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2019.11.4 東京オリンピックのマラソン・競歩の開催地が東京から札幌に移転したことについて (2019年11月9、10《図》、11、13日に追加あり)

  2019.10.31TBS  札幌のマラソンコース        大通り公園

(図の説明:1番左の番組を始め、全国版のメディアでもマラソン・競歩の札幌移転を批判する声が多かったが、それは東京人の目線にすぎない。左から2番目は札幌のマラソンコースで、右の2つは大通り公園だが、大通り公園は美しい道路だ。2020年のYOSAKOIソーラン祭りのチーム等が、街にくり出てオリンピックの閉会式に花を添えると、翌年からその地域への観光客や祭りへの海外チーム参加が増えそうだ)

 
   時計台    北海道大学      北海道庁   (単調と言われている)新川通

(図の説明:それぞれの場所で塗り替えしたり、植栽を充実したりして手を入れれば、東京とは違った美しさが見られるだろう)

  

 

(図の説明:上の段の左の3つは、YOSAKOIソーラン祭りチーム、下の段の左の4つは、徳島の阿波踊りチーム、一番右の上下は沖縄エイサー祭りチームだが、他地域の祭りの友情出演があればさらに華やかになり、日本の民族衣装と踊りが外国人に喜ばれると思う)

(1)マラソン、競歩の開催地移転への批判について
 2020年東京オリンピックのマラソン、競歩を東京から札幌に移して開催することを国際オリンピック委員会(IOC)が決定した時、私は意外な気がしたが、尤もだと思った。

 その後、メディアは、*1のように、「出発時刻を早めたり、ミストを出すベンチを備えたり、遮熱性舗装をしたりして努力したのに・・」「IOCは強権だ」「不平等条約だ」等の批判をしていたが、弥縫策の「対策したふり」では間に合わないような猛暑になる可能性も大きかったため、この批判は当たらない。それよりも、「オリンピックの開催都市になるためのプレゼンテーションで『日本は温暖な気候だ』と言っていたのは虚偽だった」と言われそうである。

(2)遮熱性舗装について
 表面に遮熱財を塗布して赤外線を反射させ路面温度の上昇を抑える遮熱性舗装は、*2のように、人が立つ高さでは逆にアスファルト舗装より気温や紫外線が高くなるという研究結果がまとまったそうだ。しかし、“遮熱性舗装”の仕組みについて考えればわかることだが、遮熱性舗装をしたからといって熱エネルギーがなくなるわけではなく、アスファルトに吸収されずに反射されるだけなので、この結果は当然なのである。

 このことについて、樫村東京農業大教授(運動生理学・環境生理学)の研究チームは、「路面温度はアスファルトより約10度低かったが、高さ50センチ、150センチ、200センチではいずれもアスファルトより遮熱性舗装の方が高く、遮熱性舗装は熱中症のリスクを高める」と日本スポーツ健康科学学会で2019年8月30日に発表されたそうだ。

 国土交通省や東京都の担当者は、東京でのマラソンや競歩を可能にするため結果を矮小に評価し、日本独特の根性論で切り抜けようとしていないだろうか? それよりも、アスファルトやコンクリートで覆われた地面を減らし、緑地を増やして、本当に過ごしやすくて豪雨に強い街を作るべきである。

(3)札幌のオリンピック、マラソンコースについて
 札幌のマラソンコースについては、新川通(北区、手稲区)が日陰が少なく単調だというクレームが多かったため、*3のように、新川通を他の地区に変更する方向で検討しているそうだが、私は、北海道の大自然が放映されるのもよいと考える。

 日陰の少なさは中央分離帯や両側に大きな並木(白樺・イチョウ・桜など)を植樹し、単調さは低層に3kmづつ異なる花(この時期に咲く花)を植えれば、市街地にはない北海道らしい自然の美しさが見られる。大自然に比べればおもちゃのようなビルやテレビ塔のある景色が一番よいと感じるのは、都会のコンクリートの中で育った人の感受性にすぎない。

 なお、オリンピックのマラソンで大きな高低差を許されるのなら、大通り公園から40km以内に支笏湖や中山峠が入るので、中山峠付近を出発点として下りながら札幌市内の大通り公園を目指すのも美しいコースになるだろう。

*1:https://digital.asahi.com/articles/ASMB00GWXMBZUTQP01S.html (朝日新聞 2019年11月1日) マラソン騒動で見えたIOCの強権ぶり「不平等条約だ」
 2020年東京五輪のマラソン、競歩の開催地を東京から札幌に移す国際オリンピック委員会(IOC)の案について話し合うIOC、東京都、大会組織委員会、国の4者によるトップ会談が1日正午、都内で始まった。
●マラソン札幌開催が正式決定 小池知事「合意なき決定」
 開催都市・東京の小池百合子知事は移転に反対してきたが、この会議の冒頭で「IOCの下した決定を妨げることはしない。合意なき決定だ」と述べた。なぜ「合意なき決定」ができたのか。組織委幹部はささやく。「都や組織委は、不平等条約を結ばされているようなものだから」。日本側が嘆くのは、東京都や組織委などがIOCと結ぶ「開催都市契約」だ。いったいどのような内容なのだろうか。「IOCは、オリンピック・ムーブメントの最高の権威で、五輪はIOCの独占的な財産である」。序文で、IOCの立場が明確に宣言されている。別の大会関係者は、こう解説する。「東京都は自らの意思で立候補して大会の開催場所をIOCに提供した立場。組織委はIOCの意向で動く手足で、いわばイベント屋だ」。組織委自体も、開催都市契約に基づいて設立された。1日に最終日を迎えた調整委員会は準備状況を確認し、話し合う場だが、意見が対立した場合の最終決定権は日本側にない。それを示す条文がある。「調整委が解決できない問題がある場合、あるいは、調整委の勧告に従って行動することをいずれかの当事者が拒否した場合、IOCが最終的な決定を行う」。さらに、こんな記述もある。「IOCは指針およびその他の指示を修正し、かつ新たに出す権利を留保する。開催都市(東京都)、NOC(日本オリンピック委員会=JOC)、及びOCOG(組織委)は、これらの修正、および新しい指針および指示の全てに対応するものとする」。今回の例に当てはめると、契約上、東京都も組織委も「マラソン、競歩の札幌開催」というIOCの「指示」に逆らえない。IOCが「決定事項」と強気だったのは、こうした裏付けがあるからこそだ。組織委や都も、IOCの要求を無条件にのんできたわけではない。経費を抑えるために、立候補ファイルにあった競技会場の新設を一部取りやめ、既存会場を利用することにした。それでも、IOCや国際競技団体を説得するのに、1年以上の時間を要した。マラソンの暑さ対策も、昨夏から深夜の開催などを模索していたが、IOCから「テレビ映りが悪い」などの理由で、却下された経緯がある。組織委幹部は「五輪開催に興味のある都市は、どう思うだろうか。開催都市とIOCの関係は、考え直すべき時が来ているのでは」と言う。契約の内容は過去大会を踏襲し、今回が特別というわけではない。IOCに強い権限を定める「五輪憲章」に沿い、その順守を求める内容になっている。五輪憲章には「IOCは五輪開催都市契約が定める拠出金のほかは、それと異なる内容の合意が書面でなされていない限り、大会の組織運営と財政、開催について財政的な責任を負うことはない」との文言もある。契約はIOC総会で開催都市に決まった直後に結ぶことになっており、東京の場合、13年9月に東京都、JOC、IOCの3者の間で結ばれた。組織委も14年に契約を結んでいる。契約内容は当初は非公開だったが、17年5月に公表された。組織委の公式サイト(https://tokyo2020.org/jp/news/notice/20170509-01.html別ウインドウで開きます)などから確認できる。
●IOCの権限が強い開催都市契約
 五輪憲章に基づき、IOCは、オリンピック・ムーブメントの最高の権威であって、これを主導し、また、オリンピック競技大会は、IOCの独占的な財産であって、IOCはこれに関するすべての権利とデータ(特に、組織、運営、利用、放送、記録、表現、複製、アクセス、流布に関する、あらゆる形態、手法またはメカニズムのすべての権利であるが、これらには限定されるわけではない)を、既存のものか将来開発されるものかを問わず、全世界を通して永続的にこれを所有する(序文)。遅くともIOCが選手村の開村を求める公式日から本大会終了までの間、開催都市および本大会におけるイベントを開催する他の都市全体におけるすべての会場の出入り口と大通りを、オリンピックシンボルおよびその他のオリンピック関係の言葉とイメージで装飾する(第22条)。IOCは、オリンピック憲章に基づき、また、IOCがその単独の裁量にて本大会にとって最も利益になると考えた場合、いかなる時でも、競技、種別および種目に変更を加える権利を留保する。上記第6条(略)の規定に基づき、組織委は、本大会プログラムに関する競技、種別および種目の追加および/または削除を含め、これらの変更についての全費用を負担するものとする(第33条)。メダルおよび記念メダルを含めたすべてのメダルと賞状は、厳格な監督の下、またIOCの書面による事前承認を得た上で、制作し、配布されるものとする(第40条)

*2:https://www.nikkansports.com/general/nikkan/news/201908260000658.html (日刊スポーツ 2019年8月27日) 五輪マラソン、猛暑対策の「遮熱性舗装」は逆効果
 路面温度の上昇を抑える効果があるとして、東京オリンピック(五輪)の猛暑対策に国や都が導入を進めている「遮熱性舗装」が、人が立つ高さでは逆にアスファルト舗装より気温や紫外線が高くなるという研究結果がまとまった。樫村修生東京農業大教授(運動生理学・環境生理学)の研究チームが30日の日本スポーツ健康科学学会で発表する。樫村教授は「遮熱性舗装は熱中症のリスクを高める」としている。
   ◇   ◇   ◇
 16年8月31日、東京・青山通りの実験コースを試走した瀬古利彦さんが「明らかに涼しい」と太鼓判を押し、導入が決まった遮熱性舗装が、猛暑対策としては逆効果になるという研究がまとまった。樫村教授らは五輪開催期間(7月24日~8月9日)に重なる今年7月26日、路面、50センチ、150センチ、200センチの高さで気温、紫外線強度などを計測した。路面温度はアスファルトより約10度低かったが、高さ50センチ、150センチ、200センチではいずれもアスファルトより遮熱性舗装の方が高かった。7月26日は暑さ指数28~31度だった。暑さ指数31度以上と条件が厳しかった8月8日の計測では、遮熱性舗装はアスファルトより最大で4度高かった。「日射が強くなればなるほど遮熱性舗装の方が高くなります」(樫村教授)。五輪の暑さ対策として遮熱性舗装の研究を進めていた国は15年7月15日~9月27日に検証実験をしている。75日間の平均で、高さ50センチでは遮熱性舗装の方が0・2度低く、150センチでは0・1度高かったが、「有意差はない」としていた。樫村教授は「五輪期間中は暑さ指数が30度を超えます。平均値ではなく、暑さ指数が高いときはどうなるのかを計測しないといけない」と指摘する。樫村教授らの計測では、高さ50センチが最もアスファルトとの差が大きかった。「小さな子ども、ベビーカーに乗った赤ちゃん、車いすの人が特に影響を受けるということです。もうひとつのリスクは紫外線で、遮熱性舗装ははね返りが大きく、アスファルトの4倍以上です。傘をさしても紫外線は防げない。熱中症のリスクを高めるだけではなく、目や肌への障害も高めます」。樫村教授は<1>遮熱性舗装は路面温度を下げる<2>夜間の放射熱を軽減し、熱帯夜を少なくすることは認める。しかし、問題は晴れた日の強い日射だ。7月24日~8月9日の気象データでは、晴れが75%。「4日に3日は晴れるんです」。マラソンコースは道路延長20・2キロ(都道・区道14・6キロ、国道5・6キロ)。都道・区道は75%、国道は52%、遮熱性舗装工事が終了している。
◆遮熱性舗装 表面に遮熱財を塗布し、赤外線を反射させて路面温度の上昇を抑える舗装。もともと屋根など建築に用いられていたが、ヒートアイランド対策として02年、道路舗装に使われるようになった。東京五輪の猛暑対策として「アスリート・観客にやさしい道の検討会」が16年、導入を提言した。
◆暑さ指数 <1>気温<2>湿度<3>日射・地面や建物からの放射熱から算出する。25~28度が「警戒」、28~31度が「厳重警戒」、31度以上が「危険」で、日本スポーツ協会は31度以上では「運動は原則禁止」、28~31度では「激しい運動は中止」と定めている。気温に単純換算できないが、日本スポーツ協会では気温31度以上が「厳重警戒」、気温35度以上が「危険」。
〇…国土交通省と東京都の担当者は今月20日、樫村教授を訪ねた。「おうかがいし、データを見せていただきました」(国交省道路局・武藤聡沿道環境専門官)。武藤氏は「ひとつの研究成果だと思います」と話しながらも「我々もさまざまな実験、シミュレーションをしています。これまで遮熱性舗装の方が特別高くなるという結果は出ていません」として、暑さ指数31度以上など悪条件下での計測は「今のところ特に考えていない」としている。

*3:https://www.hokkaido-np.co.jp/article/361315 (北海道新聞 2019/11/4) 五輪マラソンコース、新川通の変更検討 日陰少なく単調
 札幌での移転開催が正式に決まった2020年東京五輪のマラソンを巡り、大会組織委員会がベースとしている北海道マラソンのコースから、新川通(北区、手稲区)について他の地区に変更する方向で検討していることが3日、関係者の話で分かった。新川通は日陰が少なく、選手らの暑さ対策に課題が残ることなどが主な理由。組織委は詳細について今後詰めの作業を急ぐ方針。東京五輪マラソンのベースとされる北海道マラソンのコースのうち、新川通は高低差が少ない直線で、18・5~31・5キロ地点の往復13キロある。ただ、日陰や目標となる建物が少なく、選手らが直射日光を長く浴びるリスクがあり、直線で景色の変化に乏しい。ランナーの間では「精神力が問われる」と言われ、北海道マラソンの難所になっている。関係者によると1日のマラソンの札幌移転決定を受け、組織委の担当者らが3日道内入り、札幌市内を訪れてコースの検討のために現地視察を行ったという。

女性 今週末、最新の「地方公共団体の会計と監査」に関する税理士会の研修と試験があり、
  猛勉強しているため、ブログの記載をしばらく休みます。 汗
  左 今日、その研修と試験が終了し、内容は分量が多かったので心配しましたが、試験は
    資料持ち込み可だったため、何とか90点以上とれました(2019年11月9日)。

<日本は長所を活かして頑張らないと>
PS(2019/11/11追加):*4-1のように、大会組織委の武藤事務総長が、男女マラソンコースの発着点候補になっている大通公園は、「重要な夏のイベントが同時期にあり、調整が課題」とされたそうだが、オリンピックも世界に向けて発信できる重要なイベントであるため、これまでのイベントをオリンピック終了後に行えば、オリンピック関係者も続きに楽しめてよいだろう。
 また、*4-2のように、道議会全会派のうち自民会派のみが新庁舎での喫煙所の設置を決めており、北海道医師会の長瀬会長が、来年1月に完成予定の新しい道議会庁舎を完全禁煙とするよう自民党道連の吉川会長に要望されたそうだが、自民党は、男性中心でかつ煙草栽培農家やたばこ販売組合の応援を受けているため、煙草に甘いのである。
 なお、日本はインフレ政策(→賃金上昇)・貿易黒字による円高・頑張らない方向への改革により、加工貿易の比較優位性が新興国より低くなっているため、*4-3のように、貿易収支が赤字に転じ、この傾向は今後も続くだろう。そのため、国内消費や旅行収支は重要なのであり、これまでの蓄積を生かし発展させて、アジアの奥座敷としての地位を獲得する必要がある。

*4-1:https://www.hokkaido-np.co.jp/article/363115?rct=s_tokyo2020_marathon (北海道新聞 2019/11/9) 発着点3案「それぞれ課題」 組織委が視察 五輪マラソン
 東京五輪マラソン・競歩の札幌開催に向け、大会組織委の武藤敏郎事務総長は8日、札幌市を訪れ、男女マラソンコースの発着点として組織委が検討する市内3カ所を視察した。武藤氏は「発着点は早期に決めなくてはならない。12月初旬の国際オリンピック委員会(IOC)理事会に向け実務者会議で協議したい」「施設整備や運営は簡素化、効率化を図る」と述べた。会場(発着点)は北海道マラソンの発着点である大通公園(中央区)が最有力とされる。同日に市と道、組織委で発足した実務者会議は、この大通案に、札幌ドーム(豊平区)、円山公園(中央区)を加えた3案で検討を始めた。武藤氏は視察後に市役所で記者会見し、「それぞれ素晴らしい施設だがデメリットもある」と指摘。札幌ドームではアリーナ出入り口の改修の必要性やコースの高低差を問題視し、円山公園は「丘陵地帯のため競歩コースには難しい」などとした。有力視される大通公園については「重要な夏のイベントが同時期にあり、調整が課題」とした。

*4-2:https://www.hokkaido-np.co.jp/article/363470(北海道新聞 2019/11/11) 道議会新庁舎の完全禁煙を 道医師会長、自民党道連会長に要望
 北海道医師会の長瀬清会長は10日、来年1月完成予定の新しい道議会庁舎を完全禁煙とするよう、自民党道連の吉川貴盛会長に要望した。吉川氏は「道連として真摯(しん し)に受け止める」と述べ、新庁舎の会派控室に喫煙所を設置することを決めている自民党・道民会議に対し、要望内容を伝える考えを示した。長瀬氏は、札幌市内で吉川氏に要望書を手渡し「公共(施設)の道議会には市民も子どもも入る。他の県に及ぼす影響も大きい」と喫煙所設置を撤回するよう求めた。吉川氏は「最終的には道議会自民党が決めることになるが、今の話を(自民会派に)しっかり伝える」と応じた。要望後、長瀬氏は記者団に対し「(問題が)1歩も2歩も進んだ。道連会長として手腕を発揮してほしい」と話した。道議会全5会派のうち、自民会派のみが新庁舎での喫煙所の設置を決めており、他会派から全会派での協議を求める声が上がっている。

*4-3:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/452341 (佐賀新聞 2019年11月11日) 経常黒字10兆3382億円、19年度上半期、3・3%減
 財務省が11日発表した2019年度上半期(4~9月)の国際収支速報によると、海外とのモノやサービス、投資の取引状況を示す経常収支の黒字額は、前年同期比3・3%減の10兆3382億円だった。半期ベースでの黒字は11期連続。中国向け自動車関連部品や半導体製造装置の輸出が減少したことが影響し、経常収支の黒字幅は縮小した。経常収支のうち、輸出から輸入を差し引いた貿易収支は、前年同期の1兆1245億円の黒字から241億円の赤字に転じた。輸出は6・1%減の37兆5796億円、輸入は3・3%減の37兆6038億円だった。旅行や貨物輸送を含むサービス収支は2711億円の赤字となった。旅行者のお金の出入りを示す「旅行収支」の黒字は1兆3451億円だった。韓国からの旅行者は減った一方、外国人旅行客全体は増加した。海外投資で生じた利子や配当の動向を表す第1次所得収支の黒字は、ほぼ前年同期並みの11兆3079億円だった。同時に発表した9月の経常収支の黒字額は前年同月比12・5%減の1兆6129億円だった。黒字は63カ月連続。中国向け自動車関連部品などの輸出が落ち込み、黒字幅が縮小した。ラグビー・ワールドカップ(W杯)の開催により訪日客が増え、旅行収支は拡大した。

<再エネの利用と送電について>
PS(2019年11月13日):私は、北海道の自然や雄大さが好きで、札幌・定山渓、支笏湖・洞爺湖、昭和新山、摩周湖、函館、知床・釧路・根室などのいろいろな場所に何回か行った。そのため、*5-1のように、JR北海道がJR札幌駅南口に高さ約230mの新幹線と各交通機関との結節点となる新ビルを建設しバスターミナルも整備するのは良いと思うが、空港と鉄道の便利な連結も必要だ。
 また、北海道は観光だけでなく、再エネ発電にも向いているため、*5-2のような太陽光発電だけでなく、風力や地熱発電による電力を集めて鉄道に最新の電線を敷設することによって本州に送電することも可能だろう。それらの工夫により、*5-3のように、異常な高コストのため要するに何もできない我が国のインフラが少しは更新しやすくなると思われる。

 

(図の説明:1番左は、釧路湿原のタンチョウ《冬》、左から2番目は釧路湿原のハマナス《夏》、右の2つは羅臼のシャチで、自然がすごいわけである)

*5-1:https://www.hokkaido-np.co.jp/article/363806 (北海道新聞 2019年11月12日) 札幌駅新ビル 道内一230メートル 創成川東に新幹線改札 JR計画
 JR北海道の島田修社長は11日の記者会見で、JR札幌駅南口の札幌市中央区北5西1、西2の両街区に一体的に整備する新ビルのうち、西1街区の高層棟は地上47階建てを目指すことを明らかにした。JRによると、高さ約230メートルで、現時点で道内で最も高いJRタワー(38階建て、173メートル)を超え、道内一の高層ビルとなる。両街区を一体的に開発する札幌市とJRなどは同日、準備組合を設立し、島田社長と秋元克広市長が札幌市内で記者会見した。島田社長は、高層棟について「JRタワーより高層のビルを目指したい」と述べ、今月1日に東京・渋谷に開業した渋谷駅直結の高層ビル「渋谷スクランブルスクエア」をモデルに、新ビルを新幹線と各交通機関との結節点としたい考えを示した。市によると、新ビルは2030年度末の北海道新幹線札幌延伸に向けて、29年秋の完成を目指す。高層棟には、世界展開する高級ホテルやオフィス、商業施設を併設。西2街区の低層棟には商業施設をつくる。両街区1階部分にはいずれもバスターミナルを整備。2階には両街区をつなぐ歩行者用デッキをつくり、バスの待合所などを配置し、災害時には帰宅困難者を受け入れるスペースとする。また、北海道新幹線札幌延伸を踏まえ、創成川東地区に新幹線用の東改札を開設することも検討。その際、創成川を横断し、西1街区の新幹線駅舎と結ぶ歩行者用デッキの設置についても調整する。

*5-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20191113&ng=DGKKZO52098720S9A111C1TJ1000 (日経新聞 2019年11月13日) 道路舗装で太陽光発電、ミライラボ、EV給電も 中日本高速など、CASE対応
 「眠れる資産」とされた道路に、最新テクノロジーを実装する動きが広がっている。新興企業のMIRAI-LABO(ミライラボ、東京都八王子市)は太陽光パネルを装備した道路舗装を開発した。中日本高速道路は道路に埋め込んだセンサーを使い、自動運転で必要なデータを発信するシステムを開発している。車の電動化など「CASE」の普及をにらみ、総延長約128万キロメートルに及ぶ道路の価値の掘り起こしが本格化する。2006年設立のミライラボは非常用電源など省エネ機器を手がけ、全国の警察や自治体に販売する新興企業。今回、太陽光で発電する道路舗装「ソーラーモビウェイ」を開発した。太陽光パネルを特殊な樹脂で覆い道路の舗装材の代わりに使う。現在、道路舗装大手NIPPOと性能試験を進めており、2022年の実用化を目指す。通常の太陽光パネルは衝撃に弱く割れやすい。今回、ミライラボは柔軟性のある素材を使い衝撃に強いパネルを採用した。舗装面にパネルが露出していると車がスリップしたり路面が摩耗したりする。これを防ぐためセラミック片を混ぜた透明な樹脂でパネルを覆う。ビル屋上などの太陽光パネルは光の角度が浅いと発電効率が落ちる。開発した舗装材はセラミックが太陽光の角度を変え、1日を通した発電量を高める効果が期待できるという。電気は地中の電線を通じ蓄電池にためる。電気自動車(EV)などで使ったバッテリーの再利用も想定する。国内には総延長約128万キロメートルの道路が走っているが、車や人の移動用途が中心の「眠れる資産」だ。ミライラボの平塚利男社長は「高速道路と国道の半分を発電型の舗装にすれば日本の消費電力の16.5%を賄える」と試算する。ミライラボがにらむのは、車の電動化や自動運転など「CASE」の本格到来だ。発電した電力は街灯や道路表示板に加え、将来は走行中のEVへの無線給電や、自動運転に必要な道路状況に関するデータ通信の電力源としての活用を想定している。停電で自動運転車に情報が送れなくなると事故につながる恐れもあり、電源を道路で賄えるメリットは大きい。道路を発電基地にする利点はほかにもある。平地の少ない日本では森林を伐採してパネルを設置するケースが多く、道路を活用すれば環境破壊を防げる。災害で停電が起きてもパネルで発電すれば信号や街灯を維持できる。再生エネルギーの送電網不足が問題となるなか、道路での発電は「地産地消」につながる。国内の道路は老朽化が進み、今後大規模な改修時期を迎える。国土交通省の試算では今後30年間、高速道路や一般道で年2兆円超の工事が必要になる。老朽化対策の時期がCASEの大波と重なることから、道路に最新テックを埋め込む技術開発が広がる。中日本高速道路(NEXCO中日本)は高速道路にセンサーやカメラを整備する。すでに東名高速など主要道に地磁気センサーを埋め込み、渋滞情報などのデータを集めている。今後、高精度カメラを短い間隔で設置し、道路の運行状況を絶え間なく監視できるようにする。同社は管轄する道路の約6割が建設から30年たち、「来年度から首都圏の主要道路が改修時期を迎える」(担当者)。次世代通信規格「5G」が実用化すれば大容量の映像データをスムーズに送受信でき、自動運転車へのデータ送信など道路の付加価値を高める。大成建設は豊橋技術科学大学と共同でEVのワイヤレス給電システムを開発している。地面に電極を敷設し、受電装置を備えたEVが上を走ると電気が送られる。ブリヂストンも東京大学などと共同でタイヤを通じて道路から充電する技術開発を進めている。道路から給電できれば搭載するバッテリー量を減らし車体の軽量化にもつながる。普及に向けた課題はコストだ。ミライラボとNIPPOが試験を進める発電型の舗装材は「まだ価格を設定する段階ではない」(NIPPO)というが、大幅なコスト増は避けられない。生産規模の拡大によるコスト低減や、道路の付加価値向上による新しい収益モデルの構築が必要になる。海外でも政府や企業がCASE対応を急いでおり、今後は国際競争も激しくなる。例えば道路での太陽光発電は米国やフランスなどで開発が進むが、現時点で明確な成功例は出ていないという。

*5-3:https://www.nikkei.com/paper/related-article/?b=20191113&c=DM1&d=0&nbm=・・・ (日経新聞 2019年11月13日) 最新技術、課題はコスト インフラ老朽化契機に改修
 国土交通省によると、建設後50年以上の道路や橋の割合は2018年の25%から33年に6割に高まる。最新技術はコスト低減が課題になるが、低コスト化やノウハウ蓄積で海外に先行できれば、新たなインフラ輸出の商材になる可能性もある。国交省は2月、インフラの定期点検要領を改正した。従来は橋やトンネルの状態を人の目で確認する必要があったが、同等の情報が得られればカメラやドローン(小型無人機)などの活用も認めた。これを受け、ゼネコン以外の異業種が最新技術を応用する動きが活発になっている。リコーは複数台のステレオカメラを搭載した一般車両を走らせ路面の状態を調査する技術を開発。デジタルカメラで培った画像処理技術を応用する。カシオ計算機は時計「G-SHOCK」の技術を応用しセンサーを搭載したネジを開発。構造物のゆがみなど経年変化の情報をリアルタイムで解析できる。国交省は今後30年で必要になるインフラの更新費用が最大で194兆円に上ると推計する。単にインフラを更新するのではなく、CASE対応のような付加価値向上や新技術の育成に結びつける工夫が不可欠になる。

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2019.10.3 医療の充実と医療費削減の両立は、どうすればよいのか (2019年10月4、5、6、7、13、16、18《図》、20、21、23、24、26、28、29、31日、11月1、2日に追加あり)
   
                               2019.7.19東京新聞

(図の説明:左図のように、初期化されて何にでも分化できる細胞は、卵細胞《ES細胞or胚性幹細胞》とiPS細胞が有名だが、このほかにも成人の体内に幹細胞は多い。これを、中央の図のように、成人から採取して臓器等に成長させ、移植するのが再生医療だ。また、右図のように、既に分化した細胞を増やして、似た組織に移植する方法もある)

(1)公立病院の赤字拡大と病院再編 
1)公立病院はどうして赤字拡大したのか
 日経新聞は、*1-1-1で、「①地方自治体が運営する公立病院の赤字拡大が止まらず、本業の赤字総額が2017年度に4782億円となり2012年度比で5割増えた」「②公立病院は民間病院が手がけたがらない救急・小児科などの不採算医療を提供したり、過疎地の医療水準を維持したりする役割がある」「③赤字を公費で埋め続けると自治体財政が悪化し、保育や介護などの公的サービスにしわ寄せがいく」「④非効率な医療が温存され入院や治療を増やそうとしてムダに医療費が膨らむ」としている。

 このうち②は正しく、黒字化だけを考えれば民間病院のように不採算部門は切り捨てて採算がとれる診療科だけを残せばよいのだが、そうすると救急や小児科だけでなく産婦人科のない地域もでき、誰もが速やかに先端医療にアクセスできる状態が保てない。そのため、①になる理由を精査すべきなのであり、④のように非効率な医療が温存されていると単純に言うのは危険だ。さらに、③については、自治体は、医療・介護・保育費用だけを支出しているのではなく、他に節約すべき無駄遣いが多いため、血税を単なる景気対策に使っていないかをこそ確認すべきだ。

 なお、*1-1-2のように、医療費は消費税が非課税になっているため、病院が支払った消費税は患者に転嫁できず、病院の自己負担になってしまう。これが公立病院に限らず病院の赤字拡大の大きな原因で、医療費を非課税にすることは消費税導入時から問題になっていた。そのため、非課税ではなく0税率にすれば、支払った消費税が還付され、消費税増税が病院経営に影響しない公正な条件が整うわけである。

 さらに、*1-1-1は、公立病院の看護師は民間病院より賃金が高いので無駄遣いだと言わんばかりだが、看護師は労働量や責任と比較して労働条件が悪すぎるのが問題なのであるし、医師にも、*1-3-1のような無給医がおり、無給医でなくとも残業時間の多くは残業代を請求しておらず、労働基準法違反の状態で病院経営がやっと成り立っているのが現状だ。そのため、まず労働条件を一般労働者並みにしてから、病院の本当の赤字額を算出すべきである。

 まさか、*1-3-2のように、いい加減で形だけの仕事をしているお役人や人の顔色を見て同調しているだけの人よりも、人の命を助けるために一刻を争う3Kで責任の重い仕事をしている医師・看護師・介護福祉士の賃金の方が安くてよいと言う人はいないと思うが、*1-3-3のように、相応の報酬を支払わなければ真面目で優秀な人がその分野に来ず、医療の場合は、それが私たちの命に直結するのである。

2)それでは、どうすればよいか
 厚労省が発信しているのか、メディアの理解がその程度なのかはわからないが、*1-1-3のように、「①診療実績が少なく非効率な医療を招いている」として公立病院と公的病院の25%超にあたる全国424の病院について「②ベッド数や診療機能の縮小なども含む再編統合について議論が必要」として、厚労省が病院名を公表したそうだ。
 
 しかし、①については、どこに住んでいても助かる時間内に治療できる病院にアクセスができるためには、診療実績が少ない病院も出るだろうし、それを非効率と決めつけることもできない。ただ、②のベッド数や入院日数が先進諸外国と比較して多いのなら、それは改善すべきだ。

 そのため、その地方自治体の医療計画の下で、地域内の病院がネットワークを作って必要な医療を最小のコストで行うように再編することは必要だが、病院の統合・病床数の削減・診療機能の縮小などを自己目的化してしまうと、日本の医療水準を下げることになる。

 そのような中、「団塊の世代の全員が75歳以上になる2025年度をターゲットに、病気が発症した直後の急性期患者向けの病院ベッドを減らす」というのは、「助けないから、早く死んでくれ」と言っているのと同じであり、良識が疑われる。急性期の患者に医療スタッフを手厚く配置するのは当然のことで、これに関して医療費がかさむから病床数を減らすというのは、算術しかできず医療を知らない人の主張であるため、そういう人は、即刻、医療政策の議論から退出してもらいたい。しかし、慢性期の患者を収容するベッド数を適正化して、訪問介護・訪問看護による自宅療養や介護施設での収容に移行するのは、そのインフラを整備してからならよいと思う。

 これらについて、北海道新聞は社説で、*1-2-1のように、「病院再編リストは、地域の事情に配慮が足りない」としており、南日本新聞も社説で、*1-2-2のように、「公的病院の再編は、地域実態踏まえて議論せよ」として、日本の南北から反論が出ている。私は、同等以上の治療のできる病院が「助かる時間内のアクセス」で行ける場所にあればよいと思うが、離島・山間部ではドクターヘリを使っても助かる時間内に病院に辿りつくのが困難な場所もあるため、各地域が主導して判断すべきである。

(2)先進医療を使って完治させる方法もある
1)癌の免疫療法
 これまでの癌治療は、副作用が激しい割には余命を伸ばす程度の効果しかなかったことを素直に認めるべきだ。その状況の下で、*2-1の癌の免疫療法のように、人間がもともと持っている自然治癒力を強化して癌細胞だけを殺す方法が出てきたのである。これは、癌細胞だけを狙って殺せるため、これまでの化学療法や手術よりも副作用が小さく、効き目も確かだ。
 
 しかし、厚労省は癌の標準治療を今でも「手術」「化学療法(抗がん剤治療)」「放射線治療」としており、この方法では患者が幸福にならない上、要介護者が増えるばかりだ。にもかかわらず、これが科学的根拠に基づいているとして免疫療法を劣後させているのは、理屈がわかっていないため臨機応変に対応することができない人の判断である。私は、他の副作用の多い治療法よりも免疫療法を優先して速やかに保険適用し、癌を治癒させる同様の方法の開発を奨めるべきだと考える。

2)iPS細胞を使った再生医療
 東京医科歯科大の武部教授らの研究で、*2-2のように、前腸組織から出るレチノイン酸という物質が、肝臓・胆管・膵臓のもとになる細胞ができるのを促し、ヒトのiPS細胞から肝臓・胆管・膵臓が同時にできたのは快挙だ。これまで、iPS細胞から神経細胞を作っていたが、これにiPS細胞ではなく自分の幹細胞を使えば、「いつまでも分裂し続けるかも知れない」「他人の細胞なら自分の免疫が排除する」というような副作用がなく、*2-4-1のような「どこまで部品交換したら、自分でなくなるか」という問題も起きない。

3)自分の細胞を使った再生医療
 東京医科歯科大大学院の岩田教授らが始めた、*2-3の「抜いた親知らずの歯根膜細胞を培養して三層にした細胞シートを歯周ポケットのある歯根面に移植すると、歯根膜が歯根と歯槽骨をつないで歯を支えて細菌の侵入を防ぐとともに、シートから骨形成を促すサイトカイン(タンパク質)が出て骨を再生する」という親知らずを使った新しい再生医療も快挙だ。

 このくらいなら、他人の抜いた歯を使った細胞シートを移植しても良いし、「全国の歯周外科にこの治療法が普及すれば、歯周病が引き起こす糖尿病・脳血管疾患・脳梗塞・心臓疾患・関節リウマチ・アルツハイマー病などが減り、医療費の削減効果も大きい」というのは福音だ。

 さらに、本人の抜いた親知らずの歯髄を増やせば、脊髄損傷も治療できるのではないかと考えるため、医科と歯科の交流が望まれる。

4)再生医療による臓器移植
ア)3Dプリンターを使うケース
 日本は、精密機械の製造技術が進んでいるため、(消毒できない)細胞から無菌で臓器を作るのに適していると言われている。

 そのような中、*2-4-1のように、リコーが3DプリンターでiPS細胞から育てた神経細胞を敷いて20層ほど積み重ね、約1cm角のサイコロ形をした神経細胞の塊を作った。このプリンターの技術で様々な形をした細胞の塊を作ったり、異なる細胞を混ぜ合わせたりし、将来は大脳皮質の一部をつくって、脳の治療にも役立てるそうだ。「患者が必要としている機能を提供する」というコンセプトもよいし、応用範囲が広そうだ。

 また、イスラエルのテルアビブ大学が3Dプリンターでヒトの細胞を積み上げて血管まで備えたミニ心臓をつくったというのも素晴らしい。この分野は、世界で研究競争が進んでおり、高い目標を掲げれば実現する時代が来ている。そして、これは、臓器移植が臓器不足に直面している中で、より優れた解を与えているのだ。

 なお、ブタの身体を使って臓器を作る研究も進んでおり、「どこまで臓器を取り換えても自分でいられるか」については、自分の幹細胞を使えば全く問題はないだろう。しかし、他人のiPS細胞を使う場合は、少なくとも脳が置き換えられない限りは「自己」の意識は存在するものの、そのiPS細胞はドナーの性質を持つため、ドナーを厳選すべきということになる。

イ)ブタを使って腎臓と膵臓の再生を行うケース
 慈恵医大と大日本住友製薬が、*2-4-2のように、iPS細胞とブタの胎児組織を使って人の体内で腎臓を作る再生医療の共同研究を始めたそうだ。腎臓は、尿管や糸球体などの複雑な構造を持つためiPS細胞から作るのは難しいとされてきたが、再生医療による人工腎臓を移植できるようになれば完治して透析せずにすむため、患者の福利と医療・介護費用の節約に大きく資するだろう。

 また、東京大の中内特任教授は、*2-4-3のように、移植医療用として、人のiPS細胞を使ってブタの体内で人の膵臓をつくる研究を実施する方針を明らかにしたそうだ。

ウ)臓器の骨格だけを使うケース
 京都大学の森本教授と国立循環器病研究センターの山岡部長らは、*2-4-4のように、再生医療では幹細胞を目的の細胞に育てて移植する研究が多いが、臓器まで作るのは難しいため、組織の細胞を薬などで除去する脱細胞化技術を使って残った骨格を移植することで早期の臨床応用につなげる治療を行って成功しているそうだ。

 また、慶応義塾大学の北川教授らは、肝臓を界面活性剤などで脱細胞化して洗い流して臓器の立体構造を支える骨格だけにし、そこに人のiPS細胞から育てた肝細胞や血管内皮細胞などを入れて大型の立体臓器が作り血管をつなぐ方法を考えているそうだ。

 しかし、脱細胞化するのなら、ブタではなく亡くなった方の臓器を使ってもよいため、厚労省は日本製品を作れるよう、速やかにガイドラインを見直すべきだと考える。

5)再生医療に関する倫理
 日経新聞は、*2-4-5で、「①創造的破壊の陰には、端緒となる大発見や研究成果がある」「②人類が肉体を補い続ける新たな手段を獲得し、さらに高みに上らんとできるのは、あらゆる細胞に育つiPS細胞が登場したからだ」「③iPS細胞は、京都大学の山中伸弥教授が2007年にヒトの細胞での作製に成功し、12年にノーベル生理学・医学賞を受賞した」と記載している。

 しかし、①は正しいものの、最初に発見されたあらゆる細胞に育つ細胞は受精卵(ES細胞)であって、iPS細胞ではない。「受精卵はあらゆる細胞に育つことができるのに、成長すると決まった組織にしかならないのは何故か」という命題を研究して発見されたのが所定の場所では所定の組織にしかならないという法則で、その原理は、*2-2の前腸組織から出るレチノイン酸が、肝臓・胆管・膵臓のもとになる細胞ができるのを促すような、調和を保ちながら合目的的に分化させる遺伝子(DNA)による制御である。そして、そのDNAに傷ついた箇所があると、調和を保ちながら細胞分裂することができずに癌細胞になるわけだ。

 そして、他人の卵細胞を使うのは倫理に反するため、既に分化した細胞を初期化する方法を研究している中でiPS細胞が発見され、③のノーベル生理学・医学賞に結び付いたと記憶しているが、その後の研究で、成人の体内にも初期化された細胞は多く存在することがわかった。

 そのため、③のみに焦点を当てるのは、既に評価され権威を与えられたものしか評価できない文系のドアホだ。さらに、「人の臓器を量産する試みには、期待や畏怖の念などさまざまな反応が寄せられる」「異次元のイノベーションで、それまでの時代との軋轢がある」という感情論も無駄な悩みだ。その理由は、レントゲンで人の体を透視できるようになったり、抗生物質の出現で治らなかった病気が治るようになったりして人類の寿命が延びたことも異次元のイノベーションだったが、これらがそれまでの時代と軋轢があったかどうかを考えればわかるだろう。

<厚労省の病院再編>
*1-1-1:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO43736670V10C19A4SHA000/?n_cid=DSREA001 (日経新聞 2019/4/25) 公立病院、膨らむ「隠れ赤字」 税で穴埋め増える懸念
 地方自治体が運営する公立病院の赤字拡大が止まらない。自治体の補填を除いた本業の赤字総額は2017年度に4782億円となり、12年度比で5割増えたことが日本経済新聞の調べでわかった。最終的な損失も膨らんでおり、公的負担が急増する恐れがある。公費投入が増えると、過剰病床の縮小・集約など医療の効率化が遅れる懸念が強まる。
■本業の赤字は5年で5割増
 公立病院は都道府県や市町村がつくり、国立や大学の病院と異なる。民間病院が手がけたがらない救急や小児など不採算の医療を提供したり、過疎地の医療水準を維持したりする役割があり、公費投入に意義はある。ただ赤字を公費で埋め続けると自治体財政は悪化し、保育や介護などの公的サービスにしわ寄せがいく。さらに非効率な医療が温存され、入院や治療を増やそうとしてムダに医療費が膨らむ恐れがある。総務省が集計する公立病院決算は医業収入にも自治体の補助を含み、本業の実態が見えにくい。日経新聞は本業の力を見るため、公費を除く「純医業収支」を独自に算出した。対象は都道府県や市町村が持つ783病院のうち、12~17年度に比較できる671病院。その結果、損益悪化が止まらない状況が判明した。純医業収支が黒字の病院数は12年度の45から17年度は19に減り、全体に占める割合は7%から3%に下がった。合計赤字額は5割増えたのに対し、公費投入額は5%増にとどまり、15年度以降は借入金に頼っている。
■経営のプロ育たず
 環境が厳しいのは民間病院も同じだが、公立病院は非効率な業務構造が温存されている。全国公私病院連盟によると、民間は医業の費用が収入と均衡するが、公立は費用が1割多い。公務員の看護師は人員配置や給与体系を柔軟に変えられない。事務職は短期で異動するため経営のプロが育たず、無駄遣いが生まれやすい。建設費単価は公的な日赤病院などよりも1割ほど高い。厚生労働省の調べでも、17年度の一般病院の経常利益率は民間が2.3%、公立はマイナス1.5%との結果が出た。埼玉県立がんセンター(伊奈町)は典型例だ。13年に建て替えて病床を増やしたものの、患者数は想定を下回り赤字が急増。18年度予算は同センターを含む県立4病院への一般会計からの繰入額が建て替え前の1.8倍に膨らんだ。県病院局は「見通しが甘かった」と認める。
■首都圏で目立つ公費投入
 過大な公費投入は民間との競合が激しい首都圏で目立つ。17年度の1ベッドあたり公費投入額の首位は東京都の617万円で、全国平均の約2倍。総額で見ると都立8病院だけで400億円と、全国の1割近い公費を使った。都病院経営本部は「都立しかできない機能がある」と訴えるが、広尾病院(渋谷区)と大塚病院(豊島区)は空きベッドが増え、外来患者数は全国平均を下回る。日本総合研究所の河村小百合上席主任研究員は「都は財政規模が大きいため、巨額の公費投入が見過ごされている」と指摘する。千葉県も病院に過大投資し、損失の穴埋め額が膨らんだ。国内の病床は過剰感が強く、公立は全国の病床の15%弱に達する。病床を埋めるために入院患者を増やそうとすれば、ムダに医療費が膨らむ。総務省は07年に公立病院改革の指針を作り、全国の公立病院に施設・診療機能の再編を促した。すでに60を超す再編例があるが、多くの地域では再編の取り組みが様々な壁に阻まれている。
■病院再編、年収減に強い抵抗感
 4月1日、兵庫県川西市の市立川西病院の運営者が医療法人・協和会に変わった。赤字脱却を目指すための民間委託だ。3年後に別の場所に新病院を建て、協和会の別病院と統合する。2病院の医師を新病院に集めて救急体制を充実させる。現在の病院跡地には診療所と介護施設を整える。ハードルは市立病院の看護師らの処遇だった。民間運営になると年収が平均153万円、率で3割近く下がる。当初4年は市が差額を補うが、半数の職員は退職か市役所事務職に異動した。「公務員でなくなることに抵抗感は強い」(同病院経営企画部)。川西市はなんとか乗り越えたが、往々にして労務問題は公立病院改革にブレーキをかける。「都立病院は独立行政法人化すべきだ」。2018年1月、東京都は有識者委員会から提言された。実現すれば人事や予算を柔軟に決められる。7千人超が非公務員になるが、都立病院労働組合は「労働条件を悪化させる」と反対を表明。都は「23年度までに検討を進める」(病院経営本部)と、結論を出すかどうかも不透明だ。
■自治体間の責任分担、調整が難航
 複数の自治体が絡むと、運営責任や資金分担を巡り綱引きが生じる。千葉県香取市にある県立病院と国保小見川総合病院(市と東庄町で開設)。数年前に2病院の建て替えとセットの再編案が浮上した。県は市主導で赤字額が大きい県立病院を小見川病院に統合する案を推した。市は責任を押しつけられると警戒し、逆に県主導の建て替えを求め、小見川病院を市単独で建て替えた。これで再編案は消え、県立病院の赤字は膨らんだ。公立病院再編は縦割り意識を脱した発想が要る。08年に地方独立行政法人として発足した日本海総合病院(山形県酒田市)の前身は近接する市立と県立の2病院。県立の赤字が膨らみ、建て替えを控えていた市立病院が統合を提案した。原動力は「このままでは共倒れになる」との危機感だった。県と市、病院間で厳しい調整を重ね、県立は規模を拡大し重症者向け拠点病院、市立は縮小してリハビリ病院とする役割分担を決定。職員には業績手当てを入れた。中小病院との連携も進め、開業以来、黒字を続ける。栗谷義樹理事長は「個々の病院ではなく地域全体の医療を効率的に提供する経営が必要だ」と説く。サービス水準を落とさずに効率化するには、自治体や職員が既得権益にしがみつくのをやめる必要がある。
■民間との連携がカギ
 そのためには民間病院をまじえた医療体制の見直しもカギを握る。神奈川県は16年度に、総合病院の汐見台病院(横浜市)を医療法人に譲渡した。知事が「県立は小児科などに特化すべきだ」と判断した。従来の医療を続けることを条件に譲渡先を公募し、毎年7億円超あった公費繰入額はゼロになった。医療情報を分析するケアレビューの加藤良平代表は「都市部は公立病院が民間との役割分担を徹底し、規模を縮小すれば公費に依存する問題は改善する」と指摘する。
【集計方法】総務省がまとめる地方公営企業法が適用される公立病院の「病院事業決算状況」の項目に基づく。医業収益から医業費用を差し引いた医業収支から、さらに自治体の補助金のうち医業収益に含まれる「他会計繰入金」(救急医療と保健衛生行政費)を除いて「純医業収支」を独自に算出した。自治体の公費負担は医業内と医業外の合計額。期間中に再編統合した病院や独立行政法人化した病院は除外した。

*1-1-2:https://www.nishinippon.co.jp/item/n/547177/ (西日本新聞 2019/9/30) 増税、負担じわり 非課税の医療費も値上げ 「軽減税率」導入 混乱は必至
 消費税率が10月1日から10%に引き上げられる。増税は2014年4月に現在の8%になって以来、5年半ぶり。低所得者の負担軽減や増税に伴う消費の落ち込みを防ぐため、政府は飲食料品などの税率を8%に据え置く軽減税率制度を初めて導入するのに加え、キャッシュレス決済へのポイント還元など手厚い対策を用意している。ただ、制度が複雑化しており、混乱は必至だ。私たちの暮らしはどう変わるのか。改めてまとめた。電気やガス料金は経過措置で11月分から増税分が上乗せされる。九州電力と西部ガスによると、原燃料価格の変動も加味したモデル家庭の11月料金は、九電の電気料金が10月より93円高い6508円、西部ガスのガス料金が110円高い5827円になる。公共交通の料金も上がる。JR九州は1円単位を四捨五入し、10円単位で値上げ。在来線の初乗り運賃は10円高い170円となる。値上げの割合を示す平均改定率は1・850%。西日本鉄道の路線バスは、区間に応じて10~30円値上げ。100円の区間など、値上げしない区間もある。高速バスは、子会社を含む6社で運行する全34路線のうち31路線で10~400円を値上げする。銀行の手数料は10月1日に引き上げられる。主な銀行の現金自動預払機(ATM)の時間外手数料は108円から110円に。ATMを使って他行に3万円未満を現金で振り込んだ場合の手数料は、540円から550円になる。郵便や宅配の料金も増税の対象だ。通常はがきは1円値上がりして63円に、手紙(25グラム以内の定形郵便物)は2円高い84円になる。8月から新料金に対応したはがきや切手を販売しており、現行のものは今月30日で販売を終了する。ヤマト運輸は10月1日から、宅急便の料金を現金払いは1円単位を切り上げた価格にする。電子マネーやスマートフォンによるキャッシュレス決済の場合は切り上げをしない。一方、消費税が非課税で値上げにならないものもある。住宅の家賃や土地の売買、商品券やプリペイドカードの売買などだ。学校の授業料や火葬料も非課税取引に当たるため今回の増税の影響は受けない。ただ、公的医療保険でカバーされる医療費は消費税の課税対象外だが、医療機関が業者から仕入れる物品などは消費税がかかるため、国は10月から診療報酬を増税分引き上げる。初診料は60円、再診料は10円高くなる。

