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2017.6.26 経営戦略と組織再編 ― 日本郵政、東芝、富士ゼロックス、JR九州の事例から
    
   2017.6.24      2017.6.25    2017.6.24     2017.6.26
    東京新聞      日経新聞      佐賀新聞      佐賀新聞

(図の説明:ウェスティングハウスの買収による巨額損失を抱えこんだ東芝は、上場維持さえ危うくなり、東芝メモリを売却することによって債務超過を回避しようとしているが、これまでに締結した不利な契約に束縛され、困難が多い。富士ゼロックスは、ニュージーランド子会社の不適切会計を理由として統括会社の支配を強めようとしているが、ローカルな市場に直面する販売はローカリズムを維持した方がよい。JR九州は不動産事業の好調で順調な上場を果たしたが、気のゆるみや驕りは巨額損失に繋がるので禁物だ。また、鉄道の不採算路線は、地域社会と協力しながら話を進めることにより、問題解決して次の収益機会が得られると考える)

(1)大企業の買収・分社と失敗事例の原因
1)買収で巨大損失を招いた日本郵政
 日本郵政は、*1-1のように、買収したオーストラリアの物流子会社の業績が振るわず、のれんの減損処理をする必要が出て、民営化後初の赤字の可能性とのことである。

 減損処理を検討しているのは、2015年に純資産額より約4,700億円も高い6,200億円で買収した豪トールの「のれん代」で、上場前に国際物流で成長するというメッセージを発する目的で買収し、「上場を乗り切ろうという姿勢で、会社の将来を考えての判断とは思えない」状況だったのだそうで、この時の株主は国であり、買収は東芝出身の西室前社長の主導で行われて、内部での検討は殆どなかったそうだ。

 また、*1-2のように、早ければ7月とされる政府保有株の売却を前に、郵政が持つ膨大な不動産を野村不動産の力を借りて再開発する成長の展望を示そうと動いた日本郵政の野村不動産ホールディングス(HD)の買収交渉は中止となった。郵政株の売り出しの主幹事を務める野村証券は郵政との良好な関係を維持したいが、野村不動産は安定収益を稼ぐグループ会社であるため、郵政の要望にどう応じるべきか、野村社内には困惑するムードがあり、郵政による買収検討が伝わると野村不動産株式は急上昇したのだそうだ。

 この日本郵政の両方の買収に言えることは、金や取引関係や政府の後ろ盾を背景に、競争相手に望まない買収をしかけていることである。そのため、必要以上に高い価格で買わされ、被買収会社のモチベーションは低く、買収価格に見合った収益が挙がらないのだろう。では、相手も望む組織再編はどういうものかと言えば、技術やネットワークを拠出しあえるなど、お互いにシナジー効果のある買収や合弁だ。

 例えば、*1-3のように、ドイツポストは、配送用の電気自動車(EV)の生産で米フォード・モーターと提携し、7月からフォードの車台を使って中型のEVトラックを生産し、2018年までに2,500台を生産し、中型EVトラックとしては欧州最大規模の生産体制にし、自動車大手との提携で小包配送車をEV化する計画を加速するそうだ。この理念と仕組なら、相手も喜んで協業するだろう。

 そのような中、日本郵政のこれまでの業務とシナジー効果のある成長戦略を考えると、①最もよく使う配送車をEV化するため、日本の優秀な自動車会社とジョイントベンチャーを作る ②配送や仕分けの拠点は、土地の価格が安くて便利な高速道路のインター付近に引っ越して自動化する ③街の中心部に持っている主要郵便局は、高層化して商店・保育所・学童保育・介護施設・サービス付きマンション等を入れ、建設会社と組んで新しいスマートシティーを提案する などだ。つまり、今の時代に必要とされるサービスを提供できるよう、シナジー効果のある事業を関係する会社と合弁会社を作って行うのがよいと考える。 

2)東芝のウェスチングハウス買収と不利な契約締結による失敗
 東芝も、*1-4のように、ウェスチングハウスの高値買収と米原子力発電所建設に関して電力会社に提供した親会社保証契約で債務総額 98億ドル(約1兆900億円)を抱え、東芝原子力エナジーホールディングス(以下、TNEH)は、米国連邦倒産法第11章(Chapter 11)に基づく再生手続を申し立てることを決議して、同日付でニューヨーク州連邦破産裁判所に申し立てた。

 そして、*1-5のように、東芝は、東芝メモリを2兆円で売却して利益を出す計画で、経産省が日本勢が66.6%の株式を保有する「日米韓連合」を提案し、日米韓連合案は産業革新機構と政策投資銀行が計6千億円、ベインとSKが計8,500億円を拠出し、銀行融資も加えて2兆円となっている。そして、産業革新機構以外は融資や優先株による出資を含むため、議決権は産業革新機構が50.1%、政策投資銀行が16.5%、ベイン側が33.4%で、売却から2〜3年後の上場を目指すそうだ。

 しかし、半導体工場を東芝と共同運営する米ウエスタン・デジタルが「契約違反だ」と反対し、法廷で争う姿勢を鮮明にして経産省などと駆け引きを続けているとのことである。

 このように、高値買いと不利な契約締結の結果、東芝は、*1-6のように、2017年3月末で5,816億円の債務超過が確実となり、今月末に期限を迎える2017年3月期の有価証券報告書(有報)の提出を8月10日まで延期することを関東財務局に申請して承認され、2017年8月1日付で東証2部に降格となった。

3)東芝と日本郵政の巨額損失を招いた西室元社長について
 日本郵政は、*1-7のように、郵便事業や貯金・簡保などとは業務の異なる東芝から西室社長(1935年生まれで、2015年のトール買収時に80歳)を招き、自社に技術のないものを人脈と金にあかして買収で手に入れようとして高値買いをするという東芝と同じ失敗をしている。そして、東芝と同様、不利な契約を結んでいるという悪材料が次々と出てくるのではないかと心配されている。

 買収時に被買収会社の企業価値を厳しく精査するのは外資系企業では当然であり、私もPWCで監査していた頃、買収会社の依頼で被買収会社を監査したことがある。その目で見ると、日本企業の経営者は、根拠なき信頼をベースに企業価値をしっかり精査もせずに買収し、欧米企業を買収したこと自体に喜びを感じる人がおり、買収後の経営戦略が甘すぎるケースが散見される。

(2)富士ゼロックスのケースについて
 富士ゼロックス(株)は、富士写真フイルム(株)と英ランク・ゼロックス社との合弁会社として1962年に誕生したコピー機メーカーで、写真屋とコピー屋が技術を出し合って優秀なコピー機ができたケースだ。現在、富士ゼロックスは富士フイルムホールディングスの連結子会社だが、米ゼロックス社も25%の株式を保有しており、この協業はもともと成功事例だった。

 しかし、*1-8のように、ニュージーランドのプリンターリース会社MARCOが、普通のリース取引の形をとりながら、金融会社FINCOにリース債権を譲渡する形でリース販売を確定させ、売上の過大計上をしていたそうだ。ただ、「リース開始時に見積もったリース債権額と満了時までのリース料総額(コピー料金総額)に大きな差額が出るのは、リースが満了すれば直ちに損失計上すべき」と書かれているが、リース期間満了時に直ちに使えなくなるコピー機はないため、コピー料金で全額を支払うまでリースを解除できない契約にしておけば回収可能になる。

 実は、私は衆議院議員の時、唐津事務所で富士ゼロックスのいいコピー機を使っていて、ハンコを押した書類はどちらがオリジナルかわからないほどのカラーコピーの出来栄えに感心していたが、リース料とコピー料金が高すぎるのが欠点で、有権者に配る資料を思う存分カラーコピーすることができなかった。これは、物価の安い外国ではなおさら感じられることだと思うため、この提案をした次第である。

 今回の会計不祥事を受けて、*1-9のように、グループの成長を引っ張ってきた独立心の強い富士ゼロックスの経営を、富士フイルムHDが経理・人事・広報などで年内にも一体的に運営し始めるというのは、経理は一体的に行った方がコストの削減効果が大きいが、国によって異なるマーケットに直面している販売を統合管理するのはむしろマイナスで、人事もまた日本の論理を押し付けすぎると、現地に合ったやり方を阻害して業績悪化を招く恐れがある。

 そのため、不正をなくすためには、経営の自由度を保ちながら、富士フイルムホールディングスに社長直轄の内部監査部を作って、世界中の関連会社をローテーションしながら社内監査する仕組みにすればよい。私はPWCで監査をしていた頃、ロイズやブリストルマイヤーズの内部監査人(Big4出身の公認会計士が多い)が日本子会社の監査に来た時に、日本(東京)のPWCからその内部監査の手伝いに行っていたので知っているのだ。

 なお、写真屋とコピー屋の合弁会社である富士ゼロックスなら、*1-10のような薄い太陽電池を建材シートに印刷することも可能ではないだろうか。これにより、爆撃で建物が壊滅したイラクなどで、昔の写真を使って元の街並みを断熱性の高い建材で復元した上、可能な場所には元の建物と同じ色調の太陽電池シートを張って元の街並みを復元しながら、超次世代の街を作れば面白いし、日本の技術のアピールになると考える。

(3)JR九州について
 JR九州は本物の利益を出して滞りなく上場にこぎつけたが、*2-1のように、上場後初の株主総会に向けて準備を進めるにあたり、他社を見学したり、23人の役員全員でリハーサルを3回も開いたり、質疑に対する各役員の答弁練習を実施したり、会場で案内などを担当する社員への教育を進めたりしたのは面白い。しかし、このような成長期には、すべてを子飼いの社員でやらなくても、上場会社で総務を担当していた人材、公認会計士、弁護士、税理士などを雇えばもっとスムーズに付加価値の高いことができると考える。

 なお、JR九州の上場を容易にしたのは、*2-3のように、「不動産事業」からの収益だ。何故なら、JR九州は、現在は運輸サービス事業と駅ビル・不動産事業の利益がそれぞれ全体の4割で、不動産からの収益が多いからだ。私は、鉄道会社が運輸サービス事業とシナジー効果の高い駅ビル・不動産事業を行うのは極めて合理的だと考えている。何故なら、運輸サービス事業の充実によって、手持ちの不動産の価値を上げることができるからだ。ただし、これは、自らが運輸サービス事業を行っている地域に限られ、他の地域や外国に出るとシナジー効果はない。
 
 このような中、上場後初の総会では、*2-4のように、株主に地方路線での廃線の動きを懸念する声があったり、株主から不採算路線については第三セクターへの移譲を検討してはどうかとの意見が出たり、JR九州の担当者が効率化を図ることでネットワークを維持していく方針を説明して理解を求めたりしたそうだ。私は、鉄道収入だけを見れば不採算でも、その鉄道があることによって連続性を保つことができたり、駅近くの地価が上がったり、観光振興ができたりすることを考えれば、廃線や第三セクターへの移譲のようなコストカットだけが解決策ではなく、その特性を活かした収益拡大策があってよいと考える。

 また、*2-2のように、九州新幹線長崎ルートのフリーゲージトレインは、車体価格などコストが通常よりも約3倍になるうえ、長崎と新大阪を直通運転することもできないため、R九州の青柳社長は、全線を通常の新幹線と同じフル規格で整備すべきだとの意向を示したそうだ。私も、長崎行きがフル規格でないのはもったいなすぎるため、①高架下を利用したり ②駅近エリアの開発を行ったり ③送電線を敷設して送電料をとったり ④夜間は新幹線貨物を走らせたり しながら、フル規格で整備すれば何とかなるのではないかと考える。

 ちなみに、九州新幹線を使うと、*2-5のように、新大阪―鹿児島中央間でも3時間45分で走ることができ、夜間の新幹線貨物なら止まる駅が少ないので3時間程度で走ることができると思われる。そのため、*2-6のような物流会社と合弁会社を作れば、九州の農水産物を高付加価値のまま、高くない運賃で大消費地に届けられるだろう。

 また、街づくりのために新幹線の駅が欲しい都市は、*2-7の「ふるさと納税」で使い道を指定して寄付を集め、JR九州に目的を持って出資して、路線の有効な使い方にも知恵を絞るのがよいと考える。ただし、これがうまく機能するためには、JR九州は路線ごとに別会社にして管理しておく必要がある。

(4)合併後の戦略について ー 十八銀行の事例から
 どの合併会社でも同じだが、経理・総務は一つになり、販売も店舗の統廃合や業務の効率化で、*3のように、合併後には余剰人員が生まれる。2017年10月にふくおかフィナンシャルグループ(FFG)との経営統合を目指す十八銀行は、FFG傘下の親和銀行との合併に伴う店舗統廃合等で計400人以上の余剰人員が生じ、余力を地域活性化や新規事業に振り向けるそうだ。

 それが成功するためには、視野が広くて応用力のある優秀な人材を、経営企画部・新規事業部に配置し、事業として再編されようとしている農水産業・食品・新エネルギー・第4次産業革命・地域活性化などに関する仕事を開拓させることが必要だ。銀行経験者は、情報通で、きちんとした経理や経営計画を行う能力があるという意味で貴重な人材だが、とかく投資よりコストカットに目が向きやすい欠点があるため、自覚して気を付けるべきである。

<大企業の買収・分社と失敗>
*1-1:http://digital.asahi.com/articles/ASK4P4S39K4PULFA00Y.html (朝日新聞 2017年4月22日) 日本郵政、誤算の買収 豪子会社巡り巨額の損失計上へ
 日本郵政が巨額の損失を計上し、民営化以来初めて純損益が赤字になる可能性が出てきた。買収した豪州の物流子会社の業績がふるわず、会社の資産価値を切り下げる「減損処理」をする必要があるからだ。買収に慎重論もあったが、西室泰三前社長が主導した。日本郵政が減損処理を検討しているのは、2015年に6200億円で買収した豪州の物流大手「トール」。資源価格の低迷を受け、16年4~12月期の営業利益が前年同期に比べ7割も減るなど、業績は買収前の予想を下回る。買収額はトールの純資産額より約4700億円も高かった。トールのブランド力やノウハウが収益につながると期待したためで、この差が「のれん代」と呼ばれる。のれん代は買収した企業の資産になるが、期待ほど収益が上がらなければ損失として計上しなければならない。東芝が巨額損失を計上したのと同じ構図だ。買収発表は日本郵政が株式を上場する約9カ月前。「上場前に郵便事業の成長戦略を描く必要があった。国際物流で成長するというメッセージ」(当時の幹部)だったが、巨額の買収費用に「高値づかみだ」との声も出ていた。トールののれん代は16年12月末時点で3860億円あり、日本郵政は来週前半の取締役会でこの大半について減損処理を決める見通しだ。日本郵政は17年3月期決算の純損益を3200億円の黒字と予想するが、減損額によっては07年10月の民営化以来、初の赤字に転落する可能性がある。業績の大幅悪化は、政府が東日本大震災の復興財源に当て込む日本郵政株の売却益を減らしかねない。政府は22年度までに郵政株の3分の2を売って計4兆円を確保する計画。15年に約2割の株を1・4兆円で売却済みで、早ければ7月にも追加で売却するとみられる。日本郵政株の終値は、減損の検討が明るみに出た20日に前日比で2・6%下落。翌21日に1・6%戻したものの、今後も不安定な値動きが予想される。財務省理財局は「売却時期や規模については、市場環境などをふまえて適切に判断する」と話す。株価の下落が続く場合、売却時期の先送りもありうる。
■「内部検討ほとんどなし」
 日本郵政グループ幹部によると、西室前社長は15年春の取締役会で初めてトールの買収を説明し、「もう決めた」と語った。取締役から批判が上がったものの、西室氏の意思は変わらなかった。巨額買収を心配する声は当初からあった。別のグループ幹部は「買収について内部の検討はほとんどなかった。上から降ってきた話」と明かした。元幹部は「とにかく上場を乗り切ろうという姿勢で、会社の将来を考えての判断とは思えない」と語っていた。16年初めの日本郵政の経営会議。トールの現状について「かろうじて黒字」などと報告されたのに対し、社外取締役から「日本郵便にとって意味があるから買ったのでは」「いくらもうかり、いくら損して、これからいくら負担しなければならないのか、数字で示してくれ」などの懸念が出た。グループ内でも「すぐに減損処理せざるをえない」との見方が強まっていた。このころ、西室氏がかつて社長を務めた東芝の子会社、ウェスチングハウスも原発の受注悪化などから減損が避けられないとの見方が出ていた。だが、東芝はまだ「将来の収益が見込める」として損失の計上は不要との姿勢を続けていた。16年2月に取材に応じた日本郵政幹部は、同年3月期にトールの減損を実施するかを問われ、こう答えた。「しない。ウェスチングハウスと同じだ」(真海喬生、織田一)

*1-2:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20170621&ng=DGKKZO17905290Q7A620C1EE9000 (日経新聞 2017.6.21) 郵政成長戦略の舞台裏(上)、大型買収不発 次の一手模索 政府の保有株売却を意識
 日本郵政による野村不動産ホールディングス(HD)の買収交渉が中止になった。早ければ7月とされている政府保有株の売却を前に成長の展望を示そうと動いたが、大型買収への懸念をぬぐいきれなかった。オーストラリアの物流会社への出資に続く失敗で、M&A(合併・買収)による成長の道は狭まった。これから新たな戦略の模索が始まる。「ちょっと難しくなってきたな」。6月上旬、日本郵政のある幹部が関係者にこう漏らした。郵政による野村不HDの買収が報じられて1カ月。6月に入って資産査定のプロセスが止まり、買収交渉からの撤退は秒読み段階に入っていた。郵政が持つ膨大な不動産を野村不の力を借りて再開発する。野村不は有望なマンション用地などを確保。互いにメリットがあると思われた枠組みを止めたのは、他ならぬ郵政自身の「失敗」だ。
●ゲームより汗を
 郵政は2015年11月に株式上場したが、発行済み株式の8割はまだ政府出資だ。追加で売り出す株式の収益は東日本大震災の復興財源にあてられる。郵政が成長するかどうかは震災からの復興に響く。海外の買収で大失敗した直後に出てきた野村不の買収案は、政治家の目には浮ついた「マネーゲーム」に映った。郵政は野村不の買収を巡り、親会社の野村ホールディングスと交渉を進めていた。郵政株の売り出しの主幹事を務める野村は郵政との良好な関係を維持したい。一方で野村不は安定収益を稼ぐグループ会社でもある。郵政の要望にどう応じるべきか、野村社内には困惑するムードがあった。
●高値づかみ批判
 5月上旬に郵政による買収検討が伝わると、野村不株は急上昇。4月まで1800円前後だった株価は2500円程度まで上がった。「トールに続く高値づかみ」。こんな批判に耐えて買収に踏み切れるほど郵政に自信はなく、応援する人も少なかった。買収は白紙に戻ったが、成長戦略を白紙にしておくことはできない。政府が株式の追加売却を迫られているためだ。政府は3月に2次売却を引き受ける主幹事証券を決めており、追加売り出しは最も早くて7月だ。日経平均株価は2万円を超え、市場の環境は悪くない。だが郵政株は1300円台でもたついている。17年度予算に盛り込まれた売却額は1兆3000億円。郵政株が1200円台なら届く水準だが、成長戦略がきちんとしていれば、もっと大きな額で売れる可能性はある。郵政の強みは郵便・貯金・保険の3事業で培った顧客層。全国の郵便局は投資信託の販売網などとしても有力だ。華々しいM&Aには取り組みにくくなり、郵政は原点に立ち戻ろうとしている。

*1-3:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20170615&ng=DGKKASDZ14HS2_U7A610C1TJ1000 (日経新聞 2017.6.15) 独ドイツポスト、フォードとEV生産 来年までに2500台
 国際物流・郵便世界大手の独ドイツポストは14日、配送用の電気自動車(EV)の生産で米フォード・モーターと提携すると発表した。7月からフォードの車台を使って中型のEVトラックを生産する。2018年までに2500台を生産する。中型EVトラックとしては欧州最大規模の生産体制になる。自動車大手との提携で小包配送車をEV化する計画を加速する。フォードのドイツ法人と契約を結んだ。フォードの商用車「トランジット」のシャシーをベースに独自仕様の車体やEVシステムを載せる。組み立ては独西部アーヘンのドイツポスト子会社の工場で手がける。ドイツポストはEVベンチャーを買収し、積載容積4立方メートルなどの小型の自社開発EVを国内で2500台導入している。ドイツポストは全ての小包配送車をEVにするため、積載容積20立方メートルの車両を18年までに投入する方針を表明していた。フォードとの提携で中大型車両の導入に道筋を付けた。

*1-4:http://news.mynavi.jp/articles/2017/03/30/toshiba/ (マイナビニュース 2017/3/30) 東芝、最終赤字1兆円超 ウェスチングハウスの負債はこれで本当に終わるか?
 巨額の損失が発生することが判明した東芝。そのがん細胞となっている、海外原子力事業リスク遮断のため米国子会社・ウェスチングハウス社切り離しに向けて大きな動きがあった。
●債務総額 98億ドル
 米国時間の2017年3月29日、東芝の海外連結子会社に米ウェスチングハウスエレクトリックカンパニー社とその米国関係会社、米国外の事業会社群の持会社である東芝原子力エナジーホールディングス(以下、TNEH)が、米国連邦倒産法第11章(Chapter 11)に基づく再生手続を申し立てることを決議し、同日付でニューヨーク州連邦破産裁判所に申し立てしたと、東芝が発表した。ウェスチング社とTNENの2社の債務総額は98億ドル、日本円で約1兆900億円だ。3月29日、午後5時45分から都内の東芝本社で開かれた会見の冒頭、説明にたった綱川智社長は、今回の11章に基づく再生手続きの適用について「ウェスチンググループの事業の再生に不可欠だ。それと同時に、非連結化により原子力事業のリスクを遮断するという当社の方針にも合致する」と説明。申請と同時に再生手続きに入ったため、ウェスチンググループは裁判所の法的保護のもと、電力会社、東芝などの当事者の協議によって事業再建をはかることを模索していくとした。これによってウェスチンググループは東芝の実質的な支配から外れ、2016年度通期決算から連結対象からはずれることになるという。ウェスチングハウス社の今後については、再生手続に乗っ取った事業再編を念頭に置き、当面は当面現行の事業をこれまでどおり継続する予定だという。この当面の事業継続のために、ウェスチング社は8億ドルの第三者からのファイナンスを獲得し、そのうち東芝が、2億ドルを上限として債務保証を提供する予定としている。建設中の米国原子力発電所2サイトについては、ウェスチンググループと東芝の2社が、顧客である電力会社と当面のプロジェクトの継続にむけた合意を目指して協議を進めているという。包括的な合意形成にむけて協議を行う当面の間は、電力会社が建設コストなどを支払う前提だという。
●東芝への影響について
 東芝本体への影響については、2016年度業績は、現時点でまだ影響額を確定できていないと説明した上で、2月末までの計算を公表し、追加の影響可能性額を示した。2月14日に公表した2016年度業績見通しでは、原子力事業ののれん減損によって営業利益が7125億円、当期純損益・株主資本・純資産については6204億円の悪化影響を織込んで、当期純損益3900億円の赤字、株主資本1500億円のマイナス、純資産1100億円としていた。この値から当期純損益は、6200億円規模の追加悪化となり、1兆100億円の赤字。株主資本については、4700億円規模の追加悪化となり、6200億円のマイナス。連結純資産では、4500億円規模の追加悪化となり、3400億円のマイナスだという。これだけの追加の影響が出ると想定される要因。それは、再生手続きの開始によって、主にアメリカ原子力発電所建設プロジェクトの東芝が電力会社に提供している親会社保証に関連する損失計上と、ウェスチンググループへの東芝の債権に対する貸倒引当金の計上を新たに検討する必要があるというのだ。2月末時点で、親会社保証は全額で6500億円規模、債権は全額で1756億円規模で、それに対する貸倒引当金が見積もられている。その一方で、ウェスチングハウスグループが連結から外れる影響で当期純利益が概算で2000億円超の改善影響が出る見通しだ。これらを勘案し、上記のような影響額になる可能性が示された。計上額は、再生手続きの過程で確定する再生計画の内容で大きく変動すること、額の算出については、東芝グループの2016年度第4四半期実績を踏まえる必要があるとしている。このため、先に述べたように、影響額は確定できていないというのだ。「一時的には追加の損失が発生する可能性があるが、マジョリティを含むメモリー事業の譲渡。外部資本導入に加え、聖域なく保有する資産の意義を見直し、意義の低い資産の売却を進める。新生東芝において注力事業と位置づける社会インフラなどで安定的に利益を拡大、確保し、債務超過の解消と毀損した財務基盤の回復をはかる」と発言した。再生手続きの申請によって、一つ山を超えた東芝だが、親会社保証などの額が確定していない。さらには建設中の4基の原発のスケジュールの遅れなど指摘されているリスクはまだまだある。3月30日の臨時株主総会、4月11日に予定される第3四半期決算など動向を見守りたい。

*1-5:http://qbiz.jp/article/112533/1/ (西日本新聞 2017年6月21日) 東芝メモリ売却、日本勢6割超 「日米韓連合」が提案
 経営再建中の東芝は21日、半導体子会社「東芝メモリ」(東京)の売却に向け、経済産業省が主導した「日米韓連合」と優先的な交渉に入ると発表した。連合の提案によると買収額は2兆円で、東芝メモリ株の議決権の66・6%を日本勢が握る。国外への技術流出阻止や雇用確保の観点から財界の実力者や有識者を含む取締役会が「最も優位性が高い」と判断した。28日の株主総会までに合意し、来年3月までの売却完了を目指す。だが三重県四日市市の半導体工場を東芝と共同運営する米ウエスタン・デジタル(WD)は「契約違反だ」と反対するコメントを改めて発表し、法廷で争う姿勢を鮮明にした。WDは売却の差し止めを求めて米国の裁判所に提訴している。WDは「(現地時間の)7月14日に予定される審問を楽しみにしている」と表明した。訴訟の展開次第では売却手続きが頓挫する恐れがある。日米韓連合は政府系ファンドの産業革新機構、日本政策投資銀行、米ファンドのベインキャピタルで構成。韓国半導体大手SKハイニックスはベインと連携し参画するが、東芝メモリと同じ主力製品で高いシェアがあり、中国など独占禁止法の審査で問題視される可能性もある。日米韓連合案は現時点で、革新機構と政投銀が計6千億円、ベインとSKは計8500億円を拠出。銀行融資も加え2兆円とした。革新機構以外は融資や優先株による出資を含むため、議決権は革新機構が50・1%、政投銀が16・5%、ベイン側が33・4%。売却から2〜3年後の上場を目指す。日本企業数社や米ファンドのコールバーグ・クラビス・ロバーツ(KKR)の出資も取り沙汰され、陣容や枠組みは変わる可能性もある。WDは経産省側などと駆け引きを続けており、買収に関与する可能性も残る。対抗馬だった米半導体大手ブロードコムの陣営は、訴訟の行方を見守る構えだ。東芝の資金繰りを支えるため、三井住友銀行やみずほ銀行など主要取引銀行7行は6月中に、280億円の新規融資をする方向だ。

*1-6:http://www.tokyo-np.co.jp/article/economics/list/201706/CK2017062402000138.html (東京新聞 2017年6月24日) 【経済】東芝、東証2部に降格 8月1日付 決算発表も延期に
 経営再建中の東芝の株式について東京証券取引所は二十三日、八月一日付で東証一部から二部に降格になると発表した。二〇一七年三月末で負債が資産を上回る債務超過が確実になったため。また東芝は今月末に期限を迎える一七年三月期の有価証券報告書(有報)の提出を八月十日まで延期することを関東財務局に申請し、承認された。綱川智社長は東京都内で記者会見し、「非常に責任を感じている。上場を維持し、有報の提出へ監査法人と協調し最善を尽くす」と語った。有報の提出延期は、四半期ベースを含め、不正会計問題が発覚した一五年以降で五度目。元子会社の米原発大手ウェスチングハウス・エレクトリック(WH)を巡るPwCあらた監査法人の監査が七月末までかかるため延期した。東芝がWHの巨額損失をいつ認識したかについても、あらたとの意見の相違を解消する必要がある。東芝は、WHの破綻に伴い米電力会社が求める債務保証の負担などが膨らんだとして、債務超過の額が従来予想から四百十六億円増え、五千八百十六億円になったことも明らかにした。東芝は来年三月末時点で債務超過を解消できていなければ上場廃止になる。このため財務改善に必要な半導体子会社「東芝メモリ」の売却に向け、政府系ファンド産業革新機構などがつくる「日米韓連合」と交渉を急いでいる。三重県四日市市の半導体工場を共同運営する米ウエスタン・デジタル(WD)が売却に反対し係争中だが、綱川社長は今月二十八日の株主総会までに連合と売却契約を結べるとの認識を示した。

*1-7:https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/204179/1 (日刊ゲンダイ 2017年4月25日) 東芝に続き…日本郵政の巨額損失招いた西室元社長の罪
 日本郵政の巨額損失を巡り、市場の判断が揺れている。日本郵政は2015年に子会社の日本郵便を通じて、オーストラリアの物流会社トール・ホールディングスを6200億円で買収した。ところが、オーストラリア経済の低迷などでトール社の業績は悪化。3000億~4000億円程度の減損を計上する可能性が指摘されている。17年3月期の最終損益で赤字転落する恐れも出てきたのだ。「ウミを一気に出し切ることは悪くない。ダラダラと損失を処理するより、よっぽどマシでしょう」(株式アナリストの黒岩泰氏)
■「悪材料がまだあるのでは…」
 一方で、トール社買収を主導した人物が、西室泰三元社長だったことから、市場がざわついている。
「西室氏といえば東芝の元社長です。“東芝の天皇”とすら呼ばれ、その影響力は計り知れません。東芝が不正会計に手を染めたキッカケとされる経営トップの人事抗争をつくり出した張本人ともいわれます。日本郵政の巨額損失は、東芝と同じ海外M&Aに絡んでいます。もしかすると日本郵政も東芝と同じように、次々と悪材料が出てくるのではないか……と勘繰っているのです」(市場関係者)。
西室氏はトール社買収に際し、「日本郵政は世界をリードする物流企業だ。アジア太平洋で最大級のトール社との組み合わせは強力」と自信満々にコメントした。だが、西室氏の見立ては、わずか2年あまりで崩壊。買収当時、市場がささやいていた「株式上場(15年11月)に向けた“お化粧”にすぎない」「高い買い物」が正解だった。東芝の米ウェスチングハウス(WH)社買収(06年)に暗躍したのも西室氏だ。当時、西室氏は相談役に退き、社長は西田厚聰氏に譲っていた。WH社を巡っては日立製作所や三菱重工も熱心だったが、最終的には東芝が手中にした。決め手は、院政を敷いていたといわれる西室氏が人脈を駆使し、ベーカー元駐日米国大使に働きかけたからだといわれている。「ただ、その過程でWHの買収額は倍以上の約6000億円にハネ上がっています。日本郵政のトール社買収も西室氏の鶴の一声で決定したといいます。企業価値をキチンと精査しなかったので、今回のような巨額損失が生じるのです」(証券アナリスト)。日本郵政にとって「西室つながり」は悲劇だが、投資家の不安は高まるばかりだ。

*1-8:http://toyokeizai.net/articles/-/176127 (東洋経済 2017年6月14日) 富士フイルムHD、「不正会計」の絶妙カラクリ、海外子会社で売り上げのカサ上げが行われた
 6月10日。富士フイルムホールディングスの第三者委員会は、海外子会社の不正会計疑惑についての調査報告書を同社に提出した。その全文版には不正の実態が克明に描かれている。調査報告書は「不適切会計」と多く記述しているが、「不正会計の隠蔽指示」「監査上の重要性の低い監査対象外の会社での不正な会計処理等」など不正会計という記述もある。単に間違えただけなら不適切会計だが、意図的に悪意を持って正しくない会計処理をすれば不正会計だ。はたして富士フイルムHDのケースは、どちらのケースなのか。
●一見すると普通のリース取引&債権譲渡
 不正の舞台となったのはニュージーランドのプリンターリース会社MARCOと金融会社FINCOである。両社を合わせて富士ゼロックスニュージーランド(FXNZ)と呼んでいる。MARCOとFINCOの親会社が、シンガポールにあるアジア・オセアニア地域統括子会社富士ゼロックスアジアパシフィック(以下FXAP)。その親会社が富士ゼロックス(以下FX)、さらにその親会社が富士フイルムHDという複雑な親子関係だ。MARCOとFINCOの取引は大きく3段階に分けられる。まず、リース会社のMARCOはプリンターを顧客にリースする。期間は平均48〜60カ月だ。リース料金は毎月のコピー代で回収する。次に、MARCOはそのリース債権を金融会社のFINCOに全額譲渡する。最後にMARCOはリース債権を譲渡することで、債権譲渡と同時に、向こう48〜60カ月分のリース代金の合計を売上高として一括計上する。これだけならごく普通のリース取引であり、通常の債権譲渡である。問題はリース債権の見積もりにあった。このリース債権をかなり高く見積もることで、実態よりもかなり多い売上高を計上していたのである。どうやって高く見積もっていたかというと、MARCOは毎月のリース料をプリンターの使用量に完全比例するように料金設定していたが、この使用量の見積もりを、実態よりも高く見積もっていた。その高く見積もった使用量をベースにした金額でリース債権をFINCOに譲渡し、リース開始時点でリース満了までの収入を一括で得ていた。この手法だと、リース開始時に見積もったリース債権額と満了時までのリース料総額に大きな差額が出る。これはリースが満了すれば、直ちに損失計上すべきものだ。それなのにFINCOはこの差額を、未回収のリース債権としてバランスシートに計上していた。あたかも回収可能性があるかのように会計処理をすることで、損失を先送りしていたのである。
●これはやはり「不正会計」
 このケースはやはり「意図的に悪意をもって正しくない会計処理をしていた」といえるのではないか。実は、富士フイルムHDの過去分の決算修正はこれからだが、大手監査法人は不正会計を検証する前提ですでに修正作業に入っている。なぜこうした不正会計が行われたのか。調査報告書はいくつかの原因を指摘している。最大の原因はMARCOとFINCOの経営者が同一人物のニール・ウィッタカー氏だったことだ。同氏は現地採用でたたき上げの人物だったという。「料金は使った分だけ。使わなければ無料」を意味する「ミニマムペイメント(=固定費部分)なし」契約を始めたのは同氏だという。この顧客に有利な条件を武器に契約数を伸ばしたと見られる。特殊な報酬体系も不正の温床となった。売り上げ増に対する評価部分が大きいことが、毎月のリース料を高く見積もることにつながった。ウィッタカー氏はFXNZでの実績が認められてオーストラリア子会社の経営トップに栄転している。そのオーストラリアでもニュージーランドと同様の不正会計がなされた。富士フイルムは同氏への損害賠償請求を検討しているという。そもそも不正はなぜ見過ごされてきたのだろうか。調査報告書は、ニュージーランド現地の自主性を重んじ、FXが日本人経営者を派遣しなかったこと、内部監査と業績目標の管理部門が同一だったことなどを挙げている。FXでは、吉田晴彦副社長が山本忠人会長や栗原博社長に報告しないという隠蔽もあった。だが報告書は、不正会計や隠蔽は組織的だったとまでは結論付けていない。不正会計はあくまでもウィッタカー氏個人の、隠蔽は吉田副社長個人の行為だとしている。
●3月に1300億円の社債を発行
本調査が4月20日〜6月10日まで約50日もかかったのは、国内外のすべての子会社でニュージーランドやオーストラリアと同様の不正がないかを調査したからだという。結論は「ニュージーランドやオーストラリア以外で同様の不正は見つからなかった」というものである。一方で報告書は「もう一丁(1兆)やるぞ!!」をスローガンとした売上高1兆円回帰運動や、「プライド値」という売上高目標の存在を指摘し、業績至上主義の体質を指摘している。もし報告書が指摘する通りであれば、本当に不正会計問題はこれですべてなのか。他の手口による別の不正会計は存在しないのだろうか。12日の会見は2時間近くに及んだが、すべての疑問が解決されたとまでは言えそうにない。なお、今回の不正会計騒動の最中、富士フイルムは3月に1300億円の社債を発行している。また、不正会計への疑惑が指摘されているにもかかわらず、あずさ監査法人が第2四半期・第3四半期の四半期レビュー報告書で適正意見を表明している。PwCあらた監査法人が東芝に対してしたように、あずさの監査意見が「不表明」だったら、このタイミングでは社債を発行できていなかったおそれもある。

*1-9:http://www.nikkei.com/article/DGXKASDZ20IDY_R20C17A6MM8000/?dg=1 (日経新聞 2017/6/25) 富士フイルム・ゼロックス 17年目の親子接近、管理部門統合 日本流グループ統治、岐路
 富士フイルムホールディングス(HD)が子会社の富士ゼロックスと年内にも管理部門を統合する。グループの成長を引っ張ってきた富士ゼロックスは独立心が強いことで知られるが、同社の会計不祥事を受け、富士フイルムHDは経営を任せてきた方針を転換する。人事権を含めて経営を掌握して名実ともに傘下に入れる方針。成長を目指してM&A(合併・買収)で手に入れた子会社の統治が、日本企業の盛衰に直結する経営課題に浮上している。管理部門の統合は6年間で375億円の損失を出した会計処理を受け、12日に発表したガバナンス(統治)見直しの一環だ。経理や人事、広報などが候補で、年内にも一体的な運営を始める。部門の重複を減らして効率を高め、ガバナンスも強化する。近くプロジェクトチームを設け、具体的な手法を詰める。とりわけ人事部門の意味合いは大きい。2001年に連結子会社にして以来、足かけ17年にわたり主要人事の大半を富士ゼロックス側に任せ、親会社として追認するにとどめてきた。今後は富士フイルム側が社長を含む人事や主要な経営方針に強く影響を及ぼす。経理も所管しM&Aを含めたお金の流れを把握する。
●収益の多く生む
 新体制では富士ゼロックスの栗原博社長を除く6人の役員が一斉に退任。富士フイルムHDは古森重隆会長兼最高経営責任者(CEO)が富士ゼロックス会長を兼務するなど計7人の役員を派遣した。財務や技術といった主要ポストに富士フイルム側の人材が就き、栗原氏は営業を主に担う体制に改めた。
12日、富士フイルムHD本社。取締役会を終えた古森氏は富士ゼロックス会長を務めた山本忠人氏に会い、「辞めてもらえないか」と切り出した。栗原氏を除く総退陣という大なたを振るう形で、古森氏は聖域に切り込んだ。これまで経営に細かく口を挟まなかったのは、富士ゼロックスが富士フイルムHDの収益の多くを生み出してきたからだ。経営の柱だった写真フィルムは00年代、デジタルカメラの台頭で市場が急速に収縮していた。液晶パネル用部材、医薬品、化粧品――。富士ゼロックスが業績を支える間に富士フイルムは業態転換を進めて安定収益の礎を築いた。今も連結の売上高の半分近く、営業利益の4割を富士ゼロックスが稼ぐ。だが、両社の関係はこのころからよそよそしかった。もともとは折半出資だった米ゼロックス側の経営不振に伴い01年に富士フイルム側が25%分の株式を買い取った。富士ゼロックスは米ゼロックスを親会社と思う風潮が強く、富士フイルムによる連結子会社化に戸惑いを隠せなかった。両社の関係に緊張が走ったのは00年代半ばだ。古森氏が富士ゼロックスの社外の取締役として率直に意見を言い始めた。市場環境や販売の見通しといった当然の質問だが口調は厳しい。富士ゼロックスの故小林陽太郎氏は「古森さんが遠慮無く、優れた質問をする。いい意味での厳しさが増している」と評していた。両社が表立ってトラブルを起こすようなことはない。しかし、下町の印刷所に印刷材料を売り歩いて出世の階段を上った古森氏と、国際派の小林氏らは大きく境遇が異なると周囲に見られた。古森氏はこのころ「両社の関係が前向きでないなら、そうしてみせる」と微妙な間柄を示唆するような発言をしていた。富士フイルムHDの助野健児社長が12日の記者会見で言った「遠慮があった」という表現は、両社の積年の関係を映す。打ち解けない親子関係は、富士ゼロックス幹部が会計を操作する遠因にもなった。好業績こそが独立性を保てる最大の理由だということを、富士ゼロックス幹部は分かっていた。
●東芝も危機招く
 国内市場の伸び悩みを受け、日本企業はM&Aに活路を見いだしている。米ゼロックスの苦境を救う意味があったとはいえ、富士フイルムも富士ゼロックスの連結子会社化により、成長の足がかりをつかみたかった。M&Aで子会社が増えれば、それをどう管理するかという問題に直面する。とりわけ海外は目が行き届きにくい。東芝の経営危機は子会社だった米社のずさんなコスト管理が招いた。ソニーは米映画事業で1千億円以上の損失を出した。富士ゼロックスの不祥事も豪州とニュージーランドの事業で起きている。欧米の大手企業はCEOが強い権限を持ち、グループ企業の意思決定もトップに一元化している。日本企業はそれが曖昧だった面は否めない。成長に向けてM&Aが欠かせない手段となった今こそ、グループ統治の基盤強化が求められている。

*1-10:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20170626&ng=DGKKASGG23H3W_V20C17A6TJM000 (日経新聞 2017.6.26) 薄~い太陽電池、丈夫で長持ち 理化学研究所、食品ラップの3分の1
 理化学研究所の福田憲二郎研究員らは薄型でも丈夫で長持ちする太陽電池を開発した。厚さは食品ラップの約3分の1の3マイクロ(マイクロは100万分の1)メートル。腕に巻いたり服に取り付けたりしながら4~5年は使い続けられるという。健康管理用のウエアラブル(装着型)機器の電源などとして2~3年後の実用化を目指す。開発した有機薄膜太陽電池はシート状で軽い。研究チームは電池の基板に防水性に優れた「パリレンフィルム」を採用した。全体を変形させても発電に関わる部分は壊れないように設計を工夫した。従来の有機太陽電池は基板にポリイミドなどを使うのが一般的。全体の厚さは数十マイクロメートルで、折り曲げることはできても全体をくしゃくしゃにすることはできなかった。渡り鳥に取り付けて生態調査に役立てるといった用途も検討している。

<JR九州について>
*2-1:http://qbiz.jp/article/112433/1/ (西日本新聞 2017年6月21日) 「初の総会」準備着々 他社を見学、予行も JR九州、23日開催
 JR九州は23日に福岡市で開く上場後初の株主総会に向け、大詰めの準備を進めている。上場前は国土交通省所管の独立行政法人鉄道・運輸機構が全株式を保有していたため、同機構の担当者のみへの対応だったが、今回は会場のホテルに千人を超す株主の来場が見込まれる。鉄道事業の合理化などに投資家の厳しい目が向けられることも予想され、円滑な総会運営へ万全の準備を目指している。「どのくらいの来場者数を見込み、どんな会場で準備をしたらよいのか。苦労しました」(広報部)。同社は“初の総会”に向け、総務課を中心とする各部門の担当者などで準備作業を進めてきた。これまでは、福岡市の本社会議室で鉄道・運輸機構の担当者1人に対する総会を開催。所用時間は質疑応答を含め長くて2時間ほどだったという。ところが今回は、総会前に約14万通の招集通知を発送。JR他社や地場大手企業などを参考に、千〜2千人程度の来場を見込む。当日は約200人の社員で会場案内などをする予定だ。上場後を見据えJR九州は、株主総会に備えた情報収集を3、4年前から進めてきた。いつ招集通知を発送するか、会場受け付けはどうするか−。他社の総会リハーサルを見学することもあった。上場が目前に迫った昨年は、今回の会場となる福岡市のホテルで株主総会を開催。ひな壇に約20人の役員が並び、鉄道・運輸機構の担当者に対して説明するなど、来るべき日に備えて運営などを確認した。準備は今年4月から本格化。23人の役員全員でリハーサルを3回開いたほか、質疑に対する各役員の答弁練習も実施。会場で案内などを担当する社員への教育も進めてきた。鉄道事業の合理化や九州新幹線西九州(長崎)ルートへのフリーゲージトレイン(軌間可変電車、FGT)導入、上場後に相次いだ輸送障害といった課題を抱えるJR九州。「株主の関心が高そうなところはしっかり準備をし、円滑な答弁ができるようにしている」。広報部の担当者は力を込める。

*2-2:http://www.nikkei.com/article/DGXLZO17641000T10C17A6TJ2000/ (日経新聞 2017/6/14) JR九州、採算見込めず 長崎新幹線フリーゲージ導入断念
 JR九州は2022年度に開業予定の九州新幹線長崎ルートで、フリーゲージトレイン(FGT、軌間可変電車)の導入を断念する方針を固めた。車体価格などコストが通常よりも約3倍になるうえ、長崎と新大阪を直通運転することもできない。昨秋に上場し、実質赤字の鉄道事業に株主から厳しい視線を向けられるなか、十分な収益を得られないと判断した。FGTは線路の幅が違う新幹線と在来線を行き来できる利便性がある一方、軌間を変換させるために特有の部品を使用することなどから車体価格が高くなる。また、部品交換のために台車の解体が必要で、保守点検も高コストだ。鉄道建設・運輸施設整備支援機構が開発し、川崎重工業と日立製作所が試験車両を製作していたが、コストは通常の車体などと比べて約3倍になるとみられる。「従前の新幹線と比べ費用がかかるという状況で、効果的な対策が出ていない」。5月、JR九州の青柳俊彦社長は定例記者会見でこのように述べ、FGTの経済性に懸念を表明していた。JR九州は長崎ルートでの採用を目指していた。博多から新鳥栖(佐賀県)まで新幹線を走り、新鳥栖から武雄温泉(同県)までは在来線。武雄温泉から長崎までは新幹線を走行する計画だ。現状では長崎と新大阪を直接結ぶこともできない。FGTについてJR西日本の来島達夫社長は「山陽新幹線への直接乗り入れは難しい」との見解を示している。FGTの最高速度は時速270キロメートル。「山陽新幹線は同300キロメートル区間で、走行性能が異なる」(来島達夫社長)ためだ。山手線や東海道新幹線のようなドル箱路線のないJR九州の17年3月期の鉄道事業は「実力では87億円の赤字」(同社)。長崎ルートの開業が収益の改善につながらなければ、株主から厳しい批判を受けかねない。加えて、安全性にも課題が残る。走行試験を始めた直後に不具合が発覚するなど開発は難航している。社内では「万が一事故が起きた際に責任を取るのは我々だ」という意見も根強い。JR九州はこうしたFGTの問題点を説明することで政府・与党や地元自治体から理解を求める考えだ。今後長崎ルートの運行方法はどうなるのか。暫定開業する22年度は、博多から武雄温泉まで在来線を特急が走り、武雄温泉で新幹線に乗り継ぐ「リレー方式」で運行することは決まっている。JR九州の青柳社長は「今夏に(実用化できると)断定できなければ、対案を示すのが国の仕事だ」と述べ、全線を通常の新幹線と同じフル規格で整備すべきだとの意向を示した。フル規格は収益性は高いが、新幹線の整備に関しては政府・与党や地元に委ねられ簡単には決まらない。このため、リレー方式による運行が長期化しそうだ。FGT導入というJR九州にとって“最悪のシナリオ”は脱することになりそうだが、鉄道事業の収支改善に道筋をつけるのはこれからだ。

*2-3:http://www.nikkei.com/article/DGXLASDZ25H80_V21C16A0000000/ (日経新聞 2016/10/25) JR九州上場、快走演出した「不動産事業」
 九州旅客鉄道(JR九州)が25日、東京証券取引所第1部に上場した。朝方から買い注文が膨らみ、取引開始から30分ほどたって付けた初値は3100円と、売り出し価格(公開価格、2600円)を19%上回る水準。ひとまずは順調な「走り出し」といえそうだが、人気の背景を探ると、少し気掛かりな点も浮かび上がる。
■営業利益でみると「不動産会社」
 「現在は運輸サービス事業と駅ビル・不動産事業の利益がそれぞれ全体の4割。しばらくの間はこの構成で成長を目指す」。青柳俊彦社長は午前中、経済専門チャンネルの番組に出演し、成長のけん引役として不動産事業への期待感を隠さなかった。JR九州は社名の通り、鉄道事業が主力ではあるが、実は不動産事業が孝行息子。九州新幹線をはじめとする鉄道事業は2017年3月期にひとまず黒字化する計画だが、営業利益でみると連結全体の4割にすぎない。残る6割のうち、4割分を稼ぐのが駅ビル不動産事業。営業利益でみれば、鉄道事業と同じ規模なのだ。JR九州はJR博多駅の駅ビル「JR博多シティ」(福岡市)や4月に開業したオフィスビル「JRJP博多ビル」(同)など駅前の不動産を活用した商業施設や賃貸用不動産を運営しており、今後も駅ビルや駅ナカを開発していく方針を示す。保有不動産の収益力を高めるというストーリーは、東日本旅客鉄道(JR東日本)や東海旅客鉄道(JR東海)が歩んできた成長路線と重なる。初値時点でのJR九州の時価総額は4960億円と1兆~3兆円に達する、他のJR3社と比べると小粒だが、割安なJR九州に投資する理由は十分にある。
■不動産マネーの「逃げ場」にも
 完全民営化で経営の自由度が高まれば、成長のけん引役である駅ビル運営で大規模投資や他社との連携などに踏み切りやすくなる。楽天証券の窪田真之氏も、「高収益の駅ビル不動産事業は、これからさらに利益を拡大する余地がある」と指摘する。JR九州株の初値は、不動産事業への「期待料込み」ともいえる。実際、日本株の運用担当者の間では、「国内外の機関投資家がJR九州の不動産事業に注目して投資しようという動きも出ていた」という。そして、もう一つのJR九州にとっての追い風も吹いたのかもしれない。日本国内の不動産に向かっていた投資マネーの変調だ。ここ数年来の不動産価格の高騰で、投資額に見合う利回りを得にくくなっており、今年1~9月の累計で海外勢や国内の事業法人は不動産をこぞって売り越した。行き場を失った不動産への投資資金が向かいやすいのは、流動性が高く、一時期に比べて過熱感が薄れた不動産投資信託(REIT)や株式。つまり、巨大な投資マネーの流れの中で、JR九州株が資金の「一時的な逃げ場」になったのかもしれない。
■初値は「追い風参考記録」か
 もっとも、期待通りの水準だった初値が「追い風参考記録」になる恐れもある。JR九州が自社で保有する不動産は九州地方が中心で、東京や東海地域の一等地に資産を持つJR東日本やJR東海とは異なるからだ。不動産市況の過熱感が想定外に強まれば、新規の案件の取得や開発にかかるコストが膨らむ。今後、九州より不動産市場が大きな首都圏、成長著しいアジア地域で不動産ビジネスを拡大したとしても、リスクは消えない。25日のJR九州株は初値に比べて178円(5.7%)安い2922円で午前の取引を終えた。シナリオ通りに不動産事業を伸ばし、JR東日本など旧国鉄民営化の成功事例に加われるだろうか。

*2-4:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/440538 (佐賀新聞 2017年6月24日) JR九州合理化強調 上場後初の総会
■地方廃線、株主懸念も
 JR九州は23日、昨年10月の上場後初めてとなる定時株主総会を福岡市で開いた。青柳俊彦社長は「九州外のエリアに事業進出して売り上げの拡大を目指す。徹底的なコスト削減も図りたい」と述べ、不動産など非鉄道事業で収益拡大を図る一方、合理化を推進する姿勢を強調した。株主には地方路線での廃線の動きを懸念する声もある。総会には個人株主ら987人が出席し、約1時間45分で終了。株主から不採算路線について「第三セクターへの移譲を検討してはどうか」との意見が出た。日豊線の大分-宮崎空港(213キロ)の一部列車に導入した車掌を乗せない「ワンマン特急」に関して説明を求める質問も出され、JR九州は「安全面で問題はない」と回答した。JR九州の担当者は鉄道事業に関し、効率化を図ることでネットワークを維持していくとの方針を改めて説明し、理解を求めた。フリーゲージトレイン(軌間可変電車、FGT)の九州新幹線長崎ルートへの導入可否については「初夏に予定される国の専門家委員会の(耐久性などの評価に関する)判断を待ちたい」と述べるにとどめた。JR九州株を巡っては、廃線の可能性が取り沙汰されている沿線の自治体がけん制の目的で株式を取得する動きもある。日南線沿線の宮崎県串間市の担当者は総会には参加しなかったが「路線存続を求める意思表示を続けたい」と話した。

*2-5:http://www.nikkei.com/article/DGXNASFK2500I_V20C11A2000000/ (日経新聞 2011/2/26)九州新幹線、新大阪―鹿児島中央間を最短3時間45分、空とシェア争奪
 3月12日、九州旅客鉄道(JR九州)が運行する九州新幹線鹿児島ルートが全線開業する。九州を南北に縦断して博多(福岡市)―鹿児島中央(鹿児島市)の257キロメートルを直結。同時に西日本旅客鉄道(JR西日本)が運行する山陽新幹線との相互直通運転も始まり、九州と関西の交流拡大も期待される。博多―新八代(熊本県八代市)が新たに開通、2004年に開業した新八代―鹿児島中央とあわせて全線が開業する。博多―鹿児島中央は、新幹線と在来線特急を乗り継ぐ現行に比べ所要時間を約50分短縮、最速約1時間20分で結ぶ。博多―熊本は約35分となる。列車は停車駅の数に応じて3種類。新大阪から鹿児島中央までを約4時間10分で結ぶ「さくら」は1時間に1本を運行。九州新幹線でのみ運行し、各駅に停車する「つばめ」は博多―鹿児島中央を2時間弱で結ぶ。さらに新大阪―鹿児島中央を約3時間45分で結ぶ最速列車「みずほ」を投入。途中停車駅を新神戸、岡山、広島、小倉、博多、熊本に限り所要時間を短縮。朝夕にそれぞれ2往復運行する。使用する車両は2種類。九州新幹線区間の折り返し運転に主に使うのは、すでに開業区間を「つばめ」として走る800系。山陽新幹線との相互直通運転にはN700系の改良車両を使う。正規料金は博多―鹿児島中央は1万170円(指定席利用)、新大阪―鹿児島中央が2万1300円(同、最速列車「みずほ」は300円加算)。インターネット利用による割引切符は主要区間で最大40%割引する。乗車日の3日前までしか予約、変更ができない早期割引切符「e早特」は新大阪―鹿児島中央で1万7000円、新大阪―熊本で1万4400円。博多―鹿児島中央は早割で8500円。博多―熊本の早割は正規料金より40%安い3000円。九州内のネット予約割引にはJR九州が発行するクレジットカードへの入会が必要。山陽新幹線との直通列車のネット予約割引にはJR西日本発行のカードも使える。所要時間の短縮や割引料金の設定で、9割以上が空路を利用するとされている大阪―鹿児島を筆頭に、交通機関のシェア争奪戦激化は必至。全日本空輸が3月の伊丹―熊本線を正規料金から最大1万1300円割引き、最安で九州新幹線の割引料金と同程度の1万4400円とするなど、各社は新幹線対抗策を強化している。

*2-6:http://itpro.nikkeibp.co.jp/atcl/news/17/012600245/?rt=nocnt (日経BP 2017/1/26) Amazon.comが物流事業を拡大、海上輸送への進出本格化
 米Amazon.comが海上輸送事業への進出を本格化させていると、複数の海外メディア(米The Verge、米TechCrunchなど)が現地時間2017年1月25日、米Wall Street Journalの記事を引用して報じた。同社はすでに、中国の小売業者がAmazon.comのeコマースサイトで販売する商品の米国への海上輸送を始めている。こうした輸送事業はこれまで米UPSや米FedExなどが手がていたが、Amazon.comは今後これらの企業と直接競争することになり、自前の物流事業構築計画をさらに一歩前進させることになるとWall Street Journalは伝えている。英Reutersによると、Amazon.comは2015年に「Beijing Century Joyo Courier Service」と呼ぶ中国子会社を、非船舶運航業者(フォワーダー)として中国運輸省に登録した。これは自ら輸送船を保有しないが、通関や書類手続きなどを行って貨物輸送を取り扱う業者。Amazon.comはこれにより、中国から同国外への海上貨物輸送業務が可能になった。今回のWall Street Journalの報道によると、2016年10月以降、同社が取り扱った中国からの海上輸送コンテナ数は150超に上る。今月には、前述の中国子会社が、仕分けや貨物追跡といった業務についての料金を公開したという。なお、Amazon.comは約1年前に、同社の倉庫など米国における施設間で商品を輸送するために、自社ブランドのトラックを大規模導入すると発表した(関連記事:Amazon.comが数千台の輸送トラック導入 配送を効率化)。2016年8月には、「Amazon One」と呼ぶ自社ブランドの貨物航空機を利用した輸送業務を始めたことも明らかにしている(関連記事:Amazon.com、自前の貨物航空機の運航開始)。こうして同社はこれまで外部委託していた物流の中間業務を自社で手がけ、輸送業務の拡大とコスト削減を図っているとTechCrunchは伝えている。

*2-7:http://www.nikkei.com/article/DGXLASFS17H6H_Y6A610C1NN1000/ (日経新聞 2016/6/18) ふるさと納税寄付額の4割が返礼品経費に
 個人が故郷や好きな自治体に寄付できる「ふるさと納税」で、寄付額の4割が返礼品の費用に使われていることが総務省の調べで分かった。広報などの経費も含めると、地方の活性化に活用できるのは半分程度になる。寄付額が全国最多の宮崎県都城市や長野県飯山市では返礼品の費用が7割超だった。同省が全国の自治体から2015年度に受け取った寄付額と返礼品の費用などを聞き取った。寄付額が全国合計で1652億円だったのに対して「返礼品の調達費」に632億円、「返礼品の送付費」に42億円かけた。返礼品は地元の肉や魚といった特産物が多い。自治体にとって寄付してもらう動機づけになるほか、地元のPRにもつながる。全国最高の42億円の寄付があった都城市は肉と焼酎が人気で、返礼品経費は31億円だった。飯山市は寄付額17億円に対して12億円を返礼品に使った。高額な返礼品が増えたため、総務省は4月、高額だったり寄付額に対して経費がかかり過ぎたりしている返礼品の自粛を自治体に要請。これを受け、7自治体が返礼の取りやめや価格を下げることにした。自治体間の行き過ぎた競争につながりやすい返礼品の価格や寄付額に対する価格割合の表示をやめることにした自治体も33あった。高市早苗総務相は「(返礼品の費用は)基準を決めてこちらから指導するようなものではない」として自治体側の対応を見守る考えを示している。

<合併後の戦略>
*3:http://qbiz.jp/article/112722/1/ (西日本新聞 2017年6月24日) 余力400人超「新事業に」 十八銀頭取、統合意義を強調 株主総会
 10月にふくおかフィナンシャルグループ(福岡市)との経営統合を目指す十八銀行(長崎市)の株主総会が23日、本店であった。森拓二郎頭取は、親和銀行(長崎県佐世保市)との合併に伴う店舗統廃合や業務の効率化で計400〜500人の余剰人員が生じると説明。余力を地域活性化や新規事業に振り向けるとし、統合の意義を強調した。現在の行員数は十八銀が約1400人、親和銀が約1200人。合併後、2割弱が余剰になる計算。総会は非公開で約250人が出席。十八銀によると、森頭取は「スケジュール通りの統合を目指す」と語ったという。一方で株主から「選択肢として白紙撤回もあるのでは」との意見が出たほか、貸出金シェア引き下げに向けた債権譲渡に関する質問が複数あったという。総会後、長崎市内の男性株主(65)は「人口が減る中で統合する理由は分かるが、本当に実現するのだろうか」と話した。

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2017.5.22 原発の危険性と使用済核燃料の早期最終処分の必要性 (2017年5月22、23、28、30日、6月1、4、14、17、18、22、25日追加)
(1)原発を再稼働するどころか、使用済核燃料も速やかに最終処分すべきであること
1)北朝鮮のミサイル及びサイバー攻撃

 
     最近の北朝鮮のミサイル実験状況            制裁措置について
                           2017.5.15  2017.5.15
                            毎日新聞   日経新聞

 北朝鮮がミサイルを発射するたびに、日本のTVは大騒ぎをし、共謀罪の内容を隠すかのように北朝鮮ミサイルの話ばかりを報道しているが、最近は核弾頭を取り付けられるのかという疑問を発している。しかし、現在は第2次世界大戦中とは異なり、ミサイルに核弾頭など取り付けなくても、*1-2のように、ミサイルを原発の原子炉建屋・使用済核燃料プール・それらの直近の施設などに着弾させれば、そこに内蔵されている核物質により原発自体が自爆するため、敵国を住めない土地にすることは容易なのである。

 そして、テロ対策ができている原発は一つもないのに、川内1、2号機、伊方3号機は既に運転中で、玄海3、4号機、高浜3、4号機では再稼働への準備が進められており、日本政府が本当に国や国民を守ろうとしているのかについて大きな疑問がある。

 また、複数のIT(情報技術)企業が、*1-1のように、5月15日に世界で起きた大規模サイバー攻撃には北朝鮮が関与している可能性があるとの分析結果を公表し、米政府は同攻撃に北朝鮮政府が関与したと断定して、北朝鮮の対外工作活動機関である人民武力省偵察総局などに追加制裁を実施したそうだ。しかし、日本の原発へのサイバー攻撃については、これまでの原子力ムラの対応を見ている限り、先進的な防御を速やかに行った気配はない。

 なお、*1-3のように、北朝鮮のキム・インリョン国連次席大使は、「①アメリカもICBM(大陸間弾道ミサイル)の発射実験を行っており、ダブルスタンダードだ」「②国連安保理が、アメリカが行う攻撃的で挑発的なICBM発射訓練への説明を求めなければ、北朝鮮はいかなる安保理決議も受け入れない」「③アメリカが反北朝鮮政策を続ける限り、速い速度で核攻撃能力を高めていく」「④トランプ政権が制裁を強めれば、壊滅的な結果の責任をとることになる」としており、相互主義という意味では理屈が通っているが、北朝鮮は人権を尊重しない国であるため、近くに住む日本人は恐ろしいわけである。

2)このような中での原発再稼働について
 このような中で、まさに国も司法も電力会社も自治体も誰も責任を負えないまま、*1-4のように、福島の事故究明や避難計画の実効性を置き去りにして、原発が次々に再稼働され始めた。昨年春に大津地裁は滋賀県住民の訴えを入れ、「原発を動かすならゼロリスク、すなわち福島の事故原因に基づいた完璧な備えがいる」として関西電力高浜原発3、4号機の運転を差し止めたが、福井地裁と大阪高裁は「絶対的安全性は想定できず、危険性が社会通念上無視できる程度まで管理すべきだ」とした。しかし、「社会通念上無視できる程度」とは何%くらいで、その割合で事故が起こった場合に周囲がどうなるかについては全く言及されておらず、これで「安心しろ」と言っても無理である。

 また、*1-5のように、玄海原発再稼働については、佐賀県の全自治体と福岡、長崎両県の原発30キロ圏に入る計28自治体のうち6割の17自治体が再稼働の前提となる「地元同意」の対象範囲の拡大を求めているため、このまま玄海町と佐賀県の同意だけで、なしくずし的に再稼働されることはないようにして欲しい。

3)韓国の原発について

     
韓国原発事故の影響予測   福島第一原発事故(フクイチ)による汚染範囲

(図の説明:フクイチ事故の結果、放射性ヨウ素やストロンチウムも関東・東北一円で検出されており、文科省の調査結果は実際よりも控えめに表示されている。そのため、土壌汚染を通じて農産物が汚染されているのも明らかだ。なお、古里原発はじめ韓国の原発が事故を起こした場合は、日本海や日本の日本海側の地域が広い範囲で汚染されるが、国内で原発再稼働を進めながら、韓国に何とかするようにとは言えないだろう)

 外国のことなので今まで書かなかったが、韓国南部の釜山市にある古里原発3号機で使用済燃料プールの冷却機能が失われて火災が発生し、放射性物質セシウム137が大量に放出されると、*1-6のように、1月なら偏西風の影響で西日本を中心として日本の最大6万7000平方キロが汚染され、最大2830万人に避難の必要性が出る可能性がある。また、9月なら最大で韓国国土の半分以上5万4000平方キロが汚染され、2430万人が避難することになり、日本では首都圏に近い地域や東北にも被害が及ぶそうだ。

 そして、韓国には原発が25基あるため、北朝鮮がミサイルに核弾頭を積まなかったとしても、原発を自爆させて大きな被害を与えることは容易であろう。

(2)フクイチの健康被害について
1)本当は風評の問題ではないこと
 *2-1のように、改正福島復興再生特別措置法が、5月12日に参院本会議で可決・成立し、フクイチ事故で立ち入りが制限されている帰還困難区域内に、人が住める「特定復興再生拠点区域」を国費で整備することになったそうだ。しかし、こういう場所に住む人は、リスクを認識した上で受容すべきである。

 また、福島県産農林水産物の「風評払拭」に向け、国が販売の実態調査や適正な取引指導を行うなど、被災者の暮らしとなりわいの復興を加速させるとのことだが、福島県産の農産物は原発事故前の価格まで戻らず全国平均価格と差があるといっても、自由主義経済であれば、価格は需要と供給で決まり、需要の少ない製品の価格が下がるのは当然なのである。

 さらに、「流通しているものは安全が確認されている」と言っても、全数を検査しているわけではなく、基準放射線量は0ではなく、また、放射線量を開示しているわけでもないため、国民が長期的な安全性を重視してこういう製品を避けるのを、「風評被害」「心配しすぎ」などと言えば言うほど信頼がなくなるのである。

 そのため、これら原発事故の被害を農林漁業被害のすべてまで含めれば、*2-2のように、世耕大臣が「原発のコストは安い」などと言っているのは、ご都合主義の強弁にすぎない。


     電力の総原価         原子力発電のコスト   発電コスト実績比較  
               (事故費用12.2兆円という試算の時)

(図の説明:太陽光発電などの再生可能エネルギー買取に必要な費用が電気料金請求書で「再エネ発電賦課金」として加算されているため、再エネの買取が電気代を上げていると考えている人が多い。しかし、電力会社内で発電する場合の電力コストは、一番左の図のように、電力会社の発電設備等の減価償却費や発電に要する人件費・燃料費・修繕費などから構成されており、再エネを買い取る場合は、電力会社内ではこれらの発電コストが発生しない。一方、原発は、中央の図のように、立地自治体への交付金・核燃料サイクル費・事故処理費用等が国から支払われ、国民が負担しながら含められていない“発電コスト”もあり、使用済核燃料の処分費用は未だ計算されてすらいない。そのため、実際の発電コストは、一番右の図のように、原発は高い)

2)福島の原発事故関連疾病発生率

      
 セシウムの降下・蓄積   循環器系の疾患・心疾患    貧血治療数・手術数推移
           ・脳血管疾患死亡率の福島・全国比較


白内障・水晶体疾患推移    静脈・リンパ管疾患推移 扁桃周囲膿疱・急性扁桃腺治療推移

(図の説明:セシウム降下量は、文科省が航空機でモニタリング《空中の値であるため地上より低い》した結果、フクイチを中心として関東一円に広がっており、これはヨウ素やストロンチウムなど他の放射性物質でも同じだ。そして、循環器系疾患・心疾患・脳血管疾患死亡率が、福島県では全国平均と比較して2009年より2014年に明らかに上昇している。その原因は、①実際に死亡率が上昇した ②若い人が避難したため発症率の高い高齢者割合が増加した などが考えられるが、原発事故後、埼玉県でも心疾患で亡くなったという訃報が明らかに増えたため、①は決して否定できない。また、貧血・水晶体、白内障・リンパ管疾患になった人も2010年以降に増えており、扁桃周囲膿疱・急性扁桃腺治療数は福島県・栃木県両方のDPC対象病院で増加しているが、フクイチに近く放射線量の高い福島県の増え方は栃木県よりずっと多いため、原発事故の影響は明らかだ。そのため、これらの調査を、各県の大学病院・大病院がいっせいに行えば、世界でも貴重な驚くべき結果が出ると思われる)

 *2-3のように、岡山大大学院の津田教授(生命環境学)が国際環境疫学会の医学専門誌「エピデミオロジー(疫学)」に発表した「福島県が福島原発事故当時に18歳以下だった県民を対象に実施している健康調査の結果を分析したところ、甲状腺がんの発生率が国内平均の20~50倍に達していた」という論文に衝撃が広がっているが、これは予期されたことだ。

 津田教授は、原発事故から2014年末までに県が調査した約37万人を分析した結果、「二本松市」「本宮市」「三春町」「大玉村」の「福島中通り中部」で甲状腺がんの発生率が国内平均と比較して50倍に達し、「郡山市」では39倍になっており、チェルノブイリ原発事故やWHO(世界保健機関)の2013年予測をすでに上回っており、今後、患者数は爆発的に増える可能性を示唆している。

 そして、放射性物質の放出量がチェルノブイリ事故と比べて10分の1と公表されたことについては、「もっと大きな放出、被曝があったと考えざるを得ない」と指摘しておられる。これに対して、国内では「時期尚早」「過剰診断の結果」などの指摘が出ているが、海外の研究者で時期尚早と言う人は誰もいないそうだ。つまり、日本の原発関係者は、信じたくないことを証明する事実は認めたがらないのである。

 また、福島で被爆住民の健康状態を確認し、治療している布施福島共同診療所長(医師)は、韓国で行われた韓日国際シンポジウムに参加し、*2-4のように、フクイチ被爆住民の白血病・脳出血・心筋梗塞の発症増加を、福島県立医大が発表した「原発事故の後、増加した病気」に関する資料を公開して発表した。その内容は、原発事故後、福島住民の白内障は2010年比で2011年229%、肺癌は172%、脳出血は253%、食道癌は134%、小腸癌は277%、大腸癌は194%、前立腺癌は203%に増加したとのことである。

 さらに、2年経過後の2012年には、脳出血は2010年比で300%、小腸癌は400%に増加し、早産/低体重出産も166%まで増加し、東京や埼玉県でさえ事故後4%ほど死産率が増加し、放射能汚染度が高い福島県周辺の死産率は12.9%増加したそうだ。日本政府は、まだ原発事故以来、放射能による健康被害はないなどと強弁しているが、もう事実を認識して対応せざるを得ない時期に来ている。

 このほか、広瀬隆氏は、*2-5のように、順天堂大学の血液内科が発表した「血液系疾患の患者数が激増しており、首都圏の病院でも骨髄形成症候群(血液関連の癌)が2~5倍という状態」「白内障も増えている」という資料を使い、「東京で、白内障や心筋梗塞が激増するのは何故か?」という記事を書いておられる。また、「ロッキー山脈でもプルトニウムが検出されているということは、原子炉内でメルトダウンした燃料が気化し、あらゆるものがガスになって放出され」「フクシマ原発から放出された放射能は、天文学的な量」とのことである。

 さらに、「セシウムは盛岡より新宿が6倍!ヨウ素は盛岡より新宿が100倍!!」「東京の荻窪も“チェルノブイリ危険地帯第4区”!」だそうだが、埼玉県はしっかり測定していないため、東京より目立たないのだろう。

(3)使用済核燃料最終処理施設候補
 このように、使用済核燃料が原発近くのプールに大量に保管されているのは、危険なことなのである。そのため、*3-1のように、「原発燃料処分の先送りはもう限界」である。

 そこで、使用済核燃料をなるべく安価に処分するには、*3-2のように、炭鉱が閉山して無人になりつつある高島か軍艦島に核の最終処分場を作り、速やかに深い海底下に保存する方法を採用するのがよいと、私は考える。何故なら、すでに地下空間が存在し、島の維持管理もできる上、移住したい人が移住できるように保障金を支払っても人数が少ないため安く済むからだ。

<北朝鮮のミサイル及びサイバー攻撃と原発>
*1-1:http://www.nikkei.com/article/DGXLASGM16H17_W7A510C1MM0000/ (日経新聞 2017/5/16) 大規模サイバー攻撃、北朝鮮が関与か 複数社が分析、ソフトの技術的痕跡
 複数のIT(情報技術)企業は15日、世界各地で起きた大規模サイバー攻撃に北朝鮮が関与している可能性があるとの分析結果を公表した。北朝鮮のハッカー集団が今回のサイバー攻撃ソフトを作成した技術的な痕跡を見つけたという。ボサート米大統領補佐官(国土安全保障・テロ対策担当)は同日の記者会見で「ソフトは犯罪集団か外国政府によって開発された可能性がある」として「緊密に状況を注視している」と述べた。米グーグルの研究者と米シマンテック、ロシアのカスペルスキー研究所がそれぞれ公表した。カスペルスキーによると、北朝鮮のハッカー集団「ラザルス」が2015年のサイバー攻撃で使ったソフトと、今回の攻撃ソフト「ワナクライ」の初期版のプログラムに、同じ記述が存在することがわかった。同一人物によって作成された可能性があるという。ラザルスは14年にソニー米映画子会社にサイバー攻撃を仕掛けたとされる。米政府は同攻撃に北朝鮮政府が関与したと断定し、15年に北朝鮮の対外工作活動機関である人民武力省偵察総局などに追加制裁を実施した。ラザルスは13年には韓国の放送局と金融機関の計6社を襲ったサイバー攻撃に関与したとされる。16年にはバングラデシュ中央銀行への決済システムに侵入し、8100万ドル(約92億円)を不正送金した事件にも関わったとの指摘もある。シマンテックは、北朝鮮のハッカー集団が31カ国(3月時点)でサイバー攻撃に関与しているとみている。ただIT各社は今回の攻撃が北朝鮮によるものとは断定していない。ボサート氏は15日朝(日本時間同日深夜)時点で「150カ国の30万台以上が影響を受けた」と表明した。「週末が過ぎて感染速度は下がっている」という。米政府では被害は確認されていないとしている。今回のサイバー攻撃ソフトはデータ復旧の代わりに金銭を要求する「ランサム(身代金)ウエア」で、「これまでに支払われたのは7万ドル以下のようだ」(ボサート氏)。被害が大きかったのはロシアやウクライナ、台湾などという。

*1-2:http://www.datsugenpatsu.org/bengodan/statement/17-05-02/ (脱原発弁護団 2017年5月2日) ミサイル攻撃の恐れに対し原発の運転停止を求める声明
脱原発弁護団全国連絡会共同代表  河合弘之
     同           海渡雄一
1 米国が北朝鮮への圧力を強め、北朝鮮がミサイルの発射実験を繰り返し、国際情勢は緊迫の度を強めている。3月17日には、秋田県男鹿市で、弾道ミサイルを想定した避難訓練が実施された。4月21日、政府は「弾道ミサイル落下時の行動について」を公表し、国民に対し、「屋外にいる場合は、できる限り頑丈な建物や地下街などに避難すること、建物がない場合には、物陰に身を隠すか、地面に伏せて頭部を守ること、屋内にいる場合には、窓から離れるか、窓のない部屋に移動すること」等を呼び掛けた。4月29日の北朝鮮によるミサイル発射を受け、米国ティラーソン国務長官は、「ソウルや東京への核攻撃は現実の脅威である」と指摘した。この発射の直後、東京メトロ、東武線、北陸新幹線は、いずれも約10分間、安全確認のため運転を見合わせた。
2 ところで、追い詰められた北朝鮮が本気で日本をミサイル攻撃しようと考えれば、第一に狙われるのは在日米軍基地であり、第二に狙われるのは、原子力発電所であろうと言われている。原発は、在日米軍基地と違って無防備であり、通常のミサイルで壊滅的な被害を生じさせることができる。そもそも、日本の原発は、ミサイル攻撃に対する防護措置は全くとっておらず、原子力規制委員会が定めた新規制基準においても、そのことは求められていない。政府が上記のように国民に対ししてミサイル落下時の行動指針まで示さなければならないほどに事態が切迫しているのであれば、第一に原子炉や使用済み核燃料プール、これらの直近にミサイルが着弾することも当然のこととして想定しなければならないはずである。しかるに、現時点でテロ対策の設備(「特定重大事故等対処施設)が完成している原発は一つもない。政府や原子力規制委員会、原発事業者がミサイル着弾のリスクに対して有効な対策をとっているという説明は国民に全くなされていない。川内1、2号機、伊方3号機は今も運転中であり、玄海3、4号機、高浜3、4号機は再稼働への準備を着々と進めている。
3 もし、原子炉建屋や使用済み核燃料プールをミサイルが直撃すれば、戦慄すべき大惨事が起こる。その近くに着弾するだけでも、電源の喪失、各種設備の損壊、損傷によってその原発は深刻な危機に陥る。原発の位置、構造若しくは設備が災害の防止上支障がないものであること、原発の保全、運転について必要な保安措置がなされていることが原発使用の大前提であり、原発がこれらを満たしていない場合、原子力規制委員会は、原発の使用停止等の必要な措置を講じる権限を有している(原子炉等規制法43条の3の23)。ミサイル着弾に備える対策としては、原子炉内の核燃料及び使用済み燃料プール内の使用済み核燃料を安全な場所に運び出すしかないが、これは短期間でなし得ることではない。しかし、少なくとも現在運転中の原発の運転を停止して核燃料を冷温停止させておけば、危機が発生した場合において破滅的事態への進展を食い止めるための対策を講じる時間的余裕が生まれる。今、ミサイル着弾を想定すべき事態においてできる対策はそれしかない。
4 よって、脱原発弁護団全国連絡会は、原発事業者、政府及び原子力規制委員会に対し、次のことを求める。
(1) 現在運転中の原発を所有している原発事業者は、その運転を直ちに停止すること、そして、政府が日本へのミサイル着弾の恐れがなくなったことを表明するまで、再稼働しないこと。
(2) 現在、再稼働準備中の原発を所有している原発事業者は、政府が日本へのミサイル着弾の恐れがなくなったことを表明するまで、その原発を再稼働しないこと
(3) 政府及び原子力規制委員会は、原発事業者に対し、(1)(2)のとおり指示すること          以上

*1-3:http://www.news24.jp/articles/2017/05/20/10362004.html (日テレNews24 2017年5月20日) 北朝鮮「安保理決議は受け入れない」
 北朝鮮の国連次席大使が19日に会見を開き、「安全保障理事会の決議は受け入れない」などと強く批判した。北朝鮮キム・インリョン国連次席大使「もし、国連安保理がアメリカが行う攻撃的かつ挑発的なICBM(大陸間弾道ミサイル)発射訓練への説明を求めなければ、北朝鮮はいかなる安保理決議も決して受け入れないだろう」。会見した北朝鮮のキム・インリョン次席大使は、安保理がミサイル発射を非難していることに対して、「アメリカもICBMの発射実験を行っており、ダブルスタンダードだ」などと反論した。さらに、キム次席大使は、「アメリカが反北朝鮮政策を続ける限り、はやい速度で核攻撃能力を高めていくことになる」とけん制した上で、トランプ政権がさらに制裁を強めれば、「壊滅的な結果の責任をとることになるだろう」と述べた。

*1-4:http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2017051902000137.html (東京新聞 2017年5月19日) 社説:高浜原発再稼働 置き去りにしたままで
 二転三転の高浜原発再稼働。国も司法も電力会社も自治体も、その責任を負えないまま、福島の事故究明や避難計画の実効性、何より住民の不安を置き去りにしたままで、原発が次々息を吹き返す。昨年春、大津地裁は滋賀県住民の訴えを入れ、関西電力高浜原発3、4号機の運転を差し止めた。原発を動かすならば、事実上のゼロリスク-、すなわち福島の事故原因に基づいた、完璧に近い備えがいるとの判断だった。前年の暮れ、福井地裁は「絶対的安全性は想定できず、危険性が社会通念上無視できる程度まで管理すべきだ」と、真逆の決定を下していた。再稼働のよりどころとなったこの三月の大阪高裁の判断も、これと同様、ゼロリスクの追求はできない、しなくてもいいという考えに立つと言えるだろう。「想定外」なら仕方がないということだ。従って高浜原発は、重大事故の危険を残したままで、再び動き始めたということだ。福島の事故原因は、究明されてはいないのだ。ならば、万一の事故の備えはどうかといえば、やはり万全にはほど遠い。日本の原発は、元々往来の不便な海辺に建てられる。国は周辺三十キロ圏の自治体に、避難計画の策定を義務付けた。だが、渋滞は、車両の確保は、船は、介助の人員は…。自治体側の悩みは深い。原子力規制委員会は、避難計画にはかかわらない。政府も了承するだけだ。被害の補償はできるのか。民間では世界最大の東京電力にさえ、福島の事故の負担は到底負いきれない。関電や政府に十分な補償ができる保証はない。それでも、立地地域以外の住民の声は聞こうとしない。周辺住民にとっては、ないないづくし。運営する電力会社も立地地域も最大のリスクを抱え続けることになる。これで「安心しろ」と言うのは無理だ。この状態が、「社会通念上無視できるほどのリスク」だとするならば、この世に危険なものなど存在しない。何か起きればすべて「想定外」で済まされる-。安全神話が復活した、というしかないではないか。福島の事故に関して明らかなことが、少なくとも一つはある。それは、安全神話こそ、すべてのはじまりだったということだ。 

*1-5:http://www.saga-s.co.jp/news/national/10201/385309 (佐賀新聞 2016年12月10日) 再稼働、地元同意の拡大要望6割、玄海原発、5市町長慎重
 新規制基準による原子力規制委員会の審査に事実上合格した九州電力玄海原発3、4号機(佐賀県玄海町)の再稼働に関し、佐賀県の全自治体と福岡、長崎両県の原発30キロ圏に入る計28自治体のうち6割の17自治体が再稼働の前提となる「地元同意」の対象範囲の拡大を求めていることが、共同通信が10日まとめた首長アンケートで分かった。佐賀の4市町を含む5自治体が再稼働に慎重なことも判明した。地元側の対応方針決定に時間がかかり、再稼働時期が遅れる可能性がある。九電川内原発や関西電力高浜原発が再稼働した際の地元同意の対象は、立地する県と市町に限られていた。

*1-6:https://mainichi.jp/articles/20170521/ddm/008/030/057000c (毎日新聞 2017年5月21日) 原発事故:韓国で起きたなら… 「日本では最大2830万人避難」 米シンクタンク試算
 東京電力福島第1原発事故を踏まえ、韓国の原発で事故が起きた場合の被害規模を専門家が試算した。気象次第で放射性物質が日本の広範囲に飛来し、日本で最大2830万人が避難を余儀なくされる恐れを指摘した。試算した米シンクタンク「天然資源保護協会」の姜政敏(カンジョンミン)上級研究員は「地震や津波だけでなく、テロや北朝鮮のミサイル攻撃が事故につながる事態も排除できない」としている。韓国南部・釜山市にある古里原発3号機で、使用済み燃料プールの冷却機能が失われて火災が発生し、放射性物質セシウム137が大量に放出されたと想定。2015年1~12月の気象条件で被害を調べた。1月は偏西風の影響で、西日本を中心に日本の最大6万7000平方キロが汚染され、最大2830万人に避難の必要が出る可能性がある。姜氏の図解では、山口県から四国、紀伊半島まで帯状に、地表のセシウム濃度が1平方メートル当たり200万ベクレル以上の地域が広がる。9月は最大で、韓国で国土の半分以上に当たる5万4000平方キロが汚染され2430万人が避難。日本の首都圏に近い地域や東北にも被害が及ぶ。北朝鮮や中国に被害が出るシナリオもある。韓国には原発が25基ある。

<フクイチ被害の隠蔽>
*2-1:https://www.agrinews.co.jp/p40850.html?page=1 (日本農業新聞 2017年5月13日) 改正福島特措法が成立 風評払拭 復興加速へ
 改正福島復興再生特別措置法が12日、参院本会議で可決、成立した。東京電力福島第1原子力発電所事故で立ち入りが制限されている帰還困難区域内に、人が住める「特定復興再生拠点区域」を国費で整備する。また、福島県産農林水産物の風評払拭(ふっしょく)に向けて、国が販売の実態調査や適正な取引の指導を行うなど、被災者の暮らしと、なりわいの復興を加速させる考えだ。帰還困難区域はこれまで「将来にわたり居住を制限する」と位置付けられていたが、区域内に復興拠点を整備して帰還できるようにする。市町村が、放射線量の低減や公共施設の整備などで帰還が可能な地域を選定。国費を使って除染やインフラ整備を進め、5年以内をめどに避難指示の解除を目指す。一方、福島県産の農産物は原発事故前の価格まで戻らず、全国平均価格とも差がある。流通しているものは安全が確認されており、風評被害の実態と要因を究明する。流通販売の過程で買いたたきなど不適切な取引がないか調査する。結果に応じ、販売業者に対して国が指導や助言など必要な措置を行う。この他、被災した同県東部を拠点に新産業の創出を進める「福島イノベーション・コースト構想」を改正法に位置付けた。情報通信技術(ICT)やロボットなどの先端技術を活用し、農作業の効率化を目指す研究を強化する。改正法は今村雅弘前復興相の“肝いり”だった。しかし、東日本大震災が「東北で良かった」と発言し、更迭された影響で成立がずれ込んだ。菅義偉官房長官は12日の記者会見で、改正福島特措法の成立を受け、「福島の復興再生をさらに加速することができるように引き続き全力で取り組みたい」と述べた。国が費用負担する除染について、できるだけ早く開始する考えを示した。
●痛みを和らげ本気で対応を 全中会長
 改正福島特措法の成立を受け、JA全中の奥野長衛会長は12日、「福島の復旧・復興が道半ばなのは、風評被害の存在が大きい。福島の農家の、怒りを通り越した悲しみを少しでも和らげられるよう、政府に本気で対応してほしい」と語った。日本農業新聞の取材に答えた。

*2-2:http://headlines.yahoo.co.jp/videonews/ann?a=20161207-00000010-ann-bus_all (テレビ朝日系(ANN) 2016/12/7) 世耕大臣「原発コスト安い」強調…廃炉費用増加でも
 東京電力福島第一原発の廃炉と賠償費用が膨らんでいることを受け、世耕経済産業大臣は「原発コストは安い」と改めて強調しました。世耕経産大臣:「色んな費用を全部、含めたとしても発電単位あたりのコストは原発が一番、安いと考えている」。廃炉と賠償などの費用は事故後の見積もりから数兆円単位で増大していて、経産省は国民負担を増やす方向で議論を進めています。そうしたなか、世耕大臣は、新たな費用を考慮しても原子力の発電コストは他の発電よりも安いと説明しました。経済産業省内には廃炉や賠償の費用が20兆円に上るとの試算もあるものの、公表されていません。経産省は今月中に議論を取りまとめる方針です。

*2-3:https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/165762 (日刊現代 2015年10月9日) 福島の甲状腺がん発生率50倍…岡山大・津田教授が警告会見
 岡山大大学院の津田敏秀教授(生命環境学)が6日付の国際環境疫学会の医学専門誌「エピデミオロジー(疫学)」に発表した論文に衝撃が広がっている。福島県が福島原発事故当時に18歳以下だった県民を対象に実施している健康調査の結果を分析したところ、甲状腺がんの発生率がナント! 国内平均の「50~20倍」に達していた――という内容だ。8日、都内の外国特派員協会で会見した津田教授は「福島県では小児や青少年の甲状腺がんの過剰発生がすでに検出されている。多発は避けがたい」と強調した。福島県で原発事故と子どもの甲状腺がんの因果関係を指摘する声は多いが、権威ある医学専門誌に論文が掲載された意味は重い。国際的な専門家も事態を深刻に受け止めた証しだからだ。津田教授は会見であらためて論文の詳細を説明。原発事故から2014年末までに県が調査した約37万人を分析した結果、「二本松市」「本宮市」「三春町」「大玉村」の「福島中通り中部」で甲状腺がんの発生率が国内平均と比較して50倍に達したほか、「郡山市」で39倍などとなった。津田教授は、86年のチェルノブイリ原発事故では5~6年後から甲状腺がんの患者数が増えたことや、WHO(世界保健機関)が13年にまとめた福島のがん発生予測をすでに上回っている――として、今後、患者数が爆発的に増える可能性を示唆した。その上で、「チェルノブイリ原発事故の経験が生かされなかった」「事故直後に安定ヨウ素剤を飲ませておけば、これから起きる発生は半分くらいに防げた」と言い、当時の政府・自治体の対応を批判。チェルノブイリ事故と比べて放射性物質の放出量が「10分の1」と公表されたことについても「もっと大きな放出、被曝があったと考えざるを得ない」と指摘した。一方、公表した論文について「時期尚早」や「過剰診断の結果」との指摘が出ていることに対しては「やりとりしている海外の研究者で時期尚早と言う人は誰もいない。むしろ早く論文にしろという声が圧倒的だ」「過剰診断で増える発生率はどの程度なのか。(証拠の)論文を示してほしい」と真っ向から反論。「日本では(論文が)理解されず、何の準備もされていない。対策を早く考えるべき」と訴えた。「原発事故と甲状腺がんの因果関係は不明」とトボケ続けている政府と福島県の責任は重い。

*2-4:http://nonuke.at.webry.info/201701/article_5.html (NAZENヒロシマ~すべての原発いますぐなくそう! 2017/1/22) ふくしま共同診療所 布施幸彦所長が韓国シンポジウムで発表
 2011年の東日本津波で発生した福島原子力発電所の事故以来、被曝住民の健康状態が非常に悪化したことが分かった。福島で被爆住民の健康状態を確認し、治療している布施幸彦福島共同診療所長(医師)は18日、韓国で行われた韓日国際シンポジウム(チュヘソン・キム・ギョンジン議員など主催)に参加して福島被爆住民の白血病・脳出血・心筋梗塞発症が増加したと明らかにした。特に18歳以下の子供を対象に甲状腺がんが大幅に増加したと明らかにした。2012年福島診療所を立てた布施幸彦(前群馬県公立病院副院長)は、この日のシンポジウムで、福島県立医科大学が発表した「原発事故の後、増加した病気」資料を公開した。これによると、福島の住民の白内障は、2010年比で2011年229%、肺がんは172%、脳出血は253%、食道がんは134%、小腸癌は277%、大腸がんは194%、前立腺癌は203%増加した。 2年が経った2012年の場合、脳出血は、2010年比で300%、小腸癌は400%増加したことが分かった。甲状腺がんの場合、10歳〜24歳の若年層をはじめ、ほとんどの年齢層で発生率が増加した。注目すべき点は、放射能被曝の影響を受ける子供たちである。 2013年12月31日現在、小児甲状腺がんまたは小児甲状腺がんが疑われる患者は、74人だったが、2016年12月現在の患者は184人に増えた。福島県で義務的に検査を受けた30万人の18歳以下の子供の68人の場合、先行検査では問題がなかったが、時間が流れて発症を確認したことが分かった。潜伏期間を経て、被曝の影響が癌で明らかになったものである。原発事故の後、日本の人口は減少に転じた。 2010年比で2012年早産/低体重出産は166%まで増加した。難病件数も、2011年を基点に大幅に増えた。難病件数は70万件のレベルで、2011年以来、100万件水準まで増加した。死産率も増加した。東京や埼玉県の場合、核事故の後、4%ほど死産率が増加した一方、放射能汚染度が高い福島県周辺は死産率が12.9%増加した。福島近くの6つの県では、乳児死亡率も増加した。急性白血病も増加した。福島県は、2010年に白血病の死亡者が108人だったが、原発事故後の2013年に230人に増え213%も増加した。付近の群馬県は310%、埼玉県は285%増加した。日本の平均値(142%増)に比べて高い。セシウム137の汚染濃度が高いほど発生する急性心筋梗塞の場合も全国的には減少傾向が福島県だけ増加した。原子力発電所の事故を処理した労働者の場合、白内障数値も著しく増加して労働災害認定を受けた事例も現れている。布施幸彦診療所章このような事実を伝えた後、「現在の福島県当局は、診察受けない権利を主張して検査を縮小・中止しようとしている。自律検査に変わったら、住民の健康状態を把握することができる材料が適切に出てくることはできない」と憂慮した。彼は続いて「福島県当局はまた、避難指示を解除して高濃度汚染地域住民を回して送信している。ここでは、子供も含まれている」と憂慮した。県当局は、今年3月から避難住民に施行していた住宅補助を中止する予定である。このような状況を残して布施幸彦診療所長は「住宅補助中断は帰還して被爆れるのか、(避難指示に)残って貧困になるのかを選択するようにする非人間的な政策」と批判した。日本政府は、まだ原発事故以来、放射能による健康被害はないと主張している。彼はこの日、全世界最高の原発密集国である韓国の警告も忘れなかった。彼は「原発事故は、原子力発電所が多い順にスリーマイル(米国)、チェルノブイリ(ソ連)、福島(日本)で発生した。次は韓国になるという懸念が多い」と明らかにした。

