのため、このような国になっては、日本製は終わりだと思う。

(5)新型コロナだけが原因ではない介護崩壊
 特別養護老人ホーム・老人保健施設・有料老人ホーム・グループホームなど入所系の高齢者施設で、*5のように、4月末までに利用者380人余り、職員170人の合計550人余りが感染し、このうち約10%の60人が死亡したそうだ。欧米では死者の多くを高齢者施設の入所者が占めており、専門家は「日本でも感染者や死者がさらに増えていくおそれがある」と指摘しているとのことである。

 富山市の老人保健施設の例では、介助が必要だったり認知機能が衰えていたりする入所者が多く、深刻な人手不足で最低限の食事や水分をとらせるだけで着替えをしたり体を拭いたりすることが殆どなく、入所者の間で発熱などの症状が相次いだ後も適切な対応を取らず、多くの入所者が相部屋を利用するなど感染が広がりやすい構造だったそうだ。個室ですらない高齢者施設は設備が悪くてプライバシーにも欠けるため、高齢者施設を全室個室にし、身体の清潔を保ち、栄養をとれる食事を出すくらいの福祉は、憲法第25条に基づいて行うべきである。

(6)(じわじわ続く)年金崩壊
     
                      2020.5.21朝日新聞 2019.12.25毎日新聞

(図の説明:現在の年金制度は、左図のようになっている。これについて、高齢化社会と健康寿命の延びを踏まえて、中央及び右図のように、年金改革が行われた)

 年金改革関連法が、*6のように成立したが、その主な内容は「①非正規雇用労働者への厚生年金の適用」で、「②現在は週20時間以上30時間未満働く労働者は従業員数501人以上の企業のみで厚生年金への加入が義務づけられているが、2022年10月からは101人以上、2024年10月からは51人以上に改める」というものだ。

 ①②により、新たに約65万人が厚生年金に加入すると見込まれるが、「小規模企業で働く労働者は老後の生活保障がなくてもよい」ということになる理由は、年金保険料支払者の増加のみを目的にして厚生年金への加入要件を決めているからだ。これは、国民の立場から社会保障の必要性を定めている日本国憲法第25条の「1項 すべて国民は,健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」「2項 国は,すべての生活部面について,社会福祉,社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない」に反する。従って、憲法は変更する前に守るべきだ。

 また、「③年金制度は、少子高齢化の進行に合わせて給付を抑える仕組みで収支を均衡させることになっている」「④今は物価などに連動して給付が伸びるのを抑えるやり方のため、デフレが続くとこの機能が働かない」「⑤しわ寄せを受けるのは、将来年金を受け取る世代だ」「⑥全ての世代で痛みを分かち合いながら、どのような経済環境になっても年金制度が揺るがないようにするには、この仕組みの見直しが避けられない」「⑦国民年金の加入期間を40年から45年に延長すると、基礎年金の底上げ効果が大きいという試算も示された」「⑧基礎年金の半分を賄う国庫負担分の財源確保の議論が進まない」については、年金資産管理で失敗した省庁の説明を鵜呑みにして書いているだけであり、メディアとしてレベルが低い。

 具体的には、③は途中から賦課課税方式に変更した政策の失敗によるもので、年金保険料を支払ったのに受給する段階になって反故にされる世代が出ていることこそ年金崩壊である。また、④によって実質年金が減らされ、これまで日本を支えてきた高齢者が生活できなくなる事態を生んでおり、これこそ憲法25条違反だ。⑤⑧については、現役世代への(買収すれすれの)膨大な補助金や無駄遣いをやめて自ら稼がせることを考えるべきで、日本で実質GDPが増えないのは、⑥のような「痛みの分かち合い」ばかりを主張する価値観によるところが大きいのだ。なお、⑦はよいことだが、定年延長や定年廃止とセットでなければ議論できない。

(7)日本における経済分析の問題点


(図の説明:左図のように、2000年に導入された介護はニーズの高いサービスだったため、2020年には12兆円市場に伸びたが、政府は供給を抑制し続けている。また、中央の図は、「年代別1人当たり所得は、70歳以上で20代・30代より高く、高齢者は金持ちだ」という主張に資するものだが、年金だけで年間192万円/人の所得のある高齢者は滅多にいないため、このグラフの下になった数字の出所が重要だ。また、保育サービス不足は1970年代から言われているが、今でも充実しておらず、右図のように、教育費の高騰とあいまって少子化の原因となっている)

 豊かな高齢化社会で共働きが主流になった日本では、医療・介護・保育・家事支援サービスやその関連製品が必要不可欠で付加価値も高い。しかし、政府(厚労省・財務省)は一貫してこれを抑え、従来型の加工貿易(特にガソリン車の輸出)に固執した(経産省)。そのため、日本は経済成長率も出生率も上がらなかったが、それでもこういう政策を維持してきた。何故か?

1)経済分析と呼ぶに値しない“経済分析”
 内閣府が、*7-1のように、2020年5月18日に発表した2020年1~3月期の国内総生産(GDP、季節調整値)は、物価変動の影響を除いた実質成長率は前期比0.9%減、このペースが1年続くと仮定した年率換算は3.4%減だったそうで、これには2019年10月からの消費税増税・新型コロナに対応した外出自粛による個人消費の低迷・訪日外国人客の減少等の影響がある。

 しかし、現在の日本は、安い賃金を活かして国内で製造し輸出して、国民は貧しい生活を耐え忍ぶ人件費の安い開発途上国を卒業した。そして、国内の個人消費がGDPの6割近くを占め、世界に先駆けて高齢化して人口に占める65歳以上の高齢者割合が30%を超える国なのである。そのため、実質年金額を減らし、消費税増税を行って高齢化社会で必要とされる財・サービスへの消費を抑えたのは、国民の福利を削ったと同時に、高齢化社会で求められる財・サービスの開発にもマイナスになったのである。

 この現状を直視せずに、100年1日の如く、従来型の自動車輸出や住宅投資に依存しようとし、原油や天然ガスの輸入を景気のバロメーターにしていることが経済分析を意味の薄いものにし、とるべき政策を誤らせている。こうなる理由は、日本の経済学者が統計学(数学の中の微分・積分を使う)・社会学(実地調査をする)・人間行動学(行動を決める要素を調べる)に弱く、欧米で作られた公式を丸暗記しているだけで現在のミクロの実態を反映した新しいマクロ経済学の公式を作ることができず、現在の日本及び世界の現実に合った経済分析ができないため、「従来どおり」を繰り返して誤った政策に導くからである。

 そのため、このまま進めば、新型コロナで外食や宿泊に関連した消費が落ち込んだのは一時的であるものの、長期的にも日本経済は下降するだろう。

2)政府が進めるインフレ政策
 *7-2には、「①生鮮食品を除く全国消費者物価指数は、前年同月より0.2%下がり101.6だった」「②新型コロナの感染拡大による原油価格の急落や個人消費の低迷が押し下げ要因となった」「③市場では指数が前年実績に比べマイナス圏で推移するとの見方が多い」「④物価が持続的に下がるデフレに再び陥る懸念が高まった」「⑤品薄が続いたマスクは5.4%上昇した」「⑥増税の影響で外食が2.7%上がった」「⑦外出自粛による需要の高まりを背景に生鮮野菜は11.2%上がり、キャベツは48.2%上昇した」「⑧損害保険各社が値上げした火災・地震保険料は9.3%上昇した」「⑨増税に伴う無償化で私立の幼稚園保育料は94.0%下がった」などが記載されている。

 この記事は、インフレがよいことでデフレが悪いことであるかのような論調で書かれているが、本来の中央銀行の仕事は、貨幣価値を安定させて国民の財産を守ることであり、意図的にインフレを起こして国民の財産を目減りさせることではない。

 さらに、物価は、⑤⑦⑧のように需要が多ければ上がり、①②③のように消費者の財力やニーズの低下があれば下がるという現象であるため、④のように、デフレだから金融緩和して物価を上げようとすると、国民の財力がますます低下して節約を強いられるので、やはり物価は上がらない。そして、こうした国では、企業の投資も起こりにくい。なお、需要が増えないのに原油価格の上昇などのコスト要因で物価が上がるのをスタグフレーションと呼び、悪いインフレである。また、⑥⑨のように、政府の政策によって物価が著しく変動することもあるわけだ。

3)“新自由主義”は悪いとする歪んだ論理
 個人の諸自由を尊重して封建的共同体の束縛から解放しようとする価値観に反対する人は現在の日本にはいないと思うが、その理由は、*7-4のように、自由を至上の価値とする近代西欧社会で育まれた自由主義が、現在では日本国憲法の中で「人が生まれながらに持っている人権」「人間がかけがえのない個人として尊重され、平等に扱われ、自らの意思に従って自由に生きるために必要不可欠な権利」として明記されているからだ。それには、私も120%賛成である。

 日本国憲法第12条は「この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によつて、これを保持しなければならない。又、国民は、これを濫用してはならないのであつて、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負ふ」と明記し、具体的には「精神的自由権:思想・良心の自由(19条)、信教の自由(20条1項前段)、集会・結社、表現の自由(21条)、学問の自由(23条)」「経済的自由権:居住・移転、職業選択の自由(22条)、財産権の不可侵(29条)」「身体的自由権:奴隷的拘束や苦役からの自由(18条)、法定手続の保障(31条)、住居の不可侵(35条) 被疑者・被告人の権利保障(33条、36~39条)」等の条文がある。

 これに対し、*7-5は、新自由主義とは20世紀の小さな政府論のことで、「①政府の規制を緩和・撤廃して民間の自由な活力に任せ成長を促そうとする経済政策」「②緊縮財政や外資導入、国営企業の民営化、リストラのほか、公共料金の値上げや補助金カットなどを進めるため、貧困層の生活を直撃し国民の反発が強い」「③アダム・スミスは、経済は個人や企業の自由に任せることによって繁栄すると主張し、政府の役割を治安維持や防衛などに限定する必要性を説いた」「④20世紀に大恐慌や戦時動員体制の経験を経て、政府が完全雇用を目指して需要を管理するケインズ主義政策が一般的となった」「⑤1980年代に入って政府における財政赤字の深刻な累積、官僚主義的な非能率が大きな問題となり、小さな政府への改革が広まった」「⑥日本も80年代の第2次臨時行政調査会による行政改革以来、新自由主義的な政策転換が進められてきた」「⑦日本では公共事業や規制に関して既得権を持つ官僚組織、利益団体、族議員が、小さな政府の徹底に反対している」「⑧小泉政権は新自由主義改革を推進し、郵政民営化・社会保障費の抑制などが遺産となっている」としている。

 しかし、1995年前後以降は私が関与しているので知っているのだが、このうち①は、現場を知らない省庁が自らの権力を維持するために細かい規制を作って意地悪く運用すれば、民間も新しいことができなくなり経済発展を阻害するため、重要なことなのだ。また、国が破綻しないためには、膨大な無駄遣いを排除する必要があり、②の緊縮財政・外資導入・国営企業の民営化・適切な補助金カットなどは進めたが、そのために必要なリストラならともかく、公共料金の値上げや本当に必要なセーフティーネットの削減を意図したことはない。まして夜警国家になるなど前近代的で、これらは将来大きな政府に戻したい官僚が企んだことだろう。