*1-1-3:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO50232120W9A920C1MM8000/ (日経新聞 2019/9/26) 424病院は「再編検討を」 厚労省、全国のリスト公表
 厚生労働省は26日、市町村などが運営する公立病院と日本赤十字社などが運営する公的病院の25%超にあたる全国424の病院について「再編統合について特に議論が必要」とする分析をまとめ、病院名を公表した。診療実績が少なく、非効率な医療を招いているためだ。ベッド数や診療機能の縮小なども含む再編を地域で検討し、2020年9月までに対応策を決めるよう求めた。全国1652の公立・公的病院(2017年度時点)のうち、人口100万人以上の区域に位置する病院などを除いた1455病院の診療実績をもとに分析した。がんや救急など高度な医療の診療実績が少ない病院や近隣に機能を代替できる民間病院がある病院について「再編統合について特に議論が必要」と位置づけた。424病院の内訳は公立が257、公的が167だった。今後、厚労省は地域の医療計画をつくる各都道府県に対し、地域内の他の病院などと協議しながら20年9月末までに対応方針を決めるよう求める。他の病院への統合や病床数の削減、診療機能の縮小などを25年までに終えるよう要請する。ただ罰則規定や強制力はなく、権限は各地域に委ねられている。特に公立病院の再編や縮小には住民の反発も予想される。改革が進むかは不透明で、実効性を高める施策が必要になりそうだ。政府は団塊の世代の全員が75歳以上になる25年度をターゲットに、病気が発症した直後の「急性期」の患者向けの病院ベッドを減らす「地域医療構想」を進めている。看護師などを手厚く配置するため医療費もかさむのに、病床数は過剰となっているためだ。ただ各地域が医療計画で示した急性期病床の削減率は公立病院全体で5%にとどまっている。このため厚労省は縮小する余地のある過剰な医療の実態を明らかにするため、この春から分析を進めていた。
厚労省が再編の検討を求めた公立・公的病院
【北海道】北海道社会事業協会函館、木古内町国保、国立病院機構函館、市立函館南芽部、函館赤十字、函館市医師会、森町国保、松前町立松前、厚沢部町国保、奥尻町国保、長万部町立、八雲町熊石国保、せたな町立国保、今金町国保、北海道社会事業協会岩内、国保由仁町立、市立三笠総合、国保町立南幌、国保月形町立、栗山赤十字、市立芦別、北海道社会事業協会洞爺、地域医療機能推進機構登別、白老町立国保、日高町立門別国保、新ひだか町立三石国保、新ひだか町立静内、市立旭川、国保町立和寒、JA北海道厚生連美深厚生、町立下川、上富良野町立、猿払村国保、豊富町国保、利尻島国保中央、中頓別町国保、斜里町国保、小清水赤十字、JA北海道厚生連常呂厚生、滝上町国保、雄武町国保、興部町国保、広尾町国保、鹿追町国保、公立芽室、本別町国保、十勝いけだ地域医療センター、清水赤十字、町立厚岸、JA北海道厚生連摩周厚生、標茶町立、標津町国保標津、町立別海、市立美唄
【青森】国保板柳中央、町立大鰐、国保おいらせ、国保南部町医療センター、国保五戸総合、三戸町国保三戸中央、青森市立浪岡、平内町国保平内中央、つがる西北五広域連合かなぎ、黒石市国保黒石
【秋田】大館市立扇田、湖東厚生、市立大森、地域医療機能推進機構秋田、羽後町立羽後
【岩手】国立病院機構盛岡、岩手県立東和、岩手県立江刺、奥州市国保まごころ、一関市国保藤沢、洋野町国保種市、岩手県立一戸、岩手県立軽米、盛岡市立、奥州市総合水沢
【宮城】蔵王町国保蔵王、丸森町国保丸森、地域医療機能推進機構仙台南、国立病院機構仙台西多賀、国立病院機構宮城、塩竈市立、宮城県立循環器・呼吸器病センター、栗原市立若柳、大崎市民病院岩出山分院、公立加美、栗原市立栗駒、大崎市民病院鳴子温泉分院、美里町立南郷、湧谷町国保、石巻市立牡鹿、登米市立米谷、登米市立豊里、石巻市立、南三陸
【山形】天童市民、朝日町立、山形県立河北、寒河江市立、町立真室川、公立高畠、酒田市立八幡
【福島】済生会川俣、地域医療機能推進機構二本松、三春町立三春、公立岩瀬、福島県厚生連鹿島厚生、福島県厚生連高田厚生、福島県厚生連坂下厚生総合、済生会福島総合
【栃木】地域医療機能推進機構うつのみや、国立病院機構宇都宮
【群馬】群馬県済生会前橋、伊勢崎佐波医師会、公立碓氷、下仁田厚生
【茨城】笠間市立、小美玉市医療センター、国家公務員共済組合連合会水府、村立東海、国立病院機構霞ケ浦医療センター、筑西市民
【千葉】千葉県千葉リハビリテーションセンター、国立病院機構千葉東、地域医療機能推進機構千葉、千葉市立青葉、銚子市立、国保多古中央、東陽、南房総市立富山国保、鴨川市立国保、国保直営君津中央病院大佐和分院
【埼玉】蕨市立、地域医療機能推進機構埼玉北部医療センター、北里大学メディカルセンター、東松山医師会、所沢市市民医療センター、国立病院機構東埼玉、東松山市立市民
【東京】国家公務員共済連九段坂、東京都台東区立台東、済生会支部東京都済生会中央、東京大学医科学研究所付属、東京都済生会向島、地域医療機能推進機構東京城東、奥多摩町国保奥多摩、国立病院機構村山医療センター、東京都立神経、国民健康保険町立八丈
【神奈川】川崎市立井田、三浦市立、済生会平塚、秦野赤十字、国立病院機構神奈川、相模原赤十字、東芝林間、済生会神奈川県、済生会若草、横須賀市立市民
【新潟】新潟県立坂町、新潟県立リウマチセンター、新潟県厚生連新潟医療センター、国立病院機構西新潟中央、豊栄、あがの市民、新潟県立吉田、三条総合、新潟県立加茂、見附市立、国立病院機構新潟、厚生連小千谷総合、新潟県立松代、新潟県立妙高、上越地域医療センター、新潟県立柿崎、新潟県厚生連けいなん総合、魚沼市立小出、南魚沼市立ゆきぐに大和、町立湯沢、労働者健康福祉機構新潟労災、佐渡市立両津
【富山】あさひ総合、富山県厚生連滑川、富山県リハビリテーション・こども支援センター、かみいち総合、地域医療機能推進機構高岡ふしき
【石川】国保能美市立、国家公務員共済組合連合会北陸、津幡町国保直営河北中央、町立富来病院、町立宝達志水、公立つるぎ、地域医療機能推進機構金沢
【福井】国立病院機構あわら、坂井市立三国、越前町国保織田、地域医療機能推進機構若狭高浜
【山梨】地域医療機能推進機構山梨、北杜市立塩川、韮崎市国保韮崎市立、北杜市立甲陽、山梨市立牧丘、甲州市立勝沼、身延町早川町国保病院一部事務組合立飯富
【静岡】JA静岡厚生連リハビリテーション中伊豆温泉、伊豆赤十字、国立病院機構静岡てんかん・神経医療センター、JA静岡厚生連清水厚生、JA静岡厚生連静岡厚生、地域医療機能推進機構桜ケ丘、菊川市立総合、市立御前崎総合、公立森町、浜松赤十字、市立湖西、JA静岡厚生連遠州、労働者健康福祉機構浜松労災、共立蒲原総合
【長野】川西赤十字、佐久穂町立千曲、長野県厚生連佐久総合病院小海分院、東御市民、国保依田窪、長野県厚生連鹿教湯三才山リハビリテーションセンター鹿教湯、長野県厚生連下伊那厚生、下伊那赤十字、国立病院機構まつもと医療センター松本、国立病院機構まつもと医療センター中信松本、安曇野赤十字、飯綱町立飯綱、長野県立総合リハビリテーションセンター、信越、飯山赤十字
【岐阜】岐阜県厚生連岐北厚生、羽鳥市民、岐阜県厚生連西美濃厚生、県北西部地域医療センター国保白鳥、国保坂下、市立恵那、岐阜県厚生連東濃厚生、国保飛騨市民、厚生会多治見市民
【愛知】津島市民、あま市民、一宮市立木曽川市民、愛知県心身障害者コロニー中央、みよし市民、碧南市民、中日、国立病院機構東名古屋、ブラザー記念
【三重】三重県厚生連三重北医療センター菰野厚生、三重県厚生連大台厚生、済生会明和、町立南伊勢、市立伊勢総合、桑名南医療センター、亀山市立医療センター
【滋賀】地域医療機能推進機構滋賀、大津赤十字志賀、守山市民、東近江市立能登川、長浜市立湖北
【奈良】済生会中和、奈良県総合リハビリテーションセンター、済生会御所、南和広域医療企業団吉野、済生会奈良
【京都】国立病院機構宇多野、市立福知山市民病院大江分院、舞鶴赤十字、国保京丹波町
【大阪】大阪市立弘済院附属、仙養会北摂総合、市立藤井寺市民、冨田林、済生会支部大阪府済生会新泉南、和泉市立、生長会阪南市民、健保連大阪中央、高槻赤十字、市立柏原
【和歌山】海南医療センター、国保野上厚生総合、済生会和歌山、国保すさみ、那智勝浦町立温泉
【兵庫】兵庫県立リハビリテーション中央、国家公務員共済連六甲、高砂市民、明石市立市民、多可赤十字、公立豊岡病院組合立豊岡病院出石医療センター、公立香住、公立豊岡組合立豊岡病院日高医療センター、公立村岡、国立病院機構兵庫中央、兵庫県立姫路循環器病センター、相生市民、たつの市民、加東市民、柏原赤十字
【鳥取】岩美町国保岩美、日南町国保日南、南部町国保西伯、鳥取県済生会境港総合
【島根】国立病院機構松江医療センター、地域医療機能推進機構玉造、出雲市立総合医療センター、津和野共存
【岡山】備前市国保市立備前、岡山市久米南町組合立国保福渡、総合病院玉野市立玉野市民、せのお、備前市国保市立吉永、労働者健康安全機構吉備高原医療リハビリテーションセンター、瀬戸内市立瀬戸内市民、赤磐医師会、笠岡市立市民、矢掛町国保、国立病院機構南岡山医療センター、井原市立井原市民、鏡野町国保
【広島】北広島町豊平、国家公務員共済連吉島、広島市医師会運営・安芸市民、広島県済生会呉病院、呉市医師会、国家公務員共済連呉共済病院忠海分院、日立造船健保組合因島総合、三原市医師会、府中北市民、国立病院機構広島西医療センター、総合病院三原赤十字、府中市民、総合病院庄原赤十字
【山口】岩国市立錦中央、岩国市立美和、光市立大和総合、周南市立新南陽市民、地域医療支援病院オープンシステム徳山医師会、光市立光総合、美祢市立美東、美祢市立、小野田赤十字、下関市立豊田中央、岩国市医療センター医師会、厚生連小郡第一総合、国立病院機構山口宇部医療センター、山陽小野田市民
【徳島】国立病院機構東徳島医療センター、徳島県鳴門、阿波、海陽町国保海南、国保勝浦、阿南医師会中央
【香川】国立病院機構高松医療センター、香川県厚生連滝宮総合、さぬき市民、済生会支部香川県済生会
【愛媛】国立病院機構愛媛医療センター、宇和島市立吉田、宇和島市立津島、西条市立周桑、鬼北町立北宇和、愛媛県立南宇和
【高知】JA高知、佐川町立高北国保、地域医療機能推進機構高知西、いの町立国保仁淀、土佐市立土佐市民
【福岡】福岡県立粕屋新光園、嶋田、嘉麻赤十字、飯塚嘉穂、労働者健康安全機構総合せき損センター、川崎町立、中間市立、遠賀中間医師会おんが、北九州市立総合療育センター、芦屋中央、宗像医師会、国立病院機構大牟田、飯塚市立
【佐賀】小城市民、国立病院機構東佐賀、地域医療機能推進機構伊万里松浦、町立太良、多久市立
【長崎】日本赤十字社長崎原爆、国保平戸市民、平戸市立生月、市立大村市民、日本赤十字社長崎原爆諫早、長崎県富江、北松中央
【大分】杵築市立山香、臼杵市医師会立コスモス、竹田医師会
【宮崎】地域医療機能推進機構宮崎江南、国立病院機構宮崎東、五ケ瀬町国保、日南市立中部、えびの市立、都農町国保、国立病院機構宮崎
【熊本】国保宇城市民、国立病院機構熊本南、小国公立、天草市立牛深市民、熊本市医師会熊本地域医療センター、熊本市立植木、熊本市立熊本市民
【鹿児島】済生会鹿児島、鹿児島市医師会、鹿児島厚生連、鹿児島赤十字、枕崎市立、南さつま市立坊津、肝付町立、公立種子島
【沖縄】なし

*1-2-1:https://www.hokkaido-np.co.jp/article/349451 (北海道新聞社説 2019.9.29) 病院再編リスト 地域事情に配慮足りぬ
 厚生労働省は、全国1455の公立病院や日赤などの公的病院のうち、診療実績が乏しく、再編・統合の議論が必要とする424の病院名を初めて公表した。高齢化により膨張する医療費を抑制する狙いがあるという。そのうち道内は111病院中54病院と全都道府県で最も多く、道民生活に与える影響が大きい。道内は面積が広大で、公共交通機関に恵まれず、通院に時間がかかる人も多い。とりわけ冬季はままならなくなる。大都市と過疎地に一律の基準を当てはめ、再編・統合を促すのは無理があろう。対象となった病院や自治体などから反発や戸惑いの声が挙がるのも当然だ。無年金や低年金で暮らす高齢者もいる。弱者の切り捨てにつながる再編・統合は許されない。厚労省は、来年9月までに結論を出すよう都道府県を通じて対象病院に求める方針だ。道は各地の実情を十二分に考慮し、住民一人一人に寄り添い、丁寧に議論を進めてもらいたい。今回、厚労省は2017年度のデータを基に、がんや脳卒中、救急など9項目の診療実績と、競合する病院が車で20分以内の場所にあるかで分析し、判断した。機械的にリストを作成し、一方的に名指しするのは、乱暴だと言わざるを得ない。18年度の医療費は42兆6千億円と過去最高を記録し、団塊の世代が全員75歳以上になる25年度にはさらに大きく膨らむ。医療費削減のため、政府は25年時点の望ましい病床数が全国で約119万床になると推計し、都道府県に計画を策定させた。この通り進めるには、現状より5万床以上減らす必要がある。手術や救急に対応し医療費のかかる「急性期」の病床数を減らし、在宅医療やリハビリ向け病床への転換を促すという。広い道内で急性期病床を減らせば、道民の命に関わりかねない。公立・公的病院は地域コミュニティーの核となる存在だ。強引に再編・統合を進めれば、過疎地の人口減に拍車がかかり、地域崩壊を招く懸念が拭えない。道は、21の医療圏ごとに協議会を設け、再編・統合など地域医療のあり方を検討中だ。医師不足は深刻で、公立・公的病院の多くが赤字経営になるなど課題は山積している。住民の声に耳を傾け、安心できる医療体制の将来像を示してほしい。

*1-2-2:https://373news.com/_column/syasetu.php?storyid=110686 (南日本新聞社説 2019.9.28) [公的病院の再編] 地域実態踏まえ議論を
 厚生労働省は、診療実績が乏しく再編・統合の議論が必要と判断した全国424の公立・公的病院名を公表した。鹿児島県内では鹿児島市医師会病院など8病院が対象となった。年々増加の一途をたどる医療費の抑制は待ったなしの課題である。団塊の世代が全員75歳以上の後期高齢者になる2025年が目前に迫り、医療提供体制の見直しは避けられない状況だ。だが、再編されれば適切な医療サービスを受けられなくなるという住民の不安は大きい。政府、都道府県は数字によって機械的に進めるのではなく、地域の実態に十分配慮すべきだ。今回、17年度のデータを基に重症患者向けの「高度急性期」、一般的な手術をする「急性期」に対応できる1455病院を調査。がんや救急医療といった9項目の診療実績と、競合する病院が「車で20分以内」の場所にあるかを分析した。再編・統合検討が必要とされたのは全体の約3割だった。厚労省によると、対象の病院には、廃止や病床(ベッド)削減、機能転換、他の病院への診療科移転などを検討してもらう。来年9月までに結論を出すよう、都道府県を通じて対象病院に要請するとしている。政府は自宅など住み慣れた地域で暮らせるよう「地域包括ケアシステム」の構築を目指している。一方、医療提供体制の見直しでは、民間を含めて全国で124万6000床(18年)ある病院のベッド数を25年に119万1000床まで減らす方針だ。病院のベッドに関しては、少子高齢化などに伴う人口構成の変化に合わせた機能転換が求められている。現状では「高度急性期」「急性期」のベッド数が多く、高齢者にニーズの高いリハビリ向けは不足しており、ミスマッチ是正が課題となってきた。今回、病院名公表に踏み切ったのは、特に停滞している公立・公的病院の再編・統合の議論を加速させる狙いがある。ただ、懸念される問題点は多い。そもそも、へき地や離島にある病院の役割を考えれば、経済合理性重視で評価を下せるものではない。長年頼みにしてきた地域の病院が遠隔地に統合されるとなると住民の不利益は計り知れない。県内で対象となった病院の地元からは反発の声が出ている。公立種子島病院(南種子町)は島中南部の医療拠点だが、再編されれば車で1時間以上かかる西之表市に行かなければならなくなる。交通手段のない高齢者にとっては深刻な問題だ。国の借金や将来世代の負担を考えれば、再編に切り込むのは理解できる。だが、数字を挙げて指摘するだけでは地元は納得しまい。行政と共に住民も加わり、地域医療のあるべき姿について真摯(しんし)に議論することが重要である。

*1-3-1:https://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201906/CK2019062802000276.html (東京新聞 2019年6月28日) 無給医、50病院に2100人 大半雇用契約なし 大学病院、研究名目で診療
 文部科学省は二十八日、労働として診療を行っているのに給与が支払われない「無給医」が、五十の大学病院に計二千百九十一人いたと発表した。調査対象とした医師約三万二千人の7%に上るが、まだ各大学が精査中の医師が千三百四人いて、人数がさらに増える可能性がある。無給医の多くは雇用契約を結ばず、労災保険も未加入だった。各大学は文科省の指導に基づき、給与の支払いや雇用契約の締結を進める。大学病院には、大学院生らのほか、自己研さんや研究目的の医師が在籍し、その一環で診療に携わる場合には給与を支払わない慣習が広く存在する。今回の調査では、診療のローテーションに組み込まれていた場合などを実質的な労働だったとし、給与の支払いがない医師を無給医とした。判断は各大学が専門家らに相談して行った。調査は一~五月、国公私立九十九大学の百八付属病院に在籍する医師と歯科医師を対象に実施。昨年九月に診療に従事した計三万一千八百一人(教員や初期研修医を除く)について、同月の給与の支給状況などをまとめた。無給医と確認された二千百九十一人のうち、合理的な理由なく給与を支払っていなかったのは五十病院のうち二十七病院の七百五十一人。契約上は週二日なのに実際は週四日診療しているような例も含まれ、最大二年間さかのぼって支払う。残る千四百四十人は五十病院のうち三十五病院に所属し、無給の合理的な理由はあるが、診療の頻度や内容を踏まえて今後は給与を支給する。これらとは別に、六十六病院の三千五百九十四人が、ほかの所属先から大学病院で働いた分も含めて給与を受け取っているなど、合理的な理由があり給与を支給しない現状を維持するとした。病院別では、無給医が最も多かったのは順天堂大順天堂医院の百九十七人(対象者の46%)で、北海道大病院百四十六人(同24%)、東京歯科大水道橋病院百三十二人(同62%)が続いた。昭和大歯科病院は百十九人、愛知学院大歯学部病院百十八人で、それぞれ対象者全員が無給医だった。無給医かどうか精査中の千三百四人の内訳は、日本大板橋病院三百二十一人、東大病院二百三十九人、日大歯科病院二百十一人、慶応大病院二百人など。全対象者のうち、合理的な理由なく雇用契約を結んでいなかった医師は千六百三十人、労災保険の対象外だったのは千七百五人だった。多くの無給医は深夜や休日に、別の医療機関でアルバイトなどをして生活費を得ており、過重労働による診療への悪影響などが懸念されている。
◆医療事故の責任あいまいに
<全国医師ユニオンの植山直人代表の話> 文部科学省の調査は大学病院に報告を求める形で実施され、病院によって調査手法や無給医かどうかの判断に違いがある。今回明らかになった結果は氷山の一角で、実際はもっと多いだろう。いくら研修や研究のために病院にいるといっても、免許を持つ医師が診療をし、病院が報酬を得ている以上は賃金が払われるのが当然だ。加えて、雇用契約がなければ、労働時間の管理もなされず、医療事故が起きた際に責任の所在があいまいになることで患者の不利益にもなりかねない。早急な改善が必要で、国もフォローアップしていくべきだ。
<無給医> 大学病院などで実質的に労働の実態があるのに、給料が支払われていないと判断された医師。病院の人件費が限られているため、便宜的に無給とされたり、一部しか支払われなかったりするケースがある。(1)大学院生らが教育や研修名目で働かされる(2)契約した以上に勤務に入れられる-など、形態はさまざま。病院で診察や病棟管理を担う一方、生活費を稼ぐために深夜や休日にアルバイトをして、過労死した医師もいる。

*1-3-2:https://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201909/CK2019093002000231.html (東京新聞 2019年9月30日) 調査手法を情報公開 統計不正 総務省が再発防止策
 政府の統計不正の再発防止策を話し合う総務省の統計委員会は三十日、会合を開き、毎月勤労統計の重点的な検証結果を盛り込んだ報告書を正式決定した。統計の調査手法などを積極的に情報公開し、透明性の高い作業環境づくりを促すことが柱。外部の目を光らせることによって再発防止につなげる。報告書では、毎月勤労統計を所管する厚生労働省に対して詳細な調査手法の公開に加え、業務マニュアルを整備して全ての職員が作業内容を把握できるようにすることを求めた。特定の職員が長期に業務を担い、不正が見過ごされてきた反省を踏まえた。外部の研究者にとって調査データを利用しやすくする環境整備も促している。不正が発覚した後、過去のデータが一部で保存されておらず再集計が困難になった。このため、必要な情報を電子化して永久保存することを要請。八月に大阪府の調査員による虚偽報告が発覚したことを受け、調査員が業務上の困り事を相談できる窓口も設ける。報告書を受け取った高市早苗総務相は記者団に「統計の品質の向上と信頼性の確保に取り組みたい。厚労省が二度と同じ過ちを繰り返さないのはもちろんだが、統計は国民が合理的な判断をするための重要な情報で全ての府省が対策を進めてほしい」と述べた。
<勤労統計不正> 企業の賃金や労働時間を把握する「毎月勤労統計」で、厚生労働省が不正な調査手法を取っていた問題。2004年から東京都の500人以上の事業所で、本来の全数調査でなく抽出した3分の1程度しか調べていなかった。統計を基に算出する雇用保険や労災保険、船員保険の給付額が本来より低くなり、延べ約2000万人が過少支給になった。雇用形態や学歴など労働者の属性別に賃金を把握する「賃金構造基本統計」でも計画と異なる郵送調査をしていた。

*1-3-3:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190929&ng=DGKKZO50303850X20C19A9MM8000 (日経新聞 2019.9.29) 米IT人材獲得戦 異状あり、インド系半減 囲い込むGAFA
 米国のIT(情報技術)人材の争奪戦に異変が起きている。世界から人材を引き寄せるのが米IT産業の強みだったが、トランプ政権がビザ(査証)発給を厳格にして相対的に賃金が低い案件の承認を一気に絞った。インド系のIT大手での承認が急減した一方、グーグルなど「GAFA」は高報酬をテコに承認を増やし、むしろ人材の囲い込みに拍車をかけている。米国は「H1B」ビザでIT人材などを受け入れてきた。受給者はインド出身が7割に及ぶ。米国での起業を夢見る若者。世界の優秀な人材を選べる企業。米国発のイノベーションの「舞台装置」だ。「オバマ政権なら3週間でとれるといわれていたのに」。インターネットを使った教育事業をシリコンバレーで始めようとした日本人起業家、真田諒さん(35)は頭を抱えた。インド出身の技術者を採用しようとしたが、H1Bの申請がいっこうに受理されない。当局と4カ月にわたるやり取りの末、技術者の年収を当初の8万ドル(約860万円)から13万ドル弱に引き上げ、やっと承認にこぎつけた。トランプ政権は2017年の大統領令でH1Bビザの審査を厳しくした。移民局によると、18年度(17年10月~18年9月)の承認件数は新規と更新の合計で約33万5000件と前年度から1割減った。雇用主企業別では、システム構築や保守を請け負うITサービス企業の急減が目立つ。インドに本社を持つインフォシスとタタ・コンサルタンシー・サービシズ、同国を開発の主力拠点とするコグニザント・テクノロジー・ソリューションズのいわゆる「インド系」大手3社は承認上位の常連だったが、18年度の承認は3社合計で59%減った。かねて「高度人材の名のもとに割安な賃金で労働者を呼び、米国人の職を奪う」との批判もあった。「高学歴の申請を優先する仕組み」(米法律事務所)に変え、米国人と競合しそうな「中技能・中所得」に狙いを定めて発給を絞り込んだ可能性が高い。「成果」は出ているようだ。インフォシスは19年半ばまでの2年間に米国内で新たに1万人を雇用した。インドから大勢のIT人材を連れてくることが難しくなり、代わりに米国に拠点をつくって地元の大学で採用を増やした。対照的に、グーグルなどのGAFAはH1BでのIT人材の獲得を加速させている。4社合計の承認件数は18年度に28%増え、インド系との差が急縮小している。GAFAがビザの申請対象者に示した年収(中央値)は12万~15万ドルとインド系の8万ドル前後を上回り、「賃上げ」も続く。動画配信のネットフリックスも報酬を引き上げて人材獲得を急ぐ。「高技能・高収入」なら審査が通りやすい状況を活用し、したたかに動く姿が浮かぶ。ビザ申請の年収をみると、日本勢はインド系に近い位置にとどまる。世界で人事・報酬制度を見直している日立製作所。カリフォルニア州のデジタル子会社では高報酬の用意を整えつつあるが「日本の本社への配慮もあって制度全体としては踏み込めていない」と人事担当者は漏らす。米国の異変は他の国々にはIT人材を得る好機にもなる。カナダや英国はすぐに人材の囲い込みに動いた。日本も柔軟な給与体系づくりや待遇の改善を急がないと、せっかくの機会を逃しかねない。

<先進医療>
*2-1:https://mainichi.jp/articles/20190227/ddm/005/070/039000c (毎日新聞 2019年2月27日) がん新免疫療法 公的保険でどう支えるか
 新たながん免疫療法として期待される「CAR-T細胞療法」に使われる製剤の製造・販売が、厚生労働省の専門部会で承認された。今夏にも公的医療保険が適用される。効果は高いが、治療費も超高額なことでも注目されていた新薬だ。こうした薬を医療保険制度にどう組み込んでいくのか。国民皆保険の日本が直面する大きな課題と言える。承認されたのは製薬大手ノバルティスファーマの「キムリア」だ。患者から取り出した免疫細胞に遺伝子操作を加え、がん細胞への攻撃力を高めた製剤で、点滴で体内に戻す。これがCAR-T細胞療法で、キムリアは特定の白血病とリンパ腫の患者の一部が対象となる。 患者数は年間約250人と予測されている。臨床試験では白血病患者の8割で症状が大幅に改善した。 他の病気でも同種の技術を使う治療法の開発が進んでおり、がん治療の新たな柱になる可能性を秘める。ただ、キムリアの臨床試験では重い副作用が出るケースも報告されている。体制が整った医療施設で、慎重に効果を見極める必要がある。キムリアの日本の薬価はこれから決まるが、米国では1回の治療に約5200万円かかる。巨額の開発費に加え、製造工程も複雑だからだ。日本には高額療養費制度があるため、超高額な新薬でも、患者の自己負担には上限がある。一方で、高額な薬の保険適用が拡大すれば、医療財政の圧迫は避けられない。超高額な薬価で話題になったがん免疫治療薬「オプジーボ」の価格引き下げ騒動を教訓に、厚労省は、市場規模が拡大した薬については、薬価の改定時期を2年に1回から年4回に見直した。適切に運用していく必要がある。米国では、キムリアの投与から1カ月後に治療効果が上がった場合に限り、製薬企業に費用が支払われる。企業の新薬開発意欲を保ちつつ、薬剤費の膨張を抑える方策として、日本でも検討の余地がある。貧富の差を問わず、一定の医療が受けられることが皆保険の利点だ。高額だが有効性の高い薬に保険を適用するため、症状の軽い病気に使う薬は患者負担を増やして財政のバランスをとる。そんな観点での国民的な議論も深めるべきだ。

*2-2:https://digital.asahi.com/articles/ASM9M567MM9MULBJ00H.html?iref=comtop_list_sci_f02 (朝日新聞 2019年9月26日) iPS細胞から「ミニ多臓器」初成功 東京医科歯科大
 ヒトのiPS細胞から、肝臓と胆管、膵臓(すいぞう)を同時につくることができたと、東京医科歯科大の武部貴則教授らの研究チームが発表した。iPS細胞から、それぞれの臓器がつながった「ミニ多臓器」をつくったのは初めてという。論文は25日付の英科学誌ネイチャーに掲載される。iPS細胞を使ったこれまでの研究は、神経や心臓の細胞といった特定の細胞をつくるものが多かった。武部さんらは2013年、iPS細胞から初めての臓器となる「ミニ肝臓」をつくった。しかし、一つの臓器をつくって移植したとしても、機能が十分に発揮されなかったり長く働かなかったりするという課題があった。研究チームは、iPS細胞から複数の臓器を同時につくれないかと考えた。まず、iPS細胞から前腸組織と中腸組織という消化器系の臓器のもとになる二つの組織をつくった。これをくっつけたところ、境界部分に肝臓、胆管、膵臓のもとになる細胞が出現した。この細胞を培養すると、肝臓と胆管と膵臓がつながったミニ多臓器ができた。受精から1~2カ月の胎児の臓器ほどの大きさという。チームは前腸組織から出るレチノイン酸という物質が、肝臓、胆管、膵臓のもとになる細胞ができるのを促したとみている。実際にヒトに移植するには臓器とともに血管なども同時につくらなければならない。武部さんは「まだ基礎研究の段階だが、10年以内に今回開発した技術を実用化させて患者に届くようにしたい」と話している。

*2-3:https://www.tokyo-np.co.jp/article/living/life/201907/CK2019071902000182.html (東京新聞 2019年7月19日) 細胞シートで歯周病治療 抜いた親知らず捨てずに活用
 親知らずが歯周病患者を救う-。抜いた親知らずなどから採取した細胞を培養して細胞シートを作り、患部に貼り付けて歯周病を治療する治験(臨床試験)を、東京医科歯科大大学院の岩田隆紀教授(46)らが始めた。医療廃棄物として捨てられていた親知らずなどを使った新しい再生医療。高齢になっても多くの歯が残れば、生活の質の向上が期待できそうだ。歯周病は歯と歯肉の間に細菌が増え、歯こうが蓄積することで歯茎に腫れや出血を起こす。進行すると歯と歯肉の境目(歯周ポケット)が深くなり、歯を支える歯槽骨を毒素が溶かす。新しい再生医療は、抜いた歯の歯根膜細胞を培養して三層にした細胞シートを、歯周ポケットのある歯根面に移植する。歯根膜は、歯根と歯槽骨をつないで歯を支え、細菌の侵入を防ぐ。シートからは骨形成を促すサイトカイン(タンパク質)が出る。つまりシートが歯根膜の役割をして骨を再生する。移植手術では、歯槽骨が欠けた部分に顆粒(かりゅう)状の骨補填(ほてん)材を入れて歯肉を縫合する。手術は一時間程度。外来で済む。岩田さんらは二〇一一年から、患者自身の抜いた歯で細胞シートを培養して移植する臨床研究に着手した。重症七人を含む十人(三十三~六十三歳の男女各五人)に行った移植では、現在も拒絶反応や痛みなどは起きていない。歯周ポケットの深さは術前の平均五・六ミリから正常範囲の同二・四ミリに。歯槽骨の再生も維持できているという。これを受け、岩田さんらは東京女子医科大歯科口腔(こうくう)外科の安藤智博教授のグループと昨年末から、他人の抜いた歯を使った細胞シートを移植する治験を始めた。既に六十四歳女性など三人に実施。本年度中にさらに三例の移植を行い、二〇年度中に安全性と有効性を検証する。岩田さんによると、抜いた歯一本から一万シートの生産が可能で、一シートで二、三本の移植ができる。現在は七本の歯から培養した約七万製品分の細胞を凍結保存中。岩田さんは「全国の歯周外科にこの治療法が普及すれば、歯周病が引き起こす糖尿病や脳血管疾患が減り、医療費の削減効果も大きい」と話す。
◆歯磨き、食生活…予防も大切
 歯を失う原因として最も多い四割を占めるとされる歯周病。厚生労働省の患者調査では二〇一七年に約三百九十八万人に達する。日本歯周病学会理事の専門医で、東京都内で開業している若林健史さん(62)に、どう防ぐかを聞いた。予防の決め手はフロスや歯間ブラシなども使った歯磨きの励行。菓子や炭酸飲料など糖分の多い食生活を見直すことも重要で、三、四カ月に一回は歯科で歯石の除去をするとよい。喫煙は歯周病のリスクを五~八倍高めるという。「女性には歯周病リスクが三回ある」と若林さん。まず、思春期はホルモンバランスが変化し、口中の細菌が増えやすい。女性ホルモンが増える妊娠・出産期も注意が必要。唾液が減って乾燥しやすい更年期も歯周組織が劣化するという。糖尿病と肥満は歯周病の危険因子であり、逆に歯周病は糖尿病や肥満を悪化させる。歯周病菌は血液を通じて脳梗塞や心臓疾患、誤嚥(ごえん)性肺炎、早産や低体重出産、関節リウマチを招くことが知られている。最近ではアルツハイマー病との関連も指摘される。

*2-4-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20191002&ng=DGKKZO50376970Q9A930C1TL1000 (日経新聞 2019年10月2日) 心臓が量産品に変わる日、第7部 医ノベーション(1)
 自らの肉体を自在につくる技術を人類がひとたび手にしたら、どんな未来が待っているのだろうか。そんな想像を膨らませ、取材は始まった。羽田空港の駐機場を望む川崎市の研究開発拠点。リコーの研究室で、両手で持てそうな小型プリンターがせわしなく動く。左右に走るヘッド部分から、ぽたぽたとしずくが落ちる。漏れ出たインクではない。1滴ずつが神経細胞を含む液体だ。ヘッドが小刻みに行き来し、絵や文字を印刷する代わりに神経細胞を丁寧に敷き詰める。1~2時間で最大20層ほど積み重なり、約1センチメートル角のサイコロ形をした塊になる。神経細胞は、再生医療の切り札とされるiPS細胞から育てた。この3Dプリンターの技術を使えば、細胞の塊を様々な形に変えたり、異なる細胞を混ぜ合わせたりできる。将来は大脳皮質の一部をつくり、病気やケガで傷んだ脳の治療に役立てる。事務機器のインクジェットプリンターを担当した開発員も加わり、研究は熱を帯びている。
■1万人の患者が移植を待つ
 リコーは、必ずしも完全な臓器をつくろうとはしていない。「患者が必要としている機能を提供する」(バイオメディカル研究室の細谷俊彦室長)方針だ。だが「交換可能な臓器」の開発が焦点になっているのは明らかだ。2019年春、イスラエルのテルアビブ大学が3Dプリンターでヒトの細胞を積み上げ、血管まで備えたミニ心臓をつくったとのニュースが伝わった。佐賀大学も、ヒトの細胞から血管を組み立て、人への移植を目指している。本物そっくりの臓器をいかに実現するかは大きな課題だ。3Dプリンターの活用は有力な手立てで、すでに先陣争いが始まっている。3Dプリンターはまず、ものづくりの現場で脚光を浴びた。樹脂などを熱や光で加工し、いとも簡単に立体部品に仕立てる。臓器すらもつくれる時代が間近に迫り、遠くない未来に臓器は「量産品」に変わる。衰えたり傷んだりした臓器は、スペア(予備)の臓器と取り換え、命あるかぎり補える。そうなれば、私たちの肉体は朽ちるだけのものではなくなる。フランス生まれの外科医アレクシス・カレルが血管をつなぎ合わせる技術を究め、臓器移植への道を開いてノーベル生理学・医学賞を受賞したのが1912年。60年代から始まったとされる移植医療は、深刻な臓器不足に直面する。腎不全患者などが望む腎臓移植は、国内では年間1500件前後。約8割が健康な人からの提供で、1万人以上の患者が移植を待つ。量産臓器が既存の移植医療を一変させるのは確かだ。ディスラプション(創造的破壊)のインパクトはそれだけにとどまらない。研究者の一人はいう。「私は歯を器具(インプラント)に置き換えたが、臓器だって同じ。どこか壊れたら取り換えるだけだ。おかしなことではない」。国内外で、肝臓や心臓など内臓の8割以上が臓器再生の研究対象になっている。最先端技術は、肉体をどこまでも入れ替えるだけの潜在力を秘めている。人類は幾多の技術進歩を目の当たりにしてきた。いつの時代も、生まれ落ちた本来の体を取り戻すことが医療の最大の使命だった。今の臓器移植も自らの体の一部を補うだけだ。ところが、これからは自分の肉体が新たな肉体に次々と置き換わる。自分の肉体の大半が新しい臓器で満たされたら、私自身でありえるのか。生まれながらの私ではないのだから、私と名乗ってはいけないのだろうか。人類史上、ほとんど意識したことのなかった問いにさいなまれる。新たな肉体が私でないとしたら、私が私でなくなる日は近づいている。東京大学の中内啓光特任教授は「今から30年もすると、長生きしている人の多くは新たな技術で体を補い、生まれた時のままの体でいる人は少数派になっているだろう」とみる。そして、量産した臓器は、治療の選択肢として珍しくはなくなる。
■どこまで「自分」でいられるか
 中内特任教授は、驚くような方法で自然な臓器をつくろうとしている。ブタの受精卵にヒトのiPS細胞を仕込み、本来はブタの胎児が持つ膵臓(すいぞう)や腎臓をヒトのものに置き換える計画を温める。生まれたブタからヒトの臓器を取り出し、移植を待ちわびる患者を救うのだという。19年秋からはマウスの受精卵にヒトのiPS細胞を入れ、きちんと育つかどうかを調べる実験に取りかかった。私が少しでも私であり続けるため、本人のiPS細胞でできた臓器の作製が最終目標だ。あなたはどこまであなたでいられるのだろうか。哲学に詳しい京都大学の沢井努特定助教は、臓器移植が思うがままにできるようになったとき「外から取り込んだ組織が一定割合を超えたころから、自然(な自分)かそうじゃないかの議論が起こりうるのではないか」と推測する。ただ「心臓の働きを補うペースメーカーを埋め込むと、機械であるにもかかわらず自分の肉体の一部のように愛着をもつ人もいる」とし、臓器を交換しながらも私は私のままと感じる人はいると考えている。東大の中内特任教授の答えはこうだ。「体の大部分が他人から提供された臓器や機械に取り換えられても、脳が置き換えられない限り『自己』の意識は存在する」。防衛医科大学のチームは最近、血小板や赤血球の働きをする人工血液を開発した。大量出血で死にそうな10匹のウサギに「輸血」したところ、6匹の命が永らえたという。人工なので血液型とは無縁だ。研究成果が公になると「血液型占いはどうなっちゃうの?」「輸血したら自分じゃなくなっちゃう?」と多くの反響を呼んだ。技術の進歩によって現代人が自問自答しなければならないテーマがまた1つ増えた。

*2-4-2:https://www.nishinippon.co.jp/item/o/500209/ (西日本新聞 2019/4/5) ブタを使って人の腎臓再生 慈恵医大、iPS細胞で
 東京慈恵医大と大日本住友製薬は5日、人工多能性幹細胞(iPS細胞)とブタの胎児組織を使って、人の体内で腎臓を作る再生医療の共同研究を始めたと発表した。サルで安全性や効果を確認した後、3年後に人での臨床研究に進み、2020年代に実用化を目指す。慈恵医大の横尾隆教授は「将来的に臓器移植に代わる治療法にしたい」と話している。ただブタの細胞を体内に入れることから予期せぬ問題が起こる懸念があり、慎重な実施を求める声もある。腎臓は、尿管や糸球体など複雑な構造を持つため、iPS細胞から作るのは難しいと考えられてきた。

*2-4-3:https://www.nishinippon.co.jp/item/o/506443/ (西日本新聞 2019/4/28) ブタ体内で人の膵臓、iPS利用 東大が年度内にも実施、国内初
 東京大の中内啓光特任教授は28日までに、人工多能性幹細胞(iPS細胞)を使って、ブタの体内で人の膵臓をつくる研究を実施する方針を明らかにした。将来、移植医療用として使うのが目的。学内の倫理委員会と国の専門委員会による2段階審査で認められれば、2019年度中にも国内で初めて人の臓器を持つ動物をつくる実験に着手する。臓器移植を希望する人に対して、提供者が少ない状態は慢性的に続いており、中内氏は「まずは品質を確かめる。10年以内に治療に役立てたい」と話している。

*2-4-4:https://www.nikkei.com/paper/related-article/tc/?b=20191002&bu=・・・ (日経新聞 2019/9/16) 再生医療 細胞除去し「骨格」だけ活用 京大は皮膚/慶大が肝臓
 再生医療などによる病気治療に、組織や臓器の骨組みだけを活用する研究開発が進んでいる。再生医療では幹細胞を目的の細胞に育てて移植する研究が多いが、臓器まで作るのは難しい。このため組織の細胞を薬などで除去する脱細胞化技術を使い、残った骨格を移植することで早期の臨床応用につなげる狙いだ。京都大学の森本尚樹教授と国立循環器病研究センターの山岡哲二部長らは生まれつき大きなほくろを持つ「先天性巨大色素性母斑」患者の皮膚を再生する臨床研究を実施中だ。放置すると悪性黒色腫になる恐れがある母斑は皮膚の真皮部分にあるが、細胞培養技術でも真皮の再生は難しい。新手法は患部を切り取り2000気圧で10分間処理する。母斑も含め細胞は死ぬが真皮組織の骨格は残る。これを患部に戻す。後日、患者の培養した表皮を移植する。「真皮がないと表皮は定着しないため、母斑組織を殺した上で真皮を再利用する」(森本教授)。現在までに10例実施。真皮に血流が復活し皮膚全体も機能しているのを確認した。1年の経過観察を終え、治療効果を評価中だ。慶応義塾大学の八木洋専任講師、北川雄光教授らは肝臓の新しい再生医療の実現を目指す。肝臓を界面活性剤などで脱細胞化して洗い流すと、臓器の立体構造を支える骨格だけが残る。肝臓内の血管や管の構造も維持されている。そこに人のiPS細胞から育てた肝細胞や血管内皮細胞などを入れれば大型の立体臓器が作れ、血管をつなぐことができると考えた。日本人の肝臓と大きさや構造が似ているブタの肝臓から骨格を作る想定で10~15年後の実用化が目標だ。現在は日本医療研究開発機構の支援を受け実験を重ねている。iPS細胞から肝臓細胞を作る技術を持つ大阪大学の水口裕之教授の協力も得て進めている。八木講師は「重症の肝硬変患者向けに、生体肝移植とは異なる新たな移植治療を普及させたい」と話す。阪大の澤芳樹教授らは心臓移植を受けた患者などから不要になった元の心臓弁を提供してもらい、脱細胞化し弁の構造だけを残して別の患者に再利用する手術を臨床研究として実施している。動物の弁などを利用する人工心臓弁に比べて耐久性が高いと考えられる。移植した患者自身の細胞が脱細胞化弁に入り込んで自己組織化されるため拒絶反応も起きにくい。医師主導臨床試験(治験)を計画中だ。脱細胞化技術は死亡した人から提供された臓器や骨、皮膚などを治療に用いる移植医療が盛んな米国で進んでいる。東京医科歯科大学の岸田晶夫教授は「約20年前から製品化され始めた」と話す。日本でも厚生労働省が2019年5月に製品評価のためのガイドラインを公表した。作成に携わった岸田教授は「海外製品が数多く入ってきたときに評価しやすいような枠組みを作った」と話す。そのうえで「自国製品を作らないと海外に後れを取る」と危機感を募らせる。iPS細胞や免疫研究など日本が強みを持つ分野と組み合わせた研究開発が競争力につながると訴える。

*2-4-5:https://www.nikkei.com/paper/related-article/?b=20191002&c=DM1&d=0&nbm=・・ (日経新聞 2019年10月2日) 可能性と倫理のはざまで
 創造的破壊の陰には、端緒となる大発見や研究成果がある。人類が肉体を補い続ける新たな手段を獲得し、さらに高みに上らんとできるのは、あらゆる細胞に育つiPS細胞が登場したからだ。iPS細胞は、京都大学の山中伸弥教授が2007年にヒトの細胞での作製に成功し、12年にノーベル生理学・医学賞を受賞した。全国約1800人を対象とした内閣府の調査(17年)では、iPS細胞など再生医療に関するイノベーションによって病気やケガなどの治療技術が進歩すると考える人が9割を超えた。14年には、日本の理化学研究所などが目の難病「加齢黄斑変性」の患者にiPS細胞から育てた細胞を初めて移植した。一般の人々の目に映る医療の姿は、iPS細胞の誕生前後でがらりと変わった。異次元のイノベーションは破壊や急速な変化を伴うだけに、それまでの時代とのあつれきは避けられない。人の臓器を「量産」する試みには、期待や畏怖の念などさまざまな反応が寄せられる。東京大学の中内啓光特任教授の研究は今でこそ国も認めるが、10年に構想を発表したときは世界で議論が巻き起こった。京都大学iPS細胞研究所上広倫理研究部門の藤田みさお特定教授は「動物を使ってヒトの臓器の作製を目指す研究は新しく、議論すべき対象になっている」と指摘する。地殻変動を引き起こしたiPS細胞の「生みの親」である山中教授はどんな思いなのだろうか。山中教授が監修した書籍「科学知と人文知の接点」(弘文堂)に、複雑な心境が垣間見える。ヒトのiPS細胞をつくった後の苦悩を明かし、「大きな倫理的課題を生み出したことに気づき茫然(ぼうぜん)としたことを覚えている。(中略)どのような研究にも、光と影がある。うまく使えば人類の福音となるが、使い方を誤ると人類の脅威となる」と吐露した。イノベーションは、その後の新しい時代を生きる人類に相応の責任と覚悟を迫っている。

<精神医療における過剰診断と人権・教育>
PS(2019年10月4日追加):*3-1の発達障害という言葉を近年よく聞くようになったが、これらが“病気”として統計に現れるようになったのは、下の図の上の段の左図のように平成18年以降であり、それまではなかった。さらに、*3-1は、診断レベルとされていないが本来は診断レベルの「グレーゾーン」があるとしており、その障害の中には外見上は健常者にみえるタイプがあり、「彼らは他者との違いが理解できるため最もつらい思いをしている」などとしているが、外見上、健常者に見えるのなら何ら問題はない上、DNAが違うのだから他者と違うのは当然だ。さらに、上の段の中央の図のように小学生の数が減っているのに、上の段の右図のように、“障害者”を増やして特別支援教育をすることの方が大きな問題である。
 なお、*3-1は、ASDの特性を①物事や手順へのこだわりが強い ②コミュニケーションが苦手 ③予想外のことが起こるとパニックを起こす ③ADHDには、落とし物・忘れ物が多い ④じっとしているのが苦痛 ⑤感情を抑えられない ⑥全てにバランスのとれた人はいないので、誰もがグレー としているが、この特性の捉え方自体が躾や習慣の悪さを正当化しながら、“普通(バランスよく不完全?)”が最善だという信仰のような考え方をしている。しかし、このようにして特別支援教育を受ける子どもを増やせば、“普通”の人には理解できない突き抜けた才能を活かすことはできないし、その子の機会を奪うことにもなる。
 このように何でも精神障害に仕立てた結果、日本は精神病患者の在院日数が下の段の左図のように先進諸外国と比較して飛びぬけて長く、さらに、*3-2のように身体拘束もしており、これは人権侵害である。また、下の段の右図のように、日本は人口当たりの精神科ベッド数が先進国最多であり、問われるべきは日本人の良識・精神障害者に対する差別意識・日本の精神医療の在り方・精神科ベッド数の多さなのだ。

 
障害別通級指導の児童生徒数    小学校児童数の推移   段階別特別支援学校在籍者数

    
 精神病床の平均在院日数推移国際比較     精神ケア病床数推移国際比較

*3-1:https://www.sankei.com/west/news/190824/wst1908240003-n1.html (産経新聞 2019.8.24) 発達障害の「グレーゾーン」 実際には診断レベルも 見落とされやすいタイプのASD
 発達障害をめぐり、近年、「グレーゾーン」という言葉がよく使われるようになった。一般的に、発達障害の傾向はあるが診断レベルではないことを意味する。だが専門家からは、本来であれば診断レベルにありながら見落とされているケースもあると指摘する声も。特に発達障害の一つ、自閉症スペクトラム障害(ASD)の中には、外見上は健常者にみえるタイプがあり、「彼らは他者との違いが理解できるために、最もつらい思いをしている」と訴える。
■ある意味、誰もがグレー
 発達障害は、ASDや注意欠陥・多動性障害(ADHD)などの総称。主な特性として、ASDには、物事や手順へのこだわりが強い▽コミュニケーションが苦手▽予想外のことが起こるとパニックを起こす。ADHDには、落とし物・忘れ物が多い▽じっとしているのが苦痛▽感情を抑えられない-などがあるが、人によってさまざまだ。「人はだいたい、ASDかADHDのどちらかだ」と話すのは、発達障害を専門とする「どんぐり発達クリニック」(東京)の宮尾益知(ますとも)院長。誰もがASDやADHDの素質を部分的に持ち、それが特技や仕事の向き不向きにつながるもので、「全てにバランスのとれた人はいない。そういう意味では、誰もがグレーといえる」。ただし、その素質のために社会生活に支障をきたしている場合は「障害」と診断され、必要な支援を受けることができるようになるとする。
■ASDの中の3タイプ
 だが、実際に医師らからグレーゾーンとされている人について、発達障害に詳しい京都大の十一元三教授は「専門医が診れば発達障害、特にASDの診断がつく人が多い」と指摘する。

*3-2:https://www.kyoto-np.co.jp/info/syasetsu/20190218_4.html (京都新聞 2019年2月18日) 精神科の拘束  医療の在り方見直しを
 精神科病院で手足をベッドにくくりつけるなどの身体拘束を受けた入院患者が、10年間で2倍近くに急増していることが厚生労働省の調査で分かった。2017年度の年次調査によると、全国で1万2千人強にのぼる。調査方法が変わったため単純比較はできないものの、03年度の5千人強から増加の一途だ。施錠された保護室に隔離された患者も1万3千人近くに増えている。本来は極めて限定的な場合だけに認められる身体拘束が、安易に行われている可能性がある。拘束は、患者がさらに精神的に不安定になる悪循環を招く。人権侵害の恐れにとどまらず、長期間の拘束によるエコノミークラス症候群などで死亡し、訴訟になるケースも起きている。問われているのは、日本の精神医療の在り方である。日本は人口当たりの精神科ベッド数が先進国で最多であり、必要がないのに長期入院を続ける「社会的入院」が生じやすいとされる。平均入院日数も、身体拘束の期間も突出して長い。諸外国では施設を脱して地域で暮らしながら治療する流れが一般的だ。イタリアのように精神科病院をなくした国もある。身体拘束が増えるのは逆行している。厚労省は「増加の原因は分析できていない。不要な拘束などをしないよう引き続き求めていく」としている。だが、実態を詳しく調査し、状況の改善に本腰を入れるべきではないか。拘束が適切かどうかを第三者が検証できる仕組みが求められる。「閉鎖的」と言われがちな日本の精神医療を見直し、透明化するきっかけとしてほしい。現場の人手不足が身体拘束の一因との声もある。一般病床と比べて少ない医師や看護師の配置を増やす必要がある。さらに気になるのは、患者に対する意識の問題だ。「(患者への対応のため)精神科医に拳銃を持たせてくれ」。昨年6月、日本精神科病院協会の会長が機関誌に、部下の医師のそんな発言を引用して載せていたことが問題となった。精神疾患はいつ、だれが発症してもおかしくない。認知症による入院も増えている。それなのに、日本では患者に対する差別意識が残り、精神医療の問題をタブー視して遠ざける感覚も根強いとされる。身体を拘束される人が増える社会は健全とはいえない。一人一人が関心を持ちたい。