*2-5:http://diamond.jp/articles/-/82736?display=b (ダイヤモンド・オンライン) なぜ、東京で、白内障、心筋梗塞が激増するのか?
――エッセンシャル版・緊急特別講演会
<広瀬 隆 :1943年生まれ。早稲田大学理工学部卒。公刊された数々の資料、図書館データをもとに、世界中の地下人脈を紡ぎ、系図的で衝撃な事実を提供し続ける。メーカーの技術者、医学書の翻訳者を経てノンフィクション作家に。『東京に原発を!』『ジョン・ウェインはなぜ死んだか』『クラウゼヴィッツの暗号文』『億万長者はハリウッドを殺す』『危険な話』『赤い楯――ロスチャイルドの謎』『私物国家』『アメリカの経済支配者たち』『アメリカの巨大軍需産業』『世界石油戦争』『世界金融戦争』『アメリカの保守本流』『資本主義崩壊の首謀者たち』『原子炉時限爆弾』『福島原発メルトダウン』などベストセラー多数>
 ついに伊方原発の再稼働に関して、中村時広愛媛県知事がGOサインを出した。「1977年9月30日稼働」以来、38年経った「老朽化」の心配もさることながら、中央構造線上にそびえる伊方原発の危険性については、本連載でも再三触れてきた。同時に、2015年8月に1号機、10月に2号機が再稼働し始めた川内原発とまったく同じ「加圧水型」の原子炉は、「沸騰水型」の福島第一原発とは比べものにならない危険性があると、本連載第21回で指摘した。壮大な史実とデータで暴かれる戦後70年の不都合な真実を描いた『東京が壊滅する日――フクシマと日本の運命』が増刷を重ね、第6刷となった。本連載シリーズ記事も、累計313万ページビュー(サイトの閲覧数)を突破し、大きな話題となっている。そんななか、10月23日に、広瀬隆氏がダイヤモンド社で緊急特別講演会を開催。当日は南相馬出身の人や高速バスで遠くからたくさんの人が会場を訪れた。予定の1時間を大幅に超え、2時間にわたった講演会のエッセンスを凝縮してお届けする。さらに、現況から展望される今後の原発ゼロ時代の到来について、7回の連載記事をお届けする。
では、注目の第3回をお送りしよう。
●順天堂大学の血液内科が発表した衝撃データ
  「原発問題はフクシマだけの問題であるから、東京に住んでいる私には関係ない」と思っている人にぜひ見てほしいデータがあります。東京の人間は非常に危ない状態にあります。このことについては、それを裏づけるデータがいくつかありますので、ダイヤモンド書籍オンラインのリンク(第24回)をここに示しておきます。全身に血液が流れるので、血液が癌の転移を引き起こすという意味で非常に重大です。このリンクに示したように、血液系疾患の患者数が激増しています。首都圏の病院でも、骨髄形成症候群(血液関連の癌)が2~5倍という状態です。またほとんどの人は、放射能というと、「癌」、「白血病」しか考えないのですが、「白内障」も増えています。東京や首都圏の人間は、本人がほとんど無意識でも、確実に被曝しています。この事実は、断言しておきます。私は、フクシマ原発事故が起こってからできるだけ外出しないようにしました。ただ、当時、講演会の依頼があるたびに全国各地に引っ張りまわされたので、私自身も、かなり被曝しています。この深刻な被曝がいつごろまで続いたかが問題ですが、フクシマ原発事故が起こってから2ヵ月後の5月11日に福島大学が高空の放射能測定結果を発表しました。このグラフは、縦軸に地上からの高さをキロメートル単位で示してあります。飛行機の絵がある高さが10キロメートルで、ジャンボ機が飛行するおよそ1万メートルです。横軸が放射線の量で、セシウムのガンマ線が濃紺の折れ線で示され、ストロンチウムやトリチウムのベータ線がピンクの折れ線で示されています。このような高空に大量の放射性物質が浮遊していた、つまり原発からは放射性物質の大量の漏洩が続いていることが確認されたのですから、これらが風に運ばれて、南下して首都圏へ、また北上して東北の北部にまで、大量に流れていたのです。事故が起こってから2ヵ月後でも、これほど大量にです!! 実際には、分っている限り2015年6月頃までは、これほど深刻な被曝量でした。そうしたなかで、誰も、眼が被曝していたことには、ほとんど意識がなかったはずです。しかし水晶体のある角膜に、1000分の1mmという、目に見えない、つまりミクロン単位の微小な放射性物質がつくと、白内障になり、眼の濁りが出てきて、数年~10年後ぐらいから悪化し、最悪の場合は失明してしまいます。こうした被害は、アメリカのスリーマイル島原発事故でも、チェルノブイリ原発事故でも、多くの被害者を出しているので、明らかになっています。白内障が東北で激増している、統計データも、さきほどのリンク先に示してあります。一番こわいのは、猛毒物プルトニウムです。アメリカの環境保護局EPA(Environmental Protection Agency)が発表しているデータを見ると、アメリカ西海岸のカリフォルニアで多量のプルトニウムが検出されました。プルトニウム燃料を使って運転していた福島第一原発3号機が大爆発をした日からちょうど10日後、2011年3月24日にグーンとプルトニウムの数値が上がっています。これ以降、なぜかEPAはデータを出していません。この分野で信頼できる科学者のアーニー・ガンダーセンさんがたびたび警告したように、ロッキー山脈でもプルトニウムが検出されていますし、東京の都心でもウランのような放射性物質が検出されています。茨城県つくば市にある、気象庁気象研究所では、放射性物質のモリブデンや、テクネチウムが検出されたと、地元紙・常陽新聞が報道したのが、2011年7月16日です。このニュースを聞いたときは、私は、もうダメだと思いました。このことも、すでにダイヤモンド書籍オンラインで書きました。つくば市は福島第一原発から170kmも離れています。つくば市まで沸点4877℃でガス化するテクネチウムが飛んできたということは、原子炉内でメルトダウンした燃料が気化して、あらゆるものがガスになって放出されたということです。原子炉内で、一番危険な甲状腺癌を起こす放射性ヨウ素は184℃でガスになりますから、天ぷらの温度ですぐガス化する。それが日本全土に降り積もりました。セシウムはよく議論されていますが、白血病を起こす沸点1384℃のストロンチウムはほとんど議論されていません。一番危険な猛毒物プルトニウムでさえ、3232℃でガス化します。こういう危険な放射性物質が見えないガスになって東京を含む東日本地域に襲いかかりました。沸点が低い放射性物質はみんな、原子炉内でガス化していたわけです。それが、東京に飛んでこないはずがないのです。大事故直後の2011年3月17日に、私はCS放送の「朝日ニュースター」という番組で。「今、みなさんはテレビのいい加減な学者たちから、東京は大丈夫だという話を聞いていますが、そんなことはあるはずがない! 危険な放射性物質がガス化してみんな、東京にきていますよ」ということを話しました。
●セシウムは「盛岡」より「新宿」が6倍!ヨウ素は「盛岡」より「新宿」が100倍!!
 福島県では、美しい阿武隈山地に放射能が大量に降り積もりました。北のほうに流れた放射性物質は、奥羽山脈にぶつかってそこで大量に落ち、南のほうは茨城県から千葉・埼玉・東京に向かって山がないため、一気に直進して東京から神奈川にきたわけです。特に、新宿の高層ビル群に大量にぶつかりました。高層ビルの福島側と、その裏側では全然放射線量が違いました。しかし、マスコミは一切この事実を報道せず、多くの人たちは平気で通勤していました。「この人たちは大丈夫なのか?」と思っていたのは、私だけでしたでしょうか。あまりにも非常識で、普通の生活をする人たちを見て、私の頭がオカシイのかと思いました。それぐらい誰もが普通に通勤して、子どもたちも2011年4月に入って、普通に通学しているじゃないですか。「子どもたちの通学を止めさせろ」と叫んでいたのですが、誰も聞いてくれない。あの期間に、多くの人が被曝をしました。東京・新宿と盛岡市では、セシウムで新宿のほうが6倍です。この数字は、自治体の測定値なので、おそらくエアコンのフィルターなどで付着物を測定したものと思いますが、文科省の測定ではないので、信用していいです。甲状腺癌を引き起こす放射性ヨウ素は、新宿のほうが盛岡の100倍ですよ!(2011年11月25日公表値)。特に2011年は6月ぐらいまで、多くの人がすさまじい被曝をしました。
●東京の荻窪も“チェルノブイリ危険地帯第4区”!
 これは文部科学省が発表している東京の汚染地図ですが、山のある多摩地区は当然のことながら高度に汚染され、ギリギリ山梨県境まで汚染されました。この地図を見ると、「新宿」と「杉並」が汚染されていませんが、これはウソなのです。土壌が大汚染されているのに、航空機からの空間線量で、机上の計算でつくった気休めの地図です。放射性物質を実測したものではないのです。真の危険性を調べるため、私は、わが家のある東京・荻窪(福島第一原発から230km離れた場所)の土壌の汚染度を、信頼できる人に分析してもらいました。この人たちは、チェルノブイリ原発事故以来、ずっと放射能測定を続けてきた専門家です。つまり、継続して測定している人たちが、フクシマ原発事故の真の危険度を知ることができるのです。この内容は、『東京が壊滅する日』にくわしく書きましたので、お読みください。杉並区のわが家も、目の玉が飛び出るように汚染されていることが判明しました。その結果、1平方メートルあたり、わが家は1万7160ベクレルあり、子どもが遊ぶ近くの公園の土では9万2235ベクレルという驚異的な数値でした。杉並区の住宅地のど真ん中ですよ。ところが、同じ10月に文部科学省が空間線量から推定した汚染分布地図では、今の分布図のように、杉並区も新宿区も“安全地帯”となっているではないですか! その汚染された公園では、幼稚園児たちが遊んでいたというわけです。
●これから何が起こるのか? ―知られざる「ホットパーティクル」の恐怖
 私は30年以上前から、この問題に医学的に取り組んできたので、これから何が起こるかを理論的に申し上げます。1986年4月26日に起きたチェルノブイリ原発事故の教訓はこうです。ソ連では、当時の白ロシアが分離独立して、現在、「ベラルーシ」と呼ばれています。チェルノブイリ原発はベラルーシ国境近くのウクライナにありました。ベラルーシでは、チェルノブイリ原発事故のあとに亡くなった人たちの体を解剖すると、体内に高濃度の放射性物質の粒子「ホットパーティクル」がいっぱいありました。これもダイヤモンド書籍オンラインでくわしく書きましたので、そちらを参照してください。東京に住んでいるわれわれも、この高レベルの放射性物質を吸い込んできたのです。クシマ原発事故のあと、多くの人が線量計を買って、危険かどうかを調べてきましたが、アメリカと東京では、空間線量がほとんど変わりません。つまり空間線量の測定では、こうした危険な「ホットパーティクル」を検出できないわけです。
●「放射能の実害」から科学的に分析
 結論を申し上げます。フクシマ原発から放出された放射能は、トテツモナイ天文学的な量です。その内訳や計算は『東京が壊滅する日』にくわしく書きましたので、参照してください。大量の癌患者・死者を出したアメリカのネバダ核実験の風下地帯より、日本のほうが汚染度が高いのです。見すごされている事実として、首都圏はトテツモナイ人口密度だということがあります。これは福島県の比ではありません。これからこの日本で、100万人以上の方が、フクシマ原発事故の汚染で亡くなります。一瞬でみんなが死ぬわけではない。だから、気づかない。それがおそろしいのです。時間をかけて、病室の中でゆっくりと殺されてゆく。音もなく、家族だけが知っている。そうして亡くなっていくのです。私が申し上げている事実は、「放射能の実害」にあります。もし、原発から出る放射性物質が、人間の体内で「実害がない」ならば、どんどん原発を建てたらいい。しかし、私が調査してきたスリーマイル島事故(1979年)、チェルノブイリ事故(1986年)だけでなく、『東京が壊滅する日』で紹介した、アメリカネバダ州での大気中核実験(1951~58年で計97回)がおこなわれた場所から220kmも遠く離れた、田舎町のセント・ジョージでの悲劇、ロシアがひた隠しにしてきた「チェリャビンスク40」での史上最大の惨事を科学的に分析すると、放射能災害は必ず大量発生します。必ず起こります。ただ、東京には1300万人以上もいますので、100万人が何年かにわたって亡くなっても、精細な統計疫学で分析しないと、はっきり統計には出てきません。知るのは当事者の家族だけです。人殺し政策の好きな安倍晋三の日本政府が、賠償金打ち切りのために、次々と危険地帯への住民帰還政策を進めています。新聞やテレビも「フクシマ事故の影響はもう終った」かのような報道をしています。こうしてますます、フクシマ事故の大災害がいま現在、深く静かに進行しています。この体内被曝は、医学的な時限爆弾ですから、時間が経過すると共に発症するのです。
●なぜ、『東京が壊滅する日』を緊急出版したのか ―広瀬隆からのメッセージ
 このたび、『東京が壊滅する日――フクシマと日本の運命』を緊急出版した。現在、福島県内の子どもの甲状腺ガン発生率は平常時の70倍超。2011年3~6月の放射性セシウムの月間降下物総量は「新宿が盛岡の6倍」、甲状腺癌を起こす放射性ヨウ素の月間降下物総量は「新宿が盛岡の100倍超」(文部科学省2011年11月25日公表値)という驚くべき数値になっている。東京を含む東日本地域住民の内部被曝は極めて深刻だ。映画俳優ジョン・ウェインの死を招いたアメリカのネバダ核実験(1951~57年で計97回)や、チェルノブイリ事故でも「事故後5年」から癌患者が急増。フクシマ原発事故から4年余りが経過した今、『東京が壊滅する日――フクシマと日本の運命』で描いたおそるべき史実とデータに向き合っておかねばならない。1951~57年に計97回行われたアメリカのネバダ大気中核実験では、核実験場から220キロ離れたセント・ジョージで大規模な癌発生事件が続出した。220キロといえば、福島第一原発~東京駅、福島第一原発~釜石と同じ距離だ。核実験と原発事故は違うのでは? と思われがちだが、中身は同じ200種以上の放射性物質。福島第一原発の場合、3号機から猛毒物プルトニウムを含む放射性ガスが放出されている。これがセシウムよりはるかに危険度が高い。3.11で地上に降った放射能総量は、ネバダ核実験場で大気中に放出されたそれより「2割」多いからだ。不気味な火山活動&地震発生の今、「残された時間」が本当にない。子どもたちを見殺しにしたまま、大人たちはこの事態を静観していいはずがない。最大の汚染となった阿武隈川の河口は宮城県にあり、大量の汚染物が流れこんできた河川の終点の1つが、東京オリンピックで「トライアスロン」を予定する東京湾。世界人口の2割を占める中国も、東京を含む10都県の全食品を輸入停止し、数々の身体異常と白血病を含む癌の大量発生が日本人の体内で進んでいる今、オリンピックは本当に開けるのか?同時に、日本の原発から出るプルトニウムで核兵器がつくられている現実をイラン、イラク、トルコ、イスラエル、パキスタン、印中台韓、北朝鮮の最新事情にはじめて触れた。51の壮大な史実とデータをぜひご覧いただきたい。「世界中の地下人脈」「驚くべき史実と科学的データ」がおしみないタッチで迫ってくる戦後70年の不都合な真実!よろしければご一読いただけると幸いです。

<使用済核燃料最終処理施設候補>
*3-1:http://www.shinmai.co.jp/news/nagano/20170507/KT170501ETI090005000.php (信濃毎日新聞社説 2017.5.7) 原発燃料処分 先送りはもう限界だ
 原発は「トイレのないマンション」と批判される。指摘されてきた矛盾の一部が浮き彫りになった。廃炉が決まった全国の原発17基のうち7基で、使用済み核燃料計約610トンの搬出先が確定していないことが表面化した。解体が計画通りに進まない可能性がある。使用済み核燃料は再処理して、プルトニウムとウランを回収する。後に残る高レベル放射性廃棄物はガラス固化体にして、地下300メートルより深く埋めることになっている。その処分地は決まっていない。搬出先が決まらないのは、最終的な核のごみの行き場がなく、途中で処理が行き詰まっているためだ。使用済み核燃料は長期にわたって極めて強い放射線を出す。運転が続けば総量はさらに増える。見通しがないまま、動かし続けることは認められない。問題を先送りにしてきた政府と電力会社の責任を問わねばならない。日本にある使用済み核燃料は約1万8千トン。フランスなどに委託して再処理した分を含めると、ガラス固化体換算で2万5千本相当になる。使用済み核燃料は、原発に併設されているプール施設などに保管されたままだ。廃炉が決まると、併設されていたプールも将来、取り壊される。そうなると、保管されていた核燃料の行き場がなくなる。搬出先が決まっている核燃料も問題を抱える。搬出先の多くは、同じ敷地内にある別の建屋のプールである。中部電力浜岡原発(静岡県御前崎市)は、廃炉になった1、2号機の使用済み核燃料を4、5号機のプールに移す。その結果、同原発のプールの貯蔵量は許容量の86・9%に上る。3〜5号機全てが再稼働すれば、2年余で上限に達する。満杯になれば搬出先は簡単には見つからないだろう。脱原発へのプロセスとして必要なことは、当面の保管先を確保することだ。保管方法を電力を使う水冷より安全性が高いとされる空冷の乾式貯蔵に切り替え、原発敷地などに施設を建設することも考えられる。長期保管につながる乾式貯蔵施設の建設は、地元自治体の同意が必要だ。理解を得るには、保管期限を厳密に定め、その間に最終処分する手段や処分地を見つけ出すことが求められる。まずは原発を稼働させる期間と基数を明確にして、処分する核のごみの総量を決めるべきだ。先送りはもう限界に来ている。

*3-2:http://qbiz.jp/article/99327/1/ (西日本新聞 2016年12月3日) 【閉山の島 高島30年・池島15年】(3)直訴 「無人」がもたらすもの
 閉山に揺れる30年前の高島(長崎市)に、こんな構想が持ち込まれた。国内随一を誇った高さ965メートルの立て坑を使い、ロケットの打ち上げ拠点にする−。「ありとあらゆる提案があった」。当時の高島町助役、土居訓(79)はその奇抜さに驚いた。記憶は、さらにさかのぼる。「そういえば、軍艦島(端島)の炭鉱閉山のときは核のごみ処分場はどうか、という話もあったなあ」。池島炭鉱が閉山した15年前の池島(長崎市)でも、原発から出る核のごみの最終処分場建設案が、外部コンサルタントを通じて当時の外海町に届いた。「被爆地・長崎で、無論できるわけがなかった」。当時、閉山対策を担う町課長だった吉川司(68)もあきれる。いずれも立ち消えになったが、共通するのは「人がいなくなる」=「無人化」を前提にしていたこと。もともと寒村だった島。炭鉱が生まれ、全国から人が集まった。「炭鉱なしで島は成り立つのか。行政マンとしては本土への集団移転も現実的な選択肢として考えたが…」。吉川は、今も悩んでいるようだ。
     ◇
 「お願いがあります」。11月初め、高島での旧高島町と市の合併10年式典。地元代表としてあいさつに立った自治会連合会長の松尾保(49)は、壇上の市長、田上富久(59)や市議に目を向けた。「観光だけで人口減少は止められません。せめて、今住んでいる人が住みやすくしてほしい。希望ある未来が訪れることを祈ります」。祝いの場での“直訴”だった。人口384人。うっそうと茂る雑草が坑口跡や住民の消えた家、通路をふさぐ。除草を担ってきた島民が高齢で引退し、公募でやっと市本土在住の男性が見つかり、11月から船で通う。草刈りですらぎりぎりだ。10月上旬、池島炭鉱跡。普段は立ち入り禁止区域に、池島自治会連合会長の近藤秀美(66)は関東から来た研究者数人を案内した。目的は、高低差660メートル、煙突状の立て坑。内部のコンクリート構造は健在。研究者たちは、島を囲む海から立て坑内にくみ上げた海水を落としてタービンを回す、国内初の揚水発電をひそかに構想する。炭鉱の下請けで働いていた近藤は土産店を営むが、人口は159人。客はほとんどない。「炭鉱を生かした観光の武器になる。人をたくさん呼べるようになるかもしれん」。島に2人しかいない小学生の祖父でもある近藤に差した、かすかな希望の光。一方、研究者の視点はこうだ。「実験場としてこんな適地はない。こう言っては悪いが、人がいない島なので騒音への反対がない」。最盛期からの人口減少率は2島ともに98%。こんな街が、日本にあるだろうか。島の中で今、暮らしを営む人の思いは常に切実で、外からの視線はいつも冷徹なほどに現実的だ。


<スイス、国民投票で脱原発>
PS(2017/5/22追加):フクイチから遠い国スイスでは、2017年5月21日、*4のように、脱原発を問う国民投票が行われて賛成多数で可決され、「脱原発」支持の民意が示された。なお、国民がこのような判断に至るためには、スイスでは、今回の原発事故に関する正確な情報が開示されていたのである。

*4:http://www.jiji.com/jc/article?k=2017052200199&g=int (JIJI 2017/5/22) 「脱原発」、賛成が多数=スイスで国民投票
 スイスで21日、原発の新設を禁止し、再生可能エネルギーを推進する改正エネルギー法への賛否を問う国民投票が行われた。開票結果は賛成58.2%に対し、反対41.8%と、「脱原発」支持の民意が示された。投票率は42.4%。スイスは2011年の東日本大震災での東京電力福島第1原発事故を受け、脱原発方針を決定。改正法はこの方針に基づくもので、昨年9月に議会で承認されたが、その後国民負担増加への懸念を理由に反対派が署名を集め、国民投票に持ち込んだ。

<核禁止条約>
PS(2017年5月23日追加):「日本には不幸なことで世界で有名になった都市が4つあり、それはヒロシマ・ナガサキ・ミナマタ・イサハヤだ」と言われているうちに、フクシマも加わって5つになった。そのヒロシマ・ナガサキから「核兵器禁止条約」が提案され実現が近づいているが、これが本来の日本の役割だと考える。そこで、原発はどうする?

*5:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12950874.html (朝日新聞 2017年5月23日) 「ヒバクシャの苦難を心に留める」 核禁止条約原案に表現
 核兵器の使用などを法的に禁じる「核兵器禁止条約」の原案が22日、初公表され、「核兵器使用の犠牲者(ヒバクシャ)の苦難を心に留める」との表現が盛り込まれたことが分かった。原案をまとめた条約交渉会議議長国コスタリカのホワイト大使は、「『被爆者が皆この世を去る前に、核兵器禁止条約の実現を見届けたい』との被爆者の思いを、交渉会議に伝えてほしい」と田上富久長崎市長から依頼された、との逸話を明かした。原案は、前文と21の条項から構成されている。前文では、締約国が、核兵器のもたらす壊滅的な非人道的影響を「深く憂慮」し、再び使われることがないための「あらゆる努力」を行う必要性をうたった。禁止する項目は、(1)核兵器の開発や製造、生産、取得、保有、貯蔵(2)核兵器やその管理権限の移転や受領(3)核兵器の使用(4)核実験の実行(5)上記の活動について支援したり、支援をうけたりすること(6)自国領への核兵器の配備(7)自国領での核実験、と定めた。一方で「核兵器使用をちらつかせた脅し」を禁止する、直接的な文言は含まなかった。米国の「核の傘」の下にあり、交渉に現在参加していない日本などに、将来加盟する余地を残すものだ。


<新エネルギーと原発>
PS(2017.5.28追加):*6-1のように、福井県の原発集中立地は誰が考えても危険であるにもかかわらず、福井県が率先して原発再稼働を進め、原発事故の責任は国にあるとしているのは無責任だ。原発立地地域が原発を推進する理由は、原発が交付金・税収・(少々の)雇用等をもたらすからだが、少し広い視野で見ると、*6-2、*6-3、*6-4のように、原発は環境親和性の高い新エネルギーの進歩や発展を阻害している。また、燃料費を外部に持ち出さず安全性も高い地域エネルギーでその地域を豊かにすることをも阻んでいるのだ。さらに、*6-5のように、福井県高浜町長は、使用済核燃料を原発敷地内で「乾式貯蔵」する選択肢も示しているそうだが、ただでさえ放射性物質の多い原発敷地内で、災害・テロ・戦争などが起こっても、安全に10万年も貯蔵できるつもりだろうか。もしそうでなければ、近所迷惑である。

*6-1:http://dd.hokkaido-np.co.jp/news/opinion/editorial/2-0113969.html (北海道新聞 2017.5.28) 福井県の原発 集中立地やはり危うい 
 原子力規制委員会は、関西電力大飯原発3、4号機(福井県)が新規制基準に適合すると認める審査書を正式決定した。気になるのは、海沿いに原発が10基以上も並ぶ福井県内で、審査に合格した原発がすでに7基を数えることだ。いずれかの原発で自然災害などによる過酷事故が起き、立ち入りが禁止されたり制限されたりする区域が広がった場合、他の原発に混乱は生じないのか。国、電力会社、自治体は、「原発銀座」が抱える危うさに正面から向き合わなければならない。同県内では、関電の高浜1~4号機、美浜3号機も審査に合格している。中でも大飯と高浜の両原発は十数キロしか離れていない。だが、規制委は各原発の号機ごとに審査し、独立した形での安全態勢確保を基本としている。東日本大震災の規模を考えれば、原発が集中するこの地帯で、複数の施設が同時に被災する可能性は否定できまい。その時、電力会社が想定通りに事故に対応し、住民が安全に逃げられると言い切れるのか。福井県が策定した広域避難計画が「多重事故」を想定していないことも、大きな懸念材料だ。福島第1原発事故では炉心溶融が1~3号機で起き、広範囲で放射線量が高まったため、ピーク時は約16万人が避難した。福島第2原発も津波に襲われたが、かろうじて大惨事を免れた事実がある。東日本大震災の教訓を生かすには、原発の審査や避難計画を、単独の「点」ではなく、「面」でとらえる発想が必要だ。まして福井県の場合、合格した7基だけでも、避難計画策定が必要な半径30キロ圏内の地域は京都府や滋賀県の一部にも及ぶ。原発は、立地地域に雇用などの経済効果をもたらす。だからといって、事故時には周辺地域にも被害が及ぶ恐れがあることを無視していいはずがない。大飯原発の審査を巡っては、島崎邦彦前規制委員長代理が耐震設計の目安となる基準地震動について、過小評価の疑いを指摘した。関電は秋以降の再稼働を目指しているが、運転差し止めを求める訴訟が名古屋高裁金沢支部で審理中でもあり、30キロ圏内で不安を抱く住民も少なくなかろう。しかし、現状では電力会社と国、立地自治体の意向だけで再稼働を進めることができる。やはり、可否を巡る同意権を、周辺自治体にも認めるべきだ。

*6-2:http://qbiz.jp/article/110169/1/ (西日本新聞 2017年5月23日) インドネシア 地熱12鉱区の開発加速、来月に5鉱区入札へ
 インドネシア政府は今年、地熱鉱区12カ所の開発に向け、入札手続きなどを加速させる。12鉱区の総発電容量は86万5,000キロワット(kW)。投資総額は約43億米ドル(約4,800億円)と見込んでいる。22日付ジャカルタ・ポストが伝えた。エネルギー・鉱物資源省によると、6月中にも5鉱区の一般入札を実施する。5鉱区は、◇中スラウェシ州ボラプル◇東ヌサトゥンガラ州オカイレ・アンゲ◇同シルン◇北マルク州ジャイロロ◇北スマトラ州シンボロンサモシル――。総発電容量は計33万kWで、うちシンボロンサモシルが22万kWで最大。このほか、国営電力PLNとPLN傘下のジオ・ディパ・エネルギー、国営石油プルタミナの3社は、直接指名鉱区7カ所の開発を進める。PLNは北マルク州ソンガ・ワヤウアなど3鉱区、ジオ・ディパ・エネルギーとプルタミナはそれぞれ2鉱区を開発する。インドネシアの現在の地熱総発電容量は169万8,500kW。北スマトラ州サルーラ地熱発電所で2号基が稼働することなどに伴い、容量は年内に16万kW増の185万8,500kWに拡大する見通しだ。政府は、地熱総発電容量を2025年までに720万kWに引き上げる方針を示している。

*6-3:http://qbiz.jp/article/110601/1/ (西日本新聞 2017年5月27日) 九州の風力発電 接続可能量到達
 九州電力は26日、九州の風力発電所から電力系統に接続するための契約申し込みが、25日に接続可能量の累計180万キロワットに到達したと発表した。26日以降に接続を申し込む事業者は、電力の需給バランス調整のために稼働を停止する出力制御を、無制限に受け入れる必要がある。事業者は稼働日数が想定できず、新規案件のリスクが高まる。2012年7月に再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度が始まって以降、風力発電所の設置が増加。25日時点で、既に九電の系統に接続した発電所の出力が49万キロワット、接続を承諾した計画が29万キロワット、接続契約の申し込みがあった計画が102万キロワットとなった。出力制御は、天候で出力の変動が大きい太陽光発電や風力発電の急増を受け、電力需給のバランスが崩れるのを防ぐための措置。もともと九電は、各発電事業者に年間で最大30日間の出力制御を前提に容量を設定している。ただ、これまでに風力発電所の出力制御を要請したことはない。

*6-4:http://qbiz.jp/article/108807/1/ (西日本新聞 2017年5月3日) 九州・沖縄の倒産、太陽光関連が最多に 17年は4月時点で9件
 東京商工リサーチ福岡支社は2日、九州・沖縄地区の太陽光発電関連事業者の倒産状況を発表した。2017年は4月時点で件数9件、負債総額計62億7200万円に上り、件数・金額とも年間の過去最高を既に更新した。再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度の価格引き下げや新規投資縮小が背景にあり、同支社は今後も倒産が増えるとみている。17年の倒産9件のうち、原因別では「販売不振」が3件で最多。「事業上の失敗」「他社倒産の余波」が各2件だった。4月には関連部品販売の「ZEN POWER(ゼンパワー)」が破産開始決定を受け、負債額は約52億円と九州で過去最大だった。本年度は事業用の太陽光発電に入札制度が設けられ、今後住宅用の買い取り価格も引き下げられる見通し。同支社は「ノウハウがない新規参入企業などで淘汰(とうた)が進む」としている。同支社は2000年から集計開始。これまでの過去最高は、件数が16年などの7件、負債総額は12年の50億8100万円だった。

*6-5:http://www.shinmai.co.jp/news/world/article.php?date=20170527&id=2017052701000658 (信濃毎日新聞 2017年5月27日) 原発敷地内で乾式貯蔵も選択肢 使用済み核燃料で高浜町長
 関西電力高浜原発が立地する福井県高浜町の野瀬豊町長が27日までに共同通信のインタビューに応じ、同原発で増え続ける使用済み核燃料の扱いについて、現在保管している原発内のプールから取り出し、専用の金属容器に入れて保管する「乾式貯蔵」を原発敷地内で進めることも選択肢との認識を示した。原発外への搬出が前提となっている使用済み燃料を巡り、原発の地元町長が敷地内でのさらなる保管に言及するのは異例。野瀬町長は同時に、使用済み燃料を原発外でいったん保管する「中間貯蔵施設」建設に国が積極的に関与するよう求めた。国や、原発を抱える各地の立地自治体の議論に影響を与えそうだ。

<地産地消のエネルギーへ>
PS(2017年5月30日):*7-1、*7-2のように、福岡県の筑後地方では、「やめエネルギー」や「みやまスマートエネルギー」が事業を始め、①地域資金とエネルギーの循環を生み出して地域を豊かにする ②電力を地産地消して災害に強いまちづくりをする ③高齢者の見守りサービスを組み合わせる などを行いながら、ドイツの先進事例を学んでおり、他の地域でも参考になるだろう。また、*7-3のように、柳川市は、市の49施設を地産電力に切り替え、年間472万円の電気代節減に成功したそうだ。さらに、*7-4のように、大分県九重町の出光興産地熱バイナリー発電所が低温熱水での発電を始めており、地域によってさまざまな電源があるだろうが、これにEVとゼロエネルギー建物を組み合わせると地域のエネルギー自給率は100%になるため、「日本は資源のない国」というのは誤りである。

*7-1:http://qbiz.jp/article/109886/1 (西日本新聞 2017年5月19日) 電力新時代:八女市に新電力73社出資 6月供給スタート 太陽光など「地産地消」へ
 福岡県八女市の中小企業が1月に立ち上げた地域新電力会社「やめエネルギー」が18日、同市本町の「おりなす八女」で事業開始式を行った。出資企業は広川町を含む八女地域で事業展開する73社に上り、やめエネルギーによると民間資本だけで設立された新電力会社の中で出資者数は全国最多。「電力の地産地消」を掲げ、これまで電気料金として地域外に流れていた資金を地元で循環させ、地域経済の活性化にもつなげたい考えだ。同社は、昨年4月から全面自由化された電力小売り事業への参入を目的に1月11日に設立。製茶や仏壇など地域の特色ある産業をはじめ、建設業やサービス業など幅広い業種が出資した。電力は「やめのでんき」のブランド名で販売し、6月から供給を始める。販売する電力は、太陽光発電を中心に再生可能エネルギーを地元から調達し、不足分は電力卸取引市場などから仕入れて補う。料金は一般家庭向けでは九州電力より2〜5%安く設定した。当面は、みやま市などが出資する「みやまスマートエネルギー」が電力供給などを担い、やめエネルギーは電力の需給管理などノウハウを得た上で、1年後をめどに独立するという。出資者ら約100人が出席した式典で、やめエネルギーの本村勇一郎社長は「地域資金とエネルギーの循環を生み出すことで、新たな産業や地域サービス、雇用、人の流れが生まれる。ビジネスや生活面で地域を豊かにしたい」とあいさつ。八女市の三田村統之市長は「(電力を地産地消することで)災害に強いまちづくりにも大きく貢献できる」と期待した。1年後までに、事業者80件、一般家庭450件程度との小売り契約を目指す。本村社長は「将来的には、木質バイオマスによる発電事業も構想している。高齢者見守りサービスなどにも取り組んでいきたい」と話している。契約などに関する問い合わせは同社=0943(22)8834。

*7-2:http://qbiz.jp/article/103147/1/ (西日本新聞 2017年2月7日) みやま市やドイツの先進事例を学ぶ 自治体エネルギー会議
 自治体主導の電力事業に注目が集まる福岡県みやま市で6日、「日独自治体エネルギー会議 in みやま」(環境省主催、みやま市など共催)が開かれた。国内外から参加した約140人が、ドイツの先進事例やみやま市の取り組みなどを学んだ。ドイツは、電力やガスなどのエネルギーを供給する自治体出資の都市公社が数多く設立されている先進地。会議では、公社や自治体の担当者らが、運営の仕組みや収益状況などを説明。新電力の設立を検討している日本の自治体関係者らが耳を傾けた。みやま市が中心となって設立した「みやまスマートエネルギー」は、電力売買で得た収益を住民サービスに還元する取り組みなどを紹介。磯部達社長は「自治体同士で電力を融通し合う取り組みを深め、互いの経済活性化に協力できるような関係づくりを進めたい」と話した。

*7-3:http://qbiz.jp/article/102885/1/ (西日本新聞 2017年2月2日) 電力新時代:柳川市が地産電力に切り替え 福岡県内初 49施設、年472万円節減
 福岡県柳川市は1日、市の49公共施設の電力供給先を、九州電力から、隣接するみやま市が55%出資している地域電力会社「みやまスマートエネルギー」(磯部達社長)に切り替えた。同社がみやま市以外の県内の自治体と売電契約を結んだのは初めて。柳川市によると、年472万円の電気料の節減につながるという。供給を切り替えた施設は市役所3庁舎、全25小中学校、給食センター、公民館など。いずれも高圧電力(50キロワット以上)を使用し、この49施設で市における公共施設全体の電気料の56%を占める。市は「低圧電力より大きな節減効果が見込めた」としている。この日、柳川市役所で供給切り替え式があり、金子健次市長、磯部社長、みやま市の西原親市長らが切り替えスイッチを押した。金子市長は「みやま市とは共同で火葬場やごみ処理施設を計画しており、今回の契約で、両市の地域連携をさらに深めたい」と強調。磯部社長は「地域に地産地消エネルギーを普及させることで、両市の発展に貢献したい」と述べた。同社は南筑後地区の他の自治体にも切り替えを働き掛けており、金子市長は「柳川の契約を機に、他の自治体にも広がるのでは」と話した。同社は柳川市の一般世帯にも普及を図るため、電気料を払うと市内統一買い物カード「やなぽ」のポイントがたまるサービスも検討する。

*7-4:http://qbiz.jp/article/104722/1/ (西日本新聞 2017年3月2日) 余った熱水を使った全国初の地熱発電所が運転開始
 大分県九重町に出光興産が建設した地熱バイナリー発電所「滝上バイナリー発電所」(出力5050キロワット)が1日、商業運転を始めた。低温の熱水で発電するバイナリー方式として日本最大級。グループ会社や九州電力に売電する。発電所は、子会社の出光大分地熱が運営する滝上事業所の敷地内に建設。同事業所は、九電滝上発電所に地熱発電用の高温の蒸気を供給している。同発電所で使わずに地下に戻していた130度の熱水を利用するため、出光が新たに発電所を建設した。既設の地熱発電所に併設し、未利用の熱水を使う地熱バイナリー発電所の稼働は国内で初めてという。出光大分地熱の竹中照雄社長は記者会見で「エネルギーを効率的に利用でき、地熱発電の拡大にもつながる」と語った。

<スマートメーターを使った見守りサービス>
PS(2017年6月1日):九電が、*8のように、1人暮らしの高齢者の電気使用状況から察知して高齢者を見守る社会実験を福岡市で始めるそうだ。私は、電力使用が普段と異なるパターンを示した場合には、①まず「大丈夫ですか?」と声をかけ ②返事がない場合はアクションを起こせる組織に連絡する のがよいと考える。ただ、高齢者も旅行や入院などで普段と異なる電力使用パターンになることはあるため、その場合はあらかじめ連絡するようにしておくべきである。また、「見守り・介護サービス」という福祉子会社を作り、プライバシーを守りながらシステムを完成すれば、料金をとるサービスとして国内だけでなく他国でも使えるだろう。

*8:http://qbiz.jp/article/110886/1/ (西日本新聞 2017年6月1日) 九電が高齢者の見守り社会実験 6月から電気使用量で異常把握
 九州電力は31日、1人暮らしの高齢者の電気使用状況から親族が異常を察知するサービス「みまもりサポート」を活用し、地域で高齢者を見守る社会実験を福岡市で始めると発表した。親族を対象にしたサービスを、高齢化が進む地域の見守り活動に発展できるかを検証するのが狙い。社会実験は6月から半年間、同市城南区の別府校区で実施する。1人暮らしの高齢者約30人の電気使用量と過去のデータを30分ごとに九電のシステムが分析。使用量に異常があれば、同校区の社会福祉協議会のメンバーにメールを送り、高齢者の状況を確認してもらう。高齢者1人を最大5人の地域住民で見守る。すでに九電と市、市社会福祉協議会が協定を締結。実験後に、見守る側と見守られる側の負担感などを検証する。九電の渡辺義朗営業本部長は記者会見で「他地域に拡大できればいい。役に立てることで地域に貢献したい」と語った。結果次第では、他地域での本格運用も検討する。みまもりサポートは九電の生活関連支援サービスの一つで、昨年10月に開始。九州でスマートメーターを設置している契約者が、月額500円で利用できる。

<太陽光発電電力の買取価格>
PS(2017年6月4日追加):*9-1に書かれているとおり、原発再稼働の同意は原発事故時に汚染される全地域にすべきで、それができなくても、少なくとも30キロ圏内の市町村・都道府県の同意は必要だろう。なお、*9-2のように、東日本大震災後に太陽光発電所が爆発的に増えた九州で、太陽光を中心に723万キロワット分(大型原発7基分)の再生可能エネルギー発電所建設計画の認定が2017年4月に失効したそうだが、これには系統設備の増強・新設の工事費が高騰したことや原発を再稼働させたい九電が太陽光の買取制限を行ったことなどが影響している。太陽光発電による電力の買取価格は、2012年度のスタート時(普及開始時)は1kw時当たり40 円だったが、今後は市場価格での普及を促すため、世界標準の10円前後にするのがよいだろう。

   
 2017.6.4    2016.11.23   電源別発電コスト    太陽光発電コスト
 西日本新聞    佐賀新聞      の比較         国際比較

(図の説明:日本全国では大型原発106基分の再生可能エネルギーが認可を受け、九州では太陽光を中心に大型原発22基分の再生可能エネルギーが認可を受けているため、原発再稼働は全く必要ない。また、玄海原発30km圏には26万人以上の人が住んでおり、事故時には立地自治体と変わらぬ大きな被害を受けるため、原発再稼働には立地自治体並みの同意が必要だ。なお、太陽光発電の買取価格1kw時当たり8~15 円への引き下げは、他国では既に実現しており、市場価格での取引を始めるためには、我が国でも必要だと思われる)

*9-1:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12971524.html (朝日新聞社説 2017年6月4日) 原発と地域 再稼働への同意権拡大を
 周辺で暮らす人々の不安を置き去りに、原発がまた続々と動きだそうとしている。九州電力玄海原発(佐賀県玄海町)ではこの春、佐賀県知事と玄海町長が再稼働に同意した。関西電力大飯(おおい)原発(福井県おおい町)も先月、新規制基準に適合し、福井県知事とおおい町長の同意手続きへ進む。事故に備えた住民避難計画をつくる周辺30キロ圏では、首長や住民から再稼働反対の声が相次ぐが、電力事業者は耳を傾けない。再稼働への同意を得るべき「地元」は、原発の立地市町村と道県に限っているからだ。東京電力福島第一原発事故の被害を経験した日本で、事故前と同じ手続きを繰り返す限り、住民の不安はぬぐえない。「地元」の定義を見直し、少なくとも30キロ圏の自治体に同意権を認めるよう改めて訴える。
■被害に差なし
 同意権は法令上の権限ではない。自治体と電力事業者が結んでいる安全協定にある「事前了解」の規定がおもな根拠だ。玄海原発の30キロ圏にある佐賀県伊万里市(人口5万5千人)。塚部芳和(よしかず)市長は昨夏、再稼働への反対を明言した。福島原発事故後の13年に30キロ圏の福島県南相馬市を訪ね、「周辺と立地自治体とで被害の差はない」と痛感した。立地自治体並みの事前了解を含む安全協定の締結を九電に求めたが、九電側は拒んだ。「いくら反対してもかやの外。事故のリスクだけは負わされる。あまりに理不尽だ」と塚部市長は憤る。周辺では長崎県の3市長も反対を表明した。だが、県境をまたげば知事でも同意権はない。15年以降、川内(鹿児島県)、伊方(愛媛県)、高浜(福井県)の3原発が立地自治体だけの同意で再稼働した。福井県に隣接する京都府や滋賀県は同意権の拡大を訴えてきた。北海道函館市は、海を挟んで23キロ離れた大間原発(青森県)の建設差し止め訴訟を起こした。被害が及ぶ恐れがある地域がなぜ「地元」と認められないのか、という問いかけだ。
■地域の目を安全向上に
 朝日新聞の社説はこれまでも同意権を持つ地元の範囲を広げるよう主張してきた。より多くの自治体が同意手続きで原発の安全性をチェックすればその向上が期待でき、住民の信頼につながると考えるからだ。安倍政権は、新規制基準は世界で最も厳しく、原子力規制委員会が適合だと認めれば安全性は確認される、との見解だ。ただ、国際原子力機関(IAEA)が求める5層の安全防護策のうち、新規制基準がカバーしているのは4層までだ。第5層は原子力防災だ。1~4層が突破されて原発外に放射性物質が拡散する事態を想定し、住民を避難させて被曝(ひばく)を防ぐ「最後の壁」だ。国は福島原発事故後、その計画づくりを30キロ圏の自治体の責務とした。自治体が原発の安全性の確認を国任せにせず、自分たちが担う避難計画の実効性も含めてまだ不十分だと判断すれば、再稼働に待ったをかける権限を与えることは当然ではないか。判断には専門知識も要る。福島原発事故の独自検証を続ける新潟県のように、専門家組織を設けることも有益だろう。
■国会で議論を
 同意権の範囲拡大には、ほとんどの立地自治体も否定的だ。立地自治体は、電源三法に基づく国の交付金や住民の雇用確保など、財政・経済面で原発の恩恵を多く受けてきた。「同意権を持つ自治体を増やせば、それだけ原発は動かしにくくなる」との警戒感がにじむ。「安全協定の本来の意味に戻るべきだ」。金井利之・東京大教授(自治体行政学)は話す。60年代以降、立地自治体が協定締結に動いたのは、電力事業者に事故やトラブルの情報を隠させず、必要に応じて「もの申す」ことで、住民の安全・安心につなげるためだった。「不安や懸念を抱く自治体が周辺にあれば、何を問題視しているか、広く一緒に議論すればいい。安全性はさらに高まり、立地自治体にもプラスのはずだ」と金井さんは言う。各自治体が安全面のみを中立的に判断できるよう、原発の稼働の有無で財政・経済面の受益に差が出ることがないようにする制度づくりも考える必要があると説く。そうした制度を考えるのは、国の役目のはずだ。安倍政権はこれまで、地元同意の範囲は「国が一律に決めるものではない」(世耕弘成経済産業相)と傍観してきた。ただ、「地元」をめぐる電力事業者・立地自治体と周辺自治体の分断を放置し、周辺の異論も無視したままの原発再稼働をこれ以上続けてはならない。30キロ圏の自治体の同意を再稼働の条件として法令に明記するなど、やり方はいろいろ考えうる。事故から6年余り、積み残されている重要課題として、国会で論議していくべきだ。

*9-2:http://qbiz.jp/article/111091/1/ (西日本新聞 2017年6月4日) 電力新時代:太陽光計画、九州3割失効 723万キロワット、建設放置の業者排除
 東日本大震災後に太陽光発電所が爆発的に増えた九州で、太陽光を中心に723万キロワット分の再生可能エネルギー発電所建設計画の認定が4月に失効したことが分かった。認定された出力合計の3割強で、全国10地域で最大。太陽光などの電力買い取り価格が高い時期に認定を取得し、いっこうに建設を始めない事業者が国によって排除された形だ。大型原発6〜7基分の出力に匹敵する計画が、実現性がないまま放置されていた実態が浮かび上がる。太陽光設備の認定を経済産業省から受けた後も実現していない発電所が全国で増加し、問題になっている。太陽光の電気を買い取る価格が高いうちに認定だけ受け、発電設備の部材価格下落を待っている事業者がいたことなどが要因とみられる。固定価格買い取り制度(FIT)を見直した4月の改正FIT法施行に合わせ経産省は、事業者が3月末までに大手電力会社の電力系統への接続契約を終えなかったケースは原則的に認定を失効させた。経産省によると、FITが始まった2012年7月から16年6月末までに、九州では太陽光を中心に52万7千件、2204万キロワットの再生可能エネルギーの計画を認定。うち42万4千件、1327万キロワットは今年3月末までに九州電力との接続契約を済ませた。しかし、最大で10万2千件、723万キロワットの認定が4月に失効した。ほとんどが太陽光という。九電によると、認定後に九電に系統の接続契約を申し込んでいなかったり、申し込み後に辞退したりしたものが、失効の大半を占める。太陽光発電所の建設が集中する九州南部を中心に系統設備の増強・新設の工事費が数億円規模に高騰したことや、太陽光の増加で出力制御が必要になったことなどで事業環境が厳しくなり、建設を断念した事業者も多いとみられる。FITの事業用太陽光(10キロワット以上)の買い取り価格は、12年度に1キロワット時当たり40円でスタートした。しかし、13年度に36円に引き下げた後は4年連続で減少が続き、17年度からは21円と当初の約半分になった。価格低下に伴い、発電事業のうまみも薄れ続けている。改正FIT法 再生可能エネルギー固定価格買い取り制度(FIT)の内容を見直し、4月に施行。事業者が設備の認定後に電力会社と系統接続を契約する従来の手順を変更。接続契約を認定の条件にすることで、早期の事業の実現性が見込める太陽光の計画を買い取り対象に認定する。認定した計画の事業者名や設備所在地も公表。太陽光は認定から運転開始までの期限を1〜3年に定めた。

<佐賀地裁の玄海原発再稼働容認判決>
PS(2017年6月14日追加):*10-1、*10-2のように、九電玄海原発3、4号機再稼働に関する住民団体の運転差し止めを求める仮処分について、佐賀地裁は6月13日に「原発が安全性に欠けるとは認められない」と判断して住民の訴えを却下する決定を出し、九電は「妥当な決定だ」、玄海町長は「安全性が認められた」と評価しているが、住民側は決定を不服として福岡高裁に即時抗告する方針だそうだ。しかし、福岡高裁は地裁の言う通りであるため、三審制はあまり期待できない。そこで、原発は事故時には周辺に不可逆的で深刻な公害を引き起こし、経済的にも安価ではなく、屁理屈を付けて少数の利益のために周辺にリスクを負わせるのはやめてもらいたいため、30km圏内に入る壱岐市、松浦市、平戸市、佐世保市の市民が中心となって、事故時の避難の必要性や同意権の有無などの新規制基準の不備や原発の温廃水による漁業被害等も含めて長崎地裁に提訴すれば、大津地裁のように運転差し止めが認められると考える。

    
                2017.6.13西日本新聞

*10-1:http://qbiz.jp/article/111800/1/ (西日本新聞 2017年6月13日) 玄海3、4号機の再稼働容認 佐賀地裁が差し止め認めず
 九州電力玄海原発3、4号機(佐賀県玄海町)の再稼働を巡り、住民団体が運転差し止めを求めた仮処分申し立てで、佐賀地裁(立川毅裁判長)は13日、「原発が安全性に欠けるとは認められない」と判断し、住民側の訴えを却下する決定を出した。住民側は決定を不服とし、福岡高裁に即時抗告する方針。3、4号機については今春、地元の佐賀県と玄海町の同意手続きを終え、今秋にも再稼働の見通しとなっている。直近の司法判断では今年3月、高浜原発(福井県)の運転を差し止めた大津地裁決定を大阪高裁が取り消し、伊方原発(愛媛県)についても広島地裁が住民側の訴えを却下。佐賀地裁決定は脱原発派に厳しい流れとなり、新規制基準に適合した原発の再稼働を進める政府、電力会社に追い風となった。決定は、東京電力福島第1原発事故後に定められた新規制基準の合理性を認めた上で、原子力規制委員会の審査を「厳格かつ詳細に行われた」と評価。九電が断層面積から地震規模を導くのに用いた計算式「入倉・三宅式」については「現在の科学技術水準に照らして合理的で有効性も検証されている」と判断し、住民側の「過小評価を導く」との訴えを退けた。原子炉の冷却水が流れる配管の老朽化に関しては、2号機で2007年に配管ひび割れが発覚したことについて「発見が遅れたことには問題があると言わざるを得ない」としながらも「保守点検体制に重大な不備があったとはいえない。必要な対策を講じており、現時点では同様の恐れは認め難い」とした。住民側の冠木(かぶき)克彦弁護団長は「日本は地震大国。決定は熊本地震を何も考慮しておらず、住民の安全を無視している」と話した。仮処分を申し立てたのは3号機90人、4号機146人(うち34人重複)だった。
●九州電力「妥当な決定だ」
九州電力は「発電所の安全性は確保されているとの当社のこれまでの主張が裁判所に認められたもので、妥当な決定をいただいたと考えている。今後とも、さらなる安全性、信頼性向上への取り組みを自主的、継続的に進め、発電所の安全確保に万全を期してまいります」とコメントした。山口祥義・佐賀県知事「注視怠らない」 特にコメントすることはないが、国と事業者には安全性の確保について最大限努力してもらいたい。安全問題に関しては、気の緩みや考え方、思いが風化していくことが一番怖い。注視を怠らず、玄海原発を見守っていきたい。岸本英雄・佐賀県玄海町長「安全認められた」 司法の判断で、しっかりとした安全性が認められた。再稼働が先送りされなかったことに安心している。玄海原発の保安規定の審査や使用前検査を早く進めてもらい、年内には再稼働をしてもらいたい。
■玄海原発 佐賀県玄海町に立地する九州初の原発。1号機(55万9千キロワット)は1975年、2号機(同)は81年、3号機(118万キロワット)は94年、4号機(同)は97年に運転開始した。いずれも加圧水型軽水炉で、3号機は2009年、国内初のプルサーマル発電を始めた。東日本大震災を受け、11年12月までに全4基が停止。九州電力は15年4月、運転期間を原則40年とする国の制度に基づき、1号機を廃止した。原子力規制委員会は今年1月、3、4号機の新規制基準適合を決定。佐賀県と玄海町は今春、再稼働に同意した。

*10-2:http://qbiz.jp/article/111863/1/ (西日本新聞 2017年6月13日) 「フクシマを学ばず」原告ら落胆 地裁決定「政治や経済に追随」
 九州電力玄海原発(佐賀県玄海町)3、4号機の運転差し止めを認めなかった13日の佐賀地裁の仮処分決定に、申立人の住民団体「玄海原発プルサーマルと全基をみんなで止める裁判の会」のメンバーは「正義はないのか。安全性の無視だ」と落胆や怒りの声を上げた。地裁前でメンバーが「フクシマを学ばず」と書かれた垂れ幕を掲げると、申立人ら約70人からため息が漏れた。同会代表の石丸初美さん(65)=佐賀市=は「裁判所が最後のよりどころと思っていたので悔しい。原発がたくさんの犠牲をまた生み出すかもしれないのに」と残念がった。仮処分を申し立てたのは2011年7月、玄海再稼働の県民説明番組に九電社員らが肯定意見を寄せた「やらせメール」問題が発覚した直後だった。石丸さんは「政治や経済に追随した決定だ」と批判した。玄海原発から6キロの玄海町の自宅で却下を知った申立人の青木一さん(79)は、妻(82)と知的障害のある義妹(79)との3人暮らし。原発事故の避難計画の実効性が問われる中、試しに家族を車に乗せ、指定避難先の同県小城市に移動したことがあるが、1時間10分もかかった。青木さんは「再稼働は不安だ。裁判所の判断と言われても、納得はいかない」と語った。同県唐津市の農業、中原宏輔さん(30)は「司法は市民の声をすくい上げてくれなかった。それでも反原発への思いは変わらない」と話した。

<地熱発電の資源>
PS(2017年6月17日追加): 確かに地熱発電なら温室効果ガスを出さず、外国にエネルギー代金を支払わずに済み、コストも安く、日本列島は火山が多くて地熱が無限にあるため、*11のように、地熱発電を増やすのは良いと思う。さらに、現在は電力自由化時代で、九電が北海道や東北などに発電所を設置して電力を販売してもよくなったため、大分県・鹿児島県だけでなく、多くの場所で地熱発電すればよいだろう。

  
   日本近海のプレートと火山・地震の分布      2017.6.11    2017.6.11
                           佐賀新聞      日経新聞

(図の説明:日本は火山が多いので地熱発電の適地も多い。しかし、原子力発電は右から2番目の表のように危険性がある上、一度事故を起こすと一番右の図のように汚染範囲が広い。このセシウムボールは粉状の白い細かな粒子で、フクイチ事故の後、しばらく埼玉県の私の自宅のサイクロン型掃除機にたくさん入り、これを取り除いて線量を下げるためには、床だけではなく、壁・カーテン・備品・本の一冊一冊まで大掃除しなければならず被害甚大だったのだが、補償されていない。ちなみに、私は食べ物にも非常に注意した結果、現在のところは健康です)

*11:http://www.saga-s.co.jp/news/national/10201/438597 (佐賀新聞 2017年6月17日) 地熱発電強化へ 九電、大分で調査、来月から九重町
 九州電力は16日、大分県九重町の涌蓋山東側のエリアで、地熱発電所新設に向けた調査を7月下旬から始めると発表した。5年後をめどに事業化できるかどうか判断する。温室効果ガスを出さない資源として九電は地熱発電事業を強化する構えで、大分県内でのほか2カ所を含め、九州と北海道の計6カ所で発電所設置を視野に調査中だ。九電によると、今回調査するエリアでは、京都大や九州大の調査により1990年代から地熱の存在が推定されていた。当初は電気や磁気を測定して地熱の分布を調べるとともに、発電所を設けた場合に周辺の温泉に悪影響が及ぶかどうかも確認する。その上で掘削調査を行う方針だ。九電はグループ会社を含め、国内で大分と鹿児島両県の計6カ所で地熱発電所を運営している。

<韓国、古里原発1号機の廃炉>
PS(2017年6月18日追加):韓国は、*12のように、最も古い古里原発1号機を運転開始から40年で廃炉とし、隣接地に建設中の新古里5、6号機の建設も中止するそうだ。そして、釜山市の徐市長が建設中止に賛成を表明し、周辺で飲食店を営む男性も「運転延長は事故のリスクが高まる」「原発依存度を下げるのは世界の流れだ」等として文大統領の公約実現を望んでいる。これは、原発事故当事者の日本よりもアクションが早い。

*12:http://qbiz.jp/article/112244/1/ (西日本新聞 2017年6月18日) 韓国の原発で初、古里1号機が18日廃炉 文政権の方針に注目
 韓国で最も古い古里(コリ)原発1号機(出力58・7万キロワット、釜山市)が、運転開始から40年を迎える18日を最後に永久停止し、廃炉となる。韓国での原発廃炉は初めて。これを機に、隣接地に建設中の新古里5、6号機(蔚山市)の建設中止など、韓国政府が脱原発にかじを切るかが注目されているが、地元には不満の声も根強い。1号機は17日夕に電源が切られ、出力が低下。18日深夜に停止する。1号機は1977年6月、初めて核分裂反応に到達。2007年に30年の運転期限を迎えたが、10年の延長が認められていた。今回の廃炉で韓国の原発は24基に減る。韓国メディアによると、文在寅(ムンジェイン)大統領が19日に同原発を訪れ、今後の原発政策について就任後初めて方針を示す可能性がある。11年の東京電力福島第1原発事故や韓国内での地震発生などを受け、文氏も選挙中「新古里5、6号機建設の白紙化や運転40年での廃炉推進」などを公約していた。ただ、37年間、古里原発で働いてきた男性住民(67)は「40年間、安全に運転してきた。1号機はまだ使える」と話す。制度上はさらに10年の延長を申請できたが、政府の停止勧告があり運営会社が廃炉を決定したことに不満げだ。日本には審査を経れば60年まで延長可能な制度がある。男性は「韓国もエネルギー資源が少ない。原発の安い電気が産業の国際競争力を支えていることを忘れてはならない」と指摘した。新古里5、6号機について、別の男性(74)は「多額の費用が既に投資された。継続してほしい」と話した。韓国はこれまで原発プラントの海外輸出にも積極的で、「核のごみの処分先が決まらず、地震による事故の心配もあるが、原発新設で韓国が持つ技術力を向上させられる」と期待。近くの女性(63)も「作業員がいるから地域経済が成り立っている」と話した。一方、釜山市の徐秉洙(ソビョンス)市長は今月上旬、同5、6号機の建設中止に賛成の立場を表明した。原発周辺で飲食店を営む男性(45)は「運転延長は事故のリスクが高まる。原発を新設するほど国内の電力需要もない。原発依存度を下げるのは世界の流れだ」とし、大統領の公約実現を望んでいた。

<韓国の脱原発と日本>
PS(2017年6月22日追加): *13-1のように、韓国は文大統領が脱原発にカジを切り、LNGや再生可能エネルギーによる発電を柱とする方針を発表したが、これが現在のあるべき姿である。これに対し、日本では「電源別の構成を示さなかった」などという馬鹿な批判をし、日本の経産省はベースロード電源などという概念を作って2030年に原発20%超などという今では世界の潮流からも外れた愚かなエネルギーミックスを計画しているが、役所が、列車・自動車・自転車の利用割合など交通機関の利用ミックスを決めるのがナンセンスであるのと同様、エネルギーも結果である利用割合を決めるのはナンセンスで、政治が理念に基づいた目標を決め、その方向に舵を切れば技術は安心してついてくるものなのである。その点、日本は原発を守ることで原発への無駄な投資を続け、先頭に立って世界を変革できる位置にいたにもかかわらず、燃料代が無料で100%自給可能な再生可能エネルギーに構造転換するチャンスを失った。これは、政治家はじめそれを選んだ市民、民主主義を誤らせないためには真実の情報提供が必要だということの意味すらわかっていない日本のメディア(特にTV)のレベルの低さが原因であり、日本のメディアは「言論の自由」「表現の自由」を言い立てる以前のレベルなのだ。
 また、*13-2ように、大分県の住民が、「伊方原発沖に国内最大級の活断層帯『中央構造線断層帯』があるため地震による重大事故の危険性があると主張して伊方原発の運転差し止め訴訟を起こしているが、伊方原発は中央構造線断層帯のすぐ上にあり、ここに原発を作ったことがそもそもの誤りなのだ。そのような中、*13-3のように、2017年6月20日に大分県で震度5強の地震があり、これに関する報道は少ないが、熊本地震との連続関係も考えられ、今後の地震にも注意すべきことを思えば、伊方原発は手早く廃止するのが最も安上がりだろう。
 なお、*13-4のように、世界の再生エネルギーによる発電能力は20億1,700万キロワットに達して、電力全体の24.5%を再生可能エネルギーが供給し、地球温暖化をもたらす二酸化炭素の排出削減に貢献したそうだ。そして、日本でも太陽光発電は昨年1年間で860万キロワットが導入され、累積で4,280万キロワット(原発43基分)になったとのことである。

    
  経産省が決めた馬鹿なエネルギーミックス  2017.6.20大分地震 2017.6.22
                                 西日本新聞
*13-1:http://www.nikkei.com/article/DGXLASGM19H9U_Z10C17A6FF1000/ (日経新聞 2017/6/19) 韓国、脱原発にカジ 新設白紙、再生エネを柱に
 韓国が「脱原子力発電」にカジを切る。文在寅(ムン・ジェイン)大統領は19日、原発への依存度を減らし、液化天然ガス(LNG)や再生可能エネルギーによる発電を柱にする方針を発表した。韓国では原発が発電量の3割を占める主力電源で、「エネルギー政策の大転換」(文氏)となる。文氏は釜山市郊外の古里原発1号機の運転停止の記念式典で脱原発を宣言した。具体的な時期や電源別の構成などは示さなかったが「早期に脱原発のロードマップを作成する」と語った。新規原発の建設計画は白紙化し、設計寿命を超えた原発の稼働延長は認めない。延長運転中の月城原発1号機(南東部慶州市)は電力需給を見ながら早期閉鎖をめざす。建設中の新古里5、6号機をどうするかについては「早期に社会的合意を得る」と語った。発電量の4割を占め、環境汚染の一因となっている石炭火力にも大なたを振るう。新設を全面中止し、老朽化した10基を文氏の任期内に閉鎖する。代わりに石炭より環境負荷の少ないLNG火力発電の稼働率を高める。再生エネの比率を引き上げるため、関連産業を育成する。原子力と石炭火力という2つの主力電源への依存度を下げれば、発電コストの上昇は避けられない。電力需給が逼迫する恐れもある。産業界には懸念が強いが、文氏は「産業用電力料金を見直し、産業分野の過剰消費を防ぐ。産業競争力に影響しないよう中長期的に進め、中小企業は支援する」と語った。韓国で廃炉になるのは古里1号機が初めてで、解体技術の獲得も課題だ。文氏は研究所を設立して廃炉を支援し、廃炉解体を事業化する考えも示した。

*13-2:http://www.oita-press.co.jp/1010000000/2017/06/19/JD0055862157 (大分合同新聞 2017年6月19日)運転差し止め 原告は378人 「県民 危機感の表れ」
 県民が四国電力伊方原発(愛媛県伊方町)の運転差し止めを求めた大分地裁の訴訟は、5月の2次提訴で原告が114人増え、計378人になった。住民側弁護団によると、住民が主体となって同地裁に起こした裁判では、1977年に始まった「8号地計画取り消し訴訟」(488人)に次ぐ多さ。原告らは「大分県民の危機感の表れだ」と強調する。「大きな前進だ」。5月11日の2次提訴後に大分市内で開かれた集会。住民側弁護団の共同代表を務める岡村正淳弁護士(72)は、大規模な原告団になった意義をこう説明した。「いいかげんな判断を許さないぞという県民、法廷の熱気が、裁判官に勇気を与える」。岡村弁護士によると、同地裁で原告が最も多かった裁判は、ストライキに伴う懲戒処分を不服として教職員1014人が84年に起こした処分取り消し訴訟。教職員組合が中心となった。住民運動による訴訟としては、同市佐賀関で計画された「大分新産都8号地」の埋め立てを巡る裁判。77年1月に332人、同6月に156人の背後地住民らが提訴し、県に計画の取り消しを求めた。臼杵市でセメント工場建設に反対する風成(かざなし)地区の漁民が立ち上がり、全国初の公害予防裁判として注目された「風成訴訟」(70年に提訴)の原告は56人だった。8号地の訴訟は住民側が敗訴したものの、県は最終的に計画を断念。風成訴訟は住民側が勝訴し、工場進出を阻止した。いずれも住民の声の高まりが行政、司法を動かした形だ。伊方原発訴訟の2次提訴に加わった大分市の主婦阿南祐子さん(59)は「3・11で原発の安全神話が崩壊し、危機感を抱いた。次世代の子どもたちのことを思うと、黙っておけなかった。裁判所は良心を持った判決を出してほしい」と話す。伊方原発沖には国内最大級の活断層帯「中央構造線断層帯」がある。住民側は地震による重大事故の危険性などを主張。四国電側は「安全性を十分確保している」と全面的に争っている。同地裁では運転差し止めの仮処分申請に対する審理も続いている。

*13-3:https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170620-00000132-mai-soci (毎日新聞 2017/6/20) <地震>大分・佐伯市で震度5強 津波の心配なし
20日午後11時27分ごろ、大分県沖の豊後水道を震源とする地震があり、同県佐伯市で震度5強を観測した。気象庁によると、震源の深さは約40キロで、地震の規模を示すマグニチュード(M)は5.0と推定される。この地震による津波の心配はないという。佐伯市の地元消防や警察署によると、けが人などの人的被害は確認されていない。市防災危機管理課によると「激しい横揺れが5秒続いた」という。21日午前1時現在、被害報告は寄せられていない。市内のコンビニエンスストアでは化粧品などの軽い商品が棚から落ちた程度だった。また、地割れが多数見つかっている同県豊後大野市朝地町綿田地区では、地震で亀裂が広がるなどの変化は出ていない。九州電力などによると、玄海原発(佐賀県)、川内原発(鹿児島県)、伊方原発(愛媛県)で地震による異常はみられないという。
主な震度は次の通り。
震度4=大分県津久見市、豊後大野市、竹田市、熊本県高森町、宮崎県延岡市
震度3=大分市、大分県臼杵市、由布市、熊本県産山村、阿蘇市、南阿蘇村、山都町、宮崎県日向市、西都市、高鍋町、都農町、高千穂町、愛媛県伊方町、愛南町、高知県宿毛市

*13-4:http://qbiz.jp/article/112601/1/ (西日本新聞 2017年6月22日) 世界の再生エネルギー拡大 電力供給の4分の1担う
 2016年末時点で、大型水力発電を含む世界の再生可能エネルギーの発電能力が20億1700万キロワットに達し、初めて20億キロワットの大台を超えたとの調査結果を、エネルギーの専門家らでつくる「21世紀の再生可能エネルギーネットワーク」(REN21、本部フランス)が発表した。
●発電能力 初の20億キロワット超
 世界全体の電力の24・5%を再生可能エネルギーが供給したと推定され、地球温暖化をもたらす二酸化炭素の排出削減に貢献した。日本の市場規模の伸びは15年比で20%鈍化した。それでも太陽光発電は昨年1年間で860万キロワットが導入され、累積で4280万キロワットとなりドイツを抜き世界2位になった。昨年1年間に建設された世界の再生可能エネルギーの発電設備容量は1億6100万キロワットで、前年比9%の伸び。増加分の内訳は太陽光発電が47%、風力が34%だった。風力、太陽光ともに中国の増加量が最大で、総容量でも2位以下を大きく引き離している。世界全体で見ると、年間増加量は15年よりも多かったが、総投資額は23%少ない2416億ドルで、開発コストの低下を印象づけた。REN21の担当者は「世界の再生可能エネルギー開発のトップを走る中国は今年1月、開発中だった石炭火力発電所100基超の閉鎖を決めた。温暖化防止のため、このような変革を各国が進める必要がある」としている。

<プレートの沈み込みと地震・火山帯・断層帯>
PS(2017年6月25日追加):*14-1の大分県で震度5強を観測した6月20日夜の地震について、気象庁は「熊本地震との直接的関連はない」という見方を示したそうだが、“直接的関連”とはどういう関連までを言い、それなら今回の大分地震の原因が何かの説明ができていない。そして、気象庁は、プレートの沈み込みが早くなったことにより歪が大きくなり、限界を超えた場所で歪の修正を行うべく地震が起こったり断層ができたりすることについては直接的関連の範囲に入れていないようだが、プレートの沈み込みと火山噴火・地震・断層が無関係であることを証明できない限り、「関連なし」とは言えない筈だ。そして、日本列島の地図を見れば、プレートの沈み込みと火山帯・地震発生・断層帯の間に大きな関係があることは、一目瞭然なのである。なお、6月25日には、*14-2のように、糸魚川・静岡構造線(フォッサマグナ)上の長野県南部を震源とするマグニチュード5.6の地震もあった。



(図の説明:中央構造線、糸魚川・静岡構造線付近で地震が多く、火山帯は太平洋プレート・フィリピン海プレートが沈み込む少し内側にある。そして、中央構造線付近は絶えず動いて木々が育たないせいか、宇宙からも見える。この中央構造線が作った川や平野に沿って神武東征は速やかに行われたらしく、機関神社が中央構造線上にあるのは尤もであり、新しい発見だ)

*14-1:https://mainichi.jp/articles/20170621/k00/00e/040/239000c (毎日新聞 2017年6月21日) 気象庁:大分・震度5強「熊本地震と関連ない」
 大分県佐伯市で20日夜に震度5強を観測した地震について、気象庁は21日、「熊本地震との直接的な関連はないとみられる」との見方を示した。同庁によると、今回の地震は、陸側のプレート(岩板)に潜り込むフィリピン海プレートの内部で、地盤が北西-南東方向に引っ張られて発生したとみられる。同日に記者会見した尾崎友亮・地震情報企画官は「熊本地震は活断層の比較的浅いところで起きており、地震のタイプが異なる」と説明した。同庁は、揺れの強かった地域では今後約1週間、最大で震度5強程度の地震に注意が必要で、土砂災害などにも警戒するよう呼びかけている。また、大分県などによると、一夜明けた後の調査でも、けが人や建物被害などは確認されていない。同県内のJRの在来線や路線バスは朝から平常通り運行している。東九州道や大分道も通行止め区間はない。

*14-2:http://www.yomiuri.co.jp/national/20170625-OYT1T50010.html (読売新聞 2017年6月25日) 長野県南部で震度5強、震度4も2回…2人けが
 25日午前7時2分頃、長野県南部を震源とする地震があり、同県王滝村と木曽町で震度5強を観測した。震源の深さは7キロ、地震の規模を示すマグニチュードは5・6と推定される。揺れの強かった地域では、落石や崖崩れの危険性があり、気象庁は「今後1週間程度、地震に注意してほしい」と呼びかけている。同庁によると、最初の地震の後、25日午後7時までに観測された震度1以上の地震は25回。午前9時24分頃と午後3時17分頃には、木曽町などで震度4を観測した。2014年9月に噴火した御嶽山との関連について、気象庁の松森敏幸・地震津波監視課長は25日の記者会見で、「関連性はわからない」と述べた。御嶽山の火山活動に異常は確認されていないという。木曽地域では1984年9月に、死者・行方不明者29人を出した長野県西部地震が起きているが、同庁は今回の地震との関連は低いとみている。長野県などによると、同県木曽町の女性(60)が自宅で倒れてきたタンスに脚を挟まれて軽いけがをしたほか、同県王滝村の80歳代女性が、落下物が頭にあたって軽傷。3町村の22棟で屋根瓦が落下するなどし、王滝村では90戸が最大4時間停電した。王滝村では直径約1・5メートルの石2個が村道に落下。木曽町のホテルでは、町中心部につながる町道に落石があり、宿泊客約60人が一時、通行できなくなった。岐阜県高山市でも県道が一時、落石のため通行規制された。JR東海によると、この地震で、東海道新幹線が新横浜―掛川間で緊急停止。約10分後に運転を再開した。中央線、高山線、飯田線も運転を見合わせ、在来線25本が最大1時間47分遅れた。
各地の震度は次の通り。
▽震度4 長野県上松町、大桑村、石川県輪島市、岐阜県高山市、下呂市、中津川市
▽震度3 長野県松本市、諏訪市、石川県七尾市、岐阜県飛騨市、岐阜市、富山県射水市、
     浜松市天竜区、名古屋市北区、滋賀県彦根市など

| 原発::2015.11~ | 09:55 AM | comments (x) | trackback (x) |
2017.6.8 壊される平和主義、壊されそうな主権在民(国民主権=民主主義)、壊された基本的人権の尊重 (2017年6月10、11、14、15、19日に追加あり)
(1)壊される平和主義
 自民党が、*1-1のように、憲法9条1項・2項を残して自衛隊の存在を新たに憲法に明記する方針で改憲の原案づくりに向けた作業をスタートさせたそうだが、私も、憲法・安保基本法・自衛隊法等の個別法と合わせて法体系を整理し、自衛隊の存在から安全保障の全体像にまで及ぶ総合的な議論をすることが必要だと考える。その理由は、国民が知らないうちに、自ら平和主義を壊して危険な社会を作るという事態を招かないためである。

 しかし、我が国では、現在のように自衛隊への文民統制が定められていても、自衛隊出身の政治家が防衛大臣を務めることもあり、これはいろいろな意味で文民統制のうちに入らないと思われるため、運用にも気を付けるべきだ。

 また、*1-2に、「①憲法の理想と現実の間には隔たりがあるが、現実を理想へと近づけることこそが正義の姿である」「②だから九条の平和主義を高く掲げよ」と述べ、「③被爆国日本の役割、不戦の国の誇り、自衛隊らしい人助け、非戦は国家戦略である」「④戦後七十年余の長きにわたって戦争をせず今日に至ることのできたのは、それが国民多数の願いであり、願いの象徴的文言が九条である」と書かれているが、私は、①は全くそのとおりで、現実を理想に近づける努力をするのが当たり前であるにもかかわらず、現在は「理想と現実は異なる」として理想を諦め、現実に妥協することが正義のようになっているのが問題だと考える。さらに、②③のように、非戦はまさに国家戦略であり、④のように70年以上に渡って戦争をせずに今日に至ったことが、破壊や武器等への後ろ向きの支出がなく、我が国が富を蓄積できた大きな理由だと考える。

 そのため、日本国憲法・安保基本法・自衛隊法等の個別法を総合して、自衛隊の存在から安全保障の全体像に及ぶ中身のある総合的な議論をすることが必要だ。

(2)壊されそうな民主主義(主権在民=国民主権)
1)有権者に投票根拠となる事項を開示するよう公職選挙法を改正すべきこと
 *2-1に、「①国政選挙と首長選では、法定はがきやビラ以外にマニフェストの冊子が配布可能になったが、地方議員選挙ではマニフェストを配れない」「②新たな配布物が増えると資金力による候補者間の格差が生じるのが慎重論の根拠」「③民進党は2015年に公選法改正案を国会に提出し、自民党は2019年の統一地方選には間に合わせるが、この都議選での解禁は難しいとした」と書かれている。しかし、有権者に候補者の公約や人となりを正確に知らせることは、誰に投票するかを決める上で、最も重要なことなのである。

 しかし、①については、ビラは集会に集まった人にだけ配れるのであって、どこででも配ってよいわけではないため、集会で大人数を集めたり、組織的にボランティアを行う団体(≒政策によって利益誘導される団体)に支援されている候補の方が有利である。また、②は、資金力とビラやマニフェストの配布場所は関係なく、ビラに公約を書けば追加費用はかからないため、屁理屈にすぎない。そのため、③のように、民進党が公選法改正案を国会に提出しても、自民党はなるべく変えたくないのだと思われる。

2)高齢者を1人の有権者と考えないとする暴論の出現
 *2-2に、1964年生まれ(ゆとり教育世代)の京都大博士(経済学)で、公共経済学・人口経済学専門と標榜する岡本岡山大教授が、①経済学的に育児支援と年金削減が望ましい ②全体利益ある政策も現選挙制度では否決される(これがポピュリズムと呼ばれる) ③そのため、余命投票方式が効果が大きいが導入への壁が高い として、根拠薄弱で自信過剰な暴論を書き連ねておられる。

 私が、*2-2を、根拠薄弱で自信過剰だと書く理由は、①で「育児支援と年金削減が望ましい」としているのが、社会保障間の予算のやり取りしか考えられない厚労省の算術を基にした政策に乗っているにすぎず、公共経済学・人口経済学を専門とする京都大卒経済学博士の大学教授が調査・分析をして得た結果とはとても思えないからである。さらに、②のように、全体利益を口実にして個人の権利をないがしろにする政策が現選挙制度で否決されるのをポピュリズムと評しているのは、稚拙な論理をふりかざしての独裁であり、民主主義の否定にすぎない。

 また、①には「経済学的に」とも書かれているが、*2-4のように、これからの経済成長の源泉は人口で多数を占める高齢者の需要に応える財・サービスの開発と生産で、*2-2は経済学的にはマイナスであり、日本の経済学者はこの程度かと思わざるを得ないのである。

 そして、その結果、③のように、余命投票方式の方が効果は大きいが導入への壁が高いため、ドメイン投票方式や世代別選挙区制度を組み合わせるのがよいとして、*2-3の日本国憲法第15条「公務員の選挙については、成年者による普通選挙を保障する」という条文とその内容の価値を無視している。つまり、日本では、日本国憲法も年金・医療・介護の重要性も理解しておらず、単純な算術しかできない人が経済学の専門家として公共経済学・人口経済学専攻と称しているのが、最も大きな問題なのである。

3)*2-2の文章の稚拙さについて、具体的に述べる


 2016.9.20  家計収入と消費支出の推移    出生数と      年齢別潜在的
  日経新聞   総務省家計調査報告   合計特殊出生率の推移  労働力率と就業率

(図の説明:政府は物価上昇を目的として異次元の金融緩和を続け、円安にもなったが、一番左のグラフのように物価はあまり上昇しなかった。その理由は、物価上昇・利子率低下・消費税増税・社会保障の負担増・給付減で、65歳以上の人が人口に占める割合が27.3%になっている我が国の高齢者の可処分所得を減少させたからである。また、2014年4月から消費税が8%に上げられたため、左から2番目のグラフのように、2014年5月以降の家計収入・消費支出はマイナスとなり、消費税増税や社会保障の負担増・給付減は、福利を低下させ経済にも悪影響を与えている。さらに、人口における高齢者の割合が増加した理由は、右から2番目のグラフのように、第二次世界大戦後の第一次ベビーブームの後、国の家族計画によって合計特殊出生率がゆるやかに低下し始め、ベビーブーム世代が出産期を迎えた1965~75年の第二次ベビーブーム期に出生数は増加したものの、合計特殊出生率は一貫して下がっているからだ。合計特殊出生率が一貫して下がった理由は、戦後教育を受けた女性の社会進出が増えても、厚労省が育児に対する社会的支援を行わず、多くの女性が結婚や出産で正規の仕事を辞めた後にはパートしか仕事がない状態が続いたからで、それにより女性は結婚や出産を先延ばししたり、諦めたりし、その状況が、一番右のグラフのように、今でも女性は労働力率が低く、M字カーブがあることに現れている)

   
年金に関する論戦    2016.11.2東京新聞     2016.1.28    2016.10.21 
                           朝日新聞     佐賀新聞

(図の説明:2007年度の年金制度見直し時に、国民がもらえる年金額の確定(=政府債務の確定)のために、年金特別便や年金定期便を提案したのは私なのでよく知っているのだが、その時挙げられた①年金制度の不合理 ②不正免除など年金保険料回収の杜撰 ③年金積立金の運用における杜撰 ④管理の杜撰 等々の問題は、いまだに実質的には改善されていない。それにもかかわらず、積立金が足りなくなると少子高齢化を理由として給付減・負担増を言い出すのはやめるべきだ。また、年金定期便で確認された金額から減額するのは契約違反であるにもかかわらず、左から2番目の図のように、賃金か物価のどちらかが下がれば、その低い方に合わせて年金支給額を下げる変更は、(子どもの世話にならずに)年金生活をしている高齢者の生活設計を破壊する。さらに、年金受取額が多い厚生年金には正規労働者の会社員と公務員しか入れず、非正規労働者や無職者が入る国民年金は自営業者向けに設計されたもので定年を想定していないため、負担額が大きく給付額は小さい。その上、年金支給は保険料を支払った人すべてに行われるのではなく25年以上支払った人に対してのみで、2017年8月1日からは10年以上であれば支給されることになったものの、10年以上支払わなければもらえないというのもおかしい)

 *2-2の文章は、学位論文だとしても落第だ。何故なら、「①巨額の政府債務を抱えて財政再建が急務であり、プライマリーバランスの黒字化を当面の目標とするが、年金、医療などの社会保障給付が拡大する半面、若年の意見が政治に反映されにくい」として、 “当面の”プライマリーバランス黒字化を目標とし、これまで長期間かけてできた政府債務の原因究明をせず、若者に寄り添うふりをしながら社会保障給付を削減することを目的とする文章であり、真実に基づいて問題を解決しようという姿勢が全く見られないからである。

 真実は、これまでの政府債務の増大は、景気対策と称して支出した膨大な無駄遣いによるものだ。また、年金・医療・介護などの社会保障は契約により保険料を徴収して給付しているものであるため、給付時に足りなくなった金額は厚労省の杜撰な管理・運用により積立金が足りなくなったことが原因で、そうなった真の原因を追究して改善すべきなのである。

 また、*2-2の「②分析の結果、育児支援の促進政策と年金給付の削減政策はともに経済学的に望ましい政策であることが示された」と書かれているのは、突然、結論だけが出てきて根拠が書かれておらず、実際には、日本だけでなく世界で人口に占める割合が増える高齢者の年金・医療・介護給付を減らすことが経済学的に望ましいことなどあり得ない。

 その後、「③“無限先”の将来世代の効用までを考慮した上で、経済厚生全体のパイが拡大するため、世代間での適切な資源配分によりすべての世代が改革前と同じか、改革前よりも良い状態に移行できる」として、突然、時間を“無限先”にして出生率上昇によるパイの拡大を効用として挙げている。こうすれば“無限先”には人口が増加してパイが拡大するという馬鹿なモデルを想定しているが、このように個人を犠牲にすることを何とも思わず、老後が保障されない国で、支出ばかりが多い子育てをするよりも、正社員として働き続けて貯蓄しておかなければ自らの生活が危うくなるため、考えのある人ほど出生率は低くなるだろう。

 さらに、「④少子高齢化・人口減少が急速に進展する中、少子化対策を拡充する必要性が認識されているが、日本の家族政策に対する公的支出は国際的にみて低水準」というのは、1970年代後半から長期的に起こってきたことで、厚労省がそれこそ長期的視野で対応してこなかったまさに失政の結果である。そのため、何故、そのような怠惰なことを続けてきたのかを徹底して原因究明し、改善しなければ解決しないのだ。

 にもかかわらず、「⑤人口比率の高い高齢者の政治への影響力増大は、世代間不公平につながり、若者の政治的無関心を引き起こしている可能性があるため、シルバー民主主義に弊害がある」というように、高齢者に一票の選挙権があるのが問題だという違憲の結論を導き出している。このように変に若者を甘やかし、若者のためにならない議論のシャワーを浴びせられて育った若者が、成長すれば正義感にあふれた社会に役立つ人材になるということはあり得ないため、モチベーションが高くてやる気にあふれ、高齢者に親切な外国人労働者を導入した方がずっとよいというのが、今後の日本が辿る道になる。

 なお、このように、厚労省の重大ミスを隠して官にはミスがないと強弁し、屁理屈を付けて国民を分断しながら国民にしわ寄せするという発想は、*2-5のように、憲法に天皇を元首として位置付けようとする昔帰りの発想をする人たちが、(特に自民党)政治家の中に多いことにも起因している。何故なら、官は選挙で選ばれるのではなく天皇の官吏であって判断ミスなど犯すわけがなく、官が犯したミスは国民か政治家が悪いため、問題とされた時点でたまたま大臣をしている政治家を引責辞任させ、国民の溜飲を下げればよいという発想になるからだ。

 もちろん、官の走り使いとして形だけの民主主義を演じている政治家は、本当の意味での国民代表ではないが、官に都合のよい政治家が官によって選挙の便宜を図られることは多く、回を重ねて当選した人が大臣や首相になるのである。また、日経新聞はじめメディアも官の太鼓持ちが多く、「言論の自由」「表現の自由」を標榜している割には真実で中身のある言論や表現は少ないため民主主義を下支えするには堪えず、国民はそれも見抜いて変えなくてはならない。

4)成長戦略が成果を出せない理由
 政府の成長戦略がなぜ成果を出せないのかについて、*2-4を土台にして説明すると、政府(特に官である経産省)は、成長戦略として二番煎じのAI・ビッグデータ・ロボットを活用して課題解決する社会の実現ばかりを掲げているが、そこには機械に対する狭い興味しか反映されておらず、国民の福利を増そうという発想がないからである。それは、最終需要者である国民の所得が減れば全体の需要も減るという経済学の基本原則を無視している。

 また、「日本経済の最大の課題は、成長力の強化と財政健全化の両立だ」と書かれているが、何故、経済成長(正しくは経済拡大)しなければならないのかについての考察がなく、国の経済拡大だけを目的としているようであり、国民の福利を無視している。さらに、ベビーブームがあったからには適正人口まで人口が減るのは当然で、その局面では経済拡大よりも個人の豊かさを増す財やサービスの提供の方が重要だという発想もない。その結果、「財政健全化には、消費税増税と社会保障の削減しかない」という算術(足し算と引き算のみ)に基づく愚かな政策提言しかできていないのだ。

 さらに、日銀による異次元の金融緩和による物価上昇は、消費税増税とあいまって人口に占める割合の多い年金受給者の実質所得を減らした。その上、社会保障の負担増・給付減がめじろおしであるため、日本経済の潜在成長率が2014年時点の0.8%台から16年後半には0.6%台まで下がったのは当たり前で、今後も高齢者の生活を締め付ければ締め付けるほど、人口の多くを占める高齢者に対応した新しい技術や製品開発は進まず、現在から将来にわたって世界で需要される財・サービスの開発を邪魔することになるのである。

 なお、自動運転車やEVも、日本発のアイデアでありながら抵抗勢力のため世界に出遅れて税収増の機会を失ったが、このようなことになる原因分析を行わずに、古い技術に大きな予算をつけ、官が作った法律を通しさえすれば実績をあげたなどと考えている政治家は、官の走り使いとして形だけの民主主義を演じている信念なき政治家にすぎない。

(3)壊された基本的人権の尊重
 「テロ等準備罪」と名を変え、表題と内容の異なる「共謀罪」法案が、自民党・公明党・維新の会の賛成多数で衆議院を通過し、現在は参議院で審議中だ。これに対しては、*3-1のように、国連のプライバシー権に関する特別報告者ジョセフ・ケナタッチ氏が懸念を表明し、それに対する菅官房長官の抗議に対して、「中身のないただの怒り」「内容は本質的な反論になっておらず、プライバシーや他の欠陥など、私が多々挙げた懸念に一つも言及がなかった」と批判するとともに、プライバシーが侵害される恐れに配慮した措置を整える必要性をあらためて強調している。そして、私も、全くそのとおりだと考える。

 また、*3-2のように、衆院憲法審査会は2017年5月25日、「新しい人権」などをテーマに審議を行い、「共謀罪」の趣旨を含む組織犯罪処罰法改正案に対し、野党の委員から「(新しい人権の一つとされる)プライバシー権の侵害で、違憲立法」などの批判が相次いだそうだ。しかし、日本国憲法は、第21条で「集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない」と定めており、プライバシー権は、1947年(昭和22年)5月3日に施行された日本国憲法に規定されている権利であって、最近になって初めて認められた新しい権利ではない。

 そして、共謀罪の捜査で最も有力なツールとなる盗聴・盗撮については、*3-3のように、米国家安全保障局(NSA)による大規模な個人情報収集を告発し、現在はロシアに亡命中の米中央情報局のスノーデン元職員が、モスクワで共同通信と会見し、①NSAが情報監視システムを日本側に供与した ②日本政府は個人のメールや通話等の大量監視を行える状態にある ③「共謀罪」の趣旨を盛り込んだ組織犯罪処罰法改正案は個人情報の大規模収集を公認することになる ④これまで日本に存在していなかった監視文化が日常のものになる として、共謀罪法案に懸念を表明した国連特別報告者ケナタッチ氏に「同意する」と述べたそうだ。

 その上、*3-4のように、国際組織犯罪防止条約(TOC条約)締結のため政府が必要と言う共謀罪法案について、国連の「立法ガイド」を執筆した刑事司法学者のニコス・パッサス氏は、「1)条約はテロ防止を目的としたものではない」「2)英国は長年TOC条約のメンバーだが、条約を締結するだけではテロ防止にはならない」「3)新たな法案等の導入を正当化するために条約を利用してはならない」「4)非民主的な国では政府への抗議活動を犯罪とみなす場合があるので、イデオロギーに由来する犯罪は除外された」「5)現行法で条約締結の条件を満たさなければ、既存法の改正か新法導入で対応しなければならない」「6)条約はプライバシーの侵害に繋がる捜査手法の導入を求めていない」と述べ、条約を新たな施策導入の口実にしないよう注意喚起したそうだ。

 私は、ロンドンでテロが多発したとしても、英国と日本は歴史が異なる上、日本は自衛戦以外の戦争をしないため、他国のテロが日本での立法理由にはならないと考える。

 佐賀新聞は、2017年6月7日の記事で、*3-5のように、「民主主義社会において発言や行動の自由がいかに大切かをあらためて確認する必要がある」と述べている。確かに、「共謀罪」「特定秘密保護法」などは、「何を行えば罰になるのか」が曖昧で、憲法21条に違反しているが、これまでメディアや野党が行ってきた言いたい放題の言論も、疑惑どまりのくだらない人格攻撃が多く、民主主義を守るために体を張って行った言論や表現とはとても言えず、言論の自由や表現の自由で守られる価値のあるものだけだったわけではないため、猛省すべきだ。

 そのような中、*3-6のように、法律の専門家である日本労働弁護団が「衆議院法務委員会における共謀罪法案の採決強行に抗議する声明」を出している。また、*3-7のように、真宗大谷派《東本願寺》宗務総長の但馬氏も「テロ等組織犯罪準備罪(共謀罪)法案に反対する声明」を発表しておられ、さらに、*3-8のように、カトリック団体も戦中の弾圧に言及して「共謀罪」法案の衆院通過に反対する声明を出しておられる。つまり、普段は温厚で熟考するタイプの方々が、歴史に基づいて次々と反対表明を出しておられるのは重視すべきだ。

 最後に、*3-9のように、国際ペンクラブのジェニファー・クレメント会長も、「共謀罪」の趣旨を盛り込んだ組織犯罪処罰法改正案が国会で審議されていることを受け、「共謀罪は日本における表現の自由とプライバシーの権利を侵害する」と題する声明を発表しておられる。同法が成立すれば、日本における言論・表現の自由やプライバシーの権利は必ず脅かされる。しかし、それでも党議拘束だからと言ってすべての議員が党の決定に従うのであれば、日本には、国あって国民がない(人が主役でない)のと同様に、党あって議員がいないのであり、その「組織あって個人なし」の発想こそがわが国で最も大きな問題なのだ。

<壊される平和主義>
*1-1:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20170601&ng=DGKKZO17153520R00C17A6EA1000 (日経新聞社説 2017年6月1日)9条論議は安保基本法を含め総合的に
 安倍晋三首相が火をつけた憲法9条の改正論議が広がりを見せている。自民党が改憲の原案づくりに向けた作業をスタートさせ、日本維新の会も調整を本格化。経済団体に加え、民進党の支持団体である連合も議論をはじめる。憲法施行70年、9条問題にわれわれ自身も真っ正面から向き合うときがいよいよ来たようだ。首相がこれまでに明らかにしている方向は、9条の1項と2項は残しつつ、新たに自衛隊の存在を憲法に明記するというものだ。自民党としての改憲案を年内にまとめ、2020年の新憲法の施行をめざすとしている。これは、自民党が野党当時に決めた12年の改正案を捨てて、公明党の主張である現行憲法をそのままにして必要なものを加える「加憲」の考え方に沿ったものだ。民進党の一部にも9条3項などのかたちで自衛隊の存在を明記する意見があるのもにらんでいる。自民党内では首相の唐突な見解表明を批判する声があるように、従来の議論と異なったものであるのは間違いない。そうだとしても、本社調査で51%の有権者が自衛隊の明記に賛成している世論の動向を踏まえた場合、しっかりした議論を通じて方向性を見いだしていくことが望まれる。必要なのは単に自衛隊を明記するのが是か非かといった形式的な憲法論ではなく、安全保障のあり方を含めた総合的な議論だ。そのとき参考になるのが12年当時、自民党が集団的自衛権の行使を容認する際に定めようとしていた国家安全保障基本法案だ。もし自衛隊を憲法上で明文化するのなら、自衛隊に対する文民統制、安全保障基本計画の策定といった同基本法案に盛り込んだ規定なども改めて検討すべきだ。憲法、安保基本法そして自衛隊法などの個別法と法体系を整理し、自衛隊の存在から安全保障の全体像にまで及ぶ議論が求められる。その前提として21世紀の国家のあり方を含めた中長期的なビジョンも必要になってくるだろう。9条改正消極論のひとつとして、目ぼしい成果があらわれていない成長戦略や規制改革などのテーマに政権の力を集中すべきだといった声があるのは事実だ。首相の宿願である改憲を実現するためにも、国民の多くが望む経済再生につながる政策を断行し、具体的な果実を示していく努力もまた必要になる。

*1-2:http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2017051502000118.html (東京新聞社説 2017年5月15日) 日本の平和主義 9条の精神を壊すな
 憲法記念日に、安倍首相が自民党総裁としてとことわりつつも、九条改正を唱えたのを聞き、皆さんはどう思われただろう。自衛隊の存在を書き込むだけなら認めていいと思われたか、それとも不安を覚えられたか。私たち論説室は今年の元日前後に「日本の平和主義」と題した連載型の社説を掲げた。安保法が成立し次にはどんな形であれ、改憲の動きが出てくる。そうなれば焦点は九条、日本の平和主義が危うくなると考えたからだ。連載の初回(十二月三十日)は、ずばり「憲法改正が来年の大テーマとなるでしょう」と書き出して、憲法の理想と現実の間には隔たりがあるが、現実を理想へと近づけることこそが正義の姿であると述べた。だから九条の平和主義を高く掲げよ、と。私たちのその姿勢は今ももちろん変わらない。連載は被爆国日本の役割、不戦の国の誇り、自衛隊らしい「人助け」、「非戦」は国家戦略であると続けた。訴えたかったのは、戦後七十年余の長きにわたり戦争をせず今日に至ることのできたのは、それが国民多数の願いであり、願いの象徴的文言が九条であるということだ。政治に知恵を絞らせもした。自衛隊はたしかに憲法の字句外にある。戦力不保持をいう憲法下で発足し、国連PKО(平和維持活動)の名の下に今は外国へも行く。しかしそれでも九条を侵しはしない。守るべきは専守防衛。他国の侵害はしない。首相は九条の一、二項、すなわち戦争放棄と戦力不保持を維持したうえで、自衛隊を認める明文を加えたいという。巧みな言い方である。しかし、そもそも歴代の政府も多くの国民もその存在を認めてきた自衛隊を、急いで書き込む理由は何なのか。しかも今の自衛隊は安保法により違憲濃厚な集団的自衛権を付与されている。展開次第では九条が歪(ゆが)められ、日本の平和主義は変質してしまうかもしれない。父や母、祖父や祖母、戦争体験者たちが命がけで守ってきた戦後日本の思いが霧消してしまう。キナ臭い現実をまだ見えぬ理想に近づけよう。現実の追認は未来への否認である。人類の正義は理想へ向かう行動にある。九条の精神を壊してはなるまい。

<壊される民主主義>
*2-1:http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201705/CK2017052202000114.html (東京新聞 2017年5月22日) 【政治】都議選で公約ビラ配れない 法改正、間に合わぬ見通し
 国政選挙と地方の首長選では公約が書かれた冊子やビラを配れるが、地方議員選では配れない-。東京都議選を前に、こうした公職選挙法の規制を見直すよう求める声が高まっている。だが、六月二十三日の告示が一カ月後に迫り、法改正は間に合わないとの見方が強い。国政選挙は二〇〇三年の公選法改正により、法定はがきやビラ以外にマニフェスト(政権公約)の冊子が配布可能になった。さらに〇七年の法改正で、地方首長選もA4判以下の一枚紙のローカル・マニフェストが配れるようになった。国政選挙や首長選に比べ、地方議員選は不特定多数に政策を訴える色合いが薄いのが実態。「新たな配布物が増えると、資金力による候補者間の格差が生じる」との慎重論も根強い。一方、政策本位の選挙に向け、地方議員選での解禁を求める声は強い。早稲田大マニフェスト研究所(マニ研)によると、〇六年から今年にかけて千葉、神奈川、長野など八県議会と東京都町田市、岐阜県多治見市など二十二市町議会が地方議員選での解禁を求める意見書を可決した。全国の地方議員でつくるローカル・マニフェスト推進地方議員連盟は昨年、都議選に間に合う法改正を求める決議を採択。学識者や弁護士でつくる選挙市民審議会も今年一月の中間答申に、地方版マニフェスト配布自由化を盛り込んだ。国会も放置しているわけではない。一六年の公選法改正の際、衆参の特別委員会は解禁について「速やかに検討を進める」と付帯決議。自民党は選挙制度調査会が全国地方組織にヒアリングを実施し、民進党は民主党時代の一五年に公選法改正案を国会に提出した。ただ、自民党関係者は「一九年の統一地方選には間に合わせるが、この都議選での解禁は難しい」と打ち明ける。都議会の定数一二七は、全国の地方議会で最多。都議選は「ビラが配布できない最も大規模な選挙」になる公算が大きい。