 また、③のアダム・スミスが言う「神の見えざる手」とは、「市場における需要と供給が生産調整をすすめ、市場の自由を徹底することが経済発展を進める」と説いているもので、これは共産主義・社会主義経済が失敗し、市場主義に移行してから復活したことで歴史的に検証済だ。ただし、市場の失敗もあるため、補足的に④のケインズ主義政策が行われたのであり、ケインズ主義政策ばかりでは国家財政が破綻するのは時間の問題で、社会保障もできなくなる。

 日本では、1980年代に、⑥の第2次臨時行政調査会による行政改革が行われ、⑦のように、無駄遣いが多く効率の悪い官僚的性格を廃し始め、小泉政権は⑧のように郵政民営化を進めた。しかし、私が自民党内でいくら反対しても社会保障費抑制を進めたのは、財務省と厚労省である。

 つまり、私は、ここでいう“新自由主義改革”を推進してきたので知っているのだが、社会保障はもともとは保険で行われており、管理の杜撰・給付の不合理以外は主張したことがない。また、政府の役割を治安維持や防衛に限定することは、歴史的教訓を踏まえない愚行だと思う。

 しかし、*7-3のように、新自由主義という言葉が、ニュースや論説で批判のためによく登場するのは事実で、その内容については「国民の多数が実際に怒り、抗議しているのは増税や金融機関救済という大きな政府路線なのに、一部のメディアや知識人がそれを新自由主義のせいにしたがっている」「物事を正しく理解し、議論するには明確な言葉を使うことが必要不可欠である」「新自由主義などという定義と正反対の使用がまかり通る言葉を使っていては、経済問題の本質について考えることはできない」というのは、全くそのとおりだと思う。

 なお、マクロン政権が環境政策の一環としてガソリンと軽油を増税したように、環境問題を税制で解決することは大きな政府とは関係なく、私は“アリ”だと考えている。何故なら、政府が放っておけば外部不経済として環境を汚した者が得する場合に、政府が介入して無料のものを有料にし、望ましい方向への切り替えを促すことができるからだ。しかし、これが適切に行われるためには、政府の見識の高さが必要なのである。

(8)資源の使い方と財源
1)国有林の民間による伐採
 2019年5月16日に、全国の国有林で最長50年間、大規模に伐採・販売する権利を民間業者に与える国有林野管理経営法改正案が、*8-1のように、衆院農林水産委員会で可決され、6月5日に参議院も通過した。

 しかし、国有林・民有林の両方とも先祖が大切に育てた木材資源であり、特に全国の森林の3割を占める国有林は国民の財産だ。そのため、「低迷する林業の成長を促す」という建前の下、特定の民間に大きく開放することは、対価として徴収する権利設定料や樹木料の安さから、せっかくある国民の財産を叩き売りすることとなり、「森林を守る」「資源を活かす」などの発想がないことも明らかである。

 さらに、伐採後の植え直し(再造林)は別の入札で委託して国民の血税を使って行うとのことであり、金を使うことしか考えない政治と行政では、国の財政破綻による緊急事態で、イタリア・ギリシャのように社会保障が削減されるのは時間の問題となるわけだ。

2)放牧の中止
 山の多い日本では、山を賢く使って放牧すれば、家畜を畜舎に閉じ込め、外国から餌のトウモロコシを輸入して、脂肪の多すぎる肉を作る必要はない上、食料自給率も上がる。

 しかし、*8-2のように、農水省は、豚や牛などの放牧制限をしようとしており、何をしているのかと思う。豚熱でもワクチン接種すれば放牧して問題ない上、それ以外の地域まで畜舎の整備を義務化する科学的根拠もないだろう。

 オーストラリア・アメリカ・カナダ・ヨーロッパでは当然の如く放牧している。そして、その方が家畜のストレスが少なく、家畜の免疫力が向上して病気にも強いため、薬の使用減少や耕作放棄地の解消、飼養コストの低減などに繋がるのである(まさか、これが困るのではないでしょうね)。そのため、雨風に備えて一定の畜舎はあった方がよいものの、舎外飼養の中止要請は非科学的だ。つまり、農水省は科学的根拠もなく、農家への影響調査もしていないようなことを、改正案に盛り込むべきではない。

3)地方創成
 新型コロナ以前から、*8-3のように、東京圏在住者は地方暮らしに関心があると答えており、コロナ後は、さらに都市住民の田園回帰志向が強くなっている。

 「やりたい仕事」は、「農業・林業(15.4%)」が最多で、「宿泊・飲食(14.9%)」「サービス業(13.3%)」「医療・福祉(12.5%)」が続き、若い世代ほど移住の意向が強い傾向も分かったそうだ。これらは、今後のニーズを考えれば自然であるとともに、東京一極集中を解消するためにも有効である。

 しかし、地方圏暮らしへのネガティブイメージに「公共交通の利便性が悪い(55.5%)」「収入の減少(50.2%)」、「日常生活の利便性が悪い(41.3%)」などが挙がっているのも当たっており、農林漁業等々で稼げなければ夢破れて二度と田園回帰志向は起こらないだろう。さらに、教育・医療・公共交通の充実による生活の利便性は、人口が増えればある程度はよくなるものの、意識的な充実が不可欠だ。

4)公立病院などの基幹病院を中心とした医療圏の構築
 厚労省は、*8-4のように、新型コロナで入院病床が逼迫したのを受け、感染症対応の視点が欠如していた約440の公立・公的病院の再編・統合について都道府県から検討結果報告を受ける期限を当初の9月から先延ばしするそうだ。

 しかし、地域で重複している診療機能を役割分担して効率化したり、社会的入院をなくして高齢者施設を充実しながら、医療提供体制の無駄をなくしたりすることは重要だが、団塊世代が75歳以上となり医療費が急増するから、2018年に全国で124万6千床あった病床を119万1千床まで減らすというような単純な医療費・病床数削減を目的とした病院統合なら1人当たりの福祉が小さくなるだけであるため賛成しない。

 また、近隣に競合病院があっても、セカンド・オピニオンを得るために重複して受診することもあるため、新型コロナの検査基準のように「非科学的でも、ともかく病院には行かないで欲しい」などという価値観を持って医療体制の再構築をしようとしている厚労省は、命を託せる省庁ではないことが明らかになったのだ。

 さらに、少子高齢化で、急病・大けがで入院する「高度急性期」「急性期」病床の必要性が低くなるというのもおかしく、高齢になると多発する脳血管疾患や心疾患は「高度急性期」「急性期」そのものであり、そこで命が助からなければリハビリといった「回復期」病床に行くこともないため、結論ありきの非科学的な議論はやめるべきだ。

 最後に、病院は重要なインフラであり、病院がなくなれば、都会から移住するどころか、現在住んでいる人もその地域に住めなくなる。そのため、厚労省が狭くて短い視野で考えた無茶な病院再編や効率化を実現させないために、公立病院などの基幹病院を中心とした医療圏の構築に関わる意思決定は地域が行うべきだ。そして、その財源は、資源を安くたたき売ったり投げ捨てたりせずに、有効に使うことによって出る。

(9)研究と特許の意義
 経済学の公式が「与件」として「一定で変わらない」と仮定している要素に、「技術進歩」がある。1953年にワトソン・クリックがDNAのらせん構造を発見して以来、目覚ましい進歩を遂げている生命科学の進歩も無視されており、今回の新型コロナ騒動に際して100年前のスペイン風邪と同じ公式を使っていたというのは、聞いて呆れた。

 そして、日本では、政府もメディアも、生命科学者が瞬く間にウイルスの遺伝情報を読み、その弱点を突いたワクチンや治療薬を作れることを無視していたため、人材はいるのに技術開発で先んじて特許権を得ることを放棄させた。また、国内外の経済封鎖を続けることによって経済に大きなダメージを与え、それをカバーするために血税から多大な支出をしている。どうして、こういうことが起こるのかといえば、そういうことの全体を瞬時に考慮できる専門家をリーダーにしていないからである。

1)新型コロナのワクチン・治療薬に対する他国と日本の対応
 米国は、*9-2のように、米国民の生命を守るため治療薬やワクチンの開発・生産を支援し、自国での供給・備蓄を目的に1千億円超を投じて欧米医薬企業の実用化を後押ししている。中国や欧州も国を挙げて開発を強化している。

 日本の政府及びメディアは、ワクチンや治療薬の開発と実用化に消極的で、「ワクチンができるには数年かかる」「国民は我慢して自粛せよ」「安全性が・・」と繰り返した。そして、「ワクチンができたら国際協調で、分けてね」という態度だが、そんな先進国に優先的に分けてやる国などない。このようにして、世界は「Japan Passing」になりつつある。

2)癌の免疫薬に対する日本の情けない態度
 日本人の死因トップになった癌の治療は、今でも外科的手術・放射線治療・化学療法が標準療法と定められているが、*9-1-2のように、本庶京都大学特別教授が最初に癌免疫治療薬「オプジーボ」を開発・実用化しようとした時は、日本では製薬大手も消極的で、米国のブリストル・マイヤーズが先に実用化に手を貸してくれたと聞いている。

 そして、日本で癌免疫治療薬「オプジーボ」が有名になったのは、本庶教授がノーベル賞を受賞した後だった。さらに、オプジーボはじめ免疫薬は革命的な薬で副作用が小さく、さまざまな癌に効き始めているのに、日本では厚労省が頑なに癌の標準治療を「外科手術」「抗癌剤による化学療法」「放射線療法」として免疫療法を厳しく制限している。これによって、日本国民は免疫薬による治療を著しく受けにくいと同時に、免疫薬の開発者も年間数百億円にのぼるロイヤルティーを逸した。厚労省のこの非科学的態度は、国民の命よりも既に抗癌剤を売っている製薬大手の利益を重視するものではないのか?

 このような環境の中では、免疫療法を開発してきた研究者も厳しい環境に耐えなければならなかったし、開発後もロイヤルティーで被害を受けている。つまり、リスクをとったのは製薬会社だけでなく、一生をかけたリスクをとって先頭に立っている研究者もであるため、本庶教授が「オプジーボ」の特許収入として小野薬品工業に約226億円の支払いを求めて大阪地裁に提訴された気持ちはよくわかる。この場合、組織を重視して個人の貢献を軽視する日本の風土もまた、日本の研究開発人材を生きにくくしているのである。

 なお、*9-3のように、日本農業新聞が2020年6月8日の論説で、「コロナ危機と文明、生命産業へかじを切れ」と題して記事を書いているのは、生命産業に従事する多くの労働者が関心を持って読むのでよいと思うが、ここでも「消費をあおり、資源を乱費する欲望の新自由主義」と記載しているのは、新自由主義の定義を誤っている。もう少し勉強してから記事を書かないと、国民を誤った方向に誘導することになるが、日本農業新聞は自由主義から封建制・官僚制に戻したいのだろうか?

