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2021.9.2~3 女性教育の産業への好影響 ← アフガニスタンには男女の人権を護る憲法と女性差別を具体的に禁止する法律が必要 (9月4《図》、5、7《図》、8、9、10、11、14《図》、15、17、18《図》、20、23、24日、10月2日追加)
(1)アフガニスタンについて

 

(図の説明:1番左の図のように、中村医師はアフガニスタンに2003年から用水路を建設し、用水路が完成した地域には、左から2番目の図のように緑地が広がっている。現在は、右から2番目の図のように、太陽光発電所と羊牧場を併設したり、1番右の図のように、砂漠に風力発電機を設置して動力を得たりすることもできる)

    
アフガンの人口ピラミッド   日本の人口ピラミッド      2018.6.4東洋経済

(図の説明:左図のように、アフガニスタンの人口ピラミッドは富士山型に近く、栄養状態が悪くて医療も普及していないため乳児死亡率が高いことを示す。これは、中央の図の日本の1950年以前《主に戦前》の状態に近いが、日本では、右図のように、戦後、急速に実質GDPが伸び、それにつれて栄養状態が改善し、教育や医療が普及して、一人一人の生産性が前より上がって豊かになり、人口ピラミッドがつりがね型からつぼ型へと変化した。つまり、多産と経済成長は正の相関関係がないだけでなく、教育を通して負の相関関係がありそうなのである)

1)米軍のアフガニスタン駐留終了が人権に与える影響
 バイデン米大統領は、*1-1-1のように、「20年間にわたる米軍のアフガニスタン駐留が終了した」と明らかにし、12万3000人の米国人及び米国に協力したアフガン人の国外退避をだいたい終えた後、掃討をめざしていたイスラム主義組織タリバンが復権した。

 が、未だ100~200人の米国人が出国できずに残っており、タリバンが求める経済支援と引き換えに自由かつ安全な移動に関する合意を履行するよう求めており、タリバンの報道官の方は米軍撤収について「私たちの国は完全な独立を手に入れた」とツイッターに投稿したそうだ。

 *1-1-2は、①タリバンの統治を恐れて空港周辺に出国を望む市民数千人が殺到して死者が出た ②アフガン在住の各国国民や協力したアフガン人の国外退避は緊急を要する最優先事項 ③タリバンは国外退避を望むアフガン人に対し、新たな国造りに必要な人材として空港到着を阻んでいる ④在アフガニスタン米大使館員らは7月13日付の極秘公電で駐留米軍が8月31日に撤退すれば、直後にガニ政権や政府軍は崩壊する恐れがあると警告していた ⑤警告にもかかわらず、米政府はガニ政権とタリバンとの戦闘見通しを誤った と記載している。

 また、*1-1-2は、⑥日米欧のG7は8月24日に緊急首脳会議を開いて、退避支援に全力を挙げること・人道危機回避への貢献・女性の権利擁護・テロ対策での緊密な連携を確認 ⑦日本政府は出国を求める人に各自で空港までの移動手段を確保するよう求めたが、市民に自己責任で移動を求めるのは無責任 ⑧日本政府はタリバンと交渉し安全地帯を確保して迎えに行くなどの安全で確実な方法を示すべき ⑨米軍撤退の教訓は、中央アジアの覇権争いを繰り返さず、故中村哲医師が実践したような取り組みで国を再生させること とも記載している。

 さらに、*1-1-3は、⑩タリバンは、8月17日に首都カブールで開いた記者会見でザビフラ・ムジャヒド報道官が初めて姿を見せて国際テロ組織を国内から排除する方針を明らかにし ⑪報道官は「外国組織が他国に危害を与えるために国土を使うことを許さない」とも強調し ⑫資金源であるケシ栽培は「金輪際関わらない。そのためにも国際社会の援助が必要」と訴え ⑬ジェイク・サリバン米国家安全保障担当大統領補佐官は、8月17日の記者会見で「タリバンがどのような行動を世界に示すか次第。(政権承認の是非を)判断するのは時期尚早だ」と答え、女性の権利を守らせるために同盟国と連携してタリバンに圧力をかける と記載している。

 このうち①は悲惨で、酷い刑がしばしば行われる国では②が不可欠だ。また、③は、タリバンの支配層が新たな国造り要員としてアフガン人の出国をの望まなかったとしても、その意味するところを文字の読めない末端まで理解できるとは限らず、自由な思想を持つリーダーの方がいつ殺されて失脚するかわからないため、残された人はやはり危険である。これは、日本の明治維新から第二次世界大戦以前と同じような状況だ。

 従って、④⑤⑥については、⑤の警告に基づいて必要なことを終わらせた後で撤退すれば、①②は起こらず、何とか合格点だったただろう。しかし、日本の⑦も、市民に無理を強いている。⑧は、日本大使館を再開して安全地帯とし、ビザを発行して国外退避したい人をアフガニスタン国外に移送し、その後、日本に空輸するしかないと思われる。

 それを可能にするには、⑨や*1-3に書かれている中村医師の実績と今後の日本の援助方針が効くだろう。中村医師は、アフガンを干ばつが襲って農地が砂漠化するのを見て、病気の背景には食料不足と栄養失調があると考え、「100の診療所より、1本の用水路を」と2003年からアフガン東部で用水路建設に着手した。

 この用水路は、これまで約27kmが開通し、1万6,500haを潤して砂漠に緑地を回復させ、農民65万人の暮らしを支えている。中村哲医師の灌漑は、現地の人が維持・管理できるように江戸時代に築かれ今も使われている福岡県朝倉市の山田堰をモデルとし、護岸はコンクリートではなく鉄線で編んだ「蛇籠」に石を詰めて積み、そこに根を張る柳を植えて補強したもので、その防風・防砂林の植樹総数は100万本を超えて、工事に携わった人たちは現場で技術を習得して熟練工となり、中村さんは近年、国連機関やJICAとも連携してノウハウをアフガン全土に広めようとしていたのだそうだ。

 農林業の技術移転によってアフガン全土に実りの豊かさをもたらすことは、戦争に割く人員を減らして穏やかに暮らすために不可欠な条件だと思われるため、適切な作物を選んで必要な工事を行い、今後の技術支援の軸にすべきだろう。

2)イスラム圏で女性の人権と自由をどう守るか
 タリバン執行部は、*1-2-1のように、「イスラム法の範囲内で女性の権利を尊重する」と主張しているが、旧タリバン政権下で女性を抑圧した過去があるため、国際社会は女性の人権が守られるのか強い懸念を抱いている。

 そもそも、「『イスラム法の範囲内』で尊重される女性の権利」は、女性を1人の人間として男性と差別なく人権・自由を保障するものではなく、アフガン国内の女性が変えることはできない性格のものである。その例として、カブールで美容院の女性の肖像がスプレーで汚されていたり、女性が夫以外の男性の前で着飾ることや目以外の部位を露出することを認めなかったり、女性を拉致したり、女性を職場から追い出したりする事例は枚挙に暇がない。

 アフガンで低迷する女性の識字率や社会進出の課題を告発し続けてきた女性記者エストライ・カリミさんは、「西部ヘラート州で、夫が運転する車で取材先に向かっていたところ、銃声が響き、戦闘員に取り囲まれて夫婦で拉致され、モスクの脇にあるタリバンの施設で『運転席の男は誰だ。女が夫や兄弟の同伴なしで出歩けると思っているのか』と尋問され、憤激するタリバン幹部に夫だと説明すると、勤務先や住所も確認され、約1時間後にモスクの宗教指導者がタリバン幹部をなだめて解放された」のだそうだ。

 また、タリバン傘下に入った国営テレビ局「RTA」では、画面から女性キャスターの姿が消え、その一人のシャブナム・ダウランさんがSNSに投稿したビデオ声明で「タリバンから『帰れ』『政権が変わったんだ』と追い返された」と訴えた。

 さらに、ロイター通信によると、南部カンダハルでは7月にタリバンが銀行を訪れ、女性職員9人に出勤停止を命じ、カンダハルの女子校に勤める女性教員は「学校は閉鎖したままで生徒が心配。たとえ授業が再開しても、科目は宗教に偏るでしょう。進学を志す女子がまた減ってしまう」と憤っているそうだ。

 タリバンは政権に就いていた1996~2001年、極端なイスラム教解釈で女性の通学や就労を妨げ、服装を強要して国際的な批判を浴び、今後も女性の行動に一定の縛りをかける恐れが強いため、カブールではタリバンの権力掌握を受け、全身をすっぽり覆う衣装「ブルカ」を買い求める女性が店に殺到したのだそうだ。

 アフガンでタリバンが猛攻を続けていた頃から、*1-2-2のように、海外留学中のアフガン人学生からは「また教育が奪われる」と懸念の声が上がっていた。アフガンで裁判官になるのが目標で、3年前に激しい競争の中でアズハル大の奨学金を勝ち取って単身でカイロに来た7人兄妹の長女は、教育を禁じるタリバンが国を支配すれば、「女性で単身留学している私は標的になる。帰国すれば命を狙われる」と話し、医者を目指していた妹は「もう諦めた。ここから逃げたい」と毎日泣いているそうだ。

 タリバンが制圧した州都では、教育機関や政府施設が破壊され、一部では女性に体や顔を覆う衣装「ブルカ」の強要も始まったそうで、これらからわかるように、イスラムの女性が「ブルカ」を着たり、教育を受けなかったり、識字率が低かったりするのは、その文化を自ら望んでいるからではなく、支配者に強要されるからなのである。

3)今後の対応について
 アフガンの状況は、日本の第二次世界大戦前後の状況や女性の地位に似ている。これらを同時に解決するには、日本国憲法に近い徹底した民主主義憲法を導入し、男女平等の民法を制定し、女子差別撤廃条約に調印させ、男女雇用機会均等法や男女共同参画基本法を成立させなければならない。

 外圧でそれらを行わなければ、アフガン内部のリーダーは、自由で人権を尊重する人ほど殺されて早く失脚するのである。そのため、私は、*1-3のような経済支援や日本企業の進出を、民主主義に基づく新憲法の導入等を条件として行うべきだと思う。そして、女性を教育して男女共同参画させることは、実は、産業や経済の発展にも大きく寄与するのだ。

(2)日本では、豪雨で繰り返す内水氾濫・外水氾濫

   
   Weathe News      2019.8.29佐賀新聞     2021.8.14産経新聞

(図の説明:今夏は、左図のように、佐賀県《特に嬉野市》で1,000mmを超える雨が降り、低い土地にある市や町で、中央の図のような内水氾濫が起こった。そのうち武雄市や大町町は、2019年にも同じ場所で内水氾濫が起こっており、右図のように、洪水が予想される地域である)


 2021.8.14日本TV    2021.8.16佐賀TV    2021.8.14朝日新聞   2021.9.1 
                            順天堂病院     佐賀新聞
(図の説明:1番左の図のように、豪雨時の六角川本流の水面は住宅地の屋根より高く、一部で外水氾濫を起こしたと同時に広い範囲で内水氾濫を起こした。その結果、左から2番目の図のように、武雄市では住宅地が一時は3mも水に浸かった。また、右から2番目の図のように、大町町の順天堂病院も1年おきに1階が水没しており、せっかく病院を誘致できたのに残念なことだ。さらに、1番右の図のように、激甚災害の指定を受けて国庫補助率が上がったのはよかったが、かさ上げしなければならないのは補助率だけではなく住宅地そのものであるため、復旧にしか使えないのは使い勝手が悪い)

1)2021年8月の浸水被害
 8月11日から降り続いた豪雨で九州北部の佐賀県武雄市・福岡県久留米市は、*2-1のように、水路や下水道の排水が追い付かず、雨水が地表にあふれる「内水氾濫」が起きて住宅浸水や道路の冠水が相次いだ。武雄市内では支流の内水氾濫に加えて六角川本流も一部で外水氾濫し、東部を中心に住宅地などが濁った水で覆われた。また、武雄市と隣接する大町町の順天堂病院も周囲を泥水で囲まれ、2019年と同様に孤立状態となった。

 久留米市では、8月14日午前までの24時間降水量が観測史上最大の387mmとなり、筑後川支流で内水氾濫が起きて4年連続で市街地と田園地帯が水に漬かった。久留米市によると、支流は本流からの逆流を防ぐため合流点の水門を閉鎖し、水は本流にポンプで送るが、処理できなくなった雨水が広域であふれ、ポンプを増やしたり、堤防のかさ上げに取り組んだりしたが、圧倒的な雨量に及ばなかったそうだ。

 佐賀県武雄市の被害概要について、*2-2のように、浸水の深さ・内水氾濫の面積・家屋被害数等が、2019年8月に県を襲った記録的大雨より深刻で、2年前の8月は降雨期間が3日間だったが、今夏は7日間(11~17日)続き、総雨量も最大約1,300mm(2年前は最大約500mm)で、六角川の排水ポンプが3回合計8時間50分(前回は1回合計3時間10分)停止し、家屋への浸水被害は2021年8月25日現在で床上1,273棟・床下390棟の計1,663棟(前回は1,536棟)、通行止めは約90カ所(前回は63カ所)、浸水の深さや内水氾濫の面積は2年前より大きく、地滑りの兆候も今回は3カ所で確認されたそうだ。

 武雄市は、2年前と比べて内水氾濫が広がった理由を長時間の降雨と六角川の水位上昇に伴って排水ポンプの停止時間が長引いたことなどが影響したとみており、市長は「国交省には内水氾濫対策に目を向けてほしい」とし、ポンプ機能を維持する方策を専門家や国交省の河川事務所と早急に協議する意向を示しているそうだ。

2)国からの支援としての激甚災害の指定とこれから行うべきことについて
 佐賀県武雄市や大町町で「内水氾濫」がよく起こる理由は、海抜0m地帯で、有明海に注ぐ六角川の勾配が緩く、満潮時は有明海の海水が上流約29kmまで遡り、広範囲で住宅地が川面より低くなり、雨水が下水道等から溢れることによるそうだ。つまり、標高が低いため自然排水が難しく、もともと浸水リスクの高いこの地域は、上の段の右図のように、洪水予想地域として地図上に記載されているのである。

 これに対し、国交省は、六角川と牛津川流域の60カ所以上にポンプを設置し、住宅地に降った雨水を河川に排水しているが、大雨で河川の水位が上昇するとポンプの運転を停止せざるを得なくなり、ポンプによる排水が追いつかなくなる。これは、気候変動によって海面の高さが上昇し、豪雨も激しくなれば、ますます被害を大きくするものである。

 確かに、下の段の1番左の図のように、豪雨時の六角川本流の水面は住宅地の屋根より高く、一部で外水氾濫を起こしたと同時に広い範囲で内水氾濫を起こしている。そのため、下の段の左から2番目の図のように、武雄市では住宅地が3mも水に浸かり、大町町の順天堂病院も、右から2番目の図のように、1年おきに1階が水没しているのだ。

 これらの被害について、*2-3のように、今回も激甚災害の指定を受けることができ、国庫補助率が上がったのは不幸中の幸いだったが、広範囲に降る自然の豪雨を人工のポンプで排水すること自体に無理があるため、住宅地は土地を交換して高台に移転し、低地でもいつも川の水面上になるようかさ上げして田畑にするのが、今後の被害を免れる唯一の方法だと考える。

 私が衆議院議員をしていた2005~2009年の間にも浸水被害があったため、地元の人に「土地のかさ上げか、高台への移転ができないのか」を聞いたところ、「①かさ上げする土がない」「②浚渫していないため、ダムや川の底に土が溜まって浅くなっている」「③それをする人手がない」「④個人の住宅に補助を出すことはできない」などのできない理由ばかりが返ってきた。

 しかし、②の浚渫を行えば①の土も出るため、③は外国人労働者を雇用してでもやった方がよいだろう。また、このように頻繁に浸水するのなら、④の個人住宅や病院もかさ上げするか、高台に移転する方法を考えた方が、費用と時間をかけて行う復旧を「賽の河原の石積み」にせずに済むと思うわけである。

・・参考資料・・
<アフガニスタン>
*1-1-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20210831&ng=DGKKZO75292470R30C21A8MM0000 (日経新聞 2021.8.31) 米軍、アフガン撤収完了、米最長の20年戦争終結、米国人ら12万人退避
 バイデン米大統領は30日の声明で「20年間にわたる米軍のアフガニスタン駐留が終了した」と明らかにした。掃討をめざしたイスラム主義組織タリバンが復権し、米史上最長の戦争は敗走に近い形で幕を閉じた。国際テロ組織がアフガンを拠点に米国本土を再び攻撃するリスクは消えていない。バイデン氏は声明で、アフガンの首都カブールの空港で米国人やアフガン人の国外退避を支援した米兵に対し「米史上最大の空輸任務を実行した」と謝意を示した。米東部時間31日午後1時30分(日本時間9月1日午前2時30分)にアフガン戦争の終結について国民向け演説を行う。米軍がアフガンの国外に退避させたり退避を支援したりした米国人やアフガン人などの数は12万3000人に上る。ブリンケン国務長官は30日の演説で「米国の軍事面での戦いは終わった。米国のアフガンに対する新しい関与のチャプターが始まる」と強調した。米国の在アフガン大使館を閉鎖し、カタールの首都ドーハでタリバンとの対話を進めていく。アフガンでは100~200人の米国人が出国できずに残っていると明らかにした。アフガン戦争で米国に協力したアフガン人について「期限を設けずに彼らとの約束を守る」と断言。退避を望む米国人と並んで退避支援を続けるとした。タリバンに対して自由かつ安全な移動に関する合意を履行するよう改めて求めた。タリバンが求める経済支援などを念頭に「我々の対応は言葉ではなく行動に基づいて決まる」と指摘し、米国との協力を促した。一方、タリバン報道官は米軍撤収について「私たちの国は完全な独立を手に入れた」とツイッターに投稿。タリバンがカブールを制圧して以降、「恐怖政治」が復活するリスクが浮上している。バイデン氏は4月、約2500人のアフガン駐留部隊を撤収させると表明した。部隊を5800人規模に増やし、米国人に加えてアフガン戦争で米国に協力したアフガン人の国外退避を8月末まで進めると説明してきた。欧州や日本も自国民らを退避させた。泥沼の戦争を批判的にみる世論に配慮し、バイデン氏はアフガン撤収を貫いた。2001年の開戦直後はテロとの戦いを米国民の大半が支持したが、巨額の戦費や米兵の犠牲を伴う戦争に一般国民は恩恵を感じず熱気は冷めていった。バイデン氏が副大統領を務めたオバマ政権は16年末までの撤収を目指したが、治安悪化を受けて断念していた。タリバン復権でアフガン民主化の取り組みは失敗に終わった。アフガン戦争を通じて根付きつつあった女性の権利や報道の自由が後退する可能性が高まる。バイデン氏は軍事力を通じて「国家建設に関与しない」と繰り返し主張しているが、民主主義や人権を重視する外交方針に逆行する。

*1-1-2:https://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-1381635.html (琉球新報社説 2021年8月26日) タリバン復権と混乱 国外退避に全力尽くせ
 アフガニスタンのイスラム主義組織タリバンが首都カブールを制圧し、ガニ政権の崩壊から10日が過ぎた。空港周辺にはタリバンの統治を恐れ出国を望む市民数千人が連日殺到し、死者が出るなど混乱が続いている。ベトナム戦争末期に、米大使館からヘリコプターによる脱出を迫られたサイゴンの混乱を彷彿(ほうふつ)とさせる事態だ。アフガン在住の各国の国民や通訳などで協力したアフガン人の安全な国外退避は緊急を要する最優先事項である。各国は結束して退避支援に全力を挙げてもらいたい。バイデン大統領は8月に設定した米軍の撤退期限を維持する考えを強調したが、見通しが甘いのではないか。米メディアによると、タリバンは国外退避を望むアフガン人に対し、新たな国造りに必要な人材だとして空港到着を阻んでいるという。撤退期限の順守ではなく、人命を守ることを最優先させるべきだ。混乱の原因は米国にある。米史上最長の戦争の最終段階で「出口戦略」を誤った。米紙ウォール・ストリート・ジャーナルは、在アフガニスタン米大使館員らが7月13日付の極秘公電で、駐留米軍が8月31日に撤退すれば直後にガニ政権や政府軍が崩壊する恐れがあると警告していたと報じた。米軍に協力したアフガン人らの退避手続きを急ぐようブリンケン国務長官らに求めていたという。警告されたにもかかわらず米政府は、ガニ政権とタリバンとの戦闘の見通しを誤った。タリバンによる侵攻が想定外の早さで進み、政府崩壊は予期できなかったというのは言い訳にすぎない。日米欧の先進7カ国(G7)は24日、アフガニスタン情勢を巡る緊急首脳会議を開き、退避支援に全力を挙げ、人道危機回避への貢献や女性の権利擁護、テロ対策で緊密に連携することを確認した。ここは国際社会の結束が求められる局面だ。一方、邦人と日本の協力者を退避させるため日本政府は自衛隊機を現地に派遣した。政府は出国を求める人に対し各自で空港までの移動手段を確保するよう求めている。だがタリバン戦闘員が空港に続く道路に検問所を設け、外国人を一時的に拘束する事態も出ている。丸腰の市民に自己責任で移動を求めるのは無責任である。日本政府はタリバンと交渉して安全地帯を確保して迎えに行くなど、安全で確実な方法を示すべきだ。タリバン政権は2001年、米中枢同時テロを起こしたアルカイダ指導者ビンラディン容疑者の引き渡しを拒んだため、米英軍の攻撃によって崩壊した。米軍はその後20年間、アフガニスタンに駐留したが、国家建設に失敗した。米軍撤退の教訓は何か。中央アジアの覇権争いを繰り返すのではなく、凶弾に倒れた故中村哲医師が実践した持続可能な取り組みによって国を再生させることではないか。

*1-1-3:https://www.yomiuri.co.jp/world/20210818-OYT1T50258/ (読売新聞 2021/8/19) アフガン制圧したタリバン、「国際テロ組織の排除」強調…政府承認取り付ける狙いか
 アフガニスタンのイスラム主義勢力タリバンは17日に首都カブールで開いた記者会見で、国際テロ組織を国内から排除する方針を明らかにした。テロの温床になりかねないとする国際社会の懸念を 払拭ふっしょく し、「政府承認」を取り付ける狙いがある。会見には、正体不明だったザビフラ・ムジャヒド報道官が初めて姿を見せた。タリバンは2001年、米同時テロを起こした国際テロ組織「アル・カーイダ」の指導者をかくまい、政権崩壊を招いた。報道官は「外国組織が他国に危害を与えるために国土を使うことを許さない」と強調した。資金源である麻薬原料のケシ栽培についても「金輪際関わらない。そのためにも、国際社会の援助が必要だ」と訴えた。17日には、ナンバー2のアブドル・ガニ・バラダル師がカタールから帰国した。米国とのパイプを持つ穏健派として知られ、「バラダル師を大統領に据え、国際社会との関係構築を進めるのでは」(地元記者)との観測も出ている。ただ、18日にはタリバンの一派で、パキスタンとの国境付近を拠点とする「ハッカニ・ネットワーク」幹部もカブール入りし、タリバン幹部らと協議を行った。ハッカニ一派は各国でテロを引き起こし、米国がテロ組織に指定している。「アル・カーイダ」系のイスラム過激派組織「アル・シャバブ」など各国の武装勢力もタリバンに「祝意」を送っており、タリバンがテロ組織と関係を断絶できるかは不透明だ。一方、米ホワイトハウスは17日、アフガニスタン情勢に関する先進7か国(G7)首脳会議が、来週中にオンライン形式で開催されると発表した。バイデン大統領が、G7議長国を務めるジョンソン英首相との電話会談で合意した。タリバンが主導する新政権の承認などが議題となる見通しだ。ジェイク・サリバン米国家安全保障担当大統領補佐官は17日の記者会見で、タリバンの融和姿勢について、「タリバンがどのような行動を世界に示すか次第だ。(政権承認の是非を)判断するのは時期尚早だ」と答えた。女性の権利を守らせるため、同盟国と連携してタリバンに圧力をかける考えも明らかにした。

*1-2-1:https://digital.asahi.com/articles/DA3S15017957.html (朝日新聞 2021年8月22日) アフガン、息潜める女性 政権崩壊1週間
 カブールで18日、美容院の女性の肖像がスプレーで汚されていた。その前を歩くタリバンの戦闘員=AFP時事。タリバン強硬派は、女性が夫以外の男性の前で着飾ることや、目以外の部位を露出することを認めていない。アフガニスタンでイスラム主義勢力タリバンが権力を掌握し、ガニ政権が崩壊してから22日で1週間となる。タリバン執行部は「イスラム法の範囲内で女性の権利を尊重する」と主張しているが、旧タリバン政権下で女性を抑圧した過去があり、国際社会は女性の人権が守られるのか強い懸念を抱いている。女性が拉致されたり、職場から追い出されたりする事例は後を絶たない。社会は圧制の時代に逆戻りしてしまうのか。
■タリバン、取材に向かう記者拉致 キャスターや銀行員、職場追われ
 「州都を包囲するタリバンの戦闘部隊に見つかり、銃撃された。記者人生で最も死に近づいた瞬間でした」。地元メディア「パジュワク・アフガン通信」の女性記者エストライ・カリミさん(38)は、朝日新聞の取材に応じ、証言した。西部ヘラート州で今月2日、夫が運転する車で取材先に向かっていた。銃声が響き、とっさに顔をうずめた。耳元でサイドミラーが「カン! カン!」と弾をはじいた。戦闘員に取り囲まれ、夫婦は拉致された。カリミさんはモスクの脇にあるタリバンの施設で尋問された。「運転席の男は誰だ。女が夫や兄弟の同伴なしで出歩けると思っているのか」と憤激するタリバン幹部に、夫だと説明した。勤務先や住所も確認された。尋問が約1時間続いた後、モスクの宗教指導者がタリバン幹部をなだめ、解放された。夫婦はパソコンやカメラをバッグに詰め、翌朝の飛行機で首都カブールへと脱出した。同国で低迷する女性の識字率や社会進出の課題を、カリミさんは告発し続けてきた。「駆け出しの15年前、女性記者はほとんどいなかった。女性の尊厳を守りたい一心で書き続けた」。記事への反響が支えだった。ヘラートからカブールに退避して12日後の15日、カブールも陥落した。現在は夫婦で、保護団体のシェルターに隠れて暮らす。タリバンの一部戦闘員が「記者狩り」をしており、外出できない。カリミさんは「15年積み上げたものが政権崩壊と同時に崩れた。やっと女性たちが怒りの声を政治にぶつけられる時代になったのに」と声を落とした。タリバン傘下に入った国営テレビ局「RTA」では政権崩壊後、画面から女性キャスターの姿が消えた。その一人、シャブナム・カーン・ダウランさんはSNSに投稿したビデオ声明で「タリバンから『帰れ』『政権が変わったんだ』と追い返された」と訴えた。ロイター通信によると、南部カンダハルでは7月にタリバンが銀行を訪れ、女性職員9人に出勤停止を命じたという。タリバンは政権に就いていた1996~2001年、極端なイスラム教の解釈で女性の通学や就労を妨げ、服装を強要して国際的な批判を浴びた。今後、女性の行動に一定の縛りをかける恐れが強い。カブールではタリバンの権力掌握を受け、全身をすっぽり覆う衣装「ブルカ」を買い求める女性が店に殺到し、政権崩壊前に1着1千アフガニ(約1400円)ほどだったものが約5倍に値上がりした。カンダハルの女子校に勤める女性教員(29)は「学校は閉鎖したままで生徒が心配。たとえ授業が再開しても、科目は宗教に偏るでしょう。進学を志す女子がまた減ってしまう」と憤った。

*1-2-2:https://www.tokyo-np.co.jp/article/123786 (東京新聞 2021年8月13日) 「留学女性は命狙われる」「もう帰国できない」 教育禁じるタリバン支配地拡大でアフガン留学生ら悲鳴
 アフガニスタンで反政府武装勢力・タリバンが猛攻を続ける中、海外留学中のアフガン人学生が危機感を募らせている。教育を禁じたタリバン政権が2001年末に崩壊して以降、アフガンでは教育が再開し、エジプトの首都カイロにあるイスラム教スンニ派権威機関アズハルの付属大学には若者約300人が留学している。タリバンが支配地域を広げる現状に、学生からは「また教育が奪われる」と懸念の声が上がっている。「なぜアフガンだけ何度もひどいことが起きるのか。私は何でアフガンに生まれたの?」。アズハル大で法律を学ぶララ・アブドラさん(22)が「戦争の日記」と呼ぶ小さな手帳には、1ページ目にこう書いてある。駐留米軍の8月末撤退を見据え、タリバンが侵攻を激化させた3週間前から日記を付け、友人や家族から聞いた現地の状況をつづっている。3年前、激しい競争の中でアズハル大の奨学金を勝ち取り、単身でカイロに来た。女6人、男1人の7人きょうだいの長女。アフガンで裁判官になるのが目標で、父(50)の夢でもある。父は女性が教育を受けることを重視し、母と共にカイロに送り出してくれた。妹たちも姉が目標だ。しかし、教育を禁じるタリバンが国を支配すれば、「女性で単身留学している私は標的になる。帰国すれば命を狙われる」と話す。家族が暮らす西部ヘラート州は、イラン国境付近がタリバン支配下に落ち、州都は陥落目前となっている。「お姉ちゃんの後に続く」と医者を目指していた妹(17)は「もう諦めた。ただ、ここから逃げたい」と毎日泣いているという。タリバンが制圧した州都では、教育機関や政府施設が破壊され、一部では女性に体や顔を覆う衣装「ブルカ」の強要も始まったという。20年前を思わせる状況に、アズハル大の学生らは「もう帰れない」「昔に逆戻りだ」と懸念する。教育が再開したアフガンからは、アズハル大への留学生が大幅に増えた。前学生会長のオスマン・ヌーリスタニさん(26)は「私の世代は教育を受けることができ、みんな必死に勉強してきた。それがまた奪われるのか」と憤る。攻防が続くアフガンでは、国軍約30万人に対してタリバンは約7万人。数では国軍が勝るものの、タリバンに攻め込まれた地域では、国軍が戦闘を放棄して逃げたとの情報もある。在エジプト大使館のアミヌラーク・アフマディ領事は「米軍に頼らずわれわれの手で国を守る必要があるが、国際社会からの財政支援も必要だ」と話す。

*1-3:https://digital.asahi.com/articles/ASMDB5QJTMDBTIPE01X.html?iref=pc_photo_gallery_bottom (朝日新聞 2019年12月11日) 「100の診療所より用水路」 中村さんが変えた暮らし
 アフガニスタンで銃撃されて亡くなったペシャワール会(福岡市)の現地代表、中村哲さん(73)が医療から灌漑(かんがい)・農業支援へと活動を広げたのは、アフガンを大干ばつが襲い、農地が砂漠化するのを目の当たりにしたからだ。病気の背景には食料不足と栄養失調があると考えて「100の診療所より、1本の用水路を」と、2003年からアフガン東部で用水路の建設に着手した。これまで約27キロが開通。用水路は福岡市の面積のほぼ半分に当たる1万6500ヘクタールを潤し、砂漠に緑地を回復させた。今、農民65万人の暮らしを支えている。高価な資機材がなくても現地の人が維持・管理できるようにと、現代的な施設ではなく、伝統的な技法を採り入れた。取水堰(ぜき)は、江戸時代に築かれて今も使われている山田堰(福岡県朝倉市)がモデル。護岸はコンクリートを使わず、鉄線で編んだ「蛇籠(じゃかご)」に石を詰めて積み、そこに根を張る柳を植えて、護岸を補強した。防風・防砂林の植樹総数は100万本を超えた。工事に携わった人たちは現場で技術を習得し、熟練工が育った。中村さんは近年、国連機関や国際協力機構(JICA)とも連携して、ノウハウをアフガン全土に広めようと考えていた。ペシャワール会の村上優会長は9日の記者会見で「全ての事業を継続していきたい」と決意を述べた。

<日本 ← 繰り返す豪雨による内水氾濫・外水氾濫>
*2-1:https://www.nishinippon.co.jp/item/n/785375/ (西日本新聞 2021/8/15) 「同じことの繰り返し」内水氾濫に住民疲弊 久留米、武雄で浸水被害
 激しい雨音で眠れずに朝を迎えると、自宅は茶色い泥水に囲まれていた-。14日も豪雨に見舞われた九州北部。佐賀県武雄市や福岡県久留米市では住宅浸水や道路の冠水が相次いだ。水路や下水道の排水が追い付かず、雨水が地表にあふれる「内水氾濫」が起きたという。両市周辺では近年同じ被害が繰り返されており、住民たちは疲れ切った表情を見せた。「大雨が怖く、昨夜から2階で過ごした」。同日午前、武雄市朝日町の自宅から消防のボートで助け出された福田タケ子さん(85)は振り返った。市内では支流の内水氾濫に加え、近くを流れる本流の六角川が一部で氾濫。東部を中心に住宅地などが濁った水で覆われた。市や近隣自治体では2019年にも冠水被害が起きている。自宅が浸水した同市朝日町の樋口勝則さん(56)は、13日夕から避難所に身を寄せる。前回浸水時は避難所で1カ月を過ごし、泥水に漬かった家具の片付けに加え、職場も被災した。「元の生活に戻るのに半年かかった。たった2年で同じことの繰り返し。これからを考えると力が抜けてしまう」と頭を抱えた。市と隣接する大町町の順天堂病院は周囲を泥水で囲まれ、前回に続き孤立状態となった。町によると、雨水が建物内部に入り、入院患者を上階に避難させたという。周辺でも消防への救助要請が相次いだ。筑後川が流れる久留米市。14日午前までの24時間降水量は、観測史上最大の387ミリとなった。支流では内水氾濫が起き、4年連続で市街地や田園地帯が水に漬かった。市によると、支流では本流からの逆流を防ぐため合流点の水門を閉鎖。本流にポンプで水を送るものの、処理できなくなった雨水が広域であふれた。ポンプを増やし、堤防のかさ上げにも取り組んでいるが、圧倒的な雨量に及ばなかった。一部で道路が冠水した市中心部では、消防のボートで助け出される住民がいた。水をかき分けながら各戸を回り、取り残された人がいないかを見回っていた消防隊員は「水位が首の高さまである場所があった」と話した。膝まで水に漬かりながら自力で避難していた女性は「これほどの浸水は初めて。アパートの2階に住んでいるが、1階が浸水したので知人宅に避難する」と声を震わせた。

*2-2:https://news.yahoo.co.jp/articles/12a76f5f1a8d5cbf30e81fd6caefc619ca5c692c (Yahoo 2021.8.26) 大雨 家屋1663棟浸水 「2年前より深刻」 佐賀・武雄市
8月11日から降り続いた大雨で甚大な被害が出た佐賀県武雄市で被害概要がまとまり、小松政市長が25日、記者会見で発表した。浸水の深さや内水氾濫の面積、家屋被害数などが2019年8月に県を襲った記録的大雨より深刻との認識を示し、「被災者の苦しみ、痛みに寄り添いながら一日も早い復旧と生活再建に全力で取り組む」と語った。小松市長はまた被災した市民、事業者らに市独自の生活支援策を検討する考えも示した。武雄市によると、2年前の8月は降雨期間が3日間だったのに対し、今夏の大雨は7日間(11~17日)続き、総雨量も最大約1300ミリ(2年前は同約500ミリ)に達した。武雄市を流れる六角川の排水ポンプが3回計8時間50分(同1回計3時間10分)停止した。家屋への浸水被害は25日現在、床上1273棟、床下390棟の計1663棟(同1536棟)で通行止めは約90カ所(同63カ所)。浸水の深さや内水氾濫の面積は「2年前より大」としている。地滑りの兆候も今回は3カ所で確認された。2年前と比べ、内水氾濫が広がった理由について市は、長時間の降雨と六角川の水位上昇に伴い、排水ポンプの停止時間が長引いたことなどが影響したとみている。この結果、朝日町、北方町、橘町で浸水の被害が大きかったと指摘した。小松市長は内水氾濫による被害が続いていることに「(管轄の)国土交通省には内水氾濫対策に目を向けてほしい。国、県、市町が可及的速やかに対策を打ち出す必要がある」と注文をつけた。今後、ポンプ機能を維持する方策を専門家や国交省の河川事務所と早急に協議する意向も示した。復旧・復興に向けては、新型コロナウイルスの急拡大に伴い、2年前と比べてボランティアが集まりにくい状況にあると報告。小松市長は「被災者支援を2年前より強化する」と語り、2年前に被災しながら再建した事業者らに「もう1回頑張っていただける再建費用の補助検討を現在、進めている」とした。市は災害復旧に関する支援策を9月議会に追加提案する予定。
◇商工業被害額、店舗など84億円
 記録的大雨で多大な被害を受けた武雄市で商工業被害額が25日時点で約84億円(速報値)にのぼることが、同日の県産業振興課への取材で判明した。県によると、同市の中小企業や個人事業主計230店舗が被災。最も多かったのが浸水被害という。さらに被害額は膨らむ可能性もあるという。2019年8月に県内を襲った大雨で武雄市は今回とほぼ同数の約230店舗が被災、被害額は約80億円だった。

*2-3:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/733382 (佐賀新聞 2021.9.1) 大雨被害、激甚災害指定へ 農業分野復旧は佐賀県全域、中小企業支援は武雄、大町
 佐賀県内で11日から降り続いた記録的な大雨の被害に関し、棚橋泰文防災担当相は31日の閣議後会見で、激甚災害に指定する見通しになったと発表した。農業分野では地域を限定せず県内全域が対象になる「本激」となり、国庫補助率をかさ上げする。融資による中小企業の再建支援は武雄市、杵島郡大町町に限定する「局激」となる見込み。内閣府によると、農地や農道、水路などの農業用施設や林道の災害復旧事業は、通常の国庫補助率をかさ上げする。過去5年間の実績の平均では、農地は補助率を84%から96%にかさ上げしている。国庫補助の対象とならない小規模な農地でも、交付税措置などで自治体負担を軽減する。被災した市町や農家の財政負担を軽減し、早期復旧を後押しする。これらの措置は地域を限定しない。さらに武雄市、大町町には、中小企業の事業再建のための特例措置を適用する。保証限度額を増額することで、中小企業は民間金融機関から再建資金を借りやすくなる。激甚災害は経済的被害を基準に指定する。県市町が被害額を調査し、各省庁が査定。局激の場合、市町の財政規模ごとに基準額が設定され、基準額を超えた時点で指定の見込みが示される。閣議決定による正式指定には、1カ月ほどかかる見通し。棚橋氏は「被災した自治体は、財政面に不安なく、迅速な災害復旧に取り組んでいただきたい」と述べた。内閣府によると、公共土木分野での被害状況も査定を続けている。早期指定を要望していた佐賀県は「農地などの復旧が本激指定になることはありがたい。適用される措置を活用し、この2年間で再び被災された多くの方の支援に取り組んでいきたい」とした。一方、中小企業への特例措置が、武雄市と大町町に限る局激となることについては「具体的にどういった支援ができるのか中身を精査していく」としつつ、「本激でなければ実施されない『なりわい再建補助金』(復旧費の最大4分の3を公費補助)に関し、局激でも実施してほしいと要望していた。今後の国の対応を注視したい」と述べた。

<アフガンの攻防と女性デモ>
PS(2021年9月6、7日追加):*3-1のように、アフガンのタリバン指導部は、制圧した都市で住民財産保護や生活維持に気を配るように戦闘員に指示したが、タリバン戦闘員は、①民家で「50人分の食事を作れ」と要求したり ②民家や学校に放火したり ③降伏した政府軍兵士を処刑したり ④12歳の少女に自分と結婚するよう強要したり など蛮行が目立ち、国連のグテレス事務総長は、8月13日、タリバンを非難した。
 アフガン女性は、*3-2のように、9月2~4日、国の発展には女性の力が不可欠だと訴えて女性の教育機会保障・働く権利保障・政治参加保障をするよう求めるデモを行ったが、これに対して、タリバンは催涙ガスを使ったり、小銃の弾倉で女性の頭を殴ったりしたそうだ。タリバンは、8月中旬にカブールを制圧した直後の記者会見で「女性は働けるし、教育も受けられる。女性の権利はイスラム法の枠内で認められる」としたが、BBCのインタビューでタリバン幹部は、「女性が高い地位につくことはない」などと世界の女性を敵に廻すような発言をしている。
 そのような中、*3-3のように、9月4日、タリバンは唯一制圧していない北東部パンジシール州を支配下におさめようと抵抗勢力(旧政府軍)と衝突し、米軍制服組トップは、タリバンが権力基盤を固めることができなければ「内戦」に陥る恐れがあると警告したそうだが、国民的英雄マスード司令官の息子で同地域を率いるアフマド・マスード氏は、パンジシール州は「強い抵抗を続けている」と強調している。


 アフガンの地形    パミール高原   パンジシール州の位置 パンジシール州の風景
ペシャワール会より               Ameba       Parstoday

(図の悦明:1番左の図のように、アフガニスタンは高い山や高原に囲まれており、水がないわけではなく水利施設が整っていないようで、左から2番目の図のパミール高原も手入れをした場所には緑がある。また、強い抵抗を続けているパンジシール州は、右から2番目の図のように北東部にあり、1番右の図のように、緑豊かな渓谷があって農業の潜在力も大きそうだ)


 2016.11.1Ameba     Smartagri     Smartagri     Perfectstone

(図の説明:1番左はアフガニスタンの主食である小麦、左から2番目はアフガニスタンの葡萄、右から2番目は同サフランで、戦争前のアフガニスタンは食料自給率100%の農業国だったそうだ。また、1番右の図のように、パンジシール州ではエメラルドも採れる)

*3-1:https://www.yomiuri.co.jp/world/20210814-OYT1T50221/ (読売新聞 2021/8/15) 民家や学校に放火、12歳少女に結婚強要…タリバン支配地で蛮行目立つ
 アフガニスタンの旧支配勢力タリバン指導部は13日の声明で、制圧した都市では住民財産の保護や生活の維持に気を配るよう、戦闘員に指示した。住民を懐柔し、支持を広げる狙いだが、支配地では蛮行が目立ち、国際社会からも批判が高まっている。タリバンは声明で、支配地の拡大は「我々に対する支持があってこそだ」と強調し、タリバンを恐れる住民に「心配する必要はない」と呼びかけた。だが、実態は違うようだ。タリバンが10日に制圧した北部プレフムリの主婦(22)によると、タリバン戦闘員は主婦の自宅に押しかけ、「50人分の食事を作れ」と要求したという。夫はスリッパ商人で、一家は裕福ではないが、肉や野菜、ヨーグルトなどを大量に提供させられたという。プレフムリからカブールに避難してきたリロマさん(43)は本紙通信員に、タリバンが民家や学校などに放火していると語った。リロマさんは、「タリバンの暴虐ぶりは昔と変わっていない」と非難した。カブールの米大使館によると、降伏した政府軍兵士の処刑も確認されている。タリバンは米国と和平合意を交わした昨年2月以降、住民の取り扱いに注意するよう、指導部が戦闘員に指示してきたが、浸透していないようだ。英紙デイリー・メール(電子版)によると、あるタリバン戦闘員は支配地域で、12歳の少女に自分と結婚するよう強要した。戦闘で夫を失った女性も、タリバン戦闘員の妻にされる場合が多い。国連のアントニオ・グテレス事務総長は13日、ニューヨークで記者団に、「アフガンの少女や女性が苦労して得た権利を奪われている。胸が張り裂けそうだ」と語り、タリバンを非難した。

*3-2:https://www.msn.com/ja-jp/news/world/ (毎日新聞 2021/9/5) アフガンで女性デモ 就業や政治参加求め タリバン、催涙ガスで応酬
 イスラム主義組織タリバンが実権を掌握したアフガニスタンで2日から4日にかけ、女性の就業や政治参加の権利を保障するよう求めるデモがあった。首都カブールではタリバンが催涙ガスを使うなどし、負傷者が出たという。タリバンは2001年までの旧政権でイスラム教の厳格な教義に基づき女性の権利を制限した。デモ参加者は、国の発展には女性の力が不可欠だと訴えている。アフガンの民間放送局「トロニュース」(電子版)などによると、4日にカブール中心部で行われたデモでは、活動家やジャーナリストらが女性の働く権利や教育の機会の保障を求めるスローガンを掲げて行進した。大統領府に向かおうとしたデモ参加者に対し、タリバンの戦闘員らは催涙ガスを使ったという。ロイター通信は、女性が戦闘員によって小銃の弾倉などで頭を殴られ、血を流していたとの参加者の証言を報じた。参加者の一人はトロニュースに対し「私はタリバン政権崩壊後の20年間で学校で学ぶことができ、よりよい将来のために努力してきた。この成果を失いたくない」と訴えた。同様のデモはカブールで3日にあったほか、2日に西部ヘラートでも起きた。01年にタリバンの旧政権が崩壊するまでの約5年間、アフガニスタンの女性は教育が禁止されるなど厳しい制約下に置かれた。タリバンは8月中旬にカブールを制圧した直後の記者会見で「女性は働けるし、教育も受けられる。社会に必要な存在だ」とする一方、女性の権利はイスラム法の枠内で認められるとも強調した。タリバン幹部は英BBC放送のインタビューで、新政府の省庁で女性職員が元の職場に戻ることを希望すると述べる一方で「高い地位につくことはないだろう」と要職への女性登用を否定した。最終調整が続くタリバン政権の組閣でも、女性は起用されない見通し。

*3-3:https://news.yahoo.co.jp/articles/bc9b9a7323934577f5db64c0f7b950c62d5ce6d0 (RUETERS 2021/9/5) タリバン、北東部で抵抗勢力と戦闘 米軍幹部は「内戦」警告
 アフガニスタンのイスラム主義組織タリバンは4日、唯一制圧していない北東部パンジシール州を支配下におさめようと抵抗勢力と衝突した。米軍制服組トップは、タリバンが権力基盤を固めることができなければ「内戦」に陥る恐れがあると警告した。タリバンと抵抗勢力はともにパンジシール州を掌握したと主張しているが、いずれも確かな証拠は示していない。タリバンは1996─2001年にアフガンを統治した際、首都カブールの北にあるパンジシール渓谷を支配できなかった。タリバンの報道官は、パンジシール州の7地域のうち4地域を制圧したと主張。ツイッターで、タリバン兵士が州中心部に向けて進軍していると述べた。だが、国民的英雄マスード司令官の息子で同地域を率いるアフマド・マスード氏に忠実なアフガニスタン民族抵抗戦線(NRFA)は、「数千人のテロリスト」を包囲し、タリバンが車両や機材を放棄したと主張。マスード氏はフェイスブックへの投稿で、パンジシール州は「強い抵抗を続けている」と強調した。米軍制服組トップのミリー統合参謀本部議長はFOXニュースで「内戦に発展する可能性が高い状況というのが私の軍事的な見立てだ。タリバンが権力基盤を固め、統治を確立できるか分からない」と述べた。その上で、タリバンが統治を確立できなければ、今後3年で「アルカイダの復活やイスラム国(IS)もしくは他のさまざまなテロ集団の拡大につながる」との見方を示した。こうした中、パキスタンの軍情報機関、3軍統合情報局(ISI)のハミード長官が4日、カブール入りした。目的は明らかになっていないが、パキスタン政府高官は数日前に、タリバンによるアフガン軍再編成をハミード氏が支援する可能性があると述べていた。
<女性が権利尊重求めデモ>
 現地メディアのトロ・ニュースによると、首都カブールでは、十数人の女性がタリバンに女性の権利尊重を求める抗議デモを行ったが、タリバンはこれを排除した。女性らが口を覆い、咳をしながら武装した兵士と衝突するのが映像で確認できる。デモ参加者の1人は、タリバンが催涙ガスやテーザー銃を使用したと語った。タリバンが女性らの頭を弾倉で殴り、出血したと話す参加者もいた。
<新政権は「あらゆる勢力」で構成>
 タリバン関係筋は、新政権の発表が5日からの週に先送りされるとの見方を示した。タリバン共同創設者のバラダル師は中東のテレビ局アルジャジーラで、新政権はアフガンのあらゆる勢力によって構成されると述べた。複数のタリバン関係者はこれまでに、バラダル師が新政権を率いるとの見方を示している。アルジャジーラによると、カタールの駐アフガン大使は、技術チームによりカブールの空港が再開され、支援物資などの受け取りが可能になったと明らかにした。アルジャジーラの記者は、アフガンの国内線運航も再開されたとしている。国連は、人道危機の回避に向けてアフガン支援拡大を呼び掛ける国際会合を13日に開く。

<自民党総裁選と政策論争>
PS(2021年9月8、9日追加):日本のメディアは、アフガン情勢を事前に報道せず、オリ・パラの開催を批判することに専念し、新型コロナ危機は必要以上に言い立て、首相を変えさえすれば物事がうまくいくかのような報道をしていた。その結果、日本は、人を貶めるための不正確な人格攻撃情報であふれ、首相は短期で交代して民主主義政治の貧困を招いている。
 そして、河野太郎氏の総裁選立候補の話が出ると、*4-1のように、原子力利権の守護神である経産省は、週刊文春を使って河野氏を人格攻撃する最終戦争に打って出た。私も週刊文春を使った人格攻撃をされた経験があるので知っているのだが、政策でかなわない時、論点をずらし、変なところを誇張して人格攻撃を行い、対象となった人を貶める卑怯な方法がよく使われる。河野氏の場合は、資源エネルギー庁幹部との会議で近く閣議決定される「エネルギー基本計画」に繰り返しダメ出しをしてパワハラを行ったように書かれているが、本当は世界に例を見ない出鱈目な「容量市場制度(大手電力の石炭火力に多額の補助金を与え、再エネ電力供給業者に多額の資金拠出を強制する制度)」の即時廃止又は抜本的改革を主張し、経産省がこれを無視したのだそうだ。また、原発と再エネの電源比率も、経産省は再エネ比率が想定以上に上がるのを妨げて原発の維持拡大に有利な抜け穴を作ろうとしているが、河野氏が「理不尽な内容のままなら閣議で反対する」と言い、経産省が論戦で完敗して、河野氏の「脅し」として一部週刊誌に漏洩し、「個人攻撃」で河野氏を叩こうとしたのだそうである。しかし、次の衆議院議員選挙は表紙を変えればいいのではなく、「脱原発して再エネ移行」を掲げるくらいの政策を掲げるのでなければ、(理由を長くは書かないが)自民党は落選者が続出すると思う。
 本来は産業振興のために頭を使うべき経産省だが、このようにやるべきことの逆を繰り返した結果、*4-3のように、日本は労働生産性がOECD加盟36カ国中21位・主要先進7カ国最下位、賃金は唯一下がっている国になった。労働生産性は「付加価値(≒売上高-売上原価《人件費を除く》-経費《人件費を除く》)/総労働時間」であるため、水光熱費や土地代などの人件費以外の経費が高ければ労働生産性は下がり、賃金を労働生産性より高くはできないからである。
 なお、付加価値を上げるには、人件費以外の経費を下げる以外に販売単価を上げて売上高を増やす方法もあるが、その基となる技術力も、*4-2のように、中国が注目度の高い科学論文の数で米国を抜いて初めて首位に立ち、年間の論文総数でも2年連続で1位になっているのに、日本は研究者数と研究開発費は世界3位、論文総数は4位であるにもかかわらず、「トップ10%論文数」の順位はインドにも抜かれてG7最下位の世界10位まで転落した。私も、その最大の原因は、「何をやっても日本の技術力は優れたままである」と根拠もなく思い込み、政治・行政がやるべき努力をしなかったことだと考えている。
 日本で光熱費を下げて付加価値を上げるには、*4-4のように、変動費0の再エネで100%のエネルギーを賄い、外国に支払っていたエネルギー代金を国内で廻して、エネルギー自給率を100%にするのがよいし、それは可能である。一方、原子炉は、新型で小型でも、冷却時に海水を温め、外国に高い燃料代を支払う必要があり、暴走のリスクが0ではなく、使用済核燃料の処分に多額の費用がかかり、エネルギー安全保障でも劣るため、賢い選択肢とは言えない。そのため、それが見えることは、日本の首相には特に重要だ。なお、脱原発については、2011年のフクイチ事故以降は本気で議論してきており、既に10年も経過しているため、「明日や来年やめろ」というような性急な話ではないだろう。

 
2019.8.29東京新聞  News.Mynavi    2021.8.10毎日新聞 2021.8.10西日本新聞

(図の説明:1番左の図のように、1997年を基準とした主要国の時間当たり賃金は、日本のみがマイナスになっている。また、左から2番目の図のように、労働生産性は日本がOECD加盟36カ国中21位・主要先進7カ国で最下位だ。また、右から2番目及び1番右の図のように、世界の平均気温上昇による極端現象は明らかに増えており、エネルギーの変換や技術開発はできるかぎり速やかに行わなければならない状況なのだ)

   
 2021.6.10日経新聞   2021.8.26日経新聞

(図の説明:左図のように、日本の国別発電コストは著しく高く、日本の産業は足に重りをつけて競争させられているようなものである。しかし、日本には、中央の図の地熱発電はじめ未利用の再エネがふんだんにあり、これらを使えば安価な電力を実現できる。また、右図のように、今では自家発電しながらエネルギーを使う方法も多くできているため、決断が遅いくらいなのだ)

*4-1:https://news.yahoo.co.jp/articles/e3cdefcb9a0801e0983015441b3fc90dc28995ed (Yahoo 2021/9/7) 経産省による「河野太郎叩き」が意味すること〈週刊朝日〉
 自民党総裁選の裏で大戦争が起きている。主役は、原子力利権の守護神・経済産業省の官僚と河野太郎規制改革担当相だ。連戦連勝の河野氏に対して、経産省は「文春砲」で最終戦争に打って出た。先週の週刊文春は、近く閣議決定される「エネルギー基本計画(エネ基)」について、経産省資源エネルギー庁幹部との会議で、河野氏が繰り返しダメ出しする様子を伝えた。普通に読めば、河野氏が理由なくパワハラ発言をしたと読める内容だ。文春は、菅義偉政権の目玉閣僚である河野氏を叩こうと考えた。その姿勢は、忖度報道ばかりの大手マスコミにはないもので貴重ではあるが、この記事はあることを報じていない。実は、この会議に至るまで、経産省と河野大臣、そして、河野大臣直轄の有識者会議「再生可能エネルギー等に関する規制等の総点検タスクフォース(TF)」の間では、1年近く議論が行われてきたということだ。TFは電力会社から完全に独立した国内最高の専門家4人からなる。そのため、私が見る限り、経産省は論戦で完敗した。経産官僚はネット生配信で毎回恥をさらしたのだ。例えば、文春の記事にあった「容量市場」制度(将来の電力需要に備えるため、電力会社が準備する安定供給電源設備に対して、供給が不安定になりがちな再エネ電力などの供給業者が一定の資金をあらかじめ支払って、設備を維持してもらう制度)は、世界に例を見ないでたらめな制度だ。驚いたことに、大手電力会社の石炭火力に多大な補助金を与え、逆に再エネ電力供給業者に事実上の死刑宣告になるような多額の資金拠出を強制する制度になっている。河野氏は、即時廃止または抜本的改革を主張したが、経産省はこれを無視。エネ基最終案にも即時抜本改革さえ盛り込まなかった。河野氏が怒るはずだ。原発と再エネの電源比率の書き方についての争いも、文春の記事からわかるのは、経産省が、再エネの比率を想定以上に引き上げるのを妨げ、原発維持拡大に有利になるような抜け穴を作ろうとしているということ。30年以上官僚をやっていた私には彼らの魂胆がよくわかる。経産官僚は、電力利権と安倍晋三前総理や甘利明税調会長などの利権政治家の側に立ち、国民の利益を全く無視している。こうした真実を知れば、国民の多くは、経産官僚に対して罵声を浴びせたくなるだろう。やむなく河野氏が、理不尽な内容のままなら閣議で反対すると言ったのは当然のことだろう。それがどうして「脅し」になるのか、意味不明だ。経産省が、内部調整中のエネ基の文言を一部週刊誌だけに漏洩して、「個人攻撃」で河野氏を叩こうとしたのは、彼らの「政策論」が世の中で通用しないと悟ったからだ。つまり、彼らは負けを認めたのだ。官僚と族議員の利権に容赦なく切り込む河野氏の敵は、利権擁護派の官僚と自民党族議員全体に及ぶ。彼らは、週刊文春を味方につけた経産省とともに、かさにかかって河野叩きに出るはずだ。河野総裁や要職での起用の可能性もあるとなればなおさらだろう。マスコミによる河野氏への人格攻撃は、その報道の意図とは関係なく、原発維持拡大などの利権擁護派に利用されていることを国民はよく理解しておかなければならない。
※「週刊朝日」9月17日号より
■古賀茂明(こが・しげあき)/古賀茂明政策ラボ代表、「改革はするが戦争はしない」フォーラム4提唱者。1955年、長崎県生まれ。東大法学部卒。元経済産業省の改革派官僚。産業再生機構執行役員、内閣審議官などを経て2011年退官。近著は『官邸の暴走』(角川新書)など

*4-2:https://digital.asahi.com/articles/DA3S15036209.html?iref=comtop_Opinion_01 (朝日新聞 2021年9月7日) 論文引用数、中国躍進の一方で日本10位 科学技術力の岐路、おごり捨てて 桜井林太郎
 科学技術政策について考えさせられるリポートが先月、公表された。注目度が高い科学論文の数で、中国が米国を抜き、初めて首位に立ったという。文部科学省の科学技術・学術政策研究所が、引用された回数が上位10%に入る「トップ10%論文数」を調べた結果で、その国の科学技術力を示す一つの指標となっている。中国は、年間の論文総数でも2年連続で1位となり、「質、量ともに世界一になった」と報じたメディアもあった。知り合いの材料研究者は「10年前、中国の研究者は独創性が高い日本の論文を追いかけていたが、今では中国の論文を日本の研究者が追試していることも多い」と嘆く。ただ、中国が質でも世界一になったと言い切るのは時期尚早という意見もある。理工系のある大学教授によると「中国は自国の科学雑誌への投稿を促し、格が高い雑誌に育てた上で、論文を引用し合う場合も多い」からだ。文科省の研究所の分析でも、英ネイチャーや米サイエンスといった世界屈指の科学誌のシェアでは今なお、米国が圧倒的に強かった。中国は、米国に次ぐ英独の2位争いに加わろうと猛追している段階だ。一方、日本の凋落(ちょうらく)ぶりは目を覆うばかりだ。日本は、研究者数と研究開発費は世界3位で、論文総数は4位。なのに、「トップ10%論文数」の順位は2000年代半ばから下がり続けている。今回はインドにも抜かれ、G7最下位の世界10位に転落した。研究時間の減少や博士課程進学者の減少など、さまざまな要因が原因として挙げられている。しかし、最大の原因は「慢心」にあったのではないか。この10年余り、皮肉にも日本はノーベル賞の受賞ラッシュに沸いた。「中国のノーベル賞はごくわずか。科学技術力は日本が上だ」。そんな話を何度も耳にした。現状の認識がこの有り様では、中国だけでなく、世界から取り残されてしまうだろう。日本政府も危機感を強め、テコ入れを始めた。日本の科学技術力は今まさに分岐点にある。「失われた10年」を「失われた20年」にしてはいけない。

*4-3:https://news.mynavi.jp/article/20191218-941815/ (マイナビニュース 2019/12/18) 「労働生産性の国際比較 2019」公開 - 日本は主要先進7カ国中最下位
 日本生産性本部は12月18日、「労働生産性の国際比較 2019」を公表した。これは、同本部がOECDデータベースなどをもとに毎年分析・検証し、公表しているもの。OECDデータに基づく2018年の日本の時間当たり労働生産性は46.8ドル(4,744円)で、OECD加盟36カ国中21位だった。名目ベースで見ると、前年から1.5%上昇したが、順位は変わっていない。日本の労働生産性は、米国(74.7ドル/7,571円)の6割強で、イタリア(57.9ドル)やカナダ(54.8ドル)をやや下回る程度の水準。主要先進7カ国では、データが取得可能な1970年以降、最下位の状況が続いているという。就業者1人当たりの労働生産性は81,258ドル(824万円)で、同じくOECD加盟36カ国中21位だった。日本の1人当たり労働生産性は、英国(93,482ドル/948万円)やカナダ(95,553ドル/969万円)といった国をやや下回る水準。米国(132,127ドル/1,339万円)と比較すると、6割強の水準となっている。1990年代初頭は米国の4分の3近い水準だったが、2010年代に入ってから3分の2前後で推移しているという。

*4-4:https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA07CK60X00C21A9000000/ (日経新聞 2021年9月9日) 脱炭素が問う自民総裁選 原発と再生エネが主戦場
 自民党総裁選は17日に告示され、29日投開票する。新総裁が首相になるため、誰が勝つかが関心事だが、そのまま政権公約となる各候補の政策についても国内外の熱い視線が注がれる。政府が掲げた2050年までに国内の温暖化ガス排出実質ゼロ、30年度に13年度比で46%削減する目標に向けた原子力発電と再生可能エネルギーのあり方が論戦の主戦場になる。総裁選は岸田文雄前政調会長、高市早苗前総務相が立候補を表明し、河野太郎規制改革相は10日にも明らかにする。今回の総裁選がこれまでとは異なり、エネルギー政策が注目されるのは、河野氏の脱原発を巡る過去の発言がある。河野氏は東日本大震災直後の11年7月の自民党の総合エネルギー政策特命委員会で原発政策について「放射性廃棄物を出すのに、なぜクリーンエネルギーと言ってきたのか」と批判。12年には超党派議連「原発ゼロの会」の発起人となった。河野氏は8日、内閣府で記者団に「再生エネを最優先に広く取り入れていくのが基本だ」と力説。「いずれ原子力はなくなっていくだろうが、明日や来年やめろというつもりはない」と述べた。「安全が確認された原発を再稼働するのはカーボンニュートラルを目指すうえである程度必要だ」と容認した。脱原発の考え方が変わったのかの質問には「変わっていない」と説明した。一連の発言には総裁選で脱原発に関して過度に焦点が当たるのを回避する狙いもあるとみられる。河野氏は新著「日本を前に進める」(PHP新書)で「与党議員ではできないことも、閣僚として権限を持てれば実現できる。権限があるということは、やる気になれば、実現できる」と記している。岸田氏は8日に発表した経済政策で「再生エネの最大限の導入は当然」とするとともに蓄電池、新型の小型原子炉などへの投資を提唱した。記者会見で原発を巡り「新増設の前に既存の原発の再稼働を進めていくのが大事だ」と話した。2日の日本経済新聞とのインタビューでは「脱炭素目標を掲げる以上は、より丁寧に日本の産業に目配りをし、責任を持って考えていかなければならない」と語った。7月に原案を示したエネルギー基本計画は30年度の電源比率で再生エネの割合を36~38%にした。高市氏は8日の記者会見で環境政策とエネルギー政策を一元的に担う「環境エネルギー省」の創設を主張。天候で変わる太陽光の発電量を補う電源として火力を挙げ、再生エネのさらなる導入と原子力の平和利用を唱えた。新著「美しく、強く、成長する国へ。私の『日本経済強靱(きょうじん)化計画』」(WAC BUNKO)で太陽光のリスクの最小化を提言。「太陽光パネルの傾斜が雨天時に地面を削り取る原因となっている」と指摘した。エネルギー政策の主な論点は電源構成だ。脱炭素へ原子力や再生エネ、火力の構成が適正で、実現可能かどうか。再生エネが季節や時間帯で発電量が変動する可変動電源ならそれを補強する電源とそのコストの議論も国民負担にかかわるだけに避けて通れない。地球温暖化は異常気象を生み、死者が出るほどの高気温や山火事、台風を含めた暴風雨など世界を恐怖に陥れる。生態系の破壊がもたらす異常気象の際限は想像がつかない。地球温暖化が国民の生命と財産を危険にさらす以上、国家指導者は最優先課題として防止策に取り組まなければならない。そのための国際連携も急務だ。総裁選は各候補の脱炭素への決意を確認すると同時にその政策の根拠が精緻で、実現できるのかを見極める場にもしたい。

<計画性なき日本の安全保障政策>
PS(2021年9月10、11、15、23日追加):自民党保守派と称する人は、軍備を増強するのに予算を使うことには熱心だが、国民の生命・財産・領土・領海・資源を守る本当の国防計画はないようだ。何故なら、*5-1-1のように、食料自給率は2020年度に37%、エネルギー自給率は2018年に11.8%なのに、それを改善する努力はせず、国民の生殺与奪の権を食料やエネルギーを依存する国に委ねているからだ。
 それどころか、*5-1-2のように、日本一の海苔産地である有明海沿岸の佐賀空港にオスプレイを配備することを自己目的化し、九州防衛局(=政府?)は、漁民と地権者は異なるため地権者にアンケート調査をしても意味がないのに、オスプレイ配備計画について地権者にアンケート調査し、土地売却の意向は「条件次第で売却」が最も多かったなどとしているのだ。しかし、重要なのは漁業権を持ち、安心・安全な食料を作っている漁業者であり、オスプレイ配備で隊員や家族ら2千人以上が移住してくることよりも、宝の海で食料生産を続けて食料自給率を上げることの方が、防衛にも協力することになり、地域活性化の上でも重要なのである。
 一方で、*5-2-1のように、沖縄・尖閣諸島周辺の領海の外側にある接続水域では、112日間連続で中国海警局の公船「海警」4隻が航行し、領海への侵入も今年は18件起き、日本漁船への接近もたびたび発生し、海上保安庁は巡視船12隻を専従させて警戒を続けているが、中国は尖閣諸島を自国領土と主張し、中国公船の活動は“パトロール”として「釣魚島と付属島嶼は中国固有の領土で海警船が巡航することは法に基づく正当な措置だ」としている。また、中国海警局の元幹部は「365日の活動を可能にする『常態化』は10年以上前から計画されてきたもので、日本側にもその意思を伝えてきた」とし、中国外交筋は「日本側はいつも『領土問題は存在しない』としか言わず、まともに議論する意思がない。日本の漁船が挑発的に尖閣領海に入っている状況からも合意を破っているのは明らかに日本だ」と批判している。
 これに対し、加藤官房長官は「極めて深刻な事態。我が国として冷静かつ毅然と対応していく考えだ」と述べ、赤羽国交相も「極めて深刻に受け止めている。海上保安庁では常に相手の勢力を上回る巡視船の隻数で対応し、万全の領海警備体制を確保している。事態をエスカレートさせず、冷静かつ毅然と対応を続けて領海警備には万全を期していく」と述べながら、*5-2-2のように、石垣市が尖閣諸島に行政標柱の設置を目指すと、*5-2-3のように、加藤官房長官は「政府は尖閣諸島および周辺海域の安定的な維持管理という目的のため、原則として政府関係者を除き、何人も上陸を認めない」と語り、肝心なところでは「毅然とした姿勢」どころか「及び腰」なのである。つまり、中国が10年以上前から計画してきた尖閣諸島領有については「領土問題は存在しない」と言ってまともな議論もせず、「冷静かつ毅然と対応する」としながら何もせず、「安定」の名の下に領土を放棄しようとしている。これは、どういうわけか。
 *5-3のように、河野氏も「安全が確認された原発を当面は再稼働させるのが現実的」と言われたが、これは新たな安全神話だ。何故なら、原子力規制委員会は「①安全を考える場合、リスク0にならないことを前提に確率論的リスク評価が必要で、不完全性・不確実性はある」「②安全性目標は、他の死亡リスクとの比較や土地汚染に関する根拠(100TBq の根拠等)などある程度の価値判断を含む定性的な上位概念を示すことを考えて良い」としており、この安全性目標から外れていれば何が起こっても“想定外”とし、ある程度の汚染は甘んじるべきという価値判断をしているからである(https://www.nsr.go.jp/data/000227853.pdf 参照)。
 また、本当に安全なら、i)電源三法による交付金 ii)原発関連施設の固定資産税 iii)電力会社からの寄付金 などの原発マネー(これまでに支払われた金額は総額2兆5,353億233万円と言われる)は不要な筈だが、原発立地自治体は原発が安全だと思っているからではなく、原発マネーが財政を潤すから原発の立地を受け入れているのである。しかし、1966年に日本で最初の原発が商業発電を始めてから既に55年が経過しているのに、未だに補助金を出さなければ運用できないような発電方法は既に破綻しているため、原発の処理と再エネ100%の実現こそが、汗をかき少し手を伸ばして可能にしなければならない課題なのだ。
 なお、「デジタルの力で日本を前に進める」とも言われたが、デジタル化や自動化は民間では1980年代からやっているため、今頃、これを言わなければならないのは行政だけだ。さらに、デジタル化を当然としても個人情報保護や犯罪防止は必要不可欠であるのに、「デジタル化さえ進めば、後はどうでもよい」と考えている点で日本は著しく遅れている。なお、「自民党は保守政党だ」としながら「自民党を変え、政治を変える」と言うのは日本語の意味を間違えている。何故なら、「保守」とは、読んで字の如く「保ち守る」という意味で、「続けられてきた状態を維持し続けること、維持するための取り組み、維持するための主張」を指すからだ。
 このような中、*5-4のように、①原子力規制委は中国電力島根原発2号機の安全対策が新規制基準に適合しているとする審査書を決定したが ②県庁所在地にある原発で事故時には46万人の住民避難が課題で ③中国電力は敷地近くの宍道断層による地震は基準地震動が最大加速度820ガルと想定 ④津波は最大11.9mと想定 ⑤三瓶山噴火の火山灰は最大56cm積ると想定 ⑥安全対策費は原発全体で6千億円程度の見積もっている そうだ。しかし、②は、事故時に46万人もの住民がどこに、どれだけの期間避難するつもりか問題であり、③の基準地震動は最大ではなく平均地震動であるため、最大地震動でも使用済核燃料プールの水がこぼれることはなく、管を含む原発のすべての部品が正常であるという前提に無理がある。④⑤については、その前提でよい理由は不明だが、事故が起これば歴史的に重要な地域で取り返しのつかない状況になることを考えれば、①は甘い審査だと私は思う。
 なお、*5-5のように、台湾がTPP加盟の正式申請手続きを行うと、日本のメディアは、「⑥中国は中国大陸と台湾は1つの国に属するという『1つの中国』を唱えているため、中国の強い反発が予想される」「⑦対立する中台のTPP加盟を日本などの加盟国がどう判断するか外交的な駆け引きも含めて交渉が激しくなる」などと報道している。これに対し、台湾通商交渉トップの鄧政務委員は、「⑧中国はいつも台湾の国際社会との連携を阻もうとしてきた。もし中国が先にTPPに加盟すれば台湾のTPP参加は不利になる」「⑨台湾のTPP参加は台湾の利益と経済発展のために行うもので、中国の反対があっても彼らの問題だ」などと切り捨てて強い不満を表明されたそうだ。私は、独立国の意思決定に対する⑥⑦の質問や考察は失礼なので、⑧⑨の反発の方が尤もだと思う。また、尖閣諸島と同様、肝心なところで敵対する相手の顔色を見て首尾一貫性がなくなる国は、誰からも信用されなくなるだろう。

    
   MotorFan         Quara   2021.8.26山陰中央  2021.4.15Yahoo
エネルギー自給率国際比較  食料自給率国際比較  食料自給率推移  尖閣諸島の位置

(図の説明:1番左の図のように、エネルギー自給率は先進国の中でも著しく低く、左から2番目の図のように、食料自給率も先進国の中でかなり低い。また、右から2番目の図のように、食料自給率は一貫して下がっており、政策が悪かったとしか言いようがない。さらに、1番右は尖閣諸島の位置関係を示す図で、沖縄県石垣島と中華民国《台湾》が170kmで等距離であるものの、中華人民共和国《中国》は330kmも離れており、全く関係ないと言える)

   
  2021.4.9産経新聞     Goo    2021.4.29東京新聞   

(図の説明:1番左の図のように、2019年時点で原発の発電量は6%しかなく、2050年までに原発と火力を30~40%にするということこそ、世界の流れに反しており、非現実的である上、理念が見えない。また、左から2番目と右から2番目の図のように、膨大な量の使用済核燃料が満杯に近く貯蔵されており、残りの貯蔵空間は少ないが、最終処分の方法もまだ決まっていない。そして、1番右の図のように、仮に玄海原発が自然災害や戦争による爆撃で爆発すると、歴史的に重要な場所を含む食料生産地域が汚染され、食料自給率は現在の1/4程度減ると思うが、日本政府は食料・エネルギーの自給率や食料の汚染にとりわけ疎いのだ)


                 iMart        2016.6.19Goo  2016.10.21
                                     朝日新聞
(図の説明:1番左の図のように、日本は北米プレートとユーラシアプレートの上にあり、ここに太平洋プレートとフィリピン海プレートが沈み込んで、その内側に火山帯がある。そのため、左から2番目の図のように、押されてできた割れ目が多数の活断層になっており、知られている活断層が全てではない上、新しい活断層ができない保証もない。そして、右から2番目の図の熊本・大分の地震は中央構造線から連なる活断層の上で起こったが、特に伊方原発と川内原発は中央構造線に極めて近い場所にあり、図に活断層は描かれていないものの、近くには活断層が多いと考えるのが自然だ。また、1番右の図のように、2016年の鳥取地震では地殻変動によるひずみの集中で地震の起こるメカニズムが初めて明らかにされ、これもノーベル賞級の研究だと思う)

*5-1-1:https://www.sanin-chuo.co.jp/articles/-/84726 (山陰中央新報 2021/8/26) 食料自給率37% 過去最低 20年度、コメや小麦減少
 農林水産省は25日、2020年度のカロリーベースの食料自給率が前年度から1ポイント低下し37%だったと発表した。1993年度と2018年度に並ぶ過去最低の水準。自給できているコメの需要減少や、ただでさえ輸入頼みの小麦の生産量が落ち込んだことが響いた。新型コロナウイルス禍で外食需要減少に伴う消費の落ち込みも押し下げた。新型コロナの影響では、家庭食の増加など自給率向上に寄与する要因もあったが、マイナス面が上回った。
1993年度は記録的なコメの凶作の年で、2018年度は長期的な自給率低下が続く中で天候不順となり、小麦などの生産量が減少し、いずれも37%だった。一方、生産額ベースの自給率は前年度から1ポイント上昇の67%だった。単価の高い豚肉や鶏肉、野菜、果実の生産額が増加した一方、魚介類などの輸入額が減少したため4年ぶりに上昇した。農水省の担当者は「外出自粛で清涼飲料水や土産物の菓子の需要が落ち込んだ」と説明。これらの原料として使用する砂糖類や植物油脂の輸入額が減ったことも上昇要因となった。品目別(重量ベース)の自給率では、コメが前年度と同じ97%、小麦は1ポイント下落し15%となった。野菜は1ポイント上がり80%、魚介類は2ポイント上昇の55%だった。農水省は19年度の都道府県別の食料自給率も発表した。カロリーベースでは北海道が216%で3年連続の1位となり、2位は205%の秋田県。東京都は都道府県別の統計として初めて0%を記録した。島根、鳥取はともに61%だった。

*5-1-2:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/735211 (佐賀新聞 2021/9/4) <オスプレイ配備>割れた意見、漁業者ら受け止めさまざま、配備候補地 地権者アンケート結果
オスプレイ配備計画の地権者アンケートで、計画への理解を尋ねた設問の結果は、賛否と「どちらとも言えない」の三つに割れた。土地売却の意向も、賛否に直接的にくくれない「条件次第で売却」が最も多く、地権者や漁業者の受け止め方はさまざまだった。漁協支所の運営委員の一人は、計画への理解について「どちらとも言えない」が3分の1を超えた点を「多くの人が判断しようがなかったのだろう」と推し量る。「説明不足」との指摘が相次いだ九州防衛局の地権者説明会を引き合いに「ずっと判断材料が不足したまま。アンケート結果をもってしても、どっちにも進めようがないだろう」。駐屯地予定地の直接の地権者が所属する漁協南川副支所では、「売却する」が「売却しない」をやや上回り「条件次第」が半数近くだった。微妙な数字で、田中浩人運営委員長は「正式な数字を見たばかりで、コメントする立場でもない。皆さんの考えが表れたものとしか言えない」と口数は少なかった。ただ、「条件次第」が多かった点には「どういう条件なのか精査し、今後、漁協内で協議すべきものと思う」とした。南川副支所の50代のノリ漁師は計画に賛成の立場で、土地を売却すると回答した。結果は「条件付きを含めると売却に賛成が多く、思った通り」と受け止める。配備で隊員や家族ら2千人以上が住み、地域活性化につながると期待する。「今回の結果を機に計画が前進してほしい」と話した。地権者でつくる有志の会の古賀初次さんは、質問が誘導的として疑問を呈しつつ「お金が欲しくない人はいないのだから、条件次第で土地を売ってもいいという人が多いのは当たり前」と指摘した。ノリ漁の準備が始まっており「この多忙な時期に、こんな大事なことを話すなんておかしい」と、漁協が防衛省のペースに乗って議論を進めていると批判した。

*5-2-1:https://digital.asahi.com/articles/ASP646HKSP62UTIL041.html (朝日新聞 2021年6月4日) 尖閣周辺の中国公船確認、112日連続 最長記録を更新
 沖縄・尖閣諸島周辺の領海外側にある接続水域で4日、中国海警局の公船「海警」4隻が航行しているのが確認された。接続水域での航行は2月13日から112日連続。2012年の尖閣国有化後、最長だった111日連続(昨年4~8月)を更新した。領海への侵入も今年は3日までに18件起き、漁船への接近もたびたび発生。海上保安庁は巡視船12隻を専従させて警戒を続けている。4日は午後3時現在、大正島沖で2隻、久場島沖で別の2隻が確認された。うち1隻は機関砲のようなものを搭載していた。通常、中国公船は4隻で航行していることが多いという。領海は、通常は潮が最も引いている大潮の干潮時の海岸線を基線とし、そこから12カイリ(約22キロ)までの海域をいう。沿岸国の主権が及ぶが、その国の平和や秩序を乱さなければ「無害通航権」といって他国船は事前通告なく通ることが認められる。この領海外側にある24カイリ(約44キロ)までが接続水域だ。沿岸国は犯罪が領海で起きるのを防いだり、違反した船を取り締まったりすることができる。日本は2012年9月に尖閣諸島にある五つの島のうち、魚釣島、北小島、南小島の3島を国有化した。それ以降、中国当局の船が周辺海域に近づく事案が頻繁に発生するようになり、領海侵入も増えた。1年間に接続水域内で確認された日数は12年は91日で、13年には232日に増加。一時期は減少していたが、19年に282日と再び増えると、昨年は333日と過去最多を記録した。頻度とともに懸念されるのは、船舶の大型化や武装化だ。海上保安庁が公開情報をもとに推定したところ、大型船(1千トン級以上)は12年に40隻だったが、昨年は131隻と8年間に3倍以上に増加した。海上保安庁の同水準の巡視船69隻を上回る勢力になっている。また、15年12月に機関砲を搭載した海警船も初めて確認され、以降は機関砲を搭載した船の接近が頻繁に発生している。海警局は18年7月に人民武装警察部隊に編入され、今年2月には武器使用を認める中国海警法も施行された。海上保安庁の奥島高弘長官は5月の定例会見で、尖閣周辺の情勢を「依然として予断を許さない厳しい状況」との見解を示し、「関係機関と緊密に連携して冷静にかつ毅然(きぜん)として対応を続け領海警備に万全を期す」と述べた。加藤勝信官房長官は4日の会見で「極めて深刻な事態と認識している。我が国として冷静かつ毅然(きぜん)と対応していく考えだ」と述べた。赤羽一嘉・国土交通相も4日の閣議後会見で「極めて深刻に受け止めている。海上保安庁では常に相手の勢力を上回る巡視船の隻数で対応し、万全の領海警備体制を確保している。事態をエスカレートさせず、冷静かつ毅然と対応を続けて領海警備には万全を期していく」と述べた。これに対し、尖閣諸島を自国領土と主張する中国は、中国公船の活動を「パトロール」と強調。日本政府が「国際法違反」と指摘している点について、中国外務省の汪文斌副報道局長は4日の定例会見で「釣魚島(尖閣諸島の中国名)と付属島嶼(とうしょ)は中国固有の領土であり、海警船が巡航することは、法に基づく正当な措置だ」と主張した。中国公船は12年の日本の尖閣国有化直後から定期的に航行するようになり、段階的に回数と態勢を引き上げてきた。自身も尖閣周辺のパトロール経験がある海警局元幹部は「365日の活動を可能にする『常態化』は10年以上前から計画されてきたものであり、日本側にもその意思を伝えてきた。当たり前のことができるようになっただけなのに、日本があおり立てて問題を大きくしている」と語る。日中両政府は14年、尖閣問題について「対話と協議を通じて、情勢の悪化を防ぐ」などとする4カ条の合意を交わした。だが、中国外交筋は「日本側はいつも『領土問題は存在しない』としか言わず、まともに議論する意思がない。日本の漁船が挑発的に尖閣領海に入っている状況からも、合意を破っているのは明らかに日本だ」と批判する。

*5-2-2:https://ryukyushimpo.jp/news/entry-1380399.html (琉球新報 2021年8月24日) 石垣市、国に尖閣上陸申請へ 行政標柱が完成、設置目指す
 石垣市は23日、尖閣諸島への設置を目指している行政標柱が完成したと発表した。市が昨年10月に、市の行政区域に含まれる尖閣諸島の住所地の字名を「登野城」から「登野城尖閣」に変更したことに伴う取り組みの一環。市は今後、標柱設置のために国に尖閣諸島への上陸申請をしていくが、具体的な時期は未定という。23日に市内であった完成発表会で、中山義隆市長は「尖閣諸島とその周辺を取り巻く環境は大変厳しい状況が続いている。市はこれまで国に対し必要な措置を要請してきたが、いまだ状況に変化がない。尖閣諸島を市民、国民の皆さんに広く正しく知ってもらうことが重要だと考えている」と語った。標柱には石垣島産の御影石が使われ、「八重山尖閣諸島魚釣島」や「沖縄県石垣市字登野城尖閣二三九二番地」などと記されている。製作費は総額約200万円で、ふるさと納税による寄付でまかなった。国から上陸許可が出るまでの間は、この冬のオープンに向けて計画中の「市尖閣諸島情報発信センター」(仮称)で展示を予定している。

*5-2-3:https://news.yahoo.co.jp/articles/34ca6f79116d9ef11551a757e36c497cba10781c (Yahoo 2021年8月30日) 石垣市の尖閣標柱に日本政府「弱腰」 上陸申請めぐり“中国に屈した発言”も 石平氏「中国の反応など考慮する必要はない」
 中国当局が東シナ海での休漁期間を解禁して以降、沖縄県・尖閣諸島周辺には連日、数十隻もの中国漁船が大挙して押し寄せている。日本の領土・領海を守り、先祖から受け継いだ海洋資源を守るためにも、尖閣諸島を行政区域とする石垣市は近く、「行政標柱設置のための上陸申請」を行う方針だが、日本政府は「及び腰」「弱腰」だという。これで、国民の生命や財産を守り抜けるのか。菅義偉政権の胆力が試される展開となっている。
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 第11管区海上保安本部(那覇)によると、尖閣周辺の接続水域外側で25日、約60隻の中国漁船が操業しているのが確認された。中国当局が漁を解禁した16日以降、漁船を確認しない日はなく、19日には最多の約100隻が押し寄せた。海上保安庁の担当者は「接続水域や領海に接近する様子があれば、警告するとともに、違法操業があれば退去させる」と説明した。中国海警局船も要警戒だ。尖閣周辺の接続水域では26日、海警局船2隻の航行が確認された。18日連続で、1隻は機関砲のようなものを搭載していた。巡視船が領海に近づかないよう警告した。こうしたなか、石垣市は、昨年10月に尖閣諸島の字名を「石垣市字登野城」から「石垣市字登野城尖閣」に変更したことを受け、島名などを刻んだ行政標柱を製作し、23日公開した。魚釣島と南小島、北小島、久場島、大正島に設置する方針で、今後、国に上陸申請を行うという。中山義隆市長は同日の記者会見で、「尖閣周辺に中国船が連日出没し、大変厳しい状況が続いている」「これまでも国に対し、尖閣周辺海域の適正な管理や漁業者の安全操業の確保など、必要な措置を要請してきたが、状況に変化がない」「尖閣について国民に広く正しく知ってもらうことが大切だ」などと語った。行政標柱の設置は、日本の毅然(きぜん)とした姿勢を示すことになる。ところが、菅首相の女房役である加藤勝信官房長官は24日の記者会見で、「政府は尖閣諸島および周辺海域の安定的な維持管理という目的のため、原則として政府関係者をのぞき、何人も上陸を認めない」と語った。まだ、上陸申請が出ていない段階で、これを拒否する考えを示したのだ。日本沖縄政策研究フォーラム理事長の仲村覚氏は「菅政権の考えは、まったく理解できない。尖閣諸島は日本領土ではないのか?現在の状況では、『安定的な維持管理』ができているとは言えない。『中国に屈した発言』としか思えない。これでは、尖閣諸島だけでなく、他の領土も危ない」と懸念を示した。石垣市は淡々としている。企画部の担当者は、上陸申請を提出する時期を「検討中」としたうえで、「今回の標柱設置は、市の行政手続きの1つとして理解していただきたい。今後、申請にあたって政府に説明したい」といい、一切譲歩しない姿勢を示した。菅政権による新型コロナウイルス対策への不満などから、一部の世論調査では内閣支持率が30%を下回る「危険水域」に突入している。菅首相の地元・横浜市の市長選(22日投開票)では、首相が全面支援した候補が惨敗した。尖閣諸島に関する「及び腰」「弱腰」といえる姿勢は、習近平国家主席の中国にナメられ、さらに菅内閣の支持率を下落させかねない。中国事情に詳しい評論家の石平氏は「日本の領土である尖閣諸島について、(中国の反応などを)考慮する必要はない。ここまで中国を増長させた責任は、今回の加藤長官の発言をはじめとする、愚かな姿勢を示してきた日本政府にある。日本の領土であることをハッキリと主張して、行動すべきだ」と指摘した。

*5-3:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20210911&ng=DGKKZO75676950R10C21A9MM8000 (日経新聞 2021.9.11) 河野氏「安全な原発は再稼働」 総裁選出馬を表明
 河野太郎規制改革相は10日、国会内で記者会見し、自民党総裁選への出馬を表明した。原子力発電所について「安全が確認された原発を当面は再稼働させるのが現実的だ」と強調した。「デジタルの力で日本を前に進める」とも語った。新型コロナウイルス禍を踏まえ「皆さんと一緒に直面する危機を乗り越えていかなければならない」と訴えた。「人が人に寄り添う、ぬくもりのある社会をつくっていきたい」と述べた。総裁選への立候補を表明したのは岸田文雄、高市早苗両氏に続き3人目となった。出馬表明した3人で唯一の現職閣僚になる。規制改革、ワクチン担当の職務は続ける。河野氏は総裁選向けの政策パンフレットで「産業界も安心できる現実的なエネルギー政策を進める」と明記した。持論の「脱原発」政策を推進するとの見方があったため、現実的な路線をとると強調した。冊子は「日本を前に進める」と題し「自民党を変え、政治を変える」と掲げた。会見の冒頭で「自民党は保守政党だ」と指摘し「日本の一番の礎は伝統と歴史、文化に裏付けられた皇室と日本語だ」と力説した。保守層からの支持が念頭にある。記者会見では政府と日銀が掲げる2%のインフレ目標の達成に慎重な考えを示した。「かなり厳しいものがあるのではないか」と説いた。河野氏は10日夜のテレビ東京番組で、原発で燃え残った核燃料を再利用する「核燃料サイクル政策」に言及した。「方向転換することもテーブルの上に載せる必要がある。我々の責任で解決策を見いだし、実行していく必要がある」と話した。過去にも核燃料サイクルに異論を唱えていた。総裁選は17日告示―29日投開票で実施する。3人以上で争う構図になった。河野氏は世論調査で「次の総裁にふさわしい人」の上位に挙がる。日本経済新聞社の8月の調査は16%で首位だった。派閥横断的に若手を中心に衆院選の「選挙の顔」に期待する声がある。

*5-4:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/740315 (佐賀新聞 2021.9.15) 島根原発2号機が審査合格、全国唯一、県庁所在地立地
 原子力規制委員会は15日の定例会合で、中国電力島根原発2号機(松江市)の安全対策が、新規制基準に適合しているとする「審査書」を決定した。これで正式に審査に合格した。合格は10原発17基目。事故を起こした東京電力福島第1原発と同じ沸騰水型軽水炉としては4原発5基目となる。全国で唯一、県庁所在地にある原発で、事故時の住民避難が課題だ。中国電は再稼働に向け、本年度内の安全対策工事完了を目指す。再稼働には、原発が立地する島根県と松江市の同意を得る必要があり、時期は未定。原発の30キロ圏に入る鳥取県などの動向も焦点となる。会合では、6月に取りまとめた審査書案に対する一般からの意見公募で、中国電が規制委から借り受けたテロ対策施設に関する機密文書を誤廃棄した問題に関し、「中国電に原発を運転する資格があるのか疑問」などの意見が寄せられたことを規制委事務局の担当者が説明。規制委側は、施設の運用ルールを定めた保安規定の審査の中で、引き続き中国電の改善姿勢を確認していくとした。審査書の決定には5人の委員全員が賛成した。中国電は、敷地近くの宍道断層による地震などを検討し、耐震設計の目安となる揺れ(基準地震動)を最大加速度820ガルと設定。最大で海抜11・9メートルの津波が敷地に到達すると想定し、海抜15メートルの防波壁を建設した。三瓶山(島根県)の噴火で敷地に最大56センチの火山灰が降り積もるとして対策を取る。中国電は2013年12月に審査を申請。18年には、新規稼働を目指して建設中の3号機の審査も申請した。1号機は17年から廃炉作業中。原発全体での安全対策費は6千億円程度と見積もる。

*5-5:https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM230B00T20C21A9000000/?n_cid=BMSR3P001_202109231017 (日経新聞 2021年9月23日) 台湾、TPP加盟申請を発表 中国反発でも加入に強い意欲
 台湾当局は23日、環太平洋経済連携協定(TPP)への加盟に向け、正式に申請手続きを行ったと発表した。同日午前、記者会見を開き、行政院(内閣)の報道官が明らかにした。加盟申請は22日午後に行った。中国の強い反発が予想されるなか、TPP加盟に強い意欲をみせた。TPPを巡っては、中国が16日に加盟申請を行ったことを公表したばかりだ。台湾として中国に加盟申請で大きく遅れれば、加盟が困難になるとみて申請手続きを急いだ。台湾の通商交渉トップである鄧振中・政務委員(無任所大臣に相当)は会見で、「中国はいつも、台湾の国際社会との連携を阻もうとしてきた。もし中国が先にTPPに加盟してしまえば、台湾のTPP参加は不利になることが予想された」と述べた。そのうえで、鄧氏は「台湾のTPP参加は、台湾の利益と経済発展のために行うものだ。中国の反対があっても、それは彼らの問題だ」などと切り捨て、強い不満を表明した。さらに「TPP加盟国は、台湾の貿易総額の24%以上を占める。今年、(閣僚級会合のTPP委員会の)議長国である日本とは非常に緊密な関係にあり、今こそ加盟すべき時が来た」と語った。蔡英文(ツァイ・インウェン)総統は、2016年の就任時からTPP加盟を悲願としてきた。台湾経済は中国に大きく依存している。台湾からの輸出は4割強を中国が占める。統一圧力を強める中国からの脱却を急ぐには、TPPに加盟し、中国への経済依存度を引き下げる必要があると判断した。ただ中国は、中国大陸と台湾は1つの国に属するという「一つの中国」を唱えている。台湾のTPP加盟には強硬に反対する姿勢だ。TPPには現在、日本やオーストラリアなど11カ国が加盟している。参加するには、加盟国すべての同意が必要となる。今後、対立する中台のTPP加盟を、日本などの加盟国がどう判断するか、外交的な駆け引きも含めて交渉が激しくなりそうだ。米国の今後の動きも大きな焦点となる。トランプ前大統領は17年1月、TPPから「永久に離脱する」とした大統領令に署名し、TPPから離脱した。バイデン政権が復帰を決定することは容易ではないが、中台の加盟申請でTPPを取り巻く状況は大きく変化しており、米国としても何らかの対応が必要になる可能性がある。

<アフガンへの支援と今後>
PS(2021年9月17、18、24日追加):*6-1のように、タリバンが権力を掌握したアフガンで食料不足や物価高騰が深刻で、「①国民の93%が食事を十分にとれない事態で人道危機が迫っている」として、国連は、*6-2のように、9月13日、96カ国が参加する緊急会合で計12億㌦(約1300億円)超の拠出を表明した。グテレス事務総長は、ジュネーブの国連欧州本部で開かれた会合で「②事実上の政府であるタリバンとの関わりなしに人道支援を行うのは不可能」「③経済が崩壊すれば人道支援だけで問題は解決しない」「④国外資産凍結・IMF・世界銀行の支援停止などでアフガン経済はさらなる苦境に陥っている」と訴えたが、ドイツのマース外相や米国のトーマスグリーンフィールド国連大使は「⑤国際社会の支援を受けたいタリバンは政権発足にあたって女性の人権や旧政権に参加した人の安全などを守るとしていたが、既に多くの市民への暴力が報告された」と、タリバンの実行動に懸念を示されたそうだ。
 また、*6-1には、2年前に戦闘に巻き込まれて夫を失い、自身も右足をけがして不自由になり、3歳から14歳までの7人の子どもと逃れてきた避難民女性が首都カブールの公園などにテントを張って暮らしている様子も書かれている。アフガンは食事も十分にとれない国民が93%に上るそうだが、男性は戦闘という破壊活動(生産とは反対の活動)を行い、女性は勉強も就業もできずに次々と7人も子どもを作っていれば、貧しかったり飢えたりするのは当然のようにも思うが、放っておくわけにもいかない。そのため、日本で消費期限が近づく災害用非常食や1年以上備蓄されている備蓄米・脱脂粉乳等々を、団体を通じて援助物資として送ったらどうか。その際、梱包する箱や袋に日本の国名・(男女を含む)作っている人の写真・農村の生産風景・再エネ発電等を映した印刷物を添付し、女性が働かなければ付加価値を高めることは困難で、豊かさは戦争をしても作れないことを示すメッセージにすればよいと思う。
 なお、*6-3のように、イスラム主義勢力タリバンが首都カブールを制圧してから、自分たちの権利を守るために声を上げる女性も出てきているが、タリバンのメンバーが抗議デモの女性をムチで打つなど暴力を振るったり、女子学生への教育は認めたが学校で男女の間に仕切りを置いたり、女性は働くことができないと言ったり、女性に頭髪を覆うスカーフやブルカの着用を義務づけたりなど、女性差別が多すぎる。そのため、*6-1のドイツのマース外相や米国のトーマスグリーンフィール国連大使の懸念は的を得ているのである。
 こちらが先だが、アフガンに平和・民主主義・人権・平等・信教の自由などを重視する憲法ができ、それに沿った民法・商法・税法等の法律ができれば、その後は、*6-4の中国主導の広域経済圏構想「一帯一路」やその他の鉄道・道路によって、アフガンで見込まれる非鉄金属・レアアース(希土類)等の資源開発や輸出が期待でき、バーミヤンの石仏などを復元すれば観光の要所にもなれるだろう。
 *6-5のように、「⑥G20外相会議は、女性の権利尊重をタリバンに求めることで一致し」「⑦タリバンへの経済制裁については、維持を訴える米国と解除を求める中国で違いが明らかになり」「⑧G7は、タリバンに対し人権尊重・テロ対策・少数派を含む包括的な政権作りを求め」「⑨中国の王毅外相は、人道支援・難民問題に取り組むよう求め」「⑩中国は、タリバンとの意思疎通を続けて包括的な政権作りを促す方針でロシア等と協調して情勢の安定化を図る」とのことだ。⑦については、制裁をちらつかせながら「基本的人権の尊重」「男女平等」「信教の自由」等を定める憲法その他の法律を整備しなければ、⑥の女性の権利尊重はできないし、⑧⑩の人権尊重や包括的な政権作りもできない。そのため、よりよい形で安定をもたらすためには北風と太陽の両方が必要であり、男女平等に関しては、下の1番右の図のように、ドイツ11位・フィリピン17位・米国30位・韓国102位・中国107位・ミャンマー109位・日本120位と儒教・仏教・イスラム教を基盤とする国はキリスト教を基盤とする国より遅れているため、自由・平等・博愛を重視するキリスト教国に先導してもらった方がよいと思う。


  2021.9.10    2021.9.8CNN    2021.9.9afpbb  2021.9.17  2021.4.1
 TokyoHeadline                        日経新聞  毎日新聞

(図の説明:1番左の図は、アフガン女性が命がけで女性差別に抗議している様子で、左から2番目の図は、学校で男女間に仕切りを付けられた様子だ。また、中央の図は、イスラム世界において女性に許された服装で、男性目線のSEX中心でしかない。さらに、右から2番目の図は、鉱山開発のためにアフガンが期待する中国の「一帯一路」だ。そして、1番右の図は、男女格差の小さい順に並べた国名で、アフガニスタンは156ヶ国中156位で全体最下位である)

