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2019.7.22 女性リーダーの誕生を妨げる女性蔑視と女性差別 (2019/7/23に追加あり)
  
国会議員の女性割合     管理職の女性比率   女性・女系天皇(2019.7.10毎日新聞)

(図の説明:左図のように、日本の国会議員に占める女性割合は著しく低く、中央の図のように、管理職に占める女性割合も低い。さらに、右図のように、女性天皇・女系天皇に未だ反対する政党もあり、世界からは周回遅れになっている)

  
   2019.7.22毎日新聞    2019.7.22読売新聞     2019.5.13朝日新聞

(図の説明:2019年参院選の結果は、左図のようになった。女性は、中央の図のように、候補者に占める女性割合より当選者に占める女性割合が低く、一般に女性の当選率の方が悪いことがわかる。また、女性・女系天皇を認めた場合の皇位継承順位は、右図のようになる)

(1)リーダーになる機会の男女平等はあるのか
1)2019年の参院選について
 *1-2のように、①2013年4月に安倍首相が成長戦略に女性活躍を盛り込み ②2014年1月の国会施政方針演説では「全ての女性が活躍できる社会をつくるのが安倍内閣の成長戦略の中核」と述べられ ③2016年4月には企業や自治体に女性の登用目標などの計画策定・公表を義務付けた女性活躍推進法を施行し ④2018年5月には「政治分野の男女共同参画推進法」が議員立法で成立して、女性が活躍しリーダーになるための法律整備は既にできている。

 しかし、2019年の参院選における主要政党の女性候補割合は、野党は社民(71%)、共産(55%)など女性が半数を超える政党もあり、立憲民主(45%)も約半数だが、与党は自民(15%)、公明(8%)と低かった。これには意識の低さ以外に、すでに現職で埋まっているため新しい候補を擁立しにくいという事情もあるだろう。

 世の中は、少子化による生産年齢人口割合の減少で物理的にも女性労働力の重要性は増しておりが、女性の地位向上によって男性にはない視点からの気付きを意思決定や政策に反映しやすくなる。そのため、男性優位の習慣や制度は大胆に変えるのが経済的にも有効だが、日本の女性登用は欧州連合(EU)委員長と欧州中央銀行(ECB)総裁に女性を起用した欧州に比べると30年遅れである。

 なお、7月21日に投開票された参院選の候補者となった女性の当選率は、*1-1のように、26.9%で、男性の36.1%に及ばず、女性候補の比率は過去最高の28.1%となったものの全当選者に占める女性の比率は22.6%に留まった。選挙区別では、女性当選者が東京で半数の3人を占め、神奈川や大阪でも半数だったが、九州は全体で0だった。

 女性の当選率が低い理由は、女性候補が野党に多く、現職でない上に準備期間も短いため、不利な闘いを強いられることだろう。しかし、九州の0は、*2-2に代表される女性蔑視が大きな原因の一つだと考える。

2)世界と日本の男女平等度
 日本の男女平等度は、*1-3のように、世界経済フォーラムが公表する「ジェンダーギャップ指数」で示されており、この指標による日本の2018年の順位は149か国中110位とG7、G20で最下位だ。指標の内訳は、2018年で、①経済分野 0.595(117位) ②教育分野 0.994(65位) ③健康分野 0.979(41位) ④政治分野 0.081(125位) であり、いずれも決して高くはないが、政治分野は特に低い。

 政治分野の評価の対象は、「国会議員の男女比」、「女性の閣僚率」、「女性首相の在任期間」などだが、国会議員における女性の割合が衆議院10.2%、参議院20.7%(平成31年1月現在)であるのは、日本のジェンダー平等への進行が遅すぎるということだ。

 今回の参院選では、370人の候補者のうち女性は104人で28.1%を占め、過去最高の高さと言われているものの、政党別では、①自民党15%(12人) ②立憲民主党45%(19人) ③国民民主党36%(10人) ④公明党8% (2人) ⑤共産党55%(22人) ⑥日本維新の会32%(7人) ⑦社民党71%(5人)と党による差が大きい。

 しかし、採用時点で30%では、指導的地位に女性が占める割合を30%程度にすることはできず、2020年に指導的地位の女性割合を30%にするためには、採用時は50%くらいでなければ、女性に多いハードルや偏見をクリアして生き残る人は30%にならない。そして、衆議院議員・参議院議員も、なっただけでは指導的地位についたとは言えず、実力と実績で閣僚や党幹部になれて初めて指導的地位についたと言えるのである。

3)他分野における指導的地位に女性が占める割合
i) キャリア官僚への女性合格
 国家公務員キャリア官僚への女性合格率は、*1-4のように、2019年度の採用試験で1798人が合格し、女性割合は過去最高の31.5%で初めて3割を超えたそうだが、キャリア官僚になったから指導的地位に就いたとは言えないため、採用時は女性を50%採用すべきだ。

 そうすれば、次官や局長などの女性割合が次第に30%になると思われるが、2020年にはとても間に合いそうにない。

ii) 女性天皇、女系天皇は何故いけないのか
 このように、「指導的地位の女性割合を30%にしよう」と言っている時代に、*1-5のように、女性天皇や女系天皇に拒否感を示す政党は、科学的でも論理的でもなく感情的である。

 立憲民主党は「皇位継承資格を女性・女系皇族に拡大し、現代における男女間の人格の根源的対等性を認める価値観は一過性ではない」と明記し、「皇位継承順位は長子優先」とした。共産党は女性・女系天皇に賛成する立場を明らかにしており、自民党と国民民主党は男系維持だ。この「立憲民主党」「共産党」と何かと自民党に近い「国民民主党」の違いが、今回の野党間の選挙結果の違いに繋がっていると思う。

(2)女性がリーダーになることを阻害する偏見・女性蔑視
 2019年7月22日、*2-1のように、佐賀新聞が「政治分野の男女共同参画推進法成立後、初めての大型国政選挙だったが、参院選の女性当選者数は、選挙区18人、比例代表10人の計28人で過去最多の前回2016年と同数だったものの、立候補した女性104人のうち当選率は26.9%は前回を下回り、当選者全体に占める女性比率は22.6%だったと記載している。

 せっかくこの認識に至ったのなら、私には心当たりが多いため、九州は全県で女性当選者が0だったという日本の平均から見ても周回遅れだったことも含めて、何故そうなるのかを分析し、女性候補に対する報道や表現を改めてもらいたい。何故なら、選挙は候補者を直接には知らない有権者が多く投票するため、メディアの女性蔑視表現で票が減ることが多いからである。

 このような中、選挙の最中の2019年7月20日、西日本新聞が、*2-2のように、「IQ(論理的思考)とEQ(情緒的感性)には明確な男女差がある」と書いており、その内容は、「男性は論理的に思考するタイプが多く、女性は情緒的・感覚的に思考するタイプが多いという明確な差が出て、男性は論理的に考えるのが得意で、女性は共感力が高いというイメージに近い結果になった」というものだ。

 これは、「(原因が何であれ)女性は感情的で男性ほど論理的でないため、リーダーには向かない」と言っているのであり、個に当てはめると妄想であって現実ではない。また、調査の仕方にも問題があり、出した結果は女性に対する偏見や女性差別にほかならない。さらに、こういう記事を書くことは女性候補者を不利にするため、選挙違反である。相手の立場に立って考える「おもいやり」は男女の別なく持っていなければならないものだが、そもそも“共感力”とはどういう能力なのか、特定の接客業以外で必要な能力なのか、私には意味不明である。

(3)女性差別を禁止する条約締結と法律制定の経緯
 私は、東大医学部保健学科を1977年に卒業し、男性に比べて就職の条件が悪かったので公認会計士の資格を取るために勉強をしていた時、1978年頃、さつき会(東大女子同窓会)の代表だった正木直子さんから電話をいただき、「どうしてさつき会に入らないの?」と聞かれた。

 そのため、「東大の卒業証書が就職であまり役に立たなかったからで、現在は公認会計士試験の勉強中です」と答えたところ、1979年の第34回国連総会で、*3-1の女子差別撤廃条約が採択され、日本は、1985年に、*3-2の最初の男女雇用機会均等法を外圧を借りて制定し、同年、女子差別撤廃条約を締結した。正木直子さんは、労働省勤務だったのだ!

 女子差別撤廃条約の締結と最初の男女雇用機会均等法制定は、赤松良子さんや正木直子さんなど、労働省(当時)に勤務していたさつき会の先輩方が変わった人であるかのように言われながらも、日本の男女平等を進めるための法律を作ったのである。一方、同じ1985年に、厚生省(当時)は、専業主婦の奨めともなる年金3号被保険者を作り、年金制度を積立方式から賦課方式に変更し、日本では女性活躍のアクセルとブレーキが同時に踏まれたのである。

 そして、*3-3のように、内閣府が男女共同参画社会基本法を作ったのは、*1-3のように、20年前の1999年だ。しかし、男女平等ではなく、男女共同参画に過ぎない。これに先立ち、1997年に男女雇用機会均等法が改正され、努力義務でしかなかった男女の雇用機会均等を義務化したが、これは経産省に私が頼んでやってもらったものである。

 そのほか、「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律(女性活躍推進法)」は、第2次安倍内閣下の最重要施策の1つとなり、2015年9月4日に公布・施行されたが、これは私の提案がきっかけだ。

 また、2018年5月23日に公布・施行された「政治分野における男女共同参画の推進に関する法律」は、赤松良子さんが中心になって女性たちが協力してできた法律である。

 つまり、女性差別を禁止する法律は、日本国憲法制定で男女平等を勝ち取ったのに差別され続けた日本女性が協力して制定してきたものだ。にもかかわらず、「男性には論理的に思考するタイプが多く、女性には情緒的、感覚的に思考するタイプが多い」とか「均等法以降の女性にのみキャリアがある」「空気を読むことが大切」などと言っているのは、馬鹿にも程があるのだ。

<リーダーになる機会の男女平等はあるのか>
*1-1:https://www.jiji.com/jc/article?k=2019072200284&g=pol (時事 2019年7月22日) 女性28人、過去最多タイ=当選率、男性に及ばず-東京など半数占める【19参院選】
21日投開票の参院選で、女性の当選者は選挙区18人、比例代表10人の計28人となり、過去最多の前回2016年に並んだ。選挙区の当選者は16年より1人多く、最多記録を更新。一方、女性候補全体に占める当選者の比率は16年より2.3ポイント減の26.9%で、男性の36.1%には及ばなかった。今回の参院選は、男女の候補者数をできるだけ均等にするよう政党や政治団体に求める「政治分野における男女共同参画推進法」が18年5月に成立して以降、初の大規模国政選挙となった。ただ、女性候補の比率は過去最高の28.1%となったものの、全当選者に占める女性の比率は22.6%にとどまった。選挙区別では、改選数が1増えた6人区の東京で女性が半数の3人を占め、ともに4人区の神奈川と大阪でも男女の当選者が同数だった。政党別で見ると、12人が挑んだ自民党の当選者が10人で、16年に続き最も多かった。公明党は2人の候補がともに当選。女性を積極的に擁立した主要野党4党では、立憲民主党で19人中6人が議席を得たのに対し、候補者数が最多だった共産党は22人中3人、国民民主党は10人中1人の当選にとどまり、社民党はゼロだった。NHKから国民を守る党も女性当選者がいなかった。改選数1の1人区で無所属の野党統一候補として出馬した中では4人が勝利。日本維新の会、れいわ新選組はそれぞれ1人が初当選した。

*1-2:https://www.kochinews.co.jp/article/293741/ (高知新聞社説 2019.7.18) 【2019参院選 女性活躍の社会】看板倒れの現実直視を
 「全ての女性が活躍できる社会をつくる。これは安倍内閣の成長戦略の中核です」。2014年1月の国会の施政方針演説で、安倍首相はそう決意を述べた。13年4月に成長戦略に女性活躍を盛り込んで、もう6年以上がたつ。演説では「20年には、あらゆる分野で指導的地位の3割以上が女性となる社会を目指す」と数値目標も掲げる意気込みだった。14年9月の内閣改造では、新設した女性活躍担当相ら5人の女性閣僚を起用。16年4月には企業や自治体に、女性の登用目標などの計画策定・公表を義務付けた女性活躍推進法が施行された。矢継ぎ早に打ち出された政策に対し、現在の実績はどうか。まず13年の政策演説で発表された「17年度末までに待機児童をゼロにする」との目標は、早々と断念し20年度末に先送りされた。女性閣僚の数も内閣改造のたびに減り、現在は片山地方創生担当相ただ1人だ。鳴り物入りで設置された女性活躍担当相も、片山氏が兼務するありさまである。政策を遂行する体制がこれでは、安倍政権のやる気を疑われても仕方がない。世界経済フォーラムが公表した18年版の男女格差報告によると、日本は調査対象の149カ国中110位だ。先進国では閣僚が男女ほぼ半々という国も珍しくない。女性1人というのは極端に遅れている。こうした現状を打開しようと昨年、「政治分野の男女共同参画推進法」が議員立法で成立した。選挙で男女の候補者数をできる限り均等にすることを目指す。同法が施行されて初の国政選挙となる今回の参院選が、今後を占う試金石となる。ところが主要政党の女性候補の割合を見ると、がくぜんとする事実が浮かんでくる。野党は社民(71%)、共産(55%)と女性が半数を超え、立憲民主(45%)もほぼ半数に近い。これに対し与党は自民(15%)、公明(8%)とあまりにも低い。自公が政権を握って6年半、早くから「女性が輝く社会」をぶち上げていったい何をしてきたのか。言い出しっぺがこのありさまでは、女性活躍推進法に真面目に取り組んでいる民間企業のやる気もそぎかねないだろう。安倍首相は男女が共同参画する社会の意義について、理解と努力が不足しているのではないか。少子高齢化が進む中で、国民の半数以上を占める女性の地位向上がなければ、よい政策や企画も生まれまい。これまでの「女性活躍」が看板倒れになっている現実を直視し、男性優位の習慣や制度を大胆に変えていく気概が必要だ。激動が続く欧州では先日、欧州連合(EU)委員長と欧州中央銀行(ECB)総裁に、ともに女性を起用する人事が固まった。世界との差は開く一方のようだ。

*1-3:http://ivote-media.jp/2019/07/09/post-3196/ (Ivote 2019.7.9) 2019年は節目の年【政治×女性】〜参院選2019〜
 第25回参議院議員通常選挙が7月4日に公示され、投開票日は、7月21日となっています。2019年は12年に一度の「統一地方選挙」と「参議院議員選挙」が重なる亥年の選挙として大きな節目の年になっていてivote mediaでも取り上げています。そして、もう一つ大きな節目として、2019年は「男女共同参画社会基本法」が制定・施行されてから20年という節目の年でもあるのです。男女共同参画社会の実現というものを21世紀の日本の最重要課題と位置づけ、課題の解消のために走り始めた年から20年経過をした年になります。ジェンダー平等に関して、近年では「女性活躍」という言葉を頻繁に聞くようになり、女性活躍は安倍政権の看板政策の一つでもあり、立憲民主党はじめ他政党でもジェンダー平等について動きを見せています。そこで今回の記事では、男女共同参画社会基本法が成立してから20年が経過をした現在の日本の男女平等における状況、とりわけ「政治」の分野における状況を確認し、参議院議員選挙における、読者の方々の投票の一つの視点となってもらえればと思います。
●日本における男女平等の現状
 男女平等を世界の国々と比較するときに用いられる指標は、世界経済フォーラム(World Economic Forum)が公表する「ジェンダーギャップ指数」です。この指標では、経済・教育・健康・政治の4つの分野のデータから作成されています。そして、日本の2018年の順位は149か国中110位(前年:144か国中114位)であり、前年から4つ順位を上げたものの、G7内では最下位となっていて、男女平等については後進国といっても過言ではありません。
指標の内訳としては、(2018年←2017年)
◇経済分野 0.595(117位) ← 0.580
◇教育分野 0.994(65位) ← 0.991
◇健康分野 0.979(41位) ← 0.980
◇政治分野 0.081(125位) ← 0.078
となっています。(1が完全平等を示す。)
 政治分野の評価の対象には、「国会議員の男女比」、「女性の閣僚率」、「女性の首相在任期間」などが評価の対象となっています。皆さん、ご存じの通り、日本では未だ女性首相の誕生は一度もありません。そして、国会議員の男女比の割合について、衆議院では10.2%、参議院では、20.7%(平成31年1月現在)が女性の議員となっています。これらのデータや、皆さんの方々の実感から分かるように日本では、政治分野における男女平等は、後進国であると考えられます。しかし、男女共同参画社会基本法が成立してから、今現在まで無策だったわけではありません。国・都道府県においては、男女共同参画計画を策定し、ほぼ全ての基礎自治体においても、男女共同参画に関する計画を策定して施策を実施しています。自治体の施策だけでは解決しない問題ではありますが、ジェンダー平等に関する課題は日本の大きな課題として掲げ続けられています。そのような状況から、特に政治分野におけるジェンダー平等の不平等を解消しようという大きな動きも出てきています。平成30年(2018年)5月23日に「政治分野における男女共同参画の推進に関する法律」が公布・施行されました。この法律では、衆議院、参議院及び地方議会の選挙において、男女の候補者の数ができる限り均等となることを努力目標として掲げ、目指しています。そこで、この法律が成立をしてから初めての国政選挙となる第25回参議院議員通常選挙の立候補者の男女の割合を見てみましょう。
●政党別立候補者数の男女比(今回の参院選)
 第25回参議院議員通常選挙には、370人が立候補をすることを予定しています。そのうちの女性候補は104人で28.1%を占めています。これは、過去最高の割合の高さとなっています。では、政党別に女性候補の数と割合を見てみましょう。
◇自由民主党  15%(12人)
◇立憲民主党  45%(19人)
◇国民民主党  36%(10人)
◇公明党    8% (2人)
◇共産党    55%(22人)
◇日本維新の会 32%(7人)
◇社民党    71%(5人)
 政治分野における男女共同参画の推進に関する法律が制定されてからのはじめての国政選挙で、以上のような立候補者の状況となっています。
●2020年30%目標
 「2020年30%目標」初めて聞く人も多いかと思います。これは、「社会のあらゆる分野において、2020年までに指導的地位に女性が占める割合を少なくとも30%程度とする」という平成22年12月に閣議決定をされた目標です。「指導的地位」の中には、衆議院議員や参議院議員も含まれているため、国の目標としても30%という目標は達成をすべき大きな指標となっています。この目標は、兼ねてから掲げられてきた目標でありますが、今回の参議院議員選挙の立候補者の男女の割合、政党別にみたときの男女の割合はどうでしょうか。判断は皆さま方にお任せをします。(以下略)

*1-4:https://www.hokkaido-np.co.jp/article/318756?rct=n_topic (北海道新聞 2019/6/25) 国家公務員の女性合格、初3割超 19年度、総合職
 人事院は25日、2019年度の国家公務員採用試験で、中央省庁のキャリア官僚として政策の企画立案を担う総合職に1798人が合格したと発表した。うち女性は567人。割合は過去最高の31・5%で、初めて3割を超えた。前年度から4・3ポイントの増加。人事院は「中央省庁で活躍する女性が増え、入省後のイメージを描きやすくなったことが一因」と分析している。申込者数は1万7295人で、倍率は9・6倍だった。合格者の出身大学別は、東大の307人が最多で、京大126人、早稲田大97人、北海道大81人、東北大と慶応大が75人で続いた。

*1-5:https://www.sankei.com/politics/news/190611/plt1906110035-n1.html (産経新聞 2019.6.11) 立民が「女系天皇」容認 国民との違いが浮き彫りに
 立憲民主党は11日、「安定的な皇位継承を確保するための論点整理」を取りまとめた。皇位継承資格を「女性・女系の皇族」に拡大し、126代に及ぶ男系継承の伝統を改める考えを打ち出した。「女性宮家」創設の必要性も強調した。一方、国民民主党「皇位検討委員会」は同日、男系維持に主眼を置いた皇室典範改正案の概要を玉木雄一郎代表に提出。両党間で皇室観の違いが浮き彫りとなった。立憲民主党の「論点整理」は伝統的な男系継承について「偶然性に委ねる余地があまりに大きい」と指摘した。また、「現代における男女間の人格の根源的対等性を認める価値観は一過性ではない」などと明記した上で、女系天皇を容認すべきだと訴えた。皇位継承順位に関しては、男女の別を問わず、「長子優先の制度が望ましい」とした。男系を維持する手段として旧皇族を皇室に復帰させる案は明確に否定。「今上天皇との共通の祖先は約600年前までさかのぼる遠い血筋だ。国民からの自然な理解と支持、それに基づく敬愛を得ることは難しい」と断じた。また、皇族減少に歯止めをかけるため、女性皇族が結婚後、宮家を立てて皇室に残り皇族として活動する女性宮家の創設を訴えた。一方、国民民主党は女系天皇を「時期尚早」として認めず、改正案も男系を維持する内容だ。ただ、過去に10代8人いた「男系の女性天皇」の皇位継承は認める。きょうだいの中では男子を優先した。皇統に関しては、共産党がすでに女性・女系天皇に賛成する立場を明らかにしている。3党は参院選の32ある改選1人区の全てで候補を一本化したが、最重要の皇室をめぐり、「立憲民主党・共産党」と「国民民主党」の間で方向性の違いが表面化した。

<女性がリーダーになることを阻害する偏見>
*2-1:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/403685 (佐賀新聞 2019年7月22日) 女性当選者28人、過去最多に並ぶ、政府目標には届かず
 参院選の女性当選者数は、選挙区18人、比例代表10人の計28人で、過去最多の前回2016年と同数となった。立候補した女性は104人で当選率は26・9%。前回を下回った。当選者全体に占める女性の比率は22・6%だった。政党に男女の候補者数を均等にするよう促す「政治分野の男女共同参画推進法」の成立後、初めての大型国政選挙。「指導的地位に占める女性の割合」を2020年までに30%にするとの政府目標には届かなかった。秋田と愛媛両県選挙管理委員会によると、両選挙区で戦後女性参院議員が誕生したのは初めて。

*2-2:https://www.nishinippon.co.jp/item/o/528623/ (西日本新聞 2019年7月20日) IQ(論理的思考)とEQ(情緒的感性)には明確な男女差が
●43万人の個性診断結果をビッグデータ解析して見えてきた、男女の思考性の違い
COLOR INSIDE YOURSELF( https://ciy-totem.com/ )は43万人以上が利用する、自己診断サービスです。43万人以上の診断結果をビッグデータ解析した結果みえてきた、個性や性格に関する興味深い統計データをお届けします。
●IQ(論理的思考)とEQ(情緒的感性)には明確な男女差が
 COLOR INSIDE YOURSELF(以下「CIY」)の診断結果では、個人の様々な特性が明らかになりますが、その中でも特に、「論理的に思考するタイプ」と「情緒的、感覚的に思考するタイプ」では、男女間で明確に差がでました。年齢別の診断結果の割合を多項式近似曲線で表すと、「論理的に思考するタイプ」は全年齢層で男性の割合が高く、逆に「情緒的、感覚的に思考するタイプ」では、全年齢層で女性の割合が高くなっています。ステレオタイプに言われているような「男性は論理的に考えるのが得意、女性は共感力が高い」というイメージに近い結果となりました。
●男女によって、求められる思考性が異なる?
さらに、ライフスタイル別の統計結果を見ると、男性では新社会人(23歳~29歳)から40代にかけて「論理的に思考するタイプ」が増加しています。女性では、高校から大学、社会人になるに従って「情緒的、感覚的に思考するタイプ」が増えており、30代からは緩やかに減っていきます。
●年齢とともに性格が変化する要因は、何でしょうか?
A:組織の中で、「男性は論理的であること、女性は情緒的で共感し合うこと」を求められた結果、年齢とともにそれぞれの思考性が変化していく
B:そもそも男女で年齢とともに思考性が変化していく傾向があり、結果的に「男性は論理的、女性は情緒的で共感力が高い」という集団ができていく
いずれの要因かまでは分析結果からはわかりませんでしたが、ここまで明らかになると、さらに興味深い洞察が得られそうです。
●年齢とともに性格は変わるのか?
 世代別の結果では、男性では「ゆとり第一世代~団塊ジュニア世代」までが、やや「論理的に思考するタイプ」が高くなっているようです。(女性では、世代別の変化は、あまり見られません。上述の通り、年齢や社会的なポジションに伴って性格が変わっていくのか、特定の世代に限って「論理的に思考するタイプ」がそもそも多いのかについても、興味深いポイントです。個性や性格の半分は遺伝で決まり、残りの半分はその他の要因によって決まると言われています。そのため加齢による性格の変化はそこまでないはずですが、男性で30−40代が「論理的に思考するタイプ」が多く、50代をすぎると「情緒的、感覚的に思考するタイプ」が増えていくという傾向を見ると、年齢とともに性格が変化しているとも感じられます。今後も継続的に結果を分析することで、年齢による変化なのか、特定の世代による傾向なのかを明らかにしていきたいと思います。

<女性差別を禁止する法律と条約>
*3-1:https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/josi/index.html (外務省) 女子差別撤廃条約
 女子差別撤廃条約は、男女の完全な平等の達成に貢献することを目的として、女子に対するあらゆる差別を撤廃することを基本理念としています。具体的には、「女子に対する差別」を定義し、締約国に対し、政治的及び公的活動、並びに経済的及び社会的活動における差別の撤廃のために適当な措置をとることを求めています。本条約は、1979年の第34回国連総会において採択され、1981年に発効しました。日本は1985年に締結しました。(以下略)

*3-2:https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyoukintou/danjokintou/index.html (厚労省) 
男女雇用機会均等法

*3-3:http://www.gender.go.jp/about_danjo/law/index.html#law_brilliant_women (内閣府男女共同参画局)
男女共同参画社会基本法
配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律
女性の職業生活における活躍の推進に関する法律(女性活躍推進法)
政治分野における男女共同参画の推進に関する法律

<女性の当選者>
PS(2019/7/23追加):滋賀県選挙区は1人区だが、脱原発を掲げる前滋賀県知事の嘉田由紀子さんが無所属で初当選された。無所属で立候補すると費用が自分持ちで大変なのだが、よく頑張られたと思う。

*4:https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190722-00010002-bbcbiwakov-l25 (BBCびわ湖放送 2019/7/22) 参院選 嘉田氏当選/滋賀
 参議院議員選挙は、21日投票が行われました。即日開票の結果、滋賀県選挙区は無所属新人で、前の滋賀県知事の嘉田由紀子さんが初めての当選を果たしました。初当選を果たした嘉田さんは「この滋賀から草の根の声をあげる転換点にしたい」と意気込みを語りました。参議院選挙滋賀県選挙区の開票結果は、嘉田由紀子さんが、29万1072票自民党現職で再選を目指した二之湯武史さんが27万7165票NHKから国民を守る党の新人服部修さんは、2万1358票でした。なお、投票率は51.96%で、3年前の前回を4.56ポイント下回りました。

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2019.7.17 環境・安全保障とエネルギー政策 ← 日本は、脱原発・脱化石燃料にして再エネ発電に移るのが合理的である (2019年7月17、18、19、20、21日に追加あり)

  2018.3.7毎日新聞     2019.7.10東京新聞      2018.8.1東京新聞

(図の説明:左図のように、フクイチ事故の処理費用は天井知らずで、先が見通せない状況だ。また、中央の図のように、原発事故被災地の放射線量は今でも高い。さらに、右図のような活断層や火山噴火は、これまでの原発建設には考慮されていなかったようだ)


2019.7.11  2018.12.22           農業地帯の風力発電
東京新聞    毎日新聞

(図の説明:参議院選挙の候補者は、国の予算のうち年金・社会保障を削ることには積極的だが、金を湯水のように使う原発再稼働には賛成の人がいるため、それぞれの意見を並べて比較すべきだ。また、農業補助金をばら撒くことを厭わない人も多いが、毎年補助金をばら撒くより一度だけ太陽光・風力など再エネ発電機器の設置を行い、その収入を補助金に換えた方が、予算の削減・地方創成・エネルギー自給率向上のすべてに資すると考える)

 

(図の説明:1番左の図のように、特に地域間送電線は鉄道などの既存インフラに沿って超電導ケーブルを敷設すれば電力ロスが少なく、人手不足なら、左から2番目の図のように、外国人労働者を雇用することも可能だ。また、漁業地帯は、右から2番目の図のような養殖施設に付帯した風力発電もあり、1番右の図のようなEV冷蔵トラックもできている)

(1)環境とエネルギー政策
 地球温暖化が原因と見なされる気象災害が、世界の各地で相次ぎ、*1-1・*1-2・*1-3のように、「気候緊急事態宣言」をする自治体がオーストラリア・欧州・北米国内で広がり、2019年5月には英国議会も宣言した。

 また、2015年にはパリ協定が採択され、国際エネルギー機関も2040年に総発電量の40%超を再エネが占めると見込んでいる。しかし、日本政府(特に経産省)は、フクイチ事故の辛酸を舐め「安全神話」が崩壊して原発比率が2017年度では3%になっているにもかかわらず、エネルギー基本計画で2030年の電源構成に占める再エネ比率を22~24%、原発比率を20~22%としている。つまり、国民の年金を減らしながら、無駄な国費を使って、環境に悪い輸入資源由来の原発を推進しようとしているわけだ。

 その原発の総コストは、国費も入れると再エネに到底かなわず、使用済核燃料という膨大な負債を未来に残し続けている。また、輸入石炭による石炭火力を温存しつつ「脱炭素社会」の実現を掲げる政策も自己矛盾しており、世界に遅れている。さらに、再エネによってエネルギー自給率を高め、国内で資金を循環させながら、安価なエネルギーを作って産業や国民生活に資する努力にも欠けるのである。

 一方、野党の多くは原発0をうたって再エネ導入の目標拡大を掲げており、共産党は再稼働させずに即時0、立憲民主党は2030年までに全廃を目指すとしているが、私は、即時0も可能だと考えている。エネルギー価格は産業の国際競争力に大きく影響し、エネルギー自給率は安全保障を左右するため、メディアは各党のエネルギー政策を参院選前に明確に報道し、有権者が参院選でエネルギー政策に関する審判もできるようにすべきだ。

(2)原発
1)フクイチの現在
 フクイチ事故後8年後の現在も、*2-1のように、終わりの見えない廃炉作業が続いており(予算ばかり使って本当にやる気があるのか?)、住民は苦境の中にあるのに、政府は原発再稼働の方針を変えず、旧来型の産業界がそれに期待を寄せている。

 しかし、*2-2のように、フクイチ1~4号機が立地していた福島県大熊町の帰還困難区域の放射線量は、今でも毎時2~3マイクロシーベルトあり、帰還が始まった地域でも事故前と同じように放射線量が低くなったわけではない。

2)参院選候補者の原発に対する見解
 そのため、「今後も原発を存続すべきと思うか?」については、各地で全候補者に問うて欲しいが、東京では、自民の武見さん・幸福実現党の七海さん・安楽死制度を考える会の横山さん・無所属の関口さんが「原発存続賛成」で、立民の山岸さんと塩村さん・共産の吉良さん・社民の朝倉さん・日本無党派党の大塚さん・れいわ新選組の野原さんが「原発存続反対」だそうだ。国民の水野さん・公明の山口さん・無所属の野末さんは「どちらでもない(言えない?)」で、回答しなかった人は「(言えないが)原発存続に賛成」と考えてよいだろう。

3)司法の見解
 四電伊方原発3号機の運転差し止めを求めて山口県の住民が申し立てた仮処分申請で、山口地裁岩国支部が申し立てを却下する決定を出したことについて、愛媛新聞が社説で、*2-3のように、「①山口地裁伊方稼働を容認したが、司法はフクイチ事故を忘れている」「②このような司法判断の連続に失望を禁じ得ない」「③住民の不安に正面から向き合っていない」等と報道しており、全く同感だ。

4)市民の抵抗
 また、*2-4のように、脱原発を目指す市民グループ「eシフト」が、ウランは100%輸入なのに、国のエネルギー基本計画が「日本の原発は準国産のエネルギー源」と記載して国産を強調しており、このような記述が104カ所もあって「原発推進への印象操作だ」と批判しており、そのとおりだと思う。このような論理的な反論が、あちこちから出ることが重要だ。

(3)これからのエネルギーは脱原発・脱化石燃料にして再エネへ転換
1)再エネへの転換
 九電が川内原発を鹿児島県で再稼働させた地元誌の南日本新聞も、*3-1-1のように、「①東日本大震災とフクイチ事故は、世界のエネルギー政策の転機となった」「②政治の責任で脱原発・再エネへの転換を急ぐべき」「③原発が競争力を失っていることは明らか」「④川内と玄海で原発4基が再稼働した九州では再エネの出力制限を招き、原発で再エネがはじき出された」「⑤政府が脱炭素社会をうたったパリ協定を批准しながら石炭火力発電所新設を認めているのはちぐはぐだ」「⑥原発にこだわった日本のエネルギー政策は世界の潮流から取り残された」「⑦政府は現実を見据えた大胆な政策転換に踏み出すべきだ」としている。私も、日本政府が原発を護ってトップランナーだった日本の再エネ技術をビリまで落とした責任は大きいと考える。

 日本弁護士連合会も、*3-1-2のように、パリ協定と整合したエネルギー基本計画の策定を求める意見書を資源エネルギー庁長官に提出しており、「①太陽光・風力について蓄電池・水素等と組み合わせた電力貯蔵系システム」「②再エネの送電網への優先接続」「③既存送電網の活用及び地域分散型電源に対応した送電網の拡充」「④地域分散型のエネルギー需給システム構築のための政策の積極的推進」「⑤省エネ対策の一層の強化」「⑥脱炭素化を促進する野心的な炭素の価格付けの早急な導入」などを挙げており、同感だ。

2)「RE100」の提言
 事業で使う電力をすべて再生可能エネルギーで賄うことを目指す国際的な企業連合「RE100」の国内メンバーと米アップルの計20社が、*3-2-1のように、2019年6月17日、2030年の日本の再エネ比率を、政府目標の「22~24%」から「50%」に引き上げるべきだと提言したそうだ。

 アップルで環境対策を担当するリサ・ジャクソン副社長が、「世界中でクリーンなエネルギーを調達している企業として痛感しているのは、政府の決断次第で、より安価で安定的に調達が可能になるということだ」と述べ、日本政府に企業の取り組みを後押しする政策を求めたのは、全くそのとおりでよかった。

 また、*3-2-2のソニーのように、(ちょっと遅いが)2040年までに、世界の111拠点で全電力を再エネに切り替える目標を立てたり、環境対策の優れた企業に投資や調達を集中させたりするのは効果的だ。

 さらに、*3-2-3のように、取引先等の自社拠点以外でもCO2排出削減や資源循環に取り組んだり、物流拠点の共同利用でCO2を減らしたりするグローバル企業が増えると、世界に好影響を与えることが可能だ。

3)電力会社は・・
 九州では太陽光発電の出力が原発7、8基分に高まり、九電の原発4基も再稼働したため、九電は、*3-3-1のように、太陽光や風力発電事業者に稼働停止を求める「出力制御」に踏み切ることが多くなり、もったいないことだ。余った再エネを事業者に直接販売したり、水素に変えたりするインフラがあれば、意識の高い事業者の助けになるが、このようなことが技術的に難しいようでは先進国とは言えない。

 しかし、*3-3-2のように、 四電管内では、太陽光や水力発電など自然エネルギーによる電力供給量が、2018年5月20日午前10時から正午にかけて需要の100%を超えていたそうだ。内訳は、太陽光161万キロワット、水力56万キロワット、風力7万キロワット、バイオマス1万キロワットの計225万キロワットで、需要の101.8%に達し、余った電力は連係線を通じて市場で他社に卸売りしたほか、水をくみ上げて夜間に発電する「揚水発電」に使ったとのことである。他地域への電力販売は、地方経済の活性化を通じて地方の財源創出に資すると考える。

 また、*3-3-3のように、エアコンを夜通し動かしておかないと命が危うい猛暑の夏でも、3・11の教訓を生かした賢い省エネ・再生可能エネルギーの普及・電力融通の基盤整備によって電気は足りていたそうで、むしろ最大のピンチに立たされたのは、昨年から今年にかけて4基の原発を再稼働させた関西電力だそうだ。

 地域独占からネットワークへ、集中から調整へ、原発から再エネへと電力需給の進化は静かに、しかし着実に加速しているのではないかとのことである。

<環境とエネルギー政策>
*1-1:https://www.chugoku-np.co.jp/column/article/article.php?comment_id=552537&comment_sub_id=0&category_id=142 (中国新聞 2019/7/15) ’19参院選、エネルギー CO2と原発、どう脱する
 「気候緊急事態宣言」をする自治体がオーストラリアや欧州、北米の国内で広がり、5月には英国議会も宣言した。地球温暖化が原因と見なされる気象災害が、世界の各地で相次いでいるからだ。温暖化を食い止めるため2015年に採択されたパリ協定が来年、本格的に始動する。各国のエネルギー政策の動向には今後、注目が強まるだろう。石炭や天然ガスなどの化石燃料に依存した経済や社会から、いかに脱却するか。東京電力福島第1原発事故の辛酸をなめた日本社会にとっては、原発の扱いも重い政策課題である。活発な政策論議が望まれる。安倍政権は昨年改定したエネルギー基本計画で、30年に電源構成で占める再生可能エネルギーの比率を22~24%、原発は20~22%とした。再生エネの「主力電源化」を今回初めて打ち出した割には、海外諸国に比べると見劣りのする数値といえよう。40年に世界で総発電量の40%超を再生エネが占める―と見込む、国際エネルギー機関(IEA)の予想ともかけ離れている。一方で、原発の電源比率は17年度で約3%にとどまる。20%超の比率目標は、30基前後の稼働を前提とした数字である。現実はどうだろう。耐震補強や津波対策による高コスト化で廃炉を余儀なくされる原発も現れている。再稼働にこぎ着けた9基の幾つかは、テロ対策の不備から運転停止命令の出る公算が大きい。比率の実現など、もはや困難な状況である。政府はまた、先にまとめた温暖化対策の長期戦略で「脱炭素社会」実現を掲げた。今世紀後半のなるたけ早期に、二酸化炭素(CO2)など温室効果ガスの排出量をゼロにするという。にもかかわらず、石炭火力を温存する姿勢は変えていない。国内では新規の発電所建設が進み、30年度の排出削減目標は達成が危ぶまれている。CO2の排出量が膨大なため、石炭火力の廃止に向かいつつある世界とは逆行している。どうして、これで30年の電源構成比率や「脱炭素社会」の実現を成し遂げられると言い切れるのだろう。化石燃料を使わず、CO2を排出しない。「非化石」電源として原発を位置付け、推進すれば、矛盾はしない―。そう言いたいのかもしれない。だが、原発の「安全神話」はとうに崩壊し、事故の際のリスクを国民は目の当たりにした。代償はあまりに大きく、そして長期に及ぶ。先の見えぬ使用済み核燃料の廃棄や処分コストを考えても、妥当性はもはや見当たりそうにない。現政権のエネルギー政策は明らかに、ちぐはぐと言わざるを得ない。矛盾しないとするなら、与党は選挙戦できちんと説明する責任がある。野党の多くは原発ゼロをうたい、再生エネ導入の目標拡大などを掲げる。石炭火力では唯一、立憲民主党が30年までの全廃を目指す―と打ち出した。対立軸がこれほどはっきりした分野でありながら、議論がまだ低調なのは物足りない。エネルギー政策は、私たちの暮らしはもとより、産業の国際競争力や安全保障も左右する。与野党間で、もっと論争が交わされるべきである。

*1-2:https://digital.asahi.com/articles/DA3S14097729.html?iref=editorial_news_two (朝日新聞社説 2019年7月15日) 参院選 脱炭素政策 変革への意欲はあるか
 来年から、地球温暖化対策の国際ルール・パリ協定が始まるのを前に、世界の脱炭素化が加速している。
再生可能エネルギー発電の設備容量は一昨年までの10年間で倍増し、すでに総発電量の4分の1を超えた。石炭火力発電は二酸化炭素(CO2)の排出量が多く、先進国では全廃や縮小をめざす動きが相次ぐ。
日本も自らの目標を達成できるよう、温室効果ガスの削減に本気で取り組まねばならない。そのために必要なのは、社会や経済の思い切った変革だ。参院選では、脱炭素化への与野党の覚悟と意欲が問われる。
これまで安倍政権のもとで打ち出されてきた各種の政策で、日本の脱炭素化を加速させられるのかは心もとない。たとえば昨年のエネルギー基本計画は、2030年度の電源構成で再エネを22~24%しか見込まず、石炭火力を26%も残すとしている。これに縛られたままでは、閣議決定した「50年までに80%排出削減」という目標にたどり着くのは難しい。政府は先月、この目標に向けたシナリオである長期戦略を国連に提出した。目標を達成した後、今世紀後半のできるだけ早期に排出ゼロの脱炭素社会をつくるとしている。だが、将来の不確かな技術革新に過度な望みをかけ、炭素税や排出量取引などのカーボンプライシングのように、いま実行できる対策からは逃げている。説得力に欠ける戦略である。それでも与党は、このシナリオに沿って進めばいいとの考えだ。脱炭素化を急がねば、という危機感は感じられない。それを象徴するのが石炭火力への姿勢である。日本には多くの新増設計画があり、「CO2削減に後ろ向きだ」と海外では評判が悪い。なのに与党は産業界の意向を尊重し、石炭火力からの撤退を視野に入れていない。大胆な政策転換に背を向けていては、世界の流れに取り残されてしまう。選挙戦の前半では、気候変動や温暖化をめぐる論戦は活発ではなかった。しかし野党には脱石炭に前向きな声があり、与党との対立軸として訴えられるはずだ。「30年までに石炭火力全廃」を公約に掲げる立憲民主党は、野党第1党として安倍政権の姿勢をただしてほしい。近ごろ、世界のあちこちで異常気象や自然災害が相次いでいる。このまま温暖化が進めば、くらしに深刻な影響が及ぶことを忘れてはならない。次世代に重いツケを回さぬよう、いま対策を急ぐ必要がある。与野党どちらに脱炭素社会をめざす意気込みがあるのか、しっかり見極めたい。

*1-3:https://digital.asahi.com/articles/DA3S13491491.html (朝日新聞 2018年5月13日) 原発20~22%を明記 「取り組み強化」 エネ計画改定案
 政府が今夏の閣議決定を目指す「第5次エネルギー基本計画」の原案がわかった。電力量に占める原子力発電の割合を20~22%にするなど、政府が2030年度にめざす電源構成を初めて明記し、「確実な実現へ向けた取り組みのさらなる強化を行う」とした。核燃料サイクル政策は維持し、原発輸出も積極的に進めるなど、原発推進という従来の姿勢を崩していない。原発比率を20~22%にするには30基程度を動かす必要がある。経済産業省はいまある原発の運転を60年間に延長すれば達成できるとの立場だ。だが、新規制基準のもと、現時点では8基しか稼働しておらず、「非現実的」と指摘される。東京電力福島第一原発事故後、再稼働に反対する世論が多数を占めるなか、エネルギー政策への不信を深めることにつながりかねない。30年度の電源構成は原発のほか、太陽光や風力などの再生可能エネルギーの比率を22~24%にすることなどを掲げる。15年に経産省がまとめたもので、その前年に決定した第4次計画には盛り込まれていない。原案は原発について「依存度を可能な限り低減させる」としながらも、「重要なベースロード電源」とし、従来の計画の位置づけを維持。新規制基準に適合した炉の再稼働を進めるとした一方、新増設の必要性の文言は明記していない。核燃料サイクルについては、自治体などの理解を得つつ、再処理で取り出したプルトニウムを燃やすプルサーマル発電を一層推進する、とした。安倍政権が成長戦略に掲げる原発輸出は各地で難航しているが、「世界の原子力の安全向上や平和利用などに積極的な貢献を行う」として、こちらも進める姿勢だ。再生エネは「主力電源化」を初めて打ち出した。送電線への接続制限などの課題の克服を「着実に進める」とした。一方、石炭火力は「重要なベースロード電源」との位置づけを維持した。温室効果ガス排出量が多く、国内外で批判も強いが、「高効率化技術を国内のみならず海外でも導入を推進していく」とした。化石燃料の自主開発比率について、30年に石油・天然ガスで40%以上に引き上げ、石炭は60%を維持することも目指す。基本計画は政府の中長期的なエネルギー政策の方向性を定め、約3年に1回見直している。原案は16日にある経産省の審議会に示す。

<原発>
*2-1:https://www.tokyo-np.co.jp/article/tokyo/list/201907/CK2019071102000124.html (東京新聞 2019年7月11日) <参院選>候補者アンケート 原発 「存続すべき」4人が主張
 東日本大震災から八年がたった今も、東京電力福島第一原発では終わりの見えない廃炉作業が続き、ふるさとに帰還できても、避難先などにいても、住民は苦境の中にある。一方、政府は原発再稼働の方針を変えず、産業界も期待を寄せている。今後も原発を存続すべきか。候補者に賛否を問うと、「賛成」が四人、「反対」が九人、「どちらでもない」が三人、「回答なし」が四人だった。賛成とした自民の武見敬三さんは「徹底した省エネ、再エネの導入等で原発依存度を可能な限り低減し、段階的な廃止を進め、安全性を最優先に、立地自治体等の理解を得るための取り組みを進めるべきである」と「条件付き」で存続の立場を取る。日本は石油などが乏しいことや、経済力、技術力の維持という観点から存続を容認する意見も。諸派(幸福実現党)の七海ひろこさんは「安全保障上からも原発の再稼働・増設を進め、エネルギー自給体制を構築すべきだ」と主張した。また、無所属の関口安弘さんは「原発なしで電源問題は解決できない。再生可能エネルギーの比率を高めながら最低限は存続」とする。諸派(安楽死制度を考える会)の横山昌弘さんは「原子力発電の技術を維持するためにも存続する必要がある」としつつ「狭い日本では数を半分に減らせる」と述べた。一方、反対する立民の山岸一生さんは「『原発ゼロ基本法』成立後五年以内に全ての原発を停止し、再稼働させることなく廃炉にする」と持論を展開。同じく立民の塩村文夏さんも反対の立場だった。共産の吉良佳子さんは「原発と人類、地震国日本は共存できない。コストの点でもすでに失格」と断じ、再生可能エネルギーへの転換を提言。社民の朝倉玲子さんは「人間の力で制御できないものは作るべきではない」、諸派(日本無党派党)の大塚紀久雄さんは「海岸線に設置され危険極まりない」、諸派(れいわ新選組)の野原善正さんは「巨大地震が取り沙汰されている中、継続はありえない」と安全性を疑問視。国民の水野素子さんは「原発ゼロ社会を目指していくためには、現実的な道筋、ロードマップを責任ある形で示していくことが必要」と指摘する。公明の山口那津男さんは「新設は認めない」が「新規制基準を満たし、立地自治体等関係者の理解を得て、再稼働を判断。再エネ拡大で原発依存度を下げる」として「どちらでもない」を選択。無所属の野末陳平さんは「当面は原発存続しかないが、三十年くらい先は原発依存から脱却しなくてはいけない」とする。
     ◇
 アンケートでは、丸川さん、西野さんから回答を得られなかった。森さんは回答を拒んだ。大橋さんは一部のみ回答。

*2-2:https://genpatsu.tokyo-np.co.jp/page/detail/1075 (東京新聞 2019年7月10日) 福島・大熊町の放射線量 −本紙が実走して測定−
 本紙は6月26日、東京電力福島第一原発1~4号機が立地する福島県大熊町の帰還困難区域で放射線量調査を実施した。7時間かけ自動車で約160キロを低速で走り、車外の線量分布を調べると、今なお原発事故の爪痕が色濃く残っていた。同町は、今年4月、大川原(おおがわら)、中屋敷(ちゅうやしき)両地区の避難指示が解除され、JR常磐線大野駅近くにあった町役場は大川原地区に移転し、新たな歩みを始めた。町の復興計画では、大野駅周辺など人口が多かった地域を「特定復興再生拠点区域」に指定し、優先的に除染を進めて2022年春ごろまでに避難指示の解除を目指す。27年には居住人口を、震災前の2割強に当たる2600人まで回復させたい考え。除染はまだ始まったばかりで、大野駅周辺は毎時2~3マイクロシーベルトあった。国道6号の東(海)側は、除染で出た汚染土などを長期貯蔵する中間貯蔵施設。用地が確保されしだい、次々と処理・貯蔵施設が建設され、急速に町の姿が変わっていた。

*2-3:https://www.ehime-np.co.jp/article/news201903160010 (愛媛新聞社説 2019年3月16日) 山口地裁伊方稼働容認 司法は福島の事故を忘れている
 東京電力福島第1原発事故を忘れたかのような司法判断の連続に、失望を禁じ得ない。四国電力伊方原発3号機の運転差し止めを求め、山口県の住民が申し立てた仮処分申請で、山口地裁岩国支部は申し立てを却下する決定を出した。愛媛をはじめ、広島、山口、大分4県の住民らが同様の仮処分申請をしているが、2017年に広島高裁が火山の危険性を指摘し運転を差し止めた以外、全て運転を認める決定が下っている。ほとんどが四電の主張を追認する内容で、原発の安全性や重大事故が起きた場合の避難など、住民の不安に正面から向き合っているとは言い難い。司法は、二度と福島のような事故を起こさない責任を改めて自覚し、住民の命や権利を守る役割を果たすべきだ。山口地裁で争点の一つだった住民の避難計画に対する判断は特に信じがたい。伊方原発から30㌔圏外で避難計画が策定されていない点について、国の緊急時対応が合理的との理由で問題視しなかった。しかし、福島原発事故の被害が30㌔圏にとどまらなかったことは周知の事実。事故への備えを一律に距離で線引きすることはできず、現実から目を背けるような姿勢は看過できない。さらに、地震などとの複合災害が起きた場合には「速やかに避難、屋内退避を行うことは容易ではないようにも思われる」と認めながら、具体的な問題点には触れていない。そればかりか「自治体レベルでの対応が困難になった場合には、全国規模のあらゆる支援が実施される」と言及。避難計画がなくても、いざとなれば国が何とかしてくれるといった論理はあまりにも乱暴で楽観的すぎる。伊方原発で最大の懸案である地震の影響に関しては、審尋の中で、地質学の専門家が活断層である沖合の中央構造線断層帯とは別に、地質の境界線の中央構造線の周辺にも活断層が存在する可能性を指摘した。決定では、四電や大学などが詳細に調査しているとして「活断層が存在するとはいえない」と断言したが、疑問だ。政府の地震調査研究推進本部も調査の必要性に言及しており、国や四電は速やかに検討すべきだ。広島高裁が運転差し止めの根拠とした巨大噴火の危険性は、「社会通念を基準として判断せざるを得ない」と、他の決定を踏襲した。だが、国民が気に留めないことと、実際の危険性は別の話だ。弁護団が「科学的な問題に社会通念を用いるのはおかしい」と指摘するように、噴火の規模の予測が困難な以上、自然災害には最大限謙虚に向き合わなければならない。社会通念を持ち出すべきは、原発の在り方そのものだろう。決定では「原発の必要性が失われている事情も認められない」としたが、太陽光などの再生可能エネルギーの普及が進む今、脱原発への潮流を司法が見誤ってはならない。

*2-4:https://www.tokyo-np.co.jp/article/economics/list/201903/CK2019031502000147.html (東京新聞 2019年3月15日) 「エネ計画に印象操作」市民団体分析 原発「国産強調」 事故「矮小化」
 国のエネルギー基本計画について、脱原発を目指す市民グループ「eシフト」は十四日、その内容を詳細に分析した結果を公表した。ウランは100%輸入なのに計画には「日本の原発は準国産のエネルギー源」と「準」とすることで国産を強調しているとし、グループはこのような問題を含む記述が百四カ所あると指摘。「原発推進への印象操作だ」と批判している。作成の中心を担った東北大の明日香壽川(あすかじゅせん)教授(環境エネルギー政策)は本紙の取材に「都合の良いデータだけを採用したり、事象の一面しか取り上げないなど、印象操作を狙ったように見える」と指摘した。検証サイトは、基本計画の本文を示しながら、問題のある箇所を一目でわかるように色づけし、問題点を解説するコメントを逐一、添えた。例えば、基本計画の前提となる近年のエネルギー動向をどう見るかについて、二〇一八年に閣議決定したこの第五次計画は、第四次計画を決めた一四年から「本質的な変化はない」と記述。これに対し、検証サイトは再生エネのコストが低下する一方で、原発のコストが増加したことを挙げ、「極めて大きな変化があった」と、前提の置き方を問題視した。福島第一原発事故による避難者の数に関して、基本計画が区域外避難者を含めていない点を「被害の矮小(わいしょう)化だ」と批判した。明日香氏は「エネルギー政策は複雑と思われがち。問題点を分かりやすく示すことで、改めて議論のきっかけになれば」と語った。検証サイトは、eシフトの公式サイトで読むことができる。

<これからのエネルギーと脱原発>
*3-1-1:https://373news.com/_column/syasetu.php?storyid=103037 (南日本新聞社説 2019/3/10) [原発政策] 再生エネへ転換を急げ
東日本大震災とそれに伴う東京電力福島第1原発事故は、世界のエネルギー政策の転機となった。原発依存を脱却し再生可能エネルギー中心への大転換である。それなのに日本では安倍政権の下で原発の再稼働が進められ、ルール骨抜きの運転期間延長の動きも顕在化している。いまだに汚染水がたまり続け、溶けた核燃料の取り出し方法さえ定まっていない福島第1原発の状況を見れば、現実離れした政策と言わざるを得ない。安倍晋三首相は、8年たっても5万人以上に避難生活を強いている震災と原発事故の複合災害の教訓を思い起こすべきだ。政治の責任で脱原発の方針を明確にし、再生エネへ転換を急ぐ必要がある。福島の事故後、安全規制の強化によって原発の建設コストが膨れ上がり、世界各地で新増設計画が苦境にある。東芝の米子会社が経営破綻し、フランスの原発大手だったアレバ社も事実上破綻した。昨年末には、三菱重工業がトルコで進めていた原発新設計画と、日立製作所の英国での案件が断念の方向に追い込まれていることが表面化した。これで安倍政権が成長戦略として旗振り役を務めた原発輸出は全て行き詰まった。原発が競争力を失っていることは明らかだ。政府は昨年7月に改定したエネルギー基本計画でも原発を引き続き基幹電源と位置付け、2030年の電源構成比率の目標でも原発を20~22%のまま据え置いた。目標達成には現在稼働している9基を30基程度に増やす必要があるが、国民の反発が予想される新増設の議論は封印したままだ。川内と玄海両原発の4基が稼働する九州では、電力の供給過剰対策で再生エネの出力制限を招いている。原発再稼働によって再生エネがはじき出された格好だ。一方で政府は電力会社に多くの石炭火力発電所の新設を認めている。「脱炭素社会」の実現をうたったパリ協定を批准しながら、まったくちぐはぐな対応である。この間に、多くの国が脱原発や脱石炭のエネルギー政策に動きだしている。再生エネのコストが劇的に低下し、急拡大しているからだ。20年までに風力や太陽光が最も安価な電源になると予測する国際機関もある。原発にこだわるあまり、日本のエネルギー政策は世界の潮流から完全に取り残された。政府は早急に、現実を見据えた大胆な政策転換に踏み出さなければならない。

*3-1-2:https://www.nichibenren.or.jp/activity/document/opinion/year/2018/180615.html (日本弁護士連合会 2018年6月15日) パリ協定と整合したエネルギー基本計画の策定を求める意見書
●本意見書について
 当連合会は、2018年6月15日付けでパリ協定と整合したエネルギー基本計画の策定を求める意見書を取りまとめ、資源エネルギー庁長官に提出しました。
●本意見書の趣旨
 第5次エネルギー基本計画は、2050年までに温室効果ガスの排出量を80%削減するという我が国の長期目標に向けて、以下の点を明確にし、パリ協定の目的と整合したものとすべきである。
1 福島第一原発事故の経験から、原子力発電所の稼働、新増設を前提とするのではなく、原子力からの脱却を前提とする計画とすべきである。
2 脱炭素を実現するため、石炭火力発電からの脱却を明確に位置付けるべきである。
3 速やかに再生可能エネルギーの主力電源化を実現するために、2030年の電力供給に占める再生可エネルギーの割合を30%以上に引き上げるべきである。また、その拡大に当たっては、太陽光・風力について蓄電池や水素等と組み合わせた「再生可能エネルギー・電力貯蔵系システム」をコスト検証の対象とするのではなく、再生可能エネルギーの送電網への優先接続、既存送電網の活用及び地域分散型電源に対応した送電網の拡充など、地域分散型のエネルギー需給システム構築のための政策を積極的に推進するべきである。
4 省エネ対策の一層の強化及び脱炭素化を促進する野心的な炭素の価格付け政策を早急に導入するべきである。
5 エネルギー基本計画は、国民への十分な情報開示と、国民の意見が政策の立案・策定において実質的に反映されるプロセスの下で策定されるべきである。

*3-2-1:https://www.tokyo-np.co.jp/article/economics/list/201906/CK2019061802000131.html (東京新聞 2019年6月18日) <原発のない国へ>2030年、再エネ50%提言 ソニー、イオン、アップルなど20社
 事業で使う電力をすべて再生可能エネルギーで賄うことを目指す国際的な企業連合「RE100」の国内メンバーと米アップルの計二十社が十七日、二〇三〇年の日本の再エネ比率を、政府目標の「22~24%」から「50%」に引き上げるべきだと提言した。RE100は、英非政府組織(NGO)「The Climate Group」などが運営し、米グーグルやスターバックスなど百七十九社が参加。提言には、国内企業で加盟するソニーやイオンなど十九社に、世界の自社施設で使う電力を昨年すべて再エネにした米アップルを合わせた二十社が名を連ねた。提言は、世界中で異常気象が頻発していることを挙げ「早期の脱炭素化への行動が必要だ」と強調。気候変動に対応するため、温室効果ガスを排出しない再エネの比率を高める必要があるとし、「国が明確かつ意欲的な方向性を示すことが、迅速かつ大規模な再エネ普及の前提になる」と訴えた。この日、東京都内で関連のシンポジウムがあり、アップルで環境対策を担当するリサ・ジャクソン副社長が「世界中でクリーンなエネルギーを調達している企業として痛感しているのは、政府の決断次第で、より安価で安定的に調達が可能になるということだ」と述べ、日本政府に企業の取り組みを後押しするような政策を求めた。アップルは取引先にも納める部品を再エネ100%で生産することを求めており、国内ではイビデン、太陽インキ製造、日本電産の三社が対応した。ジャクソン氏は「他の日本の部品供給企業も続いてほしい」と訴えた。

*3-2-2:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO35148180Y8A900C1EA5000/ (日経新聞 2018/9/9) ソニー、全電力を再生エネに 世界111拠点で40年に
 ソニーは事業運営に必要な電力をすべて再生可能エネルギー由来に切り替える。現在7%の再生エネ比率を2040年までに段階的に引き上げる。環境対策の優れた企業に投資や調達を集中させる動きがあり、企業価値に直結すると判断した。日本では10社程度にとどまる全面切り替えが、半導体など生産に大量の電力を使う大手製造業にも広がってきた。世界中の事務所や工場など111拠点で使う電力を再生エネに切り替える。テレビやカメラなどの生産に必要な電力に加え、映画などコンテンツ製作も含む。工場の屋根に太陽光パネルを設置したり、再生エネを使ったとみなされるグリーン電力証書を買ったりして再生エネ比率をまず30年に30%まで引き上げる。再生エネへの全量切り替えを目指す世界的な企業連合「RE100」に加盟する。米アップルなど先行する欧米勢に加え、日本では富士通やリコー、イオンなどが参加し30~50年までの全量切り替えを目指している。ソニーは欧州ですでに再生エネ活用100%を達成しているが、グループ全体の電力消費の8割は日本に集中している。半導体工場があるためだ。ソニーの電力などに由来する温暖化ガス排出量はリコーの4倍あり、同連合に加盟する日本の製造業では最多になるとみられる。太陽光発電設備の買収も進める。日本では32年以降、再生エネでつくった電力を高値で買い取る固定価格買い取り制度の対象から外れる太陽光発電所が出てくるため、発電事業者の間で設備売却機運が高まるとソニーはみている。環境や社会への配慮で優れた企業に投資するESG投資は世界的な潮流になっている。世界持続可能投資連合(GSIA)の集計によると、世界でESG投資に向かった金額は16年に22兆9千億ドル(約2540兆円)と14年比で25%増えた。日本でも約160兆円を運用する最大の機関投資家、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が17年からESG指数に基づいた運用を始めた。再生エネへの切り替えは一時的にコスト増を招くが、「対応しなければ(資金調達など)事業が立ちゆかなくなる未来が来る」(ソニー幹部)と取り組みを強化する。

*3-2-3:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO25954220Q8A120C1EA5000/ (日経新聞 2018/1/21) 本社調査:環境エネ 素材キヤノン、製造業首位守る 環境経営度ランキング
 日本経済新聞社が実施した第21回環境経営度調査の企業ランキングで、製造業ではキヤノンが2年続けて首位となった。環境対策を取引や投資の条件とする動きが世界で強まるなか、取引先など自社拠点以外でも二酸化炭素(CO2)の排出削減や資源循環対策に取り組む企業が増えている。非製造業では物流拠点の共同利用でCO2を減らす試みが広がっている。調査では、資源循環や温暖化対策など5つの評価指標で企業を評価してランキングにまとめた。キヤノンは評価指標すべてで高評価を獲得。中でも資源循環は最高点だった。使用済みの複合機やトナーを回収し、部品や素材を製品に再利用する取り組みを強化。使用済み製品を生まれ変わらせた量は2016年に累計3万4千トンと、12年の6倍に増えた。茨城県には再資源化専用の工場も設けた。環境統括センターの古田清人所長は「欧州の国際会議などでは温暖化対策以外に資源循環を求める声がある」と話す。再資源化拠点は欧州や米国、中国にも設けている。5位のトヨタ自動車も資源循環に取り組む。使用済み自動車の破砕処理後に出る廃棄物の再資源化率は16年度に98%と12年度比4ポイント高まった。2位のコニカミノルタは主要な調達先500社以上を対象に省エネ支援を始めた。自社工場で培った省エネ対策をまとめたデータベースを17年に作成。調達先が容易に省エネできるようにした。サプライチェーン(供給網)全体で水資源のリスク管理に動くのは7位のサントリーホールディングス。17年度に取引先を対象とした水使用についてのガイドラインを整備した。海外の水使用量や水の枯渇リスクなどを把握。水を通じて持続可能な生産体制を整える。非製造業の運輸部門では佐川急便が3年連続の首位。20年をメドにIHIと都内に物流拠点を新設して共同運用する。物流を効率化することでトラックの配送距離を短くし、CO2排出量を減らす。2位の日立物流は佐川急便と資本提携しており、両社で千葉県の物流拠点の共同活用を進める。建設業は2年連続で積水ハウスが首位となった。17年から住宅の建設廃棄物をQRコードを使って現場で分別するリサイクルシステムの運用を始めている。
▼環境経営度調査 企業が環境対策を経営と両立させる取り組みを評価する調査。日本経済新聞社が日経リサーチの協力を得て1997年に始めた。今回は上場と非上場の有力企業のうち、製造業1724社、小売り・外食、電力・ガス業、建設業などの製造業以外の業種1357社を対象に、2017年8月から11月に実施。676社から有効回答を得た。評価指標は製造業が、環境経営推進体制、汚染対策・生物多様性対応、資源循環、製品対策、温暖化対策の5つ。スコア算出の際は、評価指標によって最高点が異なるため、最高を100、最低を10に変換。最高スコアを500とした。建設業は製造業に準じ5指標で評価し、非製造業、電力・ガス業は「製品対策」を除く4指標で評価している。非製造業の最高スコアは400、電力・ガス業は対象社数が少ないため各指標の平均を50、合計の平均を500としてスコアを算出している。

*3-3-1:http://qbiz.jp/article/139788/1/ (西日本新聞 2018年8月28日) 九電が事業者に太陽光制限周知へ 供給過剰の可能性 9月にも
 九州電力は、9月にも太陽光発電や風力発電事業者に稼働停止を求める「出力制御」に踏み切る可能性が高まったとして、近く事業者(契約件数約2万3千)に事前周知する。出力制御が行われれば、離島を除き全国初。九州では太陽光発電の出力が原発7、8基分に高まる中、今夏までに九電の原発4基が再稼働している。暑さがピークを過ぎて冷房需要が落ちる秋以降、電力の供給力が需要を大幅に上回り「送電網の安定運用が難しくなる恐れがあるため」(九電)としている。電気は需要と供給のバランスが崩れると、周波数が乱れたり、最悪の場合は大規模停電が起きたりする可能性がある。九電によると、再生可能エネルギーの出力制御は、工場やオフィスが休業し、需要が特に落ちる連休中などを想定。実施する場合は、前日夕方までに事業者にメールなどで通知し、当日朝に実施の最終判断をする。九電は初の本格的な出力制御となるため「突然の通知で混乱を招かないよう、あらかじめ対象者にダイレクトメールや直接訪問で周知」(関係者)する方向で調整している。九電管内では、5月の連休中に一時、太陽光発電の出力が需要量の81%を占めた。この時期にも出力制御が検討されたが、同社の火力発電の出力を抑制したり、揚水発電所の水をくみ上げる「揚水運転」に電力を使ったりすることで、実施を回避してきたという。その後、玄海原発4号機の再稼働や、川内原発1号機の定期検査終了で供給力が大幅に上昇。現在、定検中の川内原発2号機も近く発電再開の見通しとなっているほか、太陽光発電も月5万キロワットのペースで増えている。九電は「再生エネルギーを前向きに受け入れてきた結果、出力制御をしなければ需給バランスを保てない限界に近づいている」としている。経済産業省によると、出力制御は、揚水運転、火力発電抑制、再生エネ、原発の順に行われる。原発が最終手段とされている理由については「短時間に供給力を微調整するのが技術的に難しい」(担当者)と説明している。

*3-3-2:http://www.topics.or.jp/articles/-/87629 (徳島新聞 2018年8月17日) 四電、自然エネ100%供給 今年5月、国内10社で初
 四国電力管内で太陽光や水力発電など自然エネルギーによる電力供給量が、5月20日午前10時から正午にかけ、需要の100%を超えていたことが、NPO法人・環境エネルギー政策研究所(東京)の調べで分かった。2012年に太陽光発電などの固定価格買い取り制度が始まって以降、供給が100%に達したのは国内電力10社で初めてという。5月20日午前10~11時の四電管内の電力需要は221万キロワット。これに対する供給は太陽光161万キロワット、水力56万キロワット、風力7万キロワット、バイオマス1万キロワットの計225万キロワットで、需要の101・8%に達した。同11時~正午は需要が223万キロワットで、太陽光167万キロワット、水力52万キロワット、風力6万キロワット、バイオマス1万キロワットの計226万キロワットを供給し、需要に対する割合は101・3%だった。両時間帯ともに、太陽光が72・9%、74・9%を占め、最も多かった。火力発電と合わせると、10~11時は150万キロワット、11時~正午には153万キロワットの供給過多となった。余った電力は連係線を通じて市場で他社に卸売りしたほか、水をくみ上げて夜間に発電する「揚水発電」に使った。春は冷暖房があまり使われないため電力需要が少なく、太陽光発電の出力が大きい好天時は、自然エネルギーの割合が高くなりやすい。四電によると、5月20日は企業の需要の少ない日曜日で、晴天の上、それまでの降雨で水力の供給力も大きかった。自然エネルギーの1日平均の供給割合は52・2%だった。一時的とはいえ100%を超えたのは、固定価格買い取り制度に伴い、太陽光発電の導入が進んだことが背景にある。研究所によると、四電が他電力よりも早く100%を超えたのは太陽光や水力の比率が高いためという。飯田哲也(てつなり)所長は「伊方原発の再稼働は、電力需給を見る限り明らかに不要」と訴えている。四電は「自然エネルギーは天候に出力が左右される。安定的な供給のため原子力発電は不可欠」としている。

*3-3-3:http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2018090402000169.html (東京新聞社説 2018年9月4日) 猛暑も電力余力 節電、融通、再エネで
 エアコンを夜通し動かしておかないと、命が危うい猛暑の夏-。それでも電気は足りていた。3・11の教訓を生かした賢い省エネ、そして電力融通の基盤整備が、エネルギー社会の未来を切り開く。七月二十三日。埼玉県熊谷市で国内観測史上最高の四一・一度を記録した猛暑の中の猛暑の日。東京都内でも史上初めて四〇度の大台を超えた。冷房の使用もうなぎ上り。午後二時から三時にかけての電力需要も、この夏一番の五千六百五十三万キロワットを記録した。それでも最大需要に対する供給余力(予備率)は7・7%。“危険水域”とされる3%までには十分な余裕があった。その日中部電力管内でも3・11後最大の二千六百七万キロワットに上ったが、12・0%の余力があった。東電も中電も、震災後に原発は止まったままだ。この余裕はどこから来るのだろうか。最大の功労者は省エネだ。計画停電を経験した3・11の教訓を受け止めて、家庭でも工場でも、一般的な節電が当たり前になっている。これが余力の源だ。そして、再生可能エネルギーの普及が予想以上に原発の穴を埋めている。猛暑の夏は太陽光発電にとっては好条件とも言えるのだ。むしろ最大のピンチに立たされたのは、昨年から今年にかけて四基の原発を再稼働させた関西電力ではなかったか。七月十八日。火力発電所のトラブルなどが重なって供給率が低下し、予備率3%を割り込む恐れがあったため、電力自由化を見越して三年前に発足した「電力広域的運営推進機関」を仲立ちとして、東電や中電、北陸電力などから今夏初、計百万キロワットの「電力融通」を受けた。3・11直後、東日本と西日本では電気の周波数が違うため、融通し合うのは難しいとされていた。だが、やればできるのだ。震災当時百万キロワットだった周波数変換能力は現在百二十万キロワット。近い将来、最大三百万キロワットに増強される計画だ。北東北では、送電網の大幅な拡充計画が進行中。地域に豊富な再生可能エネルギーの受け入れを増やすためという。地域独占からネットワークへ、集中から調整へ、原発から再エネへ-。電力需給の進化は静かに、しかし着実に加速しているのではないか。猛暑の夏に、エネルギー社会の近未来を垣間見た。

<おかしな論理はやめ、脱化石燃料へ>
PS(2019.7.17追加):*4-1・*4-2のように、2019年6月、この海域で日本のタンカーが攻撃されたため、米国が派遣した艦船が監視活動を指揮し、参加国が米艦船の警備や自国の民間船舶の護衛に当たるため、米国が同盟国に有志連合の結成を呼び掛け、原油を中東に依存する日本にとってこの航路の安全は極めて重要なので、日本政府は担当者を出席させるそうだ。
 こうなる理由は、*4-3のように、安保法制関連法案の国会審議の中で、集団的自衛権を行使し、自衛隊を米軍とともに世界に派遣する一例として、この航路の安全確保が挙げられていたからだ。しかし、根本的におかしいのは、①民間の船舶であるタンカーの経済的リスクなら保険で手当てすべきで ②保険料込みで原油購入者は対価を支払っている筈であり ③リスクが高ければ原油の販売者も大きな打撃を受けるため、この海域を守るべきは周辺の産油国側で ④この海域が原油で汚染されて困るのもこの海域の国々であること などである。
 このような中、エネルギー自給率を向上させる努力もせず、化石燃料であるこの地域の原油に依存し続けている日本の政治は、とりわけビジョンがないと言わざるを得ない。

*4-1:https://www.kochinews.co.jp/article/293436/ (高知新聞 2019.7.17) 【ホルムズ海峡】有志連合は緊張を高める
 中東・ホルムズ海峡などの安全を確保するため、米国が同盟国に有志連合の結成を呼び掛けている。米軍によると、米国が派遣した艦船が監視活動を指揮し、参加国は米艦船の警備や自国の民間船舶の護衛に当たるという。6月にこの海域で日本のタンカーなどが攻撃されたことに伴う対応としている。日本政府にも参加や負担を求めてくる可能性がある。イラン沖にあるホルムズ海峡やその周辺海域は原油の海上輸送の大動脈といってよい。原油を中東に依存する日本にとっても、航路の安全は極めて重要である。だが、自衛隊は現状で有志連合に参加すべきではない。現行法上、派遣が難しいこともあるが、航路の安全確保は本来、実力部隊の派遣によってではなく、国際社会の対話と協調で実現していくのが筋である。自衛隊派遣について岩屋防衛相はきのう「現段階では考えていない」と述べた。当然の判断だ。他の同盟国にも冷静な判断を求める。トランプ米政権は、タンカー襲撃などはイランの最高指導者ハメネイ師が直轄するイラン革命防衛隊の仕業と指摘し、非難している。ただ、確たる証拠がないのが現状だ。そもそも、米国とイランの最近の関係悪化はトランプ政権が引き起こしたといっても過言ではない。イランと、米欧など6カ国は2015年、イランが核開発を大幅に制限する見返りに制裁を解除することで合意。中東の緊張緩和は大きく前進すると期待された。ところが、米大統領に就任したトランプ氏はこの核合意からの離脱を一方的に表明し、対イラン制裁も再開した。イランが猛反発するのも当然だ。トランプ氏のイランへの強硬姿勢には、来年の米大統領選に向け、支持者に強いリーダー像を見せたいとの思惑があるとみられる。支持層である保守派はイランへの制裁強化を望む人が多い。問題は、トランプ氏がそれに同盟国を巻き込もうとしていることだ。同盟国はこれまで、トランプ政権の対イラン政策に一定の距離を置いてきたはずだ。有志連合に加われば一転、同調したことになる。ホルムズ海峡はイランにとって対外戦略上の要衝である。そこに米軍主導で多国籍の艦船が展開すれば、イランには軍事的な包囲網に映るだろう。航路の安全どころか、かえって緊張が高まりかねない。米国は数週間以内に有志連合を結成したいとしている。同盟国は参加を検討するより前に、米国とイランの関係修復に当たりたい。日本はイランと友好的な関係を維持してきた。安倍首相は6月、仲介のためにイランを訪問し、ハメネイ師とも会談した。その日本が有志連合に入るようなことになれば、これまでの友好関係も仲介の取り組みも水泡に帰すことになろう。今後も粘り強い外交努力が必要だ。

*4-2:https://www3.nhk.or.jp/news/html/20190717/k10011995731000.html (NHK 2019年7月17日) ホルムズ海峡安全確保 米構想の説明の場に日本も出席で調整
 中東のホルムズ海峡などの安全確保のため、アメリカ政府が今月19日に関係国に新たな構想を説明する場に、日本政府も担当者を出席させる方向で調整しています。アメリカとイランの対立で緊張が高まる中、アメリカ軍はホルムズ海峡の安全を確保するため、同盟国などとの有志連合の結成を検討していて、国務省のフック特別代表は、今月19日に関係国に対し新たな構想について説明する場を設ける考えを明らかにしました。これを受けて日本政府は、アメリカにある日本大使館から担当者を出席させる方向で調整しています。有志連合の結成をめぐっては、岩屋防衛大臣は16日「この段階で、いわゆる有志連合に自衛隊の参画を考えているものではなく、自衛隊を派遣することは考えていない」と述べています。ただ日本政府としては有志連合をめぐるアメリカの構想が明らかにならない中、担当者を出席させることで構想の具体的な内容について情報を収集するねらいもあるものとみられます。

*4-3:https://www.news-postseven.com/archives/20150604_326445.html (週刊ポスト 2015年6月12日号)安保法案でのホルムズ海峡機雷除去 想定自体現実にあり得ず
 安保法制関連法案の国会審議が始まった。集団的自衛権を行使し、自衛隊を米軍とともに世界に派遣する──安倍政権が閣議決定した憲法解釈変更を法制化し、日本の安全保障政策を大転換させる重要法案だ。法案早期成立のために、安倍晋三首相は詭弁と詐弁を駆使している。「他国の領土、領海、領空に派兵することはない」。安倍首相は安保審議の前戦の党首討論でそう言明した。しかし、安保法制の柱であり、国際紛争に際して自衛隊派遣の要件を定める恒久法「国際平和支援法案」には、「外国の領域における対応措置」が明記されており、他国領で活動しないという安倍首相の説明は明らかに嘘である。安倍首相が他国領域での集団的自衛権の行使について、「例外」のひとつとして挙げているのがホルムズ海峡での機雷除去活動だ(その他「米艦防護」に含みを持たせ、内閣法制局長官は「敵基地攻撃」にも言及した)。イランがペルシャ湾口のホルムズ海峡を機雷で封鎖する事態になれば、日本は中東からの石油運搬ルートを断たれる。それは安全保障上の重大事態だから、米国との集団的自衛権を行使して海自による機雷除去の掃海活動が必要になるという論理である。しかし、早稲田大学法学部の水島朝穂教授はこの想定自体が現実にはあり得ないと指摘する。「ホルムズ海峡はイランとオマーンの間で最狭部は幅約30キロ。両国が主張する領海が重なり、公海はない。この海峡を通る世界のタンカーの9割は中間線よりオマーン側の航路を通る。イランが海峡を封鎖するなら、オマーン領海にも機雷を敷設しなければならない。相手国領海への機雷敷設は戦闘行為そのもので、イランはオマーンに宣戦布告することになる。しかしオマーンはイランの友好国だから、機雷を敷設するという想定自体が非現実的だ」。それだけではない。「仮に機雷が敷設された場合でも、戦争状態での機雷除去は軍事行動になる。それを自衛隊が行なうとすれば、日米の集団的自衛権に基づくものではない。これは『集団的自衛権は米国が相手』としてきた政府の説明と矛盾する」(同前)。それでも安倍首相がホルムズ海峡を持ち出したのは、「石油が断たれたら大変なことになる」と危機を煽れば国民も認めるだろうという発想なのだ。

<電動車への移行>
PS(2019年7月18日追加):*5-1のように、市川市が低炭素社会の実現をアピールするためにEV導入を決定し、市長と副市長の公用車にテスラ製の高級セダンの『モデルS』とSUV(スポーツ用多目的車)の『モデルX』の2台を導入することをめぐって、「高額すぎる」と市民から見直しを求める声が上がったそうだが、それを次の産業政策に結び付ければ上出来だと私は考える。例えば、市長の公用車をテスラ、副市長の公用車をリーフ、市の他の所有車もEVや運転支援車にして皆で性能を比較し、今後の自動運転化やEV化を進める基礎にしたり、その方面の企業を誘致したりできれば初期投資は大きすぎず、値引要請も可能だろう。
 なお、最近は、*5-2のように、燃料電池電車も独で営業を始めており、これを運行する州の交通公社は2021年までに全てを燃料電池電車に置き換える予定で、その電車は水素タンクを満タンにすれば千km走行できる上、将来は風力発電による電気で水を分解して得た水素を使うのだそうだ。再エネによる分散発電と燃料電池電車を組み合わせれば、エネルギー代金が下がってエネルギー自給率は高まり、さらに超電導電線を敷設すれば送電料が入るため、日本でも北海道・東北・四国・九州の鉄道会社に特にお勧めだ。

    

(図の説明:1番左が、2018年9月17日から営業運転を開始したドイツのFCV電車だ。左から2番目は、日立製のFCV電車だが、営業運転はしておらず、DENCHAという子供じみた命名をしている点で本気度が見えない。また、右から2番目は、EV電車、1番右はEVバスで、陸上交通は既に実用化済のFCVやEVに変えることが可能になっている)

*5-1:https://response.jp/article/2019/07/18/324536.html (Response 2019年7月18日) 高級EVテスラにこだわる市川市長、リーフの選択は論外?[新聞ウォッチ]
 ローカル過ぎる話題だが、批判の的にされているのは、あのイーロン・マスク氏が最高経営責任者(CEO)をつとめる米電気自動車(EV)メーカー、テスラの高級EV車だけに見過ごすわけにもいかないようだ。千葉県の市川市の市長と副市長の公用車にテスラ製の高級セダンの『モデルS』とSUV(スポーツ用多目的車)の『モデルX』の2台を導入することをめぐり、市民から見直しを求める声が上がっているという。きょうの毎日などが「米テスラ高級EV公用車に批判」などと、社会面で大きく取り上げている。それによると、市川市は低炭素社会の実現をアピールするため、EV導入を決定。7月上旬には、副市長用に車両価格1110万円のモデルXのリースを開始した。費用は月約14万円で期間は8年間。これまでのトヨタの『クラウン』は月約6万円で月額が2倍以上となったという。このため、市民や議会から「高額だ」と批判が噴出。村越祐民市長は「説明不足だった」として、もう1台の車両価格1020万円のモデルSについては入札を延期することを決定。すでに納車された1台については、これまでの国産車との差額分8万5000円分を自身の給料から減額して補てんする考えを示したそうだ。この市川市の公用車導入の問題を少し整理すると、地球温暖化対策に前向きな取り組みの一環としてエコカーを選択することについての批判は少ないようだが、市民感情としてはその車種が1000万円を超える高級外車だから「税金の無駄遣い」との反対意見が噴出したと思われる。もし、最初から日産自動車の『リーフ』などを選択していたら、批判の声も上がらなかったのではないだろうか。もっとも、リーフは大衆車であるのと「差額は自腹でも」という市長の発言からみると、最初から「テスラありき」との思惑も透けて見える。

*5-2:https://digital.asahi.com/articles/ASL9K1RV4L9KUHBI001.html (朝日新聞 2018年9月18日) 世界初、燃料電池で走る列車 時速140キロ、独で営業
 鉄道が電化されていない区間の多いドイツで17日、燃料電池を使った列車の営業運転が始まった。車両を製造したフランスのアルストム社によると世界初の取り組みという。走行時に二酸化炭素(CO2)を出さず、環境にやさしい次世代の列車として世界的に注目されている。北部ニーダーザクセン州の約124キロの区間(ブクステフーデ駅―クックスハーフェン駅)を走る14編成のうち2編成で導入された。1編成で最大300人を乗せることができ、運行する州の交通公社は2021年までに全てを燃料電池列車に置き換える予定だ。車両の屋根にあるタンク内の水素と空気中の酸素を化合して発電。架線からは電気を受けずに、モーターを回して走る。床下にはリチウム電池が設置され、走行中にも自動で蓄電する。最高速度は時速140キロで、水素タンクを満タンにすれば1千キロまで走行できる。将来は風力発電による電気で水を分解して得た水素を使う方針という。通勤のため乗車した50代の女性は「すごく静かでとても驚いた。乗っていて心地良いくらい」と話した。ドイツの鉄道は現在も電化されていない区間が約半分を占め、ディーゼル車が走る。電化には巨額の投資と時間がかかるため、二酸化炭素削減に取り組む中で、燃料電池列車が急速に普及する可能性がある。一方、日本では鉄道総合技術研究所などで開発が進むが、営業運転のめどは立っていない。アルストム社の広報担当者は「燃料電池列車の価格はディーゼル列車より高いが、電化の費用を考えれば十分に見合う」と話す。

<メディアの質が低いこと>
PS(2019年7月19、20日追加):*6-1のように、参院選のテレビ報道が少なく、報道関係者は「選挙自体が盛り上がらず高視聴率を見込めないから」と説明しているそうだ。しかし、テレ朝の「羽鳥慎一モーニングショー」は、参院選公示以降、毎日30~40分、消費増税、年金などをテーマに専門家を招いて選挙報道を行い、各党の主張を紹介して連日9%台の視聴率を記録しているそうで、これは、この時間帯に家にいる高齢者や女性の政策への関心も高いことを示している。各党の公約を掘り下げて報道しなければ選挙による有権者の真の審判はできないが、NHKはじめ他の民放は、災害・天気・放火・殺人・高齢者の交通事故ばかりを報道しており、これらの報道関係者は各党の政策や公約を的確に掘り下げる意欲も能力も使命感もないようだ。
 また、メディアの質が低下しているのは報道番組だけでなく、*6-2のようなNHKの大河ドラマ「いだてん」も同じで、ゴールデンタイムを使って広告がないにもかかわらず6月9日の平均視聴率は6.7%と苦戦し、1989年以降最低だそうだ。そして、その理由を「①合戦のシーンを大河の見どころと考える従来の固定層が近現代という設定になじめなかった」「②有名人のストーリーではないから」「③作品のメッセージ性はよい」「④少子高齢化により高齢視聴者の影響が強い数字になりがちだから」「⑤『歴史好き』ではなく、『ドラマ好き』が支持しており、視聴率は関係ない」としているが、マーケットリサーチは正確に行わなければ今後の改善もない。私は、①②④は、言い訳にしても従来の視聴者や高齢者を馬鹿にしており、③は偶然に触発された人ばかりのメッセージで感動するほどのものではなく、⑤は、ドラマとしても、失敗ばかりして絶叫しているストーリーで面白くないのである。
 大河ドラマに戦国時代・明治維新の話は既にしつこいほど出たため、今後は、1)秦の始皇帝と徐福 2)三国志と倭 3)神功皇后の新羅出兵と応神天皇の東征 4)大化の改新・白村江の戦い・飛鳥時代・持統天皇 5)「この世をば わが世とぞ思ふ・・」と詠んだ藤原道長と彰子、定子、紫式部、清少納言 など、日本の古代史とアジアを、二国間協力し壮大な大河ドラマにして美しい映像で放映すれば、世界レベルで興味を持たれると思う。もし、日本の作家にそういう能力がなければ、中国・インド・アラビア・エジプトはじめ文化に力を入れている外国の映画を放映した方がよほど面白い。
 なお、京都アニメ放火事件について、ある番組のコメンテーターが「テロと言ってもいい」などと言っていたのには呆れたが、テロリズムとは、*6-3のように、「準国家的集団又は秘密の代理人による、非戦闘員を標的とし、政治的な動機を持つ暴力をいう」と定義されており、非国家主体又はその各々の政府のために仕える秘密捜査員によってのみ関与されるものだ。日本は既に民主主義国で政治の変革にテロは不要なので、私は京都アニメ放火事件はただの犯罪だと思うが、あれをテロだと言った人は(いい加減ではなく)テロの要件に合う理由を述べるべきだ。

*6-1:https://digital.asahi.com/articles/ASM7K6X5XM7KUCVL02H.html?iref=comtop_8_02 (朝日新聞 2019年7月19日) 「視聴率取れない」参院選、TV低調 0分の情報番組も
 参議院選挙のテレビ報道が低調だ。選挙自体が盛り上がらず、高視聴率を見込めないためと関係者はみるが、そんな常識を覆す現象も起きている。テレビ番組を調査・分析するエム・データ社(東京都港区)によると、地上波のNHK(総合、Eテレ)と在京民放5社の、公示日から15日までの12日間で選挙に関する放送時間は計23時間54分で、前回に比べ6時間43分減っている。とりわけ「ニュース/報道」番組の減少が顕著で、前回から約3割減、民放だけなら約4割減っている。公示日のテレビを見ると、NHK「ニュースウオッチ9」がトップで伝えたり、TBS系「NEWS23」と日本テレビ系「news zero」が党首討論を行ったり、午後9時以降の主な報道番組六つすべてが選挙にふれたが、翌日は六つとも報じなかった。その後も、番組によって、放送しない日があった。「情報/ワイドショー」は、前回より放送時間が増えたが、フジテレビ系「とくダネ!」やTBS系「ビビット」、日本テレビ系「スッキリ」など、公示日から15日まで選挙企画が全くないところも。10年以上情報番組に携わった在京キー局の元プロデューサーは、選挙自体、盛り上がりに欠けるためだとみる。「安倍政権1強下で行われる参院選。政権交代が起きる要素もない。テレビが取り上げたくなる個性の強い候補者や選挙区もない。視聴率が取れない」。また選挙期間中は、陣営からのクレームを恐れ、発言時間をストップウォッチで管理するなど細心の注意が必要だったとし、「数字が取れないのに、作り手は、手間とリスクを取って放送するメリットはないと思っているのでは」。実際、14年には自民党がテレビ局に、出演者の選定や街の声の放送など、事例を挙げて「公平」な報道を求める文書を送付している。そんな中、積極的なのはテレビ朝日系の朝の情報番組「羽鳥慎一モーニングショー」。公示日以降、ほぼ毎日30~40分、消費増税、年金などをテーマに、専門家を招いて掘り下げ、各党の主張を紹介している。しかも、視聴率(関東地区、ビデオリサーチ調べ)は連日9%台を記録。同時間帯の民放の情報番組の中で首位を走る。憲法改正に絡む「緊急事態条項」を取り上げた祝日15日の放送は、15年の番組開始以来2位の11・7%となった。小寺敦チーフプロデューサーは「難しいテーマに司会者の羽鳥慎一さんさえ『祝日の朝に本当に見てもらえるのだろうか』と心配していたのに、結果を見て、選挙に関する有権者の知りたいという欲求を確かに感じた」と話す。NHKは前回に比べ3時間弱、放送時間が減少した。同局幹部は4日の公示日前後にあった九州南部の大雨に触れ、「災害報道に時間を割いたことも影響しているのでは」と言う。ただ、NHKの場合、ネット上で選挙サイト「NHK選挙WEB」も展開。世論調査の結果や各党党首の演説を、グラフや図を使って多角的に分析。全国の選挙区ごとに特設ページを設け、候補者へのインタビュー映像や、NHKの記者による争点解説の動画を発信するなどネット報道を強化しているという。別の幹部は「全体では、発信する情報量はむしろ増えている」。政治とメディアの関係に詳しい逢坂巌・駒沢大准教授は、選挙に強い関心のある有権者を満たす受け皿としてネットの充実は必要だと評価する。ただ「選挙に関心の低い人が興味を持つきっかけは、最も影響力の大きい地上波が担うべきではないか」。そもそも、各局の放送内容に批評性が足りないと指摘するのは、フジテレビで報道番組のディレクターなどを務めた筑紫女学園大の吉野嘉高教授だ。「本来であれば、安倍政権の6年を振り返り、何が実現して何が実現しないのか検証する報道が必要だ。公平性に気が回りすぎて、全く切り込めていない」と話す。「有権者が一番知りたい時期に、知る権利に量的にも質的にも応えていないことを意識すべきだ」と指摘する。

*6-2:https://digital.asahi.com/articles/ASM6M2W93M6MUCVL001.html (朝日新聞 2019年7月2日) こんな大河見たことない いだてん、視聴率が計れない熱
 NHKの大河ドラマ「いだてん~東京オリムピック噺(ばなし)~」が苦戦している。6月9日の平均視聴率は6・7%(関東地区、ビデオリサーチ調べ)で、NHKが把握している1989年以降で大河史上最低を更新した。作品を評価する声はあるのに、なぜ?「いだてん」は五輪マラソンに日本人初出場を果たした金栗四三(かなくりしそう)と、64年の東京五輪招致に関わった田畑政治の歩みを描く。大河としては珍しい近現代の物語だ。脚本は人気作家の宮藤官九郎さん、金栗を中村勘九郎さんが演じ、ビートたけしさんや役所広司さんらも出演し、話題性は十分だった。ところが、初回視聴率こそ前作「西郷(せご)どん」を上回ったが、2月から6月30日まで20回連続で1桁台。対照的に、山奥の一軒家を訪ねる同時間帯のテレビ朝日系「ポツンと一軒家」は20%前後の高視聴率で、民放関係者は「確実に視聴者が流れている」と指摘する。
●従来の固定層がなじめない
 受信料で支えられる公共放送のNHKは、数字に一喜一憂する必要はないはずだが、大河や朝ドラは「NHKの看板番組」。ある幹部は「トヨタでプリウスが売れなかったら問題になるようなもの。公共放送も、放送内容に納得してもらうからこそ受信料を払ってもらえる」と危機感を募らせる。低迷の理由はどこにあるのか?大河に詳しいコラムニストのペリー荻野さんは「合戦のシーンを大河の見どころと考える従来の固定層が、近現代という設定にそもそもなじめなかった」と分析。明治・大正期と昭和期の二つの時代を唐突に行き来する複雑な演出なども敬遠されたとみる。さらに、織田信長や坂本龍馬のような有名人のストーリーではないため、「1回見逃すと、話についていけなくなると思われた」こともマイナスに影響したと考える。とはいえ、ペリーさん自身は、これまでにない「新しい大河」として、いだてんを評価する。
●現代に通じる強いメッセージ
 6月9日の放送では、陸上競技の大会で、女学生が素足に靴を履いて走った。父親が「おなごが人前で脚を丸出しにするなんて。もう嫁には行けない」ととがめる中、教師の金栗は「おなごが脚ば出して何が悪かね」と猛然と反論する。ペリーさんは、女性が職場でヒールがあるパンプスを強制されることに疑問を投げかける昨今の社会状況と重なったと語る。「単なる女性の自立ではなく、『男女はこうあるべきだ』という社会の押しつけに異議申し立てする現代的な視点を歴史物語に盛り込むなど、作品のメッセージ性は強い」。近現代文学を扱う小樽文学館(北海道小樽市)の玉川薫館長は「金栗の日記などを元にした脚本は人物を生き生きと描いており、明治・大正期の人物が身近なものとして感じられる。4年に一度の五輪がいかに人生を振り回すかが切実に伝わってきます」と評価する。
●「ドラマ好き」からの支持
 そもそも「視聴率が低いから失敗」とは言えないと、メディアコンサルタントの境治さんは指摘する。ビデオリサーチの視聴率とは「世帯視聴率」のことで、少子高齢化により高齢視聴者の影響が強い数字になりがちだというのだ。「ツイッターでの反響や他の調査会社のデータなどを分析すると、高齢視聴者が中心の従来の『歴史好き』ではなく、『ドラマ好き』が支持しているとわかる。新しい視聴者の開拓という意味では成功していると言えます」。視聴率の高い低いは注目され、ニュースにもなる。「しかし、世帯視聴率は今や番組を測る基準の一つでしかないのだと、テレビ局もメディアも視聴者も認識を改めるべきではないか。もっとも、好きなドラマを楽しむのに視聴率は関係ないと思いますが」。大河制作に携わっていたNHKの木田幸紀放送総局長は視聴率低迷を「残念なこと」としつつ、「『いだてん』は今までにない、これからあるかどうかわからない、見たこともない大河ドラマ。この作り方を最後まで貫いてほしい」と語る。ドラマは6月30日から田畑が主役の第2部へ。その前に報道陣の取材に応じた田畑役の阿部サダヲさんは「ポツンと一軒家」を念頭にこう言った。「もう一軒家って、そんなにないでしょう、そろそろ。(視聴者が)帰ってくると思いますよ」

*6-3:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%86%E3%83%AD%E3%83%AA%E3%82%BA%E3%83%A0%E3%81%AE%E5%AE%9A%E7%BE%A9 (Wikipediaより抜粋) テロリズムとは
 「準国家的集団又は秘密の代理人による、非戦闘員を標的とし、事前に計画された政治的な動機を持つ暴力をいう」と定義されている。テロリズムの教科書に載っている定義には、以下のようなものが含まれている。
 1)テロリズムは、政治目的、宗教又はイデオロギー的な変化を追求しようとして、
   特に民間人に対して、暴力又はその脅威を行使することである。
 2)テロリズムは非国家主体又はその各々の政府のために仕える秘密捜査員に
   よってのみ関与され得る。
 3)テロリズムは直接対象となる犠牲者以外にも影響が及び、より広範囲の社会
   への標的にも向けられる。
 4)テロリズムは「法律により違法とされた犯罪(法定犯)で、不道徳又は不正な
   行為(自然犯)である。

<参院選における投票判断の材料>
PS(2019年7月20日追加):*7は、朝日新聞社と東京大学谷口研究室の共同調査で、候補者や政党の見解がわかりやすく纏められていてよいのだが、大雨や日程の都合で期日前投票をした人も多いため、今週始めくらいに出してもらえるともっとよかったと思う。

*7:https://www.asahi.com/senkyo/senkyo2019/asahitodai/?iref=comtop_8_08
朝日新聞社と東京大学谷口研究室の共同調査で、候補者に政策課題への賛否を尋ねました。皆さんが注目する候補者の政策への考え方を調べてください。(以下略)

<政策選択と投票>
PS(2019年7月21日追加):*8-1のように、今日、参院選が投開票されるので、有権者は選挙で政策への賛否を示すべきである。一票では力がないと考える人もいるが、一票の集まりが選挙結果や政策変更に繋がっており、棄権は政権への白紙委任だ。しかし、メディアの情報にも、「年金支給を支えながら自身は十分に受け取れない可能性がある若者こそ声を上げるべきだ」というように行政の説明を鵜呑みにした論調が多く、これでは、「これまで年金を支えたり、老親を直接養ったりしてきたのに、自分は生活できる年金すら受け取れない」という現在の高齢者の生活を無視している。そして、この問題を一挙に解決して誰にも文句を言わせないのが、自分のために積み立てる積立方式への移行と税外収入による積立不足分の補填なのである。
 また、*8-2のように、自由貿易至上主義でTPPとEUとのEPAが推進されているが、産業政策も考えておかなければ、我が国は食料自給率が低く、自国の食料確保さえおぼつかなくなる。それは与党が主張する「攻めの農政」だけでは解決しないし、野党が主張する「戸別所得補償制度」では財源が膨大になる上、農業の生産性向上に資さない。また、「農産物の価格補償」は、高価格分が国民負担なのである。そのため、私は、TPPとEUとのEPAを進めるにあたり、「戸別所得補償制度」の代わりに農林漁業に再エネ機器を貸与して副収入を得させるようにし、補助金の削減・地方創成・地方交付税の削減に結び付けるのが最もよいと考える。
 なお、自民党政権は行政とつるみ、大人が働いている産業に補助金をばら撒いて社会的弱者への教育・社会保障を削ってきた。しかし、*8-3の教育投資は重要で、技術革新や生産性向上の源は教育だ。さらに、*8-4のように、沖縄は過去2回の知事選・今年2月の県民投票で基地移設反対の民意が鮮明に示され、オール沖縄で基地の集中に抗議しているのに、与党は公約で辺野古移設推進を掲げ、沖縄選挙区の自民党公認候補は賛否を明らかにしていない。そして、ここにも土木業者と結託して将来計画もなく環境を破壊している無駄遣いの温床があるようだ。


