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2024.3.7~4.11 歳出改革の理念から見た予算について (2024年4月15、21、22《図》、24、25、26、27《図》日、5月31日に追加あり)
  
     梅林       アーモンドの花       レンゲの花     蜜蜂

(図の説明:この章を書いているうちに、「梅→アーモンド→レンゲ」の花と季節が進みました。蜜蜂を飼っている友人に言わせると、「蜜蜂は、自分で餌を採ってくるし、巣も自分で掃除するので、犬猫より飼うのが簡単で、蜂蜜もくれる」とのことです。また、「蜜蜂の行動範囲は巣から1~2kmなので、花を選んで蜂蜜を採ることも可能」だそうです)

(1)地球環境及び食料・エネルギー自給率の理念から見た歳出改革について
1)研究開発・イノベーション力とヒト・モノ・カネの関係
 *1-1-1は、イ)「生産性向上のための構造改革が置き去り」として、①「国民経済計算」確報版で示された日本の2022年名目GDP/人はOECD加盟国中21位でG7最低 ②日本生産性本部「労働生産性の国際比較2023」では、2022年の労働生産性/人はOECD加盟国中31位 ③GDP全体でも人口が日本より3割以上少ないドイツに抜かれて4位 ④労働生産性が2022年に31位まで後退した理由は、日本は就業者比率が高く、欧州はユーロの評価以上に生活水準の高い国があるから ⑤労働生産性の順位こそ深刻に受け止めるべき ⑥日本でGDP/人や労働生産性/人の低迷が起きた理由は、財政・金融政策頼みの経済運営で生産性向上のための構造改革が置き去りにされてきたから 等としている。

 このうち①③は事実で、1人当たりGDPはOECD加盟国中21位と決して高い方ではなく、G7で見れば離れて最低なので、日本は先進国とは言えない状態だ。また、総GDPも人口が日本より3割以上少ないドイツに抜かれて情けない限りだが、こうなる理由は、規制で既得権益を守ってイノベーションをやりにくくしている政府や“日本文化”の責任が大きいのである。

 また、②④⑤の労働生産性はOECD加盟国中31位で、その理由は「就業者比率が高いから」と説明されているが、生産年齢人口の割合が減少すれば就業者比率は高くなるのが当然であるため、日本は、力仕事やルーチンワークの機械化・生産性の高さに報いる給与体系・組織のフラット化などの生産性を上げるシステムへの移行ができていないのが本質的な原因であろう。

 このような中、⑥のように、日本政府は、漫然と莫大な予算を使って国債残高を増やしつつ財政・金融政策頼みの経済運営をして経済にカンフル剤を打っただけで、教育・研究開発・実用化に向けた規制改革をしてイノベーションを起こし易くし、生産性を向上させる取り組みが少なかっただけでなく、部分的には後退までさせていたのだ。

 また、*1-1-1は、ロ)「良質なヒト、モノ、カネが国外流出の恐れ」として、⑦良質なヒト、モノ、カネが国を見捨てて流出していく ⑧教育水準の高い人や才能のあるスポーツ選手が実力を発揮した場は欧米 ⑨実際に人口減少の中で日本人の海外永住者数は増加中 ⑩イノベーション不足の国はモノへの投資も海外へ向かう ⑪カネに関しても、日本は0金利を維持して資金流出と円安を招いた ⑪良質のヒト・モノ・カネの流出はさらなる貧困化を招き、一層政府への依存度を高める ⑫既得権益や規制の壁も大きい としている。

 このように、生産性の高さに報いない給与体系で、規制により既得権益を守ってイノベーションをやりにくくしていれば、日本で研究しても報われないため、⑦⑧⑨⑩⑪⑫のように、良質なヒト・モノ・カネが国を見捨てて流出し、日本人の海外永住者数が増加している。

 実際、⑧のように、教育水準の高い人や才能あるスポーツ選手が実力を発揮した場所は、人の能力を小さく規定せずに能力を存分に発揮させる欧米であり、⑪のように、良質のヒト・モノ・カネが流出する結果、政府への依存度の高い人ばかりが残って国内はさらに貧しくなる。これは、数十~百年単位では、次世代への生物的遺伝も加わるため、大きな違いとなるのだ。

 さらに、*1-1-1は、ハ)生活の豊かさまで含めたビジョンが必要 として、⑬生活を豊かにするサービスを市場経済から供給されるサービスに限らず、環境を含む市場外サービスまで拡張し ⑭それらを提供する民間資本・社会インフラ・自然資本・人的資本等の組み合わせを政策目標とし ⑮単なる過去への回帰でない「豊かさ」への戦略を練る必要 等と記載している。
 
 しかし、⑬のように、環境は「市場外サービス」と考えること自体、「昭和的」というより「戦後復興期」の日本の開発途上国時代の発想だと、私は思う。

 例えば「生活を豊かにする環境」とは、住居の場合なら、i)都市計画の行き届いた自然が多くて文化的な都市 ii)ゆとりある個人住宅や庭 iii)住宅の断熱性能 iv)水だけでなく湯の出る環境 v)職住接近による可処分時間の確保 など、欧米では市場経済で供給されているが、日本では市場に存在しなかったり、存在しても著しく高価で可処分所得を圧迫するため購入できなかったりするものだ。そのため、同じ名目所得を得ても、欧米の方が生活を豊かにする環境で生活でき、日本は今でも開発途上国の住環境にあるのである。

 従って、⑭のうちの自然資本と社会インフラは、国や地方自治体がこれまでに整備しておくべきだったもので、それらが整備されて後に、そこで民間資本や人的資本が活躍できるのだ。そのため、⑮の「単なる過去への回帰でない豊かさ」が必要なのは当然だが、それは公的部門も漠然と前例を踏襲したり、多額の予算をつけたりしていればできるものでは決してないのである。

2)生活の豊かさを増す政策(その1) ← 省エネと再エネの導入
 日本は再エネが豊富な国で、エネルギー自給率向上にも役だち、国富の海外流出を抑えられるにもかかわらず、様々な屁理屈をつけて再エネ利用に消極的で、化石燃料や原子力等の従来型集中発電方式を優先してきたため、日本初の技術である再エネの実用化や商用化が遅れた。

 そのような中、*1-1-2は、①経産省は2025年度にビル壁や窓等でも発電できるペロブスカイト型太陽光発電を再エネ電力固定価格買取制度(以下“FIT”)に加える ②現行太陽光向け水準を上回る10円/kwh以上に優遇する ③それにより、民間投資を促して日本の再エネ拡大に繋げる ④日本発の技術で開発段階では日本勢に優位性があったが、中国企業は量産を始めて商品化で先行 ⑤ペロブスカイト型普及で都市を発電所にできる 等としている。

 このうち①②のように、経産省がペロブスカイト型太陽光発電をFITに加え、現行の太陽光発電以上に優遇して、③のように、民間投資を促して日本の再エネ拡大に繋げるのはよいと思う。しかし、2025年度まで待たなくても2024年度からやればよく、④のように、量産を始めて商品化で先行している中国企業と同じ以下のコストにしたり、断熱窓と組み合わせたり、ビルの壁面らしい色に印刷したりなどして、速やかに高付加価値の製品を作るべきである。

 そうすることによって、⑤のペロブスカイト型太陽電池を自然な色や形で都市の色調にマッチさせて普及することができ、電力消費量の多い都市自体を発電所にすることができるのである。

 このほか、*1-1-3は、⑥高断熱や複層ガラスによる省エネ性能の高い窓への交換が急増 ⑦背景に冷暖房コスト増で断熱性の高い窓に交換して電気代を抑える需要 ⑧立川市のマンションは、2022年に修繕工事の一環として全136戸の窓ガラスを日本板硝子の省エネガラス「スペーシア」に交換 ⑨スペーシアは2枚のガラス間に0.2ミリメートルの真空層を作って熱の伝導や対流を抑えるもので、厚さは1枚ガラスとほぼ同じで4倍の断熱効果 ⑩夏の電気代が2〜3割減少 ⑪AGCの複層ガラスも4〜5月の販売数が前年比5割増で6月は2倍 ⑫政府は2023年度から省エネ性能の高い窓ガラスや窓枠の交換費用のうち1戸あたり上限200万円まで補助する「先進的窓リノベ事業」を展開しており、政府の補助金も追い風 としている。

 化石燃料の輸入を減らし、国富が国外流出するのを防いで、エネルギー自給率を高める方法には省エネもあり、断熱性の高い住まいは国民の生活の豊かさも増す。そのため、⑥⑦は実需であり、⑧⑨⑩⑪のように、中古マンションの大規模修繕工事の際に全戸の窓ガラスを「スペーシア」や「複層ガラス」に交換して電気代を抑えるのは良いし、その際に住民に反対が出ないためには、⑫のように、政府が「先進的窓リノベ事業」として補助するのがよいと思う。

 そのため、*1-1-4のように、⑬政府は戸建て・集合住宅のリフォーム工事を対象として住居の窓を断熱性の高いものに改修する工事へ支援制度を延長する方針 ⑭工事にかかる費用の半分(1戸最大200万円)を国が負担 ⑮登録した事業者が施工する場合に適用 ⑯環境省は2024年度予算の概算要求で1170億円を求めた というのは、2023~2024年だけでなく2032年までの10年間くらいは続けて良いと思う。

3)生活の豊かさを増す政策(その2) ← 地球環境と藻場、漁業
イ)大阪湾湾奥部の藻場再生について
 *1-2-1は、①大阪府が2023年8月にBOIと事業連携協定を締結した ②藻場はCO2を吸収して長期貯留してSDGsに寄与する ③藻場はO₂の供給など水質改善効果も期待でき、魚類など生き物のすみかとなる ④大阪湾全体の湾奥部だけがコンクリート等でできた人工護岸のため「ミッシングリンク」だった ⑤大阪府は「大阪湾MOBAリンク構想」を掲げたが、i)船舶等の港湾利用に影響を及ぼさない藻場創出技術 ii)海面下の海藻の生育状況確認 iii)企業の所有地に面した護岸と海藻を育成したい人の少なさ が課題だった ⑥大阪湾奥部は大都市圏から流入する河川等の影響で汚濁物質が溜まりやすく水質改善も課題 ⑦2021年12月に大阪市が管理する「大阪南港野鳥園」の護岸にある消波ブロックにワカメを育てる30センチ四方のパネルを設置し、2022年4月にはワカメの繁茂を確認していた としている。

 上の②③のように、藻場は、光合成によって水中のCO2を吸収してSDGsに寄与し、同時に水中にO₂を供給し、水中の養分を吸収して、水質を改善する。そのため、藻場は、貝類や魚類の餌場・すみか・産卵場所となり、「港は魚の保育園」とも言われている。

 しかし、大阪湾の湾奥部は、④⑥のように、大都市圏から流入する河川等の影響で汚濁物質が溜まり易い上、コンクリート等でできた人工護岸のため藻場がなかったため、大阪府は、⑤のように、「大阪湾MOBAリンク構想」を掲げたのだそうだ。

 そして、2021年12月には、⑦のように、大阪市管理の「大阪南港野鳥園」護岸にある消波ブロックにワカメを育てる30センチ四方のパネルを設置し、2022年4月にはワカメの繁茂を確認していたが、⑤iii)のように、企業の所有地に面した護岸は近づけないため藻場の再生ができていなかったとのことである。本来は、波消ブロックやコンクリート護岸設置で藻場を喪失させた企業は、(それも公害であるため)企業自身が藻場の復元を行なうことを国は義務化すべきだ。

 また、⑤i)の船舶等の港湾利用に影響を及ぼさない藻場創出の技術は、海藻の種類を選べば可能であるし、⑤ii)の海面下の海藻生育状況確認は、①のように、大阪府が2023年8月に事業連携協定を締結したBOIのメンバーであるスタートアップが保有する海洋ドローン等で調べるそうだが、近年はカメラも安価になっているため、24時間、毎日、複数のカメラで撮影して画像を送信し続ければ、海藻の生育状況と魚介類の増加状況が時間の経過とともに記録され、有用なデータになると思われる。

ロ)唐津アカウニの資源回復について
 *1-2-2は、①藻場の磯焼けでアカウニの資源が大きく減少していた ②唐津ブランド・アカウニ資源を回復するため、唐津市内の漁業者とNPO法人「浜-街交流ネット唐津」が長崎県産アカウニの大型種苗を放流した ③これまで佐賀県産の小型アカウニ種苗を放流していたが、小型種苗は生残率が低かった ④今後、収穫までの生残率を定期的に調べて効果的なアカウニ種苗の放流を検証する ⑤NPO代表理事は「アカウニの資源が減り、危機的状況。資源回復の効果を確認していきたい」と語る としている。

 しかし、①~⑤については、藻場が減ってアカウニの餌となる海藻が減り、その結果、アカウニが減少しているのであるため、藻場を回復しなければアカウニの種苗を放流しても生残率が低かったり、売り物にならない痩せたウニになったりする。

 従って、アカウニの資源回復のためには、餌の海藻を増やす必要があり、餌の海藻は、i)地球温暖化による海水温上昇 ii)原発の温排水による海水温上昇 でこれまでの海藻が育ちにくくなり、残った海藻をウニが食べ尽くして磯焼けになったのであるため、何らかの方法で藻場を再生してウニの餌を増やすか、ウニの種苗を養殖するかしなければ、良質のアカウニを出荷することはできないのである。

 このような中、*1-2-3は、⑥唐津市は、唐津市沖に誘致を検討している洋上風力発電事業の有望区域指定を進めるため、副市長をトップとして経済部・漁業・港湾振興部等の横断的体制を立ち上げた ⑦市長は「事業の早期実現は、地域振興・経済波及効果が大いに期待できる」としている ⑧国は、2021年9月に唐津市沖を「一定の準備段階に進んでいる区域」にした ⑨住民からは観光地の景観や沿岸漁業への懸念の声が出ている としている。

 洋上風力発電は原発と違って温排水を排出しないため、洋上風力発電機の存在が磯焼けを起こしたり、漁獲物を減らしたりすることはない。むしろ、洋上風力発電機周辺の設計によっては、風力発電機周辺を藻場にして海藻を収穫したり、ウニを放流したりすることも可能である。

 しかし、景観(これも重要な環境である)は、洋上風力発電機の設置場所にもよるが、悪くなる可能性が高い。また、洋上風力発電機は洋上に設置するため、建設や維持管理が陸上風力発電機より複雑で高コストになる。そのため、私は、離島・半島はじめ山林・農地等の陸地に設置した方が、低コストで同じ電力を生み出せるのではないかと考えている。

ハ)養殖について
 *1-2-4は、①ニッスイはサステナブルな食のために養殖技術開発に力を入れ、養殖事業の拡大を長期ビジョンの成長戦略の1つに位置づけている ②任意の時期に産卵させる技術と優れた特性を持つブリを育種で選別し、1年を通して育成スピードが速く高品質なブリの出荷を可能にした ③国内ではギンザケの養殖にも注力し ④環境負荷を低減する研究もして収益安定化に繋げた ⑤2020年には地下海水を利用したマサバの陸上循環養殖の実証実験を開始し、2023年にはバナメイエビの陸上養殖も事業化した ⑥日本は長年天然の水産物の恩恵を受けてきたが、近年縮小する漁業生産を補う養殖の重要度は高まっている 等と記載している。

 農業で品種改良や栽培技術の発達があったように、同じ生物である水産物も品種改良や栽培技術の発達ができる筈で、これが軌道に乗れば第五次産業革命と言える(第一次~第四次産業革命については「https://spaceshipearth.jp/fourth-industrial-revolution/」参照)。そして、上の①~⑥は、その重要な過程を示している。

 一方、*1-2-5は、⑦有明海の海況悪化で赤潮の発生が長期化し、ノリ養殖の不作が続いている ⑧環境改善のため赤潮発生原因となる植物プランクトンを捕食するスミノエガキの養殖に、佐賀県有明海漁協新有明支所(白石町)の青年部が取り組んだ ⑨スミノエガキは、河口域の低塩分に強く成長も早いため、漁業者の収益向上も期待できる ⑩その取り組みが全国青年・女性漁業者交流大会で資源管理・資源増殖部門最高賞の農林水産大臣賞に選ばれた ⑪スミノエガキは、国内では有明海にのみ生息し、淡水流入による河口域の低塩分化に強く、単年出荷可能(マガキは2年かかる) ⑫カキをかごに入れて海中につるすと、干満に関係なく常時捕食して身入りが良くなった ⑬海況を改善し食べられて収入になるので『一石三鳥』で、マガキと出荷時期が違うため、需要・価格面でも期待できる と記載している。

 ⑦~⑬は、確かに頭を使って考えれば、ピンチもチャンスにできる良い例で、有明海の海苔養殖は既に軌道に乗っていたが、有明海の富栄養化も副産物(ここではスミノエガキ)との同時生産で収入増に繋げることができそうだ。

二)農業について
i) 政府は基本法改正・食料供給困難事態対策法案・農地法改正案
 *1-2-6は、①政府は地球温暖化・国際紛争・物流途絶等を挙げ、食料供給量が大幅に不足するリスクが増大していると指摘 ②国内の食料供給システム強化の新たな農業政策を閣議決定 ③基本理念は「食料安全保障」 ④日本農業は担い手の減少・高齢化の進展・農地の減少等で足腰が弱い ⑤農業を魅力ある産業として若者や都市在住者らの新規就農を促す必要 ⑥IT活用によるスマート農業進展や農地のさらなる集約 ⑦輸出環境整備等による現場の活性化 ⑧生産基盤の一層の強化が不可欠 ⑨日本のカロリーベースの食料自給率は38%で先進国の中で最低 ⑩相対的経済力の低下で、影響世界市場での食料買い付け力も落ちた ⑪政府は基本法改正に併せて食料供給困難事態対策法案と農地法改正案も決定 ⑫困難事態対策法案は、深刻度に合わせて農業者への生産拡大要請など3段階の対応を規定 ⑬国民が最低限必要とする食料が不足する恐れがある場合は、生産転換や割り当て・配給を実施し、罰則も設けた ⑭極端な例は、花卉類を生産している農家にイモ等のカロリーの高い農作物を栽培するように強制するケースも想定 ⑮稲作は国内需要を上回る供給力を持ちながら、減産で価格を下支えしてきた ⑯食料供給の大幅不足が懸念されるというのなら、コメ生産能力のフル活用も考えたい ⑰国内で消費できない分は輸出に回し、いざというときは国内に戻す構想は検討に値するため、日本米のさらなる海外市場開拓に官民の知恵を絞りたい としている。

 このうち①⑨⑩は事実であり、③の「食料安全保障」は重要だが、②の食料供給システム強化に関する農業政策は、⑪⑫⑬⑭のように、政府が強制的に花卉類からイモ等への生産転換や割当・配給実施のような第二次世界大戦中や戦後日本に戻ったような政策であるべきではない。

 現在、日本の農業は、④⑤のように、高齢化の進展によって担い手が減少し、それに伴って農地も減少して生産力が落ちており、都市在住者・若者だけでなく、女性・外国人労働者・企業の新規就農を促し、農業を(儲かる)魅力ある産業にしていく必要がある。

 しかし、日本に耕作放棄地が増えて農業生産力が落ちた理由には、⑮のような減反政策があった。それは、戦後の食糧難時代は米の増産が国全体の問題で、昭和40年代に肥料・農機の導入が進んで技術革新が起こり、米の生産量が大きく伸びたが、食卓の欧米化に伴って米消費量/日本人が減って余剰米が生じるようになり、当時の食管制度による米価調整では農家からの買取価格よりも市場への売渡価格の方が安くなるという逆ザヤが頻繁に起こるようになった。そのため、日本政府は1970年に新規開田を禁止し、耕作面積の配分を行う生産調整を開始したが、この単純な米の減産に補助金を出した政策が失敗だったのだ。

 つまり、余剰している米ばかり作らず、ニーズに応じて輸入割合の高い小麦・大豆・野菜・果物・畜産等を行うのは、⑨のようなカロリーベースだけではなく、栄養バランス良く食料自給率を高める方法であるため、私は、水田でも麦や大豆などを作れば、「3万5000円/10アール」の補助金を出したり、加工用米や家畜の飼料米に補助を出したりするのはまあ良いと思うが、⑮のように、単純な米の減産に補助金を出した減反政策は農家のやる気をなくさせ、耕作放棄地を増やしたと思う。

 なお、農業の生産力向上には、⑥のIT化によるスマート農業の進展や大規模農機を使うための農地の集約が必要なことは言うまでもなく、⑧の生産基盤の強化も不可欠だ。

 従って、⑯⑰の「(i)食料供給の大幅不足が懸念⇒(ii)コメ生産能力フル活用⇒(iii)国内消費できない分は輸出し、いざという時は国内に戻す」という構想は、(i)の食料供給の大幅不足が懸念されるのは米ではないため、(ii)のコメ生産能力フル活用では栄養バランス良く国民の食料自給率を高めることはできない。また、(iii)の輸出は良いが、日本米を食べたい人にしか売れないことを忘れてはならず、輸出できる農産物は米とは限らないため、ニーズのある製品を作って売るために、⑦の輸出環境整備を考える必要がある。

 根本的には、「米はじめ穀物を作って腹を満たしさえすればよい」という発想ではなく、栄養学の知識を持って農水産物の本当のニーズを発掘できる人が、農業政策を行う必要があるのだ。

ii) 賢い農業へ

 
 無肥料で作った蓮根     パクチー   パクチー使用のラーメン パクチーサラダ 
  
(図の説明:左図は、無肥料で作ったレンコンで、富栄養化したクリークならレンコンを作って毎年収穫すれば、次第に通常の状態に戻るだろう。また、左から2番目はパクチーで、1度植えれば折れた茎からでも根が出て繁茂するたくましいハーブであるため、クリークの縁に植えて定期的に収穫すれば他の植物は生えず料理の使い道も多くて便利だ)

 肥料や家畜の餌を輸入して日本で生産したものは、国内の食料自給率に加えるべきではないが、38%といわれる日本のカロリーベースの食料自給率には、それが含まれていることが明らかになった。

 そこで、*1-2-9は、①化学肥料の原料価格が高騰 ②化学肥料の主な原料となるリンを含むリン鉱石は、中国・モロッコなどからほぼ全量輸入 ③国と東京都は巨大都市から大量に出る「下水汚泥」からリンを採り出す実験を開始 ④東京都は全国普及を目指して国やJA全農と連携 としている。

 上の③④は、これまで邪魔者として捨てて海を富栄養化させていた資源を利用して良質の肥料を作る技術を開発し全国に広げる意図であるため、肥料の国産化にも資して賢い。これによって、①②のように、ほぼ全量を海外依存して交際情勢や円安の影響を受け易く、簡単に高騰していた化学肥料の原料価格が抑えられれば、食料自給率とコストの両面から有用である。

 *1-2-7は、⑤佐賀市は清掃工場から出るCO₂を活用し、魚の養殖と野菜の水耕栽培を組み合わせた新しい農業「アクアポニックス」の事業化を目指している ⑥アクアポニックスは魚の養殖と植物の栽培を組み合わせた資源循環型型農業 ⑦魚を養殖した水を水耕栽培で再利用して溶け込んだ窒素やリンを植物が養分として吸収する ⑧水は養殖で再利用するため水槽に戻す ⑨化学肥料をやったり、土を耕したりする必要はない ⑩4月下旬からマスを2千匹規模で養殖し、約40平方メートルの水耕ベッドで葉物野菜を育てる ⑪CO₂を利用することで脱炭素社会への取り組みを強化しつつ野菜の生育促進に役立てる としている。

 上の⑥~⑩は、農業と漁業を組み合わせて水を循環させ、化学肥料を不要にする方法で、これならどの地域でもできそうである。また、⑤⑪のように、清掃工場から出るCO₂を活用して脱炭素社会への取り組みを強化しつつ、野菜の生育促進に役立てるのは、これまで捨てていた邪魔者を有用なものとして利用し尽くす点が本当に賢い。

 このような中、*1-2-8のように、⑫特定外来生物で水生植物の「ナガエツルノゲイトウ」や「ブラジルチドメグサ」が、爆発的な繁殖力で佐賀市内のクリークや河川で繁茂を続ける ⑬茎の切れ端からでも再生・繁殖し、長期間の乾燥にも耐え、一度除去しても残った部分から再生する ⑭農地に侵入すれば農地を覆い、農作物の収量・」品質・作業効率の低下を招く ⑮樋門や排水ポンプなどの機能に支障が出かねず、市は水面や根から除去し続けている ⑯対策費は2022年度に7154万円と、この5年間で倍増 等と記載している。

 上の⑫~⑯は、市の予算を使って人力で除去しようとした点で賢いとは言えない。しかし、それだけ水生植物が繁茂するというのは、佐賀市内のクリークや河川が富栄養化している証拠であるため、(i)富栄養化を利用して有益な植物(例:ハス)を育てる (ii)除去した「ナガエツルノゲイトウ」や「ブラジルチドメグサ」を焼却して肥料に使う (iii)「ナガエツルノゲイトウ」や「ブラジルチドメグサ」を食べる有用生物をクリークに放す 等の人手や予算をできるだけ使わず、富栄養化したクリークや河川を利用する方法を考えた方が良いと思われた。

3)膨大すぎる原発のリスクとコスト
イ)フクイチの廃炉・汚染水・処理水について


   2023.8.21東京新聞    2023.8.24日経新聞    2023.8.21西日本新聞  

(図の説明:1番左と左から2番目の図のように、ALPS処理水を汲み上げた海水で薄めてトリチウム濃度を基準値以下にし、海水に放出するのが処理水放出の流れだ。そして、右から2番目の図のように、今後数十年に渡ってこれを続け、予算措置を続けるそうだが、リスクを風評と断じる点や膨大な予算を使っても平気な点が、原発に対する場合の異常性なのである。一方、1番右の図のように、漁業者は、IAEAの包括報告書でALPS処理水の安全性への理解が深まったそうだが、下に記載したとおり、それで科学的安全性が担保されたとは言えないのである)

 *1-3-1は、①2011年のフクイチ事故で、2号機取水口付近のピットから高濃度汚染水が海へ流出 ②おがくず・新聞紙・吸水性ポリマー等が大量に投入したが止水できず、乳白色の入浴剤で流れる経路を調べるなどの「ローテク」ぶり ③放射能の脅威を前に日本の土木技術やロボット技術は敗北し、この技術レベルでは安全神話なくして地震国での原発推進は難しい ④東電は2024年1月末、2023年度内としていたフクイチのデブリ取り出し開始を三たび延期すると発表 ⑤1~3号機に推計880トンものデブリがあるが、どこにどのような状態で存在するかもわからず ⑥廃炉の「最終形」に関わる議論は進まず、多額の金を投じて「全量取り出す」前提で技術開発 ⑦世界的な核融合フィーバーだが、発電技術は進化したか としている。

 また、*1-3-2も、⑧フクイチで“処理水”の海洋放出が始まったが、廃炉作業の終わりが見えない ⑨「処理水」とは汚染水をALPSに通して大半の放射性物質を取り除き、トリチウム濃度を500ベクレル/リットル(国の放出基準の1/40)未満となるように海水で希釈したもの ⑩東電はALPS処理水を分析してトリチウム以外の29の放射性物質濃度が放出基準を下回っているか確認 ⑪さらに海水で希釈してトリチウム濃度を薄めて基準未満かを確認 ⑫この水を蒸留させるなどして測定の邪魔になる不純物を取り除いた後に、放射線を受けると発光する試薬を使って光量から濃度を換算 ⑬東電・国・福島県が周囲の海水をモニタリングし、トリチウム濃度が放水口近くで700ベクレル/リットル、沖合10㎢で30ベクレル/リットルを超えると放出停止 ⑭水産庁が放水口の南北数キロに設置した刺し網で捕獲したヒラメなどのトリチウム濃度を測定し、放出停止する異常値は確認されていない ⑮東電によると処理水放出は30年ほど続く見込みで年間22兆ベクレルを上限に廃炉完了の目標時期である2051年までに終える見込み ⑯廃炉作業の「本丸」である燃料デブリは計約880tあるが事故から13年が経っても1gも取り出せていない 等としている。

 このうち、①②③や事故時の説明については、私も意外なほどローテクで知識が乏しいのに驚かされたし、③の安全神話は現在でも形を変えて存在しており、「裏付けのないことでも、信じれば救われる」と考える日本人が多いのにも呆れたが、何故、そうなっているのだろうか?

 そして、⑤⑯のように、やっと推計約880tあることがわかったというデブリは、どこにどのような状態で存在するのか未だわからず、事故から13年経っても1gも取り出せずに、④のように、東電は2023年度内としていたフクイチのデブリ取り出し開始を三度延期している。

 また、燃料デブリを冷やして汚染水となり、⑧⑨⑩⑪のように、ALPSに通して大半の放射性物質を取り除いてトリチウム濃度を500ベクレル/リットル(国の放出基準の1/40)未満となるように海水で希釈した “処理水”の放出は、⑮のように、年間22兆ベクレルを上限に廃炉完了(目標:2051年)まで30年ほど続くとのことだが、事故から13年経ってもデブリ取り出しができない状況で、⑥のように、多額の金を投じて「全量取り出す」前提の廃炉では、膨大な予算の無駄遣いと海の汚染による水産業への打撃がひどくなりすぎるのである。

 これに対しては、⑬⑭のように、「東電・国・福島県が周囲の海水をモニタリングして、トリチウム濃度が放水口近くで700ベクレル/リットル、沖合10㎢で30ベクレル/リットルを超えると放出を停止するから大丈夫」「水産庁も放水口の南北数kmに設置した刺し網で捕獲したヒラメ等のトリチウム濃度を測定して異常値は確認されていないから大丈夫」等の主張がされる。

 しかし、私は、中国政府の「『基準値を満たすこと』『検出下限値未満であること』と『存在しないこと』は別である」という主張の方が科学的に正しく、希釈した分だけ体積の増えた“処理水”に含まれる核種の総量は変わらないため、「海洋放出によって海洋環境や人体に予期せぬ被害がある」とする方が保守的な安全性評価だと思う。また、原子力の平和利用での協力を進める中心機関であるIAEAは、特別な利害関係があり第三者ではないため、独立性を持ってモニタリングできていない可能性が高いと考えるのが監査の常識である(https://www.mofa.go.jp/mofaj/press/release/press1_001548.html、https://www.unic.or.jp/info/un/unsystem/specialized_agencies/iaea/ 参照)。

 このような中、廃炉に膨大な無駄遣いをし、水産業に打撃を与え、中国から海洋汚染の賠償金請求までされては、日本国民の暮らしはますます貧しくなるため、廃炉の「最終形」に関わる議論を海洋も含む環境を壊さない形で早急に進めるのが、科学的で現実的である。

 なお、⑫の「ALPS処理水を蒸留させるなどして測定の邪魔になる不純物を取り除いた後に、放射線を受けると発光する試薬を使って光量から濃度を換算する」というのは、蒸留した水は核種も含めて何も含まないため、科学的どころか意味がない。

 このように、非科学的で核種や放射線に対して無神経な国が、「核融合なら、環境や人の健康を守りながら扱うことができる」と考えるのは甘すぎるため、⑦の世界的な核融合フィーバーに日本が乗るのは、無駄使いが多すぎる上に危険極まりないのである。

ロ)能登半島地震と志賀原発について


        2024.3.25東京新聞         2024.1.25日経新聞 2021.1.21
                                     中日新聞
(図の説明:左図のように、能登半島地震で志賀原発の敷地は12cm動き、3.96~4.74cmの沈下も起こったが、今回は原発事故にはならなかった。しかし、中央の図のように、避難路を含む道路が寸断され、全半壊した住宅も多かった。東日本大震災では、右図のように、原子力災害からの復興に2020年までに既に6~7兆円かかっており、これからも大きな金額がかかる予定だ)

 *1-3-4は、①北陸電力は、能登半島地震後に志賀原発敷地が地震前と比べて平均4cm沈下と発表 ②測量した11カ所の沈下幅は4.74~3.82cmで隆起した地点はない ③原子炉を冷却する海水の取水口に近い物揚げ場は3.96cm沈下 ④敷地全体が西南西方向に平均12cm移動 ⑤敷地内の地面に段差や割れを約80カ所で確認、担当者は「舗装が変形したためで敷地内の断層が動いた形跡はない」と説明 ⑥能登半島地震で半島北側の沿岸一帯が隆起し、輪島市西部では最大4m隆起 ⑦志賀原発から1km北の岩ノリの漁場が数十cm隆起 ⑧志賀2号機は新規制基準適合性審査中で、北陸電は「地震で原発北側の輪島市付近の断層が動いた場合20cm以下の隆起が起きるが、冷却水の取水に影響はない」と主張 としている。

 また、*1-3-5は、⑨志賀原発が立地する半島西側は活断層が存在 ⑩今回動いたエリアの脇にある半島西側の志賀町沖断層で、地震が発生し易くなった ⑪今回の地震で北陸一帯の断層帯に地震を起こしやすくする力がかかり、マグニチュード7クラスの大地震発生リスクが高くなった ⑫次の地震で心配なのが志賀原発だが、北陸電の広報担当者は「原子炉建屋は基準地震動600ガルまで耐えられ、今回の地震による地盤の揺れは600ガルよりも小さく、2号機については1000ガルまで耐えられるので原子力施設の耐震安全性に問題はない」と説明 ⑬現行技術水準では活断層の全容が捉えがたく安心もできない ⑭原発に及ぶ地震の脅威は揺れ以外にもあり、メートル単位で上下・水平方向にズレが生じれば、計算するまでもなく原発はもたない ⑮志賀原発は2012年に直下に断層があると指摘されたが、原子力規制委員会は直下断層の活動性を否定する北陸電の主張を妥当と判断 ⑯原発が止まっていても核燃料がプールで保管されているため、災いの元凶になる核燃料の扱いを早急に議論すべき 等としている。

 上の①②③のように、北陸電力の発表では、「能登半島地震後、志賀原発の敷地が地震前と比べて平均4cm(3.82~4.74cm)沈下し、隆起した地点はない」とのことだが、⑥⑦のように、能登半島北側の沿岸一帯は隆起し、志賀原発から1km北の岩ノリの漁場で数十cm、輪島市西部では最大4mの隆起が確認されている。

 また、④⑤のように、北陸電力の敷地全体が西南西方向に平均12cm移動し、敷地内の地面に段差や割れを約80カ所で確認されているが、北陸電力の担当者は、「舗装が変形したためで敷地内の断層が動いた形跡はない」と説明しており、影響に関する過小評価が目立つのである。そして、このような小さな安全神話の積み重ねが大きな安全神話となって、⑧のように、「新規制基準に適合」と判断されるのが危ないのだ。

 さらに、北陸電力の広報担当者は、⑫のように、「原子炉建屋は基準地震動600ガルまで耐えられ、今回の地震による地盤の揺れは600ガルよりも小さく、2号機については1000ガルまで耐えられるため、原子力施設の耐震安全性に問題はない」と説明し、⑮のように、「直下に断層がある」と指摘されても直下の断層の活動性を否定し、原子力規制委員会も北陸電力の主張を妥当と判断しているのだ。

 しかし、⑨⑩⑪のように、志賀原発が立地する能登半島西側に活断層が存在し、今回動いたエリアの脇にある志賀町沖断層で地震が発生し易くなっており、今回の地震で北陸一帯の断層帯に地震を起こしやすくする力がかかってマグニチュード7クラスの大地震発生リスクが高くなっている上に、⑬のように、現行技術水準では活断層の全容が捉えがたいため、活断層に関しても北陸電力は過小評価になっており、これでは、科学的とも安全側に保守的とも言えないのである。

 そのため、当然、⑭のように、原発直下でメートル単位の上下・水平方向にズレが生じれば、計算するまでもなく原発はもたず、数十cm単位のズレでも、⑯の核燃料プールが傾いたり、ひびが入ったりして水がこぼれ、保管されている大量の使用済核燃料が爆発する等の災いが起きるため、早急な議論が必要であることは間違いないのだ。

ハ)政策決定手法の転換へ
 *1-3-3は、①未だ被災者に大きな影響を与え続けているフクイチ事故から13年 ②この間に世界のエネルギー状況は大きく動いた ③化石燃料依存リスクが鮮明になった ④発電コストや建設費の増大で原子力発電は停滞 ④価格低下した太陽光・風力発電は急拡大 ⑤目指すべきは高コスト・高リスクの大規模集中型電源から低コストの再エネを主とする分散型システム ⑥自公政権のエネルギー政策はこの流れに逆行 ⑦日本政府や電力会社は、水素やアンモニアを利用して「CO₂を出さない火力」を目指すことに注力しているが、高コストの手法は気候変動対策にならない ⑧日本は限られた資金や人材の多くを原発や不確実な将来の新技術に投じ、日本国内の再エネ市場は他国に比べて大きく見劣り ⑨今になって大規模な洋上風力発電の開発を進めようにも風車は輸入 ⑩経産省が指名した委員による委員会で、役所のシナリオに沿って政策を決める非民主的な手法を見直して、科学とデータに基づき、多くの市民や専門家の意見を聞いて民主的政策議論を進める「政策決定手法の大転換」も重要 としている。

 この記事には、必要な論点がすべて書かれていると、私は思う。例えば、①については、原発事故さえなければ既に回復できていた筈の農林漁業地域に未だに帰還困難区域を作らざるを得ず、超長期避難者も多い。また、②③④⑤は、私が1995年前後に初めて再エネ推進を提言した時から言っていたことだが、それを世界はやっと現実として認識したのだ。

 にもかかわらず、⑥のように、自公政権のエネルギー政策は世界の流れに逆行し、⑦のように、日本政府や電力会社は水素やアンモニアを利用して「CO₂を出さない火力」を目指しているが、この方法は化石燃料より高コストになることが避けられない。従って、⑧⑨のように、使えない技術の開発に限られた資金や人材を投入して再エネ技術を疎かにしたのは、日本の経済成長を低め、円安を促進する効果しかなかった日本政府の誤った政策判断なのである。

 なお、このような誤った政策が進められた背景には、⑩のように、経産省がやりたいことを先に決め、経産省が指名した委員からなる委員会で、経産省のシナリオに沿って政策を決めてきたことがある。その中で、民主的に選ばれた筈の政治家は、自分の頭では考えられなかったためか、経産省の言いなりになった方が身の安全を守れるためか、ともかく経産省の言いなりになったのだ。そのため、このような手法を見直して、多くの市民や専門家の意見を集め、科学とデータに基づいて政策を決定するという当たり前の手法への大転換が必要なわけである。

二)日本列島の成り立ち・断層・玄海原発


          2023.7.23現代ビジネス             BS朝日

(図の説明:左図は、ユーラシア大陸の一部だった日本列島が、太平洋プレートの沈み込みに伴って大陸から引き剥がされ、島を形作っていく様子だ。このように、大陸が切り離されて間に海ができる様子は、現在では、右図のアフリカ大陸の大地溝帯に見ることができる。つまり、日本海や瀬戸内海は、地溝帯に海水が流れ込みながら、次第に広がったものだろう)


 2021.9.6Economist    国土地理院   2024.1.15長州新聞 2024.3.30佐賀新聞

(図の説明:1番左の図は、太平洋プレートがユーラシアプレートに沈み込み、フィリピン海プレートや北米プレートとせめぎ合いながら、日本列島に力をかけている様子だ。この力によって、日本列島の各地点は、左から2番目の図のように、2011~2022年に矢印の方向に移動し、矢印の長さが移動距離・矢印の方向が移動方向を示している。このように、測定地点により移動距離や移動方向が違うため、歪みが蓄積して耐えられなくなった時に地震が起こって地形を変化させる。また、右から2番目の図は、現在わかっているとされる日本列島とその周辺海域の活断層及び原発の位置だが、「海底の活断層はわかっていない」として殆ど表示されていない。なお、1番右の図は、佐賀県と周辺の活断層を示したもので、海底の断層は表示されていないが、名護屋浦・串浦・外津浦・仮屋湾・伊万里湾は、地形から見て断層そのものではないかと思う) 

 *1-3-6は、①九電は3月8日に原子力規制庁との会合で、玄海原発3、4号機の基準津波を修正する方針 ②政府の地震本部が2022年に公表した日本海南西部の海域活断層長期評価を踏まえて検討した結果、想定される津波が既存値を上回ることが分かったから ③日本海南西部海域活断層長期評価では対馬南西沖断層群と第1五島堆断層帯が連動したケースで想定される津波の高さ6.37m、低さマイナス2.65mで、現行基準津波(高さ3.93m、低さマイナス2.6m)を超えるが、基準地震動への影響はない ④玄海原発は高さ約11m、取水位置の低さ(マイナス13.5m)で想定される津波に対して余裕があり、追加工事はない としている。

 上の①~④は、津波に関して余裕があってよかったとは思うが、地震については不明だ。

 *1-3-7の佐賀県内首長原発アンケートでは、i)玄海原発の運転継続について、玄海原発立地町の脇山玄海町長だけが「賛成」・15市町長が「条件付き賛成」・反対0 ii)原発の今後に在り方については、16市町長が「将来的に廃止」 iii)原発から出る高レベル放射性廃棄物の最終処分場を受け入れる市町長は0 とのことである。

 運転継続について「どちらともいえない」とした深浦伊万里市長は、「事故が発生すれば取り返しがつかないことになるため基本的に反対だが、電力は企業活動や市民生活を支える基礎的なインフラで安定的な供給は不可欠であり、原発を止められない現実がある」とされている。しかし、太陽光発電による電力は既に余剰が出て捨てており、大規模集中型発電より分散型発電の方が大規模停電のリスクも小さいため、電力の安定供給は既に原発稼働の口実にはならなくなっている。それより、原発事故時は、どこにどれだけの期間、避難しなければならないのか、それは可能なのかを検討すべきであろう。

 また、「条件付き賛成」を選んだ首長は、条件として「電力事業者・国の責任で安全性を追求し、可能な限り情報公開に努める(村上嬉野市長)」、「使用済核燃料の処理方法について国の責任で対策を講じる(江里口小城市長)」などを挙げられたそうだが、原発には大きなリスクがあり、100%の安全を保証した人は1人もいないし、使用済核燃料の処理は1mmも進んでいないことを思い出すべきである。

 さらに、原発の今後で「将来的に廃止」を選択した首長は、「カーボンニュートラルの実現に向けて取り組む(向門鳥栖市長)」「再エネ導入を進めて原子力への依存度を下げていく(松尾有田町長)」「能登半島地震を踏まえ、南海トラフ地震を含めた対策を一から見直すことも重要課題で、代替エネルギーの研究も加速させるべき(岡みやき町長」」などの見解を示されたそうだが、再エネは遠い未来に実現可能な技術ではなく、既に実用化されている原発よりずっと安価な技術であり、街作りと一緒に行なえばモダンで効果的な街ができるのである。

 能登半島地震では北電志賀原発周辺で道路の寸断・家屋倒壊等が相次ぎ、避難と屋内退避の実効性が問われたため、*1-3-8では、佐賀県内の首長に原発重大事故時の避難ルートについて質問し、iv)7市町長が現行の避難計画を「見直す必要がある」と回答、他の12首長は「(規制委の)今後の議論を注視したい(坂井英隆佐賀市長)」という意見が多かった v)松尾鹿島市長は「避難が現計画で対応できるかなど再検討の必要がある」とされた とのことである。

 日本の“避難”は、我慢しても1週間しかいられないような体育館や公民館等の劣悪な環境であるため、原発事故時の長期間の避難には全く向かない。そのため、「原発事故に遭いたくなければ、原発立地地域やその周辺には住まない方が良い」という悪循環の選択になりそうだ。

(2)人口構成と高齢化社会対応から見た歳出改革→高齢者への給付減・負担増ではない
1)公的年金目減りの原因であるマクロ経済スライドについて


    2023.9.30日経新聞    2022.6.25日経新聞    2024.1.19時事わ

(図の説明:左図のように、物価上昇率の体感と統計には11.4%の差があるが、これは、中央の図のように、食料品などの単価は安いが頻繁に買わざるを得ない必需品の物価上昇が激しいからである。しかし、「マクロ経済スライド」が適用され、右図のように、年金改定率が2.7%に抑えられたため、所得が低いので食料品等の購入割合が高くなっている年金受給者の体感物価との差は12%以上になるのだ)

 *2-1-1は、①物価と賃金の上昇で2024年度の公的年金額は前年度比で2.7%増だが、0.4%分目減り ②年金財政の安定のための「マクロ経済スライド(直近1年間の物価変動率と過去3年度分の実質賃金変動率を元に改定し、物価と賃金の伸びよりも年金支給額を抑える)」で物価と賃金の伸びに届かず ③マクロ経済スライドの影響で、国民年金は実質年3600円、厚生年金は同1万1500円ほど目減り ④厚労省の審議会では財政に余裕のある厚生年金が基礎年金に資金支援して給付水準抑制を前倒しで終了する案が出た ⑤就労を促進して高齢者の手取り収入を増やす方向の改正も議論 ⑥一定の所得のある高齢者の年金支給を減額する在職老齢年金制度も見直しを求める声が強い 等としている。

 また、*2-1-2も、⑦公的年金の2024年度支給額は、マクロ経済スライドで実質価値減少 ⑧名目賃金上昇率3.1%が、前年の物価上昇率3.2%より低く、労働者数の減少と高齢化の影響により「マクロ経済スライド」が2年連続で発動され、0.4%分を差し引いた2.7%のプラス改定 ⑨本来は物価が上がっても買えるものが減らないように給付(支出)を引き上げる必要があるが、保険料(収入)は賃金が上がれば増え下がれば減るため、物価上昇が賃金上昇を上回ると支出が収入を上回って年金財政が悪化するため、物価上昇率と名目賃金上昇率の低い方を改定率計算に使用 ⑩少子高齢化の日本で将来世代の年金を確保するには、さらなる措置が必要で、その影響を織り込んで給付を抑える仕組みが「マクロ経済スライド」としている。

 このうち、①②⑦⑧⑨⑩は、「マクロ経済スライド(尤もらしい名称だが、経済学にこの言葉はない)」によって、年金財政が悪化しないように物価上昇率と名目賃金上昇率の低い方と労働者数の減少を年金改定率の計算に使い、年金のプラス改定分は「物価上昇率3.2%>名目賃金上昇率3.1%」より0.4%低い2.7%となるということである。

 その結果、③のように、ただでさえ所得代替率の低い国民年金・厚生年金の実質価値は目減りし、さらに所得代替率(年金を受け取り始める時点《65歳》の年金額が、現役世代男性の平均手取り収入額《ボーナス込み》と比較した時の割合)が下がるのである。

 しかし、前年の物価上昇率3.2%は、上の左図の2023年9月30日における3.3%に近いが、この時の体感物価指数は14.7%であり、体感と統計との間に11.4%の差がある。その理由は、上の中央の図のように、食品等の頻繁に買うものの物価上昇が大きいからであり、年金生活者が買うのは耐久消費財ではなく食品等のエンゲル係数に直結する品目の割合が高いため、年金生活者の体感物価指数は14.7%以上で、年金プラス改定分より12%以上高い。そして、これが、「マクロ経済スライド」と呼ぶ、反対運動を起こさせずにこっそり年金を引き下げるやり方なのだ。

 それでは、「マクロ経済スライド」を導入しなければ年金財政が悪化して年金制度を維持できないのかと言えば、支払われた保険料を積立方式できちんと積立てて運用し、保険料を支払った人にのみ、支払額に応じて年金を支給すればそのようなことはなかった筈だ。しかし、日本政府はそれをせず、団塊の世代が受給する段になって慌てているというお粗末さなのである。

 また、「少子高齢化≠労働力の減少」であるにもかかわらず、少子高齢化を年金支給額引き下げの口実にしているが、女性に対する結婚罰・妊娠罰・子育て罰を1970~80年代に廃止しておけば、著しい少子化は起こらなかった筈で、政府の政策は40~50年遅れているのだ。

 そして、④のように、厚生年金に入って高い保険料を支払った人の積立金を基礎年金に流用するなどという議論を厚労省の審議会で行なっているそうだが、保険であれば流用は禁物で、足りなければ税金から支出すべきである。

 その税金を原資とする財源は、エンゲル係数が高くて食べるものまで節約している高齢者からむしりとるのではなく、*2-1-5のように、経産省が最先端半導体の量産を目指すとしてラピダスに税金から2024年度までに累計9200億円もの支援をするようなことをやめて作るべきである。何故なら、半導体という30年以上も前から必要性が言われてきた産業に、今頃、国が多額の支援を行なわなければならないような企業に将来性はなく、仮に将来のニーズを満たす企業なら、税金ではなく民間銀行の貸し付けや社債・株式の発行で資金調達すれば良いからだ。

 従って、労働者数の減少と年金の所得代替率の低さから、⑤のように、高齢者の就労を促進したり、年金保険料の支払期間を延ばしたりするのは良いが、⑥のように、(著しく低く、いつなくなるかわからないけれども)一定の所得があるからといって高齢者の年金支給額を減らすのは、結局は高齢者層の購買力を無くさせ、次の時代に本当に必要とされる製品の開発を妨げることになるのだ。

2)物価上昇と賃上げについて
 *2-1-3は、①2023年7月の消費者物価指数は変動の大きな生鮮食品を除く総合指数で前年同月比3.1%上昇、エネルギーも除けば4.3%上昇 ②物価の上昇圧力が続き、食品・日用品の値上がりが家計を圧迫して消費を下押し ③16カ月連続で日銀が掲げる2%の物価目標を上回る ④7月にはハンバーガー前年同月比14.0%上昇、プリン27.5%上昇、宿泊料15.1%上昇、携帯電話通信料10.2%上昇 ⑤外食は1.8%増とプラスを維持したが、5月(6.7%増)から伸びを縮めた ⑥サービス消費は新型コロナ禍からの正常化で回復期待が高かった割に動きが鈍い ⑦値上げが目立つ品目ほど消費が減少し、総務省の家計調査で2人以上世帯の6月の消費支出は実質前年同月比4.2%減で経済成長に水 ⑧2023年4~6月期実質GDPは季節調整済前期比年率6.0%増と高い成長率だが、牽引役は復調した輸出等の外需で、個人消費は物価高で前期比0.5%減 ⑨2023年の賃上率は30年ぶり高水準だったものの物価上昇に追いつかず、2024年以降に賃上げが息切れすれば家計の購買力低下を通じて再びデフレ圧力 ⑩実際、コロナ禍前の2019年10~12月期と足元を比較すると雇用者報酬は実質3.5%減と物価上昇に賃金が追いつかず消費は伸びていない ⑪日米欧では米国だけが賃金と消費を伸ばしている 等としている。

 上の①については、変動が大きいからといって生鮮食品を除いたり、エネルギーを除いたりすれば、それらの購入割合が高い世帯(低所得でエンゲル係数が高く、政府が最も注視しなければならない世帯)の体感消費者物価指数が、統計とはかけ離れた数値になる。

 また、②⑦のように、総務省の家計調査で2人以上の世帯の2023年6月の消費支出が実質前年同月比4.2%減だったのは、物価が4.3%上昇し、賃金・年金を含む国民全体の所得が増えなかったことを考慮すれば当然の結果である。

 私も、④⑤⑥のように、著しく物価上昇した商品やサービスは、どうしても仕方のない場合を除いて購入しないよう工夫したが、そもそも前年度はコロナ禍で経済を止めていたため、前年同月と比べれば少しは伸びる状態だったのである。

 にもかかわらず、日銀は、③のように、2%の物価上昇目標を掲げて国民の資産と政府や企業の債務を目減りさせている。そして、これによって、政府や企業の実質借入金額を物価上昇分だけ目減りさせ、それと同時に金利も「名目金利 - 物価上昇」であるためマイナスにしている。つまり、実質預金は物価上昇分だけ目減りすると同時に、実質金利もまたマイナスになっており、これは、通貨の安定を通して国民の財産を護るべき中央銀行として、おかしな行動なのである。

 しかし、これらの政策の結果、⑧のように、2023年4~6月期の実質GDPは季節調整済で前期比年率6.0%増と高い成長率になったが、その牽引役は復調した輸出等の外需で、物価高によって実質で貧しくなった国民の個人消費は前期比でも0.5%減となっているのだ。

 「物価を上げれば、それ以上の賃上げができるのか?」と言えば、物価上昇分をすべて賃上げに充てても、生産性向上がなければ最大で物価上昇分までの賃上げしかできない。そのため、⑨⑩のように、コロナ禍前の2019年10~12月期と足元を比較すれば、雇用者報酬は実質3.5%減と賃金上昇は物価上昇に全く追いつかず、2023年の賃上率は30年ぶりの高水準でも物価上昇に追いつかず、2024年以降に賃上げが息切れすれば家計の購買力低下を通じて再びデフレ圧力となるのだ。そして、これも、こっそり賃金を引き下げる政策の一環なのである。

 なお、⑪によれば、「日米欧では米国だけが賃金と消費を伸ばしている」そうだが、米国は生産性の高い産業に労働移動し易いシステムで、外国人や移民も加わって新技術を作ったり、新技術によるイノベーションを起こしたりするのが早い。これは、政府主導で、外国を模倣しながら、30~50年遅れのイノベーションもどきを起こそうとしている日本とは、気質と土壌が全く違うと言わざるを得ないのだ。

3)医療・介護について

    2023.12.6山陰中央新報    2023.12.26日経Xテック 2023.6.9東洋経済

(図の説明:左図は、政府が社会保障分野で検討する“改革”項目だが、「介護のケアプラン作成の有料化」は見積もりを有料化するのと同じく社会常識からかけ離れており、「金融資産を考慮した支払能力判定」が行なわれれば金融資産は日本で所有すべきでなくなる。また、中央の図は、2024年度の診療報酬改定の基本方針だが、時代のニーズが変わっているのだから、持続可能性は厚労省管轄の予算内だけで考えるべきではない。さらに、右図は、令和2年度に支出される医療費の推計で、70歳以上の人が医療費の51%《半分以上》を使い、特に75~85歳の医療費が高くなっている。この図は、世代毎の医療費支出と人口を掛け合わせて産出したものだが、個人についても、75歳以上の退職後高齢者になってから生涯医療・介護費の半分以上を支出するのが普通であるため、在職中に入る医療保険は大幅な黒字の筈である)

   
    2024.4.3日経新聞    2024.4.3日経新聞     経済産業研究所

(図の説明:左図は、内閣府による医療・介護費のGDP比予測だが、高度医療が医療・介護費を膨らませると仮定している点が誤りであるし、出生率を上げれば実質成長率が上がると仮定している点も、世界を見ればわかるとおり事実ではなく少子化対策への流用を誘導しているにすぎない。中央の図は、2020年と2060年の各国の実質GDP/人の予測だが、日本より人口の少ないスイス・ノルウェー・スウェーデン・ドイツの実質GDP/人《国民1人1人の豊かさを示す》は日本より高く、これらは研究開発に熱心で社会保障も整っている国だ。また、右図は、OECD各国の政府債務残高《GDP比》と実質経済成長率の関係で、単なるバラマキによって政府債務残高を増やした日本は、政府債務残高が多い割に実質経済成長率が低いという当然の結果が出ている)

 
 社会実情データ          保団連            ダイアモンド

(図の説明:人生の終盤に年金・医療・介護費が増えるため、高齢化すれば社会保障費が増えるのは当然で、左図が、65歳以上の人口割合と社会保障支出/GDPの関係だが、日本は他国と比較して高齢化の割に社会保障支出が少ない国である。また、中央の図のように、1980年と比較して直近の社会保障支出/GDPが減っているのは日本だけであり、先進国中最低になっている。さらに、右図のように、先進国中、日本だけが「社会保障支出/GDP<公共事業支出/GDP」であり、日本の社会保障支出/GDPは現在でも決して大きくない。つまり、「全世代型社会保障」と称して高齢者に負担を押しつける政策は、根本的に間違っているのである)

 *2-1-4は、①医療・介護給付費は65歳以上人口がピークアウトする2040年度頃から急激に増加 ②医療・介護利用の多い85歳以上人口が継続的に増すため ③2025~60年度の平均実質成長率は、i)0.2%の「現状維持」 ii)1.2%の「長期安定」 iii)1.7%の「成長実現」で試算 ④医療・介護給付費のGDP割合は、「現状維持」で2060年度13.3%と2019年度より6割贈、「成長実現」で9.7%と2割弱増 ⑤社会保障制度維持にはデジタル化による効率化やGDP成長率の引き上げが急務 ⑥医療技術革新が加速すれば給付費は一段と膨らみ、高額医薬品の登場による医療費拡大が従来の2倍ペースだとGDP比は「現状維持」で2060年度に16.1%で 2019年度の2倍 ⑦岸田首相は「実質1%を上回る成長で力強い経済を実現し、医療・介護給付費のGDP比上昇に対する改革に取り組む」と強調 ⑧政府は2023年12月公表の改革工程素案に介護サービスを利用する際の2割負担の対象者を2024年度に拡大すると盛り、与党からの反対等で見送った ⑨政府は社会保障の歳出改革で少子化対策による実質的負担増を回避すると主張するが、介護負担拡大の先送り等が続けば実現は遠のく ⑩実効性ある社会保障改革に繋げるには試算の妥当性検証も必要 等としている。

 上の右図のように、普通の人は75歳以降に生涯医療費の半分以上を使い、特に85以上で医療・介護関係の支出が増えるが、これは誰にでも言えることである。

 そのため、①②は事実だが、③の成長率の試算については、iii)の1.7%の「成長実現」が合計特殊出生率1.8程度まで回復、「全要素生産性(TFP)」がバブル期並みの1.4%の上昇という条件を設定していることに、私は意図的なものを感じた。

 何故なら、女性の教育や能力が向上して職業選択の自由度が高まれば、結婚・出産・子育てのみを人生の最終目標にする女性割合は著しく減るため、いくら児童手当を支給したり、教育を無償化したりしても、外国人を閉め出して日本人だけでやる限り、合計特殊出生率が1.8程度まで回復することはないからである。また、金融緩和をしただけのバブル期に、「全要素生産性(TFP)」が1.4%上昇したというのも疑わしい。

 そのような中、④のように、医療・介護給付費の対GDP比を下げようとすれば、⑤⑦のように、GDPを増やすためGDP成長率を上げることは重要だ。しかし、GDP成長率の引き上げ方法は、デジタル化による効率化だけではなく、⑥の先進的な医療・介護機器や医薬品の開発による医療技術の革新を国内で起こし、それを世界市場に投入する方法もある。そうすれば、それを使用することによって、一時的には医療給付費が膨らむが、日本のGDPが増えたり、医療・介護費の合計が減ったりする効果もある。その良い例が、米国のコロナワクチンだ。

 にもかかわらず、政府見解にはいつも優れた医療・介護機器や医薬品の開発とその世界市場投入によるGDP成長率向上・国民の福利増進の視点が抜けている。効果が高く副作用の少ない優れた新薬のために医療費給付が一時的に高額になっても、副作用が大きく効果の薄い旧来型の治療法を保険適用から外せば、国民は先端医療を享受しながら、医療・介護費用の節減を正攻法で行なうことができて歳出改革に繋がるのに、である。つまり、現在は、政府(厚労省・財務省)自身がそれを邪魔して、GDP成長率向上を阻害していることになる。

 また、⑧のように、政府は2023年12月公表の改革工程素案に介護サービスを利用する際の2割負担の対象者を2024年度に拡大すると盛ったが、確かに高齢になっても働いて現役並みの所得を得ている人もいれば、年金のみで生活しなければならず食費やエネルギー代にも事欠いている人もいる。そのため、「原則は全員3割負担で、所得に応じて医療・介護費の自己負担額合計が一定上限額を超えない範囲」とするのが公平で適切だろう。

 しかし、日本政府は、現在は高齢者に関しては生活保護程度の所得でも高所得と看做しているため(ここが大きな問題)、1年間の医療・介護費支払上限額は、医療・介護費が生活費を圧迫しないよう所得の5%以下と低く設定し、いろいろな意味で個人情報保護の怪しい「マイナ保険証」で受診しなくても、窓口で自己負担分だけ支払えば済むようにすることが条件になる。

 なお、⑨のように、政府は、高齢者に対する医療・介護給付の削減を社会保障の歳出改革と称しているが、医療保険料・介護保険料として支払った保険料を少子化対策に使うのは目的外の流用である上、日本の医療・介護制度を支えるのは“生産年齢人口”に当たる15~65歳の日本人男性だけでなくても良い。そのため、いくら屁理屈をこねても流用は合理化できないし、現役世代の負担が重いといっても、殆どの人が同じ経過を辿って死ぬため不公平はなく、高齢者はいつまで現役並みの所得を得られるかわからないので貯蓄は必要なのである。

 さらに、⑩については、政府がこれまで行なってきた政策を正当化するためか、原因分析や予想が甘すぎる点が散見され、確かに仮定・原因・試算等の妥当性の検証も必要だと思われる。 

 上のほか、*2-1-6も、⑪バラマキをやめ財政を「平時」に戻す必要 ⑫「賢い支出」を追求して財政健全化と成長の両立をめざすべき ⑬内閣府は2060年度までの社会保障費と財政状況の長期推計を初めてまとめ、社会保障費の急増で財政が持続可能でなくなる危うい未来が浮かんだ ⑭毎年度の社会保障費を高齢化による伸びの範囲内に収め、給付の抜本改革や消費税を含めた負担の議論もすべき ⑮新型コロナウイルス禍の危機対応で膨張した財政の規律を取り戻す必要 ⑯歳出改革で4兆円削り、税収が5.3兆円上振れしても、基金の乱立等で新たな歳出が3年前の試算に比べて7.5兆円増え、効果を薄める ⑰首相は財政健全化の決意を行動で示すべき ⑱成長を実現し、将来の歳出を減らすため、DX等で生産性を高める賢い支出は欠かせない 等としている。

 このうち⑪⑫⑮⑰は賛成だが、⑬⑭のように、歳出改革と言えば、「持続可能性のため社会保障費を削減するか、消費税増税が必要」と主張するのは、国民不在・省益優先の行政の代弁であり、日経新聞の悪い点である。しかし、こういうことを言うメディアは、ほかにも多い。

 特に、社会保障のうちの医療・介護保険制度は、*2-1-7のように、高齢化社会のニーズに対応して作った優れた制度であり、中身を濃くしながら充実することはあっても、数値だけを見て削減するような数合わせに終始してはならないものだ。

 日経新聞は、日頃から、著しい金食い虫である原発は熱心に推進し、⑱のように、ラピダスのようなDX企業への補助金も兆円単位であっても成長を促す「賢い支出」としているが、関連性まで含めた経済の仕組みがわかっていないのではないか? また、生産に資するのではなく、破壊に資する武器を作る兆円単位の支出が「賢い支出」とは、どう考えても言えないと思う。

 つまり、首尾一貫した主張をすべきなのは、政治家だけではなく、メディアも同じであり、責任ある大人であれば、誰でも同じなのである。なお、⑯については、複数年での予算の使用を可能にし、毎年、費用対効果を検証しながら翌年の予算を決められるシステムにすれば、基金の乱立は不要であり、国会議員始め国民にとって透明で賢い使い方になる。

4)少子化対策について
 *2-2-1・*2-2-2は、①政府は、児童手当や育児休業給付など少子化対策の拡充のため、2024年度からの3年間で年3.6兆円の予算を確保する ②「医療保険料からの支援金制度」で初年度6000億円、段階的に金額を増やし2028年度には年1兆円集める ③他は歳出改革で1.1兆円、既定予算の活用で1.5兆円確保する ④首相は「2028年度拠出額は加入者1人当たり月平均500円弱」「社会保障の歳出改革で保険料の伸びを抑え、今春以降の賃上げで負担率の分母が増えるため、実質的な負担増にならない」とする ⑤支援金は、サラリーマンの場合は給料から天引きされる医療保険料に上乗せし、75歳以上の後期高齢者も含む全世代が負担する ⑥実際の1人当たり負担額は個人毎に差が出て所得の高い人ほど負担額が増える としている。

 また、*2-2-3は、⑦野党から、「支援金は事実上の子育て増税」と批判 ⑧立憲の山井氏は「所得階層別の負担額を出してほしい」と迫り、加藤こども政策相は「年収別拠出額は数年後の賃金水準等に依るため、現時点では一概に申し上げられない」と繰り返した ⑨少子化対策の最大の争点は財源確保策 ⑩立憲の早稲田氏は「給付と負担の関係が明白な社会保険の考え方に到底見合わない。租税でまかなわれるべき」と指摘し、加藤氏は「(医療保険等の)社会保険制度はともに支え合う仕組み。支援金制度も少子化対策で受益のある全世代・全経済主体で支える仕組み」と答弁 ⑪岸田首相も衆院本会議で「少子化・人口減少に歯止めをかけることで、医療保険制度の持続可能性を高める」と強調 ⑫本会議では国民の田中氏が「こども誰でも通園制度を拡大していく考えはあるのか。保育士等の賃金・労働条件を改善し、質の高い保育の提供に必要な人材を確保すべき」との指摘 としている。

 しかし、日本の最高法規で法体系の頂点に立つ日本国憲法は、第25条で「1項:すべて国民は健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する 2項:国は、すべての生活部面について社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない」と定めている。

 また、第 26 条で「1項:すべて国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、等しく教育を受ける権利を有する 2項:すべて国民は、法律の定めるところにより、その保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負ふ。 義務教育は、これを無償とする」と定めている。

 そして、それらに使うために、第30条で「国民は、法律の定めるところにより、納税の義務を負ふ」と定め、国民から税を徴収しているのだ。

 つまり、子育ての中の保育や義務教育の無償化や(年齢を問わず)すべての国民に対する医療・介護・公衆衛生の増進は、憲法で保障された国民の権利であり、国はそれを実現するために国民から税を徴収しているのだ。そのため、優先順位の低い事に無駄使いした挙げ句、「少子化対策のためだから、国民負担を増やす」とか「財源を探す」などという議論にするべきではなく、③のように、優先順位の低い歳出をカットして必要な財源を確保し、憲法で定められた国民の権利を保障すべきなのである。

 従って、子育てのための支援を増やしたり、教育無償化したりするのは良いが、それを①のように、少子化対策と位置づけるのはそもそも問題の本質から外れているし、②のように、その財源の一部を医療保険料から流用すれば、全国民に対する公衆衛生の向上・増進を阻害して憲法違反となるのである。

 なお、④⑤⑥のように、首相は「2028年度拠出額は加入者1人当たり月平均500円弱」「社会保障の歳出改革で保険料の伸びを抑え、今春以降の賃上げで負担率の分母が増えるため、実質的な負担増にならない」等とされたそうだが、「500円弱」というのは働いていない人まで含む人口で割って出した金額で実際の負担額は人によって異なるため誤解を生み、社会保障の歳出改革で社会保険料の伸びを抑えれば、医療・介護はさらに疎かになって、国民の健康や公衆衛生の増進に逆行するのである。

 そのため、⑦⑧のように、野党が「支援金は事実上の子育て増税」「所得階層別の負担額を出すべき」と反論するのは尤もだが、優先順位が高いにもかかわらず、これまでサボっていたことをするのに追加負担を求めるのは、どの所得階層の国民であっても許し難いのだ。

 従って、⑨の財源は、⑩のように、税で賄われるべきであり、加藤氏の説明はこれまで明確だった事をわざと混同させて煙に巻いている。また、⑪の岸田首相の「少子化・人口減少に歯止めをかければ、医療保険制度の持続可能性を高める」というのも、児童手当や育児休業給付で少子化が止まるという証拠はなく、現在いる人材も本当に必要な場所で有効に使っているわけではない上、医療保険等の社会保障を支えるのは日本人の生産年齢人口(15~65歳とされる)の男性でなければならないとも決まっていないため、その場しのぎの言い訳にすぎないのである。

5)外国人労働者について


(図の説明:左図は、外国人労働者の在留資格・在留可能期間・在留者数を示したもので、在留期間を短く区切って滞在者数を制限し、医師・看護師・介護福祉士・保育士・美容師等の資格の相互承認はしておらず、生産年齢人口に対して雇用機会が不足している時の体制のままになっている。また、中央の図のように、外国人労働者の給与は技能実習を終えた特定技能でも日本人の高卒非正規程度で外国人差別が存在しており、日本が「選ばれる国」になるのを妨げている。このように、熟練した頃には強制的に母国に返すため、右図のように、特定技能や技能実習の外国人は限られた数になり、人手不足が補えないのだ)



(図の説明:そこで、左図のように、日本政府は特定技能の受入上限を「2024~28年に82万人」と増やしたが、職種は殆ど男性で日本人ばかりの政治家・行政官が思いつく範囲に留まるため不十分だ。このような中、中央の図のように、自国の所得水準との差が縮まれば日本で働く魅力は薄れるため、所得水準の差の大きな国が外国人労働者の供給源として有望なのだが、右図のように、日本の難民受入数は2023年に300人程度と先進国の中で桁違いに低く、他国を批判する割には困っている時に助けない「《大金を払わなければ》好かれない国」となっている)

 まず、日本国憲法は前文で、「全世界の国民が、等しく恐怖と欠乏から免れ、平和の内に生存する権利を有することを確認する」「いずれの国家も自国のことのみに専念して他国を無視してはならないのであって、政治道徳の法則は普遍的なものであり、この法則に従うことは、自国の主権を維持し、他国と対等関係に立とうとする各国の責務であると信ずる」と定めている。

 そして、*2-3-1は、①政府は外国人労働者の在留資格「特定技能」の受け入れ枠を提示し、2024年度からの5年間で現行の2倍以上の82万人を受け入れる ②内訳は国交省所管分18.2万人・経産省所管分17.3万人・厚労省所管分17.2万人 ③数字は業界毎に成長率・需要等から不足人数を出し、人材確保や生産性向上の努力で解決できる分を差し引いて算出 ④急速な少子高齢化に見舞われる地方からは悲痛な声が上がっていた ⑤厚労省発表の2023年10月の外国人労働者は約200万人で、JICAは年平均1.24%の成長を2040年に達成するには674万人の外国人労働者が必要と推計 ⑥政府は特定技能だけでなく技能実習に代わる「育成就労」と合わせて受け入れ数を増やす方針 ⑦円安や低下した賃金水準は日本が「選ばれる国」になる足かせ ⑧外国人の職場への順応や生活環境の支援策を整えることが重要 ⑨移民統合政策指数の2020年版の総合評価で日本の順位は56カ国中35位で、韓国に後れをとる 等としている。

 このうち③の「業界毎に成長率・需要等から不足人数を出し、人材確保や生産性向上の努力で解決できる分を差し引いて外国人労働者の必要数を算出する」というのは、国内のイノベーションを計りながら、雇用との調和を維持しようとするするもので良いと思う。

 しかし、外国人労働者が必要な分野は、②の国交省・経産省・厚労省だけではなく、文科省・農水省・環境省・防衛省等の分野にも及ぶため、人手不足が経済の足をひっぱらないためには、①の82万人ではなく、④⑤を考慮して必要とされる分野は躊躇なく追加すべきである。

 また、⑥の2019年に始まった特定技能制度は、人手不足が著しいとされた特定分野に限って一定の専門性と日本語能力を持つ外国人材を受け入れる制度だが、それでも「1号」の在留期間は最長5年で家族は帯同できず、「2号」になって初めて家族を帯同できるが、就労している限り更新の上限がないという条件の悪さである(https://global-saponet.mgl.mynavi.jp/visa/2685 参照)。

 そして、特定技能1号の取得方法には、i)分野毎に用意された技能試験と日本語能力試験に合格 ii)職種と作業内容に関連性のある技能実習を良好に3年間終了する の2つがあるが、技能実習制度には問題が多発しているため、日本政府が2024年2月9月に技能実習制度廃止と育成就労制度(特定技能への移行を目指す制度)創設を決定したものの、改正法施行は2025年~27年と消極性をあらわにするゆっくりした進展なのである。

 このように雇用条件が悪ければ、⑦のように、円安や低下した賃金水準で他国との賃金格差が縮まれば日本は「選ばれる国」にならない。また、⑧のように、外国人のみに職場や生活環境への順応を求めれば、外国人の日本での生活しにくさは著しいものになる。これらの結果として、⑨の2020年版移民統合政策指数総合評価で日本の順位は56カ国中35位になり、言葉の特殊性は日本と同レベルの韓国にも後れをとっているのである。

 難民については、*2-3-2が、⑩出入国在留管理庁が自国で迫害を受ける恐れがあるとして2023年に303人(申請者数のわずか2.2%)を難民認定したと発表 ⑪内訳は、2021年の政変後に退避したJICA職員が多いアフガ二スタン237人、軍政による弾圧が続くミャンマー27人、エチオピア6人など ⑫難民認定申請者数は1万3823人で、スリランカ3778人、トルコ、パキスタンの順 ⑬難民認定制度とは、難民を「人種・宗教・国籍・政治的意見・特定の社会的集団の構成員であることを理由に迫害される恐れがあって国外に逃れた人」と定義し、出入国在留管理庁の調査官が面接等で審査 ⑭日本の難民認定数は年間1万人超の国がある欧米と比べて著しく少なく、基準が厳しすぎるため「難民鎖国」との批判がある と記載している。

 このうち⑩⑪⑫⑬は事実だが、⑭のように、日本の難民認定数は欧米先進国と比較して著しく少なく、基準が厳しすぎて「難民鎖国」そのものである。しかし、気候変動等によって食料や土地の支配権を巡る争いが頻発するようになれば、移住を余儀なくされる人も増えて難民は増加する。その時に、難民を軽蔑して排除するような国が「国際貢献している国」と評価されるわけはなく、大金を払わなければ「好かれる国」にも「選ばれる国」にもならないだろう。

 それでは、難民になる人は労働者としてレベルが低いのかと言えばそうではなく、いろいろな点で日本人より優れた人も多い。そのため、私は、難民鎖国は早急に止めた方が良いと考える。

 わかり易い例を挙げれば、*2-3-3の日本を代表する指揮者で“世界のオザワ” の小澤征爾氏は、満州国奉天に生まれ、大陸で生まれ育ったことが日本人離れした活躍の源で、戦後は立川に住まいを移して中学3年生の時に齋藤秀雄(桐朋学園で多数の著名指揮者や弦楽器奏者を育てた大功労者)に弟子入りし、23歳でブザンソン国際指揮者コンクールで優勝し、1961 年にニューヨーク・フィルハーモニックの副指揮者に抜擢された。

 その後、輝かしい活躍をされたのだが、最初は敗戦後の開発途上国であった日本の一青年が国際指揮者コンクールで優勝できる先進国のFairな審査があり、その結果を受けて機会を与えたボストンフィル、ニューヨーク・フィル、ウィーン・フィル、ベルリン・フィルなどがあって、小澤征爾氏は世界をはじめとして日本でも活躍できたのである。そして、このような人は多い。

 そのため、日本もFairな態度で広い母集団から人材を選ぶことが必要不可欠であり、そうすれば、結果として日本だけでなく世界のためにもなるだろう。

 そして、*2-4は、⑮職に就いていないが仕事を希望する「働き手予備軍」は2023年に411万人と15歳以上の3.7%に留まり、その割合は20年で半減 ⑯予備軍が減ったのは景気回復で女性・高齢者の働く環境整備が進んだため ⑰一般労働者は1.0%増でパートの伸びが際立ち、女性・高齢者の労働参加が進んで人材プールが細った ⑱国立社会保障・人口問題研究所によれば、生産年齢人口はピークの1995年と比較して2023年に15%減だが、その間に就業者は約400万人増 ⑲「M字カーブ現象」もほぼ解消 ⑳日本は1960年代後半に「ルイスの転換点」を過ぎたが女性・高齢者を含めて新たな転換を迎える可能性 ㉑人手不足で採用できず、非正規の時給引き上げが続けば、低採算の事業は撤退をせざるを得ない 等としている。

 このうち⑮⑯⑱⑲は良かったと思うが、⑰⑳については、女性・高齢者が短時間勤務を希望したとしても、短時間の正規雇用として雇用を安定化させつつ、社会を支えることもできるのに、未だパート中心で「ルイスの転換点」にも達していないことには落胆させられる。

 しかし、㉑の低採算で人手不足の産業が不要な産業ばかりでは決してないことは、高くて必要なものも買えなかったり、必需品の多くを輸入依存していたり、日本企業でさえ安価な労働力を求めて海外に生産拠点を移し国内の産業が空洞化していたりする状況を見れば明らかだ。

 そのため、本格的に外国人労働者を受け入れ、安価に国内生産できる製品を増やし、さまざまな製品やサービスを開発・提供すべき時であることは間違いないだろう。

・・参考資料・・
<歳出改革の理念1←地球環境と食料・エネルギー自給率>
*1-1-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20240221&ng=DGKKZO78623090Q4A220C2KE8000 (2024.2.21 日経新聞) 生産性停滞 要因と対策(上) 「豊かさ」への新たな戦略探れ 宮川努・学習院大学教授(56年生まれ。東京大経卒、一橋大博士(経済学)。専門はマクロ経済学) 木内康裕・日本生産性本部上席研究員(73年生まれ。立教大院修了。専門は生産性に関する統計作成・経済分析)
<ポイント>
○生産性向上のための構造改革が置き去り
○良質なヒト、モノ、カネが国外流出の恐れ
○生活の豊かさまで含めたビジョンが必要
 2023年末、日本の国内総生産(GDP)や生産性に関する国際的順位が公表された。「国民経済計算」確報版で示された22年の1人当たり名目GDPは、経済協力開発機構(OECD)加盟国中21位と主要7カ国(G7)で最低となった。また日本生産性本部の「労働生産性の国際比較2023」では、22年の1人当たりの労働生産性はOECD加盟国中31位となった。円安が要因とはいえ、GDP全体でも人口が日本より3割以上少ないドイツに抜かれ、4位に転落した。日本の経済的地位の低下を嘆く報道は恒例行事と化した感がある。しかし当面の順位にこだわるだけでは、日本が直面している問題の解決にはならない。本稿では日本経済の国際的地位を念頭に置きながら、労働生産性の向上を含めた日本の選択肢について述べたい。1人当たりGDPや労働生産性などの経済的豊かさに関する指標の国際順位が調査により異なるのはなぜか。1人当たりGDPも労働生産性も分子はGDPだが、それを割る分母の指標が異なる。1人当たりGDPでは人口、労働生産性では労働者数や労働時間数で割っている。さらに影響が大きいのはドルに換算する際の為替相場の違いで、内閣府の順位ではその時々の為替レートを使うため最近の円安が大きく影響する。一方、日本生産性本部の指標ではドル換算時に購買力平価を使う。購買力平価は日米の生活水準を同じくするレートで計算されており、00年は1ドル=155円、22年は同98円とむしろ円高になっている。つまり現在の日本の財・サービスは品質が良く、米国ではより高く売れるということだ。それでも労働生産性が22年に31位まで後退しているのは、日本の就業者比率が高く、欧州でユーロの評価以上に生活水準の高い国があるからだ。従って労働生産性の順位こそ深刻に受け止めるべきだろう。長年にわたる1人当たりGDPや生産性の低迷はなぜ起きたのか。筆者らは21世紀初頭から生産性の国際比較をしてきたが、この間アベノミクスに代表される財政・金融政策頼みの経済運営により、生産性向上のための構造改革が置き去りにされてきたと感じる。かつて政府は「世界最高水準のIT(情報技術)社会の実現」という目標を掲げた。だが依然マイナンバーの普及が十分でなく、ライドシェア一つ実現できていない社会を世界最高水準のIT社会と呼べるだろうか。実際、労働生産性の順位は10年代半ばごろから急落している(図参照)。構造改革を労働強化とする批判も生産性向上が進まない一因だが、新技術の習得に努めなければ経済的な豊かさどころか安全性も維持できなくなりかねない。筆者らが日本経済の課題の一つとして生産性向上を唱え始めたころは、日本経済はいずれリバウンドするという期待があった。だが当初の予想を上回る長さの低迷から考えると、この流れを直線的に延長していけば、予想される未来は「緩やかなアルゼンチン化」だ。地球の反対に位置しながら、経済成長の分野で両国は奇妙な縁がある。産業革命を経て先進国化した欧米諸国の次に先進国入りをするのはどの国かということが議論された際に、候補として挙げられたのが日本とアルゼンチンだ。その後は大方の予想を裏切り日本がアルゼンチンよりも経済的に成功したが、21世紀に入り日本はアルゼンチンの後を追うように坂を転がり続けている。世界銀行のデータでは、1995年から22年の労働生産性順位の変化を見ると、日本は28位から45位、アルゼンチンは44位から55位へとともに順位を落としてきた。アルゼンチン化の特徴の一つは、良質なヒト、モノ、カネが国を見捨てて流出していくことだ。ヒトに関しては、日本の教育水準の高さは先進国でも群を抜いている。スポーツでも、両国とも野球の大谷翔平やサッカーのメッシという百年に一度ともいわれる才能のある選手を輩出している。しかし彼らが実力を発揮した場は欧米だ。日本であれば二刀流というイノベーション(革新)は十分に許容されなかったのではないか。実際、人口が減少するなかでも、日本人の海外永住者数は増え続けている。イノベーション不足の国ではモノへの投資も海外へ向かう。従来型ビジネスで稼ぐには、日本企業は低金利で調達し収益性の高い海外で投資した方が有利だ。最後のカネに関しては、アルゼンチンは何度も資本流出により経済危機に見舞われた。日本でもその兆候は見え始めている。22年から欧米が金利を引き上げたのに対し、日本はゼロ金利を維持しており、資金の流出と円安を招いている。良質のヒト、モノ、カネの流出はさらなる貧困化を招き、皮肉にも人々は一層政府への依存度を高めることになる。だが政府自身に経済を活性化する機能はない。最終的にアルゼンチンのように肥大化して身動きがとれなくなった政府に徹底した「ノー」を突き付けるような状況が日本に訪れる可能性は否定できない。「緩やかなアルゼンチン化」から逃れる方法はあるのか。一つは従来型の成長戦略をより強い形で実行していくことだろうが、実現性が低いかもしれない。既得権益や規制の壁も大きな理由の一つだ。加えて長年の経済低迷の影響で、90年代までに社会人としての経験がない世代には、改革後の成長のイメージが浮かばず説得力に欠けるのだ。いわゆる氷河期世代以降は成長期の体験が乏しく、停滞する日本経済だけを見てきた。彼らにとって、日本は経済活力や科学技術の面で世界的に優れた国ではない。こうした世代には、経済的豊かさを優先した世代のシナリオは魅力的でなく、生活の豊かさまで包含したビジョンが必要だろう。1月18日付本欄で滝澤美帆・学習院大教授が紹介した日本生産性本部の生産性を含む包括的な豊かさの指標を探る試みも昭和的な成長志向の修正を企図している。だがより経済学的、政策的なアプローチは、パーサ・ダスグプタ英ケンブリッジ大名誉教授が「生物多様性の経済学」で示した「資本アプローチ」だ。資本アプローチは、人々の生活を豊かにするサービスを市場経済から供給されるサービスに限らず、環境を含めた市場外のサービスにまで拡張してとらえ、それらを提供する基盤となる民間資本、社会インフラ、自然資本、人的資本などの組み合わせを政策目標として考える。このアプローチが定着するには時間がかかるだろうが、これまで経済的豊かさの指標として君臨してきたGDPも将来はより包括的な豊かさを取り入れたものへと変化していくだろう。GDPや生産性の低迷をきちんと受け止めることは大切だが、単なる過去への回帰ではない「豊かさ」への戦略を練る必要がある。

*1-1-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20240308&ng=DGKKZO79073400Y4A300C2MM8000 (日経新聞 2024.3.8) 曲がる太陽電池を優遇 経産省、電力買い取り額上乗せ
 経済産業省は再生可能エネルギーの電力を高く買う固定価格買い取り制度(FIT)で、軽くて曲がる次世代の太陽光発電装置「ペロブスカイト型」を優遇する。2025年度にも同型による発電をFITに加え、通常の太陽光発電より高く買い取る。新技術への民間投資を促し、日本の再生エネの拡大につなげる。経産省はペロブスカイト型の買い取り額を、現行の太陽光向けの水準を上回る1キロワット時あたり10円以上で調整する。ペロブスカイト型の太陽電池はビル壁や窓など今まで設置できなかった場所でも発電できる。日本発の技術で、耐久性といった開発段階の品質では日本勢に優位性がある。一方、中国企業は量産を始めており商品化で先行する。FITでの優遇で、日本勢の関連ビジネスの競争力を高める。国土の狭い日本では太陽光パネルを設置できる余地が狭まっており、各地で林地開発のトラブルも相次ぐ。ペロブスカイト型が普及すれば、都市部のビルの壁面といった新たな発電場所を開拓できる。

*1-1-3:https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC231FM0T20C23A5000000/ (日経新聞 2023年8月17日) 省エネ窓にリノベ、家計守る 高断熱ガラス売り上げ2倍
 省エネ性能の高い窓に交換する世帯が急増している。大手メーカーの高断熱や複層ガラスの売り上げは前年比2倍の伸びで、冬場に向けて増産の動きもある。背景には冷暖房コストが増すなか、断熱性に優れた窓に交換して電気代を抑えたい需要の高まりがある。修繕工事の一環で全136戸の窓ガラスを日本板硝子の省エネガラス「スペーシア」に、2022年に交換した東京都立川市のマンション。住民の後藤和夫さんは「夏の電気代が2〜3割減った」と語る。スペーシアの3月以降の売り上げは、前年同期比約2倍と好調だ。スペーシアは2枚のガラスの間に0.2ミリメートルの真空層をつくることで、熱の伝導や対流を抑える。厚さは1枚ガラスとほぼ同じだが、4倍の断熱効果がある。施工費用などを除いたガラスのみで、1平方メートルあたり約5万円で注文できる。スペーシアは1997年の開発以来、通常のガラスと比べて価格が数倍高いこともあり、販売は思うように伸びなかった。電気代の上昇が家計を圧迫するなか、断熱性能の高い窓ガラスへの交換需要が増えている。東京電力ホールディングスや中国電力など大手7社は6月、火力発電所に使う液化天然ガス(LNG)価格の上昇などを理由に家庭向け電気料金を1〜4割程度値上げした。7月から電気料金は下がっているが、依然として高水準のままだ。AGCの複層ガラスも4〜5月の販売数が前年比で5割増え、6月は2倍に伸びている。工場の稼働はフル生産しているが、納期は1カ月以上先になる場合もあるという。秋以降に設備投資して、最大15%程度の増産を検討する。建築ガラスアジアカンパニー日本事業本部の古賀潔氏は「節電のために窓を交換する世帯が増えている」と指摘する。政府の補助金も追い風となっている。政府は23年度から省エネ性能の高い窓ガラスや窓枠の交換費用のうち、1戸あたり上限200万円まで補助する「先進的窓リノベ事業」を展開している。予算枠は約1000億円で、3月31日から交付申請を受け付けている。8月16日時点で申請額は予算の5割を超える。22年度の補助制度と比べて補助額の上限が大きいため、高額でも断熱性に優れた窓ガラスへの交換を後押ししているとみられる。「補助金の枠を使い切ってしまう可能性は十分ある」。LIXILの瀬戸欣哉社長は指摘する。同社では想定の6〜8倍の注文があり、4月の取替窓の販売は10倍に伸びた。瀬戸社長は「断熱性のある窓に交換する需要はこれからも大きくなるだろう」とみる。記録的な猛暑が続く中、より手軽に窓回りの断熱性能を高めるグッズを購入する消費者も増えている。ホームセンター大手のカインズでは、「断熱カーテンライナー」の販売が好調だ。ニトリでも通販サイト内の節電グッズ特集で遮熱性能のあるレースカーテンや遮熱窓シートなどを紹介している。

*1-1-4:https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA0641G0W3A001C2000000/ (日経新聞 2023年10月8日) 断熱窓への改修補助金、経済対策で延長へ 政府
 政府は住居の窓を断熱性の高いものに改修する工事への支援制度を延長する方針だ。工事にかかる費用の半分ほどを国が負担する仕組みで、エネルギー消費が増える冬場を見越して対応を促す。10月中にまとめる経済対策に盛り込む。制度は2023年度から始まった。戸建て・集合住宅のリフォーム工事が対象で、登録した事業者が施工する場合に適用する。事業者を通じて手続きする。断熱窓は窓枠を二重にしたりガラスに熱を通しにくく加工したりしたものを指す。補助額は1戸あたり最大で200万円で、窓の性能やサイズなどで変わる。10月上旬時点での申請額は予算規模のおよそ7割に達した。この秋に取りまとめる経済対策で国内投資の促進策として制度延長を打ち出す。環境省は24年度予算の概算要求で1170億円を求めた。予算が足りなくなる可能性があると判断し前倒しで23年度補正予算案に計上する見通しだ。住宅内の熱の出入りは7割が窓を通じているとされる。断熱にすれば冬場で3割ほどの電力を抑えられる効果があるという。

*1-2-1:https://bizgate.nikkei.com/article/DGXZQOLM113VK011092023000000 (日経新聞 2024/1/31) NIKKEIブルーオーシャン・フォーラム:SDGs 海洋保全 脱炭素:大阪湾護岸に「藻場」創出 大阪府、海洋保全で官民連携、ブルーオーシャン・イニシアチブと事業連携 兵庫県とアライアンス設立
 大阪府が大阪湾の護岸に海藻などの「藻場(もば)」を創出するため、民間企業との連携を強めている。一般社団法人ブルーオーシャン・イニシアチブ(BOI)と2023年8月に事業連携協定を締結。2024年1月には兵庫県と「大阪湾ブルーカーボン生態系アライアンス(MOBA)」を設立した。2025年の大阪・関西万博で藻場創出の取り組みを国内外に発信する。藻場は海の生物多様性を増すほか、二酸化炭素(CO2)を吸収して長期で貯留できるため、持続可能な開発目標(SDGs)達成に寄与するとして注目を集めている。官民連携を通じて藻場を生み出すための様々な課題を解決する。
●「ミッシングリンク」解消目指す
 海藻類が育つ藻場はCO2の吸収源となるほか、魚類など生き物のすみかとなる。酸素の供給など水質改善の効果も期待できる。しかし、大阪湾のうち北は大阪市から南は貝塚市までの「湾奥部」(海岸線延長約180㎞)は大半がコンクリートなどでできた人工護岸で藻場はほぼ存在しない。一方、泉佐野市以南の湾南部や西部には海藻が自生しており、淡路島や兵庫県南部を含めた大阪湾全体で見ると「湾奥部だけが藻場がない『ミッシングリンク(連続性が欠けた部分)』になっている」(大阪府環境農林水産部環境管理室環境保全課の田渕敬一課長補佐)という。大阪府は湾奥部に藻場を創出することで、大阪湾全体を藻場や干潟などの回廊でつなぐ「大阪湾MOBAリンク構想」を掲げ、その実現には主に3つの課題があるとみている。第1の課題は船舶などの港湾利用に影響を及ぼさず藻場を創出する技術だ。第2の課題は海藻が海面下にあるため生育状況を確認するための費用がかかる点だ。第3の課題は護岸の多くは企業の所有地に面していて近づけないうえ、海藻を育成したい人が限られること。大阪府はこれらの課題を解決するための事業に着手した。
●湾奥部でワカメを育成
 大阪湾奥部は大都市圏から流入する河川などの影響で汚濁物質がたまりやすく、水質改善が課題となっている。そこで傾斜型の護岸に海藻が定着しやすい技術を確立して藻場を創出し、そこから周辺の護岸に広げていくことを目指している。2021年12月には大阪市が管理する「大阪南港野鳥園」の護岸にある消波ブロックにワカメを育てる30センチ四方のパネルを設置した。徳島県鳴門市産のワカメの胞子がパネルについて大きくなる仕組みで、漁礁工事の日本リーフ(兵庫県南あわじ市)が公募で事業者に選ばれた。府はこの事業にかかった経費の半額を補助金として支給。ワカメは順調に育ち、2022年4月にはワカメが繁茂していることを確認できた。護岸に面した事業所を所有する企業とも連携する。2022年にENEOS堺製油所(堺市)の護岸で環境省のモデル事業として海底にブロックを設置してワカメを育てた。波が想定より小さく、ワカメは育たなかったが、府は知見を生かして他の方法で藻場創出を支援する。
●スタートアップなどの技術に期待
 大阪府は2023年8月に一般社団法人のBOIと事業連携協定を締結した。2022年12月に設立されたBOIは海のサステナビリティ(持続可能性)実現に向け、産官学民の関係者が協力して活動している。具体的には、①長崎県対馬市と連携した海洋プラスチックごみ削減②魚類などの海洋資源保全と関連事業の活性化③ブルーカーボンクレジットの推進など海洋に関する気候変動対応――の3分野を中心に、「海の万博」といわれる2025大阪・関西万博を経て、SDGsの期限である2030年を目指し活動を推進する。大阪府は連携を通じてBOIに「MOBAリンク構想」に参画してもらい、海藻などの生態系に関する技術やノウハウを有する企業とのネットワークを構築し、湾奥部における藻場創出を加速する。例えば、BOIのメンバーであるスタートアップが保有する海洋ドローンなどの技術を活用して海中を「見える化」し、海藻の生育状況を調べることなどを想定。国内の他の地域で実績がある海藻の育成技術などの提供にも期待する。BOIのメンバーであるNPO法人ゼリ・ジャパンが2025大阪・関西万博で設けるパビリオンやイベントでMOBAリンク構想を国内外に発信する。例えば、来場者が大阪湾の海藻の周りに魚などが生育している様子を水中ドローンの映像で体感するイベントなどを想定する。
●兵庫県とのアライアンスで会員募集
 大阪府は2024年1月、兵庫県と「大阪湾ブルーカーボン生態系アライアンス(MOBA)」を設立した。具体的な活動内容として①取り組み状況の情報発信や普及啓発②ブルーカーボン生態系創出の取り組みを活性化③会員の連携による新たな事業の創出④藻場の創出が生物多様性などに与える影響の把握――などを予定。大阪湾MOBAリンク構想の実現に向けて、MOBAの活動に賛同する企業や団体、研究機関、行政機関などの会員を募る。2025年の大阪・関西万博で事業の認知度を高め、2026年度からSDGsの達成期限である2030年にかけて藻場の創出を加速させる。

*1-2-2:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/1195380 (佐賀新聞 2024/2/17) アカウニの資源回復へ大型種苗放流 唐津市の漁業者とNPO法人、収穫までの生存率を検証
 唐津ブランド・アカウニの資源を回復しようと、唐津市内の漁業者とNPO法人「浜-街交流ネット唐津」が6日、アカウニの大型種苗を放流した。生残率を検証するため、今回は種苗を小型から大型に変えた。魚やウニのすみかとなる藻場の磯焼けで、近年はアカウニの資源が大きく減少している。これまでは佐賀県内で生産されている小型アカウニの種苗を放流してきたが、小型種苗は魚の食害を受けやすく、生残率が低いという。山口県の報告書によると、放流して1年後の平均生残率は殻径1センチ以下で9・5%、1・6センチ~2センチで52・4%、2センチ以上で80・5%。今回は長崎県の種苗センターから3センチサイズを調達し、市内の沿岸に放流した。今後は収穫までの生残率を定期的に調べ、効果的なアカウニ種苗の放流を検証していくという。NPOの千々波行典代表理事は「唐津を代表するアカウニの資源が減り、危機的な状況が続いている。資源回復の効果を確認していきたい」と語る。

*1-2-3:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/1205735 (佐賀新聞 2024/3/7) 洋上風力発電推進へ庁内組織立ち上げへ 唐津市
 唐津市は7日、佐賀県が唐津市沖に誘致を検討している洋上風力発電事業を巡って、有望な区域への指定を進めるため副市長をトップとした庁内組織を立ち上げる方針を示した。経済部、漁業や港湾振興の部署など横断的な体制を立ち上げていくという。同日の市議会一般質問で伊藤泰彦議員(清風会)が質問した。峰達郎市長は「事業を早期に実現することは地域振興、経済波及効果が大いに期待できる」とし、「『一定の準備段階に進んでいる区域』から『有望な区域』へ整備されるよう推進体制を構築し、地元の理解を賜り、早期に次のステップに進めるよう尽力したい」と答弁した。国は2021年9月、唐津市沖を第1段階の「一定の準備段階に進んでいる区域」に整理した。次の段階として、利害関係者を特定した上で、法定協議会の設置について了解を得る必要がある。県と市は候補海域と隣接した五つの離島や相賀、湊地区などで説明会を開く一方、住民からは観光地の景観や沿岸漁業への懸念の声が出ている。峰市長は取材に対し、「待ったなしの状況で、集中的にアクションを起こしていきたい。地元住民の不安に対し、一歩踏み込んで説明していかないといけない」と語った。