*6-1:https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210912/k10013255411000.html (NHK 2021年9月12日) アフガニスタン 国民の93%が「十分に食事をとれない事態」に
 武装勢力タリバンが権力を掌握したアフガニスタンでは、食料不足や物価の高騰が深刻になっていて、国連は、国民の93%が食事を十分にとれない事態に陥っているとして、国際社会の支援が急務だと訴えています。アフガニスタンでは、仕事ができなくなったり銀行が閉鎖されたりして、多くの人が現金収入を絶たれ、食料不足や物価の高騰が深刻化しています。首都カブールには、国内各地で家を追われた避難民が公園などにテントを張って暮らしていますが、多くの人は近くの住民などが善意で運んでくれる食料を頼りにして飢えをしのいでいるということです。2か月半前に戦闘で家が破壊され、北部の州から子ども7人と避難してきたという女性は「子どもたちは飢えていて、ひと切れの小さなパンをめぐって奪い合いになっています。このひどい状況から抜け出すためにも支援が必要です」と話していました。WFP=世界食糧計画は、地域事務所の担当者がオンライン会見を開き、タリバンが権力を掌握した8月中旬以降、食事を十分にとれない人は、国民の93%にのぼるとして、支援のための食料の備蓄もなくなるおそれがあると説明しました。担当者は「冬を迎える前に助けを必要としている人たちを救えるかは、時間との戦いになっている」と話し、国際社会の支援が急務だと訴えました。
●「誰も助けてくれず、取り残されている」
 アフガニスタンで、各地での混乱を逃れ、首都カブールに避難してきた人たちは、多くが支援を受けられず、食事が確保できない深刻な状況に陥っています。このうちカブール中心部の公園には2000人余りの避難民がテントを張って生活しています。2か月半前に北部バグラン州での戦闘で家が破壊されたというザル・ベグムさん(42)は3歳から14歳までの子ども7人と逃れてきました。ザルさんは2年前、戦闘に巻き込まれて夫を失ったほか、自身も右足がけがで不自由となりました。着の身着のままで逃れてきたため食料を買う金もなく、近くの住民などが善意で運んでくれる食料だけが頼りですが、子どもたちの飢えをしのぐには十分ではないといいます。ザルさんは「政権の崩壊以降、誰も助けてくれず、取り残されています。私は足が不自由で、子どもたちもまだ幼いので食料の分け前をほかの人たちに取られてしまいます。子どもたちは飢えていて、ひと切れの小さなパンをめぐって奪い合いになっています。このひどい状況から抜け出すためにも支援が必要です」と窮状を訴えていました。

*6-2:https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR13CXG0T10C21A9000000/ (日経新聞 2021年9月14日) アフガン支援でジレンマ 「タリバン政権」に米欧慎重、国連が緊急会合、1300億円超の拠出表明
 アフガニスタンへの支援を協議する国連の緊急会合で各国は13日、計12億㌦(約1300億円)超の拠出を表明した。イスラム主義組織タリバンによる制圧後、食料不足や経済のまひ状態が続くアフガンに人道危機が迫る。「タリバン政権」の承認に慎重な国際社会は、暫定政権との協力をめぐりジレンマを抱えている。「事実上の政府であるタリバンとの関わりなしに人道支援を行うのは不可能だ」。国連のグテレス事務総長は13日スイス西部ジュネーブの国連欧州本部で開いた会合で、タリバンとの協力は不可欠だと繰り返し訴えた。会合には96カ国が参加した。国連が9~12月を乗り切るために必要としていた目標の6億ドルは達成できる見込みとなったが、グテレス氏は「経済が崩壊すれば、人道支援だけで問題は解決しない」とも述べ、アフガンが直面する現金不足の問題を指摘した。名指しこそしなかったものの、念頭にあるのは米国などが凍結した、アフガン中央銀行の約100億ドルもの国外資産だ。資産凍結や国際通貨基金(IMF)、世界銀行による支援の停止などで、最貧国の一つであるアフガン経済はさらなる苦境に陥っている。現金の不足で銀行は営業停止や引き出しの制限をしている。物価は高騰し、経済はまひ状態にある。国連開発計画(UNDP)によると、既に7割程度だった貧困率は22年半ばまでに97%に上昇する恐れがある。国民の3人に1人は次の食事もままならない状況だという。国際社会の支援を受けたいタリバンは政権の発足にあたり、女性の人権や旧政権に参加した人の安全などを守るとしているが、既に多くの市民への暴力が報告されている。7日に発表した暫定政権の顔ぶれには、国連制裁や米連邦捜査局(FBI)の指名手配対象が含まれた。女性や少数派の姿は見られない。ドイツのマース外相は「良いシグナルではない」と指摘。米国のトーマスグリーンフィールド国連大使も「言葉だけでは不十分だ。実際の行動を見なければいけない」とくぎを刺した。タリバン側との対話や調整を通じた大規模な支援や資産凍結の解除は「タリバン政権」の承認につながりかねないだけに、米欧は消極姿勢を崩さない。人道支援に約6400万ドルを拠出すると発表した米国では、13日の議会下院外交委員会の公聴会で懸念の声が出た。共和党のスコット・ペリー下院議員は「(米国民の)税金をテロ組織へ支払うことは米国の政策なのか」とブリンケン国務長官を問い詰めた。ブリンケン氏は「国連などを通じて支援する」と応じたが、議会の監視は厳しい。一方、隣国パキスタンはいち早く援助物資の空輸に動いた。パキスタンとともにタリバンと密接な関係を持つカタールも「無条件の支援」を国際社会に呼びかけている。12日にはムハンマド副首相兼外相がカブールを訪れた。中国は医療支援などでタリバンと接近している。王毅(ワン・イー)国務委員兼外相は8日、オンラインで開いたアフガン隣国の外相協議に参加し、「新型コロナウイルスワクチンを第1回分として300万回分寄贈する」と表明した。総額2億元(約34億円)分の食料や越冬物資なども提供すると述べた。ロシア、中央アジア諸国などとともに加盟する上海協力機構(SCO)の枠組みも活用してアフガンへの関与を強める。16日から2日間の日程で、タジキスタンの首都ドゥシャンベで首脳会議を開く。習近平(シー・ジンピン)国家主席がオンラインで出席する見通しだ。中国はアフガンからのイスラム過激派流入を警戒しており、人民解放軍は11日からロシア南部オレンブルク州で実施する対テロ合同軍事演習に参加している。タリバンとの関係を築き、復興を支援することでアフガンを安定させたい考えだ。

*6-3:https://news.yahoo.co.jp/articles/bdd36bb3e32f4f012c9261580af02629210e2879 (Yahoo、日テレ 2021/9/15) カブール制圧から1か月  タリバン支配下のアフガン女性たちの現状は?
 アフガニスタンでイスラム主義勢力タリバンが首都カブールを制圧してから1か月たち、注目されているのが「女性の権利」だ。旧タリバン政権下でその権利を大きく制限されてきた女性たちの間では、手に入れた自由がまた制限されてしまうのではないかと不安が広がっている。アフガン女性たちに現状を聞いた。
●自分たちの権利を守るため 声を上げる女性たち
 9月、首都カブールで行われた抗議デモ。自分たちの権利を守るために声を上げる女性も出てきている。デモに参加した女性たちは――「仕事に行けない女性、学校に行けない女性の助けになるために外に出ている。私は彼女たちの声になりたい」「アフガン女性は常に女性の権利を訴えてきた。アフガン女性も他の女性と変わりない。なぜ私たちは権利が無いのか。私たちもすべての権利を持つべきだ」。そして、9月8日、ロイター通信によると、タリバンのメンバーが抗議デモに参加した女性らをムチで打つなど暴力をふるったという話も出てきた。
●旧タリバン政権下で権利を制限されてきた女性たち
 1996年から2001年まで続いた旧タリバン政権下では、女性の権利は大きく制限されていた。例えば…
・頭の先からつま先まで全身を覆うブルカの着用義務
・学校教育、就労の禁止
・外出は男性親族の同伴が必要
などの制約があった。それが2001年、アメリカ同時多発テロをきっかけに、アメリカがアフガンを攻撃。旧タリバン政権が崩壊したことで、女性たちはそれまでの抑圧から解放された。女性YouTuberたちが登場し、日常生活の様子を動画で配信。おしゃれをして街を歩き、その様子を積極的に発信するなど、タリバン政権下とは打って変わって女性たちが輝いているように見えた。しかし、今回タリバンの支配が復活したことで、せっかく手に入れた自由がまた制限されてしまうのではないかという不安が女性たちの間で広がっている。
●男女で仕切られた教室
 タリバンは、「女性の権利を尊重する」として、12日には女子学生への教育を認めると発表したが、学校では男女の間に仕切りを置いたり、女性は頭髪を覆うスカーフの着用が義務づけられるなどさまざまな条件が課されている。タリバンの復権以降、女性たちはどんな思いで過ごしているのか、アフガン女性2人に話を聞いた。以前NGOで働いていて現在はパキスタンに避難している30代の女性――「タリバンから女性は働くことができないと言われ、新しい方針が決まるまでは家にいるよう言われた」「以前は、人と集まることも仕事もピクニックなども自由にできていたのに、今はそのすべてが奪われた」。日本に留学経験があり、現地の国際機関に勤めていた20代の女性――「出勤しても、オフィスは閉鎖され、タリバンの戦闘員に追い返され、いまだ出社できない状態」「外国人と仕事をしていたことが分かると危害を加えられる恐れがあることから、自宅の書類をすべて燃やした」「銀行にお金をおろしに行ったときには銃で武装したタリバン兵がいて、彼らの意に沿わない行動をしたら死につながってしまうだろう」と不安の中で生活している。20年ぶりに復権したタリバンは国際社会の目を意識して、表向きは女性の権利を保障すると主張している。しかし、女性たちの話や今実際に起きていることを見ていると、女性の権利がどこまで守られるのかは不透明で、今後、国際社会が注視していく必要がある。

*6-4:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20210917&ng=DGKKZO75832810W1A910C2FF1000 (日経新聞 2021.9.17) タリバン、「一帯一路」意欲 パキスタンと道路接続も 鉱山開発、進展に期待
 アフガニスタンを制圧したイスラム主義組織タリバンが大規模インフラ整備事業「中国・パキスタン経済回廊(CPEC)」への参加に意欲を見せ始めた。中国主導の広域経済圏構想「一帯一路」の関連で、アフガンの鉱山開発で利点がある。だが、アフガン情勢はなお安定せず、専門家は「中国はアフガンの加入に慎重だ」と指摘する。タリバンの報道担当は16日までに、CPECに加わりたいと述べた。中国とパキスタンを鉄道や道路で結び、同国南西部のグワダルの港を軸に発電所なども整備する計画で500億ドル(約5兆5000億円)前後の投資が見込まれる。鉄道や道路をアフガンに延伸すれば、同国で見込まれる非鉄金属やレアアース(希土類)などの開発を促せるとタリバンは期待しているようだ。アフガンは内陸国だが、パキスタンの港を使えば鉱物の輸出先を広げられる。中国は経済成長に欠かせない資源を大量に確保できる。タリバンを支えてきたパキスタンはアフガンへの影響力を強め、対立するインドをけん制できる。13日にはタリバンのメンバーがカブール近郊のアイナック鉱山を視察した。ロイター通信が報じた。中国企業は2008年、世界有数の銅鉱床があるこの鉱山の開発権を30億ドルで獲得したが、アフガン情勢が不安定だとの理由で、実質的な工事に着手していない。アフガンには未開発の鉱物資源が大量に埋蔵されているといわれる。中国は18年からタリバンにインフラでの協力を持ちかけてきたとされる。タリバンに近い関係者は「口頭では合意した。(タリバンの)暫定政権が国際社会に承認されれば、中国はアフガンで整備を進めるはずだ」と明かした。8日に開かれたアフガン周辺国の外相会議で中国は、アフガン側に穀物、防寒具、医薬品など3100万ドルの緊急支援を約束した。タリバンの報道担当は9月上旬の記者会見で「中国とよい関係を築きたい」と主張した。その前に中国の呉江浩外務次官補はタリバン幹部と電話で協議した。呉氏は「アフガンへの友好政策を励行する」という構えだった。だが、情勢に詳しいチェコの大学の専門家は「中国は焦らない。アフガンへの関与を深めるかどうか慎重に判断するだろう」と指摘する。パキスタンの内相は先週の記者会見で同国とアフガンの発展は相互に影響すると述べ、アフガンのCPEC参加を歓迎する姿勢をみせたが、この専門家は「パキスタンはテロの脅威にさらされており、CPECを広げれば同国のリスクも高まる」と説明した。

*6-5:https://digital.asahi.com/articles/DA3S15053909.html (朝日新聞 2021年9月24日) 女性の権利尊重、G20要求 経済制裁、米中に相違 対タリバン
 イスラム主義勢力タリバンが政権を掌握したアフガニスタン情勢を協議する主要20カ国・地域(G20)外相会議が22日、オンラインで開かれた。米国務省によると、女性の権利尊重をタリバンに求めることで一致した。一方、タリバンへの経済制裁については、維持を訴える米国と解除を求める中国の姿勢の違いが浮き彫りとなった。米国務省によると、ブリンケン国務長官は外相会議で「制裁がアフガン市民に与える影響を抑えつつ、タリバンに対する制裁は維持する」との意向を示した。米政府は主要7カ国(G7)メンバーと足並みをそろえ、タリバンに対して人権尊重やテロ対策、少数派を含む包括的な政権づくりなどを求めている。タリバンは「人権を守る」などと表明しているものの、実際に行動で示すまでは制裁を維持したい考えだ。一方、中国外務省によると、中国の王毅(ワンイー)国務委員兼外相は「制裁を政治圧力のカードとすべきではない」と訴えた。米国や北大西洋条約機構(NATO)の拙速な撤退が混乱を招いたと非難し、人道支援や難民問題に取り組むよう求めた。中国はタリバンとの意思疎通を続けて包括的な政権づくりを促す方針。ロシアなどと協調して情勢の安定化をはかる姿勢を示している。日本外務省によると、茂木敏充外相は「タリバンに対し、多様な民族や宗派を含む包摂的な政治プロセスや、女性らの権利尊重を統一したメッセージで求めていくべきだ」と訴えた。

<無駄遣い・高齢者いじめ・消費税増税は何故起こるのか?>
PS(2021年9月20日、10月2日追加):日本記者クラブ主催の公開討論会で、*7-1のように、自民党総裁に立候補した4氏が論戦し、河野氏はエネルギー政策のやりとりで「①私の脱原発は耐用年数が来たものは速やかに廃炉にして、緩やかに原子力から離脱していくことだけ」「②野田さんは将来も原子力に頼った方がいいと思っているのか」「③再エネを増やせなかったのは原発に重きを置こうという力が働いていたから」「④原発のコストが見直されて再エネの方が安いことが明確になった」「⑤核のごみの現実的な処分方法をどうするのかを議論をした方がいい」と言われた。私は、①②③④については、耐用年数が来ていなくても廃炉にすべきものやできるものはできるだけ早く廃炉にすべきだと思う。その代替は再エネ以外になく、日本の場合は再エネ化を進めることによって国や地方自治体に税外収入が入るため、呪縛のように言われている消費税増税を行わず、消費税を廃止することすらできる。また、最悪の事態に備えるのなら、⑤の核のごみも早急に処分すべきだ。
 上の⑤を受けてか、*7-2のように、経産省が「⑥廃炉が相次ぎ、低レベル廃棄物の『蒸気発生器』と『給水加熱器』の処分を有用資源として安全に再利用されるなど一定基準を満たす場合に限り例外的輸出を可能にすることを新エネルギー基本計画改定案に盛り込んだ」「⑦電力会社から海外業者への支払いでコストが膨らむ可能性もある」そうだ。しかし、⑥について、私は、国内処分の原則は不要だと思うが、除染する人に被曝の可能性があり、除染の程度も疑問であるため、「放射性廃棄物を有用資源として安全に再利用する」とするのはよほどの放射能好きだ。また、⑦は、これ以上の負担を電力使用者にかけないためにも、安価に処分してくれるのでなければ、密閉した容器に入れて排他的経済水域内の3,000m以上深くて流れのない窪地に沈めるのが最も安価だと思う。しかし、その分量にも限界があるので、これ以上核廃棄物を増やさないことが最も重要だ。
 また、*7-3のように、「⑧新型コロナ対策として人流抑制を考え」「⑨個人への給付金を検討し」「⑩緊急事態宣言より強制力の強いロックダウンに向けた法整備をする」と言った人もいたが、⑧⑩は感染症が蔓延しやすく、ワクチンや治療薬を作れない国のすることで、(もう長くは書かないが)日本はこれとは異なる。そして、今回の蔓延と個人の経済破綻は政治による人災であり、経済を止められて破綻した生産年齢人口の人が30万円の給付金をもらっても焼石に水だが、数が多ければ国民負担は大きい。つまり、生産年齢人口の人に補助しなければならないような政策を作ること自体が誤りなのである。
 なお、*7-1では、「⑥全額消費税で支える基礎年金への制度変更」の話も出ていたが、これまで年金保険料を支払っていた人への基礎年金の支払いを停止するのは契約違反だ。そのため、最低保証年金を作るのなら、これまでの1~3階はそのままにして、最低生活に満たない人に保障する0階を設けるべきであり、その原資が消費税でなければならない理由もない。例えば、生産年齢人口にあたる人に景気対策として補助する政策をなくし、原発は早期にやめて再エネに変え、国内にある資源を有効に使って国や地方自治体が税外収入を獲得すればよいのである。
 その1例は、*7-4のように、排他的経済水域内にコバルトリッチクラストが広く分布しており、コバルト・ニッケル・白金などのレアメタルやレアアース等を含む海底金属資源があるため、(国立公園内の地熱とともに海も国有なので)採取すれば国が税外収入を得られるのだ。
 *7-5には、⑪バイク・自動車・航空機等を作ってきたホンダが宇宙事業に参入を表明 ⑫小型の人工衛星を載せるロケットを開発し、2020年代に打ち上げる目標 ⑬月面での作業ロボットも検討 ⑭火星探査の中継地と想定される月面での居住空間作りにも参画 ⑮地球から月面での作業ができる遠隔操作の分身ロボットにも取り組む ⑯地球と月の間の通信には遅延が生じるので、アシモの技術などを活用してスムーズに動かす機能を採用 などが記載されている。他の惑星における住居や作業ロボットは面白く、⑪~⑯は、既に必要な技術を持つ企業が多いので、それらとベンチャー企業を作れば比較的容易にできると思う。しかし、下の図のような海底金属資源を採取する海底作業にも、深海の圧力に耐える強靭な海底作業ロボットと運搬手段が必要で通信の遅延は生じないため、可能な会社は造船会社とベンチャー企業を作って、必要な機械を作ったらどうかと思う。そして、この装置の需要も国内だけではないだろう。


                   *7-4より
(図の説明:左図は*7-4の図1、中央は図5、右図は図6で、日本の南東約1,800km沖にある巨大平頂海山の南斜面に、多量のコバルトリッチクラストが存在することがわかった)

*7-1:https://www.nishinippon.co.jp/item/n/803028/ (西日本新聞 2021/9/19) 「狙い撃ち」された河野氏のカウンター「原発に頼った方がいいんでしょうか」
 「ポスト菅」を決める自民党総裁選(29日投開票)は18日、日本記者クラブ主催の公開討論会で立候補4氏による論戦が本格化。主役を張ったのは、報道各社の世論調査などで「次の首相にふさわしい人」の首位を走る河野太郎行政改革担当相だった。脱原発をはじめ数々のとがった改革志向の持論に対し、他の3氏が質問を集中。河野氏は「守り」の回答を崩さず、時には逆質問して「攻め」に転じる柔軟さも見せた。
●改革志向の持論に定められた照準
 相手を指名して見解をただせる討論会第1部の見せ場は、エネルギー政策のやりとりだった。自民内では少数派である河野氏の脱原発に照準を定め、野田聖子幹事長代行が「総理になったら、速やかに過去の発言を実行してしまうのか」と切り込んだ。河野氏は表情を動かさず、「私が言っている脱原発は、耐用年数が来たものは速やかに廃炉になる。緩やかに原子力から離脱していくことになる、というだけだ」。返す刀で、「野田さんは将来も、原子力に頼っていった方がいいと思っているんでしょうか」と切り返した。手元に準備した資料にはほぼ目を落とさない。「再生可能エネルギーを増やすことができなかったのは、原子力発電に重きを置こうという力が働いていたからだ」「原子力発電のコストが見直されて、再生可能エネルギーの方が安いということが明確になった」。こう畳み掛けた河野氏は、「原子力産業は、あまり先が見通せない」と言い切ってみせた。第2部で、原発の「核のごみ」を埋める最終処分場の場所が決まっていない問題を問われた際は、「もう、現実的な処分方法をどうするのかをテーブルに載せて議論をした方がいい」と一歩踏み込んだ。今回の総裁選。河野氏は支持の裾野を広げたいがためか原発再稼働の容認を明言し、脱原発の姿勢は玉虫色となった。だが、使用済み核燃料を再利用する「核燃料サイクル」の見直しは掲げ続けており、自民政権の伝統的な原子力政策路線との違いが際立っている。岸田文雄前政調会長は、そのアキレス腱(けん)を突き「(核燃料サイクルの停止は)原発再稼働と両立できるのか」「核燃料サイクルを止めればプルトニウムが積み上がり、外交問題にも発展しかねない」と整合性に疑問を投げ掛けた。
●「一対一」の討論、最多の5回指名
 河野氏の持論の一つである「税金で支える方式への公的年金制度改革」もまた、俎上(そじょう)に載せられた。
高市早苗前総務相は「基礎年金を税金で、となるとかなりの増税になる。年金制度の仕組みそのものに、大きなひずみが出てしまう」、岸田氏も「(消費税は)何%上がるのか」などと追及。これに対し、河野氏は「どれぐらいの年金を、どういう人を対象に支払うかによって税金の必要な額が違ってくる」と慎重な言い回しで言質を取らせない一方、「高齢者でも所得1億円の方に最低保障年金を出す必要はない」とアピールも忘れなかった。この日、候補者同士の「一対一」のやりとりは計12回あり、うち最多の5回で河野氏が質問相手に指名された。力をそいでおくべき標的に位置付けられたことは、自民の同僚議員間における人気は別として、国民的な知名度では頭一つ抜けている現実を裏付けた。

*7-2:https://digital.asahi.com/articles/DA3S15048847.html (朝日新聞 2021年9月20日) 放射性廃棄物、海外委託も 国内処分の方針、転換 低レベルの原発主要機器 経産省
 原発の放射性廃棄物は国内ですべて処分するという原則に関わる規制が、変わろうとしている。廃炉が相次ぐなか、低レベル廃棄物である一部の大型機器について、処分を海外業者に委託できるように輸出規制を緩和する。新たなエネルギー基本計画の改定案に方針が盛り込まれた。経済産業省が見直し案を検討するが、実施に向けては不透明な部分もある。海外での処分を検討しているのは「蒸気発生器」と「給水加熱器」、「核燃料の輸送・貯蔵用キャスク」の3種類の大型機器だ。いずれも原発の重要機器で、主なものだと長さは5~20メートル前後、重さは100~300トン前後もある。使用済み核燃料から出る高レベル放射性廃棄物(核のごみ)ほど放射能レベルは高くはないが、低レベルの廃棄物として埋設処分などが必要だ。エネルギー基本計画の改定案に「有用資源として安全に再利用されるなどの一定の基準を満たす場合に限り例外的に輸出することが可能となるよう、必要な輸出規制の見直しを進める」と明記された。改定案には、今月3日から10月4日まで意見を公募している。国内ではこれまで原発24基の廃炉が決まり、2020年代半ば以降に原子炉の解体などが本格化する。国内に専用の処理施設がなく、発電所の敷地内で保管したままだと作業スペースが圧迫され、廃炉の妨げになると経産省は説明する。米国やスウェーデンでは放射性廃棄物を国外から受け入れ、除染や溶融をしたうえで、金属素材などとして再利用するビジネスが確立しているという。国際条約では、放射性廃棄物は発生国での処分が原則だ。相手国の同意があれば例外的に輸出できるが、日本は外国為替及び外国貿易法(外為法)の通達で禁じている。経産省は大手電力会社の要望などをもとに、専門家らを交えて検討してきた。国内処分を基本としつつ、対象を3種類の大型機器に絞り、再利用されることなどを条件に例外的に輸出を認める方向だ。法改正をしなくても通達の見直しなどで対応できるという。原発敷地内で保管している大型機器も対象になるとしており、稼働中の原発の廃棄物が輸出される可能性もある。電力会社から海外業者への支払額ははっきりしておらず、コストがふくらむ恐れもある。安全な輸送方法など課題は多い。規制が緩和されても、実施まで時間がかかりそうだ。低レベルの廃棄物は電力会社が責任を持って処分することになっている。原発の稼働や廃炉にともなって増えているが、処分先が決まらないことが大きな問題だ。たまり続ける廃棄物への地元住民らの不安感もあり、海外での処分に期待する見方もある。ただ、国内処分の原則を揺るがしかねないだけに、国や電力会社には十分な説明が求められる。

*7-3:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20210920&ng=DGKKZO75906870Z10C21A9NN1000 (日経新聞 2021.9.20) 個人に給付金検討 一律の現金支給は否定
 自民党総裁選の各候補は新型コロナウイルスの感染が再び拡大局面に入った場合の対策として、人流抑制を引き続き視野に入れる。個人への給付金を検討する考えを示し、一律の現金支給は否定する。規模や範囲、時期などが焦点になる。河野太郎規制改革相は19日のNHK番組で「次の緊急事態宣言に備えて給付金を一律ではなく、必要性や規模に応じて出せるようにする」と述べた。岸田文雄氏はかねて「非正規労働者や女性、困っている方々には直接給付金を用意しないといけない」と言明する。高市早苗氏は「本当にお困りの低所得者に手厚くする」と語る。野田聖子幹事長代行はクーポンでの配布を主張する。2020年4月に決めた経済対策で1人あたり一律10万円が特別定額給付金として支給された。所得が一定水準を下回った世帯に30万円を配る内容だったのを公平性や支給スピードを重視して転換した経緯がある。河野、高市両氏は緊急事態宣言よりも飲食店の営業制限などへの強制力が強い「ロックダウン(都市封鎖)」に向けた法整備の必要性に言及している。経済的な影響もより大きくなり、個人へのさらなる生活支援の議論が必要になる。

*7-4:http://www.jamstec.go.jp/j/about/press_release/20160209_2/ (国立研究開発法人海洋研究開発機構、国立大学法人高知大学 2016年2月9日)5,500mを超える大水深に広がるコバルトリッチクラストを確認~コバルトリッチクラストの成因解明に大きな前進~
1.概要
 国立研究開発法人海洋研究開発機構(理事長 平 朝彦、以下「JAMSTEC」という)は、国立大学法人高知大学(学長 脇口 宏、以下「高知大学」)と共同で、戦略的イノベーション創造プログラム(※1以下「SIP」)の課題「次世代海洋資源調査技術(海のジパング計画)」における「海洋資源の成因に関する科学的研究」(研究代表者:鈴木 勝彦、JAMSTEC次世代海洋資源調査技術研究開発プロジェクトチーム成因研究ユニットリーダー)の一環として、日本の南東約1,800km沖に存在する巨大平頂海山 拓洋第5海山(図1左図)の南斜面において、無人探査機「かいこうMk-IV」(図2)を用いたコバルトリッチクラストの調査を実施しました(※2)。コバルトリッチクラストは、コバルト、ニッケル、白金などのレアメタルやレアアースの資源として期待されている海底の岩石です。今回の調査により、世界で初めて5,500mを超える大水深の海山の斜面においてコバルトリッチクラストの存在を確認し、研究用試料の採取に成功しました。今後、採取したコバルトリッチクラスト試料を詳細に分析・解析することによって、日本周辺におけるコバルトリッチクラストの成因解明に関する研究を進め、海洋資源調査技術の開発につなげていく予定です。
2.研究の背景・目的
 形成後時間が経過した古い海山の斜面には、海山を形成する玄武岩や水深の浅い石灰岩等の基盤岩を覆うように鉄・マンガン酸化物を主体とした数mmから10cmあまりの厚さのコバルトリッチクラストが広く分布しており、コバルト、ニッケル、白金などのレアメタルやレアアース等を含む海底金属資源として注目されています(※3)。SIP「次世代海洋資源調査技術(海のジパング計画)」の「海洋資源の成因に関する科学的研究」課題においても、コバルトリッチクラストが対象となっており、科学的な研究を基にその調査技術の研究開発を進めています。過去にもJAMSTECの船舶・無人探査機を用いた拓洋第5海山の調査が行われており、水深3,000mより浅い海域において、系統的、かつ、連続的なコバルトリッチクラストのサンプリングや厚み計測などの調査が行われてきました。平成21年に海洋調査船「なつしま」航海(NT09-02 leg2、首席研究者:浦辺 徹郎、国立大学法人東京大学教授(当時))において、無人探査機「ハイパードルフィン」を用いて最初のコバルトリッチクラストの現場産状観察と系統的な試料採取が水深1,200mから3,000mまでの連続的な水深で実施されました(図1右図青線)。平成27年には、深海調査研究船「かいれい」航海(KR15-E01、首席研究者:飯島 耕一、JAMSTEC海底資源研究開発センター調査研究推進グループ技術主任)において「かいこうMk-IV」が拓洋第5海山の南方尾根にて潜航し、水深3,491mから3,360mの調査によってコバルトリッチクラストの産状観察と試料採取を行いました(図1右図青点)。JAMSTECにおけるこれまでのコバルトリッチクラストの研究で、採取された試料などから、同位体を用いた年代測定によって、コバルトリッチクラストの成長速度が数mm/百万年であることを明らかにするとともに(Usui et al., 2007; Goto et al., 2014)、モリブデン,タングステン、テルルなどのレアメタルがコバルトリッチクラストに濃集するメカニズムを解明し(Kashiwabara et al., 2011; 2013; 2014)、さらにコバルトリッチクラストの遺伝子解析(Nitahara et al., 2011)などを行って、多様な微生物が生息していることを明らかにしてきました。本調査では、コバルトリッチクラストの成因研究をさらに進めるため、無人探査機「かいこうMk-IV」を用いて、これまでの調査で成し得なかった拓洋第5海山の5,500m以深のコバルトリッチクラストの産状観察や試料採取を行って、拓洋第5海山のような巨大海山の大水深部にコバルトリッチクラストが広がっているかどうかを明らかにすることを計画しました。さらに、コバルトリッチクラストの現場環境と生成メカニズムの理解に向けて、電磁流速計、微生物現場培養・化学吸着実験装置の設置を計画しました。
3.成果
 本調査では、無人探査機「かいこうMk-IV」を用いて、世界で初めて拓洋第5海山南方尾根の水深5,500mに広がるコバルトリッチクラストの現場観察に成功し、研究用のコバルトリッチクラスト試料を採取しました。これまでは、詳細なコバルトリッチクラストの調査のために、拓洋第5海山にて水深3,500mまでの現場観察と試料採取が連続的に行われていましたが、そこから2,000mも水深方向に延伸するものです。さらに、水深1,150m、3,000m、5,500mという異なる3つの水深での電磁流速計の設置、現場培養・化学吸着装置を設置しました。これによって、コバルトリッチクラストが形成される環境での有用なメタルを効率的に集めるメカニズムを観察し、さらには、コバルトリッチクラストの成長や有用メタル濃集に関わる微生物の観察が可能になり、コバルトリッチクラストの成因研究に大きな前進が期待されます。今回の調査で、南方尾根水深4,500m付近にコバルトリッチクラストが広がっていることを確認し(図3)、約2cmから約7cmの厚みのコバルトリッチクラストを採取しました(図4)。さらに南方へ進んだ5,500m付近では、崩れた崖が続く海底の所々に板状のクラストや庇状のクラストがあることを確認し(図5)、マニピュレータを使って幅30~40cm、厚さ約3cm~約8cmの板状の多数のクラスト試料を採取しました(図6)。これまで、大水深のコバルトリッチクラストのほとんどが船上からドレッジ(ケーブルで降ろしたバケツ状の採取器具を底引き網のように引っ張ること)によって試料が採取されているために、その試料は転石と呼ばれる現地性を確証できない試料でした。また、有人潜水調査船による火山岩の調査で同時にコバルトリッチクラストが採取された例はありますが、コバルトリッチクラストの調査を目的としていないため、散点的に発見されたものでその広がりは明確ではなく、試料採取も系統的なものではありませんでした。さらに、無人探査機を用いたコバルトリッチクラストの現場観察を系統的に行ったのは、拓洋第5海山の一連の調査のみで、水深も3,500mが最深でした。今回の調査により、拓洋第5海山の深さが5,500mを超える斜面にコバルトリッチクラストの広がりが確認され、さらに試料採取も行えたことから、コバルトリッチクラストの形成メカニズムを解明するための微生物学的・地球化学的機能の分析が行えるようになります。
4.今後の展望
 採取したコバルトリッチクラスト試料の化学組成、同位体組成を分析し、水深によるレアメタル濃度(品位)の違いを調べます。そのデータと、海水の溶存酸素濃度や海水の元素組成とを比べることで、コバルトリッチクラストのレアメタル濃度を決めている要素を明らかにすることが期待されます。また、微生物の解析を行うことによって、コバルトリッチクラストに存在する微生物の種類等を把握します。現場培養装置と化学吸着装置は、いわゆる天然での実験装置であり、次年度に予定されている調査航海にて回収を行い、その分析・解析を行うことによって、深海におけるコバルトリッチクラストと海水との相互作用を把握し、コバルトリッチクラストに元素が濃集するメカニズムの全容を把握するとともに、微生物とコバルトリッチクラストの形成開始,成長との関わりを明らかにできることが期待されます。我々は拓洋第5海山をコバルトリッチクラストの成因研究を行うためのモデル地域と位置づけており、これまでの研究の蓄積と今回の成果、および、今後得られるデータにより、コバルトリッチクラストの成因の解明に迫ります。これを基にSIP「次世代海洋資源調査技術(海のジパング計画)」における「海洋資源の成因に関する科学的研究」の目的である高品位のコバルトリッチクラストの存在地域の予測と、調査手法の開発につなげます。これらの成果は、コバルトリッチクラストの鉱量評価にも貢献します。
※1 戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)
 総合科学技術・イノベーション会議(CSTI)が自らの司令塔機能を発揮して、府省の枠や旧来の分野の枠を超えたマネジメントに主導的な役割を果たすことを通じて、科学技術イノベーションを実現するために平成26年度より5カ年の計画で新たに創設したプログラム。CSTIにより選定された11課題のうち、「次世代海洋資源調査技術(海のジパング計画)」(プログラムディレクター 浦辺 徹郎、東京大学名誉教授、国際資源開発研修センター顧問)はJAMSTECが管理法人を務めており、海洋資源の成因に関する科学的研究、海洋資源調査技術の開発、生態系の実態調査と長期監視技術の開発を実施し、民間企業へ技術移転する計画となっている。
※2 深海調査研究船「かいれい」KR16-01 leg1航海(首席研究者:飯島 耕一、JAMSTEC海底資源研究開発センター調査研究推進グループ技術主任、調査期間:平成28年1月9日~1月30日)
※3 コバルトリッチクラストの経済価値
 一般社団法人日本プロジェクト産業協議会(JAPIC)の見積もりでは、日本周辺のコバルトリッチクラストの経済価値は、回収率45%を仮定し、約100兆円とされている。現時点で商業的に採掘されている例は無く、深海から環境への影響を適切に評価しながら採鉱する技術を確立する必要がある。環境影響評価についてはSIP「次世代海洋資源調査技術(海のジパング計画)」の「海洋生態系観測と変動予測手法の開発」課題(研究代表者:山本啓之、JAMSTEC次世代海洋資源調査技術研究開発プロジェクトチーム生態系観測手法開発ユニットリーダー)において評価手法の国際標準確立を目指している。

*7-5:https://news.yahoo.co.jp/articles/314d36df22c554dc5246e96dffdbef0248786750 (Yahoo 2021/9/30) ホンダ、宇宙事業に参入 2020年代にロケットの打ち上げ目指す
 ホンダは30日、宇宙事業への参入を表明した。小型の人工衛星を載せるロケットを開発し、2020年代のうちに打ち上げることをめざす。国内の大手自動車メーカーが、打ち上げロケットを本格的に手がけるのは初めてという。月面で作業できるロボットなども、検討していく。ホンダはバイクや自動車、航空機など様々なものをつくってきた。宇宙事業は利益を出しにくいが、新領域に挑戦し、将来の成長の芽を育てたい考えだ。小形の人工衛星は、通信や地球観測などでの利用拡大が見込まれる。まずは高度100キロ程度の地球を周回しない「準軌道」に打ち上げ、距離を伸ばしていく方針だ。若手技術者を中心に19年末から開発をスタートした。エンジン開発で培った燃焼技術を応用する。火星探査の中継地として想定されている月面での居住空間づくりにも参画する。宇宙航空研究開発機構(JAXA)と共同で、生活に必要な水や酸素のシステム開発を進める。
■月面開発に意欲 分身ロボットの実用化も
 遠隔操作の「アバター(分身)ロボット」の実用化にも取り組む。月面開発が進む30年代以降に、地球にいながら月面での作業ができるようにする。アバターロボットは、VR(仮想現実)ゴーグルや手の動きを伝えるグローブをつけて操作する。開発中のものでは、コインをつまんだり、缶のプルタブをつかんだりできるようになったという。地球と月の間の通信は遅延が生じるため、人工知能(AI)を使って視線や手の動きなどから操作者の行動を予測し、スムーズに動かす機能を取り入れる。二足歩行ロボット「アシモ」の技術なども活用する。NTTデータ経営研究所によると、40年の世界の宇宙産業の市場は約120兆円で、20年の約40兆円から3倍になる見込みだ。小型衛星からのデータを、災害の予測や農業支援などへ活用することが期待される。民間の宇宙開発は広がっている。電気自動車メーカー、テスラを率いるイーロン・マスク氏の「スペースX」などが、大型ロケットを打ち上げている。国内では三菱重工業が大型の「H2A」を運用している。小型ロケットはコストが下がったこともあり、複数のベンチャー企業が事業化をねらう。ホンダは宇宙事業を大きく育てたい考えだが、競争は激しく開発費もかさむため、利益を出すのは簡単ではない。また、宇宙事業と並ぶ新領域として、4人乗りの垂直離着陸機「eVTOL(イーブイトール)」も開発する。試作機の実験を23年に北米で始め、30年以降の実用化をめざす。

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2021.8.14~28 地方の重要性 (2021年8月29、30日、年9月1日追加)
  
      2021.7.16日経新聞      2021.7.16日経新聞 2021.8.13日経新聞

(図の説明:左と中央の図は都道府県別人口増減率で、今でも関東圏と福岡県・愛知県に集中し続けており、例外は沖縄県だ。その理由は、国策として関東・東海に集中投資して工業地帯を作ったこと、関東圏に若者を吸収する大学が多いことなどが理由であり、地方がさぼっていたからではない。沖縄県は、近年、地の利を生かして観光に力を入れ、出生率も低くないため、人口が増えている。右図は、最近、移住等に力を入れて人口を増やした市町村で、企業誘致を進めて働く場所を増やしたり、東京への通勤圏になったり、若者の支援に力を入れたりしているのだ)


    2021.7.2日経新聞       2021.7.2日経新聞    2021.8.13日経新聞

(図の説明:左図は、都道府県の住民所得は生産年齢人口の数と正の相関関係があるというグラフで、主たる稼ぎ手が生産年齢人口であることを考えれば当然だ。しかし、中央の図のように、農林漁業で個人所得を増やして個人住民税を増やした町村、区画整理・宅地造成で転入者を増やして個人住民税を増やした町村もある。ただ、沖縄県与那国島の自衛隊駐屯地誘致による個人住民税の増加は、新しく稼ぎだした所得というより所得移転によるものと言える。なお、右図のように、政府は「地域おこし協力隊」「地域活性化起業人」「テレワークの推進」などで移住促進計画を打ち出しているが、主たる産業の地方移転や筋の通った地方産業の活性化がなければ、ボランティアと腰掛に終わると思う)

(1)農業の高付加価値化による地方の産業高度化へ
1)カイコから新型コロナワクチン
 新型コロナについて、政府(特に厚労省)及び厚労省専門家会議は、2021年8月になっても「人流を減らす」しか言えていないが、*1-1-1は、①九大は世界的なカイコの研究機関で、2020年6月26日、カイコで新型コロナウイルスのスパイク蛋白質を生成できることを確認してワクチン候補となる蛋白質を開発することに成功したと発表し ②このスパイク蛋白質を注射したマウスに抗体ができるか否かの実験を2020年内に終わらせる方針で ③昆虫工場による大量生産により数千円で接種できるワクチンの臨床研究開始を来年度にめざす としている。

 その後、この研究は、どうなったのだろうか。結果を出すのが遅すぎると他のワクチンが世界中に出回り、それよりよほど品質がよくて安価であることを証明できない限り、販売するに至らずもったいないことになる。そして、この技術を実用化しなければ、農業を高度化・高付加価値化する1つのよい機会が失われてもったいないのである。

 なお、*1-1-2のように、遺伝子組換えカイコを使って新しい絹や医薬品の原料を作る研究が進んでおり、ヒト型コラーゲンを生成する遺伝子組換えカイコを作り、既に化粧品などに製品化しており、将来的には安全で安価な医薬品の製造も視野に入れているそうだ。私は、遺伝子組換えカイコが作る蛋白質で安全・安価な診断薬の原料となる抗体だけでなく、新型コロナの抗体も作ることができると考える。

2)米からコレラワクチン作成
 東大の清野特任教授と幸特任研究員らは、*1-2のように、コレラの毒素を構成する部品からワクチンに使える無害な部分の遺伝子を組み込んだコメからできたワクチンの安全性をヒトで確かめたそうだ。米粒の中にワクチンの成分が入っており、すりつぶしてコメの粉末を飲むとワクチンの成分が腸に届いて免疫をつくるのだそうだ。また、コメに成分を封じ込めたため冷やさなくても長期間保存でき、冷蔵管理が難しくコレラが蔓延しやすい発展途上国で利用しやすいとのことである。ノーベル賞もののすごい発明だし、米の付加価値も上がるだろう。

 なお、今後、遺伝子を組み換えたイネを大規模に栽培するためには、他にイネ科の植物がなく花粉が混じらない離島などの場所を選ぶか、ハウスで徹底管理するかする必要があるが、確かに、これなら理論上はあらゆる感染症のワクチンを同じ方法で開発でき、常温で保存できて、飲むだけで済むため利点が大きい。さらに、ワクチンだけでなく、抗体も作れると思う。

3)新型コロナの“治療”について
 新型コロナの「抗体カクテル療法」が、*1-4-1のように、入院患者にしか認められていなかったが宿泊療養者にも使えるようになったそうだ。しかし、ウイルスが細胞に感染するのを防ぐ二つの中和抗体を組み合わせた薬であれば、軽症であればあるほど治癒しやすいので早期発見・早期治療が望ましいものの、中等症や重傷になっても根本的治療を何も行わずに「酸素吸入」「エクモ」を使った対症療法だけを行うよりは「抗体カクテル」を点滴した方が治癒しやすいので、厚労省が一律の単純な基準で制限を設けるよりも医師の判断に任せた方がよい。

 そうすると、「抗体カクテル」の量が足りなかったり、高価過ぎたりするのなら、世界で使っている安価なイベルメクチンやアビガンなど他の武器も承認すればよい。このような中、いつまでも「病床が足りない」「自宅で亡くなる人もいる」など、不作為による人災を災害であるかのように言うのはいい加減にしてもらいたい。

 なお、*1-4-2に、菅首相が、①自宅療養患者への連絡態勢を強化する ②患者が酸素投与を必要とした場合に対応する『酸素ステーション』を設ける ③軽症者の重症化を抑える抗体カクテル療法を集中的に使える拠点を整備する ④政府の新型コロナ感染症対策分科会提言を受けて、商業施設等の人流の抑制に取り組む と言われたそうだが、②③は別々の拠点ではなく、医師の判断で連続的に治療できるようにしなければ金ばかり使ってややこしくなるだけだ。

 また、①については、新型コロナにかこつけてデジタル診療を推し進めようとしている人がいるが、感染症のように他人に感染する急性疾患に「自宅療養+デジタル診療」は向かず、成人病の手術後のように長期の療養を要するが他人には感染しない慢性期の療養に自宅療養が向くのである。そのため、この違いの分からない人が政策を決めているのが敗因であり、政府の新型コロナ感染症対策分科会も、相変わらず④のように人流抑制しか提言できていないが、その理由は説明されず、理由を説明するためのエビデンスも示されていないのだ。

4)住宅への木材活用と3Dプリンター
 不動産各社が、*1-3-1のように、住宅に木材を活用する動きがあり、①住友不動産は戸建てリフォームで木材を再利用する取り組みを始め ②ケイアイスター不動産は注文住宅の国産材比率を100%に引き上げて環境配慮の姿勢を示し ③三井ホームは、強度や防音性などを高めてマンションを木造化できる新しい技術を開発して5階建て程度の中層マンションの木造化を進め ④三菱地所など建設・不動産7社も国産材の需要を掘り起こす取り組みを始めた そうだ。

 近年は、湾曲した木材や間伐材などから製材した板や角材を乾燥して、節や割れなどの欠点部を取り除き、接着剤で接着してつくる集成材もあり、天然材と比較してかえって強度・寸法安定性・耐久性に優れていたりする。

 また、*1-3-2のように、3Dプリンターを使って工場で住宅を製造して大型トレーラーで運んで施工するマイティ・ビルディングズのような会社もあり、⑤3Dプリンターに事前に図面データを入力し ⑥データ通りにノズルを動かし、紫外線を当てればすぐ硬くなる建築素材を噴射して積み重ね ⑦(例えば)天井部分の工程は、柱やパネルを設置した後で上から覆うように建築素材を噴出して形成し、固まった層は外壁や床材などになって現場工事が要らず ⑧小型住宅なら10日で完成し ⑨従来の建築工法と比べて費用を30%削減できる そうである。

 大林組も3Dプリンターで大型ベンチを試作し、竹中工務店は2023年以降にイベント施設などの建築向けに3Dプリンターを導入する考えで、3Dプリンターは自由にデザイン設計しやすく、製造に携わる人手を減らせることも利点なので、三菱重工業は国産ロケット「H3」でエンジン噴出口部品の加工に3Dプリンターを採用したそうだ。

 日本は災害が多いため建築法規制が厳しいのが課題だそうだが、集成材で骨組みを作り、3Dプリンターで作った小型の部屋を積み重ねれば、強度があり、軽くて断熱効果の高い住宅を、人手を省いて安価に作れそうだ。

5)再生医療と3Dプリンター
 再生医療でも、*1-3-2のように、医療スタートアップのサイフューズが開発した3Dプリンターは、臓器疾患のある患者から採取した細胞を培養し、細胞を剣山に刺していって次第に細胞同士がくっついて固まることにより数週間で患者専用の臓器を製造する。この臓器は、患者自身の細胞で作るため移植後に感染症や拒絶反応が生じにくく、まず血管や骨軟骨などで臨床試験に入るそうで、2025年度にも移植手術で利用できるようにしたいそうだ。

 3Dプリンターで作って欲しい患者専用臓器(歯も含む)には、ほかにどんなものがあるかを意見募集すると意外性があって有意義だろう。

6)代替肉と3Dプリンター
 食品業界では、*1-3-2のように、イスラエルのリディファイン・ミートが3Dプリンターで代替肉によるステーキなどを製造する技術を開発し、アジア市場ではハンバーガーなどの製品群を2022年に提供する方針だそうだ。3Dプリンターが得意な分野を見いだして使いこなすことで、かなりのイノベーションが期待できる。

(2)農林漁業の販売力向上による地方産業の高度化

 
2021.8.14日経新聞 2021.8.12ふるさと納税ガイド 2021.7.29時事 2021.8.15日経新聞

(図の説明:1番左の図のように、農業産出額は北海道・宮崎県・鹿児島県の市町で多く、ふるさと納税受入額の大きい地域と一致しているが、そこには努力があるのである。また、左から2番目の図のように、九州7県のうち5県までがふるさと納税受入額上位10県に入っている。ふるさと納税受入総額は、右から2番目の図のように著しく増えたが、これは皆で育てた結果だ。なお、1番右の図のように、日本の品種であるシャインマスカットの生産量・輸出量は韓国の方が大きくなっており、これは情けない限りだ)

1)農業の販売力向上と関連産業育成による地域での付加価値増加ついて
 *2-1は、「①2019年の農業総産出額は8兆8938億円で、北海道が1位で1兆2558億円、2位以下は鹿児島県・茨城県・千葉県・宮崎県・熊本県の順」「②農業競争力に大きな差が生じ、過去5年間で全国1741市区町村のうち6割が産出額増加、4割が減少」「③1960年時点は米どころが上位だったが、米の需要低下で稼げる農業の内訳が一変」「④躍進する九州勢の取り組みは地域ブランドを活用した『売れる農業』」「⑤稲作から施設を使った畜産・園芸への転換を進めた宮崎県などの九州勢が躍り出た」「⑥稼ぐ力を確立した地域が強みを発揮する」「⑦宮崎県では関係者が一丸となった競争力向上の取り組みが進み、県は1994年に『みやざきブランド確立戦略構想』を策定して『作ったものを売る』から『売れるものを作る』を目標にした」等を記載している。

 このうち、⑥については、宮崎県や鹿児島県は1994年頃からやっていたのかもしれないが、私が衆議院議員になった2005年の段階で佐賀県の地元農協や農家を廻った時には、まだ「ブランド戦略」「『作ったものを売る』から『売れるものを作る』発想」はあまりなく、「米が安すぎる」「補助金が欲しい」という話が多かった。そのため、「食料自給率は低いのに・・」と思って自民党の農林部会で問題提議したところ、農水省は「国民が米より小麦製品を多く食べるようになって不得意分野の比重が高くなったから」と答えた。つまり、「国民が米を食べればいいのに」という発想だったし、意思決定権者が男性中心で栄養学の知識に乏しいためか、その発想は今でも残っている。

 私は唖然としながら、製造業の監査・原価計算・経済学で得た知識・経験をフル活用し、i)大規模化による生産性の向上 ii)転作補助金の作成 iii)副産物の活用 iv)農地・水・環境維持のための補助金作成 などを行った。そのうちに、経産省が農業の6次産業化案を出して、第一次産業として原料を作るだけでなく、第二次産業の加工や第三次産業のサービスも組み合わせて地域で付加価値を高めることになり、現在に至っているわけである。

2)ふるさと納税の意義は、地方自治体の財源だけではないこと
 地方公務員も税金で養われているため、「新しいことをして摩擦が生じるよりも現状維持のまま問題を起こさない方がよい」という現状維持型・やる気なしの人が多い。そのため、ふるさと納税で地方の努力を誘発しなければ、都会に集中する税収から地方交付税という形で多くの金を地方に配分し、少ない機関車で多くの客車を引っ張らなければならなくなって大変なのである。

 そのような中、私が提案してできた「ふるさと納税」は、生産年齢人口の多くが都会に出るため税収が増えにくい地方の財源を少し取り戻しただけでなく、地方公務員をやる気にさせて地域ぐるみで優良な産品を作り出すのにも役立った。その理由は、i)地方公務員が頑張れば頑張るほど、目に見えて地方税収が増え ii)都会の消費者が価値あると感じる物を、地方公務員と農林漁業者が直接知ることができ iii)地方に多い農林水産物の価値を知るため、地域ぐるみでそれを高める工夫に繋がり iv)一村一品どころではない地方の製品の発掘・開発が進んだ からである。

 そのふるさと納税は、*2-2-1のように、2020年度の寄付総額が約6,725億円で過去最高になり、嬉しいことだ。「巣ごもり需要」を背景に各地の返礼品を探して楽しむ寄付者が増えたためとのことだが、寄付総額は2019年度の1.4倍に増加し、自治体別の受け入れ額は、1位が宮崎県都城市の135億2,500万円で、2位が北海道紋別市の133億9,300万円であり、これは農業の高付加価値化の努力をしている県と重なっている。

 また、ふるさと納税による2021年度の住民税控除額は約4,311億円で、東京都が参加していないため、最多は横浜市の176億9,500万円で、次は名古屋市の106億4,900万円、大阪市の91億7,600万円の順だった。

 なお、*2-2-2のように、今後は太陽光発電や風力発電などの再エネの普及が進み、電気の約半分は市内産という長崎県五島市のように「原料の安全・安心は当たり前」「島の風と太陽から生まれた電気で製造」という取り組みや福島県楢葉町・愛知県豊田市・大阪府泉佐野市などが提供していた電気の返礼品なども増えると面白い。

3)それでは、見直すべきは何なのか
 このような中、*2-2-3は、「①ふるさと納税による寄付の膨張が止まらない」「②コロナ対策で農水省が始めた農林水産品の販売促進の補助金を使えば返礼率を大幅に高めることができる」「③高所得者ほど返礼品を多く受け取れ税優遇も大きい」「④昨年度の寄付額から換算すると全体で約3千億円の税収が失われたことになる」「⑤コロナ感染が特に広がっている東京などの都市部は、財源の流出で感染対策の費用を賄えない事態になっては困る」「⑥自治体間の財政力格差を是正するなら、今の地方税や地方交付税のあり方が妥当か否かを正面から論じるべき」「⑦ふるさと納税を続けるなら、返礼品をなくすなど抜本的に制度をつくり変えるべき」「⑧見直しの議論は進んでいない」と記載している。

 しかし、①は、努力の賜物であって喜ばしいことであり、②は、東京で大流行している新型コロナによる東京での飲食店閉鎖で行き場を失った原材料の農水産物の販促を農水省が手伝い、これに市民が協力しているということで、高所得者は累進課税で多額の税を支払っており、ふるさと納税の限度額はそのごく一部にすぎないため、③はひがみ・妬みを利用した誹謗中傷である。また、④はどうやって計算するのかわからないが、⑤を含めて、もともと東京には投資が集中しているのに、東京五輪でさらに東京に集中投資した金額と比較すれば小さなものである。

 そして、⑥は、消費税の全額地方税化など考えられる変更はありうるが、だからといって、このままでは都市部に生産年齢人口が集中するのは避けられないため、地方分散の名案を提案して見せるべきである。さらに、⑦⑧は、全貌の見えていない人が、「高所得者への妬み」と「返礼品憎し」で述べた主張であるため、実現すれば改悪になる。

4)特許権・商標権登録の重要性
 高級ブドウ「シャインマスカット」など日本で開発されたブランド品種が、*2-3のように海外流出し、流出先の韓国で輸出の主力となって日本の5倍超の輸出額になったそうだ。また、栽培規模は日本1,200ha、韓国1,800ha、中国5万3,000haと桁違いだそうで、これでは日本のブランド農産物輸出額が減少する。
 
 日本が開発費を支払って開発した品種は日本の財産であるため護るのが当然だが、法規制がされていなかったり、法規制しても実効性のない形で行われていたりすることが多い。ただ、葡萄やイチゴなど、果実を輸出すれば種も同時に輸出され、その種から栽培することが可能なものは流出防止できないため、世界ベースで特許権・商標権を登録しておくことが重要なのである。

(3)再エネによる地方産業の育成


 2021.5.22日経新聞        2021.6.3日経新聞       2021.6.3日経新聞

(図の説明:左図のように、日本でEVにくだらないケチを付けている間に、世界では車載電池の寡占が進み、中国・韓国の企業が善戦している。そして、中央の図のように、確かに電池も進歩しており、リチウムイオン電池の容量も大きくなったが、さらに安心して使えるためには、安価な全固体電池の市場投入が必要だ。また、右図のように、全固体電池をめぐる主なプレーヤーは、自動車会社と電機メーカーである)

  
2021.6.3日経新聞       2021.6.3日経新聞         2021.8.19日経新聞

(図の説明:左図のように、EV電池はより小型に、その他はウェラブルなほど小さく軽くなるそうで楽しみだ。中央の図は、全固体電池の仕組みをリチウムイオン電池と比較したものである。ただし、右図のように、自動車は、EV化だけでなく自動運転化も進んでおり、これらは新しい技術であるため、その気になれば地方への工場誘致や地方企業の育成も可能だろう)

1)気候変動と再エネ
 国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が、2021年8月9日、*3-1-1のように、①産業革命前と比べて世界の気温は2021~2040年に1.5度上昇し ②人間活動の影響は疑う余地がなく ③自然災害を増やす温暖化を抑えるには二酸化炭素排出を実質ゼロにする必要がある と指摘しており、そのとおりだと思う。
 
 これについて、*3-1-2は、④報告書は2011~2020年で1.09度上昇し ⑤極地やシベリアで氷床や永久凍土の融解が報告され ⑥日本では巨大台風・豪雨、世界では異常熱波・大規模山火事が繰り返され ⑦当面続く気温上昇に備えて避難計画の見直し・食料確保等の対応が欠かせなくなり ⑧日本政府は、再エネ活用を模索すしつつ石炭火力の温存や家庭の取り組みに頼る姿勢を見せているが ⑨石炭火力の全廃・ガソリン車の販売禁止といった思い切った政策を早期に打ち出さなければ・・ と記載している。

 このうち、①②③④⑤⑥⑦は、実体験に近いが、⑧のように、日本政府が石炭火力に頼れば、「EVはCO₂削減に貢献しない」などという屁理屈を許してしまうため、⑨は重要なことである。さらに、石炭は輸入しなければならないが、再エネなら国産にすることができ、地方で再エネ発電を行えば地方の所得を増やすことができるのである。

 また、*3-2-1は、⑩日本最大の課題は脱炭素で ⑪環境問題対応が欧州を中心にスタンダード化した中で、日本も外圧で取り組まざるを得なくなったのは主体性がみえない ⑫米国もバイデン政権になって脱炭素に舵を切ったため、日本は外堀を埋められ ⑬2020年10月の菅義偉首相の決断がせめてもの救いだが ⑭約150年前の明治維新から日本は外圧による転換を繰り返し ⑮戦後の政治経済レジームも日本国憲法はじめ殆どが外圧によるもので  ⑯日本は自律的に変わらず、外圧がなければ改革できない ⑰今回の脱炭素を中心とした外圧も日本にとってチャンスとの見方もできる 等と記載している。

 環境問題の国際的認識は、(私の提案で)京都議定書から始まった。にもかかわらず、⑩⑰のとおり、再エネへの変換は日本にとってはプラスなのに、日本が主体性を持って世界をリードすることはできず、まさに⑪⑫⑭⑮⑯のように、欧米の外圧があってはじめて変わるわけである。⑬は、せめてもの救いだが、やはり遅い。つまり、変革は個人の意識と行動から始まるものであるため世代交代すればできるわけではないが、先見の明を持ち早く始めてトップランナーになった国・企業が大きな利益を得、慌ててついていく国・企業には座礁資産が多くなるのである。

2)再エネ由来の電源へ
 経産省は、*3-2-2のように、2030年度の電源構成で再エネの主力化を進める新たなエネルギー基本計画素案を有識者会議に提出したそうだが、未だにCO₂排出量の多い石炭火力や問題の多い原子力への依存を続ける姿勢だそうだ。

 政府が計画を抜本的に見直して脱炭素実現に不可欠な社会・経済の変革を促すことは重要で、それには、エネルギー基本計画に2030年までの石炭火力0、原発0を銘記すべきだ。そうすれば、2030年に向けてやるべきことは明確になり、それは送電網の整備・蓄電池の普及・発電場所の確保・場所にあった発電機の開発・再エネ関連機器の低コス化である。そして、“ベースロード電源”などという概念は廃止し、原発の新増設や建て替えはしないことにするのである。

 日本で「再エネは天候によって発電量が変動するから、“ベースロード電源”が必要だ」などと言ってぐずぐずしている間に、*3-2-3のように、米テスラは日本で送電向け蓄電池を国内相場の約5分の1の価格で販売し、その電池の調達元はEV向けも調達する世界大手の中国寧徳時代新能源科技だそうだ。寧徳時代新能源科技は、テスラと25年末までの新たな電池の供給契約を結び、新電力のグローバルエンジニアリングが北海道電力の送電網にテスラの蓄電池システムを接続して電力の調整弁として機能させるそうである。

 日本でも水素による蓄電方法や電池ができているが、方向が定まらずに右往左往して価格が高止まりしている間に、再エネ由来の利益も海外企業に持っていかれそうになっているわけだ。

3)再エネ由来の燃料へ
イ)水素燃料航空機について
 政府(経産省・国交省・文科省)と関連する民間企業(日航・全日空・川崎重工・三菱重工・IHI・燃料供給会社)が、欧州航空機大手エアバスが2035年までに水素燃料航空機を市場投入すると公表した外圧を受けて、*3-3-1のように、初めて水素を燃料とする航空機の実用化に向けて水素の貯蔵や機体へ注入するための空港施設の整備に向けた検討を始めるそうだが、これも追随型で遅い。

 何故なら、水素はロケットや自動車を動かせる燃料であり、CO₂を排出しないため、水素燃料電池車が出た時に思いついて当たり前だからだ。現在、日本製の航空機は飛んでいないため、水素燃料航空機はゲームチェンジャーになれるところでもあった。

 そして、新しいことをやろうとすると必ず「コストが高い」と言うが、コスト高で競争力がなく生産・販売できなければ、技術も進歩せずに消えていく。また、何であれ最初はコストが高く、大量に生産すれば安くなる筈なのである。

ロ)軽EVについて
 軽EVの開発競争が、*3-3-2のように加速しており、日産・三菱は共同開発車を2022年度前半、ホンダは2024年、スズキは2020年代半ばに市場投入を目指し、ダイハツは開発を検討中だそうだ。「地方の足」である軽に脱炭素・EV化の流れが進むのは当然のことで、その理由は、EVなら近くで発電した安い電力で走ることができ、環境を害することがないからだ。

 ガソリンエンジンを搭載しなくてよいため、軽EVが安くなるのは当然だと私は思うが、日本では国や自治体の補助金を含めた価格が200万円を切ると、走行距離が短くなるそうだ。しかし、中国では、上汽通用五菱汽車が2020年7月に発売した50万円を切る小型EVが爆発的に売れているのである。

 EV先進国となった中国は、*3-3-3のように、百度が「ロボットカー」を発表し、中国自動車大手と共同出資してEVの製造・販売に今後5年間で500億元(約8500億円)を投じるそうで、百度のCEOは「未来の自動車はロボットEVの方向に進化する」と言っている。

ハ)ホンダについて
 企業誘致すると、その企業が支払う住民税・事業税のほかに、その企業に勤める社員の年収に応じて住民税が徴収され、誘致した自治体の財源が増える。しかし、企業誘致には、①生産に有利(土地建物・人件費・水光熱費等のコストが安い) ②販売市場に近い ③質の良い労働力を集めやすい ④その他のインフラが整っている 等の企業にとって有利な条件があるだけでなく、⑤従業員の生活に便利(生活・教育・文化・交通面)である などの条件も比較されることを考慮しなければならない。

 ホンダは、東京本社のほか埼玉県・三重県・熊本県などに製作所があり、埼玉県にある我が家の車はホンダのグレース(HV)だが、ホンダのトルネオ(ガソリン車)から乗り換えようとしていた時、EVが出るのを待っていたのにEVが出ないので、HVを買った経緯がある。

 そのホンダが、*3-3-4のように、2021年度中に狭山完成車工場の四輪車生産を新鋭の寄居完成車工場に集約するそうだが、寄居工場の稼働開始は2013年であるのに、寄居町にホンダ関連で大きな受注を獲得した企業や工場の新増設の話はなく、商業にも目立った経済効果が出ていないそうだ。寄居工場は国内での増産投資が目的だったが、その後、ホンダが国際分業を一段と加速したのは、上の①②③が揃っているためではないのか?

 また、従業員の殆どは工場内の食堂や売店を利用し、狭山工場で勤務していたため狭山市周辺から通勤する人が多く、寄居町で消費する機会はかなり限られるのだそうで、この状況を打開するため、寄居町は今年秋にも狭山市周辺から通う従業員向けに移住・定住を促すツアーを開催したいと考えているそうだ。が、ホンダの工場進出で、従業員の住民税はさほど増えなかったが、法人関係の税が寄居町の財政を潤したのは確かである。

 そのホンダが、*3-3-5のように、中国でEVなどの新エネルギー車を生産増強し、合弁会社を通じて約30億元(約500億円)投資し、広東省広州市の工場を増設して生産能力を年12万台上積みするそうだ。EV・PHVなどの新エネ車専用の新設備の建設面積は約18万6,000m²で、新しい生産設備が稼働すればホンダの中国での自動車生産能力は年161万台となり、現在と比べて約1割増える見通しだそうだが、これは、中国の方が上の①②③が揃っており、④の中のEV推進も積極的に行っているからだろう。

(4)医療・介護による地方産業の育成
1)日本の新型コロナ対応
 *4-1-1は、①政府は新型コロナの入院対象者を重症化リスクの高い中等症・重症者に限り、それ以外は自宅療養を原則とした ②これまでは軽症・無症状の人も原則として宿泊療養させた ③目の届きにくい自宅療養は容体急変への対応が限られる ④中等症でも呼吸不全を起こして酸素投与が必要になる場合もある ⑤自宅療養を基本とするなら患者が安心して療養できる環境が必要 ⑥現状は往診等の在宅医療体制が整っている地域は少ない ⑦入院対象の仕分けは自治体の保健所が担う ⑧宿泊療養施設の拡充や在宅患者を見守る医師・看護師の確保など地域住民の不安を拭う策を講じるのが先 ⑨選択肢を広げるのが政府の務めであり、自粛要請に頼って病床確保を怠ってきた責任は重い と記載している。

 ②については、感染者にとっては行き過ぎた強制の面もあったが、他者に感染させないために必要な措置だった。そのため、退院基準をPCR検査で2度陰性が続いた人として、療養中に軽症者向けの薬を投与し、回復を早めて速やかに退院させればよかったのだが、軽症者向けの薬をいつまでも承認しないという厚労省の不作為があった。また、⑦については、保健所職員が単純な基準で判断するのではなく、医師が患者の全体像を見て判断しなければ医療ミスの起こる可能性が高くなるが、既に起こった医療ミスの責任は保健所がとるつもりなのか?

 また、①③④⑤⑥で、患者が亡くなった場合の医療ミスの責任は、これまで医療制度を軽視し続けてきた厚労省がとるのか、患者を仕分けした保健所がとるのか、それとも政府全体でとるのか? 私は、不作為も含め、政策を作って意思決定してきた人(厚労省及び同専門家会議)が故意または重過失の責任をとるべきだと考える。

 なお、⑧の宿泊療養施設の拡充は昨年の新型コロナ感染の当初から言っており、既にホテル等の既存建物が多い日本で新しい施設を造るのは無駄だが、ホテルを抑えても実際には使われない場合が多く感染防止の本気度が疑われた。また、宿泊療養施設の患者を見守る医師・看護師の確保も最初から言っていたのに未だできておらず、在宅患者を見守る医師・看護師・介護士の確保は慢性疾患の患者を見守るためには必要だが、急性感染症の患者を自宅療養させるのはリスクが高い上に感染拡大に繋がるため常識外れだ。

 従って、⑨の選択肢を広げるのが政府の務めというのは正しいが、それは慢性疾患の場合であり、新型コロナのような感染症は入院やホテル療養などによる隔離を基本とすべきだ。また、自粛要請に頼るのも、最初の3カ月なら仕方がないものの、日本なら国民が自粛している間にすべての準備をすませておくべきであり、できた筈である。

 18世紀末にジェンナーが天然痘ワクチンを開発して世界で天然痘が根絶され、1960年代に日本がポリオの生ワクチンをソビエトから緊急輸入して世界に先駆け1000万人を超える子どもたちに一斉接種してポリオの流行を止めたように、ウイルス性の感染症にはワクチン接種が決定打であることは100年以上も前からわかっていた。

 にもかかわらず、2020年の日本で、*4-1-2のように、⑩ワクチン接種が円滑に進む地域は準備に早く着手した ⑪きめ細かな診療体制も敷かれ医療機関同士や行政との連携が密だった ⑫接種率が高い地域の多くは大病院が少なく、かかりつけ医が患者に目配りしている ⑬地元医師会・大学・行政が連携して役割分担している ⑭こうした連携は一部で全国的には道半ば ⑮患者は軽い病気やケガで大病院を利用するケースが多く、効率的・機動的な医療が妨げられている ⑯接種をきっかけに地方で芽生えた取り組みはコロナ後の医療改革のヒント 等が書かれており、ここでいちいち反論を書くことはしないが、愚かぶりが著しい。

 何故なら、ワクチンの接種は当然のこととして、ワクチンを、i)どう早く作るか ii)どう早く接種するか iii)二重接種等にならないようにどう整理するか を最初から考えておくのが当たり前であり、これを実行したのが欧米・ロシア・中国等で、日本の厚労省及び同専門家会議は多額の税金を使ってワクチンを外国から買いあさることしかできなかったからである。

2)日本における分析と政策立案の欠陥 ← 新型コロナの対応から
 *4-1-2には、⑩ワクチン接種が円滑に進む地域は準備に早く着手した ⑪きめ細かな診療体制も敷かれ、医療機関同士や行政との連携が密だった ⑫接種率が高い地域の多くは大病院が少なく、かかりつけ医が患者に目配りしている ⑬地元医師会・大学・行政が連携し役割分担している ⑭こうした連携は一部で全国的には医療機関の規模に応じた役割分担と連携は道半ば ⑮患者は軽い病気やケガで大病院を利用するケースが多く、効率的・機動的な医療が妨げられている ⑯接種をきっかけに地方で芽生えた取り組みはコロナ後の医療改革のヒント 等が記載されていた。

 このうち、⑩⑪⑬⑭は事実だとしても、⑫については、「接種率が高い地域は、大病院が少ない」のではなく、大病院が少ない地域は地方で、高齢化率が高いため接種率が高いのである。また、高齢者はワクチンの力を知っているためワクチン接種に積極的で、頼れる大病院が少ないことを自覚しているので自助にも熱心なのだ。

 また、⑮については、「軽い病気やケガで大病院を利用してはいけない」と言いたそうだが、「軽い病気やケガ」の定義はどこまでで、それは誰が決めるのか? 私は、患者自身で病気の軽重を決めるのは危険だし、重篤化したりこじらせたりしてから大病院に行っても、治癒するのに時間がかかったり、治癒できなかったりするため、最初が肝心だと考えている。

 さらに、⑯は、新型コロナやワクチン接種という急性感染症を例として、成人病や慢性疾患における医療ネットワークの必要性を論じている点で無理がある。何故なら、急性疾患の場合は、1分でも1秒でも早く対応するのが病気やケガを悪化させず、回復の確率を上げるコツだからだ。

 また、*4-2-1は、政府は⑰感染が急拡大している地域は自宅療養を基本とする新方針を発表し ⑱入院は重症者や重症化のおそれが強い人を対象とし ⑲自宅宿泊療養の新型コロナ患者への往診の診療報酬を大きく拡充して新型コロナ感染者への医療提供体制を強化するよう協力を要請し ⑳地域の診療所が往診やオンライン診療で患者の状況を把握して適切な医療を提供するようお願いし ㉑血液中の酸素飽和度を測定するパルスオキシメーターを配布 としている。

 しかし、⑰~㉑は、診断と治療が終わって急性期を脱し、慢性期に入っている人には有効だが、急性疾患の初診で重症化の恐れがあるか否かは、患者に対面し、検査をし、患者の全体像を把握した上で初めて判断できるもので、保健所が時間をかけて中等症にした人を、(いくら診療報酬を拡充されたとしても)オンライン診療による初診だけで医師が引き受けるのはリスクが高すぎて元が取れないと思う。何故なら、診断ミスによる医療過誤で信用を失えば病院経営に深刻な打撃を与えるからで、それはもちろん、患者のためにもならない。

3)医療ネットワークに組み込むべき往診・訪問看護・訪問介護
 医療ネットワークの要素には、大病院・かかりつけ医・往診・訪問看護ステーション・介護ステーションがあり、1人の患者を例にとれば、病気やケガの発生・治療・療養・リハビリなどの各段階において有機的に連携されていることが望ましい。しかし、現在は、そうなっていないのが課題なのである。

 そのような中、大阪府は、*4-2-2のように、新型コロナ感染者のうち自宅療養者の健康観察を強化するため、訪問看護を府内全域で実施すると発表したそうだ。新型コロナのような感染しやすい急性感染症を自宅で療養するのはいかがなものかと思うが、他の病気で自宅療養する時に往診や訪問看護が必要不可欠なのは間違いない。しかし、訪問看護も、保健所が必要だと判断した患者ではなく、医師が必要だと判断した患者に対して、医療行為の一環として連携して行うべきである。そのため、大病院でもかかりつけ医でも、訪問診療科・訪問看護科・訪問介護科を常設し、検査・治療・療養・リハビリ・栄養指導・生活支援などを各段階で一貫して行うようにすると患者が便利だ。が、この場合は、病院の中にケア・マネージャーが必要だろう。

4)介護保険制度について


     国保連          介護求人       2021.8.21日経新聞

(図の説明:介護保険制度の仕組みは左図のとおりで、所得によって介護保険料の負担額が異なるだけでなく介護費用の負担割合も異なり、これは保険の枠組みから逸脱している。また、40~65歳の第二号被保険者は介護サービスを受けられる病気も限定されているため、サービスの提供における差別があると同時に、介護保険料の徴収年齢にも合理性のない差別がある。また、要介護・要支援・自立の判定は本人の申請に基づいて行われ、中央の図のように、判定を経て決定されるので、自治体の判定に依拠するところが大きい。このような中、右図のように、日経新聞が介護給付費を大きく減らした上位10市町村を掲載しているが、工夫して賢く減らしたのか、単に介護費用を削っただけなのかは要検討だ)

イ)介護給付費の削減について
 日経新聞は省庁の広報機関のような見解を述べることが多いが、*4-3-3も、①介護給付費は2020年度に10兆円に達し、介護保険制度が始まった2000年度の3倍以上に膨らんだ ②持続可能性を高めるには圧縮が急務 ③全国では既に59市町村が削減に成功した ④高齢者1人当たり給付費は保険者2018年度で26万円と制度開始時から11万円強増えた としている。

 しかし、①④は、介護保険制度がスタートした2000年度は、i)介護サービスが充実しておらず ii)介護の担い手も不足しており iii)介護を受ける世代の人に「本来なら家族が介護するべきところ、人様の世話になるなんて」と思う人が少なくなかったため、比較すること自体が無意味なのである。そして、2020年になっても、介護保険料が高い割には、不必要な介護用品に補助を付けている例もあるのに必要なサービスを受けられない人も多く、年齢による介護保険料負担の不公平感もあるため、介護制度は未だ不完全な制度と言える。

 また、②は、自分は介護を担わないと思っている人の発言であり、③は、もともと不十分なサービスを減らすことが適切だったか否かについて、事例毎の検討を要する。

 さらに、*4-3-3は、⑤高知県南国市は保健師・栄養士・理学療法士等が協力して介護予防に取り組み ⑥1人当たり給付費を2001年度の28万円弱から24万円(2018年度)まで減らし ⑦「地域ケア会議」で身体的負担の少ない公営住宅紹介等の個別支援プランを策定し、食事や運動も精緻に計画・検証し ⑧多くの事例で自立生活が維持できるようになった ⑨沖縄県名護市は給付増の要因になりやすい施設入所を生活に支障なく抑制しようと配食サービスの普及に力を注ぎ ⑩北海道鶴居村・天塩町はクラブを作って運動を促し、糖尿病や肥満の人に個別指導をして機能低下を防ぎ、高齢者1人当たりの給付費を各36.7%、25.3%減らした としている。

 しかし、⑤⑩は、健康寿命が延びるのでよいと思うが、⑥のように一時的に給付費が減っても最後は介護を受けて亡くなるため、1人当たり給付費は数年~十数年後には元に戻るか増えると思われ、科学的な継続調査と結果の公表が望まれる。また、⑦の身体的負担の少ない公営住宅紹介もGoodだと思うが、今後は国として身体的負担をかけないバリアフリー住宅の建築基準を作ればさらに効果的だ。また、⑨の配食サービスや⑩の栄養指導もよいが、スーパーなどで美味しくて栄養バランスのよい薄味の惣菜や弁当を売っていれば、自立した自宅生活がしやすい。

 このほか、セコム等が見守りサービスを実施しているが、生活支援の便利屋機能を加えると、介護保険の生活支援サービスを受けずに自宅生活のできる人が増えると思う。

ロ)市民が見た介護保険の20年とこれから
 介護保険制度創設は、私が、1995年頃、さつき会(東大女子卒業生の同窓会)が発行したエッセイ集に載っていた共働き先輩女性の介護での苦労話を読み、「明日は我が身」と身につまされて「現役時代によい制度を作っておかなければ、退職後にひどい目に合う」と実感し、メーリングリストでさつき会の会員に呼びかけつつ、通産省(当時)の人に言って始まったものだ。

 その介護保険制度について、2020年4月29日、西日本新聞は社説で、*4-3-2のように、①2000年4月に「介護の社会化」を掲げて始まった介護保険制度で家族頼りだった介護は民間サービスが担うようになり ②社会的入院の解消を促し、「老親の世話は同居する女性の役割」という社会通念を拭い去るのに貢献 ③この20年で高齢化がさらに進み要介護・要支援認定者と必要な費用が3倍に増えた ④介護サービス需要が急速に伸び、制度の維持が困難に ⑤大変な仕事の割に介護職員の平均給与が全産業平均を大きく下回って現場の人手不足が深刻 ⑥外国人材への期待も高いが新在留資格「特定技能」による受け入れは進んでいない ⑦団塊世代が75歳以上の後期高齢者になる2025年には約34万人の介護人材不足が見込まれる としている。

 また、⑧国は財政逼迫を受けて負担増と給付減を行い ⑨介護の必要性が低いとされる利用者サービスを全国一律の介護保険から切り離す動きが始まって要支援者の訪問介護と通所介護は既に市町村に移管され ⑩要介護1、2の一部サービス移管案も浮上しており ⑪急な負担増は利用抑制を招いて生活の質や健康への悪影響があり ⑫市町村への事業移管は居住地によるサービス格差の懸念が大きく ⑬介護保険の財源は保険料と公費(税金)で構成されるので、公費負担アップや介護保険加入年齢の40歳以下への引き下げも要検討 としている。

 このうち、①②はそのとおりだが、③の高齢化の進展は創設当時からわかっていた。また、介護を受ける人が増えて介護を外部化することに対する違和感が減ったため、実際の要介護・要支援者のうち認定される人の割合も増えたと思う。そして、④の介護サービス需要が急速に伸びたのは本当に必要な実需だったからにほかならず、工夫もせずに「制度の維持が困難になった」と言うのはお役所仕事そのものである。また、同じサービスの給付に対して負担率が異なるのは、保険の枠組みから外れてもいる。

 ⑤も何度も聞いたが、全員を同じ給与にする必要はなく、看護師や介護士の資格があれば相応の資格手当や技術加算分を支払い、管理職には管理職手当を支払い、日本語がよくわかる人には日本語手当を支払うなどして、⑥の外国人も十分活用しながら、サービスを削ることなく、介護の能力に応じた給料を支払えば、⑦の介護人材不足は解消するだろう。また、そもそも介護保険制度は、⑬の介護保険制度への加入を働く人全員(40歳以下も)にすべきである。

 さらに、国(特に厚労省)が、(新型コロナ対策を見てもわかるように不要なことをして膨大な無駄遣いをしながら)⑧のように“財政逼迫”として介護制度の負担増・給付減を行ったのは、⑪のように、介護を受ける人のことを全く考えず、介護サービスという今後は世界で膨大な産業となるサービスの芽を摘んでいる。また、⑨⑩⑫のように、要支援や要介護1、2を介護の必要性が低いとして全国一律の介護保険制度から切り離すと、各地方自治体はこれまでの国策の結果として生産年齢人口と高齢者人口の比率が異なるため、格差が生じて不公平になるのだ。

 「市民が見た介護保険の20年」と題し、*4-3-1は、⑭2005年の改正で要介護者への給付とは別に要支援者への予防給付ができた ⑮2014年の改正では、要支援者のホームヘルプとデイサービスが予防給付から地域支援事業に移され、特別養護老人ホームの利用は要介護3以上となった ⑯利用者に選択権があるとして始まり、介護が必要と認定されれば給付が保障されていたのに、いつの間にか予防重視型になった ⑰2020年の要支援・要介護認定者669万人のうちサービス利用者は515万人で約4分の1は介護制度を利用していない ⑱厚労省は家族で対応していると説明するが、自己負担を払えず利用できない人が一定数いる ⑲ホームヘルプが抑制され、同居家族がいると生活援助を利用できないという解釈が市町村で広がった ⑳ホームヘルプは高齢者の自立支援に資することがないと批判を浴びてヘルパーが減った ㉑厚労省は地域包括ケアを掲げるが、ヘルパーが減ってどうやって地域での暮らしを支えるのか疑問 ㉒要支援者が要介護認定を受けても地域支援事業のデイサービス等を引き続き利用できるよう見直され、要介護認定を受けても給付の対象にしなくて良い仕組みになった ㉓予防給付や地域支援事業を拡大する方向性で制度を維持しようとするのはおかしい としている。

 私も、⑮のように、要支援者のホームヘルプとデイサービスを地域支援事業に移して特別養護老人ホームの利用は要介護3以上に限定し、㉒のように、要介護認定を受けても地域支援事業を利用できるようにすれば、国は介護費用を節約できるが、介護の必要な人が介護を受けられない事態が発生していると思う。また、⑰のように、高い介護保険料を支払いながら介護費用を支払えずに介護を受けていない人もいるだろう。これに対し、⑱のように、厚労省が「家族で対応している」と説明するのは、昔返りで介護保険制度の意図を理解していない。

 また、⑭⑯のように、介護と支援のどちらを選択するかを高齢者が選択できるのではなく、要支援者のホームヘルプとデイサービスを地域支援事業に移し、⑲のように、介護費用を節約したい地方自治体が「同居家族がいると生活援助を利用できない」と解釈すれば、同居する女性に介護を強いることとなり、介護保険制度の意味を失わせる。そうなると、⑳のように、ヘルパーが減るのも当然で、㉑の厚労省の言う地域包括ケアは、「女性を中心とする地域ボランティアがやれ」ということになり、介護を無償労働化している点で介護を担当する人に極めて失礼だ。

 従って、㉓は、予防給付や地域支援事業の一部は本来の介護ではないため、その費用は介護保険制度から拠出するのではなく、税金から別に予算を出すべきであろう。

5)診療は、ITやオンラインを使いさえすれば進んでいるわけではないこと
 厚労省は、*4-4のように、新型コロナで自宅やホテルで療養する人に対し、電話やオンラインで診療した場合の診療報酬を2倍超に引き上げると自治体に通知したそうだが、自宅にいる患者に電話やオンラインで初診すれば、検査はできず、患者の様子も本人の報告を聞くだけであるため、何もしないよりはいいという程度に終わる。

 その報酬が2,140円だったのを4,640円にしたとしても、初診の診断ミスのリスクには見合わないため、急性感染症に遠隔診療を促すのは賛成しない。重要なのは、時と場合に応じてどういう内容の検査・診察をして判断したかであるため、「この際、オンラインを使った遠隔診療を進めよう」という考えで遠隔診療を進めるのは慎むべきである。

(5)国と地方自治体の財源

   
2020.12.15時事 2020.12.21時事   2020.6.10日経新聞   栗原税理士事務所
                     *5-1より
(図の説明:1番左の図のように、2000~2020年度の日本全体の歳入は40~60兆円の間であり、2000~2019年度の歳出は80~100兆円程度だったが、2020年度は新型コロナ対策として約176兆円もの効率の悪い予算を組んだため、国債発行額が40兆円から約113兆円に跳ね上がった。そして、左から2番目の図のように、2021年度当初予算における歳出も過去最高の約107兆円で、このうち税収で賄われるのは約57兆円、税外収入で賄われるのは約6兆円にすぎず、残りの約44兆円は新規国債発行によるものだ。なお、地方自治体の歳入の一部となる地方交付税交付金は、国の2021年度歳出予算のうち約16兆円だ。右から2番目の図は、地方自治体の2018年度決算で、歳入は地方税40%、地方交付税19%、その他16%などである。1番右の図は、税目別の国税と地方税の振り分けだ)

1)国の財源のうち税外収入
 上の左から2番目の図の歳入構造には、①税収 ②税外収入 ③新規国債発行がある。このうち、①の税収を増やすためには、i)国民や法人の稼ぎを増やす ii)既存の税の税率を上げる iii)新しい税目を作る などの方法があるが、ii)は何の工夫もいらないものの景気を押し下げる。また、i)は、付加価値を上げたり、販売力を伸ばしたり、生産性を上げたりする根本的な解決法もあるが、金融緩和による通貨量増加だけでは景気のカンフル剤にしかならず、物価が上がって購買力平価が落ちれば国民生活は貧しくなる。さらに、iii)は、環境に悪い行動に環境税を課し、環境によい行動の補助金財源にすれば、財政中立で環境改善への二重のインセンティブとなる。

 ③の新規国債発行については、国の責任で生じた過去の年金積立金不足を新規国債発行で賄うのは公平・公正の観点から必要だが、景気対策として行われる無駄遣いを国債で賄えば、その国債を返還する世代に不当な負担を押し付けることになる。ただし、地域間送電線・道路の建設等のように次世代への負債と資産がセットで残るものならば、負債だけが引き継がれるわけではないため世代間の公平・公正を害しない。しかし、その金額を正確に把握するためには、国への複式簿記による公会計制度の導入、迅速な会計処理、その年度の決算に基づく次年度の予算審議が必要で、これは民間企業なら必ず行っているもので、多くの国で採用しているものでもある。

 なお、仕方なく発行された国債であったとしても、令和2年度末に906兆円と見込まれる公債発行額は令和2年度税収64兆円の14年分にあたるため、とても税収から返済できるものではない(https://www.mof.go.jp/policy/budget/budger_workflow/budget/fy2020/seifuan2019/04.pdf 参照)。そのため、国民に負担をかけずに国債を賢く返済するには、②の税外収入が必要不可欠で、税外収入は、これまで開発してこなかっただけに潜在的資源が多いのである。

 例えば、*5-1-1のように、日本は陸地及び排他的経済水域ともに地熱資源が豊富だ。しかし、経産省が地熱発電所を増やすため国立公園内などに適地を見つける調査を本格化するといっても、2030年度に地熱発電を1%に引き上げるという小さな目標だ。環境省が自然環境や景観を損なうという理由で開発に慎重だったとのことだが、原発や化石燃料の方が自然への悪影響や景観悪化はずっと大きいため言い訳にすぎず、次期エネルギー基本計画には「地熱資源の活用による国の税外収入の増加」を明確に記載すべきである。

2)国から地方自治体への国庫支出金、地方自治体の税外収入
イ)地方自治体の再エネ発電
 *5-1-1の地熱発電をはじめとする再エネを使った売電収入は、地方自治体の資産を使って行えばその地方自治体の税外収入になる。そのため、地方自治体も、これまで活用してこなかった再エネ発電で安価な電力を作り出し、その自治体における光熱費を下げて、農業や製造業を有利にする方法がある。この時、頑張って黒字化した地方自治体には、右から2番目の図の地方交付税が減らされるのがマイナスのインセンティブにはなるが、もらえる地方交付税の金額を大きく上回る稼ぎがあれば地方自治体にとっても国にとっても役立つことは言うまでもない。

ロ)地方自治体のごみ発電
 地方自治体は、“邪魔者”であるゴミを集めて処分しているつもりだと思うが、ゴミの収集がこれだけ整然と行われる組織はそれ自体が財産である。その理由は、ゴミは、分別とリサイクルで利用可能な資産になるからだ。

 その1例は、*5-3-1のごみを燃やした熱を利用してタービンを回して発電する「ごみ発電」で、日立造船など上位3社の累計受注件数が5年で倍増したそうだ。世界には日本以外にもごみ活用の先進国があり、再エネ比率が6割を超えるスウェーデンは、国内で発生するごみの約半分を焼却して発電に利用し、余熱も暖房用などで家庭に供給し、肥料にも使うため自国のごみだけでは足らずに近隣諸国からごみを輸入しているそうだ。そして、今後は経済発展に伴って、アジアが市場を牽引する見通しとのことである。

 そのような中、*5-3-2は、①全国のごみ処理費は年間2兆円を超え、10年前と比べて1割増えた ②人口減に伴う担い手不足の懸念も強まる ③財政も厳しさを増す中、持続可能な地域を築くためには排出削減への戦略的施策が欠かせない などとしている。

 しかし、ゴミ処理は必要不可欠なサービスであるため無料である必要はなく、ゴミ袋を有料化することによってゴミ収集費を回収することが可能で、そうすると必然的に不要なゴミは減る。しかし、ゴミの分別がややこしすぎるのは生活に不便を強いるため、簡単な分別で処理できる包装資材の開発などの川上改革を行い、異なる色の有料ゴミ袋を使うなどして分別も簡便にできるようにした方がよい。

 こうすれば、①は、年間2兆円のごみ処理費は有料化で回収した上、地方自治体はごみ発電や温水供給による税外収入を得ることができる。また、②は、自動化や移民の受け入れを考えることなく言うべきではない。さらに、③は、工夫もなく、「環境保護=国民に我慢を強いること」というイメージを作っている点で愚かな発想だ。

 そのような中、川上村は可燃ごみの4割を占める生ごみの回収を一切せず、各家庭で堆肥化することによって全国の自治体で一番排出量を少なくしたそうだが、これは庭や畑が広くない地域では不潔になるため無理なことである。

3)地方自治体の歳出削減
 大阪市は、*5-4のように、市役所本庁舎で使用する電力を2021年12月から太陽光やバイオマス発電など再生エネ由来100%の再エネに切り替えるそうだ。また、大阪府では2021年4月から既に本庁舎などで使用する電力を再エネ由来100%の調達に切り替えており、日立造船がバイオマス発電による電力を供給しているとのことである。

 が、使用する電力を地方自治体自身で作れれば、光熱費が0になってSDGsにも役立ち、発電できる場所は考えれば少なくない筈だ。

4)地方自治体の歳入増加
 上の右から2番目の図及び*5-2-1のように、2018年度決算における地方自治体の歳入は、①地方税40.2% ②地方交付税19.1% ③国庫支出金14.7% ④地方債10.4% ⑤その他15.6%で、自前の財源だけで財政運営ができている自治体は少ない。

 しかし、地方自治体もIT化を進めれば人件費削減が可能な筈だし、新型コロナ対策も国と同様に人流抑制を繰り返して経済を止めるのではない方法もあった。そして、その場合は、家計や企業の緊急支援額を低く抑えることができ、財源不足が大きくなることはなかったのである。

 なお、*5-2-2のように、⑥新型コロナ感染拡大は人口の流れに影響を与え ⑦2020年の1年間で大都市から地方への移動が鮮明になって ⑧東京、関西、名古屋の三大都市圏の人口の合計は2013年の調査開始以来初めて減少し ⑨大都市から地方に人口が流れる傾向があり ⑩人口増の多い町村は子ども医療費無償化・幼小中一貫校設置・待機児童0・住宅地整備・企業誘致などの環境整備が注目される そうだ。

 住民税・事業税・固定資産税などの地方自治体の歳入を増やすためには、企業や生産年齢人口の増加が必要であるため、移住してもらうのがBestで、そのための努力は、上の⑩に代表されるだろう。しかし、人口が分散すれば、著しく狭くて高い住居や過度に節水した不潔な水道や長い行列に悩まされることもなく、自然に近い場所で居住することが可能なのである。

・・参考資料・・
<地方産業の高度化―その1:農林漁業の高付加価値化>
*1-1-1:https://digital.asahi.com/articles/ASN6V721GN6VTIPE00P.html (朝日新聞 2020年6月26日) カイコからコロナワクチン? 九大が候補物質の開発成功
 九州大学は26日、昆虫のカイコを使い、新型コロナウイルスワクチンの候補となるたんぱく質を開発することに成功したと発表した。「昆虫工場」による大量生産で、数千円で接種できるワクチンの臨床研究開始を来年度にもめざす。九大は世界的なカイコの研究機関として知られる。カイコは遺伝子操作したウイルスを注射すれば狙ったたんぱく質を体内で生産できることから、このたんぱく質を使って、新興の感染症を想定したワクチン開発技術を研究してきた。九大は1月に公開された新型コロナウイルスの遺伝情報をもとに、ウイルスが人間の細胞に感染するための突起状の「スパイクたんぱく質」に着目。大学で飼育するカイコで、このたんぱく質が生成できることを確認したという。別のコロナウイルスの研究では、スパイクたんぱく質を注射したマウスの免疫反応で体内にできた「抗体」で、ウイルスの感染を予防できる結果がすでに得られている。九大は新型コロナでもマウスを使った実験を年内にも終わらせる方針。製薬企業と連携し、早ければ来年度にも人間での研究を始める意向だ。26日の記者会見で日下部宜宏教授(昆虫ゲノム科学)は「ワクチン開発は世界中で進むが、スピードよりも、途上国も含めて接種できる安価なワクチンを、安定して生産することをめざしたい」と話した。また、九大の西田基宏教授(薬理学)らは26日、すでに使われている約1200種類の薬の中から、新型コロナの重症化防止も期待できる薬を3種類、発見できたと発表した。新型コロナの患者にも見られる呼吸不全や血管の炎症などの治療薬のため、早期の投与開始が見込めるとして「年内にも実用化につなげたい」と説明している。

*1-1-2:https://www.nippon.com/ja/features/c00508/ (Nippon.com 2012.7.9) [農業生物資源研究所]遺伝子組換えカイコで医薬開発に挑戦
 紀元前から続く養蚕の歴史に新しい一ページが刻まれそうだ。遺伝子組換えカイコを使って新しい絹や医薬品の原料を作る研究が進んでいる。その先端を行く農業生物資源研究所(茨城県つくば市)を訪ねてみた。
●カイコが持つタンパク質生成の高い能力に注目
 独立行政法人農業生物資源研究所(生物研)は、農業分野におけるバイオテクノロジーの中核機関として2001年に設立された。カイコが持つタンパク質生成の高度な能力に着目し、カイコが従来作る種類以外のタンパク質を作らせる研究を続けている。すでに、遺伝子組換えカイコ由来のタンパク質を使った化粧品が市販されているほか、将来的には安全で安価な医薬品の製造も視野に入れている。研究の詳細を紹介する前に、まずはカイコについて解説しておきたい。養蚕は紀元前15世紀ごろが起源とされる。日本では1~2世紀ごろに始まり、1909年には生糸生産高が世界一になったが、化学繊維の普及や後継者不足などによって徐々に衰退。現在は中国やインド、タイが主な産地である。日本国内には遺伝資源も含めて約600種類のカイコが存在するが、いずれも成虫(カイコガ)になっても飛ぶことができない。長い歴史のなかで養蚕に適するように品種改良、つまり“家畜化”されたためだが、これが遺伝子組換えカイコを産業化する際のメリットになる。遺伝子組換え生物はカルタヘナ法(※1)の対象で、厳密に管理しなければならない。カイコの場合、飛んで逃げる心配がないため管理しやすいのである。カイコは孵化(ふか)からおよそ1カ月後に繭(まゆ)を作る。その繭の原料となるのがタンパク質。タンパク質は体内の絹糸腺という器官で作られるが、絹糸腺内の部位によって、作られる種類は異なる。後部絹糸腺ではフィブロインというタンパク質が、中部絹糸腺ではセリシンというタンパク質がそれぞれ作られる。カイコが作り出す糸は、糊状のセリシンが繊維状のフィブロインを包み込んだ格好となっている。おおよそ、セリシン25%、フィブロイン75%の割合だ。糊状のセシリンは水溶性なので、繭をぐらぐらと湯で煮立たせると溶出し、繊維状のフィブロインだけを絹糸(シルク)として取り出すことができる。
●何世代も機能を受け継げる遺伝子組換え技術
さて、遺伝子組換えカイコの研究だが、遺伝子組換えカイコを作り出す際には、2つのDNAをカイコの卵に注射する。1つ目は、トランスポゾンというDNA上を移動できる遺伝子に、特定のタンパク質をつくるための外来遺伝子を組み込んだベクターDNA(※2)。もう1つは転移を促す酵素を組み込んだヘルパーDNA。これらを注射した卵を孵化させて、得られた次世代の個体群をスクリーニングすれば、利用可能な遺伝子組換えカイコだけを得ることができる。「卵の中でも生殖細胞に分化する部分を狙ってDNAを導入することで、特定の能力を何世代にもわたって引き継ぐことができます。この技術によって遺伝子組換えカイコの量産が可能になりました」と生物研主任研究員の内野恵郎氏は話す。生物研は9年前、外来遺伝子の性質が現れる場所をコントロールする技術も確立した。繊維状のフィブロインを作る後部絹糸腺で発現させると、シルクの改質が可能となり、生物研では蛍光色のシルクの開発に成功している。一方、糊状のセリシンを作る中部絹糸腺で発現させると、糊の中に狙ったタンパク質を作ることができる。セリシンは水に溶けるので、タンパク質の抽出もたやすい。生物研遺伝子組換えセンター長の町井博明氏は、「当研究所では生成するタンパク質の98%以上がセリシンという品種も開発。それと組み合わせればより多くのタンパク質が得られる」と技術の有効性を強調する。生物研は、群馬県蚕糸技術センター、前橋遺伝子組換えカイコ飼育組合、民間企業などと連携しながら研究を進めている。町井氏は「日本の養蚕業は厳しい状況にあるが、遺伝子組換えカイコが養蚕業の再活性化につながるかもしれない」と期待を寄せる。
●化粧品から将来は医薬品開発へ
 群馬県藤岡市にある株式会社免疫生物研究所では、生物研から技術提供を受けて、ヒト型コラーゲン(※3)を生成する遺伝子組換えカイコを作り出した。すでにそのコラーゲンを化粧品などに製品化している。特に苦労したのはコラーゲンの抽出だった。1つの繭から生成されるコラーゲンは約10mg。これを抽出するためには繭の成分を水に溶かし、こして繊維質を除去しなければならない。しかし、糊状のセリシンがフィルターの目に詰まってしまい、思うようにこすことができないという問題が残った。免疫生物研究所製造・商品開発部蛋白工学室長の冨田正浩氏はさまざまな工夫を重ね、最終的に10mgのコラーゲンから6~7mgを回収する手法を編み出した。免疫生物研究所はすでにヒト型コラーゲンを化粧品などに使用している。一般に化粧品には魚由来のコラーゲンを使ったものが多く、なかにはアレルギー反応を示す人がいるが、ヒト型コラーゲンなら問題ない。しかも、シルクや繭のイメージは化粧品のイメージアップにつながり、商業的にもメリットがありそうだ。「ゆくゆくは医薬品や医薬部外品を開発したいと考えています。たとえば、抗体を使った診断薬を開発する場合、細胞培養やマウスの体内で抗体を生産させるプロセスがあります。でも、動物愛護の観点からマウスの使用は減らしたいところですし、細胞培養にコストがかかって製品価格が上がるのも問題です。抗体はタンパク質の一種ですから、遺伝子組換えカイコで診断薬の原料となる抗体を作ることができれば、こうした問題はすべて解決できます。安全で安価な医薬品を作れる可能性があるのです」(冨田氏)。カイコが作る絹糸は、絹織物の美しさと滑らかな手触りで人々を魅了してきた。今後は、遺伝子組換えカイコが作るタンパク質が安全で安価な医薬品を生み出し、人々の健康に貢献するのかもしれない。