2019.6.26、28東京新聞           2018.3.19東京新聞

(図の説明:参院選のテーマは多いが、左と中央の図のように、ポイントが纏められている。根本は、インフレ政策で実質年金・実質賃金が減少し、生活が苦しくなった人が多い《=エンゲル係数が上がった》ことである)

*8-1:https://www.hokkaido-np.co.jp/article/327180 (北海道新聞 2019年7月21日) <2019参院選>きょう投票 未来につながる選択を
 参院選はきょう投開票される。衆院選と違って政権選択選挙ではないとされるが、6年半続く安倍晋三首相の政権運営に評価を下す大切な機会である。この間に、われわれの暮らしはどう変わっただろうか。参院選の公示直前に「老後に夫婦で2千万円の蓄えが必要」と試算した金融庁の報告書が明らかになり、老後への不安があらわになった。こうした不安を取り除く手だてを講じるのが政治の使命であり、その政治を動かすのは有権者の切実な声だ。なかんずく、現在の年金支給を支えながら自身は十分に受け取れない可能性がある若者こそ、声を上げるべき局面といえる。未来を見据えた思いを1票に託そう。今回改選される参院議員は、安倍首相が政権復帰して初めて行われた国政選挙で当選した。任期が第2次以降の安倍政権とほぼ重なるだけに、候補者や、候補が所属する政党が政権とどう向き合ってきたかが問われる。「安倍1強」の下、政権に不都合な事実を覆い隠すような公文書の隠蔽(いんぺい)や改ざんが行われ、参院を含む国会の形骸化が進む。行政監視の機能を取り戻す必要がある。安倍首相は「違憲論争に終止符を打つため、憲法に自衛隊を明記していく」と繰り返し、改憲を最大の争点に掲げる。権力を縛るはずの憲法について、為政者自らがそのくびきを外すかのごとく改定を声高に叫ぶのは、やはり違和感が拭えない。改憲は国民の代表である国会が発議するもので、そこに投票で意思を投影するのは有権者であることを忘れてはならない。首相があまり強調しないテーマの方がむしろ問題は切迫している。北海道では、急激な人口減と高齢化に伴う地方衰退に歯止めをかける施策が求められる。ふだんの暮らしで困ったことを、どう解決するか。自分の生活に引きつけて、候補や政党の公約を見比べてみるのも有効だ。道選挙区の投票率はかつて60~70%台で推移していたが、2013年は54・41%、16年は56・78%と低迷が続いている。前回の参院選から選挙権年齢が18歳以上に引き下げられたが、投票所に足を運ぶ若者は少ない。少子高齢化が加速し、若者の声が政治に届きにくくなっている。この状況を変えるためにも、まずは1票を投じてほしい。

*8-2:https://www.hokkaido-np.co.jp/article/326973?rct=c_editorial (北海道新聞社説 2019年7月21日) <2019参院選>農業政策 自由化後の展望見えぬ
 あす投開票される参院選は、環太平洋連携協定(TPP)、日本と欧州連合(EU)の経済連携協定(EPA)の発効後、最初の国政選挙である。日本農業はかつてない自由化の荒波に直面し、多くの農家が将来に不安を抱いている。これからの農業をいかに守り、育てるのか―。食料基地・北海道の有権者にとって関心の高いテーマだが、年金問題などに比べて各党の優先順位は低く、論戦が深まっていないのが残念だ。選挙戦も残り1日である。特に道選挙区の候補者には、農業政策の具体論を語り、有権者に明確な選択肢を示してもらいたい。農業政策について与党は、安倍晋三政権が推進する「攻めの農政」を通じ、対外的な競争力を高めることに重きを置く。自民党は「TPPや日欧EPAの下でも農業者が安心して再生産に取り組めるよう全力で応援する」、公明党は「世界に日本ブランドを広め、輸出力を強化する」とそれぞれの公約集に記した。こうした考え方は、輸入農産物の攻勢にさらされている生産現場の実感とは大きく異なる。例えば、TPP発効後の約半年で、オーストラリアなど加盟国からの牛肉の輸入は前年同期比で4%伸びた。しかも関税は今後14年間下がり続ける取り決めがある。ただでさえ高齢化と人手不足で経営体力を失う生産者が増えているのに、既存の国内対策の「着実な実施」や輸出などの「攻め」を強調するだけでは説得力を欠く。対する野党は、農家の所得を底上げし、40%未満に落ち込んだ食料自給率向上を訴えている。所得向上策に関しては、立憲民主党と国民民主党が「戸別所得補償制度の導入」、共産党は「農産物の価格補償と所得補償の抜本強化」を掲げた。農家への直接支払制度は自国農業を守るのに有効だが、巨額財源をどう確保するかの説明がなく、絵に描いた餅にしか見えない。特に立憲民主党と国民民主党は、民主党政権時代の戸別所得補償制度が十分機能しなかった原因を検証し、改善案を示さなければ、農家の信頼は得られまい。選挙後には日米貿易協定交渉も本格化する。トランプ米大統領は「農産物と牛肉が重要だ」と主張しており、輸入拡大を求めてくることははっきりしている。各候補は「農業を守る」と連呼してきたが、そんなかけ声だけで済ませてよい選挙ではない。

*8-3:https://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201907/CK2019072002000134.html (東京新聞 2019年7月20日) <参院選 くらしデモクラシー>中所得層にも無償化訴え 大学生困窮「教育もっと投資を」
 日本の公教育への投資は先進国の中で極端に低く、家計への負担は大きい。低所得世帯の学生らを対象に高等教育の負担を軽減する新法が五月にできたが、中所得層は置き去りのままだ。現状に苦しむ学生から「教育への投資」を求める声が高まっている。「政治はもっと教育に目を向けてほしい」。梅雨空が広がった六月末、学生団体「高等教育無償化プロジェクト」(通称・フリー)代表の岩崎詩都香(しずか)さん(20)=東大三年=の声が東京・新宿駅前に響いた。「高額な学費で学生生活が奪われている」「奨学金という借金を背負い未来を自由に描けない」。メンバーの学生らも代わる代わるマイクを握り、窮状を訴えた。フリーは、岩崎さんらが学生の実態調査のために約三十大学の学生らとともに昨年九月につくった。現在、首都圏を中心に約百三十人が活動している。岩崎さんは地元・長崎市の公立高を卒業し、二〇一七年に東大文学部に進学した。六人きょうだいの末っ子。八歳の時に父を病気で亡くした。起業に失敗した父の借金を背負った母が、清掃業のパートで家計を支えてきた。しかし、父の遺族年金を含めても収入は年二百五十万円に届くのがやっとで、浪人は許されない。東大を選んだのは、年約五十四万円の授業料が全額免除される制度の所得対象になったからだ。仕送りはなく、月額約五万円の奨学金に加え、母子生活支援施設を警備する夜間バイトで生活費を賄う。「教科書の購入が必要な授業は、なるべくとらないようにしています。同級生との交流を極力減らし、コンパも断ってきた。ましてや旅行なんて」。返済が必要な奨学金の総額は、大学四年間で約二百五十万円を見込む。進学を望む大学院でも奨学金を頼るつもりだが、一段と膨らむ負担への不安は大きい。苦しんでいるのは「自分のような低所得層だけではない」と言う。「裕福そうな友人たちも、授業料のためにバイト漬けの生活を送っていた」。フリーが全国の大学や短大、専門学校に実施したアンケートでは、七月中旬までに集計が完了した約六千七百人の六割程度が「大学・学部を選択する際に学費を考慮した」と回答。奨学金の利用は三割を超えた。安倍晋三首相は消費税の使い道として「高等教育無償化」を掲げたが、五月に成立した高等教育の負担を軽減させる新法の対象は低所得世帯に限定された。多くの学生が望むものとはほど遠い。岩崎さんは「地元の友達の中には、親から『おまえは大学にはやれない』と言われて早々に諦めた人もいる。高等教育を受けることができないのは本人の努力不足かのような自己責任論を押しつけられている。こうした社会を変えていきたい」。二十一日投開票の参院選で、学生の未来を託せる候補者を見極めるつもりだ。
◆公的支出2.9% OECD34カ国中最下位
 日本の学生を取り巻く環境は厳しさを増している。日本の教育への公的支出の割合は、経済協力開発機構(OECD)の加盟国の中でも際立って低い。二〇一八年の発表によると、日本の国内総生産(GDP)に占める公的教育費の割合は2・9%でOECD平均の4・2%を下回り、比較可能な三十四カ国で最下位だった。日本では特に国公立大など高等教育の授業料が主要国の中でも高く、学費の家計依存度の68%もOECD平均の30%の二倍を超える。授業料の値上げも続いている。文部科学省によると、バブル経済に沸いた一九八九年に約三十四万円だった国立大の授業料は現在、約一・六倍の約五十四万円に。入学金は十万円増の約二十八万円となった。一方、九四年に六百六十万円を超えた一世帯あたりの平均所得は、一七年には五百五十一万六千円に低下した。家計に余裕がなくなっているのに、国立大では学費値上げが相次ぐ。東京工業大や東京芸大などは一九年度から学費を年額十万円値上げし、学生らが苦境に立たされている。

*8-4:https://www.hokkaido-np.co.jp/article/326972?rct=c_editorial (北海道新聞 2019年7月21日) <2019参院選>沖縄に基地集中 辺野古は全国の問題だ
 戦後、沖縄が背負ってきた負担はあまりに重い。今なお、国内の米軍専用施設の7割が集中している。その状況下で安倍晋三政権は米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設工事を強行している。首相は就任以来「沖縄に寄り添う」と繰り返してきたが、実際の態度は違う。県はすでに辺野古沿岸部の埋め立て承認を撤回している。加えて過去2回の知事選に続き今年2月の県民投票では、移設反対の民意がより鮮明に示されている。なのに、国は県の承認撤回を脱法的とも言えるやり方で取り消し、希少な自然が残る辺野古沿岸で埋め立て域を広げ続けている。安全保障を理由に、国の政策を一方的に押し付ける姿勢は、対等であるべき国と地方の関係をゆがめている。沖縄以外の地方にとっても人ごとではない。沖縄の基地問題は負担の公平性も含め、参院選の大きな争点だ。自民党は公約で辺野古移設推進を掲げる。しかし沖縄選挙区では公認候補が賛否を明らかにしていない。昨年の知事選同様、争点をぼかそうとする意図が透ける。公明党は党本部が政府方針を容認する一方、沖縄県本部は県内移設に反対している。一貫性を欠き、有権者には分かりづらい。一方、立憲民主、国民民主、共産、社民の野党4党は中止、反対を公約に掲げ、政権批判を強めている。ならば普天間返還を含め、基地負担の軽減を米側とどう進めるか具体的に示す必要があろう。県は今週、石井啓一国土交通相が県による埋め立て承認撤回を取り消す裁決をしたのは違法だとして、裁決の取り消しを求める訴訟を福岡高裁那覇支部に起こした。国と県の対立はまたも法廷闘争に入り、出口が見えない。そもそも県の撤回理由には、辺野古沿岸部に最深約90メートルに達する軟弱地盤の存在が新たに判明したことがある。現計画では対応できず、費用も大幅に膨らむ。国が県の承認なく工事を強行し続けることができないのは明らかだ。国は普天間問題について「辺野古移設が唯一の解決策」とする。だが移設を最初に閣議決定してから20年たち、安全保障環境も変わる中「なぜ、唯一なのか」を県民に丁寧に説明したことはない。今回の参院選は、政権の地方軽視の姿勢と基地負担のあり方を国全体の問題として考え、投票する機会にしたい。

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2019.7.1 2019年7月の参議院議員選挙と人権軽視の司法改革など (2019年7月2、4、9、10、15、16日追加)
 
   2018.3.16、2018.11.20産経新聞       
         司法取引               共謀罪    特定秘密保護法

(図の説明:左の2つの図のように、司法取引を導入している国は日本だけではないが、重要なのは使われ方で、ゴーン氏逮捕事件は民衆の嫉妬を煽って無理に有罪を作りだすという日本独特の様相を呈している。また、右から2番目の図の共謀罪も何とでも言えるため、憲法違反が指摘されている。さらに、一番右の特定秘密保護法は行政のやりたい放題になる上、「秘密を漏えいしやすいので特定秘密取扱者の制限を受ける」として挙げられた類型は差別そのものである)

(1)参院選で考慮すべき国民監視強化と人権侵害への法改正
1)2019年7月の参院選について
 日本農業新聞が、*1-3のように、TPPの発効や規制改革推進会議による官邸主導の政策決定が生産者を無視したため、「安倍内閣の農業政策を評価しない」は68.5%に上っており、政権運営に不満はあるのだが、農業従事者は野党にも厳しい目を向けていると書いている。

 そして、支持政党トップは自民党の46.7%、野党のトップは立憲民主党の9.3%で、参院比例区の投票先も、自民党39.1%が立憲民主党14.5%を大きく引き離しているそうだ。その理由は、「①野党は選挙協力を進めたが、共産党を含む連立政権の樹立を目指しているわけではない」「②野党はばらばら」「③政権交代の可能性がない」「④野党第1党の立憲民主党は都市型政党で農政に弱い」と書かれている。しかし、①②は、自民党支持者が野党を分裂させるために使う批判であるため、野党支持者はこれに乗ってはいけないのである。

 また、③については、参院選であるため仕方なく、④については、野党は、歴史が浅いこともあって i)地域に根付いた議員が立候補していない ii)地域に根差した支持基盤がない などが理由で、地域からの政策に関する指摘が上がりにくいわけである。その点、自民党は県議や市議にも自民党員が多く、普段から組織がしっかりしている。しかし、自民党の欠点は、永く与党であるため立候補に既得権や世襲の色合いが強く、世襲議員は(特に優秀でなくてもなれるため)代を重ねるごとに劣化する傾向があるということだ。

 そのため、自民党候補者は支持しないが、野党候補者も支持できないので、選択肢も興味もなくなり、棄権するのが近年の低い投票率の原因だろうが、浮動票が少なくなれば組織票がモノを言うため、さらに自民党に有利になって自民党は組織票の源泉となる政策を増やすわけである。

2)参院選の争点
 これは、メディアがわかりやすくまとめて一覧表にして欲しいが、*1-1は、参院選で、①改憲 ②安倍政権の経済政策の是非 ③くらしと年金(公的年金制度のあり方) ④外交 ⑤原発・エネルギー ⑥安倍政権の政治姿勢 を主要争点としている。

 このうち①については、*1-2のように、安倍首相は、「憲法改正の議論すら行われない姿勢でよいのか、国民に問いたい」としておられるが、自民・公明・維新・改憲に前向きな諸派や無所属議員を加えた改憲勢力が改憲発議に必要な2/3以上になれば、改憲を議論した途端に党議拘束のある強行採決が行われて国民投票となりそうであるため、まともな議論をするためには改憲勢力は2/3未満でなければならない。

 また、このブログに書いてきたとおり、私も②③④⑤に不満足な点は多いが、⑥の「安倍政治だからいけない」という批判は政策に対する批判ではなく、(理由を長くは書かないが)他の人ならそれ以上のことができるかどうかもあやしく、事実も知らずに人格攻撃をしていることになるため、民主主義の国の大人が言うべきではないだろう。

3)公的年金について
 安倍首相は、*1-2のように、公的年金問題に関する金融庁報告書に対し「対案もないまま、不安をあおる無責任な議論があってはならない」と言われたそうだが、私がこのブログの「年金・社会保障」の項目に何度も記載したとおり、誰も文句を言わない唯一の方法は、①積立方式(≒発生主義による引当方式)への移行 ②徴収・支払の完全化 ③積立金の管理強化 ④二重負担の排除 であり、出生率に影響され散財の多い現在の仕送り方式である限り、皆が不安で不満足なのである。

(2)国民の人権を大切にしない立法・行政・司法とその政策
1)立法・行政・司法による人権侵害
 日本国憲法で、立法・行政・司法は三権分立していると規定されているが、実際には日本の行政・司法(昔の“お上”)は、個人の人権や幸福のために行動するのではなく、別の目的で行動することが多いというのが多くの事例で示されており、日本国憲法は、未だ形だけで精神まで実行されていないというのが現状である。

 そのような中、*2-1・*2-2に書かれているとおり、自民党政権下で「刑事訴訟法等の一部を改正する法律」が成立したが、これは、裁判員裁判対象事件と検察庁の独自捜査事件に限定された一部事件で取調べの全過程の可視化が義務付けられた一方で、司法取引の導入、通信傍受の拡大を含む。

 私も、この通信傍受拡大は警察の見たい放題・聞きたい放題となり、通信の秘密やプライバシー等の人権侵害が著しく、濫用の危険性も高いため、この法律を成立させた自民党政権に疑問を感じた。しかし、自民党政権は、G20でもデータの流通を提案するなど、日本はもちろん世界の人も眉をひそめるほどだ。

 また、司法取引の導入も濫用の危険性を排除しておらず、この制度が人権侵害を生み出した例としては、今後、内部紛争の手段として司法取引制度を使った、*3-1の三菱日立パワーシステムズ(MHPS)の海外贈賄事件や、*3-2-1のゴーン氏の逮捕事件などが挙がってくると思われる。いずれのケースでも、日本の司法は、個人を犠牲にして会社の味方をしている。

2)司法が生んだ冤罪
 通常は警察の取り調べと関係がないため無視していられるが、*2-3のように、1967年の「布川事件」では、検察が証拠をでっちあげ、無実の証拠は隠して、1978年に無期懲役が確定し、再審で無罪となった桜井昌司さんがいる。

 また、*2-4のように、自宅の火災原因は、土間に設置していた風呂釜の種火が同じ土間に止めていたホンダ・アクティ(軽ワゴン)のガソリンに引火して自宅が全焼した青木惠子さんは、「娘殺し」の犯人として無期懲役を課せられた。それは、捜査員たちが、ホンダの車からガソリンが漏れるわけはないと思い込み、「出火原因は放火で、動機は生命保険金を狙った殺人だ」というストーリーを描いたからだが、風呂釜の種火の近くに置いてあれば、一定の温度以上になればガソリンが漏れていなくても引火することはある。

 しかし、被害者の青木惠子さんと内縁の夫の朴さんは捜査員の言いなりに自白させられ、この2人の甚大な不幸によって助けられたのは、風呂釜の種火近くに可燃物を置かないよう説明していなかった会社と保険金を払わずにすんだ会社なのである。

 また、*2-5の袴田事件は高裁で再審を取り消されたが、犯人のものとされる着衣に付いていた血痕のDNA鑑定がおかしく、再審を決めた静岡地裁は「袴田元被告のものと一致しない」という弁護側鑑定の信用性を認め、高裁は信用性を否定した。しかし、DNAは、一卵性双生児なら完全に同じであり、近親者になるほど近いため、同じでも疑うべきである上に、昔の鑑定はさらに不正確だっただろう。つまり、“科学的”という名の下に、他の複数の証拠との整合性もなく犯人と決めつけるのはおかしく、検察の立証が合理性を欠く場合は速やかに再審を行うべきだ。

 さらに、*2-6-1の大崎事件は、1979年10月、夜に泥酔して自宅から約1キロ離れた用水路に自転車とともに倒れていたところを通りがかりの村人に引き上げられ、家まで軽トラックで送り届けられた後に所在不明となって捜索願が出されていた中村邦夫さんが、自宅牛小屋の堆肥の中から腐乱死体で発見された大崎事件の死亡原因は殺人ではなく転落による事故死であるため殺人罪は冤罪だとの主張があるそうだ。

 警察は、当初から近親者の犯行と見て捜査を開始し、同一敷地内に住む長兄の中村善三さん・次兄の中村喜作さん・喜作さんの長男の中村善則さん・善三さんの妻だった原口(当時中村)アヤ子さんら4人を殺人と死体遺棄で逮捕し、原口アヤ子さんは一貫して否認したが他の3名が自白して起訴され、原口さんも3名の供述を元に起訴された。

 検察は、「原口さんが首謀者となって酒乱の邦夫さん殺害による保険金取得を謀議し、原口さん、夫の善三さん、義弟の喜作さんの3人で邦夫さんを押えつけたうえ西洋タオルで絞め殺し、原口さんと甥の義則さんで牛小屋堆肥に死体を遺棄した」というストーリーを作り、原口さんは終始これを否認したが、鹿児島地裁は「頸椎前面に出血があることから首に外力が働いた。他殺による窒息死と想像する」という鹿児島大医学部教授の鑑定書と自白を根拠に、全員に(それにしては、短い)実刑を宣告した。

 そして、*2-6-2のように、最高裁が、再審開始を認めた福岡高裁と鹿児島地裁の決定を取り消し、再審請求を棄却する決定をして、再審を認めない判断が確定したが、確定判決が「窒息死と推定される」とした男性の死因については、「転落事故による出血性ショックの可能性が極めて高い」との指摘もあるそうだ。しかし、自転車で転んだ際に首の骨が折れたり、全身不随になったりすることもあるため、警察や検察の死因推定やストーリー仕立ては単純なワンパターンにすぎるわけである。

(3)司法取引について
 日本版「司法取引」が導入されたのは、*3-1のように、2018年6月1日で、これを利用した起訴は2件あり、それは、日産自動車前会長ゴーン氏と三菱日立パワーシステムズ(MHPS)の元幹部3人だが、いずれも「社内紛争で、会社が社員を差し出した」という感じがする。

 また、(2)の冤罪事件で明らかなように、①日本の警察・検察は単純すぎるワンパターンの犯罪ストーリーを描く ②経済事件に弱い ③公正でなく意図的である ④権力や会社側について個人を犠牲にすることを厭わない などにより、信用に値しないため「司法取引」も都合よく使うだろうと推測せざるを得ない。

 なお、*3-2-1のように、ゴーン前会長と前代表取締役ケリー氏が公判前整理手続きに出席したそうだが、ゴーン前会長の弁護側が検察側に対して証拠を早期に開示するよう求めたり、日産の西川広人社長が虚偽記載事件で不起訴処分になった理由の説明などを求めたりしたのは当然だろう。また、*3-2-2のように、ゴーン前会長は、保釈条件で妻キャロルさんとの接触を禁止されているわけだが、証拠は既に出ていて当然の時期であるため、妻と助け合えないよう接触禁止にしているのは嫌がらせに見える。

(4)共謀罪について
 政府は、*4-1・*4-2のように、2017年3月21日、共謀罪の創設を含む組織的犯罪処罰法改正案を閣議決定して国会に上程し、2017年6月15日に可決成立した。この法案は、日弁連意見書が検討の対象とした法案に比べ、①犯罪主体についてテロリズム集団その他の組織的犯罪集団と規定している ②準備行為は計画に基づいて行われる必要があることを明記して準備行為が必要とされている ③対象となる犯罪が長期4年以上の刑を定める676の犯罪から277の犯罪にまで減じられている点が異なっているそうだ。

 しかし、①の「テロリズム集団」は組織的犯罪集団の例示として掲げられているに過ぎず、この例示が記載されたからといって主体がテロ組織・暴力団等に限定されることはなく、②の準備行為についても計画に基づいて行われるものに限定したとしても準備行為自体は法益侵害への危険性を帯びないため犯罪成立を限定する機能を果たさず、③の対象となる犯罪が277に減じられたとしても組織犯罪やテロ犯罪と無縁の犯罪も対象とされていることから、上記3点を勘案したとしても、日弁連の意見書で指摘した問題点が解消されたとは言えないそうだ。

 私も、この法案の成立過程を見ていたが、この法律は日本を監視社会化して市民の人権や自由を侵害する恐れが強いと考えた。

 また、この法案に対しては、国連人権理事会特別報告者であるジョセフ・カナタチ氏が懸念を表明する書簡を発出するという経緯も存したが、④一般市民が捜査の対象になり得るのではないか ⑤「組織的犯罪集団」に「一変」したといえる基準が不明確ではないか ⑥計画段階の犯罪の成否を見極めるために、メールやLINE等を対象とする捜査が必要になり、通信傍受の拡大など監視社会を招来しかねないのではないか などの様々な懸念は、*6-1の2019年6月1日の施行の「改正通信傍受法」で実現している。

 さらに、「改正通信傍受法」が、これまで捜査員が通信会社に出向いて通信会社社員の立会の下で行なっていた通信傍受を、警察に居ながらにしてできるようにしている。そして、通信傍受が認められている“犯罪”は、薬物、銃器、集団密航、組織的殺人、殺人、傷害、放火、爆発物、窃盗、強盗、詐欺、誘拐、電子計算機使用詐欺・恐喝、児童売春など殆どで、今後は裁判所の令状を取られた被疑者と会話やメール等で通信する相手は、警察の監視下に置かれ、ネット化、IT化、キャッシュレス化がもたらす個人情報の共有が警察当局にももたらされ、通信傍受と合わせられるそうだ。

 そして、日本政府は、キャッシュカードの使用を推奨しているが、利用履歴や買い物履歴は個人情報になるため、自分の個人情報が悪用されないように気を付けるのは、今では正当な注意になってしまった。これを、主権者はどう評価するのだろうか。景気さえよければ、民主主義はどうでもよいのだろうか?

(5)特定秘密保護法について
 日本弁護士連合会は、*5のように、特定秘密保護法について廃案を求める会長声明を出し、特定秘密保護法における「テロリズム」の定義が広すぎ、市民の表現行為が強要とされてテロリズムに該当すると解釈される危険性があるとしている。

 私も、特定秘密保護法については、特定秘密の範囲も曖昧で、秘密の指定は恣意的になりかねず、それをチェックすべき第三者機関の独立性は疑わしく、テロの定義を広げて国民の正当な政府批判まで取締りの対象にする危険があり、特定秘密の取扱者の制限も差別的内容を含んでおり、人権侵害の恐れがあるため、特定秘密保護法についても改めて有権者の評価を求めたい(https://www.tokyo-np.co.jp/feature/himitsuhogo/news/131206zenbun.html 参照)。

(6)監視社会へ ← 一度失ったら取り戻すのに多大な犠牲を強いる「自由」
 (4)にも記載した通り、*6-1のように、2019年6月1日施行の「改正通信傍受法」で、捜査員は警察に居ながらにして通信傍受を行えるようになったが、改正は「段階を踏んで少しずつ行われ、今では殆どの犯罪領域がカバーされることになったのだそうだ。そして、本当に犯罪捜査にだけ使われるのならよいが、そうとは限らないため問題なのである。

 さらに、*6-2のように、地銀64行がテロリストへの資金供給などに使われるマネーロンダリング(資金洗浄)防止のため、情報共有システムを構築するそうだが、日本でテロリスト・テロリストと言われのに、私は違和感がある。何故なら、日本は戦争をする国ではないため恨まれる理由がなく、国内でテロが起こることは考えにくいからだ(実際、何回起こったか?)。そのため、テロ対策と称する国民への個人情報の侵害の方がよほど重大な問題だろう。

<参院選の争点に含めるべき国民監視強化と人権無視>
*1-1:https://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201906/CK2019062602000155.html (東京新聞 2019年6月26日) <参院選岐路>参院選 事実上スタート 憲法、年金など争点に
 国会は二十六日に閉会し、参院選の公示を前に、選挙戦が事実上、スタートする。衆院は二十五日の本会議で、立憲民主など野党五党派が共同提出した安倍内閣不信任決議案を自民、公明の与党と日本維新の会などの反対多数で否決した。安倍晋三首相は衆院解散を見送る。参院選は七月四日公示、二十一日投開票となる見通し。首相は二十六日午後、官邸で記者会見を行う。衆参同日選を見送る理由や参院選への決意を表明するとみられる。政府はこれに先立ち臨時閣議を開き、参院選の日程を正式決定する。参院選では、首相が目指す改憲、安倍政権の経済政策の是非に加え、老後二千万円不足問題で不安が広がる公的年金制度のあり方などを主要争点に与野党が論戦をかわす。憲法、くらしと年金、外交、原発・エネルギーに加え、安倍政権の政治姿勢など、政権の六年半が問われる。首相は二〇二〇年の新憲法施行を目指している。自民、公明の与党に加え、維新や改憲に前向きな諸派・無所属議員を加えた「改憲勢力」が、改憲発議に必要な三分の二の議席を維持できるかが最大の焦点となる。内閣不信任決議案を巡る本会議での趣旨弁明で、立民の枝野幸男代表は「安倍内閣が議会制民主主義を根底から破壊している現状を見過ごすことは到底できない」として、首相の政治姿勢を批判した。自民党は、外交や経済で実績を上げていると反論した。

*1-2:https://www.jiji.com/jc/article?k=2019062600875&g=pol (時事 2019年6月26日) 憲法改正「国民に問う」=年金充実へ経済強化-安倍首相記者会見
 安倍晋三首相は26日、通常国会閉幕を受けて首相官邸で記者会見した。7月21日投開票の参院選について、かつての民主党政権を批判した上で「最大の争点は安定した政治の下で改革を前に進めるのか、再び混迷の時代に逆戻りするかだ」と強調。憲法改正に関し「議論すら行われない姿勢でよいのか、国民に問いたい」として、争点とする意向を示した。首相は「令和の日本がどのような国を目指すのか、その理想を語るものは憲法だ」と述べ、改憲への意欲を表明。野党が国会での改憲論議に非協力的だったと指摘した上で、「憲法の議論すらしない政党を選ぶのか、国民に自分たちの考えを示して議論を進めていく政党を選ぶのか、それを決めていただく選挙だ」と訴えた。首相は経済最優先の政権運営を継続する考えを示した上で、「景気下振れには、ちゅうちょなく機動的かつ万全の対策を講じる」と述べ、追加経済対策の可能性に言及した。老後資金が公的年金以外に2000万円不足するとした金融庁報告書に対して批判を強める野党を念頭に、「対案もないまま、ただ不安をあおるような無責任な議論は決してあってはならない」とけん制。「年金(制度)を充実する唯一の道は、年金の原資を確かなものとすること、すなわち経済を強くすることだ」と述べた。

*1-3:https://www.agrinews.co.jp/p48078.html (日本農業新聞 2019年7月1日) 参院選 このままでいいのか 野党の体たらく問う 一橋大学大学院教授 中北浩爾
 参院選の帰趨(きすう)を決すると言われるのは、農村部に32ある改選定数1の「1人区」である。かつてであれば、自民党が堅調に議席を獲得する金城湯池であった。しかし、日本農業新聞が行っている農政モニターの意識調査を見る限り、自民党が楽観できる状況にはない。2006年の第1次安倍政権では、発足後の06年10月調査の内閣支持率は76・1%あった。それが第2次安倍政権発足時の12年12月調査では支持率66・0%となり、今年3月の調査では支持率39・5%と低迷。17年10月以降は支持率30%台の低空飛行が続く。これに対して、不支持率は6割を超える。国民一般に比べて農業従事者ほど、安倍政権に不満を抱いていることがうかがえる。
●政権運営に不満
 3月の調査結果からは、その理由も浮かび上がる。安倍内閣の農業政策を「評価しない」は68・5%に上った。政権運営が謙虚かどうかの評価では、「全く謙虚ではない」が最も高く42・9%で、「あまり謙虚ではない」が33・2%と続いた。環太平洋連携協定(TPP)が発効するなど過去最大の農産物の市場開放への不満に加え、規制改革推進会議に象徴される官邸主導の政策決定に対して、生産者の声を無視しているとの批判の表れとみられる。本来であれば、これは野党にとって大きなチャンスである。それを生かせば、間もなく公示となる参院選で勝利し、3年後には「ねじれ国会」に持ち込む展望が開けるかもしれない。
●投票先では大差
 ところが3月の調査結果を見ると、農業従事者らは野党にも厳しい目を向けている。支持政党のトップは自民党の46・7%で、野党は最も支持が多かった立憲民主党でも9・3%にとどまった。参院選比例区での投票先でも、自民党が39・1%で、立憲民主党の14・5%を大きく引き離した。これには二つの理由が考えられる。第一は、野党がばらばらであり、当面、政権交代の可能性がないと考えられていることだ。1人区で候補者調整を行うなど、野党は選挙協力を進めているが、共産党を含む連立政権の樹立を目指しているわけではない。そうである以上、自民党政権の枠内で農業政策の転換を期待するしかない。昨年9月の党総裁選の際、農業従事者の間で石破茂元幹事長への期待が高かったのは、そのことを裏付ける。第二に、野党第1党の立憲民主党が、都市型政党であり、旧民主党以来の農業者戸別所得補償制度を主張しているとはいえ、農政に弱いことである。枝野幸男代表は、民主党代表時代の小沢一郎氏のようには、農村部を丁寧に回るということをしていない。旧民主党では、むしろ国民民主党の方に農政通が多い。玉木雄一郎代表の父親は農協関係者である。だが、結党の経緯などから、同党の支持率は低く、3月の調査結果では1・7%にすぎない。安倍内閣の個別の政策には批判が強いのにもかかわらず、民主党政権の失敗を背景とする野党の低迷により、異例の長期安定政権が可能になっている。これは農政に限られた現象ではない。その結果が、近年の低い投票率である。今回の参院選では5割を下回る可能性すらある。参院選を目前に控えて改めて野党に問いたい。本当にこのままでいいのか、と。
*なかきた・こうじ 1968年、三重県生まれ。東京大学法学部を卒業後、立教大学法学部教授などを経て、一橋大学大学院社会学研究科教授。政治学が専門。著書に『自公政権とは何か』(筑摩書房)、『現代日本の政党デモクラシー』(岩波書店)など。

<司法が生む冤罪と人権侵害>
*2-1:https://www.osakaben.or.jp/speak/view.php?id=121 刑事訴訟法等の一部を改正する法律の成立に当たっての会長声明 (2016年5月24日 大阪弁護士会会長 山口健一)
 本日、「刑事訴訟法等の一部を改正する法律」が可決・成立した。この改正は、一部の類型の刑事事件について、身体を拘束された被疑者に対する捜査機関の取調べの全過程を録音・録画することの義務付け等を行う一方で、いわゆる司法取引の導入や通信傍受の拡大を含むものとなっている。これらの改正部分は、法律成立の日から3年以内に施行される。取調べ全過程の録音・録画は、市民の監視が全く及ばない密室で、捜査機関が違法・不当な取調べを行ったことにより、無実の者が虚偽の自白を強いられ、多くのえん罪を生んだことへの痛切な反省から導入された。富山・氷見強姦えん罪事件、志布志事件、足利事件等虚偽自白の強要によるえん罪事件は枚挙に暇がない。拷問による虚偽自白の強要、無罪を裏付ける証拠の隠ぺいに加えて、捜査機関による証拠ねつ造の疑いまで発覚し、確定死刑囚に再審開始及び死刑の執行停止が言い渡され、釈放された袴田事件(検察側申立により即時抗告審で審理中)は、記憶に新しいところである。2010年(平成22年)には、関係者の虚偽自白調書に基づき、虚偽有印公文書作成罪等で起訴された厚生労働省の官僚に無罪判決が言い渡された。同事件の捜査に携わった大阪地方検察庁特別捜査部の主任検事による証拠改ざんも明らかとなり、この重大な検察の不祥事を機に、取調べ及び供述調書に過度に依存した捜査・公判からの脱却を目指す刑事司法改革の検討が本格化した。取調べ全過程の録音・録画の法制化は、今般の刑事司法改革の中核をなすものである。当会は、数々の虚偽自白とえん罪を生んだ違法・不当な密室取調べの根絶を目指し、1990年代から、捜査機関における取調べ全過程の録音・録画、すなわち「取調べの可視化」を提唱してきた。今般の刑事訴訟法改正は、当会が長らく訴えてきた、被疑者・被告人の人権を守り、えん罪を根絶するための取調べの可視化の必要性を、正面から認めたものと評価することができる。今回の法改正による取調べ全過程の録音・録画の義務化は、裁判員裁判対象事件及び検察庁の独自捜査事件に限定されており、未だ道半ばであることは否めない。しかしながら、捜査機関が長らく抵抗してきた取調べ全過程の可視化が、一部の事件類型であっても法制化に至ったことは、率直に評価すべきである。身体拘束の有無を問わず、全刑事事件の取調べの可視化実現に至る第一歩として、我が国の刑事司法制度における歴史的意義を有するものである。今般の取調べ全過程の録音・録画の法制化を機に、刑事弁護の実践において漏れのない取調べの録音・録画を実施させ、取調べ監視体制を確立しなければならない。義務化の対象事件であるか否か、被疑者が拘束されているか否かを問わず、捜査機関に対する取調べ全過程の録音・録画の要請をさらに強化し、一刻も早く、全事件の取調べの可視化を実現することが、我々弁護士に課せられた社会的使命であり、当会としてもこれを推し進めていきたい。そして、今後は、全事件・全過程の取調べの可視化の法制化を可及的速やかに実現させることが強く求められる。また、検察庁及び警察は、既に義務化の対象以外の事件類型についても、録音・録画の実施対象を拡大し始めているところであるが、今般の法制化を機に改めて、捜査機関に対し、義務化対象事件であるか否かを問わず、被疑者が拘束されているか否かをも問わず、全事件・全過程の取調べの録音・録画を実施するよう強く要請する。なお、取調べの録音・録画について参議院法務委員会の審議において問題とされた、別件の被告人勾留中における対象事件の取調べは、対象事件についての「勾留されている被疑者」を取り調べるときにほかならないのであるから、録音・録画の義務付けの対象となることは明らかであり、それを前提とした弁護実践を行うことが強く求められる。他方、今般の改正に盛り込まれた通信傍受制度の拡大は通信の秘密やプライバシー等の人権侵害の程度が著しく濫用の危険性も大きい。いわゆる司法取引の導入についてもその濫用の危険性を排除したものとは言い難い。今後、これらの制度が人権侵害を生み出すことのないよう、その運用に厳しく対応する必要がある。捜査機関においてもこれらの制度を濫用することのないよう、通信傍受制度については補充性・組織性の要件を厳格に解釈運用すること、司法取引については引き込みの危険等に留意しつつ本制度が誤判の原因とならないよう厳格に運用されることを要請する。加えて、通信傍受制度について第三者監視機関の設置等の通信の秘密やプライバシー等の人権侵害を防止するための制度の創設を要請する。

*2-2:https://www.nichibenren.or.jp/activity/document/statement/year/2019/190601.html 取調べの可視化を義務付ける法律の施行に当たっての会長談話 (2019年6月1日 日本弁護士連合会会長 菊地裕太郎)
 本日、取調べの可視化を義務付ける改正刑事訴訟法が施行されました。改正法は、裁判員裁判対象事件及び検察の独自捜査事件について、逮捕・勾留下の被疑者の取調べの開始から終了に至るまでの全過程の録音・録画を義務付けています。そして、原則として、録音・録画がない場合には、供述調書を証拠として提出することができなくなると定めています。当連合会は、かねて取調べの全過程を録音・録画する取調べの可視化を求めてきましたが、これが法律上の義務となり施行されることは、歴史的意義を持ちます。現在、取調べの可視化によって、取調べの適正化が進んできています。同時に、従来からの日本の刑事司法の特徴である、捜査段階の供述調書に過度に依存する「調書裁判」は、根本から見直され始めました。既に、裁判員裁判対象事件については、警察でも検察庁でも、ほぼ全ての事件について、逮捕・勾留下の取調べの全過程の録音・録画がなされており、改正刑事訴訟法施行に向けての準備が整ってきていました。また現在、検察庁においては、裁判員裁判対象事件以外でも、幅広く取調べの録音・録画がなされており、今後は、この動きが、警察を含め加速されることが期待されます。一方、本日施行の改正刑事訴訟法では、取調べの録音・録画を義務付ける対象事件が限定されています。しかし、取調べの適正確保に録音・録画が必要であることは、事件の重さや種類に関わりません。このことは、痴漢、窃盗等、比較的軽微な事件におけるえん罪事件の経験からも明らかです。このほか、逮捕・勾留されていない、いわゆる在宅被疑者の取調べについても録音・録画を義務付ける必要があること等の克服すべき課題があります。全事件における取調べの全過程の録音・録画を実施するまでには、なお道のりがあります。取調べの可視化の改革は更に前進させなければなりません。当連合会は、改正刑事訴訟法の附則に定める3年後の見直しの際に録音・録画の対象・範囲を全事件・全過程に拡げるべく、全ての弁護士、弁護士会とともに引き続き全力で取り組む所存です。

*2-3:https://www.nishinippon.co.jp/item/n/520945/ (西日本新聞 2019/6/23) 検察の「証拠独占」批判 「布川事件」桜井さん講演
 「なぜ証拠は検察の独占物なのか」‐。1967年に茨城県で起きた強盗殺人事件「布川事件」で再審無罪が確定した桜井昌司さん(72)=水戸市=の講演会が22日、福岡県直方市で開かれた。今年5月に東京地裁であった国家賠償訴訟判決が、公判で証拠開示を拒否した検察側の対応を違法と認定したことを受け、桜井さんは「検察は証拠をでっちあげ、無実の証拠を隠す」と語った。布川事件は、別の窃盗容疑などで逮捕された桜井さんを含む男性2人が強盗殺人罪に問われた。公判で一貫して無実を訴えたが、78年に無期懲役が確定。未提出証拠の開示請求を繰り返し、目撃証人の初期供述調書などを開示させ、2011年5月に2人とも再審公判で無罪となった(1人は15年に死去)。市民ら約50人が訪れた会場で、桜井さんは「正直に話しても刑事から『違う』と言われると、自分の記憶が間違っていると思ってしまう」と取り調べを振り返った。検察に対しては「人権を守るべき公益の代表者が、有罪無罪を左右するかもしれない証拠を(公判で)出さなくていいのか」と批判した。質疑応答では、福岡県飯塚市で女児2人の殺人容疑などで久間三千年(みちとし)元死刑囚(08年刑執行)が逮捕された「飯塚事件」について問われ「(目撃供述など)ありえない証明を基に彼は犯人にされた。布川事件と同じで、久間さんを犯人にするために何の証拠もないから証人がつくられた」と指摘した。

*2-4:https://gendai.ismedia.jp/articles/-/54537 (週刊現代 2018.3.20) 「娘殺し」で20年も身柄を拘束された冤罪母の声、それでも裁判官にはおとがめなし
 判断をひとつ間違えれば、罪のない人間に罰を与えてしまうかもしれない。それが裁判官だ。だが、その重みを十分に感じていない判事もいる。彼らは冤罪を出しても咎められることはないのだから。
●裁判官に裏切られた
 「本当のことを言っているんだから、私の話をちゃんと聞いてくれたら無罪しかないわけですよ。裁判官はきちんと審理して無罪判決を出してくれるに決まってる。そう思ってたもの。私は裁判所を疑ってなかったから。ところが、無罪の人間に無期懲役を宣告したんですから絶望した。これが日本の裁判所なのかって。そんな酷いところなんだって」。険しい表情で一気にこう語ると、青木惠子(現在54歳)は押し黙ってしまった。人生を一瞬にして崩壊させられた法廷での記憶が、生々しく甦ってきたかのようだった。大阪市内の貸会議室に、約束の時間ピッタリに現れた青木は、花柄のブラウスに黄色のカーディガン、スカートにハイソックスという若々しい出で立ちだった。その服装に、しばし気を取られていると、弁解するように言った。「若作りしてるって言われるんだけど、あの日以来、時間が止まってしまって。どんな服を着ればいいかわからないから。昔、着ていたような服ばかり買ってしまうんです」。衆議院法務委員会で、清水忠史代議士が最高裁刑事局長に質したところによれば、「死刑または無期懲役の判決が確定し、昭和五十年以降に再審開始決定がされた事件数は合計十一件」(2015年12月4日)。その11件目の再審開始決定が、青木惠子を犯人とした「東住吉事件」だった。再審開始決定とは、「無罪を言い渡すべき明らかな証拠をあらたに発見したとき」、裁判のやり直しを命じる制度である。ごく平凡な主婦として大阪市東住吉区に暮らしていた青木は、23年前の夏、自宅が火災で全焼。この時、青木が前夫との間にもうけたふたりの子供のうち、長女のめぐみ(当時11歳)を亡くしていた。めぐみには、3年ごとに30万円が給付される学資保険タイプの生命保険をかけていたが、事故で死亡した場合は1500万円が支払われるというものだった。大阪府警捜査一課の捜査員たちは、この保険金を得ようと火災事故に見せかけ、長女を殺害したものと憶測。「保険金目的放火殺害事件」の「主犯」として、青木(当時31歳)を逮捕したのである。「共犯」は、内縁関係にあった朴龍晧(当時29歳)で、青木の「発案」のもと放火を実行したとして逮捕されている。この逮捕の日から、再審裁判で無罪判決を勝ち取るまで21年という時間がかかっていた。「娘殺し」の汚名を着せられ、無期懲役囚として自由を奪われた一審裁判を思い出すだに怒りを抑えきれないと、青木は言った。「私は、世間に迷惑かけんようにと、一生懸命、いろいろ考えて働いていただけなのに。なんで、裁かれないかんかったんでしょうか。なんで、あんな扱いをうけないかんかったのかと、いまでも思いますけどね」。青木の自宅の火災原因は、玄関を入ってすぐの土間に止めていたホンダ・アクティ(軽ワゴン)の燃料タンクからガソリンが漏れ、その土間に設置していた風呂釜の種火に引火しての事故(自然発火)だった。この事実は、青木と朴の弁護団による「燃焼再現実験」で客観的に実証されている。実際、裁判所もまた、この実験結果を「無罪を言い渡すべき明らかな証拠」として採用したことで、再審開始の決定がなされ、その後の再審無罪判決を得ることができたのだ。しかし、当時の捜査員たちは、ホンダの車からガソリンが漏れるわけはないと思い込んでいた。そしてその憶測が、出火原因は放火で、動機は生命保険金を狙った殺人という、根も葉もない確信へと変わるのである。
●悲しむ時間も奪われて
 ただ、ふたりの犯行を裏付ける物証はなかった。だったら「自白」で放火を認めさせろ。短絡的で野蛮な捜査方針がとられたのである。過酷な取り調べのなか、青木は、やってもいない犯行を「自白」している。その時の心理状態をこう語った。「何を言っても信じてもらえないし。怒鳴られて、ののしられて、侮辱されて。私にしたら、娘を亡くしたばかりでしょう。一番弱ってますよね。娘の死を悲しむ時間まで奪われたうえ、お前みたいな奴が母親で、めぐみも可哀想やとまで言われて。なんなんだろう、これはって思いましたよ」。底の見えない絶望感へ突き落としたのは、捜査員の次のひと言だった。「朴さんが、めぐちゃんに性的虐待を加えていたと言われたんですよ。ガーンと頭殴られたみたいな衝撃で、私にしたら止めを刺されたようなもんですよ。助けられなかったうえ、気づかなかったわけだからね。私は、子供を幸せにしてあげたいと思ってるのに、そんな不幸なね。毎日、恐ろしい目にあってたんだと思ったら。こんなことにも気づかず、私は、子供は幸せなんだと思い込んでいた。そんな自分が情けなくて、すごく追い詰められたわけですよ」。司法解剖の結果、「死後半日から2日前くらいの間に性的虐待があった可能性は否定できない」と報告されていた。捜査員はこの報告をテコに、まず、朴を追及し、性的虐待を認めさせている。そしてその恥ずべき行為をマスコミに公表すると脅し、暴行を加えるなど肉体的、精神的に追い込んだうえで、捜査員の言いなり通りの自白をさせていたのである。あまりのショックに茫然自失となった青木は、「めぐちゃん、ごめんね」との思いが頭から離れなかった。何も考えることができず、ただ捜査員に言われるまま「自供書」を書いていた。自ら手にとったペンで書く「自供書」は、「自白」の内容を記載した「供述調書」より重い。捜査員は、証拠価値の高い「自供書」をとることで、何としても青木を犯人に仕立て上げたかったのだろう。起訴に持ち込めなければ「誤認逮捕」としてマスコミから批判され、職場の同僚からも白眼視される。保身からの計算をし尽くしての、狡猾な取り調べであった。「刑事から紙を渡され、まずは題名書こうって言われるわけですよ。そんなこと言われても、わかんないしね。すると、刑事が題名言うわけですよ。言ったこと書けって言われても、全部は聞き取れないでしょう。途中で止まったら、認めたくない気持ちはわかるけど、これを書かなあかんって言って、題名の続きを言うわけですよ。そのあと内容にいくわけです。この内容って、本当のことも入ってるわけですよ。たとえば、家が火事になりました。当たり前でしょう。そしてめぐちゃん、19歳の時に産みました。これも合ってるわけですよ。だから、合ってる中にポツンと犯行の状況を入れるわけです。いまでもね、その時書いた内容覚えていますかって言われたら、覚えてないんですよ」。往々にして、マスコミで大きく報道された事件で、捜査が行き詰まった場合、厳しい取り調べが行われる。元大阪高裁裁判長の石松竹雄は、『刑事裁判の空洞化』のなかで、そんな捜査の恐ろしさを指摘している。「捜査官としての見通し・見込みを立てたうえ、被疑者を……長期間徹底的に取調べ、その見通し・見込みに沿った自白を追及して詳細な供述をさせ、これらの供述を含む捜査の結果を、その見通し・見込みに従って整理し詳細に調書に録取して固定化し」、「これらの証拠が採用されれば、直ちに有罪判決をすることができる状態になっている」。青木らへの捜査は、まさに石松が指摘する通りのものだった。
●調書を鵜呑みにする裁判官
 元東京高裁裁判長はこう語っている。「供述調書を見る時は、最初の調書と2通目を見比べて、2通目で本当は何を取りたかったんだろうかと、詮索する。最初のは、捜査員の意図通りの供述をうまく調書に取れなかったからじゃないか。じゃ、その先の調書ではどうなってるの、と見る。何通重ねた調書でも、かなりの部分は同じ内容が多いんですよ。それなのに、本人を連日呼び出した狙いはなにかとか、詮索してみなくちゃならない。見抜くために、乗せられないために背後の事情を読み取るのが、刑事裁判官のあるべき姿なんです」。裁判官には、証拠の価値評価や、その採否を「総合的、直感的」に自由に決定できる権限が与えられている。自由心証主義と言われるこの特権は、かりに「冤罪」を生み出したとしても、その責任を問われることはない。そんな気楽さからか、青木らに有罪判決を下した地裁の裁判官も、その判決を支持した高裁と最高裁の裁判官たちも、「自供書」や「供述調書」に隠された捜査員の意図を見抜こうとしなかった。単に、検察官の主張を無批判に受け入れ、「冤罪」を生み出していたのである。当時の大阪地裁刑事部では、こんな会話が飛び交っていたという。「自然発火と言ってるぞ」「そんなの無理」「共犯の男は、亡くなった娘に性的暴行加えてるしな」「完全にクロ」――。実際、青木を裁いた地裁の毛利晴光裁判長は、こう断罪した。「被害者(のめぐみ)は母親から愛情を与えられず、理不尽に死に追いやられており、まことに哀れだ。悲しみに暮れる母親を装った青木被告の刑事責任は重い」。また、朴を裁いた川合昌幸裁判長も判決文に書いている。「金のためなら子供の命すら奪うという被告人らの非人道的態度は、いかに厳しく非難しようとも非難し過ぎるということはない」。「捜査段階においては本件各犯行を悔悟し反省する態度が見られたのに、公判段階では不合理な弁解を縷々並べ立てており、結局のところ、ひたすら自己の罪責を免れようとの一心しかなく、自己の犯行を反省し被害者の冥福を衷心から祈ろうとの人間らしい心情に全く欠けるものといわなければならない」。青木と朴の法廷での必死の訴えを、裁判官たちは鼻でせせら笑っていたのである。ただひとり、一連の裁判のなかで、青木らの無罪を主張した裁判官がいた。大阪弁護士会会長から最高裁判事に任官した滝井繁男だ。滝井は、青木惠子の審理を担当した最高裁第二小法廷の裁判長だったが、同小法廷の多数意見が青木を有罪と認定すると、ひとり反対意見を書いた。
●「誤判」後に栄転
 A4用紙24枚に及ぶ意見書はこう結論づけている。「被告人が共謀によって本件犯行を行ったとするには、なお合理的な疑いが残る」「(控訴審判決を)破棄しなければ著しく正義に反する」。しかし、この反対意見は陽の目をみることはなかった。最高裁判決の文案を作成する調査官が、その公表に難色を示したからだ。70歳の定年が近づいていた滝井は、なんとか判決期日を決め、その反対意見を世に示そうとしたが叶わなかった。滝井の定年退官から約1ヵ月後の2006年12月、第二小法廷は青木の上告を棄却している。この日の棄却から10年目の、2016年8月、ようやく大阪地裁の西野吾一裁判長は、青木と朴の再審裁判で無罪を言い渡した。そして、「被告人の自白すべてに証拠能力を認めることはできない」「本件火災が自然発火によるものである可能性が合理的な疑いとして認められるから、被告人が……犯行を行ったとは認められない」と判示した。青木らを犯人としてきた「自白」のすべてを証拠から排除したのである。この再審無罪判決が出る半年前、一審で朴龍晧を有罪と「誤判」した川合昌幸裁判長は、広島高裁長官に栄転している。高裁長官は、天皇によって認承される「認証官」で、最高裁長官と最高裁判事に次ぐ地位にある。長官着任後の記者会見で川合は、いみじくも「自分は間違える人間だと思ってやってきた」と語っていた。また、青木惠子を裁いた毛利晴光裁判長は、再審無罪判決の約2年前、長崎家裁所長へと異動している。エリートコースを歩んできた毛利が、川合に比べさほどの地位を得られなかったのは、東京地裁裁判長時代の2006年2月、書面による厳重注意処分を受けたことによるとされている。毛利は、少年法の規定で家裁送致しなければならない少年を、捜査機関の求めるまま不当な勾留を認めていたのである。一方の青木惠子は、出所後、愛娘めぐみに性的虐待を加えていた朴と決別。亡き娘の霊を供養しながら、一枚3円でチラシを各家庭の郵便受けに投入するポスティングの仕事と、新聞の集金人を務めながらつましく暮らしている。青木は言った。「これだと月4万4000円ぐらいでしょう。最低でも6万円稼ぎたいなぁと思ってるんだけど、うまくいかないんだよね」。冤罪によって奪われた時間の空白は、懸命に生活の基盤を築こうとする彼女の背中に、いまも重くのしかかっている。

*2-5:https://mainichi.jp/articles/20180615/ddm/005/070/063000c (毎日新聞社説 2018年6月15日) 袴田事件で再審取り消し 鑑定評価の仕組み検討を
 科学的とされる鑑定結果でも、その評価は難しい。1966年に起きた「袴田事件」で、死刑が確定した袴田巌元被告の再審決定を東京高裁が取り消した。焦点になったのは、犯人のものとされる着衣に付いていた血痕のDNA型鑑定だ。再審を決めた静岡地裁は「袴田元被告のものと一致しない」との弁護側鑑定の信用性を認めたが、高裁は信用性を否定した。鑑定の評価がなぜ正反対になったのか。高裁では、検察側が申請した鑑定人が、弁護側鑑定の手法を検証した。その中で、DNAの抽出に当たり、試薬を使った独自の方法を取ったことを「不適切だ」とする報告書をまとめた。他にも批判的な法医学者の意見書が出て、高裁はそうした意見をくんだ形だ。静岡地裁の決定から4年がたつ。専門家が別の専門家を否定する科学論争のためにいたずらに時間が経過した感は否めない。鑑定を科学的に突き詰めて事実解明することは重要だが、最先端の科学でも場合によってはあいまいな部分は残る。そこをどう考えるかだ。弁護側、検察側双方の鑑定人が意見をぶつけ合うだけでは限界がある。今回は極めて古い試料でのDNA型鑑定の信頼性が問われた。そのような難しい事案の場合、裁判所の主導下で、第三者的な立場の専門家を集め、鑑定や検証を担ってもらう仕組みが築けないだろうか。もちろん、鑑定結果が全てではない。その上で全証拠を総合して結論を出すのは司法の責任だ。事件発生から半世紀がたつのに、なぜ再審の決着がつかないのか。主な原因は、再審段階での証拠開示が検察の判断に委ねられていることだ。袴田事件で検察が衣類発見時の写真などを開示したのは第2次再審請求後の2010年だった。再審での証拠開示のルール作りが必要だ。この事件では1審段階で45通の自白調書のうち44通が証拠採用されなかった。捜査は自白偏重だった。「疑わしきは被告人の利益に」という刑事裁判の原則は再審でも例外ではない。弁護側は週明けにも最高裁に特別抗告する。最高裁は鑑定結果を含め十分かつ迅速な審理をし、その上で検察の立証が合理性を欠くならば再審の扉を開くべきだ。

*2-6-1:https://matome.naver.jp/odai/2140539519066755001 (NAVER 2018年09月26日) 大崎事件
 大崎事件(おおさきじけん)は、1979年10月、鹿児島県曽於郡大崎町で起こった事件。殺人事件として有罪が確定したが、死亡原因は殺人ではなく、転落による事故であるため殺人罪は冤罪である、との主張がある。1979(昭和54)年10月15日午後2時ごろ(大隅半島の中央に位置する)鹿児島県曽於(そおぐん)郡大崎町井俣の農業・中村邦夫さん(当時42歳。中村家の4男)が、自宅牛小屋の堆肥の中から腐乱死体で発見された。邦夫さんは、3日前の夜泥酔して自宅から約1キロ離れた用水路の中に自転車とともに倒れているところを、通りがかった村人に引き上げられて家まで軽トラックで送り届けられた後、所在不明となり、捜索願が出されていた。警察は、当初から近親者の犯行と見て捜査を開始し、10月18日、同一敷地内に住む長兄(中村家の長男)の中村善三さん(当時52歳。服役後の93年10月に病死)と次兄(中村家の二男)の中村喜作さん(当時50歳。服役後87年4月自殺)を、続いて27日には喜作さんの長男の中村善則さん(邦夫さんのおい。当時25歳。服役後の01年5月自殺)を、さらに30日には善三さんの妻であった原口(当時中村)アヤ子さん(当時52歳。11年9月現在84歳)ら4人を殺人と死体遺棄(善則さんは死体遺棄)で逮捕した。原口さんは一貫して否認したが、他の3名は自白、11月1日に起訴、また原口さんも3名の供述を元に11月20日起訴された。原口さんと他の3人は別々に起訴され(裁判官の構成は同一)、起訴日は違うものの、検察のストーリーは、公訴事実は同一で、原口さんが首謀者となって酒乱の邦夫さん殺害による保険金取得を謀議し、原口さん、夫の善三さん、義弟の喜作さんの3人で、邦夫さんを押えつけたうえ西洋タオルで絞め殺し、原口さんと甥の義則さんで牛小屋堆肥に死体を遺棄したというものであった。原口さんは終始一貫否認したが、80(昭和55)年3月31日鹿児島地裁は双方の事件について、「頸椎(けいつい)前面に出血があることから首に外力が働いた。他殺による窒息死と想像する」とする城哲男鹿児島大医学部教授(当時)の鑑定書と、殺害・死体遺棄を実行したとする共犯者とされた原口さんの夫・善三さんら3人の自白を根拠に、「原口さんと兄2人が殺害。善則さんも死体遺棄に加わった」として、全員に実刑を宣告した。判決は、保険金目あてという裁判中に崩れてしまった動機については検察主張こそ排斥したが、その他は検察主張を認め、主犯格とされた原口さんが懲役10年、夫の善三さんが懲役8年、義弟の喜作さんは懲役7年、甥の善則さんは懲役1年の各実刑を言い渡した。原口さん以外の他の3名は控訴せずに服役。原口さんは控訴・上告して争ったものの、福岡高裁宮崎支部は80年10月14日、最高裁判所は翌81年1月30日、いずれも棄却した。原口さんは、再審をめざして仮出獄を拒否し、90年7月17日の刑期満了まで服役した(善三さんと90年7月23日協議離婚)。原口さんは獄中からも無罪を訴え続け、服役後(出所後)の95(平成3)年4月19日に、また死体遺棄罪で懲役1年の刑を受けた服役後、無実を訴えた善則さんが97年9月19日に、鹿児島地裁にえん罪を訴えて再審開始を求めた(01年5月死亡により母親のチリさん〈01年当時73歳〉=同県志布志町志布志=が再審を継承。02年4月1日チリさん死亡)。

*2-6-2:https://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201906/CK2019062702000175.html (東京新聞 2019年6月27日) 大崎事件 再審取り消し 最高裁 鑑定の証明力否定
 鹿児島県大崎町で一九七九年に男性の遺体が見つかった「大崎事件」で、殺人罪などで服役した義姉の原口アヤ子さん(92)が裁判のやり直しを求めた第三次再審請求審で、最高裁第一小法廷(小池裕裁判長)は、再審開始を認めた福岡高裁宮崎支部と鹿児島地裁の決定を取り消し、再審請求を棄却する決定をした。再審を認めない判断が確定した。二十五日付。裁判官五人全員一致の意見。一審、二審の再審開始決定を最高裁が覆したのは初めてとみられる。共犯とされた元夫(故人)の再審開始も取り消した。最高裁は、一、二審が重視した弁護側が新証拠として提出した法医学鑑定を検討。鑑定は、確定判決が「窒息死と推定される」とした男性の死因について、「転落事故による出血性ショックの可能性が極めて高い」と指摘していた。最高裁は鑑定について、写真だけでしか遺体の情報を把握できていないことなどを挙げ、「死因または死亡時期の認定に、決定的な証明力を有するとまではいえない」と判断した。有罪の根拠となった「タオルで首を絞めた」などとする元夫ら親族三人の自白については、「三人の知的能力や供述の変遷に問題があることを考慮しても、信用性は強固だといえる」と評価。「法医学鑑定に問題があることを踏まえると、自白に疑義が生じたというには無理がある」とした。最高裁は「鑑定を『無罪を言い渡すべき明らかな証拠』とした高裁支部と地裁の決定を取り消さなければ著しく正義に反する」と結論づけた。弁護団は二十六日、東京都内で記者会見し、「許し難い決定だ」と批判。第四次再審請求を検討するとした。第三次再審請求審では、鹿児島地裁が二〇一七年六月、目撃証言の信用性を否定する心理学者の鑑定や法医学鑑定を基に、再審開始を認めた。一八年三月の福岡高裁宮崎支部決定は、心理鑑定の証拠価値は認めなかったが、「法医学鑑定と整合せず不自然」などとして親族らの自白の信用性を否定し、再審開始決定を維持した。

<司法取引について>
*3-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190601&ng=DGKKZO45538510R30C19A5CR8000 (日経新聞 2019年6月1日) 司法取引 慎重運用続く、導入1年で起訴わずか2件 社会の理解なお深まらず
 日本版「司法取引」が導入されて6月1日で1年となる。複雑な経済事件の解明につながるとの期待を受けてスタートしたが、起訴に至ったことが判明しているのは日産自動車元会長、カルロス・ゴーン被告(65)の事件など2件にとどまる。制度の使われ方に批判や懸念が根強く、慎重な運用が続いている。日本の司法取引は他人の事件の捜査や公判に協力すれば不起訴や軽い求刑を約束する「捜査公判協力型」だ。複雑な資金移動や隠蔽工作のある経済事件などで有効な捜査手法になるとされる。検察幹部は「捜査に時間と労力が必要な事件でも、しっかりとした証拠が一括で得られ、重要人物も確実に聴取できる」とメリットを強調する。ただ、無関係の人を巻き込む恐れがあり、運用には慎重さが求められる。導入後、水面下では「かなりの数の司法取引の申し入れがあった」(検察幹部)。違法薬物や暴力団がからむ事案が多く、情報の信用性などの面から関係者との合意には至らなかったという。現時点で起訴に至った事件は東京地検特捜部が手掛けた2件だけとみられる。ゴーン元会長の事件では側近幹部が取引に応じた。弁護人は「内部紛争の手段として制度が使われた」と批判する。三菱日立パワーシステムズ(MHPS)の海外贈賄事件では合意した法人は不起訴だったが、元幹部3人が在宅起訴に。「会社が社員を差し出した」との違和感を指摘する意見もあった。企業や弁護士らにも戸惑いが残る。企業法務に強い弁護士は「取引に応じた側が批判されかねない」と懸念し「まだ特殊な事件しか適用例がなく、実際に活用するイメージがつかめない」と困惑する。独占禁止法の課徴金減免(リーニエンシー)制度が2006年に導入された際も「仲間を売る制度は日本になじまない」と指摘されたが、17年度は103件の申請があるなど定着した。日本経済新聞社の18年「企業法務・弁護士調査」では弁護士の82%が司法取引を活用すべきだと回答し、企業も計44%が活用を検討している。稲田伸夫検事総長は検察幹部が集まる会合で「(司法取引の)有用性は明らかだ」と強調し、「国民の信頼を得ながら定着させる必要がある」と述べた。適用例が蓄積され、利点が明確になれば、活用される可能性もある。

*3-2-1:https://digital.asahi.com/articles/ASM6S3DQQM6SUTIL00D.html?iref=comtop_list_nat_n05 (朝日新聞 2019年6月24日) ゴーン前会長、公判前整理手続きに出席 ケリー氏も
 日産自動車の前会長カルロス・ゴーン被告(65)の裁判で、争点や証拠を絞り込む公判前整理手続きが24日、東京地裁(下津健司裁判長)であり、保釈中のゴーン前会長と前代表取締役グレッグ・ケリー被告(62)が出席した。ケリー前代表取締役が公の場に姿を現すのは昨年12月の保釈後、初めて。午前10時過ぎ、雨が降る中、傘を差したゴーン前会長は黒いスーツに身を包み、弁護士らと地裁に入った。ケリー前代表取締役もスーツ姿で、15分ほど後に入った。ゴーン前会長は金融商品取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)と会社法違反(特別背任)の罪で起訴されている。特別背任事件の公判前整理手続きは2回目で、虚偽記載事件では初めてとなる。虚偽記載罪だけで起訴されているケリー前代表取締役に加え、法人としての日産も弁護人が出席した。手続きは非公開。関係者によると、ゴーン前会長の弁護側は、検察側に対して、証拠を早期に開示するよう求めたり、日産の西川広人社長が虚偽記載事件で不起訴処分になった理由の説明などを求めたりした。

*3-2-2:https://digital.asahi.com/articles/DA3S14074683.html (朝日新聞 2019年6月29日) 「ゴーン前会長が会見」…撤回
 日産自動車の前会長カルロス・ゴーン被告(65)が28日、日本外国特派員協会で同日夜に記者会見を開く意向をいったん示しながら、数時間後に撤回した。会見を主催する同協会に、弁護団から「家族や広報担当者から反対があった」と連絡があったという。同協会によると、この日正午ごろ、会見を開きたいというゴーン前会長の意向が弁護団から伝えられた。午後9時に会見が設定されたが、午後3時半に弁護団から家族らの反対があると連絡があり、午後5時過ぎに中止が決まったという。同協会は「遺憾に思う。一連の経緯に対する失望を弁護団に伝えた」とホームページ上でコメントした。弁護団によると、ゴーン前会長は保釈条件で妻キャロルさんとの接触を禁止されていることに強い不満を持っているという。

<共謀罪について>
*4-1:https://www.nichibenren.or.jp/activity/document/statement/year/2017/170331.html いわゆる共謀罪の創設を含む組織的犯罪処罰法改正案の国会上程に対する会長声明 (2017年3月31日 日本弁護士連合会会長 中本和洋)
 政府は、本年3月21日、いわゆる共謀罪の創設を含む組織的犯罪処罰法改正案(以下「本法案」という。)を閣議決定し、国会に本法案を上程した。当連合会は、本年2月17日付けで「いわゆる共謀罪を創設する法案を国会に上程することに反対する意見書」(以下「日弁連意見書」という。)を公表した。そこでは、いわゆる共謀罪法案は、現行刑法の体系を根底から変容させるものであること、犯罪を共同して実行しようとする意思を処罰の対象とする基本的性格はこの法案においても変わらず維持されていること、テロ対策のための国内法上の手当はなされており、共謀罪法案を創設することなく国連越境組織犯罪防止条約について一部留保して締結することは可能であること、仮にテロ対策等のための立法が十分でないとすれば個別立法で対応すべきことなどを指摘した。本法案は、日弁連意見書が検討の対象とした法案に比べて、①犯罪主体について、テロリズム集団その他の組織的犯罪集団と規定している点、②準備行為は計画に「基づき」行われる必要があることを明記し、対象犯罪の実行に向けた準備行為が必要とされている点、③対象となる犯罪が長期4年以上の刑を定める676の犯罪から、組織的犯罪集団が関与することが現実的に想定される277の犯罪にまで減じられている点が異なっている。しかしながら、①テロリズム集団は組織的犯罪集団の例示として掲げられているに過ぎず、この例示が記載されたからといって、犯罪主体がテロ組織、暴力団等に限定されることになるものではないこと、②準備行為について、計画に基づき行われるものに限定したとしても、準備行為自体は法益侵害への危険性を帯びる必要がないことに変わりなく、犯罪の成立を限定する機能を果たさないこと、③対象となる犯罪が277に減じられたとしても、組織犯罪やテロ犯罪と無縁の犯罪が依然として対象とされていることから、上記3点を勘案したとしても、日弁連意見書で指摘した問題点が解消されたとは言えない。当連合会は、監視社会化を招き、市民の人権や自由を広く侵害するおそれが強い本法案の制定に強く反対するものであり、全国の弁護士会及び弁護士会連合会とともに、市民に対して本法案の危険性を訴えかけ、本法案が廃案になるように全力で取り組む所存である。

*4-2:https://www.nichibenren.or.jp/activity/document/statement/year/2017/170615.html (日弁連会長声明 2017年6月15日) いわゆる共謀罪の創設を含む改正組織的犯罪処罰法の成立に関する会長声明
 本日、いわゆる共謀罪の創設を含む組織的犯罪処罰法改正案(以下「本法案」という。)について、参議院本会議において、参議院法務委員会の中間報告がなされた上で、同委員会の採決が省略されるという異例な手続により、本会議の採決が行われ、成立した。当連合会は、本法案が、市民の人権や自由を広く侵害するおそれが強いものとして、これまで本法案の制定には一貫して反対してきた。また、本法案に対しては、国連人権理事会特別報告者であるジョセフ・カナタチ氏が懸念を表明する書簡を発出するという経緯も存した。本国会における政府の説明にもかかわらず、例えば、①一般市民が捜査の対象になり得るのではないか、②「組織的犯罪集団」に「一変」したといえる基準が不明確ではないか、③計画段階の犯罪の成否を見極めるために、メールやLINE等を対象とする捜査が必要になり、通信傍受の拡大など監視社会を招来しかねないのではないか、などの様々な懸念は払拭されていないと言わざるを得ない。また、277にも上る対象犯罪の妥当性や更なる見直しの要否についても、十分な審議が行われたとは言い難い。本法案は、我が国の刑事法の体系や基本原則を根本的に変更するという重大な内容であり、また、報道機関の世論調査において、政府の説明が不十分であり、今国会での成立に反対であるとの意見が多数存していた。にもかかわらず、衆議院法務委員会において採決が強行され、また、参議院においては上記のとおり異例な手続を経て、成立に至ったことは極めて遺憾である。当連合会は、本法律が恣意的に運用されることがないように注視し、全国の弁護士会及び弁護士会連合会とともに、今後、成立した法律の廃止に向けた取組を行う所存である。

<特定秘密保護法について>
*5:https://www.nichibenren.or.jp/activity/document/statement/year/2013/131203.html (日本弁護士連合会会長 山岸憲司 2013年12月3日) 特定秘密保護法案について改めて廃案を求める会長声明
 特定秘密保護法案に関連して、自由民主党の石破茂幹事長が、自身のブログで、議員会館付近での同法案に反対する宣伝活動に対して、「絶叫戦術はテロ行為とその本質においてあまり変わらない」と述べたことにつき、厳しい批判の声が上がり、その後、記事の撤回と謝罪がなされたことなどが大きく報道された。テロとはまったく異質な市民の表現行為をとらえて、テロと本質が同じであると発言したことについては、当連合会としても、表現の自由を侵害するもので許されないと考える。特定秘密保護法案においては、第12条2項で「テロリズム」の定義が記載されている。これに対しては、「政治上その他の主義主張に基づき、国家若しくは他人にこれを強要」する行為がそれ自体でテロリズムに該当すると解釈されるのではないかとの疑義が示され、問題であると指摘されている。この点について、政府は、「人を殺傷する」などの活動に至る目的としての規定であるとし、石破幹事長も説明を修正したが、政権与党の幹事長が、上記のような発言をしたことは、その後発言が修正されたとはいえ、市民の表現行為が強要と評価され、直ちにテロリズムに該当すると解釈されることもありうるという危険性を如実に示したものということができる。特定秘密保護法案については、その危険性を懸念する声が日に日に増しており、マスコミ各社の世論調査などによってもそのことが明らかとなっている。それにもかかわらず、衆議院では法案の採決が強行され、その拙速な審議が強く批判されている。このような状況において、やむにやまれず法案への反対を訴える市民の行動をとらえて、政権与党の責任者が、市民の宣伝活動について、テロ行為と本質が変わらない、主義主張を強要すればテロとなり得るなどと発言することは、甚だ不適切であり、特定秘密保護法が成立した場合に、表現の自由やその他の基本的人権を侵害するような運用がなされるのではないかとの危惧をますます大きなものにしたといわざるを得ない。このようなテロリズムの解釈の問題については、国会審議でも疑念が指摘されたが、政府は条文の修正をしようとしない。この法案については、秘密の範囲が広範であいまいであり、秘密の指定が恣意的になされかねないこと、それをチェックすべき第三者機関の設置が先送りされたままであること、報道の自由をはじめとする表現の自由に対する萎縮効果があることなどの問題点が指摘されており、これに加えて、テロの定義が広がり、国民の正当な政府批判までが取締りの対象になる危険性が明らかになったのであって、このような問題点が払拭されないまま、この法案を成立させることは許されないというべきである。よって、当連合会は、人権侵害のおそれがより明らかになった特定秘密保護法案について改めて廃案を求める。

<監視社会へ>
*6-1:https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20190530-00064915-gendaibiz-bus_all (Yahoo 2019/5/30) 6月1日施行「改正通信傍受法」で国民の情報はここまで裸にされる
●国民は丸裸に
 TTドコモなど通信会社と都道府県警本部を回線で結び、被疑者などの電話やメールを専用のパソコンで通信傍受(盗聴)する改正通信傍受法が、6月1日に施行される。これまでとの違いは、捜査員が通信会社に出向き、社員立ち会いのもとで行なっていたリアルタイムの通信傍受を、警察に居ながらにして行えること。しかも、傍受した会話やメールを暗号化して送り、一時保存、後に再生することができる。このため、「使いやすさ」は飛躍的に向上する。改正通信傍受法は、段階を踏んでおり、16年12月の段階で、まず対象犯罪が拡大した。それまで通信傍受が認められていたのは、薬物、銃器、集団密航、組織的殺人の4類型。それに、殺人、傷害、放火、爆発物、窃盗、強盗、詐欺、誘拐、電子計算機使用詐欺・恐喝、児童売春などが追加され、ほとんどの犯罪領域がカバーされることになった。今後、裁判所の令状を取られた被疑者と、会話やメールなど通信の相手先は、警察当局の監視下に置かれる。加えて、ネット化、IT化、キャッシュレス化がもたらす個人情報の共有が、令状を伴う強制か、捜査関係事項照会書による任意かはともかく、警察当局にももたらされ、通信傍受と合わせ、国民は“丸裸”である。我々は、各種サービスを個人情報との引き換えによって得ている。アプリやカードを作成する際に個人情報は必須。買い物や利用の履歴は、ビッグデータとなって蓄積され、企業の製造、雇用、サービスに役立ち、利用者はポイントを溜めて買い物や旅行などで便宜を得る。グーグル、ヤフー、フェイスブックといった巨大プラットフォーマーは、住所年齢、趣味嗜好、行動範囲、友人の傾向などを踏まえ、個人情報どころから、「本人すら気付かない人格と性向」まで把握する。プラットフォーマーは、個人情報を取得するのが目的ではない。本業が広告の彼らは、精度の高いターゲティング広告を得るために個人情報を集め、その反対給付として、メールや会話サービス、天気や位置・地図情報、検索エンジンサービスなどを提供する。買い物やレンタルをするとポイントが溜まるTカード発行のCCC(カルチュア・コンビニエンス・クラブ)が、警察からの要請を受け、令状なしに顧客情報を渡していたことが、年初、明らかになった。この件が報じられた後、CCCは事実関係を認め、「当初は捜査令状に基づき、個人情報を提供していたが、12年からは警察の捜査関係事項照会書だけでも提出していた」としたうえで、「規約を見直す」としたものの、警察への捜査協力をどう変えるかについては言及しなかった。この問題を機に行なわれたアンケート調査などにより、CCCだけではなく、交通系、ネット通販系、量販店系などアプリやカードを発行する企業や団体が、警察の照会書で情報提供していることが明らかとなった。プラットフォーマーも同じである。ラインは、ホームページ上で「捜査機関への対応」として、どのような要請に対し、どのような対応をしているかを公表している。情報開示は、①捜索差押令状がある場合、②(捜査関係事項照会書のような)法的根拠に基づく捜査協力の要請があった場合、③緊急避難が成立すると判断した場合、に行なうとされ、③は、自殺予告や誘拐等の特殊事情なので、実際は、強制(令状)であれ、任意(照会書)であれ、応ずる可能性が高いということだ。

*6-2:http://qbiz.jp/article/139111/1/ (西日本新聞 2018年8月13日) 地銀64行が資金洗浄防止 情報共有システム構築へ
 全国地方銀行協会(地銀協)が、テロリストへの資金供給などに使われるマネーロンダリング(資金洗浄)を防止するため情報共有システムの構築を検討していることが10日、分かった。国際組織の審査を来年に控え、対策が不十分な国とみなされると海外の金融機関と取引がしづらくなる恐れがあり金融庁も対応を求めていた。地銀協は全国64の地方銀行で構成する。全国銀行協会(全銀協)とも連携して対策の強化を急ぐ。地銀協会長の柴戸隆成氏(福岡銀行頭取)が共同通信のインタビューで明らかにした。柴戸氏は「マネロン対策は競争ではない。(銀行同士で)一緒にやっていく余地はある」と強調。「時間は限られている。スピード感をもって対応していく」と地銀協として重点的に取り組む考えを示した。共有システムに登録するデータとしては、怪しい人物の顧客情報や送金先の国・地域、送金事例などが想定される。メガバンクは本人確認の徹底や不正検知システムの導入などにより既にマネロン防止対策を強化しているのに対して、地銀には管理体制が緩い銀行もあり、不正送金などが起きやすいとされる。マネロン対策の国際組織「金融活動作業部会」(FATF)は2014年、日本に対してテロ資金対策の不備に迅速に対応するよう異例の声明を発表した。日本政府は犯罪収益移転防止法を改正するなど対応してきたが、それでも「日本の金融機関の対策は不十分だとみられている」(金融庁幹部)という。このため金融庁は今年に入り、資金洗浄やテロ資金対策を担当する企画室を新設。金融機関に対し、マネロン対策に関する報告を求めるなど監視を強化し、不十分な金融機関には立ち入り検査する方針を示している。

<個人情報の無断使用による人権侵害と所有権の所在>
PS(2019年7月2日追加):G20が6月28日に大阪市で開幕し、議長を務める安倍首相が国境を越えた自由なデータ移動を認める「データ流通圏」の構想を提唱して交渉開始を宣言されたそうだが、「データを自由に流通させる」とは日本政府はデータを誰のものと認識しているのだろうか。「デジタルデータなら、本人の許可なく対価も支払わずに勝手に流通させて良い」と考える国は、国民から見て「信頼できる国」ではない。つまり、*7-1の「デジタルを最大限活用する」というのは既に当然のこととして行われているが、それと「デジタルデータなら勝手に流通させて良い」というのは全く異なるのである。そのため、国際的ルールづくりは、個人の権利保護につき、「自由なデータの流通」を「大阪トラック」などと呼ぶのは恥さらしだ。また、貿易についても、「貿易制限的な措置の応酬はどの国の利益にもならない」というのも単純すぎ、自由貿易だけを念仏のように唱えていても解決しないことは日本にも山ほどあるのである。
 それに加えて、2018年4月、*7-2のように、政府は主要農作物の種子の生産・普及を都道府県に義務付けた種子法を廃止したが、これは、それまでその地域の気候にあった種子を地域で開発し、ブランド力のある農産物を作ってきた地方に対し、大変な不便を与えている。同時に、その価値もわからずに国民の財産である種子という知的所有権を投げ捨てたことになる。さらに、その種子法廃止の目的を、「農業の競争力向上のため、民間技術も取り入れて新品種の開発力を強める意図があった」としているが、技術や競争力のある民間の種子なら種子法を廃止しなくても勝ち残るし、条例で従来の生産体制が維持・強化されると参入が難しいような民間の種子ならいらないのである。にもかかわらず、このようなことをするのは、知的所有権という種子の本質を理解しておらず、国民の財産を大切にせず、農業を粗末にしているということだ。
 そして、このように国民の財産をドブに捨てるようなことはせず、国有林のストックや海底資源を活用すれば、消費税を廃止しても十分な年金の支払いや社会保障を行うことができるため、「社会保障は消費税増税がなければ無理」と考えることこそ愚かな思考停止である。


     2019.1.19読売新聞       種子法廃止の悪影響   2019.7.2日経新聞
                               種子条例を定めた自治体
(図の説明:左図のように、日本は個人情報の流通には原則として本人の同意が必要としているが、産業データに入れれば自由に流通できるため、欧州のようにプラーバシー保護を前面に出すべきだ。また、中央の図の種子法廃止は、利益追及目的で行動する民間企業はやらないことも多いのでよくない。従って、農業を大切にする地方自治体が種子条例を制定したのはよいと思う)

*7-1:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO46687400Y9A620C1MM0000/ (日経新聞 2019/6/28) 首相、「データ流通圏」交渉開始を宣言 G20サミット、貿易、緊張緩和めざす
 20カ国・地域首脳会議(G20サミット)が28日、大阪市で開幕した。議長を務める安倍晋三首相は国境を越えた自由なデータ移動を認める「データ流通圏」の構想を提唱し、交渉開始を宣言した。拡大するデータを使ったビジネスに対応したルールづくりを世界貿易機関(WTO)の枠組みで進める方針を打ち出した。G20サミットは28、29両日の日程で開かれる。初日のデジタル分野での特別会合で首相は「デジタル化は経済成長を後押しし、国際社会の課題を解決する可能性を有している。最大限活用するには国際的なルールづくりが不可欠だ」と強調。信頼できる国・地域間で自由にデータが流通し、技術革新につなげられる国際的な枠組みやルールの必要性を訴えた。その上で「2020年6月のWTO閣僚会議までに実質的な進捗を達成しよう」と述べ、ルールづくりの交渉枠組みを「大阪トラック」と呼んで本格的な交渉開始を宣言した。世界経済や貿易分野での28日の討議では、足元の経済・貿易の現状を分析する。首相は「貿易制限的な措置の応酬はどの国の利益にもならない。現下の状況に深く憂慮している」と表明した。米中対立などで深刻化する貿易摩擦に対し、協調して対処する方針を示したい考えだ。機能不全が指摘されるWTOの改革で一致し、貿易問題を多国間で解決していく姿勢を示すことをめざす。G20サミットは2008年11月、リーマン・ショックに対処するための会議として発足した経緯がある。29日の閉幕時の首脳宣言で、各分野で実効性の高い協調策を世界に向けて発信できるかが焦点だ。

*7-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190702&ng=DGKKZO46834490S9A700C1MM0000 (日経新聞 2019年7月2日) 種子の保護、条例で復活 民間参入促進へ法廃止も… 、価格高騰や供給不安 自治体、農家に配慮
 全国の自治体で種子条例を制定する動きが広がっている。国はコメなど主要農作物の種子の生産・普及を都道府県に義務付けた種子法を2018年4月に廃止したが、県などが引き続き責任を負う姿勢を示す。種子の供給不安や価格高騰を懸念する農業者らに配慮した形だが、同法廃止が狙う品種開発などへの民間参入が、条例により阻まれる可能性もある。富山県は1月、「主要農作物種子生産条例」を施行した。種子の作付面積の配分など計画の策定や圃場の指定などを県が受け継ぐことを示した。同県はコメの種もみ出荷量が全国首位で43都府県に供給する。「農家などに安心して種もみの生産を続けてもらうため、条例が必要だと判断した」(農産食品課)。供給力の強化へ3月には富山市内の県農業研究所に生産施設を立ち上げた。隔離した圃場で種子のもとになる原種を生産し、病害虫がつかないよう管理を徹底する。北海道も4月、同様の条例を施行した。道内に適した優良品種を道が認定し、種子の安定供給につなげる。種子法の対象だったコメや麦類、大豆に、特産の小豆とエンドウ、インゲン、ソバを独自に加えた。北国のため育ちやすい品種が他地域と異なり、輪作で複数の農作物を育てる農家が多いことに配慮した。これまでに9道県が種子条例を施行した。種子法の下では、各都道府県の農業試験場などが優良な品種の種子を開発し、その原種を指定された生産者が増やして農家に供給してきた。同法廃止後も多くの自治体が要綱などで供給を支える方針を示すが、行政の関与が薄れるなどの懸念から生産者団体などが条例化を求める動きを強めた。長野県は種子条例案を県議会の6月定例会に提案した。主要農作物の種子を県が安定供給するほか、新たに生産が盛んなソバや県が認定する「信州の伝統野菜」を対象とする。生産者の確保や技術承継などへの支援も盛り込み、20年4月ごろに施行を目指す。鳥取県も6月の県議会で主要農作物に関する種子条例を採択し、7月に施行予定。宮城県は6月に条例案を示し、意見を募集している。ただ、種子法廃止は農業の競争力向上へ、民間技術も取り入れて新品種の開発力を強める意図があった。都道府県によるコメの奨励品種で民間企業が開発したものはないという。条例で従来の生産体制が維持・強化されると、民間参入が難しい状況が続きかねない。

<政治と外交>
PS(2019年7月4日追加):*8-1のように、徳川家康に似た顔の徳川宗家19代目徳川家広氏(54)が、立憲民主党から家康ゆかりの静岡選挙区で立候補され、「天下泰平」と書かれた葵紋ののぼりを掲げて、脱原発や憲法改正反対を訴え、家康の銅像前で演説されたそうだ。筋金入りで好感が持てるが、「静岡県民として落とすわけにはいかない」と地元議員や元首長らの勝手連が立ち上がり、幕臣の子孫の一部も支援しているそうだ。
 日本は、*8-2のように、IWCを脱退して31年ぶりに商業捕鯨に踏み出し、関係者は「日本の鯨食文化を守る」と捕鯨に熱心だが、国際社会が日本の外交に疑問符を加えるのは間違いなく、日本人から見ても野生動物保護の意識が低い。さらに、食糧難で蛋白質不足の時代とは異なり、現在の食卓は鯨より美味しい肉類はじめ蛋白質が豊富で、鯨肉を食べたことのない人も増え、捕鯨が切望されていたわけではないため、財源を使って外国からの印象を悪くし、他の外交に不利益を蒙りながら、何のために捕鯨業の発展に努めているのかわからない。
 また、*8-3のように、G20大阪サミットが開かれ、①海洋プラスチックごみは2050年までに流出をゼロにする目標導入 ②各国が自主的に削減に取り組んで報告し合う国際枠組み新設 などが決まり、首相は「③日本の知見を生かして途上国の適切な廃棄物の管理などに貢献する」と述べられたそうだ。しかし、環境への流出をゼロにすればよいため、i)公共の場所にゴミ箱を多く設けて捨てやすくし ii)なるべくリサイクルし iii)リサイクルしやすいプラスチックを作って使い iv)リサイクルできないものは必ず焼却する などを徹底すればよく、木や竹などの植物が多い日本はプラスチックの代替として紙を使うのもよいが、ヒステリックにプラスチック製のストローやレジ袋を排除して、その生産者・消費者を困らせる必要はないだろう。



(図の説明:プラスチック製容器は食品を入れるために使い捨てとして使われることが多く、1番左や左から2番目の図のように、異なる材質の安っぽい模様のついたプラスチックの底をつけて品を落とした上、分別・リサイクルをやりにくくしている。そのため、私は、右から2番目の図のような透明な容器をペットボトルと同じ素材で作り、底はクマザサや植物由来の抗菌剤を含む紙を敷いた方が、品がよい上、プラスチック部分はすべて簡単に分別・リサイクルできるのにと前から思っていた。しかし、1番右の図のように、使用後の漁網を海中に捨て、それに生物がかかって気の毒なことになっているため、ゴミを水中に捨てるのはやめなければならない)

*8-1:https://www.hokkaido-np.co.jp/article/321973?rct=n_politics (北海道新聞 2019年7月4日) 立民で初陣、徳川宗家19代目 家康ゆかりの静岡
 徳川宗家19代目で評論家の徳川家広氏(54)は、静岡選挙区(改選数2)で立憲民主党として初の議席獲得を目指す。江戸幕府初代将軍の徳川家康が晩年を過ごした駿府城跡の公園で「江戸の平和が生まれた場所だ。私たちの知る平和は全てここ静岡から始まった。この平和を壊してはならない」と第一声を上げた。徳川氏は「天下泰平」と書かれた葵の紋入りののぼりを掲げ、家康の銅像前で演説。「国民のほとんどが経済をどうにかしてと言っているときに安倍(晋三)さんは改憲が争点だと言っている。だから私は受けて立ちます」と力を込め、応援に駆け付けた蓮舫参院幹事長らと気勢を上げた。6月の記者会見では「今の世相が戦時中の末期に近づいていると感じる。よく分からない理由のために人がどんどん使いつぶされていく」と危機感をあらわにした。「本来、言われてしかるべきことが言われていない」と、脱原発や憲法改正反対を訴える。東京生まれだが、家康を祭る久能山東照宮(静岡市)の行事に参加するなど静岡との縁は深く「魂が根を張っている」。出馬表明以降、「静岡県民として落とすわけにはいかない」と、地元議員や元首長らの勝手連が立ち上がり、一部の幕臣の子孫も支援の動きを見せている。

*8-2:https://digital.asahi.com/articles/ASM71532MM71ULFA027.html (朝日新聞 2019年7月2日) 商業捕鯨、不安乗せた船出 肝心の食卓ニーズは尻すぼみ
 日本が国際捕鯨委員会(IWC)を脱退し、31年ぶりの商業捕鯨に踏み出した。「日本の鯨食の文化を守る」と関係者は意気込むが、国際社会は反発し、外交上のリスクも抱える。肝心の鯨肉の需要も尻すぼみで、「商業」の名を借りた国の補助金頼みの「官製捕鯨」になりかねない。1日午後5時ごろ、北海道・釧路港に、捕鯨船からクレーンでつり上げられたミンククジラ2頭が初水揚げされた。1頭は体長約8・3メートルで、体重約5・6トン。日本小型捕鯨協会の貝良文会長によると、「ミンククジラとしては最大級」という。「今日は最高な一日だった。31年間辛抱したかいがあった。皆さんにおいしいクジラを召し上がっていただきたい」と話した。この後、クジラは約15キロ離れた加工場に運ばれた。清酒を振りかけて清める「初漁式」や計測などを済ませ、解体処理が始まった。早ければ4日にも店頭に並ぶという。
●「捕鯨業の発展に努めていく」
 沖合操業の基地・山口県下関市。1日朝、約200人が集まった出港式で、3隻の捕鯨船団の総括責任者、恒川雅臣さんは決意を語った。下関は江戸時代からクジラの流通拠点で、戦後の食糧難の時代は関連の加工業や飲食店で街はにぎわった。だが現在は活気が失われ、商業捕鯨再開への期待も強い。出港式では前田晋太郎・下関市長が、「安定的な陸揚げや新たな産業振興、観光振興、さらなる経済の活性化を図るための取り組みを推進する」と述べた。商業捕鯨の再開は、業界にとって「30年来の悲願」(前田晋太郎・山口県下関市長)だ。昨年末に政府が再開方針を決めると「早く捕獲枠を公表して欲しい」との要望がわき起こっていた。だが、捕獲枠が業者に通知されたのは出港直前の1日午前8時。水産庁は「100万通り以上の試算が必要で時間がかかった」とする。だが、2週間前には捕獲枠は固まり、首相官邸に報告していた。6月28~29日に主要20カ国・地域(G20)首脳会議が大阪市であり、英豪など反捕鯨国トップが出席。この場で反発が起きないよう公表を先送りしたのだ。国際社会の反応を気にかけながらの再開となったが、反捕鯨団体などからは批判の声が相次いだ。南極海での日本の調査捕鯨への妨害を繰り返してきた反捕鯨団体シー・シェパード豪州支部のジェフ・ハンセン代表は1日、「クジラやイルカの殺害に対する闘いに今後も焦点を当てる」との声明を出した。IWCの本部がある英国では6月29日、ロンドン中心部で動物保護団体「ボーン・フリー財団」の関係者らが企画した抗議デモがあり、「捕鯨をやめよ。さもなくば(東京)五輪をボイコットする」などと訴えて練り歩いた。英紙タイムズは29日付で「恥ずべき瞬間」と題した社説を掲載した。
●国際社会でのリスク
 国際社会の反発に加え、商業捕鯨を続けるには「二つの外交リスク」も潜む。一つが、日本も批准する国連海洋法条約だ。クジラの管理は「適当な国際機関を通じて活動する」ことを定めている。日本はIWCから脱退したが、オブザーバーとして参加は続けるため、「条約の要件は満たせる」(外務省)とする。だが、捕鯨をめぐる国際政治を研究する早稲田大学地域・地域間研究機構の真田康弘・研究院客員准教授は、「条約違反で訴える国が出てくれば、敗訴する可能性が高い」と指摘する。日本はオブザーバー参加で捕鯨をしている国の例としてカナダをあげるが、カナダは先住民が年数頭を捕獲するだけだ。年383頭も捕獲する日本が「カナダと同じ状況だと主張するには無理がある」(真田氏)。もう一つがワシントン条約の精神に反するとの批判だ。今回商業捕鯨で捕獲するミンク、イワシ、ニタリの3種類のクジラはいずれも、同条約で「絶滅の恐れがある」として、国際的な売買を禁ずるリスト「付属書1」に記載されている。日本はミンク、ニタリについては非締結国扱いとなる「留保」をしているが、北太平洋のイワシは留保をしていない。同条約の常設委員会は昨年、日本の北西太平洋でのイワシクジラの調査捕鯨を「条約違反」と認定し、日本に是正を勧告したばかりだ。外務省の担当者は「ワシントン条約は公海が対象で、排他的経済水域(EEZ)内は規制の対象外」と説明するが、国際法上、日本自体が「絶滅の恐れがある」と認めた鯨種を捕獲するという矛盾は否めない。1日に公表した捕獲枠で、水産庁はイワシを年25頭にした。調査捕鯨だった昨年(134頭)から大幅に縮小した。「ワシントン条約違反への回答で、『公海ではとらない』と宣言した点も考慮した」という。二つのリスクを国際社会で厳しく責められれば、せっかく再開した商業捕鯨が頓挫しかねない。
●鯨食文化も存亡の危機
 調査捕鯨では、捕獲後に胃の内容物など約60項目の調査が必要で、その間に鮮度が下がった。捕獲するクジラも乱数表に従って群れの中から機械的に選んでいたが、商業捕鯨では枠内でおいしそうなクジラを選んでとれる。だが、日本捕鯨協会の山村和夫会長は「期待と言うよりもむしろ不安でいっぱいだ」と話す。鯨肉では、えさのオキアミが豊富な南極海でとれるミンククジラが最も高級品とされている。だが、商業捕鯨の海域は日本のEEZ内だけになり、南極海からは撤退する。国が認めた捕獲頭数は、調査捕鯨だった昨年より4割も少ない。しかも、EEZ内での捕鯨は手探りで、漁場探しから始めなければならないのが実態だ。ある水産庁OBは「枠はあっても実際には捕獲できず、とれる鯨肉は昨年の半分ぐらいにまで減るのではないか」と心配する。捕鯨推進派が掲げる鯨食文化も存亡の危機だ。鯨肉の販売関係者は「かつて調査捕鯨の鯨肉は飛ぶように売れたが、00年代半ばからは、在庫処分に苦労するようになった」と明かす。終戦直後は半分近くあった国民が食べる肉全体に占める鯨肉の割合は、今では0・1%以下。鯨肉を日常的に食べた経験がある60歳以上の世代はこれからどんどん人数が減っていく。5月には、創業から半世紀の大阪市の老舗鯨料理店「徳家(とくや)」が閉店した。国際社会の反発を恐れ、海外で事業を展開する大手スーパーでは鯨肉の販売を「自粛」する動きが続く。イオンは鯨肉販売は捕鯨拠点などがある一部の店舗に限定しているが、「販売店舗の拡大予定はない」。15年ほど前に販売をやめたイトーヨーカ堂も「再開の予定はない」という。今年度の国の捕鯨予算は昨年度と同じ51億円。調査捕鯨をやめる一方で、新たに捕鯨業者に配る補助金をつくった。捕鯨基地がある山口県下関市は安倍晋三首相の地盤で、和歌山県太地町は二階俊博自民党幹事長の選挙区。捕鯨業界の政治力は強い。水産庁幹部は「補助金を未来永劫(えいごう)続けるつもりはないが、打ち切る時期はわからない」とする。