*1-2-4:https://bizgate.nikkei.com/article/DGXZQOLM21AEA021122023000000 (日経新聞 2024/1/9) NIKKEIブルーオーシャン・フォーラム:ニッスイ、積み重ねた養殖技術への誇り、水産資源を守り未来につなげる
 ニッスイは、2022年4月に長期ビジョンを発表し、中期経営計画に着手、同年12月には社名を変え、新たな成長に向けてスタートを切った。ミッションに掲げる「新しい"食"の創造」の実現のひとつとして、養殖技術開発に力を入れる。ニッスイが目指す持続的な水産業の未来とは。中央研究所大分海洋研究センターの取り組みを追った。
●天然資源への負荷を低減する サステナブルな養殖技術
ニッスイは、2022年4月にミッション(存在意義)を「海で培ったモノづくりの心と未知を切り拓く力で、健やかな生活とサステナブルな未来を実現する新しい"食"(Innovative Food Solutions)を創造していく」と定義した。時代や環境の変化に応じて"食"の新たな可能性を追求し、社会課題を解決していくことがグループの使命であると宣言した。環境負荷を抑えて高品質な養殖魚を持続的かつ安定して出荷するには、養殖技術を高めることが欠かせない。ニッスイが養殖事業の研究開発を担う中央研究所大分海洋研究センターを設置したのは、1993年のことだ。大分県佐伯市にあるこの研究所では、現在、養殖に関する基礎研究から事業化に向けた応用研究まで、約30人の研究員と支援員がそれぞれの研究分野に取り組んでいる。
●人工種苗・育種技術の高度化により 年間を通じて高品質ブリを提供
大分海洋研究センター研究員の山下量平氏は、現在ブリ養殖の中心メンバーとして基礎研究から事業化に向けた応用研究までを担っている。ニッスイのブリ養殖の歴史は、04年にブリの養殖会社を事業譲受して黒瀬水産を設立したことから始まった。翌05年には、大分海洋研究センターで親魚から採卵し、受精卵から一貫して人の手で管理するブリの人工種苗の開発に着手した。一般的なブリの養殖では、「モジャコ」と呼ばれる天然の稚魚を取り、大きく育ててから出荷しているが、産卵後成熟後期の夏以降にブリがやせてしまい、周年にわたって品質の良いブリを生産するのは困難だった。そこで、ブリの産卵時期は年1回だが、任意の時期に産卵させることができれば、周年を通して安定したサイズ・品質のブリができると考え、成熟誘導技術の開発を進めた。この任意の時期に産卵をさせる成熟誘導技術と、育種による優れた特性を持つブリを選別し次世代につなげることの組み合わせで、1年を通して育成のスピードが速く高品質のブリの出荷が可能となった。22年度には、黒瀬水産が出荷する「黒瀬ぶり」の全量が人工種苗によるものとなり、23年には年間200万尾の出荷を目指している。山下氏は「長年蓄積してきた高度な養殖の知見・技術によって、高度な養殖が実現するとともに、成熟誘導や種苗生産技術の開発により時期をずらしながら種苗を生産することで、完全養殖ブリの周年出荷が実現しました。世界を見てもこの養殖技術はニッスイの強みだといえます」と話す。ただ、生き物が相手なだけに、研究は困難の連続だ。現在は完全養殖を始めてから5世代目の育成を進めているが、養殖環境下で遺伝的な多様性を確保しながら改良を続けているという。「人工種苗100%の完全養殖を実現したことで、現在では年5回、時期をずらしながら種苗を生産できるようになりました。今後は成長性や安定した品質はもちろん、環境負荷の軽減も考えていかなくてはなりません」と山下氏は話す。その解決のために、飼料や魚の性質の改良を進め、環境負荷を低減する研究にも取り組んでいる。選抜育種と人工種苗の技術を磨いたことで、高品質なブリを夏場でも出荷できる強みにもなった。差別化した安定供給できる商品を増やしていくことは、水産市況の変動の影響を低減して、収益の安定化にもつながっている。
●養殖技術を拡大し 新しい"食"の創造に貢献
 ニッスイは養殖事業の拡大を長期ビジョン・中計の成長戦略のひとつに位置づけており、国内ではブリ以外にはギンザケの養殖にも注力している。ギンザケの場合は、淡水で約1年稚魚を育成してから、生育に適した海水温になった時期に海上のいけすに収容し、半年間飼育してから出荷される。大分海洋研究センターでは、ギンザケの稚魚が早く海水に適応できるようにする研究などにも取り組んでいる。また、ニッスイでは近年注目度が高まっている陸上養殖にも着手しており、20年に地下海水を利用したマサバの陸上循環養殖の実証実験を開始している。23年4月には「閉鎖式バイオフロック法」を用いたバナメイエビの陸上養殖を事業化した。世界的には人口増加や健康志向の高まりなどを受け、水産物の需要は右肩上がりに増加しているが、漁獲量自体は増えておらず、その増加分を補っているのが養殖だ。日本はかつて水産大国といわれ、長年天然の水産物の恩恵を受けてきたが、近年縮小する漁業生産を補う養殖の重要度は高まっている。水産資源の枯渇や持続可能性への懸念が指摘されるなか、効果的な漁業管理など適切な処置による漁業資源の維持や再生が重要になっている。食の安全や環境負荷の低減などの観点からも、ニッスイが養殖の研究開発を続ける意義は大きい。「ニッスイが取り組む以上、高いレベルの品質を維持して安全・安心を提供しないといけない。新しい"食"を創造するために研究開発を重視する方針を会社として守り続けているからこそ、今の養殖事業があります。養殖の研究は私にとってライフワークであり、人生を懸けて取り組むことにやりがいを感じています」と山下氏は語った。

*1-2-5:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/1210627(佐賀新聞 2024/3/16)スミノエガキ養殖、海況改善へ 基幹のノリ漁不作で取り組み 佐賀県有明海漁協新有明支所青年部
 有明海の海況が悪化して赤潮の発生が長期化するなどし、基幹漁業のノリ養殖の不作が続いている。環境改善へ、赤潮の発生原因となる植物プランクトンを捕食するスミノエガキの養殖に、佐賀県有明海漁協新有明支所(白石町)の青年部が取り組んでいる。河口域の低塩分に強く成長も早いため、漁業者の収益向上も期待できるという。取り組みが評価され、3月上旬の全国青年・女性漁業者交流大会で資源管理・資源増殖部門最高賞の農林水産大臣賞に選ばれた。スミノエガキは国内では有明海にのみ生息し、夏に大雨が降った後に産卵するなど淡水の流入による河口域の低塩分化にも強いとされる。成長が早く、マガキの養殖が一般的に出荷まで2年かかるのに対し、単年出荷が可能という。昭和30年代ごろまで養殖が盛んだったが、ノリ養殖の発展とともに衰退していた。有明海のノリ養殖は海況の悪化で生産が不安定になっており、新有明支所では色落ち被害が起き、2021、22年度の生産量は例年の半分以下に落ち込んでいる。同支所青年部(15人)はサルボウなど二枚貝の減少が要因の一つと考え、県有明水産振興センターからの提案を受け、スミノエガキの養殖に着手した。22年度は天然のスミノエガキを10~12月の2カ月半、はえ縄式の養殖施設でかごに入れて海中にカキを垂下したところ、むき身の肥満度が5%向上し、グリコーゲン量も1・3倍に増加した。海底では干潮時にプランクトンを捕食するが、海中につるすと潮の干満に関係なく常時捕食でき、身入りが良くなった。年明けにも再度養殖し販売した。23年度は単年養殖に取り組み、塩田川河口域で天然採苗にも成功して、間もなく収穫期を迎える。24年度は作業を軽減する機器を導入して、さらに養殖に取り組む予定という。取り組み開始時に部長を務めた木下祐輔副部長(35)は「海況を改善し、食べられて、収入にもなり『一石三鳥』。3、4月が旬で、3月中旬に終わるマガキと出荷時期が違うため、需要や価格面でも今後期待できるのでは」と話している。

*1-2-6:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/1208602 (佐賀新聞 2024/3/13) 農業基本法改正 有事対応と活性化同時に
 国際紛争の激化や気候変動などに対応する新たな農業政策を展開するため、政府は農政の在り方を示す食料・農業・農村基本法の改正案を閣議決定した。今国会で成立させ、食料供給システムの強化を図りたい考えだ。1999年の同法施行から実に25年になり、この間、国内外の情勢は大きく変化した。時代にふさわしい内容にするのは当然だ。打ち出した基本理念は「食料安全保障」。具体的には「良質な食料が合理的な価格で安定的に供給され、かつ国民一人一人がこれを入手できる状態」と定義した。有事に対応した備えは重要だ。だが足元を見ると、担い手の減少や高齢化の進展、農地の減少などによって日本農業の足腰が弱っていることは明白だ。ここを修復しない限り、どんな理念を掲げても内容を伴うことは難しいのではないか。農業が魅力ある産業となり、若者や都市在住者らの新規就農が促されなければならない。ITの活用によるスマート農業の進展や農地のさらなる集約、輸出環境の整備などによって現場を活性化させ、生産基盤の一層の強化に取り組むことが不可欠だ。これまでも取り組んできたが、今回の改正を機に改めてその重要性を認識し、取り組みを加速させたい。政府は今回の農政転換の背景として、地球温暖化の進行や、物流の途絶などを挙げ、食料供給量が大幅に不足するリスクが増大していると指摘した。確かにウクライナ危機による穀物相場の高騰や中東情勢の緊迫化による海運の混乱は、海外依存度が高い日本のアキレス腱(けん)をまざまざと見せつけた。日本のカロリーベースの食料自給率は38%で先進国の中で最低だ。専門家の間では相対的な経済力の低下などが影響し、世界市場での食料買い付け力が落ちてきたとの指摘もある。政府は基本法改正に併せて、食料安保政策を具体的に進める食料供給困難事態対策法案と農地法改正案も決定。困難事態対策法案は、気候変動に伴う穀物類などの主要産地の生産不安定化などを想定し、深刻度に合わせ、農業者への生産拡大要請など3段階の対応を規定した。国民が最低限必要とする食料が不足する恐れがある場合は、生産転換や割り当て・配給を実施し、実効性を担保するために違反や拒否には罰則も設けた。極端な例としては、花卉(かき)類を生産している農家に、イモなどカロリーの高い農作物を栽培するように強制するケースも想定できる。こうした対応を取らざるを得ないような状況は緊急事態だろうが、私権を制限することになるだけに、必要性や具体的な内容を丁寧に説明しなければならない。なぜここまでの想定をしなければならないのか、国会で十分に議論を尽くしてほしい。日本農業は潜在力を十分に発揮できているだろうか。稲作は国内需要を上回る供給力を持ちながら、減産で価格を下支えしてきた。食料供給の大幅不足が懸念されるというのなら、コメ生産能力のフル活用も考えたい。国内市場は縮小しているが、国内で消費できない分は輸出に回し、いざというときは国内に戻す構想は検討に値するのではないか。まずは日本米のさらなる海外市場開拓に官民の知恵を絞りたい。

*1-2-7:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/1210513 (佐賀新聞 2024/3/16) 魚の養殖×野菜栽培、新たな農業模索 水を循環、CO2も活用 熊谷組が佐賀市で実証事業
 佐賀市は、市清掃工場(高木瀬町)周辺で、ゼネコンの熊谷組(本社・東京)が実証事業を始めると明らかにした。清掃工場から出る二酸化炭素(CO2)を活用しながら、魚の養殖と野菜の水耕栽培を組み合わせた新しい農業「アクアポニックス」の事業化を目指す。アクアポニックスは、魚の養殖と植物の栽培を組み合わせた循環型農業。魚を養殖した水を、水耕栽培で再利用し、溶け込んでいる窒素やリンを植物が養分として吸収する。水は再び、養殖で使用するため水槽に戻す。化学肥料をやったり、土を耕したりする必要もなく、資源循環型のシステムとして注目を集めている。市バイオマス産業推進課によると、同社は既に佐賀市などから2人を雇用。4月下旬からマスを2千匹規模で養殖し、約40平方メートルの水耕ベッドで葉物野菜を育てる。CO2を活用することで脱炭素社会への取り組みを強化しながら、野菜の生育促進に役立てる。実証事業は6人体制で、少なくとも3年間実施する。量や質の確保、他社との差別化、販売ルートの確保などの観点で検証する。市は「資源循環の取り組みとして互いに共感することが多く、佐賀市のフィールドを選んでいただいたと感じている」と話す。

*1-2-8:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/1205171 (佐賀新聞 2024/3/7) 爆発的繁殖力の外来水生生物 佐賀市、除去作業に苦慮 5年間で対策費倍増、農業被害も
 爆発的な繁殖力で農業被害などをもたらす特定外来生物で水生植物の「ナガエツルノゲイトウ」や「ブラジルチドメグサ」が、佐賀市内のクリークや河川で繁茂を続けている。水位を調整する樋門や排水ポンプなどの機能に支障が出かねず、市は水面や根から除去し続けているが抜本的な解決策はない。対策費は2022年度に7154万円と、この5年間で倍増。一度除去しても残った部分から再生する力があり、堂々巡りの状況に市は苦慮している。ナガエツルノゲイトウは南米原産の多年生の浮遊植物で、長く折れやすい茎を持っている。河川やクリークに群生し、茎の切れ端からでも再生、繁殖するほか、長期間の乾燥にも耐える。一度農地に侵入すれば、農地を覆い、農作物の収量や品質、作業効率の低下を招く恐れもある。市内では2010年に初めて確認された。ブラジルチドメグサは15年に初確認。南米産の多年生の浮遊植物で扁平(へんぺい)な葉が特徴で、ナガエツルノゲイトウ以上に生育が速い。生育面積は把握できる農業用水路だけでも約10万平方メートルに拡大。ブラジルチドメグサが本年度初めて高木瀬地区で確認されるなど、まちなかにも広がっている。市農村環境課には農家から「ポンプの周りに繁茂し、支障が出ている」との相談が寄せられている。市は重機や人力で除去を行ったり、繁茂の激しい地区では、水路ののり面にコンクリートを張り付けたりと対策を行っている。一見、きれいに片付いたと思っていても、翌年にはびっしり繁茂したケースも。繁殖力の強さが、担当者を悩ませる。対策費も膨らんでいる。事業費(決算額)は、18年度の3540万円が22年度は7154万円と倍以上になった。市幹部の一人は「小中学校の給食費値上げ分を補助する費用を上回る額」とし、厳しい財政状況の中で対策事業が大きな負担となっていると指摘する。除去の相談が増えるのは例年、春先から。市は地元の協力も広げていこうと、「切れ端を回収する」「根から取り除く」といった市民への周知も始めた。市環境政策課は「繁茂が小規模な段階で、効果的に除去できるよう考えていきたい」とする。

*1-2-9:https://www.asahi.com/articles/ASS316T7WS29OXIE058.html (朝日新聞 2024年3月3日) 首都の「下水」が化学肥料に 東京都、全国普及へ国やJA全農と連携
 化学肥料の原料価格が高騰し、国内農業に影を落としている。ほぼ全量を輸入に頼っている現状から抜け出そうと動き出した実験の現場は、農業に縁遠そうな東京。国と東京都は、巨大都市から大量に出る「下水」に目を付けた。農林水産省によると、化学肥料の主な原料となるリンを含むリン鉱石が国内では産出されないため、中国やモロッコなどからリン酸アンモニウムなどの形で必要量のほぼ全てを輸入している。しかし、ウクライナ危機や世界的な穀物需要の増加を受け、2022年に国際価格が急騰した。財務省貿易統計によると、リン酸アンモニウムの輸入価格は、同年7月には前年同時期の2・4倍に。23年以降、いったん下落したが、なお不安定な状況が続く。安定確保策として国が目を付けたのが、東京の「下水汚泥」だった。
*国と東京都は、下水汚泥から化学肥料の原料を取り出す実証実験を始めました。記事では、東京都が民間と共同開発した独自技術や、JAと組んで目指す全国普及について紹介します。

*1-3-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20240225&ng=DGKKZO78735540U4A220C2TYC000 (日経新聞 2024.2.25) <サイエンスNextViews>危ういテクノロジー頼み 廃炉・温暖化、現実直視を 編集委員 矢野寿彦
 原子炉3基が立て続けに炉心溶融(メルトダウン)した2011年の東京電力福島第1原子力発電所の事故。今も脳裏に焼き付く1枚の画がある。2号機取水口付近のピット(作業用の穴)から高濃度汚染水がじゃばじゃばと海へ流れ出る様子を伝えていた。おがくずや新聞紙、おむつに使われる吸水性ポリマーなどが大量に投入されるが、なかなか止水できない。流れる経路を調べるために使ったのは乳白色の入浴剤。あまりの「ローテク」な対応にあぜんとした。放射能の脅威を前に日本が誇ってきたはずの土木技術やロボット技術は敗北した。有事にはまったく使い物にならなかった。原子力ムラが築いた「安全神話」はもってのほかだが、この技術レベルでは安全神話なくして地震国での原発推進は難しかったともいえる。あれからまもなく13年。東電は24年1月末、23年度内に予定していた福島第1原発のデブリ(溶け落ちた核燃料)取り出し開始を三たび延期すると発表した。原子炉への貫通部が堆積物で埋め尽くされており、現状では英社と開発中のロボットアームが使えないことが判明したという。解せないのは3度目の延期ではない。釣りざお式という別の方法で24年10月ごろに数グラムの試験採取を目指すとしたことだ。過去に炉内調査で実績があるとはいえ、この方式は本格的な採取に移行できた場合に使うことを想定していないという。工程表にある「デブリ採取に着手」ありきと批判されても仕方ないだろう。1~3号機には推計880トンものデブリがあるという。どこにどのような状態で存在するかもわかっていない。すべてを取り出すことが技術的に可能なのか。無理だとしたら廃炉の「最終形」をどうするか。根幹に関わる議論が一向に進まないまま、多額のお金を投じて「全量取り出す」を前提に技術開発が進む。「地球沸騰」なる言葉がしっくりくるほど深刻化する気候変動の対策において、テクノロジーの進化で困難は乗り越えられると楽観するのも危うい。ここ数年、世界的な核融合フィーバーだが、発電に向けて技術は進化したのだろうか。それほどのブレークスルーは見当たらない。20年ほど前、日本とフランスが繰り広げた国際熱核融合実験炉(ITER)の誘致合戦を取材した。その際、核融合の世界にはこんなジョークがあることを知った。「あと50年、あと50年と言われ続けて50年」。太陽が膨大なエネルギーを生み出す核融合反応を地上で再現し安定的に発電するのは、永遠に「夢の技術」というわけだ。テクノロジーには原罪のように未知なる災禍の種子が蓄積されており、不可避的に突如はじける。仏思想家のポール・ヴィリリオ氏は著書「アクシデント 事故と文明」で技術文明が事故を発明する、と説いた。技術がもたらした危機は技術の力によって克服できる。こうしたテクノロジーの万能性への信仰は、廃炉にしろ温暖化対策にしろ、リスク回避の本質から目を背けていることになる。

*1-3-2:https://digital.asahi.com/articles/DA3S15880553.html (朝日新聞 2024年3月7日) (東日本大震災13年)原発 処理水、安全どう保つ
 東京電力福島第一原発では処理水の海洋放出が始まり、敷地内のタンクが増え続ける状況が変化した。だが廃炉作業は足踏みが続き、終わりは見えないままだ。
■放出作業、完了まで約30年 専門家「外部のクロスチェック必要」
 処理水の海洋放出は、昨年8月24日に始まった。初年度の2023年度は、敷地内で保管しているタンクの水3万1200トンを4回に分けて放出する計画。24年度は、7回にわけて約5万4600トン分を流す。処理水は、汚染水を多核種除去設備(ALPS〈アルプス〉)に通し、大半の放射性物質を取り除いた後、トリチウムの濃度を1リットルあたり1500ベクレル(国の放出基準の40分の1)未満となるよう海水で希釈したもの。海底トンネルを介して沖合約1キロにある放水口から海に流す。処理水として放出するには、含まれる放射性物質が基準未満であることを確認する必要がある。ALPSではトリチウムを除去できないため、東電はまず、ALPSに通した後の水を分析し、トリチウム以外の29の放射性物質の濃度が放出基準を下回っているか確認する。さらに海水で希釈してトリチウムの濃度を薄める。放出直前の分析では、トリチウム濃度が基準未満かを確認。この水を蒸留させるなどして測定の邪魔になる不純物を取り除いた後、放射線を受けると発光する試薬を使い、光量から濃度を換算するという。第三者による分析は、日本原子力研究開発機構(JAEA)が担う。放出後も、東電や国、福島県が周囲の海水のモニタリングをする。東電は、トリチウム濃度が放水口近くで1リットルあたり700ベクレル、沖合10キロ四方で同30ベクレルを超えると放出を止めることにしている。これまでの分析結果は同22ベクレルが最大値で、すべて下回っている。海産物については、水産庁が放水口の南北数キロに設置した刺し網で捕獲したヒラメなどのトリチウム濃度を測定している。これまで、放出を停止するような異常な値は確認されていない。福島第一原発周辺の放射線測定を続けている小豆川勝見・東京大助教(環境分析化学)は、放出開始後の昨年10月に沿岸の海水や魚について、トリチウムを含む複数の核種の測定をして、異常値は検出されなかったという。「処理水の放出は1、2年で終わることではなく、これから何十年と続く。いつまで緊張感を維持して作業を続けていけるかが課題。外部の専門家などによるクロスチェックが必要ではないか」と話す。東電によると、処理水の放出は30年ほど続く見込み。年間22兆ベクレルを上限に、廃炉完了の目標時期とする51年までに終えるよう放出のシミュレーションを示している。今も福島第一原発には、汚染水をALPSに通した後の水を保管するタンクが1千基以上ある。処理水の放出によって保管する水の量が減り始めたとはいえ、溶け落ちた核燃料(燃料デブリ)を冷やす水に地下水や雨水が加わることで汚染水は発生し続けている。汚染水対策はこれからも続く。
■停滞する廃炉、見通し立たず 燃料デブリ取り出し、3回延期
 今年度の廃炉作業では、汚染配管の撤去などは進んだものの、原子炉建屋の内部について大きな進展はなかった。作業の延期もあり、先行きはまだまだ見通せない。最も難航しているのは、廃炉作業の「本丸」といわれる溶け落ちた核燃料(燃料デブリ)の取り出しだ。1~3号機で計約880トンあると推計されているが、事故から13年が経とうとしている今も、1グラムも取り出せていない。まず2号機で数グラム程度の試験的な取り出しを始める予定だが、東電は今年1月、今年度中の着手を断念すると発表した。デブリを取り出すロボットアームの動作精度不足などが理由で、延期は3回目。当初は2021年の予定だった。改良に時間がかかることから、今年10月までに「釣りざお式装置」を使って取り出しをはじめる方針に切り替えた。ただ、釣りざお式で採取できるのは限られた範囲だけで、大規模な取り出しには役に立たない。ロボットアームを使った取り出しも24年度末までに着手するとしているが、不透明だ。本格的なデブリの取り出しについては、使用済み燃料の移動が済んでいる3号機から始める計画。廃炉のための研究や技術開発、助言をする原子力損害賠償・廃炉等支援機構(NDF)が工法を検討している。NDFはこれまで、現状のままデブリ取り出し作業を進める「気中工法」と、原子炉建屋全体を鋼鉄の構造物で囲って建屋ごと水没させてから取り出す「冠水工法」を検討していたが、コンクリートなどの「充填(じゅうてん)材」を流し込み、固めてから掘削装置を使って削り出す「充填固化工法」を新たに検討するという。専門家でつくる小委員会が、三つの案の実現可能性などを整理した提言を近くまとめる予定だ。1号機については、使用済み燃料の取り出しに向け、建屋全体を覆う大型カバー設置の準備を進めているが、設置完了目標は23年度中から25年夏ごろに延期された。1号機では、原子炉圧力容器を支える台座の下部が全周にわたってコンクリートが失われ、鉄筋がむき出しになっていることが判明している。東電は、耐震性は保たれており、仮に原子炉圧力容器が沈み、格納容器に穴が開いたとしても敷地境界での被曝(ひばく)線量は「極めて軽微」と評価する。ただ、時間とともに老朽化が進むため、楽観はできない。

*1-3-3:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/1205783 (佐賀新聞 2024/3/8) 福島原発事故13年 原発のリスク再認識を
 いまだに被災者に大きな影響を与え続けている東京電力第1原発事故から13年になる。この間に大きく動いた世界のエネルギーを取り巻く状況を見つめ、原発が抱えるリスクを改めて心に刻む日としたい。目指すべきは、高コスト、高リスクの大規模集中型電源から、しなやかで低コストの再生可能エネルギーを主とする分散型システムへの転換だ。この間のエネルギーを巡る動きを特徴付けるものの一つは化石燃料依存のリスクが鮮明になったことだ。石炭などからの二酸化炭素(CO2)がもたらす気候危機は「地球沸騰時代」と言われるまでに深刻化した。ロシアのウクライナ侵攻の影響で化石燃料価格は急騰、エネルギー関連の輸入額は三十数兆円に上り、多くの企業や市民が高騰の影響を受けている。一刻も早い脱炭素電源の実現が求められる。もう一つの特徴は急速に価格が低下している太陽光や風力発電の急拡大と発電コストや建設費の増大が招いた原子力発電の停滞だ。国際シンクタンクの調査によれば、原発の電力が世界の総発電量に占める比率は1996年の17・5%をピークに減少傾向が続き、2022年には9・2%で過去40年間で最低だった。多くの国が低コスト、低リスクで、導入までの時間が短い再生可能エネルギーを増やし、変動する電源を安定的に利用する技術や政策の実現を急いでいるのは当然だ。だが、自公政権のエネルギー政策はこの流れに逆行してきた。岸田文雄首相は気候変動対策としての原発推進を打ち出した。だが、気候危機対策では短期間に大幅なCO2排出削減が求められ、「今後10年が気候危機の将来を左右する」といわれる。新設はもちろん再稼働にも長期間を要する原発を重視する気候危機対策は非合理的だ。1基で100万キロワットを超える大規模な電源が自然災害によって一瞬にして失われることの影響の大きさを原発事故は教えた。能登半島地震で北陸電力志賀原発の再稼働の見通しがまったく立たなくなったことからも、原発が電力の安定供給に貢献するとの言説も疑わしい。日本政府や電力会社は、水素やアンモニアを利用して「CO2を出さない火力」を目指すことに注力している。だが、高コストで技術的課題が山積するこの手法が有効な気候変動対策となり得ないと指摘されている。限られた資金や人材の多くを原発や不確実な将来の新技術に投じたため、日本国内の再エネ市場は、他国に比べて大きく見劣りする結果となった。今になって大規模な洋上風力発電の開発を進めようにも、風車は輸入に頼るほかない状況で、小さな日本の市場が海外の投資家や企業から見向きもされなくなる懸念が示されている。政府は間もなく、エネルギー基本計画の見直しに着手する。世界の主流から後れを取った日本のエネルギー政策を根本から見直し、大転換を実現する最後のチャンスと言えるかもしれない。そのためには、経済産業省が指名した委員による委員会で、役所のシナリオに沿って政策を決めるという非民主的な手法を見直し、科学とデータに基づき、多くの市民や専門家の意見を聞きながら民主的な政策議論を進める「政策決定手法の大転換」も重要だ。

*1-3-4:https://www.tokyo-np.co.jp/article/317278 (東京新聞 2024年3月25日) 志賀原発の敷地が平均4センチ沈んでいた 能登半島地震で 北陸電力は「影響はない」と説明
 北陸電力は25日、能登半島地震後に志賀原発(石川県志賀町)の敷地内を測量した結果、地震前と比べ平均4センチの沈下を確認したと発表した。北陸電はオンラインの記者会見で「変動は小さく(安全確保に)影響はない」と説明した。
◆隆起した地点はなかった
 北陸電によると、測量した11カ所の沈下幅は4.74センチ~3.82センチで、隆起した地点はなかった。原子炉を冷却する海水の取水口に近い物揚げ場は3.96センチの沈下だった。また、敷地全体が西南西方向に平均12センチ動いていた。敷地内の地面に生じた段差や割れを約80カ所で確認。ほとんどが土を盛ったり埋め戻したりした場所で発生していた。担当者は「舗装が変形したためで、敷地内の断層が動いた形跡はない」と話した。能登半島地震では半島北側の沿岸一帯が隆起し、輪島市西部では最大4メートルに上った。地元住民によると、志賀原発から1キロほど北の岩ノリの漁場が数十センチ隆起したという。志賀2号機は新規制基準への適合性の審査中。北陸電の申請内容では、地震で原発北側の輪島市付近の断層が動いた場合、20センチ以下の隆起が起きると想定し、その場合でも冷却水の取水に影響は出ないと主張している。

*1-3-5:https://www.tokyo-np.co.jp/article/307026 (東京新聞 2024年2月3日) 断層上にある志賀原発は「次の地震」に耐えられるか 能登半島地震で高まった巨大地震発生リスク
 マグニチュード(M)7.6を記録し、200人余が犠牲となった能登半島地震。発生から1カ月たつ中、拭い去れない危惧がある。次なる地震だ。先月、半島北側の断層が大きく動いた影響で、周辺の断層も動く可能性があると指摘されている。懸念が強まるのが北陸電力志賀原発(石川県志賀町)。立地する半島西側は活断層が少なからず存在する。現状にどう向き合うべきか。
◆震度5強以上の発生確率「平常時の60倍」
「いずれ志賀原発の近くでも大きな地震が来るんじゃないか」。能登半島の東端に位置し、先月の地震で甚大な被害が生じた珠洲市の元市議、北野進氏はそう語る。この3年ほど、能登半島は群発地震が活発化した。地震の規模が少しずつ大きくなっていたところに今回の大地震に見舞われた。そんな経緯がある中、志賀原発差し止め訴訟の原告団長も務める北野氏は「次の地震」に気をもむ。先の地震から1カ月を過ぎ、余震の数は減った。ただ気象庁は1月末に「今後2〜3週間程度、最大震度5強程度以上の地震に注意を」と呼びかけ、その発生確率は「平常時の60倍程度」と付け加えた。
◆周囲100キロ以内で「地震活動は活発に」
 研究者らも懸念を示す。先の地震は能登半島の北側で東西約150キロにわたって断層が活動したとされる。東北大の遠田晋次教授(地震地質学)が周辺の断層に与えた影響を計算したところ、今回動いたエリアの両脇、具体的には能登半島東側の新潟・佐渡沖、半島西側の志賀町沖の断層で今後、地震が発生しやすくなったという結果が出た。遠田氏は「佐渡島周辺や志賀町沖などで体に感じないほどの小さな地震が増えている。何らかのひずみが加わったサインだ」と解説する。「今後の地震の発生時期や規模は分からないが、陸地を含めて周囲100キロ以内の地震活動は活発になっており、しばらく警戒が必要だ」と説く。
◆「流体」今回の地震のトリガーに?
 「流体」の存在も気にかかるところだ。能登半島で起きた近年の群発地震は、地下深くから上昇した水などの流体が原因とされる。断層帯にある岩盤の隙間に流体が入り込み、潤滑油のように作用することで断層がずれやすくなったと考えられてきた。「流体が今回の地震のトリガーとなった可能性がある」と話すのは金沢大の平松良浩教授(地震学)。
今後も流体が断層活動を引き起こすのか。
◆「地震を起こしやすくする力がかかった」
 平松氏は「現時点では分からない」との見方を示す一方でこう続ける。「今回の地震によって、能登半島の西側を含め、北陸一帯の多くの断層帯に地震を起こしやすくする力がかかったことが分かっている。マグニチュードで7クラスの大地震発生のリスクは相対的に高くなった」。次なる地震で心配なのが志賀原発だ。立地するのは能登半島の西側。地震が起きやすくなったとも。原発の周辺は、活動性が否定できない断層が少なくない。北陸電の資料を見ると、原発の10キロ圏に限っても陸に福浦断層、沿岸地域に富来(とぎ)川南岸断層、海に兜岩沖断層や碁盤島沖断層がある。次なる地震に原発は耐えられるか。北陸電の広報担当者は、地震の揺れの強さを示す加速度(ガル)を持ち出し「原子炉建屋は基準地震動600ガルまで耐えられ、今回の地震による地盤の揺れは600ガルよりも小さかった。さらに2号機については1000ガルまで耐えられると新規制基準の審査に申請している。原子力施設の耐震安全性に問題はない」と話す。
◆「想定を超えた」北陸電の言い分
 北陸電の言い分はうのみにしづらい。そう思わせる過去があるからだ。同社が能登半島北側の沿岸部で想定してきた断層活動は96キロの区間。だが先の地震では、政府の地震調査委員会が震源の断層について「長さ150キロ程度と考えられる」と評価した。なぜ想定を超えるのか。「海底の断層を調査する音波探査は、大型の船が必要。海底が浅い沿岸部は、調査の精度が落ちる。近年は機器が改良され、小型化されたが、特に日本海側は調査が行き届いていない」
◆現行の技術水準では全容捉えがたく
 こう指摘するのは新潟大の立石雅昭名誉教授(地質学)。陸の断層も「地表に見える断層が数キロ離れていても、地下で一つにつながっているかもしれない」。現行の技術水準では捉えがたい活断層の全容。それだけに安心もできない。志賀原発周辺で注目すべき一つは、北に約10キロの距離にある富来川南岸断層。この断層の全容は見方が割れる。北陸電の資料では陸域を中心に長さ9キロと書かれる一方、研究者からは、海まで延びる可能性を指摘する声が上がってきた。脅威の程度が捉えづらいこの断層。再評価を求めるのが名古屋大の鈴木康弘教授(変動地形学)だ。
◆地表のずれとたわみ、志賀町内に点在
 先の地震後に志賀町内を調べ、富来川南岸断層とみられる地表のずれやたわみが点在しているのを確認した。「1970年代から推定されていたが、今回の痕跡でより確度が高まった」。鈴木氏は「今後の活動が必ずしも迫っているとは思わない」と慎重な見方を示しつつ、「先の地震では、能登半島北西部の沿岸の断層がどのような動きをしたのかは分かっていない。今までの知見に頼らず、断層の評価を検討し直す必要がある」と語る。志賀原発の近くにあり、多大な影響を及ぼしかねない富来川南岸断層。同様に再検証が必要なのが、原発の西4キロの海域で南北に延びる兜岩沖断層という。北陸電の資料によれば、「活動性が否定できない」とされ、長さは4キロとある。
◆「計算するまでもなく原発はもたない」地盤がズレたら…
 鈴木氏は「本当にこの長さか。今回の地震で、沖合に長い断層があることで隆起が起きることが改めてわかった。原発付近も海岸に同様の隆起地形があることから、長い断層がないと説明できない」と訴える。原発に及ぶ地震の脅威でいえば、揺れ以外にも思いを巡らせる必要がある。地盤のズレもだ。元東芝原発設計技術者の後藤政志氏は「メートル単位で上下や水平方向にズレが生じたら、計算するまでもなく原発はもたない」と指摘する。原発は、揺れの大きさに対して耐震設計基準が示されている一方、地盤のズレなどにより「原子炉建屋が傾いたり、損壊したりすれば壊滅的な被害となる」。配管にズレが生じると取水できず、核燃料を冷却できなくなる可能性もある。
◆手放しで安心できぬ規制委の判断
 志賀原発は2012年、直下に断層があり、これが動いて地盤のズレが生じうると指摘された。原子力規制委員会は昨年、直下断層の活動性を否定する北陸電の主張を妥当と判断した。ただ、手放しで安心できるかといえば、そうではないと後藤氏は説く。「周囲の断層が起こす地震によって、直下断層の動きが誘発される恐れもある」。地震リスクの懸念が拭い去れない志賀原発。いま、何をすべきか。龍谷大の大島堅一教授(環境経済学)は「原発が止まっているとはいえ、核燃料がプールで保管されている。金属製のキャスクに移すなどの対策が必要ではないか」と述べ、災いの元凶になりうる核燃料の扱い方について早急に議論するよう求める。地震リスクは他の原発にも潜むとし「現状で動いている原発も止めた上で断層の再評価など規制基準の見直しが必要だ」と訴える。
◆デスクメモ
 被災した方々を考えると、次の地震が起こらないよう願うばかり。ただ核燃料は、まだ志賀原発に。プールは揺れやズレに耐えられるか。搬出すべきか。それは可能か。事が起きた時、被災地に残る方々が避難できるのか。願うばかりでは心もとない。どう備えるかの議論も必要では。

*1-3-6:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/1206413 (佐賀新聞 2024/3/8) 玄海原発3、4号機 基準津波を修正へ 九州電力が政府の調査結果を反映
 九州電力は8日、原子力規制庁との会合で、玄海原発3、4号機(東松浦郡玄海町)の基準津波を修正する方針を明らかにした。政府の地震調査研究推進本部(地震本部)が2022年に公表した日本海南西部の海域活断層長期評価を踏まえて検討した結果、想定される津波が既存値を上回ることが分かったという。7月をめどに原子炉設置変更許可を申請する見通し。地震本部が公表した日本海南西部の海域活断層長期評価では、九電が玄海原発3、4号機の再稼働に当たって検討したものとは異なる断層の評価が指摘されている。このうち、対馬南西沖断層群と第1五島堆断層帯が連動したケースでは、想定される津波の高さが6・37メートル、低さはマイナス2・65メートルとなり、現行の基準津波(高さ3・93メートル、低さマイナス2・6メートル)をいずれも超える値となった。一方、基準地震動への影響はないという。今後は、基準津波の修正に関する原子炉設置変更許可を申請するが、玄海原発の敷地の高さは約11メートルであることや、取水位置などの低さ(マイナス13・5メートル)も想定される津波に対して余裕があることから、現時点で設備面での変更や追加工事は発生しない見通しだという。

*1-3-7:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/1206983 (佐賀新聞 2024/3/10) <佐賀県内首長原発アンケート>玄海原発運転継続、15市町長「条件付き賛成」 最終処分場は全員「受け入れず」
 佐賀新聞社が佐賀県内の知事と市町の首長を対象に実施した原子力政策に関するアンケートで、玄海原発(玄海町)の運転継続について15市町長が「条件付きで賛成」と回答した。反対はゼロだった。原発の今後に在り方に関し、「将来的に廃止」としたのは16市町長だった。原発から出る高レベル放射性廃棄物の最終処分場は全員が受け入れない考えを示した。玄海原発の立地町の脇山伸太郎玄海町長は、運転継続に唯一「賛成」と回答した。「国のエネルギー基本計画にのっとって、エネルギーミックスによる原発の割合を維持していくべき」という認識を示した。山口祥義知事は賛否の選択肢は選ばなかった。「原発への依存度を可能な限り低減し、再生可能エネルギーの導入を進める取り組みを積極的に行うべき」としつつ「一定程度、原発に頼らざるを得ない現時点においては、県民の安全を何よりも大切に、玄海原発と真摯(しんし)に向き合い続けていく」と回答した。「条件付き賛成」を選んだ首長は、その条件として「電力事業者、国の責任で安全性を追求し、可能な限り情報公開に努めてもらうこと」(村上大祐嬉野市長)、「使用済み核燃料の処理方法について国の責任で対策を講じること」(江里口秀次小城市長)などを挙げた。「どちらともいえない」とした深浦弘信伊万里市長は「事故が発生すれば取り返しがつかないことになるため基本的に反対の立場だが、電力は企業活動や市民生活を支える基礎的なインフラで安定的な供給は不可欠であり、原発を止められない現実がある」との認識を示した。原発の今後で「将来的に廃止」を選択した首長からは、「カーボンニュートラルの実現に向けて取り組む」(向門慶人鳥栖市長)、「再生可能エネルギーの導入を進めて原子力への依存度を下げていく」(松尾佳昭有田町長)などの見解が示された。原子力政策全般の課題に関し、岡毅みやき町長は能登半島地震を踏まえて「南海トラフ地震を含めた対策を一から見直すことも重要課題。代替エネルギーの研究も加速させるべき」と回答した。「住民の不安払拭(ふっしょく)のためにより一層の情報公開」(松田一也基山町長)「住民や近隣市町に課題を丁寧に説明し、安心して生活を送れるように努めてほしい」(永淵孝幸太良町長)といった注文もあった。アンケートは、官製談合事件で内川修治市長が逮捕、起訴されて不在の神埼市を除く20首長が回答した。

*1-3-8:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/1206979 (佐賀新聞 2024/3/10) <佐賀県内首長原発アンケート>7市町長、玄海原発の避難計画見直し「必要」 能登半島地震で課題浮上
 東京電力福島第1原発事故から13年になるのに合わせ、佐賀新聞社は佐賀県の山口祥義知事と各市町の首長に、九州電力玄海原発(玄海町)の在り方や原子力政策に関するアンケートを実施した。元日の能登半島地震を受けて原発の重大事故時の避難ルートなどが課題に挙がる中、7市町長が現行の避難計画を「見直す必要がある」と回答した。他の自治体の首長も、見直しの動きを注視している姿勢がうかがえた。アンケートには首長20人が回答した。官製談合事件で内川修治市長が逮捕、起訴された神埼市は、市長不在として無回答だった。能登半島地震では北陸電力志賀原発(石川県志賀町)の周辺で道路の寸断や家屋倒壊などが相次ぎ、避難と屋内退避の実効性が改めて問われた。原子力規制委員会は、住民避難などをまとめた原子力災害対策指針の見直しに着手している。アンケートで避難計画の見直しを「必要」としたのは、多久、武雄、鹿島の3市長と吉野ヶ里、みやき、有田、江北の4町長。横尾俊彦多久市長は「あらゆるリスクや課題を想定し、万全を期した対策を充実することが最重要」、松尾勝利鹿島市長は「避難が現計画で対応できるかなど再検討の必要がある」とした。他の12首長は「その他」を選び、原子力災害対策指針の見直しの動向を踏まえて「(規制委の)今後の議論を注視したい」(坂井英隆佐賀市長)といった意見が多かった。「現行の計画のままでよい」はゼロだった。武広勇平上峰町長は選択しなかった。玄海原発が立地する玄海町の脇山伸太郎町長は「新たな指針などが示された後、検討を加え計画の見直しが必要な場合は修正する」との考えを示した。隣接自治体の峰達郎唐津市長は「必要性に応じ、市民の生命と財産を守るために速やかに対応する」と答えた。山口知事は「(規制委の)議論の結果など、能登半島地震から得られた意見や気付きを検証し、避難計画の実効性を高めていく」と回答した。

<歳出改革の理念2←人口構造と高齢化社会≠高齢者への給付減・負担増>
*2-1-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20240120&ng=DGKKZO77825980Z10C24A1EA1000 (日経新聞 2024.1.20) 公的年金、来年度2.7%増 0.4%分目減り 物価伸びより抑制
 物価や賃金の上昇を受けた2024年度の公的年金額は前年度比で2.7%増額となり、1992年度以来32年ぶりの伸びとなった。年金財政の安定のために支給額を抑える「マクロ経済スライド」により、物価の伸びには届かなかった。同スライドはデフレ下で何度も発動が見送られており、抑制の長期化で将来の給付額が想定より減る懸念が高まっている。厚生労働省が19日、24年度の支給額を発表した。4、5月分をまとめて支給する6月の受け取り分から適用する。自営業者らが入る国民年金は40年間保険料を納めた場合、68歳以下の人は1人当たり1750円増の月6万8000円になる。厚生年金を受け取る夫婦2人のモデル世帯は、6001円増の月23万483円になる。モデル世帯は平均的な収入(賞与を含む月額換算で43万9千円)で40年間働いた夫と専業主婦のケースを指す。年金額は直近1年間の物価変動率と過去3年度分の実質賃金の変動率をもとに、毎年4月に改定する。23年度は厚生年金で月22万4482円、同年度に67歳以下の人の国民年金で月6万6250円だった。支給額は2年連続で増えたが物価や賃金の上昇分に届いていない。物価や賃金の伸びよりも支給額を抑えるマクロスライドの影響で、国民年金は実質年3600円ほど、厚生年金では同1万1500円ほど目減りする。24年度の物価や賃金を反映した改定率は3.1%だった。23年の物価上昇率(3.2%)と20~22年度の名目賃金変動率(3.1%)を考慮し賃金が物価を下回ったため賃金の変動率を採用。そこからマクロスライドによる0.4%分の抑制分を差し引き、最終的な改定率は2.7%となった。公的年金は現役世代から集めた保険料を高齢者に給付する仕組みのため、少子高齢化が進むと年金財政の維持が難しくなる。このためマクロスライドで支給額を抑えている。だが物価や賃金が下落するデフレ下では発動しないルールのため、2004年に導入されてからの20年間で4回しか発動されていない。支給額の抑制が想定より遅れると、マクロスライドを発動させる期間が長期化し、将来の給付水準が過度に低下する。特に基礎年金の抑制は現行のままなら、46年度まで続く見通しだ。この結果、現役男性の平均手取り収入に対する年金額の比率を示す基礎年金の「所得代替率」は、19年度の36.4%から46年度には26.5%と約3割も低下する見通しだ。25年は5年に1回の年金制度改正の年にあたり、24年中に具体的な改革案が示される。厚労省の審議会では財政に余裕のある厚生年金が基礎年金に資金支援して、給付水準の抑制を前倒しで終了する案が出た。就労を促進して高齢者の手取り収入を増やす方向の改正も議論されている。一定の所得のある高齢者の年金支給を減額する在職老齢年金制度も見直しを求める声が強い。老後の収入を充実させるために、個人型確定拠出年金(iDeCo、イデコ)など私的年金の活用促進も重要になる。ニッセイ基礎研究所の中嶋邦夫上席研究員はマクロスライドについて「抑制期間の長期化を防ぐために、賃金や物価の下落局面でも毎年スライドを発動させるための議論が必要だ」と指摘する。

*2-1-2:https://digital.asahi.com/articles/DA3S15842823.html (朝日新聞 2024年1月20日) 公的年金、実質目減り 物価上昇率下回る2.7%増 来年度
 公的年金の2024年度の支給額は、物価や賃金の上昇を反映して23年度より2・7%増えることが19日、決まった。増額は2年連続。ただし、物価上昇率よりは低く、将来世代に向けて今の年金を抑制する措置も2年連続で発動され、実質的な価値は下がる。年金額は毎年度、物価や賃金の変動を反映して、改定される。今回は、名目賃金の上昇率3・1%が、前年の物価上昇率3・2%より低く、賃金の変動幅に応じて改定される。さらに労働者数の減少や高齢化の影響による「マクロ経済スライド」も2年連続で発動されるため、0・4%分を差し引いた2・7%のプラス改定となる。上昇率は1992年度の3・3%に次ぐ高さとなった。支給額は人によって異なるが、自営業者やパート・アルバイトの人らが入る国民年金の月額(40年加入の1人分)だと、前年度より1750円増えて6万8千円。24年度中に69歳以上になる人なら、1758円増えて6万7808円。年額で初めて80万円を超えた。会社員や公務員などの厚生年金では、「平均的な給与で40年間働いた夫と専業主婦の妻の2人分」のモデル世帯で計算すると、前年度より6001円増えて、23万483円になる。本来、年金はインフレで物価が上がっても、買えるものが減らないように給付(支出)を引き上げる必要がある。ただし、年金の「お財布」に入る保険料(収入)は、賃金が上がれば増え、下がれば減る。もし物価上昇が賃金上昇を上回ると、支出が収入を上回り、財政が悪化してしまう。今回の改定では、物価の上昇率(3・2%)と、名目賃金の上昇率(3・1%)を比べ、低い方の賃金を改定率計算に用いた。少子高齢化の日本で、将来世代の年金を確保するには、さらなる措置が必要になる。保険料を払う現役世代は減り続ける一方、年金を受け取る人たちの高齢化が進む。その影響を織り込んで給付を抑える仕組みが「マクロ経済スライド」だ。今回の改定では、この分で0・4%マイナスになる。この仕組みは04年の年金改正で導入されたが、デフレ下では十分に機能せず、今回がようやく5回目の発動となった。

*2-1-3:https://www.nikkei.com/paper/related-article/?R_FLG=1&b=20240120&be=・・=DEA2000 (日経新聞 2023/8/19) 続く物価高、消費に影 生鮮・エネ除く指数4.3%上昇、食品高止まり、宿泊料伸び拡大 賃上げは追いつかず
 物価の上昇圧力が続いている。7月の消費者物価指数は生鮮食品とエネルギーを除く総合指数が前年同月比4.3%上昇し、伸び率は再拡大した。食品や日用品の値上がりは家計を圧迫し、消費は伸び悩む。物価上昇と賃上げの好循環はなお遠く、景気回復の勢いも弱まりかねない。総務省が18日発表した7月の消費者物価指数は、変動の大きい生鮮食品を除く総合指数が前年同月比3.1%上昇した。伸び率は6月の3.3%から縮んだものの、日銀が掲げる2%の物価目標を16カ月連続で上回る。価格が変動しやすい品目をさらに除いた指数をみると、物価上昇はむしろ勢いを増す。生鮮食品とエネルギーを除く総合指数は前年同月比4.3%プラスで、2カ月ぶりに伸びを拡大した。消費者物価は2023年度の後半にかけて鈍化するとの見方もあるが、現時点ではまだピークアウトしたとは言えない状況にある。最大の要因は、全体の6割を占める食料の高止まりだ。7月はハンバーガーが前年同月比で14.0%上昇した。10%超えは13カ月連続。プリンは27.5%プラスで、6月の12.6%から伸び率が拡大した。米欧に遅れた価格転嫁の波が続いている。宿泊料は15.1%プラスと、6月から10ポイントほど伸び率を拡大した。インバウンド(訪日外国人)の回復などによる需要の高まりに、政府の観光支援策「全国旅行支援」が今夏以降に各都道府県で順次終了したことが重なった。ほかのサービスも上昇に弾みがついた。携帯電話通信料は10.2%プラスと統計上さかのぼれる01年以降で過去最高の伸び率となった。NTTドコモが7月から新料金プランを投入したことが背景にある。日銀は7月、23年度の生鮮食品を除く物価上昇率の見通しを2.5%に引き上げた。4月の段階では1.8%とみていた。物価上昇率が11カ月連続で3%を超えて推移するなど、物価高が想定を超えて続いている。SMBC日興証券の宮前耕也氏は「日銀も市場関係者もウクライナ侵攻による輸入物価上昇のインパクトを読み違えた」とみる。過去の物価高局面と異なり「一度ではコストを転嫁しきれず、複数回値上げする動きを読み切れなかった」と説明する。長引く物価高で消費への下押し圧力は強まっている。総務省の家計調査によると、2人以上の世帯の6月の消費支出は実質で前年同月比4.2%減った。マイナスは4カ月連続だ。品目別に見ると、物価上昇の大きな要因となっている食料が3.9%減で、9カ月連続のマイナスとなった。プリンやハンバーガーといった値上げが目立つ品目ほど消費は細っている。6月の実質消費支出はそれぞれ15.4%、13.5%減った。逆に、電気代は燃料価格の低下や政策効果による価格下押しで支出が5.9%増えている。外食は1.8%増とプラスを維持するものの、5月(6.7%増)から伸びを縮めた。サービス消費は新型コロナウイルス禍からの正常化で回復期待が高かったわりには動きが鈍い。勢いを欠く消費は経済成長に水を差す。23年4~6月期の実質国内総生産(GDP)は季節調整済みの前期比年率6.0%増と高い成長率となったものの、けん引役は復調した輸出などの外需だった。個人消費は物価高を受けて前期比0.5%減に沈んだ。23年の春季労使交渉の賃上げ率は30年ぶりの高水準だったとはいえ、物価の伸びには追いついていない。24年以降に賃上げが息切れすれば、家計の購買力の低下を通じて再びデフレ圧力が強まるとの懸念がにじむ。実際、コロナ禍前の19年10~12月期と足元を比較すると、雇用者報酬は実質で3.5%減っている。高止まりする物価に賃金が追いつかず、消費はほとんど伸びていない。日米欧では米国だけが賃金と消費を伸ばす。秋以降は物価上昇が加速する恐れもある。政府が実施しているガソリンや電気・都市ガスの価格抑制策は延長措置がなければ、ともに9月分で終了する予定だ。第一生命経済研究所の新家義貴氏はガソリン価格抑制の補助金事業が終われば、10月以降の生鮮食品を除く消費者物価指数を0.5ポイント押し上げるとみる。総務省は電気・都市ガスの価格抑制策が7月の物価の伸びを1ポイントほど押し下げたと推計する。対策が終われば、単純計算で1.5ポイントの上昇圧力となるリスクがある。高い物価上昇率は金融政策の議論にも影響を与える。日銀は物価の安定には「まだまだ距離がある」(植田和男総裁)とみて、金融緩和を続けている。ただ、物価上昇の勢いがこのまま衰えなければ、現状の金融緩和策の見直しが焦点となる。

*2-1-4:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20240403&ng=DGKKZO79748190S4A400C2EA2000 (日経新聞 2024.4.3) 医療・介護費、40年以降急増 60年度にGDP比6割増、政府が初試算、DXで効率化急務
 内閣府は2日、2060年度までの社会保障費と財政状況の試算を公表した。医療と介護の給付費の国内総生産(GDP)に対する割合は40年度以降に上昇ペースが速まる。社会保障制度を維持するにはデジタル化による効率改善や成長率引き上げなどが急務となる。内閣府によると社会保障と財政に関する60年度までの長期推計をまとめたのは初めて。同日の政府の経済財政諮問会議に資料を提示した。岸田文雄首相は会議で「実質1%を上回る成長により力強い経済を実現するとともに、医療・介護給付費のGDP比の上昇基調に対する改革に取り組む」と強調した。試算結果をみると医療・介護の給付費は65歳以上人口がピークアウトする40年度ごろから増加の勢いが増す。高齢者人口の全体数が減少に転じても、医療や介護の利用が多い85歳以上の人口は継続的に増えるためだ。国立社会保障・人口問題研究所による最も実現性が高いケースの推計では40年の1006万人が60年には2割弱多い1170万人になる。試算は25~60年度までの平均実質成長率について(1)0.2%ほどの現状維持ケース(2)1.2%ほどの長期安定ケース(3)1.7%ほどの成長実現ケース――の3シナリオに分けてまとめた。給付費は現状維持ケースで最も高くなる。医療と介護を合わせた名目GDPに対する割合は60年度に13.3%と19年度より6割上がる。成長実現ケースでも60年度に9.7%と2割弱の増加が避けられない。医療の技術革新が加速すれば給付費は一段と膨らむ。試算では高額医薬品などの登場による医療費の拡大が従来の2倍ペースにあたる年率2%で進む場合、GDP比は現状維持ケースで60年度に16.1%まで高まり、19年度の2倍近くなる。経団連の十倉雅和会長ら諮問会議の民間議員は試算を基に成長率などの数値目標を定め、実現に必要なこの先3年程度の政策パッケージをまとめるよう求めている。社会保障制度の健全性を保つには歳出改革が必須条件となる。内閣府は毎年度の社会保障費を高齢化による伸びの範囲に収め、医療の高度化による増加をカットする改革を実施した場合の姿も示した。この改革を徹底する前提で成長実現ケースにあてはめると、60年度の給付費はGDP比8.2%と19年度と同水準には抑えられる。歳出改革は足元でもおぼつかない状況で、将来も続けられるかは見通せない。政府は23年12月公表の改革工程素案に介護保険サービスを利用する際の2割負担の対象者を24年度に拡大すると盛ったものの、与党からの反対などを受けて見送った。政府は社会保障の歳出改革を通じて少子化対策による実質的な負担増は回避すると主張する。介護負担拡大の先送りのような事例が続けば実現は遠のく。現役世代の負担が重いままでは結婚や出産をためらわせる要因にもなりえる。歳出抑制につながる施策の一つはデジタルトランスフォーメーション(DX)による医療・介護サービスの効率化だ。マイナンバー保険証での受診を促して投薬情報を共有しやすい体制をつくることなどが挙げられる。社会保障費の削減につながる民間投資の後押しも欠かせない。介助ロボットや認知症予防策などが普及すれば長期的な介護費抑制につながる。内閣府は成長実現ケースを達成すれば1人当たりの実質GDPは60年に9.4万ドルと米国や北欧に肩を並べられるとの試算も示した。逆に現状維持ケースでは6.2万ドルと先進国で最低水準に落ち込む。社会保障改革は日本の豊かさを左右する。試算の前提には甘さも見える。成長実現ケースは合計特殊出生率が1.8程度まで回復し、企業の技術進歩や労働者の能力向上などを示す「全要素生産性(TFP)」がバブル期並みの1.4%の上昇を続けるという条件ではじき出した。出生率が1.8を上回っていたのは1984年が最後だ。2022年は1.26と17年ぶりの低水準まで落ち込んだ。TFPは内閣府の推計で13年度以降、一度も1%に達していない。11月の米大統領選でトランプ前大統領が再選すれば対中関税の引き上げなど保護主義的な政策が広がって目先の成長率も落ち込みかねない。実効性のある社会保障改革につなげるには試算の妥当性を点検する作業も必要になる。

*2-1-5:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20240403&ng=DGKKZO79743040S4A400C2TB1000 (日経新聞 2024.4.3) 〈TODAY〉ラピダス、AI半導体注力、「後工程」に補助金535億円 素材・装置と連携
 最先端半導体の量産を目指すラピダスは、人工知能(AI)半導体向けに次世代の「後工程」技術を開発する。複数の異なる機能を持つチップを集約し、性能を高める。経済産業省がラピダスの後工程の技術開発に535億円を補助する。国内の装置メーカーや素材メーカーとも連携し、官民で半導体の技術開発を進める。組み立て作業である後工程の技術開発では、日本が競争力を持つ素材や製造装置の技術が不可欠だ。台湾積体電路製造(TSMC)などに回路の微細化では先行されるが、後工程の分野でリードできれば国内半導体産業の底上げにつながる。小池淳義社長は2日に開いた記者会見で「日本には優れた装置や素材メーカーがあるが、(研究開発の)出口となる半導体メーカーがなかった。力を合わせて日本から世界に貢献できる半導体をつくりたい」と語った。経産省は同日、2024年度にラピダスに対し最大5900億円を支援すると発表した。ラピダスは25年4月に試作ラインを稼働させ、27年から線幅2ナノ(ナノは10億分の1)メートルの最先端半導体を量産する計画だ。国の支援は回路をつくるための「前工程」向けが中心だったが、今回、後工程を初めて支援する。半導体はこれまで回路線幅を微細化して性能を高めてきたが、コストや物理的な課題から限界に近づいている。ラピダスは機能の異なる複数のチップを1つの基板に集積する「チップレット」などの技術開発を進める。小池社長は「コスト低減と性能向上の2つを実現できる」と話す。ラピダスが後工程に注力する背景には、AI向けの半導体の需要拡大がある。AI向け半導体には演算や記憶といった機能が求められる。複数の半導体を1つの基板に収めることができれば、効率よく相互に連動させられる。必要な機能を担うチップを入れ替えるだけで性能を高められる。同社はドイツの研究機関、フラウンホーファー研究機構と連携し、ウエハーの研磨技術やチップの接合、素材開発などの要素技術を取り込む。省電力素材に優れる国内の素材メーカーや装置メーカーとも連携する。試作品開発ではラピダス工場に隣接するセイコーエプソンの小型液晶パネルの製造拠点を活用する。後工程分野は台湾や韓国メーカーも注力している。TSMCは独自技術を使って、米エヌビディアのAI半導体の製造を受託。世界の素材メーカーと技術を開発し、性能改善を図る。韓国サムスン電子も24年度に横浜市に先進後工程の研究拠点を設置する予定だ。経産省はラピダスへの支援を経済安全保障上、重視している。半導体はサプライチェーン(供給網)が途絶するリスクがあり、日本で最先端品を生産できれば国内産業の安定につながる。斎藤健経産相は2日の記者会見で「日本産業全体の競争力の鍵を握る。経産省としても成功に向けて全力で取り組む」と話した。ラピダスは27年の量産開始までに5兆円の資金が必要だとしている。国からは24年度までに累計で最大9200億円を受けるが、追加の資金調達が必要となる。同社幹部は「中長期的には民間の金融機関からの資金調達や、新規株式公開(IPO)を検討する」と話す。

*2-1-6:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20240404&ng=DGKKZO79769220T00C24A4EA1000 (日経新聞社説 2024.4.4) 「賢い支出」で財政健全化と成長の両立を
 ばらまきの発想をやめ、一刻も早く財政を「平時」に戻す必要がある。一方で、将来に向けた投資まで絞り込めば成長の芽を摘んでしまう。「賢い支出」を追求し、財政の健全化と成長の両立をめざすべきだ。内閣府は2日、2060年度までの社会保障費と財政状況の長期推計を初めてまとめた。そこから浮かび上がるのは、社会保障費の急増で財政が持続可能でなくなる危うい未来だ。実質でみた25~60年度の成長率が現状と同じ平均0.2%ほどで推移した場合、名目の国内総生産(GDP)に対する医療と介護を合わせた給付費の割合は13.3%に達する。19年度の8.2%を6割も上回る水準だ。医療の技術革新が給付費をさらに膨らませる可能性がある。内閣府は高額医薬品などの登場で、GDP比が60年度に16%超まで上昇するケースも想定する。このままでは社会保障制度を維持できなくなる。いまから手を打たねば間に合わない。毎年度の社会保障費を高齢化による伸びの範囲内に収めるだけでなく、給付の抜本改革や消費税を含めた負担の議論からも逃げるべきでない。なによりまず、新型コロナウイルス禍の危機対応で膨張した財政の規律を取り戻す必要がある。政府の有識者会議が3月末に示した25年度の国と地方の基礎的財政収支(プライマリーバランス、PB)に関する見通しでは、基金の乱立などで新たな歳出が3年前の試算に比べ7.5兆円増える。せっかく歳出の改革で4兆円削ったり、税収が5.3兆円上振れしたりする見込みなのに、その効果を薄めてしまう。25年度にPBを黒字化する目標を達成できるかどうかはなお微妙だ。岸田文雄政権の危機感は乏しい。コロナ後の23年度も大型の補正予算を組み、6月には効果がはっきりしない所得税減税に踏み切る。首相は財政健全化への決意を行動で示すべきだ。もちろん、支出を抑えるだけでは経済全体が縮む。成長を実現し、将来の歳出を減らすためにも、デジタルトランスフォーメーション(DX)などで生産性を高める賢い支出は欠かせない。その際に必要なのが、根拠に基づく政策立案(EBPM)の視点である。しっかりとしたデータで効果を検証する仕組みを日本にも根づかせなければならない。

*2-1-7:https://toyokeizai.net/articles/-/677510?display=b (東洋経済 2023/6/9) 医療・介護費が減る「公的制度」意外に知らぬ活用術、せっかくの制度をきちんと利用しない手はない
 定年後に必要となる生活費の中で、人によって大きく異なるのが医療費と介護費です。そのため、将来設計を考えるときに心配になりがちですが「公的制度を優先して、足りない分は貯金で補う」方針をすすめるのが、経済ジャーナリストの頼藤太希氏です。頼藤氏が医療費と介護費の公的制度について解説します。
●70歳未満は生涯の医療費の半分も支払っていない
これまで何度となく、病院や薬局のお世話になってきたことでしょう。しかしもし今70歳未満ならば、まだ生涯の医療費の半分も支払っていないといったら、驚く方もいるかもしれません。厚生労働省「医療保険に関する基礎資料」(2020年度)によると、1人あたりの生涯医療費はおよそ2700万円。そして、そのうち約半分は70歳未満、もう半分は70歳以上でかかっています。つまり、70 歳以上の医療費は1350万円くらいかかるのです。高齢になると、病気やケガをしやすくなるものです。入院・退院を繰り返したり、治療に時間がかかったりするのは、仕方のないことかもしれません。もっとも、1350万円をすべて自費で負担する必要はありません。健康保険があるため、70歳以上の医療費は原則2割負担、75歳以上の医療費は1割負担となるからです(所得によっては2割・3割負担もあり)。そのうえ、毎月の医療費が自己負担の上限を超えた場合は、高額療養費制度を利用することで超えた分が戻ってきます。また、医療費だけでなく介護費用がかかる場合もあります。自分の介護より前に、親の介護にお金がかかる人もいるでしょう。生命保険文化センター「生命保険に関する全国実態調査」(2021年度)によると、介護費用の平均は、一時費用が74万円、毎月の費用が8.3万円。また、平均的な介護期間は5年1カ月ですので、すべて合計すると約580万円かかる計算です。しかし、介護費用も公的介護保険によって1~3割の負担で済みます。さらに、介護費用が高額になった場合は「高額介護(予防)サービス費」や「高額医療・高額介護合算療養費制度」といった制度を利用することで抑えることができます。そして何より、親の介護の費用であれば親の収入・資産から出すこともできるでしょう。病気になったり、介護が必要になったりした際に保険金が受け取れる民間の医療保険や介護保険もありますが、公的な医療保険や介護保険は意外と充実しています。医療費や介護費はもちろんかかるのですが、一度に支払うお金はそれほど高額ではありません。普段から貯蓄をきちんとしていれば、十分まかなえる金額です。それに、民間の介護保険では、所定の要介護状態になっても保険会社独自の基準を満たさない場合には保険金が受け取れないケースもあるのです。いざ介護が始まったというときに介護保険が利用できないのでは、保険料の無駄です。まずは公的な制度を活用することを優先しましょう。
●「高額療養費制度」で自己負担を減らす
 日本では「国民皆保険」といって、原則すべての国民が健康保険制度に加入します。病気やケガで医療機関にかかるとき、保険証を提示すると医療費の自己負担額は最大でも3割で済みます。しかし、3割負担であっても、入院や通院が長引けば医療費の負担が大きくなってしまいます。この負担を減らせる制度が高額療養費制度です。高額療養費制度は、毎月1日から末日までの1カ月の医療費の自己負担額が上限を超えた場合に、その超えた分を払い戻してもらえる制度です。自己負担額の上限は、年齢が70歳未満か70歳以上か、所得の水準がいくらかによって変わります。例えば、年収180万円の70歳未満の方が入院・手術などをして、1カ月の医療費が100万円かかり、3割負担で30万円を支払ったとします。こんな場合でも、高額療養費制度の申請をすればこの方の自己負担限度額は5万7600円で済みます。残りの約24万円は、後日払い戻されます。さらに、過去12か月以内に3回以上自己負担額の上限に達した場合は「多数回該当」となり、4回目から自己負担限度額の上限が下がります。先の年収180万円の方なら、自己負担限度額は4万4400円になるのです。先に医療費を立て替えるのが厳しい場合は「限度額適用認定証」を申請することで、自己負担分だけの支払いだけで済ませることもできます。なお、マイナンバーカードを保険証として利用する「マイナ保険証」で受診すれば、限度額適用認定証の申請手続きをしなくても自己負担分だけの支払いですみます。
●対象外の費用もあるので要注意
ただし、高額療養費制度には対象外の費用もあります。例えば、入院中の食事代、差額ベッド代、先進医療にかかる費用などです。入院中の食事代は「標準負担額」といって、基本的に1食あたり460円です。もしも1カ月入院したら約4万円かかります。差額ベッド代とは、希望して個室や4人までの少人数部屋に入院した場合にかかる費用です。金額は人数や病院によっても異なりますが、中央社会保険医療協議会の「主な選定療養に係る報告状況」(令和3年7月)によると、差額ベッド代の1日あたり平均徴収額は6613円。個室は8315円と高いのですが、2人部屋は3151円、3人部屋は2938円、4人部屋は2639円と、金額に開きがあります。先進医療とは、厚生労働大臣が認める高度な技術を伴う医療のことです。先進医療の治療費は健康保険の対象外なので、全額自己負担です。もっとも食事代や差額ベッド代は確かにかかりますが、そこまで高い金額ではありません。貯蓄をしっかりしておけば、十分まかなえる金額です。また、先進医療の費用は、がんの陽子線治療や重粒子線治療などは数百万円しますが、数万円から数十万円で済む治療もあります。そして厚生労働省「令和4年6月30日時点で実施されていた先進医療の実績報告について」によると、先進医療を受けた患者数は2万6556人ですから、日本の人口(1億2500万人)で割ると先進医療が必要になる確率はわずかに0.02%です。この費用をあえて医療保険やがん保険で用意する必要はないと考えます。介護サービスを利用し、1カ月の自己負担額が一定の上限額を超えた場合に、その超えた部分が戻ってくる「高額介護(予防)サービス費」という制度があります。高額介護サービス費の上限額は住民税の課税される世帯(現役並み所得者がいる世帯)で14万100円、住民税非課税世帯で2万4600円となっています。高額療養費制度の医療費と同様に、介護費用の負担も一定の上限額までにできる、ありがたい制度です。
●高額医療・高額介護合算療養費制度も活用
 とはいえ、長期間にわたって医療費と介護費がかかり続けると、家計の負担が大きくなってしまいます。そんなときに利用したいのが高額医療・高額介護合算療養費制度です。高額医療・高額介護合算療養費制度は、同一世帯で毎年8月1日~翌年7月31日までの1年間にかかった医療費・介護費の自己負担額の合計額(自己負担限度額)が上限を超えた場合、その超えた金額を受け取れる制度です。高額療養費制度や高額介護サービス費制度を利用すれば自己負担は減りますが、ゼロになるわけではありません。高額医療・高額介護合算療養費制度を利用することで、その自己負担をさらに軽減できます。高額医療・高額介護合算療養費制度の自己負担限度額は、世帯の年齢や所得によって異なります。年間の医療費・介護費を計算して、制度が利用できるか確認しましょう。高額医療・高額介護合算療養費制度の申請は、公的保険の窓口で行います。国民健康保険や後期高齢者医療制度の場合はお住まいの市区町村、協会けんぽや健康保険組合などの場合は勤務先を通じて申請を行います。ただし、高額療養費制度・高額介護サービス費制度の対象外となっている費用は、高額医療・高額介護合算療養費制度でも対象外です。例えば、高額療養費制度では入院時の食事代や差額ベッド代、高額介護サービス費制度では要介護度別の利用限度額を超えた費用などは自己負担になります。高額介護サービス費の自己負担の上限額は、本人の所得で決まる場合と世帯の所得で決まる場合の2つのパターンがあります。そこで、同居している家族が住民票の世帯を分ける「世帯分離」をすることで、介護費用を削減できる場合があります。なお、世帯分離をしても、同居を続けてかまいません。世帯分離とは、同居している家族が住民票の世帯を分けることです。世帯分離をすることで、介護費用を削減できる場合があります。例えば、介護サービスを受ける親を世帯分離して、親単独の世帯にすれば、世帯としての所得が大きく減るため、高額介護サービス費の自己負担を大きく減らせる、というわけです。
●世帯分離をしても、別居する必要はない
 介護サービスを受けている親(住民税非課税)が、住民税の課税される世帯と同世帯にしていた場合、高額介護サービス費の負担限度額は月額4万4400円になります。しかし、世帯分離をして親だけの世帯になった場合、高額介護サービス費の負担の上限額は「世帯全員が住民税非課税」にあてはまるので、月額2万4600円となります。さらに、仮にこの親の前年の年金年収とその他の所得金額合計が80 万円以下だったとしたら、負担の上限額は月額1万5000円になります。同じ介護サービスを受けていても、負担が月約2万~3万円、年間で約24万~35万円ほど減らせることになります。高額介護サービス費は、最も負担の重い世帯で月額14万100円の負担になっています。ですから、高所得者の方こそ、世帯分離を検討するといいでしょう。なお世帯分離をしたからといって、別居する必要はありません。世帯分離は介護費用の削減にとても役立つ方法なのですが、高額療養費制度や高額介護サービス費の「世帯合算」はできなくなります。高額療養費制度や高額介護サービス費は、世帯ごとにかかった費用を合算して申請できます。しかし、たとえ同居していても、世帯分離をすれば親と子で別の世帯になりますので、合算できなくなります。とくに、2人以上介護している場合には、世帯分離がかえって損になる可能性があります。損得をトータルで考える必要がありますので、詳しくはお住まいの自治体にご相談ください。

*2-2-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20240207&ng=DGKKZO78285980W4A200C2PD0000 (日経新聞 2024.2.7) 少子化支援金、首相「1人あたり月500円弱負担」、医療保険料に上乗せ 歳出改革・賃上げ推進
 岸田文雄首相は6日、少子化財源確保のために医療保険料に上乗せする新たな「支援金制度」の負担額が平均で1人当たり月500円弱になるとの見通しを表明した。実質的な負担増にならないとも強調した。個人ごとにみると負担は首相の説明通りにならない場合もある。政府は2024年度からの3年間で年3.6兆円の予算を確保して、児童手当の増額など少子化対策の充実に充当する。その財源のうち1兆円を「支援金制度」で賄う。首相は6日の衆院予算委員会で「粗い試算」として「支援金の総額を1兆円と想定すると、28年度の拠出額は加入者1人当たり月平均500円弱となると見込まれている」と語った。これまで1人当たりの負担水準を明らかにしていなかった。立憲民主党の早稲田夕季氏に答弁した。実際の1人当たりの負担額は個人ごとに差が出る。会社員らが加入する健康保険組合では定率で保険料を上乗せして支援金を集める見通し。加入する健康保険組合や年収によって個人の負担額は変わる公算が大きい。たとえば、22年度の医療保険料率は中小企業が主な対象となる全国健康保険協会(協会けんぽ)は平均で10%。大企業が中心の健康保険組合連合会(健保連)は9.26%と異なる。被保険者の平均年収も21年度時点で協会けんぽ272万円、健保連は408万円と差がある。日本総研の西沢和彦理事の試算によると、医療保険の加入者(家族を含む)1人あたりの支援金の平均額は協会けんぽでは月638円となる。健保組合は月851円、後期高齢者医療制度で月253円になるという。所得が高い人はこの負担額がさらに増える。予算委では野党から「組合の種類や所得によって、(支援金の負担額が)上がっていくということを言わないと不誠実だ」との批判が出た。首相は支援金を導入しても、社会保障分野の国民負担率を上げない方針を示す。社会保障の歳出改革で保険料の伸びを抑え、今春以降の賃上げにより負担率の分母が増えるとの訴えだ。6日の予算委でも「実質的な負担は全体として生じない」と語った。その実現は見通せない。歳出改革では政府が23年12月にまとめた28年度までの工程表で早くもほころびが見えている。介護保険サービスを利用した際の自己負担について、政府は24年度から2割負担の対象者を広げる方針だった。現行は原則1割となっている。対象拡大は自民党などの反発を受けて、27年度以降に先延ばしとなった。賃上げ頼みの仕組みも課題だ。国民民主党の玉木雄一郎代表は6日の予算委で「賃上げはどれくらいを見越しているのか」と首相に問いただした。仮に歳出改革が計画通りに進んでも、賃上げが実施されない企業で働く人は支援金の実質負担が発生するケースがあり得る。日本総研の西沢氏は「実質的な負担は生じないという説明は誤解を生む。『500円弱』の数字が独り歩きする説明では国民の理解が得にくいのでは」と指摘する。

*2-2-2:https://www.nikkei.com/paper/related-article/?b=20240207&c・・=DPD0000 (日経新聞 2024.2.7) 少子化支援金、首相「1人あたり月500円弱負担」 医療保険料に上乗せ 歳出改革・賃上げ推進、財源1兆円「支援金」で捻出 26年4月から徴収
 政府は24年度からの3年間で年3.6兆円の予算を確保し、児童手当や育児休業給付など少子化対策の拡充に充てる。その財源のうち1兆円を「支援金制度」で捻出する。そのほかは歳出改革で1.1兆円、既定予算の活用で1.5兆円を確保する。支援金はサラリーマンの場合は給料から天引きされる医療保険料に上乗せして集める。75歳以上の後期高齢者も含む全世代で負担する。低所得者には負担軽減策を設ける。26年4月から徴収が始まる。初年度は6000億円を集め、段階的に金額を増やし28年度に年1兆円の確保をめざす。使い道や政策への充当割合などを明記した関連法案を今の通常国会に提出する。

*2-2-3:https://digital.asahi.com/articles/DA3S15903977.html (朝日新聞 2024年4月4日) 少子化対策、財源巡り攻防 徴収の「支援金」野党批判 政権、負担明示せず
 政権の少子化対策「子ども・子育て支援法等改正案」の国会審議が本格化している。3日の衆院特別委員会では、財源の一つで医療保険料とあわせて徴収する「支援金」について、「ごまかしで事実上の子育て増税」などと野党の追及が相次いだ。「(支援金の)所得階層別の負担額を出してほしい」。立憲民主党の山井和則氏がそう迫ったが、加藤鮎子こども政策相は「年収別の拠出額は数年後の賃金水準などによるため、現時点で一概に申し上げられない」と繰り返すばかりだった。2日に衆院で審議入りした法案。最大の争点は財源確保策だ。法案には児童手当の大幅な拡充などを盛り込んだ。少子化対策全体では年3・6兆円規模で、うち1兆円を支援金で賄う想定。ただ、政府は医療保険ごとの加入者1人あたりの平均額の試算を出した一方、所得に応じた負担は提示せず「2021年度の医療保険料月額の4~5%程度」という月額の「目安」を示すのみで、野党の批判が強まっていた。少子化対策の財源を、税ではなく医療保険とあわせた形で徴収することにも批判が殺到。立憲の早稲田夕季氏は「給付と負担の関係が明白である社会保険の考え方には到底見合わない。租税でまかなわれるべきものだ」と指摘した。加藤氏は「(医療保険などの)社会保険制度はともに支え合う仕組み。支援金制度も、少子化対策で受益がある全世代・全経済主体で支える仕組みだ」と答弁。岸田文雄首相も2日の衆院本会議で「少子化、人口減少に歯止めをかけることで医療保険制度の持続可能性を高める」と強調していた。論点には充実策の実効性も挙がる。保護者の就労要件を問わずに保育所などを利用できる「こども誰でも通園制度」については現在、子ども1人あたり月10時間までで試行的に運用中だ。2日の本会議では「今後拡大していく考えはあるのか。保育士などの賃金や労働条件を改善し、質の高い保育を提供するための必要な人材を確保すべきだ」(国民・田中健氏)といった指摘があった。首相は「試行的事業の状況等も踏まえながら、今後検討していく。引き続き、処遇改善も行っていく」と応じた。政府は今国会での法案成立を目指すが、「現段階ではこの法案にもろ手を挙げて賛成するということは極めて難しい」(維新・音喜多駿氏)などと意見が出ている。野党との対立がさらに激化する可能性もある。

*2-3-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20240307&ng=DGKKZO79039740X00C24A3EA2000 (日経新聞 2024.3.7) 特定技能、窮余の拡大 人手不足で上限枠2.4倍82万人に 煩雑な申請など足かせ、待遇改善急務
 政府は外国人労働者の在留資格「特定技能」の受け入れ枠を自民党に提示した。2024年度からの5年間で現行の2倍以上の82万人を受け入れる。同じく人手不足に直面する他国との人材争奪はますます激しくなる。日本が「選ばれる国」となるための支援策を整えることが急務となる。政府が6日までに自民党の部会に受け入れ枠を広げる方針を示し、了承された。内訳は建設業など国土交通省の所管分で18.2万人となる。製造業など経済産業省の所管では17.3万人、介護を含む厚生労働省の所管を17.2万人とした。それぞれの数字は業界ごとに成長率や需要などから不足人数をはじき、人材確保や生産性向上の努力で解決できる分を差し引いて算出した。急速な少子高齢化に見舞われる地方からは悲痛な声が上がる。福岡県鉄構工業会は4日、特定技能に関する要望書を小泉龍司法相に提出した。「最先端技術の導入などの取り組みをしても必要な人材確保が困難な状況だ」と訴えた。厚労省が発表した23年10月の外国人労働者はおよそ200万人だった。国際協力機構(JICA)などは年平均1.24%の成長を2040年に達成するには、674万人の外国人労働者が必要だと推計する。政府は特定技能だけでなく、技能実習に代わる非熟練労働者の新制度「育成就労」などと合わせて受け入れ数を増やしていく方針だ。それでも日本社会の機能を維持するのには足りない。政府は特定技能制度が始まった19年に34.5万人の受け入れ枠を設定した。実際の在留者数は23年11月時点でおよそ20万人にとどまった。伸び悩んだのは新型コロナウイルス禍の影響が大きかった。介護や農業など海外で試験を受けて入国する労働者の受け入れが滞った。外国人雇用に詳しい杉田昌平弁護士は「コロナ禍で送り出し国での試験実施が遅れ、運用の確立や制度の浸透が不十分だった」と指摘する。コロナ禍のせいだけにもできない。行政側の対応や、受け入れ企業の負担が大きい現状にも課題がある。宿泊分野で外国人材紹介を手掛けるダイブ(東京・新宿)の菅沼基氏は入管への申請数の増加を要因に挙げる。「申請結果が出るまでの時間が長く入国待ちや変更待ちの人が多数いる」と話す。特定技能の場合、技能実習とは異なり受け入れ窓口である監理団体が存在しない。受け入れ企業が実習や日本語教育の支援を自社で賄うケースもある。日本は諸外国と外国人材の獲得を競わなければならない。オーストラリアや韓国は外国人労働者を獲得する政策を積極展開する。円安や相対的に低下した賃金水準は、日本が「選ばれる国」になるための足かせとなりつつある。賃金面で魅力を高める努力とともに、外国人の職場への順応や生活環境の支援策を整えることが重要だ。特定技能で来日した労働者を国籍別に見るとベトナムが最も多く、インドネシアやフィリピンなどが続く。文化や慣習の異なる東南アジアが中心になっている。勤務上のトラブルが発生した場合の支援体制や、日本語の学習環境の整備は欠かせない。日本人との共生には、自治体と地域の企業が一体となってバックアップに取り組む体制が求められる。各国の共生政策を比較する移民統合政策指数(MIPEX)の2020年版の総合評価で見た日本の順位は56カ国中35位にとどまった。スウェーデンが1位で、アジアでは18位の韓国に後れをとっている。
特定技能の受け入れ枠拡大を巡り、自民党の部会で目立った異論は出なかった。外国人材に頼らなければ地方経済が回らなくなりつつある現状を映している。
▼特定技能制度 一定の専門性と日本語能力を持つ外国人材を受け入れる制度で19年に始まった。海外から入国する場合は、技能と日本語の試験に合格すれば最長5年在留できる「1号」の資格を得られる。さらに条件を満たせば在留資格の更新に制限がない「2号」になれる。家族を帯同でき将来は永住権も申請できる。現在は人手不足が著しい12の分野が対象。政府は新たにタクシーやバスの運転手である「自動車運送」や列車乗務員の「鉄道」など4分野を追加し16分野とする計画だ。

*2-3-2:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/1215816 (佐賀新聞 2024/3/26) 入管庁の難民認定、最多303人、23年、アフガンが大半
 出入国在留管理庁は26日、自国で迫害を受ける恐れがあるとして、2023年に303人を難民認定したと発表した。22年から101人増え、最多を更新。うち237人がアフガニスタン国籍で、関係者によると、21年の政変後に退避した国際協力機構(JICA)の職員らが多くを占める。難民認定申請者数は1万3823人で、22年の3倍超と大幅に増えた。入管庁によると、難民認定者303人の内訳は、アフガンが最多で、軍政による弾圧が続くミャンマーが27人、エチオピアが6人など。アフガンでは22年も日本大使館の元職員や家族らが多く認定されている。申請者数は、17年の1万9629人に次いで2番目に多い。スリランカが3778人で最も多く、トルコ、パキスタンが続いた。入管庁は「新型コロナウイルスの水際対策が終了し、来日者数の回復に伴い申請者も増えた」と分析している。23年に成立した改正入管難民法で新設され、紛争避難民らを難民に準じる形で在留を認める「補完的保護」は、申請を受け付けた23年12月から今年2月末までに1110人が申請。647人が認められ、ウクライナ避難民が644人、23年4月に軍事衝突があったスーダンが3人だった。「定住者」の在留資格を付与する。難民と認めなかったものの、23年に人道的配慮から在留を認めたのは1005人。ミャンマーなど本国の情勢を踏まえた許可が大半を占めた。難民認定を巡っては、年間1万人を超える国がある欧米と比べ、日本は認定数が少なく、基準が厳しいとの指摘がある。難民認定制度 外国人から申請を受け、難民条約が定義する難民に該当するかどうかを判断する。条約は人種や宗教、国籍、政治的意見、特定の社会的集団の構成員であることを理由に迫害の恐れがあり、国外に逃れた人を難民と定義し、出入国在留管理庁の調査官が面接などで審査する。認定されると「定住者」の在留資格を付与。不認定の場合は審査請求ができる。日本では、制度が開始した1982年から2023年までに1420人を条約上の難民と認定。欧米と比べ少なく「難民鎖国」とも批判される。

*2-3-3:https://www.nippon.com/ja/features/c03707/ (Nippon.com 2024.2.9) 小澤征爾:“人間力”で「世界のオザワ」に上り詰めたカリスマ指揮 柴田 克彦
《日本を代表する指揮者・小澤征爾さんが2月6日死去した。“世界のオザワ” の冥福を祈るとともに、敬意を込めて2018年に公開した記事を改めてお届けする》世界のクラシック音楽界で頂点に立つ指揮者の1人、小澤征爾。“音楽エリート” ではなく、苦労しながら努力と行動力、そして人間的魅力で世界に嘱望されるまでに至ったマエストロの軌跡を振り返る。
(2018年6月12日に公開した記事を再掲致します)
 2002年1月1日、小澤征爾はウィーン・フィルハーモニー管弦楽団の「ニューイヤー・コンサート」に登場した。60年もの歴史を誇り、約60カ国にテレビ中継されるこの世界的風物詩を指揮する初めての日本人だった。彼は、米国ビッグ5の名門、ボストン交響楽団の音楽監督を約30年にわたって務め、この年の秋からオペラ界の頂点、ウィーン国立歌劇場の音楽監督に就任することになっていた。さらには、世界最高峰の2強、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団とウィーン・フィルの定期演奏会にレギュラーで登場する数少ない指揮者の1人だった。これらは全て、西洋の文化であるクラシック音楽の分野で日本人が達成するには、あまりにハードルが高い、正真正銘の偉業である。無論、小澤以外に成し遂げた日本人指揮者はおらず、裾野に近づいた者さえごく限られる。
●日本人離れの行動力の原点
 小澤征爾は、1935年9月1日、満州国の奉天(現・中華人民共和国の瀋陽)に生まれた。山梨の貧しい農家の出で、苦学の末に歯医者となった父・開作は23歳の時に満州へ渡り、長春で歯科医を開業。その地で征爾の母となる若松さくらと結婚した。だが開作は、アジア民族の一体化を理念とする政治活動に没頭し、政治団体「満州国協和会」の創立委員として奉天に移り住んだ。そこで生まれた三男は、開作が知遇を得た陸軍大将・板垣征四郎から「征」、関東軍参謀・石原莞爾から「爾」を取って「征爾」と命名され、6歳の年まで満州で過ごした。大陸で生まれ育ったこと、さらには父譲りの行動力が、小澤の日本人離れした活躍の源にあるのではないか…そう思えてならない。小澤はいわゆる “音楽エリート” ではなかった。音楽との出会いは5歳のクリスマスに母が買ってくれたアコーディオンで、ピアノを始めたのが10歳の時。一家は41年に帰国して立川に住まいを移していた。もちろん当時、家にはピアノがなく、後に親戚から譲り受けた際も、兄たちが横浜から立川まで3日かけてリヤカーで運んだ。ピアニストになる夢はあっても、スタートがあまりに遅い。そんな折の49年12月、日比谷公会堂における日本交響楽団(現・NHK交響楽団)のコンサートで、ロシア出身のピアニスト、レオニード・クロイツァーがピアノを弾きながら指揮をする演奏を聴いて、初めて指揮に強い魅力を感じた。そして母さくらの遠縁に音楽教育者・チェロ奏者の齋藤秀雄(1902~74年)がいることが分かり、弟子入りを志願する。中学3年生の時だった。
●生涯の師、友との出会いを経て2大巨匠の下へ
 人生とは巡り会い。小澤の道のりをたどるとそれを痛感させられる。齋藤秀雄は、桐朋学園で多数の著名指揮者や弦楽器奏者を育てた大功労者だ。彼は小澤の生涯の師となった。もう1人、齋藤の指揮教室で巡り会ったのが山本直純(1932~2002年)。後にコマーシャルの「大きいことはいいことだ」のフレーズで名をはせた指揮者にして、映画『男はつらいよ』のテーマ音楽を手がけた作曲家である。小澤は最初、兄弟子にあたる山本に指揮を教わった。1952年小澤は斎藤が開設に関わった桐朋女子高等学校音楽科に入学、55年桐朋学園短期大学に進学した。やがて、「音楽をやるなら外国へ行って勉強するしかない」と強く思うようになった小澤に向かって、山本は「音楽のピラミッドがあるとしたら、オレはその底辺を広げる仕事をするから、お前はヨーロッパへ行って頂点を目指せ」と言って後押しした。そしてそれは実現した。59年2月、持ち前の行動力を発揮し、スクーターと共に貨物船で単身渡仏した23歳の小澤は、同年ブザンソン国際指揮者コンクールに挑んだ。実は応募の締め切りを過ぎていたのだが、つてを頼って紹介してもらった米国大使館の職員の口利きで参加がかない、見事優勝。これが飛躍の第1歩となった。まずは審査員だった巨匠シャルル・ミュンシュの一言でボストン交響楽団が毎夏米国マサチューセッツ州で主宰するタングルウッド音楽祭に参加し(60年)、それを機に、61 年レナード・バーンスタイン率いるニューヨーク・フィルハーモニックの副指揮者に抜てきされた。またヘルベルト・フォン・カラヤンの弟子を選出するコンクールにも合格。そこで小澤は、20世紀後半の指揮界を二分するカラヤン、バーンスタイン両雄の薫陶を受けることができた。このような経験を持つ指揮者は、世界でも恐らく小澤しかいない。
●「N響事件」を経て新日本フィル結成へ
 小澤征爾は天才ではなく、努力の人である。「勉強、勉強、また勉強」が彼の生き方。そして小澤を知る者は、「彼ほど人懐っこく、人間に対する愛情が深く、義理固い人はいない」と言う。日々の努力にそうした人柄が加わったからこそ、良き巡り会いが生まれたに違いない。ただ日本では順風満帆ではなかった。1962年には、契約を結んだNHK交響楽団からボイコットされる「N響事件」が起きた。同年6月から半年間の指揮契約を結んでいたが、楽員から27歳の小澤に対し「生意気だ」「態度が悪い」などの感情的反発が生まれていたのだ。そこで翌年「小澤征爾の音楽を聴く会」が開催され、発起人に、浅利慶太、石原慎太郎、井上靖、大江健三郎、曽野綾子、武満徹、谷川俊太郎、團伊玖磨、中島健蔵、黛敏郎、三島由紀夫ら、驚きのビッグネームが並んだ。これも小澤の吸引力のなせる業だろう。しかし彼は事件を機に日本に見切りをつけ、世界にのみ目を向けた。事件は結果的に “世界のオザワ” 誕生を導いたといえる。72年には、縁あって首席指揮者を務めていた日本フィルハーモニー交響楽団が、フジサンケイグループからの支援を打ち切られる。急きょ米国から帰国した小澤は何とか存続を図ろうと奔走し、天皇陛下へ直訴までする。同年日本芸術院賞を受賞していたが、その授与式で「自分だけ賞をもらいましたが、今一緒にやっているオーケストラは大変な状況なんです」と思わず言ってしまったのだ。結局当時の “財団法人日本フィル” は解散(注:裁判闘争を続けながら自主運営団体として継続し、現在は公益財団法人として活動中)、小澤は山本直純と共に新日本フィルハーモニー交響楽団を結成する。その後長い間、日本では基本的に新日本フィルしか指揮せず、同楽団を起用した山本の公開テレビ番組「オーケストラがやって来た」に再三出演するなど、義理堅さを発揮した。
●クラシック界の頂点に駆け上がる
 世界における快進撃の始まりは、「N響事件」の翌年、1963年にシカゴ交響楽団が主宰する「ラヴィニア音楽祭」に急きょ代役で出演し、成功を収めたことだった。64年には同音楽祭の音楽監督に就任(68年まで)。65年にはトロント交響楽団の音楽監督に就任した(69年まで)。66年には「ザルツブルク音楽祭」ならびにウィーン・フィル、さらにはベルリン・フィルの定期演奏会にデビュー。70年には「タングルウッド音楽祭」の芸術監督(2002年まで)、サンフランシスコ交響楽団の音楽監督(76年まで)に就任した。そして73年、ボストン交響楽団の音楽監督に就任し、2002年まで約30年間に及ぶ米国では異例の長期体制を築いた。79年パリ・オペラ座、80年ミラノ・スカラ座、88年ウィーン国立歌劇場にデビューし、オペラでも世界最高峰の舞台で活躍。2002年のウィーン国立歌劇場の音楽監督就任(2010年まで)に至る。膨大なディスクも録音し、中でも冒頭で言及した「ニューイヤー・コンサート2002」のライブCDは、日本で80万枚(世界で約100万枚)というクラシック界では空前絶後のセールスを記録した。94年にはタングルウッドにその名を冠した「セイジ・オザワ・ホール」が建てられた。日本での活動も徐々に活発化した。87年に齋藤秀雄の門下生を主体とする「サイトウ・キネン・オーケストラ」の活動を開始。同楽団は世界から一流と目される存在となった。90年には水戸室内管弦楽団の芸術顧問に就任。92年には「サイトウ・キネン・フェスティバル松本」(2014年から「セイジ・オザワ松本フェスティバル」)の総監督に就任し、同音楽祭は垂涎の内容で人気を集めた。98年には長野冬季オリンピックの開会式で、世界5大陸を結ぶベートーヴェン「第九」を指揮。2000年には若手音楽家を育成する「小澤征爾音楽塾オペラ・プロジェクト」を始めた。
●“人間力”で最高の音楽を引き出す
 指揮者は、自ら音を出さない不思議な音楽家だ。実際に音を出すのは、おのおのが一家言持つ100名ものプロフェッショナル演奏家集団である。彼らに意を伝え、持てる能力を発揮させ、1つの音楽を形作るには、技術や知識以上に人間的な魅力やカリスマ性を必要とする。指揮法を体系化した齋藤秀雄譲りのバトン・テクニックは素晴らしい。しかし彼の本領は、人柄に努力と経験が加わった “人間力” に尽きる。小澤のカリスマ性を示すエピソードがある。2015年、新日本フィルの創設期を共にしたティンパニ奏者の山口浩一が亡くなる直前、小澤は彼を見舞いに訪れた。山口はほとんど意識がなく、周りで見守る人たちが「分かったら手を握って」と言うと、辛うじて握り返す程度だった。ところが小澤が声をかけると、パッと目を開け、会話までしたという。1986年2月13日、東京文化会館における小澤指揮/ボストン交響楽団によるマーラーの交響曲第3番は、筆者にとってこれまで経験した最高のコンサートだった。終始引き付けられた末の深い感銘を、30年以上たった今でもありありと思い出す。この体験は生涯まれな “ギフト” だった。小澤の音楽は熱い。彼はきっと同様の感銘を皆に与えてきたであろう。ここ数年は健康状態を鑑みながら活動している。今秋には83歳を迎える小澤。だがまだまだギフトを与え続けてほしいと願わずにはおれない。

*2-4:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20240407&ng=DGKKZO79852220W4A400C2EA2000 (日経新聞 2024.4.7) 働き手「予備軍」、20年前から半減 昨年411万人に、女性・高齢者の就業進む 人手不足、事業再編迫る
 日本の働き手が枯渇してきた。今は職に就かず仕事を希望する働き手の「予備軍」は2023年に411万人で15歳以上のうち3.7%にとどまり、割合は20年で半減した。女性や高齢者の就業が進み、人手の確保は限界に近い。企業を支えた労働余力は細り、非効率な事業の見直しを迫られている。現場の人手不足を敏感に映すのが時給の動きだ。労働政策研究・研修機構が毎月勤労統計をもとに集計したパートタイムの時間あたり給与は、23年10~12月期に前年同期比3.8%増だった。新型コロナウイルスの影響があった時期を除くと15年以降で最も高い。一般労働者は1.0%増で、パートの伸びが際立つ。コロナの影響が薄れたことによる景気要因だけではない。より大きいのは、女性や高齢者の労働参加が進み、人材のプールが細ったという構造要因にある。総務省がまとめた労働力調査によると、15歳以上で職に就かず仕事を探していないが、就業を希望する人は23年に233万人と20年前に比べて297万人減った。職探しをしている完全失業者の178万人と合わせた「予備軍」は411万人で15歳以上の人口の3.7%にあたる。03年の8.0%に比べて半分以下の水準だ。予備軍が減ったのは景気回復とともに、女性や高齢者が働く環境整備が進んだためだ。国立社会保障・人口問題研究所によると、15~64歳の生産年齢人口はピークだった1995年に比べ23年は15%減ったが、就業者は20年間で約400万人増えた。足元では結婚や子育てで女性が職を離れ、30代の就業率が下がる「M字カーブ現象」もほぼ解消した。大和総研の田村統久氏は「働き手の減少を女性や高齢者で補うのは限界に近い」と指摘する。英国の経済学者、アーサー・ルイス氏は農村で余った労働力が工業部門に吸収されて成長する中で、ある時点で余剰労働力がなくなる「ルイスの転換点」の考え方を示した。転換点を過ぎれば賃上げの圧力が強まる。日本は1960年代後半に過ぎたと見られているが、女性や高齢者という観点で新たな転換を迎える可能性がある。企業も戦略の転換を迫られる。低金利による借り入れ負担の軽減と、非正規で働く女性や高齢者の活用はコスト低減の柱だった。低収益の事業でも存続しやすくなり、景気回復下でも賃金が上がらないデフレの色合いを強めた。日銀のマイナス金利解除に伴い、金利には上昇圧力がかかる。人手不足で採用ができず、非正規の時給引き上げが続けば、低採算の事業は選別し撤退をせざるを得なくなる。

<男女別学と教育について>
PS(2024年4月15日追加): 国連の女子差別撤廃条約を持ち出すまでもなく、日本国憲法が第3条で「すべて国民は、等しく、その能力に応ずる教育を受ける機会を与えられなければならないものであって、人種、信条、性別、社会的身分、経済的地位又は門地によって、教育上差別されない」と教育の機会均等を定めている。そして、西日本では、男女別学だった公立校は日本国憲法施行と同時に男女共学に変更され、その恩恵によって私の今がある。
 しかし、*3-1・*3-2のように、未だに男女別学の公立高校が存在する埼玉県で、市民グループ「共学ネット・さいたま」が、①公立校としての公共性 ②ジェンダー平等 ③性の多様性 の三つの観点から県立高校の共学化を求め ④埼玉県男女共同参画苦情処理委員が2023年8月に埼玉県教育長に対して共学化を勧告したところ、埼玉県教育委員会は「名門2校(浦高と浦和第一女子)」の卒業生に対し聞き取りを実施し ⑤i)伝統維持 ii)選択肢の確保 を強調する反対意見が多数を占め、男女の機会均等などを訴える賛成派はわずかだった とのことである。
 具体的な反対意見には、⑥男子校の埼玉県立浦和高校同窓会は「浦高」は埼玉唯一の全国ブランドで別学を維持しないと文化が壊れる」と別学維持を求めて大野元裕知事に意見書を渡した ⑦女子側“トップ校”の浦和第一女子高同窓会は事前に集めた卒業生アンケートで「500件のうち483件が共学化に反対」「女子校出身者の方が理系選択が多い」「女子校は男女の性差にとらわれることなく能力や個性を発揮できる」などの意見があった ⑧勧告後に始まった共学化反対のインターネット署名は2万件を超えた としている。
 しかし、④のように、卒業生に聞き取りを行えば、男女共学高校で教育を受けた経験がなく、自らの過去を肯定したいという動機も重なって、反対意見が出るのは当然だが、卒業生(過去の在学生)の意見を根拠に男女別学を維持するのは、日本国憲法に反して意図的であり、本末転倒だ。また、⑤の伝統維持についても、その長い伝統は男女の性別役割分担や女性差別・女性蔑視に基づく伝統であるため、女子差別撤廃条約・日本国憲法及び①②に反しており、「伝統維持=女性差別・女性蔑視の維持」になっている。そのため、このような教育制度・社会意識の下では埼玉県に赴任する子育て家庭は父親だけの単身赴任になり、埼玉県の人口10万人あたり医師数は全国最下位で、人口の割に高校のレベルも上がらない。ちなみに、私は、子供を作らないと決めてから埼玉県にマンションを買ったが、その理由は東京・神奈川と比較してかなり安かったからで、住民(男性だけでなく女性も)にも女性蔑視があるのは不愉快に感じている次第だ。
 なお、⑥については、その“全国ブランド”の恩恵に預かるのは男子生徒だけであり、このようにして男女別学かつ男性優遇の中で育った男性が女性の能力を過小評価して職場や社会でも女性を差別し、社会進出を阻んでいることを忘れてはならない。また、簡便のために東大で比較すると、浦和高校は、文I:4人(浪人3)・文II:9人(浪人6)・文III:5人(浪人3)・理I:13人(浪人6)・理II:13人(浪人7)・理III:0・合計:44人(浪人25)など、理系や職業に結びつく学部への合格者が多い(https://www.inter-edu.com/univ/2024/schools/336/jisseki/ 参照)が、女子側“トップ校”の浦和第一女子高校は、文I:1人(浪人1)・文II:2人(浪人2)・文III:3人(浪人2)で、文系でも現役で法律・経済学部に合格した女子生徒はおらず、理系学部に合格した女子生徒は現役・浪人合わせて全くいないため、⑦は根拠なき主張だ(https://www.inter-edu.com/univ/2024/schools/374/jisseki/ 参照)。さらに、浪人割合が高いのは、高校までの勉強では東大に入れず、予備校での浪人生活があって初めて東大に合格したということである。これに加えて、卒業生が“全国ブランド”と考えている浦和高校も理IIIの合格者は0で、これは高校だけで頑張っても中高一貫校で勉強した人には追いつけないことを意味する。その中高一貫校は男女別学の私立が多く、学費も高いため、東大合格者は所得や出身校で偏り、地方出身者が減って、多様な視点の源であるリーダーの多様性もなくなった。国・埼玉県及び他の地方自治体は、これでよいのだろうか?