3)自動運転車及びサポカー開発の遅れ
  

(図の説明:左図のように、近年は交通事故による死者数が減少傾向で、よいことだ。右図の年齢階級別の「死亡事故件数/免許人口10万人」では、確かに75歳以上で死亡事故が多いように見えるが、①85歳~100歳をひとくくりにしているため、この階級は他の3倍の年齢層が入っている ②高齢者は地方に多く都市部の生産年齢人口より運転時間が長いため、運転免許を持つ人を分母にするのではなく運転時間を分母にしなければならないのではないか と思う)

 近年、誰か一人が重大な事故を起こしたとして、そのグループに属する人全員に運転免許を返納させることが流行しているが、特定のグループの人に運転免許を持たせないことは、外出の機会や就職の機会を奪うため人権侵害になる。

 東京都池袋で高齢運転者の運転する車が暴走したケースでは、松永真菜さんと長女の莉子ちゃんが死亡した事故を受けて、*9-4-1のように、夫の拓也さんが事故5日後に「運転に不安がある人は運転しないでほしい」と訴え、その結果、*9-4-2のように、家族などから年齢を理由に運転しないことを強制される高齢者が増えた。しかし、これは年齢による差別であり、自分の家族が身体の不自由な高齢者の運転で交通事故に遭ったからといって、全高齢者の運転を禁止する資格にはならない。

 高齢者の運転では他にも事故が起こっているが、その割合が若者より高いかといえばそうでもないし、コロナ自粛で誰もがわかったように、外出できないことは高齢者にとってもストレスであり、不便にしたり身体を悪くさせたりする。そのため、私は、高齢者のみに限定免許創設するよりも、さっさと安全運転サポートを進歩させ、それを標準装備にすればよかったと思う。

 なお、自動運転車や安全運転サポカーについても、技術開発の遅さ・国民への我慢の強制・国の対応の遅さは、新型コロナのワクチン・治療薬や癌の免疫療法と同じで、これは、国民の福利を押し下げながら、今後は世界でニーズが見込まれる日本の技術を収益に結び付けることを不可能にしているので賢くない。

4)EV活用の遅れ
 EVもまた、日産自動車が世界で初めて市場投入したにもかかわらず、*9-5-1のように、2020年6月3日現在、日本は重要市場になっておらず、重要市場になっているのは中国で、日本電産は中国東北部の遼寧省大連市で約1千億円を投じて建設中の工場内に駆動モーターの開発拠点を新設し、成長の柱と位置づけるEVの開発を2021年には稼働させるそうだ。

 独コンチネンタルも2021年に天津市に開発センターを設置する予定で、独ボッシュもまた現地企業と合弁を組んでEV用駆動モーターの供給を目指すそうなので、環境とエネルギーの両面からEVが主役になった時には中国が自動車先進国になるだろう。

 また、日本電産は、5月27日、*9-5-2のように、同社のEV用駆動モーターシステム「E-Axle」が中国の吉利汽車の新型EVに採用されたことを喜んで発表しているが、当然だ。

・・参考資料・・
<医療崩壊を加速させた消費税制>
*1-1:https://gemmed.ghc-j.com/?p=27985 (Gem Med 2019.8.15) 病院の消費税問題、課税化転換などの抜本的解決を2020年度に行うべき―日病
 病院の消費税問題について、診療報酬の上乗せでは不公平等を解消することはできない。課税化転換などの抜本的措置を2020年度の税制改正で行うべきである。日本病院会は8月7日に、こうした内容を盛り込んだ2020年度税制改正要望を根本匠厚生労働大臣に宛てて提出しました。
●診療報酬プラス改定では、個別病院の消費税負担の不公平等を解消できない
 日病の税制改正要望は次の8項目(国税5項目、地方税2項目、災害医療拠点としての役割と税制1項目)で、このうち▼消費税関連(国税の(1))▼診療報酬の事業税非課税(地方税の(1))▼固定資産関連(地方税の(2))の3点を「優先」的に措置すべき項目として強調しています。
【国税】
 (1)控除対象外消費税について、個別病院ごとの解消状況に不公平や不足などが
   生じないよう、税制上の措置を含めた抜本的措置を講じる
 (2)医療法人の出資評価で「類似業種比準方式」を採用する場合の参照株価は、
   「医療福祉」と「その他の産業」のいずれか低いほうとする
 (3)医療機関の設備投資を促進するための税制を拡充する
 (4)資産に係る控除対象外消費税を「発生時の損金」とすることを認める
 (5)公的運営が担保された医療法人に対する寄附税制を整備する
【地方税】
 (1)医療機関における社会保障診療報酬に係る事業税非課税措置を存続する
 (2)病院運営に直接・間接に必要な固定資産について、▼固定資産税▼都市計画税
   ▼不動産取得税▼登録免許税―を非課税あるいは減税とする
【ほか】
 激甚災害に相当するような地震・台風・噴火などの大規模災害が発生した場合に、地域医療の重要な拠点としての役割を果たす医療機関・介護施設に関しては、その機能復旧を支援するための税制上の特段の配慮を行う。
 要望内容を少し詳しく見てみましょう。まず国税(1)の「消費税」については、現在、保険診療(言わば診療報酬)については「非課税」となっています。したがって、医療機関等が物品購入等の際に支払った消費税は、患者・保険者負担に転嫁することはできず、医療機関等が最終負担しています(いわゆる控除対象外消費税)。この医療機関等負担を補填するために、特別の診療報酬プラス改定(消費税対応改定)が行われていますが、当然、「医療機関等ごとに診療報酬の算定内容は異なる」ことから、どうしても補填の過不足が生じます。2019年10月に予定される消費税対応改定では、病院の種類別に補填を行うなどの「精緻な対応」が図られますが、「病院の種類による不公平」是正にとどまり、個別病院の補填過不足を完全に解消することはできません。このため、昨年(2018年)夏には四病院団体協議会(日本病院会、全日本病院協会、日本医療法人協会、日本精神科病院協会)と三師会(日本医師会、日本歯科医師会、日本薬剤師会)とが合同で、▼消費税非課税・消費税対応改定による補填は維持する▼個別の医療機関ごとに、補填の過不足に対応する(不足の場合には還付)―という仕組みの創設を要望しました(関連記事はこちらとこちら)。「消費税非課税制度の中で個別医療機関等への還付を認めよ」との要望ですが、与党の税制調査会は「税理論上、非課税制度を維持したまま税の還付を行うことはできない」とし、事実上のゼロ回答を突きつけました(関連記事はこちら)。日本医師会は、このゼロ回答に対し、なぜか「消費税対応改定の精緻化により、消費税問題は解消した」としています。しかし病院では▼物品購入量が多く(特に急性期病院)、補填不足が生じやすい▼クリニックと異なり、いわゆる四段階制(社会保険診療報酬の所得計算の特例措置で、概算経費率を診療報酬収入が2500万円以下の医療機関では72%、2500万円超3000万円以下では70%、3000万円超4000万円以下では62%、4000万円超5000万円以下では57%の4段階とする)などの優遇措置もない―という事情があることから、四病院団体協議会では「補填の解消に向けた更なる対応が必要」と判断(関連記事はこちら)。今般、日病では、この四病協判断に則り、さらに「診療報酬での対応は、最終的に消費税負担を患者・保険者に求めることとイコールである」点も考慮し、「病院」について、消費税問題の抜本的措置(課税化転換や、保険診療設備・材料の仕入れを非課税とするなど)を講じるべきと強く要望しているのです。また国税(3)では、地域医療構想の実現や地域包括ケアシステムの構築に向けた設備投資を国全体で促す必要があるとし、具体的に▼病院用建物・医療機器・医療情報システム等に関する法定耐用年数の短縮▼地域医療構想や医療計画に沿った病院の機能分化を行うための設備投資に対する税制負担軽減制度の充実―などを行うよう求めています。一方、国税(5)では、社会医療法人や特定医療法人などの「公的運営が担保された医療法人」について、「寄附」を▼所得税法上の寄付金控除の対象▼法人税法上の損金―とすべきと要望。あわせて、公的医療法人へ不動産を贈与する場合、「贈与税」という障害をなくすため、租税特別措置法第40条の「譲渡所得税非課税申請」を当然に受けられるようにすべきとも求めています。また優先項目にも盛り込まれた地方税(2)では、一般の医療法人においても、国公立・公的病院や社会医療法人と同様に、病院運営に直接関係する不動産について「固定資産税・都市計画税を非課税」とすることを提案。あわせて看護職員等の職員寮などの病院経営に間接的に必要な不動産について、固定資産税などの非課税・減税措置を設け、病院経営の安定等を図るべきと切望しています。

*1-2:https://digital.asahi.com/articles/ASM8L4G3QM8LULBJ003.html (朝日新聞 2019年8月19日) 消費税分969億円、国立大病院が負担 経営を圧迫
 全国の国立大病院42カ所で、高度な医療機器やベッドなどの購入時に支払った消費税を診療費に十分転嫁できず、2014~18年の5年間に計969億円を病院側が負担していることがわかった。診療報酬制度の仕組みによるもので、病院の経営を圧迫しているという。診察に使う機器やベッド、ガーゼなどの消耗品は、病院が購入時に消費税も支払う。一方、公的保険の医療は非課税のため、患者が支払う初診料や再診料などの診療報酬点数に消費税の相当分も含めることで、病院側に補塡(ほてん)する仕組みになっている。だが、初診料や再診料はすべての医療機関でほぼ同額で、高額化が進む手術ロボットなどの先進機器を購入することが多い大学病院などでは消費税分の「持ち出し」が大きいという。全国の国立大病院でつくる「国立大学病院長会議」の試算によると、1病院あたりの補塡不足は平均で年約1・3億円(17年度)。税率が8%になった14~18年の5年間で計969億円に上った。私大の付属病院などでも同様の傾向と見られるという。医療の進歩にともない、高精度な放射線装置、全身のがんなどを一度に調べることができるCT、内視鏡手術支援ロボットなど、1台数億円する医療機器が登場した側面もある。ある大学病院の医師は「医療機器の更新ができなくなると、患者さんにしわ寄せがいく」と嘆く。厚生労働省は「おおむね補塡されている」としてきたが、16年度のデータを調べたところ、補塡率は病院全体で85%にとどまり、国立大病院を含む68カ所の特定機能病院では平均62%だった。同省は、税率が10%になる際は、病院の規模を考慮して、入院基本料などの点数を上げることで対応することにしている。同会議の山本修一・常置委員長は「厚労省に検証を要請するとともに、補塡が十分にされるか注視していきたい」と話している。
●増税分は節約で対応
 病院側はコスト削減の工夫を重ねている。米国製の手術支援ロボット「ダヴィンチ」は、難しい手術にも対応できるが、価格は約3億円。がん治療用の高精度な放射線装置は1台3億~5億円など、このような機器を導入すると、消費税分だけで数千万円かかる。国立大学病院長会議の小西竹生・事務局長は「こうした高度な医療を提供する大学病院ほど赤字幅が大きくなる」と話す。コスト削減の一環として東大病院(東京都文京区)など39カ所が取り組んでいるのが、入院用ベッドのリサイクルだ。病院の地下の一室には、予備のベッドや乳幼児用のベッドなど、数多くのベッドが保管されている。その片隅にはリモコンや手すりなど、一部が故障したものもある。ベッドは1台数十万円するため、更新が滞っている。同会議が大学病院にある2万8千床を調べたところ、耐用年数の8年を超えて使われていたベッドは約7割にのぼった。15年以上使われていたものも3割弱あった。大学病院は平均700床以上あり、消費税の補塡(ほてん)不足などで経営は苦しく、手術や検査に使う医療機器と比べて更新は後回しにされがちだ。ただ、病院関係者は「整備が不十分だと転倒事故などにつながるおそれもある」と話す。従来は一部が壊れると廃棄していたが、部品を修理したり、まだ使える部品を専門業者がメンテナンスしたりした後、別の病院に融通する仕組みだ。新品は1台数十万円だが、部品なら数万円で済む。病院で使うガーゼや手袋などを複数の病院で共同調達する試みも始めた。カテーテルやアルコール綿など多くの製品について、現場の看護師がサンプルを比べて品質を確認。品目を絞ったり大量購入したりすることで、価格を下げてもらっている。2016年度に始め、導入前と比べて数億円の削減につながったという。東大病院の塩崎英司・事務部長は「消費税の補塡(ほてん)不足で経営が苦しい中、今後も知恵を絞って取り組みたい」と話す。