PS(2019年10月5、6、7日追加):*4-1のように、佐賀県基山町に対馬藩の藩校名をとった東明館中高一貫校があり、佐賀県が教育に力を入れているのはよいことだ。その生徒数が中高で370人しかおらず定員(900人)を大きく割り込んだのは、近くに佐賀西高校・弘学館高校などの進学校が多く、生徒や保護者がより進学実績の高い高校を選択するのが原因であって、つめ込み教育をするのが原因ではない。早稲田佐賀中高一貫校は、一定割合の生徒が早稲田大学に入試なしで進学できるのが人気を博している大きな理由だ。しかし、知識も理論も、初等中等教育で学ぶことはしっかり身に着けておかなければ大学に行っても授業内容を吸収できない。つまり、知識をつめ込むのがいけないのではなく、知識を背後にある理屈も考えずに丸暗記するのが理解も応用的展開もできないためいけないのであり、これでは優れた研究開発など望むべくもない。従って、先生の要件は、知識を背後にある理屈とともにわかりやすく解説でき、生徒にも自ら考えることを促せる人で、そのための実力と識見を有していること になるのである。
 このような中、*4-2のように、目黒虐待死事件で、父親が「①理想を押しつけた」などと弁解しているが、「②勉強してなかった」「③食事をいっぱい食べてた」と聞いて、5歳の子どもに食事制限を始め、死ぬほどの暴力を振るったのがこの事件である。このうちの②については、まだ5歳であることを考えれば文字を書けるだけでも上出来で、③については、幼児や成長期の児童・生徒に栄養バランスを考えて食事を多く食べさせるのが基本中の基本であるため、食事制限をするのは母親も含めて無知すぎる。そのため、①のように、「理想を押しつけた」とするのは、「理想」の内容が疑問である上、「理想」という言葉に失礼だ。つまり、このような栄養学の基礎知識は中学・高校の家庭科で教えているため、きちんと勉強して理解し覚えておくことが、判断を間違わないため誰にとっても必要なことなのだ。
 しかし、児童相談所も「忙しかった」「引っ越して前の児童相談所から情報が来なかった」等の弁解が多く役に立っていなかったが、*4-3のように、改正児童福祉法で2022年4月(先の話)から全ての児童相談所に医師の配置が義務付けられて医療と連携することになり、法医学者が関わって虐待を早期発見できるようになったのは進歩だ。今後は、親に育てる力がなく危うい目にあっている子を親から引き離した場合に、きちんと育てられるシステムの整備が必要だ。
 この子育てシステムには、現在は乳児院・児童養護施設(86.6%利用)と里親制度(13.3%利用)があり(https://npojcsa.com/foster_parents/index.html 参照)、「里親制度」とは、育てることができない親に代わって一時的に家庭内で子を養育する制度で里親と子の間に法的な親子関係はなく、実親が親権を持ったまま里親に里親手当てや養育費が自治体から支給されるものだ。一方、「養子縁組」は民法に基づいて法的な親子関係を成立させる制度で、養親が子の親権を持ち養育費等は支給されない(https://www.nippon-foundation.or.jp/what/projects/happy_yurikago/infographics 参照)。私は、親に子を育てる能力や判断力がない場合には、「養子縁組」の方が子のためになると思うし、自分の子は既に家を離れて部屋も空いているのでもう1~2人養子を育ててもよいと思う夫婦は少なからずいると思うが、そのためには幼保無償化・義務教育の無償化をはじめ高等教育の低コスト化が必要なのである。そのため、*4-4のように、たいした所得でもないのに「所得が高い」とターゲットにして小さな“不公平”を言い立てるのではなく、子を育てるのに多額の金がかからない社会にすべきだと考える。
 なお、*4-5には、「①これまで保育料に含まれていた副食費が無償化対象外になった」「②自治体が担ってきた徴収業務を直接保育園が行うことになった」「③これまでも絵本代など保護者から月千円前後を徴収してきた」「④副食費の徴収に口座振替を活用する園がある」「⑤副食費を巡っては『子育て支援の充実』『施設側の負担軽減』を理由に自治体が独自に助成するケースもある」等が書かれているが、食事は栄養バランスが大切なのに、食費を主食費と副食費に分けたり、主食を家から持参させたりするというのには呆れた。何故なら、子の成長にはむしろ“副食”の蛋白質・カルシウム・ビタミン類の方が重要であるし、“主食”を家から持参させれば保護者は手を省けないからである。さらに、③がこれまで保育料に含まれていなかったというのにも驚いたが、保育園も③のように集金していたのなら集金はできるので、②は問題なく、④のように口座振替を使う方法もある。また、ふるさと寄付金を活用して、⑤のように子育て支援を充実させるのも地域色が出てよいだろう。
 さらに、*4-6のように、北海道新聞が社説で、「質の悪い保育の悪影響は成人後にも及び、国の基準は3~5歳では先進国の水準に及ばないため、子どもの健全な発達を保障する幼児教育や質の確保も緩みなく」としており、今後は質の高い幼児教育という視点も重要である。
 
*4-1:https://digital.asahi.com/articles/DA3S14206205.html (朝日新聞 2019年10月5日) (けいざい+)続・奇跡の高校:4 学校再建、佐賀でも託され
 「お願いがあるのですが……」。札幌新陽高校(札幌市)校長の荒井優(44)に5月、旧知の立命館慶祥高校(北海道江別市)の校長から連絡が入った。佐賀県基山町にある私立東明館中学、高校の理事長になってくれないかという。新陽高校を再建した手腕を買われてのオファーだった。札幌から佐賀まで1700キロ、片道6時間。新陽はようやく黒字化が見えたばかり。相談すると新陽の全員が反対だった。だが荒井は「むげにできない」と7月、東明館の理事長を兼務した。福岡県境にある基山町は旧対馬藩の飛び地で、東明館は対馬藩の藩校名をとって1988年に開学。中高6年制の進学校で、卒業生の1割は医師だ。しかし、この10年余は生徒数が減り、進学実績も振るわない。周辺の久留米大附設(福岡県久留米市)や弘学館(佐賀市)が男子校から共学になって人気を集め、早稲田佐賀(佐賀県唐津市)や上智福岡(福岡市)など有名大の系列校もできた。東明館の生徒数は中高合わせ370人で、定員(900人)を大きく割り込む。2015年から立命館の支援を受けてきたものの、危機的な状況は、荒井が新陽の校長に就任したときと似ている。荒井にとって縁がある土地だ。基山町の隣の鳥栖市は、かつて仕えた孫正義の故郷。ソフトバンク時代には、福島第一原発事故の被災者を九州に避難させる計画作りにもかかわった。孫は子どものころ、ほかの子に解き方を教えるのが得意で、先生になるのが夢だった。荒井は偶然にも、かつてのボスの夢を追う。東明館理事長に就いたことを孫にメールで伝えると、「すごいね! 頑張って」と返信がきた。まず生徒を増やさなければならない。荒井は9月21日、東明館のオープンスクールで「21世紀型進学校をめざします」と来場者に語りかけた。九州の進学校では、朝からの補習や1日7コマの授業など「つめ込み教育」をするところが珍しくない。そこで来年度に新設するのが、新陽でも採用した「探究コース」。暗記重視の座学ではなく、生徒が自主的にテーマ設定し、課題解決を目指す学習だ。従来の教育熱心な保護者だけでなく、今までの教育に飽き足らない層を取り込むことも狙っている。見学に来た小5の父は「つめ込み式じゃないのが魅力」と荒井にひかれた。小6の孫の進学先として検討する祖父母も「Tシャツ姿の理事長さんが面白そう」。知名度も実績もこれからだが、荒井に助言する京都造形芸大副学長の本間正人は「いろんな人を巻き込む魅力と引力が桁外れ。今後の教育界を背負う五指に入る」と彼を買う。「折り入ってお話が……」。荒井のもとに学校再建を託したいという依頼がその後も舞い込んでいる。

*4-2:https://digital.asahi.com/articles/DA3S14206334.html (朝日新聞 2019年10月5日) 父「理想、押しつけた」 目黒虐待死、法廷で謝罪
 東京都目黒区で船戸結愛(ゆあ)ちゃん(当時5)が虐待死したとされる事件の裁判員裁判が4日、東京地裁であった。保護責任者遺棄致死などの罪に問われた父親の雄大被告(34)は、亡くなる直前の結愛ちゃんの気持ちを検察官に問われ、「言い表せない深い悲しみ、怒りの中にいたんじゃないか」と陳述。「親になろうとしてごめんなさい」と泣きながら謝罪した。雄大被告は「思い描いた理想を結愛に押しつけてきた。エゴ(自分勝手)が強すぎた」と事件の原因を分析。結愛ちゃんが「ゆるしてください」などと書いたノートを見た感想を問われると、「私の機嫌をとるためだけに書かされたという印象」と答えた。雄大被告によると、2016年4月、公園でシーソーの乗り方も知らず、さびしそうな表情を見せた結愛ちゃんに「父親が必要だ」と思い、母親の優里(ゆり)被告(27)と結婚。「笑顔の多い明るい家庭に」と理想を描いたが、血のつながりがないことを負い目に感じ、それをはね返そうと必要以上にしつけを厳しくした。歯磨きや「食事への執着」について結愛ちゃんを直接しかるようになり、改まらないと「焦りやいらだちが暴力に向かった」。雄大被告は仕事を求めて香川県から東京都に転居。18年1月に東京で母子と合流した後、結愛ちゃんから「勉強してなかった」「食事をいっぱい食べてた」などと聞いて怒りが爆発し、食事制限を始めたという。2月下旬には、勉強を命じたのに無視して寝ようとしたことに激怒。馬乗りになって騒がないように口をふさぎ、「謝れ」と怒鳴ってシャワーで水を浴びせ、顔を複数回殴ったと説明した。死亡直前、嘔吐(おうと)を繰り返した結愛ちゃんを病院に連れて行かなかったことについては、「虐待の発覚を恐れる保身の気持ちが強かった。ありえない判断だった」と反省の弁を述べた。一方で、香川の児童相談所の職員から面会時に「血がつながってないから(実子の弟と)差別しているのでは」と言われたと不満をあらわに。児相を信頼できず、転居先の東京の住所を教えなかったと明かした。

*4-3:https://www.nishinippon.co.jp/item/n/548492/ (西日本新聞 2019/10/4) 法医学の目 虐待見逃さない 傷の原因を見極め/人手不足が課題
 児童虐待が深刻化する中、遺体解剖のイメージが強い法医学者が関わり子どもの命を救おうとする取り組みが始まっている。傷やあざから原因を特定する専門性を生かし、虐待が疑われる子どもの早期保護や支援につなげる。6月に成立した改正児童福祉法では、2022年4月から全ての児童相談所に医師の配置を義務付けるなど、医療との連携は欠かせなくなっている。児相関係者は「虐待の見逃しを防ぐため、科学的視点で助言をくれる心強い存在」と期待を寄せる。
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 「園児の顔にあざがある」。長崎県内の保育施設から、長崎市の県長崎こども・女性・障害者支援センター(児相)に通告があった。幼児は「パンチしたの」と話すばかりで要領を得ない。児相は虐待を疑い、幼児を一時保護した。父親は「寝ぼけて家具にぶつけたのだろう」と説明したが、児相は不審に思い長崎大法医学教室に連絡した。幼児のあざを確認した法医学者の意見は「歩いている時に打ってできるものではない。押されたり蹴られたりした反動で何かにぶつかるなどしてできた可能性がある」。大人の力が加わっている疑いが強まった。児相は身体的虐待があったと判断して支援を継続。定期的に面会する中で、父親は暴力を認めたという。近所の住民から「泣き声が激しい」と通告を受けた別のケースでは、児相職員が保育施設で幼児の体を確認すると、あざのような皮膚の変色が複数あった。写真を撮り、同教室にメール送信。法医学者が写真を見た上で、施設に駆け付け目視すると、あざではなく悪化した湿疹と分かった。
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 今年6月に札幌市で2歳女児が衰弱死、8月には鹿児島県出水市で4歳女児が溺死した事件があった。児相などの行政機関が傷やあざを把握しながら一時保護につながらず、幼い命が失われるケースは後を絶たない。幼児は自ら説明できず、学齢期でも親から口止めされたりかばったりして虐待の痕跡を隠そうとしがちだ。大人が正しく見極める必要があるが、児相職員も含め経験が十分ではない。見逃しを防ごうと、長崎県では約10年前から長崎大法医学教室と2カ所の児相が連携し始めた。病院や保育施設などから通告を受けた児童相談所が判断に迷ったら、法医学者に傷の写真を見てもらったり、目視で確認してもらったりする。昨年は22人、今年は8月末までに17人の子どもが対象になった。「軽傷で『自分でぶつけた』などと保護者に流ちょうに説明されると、職員は納得してしまいがちだ。法医学者の科学的な見解があると、確信を持って支援や保護を始められる」と柿田多佳子・同センター所長(60)は意義を強調する。同教室の池松和哉教授(48)は「子どもは傷の治りが早く、悠長に様子を見ていては虐待の兆候を見落とし、支援のタイミングを逃してしまう。親子を支えるきっかけになれば」と話す。福岡市こども総合相談センター(児相)も、九州大と福岡大の法医学者に診察を委嘱する形で同様の取り組みを行い、昨年は26人の子どもについて意見を聞いた。福岡県久留米児相(久留米市)や同県大牟田児相(大牟田市)なども年に数件、法医学者の力を借りることがあるという。千葉大病院(千葉市)は昨年7月、児相や警察が虐待の疑いで保護した子どもを法医学専門の医師が診察する「臨床法医外来」を、全国で初めて開設した。
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 今年3月に閣議決定された新たな虐待防止策には、児相と法医学者などとの連携強化も盛り込まれた。ただこうした取り組みを全国に広げるには課題がある。日本法医学会によると、司法解剖などの実務に携わる法医学者は約200人。警察が、18年に事件事故や自殺で死亡し「異状死」として取り扱った遺体約17万体のうち、死因究明のために解剖されたのは約2万体で約12%(警察庁調べ)。“本業”も十分カバーできていない中で、「虐待予防に人手を割く余裕はない」との声が現場から上がることもあるという。児相に協力している同学会前理事長の池田典昭九州大教授(63)によると、親が「風呂場で熱いお湯がかかった」と説明しても、服の上から熱湯をかけなければできないやけどの特徴が見られたりする。傷痕から受傷の経緯を分析するのは、小児科医や外科医では難しい。池田教授は「まず人手不足を解消する必要があるが、命を救うために法医学ができることはたくさんある」と話している。

*4-4:https://www.kyoto-np.co.jp/info/syasetsu/20191006_3.html (京都新聞 2019年10月6日) 幼保無償化  不公平をなくす見直しを
 幼児教育・保育の無償化が始まった。消費税率10%への引き上げに合わせ、増収分の一部を活用した少子化対策だ。安倍晋三政権が掲げる「全世代型」社会保障の看板政策といえる。認可保育所や幼稚園、認定こども園に通う全ての3~5歳児と、住民税非課税世帯の0~2歳児の保育料が原則無料になった。子育て費用が軽くなるのは保護者にとって助かるだろう。ただ、政権主導で急ごしらえした制度と保育現場にずれが多く、不安を残したままのスタートとなったのは否めない。象徴的な問題の一つが、給食の副食(おかず)費の扱いだろう。副食費はこれまで保育料に含まれていたが、国は無償化の対象外として非課税世帯などを除いて実費負担を求めたからだ。保育料は、収入に応じて段階的に設定されてきた。低所得者は以前から減免されており、無償化の恩恵は小さいのに定額の実費が増えると負担感は重い。かえって出費超となる「逆転現象」の恐れもある。こうした事態を防ぐため、京都府は9月議会で新たに市町村による副食費支援への助成費を設けた。どこまで負担軽減をするかは市町村の判断で、地域格差が広がる可能性もある。無償化される幼保施設の線引きにも不満が根強い。インターナショナル校や民族学校は「各種学校」だとして対象外にされたが、保護者らは「同じ権利を認めて」と訴えている。希望しても認可施設に入れない待機児童は恩恵がないばかりか、状況の悪化が危惧される。全国の待機児童は4月時点で約1万6千人、「潜在的」な待機も約7万4千人いる。さらに無償化が新たな保育需要を掘り起こし、自治体による受け皿拡大が追いつかない恐れが高い。このため国は無償化から当初は外していた無認可保育施設を5年期限で補助対象に加えた。独自財源で補助上限額を引き上げるなどする自治体も多い。だが、保育士の数や設置面積などが不十分な無認可に広げることで、子どもの安全や保育の質の低下が懸念されている。京都市は補助期間を1年半に短縮し、無認可施設が早期に国基準を満たすよう促す方針だ。保育士不足は全国的に深刻さを増している。資格を持つ「潜在保育士」の掘り起こしなど官民挙げた確保策が必要だろう。一部の保育所や幼稚園では無償化に合わせ、「便乗」が疑われる値上げも見られた。理由に挙げられる保育士の待遇改善や環境整備に使われているか、行政はしっかり監視してほしい。不安が拭えないのは、どんな保育の受け皿や「質」が必要かの検討がなおざりのまま進められた結果といわざるをえない。幼保無償化には年間約7760億円が充てられる。財源となる消費増税は全ての人が負担するのに、一律の無償化は所得の高い人ほど受益が大きいという根本的な矛盾に不公平感が渦巻いている。本当に必要とする子育て世帯に恩恵が行き渡るよう不断の見直しが必要だろう。

*4-5:https://www.nishinippon.co.jp/item/n/549108/ (西日本新聞 2019/10/7) 無償化対象外、おかず代不安 保育園、新たに徴収業務 「未納でも食べさせないと」
 消費税率10%への引き上げを財源として1日から始まった幼児教育・保育の無償化では、これまで保育料に含まれていた副食費(おかず代など)は無償化の対象から外れ、自治体が担ってきた徴収業務を直接保育園が行うことになった。新たに滞納への対処が必要になるほか、事務負担増も見込まれており、現場からは不安の声が上がっている。「滞納した子の給食を出さないわけにはいかない。これまでも絵本代などで保護者から月千円前後を徴収してきたが、集める金額も大きくなる。問題なくできるだろうか」。約160人の児童を預かる福岡市城南区の信明保育園の高山英樹園長は頭を悩ませる。昼食の主食(ごはんなど)は各園児が持参し、副食を給食として提供する。今月からは副食費として同園が月4500円を実費徴収することになった。最大の懸念は「滞納への対応」。これまでは副食費は保育料に含まれて市が徴収していた。滞納があった場合でも市から園に渡される委託費は減額されず、保育や給食の質は確保されてきた。
▼「自腹」負担も
 だが、今後は副食費の滞納分がそのまま園の負担となる。「督促することによって保護者との関係が悪くなる恐れもあり、なかなか言いにくい。1年間滞納すると1人5万円ほど。決して小さな金額ではない」。市によると保育料の未納は年間1億円ほどに上る。国は、無償化から副食費を外した理由について「食費を保護者が負担してきた幼稚園や義務教育の学校給食との公平性確保」「在宅で子育てする場合でも必要な費用だ」などと説明する。従来通り自治体が徴収を代行することは「制度上できない」という。福岡市内では、副食費の徴収に口座振替を活用する園があるなど、各園が模索する。福岡市保育協会の篠原敬一理事長は「大規模な制度改革で国の対応は遅れた面もあるが、無償化自体はとても良いこと。試行錯誤しながらやっていくしかない」と話す。
■自治体の独自助成じわり
 副食費を巡っては、「子育て支援の充実」や「施設側の負担軽減」を理由に自治体が独自に助成するケースもある。福岡県内では田川市や大任町などが幼稚園、保育園問わず副食費として1人月4500円を上限に施設側に助成している。九州各県によると、長崎県で21市町中6市町、宮崎県で26市町村中3町村が無償化にする方向という。秋田県内では半数以上の15市町村が県との共同事業に自治体独自の助成を上乗せして全面的に無償化する。県の担当者は「秋田は全国一の人口減少県。歯止めをかけるための経済的支援になればと力を入れている」と話す。一方、人口規模の大きな自治体では今のところ助成の動きは広がっていない。福岡市は第3子以降の副食費は免除しているものの、全児童を対象とした財政支援は行わない方針。市によると、幼稚園、保育園の副食費を全て無償化した場合の費用は年間10億円ほどで「負担が重い」としている。

*4-6:https://www.hokkaido-np.co.jp/article/352065 (北海道新聞社説 2019.10.7) 幼保無償化 「質」の確保も緩みなく
消費税率引き上げに伴い、幼稚園や保育所などが無償化された。増収分から年間約8千億円を投じ、全ての3~5歳児と低所得世帯の0~2歳児について、利用料の全額または上限まで補助する。一昨年の衆院選の看板政策で「無償化ありき」で実施に至った。待機児童解消は道半ばで、保育士の待遇改善も進んでいない。無償化で需要の掘り起こしが見込まれる上、保育士不足の中で「量」の確保を急いだため、保育の「質」への不安が拭えない。子育て世帯の負担軽減に異論はないが、誰もが安心して公平に享受できることが大前提だろう。既に便乗値上げとみられる動きもある。国と自治体は、待機児童解消を緩みなく進めながら、制度の穴を確実にふさぐ必要がある。無償化の緊急性には、当初から疑問が出ていた。低所得世帯には既に減免制度があり、高所得世帯ほど恩恵が大きくなるからだ。そもそも保育所に入れない待機児童数は4月時点で1万6千人、入所を諦めた潜在的待機児童数は7万人を超え、不公平感は強い。無償化は本来、認可施設が対象だが、反発を受けて国の指導監督基準を満たさない認可外にも広げ、是正に5年間の猶予を認めた。認可外施設は体制が手薄なところも少なくなく、死亡事故の発生率は認可を大きく上回る。このため国は、自治体が条例で無償化対象を制限できるとしたが、認可外が待機児童の受け皿になっている現状では難しかろう。ましてベビーシッターなどは、行政の立ち入り検査もない。やみくもに無償化を急ぎ、安全に疑問のある保育サービスが増える余地を生んだといえる。せめて札幌市のように、認可外施設への指導内容の公表など、情報発信を進めてもらいたい。待機児童対策で、国は次々に基準緩和を進めてきた。だが、切り札とした企業主導型保育所は、手厚い補助を当て込んだ新規参入が相次ぎ、甘い審査で助成金詐取や破綻を許した。一方で、給食費を巡り国の負担が増したとして、肝心の保育士の人件費加算を直前で見送った。ずさんな制度設計のしわ寄せを受けるのは子どもたちだ。質の低い保育の悪影響は成人後にも及ぶとの海外の研究もある。ただでさえ、国の基準は3~5歳では先進国の水準に及ばない。幼児教育をうたう以上、子どもの健全な発達を保障するだけの余裕を現場につくらねばならない。

<介護保険とその財源、エネルギーの再エネ化など>
PS(2019年10月13日追加):*5-1のように、「①高齢化で増加する医療費を抑えるため、医療提供体制の見直しが避けられない」「②地域住民の安心を確保できるよう見直す際は地域事情に十分配慮すべき」「③病院ベッド数は人口減少と少子高齢化に伴う人口構成の変化に合わせた機能転換が必要」「④若い世代に多いとされる急病・大けがの手術の際に入院する『高度急性期』『急性期』のベッド数の必要性は低くなる」「⑤脳血管障害・骨折の手術後のリハビリに対応する『回復期』のベッド需要が高まる」「⑥急性期ベッドは看護師配置が手厚く診療報酬が高いが、現状では回復期ベッドが足りずリハビリ中の高齢者が入院している例も多い」「⑦地域医療の将来像は住民本位で」と書いたメディアは多い。しかし、(私が大学で習って衆議院議員時代に始めた)病院ネットワークの充実は、①の高齢化による医療費の増加を抑えるためではなく、最小のコストで充実した医療を提供するために行うものだ。そのため、②③は当然であるものの、高齢者が増えれば脳血管疾患・心疾患・骨折などが増えて急性期患者の絶対数が増えるため、④は事実でない。また、⑤は事実だが、現在は理学療法士を配備したリハビリ病棟が少ない上、回復期には縦割りの病院間の引っ越しをしなければならないというのも患者にとっては負担であるため、そのまま急性期病棟にいることが多いわけである。また、診療報酬は診療内容によって決まり、急性期の方が高いため、病院は急性期の患者を多く入れた方が利益が多いので、⑥も誤りである。つまり、高齢化に対応するための給付抑制と病院の悪徳性を先入観として持った上で考えると事実と異なる認識で誤った結論を導くのであり、⑦の住民のニーズに合った治療を最低コストで行うためにこそ、病院の再編やネットワーク化は行うべきなのである。
 このような中、*5-2のように、つしま医療福祉グループ・江別市・北海道が北海道のモデル事業として「生涯活躍のまち」を整備したり、*5-3のように、JAが主体となって介護保険事業の種類ごとにWGを設置し、現場の情報やノウハウを共有したり、課題解決策を探って事業改善に生かし介護を底上げしたりして地域の声を反映した介護保険制度の充実に繋げようとしたりしているのは、正攻法で期待が持てる。そのため、介護の対象者を組合員だけではなく、一般市民にも開放して欲しいくらいだ。
 しかし、厚労省は、*6-1のように、「⑧65歳以上の高所得世帯の介護保険サービスの自己負担月額上限を2~3倍に引き上げる」「⑨介護サービスを利用する時の自己負担は年収に応じて1~3割」「⑩これは介護保険制度の維持が目的」としている。しかし、年収に応じて保険料の支払額を変え、⑧⑨のように、年収に応じて利用料まで変えるのは、食料品の値段を年収に応じて変えるのと同じくらい馬鹿の一つ覚えの応能負担思考だ。また、介護が保険制度である以上、不公正に制度を複雑化させる。さらに、介護状態になり、これから高い年収が入るわけのない人の利用料を上げるという発想は、⑩の介護保険制度の維持どころか介護保険制度の意味を失わせるものである。つまり、*6-2のように、今でも不足している介護保険制度の利用をさらに控えさせることになるため、全世代型社会保障と言うからには、何歳であっても必要な介護を受けられ、介護保険料の支払者は所得のある人全員にすべきなのだ。
 この介護サービスは20世紀から必要性が指摘され、21世紀始めの2000年4月1日に、日本で最初に施行されたもので、現在は韓国で2008年から、台湾で2019年からなど公的介護保険制度の運用を開始している国が多い。それにもかかわらず、このような新しいサービスは邪魔者扱いにしてまともに育てることすらできないのが、(特定の首相ではなく)我が国の政府なのである(https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12300000-Roukenkyoku/2gou_leaflet.pdf 参照)。そして、主権者は国民自身だ。
 なお、介護はじめ社会保障サービスの原資は、(これも馬鹿の一つ覚えのように)消費税だと唱えて決して疑問を持たないメディアが多いが、*7-1・*7-2のようなリチウムイオン電池・太陽光発電・EV(どれも日本発の技術)を組み合わせれば、日本は外国に多額の燃料費を支払うことなく、CO₂を排出しないクリーンなエネルギー体系を作って国民を豊かにすることができた。にもかかわらず、経産省・経団連・原発推進派などの既得権者が逆風を吹かせて予算を無駄遣いしつつ、先駆的企業の経営を危うくし、先駆的企業の技術が日本ではいかされずに海外に先を越されたのである。そのため、そういう状況を変えることなくノーベル賞受賞だけをいくら騒いでも、科学技術創造立国になったり、先進技術を使ったベンチャー企業の育成ができたりするわけはないのだ。ただ、世界の中ではかなり遅れたが、*7-3のように、「再エネ100%のネットワーク」が始動したのは、日本政府の愚かさと比較すれば少しは希望が持てる。

   
                            2018.4.4朝日新聞

(図の説明:左図のように、65歳以上の被保険者から集める介護保険料は増加の一途を辿り、提供される介護サービスは減少している。また、中央の図のように、介護サービスには、半額の公費が投入されているが、介護保険料を支払っているのは65歳以上と40~64歳のみであり、意味なく複雑である。また、右図のように、団塊の世代が75歳を超える2025年には介護保険料の上昇と介護人材の不足が懸念されているとのことだが、まず所得のある人全員が介護保険料を負担し、全世代が介護を受けられる単純な全世代型社会保障にし、外国人労働者を活用すれば多くの問題が解決しているだろう)

    
                         2019.10.6東京新聞 
(図の説明:左図のように、介護を受けた時に支払う介護保険料の割合は、物価高の中ではたいして多くもない所得で2割・3割と増加する。また、右図のように、毎月の上限支払額も所得によって段階的に増えるが、介護と医療は同時に受ける場合が多いため、合わせて一定以下に抑えなければ生活できなくなるのである)

*5-1:http://www.the-miyanichi.co.jp/shasetsu/_41417.html (宮崎日日新聞社説 2019年10月9日) 公的病院再編
◆地域事情に十分配慮せよ◆
 厚生労働省による再編・統合の検討が必要な全国の公立・公的病院の公表が波紋を呼んでいる。全国1455病院のうち、対象になったのは本県7病院を含む計424病院。高齢化に伴い増加の一途をたどる医療費を抑えるには医療提供体制見直しが避けては通れない。地域住民の安心を確保できるよう、地域事情に十分配慮すべきだろう。病院のベッドに関しては、人口減少と少子高齢化に伴う人口構成の変化に合わせた機能転換が必要だと指摘されてきた。つまり、比較的若い世代に多いとされる急病、大けがの手術の際に入院する「高度急性期」「急性期」ベッドの必要性は低くなる。一方で、脳血管障害や骨折の手術後のリハビリに対応する「回復期」ベッドの需要が高まるとされている。急性期ベッドは看護師配置が手厚く診療報酬が高く支払われる。だが現状では、回復期ベッドが足りず、リハビリ中の高齢者が入院している例も多いとされ、ミスマッチ是正が課題になってきた。この方向に沿って医療提供体制を見直すため、国が各都道府県に策定を求めたのが地域医療構想だ。全国の病院のベッド数は2018年で約125万床だが、同構想では25年に必要なのは約119万床で、削減が可能と思われた。ところが厚労省が全国の病院に報告を求めたところ消極姿勢が目立ち、公立・公的病院はほぼ削減が進まない見通しであることが分かった。このため今回、病院側や都道府県に対し再検討を促すため、病院名の公表に踏み切った。しかし、全国知事会など地方3団体が「地域の不安が増す」などとして反発を強めている。確かに懸念される問題点は多い。第一に、山間へき地、離島への立地や、がんの先進治療など民間病院では限界がある医療を提供するという公立・公的病院ならではの役割は、経済合理性重視で評価を下せるものではない。そもそも患者一人一人の立場になれば、長年頼みの綱にしてきた地域の病院が遠隔地に統合されるなどすれば、不安、不利益は計り知れないだろう。さらには、公立・公的病院の再編・統合により、現状でも深刻な地方の医師不足に拍車が掛かりかねない。それが引き金になって人口減少、過疎化がさらに進む可能性も否定できない。地域医療構想は都道府県が複数の自治体単位で策定し、それを受けて各病院側が具体的なベッド数削減を決めていく。その過程では、地元の医療関係者のほか住民代表らも加わった会議で協議することになっている。地域医療の将来像は住民本位で探っていくべきだ。地域の不安解消に丁寧な議論が必要だ。

*5-2:https://www.hokkaido-np.co.jp/article/351158?rct=n_hokkaido (北海道新聞 2019年10月3日) 共生のまちづくりへ つしまグループ、江別市、道が協定締結
 道は3日、つしま医療福祉グループ(札幌、対馬徳昭代表)と江別市が同市大麻地区で進める「生涯活躍のまち」整備について、全道のモデル事業としての成功に向け、同グループと同市とで3者協定を締結した。事業は、同市が構想を策定。同グループが約3万平方メートルの敷地に、サービス付き高齢者向け住宅や保育所、住民の交流拠点など9種類の施設を建設する。予算は40億円超の見通しで、2021年4月完成予定。道は運営手法などを全道に波及させ、人口減少対策につなげたい考えだ。道庁での締結式で、対馬代表、三好昇市長、鈴木直道知事が協定書に調印。道と同グループは人事交流などを行う。鈴木知事は「全国に誇る先駆的なプロジェクト。成果を全道に広げたい」と述べた。

*5-3:https://www.agrinews.co.jp/p48848.html (日本農業新聞 2019年9月29日) JA主体 介護底上げ 高齢者福祉ネット体制強化 情報やノウハウ6WGで共有へ
 介護事業に取り組むJAなどで構成し、高齢者福祉対策を担ってきた「JA高齢者福祉ネットワーク」が、10月から運営方式をJA主体に見直し、活動を強化する。居宅介護支援など介護保険事業の種類ごとに六つのワーキンググループ(WG)を設置。各JAはWGに参加し、情報やノウハウの共有、課題解決策を探り、事業改善に生かす。WGで出た意見や要望は政策提言し、地域の声を反映した介護保険制度の充実につなげていく。ネットワークは、介護事業を展開する全国の約260JA、約50の県中央会と厚生連、12の全国機関で構成し、JAの介護保険事業の中心的な役割を果たしてきた。JA全中が事務局を務め、研修会などを開いてきたが、ネットワーク非会員JAへの全中のアプローチが難しいことや、介護保険事業の収支が厳しさを増していることなどが課題だった。課題解決も含めて、ネットワークの役割などを再検討。従来の参加型の協議会方式から、JAが結集する方式へ転換し、全体で介護保険事業の底上げを目指す。全中は、情報提供や研修会の開催などでJAを後方支援する体制に変更する。介護事業に取り組む全JAに参画を促していく。WGは①経営管理②居宅介護支援③訪問・定期巡回④通所介護⑤小規模多機能⑥介護・医療連携──で構成する。各JAは、それぞれが展開する事業内容と課題に応じてWGに所属する。より濃密で鮮度の高い情報を入手でき、県域を超えたつながりによる新たな事業展開のヒントを得ることに期待がかかる。WGで出た現場の声は、JAグループの政策提言にもつなげる。全中営農・くらし支援部は「WGでは現場からの意見を最優先に吸い上げ、政策提言に生かしたい」と話す。JAグループ全体の介護保険事業の収益は年間で約300億円。業界でも上位規模になる。

*6-1:https://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201910/CK2019100602000119.html (東京新聞 2019年10月6日) 高所得者 介護負担増へ 65歳以上、月額上限2~3倍
 厚生労働省は五日、膨張する社会保障費抑制のため、主に六十五歳以上の高所得世帯を対象に、介護保険サービスを受ける際の自己負担の月額上限を引き上げる方針を固めた。現在の月額上限は低収入の世帯を除くと四万四千四百円だが、年収約七百七十万円以上の世帯は九万三千円、約千百六十万円以上は十四万百円に増やす。政令改正し二〇二一年度にも導入する。介護保険制度の維持が目的で、比較的余裕がある高齢者に相応の負担を求める。介護サービスを利用した人の自己負担は一~三割。利用者の負担が過重にならないよう「高額介護サービス費」という仕組みがあり、月ごとの自己負担額に上限を設け、超えた分は払い戻してもらえる。現在、上限は住民税課税世帯であれば収入額に関係なく四万四千四百円。今回、これを見直す。具体的には(1)年収約七百七十万円までの世帯の月額上限は四万四千四百円(2)年収約七百七十万~千百六十万円の世帯は九万三千円(3)年収約千百六十万円以上は十四万百円-とする。対象となる六十五歳以上の世帯は数%の見込み。住民税非課税の場合の上限は、現行の世帯二万四千六百円、個人一万五千円を維持する。

*6-2:https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/480560 (沖縄タイムス社説 2019年10月7日)  [介護保険見直し]「利用控え」広げないか
 果たして、これまでのように支援を受けることができるのか。来年の通常国会での法案改正を目指し、政府内で介護保険見直しに向けた議論が進んでいる。並ぶのは利用者の負担を引き上げるいくつもの項目だ。3年に1度実施している制度改正で、厚生労働相の諮問機関である社会保障審議会の部会は、自己負担2割の対象者拡大▽ケアプラン作成の有料化▽自己負担の月額上限引き上げ-などを論点に挙げている。社会保障費を抑制するため、年末までに結論を出すという。65歳以上の全ての高齢者を対象に2000年にスタートした介護保険は、年収に関係なく1割負担でサービスが受けられ、「介護の社会化」に貢献してきた。だが15年に年収280万円以上の人を対象に2割負担が導入され、18年に340万円以上の人は3割に引き上げられた。財務省などは2割負担を原則とするよう求めており、今度の改正で年収要件を引き下げ、2割負担の対象が広がる可能性がある。ただ既に2割に引き上げられた人のうち、3・8%がサービス利用を減らしたり、中止したりしたことが同省の調査で分かっている。「利用控え」の割合は、1割に据え置かれた人の3倍に上った。例えば月2万円の負担が4万円に跳ね上がれば、サービスをためらう人が間違いなく増えるだろう。支援が受けられず重症化しないか心配だ。
    ■    ■
 ケアプラン作成の有料化も焦点の一つである。ケアプランはサービスに詳しいケアマネジャーに依頼するのが一般的で、誰もが公平にサービスを受けられるよう現在は全て保険からの給付で賄われている。仮に1割負担となった場合、高い人で月に1400円ほど支払うことになる。毎月のことであり決して小さくない額だ。月ごとの自己負担額に上限を設ける「高額介護サービス費」の引き上げも検討されている。住民税課税世帯なら収入に関係なく4万4400円の現行から、年収約770万円以上の世帯は9万3千円、約1160万円以上は14万100円に増やす方針だ。比較的余裕がある層とはいえ、税金などを引かれた後、月5万円から10万円近い支出増は家計へ影響を及ぼす。十分な調査と説明を求めたい。
    ■    ■
 18年度の介護保険給付費は10・7兆円で制度開始時の3倍に増加した。団塊世代全員が75歳以上となる25年度は15兆円を超える見込みだ。高齢化の進展に伴う社会保障費の伸びを抑える狙いがあることは理解するものの、利用者の負担が限界に近づいているのも事実である。老後資金2千万円問題などで公的年金制度への不安が高まっている。消費税も10%にアップされたばかりだ。今は健康でも介護を必要とする時期は、多くの人にやってくる。制度が維持されても、生活が成り立たなければ本末転倒である。

*7-1:https://digital.asahi.com/articles/DA3S14212779.html (朝日新聞 2019年10月10日)電池ビジネス、急拡大 日本メーカーが牽引、競争激化 吉野さんノーベル化学賞
 今年のノーベル化学賞に決まった吉野彰・旭化成名誉フェローらが開発したリチウムイオン電池は、用途を広げながら市場拡大を続けている。牽引(けんいん)してきたのは、日本の素材や電機メーカーだ。ただ近年は中国勢が台頭し、競争は激しさを増している。リチウムイオン電池は、電気自動車(EV)やスマートフォンなど向けの需要が伸び、市場規模の拡大が見込まれる。調査会社の富士経済の予測では、2022年の世界市場は7・4兆円で、17年の2・3倍に伸びるという。旭化成は、電池の正極と負極を隔てる膜の「セパレーター」の生産能力が世界一で、市場シェアの約2割を握る。吉野氏の研究成果と同社独自の技術を組み合わせ、1990年代に量産化に着手。20年度までに生産能力を16年度比で8割増やす方針で、工場の増強を計画する。小堀秀毅社長は「リチウムイオン電池が、今後ますます世界の人々の暮らしに役立つものになっていくと期待している」との談話を出した。ほかの主要部材でも日本勢は強い。日立化成は、EV用電池の負極材で世界有数のシェアを誇る。宇部興産は、電気の通り道になる電解液で、耐久性を高める独自の技術を持ち、こちらも世界有数のシェアだ。電池そのものの生産にも、電機メーカーなどが力を入れてきた。東芝は自社のリチウムイオン電池を、スズキの簡易ハイブリッド車や東京メトロの車両の非常用電源向けに納入している。パナソニックは自動車向けに注力し、いまや電池事業の年間売上高は数千億円規模と、冷蔵庫や洗濯機を上回るまでに成長。EV大手の米テスラと組み、米国に電池工場も構えている。ただ、日本勢の地位は揺らいでいる。中国の新興メーカー、寧徳時代新能源科技が、中国政府の支援を受けて急成長し、EV向けの出荷量ではパナソニックを抜いたとされる。17年には日本法人を設立し、営業攻勢をかけている。電気の通り道に液体を使わず、発火のリスクを抑える次世代技術「全固体電池」の開発競争も始まっている。トヨタ自動車はパナソニックと提携し、20年代前半の実用化をめざす。一方、激しい競争の中で撤退に追い込まれる動きも相次ぐ。日産自動車とNECは昨年、共同出資する電池メーカーを中国企業に売ると決めた。世界に先駆けてリチウムイオン電池を実用化したソニーも17年に電池事業を村田製作所に売却した。関連技術や市場環境は大きく変化しており、この先も再編含みの競争が続きそうだ。

*7-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20191010&ng=DGKKZO50809460Z01C19A0EA1000 (日経新聞社説2019年10月10日)電池の革命がノーベル賞を手にした
 今年もまたうれしいニュースが飛び込んできた。ノーベル化学賞が旭化成の吉野彰名誉フェローに贈られることが決まった。授賞の理由はリチウムイオン電池の開発。97歳と過去最高齢となるジョン・グッドイナフ博士らとの共同受賞だ。パソコンから携帯電話、スマートフォン、それに電気自動車。現代の暮らしは、これらに使われる電池の革命なしには考えられない。文句なしの受賞といえる。充電すれば繰り返し使える電池の性能は電極にどんな材料を選ぶかで決まる。1980年代半ば、吉野氏はグッドイナフ氏が開発した正極にあう負極を探した。最初は電気を通すプラスチックに着目したが、実用に見合う性能が引き出せない。試行錯誤の末、たどり着いたのが旭化成が得意としてきた炭素材料。85年にリチウムイオン電池の基本構造を確立した。リチウムイオン電池は従来の電池より小さく軽くて電圧も高い。ソニーが91年に初めて製品化し、当初は安全性に課題もあったが、携帯機器で普及した。2010年ごろまでは日本メーカーがリードしたが、その後、韓国勢などが台頭し市場での立場は逆転した。産業での日本の優位性が長続きしなかったことを悔やむ声があるが、それだけ世界が求めていた革新的テクノロジーだった。日本企業に所属する研究者の受賞は2002年に化学賞をとった田中耕一島津製作所シニアフェローに次ぐ2人目だ。吉野氏も田中氏も1980年代の業績で、大手メーカーが中央研究所を設け、将来の応用を見据えて基礎研究にも力を入れていた時代だった。科学研究の実力は国力を映し出す鏡ともいわれる。成果から受賞までに20年、30年かかることを考えると、2000年以降、今回で19人を数える日本の科学者の受賞ラッシュは、80年代の日本の豊かさと余裕のたまものだろう。喜んでばかりはいられない。足元で日本の研究力は元気がない。優れた論文の数からみる実力は各分野で低下。知の拠点となる大学のランキングもじり貧だ。1901年に始まったノーベル賞は1世紀以上たった今も「科学界の最高の賞」とされる。人類への貢献にこだわり息の長い基礎研究を顕彰してきたからだ。吉野氏が今後何を語るのか注目しよう。そこから科学技術創造立国への復活のヒントを得たい。

*7-3:https://digital.asahi.com/articles/DA3S14212804.html (朝日新聞 2019年10月10日) 再エネ100%のネットワーク
 再生可能エネルギーの利用を100%にすることを宣言する、日本の企業や教育機関、病院などのネットワーク「再エネ100宣言 RE Action(アールイーアクション)」が9日、設立された。遅くとも2050年までに消費電力の100%を再エネ化する目標を設けて、毎年、比率を公表する。再エネ100%を宣言する国際的な企業連合「RE100」には現在、日本企業25社が加盟しているが、参加できるのは消費電力の規模が大きな企業に限定されている。規模の小さな国内企業・団体からも同様のネットワーク設立を求める声が上がっていた。RE Actionは日本気候リーダーズ・パートナーシップなど4団体によって発足、まず28企業・団体が参加した。

<生物の進化をつかさどるDNAの変異>
PS(2019年10月16日追加):同じ厳しい気候や感染症に晒されても生き残る個体とそうでない個体があり、*8には、有性生殖が多様性を生んだと書かれているが、有性生殖によるDNAの組み替えだけではそれまでになかった全く新しい性質は獲得できない。しかし、無性生殖する細菌やウイルスもDNAが変異して環境に適した性質を持つ個体が生き残り、進化は無数に起こるDNA変異の中から、より環境に適した個体がより多くの子孫を残す形で起こると言われている。
 そして、最近、日本でもカムイサウルスが発見され下のように展示されているが、この恐竜の骨格は飛べない鳥エミューの骨格と類似しているため、骨格の並べ方が違うのではないかと、私は思う。歩く時は下のエミュー型、走る時は下のロードランナー型になったのではないだろうか。つまり、“恐竜”の多くは、飛べない鳥に進化していたのだろう。

    
 カムイサウルスの骨格   エミューの骨格と生体     走るロードランナー  

(図の説明:1番左のカムイサウルス《むかわ竜》の骨格は、左から2番目のエミューの骨格に似ているため、生きていた時の姿は右から2番目のエミューに似ており、走る姿は1番右のロードランナーのようだっただろう。それを明らかにするには、カムイサウルスが立ったり走ったりする時の重心の位置と、その大きな骨格を動かす筋肉の大きさを現生動物から推定する必要がある)

     
   anchiornisの化石と想像図      ガチョウ     ペンギン  シラサギ

(図の説明:1番左のanchiornisは翼のある恐竜の化石で、左から2番目はその想像図だ。そして、中央のガチョウの嘴にも歯のようなギザギザがあり、顔も似ている。さらに、右から2番目のペンギンの口の中は恐ろしい歯並びで、泳ぐ魚を捕獲して丸呑みしながら切り裂くのに適していそうだ。また、1番右のシラサギは美しい鳥だが、首の曲がり方が蛇を思わせる)

*8:https://www.nishinippon.co.jp/item/n/549199/ (西日本新聞 2019/10/7) <33>多様性を生む有性生殖
 性教育といっても月経や精通、妊娠や出産、性感染症や望まない妊娠の話ばかりではありません。理科や生物の授業で習った「有性生殖」も大切な性の話です。有性生殖は雄と雌、男と女という性別があり、それぞれの精子と卵子を授精させて命をつなぐこと。子どもは、両親から半分ずつ受け継いだ新しい遺伝子を持つので、性格や体質は両親とは異なります。このように有性生殖は遺伝子を混ぜ合わせて、人が多様になるように命をつなぐ方法です。今年も猛暑の夏でした。もし気温が40度になって、みんなが熱中症になってしまうと大変です。けれども高温にも強い体質の人が必ずいます。その人は熱中症で倒れている人に「大丈夫?」と声を掛け、水を与えることができます。エイズは比較的新しい病気ですが、感染の機会があってもエイズを発症しない人たちがいます。その体質は、エイズの登場以前に獲得した遺伝子の働きによるものだと分かってきました。この人たちの体質から、新しい薬や予防法が開発されようとしています。地球の大きな寿命に比べれば、人間の寿命は約100年。私たちは自分の特徴に気付くことはないかもしれません。しかし気候が大きく変化したり、未知の病気が流行したりしたときに多様な人がいれば、それに対処し乗り越えられる誰かがいるはずです。こんなことを話した性教育の出前授業の後でいただいた、とっておきの感想文を紹介します。
<僕が一番心に残ったことは、人が有性生殖をするのは、命を多様にしてさまざまな人が生まれてくるからということです。いろいろな長所や短所を持った人がいることで、その人の長所が別の人の短所を助けることができるという点がすごく良いなと思いました。自分にないものを持っている人をうらやましがったり、ねたんだりするのではなく、その人がいつか自分を助けてくれるかもしれないんだという気持ちを持ちたいと思いました。また、自分の長所が他の人をどのように助けることができるのか考えようと思いました>
 有性生殖で命をつなぐ意味は「誰かが誰かを助けるために」。このように考えてくれる高校生がいると、未来も安心だと思えます。

<外国籍の人の教育に関する取り扱い>
PS(2019年10月20日追加): *9-1・*9-2のように、学齢期でも小中学校に通えない外国籍の子どもが日本国内に約2万人おり、外国人労働者の受け入れを拡大すれば数が増える。国際人権規約では、小中学校教育を「義務的なもの」として「すべての者」に「無償とする」と規定しているが、日本国憲法が定める義務教育の対象は「国民」となっており、外国人は対象外で法律上は就学させる義務がないことが問題の背景にあるそうだ。
 確かに、*9-3の日本国憲法26条は2項で「すべて国民は、法律の定めるところにより、その保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負ふ」と定めており、日本国民以外には義務を課していないが、外国籍の子も教育を受ける権利があり、国際人権規約では小中学校教育を「すべての者に義務」としている上、外国籍の子にも教育を受けさせた方が質の良い労働力が増えて生活保護受給者を増やさず日本にとってもプラスだ。そのため、これまで外国籍の子を軽視していたのは国・地方自治体の配慮不足が過ぎる。
 また、*9-4の教育基本法も、日本国憲法を受けて日本国民しか対象にしていないが、第4条に教育の機会均等を掲げ、「人種・信条・性別・社会的身分・経済的地位又は門地によって教育上差別されない」とし、国・地方自治体に義務教育の機会保障・その水準確保・適切な役割分担と相互協力による責任ある実施を要請しているため、外国籍の子にもこれを準用すればよかったのだ。そのため、教育基本法の前文に、「国内に在住する外国人には、この法律を準用する」という一文を付け加え、教育基本法の理念をしっかり実現すればよいだろう。

*9-1:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/443320 (佐賀新聞 2019年10月19日) 外国人の不就学 学ぶ権利は平等だ
 学齢期なのに、小中学校に通えない外国籍の子どもが国内に2万人近くいる可能性がある。文部科学省の初の調査で分かった。少子高齢化対策で政府が外国人労働者の受け入れを拡大し、外国籍の子は確実に増える。子どもが学ぶ権利は国籍に関係なく平等だ。国が主導し、自治体と共に早急に対策を講じるべきだ。文科省が「不就学」の可能性があるとした外国籍の子は1万9654人。この年代は住民基本台帳には約12万人登録されており、16%を占める。このうち、就学していないことが明らかなのは千人で、残りは状況の把握すらできていないといい、その事実が事態の深刻さをうかがわせる。実際には住民登録していない子どももいるだろう。日本も批准した国際人権規約は小中学校の教育を「義務的なもの」とし、「すべての者」に無償とするとしている。ただ、憲法が定める義務教育の対象は「国民」。外国人は対象外で、法律上は就学させる義務がないことが問題の背景にある。調査から浮かぶのは、外国人への就学案内が不親切という実情だ。多くの市区町村が、保護者の希望があれば入学させるという待ちの姿勢で、積極的に働き掛けていない。住民登録時に全員に就学案内をする自治体は半数。義務教育年齢の子どもを登録する「学齢簿」に準じる書類を外国人全員に作る所も半数に満たない。小学校新入学の年齢の子がいる家庭に案内を送るのは63%、中学校は48%にとどまる。多くが日本語で記しており、理解が危ぶまれる。驚くのは、就学状況が不明な場合の対応について、65%もの自治体が「特に実施していない」と答えたことだ。国は「通知などで対応を促してきた」というが、責任を押し付け合って済む問題ではない。文科省は今年に入ってようやく実態把握や対策を検討し始めたが、遅きに失した感がある。外国人が住むのは東京都、大阪府、神奈川県、愛知県など都市部が多い。人数が多い自治体は把握が不十分な一方、国際結婚などで外国人が散在する地域は受け入れの経験が少なく、人手や予算もないという課題がある。国がこの問題を自治体任せにしてきたために地域ごとの差が大きい。外国人労働者の多い浜松市は積極的に家庭への訪問を繰り返してきた。文科省はこうした先進事例を一刻も早く全国に紹介し、きめ細かな対応を促すべきだ。さらには制度を整え、自治体の財政支援に力を入れる必要がある。文科省の別の調査では、日本語指導が必要な高校生の中退率は平均の7倍以上。卒業しても就職者の40%が非正規労働で、進学も就職もしない比率も高い。日本語が不自由なまま働いたり、きょうだいの世話をしたりする子どもの将来が心配だ。制度からこぼれ落ちた子どもたちが犠牲になっていいわけがない。読み書きもままならずに大人になれば、貧困状態に陥る恐れが大きい。教育を受けて就職し、生活が安定すれば、結局は日本社会全体が利益を得る。4月の改正入管難民法施行による新たな在留資格創設で、外国人労働者とその子どもは一層の増加が見込まれる。門戸を開いた以上、国として責任を持つべきだ。こんな恥ずかしい状況を放置したままでは安倍政権は国際社会に顔向けできまい。直ちに対策を実行する必要がある。