*1-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20210808&ng=DGKKZO74574720W1A800C2MY1000 (日経新聞 2021.8.8) 米粒にコレラワクチン成分 東大など、遺伝子操作のイネ栽培
 東京大学の清野宏特任教授と幸義和特任研究員らはコメからできたワクチンの安全性をヒトで確かめた。米粒の中にワクチンの成分が入っており、すりつぶして飲むだけでコレラの毒素による下痢症状を防ぐ。コメに成分を封じ込めた結果、温度や湿気の影響を抑え、冷やさなくても長期間の保存ができる。コレラがまん延する発展途上国などでは冷蔵管理が難しく、利用しやすいワクチンの開発が待たれていた。ワクチンは千葉大学などと共同で開発した。コレラは東南アジアやアフリカなどの発展途上国で多く発生し、発症すると下痢の症状が出る。これまでのワクチンは冷蔵保存が必要だった。研究チームはコレラの毒素を構成する「部品」から、ワクチンの成分に使える無害な部分の遺伝子をイネに組み込んだ。この部品はコメがもつ天然のカプセルにたまる。コメの粉末を飲むと、ワクチンの成分が腸に届いて免疫をつくる。これまでにマウスやブタ、サルなどで免疫ができるのを確認した。コメであってもワクチン候補にあたるため、今回は健康な大人の男性60人を対象に医師主導治験を実施した。ワクチンを飲んだ人の健康に問題はなく、血清を調べると40~75%の人でコレラの毒素に立ち向かう抗体ができていた。飲む量が増えるにつれて抗体の量も増えていた。今後は有効性を慎重に確かめるほか、遺伝子を組み換えたイネを大規模に栽培できる体制づくりなどの課題を乗り越えたいという。研究チームによると、理論上はあらゆる感染症のワクチンが同じ方法で開発できるという。常温で保存でき、飲むだけで済めば利点は大きい。

*1-3-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20210802&ng=DGKKZO74401590S1A800C2MM0000 (日経新聞 2021.8.2) 住宅、木材活用に知恵 環境にも配慮、住友不動産やケイアイスター
 不動産各社が住宅で木材を一段と活用する動きが目立ってきた。住友不動産は戸建てのリフォーム事業で従来は廃棄していた木材を再利用する取り組みを始めた。戸建て分譲住宅を手がけるケイアイスター不動産は注文住宅の国産材比率を100%に引き上げ、輸入材を使う場合に比べて環境負荷を減らす。改築や新築時の二酸化炭素(CO2)排出量の削減などにつながる環境配慮の姿勢を消費者にアピールして、需要取り込みを狙う。住友不はこのほどリフォームサービス「新築そっくりさん」で木材の再利用を始めた。従来、柱などの主要な構造材以外に使用している木材はリフォーム時に廃棄処分していたが、品質を確認のうえ顧客の同意を得られれば壁の内側の下地材などとして再利用する。同社のリフォームは建て替えるよりも廃棄物の排出量が半分で済む特徴がある。木材の再利用を進めることで改築時の廃棄物をさらに減らせる。新たな資材の調達も減らせるため、資材輸送時のCO2排出量も削減できると見込む。同社は年1万棟の大規模リフォームを手掛けており、環境配慮のサービスとしても顧客にアピールしていく考えだ。ケイアイスター不動産は平屋建ての注文住宅「IKI」について、4月以降の契約分から使用する木材を全て国産材に切り替えた。これまでも全体の約8割を国産材としていたが、新たに構造材の梁(はり)もすべて国産木材で建てられるようにした。同社によると、木造の戸建て住宅は鉄筋コンクリート(RC)造と比べ建築時に排出するCO2を約29トン削減できる。1世帯が排出する約7年間分のCO2に相当する。輸入材を使用するよりも輸送時の環境負荷も減らせる。全て欧州産の木材を使って建てた場合は国産材を使った場合に比べて約8.5倍のCO2が発生するとの試算もある。建屋の価格は17坪(約56平方メートル)で599万円から。今後3年間で500棟の受注を目指す考えだ。三井ホームは5階建て程度の中層マンションの木造化を進める。第1号物件となる賃貸マンションを東京都稲城市で建設している。強度や防音性などを高めてマンションを木造化できる新しい技術を開発した。建設時のCO2排出量もRC造の半分程度に減らせる見込みだ。政府は4月、2030年度の温暖化ガス排出量を13年度比で46%以上減らす目標を決めた。住宅部門でも省エネルギー性能の向上や太陽光発電など再生可能エネルギーの導入などを加速する必要があり、コンクリートに比べて断熱性の高い木材の利用が住宅で一段と進む可能性がある。ウッドショックが懸念されていることもあり、輸入材よりも環境負荷を低減できる国産材への注目も高まる。三菱地所など建設・不動産7社も国産材の需要を掘り起こす取り組みを始めている。環境に配慮した住宅は消費者からの支持も得やすいとみられ、今後も不動産各社で木材活用が進みそうだ。

*1-3-2:https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC27B9W0X20C21A5000000/?n_cid=NMAIL006_20210812_H (日経新聞 2021年8月12日) 3Dプリンター、10日で住宅建築 臓器も代替肉も製造
 戸建て住宅がわずか10日で完成――。米スタートアップが昨年から住宅の建築に活用しているのは3Dプリンターだ。従来は樹脂や金属加工に使われてきた3Dプリンターは技術開発が進み、移植用臓器や代替肉にも活用分野が拡大。短期間で人手がかからないものづくりを実現し、イノベーションも生み出すとの期待が膨らむ。米カリフォルニア州の砂漠地帯に位置するランチョミラージュ。この地域の一角に、2021年中に計15戸の「印刷」された戸建て住宅が建つ計画が動き出す。手がけるのは米建築スタートアップ、マイティ・ビルディングズだ。同社は自社工場で3Dプリンターで住宅を製造、そのまま大型トレーラーで運んで施工するビジネスモデルだ。3Dプリンターには事前に図面データを入力する。データ通りにノズルを動かし、紫外線を当てるとすぐに硬くなる特殊な建築素材を噴射して積み重ねる。例えば、天井部分の工程では柱やパネルを設置した後、上から覆うように建築素材を噴出して形成していく。固まった層は外壁や床材などになるため、大がかりな現場工事は要らない。一人暮らしなどに向く小型住宅なら、10日程度で製造から施工までできるという。国内大手住宅メーカーによると、戸建て住宅の建築は2カ月ほどかかる場合が一般的。同社のスラバ・ソロニーツィン最高経営責任者(CEO)は「従来の建築工法と比べて費用は30%削減できる」と自信を見せる。同社は昨年から同州で住宅を供給しており、日本市場への参入に向けた検討も始めた。3Dプリンターを使った建築は世界で広がっている。オランダの3Dプリンターメーカー、サイビ・コンストラクションは世界で10台以上の納入実績を持つ。同社は数分で固まる素材も開発。これらを使ってアラブ首長国連邦やオランダなどで住宅が建てられている。国内大手も動く。大林組は3Dプリンターで高さ2.5メートル、幅7メートルの大型ベンチを試作。早ければ22年にも3Dプリンターの商業化を目指す。竹中工務店もオランダのスタートアップと共同で3Dプリンター技術の検証を進め、23年以降にイベント施設などの建築向けに導入する考えだ。企業による3Dプリンターの活用はこれまで、樹脂や金属の成型が中心だった。金型成型などの既存技術と比べて短期間で製造でき、少量多品種生産にも対応できることから試作品づくりなどに使われている。自由なデザイン設計がしやすく、製造に携わる人手を減らせることも利点だ。三菱重工業は国産ロケット「H3」でエンジン噴出口部品の加工に3Dプリンターを採用。100億円程度とされる打ち上げコストの半減をめざす。調査会社の富士経済(東京・中央)によると、樹脂や金属を素材とする世界の3Dプリンター市場は19年の1186億円から25年は1833億円と5割以上伸びる。デロイトトーマツグループの入江洋輔氏は「最近では技術開発が進んで3Dプリンターで加工できる素材などが増え、印刷速度も上がってきた」と指摘する。単なるものづくりの代替手段にとどまらず、イノベーションを生み出す役割も3Dプリンターが担う。その一例が再生医療だ。医療スタートアップのサイフューズ(東京・文京)が独自に開発した3Dプリンターは、臓器に疾患がある患者から採取した細胞を培養し、患者専用の臓器を製造する。3Dプリンターで細胞を剣山に刺していき、次第に細胞同士がくっついて固まることで数週間で臓器が完成する。25年度にも移植手術で利用できるようにしたい考えだ。臓器は患者の細胞からつくるため、人工臓器と比べ移植後に感染症や拒絶反応リスクが生じにくい。まず血管や骨軟骨などで臨床試験に入った。同社の三條真弘氏は「移植可能な臓器をつくるためには3Dプリンター技術が不可欠だ」と話す。食品業界ではイスラエルのリディファイン・ミートが3Dプリンターで代替肉によるステーキなどを製造する技術を開発した。植物由来の素材をプリンターのノズルで噴射して積み重ねて製造。アジア市場ではハンバーガーなどの製品群を22年に提供する方針だ。3Dプリンターはデザインが複雑な構造物や、細胞を培養した臓器など特殊な用途で強みを発揮する。一方、大量生産には金型成型の方が適する場合もある。3Dプリンターが得意な分野をいかに見いだして使いこなすか、巧拙が問われる。
●人手不足緩和へ導入
 人手がかからず短期間でものづくりができる3Dプリンターの活用が広がれば、日本の産業界が陥っている慢性的な人手不足の緩和につながる。特に建設業界は人材の高齢化が進む一方、3K(きつい、汚い、危険)のイメージから若者は就業を避けがちだ。労働政策研究・研修機構が2019年に公表した推計では、鉱業・建設業の就業者が17年の493万人から40年に300万人未満に落ち込む。人手不足に苦慮する建設業界では近年、部材加工や施工の一部でロボット導入が相次ぐ。そんな中、住宅をまるごと自動で造ってしまう3Dプリンターの活用はさらに先を行く取り組みだ。みずほリサーチ&テクノロジーズの岩崎拓也氏は「競争力維持のため、国内産業は3Dプリンターの活用領域を見極めて構造転換する必要がある」と指摘する。課題もある。日本の建設業界は災害が多いことなどを背景に法規制が厳しく、3Dプリンターによる大規模な住宅の建築は事実上難しい。柱など住宅の主要な構造部材は日本産業規格(JIS)などの規格・基準に沿わないと使えず、個別に認定を受ける必要がある。デロイトトーマツグループの入江氏は「日本企業は品質へのこだわりが高く、量産への活用には抵抗もある」とみる。欧州では3Dプリンターの製造受託サービスが普及する一方、「自前主義」が強い日本では同様のサービスが少ないことも普及の壁となる。人手不足や規制、過剰品質など3Dプリンター導入の利点や普及に向けた課題は、日本の産業界が直面する問題そのものだ。3Dプリンターを今後どう活用していくかは、こうした問題にどう向き合うかの試金石にもなる。
*多様な観点からニュースを考える:深尾三四郎 伊藤忠総研上席主任研究員
新時代に合った日本発祥の技術。コロナ禍のイタリアでは、ロックダウン下の工場停止で在庫不足に陥った人工呼吸器の弁をミラノのファブラボ(市民共有型の工場)が3Dプリンターで即時生産し、病院に供給したことで数多くの命が救われた。印刷機に送信される製品設計図等のIPをデータの耐改ざん性と機密性を担保するブロックチェーンで管理し、IP使用量に見合う利用料を徴収するシステム構築もイタリアの中小企業の間で試行されている。製造時CO2排出が多い金型を省き、樹脂素材はリユース・リサイクルできるので脱炭素化にも貢献する。1980年に名古屋で光硬化樹脂を積層する光造形法を発明した小玉秀男氏が3D印刷の生みの親。 

*1-4-1:https://digital.asahi.com/articles/DA3S15011223.html (朝日新聞 2021年8月15日) 抗体カクテル、宿泊療養者にも 重症化防止へ厚労省 新型コロナ 
 入院患者にしか認められていなかった新型コロナウイルスの「抗体カクテル療法」が、宿泊療養者にも使えるようになった。首都圏を中心に病床が逼迫(ひっぱく)するなか、この治療で症状が軽い人たちの重症化を防げれば、医療提供体制への負担軽減にもつながりそうだ。抗体カクテル療法は、ウイルスが細胞に感染するのを防ぐ二つの中和抗体を組み合わせた点滴薬。軽症や中等症の患者向けで、肥満や基礎疾患などがある高リスクの人の重症化を抑える効果が見込まれる。国内では初の軽症者向けの薬として7月に特例承認された。感染初期の治療の選択肢を広げると期待されている。厚生労働省が13日付で都道府県などに出した通知によると、宿泊施設を臨時の医療施設とみなすことで、ホテルなどで療養している患者も治療対象とする。自治体や専門家からは、自宅療養者への使用を求める声も上がるが、高齢者施設や自宅で療養している患者への使用は現時点では認めない、とした。宿泊施設では、投与後に少なくとも1時間は経過をみる。また、投与して24時間以内の副作用として重いアレルギー反応「アナフィラキシー」が報告されていることなどを踏まえ、十分な観察ができるようにすることも求めた。宿泊療養施設での抗体カクテル療法の実施は、東京都の小池百合子知事が13日の記者会見で、態勢を整備したことを表明。「コロナとの闘いに新たな武器が加わった。攻めの戦略で、いかにして重症化を防いでいくかになる」と語った。厚労省によると、11日時点でホテルなどの宿泊施設に滞在する療養者は、全国に1万4871人で、4週間前の約3倍となった。自宅療養者は約13倍の7万4135人にのぼっている。

*1-4-2:https://digital.asahi.com/articles/DA3S15010172.html?iref=shukatsu_mainbox_top (朝日新聞 2021年8月14日) 「酸素ステーション」整備 商業施設「人流を抑制」 首相表明
 菅義偉首相は13日、自宅療養患者への連絡態勢を強化する考えを示した。患者が酸素の投与が必要になった場合に対応する「酸素ステーション」を設けて対処するといい、こうした方針を関係閣僚に指示したという。首相官邸で記者団の取材に応じた。首相は自宅療養の患者について「必ず連絡が取れるようにする」と述べた。また、軽症者の重症化を抑える抗体カクテル療法を集中的に使える拠点を整備する考えも示した。政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会は12日、感染拡大が深刻な東京都で、人出を緊急事態宣言が始まる直前の5割まで減らす必要があるとの緊急提言を公表した。首相は「提言を受け、関係団体と連携し、商業施設などの人流の抑制に取り組んでいきたい」と説明。また、コロナのワクチン接種で「10月初旬までに、希望する国民の8割に2回打てる態勢を作っている」とも述べた。

<地方産業の高度化―その2:農林漁業の販売力向上>
*2-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20210814&ng=DGKKZO74783390T10C21A8EA1000 (日経新聞 2021.8.14) 「売れる農業」県内一丸 稲作からの転換奏功、宮崎や鹿児島、ブランド確立
 基幹産業として地域を支えてきた農業の競争力に大きな差が生じている。過去5年間で全国1741市区町村のうち6割の974が産出額を伸ばした一方、4割は減少した。躍進が目立つ九州勢の取り組みを探ると、地域ブランドを活用した「売れる農業」の姿が見えてくる。農林水産省が3月に公表した2019年の農業総産出額は8兆8938億円。都道府県別の産出額では北海道が統計の残る1960年以来首位を守り、1兆2558億円だった。2位以下は鹿児島県、茨城県、千葉県、宮崎県、熊本県が順に並ぶ。60年時点では新潟県など米どころが上位の常連だったが、需要低下もあり稼げる農業の内訳が一変。台風被害を防ぐため稲作から施設を使った畜産や園芸への転換を進めた宮崎県などの九州勢が躍り出た。2014年から集計が始まった自治体別の産出額(推計)でみても、九州が目立つ。19年のトップは宮崎県都城市で877億円。14年比増加率(産出額100億円以上の226自治体を集計)でも首位は74%増の宮崎県日向市だった。2位は61%増で鹿児島市、都城市も25%増で33位に入った。稼ぐ力を確立した地域が、より強みを発揮する。マンゴーの産地、宮崎県日向市は県やJAなどと取り組んだ高級マンゴーのブランド「太陽のタマゴ」のほか畜産などで生産力を高めた。主力の養鶏では事業者が鶏舎の清掃などの分業化を進めて作業効率を向上。鶏肉の年間出荷回数を従来の4.5回から5~6回程度まで引き上げた。日向市だけでなく、宮崎県内では関係者が一丸となった競争力向上の取り組みが進む。県は1994年に「みやざきブランド確立戦略構想」を策定し「『作ったものを売る』から『売れるものを作る』」を目標に据えた。おいしさや鮮度といった商品そのものの「質」を高めるだけでなく、安心・安全を前面に畜産物と花卉(かき)を除くすべてのブランドに月2検体以上の残留農薬検査を義務付け、基準値を超えた場合には迅速な出荷停止措置をとれる体制を整えた。都城市は60年以降、稲作から畜産への転換を進めてきたことが功を奏し、2019年、初の首位となった。主力産品のひとつ「宮崎牛」は1986年、県内関連団体が共同で「より良き宮崎牛づくり対策協議会」を発足させ、品質向上への動きを加速。「日本一の努力と準備」を合言葉に全国大会で史上初の3連覇を果たしたことなどで、首都圏をはじめとした大消費地からの評価を高めた。増加率2位の鹿児島市も「鹿児島黒牛」や「かごしま黒豚」の産地の一つとして、県や周辺自治体と連携して知名度向上に力を入れる。県は全国に先駆けて1989年から販売力の強化を目的とした農産物の認証制度をスタートした。2010年代半ばからは輸出も強化。牛肉は東南アジアでの人気が高く、新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受け、県全体の輸出額が前年度比5%減少の214億円だった20年度も、畜産物は21%増の106億円と過去最高額を更新した。鹿児島黒牛と宮崎牛は17年末、国が保護する地域ブランドに登録された。鹿児島黒牛は遺伝子解析などの先端技術を使い、改良に長く取り組んできたと認められた。宮崎牛は種牛の一元管理を全国で初めて構築したと評価された。地域ブランドには「神戸ビーフ」「特産松阪牛」も名を連ねており、世界に知られる和牛産地と南九州が肩を並べている。

*2-2-1:https://www.jiji.com/jc/article?k=2021072801196&g=eco (時事 2021年7月29日) ふるさと納税、過去最高6725億円 「巣ごもり需要」背景か-20年度
 ふるさと納税の2020年度の寄付総額が約6725億円で、過去最高になったことが28日、分かった。寄付件数も過去最多だった。新型コロナウイルスの感染拡大に伴う「巣ごもり需要」を背景に、各地の返礼品を楽しむ寄付者が増えたためとみられる。総務省が近く公表する。寄付総額は19年度の約4875億円から1.4倍に増加。寄付件数は約3489万件で、制度開始以来12年連続で最多を更新した。自治体別の受け入れ額は、1位が宮崎県都城市で135億2500万円。2位が北海道紋別市の133億9300万円で、同根室市125億4600万円が続いた。一方、ふるさと納税による21年度の住民税控除額は、前年度比1.2倍の約4311億円だった。最も多いのが横浜市の176億9500万円で、名古屋市106億4900万円、大阪市91億7600万円の順となった。ふるさと納税は、寄付額から2000円を引いた額が現在住んでいる自治体の住民税などから控除される仕組み。豪華な返礼品を提供する競争の過熱が問題となり、19年6月から返礼品は「寄付額の3割以下の地場産品」などの基準を守る自治体のみ参加できる制度に移行した。

*2-2-2:https://digital.asahi.com/articles/ASP867HHFP7ZTIPE01P.html (朝日新聞 2021年8月10日) 「電力まで五島産」広がる再エネ ふるさと納税でも復活
 再生可能エネルギーの「産地」を売りにする動きが広がっている。地域の太陽光や風力などでつくった電気をブランド化して地域振興につなげる狙いだ。ふるさと納税の返礼品としてPRする自治体もある。
●「電力まで五島産」
 レシピカードには、こんな言葉が記されていた。東京や大阪の百貨店で開かれた物産展で、長崎県五島市の水産加工会社「しまおう」が魚のすり身に昨年から添えた工夫だ。
●原料の安全・安心は当たり前
 しまおうは地元でとれるアジやアゴ(トビウオ)ですり身やかまぼこを作る。昨春、地元の新電力会社と契約し、工場の電気はすべて地元の再エネでまかなっている。カードには「島の風と太陽から生まれた電気で製造しています」と記し、風車のイラストも描いた。山本善英社長(51)は「原料の安全や安心は当たり前。地元の電気が注目されるようになれば」と話す。五島市では太陽光や風力発電など再エネの普及が進み、使う電気の約半分は市内でつくっている計算だ。沖合に巨大な風車を新たに8基浮かべて発電する計画も進んでおり、2023年ごろには8割まで上げる予定だ。電気は、大手電力会社には売らず、できるだけ「地産地消」に生かす。今夏には、使う電気をすべて地元の再エネでまかなう企業を独自に認定する「五島版RE(アールイー)100」という取り組みを始める。五島と政府の景気刺激策をもじった「GOTO RE100」というロゴマークも作り、認定された企業はロゴを使って取り組みをアピールできる。地元の福江商工会議所の清瀧誠司会頭(81)は「人口減少の著しい離島は、他ではできないことをしなければ生き残れない。島の電気を活用して生産段階から差別化を進め、地元企業の価値を高めたい」と話す。
●スタバも関心「お店で知って」
 電気の産地には、企業も関心を示す。スターバックスコーヒージャパンは10月までに、約350店舗ある直営路面店すべてで、使う電気を地域の再エネに切り替える。富山や鹿児島の店では地元の水力発電所の電気を使う。徳島では地元の木質バイオマス発電所から調達し、近くの森林の維持・管理にも役立てる。広報担当者は「ビジネスを続けるには、地域活性化への貢献は欠かせない。お店を通じて、地元の再エネも知ってもらいたい」と話す。アウトドア用品大手、スノーピークも7月、新潟県三条市の本社などで使う電気を市内の木質バイオマス発電所に切り替えた。電気代は少し高くなる見込みだが、「地元に根ざした事業をしており、地産地消に貢献したい」(広報)としている。ふるさと納税の返礼品として地元の再エネを提供する動きもある。阿蘇山のふもとにある熊本県小国町は8月初旬、地元の電気を返礼品に加えた。町には地熱発電所が立地し、太陽光や水力を含む発電出力は約3万7千キロワット。町内で使う電気の約2・6倍に及ぶ。特産のあか牛や馬刺しなどの肉類には知名度で劣るが、「町の新電力会社の経営安定にもつながる。町外からの問い合わせも多い」(町の担当者)。
●ふるさと納税もお墨付き
 地元の電気を返礼品として提供して寄付者の電気代を割り引く自治体は数年前からあった。しかし、総務省が今年4月、「電気は地場産品に当たらない」との見解を出した。一般の送配電網で供給される電気は様々な地域で発電されたものが混ざってしまうためだ。再エネの普及をめざす政府の方針を受けて、総務省は一転して6月に一定の条件下でこれを容認した。政府のお墨付きを得たことで、返礼品をきっかけに再エネ普及が進む、との期待も出ている。電気の返礼品は今春まで福島県楢葉町や愛知県豊田市、大阪府泉佐野市など全国9市町が提供していた。地元の太陽光や水力で発電した電気をもとに17年から返礼品を提供している群馬県中之条町は10月再開をめざす。担当者は「またぜひ使ってもらいたい」。ただ、寄付者が返礼品としての電気を受け取るには、自治体の指定する新電力会社と契約を結ぶ必要がある。手続きの煩雑さが寄付額の伸び悩みにつながっているとの見方もある。

*2-2-3:https://digital.asahi.com/articles/DA3S15008803.html (朝日新聞社説 2021年8月13日) ふるさと納税 「官製通販」見直しを
 ふるさと納税による寄付の膨張が止まらない。昨年度に全国の自治体が受け入れた寄付額は前年度を4割も上回り、過去最高の6724億円にのぼった。自治体間の過剰な競争を抑えるため、返礼品を「寄付額の3割以下」にするルールが導入され、19年度は7年ぶりに減少に転じた。だが、ルールは早くも骨抜きになっている。例えば、コロナ対策で農水省が始めた農林水産品の販売促進の補助金を使えば、返礼率を大幅に高めることができる。20年度に寄付額が急増したのはコロナ禍での「巣ごもり消費」に加え、ルールの形骸化も影響しているだろう。ふるさと納税は、寄付額の多寡にかかわらず、自己負担は実質2千円だ。高所得者ほど返礼品を多く受け取れるうえ、税の優遇も大きい。コロナ禍による格差の是正が政策課題になるなか、不平等な仕組みをこれ以上放置することは許されない。総務省によると、寄付額の45%が返礼品の購入費や、返礼品を選ぶ民間のポータルサイトへの手数料などに費やされている。昨年度の寄付額から換算すると、全体で約3千億円の税収が失われることになる。コロナ感染が特に広がっている東京などの都市部は、ふるさと納税で寄付する人が多い。財源の流出が続き、感染対策の費用をまかなえないような事態になっては困る。ふるさと納税の当初の趣旨は、寄付を通じて故郷に貢献してもらうことだった。しかし現状では「官製通信販売」になってしまっている。NTTグループの昨年の調査では、「出身地への貢献」のために制度を利用した人は12%しかいなかった。自治体間の財政力の格差を是正するのであれば、いまの地方税や地方交付税のあり方が妥当かを、正面から論じるべきだ。そもそも寄付とは、見返りを求めないものである。返礼品を受け取らずに、災害の被災地に寄付をする人もいる。ふるさと納税を続けるのであれば、返礼品をなくすなど抜本的に制度をつくり変える必要がある。しかし見直しの議論は進んでいない。ふるさと納税は菅首相が総務相時代に創設を決めた。反対した幹部が「左遷」されたこともあり、制度の欠陥を指摘されても、総務官僚らは見て見ぬふりを決め込んでいる。地方自治は「民主主義の学校」と言われる。返礼品を目当てに、自分が暮らす自治体から受けた行政サービスに対する負担を回避する制度は、地方自治の精神を揺るがす危うさがある。制度の生みの親である菅首相には、政策の誤りを認め、欠陥をただす責任がある。

*2-3:ttps://www.nikkei.com/paper/article/?b=20210815&ng=DGKKZO74788420U1A810C2EA1000 (日経新聞 2021.8.15) 「シャインマスカット」 中韓の生産、日本上回る 日本発ブランド、流出先で輸出の主力に
 高級ブドウ「シャインマスカット」をはじめ、日本発のブランド品種の海外流出が深刻さを増している。流出先の韓国では、もともとのシャインマスカットが今や輸出の主力となり、輸出額は日本の5倍超に膨らんだ。中国国内での栽培面積は日本の40倍超に及ぶ。海外への持ち出しを禁止する改正法が4月に施行したが、実効性には課題を残したままだ。農林水産省によると、シャインマスカットは2016年ごろから海外流出を確認。法規制が追いついていなかった経緯もあり、韓国などへの持ち出しと現地栽培、輸出が膨らんでいった。19年には日韓のブドウの輸出数量が逆転した。21年1~4月の韓国産ブドウの輸出額は約8億円と前年同期比で1.5倍に増えた。このうちシャインマスカットが約9割を占めた。日本の輸出額は1億4700万円にとどまり、量では7倍の差がついた。農林水産・食品産業技術振興協会によれば、ブランド果実の流出先は中国、韓国が中心だ。シャインマスカットのケースで、栽培面積は日本が1200ヘクタールなのに対し、韓国は1800ヘクタール、中国では5万3000ヘクタールと規模は桁違いだ。ブドウ以外でも同協会の20年の調査で、30以上の品種の海外流通が確認された。静岡県のイチゴ「紅ほっぺ」や高級かんきつ「紅まどんな」などが標的になっている。政府は登録品種の海外持ち出しを禁じる改正種苗法を4月に施行した。違法持ち出しに罰金や懲役を設けたが、違反事案は絶えない。意図的かどうかにかかわらず、一度流出すると種苗や苗木の追跡は難しくなる。日本政府はブランド品種を中核にし農林水産物輸出額について25年に2兆円、30年に5兆円に増やす目標を掲げる。20年の輸出額は9217億円。当初目標の「19年に1兆円」には届かなかった。海外流出に歯止めをかけられず、さらに流出先で輸出まで膨らむ状況が続けば、一連の目標に黄信号がともる。

<地方産業の育成―その1:再エネ>
*3-1-1:https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA074ZX0X00C21A8000000/ (日経新聞 2021年8月9日) 気温1.5度上昇、10年早まり21~40年に IPCC報告書
 国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は9日、産業革命前と比べた世界の気温上昇が2021~40年に1.5度に達するとの予測を公表した。18年の想定より10年ほど早くなる。人間活動の温暖化への影響は「疑う余地がない」と断定した。自然災害を増やす温暖化を抑えるには二酸化炭素(CO2)排出を実質ゼロにする必要があると指摘した。温暖化対策の国際的枠組みのパリ協定は気温上昇2度未満を目標とし、1.5度以内を努力目標とする。達成に向け先進各国は4月の米国主催の首脳会議(サミット)で相次ぎ温暖化ガスの新たな削減目標を表明した。今回の報告書は気温上昇を抑える難しさを改めて浮き彫りにした。10月末からの第26回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP26)での議論が次の焦点になる。IPCCは5つのシナリオを示した。21~40年平均の気温上昇は、50~60年に実質排出ゼロが実現する最善の場合でも1.5度になる。化石燃料への依存が続く最悪の場合は1.6度に達する。18年の報告書は1.5度になるのは30~52年とみていた。予測モデルを改良し、新たに北極圏のデータも活用したところ10年ほど早まった。上昇幅は最善の場合でも41~60年に1.6度になる。化石燃料への依存が続く最悪の場合は41~60年に2.4度、81~2100年に4.4度と見込む。過去の気温上昇も想定以上に進んでいたとみられる。今回、11~20年平均で1.09度と分析した。18年の報告書は06~15年平均で0.87度だった。1850~2019年の二酸化炭素排出量は累計2390ギガトン。気温上昇を1.5度以内に抑えられる20年以降の排出余地は400ギガトンとみる。今の排出量は年30~40ギガトンで増加傾向。10年ほどで1.5度に達する。産業革命前は半世紀に1回だった極端な猛暑は1.5度の上昇で9倍、2度で14倍に増えると予測する。強烈な熱帯低気圧の発生率も上がり、干ばつも深刻になる。平均海面水位は直近120年で0.2メートル上がった。今のペースは1971年までの年1.3ミリの約3倍と見積もる。気温上昇を1.5度以内に抑えても、2100年までに今より0.28~0.55メートル上がると予測する。気候変動のリスクを正面から受け止め、対策を急ぐ必要がある。IPCCは気候変動に関する報告書を1990年以来5~7年ごとにまとめている。最新の研究成果を広く踏まえた内容で信頼度が高く、各国・地域が温暖化対策や国際交渉の前提として活用する。第6次となる今回は22年にかけて計4件の報告書を公表する予定だ。

*3-1-2:https://www.shinmai.co.jp/news/article/CNTS2021081100128 (信濃毎日新聞社説 2021/8/11) 温暖化報告書 深刻さを共有しなければ
 深刻さはより深まっている。人類への警鐘と受け止め、二酸化炭素(CO2)排出量の実質ゼロを確実に果たさねばならない。国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が、最新データに基づく地球温暖化の予測を報告書にまとめた。温暖化は人間の影響とすることに「疑う余地がない」と初めて断言。世界の平均気温は、対策を進めても2021~40年に、産業革命前と比べて1・5度上昇する可能性が高いとした。13年の報告書では、温暖化と人間の影響について「可能性が極めて高い」と指摘。18年の特別報告書で、上昇幅が1・5度に達するのは30~52年としていた。踏み込んだ表現や、約10年早まった分析は、スーパーコンピューターを駆使し、より精度を高めた結果だ。科学に裏付けられた知見として共有する必要がある。温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」は、気温上昇を2度未満、できれば1・5度に抑える目標を掲げる。2度を超えると、極端な高温や豪雨などが頻発し、海面が上昇すると考えられるからだ。報告書によると、11~20年で1・09度上昇した。既に極地やシベリアで氷床や永久凍土の融解が報告されている。日本では巨大台風の襲来や豪雨、世界では異常熱波や大規模な山火事が繰り返されるようになった。当面続く気温上昇に備え、避難計画見直しや食料確保といった対応が欠かせなくなりつつある。報告書は、50年にCO2排出量を実質ゼロに抑えられた場合、温度は今世紀後半に下降し、1・5度未満に収まる予測も示している。解決のための目標は明確だ。日本政府は、30年度に13年度比で46%削減、50年に実質ゼロを表明している。ただ、再生可能エネルギーの活用を模索する一方で、石炭火力を温存し、家庭での取り組みに頼る姿勢を見せる。石炭火力の全廃やガソリン車の販売禁止といった思い切った政策を早期に打ち出さなければ、実現は困難ではないか。生物多様性の保全や海洋プラスチックごみ対策も温暖化抑止につながる。森を守り、化学肥料を減らして農作物を育て、プラスチックをできるだけ使わない暮らしを、地域や個人でも進めたい。10月末には英国で国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議が開かれる。各国の足並みはそろっていない。報告書の知見を最大限に生かし、世界が一体となれる合意を目指さねばならない。

*3-2-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20210729&ng=DGKKZO74269830Y1A720C2EN8000 (日経新聞 2021.7.29) 脱炭素の外圧、変革に生かせ
 今日、日本の最大の課題は脱炭素だ。一連の環境問題への対応は、欧州を中心にスタンダード化するなかで日本も取り組まざるを得なかったものだ。そもそも「日本は環境先進国」と思っていたなかで生じた「外圧」による対応に、必要性を感じながらも釈然としない思いを抱く日本人も多いのではないか。米国もバイデン政権になって脱炭素に向けて大きく舵(かじ)を切っただけに、日本は外堀を埋められた。2020年10月の菅義偉首相の決断がせめてもの救いだ。外圧が主導し、日本の主体性がみえない対応はいかがなものかという見方は当然だ。だが、約150年前の明治維新以来、日本は50年周期の外圧による転換の繰り返しだった。幕末の欧米列強の外圧がなければ、明治維新の近代化、統一国家実現は不可能だった。その後、1920年代の世界大恐慌後の重化学工業化も同様で、戦後の政治経済のレジームは日本国憲法をはじめほとんど外圧だった。70年代以降の環境問題による転換も同様だろう。公害問題の深刻化に伴う自主的な側面はあったが、大きなドライバーになったのが、石油危機でのエネルギー価格高騰のほか、米国のマスキー法などを中心とした自動車の排ガス規制だった。以上、日本は常に外圧に対し、やらされているという被害者意識を持ちつつも、その潮流に乗って大きく社会構造や経済システムを転換させてきた。日本がなかなか自律的に変わりにくいなか、外部環境の転換がなければ改革はできなかった。第2次世界大戦が終わって3四半世紀が過ぎ、バブル崩壊という第2の敗戦を経て、新型コロナウイルス危機は第3の敗戦との見方もある。ただし、脱炭素も含めた環境問題はそもそも日本が先進的な分野である。日本ほど自然災害への遭遇も含め、自然と向き合う生活を文化としてきた国民も珍しい。今回の脱炭素を中心とした外圧も、日本にとって大きなチャンスとの見方ができる。70年代の一時的な成功体験に安住し、その後バブルに陥ったことによる停滞を一気に挽回する発想転換が必要だ。そこでは世代交代も含め、保有資産が座礁資産化するのも覚悟しつつ、過去を捨て去る決断も必要になるだろう。

*3-2-2:https://373news.com/_column/syasetu.php?storyid=141076 (南日本新聞 2021/7/30) [エネルギー計画] 脱炭素へ抜本的改定を
 経済産業省は、2030年度の電源構成で再生可能エネルギーの主力化を進める新たなエネルギー基本計画の素案を有識者会議に提出した。菅義偉首相が打ち出した50年の温室効果ガス排出量実質ゼロや、30年度に排出量を13年度比で46%削減するといった国際公約の実現に向けた重要な一歩ではある。だが、再生エネ拡大には課題が山積し、二酸化炭素(CO2)排出量が多い石炭火力や、諸問題を抱える原子力への依存を続ける姿勢は変わらない。政府は脱炭素の実現に不可欠な社会や経済の変革を促すため、計画を抜本的に見直していかなければならない。基本計画は中長期的なエネルギー政策の指針で、将来の電源構成や原発の運営の方向性などを示し、おおむね3年に1度改定してきた。今後、意見公募などを経て10月までに閣議決定する見通しだ。素案では、現行目標が22~24%の再生エネを36~38%と大幅に拡大する方針を示した。19年度実績の約2倍に相当し、政府は建設期間が比較的短い太陽光に期待している。ただ、太陽光は急速に導入を進めてきた結果、新たな適地の確保が難しくなっている。悪天候で発電が減った時に備え、他の電源を用意するコストがネックになる恐れもあり、順調に進むかは不透明だ。再生エネ拡大は国際的潮流だが、素案の目標はドイツの65%、米カリフォルニア州の60%などに比べて見劣りする。政府は電力を消費地に届けるための送電網の整備や蓄電池の普及を急ぎ、大幅な拡大を目指す必要がある。一方、現在主力の火力は現行の56%から41%へと大きく減らす。このうち、近年は総電力の3割前後を占めるまでに拡大した石炭火力は19%に削減するが、安定供給性や経済性に優れているとして活用する道を残す。米国が35年の電力脱炭素化を掲げ、各国が石炭火力の全廃を打ち出す中、日本の温暖化対策の遅れが際立っていると言わざるを得ない。原子力については、東京電力福島第1原発事故後に再稼働した原発は33基中10基で、19年度実績は6%程度にとどまる。しかし、目標は現行の20~22%に据え置かれ、低コストで安定供給が可能な「重要なベースロード電源」という位置付けも維持した。目標達成には30基程度を稼働させる必要がある。安全対策でコストがかさむ中、政策の見直しは避けられないのではないか。さらに焦点だった原発の新増設や建て替えの方針は盛り込まれず、問題を先送りした感は否めない。原発に対する国民の不信感は根強い。政府は原発の是非を含めた議論を深め、将来像を示すべきである。

*3-2-3:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20210819&ng=DGKKZO74903140Y1A810C2TB2000 (日経新聞 2021.8.19) テスラ、日本で送電向け蓄電池 価格5分の1に
 米電気自動車(EV)大手のテスラが日本で電力ビジネスに参入する。電力需給の調整弁となる大型蓄電池と制御システムを電力事業者に供給し、天候によって発電量が変動する再生可能エネルギーの有効活用を後押しする。国内相場の約5分の1の価格で販売する予定で、再生エネの導入コストが下がる効果も期待できる。再生エネ発電所は安定して発電しにくい。必要以上に発電すると需給バランスが崩れ、送電網がパンクして停電を起こしかねない。電力インフラに組み込む蓄電池に余剰電気を蓄えさせ、需要が増えたときに放電させれば再生エネを無駄なく使える。テスラ日本法人のテスラモーターズジャパン(東京・港)は第1弾として、新電力のグローバルエンジニアリング(福岡市)が2022年に北海道千歳市で稼働させる拠点に大型蓄電池を納入する。容量は6000キロワット時で、一般家庭約500世帯分の1日の電力使用量に相当する。グローバルエンジニアリングは北海道電力の送電網にテスラの蓄電池システムを接続し、電力の調整弁として機能させる。1キロワット時当たりの納入価格は5万円弱と従来の推計価格(24万円強、19年)を大きく下回る。電池の調達元は中国の寧徳時代新能源科技(CATL)。EV向けも調達する電池の世界大手で、このほどテスラと25年末までの新たな供給契約を結んだ。提携関係からテスラは有利な条件で取引できるとみられる。経済産業省は7月、新しいエネルギー基本計画の原案をまとめ、30年度の電源全体に占める再生エネ比率を現行の22~24%から36~38%に引き上げるとした。これに伴い、計2400万キロワット時分の蓄電池が必要になる見通しだ。テスラは米国やオーストラリアで需給に応じて自ら電力を売買する事業を展開している。日本でもほかの新電力や商社などと組み、電力ビジネスを拡大するとみられる。

*3-3-1:https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA0121X0R00C21A8000000/ (日経新聞 2021年8月1日) 水素航空機の空港施設整備、官民で検討 燃料貯蔵など
 政府は水素を燃料とする航空機の実用化に向け、水素の貯蔵や機体へ注入するための空港施設の整備に向けた検討を始める。二酸化炭素(CO2)を排出しない水素を燃料とする航空機は次世代技術として期待される。今秋をめどに、具体化に向けた課題を整理してまとめる。経済産業省は3日午後にも、国土交通省や文部科学省のほか、関連民間企業による検討会の初会合を開く。水素燃料航空機の空港インフラ整備について日本政府が検討するのは初めて。民間からは日本航空や全日本空輸、川崎重工業、三菱重工業、IHI、燃料供給会社が参加する。水素燃料航空機を運航させるには、液化水素燃料の貯蔵タンクや、送配管といった施設を設置する必要がある。現状の制度面での課題や、費用試算も含めて検討し、早期実現を後押しする。欧州航空機大手のエアバスは、2035年までに水素燃料航空機を市場投入すると公表した。他メーカーの動向も踏まえ、経産省は30年までに要素技術を確立する必要があるとみている。

*3-3-2:https://www.tokyo-np.co.jp/article/123525 (東京新聞 2021年8月11日) 軽電気自動車の開発加速、発売へ 価格200万円切りが焦点
 軽自動車の電気自動車(EV)の開発競争が加速している。日産自動車と三菱自動車は共同開発車を2022年度前半に発売し、スズキは20年代半ばの投入を目指す。「地方の足」である軽にも、脱炭素の流れが波及している。安さが魅力の軽でEVが広まるには、国や自治体の補助金を含めた価格が200万円を切り、どこまで下げられるかが焦点になりそうだ。ホンダは24年の発売を計画。ダイハツ工業は開発を検討中。日産と三菱自は他社に先駆けて発売し「軽EVの開拓者」(関係者)を狙う。スズキは今年「EV事業本部」を新設した。走行距離と価格のバランスを見極めることが重要になりそうだ。

*3-3-3:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20210819&ng=DGKKZO74903370Y1A810C2FFJ000 (日経新聞 2021/8/19) 百度、自動運転EVに本腰、吉利と提携、8500億円投じ生産  ロボタクシー事業拡大
 中国インターネット検索最大手の百度(バイドゥ)は18日、未来のクルマのあり方を示した自動運転のコンセプト車「ロボットカー」を発表した。中国自動車大手との共同出資会社で参入する電気自動車(EV)の製造・販売には今後5年間で500億元(約8500億円)を投じる。8年前に開発に着手した自動運転技術の進歩を訴えた。「未来の自動車はロボットカーの方向に進化する」。18日、オンラインで開いた発表会で、李彦宏(ロビン・リー)董事長兼最高経営責任者(CEO)はこう強調した。ロボットカーは2人乗り。ハンドルやアクセル、ブレーキなどの運転席がなく、前面には大きなパネルがある。人工知能(AI)が学習することも特徴で、乗客の好みに応じた運転やサービスを提供するとしている。発表会で実際に走行する場面を披露したものの、ロボットカーの発売時期については触れなかった。現段階では未来のクルマとの認識だが、ネット大手の百度は近く、EVメーカーの仲間入りを果たそうとしている。今年初めに発表した中国民営自動車大手、浙江吉利控股集団との提携が戦略の柱になる。3月に立ち上げたEV製造・販売の共同出資会社、集度汽車は百度が55%を出資して主導権を握った。集度汽車は今後5年間で約8500億円を投じることを決め、自動運転技術を搭載したEVを製造・販売する。2022年4月に開かれる北京国際自動車ショーでコンセプト車を公開し、同年中にも受注を始める計画だ。具体的には、吉利が開発したEV専用のプラットホーム(車台)を活用し、吉利の工場を活用するとみられる。百度が自動運転技術の開発に着手したのは13年と競合より早く、17年には自動運転技術の開発連合「アポロ」を立ち上げた。トヨタ自動車や独フォルクスワーゲン(VW)、米インテル、米エヌビディアといった世界の大手が参画し、中国政府の支援を受けている一大連合だ。パソコンやスマートフォンの基本ソフト(OS)のように「自動運転車のOSといえる基幹システムを生み出すこと」を目標に掲げた。これまで百度は自動車大手にシステムを提供して「稼ぐ」モデルを描いてきた。実際、国有自動車大手の中国第一汽車集団や新興EVメーカーである威馬汽車がアポロを搭載したEVを投入した。ただ、中国国内での利用は進みつつあるものの、パソコンの「ウィンドウズ」やスマホの「アンドロイド」のように、市場を牛耳るにはほど遠い状況だった。次なる一手が、自ら車両の製造・販売を手掛けることだった。自動車大手とタッグを組み、収益化を急ぐ方針に転じた。百度など中国勢の自動運転技術の実力について、日系自動車メーカーの幹部は「成長が著しい」と評価する。自動運転で先行してきた米国勢に迫っている。20年の公道での自動走行試験の距離は米ゼネラル・モーターズ(GM)子会社と、米アルファベット傘下のウェイモに並び、百度も100万キロメートルを越えた。自動運転タクシーにも本格的に乗り出し、自動運転分野における「百度経済圏」の構築も急ぐ。現在は北京、広東省広州、湖南省長沙、河北省滄州の限定した公道で展開し、3年以内に30都市まで拡大する。これまでは実験段階で地図アプリで予約する仕組みだったが、本格的な事業展開に備えて専用アプリを立ち上げることも表明した。百度が自動運転分野で成果を急ぐのは、主力の検索事業の成長が鈍化しているためだ。売上高の約6割は検索を中心とするネット広告収入だ。中国政府が米グーグルなどの利用を制限し、検索サービスでは圧倒的なシェアを誇るが、20年12月期の売上高は1070億元と前の期を下回った。百度は長く、アリババ集団、騰訊控股(テンセント)と並ぶ中国のネット3強、いわゆる「BAT」と評されてきたが、収益面や時価総額では差が開いた。2強の背中は、はるかかなたにある。自動運転技術を搭載したEVはスマホ大手の小米(シャオミ)が参入し、自動運転タクシーも滴滴出行(ディディ)などが力を入れている。これまで中国勢の先頭を走ってきたと自負する百度の実力が今こそ問われる。

*3-3-4:https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCC166RR0W1A710C2000000/ (日経新聞 2021年8月11日) ホンダ寄居工場の進出効果、地元では実感乏しく
 ホンダは2021年度中に狭山完成車工場(埼玉県狭山市)の四輪車生産を新鋭の寄居完成車工場(同県寄居町)に集約する。狭山市の地域経済への懸念はこれまでも話題になってきたが、一方で寄居町の商工業は盛り上がっているのか。地元の商工団体や商店を訪ねると、民間ではまだ大きな経済効果が感じられない状況が浮き彫りになった。寄居工場の稼働開始は13年。06年の建設計画発表当初は、10年に稼働開始予定だったが、08年のリーマン・ショックで3年遅れた。「当初は町内の製造業にもっと大きな波及効果があると思っていた」。寄居町商工会の担当者は話す。しかしホンダ関連で大きな受注を獲得した企業や、工場の新増設の話も聞かないという。計画当初、寄居工場は国内での増産投資が目的だったが、その後、ホンダが国際分業を一段と加速。協力部品メーカーを含めて増産の意義は薄れ、町内の中小製造業が食い込む機会も広がらなかったとみられる。例えばホンダ系の大手部品メーカー、エイチワンは07年、増産に向けた工場用地を近隣の熊谷市に確保したが、21年3月に売却を発表した。商業にも目立った経済効果は出ていない。町内の中心部にある寄居駅南口の一等地で20年間続いた大型スーパー「ライフ寄居店」は13年に閉店し、今も空き店舗のままだ。寄居駅周辺の約40店で構成するふるさと寄居商店会会長で新島薬品を経営する新島清綱氏は「期待はしているが、ホンダの工場ができてから新しい客が増えた印象はまだない」と言う。要因の1つは、工場の立地も影響しているようだ。寄居工場は寄居駅から東武東上線で南東方向に4駅目のみなみ寄居駅前にある。同駅はホンダが東武鉄道に整備を要請し、事業費を全額負担した。駅舎と工場を結ぶ渡り廊下があり、従業員は駅から工場敷地内に直接入れる。駅前に商店はなく、従業員のほとんどは昼間、工場内の食堂や売店を利用するようだ。また「もともと狭山工場で勤務し、いまも狭山市周辺から通勤する従業員が多い」(寄居町役場)。車で通勤する場合、最終的には国道254号を北上して寄居工場に通うのが一般的で、寄居駅前は通勤ルートに入らない。従業員が町内で消費する機会はかなり限られる。こうした状況を打開しようと、寄居町は今年秋にも狭山市周辺から通う従業員ら向けに「移住・定住を促すツアーを開催したいと考えている」(担当者)。ただ寄居町と隣接する深谷市の花園地区には、22年秋に約120店舗を集めたアウトレットモールが開業予定で、町内の消費が流出する可能性もある。民間にはまだ目に見える経済効果が出ていないかもしれないが、ホンダの工場進出が寄居町の財政を潤したのは確かだ。寄居町の21年度の一般会計当初予算は約112億円、町税は約45億円。ホンダ進出で町税が5億円ほど増えたこともあったという。税収増の効果をもとに、地元企業の技術力向上をどう支援してホンダ関連の受注獲得に結びつけるか。ホンダ関連の従業員の移住促進や商業の活性化にどうつなげるか。寄居町にとってこれからが正念場となる。

*3-3-5:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20210819&ng=DGKKZO74903030Y1A810C2TB2000 (日経新聞 2021.8.19) ホンダ、中国で新エネ車増産 EVなど、年12万台上積み
 ホンダが中国で電気自動車(EV)など新エネルギー車の生産増強に乗り出すことが18日までに分かった。合弁会社を通じた総投資額は約30億元(約500億円)で、南部広東省広州市の工場を増設し生産能力を年12万台分上積みする。2024年2月以降の稼働を目指す。ホンダは中国で新車販売を伸ばしてきたが、新エネ車を巡っては中国ブランドなどとの競争が激化しており巻き返しを急ぐ。ホンダの中国での合弁会社、広汽ホンダが広州市当局に提出した工場増強に関する入札申請書で投資計画が明らかになった。新設備の建設面積は約18万6000平方メートルで、10月の着工を予定する。EVやプラグインハイブリッド車(PHV)といった新エネ車専用の生産設備となる見込みだが、車種などは明らかになっていない。広汽ホンダは広州市に4工場を持ち年77万台の生産能力を持つ。一方、ホンダの別の合弁会社、東風ホンダも湖北省武漢市で3工場を運営し、生産能力は年72万台。広州市の新しい生産設備が稼働すれば、ホンダの中国での自動車生産能力は年161万台となり現在に比べ約1割増える見通し。ホンダの中国での新車販売台数は20年に19年比5%増の約163万台で2年連続で最高を更新した。21年も1~7月累計で前年同期比20%増の約89万台と伸びているが、足元では7月まで3カ月連続で前年実績を割り込むなど減速している。

<地方産業の育成―その2:医療・介護>
*4-1-1:https://www.chugoku-np.co.jp/column/article/article.php?comment_id=781600&comment_sub_id=0&category_id=142 (中國新聞 2021/8/8) コロナ入院制限 制度設計、甘すぎないか
 新型コロナウイルス感染症の入院対象者を、政府が絞り込む方針だという。重症化リスクの高い中等症や重症の感染者に限り、それ以外は自宅療養を原則とする。呼吸困難や肺炎などでも重症化リスクが低いと判断されると、自宅療養になる。これまでは、軽症や無症状の人も宿泊施設で療養させるのが基本だった。目の届きにくい自宅療養では容体急変への対応などが限られ、心もとない。感染者の激増を受けた苦肉の策だろうが、国民の命を左右しかねない方針転換である。必要な医療を受けられず、置き去りにされるようなことがあってはなるまい。入院制限の対象は「爆発的感染拡大が生じている地域であり、全国一律ではない」と菅義偉首相は説明する。念頭にあるのは首都圏だろう。だが感染力の強い変異株「デルタ株」は全国に広がっており、新規感染者は連日1万人を超す。地方にとっても人ごとではない。中等症でも、肺炎など症状によっては呼吸不全を起こし、酸素投与が必要になる場合もある。実際、5月がピークだった「第4波」では、自宅療養者が適切な医療を受けられずに重篤化したり死亡したりする事例が大阪で相次いだ。その教訓から今回、国民や医療関係者の間で懸念が高まり、与野党から異論が噴出したのは当然だろう。自宅療養を基本とするなら、何よりもまず、患者が安心して療養できる環境が必要である。現状では、往診などの在宅医療体制が整っている地域は少ない。宿泊療養施設の拡充や在宅患者を見守ることのできる医師や看護師の確保といった、地域住民の不安を拭い去る策を講じるのが先のはずだ。政府の方針では、入院対象の仕分けについては、自治体の保健所がまず担うという。ただ、各地の保健所はすでに業務がパンク状態とされる。対応する余力はあるのだろうか。また、自宅療養から入院への切り替えは地域の医師の判断に委ねられるものの、明確な基準は示されていない。制度設計が甘すぎるのではないか。緊急事態宣言下の6都府県では、自宅療養者が4日時点で約3万7千人に増えている。その4割近くは東京で、入院や療養先を調整中の人は1万人近くに上るという。入院の制限でさらなる増加は目に見えている。自宅療養者の急変に適切に対処できるとはとても思えない。見過ごせないのは、これほどの方針転換を専門家や自治体に相談せず、生煮えで政府が打ち出したことだ。首相は「国民の安全安心、命と健康を守る」と繰り返してきたが、今回の方針は感染拡大防止策の手詰まりをさらけ出していよう。ワクチン接種が進み、重症化リスクの高い高齢者の感染が減少傾向にあるのは確かである。にもかかわらず、入院制限を打ち出したのは、接種が済んでいない40~50代の感染者や重症者が急増したためだろう。楽観が過ぎ、あまりにも見通しが甘かったと言わざるを得ない。本来、選択肢を広げるのが政府の務めではないか。自粛要請に頼るばかりで、コロナ専用病棟をはじめとする病床確保を怠ってきた責任は重い。手を尽くして感染者を抑え、医療崩壊を食い止めねばならない。

*4-1-2:https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCC223NE0S1A720C2000000/?n_cid=NMAIL006_20210807_A (日経新聞 2021年8月6日) 接種進捗が示す医療効率 かかりつけ医、大病院と密に
 新型コロナウイルスの感染拡大や医療崩壊を防ぐには高齢者だけでなく、重症者が急増している40~50代へのワクチン接種が欠かせない。接種が円滑に進む地域は準備にいち早く着手したことに加え、きめ細やかな診療体制が敷かれ、医療機関同士、行政との連携も密だ。接種率の地域差から高齢化時代のあるべき地域医療の姿が見えてくる。都道府県別にみた全世代の1回目の接種率(8月3日時点)は山口県が45.6%でトップ。和歌山、山形、高知、熊本、群馬、佐賀の各県と続く。最下位は沖縄県の29.3%でトップから16.3ポイントの開きがあった。接種率が高い地域の多くは高度医療を提供する大病院(500病床以上)が少ない傾向があり、かかりつけ医(一般診療所、20病床未満)が患者に目配りする。地元医師会や大学、行政との関係も良好で連携・役割分担が進むほか、大規模災害を見据えた体制づくりなどを検討しており、医師の有事対応力が高い地域も多かった。和歌山県は2019年10月時点で約1000カ所の一般診療所があり人口10万人あたりでは110.8と都道府県で最多。県人口の4割近くの35万人が集まる和歌山市には4割の一般診療所が集中する。一方、500病床以上の大病院は県内に2カ所だけ。患者は一般診療所の受診が中心。個別接種が進み接種率を押し上げる一因となった。南海トラフ地震などに備えた即応体制への意識の高さも対応力を底上げした。県福祉保健部の野尻孝子技監は「コロナの感染拡大防止に向けた仕組みではない」とするものの、県は大規模災害が休日や夜間に起きた際、地域の開業医が「地域災害支援医師」として緊急医療にあたる仕組みを検討している。仁坂吉伸知事は接種率の高さについて「準備をしっかりやったから」と胸を張る。佐賀県ではかかりつけ医を地域第一線の医療機関と定義する。大町町は4カ所ある町内の病院の医師や看護師らが診察に訪れた高齢者に直接予定を聞き、接種日を設定した。通院歴がある人に医療機関側から連絡もしたという。同町職員は「日ごろ診ている患者をコロナから守ろうと医療スタッフが熱心に働いた」と振り返る。行政と大学の連携協定が奏功しているのは山形県。県内人口の4分の1が集まる山形市が設けた大規模会場に、山形大学医学部が医師や看護師を派遣。吉村美栄子知事は大学、医師会、看護協会、薬剤師会が協力する「オール山形」の成果を強調する。山口県も県内の市町や医師会などが参加する対策会議を発足させ、早い段階から情報共有を進めた。個別接種や集団接種の体制を整え「高齢者接種の立ち上がりから順調に接種できた」(県新型コロナウイルス感染症対策室)。福島県相馬市では、コロナの感染拡大前から市と地元医師会が密に連携してきた。救急医療の主な担い手である公立相馬総合病院の夜間急患体制を維持するため、開業医が当番で勤務する制度を導入。11年の東日本大震災の発生後は、市職員と開業医が連携し、避難所で被災者の健康管理にあたった。とはいえ、こうした連携はなお一部で、全国的にみると医療機関の規模に応じた役割分担と連携は道半ば。患者も軽い病気やケガで大病院を利用するケースが多く、効率的で機動的な医療が妨げられている。接種をきっかけに地方で芽生えた取り組みは、コロナ後の医療改革のヒントを投げかけている。

*4-2-1:https://www.nikkei.com/article/DGXZQODE039AP0T00C21A8000000/ (日経新聞 2021年8月3日) 首相「往診・遠隔医療で協力を」 在宅療養で医師会長に
 菅義偉首相は3日、首相官邸で日本医師会の中川俊男会長らと面会し、新型コロナウイルス感染者への医療提供体制を強化するよう協力を要請した。「地域の診療所が往診やオンライン診療で患者の状況を把握し、適切な医療を提供するようお願いする」と述べた。政府は2日に示した新方針で感染が急拡大している地域は自宅療養を基本とし、入院は重症者や重症化のおそれが強い人を対象とすることにした。自宅療養を円滑に進める環境を整えるには医療機関の協力が不可欠と判断し、医師会による後押しを促した。中川氏は「特に自宅療養への対応に重点を置いた体制整備を進めている」と答えた。首相は血液中の酸素飽和度を測定するパルスオキシメーターの配布に加え「自宅宿泊療養の新型コロナ患者への往診の診療報酬を大きく拡充している」と指摘した。中川氏は「全国的な緊急事態宣言の発令で強力な感染防止対策が必要だ」と訴えた。医師の負担が過重にならないように人流抑制などの対策を講じるよう求めた。

*4-2-2:https://digital.asahi.com/articles/ASP856V0BP85PTIL024.html (朝日新聞 2021年8月5日) 自宅療養者向け訪問看護、大阪全域で 健康観察を強化
 大阪府は5日、新型コロナウイルス感染者のうち自宅療養者に対する訪問看護を府内全域で実施すると発表した。感染の急拡大に伴い自宅療養者も増加しており、健康観察を強化するのが狙いだ。府内の新規感染者は3~5日、3日続けて1千人を超えた。5日の府発表で、自宅で療養する無症状や軽症の人は4633人。「第4波」のピーク時には約1万5千人にのぼった。保健所は自宅療養者への健康観察を電話などで行い、血中酸素飽和度を測るパルスオキシメーターも配布する。しかし、感染者の増加が続けば保健所業務は逼迫(ひっぱく)し、対応しきれなくなる可能性もある。そこで府は7月から、和泉保健所管内などの訪問看護ステーションと連携し、保健所が必要だと判断した人について、本人の同意を得たうえで訪問看護を行う仕組みを広げてきた。府は医療用マスクやガウンなどを提供するほか、初期費用5万円、1回の訪問あたり2万円を支給する。7月は保健所で対応できる状況だったため、この仕組みの利用実績はないが、6日から府内108の訪問看護ステーションと協力し、実施範囲を府内全域に広げる。吉村洋文知事は5日、「感染者が増えてきたら保健所だけで健康観察を十分にやりきるのは難しい。自宅療養者の症状が急に悪くなることもある。早く治療し、早く治すことが、結果として病床確保にもつながる」と記者団に語った。

*4-3-1:https://news.yahoo.co.jp/articles/5fda340edb774d1ecd0f30f642ca3094497ad5fa (福祉新聞 2021/7/28) 市民が見た介護保険の20年 福祉フォーラム・ジャパンセミナー
 福祉フォーラム・ジャパン(渡邉芳樹会長)は7月10日、オンラインセミナー「市民がみた介護保険の20年」を開催した。講演した小竹雅子・市民福祉情報オフィス・ハスカップ主宰は、20年以上介護保険の電話相談を行い、厚生労働省の審議会を傍聴し続けてきた中で、「市民の声と専門家の意識にギャップを感じてきた。介護保険で高齢者の主体性がどこまで保障されるのかに関心を持ち続けてきた」と言う。講演では電話相談に寄せられた内容を交え、制度改正の動向を解説しながら市民目線で問題点を挙げた。2005年の改正では要介護者への給付と分けて要支援者への予防給付ができた。14年の改正では要支援者のホームヘルプとデイサービスが予防給付から地域支援事業(総合事業)に移され、特別養護老人ホームの利用は要介護3以上となった。こうした流れに対し、小竹氏は「利用者に選択権があるとして始まり、介護が必要と認定されれば給付が保障されていたはずなのに、いつの間にか予防重視型になってしまった」と指摘した。20年の要支援・要介護認定者669万人(4月)のうちサービス利用者は515万人(5月)。約4分の1は利用していないことを挙げ、「厚労省は家族で対応していると説明するが、自己負担を払えず利用できない人が一定数いるのではないか。そうだとすると、ゆとりのある高齢者しか給付を受けられないことになる」とし、実態を調査すべきと提起した。小竹氏は、ホームヘルプが抑制されていることも危惧した。同居家族がいる場合、生活援助を利用できないという解釈が市町村で広がったとし、「ホームヘルプは高齢者の自立支援に資することがないと批判を浴び、ヘルパーも減っている。厚労省は地域包括ケアを掲げているが、ヘルパーが減る中でどうやって地域での暮らしを支えることができるのか疑問だ」と述べた。そのほか、今年4月に要支援者が要介護認定を受けても、これまでの地域支援事業のデイサービスなどを引き続き利用できるよう見直されたことに対し、「要介護認定を受けても給付の対象にしなくても良いという仕組みであり、認定者に給付をするという介護保険の原則に穴が開いた」と心配した。講演後は参加者で意見交換も行われ、「予防給付や地域支援事業を拡大する方向性で制度を維持しようとするのはおかしい」と発言があり、セミナーで座長を務めた宮武剛副会長は「その点は大議論が必要だ」と応じた。

*4-3-2:https://www.nishinippon.co.jp/item/n/604539/ (西日本新聞社説 2020/4/29) 介護保険20年 抜本改革の議論始めよう
 これからの高齢者の介護を社会全体で担い続けることができるのか-。創設20年の節目を迎えた介護保険制度が大きな曲がり角にさしかかっている。2000年4月に「介護の社会化」を掲げ始まった制度だ。それまでは家族頼りだった介護を多様な民間サービスが担うようになった。家庭の事情などで余儀なくされる社会的入院の解消を促し、「老いた親の世話は同居する女性の役割」という社会通念を拭い去るのにも貢献した。社会保障の歴史に画期をなす挑戦だったと言える。この20年で、高齢化はさらに進んだ。要介護・要支援認定者は3倍に増え、必要な費用も3倍に膨らんだ。介護サービスの需要は急速に伸び、制度の維持が年々、困難になっている。何より深刻なのは現場の人手不足だろう。大変な仕事の割に収入が少ないイメージが人材確保の壁になっている。実際、介護職員の平均給与は全産業平均を大きく下回る。外国人材への期待も高いが、新たな在留資格「特定技能」による受け入れは進んでいない。団塊世代が75歳以上の後期高齢者になる25年には、約34万人の介護人材不足が見込まれる。国はロボットや情報通信技術の活用などで現場の負担を緩和するとともに、処遇改善にも本腰を入れるべきである。財源も心配だ。国は財政逼迫(ひっぱく)を受け、所得に応じて利用者負担を引き上げ、特別養護老人ホームの新規入所要件の厳格化などを進めてきた。「負担増」と「サービスの制限・縮小」だ。介護の必要性が低い利用者のサービスを全国一律の介護保険から切り離す動きも始まった。既に要支援者向けの訪問介護と通所介護は市町村に移管されている。要介護1、2の一部サービスの移管案も浮上している。急激な負担増は利用抑制を招き、生活の質や健康への悪影響も否定できない。市町村への事業移管には居住地によるサービス格差の懸念が多い。ともに慎重な検討が欠かせない。介護保険の財源は、自己負担を除けば保険料と公費(税金)で構成される。利用者増をにらんだ公費負担のアップや、保険料を払う年齢を現行40歳から引き下げることも検討せざるを得ないだろう。いずれにしろ国民的な合意形成が必要だ。急速な高齢化で「介護の社会化」が危うくなり、介護離職や老老介護も深刻な問題になってきた。それだけに所得や家族構成にかかわらず、必要とする人に適切なサービスを提供する介護保険の理念は今後も輝きを増すだろう。今後20年の社会を支えるため、制度の抜本的改革の議論を始めるべきである。

*4-3-3:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20210821&ng=DGKKZO75008650R20C21A8MM8000 (日経新聞 2021.8.21) 介護給付 抑制に「秘策」、59市町村が開始時から圧縮 高知・南国、個別支援で自立促す
 介護給付費(総合2面きょうのことば)の膨張が止まらない。2020年度は10兆円に達したもようで、介護保険制度が始まった00年度の3兆2400億円から3倍以上に膨らんだ。持続可能性を高めるには圧縮が急務となるが、全国をみると、すでに59市町村が削減に成功している。高齢者の自立生活の維持に向けた支援策など、取り組みからヒントを探った。高齢者1人当たりの給付費は保険者(市区町村を中心に、広域連合など全国1571団体)ごとに比較可能な18年度で26万円(利用者負担軽減の払い戻しなどを除く)と、制度開始時から11万円強増えた。そうした中、給付を減らしたのは18市41町村。市では高知県南国市の13.2%減を筆頭に、徳島県小松島市、北海道石狩市、沖縄県浦添市などが上位となった。町村では東京都小笠原村が46.9%減でトップ。北海道鶴居村、沖縄県与那国町が続く。高知県南国市はケアマネジャーだけでなく保健師や栄養士、理学療法士などが協力して介護予防に取り組み1人当たり給付費を01年度の28万円弱から24万円(18年度)まで減少させた。各分野の専門家を集めた「地域ケア会議」で身体的負担の少ない公営住宅を紹介したり、水分摂取の不足などを警告したりと個別の支援プランを策定。食事や運動なども精緻に計画・検証し、多くの検討事例で自立生活が維持できるようになった。高知県は1人当たりの医療費(市町村国保)が高水準にあり、同市も全国平均を2割(18年度、年齢調整前)上回っている。ただ、01年度比では4.4%減少させており、担当者は「介護にも医療にもかからない健康な高齢者を増やしていくことで、結果的に給付費・医療費双方の抑制につなげていきたい」と話す。沖縄県宜野湾市は介護に頼らず最小限の支援だけで自立した生活を続けられるよう、安価に利用できるサービス拡充に力を入れる。本来2万3400円のデイサービスを、市の助成で週1回まで最安2340円(1割負担になる所得層の場合)で利用できるようにしたほか、今秋には手すりをつけるなどの住宅改修も安価にできるようにする。給付増の要因になりやすい施設入所を生活に支障がない範囲で可能な限り抑制しようと取り組むのは沖縄県名護市。配食サービス普及に力を注ぎ「食事の心配をしなくてよければ在宅で過ごしたい」という高齢者を後押しする。新型コロナウイルス禍の外出自粛の影響もあり、20年度は前年度比1.5倍の延べ3万1000食近くを提供した。東京都小笠原村は名護市とは逆に村営有料老人ホームを新設したことが奏功した。以前は高齢者の多くが比較的高価な都区部の施設に入所、負担義務のある同村の給付が膨張する要因となっていた。給付費を抑制した自治体は相対的に農業などの1次産業が強く、現役で働き続ける高齢者が多い傾向がある。さらに削減した市町村内でも地域差は顕著で、10.9%減少の北海道石狩市では札幌市に隣接する市街地エリアに比べ市町村合併で編入された漁村部で介護認定が重度化するタイミングが遅かった。日々の暮らしが予防の下地になる。こうしたことを受け積極的に身体を動かすことに取り組む自治体も増えている。北海道鶴居村や天塩町は、クラブを作って運動を促すことで体力を落とさないようにしたり、糖尿病や肥満の人に個別指導をしたりして機能低下を防ぐ。両自治体は高齢者1人当たりの給付費をそれぞれ36.7%、25.3%減少させた。

*4-4:https://www.nikkei.com/article/DGKKZO74827960X10C21A8MM8000/ (日経新聞 2021年8月17日) コロナ遠隔診療 報酬2倍、厚労省、自宅療養急増に対応
 厚生労働省は16日、新型コロナウイルスの自宅療養者らを電話やオンラインで診療した場合の診療報酬を2倍超に引き上げると自治体に通知した。自宅やホテルなどで療養する人が急増していることに対応する。菅義偉首相は同日、記者団に「医療体制の構築が極めて大事だ。自宅にいる患者への電話による診療報酬を引き上げる」と述べた。電話やオンラインでの初診の報酬は従来の2140円に2500円を上乗せし、倍以上にする。再診は730円に2500円を加算し、4倍超に引き上げる。感染拡大が続く東京都内では自宅療養者が2万人を超えた。入院・療養先が未定の人も1万人を上回る。診療報酬の手当てによって医療機関による遠隔の支援を促す。対面診療では感染防護対策などを理由に既に診療報酬を加算している。厚労省はコロナ対応の臨時施設に医師らを派遣する際の補助金も引き上げる。健康管理を強化した宿泊療養施設、入院待機ステーションなども念頭に置く。医師は1人1時間あたり今の倍の1万5100円となる。

<国・地方自治体の財源>
*5-1-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20210826&ng=DGKKZO75127550V20C21A8EP0000 (日経新聞 2021.8.26) 地熱の本格調査、国立公園内で、発電量、30年度に1%目標 安定供給に寄与
 経済産業省は地熱発電所を増やすため、国立公園内などに適地を見つける調査を本格化する。環境省と連携し、北海道や九州など30カ所を現地調査する。国の調査はこれまで公園外を中心に5カ所だけだった。太陽光発電や風力発電よりも出力の変動が小さく、温暖化ガスの排出削減と電力供給の安定に役立つと期待される。2022年度予算の概算要求に資源量の調査費など地熱発電の開発支援として183億円を盛り込む。110億円を確保した21年度予算から6割増やす。温暖化ガス排出量を30年度までに13年度比で46%減らす目標の達成に向け、地熱発電で30年度に総発電量の1%を賄う計画だ。地熱発電の適地の8割は国立公園などの自然公園内とされる。環境省はこれまで自然環境や景観を損なうといった理由で開発に慎重だった。今年度に入って小泉進次郎環境相が自然公園内の開発を急ぐと表明した。開発許可の要件を明確にするなどして、事業化を支援する。経産省の予算額の過半は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)が担う国の調査に充てる。地表で人工的に地震波を発生させ地下の構造を把握する。地震波が跳ね返ってくる速さなどをもとに地熱発電に使える熱水や水蒸気がたまる場所がわかる。地表調査と簡単な掘削調査に2年ほどかける。有望な場所と判断すれば、開発したい民間事業者を募って引き継ぐ。すでに地熱発電を手がける九州電力などの大手電力や資源開発会社が候補となる。経産省は調査地の半分が事業化につながるとみる。JOGMECは20年度に調査を始め、北海道の大雪山や岩手の八幡平などの5地点を調べた。新たに北海道の支笏洞爺国立公園や新潟と長野の妙高戸隠連山国立公園、熊本と大分にまたがる阿蘇くじゅう国立公園などの30カ所ほどを調査する。1つの公園内の複数の地点を調べる場合もある。21、22年度にそれぞれ15カ所程度調べる。21年度は数カ所の予定だったが、予算の付け替えで拡大する。経産省は公園を管理する環境省などと調整に入った。経産省によると、日本の地熱の資源量は米国とインドネシアに次ぐ世界3位の2347万キロワットにのぼるが、発電の設備容量は60万キロワットにとどまる。資源量が半分未満のフィリピンやニュージーランド、メキシコ、イタリアなどよりも設備が少なく、伸ばせる余地は大きい。7月に示した次期エネルギー基本計画の原案で「安定的に発電できるベースロード電源」と位置づけた。総発電量に占める再生可能エネルギーの比率を19年度の18%から30年度に36~38%に高め、このうち地熱は0.3%から1%に引き上げる。設備容量を150万キロワット程度に増やす必要がある。すでに開発のめどが立った場所などの発電開始で現行の60万キロワットから100万キロワットに引き上げ、国の調査地の事業化でさらに50万キロワット上積みする。調査開始から発電までの期間は急いでも8年程度。30年度に間に合わせるには適地探しはギリギリのタイミングとなっている。

*5-1-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20210823&ng=DGKKZO75023210T20C21A8MM8000 (日経新聞 2021.8.23) 再生エネ導入に最大75%補助 環境省、自治体の脱炭素支援
 環境省は再生可能エネルギー導入などで地域単位で先行して電力消費に伴う温暖化ガス排出実質ゼロを目指す自治体を支援する。事業費の最大75%を補助する交付金を設ける。2030年度までに少なくとも100カ所で電力の脱炭素を実現し、成功モデルをつくる。22年度予算の概算要求に「地域脱炭素移行・再エネ推進交付金」を盛り込む。初年度は200億円を想定し、20~40自治体を対象に30年度まで継続支援する。交付金で設備費の2分の1から4分の3をまかなう。温暖化ガス排出量を30年度までに13年度比で46%減らす目標の実現につなげる。市街地や団地、離島など地域単位で家庭や商業施設といった民生部門の実質ゼロを目指す。事業の進捗に合わせて翌年度への繰り越しや設備導入の順番変更をできるようにし自由度を高める。民間事業者にも使える。自治体は9年間の計画を作る。太陽光など再生エネ設備の導入のほか、蓄電池や水素設備による再生エネの活用、建物の断熱改修などに一体的に取り組むことが条件だ。交付金制度の法制化も検討している。

*5-2-1:https://www.nikkei.com/article/DGXKZO60178610Z00C20A6EA2000/ (日経新聞 2020年6月10日) 地方財政とは 自前の税収は4割
▼地方財政 総務省は毎年末、都道府県と市区町村を合わせた地方自治体全体の翌年度の収支などの見通しを地方財政計画としてまとめる。財源不足はバブル崩壊後の1994年度以降、急激に拡大。リーマン・ショック後の2010年度には過去最大の18兆円に達した。近年はアベノミクスによる景気拡大で大幅に縮小してきた。直近の18年度決算によると、歳入は地方税が4割を占める。地方財源として国が配分する地方交付税は2割弱。借金である地方債は1割強だ。自前の財源だけで財政運営できる自治体は少ない。歳出は地方債を償還(返済)する公債費や人件費など必ず支払わなければいけない義務的経費が9割を超える。コロナ禍の前から財政は硬直的で余裕がないと言える。地方債などの借入金残高は14年度ごろから緩やかに減少し、20年度は前年度から約3兆円少ない189兆円を見込んでいた。足元では新型コロナウイルス対策で各自治体が家計や企業の緊急支援に動く。歳出の急増を政府からの地方創生臨時交付金などで賄いきれなければ財源不足が大きくなる。借入金残高も再び増勢に転じる見通しだ。

*5-2-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20210813&ng=DGKKZO74745310T10C21A8EAC000 (日経新聞 2021.8.13) 脱・大都市 町村も受け皿に、23区若者、移住に関心48%
 新型コロナウイルスの感染拡大は人口の流れに大きな影響を与えた。総務省が公表した住民基本台帳に基づく人口動態調査をみると、2020年の1年間で大都市から地方への移動が鮮明になった。都会を避け移住を決断した人が選んだのはどのような地域だったのか。東京、関西、名古屋の三大都市圏の人口の合計は13年の調査開始以来初めて減少した。東京都は20年の転入者数から転出者数を引いた転入超過(帰化など含む)が6万人ほどで、19年に比べておよそ2万7千人減った。日本人の人口の増減率は46道府県で改善し、東京だけ伸びが鈍った。新型コロナで東京など大都市から地方を受け皿に人口が流れた傾向がデータから読み取れる。人口増の多い町村を見ると、熊本県菊陽町が556人で1位となり、長野県軽井沢町が502人と続いた。地方創生の取り組みとして、子育て世代への支援の手厚さが共通する。菊陽町は子どもの医療費の無償化や企業誘致に取り組み、人口が増え続ける。住宅地を整備し、指定の区域に転入した人に最大100万円の補助金を出す。子どもが生まれたら10万円を支給する。別荘地として有名な軽井沢町は東京駅まで新幹線で1時間程度で、通勤圏となっている。総務省は「テレワークの普及で移住者が増えた」と分析する。幼小中の一貫校の設置といった教育環境の整備も注目される。沖縄県南風原町は那覇市に近く交通の利便性がよい。住宅地を開発し、中学生までの子どもの通院費無料など子育てをする若年層への支援に力を入れる。8位の京都府大山崎町も「待機児童ゼロ」など育児環境の良さをアピールする。「新型コロナを機に地方への関心が高まっている。東京一極集中の是正につなげる」。秋田県出身の菅義偉首相は地方創生への思いを強調する。内閣府の調査によると、東京23区の20歳代で地方移住に関心のある人は19年末時点で39%だった。新型コロナの感染拡大後の21年4~5月は48%と、10ポイント近く上昇した。意識は変わった。移住希望者は既存の政府の支援策を活用できる。総務省は09年度から「地域おこし協力隊」を各地へ派遣する。1~3年程度、地方に移り住んで地域振興の担い手になってもらい、定住につなげる。13年度に1000人ほどの隊員は増加し、20年度にはおよそ5400人になった。24年度は8000人を目指す。縁のない土地での生活に慣れるまでは大変だ。21年度から隊員の経験者による移住生活のサポートを始めた。協力隊の任期終了後に定住した人は多くが就業・起業する。自治体職員などの行政関係が最も多く、観光業、農林水産業が続いた。最近はデジタル分野の素養や接客のノウハウがある人も歓迎されるという。新型コロナの感染拡大をきっかけにテレワークが普及すれば、仕事を続けたままの移住という選択肢も出てくる。政府は「転職なき移住」の実現に向けた環境整備も進める。仕事を辞め新たな土地に定住するのは覚悟がいる。内閣官房の高原剛地方創生総括官は「若い人の職の不安が移住の障壁だった。転職なき移住はその心配が不要」と説く。移住先が気に入らなければ、元の生活に戻れるという利点もある。個人に加え、企業にも行動を促す。内閣府は総額100億円の「地方創生テレワーク交付金」を創設した。大都市部の企業が地方でテレワークの拠点を開けるように「サテライトオフィス」の設置の支援も始めた。仕事ばかりではなく、日常生活の全般を支える仕組みも不可欠になる。武田良太総務相は「遠隔教育、遠隔診療など住みたい地域に住みながら、必要なサービスが受けられる取り組みが広がっている」と話す。

*5-3-1:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO61880510S0A720C2TJ2000/ (日経新聞 2020年7月27日) ごみ発電、海外で受注倍増 日立造船がAIで安定焼却
 日本のごみ焼却発電プラントメーカーが、海外での受注を伸ばしている。日立造船など上位3社の累計受注件数は5年で倍増した。各社は人工知能(AI)で燃焼を安定させる最新技術を投入し、ごみの埋め立てを規制する欧州や、インフラ需要が拡大する新興国市場をさらに切り開く。ごみ焼却発電プラントは、ごみを燃やした際の廃熱を利用してタービンを回し発電する。日本企業が技術力で先行する分野だ。日立造船は2月、子会社の日立造船イノバ(スイス)を通じ、英国レスターシャー州のプラントを受注した。発電出力は4万2000キロワットで、総送電量は一般家庭8万世帯分の年間消費量に相当する。英国でのプラント受注は12件目となった。
●EU埋め立て規制が追い風
 欧州で受注が伸びる背景には、欧州連合(EU)が2015年に定めた「埋め立て規制に関する指令」がある。埋め立てで処理するごみの比率を30年までに10%以下に抑えるという内容だ。経済協力開発機構(OECD)によると、ごみ発電の技術で先行する日本は、埋め立て比率が1%未満。対して英国は14%、フランスは20%、イタリアは23%と高い。世界エネルギー会議は欧州のごみ発電プラント市場が21年に51億ドル(5500億円)と、10年前の2倍に膨らむと予測する。日本勢は広がる商機を狙う。10年には日立造船がスイス、14年には日鉄エンジニアリングとJFEエンジニアリングがそれぞれドイツの同業を買収し、海外進出の足がかりをつくった。3社の海外での累計受注件数は19年度末で84件で、14年度末の37件から倍増している。スイスのコンサルティング大手の調査では、19年に欧州・中東・アフリカを合わせた市場のシェアで、日本勢が過半を占めた。各社はさらに受注を伸ばすべく、技術開発に取り組んでいる。力を入れるのが無人化だ。日立造船は日本IBMと組み、焼却炉内の温度を自動で安定させる技術を今年度中に開発する。蒸気の発生量などの情報をもとに、数分~数十分後の温度をAIで予測する。発電に最適な温度を下回る場合には、燃えやすいごみを投入するなどして温度を一定に保つ。焼却炉にはプラスチックや生ごみなど様々なごみが投入され、それぞれの性質で燃焼状態が変わる。現在は温度が安定しない場合、作業員が経験に基づき投入するごみを選んでいる。人材頼みだった作業を自動化し、安定した発電を実現する。JFEエンジもAIを使った自動運転プログラムを開発した。焼却炉内の様子を1分ごとに撮影し、温度や燃え方を把握。供給する空気の量や、投入するごみの量を調節して温度を一定に保つ。国内プラントで実証実験を進めており、発生する蒸気量が安定する効果も確認できたという。大下元社長は「日本の環境技術は競争力も高く、今後も欧州など海外で積極的に受注獲得に動いていく」と語る。
●天候の影響なし
 世界には日本以外にもごみ活用の先進国がある。再生可能エネルギーの比率が6割を超えるスウェーデンは、国内で発生するごみの約半分を焼却して発電に利用し、余熱も暖房用などに家庭に供給している。肥料などにも使うため自国のごみでは足らず、近隣諸国からごみを輸入している。国際エネルギー機関(IEA)によると、世界の電力消費量に占めるバイオマス発電の量は約1割で、ごみ発電はさらにその一部になる。規模は小さいが、ごみが排出される限り安定的に発電できる。再生エネでも太陽光や風力は天候や時間帯で発電量がぶれるデメリットがある。ごみ発電は足元では欧州で需要が拡大しているが、今後は経済発展に伴ってインフラ需要が広がるアジアが市場をけん引するとみられる。アジアのごみ焼却発電プラント市場は21年に64億ドル(約6900億円)と、10年前と比べ3.7倍になる見通しだ。日鉄エンジはNTTデータなどとマレーシアでごみ発電を導入するための調査に取り組む。中国のプラントメーカーも台頭するなか、日本勢は効率性の高い技術で優位を保とうとしている。
*国内ごみ発電の余剰電力、新電力が9割落札
 日本国内では新電力がごみ発電による電力供給の主役になっている。エネルギー調査会社のリム情報開発(東京・中央)によると、2020年に実施されたごみ焼却施設の余剰電力入札50件のうち、94%にあたる47件が新電力に落札された。比率は4年前の86%からさらに上昇した。事業に必要な電力を100%再生可能エネルギーでまかなうことを目指す国際的な企業連合「RE100」に加盟する日本企業は30社を超える。NTTグループの新電力大手、エネット(東京・港)の池田ひなた経営企画部部長は「環境負荷の低い電力を要望するお客さんは年々増えている」と話す。新電力は19年度の国内の電力販売量の15.4%を占めるが、ほとんどの企業が太陽光や風力発電など再生エネの自前設備を持たない。そこで目を付けたのが、ごみ焼却施設が生み出す電力だ。19年2月の神戸市東部環境センター(神戸市)の入札では、大手の関西電力と新電力の計8社が競り合い、丸紅新電力(東京・中央)が落札した。人口減少が続く日本では、ごみ焼却発電プラントの増加は見込めない。限られた再生エネの安定電源の争奪戦は激化しそうだ。

*5-3-2:https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCC194EP0Z10C21A6000000/ (日経新聞 2021年7月10日) 「脱ごみ社会」自治体挑む 長野・川上村、生ごみゼロ
 全国のごみ処理費は年間2兆円を超える。増加傾向にあり10年前に比べ1割増えた。人口減の進展に伴う担い手不足の懸念も強まっている。財政も厳しさを増す中、持続可能な地域を築くためには排出削減への戦略的な施策が欠かせない。企業が環境意識を高める中、先進的に取り組む自治体では新たな産業を呼び込むなど、活性化にも寄与し始めた。環境省が3月にまとめた一般廃棄物処理の実態調査(2019年度)によると、1人1日あたりの排出量は918グラム。都道府県で最少は長野県で816グラムだった。京都府(836グラム)、滋賀県(837グラム)が続く。長野県は800グラム以下に減少させる目標「チャレンジ800」を策定。啓発を進め、14年度以降、日本一を維持する。全77市町村のうち60がごみ袋を有料化。記名式に踏み込んだ自治体も同じく60あった。自治体のごみ問題に詳しい山谷修作東洋大名誉教授は「有料化や記名式はコストの可視化や排出責任の明確化につながり減量への動機づけになる」と指摘する。全国自治体で一番排出量が少ない川上村(有料・記名、294グラム)は、可燃ごみの4割を占める生ごみの回収を一切せず各家庭で堆肥化する。生ごみは水分含有量でも自治体を悩ませる。そのままでは焼却炉の温度を下げてしまい、ダイオキシン発生を誘発。一方で温度を維持しようとすると、燃料費がかさむ。財政難から3基の焼却炉すべてを耐用年数を超えて運用する上田市(有料・記名、770グラム)は、16年から自己処理を促す「生ごみ出しません袋」の無料配布を始めた。畑がない家にもメリットを直接感じてもらおうと、乾燥生ごみ1キログラムにつき1ポイントとする事業も開始。5ポイント集めれば市内のJA直売所で500円分の野菜などに交換できる。2位の京都府では、京都大と連携して発生抑制に取り組む京都市(836グラム)がけん引する。1980年から発生場所を特定する「細組成調査」を開始。市はピーク時の年間排出量82万トン(00年度、1人あたり排出量は1608グラム)を半減する目標も策定した。18年度に目標を達成し、処理費は4割減の224億円(20年度)にまで減った。減量のメリットは処理に費用がかかるケースが多い事業者にとっても大きい。東京都多摩市は15年「利益率5%の事業者が50万円のもうけを出すには1000万円の売り上げ増が必要。処理(持ち込みの場合10キログラム350円)に年500万円を費やすなら、ごみ1割減でも50万円の経費削減となり同等の効果を生む」と具体例を挙げて可視化。事業所1人あたり排出量の2割減につなげた。環境負荷低減が世界的な要請となる中、取り組みは活性化にも直結する。全国に先駆け、焼却・埋め立てごみをゼロにする宣言を行った徳島県上勝町には、町の人口(1500人)を超える約2000人が例年視察などに訪れる。調査時点でもなお539グラム(市町村で30位)を排出しているが、住民自ら45品目に分別し、資源化を進めることで年間処理費を6割減程度まで抑制した。焼却炉は00年、ダイオキシン類対策特別措置法の基準を満たさなかったことを機に廃止。環境都市としてブランド力が高まり、15年に町外事業者がビール製造場を新設した。キャンプ場などレジャー施設も増えている。

*5-4:https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUF1628X016072021000000/ (日経新聞 2021年7月16日) 大阪市、本庁舎の電力すべて再生エネに 12月から
 大阪市は16日、市役所本庁舎で使用する電力について12月から再生可能エネルギーに切り替えると発表した。入札で9月下旬まで事業者を募り、太陽光やバイオマス発電など再生エネ由来100%の電力による供給を求める。年間の使用電力量は約656万キロワット時を予定する。現在、市の本庁舎は中部電力と電力契約をしており、再生エネに限定した調達はしていない。府・市が3月に発表した「おおさかスマートエネルギープラン」では、府や市の庁舎で再生エネ電力の調達を推進すると表明しており、それに沿った取り組みだ。松井一郎大阪市長は同日、記者団に対して「SDGs(持続可能な開発目標)は25年の国際博覧会(大阪・関西万博)のテーマでもある。我々ができるところから持続可能な社会をつくっていきたい」と話した。府でも4月から本庁舎などで使用する電力を再生エネ由来100%の調達に切り替えた。日立造船がバイオマス発電により電力を供給している。

<人材不足と外国人労働者及び難民の受け入れについて>
PS(2021/8/29追加):*6-1-1のように、アフガニスタンで反政府勢力タリバンが首都カブールを勢力下に置いた事態を受け、「タリバンの司令官の1人が公開処刑・手足の切断・投石による処罰等の実施を公言した」とBBCが報じているため、難民支援の弁護士団体が、2021年8月16日、アフガニスタン出身者への緊急措置による迅速な保護を求める声明を公表した。
 その内容は、①我が国に庇護を求めるアフガニスタン出身者に対し、難民認定手続の審査を待たずに、アフガニスタン出身者であることが確認できれば、緊急措置として迅速に安定的な在留資格を付与すること ②難民認定手続外で在留資格の変更を求めるアフガニスタン出身者に対しても、緊急措置として迅速に安定的な在留資格への変更を認めること ③前記1と2で付与又は許可する在留資格は最低でも在留期間1年とし、更新を可能とすること ④在留するアフガニスタン人が日本への家族呼び寄せを希望する場合、在留資格認定証明書の許可要件の緩和や大使館での迅速な査証の発給など、最大限の配慮をすること などである。
 しかし、*6-1-2のように、アフガニスタンにいる日本人と日本大使館の外国人スタッフらを退避させる目的で派遣していた航空自衛隊の輸送機は、8月26日現在、米国の要請を受けて迫害の恐れがあるアフガニスタン人14人を首都カブールの空港から隣国パキスタンに退避させただけだ。そして、日本政府は、カブール空港内で活動していた外務・防衛両省の支援要員を撤収させ、輸送機を安全なパキスタンのイスラマバードに待機させているとのことである。つまり、日本は一刻を争う大使館スタッフ等のアフガニスタン人の移動も行わず、退避を希望する日本大使館やJICAのアフガニスタン人等の現地スタッフとその家族ら約500人を残したまま、外務省が「現地に残る日本人は、ごく少数」と説明しているわけだ。本当に人命を第一に考える国であれば、このような場合は、日本の関係施設で働いていたアフガニスタン人を一刻も早く出国させるためにあらうる手を尽くす筈で、そのために外務・防衛両省の支援要員を派遣しているため、応急のビザを出して日本に退避させ、その後で難民認定を行うことも容易である。そして、それもできないようなら外務・防衛両省から派遣した意味がない。
 ただ、日本におけるテロリズムの定義は、特定秘密保護法第12条第2項で、「政治その他の主義主張に基づき、国家若しくは他人にこれを強要し、又は社会に不安若しくは恐怖を与える目的で人を殺傷し、又は重要な施設その他の物を破壊するための活動を言う」とされているため、どんな国家であっても国を作ってしまえばその権力に逆らう者がテロリストとされる。そのため、アフガニスタンの事態は、日本における「テロリズム」の定義のおかしさをあぶり出し、この考え方が政治亡命せざるを得ない人への冷たい仕打ちに繋がっていると思われる。
 なお、日本という国が今でも人命を大切に考えていないことは、*6-2の名古屋入管で死亡したスリランカ人女性ウィシュマさんの事件からも明らかで、ウィシュマさんの死亡後、入管庁が公開した最終報告書は「死因の特定は困難」とし、行政文書の開示請求で名古屋入管が送ってきたのはほぼ黒塗りの約1万5千枚の文書という不誠実なものだった。そのため、私も、国連も問題視している非人道的な入管制度が抜本から変わらない限り、日本が外国人労働者と共存し、難民を受け入れて成長できる国になることはないと考える。


 2021.6.3日経新聞        2021.6.17Goo        2021.8.29日経新聞

(図の説明:左図は、先進国の難民認定数・認定率だが、日本は2019年に44人、0.4%と著しく低く、中央の図のように、近くのミャンマー出身者の難民認定数・認定率でさえ0人、0%だ。また、右図は、アフガニスタンから各国が退避支援した人数だが、日本は全部で15人とやる気のなさが際立っている)

*6-1-1:https://news.yahoo.co.jp/articles/cefcca8b5d95b8c7e1a0859e2372961d5baf66f2 (Yahoo 2021/8/17) 「在日アフガニスタン人の迅速な保護を」難民支援の弁護士らが声明
 アフガニスタンで反政府勢力タリバンが首都カブールを勢力下に置くなどの事態を受け、難民を支援する弁護士の団体「全国難民弁護団連絡会議」は8月16日、アフガニスタン出身者への緊急措置による迅速な保護を求める声明を公表した。声明は、法務省や外務省に宛て送付されている。全国難民弁護団連絡会議では、現在のアフガニスタンの状況について、タリバン司令官の1人が、公開処刑、手足の切断、投石による処罰などの実施を公言したとBBCが報じていることを指摘。「タリバンの理念に反する者、女性やマイノリティへの人権侵害が更に広範 化し悪化することが懸念されます」としている。そのため、在日アフガニスタン人から、本国の家族を日本に呼び寄せることはできないかという訴えが弁護士や支援関係者に寄せられているという。全国難民弁護団連絡会議は、現在、比較的多くのアフガニスタン出身の庇護希望者が日本で在留資格を得ているものの、難民として認定されず、人道配慮による在留が認められないケースもあると指摘。アフガニスタンで迫害や重大な危害を受けるおそれがあるアフガニスタン出身の在留者らを本国に送還しないよう求めている。
●「迅速な在留資格付与」求める
 声明では、次のことを求めている。
  1、我が国に庇護を求めるアフガニスタン出身者に対し、難民認定手続の審査を待たず
    に、アフガニスタン出身者であることが確認でき次第、緊急措置として迅速に安定的
    な在留資格を付与すること
  2、難民認定手続外で在留資格の変更を求めるアフガニスタン出身者に対しても、緊急
    措置として迅速に安定的な在留資格への変更を認めること
  3、前記1と2で付与又は許可する在留資格は最低でも在留期間1年とし、更新を可能と
    すること
  4、在留するアフガニスタン人が日本への家族呼び寄せを希望する場合、在留資格認定
    証明書の許可要件の緩和や大使館での迅速な査証の発給など、最大限の配慮を
    すること

*6-1-2:https://digital.asahi.com/articles/DA3S15025646.html (朝日新聞 2021年8月29日) 自衛隊機、アフガン人輸送 14人、米の要請受け隣国へ
 アフガニスタンにいる日本人や日本大使館の外国人スタッフらを退避させるために派遣されていた航空自衛隊の輸送機が26日、アフガニスタン人14人を首都カブールの空港から隣国パキスタンに退避させていたことがわかった。米国の要請を受けて運んだ。今回の派遣の根拠となった自衛隊法84条の4「在外邦人等の輸送」に基づき、外国人を輸送したのは初めて。複数の政府関係者が明らかにした。14人は旧政権の政府関係者らで、「国内にとどまれば、迫害される恐れがあった」という。輸送機は25日以降、カブールの空港に複数回降り立った。だが、治安悪化などの影響で、日本が退避対象としていた大使館スタッフなどのアフガニスタン人を、空港に移動させることはできなかった。27日には、退避を望んだ日本人1人をC130輸送機でパキスタンの首都イスラマバードに運んだ。外務省は現地に残る日本人は「ごく少数」と説明。今回は退避を希望していなかった、としている。一方、退避を希望する日本大使館や国際協力機構(JICA)のアフガニスタン人などの現地スタッフとその家族らは残されたまま。政府関係者によると、そうした人は約500人規模になるとみられる。自衛隊法84条の4は「外国における災害、騒乱その他の緊急事態」に際し、防衛相が外相からの依頼に基づいて、輸送を行う。日本人だけでなく、外国人も運べると規定する。過去4件実施したが、運んだのはいずれも日本人だった。政府は、カブールの空港内で活動していた外務、防衛両省の支援要員をいったん撤収させた。だが、輸送機をイスラマバードに待機させており、「退避に向けた努力を継続する」としている。