*2-2:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20170505&ng=DGKKZO15995160S7A500C1KE8000 (日経新聞 2017.5.5) 経済教室:シルバー民主主義を考える(下)選挙制度の大胆改革急げ 、まず「世代別選挙区」導入を 岡本章・岡山大学教授
 現在の日本では「シルバー民主主義」の弊害が指摘されることが多くなっている。巨額の政府債務を抱えて財政再建が急務であり、プライマリーバランス(基礎的財政収支)の黒字化を当面の目標とするが、その達成は遠のくばかりだ。年金、医療などの社会保障給付が拡大する半面、少数派の若年層の意見が政治に反映されにくくなっている。また少子高齢化・人口減少が急速に進展する中で、少子化対策を拡充する必要性が認識されているにもかかわらず、日本の家族政策に対する公的支出は国際的にみて低水準のままだ。さらに高齢層の政治への影響力の増大は、世代間の不公平につながり、若者の政治的無関心を引き起こしている可能性がある。政策決定にあたっては、今生きている現在世代のみならず、子どもの世代、さらには今後生まれてくる将来世代への影響も考慮する必要がある。こうした問題を分析するため、筆者は乃村能成・岡山大准教授と共同で「人口内生化世代重複シミュレーションモデル」を構築した。そして政府の育児支援の促進政策と公的年金給付の削減政策が、各世代の生涯効用(人が商品やサービスを消費することで得られる満足度)に与える影響を定量的に分析した。その結果、政策の変更の影響は世代により大きく異なることが示唆された。これら2つの政策は1970~75年以降生まれの若い世代や将来世代の効用を改善する半面、それより前に生まれた世代や高齢世代の効用を悪化させる。本研究では、無限先の将来世代を含むすべての世代の効用を総合的に考慮して、改革案が全体の経済厚生(経済学的な「効率性」を表す)に与える影響を厳密に分析した。分析の結果、育児支援の促進政策と年金給付の削減政策はともに経済学的に望ましい政策であることが示された。無限先の将来世代の効用まで考慮したうえで経済厚生全体のパイが拡大するため、世代間での適切な資源配分によりすべての世代が改革前と同じか、改革前よりも良い状態に移行できる。問題は、全体にとって望ましい改革ではあるものの高齢者が損をするため、こうした改革案は政治的に実現されにくいことにある。そこで現行の日本の選挙制度の下でこれらの政策が政治的に実現可能かどうかについて検討した。育児支援の促進政策は、若い世代や将来世代の効用を改善する半面、高齢世代では税負担が増えるだけで受益がないために効用が悪化する。シミュレーションの結果、損得は2014年時点の44歳と45歳の間で分かれる。投票にあたって、改革により効用が改善する者は賛成票を、悪化する者は反対票を投じるものとする。現行の日本の選挙制度や有権者の各年齢での現実的な投票率の下では、圧倒的な差(20対45)で育児支援の促進政策は否決される(表参照)。公的年金給付の削減政策の政治的な実現可能性についても分析したが、ほぼ同様の結果が得られた。以上のように現行の選挙制度や現実的な投票率の下では、全体にとって望ましい政策(育児支援の促進・年金給付の抑制)が否決され、シルバー民主主義の弊害が如実に表れる結果となった。その理由として日本での高い高齢者人口比率、若者の低い投票率、および改革により効用が改善する選挙権年齢以下の若い世代と将来世代が投票に参加できないことが挙げられる。こうした問題を解決するには、子どもや孫世代の利益を尊重する高齢者の良識に期待するだけでなく、制度として若い世代の声を政治に反映させる仕組みを構築する必要がある。ここでは3つの選挙制度の改革案を取り上げる。まず「ドメイン投票方式」は、米国の人口学者ポール・ドメイン氏が考案したもので、投票権を持たない未成年に投票権を与え、親が子どもの代わりに投票する。次に「世代別選挙区制度」は、井堀利宏・東大名誉教授と土居丈朗・慶大教授により提唱されたもので、有権者を年齢階層別にグループ分けし選挙区を構成する。例えば30代以下を青年区、40~50代を中年区、60代以上を老年区とする。各グループから有権者数に比例した定数の議員を選ぶため、青年区の投票率が低くても必ず若年層を代表する議員を議会に送り出せる。最後に「余命別選挙制度(余命投票方式)」は、竹内幹・一橋大准教授により提唱されたもので、余命に応じて投票権に重みをつけ、若い人の一票を高齢者の一票よりも重くする。例えば20歳の有権者の一票を64票とカウントする一方、80歳の一票を10票とカウントすることが考えられる。ただし表をみると、シルバー民主主義を克服するには、3つの代表的な選挙制度改革案の中から一つを導入するだけでは不十分で、最もドラスチックな改革である余命投票方式とさらにもう一つ別の選挙改革を同時に実施する必要があることが示唆される。3つの改革案の中で、最も効果が弱いのは世代別選挙区制度だ。日本では既に少子高齢化の水準が深刻な状況にあり、そもそも高齢者と若者の人口比率自体が大変ゆがんだものとなっているからだ。余命投票方式の効果は大きいが、年齢により一票の価値が異なる。ドメイン投票方式では未成年にも選挙権を与える。劇的な変化を伴うため、導入へのハードルは高い。政治的な実現可能性の点から当面はまず世代別選挙区制度の導入から始めるべきだろう。この制度の導入を契機として現在の危機的な状況についての理解が深まり、子どもや孫世代の利益を尊重する機運が高まることも期待される。世代別選挙区制度の導入は理念的な話にとどまらない。東京都狛江市の内山恵一氏は民間企業を定年退職した後、市民団体に所属しながら、次世代のため同制度を導入すべく地元の市議会に働きかけている。漠然としたイメージの同制度を憲法上の問題に配慮しつつ、具体的で実用的な改革案に練り上げた。この案は現行憲法の下で実現可能であり、公職選挙法の改正で済むと考えられる。改革の実現は困難を極めているが、この案の存在が広く社会に認識されて、他の自治体にも論議が波及し、早急に改革に着手することを期待している。シルバー民主主義に伴う低水準の家族政策が子育て環境を悪化させ、さらに少子高齢化・人口減少の流れに拍車をかけることもその弊害として挙げられる。こうした悪循環を断ち切るために、大胆な発想に基づいた選挙制度改革を断行すべき時期に来ている。もはや時間的猶予はない。今すぐに実施しなければ、たとえ実現できても効果は限られたものになる。現在の日本では子どもを産み、親になる可能性のある女性の数自体が急激に減少しているからだ。選挙制度の改革には大きな痛みを伴うが、長期的な視野の下で全体の経済厚生が高まる経済学的に望ましい改革であることを認識してほしい。ともかく改革を実施するのが大事で、もし改革を実施できれば得られる果実は大きい。改革により経済成長が促進されるため、たとえ損失を被る高齢者へ損失分の補償をしたとしても、まだ余りある。若者世代にまん延する閉塞感を取り除き、時間軸の長い施策が実行可能となる。そして財政破綻や急激な人口減少を回避することにより、長期的に持続可能な社会を構築し、未来への展望を切り開くことが可能となるだろう。
<ポイント>
 ○経済学的に育児支援と年金削減望ましい
 ○全体利益ある政策も現選挙制度では否決
 ○余命投票方式は効果大だが導入へ壁高い
*おかもと・あきら 64年生まれ。京都大博士(経済学)。専門は公共経済学、人口経済学

*2-3:http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S21/S21KE000.html より抜粋
第十五条 公務員を選定し、及びこれを罷免することは、国民固有の権利である。
  2  すべて公務員は、全体の奉仕者であつて、一部の奉仕者ではない。
  3  公務員の選挙については、成年者による普通選挙を保障する。
  4  すべて選挙における投票の秘密は、これを侵してはならない。選挙人は、その選択に
     関し公的にも私的にも責任を問はれない。

*2-4:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20170531&ng=DGKKZO17106690R30C17A5EA1000 (日経新聞社説 2017.5.31) 成長戦略はなぜ成果を出せないのか
 政府が今年の成長戦略(日本再興戦略)の素案をまとめた。人工知能(AI)やビッグデータ、ロボットを活用し、さまざまな社会課題を解決する「ソサエティー5.0」の実現を掲げた。その目標が悪いわけではない。問題は、安倍晋三政権が過去の成長戦略で示しながら、なお実現できずにいる難題と十分に向き合っていない点である。日本経済の最大の課題は成長力の強化と、財政健全化の両立である。日銀による異次元の金融緩和と、2度にわたる消費増税延期で時間を買っている間に、経済の実力を高めることができたか。残念ながら、日銀の推計では、日本経済の潜在成長率は2014年時点の0.8%台から16年後半に0.6%台まで下がった。この厳しい現実を政府は直視する必要がある。安倍政権は法人税の実効税率を20%台まで下げ、農業や医療などの岩盤規制改革に取り組んだ。企業統治も強化した。さらに今年の成長戦略が、IT(情報技術)を使った医療・介護の効率化策を示したのは妥当だ。高速道路での自動運転や、金融とITを融合したフィンテックの推進を打ち出したのも理解できる。しかし、こうした新政策を次々と繰り出す一方で、過去の政策目標が未達に終わった原因をしっかり分析していない。数値目標を言いっ放しで、軽々しく扱うのは民間企業ではあり得ない対応だ。たとえば、20年までに世界銀行のビジネス環境ランキングで「先進国3位以内に入る」という目標を掲げながら、昨年時点の順位は26位まで下がってしまった。ほかにも「開業率・廃業率を米英レベル(10%台)に」「外国企業による対内直接投資残高を倍増」といった目標の達成はほぼ絶望的だ。新陳代謝を促す規制改革や、信用保証制度の見直しなどが不十分だからではないか。時間に縛られない「脱時間給」という働き方を解禁する労働基準法改正案は国会で棚ざらしにされ、一般の自家用車で利用客を送迎するライドシェア(相乗り)のサービスは進まない。100ページ超に及ぶ文書をまとめて「やってる感」を国民にアピールするだけでは困る。決めたことを着実に実行する。結果を厳しく検証し、不断の改革に挑む。そんな政策のサイクルを徹底していない政府に猛省を求めたい。

*2-5:http://www.saga-s.co.jp/news/national/10201/436170 (佐賀新聞 2017年6月8日) 自民、天皇の元首明記提案、改憲論議巡り、民進反対
 衆院憲法審査会は8日午前、「天皇制」をテーマに議論した。自民党は、国家および国民統合の象徴としての地位を「元首」と定義した上で、憲法に天皇を「元首」と位置付けることも改憲論議の対象になり得るとの認識を示した。国旗や国歌、元号を憲法に明記する可能性にも触れた。民進党は、天皇の元首化は必要はないとして反対した。天皇の地位を巡り、2012年の自民党改憲草案は「天皇は日本国の元首であり、日本国および日本国民統合の象徴」と明記。「国旗を日章旗とし、国歌を君が代とする」と盛り込んでいる。

<壊される基本的人権の尊重>
*3-1:http://www.tokyo-np.co.jp/article/world/list/201705/CK2017052302000119.html (東京新聞 2017年5月23日) 【国際】「共謀罪」書簡の国連特別報告者 日本政府の抗議に反論
 安倍晋三首相宛ての公開書簡で、「共謀罪」の趣旨を含む組織犯罪処罰法改正案に懸念を表明した国連のプライバシー権に関する特別報告者ジョセフ・ケナタッチ氏は二十二日、菅義偉(すがよしひで)官房長官が同日の記者会見で抗議したと明らかにした日本政府の対応を「中身のないただの怒り」と批判し、プライバシーが侵害される恐れに配慮した措置を整える必要性をあらためて強調した。電子メールで本紙の取材に答えた。ケナタッチ氏によると、「強い抗議」は十九日午後、国連人権高等弁務官事務所を訪れた在ジュネーブ日本政府代表部の職員が申し入れ、その後、約一ページ余りの文書を受け取った。しかし、内容は本質的な反論になっておらず「プライバシーや他の欠陥など、私が多々挙げた懸念に一つも言及がなかった」と指摘した。抗議文で日本側が、国際組織犯罪防止条約の締結に法案が必要だと述べた点について、ケナタッチ氏は「プライバシーを守る適当な措置を取らないまま、法案を通過させる説明にはならない」と強く批判。法学者であるケナタッチ氏自身、日本のプライバシー権の性質や歴史について三十年にわたって研究を続けてきたとし、「日本政府はいったん立ち止まって熟考し、必要な保護措置を導入することで、世界に名だたる民主主義国家として行動する時だ」と訴えた。ケナタッチ氏は日本政府に引き続き、法案の公式な英訳文とともに説明を求めている。菅官房長官は二十二日、ケナタッチ氏の書簡に「不適切だ」と反論していた。犯罪の合意を処罰する「共謀罪」の趣旨を含む組織犯罪処罰法改正案を巡り、衆院議院運営委員会は二十二日の理事会で、衆院本会議を二十三日に開くことを佐藤勉委員長(自民党)の職権で決めた。与党は「共謀罪」法案を採決し、衆院を通過させる方針。二十四日の参院での審議入りを目指している。与党が理事会で「共謀罪」法案の採決を提案したのに対し、民進、共産両党は、与党が衆院法務委員会で法案の採決を強行したことに反発して拒否。双方が折り合わず、佐藤氏が本会議開催を決めた。「共謀罪」法案を採決するかどうかは与野党の協議に委ねた。法案を巡っては、安倍晋三首相(自民党総裁)が二十二日の党役員会で「今国会での確実な成立を目指す」と強調。高村正彦副総裁も「二十三日に間違いなく衆院通過させる」と話した。民進党の野田佳彦幹事長は記者会見で「審議は不十分だし、この間のやり方は極めて遺憾だ」と与党の国会運営を批判した。与党は法案の成立を確実にするため、来月十八日までの今国会の会期延長も検討している。  
<国連特別報告者> 国連人権理事会から任命され、特定の国やテーマ別に人権侵害の状況を調査したり、監視したりする。子どもの人身売買や、表現の自由に関する人権状況などの報告者がいる。政府や組織などから独立した専門家で、調査結果は理事会に報告する。

*3-2:http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201705/CK2017052602000135.html (東京新聞 2017年5月26日) 【政治】共謀罪は「プライバシー権侵害」 憲法審で委員から「違憲」
 衆院憲法審査会は二十五日、「新しい人権」などをテーマに審議を行った。衆院を二十三日に通過した「共謀罪」の趣旨を含む組織犯罪処罰法改正案に対し、野党の委員からは「(新しい人権の一つとされる)プライバシー権の侵害で、違憲立法」などの批判が相次いだ。民進党の山尾志桜里氏は、犯罪の共謀を処罰することは「包括的なプライバシー情報の収集なしには実現できない」と指摘。「共謀罪」法案について「プライバシー権の核心を侵しかねない」と訴えた。共産党の大平喜信氏も、「共謀罪」法案について「表現の自由をはじめ、憲法が保障する国民の権利を幾重にも侵害する」と指摘。プライバシー権に関する国連特別報告者ケナタッチ氏が法案に懸念を示したことに触れ「安倍政権は、この指摘を重く受け止めるべきだ」と求めた。また、民進党の辻元清美氏は、学校法人加計学園の獣医学部新設を巡る記録文書問題について「(新しい人権の)『知る権利』以前の問題。政府の隠ぺい体質そのもの」などとして、憲法審として調査を求めた。一方、共産党の赤嶺政賢氏は、自民党が年内にも改憲案をまとめる作業を始めたことについて「憲法審査会の議論は無視して、安倍晋三首相主導で改憲案をまとめようとしている」と批判。自民党の中谷元氏は、憲法審での議論は「首相に縛られるものではない」と強調した。

*3-3:http://www.tokyo-np.co.jp/article/world/list/201706/CK2017060202000125.html (東京新聞 2017年6月2日) 【国際】「共謀罪で監視が日常に」 元CIAのスノーデン氏が警鐘
 米国家安全保障局(NSA)による大規模な個人情報収集を告発し、ロシアに亡命中の米中央情報局(CIA)のエドワード・スノーデン元職員(33)が一日までにモスクワで共同通信と単独会見した。元職員は持ち出して暴露した文書は全て「本物」と述べ、NSAが極秘の情報監視システムを日本側に供与していたことを強調した。日本政府が個人のメールや通話などの大量監視を行える状態にあることを指摘する証言。元職員は、参院で審議中の「共謀罪」の趣旨を盛り込んだ組織犯罪処罰法改正案が、個人情報の大規模収集を公認することになると警鐘を鳴らした。元職員によると、NSAは「XKEYSCORE(エックスキースコア)」と呼ばれるメールや通話などの大規模監視システムを日本側に供与。同システムは、国内だけでなく世界中のほぼ全ての通信情報を収集できる。米ネットメディア「インターセプト」は四月、元職員の暴露文書として、日本に供与した「エックスキースコア」を使って、NSA要員が日本での訓練実施を上層部に求めた二〇一三年四月八日付の文書を公開した。元職員は共謀罪について「日本における(一般人も対象とする)大量監視の始まり。日本にこれまで存在していなかった監視文化が日常のものになる」と指摘。法案に懸念を表明した国連特別報告者に「同意する」と述べた。

*3-4:http://www.tokyo-np.co.jp/article/world/list/201706/CK2017060502000127.html (東京新聞 2017年6月5日) 【国際】「共謀罪」崩れる政府根拠 「条約はテロ防止目的でない」
 国際組織犯罪防止条約(TOC条約)締結のため、政府が必要であるとしている「共謀罪」法案をめぐり、各国が立法作業をする際の指針とする国連の「立法ガイド」を執筆した刑事司法学者のニコス・パッサス氏(58)が本紙の取材に、「条約はテロ防止を目的としたものではない」と明言した。三日にロンドン中心部で起きたテロなどを指し、「英国は長年TOC条約のメンバーだが、条約を締結するだけでは、テロの防止にはならない」と語った。さらに「新たな法案などの導入を正当化するために条約を利用してはならない」と警鐘を鳴らした。政府は東京五輪・パラリンピックに向けたテロ対策として、共謀罪の趣旨を含む組織犯罪処罰法改正案を成立させ、条約を締結しなければならないと主張。法案を参院で審議している。パッサス氏は条約を締結する国が、国内の法律や制度を整備する際の指針を示した国連の立法ガイドを執筆した。同氏はテロ対策に関して、それぞれの国に異なった事情があり、まずは刑法など国内の制度や政策を活用するものだと主張。条約はあくまで各国の捜査協力を容易にするためのものという認識を示した。また、TOC条約については「組織的犯罪集団による金銭的な利益を目的とした国際犯罪が対象」で、「テロは対象から除外されている」と指摘。「非民主的な国では、政府への抗議活動を犯罪とみなす場合がある。だからイデオロギーに由来する犯罪は除外された」と、条約の起草過程を振り返りつつ説明した。TOC条約を締結するため新法の導入が必要かとの問いには、「現行法で条約締結の条件を満たさなければ、既存法の改正か、新法の導入で対応しなければならない」と指摘。一方で「条約はプライバシーの侵害につながるような捜査手法の導入を求めていない」と述べ、条約を新たな施策導入の口実にしないよう注意喚起した。さらに、当局に過剰な権力を与え、プライバシー侵害につながる捜査ができるようにすることを懸念するのは「理解できる」と発言。捜査の主体や手法、それらを監督する仕組みを明確にするよう助言した。
<Nikos Passas> 1959年2月、ギリシャ・アテネ生まれ。アテネ大やパリ第二大で法学などを学び、欧米各地の大学で犯罪学や刑事司法を研究。現在は米ボストンにあるノースイースタン大犯罪学・刑事司法学科教授。
<国際組織犯罪防止条約(TOC条約)> 「国際的で組織的な犯罪集団」の対策に向け、2000年11月の国連総会で採択。組織による重大事件の合意を犯罪とみなし、マネーロンダリング(資金洗浄)などによる犯罪収益の没収や、犯人引き渡しなどでも相互協力するよう定める。「金銭的な利益その他の物質的利益」を目的とする集団を対象とし、テロについては全く触れられていない。今年4月時点で187の国・地域が締結しているが、日本は「条約を実施するための国内法が未成立」との理由で締結していない。

*3-5:http://www.saga-s.co.jp/column/ronsetsu/435789 (佐賀新聞 2017年6月7日) 表現の自由、意義を再確認したい
 民主主義の社会において発言や行動の自由がいかに大切か。今、その意義をあらためて確認する必要があろう。犯罪の計画を罰する「共謀罪」の構成要件を取り込んだ組織犯罪処罰法改正案や2014年に施行された特定秘密保護法、権力の強権的な姿勢など一般市民や報道機関を萎縮させかねない抑圧の動きへの危惧が強まるからだ。現状の問題点を指摘する声や多数意見に対する異論は議論を喚起し、その声を取り込んで政治や社会は進展してきた。例えば、人権や生活を保障するさまざまな制度はこうして築かれたものだ。「集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する」という憲法21条は、国民が政治の意思決定に参加する権利を定めた規定だ。「表現の自由」の重要性を再確認し、抑圧の動きに対抗したい。まず「共謀罪」法案から指摘しよう。その問題点の一つは「何を行えば罰になるのか」の線引きがあいまいなことだ。不明確な線引きのため「もしかしたら罰せられるかもしれない」と恐れた市民は萎縮して発言や行動を控える可能性がある。先日の衆院本会議で民進党の山尾志桜里衆院議員はこの点を指摘。「線引きの明確性や安定性を欠いた刑罰法規は自由の範囲を不明確、不安定にする」と強調し、「迷ったら、やめておこうという自発的な萎縮をもたらし、いったん萎縮した自由を取り戻すのは並大抵ではない」と主張した。計画段階の動きを把握するため捜査当局による監視が拡大する懸念も拭えない。国際ペンクラブのジェニファー・クレメント会長も声明を発表し、「共謀罪は日本の表現の自由とプライバシーの権利を侵害する」と批判している。もっと直接的な抑圧の動きもある。沖縄県で米軍基地移設への抗議活動を続ける反対派リーダーの山城博治さんは、米軍訓練場近くで有刺鉄線を切った器物損害の疑いなど逮捕、起訴され、微罪で約5カ月間も拘束された。国際人権団体アムネスティ・インターナショナルは「抗議活動への参加をためらう人が出始め、市民に平和的な表現や集会の権利の行使を思いとどまらせる悪影響が出ている」と警告したが、これも萎縮の問題だ。危惧が強まる状況の中で重要なのは報道機関の役割だろう。だが現状はどうか。国連人権高等弁務官事務所は5月末、言論と表現の自由に関する特別報告者デービッド・ケイ米大学教授の対日調査報告書を公表。特定秘密保護法で日本のメディアが萎縮している可能性や、政府が放送局を規制できる放送法によってメディアの「自由と独立」に不当な制約が課せられる懸念を指摘している。報告書は国連としての見解ではないが、近く国連人権理事会で説明される。日本政府は「伝聞情報に基づき不正確で不十分な内容だ」と反論する。だが国際的な視点からの指摘を謙虚に受け止めるべきだろう。国際ジャーナリスト組織「国境なき記者団」が発表する世界の報道自由度ランキングで日本は10年の11位から17年は72位に落ち込んだ。侵される「表現の自由」の問題は、報道機関の在り方も問うている。権力を監視するという本来の役割を果たせているのか。自主規制に陥っていないか。報道機関の重い責任も再確認したい。

*3-6:http://roudou-bengodan.org/topics/4745/ (日本労働弁護団 2017/5/19) 衆議院法務委員会における共謀罪法案の採決強行に抗議する声明   <共謀罪法案に反対する法律家団体連絡会、社会文化法律センター代表理事 宮里邦雄、自由法曹団団長 荒井新二、青年法律家協会弁護士学者合同部会議長 原和良、日本国際法律家協会会長 大熊政一、日本反核法律家協会会長 佐々木猛也、日本民主法律家協会理事長 森英樹、日本労働弁護団会長 徳住堅治、明日の自由を守る若手弁護士の会共同代表 神保大地・黒澤いつき>
 衆議院法務委員会での採決の強行を受けて、労働弁護団も加わる共謀罪法案に反対する法律家団体連絡会で声明を発表しました。本日,衆院法務委員会において、共謀罪(「テロ等準備罪」)法案を含む組織犯罪処罰法改正案の採決が強行された。来週にも本会議への上程を計画していると伝えられる。私たちは,この暴挙に対し,満腔の怒りをもって強く抗議する。そもそも、刑法は、どの行為が犯罪とされるかを定めているが、裏返せば、犯罪とされずに自由に行動できる範囲を定めているといえる。犯罪とは人の生命や身体自由名誉財産に被害を及ぼす行為と説明され、法益の侵害又はその現実の危険性が生じて初めて事後的に国家権力が発動されるというシステムは,我々の社会の自由を守るための制度の根幹である。約300もの多くの犯罪について共謀の段階から処罰できることとする共謀罪法案は、既遂処罰を基本としてきた我が国の刑法体系を覆し、人々の自由な行動を制限し、国家が市民社会に介入する際の境界線を、大きく引き下げるものである。私たちは沖縄ですでに弾圧の道具に使われている威力業務妨害罪の共謀罪が法案化されていることに警鐘を鳴らしたい。1999年に制定された組織犯罪処罰法によって、組織的威力業務妨害罪、組織的強要罪、組織的信用毀損罪が作られ、法定刑が長期3年から5年に引き上げられ、廃案となった2003年法案で共謀罪の対象犯罪とされた。これらの犯罪は、もともと構成要件があいまいで、労働運動などの弾圧法規として使われてきた問題のある犯罪である。この共謀罪はひとつだけでも治安維持法に匹敵する著しい危険性を持っている。自民党の2007年小委員会案では、これらの犯罪は共謀罪の対象から外されていたのに、これを何が何でも共謀罪の対象としようとしている安倍政権には、市民の異議申し立て活動に対する一網打尽的弾圧の意図を疑わざるを得ない。「組織犯罪集団」の関与と「準備行為」を要件としても、法案の適用範囲を厳しく限定したものとは評価できない。首相は、一般人は処罰の対象にならないと説明しているが、同法案では、原発反対運動や基地建設反対運動などに適用され得る組織的威力業務妨害罪や、楽譜のコピー(著作権法違反)や節税(所得税法違反)など市民が普通の生活の中で行う行為が犯罪に問われかねないものも,対象犯罪に含まれている。そもそも、同法案には一般人を対象としないなどという文言はなく、「計画」と「準備行為」があれば、条文解釈上、誰でもが処罰対象となり得る規定となっている。現在の審議状況では、到底、私たち市民が納得できるだけの充分な説明が尽くされたとは言えない。警察は今でも,市民運動に関わる人の情報を収集したり,イスラム教徒だというだけで調査の対象とするなどの違法なプライバシー侵害を繰り返しているが,共謀罪が制定されれば、今以上に,市民の行動や,人と人との会話、目配せ、メール、LINEなど、人の合意のためのコミュニケーションそのものが広く監視対象とされる可能性が高い。政府は,共謀罪の制定が国連越境組織犯罪防止条約(TOC条約)の批准のために不可欠であるかのように主張するが,諸外国の例を踏まえれば、このような広範な共謀罪法案を成立させることなく国連条約を批准しても、国際的な問題は全く起きるものではない。また,この条約の目的はマフィアなどの経済的な組織犯罪集団対策であり、テロ対策ではない。日本は、国連の13主要テロ対策条約についてその批准と国内法化を完了している。法案には「テロリズム集団その他の組織犯罪集団」という言葉は入れられたものの、テロリズムの定義もなく、法の適用範囲を限定する意味はない。共謀罪法案をめぐる衆議院法務委員会の審議・運営は,政府が野党議員の質問にまともに答える姿勢を放棄して「一般市民は捜査の対象にもならない」など根拠のない答弁を機械的に繰り返したり,野党議員が大臣に答弁を求めたにもかかわらず政府職員が勝手に答弁するなど,異常かつ非民主的という他ないものであった。5月17日,野党議員が金田法務大臣の解任決議案を提出したことは,道理にかなったものである。こうした異常な審議の挙句,いまだ審議すべき重要問題が多数積み残されたまま,本日,採決が強行されたことは,暴挙といわざるを得ない。5月16日報道された朝日新聞の世論調査では、共謀罪法案を今国会で成立させる必要はないという意見は64%に達し、必要とする意見18%を大きく上回った。共謀罪法案反対の世論は急速に広がっており,国民の多数は、この間の審議を通じて浮かび上がってきた法案の多くの問題点について,審議を深めることを願っている。私たち共謀罪法案に反対する法律家団体連絡会は、我が国の人権保障と民主主義の未来に大きな禍根を残す共謀罪法案の成立を阻止するため、引き続き全力を尽くす決意である。      以上

*3-7:http://www.higashihonganji.or.jp/news/important-info/19796/ (真宗大谷派《東本願寺》宗務総長但馬弘 2017年5月18日) 「テロ等組織犯罪準備罪(共謀罪)法案に反対する声明」を発表
 真宗大谷派では5月18日、宗務総長名による「テロ等組織犯罪準備罪(共謀罪)法案に反対する声明」を発表しました。
       *テロ等組織犯罪準備罪(共謀罪)法案に反対する声明*
 現在、テロ等組織犯罪準備罪を新設する組織犯罪処罰法改正案が、国会で審議されています。当然テロ等の犯罪行為は、決して許されるものではありません。しかしこの法案は、実際の行為がなくとも、犯罪とみなされる計画をしただけで処罰することができる、いわゆる「共謀罪」の内容が盛り込まれており、市民の日常生活に重大な制約をもたらす恐れがあります。どのような計画が犯罪になるのかは捜査機関の判断によることから、恣意的な検挙が行われ、市民の思想や言論、表現の自由全般が損なわれる可能性は否めません。さらに犯罪の事実を立証するために、日常的にプライバシーが侵害され、市民どうしが相互に監視する社会をつくりだしてしまうことを危惧します。宗祖親鸞聖人は、時の権力によって「専修念仏」が罪とされたことにより、同行たちが斬首され、聖人自身も流罪となった承元の法難を経験されました。権力側が欲する秩序を護るために個を抹殺しても厭わない当時、宗祖は「主上臣下、法に背き義に違し」との痛みをもった厳しい言葉を残しておられます。また明治期の日本では、国家による思想弾圧事件として、多くの人たちが無実の罪で死刑、無期懲役となった「大逆事件」が起こりました。国全体が戦争へと突き進む中、宗祖の教えに生きんとし、非戦と平等を説いた当派僧侶・高木顕明師もこの事件に連座した一人でありました。思想や信条は、他から侵害されてはならないものです。そして、思想や信条の自由は、一人ひとりが声をあげてこそ守られるものと考えます。すべての人が共に生き合える同朋社会の実現をめざす教団として、テロ対策という名のもとに政府が市民を監視し、私たち個人の思想や言論、表現を統制しようとする今回の法案に対して、真宗大谷派は強く遺憾の意を表明し、廃案を求めます。

*3-8:http://www.christiantoday.co.jp/articles/23810/20170524/kyobozai-catholic-council-for-justice-peace-statement.htm (Christian Today, Japan 2017年5月24日) 「共謀罪」法案衆院通過、カトリック団体が反対声明 戦中の弾圧にも言及
 犯罪を計画段階で処罰する「共謀罪」の内容を盛り込んだ「テロ等準備罪」を新設する「組織犯罪処罰法」の改正案が23日、自民、公明両党と日本維新の会などの賛成多数により、衆院本会議で可決された。これを受け、日本カトリック正義と平和協議会は24日、反対声明を発表。戦中の宗教弾圧により拷問を受けて亡くなった外国人神父の存在についても触れ、同法案の撤回、廃案を強く求めた。同協議会は、同法案に反対する理由を4つ挙げている。最初に挙げたのは、社会に対して実際に損害をもたらした犯罪のみを処罰するという「行為原理」や、刑罰を科す範囲をあらかじめ明確に定めるという「罪刑法定主義」などの近代刑法の原則に反することだ。「犯罪の範囲はいっきに拡大し、犯罪の『共謀』『計画』をはかったという理由で、犯罪を実行していない人間の意思や内心が処罰の対象となり、国家による恣意的な処罰、自白の強要によるえん罪の危険が高まります」と警告している。また、任意の捜査と情報収集の幅が拡大することで、プライバシーの侵害が頻発し、監視社会になってしまうと危惧。自首した場合の免罪が盛り込まれていることから、仲間うちでの密告が推奨され、社会の中に深刻な相互不信を作り出すとしている。さらに、恣意的な捜査や逮捕が可能になった監視社会では、実際の監視行動がなくても市民活動が萎縮し、憲法が保障する思想、信条、信教の自由、集会・結社の自由が破壊されかねないとしている。第2次世界大戦下では、治安維持法により多くの宗教弾圧が行われ、日本のカトリック教会でも司祭や修道者、信者らが逮捕・勾留されることは多くあった。パリ外国宣教会のシルベン・ブスケ神父は、天皇への不敬言動やスパイ活動などの容疑をかけられ、拷問を受けて亡くなった。同協議会は声明でこうした過去の弾圧について触れ、「私たちの信仰するカトリックの教義が、権力にとって都合の悪い危険思想と見なされたからです」と説明。同法案が国家に恣意的に用いられた場合の危機感をにじませた。さらに戦中は、こうした宗教弾圧により「信徒は萎縮し、警察への密告が行われ、教会は分断されました」と言い、「教会に、私たちが希求する愛と信頼に基づいた世界と正反対の出来事が起こりました。このようなことは、いかなる場所においても、もう二度と繰り返されてはなりません」と訴えている。

*3-9:http://ryukyushimpo.jp/kyodo/entry-509218.html (琉球新報 2017年6月5日) 「共謀罪」で国際ペン会長が声明 「日本の表現の自由を侵害」
 いわゆる「共謀罪」法案について記者会見する日本ペンクラブの浅田次郎会長。上は国際ペンクラブのジェニファー・クレメント会長の顔写真=5日午後、東京都中央区
「共謀罪」の趣旨を盛り込んだ組織犯罪処罰法改正案が国会で審議されていることを受け、国際ペンクラブのジェニファー・クレメント会長は5日、「共謀罪は日本の表現の自由とプライバシーの権利を侵害する」と題する声明を発表。日本ペンクラブ(浅田次郎会長)が同日記者会見し、明らかにした。声明は「いわゆる『共謀罪』という法律を制定しようという日本政府の意図を注視している。同法が成立すれば、日本における表現の自由とプライバシーの権利を脅かすものとなるであろう」と警告。「日本国民の基本的な自由を深く侵害することとなる立法に反対するよう、国会に対し強く求める」としている。


PS(2017.6.10追加):*4のように、「集団的自衛権の行使を認めた安全保障関連法は憲法違反」として、自衛官の家族や元教員が札幌地裁に同法に基づく自衛隊派遣の差し止めと慰謝料の支払いを国に求めたそうで、私は、北海道の人も頑張っていると思うが、集団的自衛権のすべてが違憲なわけではないため、違憲になる部分を具体的にリストアップして提訴しなければ勝訴しにくいと考える。また、野党の主張には手続き論が多いが、それでは手続きさえよければよいということになって本質的な問題提議にならないため、市民の共感は得られないだろう。

*4:http://dd.hokkaido-np.co.jp/news/society/society/1-0408956.html (北海道新聞 2017.6.10) 「安保法、手続きも違憲」 札幌訴訟初弁論 原告が主張
 集団的自衛権の行使を認めた安全保障関連法は憲法違反として、自衛官の家族や元教員ら268人が同法に基づく自衛隊派遣の差し止めと慰謝料の支払いを国に求めた訴訟の第1回口頭弁論が9日、札幌地裁(岡山忠広裁判長)であった。国側は派遣差し止めの請求却下と、慰謝料の請求棄却を求めた。原告は、安保法成立で平和的に生きる権利を脅かされたとして、1人につき10万円の慰謝料を求めている。原告側は6人が意見陳述し「安保法は内容も成立までの手続きも、憲法の恒久平和主義、立憲主義、民主主義に違反する」と強調。自衛官の息子を持つ70代男性は「自衛官の家族は、いつ大事なわが子、夫、父親の命が奪われるかもしれない恐怖と不安の中で過ごしている」と訴えた。


PS(2017年6月11日追加):*5のように、「取り調べの可視化を検討することを附則に盛り込む」ことによって、どこまでの範囲の取り調べ可視化が約束されるかについては全く期待できない。また、警察のシナリオに沿った自白をしない人に対するカメラには映らない取り調べ中の嫌がらせも多い。さらに、最高裁で「令状無しの捜査は違法だ」という判決が出たGPS捜査を合法化するために法律を変更するのは、プライバシーの侵害や人権侵害を合法化するものであり、憲法違反である。それでも与党は、「一般人は対象にならない」等々と強弁しているが、この場合の“一般人”の範囲はかなり狭いため、ここで言う「一般人」「普通の人」の定義も明らかにすべきで、その結果、共謀罪法案は廃案にすべきだということは自明である。

*5:http://www.news24.jp/articles/2017/05/11/04361244.html (日テレNEWS24 2017年5月11日) 自公と維新の会“共謀罪”修正案で合意
 自民・公明両党と日本維新の会は11日、共謀罪の趣旨を盛り込んだ組織犯罪処罰法改正案を修正し、取り調べの可視化を検討することなどを附則に盛り込むことで合意した。修正協議では日本維新の会が取り調べの録音・録画を義務づける「可視化」を求めた。このため修正案では「捜査の適性の確保に十分配慮する」とした上で、附則に「取り調べの録画・録音の制度を検討する」などと明記することになった。また、最高裁判所で令状無しの捜査は違法だとの判決が出た全地球測位システム(=GPS)を使った捜査については、立法措置の検討を附則に盛り込むという。自民・公明両党と日本維新の会は12日にも修正案を共同提出し、18日の衆議院通過を目指している。一方、民進党などは「政府案は人権侵害につながる上、テロ対策にもなっていない」として廃案を求めており、独自案を衆議院に提出した。組織的な詐欺などに限り犯罪の準備行為を「予備罪」として罰することや、ハイジャック防止に向け国が空港の保安体制を強化することを義務づけていて、速やかな審議入りを求めている。


PS(2017年6月14日追加):*6のように、法務委員会で議論している最中で疑問ばかりの「共謀罪」法案だが、法務委員会の採決を省略して6月15日未明に本会議で採決しそうである。これでは内容だけでなく手続きも異例で、未明に本会議で採決するなど、“働き方改革”を提唱している人たちのすることかと呆れるばかりだ。

*6:http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201706/CK2017061402000252.html (東京新聞 2017年6月14日) 【政治】「共謀罪」の委員会採決省略を提案 自民、本会議へ 民進は拒否
 自民党の松山政司参院国対委員長は十四日、民進党の榛葉賀津也(しんばかづや)参院国対委員長と国会内で会談し、「共謀罪」の趣旨を含む組織犯罪処罰法改正案について、参院法務委員会での採決を省略し、同日午後の参院本会議で「中間報告」を行った後、採決すると提案した。榛葉氏は「法務委で議論している最中だ」などとして拒否した。民進党など野党四党は内閣不信任決議案の提出も視野に成立阻止を図る方針。自民党の竹下亘国対委員長は十四日午後、党本部の会合で「中間報告の形で可決することを今日中にやらないといけない」と語った。法案は通常、委員会で審議・採決された後に本会議で採決されるが、国会法は「特に必要があるとき」は、本会議での中間報告を経て、本会議採決できる手順を定める。報告は通常、委員長が行うが、動議により委員長以外が行うこともできる。現在、参院法務委員長は公明党の秋野公造氏。十四日午後の参院本会議では、「共謀罪」法案を巡り、民進、共産両党が提出した金田勝年法相の問責決議案を与党などの反対多数で否決する見通し。自民党は、この本会議の後に「共謀罪」法案に関する中間報告と採決に踏み切ると提案した。与党は十五日に参院法務委員会で「共謀罪」法案を採決する意向だった。民進党の山井和則国対委員長は十四日昼、党会合で「近いうちに内閣不信任決議案の提出も視野に入ってくる」と指摘。自民党提案の中間報告については「強権政治は許さない」と反発した。民進党の蓮舫代表は党参院議員総会で「共謀罪」法案について「安倍内閣は充実した審議より採決ありきの姿勢だ。共謀罪は絶対に通すべきではない」と、成立阻止を訴えた。民進、共産両党は十三日、「共謀罪」法案の審議を巡り、金田法相の答弁能力が欠けるとして、問責決議案を共同提出。法務委の審議が中断した。参院本会議は十四日午前、山本幸三地方創生担当相の問責決議案を与党などの反対多数で否決した。学校法人「加計(かけ)学園」(岡山市)問題に関し、国家戦略特区制度を担当する山本氏が「事実の隠蔽(いんぺい)に加担している」などとして、民進党が十三日提出した。


PS(2017年6月15日追加):*7-1のように、犯罪を計画段階で処罰する“テロ等準備罪”を新設する改正組織犯罪処罰法が、実行後の処罰を原則としてきた日本の刑法体系を変える重大な岐路であるにもかかわらず、参院法務委員会の採決すら省略して、6月15日朝の参院本会議で自民党・公明党・日本維新の会などの賛成多数により強硬採決されたが、これは警察の監視社会・捜査権乱用と密告社会に繋がるものである。
 この法案は、地下鉄サリン事件を例に説明されることが多かったが、地下鉄サリン事件は松本サリン事件(犯罪)が起こった時、被害者を守る主張をする筈の被害者の夫を犯人に仕立て上げ、真犯人を探さなかった警察の不作為と冤罪によって起こったもので、原因と解決法が合わない。基督教関係団体・真宗大谷派住職・浄土真宗本願寺派住職・金光教教会副教会長など多くの宗教家が、*7-2のように、その歴史的教訓や宗教の理念から“テロ等準備罪(共謀罪)”に反対しておられるが、創価学会の皆様は公明党の態度に納得しておられるのだろうか。
 なお、「共謀罪」の対象となる277の犯罪には、*7-3のように、騒乱・放火・水道汚染・組織的な威力業務妨害・海底電信線の損壊・自動車道における自動車往来危険・他人の森林への放火・放射線の発散・けしの栽培・強制わいせつ・強姦・無資格自転車競走・特許権/著作権等の侵害・所得税/法人税の免脱・偽証など、テロとは関係なく犯罪実行後に処罰すればよいものが多く含まれ、放射線の発散のように、むしろ政府や東電に当てはまると思われるものもあって、“テロ等準備罪”の成立によってメリットがあるのは権力側につく警察だけである。

*7-1:http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2017061501000632.html (東京新聞 2017年6月15日) 「共謀罪」法が成立、自公強行 委員会採決省略、懸念置き去り
 犯罪を計画段階で処罰する「共謀罪」の趣旨を盛り込んだ「テロ等準備罪」を新設する改正組織犯罪処罰法が15日朝の参院本会議で自民、公明両党と日本維新の会などの賛成多数により可決、成立した。自公は参院法務委員会の採決を省略するため「中間報告」と呼ばれる異例の手続きで採決を強行。同法は実行後の処罰を原則としてきた日本の刑法体系を大きく変える内容で、野党は「監視社会や捜査権乱用につながる懸念を置き去りにした」と猛反発した。安倍内閣への不信任決議案は15日未明の衆院本会議で否決された。法務省は、法施行は7月11日になる見込みだと発表した。

*7-2:https://kansaisyukyosya.wixsite.com/kyobozai/blank、https://kansaisyukyosya.wixsite.com/kyobozai/blank-1(2017年6月13日)私たちは「共謀罪」に反対します。
【呼びかけ人】
浅野献一  (日本基督教団室町教会 牧師)
菴原淳   (真宗大谷派 教福寺 住職)
一木千鶴子 (日本基督教団高石教会 牧師)
今給黎真弓 (日本バプテスト連盟豊中バプテスト教会 牧師)
大仁田拓朗 (日本基督教団兵庫教区 議長、鈴蘭台教会 牧師)
大薮朝祥  (日本基督教団 長崎飽之浦教会 牧師)
小倉雅昭  (浄土真宗本願寺派宣光寺 住職)
上内鏡子  (日本基督教団神戸イエス団教会 牧師)
清川泰司  (日本カトリック正義と平和協議会大阪教区担当 司祭)
古郝荘八  (日本基督教団高石教会 牧師)
後藤正敏  (日本基督教団京都上賀茂教会 牧師)
斎藤成二  (日本基督教団大阪東十三教会 牧師)
斉藤 壹  (日本聖公会  司祭)
佐々木基文 (西光院 名誉住職)
高木孝裕  (大阪宗教者平和協議会 理事長 日蓮宗)
高島保   (金光教稗島教会 副教会長)
佃真人   (日本基督教団宝塚教会 牧師)
長田譲   (真宗仏光寺派正念寺 住職)
中道基夫  (関西学院大学神学部学部 教授)
袴田康裕  (神戸改革派神学校 教授)
樋口洋一  (日本基督教団島原教会 牧師、九州教区平和・人権部門 委員長)
水野隆一  (関西学院大学神学部 教授)
森口あおい  (日本基督教団大阪西淀川教会 牧師)
森田幸男   (日本キリスト教会 大阪北教会  牧師)
矢野太一  (天理教平和の会 会長)
山本有紀  (日本基督教団尼崎教会 牧師)
弓矢健児  (日本キリスト改革派千里山教会 牧師)
<声明文>
 私たちは、今国会で審議されている「組織犯罪処罰法改正案」(以下、「「共謀罪」法案」)に対して深い憂慮を抱き、その成立に反対します。この法案は、具体的な犯罪行為の前段階で取り締まる法案となっており、日本の刑法が拠って立っている原理である「行為原理」に反する法案であるとの指摘がなされています。また、「共謀罪」を取り締まるためには市民の日常的な会話や行動が監視対象となり、それによって市民生活が萎縮し、自由、ことに集会や思想信条の自由が制限されることが危惧されています。さらに、告発による罪の軽減も含まれているために、市民同士がお互いを監視し、告発し合う、「警察社会」の出現やえん罪の増加すら、引き起こしかねないと思われます。「共謀罪」法案の持つ問題については、国連人権委員会の任命した特別報告者も懸念を表明し、日本政府に対して説明を求めています。「共謀罪」法案が成立すれば、すべての宗教団体がその監視対象となることが危惧されます。政府の当初の説明では、対象は「組織的犯罪集団」のみが適用の対象となるとしてきましたが、その定義は曖昧であり、「普通の団体」も「その性格が一変すれば」対象となる事がありうると国会答弁で答えています。また、犯罪の構成要件も非常にあいまいであり、各宗教団体が行う、祈り、礼拝などの、日常的な宗教行為まで、「共謀罪」、準備行為とみなされる可能性があります。政府は、犯罪の構成要件は犯罪の具体的計画を立て、合意をし、その「準備行為」を行うことであると説明しています。しかし、その合意は集会に参加したり、SNS・メーリングリスト等でその合意が行われたグループに参加したりしているだけでも成立することがありうると指摘できます。つまり、日常的に行われる各宗教団体の集会における法話や説教で語られたことも、信者の集まりで話合われたことも、果ては、信者同士の何気ない会話も「共謀」とみなされる可能性があることは否定できません。歴史を振り返れば、「治安維持法」も「言論文章の自由」を最大限尊重すると答弁されていたにもかかわらず、多くの宗教団体が国家権力によって、監視され、自由な宗教活動は制限されました。私たちは、自らの宗教者としての信条に基づき、戦争や「国体」に反対し、それゆえ、「治安維持法」により逮捕され、拷問すら受けた宗教者のあったことを想い起こします。その一方、宗教団体が組織として、国家による弾圧を恐れて、自らの教説を曲げてまで「聖戦完遂」のために協力した歴史もあったことを認識しています。私たちが「共謀罪」法案に反対するのは、このような歴史に対する反省の上に立っています。国会審議の過程では、オウム真理教による事件が、テロ組織に変貌した宗教団体による事件の例として言及されました。彼らのような犯罪を企てることは決してありませんが、私たちが所属するそれぞれの宗教の教説には、理想的な社会の実現を信じ、そのために力を尽くすことが含まれています。「治安維持法」下では、これが「国体」を否定し、転覆させようとしたと見なされました。今回の「共謀罪」法案でも、今現在の社会を、民主的な手段で、あるいは、教育や福祉という方法で、よりよいものに変革しようとするグループすら「組織的犯罪集団」と見なされかねない危険があることが指摘されています。社会をよりよくしようとするすべての人々と手をたずさえて協力し合うことは、自らの教説に基づいており、また、これまで宗教が担ってきた社会における役割の一つであることを、私たちは認識し、これからもその役割を果たすものでありたいとの願いも、「共謀罪」法案反対の理由です。以上のようなことに鑑み、私たちは、良心の自由、思想信条の自由、集会の自由、表現の自由を守っていくため、この「共謀罪」法案に強く反対します。

*7-3:http://www.chunichi.co.jp/s/article/2017061590040437.html (中日新聞 2017年6月15日) 政治:「共謀罪」の対象犯罪
 「共謀罪」の対象となる277の罪は次の通り。
【テロの実行に関する犯罪=110】
(刑法)内乱等ほう助▽騒乱▽現住建造物等放火▽非現住建造物等放火▽建造物等以外放火
  ▽激発物破裂▽現住建造物等浸害▽非現住建造物等浸害▽往来危険▽汽車転覆等
  ▽水道汚染▽水道毒物等混入▽水道損壊及び閉塞(へいそく)▽傷害▽未成年者略取及び
  誘拐▽営利目的等略取及び誘拐▽所在国外移送目的略取及び誘拐▽被略取者等所在国
  外移送▽営利拐取等ほう助目的被拐取者収受▽営利被拐取者収受▽身代金被拐取者収
  受等▽電子計算機損壊等業務妨害▽強盗
(組織犯罪処罰法)組織的な殺人▽組織的な逮捕監禁▽組織的な強要▽組織的な身代金目的
  略取等▽組織的な威力業務妨害▽組織的な建造物等損壊
(爆発物取締罰則)製造・輸入・所持・注文▽ほう助のための製造・輸入等▽製造・輸入・所
  持・注文=第1条の犯罪の目的でないことが証明できないとき
(海底電信線保護万国連合条約罰則)海底電信線の損壊
(外為法)国際的な平和及び安全の維持を妨げることとなる無許可取引等▽特定技術提供目的
  の無許可取引等
(電波法)電気通信業務等の用に供する無線局の無線設備の損壊等
(文化財保護法)重要文化財の損壊等▽史跡名勝天然記念物の滅失等
(道路運送法)自動車道における自動車往来危険▽事業用自動車の転覆等
(森林法)他人の森林への放火
(刑事特別法)軍用物の損壊等
(有線電気通信法)有線電気通信設備の損壊等
(武器等製造法)銃砲の無許可製造▽銃砲弾の無許可製造▽猟銃等の無許可製造
(ガス事業法)ガス工作物の損壊等
(関税法)輸入してはならない貨物の輸入▽輸入してはならない貨物の保税地域への蔵置等
  ▽無許可輸出等▽輸出してはならない貨物の運搬等
(自衛隊法)自衛隊の所有する武器等の損壊等
(高速自動車国道法)高速自動車国道の損壊等
(水道法)水道施設の損壊等
(銃刀法)拳銃等の発射▽拳銃等の輸入▽拳銃等の所持等▽拳銃等の譲り渡し等▽営利
  目的の拳銃等の譲り渡し等▽偽りの方法による許可▽拳銃実包の輸入▽拳銃実包の
  所持▽拳銃実包の譲り渡し等▽猟銃の所持等▽拳銃等の輸入に係る資金等の提供
(下水道法)公共下水道の施設の損壊等
(道交法)不正な信号機の操作等
(新幹線特例法)自動列車制御設備の損壊等
(電気事業法)電気工作物の損壊等
(海底電線等損壊行為処罰法)海底電線の損壊▽海底パイプライン等の損壊
(ハイジャック防止法)航空機の強取等▽航空機の運航阻害
(火炎瓶処罰法)火炎瓶の使用
(熱供給事業法)熱供給施設の損壊等
(航空危険行為処罰法)航空危険▽航行中の航空機を墜落させる行為等▽業務中の航空
  機の破壊等▽業務中の航空機内への爆発物等の持込み
(人質強要処罰法)人質による強要等▽加重人質強要
(生物兵器禁止法)生物兵器等の使用▽生物剤等の発散▽生物兵器等の製造▽生物兵器
  等の所持等
(流通食品毒物混入防止法)流通食品への毒物の混入等
(化学兵器禁止法)化学兵器の使用▽毒性物質等の発散▽化学兵器の製造▽化学兵器の
  所持等▽毒性物質等の製造等
(サリン等人身被害防止法)サリン等の発散▽サリン等の製造等
(感染症予防法)一種病原体等の発散▽一種病原体等の輸入▽一種病原体等の所持等
  ▽二種病原体等の輸入
(対人地雷禁止法)対人地雷の製造▽対人地雷の所持
(公衆等脅迫目的の犯罪行為のための資金等の提供等の処罰に関する法律)公衆等脅迫
  目的の犯罪行為を実行しようとする者による資金等を提供させる行為▽公衆等脅迫目的
  の犯罪行為を実行しようとする者以外の者による資金等の提供等
(放射線発散処罰法)放射線の発散等▽原子核分裂等装置の製造▽原子核分裂等装置の
  所持等▽特定核燃料物質の輸出入▽放射性物質等の使用の告知による脅迫▽特定核
  燃料物質の窃取等の告知による強要
(海賊対処法)海賊行為
(クラスター弾禁止法)クラスター弾等の製造▽クラスター弾等の所持
【薬物に関する犯罪=29】
(刑法)あへん煙輸入等▽あへん煙吸食器具輸入等▽あへん煙吸食のための場所提供
(大麻取締法)大麻の栽培等▽大麻の所持等▽大麻の使用等
(覚せい剤取締法)覚醒剤の輸入等▽覚醒剤の所持等▽営利目的の覚醒剤の所持等
  ▽覚醒剤の使用等▽営利目的の覚醒剤の使用等▽管理外覚醒剤の施用等
(麻薬取締法)ジアセチルモルヒネ等の輸入等▽ジアセチルモルヒネ等の製剤等▽営利目的
  のジアセチルモルヒネ等の製剤等▽ジアセチルモルヒネ等の施用等▽営利目的のジアセ
  チルモルヒネ等の施用等▽ジアセチルモルヒネ等以外の麻薬の輸入等▽営利目的のジ
  アセチルモルヒネ等以外の麻薬の輸入等▽ジアセチルモルヒネ等以外の麻薬の製剤等
  ▽麻薬の施用等▽向精神薬の輸入等▽営利目的の向精神薬の譲り渡し等
(関税法)輸出してはならない貨物の輸出
(あへん法)けしの栽培等▽営利目的のけしの栽培等▽あへんの譲り渡し等
(医薬品医療機器法)業として行う指定薬物の製造等
(麻薬特例法)薬物犯罪収益等隠匿
【人身に関する搾取犯罪=28】
(刑法)強制わいせつ▽強姦(ごうかん)▽準強制わいせつ▽準強姦▽人身売買
(労働基準法)強制労働
(職業安定法)暴行等による職業紹介等
(児童福祉法)児童淫行
(船員職業安定法)暴行等による船員職業紹介等
(入管難民法)在留カード偽造等▽偽造在留カード等所持▽集団密航者を不法入国させる行為等
  ▽営利目的の集団密航者の輸送▽集団密航者の収受等▽営利目的の難民旅行証明書等の
  不正受交付等▽営利目的の不法入国者等の蔵匿等
(旅券法)旅券等の不正受交付等
(売春防止法)対償の収受等▽業として行う場所の提供▽売春をさせる業▽資金等の提供
(労働者派遣法)有害業務目的の労働者派遣
(入管特例法)特別永住者証明書の偽造等▽偽造特別永住者証明書等の所持
(臓器移植法)臓器売買等
(児童買春・ポルノ禁止法)児童買春周旋▽児童買春勧誘▽児童ポルノ等の不特定又は多数の者
  に対する提供等
【その他資金源犯罪=101】
(刑法)通貨偽造及び行使等▽外国通貨偽造及び行使等▽有印公文書偽造等▽有印虚偽公文書
  作成等▽公正証書原本不実記載等▽偽造公文書行使等▽有印私文書偽造等▽偽造私文書等
  行使▽私電磁的記録不正作出及び供用▽公電磁的記録不正作出及び供用▽有価証券偽造等
  ▽偽造有価証券行使等▽支払用カード電磁的記録不正作出等▽不正電磁的記録カード所持
  ▽公印偽造及び不正使用等▽墳墓発掘死体損壊等▽収賄▽事前収賄▽第三者供賄▽加重収賄
  ▽事後収賄▽あっせん収賄▽窃盗▽不動産侵奪▽事後強盗▽昏睡(こんすい)強盗
  ▽電子計算機使用詐欺▽背任▽準詐欺▽横領▽盗品有償譲り受け等
(組織犯罪処罰法)組織的な封印等破棄▽組織的な強制執行妨害目的財産損壊等▽組織的な強制
  執行行為妨害等▽組織的な強制執行関係売却妨害▽組織的な常習賭博▽組織的な賭博場開帳
  等図利▽組織的な信用毀損(きそん)・業務妨害▽組織的な詐欺▽組織的な恐喝▽不法収益
  等による法人等の事業経営の支配を目的とする行為▽犯罪収益等隠匿
(外国貨幣の偽造に関する法律)偽造等▽偽造外国流通貨幣等の輸入▽偽造外国流通貨幣等の
  行使等
(印紙犯罪処罰法)偽造等▽偽造印紙等の使用等
(郵便法)切手類の偽造等
(金融商品取引法)虚偽有価証券届出書等の提出等▽内部者取引等
(競馬法)無資格競馬等
(自転車競技法)無資格自転車競走等
(小型自動車競走法)無資格小型自動車競走等
(文化財保護法)重要文化財の無許可輸出
(地方税法)軽油等の不正製造▽軽油引取税に係る脱税
(商品先物取引法)商品市場における取引等に関する風説の流布等
(投資信託及び投資法人に関する法律)投資主の権利の行使に関する利益の受供与等について
  の威迫行為
(モーターボート競走法)無資格モーターボート競走等
(森林法)保安林の区域内における森林窃盗▽森林窃盗の贓(ぞう)物の運搬等
(関税法)偽りにより関税を免れる行為等
(出資法)高金利の契約等▽業として行う高金利の契約等▽高保証料▽保証料がある場合の
  高金利等▽業として行う著しい高金利の脱法行為等
(補助金適正化法)不正の手段による補助金等の受交付等
(特許法)特許権等の侵害
(実用新案法)実用新案権等の侵害
(意匠法)意匠権等の侵害
(商標法)商標権等の侵害
(所得税法)偽りその他不正の行為による所得税の免脱等▽偽りその他不正の行為による
  所得税の免脱▽所得税の不納付
(法人税法)偽りにより法人税を免れる行為等
(著作権法)著作権等の侵害等
(廃棄物処理法)無許可廃棄物処理業等
(貸金業法)無登録営業等
(消費税法)偽りにより消費税を免れる行為等
(種の保存法)国内希少野生動植物種の捕獲等
(不正競争防止法)営業秘密侵害等▽不正競争等
(保険業法)株主等の権利の行使に関する利益の受供与等についての威迫行為
(スポーツ振興投票法)無資格スポーツ振興投票
(種苗法)育成者権等の侵害
(資産の流動化に関する法律)社員等の権利等の行使に関する利益の受供与等について
  の威迫行為
(民事再生法)詐欺再生▽特定の債権者に対する担保の供与等
(電子署名等に係る地方公共団体情報システム機構の認証業務に関する法律)不実の署名
  用電子証明書等を発行させる行為
(会社更生法)詐欺更生▽特定の債権者等に対する担保の供与等
(破産法)詐欺破産▽特定の債権者に対する担保の供与等
(会社法)会社財産を危うくする行為▽虚偽文書行使等▽預合い▽株式の超過発行▽株主等
  の権利の行使に関する贈収賄▽株主等の権利の行使に関する利益の受供与等について
  の威迫行為
(放射性物質汚染対処特別措置法)汚染廃棄物等の投棄等
【司法妨害に関する犯罪=9】
(刑法)加重逃走▽被拘禁者奪取▽逃走援助▽偽証
(組織犯罪処罰法)組織的な犯罪に係る犯人蔵匿等
(爆発物取締罰則)爆発物の使用、製造等の犯人の蔵匿等
(刑事特別法)偽証
(国際刑事裁判所に対する協力等に関する法律)組織的な犯罪に係る証拠隠滅等▽偽証


PS(2017年6月19日追加):*8-1のように、共謀罪法に反対する大学教授が抗議声明を出して共謀罪法の廃止を求めておられるのは心強いが、反政府的な運動を弾圧することを政府が容認するという妄想のためではなく、政府が行ってきた現在も含む歴史上の弾圧の事実のために反対しているのであり、「司法は正しいことしかしない」という考えの方がよほど妄想である。
 また、公職選挙法や政治資金規正法が共謀罪法に含まれていないのはよいことで、その理由は、公選法違反や政治資金規正法違反を用いて、*8-2のように、警察が罪を捏造して選挙結果を歪めることが少なくないからであり、志布志事件の例では県議の任期終了後に無罪が確定している。県警と自民党が共謀するのは、県警を管理する公安委員会が知事の下部組織で、知事が与党であれば自民党の影響を受けやすいからである。さらに、裁判所も財務省の予算付けに弱く、最高裁判事は内閣が任命するため、与党との繋がりが深い。これらは、公選法違反で挙げられるのが、自民党以外の候補や警察への仕返しをしない落選候補が多いことからも明らかで、学者であれば、①どのような候補が ②何を理由として公選法違反や政治資金規正法違反とされ ③それがどういう役割を果たしたか について統計をとるくらいの調査はすべきだ。
 なお、民主党代表だった小沢一郎氏が、本当は間違ってすらいなかった政治資金規正法違反を挙げられて権力の座を追われたことも記憶に新しく、民主党が政権を失ってから氏の無罪判決が出たが、このように公選法違反・政治資金規正法違反は権力闘争に用いられているのだ。さらに、氏に対するメディアの印象操作もものすごく、日本国憲法に定められている「表現の自由」「言論の自由」は、「基本的人権の尊重」「民主主義」に優先する権利ではないのに、小沢氏に対する警察捜査時の報道が連日だったのと比較して、氏の無罪確定後にメディアは謝罪していない。そして、こういうことは、私を含む他の政治家に対しても、しばしば行われているのだ。
 さらに、*8-3のように、共謀罪の趣旨を盛り込んだ改正組織犯罪処罰法が成立し、警察が犯罪計画を把握するための監視を強めるそうだが、これは憲法に定められている「通信の秘密」に反する。また、「ポスト真実」と言われるように、盗聴・盗撮されたデータもどうにでも加工され得る。これを妄想と言う人もいるのだろうが、実際には、*8-4の足利事件のように、最新の科学を使った筈のDNA鑑定で菅家さんは誤って犯人と認定された。しかし、DNAは、一卵性双生児なら全く同じであり、ポイントのみ調べるのであれば血縁関係の近い人なら同じであることも多い上、意図的に証拠を捏造すれば何とでも言える。そして、先端技術であるだけに、そうされたことを証明するのは難しいのである。

*8-1:http://digital.asahi.com/articles/ASK6L5S6DK6LUTIL020.html (朝日新聞 2017年6月18日) 「共謀罪」法、学者ら廃止訴える「内容も手続きも暴挙」
 犯罪を計画段階から処罰できる「共謀罪」の趣旨を盛り込んだ改正組織的犯罪処罰法の成立を受け、反対する立場の大学教授らが18日、抗議声明を出した。「法律の内容も、国会での手続きも民主主義を破壊する暴挙だ」と批判。法律の廃止を訴えている。安全保障関連法に反対する学者の会」(約1万4千人)の呼びかけ人の62人。参院で委員会採決を省略する「中間報告」の手続きを使ったことについて、「特に緊急を要する場合にしか認められず、国会法に違反する」と主張。表現の自由の観点から法案に懸念を示した国連の特別報告者に政府が抗議したことにも触れ、「国連との関係悪化は日本の国益を侵害する」とした。この日、7人が東京都内で会見し、高山佳奈子・京都大教授は「テロ対策の主要な国際条約を批准し、すでに国内法の整備は終わっている。五輪の安全のため、テロ対策のためという政府の説明は虚偽だ」と話した。内田樹(たつる)・神戸女学院大名誉教授も「反政府的な運動を弾圧することを政府が容認しているという妄想をこの法律が生む素地がある」と述べた。7月9日午後1時半から「自由が危ない」と題した市民向け集会を早稲田大学(東京都新宿区)で開く。
■共謀罪法案の強行採決に対する抗議声明
 2017年6月15日に、自民党・公明党・日本維新の会は、参議院において、組織的犯罪処罰法改正法案につき、法務委員会での採決を経ることなく本会議での採決を強行した。内容的にも、手続的にも、民主主義を破壊する暴挙である。閣僚・与党および法務省は本法案を「テロ等準備罪」を創設するものと称したが、当初明らかになった案には「テロ」の語が存在しなかった。その後も「テロリズム集団その他」の語が挿入されただけで、テロ対策を内容とする条文は全く含まれない。しかも、日本はテロ対策主要国際条約をすべて批准し、国内法化を終えていることから、組織的なテロの準備行為はすでに網羅的に処罰対象である。本立法にテロ対策の意義はない。内閣が法案提出にあたって理由とした国連国際組織犯罪防止条約も、その公式「立法ガイド」の執筆者が明言するとおり、テロ対策を内容とするものではない。本改正法の処罰対象は、犯罪の計画の合意と「実行準備行為」から成る、国際的に共謀罪(conspiracy)と理解されるものにほかならない。主体の要件とされる「組織的犯罪集団」には、一般の団体の一部をなす集団の性質が犯罪的なものに変化すれば該当することとなり、人権団体や環境保護団体として組織されたものも対象たりうることを政府答弁は認めている。「実行準備行為」は実質的な危険を含まない単なる「行為」で足り、無限定である。約300に及ぶ対象犯罪は、テロにもマフィアにも関係のない多数の類型を含む一方で、警察の職権濫用(らんよう)・暴行陵虐罪や公職選挙法違反など公権力を私物化する罪や、民間の商業賄賂罪など組織的経済犯罪を意図的に除外しており、国連条約の趣旨に明らかに反している。こうした点について国会で実質的な議論を拒み、虚偽の呼称により国民をだまし討ちにしようとする政府の姿勢は、議会制民主主義への攻撃である。さらに参議院での採決は、委員会採決を経ない手続を「特に緊急を要する」場合にしか認めない国会法に違反している。これらの内容・手続の問題点を問いただす公式の書簡がプライバシー権に関する国連特別報告者から首相宛てに出されたにもかかわらず、政府は質問に回答するどころかこれに抗議した。国連人権委員会においては、表現の自由に関する特別報告者によって、日本の政治家の圧力によるメディアの情報操作も公式に報告されている。国連との関係の悪化は、北朝鮮問題の解決や国連国際組織犯罪防止条約への参加を要する日本の国益を侵害している。ここに、本強行採決に強く抗議し、今後、市民の自由を侵害する怖(おそ)れのある法が悪用されないよう厳しく監視することと、立憲主義と民主主義を回復する勢力によって、この法を廃止することを広く社会に対して呼びかける。
<安全保障関連法に反対する学者の会・呼びかけ人一同>
     ◇
「安全保障関連法に反対する学者の会」の呼びかけ人
・青井 未帆 (学習院大学教授 法学)
・浅倉 むつ子 (早稲田大学教授 法学)
・淡路 剛久 (立教大学名誉教授・弁護士 民法・環境法)
・池内 了 (名古屋大学名誉教授 宇宙物理学)
・石田 英敬 (東京大学教授 記号学・メディア論)
・市野川容孝 (東京大学教授 社会学)
・伊藤 誠 (東京大学名誉教授 経済学)
・上田 誠也 (東京大学名誉教授 地球物理学/日本学士院会員)
・上野 健爾 (京都大学名誉教授 数学)
・上野 千鶴子 (東京大学名誉教授 社会学)
・鵜飼 哲 (一橋大学教授 フランス文学・フランス思想)
・内田 樹 (神戸女学院大学名誉教授 哲学)
・内海 愛子 (恵泉女学園大学名誉教授 日本―アジア関係論)
・宇野 重規 (東京大学教授 政治思想史)
・大澤 眞理 (東京大学教授 社会政策)
・岡野 八代 (同志社大学教授 西洋政治思想史・フェミニズム理論)
・小熊 英二 (慶応義塾大学教授 歴史社会学)
・戒能 通厚 (早稲田大学名誉教授 法学)
・海部 宣男 (国立天文台名誉教授 天文学)
・加藤 節 (成蹊大学名誉教授 政治哲学)
・金子 勝 (慶応義塾大学教授 財政学)
・川本 隆史 (国際基督教大学特任教授 社会倫理学)
・君島 東彦 (立命館大学教授 憲法学・平和学)
・久保 亨 (信州大学教授 歴史学)
・栗原 彬 (立教大学名誉教授 政治社会学)
・小林 節 (慶応義塾大学名誉教授 憲法学)
・小森 陽一 (東京大学教授 日本近代文学)
・齊藤 純一 (早稲田大学教授 政治学)
・酒井 啓子 (千葉大学教授 イラク政治研究)
・佐藤 学 (学習院大学教授 教育学)
・島薗 進 (上智大学教授 宗教学)
・杉田 敦 (法政大学教授 政治学)
・高橋 哲哉 (東京大学教授 哲学)
・高山 佳奈子 (京都大学教授 法学)
・千葉 眞 (国際基督教大学特任教授 政治思想)
・中塚 明 (奈良女子大学名誉教授 日本近代史)
・永田 和宏 (京都大学名誉教授・京都産業大学教授 細胞生物学)
・中野 晃一 (上智大学教授 政治学)
・西川 潤 (早稲田大学名誉教授 国際経済学・開発経済学)
・西崎 文子 (東京大学教授 歴史学)
・西谷 修 (立教大学特任教授 哲学・思想史)
・野田 正彰 (精神病理学者 精神病理学)
・浜 矩子 (同志社大学教授 国際経済)
・樋口 陽一 (憲法学者 法学/日本学士院会員)
・広田 照幸 (日本大学教授 教育学)
・廣渡 清吾 (東京大学名誉教授 法学/日本学術会議前会長)
・堀尾 輝久 (東京大学名誉教授 教育学)
・益川 敏英 (京都大学名誉教授 物理学/ノーベル賞受賞者)
・間宮 陽介 (青山学院大学特任教授 経済学)
・三島 憲一 (大阪大学名誉教授 哲学・思想史)
・水島 朝穂 (早稲田大学教授 憲法学)
・水野 和夫 (法政大学教授 経済学)
・宮本 憲一 (大阪市立大学名誉教授 経済学)
・宮本 久雄 (東京大学名誉教授・東京純心大学教授 哲学)
・山口 二郎 (法政大学教授 政治学)
・山室 信一 (京都大学教授 政治学)
・横湯 園子 (中央大学元教授・北海道大学元教授 臨床心理学)
・吉岡 斉 (九州大学教授 科学史)
・吉田 裕 (一橋大学教授 日本史)
・鷲谷 いづみ (中央大学教授 保全生態学)
・渡辺 治 (一橋大学名誉教授 政治学・憲法学)
・和田 春樹 (東京大学名誉教授 歴史学)

*8-2:http://cocologsatoko.cocolog-nifty.com/blog/2015/05/post-595e.html (飯山一郎 2015.5.15) 志布志事件の真相は? 県警と自民党の共謀
 志布志事件とは、警察が犯罪をデッチアゲた事件である。買収などの選挙犯罪を一切ヤっていないのに、鹿児島県警が虚偽の自白を強要して犯罪をデッチアゲた悪質な事件である。犯罪者は、むしろ警察である。なぜ? 鹿児島県警は無実の人間を次々に逮捕してウソの自白を強要し、悪質な犯罪デッチアゲ事件を犯したのか?鹿児島県警は無実の市民を強引に犯罪者に仕立てあげた!この志布志事件の動機は何だったのか? このことを明らかにしないかぎり、警察の犯罪はなくならない。

*8-3:http://qbiz.jp/article/112247/1/ (西日本新聞 2017年6月18日) SNS、防犯カメラ…監視を「受容」 情報提供のルールない「共謀罪」法成立
 「共謀罪」の趣旨を盛り込んだ改正組織犯罪処罰法が成立し、警察が犯罪の計画を把握するために市民への監視を強めるとの懸念が強まっている。ITの発展で行政や企業が膨大な個人情報を持つようになった一方、捜査機関への提供に関するルールはほとんど整備されていない。国民が安全や利便性を追求すれば、意図しなくても監視を受け入れざるを得ない状況の中、専門家からはプライバシー保護のための仕組みを求める声が上がっている。
●歓迎 
 道路の脇に電柱と並んで長いポールが立っている。千葉県松戸市の住宅街。視線を上げると、地上に向けて設置された防犯カメラが行き交う車や通行人の姿を捉えている。「防犯カメラ作動中」の表示に気付く人は、ほとんどいないようだ。松戸市では3月に小3女児が行方不明になり、通っていた小学校の保護者会長が殺人などの疑いで逮捕された。住民の要望で、市は学校の近くに3台の防犯カメラを設置。映像はインターネット回線を通じて山梨県にある民間企業のデータセンターに送られ、1週間保存されることになった。近くに住む女性(67)は「設置されたことは知らなかったけど、悪いことをしてないから気にならない。犯罪抑止につながればいい」と歓迎。市の担当者は「任意でも提出を求められれば映像は警察に提供する。行政の責務だ」と話す。早稲田大の西原博史教授(憲法学)によると、かつては行政が防犯カメラを直接設置したり、補助金を出したりするのは商業地区が多かったが、近年は住宅街にまで広がっているという。
●丸裸 
 電子データの保存コストが大幅に下がった今、自治体や企業はカメラの映像を長時間蓄積することが可能になっている。会員制交流サイト(SNS)を飛び交う無数のやりとりも保管される。西原教授は「警察がこれらの情報を結び付ければ、人々のあらゆるコミュニケーションが丸裸になる」と指摘。「自分は捜査の対象にならないと安全・安心を求め、監視を受け入れることは自由を差し出すことと同じ。やがて、本当の自分のままでいられる空間を失う」と警鐘を鳴らす。警察は現在でも「捜査関係事項照会」などの任意捜査で、クレジットカードや出入国、銀行口座の履歴など広範囲にわたって市民の情報を集めている。だが、企業などがどういう場合に、どの程度の情報を警察に提供しているのかは“ブラックボックス”だ。無料通信アプリを運営する「LINE」(東京)は今年4月、2016年7〜12月に警察などから1500件の情報提供を求められ、うち928件を開示したことを公表。裁判所の令状に基づく強制捜査なのか任意の「照会」なのかも明らかにした。大半は強制捜査だった。LINEは「透明性を保つことが利用者の利益になる」との立場だが、NTTドコモ、KDDI(au)、ソフトバンクの携帯電話大手3社は、いずれも取材に「義務はない」として件数すら公表していない。
●保証 
 プライバシー権に詳しい中央大の宮下紘准教授は「監視社会の気味悪さは、権力を持つ側がどれだけの情報を集めているのか分からないことにある」と言う。企業や自治体が捜査機関から照会のあった件数を積極的に公表することで一定程度は乱用を抑止できるとし、捜査機関に国会への報告を義務付ける制度を設けるべきだと提言する。「乱用しないという政府の説明だけでは何の保証にもならない。『監視に対する監視』のシステムをつくることで、初めて市民のプライバシーが守られる」
●警察からの要請件数など公表、LINE
 警察などから情報提供の要請があった件数を明らかにしているLINE(ライン)の法務担当執行役員、中山剛志氏に公表の理由などを聞いた。
−なぜ公開するのか。
 「私も一利用者の立場から言えば、自分の情報がどう扱われているのか分からないと気持ちが悪い。公表することで少しでも不安が払拭(ふっしょく)できればと考えた。今後も透明性を高めていきたい」
−全ての要請に対応しているのか。
 「プライバシー保護を担当する部署で審査し、請求の範囲が広過ぎるなど問題があると判断した場合は、対応しない」
−どういう情報を提供しているのか。
 「裁判所の令状に基づく強制捜査では、利用者のトークの内容を明らかにしなければならない。ただし利用者が暗号化機能を解除していなければ、捜査機関にも知られることはない」。「任意捜査である捜査関係事項照会に開示するのは利用者の氏名、電話番号などの登録情報やプロフィル画像までで、トーク内容は開示しない」
−同業他社の対応は。
 「グーグルやフェイスブックなどのグローバル企業は、捜査当局などから情報提供を求められた件数を公開している。ラインも世界中でサービスを提供しているので、同水準の情報開示をすべきだと考えた」

*8-4:http://www.nikkei.com/article/DGXDASDG2603L_W0A320C1CC1000/ (日経新聞 2010/3/27) 足利事件再審 宇都宮地裁判決要旨
【再審までの経緯】
 1990年5月、栃木県足利市で4歳の女児が誘拐、殺害された。被害者が着用していた半袖下着に付着した体液と菅家利和さんの体液のDNA鑑定が行われ、同型だった。逮捕、起訴された菅家さんは1992年12月の第6回公判で否認したが、第7回公判で再び認め一度結審。弁論再開後、全面的に否認する供述をした。1993年の一審判決は(1)DNA鑑定(2)自白――を主な証拠とし菅家さんを犯人と認定。無期懲役とした一審判決が確定した。菅家さんは2002年、再審を請求。東京高裁は再審開始を決定した。
【DNA鑑定】
 東京高裁は2009年、鈴木広一大阪医大教授らを鑑定人に命じ、被害者の下着に付着した体液と菅家さんの血液のDNA再鑑定をし、同一の男性に由来しないと判定された。菅家さんが犯人でないことを如実に示す。最高裁が証拠能力を認めた当時のDNA鑑定は、鈴木鑑定の結果、証拠価値がなくなり、具体的な実施方法にも疑問を抱かざるを得ない。現段階においては証拠能力を認めることができず、証拠から排除する。
【菅家さんの自白】
 鈴木鑑定の結果は、捜査段階や公判での菅家さんの自白を前提とすると到底説明がつかず、自白は信用できない。起訴後でも公判維持に必要な取り調べはできるが、慎重な配慮や対応が求められる。森川大司検事は既に2度の被告人質問が行われた後の1992年12月7日、別件の取り調べで菅家さんが突如、本件の否認を始めたことから翌日、本件の犯人ではないかと追及する取り調べをした。弁護人への事前連絡を一切せず、黙秘権告知や弁護人の援助を受ける権利も説明しておらず、当事者主義や公判中心主義の趣旨を没却する違法な取り調べだった。取り調べで、DNA型が一致したとの鑑定結果を告げられたことが、菅家さんが自白するに至った最大の要因。捜査段階の自白の任意性には影響しないが、その信用性には大きく影響している。自白の証拠能力自体に影響する事情は見当たらないものの、再審公判で明らかとなった当時の取り調べ状況や、強く言われるとなかなか反論できない菅家さんの性格からすると「当時の新聞記事の記憶などから想像を交えて捜査官の気に入るように供述した」という控訴審での菅家さんの供述は信用性がある。自白は信用性が皆無で、虚偽であることが明らかだ。
【結論】
 犯人のものと考えられるDNA型が菅家さんの型と一致しないことが判明し、自白が虚偽であることが明らかになったのだから、菅家さんが犯人ではないことは誰の目にも明らかになった。

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2017.5.11 日本国憲法の変更と共謀罪・安全保障法制について (2017年5月12、14、15、18、20、24日追加)
(1)日本国憲法の変更について

  
     2016.8.12東京新聞     昭和天皇の御名御璽  戦争放棄と国民の権利・義務  

(図の説明:これまで「敗戦後に日本の国力を弱めるため米国によって押し付けられた」と説明されることが多かった日本国憲法9条は、実は幣原首相が提案したものだと米上院でマッカーサーが証言している。その憲法には、①国民主権 ②平和主義と戦力不保持 ③基本的人権の尊重 が記載されており、現在でも最先端の内容だと考える。そのため、足りない部分があると言う人は、a.どこが b.どう足りないので c.どう修正したいのか を具体的に指摘すべきだ)


 
   憲法変更前に拡張された安全保障法制          特定秘密保護法   

(図の説明:安全保障法制の拡大により、自衛権の発動と称すればどこででも戦争ができるようになったが、私は、これは違憲立法だと考える。また、特定秘密保護法は、民主主義の根幹である国民の”知る権利”を制限する上、秘密を漏らしたと称すればいつでも逮捕できるようになり、憲法の主権在民(民主主義)を脅かしている。また、特定秘密保護法の適性評価制度は、2014年3月15日に、日本精神神経学会が、①精神疾患・精神障害に対する偏見・差別を助長し、患者、精神障害者が安心して医療・福祉を受ける基本的人権を侵害する ②医療情報の提供義務は、医学・医療の根本原則(守秘義務)を破壊する ③精神科医療全体が特定秘密保護法の監視対象になる危険性が高い 等の理由で反対しているものだ《https://www.jspn.or.jp/uploads/uploads/files/activity/20140315.pdf 参照》)

 安倍首相(=自民党総裁)は、*1-1のように、2017年5月8日の党役員会で憲法9条への自衛隊明記について議論開始を求め、*1-2のように、①憲法改正は自民党立党以来の党是だ ②少子高齢化・人口減少・経済再生・安全保障環境の悪化など、我が国が直面する課題に対し、次の70年に向けて日本がどういう国を目指すのか、真正面から立ち向かって未来への責任を果たさなければならない ③自衛隊の存在を憲法に位置づけ、『自衛隊が違憲かもしれない』という議論が生まれる余地をなくすべく、憲法9条1項、2項を残しながら自衛隊を明文で書き込む ④義務教育だけでなく高等教育も無償化する旨、憲法に書き込む ⑤新しく生まれ変わった日本が動き出す2020年を新しい憲法施行日にしたい などを語られている。

 しかし、①のように、憲法改正は自民党立党以来の党是であるため、②のように、近年我が国が直面している課題に対して未来への責任を果たすために憲法を改正するというのは、国民が騙されやすい言葉を並べただけの嘘である。また、④の教育無償化は、*1-5のように、憲法を変更しなくてもできるにもかかわらず財源を理由としてやっていないだけであり、憲法の変更を行うだしにすぎない。

 ③については、私は、自衛隊は既に存在するため安全保障法制制定前なら憲法に書き加えた方がよいと思っていたが(例えば、3項に「前項の規定にかかわらず、自衛目的のために自衛隊を有する」と付け加えれば、条文上は問題ない)、*1-4のように、安全保障法制が制定され自衛戦だと主張しさえすればどこででも戦えるようになった現在では、日本国憲法のみが戦争を踏みとどまらせるツールになるため、憲法は変更すべきではなくなったと考える。

 また、*1-3のように、日本国憲法第13条は「すべて国民は、個人として尊重される」としており、これは「どういう個性(思想・信条・価値観・性etc.)を持つ人も尊重されるという意味だが、自民党憲法改正草案は「個人」を「人」に変え、草案作りに携わった礒崎参議院議員は、憲法13条は「個人主義を助長した」「個人という異様な思想」「個人という思想が家族観を破壊した」などと自らのHPに記載しているそうだ。

 これは、日本国憲法施行前の我が国で、同じ人間として扱われてすらいなかった女性の犠牲の上になりたっていた家族観や、思想・信条・価値観・身分の異なる人を差別したり、迫害したりした我が国の負の歴史を無視しており、「すべての国民を個人として尊重する」という規定の重さを理解していない。そして、そのような人たちが、自民党憲法改正草案を作ったのだから、国民は安心して笑顔でいる場合ではないのである。

 さらに、*1-3の自民党憲法改正草案前文に加えられた「和の精神」は、角突き合わさず、みんな仲良くすることだそうだが、加害者と被害者が存在する時に「和の精神」を説けば、やりたい放題になって不公正となり、このように対立する利害を公正に調整するために、基本的人権の尊重・男女平等・三権分立などが近代憲法や下部の法律で定められているのである。そのため、今さら聖徳太子の時代に戻ってよいわけがない。

 私は、日本国憲法の理念は素晴らしく、制定から70年経過しても最先端であり、決して古くなっていないと考える。そのため、*1-5のように、まさに現憲法の理念を実現することが先で、その理念を実現すれば、個人主義と利己主義を混同して「個人主義は家族観を破壊した」などと言う人はいなくなり、民主主義も徹底するだろう。そのため、「今の段階では、現憲法を変更しない」というのも立派な対案だと、私は考えている。
 
(2)基本的人権の尊重と共謀罪

     
   共謀罪に関する政府の説明     共謀罪新設で変わること   警察の通信傍受

 何度も廃案になった「共謀罪」法案が、*2-2のように、277の罪を対象とし、「テロ等準備罪」と名を変えて国会に提出されたが、このうち本当にテロの実行に関するものは110に留まるそうだ。政府は「組織的犯罪集団が対象で、一般市民が対象になることはない」と説明しているが、ここに示された罪の多くは一般市民に関係するもので、組織で行われるとは限らないものだ。つまり、法令の名前も政府の説明も事実とは異なり、日本のTVもこういう事実を正確に報道しなければ、日本国憲法に定められた主権在民(民主主義)は機能しない。

 「現在ではテロ対策が必要だ」という人は多く、それが「テロ等準備罪」制定の根拠とされているが、平和主義の国日本では、これまでサリン事件という犯罪以外は起こっておらず、今後、もしテロが起こるとすれば安全保障法制によって同盟国について行き、理不尽な戦争をして恨みを買った場合だろう。そのため、あの安全保障法制は、抑止力になるどころか国内でテロが起こるリスクを増加させているのだ。

 また、*2-3のように、現行の刑事法の下では、罪を犯した者を罰するのが原則であるため、捜査は基本的に事件が発生してから始まるが、「テロ等準備罪(=共謀罪)」は計画段階の犯罪を処罰対象とするため、事件もないのに証拠収集や取り調べを行うことが可能になり、これは日本国憲法の基本的人権の尊重に反する。これに対し、政府は「捜査権の乱用はない」と強調しているが、捜査当局が前のめりになって人権侵害したケースは過去から現在まで多い。

 さらに、政府は、テロ組織や暴力団などの組織的犯罪集団が対象で、摘発には資金・物品の手配・現場の下見などの「準備行為」が必要だと説明しているが、その適用団体の定義は曖昧で、犯罪集団か否かは捜査機関が自ら判断する上、準備行為が事件に関係していることを裏付けるために供述証拠に頼ることになる。その場合、犯罪実行前に自首した場合は刑を減免するという規定があるため、他人に罪をなすりつける虚偽供述や密告・冤罪がはびこる社会になりかねず、証拠収集のための通信傍受も広がるに違いない。

 そこで、*2-1のように、民進党は、「テロ等準備罪」を新設する政府提出の組織犯罪処罰法改正案の対案として、人身売買や組織的詐欺の予備罪新設などを柱とした法案をまとめたそうだ。そのため、TVも客観性に欠け分析力を疑うようなくだらないニュースばかり報道していないで、日本国民の人権の根幹に拘わる政策の違いや理由をわかりやすく解説すべきである。

 また、*2-4、*2-5のように、法律の専門家集団である弁護士会は、かねてから明確に、①“共謀罪”法案は、現行刑法の体系を根底から変容させるものであること ②犯罪を共同して実行しようとする意思を処罰の対象とする基本的性格はこの法案においても変わらず維持されていること ③テロ対策のための国内法上の手当はなされており、共謀罪法案を創設することなく国連越境組織犯罪防止条約について一部留保して締結することは可能であること ④仮にテロ対策等のための立法が十分でないとすれば個別立法で対応すべきこと などを指摘し、廃案を求めている。TVメディアの組織には、これらの内容を読み解ける人材が一人もいないのだろうか。

 なお、信濃毎日新聞は、*2-6のように、「憲法の岐路 強まる監視 拒否する意思示す時」「共謀罪は弾圧に道を開く」として反対しており、そのとおりである。

<憲法変更>
*1-1:http://www.saga-s.co.jp/news/national/10201/427756 (佐賀新聞 2017年5月8日) 首相、改憲へ議論加速を指示、自民役員会、9条改正巡り
 安倍晋三首相(自民党総裁)は8日の党役員会で、憲法9条への自衛隊明記などを掲げた自らの発言を踏まえ、党内論議を加速するよう指示した。「わが党は現実的かつ具体的な議論をリードする責任がある。それが歴史的使命だ」と述べた。これに先立つ衆院予算委員会では、野党に対して衆参両院の憲法審査会での活発な議論を求めた。民進党の蓮舫代表は反発し、次期衆院選の争点になるとの認識を示した。首相が2020年の改正憲法施行を目指すと3日のビデオメッセージで表明したのを受けた与野党の動きだが、自民党と民進党が改憲で合意点を見いだすのは難しい状況が改めて浮かび上がった。

*1-2:http://www.nikkei.com/article/DGXLASFK03H16_T00C17A5000000/?nf=1 (日経新聞 2017/5/3) 憲法改正に関する首相メッセージ全文
 安倍晋三首相(自民党総裁)のビデオメッセージの全文は次の通り。ご来場のみなさま、こんにちは。自由民主党総裁の安倍晋三です。憲法施行70年の節目の年に、「第19回 公開憲法フォーラム」が盛大に開催されましたことに、まずもってお喜び申し上げます。憲法改正の早期実現に向けて、それぞれのお立場で精力的に活動されているみなさまに心から敬意を表します。憲法改正は、自由民主党の立党以来の党是です。自民党結党者の悲願であり、歴代の総裁が受け継いでまいりました。私が首相・総裁であった10年前、施行60年の年に国民投票法が成立し、改正に向けての一歩を踏み出すことができましたが、憲法はたった1字も変わることなく、施行70年の節目を迎えるに至りました。憲法を改正するか否かは、最終的には国民投票によって、国民が決めるものですが、その発議は国会にしかできません。私たち国会議員は、その大きな責任をかみしめるべきであると思います。次なる70年に向かって、日本がどういう国を目指すのか。今を生きる私たちは、少子高齢化、人口減少、経済再生、安全保障環境の悪化など、我が国が直面する困難な課題に対し、真正面から立ち向かい、未来への責任を果たさなければなりません。憲法は、国の未来、理想の姿を語るものです。私たち国会議員は、この国の未来像について、憲法改正の発議案を国民に提示するための「具体的な議論」を始めなければならない、その時期にきていると思います。わが党、自由民主党は未来に、国民に責任を持つ政党として、憲法審査会における「具体的な議論」をリードし、その歴史的使命を果たしてまいりたいと思います。例えば、憲法9条です。今日、災害救助を含め、命懸けで24時間、365日、領土、領海、領空、日本人の命を守り抜く、その任務を果たしている自衛隊の姿に対して、国民の信頼は9割を超えています。しかし、多くの憲法学者や政党の中には、自衛隊を違憲とする議論が、今なお存在しています。「自衛隊は違憲かもしれないけれども、何かあれば、命を張って守ってくれ」というのは、あまりにも無責任です。私は少なくとも、私たちの世代のうちに、自衛隊の存在を憲法上にしっかりと位置づけ、「自衛隊が違憲かもしれない」などの議論が生まれる余地をなくすべきである、と考えます。もちろん、9条の平和主義の理念については、未来に向けて、しっかりと堅持していかなければなりません。そこで「9条1項、2項を残しつつ、自衛隊を明文で書き込む」という考え方、これは国民的な議論に値するのだろうと思います。教育の問題。子どもたちこそ我が国の未来であり、憲法において国の未来の姿を議論する際、教育は極めて重要なテーマだと思います。誰もが生きがいを持って、その能力を存分に発揮できる一億総活躍社会を実現するうえで、教育が果たすべき役割は極めて大きい。世代を超えた貧困の連鎖を断ち切り、経済状況にかかわらず、子どもたちがそれぞれの夢に向かって頑張ることができる、そうした日本でありたいと思っています。70年前、現行憲法の下で制度化された、小中学校9年間の義務教育制度、普通教育の無償化は、まさに、戦後の発展の大きな原動力となりました。70年の時を経て、社会も経済も大きく変化した現在、子どもたちがそれぞれの夢を追いかけるためには、高等教育についても、全ての国民に真に開かれたものとしなければならないと思います。これは個人の問題にとどまりません。人材を育てることは、社会・経済の発展に確実につながっていくものであります。これらの議論の他にも、この国の未来を見据えて議論していくべき課題は多々あるでしょう。私はかねがね、半世紀ぶりに夏期の五輪・パラリンピックが開催される2020年を、未来を見据えながら日本が新しく生まれ変わる大きなきっかけにすべきだと申し上げてきました、かつて、1964年の東京五輪を目指して、日本は大きく生まれ変わりました、その際に得た自信が、その後、先進国へと急成長を遂げる原動力となりました。2020年もまた、日本人共通の大きな目標となっています。新しく生まれ変わった日本が、しっかりと動き出す年、2020年を新しい憲法が施行される年にしたいと強く願っています。私は、こうした形で国の未来を切りひらいていきたいと考えています。本日は、自由民主党総裁として、憲法改正に向けた基本的な考え方を述べました。これを契機に、国民的な議論が深まっていくことを切に願います。自由民主党としても、その歴史的使命をしっかりと果たしていく決意であることを改めて申し上げます。最後になりましたが、国民的な議論と理解を深めていくためには、みなさまがた「民間憲法臨調」、「美しい日本の憲法をつくる国民の会」のこうした取り組みが不可欠であり、大変心強く感じております。憲法改正に向けて、ともにがんばりましょう。

*1-3:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12920934.html (朝日新聞社説 2017年5月3日) 憲法70年 先人刻んだ立憲を次代へ
 時代劇で江戸の長屋に住む八っつぁん熊さんが万歳三唱をしたら、脚本家は落第である。あれは日本古来の振る舞いではないと、NHK大河ドラマなどの時代考証を手がける大森洋平さんが著書で書いている。1889年、明治憲法の発布を祝うために大学教授らが作り出した。ちゃぶ台も洗濯板も、明治になって登場した。動作や品物だけではない。西欧の思想や文化に出会った当時の知識人は、その内容を人々に伝えようと苦心し、新しく単語をつくったり、旧来の言葉に意味を加えたりした。いまでは、それらなくして世の中は成り立たないと言ってもいい。
■消えた「個人」
 個人、もその賜物(たまもの)の一つだ。「すべて国民は、個人として尊重される」。日本国憲法第13条は、そう定めている。根底に流れるのは、憲法は一人ひとりの人権を守るために国家権力を縛るものである、という近代立憲主義の考えだ。英文では〈as individuals(個人として)〉となっている。翻訳家の柴田元幸さんはここに、固有の権利を持つ人間というニュアンスを感じたという。もし〈as humans(人間として)〉だったら「単に動物ではないと言っているだけに聞こえます」。ひとり、一身ノ身持、独一個人(どくいつこじん)と〈individual〉の訳語に試行錯誤した福沢諭吉らがこの話を聞いたら、ひざを打ったに違いない。『文明論之概略』で福沢は、日本の歴史には「独一個人の気象」がないと嘆いた。個人の尊厳をふまえ、幸福を追い求める権利をうたいあげた13条の文言には、洋の東西を超えた先人たちの思いと労苦が息づいている。ところが自民党は、5年前に公表した憲法改正草案で「個人」を「人」にしてしまった。安倍首相は昨年、言い換えに「さしたる意味はない」と国会で答弁した。しかし草案作りに携わった礒崎陽輔参院議員は、自身のホームページで、13条は「個人主義を助長してきた嫌いがある」と書いている。
■和の精神と同調圧力
 「個人という異様な思想」「個人という思想が家族観を破壊した」。首相を強く支持する一部の保守層から聞こえてくるのは、こんな声だ。一方で、草案の前文には「和を尊び」という一節が加えられた。「和の精神は、聖徳太子以来の我が国の徳性である」と草案のQ&Aは説明する。角突き合わさず、みんな仲良く。うまくことを進めるうえで「和」はたしかに役に立つ。しかし、何が歴史や文化、伝統に根ざした「我が国」らしさなのかは、万歳三唱やちゃぶ台の例を持ち出すまでもなく、それぞれの人の立場や時間の幅の取り方で変わる。国内に争乱の記録はいくらもあるし、かつて琉球王国として別の歴史を歩んだ沖縄は、ここで一顧だにされていない。一見もっともな価値を掲げ、それを都合よく解釈し、社会の多様な姿や動きを封じてしまう危うさは、道徳の教科書でパン屋が和菓子屋に変わった一件を思いおこせば十分だ。検定意見の根拠は「我が国や郷土の文化と生活に親しみ、愛着をもつ」と定めた学習指導要領だった。ただでさえ同調圧力の強いこの社会で、和の精神は、するりと「強制と排除の論理」に入れ替わりうる。
■近代的憲法観の転覆
 「個人」を削り、「和」の尊重を書きこむ。そこに表れているのは、改憲草案に流れる憲法観――憲法は歴史や伝統などの国柄を織り込むべきもので、国家権力を縛るものという考えはもう古い――である。だから、人は生まれながらにして権利を持つという天賦人権説を西欧由来のものとして排除し、憲法を、国家と国民がともに守るべき共通ルールという位置づけに変えようとする。これは憲法観の転覆にほかならない。経験知を尊重する保守の立場とは相いれない、急進・破壊の考えと言っていい。明治憲法を起草した伊藤博文は、憲法を創設する精神について、第一に「君権(天皇の権限)を制限」し、第二に「臣民の権利を保護する」ことにあると力説した。むろん、その権利は一定の範囲内でしか認められないなどの限界はあった。だが、時代の制約の中に身を置きながら、立憲の何たるかを考えた伊藤の目に、今の政権担当者の憲法観はどう映るか。明治になって生まれたり意味が定着したりした言葉は、「個人」だけではない。「権利」も「自由」もそうだった。70年前の日本国憲法の施行で改めて命が吹き込まれたこれらの概念と、立憲主義の思想をより豊かなものにして、次の世代に受け渡す。いまを生きる私たちが背負う重大な使命である。

*1-4:http://www.shinmai.co.jp/news/nagano/20170504/KT170503ETI090003000.php (信濃毎日新聞社説 2017年5月4日) 首相改憲発言 身勝手な使命感の表明
 安倍晋三首相が改憲について踏み込んだ発言をした。「2020年を新しい憲法が施行される年にしたい」と初めて具体的な時期を示している。なぜ、それほど急ぐのか。唐突な決意表明である。東京都内で開かれた憲法改正を訴える会合に自民党総裁として寄せたビデオメッセージだ。具体的な項目として9条や教育無償化に触れている。憲法を尊重し、擁護する義務を負う首相が憲法記念日に改憲を主張する。強い違和感を抱かせる発言である。改憲時期について「半世紀ぶりに夏季のオリンピック、パラリンピックが開催される2020年を未来を見据えながら日本が新しく生まれ変わる大きなきっかけにすべきだ」とし、20年施行という目標を明示した。期限をはっきりさせることで論議を加速させたいのか。衆参両院の憲法審査会では各党の主張の隔たりが大きい。改憲項目の絞り込みが進まず、国民的な議論も熟していない状況で3年後に施行とはあまりにも性急な提示だ。9条については、戦争放棄の1項、戦力不保持の2項を残しつつ自衛隊を明文で書き込むという考え方を示し、「国民的な議論に値するだろう」とした。多くの憲法学者や政党の中に自衛隊を違憲とする議論が今なお存在するとし、憲法に位置付けることで「違憲かもしれない」などの議論が生まれる余地をなくすべきだとも述べている。「陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない」と定める2項を残し、どのように書き込もうというのか。専守防衛の枠から自衛隊が踏み出すことにならないか。疑問は尽きない。安倍政権は一内閣の判断で憲法解釈を変更し、違憲との批判を顧みることなく集団的自衛権行使の安全保障関連法を定めた。立憲主義を軽んじる首相の提案に乗ることはできない。首相は、未来と国民に責任を持つ政党として憲法審査会での「具体的な議論」をリードし、歴史的使命を果たしていきたいとも述べた。世論調査では、安倍政権下での改憲に過半数が反対と答えている。自身の悲願を果たしたいだけの身勝手な使命感ではないか。改憲派の会合での一方的なメッセージである。見過ごすことはできない。首相は自身の考えを国会できちんと説明する必要がある。