*3-1:https://digital.asahi.com/articles/ASS4B420XS4BUTNB004M.html (朝日新聞 2024年4月11日) 男女別学県立高の共学化を 市民団体が改めて早期実現訴え
男女別学になっている県立高校の共学化を求める市民グループ「共学ネット・さいたま」が10日、県庁で会見し、改めて共学化の早期実現を訴えた。共学ネットは、「公立学校としての公共性」「ジェンダー平等」「性の多様性」の三つの観点から、県立別学校の問題点を指摘。「別学は選択肢の一つ」という代表的な反対意見に対し、「別学と共学の選択肢がある生徒は事実上学力の高い一部の生徒だけで、大半の生徒は選択していない」と反論した。県立の別学校をめぐっては、県男女共同参画推進条例に基づく苦情の申し出を受け、苦情処理委員が2023年8月、県教育長に対し、共学化を勧告。男子校の県立浦和高校の同窓会は別学維持を求め、大野元裕知事に意見書を渡している。

*3-2:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/1209922 (佐賀新聞 2024/3/15) 県立高、共学化勧告に波紋、伝統か機会均等か、埼玉 「名門」卒業生が反対
 男女別学の県立高校は早期に共学化すべきだ―。昨年夏、埼玉県教育委員会が県の男女共同参画苦情処理委員から受けた勧告が波紋を呼んでいる。県教委は「名門」2校の卒業生への聞き取りを実施。伝統維持や選択肢の確保を強調する反対意見が多数を占め、男女の機会均等などを訴える賛成派はわずかだった。8月までの報告を求められた県教委の対応に注目が集まっている。「『浦高』は埼玉唯一の全国ブランド」「別学を維持しないと文化が壊れる」。今年1月、県内屈指の「名門男子高」とされる浦和高(さいたま市)での聞き取りには、大学生から80代までの約110人が参加した。議論は3時間に及び、反対意見が噴出。「選択肢を残すべきだ」と声が上がる中「優れた教育を受ける権利を否定するべきではない」といった賛成意見は少数だった。女子高側の「トップ校」浦和第一女子高(同市)では、同窓会の栗原美恵子会長ら約10人が出席し、事前に集めた卒業生のアンケートを紹介。500件のうち483件が共学化に反対した。集まった意見は「女子校出身者の方が(進路での)理系選択が多い」「女子校は男女の性差にとらわれることなく能力や個性を発揮できる」など。栗原会長は「伝統や愛着ではなく、女子校が男女共同参画に成果を上げている点を見てほしい」と訴えた。県教委によると、県立高137校のうち男女別学は男子校5校、女子校7校の計12校ある。勧告は別学があった宮城、秋田、福島3県で2016年度までに全校が共学になったことなどに言及し、対応を求めた。勧告した男女共同参画苦情処理委員は、知事が委嘱した弁護士らで構成。発端は22年4月に寄せられた「男子校が女子の入学を拒むのは、国連の女子差別撤廃条約に反する」との申し出だった。条約は女子に男子と平等の権利を確保することを目的に、女子に対する差別を撤廃するための適当な措置を取るよう求めている。日本も1985年に批准した。同様の勧告は2002年にもあった。県教委は報告書に「各校が特色ある学校づくりに向けて主体的に取り組む中で、共学化を検討する可能性もある。その場合は支援したい」と記載。ただ共学化は大きくは進まなかった。今回の勧告後に始まった共学化反対のインターネット署名は2万件を超えた。県内の共学校の関係者も賛同し、議論は広がりを見せている。県教委は全別学校で聞き取りを実施。日吉亨教育長は1月の記者会見で「意向に応じて場を設定した。中学生や在校生へのアンケートを交えながら、多角的に意見を聞きたい」と話した。

<政治資金の寄付とその恩恵は・・>
PS(2024年4月21、22《図》日):*4-1-1・*4-1-2は、①自民・公明両党は自民派閥の政治資金問題を受けた再発防止策として、政治資金収支報告書のデジタル化と外部監査導入を打ち出す方針 ②公明党は、i)国会議員関係政治団体収支報告書のオンライン提出義務化 ii)政治資金の透明性向上のため外部監査・第三者機関活用 iii)収支報告書虚偽記入は政治団体代表者が会計責任者の選任や監督に関して「相当の注意」を怠れば50万円以下の罰金 iv)罰金刑を受けた議員は公民権停止 とした ③首相と与党は、i)議員本人を含め罰則強化 ii)収入を含めた外部監査充実 iii)デジタル化による透明性向上を打ち出す見通し ④公明党は今回の問題のきっかけとなった政治資金パーティーを巡り、パーティー券購入者の情報開示基準を現行の20万円超から5万円超に引き下げるよう求め、自民党内は「特定政党との繋がりを明かしたくない人もいる」との慎重論が根強く、野党はパーティーの廃止を主張 ⑤政党から政党幹部ら政治家に支出する政策活動費については、公明党は使途公開義務付けを主張し、自民党は使途公開を含めて反対論があがる ⑥公明党は国会議員の関係政治団体から寄付を受けた「その他の政治団体」の資金に関する透明性の確保策も盛り込んだ ⑦国会議員関係政治団体は1件1万円超の経常経費と政治活動費を政治資金収支報告書に明細まで記載しなければならず、資金管理団体等の「その他の政治団体」は経常経費の記載は不要で政治活動費も1件5万円以上と基準が緩い ⑧公明党案は批判に配慮して国会議員関係政治団体から年間で一定以上の寄付を受けた政治団体は、国会議員関係政治団体と同等の公開基準とするように要求 ⑨自民党の渡海政調会長は20日、政治資金規正法の今国会中改正の実現を巡って「会期を延ばしてもいいから徹底的にやるべき」と話し、自民党独自案は23日にも方向性を示すことになると言明したが、「公職選挙法の連座制と同じものは作れない」と述べた としている。
 国会議員の「事務所費問題」がクローズアップされた2007年に政治資金規正法改正法が成立し、その時は自民党衆議院議員として改正案の議論に私も参加していたため、政治資金を寄付した寄付者が裏切られたり、寄付を受けた議員が本当は他の意図があるのに政治資金規正法違反で叩かれたりしないように、「議員関係の政治資金収支報告書を複式簿記に変更して網羅性・検証可能性を確保し、適正性の意見表明ができる公認会計士監査(独立性のあるプロによる外部監査)を導入すること」を提案した。しかし、成立した改正法は、イ)国会議員関係の政治団体は「国会議員関係政治団体」と法律上明確に定義する ロ)この範囲の政治団体の収支報告の適正の確保及び透明性の向上のため一定の義務を課す という非常に限定されたものであったため、外部監査も政治資金規正法への準拠性の表明に留まった(https://www.soumu.go.jp/senkyo/seiji_s/pdf/35246.pdf 参照)。
 そして、イ)のように、国会議員関係の政治団体のみに限ったため、代表者が政党・派閥・地方議員・後援会長等の「その他の政治団体」は、⑦のように緩い基準になり、今回の不記載が合法的に起こったのである。これに対し、①②③⑤⑥⑧のように、自民・公明両党は、自民派閥の政治資金問題を受けた再発防止策として、i)国会議員関係政治団体収支報告書のオンライン提出義務化 ii外部監査・第三者機関活用 iii)収支報告書虚偽記入に対する代表者の罰金 iv)罰金刑を受けた議員の公民権停止等を検討しているそうだが、i)ii)iii)は、国会議員関係の政治団体収支報告書に限定している点で不足であるし、iv)は標的にした議員叩きのツールとして使われることもあるため注意すべきである。
 また、国会議員関係の政治団体収支報告書限定では不足である理由は、例えば*4-2-1・*4-2-2・*4-2-3・*4-2-4のように、政権与党に寄付して政策を歪めることにより恩恵を受けたい企業や個人は、国会議員関係の政治団体に寄付しなくても、政党・県連・首長・地方議員等に寄付することも可能で、それが政策を歪めていないことを証明できるためには、取引の全てを網羅性・検証可能性のある複式簿記で記帳し、外部監査人の適正意見をつけて速やかに開示し、少なくとも7年間は保存する必要があるからだ。
 なお、④のように、公明党は今回の問題のきっかけとなった政治資金パーティー券購入者の情報開示基準を現行の20万円超から5万円超に引き下げるよう求め、自民党内は「特定政党との繋がりを明かしたくない人もいる」との慎重論が根強く、野党はパーティーの廃止を主張しているそうだが、金額を細かくしても従業員の名前を使って小分けすれば匿名で寄付することができるため、私は政治資金パーティーを廃止し、かわりに民主主義のコストとして国が議員秘書の数を増やし、議員個人にも相当の交付金を出すのが良いと考える。何故なら、その方が歪んだ政策に何兆円も歳出してイノベーションを止められるより、国民にとって2~3桁安上がりだからだ。
 さらに、政権与党である自民党は情報も人材も豊富な筈なのに、自民党の機関誌は共産党の赤旗のように資金源になれていない。そのため、自民党は機関誌の内容を充実して販売代金を党の収入に充てればよいと思うし、有権者や後援会員などに集まりたい人がいる場合は、飲み食いや権力の誇示が主目的のパーティーではなく、報告会や研修会を開いて集まった人の意見を吸い上げつつ、それなりの会費を徴収すれば良いと思う。そして、それは、有能な人が議員になっていれば可能であるため、議員の資質の評価にも役立つだろう。
  
    
2023.12.25西日本新聞 2023.12.18 2024.1.15静岡新聞  2024.4.20日経新聞
            読売新聞
(図の説明:1番左の図のように、「政治とカネ」問題が起こる度に政治資金規正法が限定的に改正されてきたが、正確な情報を国民に開示するという積極的姿勢はなく、この姿勢は国の予算の使い方でも同じだ。現在の政治資金の報告の仕組みは、左から2番目の図のとおり、抜け穴が多い。また、右から2番目の図のように、日本以外の先進国の公表時期は提出から「48時間以内」「20営業日以内」のインターネット公開と迅速だが、日本は翌年の秋という桁外れに遅い時期であり、これも国の決算と同じで問題である。そして、1番右の図のように、公明党が政治資金規正法改正案を出しているが、①対象を国会議員関係団体に限定した点 ②政治資金パーティーを温存した点 ③プライバシー保護として寄付者の氏名を出さない点 等が不十分である)

*4-1-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20240420&ng=DGKKZO80164480Z10C24A4EA3000 (日経新聞 2024年4月20日) 政治資金報告、デジタルに、規正法改正、与党で調整 外部監査を導入
 自民、公明両党は自民党派閥の政治資金問題を受けた再発防止策として政治資金収支報告書のデジタル化や外部監査の導入を打ち出す方針だ。政治資金規正法の改正案に盛り込むことをめざし調整する。与党で案をまとめたうえで野党と内容を詰める。公明党は19日の政治改革本部で規正法改正案の要綱を決めた。自民党幹部は来週初めにも規正法改正に向けた独自案をまとめる方針を示した。同党は当初取りまとめに慎重な見方もあった。公明党の要綱は国会議員が関係する政治団体の収支報告書のオンライン提出を義務付けると定めた。政治資金の透明性向上へ外部監査や第三者機関の活用を明記した。収支報告書の虚偽記入があった場合の対応も記した。政治団体の代表者が会計責任者の選任や監督に関して「相当の注意」を怠ったときは50万円以下の罰金を科す内容も加えた。罰金刑を受けた議員は公民権が停止され、選挙に立候補できなくなる。いずれの措置も岸田文雄首相(自民党総裁)が主張する方向性と一致する。首相は規正法の改正に関して(1)議員本人を含めた罰則強化(2)収入を含めた外部監査の充実(3)デジタル化による透明性の向上――を軸に議論を進めるよう党内に指示している。自民党幹部は首相が示す方針は与党案でも打ち出すとの見通しを示す。公明党の案のうち首相が立場を明らかにしていない項目は擦り合わせが必要になる。公明党は今回の問題のきっかけとなった政治資金パーティーを巡り、パーティー券購入者の情報開示基準を現行の20万円超から5万円超に引き下げるよう求めた。自民党内は「特定政党とのつながりを明かしたくない人もいる」などと慎重論が根強い。政党から政党幹部ら政治家に支出する政策活動費について公明党は使途公開の義務付けを主張する。自民党は使途公開を含めて反対論があがっている。立憲民主党など野党は廃止を主張する。公明党は国会議員の関係政治団体から寄付を受けた「その他の政治団体」の資金に関する透明性の確保策も盛り込んだ。国会議員関係政治団体は原則、1件1万円超の経常経費と政治活動費を政治資金収支報告書に明細まで記載しなければならない。一方で資金管理団体など「その他の政治団体」は経常経費の記載は不要で、政治活動費も1件5万円以上と基準が緩い。立民は自民党の茂木敏充幹事長の国会議員関係政治団体から別の政治団体に2022年までの10年間でおよそ3億2000万円が寄付されたと国会で追及した。新藤義孝経済財政・再生相についても同様の資金移動があり、使途の大半がわからないとただした。公明党案はこうした批判に配慮し、国会議員関係政治団体から年間で一定以上の寄付を受けた政治団体は、国会議員関係政治団体と同等の公開基準とするように要求した。次期衆院選をにらみ、透明性のハードルをあげる実績づくりを狙う。自民党はいまだ独自案をつくっていない。公明案をどこまで受け入れるかが与党案のとりまとめに向けた調整のポイントとなる。公明党の山口那津男代表は16日の記者会見で、衆院3補欠選挙の投開票日の28日までに与党の基本的な考え方をまとめるのが望ましいとの認識を示した。与党内の調整が終われば野党との協議に入る見込みだ。立民などは政策活動費の廃止や企業・団体献金の禁止など自民党にとってさらに受け入れにくい案を取り入れるよう主張する可能性が高い。与党協議に時間がかかると、それだけ野党との話し合いに残された時間が少なくなる。与党の調整のスピードは首相が掲げる今国会中の規正法改正を左右する。

*4-1-2:https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA2028W0Q4A420C2000000/ (日経新聞 2024年4月20日) 政治資金規正法改正、23日にも自民案 渡海政調会長
 自民党の渡海紀三朗政調会長は20日、政治資金規正法の今国会中の改正の実現を巡り「会期を延ばしてもいいと思う。徹底的にやるべきだ」と話した。党の兵庫県連との会合後に記者団に話した。規正法の自民党独自案については23日にも方向性を示すことになると言明した。自民案について「原則は透明性と説明責任をどう担保していくかだと思う」と言及した。会計責任者だけでなく政治家自身も処分可能にする「連座制」を例に挙げて、「公職選挙法の連座制と同じものは作れない」と述べた。「議論し国民に理解してもらい、現実の政治活動に支障がないようにやっていかないとならない」と説明した。28日投開票の衆院補欠選挙の情勢は「たいへん厳しいと聞いている」と語った。「今回の政治資金にまつわる一連の不祥事が選挙に反映されている」と分析した。

*4-2-1: https://digital.asahi.com/articles/ASS4L3GMGS4LULFA012M.html?iref=comtop_7_01 (朝日新聞 2024年4月18日) 減税の恩恵受けた企業はどこ? 政府は非開示、法人コードは毎年変更
 政策減税で毎年8兆円超の税収が減っているにもかかわらず、減収に見合った効果が得られているか検証する仕組みは整っていない。総務省は毎年秋、所管省庁が新設や期限の延長を求めている租税特別措置(租特)の効果を点検する。昨年は36項目のうち、19項目でこれまでの効果について、32項目で将来の効果について、それぞれ説明や分析が不十分だと指摘した。とりわけ昨年末に「延長」と「拡充」が決まった賃上げ減税は、過去の減税効果が示されていないなどとして、「分析・説明の内容が著しく不十分」だと厳しい評価がくだった。財務省も昨秋、有識者を交えて賃上げ減税の政策効果を検証したが、減税が賃上げに寄与しているかどうか、はっきりとは確認できなかった。こうした事態に、上村敏之・関西学院大教授(財政学)は、「減税の政策効果を検証するために必要なデータが開示されていないことが一番の問題だ」と指摘する。賃上げ減税の効果を検証するには、減税が適用されなかった企業よりも、適用された企業の方が賃上げをしていることを示さなければならない。だが、どの企業が減税の恩恵を受けているかの情報は非開示となっている。財務省が法律に基づき、租特の適用状況を毎年まとめている報告書には、項目ごとに上位10社の適用額だけは示されているが、アルファベットと6桁の数字で作る「法人コード」で表されるだけで、具体的な企業名はわからない。しかも法人コードは、守秘義務を理由に過去の実績から企業名が推測できないよう、毎年変えられている。ほかに開示されているのは、業種ごとや資本金の規模ごとにまとめた減税の適用件数や合計額にとどまる。22年度の自民党税制改正大綱では透明性を高めようと、減税を受ける大企業に対して賃上げ方針の公表を義務づけたが、具体的な賃上げ額や減税額の公表までは求めなかった。かつては、抜本的な見直しを検討した時期もあった。10年に法人税関連の租特について定めた透明化法を策定した民主党の鳩山政権は、報告書に企業の実名を記す方向で検討を進めていた。当時、財務副大臣を務めた峰崎直樹元参院議員によると、経済界や経済産業省からの強い反発にあい、党内の意見集約もできず断念したという。峰崎氏は「どの企業が減税の恩恵を受けているかわからなければ、成果が出ているかもわからず、国会の審議などで追及もできない」と話す。そこで朝日新聞が、研究開発減税の適用額上位10社について、有価証券報告書などの公表資料と照らし合わせて分析した。22年度の適用額トップ企業は、トヨタ自動車とみられることがわかった。その額は914億9925万円で、研究開発減税全体の1割強を占める。トヨタの法人コード「DI07300」は、賃上げ減税も80億5209万円で、2番目に多く優遇を受けていた。研究開発費に毎年1兆円規模を投じるトヨタは減税規模も他企業を大きく上回り、22年度までの10年間で連結ベースの減税額は累計9千億円を超える。トヨタは朝日新聞の取材に「研究開発税制は日本企業のイノベーションを加速し、競争力強化を後押しする、一つの有効な制度だ」とコメントした。しかし、トヨタ以外の上位10社を公表資料から特定することはできなかった。

*4-2-2:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/1228542 (佐賀新聞 2024/4/18) ガソリン補助金 「賢い支援」に転換急げ
 ガソリン補助金の出口が見えない。4月末に期限を迎えるが、政府は7度目の延長を決めた。
だがガソリン、灯油の価格を抑えるために投じた補助金は6兆円を超えている。持続可能性や効率の面から疑問が生じるのは当然だろう。所得、地域、業種にかかわらず一律に支援する方式から早く転換すべきだ。原油高は続いているが、財政資金は無尽蔵ではない。低所得世帯や過疎地に支援対象を絞り込んでほしい。生活を支える補助金だからこそ、効率的で長続きする「賢い支援」に切り替えねばならない。ガソリンなどの燃油価格を抑えるため、補助金が導入されたのが2022年1月のことだ。原油の国際市況が値上がりしたためで3月末までの時限措置のはずだった。しかし2月にロシアのウクライナ侵攻が始まり、資源価格は一層高騰した。ロシアのエネルギー資源を利用できなくなり、原油や天然ガスは中東、米国、オーストラリアなどからの調達に変更してきたが、円安や中東情勢の悪化の影響もあり、原油価格は依然高い。補助金は石油元売りに渡し、店頭の値段を一定水準に抑える仕組みだ。最近のガソリンの小売価格は175円程度だが、補助金がなければ200円近くになるという。生活に直結する補助金は導入よりも打ち切るタイミングが難しい。消費者にとっては負担増になってしまうからだ。縮小や廃止のタイミングをあらかじめ検討しておくべきだという意見は、導入前から政府内にもくすぶっていた。だが政府はいたずらに期限延長を繰り返してきた。ガソリン補助金は特定の業種や所得層に対象を限らない支援だけに影響も大きい。内閣支持率や選挙をめぐる思惑が働いたのだろうか。運送業の大半は中小企業であり、公共交通機関が少ない地域では家庭も車に頼らざるを得ない。ガソリン補助金は暮らしを支えてきた面がある。政府は5月の使用分を最後に、電気・ガス代への補助金を打ち切る。液化天然ガス(LNG)などの価格が落ち着いたためだという。ガソリン補助金も縮小や廃止の方向をできるだけ早く決め、車のユーザーや家庭に周知してほしい。見直しの基本は補助金の支援対象を農漁業や物流・運輸などに限定することだ。車に頼らざるを得ない地域と、交通網が張り巡らされた都市部で差があるのも当然だろう。灯油は寒冷地への支援に絞ったらどうか。零細企業や低所得層への配慮は欠かせないが、高級車に乗る富裕層には不要だ。業種の選定や所得による絞り込みの仕組みをつくるのに時間がかかるなら、一律支援の目安となるガソリン価格の水準を引き上げる移行措置を考えてほしい。補助金の規模を圧縮できるはずだ。補助金を漫然と続ければ、省エネやエコカーへの乗り換えに弾みがつかず、結果的に化石燃料への依存が続く負の効果を生みかねない。直接の恩恵が車のユーザーに限られる補助金を見直し、省エネや脱炭素を加速させる政策に財源を振り向けるべきではないか。エネルギー分野以外にも子育て、教育、奨学金など政府の手助けが必要な分野は多い。ガソリンの巨額補助金の見直しは、財政資金の公平で有効な使い道を考えることにほかならない。

*4-2-3:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20240416&ng=DGKKZO80041660V10C24A4EP0000 (日経新聞 2024.4.16) 佐賀・玄海町の核ごみ調査、地元団体が受け入れ請願
 原子力発電所から出る高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の最終処分場選定に向けた文献調査を巡り、佐賀県玄海町の飲食・宿泊などの3団体が調査の受け入れを求める請願を町議会に提出した。町によると、原発立地自治体で文献調査に関する請願が出されたのは初めてという。
町議会は今後、原子力対策特別委員会で請願を審議する予定で17日に同特別委を開く。請願を提出したのは玄海町の旅館組合と飲食業組合、防災対策協議会の3団体で、4日付で受け付けた。脇山伸太郎町長は「重く受け止めている。まずは議会での議論を見守りたい」とのコメントを発表した。

*4-2-4:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/1229932 (佐賀新聞 2024/4/20) 核のごみ最終処分場選定調査 原発立地自治体の責務か
 九州電力玄海原子力発電所が立地する東松浦郡玄海町で、地元3団体が高レベル放射性廃棄物(核のごみ)最終処分場選定に関する文献調査の受け入れを求める請願書を町議会に提出した。難問である核のごみ処分について議論をする上で「一石を投じた」意義は否定しないが、一部の請願書の「原発立地自治体の責務」という表現には強い違和感を覚える。過疎地がさらなる核のリスクを自ら背負う義務があるとは言い難い。核のごみは強い放射線を出し続けるため、国は地下300メートルより深い岩盤に埋める地層処分の最終処分場を国内1カ所に造る計画で、場所の選定を進めている。現在、北海道の寿都町(すっつちょう)と神恵内村(かもえないむら)の2町村が第1段階の文献調査に応じて作業が進み、今年2月、次の段階となる概要調査に進むことが可能とする報告書案が公表された。長崎県の対馬市議会は昨年9月、調査受け入れ促進の請願を採択したが、市長は反対し、応募しなかった。今回、玄海町議会で文献調査受け入れを求めた請願の審議は、原発立地自治体では初めてとなる。町議10人のうち過半数が賛同する見通しで、全議員で構成する25日の特別委員会、26日の本会議で採択される公算が大きい。これを受けて脇山伸太郎町長がどう判断するかが焦点となる。請願書は町の旅館組合、飲食業組合、建設業者でつくる防災対策協議会が個別に提出した。東日本大震災を経て、老朽化した玄海原発4基のうち1、2号機が廃炉となり、原発関連の作業員が減って需要が大幅に減り、コロナ禍も重なって経済的打撃を受けている現状を訴えている。長年、原発産業に依存してきた町は福島第1原発事故後、「脱原発依存」に官民さまざまに取り組んできた。原発関連施設の固定資産税収入などもあり、県内で唯一、国から地方交付税の配分を受けていない不交付団体で、町の財政は比較的安定している。文献調査を受け入れた場合、国から最大20億円が交付される。再び「原発マネー」による経済活性化の方策へと進むのが、長期的に見て地域のためになるのか。原発によらないまちづくりの障壁が何であるかはいま一度検証し、深い議論を望みたい。玄海町をはじめ、隣接する唐津市も日常的にリスクに向き合っている。原発による電力を生み出し、使用済み核燃料からの「核のごみ」を排出する責任を問われるなら、電力の大消費地である都市部にも受益者として責任の一端はあろう。立地自治体が原発の全てのリスクを背負う義務はなく、これ以上の負担を負わせるべきではないと考える。最終処分場の選定に関し、山口祥義知事は従来、玄海原発などエネルギー政策で「佐賀県は相当の役割を果たしている」と指摘し、「新たな負担を受け入れるつもりはない」と主張、県内での建設に反対の立場を示してきた。今回も同様の考えを表明している。原発に対する賛否を超えて、知事の考え方は一定支持を得られるのではないか。核のごみの放射能レベルは時間とともに減少するものの、数万年から10万年は生活環境から隔離する必要があるといわれている。当該世代はもちろん、人類として予測が難しい時間軸である。文献調査受け入れが最終処分場候補地決定とすぐになるわけではない。地震が頻発する日本列島でもある。今回の一石を重く受け止め、長期的に向き合わざるを得ない原発のありようをあらためて考える機会にもしたい。

<賢くない支出から賢い支出へ>
PS(2024年4月24、25、26、27《図》日追加):*5-1-1は、①民間事業者から大型投資に向け、政府側により長期の計画策定を求める声があり、経産省は2035年脱炭素目標の先の電源構成の議論を始めて2024年度中に2040年度の構成を定める ②太陽光・風力といった再エネと原子力の活用が主要な論点 ③「エネルギーへの投資の難しさは将来どの技術が伸びてくるかが分からないところ」と水素事業に携わる国内大手商社幹部が指摘 ④国内では再エネが急速に普及する一方、石炭等の火力発電が主力電源として残る ⑤太陽光・風力発電の出力制御で都内の再エネ事業者から「原発再稼働を見通せず、出力制御される再エネは投資判断が難しくなった」という声も ⑥日本の電源構成は2022年度実績で脱炭素電源は再エネ21.7%、原子力5.5% ⑦政府の現行エネルギー基本計画は2030年度に再エネ36~38%、原子力20~22%に増やす目標 ⑧菅政権時に日本は2050年までにCO₂等の温暖化ガス排出を実質ゼロにする目標を表明 ⑨政府は再エネ・原発への投資や新技術開発が進むよう制度を整えて支援に乗り出してきた ⑩電力投資は大規模で投資回収は数十年単位で考える必要があるが、2050年の脱炭素社会に向けた具体的な数値目標や電源構成が不透明な現状では将来の利益を見通せず、再エネ事業者も原発事業者も新たな投資を決断しづらい ⑪天然資源に乏しい日本でこのまま脱炭素が進まない状態を放置すれば、エネルギー安全保障の観点でも問題が生じる ⑫現在、電源の7割を頼る火力発電に使う石炭などの化石燃料は多くを輸入に依存 ⑬太陽光や風力の発電に用いる中核部品も中国や欧米企業の製品に頼らざるを得ない ⑭再生エネの新技術に関する国内産業を育成し、供給網を強化して、輸入に過度に依存しない体制を整える必要 ⑮原発の再稼働や新増設に道筋をつけることも欠かせない ⑯再エネ新技術では日本発のペロブスカイト型太陽電池や浮体式洋上風力発電があり、政府は明確な目標設定を年度内に検討 ⑰原発の再稼働や新増設を促す追加策も不可欠 ⑱政府はこうした背景を踏まえて2040年度電源構成を含めた長期見通しを示して民間投資を後押しする狙い 等としている。
 しかし、②⑨⑮⑰⑱は、CO₂という温暖化ガスを排出しないという1点のみで再エネ発電と原子力発電を同一視し、「地球温暖化対策に貢献する」として意図的に読者をミスリードしている点が、大きな間違いである。何故なら、地球温暖化対策なら、もともとはなかったところに膨大な熱エネルギーを発生させ、余った熱エネルギーを海に捨てている原発は、地球温暖化防止に貢献するどころか温暖化を促進しているからである。一方、太陽光・風力等の再エネ発電は、地球にもともと存在するエネルギーを熱エネルギーに変換させずに電力に換えているため、本当に地球温暖化防止に貢献しているのである。また、⑩については、投資が膨大で数十年どころか数万年かかっても政府補助がなければ廻らないのは原発だけであり、太陽光・風力等の再エネは、⑤のように、原発再稼働で出力制御されなければとっくに採算がとれ、規模拡大すれば安価にもなるからだ。さらに、⑪のように、馬鹿の一つ覚えのように「日本は天然資源に乏しい」と主張する人が多いが、日本には太陽も当たらず、風も吹かず、水流もないとでも言うのだろうか?
 そして、エネルギー安全保障は、③④⑫のように、化石燃料を他国より高い値段で輸入し続け、水素でさえ輸入しようとし、その負担は国民に押しつければよいと考えてきた大手商社や政府(特に経産省)に問題があるのであり、安全保障全体から見ても武力行使されれば無防備な原発を北西の風が多い日本海側に並べておくなどもってのほかなのだ。
 そのため、政府が、⑥⑦のように、現在は5.5%しかない原子力発電を2030年度に東日本大震災前と同じ20~22%に増やす目標をたて、⑧の「2050年までのCO₂等の温暖化ガス排出を実質ゼロ」に関して故意に目的をすり替え、①⑱のように、民間事業者からの原発への大型投資を促すなどというのは国民不在の無責任な態度でしかない。もともと太陽光発電は日本発の技術で日本がトップランナーだったのに、政府やメディアが逆風を吹かせた結果、⑬のように、中核部品を中国や欧米企業の製品に頼らざるを得ない羽目になったのである。その上で、⑭のように、再エネの新技術に関する国内産業を税金を使って育成し、供給網を強化し、輸入に過度に依存しない体制を整えるのでは、国債残高ばかりが膨らんで経済は停滞するのが当然だ。なお、⑯の日本発ペロブスカイト型太陽電池は、ビルや住宅に自然な形で組み込まれるように、最初は補助金をつけてでも普及させるべきで、決してシリコン型太陽光発電機器の二の前にするべきではない。また、浮体式洋上風力発電も風レンズ風車や養殖施設併設型等の工夫された付加価値の高い日本発の機器があり、電気は創って使う時代になりつつあるため、政府は「省庁や大企業の既得権維持」という狭い視野ではなく、省庁の枠を越えたイノベーティブな判断をすべきである。
 つまり、分散発電を推進しつつ、発電された電力を特定の場所に集めるには、*5-1-3の耐用年数40年を過ぎた水道管更新時に、耐震化しながら、電線を地中化し、各建物で発電された電力を集めれば良いし、ここに国費を投入すれば賢い支出になる(ただし、この頃、“節水”と称して水の勢いを弱くする蛇口が多いが、これは、掃除や食器洗いに必要な水の分量が同じである以上、タイパ(タイムパフォーマンス)を悪くして、人を疲れさせるだけである)。このようにして各地で集めた電力を遠くへ送電するには、*5-1-2のように、いつまでも「開かずの踏切」のままにして国民の生産性を下げている鉄道を高架化し、そこに送電線も通して、運賃と同時に送電料も取れるよう投資すればよい。つまり、既にある連続した土地を、管轄する省庁を問わずに共用できれば、それぞれを安価に改良することができ、賢い支出になるのである。
 なお、原発は、*5-2-1・*5-2-2のように、地震の多い日本では危険な施設であり、原発が事故を起こせば取り返しのつかないことになるのは明らかだ。そのため、いつまでも国の膨大な補助金がなければ廻らない危険施設は、早急に廃止するのが国民のためであり、何度も同じ事故が起きなければそれを理解できないということは、まさかないだろう。
 原発については、電源立地地域対策交付金・広報・調査等交付金・核燃料サイクル交付・原子力発電施設等立地地域基盤整備支援事業交付金・原子力発電施設等立地地域特別交付金・福島特定原子力施設地域振興交付金・エネルギー構造転換理解促進事業を活用した事業・原子力発電施設立地地域共生交付金(運転年数30年超の原子力発電施設が所在す道県へ)・原子力発電施設等周辺地域企業立地支援事業等、多くの補助金が支払われている上、原発の維持管理のために多数の人を雇っており、これが立地地域・周辺地域や経産省にとって既得権となっているが、これらの財源は、国民が支払った税金と電気料金である(https://www.enecho.meti.go.jp/committee/disclosure/dengenkoufukin2/ 参照)。
 そのような中、*5-3-1のように、佐賀県玄海町の町内3団体は、それだけで国から20億円の文献調査交付金が交付される「文献調査」を求める請願書を町議会に提出したが、この交付金も税金で国民が負担していることを忘れてはならない(https://digital.asahi.com/articles/ASP1H6V6ZNDTIIPE01R.html 参照)。そこで、*5-3-2は、⑲佐賀県玄海町議会は原発から出る高レベル放射性廃棄物最終処分場選定の文献調査受け入れを求める地元3団体の請願をスピード採択する ⑳人口約4900人の玄海町は今年度当初予算約100億円の6割を原発関連収入が占め、佐賀県内唯一の「不交付団体」で財政に窮してはいない ㉑賛同町議は「原発立地自治体として責任を果たさなければいけない」「原発自治体で真っ先に手を挙げたかった」と語り、全国の原発立地自治体の手挙げに繋がることを期待 ㉒町旅館組合・町飲食業組合・町内の建設業者で作る町防災対策協議会は、請願理由を「原発立地自治体の責務」「文献調査での地質の把握」とした ㉓反対派町議は「文献調査は原発立地自治体の責務ではない」と反発 ㉔町民には反発の声が広がらず、町議会前で「危険原発と永久処分場」等ののぼりを掲げたのは、佐賀県唐津市や福岡市など町外の4人だった と記載している。
 このうち、⑳については、現在の佐賀県玄海町は原発関連収入で「不交付団体」となっており、財政に窮してはいないものの、原発が廃止され、原発から出る高レベル放射性廃棄物が他の自治体の最終処分場に移されれば、原発の雇用・旅館宿泊・飲食・建設ニーズをはじめ原発関連の交付金もなくなるため、⑲㉑㉒のように、町旅館組合・町飲食業組合・町内建設業者などの地元3団体が「原発立地自治体の責務」「文献調査での地質の把握」等として請願を行ない、スピード採択に至るのだと思われる。それで、㉓のような町内の声が広がらない理由は、「原発は危険で、自分にはメリットがない」と感じる人は既に町外に引っ越しており、玄海町に住んでいる殆どの人は原発によるメリットを受けているためで、㉔のように、町議会前で「危険原発と永久処分場」等ののぼりを掲げたのは、危険性と負担を押しつけられる割にはメリットの少ない唐津市・福岡市など町外の人だ。が、事故時の汚染地域の広さや原発の維持管理・最終処分の負担を考えれば、狭い立地地域の判断のみで原発の立地・維持管理・最終処分場の誘致を決めるのはむしろ問題なのである。
 しかし、既に大量に存在する使用済核燃料や廃炉時に出る高レベル放射性廃棄物の最終処分場は速やかに決めるべきであり、最終処分場は人間の生活環境から遠く離れ、酸素が少なく物質が変化しにくいという理由で、地表から300m以上深い地層に処分することに、現在は、なっている。が、地表から300m以上深い地層に処分すれば全く管理不要というわけでもなく、施設の建設費やその維持管理費はかかるため、有人島も含めて合計14,121の離島がある日本の場合は、人間の生活環境から300m以上離れ、漁業等に支障の無い無人島を使った方が施設の建設費や維持管理費がずっと安価ですむと、私は思う。そして、都道府県別の離島数は、1位長崎県1,479(うち無人島1,407)、2位北海道1,472(うち無人島1,466)、3位鹿児島県1,256(うち無人島1,225)等であり、このうち長崎県対馬市は昨年4月に調査受け入れを求める地元の動きがあり、市議会が同9月に請願を採択したが、対馬市は国境離島であるとともに漁業も盛んな地域であるため、私も対馬市長と同様、もったいないし不向きだと思っていた。しかし、漁業等に利用されておらず、本土に近い無人島なら適地は多く、建設コストを最小にするには、(石炭はもう使わないため)軍艦島のような既に放棄された地下施設のある場所が良いと思われる。
 そして、原発はこれだけ多くの問題を抱えているのに、*5-4は、㉕政府は2035年頃までの最大10年間の計画のうち前半の2024年度からの5年間で200億円を核融合研究に投じる ㉖従来はトカマク型という大型炉に特化してきたが、今後はレーザー方式など複数方式の支援も手厚くする ㉗2035年までに原理実証して2050年頃の実用化を目指す ㉘文科省は「発電に限らず、ロケットエンジン向けや熱利用等の様々な用途への応用を視野にチームを作る」とする ㉙核融合はCO2が発生せず、1gの燃料から石油8t分のエネルギーを生み出す ㉚実用化できれば脱炭素を進めながら生成AIやEV普及に伴う電力消費の急増に対応しやすくなる ㉛核融合により放出エネルギーが投入エネルギーを上回る「エネルギー純増」が2022年に世界で初めて達成された ㉞半世紀以上の研究の歴史があるが未だ実用化できていない 等としている。
 核融合・核融合と言う人は多いが、㉞のように、半世紀以上研究しても未だ実用化できない技術が、㉗のように、2050年頃には実用化でき、㉚のように、生成AIやEV普及に伴う電力消費の急増に間に合って役立つとは思えない。アメリカは、広い砂漠があり、リスクをとって実験することもでき、科学的論理性に長けた国であるため、原爆・原発・ロケット・コンピューター・インターネット・AI・バイオ医薬品等も世界で最初に開発した国だ。そのため、㉖のように、核融合原発も開発・実用化することが可能かも知れないが、アメリカで開発された核分裂型の原発を猿マネして地震・津波の多い日本でそのまま使い、大変な事故を起こしたのがフクイチ原発事故である。さらに、核分裂を使う現在の原発でさえ、暴走し始めると人間の手には終えずに広い範囲に迷惑をかけまわっているのに、㉛のように、放出エネルギーが投入エネルギーを上回る核融合原発が暴走したらどうなると思っているのか。また、㉘のようにロケットエンジンに核融合を使って、打ち上げに失敗したら地球の広い範囲が汚染されるが、これらもまた、安全神話と“風評被害”で乗り切るつもりだろうか。さらに、㉙は、核融合はCO₂が発生せず、1グラムの燃料から石油8トン分のエネルギーを生み出すとしているが、発生する莫大な熱エネルギーを冷やした熱は地球を暖めないとでも言うのか。つまり、ここまで非科学的・非論理的な日本という国が、㉕のように、核融合研究に数百億円投じても無駄使いになるだけなのである。そして、その数百億円は、ただでさえ足りない高齢者の医療・介護保険制度から流用する金額より大きいのだ。

    
   2023.8.1東京新聞    2018.4.19朝日新聞 2024.4.22佐賀新聞
                                2023.2.14福井新聞

(図の説明:1番左の図のように、既に使用済核燃料貯蔵率の高い原発が多い上、それを水中で貯蔵して冷却する使用済燃料貯蔵プールは原発に近い高い位置にあるため、地震によるひび割れや倒壊の危険性が高い。また、左から2番目の図のように、現在、高レベル放射性廃棄物の最終処分場は、ガラス固化体にして金属容器に入れ、人が近づかない地下300m以深に保管する形が好ましいとされており、右から2番目の図のように、北海道寿都町・神恵内村と佐賀県玄海町が国から20億円の交付金が得られる文献調査を受入れているが、1番右の図のように、日本には本土から300m以上離れた離島(無人島も)は多く、無人島から入る形で海底の地下に最終処分場を建設すれば300m以深である必要は無いため、安価で維持管理もしやすいと思われる)

*5-1-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20240416&ng=DGKKZO80041590V10C24A4EP0000 (日経新聞 2024.4.16) 再エネ・原発 拡大どこまで、30年度目標、達成なお遠く 電源構成で道筋示す
 経済産業省は国際公約となる2035年の脱炭素目標のさらに先を見すえた電源構成の議論を始める。24年度中に40年度の構成を定める。民間事業者からは大型投資に向け、政府側により長期の計画策定を求める声があった。太陽光や風力といった再生可能エネルギーと原子力の活用が主要な論点となる。「エネルギーへの投資の難しさは将来どの技術が伸びてくるかが分からないところにある」。水素事業に携わる国内の大手商社幹部は現状の課題を指摘する。日本国内で再生エネが急速に普及する一方で、石炭などの火力発電は主力電源として残る。太陽光や風力による発電を止める出力制御が問題となり、都内の再生エネ事業者からは「原発の再稼働を見通せず、その調整弁として出力制御される再生エネは投資判断が難しくなっている」といった声も聞かれる。日本の電源構成は22年度の実績で、脱炭素につながる電源は再生エネが21.7%、原子力が5.5%にとどまる。現行の政府のエネルギー基本計画では30年度に再生エネを36~38%、原子力を20~22%に増やす目標をかかげる。達成までの道のりは遠い。前の菅義偉政権時代に日本は50年までに二酸化炭素(CO2)など温暖化ガスの排出を実質ゼロにする目標を表明した。政府は再生エネや原発への投資、新技術の開発が進むよう制度を整え、支援に乗り出してきた。それでも、現場には脱炭素への機動的な投資に踏み出しにくい構図が残る。電力への投資は大規模で、投資回収は数十年単位で考える必要がある。50年の脱炭素社会に向けた具体的な数値目標や電源構成が不透明な現状では、将来の利益を見通せず、再生エネ事業者も原発事業者も新たな投資を決断しづらい。天然資源に乏しい日本でこのまま脱炭素が進まない状態を放置すれば、エネルギー安全保障の観点でも問題が生じると指摘される。足元で電源の7割を頼る火力発電に使う石炭などの化石燃料は多くを輸入に依存する。太陽光や風力の発電に用いる中核部品も中国や欧米企業の製品に頼らざるを得ない。再生エネの新技術に関する国内産業を育成し、供給網を強化して、輸入に過度に依存しない体制を整える必要がある。原発の再稼働や新増設に道筋をつけることも欠かせない。再生エネの新技術では、日本発の曲がるほど薄い新型太陽電池「ペロブスカイト」や、深い海域にも設置できる浮体式の洋上風力発電などがあげられる。国土が狭いため、既存の太陽光や風力の平地での適地が限られる日本において、再生エネ拡大の切り札とされる。政府はペロブスカイトや浮体式洋上風力といった新技術に関しても、明確な目標設定を年度内に検討する。原発の再稼働や新増設を促す追加策も不可欠となる。政府はこうした背景をふまえ、40年度の電源構成を含めた長期見通しを示して民間投資を後押しする狙いだ。

*5-1-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20240416&ng=DGKKZO80024680V10C24A4TLH000 (日経新聞 2024.4.16) 開かずの踏切 解決の道険し、立体交差に費用と時間
 遮断機が下りた時間が長い「開かずの踏切」が、なかなか解消されない。都市部では過密ダイヤでラッシュ時にほとんど開かない状態が続く。遮断時間が長いと通勤通学や物流など交通の障害となるうえ、事故にもつながる。開かずの踏切の現状と解決策をグラフィックスで探る。開かずの踏切とは、朝晩など混み合う時間帯に1時間のうち40分以上閉まっている踏切を指す。国土交通省によると全国に539カ所あり、東京都に288カ所、大阪府に81カ所、神奈川県に76カ所など大都市圏に集中している。最も遮断時間が長いのは、京急線品川駅近くの踏切(東京・品川)で58分。京王線明大前駅(同・世田谷)でも57分と、1時間で3分しか開かない。関西ではJR阪和線鳳(おおとり)駅(堺市)や近鉄大阪線長瀬駅(大阪府東大阪市)が52分。愛知県では近鉄名古屋線蟹江駅(蟹江町)で51分だ。愛知では踏切による渋滞が激しい場所が多い。開かずの踏切は、通勤通学や物流に大きく響く。緊急車両の通行にも支障をきたす。渋滞が続けば二酸化炭素(CO2)排出量も増える。踏切待ちによって発生するトータルの経済損失は年間1兆5000億円との試算もある。世界の主要都市と比べ、東京の踏切の多さは突出している。東京23区の踏切は米ニューヨークの約13倍、パリの約90倍だ。全国には3万2000超あり、踏切大国で知られるインドと同水準だ。欧米では早くから馬車が発達したため、鉄道は建設当初から高架上を走り、踏切は少ない。解決策は限られる。鉄道か道路を高架化・地下化して立体交差にするのが抜本策だが、莫大な費用と時間がかかる。3月には東京都が開かずの踏切が最も多い西武鉄道の一部区間での立体交差事業に着手したが、完成は13年後。事業費は2660億円を見込む。解消への道のりは遠い。

*5-1-3:https://www.yomiuri.co.jp/editorial/20240314-OYT1T50009/ (読売新聞社説 2024/3/14) 災害時の断水 水道管の耐震化なぜ進まない
 大きな地震が起きるたびに、老朽化した水道管が損傷し、断水が繰り返されている。各地で遅れが目立つ水道管の耐震化を急がねばならない。能登半島地震で大きな被害が出た石川県の奥能登地方では、今も断水が続いている。住民は食事や衛生面で不便を強いられ、病院などの運営にも支障が出ている。石川県の水道管の耐震化率は36%で、全国平均の41%よりも低い。街の中心部だけでなく、山あいに点在する集落につながる水道管も至る所で破損し、復旧に時間がかかる要因となっている。道路の寸断で、復旧にあたる作業員も現場到着に困難を極めた。今回の断水は、ひとたび水道網が破壊されたら、容易には立て直せないことを浮き彫りにした。日本の水道網は、高度経済成長期に集中的に整備され、現在では耐用年数の40年を過ぎた水道管も多い。国は、地震が起きても壊れにくく、つなぎ目が外れにくい水道管への更新を推奨しているが、切り替えが進んでいない。水道事業は主に市町村が担っている。人口減や節水技術の向上で料金収入が減る一方、住民の負担になる大幅な値上げは難しく、各地で苦境にある。水道管の更新費用も捻出できない状況だ。道路や 橋梁きょうりょう なども老朽化が深刻だが、水の確保は人の命にかかわる。地震は今後も、いつどこで起きるかわからない。水の安定供給を維持するためには、各自治体がいかに水道事業の効率化を図り、財政基盤を強化できるかがカギを握る。香川県は2018年、県内ほぼ全域の水道事業を統合した。業務の一元化で経費を削減し、設備の更新費用などに充てている。組織の規模を生かし、災害時には早急な人員派遣も可能になる。宮城県は水道事業の運営を民間に委託している。各地域で実情に見合う方法を検討してほしい。限られた予算を有効に活用するためには、どのエリアから水道管の耐震化を進めていくのかという判断も重要になる。大阪府堺市は、災害時に避難所となる学校や、被災者を受け入れる病院に水を送る水道管を優先的に耐震化している。福島県会津若松市は、AI(人工知能)で水道管の劣化度を調査し、その結果を基に更新の順番を決めている。水道行政は4月、厚生労働省から、道路を担当する国土交通省に移管される。道路工事の際、水道管の耐震化も併せて行うなど、一体的な整備につなげるべきだ。

*5-2-1:https://digital.asahi.com/articles/ASS4K7RSNS4KULBH00ZM.html (朝日新聞 2024年4月18日) 地震後に伊方原発3号機の出力2%低下、規制庁「安全には影響ない」
 四国電力は18日、前日夜に発生した豊後水道を震源とする最大震度6弱の地震後、運転中の伊方原発3号機(愛媛県伊方町)の発電機出力が約2%低下したと発表した。地震の影響とみられる。原子力規制庁によると、安全への影響はないという。四国電によると、3号機では水平方向に33ガル(ガルは揺れの勢いを示す加速度の単位)を観測したが、自動停止する設定値190ガルを下回ったため、運転を継続している。17日夜の地震後、タービンに送る蒸気の加熱装置のタンクの水位計に不具合があり、発電効率が落ちたことで発電機出力が下がったという。四国電が原因を調べている。廃炉作業中の1、2号機に異常はないという。

*5-2-2:https://mainichi.jp/articles/20230110/k00/00m/040/069000c (毎日新聞 2023/1/10) 南海トラフ地震後 1週間以内のM8級、発生率は100~3600倍
 近い将来起きる可能性の高い「南海トラフ地震」が発生すると、さらに続けて巨大地震が起きる確率は平常時より大きく高まり、1週間以内の場合は100~3600倍になるなどとする試算結果を、東北大と京都大、東京大の研究チームが10日付の国際学術誌「サイエンティフィック・リポーツ」に発表した。チームによると、これまで連続発生する確率の具体的な試算はなかったといい、連続発生を想定した備えが重要だと指摘している。太平洋側の駿河湾から日向灘にかけて延びる海底地形の南海トラフ沿いでは、100~150年間隔で巨大地震が繰り返し発生している。近代では、1944年の昭和東南海地震の2年後に南海地震が起きた。また、1854年には安政東海地震の約32時間後に南海地震が発生したことを示す記録が古文書に残る。このように、トラフ沿いの異なる場所を震源域とする巨大地震が連続する傾向がある。一方、1707年の宝永地震のように、震源域が分かれずトラフ一帯が震源域となった事例もある。福島洋・東北大災害科学国際研究所准教授(地震学)らは、地震の国際的な統計にある巨大地震の連続発生事例と、過去の南海トラフ地震のうち確度が高い1361年以降の履歴を基に、南海トラフ地震が連続発生する確率を最初の地震からの経過時間別に試算した。その結果、地震の規模を示すマグニチュード(M)8級の巨大地震が連続発生する確率は、最初の地震から6時間以内=1~53%(平常時の1300~7万7000倍)▽1週間以内=2・1~77%(同100~3600倍)▽3年以内=4・3~96%(同1・3~29倍)――となった。数値の幅が広いのは、地震の履歴が多くないためという。気象庁は、南海トラフ地震の想定震源域でM6・8以上の地震が発生し、それに連続して「後発」の巨大地震発生の可能性が高まったと評価した場合、「南海トラフ地震臨時情報」を発表して警戒を促すことにしている。研究結果について福島さんは「連続して発生する確率は時間を変えてもさほど上昇しておらず、地震直後に起きる可能性が高いことが示された。臨時情報への対応の必要性を裏付けるもので、迅速な対応ができるよう日ごろからの備えや訓練が重要だ」と話している。

*5-3-1:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/1230734 (佐賀新聞 2024/4/22) <玄海町核ごみ請願>住民説明会なくスピード採決へ 町議ら「原発政策、町民は理解」
 原発から出る高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の最終処分場選定を巡り、玄海町の町内3団体が町議会に提出した「文献調査」を求める請願書は、25日に議会特別委員会で採決される。調査を受け入れた北海道の2町村では、町や議会の判断前に住民説明会を開催している。玄海町では今のところ予定はなく、「原発政策を町民は理解していて、説明会をやる必要はない」との意見もある。原発立地自治体ならではのスピード感で判断へ進もうとしている。原発が立地する自治体で調査に向けた具体的な動きが出たのは今回が初めて。先行する北海道の寿都(すっつ)町と神恵内(かもえない)村も、原発とは無縁ではなく、共に北海道電力の泊原発の30キロ圏にある。町に応募の意思があった寿都町は町主催で説明会を開催。神恵内村は商工会が請願を村議会に提出し、議会側の求めで、国や原子力発電環境整備機構(NUMO)が説明会を開いた。神恵内村の担当者は「原発との長い付き合いから安全性もリスクも浸透しているが、地層処分はあまり知られていなかった」と振り返る。2020年当時、村の人口は800人弱で、4地区で計5回の説明会に267人が参加。ほとんど反対意見はなく、それも参考に議会で採決されたという。議会での審議は、委員会への付託から2週間強の期間で行われた。それに対し玄海町では、委員会付託から10日間で採決される見通し。説明会の予定はなく、17日の特別委員会でも早期開催を求める意見は出なかった。特別委の岩下孝嗣委員長は17日の審議終了後、「私たちは町民から付託を受けており、大多数の理解は得ていると思う」と話した。前副町長で区長会会長を務める鬼木茂信さん(73)は、1980年代から延べ数千人の町民が使用済み核燃料の再処理工場の建設が進む青森県六ケ所村などを視察していることを引き合いに「(事業の)中身は分かっていて、町民からあえて説明会を、という声は上がらないかもしれない」と推測する。採決前に説明会を開く必要性について脇山伸太郎町長は「委員会が判断することで、コメントできない」と述べるにとどめた。市長が文献調査を受け入れなかった長崎県対馬市では、推進派、反対派それぞれから請願が出された経緯がある。文献調査に反対している宮﨑吉輝町議は「関心があれば反対請願も出るはず。町民は『もう言っても一緒』と思っているのかもしない」と厳しい表情を見せる。町内の男性(86)は、国が2017年に公表した処分場の適性を示す科学的特性マップで町周辺が「好ましくない地域」に分類されていることを挙げ「(議会は)町民から選ばれているとはいえ、対応が早すぎる」と批判。「せめて町長には多くの町民の声を聞いてほしい」と訴える。

*5-3-2:https://digital.asahi.com/articles/DA3S15918448.html (朝日新聞 2024年4月23日) 「20億円ほしいわけでは」「原発立地自治体の責任」 核ごみ文献調査、賛同の佐賀・玄海町議は
 原発から出る高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の最終処分場選定をめぐり、佐賀県玄海町議会は25日、文献調査受け入れを求める地元3団体の請願を特別委員会で採決する。九州電力玄海原発が立地する町での議論は、請願の背景、採決までのスピード、少ない町内の反発など、これまで文献調査を議論したどの自治体とも違う異質の展開となっている。現在、国内で文献調査に応じたのは、北海道の寿都(すっつ)町と神恵内(かもえない)村だけ。長崎県対馬市では昨年4月に調査受け入れを求める地元の動きが表面化し、市議会は同9月に請願を採択したが、市長が同月拒否して頓挫した。これら3市町村に共通するのは、財政難に悩む自治体事情だ。文献調査を受け入れて国から20億円の交付金を得られることの是非も問われた。一方、人口約4900人の玄海町は今年度の当初予算約100億円のうち6割を原発関連収入が占め、貯金に当たる基金は187億円(2022年度末)ある。佐賀県内で唯一、財政が豊かとされる「不交付団体」だ。「20億円がほしくて手を挙げたわけじゃない。冗談で、資源エネルギー庁に20億円いらんと言ったら(先方は)なんと言うやろ、と同僚議員とも話した」。町議の1人はこう明かす。「原発立地自治体として、責任は果たさないといけない。全然、関係なかところに処分場つくるわけなかやん。だから原発自治体で真っ先に手を挙げたかった」とも語り、全国の原発立地自治体の手挙げにつながることを期待した。実際に、請願文の内容もこの町議の考えと重なる。請願は、町旅館組合と町飲食業組合、町内の建設業者11社でつくる町防災対策協議会が1~3月に提出。請願の理由を「原発立地自治体の責務」「能登半島地震があり、九州でも地震が偶発的に発生している。玄海原発の立地の安全を再確認するためにも、文献調査で地質を把握することが必要」などとした。
■「反対活動、町で数人だけ」
 反対派の町議は「文献調査は原発立地自治体の責務じゃない」と反発。請願の根拠のおかしさを指摘した。「文献調査で原発の安全を再確認する」との請願については、推進派の町議からも「これでいいのかと思う部分はあるが、思いは伝わるのでは」との声が漏れる。国が17年に公表した「科学的特性マップ」でも、玄海町は、地下に石炭があり、ほぼ全域が「好ましくない」地域に分類されている。ほぼ全域が「好ましい」地域だった対馬市や寿都町とは対照的だ。それでも町民の間では反発の声が広がっていない。17日、町議会前で「危険原発と永久処分場」などののぼりを掲げたのは、佐賀県唐津市や福岡市など町外の4人だった。玄海町は、プルトニウムとウランをまぜた核燃料を使うプルサーマル発電を国内で初めて認めたほか、福島第一原発事故後に原発の運転再開を全国で初めて認めた自治体だ。原発反対派の80代の町民男性は「今、町内で表だって原発反対の活動に参加できるのは2、3人だけ」と明かす。朝日新聞の取材では、町議全10人のうち7人は文献調査に賛成している。特別委のメンバーは議員全員で、25日の特別委、翌26日の本会議ともに、請願は採択される見込みだ。町議会で請願が付託され、一連の動きが表面化した15日からわずか10日での採決となる。町議会が請願を採択すれば、脇山伸太郎町長の受け入れ判断が問われることになる。脇山町長はこれまで「町のほうから調査に応募する考えはない」と文献調査に慎重だったが、賛成派の町議は「『議会の意見を聞いて判断する』と言っている。変わってきた」と自信をにじませる。 

*5-4:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20240423&ng=DGKKZO80188840S4A420C2TJK000 (日経新聞 2024.4.23) 核融合 複数方式を支援へ、政府、まず5年で200億円 発電への道進む後押し
 政府は核融合の研究に2024年度からの5年間で約200億円を投じる。従来はトカマク型という大型の炉に特化してきたが、今後は米国で研究が進むレーザー方式などほかの炉型の支援も手厚くする。35年までに原理実証し、50年ごろの実用化を目指す。日本発の破壊的イノベーション創出を目指す大型研究開発プロジェクト「ムーンショット型研究開発制度」に核融合発電が加わり、3月から研究テーマの募集を始めた。6月に締め切り、支援対象を決める。今回の研究支援は35年ごろまでの最大10年間の計画で、前半5年間で200億円を投じる。文部科学省の担当者は「発電に限らず、ロケットエンジン向けや熱利用など様々な用途への応用を視野にチームをつくる」と話す。核融合発電は太陽の中で起きている反応を再現する。燃料をセ氏約1億度のプラズマ状態にして、原子核をくっつけたときに発生するエネルギーを発電に利用する。二酸化炭素(CO2)が発生せず、1グラムの燃料から石油8トン分のエネルギーを生み出す。実用化できれば、脱炭素を進めながら、生成AI(人工知能)や電気自動車(EV)の普及に伴う電力消費の急増に対応しやすくなる。半世紀以上の研究の歴史があり、日米欧など主要国の多くは核融合を実現している。ただ、小規模かつ一瞬にすぎない。発電に結びつけるには、高温のプラズマを長時間にわたって安定して維持するために、高温や放射線に耐える材料の開発などが必要になる。従来、日本では磁力を使って核融合を制御する「磁場閉じ込め方式」のトカマク型を中心に支援してきたが、最近注目が高まっているレーザー方式などの研究も募る。トカマク型はドーナツ状の炉の周囲に強力な磁力を流してプラズマを制御する。装置は大型になるが安定して電気を送れる。トカマク型の国際熱核融合実験炉(ITER)は日米欧中などが協力し、フランスで07年に建設が始まった。投入量の約10倍のエネルギーの取り出しを目指すが、発電しない。日本はITERの成果を生かした原型炉の開発を目指してきた。核融合実験装置「JT-60SA」の運転を23年に始めたが、発電する原型炉の完成は50年ごろだ。欧州も同時期の発電目標を掲げるが、より早期の実用化を目指した動きが海外で活発になっている。英国は40年までに発電できる原型炉を建設する計画で、中国は発電能力を備えた試験炉「CFETR」の建設に着手しており、40年代に発電実証する。民間では米国などのスタートアップが多額の資金を投資家から集めて、30年代の発電を目指す。米コモンウェルス・フュージョン・システムズは、ITERに比べて体積が40分の1ほどのトカマク型発電炉を計画している。ビル・ゲイツ氏などが出資し、調達額は20億ドル(約3000億円)超と最大だ。民間企業で初めてセ氏1億度のプラズマを達成した英トカマク・エナジーなどもある。有力な技術として急浮上したのが、レーザー方式だ。燃料の液滴を四方八方からレーザーで一気に圧縮・加熱し、核融合を起こす。出力の調整や小型化がトカマク型よりも容易だ。世界をリードするのは米エネルギー省傘下のローレンス・リバモア国立研究所だ。放出されるエネルギーが投入エネルギーを上回る「エネルギー純増」を22年に世界で初めて達成した。レーザーを的確に液滴に当てて核融合を起こす技術に優れている。同研究所のジョン・エドワーズ研究顧問は「企業などと協力して30年代には発電も含めた要素技術を実験するプラントを造りたい」と話す。エクスフュージョン(大阪府吹田市)はレーザーに強い大阪大学の技術をもとに、30年代の発電の実証を目指す。一方、安定した発電には高出力のレーザーを1秒間に10回程度照射する必要があり、開発は道半ばだ。もう一つ注目されているのは、磁場閉じ込め方式の一種である「磁場反転配位型」と呼ばれる手法だ。中性子が出ず、安全性がより高いという。この手法で世界をリードするのが米ティーエーイー・テクノロジーズで、グーグルや住友商事などが出資し、累計調達額は12億ドルを超える。日本では日本大学と筑波大学発スタートアップであるリニアイノベーション(東京・港)が開発に取り組む。いずれの方式も一長一短があり、これから開発競争が本格化する。

<高齢者・障害者を差別するのが解決策である筈がない>
PS(2024年5月31日追加):*6-1は、①2019年4月に池袋で高齢ドライバーの車が暴走して11人が死傷した事故で妻子を亡くした松永さんら遺族が5月29日に運転していた飯塚受刑者(92歳)と面会した ②飯塚受刑者は「早く免許を返すように伝えて下さい」とした ③松永さんは、「こうならない未来はなかったのか」と改めて悲しみを覚えた ④高齢者の免許返納後の移動支援等、再発防止体制を社会全体で考えてほしいと語った としている。
 結論から言って、私は、高齢ドライバーの車が起こした事故で妻子を亡くしたからといって、すべての高齢者の運転を禁止する権利はないと思っている。理由は、i)生物年齢と老化の進捗は人によって異なる ii)自動車免許は遊びで持っているのではなく、運転禁止は仕事からのリタイアや外出禁止と同じ効果になる人が多い iii)仕事からのリタイアや外出禁止は、高齢者の生活権を奪い、社交を封じて健康を害させ、認知症を増やす などである。そのため、池袋での事故から現在まで、裁判を通して、①②③のように、高齢者の運転が悪いことででもあるかのような世論形成がなされたのには大きな違和感を感じた。そのような中、高齢者・障害者の運転を禁止せず生活権や移動権を守りながら交通安全を保つ方法は、*6-2のような自動運転技術であるため、その方向に頭を使って欲しい。自動運転技術を進化させた中国は、*6-3のように、自動車だけでなく道路や社会も一体化した自動運転に取り組んでおり、自動運転技術を高めるためには誰が考えてもそうなるのに、日本は高齢者・障害者に運転を禁止することが解決策ででもあるかのように言っている点が、時代のニーズに合わず、将来性に乏しいのである。

 
        ZMP                 ITmedia  
(図の説明:左図のうち、レベル1・2の自動運転は既に実用化されているが、問題は、その機能を搭載している車種が、極めて少なく、高価で、かつ農機具・建機・商用車等には搭載されていないことだ。しかし、日本は課題先進国であるため、レベル3・4・5も速やかに市場投入する政策にすれば、将来のニーズを先んじて実用化できるのに、何に関しても時間と金ばかり使って進捗の遅いのが欠点なのである)

*6-1:https://www.sankei.com/article/20240529-LHZIJVG7CRPOFAOTLCG54NVGSY/ (産経新聞 2024/5/29) 池袋暴走事故の松永拓也さんら遺族、飯塚受刑者と面会 「面会受けた勇気無駄にしないで」
 平成31年4月に東京・池袋で高齢ドライバーの車が暴走し、11人が死傷した事故で、妻子を亡くした松永拓也さん(37)ら遺族が29日、車を運転していた旧通産省工業技術院の元院長、飯塚幸三受刑者(92)=禁錮5年の実刑確定=と初めて面会した。刑務官に連れられ、車いすで面会室に入った飯塚受刑者は、うまく言葉が出ない状態だったというが、松永さんらの目を見て問いかけに応じていたという。松永さんは妻の真菜さん=当時(31)=の父、上原義教さん(66)とともに飯塚受刑者が収監されている刑務所の面会所に入り、約50分間にわたり面会。飯塚受刑者は「世の中の高齢者や家族に伝えたいことは」との問いかけには、「早く免許を返すように伝えてください」と答え、最後には2人が面会に訪れたことに対し「ありがとうございました」と絞り出すように話したという。松永さんは今年、遺族の心情を刑務所職員が聞き取って受刑者に伝える「被害者等心情聴取・伝達制度」を利用。飯塚受刑者に再発防止への思いや面会の希望を伝え、4月に面会に応じる旨の返答を受け取った。飯塚受刑者と顔を合わせたのは令和3年の刑事裁判以来。当時、法廷で飯塚受刑者の姿を見て、誰も被害者や遺族、加害者にならない世界はなかったのかと感じたという松永さん。面会後の記者会見では、「今までで一番近い距離で会話をすることができた」と振り返り、月日を経て面会室でアクリル板を挟んで向き合い、「こうならない未来はなかったのか」と改めて悲しみを覚えたという。また、高齢者の免許返納後の移動支援など、再発防止のための体制を社会全体で考えてほしいと語り、「彼が面会を受けたという勇気を無駄にしないで」と訴えた。

*6-2:https://toyokeizai.net/articles/-/742707 (東洋経済 2024/3/24) カギは「LLM」、完全自動運転を目指す大実験の中身、半導体チップも自前で開発するTuringの挑戦
 2022年11月にOpenAIが公開したAIチャットボット「ChatGPT」は、多くの企業の業務プロセスで利用されるほど、一気に身近な存在となった。この技術の基となるLLM(大規模言語モデル)は、AIの能力を大幅に向上させ、まるでAIが「脳」を持っているかのごとくふるまうことを可能にした。そんなLLMを、自動運転に応用させようとしている日本企業がある。2021年に創業したTuring(チューリング)だ。Turingは「We Overtake Tesla(テスラを追い越す)」をミッションに掲げ、完全自動運転のEV開発を進める。山本一成CEOは、過去にコンピュータ将棋プログラム「Ponanza」を開発。山本氏と共同で創業した青木俊介CTO(最高技術責任者)は、アメリカのカーネギーメロン大学で博士号を取得し、自動運転システムの開発・研究に従事してきた。2024年2月には、生成AIの基盤モデルを開発する事業者向けに経済産業省などが行う支援事業に、唯一「製造業」の企業として採択された。今回の助成を受け、約7.4億円相当のGPU(画像処理半導体)の計算資源も活用し、開発を進める。
●レベル5の完全自動運転を目指す
 自動運転はその段階に応じてレベル1~5に分けられる。現状、多くの市販車はレベル2などが中心で、アクセルやブレーキ、ハンドルの機能が部分的に自動化されている段階だ。Turingが目指しているのはレベル5。あらゆる条件下ですべての運転操作を自動化する、完全自動運転だ。その実現に向けて、なぜLLMに目を付けたのか。これまで自動運転の手法は大きく2つあった。1つは、レーザー光を車体に取り付け、その周囲に反射させる「LiDAR(ライダー)」という技術で、周りにある物体を3次元で認識する手法だ。センサーベースの高精度な3次元の地図をあらかじめ作成しておき、車のセンサー情報と合わせて、今どの辺にいるかを観測する。この手法は、ロボット掃除機などにも使われている。2つ目は、2010年後半に普及した、カメラと深層学習のAIモデルを組み合わせた手法だ。複雑なセンサーや事前の地図情報の取得を必要とせず、画像認識ベースで周囲の障害物の有無や位置情報などを全部調べることができる。ただ、これらの手法では完全自動運転を目指すうえで限界があった。TuringでAI開発全般のマネジメントを行う山口祐氏は「従来の手法でも9割程度は実現できるが、道路では子供の飛び出しや、見たことないような標識などが当然のようにいろんなところで出てくる」と話す。完全自動運転では、このような稀なケースにも完璧に対応しないといけない。視覚情報だけでの対処には限界があり、人間が普段運転しているときに頭で考えるような、幅の広い認知・思考能力などが必要になるという。そこでTuringが考えたのが、LLMの活用だった。Turingでは、まず言語を理解するLLMから画像や音声なども認識するマルチモーダルへ、そして空間把握や身体性を認識するAIを経て、完全自動運転AIへの発展を目指す。
●難しい場面でも人間に近い選択が可能
 Turingは昨年、OpenAIのLLM「GPT-3.5 Turbo」を使って車を制御する実験に取り組んだ。例えば車のカメラが前方の状況を撮影し、ドライバーが「○○してください」などと話すと、それを音声認識技術でテキストに起こしてGPT-3.5 Turboに渡す。GPT-3.5 Turboは、撮影された画像やテキストの情報に基づいて、目的地までの経路などに関するパスを出し、計算する。TuringのLLMを活用した自動運転の実験の様子この実験では赤色、青色、黄色のカラーコーンを設置して、「バナナと同じ色のコーンに行って」と抽象的な命令を出しても、正解を選ぶことができた。また、トロッコ問題のようにどの進行方向を選んでも犠牲者が出てしまうような場面では「どっちに行ってもけがをするので、一旦停止します」と動かない状態になった。複雑な状況を解釈できるマルチモーダル生成AIや高速な半導体、車体制御まで行える自動運転AIシステムなどがそろえば、将来的にはこのような倫理的な判断もできるようになる。「われわれ人間は、運転中に稀なシチュエーションに遭遇しても、運転していないときに学習した経験などを応用して対応できる。それと同じ対応を目指すには、非常に広範な知識や常識のようなもの、さらに思考能力が必要になってくる」。ただ、英語圏で学習したGPTなどは、日本の交通環境に関する情報や交通常識が欠落している。自動運転で活用する以上、国ごとの交通常識などを身に付ける必要がある。Turingでは、マルチモーダル開発ツール「Heron」で学習を行う同社独自のLLMの開発を続ける。LLMで完全自動運転を達成するためには、それ専用の半導体チップも必要となってくる。そこでTuringは2023年12月、半導体チップと車載用LLMアクセラレーターを開発するチームを発足させた。
●TuringのLLMを活用した自動運転の実験の様子
半導体の自社製造を決めた背景には、車ならではの制約があることが大きい。例えばスマホでChatGPTを使う場合、基本的にはネットワークを介して通信を行う仕組みになっており、応答までに数秒のラグがある状態だ。チャットボットの応答なら数秒のラグがあっても問題ないが、時速100km(1秒間で約30メートル)で進むような車では、そのラグは致命的となる。また、車は夏場に70℃を超えたり、冬には氷点下になったりすることもある。このような環境下では、普通のサーバー用の半導体チップはまるで動かない。さらにGPUに使われるメモリーは振動や電磁波に弱く、通常のGPUでは運転中の振動により壊れてしまう。エヌビディアも車載向けGPUなどを出しているが、サーバー向けのハイエンドなGPUに比べると性能が10分の1になってしまうという。これでは自動運転で1秒間に10回など推論させるとなると、スピードが追いつかない。そうした欠点を埋めるためにも、自分たちで専用の半導体を作るしかないという決定に至った。
●世間に受け入れられるためのハードル
 Turingが開発している半導体は、同社が作るAIモデルでしか動けないが、推論が速いという。既存技術の積み重ねで開発を進めており、具体的な性能の検証段階に入っている。技術的な達成度合いを高めていったところで、完全自動運転が世間に受け入れられるためには、乗り越えなければならないハードルがある。倫理観の問題だ。この先AIの精度がさらに向上しても、数学的に「100%」の正解を実現するのは難しく、自動運転での事故も0にできるとは言えない。「例えば、人間による運転よりもAIだと事故率が10分の1になったらどうかなど、社会的に許容されるラインはどこになるのかを常に考えている。技術の積み重ねや法整備などに関する議論を進めつつ、世間の人に丁寧に説明していく必要がある」(山口氏)。Turingは、完全自動運転EVの量産開始の目標時期を2030年と定める。山口氏はこれを「スマホみたいな車」と表現する。かつてAppleは、iPhoneをハードウェアだけじゃなく、ユーザー体験を考えたようなソフトウェアまで一貫して作ったことで、世界的な普及に成功した。Turingも、EVとAIモデルを垂直的に統合したかたちで開発を進め、自動車業界での革命を見据えている。

*6-3:https://wisdom.nec.com/ja/series/tanaka/2022072201/index.html (次世代中国 2022.7.20) 方向転換する中国の自動運転、「クルマ単体」から道路、社会と一体化した「車路協同」へ
 自動運転技術の進化にともない、中国の政府や企業が自動運転に取り組む方向性の変化が明確になってきた。一言でいえば、クルマ単体での自立した自動運転の実現を目指す姿勢から、「道路の智能化」を加速し、クルマと道路が一体となった「車路協同」路線への転換である。その背景には、米国を中心に広がってきた「クルマ単体」での完全な自動運転の実現を目指す動きが、なかなか商業化のメドが見えないという状況がある。その点、道路を中心とした社会インフラの整備は、中国の政治体制、メーカーと政府の協力関係など、自国の強みを活かしやすい。早期の社会実装による効果が大きく、営利化が見込めるとの読みがある。さらに言えば、IoT(Internet of Things、モノのインターネット)ですべてのモノが情報ネットワークでつながる時代を見据え、信号機との連動や渋滞情報、駐車スペースの利用状況共有など都市の「交通管理」と自動運転を結びつけ、インテリジェント化した移動のシステムを実現し、政府の総合的な統治能力を高めたいとの思惑がある。

| 財政 | 02:37 PM | comments (x) | trackback (x) |
2023.2.4~17 女性リーダーを阻む女性差別と女性蔑視 (2024年2月19、21、22《図》、26、27《図》、29日、3月4日に追加あり)
   
     2024.1.30TBS         2023.1.12佐賀新聞  2023.2.5佐賀新聞 
 
(図の説明:左図のように、麻生副総裁が上川外務相を褒めたつもりが、名前を間違ったり、『女性外務相は初』と誤ったり、『美しくないおばさん』と言ったりして物議を醸している。しかし、根本的には、日本全体に蔓延する女性蔑視や高齢者に対する年齢揶揄の習慣がある。そして、この発言の土壌として、1年前のデータだが、中央の図のように、国会議員・地方議員・首長などの政治リーダーに占める女性の割合が著しく低く、女性リーダーはアウトサイダーであるという古ーい“常識”がある。そのため、生活関連の政策が多く、女性議員の存在が重要だと思われる地方議会でさえも、右図のように、女性ゼロ議会が少なくなく、ゼロでなくても女性議員の割合が50%どころか30%を超える議会も希な状況なのだ)

(1)女性初の首相は、巧妙に隠された差別にも気づいて闘った人であって欲しいこと
 *1-1-1・*1-1-2・*1-1-3は、①自民党の麻生副総裁が講演で「そんなに美しい方とは言わんけど、英語できちんと話をし、外交官の手を借りずに自分でどんどん会うべき人に予約を取っちゃう。俺たちから見ても、このおばさんやるねえと思った」と語った ②立憲の田島氏は、参院本会議で同調圧力の強い日本社会で上川氏と同じ対応をしなければならないリスクを上川氏にただした ③上川氏の「どのような声もありがたく受け止めている」という答弁にも波紋が広がった ④ライターの望月さんは「『俺たち』が女性たちを評価するという構図が前提になっており、女性の登用をうたいながら、実際に誰を引き上げるかを決める権力はいまだ麻生氏ら男性たちが握り続けている現実を映している」とみる ⑤東大の瀬地山教授は「上川氏を評価しているのは分かるが、男性の外相なら容姿に言及することはなく、女性だけ美醜の評価を加えられる」「政治の世界で女性はアウトサイダーという認識があるから、男性政治家から『俺たちから見て』『女性ならではの』といった発言が出る」とした ⑥次の首相候補との声も上がり始め、20人の推薦人を集めて総裁選に出ようと思えば、麻生氏に反論するのは性別を問わず難しい ⑦共産党の田村委員長も、上川氏の答弁について「ジェンダー平等を進めようという立場なら、きちんと批判すべき」と語った ⑧麻生氏は上川外相の容姿を揶揄した発言を撤回し、「女性や若者が活躍できる環境を整えていくことが政治の責務」とも触れた としている。

 麻生副総裁の発言の①のうち、「英語できちんと話をし、外交官の手を借りずに自分でどんどん会うべき人に予約を取る」については、私は、できない人よりはできる人の方が良いが、それは政治家の仕事というよりセクレタリーの仕事で、政治家の実力を評価したことにはならないと思う。しかし、「女性」と言えば「語学力」「コミュニケーション能力」で評価したり、「おしゃべり」と悪口を言ったりするのは、まさに女性の実力を内容で評価しない女性蔑視の第1だ。

 また、「そんなに美しい方とは言わんけど」という発言について、⑤のように、東大の瀬地山教授が「男性の外相なら容姿に言及することはなく女性だけ美醜の評価を加えられる」とされているのは本当だが、より根本的には、「能力のある女性は美しくなく、美しい女性は能力が無い」という一般社会の女性蔑視に、麻生氏も同調しているか、おもねたところがあると思う。

 さらに、「俺たちから見ても、このおばさんやるねえと思った」という言葉には、④のように、「(現在、リーダーの多くを男性が占めているため)男性の方が能力が上で、男性が評価する立場だ」という女性蔑視が確かに感じられるが、現在、リーダーの多くを男性が占めている理由は、日本では、*3-1のように、教育段階から女性差別して男性に下駄を履かせているからで、*3-2のように、同性の中にも大きな個人差がある。それでも、日本の一般社会は、*3-2の「執筆した論文数が男性より多い有能な女性の中に美人はいない」と言うのだろうか?

 なお、「おばさん」という言葉には、「おじさん」という言葉と同様、年齢に対する揶揄が感じられ、敬意は感じられない。

 しかし、②のように、立憲の田島参議院議員が同調圧力の強い日本社会で上川氏と同じ対応をしなければならないリスクを上川氏にただしたり、⑦のように、共産党の田村委員長が上川氏の答弁について「ジェンダー平等を進めようという立場なら、きちんと批判すべき」と語ったりしたのは、確かに、国会議員の中に女性が増えた効果である。しかし、田島氏の質問に対し、③のように、上川氏が「どのような声もありがたく受け止めている」と答弁されたことについては、上川氏はわかっていないか、もしくは、わざと焦点をずらしてごまかしたと思う。 

 もちろん、上川氏が、⑥のように、次の首相候補との声も上がり始め、麻生氏に限らず、男女の議員の中に敵を作れば誰もが一票の投票権を持つ民主主義社会で首相になることはできないというジレンマを抱えていることは理解する。

 が、国会議事堂の中央広間には4つの台座があり、既に板垣退助(自由民権運動を起こし、日本で最初の政党である自由党党首)、大隈重信(日本で最初の政党内閣の総理大臣)、伊藤博文(日本で最初の内閣総理大臣)の3つの銅像が立っており、4つ目の台座には、日本で女性初の首相が銅像として立ってもらいたいと、私は思っている。そして、その功績は、日本であらゆる女性差別をなくし、最初の女性内閣総理大臣になったというくらいであって欲しく(https://www.sangiin.go.jp/japanese/taiken/gijidou/3.html 参照)、そうでなければ他の銅像と釣り合いがとれない。

(2)女性の実力が公正に評価されない巧妙な差別の事例
 *1-2は、①保利耕輔氏は謹厳実直が服を着たような人だった ②群れたがる同僚議員を尻目に夕方は自宅に直行して本や資料を読みふけった ③「予算獲得の陳情団に、普通の国会議員は本題もそこそこに地元の新しい噂話を聞きたがるが、保利さんは書類から目を離さず、事業の中身について質問した」というのが古川衆院議員の佐賀県知事の時の思い出 ④2003年に農相を打診されると教育基本法改正を巡る与党調整に注力したいとして固辞 ⑤党憲法改正推進本部長の時には「自主憲法制定は党是」という声が党内で勢いを増したが、結党時の資料を探し出して「わが党は結党以来、『憲法の自主的改正』を『党の使命』に掲げてきました」と書き改めさせた ⑥目立つことを嫌い、手柄を誇らず、常に筋を通す と記載している。

 このうち⑤の「(結党時の資料を示して)全否定ではなかった」とまで言えたのはよかったが、国民の意識や時代の変化にもかかわらず、結党時と同じことを言うのではまだ弱いと思う。

 また、③については、同じ選挙区から出ていたので意義があるわけだが、“本題もそこそこに地元の噂話を聞きたがる普通の国会議員”とは誰のことか?他の地元国会議員に失礼だと思うが、本題は自分発のテーマだったり、毎年似たようなものだったりするため、内容を根掘り葉掘り聞かなくてもわかる議員も多いだろう。

 なお、*1-2は追悼文であるため褒めるのが当然ではあるが、①については反対しないものの、②は家で本や資料を読んでおられたとは限らないため、私は「どうしてそれがわかるのか?」と思った。さらに、④の「農相を打診されたが、教育基本法改正を巡る与党調整に注力したいとして固辞」については、保利氏は教育勅語を諳んじていて、よくその話をしておられたため、教育基本法改正は戦後世代に任せた方がよいと私は思ったし、地元には「農相になればいいのに・・」と言う人が多かったのである。

 しかし、私が*1-2で最も問題だと思ったのは、⑥の「目立つことを嫌い、手柄を誇らず・・」という褒め方(≒価値観)である。何故なら、世襲ではない一般の人が目立つことを嫌えば、そもそも国会議員になろうとは思わないし、当然のことながら当選もしないからだ。また、実績(=手柄)を言わなければ内容で評価することができないため、性別・年齢・学歴等の情報からステレオタイプで常識的・観念的な評価をするしかない。

 そして、特に女性には謙虚さのみを押しつけ、いかにも女性はくだらない噂話が好きであるかのように言う日本独特の女性蔑視の価値観こそが、政治の世界でも、*3-1と同様に、ジェンダーギャップを大きなままにし、*3-2のように、本当は少数精鋭で生き残っている女性研究者の執筆論文数は男性を上回るのに、それを隠して表に出させず、しばしば手柄を横取りして、女性差別を維持する仕組みにしているのである。

(3)地方議会の担い手不足と女性差別
 *2-1は、①議員の担い手不足で、地方議会の空洞化が止まらない ②首長が議会ぬきで補正予算等を決める専決処分が多発 ③災害時等の非常時に限る仕組みのタガが緩み、住民が行政を監視する地方自治の根幹が揺らぐ ④4年毎の統一地方選で議員が無投票で決まる割合が右肩上がり ⑤議員は多様な住民の声を取り込む役割を担う ⑥専決処分多発のきっかけはコロナ禍だったが、コロナが落ち着いても「物価高対策のため」等として減らない ⑦議会が機能を十分果たすための改善策は通年制 としている。

 また、*2-2は、⑧2018年施行の候補者男女均等法効果で女性議員が増えた地域もあったが、まだ十分ではない ⑨200以上の地方議会で女性0、2割前後で伸び悩む議会も ⑩女性が影響力を持つには議会の3~5割程度を占める必要 ⑪達成には選挙制度の抜本的改革が不可欠 ⑫1人区は無投票が多く現職有利になるため都道府県議選では止めるべき ⑬定数が多いと、党派も多様で女性や若い世代も立候補しやすい ⑭市町村議選では「制限連記制」が選択肢の一つ ⑮「クオータ制」も導入した方がよく、女性候補の多い政党には政党助成金を優遇するなどの方法も ⑯少子化進行は女性議員が少なかったことが大きな要因で、女性が増えれば政策が刷新される ⑰保護者に持ち帰らせていた使用済おむつを保育所で処分するよう求める動きも、女性議員らの議会質問で始まった ⑱生活に身近な議題を扱う市町村の議会に女性や若い世代は不可欠 ⑲海外には地方議会で女性が増えてから国政に波及した例も多く、日本も地方議員を増やせば国会に繋がる可能性 等としている。

 このうち②は事実だろうし、③⑥の「災害時等の非常時に限る仕組みが、議会の監視をすりぬける手段となる」のは国の緊急事態条項も同じなので、⑦のように、議会の開催を短く制限しないようにするのは、国の場合も同様である。

 また、⑤の「議員には多様な住民の声を取り込む役割がある」というのも事実で賛成だが、①の「議員の担い手不足で地方議会の空洞化が止まらない」は、⑧⑨⑩のように、人口の半数以上を占め生活系の知識が豊富な女性議員が地方議会に著しく少ないことを解決すべきだと思う。

 しかし、④のように、4年毎の統一地方選では現職(男性)議員が無投票で再選される割合が右肩上がりに増えているそうで、そこに気の利いた女性が立候補しても、古い価値観で誹謗中傷されたり、家族も含めて妨害されたりして、著しく当選しにくい実情がある。そのため、⑪⑫⑬⑭⑮のいずれかの方法又はその組み合わせで、女性が立候補するのは当たり前、議会に女性が30~50%いるのも当たり前という状況を作るべきだ。

 なお、⑰の「保護者に使用済おむつを持ち帰らせていた」というのには、「タイパ(時間あたりの成果)の高さが必要不可欠な共働き女性に何をさせているのか!」と私も思ったが、確かに⑯のとおり、これでは2人目を産む人は少なくなり、少子化が著しく進行するのは当然だろう。そのため、これに対し、女性議員の議会質問で保育所での処分が始まったのは期待通りであり、⑱のとおり、生活に身近な議題を扱う市町村議会に女性議員は不可欠なのである。

 最後に、⑲のように、「地方議員を増やせば国会に繋がる可能性がある」という点については、国会議員選挙での公認獲得や選挙応援にあたって地方議員の役割は大きい上に、国民も女性議員の能力を具体的に見ることができるため、地方議員に女性が増えれば国会議員にも女性が増えるだろう。

(4)学術会におけるジェンダー不均衡の発生理由
 *3-1は、日米の研究チームが、論文の著者名から性別を推定する方法を開発し、日本・韓国・中国・その他(主に欧米)で1950~2020年に発表された約1億本の論文データを解析したところ、①どの国でも研究者数は男性が女性より多いが、男女比の不均衡は日中韓が欧米より大きい ②個々の研究者がキャリアを通じて発表した論文数は、日本は女性が男性より42・6%少なく、中国は9・3%、韓国は20・2%、その他は31・2%少ないため、日本の性差が最も大きい ③女性の方が研究職としてのキャリア年数が短い(日本では男性より39・6%短い)のが原因の1つ ④研究論文の共同著者となっている場合も少ない ⑤論文が引用された回数は、日本は女性が男性より19・9%低く、中国・韓国では逆に女性が高い ⑥男性研究者主導論文を過多に引用し、女性研究者主導論文を過少に引用する傾向が日中韓でみられる ⑦女性研究者主導論文の過少引用は日本が最も強い ⑧この問題は国際的な社会課題であり、論文の査読や研究者の雇用などでも起こる としている。

 このうち①は、日中韓が儒教国で女性差別が根強いことから尤もだ。しかし、②は、1975年に第1回世界女性会議で女性の地位向上のための「世界行動計画」が採択され、1979年に国連総会で女子差別撤廃条約が採択されて1981年に発効し、1995年に北京で世界女性会議が開催されたりしたのに対応して、中国・韓国はまじめに改善してきたのに対し、日本は政治的・公的活動、経済的・社会的活動における差別撤廃のため、まともに対応しなかったのが原因であることを、私は現場で比較しながら見ていたためよく知っている。

 また、③のように、「女性はキャリア年数が短い」とよく言われるが、この統計方法は、結婚で女性が姓を変更すると別人としてカウントするのも理由の1つではないかと思われた。

 しかし、④のように、共同著者となる機会が少なく、⑤⑥⑦⑧のように、日本の女性研究者は論文の引用回数が男性研究者より少ないのなら、実力で研究者として昇進する道が閉ざされるため退職せざるを得なくなることも、女性のキャリア年数が短くなる原因の1つだ。そして、多くの男性に思い当たるふしがあると思うが、これが隠された巧妙な差別の結果なのである。

 *3-2は、⑨日本の研究者が直近5年間に執筆した論文数は男性より女性の方が多く世界の傾向と逆 ⑩日本の研究者全体に占める女性割合は約2割(総務省2016年調査では15.3%)で米国やEU28カ国の約4割と比較して低い ⑪2011~2015年の研究者1人当たり論文数は、日本の女性が1.8本で男性の1.3本よりもやや多く、他国・地域と異なる ⑫1996~2000年では、より男女差が大きいのが日本の特徴 ⑬エルゼビアは「日本では女性研究者のキャリア構築が他国より難しいため、生き残っている多くの人が有能なのではないか」とみている としている。

 ⑩の日本の研究者全体に占める女性割合は約2割で、米国やEU28カ国の約4割と比較して半分というのは、優秀な人の割合が同じであれば、女性は他国と比較して2倍の狭き門をくぐらされて生き残っていることになる。ということは、退職させられた女性研究者の多くが、本来なら新しい付加価値を作れる人だったため、日本社会はもったいないことをしたということだ。

 従って、そのような狭き門でも生き残っている女性研究者が、⑨のように、世界とは逆に、直近5年間に執筆した論文数は男性研究者より多く、⑪⑫のように、最近はやや多い程度だが、四半世紀前はさらに狭き門だったため執筆論文数の男女差がより大きかったというのは頷ける。そのため、⑬のエルゼビアの原因分析は、事実に基づいており、公正中立だと思う。

(5)治る病気は治すべき ← 日本で再生医療による治療が遅れる理由
 *4-1は、①1型糖尿病(インスリンを分泌する膵臓のβ細胞が壊れて高血糖状態になる病気)の患者は、生涯インスリン補充が必要 ②20歳以降は行政による医療費助成が終わり、自己負担が重くなる ③20歳以上の患者は月1万~3万円程度の自己負担が発生する ④佐賀市の認定NPO法人「日本IDDMネットワークが、佐賀県に住む25歳までの患者を対象に4月から月額最大3万円の医療費支援を始める ⑤国内の1型糖尿病患者は10~14万人 としている。

 しかし、*4-2は、⑥成熟した膵島細胞は自己複製能を持たず、その機能低下が糖尿病の原因 ⑦出生前後に増殖する膵島細胞ではMYCL遺伝子が発現し、MYCLを働かせると成熟した膵島β細胞に活発な自己増殖を誘発できる ⑧体内でMYCLを発現誘導したり、MYCLによって試験管内で増幅させた膵島細胞を移植してモデルマウスの糖尿病を治療した ⑨これにより、糖尿病の根治を目指した新たな再生治療法となりうる としている。

 1型糖尿病は、①のように、現在は治らない病気であるため、生涯にわたってインスリンの補充が必要だが、これでは患者のQOL(Quality of life)が低すぎ、人生における選択が制限される。さらに、治療には健康保険と高額医療費制度が適用されて当然なのに、②③のように、20歳以降は行政による医療費助成が終わり、月1万~3万円程度の自己負担が生じるというのが、そもそもおかしいのである。

 そして、④のように、佐賀市の認定NPO法人が佐賀県在住の25歳までの患者に月額最大3万円の医療費支援を始めるというのは、(何もしないよりは良いが)部分的援助にしかならないため、まず治療に健康保険と高額医療費制度を適用するのが当然と言える。

 次に、⑥のように、成熟した膵島細胞は自己複製能を持たないが、⑦のように、出生前後にはMYCL遺伝子が発現して膵島β細胞が活発な自己増殖するため、⑧のように、体内でMYCLの発現を誘導したり、MYCLによって試験管内で増幅させた膵島細胞を移植したりすれば、1型糖尿病を治療でき、これは糖尿病のモデルマウスで既に証明されているのだ。従って、⑨のように、糖尿病を根治する人間の治療法にもなり得るため、これらを素早く実用化すべきである。

 MYCL使用法は糖尿病を根治できるため、生涯にわたってインスリンを補充する必要が無く、根治後の患者は普通の生活ができるためQOLが高い。それと同時に、医療保険の視点からは、患者に生涯に渡ってインスリンを補充するよりもずっと安くつき、ビジネスとしても、⑤のように、国内だけで10~14万人の1型糖尿病患者がおり、世界では著しく多くの患者がいるため、市場は十分大きく、トップランナーと2番手以下では利益率の差も大きいのだ。

 そのため、再生医療の基礎研究ではトップランナーの日本で再生医療による治療法が普及しない理由は、「政治・行政・経営・メディアの無知と不作為によって、優れた種を発見して速やかに育てることができないから」と言わざるを得ない。ぷん

(6)日本でEVと再エネが遅れた理由
 日本は、1997年に京都で開かれた地球温暖化防止京都会議(COP3)で「地球環境京都宣言」をとりまとめ、それが「京都議定書」として採択された。京都議定書は、CO₂(二酸化炭素)やCH₄(メタン)等6種類の温室効果ガスを先進国が排出削減することを定めており、その有力なツールがEVや再エネなのである。

 しかし、日本は、1990年代に、世界に先駆けてEVや太陽光発電機を実用化したにもかかわらず、「EVは音がしないから危ない(!!)」「充電設備が少ない(!)」「発電を化石燃料でするため、EVも地球温暖化に資さない(!!)」「再エネは出力が安定しないから使えない(!)」「太陽光発電は撤去が困難(!!)」等々、考えれば解決策はあるのに、工夫のない変なケチをつけてEVや再エネを普及させなかった経緯がある。

 その結果として、*5-1のように、①JAIAが発表した2024年1月のEV輸入販売台数は2カ月連続で増加 ②そのうち2割が中国EV大手のBYD ③独メルセデス・ベンツ等の欧州勢もEV車種を揃えて顧客の選択肢を増やし、輸入EVは販売贈 ④BYDは2023年1月に日本の乗用車市場に参入し、2車種のEVを展開して販売台数は前年同月比約6倍 ⑤BYDの最先端安全装置等が人気で高級車からの乗り換えや60代以上の顧客も多い ⑥BYDは、2024年春もセダンEV「シール」を日本に投入 ⑦2025年末までに国内販売拠点を100カ所まで増やして拡販方針 ⑧輸入車全体では17ブランドが118モデルのEVを日本で展開 ⑨輸入EVは独VWの「ID.4」や独アウディの「Q4 e―tron」など欧州メーカーを中心に売れている ということになった。

 このうち①②④⑥は、前年との比較で増加してシェアを増やしたということなので絶対数は多くないが、BYDのEVはスマートで安価であるため、私も好きだ。その上、⑤のように、最先端の安全装置等がついている等の工夫があれば、高級車からの乗り換えや60代以上の高齢者も多くなるのは理解できる。そのため、⑦のように、日本国内の販売拠点を100カ所まで増やして拡販してもよさそうである。

 ③⑨の欧州勢のEVは自動車として安心感があるだけでなくスマートでもあるが、値段も高いため、普通の人は買換時期にでもならなければ乗り換えないだろう。しかし、⑧のように、輸入車全体で17ブランドが118モデルのEVを日本で展開するというのは、選択肢が増えて楽しみだ。

 一方、日本メーカーは、「京都議定書」から30年近くも経過したのに、PHEVを含めなければ日産3車種、三菱・トヨタ・ホンダ・マツダ各1車種のEVしかない。地球環境に貢献しつつエネルギー自給率を上げるための技術開発をする時間的余裕は十分にあったため、遅れをとって利益機会を逃したのは、もったいなかったわけである。充電設備や水素ステーションは、スーパー・コンビニ・職場・マンション等の駐車場やガソリンスタンドに設置すれば便利だろう。

 さらに、*5-2は、⑩太陽光パネル撤去積立金が災害リスクのある斜面に立地する全国1600施設(500kw以上)で不足の恐れ ⑪放置や不法投棄に繋がらないよう適正処理の仕組み作りが不可欠 ⑫2012年開始の固定価格買い取り制度による買い取り期間は10kw以上・20年間で、2032年に買い取り期間が終了し始めて売電価格が大幅下落 ⑬パネル寿命も25~30年程度 ⑭政府は事業者に毎月売電収入の4~7%程度を10年にわたって強制的に積み立てさせる制度を2022年に開始したが、算出根拠が平地での撤去・廃棄費で、割高になる傾斜地は考慮外 ⑮小野田早稲田大学教授:「短期間の検討で立地条件までは議論が及ばず、一部で撤去費が十分でない可能性はある」 ⑯松浦京都大学名誉教授:「排水路等が管理されず、表面侵食や土砂崩れが起きやすい状況を生む可能性もあるため、撤去だけでなく植林等が不可欠」 ⑰神戸市:2020年に5万㎡以上の設備新設時に廃棄費の積み立てを義務付け、長野県木曽町:条例で原状回復を制定 ⑱環境省:リサイクル設備を導入する事業者に費用の半分を上限に補助金を出して処理能力を向上させる ⑲丸紅と浜田(大阪府高槻市)は共同出資で新会社を設立して中古パネルの買い取り販売を始めた としている。

 このうち⑩⑪⑫⑬⑭⑮⑯⑰については、「固定価格買い取り制度による買い取り期間が終了して売電価格が下がったり、パネルの寿命が尽きたりすれば、太陽光パネルは廃棄」という前提であるため不足だし、「傾斜地に立地すると撤去積立金が不足し、放置や不法投棄に繋がる」というのも不道徳で、かつ工夫がなく、もったいない話である。

 何故なら、⑱⑲のように、中古パネルはリサイクルやアップサイクルすることができ、傾斜地は風力発電を設置しつつ放牧するなどのより有効な跡地利用もでき、そうしなければせっかく金をかけて整備した傾斜地や太陽光パネルがあまりにもったいないからである。

(7)付加価値向上・生産性向上と賃金の関係
1)GDP4位転落が改革加速の呼び水か


 2022.7.25東洋経済     Wedge Online      2022.1.22 Financial Star

(図の説明:左図のように、名目GDPで日本は世界4位に転落しているが、経済規模や順位は為替レートによって大きく変化するのでさほど問題ではなく、日本は他国と異なり30年間も横這いだったのが問題なのである。しかし、国民の豊かさは、中央の図の「1人当たり実質購買力平価GDP」が最もよく表し、これも日本は横這いでアジアの中でも4位に落ちた。また、右図のように、世界の「名目1人当たりGDP《名目しか出ていなかったため使用》」の順位は、1995年の9位から2000年の2位を最高に、その後は次第に下がって2020年には24位に落ちている)

 *6-1-1は、①日本の2023年名目GDPが世界4位に転落する見通しで、米国に次ぐ2位を2010年に中国に譲り、3位もドイツに明け渡す ②米欧との金利差拡大で2023年末141円/$台と大幅に円安が進み、GDP規模が目減りした要因が大 ③ドイツ経済はマイナス成長に喘いで「欧州の病人」と指摘されており、GDPだけで一喜一憂の必要はない ④日本の成長力底上げも進まない ⑤購買力平価で計算した日本の名目GDPはまだドイツを上回る ⑥今回の事態は怠った経済改革の加速を促す警鐘と受け止めるべき ⑦為替相場次第で順位が変わるため、順位より潜在成長力の低さや生産性の伸び悩みに注目すべき ⑧2000年にドイツの2.5倍だった日本の名目GDPは四半世紀近くで同等に近い水準に ⑨日本のGDP/人は世界で30位程度と低迷 ⑩全体の規模では経済大国の一角に見えても、実力では見劣りすることを真剣にとらえるべき ⑪対日経済審査後の声明でIMFは「所得税減税等の経済対策は的が絞られていない」等の理由で「妥当でなかった」と評し、痛み止めに終始して中長期の改革に及び腰な岸田政権には厳しい指摘だった ⑫OECDも、人手不足等を展望して、定年制廃止による高齢者就労拡大、女性・外国人の雇用促進を日本に提唱 ⑬労働市場の流動性を高め、成長する分野や企業に人材が移動する仕組みを整えることがなにより重要 ⑭環境が変化する中で政府も民間部門も日本経済が抱える構造問題を直視すべき ⑮成長促進の方策を的確に練り、迅速に行動に移す必要 としている。

 私は、⑥のように、「転落して初めて改革を加速しよう(転落するまでは、さぼっていてよい)」と考える日本人の発想自体が、④のように、日本の成長力が低く、⑧のように、2000年にドイツ(現在の人口約84百万人)の2.5倍だった日本の名目GDPが四半世紀で同等まで落ち、⑨⑩のように、日本のGDP/人が世界で30位程度と低迷し続けている原因だと考える。

 何故なら、時代の変化によって人々のニーズは刻々と変化するので、時代のニーズに適応したり、新しいニーズを提案型で示したりして、高い付加価値のある財・サービスを提供していくためには、政府も民間も日頃から改革し続けている必要があるからだ。

 また、①②③⑦のように、名目GDPは為替相場次第で順位が変わるため、⑤のように、購買力平価で計算したGDPを見るのが、為替相場の変動による揺れを廃した本当の豊かさの比較になるが、⑨⑩のように、日本のGDP/人は購買力平価で計算しても世界30位程度と低迷しており、全体のGDPでは経済大国の一角でも、「国民1人当たりGDP」という実力では見劣りするのだ。

 そして、*6-1-2のように、一国の経済水準は「GDP総額」ではなく、「国民1人当たりGDP」で比較するのが世界の常識で、日本は2000年の世界第2位から下落を続けて現在は先進国の下の方になっているのだが、経済の話となると株価・景況感指数・物価上昇率・失業率・平均賃金等の数字が取り上げられ、国民にとっては最も重要で日本政府にとっては都合の悪い「購買力平価による国民1人当たりGDP」が取り上げられることはないのだ。

 さらに、「国民1人当たりGDP(名目ベース)」を主要国と比較して日本の立ち位置を確認すると、バブル期最後の1990年が8位(1990年末のドル円相場:160円/$)で、2000年に過去最高の2位(2000年末のドル円相場:115円/$)となっているため、ドル円相場で割ったドルベースによる国際比較では、2000年が日本経済のピークになっている。

 そして、2000年以降の日本経済の低迷は、(理由を詳しくは書かないが)「どの政権も日本経済の凋落を止めることができなかったから」と総括するのが適切で、再度バブルを到来させた政策は、国民にとっては誤りの繰り返しにすぎない。

 なお、*6-1-1の⑪⑫⑬⑭⑮については、日本の現状に関してよく分析しており、日本人が頼んで言ってもらったのではないかと思うほど的確な分析であるため、私もそのとおりだと思うし、日本政府はそのようにして欲しいと考えている。

2)再度バブルを起こした金融緩和政策の弊害 ← バブルでは実質賃金は上がらないこと

  
     2024.1.19北海道新聞           2023.10.1日経新聞

(図の説明:左図のように、前年比・年平均の生鮮食品を除く全国消費者物価指数は、高度成長期・バブル期の1980年代に著しく高く、その後は消費税の導入時や税率引き上げ時以外は0%近傍を推移していたが、2021~2023年にかけてコストプッシュ・インフレにより著しく上がった。また、右図のように、物価上昇率は、生鮮食品やエネルギーなどの頻繁に購入する財・サービスを含む体感と生鮮食品を含まない統計との差が大きいと言われているが、これは事実だ)


    2024.2.6日経新聞      2024.1.10中日BIZ  2023.7.21Daily Tohoku

(図の説明:中央の図のように、実質賃金《名目賃金/物価水準》が前年同月比0以下の実質賃金減少局面では、左図のように、実質消費が落ち込む。そのため、右図のように、消費者物価指数が高くなると、実質GDP成長率は低くなるのである)

 「金融緩和して円の価値を下げる」というのは、財・サービスの価値を計る尺度の価値を下げるということだ。わかりやすく例えれば、「これまで80cmとしていた長さを今後は1mと呼ぶ」と変更すれば、3,776mの富士山の高さは、実際は全く変わらないのに4,720m(3,776m/0.8)と言われるようになる。それと同様に、価値を変更しなかったドルと円の関係である為替相場は円安になり、価値の変わらない財・サービスの値段と株価は相対的に上がったのだ。

 ただし、この大きな流れの中で変わらないものがあり、それは名目価値で示された借金や預金の金額だ。そのため、物価が上昇すれば借金や預金の価値が目減りし、それによって借金をしていた人は得をし、預金をしていた人は同じだけ損をするという所得移転がある。そして、借金には、国債・社債・借入金・住宅ローンなどの負債、預金には銀行預金や貸付金などがあるのだ。

 そのような中、円の価値を下げると借金のある人が得をして預金のある人が損をし、それらの人の間でこっそり所得移転が行なわれているのだが、それでは通貨の信用がなくなるため、中央銀行の役割には「通貨価値の安定」があり、他国の中央銀行はそれをやっているのである。

 一方、日本の中央銀行である日本銀行は、「通貨の安定」ではなく「2%のインフレ目標」を掲げて金融緩和をし続けてきたため、為替相場では円安が進んで輸入品の価格が上がり、ロシアのウクライナ侵攻に対する制裁返しで資源価格自体も上がったため、日本の消費者物価はコストプッシュ・インフレで著しく上がったわけである。

 そして、これらの政策の結果はやってみなくても経済学の理論からわかる筈だが、日本政府と日本銀行がやってみた結果、やはり、*6-2-1・*6-2-2のように、実証されたのだ。

 つまり、*6-2-1は、①2023年分の毎月勤労統計調査速報で働き手1人あたり実質賃金は前年比2.5%減 ②名目賃金は物価の伸びに追いつかず ③1990年以降で減少幅は、消費増税のあった2014年(2.8%減)に次ぐ大きさ ④昨年の正社員の賃上げ率は名目賃金にあたる現金給与総額が1.2%増 ⑤消費者物価指数は3.8%増 ⑥40代男性は「給料は上がったが、値上げに追いつかず家計は楽にならない。食費を削り暖房器具の利用を控えるなどでやりくりしている」と語る ⑦50代主婦は「みんな高くて、今日はトマトまで買うのはあきらめました」と話す ⑧家計が圧迫されている状況が顕著 ⑨春闘に含まれない中小・零細企業の賃上げ率が低めだったため基本給等の「所定内給与」が1.2%増でかなり低い ⑩現実的には物価上昇率が下がらないと実質賃金はプラスにならず、今年中に実質賃金をプラスにすることは無理 等としており、名目賃金の伸びが物価上昇に追いつかず、実質賃金が下がり続けていることを示している。

 このうち②④⑤⑨は、主として円の価値低下と制裁返しによる輸入品の価格高騰によって物価が上がって消費者物価指数が3.8%増になっているのであるため、消費者が支払う金額の多くが海外に流出して国内に残らず、名目賃金を物価上昇分まで引き上げることができず、企業の中でも輸出が少ないため円安の恩恵を受けにくく、価格転嫁もしにくい中小・零細企業の賃上げ率が低いため、賃上げ率が1.2%増に留まっているのである。

 その結果、①③のように、名目賃金は決して物価の伸びに追いつかず、働き手1人あたり実質賃金が「前年比2.5%減」など、大きく減少し続けるのだ。

 その上、日本は、退職して年金暮らしの人口割合も高いため、⑥⑦⑧のように、家計が圧迫され、食費を削ったり、暖房器具の利用を控えたりなど、必需品の購入さえ抑えなくてはならない状況になった家計が多く、(7)1)で述べた「購買力平価(≒実質)による1人当たりGDP」は確実に下がって、国民は貧しくなったのである。

 そして、国民を貧しくして移転された所得は、日本政府や企業を負債(国債・社債等)の目減りを通じてひっそり潤しているため、⑩はわかっていても、日本銀行と政府は、金融緩和をし続けるのだ。解決策は他にあるのに、無駄使いの限りを尽くしながら、こういうことをする政府を、国民は信用してよいのだろうか?