*6-2:https://www.fnn.jp/articles/-/227546 (FNN 2021年8月21日) 「“鼻から牛乳”は日本のジョークです」ウィシュマさん映像の全容判明
 名古屋入管に収容中死亡したスリランカ人女性のウィシュマさんの問題について、遺族にのみ開示された監視カメラの映像の全容がわかった。そこに映し出されていたのは、日々衰弱しながらも生きようとしたウィシュマさんの姿と入管職員の人権を蹂躙する非人道的な行為だった。ともに映像を見た従姉妹マンジャリさんに映像の詳細を時系列で聞いた。
●「“鼻から牛乳”は日本のジョークです」と職員が説明
▽3月1日午後9時32分から37分の5分間。
職員2人が部屋にいてベッドに座っているウィシュマさんに薬を渡す。「喉の奥まで薬を入れてね」と職員が言うが、ウィシュマさんは水を飲んだら嘔吐してしまう。そのあとウィシュマさんが「コーヒー」と言って、職員が紙パックのカフェオレを渡す。職員がウィシュマさんの嘔吐のあとを拭こうとすると、ウィシュマさんがカフェオレを吹き出し、それを見た職員が「鼻から牛乳や」と言って笑った。ウィシュマさんは「コーヒーだけ飲める」と語って映像は終わった。
この映像を見ながら入管庁の職員は「これは日本のジョークです。ウィシュマさんと仲良くするための」と遺族らに説明した。これに対してポールニマさんが怒り「こういう状況で冗談を言うのか」と言うと職員は黙り込んだ。この頃になるとワヨミさんはずっと泣いていた。
●「痛い」と訴えても「しょうがない」と嘲る職員
▽3月2日午後6時45分から47分の2分間。
ベッドに寝ているウィシュマさんを職員が動かそうとして、服や手を引っ張るとウィシュマさんは大声で「痛い」と訴える。職員は「自分で身体を動かさないから、痛いのはしょうがない」「食べて寝るだけだから身体が重くなる」と嘲るように言う。なぜ身体を動かそうとしたのか説明はない。
▽3月3日午後4時58分から5時10分の12分間。
部屋には職員1人と白衣を着た看護師がいる。ウィシュマさんはベッドに寝ていて、「まるで遺体のように動かない」(マンジャリさん)。看護師は体温と血圧を測り、いろいろ話しながらウィシュマさんの手のマッサージをする。
看護師はウィシュマさんに手を握ったり広げたりするように言うが、ウィシュマさんは出来ない。さらに看護師はウィシュマさんの腕を上げ下げするが、大きな声で痛がる。ウィシュマさんは大きな声で痛がったが看護師は腕の上げ下げを続けた
●「本当に看護師なのか」と遺族は訝しがった
 看護師は「明日先生に会うから症状を全部言うように。ご飯を食べられない、歩けない、耳鳴りがする、頭の中が工場みたい(幻覚をみる)」と言うと、ウィシュマさんは「死にたい」と言う。看護師は「日本人の金持ちの恋人を探して結婚して幸せになるんじゃないの」と言う。そのあとも看護師は4、5回「明日先生に症状を言うように」と繰り返した。ウィシュマさんが「目も見えない」というと「それも言ってね」というだけだった。この映像を見ながらワヨミさんの夫が「この人は本当に看護師なのか。こんなに衰弱している人になぜ腕を上げ下げさせるのか」と訝しがった。これに対して佐々木聖子入管庁長官は「この人は週5回入管に来る看護師だ」と答えた。この後「時間もかかったので休憩しましょう」となり、遺族は休憩室に移ったがワヨミさんが大声で泣きだし嘔吐した。そこで「これ以上映像を見るのはやめよう」と、代理人の指宿昭一弁護士と相談して、映像を続けてみることを中止した。これが12日遺族に開示された映像の全容とその日の遺族の姿だ。映像を見た後ワヨミさんは記者団の前で「お姉さんは犬のような扱いを受けた」と泣きながら訴えた
●黒塗りの1万5千枚の文書が意味するものは
 最後の映像から3日後、ウィシュマさんは死亡した。入管庁の公開した最終報告書には、死因の特定は困難だとしている。遺族の代理人の弁護士団は、収容中の状況をさらに詳しく調べるため名古屋入管に対して行政文書の開示請求を行った。しかし名古屋入管から送られてきたのはほぼ黒塗りの約1万5千枚の文書だった。筆者はこれまでの取材を振り返りながら、入管庁や名古屋入管の職員はなぜ人命を蔑ろにし、人の尊厳を踏みにじる行為を平気で行えるようになったのだろうと考えた。遺族の代理人の1人である駒井知会弁護士はこう語る。「東京入管に朝行くと、割とお洒落な服を着た沢山の若者たちが奥の入口に吸い込まれていくのを見ます。若者たちは建物の職員控え室で入管の紺の制服に着替えるのでしょう。若い彼ら、彼女らが誇りを持って職場に向かえる日が来るためにも私たちは戦いたいです」
●すべての映像を公開し入管制度の国民的議論を
 いまの入管制度と組織が変わらない限り、ウィシュマさんのような悲劇は必ず繰り返されるだろう。そしてこの人権を無視し、非人道的な行為に加担させられるのは日本の前途ある若者なのだ。国連も問題視する非人道的な入管制度が抜本から変わらぬ限り、日本という国に未来はこない。まずはウィシュマさんのすべての映像を公開し、国民1人1人が入管施設の現実を直視したうえで議論を始めるべきだ。映像の公開が無い限り、政府は人権を軽視し国民から真実を隠そうとしていると言わざるを得ない。

<産業の付加価値向上と教育・研究>
PS(2021年8月30日):産業を高度化して付加価値を高めるには科学技術・教育・研究が重要だが、*7-1-1のように、この面でも日本の研究力は低落の一途を辿り、注目論文数が世界10位に転落した。高コスト構造により、国内の製造業が比較優位性を持てず産業が海外流出すれば、それに関わる科学技術や研究も低調になるのは必然で、科学技術や研究が低調になれば国内の製造業の比較優位性がさらに低くなるという悪循環が生じる。
 その結果、日本の国際的な存在感が低下して世界10位に落ちたことについて、*7-1-1は、①2019年の研究開発費は18兆円(名目額、購買力平価換算)でなお世界3位 ②大学関係者の中では、低迷のきっかけとして2004年の国立大学法人化を挙げる声が多い ③注目論文の国別の世界シェアは、中国24.8%、米国22.9%、英国5.4%、ドイツ4.5%で、日本は2.3%に留まる ④全体の論文数も現在は4位で2000年代半ばから急落 ⑤博士号取得者が日本だけ減少 ⑥博士人材が企業内でうまく活用されていない ⑦日本が低迷する要因は、大学教員の研究時間が減っていること ⑧『選択と集中』ではなく、個々の研究レベルを上げる政策の中で取り組むべき としている。
 しかし、研究開発費は世界3位で少ない方ではなく、人口もドイツ(約84百万人)・英国(約68百万人)より多いため、①②⑦は主たる原因ではなく、③④は⑧のように「選択と集中」で世界が注目するようなイノベーションを含む研究がやりにくく、注目される論文を書くと細かいケチをつけて足を引っ張るメディアの多いことが原因だ。⑤は、⑥のように、時間とカネをかけて博士になっても企業で活用されず、大学や研究所でも短期の任期雇用しかなければ、博士号の取得は本人にとって費用対効果が合わないのである。
 なお、突然、注目論文を書けるようになるわけではなく、初等・中等教育による基礎があって高等教育を理解でき、博士にもなれる。しかし、*7-1-2のように、日本では、政府が「一斉休校は要請しない」と言っても、「子どもを通じて、新型コロナが家庭に感染が広がる懸念がある」として、「一斉休校を要請すべき」とする論調が多く教育の優先順位が低い。が、教育に真面目に取り組んでいる国は、早くから大学生に毎週PCR検査を行い、新学期が始まる前にワクチン接種を済ませて、対面教育を継続するための最大限の努力をしているのである。
 中国については、*7-2-1が、⑨自然科学分野の論文の注目度の高さを示す指標で世界1になった ⑩中国は材料科学(48.4%)・化学(39.1%)・工学(37.3%)などの5分野で首位、米国は臨床医学(34.5%)・基礎生命科学(26.9%)で首位 ⑪産業競争力の逆転も現実味 ⑫注目論文数は、中国は2018年(17~19年の平均)に4万219本となって米国の3万7124本を抜き首位 ⑬注目論文のうち上位1%に当たる「トップ論文」も、中国(25%)・米国(27.2%)で質の面でも実力をつけている姿が鮮明 ⑭中国が量と質をともに高めている背景には圧倒的な研究人材の厚さと伸びがある ⑮科学論文の量や質を左右するのは資金力だけではない ⑯研究人材の育成で日本は中国以外の国にも大きく出遅れている と記載している。
 また、*7-2-2は、⑰米中が威信を懸けて科学力を競う主戦場の一つが宇宙開発 ⑱中国が送り込んだ無人探査機が2021年5月に火星に着陸 ⑲中国は2019年に世界で初めて月の裏側へ無人探査機を着陸させた ⑳中国の研究力向上を支えるのは積極投資と豊富な人材 ㉑胡錦濤前国家主席時代の2006年に「国家中長期科学技術発展計画綱要」で2020年までに世界トップレベルの科学技術力を獲得する目標を掲げ ㉒人材の獲得・育成に中長期的に取り組んで米欧の大学に若者を留学させた ㉓2008年に開始した「千人計画」では海外在住の優れた研究者らを積極的に呼び込んだ としている。
 このうち、⑨⑩⑪は、産業に使う研究で中国がトップに立っている姿だ。⑫⑬⑭は、⑳㉑㉒㉓のように、中国政府によって長期の政策として行われてきたことで、産業の付加価値を高めるためにも正攻法である。そして、日本では、何かというと予算さえつければよいかのような議論が横行するが、⑮⑯がまさに事実であり、初等教育から研究人材の育成までやるべきことの逆を行ってきたと言える。なお、⑰⑱⑲は、日本の宇宙研究と違って重要な本質をずばっと突いた地球人が注目する焦点であり、志の高さが感じられる。


   2021.8.8日経新聞     2021.8.29日経新聞    WeeklyEconomist

(図の説明:1番左の図のように、引用上位10%の論文シェアで中国は米国を抜いた。左から2番目の図は、分野別の注目論文数の世界シェアだ。また、右から2番目の図のように、注目論文数で日本は10位に落ち、博士数も日本だけ減少傾向だ。しかし、1番右の図のように、日本の研究開発費総額は世界3位を維持しており、米国や中国のように増えてはいないが、ドイツ・フランス・英国以上であるため、何がネックになっているのか正確に調べるべきである)

*7-1-1:https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC209AC0Q1A820C2000000/ (日経新聞 2021年8月29日) 日本の研究力、低落の一途 注目論文数10位に
 「科学技術立国」を掲げる日本の国際的な存在感が低下している。文部科学省の研究所が8月上旬にまとめた報告書では、科学論文の影響力や評価を示す指標でインドに抜かれて世界10位に落ちた。世界3位の研究開発費や研究者数も伸び悩んでおり、長期化する研究開発の低迷に歯止めがかからない。世界の科学論文の動向は文科省の「科学技術・学術政策研究所」が毎年まとめている。今回発表した最新のデータは、2018年(17~19年の3年間の平均)のものだ。1年では特殊な要因によるぶれが出かねないため、3カ年の平均値で指標を出している。10位になったのは、研究分野ごとに引用数がトップ10%に入る「注目論文」の数だ。研究者は研究成果を論文にまとめる際、関連する論文を参考として引用する。引用された数は社会やその研究分野へのインパクト、評価や注目度を示す指標になるわけだ。注目論文の国別の世界シェアをみると、中国が24.8%で米国を初めて逆転して世界一に立った。米国は22.9%で、米中で世界の50%近くを占めた。大きく離れて英国(5.4%)、ドイツ(4.5%)などが続き、日本は2.3%にとどまった。日本の低迷は最近始まったことではない。国際ランキングの推移を見ると、特に2000年代半ばからの急落が目立つ。1980~90年代前半は米国、英国に次ぐ3位を維持していた。だが94年にドイツに抜かれ、2005年までは4位になり、その後順位を落とし続け、ついに2ケタ台になってしまった。注目論文のうち引用数が上位1%の「トップ論文」もほぼ同じ推移だ。00年代前半まで長く4位だったが、今は9位に落ちた。研究開発の活発さを示す全体の論文数もかつては米国に次ぐ2位だったが、現在は4位だ。低迷のきっかけに04年の国立大学の法人化を挙げる声は大学関係者の中で多い。その後、国から配られる大学の運営費に関する交付金は年々削減されていき、大学は人件費や管理費の抑制を進めたという指摘がある。00年代半ばから低下したのは資金だけではない。他国に比べても目立つのが、将来の国の研究開発を下支えする博士号取得者の減少だ。米中は年々その数を伸ばしており、英国や韓国も00年度に比べて2倍超となった。ドイツやフランスも横ばい水準を維持している。一方の日本では、06年度の約1.8万人をピークに減少傾向が続いており、近年は約1.5万人で推移している。影響は大学だけではなく、企業の研究力にも及ぶ。米国では企業の研究者のうち博士号所有者の割合が、ほぼ全ての業種で5%を超える。日本は医薬品製造や化学工業などを除いた多くの産業で5%未満にとどまる。専門的な知識を持って入社する博士人材が、企業内でうまく活用されていない状況だといえる。民間なども加えた日本の研究者の総数は20年で68.2万人、19年の研究開発費は18兆円(名目額、購買力平価換算)で米中に大きく離れてもなお世界3位を保っている。ただ、前年からの増加率は1%以下とほぼ横ばいの水準だ。増加率2ケタ台で研究者数がトップの中国や、研究開発費で首位をキープする米国との差は開く一方だ。日本が低迷する要因について、調査担当者は「大学教員の研究時間が減っている」ことをあげる。改善するにはどうしたらいいか。政府の科学技術政策の司令塔である「総合科学技術・イノベーション会議」の議員を務める橋本和仁さん(物質・材料研究機構理事長)は「『選択と集中』ではなく、個々の研究レベルを上げる政策の中で取り組むべきだ。例えば、短期的な成果を求めないようにするため、若手の雇用を増やすべきだという議論になるだろう」と指摘する。政府は3月に閣議決定した「第6期科学技術・イノベーション基本計画」で、博士課程人材への財政支援の拡充、大学の経営基盤強化や若手研究者の支援などに向けて10兆円規模のファンドを立ち上げる方針を掲げた。実効性が問われる。
*日本の科学技術計画
 政府が5年に1度策定するもので、日本の科学技術政策の中長期的な方針を示す。科学技術基本法(1995年制定)が2020年に改正されたのに伴い、従来は「科学技術基本計画」との名前だったが現在は「科学技術・イノベーション基本計画」と呼ぶ。3月に閣議決定した21~25年度の第6期計画では「今後5~10年間が、我が国が世界を主導するフロントランナーの一角を占め続けられるか否かの分水嶺」との危機感を示した。5年間で政府の研究開発投資を総額30兆円にするといった目標を掲げた。

*7-1-2:https://www.jiji.com/jc/article?k=2021082400648&g=soc(時事 2021年8月25日)夏休み延長、分散登校も コロナ拡大で不安広がる―政府「一斉休校要請せず」
 新型コロナウイルスの感染急拡大が収まらない中、夏休み明けの学校再開に向け、全国の自治体が対応に苦慮している。政府は全国一斉の休校は要請せず、自治体に対応を委ねる意向。一方で子どもを通じて家庭に感染が広がる懸念もあり、夏休みの延長や分散登校を決める自治体も出ている。新学期の対応について、萩生田光一文部科学相は20日、「地域の事情に合わせて判断を変えていくということで、国としての一斉休校は行わない」と説明。そのため自治体の判断が分かれている。札幌市では予定通り、23日から中学校の2学期が始まった。一方、東京都は現時点で一斉休校は求めず、状況に応じて時差登校や短縮授業の検討を要請する通知を出した。大阪府も一斉休校はしないが、修学旅行を原則延期したほか、部活動の一部を中止に。愛知県も修学旅行の休止を検討するなど、行事を見直す動きは広がっている。一方、横浜市は市内の小中学校など約500校を対象に、26日までの夏休みを延長し31日まで臨時休校にした。市教委の担当者は「感染状況が厳しく、保護者から再開を不安視する声も寄せられた」と明かす。神奈川県内では川崎、相模原両市も小中学校の8月末までの休校を決定。東京都調布市は小中学校を9月5日まで休校にした。分散登校に踏み切るケースも多い。群馬県の県立学校では2学期の始業式から9月12日まで、生徒らを分けて交代で登校。熊本市では小中学校について、オンライン授業と登校日を学年ごとに分ける方式を1日から10日まで導入する。岐阜県では、県立高校の2学期の授業を当面オンラインで実施。県教委の担当者は「高校は通学エリアが広く、感染リスクが小中学校より高い」と説明している。大阪府寝屋川市も夏休み明けの登校を見合わせ、小中学校は8月27日までオンライン授業としている。政府は学校での感染防止対策として小中学校に抗原検査の簡易キットを配布する方針。教職員のワクチン接種も促すが、10代以下の子どもの感染も急増する中、自治体からは「看過できない状況になれば一斉休校も判断としてあり得る」(吉村洋文大阪府知事)との声が出ている。

*7-2-1:https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC05A1O0V00C21A8000000/?n_cid=BMSR3P001_202108101701 (日経新聞 2021年8月10日) 中国論文、質でも米抜き首位 自然科学8分野中の5分野
 自然科学分野の論文の注目度の高さを示す指標で中国が初めて世界一になった。文部科学省の研究所が10日、最新の報告書を公表した。研究者による引用回数が上位10%に入る「注目論文」の数で初めて米国を抜いた。分野別でも8分野中、材料科学や化学、工学など5分野で首位に立った。学術研究競争で中国が米国に肩を並べつつあり、産業競争力の逆転も現実味を帯びてきた。科学論文の数は国の研究開発の活発さを測る基本的な指標だ。文科省科学技術・学術政策研究所が英調査会社クラリベイトのデータを基に主要国の論文数などを3年平均で算出・分析した。中国が学術研究の量だけでなく、質の面でも実力をつけている姿が鮮明だ。注目論文の本数を調べたところ、中国は2018年(17~19年の平均)に4万219本となり、米国の3万7124本を抜き首位になった。米国も08年に比べて3%増えたが、中国は約5.1倍と急増。シェアは中国が24.8%、米国が22.9%と、3位の英国(5.4%)を引き離した。注目論文のうち上位1%に当たる「トップ論文」でも、中国のシェアは25%と米国の27.2%に肉薄した。文科省科学技術・学術政策研究所の担当者は今後について「中国のいまの勢いは米国を追い抜く様相を見せている」と指摘する。注目論文の世界シェアを分野ごとにみると、材料科学で中国は48.4%と米国(14.6%)を大きく引き離した。化学が39.1%(同14.3%)、工学は37.3%(同10.9%)などと計5分野で首位となった。米国は臨床医学(34.5%)や基礎生命科学(26.9%)で首位となった。バイオ分野で強さが目立つものの、産業競争力に直結する分野で中国が強さを示した。全体の論文数では昨年の集計に引き続き中国が首位になり、米国を上回った。中国は35万3174本、米国が28万5717本で、その差を20年調査時の約2万本から約7万本に広げた。一方、日本は論文の質・量ともに順位が低下し、科学技術力の足腰の弱さが浮き彫りになった。注目論文のシェアではインドに抜かれ、前年の9位から10位と初めて2ケタ台に後退した。トップ論文のシェアも9位と前年から横ばいだった。10年前と比べた減少率はともに10~15%と大きく、論文の質が相対的に下がっている。日本の全体の論文数は6万5742本と米中の20%前後の水準にとどまった。米中のほか韓国、ドイツ、フランス、英国などは10年前と比べ増えているが、日本は横ばいにとどまる。長期化する研究力低下に歯止めをかけるのに「特効薬」はなく、衰退を食い止めるのは難しい。科学論文の量や質を左右するのは資金力だけではない。中国が量と質をともに高めている背景には、圧倒的な研究人材の厚さと伸びがある。世界一を誇る研究者数を年々増やしている。一方、中国・米国に続いて3位の日本は横ばい水準で伸び悩む。中国の19年時点の研究者数は210万9000人と世界首位だ。前年から13%増と高水準で伸びた。日本は68万2000人(20年時点)と中国・米国に続く3位だが、増加率は0.5%にとどまる。研究人材の育成で日本は中国以外の国にも大きく出遅れている。文科省科学技術・学術政策研究所によると、日本で大学院の博士号を取得した人数は06年度をピークに減少傾向だ。米中や韓国、英国では15~20年前に比べて2倍超の水準で伸びている。ドイツやフランスは横ばい水準だ。
*ひとこと解説 青山瑠妙:早稲田大学大学院アジア太平洋研究科 教授
 自然科学分野の論文の注目度の高さを示す指標で中国が初めて世界一になった。世界一になった理由として、一般には研究開発費の増加が指摘されている。なかでも大学に配分される科研費は文系、理系を問わず、潤沢である。研究者の人数が多いことも一因であるが、その多くは欧米で教育を受けた研究者であることは忘れてはならない。さらに、中国の論文を網羅した学術データベースの存在も中国の論文の引用回数の底上げに貢献した。国際競争力を目指すには、科研費の充実をはじめとした日本政府の政策支援が求められる。

*7-2-2:https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC103PJ0Q1A810C2000000/ (日経新聞 2021年8月10日) 中国、科学大国世界一を視野 米国の競争力基盤揺るがす
 中国が「科学大国世界一」の座を米国から奪おうとしている。文部科学省の研究所が10日発表した報告書では注目度の高い論文の数で初めて首位となり、研究の量だけでなく質の面でも急速に台頭していることを印象づけた。戦後の科学研究をリードしてきた米国の優位が失われつつあり、産業競争力にも影響する可能性がある。米中が威信を懸けて科学力を競う主戦場の一つが宇宙開発だ。5月には中国が送り込んだ無人探査機「天問1号」が火星に着陸し、習近平(シー・ジンピン)国家主席は「中国は惑星探査の分野で世界の先頭集団に入った」と胸を張った。2019年には月の裏側へ世界で初めて無人探査機を着陸させている。「中国の技術力は米国に負けないレベルに達している」と京都大学の山敷庸亮・有人宇宙学研究センター長は指摘する。米国は1950年代以降、科学技術の分野で世界を先導してきた。産業競争力の源泉であり軍事上の優位を支える土台でもあったが、その基盤を中国が揺るがしている。中国の研究力向上を支えるのが積極投資と豊富な人材だ。中国の19年の研究開発費(名目額、購買力平価換算)は54.5兆円と10年間で2倍以上に増えた。首位の米国(68兆円)にはなお及ばないが、増加ペースは上回る。研究者の数も210万人と世界最多で、18年に155万人だった米国を大きく引き離す。現在の中国の姿は戦略的な計画に基づく。胡錦濤(フー・ジンタオ)前国家主席時代の06年に始動した「国家中長期科学技術発展計画綱要」で、20年までに世界トップレベルの科学技術力を獲得する目標を掲げた。研究開発投資を拡充し、対外技術依存度の引き下げを進めてきた。人材の獲得や育成にも中長期的に取り組み、米欧の大学などに若者を積極的に留学させた。08年に開始した「千人計画」では海外在住の優れた研究者らを積極的に呼び込んだ。国内でハイレベル人材を育てる計画も推進してきた。当面、中国の勢いは続きそうで、ノーベル賞の受賞なども増える公算が大きい。3月には今後5年間、官民合わせた研究開発費を年平均7%以上増やす方針を示した。米スタンフォード大学の報告によると、学術誌に載る人工知能(AI)関連の論文の引用実績で中国のシェアは20年に20.7%と米国(19.8%)を初めて逆転した。近年、米国は技術流出に警戒を強め、中国から研究者や学生を送り込むのが難しくなっている。中国は最先端の半導体などをつくる技術はまだ備えておらず、研究を産業競争力の強化につなげる段階でも壁は残る。日本の衰退は一段と進んでいる。注目度の高い論文の数ではインドに抜かれ10位に陥落した。世界が高度人材の育成を競うなか、大学院での博士号の取得者は06年度をピークに減少傾向が続き、次世代の研究を支える人材が不足している。米国では民主主義などの価値を共有する日本との協力を重視すべきだとの声もあるが、このままではそんな声さえ聞かれなくなる恐れがある。
*多様な観点からニュースを考える
山崎俊彦:東京大学大学院情報理工学系研究科 准教授 2021年8月11日
 貴重な体験談「人材の獲得や育成にも中長期的に取り組み、米欧の大学などに若者を積極的に留学させた。08年に開始した「千人計画」では海外在住の優れた研究者らを積極的に呼び込んだ。これが全てを物語っている気がします。米国で名を挙げた企業や大学の研究者が中国に戻ったり中国の組織で兼任したりしているのを実際にたくさん目にします。

<中国の塾規制とオンラインゲーム規制>
PS(2021年9月1日追加):*8-1のように、中国政府が教育費負担を抑えて少子化対策を行うために学習塾の規制強化に乗り出し、①習国家主席が「児童生徒の勉強は基本的に学校内で教師が責任を負うべきだ」とされ ②週末や長期休暇中の授業時間を制限し ③受験競争の激しい山東省が学校に児童生徒に塾通いを勧めないよう要求した そうだ。しかし、①は正論でも、先に学校で教師が責任を負えるような授業をするのでなければ親子は別の方法を考えなければならず、④家庭教師への依頼が増えコストが上がって かえって困りそうだ。ただし、放課後児童クラブ等に家庭教師を招いて複数で授業を受け、コストを抑える方法もあるかもしれない。
 なお、*8-2のように、中国政府が18歳未満の未成年のオンラインゲーム利用を週3時間に制限する新規則を公表したのはよいことだと思う。何故なら、オンラインゲームにふけると勉強や読書の時間を少なくし、心身の健康に悪影響があることは疑いない上、「eスポーツ」は実際に身体を鍛えるわけではなく、ゲームより有意義な時間の使い方はいくらでもあるからである。

*8-1:https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM229HK0S1A620C2000000/ (日経新聞 2021年7月11日) 中国が教育費高騰で塾規制 受講料、平均年収の2倍も
 中国政府が学習塾の規制強化に乗り出す。政府内に監督部門を新設し、週末授業や学費の制限を検討する。家計の教育費負担を抑えて少子化対策につなげる狙いだが、政府の思惑通りになるかどうかは見通せない。
●少子化対策へ習氏「学校が責任もて」
 「児童生徒の勉強は基本的に学校内で教師が責任を負うべきだ」。習近平(シー・ジンピン)国家主席は6月、唐突に教育問題を取り上げた。背景には少子化対策がある。中国政府は夫婦1組に3人目の出産を認める法改正に着手した。長年の産児制限で1人っ子が圧倒的に多い中国では、親が子どもの教育に巨額のお金を投じる。一人娘が6月に全国統一大学入試「高考」を受けた北京市の呉さんは「同級生で高校3年生の塾代に年30万元(約510万円)かけた家もある」と明かす。北京市の会社員の平均年収は260万円程度とされ、2倍近い計算だ。教育費は若い夫婦が出産をためらう大きな原因だ。1人の女性が生涯に産む子どもの数を示す合計特殊出生率は2020年に1.3まで下がった。政府は教育費の軽減が出生率の反転に欠かせないとみて、教育行政で「双減(2つの軽減)」を掲げた。高騰する家庭の教育費と宿題など児童の負担の2つを軽くする意味だ。矛先は塾業界に向かった。中国教育省は6月、「校外教育機関監督局」を新設した。塾への規制をつくり、監督する。週末や長期休暇中の授業時間を制限したり、学費の標準モデルを策定したりするのが検討課題という。全国に先立って動き出した地域もある。受験競争が激しいことで有名な山東省は6月、省内の学校に夏休み中の対応に関する通知を出した。児童生徒に塾通いを勧めたりしないよう要求した。シンクタンクの前瞻産業研究院によると、中国の教育産業の市場規模は20年までの5年で4割増えた。新型コロナウイルス禍でもオンライン授業が広がり、需要は底堅かった。
●講師の経歴詐称や「秘密特訓」で高額徴収
 親の教育熱を逆手に取った塾の不法行為も社会問題になった。独占禁止法などを管轄する国家市場監督管理総局は6月、15社の学習塾に総額3650万元の罰金を支払うよう命じた。講師の経歴詐称や、わざと高い学費を設定して値引きで割安感を演出する行為があった。教育省も6月、親への注意喚起という形で学習塾をけん制した。「秘密の特訓コース」などと銘打って高額の授業料を追加徴収する例などを挙げた。もっとも、新型コロナの爪痕で若者の職探しは厳しさを増す。「高考の数点の差が人生を左右する」との考えも根強く、我が子を少しでも良い大学に進学させようと必死になる親は多い。中国では塾講師や家庭教師のアルバイトをする学校教師が少なくない。給料が安く、大都市では給料だけで暮らせないからだ。評判のよい学校教師が塾で教えれば、塾の人気も高まる。北京市内の大手塾で教壇に立つ趙さんは「公立学校を辞めて塾に転職する教師もいる」と明かす。
●「家庭教師への依頼増えるだけ」
 中国共産党は加速する少子高齢化が経済成長を鈍化させると危機感を抱く。所得の伸びはすでに鈍り、習指導部は家計の大きな負担である教育費に目をつけ、塾規制という「奇手」を繰り出した。ただ、学校教師の待遇改善など本質的な対策を怠ったままでは、政策効果にも限界がある。趙さんは「塾の授業を規制しても家庭教師への依頼が増えるだけで、コストはかえって高くなる。そうなれば親の反発が強まるだけではないか」と話している。

*8-2:https://jp.reuters.com/article/china-regulation-gaming-tencent-holdings-idJPKBN2FW0E7 (ロイター 2021年8月31日) 中国の未成年オンラインゲーム規制、関連株が下落 愛好家は怒り
 中国政府が18歳未満の未成年によるオンラインゲーム利用を週3時間に制限する新規則を公表したのを受け、騰訊控股(テンセント・ホールディングス)といったゲーム企業の株価が下落した。また、ソーシャルメディア上ではゲームを楽しむ若者が怒りを表明している。オンラインゲームを「精神的アヘン」と表現したこともある中国当局は新規則について、依存の高まりを食い止めるのに必要だと説明。共産党機関紙の人民日報は、政府は「非情に」ならざるを得ないとする記事を出した。同紙は、オンラインゲームにふけることは10代の若者の日常の勉強、心身の健康に影響があることは「疑いの余地がない」と指摘。「ティーンエージャーが荒廃すれば家庭が荒廃する」とした。一方、中国の若いゲーム愛好家は怒りを表明した。中国版ツイッター「微博(ウェイボ)」のあるコメントは「こうした規則と規制をつくるおじいさんとおじさんのこの集団はゲームをプレイしたことがあるのだろうか?『eスポーツ』プレイヤーにとって最良の年齢が10代にあることを理解しているのだろうか?」と投稿。「性的同意は14歳。16歳で働きに出られる。しかし、ゲームをプレイするには18歳にならなければならない。これは全くの冗談だ」とした。31日のテンセントの株価は3.6%安。米上場の網易(ネットイーズ)はオーバーナイトで3.4%安。31日の香港上場株も同程度値を下げている。韓国のクラフトンは3.4%安。東京市場ではともに中国市場へのエクスポージャーを持つネクソンとコーエーテクモがそれぞれ4.8%安、3.7%安。

| 経済・雇用::2021.4~ | 12:02 AM | comments (x) | trackback (x) |
2021.7.22~29 身近に起こっている地球温暖化の影響 (2021年7月30、31日、8月1、2《図》、7、10、11、13日追加)
(1)地球温暖化の影響で増える自然災害
1)洪水の多発とダム決壊の恐れ
イ)欧州の「100年ぶり」の豪雨 ← これから頻繁に起こるのでは?


  2021.7.16Yahoo    2021.7.17News Week     2021.7.17NHK

(図の説明:2021年7月16日、欧州西部を襲った記録的豪雨で河川が氾濫して発生した洪水)

 欧州西部を襲った記録的豪雨で、*1-1-1のように、水位の上昇が続いて河川が氾濫し、洪水が発生して住宅が押し流されるなどの大規模な被害が発生し、7月16日時点で、ドイツ・ベルギー・オランダで約1,300人の安否が確認されず、死者が120人を超えたそうだ。

 また、ケルン当局の報道官は「ネットワークが完全に遮断され、インフラは完全に破壊された。病院は患者を受け入れられなくなっている」とし、ドイツ政府は700人を超える軍隊を動員して救援にあたっているが、ダムが決壊すれば下流地域が一段の洪水に見舞われる恐れがあるとして放流も試みているとのことである。

 気象学者は、「気候変動の影響でジェットストリームの流れが変わったため、今回の豪雨が引き起こされた」と指摘し、欧州委員会のフォンデアライエン委員長も、「今回の洪水の規模を踏まえると気候変動が影響していることは明らかなので、迅速に対応する必要がある」という考えを示しているそうだ。

ロ)中国河南省は「1000年に1度」の暴雨 ← これから頻繁に起こると思うが・・


   2021.7.22Ameblo      2021.7.21BBC       2021.7.21Yahoo

(図の説明:中国河南省の記録的大雨で、左図は、地下鉄が浸水した様子、中央の図は、街中の様子、右図は、亀裂が生じて決壊する恐れがあるとされる満タンのダムの様子)

 中国河南省でも、7月17日以降に記録的な大雨が続き、*1-1-2のように、鄭州市で地下鉄が浸水するなどして7月21日までに少なくとも計16人が死亡して10万人が避難し、鄭州の気象局は「1000年に1度の暴雨」だとして警戒を呼びかけているそうだ。

 鄭州市では、7月17日以降の3日間で年間雨量に匹敵する617ミリの雨量を計測し、20日午後6時頃に、雨水が地下鉄構内への浸水を防ぐ遮水壁を越えて線路まで流れ込み、市内の地下鉄全線が運行停止となって、500人余りが避難したが逃げ遅れた12人が死亡した。このほか、家屋の倒壊等によっても4人が死亡したそうだ。

 また、*1-1-3のように、駅や道路が冠水し、住民1万人以上が避難を余儀なくされ、人口約9400万人の河南省に最高レベルの気象警報が発令されている。さらに、洛陽市のダムに20メートルほどの亀裂が生じて決壊する恐れも出ており、同地域には兵士が配備されいるが、軍は「いつ決壊してもおかしくない」と警告したそうだ。

 同地域では少なくとも今後24時間は土砂降りの雨が続くと予想されており、洪水発生の原因は複合的であるものの気候変動による気温上昇は激しい降雨のきっかけになる。

2)気温の上昇に伴う海面の上昇
イ)氷河の融解

   
    2020.1.16朝日新聞     2019.12.24日本気象協会  2019.9.25毎日新聞

(図の説明:左図は、世界の気温の推移を、1951~1980年の平均気温を基準として1880~2020年の年間平均気温についてグラフにしたもので、初めは低かった気温が近年になって急速に上がり、全体で約1°C上がっているが、上昇幅は新興国が市場参入して多くの化石燃料を使い始めた時期に大きくなっている。中央の図は、日本の気温が1981~2010年の平均を基準として年間平均でどれだけ高かったか低かったかを1899~2019年についてグラフにしたもので、マイナス部分が多いように見えるが、実際には1889年と比較して2019年は2°C近く上昇している。世界の気温上昇に伴って海水温も上がり、右図のように、1950年と比較すると2020年には既に30~40cmは海面上昇しており、これは見た目の実感と一致している)

   
  2021.7.22Gooddo     2021.7.21AmericanView    2018.11.15産経新聞
                    氷河の後退
(図の説明:気温が上がると海面が上昇する理由は、左図のように、極地の氷が解けたり、中央の図のように、山間部の氷河が解けて後退したりするからだ。右図は、北極海の氷が解け、北極海を通行しやすくなった場合の航路短縮のメリットを記載しているが、海面上昇で国土が狭くなったり、インフラが使えなくなったりするディメリットは考慮されていないようだ)

 *1-2-1のように、カナダ・フランス・スイス・ノルウェーの研究者が、NASAの衛星「Terra(テラ)」に搭載したカメラで世界各地21万カ所以上の氷河の写真を撮影し、20年分の衛星写真をまとめて、2000年から2004年にかけては年間2,270億メートルトンの氷河が失われ、2015~2019年には年間2,980億トンが解けて、このままのペースで融解が続けば、今世紀半ばには多くの氷河が完全に失われる可能性があると、『Nature』に掲載したそうだ。

 論文は、この変化の原因に温暖化や降水量の増加を挙げており、溶けて河川や海に注ぎ込んだ水の量は、過去20年間に観測された海面上昇分の約5分の1に相当するとしているが、過去20年間に観測された海面上昇分の約1/5にすぎないのなら、残りの4/5はどこから来たのか?

 日本でも、海面上昇は重大問題で、これまで標高の低かった地域は海抜以下になって下水の排水が困難となり、洪水も起こり易くなる。中国で地下鉄に水が流れ込んだ例は、東京・大阪でも他人事ではなく、これ以上、海抜の低い地域に人口を密集させて、そこに地下鉄をはじめとするインフラを集中投資することは意味が問われるようになった。

 氷河が減ると、氷河をバッファとして比較的低く保たれてきた海水温はさらに上がりやすくなり、急速に溶ける氷河の水は北インドでは狭い渓谷を下ってふたつのダムに到達し、200人が亡くなる事故という環境災害を引き起こした。そして、国連の気候変動に関する政府間パネルが2018年に発表した報告書は、その凄まじい洪水や地滑りが高山で起きやすくなっている原因を温暖な気候にあると指摘している。

ロ)2020年は日本も世界も平均気温が史上最高で、豪雨・異常高温が相次いだ

  
    RBBTODAY COM        日生基礎研究所       日生基礎研究所

(図の説明:左図のように、世界人口は産業革命後に急速に伸びはじめ、現在は70億人程度だ。また、中央の図のように、日本の人口は太平洋戦争後の経済成長期に都市に集中し始め、三大都市圏それも東京圏に住む人口が著しく増えて、今では都市しか知らない人の割合も多くなった。右図は、2019~2020年の社会的移動による人口増加の割合で、これらの複合的要因が都市におけるヒートアイランド現象の原因となっている)

 2020年夏以降は太平洋の中部・東部の海面水温が平年より低くなるラニーニャ現象が発生して2020年末から2021年にかけては寒い冬になったが、英国気象庁によると、2021年の世界の気温は2015年以降の数年間よりはラニーニャ現象の影響で少し涼しくなるものの、1850~1900年の平均よりは約1度高く、長期的な温暖化傾向に変わりはないとのことである。

 また、*1-2-3によると、都市部ではヒートアイランド現象による気温上昇が別途加味されるが、日本全体の気温の推移を確認する場合は都市部を除いた地点の全国をまんべんなく抽出して調べたところ、日本の平均気温は昭和元年から令和元年(1926~2019年)の94年間で1.4度上昇し、猛暑日も平成以降急激に増えて2010年代の10年間は1980年代と比較すると日数が4.6倍になるそうだ。

 その上、都市部は建築物・舗装道路・人工排熱等の影響で気温が上がりやすく、ヒートアイランド現象が起こるため、全国平均よりも気温の上昇が大きく、年間猛暑日も明確に多いそうだが、これも体感と一致している。

(2)それではどうすればよいのか
1)都市の構造を変える

   
     東京(日本)         大阪(日本)        福岡(日本)

(図の説明:左図は、東京の空中写真だ。スカイツリーの近くを流れる空を映して青く見えているのは隅田川で、下水道で処理しきれなくなった場合は汚水も流すため、近くで見ると濁っていてきれいでない。また、東京の地面は、殆どがコンクリートとアスファルトで覆われており、コンクリート製の建物が密集して緑が少ないため、ヒートアイランド現象を起こし易い。つまり、都市計画が乏しい。中央の図は、大阪の空中写真で、大阪城近くを撮影しているため緑が多く見えるが、街中は東京と同じかそれ以下だ。大阪城近くを流れている大川(旧淀川)や寝屋川も、空を映して青く見えてはいるが、近くで見るときれいな川ではない。なお、右図は、福岡の空中写真で、空港にJR直通の地下鉄が乗り入れていたり、空港が街に近かったりするのはよいが、都市は東京と同じくコンクリートとアスファルトで覆われ、コンクリートの建物が密集して緑は東京より少ない《福岡の人は「自然が近いからいい」と言っていたが》。そして、どの都市も飛行機から見ると家並が時代を経るに従って無秩序に広がっていき、都市計画はないようだ)

   
   ロンドン(英国)      パリ(フランス)      上海(中国)

(図の説明:左図は、ロンドンの空中写真で、東京よりは高さの揃った建物が並んでいるが、コンクリート・アスファルト・石造りの建物が多く、街中を流れるテムズ川はきれいでない。しかし、東京より緯度が高いため、年間平均気温は低い。中央の図は、凱旋門を中心として放射状に広がったパリの街で、建物の高さ・設計がかなり統一されているため、街の景観が良く絵になる。緑は道路からは多く見えないが、建物の中庭にもあるようだ。また、右図は上海で、競って近代的な建物を建てているので一つ一つはおしゃれな建物も多いが、街全体としての整合性・統一性がなく、少し路地に入ると昔ながらの汚ない建物も多い。緑は東京と同じか少し多いくらいで、道は広くなったが近くを流れる蘇州河・黄浦江の水はきれいでない。そのため、ここも、環境に配慮した都市計画が必要だろう)

イ)日本の都市構造について
 日本の都市は、奈良・京都を除いて、道路は建物の隙間を利用して作ったかのように狭くてわかりにくく、碁盤の目になっていない。そのため、番地で住所を探しにくいが、スマホの地図を見ながら歩くと危ない上、逆に居場所を探知されて悪用されるケースもあるため、私自身はスマホを使っていない。

 そのため、これからの都市造りは、あらかじめ安全性で土地にランクを付け、水やエネルギーの供給計画を立て、必要な交通システム・上下水道・電気・ガス・病院・学校・保育所・介護施設・緑地などのインフラ整備を行う必要がある。何故なら、そういうことを考えずに建物を増やしていくと、災害のリスクが上がり、結局は住環境が悪くなるからで、既にできている都市も、今後10~100年の街づくり計画を立て、それに合わせていく必要があろう。

ロ)「空飛ぶクルマ」を使った交通システム
 JALは、*3-3のように、2025年度に、三重県等で空港と観光地を結ぶ「空飛ぶクルマ」を使ったサービスを始めるそうだ。空港を起点に目的地に行く「空飛ぶクルマ」が実用化されれば、道路の渋滞緩和や過疎地の交通に役立ちそうだ。

 しかし、「クルマ」が空から落ちてきては人も建物もたまったものではないため、事故時も安全が保たれるクルマ・道・ルールを作って欲しい。例えば、道路を3階建てにして、1階は歩行者・自転車・自動二輪車・緑地専用、2階は自動車専用、3階は「空飛ぶクルマ」専用にしておけば、「空飛ぶクルマ」は最悪でも3階に落ちるだけですみ、3階の道路に不時着することも可能だ。そして、目的地となる場所は、建物の屋上か3階以上にポートを作る必要があるだろう。

 なお、この交通システムは、これまで道路の整備が遅れていた場所で作った方が早くできそうで、もしアフリカで作れば、サバンナを道路で分断せずに自動車専用道路を作ることができる。

2)せめて「30年の計」がある予算を作るべき

 
2021.7.3日経新聞   2021.7.15日経新聞   2021.6.24日経新聞 2021.7.14日経新聞

(図の説明:1番左の図のように、政府は2021年12月下旬に来年度予算を閣議決定するが、そのためには7月から各省庁が財務省に概算要求を提出して折衝しており、2022年1~3月に国会の予算委員会で行われる議論は殆ど反映されない。そして、予算委員会は、予算審議の場ではなく、首相・大臣を小さな政治とカネ問題で誹謗中傷する場と化している。また、左から2番目の図のように、米国や欧州は、複数年かけてグリーンイノベーションを行うため徹底的な投資をするが、日本は、グリーンイノベーションには単年度で思いつき程度の予算しか割かず、役に立たない景気対策ばかり行って無駄遣いしており、財源は赤字国債なのだ。さらに、さっさとワクチンや治療薬を承認して先に進めば、人流ばかり止めなくても新型コロナの流行は止まるのに、それはやらずに人流を止め、その保証として右から2番目の図のように大きな無駄遣いをしている。なお、1番右の図のように、EUが環境対策の緩い国の製品に対し国境炭素税を導入するのは正しく、これに反対している環境保護に消極的な日本のメディアは見識が疑われるのだ)

イ)日本の財政支出
 政府が6月に閣議決定した骨太の方針では、*2-2-1のように ①グリーン社会の実現 ②デジタル化の加速 ③少子化の克服 ④地方の活性化の4分野を今後の重点課題とし、2022年度予算で重点分野の予算を増やすために、財務省は各省庁の裁量的経費を前年度から10%減らし、削減額の3倍を特別枠で要求できるようにして成長分野に優先的に予算配分できる特別枠を設けるよう調整するとのことである。

 そして、予算規模の大きい社会保障関係費は高齢化による自然増に抑え、医師の技術料等の診療報酬見直しなどでどれくらい伸びを圧縮できるかを今後の焦点にし(このように医療及び医療人材を粗末にしたのが今回の情けない結果を招いたのだが)、新型コロナに関連する予算は影響が現時点で見通しにくいため、金額を示さない(無限の)事項要求を認めるそうだ。

 しかし、財務省のこのような硬直したやり方では、無駄な支出(長くは書かないが、本当は社会保障費ではない)を省いて効率的な財政運営を行うことはできない。そのため、国の財政状態及び収支の状況を一目瞭然に把握することができ、事業別の費用対効果を計測することが可能な複式簿記による公会計制度を導入して、支出の費用対効果やその財源(国民に賦課する税収だけでなく資産から得られる収入を含む)について、毎年度、見直しを行うべきなのだ。

 なお、私は、日本も環境税(or炭素税)をかけ、そこから環境によい製品への投資を促す補助金を出して、民間の力をフル活用し、できるだけ早い時期に気候変動問題を片づけるべきで、それは可能である上に、日本にとってメリットが大きいと考えている。

ロ)欧米の財政支出と財源
 米国や欧州は、*2-2-2のように、新型コロナ危機の出口を見据えて環境・デジタル分野で数十兆円規模の財政支出に動き始め、その財源として、米国は法人税率の引き上げや富裕層への課税強化策を表明し、EUは国境炭素税案を公表している。

 なお、*2-2-3のように、EUの国境炭素調整措置案は、第三国にEU並みの気候変動政策を要求するもので、当然、中国・ロシアはじめ日米も対象になる。これを貿易摩擦に繋がるなどとと捉える思慮の浅い国は、国際基準作りでリーダーになる資格がない。

(3)エネルギーを変える

   
 2017.6.27日経BP  2013.4.24IBM研究所等 2019.5.21日板 2021.3.23exite news

(図の説明:1番左は、バスの駐車場屋根にとりつけた従来型の太陽光発電機で、左から2番目は、鏡を使って2000倍の面積から太陽光を集める太陽光発電機だ。また、右から2番目は、ビルの窓に取り付けた透明ガラスの太陽光発電機、1番右は、温室に使った透明膜の太陽光発電機で、いろいろな進化形があるので場所を選んで使えばよい。そして、これらの技術は、都会にとっても、農業地帯にとっても、また砂漠にとっても福音となるだろう)

イ)2030年度の日本の電源構成は再エネのみにすべき
 朝日新聞は社説で、*2-1-1のように、経産省が政府の次期エネルギー基本計画素案で新しい目標を示し、①2030年度の再エネ比率を36~38%とし ②再エネ最優先と明記したが ③原発比率は昨年の発電実績で4.3%に過ぎないのに20~22%に据え置いた と記載している。

 高知新聞も、*2-1-2のように、④最安値とされた原子力のコストが上がり、太陽光が原子力を下回った ⑤改正地球温暖化対策推進法は2050年までの脱炭素社会の実現を明記し ⑥それには大規模な省エネとCO₂排出量の4割を占める電力部門の対応がKeyで ⑦太陽光など再エネの導入量を増加して主力電源にすべきで、火力は縮小へ国際的な圧力がある ⑧再エネ拡大には送電網の整備が必要だ と記載している。

 また、愛媛新聞も社説で、*2-1-3のように、「太陽光『最安電力』 再生エネを促進し、原発は全廃を」と題して、⑨「最も安い電力」が原子力から太陽光に交代した ⑩原子力は発電コストの安さを強みとしてきたが、安全性への懸念・高レベル放射性廃棄物の最終処分・経済的な優位性も揺らいでいる ⑪国は太陽光など再エネの主力電源化を推し進め、原発の速やかな全廃に道筋を付けるべき と記載しており、全くそのとおりだ。

 しかし、そもそも①④⑨⑩の「原発が最安コストの電源だった」というのも嘘だったことは確実で、使用済核燃料の最終処分費用や事故時の対策費、平時の公害対策費などのすべてを加えたコスト計算はしていなかったのだ。そのため、これらをすべて含めれば、1kwh当たり11 円台後半という試算も安く見積もりすぎであろう。

 一方、太陽光は日本では30年時点で8円台前半~11円台後半と言われているが、現在は日射量の少ないドイツ・デンマークでも7~8円、日射量の多いチリ・メキシコは3~5円、アラブ首長国連邦は3円であるため、日本も次世代太陽光発電機器を住宅・ビルなどに地道に取り付けていけば相当の発電効果・節電効果が得られ、5円程度にはなるだろう。そして、水力・地熱・風力なども無駄にせず発電すれば、変動費0の低コストエネルギーを国内で自給できるのである。

 そのため、⑦⑧⑪のように、再エネの主力電源化を進め、送電網を整備して、原発は速やかに全廃するのが無駄遣いをなくす前向きの投資となる。もちろん、火力は⑥⑦のように、CO₂を排出し、縮小へ国際的な圧力がある上、変動費が0ではなく高価な輸入燃料を使わなければならないため、2030年度の電源構成で41%も残す必要はないと思う。

 なお、「原発はCO₂を排出しないから地球温暖化防止に資する電源だ」という主張もあるが、原発は平時でも温排水を排出して海を温めており、外国の分まで含めて数が多ければ、これも見過ごすことはできない。また、*2-3のように、中国広東省の台山原発で燃料棒が破損し、冷却材中の放射性物質の濃度が上昇したそうだが、放射性物質は平時でも取り除くことができないという理由でトリチウムを海に流しており、公害は地球温暖化だけでないことを考慮すれば、一日も早い廃止が必要なのである。

ロ)「現役世代からの医療費召し上げ」とはどういうことか
 (2)2)イ)の新型コロナで無差別に休業させた企業への助成金、景気対策のバラマキ、(3)の原発補助金のように、もっと賢い方法があるのに血税を無駄遣いしてきた例は多い。しかし、日経新聞はじめいくつかのメディアは、それらを批判するどころか推奨してきた。

 その上で、*2-1-4のように、「現役世代からの医療費召し上げは限界だ」と題して、①75歳以上の後期高齢者が入る医療制度に対して現役世代の加入者を中心とする企業の健康保険組合などが負担する支援金が一段と膨張した ②全世代型社会保障を看板に掲げるなら医療費膨張を制御し ③不足する財源は現役世代からの召し上げだけに頼らず安定した税財源の確保に力を尽くす必要がある などと記載している。

 しかし、①③の問題は、現役サラリーマンは協会けんぽ・組合健保・共済組合に加入し、退職すると国民健康保険に入り、75歳以上になると後期高齢者医療制度に入るという年齢で区切ったため医療需要が増える時には別の保険に入ることになる誤った区切り方が原因で発生している。

 保険理論に沿った保険制度は、サラリーマンが加入する協会けんぽ・組合健保・共済組合に退職者も加入し続け、75歳以上になっても同じ保険に加入し続けるものである。そうすれば、応能負担で保険料を支払い、リスクの低い人がリスクの高い人を支え、生涯を通じて見れば損得なしの本来の保険制度となる。そして、その結果は、現役サラリーマンの負担はもっと増え、企業は定年年齢を延長して健康な支え手である期間を伸ばすようにするだろう。介護保険も同様で、これらを徹底したときに、②の全世代型社会保障になるのだ。

 にもかかわらず、「高齢者と同じ保険に入り続けるのは嫌だ」「現役世代が高齢者の保険に支援金を払うのも嫌だ」「医療費に消費税投入を増やせ」「高齢者は世代内互助せよ」と言うのなら、それはわがままにすぎない。「後期高齢者人口が増加する」のは前からわかっていたことで、医薬品・医療機器などのイノベーションは早く治す方向に起こるため、医療費削減に資する筈だ。また、新薬の値段が高いのは、普及が遅いため単価が高いか、厚労省が言い値で機材や薬品を買っているか が理由で、いずれにしても改善すべき点は高齢者ではなく厚労省側にある。

 なお、2006年6月に老人保健法が改正され、2008年4月から後期高齢者医療制度が創設されたが、その原案を厚労省の担当者が自民党内の厚労部会に持ってきた時、私は「保険の原理に反する」と言って反対したが、その時の担当者の答えは、「そのかわり、患者負担以外は医療保険者からの拠出金と公費(税金)で賄うから」というものだった。私は、「そういう意図的な割合では、不公平になる」と言ったのだが、現在、後期高齢者医療制度の財源は、患者の自己負担分を除いて現役世代からの支援金(国保や被用者保険者からの負担)4割・公費(国・都道府県・区市町村の負担)5割・被保険者からの保険料1割で構成されているのである。

 また、「医療現場で検査の重複を減らせ」というのも、単純すぎる。その理由は、独立した病院で「Second Opinion」を取りたい場合もあるからで、デジタル化した検査結果記録を患者自身が簡単に持ち運びできるようにするのはよいものの、別の病院で二重に検査することも当然あってしかるべきだからである。

 このように、社会保障を疎かにしてきたことが、実需であり成長分野でもある産業の伸びを抑えてきた。そして、これにより、本来なら上昇する潜在力のあったGDP成長率も上昇せず、国民は豊かになるどころか貧しくなっているのだ。

(4)機械を変える ← 先端技術の使用


2021.7.15日経新聞 2021.7.22日経新聞 2021.1.26朝日新聞    2021.4.16
                            Business Insider Deutschland 

(図の説明:1番左の図は、EUの主な気候変動対策で、左から2番目の図は、自動車各社のEV専業化スケジュールだ。また、右から2番目の図は、ボルボのEVで、1番右の図は、メルセデス・ベンツのEVだ)

1)EVへの移行
イ)欧米のケース
 欧州委員会は、*3-1のように、7月14日、温暖化ガス排出大幅削減に向け、①2050年の温暖化ガス排出実質0という目標の中間になる2030年までに、1990年比で55%減らす目標を実現するため ②ガソリン・ディーゼル・ハイブリッド等の内燃機関車の販売を2035年に事実上禁止し ③自動車からのCO₂排出を2035年までに100%減らすよう定め ④環境規制の緩い国からの輸入品に国境炭素調整措置を2023年にも暫定導入し ⑤自動車及びビルの暖房用燃料に新しい排出量取引制度を設けてCO₂排出の炭素価格を上乗せするそうで、Perfectな案である。

 これを受けて、*3-2-2のように、ボルボは製品ラインナップの完全な電気自動車(EV)化へ向けた技術ロードマップを発表し、⑥実走行距離1000kmのEVを目指し ⑦バッテリーパックをクルマのフロアに統合しセル構造を利用して車両全体の剛性(安全性)を高め ⑧充電時間もバッテリー技術の向上とソフトウエア・急速充電技術の継続的改善によって2020年代半ばまでに現在の半分にし ⑨バッテリーセルを100%再エネで生産することを目指し ⑩使用済バッテリーのリユースやリサイクルも計画し ⑪EVのエネルギーインフラでの活用も計画している とのことである。
 
 さらに、独自動車大手ダイムラーのメルセデス・ベンツは、2021年7月22日、*3-2-3のように、⑫販売する新車を2030年にもすべてEVにすると発表し ⑬8つの電池セル工場を新設するなど、2030年までに400億ユーロ(約5兆2000億円)をEVに投資し ⑭EVに不可欠な車載電池では専業メーカーと共同で世界に8つの大型工場を設け ⑮2022年に満充電で航続距離1000km以上の新型車を発表し ⑯EVファーストからEVオンリーに踏み込む こととし、このほか独アウディや英ジャガー等の高級車ブランドもEV専業への転身を発表しているそうだ。

 このように、政府が政策の方向性を明確にすると、民間企業も戦略を立てやすく、そのための技術開発や投資を行えるのだが、さすがボルボは徹底していてスマートであり、ベンツは世界展開が早く、日本だけ置いてきぼりになった感がある。日本は屁理屈が多すぎ、競争もなさすぎるため、ボルボやベンツの工場を誘致してはどうか?

ロ)中韓のケース
 これまで日本車が圧倒的なシェアを占めていた東南アジアの自動車市場でも、*3-2-1のように、現地政府のEV振興策に呼応して中国・韓国のメーカーがEVで先手を取ろうとしており、タイでは中国の長城汽車が、インドネシアでは韓国の現代自動車が現地生産に乗り出そうとしているそうだ。

 タイは、現在は日本車の生産・販売シェアが約9割に達するが、大半をガソリン車が占め、長城汽車は2020年にタイから撤退した米GMの工場を取得して参入し、3年間でEVを含む9車種の電動車を投入するとのことである。

 タイ、インドネシア両政府に共通するのは、動きの鈍い日本車へのいらだちで、タイではEV普及目標の引き上げを検討する政府に対し、バンコク日本人商工会議所自動車部会が「全体でのゼロエミッションを考えて段階的に進めるべきだ」として慎重な議論を求め、インドネシアも同様だということだが、日本国内でもよく言われるこの屁理屈は、どちらから先でもよいが解決すべき問題を先送りするために使われている見識の低いものである。

ハ)日本のケース
 日本車は、*3-2-1のように、東南アジアで1960年代から現地組み立てを始め、主要国の新車販売に占めるシェアが約8割に達しているが、いつまでもガソリン・エンジンに執着した結果、EVでゲームチェンジが起こって中国勢が小型車・商用車で攻勢をかけているそうだ。

 そのため、*3-2-4に、2021年7月21日、スズキ・ダイハツがトヨタ・日野・いすゞの商用車連合に合流すると発表し、トヨタにとって電動化など脱炭素における商用車分野協業の総仕上げになると記載されているが、商用車の技術開発会社に軽自動車を得意とする2社が加わって大型から小型まで商用車を全方位で開発する体制が整うのはよいものの、すべてがトヨタ頼みでは多様性がなくなりそうである。

 地方では、狭い道でも通りやすくて自転車代わりに乗りこなせるため、軽自動車が初心者用や主婦用として購入されるケースが多い。ただし、安い価格で脱炭素を実現してもらいたいのは当然だが、ダサくてもよいわけではないため、VWやフィアットを選ぶ人もいる。つまり、日本車は、企画が洗練されておらず、(馬鹿の一つ覚えで)工夫が足りない感があるのだ。

2)有望な新技術を選ぶ脱炭素ファンドができた
 このような中、*3-4のように、企業の脱炭素化に向けた世界最大規模の枠組みとして、米投資ファンドTPGキャピタルが気候変動対策に特化したファンドを組成し、アップル・グーグル・ボーイングなどの米国を代表する企業20社以上と日本の三井住友銀行が出資して、当初の運用規模が約54億ドル(約6000億円)になるそうだ。

 そして、このファンドは、①脱炭素化に向けた技術を有するベンチャー企業に資金を投じ ②新技術開発を促進し ③2021年中に出資額を70億ドル程度まで引き上げ、④三井住友銀行は出資先への融資や新規株式公開の支援などで連携し、また、⑤気候変動対策を巡っては米アップルが2億ドル規模の森林再生ファンドを既に立ち上げており ⑥アルファベットは環境関連に使途を絞った社債「サステナビリティボンド」の発行を決めている とのことである。

 このほか、脱炭素化を巡っては米ブラックロックが新興国向けインフラファンドを立ち上げ、国際協力銀行・第一生命・三菱UFJ銀行などが出資を決めて、ファンド総額5億ドル規模を目指しており、このように、金融の視点から気候変動問題に対応し、脱炭素化の技術を保有する企業を探して育てるのはよい考えだと思う。

3)日本に国際ルール作成能力があるのか
 日経新聞は、*3-2-5のように、EUが2021年4月に公表した「タクソノミー(事業が持続可能と判定される基準)」について、「①『閻魔大王』のように企業が選別される」「②環境に優しいとされるプラグインハイブリッド車はEVへの移行期に伸びると見込まれていたが、2026年以降は新車で売りにくくなる」「③天然ガスは石炭よりCO2排出量が4割少なく、石炭から再生エネへの移行期の繋ぎ役になるとされてきたが、欧州投資銀行のホイヤー総裁は2021年末までにガスへの投融資から手を引く方針を表明した」等と記載している。

 しかし、②③は繋ぎ役でしかなく、繋ぎ役が出演できるのは主役が出てくるまでの時間でしかないため、もともと予想されていたことで、繋ぎ役で凌いでいる間に主役を作らなければならなかったのだ。また、天然ガスについては、燃料として使わなくても化学工業原料として使える上、燃料としてのガスならオリンピックの聖火と同じく再エネ由来のH₂を使えばよいだろう。

 つまり、「完全にはできないから妥協する」という地点から出発すると何も解決できないため、「日本は欧米主導のルールを受け入れることが多かったが、ルールをつくる側に回れるかどうかは国益を左右する」と言いたいのなら、我田引水によって歪んでいない合理的なルールを作って見せる必要がある。何故なら、これまでは、日本人の私が見ても、先進的かつ合理的で世界のリーダーになってもらいたいのは、欧州のルールの方だったからだ。

・・参考資料・・
<洪水の多発と地球温暖化の関係>
*1-1-1:https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2021/07/1201300.php (Newsweek、Reuters 2021年7月17日) ドイツ・ベルギー洪水の死者120人超に、行方不明約1300人
 欧州西部を襲った記録的な豪雨で河川の氾濫により洪水が発生し、16日時点でドイツ西部などで約1300人の安否が確認されていない。水位の上昇が続き、一部地域で通信が途絶える中、ドイツとベルギー両国の死者は120人を超えた。ドイツのラインラント・プファルツ州とノルトライン・ウェストファーレン州に加え、ベルギーとオランダで、河川の氾濫で住宅が押し流されるなど大規模な被害が発生。これまでにドイツだけでも103人の死亡が確認された。このうち12人は、夜間に鉄砲水に襲われたケルン南方のジンツィッヒにある障がい者施設の入所者だった。地元メディアは、洪水による家屋倒壊が増えているため、犠牲者数が増加する恐れがあると報道。ベルギーではこれまでに少なくとも20人の死亡が確認され、安否不明は20人となっている。ドイツでは16日時点で約11万4000世帯が停電。洪水に見舞われている一部の地域では携帯電話網が機能停止に陥り、被災者と連絡が取れない状態になっている。ラインラント・プファルツ州では、ケルン南方のアールワイラー地区で約1300人の安否が未確認。ケルン当局の報道官は「ネットワークが完全に遮断され、インフラは完全に破壊された。病院は患者を受け入れられなくなっている」と述べた。ドイツ政府は700人を超える軍隊を動員し、救援にあたっている。独政府報道官によると、メルケル首相は次期首相候補であるキリスト教民主同盟(CDU)のラシェット党首から捜索や救助活動を巡る状況報告を受け、近く被災地を訪問する予定という。ARD(ドイツ公共放送連盟)は、メルケル首相が18日にシュルトを訪れると報じた。当局は、ダムが決壊すれば下流地域が一段の洪水に見舞われる恐れがあるとして、放流を試みている。ドイツ西部シュタインバッハタール・ダムは昨晩にかけて決壊の恐れが高まったため、下流地域で約4500人が避難した。気象学者は、気候変動の影響でジェットストリームの流れが変わったために今回の豪雨が引き起こされたと指摘。欧州委員会のフォンデアライエン委員長も、今回の洪水の規模を踏まえると気候変動が影響していることは明らかだとし、迅速に対応する必要があるとの考えを示した。

*1-1-2:https://digital.asahi.com/articles/ASP7P4142P7PUHBI00V.html (朝日新聞 2021年7月21日) 地下鉄浸水12人死亡 中国・河南「千年に1度の暴雨」
 中国・河南省で17日以降、記録的な大雨が続き、省都の鄭州市で地下鉄が浸水するなどして21日までに少なくとも計16人が死亡、10万人が避難した。鄭州の気象局は「1千年に1度の暴雨」だとして、警戒を呼びかけている。習近平(シーチンピン)国家主席は同日、被災者の救済に取り組むよう関係部門に対して重要指示を出した。中国メディアによると、鄭州市では、20日午後4~5時の1時間で201・9ミリの雨が降り、中国全土での観測史上最大を記録した。17日以降の3日間では、鄭州市の年間雨量にほぼ匹敵する617ミリの雨量を計測したという。地元メディアによると、鄭州市では20日午後6時ごろ、地下鉄構内への浸水を防ぐ遮水壁を越えて雨水が線路にまで流れ込んだ。市内の地下鉄は全線が運行停止となり500人余りが避難したが、逃げ遅れた12人が死亡したという。ほかに5人がけがを追った。中国のSNSには、鄭州市内の地下鉄車内で乗客が胸のあたりまで水につかったまま取り残されている様子を映した動画も投稿されている。このほか、鄭州市内では家屋の倒壊などによって4人が死亡した。

*1-1-3:https://www.bbc.com/japanese/57911006 (BBC 2021年7月21日) 中国・河南省で記録的豪雨 12人死亡、1万人以上が避難
 中国中部・河南省は、今月16日から続く記録的豪雨で、深刻な洪水被害に見舞われている。駅や道路が冠水し、住民1万人以上が避難を余儀なくされている。当局によると、鄭州市でこれまでに少なくとも12人が死亡した。また、主要道路が閉鎖され、空の便が欠航するなど、10都市以上に被害の影響が出ている。人口約9400万人の河南省には最高レベルの気象警報が発令されている。洪水発生の原因は複合的だが、気候変動による気温上昇は激しい降雨のきっかけになる。
●ダム決壊の恐れも
 ソーシャルメディアでは、道路全体が水没している様子が画像から確認できる。水の流れは速く、車やがれきが漂流しているのがわかる。こうした中、河南省のダムが決壊する恐れが出ている。当局によると、洛陽市のダムに20メートルほどの亀裂が生じている。同地域には兵士が配備され、軍は声明で「いつ決壊してもおかしくない」と警告した。ツイッターには、鄭州市で浸水した地下鉄の車両に乗っていた乗客が、肩のあたりまで水に浸かっている映像が投稿されている。現実の状況を撮影したものなのかは不明。救助隊がロープを使って人々を安全な場所に引き上げる様子や、列車の座席に立って水に浸からないようにする人の姿などが確認できる。車両内に何人が閉じ込められているのかは不明だが、これまでに数百人が救助されたとの報告がある。シャオペイと名乗る人物は、中国のソーシャルメディア「微博(ウェイボ)」に助けを求めるメッセージを投稿した。「車両内の水が自分の胸にまで達している。もう声も出ません」。消防局はその後、この人物が救助されたと明らかにした。
●3日間で1年分の雨量
 「生まれてからずっと鄭州市で暮らしているが、こんな大雨は経験したことがない」と、56歳のレストラン経営者はAP通信に語った。鄭州市ではこの3日間で、通常の1年分の雨量に匹敵する雨が降ったと報じられている。同地域では少なくとも今後24時間は土砂降りの雨が続くと予想されている。

*1-2-1:https://news.yahoo.co.jp/articles/794b549b846d24273ef57f58173d01c107872ca7 (Yahoo 2021/5/1) 世界の山間部の氷河が、2050年までに“完全消失”する:衝撃の研究結果が意味すること
 これまでに氷河を散策した経験がないなら、近いうちに行きたくなるかもしれない。標高の高い場所にある世界の氷河が、科学者が想定していたよりも速く溶けていることが判明したのだ。すでに2015年以降だけで年間3,000億トン近くの氷が失われている。4月28日に発表された包括的な研究によると、このままのペースで融解が続けば、今世紀半ばには多くの氷河が完全に失われる可能性があるという。このほどカナダとフランス、スイス、ノルウェーの研究者たちが、米航空宇宙局(NASA)の衛星「Terra(テラ)」に搭載された特殊なカメラで撮影された20年分の衛星写真をまとめた。このカメラは「ASTER(Advanced Spaceborne Thermal Emission and Reflection Radiometer=アスター)」と呼ばれる機器で、世界各地の21万カ所以上の氷河の写真を撮影している。氷河の表面の特徴を立体的に捉えるために、撮影にはふたつのレンズが使用された。今回の研究にはグリーンランドと南極の大規模な氷床は含まれていないが、こちらは別の科学者のチームが調査している。今回の研究は『Nature』に掲載されたもので、2000年から04年にかけて年間2,270億メートルトンの氷河が失われたことが判明した。ところが15~19年には、溶ける量が年間2,980億トンまで増えていたことも明らかになっている。こうした変化の原因として論文では、温暖化や降水量の増加を挙げている。すべてを合わせると、溶けて河川や海に注ぎ込んだ水の量は、過去20年間に観測された海面上昇分の約5分の1に相当するという。
●人々の生活を脅かす現象
 問題は海面上昇にとどまらないが、重大な問題であることには変わりない。インドネシアやバングラデシュ、パナマ、オランダといった沿岸国や米国の一部の住民の生活が脅かされているからだ。また内陸地域の一部では、何百万人もの人が雪解け水からきれいな水を得ている。降雪量が少ないときは、長年にわたって氷河が予備の水源になっているのだ。そうした状況はアンデス山脈やヒマラヤ山脈、アラスカ州の一部に特に見られている。「氷河は地球全体の多くの場所に冷涼で豊富な水を提供しています」と、ノーザンブリティッシュコロンビア大学の地球科学教授で今回の論文執筆者のひとりであるブライアン・メヌーノスは言う。「これらの氷河がなくなると、そうしたバッファとしての機能が失われてしまいます」。これまでの氷河溶解に関する研究では、空間的にも時間的にもほとんど計測が実施されていなかった。このため氷河が実際にどれほど後退しているのかについては、不明瞭な点があったという。それが詳細な衛星写真を使うことで、「わたしたちの推計では不明確な部分を大幅に減らすことができました」と、メヌーノスは言う。21万1,000カ所すべての氷河のデータを処理するために、ノーザンブリティッシュコロンビア大学のスーパーコンピューター1台を1年間にわたってほぼフル稼働させる必要があった。
●厳しい未来への警鐘
 今回の研究結果は厳しい未来に警鐘を鳴らしているのだと、ブリストル大学の地理学教授のジョナサン・バンバー(今回の研究には参加していない)は言う。「これは21世紀の世界の氷河の質量損失に関する最も包括的、徹底的かつ詳細な評価です。かなり詳細な研究結果のおかげで、世界全体の個々の氷河の変化を初めて知ることができました」と、バンバーは説明する。現在の傾向が続けば、標高の低い山地の一部では2050年までに氷河が完全に失われることが分析で示されていると、バンバーは言う。「研究自体やその成果は素晴らしいものですが、最上段に掲げられたメッセージはとても悲観的です。氷河は消えゆく運命にあり、水源や自然災害、海面上昇、観光、そして地域の生活に深刻な影響を与えているのです」。論文の筆者たちも、この評価と同じ考えだ。ノーザンブリティッシュコロンビア大学のメヌーノスは、今世紀半ばまでにカスケード山脈やモンタナ州のグレイシャー国立公園などの場所から氷が完全になくなるだろうと指摘している。「見られるうちに見ておいたほうがいいでしょうね」と、メヌーノスは促す。急速に溶ける氷河が生み出す水は、環境災害を引き起こすことがある。例えば今年2月には、融解が進んでいたヒマラヤの氷河が北インドで崩れ、水の壁が狭い渓谷を下ってふたつのダムに到達して200人が亡くなる事故が起きた。国連の気候変動に関する政府間パネルが18年に発表した報告書は、そうした凄まじい洪水や地滑りが高山で起きやすくなっている原因は、温暖な気候にあると指摘している。「氷河の後退や永久凍土の融解によって山の斜面の安定が崩れ、氷河湖の数や面積が増えると予測される」と、報告書では結論づけている。「その結果、地滑りや洪水、水が滝状に流れる現象が、かつてそうした現象がなかった場所でも起きるだろう」
●氷河の損失の半数が北米に
 カナダと欧州の研究者たちが執筆した今回の論文は、アラスカやカナダ西部、米国で溶けつつある氷河が、世界全体で加速する氷河の質量損失の半分近くを占めていることも突き止めている。「アラスカ州の南東部は心配な場所です。ここ10年間で途方もない変化が起きています」と、メヌーノスは指摘する。アラスカ州では融解する氷が原因で地震の規模が大きくなっている。3月に『Geophysical Research』に掲載されたアラスカ大学フェアバンクス校の研究者たちの論文によると、氷河の下にある地面が隆起して圧力が解放され、付近の断層にかかる力に影響を及ぼしているのだという。全体としては悪いニュースではあるが、研究チームが20年間の衛星写真からまとめたデータの量に専門家は感銘を受けている。「本当に素晴らしい成果だと思いました」と、NASAゴダード宇宙飛行センターの雪氷圏科学研究所所長のトム・ノイマンは言う。「時系列の威力がはっきりと示されています。多くの場合、こうした調査には5~7年単位の年月がかかります。研究チームがいまでも優れたデータを集めているという事実は驚きに値します。そうしたデータは史上初の成果を得る上で大きな力になったのです」。ノイマンは、NASAの地球観測衛星「ICESat-2」のミッションのプロジェクトサイエンティストを務めている。ICESat-2は、地球の極地にレーザーを反射させて氷河や極地の氷床の損失を計測し、世界の海面上昇への影響を監視する。「20年は続けたいと思います。そしていつの日か、今回の論文のようなものを執筆できればいいですね」と、ノイマンは語る。

*1-2-2:https://www.sankeibiz.jp/workstyle/news/210104/cpd2101040638001-n1.htm (産経BZ 2021.1.4) 2020年は日本も世界も平均気温が史上最高 豪雨、異常高温相次ぐ
2020年の世界と日本の平均気温が、観測が始まった19世紀末以降、最高となる見込みであることが気象庁の調査で分かった。気温上昇に伴い、各地で30年に一度の規模の高温や大雨などが頻発。国内も九州で豪雨災害が発生するなどした。地球温暖化も寄与したとみられ、2020年は新型コロナウイルスだけでなく、気象も人類に牙を向いた年として記憶されそうだ。一方、今年はこうした傾向がやや緩和されるとの見方もある。気象庁によると、世界の1~11月の平均気温は平年(1981~2020年の平均)から0・47度上がり、16年1~11月の0・45度を抜いて1891年以降、歴代1位となった。100年で0・75度上昇したことになる。太平洋南東側やアフリカ大陸の南東側の海を除くほとんどの地域で、平年より平均気温が高くなった。日本の平均気温も1898年の観測開始以来、過去最高となり、平年より1・07度高かった。100年あたりでは1・27度上昇した。各地で異常高温もみられ、気象庁がまとめた主な現象だけでも世界の11地域で発生。シベリアの一部地域では気温が平年より14・2度高くなり、永久凍土まで解ける地域もあった。気象庁のまとめでは、8~9月に米国西部で森林火災が発生するなど、2020年は8件の気象災害が発生。うち6件が大雨、1件がハリケーンによる被害だった。6~10月にインドなどを含む南アジアで発生した大雨で、周辺では2700人以上が亡くなった。国内では7月に九州で長期にわたる豪雨災害が発生したが、この雨をもたらした暖かく湿った空気と長く停滞した梅雨前線は、九州を襲う前の6月中旬以降、中国の長江の中・下流域でも活動を活発化させ、270人以上が死亡・行方不明となる豪雨を発生させた。気象庁異常気象情報センターの担当者は「20年が暑かった原因は、温室効果ガスによる地球温暖化に加えて複数ある」と分析する。20年初頭は北極にある寒気が南に降りてきにくい大気の状態だったことから、暖冬が進行。さらに19年ごろからインド洋の海面水温が平年より高まったことが地球全体に広がり、年間を通してさらなる温暖化に寄与した可能性があるという。一方、20年夏以降は太平洋の中部・東部の海面水温が平年より低くなるラニーニャ現象が発生。ラニーニャ現象が発生した年は日本列島は寒くなる傾向にあるといい、20年末から21年にかけては一転して寒い冬となるという。気象庁と同様に地球温暖化を監視している英国気象庁によると、21年の世界の気温は15年以降の数年間よりはラニーニャ現象の影響で少し涼しくなるものの、1850~1900年の平均よりは約1度高く、長期的な温暖化傾向に変わりはないとみられる。

*1-2-3:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000006.000044799.html(パシフィック・コミュニケーションズより抜粋 2020年3月23日)昭和から令和で気温1.4度上昇!
■平成の31年間は1989年の観測史上、もっとも日本の気温が上昇した期間。
 昭和元年から令和元年(1926~2019年)の94年間で、日本の平均気温は1.4度上昇。
■世界全体で見ても平均気温は上昇傾向。2019年の世界の年平均気温は史上2番目の高さで、15~19年の5年間、10~19年の10年間の平均気温はいずれも過去最高。
■気象庁発表によると、2020年3月~5月の気温は全国的に高く、夏(6月~8月)の気温も全国的に平年並みか、高め。昨年より早い時期から真夏の太陽が照り付けると想定される。
■日本全体で進む高気温化
 都市化による影響が小さい全国15地点(※)の年平均気温偏差(濃い折れ線)および全国13地点*1の猛暑日*2の平均年間日数(薄い折れ線)の推移。
*1:全国15地点:網走*,根室,寿都,山形,石巻,伏木,飯田*,銚子,境,浜田,彦根,宮崎*,多度津,名瀬,石垣島(全国13地点:全国15地点のうち、*以外の地点)
 ※都市部ではヒートアイランド現象による気温上昇が別途加味されるため、日本全体の気温推移を確認する場合は、都市部を除いた地点を全国まんべんなく抽出している。
*2:日最高気温が35度以上の日
 日本気象協会によると、昭和元年から令和元年(1926~2019年)の94年間で、日本の平均気温が1.4度上昇したことがわかりました。2015年7月に発表された研究によると、大気中の二酸化炭素レベルが現在とほぼ同じだった300万年前の気温は、現在よりも2℃から3℃高く、海抜は最低でも6メートル高かったことがわかっています(※)。この内容から単純に計算すると、気温が1度上昇するごとに海面は2mほど高くなることから、気温1.4度の上昇がどれほど大きな変化かわかるでしょう。中でも、平成以降の約30年は気温が一段と高くなっており、統計的にも平成の30年は1898年の統計開始以降、最も暑い30年間だったと言うことができます。また、猛暑日の出現日数についても1920年から10年刻みで日数を確認したところ、平成以降急激に猛暑日が増えていることがわかりました。特に2010年代の10年間は1980年代と比較すると猛暑日の日数が4.6倍にも及ぶほか、1926年以降で猛暑日の出現日数が多かった年をランキングにしてみると、上位5カ年のうち4カ年が平成元年以降に集中するなど、直近30年の気温の高さが伺えます。
 ※Dutton et al. 2015 https://science.sciencemag.org/content/349/6244/aaa4019
■都市部でも大きな変化が
 横浜・京都・福岡など都市部では全国平均よりも大きく気温が上昇。年間の猛暑日数に関しても明確な増加傾向にあることが分かりました。一般的に、都市域では建築物や人工排熱などで気温が下がりにくいヒートアイランド現象の影響を受けやすいため、その効果が全国平均よりも顕著な気温上昇傾向として表れた可能性があります。
■令和を迎えた昨年、日本全体の年平均気温の最高を更新。2020も高気温の見通し
 2020年1月、気象庁は、2019年の日本の年平均気温(基準値との差:+0.92℃)が、1898年の統計開始以来で最も高い値であると発表。加えて、世界気象機関(WMO)は、2019年の世界の年平均気温(基準値との差)が史上2番目の高さであり、15~19年の5年間、10~19年の10年間の平均気温はいずれも過去最高であると発表するなど、日本だけでなく世界全体で見ても多くの研究で高気温化が認められています。日本全体の気温上昇は、地球温暖化の影響と自然変動の影響を受けていると考えられ、今後ますます注意が必要です。また、気象庁が20 年2月25日に発表した、向こう3ヶ月(3月~5月)と今年夏(6月~8月)の天候見通しによると、今年の夏の気温も全国的に平年並みか高めになるとのことです。また、梅雨時期の降水量はほぼ平年並みで、その後は高気圧に覆われて晴れる日が多くなると予想。昨年は7月下旬まで雨が続き、気温が上がらなかったことを考えると、今年は昨年より早い時期から真夏の太陽が照り付けるでしょう。この結果を受けて、日本気象協会は、今年は本格的な夏を待たずに、いち早く猛暑対策を行う必要があるとしています。(以下、略)

<政策の方針と予算>
*2-1-1:https://digital.asahi.com/articles/DA3S14983912.html (朝日新聞社説 2021年7月22日) 30年電源構成 原発維持は理解できぬ
 2050年に脱炭素社会を実現するために、30年度にどんな電源構成をめざすべきか。経済産業省がきのう、政府の次期エネルギー基本計画の素案で新しい目標を示した。再生可能エネルギーを「最優先」と明記し、30年度の再エネ比率を36~38%と現行目標より14ポイント高くした。再エネを主力電源と明確に位置づけたことは評価できる。一方、理解できないのが、原子力の比率を20~22%に据え置いたことだ。国際エネルギー機関(IEA)が集計した昨年の国内の発電実績の速報では、原発の割合は4・3%に過ぎない。素案が示す原発比率の達成には、新規制基準で審査中の11基を含む国内の原発27基を、8割の高稼働率で運転させる必要がある。しかし現実には、福島の事故以来、国民の不信感が根強く、再稼働は進んでいない。コストが安い電源だとの主張も根拠が揺らいでいる。経産省が今月まとめた電源別の発電コスト試算の最新結果では、30年に新設する原発は1キロワット時当たり11円台後半以上。04年には5・9円とされていたが、安全対策費用が増え続けて上昇傾向が止まらない。30年時点で8円台前半~11円台後半と最も安くなる見通しの事業用太陽光など、コスト低下が進む再エネとは対照的だ。素案が「可能な限り原発依存度を低減」としながら、非現実的な目標を掲げざるを得ないのは、30年度の温室効果ガス排出を13年度より46%減らす新しい政府目標との整合性を取る必要があるからだろう。それだけ無理をしても、30年度の電源構成の目標で最も大きいのは火力だ。昨年実績の7割からは下がる見通しだが、依然、41%もある。そもそも、8年半後の電源構成を現状から大きく組み替えることには限界がある。発電施設の建設や送電システムの改革には時間がかかるからだ。まずやるべきは、脱炭素社会実現をめざす50年のあるべき電源構成の姿を示すことではないか。主役は現時点では、再エネしか考えられない。昨年の発電実績で21・7%と、現行の30年目標(22~24%)に匹敵する水準に育った再エネの潜在力を、できる限り生かすのが得策だ。30年度の数字は、50年の目標に向けての足取りを検証するための中間指標との位置づけで考え直すのが望ましい。太陽光や風力など電源ごとに具体的な施策を挙げた長期の実行計画をまとめ、検証と修正を重ねながら柔軟に進めていく。そんな態勢を整えることこそ、脱炭素社会への早道になるだろう。

*2-1-2:https://www.kochinews.co.jp/article/471271/ (高知新聞 2021.7.14) 再生エネの優位性を磨け
 2030年時点の各電源の発電コストについて経済産業省が示した新たな試算は、太陽光が最安になった。これまで最も安いとされた原子力のコストが上昇し、太陽光は初めて原子力を下回った。原子力は東京電力福島第1原発事故を受けた規制強化に伴い、安全対策費が膨らんだ。このため前回15年の試算より1割程度上がった。改正地球温暖化対策推進法は、50年までの脱炭素社会の実現を明記している。そのためには、大規模な省エネルギーとともに、二酸化炭素(CO2)排出量の4割を占める電力部門の対応が鍵を握る。中期目標では、30年度の排出量を13年度比で46%削減する。取り組みの加速が求められている。太陽光など再生可能エネルギーは導入量の増加で主力電源になると見込まれる。今夏をめどに改定する「エネルギー基本計画」に合わせた電源構成の新目標は、現行より引き上げる方向で検討されている。火力は縮小へ国際的な圧力がある。そこで、原子力は目標を維持するとの見方が出ている。CO2を排出しない再生エネと原発の電源割合を引き上げることで補うことをもくろむ。発電コストを巡っても、経産省は原子力の安さを強みと位置付けてきた。だが、その見方も安全性とともに揺らいでしまった。災害などを想定した事故防止対策のコスト増加が見込まれる。第1原発の廃炉で最難関とされる溶融核燃料(デブリ)の取り出し費用などは含んでおらず、コストはさらに上昇することは間違いない。この試算は発電設備を新たに更地に建設して運転した場合を前提としている。土地取得の費用などは含まず、利用状況などで数値は変動するとはいえ、運転開始から40年を過ぎた原発が再稼働する中、新増設は厳しい状況だ。石炭火力はCO2排出抑制の対策費がかさむため、上昇を見込む。一方、太陽光の発電コストは、事業用、住宅向けとも下がるとした。世界的に普及が進むことでパネルなどの価格が低下するとみる。陸上風力や液化天然ガス(LNG)火力なども、発電コストを最も安く見込んだ場合の試算値では、原子力の発電コストを下回った。ただし、再生エネへの期待を膨らませても、導入は簡単に拡大するものではない。送電網の整備費などは今回の試算に含まれていない。天候に左右される発電条件など、乗り越えなければならない課題も多い。来年4月施行予定の改正温対法は、太陽光や風力発電などの促進区域を市町村が設定する制度を創設する。手続きの簡素化や資金面での優遇を想定している。だが、生態系や景観の悪化を懸念する住民らの反対運動も目立つようになった。国は土砂災害などが想定される地域は指定対象から除外する方針のようだが、地域の混乱を誘発するようでは本末転倒だ。再生エネの優位性を生かすように、きめ細やかな対応が求められる。

*2-1-3:https://www.ehime-np.co.jp/article/news202107150013 (愛媛新聞社説 2021年7月15日) 太陽光「最安電力」 再生エネを促進し原発は全廃を
 経済産業省が2030年時点での発電コストの試算を示し、「最も安い電力」が原子力から太陽光に交代した。太陽光の発電コストが原子力を下回るのは初めてとなる。原子力は発電コストの安さを強みとしてきた。だが、安全性への懸念や、高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の最終処分などの問題に加え、経済的な優位性も揺らぎ、存在意義は薄れる一方となっている。国は太陽光など再生可能エネルギーの主力電源化を推し進めるとともに、原発の速やかな全廃に道筋を付けるべきだ。試算は、発電設備を更地に新設して運転するのが前提となっている。原子力の発電コストは04年試算で1キロワット時当たり5・9円だったが、11年の東京電力福島第1原発事故を機に上昇。前回15年は10・3円以上、今回は11円台後半以上だった。前回試算と比べると、1基当たり平均1千億円と見積もった安全対策費が今回は2千億円になった。福島の事故を巡る廃炉や賠償、除染などの見積額も12兆2千億円からほぼ倍増。これらが発電コストを押し上げている。廃炉で最難関の溶融核燃料取り出しや、除染土壌の最終処分の費用は試算に含まれておらず、原発のコストが上振れするのは避けられないだろう。二酸化炭素(CO2)排出量が多い石炭火力も排出抑制対策に費用がかかり、発電コストの上昇が見込まれる。地球温暖化の元凶でもあり、原発と同様に一刻も早く廃止すべきだ。一方、太陽光は世界的な普及拡大でパネルなどの価格が低下し、発電コストが下がる。最安の計算値は、事業用が1キロワット時当たり8円台前半、住宅用が9円台後半。陸上風力も原子力を下回る見通しという。今年5月、「50年までの脱炭素社会実現」を明記した改正地球温暖化対策推進法が成立。政府は30年度の温室効果ガス排出量を13年度比で46%減らす目標を掲げる。達成に向け、省エネと合わせ、より安全で安価な再生エネの普及拡大に注力するのが合理的といえる。ただ、課題も残る。太陽光や風力発電の適地は全国に分散しており、大消費地への送電網拡張が欠かせない。天候の変化に備えた蓄電池の整備なども必要になる。こうした費用は試算に入っておらず、コストを抑える取り組みが重要だ。大規模施設を設置するための森林伐採が土砂災害リスクを高めるとの懸念もある。水質や景観への悪影響を理由とした反対運動も各地で起きている。国は地元に対応を丸投げしてはならない。行政と住民、事業者の利害を調整し、丁寧に合意形成を図る制度が必要ではないか。経産省は今月21日にもエネルギー基本計画の改定案を提示する。計画の土台となる30年度の電源構成目標で、再生エネを大きく伸ばす姿勢を明確に打ち出し、民間企業による投資拡大や技術革新につなげたい。

*2-1-4:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20210726&ng=DGKKZO74163590V20C21A7PE8000 (日経新聞社説 2021.7.26) 現役世代からの医療費召し上げは限界だ
75歳以上の後期高齢者が入る医療制度(後期制度)に対し、現役世代の加入者を中心とする企業の健康保険組合などが負担する支援金が一段と膨張した。今後、団塊世代の後期高齢化で消費する医療サービスはますます増える。菅政権が全世代型社会保障を看板に掲げるなら、医療費膨張を制御するとともに、不足する財源は現役世代からの召し上げだけに頼らず、安定した税財源の確保に力を尽くす必要がある。厚生労働省によると、2019年度に健保組合などが後期制度に払った支援金総額は前年度より3.7%増え、6兆5220億円となった。後期制度を導入した08年度以降で最高だ。主因は(1)後期高齢者人口の増加(2)医薬品・医療機器などのイノベーションがもたらした診療報酬の増額――の2点だ。イノベーションの恩恵は全世代の患者が広く享受する。新型コロナの例を出すまでもなく病の脅威に診療報酬政策を適切に用いるのは当然である。一方、後期高齢者人口の増大は22年から拍車がかかる。すべての団塊世代が後期高齢者になる25年に向け、医療費膨張に歯止めが利かなくなる事態を憂慮する。国会は先の通常国会で、一定以上の年金所得などがある後期高齢者の窓口負担を1割から2割に高める法改正をした。しかし対象者が限られ、医療費膨張を制御する効果は乏しい。根本からの対策を視野に入れるときだ。医療現場では検査の重複を減らすのが課題である。マイナンバーを生かし、デジタル化した検査結果の記録を患者自身が簡単に持ち運びできるようにすべきだ。また、最も有効かつ安全で経済的な薬の使用方針を決める「フォーミュラリー」も医療費の制御効果が高い。厚労省は来年度の診療報酬改定で、病院への導入を後押しする仕組みを工夫してほしい。もっとも、これらの対策をとっても現役世代の支援金増加をくい止めるのは難しい。骨折や慢性疾患のリスクがほかの世代よりも格段に高く、保険原理が働きにくい後期高齢者の特質を考えれば、その医療費に消費税の投入を増やすのが理にかなっていよう。今後10年程度は、消費税増税は不要というのが首相の立場だが、超高齢国のリーダーとして責任ある考えとは言えまい。税率10%後のあり方について政治的な議論の場を設定するときである。

*2-2-1:https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA0311G0T00C21A7000000/ (日経新聞 2021年7月3日) 概算要求に特別枠 22年度予算、成長分野の投資促す
 財務省は2022年度予算の概算要求基準で、成長分野に優先的に予算配分できる特別枠を設けるよう調整する。各省庁で使い道を決められる裁量的経費を前年度からまず10%減らすよう求め、削減額の3倍を特別枠で要求できるようにする。デジタル化の加速や脱炭素など菅義偉政権が力を入れる分野で政策を集め、投資を促す狙いがある。概算要求基準は各省庁による予算要求のルールとして位置づけられる。政府が近く与党と調整し、正式に決める。各省庁は8月末までに財務省に概算要求を出す。財務省は金額と政策を査定し、年末までに政府の予算案をつくる。政府は6月に閣議決定した経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)で①グリーン社会の実現②デジタル化の加速③少子化の克服④地方の活性化――の4分野を今後の重点課題にした。22年度予算編成に向けて、既存の事業の見直しを求めてメリハリを利かせたうえで、重点分野の予算を増やす。公共事業や教育など一般会計の裁量的経費は、21年度当初予算で約15兆円だった。前提として各省庁には既存経費の10%削減を求める。特別枠は削った額の3倍を上乗せして要求できる。人件費など義務的経費を減らした分についても特別枠に入れることを認める。歳出に上限は設定しない。新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、昨年の予算編成では概算要求の締め切りを1カ月遅らせて9月末にするなどの対応を取った。特別枠も設けなかったため、22年度は例年のかたちに戻る。予算規模の大きい社会保障関係費の扱いについては、骨太方針に従い、過度に膨張しないよう高齢化に伴う伸び(自然増)に抑える方針を示す。21年度予算では社会保障費の伸びを4800億円と見込んでいたが、薬価改定などで実質的な伸びを3500億円にとどめた。22年度は団塊の世代が75歳以上になり始める影響もあって、自然増はこれまでより増える見通し。医師の技術料など診療報酬の見直しなどでどれくらい伸びを圧縮できるかが今後の焦点になる。新型コロナに関連する予算などでは、影響が現時点で見通しにくいことを考慮し、金額を示さない事項要求を認める。21年度の当初予算は一般会計で106.6兆円と9年連続で過去最大を更新した。22年度も膨張が予想される。

*2-2-2:https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA13AP70T10C21A7000000/ (日経新聞 2021年7月15日) 米欧の財政支出、脱炭素・ITに集中 日本は配分課題
 米国や欧州が新型コロナウイルス危機の出口を見据え、環境やデジタルの分野で数十兆円規模の巨額の財政支出に動き始めた。税財源の計画も打ち出し、数年単位の持続的な成長戦略と位置づける。明らかになっているメニューの比較で日本は支出が実質的に10分の1に及ばず、メリハリも効いていない。長期構想に基づいて予算を無駄なく戦略的に配分する仕組みを整えなければ国際競争で劣後する恐れがある。米欧はもともと産業振興に巨額の補助金などを投じることには慎重だった。ただ脱炭素などの新技術の開発では政府がインフラ開発などで旗を振らなければ、民間の投資が伸びにくい。国家を挙げて技術覇権の確立を狙う中国に後れを取りかねないとの危機感も米欧政府の背中を押す。米バイデン政権が掲げた「雇用計画」は8年間で2兆ドル(約220兆円)をインフラ整備や気候変動対策に投じる。電気自動車(EV)を購入する消費者への補助金などに総額約19兆円、電力網の刷新に約11兆円など巨額のメニューが並ぶ。中国との覇権争いも絡むデジタル経済のカギを握る半導体支援も重点テーマだ。2022会計年度(21年10月~22年9月)から5年間で、米国内に工場や開発拠点を設ける企業への補助金など計5.7兆円を出す法案を米議会上院が可決した。政策を実現する財源確保の一環で法人税率の引き上げや富裕層への課税強化策も表明している。欧州連合(EU)は気候変動分野に集中投資する。21年から7年間の中期予算と「コロナ復興基金」の計約1兆8千億ユーロ(230兆円)のうち3割を気候変動対策にあてる。目玉は水素戦略だ。30年までに日本の目標の3倍超にあたる年1千万トンの生産体制を整える。EUは14日、国境炭素税の案を公表した。環境対策が不十分な国・地域からの輸入品に欧州の排出枠価格と同程度の税を課す。事実上の関税として年100億ユーロ近くの収入を想定し、環境投資の新たなサイクルを回す。中国は2014年から基金を作り、半導体関連技術に5兆円超の大規模投資を進めている。上海に二酸化炭素排出枠の取引所を設け、気候変動対策にも本腰を入れる。成長分野への支出で日本は質量ともに見劣りする。脱炭素に10年間で2兆円を投じる基金は20年度第3次補正予算に急きょ盛り込んだ。EVなど向けの経産省の補助金は21年度に155億円で、19兆円の米補助金に比べ桁違いに少ない。第一生命経済研究所の永浜利広氏は「経済規模の違いを考えても日本の支出は米国の10分の1以下。成長力で差が広がりかねない」という。単年度主義の硬直的な予算で赤字国債の発行に頼る財政運営も限界がある。大和総研の神田慶司氏は「コロナ後にどういう経済社会をつくるのか、財政健全化に目配りしつつ、いつまでにどれだけの政策・予算が必要なのか大きな青写真が見えない」と指摘する。日本もコロナによる経済への打撃を和らげるため、予算は大幅に増やしている。国際通貨基金(IMF)の集計によると20年以降の財政対応は計88兆円、国内総生産(GDP)比にして15.9%に上る。米国の25.5%ほどではないが、先進国で中程度の水準だ。しかし規模ありきの編成の結果、約30兆円を使い残した。無駄な部分を大胆に見直しつつ、民間の投資を促すような戦略的配分が求められる。政府は22年度予算編成ではデジタルや脱炭素などに充てる特別枠を2年ぶりに設けた。実際は各省庁のばらばらの要求の受け皿という面がある。経済成長がないまま政府債務ばかり膨らむ危うい状態に陥る恐れがある。経済協力開発機構(OECD)の見通しによると日本の21年と22年の実質成長率は主要7カ国(G7)で最も低い。長期展望や柔軟性に乏しい予算や政策の仕組みのままでは米欧の背中がますます遠のきかねない。