*8-3:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO46756940Z20C19A6MM0000/ (日経新聞 2019/6/29) 海洋プラごみ「2050年ゼロ」 G20首脳が合意
 20カ国・地域首脳会議(G20大阪サミット)は最終日の29日、国際的に問題となっている海洋プラスチックごみ(廃プラ)は、2050年までにゼロにする目標を導入することで一致した。閉幕後の議長会見で安倍晋三首相が明らかにした。首相はこうした「大阪ブルー・オーシャン・ビジョン」をG20でリードしつつ、他の国にも賛同を呼びかけていく考えを示した。首相は「日本の知見を生かして、途上国の適切な廃棄物の管理などに貢献していく」と述べた。廃プラは毎年少なくとも900万トン近くが海に流出しており、海洋生物や地球環境への深刻な影響が懸念される。6月中旬に長野県軽井沢町で開かれたG20エネルギー・環境相会合では、各国が自主的に削減に取り組み、報告し合う国際枠組みを新設することで合意したが、数値目標はなく、実効性の担保が課題だった。首脳宣言では50年までに流出をゼロにする目標を盛り込むことが固まった。欧州連合(EU)など一部の加盟国・地域からは、より早期の達成を目指す声もあったが、国際的に初の数値目標の導入を優先した。

<偏見・差別による人権侵害>
PS(2019年7月9、15日追加):日本には、「①成功した人は、悪事を働いたに違いない」「②自分が普通(=“模範”と混同している)なので、それと異なる人は悪い人である」というような変な普通至上主義(農耕由来か?)があり、ゴーン氏は、①②の価値観により、築きあげてきたすべての名誉を無にされようとしている点で著しい人権侵害を受けている。
 また、*9-1の見出しは、「③素顔のビシャラ ゴーン氏、本名の秘密 祖国ブラジル『彼はビシャラだ』」と書かれており、ゴーン氏はビシャラという名前を都合が悪いから隠していたかのような印象を与え、アクリル板越しに姿を見せたり、何でも私物化したりしたのが素顔だとしている点で、中東出身の人に対する差別である。さらに、④南米大陸初の五輪が開幕したリオデジャネイロのアトランチカ通りで半袖・短パン姿で聖火ランナーとしてゴーン氏が走り、ゴーン氏を先導した日産車が世界中に『NISSAN』のロゴを見せつけ、⑤日産がリオ五輪のスポンサーとして数百億円支出し、⑥時期を同じくしてマンションの一室を購入したこと、⑦リオから内陸に約160キロ入ったレセンデという都市に新工場を作ったことなどを私物化と決めつけているが、④⑤は、通常の広告宣伝費を支出するよりもずっと効果的に排気ガスの出ないEVを世界にアピールすることができ、⑥は全体から見ればおまけのようなものである。さらに、⑦は土地価格や人件費が安かったり、税優遇してもらったりなどの理由があると思われ、これらを批判することしか考え付かないのは“普通”の日本人のワンパターンの思考であり欠点だ。
 なお、*9-2のように、フェニキア人は海上交易で活躍し、交易のためにさまざまな地域に移動し、いくつもの植民市を建設し、アルファベットを作った『ヨーロッパ文明の父』」だそうだが、このように新しい市場やビジネスを開拓するのに身内・出身校・同僚・祖国などのすべてをネットワークとして活用するのは自然であり、むしろ組織の決まった手続きに従って二番煎じの仕事をしているだけでは下層サラリーマンしか勤まらないだろう。
 一方、私は、*9-3の三菱重工のMRJを全く評価できないが、その理由は、①三菱自動車は既に燃料電池を完成させており ②世界は脱石油の方向で ③約半世紀ぶりに日本企業が開発する旅客機であるため、ジェットエンジンを使わなければならない理由はないのにジェットエンジンを使い ④顧客への納入延期を繰り返す というダサさだ。「それなら、わざわざ三菱重工の航空機を買う必要はない」というのが需要家の見方であり、ボンバルディアの保守網と顧客基盤を手に入れるためにボンバルディアを買収しても、シナジー効果を出して両社にメリットがなければボンバルディア側の人を満足させることはできず、シナジー効果を出すためには世界初の燃料電池or電動航空機を市場投入するのがBestだろう。

 
  ハフィントンポスト    2019.4.9東京新聞  石垣島の電動船のデザインに
                           採用されたシャチョウ号   

  
2018.12.2東京新聞      Goo       2018.8.15JBpress(*9-2より) 

(図の説明:上段の中央の図のように、妻の会社でシャチョウ号を所有したことを特別背任だとしているが、その動機は会社の私物化とは限らない。それよりも、上段の右図のシャチョウ号のデザインは石垣島の電動船のモデルになっており、世界に通用する素敵な電動船を作るために、安く買えるチャンスに社長決裁で素早く手に入れたのかもしれない。そして、下段の左や中央の図の会社の私物化や特別背任とされている件も、何とか有罪にしようと違法でない事案にまで検察が手を出しているのはよくない。さらに、下段の右図のように、ゴーン氏の出自であるフェニキア人は、船など移動手段のエキスパートであり、グローバルな人材でもあるため、ゴーン氏を働けなくしたことは、ライバルにとっては朗報だが日産にとっては大きな損失だったと思う)

*9-1:https://www.asahi.com/special/matome/ghosn-identity/?iref=kijiue_bnr (朝日新聞 2019年7月9日) ゴーンショック 素顔のビシャラ ゴーン氏、本名の秘密 祖国ブラジル「彼はビシャラだ」
 アクリル板越しに姿を見せた日産自動車前会長のカルロス・ゴーンは黒いジャージーの上下を着ていた。2月19日、東京・小菅の東京拘置所。会社法違反(特別背任)などの罪で起訴された後も勾留が続いていたゴーンを励まそうと、フランスから来日した40年来の旧友のフィリップが面会に訪れた。仏タイヤ大手ミシュランに同期入社した間柄。ともに24歳だった。週末はカードゲームに興じ、パーティーで夜を明かした。その後も家族ぐるみの付き合いを続けてきた。高級スーツに身を包み、世界を飛び回っていたゴーンの様変わりした姿に、フィリップは「歯がゆく、悲しくなった」という。昨年11月。電撃的に逮捕される10日前、ゴーンはフィリップに近況を尋ねる電話をかけてきた。フィリップがミシュランを退職したことに話が及ぶと、ゴーンはふと「私も次の仕事を探している」と漏らした。そのやりとりを覚えていたのだろう。心配そうに現れた旧友の姿を見るなり、ゴーンはこんなジョークを飛ばした。「ここがキミの次の職場かい?」。拘置所の職員2人が立ち会い、許されるのは英語の会話のみ。ゴーンは特異な状況に驚く友人をリラックスさせようとしたのかもしれない。フィリップは「カルロスは自分自身をコントロールできている」と感じた。フィリップは、マイクル・コナリーやシュテファン・ツヴァイクの小説など20冊余りの本を差し入れ、フランスの約20人の友人から託されたメッセージを一つひとつ読み上げた。「(逮捕された)11月19日から私たちはあなたとともにいる」「あなたのもとで働き多くを学んだ」「あなたなら自らの無実を証明できると思っている」……。ゴーンは「ベリー、ベリー、ナイス」と相好を崩した。ゴーンが日産社内で独裁体制を敷き、会社を「私物化」するような数々の疑惑が報じられたが、フィリップは「独裁者」のように日産に君臨したゴーンの姿がどうしても想像できない。「カルロスは部下に自由にやらせる。部下はみな、彼をがっかりさせたくないと思う。一緒に仕事もしたが、彼が部下を罵倒した場面を見たことがないんだ」。フィリップは、逮捕直前に「次の仕事を探している」と漏らしたゴーンに思いを巡らせる。「カルロスは日産を早く去った方が幸せだった。信じていたのに裏切られたのだから」。そして、この先のゴーンをこう想像する。「カルロスは生粋のフランス人ではない。どんなネットワークにも属さず、様々な場所に住むのだろう。彼は自分がやりたいことのために他人の助けを必要としないんだ」
●異国で商機つかんだ祖父
 大西洋に面するブラジルの古都サルバドールから約150キロ南に位置する小さな街、イトゥベラ。中心部から数キロ南に、仏タイヤ大手ミシュランが長年運営にかかわってきたゴム農園がある。9千ヘクタールの広大な敷地を覆うように膨大なゴムの木が林立し、樹液が集められる一画には発酵の際に放たれる強烈な異臭が立ち込める。日産自動車前会長のカルロス・ゴーンは1978年にミシュランに入社し、85年に南米事業を統括する経営トップとしてブラジルに赴任した。30歳だった。このゴム農園を何度か訪れている。「カルロス・ゴーン? そんなヤツは知らない」。ここで40年以上働くアンドレ(60)は、記者の取材にけげんな表情を浮かべた。ゴーンの写真が載った当時のミシュランの社内報を見せると「この人、知ってる! 名前は何だ?」。「カルロス・ゴーン・ビシャラ」とフルネームで伝えると、彼は叫んだ。「そうだ。この人はビシャラだ! 俺たちはビシャラって呼んでたんだ!」。ゴーンの祖父ビシャラ・ゴーンは中東レバノンで生まれ、1900年代初頭にブラジルに移住した。レバノンは当時、スエズ運河開通に伴う不況にあえいでいた。中国産品が欧州に流入するようになり、レバノンから欧州への輸出が減少。経済的に追い込まれたレバノン人は世界各地に移住した。レバノンからの移民の多くは商業で身を立てた。ノートルダム大学(レバノン)のレバノン移民研究所のギータ・ホウラーニー所長は「レバノン人は交易国家として栄えた古代フェニキア以来、商人としての伝統を受け継いできた」と話す。ブラジルには現在、レバノン系ブラジル人が数百万人住み、政治・経済の分野で重要なポストを占めているとされる。ミシェル・テメル前大統領もレバノン系の移民2世だ。13歳でブラジルに渡った祖父ビシャラも、国外に仕事を求め、商業で身を立てた一人だった。アマゾン川最大の支流の一つ、マデイラ川に面するブラジル西部の街ポルトベーリョに定住した。いまは物流の拠点だが、当時は熱病を媒介する蚊が飛び交う未開の地。ボリビアで採れるゴムの集積地として発展し始めたころだった。ゴムを運ぶ鉄道が開通し、ビシャラは「商機」を見いだした。砂糖や塩などの生活物資を列車で運んでボリビアで売り、帰りの列車に沿線の農地で仕入れた果物や野菜を載せてポルトベーリョで売る。自分の店を持つほどの成功をつかみ、家族をもうけた。ゴーンはこの街で54年に生まれ、祖父の名を受け継いだ。ビシャラが21年に建てた青色のビルが市場の真向かいの一等地に残る。ビルの所有権は人手に渡ったが、隣の区画の土地と商店が入る低層の建物群は今もビシャラ家が所有する。管理するのはゴーンのいとこのゼッカ・ビシャラ(55)。ゴーンを彷彿(ほうふつ)させる太い眉毛が印象的だが、ゴーンに会ったことは一度もないという。生まれ故郷を離れたゴーンがポルトベーリョを訪ねたことがあるかも知らないが、こう口にした。「世界でも有名な経営者になったゴーンは、ビシャラ家の誇りだ。この先どんなことがあっても、リスペクトし続ける」。ゴーンの逮捕はブラジルでも大きく報道されたが、ゴーンがポルトベーリョ出身であることは地元でもほとんど知られていない。「私たちはこの街で『ビシャラ家』として知られている。ゴーンという名前は通じない」とゼッカは話す。
●「私物化」の疑い、祖国にも
 2016年8月11日。妻の誕生日を友人と祝っていたゴーンの旧友フィリップの携帯電話が鳴った。「いま、五輪会場にいる」。ゴーンの声に一同は驚いた。前週の5日。南米大陸初の五輪が開幕したブラジル第2の都市リオデジャネイロのアトランチカ通りに、半袖に短パン姿で聖火ランナーとして走るゴーンの姿があった。ゴーンを先導したのは日産車。日産はリオ五輪の期間中にSUV(スポーツ用多目的車)「キックス」など4200台の日産車を提供し、世界中に「NISSAN」のロゴを見せつけた。日産はリオ五輪の期間中にスポンサーとして数百億円を支出したとされる。観光名所コパカバーナ海岸の高級ホテルを1棟借り切って「キックスホテル」と名付け、世界中から報道機関の関係者らを招待もした。日産はリオ五輪の開催が決まった2年後の11年10月、ブラジルのリオデジャネイロ州に工場を建設すると発表。その4カ月後、リオ五輪のブラジル国内最大のスポンサーの一つに選ばれた。14年に稼働した新工場はリオから内陸に約160キロ入ったレセンデという都市に立地する。日産と取引する部品メーカーの幹部は「なぜ多くの自動車メーカーが進出するサンパウロでなく、部品調達や人材採用がしにくいレセンデに建てたのか」といぶかる。工場用地を紹介した同州の元知事は、リオ五輪誘致をめぐる汚職疑惑で逮捕された。当時1%ほどだったブラジルの国内シェアを5%に引き上げる目標が掲げられたが、販売は伸び悩んだ。「なぜ、ブラジルなのか」。日産社内にはブラジルでの投資拡大に疑問の声が広がった。ゴーンが祖国愛から決めた投資だと感じる幹部もいた。ゴーンが邸宅として使っていたリオの高級マンションは、ゴーンがトーチを片手に走ったコパカバーナ海岸沿いの通りに面して立つ。マンションの一室が購入された時期は、日産が五輪のスポンサーに決まった時期に重なる。購入と改装にかかった費用約6億2千万円は、日産の海外子会社などを通じて支払われていたとされる。逮捕後に明るみに出た会社の「私物化」の疑いは、祖国ブラジルにも及んでいた。=敬称略

*9-2:https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/53774 (JBpress 2018.8.15) フェニキア人が歴史上いかに重要だったか説明しよう
 歴史研究に、史料は不可欠です。ですが史料というものは、本質的に勝者による記録です。敗者の記録は、廃棄されてしまうことも多く、そうなると人の目に触れることはありません。したがって、実は史料にあまり信用が置けない場合もあるのです。今回取り上げるフェニキア人は、おそらく一般に知られている以上に歴史上重要な役割を果たした民族です。しかし彼らは、古代ローマとの戦いに負けてしまい、その史料はほとんど燃やされてしまいました。そのため、勝者であるローマの偉大さばかりが強調され過ぎ、フェニキア人の重要性が軽んじられてきました。そこで今回は、フェニキア人が歴史上どれほど重要であったのかを見ていきたいと思います。
●フェニキア人とはどういう民族だったのか
 一般に、「フェニキア人」は、エーゲ文明に属するクレタ文明(前2000〜前1400年頃)とミケーネ文明(前1600〜前1200年頃)が後退した後に、地中海交易で栄えた民とされます。彼らについてはあまり多くのことは分かっていませんが、フェニキア人がセム系の語族に属し、海上交易に従事していた民であったことは確かです。フェニキア人は、ユーフラテス川上流に定住し内陸交易を担ったアラム人とよく対比されます。アラム人がラクダによってシリア砂漠などで隊商を組んで交易をしたのに対し、フェニキア人は海上交易で活躍しました。さらに、アラム人はアラム文字を作り、それがヘブライ文字、アラビア文字、シリア文字、ソグド文字、ウイグル文字の母体となっていきました。それに対してフェニキア人は、まだ象形性が残っていた古代アルファベットを改良し、線状文字にし、今日まで続くアルファベットの元を作ったとされます。ちなみに、フランスの古代エジプト学の研究者・シャンポリオン(1790〜1832年)が、後代にロゼッタ石からエジプトの神聖文字(ヒエログリフ)を解読しましたが、それはエジプトの文字がアルファベットの祖先だからこそ可能になったのです。このように、アムル人やフェニキア人が文字を発明・改良したのは、おそらく交易のためであったと考えられます。交易というのは、単に言葉を交わすだけで完結するわけではありません。使用言語の違うさまざまな民族と意思を通じ合わせなければならなりません。そのために、文字が必要だったのでしょう。フェニキア人が使用していたアルファベットは、現在のように26文字ではなく、27文字から30文字あったそうです。しかも、左から右に書くだけではなく、右から左へ、左から右へ、あるいは上から下に書かれたと言われています。彼らが改良したアルファベットは、ヨーロッパ各地で使用されるようになりました。それは、彼らが交易のためにさまざまな地域に移動する人々であったからでした。言うなれば、フェニキア人は「ヨーロッパ文明の父」なのです。フェニキア人の根拠地は、東地中海南岸、現在のレバノンにありました。彼らはそこで生長していたレバノン杉を使って、地中海の交易活動に進出したのです。レバノン杉は、高さが40メートルほどにまで生育するのですが、現在ではほんのわずかしか残っていません。それは、フェニキア人をはじめとする交易に従事する人たちが船材や建材にするため伐採したからです。耐久性があり香がよいため、高級木材として珍重されたレバノン杉は、神殿の内装材にも使われたようです。ちなみに、現在のレバノンの国旗の中央に描かれている樹木のシルエットもこのレバノン杉。それだけこの地の人々にとって誇るべき存在なのです。さらにフェニキア人の特産品として、赤紫色の染料がありました。この染料で染めた織物も有力な商品だったのです。他にも、高度な技術を身につけた職人多作り出す象牙や貴金属、ガラス細工もありました。地中海世界各地の貴族階級に属する人々にとって、フェニキア人がもたらす品物は垂涎の的だったのです。この強力な“商材”を武器に、フェニキア人は貿易と海運で地中海を席巻しました。地図に、フェニキア人の交易路を示しました。彼らの交易ネットワークは全地中海に及んでいます。古代ローマのそれと比較しても、各段に広いものです。フェニキア人ほど広大な取引網をもつ民族は、この当時のヨーロッパには見当たりませんでした。われわれは、「古代地中海世界はローマ人によって形成された」と思い込みがちです。しかし、古代地中海世界は、むしろフェニキア人によって築かれたと考えるほうが妥当です。彼らは地中海の物流を完全に支配していたのです。フェニキア人は、前12世紀から地中海の物流をほぼ独占するようになり、いくつもの植民市を建設するようになります。その植民市を中継点として、地中海の物流は徐々に統一されていきます。このフェニキア人が開拓した航路は、ずっと後になってローマ人やムスリム商人、イタリア商人、オランダ商人たちも利用することになりますが、当初はフェニキア人だけが知る「秘密のルート」でした。(以下略)

*9-3:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190715&ng=DGKKZO47343840T10C19A7PE8000 (日経新聞社説 2019年7月15日) 航空機の競争力高める買収に
 三菱重工業がカナダの航空機・鉄道車両メーカーであるボンバルディアから、小型旅客機の保守・販売サービス事業を買収することで合意した。三菱重工が中心になって開発する国産ジェット旅客機「スペースジェット(旧MRJ)」は、開発作業が遅れ、顧客への納入延期を繰り返している。ボンバルディアの保守網と顧客基盤を手に入れる今回の買収を、国際競争での出遅れを取り戻し、グローバル市場に挑む足掛かりにしていかねばならない。MRJは戦後初の国産旅客機「YS11」以来、約半世紀ぶりに日本企業が開発する旅客機だ。航空機は高い安全性が要求され、使われる部品や部材などの技術は他の分野への波及効果が大きい。スペースジェットは航空機開発の技術と経験を伝承する機会と期待されたが、これまでに合計5回、納入時期を先送りした。当初、2013年を予定した納入は、20年半ばにずれ込んだ。開発は商業運航に必要な安全性の確認検査という最終段階にある。これ以上の遅れを出さないことはもちろんだが、競合相手との競争はこれからが本番だ。来年に迫る納入に備え、販売・保守の体制を整えることが必要だ。頻繁に離着陸を繰り返す小型機は必要に応じて迅速に保守・点検ができる拠点が欠かせない。YS11が苦戦した理由の一つは、全世界をカバーする販売・保守体制が十分でなかったこととされる。三菱重工はボンバルディアが米国とカナダに持つ保守拠点4カ所を手に入れる。小型機事業は今後20年で5千機の需要が見込まれ、北米がその4割を占める。主戦場となる北米で実績のある拠点を手に入れる判断を評価したい。航空機開発は巨額の資金を要し、回収に時間がかかる。開発から販売まで、すべて自前主義にこだわる必要はない。ボンバルディアから引き継ぐ資産を、スペースジェットの競争力向上につなげていくことが重要だ。

<報道による人権侵害とメディアの質>
PS(2019年7月10日追加):*10-1のような「『報道の自由』『表現の自由』を取り戻そう」という主張は、マスコミ関係者からよく聞かれる。もちろん、権力のお先棒を担がなければやっていけないようなシステムがあれば、それは変えなければならないが、現在のマスコミは、上記のように、弱者を批判して権力と闘う姿を演出しつつ、本当の権力には無批判なものが多い。中には、偏見・差別を含んで営業妨害・政治活動の妨害、ひいては人権侵害に至るケースもあり、これを「報道の自由」「表現の自由」で正当化するのは憲法違反だ。そのため、報道内容を作る人の質と意識が問われるのだが、これが心もとなく、私は、報道内容については与野党とも事実と深い分析に基づいた「公平中立」を求める申し入れを行ってもおかしくないと思う。国際社会の政治報道は、日本ほど底が浅くてお粗末なものではないのだ。
 このような中、*10-2のように、2018年5月に「政治分野の男女共同参画推進法」が成立し、合計104人の女性が立候補し、候補者に占める女性割合が28.1%になったそうだ。私は、ベビーシッターを雇わなければ選挙活動できないような時期に候補者になるのは子どもと有権者の両方に無責任だと思うが、そうでなくても公認されにくかったり、公認されなければ参議院選挙では数千万円かかると言われる選挙資金(https://senkyo-rikkouho.com/rikkouho-hiyou.html 参照)を自前で支払ったりしなければならず、女性候補に対する特有の偏見やハラスメントも多いため、女性候補が当選する確率は低くなると思う。また、お茶の水女子大の申准教授の言われる通り政策議論は重要だが、野党だったり、党議拘束がかかったりすると個人の政策は反映されにくいため、「ねじれはいけない」「(党議拘束をかけて)同じ票を入れなければまとまっていない」と言うなど民主主義国家にあるまじき批評はやめるべきである。
 なお、*10-3の若者の政治に関する無関心や過度の政治家不信は、メディアの政治家叩きと政治報道の貧しさが作ったものだ。何故なら、「若者が関心を持たないから、政治が高齢者優先になる」というのは事実に基づかない記述だが、このように一般の人が事実誤認するような報道が多いからである。例えば、幼保無償化や全世代型社会保障は、現在の若者の政治的無関心の下で(私の提案で)できた高齢者優先でない政策であるし、「若者が関心を持つ争点がない」のなら、それはメディアが政策内容をしっかり報道していないからである。もちろん、年金問題も若者にとっても無縁ではないし、高齢者向けの年金・医療・介護政策を充実すれば若者の直接負担が減るため、これを「シルバー民主主義」と呼ぶのは我儘に過ぎる。なお、「政治には特に期待していない。自分たちができることをやり、少しでも社会を変えていけたら」というのは、政治で行った方が大規模に根本的解決ができるため、やはり政治を動かした方がよいわけである。

*10-1:http://www.union-net.or.jp/mic/seimei/2019_07_02-MICseimei.pdf (日本マスコミ文化情報労組会議《新聞労連、民放労連、出版労連、全印総連、映演労連、映演共闘、広告労協、音楽ユニオン、電算労》 2019年7月2日) 国際社会の指摘を受け止め、「報道の自由」を取り戻そう
 「言論と表現の自由」に関する国連の特別報告者デービッド・ケイ氏が6月26日、日本のメディアは政府当局者の圧力にさらされ、独立性に懸念が残ることを指摘し、「政府はどんな場合もジャーナリストへの非難をやめるべきだ」と日本政府に改善を求める報告書を国連に提出しました。ケイ氏は2016年に訪日調査を行い、日本の報道が特定秘密保護法などで萎縮している可能性があるとして同法の改正や、放送に対する政治圧力の根拠となり得る放送法4条の廃止などを求めた11項目の勧告を2017年に日本政府に出していますが、未だに9項目が全く履行されていないと批判しています。今回の報告書のなかでは、私たちメディア・文化・情報関連の労働組合で組織する「日本マスコミ文化情報労組会議(MIC)」が訴えてきた、記者会見における質問制限・妨害問題についても「新聞や雑誌の編集上の圧力」と指摘しています。菅義偉官房長官は「不正確で根拠不明」と反論していますが、私たちは日本政府が、国際社会の指摘を真摯に受け止め、民主主義国家として改善につなげることを強く求めます。現状、日本のメディア環境をめぐっては、国際ジャーナリスト組織、海外世論からも厳しい視線を向けられ、その真価が問われています。民主主義社会を支える動脈である「報道の自由」をこれ以上、侵害させないよう権力に屈することなく抗い、しっかりと取り戻さなければなりません。7月4日には参議院選挙が公示されます。選挙報道をめぐってもこの数年間、政権与党から過剰に「公平中立」を求める申し入れを行い、報道現場が萎縮することが問題になってきました。こうしたことを繰り返していては、メディアの信頼が揺らぐとともに、有権者が社会の現状を正確に把握したうえで投票行動を行うことが難しくなってしまいます。私たちはそれぞれの現場において、人々の知る権利のために「報道の自由」「表現の自由」を担う職責を全うし、国際的にも信頼されるメディア環境を日本で築いていくことを再確認します。そのためにも私たちは政府に対して、国際社会の指摘を謙虚に受け止め、改善をすることを求めます。

*10-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190710&ng=DGKKZO47090890Y9A700C1CR8000 (日経新聞 2019年7月10日) 女性議員 躍進なるか、立候補104人、最高の28% 勉強会で刺激、新人も挑む
 女性の政界進出は本当に進むのか。今回の参院選は、政党に男女の候補者数を均等にするよう求める「政治分野の男女共同参画推進法」が2018年5月に成立してから初の大型国政選挙だ。選挙区と比例代表で計104人の女性が立候補し、候補者に占める割合は過去最高の28.1%となり、女性の政治参加を応援する団体で学んで出馬を決めた新人候補も目立つ。「熱意ある女性と出会い、初めて国会を目指そうと思えた」。参院選の比例代表で出馬し、関西で選挙活動をしている40代の新人女性候補は力強く話す。候補は当初「弱者に寄り添う社会をつくりたい」と地方議員に関心があったという。18年7月、女性の政治家を育てる一般社団法人「パリテ・アカデミー」(東京)の「女性政治リーダー・トレーニング合宿」に参加。会社員や経営者など様々な女性が政治への思いを語る姿に「目線の高さに刺激を受けた」と振り返る。政党関係者からスカウトされ、国政への挑戦を決めた。同アカデミーは18年3月、お茶の水女子大の申きよん准教授(政治学)らが「学術研究に基づくプログラムで若手女性の政治参画を促す」目的で設立した。セミナーで現役の女性議員がやりがいや苦労をざっくばらんに話し、スピーチの練習やSNSの活用法も伝える。これまでに高校生から40代まで延べ約60人が参加し、今春の統一地方選では同アカデミー出身の4人が当選した。「政治分野の男女共同参画推進法の成立は明らかに追い風になった。女性自身が立候補の大切さに気付けた」。女性の政治参加を推進する一般財団法人「WINWIN」(東京)の山口積恵専務理事は手応えを感じているという。勉強会などを続け、今回の参院選でも3人の議員未経験者を送り出した。ただ「せっかく選挙に立ち上がってくれても、選挙活動では女性が直面する問題がまだ多く残っており、支援が欠かせない」と強調する。選挙活動では、女性候補への「票ハラスメント」と呼ばれる嫌がらせが表面化している。山口さんの元にも「夜遅くに有権者が事務所に来て暴言をぶつけられたが、誰にも相談できない」「2人の子供のベビーシッターを雇わないと夜まで選挙活動できない。費用がかさむが、党に言い出せない」などの悩みが聞こえてくる。WINWINでは女性政治家らの寄付金を元に、候補者に支援金を給付している。今回の参院選では8人に1人30万円ずつを渡した。山口さんは「身だしなみなど女性ならではの使途もあり、わずかでも役立ててほしい」と話す。内閣府が17年度に実施した女性地方議員への調査によると、選挙活動中の悩みは「資金不足」「家事・育児・介護との両立が難しい」が目立ち、当選後も「女性として差別やハラスメントを受けた」との回答が約3割あった。お茶の水女子大の申准教授は「男性候補が主体の選挙活動では、政策議論よりもいかに有権者と握手をしたかが評価されるどぶ板選挙が続いていた。各党は候補への選挙指導を見直してほしい。議会が男女均等になれば互いの違いを尊重し合える社会に近づく。今回の参院選は絶好のタイミングだ」と話している。

*10-3:https://www.nishinippon.co.jp/item/n/525418/ (西日本新聞 2019/7/9) 【参院選あなたの声から】若者、無関心じゃないけど…
 「私たち若い世代って、政治に無関心と言われるけど…」。鹿児島市の大学1年の男性(18)から、特命取材班に戸惑いの声が届いた。本人は参院選の投票に行くつもりだが、友人ら同世代には冷めた空気があるという。若者の選挙離れ、その訳は‐。今年5月のこと。福岡市西区の九州大3年、田中迅さん(22)は大学内で若者の政治参画を促す討論会を企画した。テーマは被選挙権引き下げなど若者に関連する話。パネリストに国会議員を招き、直接質問できるようにした。メディアを集めて記者会見も開いた。準備万全のつもりだった。当日、絶句した。3千人収容の講堂に集まった学生は、わずか20人程度。来なかった友人からは「政治家に直接言っても、本当に取り組むか信用できない」と厳しい言葉を浴びせられた。「政治への諦めのようなものを感じます」と田中さん。「若者が関心を持たないから政治が高齢者優先になり、ますます若者向けの政策が少なくなる。『負のスパイラル』に陥っているのではないでしょうか」
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 2016年の前回参院選から、国政選挙で初めて選挙権が18歳に引き下げられた。各政党は若者向けイベントを開き、安全保障法制に反対した若者グループ「SEALDs(シールズ)」が野党共闘の一役を担うなど、若者が主体的に行動する姿が見られた。主権者教育による意識の高まりもあり、18歳の投票率は51・28%だった。その傾向は長続きしていない。翌17年衆院選では、16年参院選で18歳だった19~20歳の投票率は30%程度と大幅に下がった。今回の参院選でも、若者に盛り上がりは感じられない。「若者が関心を持つ争点があまりない」と明治大の井田正道教授(政治意識論)。年金不安の問題は若者にとっても無縁ではないはずだが、「若者からすれば、まだまだ先の話。もともと年金だけで老後は暮らせないと分かっており、老後資金2千万円問題にも反応が鈍い」と話す。近年、与野党が子育てや教育支援策を競うようになり、高齢者向けの「シルバー民主主義」と呼ばれた状況から脱しつつあるが、「政治への関心を喚起させるところまではいっていない。むしろ政治に頼っては駄目だという意識が強い」と井田教授はみる。特命取材班が話を聞いた鹿児島市の男性(18)も「報道を見ても、老後の話が中心でよく分からない」。ほかにも「投票率が高い高齢者向けの政策ばかり光が当たっている」(福岡工業大3年、金子茉嵩さん20歳)、「政策のアピールの仕方が下手」(福岡市の20代女性)といった声があった。
      ■
 若者たちが社会に無関心というわけではない。11年の東日本大震災や16年の熊本地震では、被災地でボランティアに励む姿が見られた。社会貢献を意識し、就職先の選択肢に非政府組織(NGO)やNPO法人を挙げる人もいる。筑紫女学園大大学院1年の中山日向子さん(23)は少女の非行について研究する傍ら、子ども食堂の運営や、親や恋人からの暴力に悩む女性の支援に当たる。投票には行くつもりだ。「でも、政治には特に期待していない。自分たちができることをこつこつとやり、少しでも社会を変えていけたら」。政治とは一定の距離を置いているように映る若者たち。世界ではどうか。例えば16年の米大統領選では、バーニー・サンダース上院議員が公立大学授業料無償化を訴えて若者の心を捉え、旋風を巻き起こした。井田教授は言う。「昨今の自民党支持は、大卒就職率が高水準を維持する中、『他よりはまし』という選択。若者の心を揺さぶる政策やカリスマ性のある政治家が出てくれば、若者を動かす可能性があります」

<交渉や議論の基礎がわかっていない日本人と日本外交の拙さ>
PS(2019年7月16日追加):*11-2のように、韓国の元徴用工裁判の原告が「奴隷のように扱われた」として複数の日本企業を相手に訴訟を起こし、日本製鉄・不二越に続いて三菱重工の資産を現金化する手続きに入るそうだ。日本の元徴用工への補償については、韓国政府も1965年の日韓請求権協定で「解決済」としてきたが、韓国大法院が「個人の請求権は消滅していない」としたため、日本政府が日韓関係の「法的基盤を根本から覆すものだ」として反発している。私も、いつまでも歴史問題をネタにして日本を批判すれば賠償金がとれると思われるのはたまったものではないと思うが、いろいろな解釈が成り立たないように日韓請求権協定に明確に記載しなかったことは、契約(協定)締結における初歩的ミスだと思う。これに対抗してか否か、*11-1のように、日本政府は突然、韓国に対して半導体材料の輸出管理強化措置を行った。韓国経由で輸出が禁止されている他国に輸出されているのであれば管理するのは当然だが、我が国がよく行う経済制裁(輸出入禁止)は、相手国が輸入先を多角化したり国産化を進めたりするため、中長期的に日本製のシェアを小さくする子どもっぽい政策だ。
 このように両者の主張が異なる時は国際機関の調停が必要になるが、常日頃から、*8-2のように、IWCを脱退して商業捕鯨を始めたり、*11-4のように、多くの国が実施しているにもかかわらず、福島第一原発事故被災地からの水産物輸入を禁止した韓国政府の措置を日本がWTOに提訴して敗訴したりしていると、「日本政府(安倍首相だからではない)の判断や行動はおかしい」というのが世界の認識になるだろう。菅官房長官は「日本産食品は科学的に安全なので韓国の安全基準を十分クリアする」と主張されているが、日本でも癌の発生率が高まっており、日本の消費者である私も原発被災地近くの食品が科学的に安全だとは思わない。また、「食の安全」や「リスク」をどこまで追及するかは、その国で選ばれた政府の判断であるため、WTO上級委員会の「韓国の措置は不必要に貿易制限的である」「韓国の措置は日本産水産物に対して差別的である」という判断の破棄は正しい。何故なら、食品・薬は「疑わしきは摂取せず」が科学的だからで、我田引水の解釈を繰り返せば繰り返すほど世界の信用を無くすわけである。
 さらに、*11-3の2018年12月の韓国海軍による日本の自衛隊機へのレーダー照射については、日本が韓国に抗議したのに対して韓国は「日本の自衛隊機が威嚇的な低空飛行をした」として謝罪を要求した。自衛隊機が低空飛行した理由は、「日本の排他的経済水域で北朝鮮漁船が漁をしていたから」とも言われているため、最初に苦情を言った日本が起こった事象を明確に説明して韓国側の違反を国際社会に明らかにしなければ、これも「日本の横車」で終わってしまい、信頼関係の回復どころか世界の信用も無くす。にもかかわらず、日本の防衛相が2019年6月1日に、韓国の国防相と会談して両者の言い分が平行線のまま「棚上げ」にされたそうだが、「(利害対立関係にあっても)話し合えばどちらかが譲る」「議論しないのが大人」などというのは、日本の一部でしか通じない甘えあいの価値観だ。

*11-1:https://www.jiji.com/jc/article?k=2019071500318&g=pol (時事通信 2019年7月15日) 韓国大統領「日本経済により大きな被害」=輸出管理強化で警告
 韓国の文在寅大統領は15日、日本政府による半導体材料の輸出管理強化措置について「わが国の企業は、輸入先の多角化や国産化に進む。結局は日本経済に、より大きな被害が及ぶ」と警告した。また、「わが国経済の成長を妨害したも同然だ」と主張、「日本の意図がそこにあるなら、決して成功しない」と強調した。首席秘書官・補佐官会議での発言を大統領府が発表した。文氏は席上、「日本が歴史問題を経済問題と関連付けたことは、両国関係発展の歴史に逆行する行為だ」と批判。日本企業に元徴用工らへの賠償を命じた韓国最高裁判決を受けた経済報復という認識を改めて示した。その上で、「一方的な圧迫をやめ、外交的解決の場に戻ることを望む」と訴え、「わが政府は、われわれが提示した方策が唯一の解決策だと主張したことはない」と述べた。徴用工問題で韓国政府は先に、日韓企業による自発的な資金拠出で慰謝料を支給する案を日本側に提示したが、修正もあり得るという考えを示した形だ。韓国の輸出管理違反などの疑惑に関しては「わが政府に対する重大な挑戦だ」と指摘。「これ以上、消耗する論争をする必要はない」と述べ、国際機関に調査を依頼する案を受け入れるよう求めた。

*11-2:https://news.livedoor.com/article/detail/16779409/ (Livedoor 2019年7月16日) 元徴用工訴訟、原告側が三菱重工業の韓国内の資産現金化着手を表明
 韓国の元徴用工らをめぐる裁判の原告が、近く三菱重工業の資産の現金化に着手すると明らかにした。 徴用工裁判をめぐる日本企業の資産を売却する手続きに入るのは、日本製鉄と不二越に続き3件目。原告側が差し押さえているのは、三菱重工が韓国国内で持つ特許権や商標権などおよそ8000万円相当の資産で、近く裁判所に売却命令を請求するといい、三菱重工側からは昨日の期限までに賠償協議に応じるとの回答がなく、「原告の高齢化を考えるとこれ以上先送りすることはできない」としている。原告らは11時からソウルで会見を開き、詳しい方針などを明らかにする予定。(AbemaTV/『AbemaNews』より)

*11-3:https://news.livedoor.com/article/detail/16561644/ (Livedoor 2019年6月3日) 日韓会談でレーダー照射「棚上げ」 それでも「信頼回復」道半ばな理由
 アジア安全保障会議に合わせてシンガポールを訪問していた岩屋毅防衛相は2019年6月1日、韓国の鄭景斗(チョン・ギョンドゥ)国防相と非公式に約40分間会談した。両者の会談は18年10月以来8か月ぶりで、18年12月の韓国海軍による自衛隊機へのレーダー照射事案以降初めて。レーダー照射事案では、日本側は韓国側に抗議したのに対して、韓国側は「日本側が威嚇的な低空飛行をした」として謝罪を要求していた。会談では両者の言い分は平行線で、こういった状況を「棚上げ」した形で「未来志向の日韓防衛当局間の関係を作っていく」(岩屋氏)ことになった。それでも、韓国メディアの中では、信頼関係の回復に懐疑的な声も出ている。
●「話し合っていれば、どちらかが譲って答えが出てくるのかというと」...
 岩屋氏は会談後に記者団に明かしたところによると、日本側は自衛隊機の飛行が適切だったことを説明し、再発防止を求めた。これに対して、韓国側は「従来の主張」を展開したという。会談でレーダー照射事案が「一定の区切り」を迎えたのか、という記者の質問には、「本当は、真実は一つしかないということだと思うが、話し合っていれば、どちらかが譲って答えが出てくるのかというと、そういう状況ではないと私は判断している。私どもの見解に変わりはないが、未来志向の日韓防衛当局間の関係を作っていくために、一歩前に踏み出したいと思っている」と答え、事実上棚上げする考えだ。岩屋氏はシンガポールで中国の魏鳳和国防相とも会談し、年内に訪中することで一致している。こういった姿勢を産経新聞は、「中韓に非がある重大な課題を棚上げして融和に転じれば、相手から侮られるだけでなく同盟国や友好国の信頼をも失いかねない」と非難している。
●相変わらず日本側に責任転嫁
 一方の韓国メディアも、必ずしも歓迎ムードではない。中央日報は「両国間の信頼が完全に回復していなかったという解釈が支配的だ。日本がまだ哨戒機の事態に対して責任がないという主張を繰り返しているからである」として、日本側に責任転嫁する形で、両国間の信頼回復は道半ばだという否定的な見方だ。一方、聯合ニュースでは、「それでも『出口』のない攻防戦を繰り広げ、防衛交流を全面中断してきた両国が、今回の会談を契機に、少なくとも対話と交流の正常化の端緒は設けた、という評価も出ている」と、事態改善が多少なりとも進みつつあるという点で肯定的に評価している。

*11-4:https://webronza.asahi.com/business/ares/2019042600009.html (RONZA 2019年5月7日) 日本は韓国にWTOで敗訴したのか?、原発事故の被災地からの水産物の禁輸。日本がこれからとるべき道は? 山下一仁 キヤノングローバル戦略研究所研究主幹
 福島第一原発事故の被災地からの水産物輸入を禁止した韓国政府の措置を日本がWTO(世界貿易機関)に提訴した事件で、第一審に当たるパネルは日本の主張を認めたものの、上級審に当たる上級委員会はこの判断を覆した。この結果、韓国の禁輸措置が継続されることとなった。この結果について、菅官房長官は「敗訴の指摘は当たらない」と主張し、その理由に「日本産食品は科学的に安全であり、韓国の安全基準を十分クリアするとの第一審の事実認定は維持されている」ことを挙げた。これが国際経済法学者から誤りだと指摘され、物議を醸している。「日本産食品は科学的に安全」という記載は第一審の報告書にはなかったとも指摘されている(4月23日朝日新聞1面)。本件に関する報道や専門家の解説記事を読む限り、私は「敗訴の指摘は当たらない」という日本政府の主張には同意するが、その理由として挙げたものは上級委員会報告を正確に理解したものではなかった。その限りで国際経済法学者の批判は当然だと考える。その根拠を以下で解説するが、むしろ問題は、敗訴していないのに、韓国がWTOに違反しているおそれが高い禁輸措置を継続できることになったことである。
●食の安全とWTO・SPS協定
 WTOが食の安全と貿易について規律するようになった経緯について簡単に説明しよう。食品・動植物の輸入を通じた病気や病害虫の侵入を防ぐため導入される衛生植物検疫措置―これをSPS措置という―は国民の生命・身体の安全や健康を守るための正当な手段である。他方、我々は、貿易によって世界中からさまざまな食品を輸入し消費している。国際交渉によって関税が引き下げられるなど伝統的な産業保護の手段が使いにくくなっている中で、これに代わってSPS措置が国内農業の保護のために使われるようになってきた。貿易の自由化の観点からは、保護貿易の隠れ蓑となっているSPS措置の制限・撤廃が求められる。しかし、真に国民の生命・健康の保護を目的としたSPS措置であっても、貿易に対して何らかの効果を与える。生命・健康の保護を目的とした真正の措置と貿易制限を目的とした措置との区分は容易ではない。このため、食の安全という利益と食品の貿易・消費の利益の調和が必要になる。このような二つの要請のバランスを図ろうという試みが、1986年から開始されたガット・ウルグァイ・ラウンド交渉の一環として行われた。その結果1994年合意されたWTO・SPS協定は、この問題の解決を「科学」に求めた。科学的根拠に基づかないSPS措置は認めないとしたのである。生命・健康へのリスク(危険性)が存在すること、そして当該SPS措置によってそのリスクが軽減されることについて、科学的根拠が示されないのであれば、その措置は国内産業を保護するためではないかと判断したのである。そのうえで、各国のSPS措置を国際基準と調和(ハーモナイゼイション)することを目指している。各国の規制が統一されている方が、貿易の円滑化に資するからだ。
●WTO・SPS協定の仕組み
 簡単にSPS協定の仕組みを解説しよう。まず、各国は適切な保護の水準(ALOP:appropriate level of protection)を設定することができる。ALOPとは、1万人に一人の死亡まで認めるか、1億人に一人の死亡しか認めないのか、つまり、どこまでのリスクを許容するかということである。ALOPは”acceptable level of risk”(受け入れられるリスクの水準)とも定義されている。ALOPをどのような水準に設定するかは各国の主権的な権利である。以下のSPS協定の規定に整合的なら、ゼロ・リスクとすることも可能である。ただし、異なる状況において恣意的または不当な区別を設けることが、国際貿易に対する差別または偽装した制限をもたらすことがないようにしなければならない(5.5条)。整合性の原則であり、同じようなリスクに対して、ある時は保護の水準を低くして緩やかな措置を許容し、ある時は保護の水準を高くして厳しい措置を要求してはならないということである。ALOPを定めたら、各国は科学的な評価(これをリスクアセスメントという)に基づきSPS措置を決定する。下の図では、この関係を簡単に理解できるよう、縦軸にリスクの程度(X人に一人死亡)をとり、横軸に措置(どれだけのハザード(危害)を摂取するか)をとり、両者の関係を右上がりの直線で示している。原点に近いほど許容できるリスクが小さい、つまり健康保護の水準が高くなる。これに伴い、許容できるハザード摂取量も減少する。ALOPが目的ならSPS措置は手段である。SPS措置に対しては科学的根拠が要求されるが、ALOPに対しては要求されない。政治的または政策的にALOPを決めると、SPS措置はALOPとリスクアセスメントによって決定される。 SPS措置について、SPS協定は、①科学的な原則に基づいてとること(2.2条、つまりリスクアセスメントを行うということである=5.1条)、②同一または同様の条件(自国の領域と他の加盟国の領域との間を含む)の下にある加盟国間で恣意的または不当な差別をしないこと(2.3条、同一または同様の条件にあるのに、異なる扱いをしてはならないということである)、③国際貿易に対する差別または偽装した制限となるように運用してはならない(2.3条)、④ALOPを達成するために必要である以上に貿易制限的でないこと(5.6条)という要件を課している。
●WTO上級委員会の判断
 上級委員会は、パネルが行った、韓国の措置は不必要に貿易制限的である(5.6条)、韓国の措置は日本産水産物に対して差別的である(2.3条)という判断について、破棄している(以下川瀬剛志「韓国・放射性核種輸入制限事件再訪」RIETIを参照した)。まず、最初の5.6条違反かどうかについて、川瀬論文は次のように要約している。
《パネルは本件での韓国のALOPが「①通常の環境における食品の放射能レベルに維持すること、よって②1mSv/年を上限として、③合理的に達成可能なできるかぎり最低限(as low as reasonably achievable-ALARA)に食品の放射能汚染を維持すること」であると認定した。にもかかわらず、パネルはもっぱら②にのみ焦点を当て、3要素がそれぞれ別個であるか、それらがどのように相互作用するか、また②がALOPの質的側面である①、③を内包するのか、などの問題を検討していない。パネルは日本が提案する代替措置(セシウム100Bq/㎏以上の食品のみ輸入制限、これで1人当たり年間被ばく量を1mSv/年以下にできる水準)が韓国の複合的なALOPを達成できるか否かを検討する責務がある。しかし、パネルは韓国のALOPの3要素全てについて検討せず、代替措置が1mSv/年を著しく下回る被ばく量を達成できる、としか判断しなかった。》
 しかし、このようなあいまいなALOPの設定は問題である。「上級委員会の先例によれば、ALOPは定量的でなくてもいいが、SPS協定の義務の実施を妨げないように「詳細な(precise)」ものでなくてはならず、SPS措置を取る国がこれを設定する専権および義務がある」(川瀬論文)からである。実際にも、このような曖昧なALOPからどのようにリスクアセスメントをしてSPS措置を決定できるのかはなはだ疑問に感じる。結局のところ、「上級委員会としては、ALARAおよび「通常の環境下」要件は単独では意味をなさず結局は1mSv/年基準を意味する、という結論をパネルは明確にすべきだった、ということに尽きる」(川瀬論文)。つまり、韓国のALOPが不適切であることをパネルが明示的に示さなかったことがおかしいと上級委員会は述べていることになる。これは、パネルがおかしいのであって、日本敗訴というものではない。第二の2.3条違反かどうかに関し、差別しているかどうかが判断される「同一または同様の条件(自国の領域と他の加盟国の領域との間を含む)」について、食品自体の放射能汚染のレベルだけで判断したパネルに対して、上級委員会は日本に原発事故が生じたという食品汚染に関わる生産国の環境も含めて判断すべきだとした。「食品自体の汚染水準についても、パネルは食品の実際の汚染レベルがパネルが認定するところの韓国の安全基準(セシウム100Bq/kg)を下回るかにのみ着目し、日本とそれ以外の地域での放射能汚染の状況の違いもたらす潜在的な食品汚染について検討していないことを指摘している」(川瀬論文)。しかし、この上級委員会の判断は疑問である。健康に影響を与えるのは、食品であり、問題なのは、それがどこで生産されたものであれ、どの程度ハザードを持っているかどうかである。存在するかどうかも分からない潜在的な汚染を、どうやってリスクアセスメントすればよいのだろうか?ただし、ここでも上級委員会が問題視しているのは、パネルの判断の誤りであって、潜在的な汚染を検討すればどうなるかという判断を行っているのではない。また、この論点で日本の主張が受け入れられなかったとしても、別の論点で韓国の措置がSPS協定違反だと認定されれば、日本は勝訴していた。いずれにしても、上級委員会はパネルが判断を誤ったと言っているにすぎず、韓国の措置がSPS協定に違反していないとも言っていない。パネルが最初の5.6条違反の点を明確に指摘していれば、韓国の措置がSPS協定違反だというパネルの結論は維持されていたと思われるのである。(以下略)

| 民主主義・選挙・その他::2014.12~ | 05:41 PM | comments (x) | trackback (x) |
2019.6.13 高齢者の困窮と高齢者の就業を妨げる高齢者差別 (2019年6月14、15、17、19、20、21、22、23、24、25、26、28、29日に追加あり)
(1)高齢者の生活と年金

 
                               2019.6.3YAHOO
(図の説明:左図のように、65歳の夫と60歳の妻の“標準的”夫婦は、年金だけでは毎月5万5千円、30年で約2千万円が不足するので貯蓄や資産運用が必要だと金融庁が公表し、右図のような対策を推奨している。しかし、ここで前提とされている高齢者のイメージは、現在の50代、60代、70代の人から見ると、かなり昔のものであることに注意が必要だ)

 

(図の説明:左図のように、“平凡な”夫婦の場合、65歳から貯蓄を取り崩し始め、夫の死後は年金給付額が減るためか取り崩しのカーブが急になり、90歳程度で貯蓄が底をつくようだ。また、中央の図のように、高齢者が貯蓄を取り崩すに従って家計貯蓄率は低下し、さらに右図のように、60歳以上の人が購入する品の物価上昇率は他に比べて大きいそうである)

 「65歳の夫と60歳の妻の“標準的”夫婦の場合、年金収入だけでは毎月5万5千円、30年で約2千万円が不足し、貯蓄や資産運用が必要」と金融庁が公表した報告書について、参院決算委員会で、*1-1のように、野党が「年金『100年安心』は嘘だったのか」と追究したが、制度の持続が100年安心なのであり、国民生活が100年安心なのではないことは、年金制度の改定内容を見ればわかる筈である。

 実際、少ない年金だけでは暮らせず、高齢になっても働き続けたり、蓄えを取り崩したりしている人は多く、(少子高齢化のせいにしているが、本当は引当不足が原因)の年金水準のさらなる(調整と称する)引き下げが予定されている。そのため、誰もが納得する形で年金引当不足を解決するには、年金を賦課方式から発生主義による引当方式に戻し、引当不足分は国有資源から生じる収益で埋めていくしかないだろう(このブログのマニフェスト参照)。

 なお、金融庁の報告書は夫婦が揃っている間の収支しか述べていないが、実は妻が1人で残った家計の方がずっと苦しく、貯蓄が底をつくこともある(女性の皆さん、どうするか考えていますか?)。また、国民全体としては、貯蓄を取り崩す高齢者の割合が増えるにつれて家計の貯蓄率は下がり、それとともに投資が抑制される。

 その上、「高齢者は金づるだ」と言わんばかりに、高齢者が購入する製品の物価を高くしたり、高齢者のみに高額の介護保険料を課したりして、全世代に年金・医療・介護の将来不安を残したままでは、誰もが消費を抑えて将来に備える必要があるため、経済にも悪影響を及ぼす。

 また、「95歳まで生きるには夫婦で2千万円の蓄えが必要」と試算した*1-2の金融庁審議会報告書は、「物価の伸びより年金給付の伸びを抑える『マクロ経済スライド』を適用してさらに年金を減額していくため、(インフレ政策をとり続ければ)中長期的には年金給付額の実質的低下が見込まれる」と明記しており、地域によって物価水準は異なるものの、2千万円蓄えても不足する人が多いというのが正しいと思われる。

 一方、参院選前なので、寝た子を起こしてはならないと、*1-3のように、自民党は金融庁金融審議会報告書に抗議して撤回を要求し、公明党の山口代表も不快感を示している。

 最後に、*1-4の「将来への議論封じるな」とする記事もあり、確かに報告書が公的年金の先細りを指摘して自助努力を促し、高齢社会の資産形成に役立つ(?)とする投資のみに言及しているのは偏りがあるため、非正規労働者の増加・年金給付水準の低下・高齢者の貧困拡大などを前提に、参院選を控えた今だからこそ、最近の年金制度改定を復習して議論を深め、それぞれの候補者がどう考えて行動してきたのかを明確にして、有権者の判断に資すべきである。

(2)改訂しても高齢世代と40代以上のみに保険料を負担させる介護保険制度

  
                                 2019.6.15東京新聞
(図の説明:左図のように、介護保険料は増加の一途を辿っているが、地域や所得によってさらに高い。また、中央の図のように、所得によって利用料の負担率が異なるが、所得によって保険料も異なるため、これは二重負担になる。そして、右図のように、金融庁の報告書には、介護が加わるとさらに最大1千万円必要だと書かれているそうだ)

 2018年度の介護保険制度改訂で、①所得が高い人の利用料3割負担の導入 ②所得が高い人の高額介護サービス費の自己負担上限引き上げ ③要介護・要支援認定有効期限の延長 ④「介護療養病床」に代わり「介護医療院」を新設 ⑤福祉用具貸与価格の適正化 ⑥共生型サービスの開始 ⑦市町村に対する財政的なインセンティブの導入 が行われたそうだ(https://www.sagasix.jp/knowledge/hoken/kaigohoken-seido-kaisei/ 参照)。

 このうち①②は、「世代間・世代内の公平性を確保しつつ、制度の持続的な可能性を高める目的で、平成30年8月から所得が特に高い一部の利用者層(年金収入などが年間340万円以上の利用者)の負担割合が3割とした」とのことだが、世代間の公平性確保なら、介護保険制度で自らの介護負担が軽減された働くすべての人に介護保険料を課すことが必要だ。何故なら、介護保険制度が無かった時代は、介護保険料の支払いは不要だったが、そのかわり家族が全ての介護をしなければならず、この負担の方が重かったからである。さらに、現在は現役世代のうち40歳以上に介護保険料を課しているため、40歳定年制などが言われているからだ。

 また、世代内の公平性として利用料3割負担の導入や自己負担上限の引き上げが行われたことについては、年金収入等が年間340万円以上の利用者が“所得が特に高い一部の利用者層”に入るというのは大いに疑問である上、所得が上がれば高い保険料を徴収し、サービス提供時にも利用料を増やすというのは、同じ所得に対する二重負担(二重課税と同じ)である。

 ③~⑦は、変更の内容を検討しなければ何とも言えないので省くが、①②を見ただけでも厚労省及び関係議員のセンスのなさがわかる上、世代間・世代内の公平性には程遠いわけだ。

(3)生活の不安は全員に

  
                        2019.5.16東京新聞

(図の説明:左図のように、老後の生活に不安を感じているのは、全世代では81.3%に上るが、非正規雇用の多い40代の91.0%は特に高い。しかし、中央の図のように、就業機会も65歳までの就業継続は義務化されたが70歳までは努力義務にしかなっていないため、平均余命の伸びや年金給付の不足額を考慮すれば、70歳までの義務化は急務である。ただ、右図のように、日本・アメリカは就労希望理由の1位が「収入」であるのに対し、ドイツ・スウェーデンは「遣り甲斐」であり、これがあるべき姿であって羨ましい)

1)高齢者の就労について
 *2-1のように、政府は未来投資会議で、成長戦略として70歳まで働ける場を確保することを、企業の「努力義務」として規定することを盛り込んだそうだ。私も、人手不足の中、労働者が長く働けるようになれば、教育研修費を節約しながら生産性を上げることができると考える。

 しかし、年金制度を国民サイドからの100年安心プランにするためには、高年齢者雇用安定法を改正して70歳までの雇用は義務化すべきだ。その際、同一労働・同一賃金は、全世代及び男女から見て当然のことである。

 そのような中、*3-1、*3-2のように、高齢運転者による事故をTVの全局で毎日取り上げ、「高齢者は全員運転能力がなくなるため、免許返納すべきだ」という世論を作っているのは目に余る。それこそ、運転支援機能がある自動車に限定した運転免許制度を創設したり、全自動車に運転支援機能をつける技術開発を行ってその装備の装着に補助金を出すなど、世界で進む高齢化社会のニーズに対応する技術開発に重点を置いた方がよほど賢い。

 しかし、*2-2は、①日本の労働生産性は主要7カ国で最下位 ②産業の新陳代謝を促して付加価値の高い分野に人を動かす抜本策が必要 ③70歳までの就業機会確保は少子高齢化への処方箋の一つとして評価できるが、単なる雇用延長だけでは日本全体の生産性の足を引っ張りかねない ④そのため、裁量労働制の対象拡大や解雇規制の緩和などが必要だ としている。

 革新を嫌ってカンフル剤の投入ばかりやってきたため、①は当然だが、②の実現には能力の高い人を必要とする企業がヘッドハントして雇用できるシステムが必要なのであり、④の裁量労働制の対象を拡大することによって労働者から搾取したり、解雇規制の緩和で解雇された人を他の企業に転職させたりすればよいわけではない。また、③の70歳までの雇用延長だけでは生産性の足を引っ張りかねないというのは、年齢・性別・勤務年数にかかわらない能力給の比重を増して、公正な評価を行う必要がある。

2)高齢者は能力がないとアピールする高齢者差別
 このような中、*3-1のように、「福岡市で高齢者が逆走し、追突事故後に加速して600~700メートル、ブレーキ痕がなかった」というニュースがあったが、運転していたのは81歳男性で76歳の妻とともに亡くなったと書かれている。

 これは、事故を起こした人も気の毒な話なのだが、*3-2のように、池袋で起こった高齢者の事故とあいまって、「子どもが犠牲になるのは痛ましいから、高齢者は全員免許返納すべきだ(話が飛躍しすぎており、子どもの事故をなくすために全高齢者が引きこもるべきだという考え方は問題だ)」「海外には免許の定年制もある(運転支援車の技術を進歩させた方が役にたつ)」という愚かな結論になった。
 
 私は、このような事故を繰り返し報道して、*3-3のように、「高齢者に免許を返納させ、生活支援の体制整備をすればよい」と結論付けるのはよくないと考える。何故なら、事故を起こすのは高齢者だけではないし、仕事や外出に運転が必要な高齢者も多いからだ。また、「75歳以上の層は70~74歳に比べて、事故が2倍多く発生」と書かれているのも層分けの幅が同じでない上に、高齢者全員が事故を起こしているわけではない。

(4)科学技術の進歩を活かせ
 政府は、*4-1のように、75歳以上の高齢ドライバーを想定して新しい運転免許制度を創設し、安全運転支援システムを搭載した自動車に限定して運転を認めるそうだが、年金生活者が新車に買い替えるのは容易ではない。そのため、プログラムを更新したり、小さな器械を装着したりすれば安全運転支援システムを搭載できるようにし、それに補助金をつけることが望まれる。

 また、*4-2のように、九電が買い取り単価7円/kw時で、FIT期限終了後の家庭発電の太陽光を買い取るそうで、これなら原発や火力発電と十分に競争できる。FIT期限が終了した家庭は、①九電への売電継続 ②新電力会社への変更 ③蓄電池を活用した自家消費などを選択できるそうで、言うことはない。経産省は大手電力各社に料金プランを示すように求め、四電が7円/kw、関電が8円/kw、東北電が9円/kwと発表しているそうで、これとEVの運転支援車を併用すれば、21世紀の移動手段になるわけだ。

 さらに、蓄電池の材料になるので次の油田と言われている「レアアース」は、*4-3のように、南鳥島周辺や沖縄付近の海域に埋蔵されているそうだ。いつまでも原油に拘泥して産業化せず、これも中国・韓国・インド・ロシアなどに大きくリードされないように願いたい。

・・参考資料・・
<高齢者の生活と年金給付>
*1-1:https://digital.asahi.com/articles/DA3S14050522.html (朝日新聞社説 2019年6月11日) 「年金」論戦 まずは政府が説明を 
 安倍首相と全閣僚が出席する参院決算委員会がきのう開かれた。衆参の予算委員会の開催を与党が拒むなか、広く国政の課題をめぐる質疑に首相が応じたのは2カ月ぶりだ。野党の質問が集中したのは、夫婦の老後の資産として2千万円が必要になるとの、金融庁が先に公表した報告書だ。65歳の夫と60歳の妻の場合、年金収入だけでは毎月5万5千円、30年で約2千万円が不足する――。そんな試算に基づき、貯蓄や資産運用の必要性を呼びかけた。「年金は『100年安心』はうそだったのか」「勤め上げて2千万円ないと生活が行き詰まる、そんな国なのか」。野党の追及に、首相や麻生財務相は「誤解や不安を広げる不適切な表現だった」との釈明に終始したが、「表現」の問題にすり替えるのは間違っている。年金だけでは暮らせず、高齢になっても働き続けたり、蓄えを取り崩したりしている人は少なくない。少子高齢化が進み、今後、年金水準の引き下げが予定されているのも厳然たる事実だろう。制度の持続性の確保と十分な給付の保障という相反する二つのバランスをどうとるのか。本来、その議論こそ与野党が深めるべきものだ。国民民主党の大塚耕平氏は「制度を維持・存続する意味での安心で、国民の老後の安心ではない」とただしたが、首相は「みなさんに安心してもらえる制度の設計になっている」と述べるだけだった。年金の給付水準の長期的な見通しを示す財政検証は、5年前の前回は6月初めに公表された。野党は今回、政府が参院選後に先送りするのではないかと警戒し、早期に明らかにするよう求めたが、首相は「政治的に出す、出さないということではなく、厚労省でしっかり作業が進められている」と言質を与えなかった。年金の将来不安を放置したままでは、個人消費を抑え、経済の行方にも悪影響を及ぼしかねない。財政検証を含め、年金をめぐる議論の土台となる正確な情報を提示するのは、まずは政府の役割である。日米の貿易交渉や日朝関係、防衛省が公表したデータに誤りがあった陸上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」の配備など、国会で議論すべき課題は山積している。しかし、4時間弱のきのうの審議では、年金以外のテーマはほとんど取り上げられなかった。夏の参院選で、有権者の判断材料となるような審議こそが求められている。今国会の会期末まで2週間余り。政権与党は逃げの姿勢を改め、国民の前で堂々と論戦に応じるべきだ。

*1-2:https://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201906/CK2019061102000140.html (東京新聞 2019年6月11日) 「老後2000万円」報告書 野党追及 年金目減り記述削除
 安倍晋三首相は十日、参院決算委員会で、九十五歳まで生きるには夫婦で二千万円の蓄えが必要と試算した金融庁の審議会の報告書について「不正確であり、誤解を与えるものだった」と釈明した。野党は、当初案にあった年金給付水準の目減りなどに関する記述が報告書から削除されたことなども指摘。「国民を欺いている」(立憲民主党の蓮舫参院幹事長)と批判した。報告書は金融庁の金融審議会が今月三日に公表。平均的な無職の高齢夫婦世帯で月五万円の赤字が見込まれ、三十年間で二千万円が不足するとした。自公政権は二〇〇四年の年金制度改革で、制度が「百年安心」との看板を掲げてきた。だが老後には公的年金以外に多額の自己資金が必要なことが明確に示されたことで、不安が広がっている。蓮舫氏は決算委で「国民は『百年安心』がうそだったと憤っている」と批判。麻生太郎副総理兼金融担当相が報告書について「冒頭の一部、目を通した。全体を読んでいるわけではない」と明かした点も「問題だ」と指摘した。首相は、公的年金の積立金運用益が六年間で四十四兆円となったことを強調。本年度の年金給付が、物価の伸びよりも年金給付の伸びを抑える「マクロ経済スライド」を適用した上でも「0・1%の増額改定となった」と反論した。麻生氏は報告書に関して「二千万円の赤字であるかのように表現した点は、国民に誤解や不安を与える不適切な表現だった」と繰り返した。蓮舫氏は、先月二十二日に審議会がまとめた報告書案の段階では、年金給付水準について「中長期的に実質的な低下が見込まれている」と明記されていたことも追及した。今月三日の報告書で削除した理由について、金融庁の担当者は「より客観的な表現に改めたものを提出した」と説明した。蓮舫氏は、年金制度の健全性を五年に一度チェックする財政検証についても「早く出さないと国会で審議できない。まさか参院選後ということはないか」と確認を求めた。首相は「厚生労働省でしっかりと作業が進められている」と、公表時期を明言しなかった。

*1-3:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/385861 (佐賀新聞 2019年6月11日) 自民、金融庁に報告書の撤回要求、公明代表「猛省促す」
 自民党は11日、金融庁に対し、老後資金として2千万円が必要とした金融庁金融審議会の報告書への抗議を伝え、撤回を要求した。林幹雄幹事長代理が国会内で金融庁幹部に伝えた。公明党の山口那津男代表は記者会見で「いきなり誤解を招くものを出してきた。猛省を促したい」と不快感を示した。自民党の二階俊博幹事長も「2千万円の話が独り歩きして国民の不安を招き、大変憂慮している」と自民党本部で記者団に語った。報告書の撤回を要求した理由に関し「参院選を控えており、党として候補者に迷惑を掛けないよう注意していかねばならない」と説明した。

*1-4:https://www.kyoto-np.co.jp/info/syasetsu/20190613_4.html (京都新聞 2019年6月13日) 「老後」報告書  将来への議論封じるな
 国民の「老後」に関する議論まで封印しようというのだろうか。95歳まで生きるのに夫婦で2千万円の蓄えが必要と試算した金融庁金融審議会の報告書の受け取りを、政府が拒否した。内容を巡って野党をはじめ各方面から強い批判が上がっていた。夏の参院選への影響を排除しようとしたことは明らかだ。確かに、報告書は公的年金の先細りを指摘して自助努力を促し、投資を勧めているとも読み取れる。違和感を感じさせる内容だ。麻生太郎財務相は「世間に不安や誤解を与えた。政府の政策スタンスとも異なる」と受け取り拒否の理由を述べた。だが、報告書はその麻生氏の諮問を受けてまとめられており、公的な性格を持つ。内容が妥当でないというなら、政府内や国会で議論を尽くすのが筋ではないか。報告書の門前払いは、審議会が提起した年金の将来に関する問題まで封じてしまいかねない。自ら諮問しておきながら、選挙で不利になりそうだと見るや一転して突き放し、はしごを外す-。麻生氏のこうした姿勢も、政治に対する不信を招きかねない。報告書はもともと、高齢社会の資産形成に関するものだが、公的年金制度の限界を政府が認めたと受け取れることや、元本割れリスクもある投資を促すなどの内容は衝撃的だった。批判が拡大したのは、非正規労働者の増加や高齢者の貧困拡大など、国民が抱く生活実感とつながる面があったからではないか。その意味では、年金の給付水準低下や長い老後への備え方など、報告書が示唆する課題を国民に示し、幅広く考えるきっかけにできる可能性があった。参院選を控えた今だからこそ、与野党を超えて議論を深めなければならないはずだ。報告書をなかったことにするのは、そうした機会の放棄に等しい。今年は5年に1度行われる年金の財政検証の年だが、政府は検証結果の公表時期をいまだ明らかにしていない。参院選での争点化を避けるため、選挙後に先送りするとの見方も出ている。そうだとすれば、年金制度の現状と先行きの見通しを覆い隠そうとするもので、極めて不誠実だ。批判を強めている野党も、政権の姿勢を責めているだけでは済むまい。年金制度の持続可能性や負担と給付のあり方に踏み込んだ具体策をぶつけ、実りのある議論につなげる気構えが欲しい。

<高齢者の就労について>
*2-1:https://digital.asahi.com/articles/DA3S14045073.html (朝日新聞 2019年6月6日) 70歳就労、企業に努力義務 成長戦略素案 人手不足、効率化狙う
 政府は5日の未来投資会議(議長=安倍晋三首相)で、今年の成長戦略の素案を示した。70歳まで働ける場を確保することを、企業の「努力義務」として規定することなどが盛り込まれている。人手不足が深刻化するなか、限られた労働の担い手がより長く働けるようにして、生産性を上げる狙いがある。今月下旬にも閣議決定する。盛り込まれた施策について、必要な法律の改正案は2020年の通常国会に提出する。安倍首相はこの日の会議で、「急激な変革の時代にあって、人や資金が柔軟に動けるよう、これまでの発想にとらわれない大胆な政策をスピーディーに実行していかなければならない」と述べた。「目玉」と位置づけるのは、高年齢者雇用安定法を改正して、70歳まで働きたい人が働けるようにすることだ。希望する人に働く場を提供するため、定年廃止や定年延長、他企業への再就職、起業支援など七つの選択肢を示す。どれを採り入れるかは各社の労使などで話し合う仕組みだ。いずれかの方法で70歳まで雇用することを当初は罰則のない「努力義務」として企業に課し、定着するかをみる。運転手不足が深刻な運送分野も重点的に盛り込まれた。一つは、マイカーによる有償での運送だ。「白タク」行為として原則禁止されており、現在は過疎地域などで限定的に「自家用有償旅客運送」として認められている。今回、この制度をさらに緩和。民間のタクシー会社が配車手続きなどで参入しやすくする。タクシーに見知らぬ人同士を乗せる「相乗り営業」については、今年度中にも通達を出して実現させる。そのほか、地方銀行と地方のバス会社が合併しやすくする特例法案を提出し、単独で生き残りが難しい地域での企業再編を促す。また、以前の成長戦略から継続する政策として、高齢運転者による事故防止策を明記。安全運転支援機能がある自動車に限定した高齢者の運転免許制度の創設に向けて、今年度内に方向性を定める。今後の課題として、戦略では「個人が組織に縛られ過ぎず、付加価値の高い仕事ができる社会を実現する必要がある」と提言。兼業・副業を広めるための議論を加速させるとした。一方、昨年の成長戦略で重点施策として掲げられた152項目のうち、4割が1年で達成すべき目標に満たなかった。ニッセイ基礎研究所の矢嶋康次・チーフエコノミストは「本来、成長戦略は企業活動を活発にするための規制緩和を掲げるべきものだ」とした上で、「夏に選挙があるため、風当たりのきつくない政策を並べている。成長力アップにどの程度役立つのか疑問だ。目新しい政策を並べるより、過去に掲げた目標を点検し、不十分な分野を加速させるべきだ」と話した。
■成長戦略実行計画案に盛り込まれた主な施策
◆70歳までの就業機会確保を企業の「努力義務」として規定
◆マイカーの有償運送にタクシー事業者らが参画しやすくする規制緩和
◆タクシーに見知らぬ人同士が乗る「相乗り営業」の解禁
◆100万円を超える銀行業以外の送金
◆地方銀行、乗り合いバス事業者の経営統合や共同経営を容易に

*2-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190606&ng=DGKKZO45748260W9A600C1MM8000 (日経新聞 2019年6月6日) 「新陳代謝」に遅れ 雇用改革踏み込めず
 人口減少が進む日本で人手不足を「成長の天井」にしないためには、効率よく働いて成果を高める「労働生産性の向上」の道を歩む必要がある。今回の計画では地銀の再編支援などを盛り込んだ。だが産業の新陳代謝を促し、付加価値が高い分野に人を動かす抜本策は踏み込み不足だ。日本生産性本部の国際比較によると、日本の労働生産性(就業1時間あたり付加価値)は2017年に47.5ドルだった。10年代以降、米国の3分の2程度の水準が続き、主要7カ国では最下位が定位置だ。原因の一つは成長分野への人材再配置の遅れにある。「日本再興戦略」と称した第2次安倍政権で初の成長戦略では、「開業率・廃業率10%台を目指す」と明記していた。それぞれ当時は4~5%程度。17年度の開業率は5.6%どまりで、廃業率は逆に3.5%まで下がった。目標未達の検証は十分でない。本来は企業の存続と雇用の問題は切り離し、生産性の低い企業には退出してもらうのが筋だ。企業の再編も既存の事業を救うためでなく、産業の入れ替えにつなげる必要がある。70歳までの就業機会の確保は少子高齢化への処方箋の一つとして評価できる。ただ単なる雇用延長だけでは日本全体の生産性の足を引っ張りかねない。裁量労働制の対象拡大や解雇規制の緩和など、ハードルが高い本丸の課題はなお積み残されている。

<高齢者は能力がないとアピールする高齢者差別>
*3-1:https://www.nishinippon.co.jp/item/n/516005/ (西日本新聞 2019/6/5) 追突事故後に加速 600~700メートル ブレーキ痕なし 福岡市の高齢者逆走
 福岡市早良区百道2丁目の交差点付近で4日夜、6台が絡み9人が死傷した多重事故で、交差点に突っ込んだ乗用車は反対車線を約600~700メートル逆走して次々と車と衝突し、事故現場には目立ったブレーキ痕も残っていなかったことが5日、捜査関係者への取材で分かった。福岡県警は、乗用車が同じ車線を走行する前方の車に追突した最初の事故直後に逆走を開始し、加速を続けて猛スピードで交差点に突っ込んだとみて調べている。
●死亡は運転81歳男性と76歳妻
 福岡県警は乗用車を運転し、死亡した2人の身元について、同区原3丁目、小島吉正さん(81)と妻節子さん(76)と発表。自動車運転処罰法違反(過失運転致死傷)容疑で、5日午前から乗用車と関係車両の計6台の実況見分を始めた。車の破損状況などを調べ、事故の詳しい経緯や原因の解明を急ぐ。事故は4日午後7時5分ごろに発生。県警の調べや目撃者の話を総合すると、乗用車は県道を交差点に向けて北上中、同区藤崎2丁目の動物病院付近で前方を走る車に追突、直後に対向車線にはみ出して逆走した。その後、前から走ってきた車やタクシーに次々と衝突、交差点で右折しようとした車2台にもぶつかり、うち1台は歩道に乗り上げてひっくり返った。信号待ちをしていた歩行者の男性も巻き込んだ。県警によると、10~80代の関係車両の8人と通行人1人が病院に搬送された。小島さん夫婦はその後、死亡が確認された。残る7人は負傷したが、命に別条はないという。当日、孫の送迎で県道を交差点に向けて走行していた同区の70代男性は「動物病院近くでガシャーンと音がした後、『ププッ』とクラクションの音がして、猛スピードで(小島さんが運転していた)乗用車に右側から追い抜かれた。自分は中央線寄りの車線を走っていたので、乗用車は逆走で反対車線を真っすぐ走っていった。80キロ以上は出ていた気がする」と話した。県警によると、県道の制限速度は時速50キロ。乗用車は、追突事故をきっかけに何らかの理由で加速し、制限速度を大幅に上回るスピードを出していたとみている。

*3-2:https://www.nishinippon.co.jp/item/n/516217/ (西日本新聞 2019/6/6) 高齢者免許返納ためらう地方 海外は場所制限、定年制も
 高齢者が運転する車による悲惨な事故が相次ぐ中、運転免許制度はどうあるべきか‐。東京・池袋で4月、87歳が運転する車が暴走し母子2人が死亡。福岡市早良区では81歳の車が逆走で交差点に突っ込んだ。都心部では免許返納者が増えているが、交通の便が悪い地方で車は「生活の足」で返納にためらう人も少なくない。海外には運転する場所などを制限する高齢者向け「限定免許」や定年制を採用する国もあり、高齢ドライバーの事故防止に各国が試行錯誤している。「(池袋と)同じような事故を起こすかもしれないと恐ろしくなった」。同区の平野澄雄さん(84)は5月23日、免許を返した。元タクシー運転手で無事故運転が自慢だったが、妻の不安などが背中を押した。福岡県警によると、池袋の事故後、免許返納者は増加傾向で、例年の倍の105件に上った日もあった。交通機関が充実した都心部でも事情は一様ではない。同市城南区の主婦(72)は「加害者になってしまったら…」と恐怖がよぎる一方で、夫(78)の病院への送迎や買い物に車は「手放せない」と悩む。地方では返納に「高いハードル」がある。高齢者の免許返納率が九州で最も低い熊本県の八代市泉町に住む森山和俊さん(78)は「車がないと何もできない」と訴える。買い物や病院、老人クラブの会合場所は約30キロ離れ、バスは1日4~6便のみ。「免許は自立の証し。衰えも感じないし、返納は考えてない」
   ◇    ◇ 
 警察庁によると、昨年の免許保有者10万人当たりの交通事故件数は494件。65~74歳はこれより少なく、75~79歳は533件▽80~84歳604件▽85歳以上645件と年齢とともに増加。一方、16~19歳1489件、20~24歳876件と若者の事故率の方が高い。ただ、山梨大の伊藤安海教授(交通科学)は「高齢者の運転能力は加齢に伴う目の衰えなどにより、若い人に比べて個人差が出やすい」と指摘する。「事故を予防するためにも『限定免許』を導入し、限定免許になった時点で返納後の生活設計もするべきだ」と話す。ドイツやスイスが導入している限定免許は、運転は昼間に限り、場所も制限する。速度制限を設ける国もある。日本も政府が2017年から導入を検討しているが、結論は出ていない。オーストラリアや米国では運転技能を見極める実技試験を取り入れている州もある。日本は70歳以上に講習を義務付け、75歳以上には認知機能検査も加わるが、実技試験はない。九州大の志堂寺和則教授(交通心理学)は「高齢者の中には運転能力を過信する人もいる。免許更新時に運転技能を確かめる仕組みが必要」と強調する。「年齢の上限が必要」‐。池袋の事故後、インターネット上には、定年制を支持する書き込みも目立った。中国は70歳までの定年制を採用する。福岡県警幹部は「年齢と運転能力は別。年齢で一律で区切って“返納しろ”は行き過ぎ」と慎重だ。

*3-3:https://www.agrinews.co.jp/p47834.html (日本農業新聞論説 2019年6月4日) 高齢運転事故防止 生活支援の体制整備を
 高齢ドライバーによる交通事故が後を絶たない。子どもらが犠牲になる痛ましい事故も相次いでいる。だが、免許の自主返納を勧めるだけでは、問題は解決しない。返納しても生活に困らない支援体制づくりや、先進技術を活用した運転支援など総合的な対策が急務だ。高齢者の運転については、農山村で暮らす農家らの関心が高く、日本農業新聞にもさまざまな声が寄せられている。免許を自主返納し、その後は電動自転車やタクシーなどの代替手段を使って支障なく暮らしている人もいる。しかし、交通事情や行政の支援、農業経営の規模など個人や地域で差があり、返納をちゅうちょする人もいる。70代後半の男性は「返納したいが、そうすると暮らしていけなくなる」と切実に訴える。返納の有無にかかわらず、対策が遅れているのが実態だ。政府は5月末、相次ぐ高齢者による事故を受けて、交通安全対策に関する関係閣僚会議を開いた。安倍晋三首相は、①高齢者の安全運転支援②免許を返納した場合の日常生活支援③子どもの移動経路の安全確保──を指示、早急な対策を求めた。60歳以上を対象にした内閣府による高齢者の経済・生活環境調査(2016年)では、買い物に行くときの手段で6割が「自分で自動車などを運転」と回答。公共交通機関や家族の運転する車、タクシーを利用するとの回答は計1割にも満たなかった。17年交通安全白書で、免許人口10万人当たりの死亡事故件数は、最多が75歳以上(8・9件)で、次いで16~24歳(7・2件)となった。75歳以上の層は、70~74歳に比べ2倍多く発生しており、高齢になるほど死亡事故につながりやすい。原因は視力や認知力、判断力の低下によるものとみられている。だが、免許を返納して交通手段が絶たれると、困るのが買い物と通院だ。近年は、こうした高齢者の生活や外出を支援しようと、国や行政の助成事業を活用して地域住民自身が高齢者の通院や買い物に付き添う支援をしたり、ショッピングセンターなど買い物ができる場所にミニデイサービスを設置したりする動きも出てきた。運営に携わる関係者は「地域住民に困り事を聞き取ったところ、草刈りとともに『買い物や病院に行く手段がない』が最も多かった。この悩みは全国共通。国や行政が本格的に支援体制をつくるべきだ」と指摘する。ブレーキとアクセルを踏み間違えた際のスピード抑制装置などが搭載された「先進安全自動車(ASV)」導入への補助も必要だ。高齢者を対象にした購入支援の検討は始まったばかりだが、早期に実現すべきだ。政府は早急に、高齢者の生活・外出支援体制を整備すべきだ。JAは行政と連携し、生活支援事業の推進に力を入れてほしい。年を重ねても安全に暮らし続けられる地域をつくることが求められている。

<科学技術の進歩を活かせ>
*4-1:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO45930890R10C19A6000000/?n_cid=NMAIL006 (日経新聞 2019/6/11) 高齢者向け新免許創設 メーカーは安全機能の開発競う
 政府は75歳以上の高齢ドライバーを想定し、新しい運転免許制度を創設する方針です。安全運転の支援システムを搭載した自動車に限定して運転を認める枠組みで、新免許は新型車の買い替え需要を促しそうです。75歳以上の高齢ドライバーは2018年末時点で563万人で、18年の高齢者による死亡事故は全体の約15%を占めています。最近でも福岡市や東京・池袋で高齢ドライバーによる死亡事故が相次ぎ発生。高齢ドライバー対策を求める世論が高まったことから、政府も制度面の検討を急ぐ必要があると判断しました。企業も対策に動き始めています。08年に富士重工業(現SUBARU)が安全運転支援システム「アイサイト」を開発。10年に乗用車「レガシィ」に搭載しました。トヨタ自動車は15年から先進安全システム「トヨタセーフティセンス」を導入。「アルファード」や「ヴェルファイア」といった上級ミニバンなどに夜間の歩行者を検知する自動ブレーキを標準搭載しました。トヨタとデンソーはアクセルとブレーキの踏み間違いなどによる事故を防ぐ後付け装置を開発。19年内には「プリウス」や「ヴィッツ」など12車種に取り付けられるようにします。

*4-2:https://www.nishinippon.co.jp/item/n/516218/ (西日本新聞 2019/6/6) 九電、買い取り単価7円 家庭発電の太陽光 FIT後方針
 九州電力が11月以降に家庭の太陽光発電で余った電力の10年間の買い取り期間が終了する契約者について、新たな買い取り単価を1キロワット時7円程度とする方針を固めたことが5日分かった。固定価格買い取り制度(FIT)が始まった2009年度に契約した家庭の単価は48円だった。九州で19年度中に期限を迎える契約は約10万件(出力約42万キロワット)に上る。九電が6日に発表する。九電と契約を結んでいる太陽光10キロワット未満の家庭などは2月現在で約37万件(同約170万キロワット)ある。期限が終了した家庭は、九電への売電継続や新電力会社への変更、蓄電池を活用した自家消費などを選択できる。FITは太陽光など再生可能エネルギーを普及させる目的で始まり、従来の単価は高く設定されていた。電力会社が再エネ電力を買い取る費用は「賦課金」として電気料金に上乗せされているため、消費者の負担軽減のために単価は段階的に下落し、九州は19年度で26円になっていた。電力会社はFITによって住宅用太陽光の余剰電力を10年間買い取ることを義務付けられているが、期限終了後は二酸化炭素(CO2)を排出しない電源としての価値などを勘案して電力各社が個別に単価を設定できる。経済産業省は大手電力各社に6月末までに料金プランを示すように求めている。既に四国電力が7円、関西電力が8円、東北電力が9円などと発表。一方、16年4月に電力小売り事業を始めた西部ガスは、FIT終了後の余剰電力を買い取るかどうかを検討している。他の新電力は九電の単価設定を踏まえ、九州地域での買い取り単価を公表する見通し。

*4-3:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO39489620Y8A221C1TJM000/ (日経新聞 2019/1/4) 深海の「レアアース泥」本格開発へ、資源量把握急ぐ
 深海底にある鉱物資源の開発が本格化する。産業技術総合研究所や海洋研究開発機構などのチームが国の支援のもと、2月に南鳥島周辺の海域でレアアース(希土類)を高濃度で含む泥「レアアース泥」の含有量を調査する。沖縄周辺の海域にある「熱水鉱床」の開発でも研究は進む。産業化には正確な埋蔵量や品質の把握が欠かせない。「予定よりも早く調査が進んでいる」。内閣府の研究プログラム「SIP」の一環で海底資源の開発に挑む石井正一プログラムディレクターは笑顔を見せる。2018年秋に先行して実施した航海では、南鳥島周辺の水深5000メートルの海底の25カ所から試料を採った。18年度内に解析する。19年も海底の地質調査を進め、海洋機構や産業技術総合研究所などがレアアース泥の量を正確に推定する。22年度には南鳥島近海で試験採掘をする計画だ。南鳥島近海では14年ころから、東京大学や企業約30社などがつくる民間団体が調査や採掘技術の開発を進めてきた。東大の加藤泰浩教授らが13年に磁石に使うネオジムなどを高濃度で含むレアアース泥を発見し、国も開発の支援に動き出した。加藤教授は「市場価値の高いレアアースが多く含まれており、泥から鉱物を取り出す工程も簡単だ」と話す。専用の管で泥を海上へ引き揚げ、酸に浸すと泥の中の鉱物が溶けて取り出せる。石井プログラムディレクターは「資源量を正確に把握し、なるべく早く産業化したい」と話す。国はこれまで、より浅い海底にある熱水鉱床の開発に力を入れてきた。熱水鉱床は金属を含む熱水が噴き出してできたもので銅や亜鉛、金などを含む。水深1000メートル前後にあり、比較的調査しやすく研究が進んでいる。17年には沖縄周辺で採掘試験に成功した。まだ産業化には調査不足だ。石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)によると、産業化には1日あたり5000トンの採掘規模が必要だという。この規模で何十年も採掘を続けられる資源量があるかは不明だ。現状ではどちらの資源も採算は不明だ。熱水鉱床の場合、経産省の試算では設備投資に1183億円、運営に年232億円かかり、採掘期間を20年とすると834億円の赤字になる。レアアース泥の場合、加藤教授らの13年の試算では約750億円の設備投資を約16年で回収できる。ただどちらも様々な仮定を伴う。石井プログラムディレクターは「民間の参入を促すには、産業化した場合の全体像を示すことが必要」と話す。SIPでは詳細調査を進めて、企業の事業判断に必要な情報をそろえる考えだ。中国や韓国、インド、ロシアでも海底資源の埋蔵量の調査が進む。国連下部組織の国際海底機構は、20年をめどに環境影響などを考慮した海底資源開発のルールを作ろうとしている。「採掘が海底の環境に与える影響を調べる技術で日本は先んじている」(資源エネルギー庁)。このリードを生かしつつ産業につなげるには、企業を巻き込んだ調査結果に基づく議論が欠かせない。

<できないということを威張るな>
PS(2019年6月14、15日追加):*5-1には、「①老後の生活費が2千万円不足するとした金融庁の報告書をめぐって野党の追及が、年金制度を所管する厚生労働省にも向かっている」「②厚労省側は『年齢が上がると支出が減るので、厚労省は[5.5万円×12カ月×30年で2千万円不足]という単純な議論はしない』と主張」「③100年安心は制度の『安定』が原点で、現在の年金制度は、向こう100年持続可能性があるという意味」「④政府は2004年改革で、『マクロ経済スライド』を導入した」「⑤日本の公的年金は『仕送り方式』なので、高齢化に伴って現役世代の負担増か高齢者への給付減が起きる」「⑥年金に魔法の杖はなく、制度への批判は簡単だが大きな改革は難しい」などが書かれている。
 しかし、①は野党に頑張って追及して欲しいが、②の厚労省の答弁のうち「年齢が上がると支出が減る」というのは誤った仮定である。何故なら、高齢になる程に、医療・介護費、葬儀等の交際費がかかる上、家事も自分でこなすことが大変になって外注が増えるからだ。つまり、消費が減るのではなく、消費の内容が変わるのである。また、③は、年金制度が継続しても国民生活はより不安になるというふざけた話で、④については、マクロ経済スライドを導入したのは2016年の改訂であるため、虚偽だ(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000147284.html 参照)。さらに、⑤⑥については、1985年以前は積立方式(自分用に積み立てる形式)だったが、1985年にサラリーマンの専業主婦を3号被保険者にすると同時に賦課課税方式(国が取り立てて他の人に仕送りする形式)に変更し、徴収が不完全な上に目的外使用も多くて積立金不足になったのだから、国が責任を持って発生主義による引当方式に変更し、引当金不足額は税外収入で補えというのが、私の趣旨である。 
 なお、これは「魔法の杖」ではなく「技術進歩」の力ででき、*5-2のように、日本以外の国は既に海底資源を採掘しており、日本近海の排他的経済水域にもメタンハイドレートの形で大量のLNGが存在する。そして、サハリン沖の石油ガス開発事業には、三井物産や三菱商事が参加しているのだ。
 このような中、安倍首相がイランを訪問している最中の昨日、*5-3のように、日本の海運会社が運航するタンカーが、ホルムズ海峡付近で攻撃を受けたとしてイランに疑いがかかった。しかし、国営イラン通信は「イランの捜索チームが、2隻から船員44人を救助してイラン南部の港に運んだ」と報じており、イランが日本のタンカーを攻撃する理由もメリットもないため、私もイランが犯人ではないと思った。しかし、この“攻撃”の後、「ホルムズ海峡は日本の生命線」という報道が多くなって安全保障法制を正当化しており、(エネルギーを外国産原油に頼りきって)未だにここを“生命線”と呼んでいること自体が兵糧攻めに弱すぎて防衛失格だと思われる。
 また、中東ホルムズ海峡近くでタンカーが沈まない程度の騒ぎがあって、“敵”が誰かもわからないのを“攻撃”と呼ぶのはおかしいと思ったが、*5-4に、「①自民党の防衛相経験者の1人が『やはり安保法は必要だった』としている」「②2015年に成立した安保法では、ホルムズ海峡が機雷封鎖され日本への原油供給が断たれて政府が『存立危機事態』に当たると判断すれば、集団的自衛権の行使が可能」と書かれている。これらから、参議院議員選挙前に安保法を正当化するため、日本が自作自演の騒ぎを起こしたのではないかと考える。しかし、ホルムズ海峡経由の原油が絶たれると存立危機事態に陥るような国は、実力から見ても戦争はできない。

 

(図の説明:左図の2019年度予算を見て、年金・医療費等の金額が大きいのでこれを減らしさえすればよいと考える人がいる。しかし、それでは1人当たりのサービスが低下する上、保険料を支払って給付を受けているのに、税金投入額が大きいのはおかしい。これについては、「仕送り方式だから」「少子高齢化で支え手が減ったから」という説明がよくなされるが、右図のように、ベビーブーム世代が高齢化すれば高齢者が増えるのは当然なので、その世代が働き手だった間に退職給付相当額を引き当てておかなければならなかったのだ。そして、この退職給付会計は、世界では1985年に導入され、日本では《私の提案で》1998年6月にできて2000年4月以降に始まる事業年度から適用された。現在は、民間大企業の殆どが退職給付会計を採用している)

*5-1:https://digital.asahi.com/articles/DA3S14054990.html (朝日新聞 2019年6月14日) 「老後2000万円」厚労省弁明 元データを提示、報告書関与は否定
 老後の生活費が2千万円不足するとした金融庁の報告書をめぐり、野党の追及の矛先が、年金制度を所管する厚生労働省にも向かっている。2千万円と計算する際の元データは厚労省が提出していたからだ。年金批判の高まりを回避したい厚労省は、報告書は金融庁が独自に作ったものと距離を置くのに躍起で、制度の持続可能性を強調している。報告書を作った金融庁の審議会の議事録によると、厚労省の課長は4月の会合で、主に年金で暮らす高齢夫婦の家計について「実収入と実支出との差は月5・5万円程度」と資料を示して説明。資産形成の重要性にも言及していた。13日の参院厚労委員会では、この厚労省の説明が焦点となった。社民党の福島瑞穂氏は「公的年金だけでは暮らしていけない、あとは自己責任でやれということか」と批判。厚労省の局長は、課長はあくまでオブザーバーとしての参加であり、「5・5万円」は総務省の家計調査から引用したデータだったと強調した。さらに局長は、月5・5万円の赤字が30年続く想定とした報告書のとりまとめへの関与も否定。「協議を受けていない。向こう(金融庁)の責任で作成された」とした。根本匠厚労相も「課長は2千万円不足すると説明はしていない」。厚労委に先立つ野党の合同ヒアリングで、厚労省側は「年齢が上がると支出が減るので、厚労省は『5・5万円×12カ月×30年で2千万円不足』という単純な議論はしない」と主張した。2004年の年金制度改革のキーワード「100年安心」を巡る綱引きも激しさを増している。野党は、年金が老後の安定を保障しないことが報告書で明らかになったと攻め込むが、厚労省は「年金は老後生活の柱だが、年金だけで暮らせると言ったことはない」と反論。現在の年金制度は、向こう100年を見通した上で持続可能性のある仕組みと説明する。政府は04年改革で、現役世代の負担増に上限を設けつつ、現役世代の減少や平均余命の伸びに応じて年金額を自動的に引き下げる「マクロ経済スライド」を導入した。ただ、この仕組みでは少子高齢化に伴う年金水準の低下は避けられない。モデル世帯(40年間働いた会社員と専業主婦)が受け取る厚生年金が、現役世代の平均収入の何割かを示す「所得代替率」は14年時点で62・7%だったが、一定の経済成長を見込んでも43年度には50・6%に低下すると厚労省は試算している。民主党政権になる直前の09年時点でも、38年度に50・1%となる見通しが示されている。菅義偉官房長官は13日の記者会見で、報告書について「世間に著しい誤解や不安を与えた」と釈明。「公的年金が老後の生活設計の基本。(報告書は)政府のスタンスと異なる」として、正式な報告書としては受け取らない政府の立場を繰り返した。
■<視点>年金に魔法の杖ない
 金融庁の報告書問題を機に、「年金不安」の声が上がっている。制度への批判は簡単だが、大きな改革が難しいのも現実。旧民主党が挑んで挫折し、その後、政権も手放したことは記憶に新しい。高齢社会を迎え、年金の将来は有権者の関心事。それだけに、誤解を生む言葉も語られる。野党が攻勢でたびたび使う「100年安心」は代表格だろう。2003年の総選挙当時、坂口力・厚生労働相を出していた公明党が使い始めた。日本の公的年金は、現役世代が払う保険料を高齢者に渡す「仕送り方式」だ。高齢化に伴い、現役世代の負担増か高齢者への給付減が起きる。そこで、100年間を見通して収支を調整するしくみがマクロ経済スライド。現役の保険料に上限を設け、高齢者への給付をその範囲に抑える。100年安心は制度の「安定」が原点だった。有権者の耳には「十分な給付額」と届きやすい。年金への誤解を招くため、厚労省などは使うのを避けてきた。それだけに、安倍晋三首相が10日の参院決算委員会で「マクロ経済スライドで、100年安心という、そういう年金制度ができた」と答えたのは罪深い。給付の「安心」には、経済を成長させるとともに、より多くの人がより長く働いて保険料を払う社会をつくる努力が必要だ。制度改革に、魔法の杖はない。与野党が地に足をつけた年金論戦をすることこそ、報告書問題を機に有権者が最も望むことではないか。