*1-5:http://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-490324.html (琉球新報社説 2017年5月5日) 首相改憲表明 現憲法の理念実現が先だ
 安倍晋三首相が憲法記念日の3日、改憲を実現し、2020年の施行を目指す方針を表明した。改定内容として、戦争放棄などを定めた憲法9条に自衛隊の存在を明記する文言を追加することや、教育無償化などを挙げた。「憲法改正は自民党の立党以来の党是だ」と述べる安倍首相にとって、国会での憲法論議は遅々として進んでいないと見えるのだろう。しかし、あと3年で憲法改定まで進むというのは拙速に過ぎる。9条は条文上、あらゆる武力行使を禁止し、自衛隊の活動に一定の歯止めをかけてきた。しかし集団的自衛権の行使容認という憲法解釈の変更で事実上、自衛隊の任務は国際紛争の場にまで広がった。さらに自衛隊が明文化されれば、武力行使の歯止めは利かなくなるのではないか。共同通信の全国世論調査でも日本が戦後、海外で武力行使しなかった理由について「9条があったからだ」とする回答は75%に上った。国民に一定評価されている9条改定の機運が熟したとは思えない。安倍首相が同時に、高等教育の無償化を理由に挙げたことも解せない。教育の無償化は憲法を改定せずともできることだ。現に民主党政権は高校の無償化を実現させた。自公政権になってから所得制限を設けたため、安倍首相が言う「全ての国民に真に開かれた」ものではなくなったのだ。共同通信調査では、安倍首相の下での改憲に51%が反対し、賛成は45%だった。本紙の世論調査でも、戦争放棄や戦力不保持を定めた9条を「堅持すべきだ」が44・2%で最も多く、「改正すべきだ」の21・7%を22・5ポイント上回った。県内では9条堅持を望む声が高い。憲法を変えるよりも先に行うべきことがある。先月の衆院憲法審査会では4人の参考人全員が、沖縄県に米軍基地負担が集中し、政府と対立する現状を問題視して、それぞれ異なる道筋を示しながら、沖縄の自治権強化を求めた。地方自治を保障した現憲法下でも、基地が偏在し、沖縄の自治がないがしろにされている。参考人として出席した学識者全員が現状を変えるよう促したのだ。安倍首相は改憲を唱える前に、現憲法の平和希求や地方自治の理念を実現するよう努力すべきだ。

<基本的人権の尊重と共謀罪>
*2-1:http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2017050801001796.html (東京新聞 2017年5月8日) 民進が「共謀罪」の対案決定 予備罪新設、テロ対策強化
 民進党は8日、「共謀罪」の趣旨を盛り込んだ「テロ等準備罪」を新設する政府提出の組織犯罪処罰法改正案の対案として、人身売買や組織的詐欺の予備罪新設などを柱とした法案をまとめた。テロ対策も強化する。政府が法改正の根拠とする国際組織犯罪防止条約(TOC条約)の締結を見据え、責任野党をアピールする狙い。9日の「次の内閣」会合で正式に決定し、週内にも衆院に提出する。蓮舫代表は8日の党会合で共謀罪について「一般の方も対象になるリスクが相当大きく、明確に反対したい」と述べ、廃案を目指す考えを重ねて表明した。

*2-2:http://digital.asahi.com/articles/ASK3102FVK2XUTIL05K.html (朝日新聞 2017年3月1日) 「共謀罪」法案、対象となる法律と罪名
 犯罪を計画段階で処罰する「共謀罪」の趣旨を盛り込んだ組織的犯罪処罰法改正案の全容が判明した。対象は91の法律で規定した277の罪。政府の分類では、「テロの実行」に関するものはこのうち110罪にとどまる。277の罪名は次の通り。
     ◇
【刑法】内乱等幇助(ほうじょ)▽加重逃走▽被拘禁者奪取▽逃走援助▽騒乱▽現住建造物等放火▽非現住建造物等放火▽建造物等以外放火▽激発物破裂▽現住建造物等浸害▽非現住建造物等浸害▽往来危険▽汽車転覆等▽あへん煙輸入等▽あへん煙吸食器具輸入等▽あへん煙吸食のための場所提供▽水道汚染▽水道毒物等混入▽水道損壊及び閉塞(へいそく)▽通貨偽造及び行使等▽外国通貨偽造及び行使等▽有印公文書偽造等▽有印虚偽公文書作成等▽公正証書原本不実記載等▽偽造公文書行使等▽有印私文書偽造等▽偽造私文書等行使▽私電磁的記録不正作出及び供用▽公電磁的記録不正作出及び供用▽有価証券偽造等▽偽造有価証券行使等▽支払用カード電磁的記録不正作出等▽不正電磁的記録カード所持▽公印偽造及び不正使用等▽偽証▽強制わいせつ▽強姦(ごうかん)▽準強制わいせつ▽準強姦▽墳墓発掘死体損壊等▽収賄▽事前収賄▽第三者供賄▽加重収賄▽事後収賄▽あっせん収賄▽傷害▽未成年者略取及び誘拐▽営利目的等略取及び誘拐▽所在国外移送目的略取及び誘拐▽人身売買▽被略取者等所在国外移送▽営利拐取等幇助目的被拐取者収受▽営利被拐取者収受▽身の代金被拐取者収受等▽電子計算機損壊等業務妨害▽窃盗▽不動産侵奪▽強盗▽事後強盗▽昏酔(こんすい)強盗▽電子計算機使用詐欺▽背任▽準詐欺▽横領▽盗品有償譲受け等
【組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律】組織的な封印等破棄▽組織的な強制執行妨害目的財産損壊等▽組織的な強制執行行為妨害等▽組織的な強制執行関係売却妨害▽組織的な常習賭博▽組織的な賭博場開張等図利▽組織的な殺人▽組織的な逮捕監禁▽組織的な強要▽組織的な身の代金目的略取等▽組織的な信用毀損(きそん)・業務妨害▽組織的な威力業務妨害▽組織的な詐欺▽組織的な恐喝▽組織的な建造物等損壊▽組織的な犯罪に係る犯人蔵匿等▽不法収益等による法人等の事業経営の支配を目的とする行為▽犯罪収益等隠匿
【爆発物取締罰則】製造・輸入・所持・注文▽幇助のための製造・輸入等▽製造・輸入・所持・注文(第1条の犯罪の目的でないことが証明できないとき)▽爆発物の使用、製造等の犯人の蔵匿等
【外国ニ於テ流通スル貨幣紙幣銀行券証券偽造変造及模造ニ関スル法律】偽造等▽偽造外国流通貨幣等の輸入▽偽造外国流通貨幣等の行使等
【印紙犯罪処罰法】偽造等▽偽造印紙等の使用等
【海底電信線保護万国連合条約罰則】海底電信線の損壊
【労働基準法】強制労働
【職業安定法】暴行等による職業紹介等
【児童福祉法】児童淫行
【郵便法】切手類の偽造等
【金融商品取引法】虚偽有価証券届出書等の提出等▽内部者取引等
【大麻取締法】大麻の栽培等▽大麻の所持等▽大麻の使用等
【船員職業安定法】暴行等による船員職業紹介等
【競馬法】無資格競馬等
【自転車競技法】無資格自転車競走等
【外国為替及び外国貿易法】国際的な平和及び安全の維持を妨げることとなる無許可取引等▽特定技術提供目的の無許可取引等
【電波法】電気通信業務等の用に供する無線局の無線設備の損壊等
【小型自動車競走法】無資格小型自動車競走等
【文化財保護法】重要文化財の無許可輸出▽重要文化財の損壊等▽史跡名勝天然記念物の滅失等
【地方税法】軽油等の不正製造▽軽油引取税に係る脱税
【商品先物取引法】商品市場における取引等に関する風説の流布等
【道路運送法】自動車道における自動車往来危険▽事業用自動車の転覆等
【投資信託及び投資法人に関する法律】投資主の権利の行使に関する利益の受供与等についての威迫行為
【モーターボート競走法】無資格モーターボート競走等
【森林法】保安林の区域内における森林窃盗▽森林窃盗の贓物(ぞうぶつ)の運搬等▽他人の森林への放火
【覚せい剤取締法】覚醒剤の輸入等▽覚醒剤の所持等▽営利目的の覚醒剤の所持等▽覚醒剤の使用等▽営利目的の覚醒剤の使用等▽管理外覚醒剤の施用等
【出入国管理及び難民認定法】在留カード偽造等▽偽造在留カード等所持▽集団密航者を不法入国させる行為等▽営利目的の集団密航者の輸送▽集団密航者の収受等▽営利目的の難民旅行証明書等の不正受交付等▽営利目的の不法入国者等の蔵匿等
【旅券法】旅券等の不正受交付等
【日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第6条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定の実施に伴う刑事特別法】偽証▽軍用物の損壊等
【麻薬及び向精神薬取締法】ジアセチルモルヒネ等の輸入等▽ジアセチルモルヒネ等の製剤等▽営利目的のジアセチルモルヒネ等の製剤等▽ジアセチルモルヒネ等の施用等▽営利目的のジアセチルモルヒネ等の施用等▽ジアセチルモルヒネ等以外の麻薬の輸入等▽営利目的のジアセチルモルヒネ等以外の麻薬の輸入等▽ジアセチルモルヒネ等以外の麻薬の製剤等▽麻薬の施用等▽向精神薬の輸入等▽営利目的の向精神薬の譲渡等
【有線電気通信法】有線電気通信設備の損壊等
【武器等製造法】銃砲の無許可製造▽銃砲弾の無許可製造▽猟銃等の無許可製造
【ガス事業法】ガス工作物の損壊等
【関税法】輸出してはならない貨物の輸出▽輸入してはならない貨物の輸入▽輸入してはならない貨物の保税地域への蔵置等▽偽りにより関税を免れる行為等▽無許可輸出等▽輸出してはならない貨物の運搬等
【あへん法】けしの栽培等▽営利目的のけしの栽培等▽あへんの譲渡し等
【自衛隊法】自衛隊の所有する武器等の損壊等
【出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律】高金利の契約等▽業として行う高金利の契約等▽高保証料▽保証料がある場合の高金利等▽業として行う著しい高金利の脱法行為等
【補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律】不正の手段による補助金等の受交付等
【売春防止法】対償の収受等▽業として行う場所の提供▽売春をさせる業▽資金等の提供
【高速自動車国道法】高速自動車国道の損壊等
【水道法】水道施設の損壊等
【銃砲刀剣類所持等取締法】拳銃等の発射▽拳銃等の輸入▽拳銃等の所持等▽拳銃等の譲渡し等▽営利目的の拳銃等の譲渡し等▽偽りの方法による許可▽拳銃実包の輸入▽拳銃実包の所持▽拳銃実包の譲渡し等▽猟銃の所持等▽拳銃等の輸入に係る資金等の提供
【下水道法】公共下水道の施設の損壊等
【特許法】特許権等の侵害
【実用新案法】実用新案権等の侵害
【意匠法】意匠権等の侵害
【商標法】商標権等の侵害
【道路交通法】不正な信号機の操作等
【医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律】業として行う指定薬物の製造等
【新幹線鉄道における列車運行の安全を妨げる行為の処罰に関する特例法】自動列車制御設備の損壊等
【電気事業法】電気工作物の損壊等
【所得税法】偽りその他不正の行為による所得税の免脱等▽偽りその他不正の行為による所得税の免脱▽所得税の不納付
【法人税法】偽りにより法人税を免れる行為等
【公海に関する条約の実施に伴う海底電線等の損壊行為の処罰に関する法律】海底電線の損壊▽海底パイプライン等の損壊
【著作権法】著作権等の侵害等
【航空機の強取等の処罰に関する法律】航空機の強取等▽航空機の運航阻害
【廃棄物の処理及び清掃に関する法律】無許可廃棄物処理業等
【火炎びんの使用等の処罰に関する法律】火炎びんの使用
【熱供給事業法】熱供給施設の損壊等
【航空の危険を生じさせる行為等の処罰に関する法律】航空危険▽航行中の航空機を墜落させる行為等▽業務中の航空機の破壊等▽業務中の航空機内への爆発物等の持込み
【人質による強要行為等の処罰に関する法律】人質による強要等▽加重人質強要
【細菌兵器(生物兵器)及び毒素兵器の開発、生産及び貯蔵の禁止並びに廃棄に関する条約等の実施に関する法律】生物兵器等の使用▽生物剤等の発散▽生物兵器等の製造▽生物兵器等の所持等
【貸金業法】無登録営業等
【労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律】有害業務目的の労働者派遣
【流通食品への毒物の混入等の防止等に関する特別措置法】流通食品への毒物の混入等
【消費税法】偽りにより消費税を免れる行為等
【日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法】特別永住者証明書の偽造等▽偽造特別永住者証明書等の所持
【国際的な協力の下に規制薬物に係る不正行為を助長する行為等の防止を図るための麻薬及び向精神薬取締法等の特例等に関する法律】薬物犯罪収益等隠匿
【絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律】国内希少野生動植物種の捕獲等
【不正競争防止法】営業秘密侵害等▽不正競争等
【化学兵器の禁止及び特定物質の規制等に関する法律】化学兵器の使用▽毒性物質等の発散▽化学兵器の製造▽化学兵器の所持等▽毒性物質等の製造等
【サリン等による人身被害の防止に関する法律】サリン等の発散▽サリン等の製造等
【保険業法】株主等の権利の行使に関する利益の受供与等についての威迫行為
【臓器の移植に関する法律】臓器売買等
【スポーツ振興投票の実施等に関する法律】無資格スポーツ振興投票
【種苗法】育成者権等の侵害
【資産の流動化に関する法律】社員等の権利等の行使に関する利益の受供与等についての威迫行為
【感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律】一種病原体等の発散▽一種病原体等の輸入▽一種病原体等の所持等▽二種病原体等の輸入
【対人地雷の製造の禁止及び所持の規制等に関する法律】対人地雷の製造▽対人地雷の所持
【児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律】児童買春周旋▽児童買春勧誘▽児童ポルノ等の不特定又は多数の者に対する提供等
【民事再生法】詐欺再生▽特定の債権者に対する担保の供与等
【公衆等脅迫目的の犯罪行為のための資金等の提供等の処罰に関する法律】公衆等脅迫目的の犯罪行為を実行しようとする者による資金等を提供させる行為▽公衆等脅迫目的の犯罪行為を実行しようとする者以外の者による資金等の提供等
【電子署名等に係る地方公共団体情報システム機構の認証業務に関する法律】不実の署名用電子証明書等を発行させる行為
【会社更生法】詐欺更生▽特定の債権者等に対する担保の供与等
【破産法】詐欺破産▽特定の債権者に対する担保の供与等
【会社法】会社財産を危うくする行為▽虚偽文書行使等▽預合い▽株式の超過発行▽株主等の権利の行使に関する贈収賄▽株主等の権利の行使に関する利益の受供与等についての威迫行為
【国際刑事裁判所に対する協力等に関する法律】組織的な犯罪に係る証拠隠滅等▽偽証
【放射線を発散させて人の生命等に危険を生じさせる行為等の処罰に関する法律】放射線の発散等▽原子核分裂等装置の製造▽原子核分裂等装置の所持等▽特定核燃料物質の輸出入▽放射性物質等の使用の告知による脅迫▽特定核燃料物質の窃取等の告知による強要
【海賊行為の処罰及び海賊行為への対処に関する法律】海賊行為
【クラスター弾等の製造の禁止及び所持の規制等に関する法律】クラスター弾等の製造▽クラスター弾等の所持
【平成23年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震に伴う原子力発電所の事故により放出された放射性物質による環境の汚染への対処に関する特別措置法】汚染廃棄物等の投棄等

*2-3:http://dd.hokkaido-np.co.jp/news/opinion/editorial/2-0113272.html (北海道新聞 2017/5/7) 「共謀罪」と捜査 前のめりの危険性高い
 現行の刑事法の下では、捜査は基本的に事件が発生してから始まる。罪を犯した者を罰するのが原則だからだ。だが、「共謀罪」の趣旨を盛り込んだ「テロ等準備罪」は計画段階の犯罪を広く処罰対象とする。事件がないのに、証拠収集や取り調べが行われる可能性がある。そこに、共謀罪の本質的な危険が潜んでいる。政府は国会審議で、捜査権の乱用はないと強調するが、当局が前のめりになって人権を侵害する恐れはまったく拭えていない。政府はテロ等準備罪を新設する組織犯罪処罰法改正案について、テロ組織や暴力団など組織的犯罪集団が対象だと説明。摘発には資金や物品の手配、現場の下見など「準備行為」が必要だという。だが、適用団体の定義は曖昧で、犯罪集団かどうかは捜査機関が自ら判断する。その危うさは重ねて指摘してきた。加えて、準備行為が事件に関係していることを、客観的な証拠で裏付けるのも困難ではないか。たとえば、銀行の現金自動預払機(ATM)からのお金の引き出しや、花見会場の下見である。一見、日常的な行為に過ぎず、その目的を探る捜査は供述に頼らざるを得なくなるだろう。供述偏重の捜査は、冤罪(えんざい)につながりかねない。過去の数々の事件が証明済みだ。金田勝年法相は「捜査に当たっては、客観証拠や供述の裏付け証拠の収集が重視される」と国会で答弁しているが、具体的な方法は明らかにしていない。一般的に、密室性の高い謀議の立証はハードルが高い。結局、証拠収集のための通信傍受が、なし崩し的に広がるのではないか。さらに注意すべきは、犯罪の実行前に自首した場合は刑を減免する―という規定である。他人に罪をなすりつける虚偽供述や、密告がはびこる社会になりかねない。それが心配だ。金田法相は、捜査機関の令状請求を審査する裁判所が、行きすぎた捜査を防ぐ歯止めになるとの見解も示している。しかし、令状審査は捜査側の言い分で判断するため、形式的になっているのが実情だ。最高裁が違法と断じた衛星利用測位システム(GPS)捜査は、そもそも警察が令状を取っていなかった。なのに、法相がもっともらしく令状主義を持ち出すのは、いかにも都合が良すぎる。

*2-4:https://www.nichibenren.or.jp/activity/document/statement/year/2017/170331.html (日本弁護士連合会会長 中本和洋 2017年3月31日) いわゆる共謀罪の創設を含む組織的犯罪処罰法改正案の国会上程に対する会長声明
 政府は、本年3月21日、いわゆる共謀罪の創設を含む組織的犯罪処罰法改正案(以下「本法案」という。)を閣議決定し、国会に本法案を上程した。当連合会は、本年2月17日付けで「いわゆる共謀罪を創設する法案を国会に上程することに反対する意見書」(以下「日弁連意見書」という。)を公表した。そこでは、いわゆる共謀罪法案は、現行刑法の体系を根底から変容させるものであること、犯罪を共同して実行しようとする意思を処罰の対象とする基本的性格はこの法案においても変わらず維持されていること、テロ対策のための国内法上の手当はなされており、共謀罪法案を創設することなく国連越境組織犯罪防止条約について一部留保して締結することは可能であること、仮にテロ対策等のための立法が十分でないとすれば個別立法で対応すべきことなどを指摘した。本法案は、日弁連意見書が検討の対象とした法案に比べて、①犯罪主体について、テロリズム集団その他の組織的犯罪集団と規定している点、②準備行為は計画に「基づき」行われる必要があることを明記し、対象犯罪の実行に向けた準備行為が必要とされている点、③対象となる犯罪が長期4年以上の刑を定める676の犯罪から、組織的犯罪集団が関与することが現実的に想定される277の犯罪にまで減じられている点が異なっている。しかしながら、①テロリズム集団は組織的犯罪集団の例示として掲げられているに過ぎず、この例示が記載されたからといって、犯罪主体がテロ組織、暴力団等に限定されることになるものではないこと、②準備行為について、計画に基づき行われるものに限定したとしても、準備行為自体は法益侵害への危険性を帯びる必要がないことに変わりなく、犯罪の成立を限定する機能を果たさないこと、③対象となる犯罪が277に減じられたとしても、組織犯罪やテロ犯罪と無縁の犯罪が依然として対象とされていることから、上記3点を勘案したとしても、日弁連意見書で指摘した問題点が解消されたとは言えない。当連合会は、監視社会化を招き、市民の人権や自由を広く侵害するおそれが強い本法案の制定に強く反対するものであり、全国の弁護士会及び弁護士会連合会とともに、市民に対して本法案の危険性を訴えかけ、本法案が廃案になるように全力で取り組む所存である。

*2-5:http://www.kanaben.or.jp/profile/gaiyou/statement/2017/post-268.html (2017年4月26日 神奈川県弁護士会会長 延命政之) いわゆる「共謀罪」法案の廃案を求める会長声明
1.  政府は、本年3月21日、いわゆる共謀罪の創設を含む組織的犯罪処罰法一部改正案(以下「本法案」という。)を閣議決定し、衆議院に提出した。当会は、2016年12月8日付けで「いわゆる共謀罪新法案の国会提出に反対する会長声明」を発しているところであるが、それにもかかわらず本法案が提出されたことは極めて遺憾であり、改めて本法案に対する当会の意見を表明する。
2.  本法案では、①犯罪主体について、従前「組織的犯罪集団」とされていた規定が「テロリズム集団その他の組織的犯罪集団」と改められており、また、②対象犯罪を676から277に減じたとされている。①の「テロリズム集団」の文言は、テロ対策を標榜しつつテロとの関係が明らかでなかった政府原案に対する批判を受けて急遽追加されたものであるが、本法案には「テロリズム集団」の定義規定はない。「組織的犯罪集団」の意義が捜査機関によって恣意的に解釈され、摘発される対象が拡大する危険性が高いという問題点は何ら解消されていない。すなわち「テロリズム集団」の文言が加わったとしても、処罰範囲の限定にならないことは明白である。また、②についても、仮に対象犯罪が277に減じられたとしても、組織的犯罪やテロ犯罪と無縁のものも依然として対象とされている。共謀罪は、「行為」を処罰する我が国の刑法の基本原則を否定するものである以上、いかに対象犯罪数を減らそうとも、軽々に認められるものではない。つまり、本法案は、過去3回も廃案になった共謀罪の問題点が何ら解消されていないのである。  
3.  当会が従前指摘していたとおり、構成要件が不明瞭であって罪刑法定主義にも反する本法案は、共謀という意思の連絡自体が犯罪として捜査対象となるために、通信傍受の対象とされた場合監視社会化を招き、憲法の保障する思想・良心の自由、表現の自由、通信の秘密及びプライバシーなどを侵害し、基本的人権の行使に対して深刻な萎縮効果をもたらすおそれがある。当会は、本法案の閣議決定および衆議院提出に対して、改めて抗議すると共に、本法案の廃案を求めるものである。  

*2-6:http://www.shinmai.co.jp/news/nagano/20170501/KT170428ETI090010000.php (信濃毎日新聞 2017.5.1) 憲法の岐路 強まる監視 拒否する意思示すとき
 新たな米軍基地建設のため、海を埋め立てる工事が強行された沖縄・辺野古。基地反対運動の先頭に立ち続けてきた山城博治さんの姿がそこにない。昨年秋に逮捕、起訴され、勾留は5カ月にも及んだ。この3月に保釈が認められたものの、事件関係者と接触を禁じる条件がつき、現場に行けない日が続く。有刺鉄線を1本切ったことが器物損壊に、工事車両の進入を阻もうとコンクリートブロックを積んだことが威力業務妨害にあたるとされた。逮捕する必要性すら疑わしい事案だと、多くの刑事法学者が指摘している。言論・表現の自由は憲法が保障する基本的人権の核を成す。政治的な意見の表明は、民主主義による意思決定の基盤としてとりわけ尊重されなければならない。
●弾圧に道開く共謀罪
 基地建設を強権的に進める政府に抗議するのは何ら不当なことではない。反対運動の中心人物の行動を強制力をもって封じることは弾圧にほかならない。沖縄で起きていることに目を凝らすと、政府・与党が今、強引に成立させようとしている共謀罪法案の怖さが際立ってくる。市民運動へのさらに厳しい弾圧に道を開きかねないからだ。犯罪の実行に至らなくても、共謀しただけで処罰の対象にする。合意した人すべてに網がかかる。何をもって合意したと判断するかは明確でない。相づちを打つことも合意とみなされ得る。誰か1人が準備行為をすれば、他の人を含めて一網打尽にできる―。安倍晋三首相の答弁が、本質を映し出している。共謀罪が設けられる犯罪は幅広い。組織的な威力業務妨害も含まれる。原発再稼働や公共事業への抗議運動を含め、政府の方針に反対する人たちが、妨害行為を計画したとして一掃される恐れさえ、ないとは言えない。準備行為として挙げた資金・物品の手配や下見は、日常の行動と見分けにくい。事前に共謀を察知しなければ、準備と判断しようがない。当局が目をつけた組織や市民の動向を把握することが、捜査を名目に正当化される。欠かせないのが盗聴だ。通信傍受法の対象犯罪に共謀罪を加えることを政府は「検討課題」としている。憲法が保障する「通信の秘密」が有名無実化しかねない。室内に盗聴器を置く会話傍受も、いずれ認められないか心配だ。警察の権限が強まり、監視と個人情報の収集が一段と進むことは間違いない。プライバシーが侵され、公権力が内心に踏み入ってくる危険は増す。密告を促す規定もある。当局の監視にとどまらず、人と人が互いに監視し合う息苦しさを生み、社会を表情のない人の群れに変えていかないか。
●戦時治安国家の様相
 戦時下、思想・言論の弾圧によって人権が著しく損なわれた反省から、現憲法は刑罰権の乱用を防ぐ詳細な規定を置いた。刑法も刑罰権に縛りをかけることに本来の役割がある。思想でなく行為を罰することは根本原則だ。共謀罪はそれを逸脱し、処罰の枠組みを一気に押し広げる。人権を守り、自由を確保するための憲法の骨組み全体が揺らぐ。政府が持つ情報を広く覆い隠す特定秘密保護法。集団的自衛権の行使を容認し、憲法の平和主義を変質させた安全保障法制。そして共謀罪。次々と進む法整備によって、日本は再び“戦時治安国家”の様相を帯びていないか。その先に安倍政権が目指す改憲がある。自民党の改憲草案は、権利全体に〈公益及び公の秩序に反してはならない〉と枠をはめた。人権の主体である「個人」は、単に「人」と変えられている。国民の権利と自由の前に、国家が大きく立ちはだかる。公権力の横暴にさらされても、対抗するためのよりどころはそこにない。日本の現在の状況は、昭和3(1928)年に似ている―。九州大名誉教授の内田博文さん(刑事法)が著書で指摘している。31年の満州事変に始まる15年戦争の“前夜”にあたる時期だ。
●今はまだ引き返せる
 25年に制定された治安維持法は3年後のこの年の改定で「目的遂行罪」が設けられた。何であれ、「国体変革」の目的を遂行するための行為と当局が決めつければ取り締まれる。それによって処罰の対象が歯止めなく広がったことは、共謀罪と重なる。治安維持法の廃止を含め、「引き返す」選択もあり得たのに、当時の日本は放棄してしまった、と内田さんは述べる。けれど今はまだその道が残っている、と。監視が強まり、権力が内心に踏み込んでくるのを黙って認めるわけにはいかない。一人一人が自分の言葉で拒否の意思を示したい。押しとどめる力は、声を積み重ねることでしか生まれない。


<軽視された民主主義>
PS(2017年5月12日):安倍内閣が、*3-1のように、「教育勅語を憲法や教育基本法に反しない形で教材として用いることまでは否定されない」という答弁書を閣議決定したそうだが、教育勅語は、天皇主権に基づき、天皇の臣民である国民は事が起きれば天皇のために命を捧げよと言っているのであり、ここで述べられている親孝行や家族愛も家制度の下で家父長や親への服従を強いたものである。そのため、教育勅語は、日本国憲法の主権在民(民主主義)・基本的人権の尊重・男女平等などに根本的に反しており、私も、*3-2のように、歴史教育以外では、憲法や教育基本法に反せず教育勅語を学校教育で使用することは不可能だと考える。

*3-1:http://blogos.com/article/216902/ (BLOGOS 2017年4月4日) 教育勅語を教材で使用認める閣議決定は時代錯誤
 安倍内閣が、教育勅語について、「憲法や教育基本法に反しない形で教材として用いることまでは否定されない」という答弁書を閣議決定しました。これは、時代錯誤でしかないと思います。教育勅語は、終戦後の1948年、衆議院で排除の決議が、参議院で失効の決議がされているものです。参議院決議では、「われらは日本国憲法ののっとり、教育基本法を制定し、わが国とわが民族を中心とする教育の誤りを払拭し、真理と平和を希求する人間を育成する民主主義的教育理念を宣言した。教育勅語がすでに効力を失った事実を明確にし、政府は勅語の謄本をもれなく回収せよ」としています。今回の閣議決定は、これと対立するものです。森友問題をめぐって、稲田防衛大臣が「教育勅語に流れているところの核の部分は取り戻すべきだ」と答弁したことが、直接のきっかけになった、とも言われています。教育勅語は、天皇中心の国体観に基づき、事が起きれば天皇のために命を捧げるという考え方であり、憲法や教育基本法に反するから排除されたものです。親孝行や家族愛、友達を大切に等は、今も必要ということのようですが、それは教育勅語によらなくても教えられるはずです。戦後レジームからの脱却を掲げてきた総理や、現在の政権の体質に強い危惧を持ちます。

*3-2:https://sites.google.com/site/kyoikuchokugonikansuruseimei/home (2017年4月27日 教育研究者有志) 教育現場における教育勅語の使用に関する声明
【要約】
 次世代を担う子どもたちの成長に対し重要な責任を負う教育において、現憲法下での国民主権に反する教育勅語を復活させることは弊害が大きい。しかし、最近の政府は「憲法や教育基本法の趣旨に反しない」という条件をつけながらも、「教員および学校長の判断において」教育勅語の学校教育での使用を容認する姿勢を示している。これは教育勅語そのものが憲法と教育基本法に反しているとした過去の国会決議や政府発言を根拠なく変更するものである。それゆえ我々は、「教育現場において、教育勅語の全体及び一部を、その歴史的な性格に対する批判的な認識を形成する指導を伴わずに使用することを認めない」という決然たる姿勢を政府に求めるとともに、教員・学校長・所轄庁のいずれもが、民主主義・国民主権・基本的人権と相対立する教育勅語の思想や価値観と決別することの必要性を、強く訴える。
【全文】
 現代においては、国境を超えた人々や情報の交流が進むとともに、人々の生活や人生の多様化も進んでいる。このような中で次世代を担う子どもたちは、多様な他者との協同のもとで、全ての人々の基本的人権を尊重し民主主義的な社会を築く主体となることが期待されており、そのために教育は重要な責任を負っている。それゆえ、戦前の大日本帝国憲法下における「国家元首かつ統治権の総攬者」としての天皇や国体思想を前提とし、現憲法下での国民主権に反するかつての教育思想を現在に復活させることは、いかなる面から見ても弊害が大きいことは論を俟たない。しかるに今、教育勅語を教育現場で使用することに対する政府の容認的姿勢が目立ち始めている。政府は、2017年2月27日に逢坂誠二議員より提出された「教育基本法の理念と教育勅語の整合性に関する質問主意書」に対する答弁書において、学校教育法上の学校において教育のために教育勅語が使用されること、教育勅語を繰り返し暗唱させることに関して、「お尋ねのような行為が教育基本法(平成十八年法律第百二十号)や学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)に違反するか否かについては、個別具体的な状況に即して判断されるべきものであり、一概にお答えすることは困難である。その上で、一般論として、仮に、同法第一条の「幼稚園」又は「小学校」(以下これらを合わせて「学校」という。)において不適切な教育が行われている場合は、まずは、当該学校の設置者である市町村又は学校法人等において、必要に応じ、当該学校に対して適切な対応をとり、都道府県においても、必要に応じ、当該学校又は当該学校の設置者である市町村若しくは学校法人等に対して適切な対応をとることになる。また、文部科学省においては、必要に応じ、当該学校の設置者である市町村又は当該都道府県に対して適切な対応をとることになる。」と答弁している。その後も国会答弁、文部科学省記者会見、質問主意書に対する答弁において、政府は「憲法や教育基本法の趣旨に反しない限り」、「教員および学校長の判断において」教育勅語の学校教育での使用を容認し、不適切な場合は「所轄庁が適切に指導する」という発言を繰り返している。むろん、個々の教師は思想信条の自由を保障されるべきであり、また私立の学校は建学の理念に即した教育を行うことが認められている。しかし、教育勅語という対象への上記のような政府の姿勢は、過去の国会決議や政府見解に照らせば、従来の方針に対して重大な変更を恣意的に加えたものと言わざるをえない。すでに1948年の時点で、衆参両院は、「根本理念が主権在君並びに神話的國体観に基いている事実は、明かに基本的人権を損い、且つ國際信義に対して疑点を残すもととなる」(1948年6月19日衆議院・教育勅語等排除に関する決議)との理由から、教育勅語の排除・失効を決議している。それゆえ、教育勅語そのものが憲法と教育基本法に反しているのであり、「それらに反しない」形での使用とは、「教育勅語は憲法と教育基本法に反している」ことを教える場合のみであるということになる。また歴代文部大臣は、「敗戰後の日本は、國民教育の指導理念として民主主義と平和主義とを高く揚げましたが、同時に、これと矛盾せる教育勅語その他の詔勅に対しましては、教育上の指導原理たる性格を否定してきたのであります」という1948年6月19日第2回国会衆議院本会議における森戸辰男文部大臣発言、およびある私立高校が学校行事で教育勅語を朗読していることが問題とされた際の「昭和二十一年及び二十三年、自後教育勅語を朗読しないこと、学校教育において使わないこと、また衆参両議院でもそういう趣旨のことを決議されております。(中略)教育勅語の成り立ち及び性格、そういう観点からいって、現在の憲法、教育基本法のもとでは不適切である、こういうことが方針が決まっておるわけでございます」という1983年5月11日第98国会参議院決算委員会における瀬戸山三男文部大臣発言等、これを教育理念とすることを明確に否定してきた。過去の国会決議や政府発言と比べて、今回の政府見解等は、教育勅語への容認の度合いを根拠なく強めるものであり、正当性を欠いている。さらに、以下の諸点において、前記の政府の姿勢は、子どもたちが民主主義的な社会の担い手として成長を遂げる過程に対し、教育現場で教育勅語が不適切な形で使用される事態を防ぐためにはきわめて不十分である。第一に、その成り立ちや性格全体から切り離して、憲法や教育基本法の趣旨と一見合致するような教育勅語の一部分が教育現場で使用された場合、教育勅語全体の性質や歴史的背景についての批判的理解が子どもたちに形成されないおそれがある。第二に、実際に学校教育法上の学校(幼稚園を含む)において教育勅語の朗読等が長期にわたり行われていた複数の事例が存在することからもわかるように、憲法や教育基本法の趣旨と反する思想をもつ教員や学校長が教育勅語を使用し、所轄庁の発見や指導が遅れたり不十分となったりするケースは容易に想定される。その場合、子どもたちは、そのような教育が行われなければ実現されていたはずの成長を阻害されるという点で、多大な損害を被ることになる。これらの理由により、教育現場における教育勅語の不適切な使用に対しては、より実効ある防止策が求められる。それゆえ、我々は、過去の政府見解も踏まえ、「教育現場において、教育勅語の全体及び一部を、その歴史的な性格に対する批判的な認識を形成する指導を伴わずに使用することを認めない」という決然たる姿勢を政府に求めるとともに、教員・学校長・所轄庁のいずれもが、民主主義・国民主権・基本的人権と相対立する教育勅語の思想や価値観と決別することの必要性を、強く訴えるものである。


PS(2017年5月14日追加):*4のように、警察は自らストーリーを描き、それに合わせて供述や証拠を集めるため、聞く耳を持たず強引になる。さらに、そのストーリーは、裁判で確実に罪にするため、過去の判例で犯罪とされたことのあるものに近くなるよう設定されるので、古くて陳腐化したものになる。もちろん、その原因には、一般社会と切り離された生活をしている警察官の想像力の限界や権威主義もあるだろうが、どんな理由があるにせよ、捜査による冤罪被害者が長期間拘束された後で無罪であることがわかっても、その間の人権侵害や名誉棄損等の人生における被害は、取り返しのつくものではないのだ。

*4:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12936582.html (朝日新聞 2017年5月14日) 筋書き通りの自白、危惧 「共謀罪」少ない物証、供述頼みに?
 「共謀罪」の趣旨を盛り込んだ組織的犯罪処罰法改正案は、犯罪を実行前の計画段階で処罰するため、物証が少なく自白重視の捜査になる、との指摘がある。2003年の鹿児島県議選をめぐる冤罪(えんざい)事件「志布志事件」=キーワード=で無罪となった元被告たちは、取り調べで虚偽自白を迫られた自らの体験から「強引な捜査が行われるのでは」と危惧する。
●「『共謀罪』ができたら、いま以上に怖い社会になる」
 鹿児島県志布志市の酒造会社社長、中山信一さん(71)は14年前、県議に初当選した直後に逮捕、起訴された。会合を開いて有権者に現金を配った公職選挙法違反(買収)の疑い。裁判でアリバイが認められ、判決は、会合自体が存在しない「架空の事件」だったことを示唆。起訴された12人全員の無罪が確定した。「共謀罪」の国会審議で政府は「一般人は対象外」「裁判所による令状審査が機能しており、恣意(しい)的な運用はできない」などと答弁している。ただ、一般人かどうか、嫌疑の有無などの判断をするのは捜査当局だ。中山さんは「一度決めれば、あらゆる手段を使って、描いた筋書き通りに『犯人』を仕立てる危険がある」と感じる。志布志事件では、警察からは「自白」を迫られ、否認すると395日間勾留された。取調官は「認めなければ娘も息子も逮捕する」などと怒鳴った。ともに逮捕された妻が自供したので罪を認めるように、と迫られたこともある。心が折れそうになったが、否認を貫いた。後で妻は自供しておらず、取調官がうそをついていたことを知った。「警察はシナリオを書いたらあの手この手で認めさせようとする。みな自分に関係ないと思っているのだろうが、自分に降りかかってきてからでは手遅れだ」
■「警察聞く耳もたなかった」
 志布志事件では6人が、捜査側に強要されてうその自白をした。そのひとり、藤山忠(すなお)さん(69)は逮捕前に14日間、約138時間事情聴取された。逮捕後も含めると、取り調べ時間は計538時間。結局、虚偽の自白をし、容疑を認めた。「いくらやっていないと言っても、警察は聞く耳をもたなかった。『共謀罪』で政府が『恣意的な捜査はしない』『適正に運用する』と言っても信用できない」。元被告以外にも多くの住民が「任意捜査」の名のもとで厳しい取り調べを受けた。同市でホテルを経営する川畑幸夫さん(71)は「ちょっと話を聞かせて」と連れていかれた警察署で、朝から晩まで取り調べを受けた。「警察という組織はバックすることを知らない。こっちの話は全く聞かず、そのまま突っ走る。法案を成立させるなら、任意の段階から取り調べを全面的に可視化し、すべてを録画・録音するべきだ」
    ◇
 国会でも「供述頼みの捜査が加速する」との懸念が議論になっている。政府は「共謀罪」で「通信傍受(盗聴)はしない」と説明。容疑者が犯罪を「共謀」したことを示す証拠として、メールやLINEのほか、関係者の供述が重視されることになるとみられる。一部の野党は違法な取り調べを避けるため「録音・録画を義務づけるべきだ」と主張。与党と日本維新の会は、条文に「取り調べを含む捜査の適正確保への配慮」を明記し、「付則」に「可視化を検討する」などと盛りこむ法案の修正に合意した。ただ、可視化も条文に明記すべきだとの意見もある。
◆キーワード
<志布志事件> 2003年の鹿児島県議選で当選した県議が同県志布志市の住民らと買収の会合を開き計191万円の授受をしたとして、鹿児島県警が公職選挙法違反容疑で15人を逮捕。うち13人が起訴された(うち1人は公判中に死亡)。07年、鹿児島地裁で被告全員の無罪判決が確定。元被告らが起こした民事訴訟で、捜査の違法性が認定された。


<教育基本法に定められている義務教育の無償・教育の機会均等・生涯教育>
PS(2017年5月14日追加): *5-2のように、①義務教育は授業料をとらず ②高等教育は機会均等になるようにし ③生涯教育を充実する ということが、教育基本法で立派に定められているため、より充実したければ教育基本法を改正して幼稚園から高校までを義務教育(無償)とし、大学以降は授業料の引下げ、学生寮の充実、奨学金の拡充などを行うのが合理的だと考える。そして、その財源は、景気対策と称して行う無駄遣いや廃止すべき補助金の廃止で何十兆円も出る筈で、財源の問題は高等教育までの無償化を憲法に記載するか否かとは無関係だ。そのため、*5-1に書かれているとおり、防衛の重大な転機とする憲法変更のだしとして教育無償化を使うのはやめてもらいたい。

 
   幼稚園利用率推移     保育所利用率推移     幼稚園と保育所の違い   
(図の説明:幼稚園と保育所の利用率は、5歳児では95%以上、3歳児でも76%以上であり、保育所の待機児童数は多い。一方、幼稚園は教育機関として幼児教育を行うのに対し、保育所は家庭と同じ居場所の位置付けにすぎない。しかし、働いている親も、幼児教育をしてくれた方が有り難く、必要な場合は長時間預かって欲しいため、3歳以上は義務教育とし、それ以外の時間帯に預かる場合は学童保育とするのがよいと思われる。なお、義務教育なら授業料は無料だ)

      
       高校進学率推移         大学・短大・専門学校進学率推移
(図の説明:高校進学率は平成20年度でも97%程度であるため、義務教育として授業料を無料にするのがよいと思われる。しかし、大学・短大・専門学校は、合わせても平成27年度で71%程度であるため、授業料の低減、奨学金の充実、安価で質の良い学生寮の整備などの方が公正で効果的だと考える)

*5-1:http://digital.asahi.com/articles/ASK5C4J02K5CUTIL018.html (朝日新聞 2017年5月14日) 教育無償化に改憲必要? 木村草太教授「法律で十分だ」
 安倍晋三首相が憲法改正の項目として打ち上げた、大学や短大、専門学校といった高等教育の無償化。だが、民主党政権は、改憲ではなく法律で高校授業料の無償化を実現した。さらに自民党は高校無償化に強く反対し、その文言は今でも党のホームページにある。そんな政権の矛盾した姿勢に、「憲法改正の方便だ」との声が相次ぐ。「高等教育についても、全ての国民に真に開かれたものとしなければならない」。安倍首相(自民党総裁)は今月3日、憲法改正を訴える団体が開いた集会に寄せたメッセージでこう述べた。「義務教育は、これを無償とする」とした憲法26条を評価したうえでの発言だった。9日の参院予算委員会では、教育無償化を憲法に盛り込むべきだとする日本維新の会の片山虎之助氏が「(憲法改正の項目に)教育を入れていただいたのは何かお考えがあるのですか」と質問。これに対し、首相は「世代を超えた貧困の連鎖を断ち切り、家庭の経済事情にかかわらず、子どもたちが夢に向かって頑張ることができる日本でありたい」と応じ、9条と並ぶ改憲項目に位置づけた。しかし、憲法学者の間では「高等教育の無償化に憲法改正は必要ない」という見方が大勢だ。高校無償化についてはすでに民主党政権で立法によって実施済み。首都大学東京の木村草太教授(憲法学)も「法律で必要十分だ。自民党が日本維新の会が出している教育無償化の法案に賛成すればいいだけだ」と指摘する。憲法に書けば、無償化が実現しない場合に違憲訴訟が起こせるなど、時の政権への強制力が増すことも考えられるが、木村教授は「本当に無償化が必要だと思うのなら、時間がかかる憲法改正ではなく、今すぐ法律でやるべきだ」と話す。
■自民、野党時は高校無償化批判
 加えて、自民党はそもそも高校無償化に後ろ向きだった経緯があり、野党からは、教育無償化が改憲のための大義名分に過ぎないといった見方が出ている。自民党は野党時代、民主党政権が提案した公立高校の授業料の無償化と私立高校生への就学支援金の導入に反対した。国会審議では「ある種のばらまき的な政策」「一律に無償化するのではなく、低所得者にもっと拡充するべきではないか」などと追及。11日現在でも、党のホームページに「高校授業料無償化の問題点!」として、「理念なき選挙目当てのバラマキ政策には反対です」と掲げる。また、自民党政権は1979年に批准した国際人権規約で、中等教育と高等教育に対する「無償教育の漸進的な導入」を掲げた部分について、「日本では私立学校の割合が高く、私学を含めた無償教育の導入は、私学制度の根本原則にも関わる」と主張し、適用されないよう「留保」。高校無償化を実現した民主党政権が2012年に撤回した。現在、日本は高等教育への公的な財政支出が少なく、先進国の中で最低レベルだ。経済協力開発機構(OECD)の調査によると、13年時点で、高等教育機関に対する私費負担の割合は65%。韓国に次いで高く、OECD平均30%の2倍以上にのぼる。矢野真和・東京工業大名誉教授(教育経済学)の試算によると、大学の授業料の無償化には約2・5兆円が必要で、維新の試算によると、0歳児から大学院までの無償化に約4・3兆円の財源が必要だという。矢野名誉教授は「これまで『財源がない』として教育予算を減らしてきた中で、どう財源を確保するのかのグランドデザインを議論するほうが先だ」と話す。こうした安倍政権や自民党の姿勢に対し、民進党の野田佳彦幹事長は8日の記者会見でこう批判した。「我々が高校の授業料の無償化をやった時には『バラマキ』と言って反対してきたにもかかわらず、今度は無償化を憲法改正に位置づけようという話だ。一貫性を感じない」(杉原里美)

*5-2:http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H18/H18HO120.html 教育基本法 (平成十八年十二月二十二日法律第百二十号)
 教育基本法(昭和二十二年法律第二十五号)の全部を改正する。我々日本国民は、たゆまぬ努力によって築いてきた民主的で文化的な国家を更に発展させるとともに、世界の平和と人類の福祉の向上に貢献することを願うものである。我々は、この理想を実現するため、個人の尊厳を重んじ、真理と正義を希求し、公共の精神を尊び、豊かな人間性と創造性を備えた人間の育成を期するとともに、伝統を継承し、新しい文化の創造を目指す教育を推進する。ここに、我々は、日本国憲法 の精神にのっとり、我が国の未来を切り拓く教育の基本を確立し、その振興を図るため、この法律を制定する。
 前文
 第一章 教育の目的及び理念(第一条―第四条)
 第二章 教育の実施に関する基本(第五条―第十五条)
 第三章 教育行政(第十六条・第十七条)
 第四章 法令の制定(第十八条)
 附則
  第一章 教育の目的及び理念
(教育の目的)
第一条  教育は、人格の完成を目指し、平和で民主的な国家及び社会の形成者として必要な資質を備えた心身ともに健康な国民の育成を期して行われなければならない。
(教育の目標)
第二条  教育は、その目的を実現するため、学問の自由を尊重しつつ、次に掲げる目標を達成するよう行われるものとする。
一  幅広い知識と教養を身に付け、真理を求める態度を養い、豊かな情操と道徳心を培うとともに、健やかな身体を養うこと。
二  個人の価値を尊重して、その能力を伸ばし、創造性を培い、自主及び自律の精神を養うとともに、職業及び生活との関連を重視し、勤労を重んずる態度を養うこと。
三  正義と責任、男女の平等、自他の敬愛と協力を重んずるとともに、公共の精神に基づき、主体的に社会の形成に参画し、その発展に寄与する態度を養うこと。
四  生命を尊び、自然を大切にし、環境の保全に寄与する態度を養うこと。
五  伝統と文化を尊重し、それらをはぐくんできた我が国と郷土を愛するとともに、他国を尊重し、国際社会の平和と発展に寄与する態度を養うこと。
(生涯学習の理念)
第三条  国民一人一人が、自己の人格を磨き、豊かな人生を送ることができるよう、その生涯にわたって、あらゆる機会に、あらゆる場所において学習することができ、その成果を適切に生かすことのできる社会の実現が図られなければならない。
(教育の機会均等)
第四条  すべて国民は、ひとしく、その能力に応じた教育を受ける機会を与えられなければならず、人種、信条、性別、社会的身分、経済的地位又は門地によって、教育上差別されない。
2  国及び地方公共団体は、障害のある者が、その障害の状態に応じ、十分な教育を受けられるよう、教育上必要な支援を講じなければならない。
3  国及び地方公共団体は、能力があるにもかかわらず、経済的理由によって修学が困難な者に対して、奨学の措置を講じなければならない。
  第二章 教育の実施に関する基本
(義務教育)
第五条  国民は、その保護する子に、別に法律で定めるところにより、普通教育を受けさせる義務を負う。
2  義務教育として行われる普通教育は、各個人の有する能力を伸ばしつつ社会において自立的に生きる基礎を培い、また、国家及び社会の形成者として必要とされる基本的な資質を養うことを目的として行われるものとする。
3  国及び地方公共団体は、義務教育の機会を保障し、その水準を確保するため、適切な役割分担及び相互の協力の下、その実施に責任を負う。
4  国又は地方公共団体の設置する学校における義務教育については、授業料を徴収しない。
(学校教育)
第六条  法律に定める学校は、公の性質を有するものであって、国、地方公共団体及び法律に定める法人のみが、これを設置することができる。
2  前項の学校においては、教育の目標が達成されるよう、教育を受ける者の心身の発達に応じて、体系的な教育が組織的に行われなければならない。この場合において、教育を受ける者が、学校生活を営む上で必要な規律を重んずるとともに、自ら進んで学習に取り組む意欲を高めることを重視して行われなければならない。
(大学)
第七条  大学は、学術の中心として、高い教養と専門的能力を培うとともに、深く真理を探究して新たな知見を創造し、これらの成果を広く社会に提供することにより、社会の発展に寄与するものとする。
2  大学については、自主性、自律性その他の大学における教育及び研究の特性が尊重されなければならない。
(私立学校)
第八条  私立学校の有する公の性質及び学校教育において果たす重要な役割にかんがみ、国及び地方公共団体は、その自主性を尊重しつつ、助成その他の適当な方法によって私立学校教育の振興に努めなければならない。
(教員)
第九条  法律に定める学校の教員は、自己の崇高な使命を深く自覚し、絶えず研究と修養に励み、その職責の遂行に努めなければならない。
2  前項の教員については、その使命と職責の重要性にかんがみ、その身分は尊重され、待遇の適正が期せられるとともに、養成と研修の充実が図られなければならない。
(家庭教育)
第十条  父母その他の保護者は、子の教育について第一義的責任を有するものであって、生活のために必要な習慣を身に付けさせるとともに、自立心を育成し、心身の調和のとれた発達を図るよう努めるものとする。
2  国及び地方公共団体は、家庭教育の自主性を尊重しつつ、保護者に対する学習の機会及び情報の提供その他の家庭教育を支援するために必要な施策を講ずるよう努めなければならない。
(幼児期の教育)
第十一条  幼児期の教育は、生涯にわたる人格形成の基礎を培う重要なものであることにかんがみ、国及び地方公共団体は、幼児の健やかな成長に資する良好な環境の整備その他適当な方法によって、その振興に努めなければならない。
(社会教育)
第十二条  個人の要望や社会の要請にこたえ、社会において行われる教育は、国及び地方公共団体によって奨励されなければならない。
2  国及び地方公共団体は、図書館、博物館、公民館その他の社会教育施設の設置、学校の施設の利用、学習の機会及び情報の提供その他の適当な方法によって社会教育の振興に努めなければならない。
(学校、家庭及び地域住民等の相互の連携協力)
第十三条  学校、家庭及び地域住民その他の関係者は、教育におけるそれぞれの役割と責任を自覚するとともに、相互の連携及び協力に努めるものとする。
(政治教育)
第十四条  良識ある公民として必要な政治的教養は、教育上尊重されなければならない。
2  法律に定める学校は、特定の政党を支持し、又はこれに反対するための政治教育その他政治的活動をしてはならない。
(宗教教育)
第十五条  宗教に関する寛容の態度、宗教に関する一般的な教養及び宗教の社会生活における地位は、教育上尊重されなければならない。
2  国及び地方公共団体が設置する学校は、特定の宗教のための宗教教育その他宗教的活動をしてはならない。
  第三章 教育行政
(教育行政)
第十六条  教育は、不当な支配に服することなく、この法律及び他の法律の定めるところにより行われるべきものであり、教育行政は、国と地方公共団体との適切な役割分担及び相互の協力の下、公正かつ適正に行われなければならない。
2  国は、全国的な教育の機会均等と教育水準の維持向上を図るため、教育に関する施策を総合的に策定し、実施しなければならない。
3  地方公共団体は、その地域における教育の振興を図るため、その実情に応じた教育に関する施策を策定し、実施しなければならない。
4  国及び地方公共団体は、教育が円滑かつ継続的に実施されるよう、必要な財政上の措置を講じなければならない。
(教育振興基本計画)
第十七条  政府は、教育の振興に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、教育の振興に関する施策についての基本的な方針及び講ずべき施策その他必要な事項について、基本的な計画を定め、これを国会に報告するとともに、公表しなければならない。
2  地方公共団体は、前項の計画を参酌し、その地域の実情に応じ、当該地方公共団体における教育の振興のための施策に関する基本的な計画を定めるよう努めなければならない。
  第四章 法令の制定
第十八条  この法律に規定する諸条項を実施するため、必要な法令が制定されなければならない。
   附 則 抄
(施行期日)
1  この法律は、公布の日から施行する。


PS(2017年5月15日追加):憲法とは関係ないが、*6のように、「教員の長時間労働は深刻で、中学校の6割が過労死ライン」というような記事が多い。具体的には、①教諭は1日11時間以上働いている ②小学校教諭の約2割と中学校教諭の約4割が労災認定基準の「過労死ライン」に触れている などだ。しかし、公認会計士・税理士として働いてきた私から見ると、i)教員は夏休み・冬休み・春休みがあるので1年間を平準化すればそれほど長時間の拘束になるわけがない ii)教科の内容が毎年大きく変わるわけではないため、過去の蓄積が利用できる iii)事務作業は、担任ではなく新人教諭や事務員に任せられることも多い iv)部活も教諭よりうまく教えられる監督も多いため、そういう人を使えばよい 等々、業務の効率化・合理化により、教育の質を高めながら拘束時間を減らす解決策があると考える。そもそも、新人教諭が見習い期間もなく、採用後、直ちに経験豊富な教諭と同様の担任になるのは無理があろう。
 また、*5-2の教育基本法第9条で「教員は、自己の崇高な使命を深く自覚し、絶えず研究と修養に励み、その職責の遂行に努めなければならない」「教員の使命と職責の重要性にかんがみ、その身分は尊重され、待遇の適正が期せられるとともに、養成と研修の充実が図られなければならない」とされており、これを実現させるために、第16条で「国及び地方公共団体は、教育が円滑かつ継続的に実施されるよう、必要な財政上の措置を講じなければならない」と規定されているため、教育の質を上げながら必要な改善をするのも教育関係者の仕事の一つだ。

*6:http://digital.asahi.com/articles/ASK4Z7SG9K4ZUBQU00D.html (朝日新聞 2017年5月1日) 教員の長時間労働、深刻 中学の6割「過労死ライン」
 公立小中学校の教員の勤務時間が10年前と比べて増えたことが28日、文部科学省の調査で分かった。授業の増加が主な理由とみられ、教諭の場合は1日あたり30~40分増え、11時間以上働いている。教育現場が深刻な長時間労働に支えられている実態が、改めて裏付けられた。調査は昨年10~11月、全国の小中学校400校ずつを抽出し、校長や副校長、教諭や講師らフルタイムで働く教員を対象に実施された。小学校は8951人、中学校は1万687人が答えた。その結果によると、小学校教諭は平均で平日1日あたり11時間15分(2006年度比43分増)、中学校教諭は同11時間32分(同32分増)働いていた。労災認定基準で使われる時間外労働の「過労死ライン」は、1カ月100時間または2~6カ月の月平均80時間とされている。今回の結果をあてはめると、小学校教諭の約2割と中学校教諭の約4割が100時間、小学校の約3割と中学校の約6割が80時間の基準に触れている。文科省は「脱ゆとり」にかじを切った08年の学習指導要領改訂で、小中学校の授業時間を増やした。今回の調査と06年度を比較すると、授業と準備時間の合計は小学校教諭で1日あたり35分、中学校教諭で30分増えており、授業の増加が反映された形だ。その一方、成績処理や学級経営などの時間は減っておらず、結果的に総時間が膨らんでいる。管理職の勤務時間も増えている。小中ともに平日の勤務がもっとも長いのは副校長・教頭で、小学校は12時間12分(06年度比49分増)、中学校は12時間6分(同21分増)に上った。文科省は「地域や保護者への対応、学校からの情報公開など組織として対応しなければいけない仕事が増えた」と説明する。文科省が同様の調査を実施したのは06年度以来、10年ぶり。松野博一文科相は28日の会見で「看過できない深刻な事態が裏付けられた」と述べ、中央教育審議会で教員の働き方改革の議論を本格化させたい考えを明らかにした。


PS(2017年5月18日追加):安全保障関連法で国連憲章第51条を根拠とするフルスペックの集団的自衛権を認めたのは日本国憲法違反であり、最高裁が違憲立法審査権を持っているが、憲法を変更すれば議論の余地もなく合憲となるため、*7のように、安全保障関連法の方を見直すべきだと、私も思う。つまり、具体的に自国の領土・領海を護る範囲を超える集団的自衛権は、どんなに屁理屈をつけても違憲であり、現在では憲法だけが行き過ぎを抑えるツールになっているわけなのだ。また、兵站(英語はMilitary Logistics:広義には軍隊の「総務・管理」を意味し、狭義には武器弾薬・食料・燃料等の物資補給や兵器の輸送・メンテナンス)も、少し長期戦になると勝利を決する決定的な要素になるため、「日本は後方支援しかしていないので、戦争には参加していない」という屁理屈は、世界のどこでも通用しないだろう。さらに、現在の安保法は、シビリアンコントロールの点からも問題が多くなっている。

*7:http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2017051802000145.html (東京新聞 2017年5月18日) 日本の平和主義 見直すべきは安保法だ
 現行憲法に自衛隊を規定した項目はない。それでも東日本大震災があった翌二〇一二年の内閣府の世論調査で自衛隊に「良い印象を持っている」と答えた国民は初めて九割を超えた。次に行われた一五年の調査でも九割を超え、各地の災害救援で献身的に働く隊員の姿が自衛隊の評価を押し上げている。本来任務の国防をみると、「必要最小限の実力組織」(政府見解)とされながらも、毎年五兆円前後の防衛費が計上され、世界有数の軍事力を保有する。自衛隊は安全・安心を担う組織として広く国民の間に定着している。変化を求めているのは安倍晋三首相ではないのか。憲法解釈を一方的に変更して安全保障関連法を制定し、他国を武力で守る集団的自衛権行使を解禁したり、武力行使の一体化につながる他国軍への後方支援を拡大したり、と専守防衛の国是を踏み越えようとするからである。安倍政権は、自衛隊に安保法にもとづく初の米艦防護を命じた。北朝鮮からの攻撃を警戒する目的にもかかわらず、北朝鮮の軍事力が及びにくい太平洋側に限定したことで安保法の既成事実化が狙いだったとわかる。米艦を守るために他国軍と交戦すれば、外形的には集団的自衛権行使と変わりはない。安保法で改定された自衛隊法は、武器使用を決断するのは自衛官と規定する。集団的自衛権行使を命じることができるのは大統領と国防長官の二人だけとさだめている米国と比べ、あまりにも軽く、政治家が軍事を統制するシビリアンコントロールの観点からも問題が多い。米艦を防護しても国会報告は必要とされておらず、速やかに公表するのは「特異な事態が発生した場合」だけである。今回、報道機関の取材で防護が明らかになった後も政府は非公表の姿勢を貫いた。国会が関与できず、情報公開もない。政府が恣意(しい)的な判断をしても歯止めは利かないことになる。安保法により、自衛隊は軍隊の活動に踏み込みつつある。憲法九条に自衛隊の存在を明記するべきだと発言した安倍首相の真意は名実ともに軍隊として活用することにあるのではないのか。現在の自衛隊が国民から高く評価されている事実を軽視するべきではない。必要なのは憲法を変えることではなく、安保法を見直し、自衛隊を民主的に統制していくことである。


PS(2017年5月20日追加):*8-1のように、日本国憲法は第21条で「集会・結社・言論・出版・その他一切の表現の自由を保障する」「検閲をしてはならない」「通信の秘密を侵してはならない」と規定しているが、その下位の法律で、*8-2のように、盗聴法(通信傍受法)が拡大されて立会人なしで盗聴が可能となり、警察が何を盗聴しているかを第三者が監視することはできなくなった(ちなみに、私はこれを織り込み済みなので電話やインターネットで重要なKey部分の話をしないが、不便である)。そして、盗聴されたことを立証するのは困難で、共謀罪の創設により犯罪と関係のない人が盗聴されるケースは確実に増えるだろう。

*8-1:http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S21/S21KE000.html (日本国憲法 抜粋)
第21条 集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。
 ○2  検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない。

*8-2:https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/book/184173 (日刊ゲンダイ 2016年6月24日) 盗聴法改悪で国民のプライバシーがさらされる
 先月、極めて問題の大きい重要法案が可決した。刑事訴訟法や組織犯罪処罰法などいくつかの法律を一本化して改正した「刑事訴訟法等改正法案」がそれだが、この中に含まれていた通信傍受法、いわゆる「盗聴法」の拡大により、我々のプライバシーがのぞかれ、警察の暴走を招く恐れがあるのだ。足立昌勝著「改悪『盗聴法』その危険な仕組み」(社会評論社 1700円+税)では、今回の法案によって何が変わり、今後どんな事態がやってくるのかを詳しく解説している。従来までも、犯罪捜査のため盗聴することは合法的に許されていた。しかし、1999年に成立した盗聴法には厳しい制約があり、対象となるのは薬物・銃器・集団密航・組織的殺人の4罪種。つまり、主に暴力団が行う犯罪や組織犯罪に限定されていた。盗聴に至る手続きも複雑で、全国どこの警察も通信会社本社のある東京に出向き、通信会社社員の立ち会いでの盗聴が条件とされていた。使い勝手が悪いことで、警察による盗聴の悪用を防いでいたと言える。ところが今回の盗聴法では一般刑法犯罪も対象となり、殺人や放火はもとより、傷害、窃盗、ポルノ処罰法違反としての提供罪および製造罪など、大きく拡大された。そして、指定した日数分の通話やデータを通信会社から送ってもらうことで、立会人なしでの盗聴が可能となった。警察が何を盗聴しているか、第三者による監視ができなくなったのだ。さらに、“将来の犯罪”も盗聴対象となった。例としては、薬物や銃の密売からの売りさばきなどが挙げられているが、対象が一般刑法犯罪になった今、警察が怪しいと感じた場合は誰もが盗聴対象となり、今後は予防的に捜査されたり、逮捕されるような事態も招きかねない。犯罪撲滅のみに利用されるのならいい。しかし、2013年に成立した特定秘密保護法もある。警察のやりたい放題を招く恐れはないのか、目を光らせたい。


PS(2017年5月24日):このような中、下の写真のように、多くの国民が危険性を感じて反対している「共謀罪」法案が、対テロを名目として形ばかりの審議を30時間で終え、自民党・公明党・維新の党の全議員の賛成で衆院を通過した。*9-1、*9-2のように、この法案が参議院も通過すれば、日本が監視社会・密告社会になることは明らかであるにも拘らず、「(決めてはいけない法律も)景気回復名目で集めた多数派与党の力で強引に決める政治がよい」とするのは、民主主義を理解していないおかしな話だ。

   

*9-1:http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201705/CK2017052402000121.html (東京新聞 2017年5月24日) 「対テロ」名目で心も捜査 「共謀罪」の危険な本質 参院で熟議を
 政府与党の都合で三十時間で打ち切られた衆院の審議では、政府が「心の中」の処罰や一般人の処罰につながるといった共謀罪が抱える本質的な危険を隠そうとするあまり、答弁をはぐらかす姿勢が目立った。例えば、最大の論点だった「一般人」が捜査や監視の対象になるか、という問題。「組織的犯罪集団」の構成員かどうかを、捜査機関が判断するには捜査してみなければ分からない。しかし金田勝年法相は、一般人とは「何らかの団体に属しない方や、通常の団体に属して通常の社会生活を送っている方」という意味なので「捜査対象になることはあり得ない」と言い続けている。これでは「犯罪に関係ない人は捜査されない」という当たり前のことを言っているに等しい。「心の中で考えたことが処罰や捜査につながり、言論の萎縮を招く」といった野党の指摘に対し、政府は「準備行為があって初めて処罰の対象とするので内心を処罰するものではない」と答え続けていた。金田氏は、採決が強行された十九日の衆院法務委員会で、「心の中」にある目的が捜査対象になることや、警察が目を付けた人物の知人が捜査対象になることを認めた。政府は「テロ対策」を強調しているが、その必要性を証明しきれていない。そもそも共謀罪は、意思の合致があったときに成立するもので、心の中に踏み込まなければ証明できない。参院では、政府はそうした危険性を認めた上で熟議をすべきだ。

*9-2:http://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-501374.html (琉球新報社説 2017年5月24日) 共謀罪衆院可決 その先にあるのは独裁 立憲主義の破壊許さず
 衆院は、犯罪を計画段階で処罰する「共謀罪」法案を本会議で強行採決し、自民、公明両党と日本維新の会の賛成多数で可決した。法案は内心の自由を侵害し、憲法が保障する思想の自由に抵触する。捜査機関が団体や市民生活を常に監視し、取り締まりの対象とするため表現の自由、集会・結社の自由に重大な影響を与える。治安維持法下の戦前戦中のような監視社会を招いてはならない。十分な論議もなく憲法に反する法案を強行採決したことに強く抗議する。立憲主義・民主主義の破壊は許されない。廃案しかない。
●監視社会招く
 政府は法律の適用対象を「組織的犯罪集団」とし、具体的な「合意」と、現場の下見や資金調達などの「準備行為」を処罰する。安倍晋三首相は当初、一般市民は対象外として、過去に3度廃案になった共謀罪法案とは別物と強調した。しかし後に「犯罪集団に一変した段階で一般人であるわけがない」と答弁を変えている。対象は際限なく広がり、労働組合など正当な目的の団体であっても、捜査機関が「組織的犯罪集団」として認定すれば処罰対象になる可能性がある。治安維持法の下で、言論や思想が弾圧された反省を踏まえ、戦後日本の刑法は、犯罪が実行されて結果が出た段階の「既遂」を罰する原則がある。しかし共謀罪は、実行行為がなくても2人以上が話し合って合意することが罪になる。基準が曖昧である。「内心」という人の心の中を推し量って共謀の意図があるかどうかを捜査機関の判断に任せてしまえば、恣意(しい)的な運用に歯止めがかからなくなる。国連も法案を懸念している。プライバシーや表現の自由を不当に制約する恐れがあるとして、国連特別報告者が安倍首相宛てに書簡を送った。これに対し日本政府が「不適切」と抗議すると「深刻な欠陥がある法案をこれだけ拙速に押し通すことは絶対に正当化できない」と批判している。安倍政権はこの批判を真摯(しんし)に受け止めるべきだ。共謀罪がない今ですら、辺野古新基地と高江ヘリパッド建設に反対する沖縄平和運動センターの山城博治議長らを、微罪で逮捕し長期勾留した。共謀罪法案が成立したら、より広範かつ日常的に室内盗聴や潜入捜査などによって市民が監視され、捜査当局の都合で逮捕・勾留が可能になる。
治安維持法も文言が曖昧で漠然としていたので拡大解釈された。暴力や不法行為の実態がなくても処罰の対象になり、監視社会を招いたことを忘れてはならない。
●印象操作にすぎない
 政府は共謀罪法案の必要性をテロ対策強化と説明し、罪名を「テロ等準備罪」に変更した。「テロ対策」を掲げて世論の賛同を得ようとしたが、同法なくしては批准できないとする国際組織犯罪防止条約は、テロ対策を目的としていない。麻薬など国境を越えた犯罪を取り締まる条約だ。テロ対策に必要だというのは印象操作にすぎない。日弁連が主張するように、関連する多少の法整備をするだけで条約批准は可能である。日本では現在、既遂、未遂ではなくても罪に問えるものとして陰謀罪8、共謀罪15、予備罪40、準備罪9が既に存在している。過去を振り返ると、治安維持法が成立した最大の要因は、憲政会と政友会が連立政権を組み、衆院の多数を確保していたからである。「一般人には関係ない」と説明し数の力を使って成立させた。共謀罪法案は、内容に問題があるからこそ過去に3度廃案になった。4度目の今回、実質審議はわずか30時間である。しかも委員会審議で法案の提案者である法務大臣が内容を理解していなかった。数の力によって表現の自由だけでなく思想の自由まで制限する悪法を成立させてはならない。その先にあるのは独裁国家だ。

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2017.5.1 農業のイノベーションと労働力について (2017年5月2、5、7、9、11、12日追加)
   
 日本における     耕地面積の     日本農業の課題    田畑の区割り
大規模農家の比率    規模別農家数

(図の説明:一番左と左から2番目のグラフのように、日本の農家は一戸当たりの耕地面積が小さくて大型機械が入りにくいため、これが穀倉地帯での生産性や農家所得を下げる原因となっている。そのため、右から2番目の図のように、農業の就業人口が減るのを機会に耕地をまとめ区割りを大きくして大型の農業機械が入りやすいようにすると、すべての問題が解決する。その方法として、①農業生産法人の設立 ②パートナーシップ ③集落営農 等が考えられるわけだ)

(1)JAの組織改革について
1)JAさがの分社化戦略
 JAさがは、*1-1のように、持株会社2社を年度内に新設し、農産物加工等のグループ会社15社のうち9社を傘下に置くそうで、進んだ組織になる。また、総務・経理などの業務を一元化し、人件費削減や商品開発強化に繋げるのなら、総務・経理を独立した会社にして、公認会計士・税理士・社会保険労務士・ITの専門家などに緊密なアドバイスを受けながら、希望する農家の会計・税務を受託したり、繁忙期に人材を派遣したりすることも可能だ。そうすると、総務・経理部門は単なるコストセンターではなく、収益獲得能力も持つことになる。

 また、持株会社の下で子会社として独立させると、*1-1に書かれているとおり、給与体系や規定を違えることも可能だ。本社から子会社に異動させられる職員もいるが、子会社の方が本社より成長した会社もあり、例えばNTTは本体より子会社であるNTTドコモやNTTコミュニケーションの方が成長会社になった。

 なお、外部出資者がいる会社は100%子会社ではないので、現在は連結納税の対象にならないが、その外部出資者との間に販売協力や技術協力があるケースもあるため、節税のためだけに必ず100%子会社にしなければならないということはない。

2)農協への国の“経営指導”
 私は、*1-2のうち、農協の買い取り販売拡大や生産資材価格の引下げなど、国が民間経営の箸の上げ下ろしまで指導するのはいかがなものかと思う。何故なら、国の“有識者会議”は、地域によって異なる農業の状況を分析し、理解した上で解決策を提示しているわけではないからだ。また、需要と供給に応じて価格は決まるため、①どれだけの分量を ②どういう形で ③誰に ④いくらで販売するか は、生産者や関連事業体の経営意思決定によるものであり、統制社会でなければ自由であるべきだからである。

 さらに、生産資材も、農協から化学肥料を買わなくても他から買うこともでき、耕畜連携すれば安い価格で有機肥料を手に入れることも可能であるため、そういう状況の中でどういう意思決定をするかは、農家や地域の工夫次第なのだ。また、事前契約に基づいて確実な出荷を行うなど、国が考えるよりも先を行く工夫も多いため、国は民間の工夫を邪魔しないように気を付けながらサポートすべきである。

 なお、近年まで日本の農業は輸出を眼中に入れていなかったが、*4-1のように、輸出し始めるとその成長率は高い。しかし、農産物を輸出するにあたっての品種の保護は、*4-3のように始まったばかりで、特許権を持てるような優良品種も誰でも栽培できる。しかし、穀物や種のある果物を生で輸出すれば、特許権があっても保護には限界があるため、いま出盛りの南米の葡萄が比較的安価で味もよく種のない品種であることに、私は感心している。また、*4-2のように、加工して出荷する方法もあるだろう。

(2)米作を優遇する農業政策はやめるべきであること
1)二毛作農家の不利益
 「我が国は、米が主食」と言う人が多いが、米だけで身体を維持する栄養素を賄えるわけではない。そのため、炭水化物・脂肪・糖などの取りすぎに注意しながら栄養バランスのよい食事をするのが近年の常識であり、主食・副食の区別はなくなったと考えるべきだ。そこで、農家は地域の気候にあった多様な作物を作ることが、食料自給率を上げるために必要不可欠であるにもかかわらず、需要が減った米に固執していれば米が余って米価が下がるのは必然である。

 しかし政府は、*1-3のように、2017年度から飼料用米などの“戦略作物”への助成を優先し、二毛作の助成金は産地交付金に組み込まれて8割になり、二毛作を行っている農家の所得が減る恐れがあるとして、二毛作が盛んな西南暖地の関係者が心配しているそうだ。日本中で耕作放棄地が増えている中、西南暖地は二毛作により100%を超える耕地利用率を誇って食料自給率や農業に貢献しているのだから、褒められることはあっても飼料用米より不利な扱いを受ける理由はないだろう。

 さらに、“戦略作物”とされた飼料用米は、米作用の機械しか持っていない兼業農家の要請で始まったもので、家畜の飼料としては米が最も栄養価が高くて安価なわけではないため、専業農家が作る他の作物への助成を減らしてまで助成すべきものではない。にもかかわらず、自給率の低い麦や大豆への助成を減らして、飼料用米への助成を増やす農政は間違っている。

2)大豆の収量低迷


  2017.4.22佐賀新聞(*1-4)    ブラジルの大豆栽培     北海道の栽培

 佐賀県が転作の基幹作物としている大豆の収量は、*1-4のように低迷しているそうで、がっかりだ。何故なら、私が蛋白質が豊富で需要の多い大豆に転作しようと呼びかけて、2005~2010年頃には、日本一の収量を誇っていたからである。

 大豆不作の理由は、①播種期の豪雨 ②記録的な猛暑による生育不良 ③生産の大規模化で農地管理が行き届かなくなったこと などが挙げられており、佐賀県農産課は「④高温乾燥による生育不良も響いた」としているが、上の写真の北海道、ブラジルの大豆畑は佐賀県の大豆畑よりずっと大規模で、機械化により生産性も高いため、①~④は解決可能であり、文明国で口にすべき理由ではないだろう。

 なお、遺伝子組み換えでない国産大豆は、安全性の観点から需要が多いため、農地管理や機械化、品種改良などで効率的な収量アップに繋げて欲しいが、安全性が高くても収穫に苦労の多い遺伝子組み換えでない国産大豆を生産し続けられるためには、*2-4のように、遺伝子組み換え(GM)食品の混入割合を欧州連合(EU)同様、加工食品まで全て表示を義務付け、少しくらい高くても消費者が選択できるようにすることが必要不可欠であり、何でも規制緩和しさえすればよいわけではない。

(3)生物由来の肥料と病中害の抑制
 *2-1のように、熊本県阿蘇地域の野草に病害抑制効果のある拮抗菌が含まれ、病害抑制効果のあることが佐賀大学の研究で分かり、阿蘇地域世界農業遺産推進協会が野草の利用促進を強化しており、農家も活用に意欲的だそうだ。

 確かに野草は強いため、このほかにも有効な物質を含んでいたり、有益な微生物が繁殖したりするのは想像に難くなく、生物由来の資源で安価に施肥と病気の抑制ができるのは素晴らしい。

(4)資源として利用されていなかったものを資源化する

 
   世界の竹生育地  日本の都道府県別森林面積   竹林  スペイン製手袋(山羊皮)

 日本で竹が繁茂するのは上のように暖かい地域で、森林を侵食するため邪魔者とされることが多かったが、*2-2のように、放置竹林を資源として活用する方法が開発され、①竹の繊維を使ったプラスチック材料 ②タケノコの観光農園 ③竹蒸気抽出液 等ができるようになった。

 また、*2-3のように、鹿は、繁殖しすぎて田畑を荒らすようになったため、害獣として頭数管理をしているが、食肉処理後の鹿皮や角を使い、ブックカバーやキーホルダーなどの雑貨作りが挑戦されているそうだ。しかし、まだ余った鹿皮の活用程度のものなので、スペインやフランスのデザイナーを使えば、牛皮よりも薄くて軽く柔らかい高級鹿皮製品ができると思われる。

(5)他国の生産方法を参照する
 
スペインのオリーブ畑   同枇杷畑   同イベリコ豚の飼育風景   同施設園芸

1)ハイテク化
 九州は、*3-1のように、人口・面積ともオランダと同程度だが、オランダの農作物輸出量は米国に次いで世界2位だそうだ。私は、植物工場で作られたような形だけで栄養価の低い野菜を食べるのは勧めないが、①農業のハイテク化 ②農地の大規模化 は必要だろう。作物の集約化は、連作被害もあるので状況によると考える。

 また、*3-2のように、オランダの施設園芸の生産性は日本の6倍もあるそうで、植物生理学からトマト栽培のLEDの青と赤の最適比率を調べており、エペ・フーベリンク准教授は、大分県で稼働しているパプリカのガラスハウスについて、「モダンだったが、収穫量はオランダの半分。オランダのハウスをただ日本に移設するだけでは不十分で、設置する場所の地形、気候などに適合した温室に改良することが必要だ」と指摘したそうだ。通気口からの病害虫の侵入を防ぐためには、通気口に換気扇につけるようなフィルターをつければよいだろう。
 
 さらに、*3-3のように、九重町ではパプリカの栽培に温泉熱も利用しており、地中熱や温泉熱の利用も可能であるため、この辺はエンジニアの出番だ。

 なお、スペインもEUでは農産物の輸出が多い国で、スーパーに入るとオリーブオイルは5L単位で売られ、果物も安くて豊富であり、イベリコ豚は美味しく、全体として豊かさを感じた。また、*3-4のように、スペイン国王フェリペ6世が来日され、日本との関係を強化することになったため、日本の農業者もヨーロッパの農業を視察に行き、オランダ・スペインの農業や農産品輸出のやり方を参考にするのがよいと考える。

2)労働力
 日本では、農業の話をすると、必ず農業従事者の高齢化と後継者難がネックだと言われるが、*5-1のように、農山漁村に移住してみたいとする都市住民の割合は既に3割を超え、自然環境に恵まれ、子育てに適しているという理由で、田園回帰の意向が広がっている。

 ただし、これらの若者は、農村の封建的・保守的な文化が好きなのではなく、豊かな自然や食を評価しているのであるため、農村は、封建性・保守性をなくしながら魅力ある仕事を創れば、若者の転出を減らし、転入を増やして、農業の後継者もできることになる。

 さらに、*5-2のように、自動車工場では既に外国人が貴重な戦力になっており、和食居酒屋でも外国人が活躍しているにもかかわらず、日本はまだ外国人の単純労働者を技能実習生としてしか受け入れていない。そのため、日本政府は、アメリカやイギリスを批判する前に、自国の外国人労働者の受入態勢を整え、労働力が足りない分野に配置できるようにすべきだ。

<農業政策とJA組織改革>
*1-1:http://qbiz.jp/article/106852/1/
(西日本新聞 2017年4月4日) JAさが、持ち株会社設立 地域農協初 年度内に9社傘下に
 佐賀県農業協同組合(JAさが、金原寿秀組合長)は3日、持ち株会社2社を本年度内に新設し、農産物加工などのグループ会社15社のうち9社を傘下に置く再編計画を明らかにした。総務や経理などの業務を一元化して効率化し、人件費削減や商品開発強化につなげる。JAさがによると、地域農協による持ち株会社設立は全国初。再編計画は3月27日の臨時総代会で決定した。当初は合併を検討したが、給与体系や規定が異なり調整に時間がかかるため持ち株会社化を選択した。新設する持ち株会社は「アグリ・生活関連」と「食品加工関連」。それぞれ、自動車販売のJAオート佐賀や葬祭事業のJAセレモニーさがなど6社▽JAさが富士町加工食品やJAフーズさがなど3社−を傘下とする。外部の出資者がいるグループ会社は100%の出資を目指し、持ち株会社への編入を検討する。原寿男常務理事は「重複する業務を見直し、生産拡大や農業者の所得増大につなげたい」と話した。

*1-2:https://www.agrinews.co.jp/p40563.html (日本農業新聞 2017年4月7日) 役割明示 販売、購買で工程表 自己改革行動計画 全農・JA 
 JA全中は6日、昨秋決めた自己改革の方針「『魅力増す農業・農村』の実現に向けたJAグループの取り組みと提案」に基づく行動計画をまとめた。JA全農の事業改革方針を反映させ、直接・買い取り販売の拡大や生産資材価格の引き下げなど重点的な取り組みについてJA段階までの具体策や工程表を盛り込んだ。全農だけでなく、JAグループ一体で農業所得の増大に向けた改革を実行していく。「重点事項等具体策」として、6日の理事会で確認した。今後、各JAでも工程表や行動計画に反映させる。奥野長衛会長は同日の会見で「農家の理解がないと前に進まない。(全農の改革方針を)現場にどういう形で下ろし、どう実践していくかが、これから求められる」と述べた。米の買い取り販売は、全農やJAが実需者への販売推進を踏まえて生産者にニーズを伝え、取り扱い条件を提案。全農は、事前契約の実施時期を生産する前年に早める。JAは事前契約に基づく確実な出荷へ、生産者との出荷契約の履行を徹底する。いずれも2017年度に始める。青果は全農とJAが連携し、販売力があり戦略を共有できるパートナー市場を選別。卸売市場を通じた販売を従来の無条件委託販売から、取引先を明確にして数量や価格を事前に決める予約相対販売に転換する。輸出はグループ全体で19年度までに金額で340億円超を目指す。全農とJAが協力しリレー出荷体制を整備。17年度はイチゴや柿で取り組む。肥料の共同購入はグループ全体で、事前予約注文を基に入札などで最も有利な価格や購入先を決める方式に転換、価格を引き下げる。全農とJAは18年の春肥からの転換を生産者に周知する。JAは銘柄集約した集中購買品目の事前予約注文をまとめ、全農に積み上げる。農薬は、品目を集約し価格を引き下げる。全農が水稲除草剤を中心に絞り込んだ重点品目を、JAは18年用の防除暦や注文書に掲載し、推進する。17年度から始める。資材価格の「見える化」も進める。17年度中にJAは資材価格や商品特性などをホームページ(HP)などに掲載し分かりやすい価格体系に見直す。全中はこうしたJAのHPを全中のHPにリンクさせ、グループ全体の環境を整備する。

*1-3:https://www.agrinews.co.jp/p40604.html?page=1 (日本農業新聞 2017年4月13日) 二毛作助成目減り 困惑 西南暖地には打撃 補正予算で財源確保を
 水田のフル活用を支える二毛作助成の単価が目減りし、所得が減る恐れがあるとして、農家から不安の声が相次いでいる。2017年度から同助成が産地交付金に組み込まれ、配分が8割にとどまる恐れがあるためだ。米・麦の二毛作が最も盛んな福岡県では、農家の手取りが10アール当たり約3000円減るとの試算もある。同県糸島市で裏作麦を30ヘクタール生産する元全国稲作経営者会議会長の井田磯弘さん(79)は「米価が安定せず、ただでさえ利益が薄い。助成が減れば土地利用型農業は維持できない」と困惑する。農水省は16年度まで、水田活用の直接支払交付金で二毛作助成(10アール1万5000円)の枠を確保していた。これに財務省は昨年、同助成について「取り組みはほぼ定着している」として全廃を要求。農水省は17年度、同助成を産地交付金に組み込んだ。産地交付金は、当初分として8割を配分し、残り2割はいったん国が留保し、深掘りへの対応や飼料用米などの戦略作物への助成を優先して10月に配分する方式だ。飼料用米などの生産が全国的に増えれば、追加配分で二毛作助成に充てる額が減ることになる。福岡県の関係者は、二毛作助成に充てる額が県内で最大7.4億円減る恐れがあると試算。単価は従来に比べ10アール3000円ほど減って1万2000円ほどになるとみる。農水省によると、16年度は留保分の全てを戦略作物助成に使っており、追加配分は「全国的な飼料用米の増産傾向を考えると期待できない」(JA福岡中央会)との見方が強い。井田さんの経営では、仮に産地交付金の留保分の追加払いがない場合、所得が100万円近く減る計算で、大規模な担い手ほど打撃も大きい。地域農業全体にも影響が心配され、補正予算で財源を確保するよう求める。産地交付金で留保した2割分について、農水省は「全て戦略作物助成に回るとは限らない」と説明。仮に産地交付金の追加配分がなかった場合も「福岡県も含め深掘りを達成した地域の戦略作物助成に回るため、現場に損はない」(穀物課)と説明する。ただ、福岡中央会や県などは「二毛作が盛んな西南暖地には打撃になる」として、地域特性を踏まえた目配りを求める。

*1-4:http://www.saga-s.co.jp/column/economy/22901/423685 (佐賀新聞 2017年4月22日) 大豆収量低迷 大規模化、管理行き届かず、16年産反収、ピーク時の半分
 佐賀県が転作の基幹作物とする大豆の収量が低迷している。2016年産の県産大豆の10アール当たり収量(反収)は148キロで、ピーク時の02年産(293キロ)から半減。かつては日本一を争ってきたものの、減少に歯止めが掛からず、全国14位に落ち込んだ。集中豪雨や記録的な猛暑による生育不良が主な要因だが、生産の大規模化で農地管理が行き届かなくなっていることも影響している。「播種(種まき)は時間との戦いだが、作付面積が広く、雨のたびにさらにずれ込んでいく」。小城市芦刈町の7~11ヘクタールほどの農地で大豆を栽培する平野裕さん(45)は頭を抱える。播種の適期は7月上旬の10日間ほど。梅雨の貴重な晴れ間を生かしての作業となるが、最近はゲリラ豪雨などの天候不順も重なり、「作業は年々難しくなっている」と平野さん。以前よりも収量が落ち込んでいるという。昨年は7月下旬から8月にかけて、最高気温35度以上の猛暑日が続いた。梅雨明け後に終日雨が降ったのは1日だけで、県農産課は「高温乾燥による生育不良も響いた」と分析する。県産大豆の反収は、07年産から13年産まで200キロ台で推移。08年産からは4年連続で全国トップになった。水田を水稲作と麦・大豆の転作作物で交互に利用するブロックローテーション(田畑輪換方式)で連作障害を抑えてきたが、11年産から6年連続で前年実績を割り込み、この2年間は全国平均も下回っている。反収減の背景には、生産者の高齢化や担い手不足による農地の規模拡大もある。「作業効率を優先せざるを得ないため、排水対策などの技術面や農地の管理が行き届かない生産者が増えている」と県農産課。県やJAは昨年から専門職員による巡回指導を強化、土壌の改良や播種作業を容易にする重機の導入も推進している。遺伝子組み換え作物など外国産に対する安全性への不安などから、国産大豆の需要は高い。県産は豆腐の原料として全国トップクラスの評価も受けており、県農産課の永渕和浩課長は「農地管理を徹底することで天候の影響もある程度低減できる。収量アップにつながる体制をつくっていきたい」と話している。

<技術革新と資源化>
*2-1:https://www.agrinews.co.jp/p40077.html (日本農業新聞 2017年2月5日) 野草から拮抗菌大量に 病害抑制 利用を促進 世界農業遺産の熊本・阿蘇
 世界農業遺産に認定された熊本県阿蘇地域の野草に、病害抑制効果がある大量の拮抗(きっこう)菌が含まれ、病害抑制効果があることが佐賀大学の研究で分かった。野ざらしにした野草に多く、野草をマルチに使ったハウスにも高密度に拮抗菌が生息していた。阿蘇地域世界農業遺産推進協会はその成果を生かし、野草の利用促進活動を強化した。農家も活用に意欲的だ。阿蘇には約2万2000ヘクタールの草原があり、希少植物が生息する生物多様性を維持している。県やJA、関係市町村などで組織した協議会が国連食糧農業機関(FAO)に申請し2013年、「阿蘇の草原の維持と持続的農業」が世界農業遺産に認定された。刈った野草は牛の餌や堆肥に利用する。同協会は、農家の間で「野草堆肥を使うと作物に病気が出ない」と言われていたことを確かめるため、佐賀大学農学部の染谷孝教授に研究を委託した。すると野外に積んだ野草や野草ロールから、病原菌を抑える拮抗菌の放線菌とバチルス属菌が大量に見つかり、野草をマルチし5年以上連作したトマトハウスにも高密度に生息していた。野草ロールは堆肥ではないが、堆肥と同等以上の細菌がおり、優れた微生物資材であることが分かった。染谷教授は「屋内に保管したものは良い菌がいなかった。雨ざらしにするのがいいようだ」と話す。同協会は世界遺産を次世代に継承するアクションプランの柱の一つに、耕種農家による野草利用の新たなシステムづくりを据える。採草と堆肥化に労力がかかる、野草価格が高いといった課題を解決するため、草原再生オペレーター組合を支援し採草面積を2倍以上に増やして、野草のストックヤードの建設や堆肥センターの拡充などで低コスト化と利用促進を目指す。草原再生オペレーター組合で採草に活躍しつつ、トマト栽培に利用する農家の竹辺大作さん(39)は「野草はトマトの病害予防に役立っている手応えがある。草原を守るため、採草活動に力を入れたい」と言う。

*2-2:http://qbiz.jp/article/105433/1/ (西日本新聞 2017年3月19日) 放置竹林を資源に活用する方策とは? 福岡で活動する産学の識者に聞いた
 里山を荒らす「厄介もの」となっている福岡県久留米市高良山の放置竹林を、肥料や手入れ不要で多様な用途を持つバイオマス(生物資源)として活用しようと、NPO法人「筑後川流域連携倶楽部」による「竹林と経済の両立塾」が始まった。竹の持つ可能性について、事務局の山村公人さん(50)と、竹繊維を使ったプラスチック材料を開発した九州工業大大学院生命体工学研究科(北九州市)の西田治男教授(61)=高分子化学=に聞いた。
−竹繊維プラスチック材料の開発の経緯は。
 西田「私はもともとバイオマスを原料とするバイオプラスチックの研究者。福岡県八女市は竹繊維とトウモロコシを原料にしたバイオプラスチックの食器を小中学校の給食に使用しており、私に『食器の強度を高めてほしい』と要望してきたのがきっかけとなった。普通のプラスチックに竹繊維を混ぜた方が強度が増すのではと調べたところ、竹繊維にはおもしろい性質があることに気付いた。微粉末化した竹繊維をプラスチックに30〜50%配合すると、曲げ強度が倍増するほか、熱による膨張も10分の1程度に抑えられる。静電気を帯びにくい性質もあり、非常に優れた工業素材となる」
−どのような手法で竹を繊維に。
 西田「これまで竹は粉砕が難しく、工業利用に適していなかった。そこで、約200度の高温水蒸気を当てるだけで細かく粉砕し、繊維を取り出す方法を新たに開発した。八女市と九州工業大、企業が連携して設立したバンブーテクノ(同市立花町)では、市内の竹林から回収した竹を竹微粉末に加工。竹粉とプラスチック複合材を使ったコンテナや溝ふたなどを製品化し販売している」
−「両立塾」でバンブーテクノを見学したが、どのような可能性を感じたか。
 山村「200度程度の水蒸気があれば竹微粉末ができると聞き、町中の小さな工場から水蒸気を買い、処理機を設置して加工できるのではないかと感じた。夢みたいな話だが、近所の竹を運んできて処理する小規模なプラントも可能では」
 西田「一から水蒸気を作り出すとなると、かなりのコストになる。現在の竹微粉末の価格も水蒸気のコストがかなりの部分を占める。これが大規模な工場やごみ処理場などの廃熱が利用できるようになると一気に値段を下げることができるようになるだろう」
−竹粉末の工業利用の課題は。
 西田「現在の竹微粉末生産量は月約1トン。工業製品を一つ作るには最低でも月100トンの年間1200トンが必要で、まずはこの量を生産できる態勢を目指すこと。製品化には、竹の伐採から粉末化、プラと混ぜ合わせるコンパウンティングという工程が必要。安定した製品供給のためには2社以上の企業での生産が求められる」
 山村「バンブーテクノがすでに商品化している竹プラスチックのコンテナを、環境問題に敏感な生活協同組合などの買い物かごや配達用のコンテナに取り入れてもらえることができるのではないか。最初から大きな量を目指すのではなく、小さなことから実績を積み上げていけるのでは」
−手応えをどう感じたか。
 山村「タケノコの観光農園ともに竹プラスチックも十分有望な事業になると実感した。東京五輪に向け、環境に優しい商品として売り出していけるのでは。みんなで知恵を出し合い、何が商品化できるのか考えていきたい。そのためのマーケティング会社の設立も必要になってくる」
−今後の取り組みは。
 山村「来年度は林野庁の複数の補助事業を申請し、官民挙げての取り組みとしていきたい。放置竹林の問題は久留米だけに限らず九州全体の問題。地元住民と里山が共生する仕組みを考えなければならない。私自身も広川町で観光タケノコ園を経営する夢を持っており、伐採した竹も利用していきたい」
 西田「竹微粉末の製造工程の副産物で竹蒸気抽出液ができる。いわゆる竹酢液だが、200度の低温で処理するため有害なタールが含まれておらず、皮膚につけても安全で入浴剤としても利用できる。竹微粉末とともに、魅力ある素材としてアピールしていきたい」

*2-3:https://www.agrinews.co.jp/p40574.html (日本農業新聞 2017年4月9日) 鹿皮や角で雑貨作り 食害 知ってほしい 静岡県伊豆市 猪股学さん
 静岡県伊豆市の地域おこし協力隊、猪股学さん(34)は、食肉処理後の鹿の皮や角を使い、ブックカバーやキーホルダーなどの雑貨作りに挑戦している。閉園した幼稚園をアトリエとして、元デザイナーのキャリアを生かしながら商品デザインや縫製をして販売する。猪股さんは「商品を通じて伊豆の鹿被害について考えてほしい」と訴える。猪股さんは山梨県出身で、元々ジュエリーデザイナーとして甲府市で働いていた。その頃に、直営の鹿肉加工施設から出る皮や角の処理に悩んでいた伊豆市が、これらを有効活用するための地域おこし協力隊を募集。デザイナーとしてのキャリアが生かせると考えて応募し、2016年から伊豆市に移住して活動を始めた。使うのは市内で捕獲され、食肉処理をした後に余った鹿の皮や角。業者になめし加工してもらい、裁断や縫製して商品にする。野生の鹿のため、皮にはダニがかんだ傷やけがによる染みもある。猪股さんは「これも鹿が生きた証し。個性として楽しんでもらいたい」と話す。ブックカバーや名刺入れ、ピアスやネックレスなど現在までに10種類ほどの商品を開発。昨秋から「mori―kara」のブランド名で販売を始め、現在は市内のセレクトショップやイベントなどで販売している。今後は首都圏や静岡市内などに販路を広げる計画だ。猪股さんは「伊豆は海のイメージが強いが、鹿による食害で周辺農家は悩んでいる。商品を通して、実情を伝えていく」と意気込む。