*9-2:https://www.sakigake.jp/news/article/20191020AK0015/ (秋田魁新報社説 2019年10月20日) 外国人不就学問題 国主導の対策が急務だ
 日本で暮らす外国籍の子どものうち、約16%に当たる1万9654人が小中学校に通っていない不就学の可能性があることが、文部科学省による初の調査で分かった。外国人労働者の受け入れが拡大する中、外国籍の子どもは確実に増える。不就学の子どもをなくすためにも、国は早急に就学環境を整える対策を講じる必要がある。調査は5~6月に全1741市区町村の教育委員会を通じて実施した。調査対象としたのは住民基本台帳に住民登録する外国籍の子ども12万4049人。このうち実際に不就学を確認したのは千人で、残りは調査時に自宅に不在だったり、学籍簿に名前が無かったりして、状況の把握すらできていないという。文科省はこれら全てを合計した人数について、不就学の可能性があると判断した。まずは実態把握を急がなくてはならない。日本は、外国籍の子どもが公立小中学校への就学を希望すれば、国際人権規約などを踏まえて無償で受け入れている。ただ日本人と違い就学義務はない。加えて働いたり、家できょうだいの面倒を見たりしている不就学の子どももいる。こうした子どもたちを孤立させてはならない。学ぶ権利は国籍に関係なく平等にある。調査からは自治体の対応や支援態勢にばらつきがあることも浮き彫りとなった。就学を促す取り組みを特に行っていない自治体は65%に上り、4割が就学案内を送っていなかった。送付したとしても日本語のみの記載といった案内も多くある。日本語指導が必要な子どもに特段の対策をしていない自治体は半数余りで、「人員や予算が不足」「どのような支援を行うべきか分からない」などを理由に挙げていた。せっかく就学しても日本語が分からなければ、学校に居づらくなり、退学となるケースも少なくない。将来の進学や就職などにも影響する。国は「通知などで対応を促してきた」としている。しかし自治体任せにするのではなく、自ら主導して、外国籍の子どもたちが安心して学校に通えるようにするべきである。積極的に家庭への訪問を繰り返している自治体や、民間と連携して日本語教育を推進している自治体もある。文科省はこうした先進事例を広く紹介することで、きめ細かな対応を促してほしい。外国人の不就学問題の解消は日本の子どもたちにとってもメリットがある。同じ教室で多様な言語や文化に触れながら学ぶことはコミュニケーション力を高め、寛容性や柔軟性を育むことにつながる。本県で不就学の可能性がある子どもは2人とされたが、県による再調査ではゼロだった。ただ本県でも在留外国人の増加に伴い、外国籍の子どもは増えている。今後を見据えて、今から準備を進めておくことが重要である。

*9-3:http://www.mext.go.jp/b_menu/kihon/about/a002.htm (日本国憲法 教育関係の条文抜粋 昭和二十一年十一月三日)
第二十三条  学問の自由は、これを保障する。
第二十六条  すべて国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する。
2  すべて国民は、法律の定めるところにより、その保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負ふ。義務教育は、これを無償とする。

*9-4:http://www.japaneselawtranslation.go.jp/law/detail_main?re=&vm=01&id=2442) (教育基本法 平成十八年十二月二十二日法律第百二十号
 我々日本国民は、①たゆまぬ努力によって築いてきた民主的で文化的な国家を更に発展させるとともに、②世界の平和と人類の福祉の向上に貢献することを願うものである。我々は、この理想を実現するため、個人の尊厳を重んじ、真理と正義を希求し、公共の精神を尊び、豊かな人間性と創造性を備えた人間の育成を期するとともに、伝統を継承し、新しい文化の創造を目指す教育を推進する。ここに、我々は、日本国憲法の精神にのっとり、我が国の未来を切り拓く教育の基本を確立し、その振興を図るため、この法律を制定する。
第一章 教育の目的及び理念
(教育の目的)
第一条 教育は、人格の完成を目指し、平和で民主的な国家及び社会の形成者として必要な資質を備えた心身ともに健康な国民の育成を期して行われなければならない。
(教育の目標)
第二条 教育は、その目的を実現するため、学問の自由を尊重しつつ、次に掲げる目標を達成するよう行われるものとする。
一 ①幅広い知識と教養を身に付け、②真理を求める態度を養い、豊かな情操と道徳心を培うとともに、健やかな身体を養うこと。
二 個人の価値を尊重して、その能力を伸ばし、創造性を培い、自主及び自律の精神を養うとともに、職業及び生活との関連を重視し、勤労を重んずる態度を養うこと。
三 正義と責任、男女の平等、自他の敬愛と協力を重んずるとともに、公共の精神に基づき、主体的に社会の形成に参画し、その発展に寄与する態度を養うこと。
四 生命を尊び、自然を大切にし、環境の保全に寄与する態度を養うこと。
五 伝統と文化を尊重し、それらをはぐくんできた我が国と郷土を愛するとともに、他国を尊重し、国際社会の平和と発展に寄与する態度を養うこと。
(生涯学習の理念)
第三条 国民一人一人が、自己の人格を磨き、豊かな人生を送ることができるよう、その生涯にわたって、あらゆる機会に、あらゆる場所において学習することができ、その成果を適切に生かすことのできる社会の実現が図られなければならない。
(教育の機会均等)
第四条 すべて国民は、ひとしく、その能力に応じた教育を受ける機会を与えられなければならず、人種、信条、性別、社会的身分、経済的地位又は門地によって、教育上差別されない。
2 国及び地方公共団体は、障害のある者が、その障害の状態に応じ、十分な教育を受けられるよう、教育上必要な支援を講じなければならない。
3 国及び地方公共団体は、能力があるにもかかわらず、経済的理由によって修学が困難な者に対して、奨学の措置を講じなければならない。
第二章 教育の実施に関する基本
(義務教育)
第五条 国民は、その保護する子に、別に法律で定めるところにより、普通教育を受けさせる義務を負う。
2 義務教育として行われる普通教育は、各個人の有する能力を伸ばしつつ社会において自立的に生きる基礎を培い、また、国家及び社会の形成者として必要とされる基本的な資質を養うことを目的として行われるものとする。
3 国及び地方公共団体は、義務教育の機会を保障し、その水準を確保するため、適切な役割分担及び相互の協力の下、その実施に責任を負う。
4 国又は地方公共団体の設置する学校における義務教育については、授業料を徴収しない。
(学校教育)
第六条 法律に定める学校は、公の性質を有するものであって、国、地方公共団体及び法律に定める法人のみが、これを設置することができる。
2 前項の学校においては、教育の目標が達成されるよう、教育を受ける者の心身の発達に応じて、体系的な教育が組織的に行われなければならない。この場合において、教育を受ける者が、学校生活を営む上で必要な規律を重んずるとともに、自ら進んで学習に取り組む意欲を高めることを重視して行われなければならない。
(大学)
第七条 ①大学は、学術の中心として、高い教養と専門的能力を培うとともに、②深く真理を探究して新たな知見を創造し、③これらの成果を広く社会に提供することにより、社会の発展に寄与するものとする。
2 大学については、自主性、自律性その他の大学における教育及び研究の特性が尊重されなければならない。
(私立学校)
第八条 私立学校の有する公の性質及び学校教育において果たす重要な役割にかんがみ、国及び地方公共団体は、その自主性を尊重しつつ、助成その他の適当な方法によって私立学校教育の振興に努めなければならない。
(教員)
第九条 法律に定める学校の教員は、自己の崇高な使命を深く自覚し、絶えず研究と修養に励み、その職責の遂行に努めなければならない。
2 前項の教員については、その使命と職責の重要性にかんがみ、その身分は尊重され、待遇の適正が期せられるとともに、養成と研修の充実が図られなければならない。
(家庭教育)
第十条 父母その他の保護者は、子の教育について第一義的責任を有するものであって、生活のために必要な習慣を身に付けさせるとともに、自立心を育成し、心身の調和のとれた発達を図るよう努めるものとする。
2 国及び地方公共団体は、家庭教育の自主性を尊重しつつ、保護者に対する学習の機会及び情報の提供その他の家庭教育を支援するために必要な施策を講ずるよう努めなければならない。
(幼児期の教育)
第十一条 幼児期の教育は、生涯にわたる人格形成の基礎を培う重要なものであることにかんがみ、国及び地方公共団体は、幼児の健やかな成長に資する良好な環境の整備その他適当な方法によって、その振興に努めなければならない。
(社会教育)
第十二条 個人の要望や社会の要請にこたえ、社会において行われる教育は、国及び地方公共団体によって奨励されなければならない。
2 国及び地方公共団体は、図書館、博物館、公民館その他の社会教育施設の設置、学校の施設の利用、学習の機会及び情報の提供その他の適当な方法によって社会教育の振興に努めなければならない。
(学校、家庭及び地域住民等の相互の連携協力)
第十三条 学校、家庭及び地域住民その他の関係者は、教育におけるそれぞれの役割と責任を自覚するとともに、相互の連携及び協力に努めるものとする。
(政治教育)
第十四条 良識ある公民として必要な政治的教養は、教育上尊重されなければならない。
2 法律に定める学校は、特定の政党を支持し、又はこれに反対するための政治教育その他政治的活動をしてはならない。
(宗教教育)
第十五条 宗教に関する寛容の態度、宗教に関する一般的な教養及び宗教の社会生活における地位は、教育上尊重されなければならない。
2 国及び地方公共団体が設置する学校は、特定の宗教のための宗教教育その他宗教的活動をしてはならない。
第三章 教育行政
(教育行政)
第十六条 教育は、不当な支配に服することなく、この法律及び他の法律の定めるところにより行われるべきものであり、教育行政は、国と地方公共団体との適切な役割分担及び相互の協力の下、公正かつ適正に行われなければならない。
2 国は、全国的な教育の機会均等と教育水準の維持向上を図るため、教育に関する施策を総合的に策定し、実施しなければならない。
3 地方公共団体は、その地域における教育の振興を図るため、その実情に応じた教育に関する施策を策定し、実施しなければならない。
4 国及び地方公共団体は、教育が円滑かつ継続的に実施されるよう、必要な財政上の措置を講じなければならない。
(教育振興基本計画)
第十七条 政府は、教育の振興に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、教育の振興に関する施策についての基本的な方針及び講ずべき施策その他必要な事項について、基本的な計画を定め、これを国会に報告するとともに、公表しなければならない。
2 地方公共団体は、前項の計画を参酌し、その地域の実情に応じ、当該地方公共団体における教育の振興のための施策に関する基本的な計画を定めるよう努めなければならない。
第四章 法令の制定
第十八条 この法律に規定する諸条項を実施するため、必要な法令が制定されなければならない。
附 則 〔抄〕
(施行期日)
1 この法律は、公布の日から施行する。

<教員の質と労働条件など>
PS(2019年10月21、24、28、29日追加):*9-4の教育基本法第9条に、「①教員は崇高な使命を深く自覚して絶えず研究と修養に励み、職責の遂行に努めなければならない」「②教員は使命と職責の重要性に鑑み、身分が尊重され、待遇の適正が期せられるとともに、養成と研修の充実が図られなければならない」と記載されている。一般社会でもいじめやハラスメントは多発しているが、*10-1のように、教員自身がいじめを行っているようでは、児童生徒にいじめを行わないよう指導することはできず、首謀者か追随者かは問わず、いじめを止めるのではなく加担する側に立つのは勇気や公正な態度の見本を示すどころか逆を行っていて、①からほど遠い。
 また、*10-2は、「③忙しい時期は勤務時間を延長して夏休み中に休暇を取るような『変形労働時間制』を公立校の教員にも適用できる法改正案を政府が閣議決定した」「④夏休み中も部活動や研修があり、必ず休みが取れるとは限らない」「⑤過労死労災認定の基準となる月80時間を超えて残業をしている教員は、文科省の16年度の調査で小学校で3割余・中学校で6割近くに上り、日本の教員の勤務時間は欧米各国に比べると突出して長い」「⑥順次導入される次期学習指導要領では、思考力や表現力を引き出す授業の工夫が一層求められる」等が書かれているが、企業と比較して教員は休みが多いので、私は③は妥当だと思う。そして、いつまでも④⑤を主張しているようでは思考力がなく、⑥を行うことができる教員が何割いるのか考えさせられる上、自分が上手くない人から教わっても上手くはなれないため、部活や外国語指導を従来の教員に担当させるのが効果的かどうかも疑問だ。さらに、学校も組織であるため教員が雑用に翻弄されずに本当の教育を行える体制を作ることはできるし、とっくの昔に作っていなければならない。つまり、②は、質の高い教育を行うために定めたもので、教員の数のみを問題にするのではなく待遇の適正化によって質の高い人材を確保しようとしているのである。
 なお、*10-3のように、関東では2019年度当初時点で公立小中学校に配置すべき教員が少なくとも503人不足しており、産休・育休取得者や病気休職などが出た場合に代わりの教員を確保できない現状が覗えたそうだ。しかし、そのリストの人材が枯渇した理由は、少なくなった新卒者を多くの企業が奪い合っているからで、それでも定年を60~65歳に保たなければならない理由はない上、待遇が悪ければ教員免許を持っていても教員という職業を選択する人は少なくなることを忘れてはならない。
 インドネシアでは、*10-4のように、ジョコ大統領が米ハーバード大経営大学院を修了してゴジェックを創業したマカリム氏を教育・文化相に任命し、先進国入りを目指して高度産業を担える人材育成を最重要課題の一つに掲げて教育改革をするそうだ。日本は、最終学歴こそインドネシアより高いが、頑張らない方向への改革を続ければ、2045年には先進国に入っていないかもしれない。
 2019年10月28日、*10-5のように、日本私立大学連盟の鎌田会長が、「⑦高等教育の無償化は『国私格差』拡大の恐れがある」「⑧私大の増収に寄与しない」「⑨新制度は受給対象者を2浪、20歳までに限っている」「⑩国立大学と私立大学の卒業生が国や社会全体にもたらす便益にこれほど大きな差があるとは考えられない」と批判されているが、日本の高等教育の問題は国私格差を無くすために国公立大学の授業料を上げて学生の高等教育負担を増やし、志のある学生に高等教育を受けにくくさせたことに由来する。また、私大は入試科目が少なく(=学生の知識や理解度はそれだけ狭くて浅い)、建学の精神に基づいて学生の選抜方針や教育方針を自由に決めることができ、巨大マスプロ教育(=議論したり、考えたりする教育が僅少)によって⑩も十分でないため、⑦のように、授業料の国私格差だけを問題にするのは、志ある学生を育てようとしている高等教育無償化の趣旨とは異なる。また、教育は人材育成のためにあり、大学の増収のためにあるのではないため、高等教育無償化に関する⑧の批判には驚いた。さらに、⑨の受給対象者を2浪に限っているのは、就職もせず大学受験で何浪もできる人はそれだけ裕福な家庭の子であることから当然で、年齢制限については、社会に出た後で再び大学で学ぶ意欲のある人は、働いている期間にそのくらいの貯金はしておけということだ。
 また、*10-6のテレビ番組(プライムニュース)は私も見ていたが、キャスターが「受験生の経済状況や居住地で不利が生じて不公平ではないか」と言ったので、萩生田氏が「『あいつ予備校に通ってずるい』と言うのと同じだ(≒不公平に当たらない)」と答えたのであり、私は同意だ。だが、大学入学共通テストで導入される民間検定試験がいくつもあると比較できないため、留学に影響するTOEFL一本にするのがよいと考える。中学・高校でTOEFL試験を何度も行えば、不公平はなくなり、受験生も慣れる。そして、それだけでは受験生間に差がつかないとか、大学教育に不十分だと考える大学は、東大のように二次試験を行えばよいだろう。
 なお、2019年10月29日、*10-7のように、朝日新聞が、大学入試改革として2020年4月から英検やGTECなど7種類の英語民間試験を活用することについて、「⑪塾に通わずに受験勉強をしている母子家庭の子や離島の生徒を例に出して教育機会均等と全く逆としている」「⑫教育基本法は『すべて国民は、ひとしく、その能力に応じた教育を受ける機会を与えられなければならない』とする」「⑬大臣が地域・経済格差が教育格差に繋がるのを容認したことが問題」「⑭都会の裕福な家の子が何回も受験の練習をするのを妨げられない」等を記載しているが、7種類の英語民間試験を活用することこそ比較可能性をなくして公正な評価を不可能にするため問題なのである。そのため、大学入試なら、各大学が入試として認定する民間試験を指定し、例えば留学に役立つTOFLEの結果のみを採用することとして、中学・高校から学校でTOFLEの試験を繰り返せば、すべての問題を前向きに解決できるが、そのためには延期が必要だろう。
 また、教育は、“身の丈”を伸ばすために行うものだが、⑪は、公立の初等・中等教育の教育内容が不十分で、塾に通わせなければ高等教育の受験もおぼつかない現状が問題なのであり、それは英語だけの問題でもないため、なったばかりの文科大臣の発言の問題に帰するのは小さすぎる。さらに、⑫や*9-4の教育基本法4条に定められた教育の機会均等は、入試の機会均等や奨学金などで一応は達せられており、結果平等を求めるものではない。⑬⑭については、地域間格差や経済格差が教育格差に繋がっているのは事実だが、これは地域間の産業格差や教育に対する意識格差が密接に関係しており、首都圏や都会だから有利とも限らないため、教育基本法13条、17条のように、国と地域で総合的な基本計画を立てて進めなければならないのである。

*10-1:https://www.niigata-nippo.co.jp/opinion/editorial/20191020502333.html (新潟日報社説 2019年10月20日) 教員のいじめ 本分忘れた許し難い暴走
 子どもの教育という自らの職責を忘れた、信じられない暴走である。あまりの荒廃ぶりにあぜんとする。これでは、子どもも保護者も学校に不信と不安を抱く。再発を防ぐためにも、なぜ問題が起きたのか、歯止めを掛けられなかったのかを徹底的に解明しなければならない。神戸市立小学校の教諭4人が同僚に対して、度重なるいじめ行為をしていた。加害者は30代の男性教諭3人と40代の女性教諭1人である。集中的に被害に遭っていた20代の男性教諭は精神的に不安定になり、9月から欠勤した。羽交い締めにして激辛カレーを食べさせる。無料通信アプリLINE(ライン)で別の女性教員に性的なメッセージを送るよう強要する。訴えられたいじめの内容は極めて悪質だ。男性教諭は50種類以上のいじめがあったと申告している。熱湯の入ったやかんを顔に押し付けられる暴行、灰皿に入れた水を車内でまき散らされる嫌がらせなどもあったという。ほかに20代の教員3人が暴言やセクハラを受けていた。「反抗しまくって学級つぶしたれ」。加害教員が児童にこう言っていたとの訴えも明らかになっている。事実であれば、子どもたちをいじめに加担させようとしたとも受け取れる。常軌を逸しているというほかない。問題が発覚し、ショックを受けた児童が学校を休んだケースもあった。子どもへの心理的影響もとても心配だ。学校でのいじめは増加し続けている。文部科学省の最新の発表によると、全国の小中学校や高校、特別支援学校での2018年度のいじめ認知件数は54万3933件、心身に深刻な被害が生じる「重大事態」は602件。ともに過去最多だった。いじめ防止は今や学校や教員にとって最大の課題だろう。にもかかわらず、教員同士の間でもいじめがあったことにやりきれない思いに駆られる。神戸市教委によると、欠勤している男性教諭は昨年以降いじめを受けていた。それを市教委が確認したのは今年9月。男性教諭の家族が訴えたからだ。この間、校内で問題はどう扱われていたのか。今春異動した前校長と現校長はいじめの相談を受けても、市教委に詳細を伝えなかった。それが、問題を深刻化させた面もあろう。市教委が設置した調査委員会による調べはこれから本格化する。管理職の対応の問題点も掘り下げ、理由や背景を明らかにしなければならない。このところ本県でも、教員の不祥事が相次いでいる。9月には長岡市の小学校校長が買春の疑いで逮捕され、十日町市内の中学校教諭が児童買春で書類送検された。モラルの低下は目を覆うばかりである。子どもたちや地域を裏切ることのないよう、教育界は自らに課せられた責任の重さを改めて肝に銘じてもらいたい。

*10-2:https://www.shinmai.co.jp/news/nagano/20191021/KT191018ETI090016000.php ( 信濃毎日新聞 2019年10月21日) 教員変形労働制 根本的な是正にならない
 年度初めや学校行事が立て込む忙しい時期は勤務時間を延長し、代わりに、夏休みの期間中に休暇を取る―。働く時間を年単位で調整する「変形労働時間制」を公立校の教員にも適用できるようにする法改正案を政府が閣議決定した。長時間労働が常態化した教員の働き方改革の一環と位置づけている。ただ、休暇をまとめて取れるようにしても、労働時間が全体として減るわけではない。むしろ、学期中の長時間労働を追認することになりかねない。定時が延びると会議などが入り、家に持ち帰る仕事がかえって増えないか…。心配する声が現場から出ている。夏休み中も部活動や研修があり、必ず休みが取れるとは限らない。表向き残業時間は減っても、どこまで過重労働の是正につながるのか疑問だ。文部科学省は、教員の残業時間の上限を月45時間とする指針を1月に定めている。この指針の位置づけも条文で明確にするが、変形労働制は月ごとの上限をなし崩しにする恐れがある。日本の教員の勤務時間は欧米各国に比べると突出して長い。経済開発協力機構(OECD)の2018年の調査では、5年前よりさらに増えた。過労死の労災認定の基準となる月80時間を超えて残業をしている教員は、文科省の16年度の調査で、小学校で3割余、中学校では6割近くに上る。順次導入される次期学習指導要領では、思考力や表現力を引き出す授業の工夫が一層求められる。小学校では英語が教科になり、授業時間も増える。教員の負担が増すのは目に見えている。一方で、子どもを取り巻く問題は深刻化している。18年度に全国の学校で確認されたいじめは54万件を超え、心身に重大な被害が及ぶ事態も600件に達した。自殺した小中高校生は330人余に上り、ここ30年で最も多い。親から虐待される子も増えている。教員に時間と気持ちの余裕がなければ、子どもと丁寧に向き合うことはできない。発しているサインや異変を見過ごすことにもなる。過重な負担を減らすには、十分な教員数を確保するとともに、学校や教員が担ってきた仕事を見直し、分担する仕組みや補う態勢を整えていく必要がある。法改正により一律に変形労働制が取られるわけではなく、導入するかどうかは自治体が判断する。国会での法案審議に加え、地方議会や地域で、学校現場の実情を踏まえた議論が欠かせない。

*10-3:https://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201910/CK2019102002000144.html (東京新聞 2019年10月20日) 教員不足 公立小中500人 本紙1都6県アンケート
 本紙が関東1都6県の計39の自治体の教育委員会に行ったアンケートで、2019年度当初時点で、公立小中学校に配置すべき教員が、少なくとも503人不足していたことが分かった。教員不足の自治体は16で4割に上った。回答からは、産休・育休取得者や病気休職などが出た場合に、代わりの教員を確保できない現状がうかがえ、児童生徒への影響も懸念される。教員の採用や配置は都道府県と政令市の各教委が行う。本紙は今年六~七月、神奈川、千葉、埼玉、茨城、栃木、群馬の各県と横浜、川崎、相模原、さいたま、千葉の五つの政令市の教委にアンケートした。東京都内は二十三区と人口二十万人以上の五市の教委に調査した。調査結果によると、小学校では十三自治体で常勤三百四十四人、非常勤三十九人が不足。中学校も十三自治体で、常勤八十三人、非常勤三十七人が不足していた。小学校では学級担任十三人が、中学校は教科担任二十三人が不足していた。教員が配置できない理由で多かったのは、産育休などの教員の代役となる非正規教員の不足だ。教員の欠員が出た場合、学校などはまず都道府県教委などが持つ登録リストに載っている人の中から後任を探す。しかし近年、このリストの人材は枯渇気味。登録しているのは「教員採用試験の不合格者」が多く、二〇一〇年ごろからは、かつて大量採用されたベテランが退職期を迎え、正規採用が増えたことで登録者が減った。教員志望者自体も減少傾向にあり、新たな登録も減っている。一方で欠員を埋めるための需要は増加している。「大量退職、新規採用増」の影響で、公立学校では教員の年齢が若返っており、ここ数年はその世代が産休や育休を取ることが多い。教員確保が難しい理由として「若手教員が増えて産休・育休取得者が増加しているため」(千葉県)という回答も目立った。「病気休職が日々発生している」(東京都八王子市)との回答もあるように、過密労働による精神疾患などで休んだり、辞めたりするケースも少なくない。

*10-4:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO51299530T21C19A0FF1000/ (日経新聞 2019/10/23) インドネシア、教育相にゴジェック創業者、競争力強化へ人材育成急ぐ
 インドネシアで23日、配車サービス大手、ゴジェック創業者のナディム・マカリム氏(35)が教育・文化相に就任した。2045年の先進国入りを目指すジョコ大統領は高度な産業を誘致するために人材育成を2期目の最重要課題のひとつに掲げている。ゴジェックで200万人の運転手を教育して職を生み出したナディム氏の経験を生かし、産業界に必要な人材育成を急ぐ。ジョコ大統領が23日発表した新内閣の目玉はナディム氏の教育・文化相就任だった。ナディム氏は早速、5千万人の児童・生徒を対象に、IT(情報技術)教育などを充実させる考えを示した。ジョコ氏は「産業界で役立つ人材育成の突破口を作ってほしい」として、教育機関と産業界の懸け橋としての役割も期待するとした。ナディム氏は1984年生まれで、米ハーバード大経営大学院を修了した。ゴジェックを起業し、15年にスマホを使った配車や宅配、金融などのサービスを本格的に始め、わずか3~4年でインドネシア人の生活に不可欠なサービスに育てた。ゴジェックは世界に20社ほどしかない巨大未上場企業「デカコーン」(企業評価額100億ドル=1.1兆円=以上の未上場企業)となった。ナディム氏は21日、入閣要請を受諾し、ゴジェックの最高経営責任者(CEO)を退任した。ナディム氏は23日、従業員に宛てた電子メールで、ゴジェックが配車などで人々の生活を改善してきたことに触れ、「インドネシアが(ゴジェックにいるような)高度な人材をもっと生み出すためには教育システムを変える必要がある」と入閣の理由を述べた。もともとは得意分野のデジタル担当相やイノベーション担当相などとして登用する案も出ていたが、最終的に教育・文化相という重要閣僚で起用することが決まったのは、ナディム氏がゴジェックで運転手を教育して職を与えたことを高く評価したためだ。就職につながる国の教育システム作りを託した。ジョコ氏は早い段階からナディム氏の事業に注目して支援してきた。15年12月に配車サービスを禁止する通達が出た際には「誰のための規制だ」と運輸相を叱責し、事実上撤回させた。19年4月にはゴジェックの運転手向けのイベントにジョコ氏が参加するなど、ジョコ政権とナディム氏の関係は深かった。ジョコ氏は組閣にあたって、ミレニアル世代(1980年から2000年ごろ生まれの若者)の代表として、有力スタートアップ経営者や大手財閥の若手経営者らの入閣を検討していた。なかでもナディム氏には4月の大統領選で再選を決めた直後から接触しており、意中の人物として早くから決めていたようだ。ただ、ナディム氏の前には大きな壁が立ちはだかる。インドネシアの労働人口のうち、最終学歴が小学校卒以下の人が約4割で、中学校卒以下も合わせれば約6割に達する。産業界からは「即戦力として使える人材が少ない」(日系企業)といった不満が出ていて、海外からの投資が周辺国に流れる一因となっている。ジョコ氏は23日、閣僚に対して「具体的な成果を意識して仕事をするように」と訓示し、早期に結果を出すことを求めた。教育は一朝一夕で改善するものではないが、ナディム氏は短期間で教育の抜本的な改善と、産業界への人材の送り出しという困難な課題に答えを出さなくてはならない。

*10-5:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20191028&ng=DGKKZO51395670V21C19A0CK8000 (日経新聞 2019年10月28日) 高等教育の無償化、「国私格差」拡大の恐れ、前日本私立大学連盟会長 鎌田薫氏 私大の増収寄与せず/現行補助廃止なら改悪
 2020年4月から低所得世帯の学生が対象の高等教育の無償化が始まるが、日本私立大学連盟の鎌田薫前会長(早稲田大学前総長)は私立大学には問題が多い制度だと批判する。来年4月から、大学、短大、高専、専門学校に在学する住民税非課税世帯およびそれに準ずる世帯の学生を対象として、新たな授業料減免制度が始まり、給付型奨学金も拡充されることになった(高等教育の就学支援新制度)。初年度の予算は7600億円が予定されている。600校を超える4年制私立大学全体に対する助成金総額が3000億円弱だから、この金額は画期的に大きなものといえる。ただし、この授業料減免制度は学生の授業料を国が代わって大学に支払うものであるから大学の収入増にはつながらず、国の負担分は消費税引き上げによる財源を用いた内閣府の社会保障関連予算に位置づけられる。グローバル化、情報化と少子高齢化が急速に進む現代日本社会においては、国民一人ひとりが高度の知識・技能を身につけ、新たな価値を創造していくことが強く求められている。一方で、教育費負担が子どもを持つことに対する最大の抑制要因となっている。実際にも、低所得者層の大学進学率は漸減傾向にあり、経済格差と教育格差の悪循環が懸念されている。これらのことを考えれば、市民生活の安定と国の繁栄を維持発展させるためには、高等教育費負担の軽減を図ることが必要であり、新制度がその第一歩を踏み出したこと自体は高く評価しなければならない。しかし、その制度設計には私立大学として看過できない問題点があり、私学団体も一貫して批判的な意見を述べてきた。ここでは、特に国私間の格差を拡大させる恐れについて私見を述べたい。
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 国の高等教育費支出は、学生1人あたり、国立大学202万円、私立大学15万円であって、13倍を超える格差がある。これらはいずれも平均額であり、国立大学生の3割は授業料減免の恩恵を受けているし、私学助成の交付額は大学によって様々であるから、一人ひとりについて見れば、より多様な比率になる。その意味では精密さに欠ける比較ではあるが、国立大学と私立大学の卒業生が国や社会全体にもたらす便益にこれほど大きな差があるとは考えられず、国費の投資効率や納税者間の平等という観点からは正当化が難しい格差といえよう。本来なら、こうした異常な格差を解消した上で、個々の学生の能力と経済状況に応じて幅広く柔軟な支援策を講ずるべきであって、大学の設置形態によって支援内容に差を設けることは合理的でなく、不当な格差を拡大させる恐れもある。例えば、ある受験生が強く進学を希望する私立大学の特定学部の授業料が160万円であるとすると、新制度による支援は70万円を上限としているから、90万円の自己負担を覚悟しなければならない。この受験生が第一希望を断念して国公立大学に進学すれば、学費全額を国が負担するという今回の制度が本人と国の将来にとって果たして有益なのだろうか。現状でも国立大学生の世帯収入が私大生のそれを上回っており、受験準備に十分な投資ができなければ難関大学に進学できない傾向が顕著になっている。新制度が国は国公立大学への進学を強く奨励しているというメッセージと受け止められれば、この傾向はさらに強まり、制度目的とは逆に受験準備のために十分な投資をする余裕のない受験生はますます進学が困難になる恐れがある。学部学生の約8割に対する教育を担っている私立大学には、低所得者層を含む多様な学生が在籍している。そのため、各私立大学は独自の支援措置をとっており、その総額は毎年900億円規模に上っている。現在は、年収841万円以下の世帯の学生に対する各私大独自の授業料減免額の2分の1について国庫補助を受けられるものとされている。実際の交付額は90億円程度に留まっているが、就学支援新制度の導入に伴って、従来の補助は廃止されるといわれる。最も多くの学生が属する年収400万~900万円の世帯に対する授業料減免への公的支援がなくなったとしても、各大学は従来の減免措置を取りやめることはできないだろうし、新制度の影響で支援策の拡充を迫られるかもしれず、私立大学にとっては改悪としかいいようがない。しかも、その原資には学生からの授業料も含まれるため、実際上は学生相互間の所得移転による社会保障の肩代わりを拡大させるものであり、本来あるべき方向性とは逆行している。
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 新制度は受給対象者を2浪、20歳までに限っている。さらに、現行制度では補助対象としていた大学院生の授業料減免が廃止されるとすると、教育再生実行会議や人生100年時代構想会議などが、生涯を通じて何時でも必要なときに必要なことを学べる体制を整えることや、博士学位取得の促進などを提言してきたが、そうした政策と矛盾することになる。新法付則の定める施行後4年の見直しに向けて、国私間格差の抜本的解消、諸外国で行われているような国公立大学に低所得者層の学生を一定数入学させる制度の導入、中間所得層を含む幅広い学生に対する支援措置の拡充などについて深く真剣に検討されることを切に期待する。

*10-6:https://www.hokkaido-np.co.jp/article/358826?rct=n_society (北海道新聞 2019年10月28日) 萩生田文科相、「身の丈に合わせて」発言謝罪
 萩生田光一文部科学相は28日、大学入学共通テストの英語で導入される民間検定試験に関して「自分の身の丈に合わせて頑張ってもらえれば」とテレビ番組で述べたことについて、報道陣の取材に応じ「国民、特に受験生に不安を与えかねない説明だった。おわびしたい」と謝罪した。民間試験導入を巡っては、受験生の経済状況や居住地によって不利が生じるのではないかと懸念の声が高まっており、全国高等学校長協会は2020年4月開始の延期を求めている。番組は24日に放映され、萩生田氏は不公平への懸念について「『あいつ予備校に通ってずるい』というのと同じだと思う」との見方も示していた。

*10-7:https://digital.asahi.com/articles/DA3S14235380.html (朝日新聞 2019年10月29日) (時時刻刻)「格差を容認」批判噴出 英語民間試験、文科相「身の丈に合わせがんばって」
 2020年度から始まる大学入学共通テストで活用される英語の民間試験について、萩生田光一文部科学相が「身の丈に合わせてがんばって」と発言し、28日、謝罪に追い込まれた。教育格差を容認するような教育行政トップの発言に、受験生や教育関係者から憤りの声が上がった。野党は大臣の辞任を求め、追及を強める考えだ。
■謝罪、発言は撤回せず
 「国民の皆様、特に受験生の皆さんに不安や不快な思いを与える説明不足な発言であった」。28日、萩生田氏は文科省内で謝罪した。問題の発言は、24日の報道番組で、大学入試改革の目玉として来年4月から活用が始まる英語民間試験に言及した際に飛び出した。現在の高2が主に受ける共通テストでは、英検やGTECなど7種類の民間試験を使って、英語の「読む・聞く・話す・書く」の4技能を測る。国のシステムで各人の成績を集約し、出願先の大学に提供する。練習のために何度受けてもいいが、大学に提供されるのは高3で受けた2回までの試験の成績だ。住む場所や家庭の経済状況によって不公平が生じないか――。こんな質問に、「『あいつ予備校通っててずるい』というのと同じ」などと反論。生徒の境遇により本番までの受験回数に差が出るのを認めた上で、「身の丈に合わせて、2回をきちんと選んで勝負してがんばってもらえば」と述べた。ただ、萩生田氏は28日の取材では不公平を容認しているとの指摘に対して、「どんなに裕福でも2回しか結果は提出できないので、条件は平等」と強調。発言は撤回せず、「民間試験なので、全ての人が(本番の)2回しか受けてはいけないというルールにはできない」などと釈明した。受験料が2万5千円を超える試験や、会場が都市部の10カ所に限られる試験もあり、地域格差や経済格差の問題は、導入が決まった当初から指摘されてきた。文科省は、低所得世帯の受験料減免を業者に求めたり、離島の受験生に交通費や宿泊費の一部を補助する支援策を来年度予算の概算要求に盛り込んだりした。一方で、萩生田氏は1日の会見で、新制度について「初年度は精密さを高めるための期間」などと発言。「生徒を実験台にするのか」などと批判を浴びた。今回の発言で、さらに批判が強まりそうだ。文科省幹部は「『なぜあんな発言を』と考える職員はいるだろう。高校などに説明する際に悪影響が出るのが心配だが、立ち止まる余裕はない」と語った。
■教育機会均等と「全く逆」
 萩生田氏の発言はSNSなどを通じて広がり、「地方の貧乏人は身の程を知れという姿勢?」などと反発が相次いだ。都内の高校2年の男子生徒(17)は母子家庭で、塾に通わずに受験勉強をしている。「与えられている条件が人によって違うのに、『身の丈に合った』と言われると、自分の可能性を抑え込まれた感じがする」と言う。「そもそも身の丈に左右されてしまうような制度。それを止めるどころか推進するような発言だと腹が立ちました」。都立高校の50代教諭は「教育を担当する大臣として、あり得ない発言」と憤る。離島の都立高校に赴任したことがある。受験料や船代、宿泊代をこつこつためていた生徒の家族をいくつも知っている。「格差を追認するような発言を大臣がしていいのか」。識者からも批判の声が上がる。小林雅之・桜美林大教授(教育社会学)は「国がすべきことと全く逆の発言であり、問題だ」と言う。教育基本法には「すべて国民は、ひとしく、その能力に応じた教育を受ける機会を与えられなければならず」とある。小林教授は「国はもっと支援策を講じるべきだ。全国高校長協会が延期を求めるなど、試験への批判も強い。再検討した方がよい」と言う。萩生田氏の発言に対し、野党は強く反発する。大臣の辞任を求め、厳しく追及する構えだ。英語民間試験を巡っては、野党統一会派と共産党が24日、「経済的な状況や居住地域に左右される」などとして、導入を延期する議員立法を衆院に提出した。その後、飛び出した萩生田氏の発言に、野党国対幹部は「憲法で保障された教育の機会均等なのに大臣自らが不平等を容認している。国会でも取り上げざるを得ない」。一方、菅義偉官房長官は28日午前の記者会見で萩生田氏の文科相としての資質について問われると、「適材適所だと思っている」と述べた。
■<視点>制度自体に問題、浮き彫り
 英語民間試験の活用について「身の丈に合わせてがんばってもらえば」と発言した萩生田光一文科相が「説明不足だった」と謝罪した。だが問題は「説明不足」だったことではない。まず、大臣が「身の丈に合わせて」と格差を容認する言葉を口にしたことだ。地域・経済格差が教育格差につながるのを防ぐのが大臣の責務だ。課題を受験生に押しつけ、開き直ったとも受け取れる。こんな姿勢では、教育政策を預かる資格はない。さらに深刻なのは、制度自体が「身の丈入試」であることを拭えない点だ。民間試験を使う以上、都会の裕福な家の子が何回も受験の練習をするのを妨げられない。萩生田氏の発言は、この問題を改めてあぶり出した。11月1日から受験用の「共通ID」の申し込みが始まる。受験生の不安はすでに限界を超えている。

<一般社会であった有名ないじめ>
PS(2019年10月23、24日追加): *11-1は、「①メーガン妃の『個人的な手紙』を報じたのは著作権侵害・データ保護法違反などにあたるとして、ハリー王子夫妻が英大衆紙と親会社を提訴した」「②王子は『こうした攻撃的な報道は他人の人生を台無しにするいじめだ』と強く非難している」としている。しかし、“血統書付きの家庭”の出身でないのはメーガン妃の責任ではなく、それでも公爵夫人になれたのはメーガン妃の実力であるため、これらの報道は「人種差別」「いじめ」に入るだろう。また、「③服装やふるまいが伝統破りだと頻繁に指摘され」「④側近の退職が相次ぎ、『気難しい公爵夫人』とあだ名を付けられ」「⑤一部メディアで激しい批判にさらされた」のも、肌の色や経歴が異なれば似合う服や行動が異なるのは当然であるため、(頭の固い)側近が退職したからといってメーガン妃のせいと決めつけるわけにはいかない。つまり、この種の報道は「言論の自由」「表現の自由」よりも「名誉棄損」や「人権侵害」に当たるのだ。そして、イギリス国民は、メーガン妃の肌の色や経歴をメリットとして活かした方が賢いし、私はデザイナーの実力でメーガン妃の容姿をぱっと輝かせる服装を見たいと思っている。
 また、*11-2は、日本の現皇后雅子妃の話で、2003年に「⑥適応障害(そういう精神病はない)」という変な病名で“療養”に入られて後、皇后になってから輝きを増したと言われている。しかし、私は結婚1年目に中東を訪れた時と比較して現在のファッションは顔立ちを活かせないぼーっとしたもので、これが日本の皇室に“適応”した姿とは情けなく思う。さらに、日本のマスコミは「笑顔」「笑顔」と繰り返し、意味もなく笑うことを強要しているが、(女優じゃあるまいし)外国人から見ると本物の喜びからくるのではない意味のない笑いはむしろ気味が悪いのだ。また、「⑦エリート中のエリートで美しい女性は相当に鼻持ちならない人格」「⑧ミーミーミーでは無く、自己主張が少なく、人に合わせる」等は、日本で女性に対してよく使われる評論だが、⑦は女性蔑視に由来し、⑧のように自己主張が少なく他人に合わせるだけの人は存在感や魅力がない上、こういう仕草を強要するのは女性差別であることがわかっているだろうか。
 私も、Fairでなく女性蔑視を含む過小評価や意図的に歪められた批判をメディアやネットで吹聴されて大きな損害を受け、「こういう社会の雰囲気を変えることが唯一の解決策だ」と思って提訴したが、勝訴しても意図的に歪められネットに掲載された誹謗中傷は消されなかった。そのため、息子がネットで中傷被害を受けて加害者を特定するために法廷で闘うことを決めた*11-3のような母親がいるのに、違法行為になるネット上の匿名の誹謗中傷の犯人を明らかにしなかったり、それらの記載を削除しなかったりするプロバイダーは、犯罪幇助者か犯罪者本人だと考える。しかし、子の方は、サッカーを辞めて他のことをしたり、不登校や自傷行為などで自分が学べない状況を作るよりは、もっとよい学校に転校して自分の道を開いた方がよさそうだ。



(図の説明:上の写真は、2019年10月22日に行われた即位礼正殿の儀で、左から雅子皇后、天皇・皇后両陛下、秋篠宮ご一家、ご親戚の順に並べた。十二単衣は平安時代の装束だが、制服のように全員同じ色ではなく、人ごとに異なる色にしたり、比翼仕立てにしたりして工夫すると、色合いやシルエットがもっと美しくなると思う)

   

(図の説明:1番左の写真は、即位礼正殿の儀を見つめる国賓の夫人たちで、凛としながらすっきりしておしゃれだ。左から2番目の写真は、即位礼饗宴の儀の様子だが、雅子皇后の服のフリルが大きすぎるのは、かえっておしゃれでない。さらに、右の2つは皇居に到着する国賓たちで、このような中、通訳を介さずにおもてなしできるのは誰にでも真似できるわけではない長所だが、誰にとって鼻持ちならないと言うのだろうか?)

*11-1:https://digital.asahi.com/articles/ASMB22HJGMB2UHBI00C.html?iref=pc_extlink (朝日新聞 2019年10月3日) ハリー王子夫妻、大衆紙を提訴 「今度は妻が犠牲に…」
 英王室のハリー王子とメーガン妃は1日、メーガン妃が書いた「個人的な手紙」の内容を報じたのは著作権侵害やデータ保護法違反などにあたるとして、英大衆紙と親会社を提訴したと発表した。王子は声明で、こうした報道は「他人の人生を台無しにするいじめだ」と強く非難した。英メディアによると、「個人的な手紙」は、メーガン妃が実父トーマス・マークルさんに宛てた手書きのものだとみられる。英大衆紙メール・オン・サンデーが今年2月に写真付きで報じていた。同紙によると、手紙は昨年8月に書かれた。手紙の中でメーガン妃は、トーマスさんが娘に金銭的な支援を求めたことも受けたこともないとメディアに語ったのはウソだと断じ、「どんな金銭的支援も申し出てきた。愛し、味方してきた」とつづっている。トーマスさんの作り話が自分たち夫婦を傷つけたとし、「私の心はばらばらに砕かれた」と書いていたという。トーマスさんは昨年5月の夫妻の結婚式直前、心臓手術を受けたとされる。健康上の理由で式を欠席すると英王室が発表していた。だがその前に、式に着る礼服を採寸する様子を金銭と引き換えに芸能カメラマンに撮影させた「やらせ」が発覚。物議を醸していた。ハリー王子は長文の声明で、メーガン妃に対する攻撃的な報道がエスカレートしていると指摘。今年5月に長男アーチー君を出産し、育休に入って姿を見せないのをいいことに、タブロイドがウソを書き立てていると非難している。「一番恐れているのは歴史が繰り返されることだ。愛する人が商品化され、実在する人間として扱われなくなった時に何が起きるか知っている」と、パパラッチに追われた末に事故死した母のダイアナ元妃にも触れた。「私は母を亡くし、今度は妻が、同じ強力な力の犠牲になるのを見ている」と怒りをにじませた。メーガン妃は英王室入りにあたり、米国出身の元女優で、男女平等や人権問題に積極的に発信し、母親がアフリカ系であることなどが注目された。その後は服装やふるまいが「伝統破り」だと頻繁に指摘され、側近の退職が相次いだことから「気難しい公爵夫人」とあだ名を付けられるなど、一部メディアで激しい批判にさらされている。

*11-2:https://news.yahoo.co.jp/byline/saitokaoru/20190628-00131842/ (Yahoo 2019/6/28) 雅子さまが突然輝きを増した理由 16年ぶりの「衣装映え」が物語る変化 (齋藤薫:美容ジャーナリスト・エッセイスト)
●あまり知られていない、雅子皇后の意外な人柄
 使命感なのだろうか、それとも解放感なのだろうか、きっと誰もが気づいたはず。雅子妃が、皇后になられるやいなや、見事に輝きを増したこと。マスコミは「輝くばかりの笑顔!」を連発した。存在感が増すのは当然としても、まるで別人のように生き生きとした表情を見せてくれたのは一体なぜなのか?単純に考えれば、輝きを増した理由はやはり劇的なまでの環境変化。いわゆる適応障害の原因は、一般的に“環境の変化”にあると言われるが、じつはその解決策もまた、基本的には環境の変化が決めてになるというのが、大方の見方。言うまでもなく、一般女性が皇室に入るほどのドラスティックな環境変化は他にない。でも、皇太子妃が皇后になることもまた、ひょっとすると同じ規模の激変なのかもしれない。つまり今、私たちの想像が全く及ばないほどの圧倒的な変化が、雅子妃に訪れているということなのだ。ちなみに、“適応障害”になりやすいのは、心の弱い人でもなければ、ストレスを溜めやすい人でもないという説がある。むしろ完璧主義で、有能かつ、真面目、負の要素が少ない人ほど、そのリスクが高いと言われるのだ。何よりも、気配りがあって、人の心が読める人に意外にも多く見受けられると言うのが特徴だ。そういう人に突如大きな環境変化が訪れると、360度へ必死で対応してしまうから、知らぬ間にストレスが限界を超える。どうもそういうことらしい。かつて、雅子妃の「人となり」について、皇室に近い人の話に基づくこんな記事を見たことがある。あまりに立派なキャリアから、どうしても“強い女性”をイメージしてしまいがちだが、その記事はむしろ逆であると指摘していた。雅子妃は自我を通すタイプでは決してない。どちらかと言うと周囲に合わせ、協調しようとするタイプだと言うのである。皇室を孤軍奮闘、開かれたものにしようとしてきた美智子妃の方が、よほど自分の意見を明確に語り、きちんと通そうとする人であると。また数々の報道によれば、紀子妃も比較的モノを言う人であり、そういう意味では雅子妃がいちばん軋轢を避けようとするメンタリティーの持ち主と言うことになる。でも逆を言うならそれは、対応の難しさが限界を超えなければ、非常にスムーズに新しい環境に順応できる人であることを示している。だから皇后という立場には見事に順応し、一気に長いトンネルから抜け出られたとも言えるのだ。おそらくは、くすぶっていた使命感の蛇口を目一杯開けることができたことと、ある種の解放感が相まってのことなのだろう。もちろん想像に過ぎない。しかし人間の心の内は意外なほど明快に姿形に現れるもの。即位の儀前後から、雅子妃の顔が明らかに変わった。こんなに自然な笑顔を目にしたのは久しぶり。単純に輝きの量が増えている。瞳からも皮膚からも。その発光こそ、一気に回復に向かった証。今の自分の環境をそのままに受け入れたことの証ではないのか? またそのオーラの正体、光の内訳は、“生命力”であることもはっきり見てとれた。それぐらい強い煌めきが体内から発せられているのが感じられたのだ。
●16年ぶりに戻ってきた「ファッションセンスと衣装映え」
 さらに「衣装映え」が認められるのも、それこそ体調を崩された2003年以来。いや、実際にはご成婚数年目から、「衣装映え」は影を潜めていた気がする。着る服がよく映えているさまを「化粧映え」ならぬ「衣装映え」と呼ぶなら、そもそもが雅子妃ほど「衣装映え」する人は珍しいほどなのに、体調を崩されてからは、着る意欲をも失われたかに見えていたから、久しぶりの「衣装映え」、それがこの上なく印象的だ。服を着るのにも、生命力が必要。生きるエネルギーが減退していると、人間は不思議にどんな服を着ても、単にハンガーにかけたように、体に馴染んでは見えないのだ。以前このコラムでも書いたように、雅子妃はもともと大変にお洒落で、天性センスの良い人である。外務省時代のファッションをほんの数種類見るだけで、知的で上品だけれど華やかな、絶妙なバランスのお洒落ができる人であることがよくわかる。比較するのもなんだが、当時バブルに沸いた時代の徒花“ボディコン・ワンレン”にも全く引けを取らない程の力強い存在感を放っていた。またその品格ある美しさと華やかなセンスは、ご成婚後も、そのままロイヤル・ファッションに生かされたかに見えた。それこそ結婚1年目、中東を訪れたときのファッションは未だ鮮烈な記憶として映像ごと残っている。グリーンと黒のストライプをあしらったつば広帽、同じグリーンと黒のコントラストも艶やかなロングジャケットとパンツのスーツ。そう簡単には着こなせない、ハイファッションだ。これを見た時、あまりのクール・ゴージャスに息を飲むと同時に、ついに新しい日本の女性像を世界にアピールしていく存在が現れたとちょっと興奮したもの。この女性こそが日本に新しい時代をもたらすキーパーソンになるのだと、無性にワクワクしたものだった。ふと脳裏をよぎったのが、ケネディ大統領が新しいアメリカを築く時、実は揺るがぬキーパーソンとなっていたジャクリーン・ケネディという存在。まさしく何ヶ国語をも操り、「ジャッキー・スタイル」と言う言葉を生むほどそのファッションセンスが絶賛を浴びた人である。いやひょっとすると、世界的に注目を集めたダイアナ妃的な存在感を生むことになるかもしれないとまで思ったもの。しかしその後、雅子妃流の華やかなスタイルはいきなり影を潜め、もう二度と見られなくなる。あるいは中東諸国ご訪問の直後から、そのファッションについて、皇后様よりも目立ってしまわれないか? 少々華やか過ぎるのでは? などという、皇室的な忖度が周囲からなされたのではないか。皇太子による、のちの“人格否定”発言の時も、その一部は“ファッションセンスも一緒に否定されたこと”を指しているのではないかと思ったほど。以前も書いたように、本来センスのある人がセンスを否定され、お洒落を奪われるのは、それこそ人格を否定されたような格別の苦痛を伴うもの。その後のファッションの弱々しさは体調のせいもあるかもしれないが、どう考えても意図的に地味な、物静かな服が選ばれていた。あれほど美しく華やかで、誰より「衣装映え」した人が……と、なんだか胸が締め付けられるような思いがしたのである。ところが不思議なことに、即位の儀から、突然その「衣装映え」が戻ってきたのである。体調はまだ回復されたわけではないと言われるが、そういう意味ではこれまでにないレベルの回復が見られたことを確信した。それこそ“誰か”より目立ってはいけないという足かせも完全になくなり、長いブランクを経て、名実ともに心置きなく“持ち前のセンス”を生かせるようになったのではないか?ロイヤル・ファッションは、単に“皇室の人々の装い”に留まらない。ある意味“国民の誇り”となり、理屈を超えた国家的エネルギーになるもの。ファッションの意味を超え、服の役割を超えて、人々を動かし活力を与える不思議なパワーを宿すのだ。でなければ、キャサリン妃やメーガン妃のファッションの詳細や是非が、英国で連日ニュースになるわけがない。そういう意味でも、雅子妃にセンスと「衣装映え」が同時に戻ってきた事は、日本にとって特別なニュースとなるのだろう。そして、本人が外交の場で通訳だったのだから当然のことなのに、「通訳のいらない外交」に喜びを感じるのは、私たち日本国民は語学に対して苦手意識が強いからだろうけれど、ともかくファッションと語学は外交の鍵。我慢の時を経てもう一度、「何につけてもこの人を見ていたい」と言う“雅子皇后ブーム”が来るのかもしれない。正直、量的にも質的にも、今の小室圭氏の比ではないほどネガティブな報道が続く中にあっても、心静かに回復を願ってきた“潜在的な雅子妃支持者”は、おそらく驚くほど多いはずだ。公務でもほとんど姿を見られなかった中で、なぜ支持者の心が変わらなかったのか? 考えてみれば不思議だが、潜在的な雅子妃ファンが少なくない理由は、それだけじゃない、もう一つ別のところにある気がする。
●あの逆風の中での支持は、「アンバランスなまでの有能さと人間性への共感」
 言うまでもなく、この人ほど見事な経歴を持つ日本女性はそうはいないのだろう。ハーバード大学卒、東大大学院編入、外務省入省後オックスフォード大学にも留学と言う、エリート中のエリート。そういう女性がどんな人格を持つのか、まぁ想像もつかないなりに決めつけもでき、おまけにここまで美しいとなれば、普通に考えると相当に鼻持ちならないタイプとなる。そういう風になることを世間も許容せざるを得ないレベルの女性である。にもかかわらず、前述したように、ミーミーミー(私が私が)なタイプでは全く無い。むしろ自己主張が少ない、人に合わせるタイプ。日本の高校時代は自らソフトボール部を作り、ハーバード大学在学中は自ら日本の文化を伝える財団などを作って積極的に活動していたと言うから、単に控えめとは違う。しかし時と場合で控えめにさえなれるって、このキャリアから考えると何か奇跡的である。ともかく、そういうアンバランスなまでの有能さと人間性を持ち合わせた女性。とてつもない経歴に反して、謙虚で奥ゆかしくもある、精神的にはどこかとても古風な女性であると言われるのだ。そのアンバランスこそまさに日本女性の理想。改めてこの人を新しい規範として、日本女性のイメージを再構築したいと思う人が多いのではないか。“お言葉”の多くもリアルに報道されない日本では、皇族一人ひとりの人柄までを伺い知ることはできないのに、それでも伝わってくる人間性、その質の高さを感じ取る人が少なくなかったということだろう。現在の天皇陛下が、結婚前「雅子さんでないと結婚は考えにくい」と語ったことが、今更ながらに思い出され、そして深く納得させられる。やはり特別な女性なのだ。皇后であることを差し引いても。とりわけ笑顔の美しい人であるという最初のインパクト、そこから読み取れる人間性に、人々は本能的に惹きつけられ、表面的ではない共感が生まれた。皇族であるかどうかを超えて、何があろうと変わらない“人間の本質”を見つめつつ、だから適応障害に見舞われたことも納得の上で、密かに応援し続ける支持者が多かったのかもしれない。人への支持は、本来そうあるべきだ。言い換えれば、雅子妃への穏やかな人気は、従来の皇族女性へのものとは少し違う。あくまで1人の女性としての才能と、皇室に生きること自体に戸惑いを見せた“普通の人の感性”に対してのもの。つまり体調を崩されたことにより、逆にシンパシーが揺るがぬものとなり、だから長い沈黙も耐えられたのかもしれない。もちろんその間、もどかしくもあった。でも体調の回復により、より強固になったシンパシーが今まさに息を吹き返し、ある意味内向的でありながらも、同時にグローバルな才能に溢れた、“新皇后”の真の覚醒を、ワクワクしながら待っている。ついに輝きを取り戻した笑顔に、もう一度、日本女性の未来像を託し、“日本の誇り”にしたいから。