*5-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190614&ng=DGKKZO46052490T10C19A6MM8000 (日経新聞 2019年6月14日) ロシア、LNG生産5倍に エネルギー相、最大7割アジア太平洋向け
 ロシアのアレクサンドル・ノワク・エネルギー相はモスクワで日本経済新聞と会見し、2035年までに液化天然ガス(LNG)の生産量を現在の約5倍に増やすと表明した。北極圏のLNG生産(総合2面きょうのことば)の拡大などで「世界市場のシェアを約20%に高める」方針だ。生産量の最大70%をアジア太平洋に輸出すると述べ、日本とエネルギー分野での協力関係を強化する。プーチン大統領は6月28~29日に大阪で開く20カ国・地域首脳会議(G20サミット)に出席する。サミット期間中の日ロ首脳会談では、エネルギー分野を中心とした経済協力も議題になる見通しだ。ロシアのLNG生産能力は、三井物産や三菱商事が参画するサハリン沖の石油ガス開発事業サハリン2と、北極圏のヤマルLNGなどを合わせて約2800万トン。ノワク氏は「35年までに1億2000万~1億4000万トンに引き上げる計画だ」と明言した。18年時点で約6%にとどまる世界の市場シェアを約20%まで引き上げる。LNG市場での18年の国別シェアはカタールやオーストラリアが20%を超える。シェールオイルの増産が進む米国も存在感を高めている。ロシアはカタールなどに並ぶLNG輸出大国をめざす。ただロシアの大幅な増産は、世界的なLNGの供給過剰に拍車をかける可能性が高い。LNG増産に関し、ノワク氏は「ロシアの北極圏だけで74兆立方メートルの天然ガスがあり、多くの未確認の埋蔵量もある」と指摘した。ロシアのガス大手ノバテクが計画するアークティック2やサハリン2の増設など新規プロジェクトを念頭に「20%のシェア獲得へ必要な資源や競争力など潜在力はすべてある」と自信を示した。

*5-3:https://mainichi.jp/articles/20190614/ddm/003/030/023000c (毎日新聞 2019年6月14日) タンカー攻撃 日本の生命線で誰が ホルムズ海峡緊張増す
 日本の海運会社が運航するケミカルタンカーが、中東のホルムズ海峡付近を航行中に攻撃を受けた。安倍晋三首相がイランを訪問し、緊張緩和を呼びかけていた最中の事件。日本に衝撃を与えるとともに、米国とイランを軸にした中東地域の緊迫化がさらに進みそうだ。13日に起きたタンカー2隻への攻撃について、バーレーンに司令部を置く米海軍第5艦隊は「早朝に二つの遭難信号を受信し、救援に向かった」との声明を発表。一方、国営イラン通信は「イランの捜索チームが、2隻から船員44人を救助してイラン南部の港に運んだ」と報じており、対立する米・イラン双方が共に「救助にあたった」との主張を展開する。(以下略)

*5-4:https://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201906/CK2019061502000162.html (東京新聞 2019年6月15日) 自衛隊派遣論 緊迫進めば高まる恐れも
 岩屋毅防衛相は十四日、中東ホルムズ海峡近くでの日本のタンカー攻撃に関し、現時点での自衛隊派遣を否定した。日本人に被害がなく、攻撃した相手も不明だからだ。ただ、米・イラン関係や現地情勢がさらに緊迫すれば、自民党内から安全保障関連法による自衛隊派遣を求める声が上がる可能性もある。岩屋氏は閣議後の記者会見で「現時点で自衛隊へのニーズ(需要)は確認されておらず、部隊を派遣する考えはない」と述べた。日本が直接攻撃された際に反撃する個別的自衛権発動の要件は満たさないとの見解を示した。一方、自民党の防衛相経験者の一人は「やはり安保法は必要だった」と自衛隊派遣に意欲を隠さない。安保法の施行で「あらゆる事態」に応じて自衛隊を海外に派遣できるようになったことが念頭にある。例えば、米・イランが戦争状態になり、ホルムズ海峡が機雷封鎖された結果、日本への原油供給が断たれ、政府が「存立危機事態」に当たると判断すれば、集団的自衛権の行使が可能になる。二〇一五年に成立した安保法の審議の際には、安倍晋三首相が海上自衛隊によるホルムズ海峡での機雷除去を集団的自衛権行使の事例に挙げた。政府は、戦時の掃海活動は機雷をまいた国の防御力をそぐ「武力行使」とみなされる可能性があり、実施するには集団的自衛権行使を認めなければならないと主張。首相は審議の終盤、当時の国際情勢からは海峡封鎖は想定できないとして事例を撤回したが、今後の展開次第ではこうした派遣論が再浮上しかねない。名古屋学院大の飯島滋明教授(憲法学)は本紙の取材に「安保法が成立した今、機雷敷設が現実になれば、自衛隊が米軍の求めに応じて掃海艇を派遣せざるを得ないことはあり得る。米国に追従する姿が反米勢力の反発を買い、自衛官が危険にさらされる恐れがあるだろう」と懸念を示した。

<生活できるためには?>
PS(2019年6月17日追加):*6-1のように、問題になった金融審議会報告書は、将来の公的年金給付水準について、当初は「中長期的に実質的な低下が見込まれる」と記載したが、最終的には「調整されていくことが見込まれる」に修正したそうだ。本当は、「『マクロ経済スライド』を導入してインフレ政策をとることにより、給付水準を低下させる」と言うのが正しく、国民を犠牲にして年金制度を維持するという知恵も工夫もない愚策である。さらに、言葉を曖昧にすれば実態が変わるわけではないので、国民に実態を見えにくくしたにすぎない。
 そのような中、*6-2のように、就職氷河期に高校・大学を卒業した氷河期世代は、新卒時に正社員になれず、今も無職や派遣・アルバイトなどの非正規雇用割合が他の世代より高く、厚生年金に入れないため無年金・低年金予備軍となっているそうだ。そのため、*6-3のように、社会保障の支え手を拡大し、正社員としての勤務年数が短い氷河期世代や女性・高齢者・外国人が損をしない能力給中心の給与体系に変え、公正な評価をする仕組みに変える必要があるわけだ。また、「70歳までの就業機会確保」「勤労者皆保険制度」は、必要である。
 そうすると、これまで差別によって優遇されてきた男性労働者から不満が出るかも知れない。また、世代間の公平性がないと言う人もいるが、年金制度がなかった時代は、年金保険料は支払わなくてもよいが、親に直接仕送りしたり、親と同居して経済的・物理的援助をしたりしなければならなかった。一方、現在それを求める親は殆どおらず、年金保険料は支払わなければならないものの、より自由な職業選択ができ、活躍できそうな新産業も次々と芽生えている。
 例えば、*7-1のように、農業も現代化しつつあり、「マーケットイン」「スマート農業」「輸出」などを目標にして、成長産業になりつつある。また、戦後植林した木が伐採期を迎えて林業も有望な産業になっている。*7-2のように、「国有林を大規模に伐採・販売する権利を民間業者に与える改正国有林野管理経営法が、2019年6月5日の参院本会議で自民・公明・国民民主・日本維新の会などの賛成多数で可決・成立した」というのは、国民の資産を二束三文で民間に譲渡するもので大規模なドロボーの合法化だが、このような国民全員の財産を相当の料金をもらって民間企業に伐採させ、税外収入を得て政府のこれまでの年金政策の失敗をカバーすれば、林業や森林の維持管理も重要な産業になりつつあるだけに問題解決に近づく。
 さらに、*7-3のように、2030年までに世界の海底地形図を作って資源探査することが可能になり、日本近海での資源開発にも役立ちそうだ。ただ、日本で鉱業を行うには、日本には鉱業会計すらないため、国際会計基準(IFRS)の鉱業会計を早急に採用する必要がある。

  
 2019.6.16東京新聞  三菱UFJリサーチ&コンサルティング    総務省統計局

(図の説明:左図のように、金融庁金融審議会報告書は、「マクロ経済スライド」による公的年金水準の低下に関する表現を曖昧にし、中央の図のように、資産形成によって不足分を補うよう奨めているが、ここでモデルとされているような家計はむしろ少ない。なお、右図は、2012年時点の産業別営業利益率だが、現代のニーズに合ったことをすれば、新市場を作ったり、売上高や利益率を劇的に上げたりできることが介護市場を見れば明らかである)

*6-1:https://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201906/CK2019061602000142.html (東京新聞 2019年6月16日) <「消された」報告書を読む>(中)年金給付水準「調整」 実質は「低下」表現修正
 老後に公的年金以外で二千万円の蓄えが必要と試算した金融庁金融審議会の報告書は、将来の公的年金の給付水準について「今後調整されていくことが見込まれている」と記した。先月二十二日に示された当初の報告書案には、給付水準について「中長期的に実質的な低下が見込まれている」と「低下」の文字があったが、最終的に「調整」に修正した。「調整」とは、現役世代が支払う保険料の上限を定め、現役世代人口の減少や平均余命の伸びに応じ給付水準を徐々に引き下げる「マクロ経済スライド」という仕組みを指す。年金制度を維持するための仕組みだ。厚生労働省が二〇一四年に公表した年金の財政検証では、この「調整」の結果、年金給付水準は約三十年後の四三年度まで下がり続ける見通しを示した。財政検証によると、現役世代の平均手取り収入に対し、夫婦で受け取ることができる年金額の割合を示す「所得代替率」は、一四年度に62・7%だったが、その後は二〇年度が59・3%、四〇年度が51・8%、四三年度の50・6%まで低下することを示した。修正前の報告書案に記された「実質的な低下」という表現は、こうした試算に合致する内容だ。当初の報告書案には、この他にも年金の給付水準を巡り「今までと同等だと期待することは難しい」「今後は公的年金だけでは満足な生活水準に届かない可能性がある」などの厳しい表現が並んでいた。みずほ証券の末広徹氏は、報告書の表現が当初案から変更されたことについて「国民が萎縮しないようバランスを考えて調整したと思うが、給付水準が実質的に低下するとの見通しは厚労省の財政検証の結果なので、ストレートに伝えるべきだった」と指摘する。また末広氏は、年金財政の負担と給付に関する正面からの議論を、政府が避けようとする傾向について「今回もうやむやにして先送りすれば、次に年金問題が注目された時は、この程度のショックでは済まないだろう」と懸念する。 

*6-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190616&ng=DGKKZO46163500V10C19A6EA1000 (日経新聞社説 2019年6月16日) 氷河期世代の支援にもっと知恵を絞れ
 就職氷河期という言葉がある。バブル経済の崩壊後、1993年からの10年あまりの間、日本企業が新卒採用を極端に絞った長期低迷期を指す。この期間に高校・大学を卒業した氷河期世代は30代半ば~40代後半になっている。無職や非正規雇用の割合がほかの世代より高いのが特徴だ。日本の中核的な層が不安定雇用に甘んじているのは、本人にも日本経済にもマイナスが大きい。産業界と政府・自治体が知恵を出し合い、効果的に支援する必要がある。氷河期世代は第2次ベビーブームの1970年代前半に生まれた団塊ジュニア世代を含む。明確な定義はなく、2300万人を超すという見方がある一方、政府は1700万人程度とみている。新卒時に正社員になれず、今なお派遣やアルバイトで生計を立てる人の割合が相対的に高い。無職者は40万~55万人、不本意なまま非正規社員を続けている人は50万~70万人と推計されている。社会保障についても不利益を強いられがちだ。国民年金の保険料を払う経済的余裕が乏しいのに減免手続きを怠り、未納を放置している人が多いとみられる。無年金・低年金者の予備軍だ。数十年後には生活保護に頼る人が続出することが想定される。経済面の制約から未婚者が多く、少子化の原因にもなっている。介護を家族に頼れない不安もある。本人の職への意識を高める必要があるのは言うまでもないが、非正規雇用の固定化などを本人の責任だけに帰すのは酷だろう。再チャレンジ支援に熱心な安倍晋三首相の意を受け、政府の経済財政諮問会議が氷河期支援を提起した。政権は今週まとめる骨太の方針に、3年間に30万人を正社員化する政策目標を盛り込む。重要なのは、根拠に基づく実効性が高い支援策だ。職業訓練・資格取得・学び直しのメニューを漫然と羅列したり、たんに人手不足が著しい業界に送り込もうとしたりしても、正社員として定着するのは難しいだろう。企業経営者も支援に責務を負っているが、正社員化の目標が独り歩きするようでは意味がない。一口に氷河期世代といっても置かれた状況はさまざまだ。例えばこの世代が得意とするデジタル技術の習熟度を高めてもらい、自宅で仕事を請け負う環境を充実するのも一案だ。企業側と本人双方の意欲と工夫が問われている。

*6-3:https://www.nikkei.com/paper/related-article/tc/?b=20190616&bu=BFBD9496EABAB・・ (日経新聞 2019年6月16日) 支え手拡大へ雇用改革 社会保障維持へ骨太素案 、氷河期世代、正規30万人増へ 女性・高齢者、年功から能力給に
 政府が11日示した経済財政運営の基本方針(骨太の方針)の素案では、社会保障の支え手拡大に軸足を置いた。働く高齢者や女性は増えており、雇用形態にかかわらず能力や意欲を評価する仕組みに変えていけるかが課題だ。今年の骨太で焦点を当てた就職氷河期世代が生まれたのは新卒採用に偏重した雇用慣行にある。年功序列と一括採用を前提にした日本型雇用の転換が急務だ。骨太の素案では「全世代型社会保障への改革」を柱に据えた。70歳まで就業機会を確保するよう企業に定年延長などの環境整備を求める。パート労働者すべてが厚生年金などに加入する「勤労者皆保険制度」の実現を掲げた。長く働き、税金や社会保険料を負担する人を増やす政策だ。厚生年金は年収106万円を超えると、保険料を払う必要がある。その負担を回避する目的で就労調整するパート労働者は多い。政府は年金保険料を負担するパートを増やすため、年収基準の引き下げを含めた公的年金の改正法案を2020年の通常国会に提出する。女性や高齢者を中心に社会保障の支え手である就業者は増えている。総務省によると、18年(平均)の就業者は6664万人となり、過去最高だ。過去5年間に増えた分の7割を占めたのが女性。一般に子育て期とされる30歳代前後の女性で就業率が下がる「M字カーブ」は緩やかになってきた。さらに年齢別では65歳以上の高齢者が35%増と高い伸びを示す。ただ、女性や高齢者は社会保障の支え手として1人あたりの稼ぐ力は十分とはいえない。女性や高齢者の雇用形態はパートなど非正規が多い。例えば、65歳以上になると非正規比率は75%を超す。パート労働者の平均賃金は月10万円弱。30万円台の正規社員と比べれば格差は大きい。日本企業の間では一定の年齢になると退職・再雇用の扱いとなり、賃金を一律で3割下げるといった措置がある。女性は育児休業で勤続年数が短くなると、男性に比べ賃金は低くなりやすい。年功型から能力に応じた制度へと変える必要がある。25年には団塊の世代がすべて75歳以上の後期高齢者になる。その時点で75歳以上の人口は2180万人となり、15年比で3割以上も増える。一方、60歳代は約2割減る。社会保障の支え手として高齢者の働き手を増やし続けるのはいずれ限界が来る。働く高齢者の年金を減らさないよう、在職老齢年金の廃止を含めて働く意欲や質を高める政策も課題になる。「就職氷河期世代への対応は、わが国の将来に関わる重要な課題だ。計画を策定するだけでなく、実行こそが大事だ」。安倍晋三首相は11日の経済財政諮問会議でこう語り、関係閣僚に対応を指示した。素案では今後3年間を「集中支援期間」とし、30代半ばから40代半ばの氷河期世代の就職を支援する考えを示した。この世代の正規雇用で働く人を3年間で30万人増やすことをめざす。全国の支援拠点と連携し、就業に直結しやすい資格取得などを促す。氷河期世代が卒業したのは1993年から04年ごろ。バブル経済の崩壊やその後の金融危機の影響で、企業が新卒採用を大幅に絞った時期だ。他の世代に比べ、正規で働きたくても働けない不本意な非正規が多い。氷河期世代で非正規や働いていない人は90万人を超す。高齢化すると十分な年金を受け取れず、生活保護に頼る世帯が急増すると懸念されている。この世代を正規社員として働けるようにするには、新卒一括採用と終身雇用の見直しが欠かせない。景気後退期に就職活動する世代が希望通りの仕事に就けない問題は潜在的にある。新たな氷河期世代を生まないためにも中途採用の拡大を進めていく必要がある。

*7-1:https://www.agrinews.co.jp/p47681.html (日本農業新聞 2019年5月17日) 新時代の農業技術 消費者意識して導入を
 時代を先読みした技術を取り入れよう。キーワードは「マーケットイン」と「スマート農業」。消費者が求めているものを的確に把握し、それに応じた生産に取り組むとともに、新しい技術をどう生かしていくか。時代のニーズに応じた生産や技術の導入が求められている。マーケットインの生産とは、消費者ニーズを栽培に取り入れようとする取り組み。日本農業新聞営農面の「農業技術ネクストエイジ」では平成の時代に開発されたり、広く普及したりした技術や品種を連載した。その中で、かんきつのマルチ・点滴かん水同時施肥法(マルドリ栽培)や根域制限栽培を紹介した。水分を与える量を制御することで、糖度を高める技術だ。消費者が求める甘いかんきつが生産できるとして、産地に広く普及した。出荷作業も同様だ。果実を切ることなく、糖度を測ることができる光センサーを取り上げた。花きのバケット輸送システムは、生花を長く楽しみたいという声に応えた技術。バラなど鮮度保持が難しい品目でも、日持ちの向上につながった。安全・安心は当たり前になった。化学合成農薬を減らし、天敵などを取り入れた総合的病害虫・雑草管理(IPM)は、広く普及した。一方、長期的な影響を踏まえ「安心できない」という消費者心理が働いた遺伝子組み換え(GM)技術や体細胞クローン技術は、普及につながらなかった。今夏にも流通する可能性があるゲノム編集で作られた作物も、消費者が安心して購入するのか。産地は見極めが必要だ。少子高齢化に伴う人口減で日本の「胃袋」は年々小さくなっていく。貿易自由化で輸入農産物は増え、消費者に選ばれる産地をどうつくるかが、重要になっている。食味や鮮度、安全性、食べやすさ、便利さなど時代のニーズに的確に応えられる技術が求められる。農村の高齢化や担い手不足に対応するため、連載企画では水稲の直まき栽培や不耕起V溝直播(ちょくは)、高密度播種育苗が進んだことを取り上げた。少ない労働力でも、大きな面積を耕作することができる技術だ。果樹の樹体ジョイント仕立ては高密度に苗を定植し、隣の木に接ぎ木する手法。樹高が一定で直線状に作業ができ、効率が高まる。酪農は規模拡大に合わせたユニットミルカーやミルキングパーラー、搾乳ロボットを紹介した。労働力不足は今後、さらに深刻化する。それを補う人工知能(AI)や情報通信技術(ICT)、ドローン(小型無人飛行機)などを駆使したスマート農業は課題解決の一つの手法ではあるが、農業のあらゆる課題を解決できるわけではない。ゴールは、作る側と食べる側がつながり日本農業を再生することだ。そのためにも、消費者を意識した技術の導入が不可欠である。

*7-2:https://mainichi.jp/senkyo/articles/20190605/k00/00m/010/113000c (毎日新聞 2019年6月5日) 改正国有林法が成立 大規模伐採を民間開放
 全国の国有林を最長50年間、大規模に伐採・販売する権利を民間業者に与える改正国有林野管理経営法が、5日の参院本会議で、自民、公明両党や国民民主党、日本維新の会などの賛成多数で可決・成立した。立憲民主、共産両党などは反対した。安倍政権は国有林伐採を民間に大きく開放して林業の成長産業化を掲げるが、植え直し(再造林)の失敗による森林の荒廃や、中小業者が淘汰(とうた)される懸念を残したまま、改正法は来年4月に施行される。改正法は、政府が「樹木採取区」に指定した国有林で伐採業者を公募。業者に与える「樹木採取権」の期間は50年以内と明記し、対価として樹木料などを徴収する。再造林の実施は農相が業者に申し入れるが、業者への義務規定はない。改正法では明文化されず今後の運用に委ねられた部分が多い。政府は当面全国で10カ所程度、計数千ヘクタールの樹木採取区を想定。「伐採期間は10年が基本」(吉川貴盛農相)と強調し、再造林は伐採業者との契約にも盛り込んで担保すると繰り返した。ただ、林野庁は現行の小規模な伐採でも、再造林の成功率などを示す全国のデータを把握していない。5日の採決に先立つ反対討論で、共産党の紙智子氏は「数ヘクタールの再造林で苗木が育たない山があるのに、数百ヘクタールを伐採すれば荒廃しかねない」と強調した。また改正法は中小業者の育成を掲げ、政府は業者の選定で財務基盤や取引先の優劣のほか、雇用増加などの地域貢献も「総合的に評価」すると答弁している。だが具体的な基準は明示されず、立憲民主党の川田龍平氏は討論で「超長期のリスクを取るのは中小業者には不可能だ。特定企業のみに50年の権利を設定するのでは、という疑念がぬぐえない」と批判した。改正法に賛成した与野党からも慎重な運用を求める声が続出し、政府は来春までに運用のガイドラインを作ってパブリックコメント(国民の意見公募)を実施する方針だ。

*7-3:https://digital.asahi.com/articles/ASM6753MSM67ULBJ00X.html?iref=comtop_list_sci_n01 (朝日新聞 2019年6月13日) 海底3億6千万平方キロを探れ 30年までに地図作成へ
 ロボット潜水艇で海底を測量し、地形図の正確さや範囲を競う国際探査レースで、海洋研究開発機構などの「チームKUROSHIO(クロシオ)」が準優勝し、日本人が参加する国際チームが優勝した。地球の7割を占める海の底は、月や火星より未知の領域が多い最後のフロンティア。海底にはどんな尾根や谷があり、どんな生き物がいるのか。レースで得られた知見をもとに、探査が本格化する。「世界の海の8割以上に詳しい地形図がない。新しい生き物や資源の探査には欠かせないのに」。レースを主催した米Xプライズ財団のジョーティカ・ヴァルマーニ事務局長は、1日にモナコであった表彰式で海底探査の意義を強調した。私たちが目にする世界地図の海底地形には、深い海溝や海底火山が描かれているが、ほとんどは解像度が1キロほどとデータが粗い。逆に、高温の熱水が噴き出す熱水鉱床などの周囲は、珍しい海洋生物や貴重な鉱物資源が集まるため詳しく調べられているものの、調査範囲が狭い。この間を埋める、詳しくて広い範囲の地形図が、開発や研究の現場から求められていた。しかし、船から人が潜水艇を操作する従来の探査では、1日に10平方キロほどを測量するのがせいぜいで、3億6千万平方キロに及ぶ広大な海を調べ尽くすのは無理がある。そこで、自動で調査できる水中ロボットの開発を後押しする国際探査レースが企画された。決勝は昨年11~12月、ギリシャ沖であった。出場したのは日米独などの5チーム。海洋機構や九州工業大、三井E&S造船、KDDI総合研究所などでつくるKUROSHIOは、全長5・6メートルの潜水艇と通信用の無人船を投入。悪天候で急きょ調査海域が変更になるなか、山手線の内側の面積の倍にあたる長さ34キロ、幅5キロの測量を成功させ、準優勝した。中谷武志共同代表は「海底を無人調査するなんて、レース前は20~30年先の技術と思っていた。造船や通信といった専門家たちが知恵を出し合って実現できた」と喜んだ。優勝は、日本財団が財政支援し、海上保安庁の職員も参加した国際チーム「ジェブコNFアルムナイ」だった。海底地形図づくりのプロを育てる米ニューハンプシャー大の研究コースの卒業生16人が日米ロなど10カ国以上から集まり、潜水艇の遠隔制御などそれぞれの得意分野を生かした。日本財団などは今後、ほかのチームにも参加を呼びかけて2030年までに世界の海底地形図をつくる構想だ。詳しい地形がわかれば、未知の生物がいそうな場所はないか、海底ケーブルをどう設置すればより安全か、新しい油田を探すのにどこが候補になりそうかなど開発や発見に役立つ。財団の海野光行常務理事は「私たちの支援はレースのためだけではなく、その先を見据えたもの。ここからが始まりだ」と話した。

<高齢化による新市場の出現>
PS(2019年6月19日追加):佐賀県吉野ケ里町が、*8-1のように、高齢者が地域で安心して暮らせるよう、セブン-イレブン2店と高齢者見守り協定を結んだそうだが、このように新しいニーズをとらえて対応すると、新市場ができたり、従来の営業のプロモーションになったりする。しかし、*8-2のように、「高齢者=認知症≒子ども」というような単純な発想で、看護師・介護師に親しすぎる言葉で話しかけられるのは、(人によっては)尊厳を無視されたようで嫌なのである。そのため、看護師・介護師は、相手の言葉遣いや態度から、相手の要望を見分ける必要がある。私の女学校卒の大叔母は、90代の時、「『ちーちーぱっぱ』のようなくだらない歌を歌わされるので、ショートステイには行きたくない」と言っていた。そのため、介護施設も、「高齢者≒子ども」という扱いは慎み、相手のニーズに合ったことをすべきだと思う。
 なお、人口動態において先進国の日本は、「高齢者が本来もらう筈だった年金や社会保障を削減する」という最も安易で工夫のない政策をとらなければ、このような新しく必要となる財やサービスを作りだして世界に普及する先進国になった筈だ。何故なら、世界もまた、*8-3のように、次第に高齢者の割合が増えていき、日本と似た道を辿るからである。

  
主要国の人口高齢化率長期推移        日本の人口ピラミッドの変化

*8-1:https://www.nishinippon.co.jp/item/n/519143/ (西日本新聞 2019/6/17) セブン-イレブン2店が高齢者見守り 吉野ケ里町と協定
 吉野ケ里町は13日、地域の高齢者を見守り、異変に気づいた際には連絡をしてもらえるようコンビニチェーンのセブン‐イレブン・ジャパンと協定を結んだ。高齢者がいつまでも地域で安心して暮らせることを目的に、住民と接する機会の多い企業などと協力して高齢者の見守りを図る「吉野ケ里町ふれあいネットワーク」事業の一環。セブン‐イレブン側は以前から他の自治体で来店したり商品の配達サービスを利用したりする高齢者などへの声掛けに取り組んでおり、町に打診し協定が実現した。協定をもとに、町内の2店舗は商品の配達時などに高齢者の安否を確認し、認知症の可能性など異変を感じた場合は町の地域包括支援センターに知らせる。協定の締結式で伊東健吾町長は「(見守りを通じて)町づくりに貢献していただければうれしい」とあいさつした。

*8-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190619&ng=DGKKZO46283280Z10C19A6MM8000 (日経新聞 2019年6月19日) 春秋
 「はい、あーんして」「ごっくんしようねー」。病院でいたたまれなくなる光景のひとつは、医師や看護師が高齢者に、赤ちゃん言葉で接している場面である。つい先日も、認知症が進んでいるらしい女性に幼児語を連発するスタッフがいた。見ていて、とてもつらい。▼悪意はないのだろう。むしろみんな、熱心に仕事をしているはずである。かつて東北地方などでは恍惚(こうこつ)の境地に入った人を「二度童子(わらし)」と呼んだという。人間は年老いて、また子どもに還(かえ)りゆくものなのかもしれない。しかし……。長い人生をひた走り、辛酸をなめ、それぞれに足跡を残してきた人々の尊厳はどこにある。▼政府がきのう、認知症対策の新たな大綱を閣議決定した。患者が暮らしやすい社会をめざす「共生」と、発症や進行を遅らせる「予防」とを柱にするそうだ。数値目標は批判を浴びたため参考値にとどめたが、予防に役立ちそうな努力を求める雰囲気はなお拭えていない。当初案では「予防」が「共生」よりも上にあった。▼いかに「共生」を唱えても、まだまだ社会は戸惑い、誰もがたじろいでいる――。むしろ、そんな思いを募らせる大綱であり、あちこちで聞く赤ちゃん言葉なのである。認知症はまさに誰でもかかる。そして症状が進んでも、さまざまな感情は心を離れない。蛇足ながら、かつて身内に患者を持って知らされたことである。

*8-3:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190619&ng=DGKKZO46250640Y9A610C1FFJ000 (日経新聞 2019年6月19日) 変わる人口地図 国連報告から(1) 50年、6人に1人高齢者
 国連の最新の予測によると、世界人口のうち65歳以上の高齢者の割合は2050年に16%と、6人に1人を占めるようになる。現在は11人に1人(9%)だが「歴史的な低さの出生率と寿命の延びで、事実上すべての国が高齢化していく」という。日本が直面する高齢者の社会保障や労働力の確保といった問題が、多くの国に共通する課題になりそうだ。地域別にみると高齢化は欧州・北米で特に進み、50年には4人に1人に当たる26%が高齢者になる。次いで日本を含む東・東南アジアで、19年の11%から24%に上昇する。ペースは緩やかだが、アフリカや中南米にも高齢化は広がる。世界全体では、65歳以上の人の数は19年から50年までに2倍以上に膨らむ。18年に史上初めて、5歳未満の子どもの数を上回り、50年には15~24歳の若者の数をも追い越すと国連は予測する。平均寿命は世界平均で72.6年から77.1年に延びるという。一方で出生率は、現在の2.5から2.2に下がると予測した。途上国で乳幼児の死亡率が下がり、先進国では女性の社会進出が広がっているのが背景とみられる。1990年には3.2だったが、低下に歯止めが掛からない。
     ◇
 変わる人口地図は世界の経済や社会にどう影響するのか。国連が17日公表した人口推計を基に解説する。

<産業のイノベーションと人材不足>
PS(2019年6月20日追加):*9-1のように、政府がやっと温暖化対策戦略で水素を柱の一つに掲げてG20サミットで話題にするそうだが、日本で水素エネが実用段階に入っても普及しなかったのは、太陽光発電と同様に経産省の愚かなエネルギー政策が邪魔したからであり、外国で実用化されて初めて慌てるのが日本の情けないところだ。なお、再生可能エネルギー由来の電力で水を電気分解して水素を作るのは、環境先進国では、理想ではなく理念に基づく現実だ。
 また、*9-2のように、林業も人材不足で、人材確保には労働環境の改善等も重要だろうが、若くして退官させられる航空自衛隊や陸上自衛隊のOBが中心になるのが、体力・技術面で適任ではないかと考える。そして、国有林は現役自衛官が訓練を兼ねて、整備や作業を行いつつ、植生・野生動物の生存数・断層などを含めた正確な地図を作ったらどうだろうか?
 さらに、*9-3のように、JR九州が事業承継ファンドを設立して自社と関連性の高い地場企業に資本や人材を投入して支援するのは、銀行の出資で設立されるファンドとは異なる視点で有意義だ。このようにして人材を入れれば、従来の事業も次第に21世紀型にできる。


2019.6.11朝日新聞     国民年金の場合      あいちのICT林業活性化構想

(図の説明:左図のように、老後、どのような生活をするかによって老後必要な貯蓄額は大きく異なる。また、中央の図のように、国民年金世帯は、不足額が大きい。しかし、右図の林業のように、現在は人手不足で、スマート化によって生産性の高い産業にできそうな分野も多い)

*9-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190620&ng=DGKKZO46303940Z10C19A6TCS000 (日経新聞 2019年6月20日) 水素で温暖化を防げるか
 政府は温暖化対策の長期戦略で水素の活用を柱の一つに掲げた。20カ国・地域首脳会議(G20サミット)でも話題になる見通しだ。温暖化ガスを出さない理想のエネルギー源として期待は高いが、思うように実用化が進んでいない。普及へ向けての課題と解決への道筋を日欧の官民の代表に聞いた。
  ◇  ◇
■政策誘導で実用化を 環境相 原田義昭氏
 日本は二酸化炭素(CO2)排出量を2050年までに80%減らす長期目標を掲げている。パリ協定の目標と照らし合わせると不十分と言われており、実質ゼロにしたいが足元の対策は必ずしもそこへ向かっていない。「究極の環境型エネルギー」である水素エネルギーをどれだけ活用できるかが、決め手の一つになる。水素エネは理論研究を経て実用段階に入っているが、思うように普及しない。有力な応用分野である燃料電池車(FCV)は水素ステーションが増えず、頭打ちだ。自動車メーカーは燃料電池車よりハイブリッド車(HV)などを重視していた。そこで水素エネの利用に広がりをもたせるため、列車や船などの公共交通に使えないかと考えている。燃料電池列車を製造しているフランスの鉄道車両大手アルストムの幹部と話す機会があり、ドイツ北部の路線で試乗もした。いま大事なのは、水素エネを使う技術や製品の需要を創出することだ。いつまでに確実にどのくらい使う、というコミットメント(約束)があればメーカーも動く。それには政府の関与が必要だ。日本でも、たとえば国がJRと組んで燃料電池列車の開発にトライすれば刺激策になる。その後、民間主体のインフラ整備へと移行すればよい。フランスでは無人の水素ステーションも見た。安全管理面などの規制緩和やルールづくりの参考になる。省庁の垣根を越え、オールジャパンで水素エネの利用を推進するつもりだ。過去を振り返ると、日本は10年ほど前には太陽光技術で圧倒的に強かったのに、いまや惨憺(さんたん)たるものだ。技術は優れていても商売で中国などに負ける。人工知能(AI)やロボット技術も同様だ。水素技術で同じ轍(てつ)を踏むようなことがあってはならない。先日、九州大学の水素エネの研究室を訪れた。毎週のように中国から見学者が来るそうだ。中国の水素エネの研究開発や関連事業への投資は日本に比べ桁違いに大きく約2兆円だという。金額ではとてもかなわないが、選択と集中で強いところを伸ばし、民間による事業化を促す。水素は再生可能エネルギーを使い、水を電気分解してつくれれば理想的だ。化石燃料由来の電力を使う場合にはCO2の回収・貯蔵(CCS)技術などと組み合わせる工夫がいる。(CO2の排出が多い)石炭火力発電所の延命策になるという見方があるのも知っている。しかし、温暖化対策に逆行する新設の石炭火力は環境影響評価(アセスメント)の段階で基本的に認めないなど、厳しい姿勢で臨んでいる。安倍晋三首相が言うように、これまでの延長線上にない非連続なイノベーションも追求する。政策当事者として、こんなことができるとよいという具体的なものを示していきたい。水素社会への移行をめざす考えは、20カ国・地域(G20)エネルギー・環境相会合でも説明した。賛同を得られ、実現へ向けた機運が高まったと思う。

*9-2:https://www.agrinews.co.jp/p47966.html (日本農業新聞論説 2019年6月18日) 林業の人材不足 労働環境の改善を急げ
 わが国の森林は、人工林を中心に木材資源の本格的な利用期を迎えている。林家の高齢化や林業経営体の弱体化で伐採できず、宝の持ち腐れになる恐れが指摘されている。人材確保に向け、林業経営体の労働環境の改善を急ぐ必要がある。林野庁は3本の柱をてこに林業改革に取り組む考えだ。第一に、森林所有者に代わって民間企業等が主伐や間伐、造林ができる新しい「森林経営管理制度」の導入だ。これを“エンジン”に、本格的な山の手入れや伐採に乗り出す考えだ。林業経営に適さない森林は、所有者に代わって市町村が管理する。第二に、森林環境税の導入だ。1人当たり年1000円を個人住民税に上乗せして徴収し、年間600億円の財源を確保。森林の管理や、間伐、担い手確保、木材利用の促進などに充てる。そして、第三が人材育成・確保である。「伐(き)って、使って、植える」という循環利用を担うための人材を確保することである。2018年度の林業白書は人材の確保に焦点を置き、当面する大きな課題と位置付けた。その認識に異論は無い。事実、地域の森林整備の担い手で、植林、下刈り、間伐の受託面積の6割を占める森林組合の9割が人材不足だ。また、民間事業体も中小規模が多く、後継者の確保が課題であることを浮き彫りにした。安い外材に頼って国内林業を軽視してきた結果である。人材不足の解決の方向として白書は、機械化や情報通信技術(ICT)などの新たな技術の導入でコスト削減を進め、林業従事者の労働条件の改善に取り組む必要性を強調した。実際に成果を上げた事例も示した。労働条件の改善は、人材確保の有効な手段であり、方向性は一定に理解できる。しかし、全産業的な労働力不足の中で、人材を確保することは容易ではないはずだ。賃金や休日の確保などの労働環境の改善を国家的に支援するとともに、林業の魅力を若い人にPRする必要がある。林野庁は、その具体策を早急に示すべきだ。林野庁が取り組む改革で懸念されるのが、伐採だけが進んで“はげ山”になることだ。民有林に加え、国有林に関する法改正では長期の「樹木採取権」を企業に与えることになった。植林を怠らないよう適切に指導すべきだ。また、山村振興に取り組む小さな林業経営を排除するようなことがあってはならない。今後、森林管理で市町村の役割が高まるが、林業に詳しい職員はごく一部に限られる。市町村の林務担当職員を増やすなど市町村の体制充実も必要だ。森林をきちんと維持するための基本は、現地に住む林家の経営を安定させ、きめ細やかな森の管理が行えるように環境を整えることだろう。後継者が育つように新しい技術の指導や国産材の販売先の確保などでの支援が必要だ。急ぐべきである。

*9-3:https://www.nishinippon.co.jp/item/n/519457/ (西日本新聞 2019/6/18) JR九州が事業承継ファンド設立へ 利益増、地域支援も
 JR九州が、後継者不足に悩む地場中小企業の受け皿となる事業承継ファンドを設立する方針を固めたことが分かった。鉄道関連や飲食など、自社の事業と関連性が高い地場企業に資本や人材を投入。利益拡大とともに地域経済の下支えにつなげる考え。事業承継ファンドは地方銀行などの出資で設立されるケースが多いが、鉄道会社が乗り出すのは全国的にも珍しい。鉄道部品関連や食品、流通分野などから投資対象となる地場企業を探し、1社当たり数千万円から数億円を投じて経営権を取得するなどする。各事業に精通した人材もJR九州側から派遣する。6月1日付で社内に担当人員を配置。本年度中にも資本提携や買収による経営参画を始めてノウハウを積み上げ、早ければ2021年度にもファンドを設立する。通常の合併・買収(M&A)と違い、ファンドは機動的な投資判断が可能になるなどの利点がある。運営には専門会社を入れることも検討する。中小企業の後継者不足は全国で深刻化。帝国データバンクの調査で「後継者がいない」と答えた九州の企業の割合は、18年は61・2%に達した。廃業する中小企業が増えれば、沿線人口の減少や地域衰退につながる。JR九州は本業の鉄道事業で実質赤字が続いており、自社の多角化の経験を活用することで、利益の底上げを図る狙いもある。

<保守系議員の女性蔑視と参院選の野党共闘>
PS(2019/6/21追加):*10-1、*10-2に、超党派の保守系議員でつくる日本会議国会議員懇談会は、「①男系男子による皇位継承を維持し、女性宮家創設に反対」「②126代にわたって例外なく維持されてきた男系による皇位継承の伝統に基づく男系男子孫による皇位継承が可能となる方策を要望」「③Yはずっと形が変わらず続いていき、Xとは違う」「④皇族の減少に伴い、女性皇族が結婚を機に皇族の身分を離れた後も活動を継続できるよう政府に申し入れる」としたそうだ。③の「Y染色体はXと異なり、形が変わらない」というデータはないので科学的根拠にはならない。ただ、次世代に誰の遺伝子が伝わるかを見ると、愛子さまが天皇となられる事例では、その次の世代には雅子さま由来のX遺伝子と美智子さま由来(天皇経由)のX遺伝子が伝わる確率が1/2ずつあり、どちらも上皇由来ではないが、男系男子のY染色体なら必ず天皇・上皇由来である。しかし、ヒトの染色体は23対あり、XY染色体はそのうちの1対にすぎない上、ミトコンドリアや細胞質からの遺伝は母方からのみだ。従って、①②も、「126代も続いた伝統だから男系男子」という気持ちは伝わるが、伝統も最新の科学や社会環境を考慮して変化しなければ、それ自体が続かなくなることを無視していると思う。さらに、④は、「(大した働きは期待しないが)人手不足だから、既婚女性は非正規かボランティアで働け」という、これまで日本女性に採ってきたのと同じ失礼な態度で、やはり女性蔑視である。
 そのような中、*10-3に「参院選野党共闘は、明確な選択肢打ち出せ」と書かれており、誰がやろうとよい政策を進めてもらえばよいため「安倍一強打破」は国民にとっての選択肢にはならないが、「市民連合」が示す①改憲反対 ②安保法制廃止 ③消費税凍結 などの政策は選択肢になる。年金に関しては、今の野党は「有権者の立場に立った社会保障の姿」を示しているとは言えず、発生主義に基づく引当方式への移行と移行期間における全世代の二重負担排除くらいは掲げるべきで、国民のストックである国有財産をうまく使えば、それは可能なのである。
 改憲については、安倍首相は、*10-4のように、「①憲法について、ただ立ち止まって議論をしない政党か」「②正々堂々と議論する政党か」を選ぶ選挙にしたいと言われたそうだ。しかし、これまでの議論で自民党の改憲案とその理由を理解した上で、「改憲を議論するのは、現在の日本国憲法の理念がもっと議員や国民に浸透してからにすべきであり、現在は時期尚早だ」という判断もあり、スタンスは①②だけではない。そして、安心して議論できるためには、強行採決して国民投票に懸けられないよう、参議院の改憲勢力は2/3未満にすべきだ。

*10-1:https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190620-00000157-kyodonews-pol (Yahoo 2019/6/20) 男系男子の皇位継承維持 女性宮家創設に反対
 超党派の保守系議員でつくる「日本会議国会議員懇談会」は20日、国会内で総会を開き、男系男子による皇位継承を維持し、女性皇族が結婚後も皇室にとどまる「女性宮家」創設に反対する内容の基本方針を決めた。今後、具体的な方策や提言案をまとめ、政府や各党に要望する。基本方針は、安定的な皇位継承を確保するための解決策について「126代にわたり、古来例外なく維持されてきた男系による皇位継承の伝統に基づき、男系男子孫による皇位継承が可能となる方策」を要望した。皇族の減少に伴い、女性皇族が結婚を機に皇族の身分を離れた後も活動を継続できるよう政府に申し入れるとした。

*10-2:https://www.jiji.com/jc/article?k=2019061101051&g=pol (時事 2019年06月11日) 「Y染色体」に触れ男系継承評価=自民・古屋氏
 自民党の古屋圭司元国家公安委員長は11日、皇位が男系でのみ継承されてきた歴史について、男性に特有の「Y染色体」に触れ、「何百年、何千年前は遺伝子工学の知識はなかったと思うが、先人の素晴らしい知恵だったと思う」と評価した。人間の性を決める染色体にはXとYの2種類があり、古屋氏は「Yはずっと形が変わらない、続いていく。Xとは違う。男女差別という問題ではなく、あくまでも染色体の科学的根拠がベースだ」と語った。古屋氏は、超党派の保守系議員で構成する「日本会議国会議員懇談会」会長として、同懇談会の皇室制度に関する検討チームの会合であいさつした。

*10-3:https://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2019062102000199.html (東京新聞 2019年6月21日) 参院選野党共闘 明確な選択肢打ち出せ
 予想される参院選投票日まで一カ月。野党は二〇一六年に続き、焦点となる三十二の改選一人区で候補を一本化し戦う態勢を整えた。一強多弱構造を崩す対立軸となり得るか、共闘の真価が問われる。立憲民主、国民民主、共産など五党派の候補者一本化協議は、四月の統一地方選後に急進展した。政府・与党内から衆参同日選の観測が漏れ出し、立民、国民を支援する連合からは「(安倍)一強政治を何としても打破しないといけない」(神津里季生会長)と、悲壮な声も飛び出した。野党票が分散すれば、一人区で与党候補に漁夫の利を与えるのは明らかだ。危機感が共有され、二十四区に公認を立てていた共産も相次ぎ候補取り下げに応じた。前回の野党共闘では地域事情に合わせた協議の積み重ねで候補を絞り込んだのに対し、今回は一月の野党党首会談で合意し中央レベルで協議を進めた影響も大きい。ただ、一本化は共闘の「スタートライン」にすぎず、選挙の公示が迫っても共通公約や相互支援の在り方は明確でない。政策は、民間の「市民連合」が五党派に九条改憲反対、安保法制廃止、十月の消費税増税見送りなど十三項目を要望し、各党派代表が署名した。しかし、扱いについては党派ごとに認識が異なり、共通の「旗」となっていない。にわかに広がった年金不信を踏まえ、有権者の立場に立った社会保障の将来像など選択肢を共同で示すことができれば、野党の存在感は一段と高まるのではないか。相互支援態勢では、五党派間で「最大限の協力で勝利を目指す」と合意したにすぎない。各党派の相互推薦は無所属候補にとどまる見込みだ。公認も含む全一本化候補に対し、実効性のある協力関係が築けるかが今後の課題となる。一人区の野党側の戦果は一六年参院選で十一勝二十一敗。共闘が整わなかった一三年が、当時の三十一選挙区中二勝二十九敗だったのと比べると善戦だった。さらに一七年衆院選の比例代表で見ると、立民、旧希望、共産、社民の合計票は約二千六百十万票で自民、公明両党の票を六十万票近く上回る。昨年以降、沖縄では野党系の「オール沖縄」候補の大勝が相次ぐ。参院選でも与党候補に十分対抗可能だろう。旧民進党分裂に伴う主導権争いや基本理念の違いが表面化しがちな野党共闘だが、残り一カ月。有権者の信頼を集める政権批判の受け皿づくりに努める局面だ。

*10-4:https://www.jiji.com/jc/article?k=2019062101353&g=pol (時事 2019年6月21日) 憲法改正、参院選争点に=安倍首相「議論する政党選ぶ選挙」
 安倍晋三首相は21日夜のインターネット番組で、憲法改正が夏の参院選の主要争点になるとの考えを強調した。「憲法について、ただただ立ち止まって議論をしない政党か、正々堂々と議論する政党か、それを選ぶ選挙だ。そのことを強く訴えていきたい」と表明した。首相は、衆参両院の憲法審査会の論議が進まない現状に関し「真剣にどういう国をつくっていくかを議論する大切な場で議論がなされていない」と述べ、野党の対応を批判。改憲について「最終的には国民が国民投票で決める。その国民の権利すら奪っている」と指摘した。

<社会保障の充実とその財源としてのエネルギー資源>
PS(2019年6月22、28、29日追加):*11-1のように、熊本市は環境省の委託を受けて熊本大等と運行実験を行い、実用性やCO2の排出削減効果を確認していたEVバス1台を2019年12月から熊本城の周遊バスに採用するそうだ。EVは、再生可能エネルギー由来の電力を使う限りCO2排出量が0であり、海外に支払っている燃料代を節約して国内で廻せるメリットもある。しかし、日本では、EVバスの新車が8千万円、中古でも4千万円もするそうで、必ず価格の高さが日本製普及のネックになるが、これは高コスト構造が原因だ。ちなみに、中国のEV最大手BYDは、*11-2のように、航続距離200km、充電時間3時間の新小型EVバスを日本市場に投入し、その価格は税抜き1950万円だそうだ。私は、日本の環境先進都市は、BYDの小型EVバスだけでなく主力の乗用車もタクシーとして導入すれば、日本メーカーの刺激になってよいと思う。
 日本政府は、*11-3のように、2019年度の経済財政運営と改革の基本方針を、①就職氷河期世代への支援 ②最低賃金上げ ③70歳までの就業確保策の検討 ④幼児・高等教育の無償化 ⑤終身雇用や年功序列など日本型雇用の見直しや兼業・副業解禁など企業改革を促す とする閣議決定をしたそうだ。私は、①はよいが、②は地域によって物価水準が異なるのに全国一律の最低賃金を採用したり、生産性と合わないほど最低賃金を引き上げたりすると、雇用が減少すると思う。また、③については、*11-4のように、努力義務ではザル法となり、高齢者をワーキングプアにするので不十分だ。さらに、④及び⑤のうちの年功序列見直しは重要だ。
 これに対し、日経新聞等のメディアは、⑥社会保障の持続性確保のための消費税率10%引き上げ後の国民の負担増・給付減に繋がる改革に踏み込まなかった ⑦国と地方の基礎的財政収支(PB)の黒字化目標を25年度まで先延ばしした などと旧来型の思考停止した批判を繰り返している。しかし、社会保障財源については、これまで述べてきたようなエネルギー改革、雇用改革、国の収支を管理しながら国有財産を有効に使う行財政改革等を行えば、消費税増税は不要なのである(このブログのマニフェスト参照)。
 また、*11-5のように、共産党が参院選の公約に、⑧マクロ経済スライドの廃止 ⑨低年金者への月額5000円の上乗せ給付 ⑩最低賃金は全国一律とし時給1500円をめざす ⑪消費税率10%引き上げの中止 ⑫安全保障法制の廃止 を盛り込んだそうだが、このうち⑧⑪⑫は賛成だが、⑨の月額5000円の上乗せ給付では殆ど役に立たず、⑩は行き過ぎだろう。なお、将来、納めた保険料に応じた額を所得比例部分として上乗せする年金制度(=発生主義による引当方式≒積立方式)にするのなら、月5万円の最低保障年金とマクロ経済スライド廃止の財源を高所得者の年金保険料の上限廃止に求めても文句はないが、これまで高所得者の年金保険料に上限があったり、徴収漏れのケースが多すぎたりしたのがおかしかったのである。さらに、歳出の見直しという視点から、金食い虫の原子力発電所の再稼働を中止して全ての原発で廃炉のプロセスに入るのは、将来の負債やリスクを少なくするために重要なことだ。
 なお、社民党が、*11-6のように、「⑪改憲反対」「⑫社会を底上げする経済政策」「⑬最低賃金全国一律時給1500円を目指す」「⑭消費税率10%への引き上げ中止」「⑮マクロ経済スライドによる基礎年金の給付抑制中止」「⑯保育士給与の月5万円引き上げ」「⑰財源確保策として大企業への法人課税強化や防衛費の見直し」などを参院選の公約にしたそうで、⑪⑫⑭⑮は賛成だが、⑬は物価水準が異なる地域で生産性以上の時給を課せば、事業(特に中小企業)が成り立たなくなるため賛成できない。また、⑯も、幼児教育・保育を無償化した上で、義務教育開始年齢を3歳にするなどの全体的な教育改革が必要なので、保育士さえ増やせばよいわけではないだろう。⑰の防衛費の見直しについては、単価が高いだけで役に立たないものも多そうなので重要だ。「大企業への法人課税強化」は役割を終えた租税特別措置法の見直しは有益であるものの、世界競争をしているので大企業だからゆとりがあるとも限らないため、具体的に言うべきだ。また、共産党がよく使う「富裕層への課税強化」は、“富裕層(年収380万円以上?!)”の定義を明確にしなければ、一億総中流階級意識の日本では殆どの有権者を敵に廻す。何故なら、現在は「蟹工船」「女工哀史」のような「資本家は金持ちで欲張りな搾取者」「労働者は貧しい被搾取者」という時代ではなく、出資している事業者の方が不利な点も多いからである。
 最後に、日本維新の会は参院選のマニフェストで、*11-7のように、⑱年金は「賦課方式」から「積立方式」に変更 ⑲年金支給開始年齢は段階的引き上げ ⑳税金と年金等の保険料を一括徴収する「歳入庁」を設置 ㉑消費税増税凍結 ㉒財源は「身を切る改革」をして国会議員報酬・定数は3割減、国家公務員人件費は2割減 としているようだ。私は、⑱には賛成で、必要な積立金額を長期の低利(orマイナス金利)国債で賄うのがよいと考える。⑲は、定年の廃止や定年年齢の引き上げと連動しなければ困るが、働いていた方が医療費や介護費も少なくてすむので一石二鳥だ。⑳は、税金と年金等の保険料を一括徴収しても年金や医療・介護費用の源資は、(ごっちゃにするのではなく)きちんと分けて保管・運用するのならよい。これにエネルギー改革・歳出改革と女性や外国人労働者の活躍を加えれば7~20兆円は簡単に出る筈で、消費税は消費に対するペナルティーとして働くため廃止も視野に入れるべきだ。なお、日本維新の会は、「身を切る改革」を看板として民主主義のコストである議員報酬や定数削減をよく言われるが、これによって節約される金額は桁が小さすぎ、議員報酬が減ったからといって年金を減らされるいわれはないし、報酬が低ければ優秀な人が集まらず、金持ちばかりが議員になって生活感のない政策を行うため、国民にとっては利益がないと考える。

    
現役・再雇用・年金時代の家計収支  2019.6.21東京新聞   2019.6.22東京新聞

(図の説明:左図のように、子育中の貯蓄は困難であるため、子育後に老後資金を準備をしなければならないが、再雇用での貯蓄は難しく、年金時代は貯蓄を取り崩す生活になる。従って、中央の図の「マクロ経済スライド」は本当に廃止すべきだ。また、右図の改正高齢者雇用安定法による高齢者雇用は非正規での再雇用を認めているため、再雇用後、著しく減収する人が多い)

*11-1:https://www.nishinippon.co.jp/item/n/519998/ (西日本新聞 2019年6月20日) EVバスで熊本城周遊 市が導入、12月から運行
 熊本市の大西一史市長は19日、電気自動車(EV)のバス1台を、12月から市が運行する熊本城周遊バス「しろめぐりん」に導入する考えを明らかにした。EVバスは昨年2月から1年間、市や熊本大などが環境省の委託を受けて運行実験を行い、実用性や二酸化炭素(CO2)排出の削減効果を確認していた。県内で路線バスへのEV導入は初めて。市によると、導入するEVバスは乗客乗員27人乗り。1回の充電で約50キロ走行でき、熊本駅から熊本城周辺の1周約10キロを1日に4、5便運行する。CO2排出量はほぼゼロの見込みで、車体にはEVをアピールするラッピングを施す。災害時には、登載バッテリーから外部への電気の供給もできるという。運行実験に参加したイズミ車体製作所(大津町)が保有する中古バスをEVに改造する。バスはリース会社が保有し、市は5年間のリース契約を結ぶ。市は5月に国から事業計画の認可を受けており、改造費など市の負担は約4千万円を見込む。市によると、全国ではEVバスの新車導入例はあるが、中古バスを改造してEV化するのは珍しいという。市は「EVバスを新車で購入すると約8千万円かかるとされ、費用が抑えられる」としている。

*11-2:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO42874120V20C19A3916M00/ (日経新聞 2019/3/25) BYD、日本で新EVバス 24年に1000台
 中国の電気自動車(EV)最大手である比亜迪(BYD)の日本法人、ビーワイディージャパン(横浜市)は25日、新たな小型EVバスを日本市場に投入すると発表した。国内の小型EVバスとして航続距離は最長となるという。同日から予約を受け付け、中国で製造し、2020年春から納車する予定。24年までに1000台の販売を目指す。新型車は全長7メートル、車幅2メートル、車高3メートル。地方の細道でも走れるように小回りの効く大きさにした。1回の充電は3時間で済み、航続距離は従来車より1.3倍の200キロとなった。一般的なEVバスの価格は1億円台とされ、高い価格が課題になっていた。新型車は税抜き1950万円と購入しやすい価格帯に設定した。BYDグループは、世界50カ国・地域で5万台のEVバスを納めている。日本では15年に京都市でEVバスを納車後、4つの自治体で計21台の大型・中型のEVバスを納品している。日本車メーカーでは20年の東京五輪で、トヨタ自動車が燃料電池車(FCV)のバスやEVなど3000台を走らせる計画で開発を進めている。また日野自動車が12年にEVバスを販売し、東京都羽村市が導入した。世界では二酸化炭素(CO2)や排出ガスの環境規制が厳しくなっており、自動車メーカーは環境対応が求められる。だが主要な日本車メーカーはEVバスの開発に消極的な姿勢のままだ。ビーワイディージャパンは緊急時に運転手が操作する「レベル3」の自動運転機能を後付けできる製品も、20年に販売するという。日本で導入済みのEVバスや今後販売の小型EVバスに搭載可能で、自動運転バスでも先陣を切りたい構えだ。25日に都内で記者会見した同社の花田晋作副社長は、主力の乗用車を日本市場に投入することに関し、「EVの市場規模が小さく、日本での展開はない」と強調。他の日本車メーカーとの提携も「求めがあれば、そのような出会いもある」とした。最後に「交通弱者の高齢者が増え、地方では路線バスの需要が増える。低価格でEVを普及し、電動化社会を進めたい」と話していた。

*11-3:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190622&ng=DGKKZO46415190R20C19A6EA1000 (日経新聞社説 2019年6月22日)厳しい改革を忘れた骨太の方針
 政府は21日、2019年度の経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)を閣議決定した。7月の参院選を意識したのか、就職氷河期世代への支援や最低賃金上げなど有権者に聞こえのよい政策が並んだ。消費税率10%引き上げ後の社会保障・財政改革など国民の負担増につながる厳しい改革には踏み込まなかった。成長戦略を含む骨太の方針では、70歳までの就業確保策の検討、幼児・高等教育の無償化のほか、就職氷河期世代への支援策などを盛り込んだ。成長戦略の実行計画では、日本が第4次産業革命を世界で主導できるかどうかは「この1、2年が勝負」としたうえで、組織に閉じこめられている個人を解放し、自由に個性を発揮できる社会の実現を提唱。終身雇用や年功序列など日本型雇用の見直しや兼業・副業解禁など企業に改革を促した。民間の変革努力は必要だが、政府の改革の取り組みは十分だろうか。巨大IT(情報技術)企業との公正競争を促す組織・法制整備、業態別の縦割り金融規制を見直す法整備などを盛り込んだが、成長を促す改革は迫力不足だ。何よりも問題なのは「経済財政運営と改革」という主題がぼやけてきていることだ。安倍晋三政権は昨年、当初は20年度としていた国と地方の基礎的財政収支(PB)の黒字化目標を25年度まで先延ばしした。骨太の方針では10月に消費税率を10%に予定通り上げることは明記したが、黒字化目標への道筋は描いていない。さらに高齢化がピークに達し、医療・介護など社会保障費が増大する40年度までについては議論すら進んでいない。社会保障・財政健全化の取り組みは消費税率の10%への引き上げで完結するわけではない。長期の政権を担う安倍首相にはその後の改革の青写真もしっかりと描く責任がある。当面の課題は、団塊世代が75歳以上の後期高齢者になる22年以降に増大する医療など社会保障費をどう抑制するかだ。この問題については「20年度の骨太の方針で、給付と負担のあり方を含め社会保障の総合的かつ重点的に取り組むべき政策をとりまとめる」と具体策には踏み込まなかった。社会保障の持続性確保には、歳出抑制や負担増などの議論は避けられない。政府は国民に事実を正直に説明し政策を訴えるべきだ。

*11-4:https://www.tokyo-np.co.jp/article/economics/list/201906/CK2019062202000157.html (東京新聞 2019年6月22日) <働き方改革の死角>高齢ワーキングプア誘発 定年後の再雇用「ザル法」
 政府の成長戦略で柱とされる高齢者の雇用機会確保。企業に「70歳までの雇用延長」を努力義務として課すが、現状でさえ不安にさらされる高齢者雇用の断面を見た。「Aさんは明日から契約社員になり、営業の仕事からは離れます」。神奈川県内にある投資コンサルタント会社に勤めるAさん(60)。定年日当日の今月中旬、会社は突然、社員を集めて発表した。「こんな強引なやり方が許されるのか」。Aさんはショックを受けた。外資系銀行での資金運用経験など金融知識を買われ、転職してきて以来十年間、営業最前線で成果を上げてきた。会社は「定年後も営業をやってもらう。給料も従前どおり」と言っていたが、定年が間近に迫った今月初め、態度をひょう変させた。定年後再雇用に際し、会社が労働条件通知書に記した給料は、定年前の六割減。仕事内容は「簡単な事務作業」。頭の中が真っ白になったAさん。以来、定年後の条件を巡って会社と押し問答を続けてきた。大学に入学したばかりの子どもがいる。給料も仕事内容も受け入れがたいが、「(辞めるのは)悔しい」と子どもに言われ、Aさんはとりあえず働き続けることにした。
    ◇  ◇ 
 高齢者雇用の根幹となる高年齢者雇用安定法(高年法)。「六十五歳までの安定した雇用を確保する」と謳(うた)い、企業に(1)定年の引き上げ(2)継続雇用(再雇用)(3)定年制廃止-のいずれかを義務付けている。だが、実際には厚生労働省調査では企業の八割が(2)の再雇用を選んでいる。「雇用契約をいったん切ると、待遇切り下げが可能になるから」。労働問題に詳しい安元隆治弁護士が言う。

*11-5:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190622&ng=DGKKZO46413490R20C19A6EA3000 (日経新聞 2019年6月22日) 年金給付の抑制廃止 共産が参院選公約
 共産党は21日、7月の参院選の公約を発表した。高齢者が受け取る年金を抑える「マクロ経済スライド」の廃止や、低年金者への月額5000円の上乗せ給付などを掲げた。最低賃金は全国一律とし時給1500円をめざす。消費税率10%引き上げの中止や安全保障法制の廃止を盛り込んだ。志位和夫委員長は記者会見で「年金問題が大きな争点になってきた」と指摘した。マクロ経済スライド廃止の財源は、高所得者の年金保険料の見直しなどで賄う。将来は全ての高齢者に年金を月5万円保障したうえで、納めた保険料に応じた額を上乗せする年金制度に変えるとした。最低賃金は「ただちに全国どこでも1000円に引き上げ、速やかに1500円をめざす」と記した。原子力発電所に関しては「再稼働を中止し、全ての原発で廃炉のプロセスに入る」と記した。

*11-6:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190628&ng=DGKKZO46645440X20C19A6PP8000 (日経新聞 2019年6月28日) 社民公約、最低賃金一律1500円
 社民党は27日、「社会を底上げする経済政策」を柱に据えた参院選公約を発表した。最低賃金を全国一律とし、時給1500円を目指すと明記した。消費税率10%への引き上げ中止や憲法改正反対を掲げた。「マクロ経済スライド」による基礎年金の給付抑制中止や、保育士給与の月5万円引き上げも訴えている。これらの財源確保策として大企業への法人課税強化や防衛費の見直しを挙げた。

*11-7:https://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2019062601002289.html (東京新聞 2019年6月27日) 維新公約、年金は積み立て方式に 消費増税は凍結
 日本維新の会が夏の参院選で掲げるマニフェスト(政権公約)の全容が26日、判明した。現役世代が納めている保険料を今の年金受給者への支払いに充てる現行の「賦課方式」から、自分が積み立てた保険料を老後に取り崩して受け取る「積み立て方式」への移行を提起。国会議員や公務員の給与を削減して財源を捻出し、消費税増税を凍結する。27日に発表する。看板政策とする「身を切る改革」の必要性を改めて強調。国会議員の報酬と定数をそれぞれ3割カット、国家公務員の人件費を2割削減する。年金支給年齢の段階的な引き上げ、税金と年金などの保険料を一括徴収する「歳入庁」設置も提案した。

<「マクロ経済スライド」の廃止について>
PS(2019年6月23日追加):*12-1のように、「マクロ経済スライド」は国民にわかりにくくしながら年金を7兆円減らす仕組みで、これが完全に実施されると年金給付は7兆円削減される。それに消費税増税とインフレ政策が加わるので、今でも生活費が不足している高齢者はますます困窮する。少し前、私が、暗くなってスーパーから帰ろうとしたところ、高齢の男性が道に座り込んで荒い息をしておられたので具合でも悪いのかと思って声をかけたら、たった一つモノが入ったスーパーのカートを押して走ってきた万引きだとわかった。そのため、そっとそのまま帰ったが、高齢者からぶんだくることしか考えない政策を作った人たちの一食分にも満たない金額を支払えない高齢者が、今の日本には少なからずいることを忘れてはならない。
 なお、*12-2のように、「骨太の方針」が出て消費税率10%への引き上げを明記し、増税後の景気下支えのための臨時経済対策費の計上が示されたそうだが、何かと理由をつけては経済対策を行うため、消費税導入後、国の債務は増え続けている。私は、「幼児教育・保育の無償化」はよいと思うが、未だ教育の質の向上と連動していないのが残念だと思う。また、幼児教育・保育を無償化すれば、それが景気対策になる筈であり、「社会保障財源は消費税」と(世界で唯一)決めつけるのもやめるべきだ。

 
税収・歳出・国債残高 2018.12.18東京新聞 2018.12.21西日本新聞 2018.3.19東京新聞

(図の説明:1番左と左から2番目の図のように、1989年《平成元年》の消費税導入後、景気対策と称する歳出拡大が続いた結果、国の財政状態はむしろ悪化した。また、弥縫策のような歳出が多いため、右から2番目の図のように、実質GDP成長率は0付近で推移している。さらに、人口に占める割合の多い高齢者の収入を削減する政策になっているため、1番右の図のように、エンゲル係数《貧しさの指標》は上がりつつあり、本当に必要とされる消費財の需要も増えない)

*12-1:http://www.jcp.or.jp/akahata/aik19/2019-06-23/2019062301_01_1.html (赤旗 2019年6月23日)年金7兆円減 首相認める、マクロ経済スライド廃止が最大焦点に
 年金給付を自動的に削減する「マクロ経済スライド」が完全実施されると、年金給付は7兆円も削減される―。高齢者のくらしを貧困に突き落とすマクロ経済スライドの恐るべき実態が、安倍晋三首相自身の口から明らかにされました。安倍首相は22日に出演した民放テレビ番組「ウェークアップ!ぷらす」(日本テレビ系)で、日本共産党のマクロ経済スライド廃止の提案に言及し、「やめてしまってそれを保障するには7兆円の財源が必要です」と発言しました。この問題をめぐって安倍首相は、19日の国会の党首討論で日本共産党の志位和夫委員長がマクロ経済スライドの廃止を提案した際、「ばかげた案だ」などと批判し、唐突に7兆円という数字を持ち出していました。民放番組で安倍首相自ら、マクロ経済スライドが7兆円の年金給付削減という痛みを国民に押し付ける仕組みだと明らかにしたことで、マクロ経済スライドを続けて年金給付を7兆円削るのか、それとも廃止して「減らない年金」をつくるのかが、年金問題の最大焦点に浮上しました。党首討論後、志位氏の求めに厚生労働省が提出した資料によれば、7兆円はマクロ経済スライドによる基礎年金(国民年金)給付の減額幅を示したもので、2040年時点で本来約25兆円になるはずの給付額は18兆円に抑制されることになっていました。基礎年金給付の実に3分の1がマクロ経済スライドで奪われる計算で、現在でも6万5000円にすぎない基礎年金の満額はさらに約2万円も削り込まれることになります。基礎年金しか入っていない低年金者ほど打撃が大きい、最悪の「弱者いじめ」の仕組みであることが浮き彫りになりました。日本共産党は21日に発表した参院選公約で、マクロ経済スライドを廃止するための財源として、年収1000万円を超えると保険料負担率が低くなる高所得者優遇の保険料制度の見直し、200兆円もの巨額積立金の計画的取り崩し、最低賃金引き上げや非正規雇用の正社員化による保険料収入増加を掲げています。

*12-2:https://www.hokkaido-np.co.jp/article/318070 (北海道新聞 2019/6/23) 骨太の方針 問題の先送りも同然だ
 政府はおととい、経済財政運営の基本指針である「骨太の方針」を閣議決定した。予定通り10月に消費税率を10%に引き上げることを明記し、増税後の景気を下支えするため本年度に続き来年度予算でも臨時の経済対策費を計上する方針を示した。米中貿易摩擦などにより景気悪化のリスクが高まれば、新たな経済対策を講じることも示唆した。就労促進で内需を支えようと、就職氷河期世代の正社員化や最低賃金の引き上げ、在職老齢年金制度の廃止検討も盛り込んだ。景気対策が色濃くにじむ内容だが、裏付けとなる財源をどう賄うのかはほとんど触れていない。社会保障改革についても具体策には踏み込まず、来年の骨太の方針で重点政策をまとめるという。これではあからさまな懸案の先送りではないか。参院選を意識して聞こえのいい政策ばかりを列挙したようにしか見えない。財政健全化では、国と地方を合わせた基礎的財政収支を2025年度に黒字化する目標を据え置いた。だが今回盛り込んだ景気対策などの新たな財源を確保できなければ目標達成が遠のきかねない。働いて一定の収入がある高齢者の年金を減らす在職老齢年金制度も、年金財政に影響させずに廃止するには1兆円の財源が必要だ。年金額が減ることを理由に就労意欲がそがれるのを防ぐことで、元気に働ける高齢者を増やし、社会保障の支え手に回ってもらうことは期待できよう。とはいえ、将来世代へつけ回すことは許されない。高所得の高齢者優遇にならない仕組みを含め、丁寧な制度設計が求められる。消費税増税対策も理解に苦しむ。対策費は本年度当初予算と同規模の2兆円程度となる公算が大きい。これは増税に伴う実質的な国民負担増に匹敵する額である。膨らむ社会保障費を皆で賄うことが本来の理念のはずだが、これでは何のための増税なのか。増税する一方で景気対策を打つ。アクセルとブレーキを同時に踏む、つじつまの合わない経済運営と言わざるを得ない。増税に耐えうる経済状況にないなら増税自体を見送るのが筋だ。安倍晋三政権の看板政策で、消費税の増税分を財源とする「幼児教育・保育の無償化」を10月に始めるために税率引き上げを見送ることもできないなら本末転倒だ。「骨太」と呼ぶにはもろさが目立つ。経済安定への道しるべとは到底言えまい。

<支え手・労働力不足の解決へ>
PS(2019年6月24、25、26日追加):*13-1のように、シリア・アフガニスタンなどの中東やミャンマーのロヒンギャが上位を占める難民は、2018年末に7080万人となり、その半数が子どもだそうだ。その解決策として、「①緊急の生活支援」「②難民を受け入れている周辺の貧しい国への支援」「③日本はUNHCRへの拠出額で5番目だが、2018年の難民認定申請者数1万493人に対して認められたのは42人」「④難民を出さない取り組みが必要」「⑤難民の自立を助け、安全な帰還を促す」「⑥シリア難民を最大150人留学生として受け入れている」「⑦難民の雇用を始めたファーストリテイリングは、2019年4月末で59人が地域限定社員等として働く」などが書かれている。
 このうち①②③は、決して自国民が豊かとは言えない日本が、難民を受け入れることはせず金で解決しようとしている点で、いつもながらの貧しい発想力である。④⑤は、難民発生国、難民受入国の課題であり、第三者である日本ができることは殆どない。そのような中、支え手が不足している日本で、⑥⑦のように難民を受け入れて教育したり、労働力として活躍させたりするのがよいと、私は考える。
 そのため、*13-2の「世界に開かれた国として多くの留学生を受け入れ、高度な技術や専門性を育成し、それによって日本の国際競争力を高め、留学生には母国との懸け橋として活躍してもらうことを目的として、留学生30万人を受け入れる」という計画はよい。現在は、農林漁業・製造業・サービス業の人手不足が顕著になっており、多様な人材を育てれば文明の相乗効果でより有用な財・サービスを作りだすことができると思う。そのため、東京福祉大のような最悪のケースを持ち出して今後の留学生拡大まで否定するのではなく、例えば、九州でも、今後必要となる分野なら大学のみならず高校や高専も留学生を増やしてよいだろう。*13-3のように、高等教育の費用も生活保護世帯の自宅生や児童養護施設の入所者など収入の少ない人は、特に給付型奨学金の増額や授業料の減免などがある時代になったのは大きい。
 なお、*13-4のように、日本の「女子学生の制服100年の歩み」は、1世紀前の1919年を境に制服が和装から洋装へと切り替わり、一般の人は当時の身の回りの“普通”にこだわったものの、私立女学校の校長だった山脇房子氏のデザインによる紺色のワンピースと白エリの制服を皮切りに洋装が広がり、昭和に入ってセーラー服が優勢になったそうだ。つまり、学生の制服は、一般の人に服装から新しいよい習慣を身につけさせる働きもしてきたわけである。そのため、女性にスカーフやヒジャブ・ニカブなどを強制する地域から来た外国人・難民の子女には、まずは学校と制服で女性を宗教による女性差別の制約から解放してあげたいと思う。

    

(図の説明:『ところざわのゆり園(西武グループ運営、https://www.city.tokorozawa.saitama.jp/iitokoro/enjoy/kanko/flower/syogyo_20140508131620678.html 参照)』は、約3万平方メートルの自然林に50種・約45万株のユリが咲き誇って森林浴と散策が楽しめるそうだが、森林に花を植えてもよいわけだ。そのコンセプトは、目から鱗だった)

*13-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190624&ng=DGKKZO46463940S9A620C1PE8000 (日経新聞社説 2019年6月24日) 難民問題は最大の人道危機だ
 増え続ける難民にどう対処するか。日本を含む世界に突きつけられた課題である。20日の「世界難民の日」にあわせ国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)が報告書を発表した。2018年末の難民は7080万人と過去最高を更新した。1年前に比べ230万人増加し、その半数が子どもだった。上位を占めたのは、シリアやアフガニスタンといった中東からのほかミャンマーのロヒンギャ難民など。第2次世界大戦以降で最大級の人道危機に直面していることを、国際社会は認識すべきだ。まずは、緊急に必要な生活支援を的確に、かつ効果的に行わなければならない。難民を周辺の貧しい国が受け入れているという現実があり、その負担を軽減する国際的な体制作りが不可欠だ。難民の自立を助け、安全な帰還を促すとともに、そもそも難民を出さないようにする多角的で中長期的な取り組みが重要になる。難民を生む原因である紛争や対立の根っこには貧困があるからだ。日本にとってもひとごとではない。UNHCRへの拠出額では5番目で、国際協力機構(JICA)を通した開発協力などを実施している。しかし、18年の難民認定申請者数1万493人に対し、認められたのはわずか42人だった。17年より22人増えたが、先進国のなかでは極端に少ない。これとは別枠で、シリア難民を最大150人留学生として受け入れるプログラムなどを実施している。しかし、十分とはいえない。もっと受け入れを増やすのか、海外での支援を重視するのか。議論が深まらないのは国民の関心が低いからだろう。その意味で、民間企業で動きが出ているのは評価したい。難民の雇用を始めたファーストリテイリングでは今年4月末現在、59人が地域限定社員などとして働く。支援物資を海外の難民キャンプに送る企業も増えている。こうした取り組みが、問題を身近に考えるきっかけになることを期待したい。

*13-2:https://www.nishinippon.co.jp/item/n/521175/ (西日本新聞社説 2019/6/24) 留学生30万人 内実伴わぬ計画の検証を
 世界に開かれた国として多くの留学生を受け入れて高度な技術や専門性の育成を図る。それによって日本の国際競争力を高め、留学生には母国との懸け橋として活躍してもらう-。そんな理念をうたった国家戦略と現実の落差が浮き彫りになった。戦略とは、2020年までの実現を目指した政府の「留学生30万人計画」、現実とは、東京福祉大で大量の留学生が所在不明になった問題のことだ。計画策定の08年当時、全国で約12万人だった留学生は現在ほぼ30万人に達し、数字の上では目標が達成されている。ところが内実は伴っていない。文部科学省などによると、東京福祉大は定員の明確な規定がない「学部研究生」の枠を大幅に広げるなどして13年度以降、留学生を10倍以上に増やし、18年度は5千人余を受け入れていた。ただ、アパートやビルの一室を教室にするなど教育環境は貧弱だった。この3年間で研究生を中心に留学生1610人が所在不明になっていたという。「大学が真に留学を目的としない外国人を大量に受け入れることは想定外だった」と柴山昌彦文科相は言う。苦し紛れの釈明である。留学名目で大学や専門学校などに籍を置き、在留資格を得る。けれども実態は出稼ぎ目的の事例が多いと、かねて指摘されていた。日本側の人手不足も手伝い、外国人を積極雇用する企業も増えている。東京福祉大は結果として、そうした「需要」の受け皿になっていたのではないか。少子化が進む中、日本の大学は学生の確保に苦慮している。留学生の受け入れ拡大が「ビジネス色」を帯びた面も否めない。政府は東京福祉大に学部研究生の募集を当面見合わせるよう指導した。全大学に留学生の在籍管理の厳格化を求める仕組みを設ける方針も打ち出した。それも遅きに失した感がある。政府はこれまで留学生の数値目標にこだわり、問題を半ば黙認してきた印象が拭えないからだ。留学生の不法残留は近年増加の一途をたどり、今年1月の法務省調査では過去10年間で最多の4708人に上った。政府の計画が、大学のずさん経営や企業の低賃金雇用、外国人の人権侵害、さらには犯罪を助長しているとすれば本末転倒である。無論、大学の自治を尊重し、意欲ある留学生を支援することは重要だ。それを踏まえつつ、政府は「30万人計画」の検証を進めるべきだ。大学の活性化や日本の国際競争力の向上などにどれだけ寄与しているのか。そうした視点での検証作業は、今春スタートした外国人労働者受け入れ拡大策の適正、円滑な実施にも資するはずだ。

*13-3:https://www.nishinippon.co.jp/item/o/521462/ (西日本新聞2019/6/25) 生活保護世帯は奨学金を増額
 政府は25日、低所得世帯を対象にした大学や短大、高専、専門学校の無償化制度を来春から導入するのを前に、給付型奨学金の額や授業料の減免額を正式に定める政令を閣議決定した。生活保護世帯の自宅生や児童養護施設の入所者は、給付型奨学金の支給額を通常より4100~8300円高い月2万5800円~4万2500円とする。文部科学省によると、夫婦と子ども2人(うち1人が大学生)の家庭の場合、支給額が満額となる世帯年収の目安は270万円未満。年収380万円未満の場合は、支給額が満額の3分の1~3分の2となる。

*13-4:https://digital.asahi.com/articles/DA3S14069003.html?iref=comtop_tenjin_n (朝日新聞 2019年6月25日) (天声人語)制服100年の歩み
 女子学生の服装史をさかのぼると、ちょうど1世紀前、1919(大正8)年が大きな節目だった。その年を境に通学服の流れが和装から洋装へと切り替わったからだ。東京の弥生美術館で今月末まで開催中の「ニッポン制服百年史」展を見て学んだ▼内田静枝学芸員(50)によると、明治の初め、女子の通学服と言えば着物だった。官立学校は袴(はかま)を勧めたが、生徒には不評。政府が欧化を急いだ鹿鳴館の時代には一転、ドレスが推奨されるが、浸透しなかった▼1919年夏、画期的な制服を考案したのは私立の女学校長だった山脇房子氏だ。紺色のワンピースと白のエリ。斬新すぎて恥ずかしいとためらう生徒も少なくなかったが、校長自ら率先して着用した▼着物より安くて動きやすい。これを皮切りに洋装が広がる。昭和に入るとセーラー服が優勢に。戦時下には、もんぺ姿を強いられ、嘆く声が聞かれた。戦後の成長期にはセーラー服に加えてブレザーも人気を広げた▼80年代以降、制服のデザインを一新した高校で受験者が急増するなど、制服は学校の経営にも影響を及ぼした。「明治以来、いくら政府や学校、親たちが強制しても、着る本人たちに愛されないと女子の制服はすぐ廃れました」と内田さん▼「女子でもスラックス制服を選べます」――。性的少数者への配慮などから、近年は性別を超えて制服の選択を認める自治体も出てきた。新旧の展示品を見て回りながら、制服は時代の制約と変化の縮図のように感じた。

<ドアホな政策が産業の低迷を生み、国民負担を増やすのだということ>
PS(2019年6月26日追加):再生可能エネルギー由来の電力で豊富な水を電気分解すると、水素と酸素が発生する。つまり、再生可能エネルギーと水が豊富な日本は、水素燃料を自給した上、輸出までできる国であり、(副産物として自然にできるのでなければ)石炭・原油・天然ガスなどの化石燃料から作るよりもCO₂フリーで超安価なのだ。にもかかわらず、*14-1のように、経産省が「水素を軸としてこのような国際協調の輪を広げ」「将来にわたって日本のエネルギー調達を安定させる」などとしているのは、ドアホとしか言いようがない。しかし、このようなことが起こるのは、馬鹿な議員を何度も当選させたり、行政の言うことだから正しいと考えたりなど、主権者たる有権者の責任にほかならないのである。
 また、輸送手段も水素燃料を使えば水しか排出しないため、陸上交通やジェット機だけでなく、*14-2の海運も水素燃料か電力に変更すべきだ。記事には「変更に多額のコストがかかる」と書かれているが、現在は港を汚し公害(外部不経済)を垂れ流して国民に負担させているため、液化天然ガス(LNG)に代替する手間とコストを省き、エンジンだけをすぐに燃料電池に換えたり、船舶を燃料電池船に更新したりすれば、全体としてはより安価にすむだろう。

 
 FCV航空機(IHI製) FCVバス(東京) FCV電車(ドイツ)   FCVトラック


        EV航空機            EV船(石垣島)   EV軽トラック

*14-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190626&ng=DGKKZO46558320V20C19A6EE8000 (日経新聞 2019年6月26日) 水素エネ普及 資源国と連携、サウジで燃料電池車 豪と輸送実験 技術提供テコに協力主導
 政府は水素エネルギーの普及へ資源国との連携を強化する。サウジアラビアで日本の技術を提供して水素ステーションを設けたほか、オーストラリアでは石炭からつくる水素の輸送実験を手掛ける。化石燃料は温暖化対策に逆行すると批判されている。現状ではコストが高いものの環境負荷の小さい水素の開発を通じ、日本は次のエネルギーに注目する資源国との結びつきを強める。「水素など新しい分野での協力も進めたい」。17日、世耕弘成経済産業相と都内で会談したサウジアラビアのファリハ・エネルギー産業鉱物資源相はこう呼びかけた。水を電気分解してつくる水素は燃やしても水が出るだけで、二酸化炭素(CO2)を排出しない。環境への負荷が小さく「究極のクリーンエネルギー」とされる。サウジアラビアは原油販売への依存を減らすため国内産業の多角化を進めており、原油から生産できる水素に期待をかける。そのサウジアラビアの国営石油会社、サウジアラムコは今月中旬から、水素を供給する「水素ステーション」の実証実験を始めた。トヨタ自動車の燃料電池車(FCV)を導入し、水素活用の方策を探る。技術面で日本が協力し、原油から水素を取り出す技術の実用化なども進める考えだ。水素は石炭などからもつくることができる。このため埋蔵する化石燃料を環境に配慮した形で活用したい資源国が注目しており、水素開発の技術を持つ日本との連携を強める動きが広がる。豪州は炭化が不十分で低品位な「褐炭」をガス化して水素をつくる。2020年度にも専用設備を備えた船で日本に運ぶ計画だ。30年ごろの商用化を視野に入れている。ブルネイでも未利用の天然ガスを水素に変え、日本に運ぶ計画がある。日本は川崎重工業や千代田化工建設など水素のプラント建設や輸送に強みを持つ企業が多い。FCVを含め、世界的に高い水準の技術をテコに協力国を増やす考えだ。水素は天然ガスなど他のエネルギーと単純比較して供給コストが数倍に上り、まだ普及していない。採算性の向上が課題だが、クリーンエネルギーとしての将来性には各国が期待を寄せる。経産省によると、中国は30年にFCVを100万台導入する目標を掲げる。経産省など日米欧の当局は6月中旬、水素分野での協力を盛り込んだ共同宣言を出した。長野県で開かれた20カ国・地域(G20)エネルギー・環境相会合に合わせて開催したのは、日本が開発を主導する姿勢を国際社会でアピールするためだ。世耕経産相らが議長役を務めたG20の同会合でも、共同声明に水素に関する文言を盛り込んだ。9月には日本が主導した関係閣僚会議の2回目の会合も控える。経産省は水素を軸としたクリーンエネルギーの国際協調の輪を広げることが、将来にわたって日本のエネルギー調達を安定させる戦略を支えるとみている。

*14-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190626&ng=DGKKZO46488060U9A620C1QM8000 (日経新聞 2019年6月26日) <海運環境規制 広がる波紋(上)>燃料転換、コスト重荷、硫黄分、大幅削減迫る
 海運業界に新たな環境規制が迫っている。国連の専門機関である国際海事機関(IMO)は、2020年から船舶燃料の硫黄分を大幅に減らすよう海運会社に求める。規制を満たすには多額のコストがかかる。海上運賃や燃料油など、商品市況への影響は広範に及ぶ。「ほかの環境規制に比べあまりに規模が大きい」。海運大手の担当者はこうぼやく。新たな規制は、あらゆる船舶の燃料油に含まれる硫黄分の上限を3.5%から0.5%と大幅に引き下げるよう義務付ける。国内外を問わず全ての海域で守らなくてはならない。目的は大気汚染の原因となる硫黄酸化物(SOx)の排出削減だ。海域や稼働年数などによって対象にならなかった船もあった従来の環境規制に比べ、適用範囲は広い。海運業界の対応方法は主に2つある。1つは燃料の切り替えだ。これまで使っていたC重油に代わり、硫黄分の少ない軽油と重油を混ぜた「適合油」を使う。硫黄を含まない液化天然ガス(LNG)の代替使用も選択肢になる。もう1つは船への脱硫装置(スクラバー)の設置だ。C重油を燃やした際の排ガスから硫黄分を除去する。どの方法にしてもコスト増は避けられない。スクラバーの設置に5億円前後が必要との見方もある。LNGは主要な港ごとに必要な補給体制の整備が進んでいない。現時点で最も現実的な対策は適合油だ。製造に使う軽油はアジア市場の指標となるシンガポール市場で1トン620ドル前後。船舶用C重油(420ドル前後)に比べ5割高い。「従来の船舶用重油に比べ、最低でも1トン5千~6千円(1割程度)高くなるだろう」(市場関係者)との声すら聞かれる。海運会社は大手を中心に、適合油の確保を進める。商船三井は燃料油の補給港で最大のシンガポール港で、19年内に切り替える予定の適合油を先行調達した。20年1~3月分も「6割確保した」(エネルギー輸送営業本部の中野道彦燃料部長)。一方で適合油には硫黄分以外の明確なスペックが確立していない。「複数の企業から調達した燃料がタンクで混ざると、エンジンに問題が起きないか」との不安を訴える海運会社もある。日本船主協会(東京・千代田)の武藤光一会長(商船三井前会長)は「(対応策の)選択の是非で経営内容に大きく差がつき、業界地図が塗り替わるかもしれない」と話す。海上運賃への影響は避けられそうにない。

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2019.6.10 自民党の参院選公約について (2019年6月11、12、13日追加)
   
  シャクヤク     アジサイ       ハナショウブ      ヒマワリ

(1)外交について
1)北朝鮮
 自民党は、*1-1のように、北朝鮮に対しては、「現在実施している制裁措置の厳格な履行に加え、さらなる制裁の検討を行う」と公約したそうだ。しかし、拉致問題については、選挙前になると拉致被害者家族の話を聞くが、通常は北朝鮮の核保有を批判したり、金正恩氏を(批判というより)口汚く罵ったり、馬鹿にしたり、圧力をかけたりしているため(これは放送・新聞・SNS等を通じて北朝鮮にも同時に配信されている)、拉致被害者を取り戻すことを第一に考えて行動してきたとはとても思えない。

 そのため、(すべてを公表することはできないかも知れないが)拉致被害者を取り戻す明確な戦略を示さない限り、信用できなくなったわけである。

2)北方領土
 北方領土については、安倍首相は対ロ交渉への悪影響を懸念して「固有の領土」との表現を封印されたそうだが、自民党の公約は「北方領土はわが国固有の領土」と明記しており、*1-1のように、それではその矛盾をどうするかについての戦略と道筋を示さなければ、外向きと内向きでは言うことが異なるという主権者を馬鹿にした公約になる。

 そのため、小さな“不正行為”の追及に過度の時間を費やすのは時間の無駄だと思うが、北方領土に関する両国の認識の矛盾とそれを突破する戦略を、首相や外務大臣が放送される委員会で説明することは必要不可欠で、そうでなければ言いっぱなしの公約になる。

(2)改憲について
 自民党の参院選公約は、*1-1のように、「早期の憲法改正を目指す」と記しており、改憲項目は、①9条への自衛隊明記 ②緊急事態対応 ③合区解消 ④教育充実 の4項目を改憲案として記しているそうだ。

 しかし、私は、「他国は何度も改憲しており、外国に押し付けられた憲法だから、改憲自体が必要である」という改憲理由は何度も聞いたことがあるが、上記④に改憲を要する納得できる理由を聞いたことはない。何故なら、④は、教育基本法で既に定められており、不足部分は教育基本法を改正したり、財源を確保したりすればすむことで、改憲は不要だからだ。

 また、③の合区解消も、衆議院・参議院のどちらかは全員比例代表にした方が、同じ方法で選ぶのではないため二重チェックがしやすく、死票も少ない。しかし、あくまでも小選挙区制にこだわるのなら、憲法には「一票の格差」に関わる問題は書かれていないので、合区解消のためには公職選挙法に必要事項を記載すればすむと考える。

 さらに、①については、憲法は自衛権の範囲を定義していないため、個別自衛権なら合憲で集団的自衛権なら違憲とはならない。しかし、安全保障関連法の定め方を見て平和主義の国とはとても思えなかったため、選挙で勝った途端にすべての政策を信任されたと主張して①の改憲を進められては困る。従って、有権者は、冷静で厳しい目を持って公約を見る必要があるわけだ。
 
 最後に、②については、*2に書かれているとおり、非常事態の際に政府に権限を集中させ、国民の権利を制限するという内容が盛り込まれており、これは憲法の基本原則である国民主権や三権分立を停止して行政が何でもできるとするものであるため、暴走するリスクがある。そのため、言われている必要性が妥当であったとしても、それは改憲以外の方法で行うべきだと考える。

 なお、野党連合は、自民党の参院選公約について、*1-2のように、反論している。

*1-1:https://www.shinmai.co.jp/news/nagano/20190609/KT190608ETI090009000.php (信濃毎日新聞 2019年6月9日) 自民参院選公約 党総裁の説明を聞きたい
 政権与党として責任のある公約なのか。自民党が参院選の公約を発表した。党総裁である安倍晋三首相が進める「外交」を前面に打ち出したことが特徴である。北朝鮮やロシア外交の行き詰まりが鮮明になる中、政府と異なる方針を打ち出した。安倍首相は党総裁として、理由を説明しなければならない。北朝鮮に対し、現在実施している制裁措置の厳格な履行に加え、「さらなる制裁の検討を行う」と記した。北方領土は「わが国固有の領土」と明記している。安倍首相は無条件での日朝首脳会談開催を目指し、北朝鮮に「圧力を加える」と言及することを避けている。北方領土では対ロ交渉への悪影響を懸念して「固有の領土」との表現は封印中だ。それでも自民党の岸田文雄政調会長は「これまでの政府、与党の方針を踏襲した」としている。野党は衆参両院の予算委員会で、首相に外交方針の変更などについて答弁することを求めてきたのに、与党は予算委の開催を拒否している。首相は詳細を明らかにしないまま、外国向けと国内向けで異なる方針を使い分けるのは無責任である。これまで最重要項目だった経済政策アベノミクスは、主張の2番手に後退させた。景気の後退傾向が出ている中で政策の限界を示している。「強い経済で所得を増やす」と記しているものの具体策は明記されていない。過去の実績をアピールしても、有権者の関心は今後にあるはずだ。現状を分析した上で対策を打ち出すのが筋である。改憲では、首相が掲げる2020年という目標年次の明示を見送り、「早期の憲法改正を目指す」と記した。「野党を刺激しても得にならない」という判断とみられている。さらに9条への自衛隊明記、緊急事態対応、合区解消、教育充実の4項目も党改憲案として記した。一方で改憲が必要な理由や今後の道筋を明らかにしていない。安倍政権は一内閣の判断で憲法解釈を変更して、違憲との批判を顧みないで集団的自衛権行使を容認する安全保障関連法を定めている。立憲民主党など野党は安倍政権下での改憲に反対し、議論に応じていない。具体策を示さないまま、選挙を終えた途端に信任されたと主張して、議論を一方的に進めるのではないか。有権者は厳しい視線で公約を見つめる必要がある。

*1-2:http://www.jcp.or.jp/akahata/aik19/2019-06-09/2019060902_04_1.html (赤旗 2019年6月9日) 自民党の参院選公約 5野党との対決鮮明
 自民党が7日発表した参院選公約で、安倍政権と日本共産党など5野党・会派の対決点がより鮮明になりました。民意を踏みにじって憲法改定、消費税10%増税、沖縄・米軍辺野古新基地建設、原発再稼働などを宣言した自民党公約に対し、野党党首が5月29日に合意した参院選の「共通政策」は安倍政治の転換を掲げています。
●憲法
自民 早期の改憲めざす
野党 国会発議させない
 自民党は参院選公約の重点項目で「早期の憲法改正を目指します」と明記。改憲は春の統一地方選公約や2017年の総選挙公約にも盛り込まれていましたが、新たに「早期改憲」と時期に踏み込みました。自民党は衆参憲法審査会への改憲4項目の提示を狙っており、選挙で早期改憲を公約にし、改憲論議の促進をはかる狙いです。17年に安倍晋三首相が9条への自衛隊明記を提案したときは、「北朝鮮情勢が緊迫し、安全保障環境が一層厳しくなっている」(「読売」5月3日)ことを強調しましたが、今度の公約では「北朝鮮の脅威」を強調できなくなっています。野党は共通政策で、▽安倍政権が進めようとしている憲法「改定」とりわけ第9条「改定」に反対し、改憲発議そのものをさせないために全力を尽くす▽東アジアにおける平和の創出と非核化の推進のために努力し、日朝平壌宣言に基づき北朝鮮との国交正常化、拉致問題解決、核・ミサイル開発阻止に向けた対話を再開する―などとしています。
●消費税
自民 10月に引き上げ
野党 増税中止めざす
 自民党は消費税増税については、重点項目では触れず、後段の各種政策集の中に「本年10月に消費税率を10%に引き上げます」と記述しました。争点化の回避をねらう意図が透けて見えます。公約では「誰もが安心、活躍できる人生100年社会をつくる」と掲げ、幼児教育・保育の部分的な無償化や低所得者世帯の学生への支援などをアピールしていますが、財源は低所得者ほど負担が重い消費税増税です。実際には誰もが不安でいっぱい。「年金の水準が当面低下する」ことなどにより、老後の資金が夫婦で2000万円不足すると自助を呼び掛けた金融庁の審議会の報告書案に対して、「『100年安心の年金』との説明はどこにいったのか」と批判が集中。政権が修正や釈明に追われています。公約で「目指す」とした最低賃金も「全国加重平均1000円」にすぎません。一方、野党は共通政策で▽10月の消費税率引き上げの中止と税制の公平化▽地域間格差を是正しつつ目指す最低賃金「1500円」を目指す▽保育、教育、雇用予算の飛躍的拡充▽選択的夫婦別姓の実現―などを掲げています。
●外交・安保
自民 軍事力を拡充・強化
野党 軍事費を他分野に
 自民党は重点項目の六つの柱の第一に「外交・防衛」を掲げ、「日米同盟をより一層強固にし、ゆるぎない防衛力を整備する」としました。政策集には、軍拡や基地強化、米国とともに海外で戦争する国づくりを加速させる項目が並びました。「防衛力の質と量を抜本的に拡充・強化」するなど軍拡路線を強調。「平和安全法制」(戦争法)で可能になった任務に関して「態勢構築や能力向上を着実に進めます」と明記しました。さらに、沖縄県民の民意を無視して「普天間飛行場の辺野古移設」を「着実に進める」としました。これに対して、野党は共通政策で▽膨張する防衛予算、防衛装備を憲法9条の理念に照らして精査し、他の政策の財源に振り向ける▽安保法制、共謀罪法など立憲主義に反する諸法律を廃止する▽沖縄県名護市辺野古における新基地建設を直ちに中止し、普天間基地の早期返還を実現し、撤去を進める―と打ち出しています。