*2-4:https://www.agrinews.co.jp/p40698.html (日本農業新聞 2017年4月25日) GM表示見直し着手 混入割合引き下げ焦点 消費者庁
 消費者庁は、遺伝子組み換え(GM)食品の表示制度の在り方で有識者による検討会を立ち上げ、表示対象の拡大を視野に議論に着手する。現行制度は2001年4月にスタートし、この間の分析技術の精度向上や、GM作物の栽培拡大・流通の変化などを踏まえる。表示義務がない混入割合は、現行は5%未満と他国に比べて緩く、どこまで狭められるかが大きな焦点だ。より詳しい表示ができれば、消費者の商品選びに役立ち、国産農産物に追い風になるとみられる。初会合を26日に開き、17年度内に取りまとめる予定だ。
●厳格化で国産追い風
 現行制度は大豆、トウモロコシ、ジャガイモ、ナタネ、綿実、アルファルファ、テンサイ、パパイアの8種類の農産物に表示を義務付けている。それらを原材料とする豆腐、納豆、みそ、スナック菓子など33食品も表示の対象。ただ、GM作物の使用重量が小さく、原材料に占める割合が上位4位以下や5%未満であれば、表示する義務はない。5%未満で線引きすることには、当時から消費者団体などから緩いとの指摘があったが、「意図せざる混入」として認められた。一方、欧州連合(EU)ではGM作物を使った加工食品の全てを対象に、表示を原則義務付けている。「意図せざる混入」が許されるのは0.9%未満まで。韓国は3%未満で、日本よりは厳しい。しょうゆ、油、でんぷんから加工される果糖ブドウ糖液糖などは、現在は任意表示にとどまる。加工工程でGM作物のDNAやタンパク質が分解されるなどして検出できないという理由だ。それらの原料の大豆、ナタネ、トウモロコシは、米国やカナダなど主産国でGM比率が9割台に達しており、義務表示を求める声が消費者団体などに強い。消費者庁は「必要とあれば、検討会の中で議論する」との構え。検討を左右するのは、技術的な課題に加え、表示拡大に対する各業界、団体の主張だ。消費者団体の関係者は「消費者が情報を手に入れる幅が広がる」と期待する声が上がる。一方で「分析による設備投資などで加工業者のコストが膨らみ、商品価格に転嫁される恐れもある」と消費者の負担増加を懸念する見方もある。加工業からは冷静な受け止めも聞かれる。関係者は、大きな影響はないと予測し、「多くの業者が既に分析技術を高めている。『意図せざる混入』を引き下げられても対応できるだろう」と指摘する。国内農家からは、消費者がGM食品を改めて考えるきっかけになると期待する声が上がる。北海道恵庭市の大豆生産者は「消費者の食への意識が高まり、厳しい基準で生産された国産大豆に関心を持ってほしい」と話す。世界のGM作物の作付面積は、1996年に170万ヘクタールだったが、現行の表示制度ができた01年には5260万ヘクタール、15年で1億7970万ヘクタールと急増している。26日の検討会では、消費者庁がGM表示に関する海外の状況と消費者アンケートの結果を報告し、今後の検討会の進め方などを議論する予定だ。

<他国の生産方法参照>
*3-1:http://qbiz.jp/article/102549/1/ (西日本新聞 2017年1月30日) 【九州農業の生産額は全国の2割】成長のヒントはある国に…
 「九州は1割経済」と言われるが、「2割経済」を誇る産業もある。農業だ。
■生産額は1・6兆円
 日本政策投資銀行九州支店のリポートによると、生産額は1・6兆円で、全国8・4兆円の19%を占める(2011年時点)。九州は「豊かな自然と温暖な気候を生かして農業、特に野菜・果物・畜産が盛ん」とした上で、「日本における農産物供給基地としての役割を担っている」と位置づけた。ただ、成長を遂げるには、ある国のノウハウを学ぶ必要があることを提案している。それは、オランダだ。人口、面積ともに九州と同程度のオランダ。それなのに、農作物輸出量が米国に次いで世界第2位となっている。
■ハイテク化する農業
 政投銀のリポートのタイトルは「九州における植物工場などハイテク農業の成長産業化に向けた課題と展望」。「農業先進国からハイテク化による競争力強化の手法を学んではいかがだろうか」と呼びかけ、オランダの事例を紹介している。高い国際競争力の理由について、リポートは「環境制御型施設園芸(太陽光型植物工場)に関する技術が発達していることが主因」と分析する。例えば、トマト。「面積当たりで3〜5倍、労働時間当たりで8倍も日本より生産性が高い」という。さらに「農地の大規模化」や「作物の集約化」もオランダ農業の強みらしい。韓国の成功事例も紹介していたが、背景にはやはりオランダが存在していた。植物工場で栽培したパプリカを日本向けに大量に輸出しているが、技術の後ろ盾はオランダ農業だった。韓国は「技術やノウハウをオランダから丸ごと導入し、農業のハイテク化を推進した」というのだ。
■オランダ方式に鍵が
 九州農業も、着実な成長が読み取れる。農林水産省によると、15年の九州農業の生産額は1兆7541億円。全国(8兆8631億円)の19・8%で、リポートで報告された11年時点から、金額も割合も拡大している。ただ、喜んでばかりはいられない。リポートで生産額が1・6兆円と同規模の「鉄鋼」は、全国(18・2兆円)に占める割合が約9%にとどまっていた。つまり、農業は鉄鋼に比べると、まだまだ「分母」が小さいというわけだ。リポートでは、「国内の他地域と同様、農業従事者の高齢化や後継者難、国際競争力の弱さなど、農業に内在する課題は深刻」との指摘もあった。九州農業が、全国の農業生産額をけん引しながら「2割経済」をさらに突破できるか。オランダ方式にそのヒントがあるのかもしれない。

*3-2:http://qbiz.jp/article/108137/1/ (西日本新聞 2017年4月22日) 施設園芸オランダに学べ 生産性は日本の6倍も 最適な環境創出が鍵
 施設園芸先進国のオランダの手法を参考にして、農業の生産性を高めようと、農林水産省が施設園芸の支援に力を入れている。九州でもオランダの技術を導入した施設が稼働しているが、“本家”との違いはどうか。3月にオランダを訪れ、最先端の園芸技術を取材した。施設園芸分野で世界トップレベルの研究を誇るワーヘニンゲン大学。オランダ中部にあり、案内された研究用ガラスハウスに入ると、赤紫色の発光ダイオード(LED)がネオン街のように輝いていた。「トマト栽培にとってLEDの青と赤の比率はどの程度が理想かを調べている」。解説するのはエペ・フーベリンク准教授。植物生理学が専門だ。執筆を一部担当した書籍「トマト オランダの多収技術と理論」は日本語版も出ている。今年1月末から2月上旬にかけて来日し、農研機構の研究者と一緒に、複数の「次世代施設園芸拠点」を視察した。大分県九重町で昨年4月から稼働しているパプリカ生産のガラスハウス(栽培面積2・4ヘクタール)も視察先の一つだった。准教授は大分の施設について「モダンだったが、収穫量はオランダの半分。オランダのハウスをただ日本に移設するだけでは不十分」と指摘した。准教授によると、オランダのハウスは通気口が少ない。大分の施設も同じだったが、日本の気候だと通気口が不足して換気が十分にできていないという。「設置する場所の地形、気候などに適合した温室に改良することが必要」と准教授。大分の施設を運営するタカヒコアグロビジネスの松尾崇史専務は「通気口を増やすと病害虫侵入のリスクも高まる。どう対応するか研究中」と話す。農水省は「日本の環境に合わせる重要性は十分認識している」と受け止める。
   ■    ■
 農水省は2013〜16年度、民間が全国10カ所で手掛けた次世代施設園芸拠点の整備に対し、補助金を支出。各拠点はオランダ式の大規模ガラスハウスや、ハイテクによる環境制御の仕組みを導入。補助金総額は111億円に上る。「安倍氏もちょうど、このあたりに立ちました」。オランダ西部にあるバルスター社。3・4ヘクタールの広大なガラスハウス内で経営者のウィボ・バルスターさんは、14年3月に安倍晋三首相の視察を受け入れたことに触れ、中を案内した。肌寒い季節だったが、ハウス内は25度で、バルスターさんは半袖姿。天井までの高さは約6メートルで、見上げると、透明なガラスの向こうの青空が鮮やかだった。パプリカの収穫量は1平方メートル当たり年間で約40キロという。日本の6倍ほどで、バルスターさんは「うちはオランダの中でも生産性が高い」と胸を張る。オランダの園芸施設はビニールハウスでなく、ガラスハウスが一般的。日本より安価な天然ガスで沸かした湯を流すパイプをハウス内に張り巡らせて暖房を得ている。さらに気温、湿度、二酸化炭素濃度などが最適になるように、ハイテク機器などで制御しているのが特徴だ。バルスターさんは生産性が高い理由について「企業秘密」と詳しく説明してくれなかった。「立派なハウスを設けても、それを活用するための知識がなければ、利益は得られない。日本に対し協力したい」と話していた。

*3-3:http://qbiz.jp/article/105837/1/ (西日本新聞 2017年3月18日) 温泉熱でパプリカ栽培 九州最大、オランダの手法導入 九重町で建設業子会社
*写真:パプリカ生産のガラスハウス
 温泉熱と高度な環境制御技術を利用して、パプリカを生産する大規模園芸施設が大分県九重町で稼働している。施設の随所に、園芸先進国であるオランダの手法を導入。栽培面積は2・4ヘクタールで年間400トンの出荷を見込み、2億4千万円を売り上げる計画。大分県によると、パプリカ栽培施設としては九州最大。脱燃油とハイテクで、収益性の高い農業を目指しており、今後の成果が注目される。総合建設業「タカフジ」(大分市)の子会社「タカヒコアグロビジネス」(九重町)が経営。2・4ヘクタールの栽培室に加え、育苗室0・3ヘクタール、出荷センター、熱交換システムを備える。昨年4月から稼働を始めた。熱交換システムは、事業地内に湧き出る温泉の熱で、施設内を巡る循環水を加温する装置。タカフジが開発した。栽培室と育苗室には、循環水が流れる直径10センチほどの管が延べ数十キロにわたって血管のように張り巡らされている。管からの放熱で暖房装置の役目を果たし、冬でも室内の気温を20度前後で維持する。
   ■    ■
 栽培室と育苗室は、オランダで一般的なガラスハウス(高さ約7メートル)を採用。ビニールハウスよりも耐久性や採光性に優れているという。室内の気温、湿度、二酸化炭素(CO2)濃度、日射量、養液量は、パプリカの生育に最適であるよう、センサーや霧の噴射装置などで自動的に制御している。これもオランダ仕様だ。農林水産省が全国10カ所で整備を支援した次世代施設園芸拠点の一つ。温泉掘削費も含む総整備費約16億円のうち、約5億8千万円を農水省が補助した。
   ■    ■
 販売先は市場に頼らず、百貨店や生協、病院食業者などを独自で開拓。収穫は昨年7月末からで、周年安定供給を目指している。今のところ予定通りの生産という。暖房もこれまで、厳しい寒さがそれほどなく、温泉の熱で全て賄えており、重油の使用はゼロ。農水省が要件とする「化石燃料の使用量を5年後までにおおむね3割以上削減する」を楽にクリアしている状況だ。ただタカヒコアグロビジネスの松尾崇史専務は「パプリカの年間生産量はオランダは1平方メートル当たり40キロ以上だが、うちの当面の目標は16キロ。栽培技術向上に努め、オランダに追い付きたい」と話している。

*3-4:http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2017040601001699.html (東京新聞 2017年4月6日) 【政治】首相、スペイン国王と懇談 外交150年へ関係強化
 安倍晋三首相は6日、国賓として来日中のスペイン国王フェリペ6世夫妻と東京・元赤坂の迎賓館で懇談し、両国の外交関係樹立150周年に当たる来年に向け両国関係を強化する考えで一致した。首相は「世界平和と発展のため貢献していく大切なパートナーだ」と強調。国王は「国民同士の距離を縮めることも非常に重要だ」と応じた。首相と国王は懇談後、若者らが相手国で働きながら勉強できるワーキングホリデーなどに関する協力文書の交換式に立ち会った。その後、国王夫妻は首相夫妻が主催する夕食会にも出席。サッカーのスペイン1部リーグ、エイバルの乾貴士選手も参加した。

<農産品の輸出>
*4-1:https://www.agrinews.co.jp/p40078.html (日本農業新聞 2017年2月5日) 和牛輸出 アジア・欧州向け強化 対米は高関税が壁 全農グループ
 JA全農グループは和牛肉の輸出拡大を強化している。2020年度に500トンの目標を掲げ、5年間で約1.8倍に増やす考えだ。輸出が増えたことで、米国では日本産牛肉に設定している低関税枠(200トン)を超える情勢。枠を上回る輸出には高い関税が適用されるためこれまでの勢いを維持できなくなる可能性があり、アジアや欧州、中東への輸出を強めるなど攻勢をかける。全農は需要拡大が見込めるアジアや欧州への輸出に注力する。香港、シンガポールは現在も主要な輸出先になっているが、国内消費は飽和状態に近く、競合他社とのシェア争いをしているのが現状だ。そこで、タイやフィリピン、ベトナムといった、今後の経済成長が見込まれる新興国の高所得者向けの需要拡大を期待する。欧州では14年に牛肉の輸出が解禁され、和食人気、食の安全・安心志向を背景に潜在需要が高いとみる。和牛の食べ方などを通じた魅力発信を進め、市場開拓を狙う。全農は昨年、農林中央金庫と英国の食品卸を買収。現地の実需ニーズを見極めて直販体制を構築し、輸出を強めていく考えだ。中東も国内消費だけでなく、世界の観光客需要に期待する。一方、米国は現在、日本産の牛肉に200トンを上限とする低関税輸入枠を置く。枠内の関税は1キロ当たり4.4セント(約5円)だが、200トンを超えると26.4%の関税がかかる仕組みだ。日本全体の16年の対米輸出量は244トンで、200トンを超えた。全農グループの米国への輸出割合も高く、年間2割程度伸びていたが「高関税がかかると輸出の伸びは厳しく、様子見の状況」(全農畜産総合対策部)。トランプ米大統領の就任で、先行きも不透明だ。多様な部位の現地加工による商品化を通じた輸出拡大も目指す。輸出する牛肉はブロックのため、使い勝手が悪いケースもある。現地で食肉加工施設を設置し、カットやスライスして提供、多様な販売先を開拓する。全農は「拡大を達成するには、親日で食文化が近い台湾などの輸出解禁は不可欠」と強調する。

*4-2:https://www.agrinews.co.jp/p40037.html
(日本農業新聞 2017年1月31日) 加工用需要拡大へ 青森:桃 宮城:リンゴ
 果実の加工需要を掘り起こそうという動きが、ジュース以外でも広がっている。青森県のJА津軽みらいは、菓子や料理の材料として桃をピューレやシロップ漬け向けに出荷。2016年産の出荷量は約5トンで、当初の5倍に増えた。宮城県は、加工向けのリンゴ「サワールージュ」の菓子利用を推進。複数店舗の協力を得て1カ月間、同品種を使った菓子を販売し販路を開拓した。実需との連携が重要な鍵を握っている。
●ピューレ、シロップ漬けに
 JА津軽みらい管内では79人が約15ヘクタールで桃を栽培する。リンゴ農家に果樹の複合経営を促すため、桃を導入した。規格外品は、ピューレやシロップ漬けの製造を業者に委託し、ケーキやソフトクリームなどの原料として菓子店を中心に販売する。売り先の一つ、青森県土産販売(青森市)は、桃のピューレを年間約200キロ調達する。16年4月には「ピンクカレー」を商品化。11月末まで約2万個売れ、同社の主力商品となった。JAは県外にも販路を広げ、東京のジェラート店からピューレ約800キロ、ホテルからシロップ漬け約500キロの注文が来た。加工向けの農家手取り価格は10キロ約1000円。ピューレやシロップ漬けを始める前の11年の同約290円の3倍以上となった。JАもも生産協議会の会長を務め、平川市でリンゴ2・3ヘクタール、桃70アールを生産する木村俊雄さん(70)は「1次加工品の販売は所得確保につながる」と実感する。
●菓子利用や料理素材向け
 宮城県は、独自に育成したリンゴ「サワールージュ」を加工向け品種と位置付け、菓子のPRに力を入れる。13年度から毎年、10月の1カ月間、仙台市内の洋菓子店やホテルと協力し、同品種を使った菓子を販売する。16年度は9業者が参加。当初の3倍に拡大した。洋菓子店のガトーめぐろは同品種のアップルパイを販売。1カ月の期間中、1日20個を作り、全日完売した。同社の目黒栄治社長は「サワールージュは酸味が強く、果肉が硬いため煮崩れしにくい。今後も調達量を増やしたい」と評価する。県内では現在、同品種を約100人が1・5ヘクタールで生産する。菓子需要の拡大を背景に、栽培が始まった11年度当初の10アールから15倍に拡大し、16年度の出荷量は2トンとなった。県は「菓子需要を拡大していくには実需者との連携が欠かせない。今後も協力店を増やしたい」(農産園芸環境課)と展望する。
●「国産」「地元産」実需者にPRを
*果実のマーケティングに詳しい弘前大学の成田拓未准教授の話
 生鮮果実の消費量が減る中、業務用需要は果樹農家の所得を確保する上で重要な販路になる。国産果実は、菓子の付加価値を高めることにつながる。今後も加工向けの国産果実の需要は増えるだろう。産地は、洋菓子店など実需者に対し、国産や地元産をPRすれば新たな商機も出てくる。

*4-3:https://www.agrinews.co.jp/40720?page=2 (日本農業新聞 2017年4月27日) 海外で品種登録支援 無断栽培を防止 知財計画 政府方針
 政府は26日、農産物の輸出促進へ、海外での日本の農産物の品種登録への支援を強化する方針を明らかにした。品種登録によって国内の品種の育成者が種苗や収穫物を販売する権利を保護し、海外で無断栽培される事態を防ぐ。来月にも改訂する政府の知的財産推進計画に盛り込む。政府は同日に開いた知的財産戦略本部の会合で、同計画の素案を示した。柱の一つに「攻めの農林水産業・食料産業を支える知財活用・強化」を掲げ、農業分野での知的財産の活用に向けた施策を、従来の計画よりも大幅に拡充する。主にアジア向けに輸出が伸びているブドウ「シャインマスカット」は農研機構が開発したが、中国で品種登録をしなかったことから無断栽培が拡大。アジア各国で日本産と中国産が競合する懸念が指摘されている。イチゴやサクランボ、カーネーションなどでも無断栽培の事例が起きている。こうしたことから政府は、国内の育成者が海外で品種登録を出願する際の支援策を同計画に盛り込む方針だ。品種登録が迅速に進むよう、国内での品種登録の審査結果を海外の登録機関に無償で提供する取り組みや、品種登録後に無断栽培が発覚するなど権利が侵害された場合の支援策などを盛り込む。輸出促進では他に、地理的表示(GI)の海外での保護や、日本発の農業生産工程管理(GAP)認証の普及なども進める。湿度や土壌水分などさまざまな情報をセンサーで読み取り、温室を自動制御するなどICT(情報通信技術)の普及へ、国内でICTの標準的な規格を作るといった取り組みも盛り込む。同日の会合では委員から「農業でこれだけ具体的に明記したのは重要だ」と素案を評価する声や、日本の地名を冠した商品が海外で売られているとして、「現地の商標を取り消す費用の助成制度が必要だ」との声が上がるなどした。

<労働力>
*5-1:https://www.agrinews.co.jp/p40119.html (日本農業新聞 2017年2月10日) 都市住民 農村へ移住3割が関心 総務省調査
 総務省が9日公表した調査で、農山漁村に移住してみたいとする都市住民の割合が3割を超え、田園回帰の意向が広がっていることが明らかになった。移住したい理由には「気候や自然環境に恵まれている」が47%と最も多い。農山漁村地域が子育てに適しているとした割合は23%で、若い世代ほど高かった。同省の「田園回帰に関する調査研究会」に示した。東京都内や政令指定都市の20~64歳の3116人に1月にインターネット調査した。農山漁村への移住の意向は、「条件が合えば移住してみてもよい」(24%)、「いずれは移住したい」(5%)、「移住する予定がある」(1%)で合わせて3割に上った。20代(38%)、30代(36%)の割合が高く、男性の方が移住希望の割合が高かった。移住希望がある人に移住のタイミングを聞いたところ、「条件が整えばすぐにでも」が20%に上った。「自分または配偶者が退職したら」が23%だった。研究会委員を務める鳥取大学の筒井一伸准教授は「田園回帰の傾向が改めて把握できた。移住したい層が確認できたので、仕事の確保を中心にどういう条件を現場で組み立てていくかヒントが見えてきた」と分析する。

*5-2:http://qbiz.jp/article/106654/1/ (西日本新聞 2017年3月31日) 【新移民時代 変わる仕事場】(1)レクサス生産に外国人が「貴重な戦力」
 「世界一有名なトヨタの車を造るのはうれしいね」。自動車部品製造のテクノスマイル(福岡県宮若市)の工場。ミャンマーからの技能実習生テ・アウン・テさん(22)は、大型機械のそばに立ち、一つの部品を作る作業を担当する。ミャンマー中部マグウェイ出身。「家は農民で、お金がなくて車は買えない。けど車は大好き」。作った部品は近くのトヨタ自動車九州の工場で、日本が誇る最高級車「レクサス」の車輪上部に組み付けられる。タイヤがはねた小石の音が車内に響かないようにする高級車向けの部品だ。テクノスマイルは2008年に実習生を受け入れ始めた。当初は技術伝承の「国際貢献」が理由だったが、今は工場で働く42人のうち17人が実習生。幹部は「自動車メーカーが日給1万3千〜1万4千円で求人しても人員確保に苦労する。コスト削減を迫られる下請けの賃金では、日本人は集まらない」と打ち明ける。
   ■    ■
 自動車生産設備製造の福設(宮若市)では、ベトナム出身の技術者グエン・トゥアン・ブゥさん(26)が真剣な表情でパソコン画面に向かっていた。3D設計ソフトを使って製図しているのは「レクサス」などを生み出すトヨタ自動車九州の生産設備だ。ベトナムの大学を卒業後に「日本の製造現場を学びたい」と来日。専門技術が評価されて派遣社員として働いていたが、昨年会社に請われて正社員採用。日本人と同等の給料で働く。現在は9人の設計担当者のうち2人がベトナム出身者だ。「国内で技術者が不足する中で貴重な戦力。さらにベトナム出身の人材を増やしたい」。井上貞夫会長(68)の期待は大きい。日本の「ものづくり」をけん引する自動車産業。巨大なピラミッド構造のあらゆる階層を外国人が支え、彼らの携わった「日本車」が九州から世界中に輸出されている。
   ■    ■
 「らっしゃいませー」。平日の午後7時すぎ、JR博多駅に近い和食居酒屋。調理場から威勢のいい声が響いた。声の主はアルバイトのベトナムからの男性留学生(22)だ。焼き鳥、刺し身、からしれんこんもお手の物。調理をこなし、別の従業員が仕上げたギョーザ鍋には「違う。たっぷり」と指導。博多万能ねぎを土鍋に盛り付けてみせた。手を抜かない仕事ぶりに「働く姿勢は日本人のお手本で、社員になってほしい」と店長(41)。無形文化遺産の「和食」も、海外人材が中心になりうる。店舗の運営会社は、福岡県中小企業経営者協会連合会が計画する、海外の若者に日本語学校の学費を貸す事業に参画を予定している。昨春、日本人の新卒入社は0人。留学生が将来入社し、幹部として海外展開を手掛ける夢を描く。一方、「労働と留学が一体の契約」として摘発された宮崎県の法人の事例もある。給料面や職業選択の自由への配慮も欠かさないつもりだが…。社長(61)は「海外人材なくして、今後企業はうまく回らなくなる」と危機感を隠さない。
   ×    ×
 少子高齢化が進み、労働力人口が減少する日本。世界第3位の経済大国・日本の企業は、外国からの労働者、専門技術者、高度人材なくしては成り立たなくなろうとしている。この現実に、私たちは対応できているのだろうか。「新 移民時代」第6部は、外国人との共生を模索する「変わる仕事場」を訪ねた。


PS(2017年5月2日追加): *6-1のように、日本国内の外国人労働者が100万人を超し、外国人労働者は九州でも貴重な戦力となっている様子が、西日本新聞の九州主要企業104社へのアンケートでわかった。つまり、九州主要企業では、社員かパート・アルバイトに外国人を採用している企業が約7割(70社)を占め、うち4割が採用拡大を考えているとのことである。
 ここ数年、*6-2のように、日本では30年遅れの“働かない改革”が主張され、若者に「働きすぎてはいけない」という意識を定着させすぎて悪影響を与えているが、現在は1980年代とは異なり、日本人労働者の平均労働時間は既にアメリカよりも短く、労働生産性も低く、問題になっている残業時間制限は季節性のある企業の事情を考慮したものであるため、それ以下にしたければ、残業時間上限の詳細は個々の企業別労働組合で決めればよいことである。ただし、職種や年収によって「脱時間給」「裁量労働制」などとするのは、同じ人間であり、異常な長時間労働やプレッシャーは誰でも同じように健康を害することからおかしい。
 そのような中、*6-3のように、徳島県のJA東とくしまが管内の若手農家と共同出資して農業生産法人を設立し、農地を集積して耕作放棄地対策を進めながら、付加価値の高い米作り等を推進するそうだ。若手農家が参画しやすい経営体づくりをして大規模化すれば、資金力・生産性を上昇させ、農業生産法人で労働者を雇うこともできるようになるだろう。

    
 年間労働時間国際比較(厚労省)   日本の年間労働時間の減少  2017.5.2日経新聞 


 2016.4.3   産業別外国人雇用   国籍別外国人労働者   2017.5.2西日本新聞  
 佐賀新聞   事業所割合(厚労省)   (厚労省)

*6-1:http://qbiz.jp/article/108738/1/ (西日本新聞 2017年5月2日) 「外国人」九州企業7割が採用、うち4割は「拡大」方針 104社アンケート
 西日本新聞の九州の主要企業104社アンケートで、社員かパート・アルバイトに外国人を採用している企業が約7割(70社)を占め、うち4割が採用拡大を考えていることが分かった。理由として、海外事業展開や訪日外国人対応に加え、2割の企業が「人手不足で日本人が集まらない」と回答。政府に就労ビザ要件の緩和や日本語学習支援を求める声が多かった。国内の外国人労働者が100万人を超す中、九州でも貴重な戦力となっている実態が浮き彫りになった。外国人を採用中の企業のうち、社員としての雇用は59社、パート・アルバイトは33社。今後の方針として外国人の人数減少を検討している企業はゼロだった。採用理由(複数回答)は、多い順に(1)海外での事業展開のため=20社(2)訪日外国人に対応するため=19社(3)海外企業との提携や交渉のため=15社(4)人手不足で日本人が集まらないため=14社(5)高度な技術を持っているため=8社−などだった。外国人の社員やパート・アルバイトがゼロの30社のうち、9社が「採用を検討している」と答えた。外国人の採用について政府や行政機関に求める政策を複数回答で尋ねたところ、「就労ビザ要件の緩和」と「外国人就労者への日本語学習支援」がともに28社で最多。次いで「留学生の就労制限(週28時間以内)の緩和」が22社、「高度外国人材の受け入れ促進」が14社に上った。「単純労働ビザの解禁」を挙げた企業も11社あった。外国人採用拡大への政策を促す声の一方、外国人技能実習生などを受け入れる企業の中には「海外の送り出し機関のチェック体制強化」や「ビザ審査の厳格化」を求める企業もあった。調査は4月に160社を対象に実施し、104社から有効回答があった。

*6-2:http://www.nikkei.com/article/DGXKZO15975270S7A500C1PP8000/ (日経新聞 2017/5/2) 残業規制、脱時間給とセット 働き方改革、連合苦悩
 安倍晋三首相が「最大のチャレンジ」と位置付けた働き方改革。労使代表らがメンバーの「働き方改革実現会議」は3月末、約半年間の議論を経て残業時間の上限規制などを盛り込んだ実行計画をまとめた。秋の臨時国会ではいよいよ立法段階に入るが、改革の旗振り役だった連合の顔色がなぜかさえない。月平均60時間、年間では720時間とし、焦点の繁忙月の特例は100時間未満とした残業時間規制の最終案。「100時間はあり得ない」としてきた連合の意向を踏まえた首相要請で決まったもので、労働基準法70年の歴史で初の大改革となる。連合にとっても悲願だったはずだ。しかし、実行計画をとりまとめた3月28日の実現会議の終了後、連合の神津里季生会長は厳しい表情を浮かべて記者団に語った。「今のままで法案が通るのは反対だ」。連合の要求を反映させた残業時間規制案となったにもかかわらず、わざわざ苦言を呈したのには理由があった。神津氏が問題にしたのは実行計画に盛り込まれた一文だ。労働時間ではなく仕事の成果に応じて賃金を支払う「脱時間給制度」の導入を柱とする労基法改正案に触れ「国会での早期成立を図る」と明記した。同法案は野党や連合が「残業代ゼロ法案」と批判。審議されないまま約2年たなざらしになっている。その法案を政府は今国会での成立を見送り、今回の残業時間規制を盛り込んだ労基法改正案と一体で秋の臨時国会で審議する方針だ。残業時間規制とともに、時間にとらわれない働き方も認め、企業側が懸念する労働の生産性の低下を防ぐ狙いだ。批判の多い脱時間給導入だけで労基法を改正するより世論の理解を得やすいとの判断もある。残業時間規制という成果を勝ち取った神津氏だが、脱時間給制度は「長時間労働を助長し、残業時間規制とは矛盾する」との立場。しかし、一体審議となれば残業規制の導入を求めてきた立場から法案審議への明確な反対を唱えにくい。さらに連合を悩ませるのは支持政党である民進党が残業時間規制を巡り、繁忙月の例外を100時間未満とすることにした今回の案に「長すぎる」として反対の立場を示していることだ。脱原発などで関係は既にぎくしゃくしているが、これ以上溝が深まるのは避けたいところだ。脱時間給制度と残業時間規制を別々の法案として審議し、民進党も残業時間規制には賛成に回ってくれるのが連合にとってはベストシナリオ。しかし政府は連合の立場を承知のうえでパッケージ案を突きつける構えだ。民進党が政府案に賛成しないのも連合が一番分かっている。

*6-3:https://www.agrinews.co.jp/p40758.html (日本農業新聞 2017年5月2日) 若手農家と法人設立 特栽米生産を振興 農地集積し放棄地対策も JA東とくしまが共同出資
 徳島県のJA東とくしまは管内の若手農家らと共同出資して、農地所有適格法人(農業生産法人)を設立した。共同出資という深いつながりで連携し、付加価値の高い米作りを推進する。法人に農地を集積し、耕作放棄地対策も進める。農家とJAが共同出資して農業生産法人を設立するのは珍しい。新法人は「ほのか株式会社」。地域の農家5人とJAで組織する。年齢構成は30代が2人、60代が1人、70代が2人。代表は、小松島市で米やトマト、小松菜などを生産し、社員20人がいる「樫山農園」専務の樫山直樹さん(38)が務める。若手農家を中心に、地域で栽培面積の広い生産者の元に農地を集積し、農業振興に貢献する。JAは法人に職員1人を派遣する。参加農家の合計面積は70ヘクタール。条件不利地に点在する農地の利活用を進めたいJAと、規模拡大したい農家の思いが合致した。法人は、構成農家が既に取り組む特別栽培米の生産振興の他、酒造好適米や飼料用米を組み合わせ、有利販売に結び付ける。米の乾燥・調製を行うライスセンターを建設することなどで、150ヘクタールまで拡大可能。県の農地中間管理機構を利用し、農地集積を進める。将来的にはトマトの作付け拡大も視野に入れる。JAは、今回の法人設立だけにとどまらず、来年度には野菜の生産法人を立ち上げる予定。直売所と連携して地産地消を進める。収益性の高い野菜と組み合わせた施策で、農家手取りの向上を図り、地域活性化につなげる。JAは今回の法人立ち上げから、地域で勢いのある若手農家との結び付きを一層強めていく。将来的には、若手農家が参画しやすい環境をつくるための経営体づくりを目指す。荒井義之組合長は「自己改革の一歩先を行く事例をつくりたかった。担い手を育てるだけでなく、担い手と共に農業をしていくことが、地域貢献につながる」と強調する。


PS(2017年5月5日追加):アメリカと通商交渉すると、(経産省が発信源かも知れないが)乱暴な規制緩和要求をされる。そのため、「モノを輸出するには相手国の需要にあったモノを作らなければならない」という当たり前の主張ができる国とだけなら、TPPを行っても制度破壊が少なくて済み、それでも、なし崩し的制度破壊が行われないように気を付けることは重要だ。その点、*7-1のオーストラリア・ニュージーランドは、日本とは季節が逆の農業国で農業技術が進んでおり、日本の農業を無作法に侵食する程度は低い。そこで、これらの国と(TPPではなく)FTAを発効し、例えば福島県の帰還困難区域に当たる地域の農業者が移住して農業を行えば、日本の需要にあった農産物を逆の季節に作ることも容易だろう。
 なお、*7-2のように、TPP交渉の開始以降、確かに農業政策には理念が見られず、浅薄な通商ゲームの“カード”にされているため、「国内に、何故農業が必要か」について国民的議論を行い、農業を守る政策を行うことが必要だ。

*7-1:http://qbiz.jp/article/108837/1/ (西日本新聞 2017年5月4日) TPP、5カ国先行発効案が浮上 11カ国難航で日豪やNZ
環太平洋連携協定(TPP)を巡り、離脱した米国を除く11カ国のうち、5カ国以上で先行発効させる案が浮上していることが3日分かった。早期発効を主導したい日本やオーストラリア、ニュージーランドなどが検討している。11カ国はカナダのトロントで2日午後(日本時間3日未明)、首席交渉官会合を開き、米国抜きの発効に向けた議論を始めた。日本は最小限の変更による早期発効を主張したが、問題点を指摘する国が相次ぎ、難航は避けられない見通しだ。発効に積極的な国の交渉関係者は取材に対し「5カ国での発効でも構わない」と明言した。5カ国程度の場合、日本などのほか、貿易自由化に積極的なシンガポールやブルネイといった国の参加が想定される。2日の会合では、規模が大きい米国市場への輸出を期待していたベトナムやマレーシアなどが、米国抜きの発効に難色を示したとみられる。日本などは消極的な国に翻意を働き掛ける方針だが、議論が行き詰まると、5カ国以上で先行発効させる案が有力になりそうだ。その場合も、TPPの経済効果は当初の想定より大幅に縮小する可能性が高い。先行発効は、保護主義の動きを強める米トランプ政権に、アジア太平洋地域の貿易や投資ルールの確立を目指すTPPの意義の再認識を促す狙いもあるとみられる。発効させた後、米国を含む残りの国が加われる仕組みも整えたい意向だ。首席会合は2日間の日程で、米国抜きの発効に向けた道筋を模索。3日午前に2日目の議論をし、3日午後に閉幕した。今月20、21日のアジア太平洋経済協力会議(APEC)貿易相会合に合わせて開くTPP閣僚会合の声明案なども協議した。11カ国での発効に消極的なベトナムなどのほか、中南米4カ国の貿易自由化の枠組み「太平洋同盟」に参加しているチリやペルーも積極的な姿勢を示していない。カナダとメキシコは、北米自由貿易協定(NAFTA)再交渉での米国の出方次第でTPPに集中できなくなる可能性があり、態度を決めかねているとされる。

*7-2:https://www.agrinews.co.jp/p40779.html (日本農業新聞論説 2017年5月4日) 理念薄い通商政策 農業守る国民的議論を
 政府が通商政策で農業をどう守ろうとしているのかが見えない。最近では、環太平洋連携協定(TPP)から離脱した米国にあくまで復帰を呼び掛ける従来方針を転換し、米国抜きTPPにかじを切った。米国との2国間交渉を避けたい意向がうかがえるが、戦術論に明け暮れていないか。理念が伝わらない。過去の政権は交渉入り前、農業を守る国民的な合意づくりに注力したが、現政権にはそれがないのだ。理念づくりが急がれる。「多様な農業の共存」。2000年に政府が世界貿易機関(WTO)交渉に際して掲げた日本提案の理念だ。ウルグアイ・ラウンド交渉で農業批判が上がった反省から、国内農業を守る理由を明確に打ち出した。食料安全保障や農業の多面的機能を維持することが消費者にも必要だと説き、公正な貿易ルールを目指す方針を示した。04年に政府がアジア各国との経済連携協定(EPA)交渉に臨んだ際には、「みどりのEPA推進戦略」をまとめた。タイなどは農産物の対日輸出に強い意欲を示していたが、日本は相手国の農村の貧困解消に力を貸すことを提案。アジア地域の農業発展の在り方について、「自由化と協力のバランス」を確保することが重要だとして折り合った。しかしTPPでは、こうした次元の議論がなかった。重要品目の聖域確保を目指した国会決議は、文字通り国会の提案で、政府は決議を自らの理念として語っていない。交渉合意後は、「TPP対策を措置するから国内農業に影響はない」という答弁に終始した。重要品目を一部関税撤廃したにもかかわらずだ。この論法に従えば、今後の交渉でも対策を打てばどう決着しようと問題ない、となる恐れがある。譲れぬ一線をいくら議論したところで、無意味になりかねない。さらに深刻なのは、農業を守る国民合意どころか、農業攻撃が政府内からやまないことだ。国際競争力を高めるべきとの理由で、地域を支えてきたJAに抜本改革を繰り返し迫り、いまだに規制改革論議が続く。農家所得を高める自己改革は必要だが、そうした域を超えた過剰介入と言っていい。産業としての農業論一辺倒で、過去の国民合意で重視した食料安全保障や農業の多面的機能の維持といった視点が軽視されていないか。改めて、WTO日本提案が“農政の憲法”である食料・農業・農村基本法を制定する国民的議論の中から生まれたことを思い出したい。現政権の一面的な農政は、「食料」「農村」という柱を高く評価した“憲法”の理念からもそれているように映る。浅薄な農業観で国内に批判を抱え、通商交渉でどうやって他国とわたり合っていくというのか。これからまた交渉が本格化しようとしている。今こそ政府は、農業を守る理念について懐の深い国民的議論を起こしていくべきだ。


PS(2017年5月7日追加):サラリーマンである士族社会と違って、農漁村では女性も自宅近くでずっと働いており、働けない女性の方がむしろ肩身が狭かったため、*8-1は、これまでの女性の活躍や貢献を過小評価している。そもそも、元祖“道の駅”は、リヤカーで新鮮な野菜や魚を売り歩いていた農家や漁家のおばさんたちだった。しかし、問題は、*8-2のように、重労働していたにもかかわらず女性の地位が低く、女性認定農業者は4.6%、JAの女性役員は7.5%、女性農業委員は7.4%と10%にも届かないことで、これは男性中心・女性蔑視の文化が原因だったのであって女性自身が垣根を作って閉じこもっていたのではないことを、ここで明確にしておく。そして、このように何でも女性のせいにする文化(このため「責任転嫁《責任を嫁に擦り付けること》」という熟語がある)も卒業しなければ、女性の地位は上がらない。
 私は、女性が農業や加工に主体的に参入することで、皿の上に盛った料理まで見据え、簡便性や栄養価を考えた無駄のない野菜や惣菜が出てきたと感じている。例えば、大根・小松菜などのつまみ菜は、それらの間引きした苗だが、ミネラル・ビタミン・食物繊維を含み、コラーゲンの生成を促してシミ・そばかすを防ぐビタミンCが豊富で、アリルイソチオシアネートによる血栓防止効果や、グルコシノレートによる解毒作用強化・抗がん効果、食物繊維による整腸作用・生活習慣病予防効果も期待できるそうだ。これから勢いよく成長しようとする植物がこれらを含んでいるのは容易に想像できるが、これまで間引きした野菜を売ることなど考えられていなかったのではないだろうか。買う方は、切る手間が省け、一人前の味をしているつまみ菜を、感心しながら買っている次第だ。

*8-1:https://www.agrinews.co.jp/p40799.html (日本農業新聞論説 2017年5月7日) 若手女性の起業 垣根を越え飛び出そう
 個人で起業活動を始める若手女性農業者が増えている。日本農業新聞が4月に始めた企画「の・えるSTAR(スター)」(日曜付「女性のページ」)では、直販、加工はもちろん、子育て女性を雇用する農場の設立、カフェの出店など、多彩に奮闘する女性が登場する。従来の経営スタイルを超え、夢の実現にまい進する彼女たちは常にアンテナを張り、交流を広げる中で一線を越えていく。地域の新たな活力として期待したい。農水省がまとめた2014年度の農村女性による起業数(15年3月現在)は、個別経営が4939件と全体の52%を占め、初めてグループ経営の数を上回った。特に39歳以下の個別経営が165件と2年前の前回調査より21%増えており、若手の躍進が目立つ。女性の社会進出の進展や、インターネット販売、インターネット交流サイト(SNS)の活用により、個人が活動しやすい状況が農村部でも広がっていると言えよう。「の・えるスター」に登場する女性たちを突き動かすのは、「今の状況を変えたい」という率直な思いだ。「もぎ取り体験では1週間しか客を呼べない」「子育てママが働けない」「畑に机を置くだけの直売所では人が呼べない」などである。悩みの解決へアンテナを張り、交流を広げ、時に業種の垣根も越えて連携へ動きだす。伝統野菜の知名度不足に悩む女性は、行きつけのラーメン店主に「レストラン」の夢を語る中から、店舗貸しの提案を受けて弁当販売を始めた。ブドウもぎ取り園の集客を模索する女性は、農水省の「農業女子プロジェクト」に参加、観光サービス会社との提携に乗り出した。県の普及指導員から助成事業の助言を受けた女性は、集客方法から売り上げの見込み額まで示す計画書を作成。審査に通り、直売所出店にこぎ着けた。一歩を踏み出すきっかけとなったのは、自ら動いて得た「つながり」である。もちろん、いいことばかりではない。限定販売に徹したり、投資を抑えたりなどの工夫をしても、経営がうまくいかないこともあるだろう。農村の因習という壁もある。若手女性農業者の発表の場では「農村はまだまだ男社会。女性が営業活動するには制約がある」「家族の理解を得られず家を空けられない女性は少なくない」といった声が出る。それでも、思いがあるならぜひ挑戦してほしい。動けば必ず共感し、支援してくれる人がいるはずだ。今後、経営が発展すれば、新たな課題が出てくるだろう。人手や賃金の確保、多様な消費者ニーズへの対応などである。地域との連携や食育、福祉といった広がりも求められる。柔軟な発想で挑む彼女たちが、地域にどんな活力をもたらすのか楽しみである。思いを実現するチャンスは、いろんなところに転がっているはずだ。

*8-2:https://www.agrinews.co.jp/p40297.html (日本農業新聞 2017年3月5日) 農山漁村女性の日 発展の鍵握る活躍期待
 3月10日は「農山漁村女性の日」。この日を前後して、農山漁村女性の社会参画促進や地位向上へ、さまざまな啓発行事が行われる。女性は農業従事者の約半数を占め、農村社会と農業の発展に欠かせない存在だ。農業経営が6次産業化を進める中、生産者であり、かつ生活者と消費者の視点も併せ持つ女性の役割は、ますます重要さを増していくはずだ。その役割の価値を見つめ直すきっかけにしよう。農業経営やJAなどの方針決定の場へ、女性の参画が増えている。農水省の調査によると、女性の認定農業者は2016年3月で1万1241人と前年より429人増えた。12年から毎年400人以上増え続けている。JA女性役員は1305人(16年7月)で、全役員に占める割合は7.5%と前年比0.3ポイント増。女性農業委員も2636人(15年9月)で、全委員に占める割合は7.4%と同0.1ポイント増となった。農水省の「農業女子プロジェクト」も4年目を迎え、農業女子メンバーは、今では500人を超える。企業と提携して商品を開発したり、教育機関と組んで学生に就農を促したりと活動が盛んだ。ことし初めて、農業女子の取り組みを表彰するイベントを開いてPRを強める。ただ、社会参画への進み方は遅い。女性認定農業者が増えているとはいえ、全体の4.6%だ。JA女性役員、女性農業委員も、第4次男女共同参画基本計画で共に早期目標に掲げる10%には届かない。「役員になり外出が増えると、夫が嫌な顔をする」「男性役員ばかりの中で意見が通らない」。JA女性役員からは、そういった不満の声が上がる。一方、組織化せず活動の自由度が高く見える農業女子の集まりの中でさえ「出掛けるには家族の許可がいる」と悩む声を聞く。家族経営が主流で、かつ男性が中心となっている農村社会の閉鎖的な構図が、依然としてうかがえる。女性農業者が真に活躍し、能力を発揮するにはまだ厚い壁があるのだ。家族の後押しはもちろん、活動を受け止める男性らがさらに理解を深める必要がある。日本政策金融公庫が16年に発表した調査では、女性が経営に関与している経営体は、関与していない経営体よりも経常利益の増加率が2倍以上高かった。特に、女性が6次産業化や営業・販売を担当している経営体で、経常利益の増加率が高い傾向にあった。買い物好きでコミュニケーション能力が高い女性だからこそ、的確に消費者ニーズを把握できていることの表れだ。農業収益を増やし、経営発展の鍵を握るのは女性農業者だ。「農山漁村女性の日」が3月10日とされたのは、女性の三つの能力である知恵、技、経験をトータル(10)に発揮してほしい――との願いが込められている。もっと活躍できる社会へ、家族、地域挙げて環境整備を急ぐべきだ。


PS(2017年5月9日追加):*9のように、もちろん小さくたっていい。だから、最初の「図の説明」にも、「耕地面積が小さく大型機械が入りにくいのは、穀倉地帯での生産性や農家所得を下げる原因になっている」としか書いておらず、すべての農業で面積だけが競争力の源泉だとは書いていないのだ。しかし、中山間地などで面積を広げられず、少ない面積で所得をあげなければならない場合は、少量でも利益のあがる付加価値の高い農産物を作ったり、ブランド化や差別化をしたり、他の資源と組み合わせたり、6次産業化したり、環境維持活動をして日当をもらったりなど、さまざまな工夫をする必要がある。その理由は、利益を増やすには、生産コストを下げるか、付加価値を上げるか、その他で稼ぐかしかないからだ。
 ただし、日本の財政は苦しく国民の財布は一つであるため、物価を上げ、福祉や教育を減らし、国民負担を増やして、健康な生産年齢人口の人に渡す補助金だけは永久に確保しようなどという甘えはやめて欲しい。つまり、自立できるのなら、違法でない限り何をやってもよいのだ。

*9:http://qbiz.jp/article/108970/1/ (西日本新聞 2017年5月9日) 小さくたっていいじゃないか
 雑誌編集部に勤務後、2008年入社。地域報道センター、福岡西支局、佐賀総局を経て経済部。顔つきからか九州出身によく間違われる が、東京出身(八王子ですが)。「成長産業」の候補として国が大規模化や企業化といった「改革」を押し進める農業。そんな農政の方向とは異なる小規模な農業の在り方を考える「小農学会」のシンポジウムが4月下旬に福岡市であった。農家や農業関係者約100人が集まって意見を交わした。この学会、九州の農家や研究者が中心になって呼び掛けて2015年に発足した。シンポジウムは昨年に続いて2回目で、参加者は1回目よりも40人ほど増加。東北や関東からも参加があった。つまり、大規模化を目指す農業に違和感を抱く人が各地に少なからずいるということだと思う。農林水産省の15年度の資料によると、日本の農家1戸当たりの耕地面積は2・5ヘクタール。放牧の畜産などを含む数字とはいえ、EUは16・1ヘクタール、米国は175・6ヘクタール。オーストラリアは2845・9ヘクタールとその差は圧倒的だ。稲作に絞った農水省の14年の資料で比べても、日本のコメ農家の平均は1・4ヘクタール。これに対し、米国の典型的なコメ生産地とされるカリフォルニアでは約320ヘクタールだ。10アール(1反)当たりの生産コストは日本が3・5倍高いという。国は農業の「競争力強化」を掲げるが、世界市場を見据えたとき、どこまでこの差を埋めるというのか。もちろん、ある程度の農地集約や効率化は必要だ。しかし、日本の農地は約4割が中山間地。広大な平地が続く外国とは事情が違う。効率化だけを追求したら、中山間地の農地は不要になってしまう。その先にあるのは、荒れ果てた農地に覆われた農山村の姿だ。「集落を守るためには、小農をつぶさないことだ」。シンポジウムで実践事例を報告した福智町の農家は力を込めた。集落の71軒の農家の中で専業農家は6軒。小規模の兼業農家も、農地を守る立派な担い手だ。特に中山間地の農地は水源かん養や国土保全などの役割も大きい。荒廃すると、その影響は都市部の住民の暮らしにも及ぶということだ。農業は「成長力のある産業」だと思うし、大規模化も一つの方策だ。しかし、進む道はいくつもあっていい。小農学会の活動がこれからどう広がっていくのか注目したい。


PS(2017年5月11日追加): *10-1のように、営農指導の担当者を増員して担い手農家に出向く体制を増強したのは、今後は新規就農者が増え、利益率の高い農業が求められるためよいと考える。また、*10-2のように、①東京農大合格者の女性割合が52.8%と半数を超え、全国大学の農学系学科に在籍する女子学生の割合は2016年度45%で、30年前の1986年度15%と比べて3倍となり ②女性は農村に活気をもたらし、収益性を向上させるとの調査結果もあるため ③農水省女性活躍推進室の久保室長が、「女性が職業の一つとして農業を選べる流れをつくり、農業の成長産業化を図る」 としているのは、やっと与謝野晶子の言う「山動く日ぞ来る」という状態が来たのだと思う。しかし、高等教育を受けても、就職時や就農時に差別されて意思決定できる立場に行けなければ女性が増えた効果は薄くなるため、今後は認定農業者やJA役員等の女性割合を母集団に見合ったものにすべきだろう。
 
*10-1:https://www.agrinews.co.jp/p40835.html (日本農業新聞 2017年5月11日) 営農指導に人員シフト 資材配送拠点を再編 引き取りは5%引き 大阪・JAいずみの
 大阪府のJAいずみのは、購買と営農指導の部門をまたいだ人員配置見直しや資材配送拠点の再編を通じ、農家に出向く体制の強化に乗り出した。資材の予約購買で、従来の配送に加え、引き取り方式を2017年度にスタート。配送にかかっていた購買部門の人員を減らし、営農指導の担当者を増員して担い手に出向く体制を増強した。両部門が連携しながら、農家の所得向上に向けた提案活動に力を入れる。
●出向く体制を強化 部門連携で提案に力
 これまで、資材の配送拠点を岸和田市の営農総合センターの購買店舗に集約していた。ただ管内は4市1町と広域で、配送に往復2時間かかる場所もある。特に繁忙期は配送に労力が割かれ、十分な提案活動ができない課題があった。資材配送の効率化と提案活動の強化に向け、配送拠点を、より組合員に近い各購買店舗に再編。地域ごとの5店舗に引き取りに来てもらう方式を4月に始めた。引き取りの場合、肥料、農薬の価格を5%引きし、農家にとってもメリットがある形にしたことで、7割の組合員が引き取りに転換したという。今後、9割ほどまで高めていきたい考えだ。水稲の資材で引き取りを利用した樋口忠俊さん(69)は「資材価格は収益面にすぐ反映されるので、安くなるのは助かる」と話した。今後は、農家に直接出向いての資材の提案活動や、各購買店舗の品ぞろえの見直し、店内広告(POP)の充実など、配送以外の業務にも注力し、農家のニーズに応えていく考えだ。購買事業の効率化を、営農指導事業の強化にもつなげる。配送などにかかっていた人員を減らし、営農指導担当者を2人増員した。地域農業の担い手に出向くJA担当者(愛称TAC=タック)体制を整え、認定農業者らのサポートを強化する。一連の改革は、地域営農ビジョンに沿った16年度からの第3次総合3カ年計画の営農経済事業改革の柱で、自己改革の一環でもある。JA営農経済部の信貴正憲部長は「農家の所得向上と農業生産の拡大に向けた起爆剤にしたい」と強調する。

*10-2:https://www.agrinews.co.jp/p40828.html (日本農業新聞 2017年5月11日) 農業系女子増加 東京農大の合格者 女性過半に 「現場で活動」「就職の幅」魅力 農村での活躍期待
 農業が、今や女子学生憧れの業界に――。大学農学部や農業高校に進学する女性が増え、農学系女子を「ノケジョ」と呼ぶ造語も登場。東京農業大学の今年度の入学試験で初めて、合格者比率で女子が男子を上回った。女性は農村に活気をもたらし、収益性を向上させるとの調査結果もあり、ノケジョ躍進に期待が集まる。神奈川県伊勢原市にある東京農業大学の農場で9日、2年生の農場実習が野菜、果樹、花きの3コースで実施された。女子学生もこの日は、ジャージやつなぎ姿で土や緑と向き合い農作業に汗を流した。実習に参加した田川真子さん(19)は、実家が長崎県の兼業農家。自身が入院した時、祖父が持参した花に感動して農業を継ごうと決意。指導者になる夢を抱き「地元の耕作放棄地を何とかしたい」と笑顔で話す。横浜市の仲田萌夏さん(19)は、農家以外の出身だが、植物の育種に興味を持ち「生花店や花き卸、種苗会社など、植物に関わる仕事に就きたい」と、胸を膨らませる。同大では、2017年度入試で合格者に占める女性の割合が52・8%と男女比が逆転。同大入試センターの藤枝隆センター長は「おそらく開学以来初めて」とみる。これまで農学部は「ダサい」「汚い」とのイメージを持たれていた面もある。しかし近年は「生命科学や環境問題、地方創生など、社会問題の解決手段として認知度が高まってきた」(藤枝センター長)。女性が増える要因について藤枝センター長は「女性は社会のトレンドに対し、男性より敏感で感性がいい」と分析。さらに「座学中心の文系学部より現場で活動する農学部に魅力を感じ、さらに就職面では農業や食品関連、公務員など幅広い選択肢がある」とみる。「ダイコン踊り」に象徴される男性的な同大のイメージは、今や昔話だ。
●共同参画で成長産業に
 女性の力に着目する農水省は、13年度「農業女子プロジェクト」を発足。昨年度からは女性の就農を促そうと、同大と東京都内の女子高校をモデルに新企画に着手した。先輩の女性農業者との交流、農業の魅力発信などを仕掛け、女性の就農意欲と働きやすい環境づくりを進める。同省女性活躍推進室の久保香代子室長は「女性が職業の一つとして農業を選べる流れをつくり、農業の成長産業化を図る」と意欲を示す。もちろん、誰もが就農するわけではない。同大では、多くが食品企業や公務員などへの就職を希望する。同大キャリアセンターは「就農や農業法人への就職意向は増えているが、他の企業と比べ、労働に応じた給与の水準が低いのが課題」とみる。女性が農業経営に参画すると、収益向上につながるとの調査結果もある。日本政策金融公庫によると、女性が経営に関与している経営体と関与しない経営体を比べると、経常利益の増加率が70ポイント高い。女性が営業や販売部門を担当する経営体は関与しない経営体と比べ収益性の伸び率に5倍の差があるとの結果もある。
●学生割合3倍に
 文部科学省によると、全国の大学農学系学科に在籍する女子学生の割合は2016年度が45%で、30年前の1986年度(15%)と比べ3倍になった。農業高校、高校の農学系学科も16年度は49%と、男女比が1対1に。農水省の調査では、学校を卒業して新規就農(雇用含む)した20代以下に占める女性比率も増加。15年は26%と、07年(17%)より大きく増え、若い女性の就農志向は鮮明だ。


PS(2017年5月12日追加):*11は、進歩ではあるもののまだ生産者側の論理で、消費者が購買しなければ販売できないのだということを忘れてはならない。その消費者は、単に「国産か否か」ではなく、①減農薬で有害物質が残っていないか ②有機肥料を使用しているか ③遺伝子組み換えにより害虫も寄り付かなくなった農産物に、人間にとって有害な物質は生成されていないのか ④農産品なら収穫地域 ⑤海産物なら漁獲海域 などを、外食・中食も含めて知りたいと思っている。そして、表示がなく状況がわからなければ、安全性を重視して外国産を選択したり、その産品は使わないという意思決定をしたりする自由もある。そのため、消費者が知りたい情報は表示し、表示されて困るような環境汚染には気を付けるべきなのだ。

   
       遺伝子組換作物について             農薬について

(図の説明:生産コストを下げることができるため遺伝子組換作物の割合は上がっているが、遺伝子組換後の作物が生成する物質を直接食べても人間には無害だという証明はされていないものが多い。そのため、少し高い価格を出しても遺伝子組換でない作物からできた商品を購入するか否かの判断は消費者に任せられるのだが、その判断をするためには遺伝子組換作物混入割合の情報が必要であるにもかかわらず、日本の表示義務はEUと比較して甘い。また、農薬使用量も、日本はヨーロッパ諸国よりもかなり多い)

*11:http://qbiz.jp/article/109290/1/ (西日本新聞 2017年5月12日) お総菜や弁当、外食も原産地表示を 九経連が義務化を求める提言
 九州経済連合会のワーキンググループ(WG、座長・山尾政博広島大大学院教授)は11日、弁当店などの「中食」と外食について原料原産地表示の義務化を求める提言をまとめた。九経連として30日に承認後、6月にも農林水産省と消費者庁に提出する。提言は、中食・外食が使う食材全てに原料原産地表示の義務化を一律に求めるのではなく「段階的に表示していくことが望ましい」と指摘。義務化の対象食材を牛肉、豚肉、鶏肉、サーモン、ウナギ、マグロ、フグ、ヒラメの八つに絞った。対象事業者については公平を期すため、全ての中食・外食事業者とした。食品の原材料の原産地表示は現在、食品表示法に基づき、生鮮食品と加工食品の一部が義務化の対象となっている。さらに政府は数年後、全ての加工食品で原則的に義務化する方針。ただ、外食と中食の一部は対象外で、消費者の国産選択が難しい状況という。このため九経連は、生産や流通などの関係者を集めてWGをつくり、1月から提言を検討してきた。

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2017.4.24 国の予算の使い方 (2017年4月25、26、27、28、30、5月4、20、27日追加)
 書くべきことは多いが、今日は、国の予算の使い方とそれを左右する基本的意思決定について記載する。なお、私は、前のパソコン(PC)にwindows XPを入れていて、そちらの方が使い勝手がよかったため最近まで使っていたが、XPではアクセスできないHPが増えたので、仕方なくwindows8.1が入っているPCを使うよう変更した。そうすると、ブログ写真の解説文字の位置が変わってしまう上、蓄積されたデータの移管にも苦労が多かった。そのため、ソフト会社は新ソフトを開発して「売らんかな」の販売戦略をとるのではなく、PCを事務作業や研究に使って価値あるデータをPCで蓄積している人の身になって考えて欲しいと思った次第である。

  
      フクイチの現状      諫早干拓地       玄海原発
        2016.6.30毎日新聞 ランドサット撮影  2017.4.13西日本新聞

(1)“国の責任”となる膨大な原発事故費用
1)フクイチの廃炉・賠償費用とその無駄遣い部分
 経産省は、2016年12月9日、*1-1のように、フクイチの廃炉・賠償などの費用総額が21兆5000億円にのぼるという見積もりを公表し、これまでの11兆円から倍増させた。

 その理由は、①廃炉費が2兆円から8兆円 ②賠償費が5兆4000億円から7兆9000億円 ③除染費が2兆5000億円から4兆円 ④中間貯蔵施設整備費が1兆1000億円から1兆6000億円に膨らんだ などだが、溶け落ちた核燃料(デブリ)の取り出し方法などの詳細が決まっていないため、経産省は合理的な見積もりが困難としてそれを含めていない。これなら、また2倍になるのも時間の問題のように見えるが、④は最初から最終処分をすれば節約できる金額で、核燃料の取り出し費用も石棺にすれば不要だった。また、廃炉に長期間かけ、原子炉建屋のカバーを外して環境を汚し続けているのは、殺人に近い。

 さらに、経産省は、賠償総額7兆9000億円のうち2400億円程度を新電力にも負担させるようにして、巨額の事故処理費用を賄う方針だ。しかし、これでは、原発事故には責任のない会社や個人が原発事故の費用負担をすることとなり、電力市場が不公正な市場となって電力自由化の効果もそがれるため、事故を起こした会社が蓄えた資産を売却して廃炉費用を賄うのが筋である。

 なお、*1-2のように、2013年9月3日、フクイチから高濃度の放射性物質を含む汚染水が漏れているため、政府は約470億円(凍土壁建設費:320億円、浄化装置開発費:150億円)の国費を投じ、政府主導・国の全額負担で、①原子炉建屋への地下水の流入を遮断する凍土壁を設置し ②汚染水浄化装置を増設し ③汚染水漏れが見つかった急造タンクは溶接のしっかりしたタンクに入れ替え ④建屋に流れ込む地下水をくみ上げ ⑤地下坑道(トレンチ)にたまっている高濃度汚染水を除去し ⑥汚染水の海への漏洩を抑えるための地盤改良をする とした。

 しかし、それから約3年6か月後の現在も、原子力規制委員会が国際原子力事象評価尺度(INES)でレベル3(重大な異常事象)に相当するとした汚染水問題は、課題のまま解決していない。これだけの国費を投入しても片付かない理由は、「総額470億円を投入。うち2013年度予算の予備費を210億円使い、対策を前倒し」というように使う金額を先に決め、汚染水問題の解決よりも景気対策が目的であるかのような予算の使い方をしているからだ。このように、事の重大性が全く理解できずに優先順位が滅茶苦茶な人は多いが、これなら石棺にすれば、汚染水問題は生じず、この470億円やタンクの設置費用は不要だったのである。

2)国は原発事故でどういう責任をとれるのか
 フクイチの場合は、これまで政府・電力会社が「原発は絶対に壊れず、安全でクリーンだ」と強く宣伝してきたため、政府や電力会社の宣伝を信じてきた住民に罪はない。そのため、原発事故の責任は、虚偽の宣伝をしてきた政府・電力会社にあり、住民は政府・電力会社に完全に復旧してもらい、復旧までに生じた損失についての損害賠償や慰謝料を受ける権利がある。ただし、実際には、除染しても完全には復旧できない地域が多く、そこに住んでいた人は損害賠償・慰謝料に加えて移転費用も請求できるわけである。
 
 しかし、*1-3のように、原発を再稼働して起こる今後の原発事故に対しては、「原発は絶対に壊れないので、安全でクリーンだ」と住民が信じれば、それは交付金目当てのご都合主義の信頼になるだろう。

 また、「万一事故が発生した場合、国は責任を持って対処する」と繰り返しているが、(1)1)の状況で、国が責任を持って対処しているとは言えず、故郷が汚染され復旧していないのに避難指示を解除されて困っている被害者も多い。さらに、原発事故は、復旧すること自体が困難で、その費用も高くつくというのが現実で、国民は、何度も原発事故処理費用のような後ろ向きの費用は負担したくないし、できないのである。

(2)玄海原発再稼働について
 佐賀県議会は、*2-1のように、過半数を占める自民党議員が「再稼働容認」、民進党は「条件付き再稼働容認」として、最稼働容認決議案を可決した。佐賀県知事は、「県民代表としての県議会決議を重く受け止め、再稼働に同意する見通し」で住民投票には否定的だが、佐賀新聞社が昨年秋に実施した県民世論調査では、反対が賛成を上回ったそうだ。私は、県議会議員選挙は原発再稼働のみを争点にして行うわけではないため、原発再稼働のみを争点とし、その賛成及び反対理由を明らかにして住民投票するのが、これからの方針を決め、それを遂行する覚悟を決める上で重要だと考える。

 なお、佐賀県内の3首長は原発再稼働に反対の意思を表明し、事故が起きれば県境は関係ないため、長崎県、福岡県からも反対・不安・懸念の表明が相次いでいる。

 このような中、*2-2、*2-3のように、2017年4月22日、世耕経産相が九電の瓜生道明社長の案内で玄海原発を視察し、午後に佐賀県庁で山口知事と会談し、山口知事は記者団に「大臣から国として責任を持つとの強い決意の言葉を頂いたので、(地元同意の判断は)できるだけ早くと思っている」と述べ、週明けにも地元同意を表明するそうだ。山口知事(東京大学法学部卒、総務省出身)は「手続きが大事」とよく言われるが、西日本新聞が書いているとおり、再稼働するための“儀式”は一歩ずつ進んでいるが、原発再稼働による住民リスクは親身に考えられていないように見える。

 そして、*2-4のように、山口知事は24日午後、「熟慮に熟慮を重ねた結果、原子力発電に頼らない社会を作るという強い思いを持ちつつ、現状においては(再稼働は)やむを得ないと判断した」として、九電玄海原発の再稼働に同意する考えを表明し、これで地元同意手続きが完了したそうだ。しかし、「手続きさえ踏めば、真実はどうでもよい」という発想が法学部卒の人に多く、「裁判で手続きさえ踏めば、無実の人を犯人に仕立て上げてもよい」という結果も招いているため、法学部教育は手続主義から真実追及主義に変更すべきである。

 なお、住民リスクの内容を重視する大学の元教員や医師らでつくる「福岡核問題研究会」の有志は、*2-5のように、「玄海原発が新規制基準に適合すると認めた原子力規制委員会の許可は不当だ」として、規制委員会に異議を申し立てる審査請求をすることを決めたそうだ。その理由は、①フクイチ後、フランスは総勢300人の緊急対応部隊を新設したが日本の新規制基準には対応する措置がなく、世界基準に程遠いこと ②規制委が重大事故時の住民避難などの対策の有効性を審査の対象にしていないこと などが、「法律が求める責務からの責任逃れであり違法」などとして、主に8項目を挙げているそうだ。また、*2-6のように、反原発団体も、「県民を犠牲にするな」と経産相に抗議している。

 さらに、2017年4月14日、*2-7のように「原発ゼロ・自然エネルギー推進連盟」が発足し、会見で小泉元首相は「国民全体で原発を止めていこうという強いうねりが起きているのを実感している」とし、「いずれ国政選挙で脱原発が大きな争点になる時がくる」と力を込められたそうで、やはり感がよいと思う。会長その他の役員は「顧問:細川護熙元首相、会長:城南信用金庫吉原毅相談役、副会長:中川秀直元自民党幹事長、島田晴雄(前千葉商科大学長)、佐藤弥右衛門(全国ご当地エネルギー協会代表理事)、事務局長:河合弘之(脱原発弁護団全国連絡会共同代表)、事務局次長:木村結(東電株主代表訴訟事務局長)、幹事:鎌田慧(ジャーナリスト)、佐々木寛(新潟国際情報大教授)、香山リカ(立教大教授)、三上元(元静岡県湖西市長)、永戸祐三(ワーカーズコープ理事長)」だそうだ。

(3)諫早干拓について
 *3-1、*3-2のように、諫早湾(長崎県)を鋼板で閉め切ってから20年が経過し、国の干拓事業で国内最大級の干潟は農地になり、諫早湾を含む有明海は漁業不振が深刻化した。そのため、2002~2016年度に、海底に砂を入れて耕したり、干潟に潮の流れをよくする水路を築いたりする工事をして、498億円という多額の公費を投入したが海は再生しなかった。自然の流れを壊した上で、海底に砂を入れて耕したり、干潟に潮の流れをよくする水路を築いたりするのが無意味なことは、やってみなくても明らかである。

 そのほか、国と自治体を合わせると、352億円の公費が投じられ、下水道を整備したり、水質を浄化したりして、調整池の水質改善を続けているそうだ。下水道の整備は干拓しなくても必要だが、水質浄化までしても調整池は富栄養化し、毎夏のようにアオコが大量に発生して、海の再生も池の水質改善も十分な効果が上がっていないのは、水が外に流れ出ないからである。逆に、有明海の方は貧栄養化して、養殖海苔が色落ちしたり、漁業不振になったりしているわけだ。

 そのため、調整池のアオコの調査を続ける熊本保健科学大の高橋徹教授(海洋生態学)は「病気なら検査して、診断し、効果のある治療法を選ぶ。有明海の異変では検査にあたる開門調査をしていない。それ抜きでは効果的な対策も不可能なのに、あてどもなく血税が投じられている」と述べている。

 この干拓事業をめぐっては複数の訴訟があり、干拓が有明海の漁業不振の原因だと疑う漁業者らは開門を求めて国を提訴し、2010年には福岡高裁で開門を命じる判決が確定したが、その後、長崎地裁が干拓地営農者の主張を認めて、国に開門を差し止める仮処分決定を決定したため、国は確定判決を履行できなくなり、2014年6月から「罰金」として漁業者側に間接強制金を支払っている。

 諫早湾干拓工事は1952年に、約1万ヘクタールの湾全体を農地にする大干拓構想として浮上し、米余り時代になって規模を縮小したものだ。そして、畑地開発や高潮・洪水防止に目的を変え、1989年に着工して、1997年4月14日に、ギロチンを思わせる293枚の鋼板で湾の3分の1が閉め切られ、長さ7キロの堤防内側は干潟が陸地になり、672ヘクタールの農地に変わった。総事業費は、2530億円(3.7億円/ヘクタール)だ。

 造成された農地は長崎県の公社が国から51億円で買い取り、2008年から営農が始まって、個人・法人計40事業者が農地を借りて野菜などを作っている。1ヘクタールあたり約3.7億円かけて造成された農地だが、リース料は年20万円/ヘクタールで、総事業費をカバーし終わるまでには1850年かかる。そのため、1事業者の面積は平均16.7ヘクタールと大規模経営でよいが、国の事業としての費用対効果は低かったと言わざるを得ない。

 しかし、私は、公共事業は短期的に見れば費用対効果が悪くても、将来の地域振興を考えると必要なものもあり、「費用対効果が悪いから、その公共事業はやらない」と即座に言うべきではないと考えている。それでも、諫早湾の干拓工事は、戦後の米不足時代に湾全体を農地にする大干拓構想として浮上し、米余り時代になってから規模を縮小し、目的を畑作や高潮・洪水防止に変更して行っているもので、一度決めたら何があっても中止しない国の公共工事のあり方とそれによる膨大な無駄遣いが問題なのである。さらに、食料自給率向上のためには、畑作もよいが漁業も大切であるのに、農水省や国土交通省は、これまで水産業(海の環境保全が必要)は眼中にないかのような政策をとってきており、それが間違いだったのだ。

 政府の公共事業費は、景気対策のためと称して、1990年代に毎年のように当初予算で9兆円台を計上し、1998年度は当初と補正の合計が15兆円近くに達して、「大型公共事業=環境破壊、税の無駄遣い」と批判された。東日本大震災の復興事業においても、本当に必要な公共事業だけをなるべく安い価格で行うのではなく、国民の血税を使って高い価格で行う有害無益な公共事業も含まれているのが残念だ。

 これらの状況は、宮入長崎大名誉教授が言われるように、「農水省は諫早湾干拓事業の費用対効果を算出する際、失われる干潟の浄化能力や漁業被害を勘定に入れなかった。そのつけを今払っており、終わりの見えない国民の血税による後始末」になっており、調和した自然の大きな力を無視した公共事業は、国民に無限の負担を強いるのである。

 なお、*3-2に書かれている諫干開門差し止め請求訴訟判決骨子で、開門反対派は、 ①開門すれば農地に塩害など重大な被害が発生する恐れがある ②開門で漁場環境が改善する可能性は高くない ③開門調査で堤防閉め切りと漁獲量減少の関連性解明の見込みは不明 と主張し、判決も、開門で堤防内の調整池に海水が入り込み、農地に塩害や潮風害、農業用水の一部喪失が発生する恐れがあるため、生活などの基盤に直接関わり重大」と指摘している。

 しかし、①については、半島・島・有明海の他の干拓地では堤防が無くても農作物ができているので根拠がなく、②③は、本明川、田古里川、船津川、境川、深海川、二反田川、有明川、西郷川、神代川、土黒川などから流入していたミネラルが海へ拡散するのを堤防の閉め切りで不自然に止めてしまったことが原因であることは誰が見ても明らかである。そのため、それを確認するために開門調査をしようとしているわけなのだ。

 さらに、開門しても、諫早湾には多くの川が流れ込んでいるため、調整池は完全な塩水にはならないが、仮に塩水になったとしても、*3-3のように、「ウオータープラザ北九州」は海水と下水から飲用水レベルの真水を精製する技術も確立しており、諫早市は下水道を整備しているため、その下水道から農業用水を作ることは容易で、むしろ精製しすぎずに窒素やリンが少し残っている方が、肥料が節約できそうである。

(4)これだけ1000億円単位の無駄遣いが多いのに、福祉・教育だけは消費税を上げなければ財源がないとするのはおかしいこと
 そもそも、保険とは、「将来起こるかもしれないリスクに対して、予測される発生確率に見合った一定の保険料を加入者が負担して万一の事故に備える制度で、さまざまな事故や災害から生命・財産を守る為の合理的な防衛策」とされている(http://www.nihondaikyo.or.jp/insurance/08.aspx 参照)。

1)介護保険の負担増について
 2017年4月15日、*4-1のように、与党が、高所得者のサービス利用時の負担割合を2割から3割に引き上げ、大企業社員や公務員らの保険料負担を増やす内容の介護保険関連法案の採決を強行した。この間、TVは森友学園問題や殺人の容疑者(犯人と確定していない)が捕まったという話ばかりをいっせいに行い、介護保険関連法案に関する報道は極めて少なかった。
 
 しかし、痛みがあるか否か以前に、将来起こるかもしれないリスクに対して、そのリスクが発生する確率に見合って保険料を支払っているのに、保険給付が行われる段階になって給付額に所得制限を設けるのでは、保険とは言えない。その上、介護保険で言っている“現役並み所得”というのは、「単身世帯で年収383万円以上、夫婦世帯では年収520万円以上」と、夫婦で医療費や介護費を負担しなければならない高齢者夫婦にとって、高所得とは言えない金額だ。

 そして、これによって節約されるのは、健康な生産年齢人口の人のために、景気対策と称して政府が行った1000億円単位の無駄遣いのほんの数%なのだから、どこか大きく間違っている。

 つまり、厚労省管轄の保険設計は、保険料の支払い時と給付時の両方において所得で差をつけており、とても保険とは言いがたく、税だとすれば二重課税になっているのである。

2)“こども保険”構想?
 自民党の小泉進次郎衆議院議員を中心とする若手議員でつくる小委員会が、*4-2のように、2017年3月29日に、「少子化に歯止めをかけるため」として、「こども保険」構想を発表したそうだ。

 「こども保険」を子育て支援の財源にするという根拠は、子どもが必要な保育・教育などを受けられないリスクをなくすことだそうだが、子どもが必要な保育・教育を受けられなければ、その子は稼ぎ手になれず、国の発展にも寄与できないため、それは個人のリスクというよりも、政府の予算の使い方における優先順位の問題である。つまり、教育や保育は、本人のためであると同時に国の礎でもあるため、1000億円単位や1兆円単位の無駄遣いをしながら、「財源がない」などと言って疎かにすべきものではないのだ。

 私自身は、幼児教育は3歳から始め、それ以前を保育として、幼児教育以降は義務教育として無償化するのがよいと考える。そして、3歳未満(0、1、2歳)の保育は、夫婦で交互に育児休暇をとれば家庭で行うという選択肢もできるため、高くない保育費を徴収するのがよいだろう。また、義務教育は高校卒業の18歳までとし、中学・高校は一貫校として行く学校を選択でき、入試を受ける形式にするのがよいと考える。

 そのため、「子ども保険」は不要で、保育・教育の費用は、堂々と一般財源から出せばよい。

<膨大な原発事故費用>
*1-1:http://www.nikkei.com/article/DGXLASFS09H0H_Z01C16A2000000/ (日経新聞 2016/12/9) 福島廃炉・賠償費21.5兆円に倍増 経産省が公表
 経済産業省は9日午前、東京電力福島第1原子力発電所の廃炉や賠償などの費用総額が21兆5000億円にのぼるとの見積もりを公表した。廃炉費用が8兆円に上振れしたことなどにより、これまでの想定の11兆円から倍増した。賠償費用の一部を新たに新電力にも負担させるようにして、巨額の事故処理費用を賄う。経産省が9日示した見積もりでは、廃炉は従来の2兆円から8兆円に、賠償は5兆4000億円から7兆9000億円に、除染は2兆5000億円から4兆円に、中間貯蔵施設の整備費用は1兆1000億円から1兆6000億円にそれぞれ膨らむ。このうち廃炉費用は原子力損害賠償・廃炉等支援機構が国内外の有識者へのヒアリングに基づく試算として示した。ただ、溶け落ちた核燃料(デブリ)の取り出し方法など廃炉の詳細はまだ決まっておらず、経産省は合理的な見積もりは現段階で困難としている。東京電力ホールディングスは9日午前に開かれた「東京電力改革・1F問題委員会」で送配電や原子力事業で再編・統合を検討する方針を示した。両事業の再編で企業価値を高め、廃炉費用を捻出する。国は東電向けの無利子融資枠を今の9兆円から13兆5000億円に引き上げるほか、廃炉費用を積み立てて管理する基金をつくり、長期に及ぶ廃炉や賠償が円滑に進むようにする。賠償総額7兆9000億円のうち、新電力による負担は2400億円程度になる。新電力が40年かけて支払う場合、新電力を利用する標準家庭の電気代に月平均で18円が上乗せさせる計算となる。

*1-2:http://www.nikkei.com/article/DGXNASDF03004_T00C13A9MM0000/ (日経新聞 2013/9/3)福島原発、汚染水対策に470億円 政府が基本方針、遮水壁、建設前倒し
 東京電力福島第1原子力発電所から高濃度の放射性物質を含む汚染水が漏れている問題で、政府は3日、約470億円の国費を投じ政府主導で解決する方針を固めた。国の全額負担で原子炉建屋への地下水の流入を遮断する凍土壁を設置するほか、汚染水を浄化する装置も増設する。東京電力主体の従来の対策よりも前倒しで事態を解決できるようにする。3日に開いた原子力災害対策本部で汚染水対策の基本方針を示した。安倍晋三首相は「世界中が注視している。政府一丸となって取り組みたい」と述べた。対策費は凍土壁の建設費で320億円、浄化装置の開発費で150億円と見積もった。対策費のうち約210億円は2013年度予算の予備費でまかない、年度内に対策に取りかかる。約2年の工期がかかる凍土壁の建設を前倒しする。対策費は概算で、凍土壁や浄化装置の開発が難航すれば上振れする可能性がある。凍土壁は建屋のまわりの土を冷却剤の循環により凍らせて地下水の浸透を防ぐ設備。原発内にたまった汚染水を浄化する多核種除去設備(ALPS)も、東電が設置する3系統に加え、国が高機能な浄化設備を増設する。汚染水漏れが見つかった急造タンクは溶接のしっかりしたタンクに入れ替える。汚染水対策に向けた体制も強化する。従来は経済産業省や原子力規制庁が汚染水問題に対処していたが、国土交通省や農林水産省も加えた関係閣僚会議を発足させる。地下水や土壌改良の専門家を集め、政府一丸で対策にあたる態勢を整える。東電や地元との連携を深めるため、国の現地事務所も新設。福島第1原発の周辺に常駐する担当官を増やし、情報収集や対策協議を密にする。基本方針には、▽建屋に流れ込む地下水くみ上げ▽地下坑道(トレンチ)にたまっている高濃度汚染水の除去▽汚染水の海への漏洩を抑えるための地盤改良――などを盛り込んだ。個々の対策の実施計画も明らかにし、早期解決に向けた姿勢を内外に示す。東電は7月下旬、福島第1原発から汚染水が海洋に流出している可能性を認め、流出量を1日300トンと推計した。対策は後手に回り、8月には汚染水をためるタンクからの漏洩が見つかるなど事態は悪化の一途をたどっていた。原子力規制委員会は汚染水問題が、国際原子力事象評価尺度(INES)でレベル3(重大な異常事象)に相当するとの評価を決定。国内外に懸念が広がっているため、政府は「対策を東電任せにせず、国が前面に立つ」(安倍首相)との姿勢を打ち出していた。
<政府の主な汚染水対策>
■体制・資金
・経済産業省や国土交通省などが関係閣僚会議を設置。東京電力や地元と連携する現地事務所を新設し、国の担当官が常駐
・総額470億円を投入。うち2013年度予算の予備費を210億円つかい、対策を前倒し
■対  策
・建屋を凍った土で覆う遮水壁の設置(320億円)
・汚染水から放射性物質を取り除く装置を新設(150億円)

*1-3:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/424128 (佐賀新聞 2017年4月24日) 玄海再稼働へ、事故時対応約束 今村氏発言後引き、「国が責任」に疑念
 九州電力玄海原発3、4号機(東松浦郡玄海町)の再稼働に同意するかどうか、佐賀県知事の最終判断が目前に迫った。万一事故が発生した場合、国は「責任を持って対処する」と繰り返すが、福島第1原発事故の自主避難者の帰還を巡って「本人の責任、判断だ」と発言して撤回した今村雅弘復興相の言動が後を引き、国への疑念はくすぶる。福島事故への対応は、原発事故に対する国の責任の取り方の先例になるだけに、厳しい視線が注がれている。
▽故郷が汚染 
 「今村さんって佐賀出身でしょ? ふるさとが放射能に汚染されてみないと、私たちの痛みは分からないんでしょうか」。福島市から佐賀市に自主避難している渡辺弘幸さん(55)は、ため息交じりにつぶやいた。事故直後、原発から約60キロ離れた福島市にも放射性物質が飛来した。国の避難指示は出なかったが、持病が心配で、母親を連れて避難することを決意した。だが、母親は「どうせこの先、長くないから」と残り、1人でふるさとを離れた。1年半前、事故で足を骨折して仕事を続けられなくなった。自主避難者に対する住宅の無償提供支援が3月で終了し、家賃が重くのしかかる。「自分の判断で避難したから、自己責任と言われればそうかもしれないが、原発を推進してきた国の責任はどうなる」
▽にじむ距離感 
 事故の翌年、2012年6月にできた「原発事故子ども・被災者支援法」は、被災者の生活支援を、原発を推進してきた国の責務として行うと定め、自主避難者も救済対象にしている。衆参両院の全会一致で可決され、今村氏も賛成した。避難者の支援活動に取り組み、法案作りに関わった福田健治弁護士は「今村氏は行政トップとして法を誠実に執行する立場なのに、支援法の規定を知らなかったんだろうか」と嘆く。
政府は「福島への帰還こそが早期復興につながる」として、避難指示の解除を段階的に進め、避難者への生活支援策を縮小していった。支援法も、具体的な施策を決める段階で対象者が限定され、支援の中身が形骸化していった。今村発言の半月前の3月17日、避難住民らが起こした集団訴訟で前橋地裁(群馬県)は、原発事故の国の過失責任を認める判決を出した。放射性物質への恐怖や不安にさらされずに暮らす「平穏生活権」が侵害されていると指摘した。国は引き続き争う姿勢で、避難者との距離感がにじむ。
▽切り捨て 
 福島原発事故による広域避難の実態を、鳥栖市などで調査してきた立教大学の関礼子教授(社会学)は懸念する。「社会の中で、事故の記憶とともに被災地への関心が薄れていっている。そうした中、政府が示す姿勢は、被害を受けた人たちを切り捨てようとしているようにも映る」。その上で、今村氏の発言は避難者だけに関わる問題ではないと強調する。「原発の再稼働を進めたい国が『責任を取る』と言った場合の、責任の取り方とはどういうものなのか、今の対応が先行事例になる。原発立地地域の人たちは自分の身に引き寄せて、見ておく必要がある」

<原発再稼働>
*2-1:http://www.saga-s.co.jp/column/ronsetsu/421590 (佐賀新聞 2017年4月14日) 県議会の玄海再稼働容認、住民の安全最優先に判断を
 九州電力玄海3、4号機(東松浦郡玄海町)の再稼働に関し、佐賀県議会が同意した。過半数を占める自民党の「再稼働容認」とする決議案が賛成多数で可決された。既に原発のある玄海町は同意している。決議を「極めて重く受け止める」とした知事は同意する見通しだが、不安や反対の声は根強い。判断を下す際の十分な説明が必要だ。臨時県議会では3本の決議案が提出された。自民などは、電力の安定供給といった観点から「再稼働の必要性が求められる」と提案し、避難計画の充実や地域振興などを国に求めた。民進などは、条件付きながら「再稼働せざるを得ない」、共産などは「拙速な判断と同意をしないよう強く求める」と主張した。しかし十分な議論が尽くされたのか、疑問も残る。知事は再稼働に同意するかどうかの判断の前提として、県議会の意思表示を求めていた。臨時県議会の12日の質疑でも、県民の代表としての議会の意見が大切であることを繰り返し表明。住民投票に否定的な答弁をしたのは、その裏返しともいえよう。地方自治を支えているのは首長と議員を住民が直接選挙で選ぶ「二元代表制」で、間接民主主義をとっている。原発再稼働というテーマが、多数決になじむのかという論議もあろう。再稼働に前向きだった自民党の案が通るのは予想された。しかし、県民にはいろいろな意見があり、佐賀新聞社が昨年秋に実施した県民世論調査では、反対が賛成を上回った。不安に感じる県民がいる以上、知事は十分に留意する必要がある。県主催の住民説明会、知事と県内20市町長との懇談会も開催した。伊万里市長ら3首長が再稼働に反対の意思を表明し、ここにきて長崎、福岡県から反対や不安、懸念の表明が相次いでいる。事故が起きれば、県境は関係ない。地元同意の範囲をめぐる議論が起きるのも、当然といえる。地元同意に法律上の明確な規定はない。このため臨時県議会の質疑では、議員から知事に対し、現在より広い範囲の同意を必要とするよう、法的な整備も含めて国に求める意見が出た。知事も「根本の議論が必要」と応じた。今後の判断に際し、隣県も含めた住民や首長の声を真摯(しんし)に酌(く)んでほしい。与野党を問わず、避難計画を実効性のあるものにすべきという主張は根強い。20市町長との懇談会でも、多くの首長が条件付きで再稼働に賛成する立場を表明した上で、福島原発事故の被害の長期化とともに、事故時の避難者の受け入れに不安を訴えた。「道路が混雑し、地震の場合は住民の避難も困難になる」「道路も整備しないとパニックになる」などと、懸念と対策を求める声が相次いだ。県議会の質疑では、避難計画は国が審査して同意を与える法整備が必要との提案があった。「それも一考に値する」として知事は、国にどういう提言ができるか検討すると答弁した。原発は国策である以上、国がしっかり対応すべき課題ではあるが、任せるだけではいけない。県レベルでも周知や渋滞などの対策が求められる。再稼働へ向けた手続きは進んだ。ひとたび原発が動けば、後戻りはできないとの覚悟がいる。知事は住民の安全を最優先に慎重に判断してほしい。

*2-2:http://qbiz.jp/article/108174/1/ (西日本新聞 2017年4月22日) 世耕経産相が玄海原発視察
 九州電力玄海原発3、4号機(佐賀県玄海町)の再稼働に向けて、世耕弘成経済産業相は22日、九電の瓜生道明社長の案内で同原発を視察し、原子力規制委員会が新規制基準適合を認めた安全対策を確認した。午後には佐賀県庁で山口祥義知事と会談する。山口知事は世耕氏との会談で再稼働や事故時などの「国の責任」を再確認し、週明けにも地元同意を表明する方針。一方、玄海原発30キロ圏の8市町のうち半数の同県伊万里、長崎県松浦、平戸、壱岐の4市長は反対を表明している。世耕氏は玄海原発で、東京電力福島第1原発事故後に配備した移動式大容量ポンプ車や格納容器が破損した場合に放射性物質の飛散を防ぐ放水砲などを見て回った。山口知事との会談後には鹿児島県薩摩川内市で九電川内原発も視察する。

*2-3:http://qbiz.jp/article/108179/1/ (西日本新聞 2017年4月23日) 玄海原発、24日にも再稼働同意 佐賀知事、経産相と会談
 九州電力玄海原発3、4号機(佐賀県玄海町)の再稼働に向けて、佐賀県の山口祥義知事は22日、世耕弘成経済産業相と県庁で会談した。山口知事は会談後、記者団に「大臣から国として責任を持つとの強い決意の言葉を頂いた。(地元同意の判断は)できるだけ早くと思っている」と述べ、週明けの24日にも同意を表明する考えを示した。山口知事は、同意を判断する際の最終手続きとして世耕氏との会談を国に要請していた。会談で世耕氏は「原子力政策に政府として責任を持つ」と述べ、再稼働への理解を求めた。山口知事は「言葉は重く受け止める」と評価した。知事は、住民説明会では反対の声が大半で、県内の市長3人も反対していると伝え、使用済み燃料や高レベル放射性廃棄物の最終処分での取り組み加速▽原子力に依存しない経済社会の確立▽避難計画の充実、原子力災害対策の継続的見直し−など6項目を求めた。国が避難計画策定を義務付ける玄海原発30キロ圏の8市町のうち、同県伊万里、長崎県松浦、平戸、壱岐の4市長は反対している。事実上、県と玄海町に限られている地元同意の範囲拡大について、世耕氏は記者会見で「同意は法律上、再稼働の要件とはなっていない」と否定的見解を示した。会談に先立ち、世耕氏は玄海原発を訪れ、福島第1原発事故後に配備した移動式大容量ポンプ車などの安全対策を確認した。山口知事との会談後には、鹿児島県薩摩川内市で九電川内原発も視察した。
●再稼働へ“儀式”着々
 佐賀県玄海町の九州電力玄海原発再稼働に向け、同県の山口祥義知事が「地元同意」を判断する際の最終手続きとして国に求めた世耕弘成経済産業相との会談が22日、終わった。国が避難計画策定を義務付ける原発30キロ圏の4市長が反対し、県庁前で住民団体の約100人が「再稼働やめろ」「県民の話を聞け」と声を響かせる中、知事は24日にも再稼働同意を表明する見通しで、世耕氏との会談にはセレモニー色がにじんだ。会談で山口知事は「県民から寄せられた意見のほとんどは再稼働に反対」と訴え、福岡、長崎両県にも不安や反対の声が多いと強調したが、世耕氏が「政府として責任を持ってエネルギー政策、原子力政策を進める」と応じると「大臣の発言は重く受け止める」とあっさり評価。「今後も地元の意見に真摯(しんし)に向き合っていただきたい」と述べ、約25分間で会談は終了した。佐賀県では1月以降、県の住民説明会や第三者委員会、県内全ての首長との懇談、担当大臣との会談など、知事が同意を判断するための意見集約が進められてきた。しかし、玄海原発の再稼働は山口知事が初当選した2015年1月の知事選の公約。知事は今月13日の県議会の容認決議を重視する考えも示していた。会談後、山口知事は記者団に判断条件は出そろったかと問われ「そうですね。あとは今日、話を頂いたことを考えて説明したい。できるだけ早く」と述べた。世耕氏は「佐賀県の皆さんに再稼働を進める政府方針を説明する良い機会になった」と満足そうに話した。府方針を説明する良い機会になった」と満足そうに話した。

*2-4:http://www.nikkei.com/article/DGXLASJC24H32_U7A420C1000000/?dg=1&nf=1 (日経新聞 2017/4/24) 玄海原発再稼働に同意、佐賀知事「重い決断」
 佐賀県の山口祥義知事は24日午後、同県庁で記者会見を開き、九州電力玄海原子力発電所3、4号機(佐賀県玄海町)の再稼働に同意する考えを表明した。山口知事は「熟慮に熟慮を重ねた結果、原子力発電に頼らない社会をつくるという強い思いを持ちつつ、現状においては(再稼働は)やむを得ないと判断した」と述べた。知事の表明で、再稼働に向けた地元同意の手続きは完了。福島原発事故を受けて新規制基準が導入された以降では、鹿児島県(川内原発)、愛媛県(伊方原発)、福井県(高浜原発)に続き4例目となった。地元同意をめぐっては立地自治体の玄海町が3月初旬までに同意を表明し、佐賀県議会も13日に容認決議を行った。ただ、福島の事故の大きさゆえに、県民の不安の声は根強く、「非常に重い判断だった」と知事。「県民83万人全員が同じ方向を向くことはない。我が国のエネルギー事情を考えたとき、火力発電がフルパワーで稼働して環境問題もある中で、総合的に判断した」と最終判断の理由を説明した。山口知事は会見に先立ち、世耕弘成経済産業相に電話で再稼働同意を伝達。22日の会談で国側が示した原発政策の実行に加え、「自然エネルギーの普及促進を改めてお願いした」と述べた。今後の焦点は玄海原発3、4号機がいつ稼働するかに移る。原子力規制委員会が現場で設備を確認する使用前検査などが必要で、稼働は今秋メドになる見通しだ。

*2-5:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/422599 (佐賀新聞 2017年4月18日) 玄海原発、基準適合は不当 福岡の研究会が規制委に異議申し立てへ
 九州電力玄海原発3、4号機(佐賀県東松浦郡玄海町)が、新規制基準に適合すると認めた原子力規制委員会の許可は不当だとして、大学の元教員や医師らでつくる「福岡核問題研究会」の有志は、規制委員会に異議を申し立てる審査請求をすることを決めた。研究会の有志5人が、行政不服審査法に基づき、許可の取り消しや、執行停止(再稼働の停止)を求める。審査請求期限の18日までに手続きする。理由として、福島第1原発事故の後、フランスは総勢300人の緊急対応部隊を新設したが、日本の新規制基準には対応する措置がなく、「世界基準に程遠いこと」や、規制委がそもそも重大事故時の住民避難などの対策の有効性を審査の対象にしていないことが、「法律が求める責務からの責任逃れであり違法」などと主に8項目を挙げている。研究会メンバーが17日、佐賀県庁で会見を開き、豊島耕一佐賀大学名誉教授は「県議会は安全性が認められたとしているが、実際には程遠い状況」と批判した。

*2-6:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/423954 (佐賀新聞 2017年4月23日) 反原発団体、経産相に抗議「県民犠牲にするな」
「県民を犠牲にするな」。玄海原発3、4号機(東松浦郡玄海町)の再稼働を巡り、山口祥義佐賀県知事と世耕弘成経済産業相が22日面会した県庁の前では、反原発の市民団体が抗議行動した。原発再稼働に前のめりの姿勢を示す国や手続きを着々と進める山口知事に対し、集まった約150人が怒りの声を上げた。午後2時18分、世耕経産相を乗せた車が急速度で正門から中に入り、参加者は「合意なき国策を押し付けるな」と声を張り上げた。県平和運動センターの原口郁哉議長は「知事は反対や疑問の声に答えずに再稼働へのステップを積み重ねている」と批判した。知事と面談して経産相が県庁を後にする午後3時10分まで約50分にわたり、「無責任な同意は許さない」などとシュプレヒコールした。参加した徳光清孝県議(社民)は「知事の同意後も再稼働まで時間がある。阻止するため粘り強く取り組む」、武藤明美県議(共産)も「福島の原発事故や自主避難者に対する復興相の失言で明らかなように、国も電力会社も原発に責任は取れない」と非難した。玄海原発の運転差し止め訴訟を続ける市民団体の石丸初美代表は「命や生活が脅かされ、核のごみも未来に押し付ける原発を続けられるわけがない。大臣は知事ではなく県民に説明するべき」と訴えた。経産相が視察した玄海原発の前でも抗議活動が行われた。

*2-7:http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201704/CK2017041502000133.html (東京新聞 2017年4月15日) 原発ゼロ・自然エネ連盟 発足 小泉元首相「国民運動に」
 各地で活動する脱原発や自然エネルギー推進団体の連携を目指す全国組織「原発ゼロ・自然エネルギー推進連盟」が十四日発足し、東京都内で記者会見を開いた。顧問に就任した小泉純一郎元首相は「自民党と革新勢力双方の支持者を巻き込んだ国民運動にしていく」と訴えた。福島第一原発の事故後に全国で進められた脱原発の運動は、連携がなく広がりを欠いていたとの判断から設立を決めた。全国組織として事務所を置き、講演会や意見交換会の開催、政府への提言、優れた活動をした団体の表彰などを行う。会見で小泉氏は「国民全体で原発を止めていこうという強いうねりが起きているのを実感している」と強調。その上で「いずれは国政選挙においても脱原発が大きな争点になる時がくる」と力を込めた。会長には、経営者として脱原発を訴えてきた城南信用金庫の吉原毅相談役が就任。吉原氏は「原発が経済的にも採算が合わないのは明らかで、自然エネルギー化は世界の流れだ。日本全国の声を結集していく」とあいさつした。連盟には約百五十の団体が参加する予定。主な役員は次の通り。
 顧問=細川護熙(元首相)▽副会長=中川秀直(元自民党幹事長)島田晴雄(前千葉商科大学長)佐藤弥右衛門(全国ご当地エネルギー協会代表理事)▽事務局長=河合弘之(脱原発弁護団全国連絡会共同代表)▽事務局次長=木村結(東電株主代表訴訟事務局長)▽幹事=鎌田慧(ジャーナリスト)佐々木寛(新潟国際情報大教授)香山リカ(立教大教授)三上元(元静岡県湖西市長)永戸祐三(ワーカーズコープ理事長)