*11-3:https://digital.asahi.com/articles/ASMBS5Q4TMBSUTFL00F.html?iref=comtop_8_03 (朝日新聞 2019年10月25日) 息子がネット中傷被害、加害者特定へ裁判「命が危ない」
 「根っからのうそつき体質」「自作自演」――。中学に入学後、いじめにあった埼玉県の男子生徒や家族を苦しめたのは、学校での無視や暴力にとどまらない、ネット上での中傷だった。子どもの命の危機を感じた母親は、加害者特定のため、法廷で闘うことを決めた。「根っからのうそつき体質」「一生いじめられっ子」……。2017年10月、埼玉県川口市の市立中学校に通っていた当時3年の男子生徒は、ネットの掲示板に実名がさらされ誹謗(ひぼう)中傷を受けた。母親によると、生徒は15年の中学入学直後から入部したサッカー部内で無視されたり殴られたりするようになった。母親は学校側に対応を求めていたが、有効な対策がないまま、16年秋から不登校に。自傷行為もあり、断続的に学校に行けない状況が続いたという。実名をあげられるほどにネットでの中傷が激化したのは、こうした中で学校側が全校を対象に初めて開いた保護者会がきっかけだった。学校側は対応の遅れを認め、保護者や生徒に反省の弁を述べたものの、事実関係を簡略化したり、事実と異なる説明をしたりした。そのため、「そのくらいでいじめって言われるのか」「学校の謝罪があっても黙らない被害者側は何が目的なの」「自作自演だ」など、むしろ生徒側に批判的な書き込みが目立つようになった。中には「自転車に乗っている○○を××(場所)で見た」など居場所を事細かに載せたものもあり、生徒は恐怖で外に出られなくなってしまったという。母親は「ネット上で悪口やデマがさらされると24時間心の休まる時がなく、避難場所がないのと同じ。特に相手が誰だか分からないのは恐怖しかなかった」と振り返る。
●加害者3人を特定
 どうすれば事実無根の書き込みを止められるのか――。母親は18年1月、弁護士に相談。書き込んだ相手を特定するために裁判を起こすことにした。12月には東京地裁がプロバイダーに開示を命じ、加害者側の氏名が明らかになった。ただし、個人の特定に結びついたのは、多くの書き込みの中の3人による4件のみ。担当した荒生(あらお)祐樹弁護士によると、発信者(加害者)を特定する場合は通常、①掲示板のサイト管理者などに、書き込んだ人物のIPアドレス(ネット上の「住所」)の開示を求める裁判手続きをする②IPアドレスから経由したプロバイダーを割り出し、氏名などの開示を求めてプロバイダーを提訴する、という大きく2段階を踏む。しかし、利用者すべてのIPアドレスの接続記録は膨大なので、プロバイダーが保存しているのは3~6カ月間が一般的だ。それ以前の書き込みについては接続記録自体が残らないため、加害者側にたどり着くのは困難。しかも、接続記録の保存はプロバイダーが任意で行っている。荒生弁護士は「プロバイダー責任制限法に発信者情報の開示請求権はあるのに、接続記録が消去されてしまうと権利行使ができない」と指摘する。また、発信者情報の開示を命じる判決を得るには、原告側が「プライバシー侵害」や「名誉毀損(きそん)」などの権利侵害が明らかだと主張・立証しなければならない。そのため、今回も実名が記載されていた書き込み4件に絞って裁判を起こした。さらに、弁護士をたててサイト管理者に連絡したり、プロバイダーと裁判したりするのは、費用も時間もかかる。海外に本社があるサイトの場合だとなおさらだ。母親は「放置すれば子どもが命を絶ってしまうという危機感があり、自分で闘うしかなかった」と話す。荒生弁護士は「ここまで闘える人は少なく、途中であきらめてしまう人も多い。しかし、ネットでの中傷は、加害者特定の手段もあるし、名誉毀損罪や侮辱罪などの刑法上の罪にもなり得る。抑止のためにも、このことが社会に広く認識されることが大事だ」と話す。生徒側はその後、訴訟前に和解が成立した1人を除く2人の加害者に対し、損害賠償を求め提訴。30万円の支払いなどで和解が成立した。
●誰もが被害者に
 ネットのトラブルは子ども同士のいじめに限らず、誰もが被害者になり得る。ネット中傷の被害回復や風評対策に詳しい河瀬季(とき)弁護士によると、①リアルな世界でのいざこざ②暴走族に入っていた過去や「バイトテロ」など自らの軽はずみな行為が残り続ける③勝手に盗撮された画像がアップされるなど自分と無関係に巻き込まれる、などがパターンとしてあるという。①は、いじめのほか、特定の企業・人物をおとしめようとしてライバルが悪評を書き込む例も目立つ。被害回復の手段としては、ハードルの高い加害者特定よりも書き込みの削除が一般的だという。ただ、ネットは転載・拡散が容易なため、膨大な量の中傷ページが残ってしまいやすい。削除には問題のページを探し、それぞれのサイト管理者に削除依頼を出す必要があり、法律面だけでなくIT知識も求められる。河瀬弁護士は「行政の人権窓口などに、こうした分野に強い人材を置くなど、対策が必要な時期に来ている」と指摘する。被害者支援に乗り出す市民団体も出てきた。17年に発足した「ネット被害を考える協議会」(前川恵会長)。被害者家族やボランティアが中心となり、ネットで中傷された被害者からの相談を受け、書き込みを監視したり、被害者に代わって加害者のアカウントに書き込みをやめるようメッセージを送ったりするなどの活動をしている。会では今後、ネットのルール作りについて提言活動を行う予定で、10月末まで広く一般から被害対策案を募集している。前川会長は「『投稿者の身元を確認しやすくする』『加害サイトの広告主に注意を呼びかける』なども考え得るのでは。広く意見を募りたい」と話している。送付先はファクス(03・6434・5539)またはメール(info@net-higai.org)へ。
●最近の被害例
 2009年 お笑い芸人・スマイリーキクチさんのブログに、スマイリーさんが殺人事件に
       関与したかのような事実無根の書き込みをしたとして、容疑者6人を書類送検
   12年 大津市立中学校で前年に起きたいじめ自殺にからみ、「加害者の祖父が県警
       OB。病院に天下り」などの誤情報が広まる
   17年 SNSに事実と異なる書き込みをして男子高校生を中傷したとして19歳の少年
       を名誉毀損容疑で逮捕
   17年 神奈川県の東名高速でワゴン車があおり運転を受けた末に停車させられ、
       トラックに追突されて夫婦が死亡した事故で、無関係の建設会社が「容疑者
       の勤務先」などと名指しされて中傷
   19年 茨城県の常磐自動車道で男性会社員があおり運転を受けた後に殴られた
       事件で、無関係の女性が「同乗していたガラケー女」と名指し

<柿くへば 鐘がなるなり 法隆寺>
PS(2019/10/24追加): *12に「柿の収穫が終わった木に一つ実を残しているのは、来年はもっと実ってほしいというおまじないか、自然に対する礼節か」と書かれているが、柿の木のある農家の方に尋ねたところ、柿の実を食べる野鳥のために残してやっており、「来年はもっと実ってほしい」という人間の利己心からではないそうで感心した。私も、柿・桃・ビワなどは大好きだが、皮をむかなければならないというよりは、遠慮なく食べられる手頃な値段でないのが問題なのだと思う。さらに、干し柿が一つ一つ袋に入っていたり、高価すぎたりしているのは、その出世ぶりに呆れるくらいだ。

*12:https://digital.asahi.com/articles/DA3S14229306.html (朝日新聞 2019年10月24日) (天声人語)柿くへば……
 柿の収穫が終わった木に、ぽつんと一つ実が残っているのをご覧になったことはないだろうか。それは「木まもり」というのだと白洲(しらす)正子の随筆に教わった。来年はもっと実ってほしいというおまじないかも……と書きつつ、思いを巡らせている▼「それは、自然に対する一種の礼節ともみられるし……実も葉もふるい落としたあとはさぞかし淋(さび)しかろうと、想像した人間のやさしい思いやりのようにも見える」。秋の青い空にある小さな朱色に、正子は心引かれた▼夏が長く、秋が短くなった気がしてならないこの国だが、季節を彩ってくれる恵みの数々がある。なかでも柿は、奈良時代にはすでに食べていたというから、ずいぶん長いお付き合いである▼数年前に九州の柿の産地で農協の人と話したとき、消費の伸び悩みを嘆いておられた。今や皮をむく果物は、それだけで敬遠されがちだと。少しの手間を惜しんであの甘さを味わえないとすれば、もったいない話である▼正岡子規は食いしん坊で柿も好物だったがゆえに〈柿くへば……〉の名句を生んだ。奈良の宿で山盛りの柿を食べていたら、鐘が鳴る音が聞こえたと随筆にある。「柿などというものは従来詩人にも歌よみにも見放されておるもので……」と得意そうに書いている▼あの句なかりせば、後の人々が柿にこれほど趣を感じることもなかったか。最近はその色ゆえにハロウィーンにちなんだ果物として並べるお店もあるという。それもまた新たな趣だと考えてみる。

<他の惑星の水・空気・気温>
PS(2019年10月26、31日追加):*13-1のように、「①火星には、かつて温暖で地球の表面のような液体の水(=海)に覆われていた時代があった」「②大量に火星表面にあった液体の水は、今は火星の地下に蓄えられている可能性が高い」ということが火星探査で明確になり、火星の表面は酸化鉄を含む砂で覆われ、気温は20℃~-130℃、大気は殆どCO2、気圧は地球の0.6%、南極冠の近くの地下では液体の水からなる湖も見つかり、オリンポス山は高さ約25km、マリネリス峡谷は深さ5~10kmだそうで、これはコロンブスのアメリカ大陸発見に匹敵する大発見だ。また、*13-2には、35億年前の火星には生命の誕生や生存に向いた環境の塩湖があったとする研究結果を、金沢大の福士准教授(環境化学)らのチームが英科学誌ネイチャーコミュニケーションズに発表し、生物のパーツになる有機物も見つかったが、火星の直径は地球の半分程度で重力が小さいため、水蒸気を含む大気を留めておくことができずに水が蒸発して失われたらしいとしている。さらに、*14のように、月の南極にも氷が存在し、月では太陽光が届かないクレーター内などに水が氷の状態で存在するとみられており、水は、飲み水だけでなく、水素と酸素に分解すれば呼吸ができロケットの燃料としても使えるため、NASAはどれくらいの水が利用できるか調べるそうだ。しかし、日本のメディアはラグビーワールドカップやくだらない事件ほどにもこれらを取り上げず、これが日本における教育の大きな問題点である。
 そのような中、日本では、*15-1・*15-2のように、台風19号による千曲川の堤防決壊で、最新鋭の北陸新幹線全編成の3分の1にあたる120両が長野新幹線車両センターで水没し、車両の床下にモーター制御等の電気設備を集中させているため、乾かしても通電すればショートする危険があり、被害額は300億円超だそうだ。しかし、ハザードマップで最大10~20mの浸水が予想されていた場所を用地買収し、たった2mの盛土をして、車両を高い場所に移動させることもなかった上、復旧(??)すればよいと考えるのは、事前・事後の両方に甘さがある。また、ルールやマニュアルへの記載がなかったから災害時に臨機応変な対応をしなかったというのも、日本における教育の緩さの結果だろう。
 なお、*15-3のように、河川の氾濫等で浸水する恐れがある場所に設置されながら浸水対策がされていない浄水場が全国で578カ所にのぼり、福島県いわき市の平浄水場が水没して最大約4万5千戸が断水したそうだが、これも復旧すればよいのか? この浄水場は2000年に市のハザードマップで浸水想定区域に入ると判断されたが、現実的にこのような被害が起きるとは想定していなかったため(??)、対策が取られなかったのだそうだ。しかし、無駄遣いも多い目先だけしか見ていない予算の編成替えを行い、根本的解決をすべきだ。
 2019年10月31日、*15-4のように、日経新聞が「③全国の1/4、580カ所の工業団地に浸水の恐れがある」「④堀江パーツ工業は台風19号襲来で膝上まで浸水し、社員は『浸水経験がなく、雨風が吹き込まないように工場の窓に目張りをする程度だった』と述べた」「⑤最大想定2m以上5m未満が220カ所、5m以上が35カ所あった」「⑥計測器のアンリツは生産設備を2階に移していたため、被害が殆どなかった」などが記載されている。このうち③⑤は、昔は沼地だった田を埋め立てたり、川の中州や扇状地に工業団地や高齢者施設を造ったりなどの安全性を無視した土地利用が原因なので、早急に土地利用規制を見直すべきである。何故なら、企業の不注意に発する被害にいちいち国の予算を費やしていては、いくら税金を上げても教育・科学・福祉などに予算が廻らないからで、中でも④は、台風や豪雨災害が続いている中で、あまりに呑気だ。⑥は既に建設している建物を何とか安全に使っているようだが、今後も継続していく企業は、もっと安全な場所に立地すべきだ。

  

(図の説明:一番左は「http://karapaia.com/archives/52243174.html」に掲載されている月の表面にある水、中央は「https://newspicks.com/news/1195435/body/」に掲載されている火星の表面を流れる水、右は火星のクレーターの中にある氷で、素晴らしい発見だ)

    

(図の説明:左は火星最大の火山であるオリンポス山で、中央は水が流れたような跡がある火星の地表、右は太古と現在の火星の様子だ。太古は水が豊富だったのに、火星の水が表面から消えた理由とその水がどこへ行ったのかが現在の最大の謎だが、地球では水が戻ってくるだけ有難いと思って、土地の割り振りを考え直すなどの対策を採る必要があろう)

*13-1:https://news.yahoo.co.jp/byline/hidehikoagata/20180730-00091150/ (Yahoo 2018/7/30 抜粋) 火星大接近 -火星に生命は存在するのか?
 2018年7月末現在、火星に限らず地球以外の天体から生命、または確実な生命の痕跡は何一つ見つかっていません。火星においても、20世紀前半まで人々が想像していたような火星人(=知的生命体)が存在しないことは今では明らかです。火星について分かっていることは、火星にはかつて温暖な時代があり、地球の表面のように液体の水(=海)に覆われていた時代があったことと、かつて大量に火星表面にあった液体の水は、今日では火星の地下に蓄えられている可能性が高いことが、今日までの火星探査で明確になったことでしょう。これらのことから、表面近くの火星地下に微生物程度なら存在するのではないか?または、表面や地下に、かつて生命が存在していた痕跡(=化石)があるのではないかと期待が膨らみます。火星は地球のすぐ外側を公転している太陽系第4番惑星で、地球から観察すると、2.2年毎に地球に接近します。夜空に赤く不気味に輝く火星。火星が赤く見えるのは、その表面が鉄さび、すなわち酸化鉄を含む砂で覆われているからです。火星では、地軸が約25度傾いているため、地球のように四季の変化が起こります。気温は、時期と場所により20℃~-130℃と幅があり、大気の成分はほとんどが二酸化炭素ですが、気圧は地球のおよそ0.6%しかありません。火星の表面は起伏に富んでおり、太陽系でもっとも高い火山、オリンポス山は高さ約25km、また、マリネリス峡谷は長さ約4000km、深さ5~10kmにもおよぶ巨大な峡谷です。表面を覆い尽くすような、大規模な砂嵐が周期的に発生するのも火星の特徴です。今年も運悪く、5月以降、火星全体を覆う砂嵐が発生しており、火星の表面の様子が詳しく分からない状況が続いています。火星の北極と南極には、ドライアイスと氷からできた極冠があり、その地下には永久凍土の形で多量の水が存在するのではと考えられています。南極冠の近くの地下に液体の水からなる湖が見つかったという最新の研究成果も発表になっています。火星は質量が地球の1/10と小型の地球型惑星です。その分、地球より早く進化した惑星と考えられ、かつては大量の水がその表面を覆っていました。果たして火星の地下には生命が存在しているのでしょうか。

*13-2:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/445937 (佐賀新聞 2019年10月25日) 太古の火星に塩湖存在、生命に好適、土壌分析
 35億年前の火星に塩湖があったとする研究結果を、金沢大の福士圭介准教授(環境化学)らのチームが25日、英科学誌ネイチャーコミュニケーションズに発表した。水はほぼ中性、塩分は地球の海の3割程度でミネラルも豊富。生命の痕跡は確認されていないが、誕生や生存に向いた“ほどよい”環境だったという。火星の表面に液体の水があったことは確実とされているが、水質が分かったのは初。チームは「生命の存在可能性を議論するには、水に何が含まれていたかも明らかにする必要がある」と話す。場所は赤道付近にあるゲールクレーター。米航空宇宙局(NASA)の火星探査車キュリオシティーが得た土壌の組成データを分析した。層状の結晶が積み重なったスメクタイトという鉱物に注目すると、層の間に水から移ったとみられるカルシウムやマグネシウム、カリウムなどが残っており、かつて水中にあった量が推定できた。同じクレーターからは生物のパーツにもなる有機物が見つかっている。火星の直径は地球の半分ほど。重力が小さいため水蒸気を含む大気をとどめておきにくく、水が早々に蒸発し、失われたとみられている。

*14:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20191026&ng=DGKKZO51447530W9A021C1CR0000 (日経新聞 2019年10月26日) 月の南極の氷を探れ NASA、22年に探査車
 米航空宇宙局(NASA)は25日、月の南極に存在する氷の分布を調べる無人探査車「バイパー」を2022年に月面に送ると発表した。24年に飛行士の月面着陸を目指す「アルテミス計画」に先立ち、将来の有人探査で飲み水などに利用できる可能性を探る。バイパーはゴルフカートほどの大きさ。民間企業が開発する輸送手段で22年12月に月の南極に着陸させる。約100日かけて数キロ走行し、センサーで地下に氷がありそうな場所を探す。太陽光の当たり方や温度の異なる数カ所で地中1メートルまでドリルで掘り、土壌を採取して搭載装置で成分を調べる。月では太陽光が届かないクレーター内などに水が氷の状態で存在するとみられる。飲み水だけでなく、水素と酸素に分解すればロケットの燃料として使える。NASAはどれくらいの水が利用できるか調べる狙いだ。

*15-1:https://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201910/CK2019101802100028.html (東京新聞 2019年10月18日) 水没した北陸新幹線 どうなるの? 全損なら被害300億円超
◆ 水没新幹線・再利用困難か
 台風19号による千曲川の堤防決壊で水浸しになった北陸新幹線の長野新幹線車両センター(長野市)。最新鋭の車両が並んで水没した光景に、衝撃が広がった。残った車両で一~二週間後には全線運転再開となる見通しだが、水に漬かった車両は再び走ることができるのか。
◆全編成の3分の1、120両が水没
 「何でこんなことが起きるのか」。東海道新幹線の運転士を長年務めた中村信雄さん(81)は、今回の事態に驚く。車両センターで水に漬かったのは、北陸新幹線全編成の三分の一に当たる十編成。JRの東日本と西日本が所有し、七編成は屋外、三編成は車庫の中にあった。一編成は十二両で、被害車両は計百二十両に上る。JR東日本によると、一車両の製造費は約三億円。十編成で計約三百二十八億円とされる。同社は水が引いた十五日から被害状況の調査を始めたが、全貌はまだ分かっていない。
◆床下電気設備に泥水
 今後どうなるのか。鉄道アナリストの川島令三氏は「全損で廃車ということにはならないのでは」とみる。
車両の床下には、モーター制御などの電気設備が集中している。「機器類はそれぞれ箱に入っている。一つ一つ開けて水が入ってないか確認し、使えないなら箱ごと交換する。座席も汚れてしまったのならきれいにするか、交換する。車体そのものは使えそうだ」
◆ 乾かしても通電でショートの危険
 一方、再利用に悲観的なのは工学院大の高木亮教授(電気鉄道システム)だ。「床下の機械類のうち、電気で動いているものが一番泥水に弱い。泥水には電気を通す成分が入っていて、付着してしまうときれいにするのは難しい。乾いても絶縁が効かなくなっているから、電気を通すとショートし、場合によっては火災が起きる」と話す。さらに、「車両の外壁と内側の壁の間に配線を埋め込んでおり、端子類に泥水がかかっていても拭き取ることはできない。水に浮き、他の車両にぶつかってできたであろう車両のへこみの写真も見たが、アルミ製車両の修理は極めて難しい」とし、新品に買い直すしかないとみる。
◆120両を陸路で運ぶのは非現実的
 鉄道ジャーナリストの梅原淳氏は、修理自体が事実上不可能との見方だ。「浸水した車両センターでは修理できる設備がなく、JR東日本新幹線総合車両センター(宮城県利府町)や、JR西日本白山総合車両所(石川県白山市)に運ぶ必要がある。どちらに向かっても、急勾配のある線路にブレーキも利かない車両を移動させるのをJRは嫌がるだろうし、百二十もの車両を陸路で運ぶことも現実的ではない」
◆ハザードマップで浸水予想 「移動しておけば…」
 長野新幹線車両センターは独立行政法人「鉄道建設・運輸施設整備支援機構」が建設し、JRの東日本と西日本に貸し付けている。長野市のハザードマップでは最大で十メートル以上二十メートル未満の浸水が予想されていた場所だが、なぜここに造ったのか。同機構の担当者は「一九九七年の供用開始時には、ハザードマップはできていなかった」と説明。「長野駅から近く、広い平たん地があり、用地買収に支障が少ないことを考慮して建設地を選定。長野県が作製した洪水浸水被害実績図を参考に、約二メートルの盛り土をした」とする。前出の中村さんは、六七年、大阪府摂津市の東海道新幹線鳥飼車両基地に大雨で近くの川の水が流れ込んだ際、車両を本線に移動させ、浸水から守った事例を指摘。「北陸新幹線も何とか助けることはできなかったのか。浸水しないように移動させるべきだったのでは」と話している。

*15-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20191024&ng=DGKKZO51301000T21C19A0EA1000 (日経新聞社説 2019年10月24日) 新幹線の水没が残した課題
 台風19号による打撃は新幹線にも及んだ。千曲川の堤防決壊でJR東日本の長野車両センターが浸水し、北陸新幹線の全車両の3分の1にあたる10編成120両が水没した。新幹線は地域経済を支える大動脈だ。復旧作業を急ぐとともに、事前の対策に甘さはなかったか、検証作業と再発防止策の導入をJR東には求めたい。ズラリと並んだ新幹線が泥水につかる映像を見て、言葉を失った人は多いだろう。だが、被害はそれだけではない。同センターにある変電所や車両の検査庫にも水が押し寄せ、検査の途中で建物の中にあった車両も浸水した。台風当日に同センターにいた36人の社員らは水かさの上昇で退避できず、翌日、ボートで救出されたという。まずJR東が全力を挙げるべきは速やかな復旧だ。台風以降運行を見合わせていた長野―上越妙高間の安全確保にメドが立ち、北陸新幹線全線の運行を25日から再開する。水没した車両は当面使えないが、他の車両をやりくりして列車本数は通常の約8割、東京―金沢の直通列車は同9割の本数を走らせるという。運行停止や大幅な減便が長期化すれば北陸の地域経済はじめ影響が広範に及ぶ可能性があっただけに、復旧の取り組みが進み始めたことは歓迎したい。一方で事前の備えが十分だったかについては厳しいチェックが必要だ。長野市の洪水ハザードマップによると、同センターのある一帯は最大10メートル以上の洪水被害が予想されている地域だ。まさかの事態に備え、車両を高架線上や浸水の恐れのない他の基地に移しておく対応はとれなかったのか。同じJR東でも東北新幹線の那須塩原の基地のように、今回、事前に車両を避難させておいた例もある。長野の教訓を踏まえ、今後同様の事態にどう備えるかのルールづくりや設備の強化が欠かせない。他のJR各社も自分たちの体制を点検する契機にしたい。

*15-3:https://digital.asahi.com/articles/DA3S14229300.html (朝日新聞 2019年10月24日) 浸水想定578浄水場、対策せず 台風19号、福島では被害も
 河川の氾濫(はんらん)などで浸水する恐れがある場所に設置されながら、浸水対策がされていない浄水場は全国で578カ所にのぼっている。台風19号の大雨では、福島県いわき市の平(たいら)浄水場が水没し、最大で約4万5千戸が断水した。災害からの復旧を支えるインフラの備えが遅れている。厚生労働省は、2018年9月に公共施設や病院などにつながる全国の主要な浄水場3521カ所を調査。その結果、22%に当たる758カ所が浸水想定区域にあり、そのうち76%の578カ所は入り口のかさ上げや防水扉の設置などの対策がされていなかった。土砂災害警戒区域にも542カ所あるが、うち496カ所が未対策だという。厚労省は各自治体の承諾が得られていないとして、個別の施設名を公表していない。いわき市では13日午前1時半ごろ、市内を流れる夏井川が氾濫して平浄水場の1階に水が流れ込み、電気を各設備に流す心臓部が約80センチ浸水。段階的な通水が22日に始まり、27日ごろに断水は解消する見通しだが、浸水家屋の掃除や洗濯が出来ず、深刻な影響を与えている。市内で最大の同浄水場は00年、市のハザードマップで浸水想定区域に入ると判断された。しかし、防水扉設置などの対策は取られなかった。市水道局の加藤弘司局長は「現実的にこのような被害が起きるとは想定していなかった。財源も限られるなか、具体的な対策を検討できていなかった」と話す。豪雨で水道施設が被災し、断水する例は近年、全国で相次ぐ。11年7月の新潟・福島豪雨では約5万戸で最長68日間、18年7月に広島県などを襲った西日本豪雨では約26万3千戸で最長38日間の断水が続いた。名古屋大の中村晋一郎准教授(土木工学)は「浸水対策などハード面の対策も必要だが、限られた予算の中で、すぐに実施することは難しい。断水のリスクに備え、住民側の事前の対策も合わせて必要だ」と話す。

*15-4:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20191031&ng=DGKKZO51614510R31C19A0MM8000 (日経新聞 2019年10月31日) 工業団地580カ所浸水恐れ 全国の4分の1、本社調査、供給網寸断リスク
 全国各地に甚大な浸水被害を与えている大型台風。福島県や栃木県で一部の工業団地が冠水し、水害に対するモノづくりの現場のもろさが浮き彫りになった。官民挙げて全国各地でつくった工業団地にどれほど浸水リスクが潜んでいるのか。日本経済新聞が調べたところ、4分の1の工業団地に浸水の恐れがあることがわかった。栃木県足利市の毛野東部工業団地。金属部品加工の堀江パーツ工業では、12日の台風19号襲来で膝上まで浸水し、プレス機や完成部品が水につかった。ラインの一部が動いたのは17日。ある社員は「浸水経験がなく、雨風が吹き込まないように工場の窓に目張りをする程度だった」と明かす。工場が被災すれば深刻な供給網の寸断が起きかねない。自然災害が頻発する中、足元に潜む水害リスクを把握し、対策を講じる必要性が増す。日経新聞は国土交通省が公表している地理データベースを活用。全国の洪水浸水想定区域(総合2面きょうのことば)と、2181カ所の工業団地(10万平方メートル以上)を照合したところ、27%にあたる580カ所が浸水想定区域と重なっていた。浸水レベルも調べた。最大想定が「2メートル以上5メートル未満」は220カ所と1割に達し、「5メートル以上」は35カ所あった。一戸建ての場合、2メートル以上は1階、5メートル以上は2階が水没する。冒頭の工業団地は2メートル以上5メートル未満の想定だった。日本の製造業が伸び盛りだった1960~80年代。全国の自治体や土地開発公社が工業団地整備にまい進した。災害リスクを今ほど意識せず、平たんでまとまった用地が多い河川流域が選ばれることが少なくなかった。法律で浸水想定区域を定めるようになったのは2001年からだ。それ以前の工業団地は河川氾濫を十分想定せず、リスクが高いところが多い。千曲川の氾濫で水没した長野市の北部工業団地も2メートル以上の浸水リスクがあった。市の主導で造成したのは90年。一角にある調整池は排水路や下水管があふれる内水氾濫に備えたもので、今回は貯留上限を軽く超えた。対策次第では同じ場所でも明暗が分かれる。福島県郡山市の郡山中央工業団地では多くの企業が浸水被害に遭ったが、計測器のアンリツは過去の浸水被害を教訓に生産設備を2階に移していたことで、被害はほとんどなかった。国内外の工業団地に詳しい東大の新宅純二郎教授は「進出企業は事業継続計画(BCP)の見直しが重要だ」と説く。11年の東日本大震災のときは、半導体大手ルネサスエレクトロニクスの工場が被災し、自動車向けなど世界のサプライチェーンに打撃を与えた。中小の部品企業でも高いシェアを持っていれば、取引先は世界に広がる。日本企業は世界への影響を念頭に置き、水害の多発という新たな難問に対処していく必要がある。

<農業こそ再エネと蓄電池だ>
PS(2019年11月1、2日追加):*16-1のように、台風15号の被害を受けた千葉県は、北海道地震を教訓に発電機導入の動きが広がり、酪農家の6割が燃料系の自家発電機を保有しており、停電時も搾乳できたのはよかった。しかし、燃料供給が途絶えて苦労した農家もいたそうで、農家は太陽光や風力などの再エネ発電による潜在力が高いため、日頃から蓄電池を備えて電力販売を副収入にしていれば電力を供給する側に回れた筈だ。従って、農業に対するエネルギー補助は、国富を外国に移転する軽油・ガソリンではなく、再エネ発電と蓄電池にすべきだ。
 しかし、分散型発電を行って電力を供給するには、大手電力会社から独立した送電網がなければならない。そのため、私は、*16-2のように、水道を民営化するのではなく、地方自治体が上下水道部門を分社化して外に出し、新インフラを利用したい発電会社・送電会社・ガス会社・通信会社などにも出資してもらって、最新技術を使った上下水道管の更新と電線の地中化を(共同溝として)速やかに行い、送電線や通信線を道路並みに公共化するのがよいと思う。

*16-1:https://www.agrinews.co.jp/p49113.html (日本農業新聞 2019年10月30日) 自家発電機導入広がる 燃料の備蓄不可欠 千葉県酪連調査
 9月の台風15号によって大きな被害を受けた千葉県で、酪農家の6割が燃料系の自家発電機を保有していることが千葉県酪農協連合会の調べで分かった。北海道地震などを教訓に発電機導入の動きが広がり、多くの農家が停電時も搾乳できた。一方、発電機を動かす燃料の調達に苦労した酪農家もおり、一定の燃料を備蓄する必要性も浮かび上がった。県酪連では台風の直撃を受けた後、生乳を出荷する県内の酪農家496戸を対象に、自家発電機の導入状況を調査した。その結果、279戸が発電機を所有していると回答。レンタルやリースしているケースも合わせると304戸に上った。県酪連は「東日本大震災や北海道地震以降、県や国の補助事業などを活用して発電機を導入する農家は増えている」とみる。農家の減災対策への意識が高まっているためだという。ただ、発電機を保有していても、倒木などの影響で燃料供給が途絶え、搾乳の合間に燃料を探し回るなど、苦労した農家もいた。乳牛100頭を飼育する鴨川市横尾地区の「カスヤファーム」では停電が1週間以上続いた。同ファームでは計5台の発電機を活用し、台風が上陸した2日後の9月11日には出荷を再開した。生乳約4・2トンを廃棄するなど被害はあったが、発電機の備えで被害を軽減できた。同社代表の糟谷英文さん(52)は、給油所の停電が続き通常通り機能しない中、空いている給油所を探して市外まで車を走らせた。高齢者や遠出できない周辺の酪農家に燃料を分けることもあった。鴨川市酪農会の会長も務める糟谷さんは「発電機の備えだけでなく、事前にある程度(軽油やガソリンを自己保有できる上限分)の燃料を買っておく必要性を痛感した。周辺農家にもその重要性を伝えていきたい」と話している。

*16-2:https://www.nishinippon.co.jp/item/n/553072/ (西日本新聞 2019/10/22) 水道民営化検討せず 九州10市 災害対応、高騰懸念
 市町村を基本単位とする水道事業の運営権を民間企業に委託する「コンセッション方式」の促進を盛り込んだ改正水道法が今月、施行された。水道事業の基盤強化が目的だが、西日本新聞が九州の政令市、県庁所在市、中核市の計10市に同方式の導入について尋ねたところ、全ての市が「導入予定はない」と回答した。最も身近なインフラで命に直結する水の「民営化」への懸念の大きさを裏付けている。10市の水道事業担当部局によると、導入しない理由として、長崎市は「コンセッションは官と民の役割やリスク分担の整理がいる。海外では再度公営化した事例もあり、安全安心な水を民間に委ねることには、市民の理解を見極める必要がある」と強調。佐賀市も「水道事業にまったく知識がない事業者が災害が起きたときに責任を果たせるのか」と懐疑的な見方だ。北九州市は「選択肢は広がったが、検討もしていない。現時点では広域連携を重視している」と回答。熊本市も「地下水で全ての水源を賄っており、効果的に運用する独自のノウハウが求められる」とした。給水人口約156万人(2017年度)を抱える福岡市は「市民に無理な負担を求めることなく安定的に黒字を確保できる」と説明。大分市も現行の直営での安定経営を理由に挙げた。一方で、鹿児島市は「当面検討もしないが、老朽化施設が増えるなどして経営状況が悪化するとなると、検討することもあり得る」と述べた。厚生労働省によると、上水道でコンセッションの導入例はこれまでなく、宮城県などが導入を検討中。ただ民営化による水道料金の高騰や水の安全性の確保、災害時の対応を民間企業ができるかといった点で市民にも不安の声は根強い。浜松市は導入の可能性を検討し、市民向け出前講座などで説明を重ねてきたが「市民、国民全体としても理解が進んでおらず、導入を進めるのは困難と判断した」として今年1月に検討も含めて導入を当面延期した。水道事業の民間委託の是非は、あくまで自治体の判断だ。民営化の動きが広がっていないことについて、厚労省水道課は「コンセッションは(官民連携の)選択肢の一つ。地域の状況に合わせて検討されるものと考えている」と話した。
【ワードBOX】改正水道法
 人口減に伴う水需要減少や水道施設の老朽化、深刻化する人手不足で経営が厳しい水道事業の基盤強化が目的。昨年12月の臨時国会で成立し、今月1日施行された。自治体が浄水施設など資産を保有したまま運営権を民間企業に売却できる「コンセッション方式」の促進を盛り込み、民営化しやすくした。自治体間の広域連携や官民連携の推進も掲げる。

| 科学・医療 | 01:04 PM | comments (x) | trackback (x) |
2019.9.26~28 日本の環境・衛生に関する意識が低下しているのは、何故か? (2019年9月29日、10月1日に追加あり) 
   
           2018.9.29西日本新聞          2018.9.29東京新聞

(図の説明:左図のように、阿蘇山から130km圏内に3つ原発があり、中央の図のように、裁判所は社会通念を基に火山の危険性を無視することを容認している。しかし、原発は、万が一にも事故を起こしては困るという方向に社会通念も変化してきている。また、右図のように、フクイチの汚染水は(何をやっていたのか)再浄化の必要なものが8割に上り、まだ増えている)

(1)裁判所も含めて低い日本の環境意識
1)東日本大震災前後の東電経営陣への無罪判決は正しいか
 2011年のフクイチ事故について、検察審査会が強制起訴した裁判で、*1-1のように、東電の旧経営陣が「無罪」になった。しかし、国の地震予測の「長期評価」で津波高は最大15.7mにのぼるという報告が事故の3年前になされていたため、大津波は想定内だったと言える。

 また、担当の東電社員がそれを元副社長に報告したところ、「(津波想定の)水位を下げられないか」と言われ、「津波対策を検討して報告すること」を指示され、「防潮堤を造る場合は完成までに4年を要して数百億円かかる」と報告したところ、元副社長は「外部機関に長期評価の信頼性を検討してもらう」と言ったと、担当の東電社員が証言しており、その外部機関は東電の言いなりになる機関だったため、対策の先送りは過失ではなく故意である。

 しかし、東電旧経営陣の業務上過失致死傷罪の責任を問うには、①原発事故との因果関係 ②大津波の予見可能性 ③安全対策での回避可能性 がポイントになるそうで、このうち①②については、東日本大震災で大事に至らなかった東北電力女川原発は869年の貞観地震を踏まえて海抜15mの高台に建てられ、実際に高さ14~15mの津波が来たのであるため、(事故時の経営陣だけではないが)東京電力の予見の甘さと原発事故には強い因果関係がある。さらに、③については、「防潮堤を造るには4年を要する」とされているが、防潮堤を造るのに4年もかかるのは長すぎる上、防潮堤を造る以外にも予備電源を高い場所に移動したり、使用済核燃料を内陸の安全な場所に移動したりなどの他の対策も考えられることから、この判決は東電の経営陣に甘い。

 さらに、*1-2には、緊急時に使う設備が事前の準備不足で機能しなかった疑いがあるので、原子力規制委員会の更田委員長が事故前の安全対策の検証をすると書かれているが、津波の危険性がある地域で非常用電源まで浸水するような低い場所に置く原発の設計自体、安全については全く考えていなかったことの証である。

2)原発の廃炉廃棄物をリサイクルするとは!?
 その上、*1-3の「④原発の廃炉に伴い発生する金属やコンクリートの廃棄物のうち汚染の程度が比較的低いものをリサイクルする」「⑤原子力規制委員会が放射能の測定方法を見直している」というのには驚いた。

 何故なら、放射能汚染の程度が比較的低ければ安全ということはなく、放射性廃棄物は人間が住む環境から隔離した場所に集めて長期間管理するのが原則だからだ。それができないほど多くの廃棄物が出たのなら、それこそ誰の責任で、どうして原発稼働を今でも続けているのかを明確にすべきだ。

3)玄海原発の差し止め訴訟
 おかしな地裁判決でもそのまま通すという上と下のご機嫌を伺うだけの情けない組織のようだが、*1-4-1・*1-4-2のように、福岡高裁が、「原発なくそう!九州玄海訴訟(長谷川照原告団長:素粒子・原子核・宇宙線・宇宙物理の専門家)」が玄海原発の運転差し止めを求めた住民側の即時抗告退けた。

 しかし、阿蘇の破局的噴火リスクは低いとはいえず、日本のような地震・火山の多い国で、原発近くの高い場所に使用済核燃料プールを置き、設計当初よりも安全を無視して使用済核燃料を詰め込みながら原発を運転するのは危険である上、事故時の“避難計画”も実効性がないため、安全なエネルギーへの速やかな転換が求められるのである。

(2)フクイチ事故の汚染水による海洋汚染
1)処理水放出は正しいか
 原田前環境相が、*2-1のように、「フクイチ原発事故で増え続ける汚染水の処理水は、海洋放出しかない」と述べたことに対して、全漁連の岸宏会長が「絶対容認できない。発言撤回を強く求める」と述べたそうで、当然のことである。

 海洋放出してよいとする理由を、原子力規制委員会は、*2-2のように、「放射性物質で汚染された地下水は除去設備で浄化され、トリチウム(三重水素)だけ取り除くことができない」「批判に科学的根拠はなく、風評被害にすぎない」などとしているが、実際には、*2-6のように、汚染水にはトリチウム(半減期12年)だけでなく、ストロンチウム90(同299年)、ヨウ素129(同1570万年)なども国の基準値を超えて含まれていた。

 また、*2-4のように、「処理水は薄めて海洋放出するのが妥当」と原子力規制委が韓国に伝えたというのは、間違ったことを言っているのに上から目線で呆れるのである。何故なら、「科学的、技術的な判断を行う規制委員会としては、基準以下に薄めて海洋に放出する方法が妥当」としているが、ここには「基準以下なら安全」と「薄めて基準以下にすれば総量が多くても海洋は処理できる」という誤った2つのセオリーが含まれているからだ。

 放射性物質を含んでいても無味無臭で味も変わらないため、食べても無害だと勘違いしている“専門家(何の??)”が多い。そのため、わかりやすい例を挙げれば、*3-1の東京湾の水質悪化は、処理しきれなかった汚水が東京湾に流れ込んで起こる問題だ。しかし、東京の人口が10人だったら、全く処理せずに汚水を流しても川も海もそれを包含して浄化することができるだろう。しかし、1000万人以上の汚水を川や海が浄化することはできないのであり、その違いは汚物の総量であって濃度ではない。さらに、“基準”は、人間が勝手に定めた法的限界値であり、自然に関する不変の真理ではないのだ。

 そのため、*2-3のように、韓国が「原発汚染水は国際問題だ」として、IAEA総会で日韓が応酬することになったが、日本政府代表が非科学的で反論にならない反論をすればするほど、環境意識の低さで世界に呆れられる。何故なら、皆、騙されるほど馬鹿ではないからだ。

2)トリチウムの害について
 トリチウムは、*2-5のように、水素の同位体で、最大エネルギー18.6keV、平均エネルギー5.7keVという非常に低いエネルギーのβ線を放出し、物理的半減期は12年だ。環境には、トリチウム水(HTO)の形で放出され、飲料水や食物から摂取されたトリチウム水は胃腸管から完全に吸収され、トリチウム水蒸気を含む空気を呼吸することによっても肺に取り込まれて殆どが血液中に入るのだそうだ。

 そして、血中のトリチウムは細胞に移行して24時間以内に体液中にほぼ均等に分布し、有機結合型のトリチウムは、排泄が遅く体内に長く留まる。トリチウムのβ線による外部被ばくの影響は無視できる程度だが、ヒトに障害が起きるのはトリチウムを体内に取り込んだ場合の内部被曝で、ヒトが長期間摂取した被曝事故例では、症状としては全身倦怠、悪心、その後白血球減少、血小板減少が起こり、汎血球減少症で死亡する。

 そのため、岩手日報は、*2-2のように、「福島原発処理水は、長期保管の可能性を探れ」と記載している。東電はタンクでの保管は2022年夏ごろ満杯になるとの試算をまとめ、保管容量を増やすのは困難だとしているが、初めから薄めて海洋放出するつもりではなかったのか。それなら、これまでに使ったタンク費用の妥当性や東電・政府の不誠実さも問われ、被害は実害であって風評被害ではないため、漁業関係者だけでなく消費者も反対なのである。

(3)後退した環境・衛生に関する意識
1)東京の下水道の不潔さ
 東京の下水道は、コレラの流行をきっかけとして明治17年(1885年)から始まったため、現在は大量のストックがあり、老朽化している上、人口増加に追いついていない。そのため、*3-1のような事態になったのだが、東京は人口増加で地方税が十分に入ってきたのだから、無駄遣いばかりせずに、下水道を維持修繕する過程で計画的に完全浄化システムに変更していくべきだったのに、何故か、これをやっていないのである。

2)ゲノム食品に対する表示義務の緩さ

  
2019.9.20東京新聞 子どもの食物アレルギーの増加   食物アレルギーの原因食物

(図の説明:左図のように、ゲノム食品の表示義務は、消費者が選択できないくらい緩くなってしまった。一方で、中央の図のように、食物アレルギーが増加しており、右図のように、鶏卵・甲殻類・乳製品・小麦などが原因物質として多いが、これは何故か?甲殻類は、外骨格まで食べてしまうと、そこに毒があるせいか、私も腹の調子が悪くなる。鶏卵・乳製品は、日本人の消化器が慣れていないのかもしれない。小麦の場合は、これまで米国産が多かったため、害虫防除の遺伝子を挿入した小麦を食べた時に、体が小麦全体を防御するようになるのかも知れない)

 消費者庁は、2019年9月19日、*3-2-1・*3-2-2のように、「①外部遺伝子を組み込まない食品は、遺伝子改変がゲノム編集によるのか、従来の育種技術によるのかを科学的に判別できず、表示義務に違反する商品があっても見抜けないため表示を義務化しない」「②外部遺伝子を組み込み、安全性審査が必要となる食品は表示を義務付ける」と決めたそうだ。

 しかし、①は、その食品の作り方を尋ねて検証すれば科学的に判別できるし、そもそも違反を見抜けないから表示を義務化しないなどというのは、アメリカに過度に忖度してか始めから腰が引けていておかしい。また、②も「安全性審査が必要となる食品」と限定することによって、「安全性審査が必要になると思わなかったから」という言い訳ができ、どちらにしても消費者が選択できる環境にならないのだ。そのため、消費者が購入時に簡単に比較して選択できるよう、表示の義務化を行って真実と異なる場合は虚偽表示とすべきだ。

 そして、このように自分の判断で食品を選べる環境を整えることが、コストがかかっても安全で美味しい作物を作る動機付けになり、そういう食品のブランド化もできる。逆に、そういう環境がなければ、安いが安全とは言えない作物が市場を席巻し、これまであった日本の食品産業の優位性も失われるだろう。

3)地球温暖化対応への消極性
 国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が、*3-3のように、「世界全体で有効な対策が取られないまま地球温暖化が進むと、今世紀末に世界平均の海面水位は最大で1.1m上昇すると予測した特別報告書を9月25日に公表したそうだ。

 世界平均の海面水位は1902年から2015年までの間に16cm上昇し、2006~2015年は年3.6mmのペースで上昇し、1901~90年の平均ペースの約2.5倍と先例がないスピードで水位が上がっているそうで、満潮時の海面と岸壁との差が既に小さくなっていることに気づいている人の実感が数字で裏付けられた形だ。

 そして、温室効果ガス削減が進まず、今世紀末の世界の平均気温が産業革命前より最大5.4°C上がった場合、世界平均の海面水位は1986~2005年の平均に比べて、61cm~1.1m(中央値84cm)上昇するそうだ。確かに、海面上昇に伴い、低地にある都市は海抜0m付近になって、ポンプを使わなければ水が海に流れず、高潮災害が頻発する等の事態になると思われる。

 ただ、最近の台風や豪雨災害を見ていると、この地球温暖化は温室効果ガスのみではなく、海底火山の噴火も影響しているように見える。

(4)フクイチ原発事故と癌の増加
1)フクイチ関係の福島県民を対象にした甲状腺検査について
 2011年のフクイチ原発事故時に18歳以下だった福島県民を対象にした2014~2015年度分の甲状腺検査について、福島県の評価部会は2019年6月3日に、「現時点で、発見された癌と被曝の関連は認められない」とする見解をまとめたそうだ。

 しかし、厚労省の人口動態統計はすべて暦年で出されているため(https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/geppo/nengai18/index.html 参照)、他の地域や日本全体と正確な比較をするには暦年単位で結果を出す必要がある。

 また、福島県民を対象にした2014~2015年度分の甲状腺検査の規模なら、対象年が終わって6カ月後には調査報告書がまとまっていてもよく、4年以上もかかるのは遅すぎる。

 さらに、真実を求めることが目的なら、調査結果を他の地域と比較することが必要なのであって主観的な“評価”は不要だ(https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/geppo/nengai18/dl/h7.pdf、https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/geppo/nengai18/dl/h10.pdf 等参照)。