<緊急事態条項について>
*2:https://www.huffingtonpost.jp/2018/05/03/kinkyu-jitai-joukou_a_23426043/ (Huffingtonpost  2018年5月3日) 憲法改正「緊急事態条項」は本当に必要なのか? 被災者を支援してきた弁護士が分析 有効性は? そして歯止めは?
 憲法改正が議論される中、改正理由のひとつとされているのが「緊急事態条項」だ。自民党が3月に示した案では、非常事態の際に政府に権限を集中させ、国民の権利を制限するという内容が盛り込まれている。権限の集中は、効果的な場面がある一方で、暴走のリスクもある。今回、取り沙汰されている緊急事態条項には、どれぐらいの必要性があるのか。そして、歯止めは十分なのか。岩手県宮古市で東日本大震災の被災者支援に携わった経験があり、災害時の法律問題にくわしい小口幸人弁護士に解説してもらった。2018年3月25日に開かれた自民党大会で示された、憲法改正「条文イメージ・たたき台素案」。このうち、緊急事態条項の部分である新73条の2と新64条の2について分析する。《第七十三条の二 大地震その他の異常かつ大規模な災害により、国会による法律の制定を待ついとまがないと認める特別の事情があるときは、内閣は、法律で定めるところにより、国民の生命、身体及び財産を保護するため、政令を制定することができる。② 内閣は、前項の政令を制定したときは、法律で定めるところにより、速やかに国会の承認を求めなければならない。》
第1 新73条の2
1 独立命令の制定権限を付与する案
 一見すると少しわかりにくいが、ザックリいうとこれは、内閣だけで法律をつくったり改正したりできるようにする案である。以下詳しく述べる。まず、学校で教わったように、国会が定めるのが「法律」、内閣が定めるのが「政令」である。現行憲法では、常に政令は法律の「下」にあり、法律の定める範囲内に限って定めることができる。内閣が、国会で定めた法律に反することを、政令で定めても無効だし、政令で法律を変えることはできない。新73条の2は、「大地震その他の異常かつ大規模な災害により、国会による法律の制定を待ついとまがないと認める特別の事情があるとき」に、内閣に、法律と同一の効力のある政令(俗に言う「独立命令」)を制定できるようにする案だ。このときに限り、内閣は政令で法律を変えたり、新たにつくったりすることができるようになる。2項で、「速やかに国会の承認を求めなければならない。」とすることで、歯止めを設けているつもりなのであろう。自民党は、2012年の憲法改正草案98条で、「法律と同一の効力を有する」政令制定権限を、内閣に認めていたが、新73条の2はその改訂版だ。歴史的には、戦前の大日本帝国憲法が定めていた緊急勅令の復活案と整理することができる。実際、緊急勅令の条文と新73条の2のつくりは似ている。なお、大日本帝国憲法8条2項は、議会が承認しなかった場合、緊急勅令の効力が将来に向かって失われると定められていた。しかし、新しい憲法73条の2、第2項には効力を失うとは書いていない。
2 歴史が語る独立命令の危険性
 法律は国会しか制定できない。国民が直接選んだ国会しか法律を制定できないという仕組みは、民主主義の根幹だ。内閣だけで、法律と同じ効力がある政令を制定できる独立命令は、この根幹を変えるものであり、三権を分立した意味を失わせかねない危険な枠組みである。濫用の恐れがあることは言うまでもない。戦前のドイツの憲法、ワイマール憲法は20歳以上の男女に普通選挙権を認めるなど、当時最も民主的だと言われた憲法であった。しかし、その48条には、「公共の安全、秩序に重大な障害が生じる恐れがあるときは、大統領は、公共の安全および秩序を回復させるために必要な措置をとることができる」という定めがあった。1933年2月27日に国会議事堂が放火されるという事件が起きるなり、当時第一党の党首であったヒトラーはヒンデンブルグ大統領に迫り、48条に基づき独立命令を制定させ、言論・報道・集会・結社の自由、通信の秘密を制限。さらに、令状によらない逮捕・拘束を行った。戦前の日本の憲法、大日本帝国憲法8条の緊急勅令も濫用されたことがある。1928年、帝国議会に出された治安維持法の改正案は、異論が噴出し、廃案となった。しかし、緊急勅令により法改正が強行された。1920年代、30年代、そして戦争の教訓を踏まえて制定されたのが日本国憲法だ。独立命令は、国家を運営する者にとっては実に便利なものだが、民主主義の根本原則に反し、濫用の危険を払拭できないとして、日本国憲法には定められなかった。つまり、大日本帝国憲法にあった緊急勅令も廃止された。こういった経緯を観れば、仮に必要性があったとしても、安易に、内閣だけで法律と同一の効力を有する政令(独立命令)を制定できる権限を与えてはならないことがわかる。法案の内容は慎重に検討されなければならない。濫用された過去を踏まえ、歯止めは十分にしなければならない。
3 歯止めは不十分
 しかし、この法案には、歯止めが不十分だ。問題点を挙げていこう。
(1) 対象に限定なし
 濫用された場合の弊害を小さくするためには、独立命令を制定できる対象をあらかじめ制限しておくことが考えられる。例えば、自然災害直後の避難者の避難に関する事項に限る等である。しかし、新73条の2は対象を一切限定していない。つまり、刑法や刑事訴訟法、公文書管理法、情報公開法、民法、土地収用法等はもちろん、公職選挙法、国会法、裁判所法、警察法、地方自治法等の改正もできる案になっている。濫用されたら令状なしの逮捕も、新たな罪を設けることも、都合の悪い文書の一切を破棄することも何でもできる。
(2) 手続きの制限なし
 濫用される場合を少しでも減らすため、手続きを厳格にしたり、段階を踏ませたり、期間を制限することも考えられる。例えば、2012年の自民党憲法改正草案も事前に「緊急事態宣言」という手続きを必要とした上で、100日という期間制限を設け、継続するには国会承認が必要という枠組みにしていた(無論、これでも不十分である)。しかし、新73条の2については、「法律で定めるところにより」としか書かれておらず、何の制限もかけていない。内閣はある日突然、独立命令を制定できてしまう。しかも、「法律で定めるところにより」の「法律」自体も独立命令で変えることができてしまう。
(3) 国会が承認しなくても効力は失われない
 先に述べたように、新73条の2第2項には、国会の承認が得られなかったときの効果が定められていない。大日本帝国憲法の8条2項でさえ、将来にわたって効力を失わせると定めてあったのに何もないのである。なお、現在の憲法54条3項には、緊急集会で参議院がとった臨時の措置について、「次の国会開会の後十日以内に、衆議院の同意がない場合には、その効力を失ふ。」という定めが置かれており、その構造は新73条の2第2項とよく似ている。よく似ているのに、54条には効力を失うと明記されている一方、新73条の2には明記されていないとなったとき、この「違い」には意味があるとするのが、普通の法解釈だ。つまり、新73条の2については、国会が承認しなかったとしても、独立命令の効力は失われないということになる。そのため、仮に、独立命令のせいで何らかの被害を受けた国民が、事後に裁判を起こして補償等を求めたとしても、「当時は適法だった」となり、原則補償されないことになる。
(4) 自然災害に限られていない
 「災害」という文字をみると「自然災害」だけを思い浮かべてしまうが、法律ではそうではない。例えば、災害対策基本法2条1号は、「災害」の中に大規模な爆発を含んでいる。爆発の原因がテロや戦争でも「災害」に含まれる。改正案が、「自然災害」ではなく「災害」という文言を使っているのは、有事全般を対象にするためだと見るべきであろう。テロや戦争は、つねに「異常」事態だから、残る歯止めは「大規模」と、「国会による法律の制定を待ついとま」の有無だけになる。
(5) 内閣だけの判断で可能
 新73条の2は、内閣だけで独立命令を制定できる。国会や裁判所の承認等は不要である。「異常かつ大規模な災害」にあたるかどうか、「国会による法律の制定を待ついとま」があるかどうかは、内閣だけで判断されることになる。さて、内閣だけの判断に委ねて大丈夫だろうか。例えば、現在の安倍政権は、2017年6月22日に総議員の4分の1以上が要求した臨時国会の召集を実質的に無視した。憲法53条が、召集「しなければならない」と定めているにもかかわらずである。さらに同年8月10日、国会で北朝鮮のミサイル発射実験が、存立危機事態、すなわち「我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険」にあたるか否かが問われたが、安倍政権はこれを否定しなかった。「根底から覆される明白な危険」なんて、どう見てもないにも関わらずだ。こうした実情をふまえれば、内閣だけの判断で独立命令を制定できるのは余りにも危険だ。
(6) 国会も裁判所も歯止めになれない
 実は国会は、召集されているときしか力を発揮できない。そして、国会を召集する権限は内閣にある。つまり、国会が開かれていないときに、内閣が暴走しだしたら国会は歯止めになれない。もちろん、国会は内閣に召集を求める権限を持っているが、すでにこの権限は、2017年に安倍政権により無視されたことがある。では裁判所はどうか?残念ながら、我が国の裁判所は、具体的に誰かが被害を受けて訴え出ない限り判断してくれない。具体的な被害が訴えられたときでも、高度に政治的な問題については「統治行為」だからといって、判断を避けがちなのが我が国の裁判所だ。内閣に独立命令の制定権限を付与するなら、国会や裁判所が歯止めになれるよう、これらをパワーアップする改正を同時に検討すべきだが、自民党の案は内閣をパワーアップさせるだけなので、国会も裁判所も歯止めになれない。
4 新73条の2はあまりに酷い
 以上のように、新73条の2には権力濫用の歯止めがみあたらず、2012年の自民党憲法改正草案や、戦前の大日本帝国憲法8条と見比べても、酷いと言わざるを得ない。近代立憲主義は、権力の暴走を防ぎ基本的人権を遵守するための英知だ。しかし、新73条の2は、内閣は暴走しないという前提に立っており、憲法の何たるかを誤解している恐れすら感じさせる。なお、自然災害に絞ってみると、そもそも災害が起きた後、中央である内閣に権限を集中させて対処するという発想自体が間違っている。災害直後、国に各地の情報が集まるのはだいぶ後になってからである。国に権限を集め現場を「指示待ち」にさせてはならない。情報のある「現場」に権限と人を送るのが基本的な対処法であり、我が国の災害法制はそのようにできている(地方公共団体に権限を委譲する方向)。そもそも、災害が起きた後、泥縄式に慌てて法律をつくっても上手く機能しない。混乱するだけである。事前に対処法を決めておき、それが実践できるよう、平時から訓練を重ねておかない限り、災害直後は役に立たない。なお、政府が2015年3月30日にまとめた「政府の危機管理組織の在り方について(最終報告)」にも同様のことが書いてある。つまり、実は政府(官僚)は災害対策を結構ちゃんとやっていて(安倍総理ら政治家が、どの程度把握しているかは怪しい)、内閣に独立命令を制定できるようにする「必要」はないことを知っている。憲法を変えたがっている人が、災害をダシにている、そしてついに改正案までできあがったというのが現在の状況だ。
第2 新64条の2
 新64条の2は、俗に言う国会議員の任期を延長する条文である。その必要性については、これまで次のように説明されてきた。憲法は、参議院の緊急集会という制度を設けて、衆議院が解散され、衆議院議員がいない場合の対策はしている。しかし、衆議院議員が、任期満了によりいなくなった場合の対策が抜けている。仮に、大規模災害が起きて選挙の実施が困難になると、機能不全に陥りかねない。そこで、憲法を改正し、大災害などで選挙ができないときに、国会議員の任期を延長できるようにする必要がある、という説明である。しかし、この説明には大きな落とし穴がある。まず、衆議院議員の任期が満了になったのは戦後一回しかない。残りは全て解散総選挙である。そして、選挙が大規模災害で延期になったのも二回しかない。阪神淡路大震災のときと、東日本大震災のときだ。つまりこの議論は、戦後一回しかないできごとが、戦後二回しか起きていないような大災害のときに偶然重なるという、めったにない場合に備える議論でしかない。さらに、災害が起きて選挙ができないという問題があるなら、その対策は、選挙制度を改善して災害が起きても影響を受けにくいものにすることなのに、その検討は一切されていない。選挙が災害の影響を受けるのは、今の選挙が、決められた投票所に足を運ばないと投票できないという、限りなくアナログな方法になっているからだ。それこそ、スマホで、郵便局のATMで投票できるなら、災害による影響も最低限で済む。なお、日本弁護士連合会は、公職選挙法を改正して選挙制度を改めれば、首都直下地震や南海トラフ地震が起きても選挙は実施できると具体的に提言している。以下、自民党の改正案(新64条の2)を検討してみる。
1 期間の限定がない
 災害で選挙が実施できないのであれば、任期を延ばすのも一つの解決方法ではある。しかし、我が国は民主主義国家で、選挙は国民が直接意思を表示できる唯一の機会だから、延長は最小限度にしなければならない。政府の南海トラフや首都直下地震の被害想定に照らせば、延長期間としては1~2カ月程度だろう。しかし、新64条の2は、「任期の特例を定めることができる」とするだけで、特例の内容を限定していない。つまり、1年延ばすのはもちろん、3年、5年、10年延長するのも可能な案となっている。任期が伸びれば伸びるほど、国会や政府の正当性は失われていき、それが一定限度を超えたら、我が国は実質的に民主主義国家はなくなってしまう。国会議員の任期を延ばすというのは、実はそれぐらい危険なものであるにもかかわらず、改正案は、延ばせる限界を全く明記していない。
2 お手盛り
 国会議員の任期を国会で延期できる、まさにお手盛りである。よって、どんなに要件を厳しく定めても、運用が甘くされてしみあう恐れがある。自分のこととなると、甘くなってしまうのは人も国会も同じだ。3分の2というハードルも、小選挙区導入後、与党の議席が3分の2を超えることが頻繁になっている現状に照らせば高いとは言えない。国会の多数派が、自らの保身のため、いたずらに任期が延長される恐れも否定できない。
3 「適正な」という言葉の恐怖
 改正案は、「選挙の実施が困難」ではなく、「選挙の適正な実施が困難」としている。前者なら物理的、時間的な話だとわかるが、「適正な」という三文字が入るだけで濫用の恐れは飛躍的に高まる。いま選挙をしたら政権交代が起きてしまうと思った多数派が、何らかの理由で、任期を延ばす恐れはないだろうか。フェイクニュースが際限なく広がっており選挙の適正な実施が困難だ、ミサイルが飛んでくる恐れがあるという危機的な状況にあるから選挙の適正な実施は困難だ、リーマンショック再来の兆候がある今選挙の適正な実施は困難だなどなど、色々な濫用のケースがが頭をよぎる。はっきり言って、ここに「適正な」という文字を挿入するのは余りにもナンセンスだ。「濫用の恐れ」という発想、それ自体が欠落している恐れすら感じゾッとする。
4 対応できない場合が多すぎる
 憲法改正までするわりには、実は、新64条の2で対応できるケースは多くない気がする。まず、新64条の2は国会議員の任期を延ばすだけだから、解散の場合は対応できない。解散の場合はこれまでどおり、参議院の緊急集会で対応することになる。次に、新64条の2に基づいて国会議員の任期を延長するためには、国会の決議が必要だから国会開会中しかできない。召集には10日以上かかる。仮に国会開会中であったとしても、議員は毎週末地元に帰っている。大規模災害直後、交通網が遮断されている中、東京に集まるには時間がかかるだろう。さらに、起きた災害が首都直下地震だったらどうだろうか。その直後、余震や本震の発生が懸念されているときに、国会議員を国会議事堂に集めるのは果たして適切だろうか。
4 新64条の2よりは優れた方法
 以上のように、新64条の2は、濫用とお手盛りの危険がある上に、対応できるケースが実は多くない。そもそも、任期満了より圧倒的に多い「解散」の場合の対応を、今後も参議院の緊急集会で行うなら、任期満了のときも緊急集会で対応すればいい。それなら濫用の恐れもない。もし今の憲法ではできないというなら、改正して任期満了のときも緊急集会を開けるようにすればいい。なお、現在の憲法のままでも、つまり改正しなくても、衆議院の任期満了時に緊急集会を開催できるという有力な説がある。憲法制定当時の帝国議会の答弁と、解散と任期満了の問題状況(衆議院の欠缺)が同じであることから、類推適用できるという解釈だ。
第3 最後に
 自民党は、長い時間をかけて緊急事態条項の検討をしてきた。2012年の案にも明記されているし、特に2015年以降、党内の憲法改正推進本部で検討が重ねられてきたはずだ。それにもかかわらず、なぜ最終案がここまで酷いものになったのか。一連の経過を見てきた者としては、正直残念である。戦後直後の帝国議会、その憲法改正委員会では、大日本帝国憲法にあった緊急勅令(独立命令)が廃止された。独立命令は国家を運営する者にとって便利なものであることを率直に認めた上で、便利だが国民の意思を無視する制度であり、民主政治の根本原則に反するからという理由で廃止された。憲法改正を党是とする自民党が熟慮を重ねた結果できあがったのが、国会を不要としかねない新73条の2と、選挙の機会を失わせかねない新64条の2という、民主政治の根本原則に真っ向から反するものであった。このことを、国民は重く受け止め、改正への賛否を検討すべきであろう。

<年金問題について>
PS(2019年6月11、12日追加):*4-1のように、参院選前に年金問題が浮上し、「①国民が怒っているのは、公的年金の100年安心がウソだったこと(野党)」「②自分で2千万円貯めろとはどういうことか(野党)」「③100年安心と言っていたのに国家的詐欺(野党)」「④100年安心はウソではなく年金制度の持続可能性を担保できる(首相)」「⑤首相が100年安心とする根拠は、現役世代の平均的手取り収入の50%を割り込まない所得代替率とマクロ経済スライド(年金加入者の減少・平均寿命の延び・社会の経済状況を考慮して年金の給付金額を変動させる制度)」「⑥公的年金の水準は今後調整されていく(金融庁)」等の論戦が行われた。
 このうちの④⑤は、発生主義で年金資金を引き当てず、管理も徴収もいい加減だった厚労省(政府)管轄の社会保険庁の失政を給付抑制によって解決しようとするもので、そのやり方は、2016年に高齢者は現役平均所得の50%を割り込まなければ生活できるとする所得代替率の概念とマクロ経済スライドを導入し、インフレにして⑥のように年金を目減りさせて調整しようとするものであり、まさに③の詐欺なのである。
 また、①②は、これらの法改正があったにもかかわらず、高齢者の生活が100年安心だと思っていたこと自体が甘すぎ、さらに2000万円貯めれば十分であるとも限らない。そのため、私は、年金を大きな争点として参院選を戦うことに賛成で、その結果として、これまで既に年金保険料を支払ってきた国民に二重払いさせることなく、必要な年金支払額を発生主義で引き当てるようにしてもらいたい。そして、これは可能なことである(マニフェスト参照)。
 与党は、*4-2のように、参議院議員選挙を前に集中審議を拒否しているが、野党には追及のための追及ではなく、年金支払額へのマクロ経済スライド導入など高齢者を生活困窮者にする制度改革の是非を徹底的に追究してもらいたい。また、与党はそれなりに考えがあってやったことだろうから、参議院議員選挙の前に、その考え方と根拠を示してもらいたい。何故なら、その内容によって、政権を託すに足るか否かがわかるからである。

    
          2019.3.7東京新聞            2019.6.11東京新聞 

(図の説明:左図は、現時点の全国平均年金支給額と生活費支出額を比較したものだが、マクロ経済スライドによる給付水準の低下により将来の年金受取額は次第に減少する。また、支出額は、全国平均にしているので、参考にならない。それにしても、右図のように、次々と制度を変更し、国民が気づかないようにしながら年金受取額を減少《“調整”と表現している》させるマクロ経済スライドは、年金保険料を支払ってきた人に対する詐欺行為だ)

*4-1:https://digital.asahi.com/articles/ASM6B51DLM6BUTFK012.html?ref=mor_mail_topix1 (朝日新聞2019年6月11日)年金は安倍政権の鬼門?「老後2千万円」野党争点化へ
 参院選を控えた与野党論戦の論点に、老後の資産形成における「2千万円不足」問題が急浮上した。安倍晋三首相ら全閣僚が顔をそろえた10日の参院決算委員会で、野党側はこの問題に照準を合わせて政権を追及。これと合わせ、消費税率引き上げや安倍首相が掲げる憲法改正、米国との貿易交渉などへの批判を強め、参院選の争点に位置づける構えだ。「国民が怒っているのは(公的年金が)『100年安心』がウソだったことだ。自分で2千万円をためろとはどういうことか」。10日の参院決算委。4月の同委の質疑以来、初めて全閣僚が出席した論戦の場で、立憲民主党の蓮舫副代表は強い口調で「2千万円不足」問題を取り上げた。3日公表された金融庁の報告書にある「公的年金の水準は今後調整されていくことが見込まれる」との記載について、蓮舫氏は「足らざる部分のためにもっと働け、と。公助から自助にいつ転換したのか」と質問を投げかけた。首相は「老後に月5万円、30年で2千万円の赤字であるかのような表現は、誤解や不安を広げる不適切な表現だった」と釈明。だがその後、簡潔な答弁を求める石井みどり委員長(自民)の注意をよそにたたみかけた。「100年安心はウソではない」。反論の材料にしたのは、首相が「100年安心」の根拠としている「所得代替率」だ。所得代替率とは、現役世代の平均的な手取り収入に対する年金支給額の割合を示す数値で「100年安心」で約束したのは50%。厚生労働省によると今は約6割で、当面は50%を割り込まない見通しだ。首相はこの点を踏まえ「(現行制度で)給付と負担のバランスは取れている」とし、野党の批判は当たらないという認識を示した。首相はさらに「マクロ経済スライド」という、平均余命の延びなどに応じて年金支給を調整する仕組みの説明を駆使して反論した。2019年度の支給額の見直しで4年ぶりにこの制度を適用し、賃金の伸び率(0・6%増)を下回る0・1%増に支給額を抑制しつつ、プラス改定ができた成果を強調。これにより年金制度の持続可能性を担保できたとして、「現在の受給者、将来世代の双方にプラスになる。公的年金の信頼性はより強固になった」と胸を張った。今回の「2千万円問題」の議論では、現役世代の負担で高齢者の生活を支える年金制度について、制度の持続可能性という「根幹」を守るのか、支給水準を重視するのかという認識のギャップも浮かぶ。少子高齢化で現役世代が受給世代を支える年金制度の仕組みが限界に近づきつつある、との指摘もある。金融庁の報告書も年金が老後の収入の柱であることは認めつつ、支給額の目減りは避けられないという文脈で作成された。同庁幹部は「あくまで平均的なモデルケース」として「2千万円」と明示したとするが、野党側は政権追及の好材料を得たとして批判を強める。この日、共産党の小池晃書記局長は「100年安心と言っていたのに、いつの間にか年金は当てにするな、と。国家的詐欺に等しい」と追及すると、首相は「100年安心は仕組みとして確保する。給付と負担のバランスを取る」と答弁し、給付よりも制度を維持することを重視する考えをにじませた。
●記録問題、受給開始時期繰り下げ…野党追及
 参院選に向けて弾みをつけたい野党は、今回の「2千万円問題」をきっかけに「年金」に戦線を拡大させる構えだ。第1次安倍政権の07年、年金記録のずさん管理が発覚。持ち主不明の年金記録は約5095万件にのぼり、この年金記録問題なども影響し、自民党はこの年の参院選で大敗し、安倍政権退陣につながった。年金は有権者の関心も高く、「安倍政権にとって鬼門」(野党中堅議員)とみるためだ。蓮舫氏はこの日、麻生太郎財務相兼金融相に金融庁の報告書を読んだかどうかをただし、麻生氏から「全体を読んでいるわけではない」との答弁を引き出し、「国民の間で怒りが蔓延(まんえん)している大問題なのに」と突き放した。さらに、いまなお2千万件弱の記録の持ち主が不明のままの年金記録問題も取り上げ、当時「最後の1人まで徹底的にチェックし、全て支払う」と発言した首相に「口約束だったじゃないか」と迫った。一方、国民民主党の大塚耕平氏が問題視したのは、日本年金機構が年金の受給開始(原則)65歳を前に送付する年金請求書だ。現行制度では、受給開始時期を繰り下げると年金額は増額され、70歳開始の場合は65歳開始と比べて年金額は42%増える。このため、請求書には「年金額を増額させますか?」などの設問があり、受給開始を繰り下げる場合は請求書の提出は不要だとしている。大塚氏は「70歳まで繰り下げる方に誘導しているのではないか」と指摘した。平均余命よりも前に死亡した場合、65歳からの受給開始に比べて受け取る年金額が少なくなりうるため、大塚氏は「年金請求書を『年金詐欺』と言う人たちがいる」と批判した。さらに大塚氏は、年金財政の「定期健診」と言われ、5年に1度のその健全性を確認する「財政検証」も取り上げ、「(物価上昇率など)非現実的な前提で出てきたら大論争になって、これまたかんかんがくがくの議論が続く」と牽制(けんせい)した。財政検証を巡っては、14年の発表が6月3日だったため、今回も6月初めとなる見通しだったが、厚労省幹部は「まだしばらくかかる」。野党は参院選で年金問題が争点化するのを避けるため、政権が意図的に遅らせようとしているとの疑念を深めており、「財政検証は参院選前に速やかに出すべきだ」(国民・玉木雄一郎代表)と問題視している。野党側は参院選に向け、10月に予定される消費増税や、首相が目指す改憲に反対姿勢を強め、米国との貿易交渉や、日ロ、日朝関係など安倍政権の外交姿勢なども争点化する構えだ。ただ、金融庁の報告書をきっかけに年金問題が急浮上。旧民主党政権も年金制度の抜本改革を掲げつつ実現できなかった経緯があり、野党にとっても無傷ではいられないテーマだが、国民民主党の玉木雄一郎代表は10日、「年金を大きな争点として参院選を戦わなければならない」と山形市内で記者団に強調した。こうした野党側の攻勢を受け、10日の自民党役員会では改選組の参院議員から「2千万円問題は参院選に影響がある」と懸念する声が出た。二階俊博幹事長はその後の記者会見で「(金融庁の)報告書は老後に備えて個人の置かれた状況に応じ有利な資産形成ができるようにという観点からの提言。年金制度の信頼性とは別のものではないか」と火消しに回った。
●主要野党が参院選で争点化を狙うテーマ
・老後「2000万円不足」問題・年金問題
・安倍政権の姿勢・体質
・日米貿易交渉問題
・10月の消費増税の是非
・アベノミクスの功罪
・日朝・日韓・日ロ外交
・自民党が掲げる9条改憲の是非

*4-2:https://adclick.g.doubleclick.net/aclk?sa=L&ai=Cg2afcH8AXfaGKMXzrQTxj4・・ (佐賀新聞 2019年6月12日)与党、集中審議の開催拒否、老後2千万円で攻防激化
 参院予算委員会は12日午前、理事懇談会を開いた。与党は、野党が求めていた安倍晋三首相出席の集中審議開催を拒否した。95歳まで生きるには夫婦で2千万円の蓄えが必要と試算した金融庁金融審議会の報告書に関し、野党は安倍政権を徹底追及する方針で、参院選を前に、与野党攻防が激化した。野党は、麻生太郎副総理兼金融担当相が報告書受け取り拒否を表明したことを報告書が「消された」と批判した。自民党の森山裕国対委員長は記者団に「政府は報告書を受け取っておらず、予算委にはなじまない」と、衆参の所管委員会での議論が望ましいと指摘した。

<皇位継承を男系男子に限るのなら、公約に書くべき>
PS(2019年6月13日追加):「皇位継承を男系男子に限る」とする人がおり、*5に書かれている5人だけではないが、それは女性を男性より一段低い存在とみる女性を馬鹿にした態度だ。そのため、そう主張する議員の名前(政党としてそう判断するのなら、その政党の公約に記載すべき)とその主張の根拠を、参院選前に明らかにしておいてもらいたい。

*5:https://ryukyushimpo.jp/kyodo/entry-935213.html (琉球新報 2019年6月12日) 自民有志、男系の皇位継承を 年内提言へグループ発足
 自民党の保守系有志議員が12日、父方に天皇を持つ男系の皇位継承を求める議員グループ「日本の尊厳と国益を護る会」を発足させた。旧宮家(旧皇族)の皇籍復帰を検討する。女性天皇、父方に天皇がいない女系天皇のいずれにも慎重な立場を取る。年内に提言をまとめ、安定的な皇位継承策に関する政府の議論に反映させたい考えだ。グループは他に、中国など外国資本による土地取得を制限する立法を目指し、外国スパイの活動を阻むための法整備も働き掛ける。発起人は鬼木誠、高木啓、長尾敬の3衆院議員と青山繁晴、山田宏両参院議員の計5人。

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2019.6.5 北方領土の話 ← 日本の外交とそれに対する国内からの妨害も含めて (2019年6月6、9日追加)
 
 北方領土の地図  知床のシャチの大集合         羅臼のシャチ  

(図の説明:一番左が北方領土と呼ばれる地域の地図で、国後島も日本の湾の中に入っているため、せめて国後島までは変換してもらいたいものだ。しかし、この地域では漁業もできなかったため、餌が豊富らしく、知床(左から2番目)や羅臼(1番右と右から2番目)にはシャチの大集合する場所があり、世界自然遺産の名に値する地域となっている)




  優勝チーム   2019.6.9福島民報   JR九州のチーム  サハリンからのチーム
           会津チーム
(図の説明:上の段と下の段の左は、札幌市で開催されたYOSAKOIソーラン祭りで元気に踊る地元チーム。下の段の右3つは、会津・九州・サハリンから参加して、趣向を凝らした面白い演舞を披露しているチーム)

(1)北方領土に関するロシアの認識
 私自身は、北海道出身の友人の話や2005~2009年の間の衆議院議員として現地訪問した経験から、「歯舞、色丹、国後、択捉の北方4島は、歴史的に一度も外国の領土になったことのない日本固有の領土であるため、返還してもらいたい」と思うが、ロシア外務省は、*1-1のように、「日本政府は南クリルの『帰属変更』について住民の理解を得る必要がある」と発言し、上月駐ロシア大使を呼び出して注意を喚起したそうだ。

 また、日本の内閣府HPは、「ソ連が北方領土領有を主張する最も有力な根拠とする太平洋戦争終盤に行われたヤルタ協定は、米英ソ三国間の秘密協定であるため日本が拘束される理由はなく、同協定が領土移転の法的効果を持つものではないことは当事国である米国政府も公式に明らかにしている」としている(https://www8.cao.go.jp/hoppo/mondai/01.html参照)。

 そして、安倍首相とロシアのプーチン大統領は、2018年11月の首脳会談で、歯舞、色丹の2島の日本への引き渡しを明記した日ソ共同宣言を基礎に平和条約交渉を加速することで合意したそうだが、「ロシア側からは、戦争でとった領土なので、返してもらいたければ戦争をするか」という発言が出たこともあるわけだ。

(2)丸山衆議院議員の戦争発言について
 このような中、*1-2のように、北方四島ビザなし交流の訪問団の一員として国後島を訪問していた丸山衆議院議員(元日本維新の会)は、元島民の男性に対し、「戦争をしないと取り返せない」「ロシアと戦争して取り返すのに賛成か反対か」などと発言して問題になった。

 これに関し、*1-4のように、衆院議院運営委員会の与野党筆頭理事は、2019年6月4日、戦争で北方領土を取り返すことの是非に言及した丸山議員(元日本維新の会)に弁明書の提出を求め、その書面で丸山議員が「人民裁判」と反論し、議員辞職に否定的な考えを示したため、直ちに進退判断を迫る「糾弾決議案」を共同提出する方針で一致したそうだ。しかし、国会議員は国民の代表であるため国会による議員辞職勧告は無理筋であり、「多数派の意見と異なるから辞職せよ」というのも危険な発想だ。

 その丸山議員は、女性に対する破廉恥な発言もあったようだが、これを言いだすと丸山議員だけではないという話になるため、戦争発言に論点を絞ると、*1-3のように、「①戦争でこの島を取り返すのは賛成ですか、反対ですか」「②ロシアが混乱しているときに取り返すのはOKですか」「③戦争しないとどうしようもなくないですか」と言っているのがポイントのようだ。

 このうち、①は、ロシアに真っ向から対立すればそうなるが、それは日本人を含む誰も幸福にしない。②は、25年前のソ連邦崩壊直後で日本が豊かだった1990年代なら千載一遇のチャンスで、「技術支援や資金援助と引き換えに4島とも返還してもらう」という話もあり得たが、それから25年後の現在では遅い(https://blogos.com/article/179399/ 参照)。

 また、③だからこそ、もっと賢い方法を考えるべきだったのだが、現在はロシアが長期間実効支配した後で、日本は現状維持と称する長期間の不作為の後であるため、時間が経つほどに旧住民は減り、権利放棄に近づいてしまったわけである。

 私は、戦争するかしないかは決して議論してはいけない話題ではないが、戦争をすれば不幸な人が増え、日本国憲法違反であり、日本政府の長期間の外交不作為の後始末の方法を元島民に問いかけるのは酷だと考える。そういう意味で、丸山議員は思慮が浅かったと思う。

(3)北方領土問題の経緯
 安倍首相は、*2-1のように、北方領土問題に関して北方4島のうち色丹島と歯舞群島の引き渡しをロシアとの間で確約できれば、日ロ平和条約を締結する方向で検討に入ったそうだ。「2島決着」に傾いた背景には、4島をロシア領と位置付けるプーチン氏に択捉、国後の返還を求め続けた場合、交渉が暗礁に乗り上げ、1956年の日ソ共同宣言に明記された色丹と歯舞の引き渡しも遠のきかねないとの判断があるそうだ。

 ロシアのプーチン大統領は、もともとは親日派だったが、*2-2のように、「パラダイス文書」でプーチン大統領に近いガス会社がどうとか、娘婿がどうとかをさんざん言われた上、ウクライナ等の事件がある度に、日本はロシアの敵側についてきた。従って、反日になっても全くおかしくなく、全体として日本の政策は思慮も計画性もなかったと言わざるを得ないのである。

 そのため、北方領土問題に関する交渉の不調を、丸山議員の言動のせいのように書いたメディアもあったが、それは全くの責任転嫁である。

・・参考資料・・
*1-1:https://digital.asahi.com/articles/ASM1B1QSXM1BUHBI002.html (朝日新聞 2019年1月10日) ロシアが日本に注意喚起 北方領土「帰属の変更発言」
 ロシア外務省は9日、「日本政府が南クリル(北方領土のロシア側呼称)の『帰属の変更』について『住民の理解を得る必要性がある』などと発言した」として、モルグロフ外務次官が同日、上月豊久駐ロシア大使を呼び出し、注意を喚起したと発表した。
●プーチン大統領「対話の継続を期待」 安倍首相に書簡
 安倍晋三首相が4日の年頭記者会見で「北方領土には多数のロシア人が住んでいる。日本に帰属が変わることについて納得していただくことも必要だ」と述べており、これを批判したとみられる。同省は「1956年の日ソ共同宣言を基礎に平和条約交渉を加速するとした日ロ首脳の合意の本質をゆがめ、交渉の内容について両国の世論をミスリードするものだ」などとした。また、同省は日本側が「(ロシアによる)『戦後占領』について、ロシアから日本や日本の元住民への賠償を求めない案」についても言及したとも批判している。ロシア・メディアは8日、「平和条約交渉で日本政府が、北方四島の元島民らの財産権侵害に関するものなど、賠償請求権を互いに放棄するよう提起する方針を固めた」とする日本側の一部報道を伝えていた。安倍首相とロシアのプーチン大統領は11月の首脳会談で、歯舞(はぼまい)、色丹(しこたん)の2島の日本への引き渡しを明記した日ソ共同宣言を基礎に、平和条約交渉を加速することで合意した。

*1-2:https://mainichi.jp/articles/20190513/k00/00m/010/160000c?fm=mnm (毎日新聞 2019年5月13日)北方領土「戦争しないと…」維新・丸山議員 国後元島民へ発言
 北方四島ビザなし交流の訪問団の一員として国後島を訪問した日本維新の会の丸山穂高衆院議員(35)=大阪19区=が11日夜、滞在先の国後島古釜布(ふるかまっぷ)で元島民の男性に対し、北方領土問題について「戦争をしないとどうしようもなくないか」「(戦争をしないと)取り返せない」などと発言し、トラブルになった。同行記者団によると、丸山氏は11日午後8時ごろ、訪問団員との懇談中、元国後島民で訪問団長の大塚小弥太(こやた)さん(89)に「ロシアと戦争で(北方領土を)取り返すのは賛成か反対か」と語りかけた。大塚団長が「戦争なんて言葉を使いたくない」と言ったところ、丸山氏は「でも取り返せない」と反論。続いて「戦争をしないとどうしようもなくないですか」などと発言した。丸山氏はロシア人島民宅で飲酒した後で、訪問団員らの制止を聞かずに大声で騒いだり外出しようとしたりしたという。このため複数の団員が「日露友好の場にそぐわない」として丸山氏に抗議。丸山氏は12日、滞在先の古釜布で全団員の前で「ご迷惑をかけたことをおわび申し上げます」と謝罪した。一方、13日に北海道・根室港に戻った後の記者会見では「(マスコミに)発言を切り取られており心外。団員の中では領土問題についてタブーが無く話せると聞いており、団長にも考えを聞いた」などと述べた。発言を受け、日本維新の会の松井一郎大阪市長は同日、大阪市内で記者団に「(丸山氏を)厳重注意した」と語った。丸山氏は当選3回。衆院沖縄北方問題特別委員会の委員を務めている。

*1-3:https://digital.asahi.com/articles/ASM5F7G81M5FIIPE02T.html?iref=pc_extlink (朝日新聞 2019年5月13日)「戦争で取り返すの賛成か反対か」丸山議員の音声データ
 「戦争で島を取り返すのは賛成ですか、反対ですか」――。北方四島ビザなし交流の訪問団の一員として同行した日本維新の会の丸山穂高衆院議員(大阪19区)が訪問団長に質問を繰り返した。同行記者団の音声データに基づく、丸山議員と元島民とのやりとりは次の通り。
●維新・丸山氏「戦争しないと」 国後島で訪問団長に詰問
 丸山氏「今日行ったお墓は、本当に骨が埋まっていないんですよね」
 元島民「と私は思っているんです。もしあれでしたら千島連盟(千島歯舞諸島
     居住者連盟)の担当者に確認します」「骨があるかないかは、それは
     掘り返したわけじゃないから分かりません。(国後島の)古釜布に住ん
     でいた人たちは、おれたちの墓はここじゃないと言っているわけですよ。
     違うところだと言っているわけですよ」
 丸山氏「戦争でこの島を取り返すのは賛成ですか、反対ですか」
 元島民「戦争で?」
 丸山氏「ロシアが混乱しているときに、取り返すのはオーケーですか」
 元島民「戦争なんて言葉は使いたくないです。使いたくない」
 丸山氏「でも取り返せないですよね」
 元島民「いや、戦争するべきではない」
 丸山氏「戦争しないとどうしようもなくないですか」
 元島民「戦争は必要ないです」
 【中略】
 丸山氏「何をどうしたいんですか」
 元島民「何をですか」
 丸山氏「どうすれば」
 元島民「どうすれば、って何をですか」
 丸山氏「この島を」
 元島民「率直に言うと、返してもらったら一番いい」
 丸山氏「戦争なく」
 元島民「戦争なく。戦争はすべきではない、これは個人的な意見です」
 丸山氏「なるほどね」
 元島民「早く平和条約を結んで解決してほしいです」

*1-4:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/382907 (佐賀新聞 2019年6月4日) 丸山氏、異例の糾弾決議案可決へ、6日にも、与野党が共同提出合意
 衆院議院運営委員会の与野党筆頭理事は4日、国会内で会談し、戦争で北方領土を取り返すことの是非に言及した丸山穂高衆院議員=日本維新の会を除名=について、直ちに進退判断を迫る「糾弾決議案」を共同提出する方針で一致した。6日にも衆院本会議で可決される見通しだ。丸山氏は3日に提出した弁明文書で「人民裁判」と反論。議員辞職にも否定的な考えを改めて示した。丸山氏に関して、与党が提出したけん責決議案と野党の議員辞職勧告決議案は取り下げる。衆参両院事務局によると、国会議員への糾弾決議案提出は例がないという。

<北方領土問題の経緯>
*2-1:http://qbiz.jp/article/147433/1/ (西日本新聞 2019年1月21日) 安倍氏、2島決着案を検討 北方4島返還「非現実的」
 安倍晋三首相は北方領土問題に関し、北方四島のうち色丹島と歯舞群島の引き渡しをロシアとの間で確約できれば、日ロ平和条約を締結する方向で検討に入った。複数の政府筋が20日、明らかにした。2島引き渡しを事実上の決着と位置付ける案だ。4島の総面積の93%を占める択捉島と国後島の返還または引き渡しについて、安倍政権幹部は「現実的とは言えない」と述べた。首相はモスクワで22日、ロシアのプーチン大統領との首脳会談に臨む。「2島決着」に傾いた背景には、4島をロシア領と位置付けるプーチン氏に択捉、国後の返還を求め続けた場合、交渉が暗礁に乗り上げ、1956年の日ソ共同宣言に明記された色丹と歯舞の引き渡しも遠のきかねないとの判断がある。だが2島決着に実際に踏み切れば、日本固有の領土である択捉と国後を放棄したとの批判を招く可能性がある。首相は世論の動向を見極めながら、最終決断を下す構えだ。交渉経過については、公表を避ける意向。先に色丹と歯舞、後に択捉と国後の返還を目指すとした「2島先行返還」の実現可能性についても、首相は悲観的な見方を強めている。首相に近い政府高官は「プーチン氏は同意しない。あり得ない」と強調した。2島先行返還は、首相が当初思い描いていたとされる解決方式。共同宣言にある色丹と歯舞の引き渡しを巡っては、妥協の余地がないと結論づけた。日ロ関係筋によると、首相は昨年11月のシンガポールでの日ロ首脳会談で、宣言に言及し「日本としてこのラインは譲れない」とプーチン氏に伝えていた。同氏は理解を示したとされる。ただプーチン氏は、宣言にある色丹と歯舞の引き渡しに関し、必ずしも主権譲渡を意味しないとの認識を示している。主権引き渡しを求める日本との隔たりは大きい。首相が22日の会談で、難交渉を強いられる展開も予想される。北方領土交渉を巡り日ロ首脳は2016年12月の会談で、北方領土での共同経済活動に向けた協議開始で合意。だが協議は進展せず、昨年11月の会談で、双方は共同宣言を基礎に平和条約締結交渉を加速する方針を新たに確認した。

*2-2:http://digital.asahi.com/articles/ASKBV7JKHKBVUHBI03S.html (朝日新聞 2017年11月6日) 米閣僚、ロシア企業から利益 「パラダイス文書」を入手
 米トランプ政権のウィルバー・ロス商務長官が、タックスヘイブン(租税回避地)にある複数の法人を介して、ロシアのプーチン大統領に近いガス会社との取引で利益を得ていたことが、朝日新聞が提携する国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)の調べでわかった。ガス会社の主要株主には、プーチン氏の娘婿や、米国の制裁対象である実業家らが含まれている。商務長官は外国への制裁判断にも影響力を持ち、複数の専門家が「深刻な利益相反の恐れがある」と指摘している。英領バミューダ諸島などに拠点がある法律事務所「アップルビー」などから流出した膨大な電子ファイル「パラダイス文書」を元に、ICIJがロス氏の資産報告など複数の公文書と合わせて取材した。「ロシア疑惑」に揺れるトランプ政権にとって、新たな火種となることは必至だ。ロス氏は大富豪として知られる投資家だ。2月の商務長官就任時に、米国の法律に従い、保有資産を公開。職務と利益相反になりうるとして大半の資産を手放すことを宣誓し、米上院から承認された。しかし今回の取材で、タックスヘイブンである英領ケイマン諸島で、長官就任後も株を保有する複数の法人を通じて、海運会社「ナビゲーター」(ナビ社)と利害関係を保っていたことがわかった。ナビ社はロシアのガス石油化学会社「シバー」にガス輸送船を貸し出している。両社の取引が拡大すれば、ロス氏も利益を得る構図だった。シバー社はロシアの元国営企業で、プーチン氏の娘婿が取締役を務めるなど、同国政府と密接な関係にある。大株主の実業家も米国の制裁対象で、米国企業は取引が禁じられている。ICIJに対し、米商務省の報道官は「ロス長官は、ロシアなどへの米国の制裁政策を広く支えてきた。高い倫理基準を守っている」などと書面で回答した。(野上英文、高野遼、サーシャ・シャフキン(ICIJ)、マーサ・ハミルトン(ICIJ))

<漁獲量について>
PS(2019/6/6追加):近年、世界でイカなどの水産物漁獲量が増え、それに伴って資源量が減っている。そこで、*3-1のように、スルメイカの資源量も減っているわけだが、日本は世界第6位の排他的経済水域を保有しているため、本来なら有利な筈である。なお、日本人1人あたりの生鮮魚介類購入量は減っているが、*3-2のように、外食・中食による消費は増えており輸出を増やすこともできるので、不漁が続くようなら資源管理だけでなく放流や養殖も考えられる。


              冬生まれ群の     日本人1人あたり      日本の
 世界のイカ漁獲量    スルメイカ資源量   年間生鮮魚介類購入量  排他的経済水域

*3-1:https://www.hokkaido-np.co.jp/article/312445 (北海道新聞 2019/6/6) スルメイカ豊漁期待、函館から中型船出港
 日本海のスルメイカ漁の主力を担う中型船(30トン以上200トン未満)3隻が5日、函館港を出港した。石川県沖の好漁場「大和堆」を目指し、イカの回遊に合わせて北上しながら操業する。港では、家族ら約350人が見守る中、漁船が汽笛を鳴らしながら順次出港した。幸雄丸(184トン、乗組員8人)の島森憲一船長(71)は「不漁が続いているが、イカをたくさん函館に水揚げしたい」と意気込んだ。乗組員の父の見送りに来た北斗市の木村絵未さん(31)は「事故なく帰ってきてほしい」と漁船に向かって大きく手を振っていた。

*3-2:https://www.agrinews.co.jp/p47833.html (日本農業新聞 2019年6月4日) 6次化販売額2・1兆円 小規模事業の底上げ課題 農水省17年度調べ
 農業関連の6次産業化の年間総販売金額(2017年度)が2兆1044億円に上り、2年連続で2兆円を超えたことが農水省のまとめで分かった。関連の雇用者数は28万人に上り、前年度から10%増えるなどの成果も出ている。一方、1事業体当たりの年間販売額は1000万円未満が76%を占め、全体の底上げには結び付いていない。一層の積み増しができるかどうかが課題となっている。農業の6次産業関連の年間総販売金額の内訳を見ると、最も大きいのは、農産物直売所の1兆790億円。前年度から4・5%増えた。次いで農産物加工が9413億円で3%増だった。観光農園は402億円、農家レストランは383億円、農家民宿は57億円で推移。直売所と加工が6次産業化の柱となっている構図が続いている。販売額増加の背景として、同省は「地域ではブランド化などの取り組みが進んでいる。さらに行政による補助事業や相談などの支援も後押しになった」(産業連携課)とみる。6次産業化の進展に伴い、雇用も増えている。農業の6次産業化関連の雇用者数は、28万3400人に上り、前年度比10%増となった。常時雇用、 臨時雇用ともに女性が7割を占めており、6次産業化の拡大に女性が貢献している。農業関連の1事業体当たりの年間販売額は、3392万円に上る。だが販売規模で分けると、100万円未満が最も多く31・8%。100万円以上500万円未満が30・5%と続き、500万円以上1000万円未満は13・5%となっている。半面、年間販売金額が1000万円以上となっている事業体は全体の24・2%と、一部に限られる。小規模事業者を含め、各地の取り組みをいかに伸ばしていくかが問われている。

<日本で夢の新技術が停滞する理由>
PS(2019年6月9日):*4-1のように、「①EVはゼロ・エミッション車と呼ばれるが、発電時に火力発電所等でCO2が出る分を勘案して、ガソリン1リットルで45キロメートル走るエンジン車と同じ環境負荷が発生すると考えて新規制を作った」「②米カリフォルニア州や中国が採用しているEVなどの販売目標台数をメーカーごとに設定するZEV規制は導入しない」「③欧州などの環境先進地でも未導入のこの手法を日本が取り入れたのは一定の意義がある」「④最終の燃費目標を達成するためにどんなエコカーに力を入れるかは各メーカーの選択に委ねる『技術中立的』な規制体系」とのことである。しかし、①は、すべてのEVは火力発電所の電力を利用して走るという架空の仮定に基づいており、再生可能エネルギーの普及も阻んでいる。そのため、③のように、日本以外ではこいう馬鹿な規制を導入しないのである。さらに、この規制は、燃費のみに焦点が当てられており、環境汚染防止の理念はないが、それなら需要者の選択に任せれば経済合理性に基づいて選択するので、政府の介入はいらないのである。そして、②④は、日本政府が、どういう自動車を推進して環境を守るかという理念に欠けていることを示している。
 このように、政策の誤りで企業資金を無駄遣いさせている間に、世界一だったEV技術はどんどん遅れ、再生可能エネルギー技術も遅れた。そして、石油大国のアメリカでさえ、*4-2のように、米ウォルマートと独フォルクスワーゲン(VW)の米子会社エレクトリファイ・アメリカが、米国内のウォルマート120店への電気自動車(V)の急速充電スタンド設置を完了し、今後も順次設置店舗を増やして将来的には全米展開も視野に入れているのだから、充電器の標準規格も日本から離れるだろう。このような日本政府の理念なき政策誘導が、日本の新技術を停滞させてきたのである。
 なお、*4-3に、IMFのラガルド専務理事が、「①世界経済は下振れリスクが存在しており、貿易摩擦が重大なリスクになっている」「②関税がどうなるか不確実だと貿易は利益や繁栄につながらないと指摘した」と書かれており、日本は「まあまあ、緊張緩和しさえすればよいだろう」というように纏めることが多い。しかし、米国が主張している知的財産権の保護や進出企業の技術移転の強制廃止などは、公正な市場を形成するためにどの国にとっても必要な要件であるため、緊張緩和して自由貿易しさえすればよいわけではないのである。

  
    北陸電力より
(図の説明:左図のように、世界の太陽光発電設備は、2006年の6GWから2016年の303GWへと10年で約50倍になり、中央の図のように、世界では最も安価な電力となった。また、まだ発電量の中には入っていないが、右図のような有機薄膜型太陽電池もでき、設置できる場所が著しく広がっている)

*4-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190609&ng=DGKKZO45875160Y9A600C1EA1000 (日経新聞 2019年6月9日) 新燃費規制テコに車の革新を
 経済産業省と国土交通省が2030年度までに新車の燃費を16年度の実績値より32%改善することを自動車メーカーに義務付ける新たな燃費基準を定めた。ガソリン1リットル当たりの走行距離を全車種平均で25.4キロメートルに引き上げるというかなり高めのハードルだが、日本車各社は強みとする環境技術に一段と磨きをかけてほしい。地球温暖化問題への貢献と競争力強化の両立こそ、日本車が21世紀も繁栄を持続する道だ。今回の新たな規制には、諸外国に比べて大きな特長が2つある。1つは電気自動車(EV)のような電池で動き、ガソリンを消費しないクルマについても、燃費の考え方を導入したことだ。例えば日産自動車のEV「リーフ」の燃費は45キロメートル程度になるという。EVは走行時にCO2を出さず、ゼロ・エミッション車(ZEV)と呼ばれるが、実際は動力源の電力をつくる際に火力発電所などでCO2が出る。その分を勘案すると、ガソリン1リットルで45キロメートル走るエンジン車と同じ環境負荷が発生する、という考え方だ。環境性能を走行時だけでなく、発電所などの源流に遡って評価する手法を「ウェル・ツー・ホイール(油井から車輪へ)」と呼ぶ。欧州など環境先進地でも未導入のこの手法を日本が先駆けて取り入れたのは一定の意義があり、EVなどの環境性能のさらなる向上を促す効果を期待したい。もう1つは米カリフォルニア州や中国が採用しているEVなどの販売目標台数をメーカーごとに設定するZEV規制を導入しなかったことだ。特定の技術や車種に政府が肩入れするのではなく、最終の燃費目標を達成するためにどんなエコカーに力を入れるかは各メーカーの選択に委ねる「技術中立的」な規制体系といえる。最近は欧州や中国でも、日本が生みの親であるハイブリッド技術を再評価する機運が高まっている。日本メーカーは新燃費規制をテコに環境技術の革新を加速し、世界をリードしてほしい。

*4-2:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO45808630X00C19A6000000/ (日経新聞 2019年6月7日) ウォルマート、EV充電器120店に設置完了 全米展開も
 米ウォルマートと独フォルクスワーゲン(VW)の米子会社エレクトリファイ・アメリカは6日、米国内のウォルマート120店への電気自動車(EV)の急速充電スタンド設置が完了したと発表した。今後も順次設置店舗を増やしていく方針で、将来的には全米展開も視野に入れる。両社は2018年7月、初のEV用充電スタンドをアーカンソー州に置いた。その後約1年で34州にある店舗を対象に、1店あたり平均4~6台の充電スタンドを追加した。出力は150~350キロワットで「車種にもよるが平均20~30分程度」(エレクトリファイの担当者)での急速充電が可能という。ウォルマートでエネルギー部門を担当するマーク・バンダーハイム副社長は「消費者に、環境に配慮した持続可能な選択肢を与えることができる」と説明。「今後はさらに2~3倍の規模までスタンド設置を広げたい」と意気込みを述べた。ウォルマートは全米に約5千の店舗を持ち、その多くが移動に車を必要とする地方にある。利用者が充電を待つ時間に店舗に立ち寄ってもらう狙いもある。現在、EV充電スタンドは需要のある東海岸と西海岸に集中している。エレクトリファイは今後10年で20億ドルを投資し、米南部でも徐々にスタンド設置を広げたい考えだ。同社のブレンダン・ジョーンズ最高執行責任者(COO)は「ウォルマートと共同でゼロエミッション車の普及に貢献したい」と述べた。VWは排ガス不正問題を受けてカリフォルニア州当局との合意に基づきエレクトリファイを設立した。

*4-3:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO45874530Y9A600C1EA2000/ (日経新聞 2019/6/8) 世界経済「貿易摩擦のリスク重い」 IMF専務理事
 20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議に出席するため福岡市を訪れている国際通貨基金(IMF)のラガルド専務理事は8日、日本経済新聞などのインタビューに答え、世界経済について「下振れリスクが存在しており、明らかに貿易摩擦が重大なリスクになっている」と指摘した。米中対立を念頭に、緊張緩和に向けた協議の進展に期待を示した。ラガルド氏は日経新聞、テレビ東京、日経BPとの共同インタビューで、2019年後半にかけて世界経済が持ち直すというこれまでの見通しを改めて示した。そのうえで「(貿易摩擦の)当事者は緊張を取り除き、合意するために交渉すると決めている」と語った。トランプ米大統領が7日、メキシコ製品に対する5%の関税発動の見送りを表明したことに関しては「関税がどうなるか不確実だと貿易は利益や繁栄につながらない」と指摘し、歓迎した。「明白なことだが、我々は常に貿易が経済成長のエンジンであるという理念を支持してきた」と改めて強調した。

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2019.5.26 人類の移動経路・本能・歴史など (2019年5月27、28、29、30、31日、6月1、2、3日に追加あり)

2018.12.21読売新聞 日本人のルーツ    イヌイットの女性 現生人類の世界への拡散

(図の説明:左図は、北海道礼文町船泊遺跡で発掘された縄文女性の臼歯に残っていたDNAから復元された顔で、現在の日本人にもよく見かける顔だ。その日本人は、左から2番目の図のように、3000年以上前に渡来した縄文人と3000年前以降に渡来した弥生人に分けることができるが、渡来は何度も起こっており単純ではない。しかし、縄文人やアイヌ人が先住民であることは確かで、右から2番目の現在のイヌイット人女性の顔と似ている。なお、右図のように、現生人類の共通祖先は20万年前にアフリカで誕生し、他の人類と混血しながら世界に広がったことがわかっているが、今後の研究には法医学等の医学分野の貢献も期待される)

(1)人類の本能と文化
1)DNAから科学的に人類史を紐解くことができるようになった生命科学の革命
 中学・高校で「縄文人」「弥生人」などと使用した土器による分類を教わった時には、「納得できない」「歴史は暗記科目だ」と感じたが、現在ではDNA解析・比較文化・行動学などから科学的に現生人類であるホモサピエンスの発生と移動経路をトレースできるようになり、これは画期的なことだ。また、どの民族にも現生人類の移動経路は興味深く、移動経路が判明すれば人種差別や戦争を収束させる力にもなるだろう(http://www.brh.co.jp/seimeishi/journal/087/research/1.html 生命誌ジャーナル参照)。

 そのような中、*1-1のように、遺伝子を高速で読み取る装置を使って、1998年に日本列島北端の北海道礼文町船泊遺跡で発掘された縄文人の臼歯内DNAの遺伝情報(ゲノム)の99%を解読することに成功し、約3800年前の縄文人女性の顔が再現された。特徴は、「シミの目立つ濃い肌の色」「細く縮れた髪」「血液型はA型」「湿り気のある耳あか」「酒に強い」「脂肪の多いアシカなどを狩猟していた船泊の縄文人は、極端な高脂肪食でも健康を保てるよう適応した可能性が高い」などで、その顔は現在の日本でもよく見かける女性だ。

 この脂肪を分解しやすい遺伝子変異は、*1-2のように、北極圏に住むイヌイット等の7割で見つかるが、狩猟をしなくなった現在の日本人にはほとんど見られない。しかし、この遺伝子によって作られる酵素は、また高脂肪食になった日本人の高脂血症の解決に役立ちそうである。

 このような現生人類の移動経路や混血状況を調べるには、古代の日本人だけでなく現在の日本人・近隣や世界の人々の遺伝情報を比較する必要があり、それは既に始まっている。これに加えて、食物・農耕・言語・文字・宗教などの文化を比較すれば強力な裏付けになるわけだ。

 なお、古代人のDNA解析は、2010年に目覚ましい成果が相次ぎ、ドイツなどの研究チームがネアンデルタール人と現生人類との間に混血があったことを証明した。また、南シベリアのデニソワ洞穴で見つかった「デニソワ人」は、現在のパプアニューギニア人にDNAの一部を残しており、東アジア全体で暮らしていたとのことである。

2)差別に見られる意識の低さ
ア)部落差別について
 日本維新の会が今夏の参院選比例代表公認候補に決定していたフリーアナウンサーの長谷川氏が、*1-3のように、江戸時代に士農工商の下にあった穢多・非人に言及し、無知と偏見に基づく差別発言を行ったそうだ。

 しかし、非差別部落は士農工商の厳しい身分制度の下で、農工商の民衆を統治するために、さらに下の身分を作って「上を見るな、下を見ろ」と言って不満のはけ口とし、為政者が民衆を分断したのだということは日本史で勉強済である。また、2016年には部落差別解消推進法が成立しているため、今でもそれを繰り返しているのは、無知で情けない人たちだ。

 なお、人権意識の高まりによって、反差別のテーマが在日外国人・女性・障害者などへと裾野を広げたのはよいことだが、差別を助長するインターネット上の書き込みが多いのは何とかすべきである。

イ)高齢者差別について
 ざっくり言うと、人類を含む哺乳類は、食物が不足するなどの親の生存も危うい場合を除いて、子が生まれるといとしく感じて授乳し、子を護る本能がある。また、そういう本能を持たない個体のDNAは、子孫を残せないため残っていない。

 一方、親を大切にする本能は、種の保存に不可欠ではないので組み込まれておらず、人類は「親孝行」という言葉や文化を作って道徳として大切にしてきた。それが「親孝行」という言葉があっても、「子孝行」という言葉がない理由だと言われている。

 このような中、最近は、*1-4のように、若者と高齢者を対立軸として分断し、どちらに社会保障を振り向けるかという論調を政治家・行政・メディアが氾濫させており、一般人にもそうことを言う人が増えた。しかし、これは、これまで政府がサボってきた社会保障財源の引当不足という失政を、国民を若者と高齢者に分断して対立させることによってごまかす手段のお先棒をメディアが担ぎ、賢明でない国民が騙されているいつか見た光景である。

 さらに、*1-4は、「①投票者の4割を占める高齢者の意見が反映されやすいシルバー民主主義はよくない」「②社会保障給付は医療・年金・介護が約9割を占め、対象は主に高齢者」「③少子高齢化が進み、若い世代ほど給付より負担が重い」「④高齢者に給付の抑制や負担を求める案が現実的だが、当事者は受け入れがたい」「⑤『頑張って保険料を納付してきたのに、年金を減らされることは認められない』という高齢者は、冷静でなく感情的だ」としている。

 しかし、①の「高齢者割合が高まる」というのは、平均寿命から見て高齢者とされる年齢が低すぎるし、全体の傾向は人口構造を見ればずっと前からわかっていたことで、その人たちが働き盛りの間に納付した保険料を発生主義で引当てず、関係のないところに無駄遣いしていたのは、完全に政府の失政であり高齢者の責任ではない。さらに、シルバー民主主義は問題などとして、年齢で票の重みを変えるなどという発想は、民主主義を理解していないことが明らかだ。

 なお、「投票率は若者が低く、高齢者が高い」のは、これから働いて稼ぐことが可能な若者が政治に頼らず働くことに専念するのは自然であり、高齢者は選挙権を大切にしていると同時に、高齢になるほど既に保険料を支払っており、やり直しがきかないため、政治への依存度が高くなるからだ。また、日本のTV番組がぼやっとして普段から政治の論点を適格に議論して伝えていないのは、有権者全体が政治に無関心になるのを促進している。

 私自身は、自分の知識と経験から、子育て支援や教育無償化を一生懸命に進めてきたが、だからといって、②③④⑤のように、その財源は高齢者の社会保障分から分捕ればよいという本能丸出しで文化を捨てたような発想はしたことがない(マニフェスト・プロフィール参照)。

ウ)外国人差別について
 このような中、*1-5のように、2019年4月1日から本格的な外国人労働者の受け入れが始まったが、差別・暴言・冤罪の押し付けはなくなるだろうか。女性もまた、外国人同様、そのことを理由に、誹謗中傷や侮辱をされるなどの差別的対応を受けることが多いが、日本社会を支えている人に対する前近代的で不合理な価値観の押し付けは早々にやめるべきである。

(2)日本史の真実は・・
1)卑弥呼の里、佐賀県吉野ヶ里町と神崎市
 当時の文字による歴史記録である魏志倭人伝によると、*2-3のように、倭国は、末盧國、伊都国、奴国など玄界灘湾岸の国であることは明らかで、その南にあるとされる邪馬台国の位置は、中国の専門家が指摘するとおり、音と方角に注目すればよい。そのため、「日の国」邪馬台国は、九州の肥前と肥後の間、つまり*2-1の吉野ケ里遺跡の場所になると思われる。

 従って、女王に従わない邪馬台国の南にある狗奴国は、球磨国(熊本県)の聞き違いであると思われ、邪馬台国から水行20日とされる投馬国(とうまこく:所在地不明)は、投与国(とよこく)の読み違いで、それなら豊前と豊後のある大分県になる。

 なお、大分県宇佐市には宇佐神宮があり、それは八幡宮の総本社で古くから皇室の崇敬を受けており、主祭神は神功皇后、応神天皇、宗像三女神だ。また、大分県臼杵市は石仏で有名だ。また、何故なくなったのかは不明だが、『日本書紀』の神功紀に引用される『晋起居注』に、泰初2年(266年)に倭の女王の使者が朝貢したとの記述があり、現存する『晋書』武帝紀と四夷伝には、266年に倭人が朝貢したことは書かれているが、女王という記述は無いとのことである。

 そのため、卑弥呼の宗女とされる13歳の女王壹與(トヨ)は、投与国(大分県)の人で神功皇后だと考えられる。その後、日本書紀に書かれているとおり、応神天皇(=神武天皇と言われている)が東遷して大阪・奈良付近に都を作り、大和朝廷になったのだろう。

 *2-2には、「卑弥呼の死と壹與の王位継承は、それ程年月が経っていない」と書かれているが、その間に「倭国大乱」があったため、ある程度の時間はあったと思われる。そのため、今後の真実の追及には、遺伝子調査、まっすぐな視線での日本書紀や神社伝承などの再解読、中国史や中国の専門家による意図的でない裏付けが必要だ。

 また、*2-4のように、「百舌鳥・古市古墳群」の仁徳天皇陵古墳(大山古墳、堺市)などを日本政府がユネスコの世界遺産委員会に推薦し、6月に世界遺産への登録が決まるそうだが、この「仁徳天皇陵」をしっかり調査すれば古代史の真実がさらに明らかになると言われている。しかし、日本の考古学の専門家は未だにあまり調査していないのだ。

2)現代の皇室と邪馬台国・大和朝廷の関係

    
   2019.5.8東京新聞    2019.5.13朝日新聞   2019.5.14西日本新聞

(図の説明:左の2つは、奈良時代そのままの衣装で「期日奉告の儀」に望まれる天皇・皇后両陛下で、右から2番目は、「斎田点定の儀」で亀卜に使った亀の甲羅。一番右は、「百舌鳥・古市古墳群」の仁徳天皇陵だ)

 大嘗祭で神々に供える米を作る都道府県を選ぶ「斎田点定の儀」が、2019年5月13日午前に皇居で行われ、そのやり方は、*3のように、亀卜と呼ばれる亀の甲を焼く占いで、火であぶったひび割れの具合で吉凶を判断し、「吉」と出た都道府県を選ぶのだそうだ。

 亀卜は卑弥呼が行っていた占いと同じで、中国では殷代に既に亀卜を行っており、殷墟から見つかった卜亀は淡水性や陸ガメの甲羅であるのに対し、日本で出土する卜亀は全て海亀の甲羅で、『延喜式』によると、亀甲の調達は紀伊(伊勢神宮のある場所)が最も多く、卜部は対馬から10人、壱岐から5人、伊豆から5人が選ばれることが多いそうだ。

 そのため、現代の皇室の祖先は、大陸からの渡来系稲作民族で(それでも十分古い家系)、しばらく九州にいた後、東遷して大阪・奈良地域に行き、儀式には今でも亀卜などの歴史上重要な伝統が受け継がれていることがわかる。

注)日本国憲法に定められた「言論の自由」「表現の自由」は、こういうことを書いた時に、「不敬罪」等に問われないために作られた規定である。

・・参考資料・・
<人類の本能と文化>
*1-1:https://www.yomiuri.co.jp/local/kansai/feature/CO036740/20181221-OYTAT50007/ (読売新聞 2018/12/14) 縄文人の姿遺伝子で再現
 年間企画「平成時代~DNAの30年」最終部となる第4部は、遺伝子研究で活躍する各分野の専門家にその最前線や将来像などを聞く。初回は、古代人の骨に残されたDNAから人類史を解き明かす神澤秀明・国立科学博物館人類研究部研究員(33)だ。「船泊のDNA解析がうまくいったのは、根気と『骨運』が良かったおかげ」と話す神澤さん(茨城県つくば市で)「船泊のDNA解析がうまくいったのは、根気と『骨運』が良かったおかげ」と話す神澤さん(茨城県つくば市で)。東京・上野の国立科学博物館で、今年3月に公開された約3800年前の縄文人女性の顔(粘土像)は、少し風変わりだった。茶色い目。シミの目立つ、濃い色の肌。細く縮れた髪の毛。まるで見てきたようなこれらの特徴はすべて、昨年解読された縄文人女性の遺伝子データを基にした、国内初の復顔だった。「血液型はA型で、耳あかは湿り気があり、もしお酒があるなら強い女性だった。ここまで突き止められたことには自分も驚いた」。女性は1998年、日本列島の北端にある礼文れぶん島(北海道礼文町)の船泊ふなどまり遺跡で骨が発掘された。骨の形などから高齢の女性とまでは推定され、その後は札幌医科大で長く保管されていた。
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 2000年代後半、遺伝子を高速で読み取る装置「次世代シーケンサー」が普及し、ごく微量のDNAも解析可能になった。ただDNAは歳月を経ると分解するため、古代人の骨から採れる保証はない。「特に日本のような高温多湿な環境では分解しやすい。船泊は日本列島にある遺跡の中で最も寒く、DNAが残りやすいと目を付けた」。3年前に研究に着手。下あごの骨から抜いた臼歯の中を丁寧に削った試料を使って、試行錯誤を重ねながら解析した。その結果、現代人とほぼ同じ高い精度で、全遺伝情報(ゲノム)の99%を解読することに成功した。世界でもトップクラスの成果だ。この女性に特有の遺伝子の変異を調べると、脂肪をあまり代謝しない体質とわかった。現代では脂肪からエネルギーを採れないと低血糖などの病気になりかねない体質だが、脂肪が多いアシカなどを狩猟していた船泊の縄文人は、極端な高脂肪食でも健康を保てるように適応した可能性が高いという。「これまで想像するしかなかった祖先の本来の姿に加えて、どのような能力を持ち、どのような生活を送っていたのかまで、ゲノムでわかる時代になった」
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 生物の高校教師を目指して大学に進んだ。4年生だった08年、古代人のDNA解析を紹介する1冊の入門書に出会う。「日本人の起源を自分で解明できたら面白い。人類の歴史にDNAから切り込める可能性に、魅力を感じた」。大学院に進み、古代のDNA解析が先行する海外の論文を読んで手法を学びながら技量を磨いた。DNA解析の進歩で、何人ぐらいの集団で暮らしていたのか、どこの地域から渡ってきたのかもわかるようになったという。だが大陸から離れた列島に暮らす日本人のルーツにたどり着くには、日本に残っているDNAだけでは不十分だ。「東アジアに広げて解析すれば、稲作などの文化がどのように伝わってきたのかも見えるだろう」。古代史の扉を開く夢は、まだ始まったばかりだ。
◇古代人解析から新種発見
 古代人のDNA解析は、2010年に目覚ましい成果が相次いだ。ドイツなどの研究チームは絶滅した旧人・ネアンデルタール人のDNA情報を公開し、現生人類と混血していることを示した。アフリカから6万年前には移動を始めたとされる我々の祖先との間に、子どもを作っていたことになる。南シベリアのデニソワ洞穴で見つかった3万~5万年前の指などの骨は、新種の旧人と判明。全身骨格はなく、DNA解析で“発見”された初の人類で「デニソワ人」と命名された。現在のパプアニューギニアなどに住む人にDNAの一部が残っており、東アジア全体で暮らしていたらしい。日本でも三貫地さんがんじ貝塚(福島県)、伊川津いかわづ貝塚(愛知県)などから出た縄文人の骨の解析が進んでいる。
◇言語に関わる発見楽しみ
 アフリカで誕生したとされる人類は猿人、原人、旧人を経て現生人類(新人)になったと、学校で習った記憶がある。現生人類以外の人類は絶滅したが、DNA解析で判明した旧人と現生人類との混血は、現生人類の進化が複雑だったことを示している。絶滅した古代人類の能力を、私たちはDNAを通じて手に入れた可能性もある。言語の習得に必要とされる遺伝子のルーツが解明されれば、人類がいつどこで言語を獲得したのか、わかるかもしれないという。どんな新発見が広がるか、楽しみだ。

*1-2:https://digital.asahi.com/articles/DA3S14012895.html (朝日新聞 2019年5月14日) 縄文人は脂っこいもの好き? 脂肪分解しやすい遺伝子解析
 北海道にいた縄文人は脂っこい食べ物が好きだった? 国立科学博物館などの研究チームは13日、北海道礼文島の船泊(ふなどまり)遺跡から出土した縄文人の全ゲノム(遺伝情報)について、世界で初めて高精度な解析に成功したと発表した。北極圏に住む人たちのように、脂肪を分解しやすい遺伝子の変異が見つかった。遺跡からは海獣の骨が見つかっており、アシカなどを狩猟していた生活様式が遺伝子情報からも裏付けられた形だ。科博の神澤秀明研究員らは、礼文島で発掘された約3800年前の女性の臼歯からDNAを抽出することに成功。高い精度で解析した遺伝子の特徴から、この女性は、脂っこい食べ物を食べてもおなかを壊したり、体調を崩したりしないような高脂肪食の代謝に有利な特徴があることがわかった。こうした特徴は、イヌイットら北極圏に住む人たちの7割で見つかるが、狩猟生活をしなくなった現在の日本人にはほとんど見られなくなっているという。当時、中国大陸ではすでに農耕が始まっていたが、縄文人はなお狩猟に頼っていたらしい。チームは昨年、遺伝子情報の解析結果の一部から、この縄文人女性は目が茶色で髪の毛は細く縮れ、肌は色が濃く、シミがあったと推測。今回さらに、お酒に強く、耳あかは湿ったタイプだったこともわかった。神澤さんは「古代人のゲノム研究で常に参照されるデータになる。現代人にみられる遺伝的な病気の起源を知ることにも重要だ」と話している。

*1-3:https://www.nishinippon.co.jp/item/n/512841/ (西日本新聞社説 2019/5/24) 部落差別発言 「人権」の原点に立ち返れ
 無知と偏見に基づく看過できない差別発言である。全国的に顔が知られているフリーアナウンサー長谷川豊氏(43)が講演で、江戸時代の身分制度に言及した。部落解放同盟が出した抗議文によると、「士農工商の下に、穢多(えた)・非人(ひにん)、人間以下の存在がいる」と発言した。さらに「人間以下と設定された人たちも性欲などがあります。当然、乱暴なども働きます」と述べた。一般的な暴漢からの身の守り方に話をつなげたかったようだ。
▼問題点どこにある
 どこが差別に当たるのか-。第一に「穢多・非人」のくだりである。実際に存在した身分だ。劣悪な住環境に置かれ、まさに「人間以下」の扱いを受けていたとされる。為政者による民衆の分断支配に利用されたのだ。その呼称は今、差別をなくす研究や運動の中では歴史的な用語として、むしろ積極的に登場する。ただ、一般的には被差別部落へのさげすみの言葉としてしばしば用いられる。長谷川氏のように、何の注釈もなく世にさらせば「差別語のばらまき」にすぎない。第二は、そうした被差別者を「プロなんだから、犯罪の」と決めつけ、集団暴行を働くかのように発言している点だ。解放同盟の抗議文は21日付で出され、当該部分について根拠をただしている。長谷川氏は翌日、自身の公式ホームページで、こう釈明した。〈今、自分で(講演録を)読んでも訳が分かりません。まず身分制度の話と暴漢に襲われる話が全くリンクしていません〉。その上で〈弁解の余地のない差別発言〉と認め、〈これから「人権」について全力で真剣に学んでいく〉と記した。講演全体の趣旨がどうあれ、当然の対応である。長谷川氏については、日本維新の会が、今夏参院選の比例代表公認候補に決定していた。超党派による議員立法で2016年に部落差別解消推進法が成立している。長谷川氏が、そうした法律にものっとって人権を擁護すべき国会議員の候補として、適格性に欠けるのは明らかではないか。以前、人工透析患者の尊厳を踏みにじる暴言もあった。同氏が元はフジテレビアナウンサーだったことも、報道メディアの一員として私たちは問題提起し、自省もしなければならない。言葉は人の命さえ奪う「凶器」になる-。言論人として最も肝に銘じなければならないことだ。12年には、週刊朝日(朝日新聞出版)が橋下徹大阪市長(当時)の出自と被差別部落の地名を一方的に暴く形で、橋下氏に関する連載を始めた。同氏の名を差別的、侮辱的な呼び方で記すなどして社会的批判を浴びた。連載は1回で打ち切られた。1970年代に社会問題化した部落地名総鑑事件に匹敵する確信犯的な差別事件だ。私たちがショックを受けるのは、運動団体を中心に長年にわたって行政、教育機関、メディアなどが、時には激しくぶつかり合いながら築いてきた「反差別」の取り組みが、こんなに簡単に足元から崩れ去るのかという現実だ。日本の反差別運動の原点は、被差別部落の人々が22年に結成した全国水平社にある。解放同盟の前身だ。有名な宣言文で「人の世に熱あれ、人間に光あれ」と高らかにうたった。
▼同和は終わったか
 「穢多・非人」という身分は1871年、明治政府による解放令で廃止された。だが、実態は何ら変わらなかった。水平社誕生の歴史的背景だ。水平社の運動は当初、差別言動を行った個人に対する糾弾闘争が主だった。それでも差別はなくならない。偏見を生む劣悪な住環境などを改善しない限り、差別は続くのではないか。そうした問題意識から「同和問題の解決は国の責務であり国民的課題」として1969年に初の事業法が制定された。学校や職場で教育や啓発が進んだ。その後、反差別のテーマは在日コリアン、女性、障害者、性的少数者(LGBT)などへと大きく裾野を広げていった。人権運動の歴史的な前進である。一方で、懸念された問題が今、現実化しているように思えてならない。「同和問題は終わった」とする風潮である。近年、大きな問題となっているのは差別を助長するようなインターネット上の書き込みだ。「部落差別」を初めて法律名に入れた差別解消推進法は、そうした新しい事態への対応策として生まれた。反差別運動は今、原点に立ち返る時期を迎えているのではないか。私たちはそう考える。

*1-4:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO26419410R00C18A2000000/ (日経新聞 2018/2/2) 進むシルバー民主主義 65歳以上が投票者の4割
 国会議員はよく「国民や有権者の意見を聞く」と口にする。この「国民」「有権者」とは、どのような人をイメージしているのだろう。若者なのか、高齢者なのか。少子高齢化が続くなか、近年は高齢者の意見が反映されやすい「シルバー民主主義」という言葉が広がっている。国会議員を選ぶ票はどの世代が投じているのかを分析した。「頑張って保険料を納付してきたのに、年金を減らされることは認められない」。日本維新の会の足立康史幹事長代理は最近、こう言われて驚いた。相手は年配の支持者。普段は冷静な人だが、高齢の富裕層に年金抑制を求める政策案への意見を尋ねると、急に感情的になったからだ。社会保障給付はいま医療・年金・介護が約9割を占め、対象は主に高齢者。少子高齢化が進み、若い世代ほど給付より負担が重い。高齢者に給付の抑制や負担を求める案が現実的だが、当事者は受け入れがたい。選挙区を回る政治家はその空気を肌で感じる。いまは「シルバー民主主義」といわれている。高齢者の投票行動が大きな影響力を持つ2つの構造的な現象があるからだ。(1)急速な少子高齢化で、人口に占める高齢者の割合が高まっている(2)投票率は若者は低く、高齢者は高い――という要素だ。まず高齢者の割合だ。2017年10月時点の総務省の人口推計の概算値は1億2672万人。このうち65歳以上は27.7%。一方、20~30歳代は21.7%にとどまる。次に投票率をみてみよう。同省が昨年10月の衆院選で年齢別投票者数を抽出調査した結果をみると、投票率は年齢が上がるごとに高くなる傾向が顕著だ。5歳ごとの年齢階層別では、60~64歳から75~79歳までは全て7割を超える高水準だ。それが50歳代は6割台、40歳代は5割台、30歳代は4割台、20歳代は3割台と、きれいに下がっていく。2つの調査をもとに、実際に投票した有権者の数を推計してみた。5歳ごとの年齢階層別で最も投票者が多いのは65~69歳で、700万人を超えた。この層は、第2次世界大戦直後のベビーブームに生まれた「団塊世代」。子育てを終えて年金を受給し始めている人が多い世代が、選挙で「大票田」になっている。65歳以上の高齢者は投票者全体の4割近くにのぼる。65~69歳を除く40歳以上の各世代はそれぞれ500万人前後。それが30歳代以下では若くなるほど投票者が減り、20~24歳は200万人を割った。18~39歳は全体の2割にとどまる。子育て世代やこれから結婚や出産を考える世代の票は存在感が薄い。過去の推定投票者数と比べると、団塊世代が年をとるにつれ「高齢者の声」がどんどん大きくなることが分かる。1980年の衆院選で最も投票者が多かった年齢層はこの時に30~34歳だった団塊世代で、800万人近くいた。年齢階層別の投票者数の分布は、年齢が上がるほど先細りになる右下がりの三角形に近い。子育てまっただ中の世代の票が厚みを持ち、65歳以上の高齢者は全体の約13%と、存在感は大きくなかった。その20年後の2000年衆院選。団塊世代は50~54歳になり、やはり最多投票層だった。投票者数の分布は高齢者と若年層が少ない山の形。この時は「大票田」の年齢層はまだ働く現役世代だった。これまでの傾向を考えれば、今後も投票者数の分布はさらに右肩上がりの三角形になる可能性がありそうだ。安倍晋三首相は昨年の衆院選で「全世代型社会保障」を打ち出した。財政健全化に充てる財源の一部を、子育て支援や教育無償化に回す。借金返済は将来に先送りする。「若者と高齢者の対立ではなく、生まれる前の将来世代にツケを押し付け、若者も高齢者も給付を受けているのが現実だ」。中部圏社会経済研究所の島沢諭主席研究員はこう指摘する。シルバー民主主義は、有権者間の世代間不公平から、有権者と非有権者の間の不公平の時代に入ろうとしている。問題は高齢者の発言力が強いことだけではない。18歳未満やこれから生まれてくる世代の声を誰がどのように政治に反映するかだ。
■将来世代の意思は?
 シルバー民主主義への問題意識から、若者の投票をできるだけ政治に反映させる工夫も出てきている。2016年からは選挙権年齢を「20歳以上」から「18歳以上」に下げ、若い有権者を増やした。13年にはインターネットを使った選挙活動を解禁し、若者の政治参加を促した。それだけでは足りない――。そう考える学者は選挙制度改革も提案している。例えば「世代別選挙区制度」。選挙区を年齢階層別に分け、各世代の代表の政治家を選ぶ構想だ。30歳代以下は青年区、40~50歳代は中年区、60歳代以上は老年区と分け、各世代の有権者数に比例した定数を割り当てる。若い世代の投票率が低くても、各世代の人口に比例した議会構成にできる。政治が短期的な視点にならない仕組みにするのは「余命別選挙制度」。余命に応じて投票権に重みをつけ、若い人の一票を高齢者の一票よりも重くする。投票権を持たない将来世代に配慮する制度もある。「ドメイン投票方式」だ。投票権を持たない未成年に投票権を与え、その親が代わりに投票する仕組みだ。とはいえ、こうした選挙制度改革が実施できるかというと、かなり難しい。いま大きな影響力を持つ高齢者の世代が反対するのは必至だからだ。理論としての研究にとどまり、現実政治の俎上(そじょう)に上ることは期待薄だ。八代尚宏・昭和女子大学特命教授は「借金依存の年金制度は現時点で大きなリスクがある。高齢者に自分の問題だと説明すれば、ある程度の負担増は受け入れられる」と強調する。高齢者票の反発を恐れず説明しなければならない。
■各世代で応分負担を
 大阪市長などを務めた橋下徹氏が、70歳以上の市民が無料で乗車できた市営地下鉄・バスについて、利用者の負担を求めたことがある。橋下氏がその後、政治生命を懸けて「大阪都構想」の住民投票に臨み、反対多数で敗れた。報道各社がその時に実施した出口調査では、20~60歳代は過半数が賛成していた。一方で70歳代は6割以上が反対だった。市民の人気が高いとされていた橋下氏は「高齢者層に負けた」とも言われた。有権者の年齢別の割合をみると、国・地方問わずどんな政策でも高齢者の存在は無視できない。だが将来世代にツケを残すことは許されない。政治家は遠回りでも、社会保障や財政の実態を正面から説明し、各世代に少しずつ負担を求めるしかないのではないだろうか。

*1-5:https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20181024-00010000-wordleaf-bus_all (The Capital Tribune Japan 2018/10/24) 本格的に外国人労働者を受け入れへ、差別や暴言はなくなるのか
 安倍政権が本格的な外国人労働者の受け入れに舵を切ったことで、今後、より多くの外国人労働者が日本にやってくることになりました。コンビニ業界や外食産業などは外国人労働者がいないと業務が成り立たない状況ですが、日本人の利用客による暴言など、日本側がこの状況に対応できないケースも目立ちます。都市部のコンビニでは従業員のほとんどが外国人というケースも珍しくありませんが、一部の利用客が、日本語がそれほど上手ではない店員に対して「まともな日本語を話せ」「何言ってんだかわかんねーよ」などといった暴言を浴びせているという事例がネットで報告されています。基本的にコンビニの場合、一定以上の日本語能力がなければ採用されませんので、まったくコミュニケーションが取れないという状況ではないと考えられます。あるコンビニでは店舗のオーナーが「暖かい目で見て欲しい」とわざわざ張り紙を出した事例もあります。法務省の調査によると、外国人であることを理由に侮辱されるなど差別的な対応を受けた経験のある外国人は約3割となっています。もっとも多いのは「見知らぬ人」で全体の53.3%、続いて、職場の上司や同僚、取引先など仕事関係が38%、近隣住民が19.3%、公務員や公共機関の職員が12.9%となっています。諸外国でも移民やマイノリティに対して一部の国民が暴言を吐くというのは時々見られる光景ですが、都市部を中心にここまで外国人労働者が増えているにもかかわらず、日常的な場所でこうした暴言が散見されるというのは、同質社会である日本ならではといってよいでしょう(ニューヨークなどに行くと、英語をほとんど話せないタクシー運転手がいたりしますので、これにいちいちクレームを付けていてはキリがないというのが現実です)。日本で仕事をするなら日本とまったく同レベルの会話ができなければ困るという意見もあるようですが、彼等は日本に押しかけているわけではありません。深刻な人手不足に対応するため、むしろ政府が積極的に外国人労働者を招致しているというのが現実です。日本の相対的な賃金レベルは下がる一方ですから、日本の方から積極的にお願いしないと日本に来てくれなくなるかもしれません。日本はいまだに前近代的なムラ社会の風習を引きずっていますから、同じ日本人同士でも、ライフスタイルや価値観が違う人とはうまくコミュニケーションを取れない人が少なくありません。外国人とうまくコミュニケーションできない本当の理由はこのあたりにありそうです。しかし、日本は国民の選択として外国人の積極的な受け入れを決断したわけですから、対応は待ったなしといってよいでしょう。

<日本史の真実>
*2-1:https://www.nishinippon.co.jp/nnp/saga/article/510436/ (西日本新聞 2019年5月16日) 人気呼ぶ吉野ケ里歴史公園 多彩な遊具や体験イベント 2年連続で来園者最多 [佐賀県]
 吉野ケ里歴史公園(神埼市、吉野ケ里町)が人気を集めている。昨年度の年間来園者数は77万3969人に達し、2年連続で過去最多を更新。歴史ファンというよりも、家族連れが目立つ。来園者の声を聞き、その魅力を探った。「子どもが『行こう』ってせがむんです」。伊藤明美さん(38)は福岡市から長男の類都君(5)を連れて遊びに来た。自宅近くの公園は狭く、老朽化などで遊具が撤去されたところも少なくないという。吉野ケ里歴史公園は面積約104ヘクタールと広大。西口に近い「古代の原ゾーン」の「遊びの原」が類都君のお気に入りだ。トランポリンのように軟らかいドーム形の遊具「ふわふわドーム」で、1時間以上飛んでいることも。「毎日でも来たい」と類都君。アスレチックやローラー滑り台などの大型遊具が充実し、そばにスタッフが常駐して安全に遊べる。お昼時になると、「野外炊事コーナー」から食欲を誘う香りが漂う。利用を申し込めば火気が使用でき、テントを張ってバーベキューを楽しめる。家族や友人とパーティーを開いていた鳥栖市の池田秀さん(29)は「近くに病院もトイレもあり、小さい子どもが一緒でも気軽にアウトドア気分を味わえる」。芝生広場「弥生の大野」で、長女と大玉を転がしていた佐賀市の江口あいさん(41)は「歴史を勉強するための場所というイメージが強かったが、こんなに楽しめるとは思わなかった」。雑貨などを販売する公園北口のイベントに訪れたが、子どもが一日中遊べる場所があると「ママ友」に聞き、西口エリアにも足を伸ばした。来園者の増加を後押しするのは、家族連れをターゲットにした料金見直しもある。子ども連れの入園料が無料になる県発行の招待券「子育てし大“券”」(期間限定)の配布が2016年度に始まり、昨年4月から中学生以下の入園料が無料となった。人気の西口エリアから、復元された竪穴住居などが並ぶ東口エリアの「環壕集落ゾーン」に来園者を呼び込もうと定期的にイベントを開催。熱気球に乗って上空から遺跡を見学できる遺跡展望は毎回子どもたちに人気だ。今月は18、19の両日午前9時から開かれる。今年の来園状況も順調だ。4月28日~5月6日までの10連休には昨年同期比で約2万人増の12万8633人が訪れた。公園担当者は「身近で楽しい『公園』として足を運んでもらうことから、遺跡の歴史にも興味を持ってもらえたらうれしい」と話している。
●来園者数の推移
 吉野ケ里歴史公園の来園者は開園初年度の2001年度に68万1041人となったが、3年後の04年度には41万5079人にまで落ち込んだ。火おこしなど古代体験ができる施設などを整備し、イベントなどを打ち出したことで、来園者は増加傾向に転じた。15年度に初めて70万人台を突破すると、17年度は73万5770人となり、過去最多を更新。18年度は、さらに約3万8千人上回った。

*2-2:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8F%B0%E4%B8%8E (ウィキペディア、台与より抜粋) 
●臺與
 臺與(「とよ」あるいは「いよ」、生没年不詳)は、日本の弥生時代3世紀に『三国志 (歴史書)』、魏志倭人伝中の邪馬台国を都とした倭の女王卑弥呼の宗女にして、卑弥呼の跡を13歳で継いだとされる女性である。魏志倭人伝中では「壹與」であるが、後代の書である『梁書』『北史』では「臺與」と記述されている。「台与」は「臺與」の代用。臺與の表記・読みについては異説が多く詳細は後記。
●事跡
 魏志倭人伝によると、正始8年(247年)に帯方郡太守として王頎が着任した。倭国は帯方郡へ載斯烏越ら使者を派遣し、親魏倭王の女王卑彌呼に未だ従わない狗奴国の男王卑弥弓呼を攻撃中であると(王頎に)報告した。太守は塞曹掾史の張政らを派遣し、詔書および黄幢(魏帝軍旗)を難升米(なしめ)に授けて和平を仲介した。後に女王卑弥呼が死ぬと径百余歩の大きな塚を作り、奴婢百余人を殉葬した。ところが、後継者として立てた男王を不服として国が内乱状態となり、千余人が誅殺し合った。改めて卑彌呼の宗女である壹與を13歳の女王として立てた結果、倭国は遂に安定した。張政らは(幼くして新女王となった)壹與に対し、檄文の内容を判りやすく具体的に説明した。壹與は倭国大夫率善中郎將の掖邪狗ら二十人を随行させた上で張政らを帰還させた。その際、男女生口三十人を献上すると共に白珠五千孔、靑大勾珠二枚および異文雑錦二十匹を貢いだ。とされる。 張政が倭に渡った正始8年から卑弥呼の死と壹與の王位継承は、それ程年月が経っていないと思われる。『日本書紀』の神功紀に引用される『晋起居注』(現存しない)に泰初(「泰始」の誤り)2年(266年)に、倭の女王の使者が朝貢したとの記述がある。現存する『晋書』武帝紀と四夷伝では、266年に倭人が朝貢したことは書かれているが、女王という記述は無い。卑弥呼#神功皇后説にもあるように、江戸時代にはこの女王は卑弥呼と考えられていたが、卑弥呼は249年(正始10年)までに逝去(『梁書』)してしまっていることから、近年ではこの倭国女王は台与のことであると考えられている。なお、この正始10年(4月に改元されて嘉平元年)(249年)は、中国では曹操に始まる曹氏の魏から、司馬懿に始まる司馬氏の晋へ禅譲革命が行われる265年12月(泰始元年)に至る契機となった年である。この朝貢の記録を最後に中国の史書から邪馬台国や倭に関する記録が途絶え、次に現れるのは150年の後の義熙9年(413年)の倭王讃の朝貢(倭の五王)である。台与と後のヤマト王権との関係は諸説あってはっきりしない。人物の比定については諸説ある。

*2-3:https://blog.goo.ne.jp/ikejun_2018/e/27ebfe56cbbabe9e590698fe8cfd7248 (Goo 2018.4.30より抜粋) 「魏志倭人伝」 晋の時代の台与(トヨ)
 「魏志倭人伝」の最後に登場するのが、卑弥呼の宗女とされる13歳の女王 台与(トヨ)。魏志倭人伝をまとめたのが、晋の時代の陳寿で、台与が貢物を贈り、国づくりを学んだのも晋の国からです。台与の存在の信ぴょう性は非常に高いです。急に年齢13歳とまで紹介されています。一方で、台与の宮殿がどこになったのかは記載がありません。
理由
1、漢の時代の倭国
  伊都国、奴国など玄界灘湾岸の国々+その南にある21国
2、魏の議題の倭国
  1に加えて、さらに南にある邪馬台国と水行20日で行ける投馬国。女王に従わない邪馬台国の南にある狗奴国
3、晋の時代の倭国
  2に加えて、「瀬戸内海の国々+近畿」と広がりがあった。と考えます。つまり、台与の宮殿は、奴国、邪馬台国でも投馬国でもなく、まだ名前が付けられていない。西日本のどこかにあった国ではないでしょうか。そして、張政らは(幼くして新女王となった)壹與に対し、檄文の内容を判りやすく具体的に説明した。壹與は倭国大夫率善中郎將の掖邪狗ら二十人を随行させた上で張政らを帰還させた。つまり大陸から国づくりを教わった。大陸主導の元で新しい国づくりが行われた。その際、男女生口三十人を献上すると共に白珠五千孔、靑大勾珠二枚および異文雑錦二十匹を貢いだ。そのお礼に台与が貢物を贈ったと云うことに・・・。後の大和朝廷の聖徳太子らが隋に遣隋使、唐に遣唐使を派遣しますが、それより以前に台与が大陸の文化や国の統治の方法を学んだと云うことです。台与が参考にした大陸の晋の国も滅び、五胡十六国の戦国時代へ、宋、隋、唐と大国がまとめたのは、6世紀ぐらい、日本では飛鳥時代になります。台与の記述を最後の中国大陸の歴史書「史記」から倭国の記載がなくなります。

*2-4:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO44296100W9A420C1000000/?n_cid=BMSR3P001_201905140021 (日経新聞 2019年5月16日) 「仁徳天皇陵」含む古墳群、世界遺産に 諮問機関が勧告
 世界文化遺産への登録を目指す「百舌鳥(もず)・古市古墳群」(大阪府)について文化庁は14日、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の諮問機関が登録すべきだと勧告したと発表した。仁徳天皇陵古墳(大山古墳、堺市)など日本政府が推薦していた49基の古墳すべてが対象。6月に始まるユネスコの世界遺産委員会で正式に登録が決まる見通しだ。諮問機関は国際記念物遺跡会議(イコモス)。14日未明に記者会見した文化庁の説明によると、勧告は古墳群を「傑出した古墳時代の埋葬の伝統と社会政治的構造を証明している」と評価。「顕著な普遍的価値」を認めた。資産の価値に関する疑問点などの指摘はなかったという。日本政府は古墳群を古代日本の政治や文化、建築技術を知る貴重な資産として推薦。仁徳天皇陵をはじめ宮内庁が皇室の祖先の墓とする「陵墓」が29基含まれており、陵墓が世界遺産に登録されれば初めてとなる。世界遺産委は6月30日~7月10日にアゼルバイジャンのバクーで開かれる。日本国内には文化遺産が18件、自然遺産が4件あり、古墳群が登録されれば23件目。日本からの登録は7年連続となる。古墳群は大阪府南部の百舌鳥地域(堺市)と古市地域(羽曳野市、藤井寺市)にあり、当時の政治や文化の中心地の一つに当たる。現存する89基のうち形がよく残っている4世紀後半から5世紀後半の49基を構成資産とした。

<現代の皇室と邪馬台国・大和朝廷の関係>
*3:https://digital.asahi.com/articles/DA3S14012750.html (朝日新聞2019年5月13日)亀の甲で占い、「吉」は栃木・京都 宮中三殿「斎田点定の儀」 「大嘗祭」の米産地選ぶ
 天皇の代替わりに伴って11月に行われる皇室行事「大嘗祭(だいじょうさい)」で、神々に供える米を作る都道府県を選ぶ「斎田(さいでん)点定の儀」が13日午前、皇居・宮中三殿で行われた。亀卜(きぼく)と呼ばれる亀の甲を焼く占いで、東から栃木県が、西から京都府が選ばれた。アオウミガメの甲羅を将棋の駒形(縦24センチ、横15センチ)に加工したものを火であぶり、ひび割れの具合で吉凶を判断し、「吉」と出た都道府県を選ぶ神事。宮内庁によると、大嘗祭で供えられる米をつくる地方を定める亀卜は、古くから行われてきたという。東京を中心に東日本の18都道県を「悠紀(ゆき)の地方」、残りの西日本29府県を「主基(すき)の地方」とし、米を作る「斎田」を設ける都道府県が一つずつ選ばれる。平成の大嘗祭に伴う儀式では、秋田、大分両県が選ばれた。儀式は13日午前10時ごろ、国中の神々をまつる神殿の前庭に設けた「斎舎(さいしゃ)」の幕内で始まり、40分ほどで終了した。天皇陛下は立ち会わず、山本信一郎長官から宮殿で結果の報告を受けて決裁する。その後、宮内庁が選ばれた自治体に連絡し、協力を依頼。具体的にどこに「斎田」を設けるかなどを今後協議していく。同庁によると、古来、斎田で作られた米は皇室に献上されてきたが、日本国憲法下で初めて行われた平成の代替わりの際は、生産者に代金を支払って購入した。今回も、同様の対応をとるという。

<女性天皇・女系天皇について>
PS(2019年5月27日追加): 皇位継承資格を男系に限定していたのは、科学的な生物学・遺伝学が広まっていなかった時代に、生殖に関しては「男が種、女は畑」と考えられていたからで、畑が肥えていようがいまいが、大根の種を蒔けば大根、キャベツの種を蒔けばキャベツしかできないのと同じに考えていたからだ。しかし、現在では、科学的に「男性も女性も種を作るのに半々に貢献しており、その上、女性が畑も提供している」ことが明らかになったため、皇位継承資格を男系に限る必要はなくなったのである。
 また、男子に限定したのは、大日本帝国憲法第11条で天皇に軍の統帥権を持たせた明治以降からであり、それ以前は女性天皇が何人もいる。従って、日本国憲法の下では男子というのも不要な制限であり、女性・女系天皇はもはや何の問題もなく、女性・女系天皇に対する反対は根拠なき女性差別になっているため、*4の結果になっているのだ。

 
       2019.5.27朝日新聞            2019.5.27毎日新聞

(図の説明:令和天皇初の国賓としてトランプ米大統領が来られ、よい歓迎を受けられた。ただし、いつも思うのは、雅子皇后の帽子は大きすぎ、それを目深にかぶるため顔が半分くらいしか見えず、おしゃれでない。そのため、自分の美しさを殺さず活かすファッションや姿勢を工夫されてはいかがかと存ずる。よいファッションアドバイザーをつけるのも一考かもしれない)

*4:https://www.jiji.com/jc/article?k=2019041200827&g=soc (時事 2019年4月12日) 女系・女性天皇に賛成7割=時事世論調査
 時事通信の4月の世論調査で、男系男子に限られている現在の皇位継承資格を女系・女性皇族にも広げるべきか尋ねたところ、「広げるべきだ」が69.8%だった。「広げるべきではない」は11.2%、「どちらとも言えない・分からない」は19.0%だった。政府は女系・女性天皇に慎重な姿勢を示しているが、回答者の約7割が女系・女性天皇を容認していることが明らかになった形だ。皇族数の減少対策となる女性宮家創設の賛否に関しても、「賛成」69.7%、「反対」10.3%、「どちらとも言えない・分からない」20.0%となった。現在の天皇陛下にどのような感情を抱いているかについては、「尊敬の念を抱いている」44.0%、「好感を抱いている」39.5%、「特に何の感情も抱いていない」15.5%などだった。

<生命科学のもう一つの革命、再生医療>
PS(2019年5月28、30日追加):*5のように、人工透析患者の皮膚から人工血管を作製し、その患者さんに移植して人工透析をやりやすくする臨床研究が始まるそうだ。人工血管もいろいろな場所で役立つが、人工透析患者に使うのなら腎臓を作って移植した方が透析不要になって患者さんの幸せに繋がりそうである。そして、人工腎臓もバイオ3Dプリンターでできるかも知れないが、絹糸や絹布などの蛋白質素材で腎臓の形を作って土台にし、患者さんの幹細胞を培養すれば、複雑な形も比較的簡単にできそうに思う。
 また、*5-2のように、東京大と米スタンフォード大などのチームが、造血幹細胞を市販の液体のりの成分で大量培養することに成功し、専門家もびっくりしたそうだ。こうなると、培養しながらの3Dプリンター等での造形が容易になるだろう。

*5-1:https://www.nishinippon.co.jp/item/n/513677/ (西日本新聞 2019/5/28) 人工血管を患者に移植 バイオ3Dプリンターで作製 佐大チーム
 佐賀大医学部の中山功一教授(臓器再生医工学)らの研究チームが、人間の細胞から立体的な構造体をつくる「バイオ3Dプリンター」を使い、人工透析患者の皮膚から人工血管を作製し、患者に移植する臨床研究を始める見通しとなった。国から認可された審査委員会に研究計画を申請済みで、承認後に着手する。中山教授によると、人工素材を使わずにヒトの細胞から人工血管を作るため、アレルギー反応や細菌の感染リスクを抑制する効果が期待できるという。バイオ3Dプリンターは、患者の脇や脚の皮膚から採取した細胞を培養し、約1万個の細胞の塊(直径約0・5ミリ)をつくり、その塊を剣山のように並べた針に刺して積み重ね、3次元データの設定通りに形成する。複数の串刺し状の塊がくっつき、直径約5ミリ、長さ約5センチのチューブ状の人工血管ができるという。人工透析は、腎不全の患者の体内から血液を取り出し、機械で浄化して戻す治療法。血液を取り出しやすくする血管(シャント)が必要になるが、樹脂製の血管は内部が詰まる場合があるという。このため、シャントの代わりに3Dプリンターで作った人工血管を3-4人の患者に移植し、半年ほどかけて安全性や効果を確認する。中山教授は「バイオ3Dプリンターで作製した人工血管の移植は世界でも珍しい。他の臓器の作製にも応用できるだろう」としている。

*5-2:https://digital.asahi.com/articles/DA3S14035348.html (朝日新聞 2019年5月30日) 造血幹細胞、のりで大量培養 高価な培養液以上、専門家びっくり 東大など、マウスで成功
 白血病の治療で重要な細胞を大量に培養することに、東京大と米スタンフォード大などのチームがマウスで成功した。これまでは高価な培養液でもほとんど増やせなかったのが、市販の液体のりの成分で培養できたという。白血病などの画期的な治療法につながる可能性があり、専門家は「まさにコロンブスの卵だ」と驚いている。白血球や赤血球に変われる造血幹細胞は、0・5リットルで数万円するような培養液でも増やすことが難しい。このため、白血病の治療はドナーの骨髄や臍帯血(さいたいけつ)の移植に頼る場面が多かった。東京大の山崎聡特任准教授らは、培養液の成分などをしらみつぶしに検討。その一つであるポリビニルアルコール(PVA)で培養したところ、幹細胞を数百倍にできたという。PVAは洗濯のりや液体のりの主成分。山崎さんは実際、コンビニの液体のりでも培養できることを確認した。共著者で理化学研究所で細胞バンクを手がける中村幸夫室長は「結果を疑うほど驚いた。研究者はみんな目からウロコではないか」と話した。論文は30日に英科学誌ネイチャーに掲載される。

<知的障害者・精神障害者差別が起こる理由、犯人の前職など>
PS(2019年5月29日、6月1、2、3日追加):*6-1のように、昨日、川崎市内のバス停で多くの小学生が刃物で襲われる事件が起き、小6の女児と見送りに来た父親が犠牲になった。2001年には大阪教育大附属池田小学校で小学生の無差別殺傷事件が発生しており、このような場合に必ずほのめかされるのが「精神障害者か知的障害者の犯行」だ。これは、刑法が39条で「心神喪失者の行為は罰しない、心神耗弱者の行為は刑を減軽する」と規定しているのが原因だが、メディアがこぞって心神喪失者か心神耗弱者(注:どちらも定義なし)の犯行であるかのように言い立て、近年おかしな病名が増えた精神科の専門家が「予備軍は多い」などと語るのも問題だ。何故なら、それなら「予備軍」と考えられる人はすべてあらかじめ閉じ込めておくのが「登下校中の子どもをあらゆる悲劇から守る手立て」になるが、これは差別に基づく著しい人権侵害に至る危険な思想だからである。
 なお、*6-2のように、私立カリタス小学校の児童ら19人を殺傷して自殺した岩崎容疑者(51歳)は、刃渡り30cmの2本の包丁を黒い手袋を着用した両手に持って短時間で多数の人を殺傷したそうだが、こんな長い包丁を使って短時間に何人も殺せる人の前職は自衛官か肉屋・魚屋か、自殺までしたのなら元自衛官が誰かに頼まれて行ったのかと疑問に思われ、前職が全く開示されないのが不思議だった。
 さらに、*6-3のように、福岡市博多区板付の路上で、息子(40代)が「10年くらい前から引きこもりで仕事をしないため注意した」という母と妹を襲った後、自殺したと書かれている。10年くらい前の2008年にはリーマン・ショックがあり、企業は介護保険制度の支払いが40歳から始まるため40歳前後の人を解雇することが多く、その後は正規雇用の仕事がないまま10年近くを過ごして犯行に及んだのかもしれない。これは、岩崎容疑者にも近いが、中途退社すると就業上の不利益を受ける社会はおかしく、「引きこもり=異常」というのも変である。ちなみに、出産直後の主婦は買い物にも行けないほどの引きこもり状態を強制されるし、夫の転勤について行った専業主婦も引きこもらざるを得ないことが多いため、これは何とかすべきだ。
 このような中、*6-4のように、元農水次官が「引きこもり」と思われる44歳の長男を刺殺したそうで、偏見に満ちた報道で「引きこもり」の当事者は最後の居場所を無くしている。また、*6-5のように、引きこもりの経験者や家族会が、「①事件と引きこもりを先入観で短絡的に結びつける報道は、無関係な引きこもり当事者を深く傷つけ、誤解と偏見を助長する」「②引きこもり状態にある人が、このような事件を引き起こすわけではない」「③無関係な他者に対し危害を加えるような事態に至るケースは極めてまれだ」と、メディアにおける事件の報じ方に言及し、危機感を表明したのは当然のことだ。しかし、ここで、「バッシングではなく支援を」と精神科医が過去の西鉄バスジャック事件や新潟の少女監禁事件を引き合いに出しているのは「引きこもり⊂精神障害者=他者に危害を加える人、殺人犯予備軍」というレッテルを貼っており、「犯罪防止」や「支援」という名目でやろうとしていることが問題なのである。
 そして、「犯罪防止」という名目で行われ始めた人権侵害には、*6-6のような大きく規制緩和されて6月1日から施行されている改正通信傍受法(https://gendai.ismedia.jp/articles/-/64915 参照)に基づく警察の通信傍受がある。そのため、これを正当化するために「日本にも、危険な人はこんなに多い」とメディアを使って差別的な広報をしているのなら、とんでもない話だ。また、通信傍受する理由はどうにでもつけられるため、犯罪とは無関係な人でも意図的に傍受されることがありえ、この法律は日本国憲法21条の「検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない」に反するわけである。
 なお、障害者差別に関して、*6-7のように、「福岡トライアスロン」が約100人の障害者をボランティアスタッフとして参加させるのは、爽やかな明るさのあるトライアスロンらしい貢献で好ましいが、裏方ではなく競技に参加させることはできないのだろうか?