 また、*6-2-2は、⑪総務省の2023年家計調査で、2人以上の世帯が使った金は実質で前年より2.6%減 ⑫物価高が家計に打撃を与え ⑬支出の3割を占める食料は前年より2.2%減り、特に魚介類・乳製品の落ち込みが大きかった ⑭家具・医薬品・小遣い・仕送りも減 ⑮外食は10.3%、宿泊料は9.3%増 ⑯物価の影響を含めた名目支出は1.1%増 ⑰財布から出てゆく金は増えたが、実際に買えるモノやサービスの量は減ったことになる ⑱2023年12月の支出は、実質前年同月より2.5%減 ⑲名目では0.4%増えたが、家賃等の住居費をのぞけば前年同月より0.5%減 ⑳家計が節約志向を高めている様子がわかる 等としている。

 実質所得が2.5%減少しているのだから、⑪⑫⑱のように、実質消費も前年より2.6%減少し、物価高が家計に打撃を与えたことは明らかだ。そして、⑯のように、物価の影響を含めた名目支出は1.1%増えたのに、⑬のように、食料でさえ前年より2.2%減り、特に価格の高い魚介類・乳製品の落ち込みが大きく、⑰⑲⑳のように、まさに財布から出てゆく金は増えたが、実際に買えるモノやサービスは減り、家計は節約志向を高めざるを得ないわけだが、これは体感と一致している。

 従って、当然、⑭のように、家具・医薬品・小遣い・仕送りも減少しているが、⑮の外食や宿泊料が10%前後増加しているのは、外国人観光客の増加に依るところが大きいのではないか?

3)国民を豊かにする持続的賃上げは、どうすれば実現できるか
 これまでよりも賃金を上げて国民を豊かにするには、民間企業の場合は、「売上高(A)ー売上原価(B)ー販売費・一般管理費(C)ー金融費用(D)ー税金(E)=純利益(F)」のうちの純利益(F)が黒字であることが必要だ。そのため、(A)~(D)のそれぞれに関して、(F)を増やす方法を記載する。

(A) 売上高を増やす方法
 売上高は、「販売単価x販売数量」であるため、i)付加価値を上げて販売単価を上げる ii)価値は変わらないが値上げする iii)販売数量を増やす の3つの方法がある。

 i)の事例は、(5)で述べた再生医療で副作用をなくしながらこれまで治せなかった病気を治すようなもので、付加価値が高く、最初に開発すれば販売単価が高くても世界で売れるため、販売数量も伸びる。(6)のEVも、再エネ電力は国内自給でき、燃料代を安くすることも可能で、静かで乗り心地が良く、環境負荷を下げるため、ガソリン車より高くても売れる。これが、消費者も納得する単価のつけ方で、それによる増益分は持続的賃金アップに回すことができる。

 ii)の「価値は変わらなくても値上げする」事例は、政府が盛んに提唱している方法だが、これでは全体として次々と物価が上がるだけで、すでに実証されたとおり賃金を物価以上に上げることはできないため、実質賃金が下がって販売数量が減り、1人1人の国民は貧しくなる。

 iii)の販売数量は、日本だけでなく世界も見据えた現在と将来のニーズに合った製品を提供すれば、世界でシェアを上げて販売数量を増やすことができ、日本は先進国として有利な立場にある。国内だけを見ても、人口が増える年齢層のニーズは高い。

 具体例を挙げれば、*6-4-1の介護や訪問介護のニーズは、現在でも高く、人手不足で、近未来には世界各国でニーズが増すことが人口構造や生活様式の変化を見れば明らかである。そのため、「介護は無駄遣い」と言わんばかりに、政府が工夫もなくサービスの対価としての介護報酬を他産業よりも低く抑え、介護サービスの提供体制そのものの維持を危うくさせているのは、再生医療やEVと同様、有望産業の芽を摘んでいることにほかならない。ちなみに、施設で過ごすよりも、ホームヘルパーの手を借りながら自宅で過ごす方が、QOL(Quality of life)が高いのは言うまでもない。

 また、*6-4-2のように、客が理不尽な要求をする「カスハラの防止」を条例化する意見が出ているが、客のクレームには合理的なものと不合理なものがあり、不合理なものを前面に出して合理的なクレームまでシャットアウトすると、製品やサービスを改善して付加価値を上げる有効な手段を失う。タクシーやバス運転手の名札義務化は、人手不足で客を無視する対応が増えたバブル期に始まったもので、それなりの効果を出していた。

 さらに、最近、うちの富士通製の新しいデスクトップPCがキーボードの上に倒れて画面が割れたので、富士通に電話で修理の依頼をしようとしたところ、電話は全く繋がらず、そのPCを買ったコジマを介して富士通にPCの修理をしてもらったら、画面を取り換えただけで新品を買うのと同じくらいの金額を請求されて呆れた。

 呆れた理由は、「新品を買え」と言わんばかりの態度で修理に消極的だったことで、「日本の製造業はここまできてしまったのかー」と思っていたところ、富士通の英子会社が開発し、イギリス全土の郵便局に導入された会計システムで、残高より実際の窓口の現金が少なかったため、イギリス各地の郵便局長らが2000年以降15年にわたり、横領等の罪に問われて収監されたり多額の弁償を強いられたりする冤罪事件が起こっていた。

 PCが計算した理論値と窓口の現金額の違いの理由は、(英国発の厳しい監査法人PWCが)監査すればすぐに特定でき、このような冤罪事件を起こす必要はなかった筈だが、日本にとっては、日本企業がこのようなお粗末な製品を作るようになった理由が大きな問題なのである。それは、過度に企業と労働者を守って顧客を疎かにする文化の発生で、この状況は1990年代の共産主義経済が市場主義経済と比較してよい製品を作れなかった時代とよく似ているのだ。

(B) 売上原価を減らす方法
 会社には、モノを仕入れて売る事業と、モノを生産して売る事業の二通りがある。

 モノを仕入れて売る事業の場合は、「売上原価」は仕入単価が低いほど減少するため、自社の従業員の賃金を上げるためには、仕入単価を下げる方法がある。しかし、輸入品が多く、円安で海外からの仕入単価が上がっている場合はそれができないし、下請けいじめもよくない。

 モノを生産して売る事業の場合は、「製造原価」の引き下げを通して「売上原価」を下げることになる。(6)のEVの事例では、部品点数がガソリン車の1/3であるため、組み立て工数が少なく、人手を減らすことができるので、従業員1人当たりの生産性を上げて「製造原価」を下げることができる。そのため、従業員1人当たりの賃金を持続的に上げることができるのだ。

 しかし、迅速に1人当たりの生産性を上げて持続的賃上げができるためには、過去の技術にしがみつく必要性をなくすことが重要だ。それには、イ)国民の教育を充実して技術やニーズをキャッチする力を養う ロ)研究力・普及力を上げる ハ)労働の流動性を高めて将来性のある部門に移動し易くするなど、我が国の教育・研究や労働慣行を見直す必要がある。

(C) 販売費・一般管理費を減らす方法
 「販売費・一般管理費」は、事業活動費用のうち原価に入らないもので、「販売費」は営業スタッフの給与や交通費・広告宣伝費・配送料・出荷手数料など、「一般管理費」は総務・経理等間接部門の人件費・通信費・消耗品費・原価に含まれない事務所の家賃や水光熱費などである。

 そのため、「売上原価」「製造原価」だけでなく「販売費・一般管理費」も人件費を含んでおり、賃金を上げるには「販売費・一般管理費」のうち人件費以外の部分を減らす方法と従業員1人当たりの生産性を上げる方法がある。

(D)金融費用を減らす方法
 「金融収益」は預金や有価証券等の受取利息・配当金など財務活動から得られる収益、「金融費用」は支払利息など資金調達にかかった費用で、(D)はそれをnet(純額)で示している。

 財務体質の良い企業は金融収益の方が金融費用より多くなるが、借入金等の負債の多い企業は金融費用の方が多くなる。そのため、財務体質を良くして運用を工夫すれば、金融収益が多くなってnetの金融費用が減り、賃上げにプラスになるが、生産性を上げるための投資をすれば一時的に財務体質が悪化し、本当に生産性が上がるのでなければ賃上げすることはできない。

(E)税金を減らす方法
 日本国憲法が第30条で「国民は、法律の定めるところにより、納税の義務を負ふ」と定めているため、企業は「売上高(A)‐売上原価(B)-販売費・一般管理費(C)-金融費用(D)」の「税引前純利益」に税法を適用して計算された法人税(国税)・住民税(市町村民税と都道府県民税)・事業税(都道府県民税)などを支払う。

 税引前に利益が出ず、法人税法による税務上の赤字である欠損金が発生している企業の場合は、法人税額が0になるだけでなく、その欠損金を翌期以降に10年間繰り越し、翌期以降の利益と相殺することができる。また、資本金の額もしくは出資金の額が1億円以下の中小企業に限り、前事業年度に繰戻し還付を請求することも可能だ。

 住民税には全企業に均等割があり、事業税には資本金1億円超の企業に「資本割」「付加価値割」の「外形標準課税」があるため、欠損金があっても一定の税金は支払わなければならない。また、住民税・事業税には欠損金の繰り越しや繰り戻し還付制度はない。

 そのため、税引前に利益が出ている企業も含め、税金の計算を誤って、本来なら支払う必要の無い税金を支払ってしまう羽目にならないよう、(税務署は払いすぎは指摘してくれないため)税額の計算時には税理士に相談することが推奨される。

 なお、個人も同様に、所得税法・住民税法・事業税法等に従って、年間所得に対する所得税(国税)・住民税(市町村民税と都道府県民税)・事業税(都道府県民税)などを支払っている。しかし、現在の日本は、国も地方自治体も会計すら正確にできず、無駄が多くて生産性の低い税金の使われ方が多いため、常により生産性の高い使い方にシフトさせる努力が必要で、それを可能にするためには国際基準の複式簿記による公会計制度の導入が不可欠である。

4)日本の賃金と労働市場の流動姓
 *6-3は、①日本の賃金は四半世紀にわたって伸び悩んだ ②労働市場が流動的な経済ほど賃金は高い ③転職に中立な社会保障・税制の整備を急ぐべき 等と記載している。

 このうち、①については、事実なので賛成だが、②については、例えば欧米のような雇用流動姓の高い社会は、日本の年功序列型終身雇用のように「能力があってもなくても一定の年齢までは少ないながらも一定の昇給があり、低くはあるが所得が補償される」ということはない。

 さらに、欧米先進国で4半世紀の間に賃金が2~4割上昇した理由は、不景気の業種では簡単にレイオフを行なって仕事のある業種や成長業種に労働移動させるため、各個人の生涯所得が増えるとは限らない。一方、日本はできるだけ正規社員のレイオフは行なわず、社内失業もないように従来の事業に固執するため、これが経済成長を妨げ、全体の賃金を低迷させることとなった。

 労働市場が流動的になると、能力のある人は所得の高い仕事に転職する機会も多いが、そうでない人は失業の可能性がある個人差の大きな社会となる。そのため、③の転職に中立な社会保障(失業・年金・医療・介護)や税制の整備は必要不可欠だ。

 また、*6-3は、④日本経済の行方を左右するのは賃金 ⑤日本で真に求められているのは経済の衰退を止めて成長軌道に乗せること ⑥その方法はデフレからの完全脱却で、賃金と物価の好循環を作ること とも記載している。

 しかし、これまで書いてきたとおり、賃金上昇の源泉は、付加価値をつけて稼ぐ力と労働生産性を上げて生産コストを下げる力である。つまり、付加価値を高め、労働生産性を上げれば、企業は利益を増やし、投資をして生産性を高め、従業員の賃金も上げられるのである。

 これに対し、④⑤⑥は、物価と賃金を短絡的に結びつけ、物価を上げれば賃金が上がって経済が成長軌道に乗るかのような主張を行なっており、実際の経済はそういう順番で進むわけではないため、ミスリードである。

 さらに、*6-3は、⑦問われるのは賃上げの持続性 ⑧賃金の決定要因は労働需給バランスで人手不足なら賃金は上がる ⑨物価と賃金の間には正の相関関係があるが、日本は長期にわたって物価上昇に賃金が無反応だった ⑩賃金は労働生産性に依存するが、日本の労働生産性は長期にわたって低迷し、賃金を停滞させている ⑪労働市場構造は、「非正規雇用/雇用全体」が1984年の約15%から2023年の約4割に上昇し、非正規社員の賃金は正規社員の7割程度のため、経済全体の賃金が低下した としている。

 このうち⑦の持続的賃上げは、国の一時的な補助金や号令で達成できるのではなく、各企業が付加価値を上げ、生産コストを下げて、本当に経済が軌道に乗らなければできないものである。

 また、⑨の物価と賃金の正の相関関係は、鎖国状態の国で無理やり賃金を上げれば、物価も少しは上がるかもしれないが、現代は鎖国状態にはなく、世界市場で自由競争が行なわれている時代だ。その中で、⑩のように、日本の賃金が1990年代から長期にわたって低く抑えられた理由は、i)共産主義諸国や開発途上国が安い賃金で世界市場に参入して製品を輸出し始めたこと ii)日本でも働く女性の割合が増えて労働力供給が増えたこと iii)団塊ジュニア世代が就職時期を迎えて労働力供給が増えたこと iv) 日本企業は、世界市場での競争に勝つために、販売市場が近くてコストの安い地域を世界中で探して製造業を移転させたこと などに依るのである。

 それに加えて、⑧の賃金の決定要因は、労働流動性の高い社会であれば労働需給バランスだけなので、人手不足になれば賃金が上がり、人手が余れば賃金は低く抑えられるが、日本は雇用流動姓の低い社会であるため、賃金が労働生産性と比較して高くなると、日本企業も海外の労働者を使って海外で生産することを選び、日本の製造業が空洞化した面も大きい。

 なお、⑪の日本の労働市場構造のうち、「非正規雇用/雇用全体」が1984年の約15%から2023年の約4割に上昇し、非正規社員の賃金は正規社員の7割程度で、経済全体の賃金が低下したのは、やはり不健全な労働市場の状態だと言わざるを得ない。

 日本企業が非正規雇用を増やした理由は、1990年代の不景気の時に新規の正規採用を抑え、1997年の男女共同参画基本法改正で性別による差別が禁止された時に女性を非正規社員として、労働者に対する差別をなくさなかったことが原因である。

 そのため、私は“非正規(労働法で守られない被差別労働者)”という雇用形態は、(本人が希望する場合を除いて)法律で禁止すべきであり、それが、日本国憲法27条1項の「すべて国民は、勤労の権利を有し、義務を負う」や同14条の「すべて国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない」にも合致する方法だと思う。

・・参考資料・・
<女性初の首相は、隠された女性差別とも闘って変える人であるべき>
*1-1-1:https://digital.asahi.com/articles/DA3S15854885.html?iref=pc_photo_gallery_bottom (朝日新聞 2024年2月3日) 容姿発言、上川氏対応に波紋 「毅然と対応して欲しかった」「女性のサバイブ、難しい現実」
 自民党の麻生太郎副総裁(83)が2日、上川陽子外相(70)の容姿を揶揄(やゆ)するなどした発言を撤回した。この問題をめぐっては、「どのような声もありがたく受け止めている」という上川氏の反応にも波紋が広がっている。「毅然(きぜん)と対応して欲しかった」との指摘があがる一方で、「責めるべきは麻生氏の側だ」と擁護する声もある。どう考えればいいのか。麻生氏は1月28日の講演で「俺たちから見てても、このおばさんやるねえと思った」「そんなに美しい方とは言わんけれども」と語った。上川氏は30日の会見で「様々なご意見があると承知しているが、どのような声もありがたく受け止めている」と述べ、麻生氏の発言への論評を避けた。これにSNSなどで様々な議論がわき起こった。「この同調圧力の強い日本社会で、同じ境遇にある女性たちも、大臣と同じような対応をしなければならないと感じてしまうリスクはないか」。2日の参院本会議で、立憲民主党の田島麻衣子氏が上川氏にただした。上川氏は「ありがたく」の表現はやめたうえで、「使命感を持って一意専心、努力を重ねていく」と述べ、正面から答えなかった。「外相として世界に間違ったメッセージを発信した」(立憲の蓮舫参院議員のX)との批判もあがっている。「百合子とたか子 女性政治リーダーの運命」の著書がある政治学者の岩本美砂子・三重大学名誉教授(67)は「女性が政界でサバイブする(生き残る)のは、まだまだ難しいという現実の表れ。女性の割合がせめて3割になれば」と言う。衆院の女性比率は10%、参院は27%。世界経済フォーラム(WEF)が昨年発表したジェンダーギャップ指数で、日本は146カ国中、過去最低の125位。政治分野では138位に沈む。一方で「次の首相候補にとの声も上がり始めた。政界での立ち位置の影響もある」とも指摘する。麻生氏は政権の中核で、昨年9月の内閣改造で上川氏の登用を推した経緯もある。今秋には自民党総裁選も迫る。「20人の推薦人を集め総裁選に出ようと思えば、麻生氏に反論するのは性別を問わず難しい」とみる。国際人権法の学者で、SNS上のグループ「全日本おばちゃん党」を立ち上げたこともある谷口真由美さん(48)は、社会における女性の立場をおもんぱかる。「女性たちは、セクハラ発言などを受け流すのが度量だとたたき込まれてきた。麻生氏のような発言にさらされ続けると、感覚がまひしてしまう」。谷口さんは2021年、東京五輪・パラリンピック大会組織委員会の会長だった森喜朗氏(86)が「女性がたくさん入っている会議は時間がかかる」と述べた問題で、当事者側に立った経験もある。森氏が名指しした日本ラグビー協会で、理事を務めていたからだ。「渦中にある当人は自分の思いを言語化しにくい。周りの自民党議員が、代わりに批判して支えて欲しい」と願う。そのうえで上川氏に注文をつける。「首相候補の女性として、一挙手一投足が注目される存在になった。今後は、前にも後ろにもたくさんの女性たちがいることを意識して発言して欲しい」。元自民党衆院議員の金子恵美(めぐみ)さん(45)は「若手の男性議員は、今回の麻生氏のような発言のおかしさに気づき、同調して笑わなくなりつつある。『麻生節』で済まされる時間はもう長くない」と語った。麻生氏は2日、上川氏に関する発言を撤回したコメントの中で、「女性や若者が活躍できる環境を整えていくことが政治の責務」とも触れた。

*1-1-2:https://www.tokyo-np.co.jp/article/307000 (東京新聞 2024年2月2日) 「なぜ抗議しないのか?」 麻生太郎氏に「おばさん」と呼ばれた上川陽子外相の答弁で議事が紛糾
 上川陽子外相は2日の参院代表質問で、自民党の麻生太郎副総裁から「おばさん」と呼ばれたことに抗議しないのかを問われ、「世の中にはさまざまな意見や考えがあることは承知している」と述べるにとどめた。質問に正面から答えていない上川氏の答弁に対し、野党側が抗議し、議事は一時中断した。麻生氏は同日夜「表現に不適切な点があったことは否めず、指摘を真摯に受け止め、発言を撤回したい」とのコメントを発表した。麻生太郎氏へのルッキズム批判に当の本人、上川陽子外相が発言「どの声もありがたく」
◆「信念に基づき、政治家としての職責を果たす」
 立憲民主党の田島麻衣子氏は代表質問で、麻生氏の発言を問題視しなかった上川氏の対応について「同じ境遇にある女性たちも同じように対応しなければならないと感じるリスクはないか」「問題があるとすれば何か」「なぜ大臣は抗議をしないのか」と質問を重ねた。上川氏はこれらの問いに直接答えず「初当選以来、信念に基づき、政治家としての職責を果たす活動にまい進してきた」と説明。現在は紛争解決や平和構築の分野で女性参画を進める「女性・平和・安全保障(WPS)」の定着に向け、力を注いでいるとも語った。その上で「使命感をもって一意専心、(日本人初の国連難民高等弁務官を務めた)緒方貞子さんのように脇目もふらず、着実に努力を重ねていく考えだ」と強調し、「田島議員、ぜひWPS、一緒に頑張りましょう」と締めくくった。
◆「慎むべきなのは当然」岸田首相の「一般論」
 岸田文雄首相は一般論として「性別や立場を問わず、年齢や容姿を揶揄(やゆ)し、相手を不快にさせるような発言を慎むべきなのは当然のことだ」と述べた。上川氏の答弁に対し、立民の議院運営委員会理事が「質問に答えていない」と抗議。与野党の理事が議場内で協議した結果、自民理事が上川氏側に複数回にわたって再答弁を求めたが、上川氏は応じず、約10分間議事が中断した。田島氏は本紙の取材に「上川氏から十分な答弁がなく、がっかりした。たとえ外相でも、女性は抗議できないという自民党の限界が示された」と語った。共産党の田村智子委員長も記者会見で上川氏の答弁について「ジェンダー平等を進めようという立場なら、きちんと批判すべきではないか」と語った。

*1-1-3:https://digital.asahi.com/articles/DA3S15851259.html (朝日新聞 2024年1月30日) 容姿言及、麻生氏に批判 女性差別/「評価する側」前提
 自民党の麻生太郎副総裁が、上川陽子外相について「そんなに美しい方とは言わんけれども」などと述べた。上川氏の外交手腕を評価する文脈だったが、「女性差別の姿勢が見て取れる」「今までの暴言の中でも最悪」と批判が広がっている。今回の発言は28日、福岡県芦屋町での講演の中であった。「俺たちから見てても、このおばさんやるねえと思った」としたうえで、「そんなに美しい方とは言わんけれども、英語できちんと話をし、外交官の手を借りずに自分でどんどん会うべき人に予約を取っちゃう」などと語った。上川氏の名前も「カミムラ」と誤った。ライターの望月優大(ひろき)さんは取材に「上川氏を褒める文脈であっても、外相としての手腕を語るうえであえて容姿に触れるのは、不必要かつ不適切。女性への差別的な姿勢が見て取れる」と話す。さらに望月さんは「俺たちから見てても、このおばさんやるねえと思った」という部分に着目し、「『俺たち』が女性たちを評価するという構図が、当然の前提になっている」とみる。「女性の登用をうたいながらも、実際に誰を引き上げるかを決める権力はいまだに麻生氏ら男性たちが握り続けている現実も映している」。東京大学の瀬地山角教授(ジェンダー論)は「上川氏を評価しているのは分かるが、男性の外相についてであれば、容姿に言及することはない。女性だけ美醜の評価を付け加えられる。女性が社会で生きていくうえでのしんどさがうかがえる発言だ」と話す。瀬地山氏は、昨年9月に上川氏ら5人の女性が閣僚に就いた際、岸田文雄首相が「女性ならではの感性や共感力も十分発揮していただくことを期待したい」と述べた問題との共通性を指摘する。「政治の世界で、女性は周縁にいるアウトサイダーだという認識があるから、男性政治家から『俺たちから見て』『女性ならではの』といった発言が出てくる」。麻生氏は問題発言を繰り返しながら、要職にとどまり続けている。副総理兼財務相だった2018年5月には、財務省の前事務次官のセクハラ問題をめぐり、「(女性に)はめられた可能性は否定できない」と答弁して撤回。「セクハラ罪っていう罪はない」との発言も問題になった。共産党の小池晃書記局長は29日の会見で「麻生さんは暴言を繰り返しているが、今までの中でも最悪じゃないか」として撤回・謝罪を求めた。

*1-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20240202&ng=DGKKZO78174220S4A200C2EAC000 (日経新聞 2024.2.2) 保利耕輔さん(元自民党政調会長) 筋を通す「まっとうな保守」
 謹厳実直が服を着たような人だった。ほとんど酒を飲まない甘党ということもあり、群れたがる同僚議員を尻目に夕方には自宅に直行し、本や資料を読みふけった。文相時代には高校野球の始球式の練習をしすぎて腕が上がらなくなり、痛みをこらえて投げた。予算獲得の陳情団が上京すると、ふつうの国会議員は本題もそこそこに地元の新しい噂話を聞きたがるものだ。「保利さんは書類から目を離さず、事業の中身について質問してきた」というのが、古川康衆院議員の佐賀県知事のときの思い出だ。役職を断ることでも知られた。2003年に農相を打診されると、教育基本法改正を巡る与党調整に注力したいとして固辞した。08年には自民党政調会長に指名されたが、「あれもこれもの政策なんかわからん」と難色を示した。仲のよい園田博之氏を会長代理にすることを条件にようやく引き受けた。当選同期だった麻生太郎自民党副総裁の弁を借りると「まっとうな保守」。そうした人柄がよく発揮されたのが、党憲法改正推進本部長のときだ。民主党政権に対抗しようと「自主憲法制定は党是」という声が党内で勢いを増していた。いまの憲法は米国の押し付けだ、と全否定する考え方だ。本当に自主憲法が党是なのか。党本部の薄暗い倉庫に自ら足を運ぶと、結党時の資料を探し出した。書いてあったのは「現行憲法の自主的改正」。全否定ではなかったとして、党のホームページの憲法に関する記述を「わが党は結党以来、『憲法の自主的改正』を『党の使命』に掲げてきました」と書き改めさせた。14年に政界を退く際、後継指名はしなかった。衆院議長を務めた父・茂氏と合わせて「70年も保利と投票用紙に書いてもらった。この先も、とは言えない」と語っていたそうだ。目立つことを嫌い、手柄を誇らない。常に筋を通す。大島理森元衆院議長は「ポピュリズムとはいちばん遠いところにいる政治家だった」と惜しんだ。 =2023年11月4日没、89歳

<地方議会の担い手不足と女性>
*2-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20240204&ng=DGKKZO78220590U4A200C2MM8000 (日経新聞 2024.2.4) 地方議会、止まらぬ空洞化、首長「専決」数、10年前水準 担い手不足も顕著
 地方議会の空洞化がとまらない。審議を担う議員のなり手不足は深刻になる一方だ。首長が議会ぬきで補正予算などを決める専決処分(総合2面きょうのことば)の多発も目につく。2012年の法改正で一定の歯止めをかけたはずが、コロナ禍で急増し、その後の戻りも鈍い。非常時に限るはずの仕組みのタガが緩んだままになれば、住民が行政を監視する地方自治の根幹が揺らぐ。
空洞化を端的に示すのは担い手不足だ。4年ごとの統一地方選で議員が無投票で決まる割合は右肩上がり。23年は改選定数1万4844人の14%(2080人)に達した。財政難や人口減少で定数は減っているにもかかわらずだ。地方自治は首長、議員それぞれを有権者が直接選ぶ二元代表制で成り立っている。とりわけ議員は地域に住んでいることが要件で、多様な住民の声を取り込む役割を担う。議会の力が弱まれば、首長のブレーキがききにくくなる。過去には例えば鹿児島県阿久根市で10年に市長が職員の賞与半減などの政策を次々と独断で進める騒ぎがあった。災害などの緊急時に限り、議会を通さずに予算や条例などを決められる「専決処分」の仕組みが抜け穴になった。当時の片山善博総務相は違法と断じ、歯止めに動いた。12年に改正した地方自治法は専決処分を議会が事後的に承認しない場合、首長が「必要な措置」をとって議会に報告するよう定めた。副知事や副市町村長の選任は専決できないようにした。抑制効果はすぐ表れた。10~12年に市町村合計で年平均1万件を超えていたのが、13年以降は8千件から9千件台半ばに落ち着いた。そのタガが再び緩んでいる懸念がある。きっかけはコロナ禍だった。感染が広がった20年は19年から5割以上増えて1万3千件を超えた。休業する飲食店への協力金などの補正予算が目立った。流行当初の混乱を考えればやむを得ない面はある。18、19年とゼロ件だった千葉県は5件になった。「命にかかわるのでその場で必要なことのみ専決していった」という。問題はその後だ。コロナが比較的落ち着いた22年もデータがそろう都道府県と市で計4500件超と19年より16%多い。22、23年の件数がコロナ前より多いある県は「物価高対策のため」と説明する。近年は疑問符がつくケースも散見される。21年は兵庫県明石市長が全市民への金券配布を専決し、翌年に問責決議を受けた。23年4月には広島県の安芸高田市長が良品計画の出店計画に関する費用を専決で計上した。議会は承認せず、6月に議員提出の修正案を可決した。自治体議会研究所の高沖秀宣代表は「緊急でない例もある。閉会中なら臨時会を開くなどすべきだ」と指摘する。コロナ禍で緊急事態宣言などを繰り返した首都圏でも神奈川県は件数が減った。議会局の担当者は「議会軽視ととられないよう、なるべく臨時会を開いて議決してもらった」と話す。どうすれば議会が機能を十分果たせるのか。ひとつの改善策として広がるのが通年制だ。予算編成などの時期だけ定例会を開くのと異なり、首長の招集を待たずに必要な議案を随時、議論できる。似た仕組みとして定例会年1回制もある。三重県が13年に採用し、翌14年以降は選挙期間を除いて専決処分はゼロだ。通年制などの導入例は全国で100を超えて徐々に増えている。もちろん計約1800の自治体の数に照らせばまだ少ない。地方自治は「民主主義の学校」と称される。それも首長と議会の健全な緊張関係があってこそだ。改革のネジを改めて巻き直す必要がある。

*2-2:https://www.nikkei.com/paper/related-article/?R_FLG=1&b=2024・・=DMM8000 (日経新聞 2023/11/2) 女性増、国会に波及も 駒沢大学教授 大山礼子氏
 4月の統一地方選で女性議員が増えた地域もあったが、まだ十分とは言えない。2018年施行の候補者男女均等法の効果が徐々に出て増えたのだと思うが、いまだ200以上の議会で女性がゼロだ。2割前後で伸び悩む議会もある。女性が影響力を持つには議会の3~5割程度を占める必要がある。達成には選挙制度の抜本的な改革が不可欠と考える。都道府県議選では1人区をやめるべきだ。無投票が多く現職に有利になる。定数が多いと党派も多様になり、女性や若い世代も立候補しやすくなる。市町村議選では(複数の候補者に投票できる)「制限連記制」が選択肢の一つだ。「クオータ制」も導入した方がいい。女性候補が多い政党に対して政党助成金を優遇するなどの方法が考えられる。首長や議会が自ら動き、女性の立候補につなげた地域もある。女性議員が半数近い兵庫県小野市では役員に女性を登用した自治会に補助金を出す取り組みなどが功を奏した。女性管理職を増やした県もある。こうした動きの積み重ねも一定の効果は期待できる。そもそも少子化の進行は女性議員が少なかったことが大きな要因だ。子育て中の女性への支援などが手薄だった。女性が増えれば政策が刷新される。保護者が持ち帰っていた使用済みおむつを保育所で処分するよう求める動きも、始まりは女性議員らの議会質問だ。生活に身近な議題を扱う市町村などの議会に女性や若い世代は不可欠だ。女性が増えると若い世代なども増え、多様性のある議会につながる効果もある。議会運営もオンライン化や定例日開催など変化が生まれている。投票率も伸びる。東京都武蔵野市では特に20~30代の投票率が飛躍的に上がった。女性がいることで政策面の期待が高まり、政治への関心が上がったのだろう。有権者が地方議員を自分たちの代表と思えるようになったのではないか。海外では地方議会でまず女性が増え、国政に波及した例も多い。日本も地方議員を増やせば国会にもつながる可能性はある。

<学術会のジェンダー不均衡>
*3-1:https://digital.asahi.com/articles/ASS1D55X1S1DPLBJ003.html (朝日新聞 2024年1月16日) 学術界のジェンダー不均衡、日本が最も大きく 約1億本の論文を解析
 日本は、研究者のキャリアの長さや研究論文の引用などで学術界のジェンダーギャップ(性差)が大きく、中国と韓国に比べても後れをとっていることが浮かび上がった。日米の研究チームが1950~2020年に出版された約1億本の論文データを解析した。研究チームの米ニューヨーク州立大バファロー校の増田直紀教授(ネットワーク科学)は「日本の学術界のジェンダーギャップを改善するには、研究職を長く続けられるようにすることが重要。子育てで女性が研究を中断しなくてすむような取り組みや、大学で女性教員を増やすなど、様々な試みをさらに進めてほしい」と指摘している。同校や神戸大、東京工業大、京都大でつくる研究チームは、論文の著者名から性別を高い精度(90%以上)で推定する方法を開発。日本と韓国、中国、「その他(主に欧米)」で、研究者のキャリアと論文の引用・被引用回数などについて性差がないかを調べた。その結果、いずれの国でも研究者数は男性が女性より多いが、男女比の不均衡は日中韓が欧米などより大きかった。個々の研究者がキャリアを通じて発表した論文数をみると、日本では女性が男性より42・6%少なかった。中国は9・3%、韓国は20・2%、その他は31・2%少なく、日本の性差が最も大きく出た。女性の方が研究職としてのキャリア年数が短い(日本では男性より39・6%短い)ことが原因の一つと推測されるほか、研究論文の共同著者となっている場合が少ないことも背景にあるとみられる。年平均でみると、発表論文数はいずれの国でも性差はほとんど見られなかった。論文が引用された回数の指標をみると、日本では女性が男性より19・9%低かったが、中国と韓国では逆に女性の方が高かった。さらに詳しく分析すると、男性研究者が主導する論文(筆頭著者と最終著者が男性)を過多に引用し、女性研究者が主導する論文(筆頭著者と最終著者が女性)を過少に引用する傾向が日中韓でみられ、とりわけ女性主導論文の過少引用は日本が最も強かった。研究チームの中嶋一貴・東京都立大助教(計算社会科学)は「学術界のジェンダー不均衡をビッグデータから定量的に分析する社会的意義がある研究をできた。この問題は国際的な社会課題で、論文の査読や研究者の雇用などでも起こりうる。今後も、様々な角度からデータ分析し、世に問う研究に取り組みたい」と話している。研究成果が国際専門誌(https://doi.org/10.1016/j.joi.2023.101460別ウインドウで開きます)に掲載された。

*3-2:https://newswitch.jp/p/8732 (NewSwitch、日刊工業新聞 2017年4月20日) 日本の女性研究者は少数精鋭!日本の研究論文数、女性が男性上回る、直近5年に執筆した論文数、エルゼビア調べ
 日本の研究者が直近5年間に執筆した論文数は、男性より女性の方が多く、世界的な傾向と逆転している―。こんなデータをオランダの学術論文出版社、エルゼビアが明らかにした。人文社会系を含む同社の論文データベース(DB)による分析だが、日本の女性研究者の“少数精鋭ぶり”がうかがえるといえそうだ。これは同社の調査報告「世界の研究環境におけるジェンダー」で明らかになった。それによると、日本の研究者全体のうち女性の占める割合は約2割(総務省2016年調査では15・3%)。米国や欧州連合(EU)28カ国の約4割と比べて、女性の活躍度はかなり低い。しかし2011―15年の研究者1人当たりの論文数は、日本の女性が1・8本で男性の1・3本よりもやや多く、他国・地域と異なる傾向だった。論文数は96―2000年ではより男女差が大きく、日本の特徴として挙げられる。エルゼビアではこの結果を「日本では女性研究者のキャリア構築が他国より難しいだけに、生き残っている多くの人が有能なのではないか」とみている。調査は同社の論文DB「スコーパス」を活用。著者ファーストネームを基に、ソーシャルメディアの記載などから性別を導き、国別の傾向を分析した。

<再生医療:治る病気は治せばよいのに>
*4-1:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/1189121 (佐賀新聞 2024/2/5) インスリン補充、生涯必要 1型糖尿病の佐賀県内患者支援 佐賀市のNPO、20~25歳対象、月3万円、ふるさと納税活用
 幼少期をはじめ幅広い年代で突然発症し、生涯にわたってインスリン補充が必要となる1型糖尿病の患者は、行政による医療費助成が終わる20歳以降は自己負担が重くなる。佐賀市の認定NPO法人「日本IDDMネットワーク」は若者を切れ目なくサポートしようと、佐賀県に住む25歳までの患者を対象に、4月から月額最大3万円の医療費支援を始める。全国で初めての取り組み。1型糖尿病はインスリンを分泌するすい臓の細胞が壊される病気で、主に注射によるインスリン補充が1日に4~5回必要になる。「小児慢性特定疾病」の一つで、18歳未満で発症した人は20歳までは医療費の助成が受けられる。20歳以上の患者は月1万~3万円程度の自己負担が発生し、出費を抑えるために治療の質を落とすケースも少なくないという。同法人はこうした現状から、20歳以上の患者や、18歳過ぎの発症で「小慢」の対象にならなかった患者について、25歳まで支援する体制を整えた。自己負担から所得に応じた一定額を差し引いたうち、月3万円を上限に助成する。財源は、佐賀県の企業版ふるさと納税を通じた寄付で賄う。昨年7月から昨年末までに1千万円を超える金額が集まり、支援の開始時期を今春に決めた。対象となる県内の患者は30人ほどを見込む。国内の1型糖尿病患者は10万~14万人とされる。同法人の岩永幸三理事長(61)は「治らない病気でありながら国の難病に指定されず、経済的な事情で望む治療を受けられない患者がいる。われわれだけでは人手や資金に限りがあり、取り組みが全国に広がることを期待したい」と話す。
*制度や寄付の問い合わせは日本IDDMネットワーク、電話0952(20)2062。

*4-2:https://www.amed.go.jp/news/release_20220214-01.html (東京大学日本医療研究開発機構 2023年2月14日) 成熟膵島細胞を増やすことに成功―糖尿病の根治に向け、新たな再生治療法の可能性を発表―
●発表者
 山田 泰広(東京大学医科学研究所 附属システム疾患モデル研究センター 先進病態モデル研究分野 教授)
 平野 利忠(東京大学医科学研究所 先進病態モデル研究分野 大学院生)
●発表のポイント
 ・成熟した膵島細胞(注1)は自己複製能を持たず、その機能低下が糖尿病の原因となっています。本研究は、出生前後に増殖する膵島細胞でMYCL遺伝子(注2)が発現し、MYCLを働かせると成熟した膵島β細胞(注3)に活発な自己増殖が誘発できることを見出しました。
 ・体内でMYCLを発現誘導する、あるいはMYCLにより試験管内で増幅させた膵島細胞を移植することで、モデルマウスの糖尿病を治療できることを示しました。
 ・本研究成果による試験管内での膵島細胞の増幅や、遺伝子治療(注4)による生体内での膵島細胞の増殖誘導は、糖尿病の根治を目指した新たな再生治療法となることが期待されます。
●発表概要
 ・平野利忠大学院生(東京大学医科学研究所 先進病態モデル研究分野)、山田泰広教授(同分野)、京都大学、愛知医科大学らの研究グループは、出生前後に増殖する膵島細胞で高発現するMYCLに着目し、MYCLを働かせることで生体内外の成熟膵島細胞に活発な自己増殖を誘発できることを明らかにしました。また、MYCLによる自己増殖の誘導には、遺伝子発現状態の若返りが関与することを示しました(図1)。さらにMYCLの発現により増殖した膵島β細胞は糖に応答してインスリン(注5)を分泌し、モデルマウスの糖尿病を治療できることを示しました。
 ・本研究は、MYCL遺伝子により体外で増幅させた膵島細胞を再び体の中に戻す細胞移植療法や、MYCL遺伝子治療による体内での膵島細胞増幅技術の開発といった、膵島細胞の再生医療開発への応用が期待されます。本研究成果は2022年2月10日(英国時間)、英国医学誌「Nature Metabolism」(オンライン版)に掲載されました。(以下略)

<SDGS:EVと再エネの遅れは何故起こったのか>
*5-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20240207&ng=DGKKZO78288850W4A200C2TB1000 (日経新聞 2024.2.7) 輸入EV販売、1月11%増 BYDシェア2割
 日本自動車輸入組合(JAIA)が6日発表した1月の電気自動車(EV)の輸入販売台数(日本メーカー車除く)は、前年同月比11%増の1186台となり2カ月連続で増加した。そのうち約2割を中国のEV大手、比亜迪(BYD)が占めて存在感を高めた。独メルセデス・ベンツなど欧州勢もEV車種をそろえており、顧客の選択肢が増えたことで輸入EVの販売が伸びている。BYDの販売台数は前年同月比約6倍の217台だった。同社は2023年1月に日本の乗用車市場に参入し2車種のEVを展開している。主力車種は多目的スポーツ車(SUV)「ATTO3(アットスリー)」だ。最先端の安全装置などが人気で、高級車からの乗り換えや60代以上の顧客も多い。ただ、同社の担当者は「輸入EV全体をみると販売台数はかなり少ない。BYDの認知度もまだまだ低いので高めていく必要がある」と語った。同社は24年春にもセダンEV「シール」を日本に投入し、25年末までに国内の販売拠点を100カ所まで増やして拡販する方針だ。輸入車全体では17ブランドが118モデルのEVを日本で展開している。JAIAは各メーカーのEV販売台数を公表していないが、輸入EVでは独フォルクスワーゲン(VW)の「ID.4(アイディー4)」や同アウディの「Q4 e―tron(キュー4イートロン)」など欧州メーカーを中心に売れている。JAIAの担当者は「欧州メーカーなどが多様なグレードのEVを揃えたことで販売が安定してきた」とした。

*5-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20240207&ng=DGKKZO78285620W4A200C2CM0000 (日経新聞 2024.2.7) 太陽光パネル、撤去難題、30年代以降、相次ぎ「引退」へ 傾斜地作業は費用割高に
 事業終了後の太陽光パネルの撤去積立金が少なくとも災害リスクがある斜面に立地する全国1600施設(500キロワット以上)で不足する恐れが浮上している。放置や不法投棄につながる可能性もあり、適正処理へ向けた仕組み作りが不可欠だ。2012年に始まった固定価格買い取り制度(FIT)による買い取り期間は10キロワット以上で20年間。32年には各地の施設で買い取り期間が終了し始め、売電価格が大幅に下落する見通し。パネル寿命も25~30年程度とされ、各自治体は発電所の維持管理や更新を怠る事業者の増加を懸念する。高まる不安を払拭しようと政府は再エネ特措法を改正し、事業者に毎月売電収入の4~7%程度を10年にわたって強制的に積み立てさせる制度を22年に開始した。しかし、水準の算出根拠は解体事業者らへのアンケートを基とした平地での撤去・廃棄費。作業難易度が上がるため割高になるケースが多い傾斜地は考慮されていない。制度設計時の議論に参加した早稲田大学の小野田弘士教授は「データが限られる中、短期間での検討であったため立地条件までは議論が及ばなかった。一部で撤去費が十分でない可能性は否定できない」と指摘する。日本経済新聞の調べでは傾斜地に立地する施設は土砂災害(特別)警戒区域など、災害リスクが高いエリアだけでも全体の18%に上る。急な傾斜地での作業は公共事業の予定価格算出に使う賃金水準でみると平地に比べ3割高い(山林砂防工と普通作業員の全国平均を比較)。太陽光開発大手リニューアブル・ジャパンの撤去工事費の試算でも3割程度上振れする。資源エネルギー庁新エネルギー課は「傾斜地では発電効率が高くなることで売電収入も上がり平地より積立額が多くなる場合もある」とするものの、日経が傾斜地の発電効率の高さについて尋ねたところ「データはなく検証はしていない」と回答した。費用不足で放置された場合、災害も誘発しかねない。京都大学の松浦純生名誉教授は「排水路などが管理されず、表面侵食や土砂崩れが起きやすい状況を生む可能性がある。撤去に加え、植林などが不可欠」と話す。第28回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP28)では、30年に再生可能エネルギーを3倍に拡大することに130カ国が賛同した。日本でその中核を担う太陽光の持続可能性を高めることは社会的責務といえる。新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の試算では使用済みパネル排出量は36年に年17万~28万トン。大量廃棄に備え、撤去や事業終了後の対応を促す狙いを盛り込んだ条例を制定する自治体も出始めた。神戸市は「多額の費用がかかる撤去や災害時のパネル飛散などに対応する」(環境保全課)ため、20年、5万平方メートル以上の設備新設時に、廃棄費の積み立てを義務付けた。長野県木曽町も原状回復を条例で定めた。適正処理を促すには規制だけでなく、事業終了後のコスト低減や再利用などを促す取り組みも必要となる。環境省はリサイクル設備を導入する事業者に対し費用の半分を上限に補助金を出し、処理能力を向上させる。丸紅と浜田(大阪府高槻市)は共同出資で新会社を設立し、中古パネルの買い取り販売を始めた。環境エネルギー政策研究所の山下紀明主任研究員は「太陽光は今後も重要な電源のひとつ。FIT後を見据えた『備え』に力を入れ、将来の懸念を払拭する努力が欠かせない」と指摘する。

<付加価値向上・生産性向上と賃金の関係>
*6-1ー1:https://www.nikkei.com/article/DGXZQODK097RF0Z00C24A2000000/ (日経新聞社説 2024年2月10日) GDP4位転落を改革加速の呼び水に
2023年の日本の名目国内総生産(GDP)がドイツに抜かれ世界4位に転落する見通しになった。米国に次ぐ2位を10年に中国に譲り、こんどは3位も明け渡すことになる。米欧との金利差の拡大などを背景に大幅な円安が進み、GDPの規模が目減りした。ドイツ経済は目下マイナス成長にあえぎ「欧州の病人」とも指摘される。逆転は為替変動の要因が大きく、それだけで一喜一憂する必要はない。とはいえ日本の成長力の底上げは進んでいない。今回の事態は怠った経済改革の加速を促す警鐘と受け止めるべきだ。ドイツ連邦統計庁が公表した23年の名目GDPを同年の平均為替相場で換算すると約4兆4500億ドル。日本の統計は同年9月までしか出ていないが、ドイツに並ぶには15日発表の10〜12月期のGDPが前年同期より3割増える必要がある。可能性は極めて低い。円相場は23年末に1ドル=141円台と年初より10円ほど下落した。逆にユーロは対ドルでやや強含み、日独逆転を生んだ。だが購買力平価で計算した日本の名目GDPはなおドイツを上回る。為替相場次第では再逆転も起きうる。順位自体より、潜在成長力の低さや生産性の伸び悩みに注目すべきだ。00年にドイツの2.5倍だった日本の名目GDPは四半世紀近くで同等に近い水準になった。日本の1人当たりGDPは世界で30位程度と低迷する。全体の規模では経済大国の一角にみえても、実力では見劣りすることを真剣にとらえねばならない。国際通貨基金(IMF)は年1回の対日経済審査後の声明で、昨年秋に決めた所得税減税などの経済対策について、的が絞られていないなどの理由で「妥当ではなかった」と評した。痛み止めに終始して中長期の改革に及び腰な岸田文雄政権には厳しい指摘だ。経済協力開発機構(OECD)も人手不足などを展望して定年制廃止による高齢者就労の拡大、女性や外国人の雇用促進を日本に提唱した。労働市場の流動性を高め、成長する分野や企業に人材が移動する仕組みを整えることがなにより重要だ。物価や賃金の上昇が始まり、日銀も超金融緩和策の正常化に動き出している。環境が変化するなかで政府も民間部門も日本経済が抱える構造問題を直視すべきだ。成長促進の方策を的確に練り、迅速に行動に移す必要がある。

*6-1ー2:https://toyokeizai.net/articles/-/605668?display=b (東洋経済 2022/7/25) 「仲良く貧乏」を選んだ日本は世界に見放される、1人当たりGDPは約20年前の2位から28位へ後退
 日本は、アメリカ・中国に次ぐ「世界3位の経済大国」とよく言われます(2008年までは世界2位)。ここでの3位は、GDPの「総額」の順位です。しかし、一国の経済水準は、GDPの「総額」ではなく、「国民1人当たり」で比較するのが、世界の常識です。日本の2021年の1人当たりGDPは3万9340ドルで、世界28位です(IMF調査)。2000年には世界2位でしたが、そこから下落を続け、世界3位どころか、先進国の中では下のほうになっています。経済の話題になると、景況感指数・物価上昇率・失業率・平均賃金といった数字がよく取り上げられますが、これらは経済の一部分に光を当てているに過ぎません。総合評価としてもっとも大切なのに日本ではあまり注目されていないのが、1人当たりGDPです。日本や主要国の1人当たりGDPはどのように推移してきたのでしょうか。そこから日本にはどういう課題が見えてくるでしょうか。今回は1人当たりGDPを分析します。なお文中のGDPデータは、IMFの統計によるものです。
●日本はもはや「アジアの盟主」ではない
 まず、1人当たりGDPを主要国と比較し、日本の立ち位置を確認します。グラフは、日本・アメリカ・中国・ドイツ・シンガポール・韓国の1990年から2021年の1人当たりGDP(名目ベース)の推移です。よく「バブル期が日本経済のピークだった」「バブル崩壊後の失われた30年」と言われますが、1990年は8位で、2000年に過去最高の2位でした。国際比較では、2000年が日本経済のピークだったと見ることができます。2000年以降の日本経済の低迷については、「小泉・竹中改革が日本を壊した」「民主党政権は期待外れだった」「アベノミクスが日本を復活させた」といった議論があります。ただ、この20年間、日本の順位はどんどん下がっており、「どの政権も日本経済の凋落を食い止めることはできなかった」と総括するのが適切でしょう。

*6-2-1:https://digital.asahi.com/articles/DA3S15857909.html (朝日新聞 2024年2月7日) (ニッポンの給料)上昇すれど、物価に追いつかず 昨年実質賃金2.5%減、2番目の減少幅
 厚生労働省は6日、2023年分の毎月勤労統計調査(速報)を発表し、物価を考慮した働き手1人あたりの「実質賃金」は前年比2・5%減だった。名目賃金が物価の大幅な伸びに追いつかず、減少は2年連続。減少幅は比較可能な1990年以降では、消費増税のあった14年(2・8%減)に次ぐ大きさだった。昨年の春闘では、正社員の賃上げ率(連合集計)が30年ぶりの高水準だったことなどもあり、名目賃金にあたる現金給与総額は、1・2%増(月額32万9859円)と3年連続で増加。しかし、実質賃金の計算に使う消費者物価指数(持ち家の帰属家賃を除く総合)は3・8%増と、上昇率が大きかった。厚労省の担当者は「今年の春闘でベースアップの水準がどれくらい上がるかを注目したい」と語る。また、昨年12月分(速報)の実質賃金は、前年同月比1・9%減だった。前年割れは21カ月連続だ。武見敬三厚労相は同日の会見で「経済の好循環によって国民生活を豊かにしていくためにも実質賃金の上昇が必要だ」と強調。賃上げしやすい環境整備や三位一体の労働市場改革の推進に取り組む考えを示した。
■食費削減・暖房も…
 買い物客でにぎわう東京都練馬区にあるスーパー「アキダイ」。昨年は食品メーカーからの仕入れ価格の上昇や光熱費の高騰の影響で、1年間で約1千品目を値上げした。鉄道会社に勤める40代の男性は「給料は上がったものの、全く値上げに追いつかず家計は楽になっていない」と語る。昨年は定期昇給で月給が約5千円上がったが、コロナ禍での業績悪化によって抑えられた賞与は元の水準には回復していない。食費を削るほか暖房器具の利用を控えるなど、「何とかやりくりしている」と苦笑した。50代の主婦は「みんな高くて、今日はトマトまで買うのはあきらめました」と話す。夫はシステムエンジニアで、昨年給料は上がっていない。数年前に2人いる子どものうち1人が離れて暮らすようになり、いまは3人暮らし。だが、「家計簿を見ると、4人暮らしのころより、今の方が食費が高い」と肩を落とした。連合総合生活開発研究所が昨年12月に公表した報告書によると、首都・関西圏の企業に勤める2千人へのアンケートで、1年前と比べて賃金の増加が物価上昇より「小さい」と回答したのは約6割に上り、家計が圧迫されている状況が顕著になっている。
■プラス化は物価減速後
 野村総合研究所の木内登英(たかひで)エグゼクティブ・エコノミストの話 基本給などの「所定内給与」が、1・2%増とはかなり低い印象だ。春闘に含まれない中小・零細企業の賃上げ率は低めだったためとみられる。今春闘の賃上げ率は、昨年より若干高めになると思うが、それでも今年中に実質賃金をプラスにすることは明らかに無理だ。現実的には物価上昇率が下がらないと実質賃金はプラスにはならず、そうなるのは2025年の後半だと思う。物価上昇率が賃金上昇率より高いので国民の生活は圧迫されている。働き手が賃上げが不十分だと判断すれば、消費が落ち込み、物価上昇率の低下が進む。そうなれば、実質賃金がプラスになるのが少し早まるだろう。

*6-2-2:https://digital.asahi.com/articles/DA3S15857906.html (朝日新聞 2024年2月7日) 消費支出、3年ぶり減 前年比実質マイナス2.6% 家計調査
 総務省が6日発表した2023年の家計調査によると、2人以上の世帯が使ったお金は月平均29万3997円だった。物価変動の影響をのぞいた実質で、前年より2・6%減った。物価高が家計に打撃を与え、3年ぶりに減少に転じた。支出の3割を占める食料は、前年より2・2%減った。大半の品目で消費が減り、とくに魚介類や乳製品の落ち込みが大きかった。ほかに家具や医薬品、小遣いや仕送り金も減った。一方、外食は10・3%、宿泊料は9・3%増えた。コロナ禍の行動制限が解けて、外出する機会が増えたためだ。理美容サービスも2・2%伸びた。物価の影響をふくめた名目の支出は1・1%増えた。財布から出てゆくお金は増えたが、実際に買えるモノやサービスの量は減ったことになる。足元の消費も厳しい。23年12月の支出は、実質ベースで前年同月より2・5%減った。10カ月連続で前年水準を下回った。名目では0・4%増えたが、家賃などの住居費をのぞけば前年同月より0・5%減り、6カ月ぶりのマイナスになった。家計が節約志向を高めているようすがわかる。
■ギョーザ購入、浜松首位奪還
 総務省はこの日、都道府県庁所在地と政令指定市の品目別購入額も公表した。宮崎、宇都宮、浜松の3市で毎年、激しい争いを繰り広げるギョーザの年間購入額1位は、3年ぶりに浜松市に軍配が上がった。2位は宮崎市(前年1位)、3位は宇都宮市(同2位)だった。

*6-3:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20240205&ng=DGKKZO78180240S4A200C2KE8000 (日経新聞 2024.2.5) 経済教室:賃上げの持続性(下) 労働市場の流動化こそ王道 宮本弘曉・東京都立大学教授(1977年生まれ。ウィスコンシン大博士。専門は労働経済学。IMFなどを経て現職)
<ポイント>
○日本の賃金は四半世紀にわたり伸び悩み
○労働市場が流動的な経済ほど賃金は高い
○転職に中立な社会保障・税制の整備急げ
 日本経済の行方を左右するのは賃金だ。日本では2022年春から物価が上昇し、約40年ぶりのインフレとなっている。生活必需品やサービスの価格が上昇するなか、賃金が伸び悩むと、国民生活は厳しさを増す。日本は過去30年間にわたり、低物価、低賃金、低成長、そして高債務の「日本病」に苦しんできた。日本で真に求められているのは経済の衰退を止め、再び成長軌道に乗せることだ。デフレから完全に脱却し、日本経済を新しいステージに移行させるには、賃金と物価の好循環が欠かせない。変化の兆しはある。厚生労働省によると、23年の春季労使交渉では賃上げ率が平均3.6%と1994年以来の3%台を記録した。日本経済新聞社によれば、冬のボーナスも75年の調査開始以来最高だった。24年も賃上げが期待される。しかし問われるのは賃上げの持続性だ。国民の間では「賃上げは一時的」との見方もある。果たして持続的な賃上げは可能なのか。賃上げの持続性を考える際には、そもそも賃金がどのように決まるのかを理解する必要がある。賃金の決定要因としては、主に労働需給のバランス、物価、労働生産性、労働市場の構造の4つが挙げられる。
 第1に賃金は労働サービスの価格であり、その需要と供給のバランスにより決定される。労働への需要が供給を上回れば、すなわち人手不足であれば賃金は上がり、逆であれば賃金は下がる。日銀短観の雇用人員判断DIによると、人手不足感は歴史的な高水準にあり、賃金上昇が期待できる。ただし労働需給のバランスが賃金に与える影響は、90年代後半から弱まっていることが指摘されており、今後、労働需給と賃金の関連性が強まるかどうかが注目される。また人口減少に伴う人手不足が賃金に与える影響も注視が必要だ。
 第2に賃金と物価は相互に連関するが、両者の間には正の関係がある。日本では長期にわたり、物価が上昇しても賃金が有意には反応しない状況が続いていたが、足元では物価上昇が賃金に影響を与えるように状況が変わりつつある。
 第3に経済学では賃金は労働生産性に応じて決まると考えられている。労働生産性が上がれば賃金も上昇するが、日本の労働生産性の伸び率は長期にわたり低迷しており、これが賃金の停滞につながっている。
 第4に雇用者の構成の変化も重要だ。日本では過去30年で雇用形態が大きく変化した。非正規雇用者が雇用者全体に占める割合は84年には約15%だったが、今は4割近くまで上昇した。非正社員の賃金は正社員の7割程度であり、相対的に賃金が低い非正社員の割合が高まることで、経済全体の賃金が低下している。
 これらの要因は、異なる時間軸で賃金に影響を与える。前者の2つはどちらかといえば短期的な影響を及ぼし、後者の2つは中長期的に賃金に影響する。日本の賃金の推移を振り返ると、97年をピークに減少が続いている。月給はピーク時と比べて1割低く、時給は近年上昇に転じているが、ピーク時とほぼ変わらない水準にある。これは25年に及ぶ日本の賃金低迷が長期的かつ構造的な理由によるところが大きいことを意味する。なお、四半世紀の間に、米国や英国など他の先進国では賃金は2~4割上昇している。本来、賃金は上がるものなのだ。持続的な賃上げのためには、人件費の増加分を価格に転嫁できる環境整備や最低賃金引き上げが重要だ。だが王道は、労働生産性を向上させるとともに、労働市場の二極化などの構造問題に対応することだ。これらを同時に達成できるのが労働市場の流動化である。経済全体の生産性を向上させるには、個々の企業や労働者が生産性を高めるとともに、経済全体の新陳代謝を促進することが欠かせない。労働市場の流動化は、適材適所とスムーズな労働の再配分を通じて、これらを実現できる。実際に、データは労働市場が流動的な経済ほど生産性が高く、その結果、賃金が高い傾向を示している(図参照)。また労働市場が流動的であれば、同一労働同一賃金がマーケットメカニズムにより達成されうる。労働市場の流動性を高めるには、労働移動を妨げる制度や政策の見直しが必要だ。社会保障や税制の改革により転職に中立な環境をつくることが求められる。政府が23年の「骨太の方針」で転職に不利な退職金優遇税制の是正を盛り込んだことは評価に値する。また一定の所得を超えると税や社会保障負担が発生する「年収の壁」は撤廃すべきだ。流動的な労働市場では、人的投資の軸は企業から労働者へとシフトする。労働者の自己啓発投資を促すため、個人の人的投資にかかる費用を課税対象所得から控除する「自己啓発優遇税制」の導入を検討すべきだ。また解雇ルールを明確化して、意欲と能力をもつ若者が活躍できるよう環境を整える必要がある。解雇の金銭補償の実現も重要だ。さらに、労働市場の流動性を妨げている日本的雇用慣行からの脱却を急ぐべきだ。終身雇用や年功賃金などの日本的雇用慣行は、経済・社会構造の変化に伴い時代遅れとなっている。古い体質の雇用慣行の維持や雇用の硬直化は生産性を下げる要因だ。特に賃金体系は働きに見合う報酬を受け取れる仕組みに変えるべきだ。「賃金=生産性」となれば、あらゆる世代が雇用機会に恵まれるし、若年層の所得向上も期待できる。生産性の向上には中長期の成長戦略が欠かせない。多くの企業が画期的な構想で成果を上げつつある。政府は、こうした民間蓄積の成果を最大限に活用するための方策を考えるべきだ。日本経済には変化の兆しがみられる。長年のデフレからの脱却も視野に入ってきた。重要なのは、デフレという穴から出た世界が、単にインフレの世界ではなく新しいステージだと認識することだ。日本経済は人口構造の変化、技術進歩、グリーン化といったメガトレンドの変化に直面しており、インフレだけでなく、これらの変化に適応できる経済を構築することが欠かせない。これは今後数十年の日本のグランドデザインが求められているということだ。包括的かつ大胆な改革パッケージが必須だ。とりわけ、人口が減少し急速に高齢化していく日本では、こうした状況でも国民が安心できる環境をつくることが求められている。高齢化を伴う人口減少下でも強い経済を構築することは可能だ。高齢者が様々な形で社会活動に参加し、生産的に貢献する構造に組み直すことができれば、経済社会のバランスシートは大きく改善する。長寿雇用戦略や健康増進産業の推進、給付と負担のバランスのとれた全世代型社会保障などやれることはまだたくさんある。また将来悲観の払拭のためにも、成長に配慮した財政健全化が欠かせない。人々が「明日は今日より素晴らしい」と感じる社会にしていくことが、持続的な賃上げにもつながると考えられる。

*6-4-1:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/1191990 (佐賀新聞 2024/2/10) 介護報酬改定、訪問サービス減額は疑問だ
 2024年度から3年間の介護報酬の改定内容が決まった。介護現場の深刻な人手不足に対応するため、職員の賃金底上げを重点課題としたのが特徴だ。サービスの対価として介護事業者に支払う報酬を増やし、24年度に2・5%、25年度に2・0%の職員のベースアップ(ベア)を目指す。
介護職員の平均賃金は全産業平均より月約7万円低い。22年には介護の仕事を辞める人が働き始める人を上回る「離職超過」に陥り、多くの事業者が人材確保に頭を痛めている。改定では介護報酬全体で1・59%増額するうち、0・98%分を賃上げに充てる。職員の処遇改善を優先するのは妥当な措置だろう。もっとも、今年の春闘では連合が5%以上の賃上げを目標に掲げており、介護職員のベアが想定通りに実現したとしても、他産業との格差が広がる懸念はある。人材流出に歯止めをかける効果を上げられたかどうか、現場の実態を調べて検証することが欠かせない。事業者への報酬を増やすと、利用者の自己負担や保険料も上がることになる。しかし職員の離職が続くと、介護サービスの提供体制そのものの維持が危うくなりかねない。政府は国民に対し、処遇改善の重要性を丁寧に説明する必要がある。今回の改定で気がかりなのは、特別養護老人ホームなど施設系サービスの基本報酬が軒並み引き上げられるのと対照的に、訪問介護サービスでは引き下げられる点だ。訪問介護は、自宅で暮らす要介護の高齢者の日常生活を支える基本的なサービスで、年100万人以上が利用する。家族にとっても、訪問介護を使うことで仕事との両立が実現できているケースは少なくない。訪問介護の担い手となるホームヘルパーは人手不足が続き、有効求人倍率は約15倍に上る。平均年齢は50代半ばと高齢化。ヘルパー不足による倒産や事業の休廃止も増えている。基本報酬を引き下げると、こうした状況が加速しないか。厚生労働省は報酬減額の理由として、事業者の経営実態を調査したところ、訪問介護分野全体の収益が大幅な黒字だったことを挙げている。処遇改善に取り組む事業者に報酬を上乗せする加算を拡充するので、加算を取得すれば経営にダメージはないと説明する。だが介護現場では、この調査は実情を反映していないとの指摘がある。集合住宅に併設され、その入居者を中心に訪問する事業者の場合、同じ建物内で多数の利用者にサービスを提供して効率よく収益を上げている。訪問介護の収益率は、こうした事業者の存在により高めの結果が出ている可能性があるという。一方で中山間地を含む郡部など、広い範囲に点在する利用者宅をカバーするような、地域に密着した小規模事業者の経営状態は厳しい。ひとくくりに基本報酬を引き下げるのは乱暴ではないか。同一建物を中心にサービスを展開する事業者に対しては、報酬を減額算定する仕組みを強化して対応すべきだ。高齢化は急速に進み、重度の要介護高齢者の増加が見込まれている。在宅介護や在宅医療の役割がより重要になるが、訪問介護による日常生活支援はその基盤でもある。基本報酬引き下げでサービス提供が手薄になり、「介護難民」が増えることにならないか心配だ。

*6-4-2:https://digital.asahi.com/articles/DA3S15857944.html (朝日新聞 2024年2月7日) 「カスハラ」防止条例検討へ サービス業、労組など要望 東京都
 客が理不尽な要求をするカスタマーハラスメント(カスハラ)対策を検討している東京都の検討部会が6日、「条例化が望ましい」との意見を示した。これを受け、都が条例化へ検討を進めることになる。都によると、カスハラ防止を目的にした条例は全国的に例がないという。部会は商工団体や労働組合の代表者、大学教授、都幹部らがメンバーで昨秋から検討を続けている。条例化については、カスハラ防止の周知啓発を進める法的根拠として施行を望む意見が出た。業界ごとに異なる事情も勘案し、罰則付きではなく機運醸成や啓発が中心の「理念型」を推す意見も出された。こうした声を軸に今後、業界ごとのガイドラインなどの対策と合わせて、条例の中身が検討されることになる。カスハラは接客業界で広く問題化しており、タクシーやバス運転手が名札義務化をやめるなどの動きがある。サービス業従事者の多い東京で対策強化を望む声が労働組合の連合東京などから上がっていた。

<日本における避難民・移民の受入れについて>
PS(2024年2月19日追加):*7-1は、①ウクライナから日本への避難民2098人のうち日本での定住を望む人が39・0%(818人)に急増 ②うち1799人が日本国内で1年働ける「特定活動」の在留資格あり ③最新の国別受入数は、ドイツ113万人・ポーランド95万人・チェコ38万人・英国25万人・ロシア121万人 ④日本財団は延べ約2千人に最長3年間・年100万円の生活費を支援 ⑤首都キーウで美容サロンを営んでいたポジダイエバ・アンナさん(50)は2022年秋に10代の娘2人と来日し、目の不自由な夫も呼び寄せて日本で人生の新しいチャプターを始めると決めた ⑥就労には日本語が欠かせない場合が多いが、殆ど話せない人が3割、簡単な日本語のみが4割 ⑦日本政府は紛争から逃れた人らを難民に準じて保護する制度を始め、対象者には定住資格が与えられ、日本語習得や生活支援が始まる 等としている。
 また、*7-2は、⑧イスラエル軍はパレスチナ自治区ガザ南端のラファを激しく空爆 ⑨エジプトとの境界にあるラファにガザの全人口230万人の半数以上がひしめく ⑩避難民の多くはシェルターやテントの劣悪な環境で暮らし、安全な飲み水や食料が殆どない ⑪イスラエルのネタニヤフ首相は軍の地上作戦を拡大する準備を整えるよう命じた ⑫アメリカのバイデン大統領は「民間人の安全を確保する信頼できる計画なしに進めるべきでない」と発言 ⑬人々はどこに行けばいいのかと困っている ⑭米政府は「最短でも6週間」の休戦合意の実現に向けて取り組んでいる ⑮検問所に近いのにラファでは支援物資が不十分 等としており、2月19日のNHKの報道は、⑯イスラエル軍が南部のナセル病院で2月15日~18日に作戦を続けた結果、WHOが「ナセル病院は1週間の包囲と作戦で既に病院として機能しておらず、約200人の患者の少なくとも20人は緊急転院して治療を受ける必要がある」と訴えた としている。
 ウクライナもガザも大変な状況だが、日本のメディアは悲惨さを情緒的に伝えるだけであり、これでは良い解決策は出て来ない。さらに、NHKはチャンネルや時間帯が余っているのに、「政治とカネ」以外の国会中継をまともに行わず、「政治は金まみれで汚い」という悪いイメージを国民に植え付けて民主主義を後退させている上、国民が本質的な問題点を深く考える機会を奪っている。民放は、これに加えて放送時間の1/3が広告であるため、「これが、記者や番組制作者の限界なのか?」と思う次第である。
 そのような中、日本では人手不足が叫ばれているのに、上の③のように、最新のウクライナからの受入人数は、ドイツ113万人・ポーランド95万人・チェコ38万人・英国25万人・ロシア121万人と10~100万人単位であるにもかかわらず、日本は、①のように、現在、避難民が2098人おり、そのうち日本での定住を望む人が818人に“急増”し、②のように、1799人にのみ日本国内で1年間だけ働ける「特定活動」の在留資格を与えているとのことである。つまり、日本は、避難民や移民の受入れが極めて少なく、かつ期間限定・就業限定なのである。もちろん、日本に来たばかりの時期は就業困難な人もいるため、④のような生活費支援も必要で、支援額はむしろ少なすぎると思うが、⑥の日本語力については、大部分の日本人が英語でコミュニケーションでき、日本語を話さなくてもできる仕事で日本語は不要であるため、日本語を就労要件にするのは発想が旧すぎると思う。例えば、⑤の美容師のケースでは、日本のやり方を研修した上で外国の美容師資格を持つ者にも日本における就労資格を与えれば十分稼げる。ちなみに、私は、フランス語は全く話せないが、旅行中にパリの美容室に入って英語で必要事項を話した後、黙って座っていたら日本より素敵な髪型にしてもらえたし、ODAでキルギス(旧ソビエト連邦)に行った時に見つけたスカートは、(裏地はついていなかったが)スタイルが抜群で気に入ったため、25年以上も大切に身につけていた。そのため、欧米における洋風スタイルの伝統の重さを実感しており、⑦のように、紛争から逃れた人に難民・移民として定住資格を与えるのは必要不可欠であると同時に、日本にとっても有益だと考えているのだ。
 そして、私が疑問に思うのは、パレスチナ自治区のガザ地区は面積365 km²(福岡市よりやや広い)、人口約222万人(福岡市は164万人)と過密な状態で、1947年に国連がパレスチナをアラブ国家とユダヤ国家に分ける決議を採択し、イスラエルが1948年に独立を宣言して以降、火薬庫になっているのに(https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/plo/data.html 参照)、どの国も自国への避難民・移民の受入れは表明せず、⑧⑨⑩のように、イスラエルのみを批判し、狭い場所で共存し続けることを強要している点である。疑問に思う理由は、広い国・人手不足の国でさえパレスチナ難民を受入れないのに、狭い土地で「共存せよ」と言うのはイスラエルとってもパレスチナにとっても無理だと思うからだ。そのため、⑪⑫⑭のように、イスラエルのネタニヤフ首相は軍の地上作戦拡大を命令し、バイデン米大統領は「民間人の安全を確保する信頼できる計画なしに進めるべきでない(最短でも6週間)」と発言しておられるが、“民間人の安全を確保する計画”は迅速に作る必要がある。何故なら、⑬⑮のように、検問所に近いのにラファで支援物資が不十分で、避難民はどこに行けばいいのかわからず、⑯のように、2月15日~18日にはナセル病院が既に病院として機能しなくなっている状態だからだ。そのような中、日本は人手不足の国であり、農林水産業・建設業・運送業・介護・観光業・軽工業等で特に労働力が足りないため、人口が減少している地域でガザの住民を入植させればよいと思う。大陸で揉まれながら4大文明の近くで生活し、アラビア語ができ、小麦・オリーブ・家畜の生産に慣れており、我慢強い人々の能力やスキルは、使い方によっては日本人以上なのだから。

*7-1:https://digital.asahi.com/articles/ASS2L6GN3S28ULLI001.html?iref=comtop_7_02 (朝日新聞 2024年2月19日) ウクライナ避難者、日本への定住希望が急増 「できるだけ長く」4割
 ウクライナから日本に避難している人のうち、日本での定住を望む人が、この1年で24・7%から39・0%に急増したことが、日本財団が定期的に実施しているアンケートからわかった。反転攻勢がうまくいかずに戦争が長期化するのを目の当たりにし、「状況が落ち着くまでは、しばらく日本に滞在したい」と答えていた人の多くが帰国を諦めたとみられる。日本に住むウクライナからの避難者は2月14日現在で約2100人。日本財団はこれまで、延べ約2千人に年100万円の生活費を支援。18歳以上を対象に、生活状況や意識を計5回アンケートしてきた。朝日新聞は、日本財団と契約を結び、日本財団からアンケート結果のデータ提供を受けて内容を分析した。第5回アンケート(1022人回答、昨年11~12月実施)で、「できるだけ長く日本に滞在したい」と答えた人が急増し、その1年前の第2回アンケートで24・7%だったのが、39・0%と1・6倍になった。これまで40%前後で最も多かった「状況が落ち着くまで」様子を見ようという人を初めて上回った。
●「日本で人生の新しいチャプター始める」
 首都キーウで美容サロンを営んでいたポジダイエバ・アンナさん(50)は2022年秋、10代の娘2人と来日した。「ミサイルが自宅近くに落ちるのを経験した娘は日本に慣れ、もう戻りたくないと言った。目が不自由な夫も呼び寄せ、日本で人生の新しいチャプター(章)を始めると決めました」
ただ、定住への課題は大きい。アンケートでは、働いていない人は52・8%と半数を超え、働いている人でも4分の3はパートタイムだった。就労には、日本語が欠かせない場合が多いが、ほとんど話せない人が3割、簡単な日本語のみという人が4割だった。
●専門家「経済的な自立策を話し合える場が必要」
 財団による生活費支援は原則として最長3年間で、来年には期限という人が出始める。日本政府は昨年12月、紛争から逃れた人らを難民に準じて保護する「補完的保護対象者」制度を始めた。対象者は定住資格が与えられ、日本語の習得や生活支援が新年度から始まる。明治学院大教養教育センターの可部州彦(くにひこ)研究員(難民の就労支援)は「戦争が長びくなか、日本での生活を設計する人が増えている。子どもが教育を受けるには資金がどれくらい必要で、就労するにはどんな技能や資格がいるのか。それぞれのライフステージに合わせた経済的な自立策を具体的に話し合える場が必要だ」と話した。

*7-2:https://www.bbc.com/japanese/articles/ceqjw22lv7go (BBC 2024年2月13日) ラファの避難者ら、イスラエルの地上作戦におびえる 国際社会は攻撃の抑制求める
 パレスチナ自治区ガザ地区ラファで、人々がパレスチナ人がイスラエル軍の地上作戦におびえている。同軍は12日未明にかけ、ガザ南端のこの都市を激しく空爆した。国連やアメリカなどはイスラエルに対し、多くの民間人を殺傷する地上作戦は実施しないよう警告している。エジプトとの境界にあるラファには、ガザの全人口230万人の半数以上がひしめている。イスラエルとイスラム組織ハマスの戦争が始まる前はラファの人口は25万人程度だったが、ガザ各地から避難者が押し寄せている。避難住民の多くは、にわか作りのシェルターやテントの劣悪な環境で暮らしている。安全な飲み水や食料はほとんどない。そのラファをめぐり、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は先週、軍の地上作戦を拡大する準備を整えるよう命じたと明らかにした。11日夜から12日未明にかけては、イスラエル軍がラファを空爆した。ハマスが運営するガザ保健当局によると、イスラエル軍の空爆とラファでの人質救出作戦により、一晩で少なくとも67人が殺害されたという。現地にいる医師のアフメド・アブイバイドさんは、イスラエル軍の空爆が絶え間なく至る所で続いていると、BBCに電話でメッセージを送った。人々は「どこに行けばいいのかと困っている」状態だとした。こうした状況を受け、国連のフォルカー・トゥルク人権高等弁務官は12日、ラファへの攻撃は「子どもや女性を大半とする非常に多くの民間人が死傷する恐れがあり、恐ろしいことだ」と警告。ガザへの「わずかな」人道支援は現在、エジプトが管理するラファ検問所を通過して運び込まれており、それが停止する恐れもあるとした。昨年10月7日のハマスによるイスラエル南部の襲撃では1200人以上が殺害され、250人以上が人質として連れ去られた。一方、ハマスが運営するガザ保健当局によると、イスラエルとの戦闘が始まってから、2万8100人を超えるパレスチナ人が殺害されている。
●「立ち止まって考えるべき」
 アメリカのジョー・バイデン大統領も12日、イスラエルのラファでの作戦について、民間人の「安全を確保する信頼できる計画なしに進めるべきではない」と発言した。バイデン氏は先週、イスラエルによるガザへの報復作戦を「度を越している」と異例の厳しい言葉で批判していた。バイデン氏はこの日、ヨルダンのアブドラ国王と会談。終了後、米政府は「最短でも6週間」の休戦合意の実現に向けて取り組んでいると述べた。イギリスのデイヴィッド・キャメロン外相も、ラファでのさらなる行動の前に、イスラエルは「立ち止まって真剣に考える」べきだと主張。欧州連合(EU)の外交を取り仕切るジョゼップ・ボレル外交安全保障上級代表は12日、ガザで「あまりに多くの人々」が殺されているとし、イスラエルへの武器の提供をやめるよう同国の友好国などに求めた。BBCにメッセージを送った前出の医師アブイバイドさんは、ガザ南部ハンユニスのナセル病院で勤務していた。しかし、イスラエル軍の空爆で自宅が破壊され、父親は脊髄を損傷。ラファへの避難を余儀なくされたという。ところが現在、ラファからも移動しなければならない可能性に直面している。アブイバイドさんは、どこに行けば安全なのか分からない状態だと話した。「軍の地上作戦が市内でまもなく始まるかもしれず、人々はとてもおびえている」。アブイバイドさんはまた、ラファでは人々の間で多くの病気が見られ、「投薬や治療を受けられる可能性が著しく低下」していることで状況は悪化しているとした。ラファにいる別の医療関係者は、「友人など会う人すべてが、インフルエンザ、コレラ、下痢、疥癬(かいせん)、そして新たにA型肝炎などにかかっていて、どんどん悪くなっている」とBBCに述べた。ラファで避難生活を送っているアボ・モハメド・アティヤさんは、12日未明にかけて空爆があったとき、テントの中で家族と寝ていたとBBCに説明した。「突然(中略)ミサイルがあちこちに撃ち込まれ、発砲があり、飛行機もあちこちに飛んできた。路上のテントと人々の頭上でこうしたことが起きた」。ガザ中部ヌセイラット難民キャンプから避難してきたというアティヤさんは、ヌセイラットではイスラエル軍からの退避指示があったが、この夜のラファでは事前の警告はなかったと非難した。「言ってくれればラファからどこへでも避難していた」。「もう安全な場所はない。どこも安全ではなく、病院さえも安全ではない。人々は死にたいと思っている」
●支援物資が不十分
 検問所に近いにもかかわらず、ラファには十分な支援が届いていない。現地の男性はBBCに、人々は何日も支援を待っており、届いても水の供給は不十分だと話した。ラファの女性は、「水が見当たらず、十分な量を手に入れることができない。水不足で喉がカラカラだ」と述べた。ガザ最大の人道支援組織の国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)のトップは12日、現地の秩序が崩壊しつつあると述べた。ハマスが運営する地元警察のメンバーらが殺害されたり、身の危険を感じて支援物資輸送車の警護に消極的になったりしているという。「地元警察がいなかったため、トラックや輸送車列が略奪に遭い、トラックは何百人の若者らに破壊された」。避難者の中には、飲食物の確保をめぐる不安より、次に何が起こるかわからない恐怖の方が大きいという人もいる。イブラヒム・イスバイタさんは、「以前は食べ物や水や電気の不足について考えていた。でも今は、この先どうなるのか、どこに行けばいいのかが分からずトラウマになっている。これが現在の私たちの日常だ」とBBCに話した。ラファから移動しなければならなくなったら、彼の家族はどこへ行こうと考えているのか。そう問われると、イスバイタさんは「実際のところ、まったく分からない」と答えた。

<GX移行債の支出対象について>
PS(2024年2月21,22《図》日):*8-1-1・*8-1-2は、①財務省が新国債「GX経済移行債」の初回入札を実施 ②初年度2023年度に1.6兆円、10年間で20兆円規模を発行予定 ③2050年の温暖化ガス排出実質0に向け産業構造転換を後押しする資金調達 ④海外で広く発行されている再エネ投資に使途を限った「環境債」より資金使途が広い ⑤初年度に製鉄工程の水素活用に2,564億円割り当て ⑥消費電力を抑える次世代半導体開発・工業炉の脱炭素・次世代原子力発電の開発も支援対象 ⑦次世代太陽電池・洋上風力発電・水素発電・次世代航空機・次世代船舶の技術開発も後押し ⑧EV等に使う蓄電池とパワー半導体の国内生産拡大に計4,800億円程度補助 ⑨省エネ性能の高い住宅機器導入・EVを含む低燃費車の購入補助事業に2000億円強充当 ⑩2023年度の1.6兆円からは「燃料アンモニア事業」は除外 ⑪資金使途が多岐で海外投資家から「グリーンウオッシュ」を懸念する声 ⑫政府は20兆円を呼び水に10年間で官民合わせて150兆円超の投資に繋げる ⑬環境への貢献度の高さを重視し、通常の国債より利回りが低い『グリーニアム』の水準が注目された ⑭応募者利回りは0・740%で直近の償還期間10年国債と比べグリーニアムによる利回り差は殆どなかった ⑮償還には2028年度から導入する化石燃料輸入企業への賦課金等を充てる としている。
 これらの記述の中には、「環境保護は経済活動には邪魔なものであるため、環境保護に追加コストがかかるのは当然である」「環境保護目的なら利回りの低い債権でも売れる筈である」という、日本が開発途上国時代に振りかざしていた前提が色濃く残っている。
 しかし、現代は、環境を悪化させる経済活動は許されず、環境を保護しながら高い利回りを上げることが求められる時代であり、その視点から見ると、⑩のアンモニア混焼は、環境保護が中途半端な上に、コストを上げるため、広く普及することのない技術だ。また、⑨のEV以外の低燃費車も、エンジンとモーターの両方を使うため、環境保護が中途半端なだけでなく、部品点数が多くて労働生産性は上がらずコストダウンも進まず、国内で産出しない化石燃料を使い続けるため貿易収支の改善にもエネルギー自給率の向上にも役立たない。さらに、⑥の中の次世代原発は、地震・火山国で面積の狭い日本に置く場所などなく、使用済核燃料の保管場所も限られるため普及できず、無駄な支出となる。このように、政府も民間も、将来の稼ぐ力を高める技術に投資しなければ、労働生産性は上がらず、貿易収支も改善せず、国民をより豊かにすることのできない、単なる無駄使いになるのである。
 そのため、①②③のように、財務省が産業構造転換を後押しする資金調達のため「GX経済移行債」を発行し、⑮のように、化石燃料輸入企業への賦課金等を償還に充てることとしたのは良いが、⑬のように、「環境への貢献度が高いから通常の国債より利回りが低い『グリーニアム』が生じる」と考えたのは甘すぎるため、結果として、⑭のように、グリーニアムによる利回り差がなかったのは当然なのだ。
 しかし、日本で遅れている⑨の省エネ性能の高い住宅機器の導入補助金や、⑦の次世代太陽電池・洋上風力発電・水素発電・次世代航空機・次世代船舶技術など、普及すれば環境保護・生産性向上・貿易収支改善・エネルギー自給率向上に役立つ技術への補助金や投資は、国民をより豊かにすると同時に税収も増やすため、無駄使いにはならない。
 なお、⑤の製鉄工程の水素活用2,564億円、⑥の消費電力を抑える次世代半導体開発・工業炉の脱炭素、⑧のEV等に使う蓄電池とパワー半導体の国内生産拡大4,800億円の補助は、1990年代末~2000年代始めならスタート段階で必要だったが、現在なら遅れた企業の甘やかしすぎである。今は企業の実質借入金額が年々減っていく時代であるため、国民に負担をかけず自らやればよい。従って、⑫の政府の20兆円の呼び水は10年でもその半額でよく、ましてや病気や要介護状態で働けない高齢者の預金を目減りさせながら負担増まで押しつけるのは論外である。
 そして、これが、④⑪のように、海外で広く発行されている再エネ投資に使途を限った「環境債」より資金使途が広すぎて、海外投資家から「グリーンウオッシュ」を懸念する声がある理由であり、私もその批判は正しいと思う。
 このような中、太陽光発電は、*8-2-1のように、窓ガラスやビルの壁面などで使える建材一体型の太陽光発電パネルが普及段階に入っており、都市が発電所となって、82.8ギガワット発電できる可能性が高い。そのため、これもまた「高すぎて普及できず、他国に後れをとった」などという事態にならないようにすべきで、まずはビル・マンションの新築や改装工事で義務化したり補助金をつけたりすればよいと思う。
 また、*8-2-2のように、フランスは、太陽光発電の適地を増やすため、80台以上の駐車場に太陽電池と一体化した屋根(ソーラーカーポート)の設置を義務付け、駐車場・農地等に設置する太陽光発電を再エネ拡大の突破口にするそうだ。さらに、*8-2-3のように、青森県つがる市は、再エネ発電促進と農林漁業の土地利用の調和を図るため2014年に施行された「農山漁村再生可能エネルギー法」に基づいて、農地で国内最大規模の風力発電所「ウィンドファームつがる」を稼働させて一般家庭約9万世帯分の電力を供給しているそうだが、風力発電機は田畑に陰を作らずに発電できるため、農地に適している。そのため、農地で再エネ発電をする場合には、「農業の戸別所得補償」のかわりに再エネ発電機設置補助金をつければ、発電能力を著しく大きくできると考える。

  
   2019.12.9HATCH     2022.10.29政治ドットコム 2022.7.29日経新聞

(図の説明:左図のように、都市への人口流入により、過疎地では全国平均より高齢者比率が高く若年者比率は低くなっている。また、中央の図のように、高齢者比率が高くなるほど、空き家比率も高くなる。その結果、このままでは、過疎地は、鉄道・バス・水道等が赤字となり、インフラの維持も難しくなっていく)

  
 2023.2.9政治ドットコム    白書・審議会データベース  2021.11.6日経新聞

(図の説明:左図のように、過疎地で頑張っていた高齢者がついに農業を辞めると、次世代のいない農家で耕作放棄地が増え、中央の図のように、農業総産出額は名目値でも漸減している。また、右図のように、燃油代・餌代の高騰で良質な蛋白源である漁業の産出額も著しく減少しているが、日本は製造業も振るわないため、「食料は輸入に頼ればよい」という考えは甘い)

*8-1-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20240211&ng=DGKKZO78400190Q4A210C2EA4000 (日経新聞 2024.2.11) 14日 財務省、「GX移行債」初入札、脱炭素加速、市場どう評価
 財務省は14日、新たな国債「GX(グリーントランスフォーメーション)経済移行債」の初回入札を実施する。同日は10年債を、27日には5年債をそれぞれ8000億円予定する。脱炭素社会への移行(トランジション)を目的とした国債の発行は世界初の試みで、10年間で20兆円規模を計画する。正式名称は「クライメート・トランジション利付国債」。2050年の温暖化ガス排出の実質ゼロに向けた産業構造転換を後押しする資金を調達する。初年度の23年度は1.6兆円を発行する。海外では太陽光のような再生可能エネルギーの発電などに資金の使い道を絞る「グリーンボンド」が普及する。今回は化石燃料を主体とした経済・社会構造からの「トランジションボンド」と区別し、幅広い使途とする。初年度1.6兆円について、政府は製鉄工程の水素活用に2564億円を割り当てる。既存の製鉄は石炭を大量に使い二酸化炭素(CO2)を多く排出する。代わりに水素を使う製鉄技術の確立をめざし、日本製鉄やJFEスチールなどの取り組みを後押しする。消費電力を抑える「光電融合」といった次世代半導体の開発、金属部品などの熱処理に用いる工業炉の脱炭素、次世代原子力発電の開発も支援対象となる。具体的な支援先は未定だが、次世代の太陽電池や洋上風力発電、水素発電、次世代航空機・船舶といった技術開発も後押しする。電気自動車(EV)などに使う蓄電池と、パワー半導体の国内生産の拡大には計4800億円程度を補助する。省エネ性能の高い住宅機器の導入や、EVを含む低燃費車の購入補助といった事業には2000億円強をあてる。資金使途が多岐にわたり、海外投資家からは見せかけの環境対応にすぎない「グリーンウオッシュ」を懸念する声も聞かれる。日本のGX戦略は火力発電の燃料をアンモニアに転換するプロジェクトが含み、「石炭火力の延命」との見方がつきまとう。このため23年度発行の1.6兆円の使途から「燃料アンモニア事業」を除外した。財務省と経済産業省は1月中旬から投資家向け広報(IR)のため欧米各国を回った。財務省幹部は関心の高さを感じたという。SMBC日興証券の浅野達シニアESGアナリストは「グリーンウオッシュへの心配の声は小さくなった。むしろ初物としてのご祝儀相場に乗り遅れまいと需要が高まり、通常の国債より利回りが低くなる『グリーニアム』の水準が注目される」と話す。グリーニアムはグリーンとプレミアムの造語で、環境への貢献度の高さを重視して利回りが低く(債券価格は高く)なることを指す。政府にとっては通常より低いコストで資金調達できる。初回のプレミアムが高くても油断はできない。続く24年度は1.4兆円、その後に残る最大17兆円の発行を控える。「市場から日本のGX政策への信認としての適切なプレミアムを維持できるかが焦点となる」(浅野氏)。政府は20兆円を呼び水に10年間で官民合わせ150兆円超の投資につなげる。脱炭素技術はどれが普及するか見通せず、企業が予見可能性をもって投資に踏み切る環境づくりは欠かせない。資金の使い道や脱炭素の効果を広く開示し、安定的な資金調達をめざす。償還には企業のCO2排出に課金する「カーボンプライシング」の2つの手法を用いる。まず化石燃料の輸入企業に燃料のCO2排出量に応じて賦課金を28年度に導入する。もうひとつは排出量取引で政府が電力会社に排出枠を有償で割り当てる仕組みを33年度に始める。