 そのため、*4-1の福島の小児甲状腺癌と被曝との関連調査は、まじめにやれば貴重な調査結果が出たのに、「線量と癌の発見率には関係がない」と結論づけるために、迅速で正確な調査をしなかったように見える。なお、日本全体では、フクイチ事故以前は死因の1/3と言われていた癌が、事故後直ちに死因の1/2と静かに修正されたのは呆れるほかない。

2)内部被曝・外部被曝について
 *4-2のように、内部被曝については、チェルノブイリや福島の経験からデータを出すことはできるし、実際に隠されていたデータや論文も多く出てきているが、ICRP・IAEA・WTOのような世界機関にはデータがないとされ、日本の食品安全委員会は「自然放射線や医療被曝を除く放射線で、生涯100ミリシーベルト以下の被曝なら健康に影響は出ない」としている。しかし、この安全基準には、科学的根拠が全くないのだ。

 さらに、外部被曝では、日本の法律上の一般公衆線量限度は1mSV/年以下だが、政府は警戒区域や計画的避難区域の人は、20 mSV/年まで許容できるとした。しかし、20 mSV/年は頑強な原発労働者の基準であり、成長期の子どもや妊婦、免疫力の低下している人にまで当てはめるのは危険で人命軽視である。そして、*4-3のように、チェルノブイリ原発事故の場合は、5mSV/年で強制移住だったが、福島では20 mSV/年以下なら帰ることを強制しているのだ。

3)メディアの報道
 メディアの中では比較的よく原発被害を報道していたテレ朝だったが、2014年8月30日、フクイチの取材や冤罪事件に心血を注いでいた報道ステーションのディレクター岩路真樹さんの遺体が自宅で発見され、「なんらかの権力による他殺ではないか」という説が流れた。

 そして、*4-4のように、「関東の子どもの健康被害」は隠されているのだそうだ。しかし、体力の弱い子どもだけでなく、大人も多かれ少なかれ同じような健康被害が出ることは間違いないのである。

<低い環境意識>
*1-1:https://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2019092002000193.html (東京新聞社説 2019年9月20日) 東電旧経営陣に無罪 「人災」の疑問は残る
 東京電力の旧経営陣は「無罪」-二〇一一年の福島第一原発事故で検察審査会が強制起訴した裁判だった。本当に予想外の事故だったのか疑問は残る。事故の三年前まで時計の針を戻してみよう。国の地震予測である「長期評価」に基づく津波の試算が最大一五・七メートルにのぼるとの報告がなされた。東電社内の会合で元副社長に「『(津波想定の)水位を下げられないか』と言われた」-担当していた社員は法廷で驚くべき証言をした。元副社長は否定し、「そもそも長期評価は信頼できない」と反論した。
◆「力が抜けた」と証言
 社員は「津波対策を検討して報告するよう指示された」とも述べた。だから、その後、防潮堤を造る場合は完成までに四年を要し、建設に数百億円かかるとの報告をしている。元副社長は「外部機関に長期評価の信頼性を検討してもらおう。『研究しよう』と言った」と法廷で応じている。てっきり対策を進める方向と思っていた社員は「想定外の結論に力が抜けた」とまで証言した。外部機関への依頼は、対策の先送りだと感じたのだろう。実際に巨大津波の予測に何の対策も講じないまま、東電は原発事故を引き起こしたのである。この社員は「時間稼ぎだったかもしれないと思う」「対策工事をしない方向になるとは思わなかった」とも証言している。社員が認識した危険性がなぜ経営陣に伝わらなかったのか。あるいは対策の先送りだったのか。これはぬぐえぬ疑問である。旧経営陣の業務上過失致死傷罪の責任を問うには(1)原発事故との因果関係(2)大津波などが予見できたかどうか(3)安全対策など結果回避義務を果たせたか-この三点がポイントになる。
◆電源喪失予測もあった
 東京地裁は争点の(2)は「敷地高さを超える津波来襲の予見可能性が必要」とした。(3)は「結果回避は原発の運転停止に尽きるが、原発は社会的有用性があり、運転停止だと社会に影響を与える」ため、当時の知見、社会通念などを考慮しての判断だとする。原発ありきの発想に立った判決ではないか。「あらゆる自然現象の想定は不可能を強いる」とも述べたが、それなら災害列島に原発など無理なはずである。宮城県に立地する東北電力女川原発との違いも指摘したい。女川原発が海抜一五メートルの高台に建てられたのは、八六九年の貞観地震を踏まえている。だから東日本大震災でも大事には至らなかった。〇八年の地震予測「長期評価」が出たときも、東北電力は津波想定の見直しを進めていた。ところが、この動きに対し、東電は東北電力に電子メールを送り、津波対策を見直す報告書を書き換えるように圧力をかけた。両社のやりとりは公判で明らかにされた。「危険の芽からは目をそらすな」-それは原発の事業者にとって常識であるはずだ。旧ソ連のチェルノブイリ事故が示すように、原発でいったん事故が起きれば被害は極めて甚大であり、その影響も長期に及んでしまう。それゆえ原発の事業者は安全性の確保に極めて高度な注意義務を負う。最高裁の四国電力伊方原発訴訟判決でも「(原発の)災害が万が一にも起きないように」と確認されていることだ。「最大一五・七メートルの大津波」という重要なサインが活(い)かされなかったことが悔やまれる。〇四年にはスマトラ沖地震の津波があり、インドの原発で非常用海水ポンプが水没し運転不能になった。〇五年の宮城県沖地震では女川原発で基準を超える地震動が発生した。これを踏まえ、〇六年には旧経済産業省原子力安全・保安院と電力会社による勉強会があった。そのとき福島第一原発に敷地高一メートルを超える津波が来襲した場合、全電源喪失から炉心損傷に至る危険性が示されている。勉強会が活かされたらとも悔やむ。防潮堤が間に合わなくとも電源車を高台に配備するなど過酷事故対策が考えられるからだ。福島第一原発の非常用電源は地下にあり、水没は容易に発想できた。国会事故調査委員会では「明らかな人災」と厳しく非難している。今回の刑事裁判は検察が東電に家宅捜索さえ行わず、不起訴としたため、市民の検察審査会が二度にわたり「起訴すべきだ」と議決したことによる。三十七回の公判でさまざまな事実関係が浮かんだ意義は大きい。
◆地震の歴史は繰り返す
 安全神話が崩れた今、国の原発政策に対する国民の目は厳しい。歴史は繰り返す。地震の歴史も繰り返す。重大なサイン見落としによる過酷事故は、やはり「人災」にも等しい。繰り返してならぬ。苦い教訓である。

*1-2:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO50074040Q9A920C1TJM000/ (日経新聞 2019/9/22) 規制委、福島第1事故の調査再開、事故前の安全対策を検証
 原子力規制委員会が東京電力福島第1原子力発電所事故の調査を約5年ぶりに再開する。更田豊志委員長が重視するのは、事故前の安全対策の検証だ。緊急時に使う設備が事前の準備不足で機能しなかった疑いがある。事故現場の痕跡を分析し、今後の安全規制に生かす。事故に伴う放射線量の高さから、原因の詳しい調査は2014年から休止していた。放射線量が下がり、ようやく原子炉建屋に入れるようになった。近く事故分析に関する検討会を再開する。メンバーには原発の構造に詳しい外部有識者や、原子力規制庁の職員に加えて、更田委員長も名を連ねる。検討会に委員長が入るのは異例だ。更田委員長には事故時の安全対策を検証することが「今後の安全対策を考えるうえで重要な教訓を与える」との強い思いがある。福島第1原発は11年の東日本大震災に伴う津波の影響で原子炉を十分に冷却できなくなり、1~3号機が炉心溶融(メルトダウン)を起こした。14年10月にまとめた報告書では、事故の拡大につながった電源喪失について「津波による浸水が原因」との見解を示した。電源喪失と津波による浸水の時刻は一致するなどと指摘し、地震の揺れが関与していたとする一部の見方を否定した。ただ、当時は放射線量が高くて建屋内の調査ができなかった。なお残る疑問の1つが、2号機で原子炉内部の圧力を下げるベントがなぜうまく働かなかったのかだ。2号機は1~3号機のなかで、最も多くの放射性物質が外部に漏れ出たとされる。格納容器内の水を通って、放射性物質が減った気体を放出するベントができなかったためだと東電は推定する。ベントができなかったのは、一定の圧力で自然に破れる配管内の板が破れなかったとの見方がある。設定圧力が高すぎた疑いがあるが、更田委員長は「ベントを減圧、冷却手段として期待していたのだったら、そんなに設定圧力を高くするはずがない」との疑問を持っている。ベント設備は1992年に国が過酷事故対策をまとめたことから電力会社側が自主的に設置した。調査の焦点となるのは「本当に狙ったような意図の施工がされていたかどうか疑問がいくつもある」(更田委員長)。最初に炉心溶融と水素爆発を起こした1号機では、非常時に原子炉を冷却する装置「非常用復水器(IC)」が停止していることに気づかなかったことが問題となった。発電所員らが復水器の仕組みや使い方を十分に理解していなかった可能性がある。福島第1原発所長だった吉田昌郎氏(故人)も政府のヒアリングに対し、理解不足との認識を示している。規制委は現場に残る復水器の状態を確認しつつ、同じ設備を持つ日本原電敦賀原発1号機(福井県)とも比較しながら、東電が所員にどのような教育をしていたのかなどソフト面の対策が十分だったかも調べる。規制委は検討会での議論を踏まえて20年に報告書をまとめる予定だ。今後の規制に反映すべき点があれば対応する。ただ、今回はまだ原子炉格納容器内は立ち入ることはできず、炉心溶融の詳細な経緯など真相究明は21年以降も続く見通しだ。

*1-3:https://genpatsu.tokyo-np.co.jp/page/detail/1101 (東京新聞 2019年7月24日) 廃炉金属のリサイクルの現状は-進む原発老朽化で大量発生へ-
 原発の廃炉に伴い発生する金属やコンクリートの廃棄物を少しでも減らすために、汚染の程度が比較的低いものをリサイクルする「クリアランス」制度。老朽原発の廃炉が相次ぐのを見込む電力業界は審査の効率化を求め、原子力規制委員会が放射能の測定方法を見直している。国の実証事業で金属廃棄物を加工した工場周辺では、市民団体が「うやむやのまま全国の原発から持ち込まれるのでは」と警戒し、情報公開の徹底を要望。リサイクル製品が社会的に受け入れられるかも未知数だ。

*1-4-1:https://www.nishinippon.co.jp/item/n/545988/ (西日本新聞 2019/9/25) 玄海原発の差し止め認めず 住民側の即時抗告退ける 福岡高裁
 九州電力玄海原発3、4号機(佐賀県玄海町)を巡り、周辺住民らが九電に運転差し止めを求めた仮処分の即時抗告審で、福岡高裁(山之内紀行裁判長)は25日、差し止めを認めなかった昨年3月の佐賀地裁決定を支持、住民側の即時抗告を退けた。即時抗告したのは、「原発なくそう!九州玄海訴訟」のメンバー約70人。阿蘇カルデラ(熊本県)の破局的噴火の発生リスクは低いといえず、重大事故が起きる可能性があると主張。避難計画やテロ対策にも不備があると訴え、九電側は「破局的噴火の可能性は低く、避難計画も合理的」としていた。昨年3月の佐賀地裁決定は「阿蘇カルデラが破局的噴火直前の状態ではないとした九電の判断は不合理とはいえない」と判断。避難計画も適切として申し立てを却下した。

*1-4-2:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/432088 (佐賀新聞) 【速報】福岡高裁も運転差し止め認めず 玄海原発即時抗告審
 九州電力玄海原発3、4号機(佐賀県東松浦郡玄海町)を巡り、運転差し止めを認めなかった佐賀地裁の仮処分決定を不服として佐賀など九州・山口の住民らが申し立てた即時抗告審で、福岡高裁(山之内紀行裁判長)は25日、棄却する決定をした。申し立てたのは、玄海原発の操業停止を求める訴訟を起こしている「原発なくそう!九州玄海訴訟」(長谷川照原告団長)に加わる住民ら71人。別の住民らが同原発の運転差し止めを求めた仮処分の即時抗告審は、福岡高裁が今年7月に棄却していた。

<汚染水による環境汚染>
*2-1:https://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2019091101001726.html (東京新聞 2019年9月11日) 全漁連「処理水放出」発言に抗議 原田前環境相に
 東京電力福島第1原発で増え続ける汚染水浄化後の処理水について、原田義昭前環境相が海洋放出しかないと述べたことに対し、全国漁業協同組合連合会(全漁連)の岸宏会長は11日、東京都内で記者会見し「絶対容認できない。発言撤回を強く求める」と述べた。岸氏らは同日午前、環境省を訪れ原田氏の秘書官に抗議文を提出した。岸氏は記者会見で、福島県内の漁業者から「怒り心頭に発している」などの憤りや不安の声が寄せられたことを明らかにし、「漁業の将来に大きな影響を与える。政治不信にもつながる。風評被害の増長を心配している」と話した。

*2-2:https://www.iwate-np.co.jp/article/2019/9/15/64534 (岩手日報 2019.9.15) 福島原発処理水 長期保管の可能性探れ
 東京電力福島第1原発にたまり続ける処理済みの汚染水をどうするのか、判断が迫られている。敷地にはタンクが林立し、保管中の水は7月末時点で約110万トン。東電は2020年末までに137万トン分のタンク容量を確保する計画だが、それ以降は未定だ。東電は先ごろ、タンクでの保管は22年夏ごろ満杯になるとの試算をまとめた。大型化などで保管容量を増やすのは困難だという。原子力規制委員会は薄めての海洋放出が合理的との考えだ。試算には、放出決定を国に促す姿勢がにじむ。処理水が増え続けているのは、溶融核燃料を冷却する注水や、流入する地下水が次々と汚染されていくからだ。処理水の処分方法は政府の小委員会で検討し、地元など関係者との調整を踏まえて国が基本方針を決める。試算だと3年後に限界が来る。規制委の更田豊志委員長は「処分方法が決まったとしても準備に少なくとも2年はかかる。意思決定の期限が近づいていると認識してほしい」と希釈しての海洋放出を改めて求めた。しかし、漁業関係者は反対姿勢を強める。当然だろう。事故によって甚大な被害を受け、抑制的な操業を余儀なくされている。政府小委員会は8月の会合で、漁業関係者からの求めが多かった長期保管を初めて正式議題に取り上げた。放射性物質で汚染された地下水は除去設備で浄化される。ただ、トリチウム(三重水素)だけは取り除くことができない。この物質は運転中の原発でも生じ、放射線の影響が少ないとして世界で放出が認められている。しかし、たとえ生物への影響がないとしても、風評被害の懸念がある。耐え続けてきた漁業者の苦労が水泡に帰しかねない。処理水には韓国も目を向ける。日本に対して海洋放出計画の有無など事実関係の確認を要求。政府は、現時点では具体的な結論が出ていないと回答した。韓国は原発事故に関し、本県産を含め8県産の水産物の輸入を禁止。世界貿易機関(WTO)がその措置を容認しているだけに、処理水の行方は気になるところだ。可能な限り長期保管の道を探るべきだ。その場合、自然に放射線量が減るのを待つことになろう。原発敷地外での場所確保は本当に難しいのか政府は精査すべきだ。仮に海洋放出すると判断するなら、漁業者に対する国の全面的なバックアップの約束が不可欠だ。これまでの汚染水漏れや公表の遅れで信頼感を欠いている東電と漁業者の関係構築も大前提になる。

*2-3:https://digital.asahi.com/articles/ASM9K10C1M9JUHBI03N.html (朝日新聞 2019年9月17日) 韓国「原発汚染水は国際問題」 IAEA総会で日韓応酬
 国際原子力機関(IAEA)の総会が16日、本部のあるウィーンで始まった。韓国政府の代表は、東京電力福島第一原発にたまり続ける、放射性物質を含んだ汚染水の処理方法について「今も解決されていないままで、世界中に恐怖や不安を増大させている」などと述べ、国際的な問題であると強調した。これに対し、日本政府の代表が反論し、IAEAでも日韓が応酬することになった。総会には韓国政府の代表として文美玉(ムンミオク)・科学技術情報通信省次官が出席。日本の原田義昭前環境相が処理済みの汚染水について「海洋放出しかない」と発言したことに触れ、「もし海洋放出するなら、もはや日本の国内問題ではない。生態系に影響を与えかねない深刻な国際問題だ」と訴えた。IAEAの積極的な関与を求め、「日本は十分かつ透明な措置をとるべきだ」とした。これに先立ち、日本の竹本直一・科学技術担当相は福島第一原発事故後の情報提供について、「国際社会に対して透明性をもって丁寧に説明してきている」と述べ、汚染水についても「議論の共有を含め、取り組みを継続していく」としていた。日本側は韓国代表の発言後に再び発言し、福島原発事故に関して昨年までIAEAの調査団を4次にわたって受け入れ、取り組みの評価を受けていると強調。「韓国代表の発言は海洋放水を前提としており、受け入れられない」とした。また、原田氏の発言は「個人的」なものだとして、処理方法は経済産業省の小委員会で協議中であると説明した。日本の主張に対しては韓国も反論し、日韓は計3回ずつ発言。韓国代表の厳在植(オムジェシク)・原子力安全委員長が「(日本が)言葉を明確で十分な行動に移すことが重要だ」と締めくくり、応酬を終えた。

*2-4:https://www3.nhk.or.jp/news/html/20190925/k10012098841000.html (NHK 2019年9月25日) 「処理水は薄めて海洋放出が妥当」原子力規制委が韓国に伝える
 福島第一原子力発電所にたまり続けるトリチウムなどを含む水の扱いについて、原子力規制委員会の更田委員長は韓国の規制当局トップに対し、「科学的、技術的には基準以下に薄めて海洋放出するのが妥当だ」との見解を伝えたことを明らかにしました。福島第一原発で出る汚染水を処理したあとの水には、取り除くのが難しいトリチウムなどの放射性物質が含まれ、これまで構内のタンクにおよそ115万トンが保管されていて、毎日170トン前後増え続けています。この水の扱いについて、今月20日までウィーンで開かれていたIAEA=国際原子力機関の総会で韓国の代表が懸念を示し、日本側は「丁寧に情報を出すなどIAEAも評価している」などと反論し、両国の間で応酬となりました。これについて原子力規制委員会の更田豊志委員長は25日の会見で、IAEA総会の期間中、韓国の規制当局トップと意見交換する場があったことを明らかにし、この中で水の扱いで懸念を伝えられたということです。これに対して更田委員長は、最終的には政府が決定する案件だと前置きしたうえで、「科学的、技術的な判断を行う規制委員会としては基準以下に薄めて海洋に放出する方法が妥当と判断している」と従来の見解を伝えたということです。トリチウムなどを含んだ水について、国はこれまで濃度を基準以下にして海や大気中などに放出する5つの案と、タンクに長期保管する案を示していて、現在、有識者でつくる国の会議で議論が行われています。

*2-5:https://atomica.jaea.go.jp/data/detail/dat_detail_09-02-02-20.html (抜粋)
<タイトル> トリチウムの生物影響 (09-02-02-20)
 将来のエネルギー源として計画が進められている核融合(炉)にかかわる環境・生物影響、とくにトリチウムの人体への影響が注目される。トリチウムはトリチウム水(HTO)の形で環境に放出され人体にはきわめて吸収されやすい。また、有機結合型トリチウム(OBT)はトリチウムとは異なった挙動をとることが知られている。動物実験で造血組織を中心に障害を生ずることが明らかにされ、ヒトが長期間摂取した重大事故も発生している。
<更新年月>
2000年03月   (本データは原則として更新対象外とします。)
<本文>
 トリチウムは水素の同位体で、最大エネルギー18.6keVで平均エネルギー5.7keVという非常に低いエネルギーのβ線を放出し物理的半減期は12年である。大気上層中で宇宙線中の中性子と窒素原子核との衝突によって生成する天然トリチウムが自然界の水循環系に取り組まれているとともに、核実験や原子力施設などから主としてトリチウム水(HTO)の形で環境に放出され、生物体へは比較的簡単に取り込まれる。ヒトの体重の60〜70%は水分で、個人差はあるが、女性よりも男性、老人よりも若者、太った人よりも痩せた人の方が含水量が多い傾向にある。表1は国際放射線防護委員会(ICRP)がトリチウムの被ばく線量計算のために水分含有量を推定したもので、“体重70kgのヒトの60%(42kg)が水分である”と仮定している。このうちの56%は細胞内液、20%は間質リンパ球、7%が血しょう中に、残りは細胞外液として存在するものとしている。飲料水や食物から摂取されたトリチウム水は胃腸管からほぼ完全に吸収される。トリチウム水蒸気を含む空気を呼吸することによって肺に取り込まれ、そのほとんどは血液中に入る。血中のトリチウムは細胞に移行し、24時間以内に体液中にほぼ均等に分布する。また、トリチウムは皮膚からも吸収される。最近問題になっているのは有機成分として取り込まれた場合の有機結合型のトリチウム(OBT:Organically Bound Tritium)で、一般に排泄が遅く、体内に長く留まる傾向がある。トリチウムは水素と同じ化学的性質を持つため生物体内での主要な化合物である蛋白質、糖、脂肪などの有機物にも結合する。経口摂取したトリチウム水の生物学的半減期が約10日であるのに対し、有機結合型トリチウムのそれは約30日〜45日滞留するとされている。トリチウムのβ線による外部被ばくの影響は無視できるが、ヒトに障害が起きるのはトリチウムを体内に取り込んだ場合である。ヒトの場合にはこのような事故例は少ないので、主として動物実験から被ばく量と障害の関係が推定されている。放射線の生物学的効果を表す指標をRBE(Relative Biological Effectiveness,生物学的効果比)というが、いろいろな生物学的指標についてのトリチウムβ線のRBEは表2のように示される。基準放射線をγ線とした場合のRBEは1を超える報告が多い。血球には赤血球、白血球(好中球、単球、マクロファージ、好酸球、リンパ球など)、血小板がある。これらはすべて骨髄の造血細胞から作られ、それぞれ機能が異なる。ヒトの末梢血液をin vitro(生体外)で照射してTリンパの急性障害をしらべた結果、トリチウムの細胞致死効果はγ線より高く、また放射線感受性はいずれの血液細胞もマウスよりヒトの方が高いことが明らかにされている。トリチウム被ばくの場合、幹細胞レベルでは変化があっても通常の血液像の変化は小さい。したがって急性障害のモニタリングには幹細胞チェックが重要である。トリチウム水を一時に多量摂取することは現実的にはあり得ないが、低濃度のトリチウム水による長期間被ばくの場合を考えねばならない。実際に、トリチウムをヒトが長期間摂取した被ばく事故例が1960年代にヨーロッパで起きている。トリチウムは夜光剤として夜光時計の文字盤に使用されているが、これを製造する二つの施設で事故が発生している。一つは、トリチウムを7.4年にわたって被ばくした例で280テラベクレル(TBq)のトリチウムと接触し、相当量のトリチウムを体内に取り込んだ事例である。尿中のトリチウム量から被ばく線量は3〜6Svと推定されている。症状としては全身倦怠、悪心、その後白血球減少、血小板減少が起こり、汎血球減少症が原因で死亡している(表3)。もう一つの例も似たような症状の経過をたどり汎血球減少症が原因で死亡している。臓器中のトリチウム量が体液中よりも6〜12倍も高く、体内でトリチウムが有機結合型として存在しているものと推定されている。発電所および核燃料再処理施設の稼働によりトリチウムも放出されるが、ブルックヘブン・トリチウム毒性プログラムは低濃度トリチウム水に長期間被ばくする場合の健康影響について示唆を与えてくれる(表4)。夜光剤を扱う施設ではラジウムペインターの骨肉腫がよく知られているが、トリチウムの場合はラジウムの場合と明らかに異なることは注目される。トリチウムによる発がんに関する報告は多くはないが、X線やγ線との比較によるRBEが求められている(表5)。これらは動物での発がん実験や培養細胞がん化実験の結果で、トリチウムRBEは1〜2の範囲である。このほか、遺伝的影響を調べるために染色体異常の誘発、DNA損傷と修復などの細胞生物学的研究や、発生時期、すなわち胞子発生期、器官形成期、胎児期あるいは器官形成期における放射線感受性の研究も行われている。

*2-6:https://digital.asahi.com/articles/ASL8N4CR7L8NUGTB004.html (朝日新聞 2018年8月21日) 福島)第一原発の汚染水、トリチウム以外にも放射性物質
 東京電力は20日、福島第一原発で増え続ける放射性物質トリチウムを含んだ低濃度の汚染水について、保管する大型タンクに入れる前の放射性物質の検査で、トリチウム以外に、ストロンチウム90、ヨウ素129が国の基準値を超えていたことを明らかにした。東電はこれまで「トリチウム以外の放射性物質は除去されている」として、十分な説明をしていなかった。構内で発生した汚染水は、セシウムを吸着する装置と、62核種を除去する装置「アルプス」を通り、取り除けないトリチウムを含む汚染水がタンクに保管されていると説明されていた。だが、「アルプス」の出口で汚染水を定期的に調べている分析検査で、トリチウム(半減期12年)のほか、ストロンチウム90(同29年)とヨウ素129(同1570万年)が国の基準値を上回っていた。最大値はトリチウムは1リットルあたり138万ベクレル(基準値の約23倍)、ストロンチウム90は141ベクレル(同約5倍)、ヨウ素129は62ベクレル(同約7倍)だった。東電は「吸着するフィルターの性能が落ちていたことも考えられる」としている。数値はホームページで公表しており、国が定める敷地境界の放射線量(年間1ミリシーベルト)も超えておらず、「保管上は問題はない」としているが、「今後はわかりやすくお知らせしていきたい」とコメントした。現在、タンクには約109万トンの汚染水がためられている。処理を巡っては、海洋や大気での放出といった方法が国で議論されている。東電によると、仮に放出となれば、事前に検査が行われる。放射性物質が検出されれば、アルプスに再び送って除去できるという。東電は「現在の汚染水がそのまま放出されるわけではなく、今回のこととは別問題」としている。

<後退した環境・衛生に関する意識>
*3-1:https://www.excite.co.jp/news/article/Buzzap_58298/ (Excite news 2019年8月20日) 【コラム】「東京湾うんこまみれ問題」はどれだけ根深く深刻なのか、13年前から指摘も【東京オリンピック】
 東京オリンピックに関して先日から話題になっている、トライアスロンなどの競技の会場ともなる東京湾が「トイレ臭い」という問題。実はあらゆる意味で極めて根の深い、深刻な話でした。
◆東京湾のオリンピック本番会場「トイレ臭い」問題とは
 産経新聞と朝日新聞が報じたところに寄ると、お盆前の8月11日に行われた本番会場と同じお台場海浜公園で行われた水泳オープンウオーターの東京五輪テスト大会。猛暑の真っ只中であったこともあり、参加選手からは水温や気温、陽射しの強さなどが過酷だと懸念の声が漏れました。これに加えて物議を醸したのが水質です。東京都や大会組織委員会が大腸菌類の流入を抑制するためにポリエステル製の水中スクリーンをコースの外周約400mに設置したものの、「正直くさい。トイレみたいな臭い」などと異臭を指摘する声が続出しました。来年には東京オリンピックの本番で、世界中から集まったトップアスリートたちが東京湾のこの会場で泳ぐわけですが、トイレ臭いとはいったいどういうことなのでしょうか。原因と現在に至る経緯を振り返って見ると、小手先ではどうにもならない極めて深刻な問題が浮かび上がってきました。しかもこれ、人災です。
◆東京23区の大部分で採用されている「合流式下水道」の問題
 この問題を知るために、まずは戦後日本のし尿の歴史を見直してみましょう。厚生省が(恐らくは昭和34年前後に)監修した「し尿のゆくえ」という極めて貴重で優秀なドキュメンタリー映画が作られています。当時は川や海へのし尿の投棄が日常的に行われており、寄生虫に加えてチフスや赤痢といった伝染病の蔓延など、衛生に関する非常に深刻な問題であった事がわかります。とはいえ出来が良すぎるため食事中は「絶対閲覧禁止」です。この作品がモノクロであることを天に感謝するレベルですので、心してご覧ください。現在は、日本のほとんどの場所でこのドキュメンタリー中盤で理想として語られる「水洗トイレから下水に流す」という方式が採用されています。もちろん東京でもこの方式が採用されているものの、東京都下水道局によると、東京都の区部の約8割では、汚水と雨水をひとつの下水道管で集める古いタイプの「合流式下水道」という仕組みが採用されています。この合流式下水道では、家の屋根や道路などに降った雨水を流す雨水管とトイレの水を含む生活排水を流す汚水管が別れておらず、いずれも同じ合流管に流れ込みます。晴天時や一定量までの雨の日は、この合流管からの下水を水再生センターで沈殿処理と生物処理によって処理した後、消毒・放流します。ですが一定以上の雨が降った際は、街を洪水から守るために汚水と雨水の混合した下水は簡易処理のみで河川や海に放流されてしまいます。上記映画でも言及されていた衛生や健康の問題、また洪水の起こりやすい関東平野での治水という観点から、東京では下水道の整備が急務となり、コストの安い合流式下水道が採用されてきました。現在は雨水と汚水を分ける分流式下水道の採用、切り替えなども行われているようですが、残念ながら2020年までに切り替えることは不可能です。なお水再生センターでは、塩素剤等の薬剤で大腸菌等を消毒して放流しているとされていますが、公益財団法人東京都環境公社の「東京湾の水質汚濁 -雨天時負荷が水質へ及ぼす影響-」という研究では、大雨後に多数の糞便性大腸菌が検出されたことが報告されています。つまり誇張でもなんでもなく、ゲリラ豪雨や台風のような大雨が降った後に東京湾は文字通りの「うんこまみれ」状態になってしまうのです。なんでそんな大切なことが分からなかったの?という疑問も出てきそうですが、実は以前から分かっていました。
◆「東京湾うんこまみれ問題」はずっと前から指摘されていた
 大雨が降ると東京湾に糞便性大腸菌が流れ出すという問題は、決して今回の東京五輪テスト大会で判明したものではありません。上記の「東京湾の水質汚濁 -雨天時負荷が水質へ及ぼす影響-」は2006年の研究発表資料ですし、国立環境研究所の2006年の公開シンポジウムでも「雨が降ると東京湾はどうなるか? -降雨後の水質変化-」の中で糞便性大腸菌が降雨時に「平水時の100~1万倍くらいまで高く」なることが指摘されています。そしてこの問題は、2013年の東京オリンピック開催決定直後に主催の東京都にもしっかり認識されていることが報じられています。スポニチは2013年9月27日の記事で、当時の猪瀬直樹東京都知事が定例記者会見で、東京オリンピックのトライアスロン会場となるお台場海浜公園周辺の海水が「大雨の時に大腸菌が多いことがある」と述べていることを伝えています。猪瀬知事(当時)はオリンピック開催までに下水道施設を改善して対処する考えを表明、「東京都はほぼ完璧に対策を取る。上流の県の水もきちんとやっていただきたい」として水質改善に向けて政府に申し入れる意向を示していました。またこの問題は、2017年7月に小池都知事も出席した都の幹部会議でも「雨が降った時が課題。対策を考えないと」と議題に上がりました。この問題を報じた朝日新聞の記事ではお台場海浜公園では「大腸菌が増えて、泳げる水質を定める国の「水浴基準」を満たさないことがあるため、ふだんは遊泳禁止。14年の都環境科学研究所の調査では、雨が3日間降らなかった後は基準をクリアしたが、大雨の直後は大腸菌がその時の約100倍に増え、基準を超えた」と指摘しています。この問題について長く取り組んでいる港区の榎本茂区議会議員によると、「平成24年(編集部注:2012年)度だけでも187万7200平方メートル、実に東京ドーム1.5杯分の未浄化下水が運河に放水されました」とのこと。日刊ゲンダイの記事によると、榎本議員は2014年9月の港区議会定例会では「私もNPOの代表をしていた平成19年(編集部注:2007年)に、このお台場でカキを使った大規模な水質浄化実験を提案し、お手伝いをしたことがあります。宮城からいただいてきたカキは、残念ながら1年を待たずして死滅してしまいました。理由の一つに挙げられたのが、毎月何度となく流れ込んでくる未浄化の生活排水によるものです」と指摘しています。また2017年5月13日に榎本議員が「ほぼ山手線の内側エリアのトイレ台所の汚水が雨水と共に、レインボーブリッジの袂から、塩素を混ぜただけの状態で放流されている」としてFacebookアカウント上にアップした動画での茶色く汚濁した水はかなり衝撃的です。榎本議員はここで「東京都下水道局は塩素で大腸菌は死んでいると言うが、港区の雨天時の水質調査をみても、大腸菌は死んでいないし、この放流されている水質が「水質汚濁防止法」の排水基準や、より厳しい上積み条例である「東京都環境確保条例」の基準を満たしているとは到底思えない」と指摘しています。つまり、少なくとも2006年の段階では問題が明らかにされており、東京オリンピック開催決定時点の2013年にも当時の都知事が問題を認識し、現在の小池都知事になった2017年にも問題として把握されていたということ。ですが開催まで1年を切った現時点でも東京都の対策が「ほぼ完璧」の域に至っていないことは8月11日に証明されたとおりです。
◆本当にここでオリンピックやって大丈夫なの?
 さてこんな状態の東京湾で、本当に東京オリンピックのトライアスロン競技を開催することはできるのでしょうか。上述したように、東京都や大会組織委員会は大腸菌類の流入を抑制するためのポリエステル製の水中スクリーンをコースの外周約400mに設置しています。東京オリンピック本番ではこのスクリーンを3重にするとのこと。東京都が2018年夏にコースそばに膜を設置して水質を調べたところ、3重の膜の内側で大腸菌類は基準値を下回っていたものの、膜の外は調査した22日間のうち5日間で基準値を超えていたとされています。大雨の後に糞便性大腸菌が大量に検出されても、1日程度で急減することは「東京湾の水質汚濁 -雨天時負荷が水質へ及ぼす影響-」でも示されているとおり。朝日新聞は大会組織委担当者の組織委の担当者は「膜の設置で水質の安全は担保できる。あとは大腸菌が流れ込む原因となる大雨や台風が、本番で来ないことを祈るのみ」という言葉を紹介しており、運頼みという状況であることが分かります。うんこだけに。実際に8月17日に開催されたパラトライアスロン・ワールドカップでは大腸菌による水質悪化でスイム抜きのデュアスロンとなりましたが、翌18日には国際トライアスロン連合基準で最悪の「レベル4」が「レベル1」まで改善されたため、トライアスロン・世界混合リレーシリーズ大会は予定通り実施されています。なお、会場となるお台場海浜公園では毎年夏にお台場海水浴「お台場プラージュ」が10日ほどの期間限定で開催されています。台風10号の襲来を前にした8月14日の水質の動画が撮影されていますが、前日からの降雨がほとんどない状態です。話が戻りますが、雨が降らなければそれで解決という話ではありません。水質は基準をクリアしていたとしても、例えば貴田裕美選手はテスト大会時に「水温も気温も高いし、日差しも強くて過酷だった。泳ぎながら熱中症になるんじゃないかという不安が拭えなかった」と述べています。また野中大暉も「他の会場と比べても暑い。脱水の心配もあるので、水分補給とかを工夫をしていかないと」と話すなど、晴れた場合は水温、気温、陽射しなどで熱中症の危険が発生するという、まさに前門の虎後門の狼状態となっています。国際水連のマルクレスク事務総長が水温の問題について「最も大切なのは選手の健康。水温の状況を見ながら5時、5時半、6時、6時半と開始時間を変更する可能性もある」と述べていますが、こうなるとまた別の問題が発生します。それは先日BUZZAP!が報じて大きな反響を得た、東京五輪ボランティアが「終電で現場に行かされ、徹夜の交流で士気を高めさせられる」という問題です。海辺の炎天下での徹夜明けのボランティア作業が過酷なことは、改めて指摘するまでもありません。この会場でトライアスロンを開催する以上、どうやっても誰かが過重な負荷や負担を強いられるという、いわゆる無理ゲー状態となっていることがよく分かります。そもそもうんこまみれの東京湾で海外のトップアスリートを泳がせることが日本の「オモテナシ」なのかという疑問もありますが、トイレを素手で掃除する事を美徳とする日本人にとっては、これも滝行のような「精神修練の場」ということになるのでしょうか。

*3-2-1:https://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201909/CK2019092002000179.html (東京新聞 2019年9月20日) ゲノム食品 表示義務なし 年内にも流通 消費者庁「判別できず」
 消費者庁は十九日、ゲノム編集技術で品種改良した農水産物の大半について、生産者や販売者らにゲノム編集食品であると表示することを義務付けないと発表した。ゲノム編集食品は特定の遺伝子を切断してつくられるが、外部から遺伝子を挿入する場合と挿入しない場合があり、現在開発が進む食品の大半は挿入しないタイプという。厚生労働省は同日、同タイプの販売について安全性審査を経ずに届け出制にすると通知。今回の消費者庁の発表で流通ルールの大枠が決まった。早ければ年内にも市場に出回る見通しだが、表示がなければゲノム編集食品かどうか分からず、安全性に疑問を持つ消費者から不満が出るのは必至だ。消費者庁は、表示を求める声が消費者団体などから上がっていることを踏まえ、義務付けない食品についても、生産者や販売者らが自主的に包装やウェブ上などで表示するよう働き掛ける方針。消費者庁は義務化しない理由について「(外部遺伝子を組み込まない食品は)遺伝子の改変がゲノム編集によるものか、従来の育種技術で起きたのか科学的に判別できず、表示義務に違反する商品があっても見抜けないため」と説明。製造から流通までのトレーサビリティー(生産流通履歴)の仕組みも不十分で、追跡が不可能だとした。一方、外部遺伝子を組み込み、安全性審査が必要となる食品は表示を義務付ける。

*3-2-2:https://digital.asahi.com/articles/DA3S14192008.html (朝日新聞社説 2019年9月25日) ゲノム食品表示 これで理解得られるか
 役所の名称とは裏腹に、消費者・市民に寄り添っているとは言いがたい決定だ。ゲノム編集技術を使った食品について、消費者庁は先週、遺伝子の配列をわずかに変えただけなら、編集した旨の表示を事業者に義務づけることはしないと発表した。既存の品種改良との区別が難しく、たとえ義務化しても違反者を特定することができないため、としている。消費者団体などが批判の声を上げたのは当然だ。朝日新聞の社説は、科学的に安全か否かの議論とは別に、自分の判断で食品を選べる環境を整えることが大切で、その視点に立って表示のあり方も考えるべきだと主張してきた。今回の措置は、消費者の権利を尊重し、適切に行使できるようにするという、消費者行政の目的と相いれない。見直しを求める。消費者庁も、どんな食品かを知りたい消費者がいることを、当然認識している。そこで、厚生労働省に届け出があったゲノム編集食品については、事業者に対し、消費者への積極的な情報提供を呼びかけている。何とも中途半端な対応だが、そういうことであれば当面は食品を開発・販売する側に期待するしかない。ゲノム編集を施したことを明示し、問い合わせがあれば丁寧に答える。情報の公開と説明に前向きに取り組む姿勢を見せることが、信頼を生み、今後のビジネスにも役立つと考えてもらいたい。そのためにも、表示・公開の方法に一定の基準を設けることを検討すべきだ。どんな遺伝子に手を加えたのか、成分はどのように変化したのかなどについて、企業秘密を守りつつ、どこまで公にするか。ホームページに載せるだけでいいのか、購入時に認識できるようにするにはどうしたらよいか。事業者任せにせず、消費者庁も入って、工夫や研究を重ねてもらいたい。厚労省の責任も重い。業者が届け出るべき情報の中には、アレルギーの原因物質が新たにつくられていないことを確認する項目などもある。開発段階で十分な試験がなされているか、データは信頼できるか、入念なチェックが求められる。ゲノム編集は発展途上の技術だ。最新の動向を幅広く収集するとともに、懸念材料が出てきたときには、事業者にすみやかに対応をとらせ、安全性を検証できる仕組みをあらかじめ整えておくことが欠かせない。効率のいい品種改良を可能にするゲノム編集技術は、国内はもちろん世界の農林水産業を大きく変える可能性を秘める。それだけに、幅広い理解を得られるよう慎重に歩みを進めたい。

*3-3:https://mainichi.jp/articles/20190925/k00/00m/040/160000c (毎日新聞 2019年9月25日) 海面水位、世界平均1・1メートル上昇と予測 地球温暖化で IPCC特別報告書
 世界全体で有効な対策が取られないまま地球温暖化が進むと、今世紀末に世界平均の海面水位は最大で1・1メートル上昇すると予測した特別報告書を25日、国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が公表した。台風など熱帯低気圧の強さも増して、高潮などによる沿岸部の被害が増加すると指摘しており、島国の日本をはじめ各地の防災対策に影響を与えそうだ。報告書によると、世界平均の海面水位は1902年から2015年までの間に16センチ上昇した。特に2006~15年は年3・6ミリのペースで上昇し、1901~90年の平均ペースの約2・5倍と先例がないスピードで水位が上がっている。さらに温室効果ガス削減が進まず、今世紀末の世界の平均気温が産業革命前より最大5・4度上がった場合、世界平均の海面水位は1986~2005年の平均に比べ、61センチ~1・1メートル(中央値84センチ)上昇すると予測した。南極の氷がどんどん解けていることなどから、IPCCが2014年に公表した報告書の予測より上昇幅は1割程度拡大した。海面上昇に伴って低地にある大都市では、これまで100年に1回程度の頻度で発生していた高潮災害などが、2050年には毎年のように起こるという。IPCCは温暖化に関する知見を各国に提供する政府間組織で、195カ国が参加している。今回の報告書は海と極地・高山地域の氷への影響に焦点を当て、公表済みの約7000の論文を基にして、日本の研究者4人を含む36カ国計104人の専門家が執筆に関わった。

<癌の増加>
*4-1:https://digital.asahi.com/articles/ASM634WF5M63UGTB009.html (朝日新聞 2019年6月4日) 福島の小児甲状腺がん、被曝との関連否定 県の専門部会
 2011年の東京電力福島第一原発事故時に、18歳以下だった福島県民を対象にした14~15年度分の甲状腺検査について、福島県の評価部会は3日、「現時点で、発見されたがんと被曝(ひばく)の関連は認められない」とする見解を取りまとめた。今回検討した検査は、11~13年度に続く2巡目。約27万人が受診し、このうち71人で、がんまたはがんの疑いが発見された。部会では、国連科学委員会による被曝線量の推計を使って、受診者の推計線量と、がんやがんの疑い発見の比率を、性別や年齢、検査年度などの影響が残らないよう調整して分析。線量とがんの発見率に関係がないと結論づけた。出席者からは、被曝線量の推計が個人別ではなく、地域で区分していることなどが指摘されたが、鈴木元(げん)部会長は現時点でできうる範囲のものと説明。「今回の結果をもって、(今後も)事故の影響が出ないとは言えない」とも述べた。

*4-2:https://blog.goo.ne.jp/kimito39/e/7b914e413119f15ca27d5b158f258b2d (Goo 2015.2.18) 内部被ばくの影響は10年後、必ずでてくる、西尾正道北海道がんセンター院長、インタビュー/ 財界さっぽろ
 放射線による健康被害は外部被ばくばかりが問題視される。しかし、深刻なのは体内に放射性物質を取り込んでしまった内部被ばく。長年、臨床医として放射線治療をしてきた第一人者に人体に及ぼす内部被ばくの影響を聞いた。世界機関に内部被ばくのデータなし
――食品安全委員会は7月26日、自然放射線や医療被ばくを除く放射線で、健康に影響が出るのは内部被ばく・外部被ばくを合わせて、生涯で100ミリシーベルト以上との答申案をまとめました。
西尾 日本の法律上では、一般公衆の線量限度は1ミリシーベルト/年ですが、政府はICRP(国際放射線防護委員会)の基準をもとに警戒区域や計画的避難区域を設け、校庭の活動制限の基準を3.8マイクロシーベルト/時間、住民には屋外で8時間、屋内で16時間の生活パターンを考えて、年間20ミリシーベルトとしました。この線量基準は年齢も考慮せず、放射線の影響を受けやすい成長期の小児や妊婦にまで当てはめるのは危険です。では、なぜこんな基準が示されたのか。移住を回避させる目的としか考えられません。しかし、原発事故の収拾のめどが立っていない状況で、住民に20ミリシーベルト/年を強いるのは人命軽視の対応です。そうした中で、今度は食品安全委員会から生涯で100ミリシーベルト以下なら安全だという答申が出された。しかも内部被ばくも含むという。しかし、内部被ばくについては、これまでICRPもIAEA(国際原子力機関)もまったく取り上げていません。むしろ原子力政策を推進する上で不問にしていた。だから内部被ばくに関するデータはまったく持ち合わせていないというのが現状です。
――にもかかわらず、100ミリシーベルトという数字を出したと。
西尾 結局、内部被ばくと外部被ばくの人体影響の差はまったくわかっていないので、とりあえず線量が同じなら同等と考えましょうというのが今の世界のコンセンサス。何の根拠もなく、わからないから1対1にしようということです。
――ものすごく乱暴な結論ですね。
西尾 ですから、内部被ばくの1ミリシーベルトと外部被ばくの1ミリシーベルトが同等の健康被害かどうかということすらわかっていない。内部被ばくは近くにある細胞にしか影響を与えません。局所的にアルファ線やベータ線の影響は強いわけですが、それを体全体の線量に合わせてしまうと60兆個の細胞のうちの局所的な個数ですから、見かけ上ものすごく少ない線量しか出てこない。そういうトリックがあります。そもそも国は、国民の被ばく線量もはかっていないのに、新たな規制値をつくるのは何の目的なんだということですよ。自分がどれだけ被ばくしているかもわからないのに、ただ数字だけが踊っている。
――考えられることは。
西尾 今後、予想される食品汚染ということになると内部被ばくの問題です。政府にはそういうデータはまったくないと思います。このタイミングで出てくるというのは、たとえばセシウムだったら年間5ミリシーベルトに抑えようと、肉だったらキロ当たり500ベクレルにしようとなっていて、そういうものを食べていれば年間5ミリシーベルトくらいになるということなんだけど、いまの規制値だとそれで収まりきらない可能性がある。だからもっとぼかした形で「一生涯にこれだけいいですよ」と。国民をだます手法の1つとして考え出されたものだと思います。ごまかしです。いままでの基準値だって、水は100ベクレルでした。それが東京・金町浄水場の水道水から210ベクレルの放射性ヨウ素が出たといったら、一気に300ベクレルに上げた。原発作業員も年間被ばく量は100ミリシーベルトといっていたら、それじゃ作業させられないから一気に250ミリシーベルトに上げた。その場でクリアできなくなったら、基準値を上げているだけ。一貫してそう。こんなことをやっていたら10年後は大変な問題が起こりますよ。「人ひとり死んでいない」とバカなことを言う人もいるけれど、それは目先の利益を追いかける人の発想です。問題は今後、奇形児が生まれたり、がんが増えたり、そういうことは確実に起こります。
――これまでに起こった原発事故で、内部被ばくによる人体への影響は明らかだと思うのですが。
西尾 いま世界中で内部被ばくを含め、隠されていたデータがどんどん出てきています。2000年以降、10ミリシーベルト以下の低線量でも健康被害があるという論文もいくつかあります。とくに子ども。放射線の影響は大人の3倍から4倍ありますよ。乳幼児の場合だったら、同じ甲状腺への取り込みは8倍から9倍になる。英国の使用済み核燃料棒の再処理工場があるセラフィールドでは、子どもの白血病が通常より10倍の罹患率です。チェルノブイリもそうです。IAEAの予想では4000人くらいの過剰がん患者というけれど、実際には100万人近く出ている。今回の福島だって、欧州のグループは今後50年間で42万人が、がんになると予想。ところがIAEAは6000人。ケタが2つも違うようなことを言っている。現在も、極めて原子力推進派の意見が世界を支配しているのです。避難住民は疎開ではなく移住すべき
――いまも福島原発からは放射性物質は出ているんでしょうね。
西尾 専門家は水素爆発時の100万分の1くらいになっていると言っていますが、いずれにせよ微量は出ていると思います。
――一連の爆発時にどんな放射性物質が放出されたのでしょう。
西尾 9割方はヨウ素131。あとの1割弱はセシウム134と137が半々くらいといわれています。
そのほかにコバルト、ストロンチウム、プルトニウムなど、もろもろ30核種50種類くらいの放射性物質が出た。
ただ、ヨウ素は半減期が8日だから、いまはほとんどなく、セシウムだけが残っている状況です。セシウム137の半減期は30年、134は2年です。
――一番毒性の強いのは。
西尾 プルトニウムです。アメリカの西海岸やハワイでも検出されています。
――そういうものを吸い込んだ人も、たくさんいるんでしょうね。
西尾 たとえば体内にセシウム137を取り込んだとします。物理的半減期が30年といっても、生物的には代謝する過程で体外に出ていきますから、実際には100日くらいしかない。4カ月もたっていたら4割くらいになっている。放射性物質を100取り込んだとして9割はヨウ素だから検出されない。1割のセシウムも3分の1くらいになっている。ですから理論的には100あったとしても3しか残っていない。
――国民はすでに汚染された肉などを食べた可能性もあります。
西尾 いまくらいの量だと実際にはそれほど問題はないと思います。ただ、食べ続けると健康へのリスクは高くなるでしょう。
――やはり食物が気になります。
西尾 政府は飲食物に関する規制値も緩和しました。年間線量限度をヨウ素では50ミリシーベルト、セシウムでは5ミリシーベルト、しかも従来の出荷時の測定値ではなく、食する状態での規制値です。これではますます内部被ばくは増加します。ちなみにホウレンソウの暫定規制値はヨウ素でキロ当たり2000ベクレル、セシウムは同500ベクレルとなりました。放射性物質は、よく水洗いすれば2割削減され、茹でて4割削減され、口に入るときは出荷時の約4割になります。確かに調理によって人体への取り込みは少なくなりますが、汚染水や人体からの排泄物は下水に流れていく。それは最終的に川や海に達します。環境汚染が進むことは避けられません。今後、日本人は土壌汚染と海洋汚染により、内部被ばく線量の増加を覚悟する必要があります。
――高い放射線量が計測される町にも人はいます。
西尾 20マイクロシーベルトになっているところは、さしあたって住めません。疎開でなく移住です。
疎開は少したったら帰ってくるという発想ですが、それは無理です。汚染地域では産業が成り立たない。
生活の基盤がつくれないのだから移住すべきだと思います。
21世紀は放射性物質との戦いの時代
――いまそういうところに住んでいる人は被ばくし続けているわけですよね。
西尾 いまくらいの数値だったら問題はないでしょう。世界中には自然放射線を年間10ミリシーベルト浴びているところもある。世界平均で2.4ミリシーベルト。それほど深刻になるほどではありませんが、地域経済は成り立たない。日本は最も原発に適さない国です。世界で発生する震度6以上の地震の半分は日本です。海に囲まれ、津波のリスクもある。国土が狭いから何かあっても逃げられない。静岡県の浜岡原発でチェルノブイリと同じことが起こったら、東京がすっぽり汚染地域に入ってしまう。そのくらい狭い国土なんです。中国はこれから原発を400基つくるといっています。日本にだって54基ある。何らかの事故でまた放射性物質がばらまかれる事態は想定しておかなければなりません。そんな時代に内部被ばくを不問にして健康被害を語るのは、まったくの片手落ち。21世紀は放射性物質との戦いの時代です。1980年以降、がんの罹患者数は増えています。昨年は心臓病を抜いてがんが、全世界で死因のトップになりました。これは単純な高齢化の問題だけでは説明がつかない。人工放射線が何らかの形で関与している可能性がある。そのくらいの思い切った発想で、放射線の健康被害を慎重に検討することが求められていると思います。