*6-1:https://digital.asahi.com/articles/DA3S14033840.html?iref=comtop_tenjin_n (朝日新聞 2019年5月29日) (天声人語)朝のバス停の悲劇
 「あの日、駅で『行ってきます』って笑顔で言ってくれたよね。あの笑顔が最後だった。もうお話しできないんだね」。大阪・付属池田小事件(2001年)で亡くなった小2女児、山下玲奈さんの遺族が翌年、そんな手記を本紙に寄せた▼感情を抑え、思い出を淡々とつづる。「車の中で宇多田ヒカルさんの歌、よく歌ってくれたよね」「小学生新聞の作文コーナーに応募したいと言って、作文用紙を買ったね」。普段着のように自然な口調が哀(かな)しみを誘う▼手記に胸を打たれた音楽家らが、鎮魂の楽曲「子守歌」を作る。「もう一度会いたいよ」「何のためにこの世に出てきたのでしょうか」「ずっと一緒だからね」。母の思いがメロディーに乗り、人々の胸に届けられてきた▼多くの小学生らが刃物で襲われるという凄惨(せいさん)な事件がまたしても起きた。犠牲者の一人は小6の女児である。いつもと変わらぬ朝を迎え、いつものバス停に立った。スクールバスに乗り込む直前に未来が絶たれるなど、だれに予測できただろう▼川崎市内の現場にはきのう、雨の中、住民らが次々に献花に訪れた。白いユリ、紅のガーベラ、黄色のヒマワリ……。登下校中の子どもをあらゆる悲劇から守る手立てはないものか。花々を見ながら考え込んだ▼〈逆縁の花の別れでありにけり〉山崎美代子。かつて本紙の俳壇に載った句である。病気であれ事故であれ、子に先立たれた親の苦しみは海より深い。時がたっても遺族の悲しみが消えることはない。

*6-2:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/380373 (佐賀新聞 5月29日) 手袋着用、短時間で多数殺害図る、川崎19人殺傷、動機を捜査
 川崎市多摩区でスクールバスを待っていた私立カリタス小の児童ら19人が殺傷された事件で、自殺した岩崎隆一容疑者(51)=同市麻生区=が襲撃時、手袋を着けていたことが29日、神奈川県警への取材で分かった。県警は凶器の包丁が滑らないようにし、短時間に大勢を殺害できるよう周到に準備したとみて捜査。同日の家宅捜索でノートなど数十点を押収した。動機や計画を示唆するものは見つからなかった。県警によると、岩崎容疑者は自宅最寄りの小田急線読売ランド前駅と登戸駅の防犯カメラ映像では手袋をしていなかった。現場近くでは手袋をした姿が写っており、襲撃直前に着用したとみられる。

*6-3:https://www.nishinippon.co.jp/item/n/514897/ (西日本新聞 2019/6/1) 母と妹襲い男自殺か 2人重傷「生活巡り口論」 博多区
 31日午後5時10分ごろ、福岡市博多区板付4丁目の路上で、通行人から「女性が倒れており、家族に殴られたと話している」と119番があった。博多署によると、女性は「帰宅したら兄に刺されたので逃げてきた」と話し、近くの市営板付南住宅の一室で、男女2人が血を流して倒れていた。3人は病院に搬送され、男は死亡し、女性2人は重傷。3人は母親と兄、妹とみられる。署によると、路上で倒れていた40代の女性は、刃物によるとみられる刺し傷が胸にあった。室内にいた母親とみられる70代の女性は署員に「息子は引きこもりで仕事もせず、注意したら口論になり殴られた」という趣旨の話をしたという。頭を金づちのような物で殴られていた。この団地の一室では、署員が駆け付ける直前に、布団などが燃える火災もあった。死亡した男は腹部から出血しており、署は2人を襲った後に自殺したとみて、殺人未遂事件として調べる。近所の小学6年の女児(11)は「部屋で友達と遊んでいたら、隣の住民から『火事だから外に出て』と言われた。頭が血で染まった女性が救急車に運ばれているのを見た。本当にびっくりした」と話した。一家と長年付き合いのある70代女性は「母親と一昨日に会った際も変わった様子はなかった。息子さんは10年ぐらい前に1人暮らしを始めたと聞いていたので、戻ってきたのも知らなかった。最近は会っていない」と驚いた様子だった。

*6-4:https://digital.asahi.com/articles/DA3S14039677.html (朝日新聞 2019年6月2日) 元農水次官、殺人容疑 44歳長男を刺す 警視庁捜査
 自宅で長男(44)を刺したとして、警視庁は1日、東京都練馬区早宮4丁目、元農林水産事務次官の熊沢英昭容疑者(76)を殺人未遂の疑いで現行犯逮捕し、発表した。熊沢容疑者は調べに「間違いない」と供述し、容疑を認めているという。長男は搬送先の病院で死亡し、同庁は容疑を殺人に切り替えて調べている。練馬署によると、逮捕容疑は1日午後3時半ごろ自宅で、長男の無職英一郎さんの胸などを包丁で複数回刺し、殺害しようとしたというもの。同40分ごろ熊沢容疑者から110番通報があり、署員が駆けつけると、英一郎さんが1階和室の布団の上で仰向けに倒れていた。熊沢容疑者は妻、英一郎さんと3人暮らし。同庁は当時の詳しい状況や動機の解明を進める。熊沢容疑者は旧農林省出身で、農林水産審議官などを歴任し、2001年から事務次官。05年から駐チェコ大使も務めた。近くに住む男性(86)は「一家は10年ほど前に引っ越してきた。長男らしい男性は一度も見たことがない」と話した。

*6-5:https://digital.asahi.com/articles/DA3S14039661.html (朝日新聞 2019年6月2日) ひきこもり報道、偏見が怖い 川崎殺傷で「懸念」声明相次ぐ
 川崎市の路上で児童らが殺傷された事件で、直後に自殺した岩崎隆一容疑者(51)が、長期間就労せずひきこもり傾向にあったことが関連して報じられていることについて、「ひきこもる人への偏見を助長しかねない」と懸念する声が当事者からあがっている。ひきこもり経験者や家族会が1日までに相次いで見解、声明を公表した。
■事件と結びつけ「当事者傷つく」
 「ひきこもりは危険という偏見をこれ以上かぶせられるのはたまらない」。東京都内で1日に開かれた「ひきこもり親子・公開対論」。中高年ひきこもりの当事者や家族らが集う「ひ老会」の主宰者、ぼそっと池井多さん(57)は事件を報じるメディアの影響に言及し、危機感を表明した。自ら長期のひきこもり経験がある。「私だってむしゃくしゃしてブラックな気分になることはある。でも、それは私が50代でひきこもりだから、なのか。そうは思わない」。ひきこもり経験者でつくる「ひきこもりUX会議」(林恭子・代表理事)は31日、声明を公表した。「『事件を悲しみ犯行を憎むこと』が『ひきこもる人たちをひとくくりに否定すること』に向かいかねない」と危惧。事件とひきこもりを先入観で短絡的に結びつけるような報道は、「無関係のひきこもり当事者を深く傷つけ、誤解と偏見を助長する」とし、報道機関に慎重な対応を求めた。一方、KHJ全国ひきこもり家族会連合会(伊藤正俊、中垣内正和・共同代表)も1日に声明を公表。「自分の子も事件を起こしてしまうのでは」と衝撃を受けた親からの相談が増えている実態を明かしたうえで、「ひきこもり状態にある人が、このような事件を引き起こすわけではない」「無関係な他者に対し危害を加えるような事態に至るケースは極めてまれ」だと指摘した。そのうえで、縦割りをこえた行政の支援構築や、家族会などの居場所につながることの重要性を訴えた。
■バッシングではなく支援を
 精神科医の斎藤環・筑波大教授の話 過去に、西鉄バスジャック事件や新潟の少女監禁事件でも、当事者へのレッテル貼りとバッシングがセットでなされ、支援の充実にはつながらないということが繰り返され、今回も懸念している。一方で、当事者たちがこれだけ発信していることは、20年前からすると大きな一歩だ。支援を当事者主体のものに変えていくきっかけにしてほしい。

*6-6:https://digital.asahi.com/articles/ASM2G4RCVM2GUTIL01M.html (朝日新聞 2019年2月15日) 警察の通信傍受、昨年1万回超 12事件で82人を逮捕
 法務省は15日、全国の警察が昨年1年間に通信傍受法に基づいて傍受した携帯電話の通話は計1万359回だったと発表した。傍受した通話のうち、犯罪に関連するものは約1割の1318回だったという。12の事件で計82人の逮捕につながったという。2000年8月に施行された通信傍受法は当初、対象犯罪を薬物、銃器、組織的殺人、集団密航の4類型に限定していた。16年12月施行の改正法で窃盗、詐欺、恐喝、児童ポルノの提供・製造など9類型が追加された。昨年1年間の12事件のうち、8事件が改正法で新たに対象犯罪になった犯罪だった。捜査幹部によると、法改正で想定していたのは組織的な窃盗団や特殊詐欺の犯行グループへの実施という。法務省は傍受を実施した都道府県警や事件の内容は明らかにしていない。

*6-7:https://www.nishinippon.co.jp/item/n/515303/ (西日本新聞 2019/6/3) 障害者100人が運営スタッフに 30日、福岡トライアスロン
 福岡市東区の西戸崎と志賀島を舞台にした「福岡トライアスロン」(30日)に、市内の福祉施設に通う約100人の障害者がボランティアスタッフとして参加する。これほど多くの障害者がスポーツ大会運営の裏方として活動するのは珍しいという。医師など市民有志でつくる大会実行委員会は「共生のまちづくりの一歩にしたい」と話している。大会は2017年に初開催され、2回目。約600人が出場予定で、バイクの受け渡しやコース管理など運営業務が多岐にわたるため、千人以上のボランティア確保が必要になっている。今年、福岡市で「障がい者差別解消条例」が施行されたこともあり、実行委は「働きやすい環境を整備すれば、障害に関係なく責任を持って大会を支えてくれる」と市内の関係団体に協力を呼び掛けた。大会には身体や知的、精神などの障害がある約100人が参加、健常者とともにチームを組んで選手を支える。具体的には選手に配るゼッケンなどの袋詰めのほか、大会前日の選手受付、当日の給水、表彰式なども支援する。障害者施設で作った物品販売や飲食コーナー、楽器演奏、ダンスでも大会を盛り上げる。実行委は車いす利用者が使いやすいようテーブルの高さを統一し、言葉で理解が難しい人には絵や写真で業務を説明した。協力に応じたNPO法人「福岡市障害者関係団体協議会」の中原義隆理事長は「これほどの規模でボランティア参加する大会は初めて。本人たちにとっても自信になる」と話している。

<近年の人類移動事情>
PS(2019年5月31日追加):*7-1のように、外国人就労拡大をする改正入管難民法の4月施行を受け、福岡県・市町村・業界団体・留学生支援団体などの官民56団体が、2019年6月に九州初となる「福岡県外国人材受入対策協議会」を発足させるそうで、他地域でも参考になる。
 また、*7-2のように、新在留資格「特定技能」外食分野の第2回国内試験の受験申し込みが外国人食品産業技能評価機構HPで始まると、申し込み殺到で受け付け開始直後から申し込みフォームが開けなくなったそうだ。しかし、*7-4のように、日本に移住して日本人妻や家族と故国のイタリア野菜を生産するイタリア人シェフや田舎暮らしに憧れて循環型の農業を目指す地域おこし協力隊のスペイン人のような方もおり、外国人だからこそ思いつくことも多い。さらに、*7-3のように、カンボジア(カボチャの古里)から来た農業実習生が新在留資格「特定技能1号」に移行するそうだが、様々な可能性を持って働く人たちであるため、せっかく日本語が通じるようになった真面目な外国人を追い出すようなことがないようにすべきだ。
 なお、最近、うちの近くでベトナム人をよく見かけるようになったが、同時にスーパーでパクチーが売られるようになり、うどんに入れて食べると爽やかで美味しい。ベトナムでは米粉麺(フォー)に入れて一般に食べられるが、その米粉麺とスープが売られていないのは残念だ。

*7-1:https://www.nishinippon.co.jp/item/n/513963/ (西日本新聞 2019/5/29) 福岡県、外国人材受け入れへ協議会 官民56団体連携
 外国人就労を拡大する改正入管難民法の4月施行を受け、福岡県や市町村、業界団体、留学生支援団体などは6月に「県外国人材受入対策協議会」を発足させる。生活、労働情報や課題を共有し、受け入れ環境向上を図る狙いだ。外国人材に関連した官民の横断的な組織の設立は九州で初めて。県は9月にも市町村と連携した広域の外国人相談窓口の設置を予定している。法務省によると、県内の在留外国人は7万3876人(昨年6月現在)。改正法は新たな在留資格「特定技能」を創設。県内でも農業、介護、建設などの分野に従事する外国人数の増加が見込まれる。協議会は県に事務局を置き、福岡市、北九州市、県市長会、県町村会、福岡労働局をはじめ、農業や介護のほか外食、宿泊、建設など13業種の業界団体を含む計56団体で構成。アンケートなどで就労や生活面の不安、事業者が抱く制度の課題点や困り事を把握し、必要な対策につなげる。新設する相談窓口は「県外国人相談センター」(仮称)。政令市を除く58市町村に寄せられる相談をセンターと共有できるネットワーク体制を構築する。(1)外国人と担当の市町村職員(2)センターのスタッフ(3)通訳業者‐の3者が機器で同時通話できるシステムを活用。スタッフが生活、就労、医療など相談内容次第で各専門機関にもつなぐ。県は、関連経費として計約2300万円を2019年度一般会計当初予算案に計上する方針。

*7-2:https://www.nishinippon.co.jp/item/n/512757/ (西日本新聞 2019/5/24) 外食特定技能試験のHP申し込み殺到 数時間アクセス困難に
 外国人労働者受け入れ拡大で創設された在留資格「特定技能」の外食分野の第2回国内試験(全国7会場)の受験申し込みが23日、外国人食品産業技能評価機構のホームページ(HP)上で始まったものの、申し込みが殺到しアクセスしにくい状態が数時間続いた。3月下旬に募集した初回分は半日で定員に達したため、機構はサーバーの容量を増強し備えていたが「予想を上回った」(事務局)という。東京会場分はこの日で定員(640人)に達した。外食分野の第2回試験は札幌、仙台、東京、名古屋、大阪、岡山、福岡で6月24-28日に実施。定員は計2032人で、この日の午前10時に受け付けを始めた。本紙「あなたの特命取材班」に寄せられた情報によると、受け付け開始直後から申し込みフォームが開けなくなり、機構によると、昼すぎまでその状態が続発。その後も申し込みに必要な仮登録メールが送信されないトラブルが起きた。申請締め切りは今月29日だが、機構は「トラブルが起きた場合に対応が難しいため、土日は受け付けを停止する」としている。特定技能の在留資格を得るためには、各分野の技能測定試験に加えて、日本語能力試験に合格する必要がある。両方の試験に合格した後に出入国在留管理局に申請し、審査を経て資格を取得することになる。外食分野を管轄する農林水産省によると、外食業では留学生を中心に約14万人の外国人が働いている。特定技能では今後5年間で最大約5万3千人の受け入れを見込んでいる。

*7-3:https://www.nishinippon.co.jp/item/n/506135/ (西日本新聞 2019/4/27) 特定技能1号 初認定 カンボジア農業実習生2人 登録支援機関は福岡など8件
 外国人労働者の受け入れを拡大する新制度で、出入国在留管理庁は26日、農業に従事する技能実習生でカンボジア国籍の20代女性2人が新たな在留資格「特定技能1号」に移行すると発表した。4月に運用が始まった新制度での認定は初めて。受け入れ企業に代わって外国人の生活をサポートする「登録支援機関」には、福岡県と鹿児島県の中小企業各1件を含む8件が全国で登録された。特定技能は人手不足が深刻な介護や建設、農業など14業種で、今後5年間で約34万人を受け入れる。外国人労働者は日本語能力と技能試験に合格すれば最長5年間働くことができる。特定技能1号にはアジアの元技能実習生23人、日本で実習中の4人の計27人が申請、2人が認められた。2人は大阪府の会社で受け入れられ、和歌山県御坊市で農業に従事。新制度では3年以上の技能実習修了者は技能試験が免除されることになっており、2人はこの要件で移行した。26日に在留資格の変更許可の通知書を送付。手続きが終われば、特定技能1号の在留カードが交付される。登録支援機関には人材派遣会社や日本語学校など1176件の申請があり、うち行政書士など個人2件、中小企業など法人6件が登録された。九州7県を管轄する福岡局への申請は78件。入管庁の佐々木聖子長官は「在留資格の変更や(本国からの)呼び戻しが多いのは予想通りで、これから審査をして徐々に増やしていく。登録支援機関が社会に定着していくようにしたい」と述べた。

*7-4:https://www.agrinews.co.jp/p47783.html (日本農業新聞 2019年5月29日) 海越えて移住「満足」 日本が古里
 日本は第二の古里──。遠く離れた異国に移住し、日本人の妻や家族と共に農業や農村暮らしに夢を描く外国人がいる。故国のイタリア野菜を生産するシェフや、田舎暮らしに憧れ循環型の農業を目指す農場を立ち上げた地域おこし協力隊員。必死に取り組む姿に地域の人々も、目を細める。積極的に地域の活動にも関わり、欠かせない存在になっている。
●故国の野菜80種 農家シェフ順風 イタリア→福岡県福津市 シルビオさん夫妻
 福岡県福津市に、国内で流通するイタリア野菜の草分けがいる。イタリア出身のカラナンテ・シルビオさん(41)と同市出身の花田愛さん(40)夫妻だ。日本に移り住んだ11年前は国内でイタリア野菜が手に入らず、自ら作り始めた。現在は、3・5ヘクタールの畑で年間80種の野菜を栽培する。トロペア、渦巻きビーツ、アーティチョーク……。夫妻が手掛ける野菜は、どれも一般のスーパーでは見掛けないマイナー品目だ。現在は種苗メーカーから種子が販売され作る農家も出てきているが、移住した当初は手に入らなかった。シルビオさんはイタリアで修業を積んだ料理人。日本の野菜でも代用できないか試したが、思った味が出せなかった。農業は素人だったが、自ら作ることを決意。周辺農家の指導を受けつつ、小さな畑から栽培を始めた。イタリア野菜は、日本で作るのが難しいとされる。気候の違いからだ。夫妻は、さまざまなイタリア野菜を育てて味見。同市の気候に適した種を探した。独特の香りや苦味が弱いなど、課題があった場合は植え付け時期や水管理を変えて工夫。地域に合った作り方を少しずつ研究していった。料理人とあってイタリア野菜の味わいに精通していたことも役立った。「味や食感を確かめながら、本場の味に近づけた」と振り返る。風変わりな野菜を作る異国人とその妻。当初は地域住民も遠巻きにしていたが、真面目に農業に取り組む2人の姿を見て協力するようになった。3・5ヘクタールと広大な農地も、地元民の声掛けで集まったという。2018年度には宗像市、福津市、JAむなかたでつくるむなかた地域活性化機構から、農業功労賞を受けるなど、今では同市を代表する農家の一人となった。17年12月には、イタリア料理店アプテカ・フレーゴを開店。生産したイタリア野菜を巧みに使い、振る舞っている。地場産のタコをメイン食材にしたパスタも、自家製の新鮮なハーブ「フェンネル」を添えると、本場の味に変貌する。店には直売コーナーを設け、料理に使った食材を並べる。シルビオさんの料理を気に入った客が、購入していく。店で使う分は一部。作った野菜のほとんどは、福岡市内のスーパー、全国のイタリア料理店や和食店などに卸す。営業活動はほとんどしていないが、口コミで出荷先がどんどん広がっているという。農業を始めてから、自分で汗を流して食材を作り、調理して食べる生活に魅了されたという夫妻。「移住して感じた食の大切さを、店に来た客にも伝えていきたい」と話す。
●豊かな水と人情 夢は循環型農業 スペイン→新潟県上越市 エミリオさん
 スペイン出身のガルシア・バランコ・エミリオさん(38)と瀧田典子さん(32)夫妻は、畜産農家を目指して2人の子どもと共に新潟県上越市柿崎区にやって来た。エミリオさんは現役の地域おこし協力隊員。活動を通して地域に溶け込み、2017年に農場「黒岩パーマカルチャーファーム」を立ち上げ、循環型農業の実践に夢を描く。パーマカルチャーは、オーストラリアで提唱された永続的な農業を指す概念で、世界各地で取り組まれているという。農場ではウコッケイの他、水田2アールでアイガモ農法に挑戦。有機野菜作りにも汗を流す。ウコッケイは10羽から50羽に増やし、卵の販売に乗り出した。有精卵は、地域の直売所や飲食店で1日約10~20個(1個120円)を販売。「こくがある」と、評判は上々だ。来日して愛知県で3年間過ごした後、16年に上越市の地域おこし協力隊に就任。今秋に任期を終える。「自然を大切にして、田舎で暮らしたい」と柿崎区に飛び込んだ。豊かな湧き水と森林、温かい人情が移住の決め手だったという。今後はウコッケイを250羽、ヤギ7頭を100頭に増やす計画。6月にはブロイラー40羽を飼育する予定だ。飼っている動物のふんから堆肥を作り、土を守る農業を実践していく。エミリオさんは「再生可能な農業でコミュニティーをつくり、新たな移住者5家族ほどを呼び込みたい」と将来の夢を描く。夫妻は、地域活動に積極的に参加し、住民から頼りにされるまでになった。今後は、豚や牛の導入も視野に循環型の永続的農業を取り入れていく考えだ。

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2019.5.3~4 GAFAの課税問題と個人データ保護問題 (2019年5月5、6、7、8、9、10、11、13、22、23、24日追加)
  
     2019.1.2産経新聞

(図の説明:左図のように、GAFAの創業は、アップル1976年、アマゾン1994年、グーグル1998年、フェイスブック2004年と、パソコンなどのハードを作ってきたアップル以外はインターネットが一般的になってから芽生えた若い企業だが、株価時価総額や売上高は兆円単位であり、時代のニーズに合ったサービスを行えば成功することがわかる。しかし、近年は、個人データの勝手な使用や移転、検索サイト等での人権侵害など、ニーズからかけ離れた横暴も見られる。また、中央の図のように、国際課税制度がグローバル企業の行動様式に追いついておらず、課税漏れも発生している。そのため、右図のような規制が検討されているわけだ)

(1)GAFAの問題について
 「GAFA(ガーファ)」とは、巨大IT企業であるグーグル・アップル・フェイスブック・アマゾンの頭文字をとったもので、*1-1のように、課税問題と個人データ保護の問題があるが、これは巨大企業だから生じる問題ではないと、私は考える。

1)課税問題について
 課税問題については、元・米グーグル副社長の村上氏が、*1-1で主張されているとおり、「GAFAは税金を払っていない」と言われることが多いが、現行税制下で脱税(税法違反の違法行為)をしているわけではなく、節税(税法に従って無駄な税金を節約すること)をしているにすぎないため、私も感情的な議論には反対だ。

 現行税制下で、日本等で営業している企業が納税しなくて済む理由は、税法が「企業は、進出国で支店や工場などの恒久的施設を持たなければ法人税を課されない」という規定になっており、GAFAなどのIT企業は配信拠点を外国に置いたまま恒久的施設を持たずに営業することができるからだ。

 しかし、倉庫が恒久的施設と認定された判例(http://www.bantoh.jp/article/14476063.html 参照)もあり、これは日本国内の倉庫で商品の保管・梱包・日本語版取扱説明書の同梱・宅配便での発送などが日本の従業員によって行われていたケースで、アマゾンの営業の一部はこれに当たるだろう。

 さらに、GAFAを含むグローバル企業は、タックスヘイブンに利益を集めれば合法的に税負担を軽くすることができるので問題になっているが、これもタックスヘイブン税制と外国税額控除を使って合法的に行われており(https://www.eyjapan.jp/library/issue/info-sensor/2017-06-07.html 参照)、上の判例のケースも、倉庫をタックスヘイブンに置き、そこで作業を行えば課税の軽減ができるわけである。

 そのため、私は、各国が、商法に「営業する国には、支店などの恒久的施設をおかなければならない」という規定を置いて、ある国で挙げた利益に対する税はその国で支払うことを義務付けるとともに、商品やデータ保護などにクレームがある場合も、その国の恒久的施設をその国で訴えればよいようにすれば、税制とデータ保護の問題が同時に解決できると考える。

 従って、「巨大企業だから、GAFAが悪い」と感情的に煽るのではなく、2019年6月の日本で開催されるG20財務相・中央銀行総裁会議で、各国がその国に恒久的施設を置くことを義務付ける点で合意すればよいだろう。

(注:タックスヘイブンとは、法人税や源泉課税などがゼロor低税率という税制優遇措置をとっている国・地域で、キュラソー、ケイマン、スイス、パナマ、バハマ、ルクセンブルクなどがこれにあたる。日本も、過疎地などで企業誘致したい場所の法人税率を下げればよいのでは?)

2)個人データ保護問題について
 *1-1にも書かれているとおり、検索やSNS等のサービスを提供するグーグルやフェイスブックなど「プラットフォーマー」と言われる企業は、インターネットやデータビジネスで強いポジションを握っているプラットフォーマーで、欧州では個人データ保護などのGAFA規制が強まっているそうだ。

 私は、個人データはその人のものであるため、便利さとの引き換えに勝手に他の目的に流用されること自体が人権侵害であり、欧州の個人データ保護規制が良識的だと考える。そのため、「米国が勝った」ではなく、米国も日本も人権侵害がないように必要な規制をしながら、誠実に事業を行わせなければならないのであり、これは中国・ロシアなど他の国々でも同じだ。

 アマゾンは、「いずれ注文しなくても必要な時に必要な商品が届くサービスも可能になる」「そのためには個人データの開示が必要だ」などと公言しているそうだが、これは過去の行動のみから判断するため、一度買ったらずっと同じ商品の広告が出たり、毎月同じものを買わされたりして役に立たないだけでなく、無駄なものを買わされて迷惑なこともある。従って、IoTによる技術革新も、個人の自由やプライバシーなどの基本的人権を踏みにじらない範囲でのみ許されることを、決して忘れてはならない。

(2)GAFAの規制について
1)問題は独占なのか?
 マッキンゼーの日本支社長だった経営コンサルタントの大前氏が、*1-2のように、「①GAFAなどのデジタルプラットフォーマーに対する規制圧力が世界中で強まっているが、この問題は『個人データの独占』と『課税』の2つがある」「②個人データの独占問題は、消費者がスマホやパソコンで検索や買い物をすると、その履歴が消費者の同意なくターゲティング広告に活用される行為が独占禁止法に違反する」「③課税問題はデジタルプラットフォーマーがタックスヘイブンや法人税率の低い国・地域に拠点を置き、実際に収益を上げている国で税金を納めていない」などの要点を書かれている。

 私は、①②については、(1)2)に記載したとおり、検索や買い物をするとその履歴が残ることまでは仕方がないが、これを消費者の同意なくターゲティング広告に利用したり、他企業に売却したりすることは人権侵害の問題であり、これは中小企業でも同じであるため独占の問題ではないと考える。つまり、アクセスデータを集めるところまではプラットフォーマーの特権になるが、個人データは個人のものであるため、その人の同意なく移動したり利用したりするのは人権侵害という憲法違反の問題なのだ。そのため、データの悪用を決して行わない信頼できるプラットフォーマーが現れれば、市場原理によってそちらの方が勝つと思われる。

 また、①③については、(1)1)に記載したとおり、各国が、営業する国に恒久的施設を置くことを義務付けることで合意すれば解決できる。

2)規制の妥当性
 現在、*1-2のように、世界中で個人データの取扱規制や新税導入などの動きが加速し、日本の公正取引委員会も、デジタルプラットフォーマーが不当に個人情報を集めた場合、「優越的地位の濫用」を個人との取引にも適用して独占禁止法を適用する方針を固めたそうだ。

 しかし、検索サービスやSNSサービスの対価として個人の情報を集めることは、デジタルプラットフォーマー以外の企業もやっており、「巨大な」「プラットフォーマー」「不当に集めた」という線引きが問題になるのは独占禁止法を適用しているからだ。そのため、個人情報やプライバシーを人権として護る消費者保護サイドの規制を作れば、境界の問題は生じない。

(3)個人データの悪用について
 政府が世界の巨大IT企業「プラットフォーマー」の規制に向けた議論を本格化させていることを受けて、*2-1のように、巨大IT、GAFA、プラットフォーマーについて、基本的な定義が示されている。

 しかし、私は、ネット経済の特性は、独占・寡占が進みやすいということよりも、少ない資本で誰でも起業でき、成功すれば急成長することだと思う。あとは、どういうサービスを提供するかというアイデアの勝負であり、個人情報の流出や人権侵害などの悪用を行う企業は、誠実で質の高い競争相手が出て来れば淘汰されるだろう。

 例えば、三越・高島屋・イトーヨーカドー・イオンなどが世界の流通ネットワークを活用して良いものを仕入れ世界に向けてネット通販したり、農協・漁協・真珠専門店などがよい産物を世界に向けてネット販売したりすれば、実質経済に根を下ろしているだけに、アマゾンより有利な位置から始められる筈だ。

 そのような中、*2-2-1のように、2018年5月にEUで施行された一般データ保護規則(GDPR)で、個人データ保護を厳しく企業に求めたのは重要なことだ。何故なら、巨大か否かを問わず、ITプラットフォーマーが勝手に個人データを流用すれば、個人は抗しきれないため、消費者保護の問題になるからだ。

 しかし、*2-2-2のように、日本政府がEUと交渉して互いの進出企業が現地で得た個人データを域外に持ち出すことを例外的に認める枠組みを作ったのだそうで、グローバル企業の事業拡大を後押しするためだと説明されているが、この発想の中には、消費者ニーズや個人情報を勝手に使われないようにして個人を護るという意識が全くないのである。

 日本が自由なデータ流通にこだわっているのは、産業振興のためには個人消費者を犠牲にすることを厭わないという全体主義的な発想からである。また、このような発想の国が、マイナンバーを使って個人管理を行い始めたのだから、日本人は気を付けなければならない。

 その巨大IT規制の政府案は、*2-3・*2-4のように、①取引条件の開示義務 ②独占禁止法での処分 ③個人情報の保護 を盛り込んでいるそうだが、個人情報保護に関しては、個人情報保護や人権侵害に鈍感な企業に消費者が近づかないよう企業名を公表するなどの厳格な態度が必要なのであり、企業の負担になる規制強化を避けようなどというのは論外である。

・・参考資料・・
<GAFAの課税問題と解決法>
*1-1:https://digital.asahi.com/articles/ASM365H4FM36UPQJ00K.html (朝日新聞 2019年3月17日) GAFA納税不十分? 元グーグル副社長「税制に問題」
 「GAFA」(ガーファ)と呼ばれるグーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン。こうした巨大IT企業への風当たりが世界的に強まっている。もっと納税すべきだ、という批判もその一つ。格差が広がる世界経済のいまを映すこの問題、どう考えれば良いのか。
●元・米グーグル副社長 村上憲郎さん「情緒的な規制、避けるべきだ」
 GAFAは支払うべき税金をきちんと払っていない、などと言われますが、違法な脱税をしているわけではないでしょう。節税をしている。それを問題視するなら、「納めなくても済む」という税制の方にこそ問題があるんですよ。税制を整えれば、それに従って、適法に納税すると思われます。最近は税金に限らず、データの集積などの問題も含めてGAFAへの批判が高まっています。ただGAFAもサービスを提供して対価を得るという商行為をしているわけで、情緒的に「GAFAが悪い」とあおることは即刻、やめるべきです。世界的に社会の格差が広がる中、特定の誰かに対する不満をあおることは負のエネルギーを生み、全体主義の復活にもつながりかねない。日本もGAFAへの規制に乗りだそうとしていますが、情緒的なアプローチだけは絶対避けるべきです。富の集中による不公平の存在は多くの人の指摘の通りですが、再分配をどうするかは難しい問題です。GAFAを生んだ米シリコンバレーでは高額所得者が集まった結果、住居費が上がりすぎ、普通の地元の人たちが住めなくなっています。米国の分厚い中間層も失われてきています。これまでの資本主義とは様相を異にしてきています。特に若い世代の格差をいかに少なくするかを根本的に議論すべき時期に来ている。ただそれは特定の私企業の責任ではありません。検索やSNSなどのサービスを提供するグーグルやフェイスブックなど「プラットフォーマー」と言われる企業は最強のポジションを握ってはいます。全てのビジネスの基盤となるからです。ただインターネットでのビジネスは、その上に幾層も重なるレイヤー構造です。動画配信大手のネットフリックスもプラットフォーマーですが、テレビ受像機をつくる企業、動作のアプリをつくる企業、番組などコンテンツをつくる企業など多くの層があります。それら全てが繁栄しないとプラットフォーマーも繁栄しません。「一人勝ち」はありえないんです。欧州では課税強化や個人データ保護などGAFAへの規制が強まっていますが、米国の本音は「勝った」でしょう。欧州にもそれなりの企業はあるけれど、データへのアクセスを罰則つきで規制されれば事業を大きくすることはできません。インターネットにつながる家電などのIoT(モノのインターネット)が成長分野ですが、データへのアクセスを制限された欧州企業は何もできず、地力を失っていくと思います。個人データの問題でもGAFAはやり玉にあがっていますが、便利さとの引き換えで利用者が判断すべき問題です。GAFAが最終的に提供しようとしているのは「執事サービス」です。執事は主人のすべてを知り尽くし、冷蔵庫に好物を常備しておく。アマゾンはいずれ、「注文しなくても必要な時に必要な商品が届く」サービスも可能になると公言している。そのためには全部見せる、つまり個人データの開示しかありません。私の見立てでは、21世紀は中国の圧勝になる。中国は東大も京大も東工大も10校ずつあるという感じで、米国で教育を受けた優秀な人たちも帰国し、一党独裁のもとで量子コンピューターなどの技術に集中投資できる。GAFAもいずれ、中国企業に取って代わられるかもしれない。GAFAを規制している場合じゃないんですよ。そんな世界で、日本はどうするか。もう若い人たちにやりたいようにやらせるしかありません。IoTの時代には車や産業ロボットなど、インターネットにつながるリアルな「モノ」がカギになります。日本はその「モノづくり」では蓄積があります。でも、そこで年寄りが威張るのではなく、若い人にこそ任せるべきです。
  ◇
むらかみ・のりお 1947年生まれ。日立電子(現日立国際電気)を経て米国系IT企業数社の日本法人代表を歴任。2003年~08年に米グーグル本社副社長兼日本法人社長。
●デロイトトーマツ税理士法人パートナー 山川博樹さん「データ時代に新しい税制を」
 グローバル企業に相応の課税ができていないのではないか、という議論が盛んになったのは、2000年ごろからです。対象は必ずしもIT企業だけではありませんでした。経済協力開発機構(OECD)はこの問題について、従来の国際ルールを元に、部分的な修正をしました。08年のリーマン・ショックがさらにこの議論を後押ししました。各国で財政が悪化し、所得増税などで国民の負担が増えた一方、グーグルやアップル、スターバックスなどが税負担を回避する仕組みを使っていることが次々と明るみに出ました。なかでもIT企業は各国で存在感を高め、利益も巨額なのに、納税のレベルが極端に低いのは不公平だ、という人々の意識が高まりました。フランスでは国民の怒りが、課税できない政府にも向かいました。なぜ課税できなかったのか。理由は大きく二つあります。まず、現行のルールでは企業が進出先の国で工場などの「恒久的施設」を持たなければ、法人税をかけられません。たとえば日本でアマゾンから電子書籍や映画を購入しても、配信拠点が米国にあれば法人税は米国で払い、日本には納めないことになります。もう一つは、税負担の少ないタックスヘイブン(租税回避地)などにほとんど実態のない子会社を作り、利益を移すとても高度な仕組みが作られていたことです。公開データによると、米IT企業など40社以上がこのやり方を使っていました。これは脱税ではありません。税制が追いついていないのです。ただ企業の存在感が大きくなったいま、もっと課税すべきだという声が出てくるわけです。OECDは15年、「税源浸食と利益移転(BEPS)に関する行動計画」をもとに、国際的な課税の共通ルール作りを始めました。世界中の国が同じルールにしないと抜け道が生まれるためです。現在、プロジェクトに約120の国・地域が参加しています。ただネット上の取引の扱いは積み残されました。既存ルールの根幹に関わる難しさがあるからです。ところが、この1年弱ほどの間にこの問題が急に進展し始めました。積極的に関わろうとしなかった米国が、議論に参加し始めたことが大きな理由です。トランプ政権は、GAFAなど米国企業だけが「狙い撃ち」にされるのはたまらないと思ったのでしょう。もう一つの背景は、一部の国が独自にIT企業に課税すると表明したことです。フランスは見切り発車で「デジタル課税」を始めると発表しました。米国も無視できず自ら関わらざるを得なくなりました。ただ欧州でも、アイルランドやルクセンブルク、オランダなど低い税率でIT企業を誘致してきた国と、それ以外の国との間で不協和音が起きています。いま求められているのは、データをビジネスにする時代に合った新しい税の考え方です。シリコンバレーのIT企業が持つ重要な価値は「アルゴリズム」です。市場のある国の利用者1人分のデータには意味がなく、集積して解析することで価値が生まれます。そしてこの活動は米国で行われています。では市場のある国でどういう理屈で課税するのか。また、各国で使われるアルゴリズムの開発やデータ管理の費用などをどう計算し、法人所得を算出するのか。極めて難しい問題です。新しいルールづくりで重要なのは、二重基準にならず、現行の制度から大きく乖離(かいり)しないこと。また、各国の税務当局や納税者、紛争を解決する裁判所などにとっても論理的に理解できるものにすることです。途上国も対応できるよう、簡素な計算式を使うなど実務的でなければなりません。6月には日本でG20財務相・中央銀行総裁会議が開かれる予定ですが、議論の進展を期待しています。
     ◇
やまかわ・ひろき 1959年生まれ。82年に国税庁に入り、調査査察部調査課長などを歴任。国際課税を長年担当してきた。14年からデロイトトーマツ税理士法人。

*1-2:https://www.news-postseven.com/archives/20190411_1348635.html (週刊ポスト 2019年4月19日号) 「GAFA独占」問題をどう解決するか、大前研一氏が分析
 商品やサービスを提供するプラットフォーム企業のうち、特に巨大なアメリカのIT企業4社は「GAFA」と呼ばれている。最近では、世界中でこの巨大企業が個人情報をかき集め、独占し、納税も巧みに逃れていることが問題となっている。経営コンサルタントの大前研一氏が、「GAFA独占」問題の解決について解説する。
 * * *
  「GAFA」(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)などの「デジタルプラットフォーマー」と呼ばれる巨大IT企業に対する規制圧力が、世界中で強まっている。この問題は、大きく分けて「個人データ独占」と「課税」の二つがある。まず個人データ独占問題は、消費者がスマホやパソコンで検索や買い物をすると、その履歴などの個人データが利用した企業に蓄積される。それをデジタルプラットフォーマーは世界規模で膨大に集めて事実上独占し、消費者の同意なくターゲティング広告(※ユーザーが閲覧したサイト、検索履歴、検索キーワードなどを基にユーザーの興味や関心、嗜好性を解析し、それに的を絞った広告を配信する手法)などの事業に活用して莫大な利益を上げている。そういう行為が独占禁止法に違反するとして、各国で批判が高まっているのだ。もう一つの課税問題は、デジタルプラットフォーマーがタックスヘイブン(租税回避地)や法人税率が低い国・地域に拠点を置き、法の抜け穴を利用して実際に収益を上げている国で税金を納めていないことである。この“税逃れ”をどう防ぐかが、世界中の政府の課題になっているのだ。だが、その解決は容易ではない。たとえば、もともと日本の独占禁止法の目的は「公正かつ自由な競争を促進し、事業者が自主的な判断で自由に活動できるようにすること」であり、市場メカニズムを正しく機能させるために「私的独占」「不当な取引制限」「不公正な取引方法」などを規制している。具体的には、不当な低価格販売などの手段を用いて競争相手を市場から排除したり、50%超のシェアを持つ事業者がいる市場で需要やコストが減少しても価格が下がらないなどの弊害が認められる場合に適用される。だが、デジタルプラットフォーマーの場合、それらのいずれも当てはまらない。それどころか、グーグルやフェイスブックは普通に利用する分にはタダであり、むしろ消費者の利便性や効率を高めている。また、そもそもデータは検索や買い物を通じて消費者自身が提供している。となると、GAFAなどが個人データを独占して莫大な利益を上げているのは企業努力の結果であり、それを規制するルールがあるかと言えば、従来の独占禁止法のどこを探しても見当たらないのだ。ただし、タダで便利なように見えて、実のところデジタルプラットフォーマーは様々な情報を吸い上げて利用者を“丸裸”にしている。情報シェアを高めることによって販売効率を高めるというのは昔からマーケティングの人間が憧れていたことであり、それをデジタルプラットフォーマーはほぼ自動的にやっているわけで、これほど一握りの大企業が情報を独占するという状況は、誰も想定していなかった。この巨大化したデジタルプラットフォーマーにタガをはめるため、世界中で個人データの取り扱い規制や新税導入などの動きが加速している。すでにEU(欧州連合)欧州委員会は3月20日、グーグルに対し、インターネット広告の分野でEU競争法(独占禁止法)に違反したとして14億9000万ユーロ(約1900億円)の制裁金を科した。日本の公正取引委員会も、デジタルプラットフォーマーが不当に個人情報を集めた場合、これまで企業間の取引にしか適用してこなかった「優越的地位の濫用(※取引上優越した地位にある企業が、取引先に対して不当に不利益を与える行為。独占禁止法により、不公正な取引方法の一つとして禁止されている)」を個人との取引にも適用し、独占禁止法を適用する方針を固めたと報じられている(『朝日新聞』3月6日付)。しかし、検索サービスやSNSサービスの対価として個人の情報を集めることは、デジタルプラットフォーマー以外の企業も、細々とではあってもみんなやっている。その線引きをどうするのか、中小企業は規制しなくてよいのか、という問題がある。また、課税問題については、各国での売り上げに応じてそれぞれの国で納税させる新たな税制が多くの国で検討されている。たとえばフランスは3月、国際収益が年間7億5000万ユーロ以上(国内での収益が同2500万ユーロ以上)のデジタル企業を対象にした「デジタル税」を導入すると発表した。イギリスやイタリア、スペイン、インドなども同様の新税を導入すると報じられている。しかし、これは国ごとではなく「グローバル課税」にしないと、根本的な解決策にならないと思う。ネットの世界はグローバル・ビレッジなので、国別に課税するという概念がなじまないからである。フランスやイギリスなどのように、単にその国での売上高に応じて納税させるのではなく、グローバルな収益から、その国の売上高に比例して納税させるべきだろう。なぜなら、GAFAは国別の収益を公表しないし、国別の経費もあまり意味を持たないからだ。したがって、企業本社での最終純利益を国別の売上高で按分する、という考え方である。これは日本の外形標準課税(*1)やアメリカのユニタリータックス(*2)に近い。
【*1:資本金・売上高・事業所の床面積・従業員数など、企業の事業規模を外形的に表す基準をベースに課税する方式。*2:アメリカの州が課す税で、州外の親会社・子会社・関連会社を一体のものとみなして全所得を合算し、その州における売上高や資産などで比例配分したものを州事業税の課税対象にする方式】

<個人データの悪用について>
*2-1:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/298464 (佐賀新聞 2018/11/6) 【共同】巨大IT、代表格はGAFA
 政府が世界の巨大IT企業「プラットフォーマー」の規制に向けた議論を本格化させています。
Q プラットフォーマーとは何ですか。
A 世界中で消費者と接点を持ち、購買行動や関心事項といった個人情報を収集、分析して各種サービスを提供している巨大IT企業のことです。膨大なデータを握ることで、企業がこれらIT企業を介さずには事業展開できないほど圧倒的な存在となっており、英語で基盤や土台を意味する「プラットフォーム」から命名されました。
Q 具体的な企業は。
A 代表格は「GAFA(ガーファ)」とくくられる米国の4社です。検索のグーグル、iPhone(アイフォーン)のアップル、会員制交流サイト(SNS)のフェイスブック、インターネット通販のアマゾン・コムの頭文字を取って、こう呼ばれています。
Q なぜ世界中に影響力を広げたのですか。
A 中小企業がネット通販を経由して世界で商品を販売する基盤を提供したり、交流サイトを使って海外の人々と連絡が取れたりと、利便性が非常に高いためです。
Q 問題点は。
A 主導権を握った企業の優位性が加速するネット経済の特性から、独占や寡占が進みやすく、取引企業や利用者への影響力が大きくなりすぎると指摘されています。人工知能(AI)を使ったサービスの不透明さや、個人情報の流出・悪用も課題となっています。

*2-2-1:https://www.nikkei.com/article/DGKKZO42098900W9A300C1M11200/ (日経新聞 2019/3/7) データ保護規制 世界に波紋、EUのGDPR、施行9カ月
 2018年5月に欧州連合(EU)が施行した一般データ保護規則(GDPR)が世界に波紋を広げている。個人データの保護を厳しく企業に求めており、大量のデータを握る米IT(情報技術)大手への攻勢を強めている。GDPRを契機として、データの自由な流通圏の構築を目指す日米欧と、国家主導のデータ管理を目指す中国との間でデータエコノミーを巡る覇権争いも激しくなってきた。

*2-2-2:https://www.sankei.com/politics/news/190123/plt1901230031-n1.html (産経新聞 2019.1.23) 欧州の個人データの移転規制、日本例外で発効
 日本と欧州連合(EU)との間で、互いの進出企業が現地で得た個人データを域外に持ち出すことを例外的に認める枠組みが23日に発効した。日EUは相互に個人情報保護の水準が十分であると認め、データ移転の際に個別の契約を求めるなどする規制をなくすことで、グローバル企業の事業拡大を後押しする。EUは昨年5月に企業などを対象に個人情報の保護を厳しくする一般データ保護規則(GDPR)を導入。仏当局は21日、米グーグルにGDPRに違反したとして5千万ユーロ(約62億円)の制裁金を科すなど、厳格な個人情報の取り扱いを求めている。

*2-3:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190425&ng=DGKKZO44146570U9A420C1EA2000 (日経新聞 2019年4月25日) 巨大IT規制、多面的に、政府案公表、成長との両立図る
 政府は24日、プラットフォーマーと呼ばれる巨大IT(情報技術)企業に対する規制のうち、公正な競争を求める案をまとめた。取引条件の開示義務に加え、独占禁止法での処分も盛り込んだ。25日には個人情報保護法改正に向けた原案も公表する。企業活動や消費者の利便性と調和を図りつつ、巨大IT企業を多面的に規制していく方針がみえてきた。政府は現在、公正競争、個人情報保護、デジタル課税という3つの政策的な観点から巨大IT企業の規制を検討している。公正競争の規制案は経済産業省、公正取引委員会、総務省と有識者が合同で協議する「デジタル・プラットフォーマーを巡る取引環境整備に関する検討会」がまとめた。データ寡占の防止や中小企業との取引適正化などが目的だ。今後は年央に出す政府の成長戦略に向け、各省庁が制度の具体化を進める。巨大IT企業はグーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン・ドット・コムを示す「GAFA」などが代表例だ。利便性の高いSNS(交流サイト)やネット通販、動画・音楽配信などを手掛けて急成長を続けるが、近年はその負の側面にも注目が集まる。例えば、ネット通販モールに出品する中小企業に対し、不利な取引条件を押しつけているとの懸念がある。公取委が巨大IT企業の取引先企業に実施した調査では「規約を一方的に変更され不当な不利益を受けている」との声が多く上がった。巨大IT企業は当初「場の提供者」にすぎないと位置づけられてきたが、その存在が消費者に広く受け入れられるようになった。扱う商品やサービス内容も膨大に増えており、取引先企業に対しても強い影響力を持つようになっている。取引企業の多くは守秘義務契約などに縛られて外部に窮状を訴えにくい。巨大IT企業はビジネスモデルが目まぐるしく変化するという性質も持つ。このため政府は独禁法の運用を見直し、今後は強制力を持つ「40条調査」も含めて業界全体の実態把握を定期的に進める方針だ。取引条件の開示を義務付ける新法もつくる方針だ。企業に自主改善を促しながら段階的に規制を強めていくなど、独禁法を補完する役割を担う。まず開示方法を行動規範として定めさせ、対外的に説明させる体制をつくる。法律や行動規範に違反した場合の初期対応として、該当する企業名や問題行為を公開し、自主的な改善を促す。ネット通販などインターネットを通じたビジネスは、消費者や取引先の評判に左右されやすい。政府は社名公表が一定の自主改善を促す効果があるとみる。公表後も改善されない場合は、新法に基づき業務改善命令など行政処分で対応する。それでも対応が不十分なら、企業規模や取引の依存関係などで優位にある企業が取引相手に不利な条件を押しつける独禁法上の「優越的地位の乱用」を適用して処分する方針だ。巨大IT企業の活動を抑制するような規制を強めるほど成長の勢いがそがれ、利用者の利便性が低下したりコスト負担が増したりする恐れがある。有望な市場の成長や技術革新を阻む懸念があり、政府はそうした副作用を抑えるように規制していくことになる。この規制案の厳しさは、欧州と米国の中間に位置する。欧州連合(EU)は競争法(独禁法)で高い課徴金の納付を命じるなど厳しい規制を持つ。逆に、多くの巨大IT企業の発祥の地である米国は取り締まり強化に慎重だ。日本は処分の前段階として「取引の透明化」に重きを置き、規制と成長の両立を図る。

*2-4:https://www.nikkei.com/paper/related-article/?b=20190425&c=DM1&d=0&nbm=DGKKZO44146570U9A420C1EA2000&ng=DGKKZO44148390U9A420C1EA2000&ue=DEA2000 (日経新聞 2019年4月25日) 仕組み作り、入り口段階 課税、各国の足並み乱れ
 プラットフォーマーと呼ばれる巨大IT企業を巡っては、個人情報保護の規制強化と課税ルールの見直しも重要な課題だ。強すぎる支配をけん制する仕組み作りは、まだ入り口の段階だ。個人情報保護委員会は25日、2020年に向けて検討している個人情報保護法改正の原案を公表する。巨大IT企業への規制強化は米フェイスブックの個人データのずさんな管理などが相次いで発覚したのがきっかけだった。保護法の見直しは避けられない論点だ。原案では、個人が企業に対し自分の個人情報の利用を止められる「利用停止権」の新設を盛りこむ。一方で情報を削除させられる「忘れられる権利」の導入までは踏み込まない。自分のデータを持ち運ぶ「データポータビリティー」も保護法には含めず、競争政策の一環として限定的な導入を目指す。保護法の改正は、個人情報を厳しく管理する欧州連合(EU)の一般データ保護規則(GDPR)を参考にしている。だが企業の負担になる規制強化を避けようとする方向性も目立つ。24日に発表した独禁法の面からのIT企業規制案と同様、政府は個人情報保護でも「規制を強めすぎると企業の技術革新を妨げかねない」との懸念を持つからだ。規制強化と産業育成の両立という難題を前に、慎重な議論を続ける。最も検討が難航するのが課税ルールの見直しだ。IT大手は支店などの拠点を持たず、ネットを通じて国境を越えたビジネスで収益を上げる。既存の法人税ルールで対応できないとの指摘も多い。新ルールを作るには国際間の合意が必要だが、より多くの税収を求める各国で意見が合わない。20カ国・地域(G20)と経済協力開発機構(OECD)は20年までに、デジタル経済に合った課税ルールの見直しに合意することを目指す。しかし欧州を中心にプラットフォーマーへの厳しい課税強化を求める声が上がる一方、米国などは「特定企業の狙い撃ちは間違っている」と反発。企業が持つブランド力や顧客データなどの「無形資産」への課税強化で代替する案も浮上する。意見のまとまりを待たず、英国やフランスが独自の「デジタル課税」の導入に動く。イスラエルやインドなど新興国の一部も同調し、各国の足並みは乱れる一方だ。国際課税ルールの見直しは、6月に日本で開かれるG20の財務相・中銀総裁会議や大阪での首脳会議(サミット)で主要議題のひとつになりそうだ。日本は議長国の役割が期待されるが、バラバラに分かれた意見のとりまとめは簡単ではない。

<求められる人材と教育>
PS(2019年5月5、6日追加):*3-1のように、「①次世代通信規格『5G』の特許出願数は、中国34%、韓国25%、米国14%、日本5%」「②出願件数が最も多い企業はファーウェイで、シェアは15.05%、研究開発費は年間100億ドル(約1兆1100億円)以上」「③特許を押さえた企業が主力プレーヤーになるため、特許数は自動運転など各国の新産業の育成や次世代の国力を左右する」と書かれている。
 ①③については、EVや自動運転技術を最初に開発し始めたのは日本なのに、このように遅らせてしまったのは政策や経営方針の問題であるため、原因を徹底的に追究した上で改善しなければ、今後も同じことが続くだろう。また、②の研究開発費は、物価水準と購買力平価を考慮すれば、日本なら10兆円以上の価値になるため、(長くは書かないが)物価上昇政策は百害あって一利なしだった。さらに、日本人が特許権に関する米中摩擦であたかも第三者であるかのように米国を批判するのはもってのほかで、自らの特許権も護らなければならない筈である。
 そのような中、経団連会長の中西氏が、*3-2のように、「イ. 日本は働けば豊かになる時代が終わった」「ロ. 過去に固執したらロクなことがないが、そこに気がついた人と気づかなかった人がいた」「ハ. 経団連の成長戦略は変化を受け止めようという内容で、いかに知恵でメシを食うかだが、科学技術をうまく使ったイノベーションは大きなヒントで、消費者の需要を引き出すことが元になり、新しい商機をつくる責任は民間が負う」「ニ. 環境を整えるのが政府の役割だ」「ホ. 日本は、高度成長という世界でもまれな成功体験があるので、なかなか変われない」「ヘ. 新時代を見通したとき、懸念するのはエネルギーの問題だ」「ト. インセンティブをつけてグリーンエネルギーに転換する総合的なシナリオを作り直すべきだ」「チ. 再生エネルギーを普及させるには、発電した電気をどう運び、どう蓄えるかという全体を設計しないといけない」「リ. 送配電網もデジタル技術で次世代化する投資が要る」「ヌ. 原発ももっと長い目でみた議論をすべきで、化石燃料を使いきったあと、原子力以外に生活や工業を支えるエネルギーはない」とおっしゃっている。
 しかし、イ. ロ. ハ. ニ.は経営学の分野では、ドラッカーなどが50年以上も前から言っていることで、ホ.の「日本の高度成長は世界でも稀な成功体験」というフレーズもよく耳にはするが、敗戦後の日本ではすべての物資が不足し労働力も減っていたため、働きさえすれば何を作っても売れ、賃金も安かったため加工貿易が成立したが、現在はそうではなく、多くの低賃金の国が世界経済に参入してきたため、本当に必要とされる高付加価値のものを作らなければ、国内でも売れないし、輸出もできなくなったのである。なお、エネルギーについては、チ. リ.はそのとおりだが、ヌ.の「化石燃料を使いきったら原子力」というのは、失礼ながらまだわかっていないようなので、勉強しなおしてもらいたい。
 なお、現在の経団連会長で日立の社長までやった人が、何故こういう初歩的なことを言うのかについては、中西氏が東大工学部電気工学科卒業のコンピュータエンジニアで、優秀ではあろうが経営学・経済学を本格的に勉強したことがないからだと思われる。そのため、高校・大学では経営学や政治・経済をもっと本格的に勉強させるべきで、日本では、民間企業も役所も学校も専門分野を早くから細かく分けすぎるため、全貌を見渡せるリーダーが育たないのである。
 このような中、*3-3のように、高校生の7割が在籍する普通科の在り方を議論している政府の教育再生実行会議が、各校ごとに重視する教育を明確にし、「国際化対応」「地域に貢献する人材育成」などに特色を類型化するよう提言するそうだ。しかし、生徒は、進学したいから普通科を選択しているのであり、地域の農林水産業も輸出入を行っており、科学技術に関する学会は国際学会(共通語は英語)であるため、「地域に貢献する人材や科学技術分野を牽引する人材に国際化は不要」とするのは、あまりにも現実離れしている。ただ、大学入試で文系・理系の両方の科目を問うのは、自分で考えて判断することのできる人材を育成するために必要不可欠だ。
 経済・会計・統計・民主主義のいずれも理解していない日経新聞論説フェローが、*4のように、「①令和デモクラシーへの道」として、「②政治に求められるのは人口減少社会での給付と負担の合意づくり」「③少子化に歯止めがかからず高齢化が進み、現在1億2600万人余の人口は2040年には1億1000万人ぐらいになって社会が縮む」「④社会保障費がかさむのは明らかで、負担を増やすか、給付を低下させるか、その両方かしか選択肢はない」「⑤産業競争力の劣化、弱体化は深刻なところに来ている」「⑥政治休戦のもと与野党合意で痛みを伴う課題を処理していくべき」「⑦チャーチル英首相の演説と同じく『千年後に最も輝かしい時だった』と言われるように、千年後の人たちから『あの頃みんなで我慢して危機を乗り越えたから今の日本がある』と言われるような令和の時代にしたい」などと堂々と記載している。
 しかし、このうち③は、日本が高度経済成長をしていた時期の日本の人口は1億人以下であったことから、人口減と産業の衰退は関係がなく、単に危機感を煽っているにすぎないことがわかる。それでも危機感を煽る理由は、②④のように、とにかく高齢者の負担増・給付減を行うことが目的という非道徳的で情けない有様なのだ。⑤は、ニーズに合った財・サービスを提供すれば産業競争力が強くなるのであるため、課題先進国の日本で高齢者向けのサービスや福祉を充実することは重要だ。そのため、⑥のように、政治休戦のもとで与野党合意で痛みを伴う課題を処理していくのは、国家総動員法の再来のようであり、これが①の令和デモクラシーであれば、令和天皇が可哀想すぎる。また、⑦のチャーチル英首相が演説した千年後に最も輝かしい時というのは、全体主義から民主主義を守った戦争のことであり、みんなで我慢して全体主義に戻す理念なき政策とは正反対である。また、②④は、単純な算術しかできない人の言うことだ。


 日本の人口推移  実質経済成長率推移 介護サービスと保険料推移 外国人労働者数推移

(図の説明:日本の人口は、左図のように、明治初期には3500万人しかおらず、急激に増加して1億人を超えたのは1966年のことだ。これは、多産多死型だった社会が産業革命で生産力を上げ、医学や学問の普及もあって多産少死から少産少死型に変わる過程で起こったことで、近年の少子化は、いつまでも女性に戦前の自己犠牲の価値観を押し付けて保育所を整備しなかったため、少産が行き過ぎたものである。また、左から2番目の図のように、日本の経済成長率が最も高かったのは人口が1億人以下だった時期であり、人口は経済成長率の重要な要素ではない。重要な要素は、消費者が必要とする財・サービスが生産され売れることであり、高齢化社会で不可欠な介護サービスは2000年に開始して以降、瞬く間に10兆円市場となった。そのため、介護は全世代型にするとともに、全体として労働力が足りなければ女性・高齢者の就業機会を増やし、右図のように、まだ少子型社会になっていない国から労働力を導入する方法もある。そして、労働力は量だけでなく質も重要で、日経新聞の論説フェローがこのレベルでは困るわけだ)

*3-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190503&ng=DGKKZO44412620T00C19A5MM8000 (日経新聞 2019年5月3日) 5G特許出願 中国が最大 世界シェア3分の1、自動運転など主導権狙う
 次世代通信規格「5G」に関する特許出願数で中国が34%と、現行の4Gの1.5倍以上のシェアを握ることがわかった。4Gでは欧米が製品の製造に欠かせない標準必須特許(SEP、総合2面きょうのことば)を握ったが、次世代産業のインフラとして注目される5Gでは中国が存在感を増す。特許数は自動運転など各国の新産業の育成や次世代の国力をも左右する。SEPは事業を進める上で代替の効かない技術の特許で、現在の4Gのスマートフォン(スマホ)では出荷価格のおよそ2%が特許使用料だという。国内の知財関係者によると総額は年間1兆円以上にのぼるといい、特許を押さえた企業が主力プレーヤーになる。独特許データベース会社のIPリティックスによると、3月時点の5G通信で必須となるSEPの出願数で中国は34.02%のシェアを持つ。出願件数が最も多い企業は華為技術(ファーウェイ)で、シェアは15.05%だった。中国勢は5位に中興通訊(ZTE)が、中国電信科学技術研究院(CATT)が9位に入った。通信技術で先行した米欧は3G、4Gで主力特許を保有した。そのため中国などは欧米企業に多くの特許利用料を支払わねばならなかった。そこで中国は次世代情報技術を産業政策「中国製造2025」の重点項目に位置付け、国を挙げて5G関連技術の研究開発を後押ししてきた。ファーウェイの5Gを含む研究開発費は年間100億ドル(約1兆1100億円)以上とされる。ファーウェイは基地局の開発などにかかわる特許の申請が多いとみられる。スウェーデンのエリクソンやフィンランドのノキアをしのぐ。ZTEも基地局などでシェアを伸ばしている。韓国はシェア3位のサムスン電子と4位のLG電子がけん引し、全体で25.23%と4Gから2ポイント以上シェアを高めた。一方、米国は14%と4Gに比べてシェアを2ポイント下げた。スマホの半導体などの特許を持ち、4Gの主力プレーヤーである米クアルコムも5Gではわずかにシェアを下げ、6位になっている。ただ、通信の場合、技術特許は積み重ねであり、5Gになっても3G、4Gの特許が引き続き使われる。クアルコムの優位性が一気に失われるとは考えにくい。同社の1~3月期の知財ライセンス部門の売上高は11億2200万ドルにのぼる。日本も5%と約4ポイントシェアを下げている。企業別シェアで12位の富士通は「狙った場所に電波を飛ばす技術など5G関連で様々な特許を持つ」という。SEPを持つ企業は特許収入で潤い、5G対応の基地局やスマホといった新たな設備を提供する際の価格競争力を高められる。一般的にSEPを多く持つ企業を抱える国ほど5Gインフラを安価に広げられ、次世代サービスで主導権を握りやすくなる。出願数に加え、使われる頻度の高い重要な特許を握れるかどうかも大きい。米国は安全保障上の理由で5Gに関してファーウェイなど5社からの政府調達を禁じる方針だ。しかし同社は5G製品の開発に欠かせない多くの特許を押さえており「ファーウェイは米国で製品を売ることができなくても特許利用料は獲得できる」(IPリティックスのティム・ポールマン最高経営責任者=CEO)。莫大な開発費と長期的なプランのもと、5Gの技術開発で中国は通信の世界で存在感を増している。その基盤の上で展開する各種サービスでも中国が米国をしのぐ存在になる可能性がある。

*3-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190503&ng=DGKKZO44277290W9A420C1MM8000 (日経新聞 2019年5月3日) 令和を歩む(1)経団連会長 中西宏明氏 変化受け止め、次の革新 
(*なかにし・ひろあき コンピューター設計者として日立製作所に入社。2010年に社長に就き、巨額赤字に陥っていた同社をV字回復させた。14年から会長。欧米での経営経験も持つ。18年5月に経団連会長に就任した。73歳)
 平成の約30年はものすごく変化が大きかった。冷戦が終結し、国際秩序を主導する存在がいない「Gゼロ」の世界になった。日本は働けば豊かになる時代が終わり、お金を持っている人も金利では稼げず、リスクをとらないとリターンが得られなくなった。電機業界も激動だった。良いモノを作れば売れるという価値観が通じなくなり、大赤字になった事業が次々と消えた。特に半導体の製造は他国にも可能になり、市場構造ががらがらと変わった。社会や文化の基盤が変わり、過去に固執したらロクなことがない。そこに気がついた人と気づかなかった人がいた。
●デジタル活用へ
 日本は社会基盤が変化するというデジタル革新の本質を受け止めきれないまま、ここまできてしまった。いまこそ変化を受け止め、先端技術で課題を解決する社会を目指すべきだ。経団連が2018年11月に示した成長戦略はこの変化を受け止めようという内容だ。いかに知恵でメシを食うか。日本は世界のなかで決して悪いポジションにいるわけではないが、高度成長という世界でもまれな成功体験があるので、なかなか変われない。いったんご破算にしたほうがいい。採用の問題も教育の問題もそうだ。教育では科学技術、工学、数学だけでなく、芸術も融合した「STEAM教育」が重要になる。デザインという言葉があるが、うまく人をコーディネートして新しい文化をつくるような仕事の組み立て方が注目される。日本には、これをお手本にすれば食べていけるという産業がない。ちがう発想で考えないといけない。産業政策も今あるものを守る発想は全部やめたほうがいい。次に挑戦する分野をどのように創っていくかという発想に立たないと、ずるずる後退していく。科学技術をうまく使ったイノベーション(革新)は大きなヒントだ。消費者の需要を引き出すことが、そのもとになる。新しい商機をつくる責任は民間が負う。環境を整えるのが政府の役割だ。新時代を見通したとき、懸念するのはエネルギーの問題だ。かつての電力会社は電力債の発行で得た資金で投資し(総括原価方式で)確実に回収できた。いまは将来を十分に見通せないため、15年間も投資が停滞している。電力会社に投資能力がないのに他の会社が入ってくる環境もない。
●競争力の危機
 経験から言えば、15年間も投資しなかった産業部門は国際競争力をなくす。経済は投資して回収するというお金が回る仕掛けのなかで技術が発展して資本が蓄積する。この仕組みが壊れている。民間の投資を呼び込むため、インセンティブをつけてグリーンエネルギーに転換する総合的なシナリオを作り直すべきだ。再生エネルギーを普及させるには、発電した電気をどう運び、どう蓄えるかという全体を設計しないといけない。送配電網もデジタル技術で次世代化する投資が要る。原発ももっと長い目でみた議論をすべきだ。化石燃料を使いきったあと、原子力以外に生活や工業を支えるエネルギーはない。日本は変わらなければならない。

*3-3:https://www.tokyo-np.co.jp/article/education/edu_national/CK2019042902000183.html (東京新聞 2019年4月29日) 高校普通科の画一化脱却を 政府会議提言へ
 高校生の七割が在籍する普通科の在り方を議論している政府の教育再生実行会議が、各校ごとに重視する教育を明確にし、特色を類型化するよう提言することが二十八日、関係者への取材で分かった。普通科の区分は維持しつつ、各校が示す特色により「国際化対応」「地域に貢献する人材育成」などの枠組みに分けることを想定。画一的とされる普通科の学びの改革を促す。五月中旬にまとめる第十一次報告に盛り込み、安倍晋三首相に提出する。高校段階での学びは、生徒の進学や職業選択に大きく影響する。ただ、グローバル化や、人工知能(AI)などの技術革新が進み、社会環境が大きく変わろうとする中、普通科では、大学受験を念頭に置いた指導や授業編成が大半で、生徒の多様な能力や関心に十分に応えられていないとの指摘がある。このため、文部科学相の諮問機関である中教審の今後の議論でも大きなテーマとして扱うことになっている。関係者によると、実行会議では、画一的な指導の原因として、各校が具体的な教育目標を掲げていないことに着目。提言で全国の高校に「どういう力を持った生徒に入学してほしいか」「特に力点を置く学習内容」「履修単位の認定方針」を明確にするよう求める。それらを踏まえた上で普通科を(1)国際的に活躍(2)科学技術の分野をけん引(3)地域課題を解決-といった各校の人材育成のイメージに応じて分類し、学びの変化を促す。具体的な分類や履修単位の設計については、中教審の議論に委ねる。また、今後、文系・理系の枠組みを超えた思考力が一層求められるとして、授業編成で文理分断型にならないことが重要と強調。大学入試でも文系・理系の科目をバランス良く問う方式に留意するよう言及する。提言では、高校教科書の見直しにも触れる。特に情報や工業などの技術革新が目覚ましい分野は、通常の四年ごとの改訂を待たず、弾力的に中身を変えられる仕組みの検討を要請する。

*4:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190506&ng=DGKKZO44264550W9A420C1TCR000 (日経新聞 2019年5月6日) 令和デモクラシーへの道、論説フェロー 芹川 洋一
 ふしぎなくらいに、元号とともに日本政治は動いてきた。なぜか改元のころの問題がその時代のメインテーマになるからだ。後講釈とばかりいえないほど、元号を通して見えてくる政治がある。明治はいうまでもなく維新で、天皇を中心にした国づくりが肝だった。自由民権運動もあり、立憲制をめざした。大正改元の直後には、第1次護憲運動がおこる。大正デモクラシーの起点だ。1918年には初の本格的な政党内閣である原敬内閣が誕生する。昭和は26年の改元と45年の敗戦で分ける必要がある。はじまりの時期は政党内閣制の定着が焦点で、そのあと崩壊して戦争へと突き進んでいった。戦後は国の再建、豊かな生活の実現が課題だった。自民党長期政権は利益分配でそれを達成しようとした。その行きづまりがはっきりしたのが89年の平成改元のころだ。政治とカネのスキャンダルが政治改革を促し、平成政治の基調となった。そして現在である。国力の回復と少子化・高齢化が主テーマであるのは論をまたない。とりわけ政治に求められるのは人口減少社会での給付と負担の合意づくりだ。その実現に令和デモクラシーの成否がかかっている。令和政治を考えるとき、今という時代をどうとらえるかが出発点になる。グローバル化、デジタル化の波のなか企業の国際競争力は落ちる一方で、この国を引っ張っていく産業のかたちがみえない。少子化には歯止めがかからず高齢化は進み、社会がどんどん縮んでいく。現在、1億2600万人余の人口は、2040年に1億1000万人ぐらいになると推計される。その間、生産年齢人口は減りつづけ、社会保障費がかさんでいくのは火を見るより明らかだ。財政は1000兆円を超える公的債務を抱える。負担を増やすか、給付を低下させるか、その両方かしか選択肢はない。それなのに奇妙な安定が支配しているのが今の日本だ。18年の内閣府の国民生活に関する世論調査では、現在の生活に満足している人の割合が74.7%に達し調査をはじめた57年以降で最高だという。「平成は日本敗北の時代だった」と言い切る経済同友会の小林喜光前代表幹事は「ゆでガエル日本」とも喝破する。カエルがぬるま湯につかっていてやがて熱い湯になり逃げだせず死んでしまうように、このままでは日本は立ち行かなくなるというわけだ。自民党中堅切っての論客である斎藤健・前農相も「産業競争力の劣化、弱体化は深刻なところに来ている。国際環境も大きく変わり、安全保障、通商政策を組みなおしていく外交力が問われているのに危機感がない」と嘆く。危機感がないのが最大の危機といっていいのかもしれない。いや応なく痛みや負担を迫られるとして、それを実現するための政治のあり方を、政府・与党と与野党の間でいかに整えるかがカギだ。まず政府・与党の問題は、政策を強力に推し進めていく政権のありように絡む。忖度(そんたく)政治や各省の思考停止など批判はあっても、正副官房長官と「官邸官僚」によって政権の中枢ができあがっている安倍晋三政権はひとつのモデルだ。チームで回していくしっかりした政権でないと「負担分配」を政治スケジュールにのせることなど不可能に近い。別の問題もある。父の福田康夫首相の秘書官をつとめた達夫衆院議員は「(07年)官邸に入ってびっくりしたのは引き継ぎ書類が一枚もなかったことだ。あったのはなぜか爪切り1個だけ。ゼロベースで首相が交代するのは国家的にも良くない」と振り返る。政権中枢のチームづくりと政策の継続性は、派閥が体をなさなくなった以上、政党が担うしかない。もうひとつは国会である。18年に当選3回で抜てきされ、いきなり外国人労働者の法案審議で矢面に立たされた山下貴司法相は「与党と野党がダメだしをするばかりでは政治不信を深めるだけだ。国会論戦でもっと論点をはっきりさせ、真の争点は何なのか国民に分かるようにしなければならない」と力説する。とくに負担と給付の問題は与野党による批判の応酬では済まなくなる。大枠で一致して乗り越えていく方法はないものか。その平成モデルが社会保障と税の一体改革についての12年の3党合意だった。平成デモクラシーの理論的支柱だった佐々木毅・元東大総長は「ほかのテーマは違っていてもいいから、領域を限定して休戦協定を結ぶ。その間は選挙をしないなど、かんぬきをかけて管理する方法はないだろうか」と語る。解散権をしばって、政治休戦のもと与野党合意で痛みを伴う課題を処理していく考え方だ。ここでも政党がその役割を果たせるかどうかにかかっている。思いおこしたい先人の言葉がある。40年6月、ナチス・ドイツが進軍、フランスが降伏寸前で、次は英国攻撃かと緊迫していたときのチャーチル英首相の演説だ。「もし大英帝国が千年つづいたならば(後世の)人びとが『これこそ彼らのもっとも輝かしいとき(ゼア・ファイネスト・アワー)であった』と言うように振る舞おう」。千年後の人たちから、あのころみんなで我慢して危機を乗り越えてくれたから今の日本がある、と言われるような令和の時代にしたいものだ。

<障害者雇用について>
PS(2019年5月7日追加):現行の障害者法定雇用率は、民間2.2%、国・地方公共団体2.5%で、対象は①身体障害者手帳を持つ身体障害者 ②療育手帳又は知的障害者判定機関の判定書を持つ知的障害者 ③精神障害者保健福祉手帳を持つ精神障害者のうち就労可能な人とされており、手帳や公的判定書を持たない人は、障害者のうちに入らない(https://snabi.jp/article/133#bn64a 参照)。しかし、2018年6月1日の実績では、国1.22%、都道府県2.44%、市町村2.38%で、いずれも法定雇用率を下回り、国には手帳や公的判定書を持たない人を障害者に数えたごまかしもあり、障害者に対する根強い差別意識が残っているようだ。
 このような中、*5のように、法定雇用率を達成した佐賀県内の民間企業割合が、8年連続で全国トップとなり、障害の回復に資する「ノーマライゼーション」の考え方が浸透しているのはよいことだ。さらに、雇用の場や収入がない障害者には生活保護費や障害者年金を支払わなければならず、“障害者”であってもできることはでき、“健常者”より得意なこともあるため、気を使いすぎずに雇用して支えられる側から支える側にまわってもらうのがWinWinである。

*5:https://digital.asahi.com/articles/ASM4B551BM4BTTHB00K.html?iref=comtop_list_biz_f01 (朝日新聞 2019年5月7日) 障害者の法定雇用率、達成した企業の割合 1位再び佐賀
 障害者の法定雇用率を達成した佐賀県内の民間企業の割合が、8年連続で全国トップとなった。厚生労働省佐賀労働局が4月、発表した。労働局は、障害がある人とない人が区別されずに暮らす「ノーマライゼーション」の考えが浸透しているのではないかなどと分析している。障害者雇用促進法では、従業員の一定割合以上の障害者を雇うことを事業主に義務づけている。現在、一般民間企業の法定雇用率は2・2%、国や地方自治体は2・5%などとなっている。労働局の集計(昨年6月1日時点)によると、雇用障害者数は2439・5人で6年連続、実雇用率は2・55%で5年連続でそれぞれ過去最高を更新。実雇用率は全国平均が2・05%の中、全国4位だった。県内の対象企業(従業員数45・5人以上)は603社。法定雇用率を達成した企業の割合は全国平均が45・9%に対し、佐賀県は66・3%で全国トップ。労働局は結果について「何か数字があるわけではない」としつつ、「小さい県ながらの良さがあると思う。『隣の企業がやっているからうちもやらなきゃ』というようなところも含めて、障害者雇用に対する『当たり前感』というような、ノーマライゼーションの考えがうまく浸透しているのではないか」と分析した。未達成企業203社のうち、障害者を1人も雇用していないのは106社だった。労働局は「1人目の雇用が障害者雇用の難しさとも言われている。丁寧に啓発、指導に取り組んでいきたい」としている。佐賀労働局は昨年12月、県内の公共機関の障害者雇用状況(昨年6月1日時点)を発表している。これによると、県の知事部局や県警、県教委はいずれも法定雇用率を満たさず、市町の機関も33機関中17機関が未達成だった。地方独立行政法人の県医療センター好生館も法定雇用率に達していなかった。障害者雇用を巡っては、昨年、中央省庁などでの雇用数の水増しが発覚し、問題となった。

<教育の視点から>
PS(2019年5月8、9、10、11日追加): *6-1に、「幼児教育・保育を無償化する子ども・子育て支援法改正案が9日に採決される」として、これについて「①実態は幼稚園・保育所に近いのに対象外になる施設がある」「②対象外施設は不公平だと反発している」と書かれている。しかし、幼児期も重要な教育期間であるため、①については、単なる居場所ではなく幼児教育・保育をきちんと行う施設を認可して無償化の対象にする「質の充実」が伴わなければならない。そして、②の対象外施設は、運営上の制約を避けるため認可施設になっていなかったとしても、預かっている子どもに認可施設よりよい環境を与えているのに変な制約を課されるので認可外でやってきたのであれば認可をとるようにしなければならないし、幼児教育・保育はしていないが預かる場所が必要だったので運営してきたのであれば、学童保育(それでも単なる居場所では困る)等に変更するか、幼児教育・保育ができる環境を整えるかすべきだ。何故なら、今回の変革は、無償で、幼児教育・保育をどの子にも与えることを重視したものだからである。
 また、*6-2のように、「細かすぎる校則」があるというのは、細かい校則がなければ何をするかわからない生徒が多いからかもしれないが(私は、そういう学校に行ったことがないのでよくわからないが)、理由も説明できずに「ルールはルール」としか答えられない教諭がいたとすればレベルが低すぎる。私は、生徒総会の要望をすべて認める必要はないと思うが、要望する人もデータや資料に基づく根拠を示し、要望を通すか通さないか決める人も、それらを基にして議論し検討した結果と結論に至った理由を示して、お互いが納得できるようにしなければならないと思う。つまり、教師は、日頃からそういう指導ができる人でなければならないのである。
 なお、2019年5月8日、*6-3のように、大津市の県道交差点で車2台がぶつかって保育園児の列に突っ込んだ事故があった。直進車と右折車がいる場合は直進車優先なので、事故の映像を見れば右折車が交通違反していることが一目瞭然だったが、何故か被害者の運転手も逮捕され批判された。また、保育園関係者の記者会見では、被害者である保育園の園長が泣いてばかりいて状況を説明しようともせずに隣の男性職員が説明していたのは、園長としての資質が疑われた。保育園側に過失はないが、園庭もないような環境だったため、もっとよい環境で子どもを預かれるように、市が小学校の空教室や空地などの便宜を計ったらどうかと思われた。
 そのような中、*6-4のように、2019年10月から幼児教育・保育を無償化する「子ども・子育て支援法改正案」が参院内閣委員会で可決され一歩前進した。これまでは「預かってくれるならどこでもよい」という選択肢のない状況だったが、今後は、産業界はじめ中等・高等教育関係者・保護者を含めて「どのような人材を育てたいのか」という観点から幼児教育・保育のあり方を検討し、国・地方自治体が指導監督やサポートをすることが重要だ。
 また、*6-5のように、低所得世帯の子どもを対象に高等教育負担を軽減する法案も参院文教科学委員会で可決され、一歩前進した。しかし、1970年代の国立大の授業料は年間1万2千円~3万6千円だったのに現在は54万円であり、この50年間に物価水準は3倍程度にしかなっていないため、教育費だけが著しく上がったのである。学生アルバイトは勉強にさしつかえない範囲にしなければ進学した意味がなく、県外に進学するか否かもその人の人生設計とそれに応えるべき大学の魅力によるため、高等教育の授業料は、誰でも無理なく負担できる範囲にすべきだ。なお、特に人材不足が懸念される分野は、さらに授業料を減免することも考えられる。
 2019年5月11日、*6-6のように、東京新聞が「①待機児童問題が深刻な都市部で園庭のない保育園が増加し、東京都文京区は78カ所の認可保育園のうち6割に園庭がない」「②東京都で2017年度に新設された認可保育園約270カ所のうち、基準通りに園庭を備えた園は2割に留まる」「③待機児童対策に追われる中、都心部ではすべての園に園庭を造るのが難しい」「④厚生労働省は、子どもの発育に重要な園外活動は今後も積極的に取り入れるよう求めている」と報じている。しかし、①②③は、これがまさに東京一極集中と狂ったような土地価格の弊害であり、地方の保育園の方がずっと恵まれている。また、小学校に空き教室が増えているので小学校に併設したり、安全対策を行ってビルの屋上に園庭のある保育園を作り、植物を植えるなどの工夫をすればよいと思うが、それもしていない。④の園外活動も重要だが、少子化そのものを問題にするよりも、園庭で安全に運動したり、外の風や季節を感じたりすることができる当たり前の保育施設を準備して誰でも入園できるようにし、育児しやすい環境を創るべきなのである。

  
  2019.5.8東京新聞       2018.11.9毎日新聞   教育費と物価水準の推移

(図の説明:左図のように、認可保育所と幼稚園の3~5歳児は保護者の働き方と関係なく原則として全世帯で全額無料、0~2歳児は住民税非課税世帯のみ無料となり、認可外保育所は一部補助となる。また、中央の図のように、給食費は3~5歳児は実費で、0~2歳児は保育料に含むとされている。なお、右図のように、教育費は物価水準と比較して著しく増加している)

*6-1:https://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201905/CK2019050802000140.html (東京新聞 2019年5月8日) 幼保無償化 あす参院委採決 対象外施設は反発「不公平」
 参院内閣委員会は七日の理事懇談会で、幼児教育・保育を無償化する子ども・子育て支援法改正案を九日に採決することを決めた。与党などの賛成多数で可決し、早ければ十日の参院本会議で成立する見込み。原案通り成立すると、実態は幼稚園や保育所に近いのに無償化対象から外れる施設が出る。認可外保育施設では、利用料補助は共働き世帯などに限られる。利用者らからは「政府が掲げる『三~五歳の原則無償化』と矛盾する」との声が上がっている。「お水がいっぱいたまっているよ」。四月中旬、千葉県松戸市の「小金原保育の会幼児教室」の園庭で、子どもたちが水たまりや砂場で元気に遊んでいた。団地の一角にあるこの教室は一九七五年に保護者らが設立し、障害児を含む多様な児童を受け入れてきた。運営上の制約を避けるため認可施設にならず、認可外施設として運営。改正案では、こうした施設は共働き世帯などに限り上限付きの補助が出る。ここでは大半の利用者が対象外だ。改正案は幼稚園や保育所などの認可施設では、保護者の働き方に関係なく無償化する。認可外施設で対象を絞るのは、やむなく認可外施設を利用する家庭への配慮だが、本来は認可施設に預けるのが望ましいとの原則に立つためだ。同教室の武中悦子事務局長は「幼稚園に断られた児童や共働きが難しい家庭を支え、行政の不備を補ってきたのに不公平だ」と嘆く。東京都西東京市で六二年から続く、自治会運営の「たんぽぽ幼児教室」は独自の運営を目指し、認可外施設の届け出をしていない。改正案では全利用者が無償化の対象外だ。平賀千秋・幼児教室部長は「保護者から選ばれなくなれば、存続できない」と心配する。自然体験を通じて子どもを育てる「森のようちえん」も同じ悩みを持つ。園舎なしや親の運営への参加などの柔軟性が強みだが、認可外施設でなければ無償化の枠から外れる。約二百団体が参加する「森のようちえん全国ネットワーク連盟」は昨年、全利用者の無償化を政府に要望したが、一律の無償化は見送られた。国会審議でも、与野党が一部の施設が無償化から漏れることを問題視したが、これまで法案の修正には至らず、衆院通過の際、五年後をめどに扱いを検討するという付帯決議を行うにとどまった。明星大の垣内国光(かきうちくにみつ)名誉教授(保育政策)は「自治体が評価する施設は対象にするなど、柔軟な運用をすべきではないか」と語った。

*6-2:https://www.nishinippon.co.jp/nnp/anatoku/article/508167/ (西日本新聞 2019年5月7日) 細かすぎる校則、変える妙案は 「ルールはルール」生徒の発案を押し返す教員も
 校則の必要性は認めつつも、細かな規定には疑問がある。これまでの取材を通して学校現場からはそうした声が多く聞かれた。校則は変えられないのか。各学校では生徒会執行部を中心に模索が始まっているが課題も多い。
●意見集約 押し返す現場
 校則の改廃について多くの学校は運用で決め、明記しているケースは少ない。取材班が入手した福岡県内の県立高校・中等教育学校の校則に関する資料で全文が記された学校でも規定は見当たらなかった。ただ、変える仕組みはあっても、事実上機能していない学校もある。「生徒総会で意見を吸い上げるようにしているが、声があっても(教師でつくる)生徒指導部で押し返してきた」。同県内の県立高校の男性教諭は打ち明けた。際限のない規制の緩和により学校が荒れることを心配する管理職ら教師側の都合がそうさせているという。学校側の姿勢に疑問を抱く教諭は「ダイバーシティ(多様性)を尊重する時代なのに息苦しさを感じる。『ルールはルール』としか言えず、根拠を持って指導できているかいつも思い悩んでいる」と話した。
●生徒会が議論する場に
 取材班は3月下旬、福岡県内の高校生徒会役員有志でつくる「福岡県高校生徒会連盟」の会合で校則の現状について尋ねた。連盟はそれぞれの学校が抱える課題について意見交換し解決策を探る目的で昨年4月に発足。これまでの活動には公私立の20校余のメンバーが参加している。男子生徒の一人は「そもそも校則って何なのでしょう」と問題提起。「生徒手帳に載っていなくても、ルールになっているものがあり、そういうものほど先生の解釈が分かれる」と訴えた。学校の決まり事の多くは生徒手帳に記されているが、その他の目に見えない規定や学校の「慣例」といった存在が混乱と不信感を招いているようだ。生徒からは「文化祭の異装規制の緩和を求めたが認められなかった」「学校に弁当以外の食べ物は絶対に持ち込めないのだろうか」といった声が聞かれた。あくまでイベントを盛り上げたり、空腹を補ったりするもので、そもそも風紀を乱す意図はない。生徒側の要望に工夫の余地があるとの指摘もあった。「生徒のアンケートを取るなど、きちんとした裏付けと議論の上で学校側を説得する姿勢が重要ではないか」。生徒の声を集約することは、学校側を話し合いの席に着かせるためにも効果的な手法だろう。「先生たちの信頼を得るために、今の校則をしっかり守る実績をつくることが必要だ」という声もあった。一方、ある男子生徒は「校則をころころと変えるのは良くない。でも、どうせ変えられないから仕方がないという姿勢も良くない」と話した。自分たちが学校生活を送る上でどんな校則が必要で不要か。そして生徒会執行部はどう関わるべきか。「校則を変えるために、校則の持つ意味を見つめ続けるのが生徒会の役割だ」と強調した。連盟の代表で西南学院高3年の田口夏菜さんは「校則の問題も含めて、これからもそれぞれの学校で悩んでいることを共有し、議論していきたい」と語った。
●理解示し柔軟な対応も
 学校側の抵抗を強く感じる校則の改廃だが、取材班が実施した福岡県立高校へのアンケートでは、生徒の要望を受けて実現した例がいくつも寄せられた。カーディガンやタイツの着用、マフラーの色の自由化、制帽や指定靴の廃止などだ。「生徒総会で議決された内容は前向きに検討する」「生徒のアンケートを参考にした」とする学校もあった。ある学校はPTAと生徒会が合同懇親会を毎年開き、保護者も一緒になって考える機会を設けていた。中でも目立ったのが携帯電話やスマートフォンに関する規定。時代の流れや防犯上の効果もあり、校内では使用禁止だが持ち込みを認める学校が増えてきているようだ。生徒たちの負わされる義務が増え、自由と権利が狭められているとも指摘される校則。変化の兆しはあるものの、学校と生徒の認識にはなおずれがある。次回は、インターネット上での校則を巡る意見から現状を考える。
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▼生徒会 中学、高校で自主的活動を促し、集団の一員としての資質を育成することを目的に全校生徒で構成する自治的な組織。学習指導要領の特別活動の一つで、生徒は主体的に組織をつくり、役割を分担すること。また、学校生活の課題を見いだして解決するために話し合い、合意形成を図って実践することとしている。生徒会長や会計などでつくる執行部(役員会)が生徒を代表して活動の推進を図り、他に体育委員会などの各種委員会がある。小学校は児童会。