*8-1-2:https://digital.asahi.com/articles/ASS2G62BQS2GULFA00N.html (朝日新聞 2024年2月14日) GX経済移行債8000億円を初入札 幅広い使途、環境債とは別物
 財務省は14日、脱炭素化と経済成長をうたう政策の財源にする「GX(グリーン・トランスフォーメーション)経済移行債」の入札を初めて実施した。募集額は8千億円で、償還期間は10年。27日にも償還期間5年のGX債の入札を実施し、年度内に計1・6兆円の移行債を発行する。欧州で幅広く発行されている、再生可能エネルギーなどへの投資に使途を限定した「環境(グリーン)債」とは異なる。脱炭素社会への移行(トランジション)を目的としており、使い道は幅広い。調達したお金は、二酸化炭素(CO2)を排出しない水素を製鉄に使う技術や、電力消費の少ない次世代半導体などの、研究開発の補助金などに使われる。さらに、次世代原子炉の開発やCO2排出を抑えた火力発電などへの投資、経済安全保障上の重要物資と位置づける半導体や蓄電池の供給を安定させるための補助金にも使われる。政府は今後10年間でGX債を20兆円発行し、これを呼び水に150兆円超の官民投資につなげるねらいがある。償還には、化石燃料を輸入する企業に対する賦課金などを充てる。課金制度は28年度から導入する。環境への配慮や社会貢献を使い道とする国債は、同じ発行条件の国債と比べて利率が低く、価格が割高になる「グリーニアム」がつくことがある。ただ、この日の入札でついた応募者利回りは0・740%で、直近の償還期間10年の国債と比べ、利回りの差はほとんどなかった。SMBC日興証券の小路薫・金利ストラテジストは、「事前の予想と比べ、軟調な結果だった」と指摘。業者間の入札前取引の際にグリーニアムが大きく出た反動で、需要が抑えられた可能性があるとして、「投資家が利回りの低さをどの程度まで許容できるかは、まだ流動的だ」と述べた。

*8-2-1:https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC21C8P0R21C23A2000000/ (日経新聞 2024年1月10日) カネカ、壁面用発電パネル生産3倍 ビルが都市発電所に
 カネカはビル壁面などで使える建材と一体にした太陽光発電パネルの年間生産量を2030年までに現在の約3倍に増やす。都心部ではパネル設置場所が限られており、窓ガラスやビル壁面に潜在需要がある。建材一体型の普及により、現在の国内の太陽光発電能力に匹敵するとの試算もある。ビル群が都市発電所として電源の一翼を担う可能性がある。カネカは窓ガラスなどに使える建材一体型発電パネルを大成建設と共同開発した。自社開発した高性能の太陽電池をガラスの間に挟んで窓ガラスや外壁材として使える。兵庫県豊岡市の既存工場の生産能力を段階的に高める。新工場建設も視野に入れる。30年に現状の3倍となる年産30万平方メートル(東京ドーム6.4個に相当)に増やす。同社の太陽光パネルは住宅向けが中心で現状の売上高は100億円前後だ。カネカは大成建設との共同開発品以外にも複数の商品発売を計画しており、30年に建材一体型のパネルだけで現在のパネル全体と同等の100億円まで増やす考えだ。インドの調査会社IMARCによると世界の建材一体型太陽光の市場規模は、28年までに22年比3倍近い548億米ドル(約8兆円)に達する見通しだ。太陽光パネルは中国メーカーが世界供給の7割を占める。国内勢はカネカや長州産業、シャープなどに限られているが、建材一体型のような付加価値商品で先行する。太陽光発電協会(東京・港)によると今後、建材一体型太陽光発電が導入可能な立地の総数を発電能力に換算すると82.8ギガワット(設備容量ベース)ある。日本国内で稼働している太陽光発電の導入実績(87ギガワット、22年度末)の95%に相当する規模が見込まれる。建材一体型パネルは単体の太陽光パネルと比べて数倍以上コストがかかるが、脱炭素を進めたい企業が持つビルの壁面などに商機がある。環境省が24年度から建材一体型の太陽光発電設備の設置費用について、最大5分の3を補助する制度を導入する予定で今後の普及への期待は高い。AGCも自社開発品の増産検討に入った。同社は2000年から発電ガラスを提供しており、これまでに約250件の施工事例を持つ。24年上期までの工場の稼働率は100%に近い水準だという。30年に向けて生産能力が不足する可能性があり、AGCは工場新設を視野に生産体制の見直しを進めている。ビル用では現在は新築向け商品が中心だが、今後は既存の建物に後付けできる商品の発売も検討する。建材一体型太陽光パネルを巡っては、カネカや積水化学工業などが開発中の「ペロブスカイト」型太陽電池も普及を後押しする技術として注目されている。軽くて曲げられるといった特徴があり、建材を使って発電する場合のコストが下がる可能性もある。政府も補助金を出し官民あげて実用化を急いでいる。

*8-2-2:https://www.nikkei.com/prime/gx/article/DGXZQOUC097NM0Z00C24A2000000 (NIKKEIGX 2024年2月19日) 太陽光適地不足、「併設」で打開 フランスは駐車場義務化
 再生可能エネルギーの拡大に向け、太陽光発電の適地が不足していることが世界各地で課題となっている。フランスは80台以上の駐車場に太陽電池と一体化した屋根(ソーラーカーポート)の設置を義務付けた。駐車場や農地、水上などに設置する「デュアルユース太陽光発電」が再生エネ拡大の突破口になりそうだ。

*8-2-3:https://mainichi.jp/articles/20210515/k00/00m/040/064000c (毎日新聞 2021/5/15) 青森の農地に国内最大の風力発電所 風車38基、9万世帯分の出力
1年を通して強い風が吹き抜ける青森県つがる市の農地に、2020年4月から国内最大規模の風力発電所「ウィンドファームつがる」が稼働している。高さ約100メートルになる風車38基の総出力は一般家庭約9万世帯分の12万1600キロワット。年間約18万トンの二酸化炭素(CO2)削減効果が見込まれる。同発電所の建設は、再生可能エネルギー発電の促進と農林漁業の土地利用の調和を図るため14年に施行された「農山漁村再生可能エネルギー法」に基づき、農地を大半の用地として17年に着工。作付けの繁忙期を避けながら、約2年半かけて完成した。同法による市への協力金はメロンの栽培など農業振興に活用され、「エコな作物」として付加価値も期待される。風車6基が建つ菰槌(こもづち)地区で農業を営む長谷川藤行さん(77)は「ここは夏の寒暖差もあり、メロンなどの作付けにはとてもいい。農業の適地でエネルギーも日々作られ、うれしい」という。市では、政府が昨年末の「グリーン成長戦略」で導入拡大の方針を示した洋上風力発電の計画も進む。運営する「グリーンパワーインベストメント」(東京都港区)事業開発本部の力石晴子・対外連携推進グループ長(36)は「再生エネルギーは地域を強くする。より良い環境を地元の方々と作っていきたい」と話す。

<古代人の親子関係でもわかる時代の現代民法嫡出推定>
PS(2024年2月26、27《図》日追加):*9-1のように、人のDNAも全部読めるようになり、最近は遺跡に埋葬された古い人骨に含まれるDNAからでも埋葬された人の血縁関係がわかるようになって、人類の移動経路や文化がより科学的に証明されつつある。それ自体が素晴らしいことだが、ここで強調したいのは、*9-2のように、それでも民法772条は「嫡出の推定」という規定を置き、「妻が婚姻中に懐胎した子は原則として夫の子と推定」「婚姻成立の日から200日を経過後or婚姻解消・取消しから300日以内に生まれた子は、婚姻中の懐胎と推定」など、婚姻関係と妊娠期間を前提とする推定をしており、DNA分析での事実認定はしないことにしている。そのため、実際の親子関係と異なる推定をされた場合に関係者全員が納得できず不幸な思いをしているため、民法722条1項の推定はそのまま、その推定に異議がある場合は関係者の誰からでも要求してDNA解析を実施し、親子関係を明らかにできるよう変更すべきだ。

  
               すべて、*9-1より
(図の説明:左の図は、岡山県津山市にある小規模集団の首長の墓《古墳時代》の血縁関係で、父親とその子である異母姉妹が葬られており、母親は実家の墓に入るため葬られていない。また、中央と右の図は、和歌山県田辺湾岸の磯間岩陰遺跡《古墳時代》にある漁民の墓地で、三浦半島の男性との婚姻関係が明らかになっている)

*9-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20240225&ng=DGKKZO78735340U4A220C2TYC000 (日経新聞 2024.2.25) DNAが導く考古学、古墳時代の血縁解き明かす
遺跡を発掘して歴史を解き明かす考古学で墓は有力な手がかりだ。近年、埋葬人骨に含まれる微量のDNAを解析して埋葬された人々の血縁関係を突き止めることが可能になり、注目を集める。収められた土器や装身具から分かるその人の社会的地位などと合わせて分析すると、権力の継承や人の移動が見えてくる。岡山県津山市に三成四号墳という前方後方墳がある。前方部の石棺には30~40代の男性と20~30代の女性が埋葬され、古墳時代の小規模集団の首長の墓とみられる。このほど、国立科学博物館の神澤秀明研究主幹らが2体の人骨の奥歯から細胞の核に含まれるDNAを抽出し、配列を詳しく調べると、この2人は夫婦ではなく親子だとわかった。後方部の石棺には高齢女性と女児が埋葬されていたが、女児は前方部の石棺の男性の子だった。先の女性とは姉妹ということになるが、2人は母が異なっていた。つまりこの古墳には父と腹違いの娘2人が埋葬されており、母たちは埋葬されていないということだ。古墳時代の埋葬人骨の関係を「ここまで詳しく特定できたのは初めて」と、古墳時代の社会構造を研究している岡山大学の清家章教授は話す。古墳時代や平安時代には、同じ墓に入るのは基本的に血族のみだった。結婚後も実家との結びつきが強く、夫婦も死後はそれぞれ実家の墓に入った。また当時は多産多死社会で、死別や再婚も多かったようだ。DNAの解析結果はこうした見方と符合する。庶民の墓についてはどうだろうか。和歌山県の田辺湾岸にある磯間岩陰遺跡は古墳時代の漁民の墓地で、8つの石棺に12体の人骨が埋葬されている。山梨大学の安達登教授らがこれらのミトコンドリアDNAを解析したところ、ほぼ全ての石棺に母方の血縁者同士が埋葬されていたが、一人だけ誰とも母方の血縁関係がない中年男性がいた。この男性の石棺には15歳の少年が先に葬られていたが、彼はほかの石棺の女性たちと母方の血縁関係にあった。男性が女性の誰かの夫で、少年が二人の間の息子だと考えるとつじつまが合う。なぜこの男性は実家の墓に戻らず、配偶者の実家の墓に葬られたのだろう。ヒントは彼らの埋葬方法にある。ほかの遺骨がまっすぐ足を伸ばしているのに対し、2人は膝を曲げ足を開いた形で置かれている。石室の底には貝殻とサンゴが敷かれ、海岸によくある穴だらけの磯石が置かれていた。いずれもこの地域の墓にはみられない特徴だ。実はこれらの特徴を備えた墓が、遠く神奈川県の三浦半島にある。田辺湾岸で作られた鹿の角の釣り針が三浦半島に伝わっており、当時から人の交流があったことがわかっている。男性はおそらく三浦半島から田辺湾岸にやってきて、ここで結婚して息子をもうけたが先立たれ、出身地の方法で埋葬したのだろう。自身が死んだときは実家は遠すぎて戻せず、同じ墓に埋葬されたのではないか。そんな仮説が浮かび上がり、調査が続いている。古墳時代より前の弥生時代の人骨も解析されている。鳥取県東部にある青谷上寺地遺跡からは100体分以上の人骨が出土しており、このうち13体について神澤研究主幹らが核のゲノムを解析した。その結果、現代の本州に住む日本人よりも縄文人寄りの人から、逆に渡来人寄りの人まで幅広く含まれていることがわかった。弥生時代の青谷上寺地には、現代の東京よりもっと多様な人々が暮らしていたらしい。「おそらく広い地域におよぶ交流が頻繁にあったのだろう」(神澤氏)。青谷上寺地は北陸や四国で産出する様々な素材を使って弥生時代の装身具「管玉」を作る職人の町だった。作った管玉は九州北部でも見つかっている。DNAの多様さは交易のハブだった当時の姿を反映しているのかもしれない。考古学に核DNAの解析が用いられるようになったのはここ5年ほどだ。血縁関係という重要な情報を明らかにするDNA解析は「今後、研究における基本的な手段になるだろう」と清家教授は話している。

*9-2:https://xn--ace-yc4g407bukbg65emna7a.com/index.php?%E6%B0%91%E6%B3%95772#:~:text=・・・%80%82 (弁護士法人エースより) 民法772条
(嫡出の推定)
第七百七十二条 妻が婚姻中に懐胎した子は、夫の子と推定する。
2 婚姻の成立の日から二百日を経過した後又は婚姻の解消若しくは取消しの日から三百日以内に生まれた子は、婚姻中に懐胎したものと推定する。
注1:婚姻関係にある男女から生まれた子を「嫡出子」といいます。婚姻中に懐胎した子は、嫡出子と推定されます。「婚姻成立から200日経過後に生まれた子」又は「婚姻の解消から300日以内に生まれた子」は嫡出子と推定されます。
注2:民法772条に該当する「推定される嫡出子」の場合、認知届は不要です。
・推定される嫡出子(推定が及ぶ場合)とは、772条に該当する子供のことをいいます。
・推定が及ばない場合とは、772条には該当するが、その期間中、妻が夫の子を妊娠することが事実上不可能な場合を言います。例えば、夫が海外滞在中で、肉体関係がないにも拘わらず、妻が妊娠をした場合などがこれにあたります。
・推定されない嫡出子とは、772条に該当しない嫡出子のことをいいます。例えば「授かり婚」のように、婚姻成立前に妊娠し、婚姻成立から200日以内に産まれた子供は、婚姻関係にある男女から産まれたので嫡出子には該当しますが、772条における「推定」の適用はないので、推定されない嫡出となります。
・二重の推定が及ぶ嫡出子とは、前婚の父性推定と後婚の父性推定とが重複する場合の嫡出子、つまり前夫との婚姻解消300日以内かつ現夫と婚姻成立200日経過後に産まれた子ということになります。この場合、773条の父を定めることを目的とする訴えによって父子関係を決めます。

<赤松良子さんの死去を悼む>
PS(2024年2月29日、3月4日追加):*10-1-1のように、女子学生が極めて少なかった時代の東大卒で、1961年にさつき会(東大女子同窓会)を設立され、1963~67年にさつき会の代表理事を務められ、1979年には国連総会で採択された女子差別撤廃条約に国連公使として賛成票を投じられ、それが1981年に発効した翌年の1982年に担当の局長に就任して男女雇用機会均等法の成立に尽力された赤松良子さんが、2月6日に94歳で死去されて1つの時代が過ぎたことを感じざるを得なかった。ただ、1985年制定の第一次男女雇用機会均等法は差別の禁止が努力義務にされたため、女性を「補助職」という結婚退職を前提とする単純労働に就かせることによる女性差別が残り、これが(私が中心となって)1997年に採用・昇進・教育訓練等で禁止規定にするまで続いた。その第一次男女雇用機会均等法の理念に反して行なわれたことの1つ目は、*10-1-2の1986年の年金制度改革であり、「サラリーマンの専業主婦は保険料負担をせず、国民年金をもらえる」という第3号被保険者の創設である。これは、フルタイムで働く女性を不利に扱い、パートの非正規社員として働く主婦の年収が130万円以上になると夫の扶養から外れて年金や国民健康保険の保険料が発生し手取りが減ることによって女性が働かないことを奨励する現象を、現在でも生んでいる。また、第一次男女雇用機会均等法の理念に反して行なわれたことの2つ目は、1980年に三浦友和と結構して山口百恵が引退し、1986年に森進一と結婚して森昌子が引退して2つの才能が消えたことを著しく褒めて報道し、神田正輝と結婚しても歌手を続けた松田聖子は叩かれ続けたようなアホなメディアによる世論の誘導だった。これらの結果、未だに日本では女性蔑視がなくならず、*10-1-3のように、2024年2月にあった日本弁護士連合会の次期会長選挙で東京弁護士会所属の渕上玲子氏が当選し、法曹三者で初めて女性がトップに就いたのだそうだ。確かに、司法には「男性優位」の価値観が残っており、それは裁判結果にも出ている。ちなみに、公認会計士協会は、2016年に関根愛子氏を初の女性会長にしている。
 そして、現在でさえ、*10-2-1のように、公的学童保育は待機児童が多い上に利用時間や利用学年に制限が多く、これが共働き世帯の「小1の壁」になっているそうだ。これに対し、企業などが運営する民間学童には、預かり時間が柔軟で学習塾・習い事などのプラスアルファ機能を併せ持ち、親世代からの支持を伸ばしているところもあるそうだが、その一方で、*10-2-2のように、民間保育園を運営する企業が習い事サービスに力を入れ、保育料とは別に料金を徴収して「付加的保育」と呼ばれる様々なサービスを提供しようとすると、「福祉的観点から“平等”でない」として保育料以外のサービス料を認めない自治体が多いとのことである。しかし、“平等”として最低の保育サービスしか受けられなければ、母親が退職して子のケアに専念するか、子を諦めるかの二者択一にしかならないため、いくら児童手当をもらっても、保育料が無償化されても、少子化は進むだろう。このように、日本は、未だに「子持ちの女性は専業主婦かパートの非正規労働者であるべき(⁇)」という前提を維持し続けているのだ。さらに、*10-2-3のように、岸田首相は「物価高に負けない賃上げに必要な報酬の改定率を決定した」と強調されるが、新年度の介護報酬改定で訪問介護の基本報酬は引き下げられた。そして、「働く女性は家族の介護はできない」ということを考慮すれば、介護保険制度は必要不可欠であり、特に住み慣れた家で介護を受けられるためQOLの高い訪問介護は重要なのだが、女性が多い介護職の報酬は2021年8月の月給制の月額平均で26万5,216円であり、これは2020年の全産業平均賃金30万7,700円より約4万円も低く、3Kになりがちで責任の重い介護職の労働対価として見合わないのである。そのため、介護人材の不足で介護保険制度の維持にかかわるわけだが、それでも介護職の報酬を全産業平均より高くしない理由は、介護職に女性が多く、「女性のケア労働は、無償か男性の労働以下である」という女性蔑視の固定観念が残っているからだ。
 *10-3は、①全国漁協の役員に占める女性割合は2021年度で約0.5%(非常勤の監事や理事が大半で常勤理事は1人)に留まる ②19都道府県で女性役員は0 ③理由は「力仕事で長時間にわたる漁に出るのは圧倒的に男性が多く、女性の漁業者は少ないから」 ④「海の神様は女性で、女性が船に乗ると神様が嫉妬する」という言い伝えがある ⑤船や漁協に女性用トイレがない ⑥女性に適した漁具の開発がない ⑦女性・若者・外国人などの新しい力を入れなければ立ちゆかなくなる ⑧世界が持続可能な漁業を目指す中、資源管理や限られた漁獲物の価値向上のためのマーケティング・商品開発など活躍する余白はある ⑨これまでのやり方に固執せず、機械化・マニュアル化・データ活用党で誰もが参加しやすい漁業の方策を探るべき としている。
 しかし、①②の状況であるため、女性が全漁連会長になったことはなく、③については、沿岸漁業・養殖漁業は夫婦で従事しているケースが多いのに、女性が表に出ないだけである。また、④は、いい加減にやめるべき迷信であり、⑤は、小さな船なら個室トイレがあれば女性用と男性用を分ける必要も無い。さらに、⑥は、女性に適した漁具というより、魚群探知機(https://sea-style.yamaha-motor.co.jp/tips/gps/001/ 参照)の機能を上げ、力仕事の部分を自動化すれば、誰にとっても容易で生産性の高い漁業になるのだ。しかし、それができるためには、それらの機器を備えた漁船が漁業収入で購入できる価格であることが必要なのだが、日本は先進機器や新しい漁船が高価すぎて普及できないのである。その結果、⑦⑧⑨のように、多様性があった方が漁業の付加価値も上げられるにもかかわらず、多様な人が参加しにくく、生産性も低いため持続可能性さえ危ぶまれる漁業になっているのだ。そして、これは漁業だけの問題ではなく、国民全体の食料の問題なのである。

*10-1-1:https://www.nikkei.com/article/DGXZQODK072ER0X00C24A2000000/ (日経新聞 2024年2月7日) 赤松良子さん死去、女性活躍の道開く 均等法の立役者
 7日死去したことが分かった赤松良子さんは、男女雇用機会均等法の成立に尽力し、「均等法の母」と呼ばれる。小さな体にあふれるエネルギーで、女性の社会進出の道を開いた。大阪の画家の家に生まれ、津田塾と東大で学んだ。大卒の女性を採用するところがほとんどないなか、「婦人少年局」のある労働省に進んだ。男女平等に働きたいと思っても、壁の多かった時代。強みとなったのは、役所の外にも活躍の場を求めたことだ。多くの論文を執筆し、さまざまな人脈を広げた。国際感覚にも優れ、海外研修で欧米の働く女性の状況を見て回った。年齢や分野を問わず、国内外に多くの友人を持つ人だった。緻密で論理的、それでいて明るくユーモアもある。1960年代、女性の「結婚退職制」による解雇を無効とした判決が出ると、赤松良子ならぬ「青杉優子」のペンネームで、雑誌に喜びの評論を書いた。本領を発揮したのが、均等法だ。日本は国連の女子差別撤廃条約への批准を目指しており、そのための国内法整備が必要だった。国連公使として条約に賛成票を投じた赤松さんが82年、担当の局長に就任。経済界の根強い反対に対し、国際社会の流れを説き、根回ししてまわった。一方で、条文の多くが努力義務にとどまり、労働側の反発も強かった。妥協した法律とすることは、本人にとっても重い決断だったろう。「小さく産んで大きく育てる」「ゼロと1は違う」との思いは、その後の改正で結実した。退官後も、非政府組織(NGO)などの立場から活動を続け、生涯現役を貫いた。とりわけ、経済分野よりさらに遅れる政治分野の女性参画に力を入れてきた。「100までやる」と周囲に公言していた。原点には、かつて小学校も卒業できなかったという母親への思いがあっただろう。春には母親の郷里である高知に行く計画も温めていたという。好きな言葉に「長い列に加わる」をあげる。婦人参政権などを求めて戦前から活動してきた市川房枝・元参院議員や藤田たき・元津田塾大学長ら先人の努力に自らも加わり、後輩たちが後に続くのを励ましながら、笑顔で歩き抜けて行った。

*10-1-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20240226&ng=DGKKZO78690640S4A220C2TCS000 (日経新聞 2024.2.26) 年金の主婦優遇は女性差別
 多くの若い女性が会社員の夫に養われる専業主婦に憧れを抱く時代は確かにあった。高度成長ただ中の昭和37年(1962年)。大映映画「サラリーマンどんと節 気楽な稼業と来たもんだ」に、こんな場面がある。田舎のしょうゆ問屋のひとり娘が商社の支社に勤める若手社員と見合いをし、女友達にこう自慢するのだ。「あたしはサラリーマンの生活に憧れちゃうな。ホワイトカラーは現代のチャンピオンよ!」。折しもその前年、すべての国内居住者が公の年金制度に入る皆年金体制が整えられ、昭和61年(86年)の制度改革で「サラリーマン世帯の専業主婦も国民年金の強制加入対象とし、健康保険の被扶養配偶者が保険料を負担せずに医療給付を受けているのと同様に、独自の保険料負担は求めない」(厚生労働省年金局の資料から抜粋)ことにした。保険料を払わなくとも国民年金をもらえる第3号被保険者の誕生である。3号という呼び方がいかにも昭和的ではないか。ちなみに自営業、農業、学生、無職の人など勤め人以外の人(1号)が月々払う年金保険料は1万6520円(免除・猶予制度あり)。専業主婦も夫が1号なら3号には分類されず、この額を払わねばならない。いま3号でも離婚して無職のままならやはり1号になり、保険料の支払い義務が生ずる。事ほどさように奇っ怪な制度だ。3号は制度開始当初の1093万人から721万人(2022年度末)に減ったが、その98%、709万人が女性だ。主婦の年金問題といわれるゆえんである。問題の核心は、パート社員として働き、年収が130万円以上になると夫の扶養から外れて年金や国民健保の保険料を払わねばならなくなり、手取りがかえって減る「年収の壁」だ。一定規模の企業で働く非正規社員が雇い主と常用的使用関係にあれば厚生年金に入る「106万円の壁」もある。これらの問題を浮かび上がらせたのがコロナ後に顕著になったサービス業の人手不足。3年あまりの鎖国状態を解きインバウンドをどっと招き入れたのだから当然である。飲食、宿泊、交通などを支える働き手がコロナ前の水準には戻ってこず、サービスが滞った。客室が空いていても清掃が間に合わず、泣く泣く予約を断ったホテルがある。経営者がパート・アルバイトの採用を増やそうと時給を上げると、年収の壁に当たるまでの「距離」が近くなり、従業員がさらに就労時間を減らす矛盾にも直面した。いわば厚労官僚の不作為が生んだ人手不足であろう。何とかできないか、という岸田官邸の意を受けて同省が23年10月、苦し紛れに始めたのが「年収の壁・支援強化パッケージ」だ。パート社員が繁忙期に残業するなどして年収130万円以上になっても、一定条件をみたせば夫の扶養にとどまれるようにした。だがサービス業の経営者から歓迎する声はさほど聞かれない。むしろ「問題の実態と複雑な背景をかんがみれば、実効性が十分に発揮されるか不透明だ」(経済同友会「年収の壁タスクフォース」座長の菊地唯夫ロイヤルホールディングス会長)などと、取り繕いを喝破する声が目立つ。従業員側も「政府の支援があっても年収を増やさない」と答えた女性が37%いた(23年12月の本紙ネット調査の結果から)。政権が閣議決定した「女性版骨太の方針2023」は支援パッケージが当座の策であるのを認め、3号制度を見直すよう厚労省に求めている。ところが厚労相の諮問機関、社会保障審議会・年金部会の議論はまことに低調だ。専業主婦に保険料支払いを求めたり消費税の増税論議に火がついたりと、新たな負担論が俎上(そじょう)に載るのを官邸が封印したためでは、といぶかる声が政府内にはある。3号問題は主婦優遇の是正という観点から語られることがもっぱらだが、角度を変えると700万人もの女性を、自立を阻む制度に押し込めて「差別を助長している面がある」(西沢和彦日本総合研究所理事)実態がみえてくる。彼女たちの就労意欲は旺盛だ。内閣府の分析によると、6歳未満の子供をもつ母親の就業率はこの20年間に倍増した。にもかかわらず夫に扶養される立場にとどめ置かれれば、家庭内でおのずと従属的になり、外で働く意欲が弱められ、企業に雇われても低い収入に甘んぜざるを得ない。少なからぬ主婦が差別的な扱いを受け入れているのだ。海外を見わたしても同様の制度をもつ国はない。厚労省退官後にスウェーデン大使としてストックホルムに駐在した渡邉芳樹氏は「日本には3号という難しい問題がある」と、同国の年金改革をリードしたヘドボリ社会相に打ち明けたらこう言われた。「夫婦でも互いに依存せぬよう自立を重視して税制を個人単位にするのが基本。わが国は社会保障も個人単位にした」。英エコノミスト誌は日本の年収の壁を紹介し、主婦の職場復帰が思うに任せない要因を探った特集記事を載せた。3号の廃止を求めているのは連合だ。そのために、所得比例と最低保障の機能を組み合わせた新しい年金制度への衣替えを提唱している。この改革案を真面目に議論する責務が社会保障審にはある。夫への依存を前提にした昭和の年金をいつまでも引きずるのは、みっともない。女性が真に自立するカギは、令和の年金改革である。

*10-1-3:https://digital.asahi.com/articles/DA3S15871849.html (朝日新聞社説 2024年2月25日) 女性初トップ 法曹の景色 変えるとき
 法律家が性別に関係なく、のびやかに活動する環境づくりのきっかけにしてほしい。今月あった日本弁護士連合会の次期会長選挙で、東京弁護士会所属の渕上玲子(ふちがみれいこ)氏が当選した。女性の会長は初めてで、裁判所、検察庁を合わせた「法曹三者」でも、これまで女性がトップに就いたことはなかったという。「女性が日弁連のトップになることで景色を変えることが私の責任だ」と述べた。法律家には、法と正義に根ざして社会の課題や紛争を解決し、少数者の人権を守る役割がある。内なる多様性が求められるのは当然のことだ。ところが、女性が法曹になる道は、他の多くの専門職と同様、阻まれてきた歴史がある。初の女性の弁護士誕生は1940年、女性の裁判官、検察官が生まれたのは終戦後の49年になってからだ。今はどうか。「弁護士白書23年版」によると、裁判官と検察官(それぞれ簡裁判事、副検事を除く)、弁護士の女性の割合は、28%、27%、19%。着実に増えてきたとはいえ、半数には遠く及ばない。特に弁護士は、国家公務員である裁判官や検察官に比べて、育児休業など仕事と生活の両立のための制度を使いにくい壁がある。ただ近年、企業や官庁・自治体が弁護士の採用に積極的になり、働き方の選択肢は増えた。企業内弁護士でみると、女性は4割を超えている。日弁連は性別を問わず育児中の会費の免除などを制度化してきた。働きやすくする工夫をさらに考えてほしい。責任の特に重い立場に就く女性の割合は法曹三者とも少ない。最高裁裁判官は現在、15人中3人。しかも、これまでいずれも弁護士や行政官などの出身で、地裁、高裁の裁判官からは出せていない。1970年代には、司法研修所の教官らが女性の司法修習生に「女性は裁判に向いていない」などと差別的な発言をし、裁判官訴追委員会にかかったことさえあった。「男性優位」の価値観が残っていることはないか、裁判所は折に触れて自問すべきだ。近年の最高裁の重要判例をみても、婚外子の国籍や相続、女性の再婚禁止期間、性同一性障害の当事者の権利など、家族や性のあり方をめぐる問題が少なくない。さまざまな属性、背景の人が意思決定に関わることが望ましい。司法試験という門はだれにも開かれていると、若い世代に知ってもらうことも重要だ。法教育の一環で中学、高校などに出向き、法曹の活動を地道に伝え続けている人もいる。広がってほしい。

*10-2-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20240229&ng=DGKKZO78825040Y4A220C2L83000 (日経新聞 2024.2.29) 共働き世帯「小1の壁」崩せ 首都圏、学童待機児童の対策急務、墨田区、3クラブ新設 定員3000人に増
 首都圏で小学生を預かる放課後児童クラブ(学童保育)に希望しても入れない児童が増えている。2023年度の待機児童数は東京都、埼玉・千葉の両県で全国の4割を占めた。保育施設での待機児童解消が進む中、今度は小学校に上がると子どもの預け先がなくなる「小1の壁」が深刻になっている。こども家庭庁の調査によると、23年5月時点で全国の学童の待機児童は約1万6300人。東京都が約3500人と最多で、埼玉県の約1900人が続いた。共働き世帯が比較的多い首都圏で対策が急務だ。東京都墨田区は24年度予算案に学童クラブ関連経費を約1億5600万円計上した。25年4月ごろまでに3つの公立学童クラブを新設し、区内全体の定員を約3000人にまで増やす。同区では毎年全体の6割の児童が学童クラブの利用を希望。立地などで希望施設の偏りがあり、実際に入れなかった児童は23年度当初時点で約120人に上った。さいたま市は西区の栄小学校など4校で24年度から「さいたま市放課後子ども居場所事業」を始める。保護者の就労などの要件を必要とせず、午後5時まで遊べる利用区分を設けた。保護者が就労や求職活動をしている場合は午後7時まで利用できる。さいたま市の幼児・放課後児童課の担当者は「パート勤務をしている保護者などからは、夏休みをはじめとした長期休業期間のみ放課後児童クラブを利用したいという声も多く、様々な家庭のニーズに対応できる仕組みが必要だ」と話す。公立学童は経済的な負担が少ない一方、利用時間や学年などに制限があり、保護者の就労状況によっては利用できない場合もある。そこで自治体が注目するのが企業などが運営する民間学童だ。預かる時間は柔軟に対応し、独自のサービスを提供する学童が増えてきた。ネクスファ(千葉県柏市)が運営する学童は学習塾の機能も併せ持つ。塾を利用する場合は夕方から算数や国語、英語などを学ぶ。社会課題について調べたり発表したりといった場も設ける。4月には新たに流山市に教室を設け、多くの共働きの子育て世帯が流入している地域で事業の拡大をめざす。工作やプログラミングなどプラスアルファの体験を盛り込み、親世代からの支持を伸ばしているのは習い事一体型の学童保育だ。ウィズダムアカデミー横浜上大岡校(横浜市)にはランドセルを背負った子どもたちが笑顔で集まってくる。ただ見守るだけでなく、子どもたちが自宅で過ごすようにほっとできる環境をつくり出すため挨拶にも工夫をこらす。性別や学年、家庭環境も異なる子どもたちが楽しく過ごすために、力を入れているのが月ごとに選べるアクティビティーだ。ピアノや書道など定番の習い事からプログラミングや理科実験教室まで、保育時間中に様々な体験ができる。習い事や教室をこれまでどおり続けたいという場合は習い事の付き添いにも対応する。平日は送迎ができないという理由で習い事を諦めている家庭も多い。同校は「家庭では家族の会話をゆっくり楽しむ時間にしてほしい」とし、子どもの成長をともに見守る二人三脚のパートナーとなりつつある。全国の学童への登録児童数は23年度、過去最高を更新した。需要が高まる中、学童は子どもが家庭の代わりに過ごす居場所であるだけでなく、学びや成長ができる場所としての役割も求められている。

*10-2-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20240225&ng=DGKKZO78736650U4A220C2EA5000 (日経新聞 2024.2.25) 民間保育園「学び」競う、待機児童減で定員割れに 学研HD・JPHDが体操や英会話
 民間保育園を運営する企業が習い事サービスに力を入れている。保育の受け皿の拡大や就学前の子どもの数の減少で保育園に入れない「待機児童」が減少。地域によっては保育園が入園希望者を取り合う構図も出てきた。運営各社は体操教室や英語教育などで魅力を高め、収益的に経営が成り立つ子供の数を確保する「持久戦」を迫られている。こども家庭庁は毎年1度、待機児童数を調査している。最新の2023年4月時点のデータによると、待機児童の数は2680人と17年の2万6081人をピークに9割ほど減少した。こども園を含む保育所などの数は22年比345カ所増の3万9589カ所。定員に対する充足率は89%と全体としては「定員割れ」の状態だ。待機児童問題が深刻だった時代は、施設を開けば定員が埋まった。現在はサービスの質を上げなければ入園希望者を集められなくなっている。保育各社は保育料とは別に料金を徴収して様々な保育サービスを提供し始めた。学研ホールディングス(HD)は一部の園で22年度から体操教室を始めたほか、23年度には英会話プログラムも始めた。43施設中、埼玉や神奈川県内など26施設で提供している。週1回1時間のレッスンで、月6300円。外国人講師のビデオ通話で保育所とつなぎ、保育士が子どもたちの様子を見ながらサポートする。最大手のJPホールディングスは、英語や体操、ダンス、音楽などが習えるサービスを用意。ポピンズも、英語やアートなどの習い事プログラムのほか、アフリカの国立公園や水族館とオンラインでつなぎ、陸や海の動物の生態系を学べるプログラムを導入した。AIAIグループは、22年4月から運動プログラムと算数講座をセットにしたカリキュラムを提供している。運動は映像に映った講師のマネをして10分ほど体を動かす。運動後に机に座って、図形や引き算などの問題をプリント中心に解いていく。保育士が見回り、ヒントを出したり、丸付けしたりする。「付加的保育」と呼ばれるこうしたサービスは、保育園が立地する自治体によっては提供しにくいケースがある。認可保育所は、法律上で児童福祉施設とされる上、主に自治体からの補助金で運営されている。福祉的な観点から「平等」が重視され、保育料とは別にサービス料金をとる付加的保育を認めない自治体が多いからだ。こうした事情から、学研HDの英会話プログラムは保育時間外に実施し、講師などの派遣は外部に依頼。希望する保護者が直接、講師を派遣する事業者と契約する形をとっている。認可保育所と異なり、幼稚園や認可外保育所は比較的に自由に教育サービスを提供でき、預かり時間後も英会話やサッカーなどの課外授業を充実させている施設が多い。横浜市や川崎市のように認可保育所で付加的保育を認める自治体もある。JPHDなど保育各社は付加的保育が認められている自治体でのみ提供している。認めていない自治体では保護者が希望していても認可保育所での習い事は受けられない。保育大手の幹部によると、付加的保育を認めていない自治体から「保育所は福祉施設であり教育を施す場所ではない」「家庭の経済状況によって保育内容に差が出るため容認できない」と言われたこともあるという。日本経済新聞社が23年10月に実施した「サービス業調査」を通じて大手保育事業者に聞き取ったところ、同5月1日時点で「定員割れしている施設がある」と回答した企業は全体の52.8%(19社)にのぼった。定員割れしている施設数が「100施設以上」と答えた企業も2社あった。AIAIグループの貞松成社長兼最高経営責任者(CEO)は「待機児童の減少を受け、保護者が保育所を選ぶ時代になっている。魅力向上のために付加的保育が必要だ」と話す。収益的に経営が成り立たない場合、民間企業が事業撤退し、結果として子供の受け皿が不足する逆戻りの事態も懸念される。子どもの政策に詳しい日本総研の池本美香上席主任研究員は「これまでの政策が待機児童解消に重点が置かれており、保育内容の議論が置き去りにされた。習い事の質のチェックや、経済的な背景による教育格差などこども家庭庁が率先して実態調査し議論すべきだ」と話す。

*10-2-3:https://digital.asahi.com/articles/DA3S15 (朝日新聞 2024年2月26日) 訪問介護報酬、実態に見合う改定か 新年度から基本報酬引き下げ、「加算」は手厚く
 「物価高に負けない賃上げに必要な報酬の改定率を決定した」。岸田文雄首相がこう強調する新年度の介護報酬改定で、訪問介護の基本報酬が引き下げられたことに反発が広がっている。現場からは「在宅介護は崩壊する」との声も。
■「セットで考えて」国は強調
 訪問介護の基本報酬はなぜ引き下げられたのか。厚生労働省は二つの理由をあげる。一つは、訪問介護で介護職員の賃上げにあてる「加算」を手厚く配分したことだ。今回の改定では賃上げのため報酬全体を1・59%増という、例年を大きく上回る水準で引き上げた。このうち介護職員の賃上げに0・98%分、残る0・61%分は「介護職員以外」の処遇改善に配分。介護職員の賃上げは報酬への「加算」で対応すると決めた。加算は、職場環境の改善や研修の実施などの要件を満たせば基本報酬に上乗せできる制度。今回、職員のうち介護職員の割合が高い訪問介護では、全サービスで最も高い加算率(最大24・5%)を設定。一方、基本報酬の増減を左右する0・61%分は、事務職など介護職以外が多いサービスに手厚く配分された。もう一つが訪問介護の収支差率(利益率)の高さだ。基礎データとなる「経営実態調査」で訪問介護は2022年度決算が7・8%と、全サービス平均の2・4%を大きく上回った。特別養護老人ホームがマイナス1・0%、介護老人保健施設が同1・1%で赤字となる中、訪問介護は「かなり良かった」と同省はみる。訪問介護サービスは総費用も大きいため、「収支差率の全体を眺め、調整した」(同省担当者)結果、訪問介護の基本報酬は引き下げることになったと説明する。ただ厚労省は、加算を取得していない事業所が新たに取得できれば、基本報酬が下がっても報酬全体では11・8%増になるモデルケースも例示。みとりや認知症関連の加算も充実したとし、「改定は基本報酬だけでなく、全てをセットで考えてほしい」と強調する。加算がとれなければ報酬は減る。同省によると、従来の処遇改善加算を取得できていない訪問介護事業所は約1割、約3千事業所。同省は、3種類あり複雑化した処遇改善加算を統合し、手続きも簡素化して取得を促す。取得が難しい小規模事業者には「伴走型で相談できる仕組みをつくりたい」としている。
■「高い利益率」根拠に疑義
 しかし、厚労省の説明には反論が出ている。引き下げの根拠とした利益率の高さ(7・8%)について、元になった厚労省の経営実態調査のデータに疑問の声があがる。現場関係者の団体などは、サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)といった集合住宅に併設され、効率よく訪問ができるタイプの訪問介護事業者の利益率が高いため、全体の数字が押し上げられていると指摘。地域を一軒一軒まわる事業者とは経営状況がまったく異なるとし、カテゴリーをわけて検討すべきものだ、と国を批判する。さらに、経営が厳しい小規模事業者はこの種の調査に応じる余裕がないとし、結果は実態を反映していないとする。経営実態調査では、延べ訪問回数別の分析がある。それによると、訪問回数が月「2001回以上」の事業所は利益率が13%台なのに対し、「201~400回」では1%台と、大きな開きがある。全体として、集合住宅併設型や都市部の大手事業所といった訪問回数が多い大規模な事業所の利益率が高く、小規模事業所が苦しい傾向をうかがわせるデータだ。処遇改善加算を含む全体で考えればプラスだという説明にも異論が相次ぐ。そもそも取得には様々な要件があり、小規模事業所にとって事務負担の重さも指摘される。厚労省は事務負担を軽くして取得を促すとしているが、どの程度効果があるかは未知数だ。さらに、改定後に最も高い区分の加算を取得しても、基本報酬の減額と相殺され、収入が減ってしまう場合がある。NPO法人「グレースケア機構」代表の柳本文貴さんは、事業所の訪問介護事業の23年分の実績をもとに現行と改定後の報酬を試算。処遇改善加算分では年間約144万円の増収だったが、基本報酬引き下げで年間約222万円のマイナスに。全体では年約78万円の減収となった。柳本さんは「厚生労働省が『処遇改善を含めるとプラス』と強弁するのはおかしい。頑張って処遇改善に取り組み、すでに上位の加算を取っている事業所は収入減になるだけだ」と話す。
■現場は反発「終わりのはじまり」
 「基本報酬引き下げは暴挙」。認定NPO法人「ウィメンズアクションネットワーク」(上野千鶴子理事長)、NPO法人「高齢社会をよくする女性の会」(樋口恵子理事長)など5団体は2月初め、引き下げに抗議し、撤回を求める緊急声明を公表した。2400を超す個人・団体から賛同を得た、としている。呼びかけ団体となった「ケア社会をつくる会」世話人の小島美里さんは記者会見で、「在宅介護の終わりのはじまり」と強い危機感を表明した。事業者や介護家族などからも抗議は相次ぐ。NPO法人「サポートハウス年輪」理事長の安岡厚子さんは、ヘルパー不足が原因で昨年春、訪問介護事業所の休止を余儀なくされた。「(介護職員の)地位向上に国が本気で取り組んでいればこんなことにはならなかった」と語り、引き下げは「言語道断」だとする。公益社団法人「認知症の人と家族の会」前代表理事の鈴木森夫さんは、介護を担う家族の介護離職防止のために訪問介護は不可欠で、「(引き下げは)介護のある暮らしを崩壊させる」と訴える。訪問介護員(ホームヘルパー)は介護が必要な高齢者宅で調理などの生活援助や身体介護を担う。介護福祉士や、所定の研修を修了した人らが務める。人材が不足し、有効求人倍率は15・53倍(2022年度)。若い世代が入らず、60代以上が約4割。年収は施設などの介護職員より約17万円少ない(介護労働安定センターの介護労働実態調査、22年度)。東京商工リサーチによると、23年の訪問介護事業者の倒産は67件。調査開始以降で最多だった。(編集委員・清川卓史)
■「基本給」増額すべきだった
 川口啓子・大阪健康福祉短大特任教授(医療福祉政策)の話 ヘルパーの介護を受け、最期を自宅で迎えたいと考える人は多く、国も在宅介護を進めようとしている。だが報酬は不十分で、介護業界の中でも特に人手不足が深刻だ。事務手続きが煩雑で負担が大きい「手当」にあたる処遇改善加算ではなく、「基本給」の基本報酬を増額するべきだった。担い手は高齢化が進み、利用者や家族からのハラスメントも後を絶たない。事業者は人材紹介会社に多額の紹介料を払って人材を確保している。経営基盤となる基本報酬の減額が誤ったメッセージとなり、人手不足に拍車が掛かる懸念がある。

*10-3:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/1202912 (佐賀新聞 2024/3/2) 漁協役員に占める女性0・5%、19都道府県はゼロ、農水省調査
 全国の漁協役員に占める女性の割合が2021年度は約0・5%にとどまったことが2日、農林水産省の調査で分かった。19都道府県では女性役員が1人もいない。力仕事で長時間にわたる漁に出るのは圧倒的に男性が多く、女性の漁業者は少ないのが現状だが、後継者不足が深刻となる中、識者は「漁業や地域の活性化のため、若い世代や女性など多様な担い手が必要だ」と指摘する。調査は、海沿いの39都道府県と琵琶湖がある滋賀県の計40都道府県で、知事が認可した沿海地区の漁協が対象。848漁協の21年度の業務報告書を基に集計した。それによると、848漁協の役員計8346人のうち、女性は21県に計41人。非常勤の監事や理事が大半で常勤理事は1人だった。都道府県別で人数が最も多いのは広島と熊本の5人。続く福井、徳島、鹿児島が4人、岩手など3県が2人、残る13県は1人だった。熊本県は県の男女共同参画計画に基づき、県内の漁協に対し女性リーダーの育成や積極的な女性登用を働きかけている。アサリを専門とする広島県廿日市市の浜毛保漁協では、役員6人のうち2人が女性だ。福井県の雄島漁協(坂井市)は組合員の約半数が海女で役員10人中4人が女性。全5地区のうち4地区から女性を1人ずつ選んでいるという。徳島県で女性役員がいたのは比較的小規模な漁協で、正組合員の女性の割合も2割以上だった。鹿児島県では、水産会社の女性役員が監事に就いている漁協があった。農水省によると、漁業就業者はこの20年ほどで半減し、22年は約12万3千人。このうち女性は約1割に過ぎない。漁業とジェンダーに詳しい東海大の李銀姫准教授は女性の少なさについて、重労働であることに加え「海の神様は女性で、女性が船に乗ると神様が嫉妬する」という言い伝えが各地にあるといった文化的背景を説明。船や漁協に女性用トイレがない、女性に適した漁具の開発がないなど、環境が整っていないところもあるという。しかし高齢化や過疎化は深刻で、李准教授は「漁村の景観や食文化などの資源も活用して新たななりわい『海業』をつくり、地域を活性化させる必要がある」と指摘。そのためにも多様な視点は重要で「女性や若い人たちが入りやすくすることは、漁業の持続性につながる」と話している。元水産庁審議官で大日本水産会の高瀬美和子専務の話 漁業者は高齢化し、後継者や人手不足にも悩まされている。女性だけでなく若者や外国人など新しい力を取り入れなければ、いずれ立ちゆかなくなる。世界が持続可能な漁業を目指す中、資源管理や、限られた漁獲物の価値を高めるためのマーケティングや商品開発など、活躍する余白はまだまだあるはず。これまでのやり方に固執せず、機械化やマニュアル化、データ活用などで、誰もが参加しやすい漁業の方策を探っていくべきだ。

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2024.1.7~12 能登半島地震と気候変動対策としての原発の妥当性(2024年1月13、18、20、21、22、25日に追加あり)
(1)能登半島地震の発生とその規模

 
     2024.1.6 Whether News    2024.1.7日経新聞 2024.1.4日経新聞

(図の説明:1番左の図のように、今回の能登半島地震の震央分布は陸から海に渡って長く、ここに断層のあることがわかる。また、左から2番目の図のように、この地震では、日本全国が揺れた。そして、右から2番目の図で震源が一点であるかのように書かれているのは誤りだが、日本海側の地震は、津波が大陸に反射して共振しながら何度も押し寄せるのというのは本当だ。さらに、1番右の図のように、日本には地震・火事に弱くて「著しく危険な」密集市街地が、関東・関西を中心として《いつまでも》広く分布している)

 今年は元日から、*1-1-2の「阪神大震災」を上回るM7.6の「能登半島地震」が発生し、1月6日20時までに合計1071回(最大震度5弱以上が14回)揺れ、徐々に地震の回数が減少していくとは考えられるが、数週間~数ヶ月後にM5〜6クラスの余震が発生する事例もあるそうだ。

 そもそも、能登半島周辺では2020年から人的被害を伴う震度5強以上の地震が5回起き、地震活動は特に2020年12月から活発化して震度1以上の地震が500回超確認され、2023年5月には地震調査委が「地震活動は当分続くと考えられる」と評価し、国は防災対策の強化を呼びかけていたそうだ。そして、2023年5月5日のM6.5 がこれまでの最大だったが、それでも志賀原発は廃炉にすることなく、使用済核燃料をリラッキングして、もともと1,050体だった使用済核燃料の貯蔵容量を1,749体に増やしており、これはあまりに不合理で驚きなのである。

 今回の能登半島地震では、震度7だったのが石川県志賀町、震度6強だったのが石川県七尾市垣吉町・能登島向田町、輪島市鳳至町・河井町、珠洲市三崎町・正院町・珠洲市大谷町、穴水町大町、震度6弱だったのが新潟県長岡市中之島、石川県志賀町富来領家町・末吉千古、七尾市本府中町・袖ヶ江町、中能登町末坂・能登部下、登町宇出津で、津波の高さは当初は「1.2m以上」と発表されていた。

 しかし、*1-1-4のように、石川県志賀町赤崎漁港は潮位計がないため津波の高さがわからず、建物の外壁に残された津波の痕跡や周辺に流れ着いた漂流物から津波は陸地を4.2mほど駆け上がり、輪島市の鹿磯漁港では約3.9m隆起し、鹿磯漁港から約5km北にある輪島市門前町五十洲の漁港でも約4.1m隆起し、隆起が4mを超えるところも複数あったのだそうだ。

 そのような中、*1-1-1は、①激しい揺れの要因は浅い震源 ②阪神大震災を上回る地震の規模 ③地震調査委は地下深くの水(流体)の関与 ④今回の地震は、北西と南東方向からプレートを押す力が働き、断層が上下にずれる「逆断層」によって引き起こされた ⑤震源が浅いと揺れが地表に伝わり易く、居住地に近いので大きな被害を引き起こしやすい としている。

 しかし、M7.6の能登半島地震は、震度7を観測した石川県志賀町で2826ガルと東日本大震災で震度7だった宮城県栗原市の2934ガルに匹敵し、輪島市では最大4mの地表隆起と約1.2mの西方向への水平移動があり、今回の地震の活動領域は長さ約130kmと広い。

 この地震メカニズムについて、地震調査委は地表面の隆起や震源の移動が確認されているので、水のような地下の流体が関係しているとする。また、東京工業大の中島教授(地震学)も「地下の水が上昇して断層に入り、滑りやすくなって地震が発生した可能性が高い」とするが、地下に流体がある理由は不明である。私は、地下の水でこれだけ広範囲に激しい地震や隆起があるとは思えず、原発の存在を正当化するため原因を過小評価しているのではないかと思う。

 なお、*1-1-3によると、日本海側は地震発生から津波到達までの時間が短く、直後に輪島港で津波第1波とみられる海面変動を観測したが、津波が早く到達する理由は日本海側の断層の位置にあり、北陸から北海道の日本海側にかけて陸と海にまたがる断層や沿岸に近い断層が多いため、こうした断層で地震が起きると陸の近くで津波が発生するからだそうだ。

 また、日本海側の津波は、朝鮮半島やロシア側の大陸で反射して数時間後に再び日本列島に到達するため長時間に及び、波が干渉して次第に大きくなる。東大地震研が文科省の委託を受けて実施した日本海側の地震・津波に関する調査報告書は、避難が難しいため「公共施設の建設・移転の際は、自然災害を考慮したより安全な土地利用を進めていく必要がある」としている。

(2)地震後の対応の遅さと鈍さ
 *1-2-1のように、石川(14ヶ所)・富山(1ヶ所)・新潟(1ヶ所)の3県にある医療機関で、停電や断水などの被害が生じているそうだが、いざという時の最後の砦となるべき医療機関で、またもや停電・断水が起こって機能不全になったというのは、もはや同情できない。

 既にドクターヘリが運用開始されており、自衛隊ヘリもあるため、近隣の県からでも救助の手は差し伸べられる筈だが、それもせずに住民に我慢を強い、何度大災害が起こっても改善せずに同じことを繰り返し、後手にまわっては国民に犠牲を強いるのが、日本の悪い点である。

 また、*1-2-2のように、1月6日午後2時時点で、七尾市の2万1500戸、輪島市の1万戸など14市町の計6万6千戸が断水したまま、全国から給水車が駆けつけても道路状況が悪くて給水に充てる時間が十分に確保できなかったり、電線も切れて石川県内の停電が輪島市約9800戸・珠洲市約7400戸・能登町約3200戸・穴水町約2600戸あるそうで、斎藤経産相は1月5日の会見で停電が続く理由を「道路被害の状況が想定以上に厳しい」とされたそうだ。

 しかし、*1-4-2のように、志賀原発の避難ルートとして「のと里山海道」があり、それが複数カ所で陥没して、一時、全面通行止めになったのである。そして、石川県の激震地である輪島市・穴水町・七尾市は原発30キロ圏内で、近隣住民は速やかに避難できなければならない筈だったが、それもできず、避難計画はやっぱり“絵空事”だったわけである。それでも政府を信頼し続けるとすれば、(それも自由だが)馬鹿と言わざるを得ず、同情も今一つである。

 ちなみに、*1-4-1のように、原子力規制委員会は2023年12月27日に東京電力柏崎刈羽原子力発電所(新潟県)に出していた事実上の運転禁止命令解除を決定し、今後は新潟県等の地元自治体の同意があれば再稼働できるそうだ。そのため、避難が“絵空事”でなければ、新潟県も原発事故時には避難者を受け入れる準備が整っている筈なのだ。従って、災害時に避難者を受け入れることもできる筈なのに、今回の地震で行く場所を失った人は受け入れないのだろうか?

 そして、これは、*1-4-3のように、2023年には原発4基を稼働させている九電とその周辺地域についても、全く同じである。

 今回の能登半島地震では、*1-2-3のように、1週間経っても道路の寸断による孤立状態が各地で続き、ヘリコプターなどで救援物資が複数回搬入されて物資不足の状況は脱したが、電気も水も途絶えて携帯電話も通じないため情報が入らない避難所もあるのだそうだ。しかし、戦争中のウクライナでさえ携帯電話を使えるのに、日本はどうなっているのかと思われた。

(3)日本は主要な活断層を対象外にして、何故、「原発容量3倍」に賛同したのか
 *1-3-1は、①地震調査委員会が1月2日に臨時会を開き、最大震度7の能登半島地震の分析や今後の動向を検討 ②主要な活断層については長期評価を公表しているが、今回地震のあった断層は対象外だった ③委員長は「(長期評価は)慎重にやっており、非常に時間がかかる」「(評価していない断層で大きな地震が起きたことは)非常に残念。もっと早く評価しておくべきだった」と話した としている。

 しかし、(1)で書いたように、2020年から能登半島周辺で人的被害を伴う震度5強以上の地震が5回起き、震度1以上の地震は500回超あり、かつ地震調査委は2023年5月に「地震活動は当分続くと考えられる」と評価していた。

 そして、志賀原発のある石川県志賀町では震度7を観測して2826ガルの揺れがあり、輪島市では最大4mの地表隆起と約1.2mの西方向への水平移動があったのだから、ここに主要な活断層があると認識していなかったのなら、地震学者を止めた方が良いくらいである。つまり、①②③は、科学者として、客観的に、重要性や危険性を警告しなかった(orできなかった)ことの言い訳にすぎないのだ。

 そして、*1-3-2・*1-3-3のように、UAEで開かれた国連気候変動会議(COP28)で、日本は「温室効果ガス排出の実質0を達成する上で、原子力は重要な役割を果たす」とし、「世界全体の原発の設備容量を2050年までに3倍に増やす」との宣言に賛同した(正しくは、米国を通してむしろリードした)のである。

 これに伴って、日本政府はエネルギー政策の中長期の方向性を示す「エネルギー基本計画」(21年閣議決定)の「原発への依存度を可能な限り低減」を変更して「原発回帰」にかじを切り、「脱炭素化のためのGX政策で再エネとともに原発を最大限活用する」として新規建設方針も盛り込み、現在は発電量の10%以下である原発を、2030年度には20~30%に引き上げるとする方針を正当化した。

 そして、これに先立って、2023年5月に成立したGX脱炭素電源法では、根拠もなく原発の60年超運転を可能にし、東電フクイチ事故以降は「想定していない」としてきた次世代原発への建て替えも進める方針を示していたのである。

 政府関係者は、しつこく「原発は脱炭素への安定電源だ」と称する。しかし、今回の地震・津波でも明らかなように、集中電源は電線や変電所が作動しなくなると停電の範囲が広い。そのため、決して「安定電源」ではなく、地震・津波等の災害や戦争の際には最も危険な設備になる。

 さらに、「原発回帰にかじを切ることは、むしろ再エネを遅らせる(NPO法人原子力資料情報室の松久保肇事務局長)」というのは事実であり、このような屁理屈をつけて不合理な現状を維持するため汲々としてきたことが、日本の経済成長を妨げ、(他国とは違って)経済を現状維持に留まらせ、国民負担ばかり増やす羽目になった本当の原因なのである。

 なお、政府は次世代原発開発で他国と連携強化をしたいのだそうだが、次世代原発であっても日本に置く場所はない。そのため、他国のまねをして原発にこれ以上の無駄金を出す余裕は、日本にはないことを深く認識すべきである。

(4)政治資金について
 2023年11月末から、派閥の政治資金パーティー収入のうちノルマ超の部分が、派閥と議員双方の政治資金収支報告書に記載されず、金の流れは、①そのまま議員の手元に残った ②全額を会派に渡した後、ノルマ超過分だけ戻された の2ケースがあると騒がれ始めた。
 
 しかし、その後のマスコミ報道を見ていると、リクルート事件(1985年始めにリクルート社の江副会長がリクルートコスモスの未公開株を、政治家・官僚・経済界・マスコミ界の実力者にばらまいた事件で、リクルートが政治家に多額の献金を行なっていたことや政治家主催のパーティ券を大量に購入していたことをきっかけに、政党助成法が制定され、公職選挙法も改正された)の古い例を持ち出して、それと同じく国会議員を辞職させる意図ある報道が目についた。

 そのため、私は、公認会計士・税理士としての知識・経験と自民党衆議院議員だった経験を基に、ここでは本質をつく議論をしたい。

1)パーティー券収入を裏金にすべき理由は何か?

 
2023.12.4毎日新聞 2023.12.21日経新聞      2023.12.4毎日新聞

(図の説明:左図のように、ノルマを超えた派閥のパーティ券収入を派閥の収支報告書にも議員の収支報告書にも記載しない運用が続いていたが、これは、中央の図のように、使い方によっては、政治資金規正法だけでなく、公職選挙法や税法にも触れる恐れがある。また、右図のように、パーティ券収入は他の派閥にもあり、阿部派と同じ取り扱いをしていた派閥もあるようだ)

 私が自民党衆議院議員時代の2007年に、私も参加して政治資金規正法が改正され、国会議員が関係する政治団体(国会議員関係政治団体)は収支報告書の透明性向上のため、i)収支報告書に明細の記載と開示を義務づけ ii)登録政治資金監査人による政治資金監査も義務化された(https://www.soumu.go.jp/senkyo/seiji_s/kspamph19/index.html 参照)。

 しかし、iii)政治資金に関する会計帳簿は未だに単式簿記のままであるため、収入・支出の網羅性・検証可能性がない iv)そのため登録政治資金監査人の意見表明は会計帳簿・明細書・領収書等・領収書等を徴し難かった支出の明細書・振込明細書・振込明細書に係る支出目的書が保存されていたか否かで留めており、適正意見の表明はしていない v)この義務は国会議員関係の政治団体のみに課しており、地方議員の政治団体は昔のままである 等が、改善されていないため、これらが今後の改善点になる。

 ちなみに、政治資金監査の対象となった事項について、すべて確認できた場合の政治資金監査報告書のひな形は「https://view.officeapps.live.com/op/view.aspx?src=https%3A%2F%2Fwww.soumu.go.jp%2Fmain_content%2F000624899.docx&wdOrigin=BROWSELINK」であり、会社法計算書類における独立監査人の監査報告書は「https://www.saisoncard.co.jp/credictionary/accounting/kansa_71.html」で、計算書類の監査の方が文面は簡単だが、監査証明の中身は濃いため比較されたい。
 
 そのような中、*2-1は、①自民党安倍派の会計責任者が、2023年12月18日に東京地検特捜部の事情聴取で政治資金パーティー収入の政治資金収支報告書不記載を認めた ②「裏金」に関する違法性の認識もあったため、特捜部は派閥側収支報告書不記載で会計責任者を政治資金規正法違反容疑で立件する ③安倍派では当選回数等に応じたパーティー券の販売ノルマがあり、超過分を議員に還流させていた ④還流分は、派閥・議員双方の収支報告書に記載されず、裏金になった ⑤裏金は公訴時効内の2018~22年(5年間)で計約5億円 ⑥現在の安倍派の会計責任者は2018年分からで、2017年分まで担当した前任からの申し送りがあった ⑦政治資金規正法は収支報告書の提出義務を会計責任者に課し、会計責任者との共謀が認められる場合は議員本人も刑事責任を追及される ⑧安倍派にはパーティー収入総額と収支報告書記載額を管理する二重帳簿があった ⑨安倍派では数十人が還流分を収支報告書に記載していない ⑩1人当たりの不記載額は多いケースで約5000万円で、多額となった議員を優先して本人からも事情を聴き、不記載の経緯や認識を確認する と記載としている。

 また、*2-2は、⑪東京地検特捜部は安倍派から約4800万円のキックバックを受け、政治資金収支報告書にウソの記載をした疑いで池田衆院議員と会計責任者を逮捕 ⑫池田容疑者は2018~22年(5年間)に派閥から受け取った約4800万円のキックバックも含めて全部で1億円あまりの収入があったが、柿沼容疑者と共謀して池田容疑者側の収支報告書には5300万円ほどの収入とした ⑬特捜部は2023年12月に池田容疑者が住む議員宿舎や議員会館事務所等を捜索し、虚偽記載の額が突出して多く、証拠隠滅の恐れもあると判断し、逮捕に踏み切った ⑭池田容疑者はこれまでの任意聴取に関与を否定 ⑮安倍派では、ノルマを超えた分の収入を派閥に納めず、中抜きしていた議員も十数人いて、この分も含めた事実上の「裏金」は2022年までの5年間で6億円規模にのぼる と記載している。

 このうち、①②については、政治資金収支報告書不記載の事実があったのだろうが、それが起こる背景は、iii)のように、政治資金に関する会計帳簿が単式簿記で収入・支出の網羅性・検証可能性がないため、意図的な操作が容易にでき、すべての取引を記載する習慣が会計責任者についていないことに依る。これは、私が衆議院議員だった時、私は公認会計士・税理士なので明確に区別して記載するが、(特に男性の)秘書はそうでない人が多くて苦労したため事実である。そして、ここから言える教訓は、会計責任者になる秘書は、会計事務所か銀行出身の女性にすれば、正確な経理をするということだ。

 また、③については、当選回数等に応じたパーティー券の販売ノルマがあることやノルマよりも多く集金した議員にノルマ超過分を還流させることは、法律で禁止されていないため合法である。私の場合は、集金ノルマがあってもそれに到達しない方なので、ノルマ超過分が還流されることもないが、ノルマがある以上は超過できた人はむしろ偉く、超過した人に環流させるのは自然ではないかと思う。

 しかし、何故、ノルマを超過するほど多く集金することができるのか、それは政策立案に反映されているのではないかという疑問は残り、もしそうなら、それが問題である。

 また、④の「還流分は、派閥・議員双方の収支報告書に記載されず裏金になった」というのは、双方が正確に記載しておけば法律上の問題はないのに、何故、記載しなかったのかについては、v)キックバックすると不平等と批判されるかと思った(内部事情) vi)不公平なキックバックをしていた(内部事情) vii)どこが多額の寄付をしたかについて知られるとまずかった(外部への見栄え) 等が考えられる。

 このうちv) vi)については、不公平で意図的なキックバックをしたのでければ、内部で説明すれば文句を言う人はいないため、本来は記載しても問題なかった筈だ。しかし、vii)については、それを明確にするために、政治資金規正法を改正して収支報告書の透明性を向上させたのであるため、これを欺く不法行為である。

 さらに、⑤⑥⑧⑨のように、「不記載にして裏金にする」「二重帳簿を作る」などというやり方は稚拙だが、⑦のように、「会計責任者に責任を課し、共謀が認められれば議員本人も刑事責任を追及される」というのも、自分を基準にして考えれば、「とにかく議員に引責辞任させたい」という意図が見え見えなのである。

 何故なら、私の場合、中央では、本会議・委員会・部会への出席や政策立案等で大変忙しく、地元では、式典や催し物に出たり、挨拶廻りと社会調査を兼ねて1軒1軒要望を聞いて廻ったりしていたため、公認会計士・税理士でも衆議院議員時代に自分の収支報告書を作ったり見たりする時間は無く、会計作業は全て会計責任者である秘書に任せて、その秘書には登録監査人から必要なことをアドバイスしてもらっていたからである。

 なお、⑩の「不記載額の多いケースは約5000万円」というのは大きな金額だが、金額の大きさで不法行為性が決まるものでもない。

2)それでは、どう改革すべきか
 *2-3は、①岸田首相は自民党派閥による政治資金規正法違反事件を受けて、党内に総裁直属機関「政治刷新本部(仮称)」を新設し、月内に中間とりまとめを行うと表明 ②新設機関には外部有識者も招いて議論 ③首相は派閥の政治資金パーティーに党の監査を実施し、収支を現金ではなく原則振り込みにする案に言及 ④「政治資金規正法改正という議論もあり得る」と述べた ⑤同本部の最高顧問に自民党の麻生副総裁と菅前首相を充てる意向 としている。

 このうち①②の政治刷新本部を新設し、外部有識者も交えて月内に中間とりまとめを行うのはよいが、③のように、政治資金パーティーに党の監査を実施し、収支を現金でなく原則振り込みにするだけでは、「刷新したふり」になる。何故なら、「現金ではなく、原則振り込み」というのは、監査証跡を残して自分をはじめ利害関係者を守るのに必要不可欠だからで、今までやっていなかったことが著しく遅れているだけだからである。また、今回の事例に関する「党の監査」は独立性がないため信頼性が低く、公認会計士等の外部監査人による監査なら独立性がある。

 また、⑤の政治刷新本部の最高顧問に自民党の麻生副総裁と菅前首相を充てるのは実行力が高くて良いと思うが、内部者だけでは出る知恵が限られ、信頼性も低くなるため、公認会計士協会の公会計関係理事など会計や監査に詳しい外部専門家を入れるべきだ。

 そして、やるべきことは④の政治資金規正法の改正だが、今回の改正に必要なのは、やみくもに議員を連座させるようにすることではなく、政治資金の会計を網羅性・検証可能性のある複式簿記に変更し、外部監査人に通常の監査をさせて、正確な会計が行なわれる環境を作ることだ。そうすれば、議員や会計責任者が意図的に特定の取引を隠せる土壌がなくなり、正確な会計を行う環境が制度的に整備されるため、政治資金収支報告書の透明性が確保されるからである。

 ところで、私は自分で政治資金パーティーを開いたこともあるのだが、熟練した秘書を多く抱え秘書に全てを任せられる古参議員ならそれも簡単だろうが、新人議員は秘書も慣れておらず数も少ないため議員自身も大きく関与しなければならず、ただでさえ忙しいのに大変だった。

 そのため、政治とは別の世界から多様な人材を集められるためには、議員自身が政治資金集めばかりしていなければならない状況をこそ変えるべきなのである。そして、その民主主義のコストは、政治資金を出してくれた相手に慮って政策を歪められたり、無駄な国費の支出をされたりするより数桁安いことを忘れてはならない。

3)国会議員に支払っている現在のコストとそれに対する世論について
 *2-4は、まず「今回の参議院選挙は自民党が圧勝し、多くのタレント議員が誕生した」と書いている。確かに、参議院全国区は日本全国で有名なタレントが票を集めやすいため、タレント出身の議員が誕生しやすい。しかし、一般人やタレントの視点も有用ではあるが、タレント議員ばかり多くては政策立案は進まない。

 また、*2-4は、①憲法49条は国会議員の報酬を「両議院の議員は、・・国庫から相当額の歳費を受ける」、国会法35条は「議員は、一般職の国家公務員の最高の給与額より少なくない歳費を受ける」と規定している ②国会議員の歳費は総額2187万8000円/年(基本給1552万8000円、期末手当635万円) ③文書交通費(現在の名称:調査研究広報滞在費):1200万円/年(領収書公開不要、第2の給与とも呼ばれ様々な用途に使用可、1200万円の所得を一般人が稼ぐには約1700万円の収入が必要 ④議員歳費と調査研究広報滞在費の合計:3887万8000円 ⑤JR特殊乗車券・国内定期航空券交付(北海道選出議員の例:羽田⇔新千歳(ファーストクラスなら往復10万円×月4回×12カ月=480万円) ⑥3人分の公設秘書給与2100万円(政策秘書900万円、第1秘書700万円、第2秘書500万円と仮定) ⑦委員会で必要な旅費・経費・手当・弔慰金等 ⑧政党からの支給 0~1000万円 ⑨会派に対して支払われる「立法事務費」780万円/人(1人会派でも政治団体ならアリ) ⑩政党交付金の一部が各議員に支給 ⑪合計:6000万~7000万円程度 ⑫政党からは役職に応じて黒塗りの車 ⑬議員宿舎の賃料は周辺相場の2割程度 としている。

 しかし、上記は、「国会議員は必要以上に儲けている」という印象を与えようとしている。例えば、①②の報酬については、「公務員」は、国会議員・大臣・裁判官はじめ立法・行政・司法に属するすべての職員を含むが、省庁のトップである大臣が一般職の国家公務員の最高の給与額より少なくない歳費を受けるのは当然であり、そういう役職の人が黒塗りの車に乗るのも普通だが、それは政党からの支給ではなく、各省庁の車だからである。

 また、国会議員については、任期が短期間で当落に関するリスクが高いため、リスクまで考慮すれば、一般職の国家公務員の給与より少なくない歳費を払っても、一般職公務員・一般企業のサラリーマン・研究者・医師・弁護士・公認会計士等から国会議員に転じる人は少ないのが実情だ。そして、国のリーダーになる人のレベルがそれではまずいことは、日本の政策や経済成長率を見れば明らかである。

 さらに、③の文書交通費(現在の名称:調査研究広報滞在費)1200万円/年については、「領収書の公開が不要だから、第2の給与とも呼ばれる」などと書かれているが、それは下衆の勘繰りだろう。何故なら、地元で会合のお知らせビラを全戸に配れば、(選挙区によって戸数は異なるが)最低でも「10円(印刷費)x15~30万件=150~300万円」の費用がかかり、これを1年に4~8回行なえば1200万円はなくなり、活動する議員ほど懐は寂しいからである。しかし、一般人は、そういう儲からない活動はしない。

 そのため、私の場合は、③の文書交通費は全額を自分の政治資金団体に寄付し、事務所費・私設秘書給与・政治活動費に使っていて、全く透明だった。そして、⑥のように、公設秘書は3人しかいないため東京事務所と地元事務所に1~2人配置すれば終わりで、それでは2ヶ所の事務所が廻らないので、どうしても私設秘書が最低2~3 人は必要だったのである。本当は公設秘書の数を10人くらいまで増やし、実体調査をして政策立案までできる必要があるのだが・・。

 また、⑦の委員会で必要な旅費・経費・手当・弔慰金等は、会社で言えば出張旅費のようなものであるため、役にたつ委員会活動の一部である限り、無駄使いではない。

 さらに、⑤の「JR特殊乗車券・国内定期航空券交付(北海道選出議員の例:羽田⇔新千歳(ファーストクラスなら往復10万円×月4回×12カ月=480万円))というのは嘘だ。私は、九州の佐賀県が地元だったので、毎週(金~月曜日、4回/月)地元に帰るのに、飛行機に乗ることが不可欠だったが、使える旅費交通費には20万円という上限があったため、ファーストクラスどころかビジネスクラスにも乗れず、エコノミークラスを使っても足りずに自前で出す部分があった。従って、JR等の他の旅費は、全て自分持ちになったため、出張旅費は、領収書を持って行けば実費で精算してくれる一般企業の方が、社員に負担をかけず合理的だと思っていた。

 なお、選挙の時に公認料として、⑧のような政党からの支給0~1000万円を貰える人もいる。そのため、政党から公認されるか否かは、票だけでなく金の面でも重要なのだ。

 それに加えて、政党政治を推進するためとして、国は政党に、⑨の「立法事務費」780万円/人や⑩の「政党交付金」を支給しているが、これは無所属の人にとっては著しく不利なのだ。そのため、むしろ議員本人に支給し、政党や派閥へは議員から会費として支払うようにすべきで、*2-5は、第1条2項を「前項の立法事務費は、議員に対して交付するものとする」に改正する必要があると思う。

 また、⑫の政党の黒塗りの車は、一般議員の場合は賃料を払って借りており、⑬の議員宿舎は、確かに新しくて便利な場所にあるが、一般企業に例えれば赴任者のための社宅である。そのため、議員宿舎の賃料は、満額ではなく2割程度を支払えば、現物給与には当たらない(https://www.resus.co.jp/topics/554/ 参照)。

 以上により、議員の収入は、⑪の「6000万~7000万円/年」ではなく、②の「2187万8000円/年(これも寄付して政治活動費に使う人もいる)」か、それ以下なのである。 

(5)地球温暖化とその対策 ← COP28を中心として

 
   2023.1.24日経新聞          2023.8.25日経新聞   

(図の説明:左図のように、各国の再エネ発電導入容量は中国が飛び抜けて1位で、日本はブラジル・インド・ドイツ以下の6位である。また、各国の太陽光発電容量は、日本は3位だが、中国はその7倍以上で1位だ。また、中央の図のように、東京都は家庭部門のCO₂排出削減に遅れが目立つそうで、建物の売買に、右図の項目の説明義務を課すそうだ。確かに、そういう内容の保証書がついていれば、選択するのに便利である)

 
   資源エネルギー庁             Zerofit Navi

(図の説明:再エネだけが国内で自給できるエネルギーだが、左図のように、日本の発電に占める再エネ割合は18.0%にすぎず、輸入化石燃料が75.8%も占めている。また、輸入燃料である原子力は東日本大震災後しばらく0%だったが、最近は再稼働する原発もあり6.2%になった。また、右図は、エネルギー自給率の国際比較だが、日本は輸入燃料を好んで使うため、自給率が11.8%にすぎず、34位で、これではエネルギー安全保障にほど遠いわけである)

1)気候変動に対する世界の認識と日本
 *3-1-1は、①国連のグテレス事務総長は「地球のバイタルサイン(生命兆候)は破綻しつつある」と温暖化対策の遅れに危機感を持ち、「世界はパリ協定の目標から何マイルも離れている「1.5度目標達成には全ての化石燃料停止が必要」「再エネは安価になり、利用拡大すべき」と主張 ②チャールズ英国王も「世界の気候変動対策は軌道から大きく外れている」「地球は私たちのためのものではなく、私たちが地球のもの」と強調 ③COP28は、開幕初日の11月30日に、気候変動で被害を受けた途上国支援基金の内容で合意 等としている。

 国連のグテレス事務総長は、①のように、地球温暖化対策の遅れに危機感を持ってくれるので助かるのだが、これに付け加えると、 1gの水の温度を1℃上昇させるのに必要な熱量は1calであるのに対し、0℃の氷1gをとかして0℃の水にするのに必要な熱量は80calであるため、極地に氷が残っている現在は氷バッファーになって海水温の上昇が緩やかだが、極地の氷が減れば減るほど海水温の上昇は激しくなる。

 また、チャールズ英国王は、②のように、「地球は私たちのためのものではなく、私たちが地球のもの」と強調され、キリスト教を信仰し、ケンブリッジ大学で考古学・人類学・歴史学を専攻された人らしい見識だと思うが、私は「生物のいない惑星はいくらでもあるため、地球は人間や生物がいなくなっても全く困らないが、地球環境が変化して生態系が著しく変わると困るのは人間の方である」と思う。

 その手始めに起こった「地球沸騰化」と呼ばれる異常な高温は、日本を含む世界中に影響し、農業や漁業資源の変化を通して食料供給を変え、人間の生存可能性に悪影響を与えている。そのため、③のように、COP28の開幕初日に気候変動で被害を受けた途上国支援基金の内容で合意したのはよかったが、実は、地球温暖化の被害者は開発途上国の人だけではないのである。

 具体的には、*3-1-3のように、日本では、青森県で養殖ホタテが高水温で大量死を起こしたり、京都の「聖護院かぶ」が生育不良になって廃棄処分が増えたりしており、これらはまだ作物の転換や品種改良で回復できる範囲ではあるが、「研究速度が気温の上昇に追いつかない状況」なのだそうだ。

 それに加えて、温暖化で線状降水帯が1.5倍発生しやすくなり、カナダで大規模な山火事が発生し、韓国・インド・リビアで水害が相次ぎ、米国では猛暑で140人以上が亡くなり、太平洋の海水温が高くなって空気中に熱を発散する「エルニーニョ現象」でさらに気温が上がり、世界でも干ばつや豪雨が続いて、ついにIPCCが「今後10年間の選択と対策が数千年先まで影響を持つ」と警鐘を鳴らした。

 なお、COP28に先だち、*3-1-2は、④IEAが「化石燃料の世界的需要が2030年までに減少に転じる」とした ⑤消費国が石油の安定確保に主眼を置いてきた時代は変わったため、日本も政策転換を急ぐべき ⑥IEAは再エネ過小評価との批判もあったが、「電力に占める再エネ比率は30%から50%に増え、移動手段もEVの新車販売が10倍に増える」とした ⑦深刻化する気候危機で化石燃料依存からの脱却は一刻を争い、省エネ・国産再エネが広がればエネルギー安全保障策になる ⑧国内の太陽光発電は東日本大震災後に急増したが、未利用地・住宅・工場・施設の屋根上など設置の余地はまだ大きい ⑨洋上風力発電も海域調査や漁業者らとの調整を進める必要がある ⑩送電網や蓄電設備の充実も急務 ⑪再エネ電力を背景にしたEV転換が次世代の鍵 ⑫経済活動への炭素課金(カーボンプライシング)も有効な手段 としていた。

 このうち、④のIEAの「化石燃料の世界的需要が2030年までに減少に転じる」という主張は世界的には正しいのかも知れないが、日本の場合は、1973年のオイルショックで原油価格が著しく上昇した後も、⑤のように石油の安定確保に主眼を置いて膨大な国富を産油国に流し、エネルギー自給率を下げた上で、今頃になって「政策転換を急ぐべき」とか、⑦のように「省エネ・国産再エネが広がればエネルギー安全保障策になる」などと言っているが、それは、あまりに反応が鈍く無思慮なのである。

 また、⑥のように、IEAは「電力に占める再エネ比率が30%から50%に増え、移動手段もEVの新車販売が10倍に増える」としたそうだが、日本の場合は屁理屈を言って止めていなければ既に再エネ大国になっていた筈で、⑧のように、従来型太陽光発電機器の設置余地もまだ大きく、*3-2-3のように、窓ガラスやビルの壁面で発電する建材一体型の太陽光発電パネルや高性能電池も開発されたため、自然エネルギー由来の再エネの可能性は著しく大きいのだ。

 そのため、日本は、再エネを推進すれば、国富を流出させず、エネルギー自給率を向上させ、エネルギー安全保障も高められる。また、⑨のように、漁業者にとってマイナスになる洋上風力発電に固執しなくても、いやと言うほどある地熱を利用したり、能登半島はじめ半島や山間部に陸上風力発電の適地も多いため、⑩の送電網や蓄電設備を充実させたりして再エネを展開することは容易なのである。

 さらに、今頃になって、⑪のように、「再エネ電力を背景にしたEV転換が次世代の鍵」などと言っているが、日本は1997年12月のCOP3で採択され、2005年2月に発効した京都議定書の時から、再エネ・EVを推進して最初は世界最先端だった。従って、今までもたもたしていた理由を究明して改善することが、産業の再生に最も必要なことである。

 なお、⑫のカーボンプライシングについては、排出権取引のように、企業や事業所が既に「排出枠」を既得権として持っていることを前提としてそれを売買する取引ではなく、CO₂の排出量に応じて環境税を課すことで、CO₂の排出を抑えつつ、環境税収入を自然エネルギー由来の再エネ普及に使うのが良いと、私は2005~2009年の衆議院議員時代から主張していた。しかし、これは、経産省関係者や経済団体の反対で実現されなかったのである。

2)日本が2030年までに再エネを3倍にすらできないのは、何故か?
 上の図の下の段に書いたとおり、再エネだけが日本国内で自給できるエネルギーなのに、日本の発電に占める再エネの割合は18.0%にすぎず、輸入化石燃料が75.8%だ。また、輸入燃料で動く原発は東日本大震災後0%が続いたのだが、最近、再稼働させて6.2%になった。その結果、日本のエネルギー自給率は11.8%にすぎず、いくら基地を増やして武器ばかり揃えても、エネルギー安全保障にも食料安全保障にもほど遠く、原発は武力攻撃に著しく弱いのである。

 また、太陽光発電機を最初に作ったのは日本であるにもかかわらず、上の図の上の段に書いたとおり、各国の再エネ発電導入容量は中国が飛び抜けて1位で、日本はブラジル・インド・ドイツ以下の6位になっている。また、各国の太陽光発電容量も、中国がダントツの1位だ。

 そして、*3-2-1のように、COP28では世界の再エネ設備容量を2030年までに3倍にすることに日本も含む100カ国以上が賛同したにもかかわらず、日本の再エネは2022年時点の約87ギガワットを2030年に2倍程度の約160ギガワットにしかしない見込みなのだ。

 また、石炭火力発電の廃止を目指す脱石炭連盟に日本は加入せず、*3-2-2のように、岸田首相はUAEのドバイで開催されたCOP28の首脳級会合で演説し、アジアの脱炭素化を主導する考えを表明されたが、その内容は、「排出削減対策が未対応の石炭火力について新規の建設を終了する」「既存施設には、アンモニアや水素の混焼しながら石炭を燃やす量をできるだけ減らす」止まりであり、これでアジアの脱炭素化を主導されては困るわけである。

 それでは、何故、日本政府はこういうエネルギーミックスにしたがるのかについて考えると、①意志決定する上層部に文系が多く、物理・化学に弱い ②「エネルギーは熱を介して作るものだ」と思い込んでいる ③太陽光発電や風力発電より、原子力発電や火力発電の方が「メカが複雑だから高度だ」と思っている ④既存の大手企業が従来の方法を使いたいと考えている ⑤環境(生物・生態系に関する学問)については考慮しない ⑥既存の大手企業から協力や政治献金がある などが考えられる。

 そのため、教育段階で、文系の人にも理系教育を決して疎かにせず、日本文化としてもチャレンジ精神を養い、「現状維持が良いことだ」などとは間違っても教えないことが重要である。

 ただし、東京都は、建物の売買時、建物の断熱性能・設備の省エネ性能・再エネ設備の設置状況・EV充電設備の整備状況・建物や駐車場の日当たりに関する説明義務を課すそうで、確かに、そういう内容の保証書が付いて売買価格に反映されていれば、選択が容易である上に、自然と建物の性能が上がる。

 また、*3-2-3のようなビル壁面などで使える建材一体型太陽光発電パネルもできたので、東京都等の都市部や住宅地など、導入可能な立地総数を発電能力に換算すると82.8ギガワットで、現在、国内で稼働している太陽光発電の導入実績の95%に相当する規模になるそうだ。

・・参考資料・・
<能登半島地震について>
*1-1-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20240103&ng=DGKKZO77402910T00C24A1NN1000 (日経新聞 2024.1.3) 浅い震源、激震誘発 M7.6「阪神」上回る、揺れ200回超、地下水関係指摘  輪島で最大4メートル隆起
 能登半島地震は国内7回目となる震度7を観測した。激しい揺れの要因は浅い震源と、阪神大震災を上回る地震の規模だ。震度1以上の揺れは2日午後6時までに200回を超えた。政府の地震調査委員会は同日、地殻変動の状況などを踏まえ「一連の地震活動は当分続くと考えられる」との見解を公表した。能登半島では2020年末から群発地震が続き、地震調査委は地下深くの水(流体)の関与を見方として示している。専門家は今回も同様の可能性を指摘する。「震源が浅く、地震の規模も大きいことで激しい揺れが起きた」。1日の地震発生後の記者会見で気象庁担当者は説明した。今回の地震は、地球の表面を覆う岩板(プレート)内部の大陸側で起きる「内陸型」。北西と南東方向から押す力が働き、断層が上下にずれる「逆断層」によって引き起こされた。内陸型は震源が浅いことが多い。今回の震源は深さ16キロで、04年の新潟県中越地震(13キロ)、1995年の阪神大震災(16キロ)と同じように浅かった。震源が浅いと揺れが地表に伝わりやすいうえ、居住地に比較的近く、大きな被害を引き起こしやすい。規模も大きかった。能登地方でのマグニチュード(M)7.6は記録が残る1885年以降で最も大きかった。マグニチュードが1大きくなると地震のエネルギーは32倍になる。今回の地震は阪神大震災(M7.3)の約2.8倍のエネルギーがあった計算になる。震源の浅さと地震の規模が相まって、大きな揺れに結びついた。地震の瞬間的な揺れの激しさを示す加速度の単位「ガル」でみると、震度7を観測した石川県志賀町の揺れの最大加速度が2826ガルを記録。東日本大震災で震度7だった宮城県栗原市の2934ガルに匹敵する大きさだった。大きな地震であったことは地殻変動のデータからもうかがえる。国土地理院は2日、輪島市で最大約4メートルの地表の隆起を観測したと発表した。水平方向では同市で基準点が西方向に約1.2メートル動いていた。津波が広範囲に及んだのも今回の地震の特徴だ。気象庁によると、今回の地震の活動領域は長さ約130キロメートル。直近3年間に能登地方で観測された地震の領域(30~40キロ四方)と比べて「はるかに広がった」(気象庁)。東京大の加藤愛太郎教授(地震学)は「断層が大きく滑り、海底面付近のかなり浅いところまで破壊されたことで津波が発生した」と分析する。震源の真上は陸地だったが、断層の動きが沖合まで広がったため、日本海側の多くの地点で津波が観測された。能登地方では20年以降、人的被害を伴う震度5強以上の地震が5回起きた。地震活動は特に20年12月から活発化し、震度1以上の地震が500回超確認された。地震調査委は23年5月に「活動は当分続くと考えられる」との評価をまとめ、国は防災対策の強化を呼びかけていた。能登地方の地震メカニズムについて、調査委は地表面の隆起や震源の移動が確認されていることから、水のような地下の流体の移動が関係している可能性を指摘した。東京工業大の中島淳一教授(地震学)は「地下の水が上昇して断層に入り、滑りやすくなったことで地震が発生した可能性が高い」と指摘する。地震波の分析では、深さ20~30キロのところに水がたまっているといい、10~15キロ付近まで上昇すると地震を起こす原因になるとみられる。地下になぜ流体があるのかなど不明な点も少なくない。中島教授も「M7を超える群発地震は世界でも観測事例がほぼないのではないか」と話す。今後も比較的大きな地震が連続する可能性があるとみて警戒を呼びかける。同庁は今後1週間ほどは最大震度7程度の地震の恐れがあるとして注意を求めている。加藤教授は「地震活動は依然として高いレベルにある。今回、流体が断層をすべりやすくして、より大きな破壊を起こした可能性があり、今後も引き続き大きな地震に注意が必要だ」と話している。

*1-1-2:https://weathernews.jp/s/topics/202401/060205/ (Weather News 2024.1.6) 令和6年能登半島地震 地震活動の状況まとめ(6日20時) 回数減少も急に強い揺れ
 1月1日に石川県能登地方で発生したM7.6 最大震度7の地震(令和6年能登半島地震)から5日がたち、地震回数は徐々に減少傾向となっています。一方で、今日6日(土)は3日ぶりに震度5強の地震が発生。過去にあった近い規模の地震では、1か月後に最大余震が発生した事例もあり、油断ができません。
●6日(土)20時までの地震活動の状況をまとめます。
1日(月)16時以降の震度1以上の地震の回数を集計すると、1日が358回、2日が387回、3日が135回、4日が65回、5日が79回、6日が47回(20時まで)となっています(5日までは気象庁の報道発表、6日は速報値による集計)。累計回数は1071回、うち最大震度5弱以上の地震は14回となっています。3日(水)午後以降は震度5弱以上を観測する地震が発生していませんでしたが、今日6日(土)5時26分におよそ3日ぶりに最大震度5強を観測する地震が発生しました。
記事冒頭の図でわかるとおり、震源域は1日(月)の頃から大きくは変わっておらず、石川県西方沖〜佐渡島の西にかけての約150kmの範囲に集中しています。体に感じない地震を含めて集計し、規模と時系列を表した散布図(MT図)をみると、マグニチュード4程度以下の地震は徐々に減少傾向ではあるものの、依然としてM5前後の地震が散発的に起きていることがわかります。
●本震—余震型の傾向か 1か月後に最大余震発生した事例も
 能登半島周辺で2020年から続いている地震活動では、これまでの最大は2023年5月5日のM6.5 最大震度6強の地震でしたが、今回のM7.6の地震はその30〜60倍程度のエネルギーということになります。日本周辺で発生した地震でみても、深発地震を除けば2011年3月の東北地方太平洋沖地震の一連の活動以来の規模といえます。地震活動の状況からは、過去数年間に能登半島周辺で発生していた群発的な地震活動型とは違い、従来から他の地域でもよくみられる本震—余震型の傾向がみられます。今後も徐々に地震の回数が減少していくと考えられます。ただ、強い余震がいつまで続くかは予測することができません。過去の本震—余震型の地震をみても、数週間から数ヶ月たった後にM5〜6クラスの余震が発生しているものもあります。今回の地震の規模に近い事例をみると、1983年に発生したM7.7の日本海中部地震、1993年に発生したM7.8の北海道南西沖地震では、ともに本震のおよそ1か月後に最大余震が発生しています。これまでに建物がダメージを受けていた場合、余震によって倒壊するなどのおそれがありますので、引き続き安全な場所で過ごすようにしてください。
●震源地:石川県能登地方、規模(マグニチュード):M7.6、震源の深さ:16km
●各地の震度(震度6弱以上)
■震度7:
【石川県】志賀町香能
■震度6強:
【石川県】七尾市垣吉町 七尾市能登島向田町 輪島市鳳至町 輪島市河井町 珠洲市三崎町 珠洲市正院町 珠洲市大谷町 穴水町大町
■震度6弱:
【新潟県】長岡市中之島
【石川県】志賀町富来領家町 志賀町末吉千古 七尾市本府中町 七尾市袖ヶ江町 中能登町末坂 中能登町能登部下 能登町宇出津
この地震により、一時は石川県に大津波警報が、北陸地方などに津波警報が発表されていましたが、いずれも時間の経過に伴う減衰により解除されています。観測された津波の高さは、最大の輪島港で「1.2m以上」と発表されていますが、現時点では能登半島周辺の正確な津波の高さはわかっていません。国内で震度7を観測するのは2018年の胆振地方中東部の地震以来で、そのほかには熊本地震、東日本大震災を引き起こした東北地方太平洋沖地震、新潟県中越地震など、いずれも大きな被害をもたらしたものばかりです。石川県内で震度7を観測するのは観測開始以来、初めてでした。
*ウェザーニュースアプリでお天気アラームを設定すると、今いる場所の天気・台風・地震・津波などの情報をいち早くプッシュ通知で受け取れます。

*1-1-3:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20240107&ng=DGKKZO77490270X00C24A1EA2000 (日経新聞 2024.1.7) 津波、1分で沿岸到達 陸と海またぐ断層が影響 日本海特有の備え不可欠
 能登半島地震では2011年の東日本大震災以来となる大津波警報が出た。被害が深刻な石川県珠洲市で地震発生から1分で津波が沿岸に達した可能性がある。日本海側は地震発生から津波到達までの時間が短い特徴があり、太平洋側と異なる備えの必要性が改めて浮き彫りになった。最大震度7の地震は1日午後4時10分ごろ発生。直後に能登地方の輪島港で津波第1波とみられる海面変動を観測した。東北大災害科学国際研究所の今村文彦教授らの研究グループは、国土地理院や米地質調査所(USGS)のデータをもとに津波が押し寄せた状況をシミュレーションした。珠洲市で約1分以内、富山市で約5分以内に津波が達していたとの結果が得られた。早く到達する要因は日本海側の断層の位置にある。北陸から北海道の日本海側にかけ、陸と海にまたがる断層や、沿岸に近い位置にある断層が多く存在する。こうした断層で地震が起きると陸の近くで津波が発生する。東日本大震災のように沖合で発生するケースと比べ、短時間で津波が沿岸に達する。1993年、日本海側で発生した北海道南西沖地震で、奥尻島に地震後まもなく第1波が到達。死者・行方不明者が200人を超えた。能登半島地震をもたらした断層も能登半島から日本海にまたがり、震源は沿岸付近だった。東京大地震研究所の佐竹健治教授は「海岸の真下に近い断層が動き、地震発生と同時に津波が到達したと考えられる」と話す。日本海側の津波は、長時間に及ぶ特徴もある。佐竹教授によると、この地域で規模の大きな津波が起きると、朝鮮半島やロシア側の大陸で反射し、数時間後に再び日本列島に到達する。大陸と日本列島に囲まれている日本海は、太平洋側と比べて津波の「逃げ道」が限られ、長く続きやすい。今回の津波注意報が全て解除されたのは、約18時間後の2日午前10時だった。東日本大震災などがあったことから、巨大な津波は太平洋側という印象を持たれがちだが、日本海側でも十数年に1度の頻度でマグニチュード(M)7程度の地震が発生し、新潟県や秋田県などで津波の被害が生じている。東大地震研が文科省の委託を受けて実施した日本海側の地震・津波に関する調査報告書は、避難が難しい点をとらえ、根本的な解決は難しいとしつつ「公共施設の建設・移転の際には、自然災害を考慮した、より安全な土地利用を進めていく必要がある」とした。津波が早期に襲来しやすいという地域の特性を踏まえ、揺れがあった場合には、津波注意報や警報を待たずに避難し始めるなどの対応が欠かせない。

*1-1-4:https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240105/k10014310811000.html (NHK 2024年1月5日) 石川県 志賀町で津波4m超遡上か 輪島市では4m以上地盤が隆起
 今月1日の能登半島地震で研究者のグループが現地を調査した結果、震度7の揺れを観測した石川県志賀町では、津波が4メートルを超える高さまで陸地を駆け上がったとみられるほか、輪島市の海岸沿いでは4メートル以上地盤が隆起していたことがわかりました。東京大学地震研究所の石山達也准教授らのグループは、地震発生翌日の今月2日から能登半島北西部の沿岸を調査してきました。その結果、志賀町の赤崎漁港では、建物の外壁に残された津波の痕跡や周辺に流れ着いた漂流物から、津波が陸地を4メートル20センチほど駆け上がったとみられることが分かりました。海岸付近の津波の高さは、潮位計がないためわかっていませんが、一般的には駆け上がった高さの半分以下とされています。また、今回の調査では沿岸の複数の地点で地盤の隆起が確認され、赤崎漁港では、25センチほど盛り上がっていました。一方、北に10キロほど離れた地点では隆起した地点が3メートルを超えるところが複数あり、輪島市の鹿磯漁港ではおよそ3メートル90センチでした。さらに、鹿磯漁港からおよそ5キロ北にある輪島市門前町五十洲の漁港では、およそ4メートル10センチに達するなど4メートルを超えるところが複数ありました。大きく隆起した漁港でも津波が駆け上がった痕跡がありましたが、建物には到達していなかったということです。石山准教授は「海岸の隆起が小さかった場所では津波が駆け上がって人家があるところまで達したと考えられる。さらに調査を進めたい」と話しています。

*1-2-1:https://www.nikkei.com/paper/related-article/?b=20240103&c=DM1&d=0&nbm=DGKKZO77402910T00C24A1NN1000&ng=DGKKZO77402960T00C24A1NN1000&ue=DNN1000 (日経新聞 2024.1.3) 医療機関が停電や断水 石川・富山・新潟
 厚生労働省は2日、能登半島地震を受け、石川・富山・新潟の3県の計16カ所の医療機関で停電や断水などの被害が生じていると明らかにした。石川県が最も多く、14カ所に上る。厚労省によると、人工透析ができなくなっている施設もあるようだ。同省は1日の能登半島地震の発生を受け、2日に同省災害対策本部の会合を開いた。武見敬三厚労相は医療機関や社会福祉施設の被害状況の把握を指示した。現地の情報集約などのため同省の職員6人を被災自治体の災害対策本部に派遣する。武見氏は職員に「先手先手の対応をし、被災者の救助に全力をあげて取り組むとともに、一刻も早く国民の生活が回復するよう全力を尽くしてほしい」と話した。