*1-3:https://www.agrinews.co.jp/p50985.html (日本農業新聞 2020年6月5日) [新型コロナ] 厚生連病院支援を 自民議連で要望相次ぐ
 自民党の議員連盟「農民の健康を創る会」(宮腰光寛会長)は4日、東京・永田町で幹事会を開き、新型コロナウイルス対策について議論した。新型コロナによる影響でJA厚生連の経営状況が厳しいことを受け、出席した議員からは、地域医療を守る厚生連の一層の経営支援を訴える声が相次いだ。JA全中やJA全厚連の役員らが出席。厚生連病院は、新型コロナの影響で予定した手術や入院の延期、一般外来診療の縮小などで医業収益が減収となっていることを全厚連が報告。医業収益が前年同期比で、半分になった病院もある。病院への財政的な支援を早急に確立することや、空床確保分の減収に対する支援拡充、医療従事者などへの危険手当の支給、医療物資や機器を国が責任を持って供給体制を整備することなどを求めた。宮腰会長は「地域医療崩壊は何としても避けなくてはならない。第2波、第3波に耐えられる医療提供体制を整えていく必要がある」とあいさつ。三ツ林裕巳衆院議員は一層の経営支援を求め「新型コロナ対策を一生懸命整えた厚生連の経営が滞ることは避けなければならない」と、訴えた。永岡桂子衆院議員は厚生連が感染者数を抑える役割を果たしてきたとし「赤字続きで倒れることはあってはならない」と支援を求めた。野村哲郎参院議員は新型コロナ患者を受け入れていない病院も経営は厳しいと見解を示し「地域医療を守るため、全ての厚生連の経営状況のチェックをするべきだ」と呼び掛けた。

<検査抑制による医療崩壊>
*2-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200609&ng=DGKKZO60128210Y0A600C2MM8000 () 検証コロナ 危うい統治(1)11年前の教訓放置 、組織防衛優先、危機対応阻む
 新型コロナウイルスの猛威に世界は持てる力を総動員して立ち向かう。だが、日本の対応はもたつき、ぎこちない。バブル崩壊、リーマン危機、東日本大震災。いくつもの危機を経ても変わらなかった縦割りの論理、既得権益にしがみつく姿が今回もあらわになった。このひずみをたださなければ、日本は新たな危機に立ち向かえない。日本でコロナ対応が始まったのは1月。官邸では「しっかりやります」と繰り返した厚生労働省の動きは一貫して鈍かった。「どうしてできないんだ」。とりわけ安倍晋三首相をいらだたせたのが自ら打ち出した1日2万件の目標に一向に届かないPCR検査だった。その背景にあったのが感染症法15条に基づく「積極的疫学調査」だ。病気の特徴や感染の広がりを調べるのが疫学調査。「積極的」とは患者が病院に来るのを待たず、保健所を使い感染経路やクラスター(感染者集団)を追うとの意味がある。厚労省傘下の国立感染症研究所が今年1月17日に出した新型コロナの「積極的疫学調査実施要領」では「患者(確定例)」と「濃厚接触者」のみが検査対象とされた。検査体制への不満が広がると、2月6日に出した要領の改訂版で初めて対象者に「疑似症患者」が加わった。とはいえ「確定例となる蓋然性が高い場合には積極的疫学調査の対象としてもよい」の限定付き。その姿勢は5月29日の最新版の要領でも変わらない。厚労省が実質的に所管する各地の保健所などもこの要領に従い、濃厚接触者に検査の重点を置いた。それが大都市中心に経路不明の患者が増える一因となった。疫学調査以外にも検査を受けにくいケースがあり、目詰まりがようやく緩和され出したのは4月から。保健所ルートだけで対応しきれないと危機感を募らせた自治体が地元の医療機関などと「PCRセンター」を設置し始めてからだ。
●疫学調査を優先
 自らのルールにこだわり現実を見ない。そんな感染症対策での失敗は今回が初めてではない。2009年の新型インフルエンザ流行時も厚労省は疫学調査を優先し、PCR検査を感染地域からの帰国・入国者に集中した。いつの間にか国内で感染が広がり、神戸で渡航歴のない感染者が見つかると、関西の病院を中心に人々が殺到した。厚労省は10年にまとめた報告書で反省点を記した。「保健所の体制強化」「PCR強化」。今に至る問題の核心に迫り「死亡率が低い水準にとどまったことに満足することなく、今後の対策に役立てていくことが重要だ」とした。実際は満足するだけに終わった。変わらない行動の背景には内向きな組織の姿が浮かぶ。厚労省で対策を仕切るのは結核感染症課だ。結核やはしか、エイズなどを所管する。新たな病原体には感染研や保健所などと対応し、患者の隔離や差別・偏見といった難問に向き合う。課を支えるのは理系出身で医師資格を持つ医系技官。その仕事ぶりは政策を調整する官僚より研究者に近い。専門家集団だけに組織を守る意識が先行する。官邸で「大学病院も検査に使えば」との声が出ても、厚労省は文部科学省が絡む大学病院での検査拡充に及び腰だった。首相は周囲に「危機なんだから使えるものはなんでも使えばいいじゃないか」と語った。誰でもそう思う理屈を組織防衛優先の意識がはね返す。
●「善戦」誇る技官
 「日本の感染者や死亡者は欧米より桁違いに少ない」。技官はコロナ危機での善戦ぶりを強調するが、医療現場を混乱させたのは間違いない。「病院があふれるのが嫌でPCR検査は厳しめにやっていた」。4月10日、さいたま市保健所長がこう話し市長に注意された。この所長も厚労省技官OB。独特の論理が行動を縛る。02年の重症急性呼吸器症候群(SARS)、12年の中東呼吸器症候群(MERS)を経て、韓国や台湾は備えを厚くした。対照的に日本は足踏みを続けた。厚労省に限らない。世界から一目置かれた日本の官僚機構は右肩上がりの成長が終わり、新たな危機に見舞われるたびにその機能不全をさらけ出してきた。バブル崩壊後の金融危機では不良債権の全容を過小評価し続け、金融システムの傷口を広げた。東日本大震災後は再開が困難になった原発をエネルギー政策の中心に据え続けた。結果として火力発電に頼り、温暖化ガス削減も進まない。共通するのは失敗を認めれば自らに責任が及びかねないという組織としての強烈な防衛本能だ。前例や既存のルールにしがみつき、目の前の現実に対処しない。グローバル化とデジタル化の進展で変化のスピードが格段にあがった21世紀。20世紀型の官僚機構を引きずったままでは日本は世界から置き去りにされる。