*6-3:https://digital.asahi.com/articles/ASM584SD0M58PTIL017.html (朝日新聞 2019年5月8日) 容疑者「前をよく見ていなかった」 大津の園児死亡事故、子どもの交通事故を防ぐ
 8日午前10時15分ごろ、大津市大萱(おおがや)6丁目の丁字路の県道交差点で車2台がぶつかり、うち1台がはずみで保育園児の列に突っ込んだ。滋賀県警によると、近くのレイモンド淡海(おうみ)保育園に通う伊藤雅宮(がく)ちゃん(2)=同市大江5丁目=と原田優衣(ゆい)ちゃん(2)=同市大江2丁目=が死亡。男児(2)が意識不明の重体となっている。ほかに2~3歳の園児10人が重軽傷、引率していた保育士3人も軽傷を負った。県警は、車を運転していた無職の新立(しんたて)文子容疑者(52)=同市一里山3丁目=と無職の下山真子(みちこ)さん(62)=同市=を自動車運転死傷処罰法違反(過失運転致傷)容疑で現行犯逮捕。下山さんについては、8日夜に釈放された。県警によると、交差点で右折しようとした新立容疑者の乗用車と、直進してきた下山さんの軽乗用車が接触。その後下山さんの車が、散歩中に信号待ちをしていた園児らがいる歩道へ突っ込んだとの目撃証言があるという。新立容疑者は「前をよく見ていなかった」、下山さんは「右折車をよけようとハンドルを左に切った」との趣旨を供述。2人は、それぞれ別の大型量販店から帰宅する途中だったという。2人にけがはなく、同乗者もいなかった。現場はJR琵琶湖線瀬田駅の北西約1・5キロの湖岸道路。約200メートル南に、園児らが通うレイモンド淡海保育園がある。

*6-4:https://digital.asahi.com/articles/DA3S14007853.html?ref=pcviewpage (朝日新聞 2019年5月10日) 幼保無償化、参院委可決
 10月から幼児教育・保育を無償化するための子ども・子育て支援法改正案が9日、参院内閣委員会で自民党と公明党、国民民主党、日本維新の会の賛成多数で可決された。10日の参院本会議で成立する見通し。認可外保育施設で国の指導監督基準を満たさない場合も5年間は無償化対象とすることが焦点の一つとなっている。9日の内閣委で安倍晋三首相は「待機児童問題により、やむを得ず認可外保育施設を利用せざるを得ない方々についても、負担軽減の観点から経過措置を設けることとした」と説明。「都道府県などによる指導監督の充実を図る」と理解を求めた。一方、立憲民主党の牧山弘恵氏は「劣悪施設の不適切な延命につながる可能性がある」と指摘。立憲民主と共産などは、採決では改正案に反対した。

*6-5:https://digital.asahi.com/articles/DA3S14007852.html (朝日新聞 2019年5月10日) 「高等教育無償化」成立へ 中間所得層への支援継続は不透明 参院委可決
 10月に予定される消費増税を財源に、低所得世帯の子どもを対象に高等教育の負担を軽減する関連法案が9日、参院文教科学委員会で与党と一部野党の賛成多数で可決された。10日の参院本会議で可決、成立する見通しで、2020年4月から、授業料減免と給付型奨学金の支給が始まる予定だ。ただ、法案の審議では、制度の対象とならず、支援を受けられなくなる学生の扱いなど、解決すべき課題も浮かんだ。負担軽減策の柱は、授業料の減免と給付型奨学金の拡充だ。対象となるのは「両親と大学生、中学生」のモデル世帯で年収380万円未満の場合。収入ごとに減免額は3段階に分かれ、270万円未満の住民税非課税世帯は、国公立大が年間54万円で一部の大学を除き全額が免除、私立大は最大で70万円が減額される。奨学金は、非課税世帯なら国公立大の自宅生で約35万円、私大の下宿生ならば約91万円支給される。文部科学省は新制度で低所得世帯の大学などへの進学率が、現在の4割程度から全世帯平均の約8割まで上昇し、支援対象者が最大75万人になると推定。必要な予算は約7600億円と試算している。支援策は、低所得層の支援が手厚くなる一方、一定の収入を超えると全く受けられない。現在も多くの大学が収入や家族構成などに応じて授業料を減免しているが、国立大の場合は各大学で基準が異なり、個別の状況に応じて支援する学生を決めている。私大には減免額の半分を国が補填(ほてん)する仕組みがあり、給与所得者なら年収841万円以下の世帯まで対象にできる。こうした学生が今後どうなるか、まだはっきりしない。国会審議でも立憲民主党などから「現在、減免を受けている学生が制度の対象外になるのでは」との質問が相次いだ。柴山昌彦文科相は「対象とならない学生も生じうる」と認め、対策は「学びを継続する観点から、実態などをふまえて配慮が必要か検討する」と述べるにとどまった。文科省の担当者は「在学生を救いたいが、財務省との厳しい予算の折衝になる」と話す。文科政策を担当する財務省の中島朗洋主計官は「新制度は支援を低所得層に重点化するもの。中間所得層の在学生の支援は、大学が自らの経営判断で続ければいい」と語る。母子家庭で育ち、現在は姉と2人で東京都内で暮らす東京大3年の岩崎詩都香(しずか)さん(20)は「新しい制度になっても支援を受け続けられるのか」と不安を感じている。1年生の時から年間約54万円の授業料を免除されているが、新制度の対象とならない場合は生活が一変しそうだ。「アルバイトをかなり増やすことになると思う。疲れて勉強に差し支えが出ないか心配だ」
■県外に進学、加速か
 新制度によって、思わぬ影響が発生する可能性もある。大和総研は4月、文科省の試算を元に「約17万人が新たに大学や専門学校に進学し、対象者は約81万人にのぼる」との予測を公表した。この結果、島根、佐賀、秋田など9県では毎年、高校卒業者の4~5%が県外に進学し、首都圏では流入の方が多くなると予想。学生の大都市への集中が加速するとみる。さらに生活費などの心配が少なくなることで、学生アルバイトが数十万人規模で減ると予想もしている。人手不足に拍車をかける可能性があるとして、金融調査部の坂口純也研究員は「学生バイトに依存する業界は、人手を確保する対策が必要になるだろう」と指摘する。大学生らも支払う消費税の増税部分を使って、一部の学生の負担を軽減する制度にも疑問の声が上がっている。高等教育無償化を目指す学生らで作る「FREE」は3月、全国140の大学・短大・専門学校の学生1457人へのアンケート結果などをもとに声明を発表し、「消費増税は学生の暮らしと直結する。それを財源に使うことは新制度の大きな矛盾だ」と指摘した。

*6-6:https://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201905/CK2019051102000121.html (東京新聞 2019年5月11日) 園庭ない保育園 増える首都圏 外遊び必要だけど安全どう確保
 大津市で散歩中の保育園児と保育士の列に車が突っ込み、園児二人が死亡した事故を受け、首都圏各地の保育園は園外活動の安全確保に気をもんでいる。待機児童問題が深刻な都市部では、園庭のない保育園が増加。関係者は「外遊びは必須。安全対策を重ねて散歩させたい」と頭を悩ませている。七十八カ所の認可保育園のうち六割に園庭がない東京都文京区。その一つで働く保育士は「事故を受け、全職員で散歩での注意点を見直している」と話す。他の職員からは「信号待ちでは車道から離れるべきだ」と意見が出た。だがこの保育士は「歩くスピードが遅い子どもが青信号で渡り切るには離れすぎもよくない」と考える。こうした判断の難しさから「運転する人には気を付けてほしい」とあらためて願う。荒川区の園庭のない保育園の女性園長は「同じ場面に出くわしたら、仕事を続けられるだろうか」と声を落とす。四季を感じ、自然と触れ合う大切さから、毎日の散歩は欠かせない。散歩中は普段から保育士同士で声を掛け合うが「事故に遭った保育士も注意していた。命を守ることはすごく難しい」と実感している。都によると、二〇一七年度に新設された都内の認可保育園約二百七十カ所のうち基準通り園庭を備えた園は二割にとどまる。残りの八割は「公園の活用を前提に開設している」と都の担当者は話す。社会福祉法人信和会(中央区)が都内で運営する二つの保育園にも園庭がない。園内のホールで体操などをするが、外出は欠かせない。同法人の中田純子理事は「待機児童対策に追われる中、都心部では、すべての園に園庭を造るのは難しい。これからも、園外で子どもたちが安全に遊べるようにしたい」と話した。一方、園庭のある保育園でも、散歩時の安全を再点検している。横浜市中心部にある認可保育園では、大津市の事故翌日の九日に職員会議を開き、ガードレールのない散歩コースの変更を検討。保育士は「事故を受けて十日まで散歩は中止し、園庭遊びだけ。週明けから、安全確認できたコースで再開する」と話した。東京都大田区の認可保育園の園長は「事故当日から職員同士で危険箇所を出し合ったほか、警察署にもアドバイスを頼んでいる」と説明。「園外活動は交通ルールなどを学ぶ社会との接点。園庭があっても欠かせない」と力を込めた。
◆厚労省が注意喚起
 大津市で保育園児2人が亡くなった交通事故を受け、厚生労働省は10日、全国の認可保育園などに、散歩時の安全確保を呼び掛ける事務連絡を、都道府県を通じて出した。厚労省によると、大津市の事故では保育園側に問題はないと考えられるため、これまで各園で実施してきた危険箇所や交通量チェックを再度徹底するよう要請。その上で、子どもの発育に重要な園外活動は今後も積極的に取り入れるよう求めている。担当者は「危ないから園外に出てはだめ、という考えはよくない」と話した。

<女性蔑視を利用した偽情報による選挙妨害もあること>
PS(2019年5月9、24日追加): *7-1に書かれている週刊文春2007年10月4日号に掲載された記事は、佐賀県議会議員選挙の最中に発行されたもので、これにより私が立場をなくし、私を応援していた県議が落選した。また、週刊文春2008年1月24日号が発行されたのは、私と保利氏が公認争いをしていた最中で、選対委員長は菅(現官房長官)氏で、「勝つ候補を公認する」というふれこみだった。どちらの記事もキャリアウーマンを見下げた悪評の散布だったため、自民党から公認されずに落選した後に、私が週刊文春を提訴し、「記事の重要な部分で真実と信じる相当の理由があったとは認められない」とされて勝訴した。にもかかわらず、未だに「①メンバーに信用できない人たちがいます」「②とくに広津前議員は、真偽の程はわかりませんが、以下の記事を読む限りでは、かなり“電波”な人では?」「③およそ政治信条とか理念などの類を持ち合わせている候補とは思えない」等々、事実でもないのに政治家としての信用を貶める内容がHP上に掲載され続けており、IT会社は削除しないのである。これには選挙妨害の意図があるのが明白だが、メディアやIT企業の良識はこの程度なのだ。
 そして、*7-2-1のように、このように勝手に作りあげられた“個人情報”が不正利用されているわけだが、これは公正性・人権の両視点から許されるものではない。*7-2-2には、「『忘れられる権利』も要る」と書かれているが、忘れられる権利どころか、このような偽情報による名誉棄損や侮辱による違法行為に対しては毅然として対応し、逸失利益も十分に損害賠償させるという裁判所の意識改革が必要不可欠だ。そのため、「使わせない権利」で利用停止や削除を依頼するだけでなく、原則として「同意がなければ使わせない」という個人情報の保護規定が必要なのであり、EUのGDPRの方が信頼できるわけである。そのような中、*7-2-3のように、自民党の経済成長戦略本部が成長戦略提言案をまとめ、「第4次産業革命において最大の資源となる『データ』を利活用できる環境をいち早く整備する」と強調したそうだが、データは個人のものであるため、“データの自由な流通”を提唱するなど人権侵害も甚だしい。
 なお、2019年5月24日、*7-3のように、愛媛新聞が「①ヘイトクライムを防ぐため、ヘイトスピーチ法を見直して差別撤廃へ実効性を高める必要がある」「②現行法では、憲法が保障する表現の自由を侵害する恐れがあるとして禁止規定や罰則を設けていない」「③ヘイトスピーチを『違法』と位置づけていないので、ネット等で脅迫や中傷を受けた場合に大半が処罰されない」「④差別に基づく侮辱や脅迫はヘイトクライムであり、通常より厳しい処罰も検討すべき」「⑤野放し状態となっているネットへの対策強化も急務だ」等を記載している。①③④⑤は全くそのとおりで、②の憲法が保障する「表現の自由」も、他者を差別する表現を自由化するものではなく、戦争に向かって権力が暴走した時に反対を唱え易くするような志の高いもので、同じ日本国憲法に定められている「基本的人権の尊重」や「差別の禁止」より優先して適用されるわけではない。つまり、憲法が「表現の自由」を保障しているから暴言でもフェイクニュースでも何でも書いてよく、それによって損害を蒙る人がいてもよいということではないのである。

*7-1:http://www.asyura2.com/09/senkyo69/msg/142.html (阿修羅 2009 年 8 月 12 日) Re: たしかに、政策はいいと思いますが、メンバーに信用できない人たちがいます
「みんなの党」は、政策はいいと思いますが、メンバーに信用できない人たちがいます。「自民党から小選挙区で公認してもらえなかったから」。「自民党の比例区の名簿で優遇してもらえなかったから」。という理由で来たらしい候補がいますね。元・自民党の清水前議員とか、同じく元・自民党の広津前議員とか・・・。およそ、政治信条とか理念などの類を持ち合わせている候補とは思えない。とくに広津前議員は、真偽の程はわかりませんが、以下の記事を読む限りでは、かなり“電波”な人では?
●武部幹事長弁当事件 83会の「奇人変人リスト」
 「その瞬間、議員一同、凍りつきました」(山崎派議員)。山崎派の会合でのこと。山崎卓氏が「総裁選(の出馬)も考えてみたい」と言うと、一人の女性議員が手を挙げた。“ミセス空気が読めない女”と呼ばれる小泉チルドレン。誰もがひやりとしたのも遅く……。佐賀三区のがばい刺客、広津素子議員(54)は真顔で山崎氏に進言した。「山崎先生は女性スキャンダルでイメージが悪いので、難しいと思います」。自民党議員が笑いを噛み殺しながら言う。「“今週の広津語録”と言われるくらい、破壊的な発言が永田町を駆け巡っています。有名になったのは、佐賀の日本遺族会の方が東京に挨拶にみえた時。話を聞いた後、広津さんは、『遺族、遺族って、一体、何の遺族ですか』と(笑)。〇五年の郵政選挙の大量当選が生んだ珍現象です」。東大卒で公認会計士という経歴をもつ広津女史。「エキセントリックな点があり、ストレートにモノを言う。党本部や国会内の会合での質問に、いつも場が凍る」(別の自民党議員)。伊吹文明幹事長が党税調小委員長だった時、伊吹氏の説明が終わると、新人・広津氏が挙手をするや……。「伊吹先生の説明ではわかりにくいと思いますので、代わって私が説明します」。絶句したのは伊吹氏だけではない。農政の会合で農家による説明が終わると、広津氏が総括(?)した。「皆さん、農業をやめて転職したらいいと思います」。極めつけが「牛肉弁当事件」。チルドレンの親分、武部勤幹事長(当時)が、「いつでもメシを食いに来なさい」と新人たちに声をかけると、本当に広津氏は幹事長室に行って、置いてあった牛肉弁当を勝手に食べてしまったというのだ。その恨みではないだろうが、武部氏は新人議員のグループ「新しい風」に広津氏を誘っていない。抗議する彼女に、武部氏は「あれは仲良しクラブだから」と逃げたつもりが、逆に「私は仲良しじゃないんですか!」と怒らせてしまった。広津氏は小誌の取材に「全部まったくのウソです」と否定するが、広津語録は議員の間で今も更新中だ。
                            週刊文春07年10月4日号より
●派閥のドン山拓に「引退勧告」しちゃった広津素子センセイ
 “ミセス空気が読めない女”と呼ばれる、小泉チルドレンの広津素子議員(54)。昨年末、彼女は所属する派閥のボス山崎拓氏(71)にこう直談判したと言う。「先生はもう七十歳を超えている。辞めるべきだと思います!」。話は次期衆議院選挙、佐賀三区の公認問題を巡って切り出された。広津議員は現在、郵政造反・復党組である保利耕輔議員(73)と激しい公認争い中。保利氏に対して前述のように「七十歳を超えて~」と批判し、「山崎さんから若い人に道を譲るように言って下さい」と続けた。山崎派議員が苦笑しながら語る。「山崎先生は保利先生と同世代。保利先生に年だから辞めろなんて、山崎先生の口から言える訳がありません。広津さんの言葉を聞いて山崎先生は、『それは俺にも辞めろと言っているのか!』と激怒したようです」。ちなみにヤマタクが総裁選への意欲を示したときも、「山崎先生は女性スキャンダルでイメージが悪いので難しいと思います」(小誌〇七年十月四日号既報)。と広津氏は直言している。山崎派の重鎮、野田毅議員が新人を集め食事会を開いたときもこんな事件が。野田氏が「地方経済は疲弊している。今こそ地方への配慮が必要だ」などと持論を語り終えたあと、広津氏はこう言い放った。「先生は古いタイプの政治家ですね」。出席していた一年生議員が振り返る。「一瞬、場が凍りつき、われわれも冷や汗をかきました。野田さんは明らかに不機嫌だった。ご馳走になっているのに、普通そういうことを言いますか?(苦笑)」。東大卒で公認会計士という経歴の広津氏は、「自らの考えが正しいと信じて疑わないタイプ」(同前)。「昨年九月の安倍改造内閣が発表される前も、『次は私が女性代表で大臣になる』と公言し周囲を唖然とさせた。福田内閣の人選が進められているときには、官邸に電話して『私を副大臣か政務官に入れるべきだ』と直談判したという伝説もある」(全国紙政治部記者)。地元の評判も芳しくない。「人の名前を覚えないから人望がない。すぐ問題を起こすから会合等に呼ばないようにしているのですが、呼ばないと『女性蔑視だ!』と大騒ぎ。問題は人間性なんですけど・・・・・・」(自民党佐賀県連関係者)。そんな言動が災いしてか、事務所も大混乱の様子。「広津さんは入りたての秘書に、『明日から佐賀に行って後援会を作ってきてちょうだい』とか無茶ブリがすごいようです」(同前)。本人に取材すると、「すべてデタラメです。一体誰が言っているんですか」とご立腹。いや、みんな言ってるんですけど。郵政総選挙でも広津氏と対峙した保利氏は、周囲にこう公言しているという。「彼女が出る以上、私も絶対次の選挙に出る。それが佐賀県のためだ」
                             週刊文春08年1月24日号より

*7-2-1:https://www.kyoto-np.co.jp/info/syasetsu/20190508_3.html (京都新聞 2019年5月8日) 個人情報の保護  利用規制は国際潮流だ
 政府が個人情報保護法の大幅な見直しに乗り出した。2020年に提出を目指す改正法案にデータ漏えい時の報告の義務付けや罰則強化などを盛り込む方針だ。デジタル化の進展で本人の知らないうちに個人情報が不正利用される懸念が高まっており、議論を注視したい。現行の改正法は17年5月に全面施行され、3年ごとに見直す規定がある。これを踏まえ、政府の個人情報保護委員会が改正案に関する中間整理を公表し、意見公募手続きに入った。見直しの柱の一つは、企業が収集する住所や氏名といった個人情報について広告などへの利用停止を個人が求めた場合、適切な対応を義務付ける点だ。「使わせない権利」の新設とも言える。現行法は個人情報を保護する一方で、国家戦略としてビッグデータ活用を後押しする狙いもある。企業は収集した膨大な個人データを人工知能(AI)で解析し、サービス改善や生産性向上に活用しているが、情報流出による不正利用やプライバシーの侵害など負の側面が問題となっている。例えばインターネットで検索や買い物後、関連商品、サービスの広告がダイレクトメールなどで再三届くことがある。検索サイトを運営する企業などが検索履歴や購入記録を再利用しているためだ。企業側が情報の利用停止や削除に応じなければならないのは、現行法では情報の不正取得などに限られ、消費者の不満が強かった。「使わせない権利」で自身に関わるデータを管理しやすくなる。国境を越えて活動する巨大IT企業によって個人情報の独占が進み、データ乱用への懸念は強い。欧州連合(EU)は昨年、個人情報保護を強化する一般データ保護規則(GDPR)を施行し、個人データの運用を厳しく規制している。プライバシー権を重視し、立場の弱い利用者を守るのは国際的な潮流であろう。ただボーダーレス化した世界で個人情報を保護するには、国内法の規制だけでは済まない。政府は海外に拠点を置く企業にも適用する仕組みを検討しているが、欧米など各国との連携が欠かせない。EUが導入した「忘れられる権利」も課題だ。ウェブサイトに流出した写真や過去の犯罪歴の検索結果など、本人にとって不都合な情報の削除を、ネット事業者に求められる仕組みを法案に盛り込むかどうか。引き続き検討するとしたが、人権侵害を防ぎ、救済する観点から議論を急ぎたい。

*7-2-2:https://www.shinmai.co.jp/news/nagano/20190427/KT190426ETI090002000.php (信濃毎日新聞 2019年4月27日) 個人情報保護法 「忘れられる権利」も要る
 ネットで買い物や検索をすると、その後しばらくの間、関連する商品、サービスの広告がスマホやパソコンに届く。煩わしく思う人は多いだろう。ターゲティング広告と呼ぶ。買い物、検索サイトの会社がデータを第三者に売っているのだ。広告などへの利用停止を個人が求めた場合、応じるよう企業に義務付ける方向を政府の個人情報保護委員会が打ち出した。いわば自分の情報を「使わせない権利」だ。個人情報保護法改正の中間取りまとめに盛り込み、パブリックコメントを始めている。買い物や検索の履歴は本人のものだ。知らないところで第三者の手に渡るのは望ましくない。規制するのは当然だ。今の個人情報保護法では、情報の利用停止や削除に企業が応じなければならないのは、不正に取得したり、目的外で使ったりした場合に限られる。通常は、請求に応じる義務はない。ただし、流れは変わりつつある。欧州連合(EU)は昨年7月に施行した「一般データ保護規則」、略称GDPRにより、個人情報の収集、取り扱い方法について利用者の同意を得ることを企業に義務付けた。その少し前には、米交流サイト大手フェイスブックの利用者の個人情報流出が表面化した。情報は英国の政治コンサル会社の手に渡り、2016年の米大統領選でトランプ陣営の支援に利用された可能性が指摘されている。この問題をきっかけに、「使わせない権利」を求める声は米国でも高まった。今後、世界に広がっていくだろう。問題は、グーグル、アマゾンなど国境を超えて活動する巨大IT企業への対応だ。「使わせない権利」をボーダーレスの世界で保障するには、米欧など各国との連携が欠かせない。法律にうたうだけでは済まない。個人情報を巡っては、流出した写真や犯罪歴の検索結果など本人にとって不都合なデータの削除、消去もかねて課題になっている。「忘れられる権利」だ。中間取りまとめでは、改正案にこの権利を盛り込むかどうかは引き続き検討するとされた。欧州のGDPRには、市民は企業に個人情報を消去させることができる、との規定が盛り込まれている。日本でも成文化すべきだ。半面、政治家が自分に都合の悪い情報を消去させるようでは国民の知る権利が損なわれる。仕組みは慎重に検討したい。

*7-2-3:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190509&ng=DGKKZO44532230Y9A500C1PP8000 (日経新聞 2019年5月9日) データ流通新法、個人情報保護法と両輪 司令塔機能の組織新設
 自民党の経済成長戦略本部がまとめた成長戦略の提言案は「第4次産業革命において最大の資源となる『データ』を利活用できる環境をいち早く整備する」と強調した。安倍晋三首相は6月に大阪で開く20カ国・地域(G20)首脳会議で議長を務め、データの自由な流通に向けた枠組み作りを提唱する方針だ。与党からも国内でのデータの収集や管理などの枠組み構築を求め、日本主導の国際ルール作りを後押しする。提言案は政府が2020年に向けて検討する個人情報保護法の改正と新法を「車の両輪として、データ駆動社会における戦略的枠組みを構築する」と記した。個人情報保護法の改正案は個人が巨大IT(情報技術)企業のサービスを使う際に、購買履歴や位置情報などの個人情報を不正に利用された場合は利用を止められるようにするなどが柱となる。国際的なデータ流通に対応するため、政府内に司令塔機能となる「デジタル市場競争本部」(仮称)を早期に新設することも盛り込んだ。各省庁横断で専門家を交えて構成する。独占禁止法など関係法令に基づく企業への調査結果を聴取したり、米欧など主要国の競争当局と連携したりするための権限を与える。公正取引委員会と新組織が連携しながら巨大IT企業を監視する仕組みだ。

*7-3:https://www.ehime-np.co.jp/article/news201905240017 (愛媛新聞社説 2019年5月24日) ヘイトスピーチ法3年 差別根絶に向け不断の見直しを
 特定の人種や民族への差別をあおるヘイトスピーチ(憎悪表現)をなくすための対策法が成立して3年がたった。「不当な差別的言動は許されない」との宣言の下、抑止条例の施行などの取り組みが進んだが、根絶には程遠いのが現状だ。とりわけ昨年来、元徴用工や慰安婦問題で一層冷え込んだ日韓関係を背景に、街宣活動やインターネット上での過激な言動は収まる兆しがみえない。先月からは外国人労働者の受け入れ拡大が始まり、環境整備が不十分な中で、新たな差別も懸念される。憎悪犯罪(ヘイトクライム)を防ぐためにも、法改正を含めて不断に見直し、差別撤廃へ実効性を高める必要がある。現行法では、憲法が保障する表現の自由を侵害する恐れがあるとして、禁止規定や罰則を設けていない。ヘイトスピーチを「違法」と位置づけていないことから、ネットなどで脅迫や中傷を受けた場合、加害者の罪を問うには刑法を適用することになる。しかし、大半は不起訴となるなどして処罰されず、これまでに立件され、刑事罰が科されたことが判明したのは2件にとどまる。侮辱罪で科料9千円、名誉毀損(きそん)罪で罰金10万円の略式命令が下されたが、刑罰が軽いとの指摘がある。民事訴訟のケースでも被害者の負担は大きい。証拠を集める際、自身への悪意に満ちた言動に再び向き合わなければならなくなり、精神的苦痛を受ける。時間や費用もかかる。差別に基づく侮辱や脅迫はヘイトクライムであり、通常より厳しい処罰の検討も必要だろう。国は事件化しやすくしたり、被害者を救済したりする仕組みづくりを進めなければならない。野放し状態となっているネットへの対策強化も急務だ。法務省は3月、ネット上のヘイトスピーチに関して削除などの救済措置の対象を、個人だけではなく集団も含めるよう全国の法務局に通知した。不当な差別的言動は集団に向けられたものも多い。国には被害者からの申告がない場合でもネット業者に対して差別投稿を削除するよう要請するなど、積極的な対応を求めたい。取り組みが自治体任せとなっている点も是正しなければならない。川崎市や京都府が、公共施設でのヘイトスピーチを事前規制するガイドラインを施行しているほか、大阪市は条例でヘイトスピーチ認定後に個人や団体名を公表している。だが、ほかの多くの自治体は「表現の自由」への配慮を巡って対応に苦慮し、有効策を打てていない。国は、表現の自由の扱いや、何がヘイトスピーチに当たるかといった基準をできるだけ具体的に示し、取り組みを後押しすべきだ。条例の策定などを通して、行政や市民らが、差別を許さないという毅然(きぜん)とした態度を示すことが、ヘイトクライムの抑止力強化につながると再認識してもらいたい。

<本当の男女雇用機会均等へ>
PS(2019年5月13日追加): *8-1のように、パリで開かれた先進七カ国(G7)男女平等担当相会合が、2019年5月10日、「女性の人権や男女平等の促進のために法制度の拡大が必要」という認識で一致し、これは大統領が男女平等促進を重要政策に掲げるフランスが議長国だった成果であり、そのことはフランス以外が新法導入の約束に消極的だったことからもわかる。しかし、女性に対する暴力は、身体的なものだけではなく、女性蔑視を利用して自己に利益誘導しようとする精神構造も入るため、徹底した法制度の拡大が必要だ。
 例えば、*8-2の「IQ(論理的思考)とEQ(情緒的感性)には明確な男女差・年齢差がある」というように、あたかも科学的調査を行ったかのようだが、実際には差別意識を植え付ける記事がそうである。内容は「①CIYの診断結果で個人の様々な特性が明らかになるが、その中で特に『論理的に思考するタイプ』と『情緒的・感覚的に思考するタイプ』」で男女間に明確な差が出た」「②論理的に思考するタイプは全年齢層で男性割合が高く、情緒的・感覚的に思考するタイプは全年齢層で女性割合が高い」「③男性では新社会人(23歳~29歳)から40代にかけて論理的に思考するタイプが増加し、女性では高校・大学・社会人となるにつれて情緒的・感覚的に思考するタイプが増える」「④組織の中で男性は論理的であること、女性は情緒的で共感し合うことを求められる結果、年齢とともにそれぞれの思考性が変化する」「⑤男女で年齢とともに思考性が変化していく傾向があり、結果的に男性は論理的、女性は情緒的で共感力が高いという集団ができる」「⑥世代別では、男性ではゆとり第一世代~団塊ジュニア世代まで論理的に思考するタイプが高くなっており、女性では世代別の変化は見られない」「⑦個性や性格の半分は遺伝で決まり、残りの半分はその他の要因によって決まると言われている」「⑧男性で30−40代が論理的に思考するタイプが多く、50代をすぎると情緒的、感覚的に思考するタイプが増えていくので、年齢とともに性格が変化していると感じられる」などが書かれている。
 しかし、調査方法については、何を質問してどう答えれば「論理的」「情緒的・感覚的」と判定しているのか不明であり、判定する人の主観や分析力も見逃せない。さらに、①②のように見えたとしても、その要因は、高等教育で何を専攻し、どの職種でオン・ザ・ジョブ・トレーニングを受け、どういう立場(非正規・正規のヒラ・管理職・社長、専業主婦等)で働いてきたかによって考え方が変わるため、③④⑧の結果になる可能性もある。これについて述べているのが、*8-3の上野元東大教授だが、東大入学者の女性比率は現在では全体で約18.6%にまで増えているものの、法学部19.1%、経済学部17.9%、文学部28.8%、教育学部37.2%、教養学部30.2%、工学部8.9%、理学部12.2%、農学部26.6%、薬学部23.9%、医学部19.8%と工学部と理学部は10%前後であり、これは就職を考慮して専攻を決定した結果だろう。その結果、就職後のオン・ザ・ジョブ・トレーニングも異なり、東大以外では家政学系・芸術系・文学系に進学する女性も多いことから、社会全体の男女の育成方法や期待の違いが*8-2の結果を生んでいると思われる。ただ、⑤⑥のように、年齢で変化するか否かについては、現時点の異なる世代間比較をしても受けた教育や過ごした社会環境が異なるため正確な比較にならず、同じ世代を多変量解析でコホート分析した方が要素毎の影響がわかりやすい。⑦については、半々かどうかはわからないが、遺伝と環境の両方の要因で変化し、同じ人でも欧米と日本で振舞いを使い分けなければならないことさえある。つまり、日本は、“文化”の名の下に女性蔑視している国なのである。
 なお、*8-3には、「サークル選びは袋詰めで渡されたビラの束から『東大男子と○○大女子のサークル』と書かれたものを捨てることから始めなければならなかった」とも書かれているが、私が入った社交ダンスクラブは東大女子が少ないので日本女子大や東京女子大と合同で行っていたが、行けば東大女子もWelcomeだった。ただ、やるのは社交ダンスでも、幼い頃からバレエや日本舞踊を習っていた人はバシッと形が決まり、そうでない人はとてもかなわないため、*8-4の「習い事の低年齢化」はあってよいと考える。これを、「エリート志向の押し付け」とか「習い事は協調性を養う」などと言っている人は、クラブ活動以外はやったことがないように思われる。何故なら、子どもが主体性を示す年齢から始めては遅いものが多く、例えば、日本語をはじめとする語学・音感・楽器・ダンスなどは幼い方が覚えが早く、これらの基礎ができていると後の勉強に役だったり、(最近の日本では数と運動量で勝負しているらしい)アイドルが1人で歌っても聞くに堪える歌唱力を持てたりする底上げ効果があるからだ。


 欧米と日本の女性役員・管理職比率     2019.5.10西日本新聞(*8-2より)

(図の説明:1番左と左から2番目の図のように、日本の女性役員・女性管理職比率は、他国と比較して著しく低い。これは、合理的に見せかけた女性に対する頑固な差別があるからで、その差別の一つに、男性の論理性と女性の情緒性・感情性理論がある。しかし、1番右と右から2番目の図を見ると、日本では男女とも、またどの世代においても、情緒的・感情的なタイプが圧倒的に多く、論理的に思考できるタイプは半分以下しかいないことがわかる。そして、グラフに出ている男女の違いは、与えられた教育や職場環境による変化の程度だ)

*8-1:https://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201905/CK2019051202000118.html (東京新聞 2019年5月12日) 男女平等促進へG7「新法導入を」 担当相会合で一致
 パリで開かれた先進七カ国(G7)男女平等担当相会合は十日、女性の人権や男女平等の促進へ法制度の拡大が必要だとの認識で一致、共同声明で「男女の格差はここ数十年で総体的に減少したが、世界中で進展がかなり鈍っている」と指摘した。マクロン大統領が男女平等促進を重要政策に掲げる議長国フランスは、外部の諮問委員会がまとめた世界の男女平等促進法を参考にG7各国がそれぞれ新法を導入することを提案。ただ共同声明は「(他国の)優れた実践は名案の源となる」とするに留まり、導入の約束には至らなかった。ある参加国筋は「立法は議会の仕事だ」と述べ、フランス以外は新法導入の約束に消極的だったとの見方を示した。女性活動家ら三十人以上で構成する諮問委のメンバーの一人、女優のエマ・ワトソンさんは記者会見で「女性に対する暴力と闘う意欲的な法枠組みをG7構成国が早急に導入するよう期待する」と訴えた。諮問委は今後、模範となり得る各種の法律に関する最終報告をまとめ、各国に提示する。日本から出席した中根一幸内閣府副大臣は「男女平等の推進にはトップの意識改革が重要だ」と述べた。

*8-2:https://www.nishinippon.co.jp/nnp/news_release/article/509065/ (西日本新聞 2019年5月10日) IQ(論理的思考)とEQ(情緒的感性)には明確な男女差が
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●IQ(論理的思考)とEQ(情緒的感性)には明確な男女差が
 COLOR INSIDE YOURSELF(以下「CIY」)の診断結果では、個人の様々な特性が明らかになりますが、その中でも特に、「論理的に思考するタイプ」と「情緒的、感覚的に思考するタイプ」では、男女間で明確に差がでました。年齢別の診断結果の割合を多項式近似曲線で表すと、「論理的に思考するタイプ」は全年齢層で男性の割合が高く、逆に「情緒的、感覚的に思考するタイプ」では、全年齢層で女性の割合が高くなっています。ステレオタイプに言われているような「男性は論理的に考えるのが得意、女性は共感力が高い」というイメージに近い結果となりました。
●男女によって、求められる思考性が異なる?
 さらに、ライフスタイル別の統計結果を見ると、男性では新社会人(23歳~29歳)から40代にかけて「論理的に思考するタイプ」が増加しています。女性では、高校から大学、社会人になるに従って「情緒的、感覚的に思考するタイプ」が増えており、30代からは緩やかに減っていきます。
●年齢とともに性格が変化する要因は、何でしょうか?
 A:組織の中で、「男性は論理的であること、女性は情緒的で共感し合うこと」を求めら
   れた結果、年齢とともにそれぞれの思考性が変化していく
 B:そもそも男女で年齢とともに思考性が変化していく傾向があり、結果的に「男性は
   論理的、女性は情緒的で共感力が高い」という集団ができていく
 いずれの要因かまでは分析結果からはわかりませんでしたが、ここまで明らかになると、さらに興味深い洞察が得られそうです。
●年齢とともに性格は変わるのか?
 世代別の結果では、男性では「ゆとり第一世代~団塊ジュニア世代」までが、やや「論理的に思考するタイプ」が高くなっているようです。(女性では、世代別の変化は、あまり見られません。上述の通り、年齢や社会的なポジションに伴って性格が変わっていくのか、特定の世代に限って「論理的に思考するタイプ」がそもそも多いのかについても、興味深いポイントです。個性や性格の半分は遺伝で決まり、残りの半分はその他の要因によって決まると言われています。そのため加齢による性格の変化はそこまでないはずですが、男性で30−40代が「論理的に思考するタイプ」が多く、50代をすぎると「情緒的、感覚的に思考するタイプ」が増えていくという傾向を見ると、年齢とともに性格が変化しているとも感じられます。今後も継続的に結果を分析することで、年齢による変化なのか、特定の世代による傾向なのかを明らかにしていきたいと思います。

*8-3:https://digital.asahi.com/articles/ASM4R3V9HM4RUTIL011.html?iref=pc_rellink(朝日新聞 2019年4月24日)東大ジェンダー論講義、立ち見の盛況 上野さん祝辞反響
 社会学者の上野千鶴子さんが、12日の東大入学式で述べた祝辞が反響を呼んでいる。入学者の女性比率が約2割に過ぎないことなどを挙げて「性差別は東京大も例外ではない」と述べるなど、「おめでとう」一辺倒ではない祝辞。東大生たちはどう受け止めたのか。24日夕、東大駒場キャンパスであった「ジェンダー論」の授業。祝辞の影響か、3週連続で536席の教室に多数の立ち見が出た。担当する瀬地山角(せちやまかく)教授によると、前回の授業後に提出させた感想には、東大のジェンダー意識の現状を憂える男子学生のものが複数あった一方、上野さんの祝辞の間、鼻で笑っている男子学生がいた、との記述もあったという。このため、この日の授業は例年と順番を入れ替え、男女雇用機会均等法(1985年制定)ができるまでの女性が置かれていた状況について伝える内容に変更した。東大はこれまで、女子学生を増やそうと、女子高校生向けの説明会を開いたり、冊子を作ったりしてきた。2017年度からは、女子学生向けの家賃補助制度も始めた。それでも、今年度入学者の女子学生の比率は18・1%。前年度の19・5%を下回った。教授の女性比率も1割に満たない。04年度以降、上野さん以外に入学式で祝辞を述べた女性は、10年度の緒方貞子さんだけだ。瀬地山教授は「男女比は、大学だけで解決できる問題ではない。上野さんの祝辞は社会に向けた投げかけでもあった」とみる。上野さんは祝辞で「東京大学は変化と多様性に拓(ひら)かれた大学です。わたしのような者を採用し、この場に立たせたことがその証しです」と語った。上野さんに依頼した理由について、東大は「祝辞を行う者の選定経緯は公表していない」とするが、新入生の受け止めは様々だ。「日本最高峰の大学で、これだけ学生数に男女差があるのは問題だと私も思っていた。入学式の場で指摘してくれたのはよかった」。埼玉県の私立共学校から文Ⅲに進学した女子学生はそう話す。高校では国公立大をめざす女子も多かったが、祖父母世代から「女の子がそんなに難しい大学に行かなくても」と言われた経験がある子が複数いたという。都内の私立共学校から文Ⅰに進んだ男子学生も、「男女差別が残っているんだとわかり、驚いた。祝辞はつまらないのが相場だが、目を覚まされたような思いだった」。一方、神奈川県の私立男子校から理Ⅰに進学した男子学生は「説教されている気分になった。式で言うべきことか、と複数の男子が言っていた」と打ち明ける。「入学したての今はピンとこなくても、いずれじわじわと心に響いてくるのでは」と言うのは、東大出身でフリーランスの広報やライターとして働く平理沙子さん(28)だ。バイト先で大学名を言うと「すごく驚かれ」、就職活動では、同じサークルの男子学生たちは早々に内定を得ていくのに、女子たちは苦戦。面接では「なぜ東大に入ったのか」と根掘り葉掘り聞かれ、東大女子が「こだわりが強すぎる人」のように見られていると感じた。「高校までは男女平等と思っていたけれど、大学、就活、就職と進むうちに、男女の置かれた状況の違いに違和感が増していった」。「祝辞を評価しますか」「祝辞で取り上げられた東大の問題を、以前から認識していましたか」。祝辞への反響を受け、東大新聞は5月10日まで、大学内外の人を対象に賛否などを尋ねるウェブアンケートを実施中だ。これまでも上野さんが祝辞で触れた「東大女子参加不可」のサークルの存在など、東大のジェンダー問題について特集を組んできた。女性編集部員で、大学院2年の矢野祐佳さんは「6年間思ってきたことを、上野さんが代弁してくれた」と言う。「東大女子参加不可」のサークルは、入学時に怒りを感じたことの一つだ。サークル選びは、袋詰めで渡されたビラの束から「東大男子と○○大女子のサークル」と書かれたものを捨てることから、始めなければならなかった。「女子が2割というのは異常。東大の学生や教授の男女比が変われば、社会にもプラスの影響があると思う」。男性編集部員で工学部3年の高橋祐貴さんは「『祝辞にふさわしくない内容だった』と思っている人は、入学式の性質を理解していない。大学が全学生にメッセージを伝える場は入学式とガイダンスくらいしかなく、祝辞は重要なもの。いまジェンダーを取り上げたのは時勢にかなっていると思う」と指摘する。上野さんは祝辞で、3年前に起きた東大生5人による強制わいせつ事件にも言及した。高橋さんは「ここ数年、東大のジェンダー問題のひどさが露呈する出来事が相次ぎ、新入生の女子比率も下がった。そこに大学も危機感をもっているのだろう。祝辞は、新入生や東大の構成員、そして社会に向けた『男女比を改善しなければ』という東大からの強いメッセージだと思った」と受け止める。

*8-4:https://ryukyushimpo.jp/column/entry-917087.html (琉球新報 2019年5月13日) 習い事の低年齢化
 5歳、4歳、3歳、0歳―。順番にフィギュアスケートの浅田真央さん、羽生結弦さん、卓球の福原愛さん、水泳の萩野公介さんが競技に触れた年齢だ
▼トップアスリートには幼少の頃に競技人生の一歩を踏み出した人が目立つ。各界で若い人材が活躍したり成功を収めたりしているのを見て自分の子供も、と刺激を受ける親は多いだろう
▼習い事の低年齢化が進む。笹川スポーツ財団の2018年の調査では4~11歳の未就学児の72%が何らかのレッスンを受けていた。一番多いのは水泳。上位14位以内でサッカー、体操などスポーツ系が九つを占めた
▼未就学児のスポーツクラブへの加入率は15年の32・8%から17年は40・1%に増えた。背景には20年開催の東京五輪・パラリンピックの影響もあるだろう。単一か複数を幅広くさせるのか一長一短あるにせよ本人が望む習い事をさせるのは悪いことではない
▼ただ幼少期からの高度なトレーニングで体を痛める危険性もある。エリート志向の押し付けで競技へのやる気をそいでは元も子もない。プロで活躍できるのはごく一握りだが、習い事は協調性や集中力を養うことにも役立つ
▼最近、幼い子どもへのスポーツ指導者の役割として、遊びを先導する重要性が指摘される。体を動かす楽しさを感じさせるのである。大事なのは子どもたちの主体性を尊重することだ。

<ふるさと納税について>
PS(2019年5月22日追加):ふるさと納税制度は、生産年齢人口が都市部で働き、保育・教育・医療・介護費用を負担している地方には税収が集まりにくい構造になっているため、私が2005年に衆議院議員になってから提唱し始めて2008年にできた制度で、多くの方の御協力で大きく育った。しかし、所得税を計算する際に2000円は負担させる仕組みになっているため、この制度を利用した人は返礼品がなければ、その分だけ多く税金を払うことになる。そこで、考案されたのが、地場産品を返礼品にして地域振興しながら寄付金を集める方法で、私は名案だと思う。しかし、地場産品以外を返礼品とし、知恵を絞って多額の寄付を集めた大阪府泉佐野市、静岡県小山町、和歌山県高野町、佐賀県みやき町が、*9-1のように、ふるさと納税制度から除外された。しかし、泉佐野市の担当者が言う通り、ルール制定以前の募集を考慮するのは横暴で租税法定主義にも反するため、この取り扱いに関して提訴すれば勝訴できるだろう。また、大阪府泉佐野市、静岡県小山町、和歌山県高野町、佐賀県みやき町にも地場産品の生産者がおり、いつまでもふるさと納税制度から除外されたままでは不利益を蒙るため、市町がふるさと納税制度に復帰できるまで、大阪府、静岡県、和歌山県、佐賀県が代行する方法もある。
 なお、*9-2に、ふるさと納税流出額が1600億円になりそうだと書かれているが、生産年齢人口を集めた都市部では打撃というほどの金額ではなく、地場産品がないか、あっても工夫しなかった地域でもあるため、ここから流出するのは立法趣旨そのものである。

   

(図の説明:左図のように、ふるさと納税額は日本全国で著しく増加しており、この制度は当たったことがわかる。しかし、左から2番目の図のように、想定外の返礼品で稼いだ市町があり、制度から除外されてしまったが、これは違法な除外である。また、右から2番目の図のように、農漁業地帯が健闘しているのは制度の狙いどおりで、右図の市町村の順位も興味深い)

*9-1:https://digital.asahi.com/articles/ASM5K4KF5M5KULFA02C.html (朝日新聞 2019年5月17日) ふるさと納税、除外4市町の早期復帰を認めず 総務相
 石田真敏総務相は17日、ふるさと納税制度から外すと決めた大阪府泉佐野市など4市町の早期の制度復帰を認めない姿勢を示した。閣議後会見で「(他自治体に)正直者が損をすることをすべきではないという声がある」と述べた。4市町は泉佐野市、静岡県小山町、和歌山県高野町、佐賀県みやき町。通知を守らずに多額の寄付を集めていたと総務省が判断し、少なくとも来年9月末までは復帰できないことが決まっている。総務省令に基づく告示により、自治体は寄付の集め方や受け入れ額を今後も問われ続ける。石田氏は「募集実態や、ルール外返礼品で受け入れた寄付額の規模などに応じて検討する」と述べ、4市町の復帰時期に差をつける可能性を示唆した。一方、泉佐野市は週明けにも石田氏に質問状を送り、対象外とされた理由などを問う方針を明らかにした。同市の阪上博則・成長戦略担当理事は17日、石田氏の発言について「いつもの脅しではないか。過去の寄付募集を考慮すること自体が問題だ」と批判した。

*9-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190522&ng=DGKKZO45105200S9A520C1MM0000 (日経新聞 2019年5月22日) ふるさと納税 流出1600億円 今年度本社調査 2割増、横浜が最多
 全国の主要市区で2019年度、ふるさと納税の影響で流出する住民税の金額(税額控除額)が前年度比で2割以上増えることが日本経済新聞の調査でわかった。金額では約1600億円に上り、横浜市や東京都世田谷区など首都圏の流出が目立つ。返礼品競争でふるさと納税が拡大する一方、都市部の自治体の財政への打撃が大きくなってきた。ふるさと納税は出身地や好みの自治体に寄付すると、寄付額から2000円を引いた金額が所得税や住民税から控除される仕組み。住民税の控除は寄付した翌年度に適用され、住民が地域外に寄付した自治体は住民税が減ることになる。調査は2~4月、全国792市と東京23区の815市区を対象に実施。寄付の受け入れ額は810市区から、税額控除額は622市区から回答を得た。19年度の流出額が最も多いのは横浜市で、18年度比31%増の136億円となる見通し。名古屋市は75億円(24%増)で、世田谷区が53億円(29%増)だった。622市区の流出額は21%増の1581億円となった。国から地方交付税を受け取る自治体は流出額の一部が地方交付税で穴埋めされるが、交付税を受け取らない自治体はそのまま流出額となる。19年度の流出額のベースとなる18年度の寄付受け入れ額の810市区の合計額は、17年度比29%増の2704億円。首位はアマゾンギフト券を返礼品とした大阪府泉佐野市の497億円だった。2位は宮崎県都城市(83億円)で、北海道根室市(50億円)が続いた。ふるさと納税を巡っては、総務省が6月から、対象自治体を指定して返礼品を「寄付額の3割以下の地場産品」に限定する新制度を導入する。

<フェイクニュースとファクトチェック>
PS(2019年5月23日):*10-1のとおり、選挙で立候補した候補者への選挙妨害を目的とする情報が、噂という無責任な形でネット空間を飛びかう時代だが、ファクトチェックが必要なのは、ネットだけではなくメディアも同じだ。何故なら、女性蔑視に基づいて女性の能力や実績を過小評価する“常識的”な判断で、私が不利益を蒙ったことはすこぶる多いからである。
 例えば、上記のように、「ふるさと納税制度は私が提案してできた」と書くと、それが事実であるにもかかわらず、「女がそんなことをできるわけがない」「女がそんなことを言うのは謙虚でない」と受け取ったメディアが多く、その結果、ふるさと納税の発案者は、*10-2の福井県知事と制度導入時にたまたま総務大臣だった菅氏ということになった。
 しかし、それでは、「2人は長期間政治家であったのに、何故、2006年までふるさと納税制度を発案しなかったのか?」、「何故、ふるさと納税の盛んな県は、佐賀県はじめ九州に多く、福井県でないのか」「菅氏は力ある政治家なのに、何故、ふるさと納税制度を弁護しないのか」という疑問に全く答えられない。つまり、大多数のメディアがフェイクニュースを発信しており、ファクトチェックが甘いのである。そして、これはほんの一例にすぎない。
 その点、誰もがHPで自分の主張を述べられるようになったのは、政治家がメディアに変なことを一方的に言われっぱなしだった時代と比べれば革命的な進歩であり、ネットだけでなくメディアも、もっと公正・中立で深い分析に裏付けられた報道を行うべきなのである。

*10-1:https://ryukyushimpo.jp/special/entry-799530.html (琉球新報 2019年2月28日) ファクトチェック フェイク監視
 ネットで広がっているさまざまな情報。それをそのままうのみにするのは危険です。選挙でも立候補した候補に対して、さまざまな情報やうわさが飛び交っています。その情報は確かなものなのでしょうか。真実なのか、うそなのか判断がつかない情報をそのまま受け取ってしまっては正しい判断ができません。「フェイクニュース」というものが、2016年の米大統領選でネット上において大量に拡散され問題になりました。琉球新報は30日投開票の知事選に関するデマやうそ、フェイク(偽)情報を検証する「ファクトチェック―フェイク監視」を随時掲載し、特集ページの1コーナーとしてまとめます。ぜひ、読んでいただき投票に生かしてもらえれば、と思います。

*10-2:https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20181124-00010003-wordleafv-pol (Yahoo2018/11/24)返礼品競争が過熱 ふるさと納税発案の福井知事が語る「本来の趣旨」
 「ふるさと納税」といえば、寄付した自治体から「返礼品」がもらえるお得なサービス、というイメージを持つ人が少なくないかもしれない。今年は、この返礼品のニュースが世間を騒がせた。ブランド牛肉やコメ、家電製品などの豪華な返礼品をめぐり、総務省が9月、調達額が寄付額の3割を超える返礼品や地場産品ではないものの場合は制度の対象から外す方針を表明したのだ。自治体からは「特産品の豊富な町とそうでない町に格差が生じる」などと反発の声が上がる一方、脱・返礼品に向け、制度本来の趣旨の浸透を目指して「自治体連合」を立ち上げた自治体もある。この自治体連合を立ち上げたのは福井県。だがなぜ福井なのか疑問に思う人もいるだろう。実はふるさと納税は「国」ではなく、「地方」からの提案で誕生したもので、その発案者が福井県の西川一誠知事なのだ。西川知事に、制度スタートから10年たったふるさと納税の現状と今後について聞いた。
●広辞苑にも掲載された「ふるさと納税」
 2008(平成20)年にスタートしたふるさと納税。今年1月に改訂された岩波書店の「広辞苑」には、「スマホ」「上から目線」「LGBT」などの言葉とともに、「ふるさと納税」も新たな項目に追加された。西川知事は「普通名詞のような、国民的な認知をいただいた」と喜ぶ。「ふるさと」と銘打ってはいるが、生まれ故郷以外の特別ゆかりのない自治体に対しても寄付することが可能で、寄付金の一部が現在住んでいる自治体の住民税から控除されるという制度だ。ふるさと納税が誕生したきっかけは、1本の新聞記事だった。2006年10月の日本経済新聞に掲載された「経済教室」の欄で、西川知事が「故郷(ふるさと)寄付金控除」制度の導入を提案する記事を出したところ、学者や政治家の関心を引き、特に当時の菅義偉総務相の目に止まって制度化が実現した。
●地方と都市のアンバランスを税制で是正
 ふるさと納税にはどんな狙いがあるのか。西川知事は3つの理由を挙げるが、その1つが人口流出と一極集中が取りざたされる「地方と都市」の関係だ。「福井県は『幸福度』日本一で、東京は2位。『日本一』の県でお金をかけて育てて、『2位』の東京に行く」。西川知事は「幸福度ランキング」(日本総合研究所の)で3回連続1位に輝いた福井県から東京へ人口が流出する実状について嘆く。「若者は自然に大都市に行ってしまう。田舎では彼らを一生懸命教育する。つまり地方で出生してから、高校卒業まで地元で行政サービス受けて、進学などを機に大都市に出る。そのまま就職して大都市の自治体に納税する。このアンバランスな状況を税制で直したい」。福井県では、進学などで毎年約2500人が上京するが、戻ってくるのは600人程度だという。2つ目は「納税者主権の促進」。会社員の場合、給与などから源泉徴収されるので、自分が税金をいくら収めているか意識している人は必ずしも多くないだろう。ふるさと納税には、返礼品だけではなく、自治体の具体的な事業を選んで寄付できるものがある(プロジェクト応援型)。そうした行為を通じて地方政治に関与することで「自分はどの自治体に寄付して、どれくらいの控除を受けるのか、税の使いみちを自覚したい。一人ひとりの納税者としての意思と権限を促進したい」と語る。最後は「自治体政策の競争と向上」だ。寄付を集めるために、各自治体が政策や返礼品などで自分たちの魅力をアピールしたり、寄付がどう活用されたかなどの成果を説明したりすることが必要になる。それが自治体の政策づくりに創意工夫を生み、自治体間の切磋琢磨につながるという。「納税者主権を発揮してもらうことで、自治体側も政策の自主性を発揮する。こういういい循環が期待できる」

| 経済・雇用::2018.12~ | 09:55 PM | comments (x) | trackback (x) |
2019.4.30 ちょっと面白い進化の話と農林水産業 (2019年5月1、2日に追加あり)

     ティラノサウルスの骨格と想像図           羽毛恐竜の化石と想像図

(図の説明:最近は恐竜化石の発見が多く、次第に全貌が見えてきたが、恐竜と鳥の骨格は類似点が多い。また、羽毛恐竜の化石も発見されている。そして、ティラノサウルスの骨格は、下のエミューや鶏のような組み立て方をするのが、重心が足の上にくるので正解だと思われる)

   
 (飛べない鳥)エミューの親子と骨格  (あまり飛べない鳥)鶏の成鳥の骨格と雛
  
(図の説明:左の2つは、オーストラリアの飛べない鳥エミューの生きている姿・雛・骨格だ。また、右の2つは、鶏の骨格模型と雛である)

 
  (飛ぶ鳥)鶴と鶴の雛      (飛ぶ鳥)鳩の飛び方、翼の構造、骨格 

(図の説明:左の2つは、鶴の成鳥と雛、右の3つは鳩の成鳥・翼の仕組み・骨格だ)

 (注)生態を調べるためでも、むやみに鳥を傷つけたり、殺したりしないで下さいね。

(1)ティラノサウルスはトカゲではなく、飛べない鳥だったのでは?
1)自然に起こった進化
 *1-1のティラノサウルス(学名:genus Tyrannosaurus)は、約6850万~6550万年前の北アメリカ大陸に生息していた肉食恐竜とされ、サウルス(saurus:ギリシア語のラテン語形学名で「トカゲ」を意味する)は恐竜・翼竜・首長竜等の絶滅爬虫類に用いられてきた(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B6%E3%82%A6%E3%83%AB%E3%82%B9_(%E6%9B%96%E6%98%A7%E3%81%95%E5%9B%9E%E9%81%BF) 参照)。

 しかし、爬虫類であるトカゲの骨格は、手足の長さが同じで地を這いやすいようになっているのが特徴で、ティラノサウルスの骨格は手が短くて羽でも生えていなければ役に立たなそうに見える。これに近い大きさの手を持っているのは、飛べない鳥エミュー(オーストラリアの非公式な国鳥で、オーストラリア大陸全域の草原や砂地など拓けた土地に分布している)で、エミューは風切羽を持たず糸状羽毛だけが生えており、手は座って卵を抱く際に地面についている。

 鳥として最終形に進化している鶴や鳩の骨格を見ると、手(=翼)の骨が長く、羽も自由に動かすことができ、翼を広げれば自在に飛べる仕組みになっている。それでも、「個体発生は系統発生を繰り返す」と言われているとおり、雛の手はエミューやティラノサウルスと同様に短く、羽毛は生えているが羽はない。ティラノサウルスと鳥の違いは、口の構造のように見える。

 このような進化が起こった理由は、そうしなければ生きられない環境があり、環境と生殖の両面から迫る淘汰圧によって、より環境に適応した個体が生き残って子孫を増やせたからである。

2)農業などで人が作った進化(or退化?)
 鶏は、キジの仲間のセキショクヤケイを、4000~5000年ほど前に、人が飼い馴らして家禽としたもので、現在では、肉や卵を生産する用途別に品種改良が進められ、約120品種以上あるそうだ(http://zookan.lin.gr.jp/kototen/tori/t421_1.htm 参照)。

 そのため、セキショクヤケイの間は、得意ではなくても少しは飛べる鳥だったようだが、家禽として人が飼うようになってからは、飛ぶ能力よりも、産卵能力や肉の美味さによって人に選別されて変わってきたわけだ(品種改良)。その鶏の手は鶴や鳩よりもずっと小さいが、エミューと違って風切り羽はあり、幼鳥の時は羽毛だけだが、成長するにつれて風切羽が生えてくる。

3)ティラノサウルスはトカゲではなく、エミューのような鳥だったのでは?
 結論として、ティラノサウルスと鳥類の足や首は殆ど同じ形であることもあり、最初に「トカゲ」という名前を付けたのが誤りで、本当はエミューと同じような飛べない鳥だったのではないかと、私は考える。また、陸上の寒冷な場所なら、うろこより羽毛の方が役立つだろう。

(2)農業における品種改良
 家畜や稲などの農産物は、味をよくしたり、気候に合わせたり、生産性を上げたりするために、品種改良や技術開発が行われるが、品種改良は生物の方から見ると進化(or退化)である。

 最近は、*1-2のように、比較的栽培が容易なことからオリーブの生産が活発化しており、油が取れるだけでなく、健康に良く、植木や枝物としても利用でき、6次産業化すれば国内だけでなく輸出にも耐えられることから、オリーブの産地化には期待が持てる。

 しかし、オリーブは、もともと地中海性気候の地域で栽培されていたものであるため、九州や瀬戸内海に浮かぶ広島県江田島市が市を挙げてオリーブの産地化を進めるのはわかるが、耕作放棄地対策や他果樹からの転換品目として東北でも栽培するには、かなりの品種改良が必要なのではないか? このようにして、農業は時間をかけて品種改良をしてきたわけだが、栗・クルミ・アーモンドなど、もっと東北で作り易い作物もあるのではないかと思った。

(3)放射線が、DNAを通して進化に与える影響
1)進化の仕組み
 それでは、どのようにして生物の進化が起こるのかと言えば、同じ種の生物でも偶然起こるDNAの突然変異によって多様な個体が生まれ、環境に適さないものも多く生まれるが、特に環境に適したものも生まれ、後者が多くの子孫を残すことで、その生物の全体に占める割合を増やしていくことによって起こるのである。

 そして、自然では、生殖と環境による淘汰圧のバランスによって選択されて変化の方向とスピードが決まり、家畜や農作物は、人の選択によって変化の方向とスピードが決まる。食品等のゲノム編集は、人がDNAに直接手を加えて変化させるので早いが、個体や環境に予想もしていなかった多くの影響が出る可能性があるため、慎重にも慎重を重ねるべきなのである。

2)自然放射線と人工放射線の違い
 ショウジョウバエの突然変異を起こすのに放射線を使うことを高校生物で勉強したが、放射線を当てるとDNAが損傷するから突然変異が起こり易くなるのであり、これは、人を含む他の生物でも同じことで、放射線には、①自然に降り注いでいる自然放射線(これが、年間1mSv未満と言われているもの) ②核爆発によって人が起こした人工放射線があるわけだ。

 これまで地球上で生き残ってきた生物は、①については、対応できているため問題ない。何故なら、対応できていない生物は子孫を残せないため、現在まで生き残っていないからだ。しかし、②については、そのストレスに曝露され始めてから70年前後であるため、寿命が長くて少産少死の生物は対応できていないわけである。

 そして、*2-1に関して、WTOが報告書に「日本産食品は科学的に安全」という記載をしなかったのは、②については、日本産食品が国際機関より厳しい基準で出荷されていても、科学的に安全とは言えないからである。そのため、*2-2に「日本は科学的立証せず、裏目に出た」と書かれているが、正確な統計をとって科学的に調査をすれば、(何度も書いているので長くは書かないが)安全ではないという結果になるだろう。

 なお、BSEのケースは、日本が国際ルールより厳しい基準を設けて前頭検査をしていたのだが、吉野屋の強い要望で米国産牛を輸入し、日本産牛の前頭検査もやめて米国基準に合わせた。しかし、米国が米国産牛の安全性を主張しているのは、それを食べてクロイツフェルト・ヤコブ病になった人がいたとしても、どの牛肉が原因だったかを判定することができないので損害賠償請求もできないだろうという考え方である。今では、日本もBSE牛が発生しやすくなっていると思われるため、せっかくやっていた前頭検査をやめて価格だけ高い牛肉になってしまったのは残念なことである。

 また、*2-3に、福島県産の野菜・果物・魚などの放射性物質の検査で、昨年度に日本の食品基準(100ベクレル/ kg)を上回ったのはおよそ1万6000点のうち6点で、イワナ・ヤマメ・たらの芽だったそうだが、問題は「100ベクレル/ kgなら無害」という根拠が科学的に示されていないことなのである。

 そのため、*2-4のように、「100ベクレル/ kg以下の食品なら、いくら食べ続けても無害だ」という根拠を科学的に示すことなく風評被害と強弁し、農水省・復興庁・経産省が連名で業界団体に対して福島県産農産物を敬遠したり、買いたたいたりすることがないよう求める通知を出したことは、日本は産業のためには人の命を差し出しても何とも思わない国だということで、とても許せるものではない。しかし、このような安全性に対する鈍感さは日本製全体の信頼を損なうため、産業のためにも有害なのである。

・・参考資料・・
<生物の進化>
*1-1:https://www.tokyo-np.co.jp/article/ibaraki/list/201904/CK2019042802000147.html (東京新聞 2019年4月28日) ティラノサウルス勢ぞろい 坂東・県自然博物館 企画展入場10万人突破
 坂東市のミュージアムパーク県自然博物館で開催中の企画展「体験!発見!恐竜研究所-ようこそ未来の研究者-」が人気だ。肉食恐竜ティラノサウルスの全身骨格を三体同時に見られる日本初という展示が好評で、ゴールデンウイーク初日の二十七日に企画展の入場者が十万人に達した。十万人目になったのは、神栖市から家族で訪れた宍戸真子さん(4つ)。「恐竜が好きで見に来た。(十万人目になり)びっくりした」と話した。企画展は二月にスタート。恐竜の標本や模型など二百二十三点を展示し、恐竜の復元された姿の変化や、骨から年齢を推定するなどの最新の研究、日本で発見された恐竜などを紹介している。発掘体験コーナーもある。三体のティラノサウルスの全身骨格は、それぞれ二十歳、十一歳、二歳ごろとされる。大人、若者、子どもの年齢で、体格の違いを見比べられる。さいたま市の小学一年生吉田光汰(ひなた)さん(7つ)は「大きくて、歯がすごかった」と驚いていた。六月九日まで。月曜休館(二十九日、五月六日は開館、同七、八日は閉館)。入場料は一般七百四十円、高校・大学生四百五十円、小・中学生百四十円。五月四日と六月五日は無料で入館できる。

*1-2:https://www.agrinews.co.jp/p47300.html (日本農業新聞 2019年4月7日) 国産オリーブ 多用途で地域を元気に
 オリーブの生産が活発だ。比較的栽培が容易なことから、耕作放棄地対策や他果樹からの転換品目として、栽培は東北から九州に及ぶ。魅力は油が取れるだけでなく、植木や枝物としても利用できること。6次産業化で新たな雇用が生まれた事例もあり、地域を元気にする果樹として産地化を進めよう。瀬戸内海に浮かぶ広島県江田島市は、市を挙げてオリーブの産地化を進める。目指すのは「カキに匹敵する産業」。市内はかんきつ栽培が盛んだが、高齢化で耕作放棄が年々拡大。管理の手間がかんきつより少なく、6次化への展開が期待できるとして目を付けた。市は苗木の助成や、荒廃した園地の改良に必要な機器リース料の助成の他、6・6ヘクタールを新たに造成するほどの力の入れようだ。果実はそのままでは利用できないため、脱渋や塩漬け、搾油といった工程が必要になる。その核となるのが、江田島オリーブ(株)だ。同社は自ら生産、販売、加工を手掛けるだけでなく、オリーブ油を使った料理などが楽しめる施設を運営する。これにより、地元に50人の雇用を生んだ。地元農家が作った果実も1キロ850円で買い取るため、農家にも地元住民にも、会社にも利益が得られる好循環が生まれている。ユニークな活用法を目指すのが、群馬県館林市の農業生産・加工を手掛けるジャングルデリバリー。鉢植えにしたオリーブを生産し、街路樹向けとしてレンタルする事業に乗り出した。生産に必要な農地は8戸の農家から借り、現在5000本の苗木を育てる。将来は面積を広げ、地域の雇用創出や農福連携も展望する。この他にも化粧品や枝物としての販売、植木としての需要も見込める。香川県では、茶樹のように仕立てて葉を収穫し、オリーブ茶として販売する。栽培の広がりを受けて2月下旬には、栽培発祥の地・香川県小豆島で初の全国サミットが開かれた。参加したのは12府県24自治体で、北は宮城県石巻市から南は鹿児島県日置市。会合では「日本オリーブ自治体協会」の設立を目指し、産地間の連携や国際オリーブ協議会への加入を目指すことを確認した。栽培に適した環境は、①年平均気温14~16度で一時的には氷点下10度でも耐えられる②年間日照時間は2000時間以上が理想。1700時間程度の産地でも結実する③年間降水量は1000~2000ミリ。地球温暖化の影響で適地は広がっているとみられるが、懸念されるのは近年の異常気象による大量の降雨。香川県小豆オリーブ研究所は「地質条件や気象条件に応じた技術開発が必要」とみる。国内で流通する国産のオリーブ油は1%未満。油にはオレイン酸、果実や葉にはポリフェノールなど機能性成分が含まれ、健康志向にマッチする。産地化に向け情報を共有し、栽培の機運を高めよう。

<自然放射線と人工放射線の違い>
*2-1:https://digital.asahi.com/articles/ASM4Q54YDM4QULFA01W.html?ref=mor_mail_topix1 (朝日新聞 2019年4月23日) WTO判決「日本産食品は安全」の記載なし 政府と乖離
 韓国による東京電力福島第一原発事故の被災地などからの水産物の全面禁輸を事実上容認した世界貿易機関(WTO)の判断をめぐり、日本政府が第一審の判断を根拠に説明している「日本産食品の科学的安全性は認められた」との記載が第一審の判決文にあたる報告書にないことがわかった。国際法の専門家から「無理のある説明だ」と報告書の内容との乖離(かいり)を指摘する声が出ており、「身内」なはずの経済産業省所管のシンクタンクも問題視するリポートを出した。この紛争は、韓国が2013年、事故を起こした福島第一原発から汚染水が流出しているとして、福島など8県の水産物の禁輸対象を一部から全面に拡大したことに対し、日本がWTO協定に違反しているとして提訴した。紛争を処理する上級委員会が11日、韓国の禁輸を「不当な差別」とした第一審・小委員会の判断を破棄する報告書を出した。日本の事実上の逆転敗訴だが、菅義偉官房長官は12日の記者会見で「敗訴の指摘は当たらない」と強調した。理由として、上級委が日本産食品の安全性に触れていないため「日本産食品は科学的に安全であり、韓国の安全基準を十分クリアするとの一審の事実認定は維持されている」ことを挙げた。河野太郎外相もほぼ同じ発言をした。だが、実際には第一審の報告書には「日本産食品は科学的に安全」との記載はなかった。さらに、第一審は「日本産食品が韓国の安全基準を十分クリアする」と認定していたものの、上級委はこれを取り消していた。「食品に含まれる放射性物質の量だけに着目した第一審の判断は議論が不十分」というのが理由だ。「科学的に安全」と付け加えたことについて、外務省と農林水産省の担当者は「第一審の『日本産食品が国際機関より厳しい基準で出荷されている』との認定をわかりやすく言い換えた」と釈明する。だが、WTOの紛争処理に詳しい中川淳司・中央学院大教授は「日本の基準が国際基準より厳しいことと、科学的に安全かは同義ではない。苦しい説明だ」と指摘する。また、福永有夏(ゆか)・早大教授は「そもそも第一審で安全性の認定は行われていない」と話す。日本が訴えたのは韓国が日本産食品を差別的に扱っていることなどで、安全性自体の認定は求めなかったためという。「韓国の安全基準を十分クリアする」との説明には、川瀬剛志・上智大教授が「明らかに判決の解釈を誤っている」と指摘する。経産省所管の独立行政法人「経済産業研究所」は16日、同研究員でもある川瀬教授がこうした問題点を指摘したリポートを出した。翌17日、外務省の山上信吾経済局長は自民党の会合で、「韓国が定める『安全性の数値基準』を十分クリアできる」と述べ、政府の公式見解を一部修正した。「判決を精査した結果、より適切な表現に改めた」(農水省担当者)という。「科学的に安全」との説明はそのまま続けている。川瀬教授は、「判決は日本の食品の安全性を決して否定していない」と強調した上で、「政府がやるべきことは事実をごまかすことではない。冷静に現実と向き合い、23カ国・地域で残る食品の輸入規制にどう対処するかを考え抜くことだ」としている。

*2-2:https://digital.asahi.com/articles/ASM4L441NM4LULFA00Y.html?iref=pc_extlink (朝日新聞 2019年4月23日) 日本は科学的立証せず「裏目に出た」 WTO判決の敗因
 世界貿易機関(WTO)の上級委員会が判決に当たる報告書で、東京電力福島第一原発事故を理由とした韓国による日本産水産物の禁輸を事実上容認し、日本が「敗訴」した。なぜ負けたのか。今後どのような影響があるのか。WTOの紛争処理に詳しい2人の国際経済法の専門家に聞いた。
●中川淳司教授(中央学院大・現代教養学部)
 今回の日韓紛争の本質は、韓国の輸入禁止措置に科学的な根拠があるのかどうかだ。にもかかわらず、日本はこの「本丸」を正攻法で立証せずに脇から攻め、裏目に出た印象だ。衛生植物検疫措置に関するWTOの国際ルール「SPS協定」は、2条の2で、各国の輸入規制は「科学的な原則に基づいてとること」を求めている。日本はこの条文では訴えず、「同一または同様の条件下にある国の恣意(しい)的または不当な差別」(2条の3)と、「必要以上に貿易制限をしてはならない」(5条の6)で韓国を訴えた。2条の3違反には、日本と他国が「同一条件にある」ことが必要だ。だが、普通に考えて、国際社会は福島第一原発の事故があった日本と他国が同一条件とは思わないはずだ。5条の6違反には、韓国の措置が「必要以上」であることを立証しなければならない。だが、食品の安全をどこまで求めるのかは国民性で違いがあるため、SPS協定は各国の裁量の余地を残している。日本も牛海綿状脳症(BSE)では、国際ルールよりも厳しい基準を独自に設けて、米国産牛肉の輸入を制限した。日本が2条の2違反を主張しなかったのは、立証が難しいと考えたからだろう。日本が放射線被曝(ひばく)量に関する国際基準より厳しい出荷規制をしていても、「科学的に安全」と認められるとは限らない。負けた時の風評被害のリスクも意識したのではないか。日本が「王道」の議論を避けた時点で、この裁判は勝ち目が無かったと思う。WTOの紛争処理では、上級委の判決には重みがある。日本が今後韓国以外の国を訴えた場合、今回の判決が重要な参考とされるはずだ。日本にとって今回の敗訴は、非常に厳しい。
●福永有夏教授(早稲田大・社会科学部)
 WTOの紛争処理においては、各国の「安全」と考える対応について、その国の裁量をより広く認める傾向は以前からある。今回の上級委の判断の妥当性に、問題はないと思う。ただ、韓国の禁輸措置をSPS協定違反とした一審の判断を破棄したものの、肝心な「違反があったかどうか」について最終的な結論は出さなかった。中途半端で、日韓の紛争が解決されずに残ってしまったと言える。判断は韓国の禁輸を「協定に違反していない」と積極的に認めたわけではないが、「違反している」とも認めなかった。最終結論は出ていないので、法律論としては、今回は「引き分け」との評価が一番妥当だ。ただ、重要な日本の主張が退けられた観点では、日本の事実上の敗訴と言える。今後、東京電力福島第一原発の事故を理由に日本産食品に輸入規制をかけている23カ国・地域と、日本が規制撤廃を交渉していく上で、痛いつまずきとなった。米国が「上級委が必要以上に判断を出しすぎだ」とWTOを批判しており、上級委がこうした批判を意識し、最終的な結論を出すのを控えた可能性もある。懸念するのは、日本国民のWTOへの信頼が損なわれることだ。WTO紛争処理は法に基づく貿易紛争の解決に貢献しており、これまで日本も多くの恩恵を受けてきた。いまのWTO紛争処理には「差し戻し」の制度が無く、今回のように上級委が第一審の判断を破棄すると、最終的な結論を下されないまま判断が確定してしまう恐れがある。差し戻し制度の導入も検討すべきで、日本は今回の判断を契機に、WTO改革を主導していく役割を果たしてほしい。
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〈韓国による日本産水産物の禁輸をめぐる経緯〉 韓国が2013年9月、福島第一原発から汚染水が流出しているとして、青森、岩手、宮城、福島、茨城、栃木、群馬、千葉の8県の水産物の禁輸対象を一部から全面に拡大。日本が15年8月にWTO協定に違反しているとして提訴した。第一審の小委員会は「不当な差別」として韓国に是正を勧告したが、第二審の上級委員会は、小委員会の判断について、検討が不十分だったとして破棄した。WTOの紛争処理は二審制で、この判断が確定することになる。

*2-3:https://www3.nhk.or.jp/lnews/fukushima/20190417/6050005159.html (NHK 2019年4月17日) 放射性物質 基準超の食品は6点
 福島県産の野菜や果物、魚などの放射性物質の検査で、昨年度国の食品の基準を上回ったのはおよそ1万6000点のうち6点でした。基準を超えたのはイワナとヤマメ、たらの芽でした。福島県は原発事故のあと県内でとれた野菜や果物、魚などの一部で放射性物質の検査を行っています。昨年度は492品目、1万5941点を検査し、国の食品の基準の1キロあたり100ベクレルを超えたのは0.04%にあたる6点で、10点だった前の年度に比べ、4点減りました。基準を超えたのは、福島市、伊達市、桑折町の阿武隈川水系でとれたイワナ2点とヤマメ3点、北塩原村でとれた野生のたらのめ1点でした。基準超えの食品は原発事故の直後に比べ大幅に減少していて、肉類は平成23年度から、野菜や果物は25年度から、コメなどの穀類は27年度から、国の基準値を上回るものは出ていません。県環境保全農業課は、「安全安心を確保するにはこうしたデータがベースになるので、品目や検体の数も含めてこれまでと変わらず検査を徹底するとともに正確に情報発信していきたい」としています。

*2-4:https://www.agrinews.co.jp/p47514.html (日本農業新聞 2019年4月30日) 福島産 敬遠回避を 物流業界に農水省指導
 農水省は29日までに、復興庁と経済産業省の連名で、卸売業者や小売業者などの業界団体に対し、福島県産農産物を敬遠したり、買いたたいたりすることがないよう求める通知を出した。東京電力福島第1原子力発電所事故を受けて根強く残る風評被害の払拭(ふっしょく)につなげる。農水省は3月末、同県産農産物の流通実態について、2018年度の調査結果を発表した。主要な農産物である米や桃などの販売価格は全国平均を下回り、震災前水準まで回復していなかった。事業者や消費者へのアンケート結果からは、福島産を敬遠する傾向が浮かんだ。今回の通知はこうした調査結果を踏まえて出した。卸売業者や仲卸業者、小売業者などの業界団体に対しては、①同県産の評価に見合った販売を行うこと②同県産農産物であることだけで取り扱わなかったり買いたたいたりしないこと③同県産と他産地産を対等に比較して取扱商品を選択すること──などを求めた。3省庁は生産者団体に対しても通知を出した。農業生産工程管理(GAP)を着実に行い、県産農産物のイメージアップにつなげることや、積極的な販売促進活動を行うことを呼び掛けている。農水省は今回の通知について、流通業者や同県の生産者を対象に説明会を開くなどし、理解を呼び掛けていく考え。

<恐竜絶滅の中で鳥類だけが生き延びた理由>
PS(2019.5.1追加):*3に、「①恐竜絶滅で、なぜ鳥だけが生き延びたか?」「②空飛ぶ恐竜はほかにもいたはず」と書かれているが、小惑星が衝突して気候が寒冷化し、陸上動物が少なくなった地球で生き残る要件は、①食物が水中・地中・木の中などにある ②体毛がある などで、そのため、大型で動物の肉を切り裂く歯を持つ恐竜が絶滅し、嘴と羽毛を持つ鳥類が生き残ったのではないかと思う。

 
 トラ(肉食)   ワニ(肉食) イグアナ(草食)   2016.4.11日経BP
        現生動物の口と歯の比較       (アメリカの恐竜展より)

*3:https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/18/050100197/(日経BP 2018.5.2)恐竜絶滅、なぜ鳥だけが生き延びた?空飛ぶ恐竜はほかにもいたはず、科学で迫る鳥類進化の秘密
 ここ数年、鳥類の進化を解明する手がかりになるような発見が続いている。米国のニューメキシコ州では最近、原始的なネズミドリの化石が断片ながら見つかった。6200万年前のものと推定されるこの化石は現在のところ、大量絶滅後に生息していた鳥類のうち、最も古い部類に属する。このほか、ニュージーランドでは6100万年前の太古のペンギンの化石が最近見つかったが、同時代のほかのペンギンとは異なる外見をしていたと考えられる。こうした化石のすべてが、最新の遺伝子解析で明らかになった進化の道筋と一致しているようだ。「数千万年に及ぶ進化の結果、前肢を羽ばたかせて空を飛ぶ小型の恐竜が誕生しました。その後、小惑星が衝突した際、そうした体の構造が実に好都合だとわかったのです」と、英エディンバラ大学の古生物学者スティーブン・ブルサティは語る。「こうした鳥の一部が大量絶滅を生き延び、ほかの動物がほとんどいなくなった地球で繁栄することになりました」。しかしまだ、より難解な謎が残っている。なぜ、現在の鳥類の祖先だけが生き延びたのかということだ。その理由に関しては、さまざまな説が唱えられている。バース大学のダニエル・フィールドと彼の同僚たちは、森林の大規模な消滅が関係しているのではないかと考えている。白亜紀末の地球は現在よりも温暖で湿潤だった。生い茂った森には、さまざまな種類の初期の鳥たちが生息していて、現生の鳥と似たものも多かったと考えられる。繁殖能力の高さが鍵を握ったとする説もある。2017年、米フロリダ州立大学のグレゴリー・エリクソンが率いる研究チームは、非鳥類型の恐竜は卵を抱いて孵化させるのに数カ月かかっていたとする証拠を示した。一方、現生鳥類の多くは一般に繁殖頻度が高く、数日から数週間という短期間で孵化するので、小惑星衝突後の過酷な状況を生き抜くことができた可能性がある。世界各地で、研究者たちは鳥類の進化の謎に挑んでいる。南米やニュージーランド、南極で進行中の発掘調査から、新たな発見が近々もたらされると期待されている。さらに今後数年のうちに、より詳細で豊富な遺伝情報が得られることになりそうだ。中国広東省の深センにある国家遺伝子バンクでは、従来よりも高速で精度の高い技術を駆使して、2020年までに1万種を超す現生鳥類すべての全遺伝子のドラフト配列(おおよその配列)を解明する取り組みを進めている。このプロジェクトの成果を応用すれば、化石となった太古の鳥の特徴と現生の鳥の特徴を照合できるようになるはずだ。ある種の鳥だけが絶滅を免れたのは、それに適した条件をいくつも備えていたからだと考えるのが、生き残りの謎に対する最も妥当な答えといえそうだ。だからこそ、これからも証拠を積み上げ、新たな説を次々と検証していくことが大切なのだ。「私たちが取り組んでいるのは、6000万年以上も時間をさかのぼり、地球規模で起きた極めて複雑な出来事を解明することなのです」とフィールドは話す。それでも「相互に関連するこうした疑問を詳細に研究することによって、地球史上でも最大規模の深刻な大量絶滅を生き延びた鳥という生き物に対して、少しずつ理解が深まっています」

<皇室が絶滅しないために、求められる「国民統合の象徴」像>
PS(2019年5月1日追加):こういう場所に書いて申し訳ないが、*4-1のように、平成天皇が2019年4月30日に退位され、「退位礼正殿の儀」で「象徴としての私を受け入れ、支えてくれた国民に、心から感謝します。令和の時代が平和で実り多くあることを皇后と共に心から願います」とお言葉を述べられた。また、同年5月1日には、*4-2のように、令和天皇が即位され、「即位後朝見の儀」で「憲法に則り、日本国および日本国民統合の象徴としての責務を果たすことを誓う」と述べられた。これらはよいが、「剣璽等承継の儀」は皇位継承資格を有する男性皇族しか参列できないというのは、大日本帝国憲法下で女性を一人前の人間と認めていなかった時代ならともかく、現在の日本国憲法下では合憲でなく、国民感情に寄り沿ってもいない。
 そのため、昭憲皇后が洋装で積極的に人々の前に姿を見せ、貞明皇后が側室制度を無くし、美智子皇后が恋愛結婚して乳母制度を廃止し、雅子皇后がキャリアウーマンから皇室に嫁ぐなど、一歩先を行く女性像を示してきた皇室なら、次は女性天皇・女系天皇を出し女性宮家も認めて皇室を男女平等にするのが、女性を含む国民統合の象徴の役割だと考える。
 側室制度を作ったり、外部から天皇として男系男子を養子に迎えたりすることを、*4-3のように国民は望んでおらず、現在の環境にも合っていないため、天照大御神(皇祖神で女性)は、その改革を進めるために令和天皇御一家に女の子だけを授けたのかもしれない。
 なお、*4-4に、新天皇のお言葉全文が記載されているが、雅子皇后について宮内庁が2004年7月に公表した「適応障害」は病名として存在せず、いい加減だ。そのため、雅子皇后には、もともと持っている個性と能力を活かして新しい皇后像を作ってもらいたいが、皇后の能力は、知識や語学だけでなく容姿やファッションセンスも含んでおり、世界に出しても恥ずかしくない皇后であっていただきたいわけだ。そのためには、メディアでよく褒め言葉として使っている日本独特の「やさしさ」と意味なき「笑顔」では不足である。
 それにしてもメディアのキャラウーマン叩き(人権侵害と侮辱そのもの)はものすごく、私もこのキャラウーマン叩きの“空気”に大変迷惑したのだが、訴訟して勝っても謝罪もされないし、損害を回復するための補償もなかったので、決して忘れてやることも許すこともない。


2019.1.5産経新聞 2019.5.1産経BZ               2019.5.1朝日新聞

(図の説明:左図の予定に従って退位及び即位の儀式が行われる。左から2番目と3番目は平成天皇退位の儀式で、1番右は令和天皇即位の儀式のうちの「即位後朝見の儀」だ。私は、皇室の儀式を私費で賄うよりも、国費で賄って立派に行いつつ世界に放映した方が、皇室の歴史を感じさせたり、外交でプラスになったりすると同時に、歴史で稼げると考える)

*4-1:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO44368970Q9A430C1000000/?n_cid=BMSR3P001_201904301709 (日経新聞 2019年5月1日) 「国民に心から感謝」 天皇陛下の最後のお言葉全文 、退位礼正殿の儀
 天皇陛下が退位礼正殿の儀で述べられたお言葉は以下の通り。
 今日をもち、天皇としての務めを終えることになりました。ただ今、国民を代表して、安倍内閣総理大臣の述べられた言葉に、深く謝意を表します。即位から30年、これまでの天皇としての務めを、国民への深い信頼と敬愛をもって行い得たことは、幸せなことでした。象徴としての私を受け入れ、支えてくれた国民に、心から感謝します。明日から始まる新しい令和の時代が、平和で実り多くあることを、皇后と共に心から願い、ここに我が国と世界の人々の安寧と幸せを祈ります。

*4-2:https://www.nishinippon.co.jp/feature/gougai/article/506992/ (西日本新聞 2019年5月1日) 天皇陛下即位の儀 「憲法にのっとり責務果たす」
 天皇陛下は1日、皇后さまと共に皇居・宮殿「松の間」で、国事行為の「即位後朝見(ちょうけん)の儀」に臨み「憲法にのっとり、日本国および日本国民統合の象徴としての責務を果たすことを誓う」と、天皇として最初のお言葉を述べられた。即位後朝見の儀には、安倍晋三首相ら三権の長をはじめ都道府県の知事や議長、市町村長の各代表らが参列。皇嗣(こうし)秋篠宮ご夫妻ら女性も含めた成年皇族も同席した。陛下は「自己の研鑽(けんさん)に励むとともに、常に国民を思い、国民に寄り添う」と決意を誓った。朝見の儀に先立ち、陛下は松の間で国事行為の「剣璽(けんじ)等承継の儀」に臨んだ。即位後初めての儀式で、陛下は皇位のしるしとされる「三種の神器」のうち剣と璽(じ)(勾玉(まがたま))を、国の印章の「国璽(こくじ)」と天皇の印の「御璽(ぎょじ)」とともに受け継いだ。皇位継承資格を有する男性皇族のみが参列し、前例に倣って女性皇族は同席しなかった。

*4-3:https://digital.asahi.com/articles/ASM4H42NFM4HUTIL00P.html (朝日新聞 2019年4月18日) 「容認」7割超、女性天皇も女系天皇も 朝日世論調査
 新しい天皇陛下には被災地訪問などを期待し、将来の安定した皇位継承のために女性・女系天皇を認めてもよい――平成から令和への代替わりを前に実施した朝日新聞社の全国世論調査では、こんな傾向も浮かび上がった。新天皇に期待する役割を複数回答で選んでもらったところ、「被災地訪問などで国民を励ます」が最も多く66%、「外国訪問や外国要人との面会」が55%、「戦没者への慰霊など平和を願う」が52%――などとなった。被災地訪問や戦没者慰霊は平成の時代に天皇、皇后両陛下が力を入れてきた活動。象徴天皇の活動として、広く浸透したことがうかがえる。一方、安定した皇位継承のために、女性天皇や母方だけに天皇の血をひく女系天皇を認めるのかと尋ねたところ、女性天皇については76%、女系天皇は74%が、それぞれ認めてもよいと回答した。天皇の退位を認める特例法案が国会に提出される直前の2017年3~4月の調査でも、女性天皇は75%、女系天皇は72%が認めてもよいと回答しており、ほぼ同様の結果だった。また、今後の皇室の活動を維持するために、女性皇族が結婚後も皇室にとどまる「女性宮家」の創設については、50%が賛成、37%が反対と答えた。現在の皇室典範では、天皇になれるのは父方に天皇の血をひく「男系」の男性のみ。このため、5月の代替わり後、新天皇となる皇太子さまよりも若い皇位継承者は、5歳違いの秋篠宮さまと今年13歳になる悠仁さまだけになる。今回の天皇退位を実現する特例法ができた際、国会は付帯決議で、安定的な皇位継承を確保するための諸課題などを検討して国会に報告するよう政府に求めた。今回の調査で、安倍内閣を支持すると答えた層の意見をみてみると、女性天皇容認は72%、女系天皇容認は70%で、全体の76%、74%をそれぞれ下回った。逆に「男性に限った方がいい」は25%で、全体の19%を上回った。安倍首相の言葉を「大いに信頼できる」と答えた層でみると、女性・女系を認める意見と男性・男系に限るべきだとする意見が拮抗していた。
新天皇に期待する役割(複数回答)
 ・被災地訪問などで国民を励ます        66%
 ・外国訪問や外国要人との面会         55%
 ・戦没者への慰霊など平和を願う        52%
 ・宮中祭祀(さいし)など伝統を守る      47%
 ・国民体育大会など国民的な催し出席      36%
 ・国会召集など国事行為に専念する       21%

*4-4:https://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2019050190135516.html (東京新聞 2019年5月1日) 「常に国民を思い、寄り添う」 天皇陛下即位お言葉
 一日に即位した天皇陛下は午前、皇居・宮殿の正殿「松の間」で、皇位継承儀式「剣璽(けんじ)等承継の儀」と、国民の代表と会う「即位後朝見(ちょうけん)の儀」に臨まれた。朝見の儀で陛下は、初のお言葉で「常に国民を思い、国民に寄り添いながら、憲法にのっとり、日本国および日本国民統合の象徴としての責務を果たすことを誓います」などと述べた。この日午前零時、「平成」から代替わりした「令和」がスタート。陛下は五十九歳で、戦後生まれの初の天皇となった。皇后さまは五十五歳。剣璽等承継の儀と即位後朝見の儀は、憲法に定める天皇の国事行為として行われた。剣璽等承継の儀では、陛下が皇位の証しとされる「三種の神器」のうち、剣と勾玉(まがたま)(璽(じ))、国印の国璽(こくじ)と天皇印の御璽(ぎょじ)を継承した。即位後朝見の儀では陛下のお言葉に続き、安倍晋三首相が国民代表として「天皇陛下を象徴として仰ぎ、平和で希望に満ちあふれ、誇りある日本の輝かしい未来を創り上げていく決意です」などと祝意を述べた。剣璽等承継の儀には、男性の成年皇族である皇嗣(こうし)秋篠宮さまと常陸宮さまのほか、安倍首相、大谷直人最高裁長官、大島理森衆院議長、伊達忠一参院議長の三権の長と閣僚、最高裁判事ら二十六人が参列。皇位継承権のない女性皇族は立ち会わず、片山さつき地方創生担当相が憲政史上初めて女性として参列した。即位後朝見の儀には、剣璽等承継の儀の参列者に加え、皇后さまをはじめ女性の成年皇族、地方自治体の代表ら約三百人が参列した。これに先立ち、陛下は即位後初の国事行為として両儀式を行うとの閣議決定を裁可した。
◆天皇陛下お言葉全文
 日本国憲法および皇室典範特例法の定めるところにより、ここに皇位を継承しました。この身に負った重責を思うと粛然たる思いがします。顧みれば、上皇陛下にはご即位より、三十年以上の長きにわたり、世界の平和と国民の幸せを願われ、いかなる時も国民と苦楽を共にされながら、その強い御心をご自身のお姿でお示しになりつつ、一つ一つのお務めに真摯に取り組んでこられました。上皇陛下がお示しになった象徴としてのお姿に心からの敬意と感謝を申し上げます。ここに、皇位を継承するに当たり、上皇陛下のこれまでの歩みに深く思いを致し、また、歴代の天皇のなさりようを心にとどめ、自己の研鑽に励むとともに、常に国民を思い、国民に寄り添いながら、憲法にのっとり、日本国および日本国民統合の象徴としての責務を果たすことを誓い、国民の幸せと国の一層の発展、そして世界の平和を切に希望いたします。
<天皇陛下> 名前は徳仁(なるひと)。1960年2月23日生まれで、幼少時の称号は浩宮(ひろのみや)。学習院大文学部史学科を卒業後、同大大学院に進学。英オックスフォード大にも留学した。89年1月、昭和天皇の逝去に伴い皇太子となり、93年6月に元外交官の雅子さまと結婚した。学習院女子高等科3年の長女愛子さまと3人家族。ライフワークは水問題に関する考察で、2013年と15年、国連本部で開かれた「水と災害に関する特別会合」で講演した。趣味はビオラ演奏と登山。
<皇后雅子さま> 1963年12月9日、後の外務事務次官小和田恒氏と妻優美子さんの長女として生まれた。85年に米ハーバード大を卒業。学士入学した東京大を中退後、87年4月に外務省に入り、日米の経済外交に携わった。86年10月、東宮御所で開かれたスペインのエレナ王女歓迎会で、天皇陛下と出会い、93年6月に結婚した。2001年12月に長女愛子さまを出産。03年12月から療養生活に入り、宮内庁は04年7月、病名を「適応障害」と公表した。現在も療養が続いている。

PS(2019.5.2追加):雅子妃に対するバッシングは、*5に書かれているとおりで、この内容が当時の週刊誌(私は、そのような週刊誌は買わないので美容院で読んだ)に掲載され、それを人権侵害や侮辱だとすら思わないほど女性蔑視の“空気”が世の中に蔓延していた。私は、世界の中で「適応障害」を起こしたのは、このようなことを言いたてた日本国民の方だと思う。