*1-2-2:https://digital.asahi.com/articles/ASS165R1PS16PTIL008.html (朝日新聞 2024年1月6日) 「何をするにも厳しい」水も電気も届かず、長引く避難生活に募る不安
 半島北部にある石川県輪島市の市役所では5日、米谷起代志さん(83)が2リットルのペットボトル5本に給水車の水を入れていた。計10キロとなったバッグをかかえ、約1キロ先のアパートに持ち帰るという。「車を持ってないから、水も食べ物も歩いてもらいに行くしかない。何をするにも厳しい」。県内では6日午後2時時点で、七尾市の2万1500戸、輪島市の1万戸など14市町の計6万6千戸ほどが断水したままで、全国から給水車が駆けつけている。ただ、輪島市で給水車1台を活動させた愛知県岡崎市によると、道路の状況が悪く、大渋滞が発生。補給やガソリン確保の移動に時間がかかり、給水に充てる時間が十分に確保できないという。派遣する複数の自治体によると、特に輪島市や珠洲(すず)市で給水がままならないという。輪島市の坂口茂市長は、避難所の環境について「電気と水がない。暖が取れないし、衛生面も悪い」と窮状を訴える。経済産業省によると、6日午後2時時点で県内の停電は約2万3200戸。輪島市が約9800戸と最も多く、珠洲市約7400戸、能登町約3200戸、穴水町約2600戸など。電線が切れるなどしたためだ。北陸電力は他の大手電力会社の応援を得て約960人態勢で復旧作業を続けるものの、倒木などで入れない地域があり、作業は困難を極めているという。斎藤健経産相は5日の会見で停電が続く理由を問われ、「道路被害の状況が想定以上に厳しい」と強調。病院や福祉施設、避難所の復旧を優先していると説明した。真冬に暖を取るために必要な灯油やガソリンなどの不足も深刻だ。被害が大きい半島北部の6市町では6日時点で、69ある給油所のうち半分以下の28店舗のみが営業を再開。残り41店舗は損壊などで営業を停止していたり、連絡がつかなかったりしている。消防車や救急車などの緊急車両に限って供給する給油所もあり、一般向けの給油所には長蛇の列ができている。道路が復旧した地域では大型車で燃料を運び入れている。石油元売り大手「出光興産」は大型車が通れない道路では、ドラム缶に燃料を詰めて小型トラックで運び、さらに渋滞を回避するため、ヘリコプターを使った物資供給も検討している。国土交通省によると、県内の高速道路や主要な道路は復旧が進むものの、国道や県道の99区間(6日夕時点)が通行止めだ。復旧を担う同省の緊急災害対策派遣隊「テックフォース」は2日時点で31人だったが、日ごとに増やして6日は394人に。ただ、そもそも道路の幅員が狭く、大規模な工事を行うクレーンなどの重機を運び込めていない。半島北部はより深刻で、被災状況の調査すら終わっていないのが現状だ。同省幹部は「復旧の見通しを立てられない」。重機の海上輸送も検討している。道路の寸断などで孤立したり支援が必要だったりする半島北部の集落は6日午後2時時点で、少なくとも40弱。県全体の避難者は約3万人に上り、自宅にとどまって支援を待つ人もいる。馳浩知事は5日の対策会議後、こう強調した。「物資については大体拠点までは届いているが、いわゆるラスト1マイル、そこから先へ十分に届いているか確認が必要だ」
●迫る感染症の影 「今の対策では限界」
 津波で大きな被害を受けた石川県珠洲(すず)市の沿岸部。近くの住民ら約200人が避難する特別養護老人ホーム「長寿園」は、6日午前も電気や水が復旧していなかった。割れた窓ガラスをブルーシートで覆い、布団にくるまったりして寒さに耐えている。頼りは10台ほどの灯油ストーブだけ。「夜は底冷えして、体調不良になる人が日ごとに増えてきた」。職員の竹平佳代さん(43)は避難生活の長期化を心配する。カップ麺や菓子パンなどは届いているが、硬いものを食べられない高齢者も多い。備蓄のゼリーやレトルトのおかゆを手でもみ、軟らかくして提供しているが、それさえも底をつきかけている。断水の影響で、トイレは水が流れなくなった。災害用に設置した簡易トイレは和式で、足腰が弱い高齢者には使えない。今はポリ袋に排泄(はいせつ)してもらい、職員が処理をしているが、水で手を洗うこともできない。感染症対策は備蓄していたマスクと消毒液だけ。「今の対策では限界がある」と竹平さんは嘆く。感染症が広がる心配はすでに高まっている。県によると、穴水町では一つの避難所で新型コロナウイルスの感染者3人が確認された。輪島市内でも体調不良の報告が増えていて、コロナやインフルエンザの疑いのある人が出ているという。想定を上回る人が集まり、物資不足が問題になる避難所もある。輪島市の鳳至(ふげし)公民館には当初、約300人が身を寄せた。備蓄していたおかゆやパンなどは150人分で、1食分を2人で食べてもらうしかなかった。水は500ミリリットルのペットボトルを200本ほど備えていたが、薬を飲む高齢者を優先した。「普段は高齢者が多い地区だけれど、時期が時期だから、帰省してきた家族がまるごと避難所に来た」と館長の七浦正一さん(76)。避難していた女性(67)は「いつまでこんな生活が続くのか。家にも戻れないし、先のことを考えるだけでつらくなるだけだよ」と話した。公民館では6日に電気が復旧したが、断水は続いているという。金沢地方気象台によると、能登地域では7日夕から8日にかけて大雪が見込まれ、避難所では不安が高まっている。珠洲市は支援物資の輸送を増やすよう県に要請。国とは避難所の電気の復旧を優先するよう調整しているが、泉谷満寿裕(ますひろ)市長は「路面状況が悪く、除雪車を出せたとしてもまともに動かせないだろう。ようやく物資を届ける体制が整い始めたが、積雪が妨げになる可能性がある」と懸念する。

*1-2-3:https://digital.asahi.com/articles/ASS1662WNS16PTIL00F.html?iref=pc_extlink (朝日新聞 2024年1月6日) 「孤立集落」で孤独感を増す避難者たち 「自分の状況が分からない」
 能登半島地震では、道路の寸断による孤立状態が各地で続く。石川県が「孤立集落」と公表する地区に5日午後、記者2人が入った。避難所近くで6日朝まで車中泊しながら、身を寄せる人たちの声を聞いた。向かったのは輪島市東部の町野地区。迂回(うかい)路となった県道はいたるところに亀裂や陥没があった。道沿いは倒壊したままの民家が並ぶ。約300人が避難する東陽中学校にたどり着いたのは午後4時ごろ。付近の家屋の倒壊は一段とひどく、瓦や柱、生活用品などが散乱していた。惣田登志樹さん(71)の自宅も倒壊し、1階リビングにいた妻が家屋に閉じ込められた。近くの人に数人がかりで助けてもらったという。「まだ救出できていない人がいるかもしれないと思うと、心が痛みます」と、沈痛な面持ちで話した。市によると、この避難所はヘリコプターなどで救援物資が複数回搬入され、物資不足の状況は脱した。だが、電気も水も途絶え、携帯電話は通じない。多くの人が「情報が入らないのが一番心配だ」と話す。家族5人で避難する男性(35)は「自分たちがどういう状況かわからないのが本当に不安」と口にした。地区の被害は正しく把握されているのか、救助は進んでいるのか――。そうした情報を発信も受信もできない。情報入手はラジオだけが頼りだ。体育館入り口に置かれたラジオの前には、常に数人が集まって耳を傾けていた。5日午後5時ごろ、ラジオのアナウンサーが県内各地で孤立状態となっている地区の名前を伝えていた。その一つに「町野地区」が読み上げられると、「まだ何も変わっとらんのか」「こりゃダメだわ」などと、失望の声があがった。日没を過ぎると、暗闇に包まれた。雨も降り、気温は一気に下がった。学校の外では、倒壊した家屋の木材をドラム缶に入れ、たき火で暖をとる人たちがいた。避難所には灯油ヒーターが数台あるが、体育館全体を暖めるには足りない。50代男性は「たき火の周りで知った顔と談笑すると、ストレス発散にもなる」と話した。午後9時ごろ、多くの人が避難所に戻った。だが、熟睡はできない。余震が一日に何度も襲う。6日午前5時半ごろには大きな余震が。続々と避難者が目を覚まし、建物の外に出てくる。「慣れっこになった人もいるかもしれないけど、私はまだ怖い」。60代女性がつぶやいていた。輪島市内には、7日から雪の予報も出ている。女性(66)は「自宅は全壊は免れたが、傾いている。雪が積もったら潰れてしまう」と嘆く。6日朝、避難者が集まって「ストーブをなるべく使わない」と決めた。使えるのは夜の決まった時間にして、灯油の消費を抑えるためだ。話し合いに参加した女性(77)は「計画停電ならぬ、計画ストーブです」。降雪に備えて雪かきの当番なども決めた。輪島市によると、この避難所は孤立状態を脱したが、復旧に不可欠な大型車両や重機は通れず、住民の不安も募る。娘と一緒に避難する女性(48)は言う。「そもそも『孤立集落』という名称が嫌だ。あなたたちは取り残されている、と毎回言われているように感じて、孤独感が増す」

*1-3-1:https://www.nikkei.com/paper/related-article/?b=20240103&c=DM1&d=0&nbm=DGKKZO77402910T00C24A1NN1000&ng=DGKKZO77402950T00C24A1NN1000&ue=DNN1000 (日経新聞 2024.1.3) 断層、長期評価の対象外
 政府の地震調査委員会(委員長・平田直東大名誉教授)は2日、臨時会を開き、最大震度7を記録した能登半島地震の分析や今後の動向について検討した。国は主要な活断層について長期評価を公表しているが、今回地震のあった断層は対象外だったと明らかにした。平田委員長は「(長期評価は)慎重にやっており、非常に時間がかかる」とした上で評価していない断層で大きな地震が起きたことについて「非常に残念だ。もっと早く評価しておくべきだった」とも話した。世界でも有数の地震大国の日本では各地に断層が存在し、リスク評価が追いついていない側面が浮き彫りになった。今後、政府の長期評価のあり方も問われそうだ。

*1-3-2:https://digital.asahi.com/articles/DA3S15808171.html (朝日新聞 2023年12月3日) 「原発容量3倍」日本も賛同 世界全体 22カ国、COP28で宣言
 アラブ首長国連邦(UAE)のドバイで開かれている国連気候変動会議(COP28)にあわせ、「世界全体の原発の設備容量を2050年までに3倍に増やす」との宣言が2日発表され、日本を含む22カ国が賛同した。温室効果ガスの排出を減らす対策の一環として、米国が呼びかけていた。
賛同したのはほかに、英国やフランス、韓国、COP28議長国のUAEなど。「温室効果ガス排出の実質ゼロを達成する上で、原子力は重要な役割を果たす」とした。世界原子力協会によると、世界の原発は436基。発電電力の約10%をまかなっている。原発は発電時に温室効果ガスを出さず、電源の脱炭素化に期待する声がある。国際エネルギー機関(IEA)は、気温上昇を産業革命前より1・5度におさえるには、50年までに2倍以上の容量が必要としていた。日本は東京電力福島第一原発の事故後、原発への依存度をできる限り低減するとしていたが、岸田文雄政権は「原発回帰」にかじを切った。脱炭素化のためのGX(グリーン・トランスフォーメーション)政策では、再生可能エネルギーとともに原発を「最大限活用する」とし、新規建設方針も盛り込んだ。エネルギー基本計画では、現在は1割以下の発電量に占める原発の比率を30年度に20~22%に引き上げるとする。しかし、再稼働したのは12基にとどまり、到達は難しい。新増設はさらにハードルが高い。政府関係者は、原発が脱炭素への安定電源になることや、輸出による関連産業の振興につながると説明。「賛同しない理由はない」と話した。一方、日本は原発事故を経験し、今も避難を余儀なくされている人がいる。環境NGO「350.org ジャパン」の伊与田昌慶さんは「必要な脱炭素化を加速させるために、危険な原子力を利用する余地はない」と非難した。

*1-3-3:https://mainichi.jp/articles/20231202/k00/00m/030/195000c (毎日新聞 2023/12/2) 「原発3倍」宣言、なぜ日本も賛同? 気候変動に役立たぬと批判も
 アラブ首長国連邦(UAE)のドバイで開催中の国連気候変動枠組み条約第28回締約国会議(COP28)では全締約国による交渉と並行し、有志国が気候変動対策強化に関する独自の宣言などを公表する場面が目立つ。米国は2日、日本など21カ国と世界全体の原子力発電の設備容量(発電能力)を3倍にすることを目指すと宣言した。国際原子力機関(IAEA)によると2022年末時点で稼働中の原発は31カ国で411基で、発電設備容量は約3・7億キロワット。バングラデシュなど途上国での計画が進み、10月公表の予測では50年までに約2・4倍の8・9億キロワットに増えると見込む。日本政府はエネルギー政策の中長期の方向性を示す「エネルギー基本計画」(21年閣議決定)で、原発への依存度を「可能な限り低減する」と明記。だが、5月成立のGX(グリーントランスフォーメーション)脱炭素電源法で原発の60年超運転を可能にし、東京電力福島第1原発事故以降、「想定していない」としてきた次世代原発のリプレース(建て替え)も進める方針を示した。脱炭素社会の実現に向け、運転中にCO2を排出しない原発を活用していく姿勢に転換した。だが、足元では発電電力量に占める原発の割合は5・6%(22年度速報)にとどまる。原発事故を受けた安全対策工事の長期化や地元同意などがハードルとなり、原発の再稼働が思ったようには進んでいないためだ。国のエネルギー基本計画に盛り込んだ30年度の原発比率20~22%との目標もほど遠い。そうした中での今回の有志国による宣言は、政府のエネルギー政策の方向性と符合する。
日本が宣言に参加したことに「原発の導入には計画から20年はかかり、今直面している気候変動への対策として役に立たない。むしろ脱炭素を遅らせる」(NPO法人原子力資料情報室の松久保肇事務局長)など批判は多い。政府は宣言に何を期待するのか。それは、次世代原発の開発などでの他国との連携強化だ。次世代原発の開発競争は欧米を中心に激化しており、国内では三菱重工業が電力大手と革新軽水炉開発に取り組んだり、日立製作所などが小型軽水炉の開発を進めたりしている。電気自動車(EV)の普及や新興国の経済成長などで世界の電力需要は今後急増し、原発市場も拡大が見込まれる。こうしたことを機会と捉え、「日本企業の技術や製品を世界に売り込むことにつなげたい」(経済産業省幹部)とする。経済界も前向きだ。経団連の十倉雅和会長は11月20日の記者会見で、有志国による原発活用について「非常によく理解できる話だ。再生可能エネルギーの普及・開発を図るのは当然だが、変動電源であり、地形的な理由で全ての国ができるわけでもない。原発も全ての国ができるわけではないが、原発を増やしていくのは人類の英知だ」と話した。

*1-4-1:https://www.yomiuri.co.jp/science/20231227-OYT1T50075/ (読売新聞 2023/12/27) 柏崎刈羽原発の運転禁止命令、原子力規制委が解除…テロ対策で「改善が見込める」
 原子力規制委員会は27日午前、東京電力柏崎刈羽原子力発電所(新潟県)に出していた事実上の運転禁止命令の解除を決定した。不備が指摘されてきたテロ対策について「自律的な改善が見込める」と判断した。2年8か月ぶりに再稼働に向けた準備が再開されることになり、今後は、新潟県など地元自治体の同意が焦点となる。同原発では2021年1月以降、侵入検知設備の不備や、所員によるIDカードの不正利用など核物質防護上の問題点が相次いで発覚。規制委は同年4月、原子炉等規制法に基づき核燃料の移動を禁ずる是正措置命令を出した。東電は、侵入検知設備の誤作動対策や、生体認証装置の拡充などの対策を実施。同原発内に社長直属の部署を新設し、社員の意識や行動を定期的に監視する仕組みも整えた。規制委は今年5月の時点では、監視体制などで改善が不十分として命令解除を見送っていたが、規制委事務局の原子力規制庁は今月6日、「是正が図られている」とする報告書案を公表。これを受け、規制委の山中伸介委員長らは同原発を視察したり、東電の小早川智明社長から意見を聞いたりして命令解除の是非を議論してきた。東電は今後、同原発の再稼働に向けて、新潟県と、立地自治体である柏崎市、刈羽村の同意を得るとしている。両市村長が再稼働におおむね容認の姿勢を示す一方、花角英世知事は態度を明らかにせず、地元同意の先行きは不透明だ。花角知事は、規制委の命令解除後に再稼働の是非を判断し、県民の意思を確認する流れを示している。県民の意思を確認する方法は、「信を問う方法が責任の取り方としてもっとも明確だ」と繰り返し、出直し知事選の可能性も否定していない。

*1-4-2:https://news.yahoo.co.jp/articles/8a2a49784efa6d034a8f7108de9956ec0136b705 (Yahoo 2024/1/7) 能登半島地震・志賀原発 避難ルート「のと里山海道」は一時全面通行止め 避難計画は“絵空事”だった
 元日に発生した能登半島地震で、北陸電力志賀原子力発電所については当日中に「異常なし」と発表された(後に訂正)。だが、原発事故があった際の避難ルート「のと里山海道」は複数カ所で陥没、一時、全面通行止めになった。石川県の激震地・輪島市や穴水町、七尾市は原発30キロ圏内だ。地震大国・日本で「原発震災」が再び起これば、近隣住民の避難はやはり困難を極める。
  *  *  *
 「志賀原子力発電所をはじめ、原子力発電所については現時点で異常がないことが確認をされております」。1月1日の地震後、最初の会見。林芳正官房長官は現地の被害状況より前に、原発の様子に言及した。地震が起きるたびに、日本、いや世界中の関心が集まってしまうからだろう。
■激震地が30キロ圏内
 能登半島西岸の石川県志賀町に北陸電力志賀原発がある。原発から約9キロ離れた同町内の観測点では震度7、原発では震度5強を記録した。激震地の輪島市や、穴水町、七尾市などは30キロ圏内になる。志賀原発には、東京電力福島第一原発と同じ沸騰水型で、1号機(54万kW、1993年営業運転開始)、2号機(135.8万kW、2006年営業運転開始)の2基がある。2011年の東電の事故後、運転は止まったままだ。2号機は、2014年から再稼働に向けて新規制基準の審査が進んでいたが、まだ合格していなかった。使用済み燃料プールには計1657体の核燃料を保管している。13年近く冷やされ続けているので、すぐに心配になる事態は起きなさそうだ。ただし、北陸電力によると、一部の変圧器で配管が壊れて油漏れが発生し、外部電源の一部が使えなくなっているという。多重の安全策の一部を欠き、安全のレベルは下がっている。2007年に震度7相当の揺れに襲われた東電柏崎刈羽原発で、基礎の杭に損傷が見つかったと同社が公表したのは、地震から14年後のことだった。その後、建屋の建て替えへと追い込まれた。志賀原発も、今後の調査でまだ損傷が見つかるかもしれない。(以下、略)

*1-4-3:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/1172469 (佐賀新聞 2024/1/6) 玄海原発3号機、運転開始40年へ安全運転 再エネ主力電源化へ技術開発を 九州電力・池辺和弘社長
 九州電力玄海原子力発電所(東松浦郡玄海町)3号機は、3月に運転開始から30年を迎える。九電の池辺和弘社長は佐賀新聞のインタビューで、玄海3号機の今後について「40年に向けて安全安定運転を続けていく」とし、延長の方針は現時点で「決まっていない」と述べるにとどめた。家庭向け電気料金に関しては資材高騰をにらみつつ今年も維持する意向を示した。(北島郁男)
●運転開始40年が近づく川内原発1、2号機(鹿児島県)は20年延長による60年運転が認可され、国では原発の60年超の運転を可能にする法律が成立した。玄海3号機の今後の運転計画をどう考えているか。
 これから40年に向けて安全安定運転を続けていく。40年の前には特別点検をし、その結果によってその先どうするかを決める段取りだと思う。まだ先なので(延長認可の申請や特別点検は)何も決まっていない。運転開始から30年の後、改正後の原子炉等規制法が施行される2025年6月までに、新たな規制制度に対応する長期施設管理計画の認可をもらえるよう準備する。
●3、4号機の耐震設計の目安となる揺れ(基準地震動)に関し昨秋、数値を見直した原子炉設置変更許可申請の補正書を規制委に提出した。新しい規制に沿った許可が必要な4月20日までに審査は間に合うか。
 原子力規制委が審査書案を出し、委員から反論はなかったというから、もうそろそろではないか。4月には間に合うと思っている。
●高レベル放射性廃棄物の最終処分場選定に向けた文献調査に関し、長崎県対馬市長は応募しない意向を表明した。使用済み核燃料の処分場が必要な「核燃料サイクル」の道筋がいまだに立っていないことを、どう考えるか。
 23年4月、最終処分に関する国の基本方針が改定され「国が前面に立ってやる」となった。そこがスタートで、これから日本各地で、人口も減っていく中でどうまちづくりをしていくのかという議論が始まり、手が挙がってくると思う。悲観的には考えていない。
●九電としては青森県六ケ所村の再処理工場に使用済み核燃料を搬出するのが前提だ。
 再処理工場の稼働は24年度上期のできるだけ早い時期とされ、それが稼働しないと玄海から持っていけない。現在は(使用済み燃料貯蔵プール内の間隔を詰めて保管量を増やす)リラッキングが3分の2は終わっている。乾式貯蔵施設も設置を計画している。
●23年は九電の原発全4基が稼働した。火力発電の燃料費が抑えられ、24年3月期の連結純利益を過去最高の1300億円と見通す。電気料金の値下げは考えていないか。
 九州は電気料金が全国的に見て安い水準。今後は資材や工事費が上がっていくと思うので、電気料金が上がらないように努力する方が先だ。自己資本比率は15%くらいしかないので内部留保を積み重ねないといけない。一律の料金の値下げは当面ないと思う。
●24年は「再生可能エネルギーの主力電源化」に取り組むとしている。再エネ導入を拡大するのか。
 拡充していく。主力電源化とは技術開発だと思う。太陽光は夜間や雨では発電せず、それで主力電源というわけにはいかない。電池や揚水、風力発電などの技術開発が大事で、これらを通して主力電源化したい。再エネ(23年11月末時点で約267万キロワット)は30年度に500万キロワットの目標に向かって進めていく。
●一方で、原発が稼働し、再エネ事業者に一時的な発電停止を求める出力制御が23年度上半期で60回に上った。再エネを有効活用する手段や構想はあるか。
 オール電化推進や、出力制御防止に向けた料金プランを作ろうと思うのが一つ。(遠隔操作で細かく調整する)オンライン制御や家庭向けのポイント付与などに取り組んでいるが、究極的には企業誘致だと考える。企業が昼間に電気を使ってくれれば捨てなくて済む部分が増える。地方自治体と力を合わせ、佐賀県も誘致活動をいろいろしているので協力したい。安く、二酸化炭素を出さない電気があることをPRしたい。

<裏金にすべき理由は何か?>
*2-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20231219&ng=DGKKZO77067050Z11C23A2CM0000 (日経新聞 2023.12.19) 安倍派パーティー「裏金」 会計責任者、立件へ 、違法性認める供述 地検、派閥側捜索へ詰め
 自民党安倍派(清和政策研究会)の会計責任者が東京地検特捜部の事情聴取に対し、政治資金パーティー収入を巡る政治資金収支報告書への不記載を認めたことが18日、関係者への取材で分かった。「裏金」について「記載しなければいけないと分かっていた」とも供述し、違法性の認識があったと説明しているという。特捜部は派閥側の収支報告書の不記載について、会計責任者を政治資金規正法違反容疑で立件する方針を固めた。安倍派の裏金の規模や慣例となった実態を解明するため、近く派閥側の関係先を家宅捜索する方針だ。安倍派では当選回数などに応じたパーティー券の販売ノルマがあり、超過分を議員に還流させていた。還流分は派閥・議員側双方の収支報告書に記載されず裏金となっていたとされる。裏金は同法の不記載・虚偽記入罪の公訴時効(5年)にかからない2018~22年の5年間で計約5億円に上るとみられる。安倍派の収支報告書の不記載額は収入と支出を合わせて約10億円に達する可能性がある。特捜部はこれまでに安倍派の会計責任者を複数回、事情聴取した。関係者によると、会計責任者は「パーティー収入の一部を不記載としてきた」と収支報告書の収入から除外していたことを説明。記載が必要だったとの認識も示したという。収支報告書によると、現在の安倍派の会計責任者は18年分から務める。関係者によると周囲に「キックバックの手法は長年続いており、引き継がれてきた」という趣旨の説明をしている。17年分までを担当した前任から申し送りがあったとみられる。政治資金規正法は収支報告書の提出義務を会計責任者に課している。会計責任者との共謀が認められれば議員本人も刑事責任を追及される可能性がある。具体的な報告・了承や指示があった場合に限られ、立件のハードルは高いとされる。特捜部は臨時国会が閉会した13日以降に捜査を本格化した。安倍派にはパーティーの収入総額と、収支報告書に記載する額を管理するための二重帳簿があったとされる。こうした客観証拠や会計責任者の事情聴取を踏まえ、不記載額の特定を進めている。安倍派では数十人が還流分を収支報告書に記載しておらず、議員側の事情聴取も進める。1人当たりの不記載額は多いケースで約5000万円に上る。裏金が多額となった議員を優先して本人からも事情を聴き、不記載の経緯や認識を確認するとみられる。

*2-2:https://news.yahoo.co.jp/articles/aa54af4ad9edde84f77dfaa4cec4bf270fdaa86b (Yahoo 2024/1/7) 速報】池田佳隆衆議院議員と秘書を逮捕 “裏金”4800万円めぐり虚偽記載か 安倍派政治資金事件
 自民党・安倍派の政治資金パーティーをめぐる事件で、東京地検特捜部は、派閥から約4800万円のキックバックを受け、政治資金収支報告書にウソの記載をした疑いで、池田佳隆衆院議員と会計責任者を逮捕した。この事件で逮捕者が出るのは初めて。政治資金規正法違反の疑いで逮捕されたのは、衆院議員で安倍派の池田佳隆容疑者と会計責任者の柿沼和宏容疑者の2人。池田容疑者は柿沼容疑者と共謀し、2022年までの5年間に派閥から受け取った約4800万円のキックバックも含め、全部で1億円あまりの収入があったにもかかわらず、池田容疑者側の収支報告書には、5300万円ほどの収入とウソの記載をした疑いがもたれている。特捜部は2023年12月、池田容疑者が住む議員宿舎や議員会館事務所などを捜索しているが、虚偽記載の額が突出して多いことや、証拠隠滅の恐れがあるなどと判断し、逮捕に踏み切ったものとみられている。関係者によると、池田容疑者はこれまでの任意聴取に関与を否定していたという。安倍派では、ノルマを超えた分の収入を派閥に納めず、中抜きしていた議員も十数人いて、この分も含めた事実上の「裏金」は、2022年までの5年間で6億円規模にのぼるとみられている。

*2-3:https://www.yomiuri.co.jp/politics/20240104-OYT1T50150/ (読売新聞 2024/1/5) 政治改革へ自民の新設機関、最高顧問候補に麻生副総裁と菅前首相…首相が意向示す
 岸田首相(自民党総裁)は4日、首相官邸で年頭記者会見に臨んだ。首相は、自民党派閥による政治資金規正法違反事件を受けた政治改革の実現に向け、党内に新設する総裁直属機関で月内に中間とりまとめを行うと表明した。新設機関は「政治刷新本部(仮称)」で来週にも設置し、外部の有識者も招いて議論すると明らかにした。首相は「党の先頭に立って、政治への信頼を回復すべく取り組みを進める」と強調し、派閥の政治資金パーティーに関して党による監査実施や、収支を現金ではなく原則振り込みにする案に言及。「政治資金規正法改正という議論もあり得る」とも述べた。この後、首相はBSフジの番組に出演し、同本部の最高顧問に自民党の麻生副総裁と菅前首相を充てる意向を示した。事務総長には木原誠二幹事長代理を起用する方向だ。年頭記者会見では、能登半島地震への対応について、「避難の長期化も懸念される中、被災者の生活となりわいを支えていく息の長い取り組みが求められる」と訴えた。

*2-4:https://toyokeizai.net/articles/-/604812 (東洋経済 2022/7/22) 国会議員が得る「お金」がどれほどか知ってますか、文書通信交通滞在費の問題は継続して議論が必要
 今回の参議院選挙は自民党が圧勝しました。多くのタレント議員が誕生しましたが、一部の議員には当選後の会見を拒否する姿勢が見られました。公人である以上、自らの言葉で有権者に説明する責任がありますが本人の姿が見えないのは残念なケースです。落選しない限り参議院議員は6年間の職位が保証されます。今回は、あらためて注目される国会議員の報酬について解説します。
●議員報酬は高いのか
 憲法では国会議員の報酬を次のように規定しています。憲法49条「両議院の議員は、法律の定めるところにより、国庫から相当額の歳費を受ける」。国会法35条「議員は、一般職の国家公務員の最高の給与額(地域手当等の手当を除く。)より少なくない歳費を受ける」。さらに、歳費法によって歳費、旅費および手当等の支給についても細かく規定されています。いったい、いくらになるのでしょうか?国会議員の歳費は月額129万4000円と定められています。年額で1552万8000円になります。ここに、期末手当(賞与)として年額635万円が加算されますので、総額2187万8000円が基本ベースです。昨今問題視されている「文書通信交通滞在費」(現在は「調査研究広報滞在費」に名称変更)が1200万円(月額100万円×12カ月)が支給されます。領収書の公開などが不要であるため、第2の給与とも呼ばれさまざまな用途に使用されているのが実情です。領収書による精算が必要ありませんからブラックボックスです。1200万円(月額100万円×12カ月)もの領収書も必要ないお金を一般人が稼ぐにはいくら必要でしょうか。所得税で40%控除されることを踏まえれば、約1700万円(月額141万円×12カ月)の収入が必要になります。次に、「立法事務費」780万円(月額65万円×12カ月)を加算してみましょう。立法事務費は会派に対して支払われますが、1人会派だとしても政治資金規正法上の政治団体として届け出ていれば認められます。また、まったく活動していなかったとしても立法事務費の使い道を第三者が確認する術はありません。使途公開の必要のない月額65万円を一般人が稼ごうとするとどうなるのでしょうか。所得税で40%控除されることを踏まえれば、1296万円(月額108万円×12カ月)程度の収入が必要です。基本ベース2187万8000円+1700万円=3887万8000円(議員歳費+文書通信交通滞在費)に1296万円(立法事務費)を加算すると、5183万8000円となります。さらに、JR特殊乗車券・国内定期航空券の交付や、3人分の公設秘書給与や委員会で必要な旅費、経費、手当、弔慰金などが支払われます。くわえて、政党交付金の一部が、各議員に支給されます。これらを踏まえて国会議員1人当たり、年間にどれだけのお金がかかっているのか試算してみましょう。
●参議院議員A氏(北海道選出)のシミュレーション
○基本給1552万8000円(月額129万4000円)
○期末手当635万円
○文書通信費1200万円(月額100万円)
○立法事務費780万円(月額65万円)
○JR特殊乗車券、国内定期航空券。北海道選出の議員であれば羽田⇔新千歳(ファーストクラスなら往復10万円×月4回×12カ月=480万円)
○秘書給与2100万円(政策秘書900万円、第1秘書700万円、第2秘書500万円と仮定)
○政党からの支給 0~1000万円程度
合計:6000万~7000万円程度と推測
政党からは役職に応じて黒塗りの車もあてがわれます。議員会館の賃料は無料、議員宿舎には格安で居住することができます。2014年に賃料引き上げを行いましたが、周辺相場の2割程度で借りることができます。24時間体制の警備が施されセキュリティーは万全です。部屋から緊急通報のボタンを押せば秒速でスタッフが駆けつけます。
●政治献金はどのくらい?
 政治活動には多額の出費が必要であることから、政治家は政治献金を募ることになります。企業が行う企業献金と、個人が行う個人献金に分かれます。企業献金には癒着につながりやすいという指摘があります。また、政治家個人への献金は禁止されていることから、政治団体(一政治家が1つだけ指定できる資金管理団体や後援会など)を通じて献金することになります。日本国籍を持つ個人献金のみ可能で、一政治団体に対して年間150万円まで可能です。政治資金パーティーによる政治献金もあります。資金管理団体には、個人献金や政治資金パーティーの収益が入り、政党支部には政党本部や企業献金が入ります。日本経済新聞電子版(2021年12月3日配信)によれば、国会議員の資金管理団体と関係する政党支部が2020年に集めた政治資金をめぐり、議員1人当たり実収入の平均額は3103万円で、2019年から28.9%減少したことが明らかにされています。「アメリカ」の下院・上院では支給額にかなりの差が生じます。下院は「議員代表職務手当」が支給されます。この手当から、交通費、通信費、秘書給与その他の経費を支出します。その額は1億2000万~1億8000万円と差があります。アメリカ合衆国議会議事堂があるワシントンから選挙区までの距離、事務所賃貸料等の個人差が生じているためです。上院は「秘書・事務所費用会計」として、事務費から秘書給与までの経費すべてを支出します。その額は約2億4000万~4億円程度です。両院とも秘書給与を流用できますが、充当されるのは、下院で8000万円程度、上院では2億~3億円です。秘書の人数も下院なら5名程度、上院で30~40名と開きがあります。
●不適切な経費請求が発覚し、厳格化されたイギリス
 「イギリス」の上院は貴族院として世襲により構成されてきましたが、現在は削減され無報酬を踏襲しています。下院は基本給に手当が加わりますが、各議員が実費精算することから内容が異なります。英国下院は約1126万円、「秘書雇用手当」が3人で平均約1300万円程度です。手当や使いみちは詳細に公開され、誰でも閲覧できるようになっています。2009年に多くの不適切な経費請求が相次いで発覚しました。イギリスの新聞、『デイリー・テレグラフ』は、全国646人の議員のうち、200人以上の不適切な経費請求を明らかにします。議員は国民から強い反発を受けました。その後、ルールが厳格化され、現在では公開が義務づけられています。「ドイツ」の議員報酬は1466万円で欧州では2位、世界全体でも8位の高額議員報酬です。個人で秘書を雇った場合はその人件費として最大23万9000ユーロ(約3100万円)が支払われます。秘書の数は制限がありませんが近親者の雇用を禁じています。平均6~7名です。「フランス」は1085万円で、これは世界14位のランクです。秘書の雇用に関しては、上院で約952万円、下院で929万円が支給されます。人数は上院6名、下院では5名まで可能で半数はパートです。これらの情報を比較すると、アメリカが突出しているように見えますが、すべて使途明細書の提出がなければ1セントも支払いがされない後払い方式です。アメリカは政党に依存しない個人活動が主流だからです。欧州は政党・会派中心ですが日本もそれに近いと言えます。
●毎回先延ばしになる議員特権議論
 2021年10月31日の衆議院選挙後に「満額」が振り込まれたことにより文書通信交通滞在費をめぐる問題は、連日メディアで報道されました。しかし、「使途の明確化や情報公開」など重要な要点には触れられずに先送りされました。与野党ともに「日割り」にするだけで決着をつけようとする姿勢が強く見受けられました。継続した議論が求められます。前の国会で各党は「使途公開」を口にしていました。ところが成立したのは当選した月の支給額を「日割り計算」にする改正だけです。使途公表や国庫返納はなんら盛り込まれていません。さらに、文書通信交通滞在費から調査研究広報滞在費に費目が変更されただけでした。その後、JR無料パスの違法使用、パパ活疑惑などがあり、国民からは「議員特権を廃止すべき」という厳しい声が上がりました。国民の血税で活動している以上、国会議員にかかる諸費については透明性を持たせる必要があります。しかし、政治家は自らが当選に有利になることでないかぎり前向きには議論しません。政治システムを変える法案を提出することもありません。当然のことながら不利になるシステムに変更されることもありません。実現させようなどと思っていないからでしょう。国会議員の本務は、国会で政策を議論し、必要な法律を策定することです。選挙区のお祭りや盆踊りに顔を出したり、運動会に参加したりすることが本筋ではないのです。議員は国の代表ですから、相応の報酬があることはもちろん理解できます。しかし、税金によって支払われる以上、議員の仕事に見合うかどうかを国民1人ひとりが注視しなければなりません。参議院選挙後の臨時国会は8月3日に召集されます。

*2-5:https://elaws.e-gov.go.jp/document?law_unique_id=328AC1000000052_20150801_000000000000000 国会における各会派に対する立法事務費の交付に関する法律
第一条 国会が国の唯一の立法機関たる性質にかんがみ、国会議員の立法に関する調査研究の推進に資するため必要な経費の一部として、各議院における各会派(ここにいう会派には、政治資金規正法(昭和二十三年法律第百九十四号)第六条第一項の規定による届出のあつた政治団体で議院におけるその所属議員が一人の場合を含む。以下同じ。)に対し、立法事務費を交付する。
2 前項の立法事務費は、議員に対しては交付しないものとする。
第二条 立法事務費は、毎月交付する。
第三条 立法事務費として各会派に対し交付する月額は、各議院における各会派の所属議員数に応じ、議員一人につき六十五万円の割合をもつて算定した金額とする。
第四条 前条の所属議員数は、毎月交付日における各会派の所属議員数による。
2 立法事務費の交付日において、議員の任期満限、辞職、退職、除名若しくは死亡、議員の所属会派からの脱会若しくは除名又は衆議院の解散があつた場合には、当月分の立法事務費の交付については、これらの事由が生じなかつたものとみなす。一の会派が他の会派と合併し、又は会派が解散した場合も、また同様とする。
3 各会派の所属議員数の計算については、同一議員につき重複して行うことができない。
第五条 各会派の認定は、各議院の議院運営委員会の議決によつて決定する。
第六条 各会派は、立法事務費の交付を受けるために、立法事務費経理責任者を定めなければならない。
第七条 各議院の議長は、立法事務費の交付に関し疑義があると認めるときは、議院運営委員会に諮つて決定する。
第八条 この法律に定めるものを除く外、立法事務費の交付に関する規程は、両議院の議長が協議して定める。

<気候変動対策について>
*3-1-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20231202&ng=DGKKZO76627250S3A201C2NNE000 (日経新聞 2023年12月2日) 国連総長「地球、破綻しつつある」 COP28 温暖化対策遅れに危機感
 アラブ首長国連邦(UAE)のドバイで開かれている第28回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP28)は1日、首脳級会合が始まった。国連のグテレス事務総長は演説で、「地球のバイタルサイン(生命兆候)は破綻しつつある」と温暖化対策の遅れに危機感を示した。(1面参照)
グテレス氏は世界の気温上昇を産業革命前より1.5度以内に抑える2015年のパリ協定に触れ「世界はパリ協定の目標から何マイルも離れている」と指摘。「今、行動すれば最悪の混乱を避けられる」と述べた。1.5度目標を達成するには「最終的に全ての化石燃料の燃焼を停止した場合にのみ可能だ」と主張し、化石燃料の廃止を訴えた。再生可能エネルギーはかつてないほど安価になっているとして、利用を拡大すべきだとの立場を強調した。チャールズ英国王も、世界の気候変動対策が「軌道から大きく外れている」と指摘した。温暖化ガスの排出量が世界規模で増えていることに触れ「COP28が真の変革に向けた重要な転機となることを心から祈る」としたうえで「地球は私たちのためのものではなく、私たちが地球のものなのだ」と強調した。開幕初日となった11月30日には、気候変動で干ばつや洪水などの被害を受けた途上国を支援する基金制度の内容で合意した。初日の会合で参加国が一定の成果を出したかたちだ。欧州連合(EU)のフォンデアライエン欧州委員長は、基金をめぐる合意について「我々は最も脆弱な市民を守るための決定的な一歩を踏み出す」と指摘。「ドバイでの会合が歴史を作ることができると信じている」と強調した。COP28ではパリ協定の目標達成に向けた対策の進捗を世界全体で検証する「グローバル・ストックテイク(GST)」が行われる見通し。GSTは今回のCOPを皮切りに、5年ごとに実施される。このほか、温暖化ガス排出削減などの重要課題で実効性のある合意に至れるかが焦点となる。

*3-1-2:https://digital.asahi.com/articles/DA3S15796373.html?iref=comtop_Opinion_04 (朝日新聞社説 2023年11月20日) IEA報告書 脱化石燃料へ転換急げ2023年11月20日
 化石燃料の世界的な需要が2030年までに減少に転じる――。国際エネルギー機関(IEA)が、そんな見通しを示した。消費国が石油の安定確保に主眼を置いてきた時代が、はっきりと変わりつつある。日本も政策の転換を急ぐべきだ。IEAは50年前の石油危機を受けて、当時の西側先進国がエネルギー安全保障での協力のためにつくった組織だ。各国に石油備蓄を義務づけ、供給不安時に協調する。化石燃料の大半を海外に頼る日本にとっても重要な機関とされてきた。一方で、「再生可能エネルギーを過小評価している」との批判もあった。その組織が先月の報告書で、各国の現行政策に基づく最も手堅い予測として、化石燃料の需要減を見込んだ。エネルギー供給全体に占める割合でも、22年の80%が、30年には73%に下がるという。一方で、電力に占める再エネの比率は30%から50%近くに増える。移動手段でも、電気自動車の新車販売が、10倍に増える見通しだ。深刻化する気候危機をみれば、化石燃料依存からの脱却は一刻を争う。省エネとともに、代替として国産の再エネが広がれば、新たなエネルギー安全保障策にもなる。国内の太陽光発電は東日本大震災後に急増したが、未利用地のほか、住宅や工場、施設の屋根上など設置の余地はなお大きい。洋上での風力発電も、海域での調査や漁業者らとの調整を進める必要がある。送電網や蓄電設備の充実も急務だ。運輸・交通面での脱炭素化も迫られる。日本はハイブリッド車で先行したが、燃費は良くてもガソリンを使い続ける以上、一時的な解決策にとどまる。再エネ電力を背景にした電気自動車への転換こそが次世代の鍵を握ることは、自動車業界も、すでに自覚しているはずだ。社会・産業を広く脱炭素化するには、インフラの整備に加えて、経済活動への幅広い炭素課金(カーボンプライシング)が有効な手段だ。国際水準の炭素価格を設ければ、競争力のある技術の開発や製品化にもつながる。政府が導入方針を示す今の枠組みは、開始時期や予想される価格水準が不十分だ。見直しを求めたい。脱炭素化できるかどうかだけではなく、そのスピードも重要だ。関連投資は急増しており、脱炭素化は制約ではなく、成長の機会にもなる。日本は来年からエネルギー基本計画の改定作業を始めるが、積年の遅れを取り戻さなければならない。

*3-1-3:https://digital.asahi.com/articles/DA3S15808101.html (朝日新聞 2023年12月3日) (COP28)沸騰化、地球むしばむ ホタテ大量死、世界では山火事・水害・干ばつ
 中東ドバイで開催されている国連の気候変動会議(COP28)では、世界のリーダーが集い、温暖化対策を議論している。世界の平均気温が史上最高を更新する今年、「地球沸騰化」とも呼ばれる異常な高温やその影響が日本を含む世界中で爪痕を残している。11月下旬、青森県の陸奥湾に面する蓬田漁港。午前3時すぎ、ホタテ漁師の中川八千雄さん(67)は漁船の上で、ホタテの稚貝をカゴに移し替える作業をしながら、ため息をついた。「3割ほど死んでる。こんなことは初めてだ」。口が開いたり成長が止まったりして「へい死」した稚貝がいくつも見つかった。37年の漁師人生で最もひどい状況だ。原因はホタテが苦手な高水温。稚貝は26度を超えると衰弱して死ぬこともある。今年は、猛暑や海洋熱波により、水温が上昇し始める時期が早く、陸奥湾では7月下旬に水深15メートルで23度を超え、その状態が2カ月余り続いたという。9月上旬には最高水温が平年より4度以上高い場所もあった。県内の生産量の約半分を占める平内町漁業協同組合販売課長の小塚達典さん(42)によれば、稚貝の9割がへい死した地点もあるという。「人間なら熱湯につかっているのと同じ。漁業者から『来年に売るものがない』という声も聞く」。京都の冬の味覚「千枚漬け」にも夏の酷暑が響く。原料となる良質な聖護院かぶの産地で知られる京都府亀岡市。農家の男性(54)は畑の一角を指さして「あの圃場(ほじょう)の収穫は諦めました」と語った。4アール分のカブを生育不良で廃棄するという。今年は暑すぎて発芽が出そろわない。種まきの時期が初めの分は大きく育たず、変色したり、特有の「滑らかな肌」も失われたりした。「欲しい時にカブがなかった」。千枚漬けの老舗「大安(だいやす)」(京都市)によると、例年は9月からの千枚漬けの販売が、10月末までずれ込んだという。九州大学の広田知良教授(農業気象学)によると、長年、品種改良や農業技術によって単位面積当たりの農作物の収量は増えてきた。しかし最近は減少傾向の作物もあるという。「研究速度が、気温の上昇に追いついていない状況だ」。今夏の日本の平均気温は過去最高を更新。気象庁の担当者も「予報を大きく超えた信じられないような高温」と断じた。東京大などの研究チームの解析によれば、地球温暖化の影響がなければ他にどんな悪条件が重なっても、ほぼ起こりえない猛暑だったという。各地で豪雨被害をもたらした線状降水帯も、温暖化によって1・5倍発生しやすくなっていた。世界でも気候災害が相次ぎ、カナダでは日本の半分の面積を焼く山火事が発生。韓国やインド、リビアでも水害が相次ぎ、米国では猛暑で140人以上が亡くなった。さらに、今年発生したエルニーニョ現象によって高温の傾向が強まる可能性が指摘されている。世界的にも干ばつや豪雨が続き、国際ブドウ・ワイン機構のまとめでは、ブドウの収穫減によって世界のワイン生産量は過去60年で最少になる見通しという。11月も例年に比べて高温の状況が続き、欧州連合(EU)のコペルニクス気候変動サービスによると、17日には世界の平均気温が初めて、産業革命前から2度以上高くなったという。国連によると、各国の現状の削減目標を達成したとしても、今世紀末には気温上昇は3度近くになる。深刻な熱波が起きる確率は現状5年に1回程度だが、3度上昇すると5年に4回になるという研究もある。国連気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は、「今後10年間の選択と対策が数千年先まで影響を持つ」と警鐘をならす。

*3-2-1:https://digital.asahi.com/articles/ASRD273TFRD2ULBH00G.html?iref=comtop_7_02 (朝日新聞 2023年12月2日) 世界の再エネ容量、30年までに3倍へ 日本など100カ国以上賛同
 アラブ首長国連邦(UAE)のドバイで開かれている国連の気候変動会議(COP28)では2日、世界の再生可能エネルギーの設備容量を2030年までに3倍にすることに、日本も含む100カ国以上が賛同した。2日まで開かれた首脳級会合では、中東情勢をめぐる波乱もあった。再エネ3倍の目標は、議長国のUAEが参加国に呼びかけていた。誓約書では、気温上昇を産業革命前から1・5度に抑えるためには、再エネの世界全体の設備容量を、現在の約3600ギガワットから、1万1千ギガワットに上げる必要があると指摘。エネルギー効率(省エネ)も2倍にすることをめざす。「化石燃料に依存しないエネルギーシステムへの世界的な移行を、前倒しで推進しなければならない」と主張。各国が再エネや省エネに関する計画をつくり、温室効果ガス削減目標に反映することも求めた。日本も再エネの導入量を引き上げる必要がある。日本の再エネは22年時点で約87ギガワット、30年には2倍程度の約160ギガワットにする見込みだが、世界に対する貢献量は少ない。伊藤信太郎環境相は「各国がそれぞれ3倍ということを言っているわけではない」と話すが、次のエネルギー基本計画の議論に影響を与えそうだ。一方この日は、米国が、石炭火力発電の廃止を目指す脱石炭連盟に加入した。英国とカナダ主導で立ち上げた枠組みだ。米国は中国、インドに次ぐ「石炭火力大国」だが、ケリー米気候変動特使は「世界中で排出対策の取られていない石炭火力の段階的廃止を加速する」とコメントした。日本は加入していない。
●交渉の裏で戦争の影も
 国際協調が必要な温暖化対策だが、前日に再開したパレスチナ・ガザ地区での戦闘は交渉にも影を落とした。COPに参加したイスラエルのヘルツォグ大統領は首脳演説をせずに、インドや欧州連合(EU)などと二国間会談を展開。同氏のX(旧ツイッター)によると、「(イスラム組織)ハマスがあからさまに停戦協定を破った」などと主張したという。イラン国営通信によると、同国のエネルギー相は、イスラエルがCOPに参加することに抗議し、会場から去ったという。2年後のCOP30の議長国となるブラジルのルラ大統領は、温暖化対策費をはるかに上回る巨額の資金が、世界で戦争や軍事に充てられていることを嘆いた。「力を結集すべき時に、世界が戦争に向かっているとは」

*3-2-2:https://www.nikkei.com/article/DGXZQODK01B120R01C23A2000000/ (日経新聞社説 2023年12月2日) アジアの脱炭素へ協力深め世界に貢献を
 岸田文雄首相はアラブ首長国連邦(UAE)のドバイで開催中の第28回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP28)の首脳級会合で演説した。アジアの脱炭素化を主導する考えを表明した。気候変動対策の行方を左右するのは世界の二酸化炭素(CO2)排出量の約6割を占めるアジアの取り組みだ。日本の脱炭素技術や省エネルギーのノウハウを積極的に移転し、削減に貢献すべきだ。アジアは日本と同様、電源に占める石炭火力発電の割合が高い。太陽光や風力の適地が少なく、再生可能エネルギーの大幅な拡充は難しい。首相が触れたアンモニアや水素の活用は日本が技術開発で先行する。現実的な選択肢だ。日本は特殊な国債を出し、世界銀行とアジア開発銀行の信用リスクを補完する。融資余力を合計90億ドル規模ほど広げるという。だがインドや東南アジアだけでも年間5000億ドルが必要とされ、欧米の支援を含めても足りない。民間投資も大幅に増やす必要がある。政府は日本企業の事業展開を促す支援策づくりを急ぐべきだ。アジアでは、補助金や税優遇といった政策も十分ではない。日本が主導するアジア・ゼロエミッション共同体(AZEC)を通じ、政策ノウハウの提供や人材育成を進めることも重要になる。まず何よりも、国内の脱炭素をより進めることが不可欠だ。日本はガソリンや電気、ガスへの補助金など脱炭素に矛盾する取り組みも目立つ。国際社会から二枚舌とみられかねない状況だ。演説では、排出削減対策が未対応の石炭火力について新規の建設を終了することも表明した。既存施設については言及しなかった。世界の潮流は脱化石燃料だ。アンモニアや水素の混焼を使いながらも、石炭を燃やす量をできるだけ減らす姿勢を見せてほしい。日本は2013年度比でCO2を約20%削減した。30年度に46%という目標の半分近くで「さらに高みを目指す」という。しかし、各国の中央銀行や金融当局で構成する気候変動リスク等に係る金融当局ネットワークなどの分析によると、進捗状況は主要7カ国(G7)の中で最も遅れている。最新の空調機器や製造装置への更新、住宅への太陽光パネル設置、建物の断熱性向上など、まだできることは多い。脱炭素技術の普及も進めながら削減実績を積み上げることが重要になる。

*3-2-2:https://www.nikkei.com/article/DGXZQODK01B120R01C23A2000000/ (日経新聞社説 2023年12月2日) アジアの脱炭素へ協力深め世界に貢献を
 岸田文雄首相はアラブ首長国連邦(UAE)のドバイで開催中の第28回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP28)の首脳級会合で演説した。アジアの脱炭素化を主導する考えを表明した。気候変動対策の行方を左右するのは世界の二酸化炭素(CO2)排出量の約6割を占めるアジアの取り組みだ。日本の脱炭素技術や省エネルギーのノウハウを積極的に移転し、削減に貢献すべきだ。アジアは日本と同様、電源に占める石炭火力発電の割合が高い。太陽光や風力の適地が少なく、再生可能エネルギーの大幅な拡充は難しい。首相が触れたアンモニアや水素の活用は日本が技術開発で先行する。現実的な選択肢だ。日本は特殊な国債を出し、世界銀行とアジア開発銀行の信用リスクを補完する。融資余力を合計90億ドル規模ほど広げるという。だがインドや東南アジアだけでも年間5000億ドルが必要とされ、欧米の支援を含めても足りない。民間投資も大幅に増やす必要がある。政府は日本企業の事業展開を促す支援策づくりを急ぐべきだ。アジアでは、補助金や税優遇といった政策も十分ではない。日本が主導するアジア・ゼロエミッション共同体(AZEC)を通じ、政策ノウハウの提供や人材育成を進めることも重要になる。まず何よりも、国内の脱炭素をより進めることが不可欠だ。日本はガソリンや電気、ガスへの補助金など脱炭素に矛盾する取り組みも目立つ。国際社会から二枚舌とみられかねない状況だ。演説では、排出削減対策が未対応の石炭火力について新規の建設を終了することも表明した。既存施設については言及しなかった。世界の潮流は脱化石燃料だ。アンモニアや水素の混焼を使いながらも、石炭を燃やす量をできるだけ減らす姿勢を見せてほしい。日本は2013年度比でCO2を約20%削減した。30年度に46%という目標の半分近くで「さらに高みを目指す」という。しかし、各国の中央銀行や金融当局で構成する気候変動リスク等に係る金融当局ネットワークなどの分析によると、進捗状況は主要7カ国(G7)の中で最も遅れている。最新の空調機器や製造装置への更新、住宅への太陽光パネル設置、建物の断熱性向上など、まだできることは多い。脱炭素技術の普及も進めながら削減実績を積み上げることが重要になる。

*3-2-3:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20240111&ng=DGKKZO77565030R10C24A1MM8000 (日経新聞 2024.1.11) ビル壁面で発電、生産3倍 カネカ 高性能電池、ガラスと一体
 カネカはビル壁面などで使える建材と一体にした太陽光発電パネルの年間生産量を2030年までに現在の約3倍に増やす。都心部ではパネル設置場所が限られており、窓ガラスやビル壁面に潜在需要がある。建材一体型の普及により、現在の国内の太陽光発電能力に匹敵するとの試算もある。ビル群が都市発電所として電源の一翼を担う可能性がある。カネカは窓ガラスなどに使える建材一体型発電パネルを大成建設と共同開発した。自社開発した高性能の太陽電池をガラスに挟んで窓ガラスや外壁材として使える。兵庫県豊岡市の既存工場の生産能力を段階的に高める。新工場建設も視野に入れる。30年に現状の3倍となる年産30万平方メートル(東京ドーム6.4個に相当)に増やす。同社の太陽光パネルは住宅向けが中心で現状の売上高は100億円前後だ。カネカは大成建設との共同開発品以外にも複数の商品発売を計画しており、30年に建材一体型のパネルだけで現在のパネル全体と同等の100億円まで増やす考えだ。インドの調査会社IMARCによると世界の建材一体型太陽光の市場規模は28年までに22年比3倍近い548億米ドル(約8兆円)に達する見通しだ。太陽光パネルは中国メーカーが世界供給の7割を占める。国内勢はカネカや長州産業、シャープなどに限られるが建材一体型のような付加価値商品で先行する。太陽光発電協会(東京・港)によると、今後建材一体型太陽光発電が導入可

<能登半島地震で顕在化した地方の働き手不足>
PS(2024年1月13日追加):石川県の馳知事が、*4-1-1のように、「(能登半島地震の復興に)数兆円規模の補正予算の編成を1カ月以内にお願いしたい」と述べられたそうだが、国民は東日本大震災の復興特別税を2013年から2037年までの25年間も所得税に2.1%加算して支払っており、負担に感じている。そして、そもそも復興とは、既得権のように四半世紀も続けるものではなく、10年以内に2度と同じことが起きない形で行なうべきものである。そのため、*4-1-2の仮設住宅建設も、何度も同じことを繰り返して避難しなくてすむよう、津波や激しい地震が発生する地域は避けるのが税金を払っている国民に対するマナーであろう。そして、今後、同じことを繰り返した場合には2度と補助せず、財源は今後起こる震災まで含めて復興税もしくは一般税から出すようにすべきである。
 なお、*4-1-3のように、石川県はじめ日本各地により安全で人口の減っている地域は少なくないため、金沢・加賀・輪島等が大切であったとしても、“復旧”として同じ場所に同じものを作る必要はなく、これを機会に都市計画をしっかりやるべきだ。また、インフラは全国で老朽化が進み、適切な修繕や補修をしないと災害時のリスクも高まるのは事実だが、本来は普段から補修・代替等をしているべきなのである。予算や人手の足りない市区町村では修繕が必要な橋梁の6割が未着手で、地方のインフラ対策は急務だそうで、その理由は、①高齢化で社会保障費が膨らみ公共事業に回す余裕がない ②市町村全体の25%にあたる437市町村でインフラ整備にあたる技術系職員を1人も確保できていない ③土木部門の職員数の減少率は市町村全体の職員数の減少率より大きい ④専門知識のない事務職員が対応して外部委託費等でコストがかさむ 等と説明されているが、これは自治体の規模・職員の採用方針・給与体系に問題がありそうだ。
 確かに能登半島地震を見ても、避難者には高齢者の割合が高く、ガザ地区で避難している人に子どもの割合が高いのと対照的である。しかし、これは50年も前から生じていた現象で、居住地の仕事・子育て環境が日本の若者にとって魅力的でなかったことによって生じたものである。そのため、その張本人であるドメドメした(domestic:国内しか見ていないこと)おじいさんたちの提言を基に、*4-2-2のように、i)人口動態の基調が変わらない限り、1億2400万人の日本の人口は2100年に6300万人に半減する ii)人口が急激に減ると社会や経済は縮小と撤退を強いられる iii)高齢化率が4割で高止まりする超高齢社会が続いて格差と対立が深刻化する iv)インフラやサービスの機能停止で地方社会は消滅の危機になる v)提言はこうした縮小と停滞を避けるため人口減のペースを緩和させ、8000万人の規模で安定させる必要性を訴えた vi)外国人労働者の受け入れは高技能者に絞る vii)2060年までに合計特殊出生率2.07の必要がある viii)2040年頃までに出生率1.6、2050年頃までには1.8に上昇することが望ましい ix)出生率1.26の日本にとって容易ではないが、決して不可能ではない筈で、政府は提言も参考に戦略を作って欲しい x)子どもを持つか否かは個人の選択で、目標が独り歩きして出産を強要するような風潮が生まれないようにするのは当然 等と言っても、内容に筋の通らないことが多いのである。 
 具体的には、i)は誤りだ。何故なら、生物は直線的に増えたり減ったりするものではなく、ゆとりが増えれば増加したり、減少速度が落ちたりするものだからだ。そのため、ix)のように、出生率1.26である現在の日本は、人の住んでいる場所が混み合いすぎてゆとりがない結果が出ているとも言える。そのため、ii)も誤りで、iii)の「超高齢社会が続くと対立する」というのは、高齢者福祉と少子化対策を二項対立させることによって政府やメディアが作ったものにすぎない。そして、これまで書いてきたとおり、高齢化が格差や対立の原因ではないし、iv)の過疎状態とvi)の外国人労働者受け入れ拒否は、日本における働き手不足の解決や地球の人口爆発と矛盾している。さらに、家畜ではあるまいし、v) vii) viii)のように、人為的に出生率をコントロールすることなどできないし、やるべきでもない。そして、x)はそのとおりだが、記事の論調全体が外国人労働者や移民を廃した上で、日本国民の出産を強要しているのである。 
 それに対し、*4-2-1のOECDの提言は、人口減の日本で働き手を確保するために、定年廃止、同一労働・同一賃金の徹底、年金の受給開始年齢引き上げ、就労控えを招く税制の見直し等により、高齢者や女性の雇用を促すよう訴えており、働く能力や意欲や価値観が生物年齢や性別によって画一的であるわけではないことから、全く尤もである。

*4-1-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20240111&ng=DGKKZO77563200Q4A110C2EP0000 (日経新聞 2024.1.11) 石川知事、能登地震で補正数兆円要請 政府に
 石川県の馳浩知事は10日の年頭記者会見で、能登半島地震からの復興のため政府に「数兆円規模の補正予算の編成を1カ月以内にお願いしたい」と述べた。能登はアクセスが脆弱な半島で、高齢化率が5割を超える地域もある。「こうした要件も踏まえた補正予算をお願いしたい」と訴えた。3月16日には北陸新幹線の敦賀延伸が控える。「金沢や加賀の観光地、人の交流を絶やすことは考えていない。こうした経済活動を通じても石川県を、能登を支えてほしい」と話した。

*4-1-2:https://digital.asahi.com/articles/DA3S15837104.html (朝日新聞 2024年1月13日) 津波は怖い、でも適地がない 仮設着工、くらし再建のジレンマ 能登地震
 能登半島地震の石川県内の被災地で、生活再建に向けた第一歩として、仮設住宅の建設が始まった。建設用地は津波の浸水想定区域に含まれるものの、県は適地がないとして着工。避難生活のいち早い解消のため、災害リスクのある場所に住み続けざるを得ないジレンマが生じている。珠洲市にある小学校2校のグラウンドで12日、仮設住宅の建設位置を決めるため、杭を打ち込むなどの作業があった。市内では計65戸が1~2カ月後の完成めざして着工されたが、水道や電気をいつ通せるか分からず、入居時期は未定だ。この日、輪島市内でも2カ所で計50戸の建設がスタート。2月上旬以降に完成する見通しで、75歳以上の高齢者や障害のある人を優先して入居させるという。ただ、珠洲市は2カ所とも、輪島市では1カ所が、市のハザードマップで津波の浸水想定区域に入っている。建設する県は11日、「両市とリスクについて相談している」と説明。「浸水区域を避けるとなると実際に土地がない。警戒・避難の体制を充実させるなどの対策を講じる」として着工を決めた。仮設住宅が建設される珠洲市の正院小学校に避難している男性(77)は、1人で暮らしていた自宅が倒壊した。「仮設に入れてもらわんと困るわ。津波は怖い。でも、入れてもらえるだけありがたい」と話す。一方、県内17市町では、建設型の仮設住宅とは別に、自治体が民間の賃貸住宅を最大2年間借り上げて提供する「みなし仮設住宅」の入居希望者の受け付けも始まっている。住宅の再建支援に必要な罹災(りさい)証明書の申請受け付けは、すでに始まっている。珠洲市では9日に罹災証明書の申請受け付けが始まると、住民が朝から列を作った。同市若山町に住む谷内田進さん(65)は、自宅が地震で大きく傾き住めなくなった。「住み慣れた土地を離れたくはない。再建に時間はかかるが、できるだけ早く罹災証明書を発行してほしい」と話す。市によると、市内にある約6千世帯のほぼすべてから罹災証明書の申請があると見込まれ、住民からの申請を待たずに、全世帯を対象に調査を実施する方針だ。輪島朝市で大規模火災が発生した輪島市では、すでに罹災証明書の申請受け付けを始めており、全世帯を対象にした調査に近く着手する。ただ、罹災証明書をいつ発行できるかめどは立っていない。市税務課の担当者は「できる限り早く発行したいが、調査を始めても1カ月ですべて終わらせるのは難しいのではないか」と明かす。被災者の生活再建は、住まいに大きく左右される。早急な住まいの再建のため、自治体はどうすればいいのか。関西大の山崎栄一教授(災害法制)は「被災者生活再建支援制度に基づく最大300万円の支援金に加え、復興基金などを生かし、自治体独自の施策として支援金を出すべきだ」と語った。(小島弘之、宮島昌英、岩本修弥、寺沢知海)
■福祉避難所、開設進まず
 高齢者、障害者、乳幼児、妊産婦、難病患者、医療的ケアを必要とする人など特に配慮が必要な人のための「福祉避難所」の開設が進まず、過酷な状態に置かれている。施設が損壊、人手も物資も足りないのが原因で厳しい状況が続く。朝日新聞の調べでは、福祉避難所の開設数(12日現在)は、石川県七尾市3(予定数は24)▽輪島市4(25)▽珠洲市0(7)▽志賀町2(8)▽穴水町1(3)▽能登町2(5)で、予定の2割弱だ。輪島市は福祉避難所を設置する協定を市内25の高齢者施設などと結び、施設の一部に受け入れる計画を立てていた。また、職員不足の時は他事業所からの派遣などで対応するとしていた。特別養護老人ホーム「あかかみ」も協定を結んだ施設の一つ。人員不足で福祉避難所の開設は難しいと判断した。もともとの利用者が95人。職員約120人も被災し、勤務できるのは70人ほど。それでも、認知症といった事情がある高齢者22人を受け入れた。ほかにも十数人から希望があるが、断らざるを得ない。施設長の森下進さんは「家族らが受け入れ先を探しているが、どこも厳しい」と話す。北陸学院大の田中純一教授(災害社会学)は「平時から少ない職員数でぎりぎりの対応をしている地域。一刻も早く国が広域連携体制をとるべきでスピードの鈍さは否めない」と話す。
■高齢者400人、移送へ 石川県内外の病院や施設に
 能登半島地震で被災した高齢者施設をめぐり、厚生労働省は12日、石川県の4市町の入所者400人以上を県内外の病院や他の施設に移送する計画だと明らかにした。同県のほか、愛知、富山両県への搬送を予定。断水の長期化などで災害関連死の懸念が高まる中、大規模な避難を進める。移送を計画しているのは、石川県輪島市、珠洲市、七尾市、穴水町の10施設で、特別養護老人ホームや有料老人ホーム、認知症グループホームなど。同県2市町の障害者施設でも、二つのグループホームから17人が避難を予定している。400人以上のうち、すでに200人以上の高齢者は自衛隊や災害派遣医療チーム「DMAT」が搬送を終えた。同省によると、移送予定人数は11日夜時点の集計という。

*4-1-3:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20240111&ng=DGKKZO77562860Q4A110C2EP0000 (日経新聞 2024.1.11) 老いるインフラ、地方で放置深刻、修繕必要な橋、6割未着手 脆弱な予算・職員響く
 能登半島地震は道路やダムなどの施設に大きな打撃を与えた。インフラは全国的に老朽化が進み、適切な修繕や補修をしないと災害時のリスクも高まる。予算や人手が足りない市区町村では修繕が必要な橋梁のうち6割が未着手で、地方のインフラ対策は急務だ。国土交通省によると、地震の影響により石川県と富山県を結ぶ幹線の能越自動車道で崩落や段差などが生じて3区間が通行止めとなった。国道も9日時点で、富山や新潟など3県の4路線29区間で路面が陥没するなどして通行が再開されていない。車が走行できずに物流網が寸断され、孤立状態になる地区が相次ぐ。河川やダムにも被害が及んだ。新潟や富山など4県が管理する河川では43水系72河川で護岸の損傷や堤防のひび割れなどが確認された。石川県のダム2カ所も損傷した。大規模な地震で地盤ごと崩れれば新しいインフラでも被害は免れないが、老いた施設ほど危険なことに変わりはない。国交省の調べでは、2040年に建設から半世紀以上が経過する施設は橋梁で75%、港湾で66%、トンネルで53%に上る。インフラは建設後50年が寿命とされる。東洋大の根本祐二教授は「適切な時期に修繕や補修などを実施しなければ、災害リスクが高まる恐れがある」と警告する。とりわけ地方のインフラに危機が忍び寄る。全国点検で修繕が必要と判断されたにもかかわらず、着手できずに放置された施設が多く残るためだ。全国の道路や橋などでは5年に1度の点検が義務化されている。国交省が23年末にまとめた調査によると、政令指定都市を除く市区町村が管理する施設のうち橋梁の60.8%、トンネルの47.4%は修繕していなかった。国管理で未着手なのは橋梁だと37.7%、トンネルだと31.5%で、地方の取り組みの遅れが目立つ。海岸や港湾の一部施設も同じ傾向にある。市区町村の堤防・護岸などで修繕に未着手の割合は85.9%で、国管理の78.4%を上回る。道路施設ほどの開きはないものの、深刻な状況だ。地方自治体で必要な予算や職員を確保できず、インフラを維持管理する体制が脆弱になっていることが背景にある。総務省によると、市町村の歳出で道路や橋などの整備に充てる土木費は21年度に6兆5000億円程度で、ピーク時の1993年度から43%減った。高齢化で社会保障費が膨らみ公共事業に回す余裕がなくなっている。インフラ整備にあたる技術系職員も不足したままだ。市町村のうち全体の25%に相当する437市町村は1人も確保できていない。土木部門の職員数の減少率は市町村全体の職員数の減少よりも大きい。広島県の安芸太田町は技術系職員が数十年にわたりいない。担当者は「募集はしているが応募がない」と話す。専門知識がない事務職員が対応せざるを得なく、外部委託費などでコストがかさんでいるという。政府はインフラの損傷が生じてから手を打つのではなく、その前に修繕する「予防保全」への転換を急いでいる。国交省が所管するインフラを予防保全した場合、2048年度の維持管理・更新費は、事後対応より5割ほど縮減できる見込みだ。公共事業で整備するインフラは学校や公営住宅などの公共施設と、道路や橋などの土木施設が半分ずつを占める。東洋大の根本教授は、公共施設は機能集約や統廃合で予算を削減できると主張する。一方で代替できない土木施設は「財源に余裕あるのならしっかり手当てしていく必要がある」と指摘する。

*4-2-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20240112&ng=DGKKZO77599940S4A110C2EA2000 (日経新聞 2024.1.12) OECD、日本に定年制廃止提言 働き手確保へ女性活躍を
 経済協力開発機構(OECD)は11日、2年に1度の対日経済審査の報告書を公表した。人口が減る日本で働き手を確保するための改革案を提言した。定年の廃止や就労控えを招く税制の見直しで、高齢者や女性の雇用を促すよう訴えた。成長維持に向け、現実を直視した対応が求められる。日本の就業者数は今後、急速に細る。OECDは23年に外国人も含めて6600万人程度と推計した。出生率が足元の水準に近い1.3が続けば、2100年に3200万人に半減する。OECDは高齢者や女性、外国人の就労底上げなどの改革案を実現すれば出生率が1.3でも2100年に4100万人の働き手を確保できると見込む。出生率を政府が目標とする1.8まで改善できれば5200万人超を維持できるという。高齢者向けの具体策では、定年の廃止や同一労働・同一賃金の徹底、年金の受給開始年齢の引き上げを提示した。OECD加盟38カ国のうち、日本と韓国だけが60歳での定年を企業に容認している。米国や欧州の一部は定年を年齢差別として認めていない。日本で定年制が定着した背景には、年功序列や終身雇用を前提とするメンバーシップ型雇用がある。企業は働き手を囲い込むのと引き換えに暗黙の長期雇用を約束することで、一定年齢での定年で世代交代を迫った。職務内容で給与が決まる「ジョブ型雇用」は導入企業が増える傾向にある。岸田文雄首相は23年10月の新しい資本主義実現会議で「ジョブ型雇用の導入などにより、定年制度を廃止した企業も出てきている」と述べた。OECDは年功序列からの脱却などを指摘するが、大企業を中心にメンバーシップ型の雇用は根強い。マティアス・コーマン事務総長は11日の都内での記者会見で「働き続ける意欲が定年制で失われている」と強調した。政府の新しい資本主義実現会議では、高齢者がスキルに見合った待遇を受けられることも念頭に、ジョブ型導入の事例集の作成を急いでいる。定年制の抜本的な見直しについては、政府の公の議論の俎上(そじょう)には載っていない。厚生労働省の22年の調査によると、日本企業の94%が定年を設けている。うち7割が60歳定年だ。政府は65歳までの雇用確保を義務づけ、21年度からは70歳までの就業機会の提供を努力義務にした。パーソル総合研究所の21年の調査では70歳以上まで働き続けたいと希望する60代従業員は4割以上おり、就労意欲がある。働き方が変わる中で、定年の仕組みをどうしていくかの議論が重要な局面になりつつある。報告書は、公的年金を支給する年齢水準についても平均寿命の延びに追いついていないと主張した。現在は65歳となっている標準的な受給開始年齢の引き上げを求めた。同一労働・同一賃金の徹底で、正規と非正規の労働者の待遇格差をなくすことにも言及した。女性の就労促進では年収が一定額を超えると手取りが減る「年収の壁」をなくすよう提起した。女性の働き手に占める非正規の割合は5割と、男性の2割に比べて高い。第3号被保険者や社会保険料控除など、女性の就業調整につながる税制などの抜本的な見直し案を示した。外国人労働者の誘致では差別防止や、高い技能をもつ外国人労働者の配偶者が日本で就労しやすくすることを提案した。働き手の減少は日本の経済力の衰えに直結し、社会保障の維持もいっそう難しくなる。政府や企業は問題を真摯に受け止めて早急に対応する必要がある。

*4-2-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20240111&ng=DGKKZO77563480Q4A110C2EA1000 (日経新聞社説 2024.1.11) 人口危機に立ち向かう戦略策定を急げ
 岸田文雄政権は問題提起をしっかり受け止め、すみやかに行動に移すべきだろう。民間有志による人口戦略会議が公表した人口危機に関する提言のことである。三村明夫・前日本商工会議所会頭を議長とする同会議には、経済界、労働界、学識者などの有志28人が参加。人口減が進むなかで持続可能な社会をつくるための提言をまとめ、2100年を見据えた長期的な国家戦略の策定と推進を首相に求めた。人口動態の基調が変わらない限り、1億2400万人いる日本の人口は2100年には6300万人に半減すると推計されている。あまりにも急激な人口減少に直面する社会や経済、地域がはたして持続可能なのか、多くの国民が不安を抱いているはずだ。ところが今の日本は危機に正面から向き合っていない。人口危機への対策を総合的に議論する場すら政府や国会に存在しないのだ。人口が急激かつ止めどなく減り続けると、社会や経済はひたすら縮小と撤退を強いられる。高齢化率が4割で高止まりする超高齢社会が続き、格差と対立が深刻化。インフラやサービスの機能停止で地方社会は消滅の危機に陥る。提言はこうした縮小と停滞を避けるため、人口減のペースを緩和させ、8000万人の規模で安定させる必要性を訴えた。外国人労働者の受け入れは高技能者に絞りつつ、経済全体の生産性を高める改革によって、2050~2100年に年率0.9%程度の実質国内総生産(GDP)成長率を維持する想定だ。実現するには60年までに合計特殊出生率が2.07に到達する必要がある。そのためには40年ごろまでに出生率が1.6、50年ごろまでに1.8に上昇することが望ましいと分析している。出生率1.26の日本にとって容易ではないが、決して不可能ではないはずだ。政府は提言も参考に戦略をつくってほしい。子どもを持つかは個人の選択であり、目標が独り歩きして出産を強要するような風潮が生まれないようにするのは当然のことだ。人口危機に立ち向かう戦略は政官民が問題意識を共有して、長期間にわたって粘り強く推進する必要がある。政府は戦略の立案・推進体制を整え、国会議員は政争の具とせずに超党派で法制化するべきだ。民間や地域も含め、国民的な議論を深めるときだ。

<活断層の長期評価と住民の安全>
PS(2024/1/18追加):*5-1は、①M7.6の能登半島地震の震源となった断層は未知のものではなく、政府有識者検討会が2014年に公表した活断層だった ②政府の地震調査委員会もこの断層を把握していたが、「長期評価」をせず広く周知されていなかった ③少なくとも異なる三つの断層がずれ動き、既知の活断層がずれて周辺の地盤が破壊された可能性が高い ④能登半島沖は産業技術総合研究所の調査で珠洲沖や輪島沖などに数十キロにわたる複数の断層が見つかり、北陸電力志賀原発の安全性を巡る評価で考慮されるなど専門家の間では知られていた ⑤政府の地震調査委は「調査には時間が必要」とする ⑥能登半島地震が既知の海底活断層で起きたのなら、地震調査委員会は存在を把握しながら危険性を地域住民に伝えていなかった としている。
 このうち①②③は、M7.6の能登半島地震が起きた後で、「政府有識者検討会が2014年に公表した活断層だった」「地震調査委員会もこの断層を把握していたが、『長期評価』をせず広く周知させていなかった」などとしている点が、危機管理の基本(最悪の事態に備えること)を忘れている。また、⑤⑥について、政府の地震調査委は「調査には時間が必要」ともしているが、阪神大震災から29年も経っているのに海底活断層が未調査(安全であることも確認されていない)というのは悠長すぎ、未調査なら最悪の事態に備えて原発立地や使用済核燃料の保管も止めるべきだ。その上、④については、「産業技術総合研究所の調査で珠洲沖や輪島沖などに数十キロにわたる複数の断層が見つかり、北陸電力志賀原発の安全性を巡る評価で考慮されるなど専門家の間では知られていた」としているが、*5-4のように、志賀原発は能登半島地震で、i)使用済核燃料プールの水がこぼれた(激しい地震で燃料プールの水がこぼれるのは自然だが、プールに罅は入っていないか?) ii)冷却ポンプも一時止まった iii)外部電源を受ける変圧器が損傷して油が漏れた iv)周辺に自治体や国が設けた放射線量測定設備の一部でデータが送れなくなった v)北陸電力は、地震による津波の影響を「敷地内に海水を引き込んでいる水槽の水位変動は確認できなかった」としていたが、実際には約3メートル上昇していた vi)変圧器から漏れた油の量も最初の発表の5倍以上だった vii)2016年に有識者会合が「敷地内の断層は活断層と解釈するのが合理的」と評価したが、北電の反論で原子力規制委員会が同社の見解を認めていた などの事実があり、北電は活断層や地震・津波のリスクをできるだけ小さく見せようとしていることがわかるのだ。そして、これは、確かに全国の原発に共通する問題である。
 また、*5-2は、⑥政府や石川県は、能登半島地震で震源となった海底活断層を地震動の予測に反映していなかった ⑦海底活断層の影響は他の地域でも殆ど反映されていない ⑧能登半島の北の海底を沿うように走る「F43」「F42」を含む海底活断層は、国土交通省が東日本大震災を受けて平成26年にまとめた報告書等に取り上げられ津波のリスク想定に活用されてきたが、政府の地震調査委員会の「地震動予測地図」には加味されなかった ⑨海底活断層は「陸上に強い揺れをもたらすものではない」というイメージが一部にあり、従来の予測に殆ど反映されなかった ⑩周辺の海底活断層が予測に反映されていないケースは他にもあり、例えば新潟県・佐渡も周辺に海底活断層が集中しているが、地震調査委の長期評価の対象になっておらず、地震動予測にも反映されていない としているが、⑥~⑩のように、海底活断層は地震動の予測に反映せず、国土交通省が東日本大震災後の報告書で津波のリスク想定に活用しても政府の地震調査委は「地震動予測地図」には加味しなかったというのは、非科学的である上、根拠もなく住民を安心させ、何の準備もしていなかった点で、故意か業務上過失致死罪にあたりそうだ。そのため、こういうところも厳しくすべきである。
 さらに、*5-3は、⑪能登半島地震は半島沖の活断層によって引き起こされた ⑫活断層は1995年の阪神大震災で広く知られるようになり、政府の地震調査研究推進本部ができるなど調査・研究体制の整備が進んだ ⑬海域の活断層が起こす地震の切迫度等に関する評価は陸域の後回しとなり、警戒感が高まらないうちに今回の地震が起きた ⑭能登半島沖の活断層は2007年の能登半島地震を機に調査が進み、複数の断層が計100km以上にわたって延びているとの研究成果もあったが、「長期評価」は陸域の活断層から進めて海域はわずかで順番にやっている最中だった ⑮海域の活断層の評価は2022年に公表した日本海南西部(九州、中国地方の北方沖)のみ ⑯地震本部が公表した2020年から30年間に震度6弱以上の揺れに見舞われる確率を示した「地震動予測地図」では、関東から四国地方にかけての太平洋側が26%以上で能登半島は3%程度 ⑰(作成時に)能登半島沖に活断層があるという情報が入っていないので結果的に評価が低くなった可能性 等としている。
 このうち、⑪⑫は事実だろうが、⑬は根拠もなく「海域の活断層が起こす地震の切迫度は低い」としている点で非科学的すぎる。また、⑭の「順番にやっている最中だった」というのも、能登半島の地震の「2018年頃から地殻内地震が増加傾向、2020年12月から地震活動が活発化、2023年5月頃からさらに活発化、2024年1月1日のM7.6の地震」という経過から見て、優先順位が高かった筈だし、評価順や評価速度に関するアドバイスをするのも地震学者の責任であろう。さらに、⑯の地震本部が公表した「地震動予測地図」では、関東から四国地方にかけての太平洋側が26%以上で能登半島は3%程度であり、⑰のように、作成時に能登半島沖に活断層があるという情報が入っていなかったというのは不完全すぎる。そのため、⑮の2022年公表の日本海南西部海域活断層評価も、意図的に不完全なのではないかと思われるわけである。


   国土地理院   2022.3.25地震本部      2024.1.15産経新聞

(図の説明:ユーラシア大陸の一部だった日本列島が大陸から切り離されて日本海ができ、瀬戸内海もできていった経緯を考えれば、海底にも無数の断層があり、その断層が陸地の断層と同じく火山や地震の源となることは容易に想像できる。そして、現在も、日本列島は、左図のように、時々刻々と動いているため、歪みの溜まった地域で歪みが修正される際に地震が起こるのだ。そのような中、中央の図の日本海側の活断層は異常に少なく表示されている上、四国電力伊方原発付近の断層は説明書きで見えない。さらに、右図のように、海底の活断層が起こす地震のリスクが無視されていたのは、地球表面のでき方に関する活きた研究材料が身近にあるにもかかわらず、非科学的すぎる)

*5-1:https://www.tokyo-np.co.jp/article/302805 (東京新聞 2024年1月15日) M7.6は「想定されていた」 能登半島地震の活断層は「未知」でもなかった? 周知や対策は
 最大震度7、マグニチュード(M)7.6を観測した能登半島地震。震源となった断層(震源断層)は未知のものではなく、政府の有識者検討会が2014年に公表した活断層だったとの見方が専門家の間で有力になってきた。政府の地震調査委員会もこの断層を把握していたが、地震の切迫度などを調べる「長期評価」をしておらず、広く周知されていなかった。
*長期評価 活断層で発生する地震やプレートの境界で起きる海溝型地震を対象に、地震の規模や「30年以内に何%」といった発生確率を予測。政府の地震調査委員会が検討し、現在114の主要活断層や6地域の海溝型地震などについて発表している。南海トラフ地震だけ他の地震と確率を出す計算方法が異なり、地震学者らから「水増し」の問題が指摘されている。
◆政府の地震調査委「調査に時間が必要」
 「99%、調べていた断層が動いたと言える」。今回の地震について、東北大の遠田(とおだ)晋次教授(地震地質学)は語る。筑波大の八木勇治教授(地震学)も地震計のデータ解析から「少なくとも異なる三つの断層がずれ動いた。既知の活断層がずれて、周辺の地盤が破壊された可能性が高い」と話す。地震調査委は震源断層は約150キロとするが、既知の断層だったかは「調査に時間が必要」としている。能登半島沖は、産業技術総合研究所の調査で珠洲(すず)沖や輪島沖などに数十キロにわたる複数の断層が見つかり、北陸電力志賀原発(石川県志賀町)の安全性を巡る評価で考慮されるなど専門家の間では知られていた。
◆地震起きたら「M7.6になる」との想定が現実に
 政府の有識者検討会は13〜14年、日本海側全体の海底活断層を調査。海底地形のデータなどから60カ所について、活断層が動いた場合に起こる地震や津波の程度を予測する「断層モデル」をつくり、公表した。今回の震源域には「F42」「F43」という断層モデルがあり、1日の本震後に起きた余震の震源域とほぼ重なる。検討会は、F43で地震が起きた場合はM7.6になると想定していた。地震調査委が発表する主要な活断層の「長期評価」は当初、陸域の活断層に限っていた。17年からは海底活断層も加えて調査している。評価を終えたのは九州・中国地方北方沖のみ。能登半島沖は評価に向けた検討が始まったばかりで、強い地震に遭う確率を色別で示した「全国地震動予測地図」に反映されていない。地震調査委の平田直(なおし)委員長は2日の会見で「もう少し早くに(海域の活断層の)評価をやるべきだった。残念だ」と語っていた。
◆記者解説 住民にとっては「ノーマーク」再び
 政府の地震調査委員会が所属する地震調査研究推進本部は、1995年の阪神淡路大震災の反省から設けられた。神戸周辺の活断層の存在は専門家の間では知られ、地震が懸念されていたが、地元自治体の対策が不十分で、住民にも危険性が伝わっていなかった。能登半島地震が既知の海底活断層で起きたとすれば、調査委は存在を把握しながらも、危険性を地域住民にしっかり知らせることができておらず、反省が生かされたとはいいがたい。日本の沿岸全体で海底活断層の評価が終わるまでには、まだまだ時間がかかる。その間は調査委の情報として周知されず、住民にとっても「ノーマーク」となるリスクをはらむ。調査委が中間評価という形でも、どこに活断層があるかを広く知らせることは急務だ。

*5-2:https://www.sankei.com/article/20240115-XDJ3IXFKTZIGBPAZ5MKBVXJSBM/ (産経新聞 2024/1/15) 見過ごされた海底活断層「F43」のリスク 同種地震の予測にも課題
 最大震度7の強い揺れが観測された能登半島地震で震源となったとみられる2本の海底活断層について、政府や石川県が地震動(地震による強い揺れ)の予測に反映していなかったことが15日、分かった。県の被害想定や対策にも影響した可能性がある。海底活断層の影響は他の地域でもほとんど反映されておらず、専門家は早急な対応を求めている。《冬の夕刻、能登半島北方沖を震源とした地震が発生する》。石川県の「地域防災計画」に挙げられた大地震のシナリオの一つは、今回の地震とよく似ている。だが、被害の想定は実際よりもかなり小さい。県は「ごく局地的な災害」として、死者7人、負傷者数211人と予測していたが、実際の能登半島地震では15日時点で222人の死亡が確認され、千人以上が負傷した。東北大災害科学国際研究所の遠田晋次教授によると、この想定には、実際に震源になったとみられる海底活断層が考慮されていなかった。能登半島の北の海底を沿うように走る「F43」「F42」と呼ばれる2本の海底活断層。F43を震源とする地震は、事前に予想された規模もマグニチュード7・6と、今回の地震におおむね合致する。これら2本を含む海底活断層は、国土交通省が東日本大震災を受けて平成26年にまとめた報告書などに取り上げられ、津波のリスク想定に活用されてきた。だが、全国の地震による揺れを予測・分析する政府の地震調査委員会の「地震動予測地図」には加味されなかった。海底の活断層については、「陸上に強い揺れをもたらすものではない、というイメージが一部にあった」(遠田氏)といい、従来の予測にはほとんど反映されてこなかったという。周辺の海底活断層が予測に反映されていないケースはほかにもある。例えば新潟県・佐渡も周辺に海底活断層が集中しているが、地震調査委の長期評価の対象になっておらず、地震動予測にも反映されていない。遠田氏は「このままでは、同じことがまた起きてしまう。早急に取り組むべきだ」と指摘する。地震調査委は平成29年4月、海底の活断層について将来の地震発生確率を評価するための分科会を設置。令和4年、日本海南西部(九州・中国地方沖)側の海域活断層についての長期評価が公表された。だが、他の地域は未公表のままだ。産業技術総合研究所名誉リサーチャーの岡村行信氏によると、海底活断層は掘削による調査が難しく、活動周期や最終活動時期といった地震予測に必要な情報の信頼性が陸上の活断層に比べ落ちるといったハードルもある。ただ、岡村氏は「難しいが、不可能な話ではない。海底の活断層も当然、予測に組み込むべきだ」と強調した。

*5-3:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/1178396 (佐賀新聞 2024/1/17) 【活断層評価】阪神で注目も海域後回し、能登地震前、警戒高まらず
 能登半島地震は、半島沖に延びる活断層によって引き起こされた。活断層は1995年の阪神大震災で一般に広く知られるようになり、政府の地震調査研究推進本部(地震本部)ができるなど調査、研究体制の整備が進んだ。だが海域の活断層が起こす地震の切迫度などに関する評価は陸域の後回しとなり、警戒感が高まらないうちに今回の地震が起きた。専門家からは「後手に回った感は否めない。早急に進めなければ」との声も上がる。
▽悔い
 「ノーマークではなかったというところが、非常に悔いが残る」。政府の地震調査委員会のメンバーでもある西村卓也京都大教授(測地学)は、こう漏らした。能登半島沖の活断層は、2007年の能登半島地震を機に調査が進み、複数の断層が計100キロ以上にわたって延びているとの研究成果もあった。しかし、地震の規模や発生確率を予測する地震本部の「長期評価」は、陸域にある活断層の評価から進めており、海域の評価はわずかだ。西村氏は「研究者によっては(海域の活断層に)非常に問題意識を持っていたと思うが、順番にやっている最中だった」と話す。
▽批判
 都市直下で起きた地震で多くの被害を出した阪神大震災を機に、活断層の怖さが広まった。研究者は震災以前から活断層に注目していたものの、その危険性が住民に伝わっていなかった。予知に主眼を置いたそれまでの対策にも批判が集まり、調査研究を防災に生かすことを狙いに地震本部は発足した。地震本部はこれまで、主に陸域にある114カ所の「主要活断層帯」と、東日本大震災を引き起こした日本海溝沿いや南海トラフ、相模トラフなど各地の海溝型地震の長期評価を公表。一方、海域の活断層の評価は22年に公表した日本海南西部(九州、中国地方の北方沖)のみだ。
▽先手
 地震本部が公表している、2020年から30年間に震度6弱以上の揺れに見舞われる確率を示した「地震動予測地図」。関東から四国地方にかけての太平洋側が26%以上となっているのに対し、能登半島は3%程度だ。「(作成時に)能登半島沖に活断層があるという情報が入っていないので結果的に評価が低くなった可能性がある」(西村氏)。東日本大震災を受け、プレート境界で起こる海溝型地震に目が向きがちだったと指摘する専門家もいる。日本海側の津波防災に向け、海域の活断層を評価した国土交通省の調査検討会は、能登半島沖に今回の震源とほぼ一致する活断層のモデルを想定していた。東北大の遠田晋次教授(地震地質学)は「津波想定としては良かったが、地震による揺れの予測に用いていなかったのは反省すべき点だ」と話す。遠田氏は「何かが起こるたびにそれが注目されるというのを繰り返している。自然は不意を突いてくるので、先手先手でやっていかなければならない」と強調。「新幹線の線路やビルの真下で活断層がずれることによる被害など、過去に起きたことがないことも想定して対策を検討しなければいけない」と警鐘を鳴らした。

*5-4:https://digital.asahi.com/articles/DA3S15840955.html (朝日新聞社説 2024年1月18日) 地震と原発 幅広い視点で教訓導け
 能登半島地震は、原子力防災にも多くの課題を突きつけた。電力会社や政府、自治体は幅広い視野で検証し、何が教訓か考える必要がある。北陸電力志賀原発では、使用済み燃料プールの水がこぼれ、冷却ポンプも一時止まった。外部電源を受ける変圧器が損傷し、油が漏れた。周辺に自治体や国が設けている放射線量の測定設備の一部は、データが送れなくなった。いずれも原因や影響を詳細に調べなければならない。地震による津波の影響について、北陸電力は当初、敷地内に海水を引き込んでいる水槽の「水位変動は確認できなかった」としていたが、約3メートル上昇していた。変圧器から漏れた油の量も最初の発表の5倍以上だった。相次ぐ訂正に、経済産業省から正確な情報発信を指示された。慎重になるあまり発表が遅れてはならないが、誤情報は住民に不安を与え、被害の過小評価は重大な結果を招きかねない。他の電力会社も含め、教訓にすべきだろう。志賀原発は、敷地内の断層の評価をめぐり、2号機の再稼働の審査が長引いている。2016年に有識者会合が「活断層と解釈するのが合理的」と評価したが、北陸電力が反論し、原子力規制委員会が昨年、同社の見解を認めたところだった。一方、規制委は10日に、今回の地震の知見を収集するよう原子力規制庁に指示した。地震の審査を担当する委員は「いくつかの断層が連動して動いている可能性がある。専門家の研究をフォローし、審査にいかす必要がある」と発言しており、丁寧な分析と検討が求められる。活断層や地震の連動、揺れの想定や施設への影響など、今回の地震が浮き彫りにした課題は、志賀原発にとどまらず全国の原発に多かれ少なかれ共通する。今回の震源の近くには、かつて珠洲原発の立地も検討されていた。教訓を引き出し、規制や防災に役立てなければならない。今回の地震では、道路の寸断による半島の孤立も改めて問題になった。四国電力伊方原発や東北電力女川原発なども半島にある。原発事故が起きた場合に、避難や救援を妨げかねない。家屋の激しい損壊状況をみれば、放射線を避けるための屋内避難もできない恐れがある。規制委は原子力災害対策指針の見直しを検討するというが、緊急対応や避難対策の課題を掘り下げてほしい。地震大国での原発のリスクが、改めてあらわになった。政府は、原発の活用に前のめりの姿勢を改めるべきだ。

<地盤隆起で漁港が消えても、土地の使い道はありそう>
PS(2024年1月20日追加):*6-1・*6-2のように、能登半島地震による地盤隆起で輪島市の黒島漁港では漁港内の海水がなくなって海岸線が波消ブロックより沖に移動し、大沢漁港では水の引いた港内に漁船が残され、鹿磯漁港では約4mの隆起を確認するなど、石川県内の15港で隆起が確認され、能登半島周辺のこの6000年間で最大規模の隆起の可能性があって、海底の断層はもしかしたら6~7mのずれができているかもしれないのだそうだ。しかし、隆起すれば土地が増えるため、道路を4車線にできたり、海抜0m地帯で養殖(例:エビ・カニ・ウ二etc.)をできたりなど、復旧するよりもできた土地を利用した方が良いと思われる。漁港は海に面した先の方に造り直せばよいし、隆起の状況やそれに関する説明も観光資源になると思われる。

  
2024.1.16LivedoorNews   2024.1.12TV朝日      2024.1.16Yahoo

(図の説明:左図は、漁港が完全に陸地となった黒島漁港だが、できた空き地を利用して道路を4車線に拡幅したり、養殖池を作ったりできそうだ。中央の図は、約4mの隆起を確認した鹿磯漁港だが、漁船はひどく壊れているようには見えない。また、右図が能登半島における地面の隆起だが、能登半島はこのような隆起の繰り返しでできた半島なのだそうだ)

*6-1:https://news.livedoor.com/article/detail/25709868/ (LivedoorNews 2024.1.16) 海が消えた漁港、沖に移動した海岸線 能登上空から見た地盤隆起
 能登半島地震による地盤の隆起で、石川県輪島市や珠洲市の漁港に大きな被害が出ている。上空から輪島市門前町黒島町の海岸を見ると、黒島漁港の中には海水がなくなり、海岸線は消波ブロックよりも沖合にあった。同市大沢町の大沢漁港では、水の引いた港内に漁船が残されていた。県によると、15日現在で県内の8割を超える58の漁港に地震による被害が出ており、そのうち15港で隆起が確認されている。漁船172隻以上が転覆したり、海に流出したりした。

*6-2:https://news.yahoo.co.jp/articles/223644639f0d636fdbc26fb813a4880e305bcc8d (Yahoo、テレビ朝日 2024/1/16) 能登半島地震で起きた地面隆起 6000年間で最大か
 能登半島地震で起きた地面の隆起が、能登半島周辺では、およそ6000年の間で最も大規模だった可能性があることが現地調査で分かりました。
○産業技術総合研究所 地質調査総合センター 宍倉正展グループ長
「過去6000年間の3回と比べても今回の地震の4メートルという隆起は最も大きいものであった可能性があります」
 産業技術総合研究所の宍倉正展グループ長らは、8日に、輪島市の鹿磯漁港で調査を行い、およそ4メートルの隆起を確認しました。地震が起きると浅い海底が隆起し、階段状の地形を作ります。去年までの調査で、輪島市の海岸ではおよそ6000年の間に出来たとみられる3段の階段状の地形が確認されていましたが、いずれも隆起の規模は2、3メートル程度でした。今回の地震でできた4段目の隆起量が最も大きい可能性があるということです。
○産業技術総合研究所 地質調査総合センター 宍倉正展グループ長
「海岸の隆起という現象を30年余り研究してますけれども、非常に私も驚きました。沖合で海底の断層がもしかしたら(さらに大きい)6メートル7メートルといったずれができているのかもしれない。それが海岸に反映されると4メートルぐらいになってるのかもしれないと想像してますね」
 宍倉氏は、今後も能登半島北岸の状況を確認して、今回の隆起の全体像を明らかにしたいとしています。

<政治資金規制法改革のポイント>
PS(2024年1月21、22日追加):*7-1は、①派閥の政治資金収支報告書は専門職による監査制度の対象外 ②派閥の代表者に政治家が就く必要もない ③透明性を高めるルール見直しが必要 ④派閥は「その他の政治団体」に分類 ⑤「その他の政治団体」で会計ルールが最も厳格なのは国会議員関係政治団体で人件費を除く1万円超の経費の領収書提出が必要で、第三者の会計監査を受ける義務もある ⑥監査制度は2006~07年に発覚した「事務所費問題」を契機に2009年分国会議員の収支報告書から導入 ⑦(登録政治資金)監査人は公認会計士・税理士・弁護士といった専門職 ⑧政治家が代表を務める資金管理団体は次に厳格な収支報告を求められ、人件費を除く5万円以上の全ての経費について2008年分から領収書添付が義務 ⑨派閥の政治団体は収支報告書では5万円未満の経費の領収書提出は不要で、監査を受ける義務もない ⑩政治団体代表は政治家である必要がなく、安倍派と二階派は事務局職員が代表で会計責任者 ⑪政治資金規正法には収支報告書に不記載・虚偽記入といった問題があった場合、政治団体の代表者の責任を問う規定がある ⑫日大の岩井名誉教授は「トップに事務員を置けば政治家はさらに追及されにくくなる」と指摘 等としている。また、*7-2は、⑬自民党派閥の政治資金パーティー事件は、第三者が政治団体の収支を点検する体制の脆弱さを浮き彫りにした ⑭米英は一定の調査権限を持つ独立機関を抱えるが、日本では権限の弱い監査人による支出のチェックに留まる ⑮自民党刷新本部は、派閥の在り方と政治資金の透明化がテーマ ⑯2007年に「国会議員関係政治団体」として届けられた政治団体を第三者が監査する「登録政治資金監査人」制度が生まれたが、対象は国会議員が代表の政党支部や資金管理団体等に限られ、支出の整合性のチェックが主な業務で、収入のチェックは義務付けられていない ⑰米国は政治資金の流れを「連邦選挙委員会」と呼ばれる独立機関が監視し、政治資金収支報告書の提出後、48時間以内にインターネットで公表する ⑱神奈川大の大川教授は「監査対象の団体や項目を増やすとともに、中長期的には強い第三者性を帯びた組織を整えるべきだ」と話した としている。
 論点をまとめると、①③④⑤⑥⑦⑧⑨⑪⑬⑭⑮⑯は、「政治資金収支報告書のうち監査対象となる範囲」で、現在は国会議員関係の政治団体だけが対象だが、公金の流れるところに監査は必要なのである。そのため、国会議員だけでなく、地方議員や派閥の政治資金収支報告書にも登録政治資金監査人の監査は必要だ。また、有効な監査をするには、網羅性・検証可能性のある複式簿記を用いた会計処理を行い、外部監査人が適正と判断すれば連帯責任を持つ方式にすべきで、そうすれば監査人は代表者に「虚偽記載はしていない」という確認書をもらうため、代表者は監査人にも責任を負うと同時に、適正意見を得ている限りは粗探しによるバッシングから守られる。つまり、改善に必要なのは、適切な会計基準と監査基準なのである。
 また、②⑩のように、派閥の代表者に政治家が就いていない場合、代表者でも会計責任者でもなければ責任追及できないためよく考えたと思うが、⑫のように、「政治家の責任が軽すぎる」とか「連座制にすべき」という主張もある。ただ、私も公認会計士なので「83会」の会計責任者をしていたが、同じく公認会計士の政策秘書に任せて83会の会計は殆ど見ていない。一般の民間企業では、社長より経理部長の方が会計に詳しく、社長が経理ばかりしていれば会社は伸びないのと同様、代表が会計責任者より経理に詳しいわけではないため、不意を突くような非難や責任追及は避けるべきである。そのため、会計責任者が責任を持ち、登録政治資金監査人が政治家に虚偽記載の有無について確認書をとって注意喚起しながら監査をすればよいと思われる。
 さらに、⑭⑰⑱は、「米英は一定の調査権限を持つ独立機関を抱え、日本では権限の弱い監査人による支出のチェックに留まる」「中長期的には強い第三者性を帯びた組織を整えるべきだ」としているが、外部監査人の権限は、会計基準と監査基準を変更すれば強くなる。むしろ、日本で政治家の監査だけを行なう独立機関を作れば、他の業種を知らずに政治の世界だけ見てきた監査人が殆どになるため、政治の世界の出来事が当たり前になって、会計検査院と同様、重要な異常性に気づかなくなるだろう。