*2-2-3:https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR13BNE0T10C21A7000000/ (日経新聞 2021年7月14日) EU並み気候変動対策、第三国に要求 国境炭素税
 欧州連合(EU)の欧州委員会が14日公表する国境炭素調整措置(CBAM)案は、第三国にEU並みの気候変動政策を要求するものだ。中国やロシアをはじめ、日米なども対象になる可能性がある。EUは緩やかに導入を進めることで他国との対立を避けたい考えだが、貿易摩擦につながるリスクがある。「第三国の生産者が排出を減らすインセンティブになる」。欧州委の担当者はこう強調する。EU域外の事業者がEUに製品を輸出するために排出減に向けて努力するというわけだ。実際、EU並みの気候変動対策をとっていれば制度の対象にはならない。CBAMは国境炭素税とも呼ばれる。影響が大きそうなのがロシアや中国、トルコの企業だ。EUの輸入に占める割合を見ると、セメントではトルコが37%を占めるほか、肥料では36%をロシアが、鉄鋼ではトップ3に中国、ロシア、トルコが名前を連ねる。厳しい環境規制で競争力の低下を懸念する欧州の鉄鋼やセメント業界などは制度の導入を支持する一方、中ロや日米などの域外国は懸念を示してきた。保護主義的な措置で、世界貿易機関(WTO)の無差別原則などのルールに違反しているのではないかといった理由だ。EU高官は6月、日本経済新聞の取材に「2050年に温暖化ガス排出の実質ゼロを宣言した先進国を念頭に置いた制度ではない」と述べた。だが日米などの企業のすべての製品が対象外になるかは不透明な面が残る。日米などは全国的な排出量取引制度を持たないため、EUと同等の環境対策をしているとデータで示すことが難しい可能性がある。EUでは排出量取引に基づいて、二酸化炭素(CO2)を出す権利の価格が日々公開される。データで示せなければ、制度の対象になるリスクが高まる。EU内にも貿易摩擦につながりかねないと不安視する声はある。とりわけ米国とはトランプ前政権時代には通商問題を巡って関係が冷え込んだ。フォンデアライエン欧州委員長は6月のバイデン大統領との首脳会談でCBAMを巡って意見交換することに同意するなど、一定の配慮を見せた。23年から3年間の移行期間を設けたのも、各国の理解を得るためだ。制度が成立するには、加盟国の承認と欧州議会の同意を得る必要がある。成立までに1~2年かかるとの見方もあり、制度設計を巡って曲折がありそうだ。日本経済研究センターは欧米が国境炭素調整を導入した場合の日本の製造業への影響について、CO2・1トンあたり50ドル(約5500円)の場合、EU向けに年2.5億ドル、米英に年5.67億ドルを支払う可能性があると試算する。業種別の負担額は機械産業で290億円、輸出額の大きい自動車産業も215億円になる。関税の上乗せで輸出額も減少する見通しだ。試算ではCO2排出量の多い鉄鋼業は欧米への輸出額が5・7%、窯業・土石業で4・7%、それぞれ減少する見通し。日本も炭素税などを導入すれば越境課税は回避できる。ただCO2・1トンあたり50ドルの炭素税を導入すると、日本経済研究センターは製造業の納税額が約1兆2010億円になると試算する。19年度に企業が納めた法人税(10.8兆円)の1割強に相当する。

*2-3:https://www.tokyo-np.co.jp/article/118798 (東京新聞 2021年7月23日) 中国・台山原発、仏なら一時停止 燃料棒破損、合弁の電力会社見解
 中国広東省の台山原発の燃料棒が破損し冷却材中の放射性物質の濃度が上昇した問題で、合弁で同原発を建設したフランス電力(EDF)は23日までに「フランスであれば、状況を正確に把握し(濃度上昇の)進行を止めるため、原子炉を一時停止する」との見解を発表した。23日付のフランス紙レゼコーは「事故ではないが、進行性の状態で深刻だ。フランスであれば、できるだけ早く原子炉を止める必要がある」とのEDF関係者のコメントを伝えた。EDFは22日の声明で、原子炉を止めるかどうかの決定は、中国側が主導権を握る運営企業にあると指摘した。

<先端技術の応用>
*3-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20210715&ng=DGKKZO73887760V10C21A7MM8000 (日経新聞 2021.7.15) EU、ガソリン車販売を35年に禁止、排出ゼロへ包括案、国境炭素税は23年にも
 欧州連合(EU)の欧州委員会は14日、温暖化ガスの大幅削減に向けた包括案を公表した。ハイブリッド車を含むガソリン車など内燃機関車の新車販売について2035年に事実上禁止する方針を打ち出した。環境規制の緩い国からの輸入品に事実上の関税をかける国境炭素調整措置(CBAM)を23年にも暫定導入する計画だ。欧州委案が成立するには、原則として加盟国との調整や欧州議会の審議を経る必要がある。企業や域外国の反発も避けられそうにない。欧州委の政策パッケージは、30年までに域内の温暖化ガスの排出量を1990年比55%減らす目標を実現するための対策だ。2030年目標は50年に排出実質ゼロにする目標の中間点となる。欧州委はガソリンやディーゼルといった内燃機関車について、35年に事実上禁止する方針を初めて提案した。自動車のCO2排出規制を同年までに100%減らすよう定める。フォンデアライエン欧州委員長は14日の記者会見で「化石燃料に依存する経済は限界に達した」と述べ、速やかに脱炭素社会を実現すると表明した。対応を迫られる自動車業界は反発を強める。ドイツ自動車工業会のヒルデガルト・ミュラー会長は7日、「35年にCO2をゼロとすることはハイブリッド車を含むエンジン車の事実上の禁止だ。技術革新の可能性を閉ざし、消費者の選ぶ自由を制限する。多くの雇用にも響く」と訴えた。トヨタ自動車幹部は「戦略練り直しは避けられない」と話す。欧州委は燃料面からも運輸部門の排出減を促す。自動車とビルの暖房用の燃料を対象にした新しい排出量取引制度を設け、CO2排出にかかる炭素価格を上乗せする。EUには産業や電力など大規模施設を対象にした排出量取引制度がある。だが炭素価格の上昇による燃料費の高騰が低所得層の家計を圧迫しかねないとの批判もあり、当面は別建ての制度とする。従来の排出量取引制度では海運を新たに対象とする。欧州委が導入を目指すCBAMは国境炭素税とも呼ばれる。当初は鉄鋼、アルミニウム、セメント、電力、肥料の5製品を対象とする方針。23年からの3年間を移行期間として暫定的に始め、事業者に報告義務などを課す。26年から本格導入され、支払いが発生する見通しだ。欧州委は30年時点でCBAMに関連する収入を年91億ユーロ(約1.2兆円)と見込む。制度案では、EU域外の事業者が環境規制が十分でない手法でつくった対象製品をEUに輸出する場合、EUの排出量取引制度に基づく炭素価格を支払う必要がある。製品の製造過程における排出量に応じた金額を算出し、事業者に負担させる。EU域内外の負担が等しくなるという考え方だ。

*3-2-1:https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGS155WI0V10C21A7000000/ (日経新聞 2021年7月21日) 中韓勢、東南アジア市場でEV先手 長城汽車や現代自
 日本車が圧倒的なシェアを占める東南アジアの自動車市場に、中国・韓国メーカーが電気自動車(EV)で先手を取ろうとしている。タイでは中国・長城汽車、インドネシアで韓国・現代自動車が現地生産に乗り出す。両社とも現地政府のEV振興策に呼応した。日本勢は、21日に発表したトヨタ自動車やスズキなどの商用車連合で、こうした動きに対抗する構えだ。「変化する時が来た」。長城汽車は6月末、バンコクで開いた新車発表会で日本車への宣戦布告ともとれるスローガンを打ち出した。タイは日本車の生産・販売シェアが約9割に達するものの、大半をガソリン車が占める。長城汽車は3年間でEVを含む9車種の電動車を投入して市場の切り崩しを狙う。同社は2020年にタイから撤退した米ゼネラル・モーターズ(GM)の工場を取得して参入した。800億円弱を投じて人工知能(AI)技術やロボットを導入し、年産能力約8万台の「スマート工場」に改修。手始めに6月からハイブリッド車(HV)の生産を始めた。23年までにEV生産を開始する計画だ。工場改修はタイ政府のEV振興策を利用し、最長8年間の法人税免除の恩典を受けた。タイは30年までに国産車の3割をEVにする目標を掲げる。長城汽車タイ法人の張佳明社長は「タイで電動車のリーダーとなり、産業高度化に協力する」と強調する。タイは東南アジア最大級の自動車市場だが、EVシフトは遅れている。自動車大手はEVを現地生産しておらず、20年の販売台数は約1400台にすぎない。このうち約6割を中国・上海汽車集団の輸入車が占める。同社はタイ財閥チャロン・ポカパン(CP)グループとの合弁工場でEVを現地生産する予定という。日本車は日産自動車の「リーフ」やトヨタ自動車の高級車「レクサス」の一部車種の輸入販売にとどまる。現地生産は三菱自動車が23年から開始する計画を持つものの、全体的にはHVを優先する傾向が強い。充電インフラが整っておらず、所得水準もまだ低いためだ。長城汽車もまず、中国で補助金分を引いた実売価格が約120万円の小型EV「欧拉」を、中国から輸出してタイ市場に投入する。市場開拓を進めながら時期をみて現地生産に切り替えるとみられる。野村総合研究所タイの山本肇シニアマネジャーは「中国勢が間隙を突いて、低価格EVでシェアを伸ばしてくるのは確実だ」と指摘する。タイと並ぶ域内2大市場の一角であるインドネシアには現代自動車が攻め入る。首都ジャカルタ近郊で総事業費約1700億円の工場建設が進む。当初の年産能力は15万台で、年内にガソリン車の生産を開始する。現地報道によると22年にもEV生産に乗り出す。同国は日本車の販売シェアが9割台後半と、ほぼ市場を独占してきた。現代自の工場建設にはインドネシア政府の働きかけがあった。進出が決定した19年11月はインドネシアと韓国が経済連携協定(EPA)を妥結した時期と重なる。韓国から輸入する自動車部品の大半が無関税となり、韓国メーカーは日本車と同等な条件での競争が可能になった。インドネシア政府は19年の大統領令で、国産車の20%をEVとする目標を打ち出した。だが、同国が13年に出した小型エコカーの振興策を受けて、日本車は設備増強を実施済みで追加投資に慎重だ。そこで白羽の矢が立ったのが現代自動車だった。タイ、インドネシア両政府に共通するのは、動きが鈍い日本車へのいらだちだ。タイではEV普及目標の引き上げを検討する政府に対し、日本車の業界団体に当たるバンコク日本人商工会議所自動車部会が「全体でのゼロエミッションを考えて段階的に進めるべきだ」として慎重な議論を求めた。タイは火力発電が中心のため、EVだけ増やしても温暖化ガスの排出は減らせないという理屈だ。インドネシアも同様の課題を抱える。日本車の主張は一理あるものの、中韓勢との投資競争に後れをとれば、かつて家電や携帯電話でシェアを失ったように自動車市場も奪われかねない。
●商用車も日本強く 5社連合で守り固める
 日本車は東南アジアで1960年代から現地組み立てを始め、主要6カ国の新車販売に占めるシェアは約8割に達した。ただ、足元で中国勢がEVで小型車のみならず商用車でも攻勢をかける。21日にスズキやダイハツ工業が、トヨタ自動車、日野自動車、いすゞ自動車の商用車連合に合流すると発表したのも、中国勢の攻勢に対抗する守り固めの意味がある。東南アジア最大級の市場のタイは小型商用車「ピックアップトラック」が市場の半分以上を占める。20年の国内販売全体でもいすゞのシェアは23%に達し、トヨタ(31%)に次ぐ2位を占める。インドネシアでも日野、三菱ふそうトラック・バス、いすゞが商用車で寡占状態だ。だが、日本勢のすきを狙い、中国勢が商用車でも攻勢をかける。タイでは商用車大手、北汽福田汽車がEVトラックを21年中にも発売する予定だ。現状、スズキは軽商用車の海外展開をしていない。5社連合で技術力を結集した小型EVなどを出せれば、日本勢の存在感が維持できる可能性がある。

*3-2-2:https://www.webcg.net/articles/-/44769 (Webcg 2021.7.1) ボルボが全車EV化へ向けたロードマップを発表
 ボルボ・カーズは2021年6月30日(スウェーデン現地時間)、製品ラインナップの完全な電気自動車(EV)化へ向けた、技術ロードマップを発表した。
●目指すは実走行距離1000kmのEV
 ボルボは現在、自社製品の急速な電動化と、より長い一充電走行可能距離や短い充電時間を可能とするバッテリーセル技術の開発を推し進めている。特にプロダクトについては、近い将来、SUVタイプの新型EVを投入し、2020年代半ばにはその次の世代となる第3世代のEVも導入するとしている。このモデルでは、航続距離をさらに伸ばすとともに、バッテリーパックをクルマのフロアに統合し、セル構造を利用して車両全体の剛性を高める、より高効率な車両パッケージも実現するという。一方、バッテリーの開発・生産に関しては、スウェーデンの大手バッテリーメーカーであるノースボルトと提携。現在のものより最大で50%エネルギー密度の高いバッテリーセルの開発を計画している。さらに2020年代の後半には、1000Wh/リッターというエネルギー密度の達成と、実走行距離1000kmのEVの実現を目指しているという。また充電に要する時間については、バッテリー技術の向上、ソフトウエアや急速充電技術の継続的な改善により、2020年代の半ばまでに現在のほぼ半分になると予想している。
●生産や廃棄の段階における環境負荷低減にも腐心
 ボルボはプロダクトの電動化以外の点でも二酸化炭素排出量の削減を推進。ノースボルトと共同開発するバッテリーセルについては100%再生可能エネルギーを使用して生産することを目指しており、他のサプライヤーとも2025年までに100%再生可能エネルギーでバッテリーを生産できるよう、取り組みを進めているという。加えて、使用済みバッテリーのリユースやリサイクルについても計画。エネルギー貯蔵などの二次利用の可能性も調査を進めている。EVのエネルギーインフラでの活用についても計画しており、SUVタイプの次世代EVでは、双方向充電により車載バッテリーの電気を電力網に流すことができるようになるという。これにより、EVのドライバーは電力の生産時に排出されるCO2量がピークとなる時間には、電力網にエネルギーを供給してCO2の排出抑制に貢献。そしてCO2排出量が減少する時間にクルマを充電することができるようになると説明している。(webCG)

*3-2-3:https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR223I60S1A720C2000000/ (日経新聞 2021年7月22日) 独メルセデス、30年にもEV専業に 5.2兆円投資
 独自動車大手ダイムラーの高級車事業会社、メルセデス・ベンツは22日、販売する新車を2030年にもすべて電気自動車(EV)にすると発表した。8つの電池セル工場を新設するなど、30年までに400億ユーロ(約5兆2000億円)をEVに投資する。オンラインで開いた記者会見で、オラ・ケレニウス社長は「高級車のEVシフトは加速している。転換点は近づいており、30年までにメルセデスは準備できているようにする。EVファーストからEVオンリーに踏み込む」と述べた。22年に満充電で航続距離1000キロメートル以上の新型車を発表する。25年にEV専用の車台(基本設計)を3種類導入。それ以降に出す車台はすべてEV専用とする。代表車種の「Sクラス」や「Cクラス」の次期モデルはEVだけになる見通しだ。ガソリン車などの販売終了時期は市場によって前後するとしている。ハラルト・ウィルヘルム最高財務責任者(CFO)は30年までにEVの生産コストを同じ車格のガソリン車と同等水準に引き下げるとしたうえで、売上高に占める調整後EBIT(利払い・税引き前損益)比率を10%以上で維持するとの見通しを示した。EVに不可欠な車載電池では専業メーカーと共同で世界に8つの大型工場を設ける。4つは欧州で、米国と中国にも建設する。年間生産能力は高級EV200万台分前後に相当する計200ギガワット時(2億キロワット時)を計画する。メルセデスはこれまで30年に新車販売の半分をEVかプラグインハイブリッド車(PHV)にし、39年にガソリン車の販売終了などで二酸化炭素(CO2)排出を実質ゼロにする「カーボンニュートラル」を目指す計画を掲げていた。半分をEV・PHVにする期限は25年に前倒しする。EV専業化に向け、PHVを含むエンジン搭載車への投資を26年までに19年比で8割減らす。欧州連合(EU)の欧州委員会は14日、35年にエンジン搭載車の販売を事実上禁止する規制案を発表した。すでに独フォルクスワーゲン(VW)傘下の独アウディや、ボルボ・カー(スウェーデン)、英ジャガーなどの高級車ブランドが相次いでEV専業への転身を発表している。

*3-2-4:https://www.nikkei.com/article/DGXZQOFD21AF30R20C21A7000000/?n_cid=SPTMG002 (日経新聞 2021年7月21日) トヨタ、商用車連合を拡大 大型から軽まで電動化
 トヨタ自動車が中心の商用車連合にスズキとダイハツ工業が加わる。トヨタにとって電動化など脱炭素における商用車分野の協業の総仕上げとなる。4月に日野自動車といすゞ自動車と立ち上げた商用車の技術開発会社に軽自動車を得意とする2社が加わり、大型から小型まで商用車を全方位で開発する体制が整う。「国内の自動車保有台数7800万台のうち軽は(4割の)3100万台を占める。地方では半数を超える」。トヨタの豊田章男社長は21日の記者会見でこう切り出し、「商用軽は収益だけを考えると非常に厳しいが日本では欠かせないものだ」と軽の重要性を強調した。スズキの鈴木俊宏社長は「求めやすい価格で脱炭素を実現するには単独では非常に難しい」と参加の理由を説明した。「企業としても脱炭素をアピールできる軽の商用電気自動車(EV)へのニーズはこれまでも高かった」と別のスズキ幹部は背景をこう解説する。今回の協業で改めて強調したのが、商用車分野を電動化や脱炭素の技術開発の起点とする考えだ。物流を担う商用車はあらかじめ決められたルートを通ることが多い。「(充電設備など)インフラとセットで考えることが不可欠」(豊田社長)なEVや燃料電池車(FCV)などの開発には向いている。トヨタが日野・いすゞとの商用車連合を発表した際、念頭にあったのが、福島県での再生エネルギーから作った水素を活用したFCVのトラックによる物流網の構築だった。今回の参画で、FCVの軽商用車も視野に入り取り組みが広がる可能性がある。3月の商用車提携発表後に、自治体・インフラ事業者、運送事業者など、多くの関係者から一緒にやりたいとの声がトヨタに寄せられた。荷物の集配所から受け取る人までの「ラストワンマイル」の物流を担う軽自動車は電動化やコネクテッドなど新技術の開発には欠かせないと判断した。トヨタからスズキとダイハツに声をかけた。軽の商用車が加わることで、中長距離物流を支える大中型トラックを含めて物流に関わる技術開発が加速できるとみる。鈴木社長は「大型と軽がつながることで非常に効率がいい物流ができる。大きな成果に結びつくのではないか」と期待を示す。トヨタにとっては、大きさの制約がある中で、いかに安く作るかを突き詰めてきた軽メーカーのノウハウを取り込む狙いもある。電動化やつながる車などは今後いかに安く作れるかがカギとなる。商用車を軸とした5社連合で、新たなプロジェクトを始める起点にもなり得る。

*3-2-5:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20210724&ng=DGKKZO74149360U1A720C2MM8000 (日経新聞 2021.7.24) GXの衝撃(5)取捨選択、欧州が主導 ルールが決する競争力
 欧州委員会が4月に公表した、分類を意味する「タクソノミー」と呼ぶ数百ページの資料。企業が手がける事業がどういう基準を満たせば「持続可能」と判別されるかを示す。「まるで『閻魔(えんま)大王』みたいに企業が選別される」。こんな受け止め方が広がる。電池製造や発電などが対象で、欧州連合(EU)の温暖化ガス排出の8割をカバーする。企業は基準外の製品を作れなくなるわけではないが、ESG(環境・社会・企業統治)が広がる中、投資を集めにくくなる。
●PHVにも逆風
 環境に優しいとされる製品もやり玉に挙がる。例えば日本の自動車メーカーが強みを持つプラグインハイブリッド車(PHV)。2026年以降は「持続可能」などの分類から外れ、新車で売りにくくなる恐れがある。PHVは、ガソリン車と電気自動車(EV)の間に位置する。EVへの移行期に伸びると見込まれているが「タクソノミーでPHVの普及期の寿命は5年ほど短くなった」と専門家は分析する。石炭火力発電がタクソノミーで外される一方、天然ガスは欧州でも意見が割れる。ポーランドなど東欧諸国は「脱石炭を進めるうえで当面は認めるべきだ」と訴える。逆風の予兆はあった。「控えめに言ってガスは終わった」。欧州投資銀行(EIB)のホイヤー総裁の1月の発言。21年末までにガスへの投融資から原則、手を引く方針を表明し波紋を呼んだ。
●ガスも縮小懸念
 天然ガスは石炭より二酸化炭素(CO2)排出量が4割少ない。天候によって変わる太陽光や風力の発電量を補う役割から、石炭から再生エネへの移行期の「つなぎ役」になるとされてきた。「天然ガスの黄金時代」が到来するとのリポートを国際エネルギー機関(IEA)が公表したのは10年前。クリーンとされる液化天然ガス(LNG)の消費はこの間に6割増えた。ただ、IEAは21年5月、50年のカーボンゼロ達成には、ガスを含む化石燃料の開発投資の即時停止が必要とのシナリオを公表した。日本エネルギー経済研究所の二宮康司氏は「今のままでは30年代以降、ガスも石炭のように悪者扱いされる」とみる。国内最大手の東京ガスが関東で張り巡らすガスのパイプラインは地球1.5周分。輸入のため港湾に設けたLNG基地は1カ所で1000億円規模だ。ガスが石炭のように縮小の道をたどればこうした設備が「座礁資産」となり使い道を失う。タクソノミーのような欧州発のルールが世界の潮流となってきたケースは多い。欧州各国によるガソリン車の販売規制の表明を伊藤忠総研の深尾三四郎氏は「欧州自動車メーカーのディーゼル不正を機に欧州が有利になるようなルールに変えてしまった」と指摘する。車が製造されてから廃棄されるまでの10年間の「ライフサイクル」でみたCO2の排出量は、IEAの20年のまとめによるとガソリン車で1台あたり平均34トン程度だった。EVが24~28トンで、PHVは約25トンと、PHVは環境性能に優れるケースもあるのにEU基準ではアウトになる。欧州がEV導入の高い目標を掲げる中、ESGの圧力により、石油開発は足元で急減。ただ実際に選ぶのは消費者で、EVの普及が遅れれば需給バランスが大きく崩れ、ガソリン価格は高騰しかねない。多角的なリスクを抱えながら企業は難しい選択を迫られている。日本は通貨や通商などで欧米主導のルールを受け入れることが多かった。グリーントランスフォーメーション(GX=緑転)でルールをつくる側に回れるかどうかは、産業競争力にとどまらず、国益をも左右する。

*3-3:https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC071580X00C21A7000000/?n_cid=NMAIL006_20210709_Y (日経新聞 2021年7月9日) JAL「空飛ぶクルマ」で旅客輸送 25年度に事業化
 日本航空(JAL)は2025年度に「空飛ぶクルマ」を使った事業に乗り出す。三重県などで空港と観光地を結ぶ旅客輸送サービスを始める。ANAホールディングス(HD)も25年度に同様のサービスへの参入を検討している。空の移動が身近になれば道路渋滞の緩和や過疎地の交通対策にも役立つ。海外でも実用化競争が進んでおり、新ビジネスに見合うルール整備が課題となる。空飛ぶクルマは空を飛び近中距離を手軽に移動する次世代の乗り物。JALが使うのはeVTOL(電動垂直離着陸機)と呼ぶ2人乗りのドローン型の機体で、航続距離は35キロメートル。最高時速は110キロ。三重県とこのほど実証実験や事業化に向けた連携協定を結んだ。機体を開発したのはJALが20年に出資したドイツのスタートアップ、ボロコプター。リチウムイオン電池に蓄えた電気で複数のプロペラを回して飛ぶ。まず20キロの近距離圏内を飛ぶ実験を進め、さらに地方の都市間を結ぶような50~150キロの中距離圏のサービスを検証する。事業化の際は発着ポートを設けやすい空港を起点に観光地をつなぐ見通し。料金は今後詰める。最終的には中距離圏内であらゆる場所に行き来するタクシーのようなサービスにする構想だ。輸送事業者としてだけでなく、操縦者の訓練や安全管理などのオペレーターサービスを他の輸送事業者に提供して稼ぐ仕組みも想定する。空飛ぶクルマは滑走路が不要で機動性が強み。都市内を簡単に移動できるため、交通渋滞の解消につながると期待されている。交通手段に乏しい過疎地の移動問題の克服にもつながる。一方で社会で広く受け入れられるサービスとするにはルール整備が不可欠だ。三重県は特区として空飛ぶサービスを認めているが、他県との行き来はできない。政府は電動かつ自動操縦で飛ぶ機体を空飛ぶクルマと見なし、ルールづくりを急いでいる。機体は航空機とみなされるため航空法に基づく制度の見直しが必要で、25年までに詰める。航空機燃料を使わないため安全基準も新たな考え方が必要となる。操縦ライセンス、運航の決まりなど整理すべき点は多い。実用化では海外が先行する。トヨタ自動車が出資する米新興企業のジョビー・アビエーションは24年に輸送サービスの商用化を計画。欧州エアバスも24年のパリ五輪での有人サービスの実現を目指している。将来はスマートフォンから予約可能なタクシーサービスの提供をめざす。国内航空大手は空飛ぶクルマなど次世代モビリティー事業を成長の柱の一つと期待する。米モルガン・スタンレーは40年までに世界の空飛ぶクルマの市場規模が1兆5千億ドル(約165兆円)に成長すると予測する。

*3-4:https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB273460X20C21A7000000/ (日経新聞 2021年7月27日) 脱炭素ファンド、Appleなど参画 三井住友銀行も出資
 企業の脱炭素化に向けた世界最大規模の枠組みが立ち上がる。米投資ファンド、TPGキャピタルは気候変動対策に特化したファンドを組成する。当初の運用規模は約54億ドル(約6000億円)で、脱炭素ファンドでは過去最大規模となる。アップルやグーグル、ボーイングなど米国を代表する企業に加え、日本からは三井住友銀行が出資する。脱炭素化に向けた技術を有する世界のベンチャー企業に資金を投じることで、新技術の開発を促進する。TPGが27日に発表した。米国の大企業や大手年金基金などから約54億ドルを集めた。2021年中に出資額を70億ドル程度まで引き上げる方針だ。ファンド出資者にはグーグルの持ち株会社であるアルファベットやアップルなど米IT(情報技術)大手に加え、ボーイングやゼネラル・モーターズ(GM)なども名を連ねる。20社以上が加わるとみられ、日本からは三井住友銀行が5000万ドルを投じて参画する。ファンドを通じて、再生可能エネルギーや二酸化炭素を排出しない輸送手段など、脱炭素化に貢献する技術を有するベンチャー企業などに出資する。投資額は1件当たり数百億円規模を想定している。ポールソン元米財務長官がファンドの取締役会長を務める。ポールソン氏は自身のシンクタンクで気候変動対策に向けた分析を手掛けており、出資先の選定などで手腕を振るう。気候変動対策を巡っては、米アップルが2億ドル規模の森林再生ファンドを立ち上げたほか、アルファベットが環境関連などに資金使途を絞った社債「サステナビリティボンド」の発行を決めるなど米IT大手の取り組みが加速している。だが、気候変動対応に関する技術を有したベンチャー企業に出資するファンドにこうしたIT大手が参画するのは異例だ。背景には投資先が有する技術にいち早くアクセスしたいIT大手側の思惑がある。ファンドは出資者や投資先が参加する企業連合を立ち上げる方針。こうした場を通じて、脱炭素化に向けた有望な技術を有するベンチャーとの協業や出資につなげていく。日本から参画する三井住友銀行は、出資先への融資や新規株式公開(IPO)の支援などで連携していく考えだ。TPGは1992年創業のプライベートエクイティ(PE=未公開企業投資)。直近の運用資産残高は960億ドル(約10兆円)で、未公開株や不動産投資などに強みをもつ。脱炭素化を巡っては、米ブラックロックが新興国向けのインフラファンドを立ち上げた。国際協力銀行や第一生命、三菱UFJ銀行などが出資を決めており、ファンドは総額5億ドル規模を目指している。

<新型コロナと五輪に関する世論から見た教育の問題点>
PS(2021年7月30日、8月2日《図》追加):*4-1のように、衆院内閣委員会で、政府の新型コロナ分科会の尾身会長が「①医療の逼迫が既に起き始めている」「②一般の人々に危機感が十分に伝わっていない」「③緊急事態宣言が出て人流は徐々に減っているが、期待されるレベルには至っていない」「④日本社会みんな危機感を共有することが今非常に重要だ」「⑤入院や重症者の数が増え、入院調整・宿泊療養・自宅療養の人も急増している」「⑥今の状況で求められることは、人々に危機感を共有してもらえるようなメッセージを出し、効果的な対策を打つことに尽きる」等と言われたそうだ。
 しかし、2020年1月に始まった新型コロナ騒動から既に1年半経過し、②の一般の人々の危機感は2020年2月から高まって協力したのに、厚労省だけが危機感を持たず、蔓延や①⑤を防ぐための検査による潜在患者の洗い出し、水際対策の徹底、ワクチン・治療薬の開発・承認、医療機関の広域連携、療養先の確保などの全てを行わず、③の“緊急”事態宣言による人流減少だけを主張して現在に至っているのだ。そのため、④は、これまでの経緯を忘れて、どの口で言えたものかと思う。また、⑥の「人々が危機感を共有するメッセージ」として「国民に自粛を求めながら、オリンピックを行うのは矛盾だ」などと関係のない2つの事象を結びつけるのも“専門家”からかけ離れており、そんなことは根拠を示してきちんと説明すれば理解されることである。さらに、「⑦デルタ株の感染力を前提としていない」というのも、デルタ株は何故感染力が高いのか、それに対してどういう対応方法が適切なのかに関するしっかりした調査もなく、ワクチンや治療薬が効かないというデータもない時に、言うべきではない。
 また、*4-2のように、日本医師会、日本病院会、日本歯科医師会、日本薬剤師会、日本看護協会、全日本病院協会、日本医療法人協会、日本精神科病院協会、東京都医師会も、「⑧感染爆発を避けるため危機感共有を」という緊急声明を7月29日に出し、その内容は「⑨40~50代の中等症患者の増加で医療の逼迫が懸念されると指摘し、政府に十分で安定したワクチンの供給を要請する」だそうだ。しかし、ワクチン接種を進めるのは当然のことで、今回の五輪はお祭り騒ぎどころか練習試合ででもあるかのように観客もいないため、間接的影響ででもこの2つを結び付けるのはおかしい。さらに、医療関係者が国民にテレワークの実施を求めるのも越境で変であり、国民は運動をせず、目が悪くなったり、ロコモになったり、孤独で心を病んだりした方がよいとでも言うのだろうか。
 なお、IOCのアダムス広報部長は、*4-3のように、東京五輪のメインプレスセンターで記者会見し、「⑩五輪関係者は最も頻繁に検査されており、別世界みたいで、われわれから感染を広げていることはない」と強調し、バジェット医事部長も五輪が「⑪医療崩壊に影響することはない」と訴えられたそうだ。組織委がまとめた大会関連の陽性者は7月1日以降で累計198人となり、陽性となった海外からの大会関係者2人が入院したそうだが、母国なら入院の必要があるのか、その後に中等症や重症になったかについても、報告された方が役に立つ。
 このように外国の対処方法と比較した方がよい理由は、*4-4のように、日本政府が「⑫新型コロナワクチン接種証明書の国内利用を特別な事情で接種できない人への差別を理由として認めなかったり(本当は、差別にならないようにすることもできる)」「⑬接種証明書を持つ入国者に72時間以内の陰性証明の提出と14日間の待機措置を求めたり(本当は、いずれか1つでよい)」「⑭外国が発行した接種証明書の利用を認めず、日本の証明書は受け入れるよう交渉したり(相互主義の常識に反する)」など、非科学的かつ非常識な対応が多いのに「何様のつもりか」と思うような不公平な取り扱いを求めているからである。
 なお、上昌広氏が、*4-5に、「⑮新型コロナ対策で日本は1回以上ワクチン接種を受けた人がG7最下位で一人負け」「⑯ワクチン接種が進む国は感染者が急速に減少」「⑰G7で感染者数が増加しているのは日本だけ」「⑱米疾病対策センターはワクチン接種を済ませた人はマスク着用義務を解除し、ドイツもワクチン接種を終えた人への制限を緩和」「⑲日本の最初の躓きは無症状感染対策なのにPCR検査を抑制したこと」「⑳感染の抑制と最も相関したのは、感染者数当たりの検査数だったが、厚労省や専門家たちはこの研究成果を無視し続け、政府のコロナ対策分科会会長の尾身氏は、2021年10月の講演で『無症状者にPCR検査しても感染は抑えられない』と公言している」「㉑これは厚労省で医療政策を仕切る医系技官の意向を代弁したもので、医系技官は、『PCRは1%程度の偽陽性があり、PCR数を増やせば医療が崩壊する』と主張して検査数を抑制した」「㉒『米国医師会誌(JAMA)』5月6日号は『殆どのPCRの特異度は100%』と記しており、2020年5月の段階でPCR検査の精度が高いことは世界の常識となって世界各国が大規模スクリーニング検査体制の構築を進めていた」と書かれており、全くその通りだ。
 また、「㉓日本の人口千人あたり検査数は、インドの半分以下で後進国レベル」「㉔厚労省は、変異株の大部分を見落とした」「㉕世界は『マルチプレックスPCR』を用いて1回の検査で変異株の感染を判断しているが、日本は検体を国立感染症研究所などの専門施設に運ぶ2段階検査に固執している」「㉖厚労省がここまでPCRを抑制する理由は、感染症ムラ(厚労省医系技官、感染研、専門家で構築される利益共同体で健康局結核感染症課が中心)の利権に関わるからである」「㉗コロナ対策で、感染症ムラにとっての『公共事業』となったのは積極的疫学調査で、法定感染症が発生した時、厚労省が指示して感染研と保健所が連携して実施することと定められている」「㉘コロナ感染症対策分科会委員の押谷東北大学教授が、2020年3月22日のNHKスペシャルで、『全ての感染者を見つけなければいけないというウイルスではなく、クラスターさえ見つけていればある程度の制御ができる』」と述べたが、この指摘が間違いだったのは明白で、感染が蔓延すればクラスター対策では対応できないことは素人でもわかる」と書かれているが、私も㉓~㉘は、あまりにも不自然でおかしいと思っていたのである。
 さらに、「㉙彼らがクラスター対策に固執している理由は研究費(2019年度の約3億4千万円から、2020年度には36億5400万円に増額)で、2020年度に採択された41人中20人が感染研、27人が感染症ムラの関係者」「㉚研究成果は東京大54報、感染研19報、横浜市大16報であり、感染症ムラの情報独占や過剰な資源投入は、日本の研究力を削いでいる」「㉛4月8日現在、PubMedには6万2905報のコロナ論文が収載されており、米国1万1251報、中国(8881報)、イタリア(6945報)、イギリス(6448報)、日本(1333報)でG7最下位だ」「㉛ワクチン開発に成功した独ビオンテックと米モデルナは、元はがん治療ワクチンを開発していたバイオベンチャーで、ゲノム情報を分析してワクチン候補となるmRNAの配列を決定するノウハウを有しており、2020年1月に中国の研究チームがコロナのゲノム配列を公開すると、その情報を分析してワクチン開発に取りかかったが、彼らの成功は感染症・免疫学・情報工学の専門家の有機的な連携によるものだ」等も書かれており、なるほどそうだったのかと思われた。
 最後に、「㉜PCR検査もできず、37.5度4日間の自宅待機を強要し、ワクチン・治療薬の開発もできず、緊急事態宣言を繰り返す日本で、多くの人命と財産が失われた」「㉝クラスター対策に固執して非科学的な対応を取り続けてきた感染症ムラと、彼らの暴走に目をつぶった政治家による人災だ」「㉞これまでの経緯を検証し、ゼロベースで体制を見直さねばならない」と書かれているのは全くそのとおりだ。しかし、「感染症ムラの暴走をコントロールするのは、本来、政治の役割だ」というのは、それをやるためには厚労省の医系技官をリードできるようなその分野に詳しく能力ある人材を担当に選ばなければならないが、「国民から選ばれて選挙で勝つ人」は必ずしもそうではなく、仮にそういう人がいたとしてもやはり厚労省の医系技官から煙たがられて担当になれないという日本特有の人事の根本的問題があるのである。

   
2021.7.9毎日新聞 2021.8.2琉球新報  2021.6.17日経新聞   2021.7.12日経新聞

(図の説明:東京圏の患者数が増えていると言われるが、1番左の図のように、東京都のPCR検査数は少し増えたが、ワクチン効果で重症者数は漸減している。また、左から2番目の図のように、新型コロナウイルスも中等症以上になると後遺症を残すケースが多発しており、これは日本脳炎やポリオ《小児麻痺》ウイルスも重症化すると神経系に後遺症を残すことを考えれば常識的に考えられることだが、日本では、最初、『軽症者は病院に行くな』と呼びかけられていた。なお、日本脳炎やポリオはワクチンによって撲滅されたのだが、現在は、右から2番目の図のように、ワクチンの副作用ばかりを強調し、1番右の図のように、感染リスクの低減したワクチンの既接種者にワクチンパスポートを出すことをためらうという世界でも珍しい対応をしている)

*4-1:https://digital.asahi.com/articles/DA3S14991935.html (朝日新聞 2021年7月29日) 尾身氏「危機感伝わらず」 迫る医療逼迫指摘 閉会中審査
 衆院内閣委員会の閉会中審査が28日開かれ、東京都の新型コロナウイルスの感染者が急増している点について、政府の新型コロナ分科会の尾身茂会長は「医療の逼迫(ひっぱく)がもうすでに起き始めている」との認識を示した。その上で「人々に危機感が十分に伝わっていない」などと懸念を語った。菅義偉首相は27日に記者団に対し、感染の急拡大による五輪への影響について「人流は減少している。心配はない」と述べた。28日の内閣委では、立憲民主党の柚木道義氏が人流の減り方は十分なのか尋ねた。尾身氏は「緊急事態宣言が出て徐々に減っているが、期待されるレベルには残念ながら至っていない」と指摘。続けて「入院や重症者の数が増えている。入院調整や宿泊療養、さらに自宅で療養している人も急増している」と述べ、医療逼迫の懸念を示した。その上で、尾身氏は「一般の人々に十分に危機感が伝わっていないということが、大きい一つの原因だ。日本の社会みんな危機感を共有することが今非常に重要だ」と語った。柚木氏から、首相による発信の仕方など政府の対応について問われ、尾身氏は「今の状況で求められることは二つだ。人々にしっかりと危機感を共有してもらえるようなメッセージの出し方。効果的な対策をしっかり打つ。この2点に尽きる」と述べた。感染拡大と五輪開催との関係を指摘する意見も出た。共産党の塩川鉄也氏は「政府は国民に自粛を求めながら、世界最大の式典を行う。大きな矛盾だ」と指摘した。西村康稔経済再生相は「都内の人流は一定の減少をみている」と強調した上で、「医療提供体制を確保していく上でも、自宅で家族か、いつもいる仲間と少人数で観戦応援をお願いできれば」と述べた。また、ワクチン接種に関し、首相が会見で、野村総合研究所のリポートをもとに「人口の4割がワクチンを1回接種したあたりから、感染者の減少傾向が明確」と発言した点について、立憲の玄葉光一郎氏が「デルタ株の感染力を前提としていない」と問題視した。これに対し、西村経済再生相は「野村総研以外のデータも首相は理解している。政府全体で正確な情報を伝えたい」と語った。
■都の説明、都庁内からも批判 「医療逼迫、第3波ほどではない」 「大丈夫との発信、意味あるのか」
 新型コロナウイルスの新規感染者数が2日連続で過去最多を更新した東京都が強調するのが、病床が逼迫(ひっぱく)して医療危機に陥った冬の第3波との違いだ。都は重症化しやすい高齢者の感染が激減し、医療への負荷が当時とは異なると説明する。だが、入院者数は急増し、病床逼迫へ警鐘を鳴らしてきた都の専門家の説明とも食い違い、政府内、都庁内から批判の声が出ている。「第3波のピーク時と比べるとワクチン接種が加速した。重症化しやすい60代以上も減っている。第3波の時とは状況が異なると認識している」。小池百合子知事は28日午後、国内外のメディア向けのオンライン講演で、そう強調した。27日の2848人の感染者を年代別にみると、60代以上は全体の5%。一方、第3波でピークとなった1月7日(2520人)では、60代以上が14%に達した。1月7日に121人を数えた重症患者数も、27日は82人にとどまる。27日夜、都のコロナ対策を担当する吉村憲彦・福祉保健局長は記者団に異例の説明の場を設け、「第3波のピークとは感染状況の質が違う。医療に与える圧迫は変わっていることをご理解いただければ」と説明した。吉村局長は、第3波で9割弱に達した病床使用率が今は半分弱になっているとも強調。「医療提供体制がにっちもさっちもいかなくなって、死者がばたばた出ることは現状ない」とした上で、「いたずらに不安をあおるようなことはしていただきたくない」と述べた。だが、こうした吉村局長の説明は、都が毎週開いてきたコロナ対応のモニタリング会議での、感染症対策の専門家や医師たちの説明とは食い違う。21日の同会議では、「新規陽性者数が急速に増加すれば、医療提供体制が逼迫の危機に直面する」との専門家のコメントを公表。指摘の通り、病床は徐々に埋まり、27日時点の入院患者数は2864人と1カ月前と比べて倍増している。厚生労働省の幹部は「不安をあおらないでほしい」との吉村局長の訴えについて、「東京の感染状況は不安になる状態。逆のメッセージを出した方がよかったんじゃないか」と指摘する。病床に余裕があるとの説明に対しても、「いまはそうかもしれないが、来週、再来週は絶対に逼迫する」と警鐘を鳴らす。東京五輪が開かれる中、あえて第3波との違いを強調した吉村局長の説明に対し、都の福祉保健局内からも批判の声が上がる。ある幹部は「病床にまだ余裕があることは事実だとしても、その点を強調して『まだ大丈夫だ』と発信することにどれだけの意味があるのか」と疑問を呈する。

*4-2:https://mainichi.jp/articles/20210729/k00/00m/040/401000c (毎日新聞 2021/7/29) 日医など9団体が緊急声明「感染爆発避けるため、危機感共有を」
 新型コロナウイルスの感染者急増によって医療提供体制の逼迫(ひっぱく)は間近だとして、日本医師会(日医)や日本病院会など9団体が29日、緊急声明を出した。声明は全国の感染者数が過去最多を更新したことに触れ、「今後の爆発的感染拡大を避けるための危機感の共有と対策が必須」と指摘。全国を対象に緊急事態宣言を出すことを検討し、40~64歳のワクチン接種を推進するよう政府に求めている。記者会見した日医の中川俊男会長は「(緊急事態宣言は)要請がないから発令しないというスタンスでは間に合わない。政府には早め早めに手を打ってほしい」と訴えた。開催中の東京オリンピックの影響について問われた東京都医師会の尾崎治夫会長は「(五輪の開催で)お祭り騒ぎをしているのに自粛してと言うのは難しく、間接的な影響はあったかもしれない」と語った。声明は、40~50代の中等症患者の増加で医療の逼迫が懸念されると指摘し、政府に十分で安定したワクチンの供給を要請。国民には徹底的にテレワークを実施することなどを求めている。声明は日医、日本病院会のほか、日本歯科医師会、日本薬剤師会、日本看護協会、全日本病院協会、日本医療法人協会、日本精神科病院協会、東京都医師会の連名で出された。

*4-3:https://www.tokyo-np.co.jp/article/120263 (東京新聞 2021年7月29日) IOC広報部長「五輪はパラレルワールド。われわれから広げていない」新型コロナ感染者数過去最多に
 国際オリンピック委員会(IOC)のアダムス広報部長は29日、東京五輪のメインプレスセンター(東京都江東区)で記者会見し、国内で感染者数が過去最多を更新していることに関連し「五輪関係者は最も頻繁に検査されており、パラレルワールド(別の世界)みたいなものだ。われわれから感染を広げていることはない」と強調した。バジェット医事部長も五輪が「医療崩壊に影響することはない」と訴えた。大会開催でお祭りムードが広がり、間接的に感染拡大につながっているのではないかとの質問に対し、東京五輪・パラリンピック組織委員会の高谷正哲スポークスパーソンは「専門家の評価に耳を傾けながら安全安心な大会運営に努めたい」と述べるにとどめた。組織委は29日、大会関連で選手3人を含む24人が新たに新型コロナウイルス検査で陽性になったと発表した。組織委が取りまとめた大会関連の陽性者数としては1日当たりで最多。陽性者は今月1日以降で累計198人となった。陽性となった海外からの大会関係者2人が入院していると明らかにした。

*4-4:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20210725&ng=DGKKZO74155890U1A720C2EA3000 (日経新聞 2021.7.25) 接種証明、入国活用も検討 五輪後の感染状況見極め、」渡航向け申請あすから、まず5カ国
 政府は26日、新型コロナウイルスワクチンの接種証明書の申請受け付けを始める。海外渡航向けの発行が目的で、全国の市区町村で対応する。まずイタリアなど5カ国が対象になる。東京五輪後の感染状況を見ながら、証明書を持つ人が日本への入国時に利用できる措置の導入も検討する。接種証明書を査証(ビザ)の発行時や入国審査の際に示すと、入国後の待機措置やPCR検査が免除される。手続きが省略されるため、新型コロナ禍での出入国の負担が減る。ビジネス往来の活性化にもつながる。政府は21日、日本で発行する接種証明書が海外の5カ国に入国する際に利用可能になると発表した。イタリア、オーストリア、トルコ、ブルガリア、ポーランドが対象になる。5カ国のほか、韓国でも入国時に隔離されないようにする手続きが簡素になる。隔離免除の申請に必要な書類の一つに認められた。証明書の申請は26日から市区町村で受け付ける。ワクチンを接種した時点で住民票があった市区町村が窓口になる。申請書と接種済み証、パスポートなどを提示する。当面、証明書の交付は書面になる。接種した日時やワクチンの種類、パスポート番号、氏名、生年月日などを日本語と英語で表記する。費用は無料で、スマートフォンのアプリを使う電子証明書の発行も視野に入れる。日本の外務省は外国が発行した証明書の利用を認めず、日本の証明書は受け入れてほしいと交渉してきた。フランスなど一部の国は日本の要請を容認しなかった。出入国の制限は両国が同じ条件を課す「相互主義」を原則にしていることも一因になったとみられる。現時点で5カ国のみとなった日本の証明書の受け入れ国を広げるには「相互主義」への対応が避けられないとの声があがる。外国で発行された証明書を持つ人が日本への入国時に利用できる基準などが課題になる。そのひとつが中国製やロシア製など日本で承認されていないワクチンの扱いだ。中国製を巡っては米欧製に比べて効力が低いとの見方がある。日本の場合、海外からの入国者に原則として72時間以内の陰性証明の提出や、14日間の待機措置を求める。渡航先で活用できても日本への再入国時に証明書が使えない点も議題になる。出入国在留管理庁によると、6月に帰国した邦人は4万3千人、外国人の入国者は1万7千人にのぼる。宿泊施設での待機措置は大きな負担になっている。足元ではコロナの感染状況が再び拡大傾向にあり、政府は導入時期を慎重に探る構えだ。新型コロナ感染症対策分科会の尾身茂会長は20日の日本テレビ番組で、東京都の1日当たりの新規感染者数が「8月第1週に3千人近くまで増加する」との見通しを示した。政府は入国時の接種証明書を活用するのは感染者数が減少局面に入った段階を想定しており、8月8日の東京五輪の閉幕後になる公算が大きい。経団連は移動自粛の緩和など証明書の国内での活用を提言したが、政府は現状では及び腰だ。ワクチン接種は任意でアレルギーなど特別な事情で接種できない人への差別につながりかねないと懸念する。当面は海外渡航での利用を念頭に置く。

*4-5:https://facta.co.jp/article/202106024.html (POLITICS 2021年6月号[罷り通る出鱈目])「ワクチン敗戦」のA級戦犯、「感染症ムラ」の暴走を止めるのは、本来、政治の役割。加藤官房長官と田村厚労大臣は、その責任を放棄してきた。
 新型コロナウイルス(以下、コロナ)対策で、日本は一人負けを続けている。1回でもワクチン接種を受けた人の割合は、2.0%以下(4月29日現在)で、主要先進国(G7)で最下位だ。英国(50.4%)、米国(43.0%)は勿論、G7で日本に次いで接種が少ないフランス(22.4%)にもはるかに及ばない。ワクチン接種が進む国では、感染者が急速に減少している。英国の人口百万人あたりの感染者数は1月10日のピークの881人から32.5人(5月1日現在)に減少し、日本(40.0人)よりも少ない。G7で感染者数が増加しているのは日本だけだ。この状況は国民生活にも影響する。英国では、5月17日に屋内での飲食、映画館などの娯楽施設、ホテルの営業が再開し、6月21日にはマスクの着用を緩和し、ナイトクラブの営業を再開する予定だ。米国も状況は変わらない。カリフォルニア州のユニバーサル・スタジオは4月16日に営業を再開し、27日には、米疾病対策センター(CDC)が、ワクチン接種を済ませた人には、マスク着用義務を解除する方針を出した。5月4日、ドイツでもワクチン接種を終えた人への制限を緩和する方針が発表された。この状況は、緊急事態宣言下の日本とは対照的だ。なぜ、日本だけ上手くいかないのだろうか。実は、このことは今に始まった話ではない。日本のコロナ対策は、昨年から一貫して「劣等生」だった。政府は「日本型モデルの成功」と自画自賛してきたが、実態は違う。本稿では、日本のコロナ対策の失敗の本質をご紹介しよう。
●医系技官の意向を代弁した出鱈目
 コロナ対策の目的は国民の生命と生活を守ることだ。これは、人口当たりの死者数と国内総生産(GDP)の変化を用いれば国際比較が可能となる。日本の2020年の人口10万人あたりのコロナによる死者は2.6人、GDPは対前年比で4.8%減だ。19年のGDPは前年より0.3%増だったから、実質5.1%減となる。本稿では、この値を「GDP変化率」と定義する。では、G7ではどうだろうか。10万人あたりの死者数は日本とは桁違いだ。最も多いのはイタリアで122.7人、日本の47.2倍だ。最も少ないドイツ(40.3人)でも日本の15.5倍となる。一方、経済ダメージは、死者数ほどの差はない。最もダメージが軽微なドイツの「GDP変化率」は5.5%減で、日本(5.1%減)と大差ない。欧米と比較した場合、日本は経済ダメージは大きいものの、死者数の抑制に成功したという見方も可能だ。東アジアと比較すれば、この評価は一変する。主要4カ国・地域の死者数は日本2.6人、韓国1.8人、中国0.3人、台湾0.03人で、「GDP変化率」は、日本5.1%減、中国3.7%減、韓国3.0%減、台湾0.3%増だ。死者数、「GDP変化率」の何れにおいても、日本は最低だ。日本はどこで間違えたのだろう。最初の躓きはPCRを抑制したことだ。コロナ対策が難しいのは、感染者の多くが無症状であることだ。それゆえ周囲にうつしてしまう。コロナ対策の本丸は無症状感染対策で、世界中の研究者がこの問題に取り組んだ。最初の報告は、昨年1月24日、香港大学の研究者たちが英『ランセット』誌に無症状感染の存在を報告したものだ。その後、「無症状コロナ感染」をタイトルに含む約800の英文論文が発表されている。この中で特記すべきは、11月11日、米海軍医学研究センターの医師たちが、米『ニューイングランド医学誌』に発表したものだ。1848人の海兵隊の新兵を隔離して感染状態を調べたところ、51人(3.4%)で感染が確認され、46人は診断時に無症状だった。若年者においては、感染者の大半が無症状ということになる。その後、12月2日にスリランカの研究者が、PCR体制の強化がもっとも有効な対策という論文を、医療政策研究の最高峰『ヘルス・アフェアー』誌で発表した。この報告で、感染の抑制と最も相関したのは、感染者数当たりの検査数だった。ところが、厚労省や専門家たちは、このような研究成果を無視し続けた。政府のコロナ感染症対策分科会会長を務める尾身茂氏は、10月14日の横浜市での講演で「無症状者にPCR検査しても感染は抑えられない」と公言している。もちろん、これは厚労省で医療政策を仕切る医系技官の意向を代弁したものだろう。尾身氏自身、医系技官OBだ。医系技官は、流行当初から「PCRは1%程度の偽陽性があり、PCR数を増やせば、医療が崩壊する」と主張し、検査数を抑制してきた。昨年8月まで医系技官トップで事務次官級の医務技監を務めた鈴木康裕氏は、10月24日の毎日新聞で「陽性と結果が出たからといって、本当に感染しているかを意味しない」とコメントしている。この発言も出鱈目だ。『米国医師会誌(JAMA)』5月6日号には「コロナの診断テストの解釈」という論文が掲載され、「ほとんどのPCRの特異度*注は100%である」と記されている。昨年5月の段階で、PCRの精度が高いことは世界の常識となっており、中国をはじめ世界各国が大規模スクリーニング検査体制の構築を進めていた。この手の出鱈目は枚挙に暇がない。11月25日の衆議院予算委員会で田村憲久厚労大臣は「アメリカは1億8千万回検査しているが、毎日十数万人が感染拡大している」と答弁しているが、これも不適切だ。前述したように、感染抑制と相関するのは、検査の絶対数ではなく、感染者数あたりの検査数だ。田村大臣発言当時の米国の感染者あたりの検査数は12.3回で、日本の18.9回以下だ。その後、米国は検査体制強化に努め、4月29日現在の感染者あたり検査数は20.0件で、日本(14.5件)を追い越した。
* 特異度(とくいど)=臨床検査の性格を決める指標の1つで、ある検査について「陰性のものを正しく陰性と判定する確率」として定義される値である。
●変異株6割見落とす「二段階検査」
 感染症対策の根幹は検査だ。菅義偉総理は繰り返し「検査体制の強化」を主張するが、日本の検査能力はいまだに後進国レベルだ。4月29日現在の人口千人あたりの検査数は0.58件で、英国(15.8件)、米国(3.1件)はもちろん、インド(1.22件)の半分以下である。PCR抑制は様々な影響を与えた。変異株のまん延もその一つだ。厚労省はPCR陽性例の4割を変異株の検査に回したが、そもそもの検査数が少なく、かつ6割はノーチェックなのだから、変異株の大部分を見落としてしまった。4月19日~25日の間に東京都では5090人のPCR陽性が確認され、このうち41%に変異株検査を実施したが、56%が陽性だった。大阪・兵庫・京都では、変異株の割合は80%を超える。実は、世界の変異株検査のやり方は、日本とは全く違った。二段階検査のような手間のかかる方法ではなく、複数の遺伝子配列を同時に増幅することができる「マルチプレックスPCR」を用い、一回の検査で変異株の感染を判断している。この方法を用いれば、検体を国立感染症研究所(感染研)などの専門施設に運ぶ必要はなく、医療機関や民間検査センターでも検査が可能で、結果はその日中にわかる。1月8日、米食品医薬品局(FDA)は、「マルチプレックスPCR」の使用を推奨したが、感染研は執拗に従来の方法にこだわり、いまだに導入されていない。
●「公共事業」と化した積極的疫学調査
 なぜ、厚労省は、ここまでPCRを抑制するのか。それは感染症ムラの利権に関わるからだ。感染症ムラとは、厚労省医系技官、感染研、専門家で構築される利益共同体だ。その中心は健康局結核感染症課だ。コロナ対策の法的根拠となる感染症法と検疫法を所管し、後述する感染症関係の研究予算を差配する。課長は医系技官の指定席だ。コロナ対策で、感染症ムラにとっての「公共事業」と化したのは積極的疫学調査だ。この調査は、感染症法で規定される法定感染症が発生したとき、厚労省が指示し、感染研と保健所が連携して実施することと規定されている。この調査では、感染者を発見したら、保健所が濃厚接触者を探しだし、PCRを実施する。もし、感染していれば、さらに濃厚接触者を探し、芋づる式に感染者を見つける。この芋づるをクラスターと呼ぶ。クラスター調査は、世界のどこでも実施している標準的な感染対策である。日本があえて「積極的」と称するのは、感染者の過去14日間の行動を調べ、接触者を探しだし、彼らを検査するからだ。この際、保健所職員を動員しての人海戦術による聞き取りを実施する。海外では感染者が見つかると、その後に接触した人を洗い出し、発症するか調査するだけだ。この際、接触アプリを活用する。厚労省や「感染症ムラ」の研究者は、積極的疫学調査を自画自賛する。コロナ感染症対策分科会の委員を務める押谷仁・東北大学教授は、昨年3月22日のNHKスペシャルに出演し、「全ての感染者を見つけなければいけないというウイルスではないんですね。クラスターさえ見つけていれば、ある程度の制御ができる」と述べている。この指摘が間違いであったのは、いまや明白だ。感染がまん延すれば、クラスター対策では対応できないことは素人でもわかる。感染研も積極的疫学調査の実施要領に「(大流行下では)感染経路を大きく絶つ対策が行われているため、個々の芽を摘むクラスター対策は意味をなさない場合がある」と記していた。ところが、彼らは未だにクラスター対策に固執する。1月8日には、実施要領の記載を「効果的かつ効率的に積極的疫学調査を行うことが重要になる場合がある」と変更し、2月25日に分科会が提出した提言には現行の調査を強化した「深掘積極的疫学調査」を盛り込む始末だ。なぜ、ここまでしてクラスター対策に拘り、PCRを抑制するのか。それは「クラスターさえ見つけていれば、ある程度の制御ができる(押谷教授)」というフィクションが通用している限り、彼らがカネとポストを独占できるからだ。研究者にとってのカネとは研究費だ。結核感染症課は「新興・再興感染症及び予防接種政策推進研究事業」を所管する。この予算は19年度の約3億4千万円から、20年度には36億5400万円に増額された。公募形式だが、採択されるのは感染症ムラの面々ばかりだ。20年度に採択された41人中、20人が感染研で、27人が感染症ムラ関係者だ。彼らが受け取った研究費の総額は約31億1800万円で、全体の85%を占める。もちろん、感染症ムラの研究者がしっかり成果を出してくれれば問題はない。ところが、研究成果が乏しい。米国立医学図書館データベース(PubMed)によれば、4月14日現在、日本人研究者が筆頭著者の856報の論文が発表されている。施設別で最も多いのは東京大で54報だ。感染研は19報で7位、横浜市大(16報)と同レベルだ。感染症ムラの情報独占や過剰な資源投入は、日本の研究力を削ぐ。4月8日現在、PubMedには6万2905報のコロナ論文が収載されている。国別でトップは米国の1万1251報で、中国(8881報)、イタリア(6945報)、イギリス(6448報)と続き、日本(1333報)はG7で最下位だ。人口10万人あたりで比較すると、日本は1.1報。OECD加盟国37カ国中32位で、ハンガリーやコロンビアと同レベルである。コロナ研究は熾烈な競争の世界だ。様々な分野の専門家が参入する。例えば、ワクチン開発に成功した独ビオンテックと米モデルナは、元はがん治療ワクチンを開発していたバイオベンチャーだ。ゲノム情報を分析し、ワクチン候補となるmRNAの配列を決定するノウハウを有していた。昨年1月、中国の研究チームがコロナのゲノム配列を公開すると、その情報を分析し、ワクチン開発に取りかかった。彼らの成功は感染症に加え、免疫学や情報工学の専門家の有機的な連携によるものだ。感染症ムラの「お医者さん」がカネと情報を独占する日本とは違う。
●「感染症ムラ」の暴走に目をつむる
 余談だが、ゲノム研究の世界的リーダーは中村祐輔・がん研がんプレシジョン医療研究センター所長だ。昨年、米メディアがノーベル生理学・医学賞候補に挙げた。残念なことに、中村氏が「感染症ムラ」から招聘されることはない。中村氏は大阪大学を卒業した外科医だが、あまりにも高名な中村氏は「感染症ムラ」にとって煙たい存在なのだろう。話を戻そう。では、どうすればいいか。感染症ムラの暴走をコントロールするのは、本来、政治の役割だ。その役割を担うべきは、加藤勝信官房長官と田村厚労大臣だ。前職は、それぞれ厚労大臣と自民党コロナ対策本部本部長で、政府・与党の責任者を務めた。ところが、彼らは、その責任を放棄してきた。PCRについての田村厚労大臣の不適切な発言は前述の通りだ。加藤官房長官の姿勢を象徴するのは、37.5度4日間の自宅待機への対応だ。検査を希望する国民に理解を示すことなく、昨年5月8日には「我々から見れば誤解」と国民に責任を押し付けた。PCRもできず、ワクチンも開発できず、緊急事態宣言を繰り返す日本で、多くの人命と財産が失われた。クラスター対策に固執し、非科学的な対応を取り続けてきた感染症ムラと、彼らの暴走に目をつむった政治家による人災だ。これまでの経緯を検証し、ゼロベースで体制を見直さねばならない。
*著者プロフィール:上昌広(かみまさひろ);特定非営利活動法人「医療ガバナンス研究所」理事長、1968年生まれ。兵庫県出身。東大医学部卒。国立がんセンター中央病院薬物療法部医員として造血器悪性腫瘍の臨床研究に従事し、2016年まで東大医科学研究所特任教授を務める。2005年より東大医科学研究所先端医療社会コミュニケーションシステムを主宰し、医療ガバナンスを研究。医療関係者など約5万人が購読するメールマガジン「MRIC(医療ガバナンス学会)」の編集長を兼ねる。

<五輪開会式から見た教育の問題点>
PS(2021年7月31日追加):五輪選手は世界の一流であるため、さすがに質が高くて気持ちの良い競技をするが、それぞれ地域の代表なので東京五輪のような無観客の会場で競技をするのは久しぶりだろう。その五輪で開催地の見識と実力が最も現れるのは開会式と閉会式だが、*5-1のように、開会式は新型コロナのパンデミックを理由に無観客・選手のマスク着用が義務付けられていた。しかし、ワクチン接種が済み、毎日PCR検査をして陰性を証明している選手にマスク着用は不要であるし、観客にワクチン証明か陰性証明があれば無観客である必要もないのだが、その判別もつかないのが、日本の厚労省・同専門家会議・政治家・メディアなのである。
 私も東京五輪の開会式は見たが、①選手の入場行進に「ドラゴンクエスト」「ファイナルファンタジー」などのゲームの楽曲が多く使われ ②歌舞伎俳優市川海老蔵さんの演技は少しで ③各種競技のピクトグラム(絵文字)をパントマイムのパフォーマーが演出し ④聖火リレーの最終ランナーに大坂なおみ選手が起用されていた。
 私の感想は、①②は、日本の芸術の貧困であり、③は面白くはあったが笑う以上の何ものでもなく、歌も上手ではなくて、この開会式にはリオ五輪のようなメッセージ性も本当の芸術もないと思った。唯一存在したメッセージは、最後に④で日本の多様性を示したことだが、これは先進国では当たり前のことで、それと同時に、声がスタジアムに届くよう五輪開会式の会場近くで五輪中止の抗議デモが行われていたのは、外国人差別が現れている上に、外国からのお客さまに対して失礼で、航空自衛隊が描いた空の五輪も風で吹き飛ばされて形にならなかった。
 五輪の開会式は、企業にとっても技術や製品を世界に発信する好機だった筈だが、*5-2のように、⑤夜空に立体的な地球を描いたドローンショーは米インテル ⑥水素で聖火をともしたのはENEOS ⑦国立競技場にプロジェクター・音響設備・照明器具を納入して開会式の演出を支えたのはパナソニック ⑧聖火のトーチに使ったアルミニウムの3割は東日本大震災の仮設住宅の窓サッシを再利用してLIXILが製造 ⑨日本代表選手が着る「式典服」と「開会式服」をAOKIHD が用意 ⑩スウェーデン選手団の公式ウエアはサステナビリティーを重視して回収したペットボトル由来の再生ポリエステルなどを採用してユニクロが提供 だそうだ。
 しかし、⑤は、素晴らしかったが、米企業インテル製で平昌冬季五輪でも同じショーを披露していたので目新しくはなかった。また、⑥⑧⑨⑩は、開会式の放送時に解説や地球環境配慮のメッセージがなかったため、気付いた人が少ない。⑦は、今や日本の家電はパナソニックしか生き残っていないというお寒い状況を告げるメッセージなのである。さらに、だらだらと入ってきた選手団のプラカードは、国名が漫画の吹き出しに書いてあってアホかと思った。
 なお、この開会式を演出したのは、*5-3のように、元お笑い芸人の小林氏だったそうで、小林氏は過去にユダヤ人のホロコーストをコントで茶化した人権意識と見識の低い人だった。組織委の武藤事務総長は小林氏の役割を「全体を統一的で一貫性あるものにするもの」と説明されているが、確かに一貫性を持って教養の香りのない開会式だった。また、7月19日には、開会式の冒頭の楽曲を制作した小山田氏が学生時代の暴行で辞任し、その前には式典を統括するクリエーティブディレクターの佐々木氏が女性タレント容姿侮辱問題で辞任しているため、今回の開会式の軽薄さは、大会を組織した人の首尾一貫した軽薄で教養に欠ける価値観に基づく人選の結果だと言える。なお、*5-4のように、東京五輪の開会式で演出を担当した小林氏の解任について、海外の主要メディアは一斉に報じ、ベンアリ駐日イスラエル大使もツイッターで「ホロコーストの生存者の娘として、小林氏の過去の反ユダヤ主義的な言動に衝撃を受けた」と投稿されたのは当然のことだが、軽薄の仲間である日本メディアは大して問題にしなかった。

    
                 2021.7.23、2021.7.24日経新聞     
(図の説明:1番左の表は、開会式で使われたゲーム曲のリストで、左から2番目の図は、日本選手団の入場の様子だ。また、右から2番目の図は、聖火の点火の様子で、1番右の表は、東京五輪をめぐる不祥事のリストだ)

*5-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20210724&ng=DGKKZO74152200U1A720C2NNE000 (日経新聞 2021.7.24) 異例の開会式、各国で詳報 無観客や選手マスク姿、東京五輪、大坂選手の点火速報
 東京五輪の開会式が23日、国立競技場(東京・新宿)で行われた。新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)下で開かれた今回の開会式について海外メディアは、初めて無観客となったことや選手がマスクを着用して参加したことなど異例ずくめである様子を報じた。米メディアのCNNやニューヨーク・タイムズ(NYT)などは開会式をライブで中継した。選手の入場行進には「ドラゴンクエスト」など日本の有名ゲームの楽曲が使われたと紹介し、各種競技のピクトグラム(絵文字)をパントマイムのパフォーマーが演出したなどと伝えた。歌舞伎俳優の市川海老蔵さんによる演技も開会式のハイライトとして注目を集めた。聖火リレーの最終ランナーにはテニス女子の大坂なおみ選手が登場、聖火を点火したときには主要メディアが相次いで速報を流した。AP通信は「空っぽのスタジアムで控えめなセレモニーが開かれるなか、東京五輪は始まった」と伝えた。「想像していたものと大きく異なったが、ようやく集まれたのでこの時間を大切にしよう」と呼びかけた国際オリンピック委員会(IOC)のバッハ会長による開会式の演説も紹介した。英BBCは「リオ五輪のようなカーニバルも、ロンドン五輪のようにスカイダイビングする女王もいなく、世界が最大の試練に立ち向かうなかで開かれる大会だと思い知らされた」と報じた。「この大会はマスク着用やコロナの陽性検査、そして無観客などこれまでとは異なるが、オリンピックが世界最大のショーであることに変わりはない」と指摘した。五輪の中止を呼びかける抗議デモについても報道が相次いだ。米公共ラジオ放送NPRは五輪開催について日本人の大半が「必要ではなく、危険な状況を作って国民に健康リスクをもたらすと感じている」と報じた。NYTは東京都が現在、コロナの感染拡大に伴い緊急事態宣言を発令中だと指摘。開会式のプログラムの合間に静けさが戻ると、会場の外に集まった抗議デモ参加者の声がスタジアムにも届いたと伝えた。

*5-2:https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC242IB0U1A720C2000000/ (日経新聞 2021年7月24日) 幻想ドローンショー 五輪開会式、企業の技術が支える、環境配慮を世界に発信
 23日の東京五輪開会式は、企業にとっても技術や製品を世界に発信する好機となった。夜空に立体的な「地球」を描いたドローン(小型無人機)ショーを手がけたのは米半導体大手のインテル。エネルギー大手のENEOSホールディングス(HD)は五輪史上初めて、環境負荷が小さい水素で聖火をともした。スポーツと平和の祭典を企業が培った技術が支える。夜空を彩ったドローンショー。1824台のドローンが五輪のエンブレムを形作り、平和を象徴する青い地球へと姿を変えた。インテルは2018年の平昌冬季五輪でも1200台超のドローンでショーを披露した。今回、使ったのは4つの羽根を備える「シューティング・スター」という同社のドローンだ。数は平昌の約1.5倍。1台340グラムと軽く、最大秒速11メートルまでの風にも耐える。高精細LEDを4つ搭載。「鮮明で境界のない明るさを実現し、より細かいグラフィックス表現が可能になった」(インテル日本法人の鈴木国正社長)。平昌では各機1つだった。ドローンの動き、光の色や点滅はアニメーションのソフトウエアなどで設計した。インテルは今回の東京五輪で、高性能CPU(中央演算処理装置)を駆使したデータの生成・処理などの技術を提供する。アスリートの動作を複数のカメラで即座に分析したり、立体データから自由に視点を移動したりといったもので、テレビ放送にも活用される。パナソニックは国立競技場にプロジェクションマッピングに使うプロジェクターや音響設備、照明器具を納入し、開会式の演出を支えた。音響設備はスピーカーから離れていても明瞭な音が聞こえる。照明器具は瞬時にオン・オフでき、高精細な4Kや8K放送で色を鮮やかに再現できるように設計した。地球環境への配慮は今大会の大きなテーマだ。国立競技場と夢の大橋(東京・江東)に設置された聖火台にはENEOSHDが水素を供給する。再生可能エネルギー由来の水素だ。新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)などが福島県に設立した「福島水素エネルギー研究フィールド」(福島県浪江町)で製造し、東京まで運ぶ。再生エネ電力を使い、水を電気分解して発生させた「グリーン水素」だ。製造時にも二酸化炭素(CO2)は出ない。聖火のトーチに使うアルミニウムの製造はLIXILが担った。アルミをリサイクルして窓サッシなどをつくる技術が評価された。素材の約3割は東日本大震災の被災者が暮らした仮設住宅の窓サッシを再利用した。トーチ本体を作ったのは金属加工・販売のUACJ押出加工(東京・中央)。軽量化しつつ、桜をイメージした複雑なデザインを実現する必要があった。金型の設計を繰り返し、約3年がかりで完成させた。トーチは全長71センチ、重さ1.2キロ。約1万本が全国で聖火をつないだ。紳士服大手のAOKIホールディングス(HD)は日本代表選手が記者会見の場などで着る「式典服」と「開会式服」を1600人分用意。日本オリンピック委員会(JOC)などが19年に実施したコンペで数十社の中から選ばれた。開会式服は白いジャケットと赤のパンツ。ジャケットの生地には日本の職人の特殊技術で小さな穴をあけ、通気性と伸縮性を高めた。シャツやブラウスには吸水・速乾機能を持たせた。AOKIHDの青木彰宏社長は「国内で60年間スーツを作ってきた技術を発信できる」と期待する。ファーストリテイリング傘下のユニクロは、スウェーデン選手団に公式ウエアを提供した。環境先進国とされる同国のためサステナビリティー(持続可能性)の観点を重視。回収したペットボトル由来の再生ポリエステルなどを採用した。選手入場時には、国内外で人気の高い家庭用ゲームのテーマ曲などが使われた。「ドラゴンクエスト」や「ファイナルファンタジー」などスクウェア・エニックス・ホールディングスの6作品から9曲が採用された。ネット上では「ドラクエの曲で鳥肌が立った」などと大きな反響があった。カプコンの「モンスターハンター」やバンダイナムコホールディングスの3作品、セガサミーホールディングスやコナミホールディングスから各2作品が使われた。

*5-3:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20210723&ng=DGKKZO74137290S1A720C2NN1000 (日経新聞 2021.7.23) 五輪組織委、止まらぬ迷走、開会式演出の小林氏解任、低い人権意識が根底に
 東京五輪の運営を担う大会組織委員会の混乱が収まらない。開会式を翌日に控えた22日、ショーディレクターを務める元お笑い芸人の小林賢太郎氏を過去のコント内容を巡って解任した。かねて不祥事は相次ぎ、19日には開会式の楽曲担当者が辞任したばかり。根底にある人権意識の希薄さや「密室体質」を払拭できず、東京五輪そのもののイメージを損なった。開閉会式の制作・演出チームの一員だった小林氏は過去にユダヤ人の大量虐殺(ホロコースト)をコントで扱い、SNS(交流サイト)上で批判が集まっていた。組織委の橋本聖子会長は22日の記者会見で「次々と多くの問題が発覚し、後手に回っている印象があり反省している」と述べた。組織委の武藤敏郎事務総長は小林氏の役割を「全体を統一的、一貫性あるものにするもの」と説明。組織委は演出内容を見直すかどうかを検討したが、22日夜に変更しないと発表した。精査した結果、小林氏1人で演出を手掛けた部分はなかったとし、「予定通り実施する方向で準備を進めている」とコメントした。橋本氏が問題を把握したのは22日未明。外交上の問題にもなりかねないとして同日午前に解任した。米ユダヤ系団体が小林氏を非難する声明を出していた。菅義偉首相も首相公邸で記者団の質問に答えて「言語道断だ。全く受け入れることはできない」と批判した。組織委を巡っては、3月に式典を統括するクリエーティブディレクターの佐々木宏氏が演出関係者に女性タレントの容姿を侮辱するメッセージを送った問題で辞任した。組織委はこれを受け、式典の制作や演出を担うチームを再編成。詳細なメンバーを開会式の9日前となる7月14日になって発表した。選定過程などの説明はなかった。19日にはメンバーの一人、ミュージシャンの小山田圭吾氏が雑誌で告白した学生時代のいじめが問題となり、辞任に追い込まれた。小山田氏は開会式の冒頭の楽曲を制作しており、当該部分の変更を迫られた。小山田氏の場合、いったん組織委は続投させる意向を示していた。今年2月には前会長の森喜朗氏が女性蔑視発言で辞任。組織委の人権意識の低さが相次ぐ不祥事の根底にはある。小山田氏辞任の際、武藤氏は「佐々木氏の辞任後、時間がない中で必要な人たちを仲間内で集める形になった」と説明。小山田、小林両氏について過去の問題の把握や精査はできていなかった。かねて不透明な体質が批判されてきた組織委。2015年には大会エンブレムで盗作疑惑が浮上し、アートディレクターを限られた幹部で決めた経緯が批判された。森氏辞任の際も後任人事を巡り、森氏が元日本サッカー協会会長の川淵三郎氏へ直接就任を打診したことが「密室人事」と非難された。教訓が生かされず、不祥事が収まらない。組織委は都や日本オリンピック委員会(JOC)、政府や民間など出身母体が異なる職員が集まり14年に発足した。専門家が集まった混成組織で職員は約8千人に及び、統治機能が働きにくい。エンブレム見直しでは選考方法を公募に切り替えた。当時の幹部は「国民的事業なので、オールジャパンで策定すべきものだった」と反省の弁を述べたが、不透明な構図は再び繰り返された。五輪の開会式目前になって制作・演出の主要メンバー2人が去った。開会式の演出はほぼ完成し、国立競技場ではリハーサルが連日行われていた。「このタイミングで演出を変更するのはかなり難しい」(組織委の担当者)のが実情だった。開会式は10億人以上がテレビで視聴するとされる。「マイナスのイメージがどうしてもぬぐえない状態で開幕を迎えようとしている」(橋本氏)。「多様性と調和」をテーマに、日本を世界に発信する場は揺らぐ。

*5-4:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20210723&ng=DGKKZO74137320S1A720C2NN1000 (日経新聞 2021.7.23) イスラエル大使「衝撃受けた」 海外から批判相次ぐ
 23日に開かれる東京五輪の開会式で演出を担当する元お笑い芸人の小林賢太郎氏の解任について主要な海外メディアも一斉に報じた。スキャンダルが立て続けに起きていることから厳しい批判が相次ぐ。ロイター通信は小林氏がユダヤ人の大量虐殺(ホロコースト)をコントのネタにしていたとみられる動画が拡散したことについて「組織委員会の頭を悩ませる最新のスキャンダルとなった」と報じた。小林氏の解任は開会式の楽曲を制作したミュージシャンの小山田圭吾氏の辞任に続くもので「さらに恥をさらす事態となった」と断じた。AP通信は「感染再拡大の懸念が高まっているにもかかわらず開催を優先させる政府への批判が土壇場の不祥事につながっている」と分析した。外国政府からも批判の声が上がる。ベンアリ駐日イスラエル大使はツイッターで「ホロコーストの生存者の娘として、小林氏の過去の反ユダヤ主義的な言動に衝撃を受けた」と投稿。その上で、小林氏を解任した組織委員会に対して「迅速な対応に感謝する」と述べた。

<先端技術の応用から見た教育の問題点>
PS(2021年8月1日追加):*6-1のように、全ゲノム健診で欧米が先行しており、ゲノム解析装置の進化で1人あたりの解析コストは20年前の10万分の1の1,000$(約11万円=109.7¥/$X1,000$)に下がって、世界のゲノム関連市場は2028年までに20年比3倍超の約630億$(約7兆円=109.7¥/$X630億$)に拡大するそうだ。日本では、「①ビッグデータだ」「②マイナンバーだ」「③位置情報だ」と言って勝手に他人の個人情報を集めて使っておきながら、このような時だけ「個人情報保護」「医療倫理」などとして進歩を妨げる声が強くなる。しかし、それなら通常の健診も同じだ。さらに、医療は守秘義務を護るため、①②③よりはずっと安全で、遺伝情報は病気になる可能性が他の人より高いことを示すだけで、現時点で病気でなければ仕事に影響ないため職場で降格や解雇をする理由はない。さらに、遺伝情報は、生命保険会社がそれだけを見てリスク判定できるほど高い確率で一定の病気にかかることを現すわけではないため、守秘義務を護り、データ管理をしっかりしておけば問題ない筈だ。
 このように、新型コロナ・ゲノム・地球環境・五輪等の問題を考えるにあたって、驚くほど非科学的で基礎的教養に欠ける思考が続いているのは呆れるほかないが、その根源は多くの国民に行われている教育にあるだろう。
 例えば、*6-2-1のケースのように、「①東京都立高校が70年以上も普通科110校で男女別の募集定員を設定して入試の合格ラインで男子に下駄をはかせ」「②都教委が『急に変えると中学の進路指導などが混乱する』と言い」「③副校長だった教員が『理系難関大学への進学実績は保護者の関心事であり、理数系に苦手意識を抱きがちな女子より男子が増えるほうが喜ばしい』と言ったり(これは『ふざけるな』と言いたい)」「④都教委と私立高が全体の定員が都立約6割、私立約4割になるよう調整したり(私立は男女別学で高いのに)」「⑤複数の大学医学部入試で女性差別をして男子に下駄を履かせたり」など、憲法26条1項の「能力に応じて、等しく教育を受ける権利を保障する」に反すると同時に女性に対する人格権の侵害を行い、能力ある人から安価でよい教育を受けさせ社会の発展に資するという教育のもう1つの目的も果たしていない。にもかかわらず、教育者が憲法や教育基本法に反する①~⑤の考え方を持ち、それを疑問にすら思わずに70年以上も継けてきたことは、教育者の質に疑問を感じざるを得ないのだ。
 さらに、*6-2-2は、「⑥文科省は小中高校や幼稚園等の教員に10年毎の講習を義務付ける『教員免許更新制』を廃止する方針を固め」「⑦最新の知識や技能を習得する狙いだったが」「⑧多忙な現場の負担が一層増すなど数々の問題が当初から指摘されていた」「⑨現役教員の調査では、8割超が負担を感じ、6割弱が講習内容に不満を持っていた」「⑩講習の頻度が10年に1度では技能向上に結びつかない」「⑪各教育委員会の研修内容とも重複する」としているが、⑥⑩は、確かに10年に1度では技能向上に結びつかないものの、⑪は、教育委員会によって研修レベルが異なるため全国統一された底上げが必要だ。また、⑧⑨のように、多忙を理由として負担を感じるのなら、長期休暇のない職種も研修が義務付けられているのだから工夫が足りないし、⑦の意欲に欠ける不適格な教員と言わざるを得ない。なお、「⑫教え子の未来を左右する教員の責任は極めて重く、教育者としての力や質を高める努力が常に求められる」と言っても、(私はその時に議論の中心にいたので知っているのだが)政治主導がなければ教員が研鑽を積み技能を高める仕組みは入らなかったし、愚痴のように実態を言っているだけでは改善しない。
 そのため、政治を批判する前に、教育者自らが常日頃から問題点を把握・検証・改善し続けるべきであり、また、それができる人材を公立校の教員として採用すべきだ。そうでなければ、親の負担が重すぎて、子育てはできないのである。


 2019.11.28毎日新聞       resemon         2019.8.1西日本新聞

(図の説明:左図のように、教育用PCは九州・四国で普及しており、大都市圏の方が普及していない。また、中央の図のように、普通教室の電子黒板は佐賀県が飛びぬけて普及しており、これらは教育に対する優先順位のつけ方に違いがあるからだろう。右図は、九州地区と全国を比較した学力テストの正答率で、これは地方より大都市、公立より国公私立全体の方が高いが、全国と比較して理由を分析し、教え方を改善していくのも教育者の仕事だと思う)

*6-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20210725&ng=DGKKZO74155430U1A720C2EA4000 (日経新聞 2021.7.25) 倫理や個人情報課題に 全ゲノム健診、欧米先行
 筑波大学などが始める全ゲノム健診では欧米が先行する。一例は米新興企業バリアンティクス(マサチューセッツ州)で1回5600ドル(約62万円)。米国立ヒトゲノム研究所によると、解析装置の進化で1人あたりの解析コストは1000ドルと、20年前の10万分の1に下がったという。米調査会社グランドビューリサーチによると、世界のゲノム関連市場は2028年までに20年比3倍超の約630億ドルに拡大する。予防意識の高まりから健康診断サービスが市場の成長をけん引するとみられている。ただ個人情報保護や医療倫理などの面で課題は多い。ゲノム情報に関する倫理制度に詳しい早稲田大学の横野恵准教授は「ルール整備を通じて差別や不利益に対する利用者の懸念を軽減することが必要だ」と話す。米国では検査の結果に基づいて生命保険や医療保険などの加入を拒否されるといった問題が起きた。08年に遺伝情報に基づく差別を禁止する法制度が整ったが、なお職場での降格や解雇といった事例が相次ぐ。日本では17年、複数の生命保険会社の約款に遺伝情報を用いるかのように読める記載があったことから、金融庁が削除を要請した経緯がある。筑波大でも検査により不利益を被る可能性を事前に説明することや、厳格なデータ管理を求める意見が出たという。今回のサービスでは検査前に対面でリスクを説明し、データは専用サーバーで物理的に隔離する。森・浜田松本法律事務所の吉田和央弁護士は「十分なインフォームド・コンセント(説明と同意)が必要だ」と話す。

*6-2-1:https://digital.asahi.com/articles/DA3S14987293.html (朝日新聞 2021年7月25日より抜粋) 男女別定員は必要か
 東京都立高校は、募集定員が男女別に設定されています。70年以上にわたって続く制度で、性別によって入試の合格ラインが異なるため、問題視する声があがっています。2018年には大学の医学部入試で、女性や浪人生が差別を受ける不正も明らかになりました。中学の学校現場の声や法律の専門家の話から、入試にまつわるジェンダーの問題について考えました。
■公立高では都立入試だけ 本社アンケート
 都立高校の男女別定員は、全国でみると異例の制度だ。朝日新聞が今年6月、47都道府県にアンケートしたところ、都道府県立高校で定員を男女別にしているのは東京都だけだった。過去に男女別にしていた7府県は「男女の比率にあらかじめ一定の範囲を定めることは合格ラインが異なることになり、男女平等の理念にそぐわない」(兵庫県)などとして、いずれも廃止。一部の学校で残っていた群馬県でも昨年春の入試を最後に廃止した。アンケートでは、男女の生徒数が同程度であるメリットも聞き、「混声合唱や部活動での団体活動が実施しやすい」といった回答があった。一方、「入学時に男女の数字に差が生じることがあるが、課題は生じていない」と答えた自治体もあった。都立高校の男女別定員制度は1950年度に導入された。現在は普通科110校で定員が男女別になっている。一方、定員の9割までを男女別の成績順で決め、残り1割を男女合同の成績順で決める「緩和措置」も98年度から導入。今春の入試では42校がこの措置をとった。男女別定員制度については、これまでも撤廃を求める声が上がっていた。男女別定員を話し合う東京都の検討委員会は90年に撤廃を提言。「小中学校での『男女平等』が高校で一転し、全日制普通科のみ男女を区別して選抜するのは疑問」とした。また、外部の有識者や学校の関係者でつくる都の入試検討委員会も見直すよう指摘している。制度が続いているのはなぜか。都教育委員会は「急激に変えると中学の進路指導などが混乱する。影響が大きいので慎重に検討する必要がある。緩和措置を導入するなど、議論は進めている」としている。私立高校との関係も影響している。都教委と私立高校は、全体の定員が都立約6割、私立約4割になるよう調整。朝日新聞のアンケートでは、東京都以外の17県も私立高との定員調整をしていると回答した。東京都以外の道府県では、性別に基づく定員の調整はいずれも「ない」と答えた。一方、男子生徒の比率が高い東日本の公立難関高で昨年まで副校長だった教員は「数学と理科が難しいと(結果として)女子の合格者が減る」と打ち明ける。理系の難関大学への進学実績は保護者の関心事でもあったといい、「理数系に苦手意識を抱きがちな女子より、男子が増えるほうが、喜ばしい。女子のほうが元気なので、女子がちょっと少ないほうが学校としてはバランスがいいと感じていた」という。
(中略)
■「違憲、医学部入試と根は同じ」 ジェンダー平等を求める弁護士の会
 都立高校入試の男女別定員制は、憲法や教育基本法に違反する許されない性差別だ――。「都立高校入試のジェンダー平等を求める弁護士の会」が6月末、制度の廃止と、合否判定における男女格差の是正を求める意見書を公表した。同会のメンバーは2018年に発覚した複数の大学医学部入試での女性差別問題で、訴訟などに関わってきた。意見書では、男女別定員制について「能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利」を保障する憲法26条1項に反すると指摘。性別などによる教育上の差別を禁じた教育基本法にも反すると訴えている。また、日本も批准している女子差別撤廃条約は男女に「同一の試験」を保障することを求めているとしたうえで、男女別定員は、受験生個人に保障されている「自ら選んだ学校の入試で公正に評価される権利」の侵害にあたると指摘している。都立高入試は、男女別の定員を明示している点では医学部入試問題と異なるが、同会メンバーの山崎新弁護士(48)は「男女の合格最低点の差を明示せず、正確な情報を隠してきたという点で、東京都は入試の公正性についての説明義務を果たしているとは言えない。性別のみに着目した入試を長年行ってきたという意味で、医学部入試問題と根は同じ」と指摘する。私立校でも男女別定員があり、男女で倍率が異なる学校はあるが、山崎弁護士は「公立校は、憲法に適合し、男女の機会平等を担保しなければならないため、例えば『男女の人数は半々が良い』などの目的で現状のような男女格差を正当化することができない」と訴える。自身も都立高出身といい、「塾が出す偏差値分布では、当時から明らかに男女で差がある高校もあった。にもかかわらず制度が長年維持されてきたのは、多くの場合、不利益を受けるのが女子だったからだ」と指摘する。「根底には性差別への感度の鈍さがある。公正に評価され、能力に応じた教育を受ける個人の権利をないがしろにしてまで、『私立校との定員調整』といったシステムを維持する合理性はない」
◇フォーラムアンケートに寄せられた声の一部を紹介します。
●その後の人生にも影響
 共学と言っても大学は成績順で合否が決まるし、高校でも理系文系でクラスが分かれれば男女比が極端に異なるクラスもたくさんある。男女比を半々にしたいがために有能な子が不合格になり、希望する教育を受けられないのはおかしいと思う。その後の人生にも影響してしまうのでは。(東京都 30代女性)
●ステレオタイプ、目の当たりに
 数年前に大学受験をしました。知人の女性が国立の大学に不合格になり、その母親が「女の子だし私立で十分だ」と慰めるように言ったのを見て衝撃を受けました。また先日、中学生の女の子の親から勉強について相談を受けていたところ「女の子だから数学は苦手で」と言われました。どちらも言った当人に悪気のない慰めや擁護ですが、そのような言葉で子供の首を絞めている側面があるように思います。適当に作られたステレオタイプが実際に成績に影響する(ステレオタイプ脅威)という事実もあるそうです。大人によるこうした刷り込みをどうにか減らせれば、と願います。(東京都 20代男性)
■不利益の当事者、見えぬまま
 取材の過程で1990年の朝日新聞朝刊1面の記事を見て驚きました。30年以上前に、都の検討委員会が都立高校の男女別定員制度を撤廃するよう求める記事が載っていたからです。当時からこの制度が「男女平等」に反するという指摘があったにもかかわらず、議論が進まないのはなぜなのでしょうか。山崎新弁護士が「この議論が深まらないのは、当事者が見えないから」と指摘していました。合格最低点が明示されない今の制度では、性別で合否が分かれても受験生自身が知ることができません。合格最低点は東京都だけでなく、すべての都道府県で公表しておらず「ブラックボックス」となっています。公平な入試のために何ができるか、受験生目線で知恵を絞るべきではないでしょうか。

*6-2-2:https://www.hokkaido-np.co.jp/article/573482 (北海道新聞 2021/8/1) 教員免許更新制 廃止に併せ検証必要だ
 文部科学省は小中高校や幼稚園などの教員に10年ごとの講習を義務付ける「教員免許更新制」を廃止する方針を固めた。最新の知識や技能を習得する狙いだったが、多忙な現場の負担が一層増すなど数々の問題が当初から指摘されていた。講習の効果自体にも疑問符が付き、マイナス面ばかりが目立つ。廃止は当然である。2009年度に導入されたこの制度は、「教育再生」を掲げた第1次安倍政権の看板政策だった。現場の実態を十分に反映していない制度設計や運用は、政治主導が過ぎた面がなかったか。教員が研さんを積み技能を高める大切さは言うまでもない。文科省は廃止で済ませず、問題点を検証し今後に生かす責務がある。更新制は教員免許に10年の期限を設け、更新時に大学などで30時間以上の講習を受ける仕組みだ。教員は約3万円かかる講習費を自己負担し、受講するために長期休暇などのまとまった時間を割く必要があった。面積が広大な道内では移動や宿泊も重荷だった。文科省による現役教員の調査では、8割超が負担を感じ、6割弱が講習内容に不満を持っていた。講習の頻度が10年に1度では技能向上に結びつかない、各教育委員会による研修内容と重複する―といった現場の指摘も当初から上がっていた。もっと早く対応する必要があったのではないか。教員はいじめや不登校、さらにコロナ禍への対応に追われ、長時間労働を強いられている。免許更新の負担が加われば、教員志望者が減るのも無理はなかろう。導入前の論議では、指導力を欠く「不適格教員」の排除が強調され、現場の管理を強める安倍政権の意向が色濃く反映した。教育の実態に詳しい専門家の知見を軽んじる姿勢も顕著だった。それが今回の方針転換につながったことを忘れてはならない。文科省は来年の通常国会で廃止に必要な法改正を目指す。国会の論議を通じ、教訓を探るべきだ。教え子の未来を左右する教員の責任は極めて重い。教育者としての力や質を高める努力が常に求められる。ただ今回の経緯を踏まえれば、いたずらに制度を変えても実効性に乏しいのは明白だ。子どもの思いや悩みにじっくりと向き合い、学ぶ喜びが感じられるよう授業で創意工夫を重ねる。そんな人材を育てるため、文科省や各教委には働き方改革や研修の改善を進めてもらいたい。

<新型コロナへの対応から見た厚労省はじめ政府の問題点>
PS(2021年8月7日追加):*7-1のように、「①新型コロナ第5波の勢いが止まらず、染み出すように地方へと広がっている」「②『五輪を開催しながら外出自粛を求めるのは矛盾したメッセージになる』と専門家が指摘してきた」などとして五輪と結び付ける論調が多いが、①については、7月20日前後は夏休みが始まって学生が帰省する影響であり、②については、国民は五輪と外出自粛が矛盾したメッセージになるから戸惑うほど馬鹿ではなく、変異株を口実にしていつまでも人流を抑えることしかしない厚労省に愛層をつかしているのである。
 また、*7-2-1の「③首相は第5波による患者急増を受けて重症者以外は基本的に自宅療養の方針を8月2日に出し、病床逼迫の緩和を狙った」「④入院制限を巡って、急変を見逃すリスクが増すとして、知事や与野党から批判が続出した」「⑤政府は8月5日、新型コロナ患者の入院制限に関して、肺炎などの中等症で酸素吸入が不要でも、高リスクなら入院できると明確にした」については、③⑤は、医師が患者の状況から臨機応変に入院や治療の判断をするのが合理的で、入院・治療に医師以外の人が基準を設け、保健所が重症度の判断をするのは、そもそも医師法違反である。また、入院制限があると、④のように急変を見逃すリスクがあったり、必要な治療を行えなくなったりするので、医師も治療に責任を持てなくなる。そのため、病床逼迫していない地方自治体が同じにする必要はないし、1年半も“病床逼迫”と言い続けている厚労省と同専門家会議は国民に対して無責任極まりなく、これが国民が怒っている理由なのだ。
 さらに、*7-2-3のように、さっさとワクチンを接種してリスクの低くなった人から経済活動を始めればよいし、そのためには、感染リスクの高い職域の人には企業がワクチン接種を求めてよい。また、*7-2-2のように、抗体カクテル療法等の治療薬も早く承認し、ワクチン接種ができない人も安心できるようにすればよかったのに、これまで厚労省がやってきたことは、検査を十分に行わず、水際も不合理で、ワクチンや治療薬も承認せずに、まるで国民の身体で新型コロナウイルスを大切に培養しているかのように逆の対応が多かったのである。
 なお、*7-3のように、「⑥全国知事会が国への緊急提言をまとめて、ロックダウン(都市封鎖・強制的外出禁止・生活必需品以外店舗閉鎖措置)のような手法の検討を求めた」とのことだが、私は日本の感染状況なら水際対策を合理的にし、さっさとワクチンを接種し、治療薬を素早く承認して治療すれば、私権の制限は不要なくらいだったと考える。むしろ、故意にそれをやらず、国民の身体で新型コロナウイルスを培養してきたのは、私権の制限やロックダウンの可否を口実に憲法に緊急事態条項を入れたり、(詳しくは書かないが、そのうち表に出るのでわかる)特定の事柄を推し進めたりするのが目的だったようで、とても許せるものではないのだ。
 また、*7-4のように、米国の企業や州政府では「⑦職員に新型コロナワクチンの接種を義務づける動きが広がり、違反すれば解雇される場合もある」「⑧未接種者には週1~2回の検査やマスク着用を求める」とのことだが、取引相手・客・同僚などに迷惑をかけないため当然だ。日本で接種を急がせるとすれば、接種可能な希望者には接種できる体制が整ってからのことだが、例えば「11月以降の接種は、無料ではなく有料」にすればよいと思う。

 
   2021.7.7NHK       2021.8.5琉球新報     2020.8.19日経新聞

    
          2021.8.6日経新聞     2021.7.6毎日新聞 2021.6.26日経新聞

(図の説明:上の段の左図のように、人口100万人あたりの新型コロナ感染者数は沖縄県が最高だが、下の段の1番左と左から2番目の図のように、全世代のワクチン1回接種率も沖縄県が47都道府県中最下位で、ワクチンの効果は明らかである。また、下の段の右から2番目の図のように、英国とフランスは感染者数が一時的に増加したが、死者数は一貫して減っており、ここでもワクチンの効果が明らかで、1番右の図のように、ワクチン接種によって入国条件を緩和する国が増えたが、これは科学的合理性がある。しかし、日本政府は、必要なことは行わずに入院制限や私権制限を行おうとするばかりで、先進国とは言えない。そして、上の段の中央の図のように、重症か中等症かで入院制限をしているが、医師でもない人がわけもわからず勝手な基準を作って医療行為の可否を決めるのは医師法違反である上に国民皆保険に反する。また、上の段の右図のように、重傷者の定義も常識からかけ離れており、1年半も何をやっていたのかと思う)

*7-1:https://news.yahoo.co.jp/articles/e741ddbcf183aafe6bd5f889864b3b3ba17e6f33 (朝日新聞 2021/8/4) 勢い止まらぬ「第5波」 お盆を待たず地方にも急拡大
 新型コロナウイルスの「第5波」の勢いが止まらない。五輪が開催される中、感染が東京など都市部だけでなく、染み出すように地方へと広がる――。専門家が懸念していた状況が現実になっている。人の移動が活発になるお盆の時期を前に、さらなる全国的な感染拡大への懸念が高まっている。朝日新聞の集計では、人口10万人あたりの1週間の感染者数をみると、4連休直前の7月19日には、最も深刻なステージ4(25人以上)は東京、神奈川、千葉、沖縄の4都県。ステージ3(15人以上)も埼玉、石川、鳥取、大阪の4府県だった。それが連休明け直後の25日には、埼玉や大阪はステージ4に。茨城や京都も新たにステージ3になった。今月3日時点でみると、ステージ4に茨城、栃木、群馬などの北関東の各県や、京都、兵庫などの関西圏、福岡などが加わって計23都道府県に拡大。ステージ3はこれらの隣接県を中心に8県となり、全国的に感染者数は増え続けている。昨年末には東京で感染者が増え、帰省の影響もあって年明けから全国に拡大した。第5波でも、お盆で感染が全国に拡大することが心配されていたが、それよりも前にすでに拡大している形だ。五輪を開催する一方で、外出自粛を求めることが「矛盾したメッセージ」になると専門家は指摘してきた。実際、繁華街の人出はこれまでの宣言時に比べても減り方が鈍い。