*5:https://rondan.net/17760 (論壇ネット 2019.3.12) 【雅子さま】別居・離婚・廃太子論……数々の批判を乗り越えて“新”皇后に
Contents
1 長期療養中の雅子さま
2 別居
3 離婚
4 小和田家が引き取れ
5 廃太子
6 廃太子した後の皇太子
7 まとめ
1 長期療養中の雅子さま
 適応障害になられてから、久しく公務や祭祀を欠席されている雅子さま。元はと言えば「御世継ぎを」のプレッシャーから適応障害になられ、今度はその適応障害を批判されるという負のスパイラルの中にありました。一連の雅子さまバッシングの中核を担った論者としては西尾幹二氏や、橋本明氏、保坂正康氏などが有名です。一方で、雅子さま擁護論を展開した論者としては、竹田恒泰氏や小林よしのり氏が挙げられます。一時はバッシングに次ぐバッシングの嵐だったものの、最近になって落ち着いてきたように思います。これも適応障害など精神疾患に関する国民の理解が進み、小室圭さん問題に端を発する秋篠宮家に注目が集まっていることなどが挙げられるでしょう。またこの5月に控えた御譲位も大きく影響しているように思えます。今回は、そんな雅子さまへのバッシングを振り返ってみたいと思います。特に取り上げるのは、橋本明「「別居」、「離婚」、「廃太子」を国民的議論に」『WiLL』(2009.9号)です。この記事は、「廃太子論」にまで飛び火したことで非常に有名です。またこの記事と関連する書籍や対談も取り上げていきたいと思います。
2 別居
 橋下氏の理論は、雅子さまのご病状を回復させることが重要であるとして、①別居、②離婚という二つの方法を挙げ、その二つが適用できずご病状も改善しないのなら③廃太子(秋篠宮殿下を皇太子にして、現・皇太子殿下は親王に格下げ)すべきだという内容です。雅子さまのご病状を心配しているような書きぶりで、実際には東宮家への強い批判が込められた文章です。まず、別居を薦める下り。
[雅子妃がご病気を克服されるということは健康を取り戻すことです。徹底的に治療する環境を作るというのは一つの方策だと思います。つまり、別居して治療に専念するということです。
橋本明「「別居」、「離婚」、「廃太子」を国民的議論に」『WiLL』(2009.9号)]
 より具体的には次のように。
[この際思い切って雅子妃を皇室から遠ざけ、ストレス因子の存在しない空間に身を移し変えて回復に専念する態勢を創出してはいかがだろうか。そこでは公務や育児の責務を逃れ、治療に専念していただく。公務を抱える殿下、学業がある愛子内親王とは別居となる。女官なども遠ざけ、身の回りの世話は専門の看護師あるいは介護者が当たればよい。橋本明『平成皇室論——次の御代へむけて』朝日新聞出版, 2009.]
 具体的な療養として、栃木の御料牧地でのアニマルセラピーが挙げられるなど、おちょくってるのか、大真面目なのか解らない文章が続きます。きっと前者なんでしょうけど。もちろん別居して改善する保証などどこにもないのですから、「別居すればいい」などとは橋本氏の妄想以外の何物でもない選択肢です。
3 離婚
 さらに橋本氏の妄想は加速して「離婚」を薦めます。
[もちろん離婚はあり得ますが、離婚は両者の合意に基づくもので一方的には決められません。決められない場合は民間であれば離婚調停を行うわけですが、皇室にはそれを保護する法律の後ろ盾はあるのかということです。いったいどこの裁判所で誰が調停員になるのか。ですから常識的にはないにしても、ご結婚が皇室会議の賛同を得なければ成立しないのと同じように、皇室会議に持ち出せば離婚もあり得ると思います。橋本明「「別居」、「離婚」、「廃太子」を国民的議論に」『WiLL』(2009.9号)]
 ただし、同氏による書籍では、離婚という選択肢もあるが、現実的には離婚など有り得ないだろうという文脈でこれが語られています。
[雅子妃の静養が長引くにつれ、ご夫妻をめぐる報道に「離婚」という文字が散見されるようになった。雅子妃を皇室という環境から解放して差し上げようといった同情的な論調から、東宮のあり方に疑問を呈するむきまでさまざまだが、皇太子が雅子妃を愛し、守り続ける覚悟に今後も生きるとすれば離婚はもとより問題外となる。仲睦まじいいまのお二人の姿からも、離婚などという事態は想像し難い。橋本明『平成皇室論——次の御代へむけて』朝日新聞出版, 2009.]
 なお法的に皇族が離婚できるのかどうか議論があるようです。しかしここで重要な点は、橋本氏は、皇太子殿下と雅子さまの「離婚」を現実的な選択肢として語っているのではなく、単に雅子さまが皇室不適格だとなじるために言っているにすぎません。先の「別居」、今回の「離婚」、これに続く「廃皇太子」いずれも実行可能な選択肢として語られているのではなく、極論を持ち出して東宮家(特に雅子さま)を貶めたいだけの言論であるように思えます。
4 小和田家が引き取れ
 このような橋下氏による雅子さま攻撃の根源的原因は、どうやらその父・小和田恆氏が左派リベラル的活動をしていたことに起因するようです。本筋とは全く関係の無い人格攻撃を持ち出して次のように言っています。
[橋本 常識的に考えて、「私の娘は役に立ちませんから引き取らせて頂きます」と申し出るのが本当の親の役目だと思います。ところが、小和田ご夫妻には、そのような意識はかけらもありませんでした。私は個人攻撃をするつもりはありませんが、国家の問題として言わざるを得ません。ところが、小和田ご夫妻には、そのような意識はかけらもありませんでした。私は個人攻撃をするつもりはありませんが、国家の問題として言わざるを得ません。小和田恆氏は、男女共同参画の産みの親のような方です。小和田氏が国連大使の時代に、国際婦人年があり、その総会で決まったことを日本に持ち帰って法律化しようと、労働省の婦人少年局長と渡り合いました。その時の記録を見ると小和田氏は、日本も男女同格で、女性も権利をもって働く国にならなければ駄目だと明確に言っています。婦人少年局長のほうがまだ尻込みしていて、そこまでまだいきませんと言っているくらいです。そらく今の雅子妃の姿を見ると、小和田氏は「こんな娘で申し訳ない」という気持ちではなく、「こんな娘にしたのは誰彼のせいだ」と思っているでしょう。橋本明×西尾幹二「雅子妃の御病気と小野田王朝」『WiLL』(2009.10号)]
 橋下氏の理論からすれば、皇室とは平等や人権とはまったく別個の世界であり、そこに適応できない雅子さまとその両親が悪いということのようです。この様な理論は保守論客の中でまま見られるものです。しかし、これは「開かれた皇室」を目指す現皇室の在り方と相容れていないことを留意すべきです。今上陛下も皇太子殿下も秋篠宮殿下も、結婚に関しては当時としてリベラル的な選択をした恋愛結婚です。また、平等という観念にも皇室は寄り添おうと努力しています。被災者を前にしても昭和天皇は決して膝を折りませんでしたが、今上陛下は膝を折り視線の高さを同じくして声に耳を傾けています。
5 廃太子
 このように「別居」して治療してもダメ、「離婚」も有り得ないのであれば、「廃太子」するしかないと言い出します。
[治療をしても雅子妃がよくならない場合について、もう少し考えてみよう。離婚という事態は、お二人のお気持ちの中に一切ないであろう。その場合、仮に皇太子が以下のように考えたとしたらどうだろうか。自分はあくまでも雅子妃と愛子内親王と共に暮らして一家庭という単位で人間として幸福を追求する。ただし、この形態のまま践祚・即位した場合、皇室のあるべき運営に不都合をきたす。よって天皇にはならない──。このように考えた場合は、立太子の儀を経て皇位を継ぎ、次期天皇に即位する既定路線が定まっているこれまでの生き方を否定し、その立場を廃するという道も選択肢のひとつとして考えられる。橋本明『平成皇室論——次の御代へむけて』朝日新聞出版, 2009. ]
 過去の歴史で「廃太子」は実際にあったことのようですが、皇太子殿下ご自身が心身健康なのに、廃位を求めるというのは流石に滅茶苦茶でしょう。事実、こっぴどく批判されています。要点は次のように。
[もう一は、廃太子、つまり秋篠宮を皇位継承第一位にするという方策もあります。皇室典範の第三条には、皇太子が心身を病んだりして公務ができない場合、皇位継承順位の変更を皇室会議で認めることが定められているからです。これについても先述の所氏は、「規定の趣旨はあくまで皇太子さま本人に決定的な不都合が生じた場合であって、雅子さまの病気が皇位継承の順番を変える理由になるはずがありません」と言います。さらに、同誌で小田部雄次静岡福祉大教授は、「公務は天皇の単独が基本で、夫婦でやるのは今の両陛下が欧米型を取り入れてから。雅子さまが公務をやらないことを理由に離婚されるとは、おかしな話です。周りが勝手な皇室像を押し付けていると感じます」という。橋本明「「別居」、「離婚」、「廃太子」を国民的議論に」『WiLL』(2009.9号)]
 つまり、雅子さまのご病状の如何で皇太子殿下が継承権を辞退する必要はないし、雅子さまがご病気で公務や祭祀ができなくても問題ないということです。特に、「両陛下が公務を行なうというのは平成流であって、皇室の伝統ではなかった」ことは、今後の雅子さまのご公務の在り方を考えるうえで重要でしょう。
6 廃太子した後の皇太子
 また「廃太子」となった後の皇太子殿下の処遇というのは次のようなもの。
[もし「廃太子」が現実になったと想定しても、徳仁親王の皇族というお立場を定める身位は「親王位」にあり、皇太子を放棄しても基本的身分に変更はない。徳仁親王家が皇族として存在することに何らの変化も生じない。ご家族とて同じである。宮家として公務に専念する立場にも変化はない。皇位継承順位もいままでの一位から三位に下がるだけだ。ただし、その際には新たに立太子礼を他の皇族について挙げ、皇太子として内外に宣明する手続きと宮中行事が必要となる。具体的に言えば、皇次子秋篠宮文仁親王が立太子礼を経て皇太子になるということだ。同時に徳仁親王には新宮家が創設され、宮号が賜れる。皇位継承順位は秋篠宮、悠仁親王、そして徳仁親王となる。東宮家のご身位は、いまの秋篠宮家と同格になる。橋本明『平成皇室論——次の御代へむけて』朝日新聞出版, 2009. ]
 具体的なのは結構ですが、秋篠宮殿下が“皇太子”になったら継承順位は二位じゃないの? こういう基本的なところでオカシナところが目につきます。単に東宮家バッシングしたいだけなんでしょうね、きっと。
7 まとめ
 以上、雅子さまバッシングの極まり「別居」「離婚」「廃皇太子論」を見てきました。東宮家叩きが収まり、秋篠宮家批判が強まりつつある今となっては、時代遅れの議論である感が否めません。当時、雅子さまや東宮家を叩きに叩いていた評論家たちが、今になって皆黙っているのは奇妙な現象であると言わざるを得ません。手のひらを返して「秋篠宮家廃嫡」すら主張できないほどの惨状です。所詮その程度の信念だったということでしょうか?雅子さまは、 様々なバッシングを浴び抜いて、とうとうこの五月に“新”皇后になられます。果たしてどの様な“象徴”となられるのか、もうすぐ明らかになります。

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2019.4.15 新技術の普及と銀行・産業界における本物のリーダーシップの必要性 (2019年4月17、18、19、20、22、23、24、26、27日追加)

    フクイチ3号基      2019.4.15東京新聞     2019.4.3東京新聞

(図の説明:左図は、フクイチ3号基の爆発直後と現在の画像で、中央の図は、使用済核燃料を敷地内で移動させる仕組みだ。また、右図は再稼働しているか否かを示す全国の原発の様子だが、フクイチの影響がなかった西日本で危機感が薄いため、最悪の事態にならないことを祈る)

(1)再エネの普及を妨げている原発
1)経団連の原発推進提言について
 原発メーカーである日立出身の中西氏を会長とする経団連が、*1-1のように、「①原発は脱炭素社会に不可欠なエネルギーであり、再稼働・新増設が必要」「②最長60年の既存原発の運転期間を延長し、審査等で停止していた期間を運転期間に含めない事実上の延長をすべき」「③政府のエネルギー基本計画は2030年度の原発発電割合を20~22%とする目標を掲げているのに、廃炉が進めば目標達成が困難」等々、世界に逆行した先見の明のない提言をしている。
 
 しかし、①は、二酸化炭素以外の公害を無視しており、②は会計・税務の常識から大きく外れている。何故なら、60年という運転期間は機械装置の中では異常に長く、例えば非常用発電機の法定耐用年数は15年だ。そのため、延長前の40年ならまあいいかという程度であるのに、原発事故後に耐用年数を20年延長して60年にするなど狂ったとしか思えない。さらに、稼働せずに停止していればさびつくため、稼働していないのは運転期間の延長理由にはならない。

 また、③については、再エネが急速に普及してコスト低減している中、政府の2030年度の原発発電割合20~22%という目標は根拠もなく高すぎる設定をしているため、この目標を達成するために原発の再稼働・新増設を進めるなど思考停止も甚だしい。

 さらに、使用済核燃料は行き場がなく、核燃料サイクルは破綻し、高レベル放射性廃棄物の処分場もなく、安全強化や事故対応でコストが高騰した原発は低コストでもないため、世界の潮流に逆らってまで原発を推進するのは無責任である。それより、経産省や経団連が取り組むべき課題は、再エネを活用して0エミッション社会を作り、その技術を世界に売り出すことだろう。

2)やっと核燃料の取り出しを始めたフクイチ
 東京電力は、事故後8年経過した2019年4月15日、*1-2のように、フクイチ3号機の原子炉建屋上部にある使用済核燃料プールから冷却保管中の核燃料を取り出し始めたそうだが、その間には屋根を取り外して強い放射線を拡散し続けていた時期もあり、その無神経さには呆れる。

 そして、取り出した核燃料は2年もかかって敷地内の共用プールに移すだけであり、クレーンなどの機器に不具合が相次ぐなど、日本の中でも低い技術で形だけの原発事故処理をして、危機感もなく遊んでいるように見える。

3)フクイチ近海の水産物について
 韓国だけでなく、被災地付近からの水産物の輸入を禁止している国は多いが、*1-3のように、日本政府は福島など8県からの全水産物の禁輸措置を行っている韓国をWTOに提訴し、WTO上級委員会が禁輸を容認する報告書を出した。

 私は、安全性の確保は自由貿易に優先するため、これらの禁輸措置を行っている国々を「科学的根拠が無い」としてWTOに提訴すること自体に見識が伺われず、それでは日本国民も困るのだが、取り出した使用済核燃料を敷地内の共用プールに移して冷やし続ける行為は、汚染水の流出防止や水産業の復興には何ら寄与しないことを付け加えなければならない。

(2)再生医療は時間をかければ犠牲者が増えること
1)再生医療の普及について ← 「焦らず安全重視で丁寧に」という言葉は意味不明
 *2-1に、「再生医療で病気やけがを治す試みが大学病院などで相次いでいるが、期待が大きい一方、実用化のペースが速すぎると危ぶむ声もある」と書かれている。しかし、遅ければその患者さんが治療不能になるため、「安全重視で焦らず丁寧に治療法を確立する」というのは、言葉だけが踊っている意味不明の文章だ。

 そもそも、医療は時間を争って治療すべきもので、ゆっくりすればひどくなったり、治らなくなったり、命を失ったりする。また、従来の治療法ではうまく治らず、それよりよい方法だと考えられるからこそ、新しい治療法である再生医療を開発しているのであるため、「速すぎるのがいけない」という主張は全くおかしい。

 また、海外には、脊髄損傷を本人の脂肪幹細胞で治療したと言っていた権威もおり、幹細胞を使うのは正解だが、日本のように早々にiPS細胞のみに特化したのは他の可能性を封じ込めたという意味で愚かな決定だった。

 そして大切なことは、一定数以上の治験をしなければ、安全性・有効性に関するデータの裏付けもとれないため、意味も分からずに変な論理で先進治療を妨害するのは止めた方がよい。そのため、メディアには各学会に行って内容を理解して取材し、正しい記事を書く能力のある記者を置いておいたらどうかと考える。

2)腎臓病の例で説明する
i) 人工透析について
 公立福生病院で、*2-2のように、本人の意思を十分確認した上で人工透析を中止し、44歳の女性が死亡したため、病院は「問題なし」としているものの、離脱判断が正しかったか否かが問題になった。人工透析はシャントを永久に作ったまま、1回4時間・週3回くらいのペースで透析しなければならないため、透析から離脱したくなるのもよくわかるが、現在はそれを我慢して人工透析で現状維持するか腎移植するかしかなく、提供される腎臓は少ないわけである。

ii) 腎臓の再生医療について
 そのような中、*2-3のように、ES細胞(胚性幹細胞)を使って、ラットの体内にマウスの腎臓を作ることに自然科学研究機構や東京大らのグループが成功し、ES細胞やiPS細胞などの多能性幹細胞から腎臓という複雑で大型の臓器の再生に世界で初めて成功したそうだ。これは、種の近さから言えば、ヒトの腎臓をサルの体内に作ったのと同じくらいだが、将来はヒトの臓器をブタなどの動物の体内で作ろうとする研究が進められている。

 このほか、*2-4のように、徳島大学の安部准教授らが、腎臓を形成する複数の細胞を混合する共培養により、生体に近い腎臓の特性を持った立体的なKLSの作製に成功し、KLSは24時間の培養ででき、低コスト・短期間での作製が可能だそうだ。

 私は、このやり方で純粋な本人の腎臓を作った方がうまくでき、慢性腎不全で新たに人工透析を受ける患者は日本国内で毎年4万人おり、世界ではもっと多いため、速やかに創薬すべき実用化の段階に入っていると思う。そして、これが実用化されれば、患者さんの苦しみが本当の意味で緩和されると同時に、現状維持するだけの苦しくて高額な医療費の削減ができるわけだが、それには資金が必要で、まずはクラウドファンディングや銀行貸付が考えられるわけである。

3)白血病の例でも説明する
 競泳女子の池江璃花子選手の白血病が公表された後、*3-1のように、骨髄移植のドナー(提供者)登録に関心が集まっているそうだが、ドナーになるのも大変で、適合しても移植が実現するのは6割程度だそうだ。
  
 私の東大の友人にも35歳で白血病になり、弟さんに骨髄を提供してもらって6カ月の入院治療後に回復した人がいるが、彼は「だんだん弟の体になっていくような気がする」と言っていた。血液を作る骨髄細胞の多くが弟さんの細胞に変わっているのだから、確かにそうなるのだろう。

 そのため、池江璃花子選手のように、身体能力が才能にあたる人は、他の人の細胞が入ると今まで通りの強い選手ではいられないかも知れない。そのため、*3-2のような自分の免疫細胞の攻撃力を高める「CAR―T細胞」を利用した新型がん免疫製剤や、自分の骨髄細胞の健康な部分を使って治療できれば一番よいと思われる。しかし、これらの治療も、早く実用化して価格を下げなければ、使えずに亡くなる人が増えるわけだ。

(3)ゲノム編集食品について
 ゲノム編集された生物を使った食品の扱いについて、*4-1のように、厚労省がパブリックコメントを実施し、有識者調査会がまとめた報告書は「開発中の大半のゲノム編集食品は安全性審査を必要とせず、国への情報提供だけで販売を認めてよい」とする内容で、安全管理の杜撰さが浮き彫りになった。
 
 そのゲノム編集は未知の部分が大きいからいけないというよりは、①害虫がつかなくなる遺伝子を入れたり ②筋肉が多くなる遺伝子を入れたりして、それが食べた人に与える影響は検証されていないことが問題なのである。また、害虫は、虫の方も進化して耐性ができるため、より強い遺伝子を入れなければならなくなり、それが自然界に拡散すれば環境にも悪影響を与える。

 そのため、少なくとも消費者が選択可能なように、ゲノム編集食品の表示は不可欠だ。また、報告書では、その生物にはない遺伝子を導入する場合は遺伝子組み換え食品と同様の安全性審査が必要と判断したそうだが、食べ物でない場合は検証の仕方が異なるし、遺伝子の入れ方によっても異なるため、薬と同様、個別にしっかり検証されていることを条件とすべきだ。

 このような中、*4-2のように、「ゲノム編集食品は、予防原則で安全徹底を」と日本農業新聞が書いているとおり、買う側の選ぶ権利を保障するための食品表示は不可欠であり、顧客ファーストの精神がなければ消費者に選ばれないため、どんな産業も成功しない。作る人も、それがわかっているのである。

(4)事業承継について


      2018.7.31産経新聞          事業承継税制の2018年改正

(図の説明:左図のように、中小企業の経営者も高齢化し、後継者がいないため廃業して技術が失われるケースが増えた。そのため、中央と右の図のように、2018年改正で10年間の特例として贈与税・相続税免除の要件が大幅に緩和された。これにより、後継者は複数でも親族外でも税制優遇を受けられるようになり、多様な形の事業承継が考えられるようになった)

 これまで、オーナー経営の中小企業の株式を後継者に移して代替わりしようとすると、オーナーの生前なら贈与税、死後なら相続税が発生し、事業承継する後継者に不利な点が多いため、黒字でも廃業して技術が廃れる事例が少なくなかった。

 そこで、*5-1のように、事業承継を円滑に進められるよう、政府が2018年度に「事業承継税制」を改正し、納税猶予割合が8割から全額になり、対象株式も発行済株式総数の3分の2から全てに拡大され、事業承継時の税負担をゼロにすることが可能になった。また、孫の代まで経営を引き継げば、猶予されていた税負担は免除されるそうだ。

 さらに、*5-2のように、個人事業主が事業承継しやすい環境をつくるため、子が事業を継ぐ時に土地・建物にかかる贈与税支払を猶予する「個人版事業承継税制」も作り、2025年までに70歳を超える約150万人の個人事業主が引退で廃業を迫られるのを防ごうとしている。その制度の対象になるのは、地方の旅館・町工場・代々続く酒蔵などの家族経営をしている個人事業主で、新制度では土地・建物・設備にかかる税金の支払いが猶予されることになるそうだ。

(5)地銀を含む銀行の役割と今後の展望
 金融庁が、*6-1のように、地方銀行の監督指針を見直して、収益が低迷する地銀の逃げ道を断って経営改革を促す方向へかじを切るそうだが、人口減少や高齢化には対応できるものの、金融緩和と超低金利が銀行の利益にマイナスであることは明らかだ。

 しかし、経済活動を行っている企業である以上、一つの「特効薬」があるわけではなく、顧客ファーストで考えた時に必要とされるサービスを安く提供しているか否かが分かれ目になる。

 もちろん、*6-2のように、店舗・人員配置の合理化などで生産性を上げ、高付加価値化することは必要だが、人口減少は産業構造改革を通じてビジネスチャンスになる上、上記(1)~(4)に関するサービスもまさにニーズであるため、次の有望企業(=融資先)を育てて将来の自己資本比率や収益力を改善する手段にできる筈だ。

 農林中央金庫は、*6-3のように、ベトナム、フィリピンの大手銀行と包括的な業務提携を結び、現地銀行ならではの情報やネットワークを生かして日本の農業法人等の販路開拓や食農関連企業の海外進出・事業拡大の支援を本格化させるそうだ。また、オランダの協同組合金融機関「ラボバンク」とも既に提携しており、農業法人やJAグループ、食品関連企業に対する現地情報の提供・ビジネスマッチング・現地での協調融資・企業の合併・買収(M&A)への助言、現地通貨の供給などを目指すそうだ。

 このうち、国際化・ビジネスマッチング・M&Aの助言・事業承継の相談などは、地方銀行もできなければならない時代になっている。

・・参考資料・・
<再エネの普及を妨げる原発>
*1-1:https://www.hokkaido-np.co.jp/article/295255 (北海道新聞 2019.4.11) 経団連の提言 身勝手な原発擁護策だ
 構造的な問題を度外視した身勝手な原発回帰論と言うほかない。経団連が電力政策に関する提言を2年ぶりに発表した。原発を脱炭素社会に不可欠なエネルギーとし、再稼働や新増設を求めた。最長60年となっている既存原発の運転期間の延長や、審査などで停止した期間を運転期間に含めないで運転できる期間を事実上延ばすことも新たに盛り込んだ。東京電力福島第1原発事故は、原発がひとたび事故を起こせば取り返しがつかない現実を突きつけた。その教訓を生かす方策が見当たらない。再生可能エネルギーが急速に普及する中、安全基準の強化でコストが高騰した原発は、もはや有望なビジネスでもない。国民の不安に応えようとせず、世界の潮流に逆らって原発を推進するのは理解に苦しむ。安倍晋三政権や経済産業省は再稼働推進の姿勢を取るが、経団連の提言に乗って原発回帰を加速させることがあってはならない。提言は、温室効果ガスを排出する火力発電への依存度が8割を超え、再生エネで賄うにも限界があり、原発が不可欠だとした。政府のエネルギー基本計画で2030年度の原発の発電割合を20~22%とする目標を掲げたことにも触れ、「廃炉が進めば達成が困難」と再稼働の必要性を訴えた。だが計画は原発依存度を低減すると明記している。目標達成のために再稼働するのは本末転倒だ。原発の大きな問題は使用済み核燃料の行き場がないことである。核燃料サイクルは事実上破綻し、高レベル放射性廃棄物の処分場選定も進んでいない。福島の事故原因は解明されておらず、廃炉のめども立たない。こうした負の側面をどう克服するか説明を尽くさず、再稼働や新増設を訴えるのは無責任である。提言を主導したのは原発メーカー、日立製作所出身の中西宏明会長だ。中西氏は「再稼働をどんどんやるべきだ」と発言し、原発と原爆が混同されて再稼働が進まないとの認識を示したこともある。日立は英国の原発建設計画を凍結したばかりで、原発ビジネスの行き詰まりを中西氏は分かっているはずだ。経団連会長の立場を利用して原発産業を守ろうとしているとの疑念も招きかねない。経団連が取り組むべきは、再生エネを有効活用して原発依存を脱する道筋を示すことだ。政治への発言力をそのためにこそ生かさなければならない。

*1-2:https://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2019041590135634.html (東京新聞 2019年4月15日) プール核燃料、搬出開始 福島第一事故8年 3号機566体
 東京電力は十五日、福島第一原発3号機の原子炉建屋上部にある使用済み核燃料プールから、冷却保管中の核燃料の取り出しを始めた。事故から八年、炉心溶融(メルトダウン)を起こした1~3号機でプールからの核燃料取り出しは初めて。現場は放射線量が高く人が長時間いることができない。ほとんどの作業が遠隔操作であるため、難航することが予想される。3号機プールには、使用済みと未使用の核燃料計五百六十六体を保管。使用済み核燃料は長期間、強い放射線と熱を発するため、水中で冷やしている。東電は四月中に未使用の七体を取り出し、六月下旬から作業を本格化させる方針。核燃料は敷地内の共用プールに移す。取り出しを終えるまでに約二年かかる見込み。作業は午前八時半すぎに開始。建屋から五百メートル離れた免震重要棟内の操作室で、作業員がモニターの画面を見ながら取り出し機器を操作した。燃料取扱機で核燃料を一体(長さ四・五メートル、十五センチ四方、重さ約二百五十キロ)ずつ持ち上げ、水中に置いた専用容器(重さ約四十六トン)に七体入れる。一体を入れるのに二、三時間かけ、この日は午後八時まで作業する。一体目は、一時間半ほどで容器に入れることができた。その後、容器をクレーンで三十メートル下の一階に下ろし、トレーラーで共用プールに運び出す予定。3号機の核燃料取り出しは当初、二〇一四年末にも始める計画だったが、高線量が作業の壁となった。外部に放射性物質が飛び散らないよう、建屋上部にドーム型カバーを設置。東電は昨年十一月に取り出しを始める計画を示したものの、クレーンなどの機器に不具合が相次ぎ、点検や部品交換のため延期していた。4号機では、一四年末にプールから核燃料千五百三十五体を取り出し済み。地震発生時は定期検査で停止中で原子炉内に核燃料がなく、炉心溶融を免れた。水素爆発で建屋上部が吹き飛んだが線量は低く人が中で作業して一年程度で終えた。
◆解説
 福島第一原発3号機のプールからの核燃料取り出し作業は、同じく炉心溶融が起きた1、2号機の核燃料取り出しの行方を左右する。いずれも建屋内の放射線量が高く、人が中で長時間作業できず、遠隔操作で進めざるを得ないからだ。3号機プール周辺の線量は毎時五四〇マイクロシーベルトで、二時間で一般人の年間被ばく線量限度に達するレベル。プールに残る細かな汚染がれきを、アーム型機器で取りながらの作業だ。クレーンなどでトラブルが起きれば、人が建屋内で修理しなければならない。これら未経験の作業をこなし、ノウハウを積む必要がある。東電は1、2号機のプール内の核燃料取り出しを二〇二三年度に始める計画を立てたが、両号機は3号機よりも線量が高く厄介だ。特に1号機は建屋最上階に大きながれきが積み重なり、原子炉格納容器上のコンクリート製の巨大なふたがずれ落ちている。ふたのずれを元に戻さなければ、3号機同様の取り出し機器は設置できない。1号機は三百九十二体、2号機は六百十五体の核燃料がプールに残る。これらを高台の共用プールに移すことはリスク軽減のため不可欠。ただ3号機の作業次第では、1、2号機の取り出し計画の大幅な見直しが迫られる。

*1-3:https://digital.asahi.com/articles/DA3S13975075.html (朝日新聞 2019年4月12日) 日本の水産物、禁輸容認 韓国が逆転勝訴 WTO上級委
 韓国が東京電力福島第一原発事故の被災地などから水産物の輸入を全て禁止していることについて、世界貿易機関(WTO)の紛争を処理する上級委員会は11日、判決に当たる報告書を公表した。韓国に是正を勧告した第一審を大幅に修正して禁輸を容認し、事実上、日本の逆転敗訴となった。これで韓国の禁輸はしばらく続くとみられる。勝訴を追い風にほかの国・地域にも輸入規制の緩和を求める予定だった日本の戦略が狂う可能性が高い。日本政府関係者によると、上級委の報告書は、第一審の紛争処理小委員会による判断の主要部分が「誤りだった」と認定。その上で、福島など8県の全水産物の禁輸を「恣意(しい)的で不当な差別」として是正を求めた判断の主要部分を覆したという。上級委が第一審の判断を変えるのは異例だ。WTOの紛争処理は二審制のため、これで禁輸を容認したWTOの判断が確定するとみられる。ある政府関係者は「日本にとって残念な結果」と話した。韓国は2013年9月、同原発から汚染水が流出しているとして輸入規制を強化した。青森、岩手、宮城、福島、茨城、栃木、群馬、千葉の8県の水産物については輸入禁止の対象を一部から全てに拡大した。これに対し日本は15年8月、「科学的な根拠が無い規制だ」とWTOに提訴。18年2月、紛争処理小委員会では日本が勝訴したが、韓国が「国民の健康保護と安全のため」として上級委に上訴していた。今回の上級委の報告書は30日以内に正式に採択される見込みだ。農林水産省によると、原発事故後、一時54カ国・地域が日本産食品の輸入を規制した。撤廃が進む一方、いまも23カ国・地域で規制が続く。政府は、規制緩和の見通しを示さず、逆に規制を大幅に強化した韓国を提訴したが、ほかは訴えていない。政府は、今回の上級委の報告で勝訴を確定した上で、ほかの国・地域とも規制撤廃に向けた交渉を加速させていく戦略を描いていた。
■韓国による日本食品輸入規制をめぐる動き
<2011年3月> 東日本大震災で東京電力福島第一原子力発電所の事故が発生
<13年5月ごろ> 原発事故を理由とした輸入規制が韓国を含む54カ国・地域に拡大
<9月> 韓国が輸入規制を強化。8県産の全水産物を禁止に
<15年6月> 日韓の二国間協議が平行線に
<8月> 日本がWTOに提訴
<18年2月> WTO紛争処理小委員会(一審)で、日本が勝訴
<4月> 韓国が上級委員会(二審)に上訴
<19年4月> 上級委員会が報告書を公表

<再生医療は時間をかければ犠牲者が増えること>
*2-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190220&ng=DGKKZO41468640Z10C19A2EA1000 (日経新聞社説 2019年2月20日) 再生医療の普及焦らず丁寧に
 iPS細胞などを使う再生医療で病気やけがを治す試みが大学病院などで相次いでいる。期待が大きい一方、実用化のペースが速すぎると危ぶむ声もある。医師も患者も焦ることなく安全重視で丁寧に治療法を確立してほしい。厚生労働省の専門部会は18日、他人のiPS細胞をもとにした神経細胞で脊髄損傷の患者を治療する計画を、承認した。慶応大学が世界で初めて実施する。iPS細胞による再生医療は、2018年に京都大学のパーキンソン病治療や、大阪大学の心臓病治療の計画も認められた。理化学研究所などは神戸市で実施した目の難病のiPS細胞治療を、全国の病院に広げる計画だ。他の細胞を使う再生医療も実用化が進んでいる。骨髄液から得た細胞による脊髄損傷治療や、足の筋肉の細胞をもとにした心臓病治療の薬が、既に医薬品医療機器総合機構から「条件付き・期限付き承認」を取得している。この制度では、少人数の患者で安全性と一定の効果を確認した段階で市販を認め、その後は使いながら効果を確かめていく。量産が難しい細胞を使う薬の承認に適しており、新しい治療法を素早く患者に届けられる利点がある。今後、再生医療は条件付き・期限付き承認が主流になろう。ただ海外からは、臨床応用を急ぎすぎではないか、との声も出ている。英科学誌「ネイチャー」は最近、同制度による承認はデータの裏付けが不十分で慎重さに欠ける、とする批判記事を載せた。実際には、市販から数年間すべての利用データを集めて安全性と有効性を詳しく調べ、結果を公表する仕組みである。厚労省や開発者は説明を尽くし、理解を促していかなくてはならない。過去の臓器移植や遺伝子治療の例からもうかがえるように、いったん不信感が広がると先端医療が再び受け入れられるのは容易でない。再生医療が普及期に向かう今こそ、多くの人の納得が得られるよう最大限の努力が必要だ。

<腎臓病について>
*2-2:https://digital.asahi.com/articles/ASM3X53TKM3XULBJ00K.html?iref=comtop_8_03 (朝日新聞 2019年3月28日) 透析中止で死亡、病院「問題なし」 判断は正しかったか
 昨年、当時44歳の女性が人工透析をやめ、公立福生(ふっさ)病院(東京都福生市)で亡くなった。病院は28日、初めて報道各社の取材に応じ、女性の意思を十分確認した上で中止し、手続きなどに問題はなかったとの認識を示した。患者が透析中止を希望した場合、医療者はどのように対応すべきか。今回の件をふまえて学会で議論している。治療にあたった外科医(50)と松山健院長らが女性の治療経過を説明した。説明によると、糖尿病による腎不全や心筋梗塞(こうそく)などを起こし、人工透析をしていた女性は、左腕につくった透析用の血液の出入り口(シャント)の状態が悪化。血管の状態も悪く、新しくシャントをつくるのは難しい状態だった。昨年8月9日、女性はシャントが閉塞(へいそく)し、同病院を受診。外科医は首周辺に管を通す透析治療を提案したが、女性は「シャントがだめだったら透析をやめようと思っていた」と話し、拒否した。女性は透析の針を刺す際の痛みがつらいなどと語ったという。外科医は透析をやめると2週間くらいで死に至ると説明、女性は「よくわかっている」と答えたという。女性と女性の夫、外科医と看護師、ソーシャルワーカーを交えて再度話し合ったが、女性の意思は変わらず、夫も女性に同意した。外科医は透析からの「離脱証明書」に女性に署名してもらった。翌10日も、看護師、センターの内科医、ソーシャルワーカーが女性と夫に確認したが、意思は固かった。女性は14日に呼吸が苦しくなり入院。16日未明、呼吸の苦しさや体の痛みを訴え、看護師に「こんなに苦しいなら透析した方がいい。撤回する」と発言したことが記録に残っている。しかし、16日昼前に女性の症状が落ち着き、外科医が呼吸の苦しさや体の痛みが軽減されればよいか、それとも透析の再開を望むかと尋ねると、「苦しさが取れればいい」と答えたという。外科医は女性の息子2人にも説明して理解を得たうえで鎮静剤を増やし、女性は同夕に亡くなった。
●外科医「特異なケースだが丁寧に対応」
 外科医は「透析を続けるための措置を拒否したために透析が出来なくなった特異なケースだが、丁寧に対応し、出来ることはやらせてもらった」と述べた。今月6日に病院に立ち入り検査をした東京都は当初、外科医が透析をやめる選択肢を示した、と説明していた。この点について外科医は「中止の選択肢は示していない」と否定した。透析中止の判断をめぐり、都は、日本透析医学会の提言を踏まえて第三者も入る倫理委員会に諮るべきだったのに行わなかったとして、病院を口頭指導した。しかし、松山院長は「病気の進行や患者の透析離脱の強い希望などがあった。学会の提言には違反していない」と述べ、対応に問題はなかったとした。都の調べで、同病院では女性のほかに透析を始めなかったり、中止したりした患者20人が亡くなったことが判明している。病院側は「確認が取れていない」として説明しなかった。病院側の弁護士は、取材対応が問題の表面化から3週間以上後になったことについて、学会の調査や見解を待っていたため、などと説明した。都のほか、日本透析医学会と日本腎臓学会も調査を進めており、近く指導したり、見解を示したりする予定だ。
●「つらさ和らげる努力」必要
 日本透析医学会は2014年、どのような場合に透析を中止するかについての提言を示した。中止の検討対象を、がんを併発するなど終末期の患者に限定。終末期でない患者が強く中止を望む場合は、透析の効果を丁寧に説明し、それでも意思が変わらなければ判断を尊重するとしている。また、患者の意思が変われば透析を始めたり、再開したりすることも盛り込んだ。木澤義之・神戸大特命教授(緩和支持治療科)は、「病院側の説明では、本人の意向を何度も確認し、誠実に対応した印象だ」と話す。その上で、透析中止の判断後の重要性を指摘する。「がん以外の他の病気では家族への対応が不十分な場合も少なくない。今回、適切な苦痛緩和や家族の十分なケアが行われたのかという視点での検討も必要だ」と話す。JCHO(ジェイコー)千葉病院(千葉市)の室谷典義院長も「つらさを和らげる努力をどれだけしたかが大切だ」と指摘する。「つらさから逃れるために鎮静剤を使って結果的に患者が亡くなることはあるが、末期腎不全の患者の苦痛は透析をすることで和らぐことも少なくない」と話す。人工透析は週2~3回、1回で4~5時間かかり、身体的にも精神的にも負担が大きい。少数だが、脚の血管が詰まり透析の度に激痛が走る例もある。透析開始年齢が平均約70歳と高齢化して合併症を持つ人も少なくない。このため、透析をしたくない、やめたいという患者もいる。だが、多くの場合透析をすれば、何年も生きることができる。藤田医科大の稲熊大城教授(腎臓内科)は「心臓などに問題がなければ、透析を始めれば、その時点での平均余命の半分は生きられる」と説明する。70歳男性なら7年超にあたる。透析をしながら旅行やスポーツなどを楽しむ患者も少なくない。透析医学会は25日、透析をしているだけでは終末期に含まないとの見解を示した。患者の命にかかわる透析の中止などについては、慎重な検討が必要だ。清水哲郎・岩手保健医療大学長(臨床倫理学)は「方針決定には本人の意思の尊重が大前提だが、医学や生活への影響についての知識が不十分なままでの意思決定は必ずしも本人にとって最善とは限らない」と話す。患者が透析で余命が何年も見込めるのに透析を望まない場合や、透析の実態や費用などについて誤解している場合は、医療従事者は透析の効果やリスク、公的助成などについて十分に患者に説明し、理解してもらうことが欠かせない。清水さんは「医療従事者も含めて本人やチーム全体が合意に至らなければ、本人の人生観や価値観を踏まえた上で、何度も話し合いを繰り返すことが大切だ」と強調する。
●透析治療をめぐる女性患者(44)の経緯
1998年      糖尿病の指摘を受ける。その後、治療を始める
2007年      心筋梗塞(こうそく)で、東京都内の病院で治療
2015年12月   透析治療で通院していたクリニックの紹介で、福生病院を初めて受診
2018年 8月9日 透析に使うシャントが詰まり、福生病院を受診。女性は透析治療をしない意思を病院に告げる
       14日 福生病院に入院
       16日 女性は苦しくなり透析再開を希望。病院側は、女性が落ち着いたときに改めて意思を確認し、透析を再開しないことを確認。女性は夕方に死亡
2019年 3月6日 東京都が病院に立ち入り検査を実施
※福生病院の説明をもとに作成

*2-3:https://digital.asahi.com/articles/ASM266X2RM26UBQU01B.html (朝日新聞 2019年2月7日) ラットの体内にマウスの腎臓 ヒトの再生医療応用に期待
 ES細胞(胚(はい)性幹細胞)を使い、ラットの体内に別の種であるマウスの腎臓を作ることに、自然科学研究機構や東京大らのグループが成功した。将来的に、移植用のヒトの臓器を動物の体内で作る研究に応用したいという。研究成果は6日、ネイチャーコミュニケーションズに掲載された。自然科学研究機構生理学研究所の平林真澄准教授らのグループは、腎臓を作るのに不可欠な「Sall1」という遺伝子をなくした状態にしたラットの受精卵をつくり、そこにマウスのES細胞を注入。生まれたラットの体内に別の種であるマウスの細胞に由来する腎臓を作った。この遺伝子は他の臓器が機能するのにも必要なため、生まれたラットの多くは数時間しか生きられなかったという。今回のように、本来臓器ができる場所に空きを作り、ES細胞やiPS細胞などの多能性幹細胞由来の臓器を作る方法を応用し、将来的にヒトの臓器をブタなどの動物の体内で作ろうとする研究が進められている。今回の成果は「腎臓という大型主要臓器の再生に、世界で初めて成功した」としている。同グループは、膵臓(すいぞう)がないラットの体内でマウスの膵臓を作り、糖尿病にしたマウスに移植することに成功している。腎臓は血液中の老廃物を濾過(ろか)し、体の外に出す機能を持つ。慢性腎不全で透析治療が必要になった際、根本的な治療は腎移植だが、ドナー不足のため移植を受けられる患者は希望者の1~2%という。平林さんは「将来的にこの方法でヒトの腎臓を作り、移植で実用できる可能性を示せた」と話す。

*2-4:https://newswitch.jp/p/15569 (ニュースイッチ 2018年12月10日) “ミニ腎臓”作製成功、実用化へクラウドファンディング
 徳島大学の安部秀斉准教授らは、腎臓を形成する複数の細胞を混合する共培養により、生体に近い腎臓組織の特性を持った立体的な組織様構造体「KLS」の作製に成功した。KLSは24時間の培養で作製可能で、尿を濾過する糸球体と糸球体を保護する細胞「ポドサイト」も再現していた。均質なミニ腎臓を低コストかつ短期間で作製が可能になり、創薬への活用が期待される。実用化に向け、不特定多数から資金を集めるクラウドファンディング(CF)を通じて資金調達する。こうしたバイオ系の創薬技術でCFを実施するのは珍しいという。KLSは、腎臓の細胞3―6種類を3次元的に共培養して作製する。培養中に細胞は自然に集まって丸い構造をとる。作製したKLSは、糸球体とそれを保護する重要な組織であるポドサイトを有していた。また、発現している遺伝子を調べると生体内の腎臓の細胞と同様であった。KLSをマウスの皮下に移植すると血管の管腔構造ができたことから、生体内に近い培養条件でKLSを作製すれば血管の構造も作れる可能性も示された。慢性腎不全で新たに人工透析を受ける患者は日本国内で毎年4万人と言われる。高齢化に伴って腎機能は低下する傾向にあり、透析に移行する前に使える治療薬の開発が求められている。現在、創薬には高速で化合物の評価ができる「ハイスループット」という手法が用いられるが、これには実験用の均質な細胞や組織が大量に必要となる。KLSは分化細胞から作るため品質にばらつきが少なく、わずか24時間でできるため低コストで大量に製造できる。CFを通じて調達した資金はKLSの有用性を示すデータを取得するための実験や、KLSの実用化に向けたベンチャー設立に充てる。国の補助金の獲得を待たず、実用化を加速する。目標金額は数百万円規模と低めに設定する。多くの人に技術を認知してもらい、実用化へのアイデアを募る狙いもある。

<白血病の治療>
*3-1:http://www.tokyo-np.co.jp/article/living/life/201902/CK2019021902000181.html (東京新聞 2019年2月19日) 池江選手白血病公表 骨髄移植ドナーに関心 適合でも実現6割
 競泳女子の池江璃花子選手の白血病公表後、骨髄移植のドナー(提供者)登録に関心が集まっている。ただ、ドナーの辞退などもあり移植が実現するのは、六割程度。ドナーになれるのは五十五歳までで、若い世代を増やすことも急務となっている。日本骨髄バンク(東京)によると、登録できるのは、十八~五十四歳の健康な人(提供は二十~五十五歳)で、体重制限もある。献血ルームや保健所などで受け付け、約二ミリリットルを採血。後日、型が患者と適合すると、候補者に選ばれる。健康の確認検査などで計四回医療機関に行き、家族同席で最終同意書に署名した後は撤回できない。骨髄は全身麻酔で採取する。採取部位の痛みや発熱、まれにしびれなどの合併症が出ることがあり、最高一億円の補償制度がある。二〇一七年三月までに実施された二万二百六十六件のうち、入通院して保険金が支払われたケースは百七十一件(0・8%)。いずれも回復している。移植を待つ患者は昨年末現在、二千九百三十人。登録者は約四十九万人で、適合率は95%になったが、移植できたのは57%。健康上の理由や、仕事などで辞退したり、連絡が取れなかったりするドナーも少なくない。登録者の半数が「定年」に近い四十~五十代で、ドナー不足は続いている。
<骨髄移植> 白血病などの患者に、ドナーの骨髄液を点滴し、造血機能を回復させる治療。白血球の型はきょうだい間で4分の1、他人では数百から数万分の1の確率で一致するとされる。池江選手は骨髄移植が必要なケースかは、明らかになっていない。
◆命の重みを知り、大きな達成感 「体験に感謝」
 東京都の田中紀子さん(54)=写真=は7年前、骨髄を提供した。1995年にドナー登録し、忘れかけていた2012年夏。日本骨髄バンクから、白血球の型が一致する患者が見つかったと連絡を受けた。家族同席で弁護士から全身麻酔による事故の確率や採取後の痛みなどについて詳しく説明され、同意書に署名。「もうキャンセルできない」と念を押された。ところが、入院前日に、療養中の義父が死去。葬儀の準備で慌ただしい中、義理の母や姉が「生きている人を助けることを優先して」と背中を押してくれた。入院翌日に採取。マスクを着けられ、再び名前を呼ばれたときには終わっていた。採取した腰の部分は内出血で変色し、強く痛んだが、1週間で治まった。体験を通じ、命の重みを知り、大きな達成感を得た。知らないだれかを救うために仕事を調整し、家族を説得し、義父の葬式に出ないことを決めた。「困難に挑戦する自分を好きになれた。ドナーは患者さんのためだけでなく、むしろ自分のためにある」。提供相手は「九州在住の男性」とだけ知らされ、バンクを通じ、家族から感謝の手紙が届いた。若い時期にギャンブル依存の問題を抱えていた田中さんは今、「ギャンブル依存症問題を考える会」(東京)の代表として患者や家族の支援に飛び回る。その原点は「ドナー体験での達成感」という。9月でドナーの年齢上限を迎える。「夫や子どもがもし、『ドナーになる』と言ったら動揺すると思う。でも、反対はしない。自分はドナーをさせてもらい、本当に感謝しているから」

*3-2:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/340090 (佐賀新聞 2019年2月20日) 新型がん免疫製剤を了承、人工遺伝子で白血病治療
 厚生労働省の専門部会は20日、一部の白血病を治療する新型の細胞製剤「キムリア」の製造販売を了承した。人工遺伝子で患者の免疫細胞の攻撃力を高める「CAR―T細胞」を利用した国内初の治療法で、3月にも正式承認され、5月にも公的医療保険が適用される見通し。臨床試験(治験)で既存の治療法が効かない患者にも効果が得られたことから注目を集めている。
欧米では既に承認されているが、米国では1回の治療が5千万円以上に設定され、高額な費用が問題となっている。日本でも今後、価格が決定されるが、高額薬として知られるがん治療薬「オプジーボ」よりも高くなる可能性がある。

<ゲノム編集食品>
*4-1:https://www.kobe-np.co.jp/column/shasetsu/201902/0012083416.shtml (神戸新聞 2019/2/21) ゲノム編集食品/国の方針は拙速に過ぎる
 ゲノム編集された生物を使った食品の扱いについて、厚生労働省がパブリックコメントを実施している。有識者調査会が取りまとめた報告書は、開発中の大半のゲノム編集食品は安全性審査を必要とせず、国への情報提供だけで販売を認めてよいとする内容だ。厚労省は本年度中に結論をまとめ、具体的な仕組みをつくる方針を示しているが、議論が不十分で拙速に過ぎる。ゲノム編集はまだ未知の部分が大きい。なにより人が食べた場合の影響はどうなのか。審査を求める消費者団体などは、調査会の検討がわずか3カ月だったことを批判している。ゲノム編集食品の表示が要らない仕組みになれば、消費者に情報が伝わらず、食べる人の知る権利、選ぶ権利を奪うことになりかねない。ゲノム編集食品は、遺伝子を切断する酵素を使って効率よく改変できる。従来の遺伝子組み換え技術に比べて開発期間が大幅に短縮される。肉付きのいいマダイや収量の多いイネなどが開発されている。報告書では、その生物にない遺伝子を導入する場合は、遺伝子組み換え食品と同様の安全性審査が必要と判断した。一方、特定の遺伝子を壊した食品は審査を不要とした。国への情報提供は問題発生時の対応などのためで、法的な義務化はしない。従来の品種改良との違いがあまりないとの推論が根拠だが、そう言い切れるのか。編集された細胞ががん化する恐れが高まるなど、新たな報告や知見がもたらされている。一度に多くの遺伝子を改変した際のリスクも不透明だ。自然界に拡散した場合、悪影響が判明しても取り返しがつかない。審査も表示もない緩い規制の下で生産が広がり、予期せぬ問題が起きたら、誰がどう責任をとるのか。影響が予測しきれない新しい技術である。人の健康と環境に関わる問題として、安全を最優先に考えるべきだ。欧州連合(EU)では、予防原則の立場から遺伝子組み換え作物として規制すべきとの司法判断が下されている。各国の状況も参考にしながら、国会でもしっかりと時間をかけて議論する必要がある。

*4-2:https://www.agrinews.co.jp/p47358.html (日本農業新聞 2019年4月13日) ゲノム編集食品 予防原則で安全徹底を
 生物の遺伝子を効率的に改変できるゲノム編集。この技術を使って品種改良した農水産物の多くは厳格な安全性審査をせずに、今夏にも食品として販売できる見通しとなった。安全性について不安視する消費者は少なくない。買う側の選ぶ権利を保障するためにも、食品表示は不可欠である。ゲノム編集は新しい技術で、もともとある特性を消すため遺伝子の一部を削ったり、他の生物の遺伝子を導入したりする。目的の遺伝子をピンポイントで改変でき、開発期間を大幅に短くできるのが特徴。交配による育種や遺伝子組み換え(GM)技術に比べて簡単で間違いが少なく、汎用(はんよう)性がある。農業分野でも多収性の稲や日持ちするトマトなどの研究が進んでいる。農水省は2019年度から5年間で、ゲノム編集作物を五つ以上開発する「次世代バイオ農業創造プロジェクト」を始めた。19年度当初予算で1億100万円を計上。需要が見込め、収益性の高い品種をつくるのが目的だ。開発に取り組む研究機関を公募する。厚生労働省は報告書を3月にまとめ、開発者側は国に届け出れば販売してもよいとした。ただ届け出に法的な義務はなく、制度の実効性に疑問を投げ掛ける向きもある。安全性の審査が必要なのは新しい遺伝子を追加する場合だけ。もともとの遺伝子を取り除くなど改変する場合は不要とした。「従来の品種改良や自然界で起きる変化と区別がつかない」(同省)からだ。この報告書案について一般に意見を募集したところ、約700件が集まった。大半が「長期的な検証をしてから導入すべきだ」「自然界で起きる突然変異と同じとは思えない」など、安全性を懸念する声だった。この声は無視できない。「遺伝子」という命に関わる新技術の開発で賛否が分かれるのはやむを得ない。問題は、このような国民生活に影響を及ぼす重要課題について議論が不十分な上、1年足らずで方針をまとめてしまう拙速さにある。これは主要農作物種子法(種子法)が廃止されたのと同じ構図だ。作る側、食べる側の不安に応えようとしない国の姿勢が問われている。日本と同様、米国も技術開発や商品化の速度に法整備が追い付かない中、欧州司法裁判所は「自然には発生しない方法で生物の遺伝子を改変して得られた生物はGMに該当する」と判断した。疑わしいものは規制するという予防原則の立場を崩していない。生産現場への影響についての実証も十分とはいえない。技術を通して多国籍企業による種子の独占、支配が進むのではないかという見方もある。食の安全についてどう考えるか。いま一度、議論をする必要がある。その上で、消費者が食べる、食べないを選択できる表示を求めたい。これは国民の権利である。

<事業承継について>
*5-1:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO34657360X20C18A8EA2000/ (日経新聞 2018/8/27) 事業承継税制とは 孫まで円滑に引き継ぎ
▼事業承継税制 オーナー経営の中小企業の株式を後継者に移して代替わりをしようとすると、オーナーの生前なら贈与税、死後なら相続税が発生する。日本の産業を支える中小企業の技術・ノウハウが失われるのを防ぐには事業承継を円滑に進める必要があり、政府は2018年度に「事業承継税制」を大きく改正した。改正では納税が猶予される割合が8割から全額になり、対象となる株式も発行総数の3分の2から全てに拡大された。承継時点での税負担をゼロにすることが可能になっている。孫の代まで経営を引き継げば、猶予されていた税負担は免除される。優遇を受けるには都道府県知事に承継計画を提出しなければならないが、改正前に年500件ほどだった利用件数は大幅に増えると見込まれている。一方、法人を設立せず商売をしている個人事業主は長らく、商売用の土地の相続時に大幅に税額を減らす「小規模宅地等の特例」を活用してきた。ただ店舗に使う建物や設備は優遇対象外だったため、個人事業主でつくる納税者団体などが、対象に含めるよう求めてきた経緯がある。

*5-2:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO38283570Y8A121C1MM8000/ (日経新聞 2018/11/28) 個人事業主の事業承継支援へ税優遇 政府・与党検討
 個人事業主が事業承継をしやすい環境をつくるため、政府・与党は新たな税優遇制度を作る方針を固めた。子供が事業を継ぐとき、土地や建物にかかる贈与税などの支払いを猶予する「個人版事業承継税制」を作る。2025年までに70歳を超える個人事業主は約150万人いるとされる。引退期を迎えた個人事業主が税金を理由に廃業を迫られるのを防ぐ狙いだ。与党の税制調査会で制度の詳しい設計を議論したうえで、2019年度の税制改正大綱に新制度の創設方針を盛り込む方向だ。新制度の主な対象になるのは、地方の旅館や町工場、代々続く酒蔵などを家族経営しているような個人事業主。土地や建物などを含めて跡継ぎに事業承継する際は、控除を超える分に生前なら贈与税、死後なら相続税がかかる。政府・与党が検討している新制度は、土地や建物、設備にかかる税金の支払いを猶予する仕組み。10年程度の時限的な制度にすることで調整している。中小企業庁によると、個人事業主全体のうち相続税が実際にかかりそうなのは1割程度を占める。新制度が悪質な節税に利用されることを防ぐ対策も同時に設ける。個人事業主が事前に事業承継計画を都道府県に提出し、認可を受けることを条件にする。法人と違い、個人事業主は私用と事業用の資産の線引きが曖昧。資産の切り分けを第三者が確認することや、跡継ぎが承継後すぐに事業をやめないことを義務づける案を検討する。税優遇が過剰にならないようにもする。個人の土地の相続では今も「小規模宅地特例」と呼ばれる税優遇制度がある。土地の価格を8割減額して相続税を減らせる仕組みで、新制度の創設後はこの特例は税優遇を受けにくくする。現在は事業用の土地を買うために借金をした場合に私用の資産と相殺して節税したり、跡継ぎでない親族まで税優遇のメリットを受けたりできる。政府・与党は条件の厳格化でこうした問題点を解消し、個人事業主への税優遇が過剰にならないよう配慮する方針だ。

<地銀の役割と今後の展望>
*6-1:http://qbiz.jp/article/150743/1/ (西日本新聞 2019年3月23日) 地銀引き締め、再編頼み 金融庁監視強化 改善不十分で退場も 地元密着合理化に限界
 金融庁が地方銀行の監督指針を見直し、収益が低迷する地銀の逃げ道を断って経営改革を促す方向へかじを切る。人口減少や超低金利という「構造不況」が続く中で、特効薬のような事業戦略は見当たらない。圧力が行き過ぎれば、店舗の統廃合など無理なリストラで金融サービスが損なわれ、地域経済に禍根を残す懸念もはらんでいる。店舗などの減損処理で計約6800億円を損失計上−。みずほフィナンシャルグループ(FG)が6日に発表した2019年3月期連結業績予想の下方修正を、ある地銀幹部は「衝撃だった」と振り返る。頭をよぎったのは昨年5月、金融庁から業務改善命令を受け、収益力の抜本改革を迫られた福島銀行の事例だ。福島銀は収益力が下がった店舗の評価を低く見直す減損処理などにより、18年3月期決算で7年ぶりの赤字に転落した。処理の背景には、金融庁検査による厳しい追い込みがあったとささやかれる。「みずほFGと同様の損失処理を迫られれば、いきなり赤字に陥りかねない」。別の地銀幹部も首筋が寒くなった。金融庁は昨年、地銀が1行しかなくても単独での存続が難しい地域が青森、富山、島根など23県あるとの試算を公表。収益改善が見込めない地銀の市場からの「退出」に関する制度見直しにまで言及した。「環境を言い訳にする経営者は失格だ」。幹部は監督指針見直しの先に地銀の「廃業」さえも見据えている。昨年4月以降、新潟県や三重県、関西圏で地銀再編が進んだ。業界の耳目を集めたふくおかフィナンシャルグループと長崎県の十八銀行の再編は、公正取引委員会の審査を巡り混迷したが、ようやく来月実現する。政府は経営統合基準を緩和してさらに再編を促す構えだが、もはや再編相手をつかまえる体力すらないほどに弱体化した地銀もある。店舗や人員配置を大胆に見直して経営改革を急ぐメガバンクとは違い、過疎地も含めてネットワークを張り巡らせ、地域経済や雇用を支える役割を担う地銀の多くは、激しいリストラには二の足を踏まざるを得ないのが実情だ。金融庁が業務改善命令を連発すれば、経営トップの辞任ドミノが起こる可能性があるが、再建が進む保証はない。
*金融庁検査:金融機関が健全で適切な業務運営をしているかを金融庁と地方の財務局が協力して調べる仕組み。大手銀行や地方銀行、信用金庫などが対象。本支店への立ち入りに加え、書類提出や聞き取りなどを組み合わせる。内部管理体制や法令違反の有無を厳しくチェックする。人口減少に伴う地銀の存続可能性も重視している。

*6-2:http://qbiz.jp/article/150744/1/ (西日本新聞 2019年3月23日) 金融庁、地銀の監視強化 収益低迷に改善命令 月内にも指針
 金融庁は地方銀行など地域金融機関への監督指針を見直し、監視を強化する。「自己資本比率」の水準など財務の健全性を重視する考え方から、将来の収益力など事業の「存続可能性」の向上に軸足を移す。貸し出しなどの本業が赤字で業績が低迷する地銀に対し、店舗や人員の縮小などの速やかな改革を求める。月内にも公表する。今夏、問題があるとみられる地銀への検査に着手する見通しで、対応が遅れれば業務改善命令を出し、経営責任を明確化する。地銀の経営環境は、人口減少や日銀の大規模金融緩和に伴う超低金利の長期化で、収益力低下に歯止めがかからない。金融庁は厳しい経営環境でも存続できるビジネスモデルを構築するよう求めている。従来の監督指針では、不良債権問題を念頭に現在の自己資本比率が重要な指標だったが、新指針では将来の自己資本比率や収益力に着目する。自己資本比率が財務の健全性を示す国内基準の4%を上回っていても、本業で赤字を出し続けている地銀には、経営の改善を求める。地域の人口や企業数の増減、融資先の動向について分析し、経営陣から経営計画などについて聞き取り調査を行った後、立ち入り検査の必要性を検討する。金融庁が2018年3月期決算を分析したところ、全国の地銀106行のうち約半数の54行が本業で赤字になり、うち23行は5期以上連続で赤字だった。ある金融庁関係者は「日銀の超低金利政策の終わりは見通せない。経営者は背水の陣に立つ覚悟で改革に挑むべきだ」と強調する。金融庁は指針の見直しを前に一部の地銀に立ち入り検査を実施。福島銀行(福島市)に収益力強化を求める業務改善命令を出したほか、島根銀行(松江市)への対応も検討している。
   ◇   ◇
●生き残り模索、九州でも 
 九州の地方銀行も収益環境は厳しさを増している。2018年9月中間決算では九州の18行・グループ中、13行・グループが最終減益となった。各行とも店舗、人員縮減によるコスト削減や業務効率化に取り組むが、抜本的な改善は難しい。今回の指針見直しは、地銀に再編を迫る「布石」になる可能性もある。西日本シティ銀行(福岡市)は昨年1月、業務見直しと効率化を図る「業務革新室」を設置した。20年までに業務効率化などで事務量の3割を削減、現金自動支払機(ATM)の2割に当たる300台を減らすという。ふくおかフィナンシャルグループ(FFG、福岡市)傘下の熊本銀行(熊本市)は無人の4店舗を導入。佐賀銀行(佐賀市)も福岡県内の7支店1事業所を今月中に移転統合する。ただ店舗削減などは一時的な対策で、将来的な業績向上につながるとは言えない。4月のFFGと十八銀行(長崎市)の経営統合後も、地銀再編の動きが続くとの見方は根強い。九州フィナンシャルグループ(熊本市)社長で鹿児島銀行頭取の上村基宏氏は昨年末のインタビューで「単独で生き残れる状況ではない。結論の先送りはその分後れを取ることになる」と指摘した。

*6-3:https://www.agrinews.co.jp/p47146.html (日本農業新聞 2019年3月23日) アジア2銀行と提携 輸出や海外進出支援 農林中金
 農林中央金庫は22日、ベトナムとフィリピンの大手銀行と包括的な業務提携を結んだと発表した。現地銀行ならではの情報やネットワークを生かし、農林中金として日本の農業法人などの販路開拓や、日本の食農関連企業の海外進出などを支援する。他のアジアにある複数の国の銀行とも同様の連携を始め、食農分野での海外進出・事業拡大への支援を本格化させる。農林中金は2019年度から5カ年の次期中期計画で、国内の農家所得増大などにつなげるため、アジアの食農バンクとしての機能を発揮し、アジアの成長を取り込む方向を示している。今回提携を結んだのは、ベトナム投資開発銀行とフィリピンのBDOユニバンク。農林中金は、オランダの協同組合金融機関「ラボバンク」とも既に提携。ラボバンクもアジアの情報は持っているが、現地銀行と連携することで、より地域のきめ細かい情報やネットワークが活用できる。具体的には、農業法人やJAグループ、食品関連企業に対し、現地情報の提供やビジネスマッチング、現地での協調融資、企業の合併・買収(M&A)への助言、現地通貨の供給などを目指す。例えば、農業法人などが日本産農産物の販路を探している場合は、提携銀行からの情報やネットワークを生かして売り先を見つけ、商流を構築することなどが考えられる。輸出ではJA全農とも連携。農業生産資材企業の販路開拓のための出資や企業買収、低温のまま輸送するコールドチェーン構築のための現地企業との連携への支援なども想定できるという。こうした情報を生かし、各種サービス提供を進めるため、農林中金は4月から海外展開を支援するための専門チームを立ち上げ。シンガポール支店の人員も増強する。農林中金は「現地からの日本の農業や食品に対する関心は高い。農業法人に加え、食品企業を支援することで、国内の農林水産物の消費を増やすことにつながる」(営業企画部)と説明する。

<疑問を感じる思考法>
PS(2019年4月17、18日追加):*7-1に、「①福島県産の野菜・果物・魚の放射性物質検査で、2018年度に国の食品基準(1kgあたり100ベクレル以下)を上回ったのは約1万6000点のうち0.04%の6点だった」「②福島県は原発事故のあと県産の野菜・果物・魚 の一部で放射性物質の検査を行っている」「③国の基準を超える食品は、肉類は2011年度、野菜・果物は2013年度、穀類は2015年度から出ていない」としており、*7-2は、「④WTOで敗訴したが、風評被害を広げぬようにしよう」「⑤残念だが、食の安全で消費者の関心は国を問わず極めて高い」「⑥23カ国・地域で続いている輸入規制撤廃と風評被害の払拭をねばり強く進めたい」「⑦生産者、消費者への十分な説明が必要」としている。
 しかし、このブログに何度も書いたように、このうち①③は、国の食品基準(1kgあたり100ベクレル以下)なら無害だとする科学的根拠はないため、説明もされていない。また、基準以下の場合には反応しないように測定器が設定されており、“食べる部分”とする一部を測定しているに過ぎないとも聞いているため、「安全」という方が風評にすぎない。さらに、②のように、ごく一部しか測定せずに全体を推測して安全性を強調するのはリスクが高い。
 また、⑤のように、食の安全性に関する消費者の関心が高いことを残念だとしている点は根本的姿勢が間違っており、④のようにWTOで敗訴し、⑥のように23カ国・地域で輸入規制が続いているのは「日本基準以下なら安全なのだから、外国の輸入規制の方が風評被害にすぎず、ねばり強く撤廃しよう」としている点で、科学的な説明もできないくせに傲慢極まりない。そして、生産者、消費者の方が詳しいのに、⑦のように説明不十分としている点は呆れるのである。
 なお、上記のように、「国の食品基準(1kgあたり100ベクレル)以下なら安全だから、いくらでも食べよ」と根拠も示さずに主張しながら、*7-3に書かれているように、「⑧経団連は再稼働や新増設の推進を掲げ」「⑨福島事故で表面化した原発の問題点には触れず」「⑩最大81兆円の廃炉等事故対応費を税金と電気料金で国民に負担させ」「⑪世界で斜陽化する原発産業にこだわり続け」ようとしている。残念ながら、これは客観的数字を無視して何が何でも日本の主張が正しいと信じ、メディアも加担して誤った政策につき進んで行った過去を思い出させる。
 このような中、*8のように、2018年の農林水産物は、輸出額9,068億円・輸入額9兆6,688億円・貿易赤字8兆7,620億円で、輸出額に対して輸入額が10倍という圧倒的輸入超過の状況で貿易赤字が拡大しているそうだ。値段が高くて安全性に「?」がつくのでは当然とも言えるが、解決策は国民が需要していないものを供給してそれを食べるように強制することではなく、これまで(安倍政治ではなく戦後政治)の政策の失敗を含めて悪い点を一つ一つ変えていくことしかない。なお、うぬ惚れの結果、自動車もJapan Passingが始まっており、いつまで貿易黒字が続くかわからないため、このままでは米国のように双子の赤字になる可能性が高い。



(図の説明:1番左の図のように、牛白血病が増加しており、左から2番目の図のように、日本では東日本に出ている。右から2番目の図に書かれている症状は人間の癌に似ており、1番右の日経新聞記事のように、感染症だとされているものの癌免疫薬が効くそうだ。何故か?)


  宝島2015.3.24    宝島2015.3.9      宝島2015.3.25    宝島2015.3.24

(図の説明:この記事を掲載した雑誌宝島は、「風評被害」「差別」などと叩かれて廃刊に追い込まれたが、書かれている統計データや内容は常識的だった。放射線に当たるとDNAが壊されるため、白血病や癌が増えたり、生殖細胞や胎児に悪影響を与えたりする。また、心臓病の増加も報告されており、フクイチ事故で増えた分は、本当は原発被害や原発のコストにあたる)

*7-1:https://www3.nhk.or.jp/lnews/fukushima/20190417/6050005159.html (NHK 2019年4月17日) 放射性物質 基準超の食品は6点
 福島県産の野菜や果物、魚などの放射性物質の検査で、昨年度国の食品の基準を上回ったのはおよそ1万6000点のうち6点でした。基準を超えたのはイワナとヤマメ、たらの芽でした。福島県は原発事故のあと県内でとれた野菜や果物、魚などの一部で放射性物質の検査を行っています。昨年度は492品目、1万5941点を検査し、国の食品の基準の1キロあたり100ベクレルを超えたのは0.04%にあたる6点で、10点だった前の年度に比べ、4点減りました。基準を超えたのは、福島市、伊達市、桑折町の阿武隈川水系でとれたイワナ2点とヤマメ3点、北塩原村でとれた野生のたらのめ1点でした。基準超えの食品は原発事故の直後に比べ大幅に減少していて、肉類は平成23年度から、野菜や果物は25年度から、コメなどの穀類は27年度から、国の基準値を上回るものは出ていません。県環境保全農業課は、「安全安心を確保するにはこうしたデータがベースになるので、品目や検体の数も含めてこれまでと変わらず検査を徹底するとともに正確に情報発信していきたい」としています。

*7-2:https://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2019041702000164.html (東京新聞社説 2019年4月17日) WTO逆転敗訴 風評被害を広げぬよう
 福島県産などの水産物輸入禁止をめぐる韓国との貿易紛争で日本は敗訴した。残念だが、食の安全で消費者の関心は国を問わず極めて高い。ねばり強い対応で規制撤廃と風評被害の払拭(ふっしょく)を進めたい。一審は二〇一八年二月に日本の主張を認めただけに、最終判断の二審での逆転敗訴は想定外で、産地の漁師に落胆が広がっている。経緯をたどると、一一年三月の福島原発の事故後、放射性物質への懸念から日本の水産物の輸入規制が各国に広がった。このうち韓国は、一三年九月に汚染水流出を受けて規制を強化し、福島、宮城、岩手など八県の水産物の輸入を全面禁止した。安全対策に取り組んできた日本はこれを不当として、一五年八月、世界貿易機関(WTO)に提訴していた。WTOは貿易紛争を扱う唯一の国際機関。機能の低下も指摘されるが、外務省は「中立的な専門家の判断」としている。日本の食品の安全性を否定しない一方で、韓国の主張を認めた判決をよく分析してほしい。生産者、消費者への十分な説明が必要だ。原発事故から八年。輸入規制は五十四カ国・地域から二十三に減った。勝訴をてこに規制撤廃と輸出拡大を目指した政府の戦略は練り直しが必要だ。養殖ホヤの生産量全国一位の宮城県では原発事故前、七、八割を韓国に輸出していた。厳しい基準での放射性物質検査に協力し、規制解除を待ち望んできた生産者、産地の漁師らの落胆は察するに余りある。ただ日本でも過去、内外の食品、食物の安全性でさまざまな問題が起きている。牛海綿状脳症(BSE)では、今回とは逆に、米国から輸入禁止の条件が厳しすぎると批判を受けた。消費者が政府に慎重すぎるくらいの対応を求めるのは国ごとの面もある。ふたつ指摘しておきたい。まず、WTO改革による紛争処理機能の強化。多国間の枠組みであるWTOの権威が揺らげば、紛争は激化しかねない。二審を担当する委員七人のうち四人が空席という事態を早く解消すべきだ。そして原発事故の影響の大きさにあらためて向き合わなければいけない。輸入規制は二十三カ国・地域で続いている。風評被害を防ぎ、すべての消費国、消費者に受け入れられるには科学的なデータの蓄積と提供、丁寧で根気強い説明が不可欠となる。

*7-3:https://www.kobe-np.co.jp/column/shasetsu/201904/0012248199.shtml (日経新聞 2019/4/17) 経団連と原発/次代への開かれた議論を
 経団連の中西宏明会長がエネルギー政策の提言を発表した。自然エネルギー拡大に必要な送配電網や蓄エネ技術の開発など、重要な指摘が多数ある。ところが、肝心の原発については首をかしげる部分が多い。安全性確保や国民の理解を前提に、再稼働や新増設の推進を掲げている。だが福島事故が示したさまざまな問題に触れていないのは不自然だ。エネルギーの在り方は日本の命運を左右する。中西会長は、次代への責任として開かれた場で疑問に答え、幅広く議論してもらいたい。中西会長は年初のインタビューで、「国民が反対するものはつくれない」「理解を得るために一般公開の討論をすべき」と発言した。その後、「再稼働をどんどんやるべきだ」と積極姿勢を打ち出し、物議を醸した。経済界トップの呼び掛けに応じて、「原発ゼロ・自然エネルギー推進連盟」が公開討論を申し込んだが、経団連はずっと拒否している。今回の提言は化石燃料の依存度を下げるために原発再稼働の必要性を主張し、60年運転延長にまで踏み込んだ。中西会長は原発メーカーの日立製作所会長でもある。福島の事故で多くの人々が苦しんでいる中、原発の負の部分を語らないのは無責任ではないか。民間シンクタンクが最大81兆円とした廃炉など事故対応費は、税金と電気料金で国民が負担している。事故から8年経っても収束までの時期も費用も全く見通せない。こうした膨大な社会的費用を無視した主張は、国民の支持は得られない。もう一つ気掛かりなことは、世界で斜陽化する原発産業にこだわり続けることのリスクだ。政府が成長戦略とした原発輸出は総崩れの状況にある。巨額の安全対策費が必要で高リスクの原発と、世界の投資が集中する自然エネルギーでは競争力の差が広がり続ける。世界の潮流は自然エネルギーを中心に、蓄電池や電気自動車、住宅などをつないだ自立・分散型社会へと加速している。提言は、電気や関係業界のビジネスモデルが一変する可能性も指摘した。原発に固執せず本音で話し合ってほしい。

*8:https://www.agrinews.co.jp/p47405.html (日本農業新聞 2019年4月18日) 18年貿易赤字 農林水拡大 8・7兆円で1958億円増
 農林水産物の貿易赤字が拡大している。農水省のまとめによると2018年は、輸出額9068億円に対し、輸入額は9兆6688億円となり、貿易赤字は8兆7620億円と前年に比べ1958億円(2%)増えた。輸出額が約1000億円伸びたものの、輸入額の伸びがそれを大きく上回った。輸入額は過去最高を更新した。農産物(食品を含む)が6兆559億円(2%増)と貿易赤字の多くを占めている。ホームページで公表する03年以降で輸入額は最大。輸出額に対し、輸入額が10倍という圧倒的に輸入超過の状況だ。赤字額は林産物が1兆2182億円、水産物が1兆4879億円となっている。農産物の輸入品目を輸入額で見ると、豚肉、牛肉、トウモロコシ、生鮮・乾燥果実、鶏肉調製品、冷凍野菜が上位に並ぶ。19年は赤字幅がさらに拡大するとの懸念が強い。TPPや日本と欧州連合(EU)との経済連携協定(EPA)が相次いで発効。牛肉などの輸入が増えるなど、貿易収支悪化の懸念材料は多い。貿易協定交渉が始まった米国は、農林水産物輸入の最大の相手国。18年の輸入額は1兆8077億円で、トウモロコシや食肉が中心だ。それに対し、輸出額は1176億円にとどまる。1兆6901億円の赤字で、農林水産物全体の貿易赤字の2割を占める。

<思考するには基礎知識が必要であること>
PS(2019年4月19、20、22日追加):*9-1に、地球環境工学が専門で東大学長を勤められた小宮山氏が「①3・11以降、原発のコストが上がり、再エネは下がって逆転が早かった」「②送電線は国民が払った電気料金で整備してきたので単に電力会社のものではなく、公共事業で増強して社会の所有物にすべき」「③世界の潮流は完全に再エネシフトしており、欧州の再エネ比率は30%超、中国は25%、米国も30%程度で、日本の16%は完全に出遅れている」「④現在は、石油・石炭・天然ガスを輸入するため20兆~30兆円が海外に流れているが、再生エネで自給するようになれば、この金は国内に流れ地域の産業に変わるので地方の活性化という日本の根本的な課題の解決に繋がる」「⑤原発ゼロは必然で、再生エネ負担は後世への贈り物」と明言しておられるが、このようにわかりやすくポイントを必要十分に語れる背景には、工学・環境・政治(社会インフラ)・経済(地方活性化)などの幅広い知識と経験の裏打ちがある。
 そのような中、*9-2に、「イ. 小学6年と中学3年全員を対象として、文科省の全国学力テストが4月18日に行われた」「ロ.中3で初めて行われる英語では発信力を重視した」「ハ.国語と算数・数学は日常生活に関わる場面設定に基づく出題が中心になった」「ニ.佐賀県教育委員会は独自に小5、中1、2で国語、算数・数学の2教科のテストも実施した」「ホ.佐賀県内は前年度、小中学ともに漢字の読みや計算など基礎の正答率は高かったが、実験結果を考察するなどの応用問題を解く力に課題があった」等が書かれている。
 このうち、イについては、全国では小6と中3しか学力テストを行わないことに呆れ、佐賀県教育委員会がニのように独自に小5、中1、2でもテストを実施したことに賛成だが、思考するには理科・社会の知識も使うため、国語・算数(数学)と英語のみに限定した科目選択を行い、これだけが重要であるかのようなメッセージを与えるのはよくないと思う。また、ロのように、中3で初めて英語のテストを行って発信力を重視するというのも考え方が安易で、意味のある内容を説得力をもって発信するには背景となる知識が重要なので、小5から数国理社英の5科目はテストをして確実に身に着けさせた方が良く、そうしなければプアー日本人を生産してしまうだろう。また、ハの日常生活の場面における応用は、理科・社会・その他の知識も組み合わせて使うので意外と簡単ではなく、義務教育では幅広い基礎知識を確実に身に着ける方が重要だと考える。
 なお、地球温暖化対策に関する「パリ協定」は、このブログに記載してきたとおり、原発の欠点により、原発回帰ではなく再エネシフトを奨めている。そのため、*10-1のように、日本政府が原発を「実用段階にある脱炭素化の選択肢」などとG20サミットまでに正式決定して国連に提出するのは、ただイノベーションという言葉を繰り返しているだけで諸問題の解決はできておらず、外国の首脳はそれぞれ優秀であるため、日本政府の環境に関する知識や意識の低さをアピールして失笑を買うと思う。さらに、日本国民の金を湯水のように使うのも大きな問題だ。
 このような状況の下、*10-2のように、衆院沖縄3区と大阪12区の補欠選挙でいずれも自民党候補が敗れ、朝日新聞は、その原因を「①首相が沖縄に入らなかった」「②首相への忖度発言で塚田氏が国交副大臣を、復興に絡む失言で桜田氏が五輪相を辞任し、首相の任命責任が問われた」「③選挙期間中に首相側近が10月に予定される消費増税の延期に言及した」などとしているが、沖縄3区は米軍普天間飛行場移設に伴う名護市辺野古への土砂投入に対する批判であり、大阪12区は維新の党のこれまでの実績を評価したもので、どちらも有権者が地元を守るため地元に関する政策を判断したものであって、①②③のように、無理に安倍首相の人格や過失に問題をすりかえても当たらない。地方の有権者は、まじめに考えており馬鹿ではないのである。
  
*9-1:https://genpatsu.tokyo-np.co.jp/page/detail/969 (東京新聞 2019年3月11日) 「原発ゼロは可能だ」小宮山宏・三菱総研理事長インタビュー
 三菱総合研究所理事長の小宮山宏氏(74)は東京電力福島第一原発事故の前後に東電で監査役を務め、原子力業界を間近で見てきた。近年は再生可能エネルギーの推進を訴え、経済界に身を置きながら「原発ゼロは可能だ」と明言する数少ない一人。その真意を聞いた。(伊藤弘喜)
●3.11機に原発はコスト高く
−東電監査役時代からの考えが変わったのですか。
 あまり変わっていません。東電でも再生エネと省エネの重要性を主張し続けた。1990年から一貫して「温暖化の解決策となるエネルギー源は、再生エネと原子力しかない。ただし原子力には安全性の問題がある」と言ってきました。90年代、再生エネのコストはまだ高かった。技術的な見通しが完全には立っていなかったから。でも技術が進めば下がり、2050年ごろには安全対策でコストが上がる原子力と逆転すると思っていた。ところが3・11がきっかけとなり原子力のコストは上がり、再生エネはがんがん下がった。(逆転は)予想よりはるかに早かったです。
●送電線は公共事業で増強を
−なぜ日本で再生エネが拡大しないのでしょうか。
 背景に大手電力10社による地域独占体制がある。地域間をつなぐ送電線が細く、電力が足りなかったり余ったりした時、融通できる余地が少ないのです。送電線は誰のものか。国民が払う電気料金で整備してきたのだから、単に電力会社のものではありません。公共事業で増強し、社会の所有物にすべきです。昨年、世界で新設された発電所の70%は再生エネで火力が25%、原子力が5%。こうした傾向は近年、一定しており、世界の潮流は完全に再生エネにシフトしている。欧州では再生エネの比率は30%を超えた。中国でも25%、米国が3割ほど。日本は16%で完全に出遅れています。
●再生エネは地方を変える
−再生エネはどんな効果をもたらしますか。
 地方の活性化という日本の根本的な課題の解決につながります。今は石油や石炭、天然ガスを輸入するため20兆~30兆円が海外に流れている。再生エネで自給するようになれば、このお金は国内に流れ、地域の産業に変わります。間伐材や家畜のふん尿で発電するバイオマスの推進は、農林業の再生につながる。水が豊富な地域は水力を、風が強い地域は風力を−といった具合に、地域に合った再生エネに取り組めばいいのです。
−現状は、政府も経済界も原発再稼働に積極的です。
 20年後には原発はほとんど動いていないでしょう。新しい原発をつくるのは極めてコストが高い。長期的には、全てを再生エネでまかなうことに多くの人が合意できると思います。一番安いのだから。
●再生エネは後世への「贈り物」
−再生エネ電力を買い取る固定価格買い取り(FIT)制度は電気料金で下支えしています。それにより、国民負担が膨らんでいるという指摘があります。
 FITは再生エネを普及させるために、現世代が負担する制度です。原発が放射性廃棄物の負担を次世代に回していることとは逆の構造なのです。FITでの買い取り期間は10~20年。何万年も保管する必要がある放射性廃棄物と比べれば、FITの負担は我慢できる範囲だと思います。温室効果ガスを出さず、後世に負担を残さない「贈り物」となるエネルギー源は、再生エネ以外にありません。
【略歴】こみやま・ひろし 1944年、栃木県生まれ。東大大学院博士課程修了。工学博士。専門は地球環境工学。東大教授、東大学長などを経て、2009年から現職。09年6月~12年6月まで東電監査役。

*9-2:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/364133 (佐賀新聞 2019年4月19日) 全国学力テスト、県内は255校 中3で初の英語、発信力重視
 小学6年と中学3年の全員を対象とした文部科学省の「全国学力・学習状況調査」(全国学力テスト)が18日、一斉に行われた。中3で初導入の英語では自分の考えを書いたり話したりする発信力を重視。学習指導要領改定を踏まえ、基礎知識と活用力を一体的に問う新形式に変更された国語と算数・数学は、日常生活に関わる場面設定に基づく出題が中心となった。佐賀県内では、国公立の小中学校と特別支援学校、私立中の計255校、約1万5500人が試験に臨んだ。結果は7月に公表される。英語は「読む・聞く・書く・話す」の4技能を問い、このうち「話す」は、パソコンの画面の映像を見て英語で説明させる形式。生徒の声の録音データを基に採点を行う。テレビ局から将来の夢を聞かれたという設定で、内容を1分間考えた後に30秒で答える出題などがあった。国語と算数・数学はこれまで、基礎知識を問う「A問題」と活用力を測る「B問題」に分かれていたが、今回から統合し、活用力を意識した設問をそろえた。日常生活と結び付いた場面設定が多く、小学校国語では、畳職人へのインタビューのやりとりから自分の考えをまとめさせた。佐賀県教育委員会は独自に小5、中1、2で国語、算数・数学の2教科のテストも実施した。対象は公立の小中学校258校、約2万3千人。県教委は、7月末をめどに国から結果が届くことを受けて、前年度まで実施してきた独自の採点は行わない。県独自の調査分については6月下旬までに各学校に集計結果を送る。県内は前年度、小中学ともに漢字の読みや計算など基礎の正答率は高かった一方で、実験結果を考察するなどの応用問題を解く力に課題があった。県教委は、基礎学力の定着に向けた補充学習の実施や、家庭学習の定着に向けた手引を小中学の保護者に配布するなど五つの柱に沿って学力アップに取り組んでいる。今回の全国での参加は小学校1万9496校の約107万6千人、中学校1万22校の約104万5千人。国公立は全校、私立の参加率は50・1%だった。

*10-1:https://digital.asahi.com/articles/DA3S13985037.html (朝日新聞 2019年4月20日) 温暖化の対策案、「原発推進」鮮明 政府、国連に提出へ
 地球温暖化対策の国際ルール「パリ協定」に基づき、政府が国連に提出する長期戦略案が19日わかった。焦点の一つである原発は「実用段階にある脱炭素化の選択肢」とし、安全性・経済性・機動性に優れた炉を追求するとの目標を掲げた。政府の有識者懇談会の提言より、原発推進に前のめりな姿勢を鮮明にした。23日に公表し、国民から意見を募った上で6月に大阪である主要20カ国・地域首脳会議(G20サミット)までの正式決定をめざす。パリ協定は2015年に採択され、21世紀後半に温室効果ガスの排出を「実質ゼロ」にすることをめざしている。各国は20年までに国連に長期戦略を提出する必要がある。日本は「50年までに温室効果ガスを80%削減」との目標を掲げており、長期戦略は実現に向けたシナリオとなる。安倍晋三首相の指示で、政府の有識者懇談会が基本的な考え方を議論してきた。今月2日に公表した提言では、原発について省エネルギーや再生可能エネルギー、水素などとともに技術的な選択肢の一つとし、「安全性確保を大前提とした原子力の活用について議論が必要」だとして、推進までは踏み込んでいなかった。一方、長期戦略案では、原発を二酸化炭素(CO2)大幅削減に貢献する主要な革新的技術の一つとして取り上げ、「可能な限り原発依存度を低減する」としつつも、「安全確保を大前提に、原子力の利用を安定的に進めていく」とした。「もんじゅ」(福井県)で失敗した高速炉のほか、小型炉、高温ガス炉など具体的な技術例を挙げたうえで、「原子力関連技術のイノベーションを促進する観点が重要」とも言及した。

*10-2:https://digital.asahi.com/articles/ASM4P76P2M4PUTFK007.html?iref=comtop_8_01 (朝日新聞 2019年4月21日) 政権与党、参院選へ痛手 忖度・復興失言… 補選2敗
 衆院沖縄3区と大阪12区の補欠選挙が21日、投開票され、沖縄では野党系新顔、大阪では維新新顔が初当選し、自民党新顔がいずれも敗れた。与野党ともに夏の参院選の前哨戦と位置づけたが、政権与党は大きな痛手を受け、大阪で大敗した野党も連携が不発に終わった。2012年の政権復帰以降、国政選挙で強さを見せてきた安倍政権が補選でつまずいた。国政選挙にもかかわらず、安倍晋三首相は沖縄に入らず、大阪入りは投票前日。選挙の顔として不安を残した。「オール沖縄」や維新が、政権に対する批判票の受け皿になった形だ。新元号「令和」への好感から一部には内閣支持率が上昇した世論調査もあったが、首相らへの「忖度(そんたく)」発言で塚田一郎氏が国土交通副大臣を、復興に絡む失言で桜田義孝氏が五輪相を相次いで辞任。首相の任命責任が問われた中での選挙戦だった。大阪は維新のダブル選で圧勝した勢い、沖縄では米軍普天間飛行場移設に伴う名護市辺野古への土砂投入を強行してきた政権に対する厳しい批判の逆風にさらされた。大阪12区はもともと自民の議席のため、自民や公明の幹部は「せめて1勝」と口をそろえていたが、両選挙区とも自公協力がうまく機能しなかった。首相は投開票日前日に同じ選挙区内で異例という3カ所の街頭演説をこなしたが、自民幹部が一度は公言した公明党の山口那津男代表とのそろい踏みは実現しなかった。選挙期間中に首相側近が10月に予定される消費増税の延期に言及。政権内には、夏の参院選に合わせた衆参同日選論がくすぶる。しかし、公明は同日選に強く反対しており、自公の選挙協力がきしむ中で踏み切れるか不透明な状況だ。対する野党は、「辺野古移設反対」で一致した沖縄3区では連携を成功させた。しかし、大阪12区では共産党現職が辞職して無所属で立候補し、他党が協力する方式が不発に終わった。参院選で32ある1人区の候補者調整で、共産系候補が立候補するケースは限定的になりそうだ。

<高齢者・障害者差別から課題解決へ>
PS(2019年4月22、23日追加): *11-1・*11-2のように、「①高齢ドライバーが自動車事故を起こした」「②従って80代以上は免許返納を」「③地方では車がないと生活できない」「④犠牲者が気の毒」などという議論がよく起こるが、④だからといって、①②のように、「高齢になると判断能力が衰え、事故を起こしやすいので、80代以上は全員免許を返納せよ」というのは、「女性は運転能力がないので、女性には自動車免許を取らせない」というのと同様に属性に基づく根拠なき差別であり、人によって異なる。また、③のように、地方では車がないと生活できない上、都会でも運転が必要不可欠な場合もあるため、人権侵害にもなる。
 そして、*11-3のように、年代別の事故率は、20代・40代・30代が多く、80歳以上による交通事故は最も少ないそうで、データを読む場合は感情論に走らず、「母集団の数」「運転時間(あまり運転しない人は事故も少ないから)」などを揃えて正確に考察すべきだ。
 なお、障がい者はむしろ自動車が不可欠な場合もあるため、障がい者が運転できない自動車の構造は変えるべきであり、バリアフリーを実現するためにも自動運転や運転支援機能が重要なことは、前から指摘されていた。にもかかわらず、*11-4のように、未だに「CASEの重圧」などと記載されているのは、日本の自動車会社の決断の遅さを示しており、これについては既に進路が明確になっているため、ディーゼル車やハイブリッド車に経営資源を振り向けるよりも、EVや自動運転車に経営資源を集中した方が無駄なく競争できるわけである。
 このように、ともかく高齢者の能力を低く見たり、差別したりするキャンペーン発言が多い中、*12のように、佐賀県鹿島市に91歳で初当選した市議がおられ、「イ. 年寄りとは思っておらず、老け込むには早過ぎる」「ロ. 4年間やっていく自信がある」「ハ. 老人のことを専門にする人が、議会に1人くらいいてもいいのではないか」と言っておられるのは頼もしい。確かに、若くさえあればよいわけではなく、高齢者だからこそわかることも多いため、人口構成を反映した議員構成が必要だろう。


アウディの自動運転車 ベンツの自動運転車  ヤマトのEV配送車    日本郵便のEV

(図の説明:日本では、1995年前後からEVの市場投入をめざして研究開発してきたにもかかわらず、実用化はEUや中国の方が早く、それを見て後を追いかけることしかできていない。また、自動運転や運転支援も高齢化・運転手不足・バリアフリー等の視点から2000年代には言っていたのに、他国に後れをとってから慌てる構図が変わらないのは何故だろう?)

*11-1:https://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201904/CK2019042002000261.html (東京新聞 2019年4月20日) 池袋暴走 「80代以上 免許返納を」 「地方暮らし 車が必須」
 東京・池袋の乗用車暴走事故があった現場では二十日午前、亡くなった母子を悼む人たちが次々と訪れ、花などを供えて手を合わせた。横断歩道のそばに設けられた献花台には、数十もの花束や人気アニメのキャラクターが描かれたお菓子などが並べられた。亡くなったのは、現場近くに住む松永真菜(まな)さん(31)と長女莉子(りこ)ちゃん(3つ)。近くのマンションに住む福沢有希子さん(40)は、花束の前で自転車を止め、後ろに乗った次女(4つ)と一緒に手を合わせた。「とても人ごととは思えない。無念と思いますが、天国で安らかに過ごしてほしい」と声を落とした。青信号の横断歩道を渡っていた人たちが巻き込まれた今回の事故。福沢さんは「青信号でもしっかり安全確認しよう」と家族で話し合ったという。近くの女性看護師(39)は「事故の時に近くにいれば。何かの助けになりたかった…」と悔やむ。八十七歳の高齢ドライバーによる事故を受け、栃木県で暮らす六十代の両親に電話で「運転に気を付けようね」と伝えたという。「地方では車がないと生活できない。実家に帰ったらタクシー代を渡したい」と話した。追悼に訪れた人たちの中には、高齢者の姿も。二歳の孫がいるという千葉県成田市の男性(75)は花束の前で手を合わせ、「あまりに悲しすぎる」と何度もハンカチで目を拭った。男性は毎日のように車を運転しているが、衰えも感じるという。「赤信号を漫然と見過ごさないよう意識しているが、高齢者講習を強化しないといけないのでは」と指摘した。三歳の孫がいるという近くに住む女性(66)は「亡くなった子と同じ公園で遊んだこともあったかもしれない。かわいい盛りなのに」と涙ぐんだ。痛ましい事故を受け、「八十代ぐらいで免許は返還してほしい」と語った。

*11-2:https://www.hokkaido-np.co.jp/article/298364 (北海道新聞 2019年4月20日) 82歳運転の乗用車、店舗入り口に突進 むかわ 2人軽傷 アクセルとブレーキ踏み間違えか
 20日午後2時5分ごろ、胆振管内むかわ町美幸4のホームセンター「ホーマックニコットむかわ店」の入り口付近に、同町穂別の会社役員男性(82)の乗用車が突っ込んだ。入り口前の園芸コーナーで作業をしていた店長の男性(53)と女性従業員(30)がはねられ、腰などを打つ軽傷を負った。乗用車は建物には衝突しなかった。苫小牧署によると、会社役員男性は駐車場に車を止めようとしていたという。同署はこの男性がアクセルとブレーキを踏み間違えたとみて調べている。

*11-3:https://news.yahoo.co.jp/byline/mamoruichikawa/ (Yahoo 2016/11/20) 高齢ドライバーの事故は20代より少ない 意外と知らないデータの真実
 10月、11月と高齢のドライバーによる交通死亡事故が相次いで報道されています。「登校の列に車、小1男児が死亡 横浜、児童8人けが」(朝日新聞 10月28日)。「駐車場のバー折って歩道の2人はねる…車暴走」(読売新聞 11月13日)。実際に統計上、高齢ドライバーによる死亡事故の件数は増加しているようです。「2014年に約3600件あった死亡事故のうち、65歳以上の運転者が過失の重い「第1当事者」になったケースは26%だった。約10年間で10ポイント近く増えている。 出典:北海道新聞11月17日社説『高齢ドライバー 事故防ぐ対策急ぎたい』」でも考えてみると、いま日本では急速に高齢化が進んでいます。それとともに65歳以上の人口が増えているわけですから、事故の件数が増えてしまうのはある意味で当然のことです。では高齢化の影響を除いた場合、高齢ドライバーによる事故は増えているのでしょうか?
●高齢ドライバーが起こす交通事故は20代より少ない
 上の図は、交通事故を起こした人(第1当事者)の数を年代別に、平成17年から27年まで見たデータです。ポイントは、年代別の「全件数」ではなく、「その年代の免許者10万人当たり、どのくらい事故を起こしているのか?」を調べていることです。こうすることで、より正確に「その年代の人が、どのくらい事故を起こしやすいのか」を知ることができます。(※16歳からのデータがあるのは、原付やバイクを含むからです。)まずわかることは、全年代でゆるやかに減っていることです。全体で見ると、10年前のおよそ半分になっています。では、どの年代がもっとも交通事故を起こしやすいのでしょうか?上から順番に見ていくと、「16~19歳」が傑出して多く、それに続くのが「20~29歳」。その次に来るのが「80歳以上」です。70代となると、他の年代とほとんど差はありません。とはいえ、高齢者になるとペーパードライバー(免許を持っているけれど運転しない人)の割合が多くなりそうです。そこで念のため、年代別の「全件数」のデータも調べてみました。驚いたことに、20代・40代・30代が多く、80歳以上による交通事故が最も少ないことがわかりました。少なくとも上記のデータからは、高齢者が若者と比べて特に交通事故を起こしやすいとは言えないのではないか?という気がしてきます。
●死亡事故は80歳以上で起こしやすいが、トップではない
 では、「死亡事故」に限定した場合はどうなるでしょうか?年代別の免許者10万人当たりの件数を見たデータです。まずわかることは、死亡事故も大幅に減っているということです。80歳以上に限定すると、10年前の半分程度に減っています。死亡事故の場合、確かに80歳以上の危険性が高いことがわかります。ただし「16~19歳」も高く、去年のデータでいえばわずかに80歳以上を上回っています。その次は、20代と70代が同じくらい。とはいえ、その他の年代と比べて、それほど多いとは言えないようです。上記のデータからは、「16~19歳と80歳以上の運転者は、死亡事故を起こしやすい」のではないか?ということがわかります。なおせっかくですから、年代ごとの交通死亡事故の「全件数」を見てみます。全件数でみると、やはり20代や40代が多く、80歳以上が起こす死亡事故は少ないことがわかります。この年代で運転している人が、そもそも少ないのかもしれません。
●データをもとに議論する大切さ
 いま高齢ドライバーが起こす死亡事故が急増していることが強調され、免許返納や認知機能検査などの重要性が指摘されています。確かにデータからも、件数としては少ないですが、80歳以上で死亡事故を起こす危険性が高いことが示されています。今後、高齢化のなかでこの年代のドライバーの絶対数が増えるのは確実ですから、対策が急務なことは間違いありません。ただ心配なのは、高齢ドライバーへの風当たりが必要以上に強まることです。例えば下記の報道で「高齢ドライバー」とされているのは、67歳の男性です。「高齢ドライバーにはねられ男性死亡 長崎」(日テレNEWS24・11月18日)65歳以上の人は「高齢者」とされるので、この男性を「高齢ドライバー」と呼ぶのは間違っていないかもしれません。でも実際の統計データは、60代のドライバーは20代より交通事故を起こしにくいことを示しています。わざわざ上記の事故を「高齢」と付けて報じることで、誤ったイメージが広がってしまう危険があります。繰り返しますが、死亡事故を減らすために、増え続ける高齢ドライバー(75歳以上)、とくに認知症に気づかないまま運転してしまう人への対策は有効だと考えられます。一方で高齢者にとって、自動車の運転が自立した生活の生命線であったり、「誇り」の象徴だったりするケースも少なくありません。いま対策が急務だからこそ、「なんとなく危なそう」というイメージではなく、データに基づいて「どんな年代の人に、何をすべきか」を冷静に考えていくことこそが大事なのではないでしょうか。
【注】第1当事者とは、事故当事者のうちもっとも過失の重い者のことを言います。

*11-4:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190421&ng=DGKKZO43942810Z10C19A4MM8000 (日経新聞 2019年4月21日) 自動車産業にCASEの重圧、直近ピーク比、時価総額57兆円減
 自動運転など新しい技術の潮流「CASE(ケース)」が、世界の自動車産業を揺さぶっている。ソフトウエアなど不慣れな領域で投資・開発の負担が膨らみ、IT(情報技術)大手など異業種との競争も激化する。「100年に一度の大変革期」に突入した自動車産業。投資マネーは離散し、自動車株の時価総額は2018年1月の直近ピーク比で約57兆円(21%)減少した。「(CASE対応で)毎年1000億円以上の開発費が必要。営業利益は大きなマイナスのリスクを抱えている」。トヨタ自動車の白柳正義執行役員は18年12月の労働組合員向けの説明会で述べた。春季労使交渉は13年ぶりに回答日までもつれ、賃上げ額は組合要求を下回った。アイシン精機の社内でも危機感は強い。主力製品の自動変速機(AT)は「自動車がすべて電動化されれば、不要になってしまう」(幹部)。ハイブリッド車向けにモーターを組み込んだATの生産を拡大するなど生き残りを懸命に探る。曙ブレーキ工業が私的整理の一種、事業再生ADR(裁判以外の紛争解決)を申請した背景にもCASEの重圧があった。業績が悪化するなかでも電動化を見据えた新しい構造のブレーキの開発を継続し、18年3月期の研究開発費は総額103億円と純利益の13倍に膨らんでいた。自動車産業の競争力を支えてきたのはエンジンなど「機械」の技術だ。しかし、CASE対応にはソフトウエアや半導体など別の技術が必要で、その領域では