*4-3:https://blog.goo.ne.jp/kimito39/e/7b914e413119f15ca27d5b158f258b2d (Goo 2013.8.21) 被曝【10ミリでガン増加、政府データ】チェルノブイリなら「5ミリで強制移住」福島では20ミリで帰れ!
●MSN産経ニュースより 2013.11.8
【追加被ばく「年間20ミリ以下」で影響なし 規制委、住民帰還で提言へ】
 東京電力福島第1原発事故で避難している住民の帰還に向け、放射線防護対策の提言を検討している原子力規制委員会が、年間の追加被ばく線量が20ミリシーベルト以下であれば健康に大きな影響はないという見解を提言に盛り込む方針を固めたことが8日、分かった。放射線防護対策を議論する11日の検討チームで提言案を示し月内にもまとめる。提言を受け、政府は住民帰還に向けた具体的な放射線対策を年内にとりまとめる方針。国際放射線防護委員会(ICRP)は原発事故のような緊急事態後の段階では、住民の被ばく線量を年1~20ミリシーベルトにする目安を示している。田中俊一委員長も住民が不慣れな避難先でストレスを抱えて病気になるリスクもあるとし、「年20ミリシーベルト以下であれば全体のリスクとして受け入れられるというのが世界の一般的考え方だ」と述べていた。政府は事故後、年20ミリシーベルトを基準に避難区域を設定。ただ、除染の長期目標は年1ミリシーベルトとし論議を呼んでいた。規制委は国際基準を再確認し提言案に盛り込む。
●MSN産経ニュースより 2013.11.8
http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/131108/dst13110814110005-n1.htm 原子力規制委員長
 「年間20ミリシーベルトまで許容」した方がいい。チェルノブイリなら5ミリで強制移住。 自民党の鬼木議員は「基準値は厳しすぎる。500ベクレルに戻せ」と言い、安倍政権は福島原発付近の出荷規制を次々に解除。【原子力規制委員長「年間20ミリシーベルトまで許容した方がいい」】 民主党政権時に定められた放射能基準値も酷かったですが、自民党はその基準値を更に緩めようとしている動きを見せています。自民党の鬼木議員は「基準値は厳しすぎる。500ベクレルに戻せ」と言い、安倍政権は福島原発付近の出荷規制を次々に解除。そして、先日に福島原発と除染状況を調査するため来日した国際原子力機関(IAEA)の専門家チームのフアン・カルロス・レンティッホ団長は「必ずしも(国が追加被ばく線量の長期目標に掲げる)年間1ミリシーベルトでなくてもいい」と述べました。日本の原子力規制委員長もこれに合わせる形で「年間20ミリシーベルトまで許容した方がいい」と発言をしており、原子力を規制する側の組織が、体制側の連中を容認しているのが分かります。おそらく、政府や権力者の間では基準値を緩める前提で話が進んでいるのでしょう。だから、国民の反発を抑えるために、IAEAの団長や原子力規制委員会の連中にこのような言葉を言わせているのだと思います。山本議員らは何とか1ミリシーベルト以下の基準値にしようと努力をしていますが、政府が基準値を緩める方向で動いているため、多勢に無勢という感じの状況です。本当は基準値を厳格化するべきなのに、基準値を緩めるとか私には出来ません。政府の連中は本気で、「お金さえ手に入れば後はどうでも良い」と考えています。でなければ、今の状況で「基準値を緩める」なんて言葉は言わないはずです。
●読売新聞 2013年10月25日(金) http://s.news.nifty.com/headline/detail/yomiuri-20131024-01364_1.htm 【IAEA報告書 「1ミリ・シーベルト」はあくまで長期目標】
 東京電力福島第一原子力発電所の事故による除染は当面、どのレベルまで実施すべきなのか。国際原子力機関(IAEA)の調査団は、徹底除染により年間被曝(ひばく)線量を「1ミリ・シーベルト以下」にすることについて、「必ずしもこだわらなくてもよい」との見解を示した。適切な指摘である。環境省にはIAEAの見解に沿い、除染を加速させることが求められる。調査団は今月、第一原発周辺の現地調査を実施して除染状況をチェックし、報告書をまとめた。注目すべきは、報告書が、国際的基準に照らし、「年間1~20ミリ・シーベルトの範囲内のいかなるレベルの個人放射線量も許容し得る」と明記した点である。避難住民の帰還に向け、政府が設けている「20ミリ・シーベルト以下」という目安を補強するものだ。早期の帰還実現への弾みとしたい。政府は、除染の長期目標として「1ミリ・シーベルト以下」も掲げる。だが、1ミリ・シーベルト以下にならなければ帰還できないと思い込んでいる住民が少なくない。民主党政権が、徹底除染を求める地元の要望を受け、1ミリ・シーベルトを当座の目標としたことが尾を引いている。ゼロリスクにとらわれると、除染完了のめどが立たなくなる。住民の帰還は遅れるばかりだ。IAEA報告書も、1ミリ・シーベルトについて、「除染のみで短期間に達成できるものではない」と結論付けた。政府には、その事実関係を丁寧に説明するよう注文した。政府は、1ミリ・シーベルトが安全と危険の境目ではないことを住民に周知する必要がある。環境省は、第一原発周辺の11市町村で除染を実施しているが、汚染土を保管する仮置き場の確保などが難航し、作業は大幅に遅れている。現在、7市町村の除染計画を見直している。汚染レベルが比較的低い地域で重要なのは、除染と併せ、住民の生活再建に必要なインフラ整備を進めていくことだ。1ミリ・シーベルトを一気に目指さず、段階的に取り組めば、除染からインフラ復旧に、より多くの費用を振り向けられる。報告書のこの提言は、除染計画の参考になろう。政府は除染費用として、今年度までに約1兆3000億円を計上した。要した費用は東電に請求する仕組みになっているが、経営が悪化している東電に支払う余力はない。電気料金の値上げなどで国民の負担となる可能性が高い。いかに効率よく的確に除染を進めるか。喫緊の課題である。

*4-4:https://blog.goo.ne.jp/kimito39/e/746becae201fb092dd7a03cda57b1291 (goo  2014.4.16) 報道ステーション せっかく取材したのに、東京の汚染は全面カットだった!
●「無いこと」にされている関東の子どもの健康被害
川根…「放射能防護プロジェクト」に参加している三田茂さんという医師がいます。この3月に小平市の病院を閉院して、東京から岡山へ移住することを決断されています。今年3月11日に、『報道ステーション』で古舘伊知郎さんが甲状腺がんの特集をやりました。古舘さんは三田先生にも取材に行っています。三田医師は、東京・関東の子どもたちの血液、特に白血球の数値が低くなっている、と明らかにしました。それは柏市や三郷市のようなホットスポットだけでなく、埼玉市や川崎、横浜、相模原の子どもたちの数値も悪くなっている、と指摘しました。話を聞いた古舘さんたちは驚いて、「先生の名前と顔が出るが、話していいのか」と聞きました。三田先生は「大事なことだから、きちんとした良い番組を作ってくれるなら出して構わない」と、OKを出しました。ところが、数日後に連絡が来て、「実は東京が危ないということは報道できない」と、全面カットになったそうです。福島だけの問題になってしまいました。三田先生は、他の医師にも「甲状腺エコー検査機器を共同で買って、治療し直しましょう」と呼びかけているのですが、反応がない。多くのテレビ局や新聞社からも、「東京の子どもの健康問題はどうなっているんだ」と取材を受けていますが、一本の記事にも番組にもなっていません。今のマスメディアは、「東京は安全だ、危険なのは福島だ」という情報操作がなされているのです。

<ゲノム編集食品表示の緩さ>
PS(2019年9月29日追加):*5に書かれているとおり、今回のゲノム編集食品の表示については「遺伝子を切り取って機能を失わせるだけなら、(安全性に問題がないので《??》)表示規制の対象外にする」としているが、本当に安全かどうかは、薬と同様、多くの人が長期間摂取した後でなければわからない。そのため、消費者の選択権をなくしてそういう食品を食べたくない人にまで無理矢理食べさせるような表示規制は問題だ。また、消費者の立場を護るために作られた消費者庁の存在も、消費者の立場を護らないのであれば無駄になる。今、この緩い表示規制に対して民間ができることは、ゲノム編集していない食品には「ゲノム編集した食品は入っていない」という文言を大きく書くことしかないが、EUではゲノム編集食品も規制の対象にすべきだとの司法判断が出たそうだ。(本当はそれが当たり前だが)司法が正常に働く国は羨ましい。

*5:https://www.kyoto-np.co.jp/info/syasetsu/20190929_3.html (京都新聞社説 2019年9月29日) ゲノム食品  許されない「見切り発車」
 消費者の不安や懸念を置き去りにし、これでは「見切り発車」といわざるを得ない。狙った遺伝子を破壊して特定の機能を失わせたゲノム編集食品の流通や販売が、あさって10月1日から解禁される。血圧を抑える成分が多いトマトや芽に毒のないジャガイモ、肉厚なマダイなどの開発が進んでおり、早ければ年内にも食卓に並びそうだ。政府はゲノム編集技術で品種改良した食品の販売に向け、届け出制度を導入するが、特定の遺伝子を壊す手法なら安全性審査は不要だ。ゲノム編集食品であるとの表示も義務付けない。ゲノム編集は生物の遺伝子を改変する技術の一種だ。簡便な手法の開発に伴い、従来の遺伝子組み換え技術より効率よく高い精度で遺伝子を書き換えることができ、医療や農林水産分野での応用が期待されている。その技術を使った食品開発は昨年6月に政府が決定した「統合イノベーション戦略」に盛り込まれ、議論が加速。厚生労働省や消費者庁などが安全性や流通ルールの検討を急いでいた。厚労省によると、遺伝子組み換え食品と同様、遺伝子を外から組み込む場合は厳格な安全性審査を求める一方、遺伝子を切り取って機能を失わせるだけなら規制の対象外とする。ゲノム編集食品の大半が届け出だけで販売が認められるという。精度が高いゲノム編集ならば想定外の変化や異常は起きにくく、安全面は従来の品種改良と同程度のリスクというのが、その理由だ。だが新技術ゆえに未知の部分も多い。予期せぬ変異は生じないと断言できまい。ゲノム編集の方法や新たなアレルギー原因物質の有無などを届け出る必要があるものの、違反しても罰則はなく実効性に疑問符が付く。ゲノム編集食品の開発・流通を促進させるためとはいえ、拙速過ぎないか。消費者はどう受け止めているのか。厚労省の意見公募に約700件が寄せられ、大半が「長期的な検証をしてから導入すべきだ」といった懸念だった。消費者庁の姿勢も疑問だ。流通・販売の解禁に際し、検査が難しいことなどを理由にゲノム編集食品であるとの表示を義務付けない方針を決めた。表示がなければゲノム編集食品かどうか分からず、消費者は知らないうちに口にする恐れがある。不満が出るのは必至だろう。消費者目線で対応すべき官庁として存在意義が問われる。ゲノム編集によって有用な品種改良が短期間で可能になる。消費者にも利点は多い。しかし食の安全・安心へのこだわりは根強い。欧州連合(EU)でも昨年、ゲノム編集食品も規制の対象にすべきとの司法判断が下された。不安を解消しないまま、ゲノム編集食品の流通が既成事実となる事態は避けたい。少なくともゲノム編集を施したとの明示は欠かせない。情報を正しく消費者に知らせ、安全で安心な食品を「選ぶ権利」を確保することが重要である。拙速に解禁しても消費者に受け入れられない。遠回りであっても法整備やルール作りを通じ、新しい技術への理解を深めることこそ早道といえよう。

<原子力規制委員会は人体に関する専門家ではない>
PS(2019年9月29日追加):上のように、人体の専門家である医師が内部被曝の危険性を説明しているのに、原子力の専門家である原子力規制委員会が「科学的に安全だ」と言ったから安全で、それを信じない人は「非科学的であり、風評被害の根源だ」などと*6が記載しているのは、“専門家”の区別もつかない文系のドアホと言うしかない。原子力の専門家である原子力規制委員会が言っている安全性は、「人体への安全性」ではなく「原子力産業と経産省継続の安全性」なのに、よくもここまで主観的・感情的なこじつけが書けるものだ。もちろん、何だって食べたい人が食べるのは自由だが、国全体では医療費・介護費が増えて年金支給額は減るだろう。

*6:https://www.nishinippon.co.jp/item/n/546973/ (西日本新聞 2019/9/29) 処理水放出、遠い「安心」 原田・前環境相発言を読み解く
 「思い切って(海洋に)放出するほかに選択はない」。東京電力福島第1原発で増え続ける処理水について、原田義昭前環境相=衆院福岡5区=がこう問題提起し、論議を呼んでいる。科学的根拠に基づくとされる「安全」と、それでもなお多くの人々が素直には胸に抱けない「安心」-。今回、あらためて浮き彫りになったのは、このギャップを埋めるのが簡単ではないという現実だ。原田氏の発言は、環境相退任前日の9月10日に飛び出した。放射性物質トリチウムを含む処理水の海洋放出を主張し、「それによって残るであろう風評被害や漁業者の苦労は、国を挙げて補完することが極めて大切だ」と強調した。処理水は今も毎日170トンずつ増え、現在計116万トンがタンク約千基に保管されている。東京電力は2022年夏ごろには満杯になり、原発の廃炉作業にも支障が出る恐れがあるとしている。国は有識者でつくる小委員会を設置し、気体にして大気中に放つ「水蒸気放出」や「地層への注入」なども選択肢に処分方法を話し合っているが、答えは出ていない。
     ■ 
 専門家である原子力規制委員会の見解は、トリチウムの人体への影響は極めて小さいので心配なく、海洋放出が「処理水処分の現実的、唯一の選択肢」(更田豊志委員長)というものだ。原田氏は、この「科学性」に依拠して声を上げた。誰もが触れたがらないことを、勇気を出して世に問うたと受け止めたのは、復興相経験者の自民党議員。「フクシマの復興を真に加速させる意味で、(原田氏の発言が)放出を決断するきっかけになればいい」。松井一郎大阪市長と吉村洋文大阪府知事も、「環境被害がないものは国全体で処理すべきだ」と同調。大阪湾で、一部の処理水放出を受け入れても構わないと踏み込んだ。これに対し、福島で日々生きる住民からは、海洋放出は水産物などへの風評被害を招くとして「容認できない」との反発が出ている。相馬双葉漁協(福島県)の立谷寛治組合長は「『安全』を訴えても、どうしても信じてもらえない消費者が一定数はいる。原発事故後に試験操業でこつこつやってきて、風評被害がやっと徐々に減っているのに、漁師の努力に水を差すつもりか」と憤る。昨夏には、処理水中にトリチウム以外の放射性物質が残留していることも判明。漠とした不安の影を濃くした。
     ■ 
 国の小委員会メンバーでもある東京大大学院の関谷直也准教授(災害情報論)は「科学的に安全だからといって、社会的な課題が解決していないのに放出を急ぐとすれば早計だ」と指摘。小委員会は、風評被害との向き合い方もテーマに検討を深めている。原田氏の後任の小泉進次郎環境相も福島を訪れ漁業関係者に陳謝し、こう述べた。「世の中に一石を投じる必要性は分かるが、簡単に石は投げられない」。では、どうすれば人々の「安心」を獲得して「安全」に近づけていけるのか-。処理水はたまり続ける。解決策はまだ見えない。

<東京オリンピックのトライアスロンは、美しい自然と歴史ある街を舞台に>
PS(2019年10月1日追加):東京オリンピックのトライアスロン競技会場がお台場海浜公園のままであれば、トライアスロン選手に酷であるだけでなく、見る方も楽しくないし、日本開催のオリンピックなのに日本の醜さばかりが世界に報道され、日本の歴史や自然の美しさが報道されない。そのため、*7のトライアスロンは、神奈川県江の島からスイムを開始し、バイクで鎌倉の名所や横浜港・元町中華街・東海道などを通って、最後に東京都内の名所をランしてゴールするように変更すれば、面白い競技を通して周囲の美しい自然と歴史(日本の鎌倉時代、江戸時代、明治維新、現代)をパノラマで世界に発信することができる。この時、日本の報道機関が、江の島付近の自然や海中、鎌倉時代、江戸時代、明治以降の歴史や付近の自然を外国の報道機関も的確に報道できるよう、あらかじめ映像や解説を渡しておけば効果的だと思う。

   

(図の説明:一番左の図は、鎌倉の名所旧跡を示した地図で、中央の3つは横浜の名所だ。また、一番右が東京の名所を示した地図だが、いずれも錚錚《そうそう》たるものである)

*7:https://www.2020games.metro.tokyo.lg.jp/taikaijyunbi/taikai/syumoku/games-olympics/triathlon/index.html (概要のみ抜粋) トライアスロン
距離:オリンピックディスタンス(スイム1.5㎞、バイク40㎞、ラン10㎞)
スイム(水泳)、バイク(自転車)、ラン(長距離走)の順で、1人で連続して行う競技で、屋外で行われます。着順を競う競技です。

| 原発::2015.11~ | 04:33 PM | comments (x) | trackback (x) |
2019.9.9~10 予算の使い方と公会計制度 ← 2020年度予算と社会保障削減・消費税増税の圧力から (2019年9月11《図》、12、13、14、15、16、21、22、23日に追加あり)
 
         2018.11.17・2018.12.21産経新聞   2019.8.31東京新聞・毎日新聞

(図の説明:1番左の図のように、日本の国家予算は増加の一途を辿り、左から2番目の図のように、2019年度予算は100兆円を超えて2/3は税収だが残り1/3は国債で賄われている。従って、国の財政状態と収支の状況を正確に知って合理的な管理をするため、国際会計基準に従った公会計制度を導入することが急務だ。さらに、2020年度については、右の2つの図のように、日本の国家予算は105兆円を超えそうだ)

(1)日本の国家予算と公会計制度
1)国家予算総額とその決め方について
 *1-1・*1-2のように、2020年度の政府予算概算要求が出そろい、総額105兆円規模になるそうだ。多くのメディアや経済評論家は、総額30兆5千億円と支出額が最大の年金・医療を無駄遣い扱いしているが、本当は支出の内訳を見なければ、そのうちのどれが無駄で本当に必要なのかを判断することはできない。そして、これは民間では当然やっていることなのである。

 また、国債費の支払いも借金を返済している部分と利子を支払っている部分がごっちゃになっているため、これによっては財政状態がよくなったのか悪くなったのかさえ判断できない。しかし、現在なら、借り換えして利子の支払を限りなく0に近づけることができる筈で、これも民間企業なら当然やっていることだ。

 このように国の財政状態も歳出の効果も不明になる理由は、国が現金主義に基づく単式簿記を使っており(小使い帳方式)、発生主義に基づいた複式簿記によるコストセンター毎の会計(民間はすべてこちら)を行っていないからだ。そして、予算と言えば集団毎の分捕り合戦になるが、単に総額が大きいだけで「社会保障費が無駄遣いの根源だ」などと言うのは間違っており、私は単なる景気対策の支出こそが効果の薄い無駄遣いだと思う。

 さらに、国の歳入も消費税を別枠にする国は他に無いし、消費税を上げて生産性の低い景気対策目的の支出を行っていては、いつまでたっても国全体の生産性が上がらない上、国の収支や財政状態も改善しない。私は、既に先進国となり、世界に先駆けて高齢化しつつある日本で最も効果的な成長戦略は、消費税を廃止又は低減させ、年金も減らさずに民間の可処分所得を増やし、市場で本当に必要とされ選ばれる製品やサービスに力を入れることだと考える。何故なら、これらは、後に他国でも必要とされ喜ばれるものだからだ。

 そのため、消費税を増税して景気対策に支出するのは、①消費税増税が自己目的化している ②景気対策と称して選挙に有利な支出を増やしている ように見える。

2)農林水産業の補助金について

   

(図の説明:1番左の図は改良型風力発電機で、2番目の図はハウスに設置した太陽光発電機だ。また、右から2番目の図のように、植物の生育に必要な青と赤の光を通し、不要な緑の光で発電するシースルー型太陽光発電機もできた。一番右の図のように、薄膜型太陽光発電機の応用分野は農業を含めて広い)

 私も、*1-3に書かれているとおり、食料・農業・農村基本計画は、食料自給率向上を重視するとともに、農林水産業は地域の重要な産業であるため地域政策もあわせて考えるべきだと思う。そして、今までそうなっていなかった理由は、農水省等の中央省庁で政策を考えている官僚の多くが都会育ちで、地方の事情に無関心だからだろう。

 そして、前に書いたとおり、人口減少と高齢化によって日本の食料自給率は向上するのが当然であり、世界の人口増加を考えれば日本の食料自給率を向上させておくことは必須で、それと同時に、高齢化・共働き化が加工食品のニーズを高めると考える。

 また、生産基盤の再建や担い手不足等も課題だが、これらは、農林水産業が儲かる魅力的な職業になれば解決する。しかし、国は真っ赤な赤字であるため、再エネを農林水産業の副収入として所得を得つつ地域の金が外部流出しないようにしたり、農林水産業をスマート化したり、外国人労働者を入れたりなど、生産性向上に資する方向で補助金をつけるのがよいと思う。

 なお、中山間地域等は、穀類生産には条件が不利でも他の作物でも不利とは限らない。そのため、TPPやEUとのEPAに対抗するには、徹底した適地適作と経営合理化の追及が必要だ。

3)本当に必要な防衛費はどこまでか ← 予算委員会でチェックすべき
 *1-2に、防衛省の要求も過去最高額を塗り替えたと書かれており、*1-4には、来年度予算の防衛省概算要求額は過去最大の5兆3223億円で、米国からの高額な兵器の購入が総額を押し上げたと書かれている。私も、TPPレベルのFTA妥結の見返りや日米同盟の見返りに不要な物まで高い価格で買わされているのではないかと思う。

 そのため、国会の予算委員会では、防衛省の概算要求額の内訳をチェックし、憲法で定める自衛のための必要最小限度の実力を保持するのに必要十分かどうかを確認する必要があり、それまでに正確な前年度実績と次年度の予算案ができていなければならない。そして、これは会計期間・会計制度・国会の審議日程を少し変更すれば可能であり、民間企業は(海外に多くの子会社や支店があっても)期末から2カ月後に開催される株主総会で、これをやっているのである。

(2)鉄道の高架化と駅ビルの建設は、新しい街づくりを進めやすくするとともに、生産性向上に資する投資である
 *2-1・*2-2のように、神奈川県で京急の電車とトラックの衝突事故が起きたが、事故現場は「開かずの踏切」で、このような踏切は都市部に多く、踏み切りを渡るために長時間待たなければならない。また、道路も狭いため、渋滞を招き、大型車の運転には神業を要する。

 そして、日本の都市には海外と比較してこのような踏切が多く、ストレスが多い上、生産性を低くしている。そのため、根本的な解決は、踏切を高架化して道路を拡幅し、駅ビルや駅近の踏切下に店舗や駐車場を作って時代にあった街づくりをすることだと思う。さらに、地方にも危険な踏切が多く、高架化して1階を道路の拡張に使ったらどうかと思う。

 しかし、これらを行うには国や地方自治体は予算を要するが、日本の問題は、工事費が高いだけでなく工事に時間がかかりすぎ、他国なら3年ですむ重要な街づくりが30年かかってもできないという深刻な状況になっていることである。

(3)災害復興と防災投資
1)佐賀豪雨について
 佐賀県をはじめとする北部九州地域で、*3-1-1・*3-1-2のように、記録的な大雨による浸水が起こった。近年は、1時間に100ミリを超す大雨が多く、それを聞いても驚かなくなったが、大町町で佐賀鉄工所大町工場から約5万リットルの油が流出したのは、周辺住民にも農業にも痛手だった。

 佐賀鉄工所大町工場からの油の流出は約30年前にも発生し、油をためる油槽がある建物を数十センチかさ上げしたり、建物に高さ3.5メートルの重量シャッター3台を設置したりして対策はとっていたそうだが、その「想定」を超えるレベルの浸水だったとしている。しかし、想定にはゆとりを持ち、厳重な防護をしなければ意味がない。

 農地への油の流出被害は推計で約82万5千平方メートルに及び、農作物被害は収穫間近の水稲25.8ヘクタール・大豆15.3ヘクタールと、天災と人災が重なり大変なことになってしまった。

 なお、*3-1-2のように、農業用水路から六角川に排水するポンプを稼働させていたが、流出した油が川から有明海に広がることを恐れた町の指示を受けてポンプを停止したため、水は行き場を失って地域をのみ込み、家屋も油まみれになった。私は、確かに六角川や有明海に油が広がるとさらに被害が大きくなるため、川に排水しなかったのはまずは正解だと思う。

 「どげんしたら地域を守れたのか」については、海上保安庁に海上流出油事故や有害液体物質・危険物の流出事故の対応を専門に行う海上流出油事故対応チーム(https://www.jstage.jst.go.jp/article/safety/45/6/45_445/_pdf/-char/ja 参照)があり、ナホトカ号やダイヤモンドグレース号の油流出事故などの油流出事故への対応・処理にあたった部署であるため、ポンプの停止や水門の閉門と同時に、ここに油の除去を依頼すればよかったと思う。

 このような場合、海上保安庁が「私たちならできる」と手を挙げず、国土交通省・農水省・総務省もすぐに気付いて救援依頼をしなかったのは、セクショナリズムが原因だろう。

 なお、*3-1-3のように、佐賀県の豪雨被害で、武雄市・多久市・杵島郡大町町が「局地激甚災害」に指定され、復旧事業の国庫補助率が引き上げられることになったのはよかったが、市民の生活再建への直接的な助成ではなく、市町の復旧事業を支える意味合いが強いそうだ。

 しかし、「前に向かって進める基盤ができた」のはよかったが、何度も同じことを起こさず、災害を事前に予防できる街を造るには、復旧ではなく新しい区割りによる復興が不可欠である。

2)胆振東部地震について
 胆振東部地震をきっかけとして、*3-2-1のように、北海道内全域の停電が発生し、これは、電力需要の約半分を担っていた北電苫東厚真火力発電所の発電機3基が相次ぎ損壊して電力の需給バランスが崩れて全電源が停止したからだった。

 私も、広大な地域で使われる電力を少数の大型電源に依存する態勢はもろく、エネルギー代金を海外に吸い取られるため、再エネによる分散発電で停電リスクを減らし、同時に送電ロスも減らすのが最終的な解だと思う。そうするためには、「マイクログリッド」を進め、太陽光、風力、バイオガスなど地域の特性に合った再エネを活用して地域経済を活性化しつつ、余った電力は他の地域に販売するための送電線を鉄道や道路に付随して設置するのがよいと考える。

 

(図の説明:1番左の図は、牧場に設置された風力発電機、左から2番目の図は、山林に設置された風力発電機だ。また、右から2番目の図は、海の養殖施設に設置された風力発電機で、1番右の図が潮流発電機だ。どれも、野生生物を傷つけずに最大の出力を出す工夫が求められる)

3)宮古島台風について
 台風13号が通過した宮古島市では、*3-2-2のように、市内の約8割を超える2万590戸が停電した。島も「マイクログリッド」の適地であるため、太陽光、風力、海流などの地域特性に合った再エネを利用して「マイクログリッド」を進め、経済を活性化するのがよいと思う。

4)東日本大震災について

   

(図の説明:1番左と左から2番目の図は、津波が起こるメカニズムだ。津波は、普通の波と異なり、大きな水塊が迫ってくるので薄い防潮堤なら圧力で壊れる。右から2番目の図が、実際に堤防を乗り越えて岩手県田老町の漁協付近を襲った津波で、1番右の図は、岩手県宮古市の津波後の光景だ《http://www.bousai.go.jp/kohou/kouhoubousai/h23/63/special_01.html》。この写真から、どういう構造の建物が地震・津波に堪えるかわかる)

 *1-2に、2020年度の特別会計で扱う東日本大震災復興予算の要求は2兆242億円だったと書かれている。もちろん、東日本大震災は、原発事故という人災がなくても未曾有の自然災害だったが、その対策としてとられた措置は、復興税を払って復興に協力してきた国民が納得できるものだったかどうかについて、今後のためにも事実を開示してもらいたい。

i) かさ上げ地は本当に安全か?
 東日本大震災では、過去の津波記録が残る神社は津波が到達しない高台に作られていたため被害を免れることができた。そのため、一定周期で訪れる大震災や大津波に対応するためには、高台に宅地を作らなければ同じ被害に遭うことがわかっている。

 従って、*3-3-1のうち、高台に新しく街を造って移転する防災集団移転が最も安全な防災方法であり、高台に移転した住民を孤立させてはいけない。何故なら、土地をかさ上げして整備する土地区画整理は、かさ上げ高が十分でなければ同じ被害にあうことになるが、かさ上げされた高さは2011年に襲った津波高よりも低く、予算の関係からか十分な高さのかさ上げができていないからである。

 しかし、漁業者や水産関係の食品加工会社が、海の近くのかさ上げした土地で営業したいのはわかるし、合理的でもある。その場合は、前回と同じ津波が来ても退避できる高さの階を持つビルを建設することが必要条件になる。最もやってはならないことは、元どおりに復旧することだ。そして、十分に整備された安全な宅地に住民が少なければ、人口過多の都会や海外からの移住を促す政策を考えればよいだろう。

ii)  巨大防潮堤は有益か、有害か?
 *3-3-2の巨大防潮堤は、白砂の浜と松林の風景を遮る醜いコンクリートの壁で、かつ高さ5メートルでは役立たない。私は、海から遠ざかる選択肢がなければ、海の近くで低層階は舟形にして津波をかわし、大津波から退避するに十分な高層階のある建物を作ればよいと思う。

 しかし、395kmの高さが最大15.5mの防潮堤では、東日本大震災級の大津波を防げない上、景観を損ね、陸と海が遮断される結果、陸からの栄養塩が海に流れなくなる。そのため、このような公共事業ありきの防潮堤を作ってはならない。

 私も、人工の構造物は自然の猛威の前にはひとたまりもないため、人間は自然に対して謙虚であるべきだと思うし、津波を一時的にせき止めて進行を遅らせる程度の構築物に莫大な予算を使うのは止めてもらいたい。巨大防潮堤は三陸海岸の景色や生態系という資産をなくし、無用の長物に膨大な金をかけたという意味で次世代の人にとってもマイナスだと私は思うし、巨大防潮堤を作るという判断の正否を、のんびりと歴史に任せて、あの世で審判を受けられても困るのだ。

5)熊本地震について
 *3-4のように、来春の熊本県知事選に、現職の蒲島氏が「熊本地震からの復興の流れを、今ここで止めるわけにはいかない」として、4選を目指して立候補する意向を固めたそうだ。

 知事としての適否は勤めた期数で決まるわけではなく、これまでの実績と次への期待で決まるものだ。そこで、私は「創造的復興」に賛成であるため、蒲島現知事を応援したい。震災で街づくりをやり直さなければならない状態になったことは、見方を変えれば新しい街づくりの推進力ともなるため、一皮むけた便利な空港・港湾・道路と心地よい住宅・田園造りを進めて欲しい。

(4)社会保障給付削減と消費税増税への圧力

   
     2018.3.19東京新聞                  2018.11.15共同通信

(図の説明:左図のように、インフレ政策と消費税増税で物価が上がって実質年金額が減ったためエンゲル係数が上がり(=国民が貧乏になり)、悪影響を受けた人の多くは高齢者だ。また、中央の図のように、世界の中で日本は女性の活躍も進んでいない。そして、右図のように、支え手の増加には高齢者や女性のほか外国人労働者も考えられている)

1)3号被保険者制度は何のために作ったか? ← 1985年に初代男女雇用機会均等法ができたため、女性の社会進出を防ぐために専業主婦を優遇したのである
 政府は、2015年に、*4-1のように、使い道が約30年間決まっていなかった専業主婦が国民年金に任意加入だった時代(1985年改正以前)に納めた保険料収入による年金積立金約1兆5500億円を、2015〜2024年度の公的年金給付に充てる政令を決定し、これを10年間にわたって給付財源として活用するとのことだった。

 1985年の年金制度改正では、*4-1・*4-2のように、サラリーマンの夫を持つ専業主婦が「第3号被保険者」として保険料負担なしで国民年金に加入することになったのだが、それ以前は約7割の主婦が任意加入して保険料を納めており、積立金が7246億円、その後の約30年間の運用収益が8282億円あり、2014年3月末時点で総額1兆5528億円になっていたそうだ。

 *4-2に、1985年改正で、「サラリーマンの専業主婦を国民年金制度に強制適用するため3号被保険者制度を創設し、これによって女性の年金権が確立した」と書かれているが、それまでは7割の主婦が任意加入して保険料を納め、働く女性は働く男性と同じく厚生年金・共済年金に強制加入して保険料を支払っていたので、専業主婦も強制加入にして保険料を納めさせるのがむしろ公平だった。また、全ての年金積立金を発生主義できちんと運用していれば、現在のような著しい年金積立金不足は起きなかった筈なのだ。

2)年金制度の「不都合な真実」は誰の責任(ここが重要)で起こったのか?
 有権者の誰にとっても生活に直結する最も重要な政策は社会保障だが、*4-3は、年金について、「①年収500万~750万円未満の層は65歳までに3200万円必要」「②年収が1000万~1200万円未満の世帯の不足額は6550万円に上る」「③非正規雇用の比率が高い団塊ジュニア世代は、貧困高齢者になりそうな人が他世代より多い」 「④夫が働き、妻がずっと専業主婦の世帯を『標準』として将来の年金水準を見通すが、今の日本の世帯は共働きが主流」「⑤急務なのは現在の高齢者の年金給付を抑える『マクロ経済スライド』が発動しにくい仕組みを改めることだ」としている。

 そのうち、①②は、年収が多い人ほど年金保険料の支払いも多いのに、年金支給額は働く世代全体の平均年収の50~60%に設定されるので、年収が多かった人は年金でカバーされる生活費の割合が低くなり、残りを貯蓄でカバーしなければならないために起こる現象だ。

 また、パートやアルバイトなどの非正規雇用は戦前からあったものの、1990年代以降は新入社員にも非正規雇用が増え、これは労働基準法・男女雇用機会均等法等で護られない雇用形態であるため、③の問題が起きた。さらに、④のように、今でも、夫が働き妻はずっと専業主婦であり続ける世帯を「標準」と考えているのは、時代錯誤と言わざるを得ない。

 そして、日経新聞はじめ多くのメディアや論客と言われる人々が、「高齢者の年金給付を抑えることが重要で、それに反対するのはポピュリズムだ」などと説いているが、これまで述べてきた通り、高齢者を犠牲にするよりも先に改善すべきことが山ほどあるのである。

3)社会保障の給付減と消費税増税しか思いつかないのは何故か? ← 国民をより豊かで幸福にしたいという発想がないからである
 *4-3は、「①団塊の世代が75歳以上になり始める2022年から高齢者医療費の伸びが加速し、会社員らの保険料負担はどんどん重くなる」「②超高額医薬品の使用は医療保険制度そのものを揺さぶる」「③介護の担い手不足は、2025年に55万人に上る」「④給付と負担のあり方に知恵を絞ることになる社会保障改革に『聖域』はないほうがいい」などと記載している。

 そのうち①③④については、なるべく長く支え手の側において保険料収入と健康を維持し、②については、高額医薬品といっても医療保険での負担を加味して価格を高くしているものも少くないため、外国での販売価格と比較したり、新しい製品は自己負担での混合医療を認めて効くようなら速やかに同価格で医療保険からも負担するようにしたりし、④については、外国人労働者も活用する などの合理的な課題解決をすべきだ。

 また、*4-4は、「⑤政府税調が中期的な税制の在り方をまとめる答申の骨子が判明し、現役世代を支え手とした社会保障制度や財政は少子高齢化で『深刻な課題』に直面している」「⑥制度維持には十分で安定的な税収基盤の確保が不可欠だ」「⑦10月の消費税率引き上げ後も何らかの増税策が必要」と記載している。

 しかし、⑤については、少子高齢化するのは1980年代にはわかっていたのに対策も行わず、歳入に対してはきちんとした管理もせずに放漫経営をしてきたことに問題があるため、国に公会計制度を導入して歳出とその効果を正確に検証できるようにし、保険料は発生主義で積み立てるなどの改革をしなければ、負担増をしても放漫経営の規模が拡大するだけなのである。

 さらに、⑥⑦については、「消費税は安定財源だからよい」という主張が多いが、景気が悪くても安定して入ってくるのでよいと言われる消費税は、景気調整のためのビルトインスタビライザー効果がないため、むしろ悪いのである。

4)支え手の拡大はすべき
 厚労省は、*4-5のように、省内の全部局に「非正規」や「非正規労働者」という表現を国会答弁などで使わないよう求め、東京新聞がこのことを情報公開請求した後に撤回したそうだ。

 本当は、労働基準法・男女雇用機会均等法等で護られない雇用形態である「非正規雇用労働」自体をなくさなければならないのであり、言葉を「有期雇用労働者」「派遣労働者」に変えれば問題が解決するわけではない。そして、労働基準法・男女雇用機会均等法等で護られない不利な雇用形態で働く人があってはならず、働き方の多様化は、年齢や性別にかかわらず正規労働の範囲内として、必要な条件を設定して行うべきなのである。

<国家予算と公会計制度>
*1-1:https://digital.asahi.com/articles/DA3S14159061.html?iref=comtop_shasetsu_02 (朝日新聞社説 2019年8月31日) 来年度の予算 ばらまき封じの徹底を
 総額105兆円規模となる2020年度の政府予算の概算要求が出そろい、編成作業が本格的に始まる。年末に向けて削り込んでいくが、19年度に続き、100兆円規模の超大型予算が組まれる可能性が高い。年金や医療などの経費が30兆5千億円、借金の返済にあてる国債費が25兆円と、この二つで要求総額の半分を占める。税収を60兆円台と見込んでも、社会保障費だけで半分は使ってしまう。その他の政策経費をまかなう分だけでも、10兆円以上は新たな借金をしなければならない。厳しい懐事情をよそに、防衛費など、のきなみ増額の要求が並ぶ。消費税率が10%になって税収が増えるから、2年限りの消費税対策が別枠で認められるからと、絞り込みが甘くなっては困る。いまの暮らしに欠かせない政策や真の成長戦略に手厚く配分するのはもちろんだが、同時に将来世代も見据え、予算づくりに臨まねばならない。予算編成のルールとなる概算要求基準には、本格的な歳出改革に取り組み、施策の優先順位を洗い直し、無駄を徹底して排除すると書いている。19年度も同じ表現があったが、実行できたとは言い難い。今回こそ本気で取り組むべきだ。ところが各省の要求を見ると、不安が募る。防災事業や水産業の交付金、企業や文化事業を支援する補助金では、政策効果が不十分、経費がかかりすぎている、といった問題点がこれまでに政府内で指摘されていながら、今回も盛り込まれた事業がある。一つひとつの施策について、見直しの徹底が求められる。高齢化で増え続ける社会保障費も、聖域ではない。景気対策も、予算をふくらませる要因だ。確かに、米中の追加関税のかけあいや、英国の欧州連合(EU)からの離脱など、先行きには不透明感が漂う。10月の消費税増税後の消費の動きも、見極めなければならない。安倍首相は増税の影響について、19年度の予算で「十二分の対策を取っている」と強調する。世界経済の行方も踏まえた目配りは必要だが、増税対策や景気対策の名を借りたばらまきは、封じなければならない。どんな対策なら、より少ない費用で最大限の効果を引き出せるか、精査するべきだ。政権が掲げる25年度の財政健全化の目標は、新たな借金をできるだけ抑えなければ達成できない。次世代の負担を増やさぬよう、政策の費用対効果を見極め、ばらまき封じを徹底する。それが予算編成の課題だ。

*1-2:https://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201908/CK2019083102000157.html (東京新聞 2019年8月31日) 一般会計、105兆円規模
 二〇二〇年度予算編成で財務省は三十日、各省庁からの概算要求を事実上締め切った。一般会計の要求総額は百五兆円規模に膨らみ、二年連続で過去最大を更新。年金・医療など社会保障を担う厚生労働省や防衛省の要求が最高額を塗り替え、災害対策費も全体を押し上げた。今年十月の消費税増税に伴う景気対策などは別枠で上積みするため要求には含んでおらず、査定で抑えても、十二月に組む予算案は一九年度の百一兆四千億円を超える可能性が高まった。安倍政権は景気後退を防ぐために歳出拡大を辞さない考えで、増税に踏み切っても財政健全化の進展は多難な情勢だ。要求総額の百兆円超えは六年連続。重点施策で上積みできる「特別枠」を各省庁が活用した結果、一九年度要求から約二兆円増えた。省庁別の最大は厚労省の三十二兆六千二百三十四億円。看板政策の就職氷河期世代支援に六百五十三億円を割いた。医療など社会保障の中核的な経費は、高齢化に連動した「自然増」を五千三百億円計上し、他省庁分を含む合計では三十三兆円程度に達した。防衛省は、高額装備品の取得により五兆三千二百二十三億円を計上。豪雨など災害対策を拡充する国土交通省は一九年度当初予算比18%増の七兆百一億円を求めた。他には子供が巻き込まれる事件・事故の防止、選手強化や警備といった東京五輪対策が目立った。自治体に配る地方交付税と特例交付金の合計は2・7%増の十六兆四千二百四十六億円。また借金返済に充てる国債費が全体の四分の一近くの二十四兆九千七百四十六億円に伸びている。特別会計で扱う東日本大震災復興予算の要求は二兆二百四十二億円だった。

*1-3:https://www.agrinews.co.jp/p48667.html (日本農業新聞 2019年9月7日) 基本計画見直し着手 食料自給率向上が焦点 地域政策も鍵
 農水省は6日、農政の中長期的な羅針盤となる食料・農業・農村基本計画の見直しに着手した。吉川貴盛農相が食料・農業・農村政策審議会(会長=高野克己・東京農業大学学長)に計画変更を諮問。来年3月に新たな食料自給率目標などを示した計画を閣議決定する。生産基盤を再建し、自給率向上の道筋をどう描くかが焦点。担い手不足にあえぐ中山間地域を維持させる地域政策を打ち出せるかも課題だ。同計画は食料・農業・農村基本法に基づき、5年ごとに見直す。同審議会の企画部会は今後、「食料の安定供給確保」「農業の持続的な発展」「農村の振興」などのテーマで年内に計6回の会合を開き、議論する。11月には現地調査や地方での意見交換会も開く予定だ。現行計画は、カロリーベース自給率を2025年に45%に引き上げる目標を掲げた。だが、18年は37%と前年比1ポイント低下し過去最低となった。新たな計画では、どのような水準の自給率目標を設定するかがポイント。自給率下落に歯止めをかけ、上向きに転じさせる施策の検討が求められる。吉川農相は諮問に当たり、農業生産所得の増加や輸出拡大などについて、農政改革によって「成果が着実に現れ始めている」と強調。一方、人口減少や高齢化などを課題に挙げた。地域政策については「地域資源を活用して仕事を作り、人を呼び込むことで活力を向上させる必要がある」と強調した。審議会と企画部会の委員を務めるJA全中の中家徹会長は、近年は農業産出額や生産農業所得が増加しているものの「生産基盤が強化されたかといえば決してそうではないのでないか」と提起。現行計画の徹底した検証が必要だと訴えた。会合では、自給率向上への具体策や次世代への経営継承などの人材確保の必要性を指摘する意見が相次いだ。農村政策の充実、先端技術を活用した「スマート農業」の普及も課題に挙げた。
[解説] 難局打開へ徹底議論を
 国内農業は今、生産基盤の縮小が加速する中、大型通商協定が相次ぎ発効するという、かつてない難局にある。食料安全保障が大きく揺らぐ事態も招きかねない。これまで以上に実効性のある対策が求められる。政府が設定した見直し期限は来年3月。検討に費やすことができる期間は6カ月程度しかない。打開策を導き出すための徹底した議論ができるかどうかが問われている。生産基盤の弱体化に歯止めがかからず、自給率向上には、その再建が欠かせない。18年度の基幹的農業従事者は145万人。10年間で2割以上減った。耕地面積442万ヘクタールも減少が続く。特に、中山間地域を含む条件不利地にはてこ入れが必要だ。規模拡大など、産業政策に偏る安倍政権の農政を見直し、地域政策を充実させる時期に来ている。日本にとって過去最大の農産物の市場開放を受け入れた環太平洋連携協定(TPP)、欧州連合(EU)との経済連携協定(EPA)は、4月から2年目に突入した。日米貿易協定交渉も9月末に署名が見込まれる。現在講じている対策が足りているか検証が必要だ。2018年度のカロリーベース食料自給率は37%に落ち込み、目標との差はさらに開いた。目標未達成だった検証の徹底が必要だ。一層の下落を食い止めるためにも、新たな自給率目標の設定に当たっては、必要な施策をより踏み込んで示すべきだ。

*1-4:https://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-982455.html (琉球新報 2019年9月3日) <社説>防衛費要求過去最大 専守防衛逸脱チェックを
 底が抜けたように歯止めがかからない。来年度予算に向けた防衛省の概算要求のことである。
要求額は過去最大の5兆3223億円。本年度当初予算比1・2%増で、2012年の第2次安倍政権発足以降7年連続の増額となった。米国からの高額な兵器の購入が総額を押し上げた。トランプ米大統領の要求に応え、不要な物まで買わされていないか。大いに疑問だ。政府は昨年策定した中期防衛力整備計画(中期防)で、19年度から5年間の防衛予算総額の目安を27兆4700億円と設定した。伸び率は従来の年平均0・8%から1%超に拡大し、中期防単位では14~18年度の約24兆7千億円から2兆円超の大幅増となった。一般会計全体の概算要求総額は過去最大を2年連続で更新する105兆円規模となった。高齢化に伴う社会保障費の増加に加え、この防衛費の膨張が要因となっている。国会で十分にチェックし、議論が尽くされた結果かどうか疑問だ。社会保障費を抑制し、消費税増税を10月に控える中、防衛費だけ特別扱いは許されない。青天井で増え続けている防衛予算に国民は注意を払うべきである。危惧するのは内容である。憲法で定める自衛のための必要最小限度の実力、いわゆる専守防衛を事実上、逸脱する様相を帯びているからだ。それを許してはいけない。新たな防衛力整備の指針「防衛計画の大綱」や中期防で位置付けた護衛艦「いずも」の空母への改修費に31億円を計上した。同艦で運用する米国製の最新鋭ステルス戦闘機F35Bの取得費に846億円を要求する。政府は「多機能・多用途の護衛艦」と説明しているが、運用によっては攻撃型空母になりかねない。今回、宇宙分野の能力向上策として「宇宙作戦隊」の新設も明記した。米宇宙軍から指導教官を招き、自衛隊員を同軍に派遣するという。米中ロが加速させている宇宙分野の軍事利用に参画する構えだ。強い疑問を覚えるのは、米国から購入される高額な兵器だ。F35Bのほか、陸上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」の発射装置取得費に103億円を盛り込んだ。秋田、山口県への配備計画を巡り、防衛省の調査にミスが相次いだことを踏まえて設置に伴う土地造成費や津波対策費の計上は見送った。しかし設置場所さえ決まっていないのに発射装置を購入するのは、地元合意よりも米国支援を優先したい姿勢の表れと言えよう。専門家からはミサイルの効果に疑問の声もある。南西諸島への陸自配備経費には237億円を計上した。尖閣有事などを想定した配備強化だが、中国を刺激し、お互いの軍拡につながる恐れがある。大切なのは、軍備に巨額の血税を投じることではなく、外交努力で紛争の火種を除去することだ。

<鉄道の高架化は、生産性向上策で街づくり投資である>
*2-1:https://vdata.nikkei.com/newsgraphics/keikyu-railway-accident/ (日経新聞 2019.9.5) 京急事故、踏切の危険性を探る
 5日午前、京浜急行電鉄の神奈川新町ー仲木戸駅間(横浜市)で電車とトラックの衝突事故が起きました。事故現場になったのは、国土交通省が安全対策を主導してきた「開かずの踏切」の一つでした。通常の踏切に比べ、約4倍もの事故が起きるという首都圏鉄道網の鬼門です。衝突時、トラックは遮断機の間にいたとみられ、神奈川県警などが詳しい事故原因を調べています。事故現場は横浜市神奈川区の京浜急行電鉄「神奈川新町第1踏切道」です。踏切は神奈川新町駅と仲木戸駅の間にあり、神奈川新町駅のすぐ近く。周辺には商店や企業の事務所、工場、住宅などがあります。京急の線路には、並行してJRの線路や国道が走っています。
●開かずの踏切の定義
 国土交通省は40分以上の待ち時間がある踏切を開かずの踏切とみなし、2016年に全国532カ所を指定しています。事故が起きた「神奈川新町第1踏切道」もそのひとつ。ピークで48分もの待ち時間がある「緊急に対策の検討が必要な踏切」でした。カラー舗装で車道と歩道を分けて事故防止に配慮はしていましたが、立体交差などの対策は打てていませんでした。「交通量が少ない踏切のため優先度は低かった」(京急)としています。
●開かずの踏切データ(開かずの踏切は全国532カ所のうち、7割の371カ所が首都圏に集中)
 国土交通省は2016年6月に「緊急に対策の検討が必要な踏切」として全国の1479カ所を指定しました。このうち、長時間遮断機の降りた状態が続く「開かずの踏切」は全国で532あり、7割にあたる371カ所は首都圏(東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県)に集中しています。最多は東京都の245で、今回事故の起きた神奈川県が73で続きます。一方、関西圏は130カ所とそれほど多くありません。
全国的にみて、交通の集中する首都圏は踏切事故のリスクにさらされやすいといえます。
●踏切の安全対策
 踏切の安全対策には莫大な費用がかかります。線路と道路を分離する立体交差化には1カ所だけでも億単位の工事費が必要で、鉄道会社には負担が重くのし掛かります。そこで国土交通省などが「当面の対策」と位置づけるのが、自動車道と歩道を見分けやすくするカラー舗装です。100万円程度で済むため、多くの踏切で採用されています。ただ、開かずの踏切などで起こる事故防止の観点からは、抜本的解決になっていないのは言うまでもありません。
●全国の踏切事故件数
●これまでの主な踏切事故
①1989/1/29
 秩父鉄道 秩父線 西羽生駅〜新郷駅間、踏切道に進入してきた自動車に列車が衝突して脱線
②1990/1/7
 JR北海道 室蘭線 白老駅〜社台駅間、踏切道に進入してきた自動車に列車が衝突
③1991/6/25
 JR西日本 福知山線 丹後竹田駅〜福知山駅間、踏切道の高さ制限用固定ビームに荷台のパワーショベルが接触して踏切道内に停止していたトラックに列車が衝突
④1991/10/11
 阪急電鉄 京都線 正雀駅〜南茨木駅間、踏切道に進入してきた自動車に列車が衝突して脱線
⑤1992/9/14
 JR東日本 成田線 久住駅〜滑河駅間、踏切道に進入してきた自動車に列車が衝突して脱線
⑥2007/3/1
 JR北海道 石北線 美幌駅〜緋牛内駅間、踏切道に進入した大型トレーラーに列車が衝突し脱線
 内閣府の交通安全白書によると、踏切事故の件数はこの20年で半減しました。2018年の事故件数は247件と、500件近かった2000年前後からは大きく減りました。国土交通省が鉄道各社に対して踏切の安全対策を求めてきた成果が出ているといえます。踏切に関連する重大事故は51人が負傷した2007年のJR北海道の事故以来、起こっていませんでした。今回の事故は比較的乗客の少ないお昼の時間帯で起こりましたが、通勤や帰宅の時間帯などに重なっていた場合にはより大きな影響が出ていた可能性があります。これまでの踏切の安全対策だけでは十分だったとは言えず、対策の見直しが必要になりそうです。
●主な鉄道各社の開かずの踏切数
 2016年6月時点で鉄道各社の開かずの踏切の数を調べると、京浜急行電鉄は7カ所と多くはありません。上位を見ると、西武鉄道が81で最多で、東日本旅客鉄道(JR東日本)が76で続きます。各社とも安全対策を施していますが、踏切がある限りは事故のリスクは残ります。
●海外と比べて日本の都市部は踏切が多い(東京23区はパリの90倍)
 海外と比較すると、日本の都市部は踏切の多さが目立ちます。例えば、フランスのパリは周辺3県を含めて踏切は7カ所しかありません。東京都は23区だけでパリの90倍の踏切があります。その他の主要都市と比べても多く、日本の鉄道に特有の問題と言えそうです。