*2-2:https://webronza.asahi.com/politics/articles/2020060700001.html?page=1 (論座 2020年6月7日) 何一つ有効な対策を打たなかった安倍首相が言う「日本モデルの力」とは?、コロナ第2波に備え必要なのは「日本モデル」の解体だ!、佐藤章 ジャーナリスト 元朝日新聞記者 五月書房新社編集委員会委員長
 未曽有のパンデミック状況を呈するコロナウイルスがこの秋から冬にも大きい第2波となって襲い来る予測が広まる中、対策を立てるべきはずの安倍内閣からは危機感がまったく伝わってこない。この原稿を書いている6月6日の首相動静は以下の通りだった。<午前8時現在、東京・富ケ谷の私邸。朝の来客なし。午前中は来客なく、私邸で過ごす。午後4時9分、私邸発。午後4時20分、官邸着。同30分から同50分まで、加藤勝信厚生労働相、菅義偉官房長官、西村康稔経済再生担当相、西村明宏、岡田直樹、杉田和博各官房副長官、北村滋国家安全保障局長、和泉洋人、長谷川栄一、今井尚哉各首相補佐官、樽見英樹新型コロナウイルス感染症対策推進室長、森健良外務審議官、鈴木康裕厚労省医務技監。午後5時10分、官邸発。午後5時27分、私邸着。《時事通信より》>土曜日だから夕方に職場に着くこともあるが、午後4時30分から始まった会議の顔ぶれから推して、政府のコロナ対策会議であることは間違いないだろう。だが、職責上これだけのメンバーを集めておいてわずか20分しか情報を交換しなかったということは、どう考えればいいのだろうか。まず、現在の仕事環境の常識を考えれば、わずか20分の会議はオンラインで済ませるべきものだ。しかし、20分という時間をよく考えてみれば、本当はメール連絡だけで済む話かもしれない。司会役が発言し、数人の事務連絡、報告があって終わりだ。対策などについて議論し合うことなどはこの短い時間では不可能だ。
●緊急事態宣言は「緊急手段」であって「対策」ではない
 「日本ならではのやり方で、わずか1か月半で、今回の流行をほぼ収束させることができました。正に、日本モデルの力を示したと思います」。安倍首相は5月25日、緊急事態宣言解除の記者会見の冒頭、こう発言した。「今回の流行をほぼ収束させること」など本当にできたのか。安倍首相のこの発言に関しては様々な疑念が湧いてくるが、最も驚くべき発言は「日本モデルの力を示した」という言葉だろう。時事通信の6月6日の世論調査では、コロナウイルスに対する安倍政権の対応について60%の人が「評価しない」と答えている。この世論調査通り、安倍政権はコロナウイルス対策については何一つ有効な対策を打ち出せなかったと言っていいだろう。もちろん、緊急事態宣言を対策と呼ぶ人はいないだろう。あらゆるレベルの経済を痛めつける緊急事態宣言は対策と呼べるようなものではなく、感染の波及を食い止める最後に残された緊急手段に過ぎない。何一つ有効な対策が打てなかった安倍首相が発言した「日本モデルの力」とは一体、どういうものなのだろうか。コロナウイルスに対して安倍政権が最初に打った「日本モデル」の対策を振り返ってみよう。
●COVID-19を指定感染症に指定した愚策
 1月28日に厚労省はCOVID-19を感染症法に基づく指定感染症に政令指定。この指定のために、感染者はたとえ無症状であっても強制入院させられることになった。厚労省はこの時、COVID-19の無症状感染者の存在を想定していなかった。無症状者や軽症者は病院以外の企業療養所などで静養隔離するという韓国が取った賢明な政策への道は、これによって閉ざされてしまった。無症状者でも入院しなければならないために早くから病院体制の崩壊が心配され、PCR検査の大幅抑制につながった。ところが、厚労省がCOVID-19を指定感染症に指定する4日前の1月24日、世界の医学界で注目されているイギリスの「ランセット」誌は、無症状の感染者の存在を報告する香港大学の研究者たちの論考を掲載していた。指定感染症担当の結核感染症課の担当者たちがこの論考をいち早く読んで対応を考えていれば、COVID-19の無症状者の存在を重視し、指定感染症には指定しなかっただろう。厚労省担当課の勉強不足と不作為が生んだひとつの国家的悲劇だ。そして、この感染症法に基づく指定感染症に政令指定したために、基本的な「日本モデルの力」が働くことになった。国立感染症研究所と保健所、地方衛生研究所が束になった「日本モデルの力」である。
●「日本モデル」への大きな思い違い
 コロナウイルス第2波の襲来を前に私が訴えたいのは、この「日本モデルの力」の解体である。恐ろしいことだが、安倍首相は本当に心から「日本モデルの力を示した」と思っているのかもしれない。しかし、これは大変な思い違いである。コロナウイルスの襲来の前に、国立感染研と保健所、地方衛生研究所の体制はほとんど歯が立たなかったのである。このままの体制で第2波の襲来を迎えれば惨憺たる結果を招くだろう。それを示すにあたって、まず5月27日の佐藤章ノート『「超過死亡グラフ改竄」疑惑に、国立感染研は誠実に答えよ!』で指摘した国立感染研公表の「超過死亡」グラフ問題の再取材結果を報告しよう。この問題は、有効なコロナウイルス対策を進める上で国際的に注目されている「超過死亡」統計のグラフが大きく変化していた疑惑で、公表している国立感染研と並んで統計を担当している厚生労働省の健康局結核感染症課が取材に応じた。まさに指定感染症を担当する課だ。この問題を簡単に復習しておくと、国立感染研のHPに5月7日に公表されていた「超過死亡」のグラフが、緊急事態宣言が解除された日の前日の5月24日、まったく違う形のグラフに変わっていたという問題だ。この変化によって、5月7日公表グラフでは2月中旬から3月終わりにかけて大きい「超過死亡」が見られたのに、5月24日公表グラフではその「超過死亡」分がそっくり消えていた。あまりに大きく変動していたために、「超過死亡」記事を紹介した私のツイートに対して、私のフォロワーの方々から「改竄されたのではないか」との声が多く寄せられたが、統計数値を直接取りまとめている国立感染研は、私の問い合わせに素っ気ない回答しか与えなかった。この国立感染研に代わって直接取材に答えたのは、感染研とともに「超過死亡」統計を担当する厚労省結核感染症課に所属する梅田浩史・感染症情報管理室長と、同室の井上大地・情報管理係長。6月2日、取材に応じた。
●厚労省結核感染症課の主張
 取材の結論をまず示しておくと、梅田、井上両氏は「超過死亡」統計グラフの作り方を懇切丁寧に説明したが、最終的に誤解を解くデータについては最後まで明らかにしなかった。梅田、井上両氏の説明を噛み砕いてシンプルに示しておこう。二つのグラフの間で大きく変化していたのは2月17日から3月29日にかけての死亡数。厚労省は東京都23特別区の保健所に対して、死亡小票を作った時点から2週間以内に死亡者や死因などを報告するように通知しているが、今年の場合、コロナウイルスへの対応に忙しく、「週によっては三つか二つの保健所からしか報告が来ない時もあった」(梅田感染症情報管理室長)という。23特別区からの報告がそろわない時には、仕方なく「報告保健所数の割合の逆数を乗じて」(国立感染研HP)いる。つまり、例えば23区のうちひとつの保健所からしか報告がなく、その報告が死亡者数5人であれば、「報告保健所数の割合」23分の1の「逆数」である1分の23に5人を乗じて、死亡数を115人と推定する、という計算法だ。これが厚労省の通知通り2週間以内に報告が出そろえば大した問題は生じないが、今回のように、1か月以上過ぎても報告がほとんど来ない事態ともなれば大変な問題となる。グラフのあまりの大きな違いに「改竄ではないか」という疑念まで生んでしまう。グラフが大きく変化していた論理はわかった。では、この厚労省結核感染症課の説明は正しいのだろうか。
●根拠の数字は頑なに示さず
 理由を述べたこの論理については、私はもちろん説明を受ける以前から知っていたが、その根拠となる数字については最後まで「公表していない」という返事しか聞けなかった。何月何日にどの保健所が何人の死亡者数を報告という数字をすべて明らかにすれば、先ほど紹介した計算をしてすぐに結果が出るのだが、なぜか明らかにされなかった。「新型コロナに対する超過死亡の数字が重要だということは我々も理解しています」。こう語った梅田感染症情報管理室長は、COVID-19対策が注目されている現在、第2波の襲来が予想されている今年秋までにCOVID-19対策専用の「超過死亡」統計を作ることを私に明言した。しかし、1か月以上経っても、東京都23特別区内にある保健所から死亡者数の報告さえ上がってこない現状で、そのようなCOVID-19対策専用の「超過死亡」統計など作って運用できるのだろうか。井上情報管理係長によれば、保健所は、報告書の死因欄に「肝臓癌」や「肺炎」などと手書きで書き、OCR(光学的文字認識)機械にかけるという。だが、OCRにかけようとパソコンに直接入力しようと、まず「2週間以内」という時間は遅すぎる。「ランセット」はCOVID-19対策のためにリアルタイムでの「超過死亡」数値の活用を訴えている。「ランセット」は、PCR検査による新規感染者数がCOVID-19の感染の勢いを正確に映していない恐れがあるために、単純な「超過死亡」数をリアルタイムで活用することを求めているのだ。PCR検査数が極端に少ない日本にこそ求められるリアルタイム統計だが、「2週間以内」ではあまりに遅すぎるし、コロナ対応に忙殺されていたとはいえ、1か月経っても死亡者数さえ報告されない現行の保健所体制ではまったく意味をなさない。未知のウイルス襲来に忙殺奮闘された保健所職員の方々の努力を軽視しているわけではない。COVID-19のようなパンデミック・ウイルスを迎え撃つ体制としては、保健所には限界があると言っているのだ。
●保健所の仲介をなくせ!
 体制としての保健所の限界は、「超過死亡」統計の問題だけではない。基本的なPCR検査体制については、さらに明確に指摘できる。私自身、発熱してからPCR検査を受けるまでに10日間を要し、指定された保健所に電話しても何日間も繋がらなかった(佐藤章ノート『私はこうしてコロナの抗体を獲得した《前編》保健所は私に言った。「いくら言っても無駄ですよ」』参照)。私のような事例は特別なものではなく、社会的には「検査難民」という言葉まで生まれた。これは文字通り保健所のキャパを超えていることを表している。しかし、例えば、ここで発想を変えて、保健所の仲介をまったくなくしてみたらどうだろう。何か困るようなことはあるだろうか。毎年のインフルエンザの検査は保健所などは通さない。かかりつけの開業医から民間検査会社にまっすぐ検査依頼が行くだけだ。だが、そうなるとPCR検査依頼が殺到して医療崩壊を招きかねないという心配の声が出てくる。その問題の対策には二つの方法が考えられる。まず、COVID-19を感染症法に基づく指定感染症から外して、無症状者や軽症者は医療機関以外の施設に大量に入所できるようにする。次に、韓国が全国69の既存病院をコロナ専用病院に転換させたように、COVIDー19を迎え撃つ医療体制の再構築を進めることだ。
●医系技官の天下り問題
 このような政策転換は努力すれば可能だが、実は問題は簡単ではない。保健所体制の問題には、厚労省や国立感染研などを含む医系技官の人事問題、つまり天下りの問題が絡んでいるからだ。この問題に関しては、医系技官問題を細大漏らさず知り尽くす上昌広・医療ガバナンス研究所理事長が懇切丁寧に解説してくれた。その説明に耳を傾けよう。戦前にできた保健所は元来、徴兵制度のサポートシステムだった。強兵養成のために栄養失調などを事前にチェックする役目を負い、戦後はGHQの下で、性病検査やチフス、コレラ、結核対策に活用された。GHQは保健所長に医師を充てる政策を採り、食中毒取り締まりなどの「衛生警察」の役割も担わせた。このため、保健所は戦後に特殊な権限を持つ役所に生まれ変わり、同時に厚労省の前身である厚生省もGHQの指揮下で、高等文官試験(現在の国家公務員試験)を通らなくても同省の官僚となれる医系技官制度を採用する。この医系技官官僚が独特の人脈を形成し、厚労省と国立感染研、そして保健所や地方衛生研究所との間で独自の人事交流、つまり天下りのネットワークを形作っていく。ところが、保健所そのものは中曽根康弘政権時代以来、行財政改革の主要な標的とされ、その存廃問題が常に医系技官たちのトラウマとなってきた。1990年代のエイズウイルスやO157、あるいは2000年代に入ってからのSARSや新型インフルエンザなどはそのような心配から医系技官たちを解放してくれた。しかし、COVIDー19の場合はPCR検査のキャパがあまりに大きく、放っておくと保健所体制をはるかに超えるPCR検査の流れができてしまう。そうなると、保健所不要論の声がまた大きくなり、再び悪夢の行財政改革の標的とされてしまう。保健所がPCR検査仲介の権限をしぶとく手放さない深い理由はそこにある。
●第2波に備えてPCR検査拡充を!
 中国は5月14日から6月1日の19日間で、武漢市民の「全員検査」を実施し、約990万人にPCR検査を受けさせた。1日あたり約52万人の計算だ。これにはかなり劣るがニューヨーク市は1日あたり4万件のPCR検査が可能になった。翻って日本の場合は、全国で1日あたり2万2000件のPCR検査が可能になったと厚労省が5月15日に発表している。この差は、アイロニカルに表現すれば、まさに安倍首相の言う「日本モデル」から来ている。つまり、日本独特の保健所体制に絡む医系技官の人事問題に由来しているのだ。PCR検査自体は難しい検査ではない。民間検査会社や大学の研究室ではまだまだキャパが余っている。人の手を介さない全自動機械も日本のメーカーが開発製造している。しかし、保健所が検査仲介の権能を手放して検査会社に検査の自由を認めない限り、検査会社も全自動機械などは導入しない。安倍首相は現在のところ、PCR検査拡充を阻むこのような問題に取り組む姿勢を微塵も見せていない。医療体制の再構築なども念頭にはないようだ。このままでは第1波と何ら変わらない体制のまま大きい第2波を迎えることになるだろう。安倍首相は本来、中曽根元首相や小泉純一郎元首相の流れを汲み、積極的な行財政改革に取り組むのではないかと見られていた。トラウマを抱える医系技官人脈にとっては警戒すべき政権だった。ところが、当の安倍首相にはそのような問題意識はまるでないことがまもなく明らかになり、天下りを夢見る医系技官にとっては夢を紡ぐ安全安心の政権と転じることになった。COVIDー19第2波の危機的な状況を前にしても、そのような問題に気が付いている節は安倍首相にはまるで見えない。「第2波の危機を前に、基本的なPCR検査の拡充などはまったく絶望的ですね」。私の問いかけに上昌広・医療ガバナンス研究所理事長は深く頷いた。この記事の筆者であるジャーナリストの佐藤章さん、記事に登場する医療ガバナンス研究所理事長の上昌広さん、東京都世田谷区長の保坂展人さんをオンラインでつないだ論座主催の公開イベント『「私はコロナから生還した」~感染したジャーナリストが語る検査の実態。医師は、行政はどうする?』を無料で公開しています。新型コロナウイルスに感染した佐藤さんの体験をもとに、医師である上さん、首長である保坂さんがコロナ対策の課題について語り合う内容です。ぜひご覧下さい。