*7-2-1:https://ryukyushimpo.jp/kyodo/entry-1369431.html (琉球新報 2021年8月5日) 中等症、高リスクなら入院 政府、説明内容を修正
 政府は5日、新型コロナウイルス患者の入院制限に関し、自治体に示した説明内容を修正した。肺炎などの中等症で酸素吸入が不要でも、高リスクなら入院できると明確にした。菅義偉首相は、入院制限を行うかどうかは自治体の判断とした。首相は感染「第5波」による患者急増を受け、重症者以外は基本的に自宅療養との方針を2日に打ち出し、病床逼迫の緩和を狙ったが、与党からも反発。わずか3日で説明の見直しに追い込まれた。入院制限を巡っては、重症手前の中等症で自宅療養する人が増え、急変を見逃すリスクが増すとして、知事や与野党から批判が続出。与党が撤回を求めたが、首相は拒否した。

*7-2-2:https://www.tokyo-np.co.jp/article/120971 (東京新聞 2021年8月1日) <新型コロナ>抗体カクテル療法 墨田区がスタート
 墨田区内四カ所の医療機関で、新型コロナウイルスの新たな治療「抗体カクテル療法」が始まった。基礎疾患のある軽症者や中等症の患者向けで、重症化を防ぐ効果があるとされている。区は独自に、この療法を受けられる区民向けの入院枠計二十床を確保した。政府が特例承認した抗体カクテル療法は、二種類の抗体を組み合わせて点滴投与する。海外の臨床試験では、入院や死亡のリスクを七割減らす効果があるとされた。区内では、都立墨東病院(江東橋四)などで七月二十七日から順次、治療をスタートした。
     ◇ 
 墨田区によると、六月以降、区内高齢者施設でクラスターは起きていない。七月からは六十五歳以上の高齢者の重症者はゼロだ。西塚所長は「命を守るワクチンの効果は出ている」と手応えを語る。区は集団接種会場として、仕事帰りに利用できる駅近くのホテルなどを平日夜間や週末に活用。金曜日の七月三十日夜、錦糸町駅に近い「東武ホテルレバント東京」(錦糸一)では、シャンデリアのきらめく宴会場で約四百人が接種を受けた。会社員の渋江みのりさん(23)は「夜までやってくれて助かる。快適な会場でスムーズに受けられて驚いた」と話した。

*7-2-3:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20210804&ng=DGKKZO74484910U1A800C2MM0000 (日経新聞 2021.8.4) NY市、接種証明義務付け 飲食やジム利用で米国初、接種率向上目指す
 二ューヨーク市のデブラシオ市長は3日、同市内のレストランやバー、スポーツジムなどの屋内施設を利用する顧客や従業員に新型コロナウイルスのワクチン接種証明の提示を義務付けると発表した。全米の都市で初めて。ワクチンの接種拒否層に対する圧力が広がっている。接種証明の義務付けは8月16日から段階的に導入し、9月13日には全面実施する。デブラシオ市長は3日の記者会見で「ワクチン接種は健康で充実した生活を送るためには必要だ」と述べた。新たに接種証明パスを発行する計画を示した。同市長はすでに警察官や教員を含む市職員にワクチン接種を義務付ける方針を示した。市の成人の66%はワクチン接種を完了したが、接種率は伸び悩む。接種を加速するため、接種者に100ドル(約1万1000円)支払う取り組みも始めた。民間も独自に接種証明書を求める。ニューヨークを拠点に高級レストランやバーを展開するユニオン・スクエア・ホスピタリティー・グループは、9月7日から店内の飲食客にワクチン接種証明書の提示を求める。提示がない場合は「屋外の座席で飲食はできるが店内には通さない」という。
●社員に接種要求
 大手企業ではグーグルやフェイスブックなどが従業員にワクチン接種を求める。米メディアは3日、マイクロソフトが9月から米国内のオフィスで従業員にワクチン接種を求めると報じた。米食肉大手タイソンフーズも3日、全従業員のワクチン接種を義務付けると発表。従業員の半分以上が未接種といい、現場で働く接種者には200ドルを出す。アワー・ワールド・イン・データによると、米国の新規感染者数(7日移動平均)は2日に8万5千人を超え、およそ5カ月半ぶりの高水準となった。感染力の強いインド型(デルタ型)が全体の8割超を占めるなか、ワクチン接種率の低い南部州などで感染拡大が顕著となっている。デルタ型の感染リスクが懸念され、接種ペースはじわりと回復する。1日あたりの接種回数(7日移動平均)は2日時点で67万回となり、50万回まで落ち込んだ7月上旬から増えた。それでもピークだった4月の338万回に比べると5分の1程度にとどまる。(以下略)

*7-3:https://www.shinmai.co.jp/news/article/CNTS2021080300105 (信濃毎日新聞社説 2021/8/3) 知事会緊急提言 ロックダウンは危うい
 新型コロナの流行第5波を受け、全国知事会が国への緊急提言をまとめた。感染対策、検査・医療体制、事業者支援と雇用対策、ワクチン接種などについて計91項目に及ぶ。国民に対しても、夏の帰省や旅行の中止や延期を求めた。第5波は、緊急事態宣言下で五輪を開く東京から一気に地方へ波及し、各地で急拡大が続く。政府は、宣言対象地域の拡大で対応している。効果は乏しく、危機感を共有できる国民への強いメッセージも打ち出せていない。緊急提言は、政府へのいら立ちや不信、悪化する足元の感染状況への焦りが、形になったと言える。政府は知事たちの危機感をきちんと受け止めるべきだ。一方、知事会が提言の中で「ロックダウンのような手法」の検討を求めた点は、人権や自由との兼ね合いから問題がある。ロックダウンは、都市を封鎖したり、強制的に外出禁止や生活必需品以外の店舗の閉鎖をしたりする措置だ。人出を抑えるには有効だが、経済への影響は大きい。欧米を中心に多くの国や地域が踏み切ったものの、感染封じ込めに成功したとは言い難い。昨年3月から断続的にロックダウンを行いワクチン接種も進めた英国では、ほぼ規制が解除された先月27日時点でも1日の新規感染者が2万人を超えている。他の国でも、感染力が強いデルタ株がまん延する中、減少につながらなかったり、解除するとすぐに増加に転じたりしている。ロックダウンを強いられたために家庭内で女性や子どもへの暴力が増え、被害者支援が受けられない事態も起きている。外出禁止を理由に、集会やデモを取り締まる国もある。日本には、強制的な外出禁止を定めた法規定がない。営業や移動の自由を保障する憲法に抵触する恐れがあるからだ。ロックダウンの法整備を求めることは、改憲への誘い水になりかねない。新型コロナに対応する特別措置法も「権利制限は必要最小限でなければならない」と定める。措置を強める前に、やるべきことがあるのではないか。いつでも誰でも何回でも受けられる検査体制は構築できたか。陽性者を一般の生活から離し確実に医療につなげているか。国も地方も不断の検証と見直しが要る。住民と行政に信頼関係がなければ、どんな対策も効果は期待できない。不信が飛び交う中でロックダウンを口にするのは危うい。

*7-4:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20210807&ng=DGKKZO74611080X00C21A8MM0000 (日経新聞 2021.8.7) 米、接種義務相次ぐ 企業・州政府、違反なら解雇も
 米国の企業や州政府で職員に新型コロナウイルスのワクチン接種を義務づける動きが広がってきた。違反すれば解雇される場合もある。インド型(デルタ型)の感染が止まらないためだ。米ユナイテッド航空は6日、全米の拠点に所属するすべての従業員に接種を義務づけると通知した。全米の大手航空会社で初めての試み。「全員が接種すれば全員がより安全になる」。スコット・カービー最高経営責任者(CEO)は従業員への手紙で利点を強調した。米食肉大手タイソンフーズは3日、全従業員に完全な接種を義務づける方針を発表した。マイクロソフトも9月から、従業員や取引先などが職場に入る際に接種証明の提示を求める。グーグルやフェイスブックなども出社する従業員に義務づける方針だ。米CNNは6日までに、未接種のまま出社した従業員3人を解雇した。州政府でも接種の義務づけが相次ぐ。ハワイ州や南部バージニア州などは5日、州の職員に接種証明を求めると発表した。未接種者には毎週のコロナ検査を課す。ハワイ州の場合、接種を受けない場合の解雇も辞さない。バイデン大統領も7月末、連邦政府職員に接種状況の開示を義務づけると発表した。未接種者には週1~2回の検査やマスク着用を求める。連邦政府の取引企業にも同様の措置を求めている。

<五輪を見て思ったこと>
PS(2021年8月10、13日):*8-1のように、菅首相が、東京五輪について「開催国としての責任を果たし、無事に終えることができた」と言われたのはそのとおりで、五輪を誘致しておいて途中で投げ出すのは無責任すぎるので、無観客開催で高揚感や経済効果が落ちたのは残念だったが、中止するよりはずっとよかったと思う。
 私は、*8-3のうち、開会式・閉会式・男女体操決勝・新体操決勝・アーティスティックスウィミング・100m決勝・男子マラソン後半・マラソンスウィミングなどを見たが、100m決勝や男子マラソンでは国籍が違ってもアフリカにルーツを持つ選手が細くて長い足で快走するのに感心し、女子体操・新体操・アーティスティックスウィミングは、旧ソ連系と中国選手の技術の高さと美しさに感心した。日本選手も頑張っていたが。
 また、マラソンスウィミングも見たのだが、*8-2のように、水質汚染で薄いカレー汁のような色をして、私なら足もつけたくないくらい汚かった。この場所は、前から、i)悪臭が報告され ii)大腸菌の濃度を懸念する場所で iii)大雨が降ると大量の未処理下水道排水が流れこんでトイレ臭を放っていたため、東京都は、iv)水質改善のために神津島の砂を海中投入し v)大腸菌を防ぐためのポリエステル製のスクリーンを設置し vi)降雨時の流出水を貯める新しい貯水タンクを設置して湾内に放出する前に処理できるようにした のだそうだが、あれは汚染水の色だった。そのため、フォックススポーツ・オーストラリアが「排泄物の中で泳ぐ。オリンピック会場で下水漏れの恐れ」という見出しで水質汚染と悪臭問題を報じたり、ブルームバーグ誌が東京湾の水質問題を「it stinks」と報じたりしたのも理解でき、これを「人工ビーチがあり、レインボーブリッジを眺める景観が最高」と表現する人は、自然の美しい海岸を見たことのない人だと思う。なお、iv) v) vi)の東京都の水質改善対策は大した効果のなさそうな弥縫策であるため、このような場所で2時間前後も泳がせることは、新型コロナが流行している今はなおさら不潔で、選手に失礼である上に人権侵害も心配された。そのため、東京都の下水処理システムを最新のものに変更して東京湾を清潔な海にすることは、東京湾の環境や漁業に不可欠である。
 なお、*8-4にも書かれているとおり、東京五輪は開会式だけでなく閉会式も芸術性が乏しくお粗末だった。大竹しのぶは灰色のセンスの悪いスタイルで昭和の格好の子供たちと何かをしていたが、私も「ここで、大竹しのぶ?」と思ったので、芝生でイベントを見ていた外国人選手たちが続々と引き揚げたのも理解できる。一方、*8-5のように、次の開催地パリからのライブ中継は、マクロン大統領も登場し、仏空軍のアクロバットチームがスモークで空にフランス国旗を描き、BMXに乗った若者が競技施設の屋根や名所を走る映像が流れて見応えがあった。また、ワクチン接種証明書か陰性証明書の提出を義務付け、イベルメクチン等の治療薬を承認していれば“密”になってもかまわないため、日本国民が中止や無観客五輪ばかりを主張し、バッハ会長の“銀ブラ”にまでケチをつけるような非科学的“空気”を作っていることには呆れるほかない。
 *8-6も、「①バッハ会長の銀座散歩は、IOCファーストに映った」「②新型コロナ感染対策規則集『プレーブック』によって柔道ジョージア代表の2人が東京タワー等を観光した際は参加資格剥奪された」「③政府は『大会関係者は入国後14日間は行動範囲が限定されるが、その後は制約がない』として、バッハ会長の行動を問題視しなかった」「④大会序盤の7月26日に、バッハ会長が笑顔で話しかけた視線の先には阿部兄妹がいて、マスクはつけていたものの、距離は1メートル以内と近かった」と記載している。
 しかし、②③は、ワクチン接種済なら選手やIOC関係者は入国後14日間の自粛も不要であるのに、14日間行動範囲を限定したり、ワクチン接種済選手家族の観戦を認めなかったりする規制の方が過剰なのである。ただ、ジョージア代表の2人の選手が東京に関心を持ってくれ、被感染リスクを犯しても街に出たいと思ってくれたことは有難いものの、街に出ると重症にならないまでも感染する可能性はあるため、ワクチン接種をしていない人もいると思われる他の選手に競技中に感染させて迷惑をかける可能性はある。従って、ワクチン接種済で入国後14日経過後のバッハ会長が、①のように、大会終了後に“銀ブラ”をしたり、④のように、ワクチン接種済の選手にマスクなしで話しかけたりしても何の問題もない。それどころか、このようなことに対して、“IOCファースト”とか変な“公平性”を持ちだして他人に不自由を強いたり、足をひっぱったりしたいと考える心を持つことこそ重症の心の病で、外国人差別でもあり、教育の問題である。


             日刊スポーツ              2021.8.8daily
(図の説明:1番左の図は、大竹しのぶと子どもたち、左から2番目の図が男声ソプラノ《!?》によるオリンピック賛歌だが、いずれもミスキャストでレベルの低い出し物だった。右から2番目の図は、東京音頭による盆踊りで少しは明るくなったものの豪華さはない。さらに1番右は、途中で退場する外国人選手たちだ)

*8-1:https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA091130Z00C21A8000000/ (日経新聞 2021年8月9日) 五輪閉幕、首相「開催国の責任果たした」 国民に謝意
 菅義偉首相は9日、長崎市内で記者会見し、8日に閉幕した東京五輪について「開催国としての責任を果たし、無事に終えることができた」と評価した。「国民の理解と協力のたまものだ。心から感謝申し上げたい」と謝意を示した。新型コロナウイルスの感染拡大による1年の延期で「様々な制約の下での大会となった」と振り返った。感染対策は「海外から『厳し過ぎる』という声もあったが、『日本だからできた』と評価する声も聞かれた」と説明した。「選手のみなさんは大活躍だった。素晴らしい大会になった」と強調した。大会関係者や医療従事者、ボランティアにも賛辞を送った。首相は9日、首相官邸のツイッターにビデオメッセージを投稿した。すべての選手に「大きな拍手を送りたい」とたたえた。「夢や希望、感動を子ども、若者、世界の人々に届けてくれたことは何ものにも代えがたい未来への財産になった」と訴えた。

*8-2:https://news.yahoo.co.jp/articles/42e2b7d0eccbf2bb31db3c3673ee4cf3f8620f16 (Yahoo 2021/7/20) 東京五輪のお台場会場の水質汚染と“トイレ臭”問題も海外に波紋…「排泄物の中を泳ぐ」「大腸菌濃度レベルが上昇」
  「選手村」での新型コロナウイルス感染や猛暑問題など3日後に開会式を控えた東京五輪に次から次へと懸念すべき問題が浮上しているが、今度はトライアスロンやオープンウォータースイミングなどの会場となっている、お台場海浜公園の水質汚染問題が海外に波紋を広げている。フォックススポーツ・オーストラリアのホームページは「排泄物のなかで泳ぐ。オリンピック会場で下水漏れの恐れ」という強烈な見出しで水質汚染と悪臭問題について報じている。「暑さもさることながら、オリンピックのオープンウォータースイミングやトライアスロンの選手たちが最も心配しているのは、東京湾の水質に懸念がある“臭い湾”だ。トライアスロンやオープンウォータースイミングの会場では、悪臭が報告されており、大腸菌の濃度レベルが上昇していることが懸念されている」としている。お台場海浜公園は、綺麗な砂浜の人工ビーチがあり、レインボーブリッジを眺める景観は最高だが、大雨が降ると、大量の未処理の下水道排水がここに流れこみ、強烈なトイレ臭を放つ。2019年にトライアスロンと、パラトライアスロン、オープンウォータースイミングのプレ大会が開催されたが、選手からは「臭い」とのクレームが続出。パラトライアスロンのスイムは基準以上の大腸菌が検出され中止になっていた。東京都は水質を改善するために伊豆諸島の神津島の大量の砂を海中に投入し、大腸菌を防ぐためにポリエステル製のスクリーンを設置。降雨時の流出水を貯めるための新しい貯水タンクを設置して湾内に放出する前に処理できるようにした。様々な対策は講じてきたが大雨が降ると未処理水を放水せざるを得ないようで、根本的な解決にはなっていない。記事では、それも踏まえて「東京では7月27日から大雨が予想されており、東京湾へ下水が流入する危険性が高まっている」と不安視している。ちなみにトライアスロンは26、27、31日に開催され、マラソンスイミングは8月4、5日に行われる。オーストラリアのトライアスロンチームは1日に2回、自ら水質検査をし、対策を練っており「チームは独自の戦略を準備している」という。ブルームバーグ誌もトライアスロンやオープンウォータースイミングの会場である東京湾の水質問題を報じており、ブルームバーグのレポートは、「it stinks (臭い)」というたった2つの言葉に、今回の問題を集約した。同誌は「問題は単に湾内の水が臭うということではない。これは、東京都が合流式下水道を採用していることが原因だ。合流式下水道とは、雨水と汚水の排水を分離せずに合流させる方式である。ほとんどの場合、このシステムはうまく機能するが、しかし、東京は台風や洪水の影響を受けやすい地域であり、排水システムはすぐに負荷がかかる」と原因を分析。東京都の水質改善の対策を紹介した上で「数週間前から不快な匂いを放っている」と、大会直前になっても改善されていない悪臭と、大会期間中の雨によってさらに状況が悪化することを懸念している。

*8-3:https://digital.asahi.com/articles/ASP8B5W9QP8BUCVL010.html?iref=com_tokyo2020_news_list_n (朝日新聞 2021年8月10日) 五輪閉会式、推計4700万人見た 視聴率最高の競技は
 ビデオリサーチは10日、NHK総合が8日に中継した東京オリンピック(五輪)閉会式の前半(午後7時58分開始)の平均世帯視聴率(速報値、以下同)が関東地区で46・7%だったと公表した。他地区は関西41・3%、名古屋40・7%、北部九州で41・5%だった。関東地区の個人視聴率は31・5%だった。全国32地区分のデータをもとにした同社の推計では、全国で4699万7千人がこの中継をリアルタイムで視聴したという。ニュースを挟んだ閉会式後半(午後9時23分開始)の世帯視聴率は関東地区で39・8%だった。競技を中継した番組で世帯視聴率(関東地区)が高かったのは▽日本が米国に勝って金メダルを獲得した野球男子決勝の後半部分(7日、NHK総合)=37・0%▽大迫傑(すぐる)選手が6位入賞した男子マラソンの後半部分(8日、同)=31・4%▽日本が延長の末スペインに敗れたサッカー男子準決勝(3日、日本テレビ)=30・8%。
東京五輪で番組平均視聴率が高かったのは
※左から内容(放送日・放送局)、世帯視聴率、個人視聴率
①開会式(7月23日・NHK) 56.4% 40.0%
②閉会式(8月8日・NHK) 46.7% 31.5%
③野球男子決勝 日本×米国の後半部分(8月7日・NHK) 37.0% 23.5%
④男子マラソンの後半部分(8月8日・NHK) 31.4% 17.7%
⑤サッカー男子準決勝 日本×スペイン(8月3日・日本テレビ) 30.8% 19.6%
⑥サッカー男子準々決勝 日本×ニュージーランドの後半~PK戦 (7月31日・NHK) 26.9% 17.0%
⑦卓球女子団体決勝 日本×中国の前半部分(8月5日・NHK) 26.3% 16.4%
⑧野球男子準決勝 日本×韓国の後半部分(8月4日・NHK) 26.2% 15.9%
⑨サッカー男子1次ラウンド 日本×南アフリカの後半(7月22日・NHK) 25.1% 15.9%
⑩卓球混合ダブルス決勝~表彰式(7月26日・フジテレビ) 24.6% 15.7%
(ビデオリサーチの関東地区の速報値をもとに作成。世帯視聴率はチャンネルを合わせた世帯の、個人視聴率は見た人の割合。競技が連続した複数番組にわたる場合は視聴率の高い方のみを記載)

*8-4:https://news.nifty.com/article/entame/showbizd/12136-1191509/ (日刊ゲンダイ 2021年8月10日) 大竹しのぶは“貧乏クジ”を引かされた…五輪閉会式で大トリも演出ドッチラケで評価散々
 「まるで葬式」と海外メディアに報じられた東京五輪開会式よりも、評価が低いともっぱらなのが閉会式だった。とりわけ大竹しのぶ(64)が合唱団の子供たちと宮沢賢治の「星めぐりの歌」を歌い、聖火台の火が消えるのを見守る大トリのフィナーレはドッチラケで、「なぜ大竹しのぶだったのか」「大女優に恥をかかせた」などとSNSでの評価は散々である。「会場は暗くシーンとして、芝生でイベントを見ていた外国人選手たちも続々と引き揚げていった。彼らも楽しもうとしていたはずですが、出演者も演出も意図も、何が何だか分からなかったのだと思います」(スポーツ紙デスク)。それはお茶の間で式典を見ていた視聴者も全く同じ。組織委によると閉会式のコンセプトは「Worlds we share」。エグゼクティブプロデューサーでスポーツマネジメント会社経営の日置貴之氏(46)は日刊スポーツに対しこう語っていた。「大会の基本コンセプトに『ダイバーシティー&インクルージョン(多様性と調和)』とある。それを考え開閉会式をつくってきた。僕が大事にすべきは、みんながそれを言える、理解する開閉会式」。東京五輪招致の際のコンセプトだった「復興五輪」については「省いたつもりはない。演出には復興の観点もあり、1ミリも忘れていない」とし、東北・復興へのメッセージは「見てもらえば分かる」と胸を張ったそうだ。で、なぜ大竹しのぶだったのか。某ベテラン広告プロデューサーはこう言う。「芸能界の大御所で、選考で名前を挙げれば誰からもケチがつかなかったでしょうし、次の五輪のパリは芸術の都ですから、大竹さんのアートな雰囲気もぴったり。閉会式でmilet(ミレイ)の歌ったエディット・ピアフの『愛の讃歌』は大竹さんも舞台などで歌われているし、何より反戦護憲派で、容姿侮辱や凄惨ないじめ喧伝、ホロコーストをネタにするような過去もありませんからね。また、夜10時すぎに子供を登場させるのは本当はアウトなのですが、その母親、理解ある保護者役のイメージも大竹さんに託したかったのかもしれません」。だが、五輪担当記者はこう言って、首をかしげた。「事実、いわゆる『身体検査』は念入りだったと思います。とはいえ、大竹さんの出演は唐突だったし、復興五輪を印象付けるためでしょうが岩手生まれの宮沢賢治の合唱は安直だったのではという意見が現場ではほとんどでした」。いずれにしても、こうした後ろ向きな基準で閉会式の演出プランが練られていたとすれば残念な限りである。前出のプロデューサーはこうも言う。「今回の東京大会も仕切った電通の担当者たちは電通の中でも特権階級でIOCのバッハ会長が接待されれば、自分たちも同じように優遇されて当然てなものです。世論などどこ吹く風どころか、完全に見下していますから。今回の閉会式も素晴らしい出来だったと自画自賛していて不思議じゃない。だからバッハ会長は大会が終わるやコロナ禍の中、堂々と“銀ブラ”なんかしてるんですよ」。大竹は9日、自身のインスタグラムを更新。「私自身、今この時の開催に、全く疑問が無かったわけではありません」と複雑な心境を打ち明けながらも「制作側のお話を聞いた上で考え、選手の皆さんの5年間を想い、明日に繋がる力になればと舞台に立ちました」と閉会式を振り返った。誰が何をやっても批判されるのは承知の上とはいえ、貧乏クジを引かされた気分だろう。

*8-5:https://www.sponichi.co.jp/entertainment/news/2021/08/08/kiji/20210808s00041000661000c.html (スポニチ 2021年8月8日) 東京五輪閉会式 中継のパリ会場は“めっちゃ密”…ネット驚き「過去の動画かと」「同じ世界なのか」
 東京五輪は8日、17日間の全日程を終え、無観客の東京・国立競技場で閉会式が行われた。式の終盤では小池百合子東京都知事からパリのアンヌ・イダルゴ市長へ五輪旗渡されるなど、次の開催地への「引き継ぎ式」が行われた。式では東京とパリを一部ライブ中継でつなぐ演出が行われ、エマニュエル・マクロン大統領らが登場。仏空軍のアクロバットチーム「パトルイユ・ド・フランス」が大空を飛び、セーヌ川、エッフェル塔など美しい街並みをバックにトリコロールのスモークを空に描いた。BMXに乗った若者が競技施設や名所から魅力をアピールする映像も流れた。パリのエッフェル塔近くの特設会場にはフランス国旗を手にした大勢の人々が詰めかけて「密」の状態。無観客の東京とは正反対の映像にネット上では驚きの声が続出し、「人多すぎて過去の動画かと思った」「もはや突き抜けてて凄い」「同じコロナ禍の世界とは思えない」「パリってこれ生中継なの?」「パリ、めっちゃ密だけど大丈夫?」「めっちゃマスク無しで密」「めっちゃ密で盛り上がってるパリの映像見ると、なんともいえん気持ちになる」などの声が上がっていた。

*8-6:https://mainichi.jp/articles/20210812/k00/00m/050/181000c?cx_fm=mailasa&cx_ml=article&cx_mdate=20210813 (毎日新聞 2021.8.12) IOC、選手家族の観戦認めず バッハ会長は視察ざんまい
 東京オリンピックは主催者の国際オリンピック委員会(IOC)のためにあるのか。そう言いたくなるトーマス・バッハ会長の行動だった。大会期間中、IOCファーストに映る場面はいくつもあった。極めつきは閉幕翌日の9日、東京・銀座の散歩だろう。ポロシャツ姿のバッハ会長は午後4時過ぎ、警護がつく中で銀座を散策した。政府はこの行動を問題視しなかった。新型コロナウイルスの感染対策をまとめた規則集「プレーブック」で選手は厳しい制限下にあった。柔道ジョージア代表の2人が東京タワーなどを観光した際は、参加資格証を剥奪されている。一方、大会関係者は入国後14日間、行動範囲が限定され公共交通機関の不使用などが求められるが、それを経過すれば行動に制約はない。7月8日に入国したバッハ会長は行動制限の対象に該当しないというのだ。大会序盤の7月26日、柔道の競技会場となった日本武道館で、バッハ会長は上機嫌だった。笑顔で話しかけた視線の先には、前日に金メダルを獲得した男子66キロ級の阿部一二三、妹で女子52キロ級の阿部詩のきょうだい。関係者席で大野将平が2連覇を果たした男子73キロ級を一緒に観戦した。マスクはつけていたものの、距離は1メートル以内と近かった。(以下略)

| 環境::2015.5~ | 01:08 PM | comments (x) | trackback (x) |
2021.7.8~19 国家100年の計どころか30年の計がやっとできた日本 ← それでは他国を見て真似することしかできず、一見バランスの良い予算を作ってそれを消化することが目的になり、矛盾する政策も多いこと (2021年7月20、21日に追加あり)

 2021.7.2日経新聞 2021.7.7NHK   2021.7.8朝日新聞   2021.6.2東京新聞
 *4-1-2より
(図の説明:1番左の図は「人口100万人当たり新型コロナ死者数の推移」で、日本は欧米に比べて著しく低いが、近くの韓国より高い。また、欧米・韓国は治療薬とワクチンで感染を抑え込み、日本はこれをやらなかったので、また山ができている。さらに、左から2番目の図のように、人口10万人当たり療養者数が30人以上になると医療が逼迫すると言ったり、機能不全になると言ったりするのも異常で、右から2番目の図のように、病床使用率20%代をステージ3として五輪を無観客にしているのだから、何を考えているのかと思う。なお、1番右の図のように、職域接種が進み始めるとワクチンが足りないと言って接種を停止しており、政府の過失《もしくは故意》にも程があるのだ)

(1)国家100年の計
1)中国、習近平総書記の演説にはあった国家100年の計
 中国共産党の習近平総書記が、7月1日、*1-1のように、北京市天安門広場で党創立100年記念式典の演説を行われた。私は、中国が改革開放を始めた1990年代に公認会計士・税理士として中国進出企業の監査・国際税務・ODA等で関わっていたため、中国が1990年代に生産で遅れていた理由と、それを克服した経緯を一部ではあるが知っている。そのため、習近平総書記の演説について気がついたことを指摘する。

イ) 国家100年の計について
 国家100年の計について、習総書記は、「①中国は、後進的な状態から世界第2位の経済大国へと歴史的な躍進を達成し、それは共産党主導で実現させた」「②全党と全国各民族人民による持続的な奮闘で、党創立最初の100年に掲げた目標を実現し、この地に『小康社会』を築き上げ、絶対的な貧困問題を歴史的に解決し、社会主義現代化強国の全面的な実現という次の100年の奮闘目標に向けて邁進している」とされている。

 しかし、中国を名目GDP世界第2位の経済大国にしたのは、鄧小平(1920~1926年にパリ留学)が1978年12月に改革開放路線に転換したからで、鄧小平路線の特徴は、i)経済優先 ii)不均等発展の容認 iii)社会主義体制外の改革先行方式 iv)市場経済の積極的導入 等であり、これら社会主義市場経済体制が中国の経済発展を作った。また、鄧小平氏は1980年代には政治体制改革の必要性も説いていたが、1989年の天安門事件後に政治体制改革を放棄したそうだ。

 なお、習総書記は、「③中国共産党は誕生当初から、中国人民に幸福をもたらし、中華民族の復興をもたらすことを使命と決めており、この100年、中国共産党が中国人民を束ね率いた全ての奮闘、全ての犠牲、全ての創造は中華民族の偉大な復興を実現するという一つのテーマに帰結する」とされており、使命に関する理念は立派だと思うが、共産主義の必要性があったかどうかは疑問である。

 何故なら、日本は自由主義でも太平洋戦争後の廃墟から約20年で立ち直り、復興期の私の両親の働く姿と1980~1990年代の中国の若者の働く姿がよく似ていたため、中国は大国であるため広くてまとめにくくはあるだろうが、むしろ共産主義体制をとったことで経済発展が30年遅れたように思うからである。

ロ)中華民族の歴史
 中華民族の歴史については、「④中国共産党と中国人民の勇敢で強固な奮闘で、中華民族が搾取され、辱めを受けた時代は過ぎ去ったことを世界に宣言する」「⑤私たちは社会主義革命を進め、中国で数千年にわたって続いていた封建的な搾取と圧迫の制度を消滅させ、中華民族の有史以来、最も広く深い社会変革を実現した」とされている。

 確かに④⑤のように、中国共産党が列国の支配から中華民族を解放し、深い社会変革を実現したのかもしれないが、私は(他国の実情はよくわからないものの)、蒋介石が中国に自由主義経済を作っていれば、停滞の30年もなかったかもしれないと思う。

ハ)社会主義について
 習総書記は、社会主義について、「⑥中国を救い発展させられるのは中国の特色ある社会主義だけだ」「⑦揺るぎなく改革開放を推進し、計画経済体制から活力に満ちた社会主義市場経済体制への歴史的転換を実現した」「⑧改革開放こそが現代中国の前途と運命を決める鍵となる一手であり、中国が大股で時代に追いついた」「⑨100年前、中国共産党の先駆者たちは、真理を堅持し、理想を守り、初心を実行し、使命を担い、犠牲を恐れず、勇敢に戦い、党に忠誠心を持ち、人民に背かない、偉大な建党精神をつくり上げ、これが中国共産党の精神の源」とされているが、⑧の改革開放や社会主義市場経済体制は、本当は社会主義でも共産主義でもない。そして、中国は市場主義経済に移行して後、大股で時代に追いついたのである。

 東西冷戦後、社会主義体制だった国に関与して私がつくづく思ったことは、自由主義市場経済体制における自由競争こそが工夫と発展を産み、国の経済発展の原動力になるということだった。そのため、私は、経済で儲けさえすればよいという近視眼的な自由ではなく、理念とセーフティネットを持った進化した自由競争が必要だと考えている。

二)中国の今後について
 習総書記は、「⑩2012年の第18回党大会以降、我々は経済一辺倒ではなく政治・文化・社会・環境保護の一体的な発展を重視する『五位一体』体制を見据えて推進した」「⑪中国の革命、建設、改革、中国共産党の創立と強化、発展のために大いに貢献した毛沢東・周恩来・劉少奇・朱徳・鄧小平・陳雲といった同志ら上の世代の革命家を深く忍ぶ」「⑫中国共産党の100年の奮闘から過去に私たちが成功できた理由を見て、未来にどうやって成功を続けられるか明らかにし、それによって新しい道で揺るぎなく、初心の使命を心に刻み、美しい未来を切り開かねばならない」「⑬中国のことをうまくやるために、カギとなるのは党だ」「⑭中国の特色のある社会主義はなぜ良いのか、それはマルクス主義によるものだ」としておられる。

 ⑩については、尤もだ。また、習総書記が共産党の党大会でされた演説なので、⑪⑫⑬⑭を言うのも当然だが、ロ)に書いたように、マルクス主義は競争を廃して人々の工夫をやめさせるため、技術が進歩・発展することは少なかった。これが、人間の欲求を動機づけとして活用しないマルクス主義の国すべてに起こった停滞という歴史的事実である。

 それでは、何故、中国は改革開放後、名目GDPが世界第2位の経済大国まで発展できたのかといえば、第1に、欧米や日本など外国に見本があったため、それを目標にして一丸となって進むには共産主義体制下での強力な管理体制が有効だったからだ。また、第2に、(科挙のように)海外も含む有能な研究者を厚遇で集めて付加価値を上げる努力をし、世界の研究者を集めて学会を開き、世界の優良企業を誘致して、世界の知を積極的に受け入れたことが大きい。

 ただ、第3に、購買力平価によるGDP総額は、2020年に中国が世界第1位、米国が第2位になっているが、同じ購買力平価による1人当たりGDP(分配の仕方にもよるが、国民1人1人の豊かさの指標)は、2020年に中国は世界73位(同米国7位、日本28位)であり、これは中国は人口が多く物価が安いために起こったことである(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%90%84%E5%9B%BD%E3%81%AE%E4%B8%80%E4%BA%BA%E5%BD%93%E3%81%9F%E3%82%8A%E5%AE%9F%E8%B3%AAGDP%E3%83%AA%E3%82%B9%E3%83%88 、 http://www.iti.or.jp/column031.htm 参照)。

 そして、このようなことは、日本でも、明治維新後の中央集権と官僚制の開始や太平洋戦争後の復興期に同様に起こったが、世界1の分野が増えて外国に見本がなくなった時、多様性がなく自由な発想のできない制度は工夫がなされにくいので、次の方向性を見失うのだ。

ホ)外交について
 外交の歴史については、「⑮中華民族は平和、和睦、調和を5000年以上にわたって追求し、継承してきた」「⑯中華民族の血には、他人を侵略し、覇権を追求する遺伝子はない」と言われているが、三国志などを見る限り国内での酷い戦争も多かったように私は思うが、漢民族は比較的温和だったと聞いてはいる。

 また、今後の外交理念として、「⑰人類の将来の運命に心を配り、世界のすべての先進的な力と協力して前進する」「⑱中国は常に世界平和の建設者であり、世界の発展の貢献者であり、国際秩序の擁護者だ」「⑲新たな道のりでは、平和、開発、協力、互恵の旗印を高く掲げ、独立した外交政策を追求し、平和的発展の道を守り、新しい形の国際関係の構築を促進しなければならない」「⑳人類の運命共同体の道を守り、『一帯一路』の質の高い発展を促し、世界に新たな機会を提供しなければならない」「㉑平和、開発、公正、正義、民主、自由という全人類共通の価値観を守る」と言われているのは、総論賛成だ。

 しかし、⑱⑲㉑については、国際秩序は「国際法が国内法に優先する」という人類共通の約束事があるため、国内法を優先させて他国の領土を侵害するのは許されないし、「内政干渉しない」という原則もあるため、既に独立国である中華民国(台湾)を無理に併合したり、同国の外交を妨害したりすることも許されない。そして、中国の民主主義や人権に関しては、強力な一党独裁で遅れていることが事実であるため、そろそろ本気で民主化すべき時だろう。

 なお、日本では悪口を言う人も多いが、⑳の「一帯一路」は中国国内での経験を基にして、それを他の開発途上国にも敷衍しているものであるため、善意で行う限り、良いことだと思う。

へ)防衛について
 防衛については、「㉒中国人民はこれまで他国の人民をいじめ、抑圧し、奴隷のようにしたことはない」「㉓中国の人民は、いかなる外部勢力が私たちをいじめ、抑圧し、奴隷のようにすることも決して許さず、故意に(圧力を)かけようとすれば、14億人を超える中国人民の血肉で築かれた『鋼鉄の長城』の前に打ちのめされるだろう」等と述べられた。

 このうち㉒については、TV放送で聞いた時すぐに、「そうかな?」と疑問に思った。他国の人民を積極的に奴隷にしたことはないかもしれないが、自分のことを「中華民族」と呼んでいる反面、周辺の民族のことは東夷(とうい)・南蛮(なんばん)・西戎(せいじゅう)・北狄(ほくてき)という蔑んだ呼び方をしていた歴史的事実がある。

 また、日本に倭国(わこく)・奴国(なこく)などという失礼な文字をあて、朝貢してきた国の女王に卑弥呼(ひみこ)という卑しさを現す文字をあてている。文字のなかった日本について記載してあるのは有難いものの、発音にあてられた文字には敬意が感じられない。

 なお、㉓は自衛権としては尤もであるものの、領土については、武力ではなく国際法にのっとって主張してもらいたい。

2)それでは、日本の「骨太の方針」に国家何年の計があるか
                  ← 対応が遅すぎる上、タイムスケジュールも不明
 「骨太の方針」が、*1-2のように、①新型コロナ対策の強化に加え ②デジタル化 ③脱炭素化 ④地方創生 ⑤少子化対策の4分野を成長の原動力と位置づけて決まったそうだ。

 このうち、①については、かなり述べたので簡略に書くと、ワクチン接種完了を「10~11月にかけて」としているのは、「解散」「解散」と騒ぎ立てるメディアや野党を、新型コロナ禍を建前として黙らせるのが目的のように見える。

 しかし、何回衆議院が解散されようと、政権が変わろうと、背後の官僚機構が政策を決めている限り、政策は変わらない。さらに、議員が官僚機構よりよい政策を作れなければ、政権は官僚機構に頼らざるを得ないということを、与野党・メディアともに認識すべきだ。そして、それを認識すれば、やるべきことはわかる筈である。

 ②③④⑤については、1990~2000年代から始めたものなので、今後のスケジュールを示さなければ意味がない。総花的かと言えば、日本では人口の中で割合が増えている高齢者のニーズを無視しており、高齢者の人権を軽く見ていると同時に、今後は世界で同じことが起こるので、経済における深慮遠謀にも欠ける。

 「どの政策を、(財源を含めて)どうやって実現していくか」については、これまで何度も述べてきたように、単にきりつめるだけでなく、正攻法で財源を増やすことや無駄遣いをなくして効率の良い使い方をすることを考えるべきだ。しかし、役所や官僚機構は、税外収入を増やすことは苦手で、古い仕事を既得権として維持しながら、ポジション増加のために新しい省庁を作ることには熱心だ。そのため、「デジタル庁」「こども庁」は、これまでの担当部署を廃して作るのでなければ、無駄遣いと調整すべき相手が増えるだけであろう。

 「最低賃金の引き上げ」については、*1-5はじめ、多くの人が言っているが、「賃金を上げれば、生産性が上がる」のではなく、「生産性を上げれば、賃金を上げることができる」のである。そうでなければ、経営が成り立たないので、日本企業は雇用を減らすか、工場を人件費コストの安い海外に移転するかして、日本では雇用が失われる。

 にもかかわらず、東大の渡辺教授が、「⑥日銀の異次元緩和で円安が進み、政策目的は円安だけでなく物価と賃金も上げることだったが、円安なのに物価も賃金も上がらなかった」と書いておられる。しかし、金融緩和は円の価値を下げるだけで、金融資産を持ち人口に占める割合の高い高齢者の実質所得や実質年金は減ったため、高いものは買えなくなり、日本製ではなく海外製の安いものに需要が向いたのであり、それは当然の結果だった。

 つまり、現在は鎖国をしている時代ではないため、中国・東南アジアなどの海外で安くてよいものができれば、高いだけで値段ほどには品質の違いがない日本製は売れなくなる。従って、「⑦日本は安い国になった」ということ自体は、国民を批判することではなく、政策によって起こった経済現象にすぎないのである。

 また、「⑧海外で物価上昇が進めば、現地の競合製品が値上がりするので日本企業も値上げできるが、日本では値上げできないという二極化が既に起きている」というのは、現在の日本は中国・東南アジア等と比較してむしろ共産主義化が進み、顧客ニーズに合ったものを作っていないという面も大きい。そのため競争に負けているのであり、これも自然な経済現象であるため、本質を改めない限り改善しない。

 *1-2は、そのほか「⑨持続可能な財政の姿が見えない」「⑩コロナ禍に伴う経済対策で2020年度の一般会計歳出総額は175兆円超、国債は112兆円が新規発行された」「⑪2021年度予算もコロナ対策予備費に5兆円積み、過去最大規模の106兆円に膨らみ、追加支出の恐れもある」「⑫内閣府は、日本経済が高成長したとしてもPBは2025年度に7兆3千億円程度の赤字」「⑬EUは復興財源として国境炭素税などを検討」なども記載している。

 ⑩⑪⑫は、コロナ禍というより、五輪の無観客開催も含めてコロナ政策禍であるため、このような政策しかできなかった根本的な問題を解決すべきである。また、コロナ政策禍によって生じた膨大な歳出増・財政赤字と失業は、*1-4のように、無駄遣いの景気対策をするのではなく、今後を見通して炭素税か環境税を導入して再エネ投資を進めることによって解決すべきだ。

 なお、五輪の無観客開催については、*1-7のように、政府の新型コロナ感染症対策分科会の尾身会長ら“専門家有志”が「無観客が望ましい」との提言を公表し、これが多くのメディアで主張されて国民の不安を煽っていたが、その根拠は「i)競技場内での感染はないと思うが、人流を抑制したい」「ii)市中と矛盾したメッセージを発しない」「iii)一般市民との公平性」などだそうで、科学とは全く関係のないものだった。

 しかし、その影響で五輪が無観客化されたことによって五輪の経済効果がなくなったマイナスは大きく、五輪のために投資した企業は損失を出し、無観客なら五輪の魅力も半減如何になる。さらに、「自国の検査で陰性だったのに、日本で感染が判明した選手団員が出た」「デルタ株の感染力が強い」などを大きく報道しているが、その根拠や解決法について“専門家”の理路整然とした説明はなかったし、「日本のPCR検査のカットオフが厳しいのだ」という説もある。その上、「デルタ株だからワクチンが効かない」とか「デルタ株だから中等症・重傷になる人の割合が増える」ということはない。なお、無観客なら国立競技場を建て替える必要もなかったため、五輪が終わったら民間に売却し、それで五輪開催にまつわる損失を穴埋めすればよい。何故なら、国民は、国民を幸福にしない誤った政策の尻拭いのために税金を負担したくはないからだ。

 このような中、*1-3には、「⑭新型コロナ禍で2020年春から積み増した予算73兆円のうち、約30兆円が使い残し」「⑮家計・企業への支払いを確認できたのは約35兆円とGDPの7%程度で、13%を支出した米国と比べて財政出動の効果が限られる」「⑯財政ニーズが強い時に予算枠の4割を使い残す事態は、日本のコロナ対応の機能不全を映し出している」「⑰翌年度への予算繰り越しが30兆円程度出る2020年度は極めて異例」「⑱ワクチン接種の遅れが消費や投資を制約させた影響が大きい」「⑲欧米や中国はコロナ後の成長基盤づくりをにらんでグリーン関連政策やデジタル化など戦略分野へ中長期的財政出動を競う」と書かれている。

 このうち、⑱は深刻である上、ワクチンを接種しても「差別」などと言ってワクチンパスポートを出さず、リスクの低い人の経済活動まで止め、⑭⑮の国に補助されなければならない人を増やした。さらに、ワクチンや薬剤の開発・承認も進めず、⑲にも不熱心で、産業の付加価値を上げたり、コストを下げて利益を得たりする機会を逸している。

 その上、⑯⑰のように、予算枠を使い残して翌年度に繰り越すこと自体が悪いかのように言うため、ゆとりを持って予算を設定し、不必要になったら使わないという当然のことができない。そして、これは、国に複式簿記による公会計制度を導入して財産管理を徹底しつつ、考え方を変えなければ解決できないものである。

 さらに、⑮で「家計・企業への支払いが日本はGDPの7%程度、米国は13%なので、日本の財政出動の効果が限られる」としていることについては、新型コロナ感染者の状況が異なる他国と同じ政策をとる必要はなく、日本の財政には無駄遣いするゆとりはない。

 なお、*1-6にも、「⑯後発薬原材料調達は6割が海外で、供給リスクが指摘される」「⑰塩野義は抗菌剤の原料生産設備を今年末までに岩手県に設ける」「⑱日本での原材料製造コストは中国の5倍以上との試算」「⑲国内回帰は薬のコスト上昇に繋がりかねない」などが記載されているが、同じ製品を日本で作ると製造コストが5倍以上になるのが問題なのである。そのため、理由を分析して問題解決すべきであり、そうしなければ他産業も日本には戻って来ず、それと同時に技術も日本から失われるのだ。

(2)客観的根拠に基づく軌道修正が不得意な国、日本


  2020.12.21   2021.6.24     2021.2.20      2021.6.26 
  Net IB News   東京新聞      毎日新聞       日経新聞

(図の説明:1番左の図のように、使用済核燃料の貯蔵割合が100%に近い原発は多く、それは稼働すれば増えるものである。また、左から2番目の図のように、40年を超える関電美浜原発3号機が再稼働したが、その30キロ圏内には28万人弱が暮らしている。さらに、右から2番目の図のように、長期停止の後に再稼働した原発も多い。なお、1番右の図の地下に埋める形式の小型原発が問題解決できるかのような記述があるが、結局のところ何も解決してはいない)

1)それでもまだ、原発の建て替えをしたい人がいるのは何故か?
 日経新聞は、*2-1-1のように、「①60年に達する原発が今後出てくるのに、経産省はエネルギー基本計画に原発の建て替えを盛り込まない方向」「②政府は2030年度までに、温暖化ガス排出量を2013年度比で46%以上削減し、2050年には実質ゼロをめざすと決めた」「③原発はCO2を排出しない電源で、これにより2050年の脱炭素社会実現に向けた道筋が描きにくくなった」「④地球環境産業技術研究機構によると、原発活用は電力コストの上昇を和らげる効果もある」「⑤2050年に再生エネで電力すべてを賄うと、送電網の整備などに大きな費用がかかると見込まれるため、電力コストは今の4倍程度に増える」などと、記載している。

 ②については、よいと思うが、遅すぎるくらいだ。また、①③については、脱炭素は地球温暖化や公害をなくす一手段にすぎず、それ自体が目的ではないため、普段から温排水や放射性物質を排出し、事故が起こると手が付けられなくなる原発は既に失格であり、早く卒業すべきだ。

 具体的には、*2-1-2のように、フクイチ事故を起こした原発処理水を海洋放出して漁業に迷惑をかけようとしており、フクイチ事故自体も広い範囲の農林漁業と地域住民に多大な迷惑をかけた。その上、難しい原状回復のために支払う電気代や税金は莫大で、それがコストに上乗せされている。さらに、*2-4のように、原発建設当時からわかっていた筈の放射性物質を含む使用済核燃料の廃棄場所は未だになく、これにも税金と電気代を使うことになりそうなのだ。

 それにもかかわらず、④の「原発活用は電力コストの上昇を和らげる効果もある」などと言っている地球環境産業技術研究機構は、いかにも地球環境を護るような名前の組織だが、理事長の山地憲治氏は原子力の専門家で(https://www.rite.or.jp/about/outline/pdf/yamaji_cv.pdf 参照)、経産省の有識者会合と同様、原発推進派の下請機関である。さらに、⑤については、高度化した送電網の整備は喫緊の課題であるため、この際、送電に参入する組織がインフラ投資を行い、装置が簡単で燃料代0の再エネ電力を普及させた方が賢いに決まっている。

2)耐用年数を過ぎた原発を再稼働させる無神経
イ)仮に避難できれば、原発を再稼働してもよいのか
 運転開始から40年を超える関西電力美浜原発3号機が、*2-2-1のように、2021年6月23日、10年ぶりに再稼働したが、重大事故の際に避難対象となる30キロ圏内には28万人弱が暮らしており、避難の実効性には疑問符が付いている。

 しかし、原発事故で土地や住居を捨てて避難し、何年~何十年もどこで暮らすつもりか?「国策だったから」として、また国が除染したり公営住宅を建設したりすることを期待しているのなら、既に国策として原発を使う必要はなく、むしろ地域が補助金目当てに原発を再稼働したのだから、復興費用を全国民に負担させる理屈は通らなくなっている。つまり、避難する用意があったとしても、原発を再稼働してよいという理屈は既に破綻しているのだ。

 なお、水戸地裁は、30キロ圏に国内最多の94万人を抱える日本原子力発電東海第二原発の運転を禁じる判決を出したが、その根拠も、「市町村で避難計画の策定が遅れており、実現可能な避難計画がなければ運転を認めない」と言うに留まっており、避難した後、どうするかについての考察はない。

ロ)40年超の老朽原発を再稼働する非常識
 そのような中、*2-2-2には、「①関西電力が44年を経た福井県の老朽原発を再稼働させ、40年ルールから外れたケースが初めて現実となった」「②関西電力は、同様に老朽化した高浜1、2号機の再稼働も進める方針」「③福井県の再稼働同意は、それを条件とする巨額の交付金を経産省が県に提示したから」「④経産省と大手電力は今回の再稼働を原発復権に向けた足掛かりの一つと捉えている」「⑤例外として最長20年の延長を認める規定がある」「⑥40年の寿命を迎えた原発から順次廃炉して脱原発を着実に進める予定だった」と記載している。

 国税庁が示している耐用年数は、単なる建物・建物付属設備でも鉄骨鉄筋コンクリート造・鉄筋コンクリート造の場合は、工場・倉庫用:38年、公衆浴場用:31年で、金属造の場合は、工場・倉庫用:最長31年、公衆浴場用:最長27年である。また、電気設備・給排水・衛生設備、ガス設備は15年しかなく、機械・装置の耐用年数は、6~13年だ。(https://www.keisan.nta.go.jp/h30yokuaru/aoiroshinkoku/hitsuyokeihi/genkashokyakuhi/taiyonensuhyo.html 、https://www.keisan.nta.go.jp/h30yokuaru/aoiroshinkoku/hitsuyokeihi/genkashokyakuhi/taiyonensutatemono.html 、https://www.keisan.nta.go.jp/h30yokuaru/aoiroshinkoku/hitsuyokeihi/genkashokyakuhi/taiyonensukikai.html 参照)。
 
 つまり、放射性物質が飛び交うような過酷な環境でない普通の建物や建物付属設備の耐用年数でも、工場・倉庫用38年で、使用済核燃料プールのように常に水を貯めている建物付属設備なら、公衆浴場用31年である。さらに、電気設備・給排水・衛生設備、ガス設備の耐用年数は古典的で単純なものでも15年しかなく、機械・装置は6~13年で精密になるほど短いのである。

 そのため、日頃から周辺機器の点検や交換を行っていたとしても、40年の耐用年数は長い方で、⑤のように、40年ルールから外れる例外を作ることこそ緩くて甘いのだ。そして、それを存分に利用しようと、③のように、国が巨額の交付金を提示し、それにつられて①②④のように、なし崩し的に40年ルールを無視し、⑥の脱原発を闇に葬るやり方は、水際対策をザルにして先端技術も使わず、新型コロナを何度も蔓延させて国民に大損害を与えたのと同じ構図である。

3)日本における想定の甘さ
イ)地震の想定と活断層
 原子力規制委員会は、*2-3-1のように、九電が玄海原発で想定する地震の最大の揺れを引き上げる必要があるとの見解を示したそうだ。基準地震動とは、原発の耐震設計で基準とする地震動で、周辺の地質・地震学・地震工学等の見地から極めてまれでも発生する可能性があり、大きな影響を及ぼす恐れもあると想定されて、原発の地震対策の前提になるものだそうだ。

 規制委は、原発周辺の活断層などによる地震に加えて、過去に国内で発生した地震データを使って揺れを想定する方法を導入し、電力各社に最大の揺れの想定を見直す必要があるかどうか回答するよう要請したそうだが、電力会社が想定を作り直せばお手盛りになるし、耐震補強の追加工事費用も電力料金に加算される。

 さらに、活断層も、*2-3-2の「未知の活断層」だけでなく、プレートが強い力で押しあえば新しい活断層ができる可能性もあるため、過去にできた活断層だけを問題にしていることの方がむしろ不思議なくらいである。

 そのため、再エネの豊富な九州は、早々に原発を卒業し、大手電力も装置が簡単で燃料費0の再エネ発電に転換した方がよいと考える。その方が、玄海原発周辺の安全性が増し、他産業の誘致がしやすくなるメリットがある。

ロ)使用済核燃料の処分
 原発稼働で発生する使用済核燃料は、*2-4のように、再処理工場を経て最終処分場やMOX燃料加工施設に運ばれることになっている。そして、現在、日本国内で貯蔵されている使用済核燃料は約1万8,000tに上り、約5年後には、福島第二で88%、柏崎刈羽で100%、浜岡原発で90%、美浜原発で89%、高浜原発で98%、大飯原発で93%、川内原発で93%、東海第二原発で96%と、一時保管場所の9割が埋まると試算されている。

 また、九電玄海原発ではトラッキングで290t、乾式貯蔵施設の設置で440t、四電伊方原発では乾式貯蔵施設の設置で500t、中電浜岡原発では乾式貯蔵施設の設置で400tの追加保管が見込まれるが、これらは原発敷地内に放射性廃棄物が増えることにかわりない。また、東電と日本原電が出資した青森県むつ市の中間貯蔵施設は3,000tの保管を最長50年予定しているが、再処理後の高レベル放射性廃棄物最終処分場の選定はできていない。

 なお、使用済核燃料も恐ろしく危険なもので、フクイチのような自然災害による自爆もあり得るが、戦争なら原爆を運んで落とすよりも、原発を攻撃すれば原爆の何十倍もの威力でその国を自爆させることができるものである。そのため、使用済核燃料の処分は、これらのリスクも考慮したものでなければならないのだ。

ハ)小型原発の開発
 原発の是非を巡る議論が続いているのに、*2-5は、「①出力30万kwの小型原発を開発する動きがある」「②小型化して建設費を抑え、安全性も高めた」「③脱炭素に繋がる電源として実用化への取り組みは欧米が先行」「④三菱重工は国内の電力大手と小型炉の初期的設計の協議に入った」「⑤建設費は1基2,000億円台で5,000億円規模の大型炉の半分以下」「⑥小型炉は蒸気発生器を原子炉内に内蔵し、ポンプなしで冷却水が循環」「⑦小型炉は地下に設置できるので、航空機等による衝突事故への備えが高まる」「⑧密閉性が高まり放射性物質の飛散も防げる」「⑨米国ではプールにまるごと沈め、非常用電源なしでも冷却でき事故が起きにくい小型炉を開発」などと記載している。

 このうち③は、(2)1)に記載したとおり、脱炭素は地球温暖化や公害をなくす一手段にすぎず、それ自体が目的ではないのに、原発を推進するために目的を矮小化して記載している点で悪意であるし、パリ協定も原発は推進しないことを明らかにしている。また、①②⑤については、小型化したから安全になったというのは新たな安全神話にすぎず、出力30万kwが2,000億円台なら出力100万kwが5,000億円台よりも割高なので建設費を抑えたとは言えない。そして、その2000億円には地元懐柔費・事故時の現状復旧費・最終処分場建設費等は入っているのか?

 さらに、⑥⑨は、ポンプなしで冷却水が循環したとしても、冷却して回収した熱はどこかに逃がさなければならないため、それが海か空気を温めることは避けられず、温暖化防止に貢献することはない。その上、⑧のように、放射性物質の飛散は防げても発生は防げないし、使用済核燃料をどこかに処分しなければならないことに変わりはない。

 なお、⑦のように、地下に置いて航空機が突っ込む事故への備えが高まったとしても、サイバー攻撃やミサイル攻撃に対抗できない点は同じであるため、このような危険を犯し、地域住民の犠牲と大金を払って、④のように、国内電力大手が燃料費無料の再エネ(水力・地熱も含む)より原発を選択するには、また何かのからくりがありそうだ。

(3)外交・防衛にも計画性のない国、日本 ← それで勝てるわけはない
1)日本の外交について ← 台湾有事と尖閣諸島問題から
 日本は、1972年9月29日に北京で締結した「日本国政府と中華人民共和国政府の共同声明(https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/china/nc_seimei.html 参照)」の2条で、「日本国政府は、中華人民共和国政府が中国の唯一の合法政府であることを承認する」としているため、中華民国(台湾)の独立性について曖昧で消極的な態度をとっている。

 しかし、中華民国(台湾)は独立国であり、中華人民共和国との合併を望んではいないため、7条の「日中両国間の国交正常化は、第三国に対するものではない」に該当し、日本政府と中華人民共和国政府の共同声明に基づいて、中華民国(台湾)の独立性が左右されるのはおかしい。

 このような中、*3-1のように、麻生氏は「①中国が台湾に侵攻した場合、安保関連法が定める『存立危機事態』に認定し、限定的な集団的自衛権を行使することもあり得る」「②台湾有事は、日本の存立危機事態に関係してもおかしくない」「そのため、日米で一緒に台湾を防衛しなければいけない」との認識を示された。

 ①②③の繋がりについては、もう少し詳しい説明を要するが、尖閣諸島問題を見ると中華人民共和国政府の国内法優先による横暴は目に余り、それは国際法にのっとった話し合いでは長期間解決することができていないのである。これは、日本の外交が情けないことも理由の1つだろうが、それだけが理由ではないと思われる。

2)日本の防衛について ← 今さら原子力潜水艦が必要か
 このような中、*3-2は、「①自由で開かれたインド太平洋を海洋安全保障戦略の基本としている4カ国の専門家が原子力潜水艦の必要性を指摘した」「②今後米中関係がさらに悪化して行く中で、台湾有事も想定せざるを得ない」「③燃料の補充が長期にわたって不要なので、潜水艦、砕氷船、発電バージに小型軽水炉は最適」「④長期間潜ったまま航行できる原潜が中国海軍の動きを抑えるのに役に立つ」等を記載している。

 また、*3-3は、「⑤ディーゼルエンジンと蓄電池で駆動する潜水艦と違い、原潜は半永久的に潜水可能」「⑥高濃度の核燃料は数十年にわたって原子炉を稼働させることができる」「⑦燃料を気にすることなく原子炉からエネルギーを得て海水を蒸発させて真水を生み出し、それを電気分解して酸素供給も可能」「⑧船員の酸素確保のために浮上する必要もないため、連続潜航距離を伸ばせる」「⑨米国が、1958年に原潜で北極点の下を潜航通過し、当時、原子力は人間が制御でき、平和利用すれば人々の生活を豊かにするという考えが大勢だった」「⑩その後、原子力潜水艦や原発がいくつも大事故を起こした」等を記載している。

 ⑤⑥⑦⑧は事実だろうが、狭い原潜の中に原子炉を積んでいれば、原潜内で放射能が上がることは確実で、放射性廃棄物は海中に捨てており、撃沈された時は燃料もろとも海中投機されるため、原潜の数が増えて実戦で使われれば海洋汚染が進む。そのため、⑨のように、1950年代に原潜を作ったのはわかるが、⑩のように、原発事故や放射能による被害が明らかになった後に、原潜を作ろうというのは時代錯誤も甚だしい。

 にもかかわらず、②④を論拠として、日本が原潜を作ろうすれば台湾も迷惑だろう。何故なら、台湾付近で原潜が戦闘を行い、そこで何隻も撃沈されれば、付近の環境や漁業に悪影響を与えるからで、①もまた、時代錯誤の日本主導でこのような指摘になったのではないかと思う。さらに、③に「燃料の補充が長期にわたって不要」と書かれている原潜のメリットは、再エネでも潮流発電を使えば海中でひっそり充電して水素と酸素を作ることが可能だ。

 また、④の「長期間潜ったまま航行できる原潜が中国海軍の動きを抑えるのに役立つ」という主張については、そんなことはないだろうし、人間が乗って運転する時代も既に去り、戦争は無人で行う時代になりつつあって、海中や空中はそれに適しているように見える。

(4)人を大切にしない国、日本 ← 医療・介護はじめ社会保障と人権を粗末にしすぎ 
1)医療・福祉について
イ)過疎地の医療について
 日経新聞は、*4-1-1で、「①2050年の人口が2015年比で半数未満となる市町村が3割に上り」「②829市町村(66%)で病院存続が困難になる」「③公共交通サービス維持も難しくなり、銀行・コンビニが撤退するなど生活に不可欠なサービスの提供もできなくなる」「④地域で医療・福祉・買い物・教育機能を維持するには、一定の人口規模と公共交通ネットワークが欠かせない」と記載している。

 交通ネットワークが整っていれば、少し広い範囲を医療・教育・福祉・買い物圏にすることができるため、必ずしも1市町村に1つ以上の基幹病院が必要ではないが、病院なら何があっても車で30分以内で専門医にアクセスできるネットワークが必要だし、小中学校はスクールバスで15分以内、保育所・介護事業所は車で5~10分以内にアクセスできる必要があるだろう。

 従って、「⑤医療圏内で20人以上の入院患者に対応した病院を維持できる境目となる人口規模は1万7500人で、これを下回ると存続確率が50%以下」というのはかなり大雑把な言い方で、病気によって専門医は異なるため、もう少し広い範囲を視野に入れ、それぞれの病気や事故時には専門医に30分以内でアクセスできる必要がある。そのため、新型コロナ禍でバス事業者が経営難に拍車をかけられたのであれば、小中学校を合併してスクールバスを走らせたり、診療・健診バスや送迎バスを走らせたりなど、これまでなかったバスの使い方を考えるのも一案だ。

 また、「⑥基準を満たせない市町村の割合は2015年の53%から2050年には66%まで増える」というのも、病院をネットワーク化してそれぞれに専門の重点を変え、距離が遠くなる地域は診療・健診バスを走らせてカバーするなど、サービスを向上させながら効率化する方法もある。そのため、固定観念ではなく、問題解決重視で改善を重ねることが重要だ。

 なお、「⑦2050年に銀行の本支店・営業所は42%、コンビニは20%の市町村で0になるリスクがある」というのは、集落が消滅する前にそういうものがなくなって不便になり、集落の消滅に拍車をかけるので、集落が消滅しないよう、仕事を作り、移住者を増やす必要がある。現在は、農林業・再エネ・製造業の国産化や地方分散が進められている時期であるため、その気になれば仕事や移住者を増やせる筈である。

ロ)全体としての医療の課題
 公共経済学の専門家が、*4-1-2のように、「①新型コロナの感染拡大を巡っては、変異株の脅威のほか、五輪開催という重大なリスク要因が存在する」と記載しておられるが、ワクチンは変異株にも有効で、かつ五輪関係者はワクチンパスポートか陰性証明を持ってくる人であるため、検査もワクチン接種もしていない日本人よりよほど安全なのである。

 そして、*4-1-2は「②ワクチン接種の大幅加速という好材料も出てきた」とも書いているが、*4-3-1のように、せっかく民間企業が職場接種を始めたら「接種に使われる米モデルナ製ワクチンの供給が追いつかなくなった」として、政府が職場接種の申請受け付けを急遽停止することにした。しかし、職場接種はモデルナ製でなければならないと決まっているわけではなく、「打ち手」が足りないわけでもないため、現役世代の接種を加速させて全体を感染から守るためには、政府は必要な場所に速やかにワクチンを供給することを考えるべきだ。

 *4-1-2には、「③ポストコロナの医療供給体制にとっても重要な課題が浮き彫りになった」とも書かれているが、日本の医療供給体制の不合理は新型コロナで初めてわかったのではなく、時代の先端を行く科学の導入や地域医療計画に合わせた医療圏の設定・病院間の分業などの継続的改善を行うことが必要だったのにやっていなかったのだ。そして、厚労省・財務省の著しく単純化された合理化案で改悪されてきたというのが実情である。

 また、このほか、*4-1-2には、「④ワクチン接種が加速している欧米諸国は死者数が大幅に減少した」「⑤欧米は死者数で第3波は到来していないが、日本には過去のピークを上回る第4波が到来している」「⑥欧米は景気もV字型の回復軌道に乗ったが、日本は経済効果があり景気回復のチャンスでもある五輪さえ無観客にして逃している」「⑦本格的な市中感染の到来を予期せず、全国レベルのワクチン接種に大きく出遅れたのが、その違いを生んだ主因である」等も書かれており、これは事実だ。

 ただ、日本の場合は、地方自治体や国民にある程度の衛生意識があるため、政府による全国一律の強制的ロックダウン等は不要だったのだが、おかしな論調のメディアに引きずられた政府のコロナ対策や医療政策が悪すぎたのである。

 また、「⑧急性期医療へのシフトなど構造改革急げ」「⑨利用者の受診抑制の要因や影響探る必要」とも書かれているが、日本の人口当たりベッド数は世界トップクラス、コロナ感染の規模は諸外国より限定的だったにもかかわらず、「医療現場が逼迫する」と言われ続けてまともな医療も受けられない人が続出した。何故か? その原因を一つ一つ解決し、患者のQOL(Quality of Life)を高めながら医療システムを良い意味で合理化することが、医療制度の改善に繋がるし、それはできるのである。

2)教育について
イ)教員の質と教員免許更新制
 *4-2-1は、「①文科省が、2009年度に導入された教員免許更新制廃止の方向で検討しているが、遅きに失した」「②免許期限を10年とし、30時間以上の講習を自費で受けると更新が認められる」「③数万円の講習費用と交通費を負担して夏休み等に講習に通うことに、教員の大多数が負担感を示し、役に立っていると答えたのは1/3だった」「④更新制は教員不足の一因にもなった」「⑤文科省は、教員の資質確保が目的で、不適格教員を排除する趣旨ではないとする」「⑥教員の多忙さが増し、学校現場の疲弊が深いのに、なぜ免許更新が必要か」「⑦いじめはじめ、子どもたちが抱える問題への対応が追いついていない」「⑧教員が子どもとじっくり向き合って力量を高め、それぞれが直面する課題を持ち寄って自主的に学び合う時間と余裕を生むことが肝心だ」と記載している。

 このうち②③については、資格を維持して業務を続けるには、公認会計士(年間40単位)・税理士(年間36単位)も、毎年度に一定以上の研修を受けることが必要で、長い夏休みなどない勤務体系でも時間を作って研修を受けている。その効果は、i)刻々と更新される実務の標準をキャッチアップし ii)知識を深く整理し iii)自分が担当していない業務にも視野を広げる などであり、大学教授の講義の中に実務から離れた役立たないものもあるが、全体としては役立つものが多い。費用は、有料・無料の両方があり、昨年からはリモートでの無料の講義が増えている。

 つまり、研修を受けることを負担に感じる人は、もともと勉強好きでないのだと思うが、勉強嫌いな教員に習った子どもが勉強の面白さを教えてもらって勉強好きになるわけがない上、⑥⑦⑧のように、何十年も「忙しさ」を勉強しない口実にして根本的な問題解決をしない人たちに習った子どもに問題解決能力が身につくわけもなく、お粗末な教育の結果は既に出ている。そのため、そういう人が教員を続けていること自体が子どもや国家にとってマイナスであるため、⑤も必要であり、研修内容は毎年改善してよいが、①の教員免許更新制は残した方がよいと思う。

 なお、④の免許更新制が教員不足の一因になったという点は、これからの日本を背負う子どもを教育する教員の給料を銀行員・会社員よりも高くし、博士など専門性があり優秀な人が教員になりやすい環境を整えるべきである。

ロ)「才能を持つ子ども」の定義と誤った評価
 *4-2-2は、「①芸術・数学などで抜きんでているが、学年毎のカリキュラムや周囲にうまく適合できず、不登校になるケースもある」「②文科省によると、米国では同年齢より特に高い知能や創造性・芸術的才能などを発揮する子どもを「ギフテッド」と呼び、早期入学や飛び級といった特別な教育プログラムが用意されている」「③中にはこだわりが強すぎたり、集団行動が苦手だったりする子もいるとされ、どう支援するかも課題」「④日本では、単純な課題は苦手だが複雑で高度な活動は得意など多様な児童生徒が一定割合存在する」「⑤同質性の高い学校文化そのものを見直すべきとの意見」「⑥松村教授は「『トップ人材を輩出する目標でなく、困っている才能児のニーズに対応する視点で議論すべき』と指摘」「⑦発達障害を抱える子もいるとして特別支援教育や生徒指導との連携も必要とした」などと記載している。

 日本では、①の文脈で語られる時、「抜きんでている」という言葉の意味が低いレベルであることが多い。②の米国における「ギフテッド(神から才能を与えられた者という意味)」呼ばれる子どもは、音楽ならモーツァルト、体操ならコマネチ、男子100mならカール・ルイス、科学ならアインシュタインのような本物の「ギフテッド」であり、そういう人やその卵を探して特別な教育プログラムで育てているのである。従って、本人の自然な欲求としてこだわりが強く、努力もしており、だからこそ他人ができない何かを成し遂げることができるのだ。

 そのため、③のように、こだわりが強いことを悪いことであるかのように言ったり、集団行動をしないから性格がおかしいかのように言ったりするのは、凡人の歪んだ劣等感の裏返しにすぎない。もし、⑥⑦のように、才能児が困っている点があるとすれば、凡人の誤った評価で発達障害扱いされたり、成長を妨げられたりすることだろう。つまり、⑤のように、いつも集団行動や同質性を強制し、それを疑問にすら思わない大人の方が問題なのである。

 なお、④のように、「複雑で高度な活動が得意など多様な児童生徒が一定割合存在する」というのは、よいことでこそあれ悪いことではない。そして、通常は、複雑で高度な活動ができる人は単純な課題はすぐできるが、単純なことを繰り返すのが嫌いなだけである。いずれにしても、これからは、単純作業や体力勝負の仕事はコンピューターやロボットにとられ、人間は複雑で高度な作業で出番が多くなるため、教員の考え方も変える必要がある。

3)間違いだらけの新型コロナ対策
イ)新型コロナと五輪
 新型コロナが拡大している中、「五輪を開催しても国民は安全なのか」という論は、*4-3-5をはじめ多い。しかし、「菅首相が何より優先しなくてはならないのは、五輪を予定通り終わらせることではなく、国民の命を守るためコロナ感染を一日も早く収束に向かわせることだ」とし、五輪を開催すると国民の命が守れないかのように記載しているのは変だ。

 これは、「子どもの安全のため、放課後は子どもを学校に残さない」と言いつつ、かぎっ子を街に放り出してきたのと同様、安全を建前として使ったより悪い選択への強制である。さらに、五輪の開催を政争の具に使うのは、今後の日本外交に悪影響を及ぼすため許すべきではない。

 具体的には、*4-3-5は「①五輪開催都市である東京で新型コロナ感染者が急増している」「②1,000人/日超の新規感染者数の報告が続き、5月の第4波ピーク時を上回っている」「③専門家は現在の増加ペースで推移すれば五輪閉会後には2,400人程度に上るとの試算を公表した」としているが、私も英国と同様、今後は新型コロナによる死者数だけを開示すればよいと考える。理由は、ワクチン接種が進むにつれて重症化する人が減るからで、治療薬やワクチンの準備もできずに天気予報のようなことしか言わない日本の“専門家”会議は既に失格なのである。

 また、「④東京など首都圏の感染者数は全国のおよそ2/3を占めている」「⑤感染力の強いデルタ株への置き換わりが進み、感染再拡大が首都圏から全国に波及する可能性もある」のであれば、ワクチンはデルタ株にも有効であるため、感染者数の多い首都圏にワクチンを先に配布すれば、感染者数が減って他地域への波及も減る。ここで、誤った「公平」を持ち出すのは科学的ではなく、おかしな平等教育の結果である。

 さらに、「⑥選手約1万人、大会関係者約4万1千人の来日が見込まれる」「⑦五輪は選手らと外部の接触を遮断する“バブル方式”で運営される」「⑧種目の大半は無観客で行われる」「⑨選手らの多くがワクチン接種を済ませ、厳格な検査と行動制限でウイルスの国内流入を防ぐとする」「⑩事前合宿先で感染が判明した例もあり、水際対策は万全ではあるまい」「⑪管理の緩さが露呈した関係者の行動も問題視されている」「⑫『バブル方式により、日本国民がコロナ感染を恐れる必要はない』『感染状況が改善した場合、有観客を検討してほしい』としたバッハ会長の現状認識にも疑問が湧く」とも書かれている。

 しかし、⑨のようなワクチン接種済の人が、⑥のように4万1千人来ても伝染するリスクは低いため、⑦⑧⑪は、外国人に対するヒステリックな対応で差別的でもある。また、⑩については、PCR検査のカットオフの問題で、日本のPCR検査は長時間増幅させているという報告もあり、水際対策はビジネス目的で入国している内外の人に対する方が甘いため、私は、⑫のバッハ会長の見解に賛成だ。

 なお、「⑬選手村には、2回目の接種を終えていない日本人スタッフらが出入りする」というのは、出入りする関係者は五輪関連者として早くワクチンを接種すればよい。そのため、「⑭五輪を発生源としたクラスターを認知した場合、大会を続行するかどうかを検討しておく必要がある」のように、ワクチン接種済の軽症者ばかりのクラスターが発生したからといって大会を中止するようなことがあれば、五輪は世界中で報道されるため、世界の笑い者になるだろう。

 「⑮生活や事業がコロナ前に戻るのはいつかを国民は一番知りたい」については、*4-3-3のように、東京五輪の原則無観客開催で多くの企業が肩すかしを食らい、スポンサー企業も製品や技術を売り込む好機の筈が人々の目に触れる機会が大幅に減っている状況なので、必要な場所に早期にワクチン接種を済ませ、この1年間で経営状況が悪くなった日本企業に五輪でさらに追い打ちをかけるのをやめた時、生活や事業は少しずつコロナ前に戻ると言える。

ロ)誤った新型コロナ対策とそれによる破綻
 政府は、*4-3-4のように、7月12日、東京都に4度目の新型コロナ緊急事態宣言を出し、蔓延防止重点措置を含む6都府県の住民に県境をまたぐ不要不急の外出自粛を要請した。そして、「接種の有無による不当な差別は適切でない」として、ワクチン接種証明書は海外渡航用に限り、ワクチン接種済者も同じく移動を止めて経済を停滞させている。しかし、感染リスクが低くなり、移動を止める理由のなくなった特定地域のワクチン接種済者の移動の自由を侵害するのは憲法違反であると同時に、それこそ差別である。

 国内の観光地も政府から僅かな補助金をもらうより、感染リスクの低いワクチン接種済者からでも営業を始めた方が助かり、納税者も同じだ。また、「都道府県間の移動は控えよ」というのは理由不明で、知事の権限範囲が異なることくらいしか理由を思いつかない。そのため、私は経団連の「接種証明書を早く活用し、国内旅行などの要件を緩和すべき」という提言に賛成だ。

 さらに、「学校は、新型コロナで運動会も中止になった」と聞くが、延期すればよく、中止にまでする必要はない。そのため、「何故、ここまで融通が効かないのか」と不思議に思う。

 なお、*4-3-2のように、東京商工リサーチによると、負債1,000万円未満を含めた新型コロナ関連破綻が累計で1,661件になったそうだ。ここでおかしいのは、夜に飲食店を利用することや酒を飲むこと自体が悪いかのように、飲食店の酒類提供や営業時間制限を設備の状況に関わらず一律に行っていることである。破綻すれば、事業主は負債を負って失業し、従業員も失業するが、これを助けるのに、生活保護や「Go To Eat」による血税のバラマキばかりしている体質なら、日本も破綻寸前でお先真っ暗なのだ。

4)難民と留学生
 サッカー・ワールドカップ予選のため来日していたミャンマー代表選手のピエ・リヤン・アウンさんが、*4-4-1のように、クーデターを起こした国軍に抗議の意志を示して帰国を拒否し、日本に難民認定を申請されたそうだ。

 日本政府は、日本への在留継続を望むミャンマー人に対し、緊急避難措置として在留延長や就労を認める方針を示したそうだが、ピエ・リヤン・アウンさんが母国の家族やチームメートの身を案じながら下した苦渋の決断にも応える必要がある。

 難民条約は、人種・宗教・政治的意見などを理由に母国で迫害される恐れがある人を難民と定義して各国に保護するよう求めているが、日本は他の先進国と比較して難民認定数が極端に少ない。そのため、本来、保護されるべき人が保護されずに送還されている可能性が高く、外国人の人権保護という視点から、難民認定制度については見直すべきである。

 また、*4-4-2のように、合宿期間中に世界ランキングが下がって五輪に出場できなくなり、コーチとともに近く成田空港から帰国する予定だったウガンダの重量挙げ男子選手が、「日本で仕事がしたい。生活が厳しい国には戻らない」という趣旨の書き置きを残して名古屋行き新幹線の切符を購入したそうだ。こういう人は、希望があればスポンサー企業がついて中京大学に留学させ、次のオリンピックを目指せるようにするか、何かいい方法がありそうだ。

 なお、ウガンダは、英語が通じ、キリスト教が6割を占める国で、現在の主要産業は農林水産業・製造・建設業・サービス業で、自動車・医療機器・医薬品などは輸入しており、日本企業のアフリカ進出の拠点になれそうな国である(https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/uganda/data.html 参照)。

(5)先端科学で証明する日本人のルーツと古代史

  
    2010.5.7朝日新聞       2021.6.23日経新聞    2021.7.8日経新聞
                     *5-1より       *5-2より

(図の説明:左図は、ホモサピエンス《現生人類》がアフリカで発祥し、ネアンデルタール人などと交雑しながら世界に広がり、それぞれの地域に適した姿に進化してきたことを示す図だ。中央の図は、日本における都道府県毎の50人のゲノム情報をもとに違いを可視化し、縄文人由来のゲノムが多い県は青色、渡来人由来のゲノムが多い府県はオレンジ色で表示したもので、沖縄県は縄文人由来のゲノム比率が他県と比べて極めて高いが地図に含まれていない。右図は、東北大学と製薬大手5社が創薬目的で作るバイオバンク構想だ)

 東北大学と製薬大手5社が、*5-2のように、10万人分のゲノムを解析するためのコンソーシアムを設立し、本格的にゲノムデータを創薬や診断技術開発等に利用できるようにし、日本も、ようやくゲノムをもとに新薬を探す「ゲノム創薬」の基盤整備が進むのだそうだ。

 年齢・性別・生活習慣・病歴などのデータも合わせて蓄積するそうだが、正しいデータ分析のできない人はゲノム・年齢・性別などによる固定観念で人を差別するようにもなりがちであるため、注意してもらいたい。しかし、人間のDNAを短時間で読むことができ、ゲノムを解析することが可能になったのは、著しい進歩だ。

 新型コロナウイルスを通して誰もが容易に理解できるようになったことは、DNAが分裂する時にはコピーミスも発生し、これによって変異が起こり、より有利な変異をした個体が生き残って、次の進化をしていくということだ。有性生殖をする生物は、次世代を残すのに少し時間を要するが、DNAのコピーミスだけでなく、交配によって両親から両方のDNAを受け継ぐことによっても、より生き残りやすい個体がより多くの子孫を残す形で進化できる。

 人間も有性生殖をする生物の一つであるため、上の左図のように、ホモサピエンスがアフリカで発祥し、ネアンデルタール人などと交配しながら世界に広がり、それぞれの地域に適した形に進化してきたが、これは各地域に住む人のDNA分析をするという先端科学を使って証明されたことだ。診療や健診の際に、それぞれの国で人口の10%程度のDNA分析ができれば、どの地域が強い繋がりを持ち、どういう経路を辿ってホモサピエンスが現在の分布になったのかを、より正確に知ることができるだろう。

 また、上の中央の図は、*5-1のように、日本における都道府県毎の50人のゲノム情報をもとに違いを可視化し、縄文人由来のゲノムが多い県は青色、渡来人由来のゲノムが多い府県はオレンジ色で表示したもので、沖縄県は縄文人由来のゲノム比率が他県と比べて極めて高いが、地図には含まれていないそうだ。

 この研究の結果、日本人は、縄文人の子孫が大陸から来た渡来人と混血することで生まれ、47都道府県で縄文人由来と渡来人由来のゲノム比率は異なることがわかり、渡来人由来のゲノム比率が高かったのは滋賀県・近畿・北陸・四国で、沖縄県はじめ九州・東北(多分、北海道も)で縄文人由来のゲノム比率が高かったとのことである。

 この結果は、渡来人が朝鮮半島経由で九州北部に上陸したとする考え方とは一見食い違うが、私は、渡来人は環日本海を自由に航海できたため、九州北部や日本海沿岸だけでなく、海路で繋がる瀬戸内海沿岸にも上陸し、縄文人の子孫と1000年以上かけて混血したのだと思う。どのような過程で混血が進んだかについては、沖縄などのように、さほど混血しなかった地域もあり、一様ではないだろう。

 ただし、使った器で進化や文化の程度を図れるものではない。例えば、有田焼を使っている人が唐津焼を使っている人よりも進んでいるわけではなく、それぞれの場所にある材料を使い、その時代にあった技術を使って、必要なものを作ったにすぎないだろう。そのため、考古学は、生物学的・科学的知見も合わせて、首尾一貫性のある納得いく歴史を示してもらいたい。

・・参考資料・・
<中華民族と東夷・南蛮・西戎・北狄、倭国・奴国・卑弥呼>
*1-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20210702&ng=DGKKZO73480930R00C21A7M11500 (日経新聞 2021.7.2) 共産党100年 習氏演説要旨、中国が大股で時代に追いついた
 中国共産党の習近平(シー・ジンピン)総書記(国家主席)は1日、北京市の天安門広場で党創立100年記念式典の演説に臨んだ。「(中国は)後進的な状態から世界第2位の経済大国へと歴史的な躍進を達成した」と述べ、党主導で経済成長などを実現させたと強調した。演説の要旨は次の通り。
     ◇
 同志と友人のみなさん。今日は中国共産党の歴史と、中華民族の歴史において、非常に重大で荘厳な日である。私たちはここに盛大に集まり、全党、全国各民族とともに中国共産党創立100周年を祝い、中国共産党の100年にわたる奮闘の輝かしい経過を振り返り、中華民族の偉大な復興の明るい未来を展望する。まずはじめに、党中央を代表し、全ての中国共産党員に、熱烈な祝意を表す。ここで党と人民を代表し、全党と全国各民族の人民による持続的な奮闘を経て、私たちは最初の(党創立)100年で掲げた目標を実現し、この地に(大衆の生活にややゆとりのある)「小康社会」を全面的に築き上げ、絶対的な貧困問題を歴史的に解決し、社会主義現代化強国の全面的な実現という次の(中華人民共和国成立から)100年の奮闘目標に向けて意気盛んにまい進していることを厳かに宣言する。これこそが中華民族の偉大な栄光である。これこそが中国人の偉大な栄光である。これこそが中国共産党の偉大な栄光である。中国共産党は誕生当初から、中国人民に幸福をもたらし、中華民族の復興をもたらすことを初心と使命と決めている。この100年来、中国共産党が中国人民を束ね率いて行った全ての奮闘、全ての犠牲、全ての創造はひとつのテーマに帰結する。それは中華民族の偉大な復興を実現するということだ。中国共産党と中国人民の勇敢で強固な奮闘をもって中国人民は立ち上がり、中華民族が搾取され、辱めを受けていた時代は過ぎ去ったことを世界に厳かに宣言する。中華民族の偉大な復興を実現するため、中国共産党は中国人民を束ねて率い、自力更生し、発奮し、社会主義革命と(社会主義現代化)建設という偉大な成果を生んだ。私たちは社会主義革命を進め、中国で数千年にわたり続いていた封建的な搾取と圧迫の制度を消滅させ、社会主義の基本制度を確立し、社会主義の建設を推進し、帝国主義や覇権主義による転覆と破壊、武装挑発に打ち勝ち、中華民族の有史以来、最も広く深い社会変革を実現した。経済的文化的に遅れた人口の多い東方の大国(だった中国)が社会主義の社会に大きく進んだという偉大な飛躍を実現し、中華民族の偉大な復興の実現に向けた根本的な政治前提と制度の基礎を築き上げた。中国共産党と中国人民は勇敢で強固な奮闘をもって世界に厳かに宣言する。中国人民は古い世界を打ち破ることに優れているだけでなく、新しい世界を建設することにも優れている。中国を救えるのは社会主義だけであり、中国を発展させられるのは中国の特色ある社会主義だけである。揺るぎなく改革開放を推進し、各方面からのリスクや挑戦に打ち勝ち、中国の特色ある社会主義を創り、堅持し、守り、発展させ、高度に集中した計画経済体制から活力に満ちた社会主義市場経済体制への歴史的転換を実現した。閉鎖や半閉鎖から全方位開放への歴史的転換を、生産力が相対的に遅れていた状況から経済の総量で世界第2位に躍り出る歴史的突破を、人民の生活で衣食が不足していた状況から総体としてはややゆとりがある社会を、さらに全面的にややゆとりがある社会に向かう歴史的な飛躍をそれぞれ実現した。中華民族の偉大な復興の実現のため、新しい活力にあふれた体制上の保障と急速発展の物質的条件を提供した。中国共産党と中国人民は勇敢で強固な奮闘をもって世界に厳かに宣言する。改革開放こそが現代中国の前途と運命を決める鍵となる一手であり、中国が大股で時代に追いついたのだ。(2012年の)第18回党大会以降、中国の特色ある社会主義は新しい時代に入り、我々は党の全面的指導を堅持・強化し、(経済一辺倒でなく政治や文化、社会、環境保護の一体的な発展を重視する)「五位一体」の体制を全体を見据えて推進し、(小康社会の建設や厳格な党統治など4項目を推進する)「四つの全面」の戦略的体制を協調して推進し、中国の特色ある社会主義制度を堅持し改善した。国家のガバナンス体制とガバナンス能力における現代化を推進し、規範に基づいた党の運営を堅持し、比較的整った党内の法規体系を形成し、一連の重大なリスクと挑戦に打ち勝った。第1の100年における奮闘の目標を実現し、第2の100年では奮闘の目標の戦略的計画を明確に実現し、党と国家の事業は歴史的成果をあげ、歴史的変革を起こし、中華民族の偉大な復興を実現するため、より整った制度保障と、より堅実な物質的基礎と、より自発的な精神力を与えた。同志と友人のみなさん。100年前、中国共産党の先駆者たちが中国共産党をつくり、真理を堅持し、理想を守り、初心を実行し、使命を担い、犠牲を恐れず、勇敢に戦い、党に忠誠心を持ち、人民に背かない、偉大な建党精神をつくり上げた。これが中国共産党の精神の源である。同志と友人のみなさん。この100年、我々が得た全ての成果は中国共産党人、中国人民、中華民族が団結し奮闘した結果である。毛沢東同志、鄧小平同志、江沢民(ジアン・ズォーミン)同志、胡錦濤(フー・ジンタオ)同志を主要な代表とする中国共産党人は、中華民族の偉大な復興のために、歴史書を光り輝かせる偉大な功績をあげた。私たちは彼らに崇高なる敬意を表する。今このとき、私たちは中国の革命、建設、改革、中国共産党の創立と強化、発展のために大いに貢献した毛沢東、周恩来、劉少奇、朱徳、鄧小平、陳雲といった同志ら上の世代の革命家を深くしのぶ。新中国を創立し、守り、建設するにあたって勇敢に犠牲となった革命烈士を深くしのぶ。香港特別行政区の同胞、マカオ特別行政区の同胞、台湾の同胞と多くの華僑に心からあいさつする。中国人民と友好に付き合い、中国の革命と建設、改革事業に関心と支持を寄せる各国の人民と友人に心から謝意を表する。同志と友人のみなさん。初心を得るのは易しく、終始守るのは難しい。歴史を鑑(かがみ)として、盛衰を知ることができる。私たちは歴史で現実を映し、未来を長い目で見通す。中国共産党の100年の奮闘の中から過去に私たちがなぜ成功できたかをはっきりと見て、未来に私たちがどうやって成功を続けられるか明らかにし、それによって新しい道のりで揺るぎなく、自覚的に初心の使命を心に刻み、美しい未来を切り開いていかねばならない。
●党は国に不可欠
 歴史を鑑として、未来を切り開くには、中国共産党の強固な指導を堅持しなければならない。中国のことをうまくやるために、カギとなるのは党だ。中華民族の近代以来180年余りの歴史、中国共産党の成立以来100年の歴史、中華人民共和国の成立以来70年余りの歴史が、すべて十分に証明している。中国共産党がなければ、新中国はなく、中華民族の偉大な復興もない。歴史と人民は中国共産党を選んだ。中国共産党の指導は、中国の特色ある社会主義の最も本質的な特長であり、中国の特色のある社会主義制度の最大の優位性であり、党と国家の根本的な所在、命脈の所在、全国の各民族の人民の利益と運命にかかわっている。新しい道のりでは、私たちは党の全面的な指導を堅持し、党の指導を絶えず充実させ、「四つの意識」を強め、「四つの自信」を固め、「二つの擁護」を徹底し、「国の大者」を銘記し、党の科学的な執政、民主的な執政、法に基づく執政の水準を絶えず向上させ、大局をまとめ、各方面を調整する核心となる党の役割を十分に発揮しなければならない。中国共産党は常に最も広範な人民の根本的な利益を代表し、人民と苦楽をともにして一致団結し、生死を共にし、自らのいかなる特殊な利益もなく、いかなる利害集団、いかなる利権団体、いかなる特権階級の利益も代表しない。中国共産党と国民を分割して対立させようとするいかなる企ても、絶対に思いのままにならない。9500万人以上の中国共産党員も、14億人余りの中国人民も許さない。歴史を鑑として、未来を切り開くには、マルクス主義の中国化を引き続き推進しなければならない。マルクス主義は私たちの立党と立国の根本的な指導思想であり、私たちの党の魂と旗印である。中国共産党はマルクス主義の基本原理を堅持し、事実に基づいて真実を求めることを堅持し、中国の実際から出発し、時代の大勢を洞察し、歴史の主導権を握り、苦難の探究を行う。絶えずマルクス主義の中国化と時代化を推し進め、中国人民が絶えず偉大な社会革命を推し進めるよう指導する。中国共産党はなぜできるのか、中国の特色のある社会主義はなぜ良いのか、それはマルクス主義によるものだ。新たな道のりでは、私たちはマルクス主義、レーニン主義、毛沢東思想、鄧小平理論、(2代前の総書記である江沢民氏の)「『3つの代表』の重要思想」、(前総書記である胡錦濤氏の)「科学的発展観」を堅持する。新時代の中国の特色ある社会主義思想を全面的に支持し、マルクス主義の基本原理と実際の中国の現状、中国の優れた伝統文化を組み合わせ、マルクス主義を用いて時代を見つめ、把握し、先導し、現代中国のマルクス主義と、21世紀のマルクス主義の発展を継続していく。歴史を教訓とし、未来を切り開くには中国の特色ある社会主義を堅持し、発展させる必要がある。独自の道を歩むのは、党の全ての理論と実践の足がかりであり、さらにこれは党の100年の闘争により得た歴史的結論だ。中国の特色ある社会主義は、党と人民が多大な苦しみと大きな代償を払ったことによる成果であり、これは中華民族が偉大な復興を実現する正しい道のりである。私たちは中国の特色ある社会主義を堅持し、発展させ、物質文明、政治文明、精神文明、社会文明、生態文明を一体的に発展し、促進する。中国式の近代化への新たな道を創造し、人類文明の新たな形態を作り出した。新たな道のりでは、党の基本理論、基本路線、基本戦略を堅持し、「五位一体」と「四つの全面」を一体的に推進する。改革開放を全面的に深化させる。新たな発展段階を足がかりとし、新しい発展理念を完全で正確かつ包括的に実行する。新しい発展パターンを構築し、高品質な発展を促進し、科学技術の自立を進める。人民自らが主であることを保障し、法の支配に従って国を統治し、社会主義の核心的価値体系を堅持する。発展中の人々の生活を保障し改善し、人と自然の調和と共生を堅持し、人民の繁栄、国家の強盛、美しい中国を共に推し進めていく。中華民族は、5000年以上の歴史の中で形成された輝かしい文明を持ち、中国共産党は100年の闘争と70年以上の統治経験があり、我々は積極的に人類文明の全ての有益な成果から学び、すべての有益な提案と善意の批判を歓迎する。ただ、私たちは決して「教師」のような偉そうな説教を受け入れることはできない。中国共産党と中国人民は、中国の発展していく運命を自らの手中に収め、自らの選択した道を歩む。歴史を教訓とし、未来を切り開くには、国防と軍隊の近代化を加速しなければならない。強国には強軍が必要で、軍は国を安定させなければならない。党が銃(軍)を指揮し、自ら人民の軍隊を建設することは血と火の闘争のなかで党が作り出し、破られない真理だ。人民解放軍は、党と人民のために不滅の功績を築き、(共産党によって守られた世の中である)「紅色江山」を守り、民族の尊厳を守る強力な柱であり、地域と世界平和を守る強力な力である。新しい道のりでは、新時代の党の強大な軍隊の思想を全面的に貫く。新時代の軍事戦略の指針を堅持し、人民解放軍に対する党の絶対的な指導力を維持し、中国の特色ある強大な軍隊の道を歩み続ける。政治建軍、改革強軍、科技(科学技術)強軍、人材強軍、法に基づき統治された軍隊を全面的に推進、人民解放軍を世界一流の軍隊へと建設する。より強力な能力と防御するための信頼性の高い手段で人民解放軍を建設すれば、国家主権、安全、発展の利益を守ることができる。
●「一帯一路」発展促す
 歴史を教訓とし、未来を切り開くには、人類運命共同体の構築を絶えず推進しなければならない。中華民族は平和、和睦、調和を5000年以上にわたって追求し、継承してきた。中華民族の血には、他人を侵略し、覇権を追求する遺伝子はない。中国共産党は人類の将来の運命に心を配り、世界のすべての先進的な力と協力して前進する。中国は常に世界平和の建設者であり、世界の発展の貢献者であり、国際秩序の擁護者である。新たな道のりでは、平和、開発、協力、互恵の旗印を高く掲げ、独立した外交政策を追求し、平和的発展の道を守り、新しい形の国際関係の構築を促進しなければならない。人類の運命共同体の道を守り、(中国の広域経済圏構想)「一帯一路」の質の高い発展を促し、世界に新たな機会を提供しなければならない。中国共産党は平和、開発、公正、正義、民主、自由という全人類共通の価値観を守る。協力を堅持し、対立をやめ、開放を守る。封鎖をやめ、互恵を守り、ゼロサムゲームをやめ、覇権主義と強権政治に反対する。歴史の車輪を明るい目標に向かって前進させる。中国人民は正義を重んじ、暴力を恐れない人々である。中華民族は強く、誇りと自信を持つ民族である。中国人民はこれまで他国の人民をいじめ、抑圧し、奴隷のようにしたことはない。過去にも現在にも、将来においてもありえない。同時に、中国の人民は、いかなる外部勢力が私たちをいじめ、抑圧し、奴隷のようにすることも決して許さない。故意に(圧力を)かけようとすれば、14億人を超える中国人民の血肉で築かれた「鋼鉄の長城」の前に打ちのめされることになるだろう。歴史を教訓とし、未来を切り開くには、多くの新しい歴史的特徴を持つ偉大な闘争が必要となる。戦い、勝利することは、中国共産党の無敵で強力な精神力である。偉大な夢を実現するには、粘り強く、たえまない戦闘が必要だ。今日、私たちは、歴史上のどの時代よりも中華民族の偉大な復興という目標に近づいている。これを実現するための自信と能力があり、同時にさらに大変な努力をする必要がある。新しい道のりでは、私たちは、危機意識を高め、常に安全な時も危険な状況を考え、総体国家安全観を貫き、開発と安全を統一的に計画する。中華民族の偉大な復興戦略と世界でこの100年なかった大変革の両方を統一的に計画する。我が国の社会の主要な矛盾の変化によってもたらされた新しい特徴と新しい要求を深く理解する。複雑な国際情勢がもたらす新たな矛盾と新たな課題を深く理解し、あえて戦い、闘争を得意とし、山があれば切り開き、水があれば橋をかけ、あらゆるリスクと挑戦を克服する。歴史を教訓とし、未来を切り開くには、中国人民がより大きな団結を強化しなければならない。100年の闘争の道のりで、中国共産党は統一戦線を重要な位置づけとし、常に最も広範な統一戦線を統合し発展させ、団結できるすべての力を結集し、動員できるすべての肯定的な要因を動員し、闘争の力を最大化する。愛国統一戦線は、中国共産党が中華民族の偉大な復興を達成するために、国内外のすべての中国人民を結集するための重要な武器である。新しい道のりでは、私たちは政治思想の誘導を強化し、共通認識を広く結集し、世界の英雄と人材を結集し、最大の公約数を探し続け、最大同心円を描き、国内外のすべての中国人民の力と心を一つの場所に集約する。民族の復興を達成するために力を結集しなければならない。歴史を教訓とし、未来を切り開くには、党が建設する新たな偉大な工程を継続的に推進しなければならない。自己革命への勇気は、中国共産党が他の政党と区別する顕著な兆候である。私たちの党は試練と苦難があったが、今も活発だ。その一つの重要な理由は、私たちは常に党が党を管理し、厳重に統治し、あらゆる歴史のなかで自らのリスクに絶えず対処し、世界情勢の深い変化の歴史的過程において、私たちの党が時代の先頭を走ってきた。歴史的過程において、国内外の様々なリスクと課題に直面するとき、常に国民のよりどころとなることを保証する。クリーンな政府を構築し腐敗との戦いを揺るぎなく促進し、党の高度な性質と純粋さを損なう全ての要因を断固排除する。健全な党を侵食するすべての病毒を除去し、党の質、色、味が変わることを防ぐ。新しい時代の中国の特色ある社会主義の歴史的過程において、党が常に強い指導的核心となるよう努力する。同志と友人のみなさん。私たちは「一国二制度」「香港人による香港の統治」「マカオ人によるマカオの統治」、高度な自治の方針を全面的かつ正確に徹底し、香港、マカオ特別行政区に対する中央の全面的な管轄権を実行する。特別行政区が国家の安全を守る法律制度と執行体制を実施し、国家主権と安全、発展の利益を守り、特別行政区の社会の大局的な安定を維持し、香港とマカオの長期的な繁栄と安定を保たねばならない。台湾問題を解決し、祖国の完全な統一を実現することは、中国共産党の変わらぬ歴史的任務であり、中華の人々全体の共通の願いだ。「一つの中国」の原則と(それを認め合ったとする)「92年コンセンサス」を堅持し、祖国の平和統一プロセスを推進する。両岸の同胞を含むすべての中華の人々は、心と心を一つにし、団結して前進し、いかなる「台湾独立」のたくらみも断固として粉砕し、民族復興の美しい未来を創造しなければならない。いかなる人も中国人民が国家主権と領土を完全に守るという強い決心、意志、強大な能力を見くびってはならない。同志と友人のみなさん。100年前、中国共産党が成立した時は50人強の党員しかいなかったが、今では9500万人以上の党員を擁し、14億人余りの人口大国を指導し、世界的で重大な影響力を持つ世界最大の政権政党になった。100年前、中華民族が世界の前に示したのは一種の落ちぶれた姿だった。今日、中華民族は世界に向けて活気に満ちた姿を見せ、偉大な復興に向けて阻むことのできない歩みを進めている。同志と友人のみなさん。中国共産党は中華民族の不滅の偉業を志し、100年はまさに風采も文才も盛りだ。過去を振り返り、未来を展望し、中国共産党の強い指導があり、全国の各民族の人民の緊密な団結があれば、社会主義現代化強国を全面的に建設する目標は必ず実現でき、中華民族の偉大な復興という中国の夢は必ず実現できる。偉大で、光栄で、正しい中国共産党万歳!偉大で、光栄で、英雄である中国人民万歳!