<諫早干拓>
*3-1:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12878773.html
(朝日新聞 2017年4月6日) 諫早、止まらぬ税金投入 国の干拓事業、湾閉め切り20年
 国の干拓事業で、諫早湾(長崎県)を鋼板で閉め切った「ギロチン」から14日で20年。国内最大級の干潟は農地になったが、湾を含む有明海は漁業不振が深刻化し、海の再生などに多額の公費投入が続く。巨費を投じた大型事業は、今も先が見えない。
■海再生498億円/判決守れず「罰金」
 2008年に完成した干拓事業。今も続く支出のうち、最も規模が大きいのが有明海再生事業だ。湾が閉め切られた3年後の00年、有明海特産のノリが大凶作に見舞われた。干拓事業との因果関係を調べるため、農林水産省の第三者委員会は、短・中・長期の開門調査を提言した。だが、農水省は中長期の開門をしない代わりに再生事業を始めた。02~16年度の事業費(予算ベース)は計498億円。海底に砂を入れて耕したり、干潟に潮の流れをよくする水路を築いたりしている。もう一つの大きな支出は堤防の内側の調整池の水質改善だ。淡水化され、干拓地の農業用水になるが、生活排水などが流れ込むと水質が悪化しやすい。そこで長崎県などが下水道整備や水質浄化を進めてきた。04~15年度に国と自治体合わせて352億円(決算ベース)の公費を投じた。それでも池では毎夏のようにアオコが大量に発生している。海の再生も池の水質改善も十分な効果が上がらないまま、毎年続いている。調整池のアオコの調査を続ける熊本保健科学大の高橋徹教授(海洋生態学)は「病気なら検査して、診断し、効果のある治療法を選ぶ。有明海の異変では検査にあたる開門調査をしていない。それ抜きでは効果的な対策も不可能なのに、あてどもなく血税が投じられている」と話す。公金投入は、こうした事業だけにとどまらない。干拓事業をめぐっては複数の訴訟が争われている。干拓が有明海の漁業不振の原因と疑う漁業者らは開門を求めて国を提訴。10年に開門を命じる福岡高裁判決が確定した。一方、長崎地裁は干拓地の営農者の主張を認め、国に開門を差し止める仮処分決定を出した。国は確定判決を履行できなくなり、14年6月から「罰金」として漁業者側に間接強制金を支払っている。現在は1日あたり90万円、3月10日時点で総額7億6500万円に上る。判決を履行するまで積み上がり、このままだと年内に10億円を超える。仮に開門すると、国は農業者側に罰金を支払う義務も負っていて、どちらに転んでも支払いは続く。漁業者らは強制金を海の再生のための基金に積み立てている。その一人、佐賀県太良町の平方宣清(のぶきよ)さん(64)は言う。「国の役人は自分の懐が痛まないから、こんな異常な状況を放置しておける。納税者としては納得できない」
■低い費用対効果
 諫早湾干拓は戦後間もない1952年、約1万ヘクタールの湾全体を農地にする大干拓構想として浮上した。その後、米が余る時代になり2度、規模を縮小。畑地開発や高潮・洪水防止に目的を変え、89年に着工した。97年4月14日、ギロチンを思わせる293枚の鋼板で湾の3分の1を閉め切った。長さ7キロの堤防の内側は干潟が陸地になり、672ヘクタールの農地に姿を変えた。総事業費は2530億円。造成された農地は長崎県の公社が国から51億円で買い取った。2008年から営農が始まり、個人・法人の計40事業者が農地を借りて野菜などを作る。1ヘクタールあたり約3億7648万円をかけて造成された農地。リース料は1ヘクタールあたり年20万円(標準額。当初は15万円)だ。1事業者の面積は平均16・7ヘクタールの大規模経営で、11年度の県の調査ではタマネギやニンジンなど主力5品目で計約2万3千トンの収穫があった。ただ、リース料の未納などでこれまでに9事業者が干拓地を去った。事業の費用対効果は農水省の試算で0・81。当初は1・03だったが難工事のため事業費が予定の倍近くに膨らみ、望ましいとされる1を割り込んで費用が事業効果を上回っている。
■大型事業、復活の動き 震災復興やアベノミクスで
 政府の公共事業費は、バブル崩壊後の90年代半ばから00年代初めがピークだった。自民党政権は景気対策のため毎年のように当初予算で9兆円台を計上。98年度には当初と補正の合計が15兆円近くに達した。一方で長良川河口堰(かこうぜき)(三重県)の反対運動が呼び水になり、大型公共事業が「環境破壊」「税の無駄遣い」と批判の的になる。01年には「構造改革」を掲げた小泉政権が発足し、公共事業費は削減に転じた。09年、「コンクリートから人へ」を掲げた民主党に政権交代すると、「事業仕分け」などにより削減が進んだ。だが、11年の東日本大震災後、野田政権は一転、復興費を含む公共事業費を増やした。高速道路や新幹線など、凍結していた大型事業の復活も認めた。安倍政権は「アベノミクス」の「第2の矢」で財政出動を掲げる。「国土強靱(きょうじん)化」をうたい、防潮堤や道路など災害に備えたインフラの整備が進む。当初予算は14年度から6兆円弱での微増が続く。関門など全国6海峡をトンネルや橋で結ぶプロジェクトなど凍結された事業の復活を、防災の名の下でめざす動きも活発だ。
■教訓学びとって
 宮入興一・長崎大名誉教授(財政学)の話 農水省は、諫早湾干拓事業の費用対効果を算出する際、失われる干潟の浄化能力や、漁業の被害を勘定に入れていなかった。そのつけを今払っているということだろう。国民の血税による終わりの見えない後始末だと言える。公共事業が無限の国民負担を強いることもあるという、最悪の事例だ。この教訓を、国も納税者も学びとらなければならない。

*3-2:http://mainichi.jp/articles/20170417/k00/00e/040/253000c (毎日新聞2017年4月17日) 諫早訴訟:開門差し止め命じる判決 長崎地裁
 国営諫早湾干拓事業(諫干、長崎県)の干拓地の営農者らが国に潮受け堤防の開門差し止めを求めた訴訟で、長崎地裁は17日、開門差し止めを命じる判決を言い渡した。松葉佐(まつばさ)隆之裁判長(武田瑞佳裁判長代読)は、もし開門すれば「農地に塩害などの重大な被害が発生する恐れがある」として、事前対策工事によって被害は防げるとする国の主張を退けた。諫干を巡る訴訟で、開門差し止めを命じる判決は初めて。2010年に国に5年間の開門調査を命じた福岡高裁判決が確定しているが、確定判決と逆の請求を認める判決は極めて異例。堤防閉め切りから今年で20年を経て“司法判断のねじれ”は一層深まった。国側補助参加人の漁業者側は控訴の意向を示したが、国が2週間以内に控訴しなければ判決が確定することから対応が注目される。判決は開門で堤防内の調整池に海水が入り込み「農地に塩害や潮風害、農業用水の一部喪失が発生する恐れがある。生活などの基盤に直接関わり重大」と指摘。これに比べ、国が主張する開門による漁場環境の改善効果は高くなく、開門調査で漁獲量減少との関連性を解明できる見込みは不明だと判断した。潮風害などを防ぐ事前対策工事も「実効性に疑問があるものがある」と結論づけた。判決を受け、山本有二農相は「判決内容を詳細に分析し関係省庁と連携しつつ適切に対応したい」とコメントした。訴訟は11年、福岡高裁確定判決への対抗措置として営農者らが起こした。長崎地裁は13年、営農者らが申し立てた開門差し止めの仮処分を認める決定を出し、国が不服を申し立てた異議審(15年)でも決定を支持した。開門差し止め訴訟を巡っては長崎地裁が16年1月に開門しない前提の和解を勧告したが今年3月に和解協議が決裂した。
●諫干開門差し止め請求訴訟判決骨子
・国に開門差し止めを命じる
・開門すれば農地に塩害など重大な被害が発生する恐れがある
・開門で漁場環境が改善する可能性は高くない
・開門調査で堤防閉め切りと漁獲量減少の関連性解明の見込みは不明
【ことば】国営諫早湾干拓事業
 大規模農地造成や低平地の水害対策を目的に1997年に湾内を全長7キロの潮受け堤防で閉め切った。2008年に完成し、総事業費約2530億円。約670ヘクタールの農地は、長崎県が全額出資する県農業振興公社が国から約51億円で購入し、営農者(個人・法人計40)に貸し付け、野菜や麦が栽培されている。農業産出額は年間計34億円。

*3-3:http://qbiz.jp/article/105683/1/ (西日本新聞 2017年3月16日) 南アで真水化事業へ 北九州市が日立と覚書
 北九州市は15日、南アフリカ東部のダーバン市で新たな水ビジネスを始める日立製作所(東京)と連携協力する覚書を結んだ。同社は、北九州市が民間企業に無償貸与している研究施設「ウオータープラザ北九州」(小倉北区西港町)で海水と下水から飲用水レベルの真水を精製する技術を確立しており、今後、ダーバン市で実証事業を手掛け、北九州市が現地スタッフを同研究施設に招き人材育成に当たる。記者会見した同社などによると、ダーバン市関係者が2013年に同研究施設を視察したことをきっかけに実証事業のオファーが来た。現地は少雨による慢性的な水不足に陥っているという。同社は飲用水の供給を依頼されており、現地施設を19年9月に完成させ、1日6250トン(2万〜3万人分)を精製。将来的に商用化して10万トン(40万〜50万人分)の供給につなげたい考えだ。11年に開業した同研究施設は、海外の89カ国を含め7700人が視察。今後、ダーバン市の海水や下水の水質に近づけた条件での実験も行っていく。北橋健治市長は「水資源が乏しい他国への普及も考えられ、官民の連携をさらに深めたい」と話した。

<財源は消費税とする福祉・教育、他の税収は何に使うのか>
*4-1:https://www.ehime-np.co.jp/article/news201704165417 (愛媛新聞社説 2017年4月16日) 介護法案強行採決 国民に視線を向けて議論尽くせ
 衆院厚生労働委員会で、与党が介護保険関連法改正案の採決を強行した。民進党議員が質疑で森友学園問題を取り上げたことに、与党が反発した結果だ。法案は、高所得者のサービス利用時の負担割合を2割から3割に引き上げ、大企業社員や公務員らの保険料負担を増やすなど、国民への影響は大きく、十分な審議が欠かせない。痛みを強いる内容でもあり、理解を得るには丁寧な説明が必要だ。にもかかわらず、その責務を放棄して、不都合なことにふたをするような身勝手な国会運営は到底容認できない。与党は「法案以外の質問をするのは、十分に質疑をしたという証拠だ」と正当化するが、実質合意していた採決予定日まで2日を残していた。議論を尽くしていないことは、与党側も認識していたはずだ。この後、衆院本会議が見送られるなど国会は混乱。貴重な審議時間も失われてしまった。「法案以外の質問」を理由に審議を打ち切り、採決することがまかり通れば、民進党議員が非難したように「言論封殺」と言わざるを得ない。ましてや、今回の強行採決の背景に、森友学園問題に関わる「安倍晋三首相擁護」があったことは想像に難くない。首相に都合が悪い質問は許さないとばかりの与党の姿勢は、「言論の府」として看過できない。首相には国民の疑問に対し、正面から向き合い答える義務がある。安倍内閣の支持率は高水準を維持し、自民党内で首相の座を脅かす有力な対抗馬は見当たらないのが現状だ。首相や政権はこの状況に甘んじ、説明責任をなおざりにしていると言われても仕方あるまい。周囲も首相の意思を忖度(そんたく)しすぎではないか。国会議員が視線を向けるべきは時の権力者ではなく、国民であるという基本をいま一度認識すべきだ。介護法案は18日に衆院通過の見通しで、審議の場を参院に移す。「良識の府」である参院は政争が目に余る衆院を反面教師に、「数の力」に頼むのではなく議論を重ねてほしい。自民党の政権復帰、第2次安倍内閣の発足から4年4カ月。政権や与党による国民軽視や、議論封じ込めの「暴走」は今回が初めてではない。今なお懸念が根強い特定秘密保護法、安全保障関連法などでも強行採決。沖縄県の米軍普天間飛行場移設では、反対する沖縄の民意をよそに、政府が名護市辺野古沖で基地建設を強行する。政権の傲慢(ごうまん)な姿勢に、危うさが募る。今国会では「共謀罪」の趣旨を盛り込んだ「テロ等準備罪」を新設する組織犯罪処罰法改正案、衆院小選挙区の新区割りに関する公選法改正案など、与野党の激しい対立が予想される法案が残っている。介護法案と同様の手法で採決をごり押しするようなことは断じて許されないと、政権や与党は肝に銘じなければならない。

*4-2:https://www3.nhk.or.jp/news/business_tokushu/2017_0405.html(NHK 2017.4.16) ビジネス特集:子育て世帯の負担軽減?“こども保険”構想
 増える待機児童、広がる教育格差。子どものいる家庭にとって心配事は増える一方です。自民党の小委員会は、子育て世帯を支援するため、今の公的年金の仕組みのように、働く人や企業などから保険料を徴収して子育て世帯の負担の軽減に充てる新たな仕組み、「こども保険」構想を発表しました。働き盛り世代に重くのしかかる子育ての出費。その軽減につながるのでしょうか?
●社会全体で支える「こども保険」
 自民党の小泉進次郎衆議院議員を中心とする若手議員でつくる小委員会は、3月29日、少子化に歯止めをかけるため、新しい社会保障制度として「こども保険」構想を発表しました。「年金、医療、介護には社会保険があるが、喫緊の課題である子育てに社会保険がない」として、子どもが必要な保育や教育などを受けられないリスクをなくそうと、社会全体で支えるとしています。具体的には「公的年金」や「介護保険」の仕組みのように、保険料を徴収して社会全体で子育て世代を支援する新たな保険制度をつくろうというものです。今の厚生年金や国民年金の保険料に上乗せする形で、働く人と企業などから幅広く徴収します。徴収した財源は、小学校入学前の子どもがいる世帯に対し、児童手当に上乗せしたり、待機児童の解消に向けて保育所の整備に充てたりするとしています。当面の案として、企業と働く人から賃金の0.1%ずつの保険料を集める案が考えられています。国民年金の加入者の場合、月160円を徴収します。小委員会によると、子どもが2人いる30代の世帯では、年収400万円の場合、月に240円の保険料の負担増となり、子どもが2人(高校生の場合は児童手当はない)いる50代の世帯では、年収800万円の場合、月に500円の保険料負担の増加になると試算しています。「こども保険」によって、およそ3400億円の財源が確保できることから、児童手当に上乗せする場合、子ども1人当たり月5000円を加算することなどが可能だとしています。
●幼児教育や保育の無償化も視野に
 小委員会は、医療や介護の改革が同時に進めば、企業と働く人から徴収する、「こども保険」の保険料率をそれぞれ0.5%まで引き上げ(国民年金の加入者は月830円に引き上げ)、財源の規模をおよそ1兆7000億円まで増やせるとしています。この場合、例えば小学校に入学する前の子どもがいる世帯には、子ども1人当たり2万5000円が支給できるようになるため、児童手当と合わせると、幼児教育や保育を実質的に無償化できるとしています。小委員会のメンバーは「医療・介護保険料は高齢化で今後も徐々に引き上げられることが予想されるが、改革を行うことで給付の伸びを抑えることはできる。まずは、なんとか0.1%の保険料でも導入したい」と話しています。小委員会では今の社会保障制度が高齢者偏重ではないかという問題意識もあり、「こども保険」の創設を「全世代型社会保険」の第一歩としたいという思いもあるといいます。厚生労働省によりますと、「待機児童」は去年10月の時点で、全国で4万7738人。2年連続で増えており、東京は1万2232人と4分の1を占めています。国は女性の就業率の向上なども念頭に十分な保育の受け皿を確保することを目指していますが、財源などの面で険しい道のりであることは言うまでもありません。今回の「こども保険」は、子育て支援の安定財源になり得るのではないかという期待も出ているのです。
●負担だけが増える世帯も
 しかし、小さな子どもがいない世帯にとっては、「こども保険」の保険料の負担だけが増えることになるため、実現に向けて慎重論が出ることは確実。小委員会でも、子どもがいない人たちの理解をどのように得るかが実現のカギになるとみていて、「子どもがいない人も、将来、社会保障の給付を受ける側になる。社会保障制度の持続性を担保するのは、若い世代がどれだけいるかだ。若い人を支援するということは、子どもがいる、いないに関係なく、社会全体の持続可能性につながる」と説明しています。また、政府内では「保険制度は、自分にふりかかるリスクに対し、個々が保険料を納めて制度として成りたっているので、子育て支援の財源は、保険制度にはなじまず、一般財源でやるべきではないか」という意見や、「保険料の徴収の対象が勤労者と事業者となっていて、『全世代型の社会保障』といいながら、高齢者からの徴収がないのは疑問だ」などという指摘も出ています。
●保険方式浮上の背景に財源問題
「こども保険」構想の背景には、「教育格差」の問題が指摘される中、与野党で「教育無償化」を進めようという議論が出ていることもあります。これまでに財源として消費税や国が使いみちを教育に限定した新たな国債「教育国債」を発行する案などが浮上しています。しかし、消費税を10%に引き上げた場合の使いみちはすでに決まっているほか、さらなる引き上げがいつになるかわからず、財源として当てにできるものではありません。「教育国債」の発行も「名を変えた赤字国債だ」という慎重論が根強く、実現に向けてハードルの高さが指摘されているのです。こうした中で出てきたのが、保険の仕組みというわけです。とはいえ「こども保険」は、まだ構想段階。使いみちなど、制度の詳細が決まったわけではなく、今後、自民党内に新たに特命委員会を設けて検討していくことになっています。「少子化対策」が言われて久しいですが、抜本的な対策は待ったなし。今後どういう議論が展開されていくのか注目していきたいと思います。


<予算から見た辺野古埋め立て>
PS(2017年4月25日追加):誰もが望む普天間基地の返還のためなら、既に滑走路のある離島は多く、そこに基地を移転すれば埋め立てなど不要で予算も少なくてすむ。にもかかわらず、*5-1、*5-2のように、辺野古でも大量の予算を使うことが目的であるかのように誰のメリットにもならない埋め立て工事が始まり、その結果は、諫早干拓事業と同様に、大量の血税を使って自然を壊し回復不能にして、沖縄の資産を破壊する結果になると思われる。

   
  辺野古の海   2016.12.28東京新聞 2017.4.25沖縄タイムス 2016.12.27朝日新聞

*5-1:http://digital.asahi.com/articles/ASK4S7HDWK4STPOB009.html?iref=comtop_8_06 (朝日新聞 2017年4月25日) 辺野古埋め立て護岸工事始まる 政府、5年で完了めざす
 米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の移設計画で、政府は25日午前、名護市辺野古沿岸部を埋め立てる護岸工事を始め、海に砕石が沈められた。工事が進めば、原状回復は困難になる。日米両政府が普天間返還合意をしてから21年が経ち、大きな節目を迎えた。辺野古の大浦湾に面した米軍キャンプ・シュワブ北側の浜辺では、午前9時20分ごろ、砂浜に設置された大型クレーンが動き出し、網に入れられた数十個の砕石をつり上げて、波打ち際に沈めた。護岸造成の地盤として海底に敷く捨て石とみられ、計5袋が海に入れられた。その後、午前11時時点までに目立った動きはない。この日着工したのは、埋め立て予定地の最も北に位置する場所。沖縄防衛局は今後、予定地の外側を囲む護岸を造成し、海を囲み終えた場所から年度内にも土砂の投入を始め、5年間での埋め立て完了を目指す。政府は当初、今月中旬の護岸工事着工も想定していたが、安倍政権と翁長雄志(おながたけし)知事の両者が支援する候補の一騎打ちとなったうるま市長選(23日投開票)が終わってからの着手となった。一方、県には25日朝、沖縄防衛局から「きょう着工する」と連絡があり、情報収集に追われた。基地問題を担当する県の吉田勝広・政策調整監は現地で工事の様子を確認し、「まるで沖縄の声を聞かない強引なやり方だ」と憤った。翁長雄志知事は、埋め立て工事に必要な「岩礁破砕許可」の期限が3月末に切れていると主張しており、工事により海底の岩礁が破壊されているのが確認されれば、工事差し止め訴訟を検討している。埋め立て承認の撤回や、県民の民意を改めて示す「県民投票」の可能性も模索している。普天間移設計画は、1995年の米兵による少女暴行事件を機に浮上した。日米は96年、普天間の返還に合意。計画は曲折を経て、辺野古の米軍キャンプ・シュワブ沿岸部を埋め立てて、滑走路2本をV字形に配置する現行案になった。県内で反対運動が続く中、13年12月、当時の仲井真弘多(ひろかず)知事が政府からの埋め立て申請を承認。しかし、「辺野古阻止」を掲げて当選した翁長知事が15年10月にこの承認を取り消し、政府が県を提訴。16年12月の最高裁で県の敗訴が確定し、政府は護岸工事着工に向けて準備工事を急いでいた。

*5-2:http://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/80555 (沖縄タイムス 2017.4.25) 辺野古の工事再開、知事は「あらゆる手法で」阻止姿勢 違法確認訴訟・敗訴から1カ月 
名護市辺野古の新基地建設を巡る違法確認訴訟の最高裁判決で沖縄県が敗訴してから20日で1カ月となった。敗訴を受け、翁長雄志知事は自身の承認取り消し処分を取り消し、国は昨年12月27日にキャンプ・シュワブ沿岸部の埋め立てに向けた工事を再開した。県は工事開始前の事前協議を求めているが国は応じておらず、本体工事に向けフロートの設置作業を急いでいる。知事は取り消し処分を取り消す一方、新基地建設は「あらゆる手法で阻止する」との姿勢を崩していない。3月で期限を迎える岩礁破砕許可やサンゴを移植する際の特別採捕許可、埋め立て本体工事の設計変更申請の不許可など知事権限を行使する考えだ。現在、県は2013年の埋め立て承認時に付した留意事項に基づく事前協議や岩礁破砕許可の条件が守られているかを確認するため海中に設置するコンクリートブロックの大きさや個数などの報告を求めている。だが、19日までに防衛局から返事はなく、県は国の留意事項違反などを根拠に承認の撤回を検討しているほか、県民投票の実施も視野に入れている。また、31日からは訪米し米議会関係者や有識者らに直接、辺野古計画の見直しを求める。一方、防衛局は抗議する市民らが臨時制限区域に立ち入らないようロープを張る新たなフロートの設置を進めているほか、報道各社に取材船で臨時制限区域に入らないよう呼び掛ける文書を送付するなど、警備態勢を強化している。国は国内最大級の作業船を導入し、早ければ月内にもボーリング調査を開始する予定で、護岸建設などの本体工事着手に向けた態勢を早急に整える考えだ。


PS(2017年4月26日追加):*6-1のように、今村復興大臣が「社会資本の毀損も25兆円という数字があり、まだ東北のほうだったからよかったが、もっと首都圏に近かったりすると莫大な額になる」と述べたのは、首都圏だったら数千兆円の損害になったかもしれないので真実ではあるが、「東北のほうだったからよかった」という言葉は、被害者自身は1人であっても大変なので不要だった。その点、新復興大臣の吉野氏は、東日本大震災復興特別委員長及び環境副大臣等を務め、まさにフクイチの地元である衆院福島5区選出の衆議院議員であるため、より真剣に東北の復興に取り組まれると考える。なお、原発が人口密度の低い地域に建設されたのは、まさに今村氏が述べた理由によるのだが、原発事故が起これば10km圏、30km圏どころか250km圏まで汚染されることが明白になったのである。
 そのため、*6-2のように、再エネによる発電を地域主導・産直で進めると、「原発は避けて再エネの電気を使いたい」という需要を満たすことができる上、エネルギー代金が地域から外に流出せずにすむので、生協だけでなく、全農も発電・配電子会社を作って地域に電力を供給すれば、再エネ開発が進んでよいと考える。

*6-1:http://www3.nhk.or.jp/news/html/20170425/k10010961341000.html (NHK 2017年4月25日) 今村復興相の後任に吉野正芳氏を起用 安倍首相方針固める
 安倍総理大臣は今村復興大臣が東日本大震災に関連し、被災者を傷つける発言をした責任を取りたいとして辞任する意向を固めたことを受けて、後任に、衆議院の東日本大震災復興特別委員長で、環境副大臣などを務めた自民党の吉野正芳氏を起用する方針を固めました。今村復興大臣は25日、みずからが所属する自民党二階派のパーティーで講演し、東日本大震災に関連して「社会資本などの毀損も、いろんな勘定のしかたがあるが、25兆円という数字もある。これは、まだ、東北のほうだったからよかったが、もっと首都圏に近かったりすると、ばく大な額になる」と述べました。今村大臣はその後、発言を撤回し謝罪しましたが、このあと同じパーティーに出席した安倍総理大臣は「東北の方々を傷つける極めて不適切な発言で、総理大臣として、おわびをさせていただきたい」と述べ、陳謝しました。こうした中、今村大臣は被災者を傷つける発言をした責任を取りたいとして、復興大臣を辞任する意向を固め、26日午前、総理大臣官邸で安倍総理大臣に辞表を提出する見通しです。これを受けて安倍総理大臣は、内閣の重要課題と位置づける東日本大震災からの復興や、国会審議などへの影響を最小限に抑えるため、後任人事の調整に入り、今村大臣の後任に衆議院の東日本大震災復興特別委員長で、環境副大臣などを務めた自民党の吉野正芳氏を起用する方針を固めました。

*6-2:https://www.agrinews.co.jp/p40701.html (日本農業新聞論説 2017年4月25日) 再エネ発電 地域主導で産直もっと
 農山村にある太陽光、風力、水力、地熱、バイオマス(生物由来資源)の再生可能エネルギーによる発電を地域主導でもっと進めたい。これまでは大手企業の地方進出による大規模発電が目立ち、開発トラブルも絶えない。一方で、安全でクリーンな再エネ電気を望む国民は多い。地元での収入確保と消費者との結び付きの両方がかなう、産直型の再エネ発電に挑む価値は大いにあろう。一般家庭が電気の購入契約先を自由に選べる電力自由化が、4月で2年目に入った。大手電力10社の地域独占が崩れ、電気小売り事業に新規参入する企業「新電力」も増えた。だが、この1年で契約を大手電力から新電力に切り替えた家庭は全体のわずか5.4%。しかも、その切り替えは大都市圏に集中し、新電力が少ない地方は低調だ。東京電力福島第1原子力発電所事故以来、「原発は嫌だ」「再エネ電気を使いたい」という安全・安心志向の家庭は多い。それでも契約切り替えが少ないのは、再エネ電気を供給する新電力がごく一部に限られるからだろう。実際、農山村で発電された再エネ電気をいわば産直契約で主体的に扱う新電力は、ほとんど生協系でしか見当たらない。首都圏で先行しているのは、生活クラブとパルシステムの2生協。組合員に野菜や果実、米、肉・卵、牛乳など共に、再エネ電気の共同購入を勧めている。脱原発、地球温暖化防止に向けた実践的な消費者運動との位置付けだ。だが、両生協とも子会社の新電力は採算ベースには乗っていない。供給規模が小さく、薄利多売で利益を得る電力事業では苦戦が続く。農山村側に産直契約をしてくれるところが少なく、今後も組合員への供給量は段階的にしか増やせない。他方、大手企業による地方での再エネ発電は増えているが、売電先は地域の大手電力会社が大半だ。目的が売電利益だけなら、あえて産直型にはしない。結局、地元で再エネ電気を扱う新電力が育たず、消費者が使いたくても購入先がない地域がかなりある。発電では売電先の選定が重要だ。国の再エネ電気の固定価格買取制度を使えば、どこに売っても同額で差がない。ならば、こだわりの消費者とつながる新電力に売る産直型の方が、お互いの顔が見える関係を築ける。地方での購入可能地域の拡大にも役立つ。わが国の2015年度の再エネ発電は電力全体の14%にすぎないが、ここ数年で増加。政府は地球温暖化防止の国際約束として30年度には22~24%にまで高める。農山村での発電は地域主導が望ましい。そのための農山漁村再エネ法施行から3年になるが、実施への基本計画作成は昨年末で29市町村にとどまる。環境先進国ドイツのように、安全・クリーンの価値を認め合う産直連携を広げながら、再エネ発電を増やしたい。


PS(2017年4月27日追加):鹿児島県の川内原発も、過疎地にあるため原発適地とされたよい例だろうが、原発事故時には「風下になった地域では農地が汚染され、長期にわたって農作物が汚染される」「汚染水で付近の海が汚染されて水産業ができなくなる」「汚染範囲は原発の周囲に留まらない」「大地震・津波・大規模な火山噴火が発生する可能性もある」などは考慮されておらず、*7-1のような専門委員会のご都合主義の安全宣言も信頼に値しないことは証明済である。そのため、*7-2のように、少なくとも30キロ圏内の市町村の意見は聞くべきだ。
 さらに、私は、対馬市などの日本海側の関連地域が、韓国の裁判所に提訴することによって、韓国釜山地区にある古里原発等の危険性を問えば、韓国内でも原発の危険性に関する意識が上がるのではないかと考える。

*7-1:http://qbiz.jp/article/107269/1/ (西日本新聞 2017年4月27日) 川内2号機「問題なし」 鹿児島県専門委
 鹿児島県は26日、九州電力川内原発(同県薩摩川内市)の安全性などを議論する専門委員会の本年度第1回会合を開いた。九電が2号機で実施した特別点検と定期検査の結果、特に問題なかったと報告。委員から指摘が出ていた、ゆっくり繰り返す長い揺れ「長周期地震動」についても「影響は及ばない」と回答した。会合後、座長の宮町宏樹鹿児島大大学院教授は「1、2号機の装置は同じ。5月に予定する次回会合で1号機と同様に問題ないと了承する」との見通しを示した。専門委は次回に意見を取りまとめて三反園訓(みたぞの・さとし)知事に提出し、これを基に知事が2号機の稼働の是非を判断するとみられる。2号機は既に定期検査を終え、3月24日に営業運転に復帰している。

*7-2:http://qbiz.jp/article/108270/1/ (西日本新聞 2017年4月25日) 「再稼働、長崎の声黙殺か」 30キロ圏内、住民 憤りと落胆と 玄海原発 佐賀知事同意
 佐賀県の山口祥義知事が玄海原発(同県玄海町)再稼働への同意を表明した24日、原発30キロ圏内にある長崎県内の住民からは「長崎の声は黙殺か」などと憤りや落胆の声が上がった。原発から8キロに位置する松浦市鷹島町にある新松浦漁協の志水正信組合長(69)は「鷹島では住民説明会が1度あっただけ。漁業者として再稼働同意は残念で許し難い。反対の意思を伝える海上デモの準備を進める」と怒りの声。一方、同市議会の高橋勝幸議長は「佐賀県知事は国策を重く受け止めたのだろう。それぞれの立場がある」と述べるにとどめた。30キロ圏内に含まれる平戸市田平町の森文明さん(64)は「国の政策が上意下達され、地方はないがしろにされる政治状況はいかがなものか」と苦言。同市大久保町の障害者支援施設「平戸祐生園」の佐藤慎一郎園長は「国は再稼働を急がず、万一の場合の補償や支援も含め、30キロ圏内の住民に時間をかけて説明してほしい」。同市議会の辻賢治議長は「市民の安全、安心を考えれば、実効性のある避難計画の確立が国の関与で万全なものにならない限り、議会として反対の立場は変わらない」と話した。壱岐市郷ノ浦町の特別養護老人ホーム「光の苑」の武原光志施設長(66)は「入所者が60人いる。再稼働するのであれば避難先などの環境を整えてほしい」と曇った表情。同市で反対活動をしている「玄海原発再稼働に反対する市民の会」の中山忠治会長(69)は「同意の判断は残念。署名活動は4月で終わるが、脱原発を目指し、今後も反対運動を続ける」と強調した。県内では30キロ圏内の松浦、平戸、壱岐、佐世保の4市が連携し、避難計画などへの国・九電の関与を県を通して求めている。中村法道県知事は「佐賀県知事は総合的に判断されたと認識している。関係自治体と連携し、諸課題の解決に努めたい」とするコメントを発表。松浦市の友広郁洋市長は「大型連休明けにも県と4市で協議の場を設けることになった」と話した。
●壱岐市議会も再稼働反対
 壱岐市議会は24日の本会議で、九州電力玄海原発3、4号機(佐賀県玄海町)の再稼働に反対する意見書案を全会一致で可決した。原発から30キロ圏内にある長崎県内の市議会では平戸、松浦両市が既に可決している。意見書では「県は住民説明会で再稼働への理解を求めているが、市民からは安全性や避難への不安をぬぐえないなどの声が相次いでる」「市は30キロ圏内地域の中では最も人口が多い離島で、事故が発生すれば壊滅的な打撃を受ける。離島からの避難は船舶が主で、全島民が避難するには5日半かかる」などと指摘。その上で「国の責任で、原発の安全性検証の手段や実効性ある避難計画などが確立されることがなければ、市民の安全を守ることができないと判断し、市民の理解が得られない限り、玄海原発再稼働に反対する」などとしている。


PS(2017年4月28、30日追加): 「教育無償化のために憲法改正が必要」とする意見があるが、日本国憲法で規定されているのは、*9-1の「第23条:学問の自由」「第26条:教育を受ける権利、義務教育の無償」であるため、3歳~18歳を義務教育と法律に定めれば、憲法を変更しなくても幼児教育から中等教育までの無償化を憲法で規定できる。これにより、16年(現在なら4年制大学まで卒業できる期間)かけて幼児教育から中等教育までを無償で行うため、親の経済力にかかわらず、子は必要な教育を受けることができるようになる。また、3歳くらいの早い時期から始めた方がよい科目も始められ、全体としては充実した内容を、しっかり教育することができる。そして、教育は、国にとっては投資であるため、一般財源からその費用を出すべきだ。
 なお、*9-2のように、教育改革よりも憲法の変更を目的として「高等教育も無償化すべき」と主張する人もいるが、高等教育を受ける必要があるか否かは職業によって異なり、初等・中等教育を充実していれば教養や見識のある市民を育てることができる。そのため、高等教育は、①公立大学の授業料を月額1万円程度まで下げる ②公立大学の入学金も10万円程度まで下げる ③高等教育で学んでもらいたい学生には、性別や国籍を問わず生活費も賄える奨学金を渡す ④安価で質の良い学生寮を整備する などの政策の方が、教育の機会均等や平等には憲法変更より有効だと考える。そして、奨学金は、国や地方自治体だけでなく、高等教育を受けた人材を活用する企業やその大学の卒業生などが作って給付対象者を選別してもよいだろう。

*9-1:http://www.houko.com/00/01/S21/000.HTM (日本国憲法 関連個所抜粋) 
第23条 学問の自由は、これを保障する。
第26条 すべて国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける
     権利を有する。
   2 すべて国民は、法律の定めるところにより、その保護する子女に普通教育を受けさせ
     る義務を負ふ。義務教育は、これを無償とする。

*9-2:https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20170318-00081574-playboyz-pol (Yahoo:週プレNEWS 2017/3/18) 「高等教育無償化」は警戒すべき! 安倍首相が目論む“憲法9条改正”への布石
 安倍首相が次期衆院選を2018年秋以降に先送りする検討を始めたという。その思惑はどこにあるのか?『週刊プレイボーイ』でコラム「古賀政経塾!!」を連載中の経済産業省元幹部官僚・古賀茂明氏は、これは安倍首相の“憲法9条改正へのシナリオ”だと警戒する。
* * *
 次期衆院選について、「首相が任期満了ギリギリの2018年秋以降に先送りする検討を始めた」と、新聞各紙が伝えている。次期衆院選はこれまで、今年の秋と予測する声が大半だった。それをさらに1年も先送りにする。これが本当なら安倍首相の思惑はどこにあるのだろうか? その答えを知るカギのひとつが3月5日の自民党大会にあった。この冒頭のあいさつで、首相はこう力説したという。「憲法改正に向け、具体的な議論をリードする。それが自民党の歴史的使命だ」。昨年の党大会では、安倍首相は改憲についてひと言も触れていない。その時と比べると、大きな変化だ。現在、自民は衆参で改正発議に必要な3分の2の議席を持っている。おそらく、首相はその議席数をキープできる来年末までに、憲法改正をやり遂げてしまおうと腹を固めたのだ。ただし、首相が狙う9条改正は容易ではない。平和憲法は広く国民の間に根づいており、そのシンボルである9条の改正には極めて強い抵抗が予想される。そこで首相が新たに持ち出そうとしている改憲項目がある。「教育無償化」だ。憲法26条では、「義務教育は無償」と書かれているが、これを受けて実際に行なわれているのは小・中学校までの無償化である。本来は、今すぐにでも義務教育の範囲を拡大して高校の無償化を実施すればよい。しかし、その前に、憲法の条文を改正して、高校まで入ることを明文化しようというのだ。教育無償化を高等教育にまで拡大するため、憲法改正したいと提案されて、表立って反対できる人は少ないだろう。望めばだれでも国の負担で高等教育を受けられる制度が憲法で保障されることは、良いに決まっている。だが、注目すべきは憲法改正による教育無償化を最も熱心に主張しているのが、「日本維新の会」ということだ。安倍・自民が憲法改正の最初のメニューに教育無償化を打ち出すということは、維新の政策を受け入れたことを意味する。そこに首相の計算が透けて見える。まずは来年の秋までに26条の改憲を実現させることで、教育無償化の言いだしっぺの維新に花を持たせる。国民の憲法改正アレルギーが払拭されるとともに、当然、維新の評価・支持率も高まるだろう。その上で自民、維新で憲法改正の連合軍を作り、次期衆院選を戦う。次の選挙で自民は30前後議席を減らすとの選挙分析があるものの、そのマイナス分を維新が他の政党に競り勝って確保してくれれば、全体としては改正の発議に必要な衆参3分の2の勢力を維持できる。来年9月には首相は3期目の党総裁選に勝利して、21年9月までの長期政権運営に乗り出しているはずだ。衆院選で維新とともに3分の2を取れば、いよいよ、本丸の9条改憲への道筋がはっきり見えてくる。このシナリオに死角があるとすれば、小物感の強い松井一郎府知事の下で維新の党勢がじり貧になっていることだろう。しかし、来年秋までに橋下氏が政界復帰するという観測がここに来て急速に高まっている。維新関係者の希望的観測かもしれないが、橋下氏が登場すれば、維新フィーバー再来も夢ではない。教育費をタダにする――国民が歓迎しそうな改憲メニューを“9条改正”の布石にしようと目論む安倍・自民。警戒を怠ってはならない。
●古賀茂明(こが・しげあき)
 1955年生まれ、長崎県出身。経済産業省の元官僚。霞が関の改革派のリーダーだったが、民主党政権と対立して2011年に退官。近著に『国家の暴走』(角川oneテーマ21)。インターネットサイト『Synapse』にて「古賀茂明の時事・政策リテラシー向上ゼミ」を配信中


PS(2017.5.4追加): 100%の人が高等教育を受けるわけではないため、高等教育の無償化はむしろ不公平を招く。また、義務でない場合の無償化は対象者の意思決定に誤った影響を与えるため、サービスを利用する人に少しは負担させる形式の方がよく、これは、誰が対象であれ医療費の無料化も同じである。さらに、憲法をいじる必要のない教育無償化をだしにして、自民党憲法改正草案のような非民主国家に逆戻りさせる憲法改悪が行われるきっかけにされるのは大きな問題だ。首相は「2020年を新しい憲法が施行される年にして、日本が新しく生まれ変わる大きなきっかけにすべきだ」と言っておられるが、①どういう新しい国に生まれ変わるために ②現行憲法のどこが不備だから ③どのように変えたいのか を具体的に示すべきである。そうすれば、その夢の適切性や意図どおりになるか否かについて、次のディスカッションができるのだが、「憲法をよく読んだことはないが、(敗戦後に押し付けられた憲法だから)現行憲法を変更すること自体が夢」で、説明は国民を説得するための手段にすぎないというのは論外なのだ。

  
     2016.8.12東京新聞     昭和天皇の御名御璽      ポイント  

(図の説明:これまで「敗戦後に日本の国力を弱めるため米国によって押し付けられた」と説明されることが多かった日本国憲法9条は、実は幣原首相が提案したものだと米上院でマッカーサーが証言していた。その憲法には、①国民主権 ②平和主義と戦力不保持 ③基本的人権の尊重 が記載されており、昭和天皇が深く喜んで交付せしめるとしている)

*10:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20170504&ng=DGKKZO16046710U7A500C1PE8000 (日経新聞 2017.5.4) 首相メッセージ要旨 高等教育無償化にも意欲
 安倍晋三首相(自民党総裁)のビデオメッセージの要旨は次の通り。憲法は国の未来、理想の姿を語るものだ。私たち国会議員はこの国の未来像について、憲法改正の発議案を国民に提示するための具体的な議論を始めなければならない時期にきている。例えば憲法9条。今日、災害救助を含め、命懸けで24時間365日、領土、領海、領空、日本人の命を守り抜く任務を果たしている自衛隊の姿に対し、国民の信頼は9割を超える。しかし、多くの憲法学者や政党の中には、自衛隊を違憲とする議論が今なお存在する。「自衛隊は違憲かもしれないけれども、何かあれば、命を張って守ってくれ」というのは、あまりにも無責任だ。私たちの世代のうちに、自衛隊の存在を憲法上にしっかりと位置づけ、「自衛隊が違憲かもしれない」などの議論が生まれる余地をなくすべきだ。もちろん、9条の平和主義の理念については未来に向けて、しっかりと堅持していかなければならない。「9条1項、2項を残しつつ、自衛隊を明文で書き込む」という考え方は、国民的な議論に値するだろう。教育の問題。70年前、現行憲法の下で制度化された普通教育の無償化は、戦後の発展の大きな原動力となった。70年の時を経て、社会も経済も大きく変化した現在、子どもたちがそれぞれの夢を追いかけるためには、高等教育についても全ての国民に真に開かれたものとしなければならない。私はかねがね夏季オリンピック、パラリンピックが開催される2020年を未来を見据えながら日本が新しく生まれ変わる大きなきっかけにすべきだと申し上げてきた。20年を新しい憲法が施行される年にしたいと強く願っている。自民党総裁として憲法改正に向けた基本的な考え方を述べた。これを契機に国民的な議論が深まっていくことを切に願う。


PS(2017.5.20追加):政府は、子育てや教育にかかる負担を社会全体で分かち合うと称して、*11のように、教育無償化や待機児童対策の財源として年金等の保険料に上乗せして徴収する“こども保険”制度の検討に入るそうだが、教育財源の不足は教育に対する国家予算の優先順位が低すぎるのが問題なので、公的保険等で国民負担を増やして教育費用を賄おうという発想はセンスが悪すぎる。また、今後、子育て費用のかかるリスクがない人(既に自前で子育てを済んだ人やさまざまな理由で子どもを持っていない人)にまで保険料を支払わせるのは不公正である上、保険制度にも合わないため、もし“子ども保険”を作るとすれば、今後、子育てで費用がかかるリスクのある人で保険に入りたい人に限るべきだ。そのため、“子ども保険”を作るとすれば私的保険が適しており、その点は誰もがリスクを有する年金・医療・介護とは根本的に異なる。

*11:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20170520&ng=DGKKZO16659010Q7A520C1MM8000 (日経新聞 2017.5.20) こども保険検討へ、教育向け新財源、税・拠出金と比較
 政府は、教育無償化や待機児童解消などをまかなう新たな財源として、年金などの保険料に上乗せして徴収する「こども保険」制度の検討に入る。税金や企業からの拠出金でまかなう案などと比較検討し、早ければ年内にも方向性を出す。少子高齢化が急速に進む中、子育てや教育にかかる負担を社会全体でどう分かち合うのか。財政論を超えて国民的な議論を呼びそうだ。政府は6月にまとめる経済財政運営の基本方針(骨太の方針)でアベノミクスの柱の一つとして教育や子育てといった人材投資の強化を盛り込む。財源として(1)税(2)拠出金(3)社会保険料――の3案を明示する。具体的な検討は今夏にも政府内に「人材投資会議」(仮称)を新設し、教育無償化の範囲などと併せて進める見通しだ。「こども保険」構想はもともとは自民党の小泉進次郎氏ら若手議員が小学校就学前の教育費の負担軽減策として打ち出したものだ。小泉氏らの提言によると、まずは社会保険料を勤労者、事業者とも0.1%ずつ上乗せして徴収。それによって得られる約3400億円で、児童手当を1人当たり月5000円増やすことができるとしている。さらに保険料の上乗せを0.5%まで増やせば、集まる財源は約1.7兆円。小学校入学前の子ども約600万人に児童手当を月2万5000円加算できるため、幼児教育・保育を実質的に無料にできる計算だ。最終的には上乗せ率を1.0%まで引き上げ、財源規模を3兆円規模に増やすことを想定する。「こども保険」の特徴は、現役世代で負担を共有し、将来世代へのツケの先送りを避けられることだ。並行して検討する税金でも消費税ならば国民全体から広く集められるが、すでに10%までの使い道は決まっている。社会保険は税金と異なり他の使途に使われることもなく、給付と負担の関係が明確で、国民の理解が得られやすいとの読みもある。政府が教育や子育て支援に必要な新しい財源の本格的な検討に入るのは、高齢化による社会保障の膨張が避けられない中で、新たな施策へ振り向ける財政的な余裕がなくなっていることがある。これまで日本の社会保障は高齢者優遇に偏っているとの声が強かった。自民党も選挙を意識して社会保障の削減には後ろ向きで、その分、子育てや教育への予算配分がおろそかにされてきた。「こども保険」の検討によって、社会保障の歳出抑制などの議論にも一石を投じる可能性がある。


PS(2017.5.27追加): *12のように、維新の党の提案を入れる形で自民党が進めようとしている高等教育無償化は、憲法9条変更のだしにすぎず、このような動機で憲法を変更すべきではない。また、日本国憲法は26条で義務教育の無償化をうたっているが、高等教育の無償化を禁じてはいないため、高等教育の無償化もやろうと思えばいつでもできる。そして、私は、国民全員を利する教育・社会保障を財源論とセットにして増税のだしに使うべきでもないと考えている。
 なお、どこまでが義務教育で、幼児教育・初等教育・中等教育・高等教育かは時代によって変わってよく、平成20年度で97%を超える生徒が進学している高校は、残る3%の進学できない生徒が人生で不利益を蒙らないためにも、義務教育にすべきだろう。
 そのため、私は、大学以降を高等教育とし、幼稚園から高校までを義務教育として無償化するのがよいと考える。また、大学の奨学金も、(子の方が未来に適合した考え方をする場合が多いのだが)親子で教育に関する考え方が一致するとは限らず、世帯収入が多いからといって100%の親が子の望む進学に金を出すとは限らないため、世帯収入とは関係なく学生全員を対象として渡すべきだと考える。そのよい例は、東大女子学生で、地方出身の女子生徒が東大に進学するのを周囲や社会に阻害されず、生活の心配なく受験できるように、東大女子同窓会が支払う女子学生への奨学金は合格前に内定し、東大が女子寮の便宜を図るようになっている。

*12:http://dd.hokkaido-np.co.jp/news/opinion/editorial/2-0113953.html (北海道新聞 2017.5.27) 教育の無償化 改憲と切り離すべきだ
 安倍晋三首相が改憲の具体的項目として、9条への自衛隊明記とともに、高等教育までの無償化を挙げた。憲法は義務教育を無償と定めている。これを大学など高等教育まで拡大するよう、憲法に書き込むとの提案だ。貧富の差に関係なく、誰でも大学で学べる社会の実現に異論はない。だが、無償化は改憲しなくても可能だ。事実、民主党政権時代には高校が無償化されている。首相は誰もが賛同する教育無償化とセットにすることで、反対が根強い9条改正に踏み込もうとしているかのようにも映る。無償化が必要と考えるなら、改憲論議と切り離して、すぐにでも取り組むべきである。憲法は26条で義務教育の無償化をうたっている。その対象拡大を禁じているわけではない。だからこそ、民主党政権下で高校無償化法が成立し、公立高校の授業料は免除、私立高校にも就学支援金が支給され、事実上無償化が実現した。これを、選挙目当ての「ばらまき」と批判したのは野党だった自民党だ。事実、政権交代後は所得制限を設け、制度を後退させた。にもかかわらず、突然の「変節」である。教育無償化については、日本維新の会も憲法による規定を求めている。9条改正という目的達成に向け、維新の協力を得るために無償化を「だし」にするような手法であるなら、到底認めがたい。経済協力開発機構(OECD)の調査では、日本の国内総生産に占める教育機関への公的支出割合は、比較可能な33カ国中32位だ。教育費の多くを家庭が負担している。こうした実態が少子化の一因にもなっている。教育の無償化は喫緊の課題なのだ。幼児教育から高等教育まで無償にすると、年間4兆円以上が必要とされる。財源を巡っては教育国債発行や、社会保険料引き上げによるこども保険創設などが出ているが、いずれも決め手に欠ける。さらに、世帯収入に関係なく全員を対象とするのか、無償化の範囲は幼児教育だけか、高等教育まで含むのか―など、実現に向けては難問が山積みだ。解決には、国会が党派の壁を取り払って、活発な議論を展開することが欠かせない。無償化を本当に実現したいのであれば、対立点の少なくない憲法を絡めて提唱したところで、逆効果ではないか。

| 年金・社会保障::2013.8~2017.4 | 10:46 PM | comments (x) | trackback (x) |
2017.4.10 さまざまな分野のイノベーションとそれを可能にする教育・研究 (2017年4月12、13、14、15、16、17、19、21、23日追加)

      太陽電池        ミニ肝臓       新有田焼    宅急便   
                             2017.4.8   2017.4.5 
                             佐賀新聞    東京新聞

(図の説明:太陽電池は今一つデザインが悪かったが、外壁ユニットに組み込む型や薄膜型太陽電池も現れ、次第に建材の一部として使えるようになってきた。また、バイオテクノロジーではミニ肝臓ができ、再生医療が一歩進んだ。さらに、磁器は、素材を改良することによって複雑なデザインを表現しやすくなった。また、ヤマト運輸は、起業時は輸送におけるイノベーションの先駆者だったが、大企業となって従業員に「寄らば大樹の陰」という意識が出てきた時には、その企業は下り坂になりがちなため、気をつけるべきである)

(1)エネルギー
1)原発について 
 原発は、*1-1のように、東芝がウェスチングハウスの経営破綻を受け、インド・中国・英国の原発事業からも撤退を急いでいる。私は、他国の原発事業者が、フクイチ事故を受けて原発から撤退しようとしていた時に、その原発事業を高値で買収した日本企業は間が抜けており、撤退しようとしていた原発事業者は幸いだっただろうと推測する。

 それでも産経新聞は、2017年3月29日時点で、インドでの原発建設が白紙撤回となることを懸念していたり、「東芝が6割を出資している英子会社ニュージェネレーション株を売却したりすれば日英関係がぎくしゃくする可能性がある」などとしており、理科音痴が技術に鈍感で、とかく過去に戻したがる傾向があるのには呆れるほかない。

 このような中、*1-2のように、もんじゅは1兆円も投じながら殆ど稼働せずに破綻し、政府は昨年12月に廃炉を決めた。そのため、使用済核燃料を再利用するプルサーマル発電で出る使用済MOX燃料を処分する必要が出てきており、現在は原発の使用済核燃料プールに山ほど保管されているが、それは非常に危険であると同時に経済性もない。それでも佐賀県議会は、4月13日に「原発再稼働容認決議」を行うそうで、それは原発交付金が目的だが、これで事故が起これば、それこそ自己責任になるだろう。

2)電力・ガスの自由化
 *1-3のように、4月1日に家庭向けの都市ガス販売が自由化され、電力・ガスの自由化が完了する。これにより、地域の電力やガスの独占状態が和らいで競争が生じれば、これまでのように国民負担させて、エネルギー価格が産業や生活の足を引っ張ることはなくなるだろう。しかし、まだ制度はそこまで行ってはいない。
 
 私は、九電が進めているオール電化と再生可能エネルギーによる発電が定着すれば、海外にエネルギー関連の支払いをする必要がなくなるため、国民はずっと豊かになると考えている。

 また、「太陽光発電は・・・」と念仏のように同じことを言う人がいるが、*1-4のように、シャープは従来機に比べて容量が35%増の6・5キロワット時でありながらサイズをほぼ半分に抑えた蓄電池システムの新製品を発表し、「ゼロエネルギー住宅」への普及を期待しているそうだ。このほか、家庭用スマートメーターも投入するとのことだが、「ゼロエネルギー住宅」や「スマートメーター」は海外でも人気が出るだろう。特に、赤道に近い地域、日照時間の長い地域、戦争で破壊されて街の再生を要する地域でのゼロエネルギー住宅の普及や、高齢化した国でのスマートメーターを利用した見守りサービスは需要が高いと思われる。

(2)バイオテクノロジーと医療のイノベーション
 私が、1990年代の初め、夫に同伴してハンガリーのブダペストで開かれたヨーロッパ脊椎・脊髄病学会に出た時に注目された発表は、マウスの脊髄を一度切って再生させ、そのマウスが歩けるようになったというもので、この研究発表が終わった時には、そこにいた人の全員が立ち上がって(その研究者とマウスに)拍手した。何故なら、「脊髄や神経は再生しない」というのが医学の常識だったからである。

 あれから約25年、今ではヒトでそれができるかと言うと、*2-1のように、2017年2月10日、慶応大学の岡野教授らのグループが他人のiPS細胞を使って脊髄損傷を治療する臨床研究の計画を大学内の倫理委員会に申請した段階だ。しかし、他国では、本人の脂肪幹細胞を使って脊髄細胞を作って治したと言う人もいるし、ES細胞を使ったと言う人もあり、私は、いずれも可能性が大だと考えている。

 このほか、*2-2のように、ドナーを必要とする肝臓移植ではなく、iPS細胞からミニ肝臓を大量製造して肝不全のマウスに移植し、顕著な治療効果を発揮しているため、ヒトに応用できる日も近いだろう。

 また、*2-2、*2-3に書かれているように、複雑であるため造るのが難しいとされている膵臓や腎臓の製造も研究中だそうで、これが実用化されると、糖尿病で苦しみ続けたり、膨大な時間と費用を費やして人工透析を続けたりする必要がなくなるため、患者の福利が増すと同時に、医療費も節減される。

 このほか、*2-4のように、人間の臓器を動物の体内で作る方法も研究されているが、私は3Dプリンターができた現在では、動物の体を借りなくても、元に近い形のヒト臓器を作ることも可能だと考える。そのため、武器の開発よりも、このようなバイオテクノロジー製品の開発に予算をつけた方が、プリウスや自動運転車のように、世界でヒットして日本が株を上げることは間違いないだろう。

(3)中小企業とイノベーション
 それでは、伝統産業は古いままで、中小企業はイノベーションができないのかと言えば、決してそうではない。例えば、*3-1のように、有田焼では、佐賀県窯業技術センターが2014年度から3年がかりで開発して焼成時に縮まない陶土を開発し、薄さ、細さ、軽さを追求するデザイナー製品や収縮率の高い大型品が作れるようになる。これは、佐賀県を挙げて努力した結果だが、欲を言えば、強さや軽さも増してもらいたい。

 そして、*3-2のように、有田・伊万里の窯元・商社16社と気鋭のデザイナー16組が共同で手掛けた伝統と革新を融合させた有田焼は、世界28の国・地域で発行されているデザイン誌「エル・デコ」主催の「インターナショナル・デザインアワード」テーブルウェア部門で、世界的なデザイン賞を獲得したそうだ。新ブランドは2016年10月に販売を始め、現在は国内40社、海外は欧州を中心に10カ国で取引をしているそうで、これも県を挙げての推進の成果である。これは、他の伝統産業や中小企業にも応用できるだろう。

(4)運輸のイノベーション
1)JR北海道とJR九州の経営比較
 北海道旅客鉄道(株)《通称:JR北海道》は、1987年(昭和62年)4月1日に国鉄から鉄道事業を引き継いだ旅客鉄道会社の一つで、鉄道とバス事業を承継し、旅客鉄道株式会社と日本貨物鉄道株式会社に関する法律(JR会社法)による特殊会社で、独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構を介して日本国政府がすべての株式を所有している。

 そして、*4-1のように、30年でJR各社の明暗がはっきりし、JR北海道は、地域輸送を含めた基幹的交通機関として鉄道をどの程度必要としているかの役割を再検証し、鉄道をただ残しているだけでは無意味であるため、赤字路線は切るしかないとしているが、こういう解決策しか思い浮かばないのが国営の悪い点なのだ。

 一方、首都圏から同じくらいの遠距離にあるJR九州は、1987年の旧国鉄の分割・民営化によって発足してから29年で、東証1部に新規上場を果たした。もちろん、全体としては黒字だ。

 この結果の違いの原因は、JR北海道が列車やバスを走らせることしか考えていないのに対して、JR九州は、鉄道やそれぞれの街の一等地を所有している強みを活かして周辺不動産の開発を行い、不動産など非鉄道事業の売上高が全体の5割超を占めることである。そして、九州の食や観光を発信する観光列車も走らせており、JR九州の青柳社長が語る成長戦略は「中核である鉄道事業とそこから相乗効果を生み出す事業を両輪として、さらなる成長を目指していくこと」だが、これは北海道でも同じだろう。

 つまり、速やかに需要を把握し、さらに需要を発掘していくことが、国ではなく民が経営することの利点なのである。このよい例は、*4-5のように、ヤマト運輸ができてから、私たちは鉄道のチッキ(送る人は駅まで持って行き、受け取る人は駅まで取りに行かなければならなかった)を使わずに宅配便を使うようになり、さらに新しいサービスが増えて、その便利さからヤマトの宅配便は最高18・7億個となり、送る荷物が増えた(運輸部門のパイが大きくなった)ことである。これには、ITの普及や高齢化社会でインターネット通信販売のニーズが増えたことも影響している。

 そのため、JR貨物も、不便さを顧客に強いるのではなく、宅配便に劣らぬ便利さを持つようにすれば、安価に大量輸送できるため、客が増えると考えられる。

2)ドライバー不足に対するヤマト運輸の解決策は正しいか?
 ヤマト運輸が、*4-3、*4-4のように、宅配便の扱い量を抑えることを検討するそうで、これが、ドライバー不足とネット通販の拡大でドライバーの長時間労働に繋がっていることの解決策とのことである。

 しかし、この解決策は、利益獲得機会を労働力不足というネックで放棄しており、駅やロッカーで預かるのもサービスの低下に繋がる。その一方で、通販で買うものの中には軽いものも多いため、女性配達員を増やしたり、OBの高齢者を再雇用したりすればよい思われる。

 また、時間指定は現在ほど細かくしなくてもよいが、「配達して欲しいニーズの高い時間帯」があり、職場なら9時~17時、自宅なら18時以降か休日が多い筈だ。そのため、配達して欲しいニーズの高い時間帯に絞って荷物を受け付ければ無駄足が減り、生産性が上がると考える。

 なお、お茶・水・ジュースなどのように、重たくて買って帰るのが大変なため、アマゾン・アスクル・楽天などで購入して配達してもらうものもある。これを運ぶのは男性の方がよいかも知れないが、一人でいる家に行っても安全が確実な人なら、外国人でもかまわないだろう。

(5)イノベーション可能な教育・研究
 このようなイノベーションを起こすには、何も知らない人が想像で行うのではなく、知識を持った人が、国内だけでなく世界で起こる刺激に正しく反応して、正解を導くことができる創造力が必要なのである。

 そのため、*5-1のように、小学校から英語を学び、世界の情報を自在に手に入れることができるようになることは重要だ。また、最近では、世界の学会の会報や新聞・雑誌は世界共通語である英語で開示されているため、それを読めれば高校生でも大学生でも、簡単に最先端の情報を手に入れることができる。この点で、日本人は、インド・シンガポール・フィリピンなどの人よりも不利になっている。
 
 また、私の経験では、日本では日本語での教育が徹底しているため、専門用語の英語は別に覚えなければならない。そのため、最初に学ぶ時に日本語と英語の両方を教えるようにするとか、課目によっては英語で授業するようにした方が、苦労少なく世界で通用する人になれるのではないかと考える。

 さらに、*5-2のように、九州産業大学が、九州の伝統工芸品の販売戦略などを調査研究する「伝統みらい研究センター」を4月1日に設立したそうだが、価値ある伝統工芸を現在でも使い勝手の良い製品にするために、これは、自前での研究開発が難しい中小企業が多い業種でとりわけ重要なことである。

(エネルギー)
*1-1:http://www.sankei.com/economy/news/170329/ecn1703290053-n1.html
(産経新聞 2017.3.29) インドや英国の撤退も急ぐ 原発輸出に打撃
 東芝は巨額損失を出し続けてきた米原発子会社ウェスチングハウス・エレクトリック(WH)の経営破綻を受け、米国のほかインドや中国、英国で手掛ける原発事業からの撤退作業を急ぐ。保有するWHと英原発子会社の株式を早期に売却できるかが今後の焦点だ。インドでは、WHが計6基の原発を建設することで昨年6月に米国とインドの両政府が合意した。今年6月までに契約する方針だが、白紙撤回となる懸念がある。昨年11月にインドと原子力協定を結び、原発輸出をもくろんでいた日本政府も打撃を受けそうだ。東芝は、6割を出資する英子会社ニュージェネレーションを通じて英北西部ムーアサイドに原発3基を建設する計画だったが、WH問題を踏まえて方針を転換し、英子会社株も売却する考えだ。ただ、東芝が手を引けば日英関係がぎくしゃくする恐れもある。中国ではWHが三門原発(浙江省)と海陽原発(山東省)で原子炉を2基ずつ製造している。最も早い稼働予定は三門の1号機だが、当初計画から約3年遅れている。東芝はWH株売却により距離を置く考えだ。

*1-2:http://qbiz.jp/article/107011/1/ (西日本新聞 2017年4月6日) もんじゅ「破綻」後議論なく プルサーマル、課題山積 玄海再稼働13日「決議」へ
 佐賀県議会が13日にも「容認」を決議し、再稼働に向けた最終局面に入る九州電力玄海原発3、4号機。このうち3号機は、使用済み核燃料を再利用する国内初のプルサーマル発電だ。同発電と高速増殖原型炉は国が掲げる核燃料サイクルの2本柱。高速増殖原型炉もんじゅの廃炉が決まり、プルサーマル発電を巡る環境も激変している。3号機の再稼働に向けた議論に核燃料サイクルの「破綻」を受けた視点は抜け落ちている。もんじゅは原発の使用済み核燃料を再処理して取り出したプルトニウムと、ウランの混合酸化物(MOX)燃料を使い、発電しながら消費した以上の燃料を生み出す「夢の原子炉」。約1兆円を投じながら、トラブル続きでほとんど稼働しないまま政府は昨年12月に廃炉を決めた。一方、プルサーマル発電はMOX燃料を使うところまでは同じだが、使用済みMOX燃料は処分する必要がある。もともと高速増殖炉実用化までの「つなぎ」の位置付けだった。核兵器にも転用できるプルトニウムを日本は48トン保有し、国際社会から厳しい目が注がれる。もんじゅの廃炉で、プルトニウムを消費できるのは事実上プルサーマル発電のみとなった。プルサーマル発電は核燃料サイクルの「つなぎ」から主役に躍り出たと言える。
   §    §
 プルサーマル発電には固有の課題も多い。使用済みMOX燃料は、普通の使用済み核燃料に比べ発熱量が大きいが、国は処分方法をいまだに示していない。当面、原発の使用済み燃料プールに保管するしかない。経済性も疑問視され、資源エネルギー庁の試算によると、1キロワット時当たりのコストは普通の原発に比べ1・5倍。燃料となるプルトニウムは半減期が長い上、毒性が強く体内に取り込まれると発がんの危険性も高いため不安視する声も多い。導入への同意を検討する際には県も安全性を問題視し、2005年に公開討論会を実施。その後、九電による「やらせ問題」が発覚した経緯がある。再稼働への意見を聞く県の第三者委員会の柳瀬映二委員(62)は「プルサーマルは危険性が大きい。公開討論会でやらせがあっただけに不安視する県民の声をしっかり受け止めるべきだが、委員会で議論は深まらなかった」と話す。徳光清孝県議は「使用済みMOX燃料は地元で保管し続けないといけない。県は先行きの議論に絡み、国と協議するべきだ」と求めた。ほぼ全域が玄海原発から30キロ圏内にある同県伊万里市の塚部芳和市長(67)は「プルサーマルの議論はあいまいになったままだ。国策といえど、県に降りかかっている問題であり、あらためて是非を検証するべきだ」と提言した。
*プルサーマル発電 一般の原発で使った使用済み核燃料を再処理してプルトニウムを分離し、ウランと混ぜたMOX燃料を使う。2009年に玄海原発3号機で国内初の営業運転が始まった。福島第1原発事故前、電気事業連合会は15年度までに全国16〜18基で導入する計画だったが、現在稼働しているのは四国電力伊方原発3号機のみ。

*1-3:http://qbiz.jp/article/106532/1/ (西日本新聞 2017年3月30日) 西部ガスVS九電 対決激化 4月1日 ガス販売自由化スタート
 4月1日に家庭向けの都市ガス販売が自由化される。福岡、北九州の両都市圏に新規参入する九州電力が、ガスと電気のお得なセット割を打ち出すと、西部ガスも対抗値下げに踏み切るなど、早くも対決が過熱している。両社の料金とサービスを比較し、専門家に選択のポイントを聞いた。両社はお互いの現行料金からの割引率を公表しているが、それぞれの新料金プランは比較していない。西日本新聞は4人家族の新料金プランを比べるため、ガスと電気のセット料金の試算を両社に求めた。条件は電気使用量は月420キロワット時(契約容量40アンペア)、ガスは月41立方メートルと設定した。現在のガス料金は、西部ガスの一般契約が月1万301円。電気は、九州電力の従量電灯Bが月1万1280円で、光熱費は月額合計2万1581円となる。新料金メニューでは、西部ガスのガスと電気のセット割を契約した場合、ガス9757円、電気1万1082円で、計2万839円となる。一方、九電のセット割は、ガス9401円、電気1万1140円で、計2万541円。九電が1・43%、298円安い計算になった。年間では、3576円の差となる。ただセット割以外にも、西部ガスにはファンヒーターや床暖房など各家庭で使うガス機器によってお得になるプランが複数ある。九電は、電気代が大幅に安くなるオール電化を顧客に優先的に勧めている。また両社は、暮らし関連の支援サービスを有料で提供している。西部ガスの場合はセット割などの新料金メニューに契約すると、ガス機器が故障した場合の出張料と工賃が無料になる。水漏れやガラス割れ、鍵のトラブルの応急措置も2年間無料。いずれも本来は月324円なので、合わせて月648円お得になる。西部ガスは通常、すべての契約世帯を平均した月23立方メートルで試算。月41立方メートルが4人家族のモデルとは言えないと説明している。
●使用量把握し、自分に合う契約を
 料金プランを選ぶポイントについて、家庭の光熱費や省エネに詳しい消費生活アドバイザー・環境カウンセラーの林真実さんに聞いた。
     ◇   ◇
 電気とガスのセット割が始まる。西部ガスもかなり安くしてきたが、料金面では九電に分があるように見える。ただ、両社が出している料金比較は、あくまで平均的なモデルケースだ。実際は、その人その人で使い方が違う。自分自身の使い方を振り返り、それに合わせて、どちらがお得かを考えてほしい。まず過去の使用量を見てほしい。消費者の中には金額しか見ておらず、使用量を知らない人が多い。時間帯や季節での使用量の違い、機器のエネルギー消費量などを調べてほしい。効率が良く、無駄がないか。見える化することだ。例えば照明をLEDに変えるなど、料金プランより前に安くする方法がある。その上で料金比較サイトでシミュレーションするのがいい。企業独自のサイトもある。さらに、付加サービスもポイントになる。西部ガスの「住まいのトラブルかけつけサービス」2年間無料は、九電にはない。会社の社会的貢献や環境配慮など、社会的な姿勢も重要だ。経営方針、電源構成、ボランティアなど、消費者が勉強してほしい。好き嫌いもあるだろう。消費者が、ガスを購入する企業を選べるようになったのは画期的だ。今までは殿様商売的なところもあったが、消費者を向いてきたのはメリットといえる。ただ、セット割などが出てくる分、非常に複雑になり、自己責任の要素も生まれている。しょっちゅう契約を見直し、変えてもいい。

*1-4:http://qbiz.jp/article/107092/1/ (西日本新聞 2017年4月6日) シャープ蓄電池の販売2倍へ 住宅用新製品でシェア拡大狙う
 シャープは6日、2017年度の住宅用蓄電池の販売台数を1万台に伸ばし、16年度から倍増させることを目指すと明らかにした。エネルギー消費量が実質的にゼロになる省エネ住宅「ゼロエネルギー住宅」の普及が追い風になると期待し、新製品を投入してシェア拡大を狙う。シャープは同日、従来機に比べ容量が35%増の6・5キロワット時でありながらサイズをほぼ半分に抑えた蓄電池システムの新製品を発表。場所を取らずクローゼットなどにも設置できるのが売りだ。変換効率を高めた太陽光パネルや家庭のエネルギー管理システム(HEMS)の新製品も投入する。製品を組み合わせて販売して稼ぐ戦略で、担当者は「ゼロエネルギー住宅に対する国などの補助金も一つの起爆剤になる」と話す。ただ、再生可能エネルギーの買い取り価格下落の影響で太陽光パネルの需要は低調だ。割高で原材料を調達したことも響き、シャープの太陽光事業は赤字が続いている。パナソニックや京セラなどとの競争も激しく、計画通り売り上げが拡大するか不透明な面もある。

<医療のイノベーションとバイオテクノロジー>
*2-1:http://digital.asahi.com/articles/ASK2B4STGK2BULBJ008.html (朝日新聞 2017年2月10日) iPSで脊髄損傷治療、臨床研究を申請 慶応大
 慶応大学の岡野栄之(ひでゆき)教授らのグループは10日、他人のiPS細胞を使って脊髄(せきずい)損傷を治療する臨床研究の計画を大学内の倫理委員会に申請した。2018年前半の手術を目指す。計画では、京都大学iPS細胞研究所の「iPS細胞ストック」から供給される細胞を、神経細胞になる「神経前駆細胞」に変化させ、脊髄の損傷部分に注入する。交通事故などで脊髄損傷を起こしてから2~4週間の患者が対象で、18歳以上の7人に移植し、安全性やまひした手足などを動かす機能の回復具合を調べる。iPS細胞ストックでは、拒絶反応が起きにくい特殊な免疫の型を持つ提供者の血液からiPS細胞をつくり、備蓄している。今後、学内の倫理委員会と他の委員会での技術的な審査を経て、厚生労働省で計画が了承されれば、来年前半にも移植を実施したいという。まずは損傷から時間があまり経っていない患者を対象にするが、将来的には慢性期の患者にも広げたい考えだ。グループは、脊髄損傷を起こした小型のサルのマーモセットにヒトiPS細胞からつくった細胞を移植し、歩けるまでに回復させることに成功している。脊髄損傷は、国内に現在約20万人の患者がおり、毎年新たに5千人がなっているとみられる。リハビリ以外に確立された治療法はなく、岡野教授は「たくさんの患者が待っている。良い細胞を使って、治療につなげられるよう研究をすすめたい」と話す。

*2-2:http://toyokeizai.net/articles/-/59601 (東洋経済 2015年2月3日)移植医療に朗報!「臓器製造システム」の実力、"ミニ肝臓"で肝不全患者を治療へ
 「谷口君、肝臓を作れませんか?」。1989年12月、研修医1年目だった横浜市立大学の谷口英樹教授は、恩師で筑波大学の教授だった故・岩崎洋治氏からこう尋ねられた。岩崎氏は1984年に日本初の脳死患者からの膵・腎同時移植を行い、殺人罪で告訴されるなど波乱の中で移植医療を開拓した臓器移植の第一人者。谷口教授は岩崎氏を間近で見ながら、自ら外科医として肝臓移植などを執刀してきた。「ドナー臓器の不足を抜本的に解決しなくては移植医療の未来はない」――冒頭の問いかけに込められた岩崎氏の強い危機意識を、谷口教授も共有していた。
●iPS細胞からミニ肝臓を大量製造
 その日から25年余り経った今、肝臓をはじめとする臓器の作成は実現可能な夢になりつつある。横浜市立大学の先端医科学研究センター内では、世界唯一の「ヒト臓器製造システム」の構築が進む。全自動ではなく、人の作業をロボットが支援する「トヨタ方式」を採用してiPS細胞(人工多能性幹細胞)から直径5ミリメートルほどの“ミニ肝臓”を大量に作り、将来的に肝不全の治療に役立てる予定だ。谷口教授の研究グループは臓器作りで世界をリードしてきた。2013年にはiPS細胞からの血管構造を持つ人の肝臓の作成に成功。世界初の小さな立体臓器が科学界に与えた衝撃は計り知れない。それまで、世界の研究者はiPS細胞から「肝細胞」を作ることに固執していた。細胞の分化の分子生物学的なメカニズムを基に、iPS細胞にいろいろなタンパク質を段階的に振りかけて肝細胞を作る。それを患者に注射して病気を治そうという考え方だ。だがこの方法には、最終的に作られた細胞の品質がとても低く、大量生産が難しいという難点があった。治療法としても、臓器の機能を失った患者に対し、臓器移植よりも良い結果が得られるのかは不明だった。「外科医としての経験から、細胞を注射することで本当に患者を治せるのか疑問を抱いていた。一方、臓器移植は起死回生の手段であり、瀕死の患者が翌日には回復する高い治療効果を目の当たりにしてきた」(谷口教授)。そこで谷口教授らは発想を転換。「肝細胞」ではなく「肝臓」を作り出すことを目標に据え、胎児内で肝臓が作られるときに起こる細胞同士の相互作用の再現を試みた。iPS細胞から肝細胞になる手前の前駆細胞を作り、そこへ血管のもととなる内皮細胞、接着剤の役割を担う間葉系細胞の2種類の細胞を混ぜて培養。すると、すべての細胞が48~72時間でボール状に集まってきた。これが網目状の血管構造を持つミニ肝臓だ。ミニ肝臓をマウスに移植すると、血液が流れ込み、マウス体内に人に特有なタンパク質が分泌され、人の肝臓でしか代謝されない薬物の代謝産物が産生。ミニ肝臓が人の肝臓の機能を持っていることが示された。また、肝不全のマウスに移植すると、30日後の生存率が何もしなかったマウスの約3割に比べて約9割に向上。ミニ肝臓はマウスにおいて顕著な治療効果を発揮した。
●膵臓や腎臓の製造も研究中
 人での臨床研究は、子どもの肝臓病を対象として2019年をメドに開始する。ミニ肝臓が大量に必要になるため、クラレと量産技術を共同開発中。ほかの企業とも連携して「ヒト臓器製造システム」の整備を進め、臨床研究の準備を行っている。ミニ肝臓の次のフロンティアの一つは、肝臓以外のミニ臓器への展開だ。現実的なターゲットとして、血糖値を下げるホルモン、インスリンを分泌する膵臓や、腎臓の研究が進められている。もう一つは、ミニでない丸ごとの臓器を作ること。線維化して細胞が生着するスペースのない肝硬変のような病気や、全体の構造があって初めて機能を持つ心臓、子宮、肺等の病気などは、ミニ臓器では治療できず、丸ごとの臓器の移植が必要となることが多い。この分野は米国のハーバード大学やマサチューセッツ工科大学などに莫大な研究資金が投下されており、世界的にも注目が集まる。急ピッチで進む臓器研究だが、再生医療の中で、今まさに人への応用が進んでいるのは細胞が主役の方法だ。昨秋には理化学研究所の高橋政代プロジェクトリーダーらによって目の難病である加齢黄斑変性の患者にiPS細胞から作った網膜の細胞の世界初の移植手術が行われた。今後もパーキンソン病や心不全の患者にiPS細胞から分化させた細胞を移植する臨床研究が計画されている。立体臓器が活躍するのはそのさらに先の段階だ。谷口教授は「複雑な臓器形成は再生医療の中では最も困難なテーマの一つ。だが、重い臓器不全の患者には臓器移植以外に既存の治療法がなく、非常に強い医療ニーズがある」と強調する。肝臓移植の場合、ドナー臓器の待機中に死亡する患者は世界で年間2万5000人超。「究極の医療」として、臓器作りにかかる期待は大きい。

*2-3:http://mainichi.jp/articles/20170126/ddm/041/040/155000c (毎日新聞 2017年1月26日) 臓器移植 世界初 ラットで膵臓作り、糖尿病マウスに 異種で作製、治療成功 東大医科研チーム
 マウスのiPS細胞(人工多能性幹細胞)などから膵臓(すいぞう)をラットの体内で作り、その組織を糖尿病のマウスに移植して治療に成功したと、東京大医科学研究所の中内啓光教授らの研究チームが25日付の英科学誌ネイチャー電子版に発表した。異なる種の動物の体内で作った臓器を移植し、病気の治療効果を確認したのは世界初という。ラットはマウスより大きく、種が異なる。ブタなどの体内でヒトの臓器を作って移植する再生医療の実現につながる成果で、山口智之・東大医科研特任准教授(幹細胞生物学)は「今後は、よりヒトに近いサルの細胞で臓器を作る研究に進みたい」と話した。チームは、遺伝子操作で膵臓ができないようにしたラットの受精卵に、マウスのiPS細胞やES細胞(胚性幹細胞)を注入し、ラットの子宮に戻した。誕生したラットの膵臓はマウスのもので、一般的なマウスの膵臓の10倍ほどの大きさに育った。育った膵臓から、血糖値を下げるインスリンなどを分泌する膵島(すいとう)を取り出し、糖尿病を発症させたマウスに移植したところ、20日後には血糖値が正常になり、1年後でもその状態が維持された。がん化などの異常は確認されていないという。  ラットの体内で育った膵島を調べたところ、血管にラットとマウスの細胞が混じっていた。しかし、マウスに膵島を移植して約1年後に移植部位を調べると、ラット由来の細胞はなくなっていた。

*2-4:http://digital.asahi.com/articles/ASK2K74SFK2KULBJ01Q.html (朝日新聞 2017年2月23日) 人間の臓器、動物から作る 米で研究先行、日本は禁止
 iPS細胞やES細胞を使い、動物の体内でヒトの臓器を作る研究が進んでいる。1月には米国のグループがヒトの細胞が混じったブタの胎児の作製に成功した。日本では現在、このような研究が指針で禁じられており、改定に向けた議論が続いている。
■ブタ受精卵にiPS細胞
 米ソーク研究所(カリフォルニア州)のチームは1月、ヒトのiPS細胞をブタの受精卵に入れ、ヒトの細胞が混じったキメラ状態の胎児を作製したと発表した。米科学誌セルに掲載された論文によると、ブタの受精卵を、分裂が進んだ「胚盤胞(はいばんほう)」の状態まで成長させ、iPS細胞を注入。子宮に戻した1466個のうち、186個が胎児に成長した。妊娠3~4週間後に調べると、67個の筋肉などで、ヒトの細胞が混じっているのが確認できた。心臓や肝臓、膵臓(すいぞう)、腎臓などの複雑な臓器は、iPS細胞などから直接作ることが難しい。そのため動物の体内を利用して作る研究が世界中で進む。発生の仕組みがよく知られたブタは、ヒトと臓器の大きさが近く、最有力候補だ。東京大とスタンフォード大で、ブタなどでの膵臓作製の研究に取り組む中内啓光教授(幹細胞生物学)らは1月、ラットの体内で、マウスの膵臓を作り、糖尿病マウスに移植して治療することに成功したと発表した。遺伝子改変で膵臓を作れなくしたラットの胚盤胞に、マウスのES細胞を注入し、子宮に戻すとマウスの膵臓を持ったラットが生まれた。ただ、ラットとマウスが同じネズミ科で、受精から誕生までの妊娠期間がほぼ同じなのに対して、ブタの妊娠期間はヒトの半分以下。種としても離れており、キメラを作るのは簡単ではないとみられる。実際、ソーク研究所の作ったブタ胎児で確認されたヒトの細胞はブタの細胞10万個当たり1個程度だったという。中内さんは「成長すれば排除されてしまう可能性もある。改めてブタとヒトのキメラを作る難しさを示した」と指摘する。キメラになる要因の一つは受精卵の分裂速度にある。分裂の速度が違うと、片方だけの個体になったり、排除されたりしてしまう。動物の生殖に詳しい明治大の長嶋比呂志教授(発生工学)は「ブタの発生と整合性を持たせるため、注入するヒトの細胞の分化段階をいかに調整するかが今後の研究のポイントになるだろう」と話す。
■倫理的な懸念
 日本では、クローン技術規制法に基づく文部科学省の指針で、ヒトのiPS細胞やES細胞を入れた動物の受精卵を子宮に戻し、子どもを作ることは禁じられている。ヒトのような意識や人格を持った動物が生まれかねないといった倫理的な懸念があったためだ。そのためソーク研究所が実施したような実験は今のところできないが、規制が厳しいという声もあり、文科省の委員会で改定に向けた検討が進んでいる。昨年1月にまとまった科学的な検討結果では、臓器を作製できる可能性がある点では、iPS細胞などから直接作る他の手法より「優位」とし、子宮に戻すことによる研究の意義が示された。今年1月に了承された倫理的観点のまとめでは、臨床用ヒト臓器を作製する段階までの研究は「社会的妥当性が認められる可能性が高い」とされた。今後、作製が認められる臓器や、使う動物などについて議論する予定だが、「丁寧な説明で国民に許容されるか、総合的な検討が必要」としている。
     ◇
〈キメラ〉 遺伝子の異なる細胞を一つの体にあわせもつ生物。ギリシャ神話に登場するライオンの頭、ヤギの胴、ヘビの尾を持った怪獣に由来する。遺伝子が混じりあってできる雑種とは異なる。例えばオスのロバとメスのウマの交配から生まれるラバは、両方の遺伝子が混じりあった雑種で、キメラではない。

<中小企業とイノベーション>
*3-1:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/417521 (佐賀新聞 2017年3月29日) 焼いても縮まぬ陶土 県窯業技術センター開発、薄さ、複雑さ一層追求へ
 佐賀県窯業技術センター(西松浦郡有田町)は28日、焼成時に縮まない陶土を開発したと発表した。複数の鉱物を配合し、変形の原因になる10%程度の収縮を抑えた。薄さや細さを追求するデザイナー製品、収縮率が高い大型品が作れるようになる。担当者は「世界最高の精度を持つ陶磁器材料」と説明し、軽量食器やフィルターなどの新製品開発にもつながりそうだ。県の有田焼創業400年事業の一環で、2014年度から3年がかりで開発した。陶土に配合された複数の鉱物が高温で結晶化し、隙間が埋まらないような働きをして縮まなくなるという。これまで焼成時に割れていた複雑な形状でも製作が可能になるという。0・03ミリ以下の微細な穴が空き、従来の陶磁器より3割軽くなるため、軽量食器にも使える。吸水性にも優れ、アロマ用品やコーヒーフィルター、吸音材にも活用できるとしている。従来の磁器と同じ温度で焼くことができ、既存の設備を使用できる。配合した鉱物も廉価で、陶土の生産コストは変わらないという。県は製法と材料の特許を3月に出願しており、県内窯元など約500社だけが使えるようにする。窯業技術センター陶磁器部の蒲地伸明研究員は「焼成時の変形予測の労力を軽減し、デザイナーが求める創造的な形状に対応できるようにもなる。メーカーにとって恩恵は大きいと思う」と話した。

*3-2:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/420198
(佐賀新聞 2017年4月8日) 有田焼、新ブランドに最高賞 世界的デザイン賞
■伝統と革新「融合」
 有田焼の窯元・商社や国内外のデザイナーが共同開発した新ブランド「2016/」が、世界的なデザイン賞のテーブルウェア部門でグランプリを獲得した。高いデザイン性に加え、伝統工芸と革新的な創作者との「融合」で、産業振興の新たな可能性を示したことが高く評価された。
 世界28の国や地域で発行されているデザイン誌「エル・デコ」が主催する「インターナショナル・デザインアワード」で受賞した。新ブランドは昨年の有田焼創業400年に合わせ、有田や伊万里の窯元・商社16社と気鋭のデザイナー16組が共同で手掛けた。オランダやドイツのデザイナーが佐賀を訪れ、形状や色合いを窯元と調整しながら2年がかりで完成させた。日本時間の7日、イタリアの国際見本市「ミラノ・サローネ」に合わせて授賞式があり、商品を取り扱う2016株式会社(有田町)の百田憲由社長らが出席した。山口祥義知事は「デザインの力が地域を変えると信じてこのプロジェクトに取り組んだ。『2016/』『ARITA(アリタ)』が世界中の人に愛され続けることを祈っている」とコメントを寄せた。同社によると、新ブランドは昨年10月に販売を始め、現在は国内40社、海外は欧州を中心に10カ国で取引をしているという。今年は中国や米国にも販路を拡大する計画で、「受賞を追い風にブランドの確立を加速させたい」と話す。西松浦郡有田町の百田陶園の陶磁器ブランド「1616/arita japan」も2013年、テーブルウェア部門でグランプリを受賞した。

<運輸のイノベーション>
*4-1:http://toyokeizai.net/articles/-/160649 (東洋経済 2017年3月2日) 北海道「本当に残すべき鉄道」はどこなのか、JR30年「公共交通のあり方」再検討も必要だ
 1987年4月1日に国鉄がJRに変わってから間もなく30年になる。国鉄改革は概ね成功したというべきであろうが、ここにきてJR北海道の経営は風雲急を告げている。この連載の記事一覧はこちら 2016年に留萌本線の留萌-増毛間廃止が発表されたところまでは驚かなかったが、同年11月にJR北海道が「単独では維持することが困難な線区」を発表したときには、ついにこの日が来たか、という印象であった。
●30年でJR各社の格差がはっきり
 JR北海道が発表した「単独維持困難な路線」(JR北海道発表の資料をもとに一部簡略化して作成)JR北海道の発表によれば、「単独では維持することが困難な線区」は13線区・1237.2キロメートル、「単独で維持が可能な線区」は11線区1150.7キロメートル(札幌までの北海道新幹線予定区間も含む)とされている。JR北海道は「単独で維持困難」とされた区間全てを廃止すると現段階で明言してはいないが、今後、路線の存廃の議論は不可避である。30年が経過し、JR各社が独自色を打ち出しているのはよいことだが、経営状態の大きな格差は看過できるものではない。JR北海道が抱える経営難にどう対応すべきなのか、国鉄からJRへと分割民営化されたときの法律も見ながら考えてみることにしよう。JRの前身である国鉄は、1964年以降慢性的な赤字に悩まされるようになり、対応策として1980年に日本国有鉄道経営再建促進特別措置法(以下「国鉄再建法」)が成立する。
○その第1条「目的」では以下のように規定されていた。
この法律は、我が国の交通体系における基幹的交通機関である日本国有鉄道の経営の現状にかんがみ、その経営の再建を促進するため執るべき特別措置を定めるものとする。
○そして第2条では、「経営再建の目標」として、
日本国有鉄道の経営の再建の目標は、この法律に定めるその経営の再建を促進するための措置により、昭和60年度までにその経営の健全性を確保するための基盤を確立し、引き続き、速やかにその事業の収支の均衡の回復を図ることに置くものとする。
○第3条では、そのために「国鉄と国が取るべき責務」として、
日本国有鉄道は、その経営の再建が国民生活及び国民経済にとつて緊急の課題であることを深く認識し、その組織の全力を挙げて速やかにその経営の再建の目標を達成しなければならない。国は、日本国有鉄道に我が国の交通体系における基幹的交通機関としての機能を維持させるため、地域における効率的な輸送の確保に配慮しつつ、日本国有鉄道の経営の再建を促進するための措置を講ずるものとする。
と、それぞれ定められた。
●組織の維持が前提だった再建計画
 国鉄には「我が国の交通体系における基幹的交通機関」としての重要な立場があり、国鉄が破綻した場合の影響は計り知れない。そのためにも膨大な赤字を抱える国鉄の経営再建は急務とされ、国鉄のみならず国にも国鉄再建への責務が確認された。国鉄は組織を挙げて経営再建目標を達成することを求められ、国は「基幹的交通機関」である国鉄の機能を維持させ、地域における効率的な輸送の確保を配慮して経営再建促進の措置を講ずることが責務とされた。国鉄は、国鉄再建法で廃止対象とされた特定地方交通線以外の路線を維持して引き続き国の基幹的交通機関としての役割を担うべきとされ、国もそれを支援せよ、とされたのである。この段階では、未だ国鉄は組織の維持を前提に再建計画が進められることになっていた。ところが経営改善計画は進まず、国鉄のままでは十分な経営改善は図れないと判断されることになり、1986年に分割民営化につながる日本国有鉄道改革法(以下「国鉄改革法」)が成立する。そのことが第1条として以下のとおり書かれている。この法律は、日本国有鉄道による鉄道事業その他の事業の経営が破綻し、現行の公共企業体による全国一元的経営体制の下においてはその事業の適切かつ健全な運営を確保することが困難となっている事態に対処して、これらの事業に関し、輸送需要の動向に的確に対応し得る新たな経営体制を実現し、その下において我が国の基幹的輸送機関として果たすべき機能を効率的に発揮させることが、国民生活及び国民経済の安定及び向上を図る上で緊要な課題であることにかんがみ、これに即応した効率的な経営体制を確立するための日本国有鉄道の経営形態の抜本的な改革(以下「日本国有鉄道の改革」という。)に関する基本的な事項について定めるものとする。国鉄のような全国組織かつ非効率な経営主体に任せていても事業の健全な運営が困難であるので、輸送需要の動向に的確に対応する経営主体の下に国鉄が保有していた鉄道路線を移管させる、と、方針の大転換が図られたのである。
●累積債務30兆円超えからの出発
 そして、国鉄から鉄道事業を継承するJRについては、国鉄改革法第6条及び第7条において、
国は日本国有鉄道が経営している旅客鉄道事業について、主要都市を連絡する中距離の幹線輸送並びに大都市圏及び地方主要都市圏における輸送その他の地域輸送の分野において果たすべき役割にかんがみ、その役割を担うにふさわしい適正な経営規模のもとにおいて旅客輸送需要の動向に的確に対応した効率的な輸送が提供されるようその事業の経営を分割するとともに、その事業が明確な経営責任の下において自主的に運営されるようその経営組織を株式会社とするものとする。とされ、旅客事業は6つの会社に分割することとされた(第7条はJR貨物)。あわせて同日、旅客鉄道株式会社及び日本貨物鉄道株式会社に関する法律(「JR会社法」)が成立し、1987年4月1日のJR発足につながっていく。このとき、JR北海道など経営基盤の脆弱性が懸念される会社には、運用益で経営を支えるための経営安定基金が用意された(JR北海道は6822億円)。なお、JR発足当時、国鉄の累積債務は30兆円を大きく超えるに至っていた。JRが発足したとき日本はバブル経済を享受していた。発足1年後の1988年3月には青函トンネル開業、寝台特急「北斗星」の運転開始などがあり、JRの滑り出しは上々であった。しかし、それから30年が経過し、いまやJR北海道は経営難に直面している。もし、JR北海道のいう「単独で維持することが困難な路線」が、もはや国鉄改革法にいう地域輸送も含めた「国の基幹的交通機関」としての地位を失っていて、かつ回復させる必要もない、といえる路線なのであれば、国鉄改革法の趣旨からすればその路線を維持することに合理性はなく、廃止も一つの選択肢であろう。一方で、その路線が「国の基幹的交通機関」としての地位を未だ失っていないというのならば、その路線を維持することができないJR北海道は、むしろ「国の基幹的交通機関」を維持する組織として国鉄改革法から期待されたその経営能力を喪失しつつあるともいえる。
●JR北海道の「役割」再検証を
 そうだとすると、国鉄改革法が定めていた「主要都市を連絡する中距離の幹線輸送、大都市圏の輸送、地方主要都市圏における輸送、そのほかの地域輸送」という視点からJR北海道の全路線が果たすべき役割を今一度検証し、「その役割を担うにふさわしい経営規模」のもとで、「明確な経営責任の下において自主的に旅客輸送の動向に的確に対応する効率的な輸送を提供」できているかどうか、再検討をするべきであろう。そして、少子高齢化社会の進展に加え、厳しい気候や、人口が広く薄く点在しているという地理的条件など北海道特有の事情からJR北海道の経営が厳しくなるのは仕方がない、というのならば、現状のJR北海道の組織や経営規模がもはや適正ではないということである。全くの私見であるが、JR北海道として維持すべき路線は、民間企業が責任をもって運営できる範囲、すなわち収支がほぼ均衡する輸送密度8,000人以上の札幌圏(札幌を中心にして小樽、旭川、室蘭程度まで)のみに縮小することも考えるべきである。2015年度のデータをもとにすると、札幌圏に限れば、営業係数(100円の売上に必要な経費を示す指数)は管理費を勘案して111、管理費を勘案しなければ96と黒字になる。営業損益は管理費を勘案すると50億円の損失になるが、管理費を勘案しなければ190億円の利益を計上できる。運用益が年に350億円に達する経営安定基金は、50億円の赤字を埋められる程度に一部を残してJR北海道単独での札幌圏の鉄道事業の支援に使うか、上下分離方式を採用したうえで施設保有者に必要な範囲で譲渡する、という方法もあろう。そして、輸送密度8,000人を下回る路線は、鉄道として残すべきか再検討するべきである。巨額の赤字が見込まれ、かつ限定的な域内輸送の役割しか果たせておらず、冬季の状況を考えても代替交通手段で足りるという路線は廃止することになる。その一方、貨物列車や都市間高速列車のために不可欠という理由や、特別な価値があり、公共財としての側面が強く公的資金を投入しても維持するべきとされる路線は、必要な限度で別途の公共企業体などの運営で維持することになる。その場合、経営安定基金はJR北海道から分離される、輸送密度8,000人未満で収支困難な路線のために分割するということも考えられる。
●鉄道を「ただ残しても」意味はない
 もちろん、鉄道をどう維持していくかはJR北海道だけの問題ではない。近年、「交通政策基本法」や「地域公共交通の活性化及び再生に関する法律」が成立し、公共交通機関の活性化推進が地域や国民生活に必要不可欠であることが認識されるようになってはいる。しかし、交通機関の多様化などで残念ながら社会には昔のような「交通機関は鉄道一択」という風潮はない。鉄道をただ残しているだけでは無意味である。この国全体として地域輸送を含めた基幹的交通機関としての鉄道をどの程度必要としているのか、この国の鉄道全体、あるいはその地域ごとの鉄道について、鉄道を使って地域や国全体の利益をどのように維持増進しようとするのか、といったことを、国鉄分割民営化から30年が過ぎる今、公共交通機関のあり方の中から再検討するべきではないだろうか。

*4-2:http://shikiho.jp/tk/news/articles/0/142173 (会社四季報 2016年10月26日) JR九州・青柳社長が記者会見で語った将来への「意気込み」、民営化から29年
 九州旅客鉄道(JR九州・9142)が25日、東証1部に新規上場を果たした。1987年の旧国鉄の分割・民営化によって発足してから29年。もともと強い営業基盤を持ち経営が安定していた東日本や西日本、東海の「本州3社」が民営化から10年以内に上場したのに対し、九州は長い時間を要した。しかし、上場初日には公開価格(2600円)を19%上回る3100円の初値を付け、直後の記者会見で青柳俊彦社長は「上場はゴールではなく、新たなステージへの出発点」との認識を示した。初値について感想を聞かれた青柳氏は「(初めは買い気配で推移し)写真撮影の最中に初値が付いたため、その瞬間は見ていなかったが、その後も非常に活発な売買が行われてよかった。初値はわれわれに対する期待の反映と受け止めている」などと語った。今後の成長戦略については「中核である鉄道事業とそこから相乗効果を生み出す事業とを両輪として、さらなる成長を目指していきたい」という考えを表明。不動産など非鉄道事業の売上高が全体の5割超を占める同社だが、具体的には地盤の九州で新幹線の乗車率向上やインバウンド(訪日外国人客)需要の取り込みを進め、ローカル線でも鉄道ネットワークを維持したうえでマンションや商業施設などを建設することで沿線人口の増加に努めると強調した。九州以外の地域への展開に関しては「ホテルやマンションは今後も東京や大阪など、九州以外でも展開していきたい」と指摘。アジアを中心とした海外事業については「これまで色々と勉強してきている。5年前に中国・上海にレストランを開店し、現在は5店を運営している。今後はそれ以外の都市への展開も考えている」などと述べた。また、同社が始めた豪華寝台列車「ななつ星in九州」が好評で、来年にはJR東日本やJR西日本も参入する計画を打ち出していることについて、「ななつ星も3年目を迎え、来年の予約も順調に入っているようだ。来春に西日本と東日本も参入することによって、日本の旅の楽しさが3倍になることを期待している」などと語り、競争激化に対する警戒よりも、むしろ市場の活性化による相乗効果への期待をにじませた。また、上場までに約30年かかったことについて聞かれた青柳氏は「本当に長い道のりだった。30年前にJR各社が発足した際に、九州が上場することをイメージできた人がどれだけいたか。当初からはっきりした道標があったわけではないが、厳しい事業環境の中で上場できたというのは、これまでの一つひとつの努力が決して無駄ではなかったということだ」とした。また、「当社の上場が北海道や四国、貨物という(まだ上場していない)JR3社の参考になり、励みにもなるのではないか」とも語った。