*2-3:https://www.nishinippon.co.jp/item/n/610611/ (西日本新聞 2020/5/23) 帰国後に39度の熱…PCRなぜ受けられない? 検査なおハードル高く
 新型コロナウイルス感染が急速に広がった際、自らの症状に不安を感じて行動しながらも、感染の有無を調べるPCR検査を「受けられなかった」という不満がくすぶった。日本は諸外国と比べて検査数が少ないと批判が高まり、政府は検査能力を増強。目標の「1日2万件」を達成したとするが、依然として実際の検査数は半数にも満たない。「次女が急に高熱を出した。もしかしてコロナかもと不安になりました」。福岡県北部に住む男性(61)は5月上旬、留学先のカナダから帰国して間もない次女(23)が39度近い熱を出したと明かす。医療機関4カ所から外来受診を断られ、保健所の相談電話もつながらない。やむなく自宅療養を続けたという。発熱5日目、クリニックの医師が保健所に連絡し、次女はようやくPCR検査を受けた。結果は陰性だったが、男性は「家族は不安で仕方なかった」と話す。次女は内臓疾患と判明した。同様の事例は各地で相次ぎ、相談してもPCR検査まで至らないケースもある。厚生労働省によると、国内のPCR検査能力は3月上旬の1日約4200件から2万3139件(5月17日現在)に伸びた。ただ、実際の検査数は平日で1日5千~8千件ほどで推移する。感染者の減少傾向を踏まえても、検査能力と検査数に大きな隔たりがあるのはなぜか。改めて検証した。 

*2-4:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200606&ng=DGKKZO60063940V00C20A6EA1000 (日経新聞 2020.6.6) コロナに後遺症リスク 重篤な合併症 治療長期化も 「肺以外に影響」報告相次ぐ
 新型コロナウイルスの感染者が重い合併症を患う症例が、世界で相次ぎ報告されている。心臓や脳、足など肺以外で重篤化するケースが目立つ。世界では300万人近くが新型コロナから回復したが、一部で治療が長期化したり後遺症が残ったりするリスクも指摘され始めた。各国の研究機関は血栓や免疫システムの異変など、合併症のメカニズム解明を急ぐ。
●俳優が右足切断
「きょう右足が切断されます」。米演劇界最高の栄誉とされるトニー賞にノミネートされたブロードウェー俳優、ニック・コーデロさん。新型コロナに感染して4月上旬、集中治療室(ICU)で治療を受けていた。重い肺炎症状に加えて表れたのが、右足の異変だ。血液の塊である血栓が生じ、つま先まで血液が行き渡らなくなった。血栓を防ぐため抗凝血剤が投与されたが、血圧に影響を及ぼし腸の内出血を併発、切断を迫られた。妻はインスタグラムで「ニックは41歳で持病もなかった。どうかみなさん、新型コロナを甘くみないで」と訴えた。新型コロナが肺以外に影響を及ぼす合併症の症例は、欧米をはじめ世界各国で報告されている。原因の一つとみられるのが、ウイルスが血管に侵入して形成する血栓だ。英医学誌ランセットに掲載された研究で、ウイルスが血管の内膜を覆っている内皮細胞を攻撃する証拠を発見。著者の一人、米ブリガム・アンド・ウィメンズ病院のマンディープ・メウラ医師は日本経済新聞の取材に「(攻撃が)心臓や脳、腎臓など複数の臓器で起きている」と指摘する。オランダの医師らの研究によると、新型コロナに感染してICUに入った患者184人のうち、31%で血栓を伴う合併症がみられた。多くが血栓が肺動脈を塞ぐ「肺塞栓症」で、一部の患者は「脳梗塞」も併発した。本来はウイルスの侵入から体を守る免疫システムが、正常な細胞まで攻撃してしまう現象も合併症を引き起こす一因とみられている。この過剰な免疫反応は「免疫暴走」とも呼ばれ、何らかの理由で過剰に反応し臓器や血管を傷つける。乳幼児が発熱や発疹など「川崎病」に似た症状を引き起こすケースも、米国だけで5月中旬までに約200の症例が報告された。
●正常機能戻らず
 重い合併症の広がりは治療の長期化や後遺症リスクを高める。中国・武漢の医者団が新型コロナを克服した25人の血液サンプルを調べたところ、ほとんどが重症度合いにかかわらず正常な機能を完全に取り戻していなかった。国際血栓止血学会は、回復した患者に退院後も抗凝血剤の服用を勧めるガイドラインを発表した。イタリアの呼吸器学会は新型コロナから回復した人のうち、3割に呼吸器疾患などの後遺症が生じる可能性があると指摘。地元メディアによると、少なくとも6カ月は肺にリスクがある状態が続く懸念があるという。「最初の症状から69日が経過したが、倦怠(けんたい)感が残る。目が痛くて断続的な頭痛がある」(カナダの男性)。重症化は免れても後遺症や長期化に悩む人は多い。米ボディー・ポリティックが感染者640人を対象に4月下旬から5月上旬に行った調査によると、9割が完全に回復しておらず、症状は平均して40日間続いていると回答した。もっとも、ウイルスが血栓の形成や過剰な免疫反応を引き起こすメカニズムは解明されていない。メウラ医師は「内皮細胞にどのように侵入するのか、抗凝血剤の投与が役立つのかまだはっきりしていない」と話す。コーデロさんのように抗凝血剤が機能しない場合もあり、医療現場では手探りの治療が続く。米ジョンズ・ホプキンス大によると、650万人を超えた新型コロナの感染者のうち約280万人がすでに回復した。だが治療の長期化や重症化に悩む患者は多く、医療保険など各国のセーフティーネットや医療インフラへの負担も深刻だ。治療薬やワクチンの開発と並び、重症化に至る仕組みの解明や対策が不可欠になる。

*2-5:https://gendai.ismedia.jp/articles/-/72582 (現代 2020.5.17) 東京の3月のコロナ死者、発表の10倍以上?「超過死亡」を検証する、国立感染研のデータから 長谷川学
●「少なすぎる」疑いの目
 5月11日、小池百合子東京都知事は、都の新型コロナ陽性者数公表に関して、過去に111人の報告漏れと35人の重複があったことを明らかにした。保健所の業務量の増大に伴う報告ミスが原因だという。同じ日の参院予算委員会。政府の「新型コロナウイルス感染症対策専門家会議」の尾身茂副座長は、「確認された感染者数より実際の感染者数がどれくらい多いか」と聞かれ、「10倍か、15倍か、20倍かというのは今の段階では誰も分からない」と “正直” に答弁した。先進各国に比べ、PCR検査件数が格段に少ないのだから、感染者数を掴めないのは当たり前のことだ。小池、尾身両氏の発言は、いずれも新型コロナの「感染者数」に関するものだ。だが実は、東京都が発表した今年3月の新型コロナによる「死亡者数」についても、以前から「あまりに少なすぎる。本当はもっと多いのではないか」と、疑惑の目が向けられてきた。東京都が初の新型コロナによる死亡を発表したのは2月26日。その後、3月中に8人の死亡が発表されている。この頃、東京都ではまだPCR検査を積極的に行っておらず、2月24日までの検査数はわずか500人余りにとどまっていた。このため「実際は新型コロナによる肺炎で死亡した人が、コロナとは無関係な死亡として処理されていたのではないか」という疑いが、以前から指摘されていたのだ。
●「超過死亡」とは何か
 これに関連して、国立感染症研究所(以下「感染研」)が興味深いデータを公表している。「インフルエンザ関連死亡迅速把握システム」(以下「迅速把握システム」)のデータである。この迅速把握システムは、約20年前に導入された。少し前置きが長くなるが、概要について述べよう。東京(23区のみで都下は対象外)など全国の21大都市における「インフルエンザ」による死者と「肺炎」による死者の数を合計し、毎週、各地の保健所から集計する。この2つの死者数の変化を追うことを通じて、全国のインフルエンザの流行状況を素早く把握しようという狙いだ。なぜ「インフルエンザ」だけでなく「肺炎」による死者もあわせて集計しているのか。例えば、お年寄りがインフルエンザ感染をきっかけに入院しても、そのまま亡くなってしまうケースは少なく、実際にはさまざまな治療の結果、最終的に「肺炎」で亡くなることも多い。そうした死者も漏らさず追跡し、インフルエンザ流行の影響を総合的に捉えようという考え方だからだ。専門的には、このような考え方を「インフルエンザ流行による超過死亡の増加」という。今回注目すべきは、迅速把握システムの東京都のデータ(次ページの図「東京19/20シーズン」)である(注・19/20とは19年から20年のシーズンという意味)。
●インフルは例年より下火だったのに
 図の「-◆-」で示された折れ線は、保健所から報告されたインフルエンザと肺炎による死者数を示している。ご覧のように、今年の第9週(2月24日〜)から第13週(〜3月29日)にかけて、それまでに比べて急増していることが分かる。この急増の原因は、いったい何なのか。この時期、東京ではインフルエンザは流行していなかった。1月、2月のインフルエンザ推定患者数は、前年同時期の4分の1程度。今年は暖冬で、雨も多かったこと、そして国民が新型コロナを恐れて手洗いを良くしていたことも影響したと考えられている。インフルエンザが流行っていなかったのに、なぜ、この時期に肺炎による死者が急に増えたのか。医師でジャーナリストの富家孝氏はこう推測する。「まず考えられるのは、新型コロナによる肺炎死でしょう。警察が変死などとして扱った遺体のうち、10人以上が新型コロナに感染していたという報道もありました。2月、3月は、まだ東京都はPCR検査をあまり行っていませんでした。検査が行われなかったら、当然、新型コロナの死者数にはカウントされません。実際にはコロナによる重症肺炎で亡くなっていた人が、コロナとは無関係な死亡と扱われていた疑いがあります」
●偶然とは思えない多さ
 金沢大学医学部の小川和宏准教授もこう話す。「今年はインフルエンザの感染者数が少なかった上に、2月末から3月末はインフルエンザのピーク(毎年1月末から2月初めの時期)も過ぎている。この超過死亡は、新型コロナによる死亡を反映している可能性が高いと思います」。では、「隠れた死者」は何人いたのだろう。再び図をご覧いただきたい。「超過死亡」とされるのは、図の赤線(閾値)を超えた部分だ。江戸川大学の隈本邦彦教授が解説する。「東京23区内で過去のデータから予測される死者数がベースライン(緑線)です。どうしても年によってバラツキがありますから、そのベースラインに統計誤差を加えた閾値(赤線)を設定し、それを超えた分を “超過死亡” と判定しています。つまり今年は、偶然では起こり得ないほど肺炎の死者が多かったということです。それが5週連続、しかも毎週20人以上というのは異常だといえます」。図のように、超過死亡は今年第9週(2月24日〜)に約20人にのぼった。その後も、第13週(〜3月29日)まで毎週20〜30人の超過死亡が起きていた。合計すると、およそ1ヵ月の間に100人以上。東京都が発表した3月中の新型コロナによる死亡数8人の10倍を超える。
●「原因病原体はわからない」
 データを発表した感染研は、この超過死亡をどう捉えているのだろうか。感染研に質問したところ、「このシステムは超過死亡の発生の有無をみるものですが、病原体の情報は持っておりませんので、その原因病原体が何かまでは分かりません」と、木で鼻をくくったような回答だった。なお感染研発表の過去の東京都のデータを調べると、前シーズン(18-19年)と前々シーズン(17-18年)にも超過死亡はあったが、これについて感染研は「インフルエンザの流行が非常に大きかった」と回答した。なぜ去年の出来事はインフルエンザとわかるのに、今年は不明という回答になるのだろう。とはいえ、この超過死亡が新型コロナによるものかどうかは、遺体がPCR検査もされずに荼毘に付されてしまったいまとなっては、実証する手立てがない。一方、感染研発表の東京都のデータからは、死者数とは別の大きな問題も浮かび上がる。図のように2月24日以降、東京23区で超過死亡が急増していた。新型コロナウイルス発生を中国政府が正式に発表したのは、今年1月9日。同23日には武漢市が都市封鎖された。日本でも1月下旬以降、徐々に感染者が確認され、2月13日には国内初の死者が出て、人口が密集する東京での感染爆発は不可避とみられていた。そうした状況下で、2月24日以降5週間にわたって、人知れず週20〜30人もの超過死亡が確認されていたのである。なぜ、この重大なサインに当局は目を留めず、活かそうとしなかったのか。「原因病原体が何かまでは分かりません」で片づけられる話ではない。
●今にして思えば…
 前出の隈本氏が首を傾げる。「インフルエンザが流行していないのに、2月下旬に東京23区で週に約20人の超過死亡が発生していた事実は、通常なら2週間後の3月上旬には感染研の迅速把握システムに届いていたはずです。その時点で、感染研の担当者や厚労省の専門家会議のメンバーの誰かが気付いて、“東京が大変なことになっているかもしれない” と警鐘を鳴らしていたら、PCR検査態勢の拡充を含め、より早期の対応が可能だったはずです」。だが実際には、小池東京都知事が新型コロナ対策で本格的に動き始めたのは、3月24日に東京オリンピックの延期が正式に決まってからだった。そして東京都の新型コロナ感染者数は、先に感染が広がった北海道に比べてずっと少なかったのに、東京オリンピック延期が決まった後から、急激に右肩上がりで増えていった。「もし2月下旬に発生し始めた週20人以上の超過死亡が新型コロナのためだとなると、その時点でオリンピックどころではなくなったでしょう。しかし、もしそうした “忖度” のために、税金を使って集めている迅速把握システムが捉えたデータが生かされなかったとしたら、何のためのシステムなのか。東京都や国の責任は重いと思います」(隈本氏)。なぜこの貴重なデータが早期に検証され、コロナ対策に生かされなかったのか。今後、経緯を厳しく検証していく必要があるだろう。