    
2023.12.18読売新聞 2024.1.15静岡新聞 2012.2.13日経新聞 2017.6.2日経新聞

(図の説明:国会議員関係の政治団体は、1番左の図のように、提出前に公認会計士・税理士・弁護士等の登録監査人の監査を受けて政治資金収支報告書を提出する。しかし、左から2番目の図のように、網羅性・検証可能性のない単式簿記会計を使用し、かつ、収入は監査の対象外という状況であるため、複式簿記による会計を使用して通常の外部監査を行なえば総務省の調査は不要である。ただし、公表時期も、民間企業や他国と比較してあまりに遅い。なお、右から2番目の図のように、日本は人口100万人あたりの国会議員の数が少なく、1番右の図のように、議員1人あたりの公設秘書数も少ないため、議員1人あたりの公設秘書数を増やし、議員が「寄付集め」に翻弄されずに調査や政策立案に専念できる状態を作った方が国益のためになると思う)

    
   2024.1.19静岡新聞          2023.12.13日テレ

(図の説明:左図の政治資金規正法違反事件は、ノルマ超過分を環流したりプールしたりしたことが問題なのではなく、派閥と議員側がノルマ超過分を政治資金収支報告書に記載しなかったことが問題なのである。また、パーティー等で寄付を集めなければならない理由は、右図のように私設秘書の給料や政治活動費を捻出する必要があるからで、まるで金を横領しているかのように言って国会議員を叩いても、《理由を長くは書かないが》本当の民主主義は達成できない)

*7-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20231226&ng=DGKKZO77259570V21C23A2CM0000 (日経新聞 2023.12.26) 派閥資金、報告制度に緩さ、会計、外部監査不要 代表は政治家に限らず
 自民党派閥の政治資金規正法違反事件は、派閥の会計処理へ監視が届きにくく責任も曖昧な実態を浮き彫りにした。派閥の収支報告書は専門職による監査制度の対象外で、収支報告に一定の責任を負う代表者に政治家が就く必要もない。裏金づくりの慣例は長年表面化しなかった。透明性を高めるためのルール見直しが求められる。政治資金規正法は政治上の主張を行ったり、公職の候補者を支持したりする団体を政治団体と規定する。「政党・政党支部」、政党の資金援助を目的とする「政治資金団体」、「その他の政治団体」の3つに大別される。派閥は政策研究のためにつくられた集団という位置づけで、議員の後援会などと同様にその他の政治団体に分類される。ある議員秘書は「派閥団体は政治資金の処理を巡る規制があまり厳しくない部類に属する」と話す。その他の政治団体のうち、会計ルールが最も厳格なのは国会議員関係政治団体だ。代表者が議員だったり、特定候補者を支援したりする団体が該当する。人件費を除く1万円超の経費について領収書の提出が必要で、第三者の会計監査を受ける義務もある。監査制度は2006~07年に相次いで発覚した「事務所費問題」を契機に、国会議員との関わりの深い団体の資金の透明化を図る狙いで09年分の収支報告から導入された。監査人は一般的に、公認会計士や税理士といった専門職が務める。政治家が代表を務める資金管理団体は次いで厳格な収支報告を求められている。人件費を除く5万円以上の全ての経費について、08年分から領収書の添付が義務となった。資金管理団体の多くは国会議員関係政治団体にも重複して区分されている。派閥の政治団体は特定の議員とつながりが深いとはみなされず、いずれにも該当しない。収支報告では5万円未満の経費の領収書の提出は不要で、監査を受ける義務もない。収支報告の精密さと使途の公開を巡るルールは比較的緩い。派閥は領袖の名前を冠して安倍派(清和政策研究会)などと呼ばれる一方、政治団体の代表は必ずしも政治家である必要はない。家宅捜索を受けた安倍派と二階派(志帥会)の代表は事務局職員だ。2派閥では会計責任者も同じ人物が務めている。規正法には収支報告書に不記載・虚偽記入といった問題があった場合、政治団体の代表者の責任を問う規定がある。会計責任者の選任・監督で相当の注意を怠ったと認定されれば50万円以下の罰金が科される。代表者と会計責任者の兼務は法令上問題ない一方、代表者に選任・監督責任を問う条項は適用されない。日本大の岩井奉信名誉教授(政治学)は「代表者の責任を定めた規定は形骸化している。トップに事務員を置けば政治家はさらに追及されにくくなる」と指摘する。安倍派ではパーティー収入のノルマ超過分を議員に還流させ、派閥・議員側の収支報告書に記載しない運用が続いていた。裏金は18~22年の5年間に約5億円に上る。同派の裏金は東京地検特捜部の捜査を通じて初めて発覚した。規正法は「政治とカネ」の問題が起きるたびに改正を繰り返してきた。総務省によると、規制内容の修正を伴う改正は1990年代以降で8回あった。岩井名誉教授は「規正法は問題が起きるたび対症療法で改正を繰り返してきたが、『抜け道』はなお多い。改正にあたっては第三者機関を設けその意見を反映させるなど、外部の視点を取り入れた抜本的な見直しが必要だ」と話した。

*7-2:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/1177300 (佐賀新聞 2024/1/15) 【政治資金規正法】緩い監視体制、浮き彫りに、米英には独立の調査機関
 自民党派閥の政治資金パーティーを巡る事件は、第三者が政治団体の収支を点検する体制の脆弱さも浮き彫りにした。米英は一定の調査権限を持つ独立機関を抱えるが、日本では権限の弱い監査人による支出のチェックにとどまる。識者は監視の緩さを指摘し、欧米のような見張り役の必要性を訴える。
▽抜け穴
 「国民から疑念の目が注がれ、極めて深刻だ」。11日に自民党本部で開かれた「政治刷新本部」の初会合で、本部長を務める岸田文雄首相が危機感をあらわにした。刷新本部は派閥の在り方のルール策定を主要議題に据える。政治資金の透明化もテーマで(1)パーティー券購入者の公開基準を現行の「20万円超」から引き下げ(2)銀行振り込みの導入(3)違反者への厳罰化を見据えた政治資金規正法改正―といった案が浮上。ただ既に幅広い意見が混在し、着地点は見いだせない。野党からは「全く期待できない」「新たな抜け穴づくりをするだけ」と厳しい声が飛ぶ。
▽片側
 現行の規正法は、政治資金の流れを外部から把握できる仕組みが十分でない点も問題とされている。閣僚らによる不透明な事務所費問題を受け、2007年、「国会議員関係政治団体」として届けられた政治団体を第三者が監査する制度が生まれた。「登録政治資金監査人」と呼ばれる税理士や公認会計士が点検する仕組みだが、対象は国会議員が代表の政党支部や資金管理団体などに限られ、派閥は対象外。加えて、支出の整合性のチェックが主な業務で、収入のチェックまでは義務付けられていない。ある元衆院議員は「収入の不記載に気づくことができない。片側しかチェックしない、中途半端な制度だ」と批判する。
▽網
 米国では、政治資金の流れを「連邦選挙委員会」と呼ばれる独立機関が監視する。違法と疑われる行為が確認されれば、当事者への聴取や現地調査を通じて情報を収集。行政罰としての過料を科すこともできる。情報開示のスピードにも格段の差がある。日本では各年の政治資金収支報告書が翌年の秋に公開されるのが一般的だが、米国では提出を受けてから48時間以内にインターネットで公表される。国会図書館の資料などによると、英国では政府から独立した「選挙委員会」が政治資金の流れをチェックする。違法行為を察知した際には調査を実施。捜査機関への情報提供も認められている。神奈川大の大川千寿教授(政治学)は「日本の制度は緩い。監査対象の団体や項目を増やして網を広げるとともに、中長期的には強い第三者性を帯びた組織を整えるべきだ」と話した。

PS(2024年1月25日追加):*8-1は、①多くの被災者が避難所暮らしの中、政府は生活再建・インフラ復旧政策を纏めるが、過去の災害で巨額の公費が地域再生に直結しなかった例もある ②人口減時代の地震大国・日本の復興のあり方を探る ③政府の支援パッケージは、i)) 避難所などの環境改善や住まいの確保など生活再建 ii) 中小、農林業、観光業など生業再建 iii) インフラなどの災害復旧が柱 ④被害額は暫定2兆625億円で東日本大震災(16.9兆円)・阪神大震災(9.6兆円)に次ぐ ⑤国が巨額予算で復興を後押しして有効活用されたと言い難い事例は、東日本大震災後に計4600億円以上を投じた「土地区画整理事業」で津波被災の土地をかさ上げして整備したが、大規模工事に時間がかかり多くの人が故郷を離れて21市町村で28%に当たる282haの土地が未利用 ⑥「元通り」にした地域も人口減が止まらない ⑦国立社会保障・人口問題研究所の推計では2070年の日本の人口は8700万人で、災害前の姿を前提に復興を進めるべきか問われる としている。
 ①②は⑦を考慮すれば尤もで、地震・津波・雪・豪雨災害の多い地域に住む人は、何度も被災したり、避難生活をしたりしなくてよいよう、安全な場所に引っ越した方がお互いのためである。また、④のように、災害が大きいため白紙の土地となり、復興にも巨額の予算を投じることができる場合は、国・地方自治体は「復旧(災害前の状態に戻すこと)」にこだわることなく、この機会に今後の土地利用計画を示し、将来に向けて模範的・合理的な工事を進めるべきで、そうすれば戻って来る人も、他の地域から移住してくる人も増える筈である。にもかかわらず、⑤の「土地区画整理事業」による津波被災地のかさ上げは、陸前高田市のかさ上げ地のように、かさ上げ高が襲った津波の高さに達しないため多額の金を投じても危険性は除去されず、大きな無駄使いになってしまったのだ。さらに、⑥のように、「元通り」にすれば危険性は全く除去できないため、戻る人が少なく人口減になるのは当然である。
 また、*8-2は、⑧2020年7月の豪雨で実施された「なりわい再建支援事業」を基に中小企業の施設・設備の復旧に1件最大15億円補助する ⑨被災自治体の企業が対象で工場・店舗・生産機械等を復旧させる場合に費用の3/4を補助する ⑩輪島塗など地域の伝統産業の事業再開を後押しするため、災害支援枠を設けて需要開拓・新商品開発・人材育成に助成する ⑪アーケードや街路灯の復旧など商店街の再生も支援する ⑫観光支援は新潟県を含む北陸地方への宿泊費やツアー代金の一部を公費で負担する ⑬心のケアセンターを新設して近親者を亡くしたり、トラウマや孤独を抱えたりした人をケアし、仮設住宅に入居した人の見守り・相談支援にも取り組む ⑭住宅が被災した世帯を対象に最大300万円(全壊の場合)の被災者生活再建支援金を迅速に支給し、被災家屋の解体は半壊住宅も住民の自己負担ゼロで可能とする ⑮住まいの確保に、プレハブだけではなく居住性の高い木造の応急仮設住宅も建設する ⑯廃棄物処理施設の早期復旧に向けた支援や生活ごみ・し尿を離れた地域まで運んで処理する経費を支援 ⑰のと鉄道は国と事業者がバスによる代替輸送の調整をし、自治体が管理する道路・河川・漁港の復旧工事は要請に応じて国が代行 としている。
 このうち⑧⑨の被災自治体の企業を対象とする「なりわい再建支援事業」は必要ではあるが、その補助要件を工場・店舗・生産機械等を“復旧”とすれば、生産性向上の機会を失う。また、⑩の輪島塗・加賀友禅等の伝統産業の事業再開も重要だが、現在の手仕事のままでは高価すぎる上に、食洗機対応ではなく、手入れも非常に大変だ。そのため、せっかく災害支援枠を設けるのなら生産性を向上させて問題解決もした方がよく、そのための機械や人材を導入すべきだ。
 しかし、⑪のアーケードや街路灯の復旧など商店街の再生支援については、震災前には人出が多く、儲かっていた商店街なのだろうか。というのは、現在は日本全国の商店街が閑散としたシャッター街になっており、それには理由があるからで、その理由とは、共働き女性が増えれば駅近や駐車場付きのスーパーなど短時間で買い物ができる場所が便利であり、高齢者が多ければ即日配達してくれるスーパーが便利など、消費者のニーズが変わったからである。そのため、これも復旧ではなく、土地利用計画・都市計画あっての復興をすべきだ。また、⑫の観光支援についても、近場のホテルや旅館に二次避難所を作り、⑮のような作っては壊す仮設住宅建設は最小限に抑え、宿泊費やツアー代金の公費補助をなくした方が合理的だと思う。そうすれば、⑯⑰のように、基礎的インフラがずたずたで、食料や水にも乏しく、不衛生な場所に長期滞在する必要はなくなるからである。また、⑬の心のケアについては、将来の見通しが立って不安がなくなれば解決する実質的・物理的なものが多く、心の問題ではないと思われる。しかし、⑭の住宅が被災した世帯を対象に最大300万円(全壊の場合)の被災者生活再建支援金を迅速に支給し、被災家屋の解体は半壊住宅も住民の自己負担ゼロで可能とするのは必要かも知れないが、高齢者の割合が高いことを考えれば、再度、同じ場所に家を建てることは不可能で不合理だ。そのため、安全な場所に高齢者向きの集合住宅を建てて、現在所有している土地と交換するのがよいと思う。
 これに加えて、*8-3は、⑮のように、「1月中に2023年度予算の一般予備費から1000億円を上回る規模の追加支出を閣議決定する」としている。能登半島地震は2023年度に起こった災害であるため、まず2023年度予算の一般予備費から支出するのは妥当だが、下の1番右の図のように、これまでの無駄使いで我が国の国債残高は次第に高くなり、対GDP比で主要国の2倍以上になっているものの、これ以上の負担贈・給付源は不可能であるため、災害であっても無駄遣いせず、将来に役立つ計画的な支出をしてもらいたい。

 
     2024.1.25、2024.1.25、2024.1.9日経新聞        財務省

(図の説明:1番左の図のように、地域の災害リスクが明らかになった上に産業や住宅の再建が遅れれば、避難していた住民も帰還せず再建困難になるため、リスクを除去して新しい魅力を追加する街作りを迅速に行うべきである。そのため、金や時間の無駄使いをしている場合ではない。左から2番目の図で無駄使いになり易いのは仮設住宅と旅行者支援で、近隣の宿泊施設を二次避難場所にした方が合理的だ。また、「なりわい」も復旧するのではなく、時代の変化に適応した復興をさせなければその産業や地域の魅力が増さず、災害リスクを越えて帰還したり移住して来たりする人は減る。さらに、インフラも復旧ではなく、災害に適応した改善をすべきだ。しかし、財源は、右から2番目の図のように、2024年度も予備費を使うそうだが、その基には東日本大震災で不使用になった復興財源を充ててもらいたい。現在の日本の国債残高は、1番右の図のように、GDP比で飛び抜けて世界最悪で、これ以上の負担贈・給付減はできない状況だ)

*8-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20240125&ng=DGKKZO77936350V20C24A1MM8000 (日経新聞 2024.1.25) 能登地震、人口減下の復興、生活再建など支援策まとまる 教訓生かしニーズ合致を
 能登半島地震の復興が動き出す。多くの被災者がなお避難所暮らしを強いられる中、政府は生活再建やインフラ復旧の政策をまとめる。過去の災害では巨額の公費が地域再生に直結しなかった例もある。人口減時代の地震大国・日本で復興のあり方を探る。政府の能登半島地震支援(総合2面きょうのことば)のパッケージが25日、公表される。(1)生活再建(2)生業再建(3)災害復旧――が柱となる見通しだ。被害の全容は不明だが、野村総合研究所の木内登英氏は23日までの状況をもとに暫定的な被害額を2兆625億円と推計した。単純比較できないが東日本大震災(16.9兆円)や阪神大震災(9.6兆円)の政府試算に次ぐ規模となる。過去の震災で国は巨額予算で復興を後押しした。だが、すべてが有効活用されたとは言い難い。東日本大震災後に計4600億円以上を投じた「土地区画整理事業」。津波被災の土地をかさ上げして整備したが、大規模工事に時間がかかり多くの人が故郷を離れた。国土交通省の調べでは、21市町村で28%に当たる282ヘクタール、東京ドーム60個分の土地が未利用。住民ニーズと施策のズレが浮き彫りになった。「元通り」にした地域も人口減が止まらない。阪神大震災の神戸市長田区の人口集中地区は2010~20年で約7%減少。東日本大震災の宮城県気仙沼市は71%も減った。国立社会保障・人口問題研究所の推計で、70年に日本の人口は8700万人まで減る。過去の教訓を踏まえ、災害前の姿を前提に復興を進めるべきかが問われる。災害時は国や自治体の「公助」に加え、助け合う「共助」、当事者の「自助」も欠かせないが、平穏な暮らしを奪われた被災者にどこまで負担を求めるかは難しい。1998年に成立した被災者生活再建支援法は当初、住宅全壊世帯の「家財道具調達」に最大100万円を補助し、私有財産である個人の住宅再建は対象外だった。2007年の法改正で使途制限を廃止。補助枠も現在は最大300万円だ。納税者が減り、社会保障費がかさむ時代に公費頼みは限界がある。常葉大の重川希志依名誉教授(都市防災)は「手厚い公助は耐震化などの備えを阻害する面もある。まずは地震保険加入など自助を急ぐべきだ」と話す。米国では05年のハリケーン「カトリーナ」被害の際、民間から資金を集めた財団が約1万戸の住宅を再建・提供。寄付文化とも通底する「共助」の仕組みが注目された。「災害列島」と呼ばれる日本。想定される南海トラフ地震の経済被害額を国は最悪220兆円と推計する。兵庫県立大の井上寛康教授は「戦略的な備蓄や代替先の確保などの備えで供給網への打撃を抑え、経済被害を軽減できれば復興の負担も軽くなる」と訴える。

*8-2:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/1181454 (佐賀新聞 2024/1/22) 中小企業復旧に最大15億円、能登地震支援の政府案
 能登半島地震の被災地支援策をまとめた政府の政策パッケージ案が22日、判明した。中小企業の施設と設備の復旧に1件当たり最大15億円補助する方向だ。観光支援では新潟県を含む北陸地方への旅行費用の一部を補助する。被災者の心のケアに向けた取り組みも本格化する。地震発生から3週間。政府は週内にも正式に決定し、復旧・復興を加速させる。石川県によると、地震の死者は22日午後2時時点で233人が確認された。安否不明者は22人。施設復旧への補助金は、2020年の7月豪雨で実施された「なりわい再建支援事業」を基にする。被災自治体の企業が対象で、工場や店舗、生産機械などを復旧させる場合の費用について、4分の3を補助する。輪島塗など地域の伝統産業の事業再開を後押しするため、災害支援枠を設け、需要開拓や新商品開発、人材育成に助成する。アーケードや街路灯の復旧など、商店街の再生も支援する。旅行支援は宿泊費やツアー代金の一部を公費で負担する。3~4月、金額に上限を設けた上で、宿泊費の50%程度を補助する方向で調整している。被害が大きい能登地域は、復興状況を見ながら、旅行客の呼び込み策を今後検討していく。被災者支援では、心のケアのセンターを新設。近親者などを亡くしたり、トラウマや孤独を抱えたりした人をケアする。仮設住宅に入居した人の見守りや、相談支援にも取り組む。住宅が被災した世帯を対象にした最大300万円(全壊の場合)の被災者生活再建支援金も迅速に支給。被災家屋の解体では、全壊だけでなく半壊住宅も住民の自己負担ゼロで可能とする。住まいの確保も「喫緊の課題」と位置付けた。応急仮設住宅は、プレハブだけではなく、居住性の高い木造も建設する。廃棄物処理施設の早期復旧に向けた支援のほか、生活ごみやし尿を離れた地域まで運んで処理する経費を支援する。のと鉄道は、一部区間で運転再開の見込みが立たないため、国と事業者がバスによる代替輸送の調整をする。自治体が管理する道路や河川、漁港の復旧工事は、要請に応じて国が代行する。

*8-3:https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA22AOB0S4A120C2000000/ (日経新聞 2024年1月23日) 能登半島地震:北陸割」で観光需要喚起へ 能登半島地震で政府支援策
 政府は能登半島地震の被災地支援パッケージの原案をまとめた。中小企業の施設と設備の復旧に補助金を出す。1件あたり最大15億円で調整する。観光業の支援は新潟県を含む北陸地方への旅行者向けに割引を設ける。岸田文雄首相が本部長を務める非常災害対策本部で25日にも被災者の生活となりわいを再建するための政策パッケージをまとめる。1月中に2023年度予算の一般予備費から1000億円を上回る規模の追加支出を閣議決定する。①避難所などの環境改善や住まいの確保など生活再建②中小、農林業、観光業など生業再建③インフラなどの災害復旧――の3つを柱として盛り込む。被災自治体の中小企業を対象に工場や店舗、設備などを復旧させる費用を補助する。20年7月豪雨の際の「なりわい再建支援事業」をもとに制度設計する。旅行業の支援は16年の熊本地震の「ふっこう割」を参考に宿泊費などを公費を使って割り引く。金額に上限を設けたうえで5割ほどを補助する見通し。被害が大きかった能登地方は復興状況を踏まえ、より手厚い需要喚起策を検討する。住宅が被災した世帯には最大300万円の「被災者生活再建支援金」を迅速に支給する。全壊だけでなく半壊も含めて住民の負担なしで被災家屋の解体が可能になる。輪島、珠洲両市などの被災地でニーズに沿った応急仮設住宅を供与する。大規模災害復興法に基づく「非常災害」に指定したことを踏まえ、自治体が管理する道路や河川、漁港の復旧工事を国が要請に沿って代行する。

| 資源・エネルギー::2017.1~ | 04:19 PM | comments (x) | trackback (x) |
2023.12.11~2024.1.3 日銀の金融緩和は円の価値下落を通して、円安・物価上昇・実質賃金の減少を引き起こしているだけである ← 本当の処方箋は・・ (2024年1月4日に追加あり)
(1)日銀の金融緩和・物価上昇・円安政策が引き起こしたこと

 
   2023.6.16TDB EconomicOnline      2023.8.19、2023.8.25日経新聞

(図の説明:左図は、2008~2023年のドル円相場で150円/$前後と円安だ。また、中央の図のように、欧米の中央銀行は物価安定のために公定歩合を引き上げたので、コロナと戦争による物価上昇が一段落しつつあるが、日本は好景気でないにもかかわらず、日銀のインフレ政策によってコストプッシュインフレによる物価上昇が続いている。そして、右図のように、輸入依存である上に購入頻度の高いエネルギー・食料の値上がり率が高いため、日本の消費者の物価実感は前年のみとの比較でさえ14.7%の上昇と著しい)

  
2022.11.11WeeklyEconomist   2023.7.22東京新聞   2023.11.15日経新聞

(図の説明:左図のように、携帯電話料金が下がったのは可処分所得を上げることに“寄与”したが、円安とロシア・ウクライナ戦争でエネルギーと食料の物価指数は著しく上がって可処分所得を下げることに“寄与”した。そして、輸入価格の上昇を通して国富が海外に流れたため、中央の図のように、消費者物価指数が上がると同時に実質賃金は下がった。それでも「賃金は物価以上に上げられる」と言っている人は、マクロ経済もミクロ経済もその繋がりも理解していない人である。そして、右図のように、物価上昇に伴って消費需要とそれに伴う民間投資が減り、効率の悪い公的需要でそれを埋めることはできないため、ますますGDP成長率が下がっているが、これは政策を見ればやってみなくても明らかなことである)

  
 2022.6.7Diamond    2022.5.8読売新聞     2022.5.30Economist

(図の説明:左図は、1995年を100とした主要国の実質GDPの推移で、2021年時点でアメリカは180超だが、日本は120程度でイタリアといい勝負だ。また、中央の図は、2022年までの日本の実質GDPの推移で、2020年にコロナで異常な変動をした以外は0近傍にいる。何故こうなったかを分析するため、右図の名目GDPの見ると、政府消費と帰属家賃が伸びて民間消費と総投資が減っている。つまり、政府消費ばかりが増え、民間の可処分所得が減ったため、経済が落ち込んだことを意味している)

1)円の価値の下落
 *1-1-1のように、2023年12月11日午前の東京外国為替市場円相場は145円/$だ。これは、*1-1-2の150円台/$より少しは円高になったものの小さな変動で、趨勢は一番上の段の左図のように、2012年の70円台/$を最高の円高として、円安方向へ移行している。

 もちろん、2012年の70円台/$は日本いじめとも思われる円高で、日本企業は海外移転を迫られ、(政府が為替相場を操作することはできないため)100~120円台/$に至るまでの日銀の金融緩和は必要だったと思うし、それが当時の日本の実力だっただろう。しかし、この間に政府がなすべきだったことは、産業構造改革のための歳出であって景気対策のバラマキではなかったため、景気対策のバラマキを大合唱していた人々は全て、経済敗戦の戦犯である。

 そして、日銀は、「2%のインフレ目標を達成していない」などとして大規模な金融緩和を続けたため円の価値が下落して円安が進み、ロシア・ウクライナ戦争でエネルギー・食料の供給が減ったことも影響して、日本では、輸入依存でかつ購入頻度が高く、生活必需品でもあるエネルギーと食料の物価が著しく上がった。そのため、一番上の段の右図のように、2023年の物価実感は前年同月比でさえ14.7%の上昇となったのである。

 確かに、円安は自動車等輸出企業の利益増やそれに伴う賃上げ効果も一部にはあるが、日本の製造業は1990年代に始まった世界の大競争時代(生産コストの安い共産主義諸国が市場参入して起こったもの)に、為替レートが100円/$以下だったため、既に生産コストの安い東欧・中国・東南アジアなどに移ってしまっている。

 その上、今では、人口構成は退職した高齢者の割合が高く、新製品の研究開発を疎かにしたため輸出競争力のある製品が生まれにくくなっており、国内の製造業の競争力や稼ぐ力は弱くなっているのだ。そのため、食料・エネルギー・原材料の輸入コスト増による物価上昇のディメリットの方が大きくなっている。

 このような中、根本的解決をせずに政府・日銀が「円買いドル売り介入」をしても、円安の動向を変える力にはなり得ない。また、*1-1-2も「国内の消費者物価(生鮮食品を除く)」と記載しているが、生鮮食品を除いた消費者物価上昇率は、実際に消費者が直面している物価上昇率とはかけ離れているため、数字のトリック以上の意味は無い。

 従って、エネルギーは、いつまでも輸入依存の原油に頼らず、食料は、その生産過程まで含めて自給率を向上させる方向での歳出改革を行なう必要があり、地球温暖化対策と合わせてこれらの課題を同時に解決する方法が、農林漁業地帯や地方で再エネ発電を行なってエネルギー自給率を上げ、電力料収入を農林漁業地帯や地方に入れることによって人口の地方分散と食料自給率向上を行なうことなのである。しかし、理系音痴が政策作成をしているため、未だ高い化石燃料への郷愁が止まらず、その輸入が減らないのである。

 なお、植田日銀総裁は、「賃上げを伴う安定的な物価上昇ではない」などとして大規模緩和を続けておられるが、日本のインフレは、有望産業を潰したり減らしたりし、教育や研究開発を疎かにして競争力のある製品を生まれにくくしているため、物価高に賃上げが追い付くわけがないのである。その結果として、(1)2)の実質所得と消費支出の減少が起こっているのであるため、その説明は2)で行なう。

2)実質所得と実質消費支出の減少
 *1-2-1のように、厚労省が11月7日に発表した9月の毎月勤労統計調査速報で、1人当たり実質賃金は前年同月比2.4%減少し、18ヶ月連続のマイナスだそうだ。ここでも、「物価高に賃金上昇が追いつかない」と書かれているが、それなら、そのうち賃金上昇が物価上昇を超える筈であるため、今は超えない理由を書くべきである。

 しかし、第二次産業(製造業)の多くは既にコストの安い海外に移転しており、第一次産業(食料・エネルギー・鉱物)は輸入が殆どだ。その上、アメリカのように、生産性が上がったわけではなく、付加価値の高い製品を開発して市場投入したわけでもないため、私は賃金が長期的に物価上昇を超えて上がる要因はないと思っている。さらに、現在の日本は、高齢や女性であることを理由に働けない人の割合が高いため、可処分所得の少ない世帯が増えているのだ。

 また、第三次産業のうち高齢者や働く女性が増えれば有望産業になる筈の家事支援・介護・医療については、政府は開発するどころか抑えることばかり考えている。しかし、本当のニーズを無視した官製の産業政策を無理に進めても、金がかかるばかりで成功がおぼつかないため、実質賃金のマイナスは続くだろう。

 そして、実質可処分所得が減れば、*1-2-2のように、(泥棒でもしない限り)実質消費支出も減少させざるを得ない。特に物価上昇の激しい食料等の生活関連や住宅支出が減って消費を押し下げ、つまりは国民を貧しくして政府支出を増やしているということだが、それは実質GDP成長率が上がらない良い事例なのであり、悪循環に陥っていると言える。

3)実質GDPの減少
 *1-3-1は、2023年7~9月速報値では、実質GDPが年率換算で2.1%減少し、その理由は、①物価高を受けて国内総生産(GDP)全体の5 割超を占める個人消費の不振 ②企業の設備投資の落ち込み ③住宅投資や公共投資もマイナスで、国内需要は総崩れ ④輸出は自動車は増えたが、インバウンド(訪日客)消費が振るわず ⑤新型コロナウイルス禍からの景気回復に急ブレーキがかかった と記載している。

 外需(輸出)を伸ばしたければ、国内の生産コストが世界の大競争に勝てるだけの低さでなければならないが、現在の日本は、価格転嫁による物価上昇をすすめ、さらに賃金上昇・働き方改革・外国人労働者の締め出し等で、それとは逆の政策を採っている。

 「それなら付加価値を上げればよいではないか」という意見も出るが、新型コロナワクチンや治療薬の開発・速やかな製造の例のように、付加価値の高い新製品を製品化して市場投入するための教育・研究開発・迅速な市場投入体制ができておらず、これは再生医療・EV・再エネ等の他の技術についても同じことが言えるのだ。一方、四半世紀で実質GDPが1.8倍になったアメリカは、これができているのである。

 それらの結果、内閣府が2023年12月8日に発表した7~9月期の国内総生産(GDP)改定値では、*1-3-2のように、GDPが年2.9%減に下方修正され、内需の柱である個人消費が節約のため下方修正された。

4)実質賃金低下による節約で生じるエンゲル係数の上昇
 「エンゲル係数」とは「家計の消費支出にしめる食費の割合(%)」で、食費など必需品の節約には限度があることから、実質可処分所得が低ければ低いほどエンゲル係数は高くなる(女子生徒は、これを中学校の家庭科で習った)。

 そのような中、*1-4-2は、①我が国のエンゲル係数は2022年6月に26.0%まで低下して2023年7月に28.2%に上昇 ②エンゲル係数上昇は食料品を中心とした物価上昇による実質収入減が主因 ③高齢者の多い無職世帯は化石燃料等の資源高が支出を押し上げ、(食費の割合である)エンゲル係数の上昇を抑制 ④食料・エネルギー価格上昇は低所得者層を中心に購入価格の上昇を通じて購買力を低下させた ⑤我が国は低所得者世帯の割合が上がり、高所得者世帯の割合が下がって家計全体が貧しくなった ⑥実質賃金の低下に加え、高い食料品価格上昇による家計の節約志向がエンゲル係数を上げた ⑦食料・エネルギーなど国内で十分に供給できない輸入品の価格上昇による物価上昇は「悪い物価上昇」 ⑧国内需要の拡大によって物価が上昇し、企業収益の増加を通じて賃金が上昇し、国内需要が更に拡大する好循環が「良い物価上昇」 ⑨輸入原材料の価格高騰を原因とした食料・エネルギー価格の値上げによる物価上昇は、国内需要の拡大を伴わず、家計の節約を通じて国内需要を委縮させる ⑩世界の食料・エネルギー需給は、中長期的には人口増加・所得水準向上による需要拡大・脱炭素化や都市化による農地減少で逼迫 ⑪日銀は2%の物価目標を設定し、名目賃金上昇率+3%、実質賃金上昇率+1%の姿が理想的であるとする ⑫そのため実質賃金が17カ月連続マイナスの現在、インフレ率が2%を超えても日銀が理想とする「2%物価目標」には程遠い 等としている。

 このうち、①②④はそのとおりだが、③の高齢者は、年金給付減をはじめとして社会保険料・税金・医療・介護費の増加により名目可処分所得が減少し、その上で化石燃料等の資源高が支出を押し上げたため、食費を増やすこともできずエンゲル係数の上昇が抑えられたのだと思う。無職の生活保護世帯も、同様に購買力低下が著しいだろう。

 また、物価高騰によって実質預金残高も目減りしたため、⑤のように、低所得者世帯の割合が上がって家計全体が貧しくなった。そして、⑥のように、実質賃金低下と食料品価格上昇により、家計は節約せざるを得ず、食費を増やせる世帯はエンゲル係数を上げたが、食費も増やせない世帯はエンゲル係数を上げることさえできずに、食事を減らして対応したということである。

 さらに、*1-4-2は、⑦⑧⑨のように、現在の日本で起こっている物価上昇は、「悪い物価上昇」であって「良い物価上昇」ではなく、むしろ家計の節約を通して国内需要を委縮させていることがわかっていながら、⑪⑫のように、日銀の「2%の物価目標」は妥当で、実質賃金上昇率+1%になるまで金融緩和を続けなければならないとしている。

 しかし、米欧の中銀で掲げている「2%の物価目標」は、インフレ率が6~7%など高い時期に長期的物価安定目標を2%に抑えるというもので、日本のように「物価上昇率0は、デフレで景気が悪いからだ」として無理に物価上昇率を2%に上げるため金融緩和をしているのとは正反対なのだ。日本には、故意か過失か、これがわかっていない政治家・メディア・経済学者が多く、国民を貧しくして困らせても金融緩和を続ける口実になっているのである。

 なお、⑩のうち「世界の食料・エネルギー需給は、中長期的には人口増加・所得水準向上による需要拡大・都市化による農地減少で逼迫する」というのは正しいが、「脱炭素化すると食料・エネルギー需給が逼迫する」という主張は化石燃料や原発を継続して使うための故意の誤りである。何故なら、農林漁業地帯で再エネ発電をして副収入を得させれば、農林漁業従事者が減らず、人口の過度な都市への集中や農地の減少などを防げるからである。

 また、*1-4-1は、⑬7~9月期の実質国内総生産(GDP)は3四半期ぶりのマイナス成長 ⑭物価高で打撃を受けた家計が節約を進め、消費が腰折れした日本経済の姿 ⑮消費回復には賃上げ継続が欠かせず、2024年の春闘が鍵 ⑯物価は2年前と比べて2~3割上昇 ⑰「会計の時に驚く。なるべく特売品を買う」 ⑱「エンゲル係数」は1~9月、2人以上の勤労者世帯で月平均26.3%に上がり、「雇用者報酬」は前年同期比2.0%減少 ⑲首相は「デフレ完全脱却に向けた千載一遇のチャンスが巡って来ている」として、経団連の十倉会長らに2024年春闘で2023年を上回る賃上げを求めた ⑳減税や大規模緩和で経済を支え続けても中長期的な潜在成長率は伸びず、OECDによると2022年時点の潜在成長率は日本0.5%、米国1.8%・ドイツ0.9%以下 ㉑賃上げとともに経済を中長期的な軌道に乗せられるかどうかも大きな課題 と記載している。
 
 ⑬⑱は事実に基づいた主張であり、⑭⑯⑰がその原因だが、⑲のように、「悪い物価上昇」を「デフレ完全脱却に向けた千載一遇のチャンス」と表現するのは、状況を理解していないか、無謬主義のごまかしである。そして、⑮⑲㉑の賃上げを行なったとしても、「悪い物価上昇」下の賃上げが実質賃金上昇に繋がるわけはない上に、賃上げの恩恵に預からない人の割合も高いため、経済を中長期的な軌道に乗せて「良い物価上昇」に繋げることはできないのだ。

 そして、⑳のとおり、減税や大規模緩和で経済を支え続けても、バラマキでは中長期的な潜在成長率を伸ばすことができない。そのため、OECDによる日本の2022年の潜在成長率は0.5%にすぎず、必要なことをしてきた米国の1.8%・ドイツの0.9%を下回っているのである。

5)金融緩和(=市場金利の低下)と債券価格・株価・為替の関係
イ)市場金利と(国債を含む)債券価格の関係
 市場金利が上がると債券価格が下がるが、その理由は、売買差益を見込んで債権を買う投資家にとって重要なのは債券価格で、市場金利が上がると市場より金利の低い債券は買い手がなくなり、市場金利と一致するまで債券価格が下落する調整が働くからである。

ロ)円の為替変動と債券価格の関係
 円高になると(国債を含む)円建て債券の価格が上がる理由は、海外を含む投資家が為替差益を狙って円建て債権を購入し、円建て債券の人気が上がるからである。逆に、円安になると、円建て債券の価格は下落する。

ハ)市場金利と株価の関係
 金融引き締めで市場金利が上がると、配当が市場金利の高さと株式のリスクに見合う水準まで株価が下落する調整が働く。また、金融引き締めは、景気を押し下げる効果もあるため、それ織り込んだ株価の下落もある。

 反対に、金融緩和が行われて市場金利が下がると、企業は借入れコストが下がるため投資を増加させるが、どの国のどの地域で投資を増加させるかは、①高いコスト競争力 ②良い消費マーケットの存在 ③研究開発に好都合な条件 等の長所を持つ場所になるため、金融緩和を行った国で投資されるとは限らない。

 日本は、戦後復興期から高度経済成長期まで、①の高いコスト競争力によって投資され、製品が輸出される開発途上国型だったが、その後は、②の良い消費マーケットの存在で投資される成熟経済型になった。しかし、実質賃金が下がり、貧しい人の割合が増えた現在は、②も怪しくなった。③については、前にも書いたとおり、日本は、研究開発に基づく迅速な市場投入がやりにくい国であるため、日本企業でも研究開発施設を海外に持つところが少なくない状況がある。

二)株も債券も円もトリプル安・・
 このような中、*1-5には、①2023年9月28日の東京金融市場は株式・円・国債が売られる「トリプル安」となった ②その理由は、米景気が底堅く、米長期金利は年4・642%と16年ぶりの高水準で、FRBが金融引き締めを続けるとの観測になったこと ③そのため、連日円安が進んで150円/$に近くなった と記載されている。

 しかし、外国為替市場に関しては、日本は金融緩和による超低金利政策を10年以上も続けているため、日米の市場金利差(≒経済の実力差)から金利の低い円を売って金利の高いドルを買う動きが続いており、9月27日のニューヨーク市場・9月28日の東京市場で為替相場が149円台/$になったのは驚くに当たらない。なお、12月15日の現在、為替相場は141円台である。

 また、日経平均株価が短期的に少々下がっても、この10年の長期を見れば金融緩和による超低金利で株価が上昇し続けた後である。そのため、金融緩和は既に限界に達し、株価もピークを迎えたとしても不思議ではなく、それが高下駄を履いた上での日本企業の実力なのかも知れない。

(2)税の原則は公正・中立・簡素 ← 減税できるなら公正・中立・簡素の方向でやるべき
1)物価高の家計負担緩和のためとする補正予算について
 *2-1-1は、①政府は物価高に対する家計負担緩和策として経済対策を決定 ②13兆1992億円の補正予算が財源 ③首相主導の所得税・住民税合計4万円/人の減税は2024年6月からで補正予算に含まれず ④共同通信の世論調査では、非課税の低所得世帯向け7万円給付を含めて「評価しない」が6割超 ⑤「防衛力強化増税等の負担増が控え、財政悪化も懸念」「減税や給付財源は増税回避や財政再建に用いるべき」がその理由 ⑥首相は「経済を立て直した上で防衛力や子ども政策を国民に協力してもらうため、増減税は同時実施にならない」と断言し ⑦首相は「減税は経済の好循環を生むため、物価高を上回る賃上げまで可処分所得を下支えする」と繰り返す ⑧首相の答弁は財政の行く末まで憂慮する国民に対し説得力に欠ける ⑨国民の不信感は保身を図る首相の姿勢にも根差す ⑩自民5派閥がパーティー収入を政治資金収支報告書に過少記載していた問題に、首相は信頼回復のため党として「どう対応すべきか考えたい」と述べた としている。

 このうち①②については、ロシアのウクライナ侵攻に対する制裁返しで資源価格のコストプッシュインフレが起こっており、それでも日銀が金融緩和を続けている大きな流れの中で、物価高に対して多少の家計負担緩和策を採ってもらっても家計にとっては焼け石に水である。しかし、政府歳出は「兆円」単位であり、その借金も最終的には国民が返済しなければならないため、④の「『評価しない』が6割超」というのはよく理解できる。

 また、③については、全員に給付した方が迅速であるのに、所得税・住民税の減税という、もらった人はピンと来ず、忘れた頃に配賦する形になったのは意味不明だった。

 なお、⑤の防衛力強化増税や⑥の子ども政策による国民負担増について、首相は⑦のように、「減税は経済の好循環を生むため、物価高を上回る賃上げまで可処分所得を下支えする」と繰り返しておられるが、コストプッシュインフレで国富の海外流出が増えており、防衛費として経済の生産性を上げない歳出をしていれば、日本経済が継続的に物価高を上回る賃上げをして実質可処分所得を増やすのは不可能であろう。

 また、子ども政策への歳出も、これまでの実績を見る限り、高齢者に負担贈・給付源を押しつけながら、(1つ1つを長くは書かないが)費用対効果の低い使い方をしてきたため、⑧のように、首相の答弁は空手形となり、将来まで考える国民に対して説得力を持たないのである。

 確かに、首相は、(首相の選抜方法やメディア・野党の揚げ足取り志向から仕方がない面はあるのだが)自民党内の派閥・現職国会議員・官僚等に少しずつ妥協し、それによって何をしたいのかも明確に説明できなくなって、政策目的は「首相を続けたい」ということ以外は国民に見えなくなっているため、⑨の意見が出るのである。

 なお、⑩の政治資金収支報告書への過少記載については、メディアは「誰かの首を取る」ことを目的とした非論理的で感情的な報道に終始しているが、くだらないことで首相や大臣を次々に交代させたり、衆議院解散に持ち込んだりしてきたのが、日本経済が世界の中で停滞した大きな理由の1つなのである。

 そのため、首相は、i) 政治資金収支報告書の作成を複式簿記による会計に変更して網羅性・検証可能性を制度的に担保する ii) 会計責任者はじめ関係者は徹底して記載漏れをしない癖をつける iii) 外部監査人に財務諸表の適法性や正確性について保証してもらう(今も外部監査人はいるが、現在の会計制度で保証まではできないため、保証はしていない) 等の内容で、政治資金規正法の会計制度と外部監査制度の改善を行なって信頼回復を計るべきだ。

2)与党税制改正大綱について
 *2-1-2は、自民・公明両党の2024年度税制改正大綱で、①4万円(所得税3万円・住民税1万円)の定額減税実施で年収2千万円超のみ除外 ②子育て世帯と若い夫婦に限り、省エネ基準適合住宅等取得でローン限度額最大1000万円上乗せ維持 ③住宅リフォーム減税も子育て環境のための改修工事を対象に追加 ④2024年12月から高校生の子がいる世帯に1人10,000円/月の児童手当支給、扶養控除は所得税38万円→25万円、住民税33万円→12万円に縮小 ⑤デフレ脱却のため物価高を上回る賃上げや経済成長を後押しする法人税減税(赤字の多い中小企業は税額控除できなかった分を5年間繰り越し可) ⑥首相は「税収増を還元」と言われたが、鈴木財務相は「過去の税収増は政策的経費や国債償還に既に充てられ、減税しない場合と比べて国債発行額は増加」と国会答弁 等としている。

 これに加えて、*2-1-3は、⑦個人も企業も減税が並び、負担増を徹底的に回避して財政規律を省みない ⑧財政悪化がもたらす将来不安が広がる ⑨時代の要請に合致した改革の構想や方向を今年の大綱から読み取ることはできない ⑩定額減税と非課税世帯等への給付には5兆円規模の国費を投入 ⑪中長期の防衛政策を考えれば安定財源の確保を急がねばならないため、法人税だけでも先行して増税できなかったのか ⑫児童手当を高校生の世帯にも支給する代わりに扶養控除を縮小するのは賛成しない ⑬中小企業の賃上げを支援する制度も拡充されたが、赤字会社が6割以上を占めることを考えれば税制以外の手段を含めて「次の一手」を考える時期 とも記載している。

 このうち、①⑥⑦⑧⑩の「5兆円規模の国費を投入して行なう非課税世帯等への給付と定額減税実施は、財政規律を省みず、国債発行額を増加させ、財政悪化の将来不安が広がる」という主張は、全体の収支を見るべきであるため、正しいと思う。

 また、⑨のように、時代の要請に合致した改革の構想や方向を考えるべきであることには賛成だが、⑪の中長期の防衛政策は、i)辺野古の埋め立て ii)オスプレイの使用 iii)兵器の遅れ 等、考え直さなければならないテーマは山ほどあるのに、1度決めたことは無駄でも推進するという姿勢であるため、高い金を払うばかりで役に立たないように見える。つまり、支出は、より効率的かつ効果的な方向への絶え間ない見直しを組み込んだ制度でなければならないのだ。

 さらに、時代の要請に合致した改革の方向性を考えれば、食料・エネルギーの自給率向上は不可欠であるため、②③のように子育て世帯や若い夫婦に限ることなく、省エネ基準適合住宅等の取得を推進したり、省エネ性能を上げる製品や改修工事に補助したりすることは、安全保障上及び国民の可処分所得向上の両方のために効果的である。また、世界人口が爆発しつつあるのに、むやみに出産を奨励し、外国人労働者を閉め出すのは時代錯誤だ。

 そして、税の公正・中立・簡素の原則から言えば、④⑫の児童手当を支給する世帯の扶養控除は縮小するのではなく、なくすべきである。何故なら、児童手当と扶養控除は目的が同じで、納税者のみを優遇する扶養控除から児童手当に変更したのであるため、両方を残せば二重取りとなって不公正だからだ。また、ちょこちょこ変な縮小を入れると、負担率の曲線がおかしくなり予測できなくなって公正でなくなり、所得税の計算も複雑になって簡素から離れる。

 なお、⑤⑬については、そもそもの理論が間違っているため、物価高を上回る賃上げを続けられるためには継続的にばら撒きを続けなければならず、これは不可能だ。しかし、赤字になった企業は、賃上げするか否かにかかわらず、赤字を7年間繰り越せるのが世界の趨勢である。

3)「年収の壁」について
 *2-2-1は、①年収が一定額を超えると税・社会保険料が増える「年収の壁」対策が10月から開始 ②「税の壁」は収入103万円超で本人の所得税が発生、150万円超で配偶者の配偶者特別控除減少により配偶者の税負担増加 ③「社会保険の壁」の第1は、従業員101人以上の会社・収入106万円超・週20時間以上勤務で厚生年金・健康保険加入が義務 ④これに対する政府の対策は、賃上げ・手当などで手取り減を補う企業に対し、10月以降に壁を越える従業員1人について3年間で最大50万円助成 ⑤「社会保険の壁」の第2は、収入130万円超で配偶者の社会保険の扶養からはずれ、週30時間以上勤務しないと厚生年金等に加入できず、国民年金保険と国民健康保険に入るため、新たに保険料負担が生じるが将来の厚生年金受給というメリットはない ⑥本人の年収が一定以上になると配偶者の会社が配偶者手当を打ち切る「配偶者手当の壁」もあり、数十万円/年になるため、政府は配偶者手当を廃止・縮小して基本給や手当を増額する等の見直しを企業に求めている 等としている。

 また、*2-2-2は、⑦助成策で手取り減がなくなるか否かは勤務先の活用次第で壁を越える人全員が対象になるわけではない ⑧助成金がない場合に106万円を超えて手取りが戻る収入は125万円だが、大きく上回るほど目先の収入と将来の厚生年金が増えるため、(介護や子育てで難しい場合を除き)賃金増の流れを生かしてなるべく大きく超えることが長寿の女性に有効 ⑨130万円の壁も回避を狙うだけでなく、週30時間以上勤務して厚生年金加入を考えることも将来の安心に有効だが、厚生年金加入後に130万円未満での手取りを回復するには150万円台の年収が必要 ⑩そこまで勤務時間を延ばせない場合は106万円で厚生年金に加入できる101人以上(24年10月からは51人以上)の会社への転職を考える選択肢も ⑪短時間労働でも厚生年金に入れる対象企業の適用を徹底的に拡大し、働く人すべてに社会保険を適用するのが本来の解決策 と記載している。

 基礎控除は、1947年に「納税者本人の生活維持のための必要経費」という趣旨で開始された制度で、当初は全納税者一律に同じ金額が適用されていたが、2020年に所得2,400万円以下:48万円、2,400万円超~2,450万円以下:32万円、2,450万円超~2,500万円以下:16万円、2,500万円超:0円と所得税法が改正され、現在は一律でない。また、住民税の基礎控除も、現在は所得が2,400万円以下の場合に43万円なのである。

 しかし、基礎控除の趣旨は「納税者本人の生活維持のための必要経費」なのだから、所得にかかわらず同じ金額を控除するのが理論的に正しい。そのため、2020年の改正は、「税法を知らない奴が、小さくこねくりまわして煩雑にした挙げ句、理論から外れた」という感が否めない。

 また、所得税の基礎控除額が、2020年分から(所得が2,400万円以下の場合に限り)38万円/年から48万円/年(4万円/月)に“引き上げられた”のは良いが、4万円/月では納税者本人だけでも生活を維持できない。そのため、「健康で文化的な最低生活」として生活保護を参考にすると、「納税者本人の生活維持に必要な経費」は、少なくとも10~13万円/月(120~156万円/年、住む地域によって異なる)になる。そのため、所得税の基礎控除額は一律150万円、住民税の基礎控除は住む地域によって120~156万円に変更してもおかしくないし、社会保険料についても同様である。

 この基礎控除額の増加を行なった上で、①~⑥の「年収の壁」は、複雑怪奇で妻が働くことを阻害しているため、「税の壁」も「社会保険の壁」も完全に撤廃し、どんな企業で何時間働いても、所得があれば所得税法に従って応分の負担をし、また、社会保険関係法令に従って応分に社会保険料も納め、社会保険加入の利益を享受できるようにして、働いた人が損をしないようにするのが、現代の公正・中立・簡素・平等を満たすやり方である。

 なお、「年収の壁」に対する政府の対策は、⑦⑧⑨⑩のいずれも、細かく区切って複雑にしただけで、税や社会保険料を支払う人の立場には立っておらず、公正・中立・簡素からもかけ離れており、平等に応分の負担をさせているわけでもないと言わざるを得ない。

 さらに、⑧の「介護や子育てで働くことが難しい場合」というのは、介護保険制度の不備や保育・学童保育の不備による不利益を女性に押しつけ、女性労働者にL字カーブを作らせて損をさせている原因であるため、そういうことが起こらない制度を作るのが筋である。

4)消費税について
イ)直接税と間接税の違いと税制改革への提言
 *2-3-3のように、国民が支払う税金には直接税(所得税・住民税・法人税等)があり、そのうち所得税は、累進課税制度で所得に応じて5%~45%までの税率で税金を支払う((https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2260.htm 参照))。また、住民税には、誰もが同じ金額を支払う「均等割(5,000円:道府県民税1,500円、市町村民税3,500円))」部分と、所得に比例して支払う「所得割(所得の10%(道府県民税4%、市町村民税6%))」部分があり、全体としては所得の多い人ほど高率の税を支払うことになっている(https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_zeisei/czaisei/czaisei_seido/150790_06.html 参照)。
 
 また、直接税のうちの法人税は、企業等の資本金の金額(1億円以下か否か)や利益の金額(年800万円以下の部分とそれを超える部分)で15~23.20%と税率が異なる(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5759.htm 参照)が、私は、資本金の金額や利益が年800万円以下か否か等で税率を変えるより、全企業に繰越欠損金の7年間の繰り越しを認めた方が、税のために企業が会社分割する必要もなくなり、公正・中立・簡素だと思う。

 このように、直接税は、個人の所得や企業の利益に応じて支払う税額を計算するため、不景気になれば支払税金が減る。そのため、不況時には税率が下がって有効需要の減少を抑え、好況時には税率が上がって景気の過熱を鎮める景気変動緩和の仕組みが税制の中に備わっており、これをビルトインスタビライザーと呼ぶ。

 一方、間接税は商品の販売やサービスの提供に対してかかる税金で、消費税・地方消費税・酒税・たばこ税・揮発油税・自動車税・自動車重量税・関税などがあり、納税するのは製造業やサービス業等の事業者だが、実際に負担するのは消費者となっている。

 このうち、消費税・地方消費税の税率は、消費税7.8%・地方消費税2.2%の合計10%だ。また、消費税が導入された理由は、i)直間比率のバランス ii)高齢化社会の財源確保 iii)物品税の問題解消 の3つと主張されてきた。

 しかし、i)の「直間比率のバランス」は、ヨーロッパと単純比較して「日本は間接税の割合が低い」ということで始まった理論だが、実際には直接税の方が所得や利益に応じて税率が変化するビルトインスタビライザー機能を備えているため、優れた税制なのである。そのため、シャウプ勧告によって戦後日本が税制の参考にしたアメリカは、「間接税は良い制度ではない」と評価しており、国の消費税は存在しない。

 また、ii)の「高齢化社会の財源確保」については、年金・医療・介護制度は税ではなく保険であるため、積み立て方式をとっていれば人口構成が変わっても税金から補填する必要は無かった筈である。にもかかわらず、保険料を支払う生産年齢人口の割合が高かった時代には将来の支出を見越して積み立てることをせず、無駄遣いの限りを尽くし、使う段階に至って初めて足りなくなったなどと言っているのだ。そのため、足りなくなったのは国民の責任ではなく同情に値しない上、消費税が本当に高齢化社会の財源確保に使われるか否かも怪しいわけである。

 さらに、「社会保障のコストは、消費税で賄わなければならない」などと決めている国は日本以外にはなく、税収はずべて国庫に入るので税収全体から必要な歳出を行ない、継続的に無駄を廃して効果の高い歳出にしていくのが当然の姿だ。しかし、現在の日本は、公会計が単式簿記である上、決算結果の出る時期が著しく遅いため、そういう当たり前のこともできず、他分野の大きな無駄を放置したまま、全体の支出額が大きいというだけの理由で社会保障を削ることに専念するという馬鹿なことをしているわけである。

 なお、現在も物品税が残っているたばこは、小売定価580円(20本入り)のものの場合、たばこ税・たばこ特別税(304.88円、52.6%)と消費税(52.73円)が二重にかけられており、支払税額が合計357.61円で税率が61.7%となっている(https://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/consumption/d09.htm#a03 参照)。しかし、たばこは、肺癌等々の健康被害をもたらして医療費を使うため、複数税率にした消費税(70~100%)のみをかけて禁煙に誘導しつつ、消費税収に加えるのが合理的だと思う。

 同様に、現在も物品税が残っている酒は、ビール(350ml入りで、酒税70円、消費税19.91円、合計税率41.1%)、日本酒(1800ml入りで、酒税198円、消費税185円、合計税率18.8%)、ウイスキー(700ml入りで、酒税301円、消費税188円、合計税率23.6%)など、酒の種類やアルコール度数によって細かく決められている(https://www.mof.go.jp/tax_information/qanda010.html 参照)。

 そして、酒も酒税と消費税の両方がかけられる二重課税の状態であり、公正・中立・簡素でもない。しかし、飲み過ぎは健康被害をもたらして医療費を使うため、アルコール度数の高いもの、分量の多いものを高めに設定した複数税率の消費税(30~50%)のみをかけ、消費税収に加えるのが合理的だと、私は考える。

 さらに、現在も物品税が残っている揮発油税・自動車税・自動車重量税についても、自動車は既に必需品であって贅沢品ではないにもかかわらず、消費税と両方がかけられる二重課税の状態になっているため、消費税に一本化するのが妥当である。ただし、化石燃料には環境税を課して、グリーン化の原資ににするのが良いと、私は考える。

 最後に、関税については、各国とも自国の経済や安全保障の方針にしたがって決めているところがあって一概に言えないため、ここでは割愛する。

ロ)インボイス制度の導入について
 *2-3-1は、①インボイス(適格請求書)制度の開始から1ヶ月、2023年10月分請求書の処理が本格化する中で中小・新興企業などで混乱 ②企業毎に異なる請求形式の違い対応や登録番号の確認作業で業務負担増加 ③10月に入っても企業の9割で今後の対応に懸念を持つとの調査結果 ④帝国データバンクのアンケートで「対応が遅れている」とした回答が3割、「事務作業負担増加等の懸念がある」とした回答が9割 ⑤都内の電気工事会社は請求書をインボイス番号記載形式に変更して8月末に取引先各社に郵送で案内したが、番号のない請求書を送ってくる取引先が散見された ⑥登録が必要とされる免税事業者160万者のうち登録済は9月末時点で106万者 ⑦つぼ八の担当者はインボイス制度について「免税事業者を設けるべきではない」と制度の廃止を求める ⑧インボイスとは、事業者毎の登録番号や税率毎の消費税額等を記載した請求書や納品書で、仕入れ時に支払った消費税額を納税時の納税額から差し引くためには仕入れ先からインボイスを受け取る必要 ⑨インボイス発行事業者の登録をしていないとインボイスを発行できず、大企業は基本的に発行事業者への登録を取引先に促すが、小規模事業者やフリーランスで様子見の動きが根強い 等と記載している。

 このうち①②③④⑤⑥⑧は、どれも「インボイス(適格請求書)制度の開始で、その準備が大変だ」という苦情だが、日本の消費税の見本になったヨーロッパの付加価値税(消費者に転嫁されるとは限らない)はインボイス制度を採用している。つまり、日本で消費税を最初に導入した時、インボイス(請求書)への明確な記載を義務づけずに仮定の多い計算をさせて妥協することにしたのが、日本の消費税計算がややこしい上に、公正・中立・簡素のいずれでもなくなった根本原因であり、それに慣れた人が変化に抗して苦情を言っているにすぎないのだ。

 また、⑦の免税事業者とは、前々年度の課税売上高が1,000万円以下で消費税の申告や納付を免除されている事業者のことで、売上も仕入も消費税込みで計算するため、二重課税の排除が適切になされているかどうかは場合による(https://www.yayoi-kk.co.jp/invoice/oyakudachi/menzeijigyosha-shohizei/ 参照)。

 そして、⑨の小規模事業者やフリーランスも、課税事業者(適格請求書発行事業者の登録申請を行い、登録事業者番号《インボイス登録番号》を取得すればインボイス《適格請求書》の発行が可能)にもなれるし、要件に該当すれば免税事業者にもなれるため、小規模事業者やフリーランスを例に挙げてインボイス制度に苦情を言うのは我儘すぎる。

ハ)社会保険診療に係る消費税について
 医療の中の社会保険診療は非課税取引であるため、医療機関が社会保険診療を提供する際に患者から消費税を受け取ることはないが、そのかわり、医療機関は社会保険診療を行うために購入した医薬品・設備等を購入する際に支払った消費税を仕入税額控除することもできない。その結果、現在は医薬品・設備等の購入にかかった消費税は医療機関が負担することになっている。

 そのため、厚労省は、「診療報酬や薬価等を設定する際に医療機関等が仕入れに際して支払う消費税を反映して点数を上乗せすることで対応をしている」と主張しているが、医療の進歩に合わせて速やかに診療報酬や薬価の点数を上乗せできているとは思えず、実際、高価な設備を導入して高度な医療を行なう大病院ほど、消費税負担の大きさに耐えかねているのである(https://www.mhlw.go.jp/bunya/iryouhoken/iryouhoken13/dl/140401.pdf 参照)。

 そのような中、*2-3-2は、①日本医師会は「令和6年度 医療に関する税制要望」で社会保険診療に係る消費税は、診療所は非課税・病院は軽減税率による課税取引に改めるよう要望した ②昨年の税制要望では「小規模医療機関等」は非課税、「一定規模以上の医療機関」は軽減税率を適用するよう要望したが、「一定規模」の線引きが課題だった ③そのため「診療所」「病院」という医療法上の区分が客観的でよいとして集約した ④非課税のまま診療報酬による補塡を求める有床診療所が多かった理由は、課税取引にすると存続が難しいという意見が多かったから ⑤社会保険診療に係る消費税が非課税であることについて、日本医師会は「控除対象外消費税が医療機関の経営を圧迫している」として、ゼロ税率・軽減税率・患者への還付制度などにより解消することを求めてきた 等と記載している。

 このうち①②③については、医療機関の中に非課税と軽減税率適用を作ることは、ご都合主義による制度の複雑化であるため容認できない。また、④のように、「課税取引にすると存続が難しい」というのも、消費税の益税によって存続しているということであるため、消費税の趣旨に反する。

 そのため、私は0税率を推奨するが、その理由は、医療機関が社会保険診療を提供する際に患者から消費税を受け取ることなく、医薬品・設備等を購入する際に支払った消費税は仕入税額控除して医療機関が支払った消費税の還付を受けることができるからだ。そうでなければ、高価な設備や先端の医薬品は使えず、救える命を救えなかったり、要介護者を増やしたりする。

 従って、⑤の中の0税率がよいと思うが、物価上昇・賃金上昇の時代に診療報酬を減らして真面目に働いている医療機関を潰せば、結局は国民が困るため、診療報酬の点数は消費税にかかわらず、他産業並みに上げるべきだ。また、小規模な医療機関でも、税務申告にあたっては税理士を使っているため、消費税に関する手続きを税理士に任せれば医療従事者の仕事は増えない。

 そして、このように、さまざまな消費税率を使っても正確な会計処理や税務申告を行なうことができ、支払った人に税率と税額を明確に示すことができるのが、インボイス制度のメリットなのである。

(3)国を挙げての組織的高齢者虐待 ← そんな子は1人もいらないのだけど

   
     日本金型工業健保          2023.11.2毎日新聞 2022.11.7時事

(図の説明:1番左の図のように、介護保険料は40~64歳の人が27%、65歳以上の人が23%を支払うことになっており、人口構成が変わっても負担割合が固定されているため、個人の負担割合は毎年変わる。また、40歳以下の人は介護保険料を支払わないため、全世代が介護保険制度の福利を享受できるわけではなく、全世代が支えてもいないため、不公平感が大きい。その上、左から2番目の図のように、65歳以上の第一号被保険者の介護保険料は、自治体の介護にかかる年間予算の23%を第1号被保険者の総数で割った額であるため、自治体の責任ではない自治体間の人口構成の違いが第一号被保険者の介護保険料にまともに影響する。そのため、本来は、国が集めて必要な予算を配賦すべきである。そして、右から2番目と1番右の図のように、現在でも所得に比して高い高齢者の医療保険料・介護保険料・医療費負担・介護費負担をさらに引き上げ、少子化対策に流用までしようとしているのだから、これは国を挙げての組織的高齢者虐待である)


                   すべて厚労省

(図の説明:国民皆保険制度のメリットを、厚労省は、左図のように述べている。しかし、個人が支払う医療費には医療保険料の支払いまで含むため、中所得層以上にとっては、働いている期間に公的医療保険の高い医療保険料を支払い、退職して診療を受ける段になると、それまでの貢献に対する感謝の念もなく、恩着せがましく制限ばかりされるよりは、最初から民間保険に入って全額自費で負担した方がよほど安い。また、中央の図が、現在の我が国の現在の医療制度だが、出産費用を保険適用にしたり、就学前の子の医療費負担を1割にするためならともかく、国民が支払った医療保険料を少子化対策に流用するなどというのは論外だ。さらに、右図のように、「若人と高齢者の費用負担関係が不明確」という批判を受けて75歳以上をすべて後期高齢者医療制度に入れたのだそうだが、人口構成が変わればかかる病気の頻度も当然変わるため、明確に分けることこそ恣意的で非科学的になる元凶だ。そのため、この改悪によって、決して高齢者に負担をかけるべきではない)

1)本当に少子化対策になっているか
 *3-1-1は、①政府は2026年度までに国・地方合わせて年3.6兆円の追加予算を投じて児童手当・育児休業給付を拡充する ②児童手当は所得制限撤廃・高校生までの支給期間延長・第3子以降の月3万円への増額をする ③3人以上の多子世帯の大学授業料は2025年度から無償化 ④税制改正で子育て世帯は2024年も住宅ローン減税対象の借入限度額を現行の最大5000万円で維持 ⑤「こども誰でも通園制度」を2026年度から全国展開 ⑥保育士1人がみる子どもの人数を国の基準より少ない25人にした場合、運営費補助 ⑦2025年度から両親ともに育児休業を取得すれば、28日間まで育休給付を手取りの実質10割に増額 ⑧子育て世帯の生命保険料控除を最大6万円に引き上げ ⑨政府は2024年度からの3年間で少子化対策に集中して取り組み、初年度は国と地方で1兆円の予算計上 ⑩2024年度予算案は財源確保を待たずに大規模な財政出動を決めたが、政策効果が不透明な施策も ⑪児童手当の所得制限の撤廃を巡って経団連の十倉雅和会長は「納得感が少ない」と批判、効果が十分検証されないまま給付を積み増す手法に経済界を中心に異論 ⑫今回の対策が出生増に繋がるかも不透明 と記載している。

 このうち①については、年3.6兆円の追加予算を投じてまで児童手当を拡充しても、②③のような「第3子以降の月3万円への増額」「3人以上の世帯の大学授業料無償化」では、子の間に不公平が生じる上に問題が複雑化する。そのため、第3子以降の児童手当を増額するよりも、全員の大学授業料を低廉化することの方が重要だ。

 また、④の「子育て世帯の住宅ローン減税対象借入限度額最大5000万円維持」や、⑧の「子育て世帯の生命保険料控除を最大6万円に引き上げ」はあってもよいが、それより自然が近くて物価が安く、ゆとりのある住宅を入手することが容易な地域に人口を分散した方が、子どもの感受性を豊かにし、職住接近できて親が子育て時間を捻出することも容易だと考える。

 しかし、⑦のように、育児休業給付の充実として「28日間まで育休給付を手取りの実質10割に増額」しても、(鶏ではあるまいし)28日で子が育つわけではないため、無意味だろう。

 なお、地方に人口分散すると言っても、その地域の雇用(男女とも)・保育・学童保育・教育などが充実していなければ、「子育てに適した地域」という選択肢に入らない。そのような中、⑤の「こども誰でも通園制度」は良いと思ったが、i)利用料を払えば ii)いつでも iii)誰でも利用できる のではなく、「専業主婦の母は月10時間までしか利用できない」というのでは話にならず、こういうことにケチるのはマイナスでしかないと思った。

 さらに、⑥のように、「保育士1人がみる子どもの数」は、現在は「0歳児:3人、1・2歳児:3人、3歳児:6人、4・5歳児:30人」で、来年度から4・5歳児を25人に見直すことになった(https://www.nhk.or.jp/shutoken/wr/20231226a.html 参照)そうだが、満6歳以上の小学生でも30人学級にして欲しいという声がある中で、4・5歳児を25人も見る保育士の負担は大きすぎるだろう。その解決策としては、保育士の基準を15~20人に1人と増やす方法もあるが、各クラスに保育士ではない保育助手(例:教職や子育ての経験がある人)を置く方法もある。

 また、政府は、⑨⑩⑪⑫のように、「2024年度は国と地方で1兆円の予算計上」「財源確保ができておらず、効果が不透明な施策も」「効果不検証のまま給付を積み増す手法に、経済界を中心として異論」だそうだが、私はどこに使われるかわからない児童手当を多く支給するよりも、保育・学童保育・教育のコストを無償化又は低廉化した方が、出生増に繋がる上に、質の高い子が育って、将来の無駄遣いが少なくなると考える。

 *3-1-3は、⑬2024年度の文教関係予算は前年度比1.0%増の4兆563億円 ⑭公立小中学校の教職員給与に充てる国の負担金を増額して初任給を5.9%引き上げ ⑮教員の長時間労働是正に向け、働き方改革の推進に重点を置いた ⑯今は1人の教員が算数や理科などほぼすべての教科を担当しているが、小学校高学年で教科ごとに担当する教員が異なる教科担任制を進め ⑰2024年度に全国で1900人増員するために40億円計上 ⑱2024年度からは教員が授業準備や指導に集中できるよう事務作業を担う「教員業務支援員」をすべての公立小中学校で配置するため、2万8000人分の81億円を盛り込んだ と記載している。

 学校は、教職員が楽に働ける場所であることが目的ではなく、子に質の高い教育を与えることが目的の場所である。そうでなければ、親自らが教えたり、塾に通わせたりしなければならないため、親の負担が著しく、誰が親であるかによって子の教育格差も大きくなるのだ。

 そこから出発すると、⑬⑭⑯⑰のように、公立小中学校の教職員の初任給を引き上げて優秀な教員を採用できるようにするとともに、小学校でも高学年では教科担任制を進めるのは良いと思う。そして、そのための文教関係予算の増額は必要だろうが、それはあくまで、⑮のような教員の長時間労働是正目的ではなく、教育の質向上が目的でなければ困る。

 ただし、教育の質向上が目的であっても、教員の事務作業を減らして教員が教育関係の仕事に集中できるようにするため、⑱のように、事務作業を担う「教員業務支援員」をすべての公立小中学校に配置するのは必要なことであるし、そのための予算も必要だ。

 そして、それらの予算は、他省庁のバラマキ景気対策や時代遅れの産業政策を廃して捻出するのが当然であり、それができるのは政治しかないのである。

2)少子化対策の財源←子育て重視に名を借りた高齢者虐待と詐欺
 *3-1-2は、「少子化財源、全世代で負担」と題して、①3.6兆円の予算を確保し、児童手当の拡充や保育サービスの充実に充当 ②財源は、i)社会保障費抑制 ii)既存予算活用 iii)医療保険に上乗せする後期高齢者を含む全世代からの拠出支援金 ③会社員なら収入に一定割合をかけた金額の拠出をする形が有力 ④健康保険組合等が公的医療保険の保険料に上乗せして集める ⑤経団連・連合・健康保険組合連合会は「現役世代に負担が集中しないようにすることが重要」と全世代負担の必要性強調 ⑥収入額に一定割合をかける仕組みにすると、稼ぎが多い現役世代に負担が偏る ⑦予算を確保できるまでの不足分はつなぎ国債 ⑧基礎年金は59歳で支払いが終わり、介護保険料は40歳から ⑨「支援金制度は、社会保険の流用」という専門家の批判 ⑩社会全体で能力に応じて負担できる消費税を財源とすべきとの声がある 等と記載している。

 このうち①の3.6兆円の予算は、原発維持目的の電源三法交付金廃止、農業補助金の選別(https://no1pac.com/?p=1557 参照)、民間企業なら自分でやるべきことへの補助金の廃止(https://www.navit-j.com/service/joseikin-now/blog/?page_id=30631&yclid=YSS.1001256002.EAIaIQobChMIhbu55e6ugwMVJNkWBR37jw24EAAYAyAAEgI7G_D_BwE 参照)など、思い付きで次々と増やして古くなっても残ったままの補助金の整理・統合を行って叩き出すべきだ。

 にもかかわらず、②のように、社会保障費を抑制すれば、現在ニーズがあって増えている医療・介護費が削がれる上、④のように、後期高齢者を含む全世代から医療保険に上乗せして支援金を拠出させれば、このような社会保障のなかった時代に自分で子育てしたり、子育てを諦めたり、自ら親を介護したりした高齢者にとっては二重負担である。そのため、現代の子育て支援の恩恵に預かれない世代に費用を負担させるのは公正でも公平でもないし、生産年齢人口の減少ならば女性・高齢者・外国人労働者の活用で十分に賄えるのである。

 そのような中、③⑤⑥のように、これまではなかった制度を作ってもらいながら、「稼ぎが多い現役世代に負担が偏る」などと主張し、退職して稼ぎのなくなった高齢者から支援金を拠出させようとする現役世代を育てたのは誰か、それこそ親や教師の顔が見たいし、これまで高い税金を払って他人の子の教育費を支援してきたこと自体が馬鹿馬鹿しく感じられるのである。

 また、⑦も、時代遅れの補助金をカットして予算を確保するのでなければ、無限に予算が膨らみ、日銀に引き受けてもらって国債残高を無限に増やすしかなくなるが、それでは(1)1)で述べたように、円の価値が落ちて多くの弊害が生じるわけである。

 なお、⑧の基礎年金は、平均寿命が延びて、2024年4月からは65歳までの雇用確保が義務付けられるため、59歳で支払いを終える必要はなく、65歳で支払いを終えれば十分である。

 しかし、介護保険制度は、65歳以上の人と40~64歳の特定疾病患者のうち介護が必要になった人を支える仕組みとされているが、64歳以下で特定疾病患者でなくても介護が必要な人はいるため、あまりに不自然な制限をつけすぎているのだ。そこで、私は、働く人すべてが介護保険料を支払うと同時に、介護や生活支援の対象となり、若くして介護や生活支援が必要になった人でも支えられる仕組みにすべきだと考える。
 
 なお、⑨の「支援金制度は社会保険の流用」というのはそのとおりで詐欺に近く、またもや目的外使用であり、これと同じ杜撰さが年金積立金不足も招いたのである。従って、この杜撰さを直さずに、⑩のように、消費税増税等で財源を賄っていけば、国民負担だけが著しく上がり、(理由を長くは書かないが)日本経済は今後も停滞すると言わざるを得ない。

3)財政健全化と称するご都合主義の財源論
 そもそも、保険とは、損害保険の場合は、自然災害・ケガ・盗難・損害賠償責任等で損失が生じた時に、その損失を保険の加入者間で分散して負担する仕組みであり、必要な掛け金は損害発生のリスクに応じて算定される。また、保険会社も自社の事業リスクを分散するため、他の保険会社に「再保険」を行うことが多い。

 また、民間医療保険の場合は、保険金・給付金の支払いに充当する「純保険料」と保険会社の人件費や広告宣伝費等の経費に充当する「付加保険料」で構成され、「純保険料」には、解約払戻金や満期時の保険金支払いに充当する「生存保険料」と死亡時の支払いに充当する「死亡保険料」がある。そして、純保険料は保険加入者が病気にかかったり、死亡したりするリスク(≒年齢・既往歴・性別等)を基に計算され、付加保険料は保険会社の経費の違いで変わる。

 つまり、保険とは、リスクを分散して負担するために考えられた制度で、被保険者のリスクの高さに応じて純保険料が計算され、それに保険会社の経費である付加保険料を加えて保険加入者の支払保険料が決まる論理的なサービスであって、所得再配分のツールではないのだ。

 しかし、公的保険が、被保険者のリスクの高さではなく、“負担能力”に応じて保険料を徴収するのであれば、それは「保険」から逸脱している。さらに、*3-2-2のように、「財源確保」「応能負担」等と称して保険金の支払い時(=サービス提供時)にまで所得に応じて支給金額を変えれば、所得と国民負担の曲線は滅茶苦茶になり、「保険の仕組み」から遠く逸脱して、もはや「保険」とは言えない状況になっているのだ。

 その上、*3-2-1のように、少子化対策のうちの医療費以外の財源を医療保険料に上乗せして徴収すれば、それは医療保険の目的外使用(=流用そのもの)であり、そのようなことをすれば、理論的に計算された筈の保険料が足りなくなるのは当然なのである。そのため、「歳出改革」等と称して平気でこのようなことを主張する人は、保険の仕組みが全くわかっていないと言わざるを得ない。

 このような中、*3-1-4は、①少子化対策の財源が課題 ②政府は医療保険料ルートで2028年度時点に年間1兆円を「こども・子育て支援金」として集める予定 ③再分配効果を高めるには幅広い国民が負担能力に応じて協力する仕組みが要るが、支援金は応能負担の視点が弱い ④高齢者にも負担を求める制度にしたのは良いが、総人口の15%超を占める75歳以上の負担分は7%程度 ⑤所得だけでなく資産の保有状況に応じて世帯の負担額を決める仕組みを導入し、現役世代の負担軽減をすべき ⑥政府は支援金制度がフル稼働する2028年度までに歳出改革を徹底する ⑦医療費・介護費の抑制に直結する歳出改革に取り組むべきで、これを欠けば現役世代の負担感はどんどん強まり、出産意欲にも響きかねない ⑧少子化の大きな要因は未婚化で、若い世代が就労で経済基盤を安定化させるための支援こそ急ぐべき ⑨いったん非正規になると抜け出せない硬直的労働市場の改革や正規・非正規の処遇格差の是正等が重要 等としている。

 このうち、①については、1947年5月3日に施行された日本国憲法は26条で「I.すべて国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する  II.すべて国民は、法律の定めるところにより、その保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負ふ。義務教育は、これを無償とする」と定めているため、教育は優先事項であり、(3)2)で記載したとおり、他省庁の無駄な補助金を廃止して捻出すべきもので、どういう形であれ、新たに国民負担を増やして財源を確保すべきものではない。

 また、②については、医療保険料ルートで2028年度時点に年間1兆円を「こども・子育て支援金」として集める予定とのことだが、それでも新たな負担になることは同じだし、③の再分配効果は既に所得税・相続税の累進課税制度で行なわれており、保険料はリスクに応じて計算すべきもので、所得の再分配を行なうためのものではないことを、(多分)意図的に無視している。

 また、④の「高齢者にも負担を求める制度にしたのは良い」というのも、高齢者は児童手当や教育無償化などなかった時代に自前で子育てした人であることを考えれば二重負担を強いているため、(総人口の何割であろうが)子育て適齢期の終わった人から子育て支援金を徴収するのは誤りだ。さらに、⑤についても、資産は課税済所得から形成されたものであるため、相続以外で資産に応じて世帯の負担額を決めるのは、税の基本から外れる二重課税にほかならない。

 そのため、⑥の「政府は支援金制度がフル稼働する2028年度までに歳出改革を徹底する」というのであれば、それは的外れの積み重ねでわけのわからない負担になると思われる。

 さらに、⑦の「医療費・介護費の抑制に直結する歳出改革に取り組むべき」等とうるさく言うのなら、医療・介護の高い公的保険料を支払うのには嫌気がさすので、医療・介護の公的保険制度を全部止めて民間保険で賄い、民間保険に入れない人は子に面倒を見てもらえばよい。そうなると、子育てに金を使うより自分の老後に備えて金を貯めておく必要があるため、出生率はさらに下がるが、やってみなければわからない人が多いので、やってみせるしかない。生産年齢人口の減少は、高齢者・女性・外国人労働者にチャンスを与えれば補えるため全く問題ない。

 なお、⑧の「少子化の大きな要因は未婚化」というのは正しいが、若い世代が就労で経済基盤を安定化させるには、政府の支援ではなく非正規雇用の廃止と共働きの推進が必要なのである。つまり、⑨のように、非正規雇用の割合が多く、正規雇用になりたくてもなれない労働市場は、1990年代後半になってできたのであり、その解決には「正規・非正規の処遇格差の是正」ではなく、労働法で守られない非正規雇用の廃止が必要なのである。

 最後に、*3-2-3は、土居慶大教授の話として、⑩経団連の提言は財政健全化への経済界の強い思い ⑪社会保険料率は過去最高水準で、企業の持続的賃上げにも影響大 ⑫金融資産も含めた「経済力」に応じて負担を考えるべき ⑬政府・与党の議論は進んでいない ⑭給付を増やして負担も増やすのか、給付自体を減らすのか、制約をなくした議論が必要 としている。

 しかし、⑫のように、課税済所得から形成された金融資産に相続以外で課税すれば二重課税になることは、慶大教授でもわかっていないようだ。そのため、⑬のように、政府・与党も議論を進めないのだろうが、⑩のように、経団連が財政健全化を言うのなら、時代遅れの産業政策補助金を自ら整理し、役割を終えた租税特別措置も廃止して、生産年齢人口の大人に対する補助金を減らすようにすべきである。また、⑪については、企業が社会保険料を負担しない非正規雇用を廃し、短時間労働でも正規雇用として雇い、休職や転職も容易化すればよいだろう。

4)年金給付減と診療報酬・介護保険料の負担増
イ)「マクロ経済スライド」という名の公的年金実質価値減少装置
 年金は、1973年に公的年金額の実質的価値を維持する制度として「物価スライド」が導入され、具体的には前年(1月から12月まで)の消費者物価指数の変動に応じて翌年4月から自動的に年金額が改定され仕組みになっており、これが私的年金にはない公的年金の長所だった。

 しかし、平成16年(2004年)の年金制度改正で、平成17年(2005年)4月から年金財政の均衡を保つことができない場合に給付水準を自動的に調整するとして、「マクロ経済スライド」が導入された。これにより、年金額の伸びを物価の伸びより抑えて公的年金額の実質的価値を減らして年金制度を維持することとなり、公的年金の大きな長所がなくなったのである。

 ただし、目立たないように年金額の実質的価値を減らすには、物価の伸びが大きくなければならない。そのために、日銀の物価上昇政策が、(他に色々と屁理屈をつけてはいるが)物価を上昇させるために行なわれたのだと言える。

 そして、*3-3-1は、①2024年度の公的年金の支給額改定では、給付を抑制する「マクロ経済スライド」が2年連続で発動される前提で予算編成 ②年金額自体は上がるが、物価上昇の伸びほど増額にならないため実質的目減り ③2024年度の年金改定率は厚労省が2024年1月に公表し、6月の受け取り分から適用 ④マクロ経済スライドは年金財政の安定化のために導入され、物価の下落局面では発動しないため、長引いたデフレ下では十分に給付を抑制できず、この20年ほど年金を「払いすぎる」状態だった ⑤払いすぎた年金は将来世代の給付を抑えて帳尻を合わせざるを得ず、調整は基礎年金で2046年度まで抑制が続く見込み としている。

 もともと、年金は、i)支払いもしないのに給付されるサラリーマンの専業主婦に目的外給付をしており ii)団塊の世代が生産年齢人口にあたっていた時代に厚労省の外局だった「社会保険庁」が、単年度主義でものを考えて年金原資が余っていると勘違いし、目的外支出を行なったため大きな積立不足に陥った のであるため、国民には全く責任がない。

 にもかかわらず、「マクロ経済スライド」というわけのわからない名前をつけて、物価を上げながら実質年金支給額を減らしている点で、高齢者の生活を全く考えていないし、頭の使い方が歪んでいる。本来なら、「物価スライド」のまま、厚労省の政策ミスで足りなくなった年金原資は、それこそ国債を発行してでも最初の契約を守るべきなのである。

ロ)介護保険料引き上げ
 *3-3-3は、①厚労省は2024年度から65歳以上で年間合計所得420万円以上の介護保険料を引き上げる方針 ②住民税非課税世帯等の低所得者は引き下げる ③現在は、国が所得に応じて基準額を9段階に分け、65歳以上の保険料は国の基準を参考に市町村が決める ④現在の最も高い所得区分は年間合計所得が「320万円以上」で、新たに「420万円以上」「520万円以上」「620万円以上」「720万円以上」の4段階を設けて13段階にする ⑤現在の保険料基準額の全国平均は月6,014円(21~23年度)で、9段階の最も高い所得区分で基準額の1.7倍だったが、新たに設ける10~13段階は1.9~2.4倍に引き上げる ⑥所得再分配機能を強めることで、これまで低所得者の負担軽減に投じてきた公費382億円分(国と地方で折半)を浮かせ、介護職員の処遇改善などに回す と記載している。

 自分や親が介護保険制度の世話になる確率(=要介護になるリスク)は、所得とはむしろ逆相関の関係にあり、所得の高い人ほど、元気に働いており、要介護になるリスクは低い。逆に、自分が要介護状態になれば、働けなくなって所得がなくなる上に、治療費・介護費がかかるため、生活が苦しくなる。そのため、元気なうちから、病気や事故のリスクに備えて自分で蓄えたり、介護保険でリスク分散したりするのが介護保険制度の役割なのであり、介護保険制度の役割は間違っても所得の再分配ではないのだ。

 そのため、上の①~⑥は、政策としては介護保険制度の目的を誤っており、地方によって異なる年齢構成をならすために国が介護保険制度を持っているのに、地方の負担を多くしたりして本来の趣旨から大きく外れた。そのため、ここまでご都合主義で目的をすり替えるのなら、厚労省は信頼できないため、「公的保険は止めて、民間の保険を使った方がよい」という結論にならざるを得ないのである。

ハ)医療・介護費用の負担贈について
 *3-3-2は、①「2025年には団塊の世代がすべて後期高齢者になり、国の医療費が膨らむ」と予想 ②医療・介護を支える負担が現役世代や企業に偏れば投資や賃上げの壁になる ③経団連は、2024年度税制改正への提言で「全世代の国民が負担する消費税が公平で安定的」「社会保障財源として消費税引き上げが有力な選択肢」とした ④高齢者医療を支える現役世代からの拠出は増え続け、健康保険組合からの拠出金は後期高齢者医療制度が発足した2008年度は約2.7兆円、2022年度は3.4兆円で、2026年度は4兆円を超える見込み ⑤「年間保険料負担/人」は2008年度38.6万円、2022年度51.1万円 ⑥マイナンバーを通じて個々人の経済力を把握し、資産の保有状況に応じた課税のほか、社会保険料や自己負担引き上げについても検討すべきとも提言 ⑦日本の家計における純金融資産は約1600兆円、保有額1億円以上の富裕層が全体の約22%保有 ⑧野村総合研究所の木内登英エグゼクティブ・エコノミストは「社会保障制度を支えるため中長期的な安定財源として消費税引き上げが適切」と指摘 等としている。

 このうち①については、高齢になるほど慢性疾患の有病率が上がるため、団塊の世代がすべて後期高齢者になって後期高齢者の割合が増えれば、医療費だけでなく介護費も増えるのが当然で、これは1970年代からわかっていたことである。

 しかし、②の「医療・介護を支える負担が現役世代や企業に偏れば投資や賃上げの壁になる」という主張については、それなら医療・介護を公的保険で賄わず、昔と同様、個人の責任にすれば、現役世代や企業は助かるのかという選択になる。何故なら、介護保険制度は2000年に始まったため、団塊の世代を含む高齢者は、既に家族の責任で介護を行なってきたからだ。

 また、医療保険は、1956年時点では日本の人口の約1/3が未加入で、1958年の国民健康保険法改正により初めて全ての市町村で地域保険制度の設立が義務化され、1961年に国民皆保険が達成された(https://japanhpn.org/ja/historical-1/ 参照)のであるため、現在の後期高齢者は適切な医療を受けることもままならず、個人で対応していた時期が長かったわけである。

 そのため、良い医療・介護保険制度ができたにもかかわらず、「支える負担が現役世代や企業に偏れば投資や賃上げの壁になる」というのは、企業や現役世代の甘えとエゴが激しすぎるため、公的医療・介護保険制度を廃止して、それがないケースを実感させる必要があるだろう。

 なお、③⑧の「全世代の国民が負担する消費税が公平で安定的」「社会保障制度を支えるため中長期的な安定財源として消費税引き上げが適切」などと言うのは、(2)4)イ)で述べたとおり、間接税である消費税は景気にかかわらず「安定的!」に徴収されるため、景気が悪くて所得が低くなると税率が高くなり、同じ年でも所得の低い人ほど消費性向が高いため税率が高くなるという悪税なのである。そのため、これを「公平」とか「適切」などと言うのは、税に関する知識がないため意見を言う資格のない人であろう。

 また、④⑤の後期高齢者医療制度が発足した2008年度は私も自民党衆議院議員だったため、私は自民党の部会で「後期高齢者医療制度のような意図的な区分をすると、必ず問題が起こる」と言って反対したが、暴走して決まってしまったものだ。

 問題が起こる理由は、それまでは高齢者も国保や被用者保険のそれぞれに加入し、各医療保険の責任ではない加入者の年齢構成の違いによって生じる医療費の差を調整するという保険として当然のことをしていたのだが、2008年に「現役世代と高齢者世代の負担を明確にし、公平な制度とする」「これからも安心して医療を受けることができるように、老人医療費を被保険者(加入者)も含めた社会全体で支えあう」などと称して後期高齢者医療制度導入し、75歳以上のすべての高齢者を独立した保険制度(後期高齢者医療制度)に入れ、公費(税金)5割、国保と被用者保険からの支援金4割、高齢者の保険料1割という意図的な支援割合を決めたからである(https://www.mhlw.go.jp/bunya/shakaihosho/iryouseido01/info02d-35.html 参照)。そして、このような意図的な割合を決めれば、人口構成が変わって保険の使用頻度が変われば、保険の理論から外れて公平にならないのは当たり前なのである。

 さらに、⑥⑦のように、マイナンバーを通じて個々人の経済力を把握し、資産の保有状況に応じて課税したり、社会保険料や自己負担を引き上げたりすれば、サービスの提供価格が所得によって変わり、既に累進課税で所得税を支払っているため、二重どころか、三重、四重、五重の負担になる異常事態だ。そのため、「日本に置いておくのは生活に必要な当座資金だけ」ということにしなければならなくなる。

二)診療報酬と介護報酬の引き上げについて
 *3-4-1は、①政府は2024年度の診療報酬改定で、医療従事者の人件費など本体部分の改定率を0.88%として医療現場の賃上げに繋げる ②「薬価」部分は1%近く引き下げて全体の改定率はわずかにマイナス ③医療費は5割が保険料・4割が税金・1割が患者の支払う窓口負担で成り立つ国民負担そのもの ④本体のプラス改定で薬価引き下げに伴う保険料や医療にかかる税金の軽減効果が打ち消される ⑤国民負担の抑制が進まず、医療分野の歳出改革が不十分になる恐れ ⑥厚労省と日本医師会等は他産業と足並みを揃えられるよう、本体部分の大幅な増額を求めていた ⑦財務省は診療所の利益率は高く、マイナス改定しても賃上げできると主張 ⑧本体改定率0.88%のうち薬剤師・看護師・看護助手等の賃上げ分0.61%、入院患者の食費引き上げ0.06% ⑨賃上げ率は定期昇給分を含めて4%程度の見通し ⑩2023年度の予算ベースの医療費は48兆円で高齢化等により医療費は自然に増える ⑪政府は2024年度に同時改定する介護報酬の改定率もプラスにして人材流出に歯止めがかからない介護現場の賃上げを後押しする ⑫診療報酬を全体でマイナス改定しても介護報酬等の増額分を含めれば社会保険料の負担は増える 等としている。

 医療・介護従事者も物価上昇に見合った賃上げを行なわなければ実質賃金が下がり、他産業との賃金の差が大きくなれば人材が流出する。そのため、財務省が、⑦のように、「診療所は利益率が高いためマイナス改定しても賃上げできる」と主張したとしても、医師は資格を取るためのコスト(時間と費用)が大きく、間違った診断をすれば人の人生を変えてしまうため、長くない働き盛りに他産業より利益率が高かったとしても、決して「儲けすぎ」にはならないだろう。

 従って、⑥のように、「厚労省と日本医師会等が他産業と足並みを揃えた本体部分の大幅な増額を求めていた」というのは理解できる。

 また、①⑧⑨のように、政府が2024年度の診療報酬改定で医療従事者の人件費等の本体部分の改定率を0.88%として上げたのは良いが、「そのうち薬剤師・看護師・看護助手等の賃上げ分0.61%、入院患者の食費引き上げ0.06%」「賃上げ率は定期昇給分を含めて4%程度の見通し」などというのは、あまりにも箸の上げ下ろしにまで干渉しすぎていると思う。

 私は、むしろ慢性疾患の患者は通院頻度を減らし、1回あたりの診療報酬を上げた方が合理的だし、②の「薬価」も「薬の処方しすぎ」はやめて、価格はメリハリをつけるべきだと考える。

 また、⑩の「2023年度の予算ベースの医療費は48兆円で高齢化等により医療費は自然に増える」というのは、1970年代からわかっていた当然のことであるため、医療費を節約するには、医療行為も自由診療と併用できるようにして、自由診療で100%支払ってもニーズのある効果的な医療行為や投薬を、その価格(ここが重要)で速やかに保険診療に移行する(つまり、専門家と患者という市場で価格決定させる)のが最善だと思う。

 なお、③④⑤の「医療費は5割が保険料・4割が税金・1割が患者の支払う窓口負担で成り立つ国民負担そのもの」「本体のプラス改定で薬価引き下げに伴う保険料や医療にかかる税金の軽減効果が打ち消される」「国民負担の抑制が進まず、医療分野の歳出改革が不十分になる恐れ」等というのは、価値のないサービスに負担だけがあるのではないため、失礼な言い方である。

 さらに、⑪のように、「政府は2024年度に同時改定する介護報酬の改定率もプラスにして人材流出に歯止めがかからない介護現場の賃上げを後押しする」のはよいが、他産業と比較してとかく3Kになりがちな介護現場の賃金が他産業よりも大きく見劣りするのでは、人材流出が止まらない。そのため、⑫については、より理にかなった経営方法を考えつつも、福利を享受できる社会保険はそれこそ全世代で支えるべきだと思う。

 そのような中、*3-4-2は、⑬政府は介護サービスの公定価格である介護報酬を2024年度から1.59%引き上げる ⑭1.59%のうち介護職員らの賃上げ分に0.98%を充て、賃上げした事業者の仕組み変更に伴う追加費用や光熱費高騰対策で0.45%分を追加予定 ⑮結果、全体で実質2.04%相当の増額予定 ⑰政府はロボットでの巡回やセンサーでの見守りなどを導入する施設に報酬を加算する ⑱介護報酬の財源は利用者が払う原則1割の自己負担を除き、40歳以上の個人と企業が拠出する保険料と税金で半分ずつ賄う ⑲国の介護費用は23年度13.8兆円、1.59%増えると2200億円弱増加 ⑳厚労省の調査で、介護サービスの2022年度利益率は平均2.4%で前の年度から0.4%低下し、特別養護老人ホームは初めて赤字に転じた としている。

 このうち⑬⑭⑮の「介護サービスの公定価格である介護報酬を2024年度から1.59%引き上げる」「そのうち介護職員らの賃上げ分0.98%」というのは、物価上昇に追いついていないため、介護職員の実質賃金は下がる。また、他産業の賃上げ率以下であれば、他産業と介護職員の賃金格差はさらに広がるため、この大きな賃金格差を容認している理由をまず聞きたい。

 また、1番上の右図のように、物価実感(食料・光熱費等の購入頻度の高いものの物価上昇率)は13~15%であるため、「賃上げした事業者の仕組み変更に伴う追加費用や光熱費高騰対策0.45%」をすべて経費上昇分にあてても不足するだろう。そして、これが、日銀のインフレ政策の結果なのである。

 なお、政府は合理化と言えば、必ず、⑯のような、i)ロボットでの巡回 ii)センサーでの見守り 等のIT化をイメージしているが、人の使い方も、iii)専門職以外でできる仕事は、専門職以外に移動する iv)(洗濯・掃除・食事などで)外注できることは外注する v)外国人労働者を活用する など、経営上、合理化できることはまだまだ多い。

 そのため、それらを行なえば、⑲のような利益率低下や特別養護老人ホームの赤字を解決する一助にはなると思われる。また、介護も自費負担と併用できるようにすれば、「本当はもっと生活支援をして欲しいのに、ホームヘルパーに中途半端で帰られてしまった」ということがなくなり、訪問介護センターの利益も増えるだろう。

 その介護の財源については、⑰⑱のように、「介護報酬の財源は利用者が払う原則1割の自己負担を除き、40歳以上の個人と企業が拠出する保険料と税金で半分ずつ賄う」「国の介護費用は23年度13.8兆円、1.59%増えると2200億円弱増加」などとされているが、そもそも介護保険制度の対象を40歳以上にする根拠はないため、まず「働く人すべて」に拡大すべきである。

・・参考資料・・
<日銀の金融緩和・物価上昇・円安政策について>
*1-1-1:https://www.nikkei.com/article/DGXZQOFL110D00R11C23A2000000/ (日経QUICK 2023年12月11日) 外為12時 円相場、下落 145円台半ば 米利下げ観測後退や株高で
 11日午前の東京外国為替市場で、円相場は下落した。12時時点は1ドル=145円42〜43銭と前週末17時時点と比べて1円34銭の円安・ドル高だった。11月の米雇用統計が労働市場の引き締まりを映す結果となり、早期の米利下げ観測がやや後退。日経平均株価が大きく上昇したのも「低リスク通貨」とされる円の売りを促した。円は145円57銭近辺まで下げ幅を広げる場面があった。8日発表された11月の米雇用統計で雇用者数の伸びが市場予想を上回り、失業率は前月から低下した。米連邦準備理事会(FRB)による早期の利下げ観測が後退したとして米長期金利が上昇し、日米の金利差拡大を意識した円売り・ドル買いが出た。東京市場では国内輸入企業による円売り・ドル買い観測も相場を下押しした。日銀がマイナス金利政策を早期に解除するとの思惑は円相場を下支えしたものの、「12月に決めるかは疑問」(国内銀行の外為ディーラー)だとの声もあり、相場が急伸した前週に積み上がった円買い・ドル売りの持ち高を縮小する動きも広がった。円は対ユーロでも下落した。12時時点は1ユーロ=156円55〜58銭と、同1円24銭の円安・ユーロ高だった。11日午前は日経平均が一時600円あまり上昇し、対ユーロでも「低リスク通貨」とされる円には売りが増えた。ユーロは対ドルで下落し、12時時点は1ユーロ=1.0765〜66ドルと同0.0014ドルのユーロ安・ドル高だった。