*4-3:http://www.huffingtonpost.jp/2017/02/22/yamato_n_14950390.html (Huffpost Japan 2017年2月23日) クロネコヤマトの宅配量、抑制検討へ ネット通販拡大でドライバー不足に
 ヤマト運輸が、宅配便の扱い量を抑えることを検討する見通しとなった。宅配量の急増にドライバーの確保が追いつかなくなっており、同社の労働組合が2月上旬、春闘で会社側に要求した。ヤマト運輸によると、ネット通販の拡大などにより、宅配便の量は毎年増加傾向にある。2016年度の配達量は、15年度と比べて8%増え、過去最高の18億7000万個を見込んでいる。同社には約6万人のドライバーが所属しているが、配達量の増加にドライバーの確保が追いつかず、長時間労働に繋がっているという。このため労組は、宅配便の引き受けを抑え、取り扱い個数をこれ以上増やさないようを会社側に要求。終業から次の仕事まで最低10時間空ける「勤務インターバル」の導入なども求めた。ヤマト運輸労働組合は、NHKの取材に対し「今年度は特に荷物の量が増え、現場のしわ寄せが大きくなっている。1年間でサービス内容の見直しなどを進め、きちんと宅配便事業を続けられる体制を整えるべきだと申し入れている」と話した。ヤマト運輸は23日、ハフィントンポストの取材に対し、「ネット通販などにより、配達量が想定以上に増え、ドライバーの確保が追いついていない。集荷量の抑制を含め、労働者の働き方を見直しを検討する」と答えた。長時間労働の是正は、業界全体の課題となっている。ヤマト運輸では2月1日、働き方改革室を新設し、ドライバーの労働環境の改善を図っている。

*4-4:http://www.sankei.com/economy/news/170228/ecn1702280043-n1.html
(産経ニュース 2017.2.28) ヤマト運輸が昼の配達取りやめ検討 来年度にも実施
 ヤマト運輸が宅配サービスを抜本的に見直し、正午から午後2時の時間帯指定の配達を取りやめる方向で検討に入ったことが28日、分かった。現在午後9時までの夜の配達時間を早めに切り上げることも検討する。インターネット通販の普及で宅配個数が急増し、ドライバーを中心に人手不足で長時間労働が慢性化しているため。今後、労使協議で詰め、早ければ来年度の実施を目指す。ヤマト運輸の労働組合は平成29年春闘の労使交渉で、宅配便の荷受量の抑制や、終業から次の始業までに一定の休息を入れる「勤務インターバル」の制度導入などを求めていることに対応する。

*4-5:http://www.saga-s.co.jp/news/national/10201/419708 (佐賀新聞 2017年4月6日) ヤマト宅配便、最高18・7億個、16年度、通販普及で拡大
 宅配便最大手のヤマト運輸は6日、2016年度に取り扱った荷物が過去最高の約18億7千万個だったと発表した。インターネット通信販売の普及で宅配便の利用が急拡大し、これまで最高だった15年度の約17億3千万個と比べ7・9%増えた。荷物をさばく人手の不足が深刻化し、17年度は運賃値上げとサービスの縮小で荷物量や長時間労働を抑制する。ヤマトの宅配便は06年度の約11億7千万個と比べると、この10年間で約59%膨らんだ。特に、ネット通販最大手アマゾンジャパンの荷物を取り扱い始めた13年度には16億個を突破。配達の現場では急速に人手不足が進んだとされている。

<イノベーションを可能にする教育・研究>
*5-1:http://www.saga-s.co.jp/news/national/10201/418011 (佐賀新聞 2017年3月31日) 【教育ニュース】小学英語の教科化を告示 小中の新指導要領
 松野博一文部科学相は三十一日付で、各教科での「主体的、対話的で深い学び」に向けた授業改善の推進や、小学五、六年での英語教科化を柱とした小中学校の新しい学習指導要領を告示した。パブリックコメント(意見公募)を受け、小学校で「聖徳太子(厩戸王(うまやどのおう))」、中学校で「厩戸王(聖徳太子)」としていた表記を、小中とも現行指導要領と同じ「聖徳太子」に戻すなど、歴史用語中心に改定案を修正した。文科省は改定案を公表した二月十四日から今月十五日まで意見公募を実施。一万一千二百十件の意見が寄せられた。社会で教える聖徳太子を巡っては「歴史教育の連続性から、用語を変えるべきではない」といった意見を踏まえた。ただ、中学校では史実を深く学ぶことを重視し、古事記や日本書紀で「厩戸皇子(うまやどのおうじ)」などと表記され、後に「聖徳太子」と称されるようになったことに触れるよう新たに示した。改定案で消えた江戸時代の「鎖国」が小中ともに復活。中学校の「モンゴルの襲来(元寇(げんこう))」も「元寇(モンゴル帝国の襲来)」という現行に近い表記になった。東京電力福島第一原発事故でのいじめや風評被害に絡み、「放射線に関する正しい知識を体系的に指導すべきだ」という意見があり、小中の総則に「災害等を乗り越えて次代の社会を形成する」ための資質・能力を育むとの文言を追加した。中学校の保健体育では武道の内容の取り扱いで、競技人口や国体種目であることなどを考慮し、銃を模した用具を使い互いに突き合う「銃剣道」も例に加えた。小学校では英語より国語に力を入れるべきだとの意見もあったが、双方の充実を盛り込んでいるとして修正しなかった。

*5-2:http://qbiz.jp/article/105394/1/ (西日本新聞 2017年3月12日) 九州の伝統工芸、九産大が支援 研究センター設立へ、販売戦略練る
 九州産業大(福岡市)は11日、九州の伝統工芸品の販売戦略などを調査研究する「伝統みらい研究センター」を4月1日に設立すると発表した。博多織(福岡)や唐津焼(佐賀)、山鹿灯籠(熊本)など国指定伝統的工芸品21品目が対象。記者会見した山本盤男学長は「伝統技術を後世に伝え、持続可能な産業として再生する手法を確立して地域を支援したい」と話した。同大は2004年、有田焼(佐賀)の柿右衛門窯の作品データベース化などに取り組む柿右衛門様式陶芸研究センターを設立。さらに生産額や従業員数が減少している伝統工芸の支援にも手を広げ、センターは博多人形や久留米絣(がすり)(いずれも福岡)などの新商品開発にも関わってきた。新センターはこうした取り組みを拡充し、柿右衛門の研究部門と伝統工芸産業の発展に向けた研究の計2部門で構成。デザインや経営が専門の同大教授らが、まず今後3年間で福岡、佐賀両県の伝統的工芸品9品目の素材、技術などを調査。その後、販売戦略なども練り地域を支援する。新センターの所長に就く釜堀文孝教授は「衰退しつつある伝統工芸を核とした地域産業に貢献するシンクタンクを目指す」と意欲を語った。


PS(2017/4/12追加):*6-1のように、鉄道は、蓄電池や燃料電池による電動化と自動運転によるイノベーションが考えられ、こうすると、JR北海道を含む鉄道の採算がよくなって赤字路線が減る。また、駅舎や高架に太陽光発電を取り付ければ、広い面積で発電してエネルギーを自給することもできる。さらに、鉄道の敷地は連続した送電線を置くのに都合がよいため、例えば北海道の農山漁村で風力発電した電力を都市部に送電して送電料を得ることも可能だ。そのため、いわゆる赤字路線も利用して、現在のニーズに合うシナジー効果の高い事業を子会社で行えば、連結決算で黒字にすることも可能だろう。
 そのような中、東芝や日立などのインフラや鉄道関連製品を作っている会社は、ルールがなければ事業の新陳代謝ができないと言うのではなく、時勢に合った産業に速やかに移行できることが、経営者の能力である。何故なら、イノベーションや新製品は、過去数期間に黒字だったか赤字だったかというような単純なルールで今後の可能性が決まるものではなく、業種によっても状況が異なるため、業務の選択と拡大のやり方を誤らないことが、その企業のリーダーである経営者の役割だからだ。
 なお、*6-2に、農水省が減らない農作業中の農機での事故の原因分析を行うと書かれており、調査・分析をやるのはよいが遅すぎたくらいで、農作業中の事故は、無残で回復不能なものも多く、生産性と安全性を両立した農機具の設計が求められる。なお、実現すれば、これは世界で求められる実需であるため、輸出を伸ばすこともできるだろう。

   
    蓄電池電車     鉄道の敷地に引かれる送電線 太陽光発電付駅舎

*6-1:http://www.nikkei.com/article/DGXLASDZ12H7D_S7A410C1000000/?dg=1&nf=1 (日経新聞 2017/4/12) 老舗重電ライバル 東芝とシーメンスを分けたもの
 東芝が監査の適正意見がない異例の決算を発表した11日、独シーメンスがボンバルディア(カナダ)と鉄道関連事業の統合を検討していることが明らかになった。経営再建中の東芝に対し、シーメンスは不断の事業再編を繰り返し株価も好調だ。両社は日独を代表する老舗重電メーカーで、発電機や医療機器などで競い合ってきた。どこで道が分かれたのか。
■シーメンスは最高値更新
 12日の東京株式市場で東芝の株価は乱高下している。上場廃止の可能性もあり値動きの荒い展開が続きそうだ。方やシーメンスの株価は11日に最高値を更新し、ボンバルディアとの鉄道統合の報道も材料視されている。時価総額は1088億ユーロ(約12兆6200億円)と、東芝(約9300億円)の13倍強に達し、日本の重電の顔である日立製作所の約2兆8000億円も大きく上回る。「電動化、自動化、デジタル化にトレンドにあわせ、当社の中核事業を変えていく」。昨年末、シーメンスのローランド・ブッシュ最高技術責任者(CTO)は自社イベントでこう述べた。同社は近年、産業用ソフトウエアの企業を相次いで買収し、ソフトとサービスの両分野を強化。米ゼネラル・エレクトリック(GE)と競うように「脱・機器売り依存」を鮮明にしている。シーメンスはソフト・サービス関連を買収で内部に取り込む一方、従来型の重電メーカーに象徴される巨額の投資が必要な「重い」事業は柔軟に他社との統合に切り替える。背景にあるのは、あらゆるモノがネットにつながる「IoT」。自らがデータを集める「面」の広がりが重要で、機器売りの規模自体を追う重要性は下がりつつある。
■鉄道車両の首位浮上も
 最近は世界シェア大手の風力発電機事業をガメサ(スペイン)と統合したばかり。今回報じられたボンバルディアとの鉄道関連事業もこの一環とみられる。シーメンスの鉄道車両を含むモビリティー事業の売上高は78億ユーロ(約9050億円、2016年9月期)、ボンバルディアの鉄道車両事業は76億ドル(約8360億円、16年12月期)。合算すれば、中国国有大手の統合で生まれた中国中車を上回る世界最大の鉄道車両メーカーになる。ただシーメンスが買収・統合だけ続けては肥大化するだけだ。東芝との最大の違いは撤退の早さだろう。社内の「撤退ルール」を持ち、事業の入れ替えを繰り返す。黒字であっても期待収益を下回ったり、中核ではないと判断したりした事業は遠慮なく売却・上場する。特に13年に就任したジョー・ケーザー社長はその傾向が顕著だ。最高財務責任者(CFO)の経験が長く、各部門の収益構造やキャッシュフローには「現業部門よりも詳しい」(同社幹部)。水処理、病院向けIT(情報技術)、補聴器、家電、製鉄機械と相次ぎ売却や合弁化している。
■撤退基準の有無、原子力で明暗
 こうした文化が染みついたシーメンスと東芝の分かれ道は原子力部門の扱いだ。2011年3月の東京電力・福島第1原子力発電所の事故を受け、メルケル独政権はいったん取り下げた「脱原発」に再びかじを切った。軌を一にしてシーメンスは仏アレバとの原子力合弁の株式をアレバに売却。22年に国が原発ゼロになる前に、シーメンスは先に脱原発を果たし、ガス火力発電タービンと、風力発電を核とした再生可能エネルギーに絞り込んだ。もっともシーメンスは政治や世論の圧力で脱原発を決めたわけではない。欧州は再生エネの普及で世界を引っ張っり、「風力発電は火力発電並みの競争力を持つ」との社内の合意が形成された。さらにシェールガス革命で天然ガスを燃料にする火力発電のシェアも高まる。もともと社内では「他の電源と比べ原子力の事業性を疑問視する声があった」(エネルギー部門幹部)。福島の事故は原発の規制コストが上昇するとみて、撤退の背中を押す一因にはなったが、それまでの計算があったから決断も早かった。その後、シーメンスの保有株すべてを引き受けたアレバは業績不振にあえぎ、仏電力公社(EDF)の支援を求める状況だ。結果的にシーメンスはうまく“足抜け”した。一方、東芝は戦略部門と位置づけ買収した原子力子会社、米ウエスチングハウス(WH)の内部統制の不備があり、WHの買収による損失でさらに傷を負った。日本の電力業界では、かつて「原子力ルネサンス」の旗振り役だった経済産業省との密接な関係もあり、東芝側から容易に撤退を言い出せない背景も指摘される。
■医療機器はそろって売却・上場
 東芝は昨年、経営再建の一環で医療機器子会社の東芝メディカルシステムズを売却した。追い込まれて“虎の子”を手放さざるを得なかった。実はシーメンスも稼ぎ頭の医療機器子会社、シーメンス・ヘルシニアーズを年内にも上場させる計画だ。ケーザー社長は「分子診断、先端治療、サービスといった成長分野でより柔軟性を持ち強くなるため」と述べ、外部に切り出すことで医療機器の成長を狙う。平時から事業の撤退ルールをどう作るか。日本企業に広く問われる課題と言えそうだ。

*6-2:https://www.agrinews.co.jp/p40594.html (日本農業新聞 2017年4月12日) 事故原因を本格調査 報告書提出促す 農機の状態情報不十分 農水省
 農水省は、農作業事故の原因分析のため、本格的な調査に乗り出した。事故が起きた状況や使用していた農機の状態などの情報収集がこれまで不十分で、都道府県や農機メーカーから報告書の提出を強く求める。事故が大きく減らない中、集まった情報を専門機関で分析し、事故防止により効果的な対策を検討する。同省によると、農作業事故で毎年350人近くが亡くなっており、依然高い水準にある。過半数が農機での作業中の事故で、対策強化が急務となっている。具体策の検討に生かすため、同省は2007年度から農機メーカーに対し、農作業事故が起きた地形や農機の種類、事故原因に関する情報提供を要請。10年度からは都道府県にも対象を広げた。だが、報告書は記述式で記入が煩雑なことが敬遠され、未提出の団体もあるなど情報が思うように集まっていなかった。同省は本格的な調査に乗り出し、報告書の提出を強く促す。この1月には都道府県に対し、事故発生時に速やかに提出するよう求める生産局長名の通知を出した。さらに、報告書を記入しやすいチェックシート形式に改善した。業界団体にも同様の要請を出した。集まった情報は、農研機構・革新工学センターに提供し、専門家の視点での事故分析や農機の安全対策の研究などに役立てる。啓発資料や指導指針の策定、農機の一層の安全設計、メーカーや輸入業者への対応の要請などの活用を想定する。成果情報は同省のホームページや、農機の関係団体でつくる「農作業安全確認運動推進会議」などで報告し、普及につなげる考えだ。同省は「事故がどういう状況で起きたか、まずはデータを多く集めたい。原因を把握し万全な対策をまとめる」(技術普及課)考えだ。


PS(2017.4.13追加): *7に、「欧米の半導体・部品メーカーが自動運転など自動車の次世代技術を持つ企業を相次いで傘下に収めている世界の流れを踏まえ、日本の部品メーカーも積極的に先進技術獲得目的のM&Aを行うべきだ」と書かれている。しかし、自らは先進技術を持たない企業が金にあかしてM&Aを行っても、高いものについただけで破綻しかけているのが東芝のWH買収だ。何故そうなるのかと言えば、本当に先進技術を持つ優良企業は、シャープのような余程の事情がない限り、M&Aで一方的にその先進技術を他国企業に譲ることはないからだ。そのため、先進技術を持つ企業を買収したり、業務提携したりしたければ、自らも相手が欲しがる秀でた技術や販売力を持っている必要があり、それは欧米追随型の技術開発ではできず、日本独自にも役立つ先進技術を開発していなければならないのである。なお、スペインのバルセロナ空港にあったサムスンTVで、見慣れた顔のゴーン氏が「Inovation is exites!(訳:イノベーションは、素晴らしい)」という自動運転の広告をされているのを見たが、EVを世界で最初に作ったのはゴーン氏率いる日産であり、自動運転も最初に手がけられたと記憶している。しかし、日産のEVはデザインが今一つスマートでなく、航続距離も短いため、まだ改善の余地が大きい。

*7:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20170413&ng=DGKKZO15247030T10C17A4EA1000 (日経新聞社説 2017.4.13) 自動車部品会社は内向き脱せ
 欧米の半導体・部品メーカーが自動運転など自動車の次世代技術を持つ企業を相次いで傘下に収めている。自動車産業が「100年に1度」といわれる転換期に入ったことが背景にある。技術開発で自前主義が強い日本の部品メーカーも、こうした世界の流れをふまえて積極的にM&A(合併・買収)に動くべきだ。半導体大手の米インテルは年内に、自動運転車の「目」となる画像認識システムで先行するイスラエルのモービルアイを153億ドル(約1兆6800億円)で買収する。米クアルコムも車載半導体で世界首位のオランダNXPセミコンダクターズを470億ドルで傘下に入れる。自動運転技術や、通信で情報を外部とやり取りする次世代車が普及すると、自動車に搭載するセンサーや半導体が飛躍的に増える。異業種の企業も自動車分野の事業を拡大する好機となる。歴史が長い自動車関連の企業もM&Aに積極的に動いている。老舗タイヤメーカーの独コンチネンタルは15年間で約100社を傘下に収め、センサーなどの有力企業に成長した。愛知県豊田市のトヨタ自動車本社近くに100人規模の拠点を構え、同社に自動ブレーキの主要部品を供給する。日本に目を向けると、部品メーカーの動きは乏しい。トヨタ系列の部品メーカーは再編を進めてきたが、効率化を目的としたグループ内の事業集約にほぼ終始している。ブレーキ事業の統合に10年超を費やすなど、スピード感にも課題がある。独立系自動車部品メーカーや、半導体・電子部品メーカーを見ても、技術の獲得を目的としたM&Aはわずかだ。自動車もIT(情報技術)分野と同様、付加価値の源泉が部品とサービスに移る「スマイルカーブ現象」が進むとみられている。日本企業も部品の重要性が高まることを認識し、内向きな姿勢を改めて外部から先進技術を積極的に取り込むべきだ。


PS(2017年4月14日追加):*8-1、*8-2のように、食材(特に、水もの・野菜・果物)や日用品を買った時に、その日の夕方までに自宅に配送してくれるサービスがあると、休日にまとめ買いしている健康な人でも重い荷物を持ち帰る心配なく買い物することができるため、買う物が増えるだろう。また、自宅療養している人には、これは必要不可欠なサービスで、中食だけでなく、栄養管理された美味しい弁当を宅配してくれれば、生活の質が上がる。

*8-1:http://www.saga-s.co.jp/column/economy/22901/421592 (佐賀新聞 2017年4月14日) 食材と日用品、戸配事業統合 JAさがと全農、全国に先駆けサービス
■利便向上へ注文一本化 中山間地などの生活支援
 JAさがと全農は、それぞれが独自に手掛ける食材の戸別配達事業と日用品宅配サービスを統合した「生活総合宅配事業」を全国に先駆けて始めた。併用する利用者が多いことから注文窓口を一本化して利便性を高め、品ぞろえの充実を図る。中山間地などの生活支援を強化する取り組みとして効果を検証した上で、全農を通じて2018年度から県外の地域農協での事業展開を目指す。JAさがの戸別配達事業は、簡単な調理でおかずができる状態に加工した肉・魚や野菜などを家庭に届けるサービス。全農は食用油や小麦粉、加工食品などの日用品を宅配業者を通じて配達しており、県内でそれぞれ約6千人、約1万6千人が利用している。配達サービスは、生協や食材宅配の専門業者に加え、コンビニエンスストアや地場スーパーの参入も相次いでいる。JAグループが扱う農産物を中心に生鮮食品の品質、価格で差別化を図ることで利用者の減少を食い止め、初年度は会員数1万7千人、取扱高15億円を目指す。今月初めに神埼市のJAさが本所食材センターであった出発式では、JAさがの北村正弘生活燃料部長が「近くに商店がなく、買い物に困っている人もいる。地域のインフラとして定着できるよう改善に努めたい」とあいさつ。関係者のテープカットの後に第1便が出発した。総合宅配事業の利用対象者は、会員登録をした組合員と准組合員。専用の注文用紙やインターネットなどで受け付けている。JA全農は「サービスの拡充で地域の暮らしを支えるモデルを佐賀でつくりたい」と話している。

*8-2:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20170414&ng=DGKKASDZ13HZY_T10C17A4MM8000 (日経新聞 2017.4.14) セブン、宅配を外部委託、セイノーから配達員 加盟店の人材確保限界
 小売り大手が宅配網のてこ入れに乗り出す。セブン―イレブン・ジャパンはセイノーホールディングス(HD)と提携。セイノーHDがコンビニエンスストアに配達員を送り、宅配を代行する。ニトリホールディングスは家具を運ぶ提携運送会社向けにトラックを割安に貸し出す。流通業の代表企業が物流の末端まで支援しなければならないほど人手不足が深刻化している。資本力のある大手が先行して配達員の確保策を進めることで、人材獲得競争が一段と過熱する可能性がある。セブンは弁当を中心にコンビニで購入した商品を店員が自宅まで届ける宅配サービス「セブンミール」を全店の7割超の約1万5千店で展開する。店員は接客なども担うため、多くの店では十分な人手を割けなかった。セブンイレブンの各店舗は個人事業主の経営が多く、採用力にも限界があった。セイノーHDはセブンの宅配を代行する全額出資子会社を設立、5月から本格稼働する。まず約100人の配達員をそろえ、広島県など1都7県の約150店を担当する。将来は全国に広げる方針だ。セイノーHDは接客や運転技能に関する社内検定に合格した人のみを派遣する。商品は軽トラックで運ぶが、運転免許以外の資格は必要なく、担当も自宅に近いエリアに限られるため、比較的、配達員も集めやすいとみられる。主婦など女性を積極的に活用する。セブンはセイノーHDに宅配を委託することで配達の頻度を増やせる。5店舗で試行したところ、利用金額は10倍に増えた。関連コストは増える見込みだがメリットの方が大きいと判断した。セブンミールは500円以上の商品を購入した場合の送料は無料で、今後も料金は変更しない。セブンミールの売上高は2017年2月期で266億円。全売上高の1%にも満たないが、高齢者や女性向けに潜在需要は大きいと見込む。ニトリHDは20年までをメドに2トンと10トンのトラックを計1200台購入し、家具を運ぶ約100社の提携運送会社向けに割安に貸し出す。月々のリース料は通常に比べ少なくとも1割程度(数万円相当)抑えることができるとみられる。運送会社の負担を抑え、運転手の人件費確保などにつなげる。小売企業が配送網維持のために、車両のリースまで手がけるのは珍しい。労働人口の減少で人材は建設や小売りなど各業界をまたいで取り合いになっており、トラック運転手は確保しづらい。


PS(2017年4月15、17日追加):*9-1のように、熊本地震で壊れた南阿蘇鉄道の全線復旧費用を沿線自治体が負担しなければ出せないとのことだが、この地域は陸上に現れた大断層の交差点であることが地震で有名になったため、観光地としての価値は上がったと言える。そのため、私は、スイスのマッターホルンのように、居心地のよい観光鉄道を設置し、高すぎない料金で走らせて、世界から観光客を集めるのがよいと考える。ちなみに、マッターホルンの場合は、その基地となるツェルマット村では、1990年代から環境に配慮し、ガソリン車の乗り入れを禁止して村内の交通手段は電気自動車としており、静かな環境と澄んだ空気が保たれている。また、北海道も乗り心地のよい北海道周遊鉄道を走らせれば、夏だけでなく冬も素敵な鉄道旅ができ、北海道の墨絵のような雪景色やスキーは、暑い国に住む人たちにとって憧れになる可能性が高い。
 なお、熊本県の農業は秀でており、首都圏でも多くの農産品が販売されているが、*9-2のように、まだ復旧していない農地があるのなら全力を尽くして早期復旧すべきだ。しかし、私は、この機会に復旧のみを考えるのではなく、どこでも作りたがって余剰している米を減らして他の作物に転作し、付加価値や食料自給率を上げるのがよいと思う。その際に障害となるのが、国が米作偏重で渡している交付金なのだ。


  2017.4.15西日本新聞(*9)より     マッターホルンの鉄道とケーブルカー

(図の説明:南阿蘇鉄道は、眼下に大きな断層を見下ろしながら草地を走る世界でも珍しい鉄道であることを前面に出し、快適に地球の営みを見学する列車を走らせたらどうかと考える。そして、これにはスイスのマッターホルンの例が参考になるが、この鉄道は赤字だろうか?)

*9-1:http://qbiz.jp/article/107652/1/ (西日本新聞 2017年4月15日) 2016熊本地震、南阿蘇鉄道の全線復旧は数十億円 沿線自治体の負担焦点
 南阿蘇鉄道の復旧に向け事業者負担をゼロにするなど、政府が特別な支援策の創設に動きだした。ただ、この支援策では地元自治体が復旧費の50%を負担する必要がある。国土交通省の調査では、復旧費は総額70億〜80億円前後に達する可能性もあり、全線復旧には数十億円に上る自治体の負担軽減が焦点だ。事業者負担をゼロにして国の補助を50%に倍増する制度は、東日本大震災で被災した岩手県の三陸鉄道で活用例がある。復旧費約90億円のうち国が45億円、県と沿線8市町村が計45億円を負担した。ただ各自治体には震災復興特別交付税が支給され、事実上、国が全額負担した形だ。熊本地震の場合、復興特別交付税の制度はない。財政基盤の弱い沿線の南阿蘇村や高森町にとって「数億円の負担も厳しい」(関係者)状況で、特別な交付税の支給や、95%が交付税措置される「補助災害復旧事業債」の活用などを国に求める考えだ。新たな支援策は線路や駅などの鉄道施設を、自治体の所有に移すことが前提になる見通し。自治体と事業者の協議がまとまり次第、政府は支援策の検討を本格化する。南阿蘇鉄道は2016年7月に高森−中松で運行を再開したが、被害が深刻な中松−立野は復旧のめどが立っていない。

*9-2:https://www.agrinews.co.jp/p40613.html (日本農業新聞論説 2017年4月14日) 熊本地震から1年 営農の完全再建急ごう
 熊本地震から1年がたつ。農地や施設の復旧が進み、多くの農家が営農を再開している。しかし被害が深刻な地域では、いまだに農家の1割が営農を再開できていない状況だ。熊本県は2019年度までの完全復旧を目指す。道のりは険しいが、農家が安心して生活し、営農で震災前の所得水準を早く回復できるよう復旧を急ぎたい。国もその間の支援を継続すべきだ。熊本地震では4月14日、16日と2度、最大震度7を観測。震源地が地下10キロと浅く、益城町と西原村を中心に大きな被害をもたらした。13日現在、関連死も含めた死者は225人。熊本県内の仮設住宅に住む被災者は3月末でも4万4000人を超える。高齢者が圧倒的に多い。一刻も早く自宅に帰れるよう、行政は全力を挙げるべきだ。農水省によると、農林水産関連の被害総額は熊本県を中心に1793億円。うち農業関係は7割を占める。1年間で被災した農地や施設の復旧は一定に進んだ。しかし復旧が遅れ、営農再建のめどが立たない地域や農家が多いのも事実だ。農地や水路が絶たれたままで、稲作の再開どころか飲用水すら確保できないケースもある。生活インフラを含め、早期の完全復旧の実現には国の支援も不可欠だ。県やJAの頑張りは評価できる。営農再開を優先させ、水を確保できない水田では復旧に先駆けて大豆作に切り替えた。農家の営農意欲を失わせず、少しでも農業収入を確保してもらう効果は大きかった。こうした臨機応変の対応が重要だ。県は昨年末、19年度までに完全復旧を目指す「食料・農業・農村計画」を策定した。「稼げる農業の加速化」をテーマに掲げ、復旧作業と併せて担い手を育て、効率的に高い品質の農畜産物を生産できる産地づくりを目指す。担い手に8400ヘクタールの農地を集める他、新品種イチゴ「ゆうべに」を125ヘクタールまで広げ、情報通信技術(ICT)を活用した次世代型園芸施設を120ヘクタール設けるなどの構想を描く。復旧の遅れた地域も含め、全県的にビジョンを早く実現してもらいたい。11日に農水省を訪れた蒲島郁夫県知事は、山本有二農相に復旧と営農再開の状況を報告した。まだ1割の農家が営農を再開できていないと指摘、「創造的な復興」に必要な支援の継続を国に要請した。JA熊本中央会の小崎憲一会長も日本農業新聞のインタビューで、行政の震災事業は単年度事業が多いと指摘し「農家の意欲が続くよう、複数年の予算確保を訴えたい」と強調した。こうした声に国は誠意を持って応えるべきだ。JAグループの役割も大きい。熊本中央会は昨年末、県経済連、農林中金と共に、県と連携協定を結んだ。県の復興計画に沿って「創造的な復興」を果たすため、全力を挙げてほしい。全国のJAも引き続き支援をする必要がある。


PS(2017年4月16日追加):沖縄では海に点在する観光地を巡るため、*10のように、クルーズ船が便利だが、そのためには大型客船が入港できる岸壁を造ってハード・ソフトを整備するだけでなく、沖縄を一級のクルーズ船観光基地にする計画が必要だ。そこで、私は、カリブ海・地中海などのクルーズ先輩地域を視察したり調査したり、クルーズの先輩の意見を聞いたりして、しゃれた計画を立てた方がよいと考える。なお、沖縄の場合は海の中が美しいため、クルーズ船に海底が見える床が透明な部屋を準備すると長い船旅にも退屈しないだろう。

*10:http://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-478409.html (琉球新報社説 2017年4月14日) クルーズ船対応 受け入れ態勢の整備を急げ
 観光に関する調査研究機関・じゃらんリサーチセンターのまとめでは「地元の人のホスピタリティー(もてなしの心)を感じた」のは、沖縄県が2005年以来12年連続で1位を記録している。毎年2位に10ポイント以上の差をつけている。観光客を大事にする県民の意識の高さを示す証しといえる。だが観光地・沖縄としての受け入れ態勢は十分といえない。クルーズ船入港時の混乱を見れば不備は明らかだ。ソフト、ハードの整備に関係機関は今以上に注力してもらいたい。本紙記者の取材によると、那覇港新港ふ頭に大型客船が寄港した11日は約千人が下船したが、船客待合所で多くの人が1時間ほど足止めされた。最後の客がタクシーに乗るまで3時間を要した。新港ふ頭は本来貨物船が使用する岸壁である。15万トンを超える大型客船が入港できる岸壁がないため利用しているだけだ。しかし周囲は貨物運搬の車両が行き交い、観光客、荷役関係者双方の安全のためタクシーの乗り入れが制限されている。市内観光に行くにはタクシーに頼るしかないが、現状は受け入れ態勢の不備で観光客に不便を強いている。クルーズ船寄港は16年に387回で過去最多を記録し、17年度はさらに増えて502回を見込む。県の観光振興基本計画は21年度までの目標として観光客1200万人を掲げている。そのうち海路客は現在の25万人から8倍の200万人に設定している。クルーズ船客は船内で入国手続きを済ませる。下船できるのは8~10時間しかなく、限られた時間で沖縄観光を楽しむ。港を出るまでに1~3時間を消費していては、観光地としての魅力が損なわれるだけでなく、買い物や飲食店などに行く時間が減り、消費面でも機会損失が大きいといえる。大型客船に対応できる岸壁の整備は急務だ。国、県をはじめとする関係機関が早急に対策を打ち出すべきだ。一方でソフト面の整備も課題となる。11日の寄港で対応したボランティアはわずか11人しかいなかった。単純計算で1人のボランティアが90人を相手にしなければならない。那覇市観光協会は語学人材の育成を進めるが、絶対数が不足している。現状では観光地・沖縄の「もてなしの心」は看板倒れに終わりかねない。


PS(2017年4月16日追加):*11のように、「利幅が薄い」などとして家電部門を縮小する会社が多いため、家電の日本製品が少なくなったのは秋葉原の電気街に行けば一目瞭然だ。そして現在、信頼できる日本製家電はパナソニックくらいしかなくなっており、技術は生産している場所でしか受け継がれたり進歩したりしないということを、技術や実績に誇りを持つのではなく、訳もなく傲慢になった日本人は忘れたように見える。そのような中、イノベーションに熱心で先進的な技術を持つシャープが家電市場で存在感を上げようとしているのは歓迎だが、シャープには一つだけ注文がある。それは、「家電は単純な構造で(それは丈夫で生産コストを削減できる効果もあるだろう)、使い易くて手入れしやすい」というのも重要な価値で、私はシャープ製のプラズマ式エアコンを使って快適に過ごしていたが、エアコンクリーニングをする時に専門業者でも掃除ができず、壊れやすい部品もあって2度交換したため、パナソニック製に変えたという事実があることだ。これは、改善した方がよいと考える。

*11:http://digital.asahi.com/articles/ASK4H4Q37K4HPLFA001.html?iref=comtop_list_biz_n01 (朝日新聞 2017年4月15日) シャープ、家電で逆張り勝負 冷蔵庫・テレビ機種増へ
 シャープの戴正呉(たいせいご)社長は15日、国内で売るテレビや冷蔵庫といった家電製品の品ぞろえを、2017年度に大幅に増やす方針を明らかにした。利幅の薄い家電部門を縮小する他社があるなかで、あえて「逆張り」に出て、家電市場での存在感を上げようとしている。戴氏は堺市の本社で開いた退職者の会合にテレビ会議システムを使って参加し、方針を明らかにした。16年度と比べた品ぞろえを高画質の4Kテレビで45%、冷蔵庫で30%、掃除機で180%それぞれ増やし、20機種前後にするという。高機能品に加え、機能を絞って価格を抑えた製品も出す。法人向けは複合機で40%増、電子看板で20%増の35機種程度にする。戴氏はパナソニックやソニーとの比較で「シャープは幅広い家電を持つが、ラインアップが足りない。頑張りたい」などと語った。だが、費用がかさむ一方で、利益が増えない恐れもある。調査会社GfKジャパンの調べでは、16年の国内の家電小売市場は約7兆円で、前年より1・5%減った。シャープが比較的強いテレビなどの音響映像製品は同6%減と縮小。競合他社では品ぞろえを絞る動きもある。また、戴氏は3月末に終わった17年3月期の決算について「予想を達成できると思う」と話した。シャープは現段階で営業損益を474億円の黒字、利息の支払いなどを反映した経常損益を99億円の黒字と予想しており、ともに3年ぶりの黒字転換となる見込みだ。


PS(2017.4.17追加):*12-1のように、3Dプリンターの再生医療への活用が既に行われているのはよかったと思うし、これを可能にする3Dプリンターや作成プロセスが世界で最初に完成すれば日本の得意技として高い世界シェアを獲得できる。しかし、*12-2のように、「そのまま患者に移植できる臓器の再現はかなり先となりそうだ」などとして時間をかけていると、EV・太陽光発電・自動運転車のように、他国に先を越されて好機を逃し、最初に着手した日本には特許権料も世界シェアも手に入らなくなるので注意すべきだ。なお、現在の日本の経済学部出身者は、言っていることが外国で作られた理論の単純な丸暗記に基づいており、イノベーションを考慮できず、言うことがとろいため、経済学部は理系学部に変更した方がよいと思う。

*12-1:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20170417&ng=DGKKZO15375170W7A410C1TJM000 (日経新聞 2017.4.17) 科学技術:3Dプリンター、再生医療に活用 まず移植用組織、東大が皮膚の構造/福岡大は横隔膜の機能
 立体的な部品などを作る3次元(3D)プリンターを使った再生医療の研究が進んでいる。たんぱく質の微粒子や細胞の塊を積み重ね、移植用の組織や臓器を作る。東京大学は治りにくい傷の治療向けに皮膚の立体構造を再現した。福岡大学などは呼吸に欠かせない横隔膜の機能を果たす小さな組織を作り、動物で治療効果を確かめた。臨床応用できれば究極の再生医療の実現に近づく。3Dプリンターは原料の粉末などを少しずつ積み上げて立体構造を作る。再生医療向けでは、専用装置で生きた細胞の小さな集まりやコラーゲンなどのたんぱく質を積み重ねる。材料選びや使うタイミング、積み方などの工夫も研究の重要なテーマとなっている。東大の高戸毅教授と峰松健夫特任准教授は3Dプリンターを活用し、床ずれや糖尿病などで発症する皮膚の治りにくい傷を治療する研究に取り組む。高齢化などで患者は増えており、長期入院を余儀なくされたり治療後に痛みが残ったりして患者の負担となっている。皮膚には表面の表皮と内部の真皮の間をつなぐ役割を持つ微細な凹凸が並んでいる。皮膚の真皮まで傷付くと再生せず、平らになってしまう。高戸教授らは3Dプリンターで「RCP」というたんぱく質の微粒子を積み上げて表面に凹凸のある層を作り、皮膚の構造をまねた。傷を付けたマウスの皮膚に移植すると、表皮の再生を促した。今後はたんぱく質の微粒子の隙間に、脂肪から取り出した幹細胞を入れて、効果を高める。幹細胞が出す物質は皮膚が硬くなるのを抑える働きがあり、皮膚の再生も促せると見込む。損傷した真皮を補うためのスポンジ構造の材料も使い、表皮と真皮の立体構造を模倣した再生医療を目指す。福岡大の柳佑典助教と九州大学の田口智章教授は3Dプリンターで細胞を積み上げる手法を用い、人の皮膚の細胞で1センチ角の組織片を作った。胸と腹を区切る横隔膜に穴を開けたラットに移植した。横隔膜に穴が開くと呼吸に支障が出る。組織片を移植した5匹は横隔膜の穴が塞がり、3カ月以上生き延びた。効果は合成繊維の膜を移植するより高かった。今後はウサギなどでも実験する。横隔膜が生まれつきない患者などの治療に役立てたい考えだ。信州大学の今村哲也助教と九大発ベンチャーのサイフューズ(東京・文京)は、人の骨髄の細胞で数ミリ角の組織片を作った。膀胱(ぼうこう)が傷つき尿がためられないラットに移植すると、健康なラットのように排尿できる状態まで回復した。組織片から出たたんぱく質などが膀胱の再生を促したとみている。膀胱は伸縮する筋肉でできた袋状の臓器で、がんの放射線治療や病気が原因で硬くなると頻尿になる。今後iPS細胞の活用も検討し、10年以内に人への移植を目指す。

*12-2:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20170417&ng=DGKKZO15375210W7A410C1TJM000 (日経新聞 2017.4.17) 科学技術:臓器実現、蓄積地道に
 3次元(3D)プリンターは材料を積み重ね、複雑、微細な立体構造を作るのが得意だ。細胞やたんぱく質に応用できる機種の開発が、再生医療研究を後押ししている。皮膚の難病治療を目指す東京大学の峰松健夫特任准教授は「3Dプリンターができたからこそ研究に着手できた」と語る。再生医療の実用化では細胞をシート状に培養して移植する手法が先行する。動物を「工場」として活用するアイデアもある。ブタなどの受精卵に人のiPS細胞を注入し動物の体内で人の臓器を作る手法だ。ただ、いずれも発展途上で、1つに絞られたわけではない。臓器は血管や神経など様々な細胞が組み合わさり、立体的な構造を作っている。そのまま患者に移植できる臓器の再現はかなり先となりそうだ。小さな組織片の移植など一歩ずつ技術を積み重ねていくことが重要だ。


<観察技術の進歩と理論のイノベーション>
PS(2017年4月19日):肉食恐竜ティラノサウルスの手は、使うには小さすぎると思っていたが、これと似た大きさの手をしているのは飛べない鳥類(エミュー、ダチョウ、鶏など)で、これらの鳥類は顔も恐竜から進化したように見え、足の形は恐竜と同じだ。また、これらの鳥類は、子供の頃は羽がなく毛だけが生えており、「個体発生は系統発生を繰り返す」という原理から考えれば、(化石には残っていないが)ティラノサウルスにもこれら鳥類と同じような毛が生えていたと推測できる。この疑問を解決するには、エミューかダチョウか鶏の卵がかえる時に、卵の中の胎児の変化を観察するのがよいだろう。また、鳥類は、飛ぶ鳥が先に発生したのではなく、飛べない鳥が先に発生した後に進化して飛ぶ鳥が発生し、捕食者との関係で飛ぶ鳥の種の方が多く生き残ったのではないかと思われる。


  ティラノサウルス       エミュー          エミューの卵と雛
 2017.4.19佐賀新聞

   
          ダチョウ            鶏の雛    鶏の手羽

*13:http://www.saga-s.co.jp/news/national/10201/422867 (佐賀新聞 2017年4月19日) 肉食恐竜ティラノの分類に新説、トリケラトプスと近縁か
 ティラノサウルスのような二足歩行する肉食恐竜は、首の長い巨大草食恐竜と同じグループに属するという従来の分類よりも、むしろ角を持ったトリケラトプスの仲間に近いとの新説を英ケンブリッジ大などのチームが19日までに英科学誌ネイチャーに発表した。現在の分類では、恐竜は鳥に似た骨盤を持つ「鳥盤類」とトカゲに似た骨盤を持つ「竜盤類」に大きく分けられる。ティラノの仲間である獣脚類は鳥の起源と考えられているものの、これまでディプロドクスなど首の長い巨大草食恐竜が属する竜盤類に分類されてきた。新説ではティラノはトリケラトプスやステゴサウルスなどの鳥盤類と近縁となる。


PS(2017年4月21日追加):リコーが、*14のように、自社設備を拡充して太陽光やバイオマス発電による電力供給を増やし、足りない分は電力会社からグリーン電力を購入して再生エネ100%を目指して、国際イニシアチブ「RE100」に参加するのは、好感の持てる可能な目標だ。私は、鉄道会社がこれを行えば、①運行コストが下がって赤字路線が減る ②環境に貢献する ③鉄道会社の送電技術が進歩し、赤字路線も送電網として機能させることができる など、多くのメリットがあると考える。

*14:http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2017042101001072.html
(東京新聞 2017年4月21日) 【社会】 リコー、再生エネ100%へ パリ協定の脱炭素実現で
 事務機器大手のリコーは21日、国内外の事務所や工場で使う電力を、2050年までに全て再生可能エネルギーで賄う目標を明らかにした。マイクロソフトなど世界の約90社が参加し、再生可能エネルギー100%を目指す国際イニシアチブ「RE100」に日本企業として初めて加わった。パリ協定が目指す“脱炭素社会”の実現に向け、企業レベルの取り組みを強化する狙い。リコーは自社設備を拡充して太陽光やバイオマス発電による電力供給を増やし、足りない分は電力会社からグリーン電力を購入する。最初のステップとして30年に電力消費の30%以上を再生可能エネルギーにすることを目指す。


PS(2017.4.23追加):*15のような「人工知能(AI)の登場でロボットの存在感が増したら、人間が失業する」という論調はよく聞かれるが、それは間違いだと考える。何故なら、単純作業が自動化されれば人間はより高度で面白い仕事をすることができるようになるだけで、自動化したから人がいらなくなるわけではないからだ。例えば、全自動洗濯機は、これによって洗濯をする人がいらなくなったわけではなく、機械の方が人よりうまくやれる仕事を機械がしている時間に、人はもっと生産性の高い仕事や人にしかできない仕事にシフトすることができたという効果をもたらした。また、機械はあらかじめ導入されたソフトの範囲でしか働けないため、そのソフトを作った人以上の仕事はできない。
 そのため、例えば、弁護士が判例を探すのをAIが手伝えば、判例探しを個人の弁護士の知識と経験のみに頼らなくても済むため、弁護全体の底上げができるだろう。しかし、その判例を、①どう事例に当てはめるか ②過去の判例では対応できない事例ではないのか などの判断は、人間である弁護士の価値観や能力に基づくため、AIでは代替できない。これは、医療において、診断にAIを利用する場合も同じだろう。
 なお、自動車が普及して人力車がなくなった時には、確かに人力車の車夫という仕事はなくなったが、新しい仕事も多くできたため車夫だった人は別の仕事に移っただろう。つまり、教育は、人にしかできない仕事をできる人を育て、時代の変化に応じて仕事を変わることもできる能力を与えておかなければならないのである。


  *15より  会話ロボ 日本橋三越受付ロボ ポーターロボ  EV工場のロボット

(図の説明:いろいろなロボットがあるが、触ると望む方向に進み、飛行機の搭乗券をかざすと荷物を載せて案内しながら出発Gateに行くポーターロボが空港にあると便利そうだ)

*15:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20170423&ng=DGKKZO15581470R20C17A4MM8000 (日経新聞 2017.4.23) ロボットと競えますか?日本の仕事、5割代替 主要国トップ
 人工知能(AI)の登場でロボットの存在感が世界で増している。日本経済新聞と英フィナンシャル・タイムズ(FT)が実施した共同の調査研究では、人が携わる約2千種類の仕事(業務)のうち3割はロボットへの置き換えが可能なことが分かった。焦点を日本に絞ると主要国で最大となる5割強の業務を自動化できることも明らかになった。人とロボットが仕事を競い合う時代はすでに始まっている。日経とFTは、読者が自分の職業を選択・入力するとロボットに仕事を奪われる確率をはじき出す分析ツールを共同開発し、22日に日経電子版で公開した。米マッキンゼー・アンド・カンパニーが820種の職業に含まれる計2069業務の自動化動向をまとめた膨大なデータを日経・FTが再集計し、ツールの開発と共同調査に活用した。
■丸ごと自動化も
 調査の結果、全業務の34%に当たる710の業務がロボットに置き換え可能と分かった。一部の眼科技師や食品加工、石こうの塗装工などの職業では、すべての業務が丸ごとロボットに置き換わる可能性があることも判明した。ただ、明日は我が身と過度に心配する必要はない。大半の職業はロボットでは代替できない複雑な業務が残るため、完全自動化できる職業は全体の5%未満にとどまる。19世紀の産業革命に始まる製造業の歴史は、自動化への挑戦そのものだった。200年を経た今、AIの進化が新たな自動化の波を起こしつつある。マッキンゼーによるとエンジンを組み立てる工場労働者の場合、77ある業務の75%が自動化できる。部品の組み立てや製品の箱詰め作業などだ。米ゼネラル・モーターズ(GM)は世界各国に合計3万台のロボットを導入しており、うち8500台のロボットは稼働情報を共有して生産ラインに故障の前兆がないかAIが目を光らせている。自動化の流れは、難しいとされたホワイトカラーや事務系職場にも押し寄せる。米通信大手のAT&Tは顧客の注文の文書化やパスワードのリセット作業など500業務相当をソフトウエアロボットで自動化している。データ抽出や数値計算は人より高速にできるため「2017年末にはさらに3倍に増やす」(同社)計画だ。ホワイトカラーの象徴といえる金融機関でも自動化が進む。事務職では60ある業務のうちファイル作成など65%がロボットに代替できる。米ゴールドマン・サックスでは00年に600人いたトレーダーが株式売買の自動化システムに置き換わり現在は数人に減った。著名投資家のジム・ロジャーズ氏も「AIが進化すれば証券ブローカーなどの仕事は消える」と断言する。一方で意思決定や計画立案にかかわる仕事、想像力を働かせる仕事はロボットの苦手分野だ。最高経営責任者(CEO)など経営幹部には63の業務があるが、ロボット化が可能なのは業務進捗表の作成など22%にとどまる。俳優や音楽家など芸術関連の職業も65ある業務のうち自動化対象は17%にすぎない。
■人手不足の解
 今ある業務が自動化される割合を国別に比較すると、日本はロボットの導入余地が主要国の中で最も大きいことが明らかになった。マッキンゼーの試算では自動化が可能な業務の割合は日本が55%で、米国の46%、欧州の47%を上回る。農業や製造業など人手に頼る職業の比重が大きい中国(51%)やインド(52%)をも上回る結果となった。日本は金融・保険、官公庁の事務職や製造業で、他国よりもロボットに適した資料作成など単純業務の割合が高いという。米国などに比べ弁護士や官公庁事務職などで業務の自動化が遅れている面もある。米国の大手法律事務所では膨大な資料の山から証拠を見つけ出す作業にAIを使う動きが急速に広がっているが、日本はこれからだ。一部の職場ではすでに雇用が失われ始めるなどロボット化には負の側面が確かにある。それでも生産年齢人口が50年後に4割減る見通しの日本では、ロボットに任せられる業務は任せて生産性を高めることが国力の維持に欠かせない。

 この記事は日経とFTの共同プロジェクトの一環として掲載しました。

| 教育・研究開発::2016.12~ | 02:46 PM | comments (x) | trackback (x) |
2017.3.19 教育基本法と教育勅語の根本的な違いは、主権の所在と教育の目的である - 教育勅語と森友学園の建設地問題から(2017年3月20、21、23、24、28、31日、4月4、15日追加)

    教育勅語本文         教育勅語の読み方      上郵便振替用紙

(図の説明:左の2つは、教育勅語だ。一番右は、森友学園の籠池理事長が安倍昭恵夫人からの寄付だと主張している100万円だが、森友学園から森友学園への振込になっており、白い訂正の下には安倍晋三と記載してあるものの、文字が乱雑で感謝の心のこもった100万円の振込ではなさそうに見える)

   
森友学園校舎 横浜市立小学校校舎 松本開智学校校舎 ロンドン小学校校舎 米国高校校舎

(図の説明:森友学園の校舎は確かにあまり趣味がよくないが、横浜市立光が丘小学校も校庭が狭く、アスファルトで舗装してあり(転んだら痛そうで、思い切り運動ができないだろう)、日本の標準形の校舎だが個性や魅力がなく、子ども中心に考えられていない。そのため、日本最初の小学校である松本市の開智学校の方が気合が入って凛としており、ロンドンの小学校やアメリカの高校もよい。義務教育学校は、子どもが長期間通ってセンスを養う場所であるため、大学の建築学科の学生の卒業論文として義務教育学校の設計を提出させ、建て換えにあたってその中からよいものを採用したらどうかと考える)

(1)森友学園問題の本当のポイントは何か
1)国有財産の安値売却は、財務省の国民への背信行為であること
 *1-1のように、財務省が生活ゴミや廃材などが大量に埋まっていたという理由で、8億円値引きした安値で国有地を「森友学園」に払い下げたことについて、その土地が国有化される前に住んでいた住民は、財務省の主張を疑問視しており、森友学園による学校建設に憤っているそうだ。何故なら、その土地は、そこに災害時の一時避難地としての役割も担う公園を建設することを豊中市議会が平成11年(1999年)決議した土地だからだそうだ。

 そのため、政治家を陥れるために、メディアがステレオタイプに政治とカネを結びつけて、いっせいに国民感情を煽る報道をするだけでは、政治家への信用を落とし続け、国民の政治参加への意識を下げるだけで、民主主義に貢献してはいない。従って、問題の本質を見極めて真実を報道すべきだ。

 そこで、豊中市が土地の半分に対して支払った金額は14億2,300万円であり、豊中市が買えなかった残りの半分の評価額は9億5,600万円とされており、財務省は、その土地の地下にある埋設物の除去費用を差し引いて1億3,400万円で森友学園に売却した上、埋設物の除去及び土壌汚染対策費として、1億3,200万円を森友学園に支払ったため、森友学園は200万円でその土地を買えたわけである。この段階では、森友学園の籠池理事長はよい買い物をしただけで、非難される理由にはならず、財務省が国有財産を異常に安い値段で売却したという国民への背信行為だけが問題だったのである。

 地下の埋設物については、旧住民の乗光さんが「あの土地にゴミなんか埋まってないですよ。1960年代、私があの土地に家を建てた際、それまで水田や畑でしたから3メートルほど地面を掘ってコンクリートをしくなどの基礎工事をしっかり行いましたが、その時もゴミなんか出ませんでした。私たちが立ち退きする際、それまであった住宅は全て解体し、産廃業者が運んで行きました。立ち退き後、土地はフェンスに囲まれ、関係者以外立ち入りできなくなっていました。私たちは毎日のように、土地の状況を見続けてきましたが、(処理費8億円に相当する)トラック4,000台分のゴミが運び込まれたり、そのために大きな穴を掘り返したりというようなことが行われている様子は今まで見たことがありません」と証言している。

2)教育施設や福祉施設の立地適地は?
 学校を建てるのに、一部で報道されているような沼地でゴミが捨てられていたような場所や水田・中洲だった場所は、子どもの安全や希望・地域の中心的避難場所という意味で適していないと私は考える。入学式の頃には桜のトンネルができる坂道を登って丘の上の学校に行き、学校の鐘が周囲にも聞こえるような学校が、学校を地域の中心に据えて子どもたちを大切にしているように、私には思われる。

3)安倍首相、昭恵夫人と森友学園の関係は、ブラックではないこと
 森友学園の籠池理事長は、*1-2のように、3月16日に行われた参院予算委員会の現地調査で、「安倍首相から昭恵夫人を通じて100万円の寄付を受けた」と証言し、上の写真の郵便振込用紙が出てきたそうで、その日付は昭恵夫人が森友学園の依頼で講演を行い、名誉校長に就任した日のすぐ後とのことである。しかし、森友学園が寄付して安倍首相と関係を持ちたい理由はあっても、安倍首相がわざわざリスクを冒して森友学園に寄付する理由はなく、仮に安倍首相が政治資金から寄付したとすれば、それは監査済の政治資金収支報告書に掲載されている筈だが、今のところ、そういう指摘はない。

 また、*1-3のように、「2015年9月頃、籠池氏が安倍首相から昭恵夫人を通して100万円をもらった」として、上の写真の郵便振替用紙を証拠として示しているが、この郵便振替用紙は森友学園が森友学園に振り込んだことを示すもので、安倍首相が寄付した証拠にはならない。そのため、森友学園の監査人に、この振込用紙の金の出所は森友学園自身の他の口座でないのかを聞きたいものである。

 そして、百歩譲って、昭恵夫人(森永創業者の孫で安倍首相より金持ち)が個人で100万円を森友学園に寄付していたとしても、家族だからといって昭恵夫人が完全に首相のコントロール下にあるわけではなく、講演を頼まれ名誉校長(名誉市長と同様、何の権限もない)にも就任させてもらったから寄付したとも考えられる上、寄付すること自体は罪ではない。さらに、有名人に講演を依頼するというのは、既に親しいからではなく、親しくなるためにするケースが多く、昭恵夫人は罠にはまったように見えるのだ。

 そのため、私は、安倍首相が「私や妻が(国有地売却や学校認可に)関係していたことになれば首相も国会議員も辞める」「複数の中でお目にかかったかもしれないが、少人数ではなく、個人的な関係は全くない」と言われたのは本心だろうと思う。なお、森友学園の籠池理事長は、とかく有名政治家との関係を誇示したがるが、パーティーで握手したり、会話したりするのは、政治家にとっては普通のことであり、そうしたからといって出会った多くの人の中の一人を、特別の特徴がない限り覚えているわけではない。

(2)森友学園の教育内容は現代日本にふさわしくないことが、問題の本質だ
1)日本国憲法に基づく教育の目的と理念
 日本国憲法に基づく教育の目的と理念は、*2-1のように教育基本法に記載されており、教育の目的は、「本人の人格完成を目指して、平和で民主的な国家及び社会の形成者として必要な資質を備えた国民を育てること」である。そのために、①幅広い知識と教養、真理を求める態度を養う ②豊かな情操と道徳心を培う ③健やかな身体を養う ④個人の能力を伸ばして創造性を培う ⑤自主・自律の精神を養う ⑥勤労を重んずる態度を養う ⑦正義と責任、男女の平等、自他の敬愛と協力を重んじ、公共の精神に基づいて主体的に社会の形成に参画し、その発展に寄与する態度を養う ⑦生命を尊び、自然を大切にし、環境の保全に寄与する態度を養う ⑧伝統・文化を尊重し、それらを育んできた我が国と郷土を愛するとともに、他国を尊重し、国際社会の平和と発展に寄与する態度を養う 等としている。

 その中で、1)学校教育は公の性質を有する 2)学校では教育の目標が達成されるように教育を受ける者の心身の発達に応じて体系的な教育を組織的に行う 3)私立学校は、公の性質及び学校教育において果たす重要な役割に鑑み、国及び地方公共団体が自主性を尊重しつつ助成その他の適当な方法によって私立学校教育の振興に努めなければならない とされており、政治教育については、4)良識ある公民として必要な政治的教養は、教育上尊重されなければならない 5)法律に定める学校は、特定の政党を支持し、又はこれに反対するための政治教育その他政治的活動をしてはならないとしている。

 このうち、上の1)3)が、大阪府や国が学校の設置に協力した論拠になるが、森友学園は2)5)に反しており、学校法人としての認可を与えたのが適切か否かが問われる。

 さらに、森友学園の園児が暗唱している敎育勅語は、*2-2のように、「①朕(ちん)惟(おも)フ(う)ニ 我(わ)カ(が)皇祖(こうそ)皇宗(こうそう) 國(くに)ヲ肇(はじ)ムルコト宏遠(こうえん)ニ 德(とく)ヲ樹(た)ツルコト深厚(しんこう)ナリ」「我(わ)カ(が)臣民(しんみん) 克(よ)ク忠(ちゅう)ニ 」と、天皇主権を前提に国民を天皇の臣下と位置づけ、天皇に忠を尽くすよう教えているため、日本国憲法に反する。

 また、「②克(よ)ク孝(こう)ニ」というのは、自分を犠牲にして親や家に尽くすことを要求し、親が決めた相手と結婚させられる悲劇が多かったため、日本国憲法は、第25条で「婚姻は両性の合意のみに基いて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない」「配偶者の選択、財産権、相続、住居の選定、離婚並びに婚姻及び家族に関するその他の事項に関して、法律は、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して制定されなければならない」としたのである。

 その上、敎育勅語の「一旦(いったん)緩急(かんきゅう)アレハ(ば) 義勇(ぎゆう)公(こう)ニ奉(ほう)シ(じ) 以(もっ)テ天壤(てんじょう)無窮(むきゅう)ノ皇運(こううん)ヲ扶翼(ふよく)スヘ(べ)シ」というのは、*2-4のように、第二次世界大戦中、老若男女を問わず、国民に異論を言わせず戦争に駆り立て、死ぬことを強要する根拠となったものだ。

 そのため、日本国憲法は、第9条で戦争の放棄を定め、第11条ですべての国民に基本的人権を認め、第12条で国民の不断の努力によつてこれを維持しなければならない としているのである。

2)稲田朋美防衛大臣の資質問題について
 安倍首相は、右寄りの稲田防衛大臣を引き立てて育てているが、左よりの元内閣府特命担当大臣(消費者・食品安全、少子化、男女共同参画)の森雅子氏も同様に引き立てており、この2人の選択根拠は、①女性の抜擢 ②どちらも旧森派 ③どちらも選挙区で勝利 など、稲田氏が右よりだからではない。

 その稲田防衛大臣は、*2-3のように、「教育勅語の精神を取り戻すべきだと今も思う」「文科省の方に『教育勅語のどこがいけないのか』と聞きました」「教育勅語の精神である日本が道義国家を目指すべきであること、そして親孝行だとか友達を大切にするとか、そういう核の部分は今も大切なものとして維持している」等と述べている。しかし、私自身は、教育勅語の推進は、第二次世界大戦の敗因を真摯に受け止めておらず、国民主権をないがしろにしている点で、大きな憲法違反だと考えている。

 そのため、日本国憲法は第19条で「思想及び良心の自由は、これを侵してはならない」としているものの、憲法違反の考えを推進する政治家や行政官に関しては、全政治家の品位を低く印象付ける政治とカネ問題や嘘をついた等の人格問題や道義的責任などという法律に定めのない曖昧な責任問題にすり変えるのではなく、憲法違反の思想信条や国造りの方針について単刀直入に追求すべきだと考える。

*1-1:https://news.yahoo.co.jp/byline/shivarei/20170313-00068645/ (YAHOO 2017/3/13) 【森友学園】裏切られた元地権者たち―8億円埋設物も「そんなものはない」、志葉玲 | フリージャーナリスト(環境、人権、戦争と平和)
 政府がただ同然の安値で、学校法人「森友学園」に、国有地を払い下げた問題で、その土地が国有化される前に住んでいた住民達の代表が、筆者のインタビューに応じた。元々の地権者たち157名は、皆、森友学園による学校建設に憤っており、また生活ゴミや廃材などの大量の埋設物がその土地に埋まっていたという政府の主張に対しても疑問視しているという。
○裏切られた元地権者達
 今回、インタビューに応じたのは、乗光恭生さん。森友学園が「安倍晋三記念小学校」こと、「瑞穂の国記念小学院」を建設している大阪府豊中市野田町で町内会長をしている。今回問題になっている土地には、かつて157人の住民がいたと乗光さんは言う。航空機の騒音対策や阪神淡路大震災を受けての避難場所確保という目的から、1970年代から1990年代にかけ、国は豊中市の協力のもとで土地の国有化を進めてきた。だが、乗光さんは当初の目的と違うかたちで土地が使われていることに、「裏切られた」と憤っているという。「今、森友学園が小学校を建設している土地は、本来、そこに災害時の一時避難地としての役割も担う公園を建設するということを豊中市議会が平成11年(1999年)決議した土地です。野田町も阪神淡路大震災で大きな被害を受けましたから、私たち住民は地域のため、被災者支援のためにと、区画整理に応じ、あの土地から立ち退き、多額のお金を投じて新たに住居を立てたのです。私自身、元の家の解体と今の家の建築に3000万円ものお金を使いました。全ては、地域のため、公園をつくるためにしたことです」(乗光さん) 。野田市による公園建設の計画書。公園の右側になるはずの土地を森友学園が取得ところが、豊中市はその後、いつまでたっても公園の建設を始めない。森友学園による国有地取得の経緯について、最初にその問題を告発した木村真・豊中市議会議員はこう語る。「乗光さん達が住んでらっしゃった土地の確保やその後の公園建設という使い道については、国と豊中市で合意していたはずでした。ところが、国は急に態度を変え、公園をつくりたいなら、土地を相応の値で買え、と強硬に迫ったのです。豊中市は財政的事情から、本来、公園するはずだった土地の半分しか買えませんでした。買えなかったもう半分の土地というのが、森友学園が国土交通省大阪航空局と財務省近畿財務局から取得し、『瑞穂の国記念小学院』を建設している土地なのです」。既に報道されているように、豊中市が本来取得するはずの土地の半分に支払った金額は、14億2300万円。他方、豊中市が買えなかった、もう半分の土地は評価額が「9億5600万円」とされ、さらに土地の地下にある埋設物の除去費用を差し引いて、1億3400万円で森友学園に売却された。その上、国側は埋設物除去や土壌汚染対策として、1億3200万円の有益費を森友学園を支払った。つまり、本来は地域の人々のための公園になるはずだった土地を、国は豊中市に対しては値下げしない一方、森友学園には実質200万円で売却してしまったのである。乗光さんは、やるせない思いを吐露する。「あそこが公園になって、(住居の移転のため)お金を出した価値が戻るのであって、そうならないのなら、私たちにとっては損失ばかりです。しかも、あんな酷い学校を建てるなんて…」「もう、私も年ですから、そう長くは生きられないでしょう。妻にも去年、先立たれました。あの土地が公園になって地域に残せてこそ、私も安心して逝けます」(乗光さん)。
○埋設物は本当にあったのか?
 森友学園による国有地取得の際の8億1900万円の控除と、1億3200万円の有益費の根拠とされている地下埋設物についても疑問が残る。乗光さんは「あの土地にゴミなんか埋まってないですよ」と語る。「1960年代、私があの土地に家を建てた際、それまでは水田や畑でしたから、3メートルほど地面を掘ってコンクリートをしくなど基礎工事をしっかり行いましたが、その時もゴミなんか出てきませんでした。私たちが立ち退きする際、それまであった住宅は全て解体し、産廃業者が運んでいきました。立ち退き後も、土地はフェンスに囲まれ、関係者以外立ち入りできないようになっていました。私達の新たな住居も、あの土地のすぐそばで、私たちは毎日のように、土地の状況を見続けてきました。しかし、(処理費8億円に相当する)トラック4000台のゴミが運び込まれたり、そのために大きな穴を掘り返したりというようなことが行われている様子を、私たちは今まで見たことがありません」(乗光さん) 。もし、乗光さんの言うように、トラック4000台分という膨大な埋設物が実際に埋まっていないとしたら、最初から森友学園に激安で土地を提供するため、埋設物についての調査結果をねつ造したのではないか―そんな疑念が出てくる。そして、仮にそうだとしたら、なぜ官僚たちがそこまでしたのか、誰からの圧力があったのか、ということも明らかにしないといけないだろう。
○疑惑の解明はこれからだ
 「瑞穂の国記念小学院」については、森友学園側は認可申請を取り下げ、籠池泰典理事長も辞任する意向を表明した。だが、あくまで森友学園側は、土地を所有し続け、「瑞穂の国記念小学院」の認可もあきらめていないという。国側が買い戻すにしても、国有地が不正に払い下げられた疑惑を解明するべきだ。そして、その土地の国有化の経緯を考えれば、乗光さんら元地権者の意見を尊重すべきだろう。

*1-2:http://digital.asahi.com/articles/ASK3J6GKDK3JUTFK01N.html
(朝日新聞 2017年3月16日) 籠池理事長を23日に証人喚問 自民・民進が合意
 学校法人「森友学園」(大阪市)への国有地売却問題をめぐり、学園の籠池(かごいけ)泰典理事長は16日の参院予算委員会の現地調査で「安倍晋三首相から昭恵夫人を通じて100万円の寄付を受けた」と証言した。首相側は即座に寄付を否定。自民、民進両党は、籠池氏の証人喚問を23日に衆参各院で行うことで合意した。籠池氏の新証言で、籠池氏との個人的な関係を否定してきた首相の答弁の信用性が問われかねない事態になり、これまで参考人招致を拒んできた自民側が、うそをついた場合に偽証罪に問える証人喚問が必要と判断し、民進側に提案した。籠池氏は大阪府豊中市の小学校建設現場を視察した参院予算委の与野党メンバーに対し、2015年9月に学園の幼稚園に講演に来た昭恵氏から「どうぞこれをお使い下さい。安倍晋三からです」と言われ、建設寄付金として100万円を手渡されたと証言。「名前は書いていないが、日付が入ったものはある」とも述べた。これに対し、菅義偉官房長官は記者会見で、「首相に確認をしたところ、『自分では寄付はしていない。昭恵夫人、事務所等、第三者を通じても寄付していない』ということだった」と述べた。昭恵氏が個人として寄付したかどうかは確認しているという。首相も記者団に「官房長官から話があった通り」と語った。証言を受け、自民、公明両党の国会対策委員長は国会内で会談。「首相に対する侮辱だ」(自民の竹下亘国対委員長)として証人喚問に応じる考えで一致。竹下氏は民進の山井和則国対委員長と電話会談し、衆参それぞれの予算委員会で23日に証人喚問を行うことで合意した。17日に正式決定する。国有地売却の不透明な経緯や政治家の関与が国会で議論となるなか、首相は「私や妻が(国有地売却や学校認可に)関係していたことになれば首相も国会議員も辞める」(2月17日の衆院予算委)と断言。籠池氏については「複数の中でお目にかかったかもしれないが、少人数ではない。個人的な関係は全くない」(同28日の参院予算委)と答弁していた。
     ◇
〈証人喚問〉 国会の国政調査権を定めた憲法62条に基づく制度。うそをついた場合は、議院証言法に基づき国会から告発され、偽証罪(3カ月以上10年以下の懲役)に問われる。正当な理由なく、出頭や証言を拒否しても禁錮刑や罰金を科せられる。近年では、2012年4月にAIJ投資顧問による年金資産詐取事件の浅川和彦社長、07年10月に防衛汚職事件の守屋武昌・元防衛事務次官、05年12月に耐震偽装事件の元建築士らが喚問された。

*1-3:http://digital.asahi.com/articles/ASK3J520TK3JUTFK00P.html
(朝日新聞 2017年3月16日) 籠池氏、調査に「首相から100万円」 官房長官は否定
 学校法人「森友学園」(大阪市)への国有地払い下げ問題をめぐる参院予算委員会の16日の現地調査で、籠池(かごいけ)泰典理事長への聞き取り調査を終えた舟山康江氏(民進)が記者団に「(籠池氏が)安倍(晋三)首相から、(昭恵)夫人を通して100万円をもらった、と語った。時期は2015年9月ごろ」と説明した。一方、菅義偉官房長官は同日午後の記者会見で、首相に確認したところ、「自分では寄付していない。昭恵夫人、事務所等、第三者を通じても寄付していない」との説明があったことを明らかにした。昭恵氏が個人として寄付したかどうかについても、念のために確認していることも説明した。現地調査では、山本一太委員長ら11人が学園が開校をめざしていた大阪府豊中市の小学校建設現場も視察した。敷地内では、籠池氏の案内を受けた。学園や籠池氏について、首相はこれまで、国会で「私や妻が(国有地売却や学校認可に)関係していたことになれば首相も国会議員も辞める」(2月17日の衆院予算委)、「複数の中でお目にかかったかもしれないが、少人数ではない。個人的な関係は全くない」(同28日の参院予算委)と答弁している。

*2-1:http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H18/H18HO120.html
教育基本法 (平成十八年十二月二十二日法律第百二十号)
第一章 教育の目的及び理念
(教育の目的)
第一条  教育は、人格の完成を目指し、平和で民主的な国家及び社会の形成者として必要な資質を備えた心身ともに健康な国民の育成を期して行われなければならない。
(教育の目標)
第二条  教育は、その目的を実現するため、学問の自由を尊重しつつ、次に掲げる目標を達成するよう行われるものとする。
一  幅広い知識と教養を身に付け、真理を求める態度を養い、豊かな情操と道徳心を培うとともに、健やかな身体を養うこと。
二  個人の価値を尊重して、その能力を伸ばし、創造性を培い、自主及び自律の精神を養うとともに、職業及び生活との関連を重視し、勤労を重んずる態度を養うこと。
三  正義と責任、男女の平等、自他の敬愛と協力を重んずるとともに、公共の精神に基づき、主体的に社会の形成に参画し、その発展に寄与する態度を養うこと。
四  生命を尊び、自然を大切にし、環境の保全に寄与する態度を養うこと。
五  伝統と文化を尊重し、それらをはぐくんできた我が国と郷土を愛するとともに、他国を尊重し、国際社会の平和と発展に寄与する態度を養うこと。
(生涯学習の理念)
第三条  国民一人一人が、自己の人格を磨き、豊かな人生を送ることができるよう、その生涯にわたって、あらゆる機会に、あらゆる場所において学習することができ、その成果を適切に生かすことのできる社会の実現が図られなければならない。
(教育の機会均等)
第四条  すべて国民は、ひとしく、その能力に応じた教育を受ける機会を与えられなければならず、人種、信条、性別、社会的身分、経済的地位又は門地によって、教育上差別されない。
2  国及び地方公共団体は、障害のある者が、その障害の状態に応じ、十分な教育を受けられるよう、教育上必要な支援を講じなければならない。
3  国及び地方公共団体は、能力があるにもかかわらず、経済的理由によって修学が困難な者に対して、奨学の措置を講じなければならない。
第二章 教育の実施に関する基本
(義務教育)
第五条  国民は、その保護する子に、別に法律で定めるところにより、普通教育を受けさせる義務を負う。
2  義務教育として行われる普通教育は、各個人の有する能力を伸ばしつつ社会において自立的に生きる基礎を培い、また、国家及び社会の形成者として必要とされる基本的な資質を養うことを目的として行われるものとする。
3  国及び地方公共団体は、義務教育の機会を保障し、その水準を確保するため、適切な役割分担及び相互の協力の下、その実施に責任を負う。
4  国又は地方公共団体の設置する学校における義務教育については、授業料を徴収しない。
(学校教育)
第六条  法律に定める学校は、公の性質を有するものであって、国、地方公共団体及び法律に定める法人のみが、これを設置することができる。
2  前項の学校においては、教育の目標が達成されるよう、教育を受ける者の心身の発達に応じて、体系的な教育が組織的に行われなければならない。この場合において、教育を受ける者が、学校生活を営む上で必要な規律を重んずるとともに、自ら進んで学習に取り組む意欲を高めることを重視して行われなければならない。
(大学)
第七条  大学は、学術の中心として、高い教養と専門的能力を培うとともに、深く真理を探究して新たな知見を創造し、これらの成果を広く社会に提供することにより、社会の発展に寄与するものとする。
2  大学については、自主性、自律性その他の大学における教育及び研究の特性が尊重されなければならない。
(私立学校)
第八条  私立学校の有する公の性質及び学校教育において果たす重要な役割にかんがみ、国及び地方公共団体は、その自主性を尊重しつつ、助成その他の適当な方法によって私立学校教育の振興に努めなければならない。
(教員)
第九条  法律に定める学校の教員は、自己の崇高な使命を深く自覚し、絶えず研究と修養に励み、その職責の遂行に努めなければならない。
2  前項の教員については、その使命と職責の重要性にかんがみ、その身分は尊重され、待遇の適正が期せられるとともに、養成と研修の充実が図られなければならない。
(家庭教育)
第十条  父母その他の保護者は、子の教育について第一義的責任を有するものであって、生活のために必要な習慣を身に付けさせるとともに、自立心を育成し、心身の調和のとれた発達を図るよう努めるものとする。
2  国及び地方公共団体は、家庭教育の自主性を尊重しつつ、保護者に対する学習の機会及び情報の提供その他の家庭教育を支援するために必要な施策を講ずるよう努めなければならない。
(幼児期の教育)
第十一条  幼児期の教育は、生涯にわたる人格形成の基礎を培う重要なものであることにかんがみ、国及び地方公共団体は、幼児の健やかな成長に資する良好な環境の整備その他適当な方法によって、その振興に努めなければならない。
(社会教育)
第十二条  個人の要望や社会の要請にこたえ、社会において行われる教育は、国及び地方公共団体によって奨励されなければならない。
2  国及び地方公共団体は、図書館、博物館、公民館その他の社会教育施設の設置、学校の施設の利用、学習の機会及び情報の提供その他の適当な方法によって社会教育の振興に努めなければならない。
(学校、家庭及び地域住民等の相互の連携協力)
第十三条  学校、家庭及び地域住民その他の関係者は、教育におけるそれぞれの役割と責任を自覚するとともに、相互の連携及び協力に努めるものとする。
(政治教育)
第十四条  良識ある公民として必要な政治的教養は、教育上尊重されなければならない。
2  法律に定める学校は、特定の政党を支持し、又はこれに反対するための政治教育その他政治的活動をしてはならない。
(宗教教育)
第十五条  宗教に関する寛容の態度、宗教に関する一般的な教養及び宗教の社会生活における地位は、教育上尊重されなければならない。
2  国及び地方公共団体が設置する学校は、特定の宗教のための宗教教育その他宗教的活動をしてはならない。
第三章 教育行政
(教育行政)
第十六条  教育は、不当な支配に服することなく、この法律及び他の法律の定めるところにより行われるべきものであり、教育行政は、国と地方公共団体との適切な役割分担及び相互の協力の下、公正かつ適正に行われなければならない。
2  国は、全国的な教育の機会均等と教育水準の維持向上を図るため、教育に関する施策を総合的に策定し、実施しなければならない。
3  地方公共団体は、その地域における教育の振興を図るため、その実情に応じた教育に関する施策を策定し、実施しなければならない。
4  国及び地方公共団体は、教育が円滑かつ継続的に実施されるよう、必要な財政上の措置を講じなければならない。
(教育振興基本計画)
第十七条  政府は、教育の振興に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、教育の振興に関する施策についての基本的な方針及び講ずべき施策その他必要な事項について、基本的な計画を定め、これを国会に報告するとともに、公表しなければならない。
2  地方公共団体は、前項の計画を参酌し、その地域の実情に応じ、当該地方公共団体における教育の振興のための施策に関する基本的な計画を定めるよう努めなければならない。
第四章 法令の制定
第十八条  この法律に規定する諸条項を実施するため、必要な法令が制定されなければならない。
   附 則 抄
(施行期日)
1  この法律は、公布の日から施行する。

*2-2:http://www.inaco.co.jp/isaac/shiryo/kyoiku_chokugo.htm
敎育ニ關スル勅語(全文)
 朕惟フニ我カ皇祖皇宗國ヲ肇ムルコト宏遠ニ徳ヲ樹ツルコト深厚ナリ我カ臣民克ク忠ニ克ク孝ニ億兆心ヲ一ニシテ世々厥ノ美ヲ濟セルハ此レ我カ國體ノ精華ニシテ敎育ノ淵源亦實ニ此ニ存ス爾臣民父母ニ孝ニ兄弟ニ友ニ夫婦相和シ朋友相信シ恭儉己レヲ持シ博愛衆ニ及ホシ學ヲ修メ業ヲ習ヒ以テ智能ヲ啓發シ徳器ヲ成就シ進テ公益ヲ廣メ世務ヲ開キ常ニ國憲ヲ重ジ國法ニ遵ヒ一旦緩急アレハ義勇公ニ奉シ以テ天壌無窮ノ皇運ヲ扶翼スヘシ是ノ如キハ獨リ朕カ忠良ノ臣民タルノミナラス又以テ爾祖先ノ遺風ヲ顯彰スルニ足ラン
斯ノ道ハ實ニ我カ皇祖皇宗ノ遺訓ニシテ子孫臣民ノ倶ニ遵守スヘキ所之ヲ古今ニ通シテ謬ラス之ヲ中外ニ施シテ悖ラス朕爾臣民ト倶ニ拳々服膺シテ咸其徳ヲ一ニセンコトヲ庶幾フ
明治二十三年十月三十日
御名御璽

教育勅語の読み
朕(ちん)惟(おも)フ(う)ニ 我(わ)カ(が)皇祖(こうそ)皇宗(こうそう) 國(くに)ヲ肇(はじ)ムルコト宏遠(こうえん)ニ 德(とく)ヲ樹(た)ツルコト深厚(しんこう)ナリ
我(わ)カ(が)臣民(しんみん) 克(よ)ク忠(ちゅう)ニ 克(よ)ク孝(こう)ニ 億兆(おくちょう)心(こころ)ヲ一(いつ)ニシテ 世(よ)世(よ)厥(そ)ノ美(び)ヲ濟(な)セルハ 此(こ)レ我(わ)カ(が)國體(こくたい)ノ精華(せいか)ニシテ 教育(きょういく)ノ淵源(えんげん)亦(また)實(じつ)ニ此(ここ)ニ存(そん)ス
爾(なんじ)臣民(しんみん) 父母(ふぼ)ニ孝(こう)ニ 兄弟(けいてい)ニ友(ゆう)ニ 夫婦(ふうふ)相(あい)和(わ)シ 朋友(ほうゆう)相(あい)信(しん)シ(じ) 恭儉(きょうけん)己(おの)レヲ持(じ)シ 博愛(はくあい)衆(しゅう)ニ及(およ)ホ(ぼ)シ 學(がく)ヲ修(おさ)メ 業(ぎょう)ヲ習(なら)ヒ(い) 以(もっ)テ智能(ちのう)ヲ啓發(けいはつ)シ 德噐(とくき)ヲ成就(じょうじゅ)シ 進(すすん)テ(で)公益(こうえき)ヲ廣(ひろ)メ 世務(せいむ)ヲ開(ひら)キ 常(つね)ニ國憲(こくけん)ヲ重(おもん)シ(じ) 國法(こくほう)ニ遵(したが)ヒ(い) 一旦(いったん)緩急(かんきゅう)アレハ(ば) 義勇(ぎゆう)公(こう)ニ奉(ほう)シ(じ) 以(もっ)テ天壤(てんじょう)無窮(むきゅう)ノ皇運(こううん)ヲ扶翼(ふよく)スヘ(べ)シ 是(かく)ノ如(ごと)キハ 獨(ひと)リ朕(ちん)カ(が)忠良(ちゅうりょう)ノ臣民(しんみん)タルノミナラス(ず) 又(また)以(もっ)テ爾(なんじ)祖先(そせん)ノ遺風(いふう)ヲ顯彰(けんしょう)スルニ足(た)ラン
斯(こ)ノ道(みち)ハ 實(じつ)ニ我(わ)カ(が)皇祖(こうそ)皇宗(こうそう)ノ遺訓(いくん)ニシテ 子孫(しそん)臣民(しんみん)ノ倶(とも)ニ遵守(じゅんしゅ)スヘ(べ)キ所(ところ) 之(これ)ヲ古今(ここん)ニ通(つう)シ(じ)テ謬(あやま)ラス(ず) 之(これ)ヲ中外(ちゅうがい)ニ施(ほどこ)シテ悖(もと)ラス(ず) 朕(ちん)爾(なんじ)臣民(しんみん)ト倶(とも)ニ 拳拳(けんけん)服膺(ふくよう)シテ 咸(みな)其(その)德(とく)ヲ一(いつ)ニセンコトヲ庶(こい)幾(ねが)フ(う)
明治二十三年十月三十日
御名(ぎょめい) 御璽(ぎょじ)

*2-3:http://digital.asahi.com/articles/ASK385H5KK38UTFK00M.html (朝日新聞 2017年3月8日) 稲田氏「教育勅語の精神、取り戻すべきだと今も思う」
 稲田朋美防衛相は8日の参院予算委員会で、天皇を頂点とする秩序をめざし、戦前の教育の基本理念を示した教育勅語について、「日本が道義国家を目指すというその精神は今も取り戻すべきだと考えている」と述べた。社民党の福島瑞穂氏に答えた。学校法人「森友学園」が運営する幼稚園で教育勅語を素読させていることに文部科学省が「適当ではない」とコメントしたことについて、稲田氏は2006年10月の月刊誌で「文科省の方に『教育勅語のどこがいけないのか』と聞きました」と擁護していた。福島氏は「今もこの考えを変えていないのか」と問うた。稲田氏は「教育勅語の精神である日本が道義国家を目指すべきであること、そして親孝行だとか友達を大切にするとか、そういう核の部分は今も大切なものとして維持をしているところだ」と述べた。福島氏が、教育勅語が終戦後の1948年に衆参両院が排除・失効の確認を決議していることを指摘すると、「教育勅語自体が全く誤っているというのは私は違うと思う」と反論。三重県の私立高校を例に挙げて、「今も教育勅語の碑を校庭に置き、父母の日に教育勅語を全部写させている学校もある」と述べた。福島氏から「教育勅語が戦前、国民の道徳の規範になって問題を起こしたという意識はあるか」と問われると、「そういうような一面的な考え方はしていない」と答えた。稲田氏は2月23日の衆院予算委員会でも民進党の辻元清美氏から教育勅語に対する考え方を問われ、「教育勅語の中の親孝行とかは良い面だ。文科省が言う、(教育勅語を)丸覚えさせることに問題があるということはどうなのかと思う。どういう教育をするかは教育機関の自由だ」と答えていた。

*2-4:http://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-461489.html (琉球新報社説 2017年3月16日) 全学徒隊の碑 「強制動員」の歴史忘れまい
 糸満市摩文仁の平和祈念公園内に「全学徒隊の碑」が建立された。今から72年前、県内21の中等学校、師範学校などの生徒(学徒)が沖縄戦に動員され犠牲になった事実を伝える。沖縄に配備された日本軍の任務は、沖縄を守り抜くことではなく、米軍を一日でも長く引きつけて「出血消耗」させ、日本本土への攻撃を遅らせることだった。そのために少年少女たちは半ば強制的に動員され、約半数が命を落とした。学徒隊として「ひめゆり」や一中、二中、師範の鉄血勤皇隊が知られるが、その他の学徒隊はあまり知られていない。全学徒隊の碑の建立を機に、改めて沖縄戦の実相を明らかにし後世に伝える重要性を確認したい。動員された学徒のうち、男子は14歳から19歳で、上級生は「鉄血勤皇隊」に、下級生は「通信隊」に編成された。女子は15歳から19歳で、主に負傷兵の看護活動に当たった。正確な数字は不明だが、ひめゆり平和祈念資料館によると、男女1900人以上が動員され981人が死亡した。男子学徒の動員は「志願」という形を取っているが、結果的に強制だった。米軍押収史料によると、軍が県と覚書を交わして、14歳以上の生徒の名簿をあらかじめ軍に提出させていた。その名簿に基づいて3月末、有無を言わせず学徒たちを召集し、2等兵として従軍させた。女子生徒の動員に対し、県は抵抗したが軍に押し切られた。軍の強制とはいえ、県が軍に協力した事実を忘れてはならない。爆薬を背負って米軍戦車めがけて自爆することを命令された学徒もいる。刀や手りゅう弾だけで敵に向かっていく斬り込みも命じられた。命を武器として扱う特攻である。学徒の犠牲は日本軍が首里の司令部を放棄して南部撤退後に多くなる。米軍が迫って来た6月上旬~下旬、学徒隊ごとに解散命令が出た。周りを米軍に囲まれ、砲弾が降り注ぐ中、逃げ惑い、悲惨な最期を遂げた。沖縄戦は終わったが、今でも世界の紛争地には多くの少年たちが徴兵・徴用されている。今回建立された碑は、沖縄戦の実相を伝えると同時に、子どもの生命を脅かし夢と希望を奪う行為を許してはならない-というメッセージを発信する場となってほしい。


PS(2017年3月20日追加):*3によると、昭恵夫人は「寄付した記憶は全くない」と話しておられるそうだが、「記憶がない」という言葉は、「①寄付したが言わない」「②寄付したかも知れないが忘れた」「③寄付していない」のどの場合にも使うことができ、これまで①の場合に使う人が多かったため、かえって疑いが濃くなる。そのため、寄付したことを明確に否定するか、寄付したのならその理由を明確に説明するのがよいだろう。いずれにしても、夫人であって首相本人ではない。

*3:http://mainichi.jp/articles/20170317/k00/00e/040/219000c (毎日新聞 2017年3月17日) 昭恵夫人が100万円の寄付否定
 菅義偉官房長官は17日午前の記者会見で、大阪市の学校法人「森友学園」の籠池(かごいけ)泰典理事長が発言した「安倍晋三首相から昭恵夫人を通じて100万円の寄付を受けた」との事実を否定した。「安倍事務所を通じて夫人に確認したところ、領収書等の記録もなく、夫人個人としても寄付は行っていないということだった」と述べた。衆院予算委員会は17日昼、籠池氏の証人喚問を23日に行うことを全会一致で議決した。参院予算委も同じく23日の喚問を議決した。政府関係者によると、昭恵さんは「寄付した記憶は全くない」と話している。籠池氏が寄付を受けたと主張した2015年9月の昭恵さんの講演に同行した政府職員も「寄付をするような場面はなかった」と証言しているという。菅氏は証人喚問について「国会でお決めになることだ。政府は説明を丁寧に行っていくことに尽きる」と述べた。証人喚問は12年4月、AIJ投資顧問の年金消失問題で同社社長(当時)に行って以来。自民、公明両党は17日午前、幹事長らが国会内で会談し、証人喚問を行う方針を確認した。自民党の二階俊博幹事長は記者会見で、16日の参院予算委の視察で籠池氏が首相の寄付に言及したことについて「物事をはっきりしてもらいたい。首相とああいう人(籠池氏)を一緒にしないでもらいたい」と語った。証人喚問は出頭を拒否したり虚偽答弁をしたりすれば、議院証言法に基づき罪に問われる。与党は籠池氏の真意をただす必要があると判断。野党も応じた。民進党の蓮舫代表は党会合で「首相が侮辱されたから国会に招くのではない。国有地が首相の知人に不当に払い下げられたのではないか。この視点を間違えてはいけない」と語った。森友学園の民事訴訟に出廷していたことを認めた稲田朋美防衛相は「しっかり事実関係、真実を話してほしい」と発言。籠池氏が言及した首相の寄付に関して「全く承知していない」と語った。


PS(2017年3月23日追加):話は変わるが、*4のように、学童保育を高齢者の介護施設に併設すると、子どもは高齢者から勉強や遊び方、昔話、高齢者のやさしさなどを教えてもらうことができ、高齢者は子どもの元気を分けてもらうことができるので、お互いによいと思われる。

*4:https://www.agrinews.co.jp/p40429.html (日本農業新聞 2017年3月22日) 福祉施設に併設 子育て 地域ぐるみ 熊本・JAくま 直営学童保育
 熊本県のJAくまが、中山間地域のあさぎり町で学童保育(学童)の運営に乗り出している。既存の施設が人手不足や採算性の悪さで維持が難しくなったため、JAが手を挙げた。学童をJAの高齢者介護施設に併設し、両施設で人員を融通することで安定的な経営を実現した。保護者や地元行政から喜ばれており、専門家は「地域に根差す取り組み。JA直営は全国的にも珍しい」と指摘する。


PS(2017年3月24日追加):昨日の参院及び衆院予算員会で籠池氏の証人喚問を聞き、①西田議員(自民党、税理士)の質問で、籠池氏が8億円程度の資金不足だったこと ②竹谷議員(公明党、公認会計士)の質問で、籠池氏が真実のみを回答しているわけではないこと がよくわかった。さらに、現在、焦点となっている「昭恵夫人が100万円の寄付をしたか」については、国会議員は悪意で何を言われるかわからないので、必ず秘書等と一緒に人(メディアも含む)と会うようにしており、昭恵夫人の場合も人払いをしたというのは嘘だと思われる。
 また、*5の籠池氏が国有地の借地権延長に関して谷氏に手紙を出した回答のFaxは、昭恵夫人は電話がかかってきた時に出ておらず、夫人担当の政府職員が調べて0回答したもので瑕疵はないように見える。国会議員(夫人も)はこういうことを陳情する支持者に明確に断るとカドがたつため、こういう曖昧な断り方をすることがあり、これは断っている態度だ。しかし、その後、ゴミが埋まっていたとして8億円値引きして国有地が売却され、学校建設のために足りなかった費用の埋め合わせができており、籠池氏は「職員の働き掛けで物事が動いた」と証言している。もし、首相や昭恵夫人が何も言わないのに勝手に“忖度(そんたく)”したのなら、国民の財産を自分の出世ために安売りしたのであるため財務省担当者に責任があり、もし首相の指示があって物事が動いたのなら首相の責任になる。

 
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 毎日新聞    朝日新聞                     朝日新聞  

(図の説明:籠池氏は「ゴミの除去は建物の下のみやった」と述べているが、本当にゴミがあったのなら運動場の方が子どもへの影響が大きいため重大だ。また、国の査定額と大阪府私学審議会への報告の差額は8億円程度であり、8億円の土地値引きがあると資金繰りに整合性が出る)

*5:http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2017032301001653.html (東京新聞《共同》 2017年3月23日) 森友、昭恵夫人の担当職員関与 財務省に照会、菅氏は影響否定
 菅義偉官房長官は23日の記者会見で、大阪市の学校法人「森友学園」の国有地払い下げ問題に絡み、学園理事長の退任意向を表明している籠池泰典氏の問い合わせに対し、安倍昭恵首相夫人を担当する政府職員が回答した2015年のファクスを公表した。ファクスは国有地に関し財務省に問い合わせ、結果を昭恵夫人に報告したと明記した。籠池氏は同日の衆院予算委員会の証人喚問で職員の働き掛けで「物事が動いた」と証言した。菅氏は昭恵夫人の関与や照会の影響を否定した。森友学園が小学校建設を計画した国有地を評価額よりも8億円安く取得した問題を巡り、昭恵夫人側の関与が明らかになった格好だ。


PS(2017.3.28追加):監査経験のある公認会計士の目で見ると、財務省は定期借地権の延長や借地料の値下げは(影響が長期に及び、関係者が多数になるため?)できず、売買に切り替えてゴミ撤去費用の名目で8億円値引きし、周辺の地価と比べて9割安の条件で土地を売却したというシナリオが矛盾が最も少ない。しかし、その際には、①新年度予算のうち他の兆円単位、1000億円単位の無駄遣いと比較して大きいか否か ②学校用地として8億円値引きして払い下げるのは不適切か ③経産省や財務省への政治家の指示があったか否か などが問題となる。
 私は、①については、8億円でも無駄遣いはやめて欲しいが、財務省や国会議員は、他の兆円単位や1000億円単位の無駄遣いを野放しにして、国民の生命線である福祉を削ったり、消費税を上げなければ財源がないなどとは決して言って欲しくない。また、②については、教育基本法第八条に、「私立学校も助成その他の適当な方法で私立学校教育の振興に努める」と規定されているため、よい学校への土地の低廉譲渡は違法ではないが、森友学園の場合は教育勅語をバイブルとし、籠池理事長が証人喚問で「皇国日本に役立つ国民を育てる」と連呼するなど、民主主義や主権在民を無視した教育を行う人であるため、そもそも認可したり優遇したりすべき学校ではなかったのだと考える。そして、③については、政治家の指示があったか否かは不明だが、このような学校に関わってその教育方針を褒めちぎっていたことについては、やはり昭恵夫人や安倍首相の感性に疑問を感じざるを得ない。
 そのため、この土地は、豊中市か大阪府か国が建物とともに買い、建物は他の学校にするとか、避難所にするなど、他の有意義な使い方をするのがよいと思われる。

*6:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12863223.html
(朝日新聞社説 2017年3月28日)森友と財務省 納税者を甘く見るな
 森友学園(大阪市)を巡る様々な問題について国会で激しい論戦が続くなか、国の新年度予算が成立した。与党からは「次のステージに向かう時だ」との声があがり、幕引きを急ごうとする動きが見られる。とんでもない。学園の籠池(かごいけ)泰典氏の証人喚問を経ても疑惑は晴れない。安倍首相夫人の昭恵氏や昭恵氏付の政府職員の行動が、学園への異例づくしの国有地売却などに影響したのか、事実関係の徹底解明が不可欠だ。見過ごせないのは、取引の経緯を詳しく説明しようとしない財務省の姿勢である。国有地の売却ではその金額を原則公表してきたのに、森友側との取引では伏せた。財務省近畿財務局によるこの異例の対応が一連の疑惑の発端になった。遊休国有地の取引は売買が主流なのに、定期借地契約を認めた。その後売買に切り替えたが、ゴミ撤去費用を巡る不明朗な見積もりを経て、周辺の地価と比べて9割安という破格の条件になった。財務省は「適正に処理した」と繰り返す。交渉記録は廃棄したから残っていない。法令違反はない。関係者への聞き取り調査はしていない――。最近になって一部の調査結果を公表したが、自分たちが正しいから信じろと言わんばかりだ。国会では当時の理財局長と近畿財務局長の参考人招致が実現したが、「報告がなかった」「政治的配慮はしていない」との発言にとどまった。財務省の仕事は、国有財産の管理と不要な資産の処分にとどまらない。税制を考え、それに基づいて税金を徴収し、予算案として配分を練るという政府の仕事の中核を担っている。そうした役割は納税者・国民の理解と納得に支えられている。財務省を含む政府の説明が明らかに足りないと考える人が多数を占める現状に、危機感はないのだろうか。ただちに関係者から話を聞き、誰がどう動いたかを再現して、国会で説明するべきだ。自ら調べる意思がないのなら、第三者に任せるしかない。土地の売却契約の成立から1年もたたずに記録を廃棄したとしているのも適切でない。内規に基づく措置だというが、内規自体が情報公開を充実させる基本に反していることを自覚し、猛省しなければならない。かたくなな財務省は何を心配しているのだろう。自らの組織の防衛か、森友問題で浮上した政治家への配慮なのか。納税者の目は厳しい。甘く見れば必ずしっぺ返しがある。


PS(2017年3月28日追加):「安倍首相の妻昭恵氏が公人か私人か」については、私は公人として報酬をもらっていない以上、私人だと考える。これに対し、①首相の外遊への同行など首相の公務遂行を補助する活動を行っている ②夫人付き職員が首相関連の公的活動を支援するために配置されている 等の理由で公人だという主張があるが、①については、首相夫人は選挙で選ばれた議員ではなく、首相の外交にプラスαの付加価値をつけるため無償で行っている内助の功にすぎないため、公人と考えるべきではないだろう。また、②については、配置されている夫人付き職員は報酬をもらってプロの仕事をしているので公人だが、夫人は無償で内助の功をしているにすぎないため、公人ではないだろう。そして、仮に配偶者が公人であるとすれば、配偶者にも報酬を支払うべきであり、その職務に耐えうる配偶者を持っている人でなければ首相になることはできないため、変なことになる。つまり、何でも政治家に不都合なように拡大解釈してケチをつけると常識外れになり、むしろ支持率が下がるのだ。