<病院への新型コロナの一撃>
*3-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200522&ng=DGKKZO59429720S0A520C2EA1000 (日経新聞 2020.5.22) コロナ禍で通院激減 「不要不急」が問う医療、医療資源、最適配分に一石
 新型コロナウイルスが猛威をふるい始めてこの方、私たちは「不要不急」という言葉を幾度となく聞かされてきた。この四字熟語は医療にもあてはまるのだろうか。企業の健康保険組合と協会けんぽ、公務員などの共済組合や船員保険を合わせた被用者保険の3月の医療費動向が判明した。総額は1兆1257億円、患者が医療機関にかかった件数は9415万件。前年同月と比べると、医療費の1.3%減に対し、件数は11.5%減と大きく落ち込んだ。何が読み取れるか。
●風邪なら自力で
 3月は初旬こそ外出を自粛する空気は強くなかったが、半ば以降はイベントや会合の中止が相次いだ。通院の見合わせや先送りをする患者が目立ちはじめたのは、この頃だ。こんな仮説は成り立たないだろうか。軽い風邪や腹痛、花粉症などにかかった人は通院を控え、薬局で薬剤師や登録販売者に相談し処方箋がなくても買える一般用医薬品(OTC医薬品)でしのいだ。従来は地域の診療所や病院の外来診療に頼っていた軽い病の治療が、自分で手当てをするセルフメディケーションに取って代わった。感染症の専門家は軽い風邪症状の人には自宅療養を呼びかけていた。手洗いや消毒の徹底による予防効果もあろう。一方、高度医療を提供する大学病院や専門病院は、高額な医療費がかかる治療をさほど減らさなかった。この結果、件数の急減に対し医療費はさほど減らなかった―。医療関係者の多くは、医療に不要不急はあり得ないという。慢性疾患を抱えた高齢者には、待合室で長時間すごすのを避けようと、通院を見合わせた人もいる。それが原因で病状が重くなることがあってはなるまい。半面、自らの体調を知り、調子が悪ければ自己判断・自己負担で薬をのんで治すのも医療のひとつのかたちだ。「不要」ではなくとも受診が「不急」であるケースはあろう。健康保険証があれば医療機関へのアクセスが原則自由な日本は、主要国で最も医師にかかりやすい国のひとつだ。早期治療を促す利点があるが、そのぶんコロナ禍による受診抑制を招きやすいのではないか。英国営医療制度(NHS)が採用した人工知能(AI)診断アプリのようなしくみを日本でも保険適用すれば、受診抑制による治療の遅れをくい止める効果が期待できよう。むろん同国とは医療費の負担構造が違うので、一概には比べられないが。
●病院経営に影響
 注目すべきは緊急事態宣言下の4月の動向だ。厚生労働省は重篤・重症のコロナ感染者を受け入れ専門治療にあたっている大学病院などに対し、特例としてICU(集中治療室)の入院料を2倍に上げた。だが採算は改善せず、コロナ対応病院の経営はおしなべて苦しい。隔離用の陰圧病室を新設したり空き病床を確保したりするコストがかさむからだ。政府・与党が編成に着手した2020年度第2次補正予算案は、コロナ対応病院への資金援助が欠かせまい。地域の診療所などはどうするか。日本医師会は2次補正に資金援助を計上すべく厚労省への働きかけを強めている。省内には初診・再診料の加算を模索する動きがある。セルフメディケーションへの移行や予防の徹底が効いているとすれば、医療機関の減収分をほかの患者や健康保険が負担する診療報酬で補填するのは筋が通るまい。診療報酬を上げるなら、オンラインの初診・再診料を増やし、コロナ後も見すえた新しい医療態勢に誘導するのが望ましい。4月に入り、規模の大きな総合病院にも、外来患者が急減したり不急の手術を先送りしたりし、収入の落ち込みが目立つようになったところがある。コロナ禍という特異な状況のもとで、専門性や診療科の違いによる繁閑の差が広がっている。軽症のコロナ感染者は感染予防を徹底させた地域の診療所で治療する選択肢もあろう。そのための設備や資材を国費で援助するのは、納税者の納得を得やすい。人材配置を含め、医療資源を最適配分するにはどんな資金援助が効くか。データをつぶさに読み取り、根拠に基づく政策立案を徹底するときである。

*3-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200606&ng=DGKKZO60069950V00C20A6EA3000 (日経新聞 2020.6.6) 新型コロナ 政策を聞く〈検査体制〉民間機関、参入しやすく 自民・医師議員団本部長 冨岡勉氏(長崎大院修了。医学博士。衆院厚労委員長など歴任。党政調副会長。石原派。衆院比例九州、71歳)
 日本は米欧や中韓に比べ検査体制の整備が遅れた。第2波が起こりかけた時に正確に把握できるよう体制の拡充が急務だ。再流行の予兆を感知したらすぐにクラスター(感染者集団)対策を強化し、小さな流行に抑えるためだ。これまで過剰に検査せず医療費を抑えた面はあったが、再流行の兆しをつかめずに大規模な感染拡大につながればかえって医療費は増える。PCR検査の体制を強化するには米国や韓国で普及するドライブスルー方式の検査センターを増やす必要がある。短時間で検体を採取できるため効率がよい。病院で医師や患者が集団で感染するリスクを減らせる。ドライブスルー方式は日本の医師会や自治体で導入が増え始めている。政府は民間の検査機関が参入しやすくなる支援策を講じてほしい。PCR検査に類似し最短2~3時間で終わる簡易な「LAMP法」もドライブスルー方式で導入すべきだ。無症状者らを対象にコロナの感染の有無を一定の精度で早く判定できると期待する。抗原検査や抗体検査は学会で診断の評価が十分に定まっていないため、明確な症状がある人らに対象を限るのが望ましい。無症状者らが診断後にPCR検査も受けたら二度手間になる。

*3-3:https://www.nikkei.com/paper/related-article/?b=20200606&c=DM1&d=0&nbm=・・ (日経新聞 2020.6.6) PCR遅れ 国会検証を 立民・幹事長 福山哲郎氏(京大院修了。民主党政権で外務副大臣や官房副長官など歴任。参院京都選挙区、58歳)
 感染の実態を十分把握しているとは言いがたい。検査のために保健所などに設置した帰国者・接触者相談センターは電話がつながらないケースが相次いだ。「37.5度以上の発熱が4日以上続く」とした受診目安も壁となった。軽症、無症状者を含めた感染者数の全体像を把握しなければ必要な対策は打てない。PCR検査を増やすべきだ。ドライブスルー方式は院内感染を防ぎ、検査数を増やせるメリットがある。韓国やドイツなどではドライブスルー方式を2~3月に導入した。感染者を早期に発見し隔離することで感染防止につなげようとしたのだろう。日本も自治体が積極的に導入したのは評価できる。国が経費を負担するのが不可欠だ。第2波に備え、抗体検査も組み合わせ検査数を増やしていくのが欠かせない。妊婦や医療従事者、教員などに優先的に受けさせるべきだ。屋外拠点や電話ボックス型の検査ブースの活用も有効だろう。医療機関とは空間を別にして数多く検査ができるシステムを開発せねばならない。PCR検査がなぜ進まなかったのか十分な検証が必要だ。国会にコロナ問題検証委員会を設け、要因を分析すれば今後の検査拡充につながる可能性がある。(随時掲載)

*3-4:https://digital.asahi.com/articles/DA3S14502069.html (朝日新聞 2020年6月5日) 病院再編、感染症考慮
 厚生労働省が再編統合の必要性を打ち出した全国の公立・公的病院について、安倍晋三首相は4日の参院厚生労働委員会で「感染症病床を担い、感染症対策において重要な役割を果たしていることは認識している」と述べ、今後は感染症対策も考慮して議論を進める方針を示した。厚労省は昨年9月、再編統合の必要があるとして424の公立・公的医療機関を名指ししたが、感染症病床の有無などは考慮していなかった。しかし、新型コロナウイルスの患者を多く受け入れている感染症指定医療機関の多くは公立・公的病院で、病院団体などから見直しを求める意見が示されていた。