*1-2:https://www.chugoku-np.co.jp/column/article/article.php?comment_id=770962&comment_sub_id=0&category_id=142 (中国新聞 2021/7/8) 骨太の方針 財政の裏付け見通せず
 菅義偉政権初となる「骨太の方針」が決まった。政府の経済財政運営の基本的な方向性を示す指針で、新型コロナウイルス対策の強化に加え、デジタル化、脱炭素化、地方創生、少子化対策の4分野をコロナ後の成長の原動力と位置づけた。いずれも日本が以前から直面している課題であるが、政権が当然取り組むべき政策を寄せ集めたように映る。総花的で新鮮味に欠ける。テーマや目標を並べても、確実に実行できなければ意味がない。にもかかわらず、どの政策を優先し、財源を含めてどうやって実現していくのかも判然としない。踏み込み不足と言わざるを得ない。コロナ対策では、ワクチン接種の見通しを「10月から11月にかけて終える」と明記した。ワクチン接種の加速で、感染収束の機運を高め、支持率回復につなげたい狙いがあるのだろう。さらに、首相が肩入れする「こども庁」の創設検討や最低賃金の引き上げなども盛り込んでいる。秋までに行われる衆院選に向けて、国民の関心を引きたい思惑も透ける。骨太の方針が政権・与党のアピールの場になりつつあるのではないか。存在感を失い、今のような形骸化が進めば、もはや役割を終えたと言われても仕方あるまい。とりわけ看過できないのは、一連の政策を裏付ける持続可能な財政の姿が見えてこない点である。国と地方の政策経費を税収などで賄えているかを示す基礎的財政収支(プライマリーバランス=PB)について、政府は2025年度に黒字化する財政健全化の目標を掲げている。コロナ禍を受けて昨年は明記しなかったが、今回は黒字化目標を「堅持する」との言葉が復活した。同時に新型コロナが経済と財政に及ぼす影響などを21年度中に検証し、「目標年度を再確認する」とした。目標の見直しや先延ばしに含みを持たせた形だ。財政健全化への道筋を曖昧にしては、骨太の方針の意義自体が問われる。コロナ禍に伴う経済対策で、国の20年度の一般会計の歳出総額は175兆円を超え、借金に当たる国債は112兆円を新規に発行した。21年度予算もコロナ対策の予備費に5兆円を積むなど、過去最大規模の106兆円に膨らんだ。感染の収束はまだ見通せず、追加の支出が必要になる恐れもある。内閣府が今年1月にまとめた中長期の経済財政の試算では、日本経済がたとえ高成長を果たしたとしても、PBは25年度には7兆3千億円程度の赤字となる見通しだ。目標達成は絶望的なことは明らかである。それでも目標の「堅持」を修正しなかったのは、こちらも衆院選を意識し、財政健全化の議論を先送りにしたのではないか。欧米の政府は、財政出動とともに財源確保策も打ち出している。米国は経済対策の財源を企業や富裕者層の増税などで調達する方針で、欧州連合(EU)も復興基金の財源として国境炭素税などを検討している。年度内に行われる検証作業では、安易な目標の先送りに終わらせず、歳出・歳入両面で具体的な財政健全化策の検討を急ぐ必要がある。 

*1-3:https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA11A0I011062021000000/ (日経新聞 2021年6月24日) コロナ予算、30兆円使い残し 消化はGDP比7%、米13%に見劣り 成長へ財政回らず
 新型コロナウイルス禍を受けて2020年春から積み増してきた国の予算73兆円のうち、約30兆円を使い残していることが判明した。家計や企業への支払いを確認できたのは約35兆円と名目国内総生産(GDP)の7%程度にとどまった。GDPの13%を支出した米国と比べ財政出動の効果が限られる展開となっている。危機脱却へ財政ニーズが強い時にもかかわらず予算枠の4割を使い残す異例の事態は、日本のコロナ対応の機能不全ぶりを映し出している。脱炭素関連の投資やデジタル化の推進、人材教育など戦略分野のコロナ禍後の成長を押し上げる財政資金ニーズは大きい。にもかかわらず予算の規模を大きくみせるために枠の確保ありきで政策の中身が置き去りになっており、成長分野へ予算が行き届いていない。脱炭素へ2兆円を投じた基金は、支援の中身が詰まっていないなかで枠の大きさの議論が先行して3次補正に盛り込まれた。経済産業省が基金の支援対象となる分野を公表したのは4月に入ってからで、ようやく企業の公募が始まった段階だ。使い残しが多いのは約21兆円の追加歳出を盛り込んだ20年度3次補正が21年1月に成立したことに加え、コロナ禍の長期化が原因だ。翌年度への予算の繰り越しが「30兆円程度」(菅義偉首相)出る20年度は極めて異例だ。東日本大震災後に多額の予算を積んだ11~12年度でも繰越額と不用額を合わせても年10兆円を超えた程度だった。コロナ対策では20年6月に当時の安倍晋三首相が記者会見で「GDPの4割に上る世界最大」規模の「230兆円」の経済対策で「日本経済を守り抜く」と打ち出した。約1年を経て実際に家計や企業に出回った国費は資金繰り支援策を除くベースでGDP比7%程度。4月末までに同13%の2.8兆ドル(約307兆円)を消化した米国と比べて遅れが目立つ。4割と安倍前首相が打ち出したのは財政支出に民間資金も加えた事業規模ベースの経済対策の金額だった。財政投融資を活用した100兆円規模の資金繰り支援策が大きい。資金繰り支援の比率がコロナ対策の9%にとどまる米国と対照的だ。予算の執行状況は20年4月以降に打ち出した経済対策などについて、内閣府が21年5月にまとめた調査を基に日本経済新聞が資金繰り支援策を除いて集計。100億円以上の事業が対象で、国費ベースで9割以上をカバーしている。1人10万円の給付金など緊急を要した家計支援策は予算の9割強がすでに支払われるなど執行が進む。一方、GoToトラベルなど消費活性化の予算は進捗率が35%にとどまった。ワクチン接種の遅れが消費や投資を制約させた影響が大きい。米欧や中国はコロナ後の成長基盤づくりをにらんでグリーン関連政策やデジタル化などの戦略分野へ中長期的な財政出動を競う。日本では政府・与党内で21年度補正予算を求める声が強まりつつあるが、規模を大きくみせる枠の確保競争に終始せずに、成長につなげる政策の中身を詰める作業が欠かせない。

*1-4:https://www.nikkei.com/article/DGXZQODK0794K0X00C21A7000000/ (日経新聞社説 2021年7月7日) 成長促進と財政規律を両立できる予算に
 政府は7日の閣議で、2022年度予算の概算要求基準を了解した。これに沿った各省庁の概算要求を8月末に締め切り、年末に予算案を編成する運びだ。財政の規律を保ちつつ、新型コロナウイルス対策や成長基盤の強化に国費を重点配分する必要がある。不要不急の支出で予算をいたずらに膨らませてはならない。21年度予算の編成は、コロナ禍で異例の対応を迫られた。感染症の収束を予見できないという理由で明確な概算要求基準の設定を見送り、各省庁の概算要求の締め切りも1カ月延ばした。コロナ対策については、金額を明記しない「事項要求」を今回も認める。ただ成長戦略を推進するための「特別枠」を設け、高齢化の進展に伴う社会保障費の「自然増」を抑える目安を示すなど、例年の手法に近い形に戻した。コロナ禍の克服はいまも最優先の課題だ。とはいえワクチンの接種率が上がり、経済社会活動の正常化が進むにつれて、この先の成長基盤の強化や財政の健全化をより強く意識せざるを得ない。緊急時でも投入できる国費には限りがある。政府が「青天井」の概算要求を見直し、一定の基準を復活させたのは妥当だろう。重要なのは無駄やばらまきを排し「賢い支出」に徹する姿勢だ。20~21年度の国の一般会計総額は当初予算と補正予算の合計で280兆円を超えたが、使い残しや繰り越しも目立つという。その検証を怠ったまま、むやみに予算を積み上げていいはずがない。コロナ対応の名目で経済対策を繰り返しても、困窮者の救済や病床の確保といった問題はなかなか解消しない。背景には様々な要因があろうが、予算配分の優先順位も正しいとは言い難い。成長戦略にも同じことが言える。デジタル化やグリーン化などの推進に予算を重点配分するのは当然だが、緊急性や必要性の高い事業を選別しなければ、絵に描いた餅になりかねない。各省庁は節度とメリハリのある概算要求を心がけるべきだ。景気の回復で税収が堅調なのを幸いに、コロナ対策の不透明な事項要求を連発したり、成長戦略の名目で不要な公共事業や施設整備を強要したりするのは許されない。コロナ対策はもちろん、成長の促進や財源の確保に心を砕くのは米欧も同じだ。日本も責任ある予算編成を心がけたい。

*1-5:https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA24DN70U1A620C2000000/ (日経新聞 2021年6月25日) 渡辺努・東大教授「賃金上がらぬ問題、まず認識を」、安いニッポン・ガラパゴスの転機 経営者・識者に聞く
国内では安定した生活を送っているのに、海外から見れば安く、貧しくなる日本。気づかないうちに深刻度を増すこの病理から、どうしたら抜け出せるのか。渡辺努・東大教授に聞いた。
――なぜ日本は安い国になったのでしょうか。
 「2012年末からの安倍晋三政権下では黒田東彦総裁が就任した日銀の異次元緩和もあって円安が進んだ。政策の目的は円安だけでなく物価も賃金も上げることだったが、読みが違った。円安なのに物価も賃金も上がらなかった。海外からみれば日本のサービスは安くなる」
――日本人からみると海外では高くて買えないものが増えます。日本のモノやサービスの質は国際的に見て相対的に低下していくのでしょうか。
 「たとえばパスタやラーメンをつくるときに材料になる小麦は輸入価格が高くなる。企業は最終製品を値上げできていないので、消費者は痛くもかゆくもない。企業はどうしているか。コスト削減をして、値段を据え置いて頑張る。あるいは商品のサイズが小さくなる。この場合は質が落ちている。消費者の満足度が落ちている。そして賃金は上がらない」
――訪日外国人(インバウンド)向けのホテルでは外国人用の高級価格が設定されています。こうした価格の二極化は広がっていくのでしょうか。
 「不動産ではそういうことが起きている。ある規格のマンションが、シドニーと日本で比較され、まるで貿易ができるかのように裁定が働いている。海外の人が投機的に家を持つと、日本人の給料では買えなくなってくる」。「同じ商品やサービスなのに2つの価格があるという意味での二重価格は国内では発生しにくいと思う。だが日本企業の製品価格は国内向けと海外向けで違ってくる。海外で物価上昇が進めば、現地の競合製品が値上がりするので日本企業も値上げできる。だが日本ではできない。こうした二極化は既に起きている」
――この状況を打開する政策はあるのでしょうか。
 「もともとは企業が賃金や価格を上げられないことに原因がある。これは企業行動にインプットされてしまっている。これまでも製品やサービスの値段を上げようとした企業はあるが、値上げすると客が逃げていく。そういうことから企業は学習していく。悪循環だ。日本の消費者が特別だということだ。海外の消費者は理由のある値上げについては仕方ないと受け入れる。日本人は一円たりとも値上げはだめだと反応する。アベノミクスが本格化した13年は一部の企業が値上げしたが、結局売り上げが落ちてしまった」。「この問題が解決していない理由は、みんな気がついていないからだ。値段が上がらないのはいいことだとポジティブに考える人がいる。賃金は上がらないので、値段は低い方が良いという。まず賃金が上がっていない問題を認識することが大事だ」

*1-6:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20210702&ng=DGKKZO73481460R00C21A7TB2000 (日経新聞 2021.7.2) 医薬原料調達で「脱中国」 塩野義など生産国内回帰へ、依存度下げ安定確保、コスト5倍の試算も
 医薬品原材料の生産を巡り、国内製薬業界で海外依存を見直す動きが出てきた。抗菌剤など欠品すると医療に大きな支障が出る品目で、各社が国内回帰に乗り出す。塩野義製薬は2022年にも手術用抗菌剤の原料の生産を岩手県で始める。医薬品原料は中国の生産シェアが高く供給リスクが指摘されてきた。安定調達へ「脱中国」が進むが、国内回帰にはコスト面で課題が残る。医薬品原材料とは医薬品の有効成分が含まれる原薬やそのもとになる化学物質。国内回帰の動きがあるのは主に後発薬の原材料だ。後発薬は公定価格が安く抑えられており、製造原価を下げる目的で原材料生産の海外移転が進んできた。塩野義は医薬品製造子会社のシオノギファーマ(大阪府摂津市)を通じ、「セファゾリン」など「セフェム系」と呼ぶ抗菌剤の原料を生産する設備を21年末までに金ケ崎工場(岩手県金ケ崎町)に設ける。年産能力37トンで稼働し、5年後に50トンに引き上げる。生産した原料は抗菌剤を手がける国内後発薬メーカーに売る見込み。塩野義は初期投資としてまず20億円強を投じる。後発薬メーカーは従来、セフェム系原料のほぼ全てを輸入に頼ってきた。特に中国依存度が約3割と高い。抗菌剤は手術後の感染症などを防ぐために投与する。欠品すると手術が難しくなり医療体制の維持に影響が出かねない、重要な薬だ。厚生労働省は医療現場に重要な医薬品として抗菌剤や血栓予防剤など約500品目を定め、安定確保を製薬会社に呼びかけている。最重要と指定するセフェム系原料は19年に国内で50トン使われ、塩野義の拠点がフル稼働すれば全量をまかなえる計算だ。抗菌剤市場全体でみても約1割をカバーできる見通しだ。抗菌剤では19年、中国当局が環境規制を理由に現地メーカーにセファゾリン原料の生産を停止するよう命令。調達難によってセファゾリンで国内シェア6割の日医工が供給停止に追い込まれ、医療現場に影響が出た。国内調達できればこうしたリスクを低減できる。明治ホールディングス傘下のMeiji Seikaファルマも22年3月期中に岐阜工場(岐阜県北方町)で「ペニシリン系」と呼ぶ抗菌剤の原料の試験生産を始める。現在は海外調達しており中国などへの依存度が高い。同社は「試験生産を経て、生産ノウハウを再度蓄積する」とする。ニプロも滋賀県内にペニシリン系の原材料の生産施設を設ける予定。投資額は数十億円になるとみられる。厚労省によると後発薬原材料を調達する製造所の6割が海外で、中国が約14%、インドが約12%と高い。一方で、各国の保護主義政策に供給が左右されかねない状況だ。政府がまとめた21年版の通商白書では、4月時点で50強の国が医療品を輸出制限している。インド政府は4月、国内メーカーがライセンス生産している新型コロナウイルス治療薬の輸出を当面禁止とし、国内使用を優先した。米国では政府主導で生産の国内回帰の動きが進む。バイデン米大統領は2月、サプライチェーン(供給網)の見直しに関する大統領令を出した。半導体が注目されたが、医薬品も対象とする。米食品医薬品局(FDA)は同月、新型コロナ禍により中国から原薬調達が難しくなり、一部の医薬品が供給不足に陥ったと明らかにした。ただ、原薬生産の国内回帰には課題が残る。製薬会社によると日本での原材料製造コストは中国の5倍以上との試算もある。日本製薬工業協会の中山譲治前会長(第一三共常勤顧問)は「国内回帰は薬のコスト上昇につながりかねない」と話す。薬価が定まっているなか、メーカーがコスト上昇分を転嫁し、流通業者への納入価格を上げるのは容易ではない。厚労省の中では「安定確保が必要な医薬品の薬価算定で『例外』を設けるべきか否かの議論も必要」(幹部)との声もある。

*1-7:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/704218 (佐賀新聞 2021年7月10日) 無観客五輪、開催意義を実感させよ
 政府が東京都に4度目の新型コロナウイルス緊急事態宣言を発令し、埼玉、千葉、神奈川3県に対するまん延防止等重点措置を延長することを決定した。これを受け、政府と大会組織委員会、東京都、国際オリンピック委員会(IOC)など5者が協議し、東京五輪は首都圏全ての会場を無観客とすることを決めた。近代五輪が無観客で開催されるのは初めてのことだ。パンデミック(世界的大流行)の中、異例の大会となる。首都圏での感染はさらに拡大を続けるとの予測もある。組織委は選手村を中心に、感染対策の手を緩めることなく万全を期すとともに、無観客であっても五輪の開催意義を市民が実感できるよう「舞台」を整えなければならない。既に多くの選手団が事前合宿のため入国し、各自治体で練習に励んでいる。自国の検査で陰性証明を受けていたにもかかわらず、感染力の強いデルタ株による感染が判明した選手団員が出たのは組織委にとって驚きだった。入念な検査が入国時も大会中も欠かせないことを思い知ることになった。海外に目を向ければ、大規模広域大会の欧州サッカー選手権で英国やフィンランドのファンから多くの感染者が出た。競技場や街の広場、あるいはパブでマスクをせずに肩を組み、歓声を上げるなどしたのが原因とされる。注目度の高いスポーツ大会、とりわけ国の代表選手が出場する大会では、喜びを爆発させるファンが多数出る傾向がある。世界保健機関(WHO)はこれに教訓にして、IOCと組織委に助言を続けていくとした。だが、国内では、政府の新型コロナ感染症対策分科会の尾身茂会長ら専門家有志が「無観客が望ましい」との提言を公表していた。政府はすぐには耳を傾けず、会場定員の50%以内で、最大1万人とする観客基準で突き進もうとした。独善的な姿勢を真摯に反省すべきである。6月下旬の共同通信の電話世論調査では、五輪とパラリンピックの開催による感染再拡大の可能性について「不安を感じている」と回答した人が86・7%に達していた。今回の無観客決断はいかにも遅かった。首都圏の会場が無観客と決まったことで、ボランティアと警備担当要員の規模は大規模な見直しが必要になった。主に観客が熱中症になった場合の対応に当たる予定だった医療従事者も規模が見直され、大幅な人員縮小が見込まれる。医療現場の負担が軽減され、最優先で取り組まなければならないコロナ感染対応で、人的な余裕が生まれるメリットも期待できそうだ。しかし、安倍晋三前首相が大会の1年延期を決定したときに語った「完全な形での開催」は実現しなかった。菅義偉首相が何度となく強調してきた「ウイルスに打ち勝った証し」としての五輪の実現も難しくなった。バッハIOC会長が言う「誰もが犠牲を強いられる大会」になるのは明らかだ。観客と喜びを共にしたいと望んでいた選手、会場で観戦できるはずだった市民はさぞかし残念だろう。それでも開催に懐疑的な人、開催を持ちわびている人が共に意義深く感じる大会にしなくてはならない。菅首相らにはその責務がある。

<客観的根拠に基づく軌道修正が不得意な国、日本>
*2-1-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20210630&ng=DGKKZO73407630Q1A630C2MM8000 (日経新聞 2021.6.30) エネ基本計画、「原発建て替え」盛らず 脱炭素の道筋、不透明に
 経済産業省は今夏をメドに策定するエネルギー基本計画に、将来的な原子力発電所の建て替えを盛り込まない方向で調整に入った。東京電力柏崎刈羽原発で不祥事が相次ぐなど原発への信頼回復ができていないと判断した。原発建て替えの明記を見送ることで、2050年の脱炭素社会の実現に向けた道筋が描きにくくなる。国の中長期のエネルギー政策の方向性を示すエネルギー基本計画はおおむね3年に1度見直しており、作業が大詰めを迎えている。二酸化炭素(CO2)の排出抑制につながる原発の建て替えを明記するかどうかは、エネ基本計画見直しの最大の焦点となっていた。法律上の稼働期間の上限である60年に達する原発が今後出てくることから、政府として建て替えを進めていく方針を明記し、将来にわたって原発を活用する姿勢を示せるかに注目が集まっていた。東電福島第1原発の事故後の14年に策定したエネ基本計画で、原発建て替えの表現を削除して以来、建て替えの記載は消えたままだった。7月にも原案を示す新たな計画では建て替えを明記しない方向だ。判断を先送りし、3年後に計画を見直す際にあらためて判断する。国内の原発は建設中の3基を含め36基ある。東電福島第1原発の事故後、再稼働できたのはこのうち10基にとどまる。直近では東電柏崎刈羽原発でテロ対策の不備など不祥事が相次ぎ、信頼回復が遠のいている。原発はCO2を排出しない脱炭素電源だ。政府は30年度までに温暖化ガスの排出量を13年度比で46%以上削減し、50年には実質ゼロをめざすと決めた。エネ計画について議論する経産省の有識者会合でも「最大限活用すべきだ」との指摘が出ていた。地球環境産業技術研究機構(京都府木津川市)が5月にまとめた脱炭素のシナリオ分析によると、原発の活用は電力コストの上昇を和らげる効果もある。50年に再生エネで電力すべてを賄うと電力コストは今の4倍程度に増える。送電網の整備などに大きな費用がかかると見込まれるためだ。一方、再生エネで5割、原発で1割を賄うケースでは2倍程度に上昇を抑えられると試算する。

*2-1-2:https://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-1212256.html (琉球新報社説 2020年10月23日) 原発処理水海洋放出 地元の不安を押し切るな
 東京電力福島第1原発で増え続ける処理水の問題で、政府は海洋放出の方針を月内に決定する。地元は漁業者を中心に反対の声を上げており、影響を受ける人々と向き合わないまま方針決定に突き進むことになってしまう。処理水には放射性物質トリチウムが含まれる。環境や人体に与える影響を巡る検証は十分ではなく、復興に取り組む地場産業に及ぶ風評被害にも懸念が尽きない。放射性物質の除去技術や安全性が確立するまでの間の新たな保管場所の確保など、海洋放出を回避する方策を探るべきだ。第1原発では溶融核燃料(デブリ)を冷やすための注水などで、現在も1日に170トン程度の汚染水が増え続けている。東電は多核種除去設備(ALPS)を使って汚染水から放射性物質を取り除く処理をしているが、水に似た性質があるトリチウムは除去することができない。東電は処理水を保管する原発敷地内のタンク容量が、2022年夏に限界に達するとしている。政府も処分方法の決定を急ぐ姿勢を強めており、菅義偉首相は21日に「いつまでも先送りできない」と語った。背景には、海洋への放出を始めるには設備工事や原子力規制委員会の審査などで2年程度の準備を要するため、現状が決定のタイムリミットだとする判断がある。だが、時間切れを理由に地元の反対を押し切ることなど許されるはずがない。炉心溶融(メルトダウン)した原発から出る処理水を海に流し続けることによる環境影響は簡単に予見できるものではなく、問題視するのは当然だ。処理水の保管を東電の敷地内に限定せず、政府としても別の保管先の確保を検討する対応などがとれるのではないか。トリチウムの除去技術開発に注力することも、原発事故を起こした東電や国の責任であるはずだ。また、震災の津波でさらわれた漂着物が沖縄で見つかることがあるように、海洋放出の影響は原発沿岸だけにとどまらない。周辺諸国からの非難は避けられないだろう。19年には、韓国による水産物の輸入規制を巡って世界貿易機関(WTO)の紛争処理手続きで日本が敗訴した。国際社会は福島の原発事故を終わったと見なしていないことを自覚する必要がある。処理水の扱いに関する議論は13年に始まった。この間には、17年に東電の川村隆会長(当時)が海洋放出について「判断はもうしている」と発言し、地元の反発を招いた。18年には、国民の意見を聞く公聴会の直前に、本来除去されているべきトリチウム以外の放射性物質が処理水に残留しているのが発覚した。東電、政府の結論ありきの姿勢やデータに対する不信も、処理水の処分方法が長年決まらない要因の一つにとなってきた。地元や国民の不安の払拭を第一とした、誠実で慎重な対応が必要だ。

*2-2-1:https://www.tokyo-np.co.jp/article/112551 (東京新聞 2021年6月24日) 「混乱するのが見えている」30キロ圏に28万人 広域避難不安拭えず 老朽・美浜原発3号機再稼働
 運転開始から40年を超える関西電力美浜原発3号機(福井県美浜町)が6月23日、10年ぶりに再稼働した。重大事故が起きた場合、避難対象となる30キロ圏内には再稼働した原発では最多の28万人弱が暮らす。県内外へ避難が計画されているが、避難先の確保など実効性に疑問符が付いたままだ。中心市街地が30キロ圏内にある福井県越前市は人口約8万人。2019年8月に初の広域避難訓練が行われ、今年1月には国の避難計画がまとまった。美浜3号機で重大事故が発生すれば、北に位置する同県坂井市やあわら市、石川県小松市や能美市へ避難する。県や市の計画では、地区ごとに避難先の小中学校や公民館が細かく設定され、病院の入院患者や高齢者福祉施設の入所者などの搬送先も決められた。しかし、福祉施設からは懸念の声が上がる。障害者施設で入所者の避難を担当する40代女性は「施設で毎年訓練をしているが、実際の避難では手伝う人も車両も足りず混乱するのが目に見えている。着の身着のまま逃げたとしても、布団などの物資はどうなるのか」と表情を曇らせた。
◆実効性ない計画なら…水戸地裁は運転禁じる判決
 広域避難を巡っては、30キロ圏に国内最多の94万人を抱える日本原子力発電東海第二原発(茨城県東海村)について、水戸地裁は3月、運転を禁じる判決を出した。市町村で避難計画の策定が遅れており、実現可能な避難計画がなければ運転を認めないという基準が示された形だ。福井県の担当者は美浜原発について「東海第二とは状況が違う。避難に使用するバスや避難先などをしっかり確保できる計画になっている」と強調する。ただ、美浜原発周辺の避難人口は、既に再稼働した福井県内にある2原発よりも多い。住民を避難させる場合に県内にあるバスの3分の1にあたる278台が必要となるなど、一段とハードルが高い。新型コロナウイルスの感染拡大で避難の難しさはさらに増した。人が密になるのを避けるためにバスの台数を増やし、避難所で避難者が間隔を空けることを避難計画に盛り込んだ。だが、昨年8月に関電大飯原発(福井県おおい町)などで行った訓練では、避難所の収容人数が減り、新たな避難場所の確保が必要になるという課題も浮かんだ。今年1月には福井県内の記録的大雪で、避難で使う国道8号や北陸自動車道で車の立ち往生が発生し、長時間通行できなくなった。福祉施設の責任者を務める50代男性は「計画で避難先が決まっていても実際に役に立つのか分からない。いざとなったら入所者は計画とは別の県外施設へ避難させる」と話した。

*2-2-2:https://www.shinmai.co.jp/news/article/CNTS2021062700079 (信濃毎日新聞社説 2021/6/27) 40年超原発稼働 例外が常態化する懸念
 関西電力が、福井県にある美浜原発3号機を再稼働させた。運転開始から44年を経た老朽原発だ。原発の運転には、2011年の東京電力福島第1原発事故を踏まえ「原則40年」とするルールが導入されている。原則から外れたケースが、初めて現実となった。「例外中の例外」として、最長20年の延長を認める規定もある。40年の寿命を迎えた原発から順次廃炉にし、脱原発を着実に進める―。事故を機に多くの国民が原発の危険性に気付くなか、そう考え導入されたルールだった。関西電力は、同様に老朽化した高浜1、2号機の再稼働も進める方針だ。他の電力会社にも再稼働を目指す40年超原発がある。今後、例外が常態化していく恐れがある。老朽原発は建材の劣化など安全性に課題があり、地域住民には不安が募っている。国民の理解を得ずに原発推進の既成事実を積み重ねるような対応は、看過できない。事故の教訓に立ち戻り、40年ルールの重要性を再確認する必要がある。安倍晋三前政権以降、政府は、脱原発を求める世論をよそに実質的な原発回帰を進めてきた。経済産業省と大手電力は、今回の再稼働を原発復権に向けた足掛かりの一つと捉えているようだ。美浜3号機は、設置が義務付けられたテロ対策の施設が未完成のため、今年10月の設置期限までに再び停止となる。わずかな期間の再稼働にこだわったのも、40年超原発の再稼働に道を開くことを重視したからではないか。福井県が再稼働に同意したのは今年4月。同意を条件とする巨額の交付金を経産省が県に提示するなど、国が積極的な役割を果たしたことが分かっている。菅義偉政権は、世界的な脱炭素化の加速を受け温室効果ガスの大幅削減を打ち出した。最近は、温室ガスを排出しないことを名目に原発推進を求める議員連盟が自民党にできるなど、政府・与党に表だった動きも目立つ。原発政策がこれまで、ごまかしの連続だったことを忘れてはならない。典型は使用済み核燃料の問題だろう。今回も、再稼働で増えていくのは分かっているのに、一時保管する関電の原発の燃料プールは約8割が埋まったままだ。行き場は決まっていない。原発にいつまで頼るのか、使用済み核燃料はどうするのか。数々の問題を放置して目先の経営や業界の利益を優先する姿勢は、到底認めることができない。

*2-3-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20210707&ng=DGKKZO73642330X00C21A7MM0000 (日経新聞 2021.7.7) 玄海原発 地震想定見直し 規制委、九電に求める
 原子力規制委員会は7日、九州電力が玄海原子力発電所(佐賀県玄海町)で想定する地震の最大の揺れを引き上げる必要があるとの見解を示した。4月に厳しくした地震の揺れの想定方法に基づき電力会社に見直しを求めるのは初めて。九電は3年以内に想定を見直して規制委の再審査に合格する必要がある。想定する揺れの大きさは基準地震動と呼ばれ地震対策の前提になる。規制委は4月、原発周辺の活断層などによる地震に加え、過去に国内で発生した90件ほどの地震データを使って揺れを想定する方法を導入した。電力各社に対し、最大の揺れの想定を見直す必要があるかどうか9カ月以内に回答するよう要請した。九電は4月、新たな方法でも玄海原発の揺れの想定は変わらないと規制委に伝えたが、規制委は7日、この主張を却下した。九電は想定を作り直し、規制委の再審査を受けることになる。耐震補強の追加工事が必要になれば費用が膨らむ可能性がある。玄海原発3、4号機は2018年に再稼働している。九電の川内原発(鹿児島県薩摩川内市)と日本原子力発電の東海第2原発(茨城県東海村)は従来の揺れの想定を変える方針を規制委にすでに報告済みだ。

*2-3-2:https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGG201GK0Q1A120C2000000/?n_cid=SPTMG002 (日経新聞 2021年1月20日) 原発「未知の活断層」対策強化 規制委が規則改正案了承
 原子力規制委員会は20日の定例会で、原子力発電所などで「未知の活断層」への備えを強化するため、新しい評価手法を盛り込んだ関連規則の改正案を了承した。電力会社は原発を襲う揺れを再評価し、現行想定を上回った場合、追加工事などの対策を迫られる可能性がある。一般からの意見公募を経て、3月をメドに決定、施行する。従来より多くの地震データを反映した評価手法を用いて、原発ごとに未知の活断層による揺れの再評価を電力会社に求める。再評価の結果が現在想定している揺れ(基準地震動)を上回る場合、改正規則の施行後9カ月以内に原子炉設置変更許可を申請し、施行後3年以内に審査に合格して許可を得る必要がある。影響を受けるのは原発周辺に目立った活断層がなく、未知の活断層の影響を重視している原発で、九州電力の玄海原発(佐賀県玄海町)や川内原発(鹿児島県薩摩川内市)などだ。再評価結果が今の想定を上回り、現在の施設では耐震性が不十分だと判断されれば、追加工事などが必要になる可能性もある。追加工事の猶予期間については工事規模などを踏まえて、規制委があらためて設定する。

*2-4:https://www.data-max.co.jp/article/39260 (Net IB News 2020年12月21日) 行き場を失う原発の使用済み核燃料~5年後に9原発で容量9割が埋まると試算
 原発を稼働していると毎年発生する、放射能を含む使用済み核燃料が行き場を失っている。原子力発電所で発生した使用済みの核燃料は、再処理工場を経て最終処分場やMOX燃料加工施設に運ばれるが、再処理を行うまでの間は、原子力発電所内の「燃料プール(貯蔵施設)」や中間貯蔵施設などで一時保管される。現在、日本国内で貯蔵されている使用済み核燃料は約1万8,000t。使用済み核燃料は原発を稼働すると増え続けるため、その一時保管場所が課題になってきた。そのため、九州電力の玄海原子力発電所の使用済燃料貯蔵設備の貯蔵能力の増強(290t)、同敷地内の乾式貯蔵施設(440t)の設置、四国電力の伊方発電所敷地内の乾式貯蔵施設(500t)の設置、中部電力の浜岡原発敷地内の乾式貯蔵施設(400t)の設置などが見込まれている。また、東京電力ホールディングス(株)と日本原子力発電(株)が出資し、リサイクル燃料貯蔵(株)が運営する青森県むつ市の中間貯蔵施設が2021年度に操業開始を目指すとされ、ここでは最長で50年、3,000tの保管が予定されている。このように約4,600t相当の使用済み燃料貯蔵施設の拡大に向けて取り組みがなされている一方で、表のように電気事業(連)の試算値では、約5年後に東京電力の福島第二で88%、柏崎刈羽で100%、中部電力の浜岡原発で90%、関西電力の美浜原発で89%、高浜原発で98%、大飯原発で93%、九州電力の川内原発で93%、日本原子力発電の東海第二原発で96%などと9つの原発で一時保管場所(管理容量)のおよそ9割が埋まってしまうと試算されている。さらに、使用済み核燃料を再処理工場で処理した後の高レベル放射性廃棄物を地層に埋める最終処分場の選定問題も難航している。原発はCO2排出量の削減に役立つとされるものの、発電後の放射性廃棄物の問題を含めて真摯に見つめたうえで、今後の方針を再度見直すべきではないか。

*2-5:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20210626&ng=DGKKZO73297070V20C21A6TB0000 (日経新聞 2021.6.26) 小型原発の開発、日本勢動く 脱炭素へ実用化探る、三菱重、建設費半額に/日立、カナダで商談
 原子力発電所の是非を巡る議論が続く日本でも小型原発を開発する動きが出てきた。三菱重工業は出力が従来の3分の1の原子炉を開発する。小型化して建設費を抑え、安全性も高めた。小型原発にはIHIなども米新興企業に出資して参画する。脱炭素につながる電源としての実用化への取り組みは欧米が先行していた。三菱重工は国内の電力大手と小型炉の初期的な設計の協議に入った。出力は30万キロワットと、従来の100万~130万キロワットの3分の1以下だ。工場で複数の部品で構成するモジュールをつくり、現地で据え付ける。設備も簡素化し、現地での作業量を減らせる。電力需要にあわせ設置数を変えられ、将来は海外での受注も視野に入れる。建設費は1基2000億円台と、東日本大震災前に5000億円規模とされた大型炉の半分以下にする。同社の小型炉は蒸気発生器を原子炉内に内蔵し、ポンプなしで冷却水が循環する。非常用電源が災害などで失われた際の安全性を高めたという。東日本大震災では東京電力福島第1原子力発電所で非常用電源が機能しなくなり、冷却できなくなった。小型炉は地下に設置でき、航空機などによる衝突事故への備えが高まる。密閉性が高まり放射性物質の飛散も防げる。商用運転の事例は欧米でもないが、複数の建設計画が進んでいる。米国では新興企業のニュースケール・パワーが小型炉を開発し、米規制当局の技術審査を終えた。出力は約7万7000キロワットで、複数を組み合わせて使う。プールにまるごと沈め、非常用電源なしでも冷却でき事故が起きにくいという。これまで5年から7年かかっていた工期も約3年に短くできる。「2040年代までに400~1000基の受注をめざす」(チーフ・コマーシャル・オフィサーのトム・ムンディ氏)としており、世界各国で11の新設計画についてそれぞれ電力会社などと覚書を交わした。ニュースケールには日揮ホールディングスとIHIも出資した。日立製作所と米ゼネラル・エレクトリック(GE)は海外市場を開拓する。受注を重ねて作業の習熟度を高めれば、建設費を700億~800億円台に下げられるとみる。カナダのオンタリオ電力と出力30万キロワットの小型炉の納入を巡り商談しているほか、エストニアやチェコなどでも営業している。小型炉への注目が高まっているのは、先進国で従来型の大型炉の建設が停滞しているからだ。大型炉は安全対策費が膨らみ、投資回収が難しくなっている。日立・GE連合は英国で大型炉を使う電力事業を計画したが、1基1兆円規模の投資に見合う経済性がないとみて撤退した。三菱重工もフランスの旧アレバ(現フラマトム)と開発していた100万キロワット級の「アトメア」の開発を凍結した。国際エネルギー機関(IEA)は、50年にカーボンゼロを達成するには化石燃料への投資を止め、30年までに毎年1700万キロワット分、31年以降は毎年2400万キロワット分の原発稼働が必要と試算する。関西電力と九州電力も小型炉などの活用を長期計画に明記した。国内の主要企業では約1万人が原発事業に従事し、三菱重工で約4000人、日立でも約1600人が働く。メーカーには小型炉の開発・建設を通じ、関連する雇用や技術を維持したいとの思惑もある。課題も多い。ひとつは発電コストだ。三菱重工の場合、1キロワット時あたり10円強のいまの大型炉より高くなる見込み。国内では原発管理の不備も続き、地元住民の反発もある。いま策定中のエネルギー基本計画でも、原発の建て替え・新増設を明記するのか議論が割れている。国内での新設の原発は09年に稼働したのを最後に、青森県や島根県で着工済みの工事は進んでいない。

<防衛にも計画性のない国、日本←それでは勝てるわけがない>
*3-1:https://www.jiji.com/jc/article?k=2021070500799&g=pol (時事 2021年7月5日) 台湾有事で集団的自衛権行使も 麻生氏
 麻生太郎副総理兼財務相は5日、東京都内で講演し、中国が台湾に侵攻した場合、安全保障関連法が定める「存立危機事態」に認定し、限定的な集団的自衛権を行使することもあり得るとの認識を示した。存立危機事態は、日本と密接な関係にある他国が攻撃され日本の存立が脅かされる明白な危険がある事態で、集団的自衛権を行使する際の要件の一つ。麻生氏は「(台湾で)大きな問題が起きると、存立危機事態に関係してきても全くおかしくない。そうなると、日米で一緒に台湾を防衛しなければいけない」と述べた。

*3-2:https://newswitch.jp/p/23594 (ニュースイッチ 2020年8月29日) 「むつ」以来のタブーを破り、日本が原子力潜水艦を造るべき深い理由、元IEA事務局長・田中伸男氏「まずは米国から1隻購入し技術移転を」
 現在、世界で使われている商業用原子炉はそのほとんどが大型軽水炉である。この炉型は大型かつベースロードで運用し、電力線網で広範囲に送電するという集中型電力システムで低コストを実現してきた。しかし東京電力福島第一原子力発電所事故でリスクの高さを露呈し、安全対策の強化で建設コストが上昇、新設では太陽光風力発電に対して競争力を喪失しつつある。今後は既存原発の運転期間を延長することでコスト上昇を抑えるしかない。大型軽水炉は将来的には小型モジュラー炉にとって代わられるだろう。軽水炉の弱みは、冷却水の供給が何らかの理由で途絶えることで燃料のメルトダウンを招く点にある。逆に船舶用の動力として使えば、万が一の場合、海中投棄でメルトダウンは防げる。燃料の補充が長期にわたって不要な点で潜水艦、砕氷船、発電バージなどで小型軽水炉は最適である。日本も原子力船「むつ」を建造し、自前の舶用小型軽水炉を実証したが、放射線漏れを起こし、残念ながら建造路線は放棄された。まずは、むつの失敗を総括するところから始めなければならない。笹川平和財団では北極海航路用砕氷船を前提として勉強会を始めたところである。関係者の話を伺ったが、むつ建造に関わった複数企業の設計インターフェースの悪さ、海外専門家から放射線漏れの可能性を指摘されながらも十分に検討しなかった建造体制の不備などが問題だったようだ。笹川平和財団では2017年から18年にかけて、インド洋地域における海洋安全保障に関する日米豪印4カ国専門家会議を開き、政策提言を取りまとめた。記者会見で配られた提言は報道されなかったが、その中に「日本政府はシーレーン防衛のため原子力推進の潜水艦保有を検討すべきではないか」という項目があった。自由で開かれたインド太平洋を海洋安全保障戦略の基本としている4カ国の専門家が一致して原子力潜水艦の必要性を指摘したのは重い。ポストコロナの中国が南シナ海や東シナ海での軍事活動強化に走り、香港の一国二制度を否定したのは、狙いが台湾併合にあることは明らかだ。今後米中関係がさらに悪化して行く中で、台湾有事も想定せざるを得ない。長期間潜ったまま航行できる原潜が中国海軍の動きを抑えるのに役に立つ。日本の持つディーゼルとリチウムイオン電池の潜水艦は静音性などに大変優れるが、毎日浮上する必要があり、秘匿性能と航続距離に課題がある。最近、北朝鮮のミサイルを撃ち落とす新型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」計画が放棄された。敵国領内での基地攻撃の可否が議論されているが、そもそも攻撃を受けた場合、通常型巡航ミサイルでの反撃は攻撃ではなく防御だ。非核巡航ミサイルを装備した原潜による敵の核攻撃抑止も、米国の核の拡大抑止の補完として検討されるべきであろう。まずは1隻、米国から購入し技術移転、乗員の訓練などのための日米原子力安全保障協力が必要だ。日本に核装備は不要で核兵器禁止条約にも加盟すべきだが、緊張の高まる北東アジアの状況を考えれば、むつ以来のタブーを破り原子力推進の潜水艦建造を検討する必要があると考える。
【略歴】田中伸男(たなか・のぶお)東大経卒、通商産業省(現経済産業省)入省。通商政策局総務課長、経済協力開発機構(OECD)科学技術産業局長などを経て07年に欧州出身者以外で国際エネルギー機関(IEA)事務局長に就任。16年笹川平和財団会長、20年顧問。70歳。

*3-3:https://gendai.ismedia.jp/articles/-/77734 (現代 2021.1.21) なぜ原子力潜水艦は長い潜航が可能なのか? 推進力、水、酸素すべてを賄う原子の力
●原子力潜水艦が長く潜水を続けられる理由とは?
 1954年の今日、世界初の原子力潜水艦であるアメリカの潜水艦「ノーチラス号」の進水式が執り行われました。原子力潜水艦は、その名前の通り原子力を動力として駆動する潜水艦のことをいいます。ディーゼルエンジンと蓄電池によって駆動する通常の潜水艦と違い、原子力潜水艦は半永久的に潜水可能というメリットがあります。なぜなら、高濃度の核燃料は数十年にわたって原子炉を稼働させることが可能であり、燃料補給がほぼ不要だからです。燃料を気にすることなく原子炉からエネルギーを得られるため、海水を蒸発させて真水を生み出すこともでき、それを電気分解することによって酸素を供給することもできます。これにより、船員の酸素確保のために浮上する必要もなく、連続潜航距離をさらに伸ばすことができるのです。そういった理由から、原子力潜水艦の実現を強く望んだのが、アメリカの海軍大佐ハイマン・リッコーヴァー(Hyman George Rickover、1900-1986)です。第二次世界大戦で潜水艦の重要性を実感した彼は、戦後上官から新しい任務を受け取りました。それが、核エネルギーによる潜水艦の現実性についての研究だったのです。リッコーヴァーが赴いたのは、テネシー州のオークリッジにある国立研究所でした。そこでは、アルヴィン・ワインバーグ(Alvin M. Weinberg、1915-2006)などの研究者が核エネルギーの平和的利用について模索していました。リッコーヴァーは彼ら研究者たちを、ついで軍の上層部を説得し、原子力潜水艦の実現に動き出します。そして、時間と競争しているかのような凄まじいペースで工事を完了させ、戦後10年も立っていない1954年に進水式に至ったのです。ワインバーグによって水の蒸気を利用するコンパクトな原子炉が提案されたことがターニングポイントだったようです。翌年には本格的に稼働し、1958年には北極点の下を潜航通過しています。当時は、原子力は人間が制御でき、平和に利用すれば人々の生活を豊かにするという考えが大勢を占めていた時代です。それに基づき、原子力の商用が強く推進されました。元アメリカ大統領・アイゼンハワー(Dwight David Eisenhower、1890-1969)による1953年の「平和のためのアトム」演説などが代表例です。しかしその後、原子力潜水艦や原子力発電所がいくつもの大事故を起こすことになるのは皆さんもご存じのとおりです。ワインバーグも、当時は安全性より経済面を重視するきらいがあったことを認めています。

<人を大切にしない国、日本 ←社会保障と人権を粗末にしすぎ>
*4-1-1:https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA2390A0T20C21A6000000/ (日経新聞 2021年6月25日) 市町村66%、病院存続困難に 人口減少巡り国交白書
 政府は25日、2021年の国土交通白書を閣議決定した。人口減少により2050年に829市町村(全市町村の66%)で病院の存続が困難になる可能性があるとの試算を示した。公共交通サービスの維持が難しくなり、銀行やコンビニエンスストアが撤退するなど、生活に不可欠なサービスを提供できなくなる懸念が高まる。地域で医療・福祉や買い物、教育などの機能を維持するには一定の人口規模と公共交通ネットワークが欠かせない。人口推計では50年人口が15年比で半数未満となる市町村が中山間地域を中心に約3割に上る。試算によると、地域内で20人以上の入院患者に対応した病院を維持できる境目となる人口規模は1万7500人で、これを下回ると存続確率が50%以下となる。基準を満たせない市町村の割合は15年の53%から50年には66%まで増える。同様に50年時点で銀行の本支店・営業所は42%、コンビニは20%の市町村でゼロになるリスクがある。新型コロナウイルス禍は公共交通の核となるバス事業者の経営難に拍車をかけた。20年5月の乗り合いバス利用者はコロナ前の19年同月比で50%減少し、足元でも低迷が続く。白書は交通基盤を支えられないと「地域の存続自体も危うくなる」と警鐘を鳴らす。

*4-1-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20210702&ng=DGKKZO73459090R00C21A7KE8000 (日経新聞 2021.7.2) コロナが示した医療の課題(上) 逼迫時の役割分担 明確に 小塩隆士・一橋大学教授(1960年生まれ。東京大教養卒、大阪大博士(国際公共政策)。専門は公共経済学)
<ポイント>
○政策の微調整での対応は信認弱める恐れ
○急性期医療へのシフトなど構造改革急げ
○利用者の受診抑制の要因や影響探る必要
 新型コロナウイルスの感染拡大を巡っては、変異株の脅威のほか、五輪開催という重大なリスク要因が存在する。一方で、ワクチン接種の大幅加速という好材料も出てきた。感染拡大の発生から1年半近くが経過し、ポストコロナの医療供給体制にとっても重要な課題が浮き彫りになった。まず新型コロナが日本人の健康に及ぼした影響を大まかにみてみよう。感染者数・死者数ともに、日本はほかの先進国と比べ著しく少なく、影響はかなり限定的だというのが一般的な受け止め方だろう。果たしてその理解でよいか。コロナ対策の評価にも影響する。図は、新型コロナを原因とする100万人当たり新規死者数(7日間合計)の推移を国際比較したものだ。図の上段は英米独日の比較、下段は日韓の比較だ(上段の目盛りは下段の20倍)。日本での影響はこれまで欧米諸国に比べ極めて軽微だった。しかし2つの点に注意が必要だ。まず図の上段の右端、つまり直近の数字をみると日本と英米独との差はほとんどなくなっている。ワクチン接種が加速している欧米諸国で死者数が大幅に減少してきたからだ。その結果、コロナの影響は「瞬間風速」としては、今では欧米とほぼ同じレベルになっている。変異株の影響もあり先行きは不透明だが、足元のこの状況は押さえておいたほうがよい。さらに重要なのは、図の上下を比較すれば明らかなように、死者数が形成してきた「波」の違いだ。欧米の死者数は2つの大きな波を形成してきたが、第2波が2021年1月ごろにピークを越えた後は、何とか収束に向かいつつある。日本では20年春に第1波が発生し、現在の波は通常、第4波と呼ばれる。欧米の第2波、日本の第3波には規制の解除・緩和を受けたリバウンド(感染再拡大)という共通点がある。だが欧米には死者数でみる限り第3波は明確な形では到来していない。景気もV字型の回復軌道に乗った。一方、日本には過去のピークを上回る第4波が到来し、対応に苦慮している。韓国でも、日本の第4波のような大きな波は発生していない。こうした波の違いは、日本政府によるコロナ対応の問題点を示唆している。本格的な市中感染の到来を予期せず、全国レベルのワクチン接種に大きく出遅れたのが、違いを生んだ主因だというのが筆者の判断だ。欧米諸国はワクチン接種と厳格な移動規制の合わせ技で、コロナ感染を力ずくでねじ伏せつつある。これに対し、日本がとってきたアプローチは経済活動に目配りをしつつ、感染者数などの動きをみながら、緊急事態宣言の発令と解除を繰り返し、さらに地域別に規制の濃淡をつけるなど、微調整で対処するものだ。本格的なロックダウン(都市封鎖)を許容する法制度がなく、ワクチン接種を急がなかったという制約条件、しかも五輪開催も予定される状況の下では、この方針は最適解だったかもしれない。だがそれはあくまでも制約条件を所与とした場合の机上の話だ。ロックダウンは難しいとしても、ワクチン接種なしで移動抑制だけで感染を抑え込もうとしても無理が出てくる。政策の微調整はそれだけを取り出してみれば合理的だとしても、方針を分かりにくくし、政策への信認を弱めてきた可能性がある。規制とリバウンドのいたちごっこを生み、政策の調整が感染の波を増幅させ、収束をむしろ遅らせてこなかったか。また入国管理や検疫に漏れはなかったか。経済への影響も含め、詳細な検証が必要になる。そうした対応の問題点を考慮に入れても、日本のコロナ感染の健康面へのショックは国際的にみれば軽微だったとの見方はできる。だが医療システムが余裕を持って感染拡大に対処できたかと問われると、答えは残念ながら「ノー」だ。日本の人口当たりベッド数は世界でトップクラスだ。しかも感染拡大の規模は諸外国より限定的だった。にもかかわらず、コロナ対応の最前線に立つ医療現場は逼迫し、崩壊寸前、あるいは事実上の崩壊に至ったところも少なくない。日本のベッド数は確かに多いが、精神病床や療養病床の比重も大きい。コロナ対応が可能な一般病床は全体の6割弱だが、すべてが急性期医療に特化しているわけではない。厚生労働省の「地域医療構想に関するワーキンググループ」の会合(20年10月21日)に提出された資料によると、全医療機関のうち、新型コロナ患者の受け入れ可能な機関は23%、受け入れ実績がある機関は19%にとどまる。しかも受け入れ実績のある機関でも、人工呼吸器、体外式膜型人工肺(ECMO=エクモ)またはその両方を使用した患者を受け入れていた機関に限ると全体の4%どまりだ。民間医療機関に患者の受け入れを要請する法制度も未整備だ。現場レベルでの調整は徐々に進んでいるが、感染再拡大をみてからの対応であり、後手に回ったといわざるを得ない。医療システムにかかる負荷は全体としてみれば小さくても、局所的には耐え難いほど高くなる。それを認識せず、その仕組みも改めずに経済活動を優先すると大変なことになる。日本の医療供給体制はもともと新型コロナのようなパンデミック(世界的流行)を想定した仕組みにはなっていない。公的介護保険の導入後も、日本の医療供給は平均在院日数の長い患者の療養を念頭に置いた面が色濃く残っている。社会全体の医療資源の使い方として非効率な面はないか。この問題がコロナ禍で改めて浮き彫りになった。医療供給体制にとって最低限必要なのは、医療逼迫時における地域医療機関の役割分担を明確にしておくことだ。長期的には、医療資源を急性期医療に一層シフトさせるとともに、地域医療機関間のネットワーク化を推進するなど、構造的な改革が求められる。最後に、日本の医療供給体制にとっての潜在的な問題点を指摘しておきたい。コロナ禍の下で利用者の受診抑制の動きがみられることだ。厚労省の研究でも明らかなように、コロナ禍の下で健康診断や各種のがん検診、人間ドック受診を抑制する傾向もみられる。問題は利用者の抑制行動が何を意味するかだ。抑制した人とそうでない人を比較して、コロナ発生前からの健康状態の変化に差がなければ、医療サービスの供給に過剰な部分があったことになる。逆に抑制した結果、健康状態が悪化していれば、必要な医療サービスがコロナ禍で受けられなかったことになる。この判定は極めて難しい。感染収束後も長期の追跡調査が必要だ。所得や就業状態など他の要因にも左右される。だがコロナ禍は医療を巡る利用者の行動変容をもたらしている可能性が高い。だとすれば、医療給付費の長期予測にも大きな影響が出てくる。まさしく統計的なエビデンス(証拠)に基づく政策評価・立案が必要となるテーマだ。コロナ禍は日本の医療供給体制の効率性や持続可能性にもかなりの影響を及ぼしている。

*4-2-1:https://www.shinmai.co.jp/news/article/CNTS2021071400125 (信濃毎日新聞社説 2021/7/14) 教員免許更新制 廃止の判断遅きに失した
 遅きに失したと言うべきだろう。文部科学省が、教員免許の更新制を廃止する方向で検討を進めている。更新には30時間以上の講習を自費で受ける必要があり、負担を訴える現場の声は導入当初から強かった。10年以上にわたって半ば漫然と存続させてきたことが問われなければならない。廃止で事を済まさず、文科省は経過を検証すべきだ。萩生田光一文科相が、制度の抜本的な見直しを中央教育審議会に諮問している。廃止の結論を得て、来年の国会への教員免許法の改定案提出を目指す。免許の期限を10年とし、大学などで講習を期限内に修了すると更新が認められる。お金と時間を負担するのは教員だ。数万円の講習費用と交通費を出し、夏休みの期間などに通わざるを得ない。教員を対象にした文科省の調査で、大多数が負担感を示す一方、講習が役に立っていると答えたのは3分の1にとどまった。自由記述では、制度を廃止すべきだとの回答が最も多かったという。更新制は教員不足の一因にもなってきた。定年前に期限を迎える教員が早期退職する動機になるほか、産休・育休取得者の代替教員の確保を難しくしている。更新を忘れて免許が失効していることが分かり、引き続き教壇に立てなくなった事例もある。2000年代初めころ、自民党の議員らから上がった「不適格教員の排除」の掛け声が制度化の発端だ。管理の強化があらわな主張に現場の反発は強く、いったんは見送られたが、第1次安倍政権下、政治主導で免許法が改定され、09年度から導入された。文科省は、教員の資質確保が目的で、不適格教員を排除する趣旨ではないと説明している。そもそもなぜ免許の更新は必要なのか。制度化の根拠は曖昧だ。その後、民主党政権が廃止の方針を打ち出したものの、参院で過半数を失って法改定を断念。自民党の政権復帰で立ち消えになっていた。教員の多忙さは増し、学校現場の疲弊は深い。いじめをはじめ子どもたちが抱える問題への対応が追いついていない現状がある。そこへ官製の研修が詰め込まれ、現場をさらに追い立てている。その状況をどう改めるか。教員が日々、子どもとじっくり向き合って力量を高める。それぞれが直面する課題を持ち寄って自主的に学び合う。そのための時間や余裕を生むことが肝心だ。文科省は現場を下支えすることにこそ力を傾けなくてはならない。

*4-2-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20210715&ng=DGKKZO73895020V10C21A7CE0000 (日経新聞 2021.7.15) 芸術や数学で突出でも不登校 「ギフテッド」の子に支援策 文科省会議、指導法など議論
 特定分野で突出した才能を持つ子どもへの支援について話し合う文部科学省の有識者会議は15日までに、初会合を開き、具体策の検討を始めた。芸術性や数学力などの面で抜きんでているものの、学年ごとのカリキュラムや周囲にうまく適合できず、不登校になるケースも。こうした子どもの状況に応じた指導の在り方、大学、民間団体との連携などを議論し、年内にも論点をまとめる。文科省などによると、米国では、同年齢よりも特に高い知能や創造性、芸術的才能などを発揮する子どもを「ギフテッド」と呼び、早期入学や飛び級といった特別な教育プログラムが用意されている。中にはこだわりが強すぎたり、集団行動が苦手だったりする子もいるとされ、どう支援するかも課題となっている。一方、日本では「単純な課題は苦手だが複雑で高度な活動は得意など、多様な特徴の児童生徒が一定割合存在する」(1月の中教審答申)とされるものの、十分に議論されてこなかった。このため、教育関係者や保護者らの間でも認識や対応にばらつきがあるのが現状だ。会合では、実際にこうした子どもが不登校となっている事例が報告されたほか、「同質性の高い学校文化そのものを見直すべきだ」との意見が出た。委員の松村暢隆関西大名誉教授は「『トップ人材を輩出する』といった目標から出発するのではなく、困っている才能児のニーズに対応するとの視点で議論していくべきだ」と指摘。発達障害を抱える子どももいるとして、特別支援教育や生徒指導との連携も必要とした。

*4-3-1:https://www.kobe-np.co.jp/column/shasetsu/202107/0014461592.shtml (神戸新聞 2021/7/1) 職場接種停止/国は態勢立て直しを急げ
 政府は、新型コロナウイルスワクチンの企業や大学などでの職場接種の申請受け付けを急きょ停止した。想定を超える申請が殺到し、接種に使われる米モデルナ製ワクチンの供給が追いつかなくなったためだ。与党からは、国と自治体による大規模接種分を回すなどして早期再開を求める声が出ているが、見通しは立っていない。このまま打ち切られる可能性もあるという。開始から間もない方針転換で、準備を進めていた企業などの混乱は計り知れない。政府は見通しの甘さを猛省し、停止の経緯と再開の可否についてきちんと説明するべきだ。混乱は自治体の現場でも起きている。7月後半以降のワクチン配分量が政府から示されないなどで、兵庫県内の複数市町で64歳以下の接種予約が滞っていることが分かった。米ファイザー製を含めたワクチン供給量は全国民分を確保していると政府は強調するが、実際に大きな混乱が生じているのはなぜか。菅義偉首相は「1日100万回」「11月末までに希望者全員に」などの数値目標を掲げた。これを達成するため、準備不足にもかかわらず、スピード重視で進めようとした無理がたたったのは明らかだろう。政府は態勢を早急に立て直し、今後のワクチン供給量と配分計画を明確に示すべきだ。職場接種は、現役世代の接種を加速させ、社会全体を感染から守る効果への期待が大きい。だが課題も多い。1カ所で最低千人程度に接種するのが要件とされ、医師や会場は自前で確保しなければならない。すぐ対応できる大企業が先行する一方、国内企業の大半を占める中小企業にはハードルが高く、不公平感は否めない。温泉地や業界団体が同業各社を集めて共同実施にこぎつけた例もあるが、医師や会場が確保できず断念した企業もある。政府は小規模でも接種が可能な仕組みや、負担軽減に向けた支援拡充を検討するべきだ。一方、「打ち手」の争奪戦が起きれば、軌道に乗りつつある自治体の接種に影響しかねない。国と自治体、医師会などが連携して接種体制の再点検に努めねばならない。接種の本格化に伴う同調圧力にも注意が必要となる。持病や医学的な理由で接種を受けられない人や、副反応への不安などから接種を望まない人もいる。接種の強要や、打たない人が不利益を被るような対応があってはならない。今後、接種対象となる若い世代には高齢者と比べて副反応が出やすいとの報告もある。政府や自治体は、丁寧な情報開示と相談窓口の充実に取り組んでもらいたい。

*4-3-2:https://www.tsr-net.co.jp/news/analysis/20210622_03.html (東京商工リサーチ 2021.6.22) 「新型コロナウイルス」関連破たん 1,661件
 6月22日は16時時点で「新型コロナ」関連の経営破たん(負債1,000万円以上)が7件判明、全国で累計1,580件(倒産1,482件、弁護士一任・準備中98件)となった。月別では2月(122件)、3月(139件)、4月(154件)と、3カ月連続で最多件数を更新した。5月は124件と、2021年1月以来4カ月ぶりに前月を下回ったが、過去3番目の件数と高水準だった。6月は22日までに105件が判明し5カ月連続で100件を超え、前月を上回るペースで推移している。なお、倒産集計の対象外となる負債1,000万円未満の小規模倒産は累計81件判明。この結果、負債1,000万円未満を含めた新型コロナウイルス関連破たんは累計で1,661件となった。3度目の緊急事態宣言は沖縄県を除き6月20日をもって解除された。ただし、一部地域はまん延防止等重点措置に移行し、飲食店の酒類提供や営業時間の制限は継続する。当面は流動的な状況で、消費関連企業にとって厳しい環境が続きそうだ。ダメージを受けた企業への金融支援策は継続するが、事業環境が回復しないままコロナ融資の返済がスタートする過剰債務の問題も浮上している。息切れや事業継続をあきらめて破たんに至るケースも目立ち始め、コロナ関連破たんは引き続き高水準で推移する可能性が高い。
【都道府県別】(負債1,000万円以上) ~ 30件以上は12都道府県 ~
 都道府県別では、東京都が372件(倒産351件、準備中21件)に達し、全体の約4分の1(構成比23.5%)を占め、突出している。以下、大阪府159件(倒産151件、準備中8件)、神奈川県80件(倒産73件、準備中7件)、愛知県74件(倒産74件、準備中0件)、北海道64件(倒産63件、準備中1件)と続く。22日は北海道、山形県、茨城県、東京都、石川県、大阪府、兵庫県でそれぞれ1件判明した。10~20件未満が17県、20~30件未満が8府県、30件以上は12都道府県に広がっている。
【業種別】(負債1,000万円以上)~飲食が最多284件、建設153件、アパレル135件、宿泊83件 ~
 業種別では、来店客の減少、休業要請などで打撃を受けた飲食業が最多の284件。一部地域では休業や時短の要請が継続し、営業制限が続く飲食業の新型コロナ破たんがさらに増加する可能性が強まっている。次いで、工事計画の見直しなどの影響を受けた建設業が153件、小売店の休業が影響したアパレル関連(製造、販売)の135件。このほか、インバウンドの需要消失や旅行・出張の自粛が影響したホテル,旅館の宿泊業が83件と続く。
また、飲食業などの不振に引きずられている飲食料品卸売業が75件、食品製造業も49件と目立 ち、飲食業界の不振が関連業種に波及している。
【負債額別】(負債1,000万円以上)
 負債額が判明した1,551件の負債額別では、1千万円以上5千万円未満が最多の557件(構成比35.9%)、次いで1億円以上5億円未満が527件(同33.9%)、5千万円以上1億円未満が272件(同17.5%)、5億円以上10億円未満が98件(同6.3%)、 10億円以上が97件(同6.2%)の順。負債1億円未満が829件(同53.4%)と半数を占める。一方、100億円以上の大型倒産も6件発生しており、小・零細企業から大企業まで経営破たんが広がっている。
【形態別】(負債1,000万円以上)
 「新型コロナ」関連破たんのうち、倒産した1,482件の形態別では、破産が1,309件(構成比88.3%)で最多。次いで民事再生法が80件(同5.3%)、取引停止処分が73件(同4.9%)、特別清算が12件、内整理が7件、会社更生法が1件と続く。「新型コロナ」関連倒産の約9割を消滅型の破産が占め、再建型の会社更生法と民事再生法の合計は1割未満にとどまる。業績不振が続いていたところに新型コロナのダメージがとどめを刺すかたちで脱落するケースが大半。
先行きのめどが立たず、再建型の選択が難しいことが浮き彫りとなっている。
【従業員数別】(負債1,000万円以上)
「新型コロナ」関連破たんのうち、従業員数(正社員)が判明した1,466件の従業員数の合計は1万8,143人にのぼった。1,466件の内訳では従業員5人未満が783件(構成比53.4%)と、半数を占めた。次いで、5人以上10人未満が294件(同20.0%)、10人以上20人未満が206件(同14.0%)と続き、従業員数が少ない小規模事業者に、新型コロナ破たんが集中している。また、従業員50名以上の破たんは2021年1-3月で11件発生し、4月は1件発生した。
※ 企業倒産は、負債1,000万円以上の法的整理、私的整理を対象に集計している。
※ 原則として、「新型コロナ」関連の経営破たんは、担当弁護士、当事者から要因の言質が取れたものなどを集計している。
※ 東京商工リサーチの取材で、経営破たんが判明した日を基準に集計、分析した。

*4-3-3:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20210710&ng=DGKKZO73760110Q1A710C2EA2000 (日経新聞 2021年7月9日) 企業落胆、商機失う 観光業など、打撃大きく
 東京五輪の原則無観客開催で多くの企業が肩すかしを食らっている。宿泊を見込んでいた観光業界は収益への打撃が避けられない。スポンサー企業も製品や技術を売り込む好機のはずが、人々の目に触れる機会が大幅に減る。「朝からキャンセルが止まらない」。東武ホテルレバント東京(東京・墨田)では、9日午前だけで十数件の予約キャンセルが入った。期間中は稼働率約7割を見込んでいたが下がることは必至。大会期間中は通常より数割高い価格で設定していたが、緊急事態宣言の影響もあり「値下げは避けられない」と話す。京王プラザホテルも予約キャンセルが入り始めている。都内の高級ホテルでは大会関係者らの予約が多く入り、無観客でも一定の需要が見込まれる一方で、中堅・中小のホテルのダメージは大手より大きい。JTBなど旅行3社は9日、1都3県での観戦チケット付きの全ツアーを払い戻すと発表した。3社はスポンサーでもあり、このうち1社の幹部は「数十億円のスポンサー料や人件費などをかけてきたが、全て水の泡だ」とため息をつく。グッズ販売も苦戦が避けられない。アシックスは当初、約200億円の売り上げを見込んでいた。同社は9日「無観客シナリオは業績予想に織り込み済み」と発表し、業績下振れ懸念の払拭を図った。大会を「技術のショーケース」と期待していたスポンサーも思惑が外れた。NTTは高速通信規格「5G」を活用。セーリングでは観客席から沖合の船を間近で観戦できるように映像を映し出し、ゴルフでは専用端末を観客に配る計画だった。だが楽しめるのは大会関係者のみになる。セコムは警備ロボット、NECは入退場を管理する顔認証システムを導入するが、PR効果は薄れる。トヨタ自動車は燃料電池車(FCV)や電気自動車(EV)など1000台以上を提供する計画だったが、修正を検討する。大和総研は無観客の場合、大会期間中の経済効果が3500億円程度と、通常開催より4500億円縮小すると予測する。五輪は世界中で視聴される。映像演出など画面を通じて技術をアピールする機会はなお残る。

*4-3-4:https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA124F40S1A710C2000000/ (日経新聞 2021年7月12日) 県境またぐ移動自粛、接種者も対象 戸惑う観光地
 政府は12日、東京都に4度目となる新型コロナウイルス対策の緊急事態宣言を適用した。まん延防止の重点措置を含む6都府県の住民には県境をまたぐ不要不急の外出自粛を要請する。ワクチン接種者も一律に対象とする。26日から申請を受け付ける接種証明書も海外渡航用だ。夏のかき入れ時に期待していた国内観光地には戸惑いが広がる。東京の宣言は8月22日まで。宣言を延長する沖縄県、宣言に準じる重点措置を延長する埼玉・千葉・神奈川・大阪の4府県も期限は同じだ。夏休みやお盆に人の移動が活発になるのをにらんだ。政府が8日に改定した基本的対処方針は特に東京や沖縄について「帰省や旅行など都道府県間の移動は極力控えるよう促す」と明記した。国内でも高齢者を中心に増えつつある接種済みの人も扱いに差をつけなかった。首相官邸によると11日時点で65歳以上の76%、2700万人がワクチンを少なくとも1回打っている。ほとんどがファイザー製で3週間後に2回目を打つため、7月中に多くが接種を完了する。ワクチンの普及に期待していた観光地は今回、冷や水を浴びせられた。首都圏からの観光客が多い京都市。八坂神社近くの旅館「ギオン福住」の山田周蔵社長は「東京が動かないと話にならない」と肩を落とす。「予約は4月以降、修学旅行以外はほとんど入っていない。8月中旬までも期待できなくなった」。温泉地の群馬県草津町の旅館「ホテル一井」の市川薫女将も「(8月以降の)予約の入り方が鈍ってきた」と話す。クラブツーリズムは12日以降、東京や沖縄が発着地となる添乗員付きツアーを中止とする。日本旅行の小谷野悦光社長は「夏休みの旅行需要も見込めず、去年より厳しい状況。この夏をどう乗り越えるか、正念場だ」と話す。日本旅行業協会(JATA)の菊間潤吾副会長は「我々にいつまで我慢しろというのか」と憤りを隠さない。政府は感染力の強いインド型(デルタ型)の拡大を警戒している。内閣府幹部は「(接種者であっても)ウイルスを運ぶリスクがある。特にインド型は侮れない」と語る。海外では接種証明書を経済再生に生かす取り組みが進む。欧州連合(EU)は夏のバカンスシーズンを前に、1日から本格運用を始めた。加盟国やスイスなど約30カ国で使える。QRコードを示せば出入国時の検査や自主隔離が免除される。発行数は2億件を超えた。シンガポールは人口の半数が2回目を接種する見込みの7月末以降、制限緩和を進める方針だ。現在は5人までの飲食店の利用を接種者グループは8人まで認めることなどを検討している。日本も26日、証明書の申請受け付けを始める。加藤勝信官房長官は12日の記者会見で「海外に渡航する際に防疫措置の緩和を受けるのを目的とする」と述べた。イタリアなど十数カ国に要請している。国内での活用は現時点で想定していない。「接種の有無による不当な差別は適切ではない」と説明した。チグハグにも映る対応に経済界は異を唱える。経団連は接種証明書を早期に活用し、国内旅行などの要件を緩和すべきだと提言している。病床確保などの対策を進めつつ、経済をいかに回すかはコロナの感染拡大当初からの課題だ。ワクチンの普及など状況の変化を踏まえた柔軟な対応も求められる。

*4-3-5:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/707944 (佐賀新聞 2021.7.17) コロナ拡大と五輪、国民は「安全」なのか
 国民の「安全」を守り、暮らしに「安心」をもたらす。一国のリーダーにとって最大の責務であることは言うまでもない。世界が注目する東京五輪・パラリンピックの開幕が迫った日本で、菅義偉首相はその使命を果たしているのか。五輪開催都市である東京で新型コロナウイルスの感染者が急増している。1日当たり千人を超す新規感染者数の報告が続き、5月の「第4波」ピーク時を上回っている。4度目になる緊急事態宣言が発令中だが、その効果は表れていない。専門家は現在の増加ペースで推移すれば、五輪閉会後には2400人程度に上るとの試算を公表した。年末年始の「第3波」さえ超える水準だ。東京など首都圏の感染者数は全国のおよそ3分の2を占めている。今後、インドに由来する感染力が強いデルタ株への置き換わりが進み、感染再拡大が首都圏から全国に波及する可能性もある。感染を収束させられないのは、政府対策の不備や迷走が第1の要因だろう。それでも五輪は23日に開幕する。21日には一部競技が先行して始まる。菅首相が「安全、安心な大会を実現する」と主張し、開催に突き進んできたためだ。1964年以来、日本では2度目となる夏の五輪には選手約1万人、大会関係者約4万1千人の来日が見込まれ、入国は本格化している。五輪は選手らと外部の接触を遮断する「バブル」方式で運営され、10都道県での広域実施となる33競技・339種目の大半は無観客の会場で行われる。菅首相は選手らの多くがワクチン接種を済ませている上、厳格な検査と行動制限を課すことで、ウイルスの国内流入を防ぐと強調する。だが事前合宿先で感染が判明した例もあり、水際対策は万全ではあるまい。選手村には、2回目の接種を終えていない日本人スタッフらが出入りする。管理の緩さが露呈した関係者の行動も問題視されている。バブルに穴がないか常時点検するとともに、五輪を発生源としたクラスター(感染者集団)を認知した場合、大会を続行するかどうかを検討しておく必要がある。菅首相はコロナ禍で行われる東京五輪の開催意義を巡って「世界が一つになり、難局を乗り越えていけることを発信したい」と繰り返している。さすがに「コロナに打ち勝った証し」との言い回しは封印したようだ。だが、生活や事業がコロナ前に戻るのはいつかという国民が一番知りたいことに答えていないのに、無責任な意義付けだと指摘せざるを得ない。主催者である国際オリンピック委員会(IOC)のバッハ会長の現状認識にも疑問が湧く。バブル方式によりコロナ感染を「日本国民が恐れる必要はない」と断言。首相と会談した際には、感染状況が改善した場合「有観客」を検討してほしいと伝えたという。首相と同じく「五輪ありき」の姿勢がうかがえ、国民感情を軽視していると批判されても仕方あるまい。菅首相が何より優先しなくてはならないのは、五輪を予定通り終わらせることではない。国民の命を守るためコロナ感染を一日も早く収束に向かわせることだ。憲法に基づく野党の臨時国会召集要求に応え、コロナ対策を充実させる論議に臨むべきだ。首相に値するか問われている。

*4-4-1:https://www.at-s.com/news/article/shizuoka/929053.html (静岡新聞社説 2021年7月14日) 来日選手難民申請 認定制度見直す機会に
 サッカー・ワールドカップ予選のため来日していたミャンマー代表選手のピエ・リヤン・アウンさんが、クーデターを起こした国軍に抗議の意志を示して帰国を拒否し、日本に難民認定を申請した。本国の家族や帰国したチームメートの身を案じながら、自らが帰国した場合、生命の危機にさらされると考えて下した苦渋の決断だった。クーデター後のミャンマー情勢には世界の目が注がれている。日本政府は5月、日本在留の継続を望むミャンマー人に対して緊急避難措置として在留延長や就労を認める方針を示した。ピエ・リヤン・アウンさんは在留延長が認められ、難民認定も出入国在留管理庁は迅速に手続きを進めるという。日本は他の先進国と比べて難民認定の判断基準が厳しく、認定数が極端に少ないと指摘されている。ここ数年、ミャンマー人は一人も認定されていなかった。人道上の見地から安心して帰国できる治安情勢になるまで保護するのは当然で、国際社会の視線を気にした例外的な対応であってはならない。認定のハードルが高いため、これまで本来、保護されるべき人が保護されていないまま本国へ送り返されるようなことはなかったのか。難民認定の在り方について見直す機会にしたい。難民条約は人種、宗教や政治的意見を理由に母国で迫害される恐れがある人を難民と定義し、各国が保護するよう求めている。日本は条約に加入した1981年以降、計約840人を難民として認定してきた。だが、他国と比べると、難民の受け入れに消極的なのは一目瞭然で、条約加入国の義務を十分果たしているとはいえない。2019年の1年間だけでも、難民認定はドイツ約5万3千人、米国約4万4千人、フランス約3万人に上る。認定率も18~30%と高い。日本の認定者は44人で、認定率は0・4%だった。他国なら難民と認められても当然な状況ながら日本で認定されなかったため、本国に帰ることもできず難民申請を繰り返さざるを得ない外国人も多いのではないか。先の国会で難民申請の回数を制限する入管難民法の改正案が提出されたが、入管施設収容中のスリランカ女性の死を巡って野党の強い反発もあり、与党は成立を断念した。難民認定は人命に関わる重要な手続きだ。申請者の出身国の情勢をしっかり見極めた上で認定の是非を判断しなければならない。国会での政治的駆け引きではなく、外国人の人権保護という原点に立ち戻って認定制度について真剣に議論する必要がある。

*4-4-2:https://www.jiji.com/jc/article?k=2021071601004&g=spo (時事 2021年7月16日) ウガンダ選手が所在不明 事前合宿地の大阪府泉佐野市〔五輪〕
 大阪府泉佐野市は16日、東京五輪の事前合宿で受け入れているウガンダ選手団の男子選手の所在が分からなくなっていると発表した。この選手は重量挙げのジュリアス・セチトレコさん(20)で、市は警察に届け出た上で行方を捜している。16日正午すぎに、セチトレコ選手の新型コロナウイルスのPCR検査が行われていないことに気付いた市職員が、ホテルの部屋を確認したところ不在だった。部屋には「日本で仕事がしたい。生活が厳しい国には戻らない」という趣旨の書き置きが残されていた。市はJR西日本に問い合わせ、同選手が名古屋行き新幹線の切符を購入したことも確認したという。市によると、セチトレコ選手は合宿期間中に世界ランキングが下がって五輪に出場できなくなり、コーチとともに近く成田空港から帰国する予定だった。選手団9人は6月19日、成田空港に到着。入国時の検査で1人が陽性判定を受けた。一行が泉佐野市に移ってから残りの8人全員が濃厚接触者と特定され、さらに別の1人の感染が判明。その後、基準を満たしたため練習を再開していた。

<先端科学で証明しよう、日本人のルーツと古代史>
*5-1:https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC18CCA0Y1A610C2000000/ (日経新聞 2021年6月23日) 渡来人は四国に多かった? ゲノムが明かす日本人ルーツ
 私たち日本人は、縄文人の子孫が大陸から来た渡来人と混血することで生まれた。現代人のゲノム(全遺伝情報)を解析したところ、47都道府県で縄文人由来と渡来人由来のゲノム比率が異なることがわかった。弥生時代に起こった混血の痕跡は今も残っているようだ。東京大学の大橋順教授らは、ヤフーが2020年まで実施していた遺伝子検査サービスに集まったデータのうち、許諾の得られたものを解析した。1都道府県あたり50人のデータを解析したところ、沖縄県で縄文人由来のゲノム成分比率が非常に高く、逆に渡来人由来のゲノム成分が最も高かったのは滋賀県だった。沖縄県の次に縄文人由来のゲノム成分が高かったのは九州や東北だ。一方、渡来人由来のゲノム成分が高かったのは近畿と北陸、四国だった。特に四国は島全体で渡来人由来の比率が高い。なお、北海道は今回のデータにアイヌの人々が含まれておらず、関東の各県と近い比率だった。以上の結果は、渡来人が朝鮮半島経由で九州北部に上陸したとする一般的な考え方とは一見食い違うように思える。上陸地点である九州北部よりも、列島中央部の近畿などの方が渡来人由来の成分が高いからだ。大橋教授は「九州北部では上陸後も渡来人の人口があまり増えず、むしろ四国や近畿などの地域で人口が拡大したのではないか」と話す。近年の遺伝学や考古学の成果から、縄文人の子孫と渡来人の混血は数百~1000年ほどかけてゆっくりと進んだとみられている。弥生時代を通じて縄文人と渡来人が長い期間共存していたことが愛知県の遺跡の調査などで判明している。どのような過程で混血が進んだのかはまだ不明で、弥生時代の謎は深まる一方だ。今回の解析で見えた現代の日本列島に残る都道府県ごとの違いは、弥生時代の混血の過程で起こったまだ誰も知らない出来事を反映している可能性がある。書物にも残されていない日本人の歴史の序章は、ほかならぬ私たち自身のゲノムに刻まれているのだ。

*5-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20210708&ng=DGKKZO73668690X00C21A7TB2000 (日経新聞 2021.7.8) 10万人のゲノム解析 東北大・武田など5社連携 創薬に利用、欧米を追う
 東北大学は7日、武田薬品工業やエーザイなど製薬大手5社と、10万人分のゲノムを解析するためのコンソーシアムを設立したと発表した。製薬会社が従来の10倍以上のゲノムデータを創薬や診断技術の開発などに利用できるようにする。欧米には数十万人規模のバイオバンクがすでにあり、ようやく日本もゲノムをもとに新薬を探す「ゲノム創薬」の基盤整備が進む。バイオバンクは健康な人や患者から、血液や尿などの試料、そのゲノムを解析したデータを収集する。年齢・性別、生活習慣や病気の履歴などのデータも合わせて蓄積し、これらを創薬研究する企業や大学などに提供する。データを活用すれば、新薬の開発やそれぞれの患者に適した治療をする「個別化医療」の実現に役立つ。東北大が運営する東北メディカル・メガバンク機構は2012年に設置。宮城県、岩手県の15.7万人超のデータや試料をもつが、ゲノム解析に時間や費用がかかり、企業が利用できるデータは約8300人分にとどまっていた。コンソーシアムは文部科学省の予算約40億円と企業の資金をもとに、24年までに10万人分のゲノム解析を目指す。21年度中に6万人分の初期的な解析を終える予定だ。参加するのはエーザイ、小野薬品工業、武田、第一三共、米ジョンソン・エンド・ジョンソン傘下のヤンセンファーマ。5社は10万人分のゲノムデータを優先的に利用できる。記者会見した東北メディカル・メガバンク機構の山本雅之機構長は「10万人のゲノムデータがあれば、日本人で見つかる遺伝子変異を網羅的に探せるだろう」と話した。製薬会社は治療薬や診断法の開発につなげる狙いだ。武田は国内でも先駆けてゲノム創薬に取り組んできた。19年には英国の「UKバイオバンク」に参加。一定の使用料を支払い、50万人規模のゲノムデータを活用している。20年には東北メディカル・メガバンク機構と共同研究を開始。認知機能の低下など精神・神経疾患を引き起こす要因を中心に調べ、新薬や治療法の確立を目指している。エーザイも21年5月に国立がん研究センターが持つがん組織のゲノムデータをもとに、希少がんの治療薬の開発に乗り出している。もっとも、ゲノムデータ収集で先行するのは欧米だ。武田が参画する英国の「UKバイオバンク」は06年から健康な50万人を追跡。米ファイザーや英アストラゼネカなど世界のメガファーマも参画する。ゲノムデータをはじめとして、生活習慣や既往歴などの情報が利用でき、創薬に利用しやすいという。英国にはがんや希少疾患の患者を対象とした政府系機関によるバイオバンクもあり、18年12月に10万人のゲノム解析を終えた。米国では100万人分を目標に約49万人分を集めた取り組みなどがある。ゲノム解析などに詳しいアーサー・ディ・リトル・ジャパンの小林美保シニアコンサルタントは「UKバイオバンクは英政府が支援しており、データが集まってくる仕組みがある」と指摘する。日本も国の支援のもとデータを集める仕組み作りが必要だ。

<感染者・濃厚接触者も検査で陰性になれば出場させるのが適切>
PS(2021年7月20、21日追加):*6-1のように、「①東京五輪に出場する選手が新型コロナ感染者の濃厚接触者でも、試合開始6時間前に実施するPCR検査で陰性なら出場を認める」「②国内の濃厚接触者は14日間の自宅待機等が求められ、五輪選手への特例的対応」「③プレーブックでは、濃厚接触者は個室に移動し、1人での食事などが求められ、試合出場に国際競技団体の同意が必要とされていた」「④南アフリカのラグビーチームで選手ら18人が大会での濃厚接触者の取り扱いが課題となっていた」と書かれている。
 しかし、濃厚接触者は感染を疑われる者でしかなく、PCR検査で陰性ならその疑いは晴れている。また、PCR検査を数回やって陰性ならなおさら安心で、14日間の自宅待機・個室への移動・1人での食事も不要であり、プレーブックの方が間違いだ。もちろん、国民も同じである。そのため、南アフリカの選手が1人であれ複数であれ、不要な出場禁止や幽閉は、権利の侵害にあたる。また、*6-2の米女子体操選手と濃厚接触者になった選手も、PCR検査で陰性なら何の問題もなく出場を認めてよい筈だ。
 さらに、*6-3のように、「①私立米子松蔭高は、7月16日に学校関係者に新型コロナ感染が判明し、第103回全国高校野球選手権鳥取大会への出場を一度は辞退した」「②ベンチ入りした全野球部員の陰性を確認したが、7月17日の試合直前に辞退を決めた」とのことだが、選手本人が陰性なら辞退する必要はない。にもかかわらず、学校関係者に新型コロナ感染が判明したことを罰するかのように、出場を辞退させるのは非科学的すぎる。また、学校関係者に感染者がいたことが全体の責任ででもあるかのような対応をとれば、悪くもない感染者を窮地に追い詰め、差別やいじめに繋がって教育上も悪影響がある。そのため、「鳥取県高野連が世論の高まりを受けて出場を容認したからよい」のではなく、こういう理不尽な判断が教育現場でまかり通った理由を追及すべきである。

*6-1:ttps://digital.asahi.com/articles/ASP7J3V8MP7JUTQP005.html (朝日新聞 2021年7月16日) 五輪選手、濃厚接触者でも検査陰性なら出場へ 特例対応
 東京オリンピック(五輪)・パラリンピックに出場する選手が新型コロナウイルス感染者の濃厚接触者と判定されても、試合前のPCR検査で陰性となれば出場を認める方向で、政府と大会組織委員会が調整していることがわかった。通常、国内の濃厚接触者は14日間の自宅待機などが求められており、五輪、パラリンピック選手への特例的な対応となる。政府と組織委の対応方針では、濃厚接触者と判定されても、試合開始の6時間前をめどに実施するPCR検査で陰性となれば、出場を認めるという。コロナ対策のルールをまとめた「プレーブック(行動規範)」では、濃厚接触者と認定されると、個室への移動や1人での食事などが求められており、試合出場については国際競技団体の同意などが必要とされていた。今月13日に来日した南アフリカのラグビーチームで選手ら18人が濃厚接触の調査対象者と判定され、事前キャンプ地入りを一時的に見送るなどしており、大会での濃厚接触者の取り扱いが課題となっていた。テニスの4大大会、ウィンブルドン選手権では、濃厚接触者となった選手は自動的に10日間の隔離を強いられ、棄権扱いになっていた。

*6-2:https://www.tokyo-np.co.jp/article/117784 (東京新聞 2021年7月19日) 米女子体操選手が陽性 事前合宿中、1人濃厚接触
 千葉県印西市は19日、同市で事前キャンプをしていた東京五輪の米女子体操選手団のうち、10代選手1人が新型コロナウイルス検査で陽性になったと発表した。別の選手1人が濃厚接触者として宿泊先のホテルで待機している。市によると、選手団は15日の入国後、毎朝スクリーニング検査を実施。10代選手は18日に陽性疑いが出て、19日未明に病院の検査で確定した。選手団はトレーニング以外での外出はしておらず、移動は貸し切りのバスを利用していた。感染した選手と濃厚接触者を除く選手団は19日午後、東京五輪の選手村に移動した。

*6-3:https://ryukyushimpo.jp/kyodo/entry-1359293.html (琉球新報 2021年7月21日) 米子松蔭高、鳥取大会初戦を制す コロナで辞退から一転
 学校関係者に新型コロナウイルスの感染者が出たため、第103回全国高校野球選手権鳥取大会への出場を一度は辞退しながら、一転して出場が決まった私立米子松蔭高の再試合が21日、米子市内で開かれた。17日に行われるはずだった境高との初戦(2回戦)で、米子松蔭高は0対2でリードされていた九回裏に3点を入れ、逆転サヨナラ勝ちした。米子松蔭高は春季鳥取大会を制した強豪校。16日に学校関係者の陽性が判明。ベンチ入りした全野球部員の陰性を確認したが、17日の試合直前に辞退を決めた。世論の高まりを受け、県高野連は19日に不戦敗の記録を取り消し、出場を容認した。

| 経済・雇用::2021.4~ | 11:46 PM | comments (x) | trackback (x) |
2021.6.12~23 差別は人権侵害を生み出し、憲法違反でもあること (2021年6月24、25、28、30日、7月1、3、4、6、7日に追加あり)

    2021.3.31Huffintonpost       2021.5.10日経新聞  2021.5.31東京新聞

(図の説明:左図のように、2021年のジェンダーギャップ指数は156ヶ国中120位で、政治・経済は3桁代、教育は辛うじて2桁代、医療も65位と新興国以下だった。また、中央の図のように、日本は、女性の就業率が上がってM字カーブの底は浅くなったが、出産・育児後は労働法で護られない非正規労働者の割合が高くなるため、正規雇用率はL字カーブだ。そして、非正規労働者は専門職の公務員女性にも多いとのことである)

(1)女性差別による人権侵害
 差別によって不平等な条件を突きつけたり、人生の可能性を狭めさせたりすることは、そもそも人権侵害である。

1)ジェンダーギャップ指数が156か国中120位の理由と日本の現状
 世界経済フォーラムの「ジェンダーギャップ指数」の発表によれば、*1-1-1のように、日本は156か国中120位でG7では最下位、アジアの主要国よりも下位で、順位を下げる要因となったのは、経済分野117位、政治分野147位と経済・政治分野の順位の低さだそうだ。

 経済分野は、男女間の賃金格差、管理職の男女差、専門職・技術職の男女比が、いずれも100位以下で、中でも管理職の男女差は139位と前年の131位から順位を下げた。日本政府は女性活躍促進を政策に掲げていたのだが、政治分野は世界のワースト10に入り、政治分野のジェンダー不平等は、多様な視点を欠いた政策に繋がっている。

 私も、政治分野のジェンダー平等は、個人を尊重し、多様性の確保された社会を実現し、民主主義を発展させ、あらゆる分野で女性の地位を向上させるための必須条件だと思う。しかし、今なお日本社会に厳然と存在する女性に対する偏見・差別・不平等な取扱いによって起こる男性より高いハードルによって、男性より実力がある人でも選挙で公認されにくかったり、公認されて立候補しても当選しにくかったりすることは多いため、その不利を帳消しにするためクオータ制を法制化することは「逆差別」にはならないと考える。

 このような中、*1-1-2のように、政治分野の女性参画拡大を目指すためとして男女共同参画推進法が改正され、女性議員の増加のため女性の立候補を妨げる要因であるセクハラ・マタハラ防止策を国や地方自治体に求める条文が新設されたそうだ。2018年に制定された男女共同参画推進法は、地方選挙や国政選挙の候補者数を「できる限り男女均等」にするよう各政党に促したが、努力義務だったため既得権のある男性候補者に阻まれて進まなかった。これにセクハラ、マタハラ防止の規定を入れたら政治分野の女性参画が進むかと言えば、もともとセクハラ・マタハラくらいは跳ね除けられる人しか議員になろうとは思わないため、影響は小さそうだ。

2)女性に多い非正規雇用
 *1-1-3・*1-1-4のとおり、女性活躍の機運の高まりを背景に「M字カーブ」は解消が進んだが、子育て後に再就職するには非正規雇用が主な受け皿で、女性の正規雇用率は20代後半をピークに右肩下がりで減っていく「L字カーブ」が新たな課題として浮上している。

 そして、内閣府の有識者懇談会が「①正社員に加えて短時間勤務の限定正社員等の選択肢を拡大し、出産後の継続就業率を高める必要がある」と指摘しているように、「②正規雇用以外の働き方が『仕事と育児を両立できる働き方』であり、本人の希望だ」と説明されることが多い。

 しかし、「③都内の公立学校の図書館で司書として働く女性も非正規」「④自治体の非正規公務員の大半は女性」「⑤1年毎の採用で気持ちを安定させて働けない」「⑥全国の自治体で働く非正規公務員は約69.4万人で、9割を会計年度任用職員が占め、その3/4以上が女性」「⑦専門性があっても給与は手取りで月約16万円」「⑧契約更新で理由も分からず職場を去らざるを得なかった人もいた」「⑧声をあげにくい人が多く、問題が覆い隠されている」等の現状がある。

 非正規雇用労働者が増えたのは、1997 年に男女雇用機会均等法が改正され、1999 年に施行された後であり、「女子差別撤廃条約(黒船)」批准のために国内法を整備するために1985 年に成立した旧均等法が「パート・女性のみ」「一般職・女性のみ」というようなコース別の募集・採用することを均等法違反ではないとしていたのを、改正法は違反としたからである。

 つまり、旧均等法ではパートや一般職として女性のみを募集することが許されており、1997 年改正でそれをできなくしたため、「非正規雇用」という労働法で護られない労働者を作って年改正法をザル法化したのだ。そのため、もともと「非正規雇用」は女性に照準を当てており、このように、日本は女性差別を禁止する度にザル法化してきた経緯があるのだ。

 なお、1997 年の主な改正点は、「募集・採用・配置・昇進等の雇用におけるすべての場面で直接差別を禁止」「積極的な差別是正措置に対する国の援助を規定」「セクシャルハラスメント防止のための事業主の配慮義務を規定」「均等法違反企業の企業名公表など一定の制裁措置を講じた」などであり、それまではこれらが堂々と行われていたのだ(https://core.ac.uk/download/pdf/229188692.pdf 参照)。

3)女性の自立を応援しなかった日本社会
 *1-1-5のように、日本国憲法は「個人の尊重と幸福追求権を定める13条」「法の下の平等に基づき性差別を禁じる14条」「両性の本質的平等を保障する24条」を持っているが、それに反して、正規労働者を護るために、解雇しても支障の出ない労働契約になっている非正規労働者を容易に解雇する。そして、非正規労働者に女性をあてていることが多いため、日本は働く女性を応援せず犠牲にしている社会なのである。

 つまり、「非正規労働」は合法的に差別される労働契約であるため、決して自ら好んで選ぶべきではないが、日本政府は出産後の継続就業率を高められる選択肢として推奨しているのだ。

 なお、私自身は、差別される側の労働力になるつもりはなかったため、キャリアを積み男性と同じく働いた上で言うべきことは言い、「仕事は自分で選ぶ」「それができるためのキャリアを積む」「空気は読むのではなく作る」ということをやっているのだが、それについて「女のくせに生意気だ(←女性蔑視)」「性格が悪い(←女性差別)」「変わっている(←女性差別)」「夫婦仲は悪いに違いない(←憶測にすぎず、大きなお世話)」等と言われることがあり、要するに「活躍する女性が幸福な姿は見たくない」と思う差別意識の強い人がいるのだ。

4)女性差別によって享受させられた女性の不利益
 東京都立高校の普通科一般入試は、*1-2-1のように、募集定員を男女に分けて設定しているため性別によって合格ラインが異なり、対象校の約8割で女子の合格ラインが最終的に高かったそうだ。都立高は全国の都道府県立高校で唯一男女別定員があるためこのようなことが起こるが、埼玉県の場合は男女別定員ではなく受験できる公立高校自体が男女で異なるため、どちらも憲法違反であり、ひどい。

 また、合否を中学校が提出する内申点と筆記試験の合計で決めるのも、中学教諭の偏見や先入観が内申点に出やすく、教諭の判断基準は教諭の時代の常識であったとしても(それも疑わしいが)、生徒たちが活躍する時代や場所の常識であるとは限らず、公平・中立にもなりにくいため、私は、内申点を(参考に留めるのではなく)筆記試験と合計することに反対である。

 このように、意図的な選抜を繰り返していると、より優秀な人、より努力する人を合格者にすることができないため、時間が経つにつれて選抜の誤謬が結果として現れる。そして、それが、日本の現在の状況を作っているのではないかと思う。

 しかし、*1-2-2のように、マイケル・サンデルのように「①成功は努力の結果ではない」「②入学を手助けした親や教師、そもそもの才能や素質があるので本人の功績とは言い切れない」と言ったり、上野千鶴子氏のように「③自分が頑張ったから報われたと思えること自体、環境のおかげだ」として、能力や努力に問題提起する人もいる。

 女性に関しては、米国は日本より男女にかかわらず能力を基準として公正に評価する傾向が強いため、日本ほどの女性差別はない。それでもマイノリティーが上昇して成功するには、成功を助ける力より成功を妨げる力の方が大きく、成功にはかなりの努力を要するため、①②は当たらないと思う。さらに、日本は、女性は強い意志と努力がなければ成功できないほど女性が成功するのを妨げる力の大きな環境であるため、環境と才能だけで成功できた女性はいないだろう。

5)結果として変な政策が決まる
イ)少子化自体を問題とする政策の誤り

  
 主要国の人口推移と人口     地域別世界人口     人口ピラミッドの形状

(図の説明:左図は、主要国の人口推移と現在の人口で、日本は1960年代後半に1億人を超えたのであり、ドイツは今でも8千万人代であるため、経済成長率には人口以外の要素が大きく関わっていることを示している。中央の図は、地域別世界人口の推移で、中国・インドが属するアジア地域で人口増加率が大きく、世界人口に占める割合も大きい。右図は、人口ピラミッドの形状で多産多死型から少産少死型に替わる時に釣鐘型からツボ型となり、多産多死型の間はピラミッド型をしているのだ)