*7:http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201703/CK2017032802000108.html (東京新聞 2017年3月28日) 【政治】「昭恵氏は私人」に野党が異議 首相夫人付き職員が「職務外」の照会報告
 学校法人「森友学園」に国有地が格安で払い下げられた問題で、安倍晋三首相の妻昭恵氏が、公人か私人かが問われている。首相は昭恵氏を「私人」と主張し証人喚問を拒否している。だが、学園に関連して、首相夫人付き職員が本来の職務を超えて対応している実態をみると、昭恵氏が「私人」との主張には疑問符が付く。 政府によると、夫人は公務員ではないが、首相外遊への同行など「首相の公務遂行を補助する活動」を行う。夫人付き職員は、首相に関連した公的活動を支援するため配置されている。第一次安倍政権で昭恵氏に初めて配置され、その後一人だったが、第二次安倍政権で常勤、非常勤で計五人に増員された。学園の籠池(かごいけ)泰典氏の依頼で、夫人付き職員が財務省に問い合わせてファクスで回答したことについて、菅義偉官房長官は二十七日の参院予算委員会で、夫人とは関係ない職務外の行為であり、「職員個人の行為」だと強調した。さらに、土生(はぶ)栄二内閣審議官は「職務ではなく『国民の方』の問い合わせに対する公務員としての『丁寧な対応』」と説明した。しかし、職員は昭恵氏に照会や回答について報告。そのことを籠池氏にも伝えている。民進党の白真勲氏は同委員会で「詭弁(きべん)だ」と反発した。職員は、昭恵氏が学園系列の幼稚園で講演し、小学校の名誉校長になった際に「連絡・調整が必要になる場合に備えて」同行した時に籠池氏と面識を持ったとみられる。職員が昭恵氏に報告したのは、籠池氏との関係を知っていたからだ。首相夫人付き職員は学園での講演のように、昭恵氏の私的な行為にも同行している。「夫人は公務員ではないから公人ではない」との説明には野党から批判が出ている。


PS(2017年3月31日、4月4日追加):*8-1に、「政府は、憲法や教育基本法等に反しない形で教育勅語を教材として用いることは否定されないと閣議決定した」と書かれているが、*2-2の最後には、「教育勅語に書かれていることは、天皇のためだけでなく、祖先の遺した文化であり、この道徳は皇祖・皇宗の遺訓であって子孫・臣民が倶に遵守すべきだから、古今に通じて護らなければならない」と記載されている。そのため、それなら、このどこを憲法や教育基本法等に反しない形で教材として利用できるのかを明示すべきだ。私自身は、教育勅語は日本史や文化人類学の教科書で教えることができるにすぎず、民主主義の下で日進月歩しており、古今で決して同じではない人類の生活様式やそれに基づく考え方とは相いれない。さらに、日本史や世界史は、「古事記や日本書紀等の文書に残されていないから、そういう事実はなかった」とするような非科学的な史実ではなく、地理学・遺伝学・考古学・行動学・社会学・比較文化等のあらゆる手法を駆使して、人類の誕生・気候変動・地殻変動・人類の地球上での拡散・それに伴って起こった戦争や文化の拡散などを、体系的かつ矛盾なく明らかにすべき時に来ており、現在の科学は既にその手法を持っている。そして、そうすることによって歴史は暗記科目ではなく筋の通った科学にすることができ、その中で、実験することが不可能な人間の行動や社会現象は過去の歴史を見れば過去にも似たようなことが起こっていて参考になることがあるわけだ。
 なお、*8-2の4月4日の記事に書かれているように、松野文科相は、「(教育勅語の)どの部分が憲法に反する、反しないに関して文科省は判断しない」として判断基準を明示しなかったそうだが、それなら文科省は教科書検定も行うことができない筈だ。しかし、本当は、(首相の問題と言うより)自民党の党是であり自民党のDNAと言われる自民党憲法改正草案(①天皇元首制 ②日本国民→日本国への変更 ③基本的人権の制限 等)や特定秘密保護法、共謀罪、安保法制と、この教育勅語復活論は考え方が同根で、下位の法律からのなし崩し的憲法改悪であるため、関連付けて考えるのがポイントである。

   
   教育勅語の排除・失効   稲田大臣の答弁  2017.3.31、2017.4.4朝日新聞

*8-1:http://digital.asahi.com/articles/ASK3045LBK30ULFA00Q.html?iref=comtop_8_01 (朝日新聞 2017年3月31日) 教育勅語、教材で用いること否定せず 政府が答弁書
 政府は31日、戦前・戦中の教育勅語を学校教育で使うことについて、「勅語を我が国の教育の唯一の根本とするような指導を行うことは不適切である」としたうえで、「憲法や教育基本法等に反しないような形で教材として用いることまでは否定されることではない」との答弁書を閣議決定した。民進党の初鹿明博衆院議員の質問主意書に答えた。勅語については、太平洋戦争後の1948年、衆参両院が排除・失効の確認を決議している。また、稲田朋美防衛相が国会答弁で「親孝行や友達を大切にするとか、そういう(勅語の)核の部分は今も大切なもの」と述べたことの是非について、答弁書は「政治家個人としての見解」とし、政府としての見解を示さなかった。

*8-2:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12875229.html
(朝日新聞 2017年4月4日) 教育勅語、説明避ける内閣 教材で使用認める閣議決定
 戦前・戦中に道徳や教育の基本方針とされた「教育勅語(ちょくご)」を教材で使うことを認めた政府答弁書の閣議決定について、安倍内閣が詳しい説明を避けている。学校法人「森友学園」(大阪市)への国有地売却問題を追及されるなか、教育勅語が注目されるきっかけをつくった稲田朋美防衛相も口を閉ざした。
■判断基準、文科相明示せず
 3日の衆院決算行政監視委員会。共産党の宮本徹氏は、「教育勅語の中で憲法に反しない部分は1カ所でもあるのか」と政府の見解を問うた。先月31日に安倍内閣が閣議決定した政府答弁書は、過去に国会が排除・失効の確認を決議した教育勅語を「憲法や教育基本法等に反しないような形」で教材として使うことを認めたからだ。使用を認めるのであれば、政府として具体的な判断基準を示す必要があるが、松野博一文部科学相は「(教育勅語の)どの部分が憲法に反する、反しないに関しての判断を文部科学省でするものではない」と解釈を避けた。そのうえで「教え方がポイントだ。我が国の歴史について理解を深める観点から教材として用いることは問題がない」と説明した。菅義偉官房長官も3日の記者会見で、教育勅語の本質や戦争中に教育勅語が果たした役割を問われたが、「法制上の効力は喪失している」と繰り返し、教材として教育現場で使うことは問題ないとの立場を強調。「教育勅語を我が国の教育の唯一の根本となるような指導を行うことは不適切だ」とする一方で、親孝行や夫婦仲良くといった徳目は評価する見方を示した。政権を支持する保守層には、教育勅語を評価する声が少なくない。記者たちから「教育勅語の内容を評価すると、戦前の否定をあいまいにすることになるのではないか」と問われると、「あいまいにしていないじゃないですか。法制上の効力は完全に消滅している」と、声を荒らげた。
■森友巡る防衛相答弁端緒
 論争のきっかけは、森友学園への国有地売却問題を追及された稲田氏の答弁だった。
 稲田氏は、教育勅語を幼稚園児に素読させている学園の教育方針を2006年の雑誌の対談で評価していた。2月23日の衆院予算委員会や3月8日の参院予算委でこの考え方を問われ、「教育勅語に流れているところの核の部分は取り戻すべきだ」などと発言した。稲田氏の一連の発言を受けて質問主意書を出し、今回の政府答弁書を引き出した民進党の初鹿明博氏は、「教育勅語の核は(天皇中心の)神話的国体観であり、それに閣僚が賛意を示すことは国際社会に疑念を与えてしまう」と話す。文科省によると、教育勅語の学校現場での使われ方に言及した答弁書は今回が初めて。作成に関わった同省生涯学習政策局政策課は「意図的に踏み込んで言ったわけではない。明治時代に出されたことを教えることまで禁止できないことを表現するためにあの書き方になった」と説明する。これに対して、共産の小池晃書記局長は3日の会見で、「ひとたび事が起これば天皇のため命を捧げるという教育勅語の根本は戦後、憲法や当時の教育基本法に反するから排除された。いいところがあるから使おうと閣議決定するところに、安倍政権の危険な姿勢が表れている」と批判した。共産の宮本氏はこの日の衆院決算行政監視委で、海上自衛隊OBらがつくる「水交会」の行事に海自幹部が出席するなか、森友学園の幼稚園児たちが教育勅語を唱和していたとも指摘。「おかしいと思う幹部はいなかったのか」とただした。稲田氏は「部外の団体主催の行事の内容について、防衛省としてお答えする立場にはない」と述べ、具体的な回答を避けた。


PS(2017年4月4日追加):教育勅語は、「天皇の臣民である日本国民が、心を一つにして忠孝に励むのが教育の目的である」としている。そのため、それを校是としている学校を認可するのは、いくら私学に入ってきてもらいたいといってもいかがなものかと考える。何故なら、それぞれの段階の教育は、その人にとっては一生に一度しか受けられないやり直し不可能なものであるため、単なる煩雑な手続ならともかく、教育の内容や質については、規制緩和すればよいというものではないからだ。
 なお、私は、先日、夫の学会(癌やバイオテクノロジーが中心で、これに関しては後で詳述する)に同伴してスペインに行き、マドリッドのプラド美術館とバルセロナのピカソ美術館・ミロ美術館に寄ってきたが、幼稚園から高校までの生徒が先生に引率されてひっきりなしに来ており、絵の前で説明を受けたり、ディスカッションしたり、あらかじめ配布された用紙に答えを書いたりしていたのに感心した。私は、このように広い裾野の生徒にセンスのよい創造力を身につけさせるため本物を見せる教育こそ、単純労働はロボットに置き替えられる時代の人間にとって必要不可欠だと考える。何故なら、そういう基礎があって初めて、部屋・レストランのコーディネートや服・カバン・靴・家電のデザインで、思わぬ色や形を組み合わせながら、センスのよさが光っているのだからである。

    
     教育勅語     籠池氏経営、塚本幼稚園の教育  松井大阪府知事の話 
 
*9:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12875189.html
(朝日新聞社説 2017年4月4日) 森友学園問題 大阪府も解明に全力を
 学校法人・森友学園の問題では、小学校の設置認可をめぐる様々な疑問も未解明のままだ。学園側の申請に対し、大阪府私学審議会には多くの異論があったのに、なぜ「認可適当」と答申したのか。学校用地に関する財務省と府の言い分も大きく食い違う。政府をチェックする国会はもちろん、認可に責任をもつ府も徹底調査すべきだ。学園が府に認可を申請したのは14年10月。同年12月の府私学審では、「永続的に小学校を運営できるか疑問」「思想教育のような部分がある」などの指摘が噴出した。だが翌年1月に臨時に開かれた審議会は、「進捗(しんちょく)状況を報告させる」という条件つきで、認可適当とした。府私学審の梶田叡一会長は先月の府議会で「学園が用地を取得する前に、認可の審議に入ったのは極めて異例だった」としたうえで、府が認可の見通しを出せば、国(近畿財務局)の審議会で森友側に国有地が渡る「確約があった」と語った。疑義に目をつむって、府と財務局が認可の流れを作ったように受け取れる。公平な審査がなされたのか、大いに疑問だ。松井一郎知事も会見で、「国から『認可の見込みと発表してくれ』と言われた」と、国側の要請があったことを認めた。しかし財務省は否定する。両者で責任を押しつけあっていては、らちが明かない。双方が公の場で詳細を語るしかない。府議会では、この問題のための百条委員会の設置案が否決された。自民の提案に、大阪維新の会と公明が反対した。維新の会代表の松井知事は賛意を示していたのに、理解に苦しむ。反対理由は「まず参考人招致をするのが筋」だった。ならば速やかに財務省や大阪航空局の担当者を招き、府議会として事実関係をただすべきだ。理事長を退いた籠池(かごいけ)泰典氏は国会の証人喚問で、協力を求めた複数の議員名をあげた。中には自民や維新の元府議もいる。真相にどこまで迫れるか、府議会の本気度が問われる。知事は、安倍昭恵氏が小学校の名誉校長だったことに触れ、「役所組織みんなでおもんぱかったのだろう」と語った。公正であるべき行政手続きを逸脱しなかったか、検証する必要がある。昭恵氏が名誉校長に就任したのは15年9月。14年12月にも、学園が運営する幼稚園で講演している。まさに府が認可を審査していた時期だ。府は補助金不正受給の疑いで幼稚園を調査したが、それ以外にも明らかにすべき点は多い。幕引きモードは許されない。


PS(2017.4.15追加):*8-1のように、教育勅語の教材化を否定しないことを閣議決定した上、*10のように、ヒトラーの「わが闘争」の教材使用を可能とする政府答弁書を出すなど、この頃、内閣はどうかしている。なお、歴史としてなら、これまでも日本史や世界史で教えており、わざわざ閣議決定をしたり、政府報告書を出したりする必要はない。

*10:http://www.jiji.com/jc/article?k=2017041401032&g=pol (時事ドットコム 2017.4.14) 「わが闘争」の教材使用可能=政府答弁書
 政府は14日の持ち回り閣議で、ナチス・ドイツの独裁者ヒトラーの自伝的著書「わが闘争」の教材使用について、「教育基本法等の趣旨に従っていること等の留意事項を踏まえた有益適切なものである限り、校長や学校設置者の責任と判断で使用できる」とする答弁書を決定した。民進党の宮崎岳志氏の質問主意書に答えた。答弁書では、「同書の一部を引用した教材を使用して、執筆当時の歴史的な背景を考察させる授業が行われている例がある」と紹介。その上で、「仮に人種に基づく差別を助長させる形で使用するならば、同法等の趣旨に合致せず、不適切であることは明らかだ」と指摘し、そうした指導があった場合は「所轄庁や設置者において厳正に対処すべきものだ」としている。

| 教育・研究開発::2016.12~ | 11:23 AM | comments (x) | trackback (x) |
2017.3.10 東芝・三菱重工・日立の原発による損失と原発の手終い方 - まず日本が再稼働せずに直ちに脱原発し、廃炉・使用済核燃料の処理に取り掛かるべきである (2017年3月11、12、14、15、16、17、20日、4月6、8、12日に追加あり)
  
 事故前後の   2号機の   除染された表土     従来の放射性廃棄物 
福島第一原発  ロボット調査   の野積み            の保存法
      2017.2.10東京新聞  毎日新聞

(図の説明:2号機のロボット調査で毎時650シーベルトの放射線量が観測されたが、2号機は被害が小さかった原発であり、3号機は爆発して放射性物質が噴出しており、その結果、関東まで含む広い範囲が放射性物質で汚染されているのである)


 2015.5.22   軍艦島            池島         池島の坑道
 朝日新聞
(図の説明:高レベル放射性廃棄物の最終処分場は、一番左の図のように地下300メートル以下とされているが、軍艦島や池島の深い坑道なら、水の下で人が近づくこともなく、既に地下がある。そのため、防御をしっかりすれば比較的安価に高レベル放射性廃棄物の最終処分場を作れるのではないだろうか)

(1)東芝・三菱重工・日立の原発による損失について
1)東芝の原発による損失
 東芝は、*1-1、*1-2のように、2017年2月14日に、2016年4~12月期連結決算で、ウェスチングハウス(以下、“WH”と記載)などの原子力事業に7,125億円の損失を計上すると発表したが、これで2015年3月期に計上した2,476億円の損失と合わせて1兆円弱の原子力事業に関わる損失を計上することとなった。しかし、WHが米国の原発4基の完成をあきらめて撤退すると、さらにWHの電力会社への違約金が生じる契約で、その親会社保証が2016年3月末で約7,935億円あるそうだ。

 しかし、「世界でエネルギー事情が変化しても、米国での原発建設を2020年末までに終えなければ、WHが工事費の増加とは別に違約金を負担し、それを親会社の東芝が保証する」という契約は、あまりにも東芝に不利にできており、このような契約を結ぶのは、営業や経営の実力のなさである。そして、このように災害に似たリスクを負う場合は保険をかけるのが通常であるため、保険もかけていなかったとすればお粗末すぎる。

 さらに、2017年3月9日の報道によれば、*1-3のように、建設工事の遅れで今後発生する損失を抑えるため、東芝が米原発子会社WHに米連邦破産法11条の適用を申請する方向で調整に入るそうだが、米国政府がWHの事業に83億ドル(約9,500億円)の債務保証をしていたとしても、契約通り処理して米原発子会社WHを破綻させるのが、誰もが納得できる問題の少ない解決策である。この際、米国民の負担や米政府の反応を気にして、日本政府が日本国民の税金を投入する理由は全くなく、徹底した契約社会で法治国家の米国は、日本政府が言い出さない限り、そのような解決策は期待しないだろう。

2)東芝の半導体事業について
 東芝は、*1-3、*1-4のように、1982年という日本では最も早い時期に超LSI研究所を設置し、クリーンルームに230億円の設備投資をした、半導体では先進的な会社であり、半導体は東芝の中核事業になっていた。にもかかわらず、東芝は、その半導体事業を分社化して設立する新会社の全株式売却も視野に入札手続きを進め、その売却額を1兆5千億〜2兆5千億円と想定しているそうだ。

 しかし、経営者と原発事業部長の判断ミスによる原発損失を半導体事業部など他の事業部の売却等で賄うと、それまでこれらの事業部で小さな製品を作りながら着実に頑張ってきた従業員はたまったものではない。従って、(私が提案してできた)持株会社方式を使って事業部毎に子会社とし、それぞれの事業部を独立採算制にしておけばよかったのだ。また、現在の日本には、(これも私が提案して)連結納税制度もできているため、事業部毎に100%子会社にすれば支払税金は増えず、事業部毎に直面している異なる市場環境で適切な意志決定を迅速に行うことができ、さらに現場から経営者までの階層が短くなるため、情報伝達が容易になった筈なのだ。

 東芝は、2017年1月27日の取締役会で、*1-4のように、半導体メモリー事業を分社化し、それをWHの巨額損失を補填するために売却することを決定した。そのような中で、東芝の半導体メモリー事業が、*1-5のような投資ファンドの餌食にならないためには、売却する相手はシナジー効果の出る他の製造業でもよいが、半導体事業部の有志が出資して銀行借り入れを行い、「東芝メモリー(仮称)」のような独立した会社を作るマネージド・バイ・アウトという方法もある。こうすると、東芝が解体された後で、優良部門だけが集まって東芝を再構築する機会もできる。

3)三菱重工、日立について
 原発で損をしそうなのは東芝だけではなく、*1-6のように、三菱重工業も、66億ドルという巨額の損害賠償請求訴訟を起こされているそうだ。

 また、*1-7のように、日立の子会社は、英国中部に2020年代前半の稼働を目指し、総事業費2兆円超の原発2基を建設するが、受注競争のためにJBICや政投銀が日立の子会社に融資や株式の買い取り支援を行うそうなのだ。ここでも、原発という過去のエネルギーに対して、日本政府が日本国民の金を「兆円」単位で投入しており、その結果が国民負担になるのは目に見えている。

(2)使用済核燃料の最終処分について
 事故を起こしていない原発にも、*2-1のように、使用済核燃料の最終処分という問題がある。九州電力は玄海原発3、4号機(佐賀県玄海町)の再稼働後を見据えて、使用済核燃料の乾式貯蔵施設を建設する敷地内候補地の選定作業に着手し、①まず3号機の貯蔵プールの容量を増強し ②次の段階として原発敷地内での乾式貯蔵施設の新設 を挙げている。

 また、原子力規制委員会は、*2-2のように、水や電気を要しない空冷の保管容器の導入を促すために、原発の使用済核燃料の保管に関する基準を緩和する方針を決めたそうだ。

 しかし、フクイチ事故を見ればわかるように、多量の使用済核燃料を貯蔵していること自体も危険で、乾式貯蔵のように空気の通りがよい場所で保管すれば、空気が汚染される危険性が高いので、使用済核燃料の貯蔵に関しても、少くも30km圏内の近隣住民の同意を要件とすべきだ。

 私自身は、*2-3のように、過去のエネルギーである原発廃棄物の最終処分場の建設やその運営に「3.7兆円+α」を支払うよりは、すでに石炭採掘後の広い地下空間があり、海面下の地下深くで人が近づかず、安全に保管できる長崎県の池島か軍艦島の深い坑道に空冷の保管容器を保存するように整備するのが、過去のエネルギーという点では一致しており、安価で、新しい観光スポットにもなるため、よいと考える。もちろん、島民のうち原発廃棄物の最終処分場建設に伴って移住したい人には、その費用を負担すればよいだろう。

(3)玄海原発再稼働について
 九州電力玄海原発3、4号機の再稼働に関して、佐賀県は、*3-1のように、2月21日に初めての県民説明会を唐津市民会館で開き、唐津市や玄海町だけでなく佐賀県内各地から192人が参加し、会場からは原発の必要性や安全対策を疑問視するなど、再稼働への反対や懸念を示す意見が相次いだそうだ。住民は真剣に考えた上で反対しているのであるため、説明会を単なるプロセスとして形式的に説明会さえ終われば再稼働してもよいなどと考えるべきではない。

 また、*3-2のように、半径30キロ圏外では初めて武雄市文化会館で開かれた説明会には、周辺市町の首長・職員・住民ら117人が参加し、会場から「再生可能エネルギーや蓄電池などの開発に国策を転換して」などの意見が上がったそうだ。再稼働に慎重姿勢の谷口嬉野市長は、エネ庁の法的に地元の同意は必要ないとの明言について、「事故があればわれわれも避難する立場であり、同意を取ってほしい」としており、尤もだ。

 さらに、*3-3のように、原発再稼働に関する佐賀市の住民説明会には234人が参加して不満が噴出したそうだ。原発は、平時でも海水を利用して熱を逃がしているため、「海温め装置」と言われており、漁業環境を変化させて漁獲減に繋がっている。

 原発再稼働に関する佐賀県内4カ所目の県民説明会は、*3-4のように、2月28日に伊万里市民会館で開催され、周辺市町の住民らを含めて388人が参加し、安全性などへの疑問点を質問し、会場からは「福島原発事故の収束や原因究明も終わらない状態で、なぜ再稼働を急ぐのか」「避難訓練が必要なほどのリスクの中で進める理由が分からない」との批判や「再稼働ありきで検討が進んでいる」との不信感も漏れ、使用済核燃料保管の問題や、テロなどでの航空機墜落事故の際の安全対策への疑問が出たそうで、全く尤もである。

 *3-5のように、佐賀県では5会場での県民説明会を終え、国と九電が再稼働の必要性や安全対策に関する紋切り型の説明をしたが、参加者から容認する意見はなく、安全性への不安や必要性への疑問が相次ぎ、九大大学院の吉岡教授(科学史)は、県民の参加状況に関して、「周知不足だけではなく、県の姿勢に期待が持てず『形だけのスケジュールを消化している』と多くの住民が判断したのではないか」と見ているそうだ。

 玄海原発の再稼働に反対する佐賀県内の複数の団体は、*3-6のように、3月9日に説明会を要望し、全市町での県民説明会の開催や再稼働に反対・慎重の意見を持つ専門家の説明会などを佐賀県に求めたそうで、これは必要なことだ。

 また、九電玄海原発3、4号機の再稼働に同意した岸本玄海町長に対しては、*3-7のように、脱原発を訴える市民団体のメンバーが、町役場で抗議して同意撤回を求めている。

(4)リーダーたちの見解
 大震災から6年経過したが、*4-1のように、①原発被災地では今も8万人が避難生活を強いられ ②地域社会の再生は見えず ③除染が終わったと連絡が来ても線量は十分に下がっておらず ④避難指示解除とともに東電が家賃の支払いを停止する のは問題だとして抗議している状況だ。

 原子炉は炉心溶融を起こしたとされているが、それは事実とは思えず、3号機は爆発して核燃料を噴出したというのが正しいだろう。その証拠は、爆発時の映像、ぐにゃりと曲がった鉄骨だけの建物の残骸、「まだわからない」とされている惨状である。そして、東電がロボットを投入した2号機は、1、3号機よりは被害が小さかったが、650シーベルトの放射線量を記録しており、溶け落ちた核燃料を取り出す道筋は見当もつかないのだそうで、その対応の無責任さには呆れるほかない。

 原発の賠償・除染・廃炉等の費用について、経産省は昨年末、総額21.5兆円にのぼるとの見通しを示し、これは従来想定の2倍で、巨額の負担が電気料金や税金として国民にのしかかるが、21.5兆円という金額は年間消費税の8.6%分だ。従って、原発のコストは非常に高く、早々に再稼働なしの脱原発を進めるべきなのである。

 このような中、*4-2のように、日本カトリック司教団は、 2016年11月11日、「地球という共通の家に暮らすすべての人」に向け、「原子力発電の撤廃を―福島原子力発電所事故から5年半後の日本カトリック教会からの提言」と題するメッセージを発表して原発撤廃を呼び掛け、世界のカトリック教会に協力と連帯を要請したそうだ。これは、世界が共通の認識を持つための重要な一歩になる。

 これに先立って、日本仏教の多くの宗派も、*4-3のように、2012年6月26日の段階で原発への反対表明をしており、今後は世界の仏教圏へのアクセスが望まれる。

 政治では、*4-4のように、民進党が3月7日、「原発ゼロ基本法案」の国会提出を明記した政策方針を了承したそうだ。私は、再稼働なしの原発ゼロ実現に向けて、自然再生可能エネルギーの利用を促進し、これまでの原発立地自治体には、他の産業で成り立つ方法を提供するのがよいと考えている。

<東芝・三菱重工・日立について>
*1-1:http://mainichi.jp/premier/business/articles/20170215/biz/00m/010/032000c (毎日新聞 2017年2月17日)「撤退なら違約金8000億円」米原発やめられない東芝
●債務超過に転落(3)
 東芝は2月14日、2016年4~12月期連結決算で、ウェスチングハウスなど原子力事業に関して7125億円の損失を計上すると発表した。15年3月期にもウェスチングハウスで2476億円の損失を計上しており、原子力事業は2年間で9601億円もの損失を出したことになる。ほぼ1兆円という莫大(ばくだい)な損失。2011年の福島第1原発事故以降、原発をめぐる社会環境が一変したことに、東芝の経営陣は目をつぶってきた。そのツケが一気に噴出したのだ。急激な環境変化にもっと早く対応していれば、ここまで大きな損失にはならなかったのではないか。14日の記者会見で、東芝の綱川智社長は、原子力事業について(1)米国4基、中国4基の建設中の原発はあらゆるコストを削減して完成させる(2)原発新設は原子炉供給などに特化し、今後、土木建築工事は受注しない(3)原子力事業の売上高の8割は既存原発の燃料・サービスであり、安定したビジネスとして継続する(4)再稼働、メンテナンス、廃炉事業は継続するーーと説明した。
●新たな損失の可能性は?
1兆円近い損失を出した8基の原発新設で、今後、新たな損失が出ることは本当にないのか。二度あることは三度あるのではないか。もっと抜本的に原発事業を見直さないと、また別の損失が出てくるのではないか。記者の質問はそこに集中した。記者の一人と、綱川社長の会見に同席した畠澤守・常務原子力事業部長との間で次の質疑があった。  記者「海外の原発建設で、今後、東芝のコスト負担は最悪どのくらい出てくると見込んでいるのか」。原子力事業部長「今回発表の損失に見込んだ将来コストの見積もりは、かなり保守的に積み上げた数字だ。将来のコストなので、リスクがないと言えばうそになる。ただ、そのリスクの最小化に努めていく」。記者「現状でまだ見えていないリスクはあり得るのか」。原子力事業部長「我々はこれから(原発の建設に関する)効率改善に取り組むが、それが期待通りにいかないリスクはある。ただ、今の最悪の状態が続く前提で損失額を計上した。改善しないという可能性はゼロではないが、少ないと思っている」
●電力会社への支払い保証
これだけひどい目にあった建設中の原発から、東芝が全面撤退することはできないのか。その手がかりになる事情が、14日に公表された東芝の資料の一番最後にあった。「ウェスチングハウスに対する親会社保証」と書かれた1枚の資料だ。そこには「16年3月期 有価証券報告書の記載額(偶発債務及び保証類似行為)」として「16年3月末 7934億9900万円 ※米国AP1000の客先に対する支払い保証が90%弱」と書かれていた。さらに、「米国AP1000プロジェクトにおいてウェスチングハウスの客先への支払い義務(プロジェクトを完工できなかった場合の損害賠償請求を含む)を履行できなかった場合、東芝はウェスチングハウスの親会社として、客先にこれを支払うことが要求されている」との注記があった。AP1000は、ウェスチングハウスが建設中の原発に導入する予定の新型原子炉だ。客先とは、原発建設をウェスチングハウスに発注した電力会社のことだ。もしいま、ウェスチングハウスが米国の原発4基の完成をあきらめて撤退すると、電力会社に「7934億円」の違約金を支払う義務があるということだ。そして、東芝は親会社としてそれを保証しているのだ。この保証は現時点も続いている。すでに損失1兆円が発生した事業。ここで退けば、さらなる地獄が待っているという状況の一端が、この1枚のペーパーに記されていた。

*1-2:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12832302.html (朝日新聞 2017年3月9日) 東芝、新たな損失恐れ 20年末に税制優遇期限 米原発建設
 東芝が、米国で手がける原発4基の建設工事を2020年末までに終えられなければ、工事費用の増加とは別に、新たな損失が最大数千億円規模で生じる可能性があることが分かった。発注元の電力会社が米政府の税制優遇を受けられなくなり、東芝側に補償を求める公算が大きいためだ。工期を期限ぎりぎりの20年12月まで延長した原発もあり、さらに遅れれば再び大きな損失が出かねない。05年に定められた米政府の税制優遇では、20年末までに運転を開始した新設の原発は、発電量1キロワット時当たり1・8セントを税金から差し引く「税額控除」を8年間受けられる。海外電力調査会などによると、この4基の税額控除は1基当たり最大11億ドル(約1250億円)になる見込み。4基とも間に合わなければ、電力会社は5千億円規模の税制優遇を失う計算で、東芝側が求められる補償も数千億円規模になる可能性がある。東芝の米原発子会社ウェスチングハウス(WH)は先月、原発4基について3度目となる工期延長を電力会社2社に要請。最も遅いサマー3号機は20年12月の完成を見込み、1カ月の遅れも許されない状況だ。WHは4基を08年に受注。13年に工事を始めたが、4年経ったいまも約3割しか終わっていない。世界の原発事情に詳しい環境エネルギー政策研究所の飯田哲也所長は「過去の経緯からみて、さらに工期が遅れる可能性は高い。その際、電力会社が東芝側に補償を求めるのは自然な流れ」と話す。補償を求められる可能性について、東芝は「コメントできない。現在の目標で工事を終わらせるよう努力する」(広報担当)としている。税制優遇を巡っては昨年、地元下院議員が20年末の期限を撤廃する法案を議会に提出したが、廃案になった。今年も同趣旨の法案を提出する動きがあるが、成立するかは不透明な状況だ。

*1-3:http://qbiz.jp/article/105252/1/ (西日本新聞 2017年3月9日) 東芝、WHに米破産法申請で調整 銀行団へ数千億融資要請を検討
 経営再建中の東芝が、米原発子会社ウェスチングハウス・エレクトリック(WH)に米連邦破産法11条の適用を申請する方向で調整に入ったことが9日、分かった。日本の民事再生法に相当する制度を活用し、建設工事の遅れで今後発生する損失を抑える狙いだ。近く最終判断する。WHの事業には米国政府が83億ドル(約9500億円)の債務保証をしている。破産法が適用された場合、米国民の負担が発生して外交問題に発展する恐れがあり、米政府の理解を得られるか流動的な側面もある。東芝もWHの事業に債務保証をしており、破産法適用が認められたとしても、今後も原発の建設費用などで応分の負担を迫られる。このため東芝は、取引銀行団に数千億円規模の追加融資を要請する検討に入った。この2年で東芝がWH関連で計上する損失額は1兆円規模に上る。WHが米国で進める原発建設は工事の遅れが常態化している。来年度以降も巨額の損失が発生すれば、東芝の経営が立ち行かなくなる危険があり、経営陣は破産法の活用に傾いたもようだ。社内には「(適用申請には)数カ月かからない」(幹部)との声もある。東芝は、半導体事業を分社して設立する新会社について、全株式売却も視野に入札手続きを進める。売却額は1兆5千億〜2兆5千億円を想定しているが、売却完了は2017年度後半となる見通し。それまでに原発建設の費用が膨らみ、手元資金が不足する恐れがあるため、銀行借り入れで乗り切りたい考えだ。支援を受けるため、半導体の新会社の株式を一時的に融資の担保とする案が浮上している。建設中の米原発は、当初16年から順次稼働する計画だったが、延期を繰り返している。東芝は現段階でも人件費などで計61億ドル(約7千億円)のコスト増になると試算しており、完成が遅れると費用はさらに拡大する。

*1-4:http://mainichi.jp/premier/business/articles/20170203/biz/00m/010/002000c (毎日新聞 2017年2月6日) 「8500億円半導体事業切り売り」は東芝解体の第一歩
●東芝解体の危機(6)
 東芝は1月27日に開いた取締役会で、半導体メモリー事業の分社化を決めた。分社化後、株式の2割弱を入札で売却し、得た資金で米原子力事業の巨額損失を補てんする。すでに10社程度の売却候補の名前があがったり消えたりしている。半導体メモリーは、東芝の中核事業だ。その2割弱の株式を外部に売ることは、どんな意味を持つのか。 2016年1月26日付の毎日新聞東京朝刊より  東芝の発表によると、分社化の対象は、東芝の社内カンパニーであるストレージ&デバイスソリューション社のメモリー事業。「NAND型フラッシュメモリー」の開発、製造、販売部門だ。東芝の主力製品であり、稼ぎ頭である。製造拠点は三重県の四日市工場だ。分社化する部門の2015年度の売上高は8456億円、営業損益は1100億円の黒字。売上高に対する営業利益の比率は13%で、かなり高い利益率をあげている。東芝は15年度、不正会計が発覚し、連結売上高5兆6000億円に対し、営業損益は7191億円の大赤字だった。半導体メモリーだけがまとまった稼ぎをあげていた。
●NANDの世界シェアは2位
 「NAND」は「ナンド」と読む。小型の記憶媒体のことだ。スマホや携帯音楽プレーヤーの記憶装置に多用され、デジカメのメモリーカードや、パソコンに接続するUSBメモリーにも使われている。「NAND」という名前は、コンピューターの演算の種類である「Not」と「AND」を組み合わせたものだ。フラッシュメモリーの「フラッシュ」は、書き込んだ内容を一瞬で消せることから付けられた。NAND型フラッシュメモリーは東芝が1980年代に開発した。携帯音楽プレーヤーやスマホが広がるにつれ、需要が急速に伸びてきた。ただし、世界シェアのトップは、韓国サムスン電子。東芝は2位、3位は四日市工場で東芝と共同で投資を行っているウエスタン・デジタルだ。もともと東芝の半導体は、「DRAM(ディーラム)」と呼ばれるコンピューターに使われる製品が主流だった。80年代に生産量が世界一になったこともある。当時は東芝、日立製作所、NECがシェア上位を競っていた。ところがその後、サムスン電子など韓国勢が大がかりな投資で製品を量産して価格攻勢をかけ、東芝は競争に負けて00年代はじめに撤退する。代わって力を入れたNAND型フラッシュメモリーが、スマホなどの普及で東芝の屋台骨に育った。
●後ろ向きの分社化
 半導体部門の分社化は、経営の意思決定のスピードアップや、設備投資に振り向ける巨額資金を外部から調達するという前向きの狙いでこれまでも検討されてきた。ただし、外部資本を入れると、その分、配当という形で利益の一部を外部に流出させることになり、決断までに至らなかった。今回は、原子力事業の巨額損失の穴埋めのために、分社化することになった。打って出る前向きの分社化ではない。1月27日の東芝の記者会見でも、記者から次のような質問が相次いだ。「稼ぎ頭であるNANDを切り離し、それで得る資金を成長分野に振り向けるシナリオもあったが、それができなくなった。追い込まれる前にやっておくべきだったのでは」「主力事業を切り売りする形になって、本当に東芝の再生は果たせるのか」 東芝の綱川智社長=2017年1月27日、根岸基弘撮影  これに対して綱川智社長は「分社化がNAND事業を強化する一助になればと考えている。再建に向かって頑張りたい」と通り一遍の回答だった。半導体事業を担当する成毛康雄副社長は「東芝全体の危機と受け止めて、乗り切ることに注力したい」と短く回答するのみだった。半導体は分社化して2割弱の外部資本を導入した後、どういう道を歩むのだろうか。これは、どんな外部資本が株式を保有するかにかかっている。次回はそのあたりを詳しく解説する。

*1-5:http://mainichi.jp/premier/business/articles/20170206/biz/00m/010/006000c (毎日新聞 2017年2月7日) 東芝半導体新会社に群がるファンドの百鬼夜行
●東芝解体の危機(7)
 半導体メモリー事業の分社化を決めた東芝は、さっそく、入札で株式の2割弱を売却する手続きに入った。すでに、10社前後の売却候補の名前が挙がったり消えたりしている。投資ファンド、銀行系ファンド、事業会社だ。このなかで、有力なのは投資ファンドだ。入札するかどうかは判明していないが、事前に名前が挙がったのは米コールバーグ・クラビス・ロバーツ(KKR)、米ベインキャピタル、米シルバーレイク・パートナーズ、英ペルミラといった名前だ。いずれも世界的に名前の知られたファンドで、日本でも実績のある大どころが並ぶ。投資ファンドに詳しいある関係者は、「まだほかのファンドが出てくる可能性がある。半導体メモリー事業に興味があるファンドは多いはず」と見る。投資ファンドの目的ははっきりしている。数年後に新会社を上場させ、株式の価値が上がったところで売却して利益を出すことだ。手を挙げるファンドがたくさん出て、競争が激しくなれば、東芝は思った以上に株式を高く売れるかもしれない。ただし、高値になればなるほど、数年後、投資ファンドが株式を手放す「出口」にたどり着いたときのハードルは高くなる。
●「出口」で大もめした投資ファンド
 「出口」で大もめしたのは、西武鉄道に出資した投資ファンド、サーベラスが記憶に新しい。西武鉄道(その後西武ホールディングス)は2004年に有価証券報告書の虚偽記載が発覚し上場廃止となった。東芝と同じくらいの窮地だった。そこにサーベラスが約1000億円を出資し、約32%の筆頭株主となった。10年後、再建を果たした西武は再上場した。その過程で、思ったほど売却益が出ないと考えたサーベラスは、路線廃止や球団売却を要求したり、株式の公開買い付け(TOB)で経営陣に揺さぶりをかけたり大騒ぎした。アベノミクスで全体の株価が底上げされ、そこそこの売却益が出ることになったため、静かになったが……。サーベラスは10年も出資をしてきた。言ってみれば「寝かせていた」ため、それなりの見返りを求めた。東芝が分社化する半導体メモリー事業について、投資ファンドは2~3年後の上場を想定し、少なくとも2~3割の売却益を目指すだろう。原子力事業の大損失がなく、戦略的に分社化・上場ができたなら、東芝が手にできたはずの利益だ。
●銀行系ファンドも有力候補
 銀行系ファンドも売却先の候補に挙がっている。その筆頭格が日本政策投資銀行(政投銀)が出資する投資ファンドだ。政投銀系の投資ファンドはベンチャー企業などに投資実績があり、企業再生に向けた出資も行っている。ただし、東芝のような大企業の再建支援に、政府系金融機関が乗り出せば、批判の声が上がる可能性がある。「投資ファンドや民間銀行系ファンドに任せればいい、なぜ政府系が手を出すのか」という批判である。政投銀は15年前、経営難に陥った大手スーパー、ダイエーの再建支援で、民間銀行とともに再建ファンドを作って出資し、このファンドがダイエーの筆頭株主になったことがある。このときも「国策救済」と批判された。結局、再建はうまくいかず、ダイエーは産業再生機構の支援を受け、最終的にイオンの傘下に入った。いま、ダイエーは店舗名からもほとんど姿を消している。仮に政投銀系ファンドが半導体新会社に出資することになったとしても、ダイエーの二の舞いにならないとは限らない。このほか、三井住友銀行やみずほ銀行、三菱東京UFJ銀行などメガバンク系のファンドも候補になる。政投銀やメガバンクのファンドは、東芝の半導体新会社の2割弱の株式をすべて手に入れることは想定していないだろう。金額が大きすぎるからだ。他の出資者と組むことが考えられる。東芝側は、外国系の投資ファンドが売却先の主体になった場合でも、政投銀や銀行系ファンドに一部出資してほしいと考えているはずだ。信用力と、話のわかる相手だからである。入札にはキヤノンなど、事業会社の名も挙がっていた。だが、キヤノンは「大変難しい」と事実上、参加しない方針を明らかにしている。次回は、そのあたりの事情を解説する。

*1-6:http://mainichi.jp/premier/business/articles/20170123/biz/00m/010/001000c (毎日新聞 2017年1月24日) 東芝だけじゃない 三菱重に賠償請求66億ドルの衝撃
●米国での原発新設(3)
 米国内では2013年以降、原子力発電所の廃炉が相次いでいる。「シェールガス革命」で電力価格が下がり、福島第1原発事故の影響で安全規制が強化され、原発のコストが上昇したことを受けた動きだ。米国内の原発新設計画も大きな影響を受けた。東芝の子会社、米ウェスチングハウスは、08年に受注したボーグル原発2基、VCサマー原発2基以外に、フロリダ州レビィ原発1、2号機を09年に受注していた。ところが、レビィ原発は当初の予定通りに米原子力規制委員会の建設運転認可がとれず、契約が解除された。東芝本体も、09年にテキサス州サウス・テキサス・プロジェクト原発3、4号機の建設を受注していた。東芝としては初の海外での原発受注だった。だが、このプロジェクトに共同出資を計画していた東京電力が、福島原発事故で断念した。さらに、プロジェクトの主体だった米電力大手も、福島原発事故直後に投資を打ち切ると発表した。2基は16年2月に建設・運転認可を受けたが、東芝は「テキサス州では電力価格が低迷していることから、電力市況を見極めながらパートナー企業を募集し、適切な時期に建設開始を判断する」と発表し、事業は凍結された。
●3割しか工事が進んでいないボーグル、VCサマー原発
 ウェスチングハウスと東芝の両社で米国内で受注した8基は、当初の予定では16年に4基、17年に3基が完成するはずだった。ところが建設が開始されたのはボーグル原発、VCサマー原発の計4基にとどまった。その4基の工期も予定より大幅に遅れている。原発回帰の流れにのって、米国内で原発を次々新設するという東芝・ウェスチングハウスの狙いは、大きく外れてしまったのだ。建設中のボーグル原発、VCサマー原発は今のところ、19年と20年に2基ずつ運転を開始することになっている。東芝が数千億円損失の可能性を公表したのはこの4基の建設についてだ。建設工事は全体の3割しか進んでいないことも明らかになった。ウェスチングハウスも、親会社の東芝も、巨額の損失で債務超過の恐れが出ている。そうした企業に、3割しか建設が進んでいない原発を完成させることができるのか、という疑問が湧いてくる。
●三菱重工に対して起こされた巨額の損害賠償請求
 米国内での原発事業で大変な目にあっているのは東芝・ウェスチングハウス連合ばかりではない。巨額の損害賠償請求訴訟を起こされている日本企業がある。三菱重工業だ。カリフォルニア州のサンオノフレ原発2、3号機のうち、3号機で12年、加圧水型原子炉の重要設備である蒸気発生器の配管が破損し、放射性物質が漏れた。定期点検中の2号機でも多数の配管の摩耗が見つかった。蒸気発生器は三菱重工製で、交換されて2年以内のものだった。米原子力規制委員会は三菱重工のコンピュータ分析のミスが、設計上の不具合につながったと結論づけた。地元住民が再稼働に反対し、米原子力規制委の調査も長期化するなかで、電力会社は13年に廃炉に追い込まれた。電力会社は三菱重工に対し、廃炉費用を含め、75億7000万ドル(今の為替レートで約8600億円)という巨額の損害賠償を求めた。三菱重工は契約上、支払いは最大1億3700万ドル(約155億円)だと主張。請求額はその後66億6700万ドル(約7570億円)に減額されたが、争いはパリの国際商業会議所の国際仲裁裁判所で係争中だ。東芝が抱えた数千億円の損失といい、三菱重工が抱える巨額の損害賠償請求といい、原発事業のリスクがいかに大きいかを物語っている。

*1-7:http://digital.asahi.com/articles/ASJDH3WLZJDHULFA00N.html (朝日新聞 2016年12月15日) 日立受注の英原発に資金支援 政府系金融機関
 政府系金融機関の国際協力銀行(JBIC)や日本政策投資銀行は、日立製作所が英国で進めている原子力発電事業に資金支援する方針を固めた。設計から運営までを担う日立の子会社に、融資などを行う。原発の輸出ビジネスに官民で取り組む姿勢を明確にする。
●日立が日本原電と協定 英国での原発建設へ協力要請
 日立の子会社は英中部に原発2基を建設する。2020年代前半の稼働を目指し、総事業費は2兆円超とされる。JBICや政投銀は、同社への融資や株式の買い取りを検討する。来年中に支援の大枠を固める。英国では中国の原子炉の導入が予定されている原発計画もある。安全面などから逆風が吹く原発ビジネスに官民で取り組む姿勢を示し、受注競争を有利に進めるねらいがある。来日したハモンド英財務相は15日、麻生太郎財務相と会談。原発事業への資金支援についても話し合ったもようだ。ハモンド氏は会談前、朝日新聞などのインタビューに応じ、日本の支援について、「前向きに考えてくれていることをうれしく思っている」と述べた。年内には、世耕弘成経済産業相とクラーク英ビジネス・エネルギー・産業戦略相も会談し、原発分野での協力を話し合う見通しだ。

<核燃料の最終処分>
*2-1:http://qbiz.jp/article/101074/1/ (西日本新聞 2017年1月3日) 玄海原発敷地内に乾式貯蔵施設 九電、候補地選びに着手 
 九州電力が玄海原発3、4号機(佐賀県玄海町)の再稼働後を見据え、使用済み核燃料の乾式貯蔵施設を建設する敷地内候補地の選定作業に着手したことが分かった。玄海原発が再稼働すれば、同原発の使用済み核燃料貯蔵プールを全て使っても、4〜5年程度で満杯になる見通し。このため、まず3号機の貯蔵プールの容量を増強。次の段階として、乾式施設も新設する方針。
●再稼働後を見据え容量拡大
 玄海原発では、使用済み核燃料を原発内の貯蔵プールで保管しており、既に容量の約6割が埋まった状態。九電は2010年2月、3号機の貯蔵プール容量を燃料集合体1050体から2084体に約2倍に増やすリラッキング工事の計画を国に申請していた。しかし、11年3月の東京電力福島第1原発事故で、電源喪失のため貯蔵プールが冷却できなくなるトラブルが発生。事故後に発足した原子力規制委員会の田中俊一委員長は、同様の問題が起きなかった乾式施設の新設を電力各社に強く要求している。九電は規制委の求めに応えて、乾式施設の新設も具体化させる。ただ、関係者によると九電は、乾式施設よりも貯蔵プール増強の方が完成が早いと判断。再稼働後にプールが満杯になる事態を避けるため、3号機のプール増強を優先する。着工から完成まで4年程度と見積もっていた従来の増強計画の設計を、福島第1原発事故後の新規制基準に適合するよう変更した上で、再稼働後なるべく早い時期に国へ工事の認可を申請する方針。乾式施設建設のための調査も始動。再稼働に向けた安全対策で手狭になった敷地内に施設を置くための、具体的な建設レイアウトの検討に入った。貯蔵容器をコンクリート製にするか金属にするかなど技術面に関する検討も進めている。使用済み核燃料を巡っては、青森県六ケ所村の再処理工場稼働の見通しが立っておらず、九電は原発敷地外への持ち出しができない状態。16年8月には、玄海原発の対岸にある佐賀県唐津市鎮西町串地区の住民が、中間貯蔵施設誘致の要望書を市に提出するなど、使用済み核燃料の取り扱いが再稼働に伴う大きな焦点となっている。
◆使用済み核燃料の貯蔵方法 プールに貯蔵する「湿式」と、キャスクという密閉容器に入れる「乾式」がある。使用済み核燃料が出す熱をプールの水の循環で冷やす湿式には、電源や水が必要なため、電源が失われると冷却できなくなる危険性がある。乾式は使用済み核燃料をキャスクに入れて建屋に保存し、空気の自然換気で冷却する。海外では安全性が高く保守・点検が簡単な乾式が普及。日本でも福島第1原発事故後に原子力規制委員会が導入を促している。

*2-2:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12765433.html (朝日新聞 2017年1月26日) 原発の使用済み燃料、空冷保管を促進 規制委、基準緩和へ
 原発の使用済み燃料の保管について、原子力規制委員会は25日、水や電気を必要としない空冷の保管容器の導入を促すために基準を緩和する方針を決めた。プールでなく、地表に置いた容器で燃料を保管する方法で、乾式貯蔵と呼ばれる。使用済み燃料は通常、燃料プールで保管し、ポンプで水を循環させて冷やしているが、地震などで停電すると冷却機能が失われかねない。東京電力福島第一原発の事故では、4号機プールで1千体以上が冷やせなくなり、燃料がむき出しになることが懸念された。乾式貯蔵はプールで十分に冷やされた燃料を専用の容器に入れて密封し、空気の通りがよい場所で保管するもの。規制委が導入を促す容器は燃料の輸送用で、高さ9メートルからの落下試験や高温の炎に耐える試験にも通っている。この保管法は欧米で導入が進んでいる。これまで国内では耐震性の高い建屋が必要だったり、地震の揺れの想定が必要だったりして、導入のハードルが高かった。そのため、日本原子力発電東海第二原発(茨城県)など一部でしか導入されていない。規制委の田中俊一委員長は乾式貯蔵について、「プールで保管するより安全度がはるかに高い」と話した。電気事業連合会によると、全国の17原発にある使用済み燃料は計約1万5千トン。プールなどの保管施設は7割が埋まっている。乾式貯蔵で保管できるようになれば、プールに余裕が出るため電力会社も導入に前向きだ。ただ、原発が立地する自治体には、燃料の新たな保管場所ができることで、敷地での保管が長期化しかねないとの懸念も強い。

*2-3:http://www.tokyo-np.co.jp/article/economics/list/201703/CK2017030602000168.html (東京新聞 2017年3月6日) <原発からの請求書>(5) 最終処分場建設、運営に3.7兆円 増額の可能性も
Q 原発から出る核のごみを受け入れる最終処分場にはいくらかかりますか。
A 経済産業省の試算では建設・運営費で計三兆七千億円かかります。東京五輪向け新国立競技場(総工費約千五百億円)が二十四個できる金額です。
Q なぜそんなにかかるのですか。
A 燃料は再利用しますが、廃液など「高レベル放射性廃棄物」が出るからです。人が近づくとすぐ死亡するほど危険なので、ガラスに混ぜて固め、三百メートル以上の地下に埋めます。日本は地震が多いので耐震性を高め、完全な地下水対策も必要。その状態で最長十万年管理し、やっと放射線が減少するのです。その分、費用はかさみます。東京電力・福島第一原発事故の溶解燃料も受け入れる可能性があり、その場合もっと高くなるでしょう。
Q お金はだれが払うのですか。
A わたしたち電気を利用する国民が払っています。大手電力が出資する専門組織が建設・運営するのですが、費用は電気料金に上乗せされ、積み立てられています。東電の上乗せ額は一キロワット時あたり〇・〇四二五円で、約三百六十キロワット時使用した家庭(図のケース)では月十五円。家庭が電力会社を選べるようになった昨春以降は主に大手電力の利用者が負担しています。二〇一六年三月末時点の積立金は約一兆円にとどまっており、本紙試算では最低四十六年上乗せを続けないと必要額に達しません。
Q 原発を持たない新電力と契約すれば負担をしなくてよいのですか。
A いいえ、一部は負担を迫られます。経産省は〇五年に最終処分対象の核のごみの種類を増やし、見積総額も約八千億円上積みしました。燃料のリサイクルに必要な費用も膨らんでいたので、まとめて計二兆七千億円分を十五年かけて電線使用料である「託送料」に上乗せして集めると決めたのです。検針票の裏に小さく記されている「使用済燃料再処理等既発電費相当額」という長い名前の項目です。一キロワット時につき〇・一一二円の負担で、図の家庭は約四十円の負担。従来負担と合わせ月五十五円。東電管内の平均家庭(月間使用量二百六十キロワット時)は毎年計千六百七十五円ずつ積み立てに協力している計算です。
Q 処分場はいつできるのですか。
A 政府は長年候補地を探してきましたが、人々の抵抗感は強く、みつかりません。経産省は断層の状況などから有望地域を示す地図を昨年末までに示す予定でしたが、先送りにしています。ごみの受け入れ先がないにもかかわらず、政府と電力会社は原発再稼働を急いでおり「無責任」との批判があります。日本学術会議も「いまの科学で十万年の安全確保は証明できない」としており、建設計画は難航が必至。資金面でも作業が進めば、三兆七千億円の見積もりを大きく超え、国民は電気代からの積み立て増額などを迫られる可能性があります。原発政策と電気代についての疑問、意見をお寄せください。ツイッター上からハッシュタグ #原発からの請求書 をつけて投稿してください。メールは keizai@tokyo-np.co.jp  ファクスは03(3595)6914

<玄海原発再稼働>
*3-1:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/407816 (佐賀新聞 2017年2月22日) 玄海再稼働 唐津市で県民説明会始まる、住民から不安、疑問 国と九電は対策強調
 九州電力玄海原発3、4号機(東松浦郡玄海町)の再稼働に関し、佐賀県は21日、初めての県民説明会を唐津市民会館で開いた。エネルギー政策、適合性審査の概要、原子力防災の取り組み、原発の安全対策の4分野について、国と九電の担当者が説明し、再稼働への理解を求めた。会場からは原発の必要性や安全対策を疑問視するなど再稼働に反対や懸念を示す意見が相次ぎ、終了時間を1時間近く延ばして対応した。唐津市や玄海町だけでなく、県内各地から192人が参加した。原子力規制庁、資源エネルギー庁、内閣府、九電の担当者が各分野の概要や取り組みを挙げ、福島第1原発事故を教訓に「審査に通ることがゴールではない」「原子力に対する不安の声に真剣に向き合う」などと述べた。会場からは「熊本地震のように複数の地震に対する審査をしたのか」「福島の事故は終わっていない」など、震災を踏まえて再稼働に反対する質問が噴出し、国や九電の担当者は説明に追われた。質問時間が1人1分間と短いことへの不満や、再度の説明会開催を求める声も上がった。主催した佐賀県の山口祥義知事は「再稼働する、しないにかかわらず玄海原発はそこにある。時間が足りないというのはよく分かるが、われわれもプロセスを大切にしたい」と語った。県は県内首長にも案内を出し、参加を呼び掛けた。唐津市の峰達郎市長は「文言が専門的すぎる。一方的な説明の仕方が印象的で、住民は分からないのではないか」と感想を話した。玄海町の岸本英雄町長は「町議会特別委員会で説明を受けた内容と同じで、わざわざ出る必要はない」として欠席した。県は、この日の県民説明会をインターネットで中継したほか、動画も見られるようにする。今後は22日に武雄市、27日に佐賀市、28日に伊万里市、3月3日に鳥栖市で開催する。玄海原発3、4号機の再稼働に関しては1月18日、規制委の適合性審査に合格した。これを受け国は県と玄海町に理解を求め、山口知事は県民から広く意見を聞く姿勢を示している。

*3-2:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/408220 (佐賀新聞 2017年2月23日) 武雄で玄海再稼働に関する県民説明会、水蒸気爆発想定審査せず
 九州電力玄海原発3、4号機(東松浦郡玄海町)の再稼働に関する県民説明会が22日、半径30キロ圏外では初めてとなる武雄市文化会館で開かれ、周辺市町の首長や職員、住民ら117人が参加した。国と九電が、エネルギー政策や安全対策などを説明した上で再稼働に理解を求め、住民からの質疑に答えた。会場からは「再生可能エネルギーや蓄電池などの開発に国策を転換して」などの意見が上がった。資源エネルギー庁は再稼働の必要性について「現状では電力の安定供給、経済性、温暖化対策でリスクがあり、今すぐ原発を代替できるものではない」などと説明した。適合性審査を担当した原子力規制庁には、重大事故が発生した場合に水蒸気爆発が起こるかどうかに質問が集中した。規制庁は「海外の知見も踏まえて水蒸気爆発が起きないことを確認している」と繰り返し、万が一、爆発が起こる想定に関しては「審査していない」と答えた。参加した武雄市朝日町の朝重節男さん(82)は、国の説明を聞いて「安全対策が十分かどうかは判断できないが丁寧だった」と話した。会場は前日の唐津会場に続いて空席が目立ち、市内の会社員の女性(31)は「若い人がいない。周知が足りないのか関心がないのか…」と首をかしげた。再稼働に慎重姿勢の谷口太一郎嬉野市長は、エネ庁が法的に地元の同意が必要ないことを明言したことに対し「はっきり言われて驚いた。事故があればわれわれも避難する立場であり、同意を取ってほしい」と顔をしかめた。説明会は今後、27日に佐賀市、28日に伊万里市、3月3日に鳥栖市で開催する。

*3-3:http://qbiz.jp/article/104555/1/ (西日本新聞 2017年2月28日) 原発再稼働、佐賀市でも不満噴出 住民説明会
 佐賀県は27日夜、佐賀市日の出1丁目の市文化会館で、九州電力玄海原発3、4号機(玄海町)の再稼働に関する3回目の住民説明会を開き、234人が参加した。前回までと同様、参加者からは事故への不安を訴える声が相次いだ。原子力規制庁の荒木真一原子力規制企画課長は、玄海原発が福島第1原発事故を踏まえた新規制基準に適合し、格納容器の破損を防ぐ冷却手段の強化や、海水を利用して熱を逃がす対策を確認したことを説明し、理解を求めた。参加者からの質問は1、2回目の説明会と同じく1人1分以内に限られ、不満が噴出。出席者が「福島の事故が収まっていない中で、世界一といえる基準が作れるのか」と訴えたのに対し、規制庁の担当者は「分かってきている基本的な部分を参考に新基準を作った。必要なものがあれば追加する」と回答した。「海外のように(炉心溶融時に溶けた核燃料を閉じ込める)コアキャッチャーは設置しないのか」との質問には「同様の機能を持たせている」と答えた。

*3-4:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/410217 (佐賀新聞 2017年3月1日) 玄海原発再稼働、伊万里説明会 市長「反対変わらぬ」、「なぜ急ぐ」住民も批判
 九州電力玄海原発3、4号機(東松浦郡玄海町)の再稼働に関する県内4カ所目の県民説明会(佐賀県主催)が28日、伊万里市民会館であった。周辺市町の住民らを含め388人が参加、安全性などへの疑問点を質問した。地元の塚部芳和市長は「参加者の不安や疑問に国や九電は答えていない。再稼働に反対の立場は変わらない」と述べた。原子力規制庁と資源エネルギー庁、内閣府、九電の担当者が防災の取り組みや国のエネルギー政策などを説明した。会場からは福島原発事故の収束や原因究明が終わらない状態で「なぜ再稼働を急ぐのか」「避難訓練が必要なほどのリスクの中で進める理由が分からない」と批判の声や、「再稼働ありきで検討が進んでいる」と不信感も漏れた。このほか、使用済み核燃料の保管の問題や、テロなどでの航空機落下事故の際の安全対策への疑問が出た。伊万里市のほぼ全域は原発から半径30キロ圏内にあり、緊急時防護措置準備区域(UPZ)にあたる。塚部市長は、国が再稼働の必要性についてエネルギーの安定供給に終始したことに触れ、「原発の安全安心とエネルギー問題は同列で論じられない。不安への回答になっていない」と指摘した。その上で会場から再稼働への疑念を示す意見ばかりが出されたことを挙げ「県がどのような判断を下すか、注目したい」と話した。
■4カ所目、最多388人参加 市長「市民の関心、不安表れ」
 首長が再稼働反対を主張する伊万里市の会場で開かれた4回目の県民説明会。これまでの最多となる388人(県発表)の参加に、塚部芳和市長は「市民の原発に対する関心の高さと不安への思いの表れだ」と強調した。唐津市と武雄市の参加者が少なかったため、伊万里市には市民から「市が周知すべきだ」と意見が寄せられた。市は24日、各公民館長に対して区長に住民への周知を促すよう呼び掛ける文書を発送。その効果もあったのか、会場には行政関係者や区長以外に一般住民の姿も目立ち、住民ならではの「命の訴え」が相次いだ。70代女性は「既成事実のための説明会という印象」と切り捨てた上で、「みんな本当に反対しているのだと分かった。市長はあくまで反対を貫き通してほしい」と求めた。一方、70代男性は「反原発団体の関係者の殺気だった質問と怒号が目立ち、あんな雰囲気の中でごく普通の市民は質問できない」と違和感を訴え、「公民館で開かれるなら、もう一度聞きたい」と期待を寄せた。説明会を巡って伊万里市と市議会は2月17日、県に市内全地区の公民館(13カ所)での開催を申し入れ、「まず伊万里での県民説明会の様子を見て、改めて協議したい」と県の回答を得ていた。終了後、塚部市長は「県がどう判断するかだが、聞き入れられなければ市議会と相談する」と地区別での実施を求めていく姿勢を示した。

*3-5:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/411493 (佐賀新聞 2017年3月6日) 原発県民説明会 容認意見なく、空席目立つ
■専門家「県の説明必要」
 九州電力玄海原発3、4号機(東松浦郡玄海町)の再稼働に関し、佐賀県は5会場での県民説明会を終えた。国と九電が再稼働の必要性や安全対策を説明し、参加者から容認する意見はなく、安全性への不安や必要性への疑問が相次いだ。説明内容の分かりづらさや質問時間の短さを指摘、追加開催の要望も上がった。1000人以上収容できる各会場は空席が目立ち、有識者は事故被害の甚大さを踏まえ、県民意向調査の実施を訴えている。各会場の受け付けでは開始時間が過ぎても参加者用の資料がうずたかく積まれたまま。「多くの県民に説明を聞いてほしいが、難しい」と県幹部はこぼした。説明会は、国が説明責任を果たすことを条件に県が主催した。2月21日~3月3日に半径30キロ圏の唐津、伊万里両市と佐賀、武雄、鳥栖市で開いた。参加者数は伊万里の388人が最多で、佐賀234人、唐津192人、武雄と鳥栖は各117人の計1048人。夜の開催で、子育て世代や若者は少なかった。説明会の運営では説明内容や質疑時間を巡り課題が指摘された。説明者の答えがかみ合わず、紋切り型の説明が繰り返され、怒号が飛び交う会場もあった。質疑時間は、原子力規制庁が適合性審査の概要説明後に20分、資源エネルギー庁がエネルギー政策、内閣府が避難計画、九電が原発の安全対策を説明した後に2回目を30分設け、「規制」と「推進」で分けた。県は「多くの意見を聞く」として質問を原則1人1問で1分間に限定。質問中に「30秒前」「まとめてください」と書いたボードをステージ上で掲げた。会場からは「重大な問題なのに短すぎる」「もう一度説明会を開いて」と批判が出た。ただ、多くは1分を超えたものの、司会者が遮ることはほとんどなく、各会場とも終了予定時間を1時間近くオーバーした。県民説明会について九州大大学院の吉岡斉教授(科学史)は「再稼働を判断する立場にある佐賀県の説明が必要だった」と指摘する。県民の参加状況に関しては、周知不足だけではなく「県の姿勢に期待が持てず『形だけのスケジュールを消化している』と多くの住民が判断したのではないか」と読み解く。住民避難に特化した説明会の必要性も挙げた上で「何より県が、県民の生命・健康を守る立場から徹底的に安全性を評価し、県民世論を幅広く収集することが大切。これまでのように政府や業界に従う姿勢は改めるべき」と述べ、住民意向調査を行うよう求めた。唐津と佐賀の説明会に出席した山口祥義知事は「福島の事故を経験して不安の声が多かった」と感想を述べた。県はメールや書面で意見を受け付け、18日には20市町の首長の考えを聞く。開会中の県議会は、再稼働容認の自民議員が多数を占める。「県議会の意見は極めて大切」と強調する山口知事。追加の説明会を開くのかどうか、幅広い声をどうそしゃくし、いつ判断を下すのか。過程を重視する知事の説明責任も重要さを増している。

*3-6:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/412564 (佐賀新聞 2017年3月10日) 玄海原発 反原発団体も説明会を要望、県に24項目の要請書
 九州電力玄海原発3、4号機(東松浦郡玄海町)の再稼働に関し、反対する県内の複数の団体が9日、全市町での県民説明会の開催や再稼働に反対・慎重な意見を持つ専門家の説明会などを佐賀県に求めた。山口祥義知事が判断材料にする会合が3月中旬に集中し、慎重な対応を求めた形だ。再稼働に反対する県内9団体で構成する脱原発佐賀ネットワークは、県内5カ所で開かれた県民説明会では不十分として、子育て世代や離島住民も参加できるよう、昼間や休日に説明会を追加開催することや、公開討論会の実施など24項目の要請書を提出した。県外住民の参加を認めることや、健康への影響、避難計画を検証する委員会の設置などを盛り込んでいる。県内各界の代表が委員を務める広く意見を聴く委員会の委員を出している県労連(北野修議長)は、再稼働に疑問を持つ専門家による説明会を求める要望書を提出した。2月の第2回会合では、再稼働を推進する国と九電の説明を聞いており「幅広い見地からの検討が必要」と指摘し、中立性を保つため県に選任を求めた。また共産党県委員会は、岸本英雄玄海町長が玄海3、4号機の再稼働に同意したことに対し抗議声明を発表した。広く意見を聴く委員会は13日、県議会原子力安全対策等特別委員会は15、16の両日、山口知事が県内首長の意見を聞く会合「GM21ミーティング」は18日に、それぞれ開かれる。

*3-7:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/412275 (佐賀新聞 2017年3月9日) 玄海原発、町長の再稼働同意撤回を 市民団体が抗議
 東松浦郡玄海町の岸本英雄町長が町内に立地する九州電力玄海原発3、4号機の再稼働に同意してから一夜明けた8日、脱原発を訴える市民団体のメンバーらが町役場で抗議活動し、同意の撤回を求めた。玄海原発対策住民会議(会長・藤浦晧玄海町議)をはじめ、佐賀市や武雄市などから集まった20人余りが、役場前でマイクを手に「再稼働は町長や議会だけで判断できるものではない」「玄海町で福島原発の二の舞いが起きてはいけない」などと声を張り上げた。その後、庁舎内に移動し、同意表明の撤回を求める要求書を、体調不良という岸本町長に代わって対応した町の担当者に手渡した。提出に先立ち、庁舎内の混乱を避けようと代表者だけの入庁を求める町職員に対し、「みんなが町民、県民の代表だ」とメンバーが詰め寄る一幕もあった。

<リーダーの見解>
*4-1:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12832205.html (朝日新聞社説 2017年3月9日) 大震災から6年 「原発は安い」では済まぬ
 東日本大震災からまもなく6年。復興はまだ道半ばだが、とりわけ原発被災地の福島県では今も8万人が避難生活を強いられ、地域社会の再生は見えない。原発事故の被害とその処理費用も膨らみ続けている。にもかかわらず、政権は原発を「重要な基幹電源」として、今後も積極的に使う構えだ。事故の惨禍を目の当たりにしてもなお、原発に頼り続けることに理はあるのだろうか。政府や電力業界が言うように、本当に「原発は安い」のか。
■膨らみ続ける費用
 東京都内のホール。福島第一原発の事故で全町避難を強いられた福島県浪江町が2月に開いた住民との懇談会で、避難者たちが次々に悲痛な声を上げた。「除染が終わったと連絡が来たが、線量は十分に下がっていない。これでは家に帰れない」。「私たちは原発事故で町を追い出された。帰れない人には東電が家賃を払い続けるべきだ」。浪江町の中心部は今月末に避難指示が解除され、住民は戻れるようになる。ただ、楢葉町など指示がすでに解除された地区では帰還率が1割ほどのところが多く、先行きは厳しい。炉心溶融を起こした原子炉の内部は、惨状がようやく見え始めたところだ。高熱で曲がった鉄格子、こびりついた黒い塊……。東京電力は2号機に調査ロボットを投入したが、人間なら数分足らずで致死量に達する強い放射線や堆積(たいせき)物に途中で阻まれた。溶け落ちた核燃料を取り出す道筋は見当もつかない。賠償や除染、廃炉などの費用について経済産業省は昨年末、総額21・5兆円にのぼるとの見通しを示した。従来想定の2倍で、巨額の負担が電気料金や税金として国民にのしかかる。そもそも、壊された生活や地域社会など金銭では表せない被害もある。痛手は計り知れない。
■保護ありきの政府
 政府は東電をつぶさないため、支援策のてこ入れに乗り出した。東電や原発を持つ電力大手各社が負担してきた賠償費を、今後40年間にわたって、電力自由化で参入した「新電力」にも一部負担させる方針だ。これは、自由化でめざす消費者の利益より、原発の保護を優先するやり方にほかならない。原発を持たない新電力にも原発固有のコストを押しつけ、大手の負担を軽くするからだ。なりふり構わぬ姿勢から浮かび上がるのは、原発はもはや強力な政策支援がないと成り立たないという実態である。それでも、経産省は「福島事故の費用を織り込んでも、原発のコスト面の優位性は変わらない」と言う。引き合いに出すのは15年に示した試算だ。原発を新設する場合の発電コストについて、火力や自然エネルギーなど他の電源より低いとする。30年度時点で必要な電気の2割ほどを原発でまかなう政策の根拠としている。だが、これにはさまざまな疑問が出ている。原発に批判的な専門家は「試算は、原発を大きなトラブルなく長く運転できることが前提。過去の稼働状況や費用の実績をもとに計算すれば、発電コストは高くなる。建設費用も震災後は世界的に上昇している」と指摘する。経産省の試算には、費用の見積もりが仮置きにすぎない項目も目につく。たとえば核燃料サイクルは技術が確立されておらず、具体的な進め方も未定の部分が多い。長年の懸案である高レベル放射性廃棄物の最終処分地選びは遅々として進まない。これらは既存の原発にもかかわる問題だ。歴代の政権は、原発推進の旗を振りつつ、「負の課題」については先送りやその場しのぎを繰り返してきた。そんなやり方は、もはや限界だ。
■脱原発への具体策を
 今年は国のエネルギー基本計画を見直す時期に当たる。この機をとらえ、原発をはじめ各電源の経済性やリスク、利点を精査し、新計画に反映させるべきだ。原発推進派だけでなく、批判的な専門家も招き、多角的に検討することが欠かせない。海外に目を向ければ、ドイツや台湾が脱原発を決めた。他の先進国でも原発を前倒しで閉鎖したり、原発への依存度を下げる目標を掲げたりする動きが出ている。安全性を重視する社会では、事故や廃棄物への対策が解決できていない原発は、手に余るものになりつつある。そのきっかけとなったのが、福島の事故だった。安全規制の強化とコストの上昇は最近の東芝の経営危機にもつながった。安倍政権がなすべきなのは、原発を取り巻く現実や再稼働に慎重な民意に向き合い、原発への依存度を着実に下げていく具体策を真剣に練ることである。閉鎖的な「原子力ムラ」の論理が幅を利かせ、安全神話がはびこった結果、福島で何が起きたか。この6年間をいま一度思い起こし、エネルギー政策を合理的で持続可能なものに作り替えなければならない。

*4-2:http://www.kirishin.com/2016/11/20161126.html (キリスト新聞 2016年11月26日) 司教団が原発撤廃を呼び掛け 世界のカトリック教会に協力と連帯要請
 日本カトリック司教団は11月11日、「地球という共通の家に暮らすすべての人」に向けて、「原子力発電の撤廃を――福島原子力発電所事故から5年半後の日本カトリック教会からの提言」と題するメッセージを発表した。同司教団は東日本大震災後の2011年11月、「いますぐ原発の廃止を」と訴えるメッセージを発表。その後、韓国のカトリック司教団とも原発について学びを重ねてきた。今回のメッセージでは、被災者が現在も経済的・社会的・精神的な苦境に立たされており、東京電力福島第一原子力発電所事故の収束の見通しも立っていないことを指摘。放射性廃棄物の根本的な処理方法が確立されていないにもかかわらず、日本政府は48基の原子炉を順次再稼働し始め、新原子力発電所建設計画の再開、原発輸出に向けた動きを加速していると述べた。そして、「一国の司教団が、世界に向けてメッセージを発するのはきわめて異例のことかもしれません」とした上で、「しかし、福島原発事故から5年半が経過し、日本がこのような事態に陥ってしまった中で日本司教団は、原子力発電の危険を世界のすべての人に知らせ、その撤廃を呼びかけるほかはないと考えるに至った」と、メッセージを発表した理由を説明した。メッセージは、「なぜ日本司教団は呼びかけるのか」「5年半をへて分かったことと学んだこと」「原子力発電を推進する国家の姿勢」「キリスト教信仰の視点から」「国際的な連帯の呼びかけ」の5項目から成り立っている。「国際的な連帯の呼びかけ」では、原子力発電の撤廃は、国際的な連帯がなければ実現困難だとし、世界中のカトリック教会に協力と連帯を要請。特に各国の司教団に対して、原子力発電の危険性を理解し、その是非について福音的立場から議論するよう求めた。最後に、「原子力発電の是非を将来世代をも含めたすべての人間の尊厳を守るという一点から判断しなければならない」と主張。また、核エネルギーを利用している国々が選択すべき道は、原子力発電の撤廃を決定し、再生可能エネルギーの利用拡大を推進していくことだと強調。「今一度立ち止まり、人類社会の目指すべき発展とは何か、真の豊かさとは何かを問い直さなければなりません」とし、それは「新たな豊かさに向けての前進」だと訴えた。

*4-3:http://www.higan.net/news/2012/06/post-28.html (彼岸ネット 2012年6月26日) 日本仏教各宗派は原発についてどう考えている? 
 毎週金曜日夜、首相官邸前や大阪の関西電力本店前などで行われている、大飯原発再稼動決定に対する抗議デモはどんどん規模が大きくなっていますね。6月22日には、官邸前に4万5000人、大阪の関電本店前には1500人が集まったと言われています。日本の仏教界では、6月12日に東本願寺(真宗大谷派)が「大飯原子力発電所再稼動に関する声明」を発表。こちらもTwitterやFacebook上で話題になりました。ところで、日本仏教界の各宗派は、原発についてどんな意見を持っておられるのでしょうか。各宗派のウェブサイトに記載されている声明や談話を、震災後から時系列に沿ってまとめてみました。
●東本願寺「原子力に依存する現代生活」を問い直す姿勢を表明(2011年7月7日、安原晃宗務総長)
http://higashihonganji.or.jp/info/news/detail.php?id=337
 宗会(最高議決機関)において、安原晃宗務総長が「原子力に依存する現代生活」の問題は「人間の方向」の問題であると述べ、「放射能飛散と被ばくのいたましい現実から『原発』の誤謬性を思い知らされることであり、したがって極力、ていねいな議論が必要な最重要課題であります」。
●全日本仏教会 会長談話「原子力発電所事故から思うこと」(2011年8月25日、河野太通会長)
http://www.jbf.ne.jp/2011/08/post_206.html
 原発の利便性ゆえに便利な生活を享受してきた反面、事故による放射能汚染、廃棄物の処理について見通しがつかないという現状があることに言及したうえで、「私ども仏教徒は、仏陀の教えに連なるひとりとして、今を生きるひとりの人間として、また大切な地球の中に生きる者として利便性と経済的効果のみを追求せず、自らの足、実地を踏む良き道を選び、歩んでまいりたいと思います」。
●臨済宗妙心寺派「宣言(原子力発電に依存しない社会の実現)」(2011年9月29日、臨済宗妙心寺派宗議会)
http://www.myoshinji.or.jp/about/post_9.html
 平和利用とは言え、原子力発電が人類に制御できない危険なものであることが明らかになった今は「一刻も早く原発依存から脱却し、これに代わる安全なエネルギーへの転換に向け社会に働きかけなければいけない」としたうえで、「私たち仏教徒は、利便性や経済性のみを追求せず、仏教で説く「知足(足るを知る)」を実践し、持続可能な共生社会を作るために努力することをここに決意し、宣言します」。
●曹洞宗「原子力発電に対する曹洞宗の見解について」(2011年11月11日)
http://jiin.sotozen-net.or.jp/wp-content/uploads/2011/11/20111101aboutapg.pdf
 「現状において即時に全ての原子力発電を停止し、再生可能エネルギーに転換することは不可能」であり、火力や水力もCO2増加や環境への負荷がかかること、電力不足で経済が混乱するなどの問題があると指摘。原発を速やかに停止して再生可能エネルギーへと移行することが望ましいとしながらも「現時点で原子力発電の是非について述べることは非常に難しいのではないでしょうか」。
●全日本仏教会「原子力発電によらない生き方を求めて」(2011年12月1日、河野太通会長)
http://www.jbf.ne.jp/2011/12/post_214.html
 快適さや便利さを追い求める影で、原子力発電所立地の人々が事故による「いのち」の不安に脅かされ、処理不可能な放射性廃棄物を生みだして未来に問題を残しているという現実があることに言及。「「いのち」を脅かす原子力発電への依存を減らし、原子力発電に依らない持続可能なエネルギーによる社会の実現を目指します。誰かの犠牲の上に成り立つ豊かさを願うのではなく、個人の幸福が人類の福祉と調和する道を選ばなければなりません」。
●西本願寺 本願寺新報「まことの安穏を目指して」(2012年1月1日号、梯實圓先生)※6/26追記
 本願寺出版社が発行する『本願寺新報』2012年1月1日号表紙に、梯實圓先生の文章を掲載。震災以降、本願寺派の公式発行物で原発に触れた最初の記事だとされています。仏教の説く「三毒の煩悩」になぞらえて、自分と自分の属する集団の利潤を最優先することを戒められています。以下、一部を引用。「単純な自然災害でも、天災と人災が複雑に組み合っていますが、とりわけ今度のような原子力発電所の事故は、想定を超えた天災のせいだけではなく、経済的効果に惑わされて、想定を甘く設定した人災であったといわねばなりますまい。さらにいえば原子力発電そのものが、経済発展を最高の価値と見なす思想が生み出した危険な産物です。その意味でこの事故は経済的利潤の追求を、すべてに優先させている思潮への激しい警鐘と受け取るべきでしょう」
●東本願寺「原子力発電所の再稼働に対する真宗大谷派の見解」(2012年4月24日、真宗大谷派解放運動推進本部長 林治)
http://higashihonganji.or.jp/info/news/detail.php?id=391
 2011年末に、政府に対して「原子力発電に依存しない社会の実現を目指す」要望書を提出。「生きとし生けるもののいのちを脅かすことなく、さらに未来を生きる子どもたちのためにも、一刻も早く原子力発電に依存しない社会の実現」を求め、「すべての原発の運転停止と廃炉を通して、原子力に依存しない、共に生きあえる社会」へと歩みたいと表明。「私たちは、すべてのいのちを摂めとって捨てない仏の本願を仰いで生きんとする念仏者として、仏智によって照らし出される無明の闇と、事故の厳しい現実から目をそらしてはならないと思っています」。
●法華宗(本門流)「第66次定期宗会において声明文を発表」(2012年6月11日)※6/27追記
http://www.hokkeshu.or.jp/
 「一、東京電力福島第一原発事故の一日も早い収束を祈り、原子力発電にたよらない、持続可能な自然エネルギーによる社会の実現に向け、努力してまいります」。
●東本願寺宗派声明「大飯原子力発電所再稼動に関する声明」を発表(2012年6月12日、宗務総長 安原晃)
http://higashihonganji.or.jp/info/news/detail.php?id=402
 「福島第一原子力発電所の事故で多数の苦しんでおられる方がある中で、一旦停止した原子力発電所を再稼動する理由に、人のいのちよりも優先すべきことがあったのでしょうか」と問いかけ、野田内閣総理大臣による大飯原子力発電所再稼動表明に強い遺憾の意を表明。すべての原発が「決して再稼働することないよう念願するものであります」。

*4-4:http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2017030701001351.html (東京新聞 2017年3月7日) 民進、「原発ゼロ法案」を了承 蓮舫代表、党大会で表明へ
 民進党は7日、エネルギー環境調査会(玄葉光一郎調査会長)を国会内で開き「原発ゼロ基本法案」の国会提出を明記した政策方針を了承した。原発ゼロ実現に向け、再生可能エネルギーの利用促進などを盛り込んだ。蓮舫代表が12日の党大会で表明する原発エネルギー政策に反映させる。政策方針は「民進党のエネルギー政策(当面の論点メモ)」。「2030年代原発ゼロ」目標の「30年」への繰り上げ明示を見送った一方、「原発依存からの脱却が前倒しで実現可能となるよう、来る総選挙に向け検討を進める」とした。省エネ目標を上積みするほか風力や水力などの再生可能エネルギーの導入を加速する。


PS(2017年3月11日追加):*5-1のように、国は年間積算の空間線量が20ミリシーベルト以下の地域では避難解除を進めているが、この線量は原発の中と同じである上、加算しなければならない内部被曝を考慮していないため、帰還した一般市民は原発労働者より大きな放射線量を365日、24時間浴び続けることになる。にもかかわらず、「20ミリシーベルトは最大で普通はそれ以下だ」という言い訳も聞くが、基準はそういうもので、原発労働者も同じである。また、避難し続けるか帰還するかについては、放射能汚染の正確な情報を公開した上で意思決定させるべきであるのに、正確に計ることもせず、「放射能による健康被害はないから、心配するのは風評被害だ」と決めつけるなど、想定が甘く非科学的すぎる。その上、避難し続ける人を「必要以上に不安に思っている人」などと吹聴しており、これが避難生活をやりにくくして、周囲から驚くような内容の差別やいじめの言葉を引き出すことになっている。そのため、*5-2のように、科学的に説明した上で、希望する避難者へは支援を継続することが必要だ。
 なお、*5-3のように、フクイチの原子炉建屋を覆っていたカバーは、解体され、現在は取り外されたままである。そのため、放射性物質の付着した粉じんが舞い上がるのを防ぐために飛散防止剤を吹き付けたとしても、その効き目がそれほど長くて強いとは思われず、フクイチは現在、遮るものもなく解放されているわけである。その上、*5-4の約350億円の国費を投入した凍土遮水壁は、かなり前に凍結を開始したものの未だに目的を果たしておらず、これから夏や台風の季節になればさらに凍りにくくなって、フクイチは汚染水を垂れ流し続けることになる。
 さらに、*5-5、*5-6のように、フクイチ2号機に、堆積物除去ロボットを投入して調査したところ、空間放射線量が毎時650シーベルトと推定され格納容器内の高線量でカメラは2時間で故障したというお粗末な結果で、「ロボットが圧力容器下まで行けなかったためデブリの状況が確認できなかった」などと説明されたが、人工衛星・ドローン・ミュー電子・放射線に感光するフィルムなど他の方法も使用可能であるため、これは稚拙な言い訳に過ぎない。

 
   スイス気象台の      日本のフクイチ以前と以後の   2015.4.14現在の上    
 2017.3.11放射能拡散予測    放射性セシウム基準    日本産食品の輸入制限上    
    (http://blog.goo.ne.jp/1shig/e/578f13d84d4da457255da1d206ae0d55参照)

(図の説明:一番左の図のように、フクイチからの放射能は現在も拡散し続けており、累積では天文学的数字だ。また、フクイチ事故前の食品に含まれていた放射性物質は大変微量だったが、現在の基準である100ベクレル以下というのは決して小さくなく、食べ続けても安全という証明はない。また、日本産食品の輸入にあたっては、条件をつけたり産地制限したりしている国が多い)

<フクイチ事故とその後>
*5-1:http://fukushima20110311.blog.fc2.com/blog-entry-94.html (福島 フクシマ FUKUSHIMA、津波被害と原発震災に立ち向かう人々とともに) 「20ミリ基準で解除」は原発の中と同じだよ ――帰還目指す住民も汚染の実態に警鐘
 国は、「年間積算の空間線量が20ミリシーベルト以下」を基準に、避難区域の解除を進めている。4月1日、田村市都路(みやこじ)地区が、20キロ圏内の旧警戒区域では最初の解除となった。南相馬市は2年後の解除を決めている。しかし、このような避難解除の進め方に、疑問を抱いている住民は少なくない。その一人である木幡寛治さん(仮名)にお話を聞いた。木幡さんは、30数年来、福島第一原発を中心に原発作業員として働いてきた。しかし、原発事故によって木幡さんの自宅も避難区域とされ、現在は、仮設住宅で暮らしながら、除染作業などに従事している。木幡さんは、原発内の作業に長年携わってきた知識と経験から、「日常生活で20ミリシーベルトというのは到底了解できるものではない。まさに原発の中の放射線管理区域で暮らすということなんだから」と厳しく見ている。とくに、木幡さんは、空間線量以上に汚染の実態と内部被ばくのリスクについて警鐘を鳴らす。だから、空間線量だけを見せて、汚染の実態について知らせないという国のやり方に対して、「国による犯罪」だと批判する。その一方で、木幡さん自身は、自宅へ「戻る」ことを選択し、「戻る」人びとと共に地域再生に取り組むことを模索している。しかし、「その前に『戻らない』人たちの選択を守っていく必要が絶対にある」と訴える。また、「戻る」にあたっても、汚染の実態を正確に調査し開示して、住民が主体となって、内部被ばくを防護する対策を徹底する必要があるという考え方だ。そして、国が、事故を何ひとつ反省せず、原発の再稼働と増設に突き進むことに対して、「国がそういう態度なら、国民の側から転換をつくり出していく必要がある」という思いを持っている。
●外部放射線以上に汚染が問題
○4月1日に田村市都路地区の避難指示が解除になり、小高や浪江もそういう方向で進んでいます。
木幡:いつまでたっても復興事業ができないとか、このままだとコミュニティーが崩壊してしまうとか、国に限らず、市町村も、遮二無二解除しようとしているよね。で、放射線に対する防御よりも、復興を優先して行くような雰囲気がどんどん強まっているし、そういう圧力が高まっているね。これ以上、除染しても無理だと思うし、そういうところに戻って住むか住まないかは個人の判断によるしかないんだけど、もし、年間20ミリシーベルト近く被ばくをする可能性があるようなところで生活するというなら、それはまさに原発作業員と同じなんだから。だから、そうするんだったら、そういう管理をきちっとやれよという話なんだよね。
○木幡さんは30年以上、主に福島第一原発で作業員をやって来られましたね。その経験や知識からすると、20ミリシーベルト基準での解除には問題があると。
木幡:そうね、相当に問題があるんじゃないかな。原発で働いてきたから、職業被ばくとして、年間20ミリシーベルト〔※〕ということについては、まあ了解しているよ。でも、日常生活で20ミリシーベルトというのは到底了解できるものではない。〔※法定の限度は「実効線量で5年間に100ミリシーベルトを超えず、かつ、1年間に50ミリシーベルトを超えない」。それに準じて、東京電力や協力企業では、概ね年間20ミリシーベルトを管理基準にしてきた〕。放射線管理区域というのが法律で定められている。その基準は、外部放射線で言えば、3カ月で1.3ミリシーベルトを超えるところ。そういうところでは、被ばく管理や汚染管理をきちんとしなさいよと決められている。例えば、放射線管理区域の中で作業をするときには、APD(警報付ポケット線量計)とか、ガラスバッチ(個人積算線量計)をつけて外部被ばくの線量を管理している。それから、作業を終えて管理区域から出るときは、汚染を服や体にくっつけたまま持ち出してしまわないように、スクリーニングチェック(表面汚染検査で汚染者を選別する)を受けなければならないんだ。表面の汚染密度で基準を作っている。そこで引っかかると、落ちるまで洗わされるとか、服なんか取り上げられるとか、そういう風にやっていたんだよ。それから、3カ月に1回はホールボディーカウンターの検査、それに6カ月に1回の電離健康診断が義務づけられているんだ。で、そういう検査でもし基準以上の数値が出たりしたら、放射線管理区域の中での作業ができなくなるんだよ。20ミリシーベルトというのはそういう世界なんだから、そういう管理がなされないといけないという話なんだよね。
○外部放射線にだけに目が行ってしまいますが、放射線管理区域では、外部放射線に対する管理とともに、汚染濃度で内部被ばくに対する管理が行われていたのですね。
木幡:その通り。原発労働の経験からすると、外部被ばくだけを見ていたらだめだと思うんだ。土壌や空気中のダストの汚染濃度を見ないと。震災前の原発では、外部被ばくに対する管理では、年間20ミリシーベルトを超えないように管理しているし、実際にはそれよりさらに低く抑えるようにしていた。しかし、それ以上に、内部被ばくに対する管理が厳しかったと思うよ。外部被ばくの防護管理だけであれば、線量測定と時間管理だけで十分なんだけど、汚染管理やスクリーニングとかホールボディーカウンターというのは、内部被ばくに対する防護としてやっていたわけだからね。だから、法律で決められている放射線管理区域の条件も、三つの基準があるんだよ。ひとつは、外部放射線で、実効線量が3カ月で1.3ミリシーベルト。もうひとつは、空気中の放射性物質の濃度。三つ目が、体や物の表面の放射性物質の密度。二つ目の空気中のダストの場合は、基準が核種によって違っていて、たとえばセシウム137だったら、1立方センチ当たり3×10-3ベクレルが空気中の濃度限度で、その1/10が管理基準といった具合。で、これがマスクオーダーだった思うんだよね。それ以上のダストが予想される場合は全面マスクをしないといけない。大事なのは、三つの指標があって、決して外部放射線だけではなかったということなんだ。
○そうすると、国の20ミリシーベルト基準の問題点は、単に、外部被ばくの数値として高いかどうかではなく、内部被ばくのリスクを軽視している点にあると。
木幡:そういうことだね。原子力規制委員会が昨年11月に「帰還に向けた安全・安心対策に関する基本的考え方(線量水準に応じた防護措置の具体化のために)」という見解を出しているけど、それを見ても、最初から最後まで線量に対する防護措置だけを扱っているんだよ。でも、20ミリシーベルト以下であれ一定の空間線量があるということは、そこにそれだけの放射性物質が存在して汚染しているということでしょ。で、外部被ばくは、空間線量率で予測できるけど、内部被ばくは主に汚染濃度に影響されるわけだからね。そういう汚染がある所で生活するということは、それを取り込むリスクがあるわけだ。それが一番危険なのに、そのことをほとんど無視しているという点だよね。
●シーベルトで管理する狙い
○そうすると、国は、汚染を密度・濃度でとらえるということを、意図的にネグレクトしているということでしょうか?
木幡:私としては、そう思わざるをえないね。実際、管理基準を変えているんだよね。あまり知られていないけど。まず、震災前の管理がどうだったかということを、少し前に作ったものだけど、表にしてみたんだ。(「放射線管理区域内の区分と管理例」 )もちろんこういう規定があるという意味ではなく、自分の経験と記憶の範囲でしかないけど。3・11以前から原発に関わってきた人は、こういうものだと思って、そういう基準でやってきたわけ。ところが、原発がドーンとなって、汚染が噴出したら、基準もガーンと変わってしまうというね。それも一時的な緊急措置ならまだしも、汚染にかんする基準は元に戻っていないわけだから。放射線管理区域から出るときの表面汚染の基準、スクリーニングの基準だね、それは、もともとアルファ線核種以外では1平方センチ当たり4ベクレル以下、カウントで約1300cpmだった。ところが、3・11以降、緊急時ということで40ベクレル、1万3千カウントにして、さらにすぐに10万カウントに引き上げた。で、その年の9月に40ベクレルには戻したけど、それがいまも続いている。3・11以前の基準の10倍。これは意図的でしょう。要するに、もう4ベクレルで管理しようとしても、そこら中が汚染だらけで、対応できないということでしょう。そういう意味で、汚染密度とか濃度ということにはできるだけ触れないで、外部放射線のシーベルトでくくっていると、これは管理しやすい。住民もシーベルトしか測んないから、本当の汚染が高いのか低いのかは分かんない状態なんだよ。もちろん、中心にいてコントロールしている人は分かっているでしょう。放射線管理区域の基準がどうだったかとか、汚染と内部被ばくの問題とか。でも、そういうことには触れないで、20ミリシーベルトという線量で切って解除ということにしている。これは、国による犯罪に近い行為なんだよ。
○なるほどそういう手口だったのですね。
木幡:ただね、国の方には、こういう言い訳があるんじゃないかと思うんだ。つまり、外部被ばくにしても、汚染を内部に取り込んだときの被ばくにしても、結局、シーベルトで統一しているんだからいっしょだと。外部被ばくで1ミリシーベルトを浴びようと、内部被ばくで1ミリシーベルト浴びようと影響は同じだというわけ。ICRP(国際放射線防護委員会)などの考え方なんだけど、外部被ばくでも、内部被ばくや局所的な被ばくでも、体の単位体積での平均的な影響で計算してしまう。でも、これは、私は違うと思うよ。例えば、細い針で皮膚を突いたときと、太い筒で突いたときとでは、痛さ、ダメージは違うでしょ、同じ力で押しても。だから、ECRR(欧州放射線リスク委員会)2010勧告では、内部被ばくは、外部被ばくに対して100倍から1000倍ぐらいリスクが高いと指摘しているよね。だから、原子力規制委員会の見解は、内部被ばくのリスクを非常に軽視したものだと思うよ。
●不安とリスコミ
○ところで、復興加速化方針では、被ばくと健康リスクに関して、住民の不安を取り除くためのリスクコミュニケーションということを言っています。
木幡:そこのところが、一番、頭に来ているんだ。たしかに健康への影響は、すぐに出てくる場合もあるかも知れないけども、すぐには出て来ない方が多い。少なくとも、健康への影響は、「わからないことが多い」というのが正しい知見でしょう。だけど、国の加速化方針は、放射線の健康影響は実際にはないと決めてかかっているよね。で、住民の抱いている「不安」には科学的な根拠はないと。それでも「不安」だというから、そういう人にはリスクコミュニケーションで「不安」を取り除いてあげましょうと。外部被ばくの数字だけを見せておいて、「大丈夫ですよ」「戻れますよ」というやり方はほんとにおかしいよ。これだけの放射能汚染があるよということを情報としてきちんと開示するべきでしょう。それからだよ、戻るかどうかは。もちろんそれをちゃんと理解した上で戻るという選択はあると思うけど。だけど、そのためには、ちゃんとした環境データをつくらないと。放射能は測ればわかるんだから。誰でも計測器があれば測れるんだから。
○国は、今後は個人の線量を把握すると言っていますが。
木幡:個人線量計つけるかどうかじゃないよ。帰還する住民に個人線量計を持たせるとか、それが被ばく対策で帰還促進策だと言っているけど。ガラスバッチを各家庭に配って、3カ月単位で送り返すと。ガラスバッチで積算線量を測るには便利だけど、その最少単位が0.1ミリシーベルトなんだ。だから0.1ミリシーベルト以下は被ばくゼロになってしまうんだ。そんなんじゃなくて、身体汚染とか内部への取り込みとか、汚染拡大なんかを防止することに力を注ぐべきだよ。
●除染の目標は「除染前よりは下げる」
○ところで、木幡さんは除染作業員としてモデル除染からかかわっていますね。また、被災者としてご自宅が除染の対象になっているわけですが。
木幡:うーん、除染ね。除染は必要は必要だよね。住宅の除染はどうしても必要だよね。ただ、やってもダメなところはダメだし、こんなやり方ではやらない方がいいんじゃないかというのもあるよね。屋根はもうやんなくてもいいと思うんだよ。最初の頃は、たしかに、一階より二階の方が線量が高いといったことがあって、やっぱり屋根から来ているということだったけど、今は、もう雨で汚染が流れてしまっているからね。あと苔が生えているような屋根とかは、苔を取ればいい。錆びたトタン屋根とか、そういうのはもう張り替えるしかない。雨樋もあるよね。雨樋なんか取り換えればいい。だけど、今の除染マニュアルでは、取り換えないね。壊れているものがあってもそれをそのままの状態におくんだ。非常に硬直している。それから壁でも、拭き取りによって効果がある材質のものだったら、拭き取りをやればいいだろう。それから洗浄でもいいと思うんだよ。
○洗浄は水の回収の問題があるのでは?
木幡:私も、最初の頃は、洗浄したら、水を回収はどうするんだかと言っていたんだけど、下がコンクリートだったら側溝に堰を作って回収する。それから、土のところでは、流れた水は土に染み込むけど、後で表土を5センチはぎ取る作業をやるから、結局、回収できるんだ。放射性物質は表土にとどまっていているからね。
○そうすると除染の現場で感じている問題は?
木幡:一番の問題は、拭き取りのできない材質のものだな。最悪なのはブロック塀。ワイヤーブラッシでブラッシングしているんだよね。これが最悪。たしかにブロックは多孔質で、放射性物質が付着していてなかなか取れない。だから、ワイヤーブラッシでやったら、ああキレイになったというのはあるか