*3-5:https://digital.asahi.com/articles/DA3S14496109.html (朝日新聞 2020年5月31日) 医療担い手、待遇悪化 ボーナス3分の1に/給料10%減… コロナ恐れ受診減
 新型コロナウイルスで、医療や介護の働き手の待遇が悪化している。感染対策のコストがかさみ、患者や利用者が減って、経営が揺らいでいるためだ。一時金をカットせざるを得ない病院や施設も相次ぐ。国は医療・介護従事者へ最大20万円を配る予定だが、減収分を補うのは難しい。一部では雇い止めや、休みを指示する一時帰休などもみられ、雇用をどう守るかも課題だ。医療機関のコンサルティングを手がけるメディヴァによると、一般の患者が感染を恐れて受診を控える動きがめだつ。同社が全国約100の医療機関に感染拡大の前後で患者数の変化を聞いたところ、外来患者は2割強、入院患者は1~2割減った。首都圏では外来は4割、入院は2割減。とくにオフィス街の診療所では、在宅勤務の定着で会社員らの患者が落ち込む。メディヴァの小松大介取締役は「非常勤医師の雇い止めも出ている。夏のボーナス支給見送りを検討している施設も散見される」と話す。実際、看護師らの給料や一時金が下がるケースが続出している。日本医療労働組合連合会(医労連)が28日にまとめた調査では、愛知県の病院が医師を除く職員の夏の一時金を、前年実績の2カ月分から半減させることを検討。神奈川県の病院では夏の一時金カットに加え、定期昇給の見送りや来年3月までの役職手当の2割カットなどを検討しているという。医労連の森田進書記長は「職員の一時金1カ月分はだいたい30万円。コロナ患者を受け入れている医療機関の勤務者には最大20万円が支給されることになったが、賃下げ幅が上回る可能性がある」と話す。職員の夏の一時金を、当初想定していた額の3分の1に引き下げる病院もある。埼玉県済生会栗橋病院(同県久喜市、329床)は、新型コロナの入院患者も受け入れている。4月の病院収入は前年同月より15%減で1億2千万円減った。院長は経営環境について「つぶれるんですか、というレベルだ」と打ち明ける。看護師や臨床検査技師ら職員の夏のボーナスについて、感染拡大前に想定した額の3分の1にまで減らさざるを得ないという。全国医師ユニオンが都内で16日に開いたシンポジウムでも、懸念の声があがった。千葉県内の民間病院に勤める研修医は「すでに給料が10%カットされた病院もある。現場でのストレスが強くなるなかで給料まで下がったら、もうやっていられないという人も出てくる」と訴えた。大病院のなかには、業務が減っている一部の職員について、一時帰休を検討するところも出てきた。今後予想される「第2波」に向け、医療従事者の雇用の安定が求められる。
■経営、もともと脆弱
 背景には、感染拡大前から病院がぎりぎりの経営を強いられ、脆弱(ぜいじゃく)だったことがある。病院の収入は診療報酬制度に基づく。手術や入院などの診療行為ごとに値段(点数)が決められている。国は医療費が膨らみすぎないように点数を抑制してきた。厚労省の医療経済実態調査によると、精神科を除く病院の2018年度の損益率(収入に対する利益の割合)は、マイナス2・7%の赤字。利益を出しにくい構造で、患者が少しでも減れば経営が揺らぐ。介護の分野でも構造は同じ。国が定める介護報酬も抑制されていて、事業者には余裕が少ない。感染対策の費用がかさむ一方で、サービスの利用者が減り経営を圧迫している。国は診療報酬の上乗せやデイサービスの条件緩和など対策をとろうとしているが、実態の把握は十分ではない。厚労省の医療経営支援課は「病院団体が調べたデータなどを踏まえて経営支援に何ができるか考えていく」という。
■病院や介護施設における待遇悪化の主な事例
【病院】
 <愛知> 医師以外の固定給職員の夏の一時金が前年から半減の1.0カ月分
 <沖縄> 正規、臨時職員の夏の一時金が前年の約3割減の0.8カ月分
 <神奈川> 定期昇給見送り。正規職員の夏の一時金が前年の約3割減の
       1.0カ月分+3万円。6月から来年3月まで役職手当2割カット、
       管理職手当1割カット
 <東京> 一部の職員に一時帰休を実施
【介護施設】
 <和歌山> 夏の一時金が前年の約2割減の1.5カ月分
 <神奈川> 基本給を平均約2割減らし、定昇は見送り。年間一時金が前年から
       半減の2.0カ月分
 (日本医療労働組合連合会調べ。労使交渉は継続中で支給内容は変わる可能性がある)

<新型コロナの経済対策>
*4-1:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/526293 (佐賀新聞 2020.5.23) コロナ解雇1万人超
加藤勝信厚生労働相は22日の記者会見で、新型コロナウイルス関連の解雇や雇い止めが21日時点で1万835人に上ったと明らかにした。政府が緊急事態宣言を発令した4月から急増し、5月だけで全体の7割近い7064人を占める。雇用情勢が急速に悪化している実態が浮き彫りになった。厚労省は2月から、解雇や雇い止めについて見込み分も含めて都道府県労働局の報告を集計している。月ごとに見ると、2月が282人、3月が835人、4月が2654人。5月は20日時点で5798人だったが、21日には7064人となり、千人以上増えた。加藤氏は「日を追うごとに増加している」と懸念を示した。業績が悪化した企業が従業員を休ませた場合に支給する雇用調整助成金などを利用して、雇用維持に努めてほしいと強調。大規模な解雇や雇い止めの情報を把握した場合は「ハローワークの職員が企業に出向き、雇用調整助成金の活用を働き掛ける」と述べた。厚労省は解雇や雇い止めの集計に関し、現在は正社員と非正規労働者を区別しておらず、加藤氏は「(今後は)正社員と非正規労働者の動向が分かるよう事務方に指示している」と語った。パートら非正規労働者は正社員に比べて解雇されやすく、労働組合関係者の間では派遣社員の大量雇い止めなどへの懸念が広がっている。

*4-2:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/528535 (佐賀新聞 2020.5.29) 観光割引、事務費が3000億円、「高すぎる」と野党が問題視
 新型コロナウイルス感染拡大で打撃を受けた観光・飲食業を支援する政府のキャンペーンを巡り、外部への事務委託費が最大約3千億円と見込まれることが分かった。予算総額1兆6794億円の約2割を占める可能性があり、立憲民主、国民民主などの野党会派が29日開いた合同部会では「事業者に恩恵が行き届かない恐れがある」と問題視する声が出た。政府は新型コロナの収束を見据え、本年度第1次補正予算にキャンペーン費用を計上。旅行商品を購入した人に半額相当を補助したり、飲食店のインターネット予約などにポイントを付与したりする。事務作業は外部に委託するが、費用の上限は3095億円に設定。人件費、広報費に充てることを想定している。事務局の公募を既に開始、6月中に選定する。赤羽一嘉国土交通相は29日の衆院国交委員会で、関係業界が多岐にわたるため、事務局の作業は「時間とコスト、手間が相当かかる」と指摘。上限額の設定は適正との認識を示した。その上で、最終的な委託費用は「絞られる」とも述べた。野党の会合では「事務局への費用がかかりすぎると、本当に必要な事業者の支援が不十分になる」「地域の消費を喚起できるような仕組みにしてほしい」といった意見が出た。

*4-3:https://digital.asahi.com/articles/DA3S14496375.html (朝日新聞 2020年6月1日) 布マスク「質より量」、迷走 政府、早さ重視 国内検品断る
 4月1日の安倍晋三首相の全戸配布の表明から2カ月。いまだ大半の世帯に届いていない「布マスク」は、安倍政権の迷走の象徴となっている。マスク不足の中、調達の現場ではなにが起きていたのか。「3月中に1500万枚、4月中に5千万枚ほしい」。2月後半、最大の受注企業となる「興和」(名古屋市)の三輪芳弘社長は政府からの依頼に驚いた、と振り返る。枚数の桁が違った。「量ですか、質ですか」。納期を考えて優先事項を尋ねる三輪氏に政府の担当者は言った。「量だ。とにかく早くほしい」。医薬品や衛生品などをつくる同社が生産するマスクは不織布の使い捨てが主流だったが、布マスクも少数ながら取り扱っている。政府は生地の調達を含めて一貫した生産ができるとみて依頼した。だが、この時点で、政府の担当者も同社も、のちに「アベノマスク」とも言われる全戸配布の布マスクになるとは想像していなかった。課題は山積みだった。ガーゼの生地は中国やベトナム、スリランカなどアジア各国で探し、かき集めた。ただ、その時点では政府の発注書もない、いわば「口約束」だった。つくった布マスクを政府が買い取るという確約もない中で作業は始まった。生地はタイとインドネシアで加工。縫製は中国の加工業者に依頼し、約20カ所を確保した。2週間で急きょ集めた作業員は計1万人以上。日本人社員は感染を避けるため赴任先から帰国させており、日本語が分かる現地スタッフを通じて加工業者らとやりとりした。これとは別に検品場所も中国で約20カ所探し、ピーク時には数千人が作業にあたった。同社は当初、品質を担保するため国内での検品を強く希望。しかし、同社の国内検品は1ミリ程度の縫い目のずれすら不良品として取り除くというもので、「それでは期日までに目標の半分も調達できないおそれがあるということで、政府側が断った」(政府関係者)という。同社は日本から検品の担当者を現地に行かせ、監督させようとしたが、出入国制限などのため断念した。こうした経緯は異例の契約にもつながった。3月17日に結ばれた介護施設など向けの布マスク、21・5億円分の契約書には、隠れた不具合が見つかっても興和の責任を追及しないとの条項が入った。配布計画を担う政府のマスクチーム担当者は「緊急を要する発注だったためにこのような契約を結んだ」と話す。縫製作業が始まったのは3月21日ごろ。同月26日、三輪氏は首相官邸で開かれた会議に出席。最初につくったサンプルを持参した。首相が全世帯に2枚ずつ布マスクを配ると表明したのは、その6日後だった。布マスク計画に関わった政府関係者は言う。「マスクが国民に行き渡るようにしろ、というのが官邸の意向だったが、これほどの量を短期間で確保するなんて元々厳しい目標だった」。前例のない計画に、やがてほころびが出た。

<介護崩壊>
*5:ttps://www3.nhk.or.jp/news/html/20200508/k10012422701000.html (NHK 2020年5月8日) 新型コロナで“介護崩壊”の危機? 高齢者施設で いま何が
 老人ホームなどの入所系の高齢者施設で、4月末までに少なくとも550人余りが新型コロナウイルスに感染し、このうち10%にあたる60人が死亡したことが全国の自治体への取材でわかりました。欧米では死者の多くを高齢者施設の入所者などが占めていて、専門家は「日本でも感染者や死者がさらに増えていくおそれがあ

(図の説明:左の図は米国、中央の図はフランスの超過死亡数のグラフで、このような事態の中で、山形の超過死亡数が出るのは極めて自然なのだが、右図のように、日本はこれまでカウントしていた超過死亡数の公表を3月以降、中止している)

(1)医療崩壊を加速させた消費税制 ← 医療費を消費税非課税取引とした失政
る」と指摘しています。
●高齢者施設関連 国内死者の15%
 新型コロナウイルスの感染が先に深刻化した欧米では、死亡した人の多くを高齢者施設の入所者などが占める事態となっていて、NHKは全国の自治体に4月末時点での高齢者施設での感染状況を取材しました。その結果、特別養護老人ホームや老人保健施設、それに有料老人ホームやグループホームなど入所系の高齢者施設では、少なくとも利用者380人余り、職員およそ170人の合わせて550人余りが感染し、このうち10%にあたる利用者60人が死亡していたことがわかりました。このほか、デイサービスなどの通所系施設やショートステイなどの短期入所系施設でも利用者と職員合わせておよそ190人が感染し、このうち利用者6人が死亡していたほか、訪問介護事業所でも利用者と職員だけで合わせて30人余りが感染していました。さらに愛知県では、デイサービスに関連して2つのクラスターが発生し、利用者と職員、それに利用者の家族や接触者などを含めて合わせて90人余りの感染が確認され、このうち20人が死亡しています。これらをすべて合わせた高齢者施設関連の死者は少なくとも86人で、国内で感染が確認され死亡した人のおよそ15%を占めています。
●感染拡大が続く高齢者施設
 各地の高齢者施設では5月に入ってからも利用者や職員の間で感染が広がり続けています。
▽札幌市の介護老人保健施設
  集団感染が発生。新たに利用者と職員合わせて30人の感染が明らかに。
▽京都市内2つの有料老人ホーム
  利用者