 *1-3-1のように、日本では、男性が育児休業をとりやすくする改正育児・介護休業法が成立し、①男性は子の誕生後8週間まで最大4週間の育児休業を取れる ②業務を理由に育休取得に二の足を踏む男性も多いので労使の合意があれば育休中もスポットで就労可 ③休業の申し出は2週間前までに短縮 などが加わったそうだ。しかし、私は、男性がちょっと育児を手伝うには至れり尽くせりだと思った。

 何故なら、②の業務が理由で育休取得が困難であるのは女性も同じであるため、出産後に(1)2)の女性の「M字カーブ」ができるのであり、「M字カーブ」の底が浅くなったとしても出産後の女性の就職は非正規雇用が多いため、女性の正規雇用率は20代後半をピークに「L字カーブ」になっているのである。そのため、女性の多くに「『出産しなければ正規雇用として得られた筈の報酬+社会保障』-『出産したため非正規雇用として得られる報酬+社会保障』」という出産・育児による生涯所得の損失があり、非正規になるため労働法による保護もなくなる上、莫大な子育て費用がかかるのである。

 このような中、第一生命経済研究所の試算では「③出生率の低下は将来の労働力の減少等を通じて中長期の経済成長力を押し下げる」「④2030年代後半に日本は潜在成長率が0.2%程度のマイナスになる」としているが、③④については、女性・高齢者を含めた労働力を100%利用しているわけではなく、日本の成長率が低いのは成長分野に投資しないからなので、少子化のせいでないことは明らかだ。

 ニッセイ基礎研究所の調査では、「⑤持ちたい子どもの数が減った理由で多かったのは、子育てへの経済的な不安」だそうだが、実際には経済的不安・仕事の安定に関する不安・子育てに対する不安・自己実現に対する不安がある。そのため、3・4歳児の教育や大学生向けの奨学金拡充で子育てや教育に対する親の過重負担を軽減するのも大切だが、女性が出産・子育てをしても仕事や研究で自己実現でき、経済的不利益を被らない社会にしなければ出生率は上がらない。

 また、*1-3-2も、「⑥新型コロナの影響で、2020年の合計特殊出生率が1.34で5年連続の低下」「⑦2005年の1.26を底に緩やかに上昇し、2015年に1.45となったが、その後は低下基調」「⑧女性の年代別では20代以下の低下が目立ち、30~34歳で最も高く、40歳以上の出生率も少し上がったが、全体として20代以下の落ち込みを補えなかった」「⑨2021年の出生数は80万人割れの可能性が高い」などと出産競争を促す書きぶりだが、文明の進歩によって女性も高学歴化し、出産・子育てによる自己実現の犠牲を嫌って、晩婚化や生涯未婚化したのが最も大きな理由だと思う。

 さらに、*1-3-3は、「⑪出生数が最少の84万人になったため、急減の流れを止めたい」「⑫このままだと将来の働き手が減少し、社会保障の担い手不足がさらに深刻になる」「⑬雇用情勢悪化による解雇や給料カットで経済的余裕を失ったカップルが多いことも出生数減少に響いた」「⑭政府は結婚や出産を後押しする観点での新たな支援に乗り出すべきではないか」「⑮出生数最多は第1次ベビーブームの1949年の269万人超で、2019年に90万人を割り込んで第1次ブームの1/3に落ち込んだ」「⑯近代以降、乳児死亡率が下がって子どもを多く産む動機が薄れた」「⑰文明の発展に連れて『多産多死』から『少産少死』へ変化する大きな流れに抗えない」「⑰出生数急減を何とか乗り越えたい」等と記載している。

 しかし、現在は⑬の状態なのであり、特に非正規労働者に皺寄せが行っているので、⑫は、まず男女とも正規労働者として100%近い本物の雇用を達成し、本当に人手不足になって初めて移民などの外国人労働者の活用も含めて考えればよいと思う。何故なら、⑭は支援の内容にも依るが、景気対策のバラマキや支援でやっと生活できる人ばかりになると国が潰れるからである。

 また、⑮については、このように出生数が1/3に落ち込み、学校や職場は増えているにもかかわらず、第1次ベビーブーム世代と同じく教育や仕事で不利な状況を与えて女性を活躍させず、競争を著しく減らしたことが、日本の働き手の質を落としたのだ。

 さらに、⑯⑰は、多く産んでも大人になるまで育つ子が少かった不幸な時代から、殆ど全員が大人になるまで育つため少し産めばよい時代になっても、一般の人がその変化を認識して出産数を減らすという生物的行動をとるまでに1~2世代かかることを意味している。そのため、増えすぎる人口を調整するための出生率低下を超える出生率低下は止めるべきだが、⑰のように、「とにかく出生数急減を乗り越えよう」と呼びかけると、地球が人口を支え切れなくなるのだ。

 つまり、日本は、食料・エネルギーを100%以上自給し、これから人口爆発するアフリカ諸国にも輸出できるようにしながら、100%近い本物の雇用を達成し、それでも人手不足があればいろいろと考えるべきである。そのため、教育は、重度障害者でもないのに働くことのできない大人を作らないようにすべきだ。

ロ)遅すぎる対応←「骨太の方針」から
 政府は、*1-3-4のように、経済財政諮問会議で今年の「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)」原案を公表し、グリーン(脱炭素)、デジタル、地方創生、子育て支援の4分野に予算を重点配分する方針を明記したそうだ。

 このうち、2025年度に国・地方の基礎的財政収支の黒字化をめざすとする財政再建目標は、現在は国の財政が現金主義であるため、目標を守ったとしても公正ではなく問題解決もしない。そのため、財政改革の1丁目1番地は、国・地方の財政(年間収支と資産・負債)を複式簿記で把握して発生主義で物を考えられるようにすることで、これをやられると困る人がいるのか、一向に進まないのが現状だ。そして、財政再建と言えば高齢者に対する社会保障費が無駄だから抑えるというのは、今でも社会保障は不十分であるため、高齢者いじめの歪んだ政策である。

 また、脱炭素化に向けて、基金や優遇税制で企業の投資を後押しし、炭素を出さないEV・FCVの普及を進め、「再エネの主力電源化に最優先して最大限の導入を促す」としたのはよいが、もともとトップランナーだった日本のEV・FCV・再エネを、環境を軽視して主要国が軌道に乗せ終わるまで応援せず、ここまで遅れさせたのはまずい政策だった。

 さらに、デジタル化については、マイナンバーカードの健康保険証や運転免許証との一体化等でカードの普及を加速させる意図があるとのことだが、①個人情報を商業目的で売ることに違和感を感じない ②個人情報もビッグデータなら流通させてかまわないと考える ③民間委託を繰り返すことによってデータ保護に責任を持たない体制を作る など、国民の福利を主にして物を考えない姿勢であるため、マイナンバーカードに多くの情報を連結させるのは危険である。

 なお、子育ての良いインフラとなるべき幼保一体化は進まず、2006年10 月1日に施行された認定こども園は、未だ幼稚園と保育所が温存されているため3制度併存となっている。そのため、「子ども庁」を作っても、せっかく省庁再編で減らした省庁をまた増やして予算を増加させ、幼稚園・保育所はそのままにして役所のポストを増やすだけになりそうなので、期待薄だ。

 最低賃金の引き上げについては、地域によって異なる物価水準や人によって異なる生産性に見合わなければ、賃金引き上げは改悪になってしまうため、全国加重平均を1000円以上にする必要はないと思う。

 最後に、コロナ対策で失敗したのは厚労省はじめ政府であり、その無思慮・無能力を補うため、日本の国民は強制力なしでも自粛したのだ。そのため、「④感染症有事の体制強化で、法的措置を速やかに検討」「⑤緊急時対応のより強力な体制と司令塔を持つ」などというのは本末転倒であり、能力も資格もない所に強力な権限を与えて国民の私権を制限できるようにすれば、基本的人権の尊重や主権在民(民主主義)から外れ、日本国憲法違反になる。

ハ)遅すぎた再エネと地熱発電開発


              2021.6.10日経新聞より
(図の説明:1番左の図のように、日本は火山帯の上にある国なので、地熱資源が多い。また、左から2番目の図のように、2015年で日本企業が作る地熱発電設備は世界シェアの6割をしめ、日本企業が関わる海外プロジェクトも、右から2番目の図のように多い。それにもかかわらず、1番右の図のように、日本国内の発電量にしめる地熱のシェアが著しく小さいのは、無尽蔵に近い豊富な資源を使わずにいるということだ)

 「世界でホットな地熱発電 出遅れ日本も『地殻変動』」とする*1-3-5の見出しは面白いが、発電の安定性に優れ、燃料費は無料で、資源量の豊富な地熱を使用した発電を、日本政府は世界で評価され機運が盛り上がって始めて2030年に発電所を倍増させる方針を掲げたのだから、これも無思慮・無能力の一例である。それどころか、天文学的高コストの原子力発電を安価だと強弁して優先してきたため、これによる財政の損失は著しく大きかった。

 これは、地熱資源量で世界第3位の日本の発電量が2020年時点で55万kwに留まり、日本企業のタービンの世界シェアは6割強に達するという対照的な結果を産んでいる。つまり、「政府は、環境も考慮しながら、4の5の言わずに10ットとやれよ」と言いたいのである。

 このような中、*1-3-6のように、全国知事会議によって「デジタル化を進める」「5G移動通信システムに対応する通信網を基礎的インフラとして全国に普及させる」「脱炭素社会の実現を再エネ豊富な地方への分散型国土創出のチャンスとする」などの提言がなされたのは注目に値する。

二)非科学的なコロナ対応
 政府(特に厚労省とその専門家会議)は、検査・ワクチン・治療薬などのコロナ対応で失敗したことは言うまでもないが、限られたワクチン接種の優先順位でもおかしなことが続いた。そもそも、接種会場に行けないような寝たきりに近い高齢者にワクチンを接種するのは、ワクチン接種による健康リスクが高い上、そういう高齢者が新型コロナを他人に感染させるリスクは低いため、そういう人に接する人(介護士や家族)にワクチンを接種した方が効果的なのだ。

 また、ワクチンが十分に供給された後も、*1-3-7のように、64歳以下の接種に優先順位をつけ、無駄に煩雑化して時間の浪費をしている。そのため、市区町村ごとに独自に優先対象枠を設定するのはよいが、なるべく多くの人に素早く接種することが感染を広げないためには最も重要なので、20~30代を優先するというのもおかしいのである。

 さらに、五輪は「中止だ」「無観客だ」と騒いでいるメディアが多いが、免疫パスポートを持っている人と直近の陰性証明書を持っている人だけが入場できるようにすれば何の問題もないし、日本なのだから、客席の下に航空機レベルの強力な換気扇を設置しておけば、観客の中に少し陽性者が混ざっていたとしても感染リスクはかなり軽減されるのである。

 にもかかわらず、「ワクチン接種が進めば、何となく政権に好感が持たれる」「10~11月にかけて、すべての接種を終える」などのボヤっとした政治的意見が出るのには呆れる。そのため、企業・学校などの職域接種をできるだけ早く始め、終わったところは一般の人にも開放した方がよいと思う。このような場合に、「五輪は特別か」「自治体毎に差が生じるではないか」「免疫パスポートの提示は差別に繋がる」などの悪平等を奨める議論をするのは筋が悪すぎる。

(2)年齢差別による人権侵害


  *2-3(図表1)     *2-3(図表2)     *2-3(図表3)

(図の説明:左図のように、65歳の健康余命は、男14.43年・女16.71年であり、75歳でも男7.96年・女9.24年である。また、中央の図のように、平均余命も健康余命も、男女とも伸びている。さらに、右図のように、健康上の理由で日常生活に影響のある人は、85歳未満では50%以下で、85歳くらいから増え始めている)

1)“高齢者”に定年は必要か
 “高齢”になった時、頭脳や身体の機能がどのくらい衰えるかは、生物年齢によって一律に決まるのではなく、個人差が大きい。そのため、一定年齢になると全員を退職させる「定年」というシステムは、余剰人員があって若い世代の出番がなかなか回ってこないような企業には便利かもしれないが、人材不足の企業にはむしろ不都合なのである。また、年齢を理由に解雇される被用者にとっては、これまでより悪い条件の職場に移動して勤務しなければならず、年齢による差別であると同時に人権侵害でもある。

 さらに、65歳以下の従業員しかいない会社は高齢者のニーズを把握できず、ここでも多様性のなさが利益機会を逃す結果となっている。

 そのため、健康状態に合わせて負荷を軽くしながら、健康で働ける限りは働いた方が経済的にも健康維持にもプラスであり、同じ生活を続けられた方が被用者にとって精神的負荷が少い。

イ)定年の廃止
 現在の一般的定年年齢である65歳は、*2-3のように、仕事、家事、学業などが制限されない健康余命が男性14.43年、女性16.71年(80歳前後まで)残っており、75歳でも男性7.96年、女性9.24年残っているそうだ。

 そのため、*2-1-1ように、YKKが正社員の定年を廃止して、本人が希望すれば何歳までも正社員として働けるようにし、生涯現役時代に備え始めたのは妥当である。しかし、これらがうまく機能するためには、役割に応じて給与が決まる役割給(≒能力給・成果給)を採用し、同じ能力・成果なら年齢に関係なく同じ給与になる仕組みが必要だ。そして、「年齢だけを理由に処遇を変えたり、退職させたりするのは公正でない」というのは正しい。

 三菱ケミカルは2022年4月に現在60歳の定年を65歳に引き上げ、将来は定年廃止も検討しているそうだが、給与制度は能力・経験に基づく職能給と、仕事の成果・役割に基づく職務給で構成していたのを、2021年4月から職務給に一本化したそうだ。

 三谷産業の場合は、2021年4月から再雇用の年齢上限をなくして65歳以上は1年ごとの更新制としたそうだが、これは年齢だけを理由に雇用条件を変えており、公正とは言えない。

ロ)70歳定年制
 ダイキン工業は、*2-1-1のように、希望者全員が70歳まで働き続けられる制度を始め、少子高齢化で人手不足が続く中、企業がシニアの意欲と生産性を高める人事制度の整備に本格的に乗り出したそうだ。しかし、これまで定年が60歳で65歳まで希望者を再雇用していたのは、やはり年齢だけを理由に処遇を変えたり、退職させたりしており、公正ではなかった。

 各社が対応を急ぐ背景には、年金の支給開始年齢が段階的に引き上げられ、所得の空白期間をなくすため、2021年4月に施行された改正高年齢者雇用安定法があり、従来、企業は従業員が希望する限り65歳まで雇用を継続する義務があったが、法改正で70歳まで就業機会確保の努力義務が課されたからだそうだ。

 大半の企業は再雇用期間の単純延長などで対応し、多くは現役時代に比べて2~5割程度給与が下がってシニアのやる気と生産性の低下が課題になっているため、定年を廃止する企業は成果に応じた賃金制度を導入したりして給与の減少を一定程度に留めるそうだ。私は、成果や能力に応じた賃金制度を導入した方が、年齢に関わらず誰にとっても公平でやる気が出ると思う。

 世界では定年制は一般的でなく、米国・英国は年齢を理由とする解雇を禁止・制限しているが、日本は定年のない企業の方が2.7%に留まる。その理由は、正社員に対して年功序列型賃金体系を採用し解雇規制も厳しいため、定年を延長・廃止しただけでは生産性に見合わない人への人件費が増加するからだ。ただ、職務を十分に果たせない理由は年齢ではないため、公正な雇用環境とは、成果主義・能力主義による賃金体系にほかならない。

 ちなみに、年功序列型賃金や解雇規制によって護られた正規雇用を維持するため、出産後の女性(もしくは多くの女性)に非正規雇用の職しかないのは、雇用の調整弁にされているからである。そのため、女性は、もともと、非正規雇用の職を押し付けられるよりは、(年功序列よりは厳しいかもしれないが)能力主義・成果主義賃金体系の中、正社員として企業間移動も容易である方がずっと公平・公正になるという環境下にあるのである。

ハ)中小企業の対応
 *2-1-2のように、70歳まで働く機会の確保を企業の努力義務と定める改正高年齢者雇用安定法が4月に施行されたのを受けて、日本商工会議所が中小企業に対応を聞いたところ、必要な対応を講じているのは約3割に留まることがわかったそうだ。

 新型コロナで企業の業績が悪化し、余剰人員が増えて人件費の負担増に繋がる施策の導入は難しそうだが、中小企業に熟練労働者は貴重であるため、もともと定年のない企業も多い。そのためか、必要な対応を講じている企業の具体策は、70歳までの継続雇用制度の導入(65.8%)、定年制の廃止(20.2%)と定年制の廃止も少くない。

2)高齢者医療←“公平”とは何か
 *2-3に書かれているとおり、平均寿命は0歳の人の平均余命で、64歳以下でなくなる人の死亡時年齢も加えた平均であるため、65歳まで生きた人の平均余命は平均寿命より長い。

 そのため、平均寿命を目安にして老後生活のための資産形成をしたのでは不十分な上、健康寿命を過ぎた後は医療・介護の世話になることになる。これは、若い世代が医療・介護保険料を支払っても殆ど医療・介護の世話にならないのと対照的だが、このサイクルはすべての人に起こるものである。

 従って、人口構成が変わる国は、若い時代に支払った医療保険料・介護保険料を発生主義で積み立てておかなければ、国民が高齢になった時に医療・介護費を負担できず、まさに現在の日本のような状態になる。しかし、このライフ・サイクルは、今になって初めてわかったことではなく、保険制度を作った時からわかっていたことであるため、適切な対応をしなかった管理者に全責任がある。

 そのような中、*2-2-1・*2-2-2は、「①高齢化に対応するため、全ての世代に公平で持続可能な医療保険制度の構築を急ぐべき」「②75歳以上の後期高齢者で一定以上の所得がある人の医療費窓口負担を1割から2割に引き上げる医療制度改革関連法が成立」「③一定収入とは年収が単身で200万円・夫婦世帯で計320万円以上」「④後期高齢者医療費のうち自己負担分を除く約4割は現役世代の保険料で賄っている」「⑤政府はこの改正が現役世代の負担増を抑える一歩にすぎないことを認識し、さらなる改革を急ぐべき」「⑥厚労省は負担引き上げによる受診減で75歳以上の医療費が年約900億円減少するとみる」「⑦実際の負担は、高額療養費制度の活用で軽減を図れる」「⑧政府の説明は『受診行動の変化のみで健康への影響を分析するのは困難』と繰り返すだけ」「⑨健康診断受診率を高め、疾病を早期発見する環境整備も必要」「⑩今後は資産に着目した制度設計が不可欠なので、高齢者の収入・資産状況を把握するマイナンバーを使った改革を急ぐべき」などを記載している。

 このうち、①については、ライフ・サイクルを考慮した時、i) 殆ど医療・介護のニーズがない若い世代が入る保険 と、ii) 医療・介護のニーズが高くなる定年後に入る保険 を分けたことが、保険の原理に反しており、不公平を作っているのだ。その不公平の一部を解消するため、④のように、自己負担分を除く約4割を現役世代の保険料で賄うという恣意的割合での補助を行っているのだが、若い時代に支払った保険で定年後も面倒を見るのが本来の保険の姿である。従って、現在の仕組みなら、若い世代だけが入っている医療保険は大きな黒字になっている筈だ。

 また、②③の一定以上の所得を単身で200万円・夫婦世帯で計320万円以上と定めたのは、医療費が0の生活保護家庭と同レベルの所得でも、後期高齢者は医療費窓口負担2割としている点で不公平だ。何故なら、健康寿命を過ぎると、医療・介護を継続的に利用し続けなければならなくなるため、医療・介護費、水光熱費を除いた可処分所得が少なくとも食費・住居費・交際費を支払える程度に残らなければ、最低生活ができないからである。そのため、⑦は最低生活を保障できる金額でなければならないのである。

 なお、⑥⑧は、科学的根拠はないが、とにかく高齢者は邪魔だと考える行政の言いそうなことだ。⑨に反対する人はいないと思うが、いくら健康診断をしても最後は誰しも健康寿命が尽きて亡くなるため、かかる医療費・介護費は変わらないと思う。違いは、それが早いか遅いかだけであろう。

 ⑤⑩については、高齢者の資産はその人が働いて所得税を引かれた後の税引後所得から貯めたものであるため、ここに課税すれば二重課税になる。また、多くの資産を子孫に残す人は相続税で課税されるため公平性が保たれており、マイナンバーを使って高齢者の資産に手を突っ込もうなどと考えるから、政府に信用がなくなって、マイナンバーカードも普及しないのである。

 なお、*2-2-3に、「⑪負担能力を判断する収入に、貯金などの金融資産を含める意見もあるが、稼働所得が少ない高齢者に負担増を求めるのは極力避けなければならない」と書かれているのは本当で、「⑫高齢化がピークに近づく2040年に向け、抜本的な社会保障制度改革は避けて通れない」というのは、私が上に書いた変更を行い、積立金の不足する分は、バラマキの無駄遣いをやめ、日本に豊富に存在する資源の開発を行ってその収益を充てたり、それこそ国債で賄ったりすべきなのである。

(3)外国人差別による人権侵害
1)日本の難民受け入れと「入管法改正案」
 *3-1・*3-2のように、政府・与党は、「①現行の出入国管理法では、外国人が難民としての認定を日本政府に申請している間は強制送還できず」「②その結果、施設収容が長期化している」として、「③難民認定申請を2回までに制限して退去命令に従わない際の罰則を設け」「④繰り返し申請する人を送還可能にする規定を盛り込んだ」改正案を、入管施設に長期収容されていたスリランカ人女性が死亡したのをきっかけに、今国会での成立を断念した。しかし、筋の悪いこの改正案は廃案にすべきである。

 何故なら、この改正案は、迫害から逃れてきて帰国できない事情のある人への配慮に欠け、国連難民高等弁務官事務所や国連人権部門から懸念を示されていたものであるため、国際水準に沿った入管法改正を行うことが必要なのだ。例えば、日本の2019年難民認定率は0.4%で、米国29.6%やドイツ25.9%より著しく少なく、外国人労働者は労働力の調整弁として受け入れてきた経緯があるため、人権を尊重した抜本的な制度改正が必要なのである。

 さらに、出入国在留管理庁は、「退去回避や就労目的が相当数含まれていた」と主張するなど、(母国にいるため外国人より優位な立場にある筈の)日本人労働者の職を護るため外国人の就労を著しく厳しく制限しており、外国人は悪人であるかのような偏見を持って管理している。この行為は、祖国で迫害されて脱出し、日本で保護されるべき外国人を送還して危険にさらす恐れがあるため、人権侵害であるとともに、日本国憲法にも違反している。

 しかし、紛争や差別、迫害から逃れてきた難民申請者には高学歴の人も多く、2つの祖国を持つ人は両方の文化を理解して懸け橋になったり、日本企業のグローバル展開に貢献できたりしやすい。さらに、従業員の出身国もまた、多様性があった方が、新しい製品やサービスを開発する機会が増えるので、外国人も排除するより認定基準を変えて活用した方が、双方にってプラスなのである。

2)自分が差別される側だったら、看過できないにもかかわらず・・
 日本で、「差別はいけない」と言って男性はじめ多くの人に賛成してもらうには、人種差別を例に出すのが最もピンとくるらしくて早いというのが、私の経験だ。

 そのような中、*3-3は、「新型コロナが中国から世界に広がったことがきっかけで、米国でアジア系の人を標的にしたヘイトクライムが目立つようになり、日本人まで巻き込まれているので差別解消に向けて日本から声を上げるべきだ」という抗議をしているが、アジア出身の人への差別は、(3)1)のように、日本人も行っている。にもかかわらず、多くの米国民に中国人・韓国人・日本人が同じに見えて出自が中国でないアジア系移民まで襲撃対象にされていることを不満に思うのは自分勝手すぎる。

 欧米人には、中国・韓国・日本の人は同じに見えるようで、私は台湾の人と米国人の家を訪問した時に「貴女たちは、お互いに言葉が通じるの?」と聞かれて、2人同時に「No!」と答えたことがある。その人は、標準語と関西弁くらいの違いだと思っていたらしい。

 もちろん、外交・安全保障で近隣国に毅然として言うべきことは言わなければならないが、それとは別に、アジア人であれ、アフリカ人であれ、人を差別すべきではない。幸運が重なることによって、日本の経済力が長い歴史から見れば瞬間的により進んでいたからといって、日本に住む1人1人が、より優れているわけではないことを心すべきだ。

(4)雇用形態について
 正規雇用と非正規雇用の社員間にある“不合理”な格差の解消を目指す「同一労働同一賃金」のルールが、*4-1のように、2021年4月から中小企業にも適用されたそうだが、合理的な待遇差は認められている。しかし、①厚労省は、基本給では能力・経験、業績・成果、勤続年数に応じて支給する場合は同一の支給、違いがあればその違いに応じた支給を求め ②最高裁は、賞与と退職金などについて格差を認める判断を示し 何が合理的な待遇差の範囲かは曖昧だ。

 しかし、①の能力・経験の違いについては、日本は年功序列(勤続年数による評価)の企業が多かったため、能力・経験、業績・成果などを公正かつ正確に評価して報酬に結び付ける文化がなく、合理的な待遇差か否かが客観的ではなく恣意的な説明になるのが問題なのである。

 また、②は、企業が非正規雇用を使う目的から、「賞与・退職金・福利厚生に違いがあるのは当然だ」ということになる。また、非正規雇用は短期の雇用になりがちで、労働生産性を高める研修も受けにくく、これは職務を限定せずジョブローテーションを繰り返して専門性の高い人材を育てない正規雇用と相まって、日本の労働生産性を低くする原因となっている。

 私も、欧米型の「ジョブ型」雇用の方が労働生産性を高めるとは思うが、ジョブ型雇用は、そのジョブで必要がなくなれば、正規か非正規かに拘らず配置転換ではなくクビにするものだ。そのため、日本のように、社員を正規と非正規に分ける必要はなく、正社員でも成果さえあがれば短時間勤務でもOKで、休職した後でも不利なく復職することができる反面、これらがうまく機能するためには、辞めた従業員の能力・経験を評価して労働者に不利益を与えることなく受け入れる企業の多い労働市場が必要なのである。

 日本は、ジョブ型雇用、能力や実績を報酬と結び付けるための評価システム、辞めた従業員の能力や経験を評価して不利益なく受け入れる労働市場に乏しいため、*4-2のように、パート・派遣などの有期労働契約が5年を超えて繰り返し更新され本人が希望すれば、無期雇用契約に切り替えられる「無期転換ルール」ができたわけだ。

 しかし、無期契約は昇給制度を作る必要がなくても人件費が重荷になるため、対応にあたって、③契約更新の回数に上限を設けて5年を超えない運用にする ④無期転換した人材は、特定の仕事には力を発揮するが配置換えをすると能力不足を感じることが多い とする企業もある。

 ③は、ザル法化で、④は、*4-3のように、正規雇用の労働者でも専門外の仕事に配置換えすればやる気も生産性も落ち、度重なる配置換えによって専門性も育たなくなるという悪影響がある。そのため、有期労働者の不安定な状況を改善するには、長期の雇用保障や年功賃金で正社員が手厚く保護され、コスト抑制策として非正規雇用が活用されている労働市場の構造を変える必要があるのだ。

 そのためには、労働者を犠牲にするのではなく、転職しやすいジョブ型雇用の労働市場を作り、解雇規制の緩和とセットにする金銭補償は会社都合退職金を自己都合退職金の3倍にするなどを行う必要がある。この「会社都合退職金を自己都合退職金の3倍にする」というのは、事業縮小のために希望退職を募っていたオランダ銀行日本支店が行っていたことで、監査に伺っていた私は、その筋の通った徹底ぶりに感心した次第だ。

(5)不合理な政策が通る理由は何か
1)新型コロナワクチンについて
 加藤官房長官は、*5-1-1のように、6月17日の閣議後会見で、①新型コロナワクチンの接種を公的に証明する「ワクチン証明書」の交付を市区町村が7月中下旬から始める ②まず書面で交付し、電子交付も見据えて検討を進める ③ワクチン接種の有無による国内での差別を防ぐため、同証明書は海外との往来を主な目的とする という方針を明らかにした。

 しかし、①②は、接種券に「新型コロナワクチン予防接種済証」が付いており、接種時にワクチンの種類・接種日・接種場所が記録されるため、ワクチン接種後はすぐに書面による交付ができている。そのため、電子証明は、接種済証を所定の場所に持っていけばできるようにすればよいのである。また、③は、「糖尿病や肥満の人に食事制限するのは差別にあたるので、家族全員が食事制限すべきだ」と言うのと同じくらい不合理で馬鹿げている。

 そのため、ワクチン接種済証か直近の陰性証明書の提示を条件にすれば、*5-1-2のような入場者制限・飲食店の時短・酒類の提供制限も不要であり、恩着せがましく少しずつ緩和していただく必要はない。にもかかわらず、「五輪は、中止か、無観客で」などと言っていた新型コロナ対策分科会の“専門家”が、五輪の開催方法については「人の流れを止める」以外の助言もできず、役割を果たしていない。これは、「“専門家”の選び方が悪い」というほかないのである。

 さらに、*5-1-3のように、ファイザー製ワクチンの接種対象が12~15歳に広がっているのを受け、小児科学会等が、「③(かかりつけ医による)個別接種が望ましい」「④感染予防策としてワクチン接種は意義があるが、副反応の説明や接種前後の健康観察を入念にするように求める」「⑤基礎疾患がある子どもは、健康状態をよく把握している主治医との相談が望ましい」という見解を発表したそうだ。

 しかし、④⑤については同意するものの、③については、健康な子どもは学校で集団接種して問題ないだろう(私たちの世代は普通に集団接種していたが、近年はしないのか?)。それより、日本の場合は、体重に比例してワクチン接種量を加減しないため、体重45kgの痩せた女性が体重90kgの米国人男性と同じ分量のワクチンを接種すれば副反応が強く出るのは当たり前だ。まして、体重30kgの子どもなら分量は1/3程度でよい筈だが、それこそ日本の“専門家”は何も調べておらず、意思決定権者もそれを求めていない点で、勉強不足である。

 なお、東京五輪・パラリンピックに合わせて来日する外国メディアの行動を、*5-1-4ように、スマートフォンのGPSを使って管理する方針は、確かに、⑥ジャーナリストのプライバシー権を完全に無視しており ⑦報道の自由を制限するもの であるため、国際ジャーナリスト連盟(IFJ)が強く反発するのは当然で、このような規制をしようと思つくこと自体が恥である。安全を維持するためなら、ジャーナリストはじめ関係者の入国時に免疫パスポートの提示を義務付ければよく、性犯罪者ででもあるかのようにGPSで追いかける必要はない。

 最後に、五輪で入場者数の制限・飲食店の時短・酒類の提供制限等をして世界のお祭りに水をかけたりせず、来られた方を「おもてなし」できるためには、*5-1-5の職域接種を五輪までに関係者全員(の希望者)に完了するための経済界の活躍が期待される。新型コロナで損害が大きく、世界標準も知っている航空会社が前倒しでワクチン接種を始めたのは尤もだが、ほかにも政府が職域接種の目安とする従業員千人に満たない中小企業が素早くワクチンを接種できる工夫はあった。そのため、顧客企業が素早く立ち直ることこそが貸付金の返済に繋がる都市銀行・地方銀行・信用金庫等も、顧客企業の従業員や家族まで対象にしたワクチンの集団接種を行い、地域の安全・安心を作り出すのがよいと思う。

2)社会保障について
 一定所得(単身:200万円以上、複数世帯:320万円以上)以上の75歳以上の後期高齢者医療費窓口負担を、1割から2割に引き上げる医療制度改革関連法が、*5-2-1のように、自民・公明両党などの賛成多数で成立した。田村厚労大臣は、その目的を「①若い人の負担の伸びを抑える目的だ」と述べられ、持続可能な医療保険制度に向けて税制(消費税)も含めた総合的な議論に着手することも明記しているそうだ。ちなみに、現役並所得(単身:年収383万円、複数世帯:520万円以上)とされる人は、雇用の不安定さにかかわらず現在も3割負担である。

 これについては、厚労省の杜撰な資金管理を改善することもなく、国民の負担増・給付減ばかりを決めており、日本国憲法25条の「1項:すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。2項:国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない」に違反している(https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_annai.nsf/html/statics/shiryo/dl-constitution.htm 参照)。そして、これは人口構成とは関係のない問題だ。

 さらに、全世代型社会保障はよいし、若い世代も介護保険制度に加入して負担すると同時に給付も受けられるようにすべきだと思うが、保険制度はリスクの高い人と低い人が混ざっていて初めて成立するものなので、高齢者を労働していた現役時代とは別の保険制度に入れ、「②財源は窓口負担を除いて5割を公費で負担し、残り4割は現役世代からの支援金、1割を高齢者の保険料で賄う」「③75歳以上の人口が増えて医療費が膨らめば現役世代の負担も重くなる」などと言うのは恩着せがましいし、これまで制度の基盤を固めてきた人に対して恩知らずで失礼でもある。

 なお、*5-2-2のように、「④高齢者の中には、所得が少なくても金融資産を多く持っている人もいるので、資産も合わせて判断するようにすべきだ」などと、課税済所得から蓄積した金融資産まで考慮して給付を減らすべきだという不公正な理論を展開している人もおり、「高齢者は日本国憲法で護るべき国民のうちに入らないから、理屈はともかく犠牲を払ってもらいたいし、資産だけはもらいたい」という考えが丸見えで、どういう教育をするとこういう利己的な考え方をする人間ができるのか、親の顔を見て苦情を言いたいくらいである。

3)まとめ
 私は、東大医学部保健学科卒なので、医療システム・疫学・地球環境・公衆衛生学・母子保健・栄養学・解剖学・人体の健康維持システム・精神衛生・成人病等について大学で習った。しかし、仕事のために公認会計士資格(経済学・経営学・会計学・原価計算・財務諸表論・商法・監査論等が必須だった)をとり、監査で外資系の薬剤会社・医療機器メーカー・銀行・保険会社などを担当し、税理士としては税務申告や金融商品にまつわる税務コンサルティングを行った。そして、国会議員時代は、社会調査を兼ねて佐賀県の地元を1件1件挨拶廻りしながら話を聞き、地方の課題を洗い出して解決法を考えた。

 その結果として得た総合力でこのブログを書いているのだが、その目で日本で専門家として意見を述べている人たち(殆ど男性)を見ると、専門の範囲が狭く、丸暗記型で、他分野のことに疎く、小さな範囲の部分最適しか述べていない。それにもかかわらず、女性が意見を言うと、「非科学的」「感情論」等の女性に対する偏見に満ちた理解をするため、始末が悪いのだ。

 そのような中、(5)1)の新型コロナについては、下の指摘ができる。
  ①中国は当初から「無症状者にも感染力のある人がいる」と指摘していたため、厚労省は
   クラスターだけを追いかけて武漢ウイルスと呼ぶのではなく、万難を排してPCR検査を
   徹底し、蔓延を防止すべきだったのに、それをしなかった。
  ②検疫もいい加減だったため、島国であるにもかかわらず水際で止められなかった。
  ③医療システムに感染症対応が抜けており、治療すらまともにできないという、日本では
   考えられない事態を起こして、日本医療の評価を著しく下げた。
  ④政府が治療薬やワクチンの開発・承認を遅らせたため、膨大な金額の支援金で国費を
   無駄遣いしたのみならず、新薬や新ワクチンで得られる筈の利益機会も逸した。
  ⑤ロックダウンやまん延防止措置など、中学校の校則のように杓子定規な規制を一斉に
   かけ、それを乱発して、国民の私権を制限した。そして、行政は、これを「断固とした
   対応」などと言っている点で質が悪い。
  ⑥さらに、日本国憲法に「緊急事態宣言を入れ、大っぴらに国民の私権を制限できるよう
   にせよ」と言っているのは、憲法改悪の第一である。

 また、(5)2)の社会保障については、下の指摘ができる。
  ①「社会保障が高齢者に手厚すぎる」などと呪文のように唱え、高齢者への負担増・
   給付減をやり続けて生活を脅かしているのは、家計の分析すらできない人のする
   ことで、憲法25条違反である。
  ②介護保険制度を軽視し続けているのは、自らは家事や介護にあたらないと思って
   いる男性が大多数の政治だからである。
  ③人口減自体を問題視する愚かな論調が多いのも、「子育ては女性の仕事」と信じ、
   自らは家計すら考えたことのない男性が大多数の政治だからであろう。
  ④「課税済所得から蓄積した金融資産まで考慮して給付を減らすべきだ」などという
   理論を展開している人が少くないのは、二重課税の弊害もわからずに政策提言を
   しているからであり、不公正を招いている。

 しかし、国民にも責任はある。何故なら、主権在民の国である日本で議員や首長を選んでいるのは国民だからで、メディアが変な論調を続けてもまともな批判ができず、それに引きずられた意見形成をしているのも国民だからである。

(6)教育と人材

   
2019.8.1福井新聞  2019.8.1西日本新聞 2020.4.25毎日新聞    Resemom

(図の説明:1番左の図のように、小学6年生と中学3年生の全国学力テストは、福井・秋田など北陸・東北の平均が高く、東高西低になっている。また、左から2番目の図のように、九州7県は全国平均以下の地域が殆どで、公立は私立より低いため、何故こうなるかの原因分析が必要だ。また、右から2番目の図のように、教育用PCの普及は2人に1台《これでも自由には使えない》の佐賀県が最も多く、1番右の図のように、電子黒板整備率は佐賀県が突出して高いが、これには、ふるさと納税制度も利用した県を挙げての努力が見える)

 先端技術の開発や生産、サービスの提供など、どんな仕事をするにも教育を受けた質の高い人材が行えば、質の高い仕事ができる。ここでいう“質の高い”にはいろいろな要素があり、知識・思考力・体力だけでなく倫理観・勤勉・真面目などの性格を備えていることが必要だが、話を複雑化させないため、以下では、知識と思考力に絞って記述する。

イ)大学入試について
 国立大学協会入試委員会が、これまでの「国語」「地歴・公民」「数学」「理科」「外国語」の5教科7科目に「情報」を上乗せして、*6-1-1のように、2025年の大学入学共通テストから、国立大学の受験生に原則として「6教科8科目」を課す案を検討しているそうだ。

 プログラミング等を学ぶ情報Ⅰもデータサイエンスによる分析を学ぶ情報Ⅱも大切ではあろうが、私たちの世代は、理系の人でも、プログラミングは大学の教養で、データサイエンスは大学の専門や大学院で学んだため、大学入試で必須科目として高校までの履修を不可欠にするのなら、義務教育を3~18歳にしてゆとりを持って学べるようにしなければ消化不良になりそうだ。それでも、分析するには影響しそうなファクターをあらかじめ予想しなければならないため、知識と経験が必要であり、学校での限られた経験しか持たない生徒には難しそうだ。

 また、「義務教育終了段階での高い理数能力を、文系・理系を問わず大学入学以降も伸ばしていく」ことも重要だが、それには、高校では文系も数Ⅲを履修しておく必要がある。何故なら、大学で学ぶ経済学やデータ解析には、個の行動を統計的に集計して全体の行動にする過程があり、それには数Ⅲの微分・積分の理解が必要だからである。

 なお、情報を教える態勢は地域によって差があって、教員の確保が急務となっており、文科省の調査では、情報担当教員の2割が「情報免許状保有教員」ではない「免許外教科担任」や「臨時免許状」を持つ教員で、今のままでは新指導要領の内容をきちんと教えることができない学校が出るそうだ。ただし、教育用PCの普及は、むしろ地方の方が進んでおり、電子黒板整備率は佐賀県が突出して高い。さらに、私立と公立のPC整備率を比較すると私立の方が高いので、公立も頑張ってPCを整備し、教えられる人材を教員に採用しなければ教育格差は広がるだろう。

ロ)全国学力テストについて
 2019年4月に行われた全国学力テストの結果は、*6-1-3のように、福井県は「①中3は、英語で東京都等と並んで1位、数学も1位、国語は2位」「②小6は、国語2位、算数4位」「③小中とも調査開始以来12年連続で全国トップクラスを維持」「④県教委は授業や家庭学習に熱心に取り組む子どもと教員らの努力の成果と評価」「⑤目的や意図に応じて自分の考えを明確に書いたり、複数の資料から必要な情報を読み取って判断したりするのが苦手な傾向は変わらなかった」「⑥文科省は、学力の底上げ傾向は続いていると指摘した」とのことである。

 ①②③は立派な成績で、まさに④のとおりだろう。⑤は、日本人は大人も、自分の考えを明確に述べることを嫌ったり、分析が苦手だったりする人が多い上、TVもまともな意見を出し合って議論する設定の番組が少ないため、子どもも訓練される機会がないのだと思う。そのため、全体の底上げは重要で、⑥は正しい。

 一方、全国学力テストについて、*6-1-2は、「⑥全国学力テストの結果をより重視する学校もある」「⑦過去問を解くなどの事前準備が常態化し、本来の調査目的から逸脱している状況もある」「⑧研究者は『学力の一部しか測れないにもかかわらず、現場だけが結果責任を問われ、追い詰められている』と訴える」「⑨学校側が意識するのは県教育委員会が各公立小中に作成を求める学力向上プランで、全国学力テストの目標点を示した上で、課題の分析や授業の改善を促している」「⑩とにかく結果を優先せざるを得ない状況になっている」等と記載している。

 私は、⑨は全体の底上げのために正しいと思う。そのため、⑥⑦⑧の弱点は改善すればよく、⑥⑦については、生徒が初めて受ける形式の試験で何を答えればよいのかわからなければテストする意味がないため、少しは過去問を解く練習も必要だ。また、⑧は、確かに英語・数学・国語しかテストしていないので学力の一部しか測っていないが、それなら科目数を増やせばよい。そのため、「現場だけが結果責任を問われ、追い詰められている」というのは、責任のある人が責任を果たさず、言い訳しているように見える。現場以外に責任があるのなら、それもまた明確にして改善していくべきで、⑩については、結果が出なければやる意味はないと心得るべきだ。

 なお、子どもの実力を正しく把握する上で、学校内や狭い地域内だけでなく、全国規模で比較し検討する意味は大きい。また、公立校のレベルが低ければ、親の資金力が子どもの学力を決め、貧困の連鎖が生まれる。その上、外国人労働者を差別したり、景気対策と称するバラマキをしたりしなければ日本人労働者の雇用を守れず、国際競争に勝てない大人を大量に作り出したりもする。そのため、学力テストを使って子どもの学力を伸ばそうとしていることは重要で、これは、世界でも日本だけではないことに留意すべきだ。

ハ)私立と公立の差
 新型コロナの緊急事態宣言中、都立高校は、*6-2-1のように、校内の生徒数を3分の2以下に抑える分散登校を続け、登校しない生徒はオンラインを活用した自宅学習としているが、学校の通信環境や取り組みに差があって出欠確認だけの都立高もあり、生徒や保護者からは「学習が遅れていないか」と不安の声が漏れているそうで、当たり前である。

 また、*6-2-2のように、IT・ネット分野専門のミック経済研究所が学校の無線LAN普及率を調査し、「①2015年5月の無線LAN平均普及率は、私立59.3%(中学56.3%・高校61.2%)・公立42.6%(中学40.2%・高校35.0%)だった」「教室数等単位では、私立17.8%・公立16.4%で、特に公立高等学校が2.6%と低い」と発表した。

 PC・タブレットを使う時間が長いと、物事を理解したり覚えたりする時間はむしろ短くなり、深く思索することも少なくなるため、成績がよくなるとは限らない。しかし、辞書・参考書・筆記用具・電話と同じ文房具として使いこなせば、今までできなかったことができるし、今はそれをやるべき時代であろう。そのため、私は、教育に使うPC・タブレットは、ゲーム等の無駄な機能を搭載しない教育用の機種を1人1台支給して、通常の授業で使いこなすのがよいと思う。

 使いこなし方は、①英語の練習として英語圏のニュースを見る ②地学や歴史に関する映像を見る ③理科の内容を動画で見る ④音楽で本物の演奏を視聴する ⑤美術で国内外の美術館・博物館をリモートで訪れる ⑥体育でダンス等の動画を見ながら練習する など、紙の教科書と担任だけでは不十分になりがちな内容を視聴したり、国内外の同学年の生徒とリモートでディスカッションしたりなど、さまざまに考えられる。そのため、これらに沿う動画を紙の教科書以外に副読本として作成する必要はあるが、一度作成すれば国内外の多くの生徒が使うことができるため、決して高価なものにはならないと思う。重要なのは、本物を見せることだ。

 なお、最近、私は中国政府が国家の威信をかけて作ったという「三国志(完全版)、全5巻、日本語字幕付」のDVDを買って、まだ1巻の始めだけだが見た。すると、高校時代に漢文で習った内容が多く入っており、中国の有名な俳優が当時の服装で出ているため中国の歴史が目に見え、中国語の美しさにも触れることができた。これは、日本や欧米の歴史についても行っておけば、世界の人がその国の言葉を感じながら、その国の歴史や文化の由来を理解できると思う。

二)誤った教育をいつまで続けるのか


           2021.6.22日経新聞            2021.5.24日経新聞

(図の説明:年代別の接種方針は、1番左の図のようになっている。大学は、左から2番目の図のように、2021年6月21日に集団接種を開始した。また、ワクチン接種の注意点は、右から2番目の図のようになっているが、「注意すべき人」の範囲を広く取りすぎており、誤解や差別を生む。さらに、ワクチンの副作用を、1番右の図のようにしており、大げさだ)

 文科省は、*6-3-1のように、高校での「①集団接種を現時点では推奨しない」とする指針をまとめて全国の自治体に通知し、中高生は個別接種を基本とすることになった。その理由を、「②学校で集団接種をすれば、接種への同調圧力を生む恐れがある」「③副作用が出た場合に対応できる医療従事者の確保が困難」とし、「④集団接種する場合は、いじめ・差別を避ける配慮を要請する」「⑤接種を学校行事への参加条件としない」としている。

 しかし、①は、子どもを個別に医者に連れて行かなければならない保護者の負担が大きい。また、③で言われている“副作用”のうち、「注射部位の痛み」などは副作用のうちに入らないし、その他も十分な栄養と睡眠をとって1日程度休めば治るものである。さらに、持病があってかかりつけ医のいる人は、かかりつけ医に相談するか、そこで接種すればよいし、②④については、「同調圧力をかけてはならない」「接種できない事情のある人を、いじめたり差別したりしてはならない」と、きちんと生徒に教えるのが学校の役目であり、そのためのよい機会でもあろう。

 そして、⑤については、陰性証明書か免疫パスポートを学校行事への参加条件とするのは、教育を継続するために必要なことであり、全く差別には当たらない。

 配慮が必要な持病については、*6-3-2のように、厚労省はワクチンを接種できない人に「⑥明らかな発熱」「⑦重い急性疾患」「⑧ワクチン成分に対するアナフィラキシーなどの重度の過敏症の経験」などを挙げているが、⑥⑦は当然だが治ってから接種すればよいし、⑧は、米疾病対策センターが、ポリエチレングリコールに重いアレルギー反応を起こした人への接種を推奨していないだけで、そのアナフィラキシーも接種100万回あたり13件が確認されているのみだ。そのため、根拠もなくワクチンにアナフィラキシーを起こしているのは厚労省の方である。

 なお、他に注意が必要な人として、「⑨過去に免疫不全の診断を受けた人」「⑩過去に痙攣を起こした人」「⑪心臓、腎臓、肝臓などに疾患がある人」などを挙げているが、⑨⑩は過去にそうでも現在そうでなければ問題ないし、⑪も疾患の重症度によって異なるため、「注意が必要な人」として指定することでむしろ科学的根拠に基づかない差別を生んでおり、国民のワクチンへのアナフィラキシーを増加させてもいる。そのため、国民に無駄な心配をさせぬよう、(あるのなら)科学的根拠となるデータを速やかに開示すべきだ。

 大学の方は、*6-3-3のように、慶応大学などの全国17大学が、ワクチン接種を職場接種として本格的に始め、今後、大学を拠点とした接種がさらに広がりそうとのことである。対面で授業を受けるにも、イベントを行うにも、帰省するにも必要なことなのだ。それにもかかわらず、「中高生には集団接種を推奨しない」というのは、おかしな話である。

・・参考資料・・
<女性差別>
*1-1-1:https://www.nichibenren.or.jp/document/statement/year/2021/210422.html (日本弁護士連合会会長 荒 中 2021年4月22日) 世界経済フォーラムのジェンダーギャップ指数に対する会長談話
 2021年3月31日、世界経済フォーラム(WEF、本部・ジュネーブ)は、世界各国の男女平等の度合いを指数化した「ジェンダーギャップ指数」を発表した。日本は前回よりも1つ順位を上げたものの156か国中120位と過去2番目に低い順位であり、主要7か国(G7)中最下位で、アジアの主要な国々よりも下位であった。ジェンダーギャップ指数は、女性の地位を、経済、政治、教育、健康の4分野で分析し、ランク付けをしている。例年、経済分野と政治分野が日本の全体順位を下げる要因となっているが、今回、経済分野は117位、政治分野は147位となり、前回から更に順位を下げた。経済分野は、男女間の賃金格差、管理職の男女差、専門職・技術職の男女比のスコアが、前回と同様、いずれも100位以下である。中でも管理職の男女差は139位と前年の131位から順位を下げた。日本政府は女性活躍促進を政策に掲げているが、経済分野でのジェンダー不平等は一向に解消されていない。そして、前回に引き続き、最も深刻な状況にあるのが政治分野である。前回、その前年から19も順位を下げて世界のワースト10に入ったが、今回は更に順位を3つ下げた。国会議員の男女比は140位、閣僚の男女比は126位と低位のままである。このような政治におけるジェンダー不平等は、ジェンダーの視点を欠いた政策につながり、いまだに社会的・経済的に弱者である女性にとって日々の生活に直結する悪影響を及ぼしている。例えば、新型コロナウイルス感染症の拡大による混乱は、雇用環境の悪化、DV(ドメスティックバイオレンス)や児童虐待の増大、母子家庭の一層の貧困化、女性自殺者の急増などをもたらしたが、これらに対する適切な施策がなされず、むしろ、全国の小中学校に対する突然の臨時休校の要請により、事実上育児の大半を担う女性が就業困難な状況に陥ったり、特別給付金の受給権者が世帯主とされたことにより、DV被害者の受給が困難となったりした。また、国連女性差別撤廃委員会からの勧告や国民意識の変化にもかかわらず、選択的夫婦別姓制の導入は遅々として進まない。女性の政治参画は、あらゆる分野における女性の地位向上のための必須条件である。女性の政治参画なくして、個人が尊重され、多様性が確保された社会の実現や、日本の民主主義を発展させることは不可能であり、女性議員数、女性閣僚数を増加させることは喫緊の課題である。日本の現状は、もはや一刻の猶予も許される状況になく、クオータ制の法制化も含めた具体的取組は急務である。当連合会は、日本の置かれている状況を懸念し、ジェンダーギャップ指数に対し毎年談話を発表しているが、状況は依然として改善されない。2021年2月の公益財団法人東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会の会長(当時)の発言と、同会長を擁護するかのごとき同組織委員会や公益財団法人日本オリンピック委員会(JOC)の対応は、今なお日本社会に厳然と存在する性に基づく偏見、差別、不平等な取扱いを露呈した。日本社会の男女不平等状態は、国際的な信用さえ失墜させ得るレベルであり、社会の閉塞感にもつながっている。当連合会は、日本政府に対し、日本社会の現状を直視し、個人が性別にかかわらず閉塞感なく生き生きと暮らせる社会を実現するため、職場における男女格差を解消し、女性活躍を更に促進する施策を実施するとともに、女性の政治参画の推進を喫緊の重点課題と位置付け、より実効性ある具体的措置、施策を直ちに講じるよう強く要請する。

*1-1-2:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/689591 (佐賀新聞 2021.6.10) 女性の政治参画拡大、改正法成立
 政治分野の女性参画拡大を目指す改正推進法は10日の衆院本会議で可決、成立した。女性議員の増加に向けて、セクハラやマタニティーハラスメント(マタハラ)の防止策を国や地方自治体に求める条文を新設。政党や衆参両院に加え、地方議会を新たに男女共同参画の推進主体として明記し、積極的な取り組みを求めた。2018年に制定された推進法は、地方選挙や国政選挙の候補者数を「できる限り男女均等」にするよう各政党に促している。改正法には、女性の立候補を妨げる要因とされるセクハラ、マタハラへの対応が盛り込まれた。国と自治体の責務として、問題発生を防ぐための研修実施や相談体制整備を新たに規定。防止策や問題の「適切な解決」に関し、自主的な取り組みを政党の努力義務として課す。基本原則にも1項を加え、地方議会を含めて推進主体を列挙した。議会を欠席する要件として妊娠や育児を例示し、国や自治体に両立支援の環境整備も求めた。制定当時の付帯決議を踏まえ、超党派で改正案をまとめた。

*1-1-3:https://www.tokyo-np.co.jp/article/107671?rct=life (東京新聞 2021年5月31日) 非正規公務員 新制度から1年 女性たち、苦境改善へ連携 「公共サービスの危機」懸念
 DVや児童虐待の相談業務といった仕事の増加に伴い、増える自治体の非正規公務員。大半は女性で、非正規の地位を安定させようと昨年四月に導入された会計年度任用職員制度によって一層つらい立場に追いやられている。期末手当(ボーナス)の支給対象にはなったが、一年ごとの採用が厳格になったためだ。そうした中、苦境に立つ女性たちが、自ら現状を発信、改善を求めていこうと動き始めた。「気持ちを安定させて働きたいけれど、来年のことを考えると…」。都内の公立学校の図書館で非正規の司書として働く女性(44)は不安げだ。現在働く自治体に採用されたのは十二年前。契約を更新しながら、購入図書の選択や本の整理にとどまらず、子ども一人一人の個性や状況に配慮して接し、図書館が安心できる場になるよう心掛けてきた。若手の教員から授業のテーマに沿った本の相談をされることも。新型コロナウイルス禍の今は、本や館内の消毒が新たな仕事として加わった。図書館の使い方などの指導も、密を避けるため、子どもを少人数に分けて何度も繰り返す必要がある。総務省の二〇二〇年の調査によると、全国の自治体で働く非正規公務員は約六九・四万人。うち九割を会計年度任用職員が占め、さらにその四分の三以上が女性だ。期末手当の支給で、女性の年収は百九十万円から二百三十万円に増えた。一方で、更新はあるが、年度ごとの採用が基本となり、雇用の不安定さは増した。「教員と違う立場で子どもと接し、本を手渡すには経験の積み重ねや継続した関係が大事なのに」。専門性を生かせ、やりがいはあるが、給与は手取りで月約十六万円。「夫と共働きで何とか子育てできるが、司書仲間にはダブルワークをするひとり親もいる」と話す。年度ごとの契約で賃金は低く、昇格もない。三月下旬、当事者がSNSなどで参加を募って開いたオンラインの緊急集会「官製ワーキングプアの女性たち」では、さまざまな仕事に携わる非正規職員が窮状を訴えた。DV対応などに当たる婦人相談員の「コロナ禍で相談が増え、やる気だけでは無理」、ハローワーク職員の「コロナで混乱する中で契約更新があり、理由も分からないまま職場を去らざるを得なかった同僚がいた」など内容は多岐にわたった。「住民サービスに不可欠なエッセンシャルワーカーが、こうした状態にあることを、社会全体が課題としてとらえるべきだ」。非正規公務員の問題に詳しいジャーナリストで和光大名誉教授の竹信三恵子さんは訴える。最近はさらなる経費削減のため、官が担ってきた仕事を民間に委託する例も増加。自治体の非正規職員ではないが、そこにも低待遇の働き手がいる。竹信さんは「相談業務などは、従事する側も利用する側も経済的、精神的に余裕がなく、声をあげにくい人が多い。そのため問題が覆い隠されてきた」と指摘する。こうした流れを変えようと、集会の企画者や参加者らは四月、「公務非正規女性全国ネットワーク(はむねっと)」を結成した。今後は、問題解決に向けた調査や提言に加え、当事者同士の交流や学習会などを進める予定だ。中心メンバーの瀬山紀子さん(46)は「このままでは公共サービスが崩れてしまう。私たち女性がまとまって動くことで、非正規公務員全体の問題を解決したい」と話す。まずは六月四日まで、当事者から現状を聞きとるアンケートをネット上で実施中。既に八百件以上の声が寄せられているという。回答は、ホームページ=「はむねっと 非正規」で検索=から。集計結果は同月中に公表する予定だ。

*1-1-4:https://www.nikkei.com/article/DGKKZO71693340Z00C21A5CT0000/ (日経新聞 2021年5月10日) 女性の雇用、「L字」課題、出産後、正社員比率低く
 出産や育児で仕事を辞めることで30代を中心に就業率が下がる「M字カーブ」は長年、女性の労働参加が進んでいない象徴とされてきたが、近年は解消が進んでいる。女性活躍の機運の高まりを背景に仕事と育児を両立できる働き方が広がった結果とみられ、2019年には就業者数が初めて3000万人を突破した。新たな課題として浮上したのが「L字カーブ」だ。子育てが一段落した後に再就職しやすくなったとはいえ、非正規雇用が主な受け皿で、女性の正規雇用率は20代後半をピークに右肩下がりで減っていく。最近はコロナの影響も大きい。内閣府の有識者懇談会「選択する未来2.0」は「正社員に加え、短時間勤務の限定正社員など、選択肢を拡大し、出産後の継続就業率を高めることが求められる」と指摘している。

*1-1-5:https://digital.asahi.com/articles/DA3S14891821.html (朝日新聞 2021年5月3日) (憲法を考える)男女平等の理念、遠い日本 「女性の自立、応援しなかった社会」
 日本国憲法は、「男女平等」を完全に保障した条文をもつ。しかし、新型コロナウイルス禍のもと、制度や社会におけるジェンダー格差が改めて浮き彫りになっている。施行から74年経った今なお、憲法がめざす理念に日本社会が近づけていないのはなぜなのか。緊急事態宣言下の3月半ば。どしゃ降りの雨の中、東京・新宿の区立公園にたてられたテントに女性たちが吸い込まれていく。弁護士や労組関係者らが開いた「女性による女性のための相談会」。コロナで生活に困る女性を対象としたところ、2日間で20~70代の125人が訪れた。
■コロナ禍で顕著
 関東地方に住む40代の女性は、野菜やお菓子、生理用品を受け取った。昨年6月、新型コロナの影響で仕事を失った。派遣で2年近くコールセンターに勤めてきたが、突然契約を打ち切られた。コロナ対策の1人10万円の特別定額給付金は、支給先は世帯主で、別居する親に配られた。中高生の頃から暴力を受けて疎遠になっていた。年末に失業給付が切れ、何も食べられない日もあった。所持金は1万3千円だった。「立場の弱い女性のほうが安定した仕事がなかったり、支援が届かなかったり。コロナはそんな現実を浮き彫りにした」。個人の尊重と幸福追求の権利を定める13条。法の下の平等をうたい性差別を禁じる14条。そして、両性の本質的平等を保障する24条――。憲法は三つの条文によって男女平等を保障する。しかし、雇用における差別は残り、支援制度も世帯単位で作られ、個人に重きが置かれていない。総務省発表では昨年、非正規雇用の働き手は75万人減ったが、うち女性は男性の倍を占めた。厚生労働省によると、昨年の女性の自殺者は7026人。前年より男性の数は減少したが、女性は935人(前年比15・4%)も増えた。
■選んでいいの?
 相談会スタッフ、吉祥(よしざき)真佐緒さんは「相談を受けて痛感したのは、夫婦間や職場で、空気を読んで口答えせず、自分のことは後回しにする生き方を強いられてきた女性が、本当に多いということだった」と話す。吉祥さんは、DV(家庭内暴力)被害者の相談も受けるが、昨春以降に件数は急増した。「自分が好きなものを飲んで」。相談に来た女性にはまず、日本茶やコーヒー、紅茶を選んでもらう。多くの女性が「え、私が選んでいいの?」と戸惑うという。だから、吉祥さんはこう問いかける。「私たちが持つ当たり前の権利ってなんだろう」と。「彼女たちは家の中で娘として妻として嫁として役割を背負わされてきた。自分にも権利があると考えられる人が多くないのは、女性の自立を応援してこなかった国の、社会の責任ではないか」

*1-2-1:https://news.yahoo.co.jp/articles/aa55ec861ba9ef03e6ad714d3df5127d3b1dd3cb (Yahoo、毎日新聞 2021/5/26) 都立高入試、男女の合格ラインで最大243点差 8割で女子が高く
 東京都立高校の普通科の一般入試は、募集定員を男女に分けて設定しているため性別によって合格ラインが異なる。都教委は毎年30~40校を対象に是正措置を講じているものの、2015~20年に実施した入試では、対象校の約8割で女子の合格ラインが最終的に高かったことが、都教委の内部資料で判明した。1000点満点で最大243点上回るケースや、男子の合格最低点を上回った女子20人が不合格とされた事例もあった。毎日新聞の調べでは、都立高は全国の都道府県立高校で唯一、男女別の定員があり、各校とも都内の公立中学の卒業生の男女比に応じて決まる。合否は中学校が提出する内申点(300点満点)と、国数英理社の筆記試験(700点満点)の合計で決めるが、合格ラインは男女で異なる。著しい格差を防ぐため、都教委は1998年の入試から、特に差が大きい傾向にある高校を対象に是正措置を行っている。定員の9割までは男女別に合否を判定し、残り1割は男女合同の順位で合格者を決めるもので、近年は普通科高校(約110校)のうち30~40校程度で実施している。都教委はその効果を確認するため合格ラインの変化を毎年調査している。毎日新聞が調査結果の資料などの情報公開を求めたところ、都教委は今年3月、15~20年入試の是正措置の対象校(延べ199校)の回答用紙について、校名の特定につながる情報を伏せる形で開示した。このうち無回答や明らかに誤記と考えられるものを除く184校の男女差を毎日新聞が分析した。是正前は約9割の170校で女子の合格最低点が高く、男子との差は、①100点以上=27校②50~99点=41校③40~49点=31校④30~39点=27校⑤20~29点=26校⑥10~19点=8校⑦9点以下=10校。最大で女子の方が426点高い学校もあった。残り1割は男女が同水準か、男子の合格最低点の方が高かった。是正後も約8割の153校で女子が上回った。男子との差は、①5校②14校③5校④13校⑤34校⑥36校⑦46校と全体的に縮小したものの、それでも最大で243点の差がみられるなど是正につながっていないケースもあった。毎日新聞は、是正措置を講じていない高校の男女別の合格最低点についても情報公開請求したが、都教委は「学校の順位付けが可能となり、競争が助長される」などとして不開示にした。男女で合格ラインに差がある現状について、都教委の担当者は「入試が男女別であることは周知しているので、受験生は合格ラインが異なることを理解した上で受けているはずだ」と制度自体に問題はないとの認識だが、「現在の是正措置が完璧ではないことは認識している。世の中の情勢に合わせて改善策を考えていきたい」と話した。文部科学省は「一般論としては、合理的な理由なく性別によって異なる扱いを受けるのは望ましくない」としつつ、「男女別定員制は東京都が『合理的』と判断して採用しているものと考えている」と静観する。
   ◇
 今回明らかになった東京都立高校の合格ラインの男女差を含め、入試を巡るジェンダー問題について、ご意見を募集します。毎日新聞東京社会部(t.shakaibu@mainichi.co.jp)まで。

*1-2-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20210605&ng=DGKKZO72585360U1A600C2MY5000 (日経新聞 2021.6.5) 実力も運のうち 能力主義は正義か? マイケル・サンデル著 成功は努力の結果ではない 《評》東京大学教授 宇野重規
 『これからの「正義」の話をしよう』や『ハーバード白熱教室』で知られるマイケル・サンデルの新著である。現代社会に広がる能力主義の支配に対して問題を提起し、「機会の平等」を超えた共通善の実現を目指すサンデルの議論は、そこであげられている数々の事例の豊富さもあって読むものを飽きさせない。読んでいて、思い起こしたのは一昨年の東京大学入学式における、上野千鶴子名誉教授による祝辞である。その祝辞はいささか型破りのものであった。入学者に対する単なる祝辞にとどまらず、入学者における女性比率の低さや、女子学生の入りにくさに対する厳しい指摘を含むものであった。さらに入学者が、自分ががんばったから報われたと思っているとすれば、そう思えること自体が、「あなたがたの努力の成果ではなく、環境のおかげだった」という発言は大きな波紋を呼んだ。入学者の努力自体は否定していない上野氏に対し、サンデルはよりストレートである。ハーバードの学生における「自分の成功は、自分の手柄、努力の当然の結果」とする能力主義的な信念の拡大に警鐘を鳴らすサンデルは、入学を手助けした親や教師の存在を指摘し、さらにはそもそもの才能や素質すら本人の功績とは言い切れないと強調する。大切なのは感謝と謙虚さであり、社会の共通善に対する貢献であると説く。それでも現実には、能力主義の信念に歯止めがかからない。格差が拡大する中、成功者はどうしてもそれを自分の努力の結果と思いたがるし、貧困に苦しむものは、単なる経済的苦境のみならず、道徳的な屈辱と怒りに苛(さいな)まれる。難しいのは左派やリベラル派にも、この信念が見られることである。米国のオバマ元大統領もまた、「努力が報われるのが米国」と繰り返した。逆にトランプ大統領は、「才能と努力の許すかぎり出世できる」とはあまり言わなかったという対比は面白い。現実の米国の社会的流動性は低く、金持ちやエリートの世襲の貴族社会が能力主義の名の下に固定化しているとサンデルは指摘する。その批判の鋭さを思うと、処方箋があまり明確ではないことが惜しまれるが、それだけ問題が難しいということだろう。

*1-3-1:https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA034E00T00C21A6000000/ (日経新聞 2021年6月3日) 迫る少子化危機、育児支援急ぐ世界 持続成長のカギ
 世界各国・地域が少子化対策・育児支援策の拡充を急いでいる。日本では3日、衆院本会議で男性が育児休業をとりやすくする改正育児・介護休業法が可決、成立した。米国でもバイデン政権が10年間で1.8兆㌦規模(約198兆円)を投じる対策を打ち出した。背景には新型コロナウイルス危機が加速させた世界的な出生数の減少がある。子育て環境の整備に加えて、出産への経済的な不安を和らげる対策が肝となる。3日に成立した改正育児・介護休業法は従来の育児休業制度に加えて、男性は子の誕生後8週間まで、最大4週間の育児休業を取れるようにする。業務を理由に育休取得に二の足を踏む男性も多いため、改正法では労使の合意があれば育休中もスポットで就労できる仕組みも盛り込んだ。休業の申し出も従来は1カ月前までに必要だったが、2週間前までに短縮した。機動的に取得できる仕組みに目を配った。厚生労働省がまとめている妊娠届などを基に推計すると、21年の出生数は80万人を割り込む可能性が高い。16年に100万人を割り込んでから約5年で年間20万人程度も新生児が減る。出生率の低下は将来の労働力の減少などを通じて中長期の経済成長力を押し下げる。第一生命経済研究所の星野卓也氏が人口の推移などを基に試算したところ、30年代後半に日本は潜在成長率が0.2%程度のマイナスになる。「出生数の急減が続いて少子高齢化が加速すれば、40年代以降も成長率が低迷を続ける可能性がある」と指摘する。今回成立した改正法はあくまで男性の育児参加を促す環境づくりがメーンで、財政支援なども繰り出して国を挙げて支援する海外の各国・地域との差は大きい。バイデン政権が打ち出した少子化対策「米国家族計画」に盛り込まれた対策は幅広い。子育て世帯の生活を支援するため、最長で12週間取れる有給の家族・医療休暇などを提供。低中所得層の家庭へのチャイルドケアの公的支援も増やす。子育て世帯への税額控除を使った実質手当の給付も拡大する。21年に限って導入した同制度では子ども1人につき年最大3000ドル(6~17歳の場合)を給付するとしていたが、これを5年間延長する。教育ではすべての3・4歳児への無償の幼児教育の提供や2年間のコミュニティーカレッジの無償化、中低所得者向けの児童保育の補助やマイノリティー向け奨学金の拡大などをメニューに並べた。米疾病対策センター(CDC)によると20年の米国の出生数は前年比4%減の約360万5000人だった。早めの対策で少子化が少子化を招く負の連鎖を防ぐ。フランスも少子化対策を強化する。7月から男性の育児休暇を従来の14日から28日に延ばす。会社側は最低でも7日分の取得を認める必要がある。男性の育休は子どもの生後4カ月以内に1度で取る必要があったが、生誕後6カ月で2回に分けて取得できるようにもする。日本以上に少子化が深刻な韓国も22年度からは出産時に200万ウォン(約20万円)のバウチャー(サービス利用券)を支給する計画など、財政出動もからめた支援強化を急ぐ。産児制限を40年以上続けてきた中国も少子化から目を背けられなくなっている。5月末には1組の夫婦に3人目の出産を認める方針を示した。出産にからむ休暇や保険も整える。ニッセイ基礎研究所の調査で、コロナ禍で将来的に持ちたい子どもの数が減った40歳以下の回答者が挙げた理由で最も多かったのは「子育てへの経済的な不安」だった。少子化に対抗するには、育児休暇をとりやすくするなど今回の改正法のような子育て環境の支援に加えて、出産や結婚をちゅうちょさせるような経済不安を和らげる必要もある。政府の子育て関連支出を国内総生産(GDP)比でみると日本は1%台で、欧州諸国の3%台を下回る。省庁横断で取り組む「子ども庁」創設論議が本格化するが、財政支援も含めた少子化対策に各国・地域が本腰を入れるなか、後手に回ればコロナ後の世界経済で存在感を失うリスクをはらむ。

*1-3-2:https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA043NS0U1A600C2000000/?n_cid=BMSR3P001_202106041436 (日経新聞 2021年6月4日) 20年出生率1.34、5年連続低下 13年ぶり低水準
 厚生労働省が4日発表した2020年の人口動態統計によると、1人の女性が生涯に産む子どもの数を示す合計特殊出生率は1.34だった。前年から0.02ポイント下がり、5年連続の低下となった。07年(1.34)以来の低水準となっており、新型コロナウイルス禍の影響も重なり21年には一段と低下する可能性が高い。出生率は団塊ジュニア世代が出産適齢期に入ったことを背景に、05年の1.26を底に緩やかに上昇し15年には1.45となった。その後、晩婚化や育児と仕事の両立の難しさなどが影響し、再び低下基調にある。20年の出生率を女性の年代別にみると20代以下の低下が目立つ。最も出生率が高かったのは30~34歳で、0.0002ポイント前年を上回った。40歳以上の出生率もわずかに伸びたものの、全体として20代以下の落ち込みを補うことはできなかった。20年に生まれた子どもの数(出生数)は過去最少の84万832人で、前年から2.8%減った。婚姻件数は12%減の52万5490件となり、戦後最少を更新。コロナ禍による経済不安や出会いの機会の減少などで、若い世代が結婚に踏み切りにくくなっている。厚労省がまとめている妊娠届の減少などをもとに日本総合研究所の藤波匠・上席主任研究員が試算したところ「21年の出生数は80万人割れの可能性が高い」という。20年の死亡者数は137万2648人となり、前年から8445人少なくなった。高齢化で死亡者数は増加基調が続いていたが、前年の水準を割り込むのは11年ぶり。死因別ではコロナで3466人が亡くなる一方、肺炎で亡くなる人が前年より1万7073人少なくなった。手洗いやマスク着用、接触機会の減少などコロナの感染対策が他の感染症などによる死者数を減らしたとみられる。死亡者数から出生数を引いた自然減は53万1816人と過去最大の減少となった。

*1-3-3:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/689885 (佐賀新聞 2021年6月11日) 出生数最少84万人、急減の流れを止めたい
 2020年生まれの赤ちゃんは統計開始以降最少の84万832人となった。女性1人が生涯に産む子どもの推定人数「合計特殊出生率」は1・34。婚姻件数も52万5490組と戦後最少だった。新型コロナウイルス流行で結婚、妊娠を避ける男女が増え少子化が加速。21年の出生数は従来推計より10年早く70万人台に落ちることが濃厚だ。このままだと将来の働き手減少、社会保障の担い手不足がさらに深刻となる。近隣アジア諸国も同じ状況に危機感を強める。この流れを止めるため、政府、自治体は子どもを産み育てやすい環境を早急に整える政策を具体化しなければならない。コロナ禍で母子への感染不安が高まり、立ち会い出産、里帰り出産も難しくなった。行政側は相談態勢強化、里帰りできない人の育児支援、さらには妊婦が感染の不安なく通院でき、感染した場合でも十分なケアの下で出産できる医療体制整備に一層力を注ぐべきだ。雇用情勢悪化による解雇や給料カットで経済的余裕を失ったカップルが多いことも出生数減少に響いている。今彼らを支えなければワクチン接種が進んでも出生数回復が難しくなる。政府は困窮世帯に3カ月で最大30万円の支給などを行うが、結婚や出産を後押しする観点での新たな支援に乗り出すべきではないか。父親の家事育児参加を促すため、子どもが生まれて8週間以内に計4週分休みを取れるようにする「男性版産休」を盛り込んだ改正育児・介護休業法が成立した。こうした基本的な子育て環境の整備も官民一体で引き続き推進する必要がある。出生数最多は第1次ベビーブームの1949年の269万人超。71~74年の第2次ブームも年200万人を超えた。その後減少し2019年に初めて90万人を割り込み、第1次ブーム当時の3分の1程度に落ち込んだ。移民など国境を越えた人の移動を除けば国の人口増減は出生数と死亡数で決まる。近代以降、母子の栄養、健康状態が改善し乳児死亡率が下がった。そうなれば昔のように子どもを多く産む動機が薄れる。医学の進歩で平均寿命は大きく延びた。感染症流行という突発要因がなくても、こうした「文明の発展」に連れ人口構造が「多産多死」から「少産少死」へ変化する大きな流れにはあらがえない。が、何とかその進行速度は抑えたい。一足早く人口減少期に入った日本のみならず中国、韓国も思いは同じだろう。コロナ禍に見舞われた20年の中国の合計特殊出生率は1・3と日本を下回り、共産党は16年の「一人っ子政策」廃止に続き第3子まで容認する方針を決めた。韓国も20年の出生数が前年比10%減で初めて人口が自然減になった。出生率は0・84と極端に低い。少子化は東アジア全域で加速している。少子高齢化がピークに近づく40年ごろの日本は、ただでさえ不足する就業者の5人に1人が医療・福祉の仕事に取られる社会となることが予想される。それに向け日本政府は、国内の介護事業の要員にアジア諸国からの技能実習生を呼び込む。一方、アジアの高齢化をビジネスの好機と捉え日本式介護事業を輸出する構想も進む。各国の少子化は東南アジア諸国も巻き込む人材争奪を呼び日本の高齢者介護を揺るがしかねない。出生数急減を何とか乗り越えたい。

*1-3-4:https://digital.asahi.com/articles/ASP697453P69ULFA010.html?iref=comtop_7_06 (朝日新聞 2021年6月9日) 脱炭素など4分野重視、財政目標見直しに含み 骨太原案
 政府は9日の経済財政諮問会議で、今年の「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)」の原案を公表した。グリーン(脱炭素)、デジタル化、地方創生、子育て支援の4分野に予算を重点配分する方針を明記。2025年度に国と地方の基礎的財政収支(プライマリーバランス=PB)の黒字化をめざす財政再建目標は、今年度内にコロナ禍の影響を踏まえて検証するとし、目標時期の見直しに含みを持たせた。骨太の方針は、政府の経済財政運営や来年度予算案の基本となる。昨年9月に発足した菅政権としては初めての方針で、与党などとの調整を経て、6月中旬に閣議決定する予定だ。原案によると、重点4分野のうち、政権がめざす脱炭素化に向けては、2兆円規模の基金や優遇税制などで企業の投資を後押し。炭素を出さない電気自動車や燃料電池車の普及を進める。再生可能エネルギーの主力電源化にも「最優先の原則」で取り組むとした。デジタル化では、9月に発足するデジタル庁を中心に行政手続きのオンライン化を5年以内に進める一方、マイナンバーカードの健康保険証や運転免許証との一体化などでカードの普及を加速させるとした。子育て支援では、児童手当などの既存の施策を総点検し、具体的な評価指標を定めた「包括的な政策パッケージ」を年内につくるとした。与党内で浮上する「子ども庁」については、子どもの問題に対応する行政組織を創設するため、「早急に検討に着手する」と記すにとどめた。地方関連では、都市との賃金格差を埋めるため、菅首相がこだわる最低賃金の引き上げについて、「より早期に全国加重平均1千円とすることを目指し、本年の引き上げに取り組む」と書き込んだ。財政再建については、25年度のPB黒字化をめざす目標を「堅持する」と記し、22~24年度も、社会保障費の伸びをその年の高齢化による範囲におさえるなどの歳出抑制を続けるとした。しかし、目標については、コロナ禍による経済や財政への影響を今年度内に検証し、その結果を踏まえて「目標年度を再確認する」としている。巨額のコロナ対策で財政悪化は加速しており、検証の結果次第では、目標時期が先送りされる可能性もある。
●「骨太の方針」原案の主なポイント
〈グリーン〉
・再生可能エネルギーを最優先し、最大限の導入を促す
・成長に資するカーボンプライシングはちゅうちょなく取り組む
・電気自動車や燃料電池車の普及を促進
〈デジタル化〉
・行政手続きの大部分を5年以内にオンライン化
・22年度末までにマイナンバーカードをほぼ全国民に
〈地方創生〉
・都市部と地方の二地域居住・多拠点居住を促進
・最低賃金はより早期に全国加重平均千円を目指し、本年の引き上げに取り組む
〈子育て支援〉
・包括的な政策パッケージを年内に策定
・子どもの課題に対応する行政組織創設の検討に着手
〈コロナ対策〉
・緊急時対応はより強力な体制と司令塔の下で推進
・感染症有事の体制強化で、法的措置を速やかに検討
〈財政〉
・25年度の基礎的財政収支黒字化目標を堅持。年度内にコロナ禍の影響を検証し、目標年度を再確認
・社会保障費の伸びをおさえる歳出抑制策などを22~24年度も続ける
・歳入面での応能負担を強化する
〈その他〉
・経済安全保障の取り組みを強化

*1-3-5:https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC06D5C0W1A400C2000000/ (日経新聞 2021年6月10日) 世界でホットな地熱発電 出遅れ日本も「地殻変動」
 脱炭素の流れを受け、世界で地熱発電が盛り上がっている。再生可能エネルギーの中でも、太陽光や風力のように天候に左右されない安定性が評価され、発電容量は10年で4割増えた。世界3位の潜在量を持ちながら原子力優先で出遅れた日本も、政府が2030年に発電所を倍増させる方針を掲げ、にわかに「地殻変動」が起きている。
●地熱発電所、2030年に倍増
「地熱は稼働までの期間が長いが(温暖化ガスの排出量を13年度比で46%減らす30年度に)間に合わせたい。環境省も自ら率先して行動する」。小泉進次郎環境相が4月下旬に開発加速を宣言した地熱発電。6月1日には、河野太郎規制改革相が30年に地熱発電施設を倍増する目標を掲げ、脱炭素電源の有力な選択肢として浮上してきた。地熱発電は地下から150度を超す蒸気や熱水を取り出してタービンを回し発電する。昼夜ほぼ一定の出力で発電でき、再生エネ電源の中で安定性は群を抜く。設備利用率は70%強と太陽光、風力の10~20%程度をはるかに上回る。国際再生可能エネルギー機関(IRENA)によると、20年末の発電容量は1400万キロワットを超え、10年で約4割増えた。直近5年で伸びが著しいのがトルコだ。00年代から政府系の地質調査所が資源量の調査を進め、国策として事業者の参入を促した。英BPなどによると、10年時点で9万キロワットだった発電容量は20年に154万キロワットへ急増した。東アフリカのケニアでも、発電容量が119万キロワットと過去10年で6倍に増えた。国際エネルギー機関(IEA)統計などによると同国の発電容量の半分近くを占める。干ばつで発電量が安定しづらい水力発電所の代替手段として地熱発電が盛んだ。地熱のエネルギー源は地下のマグマの熱で、資源量が多いのは環太平洋火山帯に位置する地域と、アフリカの一部地域やアイスランドなどとなっている。潜在する資源量は米国が3000万キロワットと首位に立ち、インドネシア、日本が続く。世界3位の日本は潜在する資源量2340万キロワットに対し、実際の発電導入量は20年時点で55万キロワットにとどまる。10年前からほぼ横ばいだ。米国やインドネシアが事業者への税制優遇や政府支援などで、20年の導入量をそれぞれ10年比12%増の370万キロワット、同92%増の228万キロワットまで伸ばしたのとは対照的だ。
●日本の開発コスト高く
 日本市場が低調な理由はいくつかある。まず、開発コストの高さが挙げられる。西日本技術開発(福岡市)の金子正彦・特別参与が経済協力開発機構(OECD)の資料などで調べたところ、日本は地熱発電所を建設してから稼働を終えるまでに1キロワット時当たり税抜き10~18円の費用がかかる。これに対し米国は5~9円、ニュージーランドは3~5円と低い。山間部が多い日本は平地主体の海外と比べ工事費が膨らみがちだ。掘削技術や大型の重機をもつ企業も限られる。地熱開発は油田と同じで掘ってみないと正確な資源量が分からない。国内では資源量の調査から稼働まで、平均15年近くかかる。実際の成功率は3割程度といわれ、1本に5億円強かかる井戸を当てるまで複数、掘り続ける必要がある。こうした事業リスクをのんで長期投資できるような民間企業はごく一部に限られる。石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)の安川香澄・特命審議役は「ある程度まで地熱開発が進んで民間任せになった途端、開発が止まるのはよくあるケース」と指摘する。地熱開発には国の後押しが不可欠なのだ。国内ではオイルショックの起きた1970年代から地熱開発の機運が盛り上がったが、90年代に入ると原発政策に押されて勢いを失った。これが2つ目の理由だ。出力1万キロワットを超す地熱発電所の新設は96年稼働の滝上発電所(大分県九重町)を最後に冬の時代に突入。19年の山葵沢発電所(秋田県湯沢市)まで23年間なかった。業界関係者からは「塩漬けの20年」などと呼ばれる。
●タービンの世界シェア6割
 国内市場が低調な半面、日本企業の技術は世界で求められている。地熱発電用タービンでは、東芝や三菱重工業など日本勢の世界シェアが6割強に達する。「この数年でインドネシアや東アフリカからの引き合いが強まった」と話すのは東芝エネルギーシステムズ海外営業戦略部の川崎博久氏。同社は建設中の発電所を含めて米国やケニアなど11カ国でタービンを納入した。海外メーカーと比べ出力が低下しづらく、長期の使用にも耐えられる点が特長だ。低い温度でも1000キロワットから発電できる小型地熱発電を商品化するなど、この分野では世界の先頭を走る。三菱重工も13カ国にタービンを納入し、特にアイスランドではシェアが55%に達している。同国は地熱発電所の温排水を利用した温泉リゾート「ブルーラグーン」で知られ、自国の電力を全て再生エネでまかなう。三菱重工は地熱開発の初期段階で国営電力と取引が生まれ、その後の連続受注に繫がった。設備の設計や調達、建設まで一括で請け負う点も評価されている。商社も海外企業とEPC(設計・調達・建設)契約を結び、海外でノウハウをためる。豊田通商は現代エンジニアリングと共同で世界最大規模のケニア・オルカリア地熱発電所(最大出力28万キロワット)を受注した。伊藤忠商事と九州電力はインドネシア・サルーラ地区の地熱プロジェクトに開発段階から参加。18年までに3基が稼働し、総出力は33万キロワットにのぼる。脱炭素の流れを受け、日本でも地熱発電は見直されつつある。北海道では環境省が15年に国立・国定公園の「第1種特別地域」の地下で域外から斜めに穴を掘って開発できるよう規制を緩和し、企業の進出構想が相次ぐ。22年に北海道函館市でオリックスが道内40年ぶりとなる大型地熱発電所を稼働。出光興産がINPEXと組んで北海道赤井川村で計画中の地熱発電所は、国内最大級の出力との観測もある。小泉環境相は関係法令の運用見直しなどで、地熱発電の稼働にかかる時間を最短8年まで縮める方針も明らかにした。技術もポテンシャルもあるのに、導入量は低調――。そんな状況を覆す素地が整いつつある。

*1-3-6:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/690450 (佐賀新聞 2021年6月12日) 全国知事会議、コロナ後の地方像を
 今後1年の活動方針を決める全国知事会議が新型コロナウイルス感染症の流行のため2年連続オンライン方式で開かれた。「新型コロナ感染抑制に向けた行動宣言」「ポストコロナに向けた日本再生宣言」などがまとめられたように、コロナ対策が議論の柱となった。会議では多くの知事が、10月から11月にかけ必要な国民のワクチン接種を全て終えるとの菅義偉首相の目標に対し意見を述べている。いつどの種類のワクチンが自治体に供給されるのか早急にスケジュールを示すべきだと強く求めた。さらに千人以上の大企業などから始める職場接種には、地方の中小企業が置き去りにされるとの批判もあった。迅速な接種には、自治体が発送する接種券の有無をどうするかも含めて、地元に接種体制を任せる柔軟な対応が必要ではないか。第5波の可能性、特に感染力が強いデルタ株(インドで確認された変異株の一つ)流行への懸念も強く示された。国の検査体制の充実を求める声が出たのも当然と言える。知事らもワクチンがコロナとの闘い方を大きく変える「ゲームチェンジャー」と認識する。だが、国からのワクチン供給の見通しが立ちにくく、都道府県や市区町村は、態勢づくりに苦労してきた。菅氏が4月に高齢者の接種を「7月末をめどに終了」と表明してからは、達成するよう国から強い圧力を受けている。国と地方の関係は対等ではなく、昔の上意下達に戻った雰囲気である。会議では「まん延防止等重点措置」の適用を知事が要請して政府が決定するまで時間がかかり過ぎるとして、手続きの簡素化を求める意見もあった。緊急事態宣言の対策では、自治体が選べるよう求める声もあった。感染の状況を分かっている自治体が、自ら対策を組み立てられるよう自由度を上げるべきである。病床の逼迫(ひっぱく)に備えて、都道府県境を越え広域搬送する仕組みをつくるべきだとの提案もあった。これらの実現に関係法の改正が必要であれば、今国会を延長してでも国は迅速に対応してほしい。本来なら昨年のうちにコロナ対策や迅速な接種の在り方を広く議論し、必要な態勢を整えておくべきだった。それを政府は怠った。対策に国の戦略性が乏しいのもそのためだ。感染症と最前線で向き合う医療関係者や自治体が、つけを払わされていると指摘できる。コロナ禍は、給付金の支給やワクチン接種での「行政のデジタル化の遅れ」を浮き彫りにし、地域経済を支える飲食や観光、交通などの事業者に大きく影響した。今後の地方活性化の方向性として知事会は、デジタル化を進めるとともに、第5世代(5G)移動通信システムに対応する通信網を基礎的なインフラとして全国普及させるよう提言した。オンラインでの診療や遠隔手術も可能となり都市との医療格差も縮小する。リモートワークの普及にもつながると期待したい。2050年に脱炭素社会を実現するには、再生可能エネルギーの普及が不可欠である。土地や風、バイオマスなどが多い地方には有利だ。知事会が提案する「新次元の分散型国土」を創出するチャンスである。国の地方創生策に手詰まり感があるだけに、コロナ後の国土の在り方、地方重視の国土政策を地方から打ち出すべきである。

*1-3-7:https://digital.asahi.com/articles/DA3S14937001.html (朝日新聞 2021年6月12日) 64歳以下の接種、誰を優先 各自治体、独自で判断 高齢から順番・20~30代・職種別 コロナワクチン
 新型コロナウイルスワクチンについて、1回目の接種を終えた65歳以上の高齢者らが3割となる中、「64歳以下」への接種に乗り出す市区町村が目立ち始めた。感染拡大を防ぎ、接種ペースを加速させるため、市区町村ごとに独自に優先対象枠を設定する動きも広がっている。ワクチン接種について、政府は当初、供給量が限られることなどから、(1)医療従事者ら(2)高齢者(3)基礎疾患のある人、高齢者施設などで働く人、60~64歳の人などと順番を決めていた。だが、ワクチン供給が本格化した5月以降、方針を修正。64歳以下の接種は各市区町村に判断を委ねることとした。各市区町村がこれまで明らかにしている方針をみると、政府が当初示した通りの60~64歳や、教育関係者を対象とするところが目立つ。一方で、独自の優先対象枠を設けるところも。大まかに分類すると、「年代」と「職種」に分かれている。例えば東京都新宿区では、59歳以下の集団接種については20~30代の予約を優先するとしている。都内では7日までの1週間の新規感染者のうち、20~30代が5割近くを占める。こうした状況を踏まえ、新宿区は行動範囲が広く比較的症状が出にくいとされる20~30代にいち早く接種することで、他の世代への感染を防ぐ狙いだ。一方、夏の観光シーズンを前に、沖縄県では観光業界に携わる人を対象とする動きも。沖縄本島北の2島からなる伊平屋(いへや)村では、宿泊業やダイビングショップ、飲食店従業員、島外との唯一の交通手段であるフェリーの船員らの優先接種を始めた。村の担当者は「小さな島の中でも行動範囲が広く、多くの人に触れあう可能性がある人に先に接種してもらうことにした」と説明する。
■1日100万回、急ぐ政権
 政府が64歳以下にも対象を拡大するのは、菅義偉首相が掲げる「1日100万回接種」を、できるだけ早く実現させたいからだ。官邸幹部の一人は「ワクチン接種が進めば、なんとなく政権に好感が持たれる。五輪への雰囲気も徐々に変わってくる」と期待する。「7月末までに高齢者接種を終わらせる」「10月から11月にかけて、必要な国民、希望する方、すべて(の接種)を終える」。首相自らがこうした具体的な目標を掲げることで、コロナ対策が進んでいることを国民にアピールするとともに、自治体などの接種現場を動かす「圧力」とする狙いがある。さらに一般の人も対象にした企業や学校などでの「職域接種」は21日からで、先に準備が整った企業では来週にも始まる。予約に空きの目立つ自衛隊による大規模接種センターについては、対象年齢を64歳以下に引き下げることを検討する。接種機会の公平性をどう担保するかなどの課題も多いなか、政府関係者はこう説明する。「自治体ごとに差が生じるとの意見はあるが、できるだけ早く接種を進めるということこそが、一番大事だ」

<年齢差別>
*2-1-1:https://www.nikkei.com/article/DGXZQODZ202BP0Q1A320C2000000/?n_cid=NMAIL006_20210419_Y (日経新聞 2021年4月19日) YKK、正社員の定年廃止 生涯現役時代に企業が備え
 日本企業が「生涯現役時代」への備えを急いでいる。YKKグループは正社員の定年を廃止。ダイキン工業は希望者全員が70歳まで働き続けられる制度を始めた。企業は4月から、70歳までのシニア雇用の確保が求められるようになった。少子高齢化に歯止めがかからず人手不足が続く中、企業がシニアの意欲と生産性を高める人事制度の整備に本格的に乗り出した。YKKは4月、国内事業会社で従来の65歳定年制を廃止し、本人が希望すれば何歳までも正社員として働けるようにした。同社は職場での役割に応じて給与が決まる役割給を採用している。今後は会社が同じ役割を果たせると判断すれば、65歳以上でも以前の給与水準を維持できるようにした。「従来も年齢だけを理由に処遇を変えたり、退職させたりするのは公正でないという考えが強かった」と同社幹部は説明する。同社は今後5年間で約800人が従来定年の65歳に到達する見通しだった。その大半が正社員としての雇用継続を希望するとみられる。定年廃止による新規の採用抑制はしない。人件費が増える可能性があるが、人手不足の中、熟練技能者などシニア活用のメリットは大きいと判断した。三谷産業も21年4月から再雇用の年齢上限をなくし、65歳以上は1年ごとの更新制とした。再雇用者になかった昇給制度も設ける。専門知識や人脈を生かし、社内外の技術指導や営業先の開拓など本業以外の仕事で貢献した場合、別途報酬を支払う「出来高払いオプション制度」も新設した。実力あるシニアが現役に近い報酬を得られるようにする。ダイキンの定年は60歳で従来は65歳まで希望者を再雇用していた。今回、再雇用の期間を5年延長した。原則一律だった再雇用者の賞与も成果に応じて4つの段階を設け、最大1.6倍の差がつくようにした。シニアの働く意欲を引き出す。三菱ケミカルも22年4月、現在60歳の定年を65歳に引き上げる。将来の定年廃止も検討している。給与制度は能力・経験に基づく職能給と、仕事の成果・役割に基づく職務給で構成していたが、21年4月から職務給に一本化した。各社が対応を急ぐ背景には21年4月に施行された改正高年齢者雇用安定法がある。従来制度で企業は従業員が希望する限り65歳まで雇用を継続する義務があるが、法改正で70歳まで就業機会確保の努力義務が課された。年金の支給開始年齢が段階的に引き上げられるなか、所得の空白期間をなくすための措置だ。大半の企業は再雇用期間の単純延長などで対応するが、多くは現役時代に比べて2~5割程度給与が下がる。シニアのやる気と生産性の低下が課題だ。定年を廃止する企業は、成果に応じた賃金制度を導入するなどして給与の減少を一定程度にとどめる。企業がシニアに期待する役割はさまざまだ。20年10月に60歳定年を廃止したシステム開発のサイオスグループは、IT(情報技術)人材が不足するなか、案件遂行で経験豊富な中高年の技術者取り込みを狙う。成果に応じた評価をシニアでも徹底する。製造業では生産管理部門などでベテラン技術者のニーズがある。一方、専門性のない一般管理職などはシニアのニーズは少ない。三谷産業などは、新たな再雇用制度の開始に合わせ、全社員にキャリア面談を義務付け、定年後を見据えたスキル習得を支援する。定年は世界では一般的でない。米国や英国などは年齢を理由とする解雇は禁止・制限されている。一方、厚生労働省の20年の調査では国内で定年のない企業は2.7%にとどまる。日本の賃金は年功色が強く解雇規制も厳格なため、単純に定年を延長・廃止すれば、人件費増加に歯止めがかからなくなる。みずほリサーチ&テクノロジーズが再雇用などで70歳まで働く人が増えた場合の影響額を20年に試算したところ、65~69歳の従業員にかかる企業の人件費は30年時点で19年比6%増の5.5兆円に、40年時点で同29%増の6.7兆円に増える。定年を廃止する場合、高齢になり職務を十分に果たせなくなったシニアを解雇する仕組みも必要になる。話し合いを通じた双方の合意で契約を終える形を想定している企業が多いが、合意に至らないケースも考えられるからだ。金銭補償などを伴う解雇ルールの策定も求められる。

*2-1-2:https://digital.asahi.com/articles/DA3S14894047.html (朝日新聞 2021年5月5日) 70歳まで働く機会、中小の対応まだ3割 コロナ禍、人件費増も重荷
 70歳まで働く機会の確保を企業の努力義務と定める改正高年齢者雇用安定法が4月に施行されたのを受けて、日本商工会議所が中小企業に対応を聞いたところ、必要な対応を講じているのは約3割にとどまることがわかった。新型コロナウイルスの感染拡大で企業の業績悪化が目立つ中、人件費の負担増につながる施策の導入は難しい。中小企業にとって、法改正への対応はハードルが高いことがうかがえる。日商が4月14~20日に全国の会員企業2752社を対象に調査し、76.2%から回答を得た。4月30日に発表した調査結果によると、「必要な対応を講じている」企業が32.6%あった一方、「具体的な対応はできていない」は31.9%。「具体的な対応を準備・検討中」は10.6%だった。日商は「就業規則や労働環境の整備も必要で、コロナ禍で対応が遅れた面もあるのでは」(産業政策第二部)とみている。必要な対応を講じている企業の具体策(複数回答)は、70歳までの継続雇用制度の導入(65.8%)、定年制の廃止(20.2%)の順に多かった。「対象の社員がいない」「対象の社員はいるが、努力義務である」ことを理由に「対応予定はない」と答えた企業も計24.9%にのぼった。「専門職の技術者の再雇用には同一労働同一賃金の対応が課題で、なかなか検討が進まない」との声もあったという。日商は30日、4月から中小企業に適用された「同一労働同一賃金」への対応について、適用直前の2月に実施した調査結果も発表した。回答のあった全国の中小企業約3千社のうち、「対象になりそうな非正規社員がいる」のは445社。このうち「対応のめどがついている」のは56.2%にとどまった。昨年2~3月の前回調査より9.5ポイント増えたが、対応が遅れている企業も多い。

*2-2-1:https://www.nishinippon.co.jp/item/n/747686/ (西日本新聞社説 2021/6/1) 高齢医療負担増 公平で持続可能な制度に 急速に進む社会の高齢化に対応するため、全ての世代に公平で、持続可能な医療保険制度の構築を急がねばならない。75歳以上の後期高齢者で一定収入がある人を対象に、医療費の窓口負担を1割から2割に引き上げる医療制度改革関連法案の参院審議が大詰めを迎えている。今国会で成立の見通しだ。年収が単身で200万円、夫婦世帯で計320万円以上の約370万人に、2022年度後半から新たな負担が加わる。現役世代並みの所得がある人は既に3割負担になっている。年収には年金も含まれ、負担増は後期高齢者の約2割に当たる。改革の眼目は現役世代の負担軽減だ。後期高齢者の医療費のうち自己負担分を除く約4割は現役世代の保険料から支援金という形で賄われている。本年度は総額6兆8千億円(1人当たり6万4千円)に上る。このままでは団塊の世代が全て後期高齢者となる25年度の支援金は8兆1千億円(同8万円)に達すると厚生労働省は試算する。法案審議でも現役世代の負担軽減に異論はなく、論点は対象の線引きと受診控えによる健康悪化の懸念にほぼ絞ら