*1-1-2:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/1121365 (佐賀新聞論説 2023/10/05) 円安150円台 緩和見直し弊害抑えよ
 円相場は一時、1ドル=150円台と約1年ぶりの円安ドル高水準をつけた。背景にあるのが日銀の大規模な金融緩和だ。日本経済の下支えに緩和政策は必要だが、高インフレの下で過度の低金利を続けることは副作用を増幅させる。足元の円安がまさに該当しよう。円安は物価高をさらに悪化させかねない。円相場は150円台の直後に一時急上昇し、外国為替市場に「政府・日銀が円安阻止へ市場介入に踏み切ったのでは」との観測が広がった。だが金融政策が変わらなければ、介入しても効果は限られる。日銀は弊害の抑制へ大規模緩和の見直しを急ぐべきだ。円安には自動車など輸出企業の利益増や、それによる賃上げのプラス効果の半面、輸入コスト増による物価上昇のデメリットが伴う。政府・日銀が昨年9月、約24年ぶりの円買いドル売り介入に踏み切ったのも物価対応のためだった。足元の状況はこの時に似ている。国内の消費者物価(生鮮食品を除く)は食品などの値上げが響き、8月まで12カ月続けて3%以上の上昇率を記録した。物価を左右する原油価格は産油国の協調減産などで再び高騰。ここに円安が重なれば原油だけでなく、穀物など輸入原材料のコスト全体を押し上げる恐れがある。今の円安は、日本と米欧の金融政策の違いによる金利差拡大に主因を求められる。米欧は昨年来、インフレ退治のために利上げを実行。それでも物価は沈静化せず、金融引き締めの長期化を余儀なくされている。これに対して日銀は、長期金利を0%程度に固定する緩和策の部分修正を7月に実施しながらも、大規模緩和は基本的に変更せず、円が売られやすくなっていた。この状況では、たとえ介入で一時的に勢いを弱められても、円安傾向を変えるのは難しい。金融政策の方向性の違いに加えて、円安の背景には日本経済の構造的な要因がある点も見落とさないようにしたい。石油・ガスをはじめ食品などの原材料を輸入に頼る点は、外貨での支払いが円売りにつながりやすい。自動車のような輸出競争力のある製品が生まれにくくなった点や、企業が海外投資で得た外貨を円に交換しなくなった点なども、円安の背景に挙げられよう。日銀の「2%目標」を上回る物価高になって、はや1年半近く。政府が「デフレではない状況」と認めるのに日銀はインフレに手を打たず、大規模緩和を続けている。植田和男総裁は「賃上げを伴う安定的な物価上昇ではない」とその理由を強調するが、物価高に賃上げが追い付かない状態は既に16カ月も続く。対応が後手に回っていないだろうか。導入時から賛否のある物価目標に固執するあまり、円安や財政規律低下の弊害だけでなく、国民生活への感度が鈍っているようで気がかりだ。2%目標とともに、マイナス金利のような極端な緩和策が現状でも必要なのか、この機に問いたい。岸田文雄首相は、10月末をめどにまとめる経済対策に物価高への対応を盛り込む方針だ。電気・ガスやガソリンの価格抑制策に焦点が当たるが、家計や中小企業に打撃の大きい円安を見過ごしていいはずはあるまい。政策連携を図り、円安是正に資する日銀との意思疎通を深める時だ。

*1-2-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20231107&ng=DGKKZO75919130X01C23A1MM0000 (日経新聞 2023/11/7) 実質賃金9月2.4%減 18カ月連続マイナス 基本給は1.5%増
 厚生労働省が7日発表した9月の毎月勤労統計調査(速報、従業員5人以上の事業所)によると、1人当たりの賃金は物価を考慮した実質で前年同月比2.4%減った。マイナスは18カ月連続となる。物価高の勢いに賃金上昇が追いつかない状況が続いている。実質賃金のマイナス幅は前月の2.8%からはやや縮小したが、なお2%台だ。実質賃金を算出する指標となる物価(持ち家の家賃換算分を除く)は3%台の上昇が続いており、賃金が目減りする状態にある。足元では名目賃金は緩やかに増えている。1人当たりの現金給与総額は前年同月比1.2%増の27万9304円だった。プラスは2022年1月から21カ月連続となる。現金給与総額のうち、基本給にあたる所定内給与は1.5%増で、5カ月連続で1%台の伸びになった。賃上げ効果が一定程度反映されている可能性がある。就業形態別にみると、正社員ら一般労働者は1.6%増の36万3444円、パートタイム労働者は1.9%増の10万2135円だった。

*1-2-2:https://www.nikkei.com/paper/related-article/?b=20231107&c=DE1&d=0&nbm=DGKKZO75919130X01C23A1MM0000&ng=DGKKZO75919440X01C23A1MM0000&ue=DMM0000 (日経新聞 2023/11/7) 消費支出2.8%減少
 総務省が7日発表した9月の家計調査によると、2人以上の世帯の消費支出は28万2969円と、物価変動の影響を除いた実質で前年同月比2.8%減少した。マイナスは7カ月連続となった。食料など生活関連や住宅への支出が減り、消費を押し下げた。QUICKがまとめた市場予測の中央値の2.7%減を小幅に下回った。8月は2.5%減で減少幅は2カ月ぶりに拡大した。消費支出を構成する10項目のうち8項目で前年同月を下回った。

*1-3-1:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/1143147 (佐賀新聞 2023/11/15) 7~9月GDP、年率2・1%減、3期ぶりマイナス、個人消費不振
 内閣府が15日発表した2023年7~9月期の国内総生産(GDP、季節調整済み)速報値は物価変動を除く実質で前期比0・5%減、年率換算は2・1%減だった。22年10~12月期以来、3四半期ぶりのマイナス成長となった。物価高を受けた個人消費の不振に加え、企業の設備投資も落ち込み、新型コロナウイルス禍からの景気回復に急ブレーキがかかった。物価変動の影響を含んだ名目のGDPは4四半期ぶりに落ち込み、前期比0・04%減、年率換算は0・2%減だった。景気実感に近いとされる名目の数値もマイナスとなったことで、景気の停滞感が強まっている。実質GDPを項目別に見ると、GDP全体の5割超を占める個人消費は、自動車販売や食料品が落ち込んで前期比0・04%減、設備投資は半導体製造装置に対する投資の減少が響いて0・6%減だった。住宅投資や公共投資もマイナスで、国内需要は総崩れだった。輸出は自動車が増えた一方、輸出に区分されるインバウンド(訪日客)消費が振るわず、0・5%増にとどまった。輸入は著作権使用料の増加などで1・0%増えた。GDP全体への影響度合いを示す寄与度は、個人消費や設備投資などの「内需」がマイナス0・4ポイント、輸出から輸入を差し引いた「外需」はマイナス0・1ポイントだった。内需のマイナスは、自動車輸出の増加に伴うとみられる民間在庫の減少が大半を占めた。22年10~12月期の実質GDPはこれまで年率換算で0・2%増だったが、0・2%減に改定された。23年1~3月期と4~6月期は年率換算で3・7%増、4・5%増と高成長が続いていた。
*国内総生産(GDP) 国内で一定期間に生み出されたモノやサービスの付加価値の合計額。内閣府が四半期ごとに公表し、景気動向や国の経済力を表す代表的な指標とされる。実際の価格で計算した名目の数値と、物価変動の影響を除いた実質の数値があり、実質がより重視される。前年や前四半期と比べた増減率を「経済成長率」と呼ぶ。

*1-3-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20231208&ng=DGKKZO76787190Y3A201C2MM0000 (日経新聞 2023年12月8日) GDP年2.9%減に下方修正 7~9月改定値 個人消費下振れ
 内閣府が8日発表した7~9月期の国内総生産(GDP)改定値は物価変動の影響を除いた実質の季節調整値が前期比0.7%減、年換算で2.9%減だった。11月の速報値(前期比0.5%減、年率2.1%減)から下方修正した。個人消費などが弱含み、4四半期ぶりのマイナス成長となった。QUICKが事前にまとめた民間予測の中心値は前期比0.5%減、年率2.0%減だった。成長率への寄与度は内需がマイナス0.6ポイント、外需がマイナス0.1ポイントだった。速報値では内需がマイナス0.4ポイント、外需がマイナス0.1ポイントの寄与度となっていた。内需の落ち込み幅が広がり、全体を押し下げた。内需の柱である個人消費は速報値の前期比0.0%減から0.2%減に下方修正。2四半期連続のマイナスとなった。最新の消費関連統計を反映した結果、食品や衣服などの消費が弱含んだ。品目別に見ると、衣服などの半耐久財は0.5%減から3.2%減に、食品などの非耐久財は0.1%減から0.3%減に下振れした。設備投資は前期比0.6%減から0.4%減に上方修正した。マイナスは2四半期連続となる。財務省が1日に公表した7~9月期の法人企業統計などを反映した。金融・保険業を除く全産業の設備投資が季節調整済みの前期比で1.4%増えた。非製造業が持ち直した。民間在庫の寄与度は前期比でマイナス0.3ポイントからマイナス0.5ポイントにマイナス幅が拡大した。在庫を積み増す動きが速報値での想定より弱かった。住宅投資は0.1%減から0.5%減に落ち込んだ。公共投資は前期比0.5%減から0.8%減に下方修正した。国内の総合的な物価動向を示すGDPデフレーターは前年同期比5.3%上昇した。

*1-4-1:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/1143818 (佐賀新聞 2023/11/16) 【GDP3期ぶりマイナス】やむなく節約、消費腰折れ、物価高の打撃鮮明、賃金鍵
 7~9月期の実質国内総生産(GDP)は3四半期ぶりのマイナス成長となった。物価高で打撃を受けた家計がやむなく節約を進め、消費が腰折れしてしまった日本経済の姿が鮮明に浮かんだ。消費回復には賃上げの継続が欠かせず、2024年の春闘が鍵を握る。根本的には経済の底力を高めることも必要で、支持率の低迷する岸田文雄首相にとって経済運営の成否に政権の浮沈がかかる。
▽エンゲル係数
 11月中旬、兵庫県川西市のスーパー「阪急オアシス キセラ川西店」で自営業北島美代子さん(77)は、魚売り場を訪れた。物価は2年前と比べ、2~3割上がったと感じている。「会計の時に驚く。なるべく特売品を買う」。この日は「魚の日」。阪急オアシスのような比較的高級なイメージの店でも「曜日販促」を取り入れ、来店頻度を高める狙いだ。エイチ・ツー・オー(H2O)食品グループの松元努取締役専務執行役員は「値上げの中でご来店いただくため、客のニーズを見極めたい」と話す。総務省の家計調査によると、消費支出に占める食費の割合「エンゲル係数」は1~9月、2人以上の勤労者世帯で月平均26・3%となり、比較可能な00年以降の各年平均値を上回った。エンゲル係数がここまで上がった背景について、第一生命経済研究所の永浜利広首席エコノミストは「賃金上昇が物価上昇に追いついていない」ことを指摘する。生活水準にかかわらず食費には一定程度支出する必要があるためだ。指摘を裏付けるように、今回のGDPで賃金などを示す「雇用者報酬」は前年同期比2・0%減と低迷した。
▽チャンス
 政府が経済運営でとりわけ重視しているのが賃金上昇だ。「デフレ完全脱却に向けた千載一遇のチャンスが巡って来ている」。15日に官邸で開いた政労使会議。首相は経団連の十倉雅和会長らに24年春闘で23年を上回る賃上げを求めた。だが賃上げをする余裕のない中小企業は多い。三菱UFJリサーチ&コンサルティングの小林真一郎主席研究員は「中小企業が24年春闘で23年の賃上げ率を上回るかどうかは見通せない」と話す。
▽米欧下回る実力
 物価高に対応しようと政府が11月決定した経済対策には所得・住民税の減税や給付金のほか、ガソリンや電気代の補助金など家計を支援する内容が並んだ。総額は17兆円を超え、財政難の中で繰り出す対策として不適切だとの見方も広がった。今回のGDPが振るわなかったことを「岸田首相は対策の規模が適切だと訴える材料に使う」と、ある政府関係者は予測した。日銀の金融政策についても「大規模緩和から出口へ向かいにくくなった」(エコノミスト)との観測が浮上する。だが減税や大規模緩和で経済を支え続けても、中長期的な経済の実力を示す潜在成長率はなかなか伸びない。経済協力開発機構(OECD)によると22年時点で日本は0・5%にとどまり、米国の1・8%やドイツの0・9%を下回る。今回の経済対策には、半導体生産支援やデジタル化、リスキリング(学び直し)といった成長に向けた施策も盛り込まれた。岸田政権にとっては賃上げとともに、経済を中長期的な軌道に乗せられるかどうかも大きな課題となっている。

*1-4 -2:https://www.dlri.co.jp/report/macro/288062.html (第1生命経済研究所 永濱 利廣 2023.11.6) エンゲル係数上昇の主因は実質賃金低下、~食料・エネルギー価格上昇に伴い拡大する生活格差~
 経済的なゆとりを示す「エンゲル係数」が足元で高水準にある。エンゲル係数は家計の消費支出に占める食料費の割合であり、食料費は生活する上で最も必需な品目のため、一般に数値が下がると生活水準が上がり、逆に数値が上がると生活水準が下がる目安とされている。最近の我が国のエンゲル係数上昇は、実質実収入の減少と食料品の相対的な価格上昇が主因となっている。その背景には、明らかに賃金上昇が食料品を中心とした物価上昇に追い付いていない実質賃金の低下がある。一方で、高齢者世帯が多く含まれる無職世帯のエンゲル係数は低下傾向にある。背景には、新型コロナ感染に対する恐怖心緩和に伴うサービス支出の拡大があるが、依然としてコロナ前より高水準にあることから、必ずしも生活水準の上昇とは言えない。政府の小麦売り渡し価格が10月から1割以上下がっていることや、原発処理水の問題で海産物の価格が下がっていること等から、食料品の値上げラッシュはピークアウトしつつあるが、中長期的には人口の増加や海外の所得水準向上等に伴う需要の拡大に加え、脱炭素化や都市化による農地減少等も要因となり、食料・エネルギー価格の上昇トレンドは持続する可能性が高い。全体の物価が下がる中で食料・エネルギーの価格が上昇すると、特に低所得者層を中心に購入価格上昇を通じて負担感が高まり、購買力を抑えることになる。そして、低所得者層の実質購買力が一段と低下し、富裕層との間の実質所得格差は一段と拡大する。更に深刻なのは、我が国の低所得者世帯の割合が高まっている一方で、高所得者世帯の割合が低下傾向にある。こうした所得構造の変化は、我が国経済がマクロ安定化政策を誤ったことにより企業や家計がお金をため込む一方で政府が財政規律を意識して支出が抑制傾向となり、結果として過剰貯蓄を通じて日本国民の購買力が損なわれてきたことを表している。その結果、我が国では高所得者層の減少と低所得者層の増加を招き、家計全体が貧しくなってきた。本当の意味でのデフレ脱却には、消費段階での物価上昇だけでなく、国内で生み出された付加価値価格の上昇や国内需要不足の解消、単位あたりの労働コストの上昇が必要となる。そうなるには、賃金の上昇により国内需要が強まる『良い物価上昇』がもたらされることが不可欠といえよう。そのためには、実質賃金の上昇が不可欠となる。
●22年度以降上昇に転じるエンゲル係数
 経済的なゆとりを示す「エンゲル係数」が足元で高水準にある。特に二人以上世帯では2022年6月に26.0%まで低下したものが、今年7月には28.2%まで上がっている。
エンゲル係数は家計の消費支出に占める食料費の割合であり、食料費は生活する上で最も必需な品目のため、一般に数値が下がると生活水準が上がり、逆に数値が上がると生活水準が下がる目安とされている。
●エンゲル係数上昇の主因は実質賃金低下
 実際、直近2023年8月のエンゲル係数を前年比で見ても+2.2ポイント上昇を記録している。しかし、食料品の値上げが相次いでいる一方で食料品の消費量は減っているように見える。そこで、エンゲル係数の変化幅を食料品の消費量、すなわち実質食料支出と相対価格および全体の消費性向と実質実収入、非消費支出に分けて要因分解してみた。すると、実質食料支出と税金や社会保険料などの非消費支出がいずれも▲1.0ポイントの押し下げ働く一方、実質実収入の減少が+2.3ポイント、食料品の相対物価が+1.3ポイント、消費性向すなわち消費量全体の減少が+0.4ポイントそれぞれ押し上げ要因になっていることが分かる。消費性向すなわち可処分所得に対する消費の割合が下がった背景には、値上げに伴い節約志向が強まったことが推察される。一方、食料品の相対価格上昇の背景には、政府の物価高対策で電気ガスなどエネルギー価格が抑制されたことで相対的に食料品価格の値上がりが上回ったことが推察される。そして最大の押し上げ要因である実質実収入減の背景には、30年ぶりの賃上げが実現したにもかかわらず、賃上げがインフレに追い付いていないことが考えられる。つまり、実質賃金の低下に加え、相対的に高い食料品価格の上昇、家計の節約志向の強まりがこのところのエンゲル係数押し上げの実体である。なお、無職世帯に限ったエンゲル係数はそれほど上昇していないが、その背景にはコロナからのリオープンやエネルギー価格の上昇が関係している可能性がある。というのも、無職世帯の10大費目別の支出ウェイトの変化を見ると、足元では交通通信と教養娯楽のウェイトが拡大しているためである。つまり、高齢者の多い無職世帯では、コロナショック以降に行動制限が敷かれていたことで機会を奪われてきたサービス消費が持ち直す一方で、ロシアのウクライナ侵攻に伴う化石燃料等の資源高が特に交通費の支出を押し上げてきたことがエンゲル係数の上昇を抑制しているといえる。
●足元の物価上昇は「悪い物価上昇」
 こうした食料やエネルギーといった国内で十分供給できない輸入品の価格上昇で説明できる物価上昇は「悪い物価上昇」といえる。そもそも、物価上昇には「良い物価上昇」と「悪い物価上昇」がある。「良い物価上昇」とは、国内需要の拡大によって物価が上昇し、これが企業収益の増加を通じて賃金の上昇をもたらし、更に国内需要が拡大するという好循環を生み出す。しかし、ここ元の物価上昇は輸入原材料価格の高騰を原因とした食料・エネルギーの値上げによりもたらされている。そして、国内需要の拡大を伴わない物価上昇により、家計は節約を通じて国内需要を一段と委縮させている。その結果、賃金上昇が物価上昇に追い付かずにエンゲル係数が上昇していることからすれば、「悪い物価上昇」以外の何ものでもない。なお、10月から政府の小麦売り渡し価格が1割以上下がったことや、原発処理水の問題で海産物価格が下がっていることからすれば、短期的には食料品の価格上昇自体は減速が期待される。しかし、世界の食料・エネルギー需給は、中長期的には人口の増加や所得水準の向上等に伴う需要の拡大に加え、脱炭素化や都市化による農地減少等も要因となる。このため、食料・エネルギー価格の上昇トレンドは持続すると見ておいたほうがいいだろう。
●生活格差をもたらす食料・エネルギー価格の上昇
 ここで重要なのは、食料・エネルギー価格の上昇が、生活格差の拡大をもたらすことである。食料・エネルギーといえば、低所得であるほど消費支出に占める比重が高く、高所得であるほど比重が低くなる傾向があるためだ。事実、総務省「家計調査」によれば、可処分所得に占める食料・エネルギーの割合は、年収最上位20%の世帯が15.7%程度なのに対して、年収最下位20%の世帯では27.0%程度である。従って、全体の物価が下がる中で食料・エネルギーの価格が上昇すると、特に低所得者層を中心に購入価格上昇を通じて負担感が高まり、購買力を抑えることになる。そして、低所得者層の実質購買力が一段と低下し、富裕層との間の実質所得格差は一段と拡大する。更に深刻なのは、我が国の低所得者世帯の割合が高まっている一方で、高所得者世帯の割合が低水準にある。事実、総務省の家計調査年報で年収階層別の世帯構成比を見ると、年収が最も低い200 万円未満に属する世帯の割合は2000年から2022年にかけて拡大している一方で、年収が最も高い1500万円以上に属する世帯の割合は2000年から2022年かけて低下している。こうした所得構造の変化は、我が国経済がマクロ安定化政策を誤ったことにより、企業や家計がお金をため込む一方で政府が財政規律を意識して支出が抑制傾向となり、結果として過剰貯蓄を通じて日本国民の購買力が損なわれていることを表しているといえよう。そして、我が国では高所得者層の減少と低所得者層の増加を招き、結果として家計全体が貧しくなってきたといえる。
●日銀の出口判断に重要な賃金
 これに対し、日銀はインフレ目標2%を掲げている。しかし、輸入食料品価格の上昇により消費者物価の前年比が+2%に到達しても、それは安定した上昇とは言えず、『良い物価上昇』の好循環は描けない。つまり、本当の意味でのデフレ脱却には、消費段階での物価上昇だけでなく、国内で生み出された付加価値価格の上昇や国内需要不足の解消、単位あたりの労働コストの上昇が必要となる。そしてそうなるには、賃金の上昇により国内需要が強まる『良い物価上昇』がもたらされることが不可欠といえよう。となると、「2%の物価目標」達成をどう判断するかが重要となってくるが、ここではやはり賃金の動向が重要になってこよう。というのも、植田新体制になって日銀はフォワードガイダンスに賃金を盛り込んでいるからである。そして具体的に日銀は2%の物価目標を念頭に置いた場合、名目賃金上昇率+3%、つまり実質賃金が+1%上昇する姿が理想的であると説明している。このため、現時点で実質賃金が17カ月連続でマイナスであることからすれば、いくらインフレ率が2%を超えているとはいえ、日銀が理想とする「2%物価目標」とは程遠いと言えよう。となれば、少なくとも来年の春闘の結果が賃金に反映されるまでは金融緩和の出口には向かえないということになろう。

*1-5:https://digital.asahi.com/articles/ASR9X7G7QR9XULFA012.html?iref=comtop_list_01 (朝日新聞 2023年9月28日) 株も債券も円も…トリプル安 「日本当局にできることは限られる」
 28日の東京金融市場では、株式と円、国債が売られる「トリプル安」の様相となった。米国の金融引き締めが長期化しそうだとの観測から、米金利が上がったことが大きな要因。円安が連日進み、1ドル=150円を試す展開となった。起点の一つは、27日のニューヨーク市場で原油先物価格が約1年1カ月ぶりに1バレル=94ドル台まで上昇したことだ。米景気が底堅く、米連邦準備制度理事会(FRB)が金融引き締めを続けるとの見方から、米長期金利は年4・642%と16年ぶりの高水準をつけた。これにつられて、28日の東京市場でも長期金利の指標となる新発の10年物国債利回りが一時、0・750%まで上昇(国債価格は下落)。2013年9月以来の高水準となった。金利上昇は景気を押し下げる効果があるほか、相対的に株式への投資魅力が薄れるため、日米で株価が下落。日経平均株価は前日比499円38銭(1・54%)安の3万1872円52銭で終えた。700円弱、下落する場面もあった。終値で3万2千円を割るのは約1カ月ぶり。この日、3月期決算企業の中間配当を受ける権利を取得できる27日の翌日だったことも、日経平均の重しになった。外国為替市場では日米の金利差が改めて意識され、円を売って金利が高いドルを買う動きが続いている。27日のニューヨーク市場で円相場は約11カ月ぶりに1ドル=149円70銭台まで下落。28日の東京市場では買い戻しの動きもあったが149円台で推移した。午後5時時点では前日同時刻より30銭ほど円安の1ドル=149円31~32銭。心理的な節目となる150円が目前に迫り、市場では政府の為替介入への警戒感が強まった。SMBC日興証券の野地慎氏は「米金利の上昇が収まるまで、日本の当局にできることは限られ、市場の動きを牽制(けんせい)するしかないだろう」と指摘。ただ、米金利の上昇はあと1~2カ月で止まり、「次第に円高方向に向かうのではないか」とみる。

<減税するなら公正・中立・簡素の方向でやるべき>
*2-1-1:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/1151260 (佐賀新聞 2023/11/29) 補正予算成立 国民の疑念晴れぬままだ
 臨時国会は2023年度補正予算が成立し、終盤に入った。岸田文雄首相は論戦のヤマ場を乗り切ったと受け止めているかもしれないが、内閣支持率の下落を招いた国民の疑念は晴れないままだ。残る会期で説明責任を果たさなければ、政権から離反した民意は戻るまい。10月20日に召集された臨時国会の会期は、12月13日までの55日間。9月に第2次岸田再改造内閣が発足した後、初の本格論戦の場だった。政府は、物価高の家計負担を緩和するとして新たな経済対策を決定。対策の財源となる13兆1992億円の補正予算案を国会に提出した。首相主導の所得税と住民税合わせて1人当たり4万円の減税は、24年6月からの実施で補正予算の枠外だが、質疑ではその当否が最大の焦点になった。共同通信の世論調査で、非課税の低所得世帯向けの7万円給付を含め「評価しない」との回答が6割を超え、他社の調査でも同傾向だったからだ。減税されても、防衛力強化のための増税など負担増が控えていることや、財政悪化への懸念が主な理由だ。減税や給付の財源は、増税回避や財政再建に用いるべきだというわけだ。首相は「経済を立て直した上で、防衛力や子ども政策について国民に協力してもらう」と強調、増減税は同時実施にならないことから「矛盾しない」と断言した。減税の狙いに関しては、経済の好循環を生むため、物価高を上回る賃上げまで「可処分所得を下支えする」などと繰り返し訴えた。それでも内閣支持率が20%台に落ち込むのは、国民が減税を次の衆院選に向けて政権浮揚を図る方策とみなしていることも要因だ。首相は「選挙目当て」を否定するが、財政の行く末まで憂慮する国民に対し、首相の答弁は説得力に欠けていると言わざるを得ない。今国会では、公選法違反事件に関与した法務副大臣や過去の税金滞納を認めた財務副大臣ら自民党出身の3人の政務三役が辞任した。首相は人選を「手腕、経験、他の候補との比較を踏まえて行った」と釈明した。だが実態は、来年秋の自民党総裁選再選の障害となる党内の不満を抑え込むため、派閥推薦や年功序列に重きを置いたはずだ。国民の不信感は、保身を図るかのような首相の姿勢にも根差していると重ねて指摘しておきたい。国民の疑念をさらに増幅させたのは、自民5派閥がパーティーの収入を政治資金収支報告書に過少記載していたと告発された問題だ。21年までの4年分だけでも計約4千万円に上っている。各派閥は「事務的ミス」として順次報告を訂正しているものの、組織的、継続的な裏金づくりと疑われても仕方ないだろう。首相は信頼回復のため党として「どう対応すべきか考えたい」と述べたが、追及をかわす一時しのぎの発言であってはならない。対応策を早急にまとめ明らかにすべきだ。同様の問題は立憲民主党議員の資金管理団体でも発覚しており、与野党で取り組む課題でもある。内閣支持率の下落原因を聞かれた首相は「一つや二つではないと思う」と分析した。そう認識しているのであれば、国民が抱くさまざまな疑問に国会の場で丁寧に答え、改めるべきは改める謙虚な政権運営に努めなくてはならない。

*2-1-2:https://www.tokyo-np.co.jp/article/296097 (東京新聞 2023年12月15日) 与党の税制大綱がうたう「支援」のちぐはぐさ 扶養控除を一部縮小、今ほしい減税の恩恵は2024年6月に
 自民、公明両党は14日、2024年度の税制を見直す与党税制大綱を決めた。1人当たり計4万円の定額減税を24年6月から実施するほか、住宅ローン減税の拡充など子育て支援策が並んだ。一方、高校生年代(16~18歳)の子どもがいる世帯の扶養控除を縮小する方針だ。
◆若い夫婦などに住宅ローン減税優遇維持
 定額減税は所得税が3万円、住民税で1万円だが、年収2000万円超の所得制限を設けた。賃金や物価の状況に応じて「家計支援の措置を検討する」と記し、延長の可能性を含んだ。子育て世帯と若い夫婦に限り、省エネ基準適合住宅などを取得するとローン限度額を最大1000万円上乗せすることで、住宅ローン減税の優遇を維持する。住宅リフォーム減税では子育て環境のための改修工事を対象に追加。23歳未満の子どもを育てる人を対象に、生命保険料控除の上限を現行の4万円から6万円にする方針も入り、25年度大綱に向けた来年の議論で決める。ただ住宅購入などに対象が限られるため、優遇の使い勝手は悪い。一方、24年12月から、高校生年代の子どもがいる世帯に原則1人当たり月10000円の児童手当が支給されることを受け、扶養控除を縮小する。控除額は所得税で年38万円から25万円に、住民税で33万円から12万円となるが、手当から税負担を差し引いた金額は富裕層でも現行より増える。ただ、控除縮小は来年は行わず、正式決定を来年に持ち越した。
◆防衛増税の時期先送り 裏金問題が影響
 デフレ脱却のため、物価高を上回る賃上げや経済成長を後押しする法人税の減税策も並ぶ。大企業は高い賃上げ率の要件を新設し、より積極的な企業を優遇する。赤字の多い中小企業の賃上げを促すため、税額控除できなかった分を5年間繰り越せる制度も新設する。昨年と同様、防衛費増額のための増税時期の決定を先送りした。自民党税制調査会の宮沢洋一会長は「増税には政権の力が必要。昨今の政治状況は自民党にかなり厳しい風が吹いている」と14日の会見で述べ、政治資金パーティーを巡る裏金問題の影響があることを隠さなかった。
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◆首相肝いり「分断招かない」は看板倒れに
 14日に決まった2024年度与党税制改正大綱の柱が、岸田文雄首相が打ち出した定額減税だ。減税対象を自ら絞らない方針を示していたが、与党税制協議会が出した結論は年収2千万円超を除外する所得制限の導入。また、一人当たり4万円の減税額を来年6月の納税額から一気に引き切れないため、経済効果が生まれるとしても、後ずれする可能性がある。首相肝いりの政策は看板倒れになりつつある。「子育て世帯の分断を招くようなことはあってはならない」。定額減税が先月の経済対策に盛り込まれる前から、首相はこう強調し、所得制限を設けない考えだった。だが、自民党内では当初から、所得制限の導入に前向きな考えが大勢で、慎重姿勢だった公明党が自民党に歩み寄った。自民党の宮沢洋一税調会長は14日の会見で「1〜1.5%の誰が見ても富裕層と言われる方に限定した。分断に当たらない」と説明。ただ減税の恩恵を受けられない層が実際に生まれるため、首相が当初想定した通りにはならなかった。
◆減税で「手取りが増えた」の実感は薄そう
 減税は給付に比べて、事務面で支援が遅れがちで即効性に劣るとされる。先月2日の経済対策の閣議決定後に、その問題点を会見で問われると、首相は「ボーナス月の6月に賃上げと減税の効果を給与明細で目に見える形で実感できる」と反論した。だが、家計への効果は遅れそうだ。ある税理士は「所得税の減税分3万円を納税額から一括で差し引くことができる人は、給与収入が50万円以上ぐらいの人からだ」と指摘。減税処理が数カ月にまたがるため、手取りが一気に増えたと「実感」できる人は多くはなさそうだ。子育て中の場合は、扶養控除などの適用でまず納税額が減っているため、さらに差し引くことが可能な額が小さくなり「実感」は乏しくなる。一方、厚生労働省の毎月勤労統計調査によると、物価変動を加味した実質賃金は10月まで前年同月比19カ月連続のマイナスを続けており、賃上げの方の効果も心もとない。
◆賃金上昇なければ財政がさらに悪化する恐れも
 「税収増を還元する」。今回の減税は首相のこうした掛け声をきっかけに、具体化された。だが、「過去の税収増は政策的経費や国債の償還に既に充てられている。仮に減税をしない場合と比べれば、国債の発行額が増加する」と鈴木俊一財務相は先月の国会で答弁。財政的には還元に当たらず、余裕がないという認識を示した。減税は原則1回限りだが、賃上げや物価高の状況次第では「所要の家計支援の措置を検討する」との文言が大綱に入り、継続される可能性が残った。本格的な賃金上昇が生じなければ、景気浮揚につながらず、財政がどんどん悪化する危険もはらむ。

*2-1-3:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/1160547 (佐賀新聞 2023/12/16) 税制改正大綱 時代に合った改革なのか
 自民、公明両党は2024年度の与党税制改正大綱を決めた。岸田文雄首相が実現を求めた所得税、住民税の定額減税を中心に、個人も企業も減税がずらりと並んだ。負担増を徹底的に回避し、財政規律を省みない内容だ。増税や物価高への批判をはね返そうとする政策だが、定額減税に対する世論の評価は芳しいものではない。財政悪化がもたらす将来不安はじわりと広がっている。アベノミクスが始まって10年がたち、経済情勢は大きく変化し、安倍政権以来の政策は多くの分野で転機を迎えている。税制も例外ではない。しかし、時代の要請に合致した改革の構想や方向を、今年の大綱から読み取ることはできない。定額減税と非課税世帯などへの給付には5兆円規模の国費が投入される。除外されるのは年収2千万円超の富裕層だけだ。1人当たり4万円のばらまき型の支援は本当に必要なのだろうか。首相はこれまでの税収増を国民に還元すると訴えた。しかし鈴木俊一財務相が指摘したように、増加した税収は既に使ってしまっている。最近の税収は前年同期を下回るようになっている。定額減税によって、税収の穴は一段と広がるだろう。防衛力強化のための法人税、所得税の増税は今年も決定を見送られた。大型減税を実施した所得税はともかく、法人税だけ先行して決められなかったのだろうか。企業だけ負担が先に決まることに経済団体は反発するだろうが、一部だけでも財源を確定する意味は大きいはずだ。中長期の防衛政策を考えれば安定財源の確保を急がねばならず、政治や経済情勢の変化に対応し臨機応変に行動する必要がある。釈然としないのは扶養控除の縮小だ。高校生年代の子どもがいる世帯を対象に、所得税で年38万円から25万円に、住民税で年33万円から12万円に引き下げる。中学生までだった児童手当を拡充し、高校生の世帯にも支給する代わりに、扶養控除を縮小するという。児童手当の支給額は、控除縮小に伴う所得税などの増額分よりも大きいから、問題ないように見える。しかし、首相は「異次元の少子化対策」を掲げている。高校生がお金のかかる年代であることを考慮すれば、二重に支援することは不自然ではない。あえて扶養控除を縮小する必要があるのか。財政規律を守るのであれば、定額減税の対象を年収によってもっと絞り込めばいい。扶養控除を継続する財源を生み出すことができるはずだ。最優先するべき政策は少子化対策ではないのか。本当に支援が必要な層を考え、減税や給付が行き渡るようにする仕組みをつくらねばならない。扶養控除の縮小を正式決定するのは来年だ。見直す時間は十分にある。中小企業の賃上げを支援する制度も拡充されたが、赤字会社が6割以上を占めることを考えれば、税制以外の手段を含め、「次の一手」を考える時期に来ている。大綱は財政悪化を踏まえ、今後は法人税率の引き上げを視野に入れた検討が必要だと指摘した。法人税を引き下げ、企業の投資を拡大するこれまでの政策はどの程度効果があったのか、真剣に検証してほしい。「稼ぐ力」の源泉を見極め、効率的な支援に転換することは、次世代の税制に直結する課題でもある。
 
*2-2-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20231014&ng=DGKKZO75238600T11C23A0PPK000 (日経新聞 2023.10.14) 「年収の壁」対策が始動、勤務先の方針、まず確認
 年収が一定額を超えると税や社会保険料が増えるいわゆる「年収の壁」に対する政府の対策が10月から始まった。ただ壁については誤解も多く、まずは壁越えのメリットとデメリットの正確な理解が重要だ。そのうえで今回の対策の活用法を考えたい。年収の壁には税の壁と社会保険の壁がある。税の壁の一つは103万円を超えると本人に所得税が発生し始めること。厚生労働省の実態調査によると、これを就業調整の理由とする人が複数回答で49.5%と多い。実際は壁を1万円超えても所得税が500円増えるだけで収入増の大半は手取りの増加となる。しかし「103万円超えが手取り減につながるとの漠然とした誤解で就業調整している人は依然多い」とファイナンシャルプランナーの深田晶恵氏は話す。もう一つの税の壁は150万円。これを超えると配偶者特別控除が少しずつ減少していき配偶者の税負担が増える。通常は妻の収入増が上回り世帯の手取りは減らないが、やはり多くが就業調整の理由として挙げている。「税の壁での就業調整は意味がないことを認識すべきだ」(社会保険労務士の井戸美枝氏)
  ○   ○
 社会保険に関する壁は106万円と130万円がある。大きく超えない限り、保険料負担が収入増を上回り手取りが減る。今回の対策は主に社会保険の壁を対象にしたものだ。
まず106万円の壁。従業員101人以上の会社で月収8万8000円(年収換算で約106万円)を超え、週20時間以上勤務などの条件も同時に満たすと、厚生年金や会社の健康保険に入ることになる。それまで配偶者の扶養に入っていた第3号被保険者は年16万円程度の保険料負担が発生し、手取りが減る。壁を越える前の手取りになるには収入を125万円程度に引き上げることが必要だ。厚労省の調査では20.6%が就業調整の理由として挙げる。しかし厚生年金加入で将来の厚生年金が受給できるようになり、長生きすることが多い女性は通常は将来の受給額合計が保険料を上回る。会社の健康保険は病気やケガの際に収入の3分の2の傷病手当金が支給されるなど給付が手厚い。保険料を払って分厚い社会保障を受ける一般の会社員と同じ状況になるだけだが「『働き損』という実態と異なる呼び方を信じて就業調整するケースも多い」(社会保険労務士の岩城みずほ氏)。また月収8万8000円は契約した賃金で決まるので残業代は含まない。年末に就業調整しても無意味だが、十分理解されず人手不足の要因になっている。ただ目先の手取りが減ることを嫌う人が多いのも事実。そこで今回の対策では賃上げや手当などで手取り減を補う企業に対し、10月以降に壁越えをする従業員1人あたり3年間で最大50万円を助成する。ポイントは従業員に直接ではなく企業に支給し、具体的な活用策を委ねる点だ。企業によって活用内容が異なる可能性が大きいため、壁越えを考えている人は勤務先がどんな方針をとるか、よく確認し相談することが必要になる。例えば同じ職場に過去にすでに保険料を負担して厚生年金加入で働いている人がいる場合、新たに106万円を超える人だけを手当や賃金増の対象にすれば不公平で、不満が広がる。企業が公平さを維持したい場合、過去に壁越えをした同程度の収入の従業員全体にも手当や賃上げを検討することになる。これにより新たに壁越えをする人だけでなく職場に広く手取り増を促す「呼び水」にすることが政策の狙いだ。しかし助成金はあくまで新たに壁越えをする人の人数分しか出ない。このため職場で広く公平な手当や賃上げを実施したい企業は、助成金以外に自社で財務的な負担が生じるケースも多そうだ。財務的な負担が無理なら、助成金の適用を見送る可能性もある。
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 もう一つの社会保険上の年収の壁は130万円。130万円以上になると配偶者の社会保険の扶養をはずれる。しかし106万円の壁と異なり、通常の厚生年金の加入条件である週30時間以上の勤務でないと厚生年金などに加入できず、国民年金保険と国民健康保険に入ることになる。新たに保険料負担が発生する一方で将来の厚生年金の受給などはなく、単純に保険料負担だけが起きるという意味では本当の壁だ。130万円の計算には残業代なども含むため年末などに就業調整が起きる。実態調査では56.6%が就業調整の理由として挙げる。今回の対策では130万円を超えても、それが人手不足に対応するための追加的な残業など一時的なものであることを事業主が証明すれば、扶養をはずれなくてもよいことにする。原則として連続2年までが上限だ。ただどんな場合に「一時的」と判断するかは勤務先に確認したい。企業の配偶者手当も年収の壁となっている。本人の年収が一定以上で配偶者の会社が配偶者手当を打ち切ることがある。配偶者手当は年に数十万円にもなることがあるため大きな手取り減だ。今回の対策では配偶者手当を廃止・縮小し、基本給や手当を増額することなどの見直しを企業に求める。配偶者手当の基準で最も多いのは103万円。しかし配偶者手当を見直す企業は増えており、103万円で手当を打ち切る会社は22年に2割と15年の4割強から急減している。配偶者の勤務先の基準が変わっていないかを確認することが必要だ。

*2-2-2:https://www.nikkei.com/paper/related-article/?b=20231014&c=DM1&d=0&nbm=DGKKZO75238600T11C23A0PPK000&ng=DGKKZO75238670T11C23A0PPK000&ue=DPPK000 (日経新聞 2023.10.14) 老後に備え大きく壁越えを
 助成策で手取り減がなくなるかは勤務先の活用次第で、壁を越える人全員が対象になるわけではない。助成金がない場合、106万円を超えて手取りが戻る収入は125万円だが、大きく上回るほど目先の収入と将来の厚生年金が増える。介護や子育てで難しい場合を除き、賃金増の流れを生かしてなるべく大きく超えることが長寿の女性には有効だ。130万円の壁についても回避を狙うだけでなく、週30時間以上の勤務にして厚生年金加入を考えることも将来の安心には有効。ただ厚生年金加入後に130万円未満での手取りを回復するには、150万円台の年収が必要になる。そこまで勤務時間を延ばせない場合、106万円で厚生年金に加入できる101人以上(24年10月からは51人以上)の会社への転職を考える選択肢もある。今回の対策は25年に予定される抜本的な改正策がとられるまでの原則3年の時限措置。法改正には保険料や給付水準の在り方を巡り様々な案が出ているが、新たな不公平の発生や複雑化の懸念も多く、簡単ではない。年収の壁への様々な誤解の解消とともに、短時間労働でも厚生年金に入れる対象企業の適用を徹底的に拡大し、働く人すべてに社会保険を適用することが本来の解決策だろう。

*2-3-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20231105&ng=DGKKZO75868900U3A101C2EA1000 (日経新聞 2023.11.5) インボイス開始1カ月、混乱続く 10月分の処理本格化、様式バラバラ、記載に不備 業務負担大きく
 インボイス(適格請求書)制度の開始から1カ月あまり。10月分の請求書の処理が本格化するなか、中小・新興企業などで混乱が続いている。企業ごとに異なる請求形式の違いへの対応や、登録番号の確認作業で業務の負担が増している。10月に入っても企業の9割で今後の対応に懸念を持つとの調査も出ている。「アプリやソフトウエア販売、電子商取引(EC)販売を手掛ける事業者の一部で10月以降、急きょ自社でインボイス発行が必要な取引が相次いだ」。家計簿アプリや会計ソフトを手掛けるマネーフォワードの松岡俊経理本部長は想定外の対応に追われた。アプリの販売プラットフォームの米アップルや米グーグル、ECサイトの米アマゾン・ドット・コムなどで、発行の仕組みがバラバラだったからだ。例えば同じアプリ販売でもアップル経由の場合、アップルがインボイスを直接交付するが、グーグルでは事業者側に交付義務が発生している。マネーフォワードは1年ほど前から準備してきたが、10月に入って取引先への周知や税務署への確認、アプリの利用規約の記載変更などの対応に追われることになった。帝国データバンクが10月6~11日までに実施したインボイス制度への対応状況に関する企業アンケートでは対応が遅れているとした回答が3割にのぼり、全体の9割で懸念事項があると回答した。懸念の多くが事務作業負担の増加だった。「10月から請求書を紙から電子に切り替えて発行してほしい」。防災設備設計・施工の紘永工業(横浜市)は、納入先10~20社から請求書のフォーマット変更の依頼が相次いだ。各社が独自システムを使っていることが多く「アカウントの登録作業に手間がかかった」(経理担当者)。都内の電気工事会社は請求書をインボイス番号記載の形式に変更し、8月末に取引先各社に郵送で案内をした。だが、取引先の請求書担当に届いていないためか、番号のない請求書を送ってくる取引先が散見される。制度への登録が必要とされる免税事業者160万者のうち、登録が済んだのは9月末時点で106万者。出前館では10月以降も一部の配達員が登録を進めており、その確認作業に追われている。辻・本郷ITコンサルティング(東京・渋谷)の菊池典明税理士は「買い手は免税事業者に対しては、どれほど課税分を負担してもらうか改めて交渉する必要がある。今後も対応で混乱する可能性もある」と指摘する。小規模な取引先の多い外食産業の負担も続く。つぼ八は「登録番号の確認作業や請求書の準備などで業務時間が増えている」と話す。10月分の請求書送付は今後増える見込みで、番号の確認作業でさらなる業務負担の増加を懸念する。インボイス制度について同社の担当者は「免税事業者を設けるべきではない」と制度の廃止を求める。居酒屋「金の蔵」などを展開するSANKO MARKETING FOODSは従業員の立て替え精算で使うシステムで番号を自動で読み取れないケースが多発。経理部が1枚ずつ領収書を確認するなど「想定以上に負担が増えた」という。免税事業者側でも混乱も起きている。建設作業員を中心に構成する全国建設労働組合総連合(全建総連)には「一人親方」と呼ばれる個人事業主の一部から「取引先から課税事業者登録を突然求められ、登録しなければ単価を下げると通知された」との報告が入った。公正取引委員会はインボイス制度を巡り一方的な取引価格の引き下げは独占禁止法の違反につながる恐れがあるとして注意を促している。だが、実際のビジネスの現場で値決めを巡り混乱が広がっている恐れもある。
▼インボイス 事業者ごとの登録番号や税率ごとの消費税額などを記載した請求書や納品書。仕入れ時に支払った消費税額を納税時の納税額から差し引くには仕入れ先からインボイスを受け取る必要がある。 インボイス発行事業者の登録をしていないと発行できない。大企業は基本的に発行事業者の登録を取引先に促す考えだ。だが、小規模事業者やフリーランスでは登録について様子見を続ける動きは根強い。

*2-3-2:https://www.jmedj.co.jp/journal/paper/detail.php?id=22704 (日本医事新報社 2023年9月8日) ■NEWS 社会保険診療の消費税、診療所は非課税、病院は軽減税率に―日医が来年度税制改正要望
 日本医師会は9月6日の定例会見で、「令和6年度 医療に関する税制要望」を公表した。社会保険診療に係る消費税について、診療所は現行の非課税のまま診療報酬上の補塡を継続しつつ、病院においては軽減税率による課税取引に改めるよう要望した。日本医師会は昨年の税制要望では、社会保険診療に係る消費税について、「小規模医療機関等」は非課税のままとし、「一定規模以上の医療機関」は軽減税率を適用するよう要望、「一定規模」をどこで線引するかが課題となっていた。6日の会見で宮川政昭常任理事は、「線引に当たって有床診療所の取り扱いが焦点となり、全国有床診療所連絡協議会と協議し、アンケートもとった。その結果、非課税のままを望む声が多かった。このため「診療所」「病院」という医療法上の区分が客観的でよいと(会内の)委員会でまとまり、このように集約した」と報告。非課税のままで診療報酬による補塡を求める有床診療所が多かった理由については、「有床診療所は規模が様々で、課税取引にすると存続が難しいという意見が多かった」と説明した。社会保険診療に係る消費税が非課税となっていることについて、日本医師会は長年、「控除対象外消費税」が医療機関の経営を圧迫しているとして、ゼロ税率や軽減税率、患者への還付制度などによりこれを解消することを求めてきた。仮に医療機関の種別により消費税率の取り扱いが変わる場合、これまで消費税分として補塡されてきた診療報酬を引き下げることや、いわば一物二価となるために患者にわかりやすい説明が必要になるなど、課題も多いとみられる。

*2-3-3:https://www.nta.go.jp/taxes/kids/hatten/page02.htm (国税庁) 「税のしくみ、税の種類と分類」より抜粋
<直接税>
●所得税
 ◎個人の所得(収入から経費などを引いたもの)に対してかかる税金です。
 ◎所得が多くなるほど、税率が高くなります。
 個人の所得にかかる税金のことを「所得税」といい、会社で給料をもらっている人や自分で商売をして利益を得ている人にかかります。所得税は、1年間のすべての所得からいろいろな所得控除(その人の状況に応じて税負担を調整するもの)を差し引いた残りの所得(課税所得)に税率をかけて計算します。税率は、所得が多くなるほど段階的に高くなる累進税率となっており、支払い能力に応じて公平に税を負担するしくみになっています。会社に勤めている人と自分で商売をしている人では、納税方法が異なります。
●住民税(道府県民税・市町村民税)
 ◎住んでいる(会社がある)都道府県、市区町村に納める税金です。
 ◎道府県民税も市町村民税も一括して市区町村に納めます。
 道府県民税と市町村民税は合わせて「住民税」と呼ばれており、住民がそれぞれ住んでいる(会社がある)都道府県や市区町村に納める税金です。「住民税」は住民(や会社)が平等に負担する金額(均等割)と、前年の所得の額に応じて負担する金額(所得割)から成り立っています。「住民税」も所得税と同じように、会社に勤めている人と、自分で商売をしている人で、納税方法が異なります。
●法人税
 ◎法人(会社)の所得に対してかかる税金です。
 ◎決算期(それぞれの会社が決めた年度)が終わったあとに確定申告をします。
 株式会社など法人の所得にかかる税金のことを「法人税」といいます。会社は決算期ごとにその期間の所得をもとに税額を計算して申告・納税をします。
<間接税>
●消費税・地方消費税
 ◎商品の販売やサービスの提供に対してかかる税金です。
 ◎納税するのは製造業やサービス業などの事業者ですが、負担するのは消費者等です。
 「消費税」は、消費一般に広く公平に負担を求める間接税で、最終的には商品を消費したり、サービスの提供を受ける消費者が負担し、事業者が納税します。事業者は、消費者等から受け取った消費税等と、商品などの仕入れ(買い入れ)のときに支払った消費税等との差額を納税することになります。消費税の税率 は7.8%、 地方消費税の税率 は2.2%、これらを合わせて10%の 税率になります。
※ 消費税等とは、消費税(国税)と地方消費税(地方税)のことをいいます。
●酒税
 ◎日本酒、ビールなど、お酒にかかる税金です。
 ◎製造者または輸入者が納税しますが、負担するのは消費者です。
 日本酒やビール、ウイスキーなどのお酒にかかる税金のことを「酒税」といいます。 アルコール分1度以上の飲料が対象になり、税額はお酒の種類やアルコール度数によって細かく決められています。製造者または輸入者が納税しますが、価格に含まれているため、負担しているのは消費者です。
●たばこ税・たばこ特別税
 ◎たばこにかかる税金です。
 ◎製造者または輸入者が納税しますが、負担するのは消費者です。
 紙巻たばこやパイプたばこなど、各種のたばこにかかる税金のことを「たばこ税・たばこ特別税」といいます。製造者または輸入者が納税しますが、価格に含まれているため、負担しているのは消費者です。たばこ税は国に納められる国税と、地方に納められる地方税に分けられます。
※地方税分は、道府県たばこ税と市町村たばこ税の合計です。
●関税
 ◎輸入品にかかる税金です。
 ◎原則として、輸入者が納税します。
 外国から日本に品物を輸入しようとする場合、その輸入品にかかる税金のことを「関税」といい、原則として貨物の輸入者が納めます。
●揮発油税・自動車税・自動車重量税など
 自動車に関連する税金には、揮発油税(ガソリンにかかる税金)や、自動車税(自動車を持っている人にかかる税金、自動車重量税(自動車の重さに応じてかかる税金)などがあります。

<国を挙げての組織的高齢者虐待 ← そんな子はいらない>
*3-1-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20231223&ng=DGKKZO77216930T21C23A2EA4000 (日経新聞 2023/12/23) 子育て重視 予算も税も、集中強化初年度は対策1兆円 児童手当など給付拡充
 政府は22日、少子化対策の強化に向けた「こども未来戦略」を発表した。2026年度までに国・地方合わせて年3.6兆円の追加予算を投じ、児童手当や育児休業給付を拡充する。税制改正では子育て世帯の減税を盛った。巨額の支援策が出生増につながるかの検証も欠かせない。22日に官邸で開いた会議で決めた。歳出改革の道筋を示した改革工程と、子ども政策の基本方針となる「こども大綱」もまとめた。政府は24年度からの3年間で少子化対策に集中して取り組む。初年度は国と地方で1兆円の予算を計上した。対策の司令塔となる、こども家庭庁の24年度予算案は総額で前年度比9.8%増の5兆2832億円を充てた。目玉は児童手当の拡充だ。所得制限を撤廃して高校生まで支給期間を延ばす。第3子以降は月3万円に増額し、0~18歳まで受けられるようにする。24年10月分から始める。3人以上を育てる多子世帯の大学の授業料は25年度から無償化する。親の就労を問わず保育を利用できる「こども誰でも通園制度(仮称)」は26年度から全国展開する。4~5歳児クラスの保育士の負担を軽減する。保育士1人がみる子どもの人数を国の基準より少ない25人にした場合に運営費を補助する。25年度からは両親ともに育児休業を取得すれば、28日間まで育休給付を手取りの実質10割に増額する。税制面でも子育て世帯に配慮する。ローンを組んで住宅を購入した際に所得税などの負担を減らす住宅ローン減税について、子育て世帯は24年も減税対象の借入限度額を現行の最大5000万円で維持する。生命保険料控除も広げる。課税対象となる所得から支払った保険料に応じて一定金額を除外する。現状では12年以降の契約の場合は所得税で最大4万円を控除しており、最大6万円に引き上げる。足元では急速に少子化が進む。23年の出生数は70万人台前半との試算もあり、過去最少を更新する見込みだ。婚姻数も増加に転じる兆しが見えない。岸田文雄首相は「若年人口が急減する30年代に入るまでが少子化傾向を反転できるかどうかのラストチャンスだ」と訴えてきた。24年度予算案では財源確保を待たず大規模な財政出動を決めたが、政策効果が不透明な施策も少なくない。児童手当の所得制限の撤廃を巡って経団連の十倉雅和会長は「納得感が少ない」と批判した。効果が十分検証されないままに給付を積み増す手法には、経済界を中心に異論が出ている。子どもの虐待対策など子育てとは直接結びつかない施策も盛り込まれた。今回の対策が出生増につながるかも不透明だ。京都大の柴田悠教授の試算によると、1人の女性が生涯に産む子どもの人数を示す「合計特殊出生率」の押し上げ効果は0.1ポイント程度にとどまるという。柴田氏は「若者の結婚や出産を阻む一因は長時間労働だ。是正のために労働基準法の改正やデジタル化など政策が介入できる余地は大きい」と指摘する。

*3-1-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20231110&ng=DGKKZO76018640Z01C23A1EP0000 (日経新聞 2023.11.10) 少子化財源、全世代で負担、政府「支援金制度」具体化へ議論 後期高齢者も対象に
 少子化対策の財源の一つとして政府が創設する「支援金制度(仮称)」の具体化に向けた議論が9日、始まった。医療保険の仕組みを通じ後期高齢者を含む全世代が支援金を拠出する。現役世代に負荷が偏る可能性もある。政府は2024年度からの3年間、少子化対策を集中的に進める。年3兆円台半ばの予算を確保し、児童手当の拡充や保育サービスの充実にあてる。予算の財源は(1)社会保障費の抑制(2)既存予算の活用(3)支援金――の3本柱で捻出する。28年度までの間に順次確保する予定で、確保できるまでの不足分はつなぎ国債の「こども特例公債(仮称)」で補う。政府は当初、1つの柱ごとに約1兆円ずつ賄う青写真を描いていた。ところが予算規模が3兆円から3兆円台半ばに急きょ膨らんだこともあり、年末までに詳細を詰めることになった。柱の一つになる支援金制度は、医療保険料に上乗せする仕組みになる見通し。会社員なら、収入に一定割合をかけた金額の拠出をする形が有力だ。公的医療保険の徴収ルートを使い、健康保険組合などが保険料に上乗せして国に代わって集める。こども家庭庁は9日、経団連や連合、健康保険組合連合会などから支援金制度に対する意見を聞いた。参加者からは「現役世代に負担が集中しないようにすることが重要だ」など全世代の負担する必要性を強調する意見が多く上がった。政府側は「負担増」のイメージ払拭に躍起になっている。同庁が会合で示した資料は「子育て世帯にとっては給付が拠出を大きく上回る」とメリットの大きさを強調したものだった。だが収入金額をもとに拠出金を算定するなら、相対的に収入が多い現役世代の負担は大きくなる。医療保険制度には、支援金の徴収対象となる加入者の裾野が広いという特徴がある。若年層から後期高齢者も含め幅広い世代が保険料を出す。基礎年金の場合は59歳で支払いが終わり、介護保険料は40歳からだ。それでも収入額に一定割合をかける仕組みにすれば、稼ぎが多い現役世代に負担が偏る。今でも現役世代は収入の約3割を社会保険料に充てている。さらなる負担に理解を求めるなら、使い道を透明にして負担を見通しやすくすることが前提だ。政府は使い道や支援金の充当割合などを法律で縛り、拠出にも上限かける方針だ。毎年度の拠出規模を決める時は、経済界などから意見も聞く。特別会計「こども金庫(仮称)」も新設し、支援金や育児休業給付向けの雇用保険料の動きを見えやすくする。政府は歳出改革で保険料の伸びを抑え、その範囲内で支援金を導入する。岸田文雄首相は「実質的な国民負担の増加にならない」と強調する。ただし保険料の伸びを抑えることは高齢者らが受ける医療・介護サービスの見直しにもつながる。少子化対策には、消費税収を一つの財源とすることが消費税法で定められているが政府は増税による財源捻出を否定してきた。消去法的に浮上した選択肢が保険料への上乗せだった。社会保険料は「第2の税」とも言われるが、消費税よりは引き上げの痛みを生活のなかで実感することは少なく増税ほど反発は起きない。経済界は9日の会合で表向き反対しなかったが「少子化対策と言われると正面から反対しにくい」(参加団体の幹部)というのが本音だ。支援金制度には「社会保険の流用だ」という専門家の批判がある。経団連は社会保障制度を維持するため、将来の消費税引き上げを「有力な選択肢の一つ」としている。セーフティーネットの社会保険より、社会全体で能力に応じ負担できる消費税を財源とすべきだとの声は根強くある。

*3-1-3:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20231223&ng=DGKKZO77207710S3A221C2M10600 (日経新聞 2023.12.23) 教育 教員増員で働き方改革
 2024年度の文教関係予算は前年度比1.0%増の4兆563億円とした。公立小中学校の教職員給与に充てる国の負担金を増額し、初任給を5.9%引き上げる。教員の長時間労働の是正に向けて働き方改革の推進に重点を置いた内容とした。いまは1人の教員が算数や理科などほぼすべての教科を担当している。この負担を軽くするために小学校高学年で教科ごとに担当する教員が異なる教科担任制を進める。必要な教員として24年度に全国で1900人増員するために40億円を計上した。24年度からは教員が授業準備や指導に集中できるよう、代わりに事務作業を担う「教員業務支援員」をすべての公立小中学校で配置する。2万8000人分の81億円を盛り込んだ。

*3-1-4:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20231224&ng=DGKKZO77223430T21C23A2EA1000 (日経新聞社説 2023/12/24) この少子化対策で将来に希望が持てるか
 政府は新たな少子化対策「こども未来戦略」を閣議決定した。少子化を日本が直面する「最大の危機」と位置付け、具体策である加速化プランは3.6兆円規模となる。若い世代が安心して結婚や出産の希望をかなえる一歩にしたいが、課題はなお多い。なによりまず、財源だ。政府は医療保険料のルートを使い、2028年度時点で年間1兆円を「こども・子育て支援金」として集める予定だ。再分配の効果を高めるには幅広い国民が負担能力に応じて協力する仕組みが要るが、支援金は応能負担の視点が弱い。高齢者にも負担を求める制度にしたのは良いが、総人口の15%超を占める75歳以上の負担分は7%程度にとどまる。所得だけでなく、資産の保有状況に応じて世帯の負担額を決める仕組みを導入するなどして現役世代の負担軽減につなげていくべきだ。政府は支援金制度がフル稼働する28年度までに歳出改革を徹底するとし、岸田文雄首相は「実質的な追加負担は生じさせない」と繰り返してきた。この方針を巡り、政府は23~24年度に実質的な社会保険負担の軽減効果が0.33兆円あるとした。だがこの算定には無理がある。政府は医療従事者らの賃上げで医療・介護費が増える分を、国民一般の賃上げ率の範囲内なら「負担」に含めないと説明している。そんなつじつま合わせではなく、医療費や介護費の抑制に直結する歳出改革に取り組むべきだ。これを欠けば現役世代の負担感はどんどん強まり、出産意欲にも響きかねない。対策の中身にも注文がある。新たなプランは児童手当の高校生までの延長や所得制限の撤廃、多子世帯の大学無償化などの経済的支援を多く盛り込み、開始時期も明記した。ただ少子化の大きな要因は未婚化だ。若い世代が自らの就労で経済基盤を安定させるための支援こそ急ぐべきだ。いったん非正規になるとなかなか抜け出せない硬直的な労働市場の改革や、正規・非正規の処遇格差の是正などが重要になる。これらの施策は、若い世代だけでなく幅広い世代に関わる。子育てに時間を割けない長時間労働の慣行や、女性に偏る家事・育児分担を変えていくことも同様だ。今の日本の社会のあり方自体が、少子化を招いている。そうした危機感を社会全体で共有したい。

*3-2-1:https://www.yomiuri.co.jp/economy/20231108-OYT1T50219/ (読売新聞 2023/11/9) 「異次元の少子化対策」、財源は医療保険料に上乗せ方針…子育て世帯以外は新たな負担
 政府が「次元の異なる少子化対策」の財源確保のため新たに設ける、国民から広く支援金を集める制度の概要案が判明した。負担能力に応じて医療保険料に上乗せして徴収する方針を初めて明記した。こども家庭庁は、9日に「支援金制度(仮称)」の設計に向けた具体的な議論を始め、年末に結論を出す。政府は少子化対策の拡充のため、今後3年間で年3兆円台半ばの追加予算確保を目指している。「徹底した歳出改革」で財源を捻出し、足りない分を主に支援金制度で補う方針だ。支援金制度は、保険加入者が拠出する支援金を子育て世代への給付などに充てる仕組み。概要案は、子育て世帯は「給付が拠出を大きく上回る」とする一方、それ以外の人には「新たな拠出となる」と説明。過度な負担とならないよう、「拠出額は負担能力に応じた仕組みとする」とした。支援金は、医療保険の仕組みを活用して徴収・納付する方向で、健康保険組合などが実務を担う仕組みを検討する。支援金の使い道については、「妊娠・出産期から0~2歳の支援策にまず充当する」との案が盛り込まれた。政府が6月に決定した「こども未来戦略方針」では、支援金制度の詳細については先送りしていた。

*3-2-2:https://digital.asahi.com/articles/ASRD56KFJRD5UTFL004.html?iref=comtop_7_03 (朝日新聞 2023年12月5日) 少子化対策の財源 医療・介護の「3割負担」拡大 「応能負担」鮮明
 政権の掲げる「異次元の少子化対策」の財源確保策の一つ、社会保障の歳出改革に関して、政府は5日、2028年度までに実施を検討する具体的なメニューを盛り込んだ改革工程の素案を示した。医療・介護では、「現役並み」の所得がある高齢者について、窓口負担や利用料を「3割負担」とする対象の拡大を検討。支払い能力に応じた「応能負担」の仕組みを一層強化する。与党との調整を経て、年末までに閣議決定する方針。少子化対策は年3・5兆円の事業規模。既定予算の活用、医療保険料とあわせて徴収する支援金(仮称)に加え、改革工程での捻出で、政府は段階的に実施する充実策が出そろう28年度までに財源を確保する考え。それぞれ1兆円程度と見込む。改革工程は各項目の実施時期を①来年度②28年度まで③高齢者数がほぼピークとなる40年ごろまでの3段階に整理。その上で「働き方」「医療・介護」「地域共生社会」の三つの視点で素案を示した。28年度までの医療・介護の改革メニューには「応能負担」を色濃く反映。「給付のあり方」や「給付と負担のバランス」について「不断の見直しを図る」と明記した。医療の窓口負担は現在、70~74歳は原則2割、75歳以上は原則1割で、「現役並み所得」の人に限って3割負担。介護の利用料も「現役並み」の人が3割負担だ。素案では「現役並み」の判断基準の見直しについて「検討を行う」と明記。介護サービスは、医療に比べて長期間利用する影響も踏まえるとした。医療・介護保険の負担では、金融所得や資産も勘案するとした。把握や反映の仕方も検討する。医療の窓口負担額の上限を定めた「高額療養費制度」も、「応能負担」と賃金や物価の上昇状況などを考えて見直しを検討するとした。介護では、ケアプラン(介護サービスの計画)の有料化や、軽度者(要介護1、2)の生活援助サービスなどの市町村事業への移行について、自治体が介護計画を策定する時期にあわせ27年度までに「結論を出す」とした。ただ、改革工程には財源をどれだけ捻出できるのか示されず、検討メニューを挙げるにとどまった。高齢者の負担増は反発を招く可能性があり、岸田内閣の支持率が最低水準で推移する中、財源確保につなげられるかは見通せない。

*3-2-3:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20231014&ng=DGKKZO75270590T11C23A0EA4000 (日経新聞 2023.10.14) 「財政健全化への強い思い」 土居丈朗・慶応大教授
 土居丈朗・慶応大教授の話 経団連の提言は財政健全化への経済界の強い思いの表れといえる。社会保険料率は過去最高の水準にあり、企業の持続的な賃上げにも影響は少なくない。金融資産も含めた「経済力」に応じて負担を考えるべきだという視点も重要だが、政府・与党の議論は進んでいない。給付を増やして負担も増やすのか、給付自体を減らすのか、制約をなくした議論が必要だ。

*3-3-1:https://www.nikkei.com/paper/related-article/?b=20231223&c=DM1&d=0&nbm=DGKKZO77207430S3A221C2M10600&ng=DGKKZO77207750S3A221C2M10600&ue=DM10600 (日経新聞 2023/12/23) 年金 2年連続で給付抑制
 2024年度の公的年金の支給額改定で給付を抑制する「マクロ経済スライド」が2年連続で発動される前提で予算編成した。年金額自体は上がるものの物価上昇の伸びほどの増額にならないため実質的に目減りする。24年度の改定率は厚生労働省が24年1月に公表する。4~5月分をまとめて支給する6月の受け取り分から適用する。マクロ経済スライドは年金財政の安定化のために導入されたが物価の下落局面では発動しない仕組みだ。そのため長引いたデフレ下では十分に給付を抑制できず、この20年ほどは年金を「払いすぎる」状態だった。払いすぎた年金は将来世代の給付を抑えて帳尻を合わせざるを得ない。こうした調整は23年度に終わる予定だったが現状では基礎年金で46年度まで抑制が続く見込みだ。

*3-3-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20231014&ng=DGKKZO75270540T11C23A0EA4000 (日経新聞 2023.10.14) 医療・介護負担「公平・応分に」、経団連、消費増税を念頭 全世代型の改革を提言
 経団連が医療や介護、年金など社会保障制度の改革への働きかけを強めている。13日に発表した提言では、2025年度までに制度や財源を抜本的に見直すよう求めた。高齢化に伴う保険料の引き上げで現役世代や企業の負担は増している。経団連は制度の持続性を高めるには、消費増税による財源の確保が避けられないと見る。2025年には団塊の世代がすべて後期高齢者になり、国の医療費が膨らむと予想されている。医療や介護を支える負担が現役世代や企業にかたよれば、投資や賃上げの壁になりかねない。経団連は「消費増税」の必要性を強調している。9月に出した24年度税制改正への提言で、全世代の国民が負担する消費税が公平で安定的と指摘し、社会保障財源として「引き上げは有力な選択肢」と踏み込んだ。十倉雅和会長も「消費税の議論から逃げるべきではない」と訴える。国民の負担となる増税にあたっては給付の見直しも欠かせない。「中長期視点での全世代型社会保障の議論を求める」と題した13日の提言では「税も含めた中長期の全世代型社会保障改革のグランドデザイン」を25年度に描くよう政府に求めた。具体的には24年度の「経済財政運営と改革の基本方針」(骨太の方針)の議論が本格化するまでに社会保障の将来見通しを明らかにすべきだとした。骨太の方針は例年、5月の大型連休後に政府内での調整が本格的に進む。経団連が訴えるのは「公平」かつ「能力に応じた負担」だ。高齢者医療を支えるための現役世代からの拠出は増え続けている。大企業の従業員らが加入する健康保険組合からの拠出金は後期高齢者医療制度が発足した08年度にはおよそ2.7兆円だったが、22年度は3.4兆円に膨らんだ。健康保険組合連合会は26年度に4兆円を超えると見込む。1人あたりの年間の保険料負担は08年度の38.6万円から22年度は51.1万円まで増えた。13日の提言では富裕層や高齢者の金融資産に言及した。マイナンバーの活用などを通じて個々人の経済力を把握し、資産の保有状況に応じた課税のほか社会保険料や自己負担の引き上げについても検討すべきだとした。日本の家計における純金融資産は約1600兆円で、保有額1億円以上の富裕層が全体の約22%を保有する。十倉氏は9月に都内での講演で「応能負担という観点からは資産に着目した負担のあり方も考えていくべきだ」と発言した。財政の健全化や社会保障制度の見直しを求める声は広がっている。民間有識者でつくる令和国民会議(令和臨調)は6日、国家の財政運営を監視する独立機関の設置を国会などに求める提言を発表した。財政収支や税・保険料の国民負担について長期予測を立て、歳出の余力などを評価する仕組みづくりを目指す。野村総合研究所の木内登英エグゼクティブ・エコノミストは「社会保障制度を支えるための中長期的な安定財源として、消費税の引き上げが適切ではある」と指摘する。負担増の議論を避けず、効率的な給付も含めた社会保障制度の見直しについて国民的な議論が必要と指摘する。

*3-3-3:https://digital.asahi.com/articles/DA3S15824389.html (朝日新聞 2023年12月24日) 所得420万円以上、介護保険料増へ 65歳以上、低所得者は減 厚労省
 65歳以上の介護保険料について、厚生労働省は2024年度から年間合計所得が420万円以上の高所得者は引き上げる方針を決めた。住民税非課税世帯などの低所得者は引き下げる。22日に開いた社会保障審議会(厚労相の諮問機関)の部会で明らかにした。65歳以上の保険料は、国が示した基準を参考に市町村が決める。国は所得に応じて基準額を9段階に分けている。現在の最も高い所得区分は、年間合計所得が「320万円以上」。ここに新たに「420万円以上」「520万円以上」「620万円以上」「720万円以上」の4段階を設けて、計13段階とする。今の保険料の基準額の全国平均は月6014円(21~23年度)。9段階の最も高い所得区分で基準額の1・7倍だったが、新たに設ける10~13段階は1・9~2・4倍に引き上げる。これら引き上げの対象となる被保険者は計約145万人。また、世帯全員が住民税非課税となっている第1~3段階では保険料を引き下げる。最も低い第1段階では基準額の0・3倍から0・285倍に、第2段階では0・5倍から0・485倍、第3段階では0・7倍から0・685倍にする。計約1323万人が対象となる。所得再分配機能を強めることで、これまで低所得者の負担軽減に投じてきた公費382億円分(国と地方で折半)を浮かせ、介護職員の処遇改善などに回す。一方、介護保険の利用料を2割負担する人の対象の拡大は見送り、「27年度の前」までに結論を得るとした。金融資産の保有状況の反映や、1~2割の間に細かく負担区分を設けることも検討する。

*3-4-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20231216&ng=DGKKZO77019730W3A211C2MM8000 (日経新聞 2023.12.16) 診療報酬本体0.88%上げ 来年度改定、負担抑制進まず、全体では小幅減
 政府は2024年度の診療報酬の改定で、医療従事者の人件費などに回る「本体」部分の改定率を0.88%とする最終調整に入った。医療現場の賃上げにつなげるためにプラス改定とする。薬剤費など「薬価」部分は1%近く引き下げ、全体の改定率をわずかにマイナスにする。本体のプラス改定により、薬価の引き下げに伴う保険料や医療にかかる税金の軽減効果は打ち消される。国民負担の抑制が進まず、医療分野の歳出改革が不十分になる恐れはある。22年度の改定率は本体でプラス0.43%、薬価はマイナス1.37%だった。本体について今回は前回を大幅に上回る改定率とした。改定率は24年度の予算編成の焦点だった。12月下旬までに武見敬三厚生労働相と鈴木俊一財務相による閣僚折衝で正式に決める。両氏は15日、首相官邸で岸田文雄首相と協議した。診療報酬は病院や診療所が公的医療の対価として受け取る収入にあたり医療費の総額を示す。診察料や入院料など医療の技術料にあたる本体と薬価に分かれる。2年に1度改定する。厚労省と日本医師会などは他の産業がおよそ30年ぶりとなる高い水準で賃上げしたのを受け、足並みをそろえられるよう本体部分の大幅な増額を求めていた。財務省は診療所の利益率は高く、マイナス改定しても賃上げできると主張していた。本体改定率0.88%のうち、薬剤師や看護師、看護助手などの賃上げ分で0.61%、入院患者の食費の引き上げに0.06%をあてる。賃上げ率は定期昇給分を含めて4%程度になる見通しだ。医療費は5割が保険料、4割が税金、1割が患者の支払う窓口負担で成り立つ国民の負担そのものだ。23年度の予算ベースの医療費は48兆円で、高齢化などにより医療費は自然に増える。24年度の診療報酬全体の改定率が0%でも医療費は8800億円増える見込みだ。このうち保険料で4400億円、患者が医療機関で支払う金額は1100億円増える。0.1%程度のマイナス改定では医療費を500億円ほど抑制する効果しかない。政府は24年度に同時改定する介護報酬の改定率もプラスにする見通しだ。人材流出に歯止めがかからない介護現場の賃上げを後押しする。診療報酬を全体でマイナス改定しても、介護報酬などの増額分を含めると社会保険料の負担は増える可能性はある。医療分野の歳出改革が進まなければ、政府が28年度までに年3.6兆円規模を追加で確保するとしている少子化対策の財源にも響きかねない。財源の原資には医療や介護の歳出改革で捻出した税金や、医療保険料に上乗せして国民や企業から広く徴収する支援金を充てる。支援金は26年度から始め、歳出改革や賃上げで保険料負担を軽減した範囲内で導入することになっている。首相は「実質的な追加負担を求めない」と表明している。診療報酬本体を前回を上回るプラス改定にしたことで、薬価のマイナス改定による保険料の負担軽減効果は小さくなる。「追加負担を求めない」とする首相の方針もおぼつかなくなる。診療報酬本体の改定率を巡っては厚労省と財務省が0%程度~1%超の範囲で具体的な水準を探っていた。調整は難航し、首相に判断を委ねた。

*3-4-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20231217&ng=DGKKZO77028990X11C23A2MM8000 (日経新聞 2023.12.17) 介護報酬1.59%上げ 来年度改定、賃上げへ ロボ活用で加算
 政府は介護サービスの公定価格である介護報酬を2024年度から1.59%引き上げる方向で最終調整に入った。定期改定では3回連続の増額で、プラス幅は09年度に次ぐ高い水準だ。他産業と比べて低い賃金水準や、物価高などによる事業者の経営悪化を考慮し、増額が必要だと判断した。鈴木俊一財務相と武見敬三厚生労働相が近く折衝し正式に決める。介護報酬は3年に1度見直す。前回の21年度改定は0.7%の引き上げだった。今回の1.59%のうち介護職員らの賃上げ分に0.98%をあてる。1.59%の増額とは別に、賃上げした事業者向けの加算の仕組みの変更に伴う追加費用や、光熱費の高騰対策で0.45%分を追加する予定だ。結果として、全体では実質2.04%相当の増額になるとみられている。政府は今回の改定でロボットでの巡回やセンサーでの見守りなどを導入する施設に報酬を加算する仕組みも新設する。20日に開くデジタル行財政改革会議で方針を決める。人手不足の解消に向け、デジタル化に関する数値目標も新たに設ける。IT(情報技術)やロボットを活用する事業者の割合は29%にとどまるが、26年に50%、29年に90%に高める目標を示す。介護報酬の財源は利用者が払う原則1割の自己負担を除き、40歳以上の個人と企業が拠出する保険料と、税金で半分ずつをまかなう。国の予算ベースの介護費用は23年度に13.8兆円で、1.59%増えると2200億円弱の費用増になる。大幅な増額となった背景には介護事業者の厳しい経営状況がある。厚労省の調査では介護サービスの22年度の利益率は平均2.4%で前の年度から0.4ポイント低下した。特別養護老人ホーム(特養)は初めて赤字に転じた。24年度は6年に1度の診療報酬との同時改定となっている。これまでは医療従事者の人件費に回る診療報酬の本体部分の改定率が介護報酬を下回ることはなかった。診療報酬本体の改定率は0.88%の増額となる方向で、同時改定では初めて介護が上回る。障害者への福祉サービスを手掛ける事業者に関する「障害福祉サービス等報酬」は1.12%引き上げる。

<1月1日の地震と1月2日の航空機事故>
PS(2024年1月4日追加):2024年1月1日16時10分頃、スマホが「地震です!地震です!今すぐ避難して下さい!」と叫んだのでTVをつけたら、*4-1-1・*4-1-2の能登地震が発生していた。地震の現場は志賀原発・柏崎刈羽原発の近くで、日本海側でも大地震が起こり、津波も来て、地震に伴う大火災が発生することもあることを再認識した次第だ。しかし、日本海側は大地震への準備が薄いらしく、耐震化の進んでいない鉄筋コンクリオートの建物がごろっと倒れていたり、狭い範囲に木造の古い建物がぎっしり並んでいたりして災害を大きくしたようだ。今回は、原発事故に繋がらなかったのが不幸中の幸いだったが、原発建設時に断層の有無などは調査しておらず、「新しい断層はできない」という保証も全くないため、日本海側も原発立地の適地ではないと思われた。
 そのような中、*4-2-1・*4-2-2のように、1月2日17時50分頃には、羽田空港の滑走路で、新千歳空港を出発して羽田空港に着陸しようとしていたJAL516便と、能登半島地震救援のため羽田空港から新潟航空基地に向かおうとしていた海上保安庁の航空機が衝突し、双方が炎上する事故があって、これにも驚かされた。脱出用シューターを使うなどしてJAL516便の乗客・乗員が全員脱出できたのは良かったが、海保機は羽田航空基地所属だったそうで、今の時代、混雑する羽田空港ではなく、厚木航空基地の所属にした方が良いと思われた。


 2024.1.2Whether News     2024.1.3日経新聞     2024.1.4毎日新聞

(図の説明:左図のように、今回の能登地震は震央が広い範囲に分布しているため、かなり広い範囲で地面の歪みが修正されたらしいことがわかる。また、中央の図のように、長い断層も多くできている。さらに、基礎を深く打ち込んでいないらしく、右図のように、鉄筋コンクリートの建物がコロッとひっくり返っているのが印象的だ)

*4-1-1: https://digital.asahi.com/articles/DA3S15830697.html?iref=pc_shimenDigest_national2_01 (朝日新聞 2024年1月4日) 国道寸断、迫る72時間 通信も途絶、捜索難航 能登地震
 能登半島を最大震度7の地震が襲って2日がたち、被災者の生存率が落ち込むと言われる「発生後72時間」が迫る。救出要請が相次ぐなか、細長い半島の先端という地理的な特性や交通網の寸断が壁となり、捜索は難航している。
■輪島市長「水・食料、全然足りない」
 「地震発生から42時間が近づいている。人命優先。市民の皆さんの命を救いたい」。3日午前9時半に、石川県の災害対策本部が開いた会議。オンラインで参加した珠洲市の泉谷満寿裕(ますひろ)市長は、画面越しにこう訴えた。画面には、各地から届く物資を集約する県や、幹線道路の復旧を担う国土交通省、人命救助にあたる消防や自衛隊の幹部ら。泉谷市長は「救助要請に対応できていないところが72件ある。まだまだ倒壊した家屋に閉じ込められている方が多くいると思う」と説明した。「能登半島の大動脈」と言われる国道249号が寸断され、通信が途絶し、被害を把握する自治体の動きも阻まれた。輪島市では、3日午後の時点でも行方不明者の人数が「不明」、住宅の損壊戸数は「多数」のまま。坂口茂市長は3日夕、「いまだ225件の救援要請がある」と明かした。「建物の下にいるから助け出して欲しい」「孤立している」などといった内容の要請が寄せられているという。自身も発生時から、自宅近くの町野支所での避難生活を余儀なくされた。3日になって陸自ヘリで移動し、約17キロ離れた市の本庁舎に入り、第6回となる会議に初めてオンラインで加わった。会議では、自らの避難経験も踏まえて「水や食料が全然足りていない」「電気がなくて暖をとれない」と窮状を伝えた。ほかの被災自治体からも「仮設トイレが限界」「携帯電話がつながらない」と、支援を求める声が次々に上がった。
■「被害把握に困難」政府、態勢を強化
 岸田文雄首相は3日午前、首相官邸で記者団に「被災者の救命救助は時間との闘いであり、まさに今、正念場であると感じている。倒壊した建物の下で救助を待っている方がまだ多数いると報告を受けている。人命第一で救急、救助に全力を尽くしている」と述べた。この日、現地で救命救助などにあたる自衛隊の人員を倍増させた。被災自治体からの要請を受け、救助犬も急きょ2倍以上に増やした。能登半島という地理的特性などから、政府も被害の全容を把握し切れていないのが現状だ。能登地方を震源とする強い地震が発生したのは1日午後4時10分で直後に日没を迎えた。首相は3日の会見で「日没後、夜間における活動があり、実態把握においてさまざまな障害があった」と語った。地震によって山間部などで道路が寸断。携帯電話の通信障害も起きた。林芳正官房長官は3日の会見で「通信障害などで、被害の把握に困難があった」と語った。能登半島最北部は一人暮らしの高齢者も多く、ある官邸幹部は「連絡が取りづらく、小集落の把握が難しい」と語る。
■自衛隊、隊員を倍増
 自衛隊は3日から被災地で活動する隊員を約2千人に倍増させた。3日朝の時点で、救助が必要な被災者は輪島市に70人、珠洲(すず)市に60人いると把握しており、救助犬も投入。この日午後1時までに珠洲市で少なくとも3人を消防隊員とともに救助するなどした。防衛省幹部は「今はとにかく人命救助が優先」と話す。自衛隊は1日夕の地震発生直後、日本海上空に航空機を飛ばして情報収集。航空自衛隊輪島分屯基地(輪島市)には住民約1千人が避難したため、埼玉県内の基地から水や食料、毛布をヘリで届けた。道路が至るところで寸断され、倒壊家屋に取り残された人の救出に必要な重機を運び込めず捜索は難航。通信状況が悪く、被災状況を把握するのもままならなかった。そんな中、輪島分屯基地の隊員約40人は、倒壊したビルや家屋に入って手探りで4人を救出した。能登半島を南北に走る県道1号の土砂を取り除き、3日未明に最大積載量4トンまでの車が通行可に。この日は海上自衛隊の艦艇が救援物資を運ぶために輪島港に入ったほか、エアクッション型揚陸艇「LCAC(エルキャック)」による砂浜からの重機搬入も4日朝に始める。国土交通省によると、石川県を中心に3日昼時点で国道や県道の85区間が通行止めだ。高速では解消が進む一方、亀裂や陥没、土砂崩れなどが判明し、前日夕時点の33区間から急増した。ただ、被害が特に大きい輪島市や珠洲市の道路状況は大半が不明のままだという。能登半島には幹線道路が少なく、幅員の狭い道路が毛細血管のように張り巡らされている。急峻(きゅうしゅん)な地形で、落石や土砂崩れのリスクがあり、容易に復旧作業を進められないのが現状だ。
■72時間過ぎると――脱水・低体温…生存率が低下
 山口芳裕・杏林大教授(救急医学)の話 寒冷地での災害で、少しでも早く救出しないと命の危険が増してしまう。72時間を過ぎると生存率が下がる理由は、閉じ込められた被災者は水分摂取が難しく脱水状態になること、低体温になること、暗闇のなか精神的に大きなストレスがかかることが挙げられる。阪神大震災では、救出された人の生存率が初日は75%、2日目は24%、3日目は15%、4日目は5%だったというデータがあり、「72時間」の根拠となっている。ただ、一律に72時間が適用されるわけではなく、捜索の努力は続けるべきだ。これから救出する場合、長時間の強い圧迫で腎不全などに至る「クラッシュ症候群」を念頭に置かないといけない。救出前に点滴を始めて、心停止が起きても自動体外式除細動器(AED)がすぐ使える態勢が必要だ。

*4-1-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20240104&ng=DGKKZO77409950T00C24A1PE8000 (日経新聞 2024.1.4) 木造密集地に火災リスク 輪島で200棟延焼、能登半島地震 東京は23区面積の1割強
 1日に発生した能登半島地震で、石川県輪島市で約200棟が燃える火災が起きた。現場は狭い範囲に木造の古い建物が並び、地震で大規模火災を引き起こしやすい木造住宅密集地(木密)だった。同様の地域は全国に点在し、東京都内にも8600ヘクタールと23区の1割強に相当する面積が残る。緊急車両が通れる道の確保や建て替え促進などリスク解消策は急務だ。地震発生後、輪島市中心部の「朝市通り」周辺で出火。2日午前にほぼ消し止められるまで約200棟に延焼した。現場は狭いエリアに店舗や家屋が集中。都市防災に詳しい東京大の広井悠教授は火災が広がった要因について「古い木造の建物が密集し、延焼しやすかった」とみる。木密を襲う火災は過去にもあった。1923年の関東大震災で、現在の東京23区の中心部にあたる旧東京市全体の4割強が焼失した。国土交通省は大規模な延焼の危険性や避難の難しさを踏まえ、全国の「地震時等に著しく危険な密集市街地」を集計。2022年度末時点の対象地域は12都府県で計1875ヘクタールに及ぶ。石川県内に該当地域はなかったが、国の定義に該当しなくても古い住宅の密集地は各地に点在し、木密の火災リスクが改めて浮き彫りになった。都は12年、木密解消に向けプロジェクトに着手。鉄筋コンクリートの建物や、延焼を防止する一定の広さがある公園などが占める比率(不燃領域率)を指標とし、同地域が60%未満など高リスクのエリアを木密と定義。広い道路の整備や、建て替えを促す支援を進めてきた。国の集計とは対象地域の定義が違うため面積は異なるが、20年時点の都内の木密は8600ヘクタール。10年時点からほぼ半減したものの、23区面積の14%にあたる地域が残る。広井教授は電気の復旧時に起きる火災を防ぐ「感震ブレーカー」普及など様々な対策の重要性を指摘。「文化的な背景から木造建物を残す地域もあり、それぞれの地域に合った取り組みを進める必要がある」と話す。

*4-2-1:https://digital.asahi.com/articles/DA3S15829803.html (朝日新聞 2024年1月3日) 日航機炎上、海保機と衝突 乗員乗客、全379人脱出 海保5人死亡 羽田空港
 2日午後5時50分ごろ、東京都大田区の羽田空港C滑走路で、着陸しようとした日本航空(JAL)の516便と、滑走路上にいた海上保安庁の航空機が衝突し、双方が炎上した。警視庁や東京消防庁によると、海保機の5人が死亡、1人が重傷を負い、JAL機の乗客・乗員のうち14人が負傷した。海保機は能登半島地震の救援のため、新潟航空基地に向かおうとしていたという。国の運輸安全委員会は2日夜、航空事故と認定し、調査を始めたと発表した。警視庁は3日、東京空港署に特別捜査本部を設置し、業務上過失致死傷容疑を視野に捜査する。国土交通省によると、JAL機が南側から着陸しようとした際、滑走路上にいた海保機に衝突。その後、滑走路北側まで進み、炎上した。海保機は誘導路から滑走路に進入した可能性があるという。JALは2日夜に会見し、滑走路への着陸許可について「出ていたと認識している」と説明した。JALや東京消防庁によると、516便の乗客は乳幼児8人含めた367人、乗員は12人。この計379人は全員、脱出用シューターを使うなどして脱出した。このうち14人が気道熱傷や打撲などで負傷したが、命に別条はないという。海保機には男性6人が搭乗しており、5人が死亡。機長はやけどを負って重傷だが、搬送時に意識はあったという。3日午前0時現在、JAL機の消火活動は続いており、滑走路は使用できなくなっている。海保機は2日午後8時半に鎮火した。JALや国交省によると、516便(エアバスA350)は2日午後4時15分に新千歳空港を出発し、約1時間半後に羽田空港に着陸しようとしたところだった。海保機は羽田航空基地所属のボンバルディア社製で長さ25・68メートル、幅27・43メートル、高さ7・49メートル。

*4-2-2:https://www.yomiuri.co.jp/national/20240104-OYT1T50105/?ref=webpush (読売新聞 2024/1/4) 羽田管制官「滑走路進入に気付かなかった」…衝突2分前に海保機が「停止位置に走行」復唱
 東京・羽田空港のC滑走路上で日本航空と海上保安庁の航空機が衝突した死傷事故で、C滑走路担当の空港管制官らが国土交通省の聞き取りに「海保機の進入に気付かなかった」と説明していることがわかった。管制塔の交信記録にも、海保機に滑走路手前の停止位置への走行を指示してから衝突までの2分間に異常をうかがわせるやり取りはなかった。国交省は当時の詳しい経緯を調べる。羽田空港には4本の滑走路があり、運用中の滑走路1本ごとに管制官2人が担当。うち1人は駐機場から誘導路への移動を担う。補佐役の管制官などもおり、管制塔全体で通常15人程度の体制を取っている。国交省関係者によると、当時管制塔内にいた管制官への聞き取りでは、担当管制官らは海保機が指示と異なる動きをしていることに気付かなかったという。3日に公表された交信記録では、滑走路の担当管制官は日航機と着陸を許可するやり取りをした直後の2日午後5時45分11秒、海保機に誘導路上の停止位置への走行を指示し、海保機側が復唱した。その後、同47分30秒頃に事故が起きるまでの約2分間は、別の民間機2機とのやり取りが行われ、日航機や海保機との交信はなかった。国交省は管制塔内でのやり取りも詳しく調べる。一方、運輸安全委員会は4日午前、日航機の乗務員への聞き取り調査を始めた。男性機長(50)らパイロット3人は社内調査に「海保機を視認できなかった」と説明。航空事故調査官は、事故当時の状況や認識に加え、コックピット内などでのやり取りも確認する。警視庁は4日午前、滑走路上で現場検証を再開した。既に海保機の機長から任意で事情を聞いており、日航機の乗客への聞き取りも進めている。

| 経済・雇用::2023.3~ | 01:04 PM | comments (x) | trackback (x) |
2023.11.12~12.1 細田前衆院議長と保利元文科省のご冥福を祈りつつ、女性差別と闘ってきた本物のキャリア・ウーマンとして、日本における女性差別の根本的な仕組みを解説する (2023年12月2、7日に追加あり)
(1)細田議長と保利元文科省の追悼


   唐津市       2022.11.3朝日新聞       2021.11.4読売新聞

(図の説明:前は引き子の法被も粗末だったのだが、保利氏のご尽力でユネスコ無形文化遺産に指定されて山笠の塗り替え費用が国から出るようになったため、少しは豊かになったらしく、山笠の色に合わせて町毎に統一された引き子の絹の法被が見た目も美しくなった)

1)細田前衆院議長の死去について
 この前の前議員会で衆議院儀長としての元気なお姿を拝見し、「広津さん、頑張ってね」と声をかけて下さっただけに、*1-1のように、メディアが「細田さんが多臓器不全で亡くなった」と報道した時は、「ひどいバッシング続きで苦労が多かったのだろう」と思い、寂しく思った。

 細田さんは、「東京教育大学附属駒場高校→東大法学部→通産省→運輸大臣等を勤めた父・吉蔵氏の議員秘書→1990年衆議院選挙で島根県全県区から初当選→11回連続当選」という絵に描いたようなサラブレッドであり、自らの選挙では苦労することのない人だったし、紳士でもあった(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%B4%B0%E7%94%B0%E5%8D%9A%E4%B9%8B 参照)。

 そのため、「一部週刊誌で指摘された女性記者へのセクハラ疑惑」というのは、私が経験したのと同様、本当の性格とは真逆の印象を擦り付けるための週刊誌によるあげつらいだと思われる。また、旧統一教会との接点についても、悪い結論ありきのしつこい質問が多すぎるが、「呼ばれて行ったので、リップサービスをした」というのは本当だろう。

 そのため、*1-2のように、自分も経験のある議員仲間は、メディアや野党発の悪評を「またか」と思って気にしておらず、岸田首相は「心から哀悼の誠を捧げたい」「今日までの努力に心から敬意を表す」「様々なご縁で親しくしていただき、先輩としてアドバイスをいただいたことを思い返す」と述べられ、茂木自民党幹事長は「悲しみでいっぱい」と表現され、公明党の山口代表は「自公連立政権をより強固なものにする過程で大きな役割を果たしてもらった」と感謝しておられるのである。

2)保利元文科相の死去について
 保利さんも前議員会で度々お会いし、同じ選挙区(佐賀三区)から出ていたため話が通じやすく、選挙区に関する会合等では親しくお話しすることが多かったため、*2-1・*2-2のように、誤嚥性肺炎で亡くなっていたという訃報に触れた時には寂しさを感じた。

 保利さんは、「東京教育大附属中学・高校→慶應義塾大法学部→日本精工→日本精工フランス社長→父・保利茂氏の死去で1979年衆議院議員総選挙に佐賀県全県区から立候補し初当選→郵政民営化法案採決で反対票を投じて自民党離党→12回連続当選」という慶応ボーイで、大学時代は陸上部だったそうで、スマートなサラブレッドの一生だった(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BF%9D%E5%88%A9%E8%80%95%E8%BC%94 参照)。

 保利さんは、佐賀県全県区から立候補した保利茂氏の選挙を手伝った時、「トラックに荷物を積んで佐賀県中を廻ったが、それでも佐賀方面では殆ど票が入らなかった」とボヤいておられた。佐賀方面は祐徳自動車社長の愛野さん父子の地盤だったからだろうが、金と時間がかかる中選挙区の大変さを垣間見た思いがした。

 なお、2005年9月執行の第44回衆議院議員総選挙(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%AC%AC44%E5%9B%9E%E8%A1%86%E8%AD%B0%E9%99%A2%E8%AD%B0%E5%93%A1%E7%B7%8F%E9%81%B8%E6%8C%99 参照)については、保利さんは郵政民営化法案採決で反対票を投じたため自民党の公認を得られず、もともと郵政民営化すべきだと思っていた私が自民党公認を得て佐賀3区で闘った。そして、佐賀県連の応援を受けた保利さんが小選挙区で当選し、私は九州比例で当選したが、総選挙後の特別国会で再提出された郵政民営化法案に保利さんたちは賛成票を投じられたものの、自民党を離党されることとなった。

 郵政民営化すべき理由は、①国営のままでは郵便貯金を使った国の隠れ債務が発生するため、「隠れ○○」をなくして国の債務は全て国債残高に現れるようにすること ②国営では機動的なサービスができず、サービスも行き届かないこと 等の理由による。しかし、保利さんは自民党佐賀県連の要請で反対票を投じておられたため、自民党佐賀県連は無所属で立候補された保利さんを応援し、ネジレ選挙になったのだ。

 その後、2008年に麻生内閣で自民党政調会長に就かれ、2009年8月執行の第45回衆議院議員総選挙では、保利さんが佐賀3区の自民党公認となり、私は九州比例の上位にもならなかったため、みんなの党佐賀3区から立候補して落選したわけである。

3)*2-3の記事で、私がひっかかった場所について
 *2-3は、①元唐津市議宮崎さんは「先生は厳しく、中途半端なことを言うとよくしかられた」「国のため地域のためを最優先に考え、政治家の範を示す実直な人だった」「唐津、佐賀のために頑張っていただき、本当に感謝の思いしかない」 ②熊本市議は「真面目な人柄で『選挙は情』だとよく話していたのが印象深かった」 ③昭和自動車常勤監査役の福岡修さんは「陣営の関係者に厳しかった分、自分にも厳しい方だった」 ④曳山取締会の山内総取締は「誠実で温厚な方だった」「曳山の塗り替えなど省庁との橋渡し役として支えていただいた」 等と語られたそうだ。

 もちろんどの人も褒めておられるのだが、①のうち「先生は厳しく、中途半端なことを言うとよくしかられた」と③の「陣営の関係者に厳しかった分、自分にも厳しい方だった」というのは、中途半端だったり、徹底しなかったり、厳しくなかったりすれば生き残れないため、当然のことである。

 しかし、男性の保利さんの場合は、「自分にも厳しい方だった」と言ってもらえるが、女性の私の場合は、「妥協しない」「優しくない」という批判が加わるため、女性であることにより、本来必要なことと矛盾した要求がなされるのである。

 また、②については、選挙は本来なら「政策」が一番大切だが、政策に比べるべきものがない場合には情で決めることになるだろう。しかし、情にはいろいろな要素が入っており、その中には女性への偏見や差別も含まれているため、国民は心してそれを廃すべきである。

 なお、④の曳山の塗り替えなどで保利さんが省庁との橋渡し役となっておられたことを、私は現職時代に聞き、それまで高額の費用を町内会が出して町内会費が高かったと言われていたため、無形文化財を支えるために良いことをされたと思っていた。ただし、要求される厳しさと温厚さを両立できるためには、選挙に晒されない秘書がしっかりしていて、憎まれ役を引き受けてくれることが必要なのである。

(2)政治における女性登用と無意識の偏見

 
 2023.3.9日経新聞          2023.6.22日経新聞   2023.6.22西日本新聞

(図の説明:1番左の図のように、世界ではクウォータ制を採用している国が多く、スペインは閣僚の40%以上、フランス・イタリアは下院の公認候補者男女同数・ブラジルも30%以上となっている。その結果、左から2番目と右から2番目の図のように、日本では政治・経済分野の特にリーダー層でジェンダーギャップが大きく、男女平等が進んでいない。1番右の分野別ジェンダーギャップ指数を見ると、政治・経済分野で男女格差が大きく、健康はまあ良いものの、教育は大学以上で専攻選択や大学院進学において男女格差が大きい)

1)日本の政治には女性が少なく世襲議員が多いこと
 岸田政権は、世界経済フォーラムの「ジェンダーギャップ報告書 2023年版」で日本が146カ国中125位で、特に政治分野が138位と足を引っ張っている状況を改善するためか、「女性活躍」を掲げて東証プライム上場企業の女性役員比率を2030年までに30%以上にする目標を示し、第2次岸田再改造内閣で閣僚の女性比率を30%に近づけるよう引き上げられたが、これには、私も賛成だ。

 しかし、*3-1のように、少子化対策に育児の実態を反映させようと、2児を育てている加藤元国交政務官をこども政策・少子化担当相に起用されたのは、副大臣を経験していない抜擢人事だからではなく、「(世襲国会議員という特殊な立場で)自分の2児を育てただけで少子化の原因を把握でき、少子化を改善できる」と考えているのなら、子育てを馬鹿にしていると思った。本気で少子化対策を考えているのなら、経験豊富な子育て関係の専門家チームが適任であ