*2-2:https://digital.asahi.com/articles/ASM967WK4M96UTIL064.html?iref=comtop_8_01 (朝日新聞 2019年9月7日) 京急事故、列車なぜ衝突 異常時に踏切前で止まれる設計
 大型トラックとの衝突・脱線事故から2日ぶりに、京急本線が7日午後、全線で運転を再開した。踏切内で車が立ち往生するトラブルは、各地でしばしば起きている。今回の現場でも、立ち往生を想定した安全システムは整備されていた。それなのになぜ、ぶつかるまで列車は止まれなかったのか。5日昼前、横浜市神奈川区の神奈川新町駅に隣り合う踏切で、事故は起きた。京急の説明によると、トラックは警報機が鳴り始める前に踏切内に入り、立ち往生していた。現場の踏切には人や車などの障害物を検知する装置がある。装置は、警報機が鳴り出した時点で地上30センチ以上にある障害物をレーザーで検知。踏切から10メートル、130メートル、340メートルの地点に設けた3カ所の専用信号機が一斉に赤色に点滅して、運転士に異常を知らせる仕組みになっている。運転士は、踏切から少なくとも600メートル離れた地点でこの信号の点滅を確認できる。ここで非常ブレーキをかければ、最高速度の時速120キロで走っている快特列車でも、踏切の手前で止まれる設計だ。点滅を確認した場合、運転士は状況に応じて通常ブレーキか非常ブレーキをかける。途中で障害物を検知しなくなれば信号が消えるため、そのときは状況を確認しながら減速をやめて通常の運転に戻すという。事故当時、検知装置や信号は正常に作動したと京急は説明している。今回の運転士は京急の聞き取りに対し、「信号に気付いてブレーキをかけたが、間に合わなかった」と話しているという。運転士はどの時点でブレーキをかけたのか。京急は取材に「調査中」としており、国の運輸安全委員会や神奈川県警などが走行データを分析する。別の大手鉄道会社の元運転士によると、障害物検知装置が作動することは「しばしばある」という。「もともと運転中は赤信号に敏感になるが、検知装置の信号は複数の赤色灯が激しく点滅するため、かなり目立つ」と話す。事故を防ぐ仕組みは多様だ。障害物を検知した場合、自動でブレーキをかけるシステムを導入している鉄道会社もある。信号に応じて列車の速度を自動制御する「自動列車制御装置(ATC)」などの信号保安装置と、検知装置を連動させる仕組みだ。東急電鉄は、東横線や目黒線、大井町線などにこのシステムを導入。検知装置が作動した場合、踏切に接近してくる列車は自動的にブレーキがかかる。京王電鉄や小田急電鉄のほか、近鉄、東武東上線、JR京浜東北線も同様のシステムだ。西武鉄道は池袋線と新宿線の踏切のうち、見通しの悪い4カ所で、検知装置と自動ブレーキを連動させているという。ただ京急など、運転士が手動でブレーキをかける鉄道も多い。京急はその理由を「自動ブレーキで止まるようにすると、トンネル内や橋の上など、かえって乗客に危険が及ぶ場所に止まってしまうことも考えられる」と説明する。2017年9月には、小田急線の沿線であった火災現場に近い踏切で、消火活動のために非常ボタンが押され、自動ブレーキで現場の目の前に止まってしまった列車の屋根に火が燃え移った例もあった。今回の事故について、工学院大の高木亮教授(交通システム工学)は「システムの想定通りに障害物を検知できた事例だ」とし、「鉄道会社としては防がなければいけない事故だったと考えられる」と指摘する。「衝突事故を防ぐには、障害物を検知した時点で自動的にブレーキがかかるシステムの導入が必要だ。手動に任せて信号を見落とすのと比べれば、事故のリスクは小さくなる」

<災害復興と防災投資>
*3-1-1:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/422825 (佐賀新聞 2019.9.5) <佐賀豪雨>鉄工所の油「想定超え」で流出 住民は「30年前と同じ」と憤り
 記録的な大雨による浸水で、杵島郡大町町の佐賀鉄工所大町工場から約5万リットルの油が流出して1週間が過ぎた。県によると、工場や順天堂病院周辺では回収が進んでいるが、農地や宅地などでは油除去の見通しが立っていない。油流出は約30年前にも発生し、同社では建物のかさ上げなどの対策をとっていたが、今回はその「想定」を超えるレベルの浸水となり、被害が拡大した格好だ。「畳やタンスなど油が染みて処分せざるを得ない。思い出の写真もほとんど処分してしまうかも。言葉にならない」。周辺道路の冠水で一時孤立した順天堂病院の近くに住む岸川マサノさん(73)は肩を落とした。「油さえ来ていなければこんな状態になっていない。健康被害も心配」と今後への不安を吐露した。回収作業は、自衛隊や九州地方整備局、鉄工所社員らがオイルフェンスを六角川に5カ所設置したり、吸着マットを使って実施。油膜は六角川の六角橋から下流では確認されず、県は「有明海への油流出はない」「ノリ漁への影響はない」との見方を示している。県によると、油の流出範囲は大町工場から東と南東方向に約1キロに及んだ。農作物への被害は水稲25・8ヘクタール、大豆15・3ヘクタール。流出面積は推計で約82万5千平方メートルに及び、「国内でも類を見ない最大規模」と指摘する専門家もいる。大町工場では1990年7月の水害時に同様の油流出が発生。事故の反省から同社が講じた主な対策は、油をためる油槽がある建物の数十センチのかさ上げと建物への高さ3・5メートルの重量シャッター3台の設置だった。今回は、かさ上げした建物で最大60センチの浸水が発生するなど「想像を超える雨」(同社)だった。同社によると、油槽は八つで約10万リットルを保管。建物内で管理し、床下約3メートルに設置している。冷却し強度を高めるため、ベルトコンベヤーを使ってボルトを油槽に移動する。24時間稼働していて、油槽にふたはない。設備の構造上、密閉することは難しいという。浸水当時の8月28日は、午前4時半ごろに油槽がある建物の稼働を停止させたが、その30分後には油の流出を確認。浸水の勢いが激しく、午前5時半ごろには従業員は避難した。同社によると、三つの重量シャッターのうち、北東側と南西側のシャッターから水が入り込んだ。油槽に水が流れ、油が浮き上がる形であふれ出したという。今回の油流出を受け、杵藤地区広域市町村圏組合は、佐賀鉄工所大町工場の熱処理工場に対し、8月30日付で消防法に基づく使用停止命令を出した。「小学6年だった30年前も同じ被害にあった。反省を踏まえ打つ手があったのではないか。天災と人災が重なったと思う」。工場近くにある自宅に油が流れ込んだ野口必勝さん(42)は憤りが収まらない。同社では「新しい対策をとっていく必要がある」との考えを示す。同様の事業所にも今回のような事案が考えられることから、県工業連合会の吉村正会長は「近年は、いつ大きな災害が起きるかわからない。これを教訓に業界全体で対策を考えていきたい」と話した。

*3-1-2:https://www.nishinippon.co.jp/item/n/540982/ (西日本新聞 2019/9/6) 排水ポンプ 苦悩の停止 佐賀・大町町の操作員 「油拡散防げ」町から指示
 記録的な大雨に見舞われた佐賀県大町町に、水害から地域を守ろうともがいた町民がいた。町から排水機場の操作を委託されている牛島忠幸さん(62)は8月28日、農業用水路から六角川に排水するポンプを稼働させていたが、流出した油が川から有明海に広がることを恐れた町の指示を受けて停止。水は行き場を失い、地域をのみ込み、牛島さんの家屋も油にまみれた。「どげんしたら地域を守れたのか」。自問を続けている。牛島さんは周囲の冠水で孤立状態になった順天堂病院近くの下潟排水機場の向かいに暮らす。油混じりの水に漬かった自宅と会社事務所の片付けに追われる。「油でめちゃくちゃ。でも、大変そうな地域の人の姿を見るのがもっとつらい」。祖父の代から水門管理を担い、住民から「係さん」と呼ばれる。2000年に排水機場が開所し、父から「係さん」を継いだ。大雨が降れば、何時でも雨具を着て排水機場に向かう。あの日も、そうだった。しとしと雨が落ちる27日昼からポンプを動かした。夜通し排水機場の水位計に気を配った。強まる雨脚。28日午前6時、水位が4メートル近くに。2時間で2メートルも上がった。「排水が追い付かん。これまでと違う」。午前11時23分、携帯電話が鳴り、町の担当者が言った。「鉄工所の油が流れているのでストップしてくれ」。ポンプを止めれば住宅が水に漬かる。頭に浮かんだものの「町には逆らえん」。指示に従った。ただ、水位に応じて用水路から川に自然排水する水門は開けたままにした。既に水位は門の下部に達しており、水面に浮いた油は滞留すると考えた。わずかな望みを胸に家に戻った。ぐんぐん水位が上昇。黒い油水にのまれる一帯を、2階からただ見つめるしかなかった。ポンプは停止後に冠水し、故障。水門も国土交通省九州地方整備局職員の手で閉められていた。町は「油の拡散を防ぐには、この選択しかなかった」、九地整も「ポンプ車などで水位を下げる努力を続けた」と説明。ポンプ停止と閉門がどこまで増水に影響したか分からない。ただ、家が漬かった住民たちは「油拡散を防ぐために私たちが犠牲になったのか」と憤る。地域の暮らしを守るのか、油による広域被害を防ぐのか-。「係さん」として今も川と向き合う牛島さんの思いは晴れない。「国と町の判断が間違っていたとは思わん。でも、水門だけでも開けていれば、助かった家や畑もあったんじゃなかか」

*3-1-3:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/423970 (佐賀新聞 2019年9月7日) <佐賀豪雨>3市町局地激甚災害指定へ 武雄、多久、大町、局地激甚災害(局激)
 山本順三防災担当相は6日の閣議後会見で、佐賀県の豪雨被害について激甚災害に指定する方針を明らかにした。地域を限定する「局地激甚災害(局激)」で、武雄、多久の2市と杵島郡大町町を指定する。国庫補助率を引き上げるなど市町への財政支援を手厚くし、復旧事業を加速させる。今後の被害額の調査によっては、別の市町も追加で指定される可能性がある。指定によって国庫補助率は1、2割かさ上げされる。農地などの災害復旧は3市町が対象で、公共土木関連では多久市と大町町、中小企業支援では武雄市と大町町が対象になる。市民の生活再建への直接的な助成ではなく、市町の復旧事業を支える意味合いが強い。過去5年間の自然災害で公共土木の復旧事業の補助率を平均すると、通常70%が指定後に83%に引き上げられている。農地は83・1%から96・0%になっている。激甚災害は、人的被害でなく経済的被害を基準に指定する。県市町が被害額を調査し、各省庁が査定する。地域を限定する「局激」の場合、市町の財政規模ごとに基準額が設定され、基準額を超えた時点で激甚災害指定の見込みが示される。内閣府は今回、被害額と市町ごとの基準額について「さまざまな数字が出て混乱する恐れがある」として明らかにしなかった。山本氏は会見で「被災地の復旧、復興を加速化させるため激甚災害に指定する見込みとなった」とした上で、「被害状況はまだ調査中のため、基準を満たす地域があれば追加して指定し、公表する」と述べた。指定される3市町以外が追加される可能性がある。菅義偉官房長官らに被災地支援を要望した後、都内で取材に応じた山口祥義知事は激甚指定の方針について「前に向かって進める基盤ができた」と話した。県によると、過去5年は西日本豪雨(2018年)や九州北部豪雨(17年)、熊本地震(16年)などで県内は毎年、激甚災害の指定を受けている。いずれも市町単位で指定する「局激」ではなく、地域を特定せずに災害そのものを指定する激甚災害(本激)だった。

*3-2-1:https://www.hokkaido-np.co.jp/article/342364 (北海道新聞 2019/9/7) 全域停電1年 供給網の在り方再考を
 胆振東部地震をきっかけとする道内の全域停電(ブラックアウト)が発生してから、きのうで1年がたった。地震発生時、道内の電力需要の約半分を担っていた北海道電力苫東厚真火力発電所の発電機3基が相次ぎ損壊。需給バランスがたちまち崩れ、全電源が停止する未曽有の事態となった。この1年間、北電による設備増強でブラックアウトが再発するリスクはかなり低減した。それでも、広大な北海道で使われる電力を少数の大型電源に依存する態勢のもろさが完全に解消されたとは言えまい。道民生活がまひした1年前の経験を教訓に、より強靱(きょうじん)で安定した電力供給の在り方を考えたい。北電は2月、液化天然ガス(LNG)を使用する石狩湾新港火発1号機の営業運転を始めた。発電容量57万キロワットは、稼働している北電の発電所としては苫東厚真4号機(70万キロワット)と2号機(60万キロワット)に次ぐ規模だ。3月には、北海道―本州間の送電線「北本連系線」の容量も1・5倍の90万キロワットに増強された。さらに今後、全国の電力会社が経費を分担して120万キロワットまで増やす計画となっている。新たな大型電源の稼働と本州からの緊急送電機能の強化によって、災害時に大規模停電が発生する可能性は1年前に比べて相当小さくなったことは間違いない。とはいえ、胆振東部地震をはじめとする過去の大規模災害は、電力会社にとって「想定外」の被害をもたらしてきたことも事実だ。もうブラックアウトは起きないと楽観視せず、官民が協力し、より進化した電力供給の仕組みを目指すべきであろう。その意味で、災害時に再生可能エネルギーを使って地域の電力を賄う「マイクログリッド」(小規模送電網)構築の試みが、道内各地で始まっていることを大いに評価したい。経済産業省資源エネルギー庁の支援事業の1次公募で採択された全国5件のうち3件を道内(釧路市、十勝管内上士幌町、石狩市)の取り組みが占めた。マイクログリッドは、大規模停電が発生した際、北電の電力系統から特定地域の配電網を切り離し、その中で地元の再生エネ電力を供給する仕組みを基本とする。太陽光、風力、バイオガスなど地域特性に合った再生エネを有効活用し、地方経済を活性化する一助にもなるのではないか。

*3-2-2:https://ryukyushimpo.jp/news/entry-985282.html (琉球新報 2019年9月7日) 宮古島、停電なお1万1000戸 台風13号 今夜復旧見込み
 非常に強い台風13号は6日、久米島、宮古島を暴風域に巻き込みながら北上し沖縄地方を通過した。市内の約8割を超える2万590戸が停電した宮古島市では、6日午後11時現在、1万1140戸が引き続き停電している。宮古島市は7日朝から城辺、上野、下地の各支所と池間島公民館に携帯電話などの充電ができるように発電機を設置する。行政サービスを求める市民に対して上野支所を除く各支所で対応する。沖縄気象台によると、台風は久米島と宮古島を暴風域に巻き込みながら北上し6日朝までに暴風域を抜けたが、台風に流れ込む暖かく湿った空気の影響で大気が不安定になっている。沖縄本島地方と先島諸島では7日にかけて雷雨や竜巻が発生しやすい状況が続いており、警戒が必要だ。沖縄電力によると、沖縄本島や八重山支店からの応援作業要員も停電の復旧作業に当たっており、7日夜に復旧見込みとしている。台風は6日午後9時45分現在、東シナ海にあり、時速35キロで北上している。8日午後9時には温帯低気圧に変わる見込み。宮古空港では5日午後0時22分に観測史上最大となる最大瞬間風速61・2メートルを記録。住宅の床下浸水が1件確認されたほか、宮古島市で30~70代の男女5人が、宜野湾市で80代女性が、それぞれ強風にあおられて転倒するなどして負傷した。

*3-3-1:https://news.biglobe.ne.jp/domestic/0907/mai_190907_3527897284.html (毎日新聞 2019年9月7日) かさ上げ、高台移転1400ヘクタール 8%が空き地、利用未定 東日本大震災8年半
 東日本大震災の被災者向けに自治体が復興予算を投じ整備した宅地約1291ヘクタールのうち、東京ドーム約23個分にあたる約107ヘクタールが空き地や利用未定地となっている。毎日新聞が被災自治体に実施したアンケートで明らかになった。全体の約8%に過ぎないが、これ以外にも宅地に自宅を再建できないまま断念する可能性がある住民も一定数いるとみられる。かさ上げした市街地の広範な利用未定地で住民がわずかだったり、高台移転先では住民が孤立したりして、復興に向けた課題となっている。アンケートは7〜8月、宮城、岩手、福島の被災3県の30市町村に実施し、全自治体から回答を得た。対象は、内陸や土地をかさ上げして整備する土地区画整理(区画整理)▽高台に移転先を整備する防災集団移転(防集)▽漁業者が多く暮らす地区でかさ上げを図る漁業集落防災機能強化(漁集)——の3事業。防集と漁集は空き区画を、区画整理は利用予定が未定の区画を尋ねた。面積では陸前高田市は一部農地を含む37・3ヘクタールで最大。区画ベースでは、回答があった宅地約1万7700区画のうち、空き区画や利用未定なのは約12%の約2160区画。一方で地区全体のうち、半数以上の空きが生じているのは12地区、5区画以上は39地区あった。宮城県石巻市や南三陸町、福島県いわき市、岩手県釜石市や山田町で目立った。

*3-3-2:https://www.sankei.com/photo/story/news/171120/sty1711200002-n1.html (産経新聞 2017.11.20) 東日本大震災:賛否分かつ巨大な壁 海岸に横たわる防潮堤
 海辺に立つ宿の窓からおかみの岩崎昭子さん(61)が海をのぞく。岩手県釜石市の根浜海岸。白砂の浜と松林で知られる。視界の一部をコンクリートの壁が遮る。東日本大震災の復興工事で高さ5メートルの防潮堤が築かれた。震災で津波を受け、1階が水没した。地区住民が高台移転に踏み切る中、現地再建の道を選んだ。海の幸と水平線から昇る日の出を売りにした宿だ。海から遠ざかる選択はなかった。海の近くに残るということは防潮堤を受け入れることを意味する。震災から7年に迫る今も巨大防潮堤を巡る議論がくすぶる。395キロ。岩手、宮城、福島の被災3県の防潮堤の総延長だ。高さは最大15.5メートル。ビルの4階に匹敵する。数十年から百数十年に1度の津波に耐える規格で建造された。「圧迫感がある」。「景観を損ねる」。「海と遮断される」。賛否の応酬は否定的な声が優勢に見える。被災地を離れるほど反対意見が台頭する印象を抱く。行政が住民合意を取るのに丁寧さを欠いて賛成派と反対派の対立を招いたり、公共事業の利権構造がむき出しになったりし、負のイメージが増幅された。
●良かったのか悪かったのか
 「奥尻と同じ轍(てつ)を踏むな」。反対派が合言葉にする。平成5年の北海道南西沖地震で津波に遭い、198人が命を落とした。町は復興事業で全長14キロ、高さ10メートル級の防潮堤で島を取り囲んだ。そのせいで景観が台無しになって観光客の足が遠のき、海の生態系も乱れて主力産業の漁業が衰退したとささやかれている。28年度の観光客は2万7千人。地震前年の半分に落ち込んだ。環境変化の影響を受けやすいといわれるアワビの漁獲高も8分の1に低落している。人口も4700から2750に減少。地域の陰りを示す数字には事欠かない。だが、防潮堤が島の弱体化を招いたかどうかの因果関係ははっきりしない。「観光客の減少も漁業不振も人口減も地震前から顕在化していた」。島民の多くは、島が細ったのは複合的な理由で防潮堤だけをスケープゴートにするのは見誤っていると語る。北海道の同じ離島で人口規模も近い礼文島も似た傾向で人口と観光客を減らしている。島の衰えは防潮堤の有無にかかわらず、地域の共通課題である実態を裏付ける。.
●判断の正否は歴史が裁く
 岩手県の旧田老町(宮古市)に「万里の長城」の異名を持つ防潮堤がある。全長2.4キロ。高さ10メートル。X字の二重構造を持つ。昭和8年の昭和三陸津波で911人の死者を出し、44年かけて建設された。東日本大震災の津波は堤体を乗り越え、全体の5分の1が破壊された。人工の構造物は自然の猛威の前にひとたまりもなく、人間は自然に対してもっと謙虚であるべきだ。巨大防潮堤は自然を征服したと思い上がった人間をたしなめる文脈で語られる。しかし、防潮堤が役立たずだったかと言えばそうではない。津波を一時的にせき止め、進行を遅らせた。避難の時間稼ぎができて難を逃れた人は少なくない。町の犠牲者は181人。隣接市町村より少ない。昭和三陸津波の時と比べても5分の1に減っている。人を死なせないこと。防災の最大の目的だ。景観も被災地の活性化も大事。生き延びた人を立ち直らせることも。ただ、これらは最優先ではない。防潮堤の適否は次世代の人を犠牲にしないことに有益かどうかで判断されるべきだ。防潮堤は人命を守ることに一定の効果がある。景観や地域活性化を理由にした反対論も傾聴に値するけれども、1番手ではない。命には命で対抗しないと釣り合わない。巨大防潮堤を造ることによって住民に依存心が芽生え、危機意識が薄まってかえって死の危険性が高まるというのなら、対等の議論として成立する。岩崎さんは防潮堤に目をやる。災害対策基本法は「行政は災害から国民の生命、身体、財産を保護しなければならない」と定める。5千人を超す死者を生んだ昭和34年の伊勢湾台風の惨劇が行政の責務を明確にした。目の前のコンクリートの塊が住民意思を置き去りにした役所の独断専行の産物だとは思いたくない。曲がりなりにも住民との合作なのだ。東日本大震災の被災地は巨大防潮堤と共に歩む運命を選んだ。その判断の正否は歴史に裁かれる。千年に1度の天災が再び起き、将来世代の命を守れなかったら。「われわれの先祖は愚かだった」と言われるのだろう。あの世で批判を受ける覚悟はできている。

*3-4:https://digital.asahi.com/articles/ASM973603M97TLVB003.html (朝日新聞 2019年9月7日) 蒲島・熊本県知事が4選出馬へ「地震からの復興進める」
 来春の熊本県知事選に、現職の蒲島郁夫氏(72)が4選を目指して立候補する意向を固めた。7日、朝日新聞の取材に「熊本地震からの復興の流れを今ここで止めるわけにはいかない」と語った。9日の県議会代表質問で正式に表明する。蒲島氏の任期満了は来年4月。3選を決めた直後の2016年4月に熊本地震が発生。被災者の住まい再建に優先的に取り組む一方、「創造的復興」を掲げ、空港や港湾、道路の整備を推し進めてきた。熊本県ではこれまで、4期以上を務めた知事はおらず、蒲島氏も16年の立候補の際には「3期目で実を結ぶ」として、仕上げの任期と定めてきた。ただ、今年8月28日の定例会見で「熊本地震の被災者の住まいの再建を最優先に、取り組まなければならない復興の課題がまだ多くある」と語っていた。7日は取材に対し「地震からの復興をスピード感を持って進める必要がある」と述べ、知事として引き続き復興に取り組んでいく姿勢を示した。知事選には、前熊本市長の幸山政史氏(54)が立候補の意向を表明している。

<社会保障について>
*4-1:http://qbiz.jp/article/73996/1/ (西日本新聞 2015年11月2日) 年金積立金1.5兆円配分 保険料塩漬け30年 給付財源 一元化受け割合決定 
 政府は1日までに、使い道が約30年間決まらなかった年金積立金約1兆5500億円について、2015〜24年度の公的年金給付に充てるとの政令を決定した。積立金は、専業主婦が国民年金に任意加入だった時代に納めた保険料の収入。分立する各年金制度への配分方法が決められず塩漬け状態だった。会社員が加入する厚生年金に公務員らの共済年金を10月に一元化したのをきっかけに、配分割合が決まった。政令では、積立金の半分を厚生年金(統合後の共済年金を含む)に振り向け、残り半分を自営業者などの国民年金と厚生年金(同)の加入者数に応じて分けると規定。今後10年間、給付財源として活用する。給付額に影響はないが、年50兆円規模の年金財政に少しだけゆとりが生まれそうだ。1986年4月の法改正で、サラリーマンの夫を持つ専業主婦は「第3号被保険者」として保険料負担なしで国民年金に加入することになった。それ以前は国民皆年金が整った61年度から、約7割の主婦が任意で加入し保険料を納めていた。85年度末までに積み上がった保険料は7246億円。その後、約30年間に運用収益8282億円も加わり、2014年3月末時点で総額1兆5528億円と倍以上に膨らんでいた。政府はこれを24年度まで、毎年約1500億円ずつ給付費に回す。15年度は運用収益見込みを含め1590億円を計上した。各制度への配分は厚生年金に1480億円、国民年金に110億円。問題の積立金をめぐっては、任意で保険料を納めた主婦の夫の何割が会社員で何割が公務員なのか確定できず、制度間の配分ルールが政府内で長年まとまらなかった。だが、厚生年金と共済年金の一元化を機に所管各省の調整が進み、給付費への投入が実現した。厚生年金と共済年金の一元化 国家公務員と地方公務員、私立学校教職員向けの共済年金を廃止し、会社員の厚生年金に統合する「被用者年金一元化法」が2012年に成立し、ことし10月1日に施行された。官民格差の是正と規模拡大による財政安定化が目的。共済独自の上乗せ給付「職域加算」を廃止し、両年金で異なる保険料率を段階的にそろえる。公務員ら約440万人の加入で厚生年金の加入者は4000万人弱に増えた。

*4-2:https://www.mhlw.go.jp/shingi/2002/04/s0419-3d.html (社会保障審議会年金部会 平成14年4月19日 抜粋) 公的年金制度の歩みとこれまでの主な制度改正
《制度の充実》
昭和40(1965)年  : 給付水準の改善、「1万円年金」の実現、厚生年金基金制度の創設
昭和41(1966)年  : 国民年金においても夫婦「1万円年金」の実現)
昭和44(1969)年  : 「2万円年金」の実現(標準的な厚生年金額2万円、国民年金も
              夫婦2万円)
昭和48(1973)年  : 物価スライド制、賃金再評価の導入(「5万円年金」の実現)
《本格的な高齢社会の到来をにらんだ対応》
【昭和60(1985)年改正】
○全国民共通で、全国民で支える基礎年金制度の創設
○給付水準の適正化(成熟時に加入期間が40年に伸びることを想定して給付単価、
  支給乗率を段階的に逓減)
○サラリーマンの被扶養配偶者(専業主婦)の国民年金制度への強制適用(第3号
  被保険者制度の創設)、これによる女性の年金権の確立
○障害年金の改善(20歳前に障害者となった者に対する障害基礎年金の保障)
○5人未満の法人事業所に対する厚生年金の適用拡大
○女性に係る老齢厚生年金の支給開始年齢の引上げ(昭和75(2000)年までに55歳
  →60歳)
【平成元(1989)年改正】
○完全自動物価スライド制の導入
○学生の国民年金制度への強制加入
○国民年金基金制度の創設(地域型国民年金基金の創設、職域型国民年金基金の
  設立要件の緩和)
○被用者年金制度間の費用負担調整事業の創設(平成9年度に廃止)
【平成6年(1994)年改正】
○60歳台前半の老齢厚生年金の見直し(定額部分の支給開始年齢を平成25(2013)年
  までに段階的に60歳から65歳まで引上げ)
○在職老齢年金制度の改善(賃金の増加に応じて賃金と年金額の合計が増加する仕
  組みへの変更)、失業給付との調整
○賃金再評価の方式の変更(税・社会保険料の増加を除いた可処分所得の上昇率に
  応じた再評価)
○遺族年金の改善(共働き世帯の増加に対応し妻の保険料拠出も年金額に反映できるよう、
  夫婦それぞれの老齢厚生年金の2分の1に相当する額を併給する選択を認める)
○育児休業期間中の厚生年金の保険料(本人分)の免除
○厚生年金に係る賞与等からの特別保険料(1%)の創設
【平成8(1996)年改正】
○旧公共企業体3共済(JR、JT、NTT)の厚生年金への統合
【平成12年(2000)年改正】
○老齢厚生年金の報酬比例部分の支給開始年齢引上げ(平成37(2025)年までに段階的
  に60歳から65歳まで引上げ)
○年金額の改定方式の変更(既裁定者の年金(65歳以降)は物価スライドのみで改定)
○厚生年金給付の適正化(報酬比例部分の5%適正化、ただし従前額は保障)
○60歳台後半の厚生年金の適用拡大(70歳未満まで拡大。65~69歳の在職者に対する
  在職老齢年金制度の創設)
○総報酬制の導入(賞与等にも同率の保険料を賦課し、給付に反映。特別保険料は廃止)
○育児休業期間中の厚生年金の保険料(事業主負担分)の免除
○国民年金の保険料に係る免除等の拡充(半額免除制度の創設、学生納付特例制度の創設)

*4-3:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190724&ng=DGKKZO47676130T20C19A7MM8000 (日経新聞 2019.7.24) 日本の針路(2)年金だけでは描けぬ安心 不都合な真実 直視の時
 有権者が参院選で最も重視する政策にあげたのは社会保障だった。参院選での与党の勝利は社会保障のために消費税率を10%に上げる公約が信任を得たことを意味する。しかし「人生100年時代」にどう備えるかという国民の不安に、与党が選挙戦できちんと向き合ったとはいえない。「鋭意作業している」。根本匠厚生労働相は公的年金の将来像を示す「財政検証」の公表時期を聞かれるとこうかわし続けた。老後資金が2000万円不足するとの金融庁の報告書で国会が紛糾するのを見た政府は検証を選挙後に延期し、与党も早期公表を求めなかった。だが「不都合な真実」を隠したところで老後の安心は確保できない。「50代で最も多い年収500万~750万円未満の層は65歳までに3200万円必要になる」。ニッセイ基礎研究所は65歳以降も生活を変えないことを前提に、こんな試算を出した。年収が1000万~1200万円未満の世帯の不足額は6550万円に上るという。他の民間調査機関も老後資金の独自試算を次々と公表した。「公的年金のほかに必要な金額は月額4万円」「非正規雇用の比率が高い団塊ジュニアの世代は、貧困高齢者になりかねない人が他の世代よりも多い」。最もデータを持つ国が実態を示し、与党がこれを直視して人生100年時代の安心を描く作業に力を注がなければ、国民の不安は払拭できない。5年に1度の公的年金の定期健診にあたる財政検証のあり方にも課題がある。財政検証は100年先まで人口と経済を見通して年金の水準や財政の状況を確認するものだが、過去の検証では、年金制度の課題をとらえきれていない懸念がある。14年の前回検証では夫が働き、妻がずっと専業主婦という世帯を「標準」として将来の年金水準を見通した。こうした世帯では、現役世代の平均手取り年収と比べた年金の給付水準(所得代替率)が約30年後に50%超になることを示し、04年の年金改革で約束した水準を確保できるとした。しかし、今の日本の世帯は共働きが主流だ。国民年金のみで年金額が少ない単身世帯も増えている。いまの年金制度がこうした世帯の生活をどこまで支えられるのか。今回の検証では世帯の多様化を踏まえ、実態を評価することが欠かせない。その上で急務なのは、現在の高齢者の年金給付を抑え、将来の年金の目減りを抑える「マクロ経済スライド」が発動しにくい仕組みを改めることだ。そして、私的年金など自助努力と一体で老後に備える国民を支援する制度を整えていくことが、国民の不安を払拭する第一歩になる。年金よりも遅れた医療・介護の改革も課題だ。団塊の世代が75歳以上になり始める22年から高齢者医療費の伸びは加速し、会社員らの保険料負担はどんどん重くなる。投薬1回で数千万円になるような超高額の医薬品の登場は医療保険制度そのものを揺さぶる。人材急募――。都内の介護施設には決まって求人の貼り紙がある。部屋が空いていても人手不足で入居できない特別養護老人ホームは珍しくない。25年に55万人に上る介護の担い手不足を解決する知恵が要る。安倍晋三首相は10%後の消費税について「10年くらいは上げる必要はない」と述べた。だが給付と負担のあり方にぎりぎりの知恵を絞ることになる社会保障の改革を前に「聖域」はないほうがいい。

*4-4:https://ryukyushimpo.jp/kyodo/entry-982929.html (琉球新報 2019年9月3日) 社会保障維持へ安定税収を、税調 少子高齢化で「課題深刻」
 政府税制調査会(首相の諮問機関)が中期的な税制の在り方について月内にまとめる答申の骨子が3日、判明した。現役世代を支え手とした社会保障制度や財政は少子高齢化で「深刻な課題」に直面しており、制度維持には「十分かつ安定的な税収基盤の確保が不可欠」だと指摘。10月の消費税率引き上げ後も何らかの増税策が必要との考えをにじませる。公的年金の受給水準の先細りを念頭に置き、老後の資産形成を後押しする環境整備なども促す。政府税調が中期答申を作るのは2012年の第2次安倍政権発足後、有識者主導で再始動してからは初めて。4日の総会で本格討議に入り、9月下旬に決定する方針。

*4-5:https://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2019090190070550.html (東京新聞 2019年9月1日) 「非正規と言うな」通知撤回 本紙の情報公開請求後に
 厚生労働省が省内の全部局に、根本匠厚労相の指示として「非正規」や「非正規労働者」という表現を国会答弁などで使わないよう求める趣旨の文書やメールを通知し、本紙が情報公開請求した後に撤回したことが分かった。同省担当者は撤回の理由を「不正確な内容が散見された」と説明。根本氏の関与はなかったとしている。厚労省雇用環境・均等局によると、文書は「『非正規雇用労働者』の呼称について(周知)」という件名で四月十五~十六日に省内に通知。当面の国会答弁などの対応では、原則として「有期雇用労働者」「派遣労働者」などの呼称を用いるとした。「非正規雇用労働者」の呼称も認めるが、「非正規」のみや「非正規労働者」という表現は「用いないよう留意すること」と注意を促している。各部局に送信したメールには、同じ文書を添付した上で「『非正規雇用』のネーミングについては、(中略)ネガティブなイメージがあるとの大臣(根本氏)の御指摘があったことも踏まえ、当局で検討した」と記載され、今回の対応が根本氏の意向であることがうかがえる。「大臣了」と、根本氏の了承を意味する表現も明記されていた。「非正規」の用語に関しては、六月十九日の野党の会合で、厚労省年金局課長が、根本氏から使わないよう求められていると説明。根本氏は同月二十一日の記者会見で「指示した事実はない」と課長の発言を否定した。その上で、働き方の多様化に関し「単に正規、非正規という切り分け方だけでいいのか、それぞれの課題に応じた施策を講じるべきではないかという議論をした記憶がある」と話していた。本紙は七月十二日付で文書やメールを情報公開請求した。雇用環境・均等局は同月下旬に文書やメールの撤回を決めたとしている。撤回決定後の八月九日付で開示を決定した。堀井奈津子同局総務課長は撤回の理由について、文書に単純な表記ミスがあったことを指摘。根本氏の意向に触れたメールについては本紙の情報公開請求後に送信の事実や内容を知ったとして「チェックが行き届かなかった」と釈明した。文書については「大臣に見せていないし、省内に周知するとも伝えていない。文書作成に関して大臣の指示も了承もなかった」と説明。メールにある「大臣の御指摘」や「大臣了」についても、メールを作成した職員の勘違いとしている。
◆格差象徴に政府ピリピリ
 正社員と非正規労働者の不合理な待遇差の解消は、安倍政権の重要政策になっている。安倍晋三首相自身も「非正規という言葉をこの国から一掃する」と強調してきた。厚生労働省が「非正規」との表現を使わないことを文書やメールで省内に通知したのは、それだけ表現に神経質になっていたためとみられる。総務省の労働力調査(詳細集計)によると、役員を除く雇用者に占める非正規労働者は、第二次安倍政権発足当初の二〇一三年で年平均約千九百十万人(36・7%)だったが、一八年には約二千百二十万人(37・9%)に増加した。非正規労働者は、正社員に比べて賃金や社会保障などの面で待遇が悪く、格差拡大や貧困の問題と結び付いている。企業には都合の良い「雇用の調整弁」とされ、否定的な意味合いで受け止められることが多い。労働問題に詳しい法政大の上西充子教授は、厚労省の文書について「非正規という言葉だけをなくしてしまえ、という取り組みに映る。正社員になれず社会的に不遇な立場にある非正規労働者を巡る問題の矮小(わいしょう)化につながりかねない」と指摘。「問題と向き合うなら、逆に非正規をちゃんと社会的に位置付けないといけない」と訴える。

<台風15号による停電と送電に関するセキュリティー>
PS(2019年9月12、13日追加):*5-1・*5-2に、2019年9月8日に関東を直撃した台風15号の影響で、「①千葉県は9月12日午前零時現在でも、約39万2千戸が停電」「②停電で浄水施設も稼働できず、2万戸が断水」「③交差点の信号機も殆ど作動せず」「④携帯電話も不通」「⑤停電で給油にも時間がかかる」「⑥クリニックも停電」「⑦復旧に1週間はかからないが、全面復旧は13日以降」「⑧気温が30度を超え、熱中症とみられる症状で午後4時までに48人が搬送された」「⑨倒れた鉄塔の送電網が断たれただけで約10万戸が停電した」「⑩東電は他電力の支援も含め1万人以上を投入して復旧作業に当たっているが、鉄塔や電柱が倒れ電線の切断箇所が多い」「⑪南房総地域では現場に行き着けない場所もある」などが書かれている。
 このうちの①②③④⑤⑥⑧⑨は、生命に関わるインフラを、たった1系統の脆弱な電力ネットワークに頼って予備電源を準備していなかったセキュリティーの甘さにも問題がある。つまり、ここは地震・津波などの大災害も予想される地域なので、送電網を二重にしたり、自家発電装置を持って分散発電したりしておく必要があるのだ。また、⑦⑩⑪は、壊れた個所を自動的に知らせる装置がついていない電力会社の機器の古さにも問題があり、作業している人数が多い割には進捗が遅いように見える。
 酷暑の中で停電・断水にあっておられる方々には心からお見舞い申し上げるが、風力も太陽光も豊富な房総半島なら、今後は再エネ等の地域資源を使った分散発電を進めたらどうかと思う。そして、*5-5のように、政府は地熱発電の普及に向けて開発段階の支援制度を拡充するそうだが、房総半島は温泉が多く地熱資源も豊富であることが既にわかっている。
 また、*5-3のように、大規模農業団地計画が埼玉県羽生市で動き出し、全体計画24haのうち9.5haに進出する3社が決定したそうだ。転作による適地適作や農業用ハウスへの薄膜型太陽光発電設備の設置、農地への風力発電設備の設置などで高収益を上げられれば、進出したい企業はさらに増えるだろう。
 なお、2019年9月13日、朝日新聞が、*5-4のように、「⑫東電は復旧を急がねばならない」「⑬房総半島の山間部などで倒木の多さに手間取った」「⑭福島第一原発の事故で経営が苦しい東電は、送配電部門の投資を抑えてきた」「⑮長期的には電線の地中化が有効な対策で、国も電力会社も無電柱化に力を入れる時だ」と記載しているが、⑫は当然のこととして、⑬については、倒木や停電の存在は昼と夜に上空(宇宙も含む)から写真をとればすぐわかるため、自衛隊か米軍に頼めば早かったのにと思う。さらに、⑮については、地方自治体が国の支援を受けて、電気、電話、水道、ガス、光ファイバー等のライフラインを一緒に道路や鉄道などの地下に埋設する共同溝を作り、電力会社も共同溝を利用するのが電力自由化・発送電分離の時代にふさわしい。ここで、「共同溝は、1kmあたり○億円かかるから電柱にしよう」などと言うのは、(理由を長くは書かないが)日本独特の欠点だ。そうなると、発送電分離を徹底しやすく、⑭の問題は比較的安価に解決することができ、無駄な景気対策をせずに生産性を上げながら必要な事業を行うことが可能である。


 2019.9.9WN    2019.9.12東京新聞   2019.9.10朝日新聞 2019.9.10Abema

(図の説明:比較的狭い範囲に強風を吹かせた1番左の台風15号の影響で、中央の2つの図のように、送電線の鉄塔や電柱が倒れ、左から2番目の図のように、千葉県内で大規模な停電が広がった。また、右図のように、農業用ハウスも倒壊している)

*5-1:https://digital.asahi.com/articles/ASM9C5QL3M9CUTIL06F.html (朝日新聞 2019年9月11日) 動かぬ信号、イオンに殺到、給油制限…停電続く千葉の今
 台風15号の影響で、千葉県内では停電や通信障害が続く。停電で街の機能が失われた房総半島南部。開店した店やガソリンスタンドには長蛇の列ができていた。房総半島南端の千葉県館山市では11日も、交差点の信号機がほとんど作動していない。夜は暗闇のなか、車がライトの有無を確認して最徐行で通る。一方で昼は連日、30度を超える猛暑。冷蔵庫に閉じ込めていた冷気も消え、食品は異臭を放ち始めている。市内の飲食店やコンビニも大半が休業中で、開店した店に客が殺到。この日朝開店した同市八幡のイオン館山店では、カップ麺や電池を求める買い物客の列ができた。数十キロ離れた同県鴨川市の丸谷成三さん(76)は「停電で冷蔵庫が動かないのが痛い。一日も早く復旧してほしい」と訴えた。車への依存度が高い地域。館山市八幡の丸高石油は1台2千円を限度に、9、10日は約1千台ずつ、11日は早朝から約500台に給油した。だが、給油待ちの車列が数百メートルに伸びて交通を妨げたため、警察からの要請で販売を中止した。高橋浩二・取締役部長(46)は「ガソリンは用意できるが、人力で給油するのでスタッフが足りない」と声を落とす。隣の南房総市では携帯電話の不通が続く。携帯各社によると、停電で基地局が機能していないのが原因だ。携帯大手3社が急きょ、移動基地局車を南房総市役所に配備。11日、市役所の半径約100メートルの範囲で電波が入り、多くの市民がスマホを手に駆けつけた。農業の男性(44)は「取引先との連絡が取れず困っている。ネットもつながらないので、どこに何があるのかも分からない」と嘆いた。同市富浦町の「生方内科クリニック」は強風で看板が飛ばされ、手書きの紙で「診療中」と張り出していた。停電が続く中、生方英一院長(61)が懐中電灯を片手に診療している。11日午後、熱中症の症状で訪れた市内の男性を診察した。自宅の屋根を修復していた際、体調が悪くなり、足がけいれんし動けなくなったという。男性は生理食塩水の点滴を受けると「だいぶ良くなった。診療をやっていて本当によかった」と喜んだ。このほか、糖尿病の薬が切れた人など1日約10人が来院する。生方院長は「停電でまともな診療はできないけど、困っている人たちを見捨てて休むことなんてできない」と語った。今後も通常通りの時間で診療を続けるという。

*5-2:https://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201909/CK2019091202000162.html (東京新聞 2019年9月12日) 千葉の停電 全面復旧あす以降
 台風15号による千葉県を中心とした大規模停電で、東京電力は十一日、全面復旧は十三日以降になると明らかにした。一週間はかからない見通し。千葉県では十二日午前零時現在、約三十九万二千戸が停電。船橋市などで新たに停電が発生した。断水も二万戸あり、市民生活への影響が長期化している。茨城、神奈川、静岡三県の停電は解消された。東電によると、今回の停電は台風によるものとしては戸数、期間とも同社で過去最大級。千葉市などを含む地域の復旧は十二日以降、成田市や木更津市などの地域が十三日以降になるという。千葉県では、十日に続き県内全域で気温が三〇度を超え、十一日は熱中症とみられる症状で午後四時までに四十八人が搬送された。断水が続いているのは君津市や南房総市など。県によると、停電により浄水施設などが稼働できなくなったのが原因とみられる。
   ◇
 東電は当初、11日朝までに停電を約12万戸に減らす計画だった。他電力の支援も得て復旧作業に当たっているが、送電線をつなぐ鉄塔や電柱が倒れ、電線の切断箇所も多く、被害は東電の想定を大きく超えている。倒木や断続的な雷雨も復旧を長引かせている。房総半島南部の君津市の緑茂る丘の上で、鉄塔二基が根元から折れて横倒しになっている。高さは四十五メートルと五十七メートル。この鉄塔の送電網が断たれただけでも、約十万戸が停電した。電柱も南房総地域を中心に多数倒壊。東電パワーグリッドの金子禎則(よしのり)社長は十一日朝の会見で「過去に例のない風速、気圧で非常に多くの設備が被害を受けた。一つの現場で直す量が見込みより増えてしまった」と、硬い表情を見せた。作業には他電力も含め一万人以上を投入するが、南房総地域では現場に行き着けない場所も。君津市内では倒木や土砂崩れが二百五十カ所以上に及ぶ。断続的な雷雨も作業中断を余儀なくさせた。現場によっては一部設備の交換で済むという想定が外れ、損傷が確認された電線や電柱の交換が必要となったという。昨年九月の台風21号でも、関西全域で最大百六十八万戸が停電し、全面復旧には十六日を要した。十一日夕の東電の会見で、全面復旧の見通しを問われた技術部門の担当者は「一週間かかるとは思っていない」と歯切れが悪かった。復旧計画の見通しの甘さを報道陣から指摘され、「反省している」と述べた。停電復旧時には漏電が起き火災につながることもある。東電はアイロンやドライヤーなど電熱器具をコンセントから抜いておくことや、外出時はブレーカーを切るよう呼び掛けている。

*5-3:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190912&ng=DGKKZO49625090Q9A910C1L83000 (日経新聞 2019年9月12日) 「農業団地」企業が選ぶ理由
 全国でも珍しい大規模農業団地計画が埼玉県羽生市で動き出した。全体計画24ヘクタールのうち先行する約9.5ヘクタールに進出する3社が決定。全都道府県に設けられた農地中間管理機構(農地バンク)を活用して農地を集積して企業に貸し出す。同様の取り組みは各地であるが行き詰まる例も多い。羽生ではなぜ順調なのか。群馬県との県境にある羽生市は東京から約60キロメートルでコメ作りが盛んだ。だが「後継者不足や耕作放棄地の増加が課題」(同市農政課)。そこで高収益農業を掲げ、農家の転作や市内外から農業への進出を促そうと、2018年3月に農業団地の構想を作成し、11月に公募を始めた。市が面積など企業の要望を聞いたうえで地権者と調整し、農地バンクが借り上げて貸し出す。農業団地は東北自動車道の羽生インターチェンジから車で5分と出荷や観光農園に有利だ。9.5ヘクタールに対して5件の応募があり、市への問い合わせは約40件あった。審査を経て進出が決まったのは、市内のスーパーと東京都内の農業資材メーカー、埼玉県内のハーブ農園の3社。いずれも20年の土地賃借契約を結ぶ。「これだけまとまった土地はめったにない」(進出企業の担当者)。羽生市役所には全国から視察も相次ぐ。農業問題に詳しいみずほ総合研究所の堀千珠主任研究員は「農業集積地の開発で最も重要なのは地権者との調整。知らない人や企業に貸すことに抵抗を感じる人は多い」と話す。また農地を相続した地権者が県外在住で連絡がつかないか、地権者が多すぎて調整がつかないことも多い。今回、農業団地全体の地権者は約80人。先行する9.5ヘクタールでは約35人で市内在住者が多いことが幸いした。しかも多くがすでに農地を貸した経験があり、貸すことに抵抗が少ないのもスムーズに運んだ理由だ。それでも「土地の利用方法を市が勝手に決めるな」と反発する人もおり、市の職員2人が説得に当たった。こういった農業団地開発では、企業などから進出の打診があってから農地を探し始める自治体もあるという。工業団地への誘致では考えにくい。「他地域では自治体の担当者と一緒に地権者まわりをしたこともある」(羽生に進出する企業)。こうした手間を企業に求めないことも企業が羽生を選んだ理由の一つだった。行政が求められることを的確に理解、遂行することが成功への第一歩のようだ。

*5-4:https://www.asahi.com/articles/DA3S14175820.html (朝日新聞社説 2019年9月13日) 停電の長期化 「想定外」ではすまない
 命にかかわる事態である。政府は全力をあげて被災者を支援すべきだ。9日に上陸した台風15号による大規模停電で、千葉県を中心に深刻な影響が広がっている。当初、東京電力は11日中の復旧を目指すと発表したが、13日以降にずれ込んだ。厳しい暑さのなかで不便な生活が続き、熱中症の疑いによる死者も出た。停電にともなう断水なども起きている。東電は復旧を急がねばならない。停電は最大時で90万戸を超えた。東電管内で起きた台風によるものでは規模、期間とも過去最大級という。12日午後8時時点でも約29万戸が電気のない生活を余儀なくされている。台風が去った後も天候が不安定で、断続的な作業にならざるを得なかったうえ、房総半島の山間部などで倒木の多さに手間取ったというが、見通しが甘かったと批判されても仕方がない。きめ細かで、確実な情報発信の徹底が求められる。復旧後には、大規模停電の原因や、なぜ復旧作業に時間がかかったのかを、厳しく検証する必要がある。他の電力会社を含め、停電を起こさぬ努力だけでなく、よりスムーズに復旧できる態勢をつくるためだ。10万戸相当の停電につながった鉄塔2基の倒壊では、強度の想定を超える風が吹いた可能性がある。倒壊の状況を精査し、必要ならば「耐風性」の想定を見直さねばならない。福島第一原発の事故で経営が苦しい東電は、需要の伸び悩みもあり、送配電部門の投資を抑えてきた。電柱の交換や補強といった安全確保策に甘さがなかったかも、検証すべきだ。安倍首相は「復旧に全力を挙げる」と述べた。自治体からは電源車の継続的な手配や、さらなる給水支援を望む声が出ている。各省庁ができることを考え速やかに対応してほしい。心配なのはお年寄りや病人ら災害弱者だ。病院は非常用発電機で機能を維持しているが、燃料補給が欠かせない。介護施設の中には水洗トイレが使えず、職員が手動で流しているところもある。最優先でニーズをくみとり、支える必要がある。停電が解消しても、日常が戻るには時間がかかるだろう。強風で多くの屋根が損傷し、ブルーシートも相当いる。他の自治体や企業も支援の手をさしのべたい。昨年は北海道地震でブラックアウトが起き、台風21号でも関西でのべ約220万戸が停電した。長期的には電線の地中化が有効な対策である。コストはかかるが大規模停電の影響と復旧費用を考えれば、国も電力会社も無電柱化に力を入れる時だ。

*5-5:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190913&ng=DGKKZO49737160S9A910C1EE8000 (日経新聞 2019.9.13) 地熱開発 国が掘削調査 再エネ普及へ企業負担減
 経済産業省は地熱発電の普及に向け、開発段階の支援制度を拡充する。これまで企業に任せていた有望地点を探す初期の掘削調査を、2020年度から国が石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)を通じて代行し、企業の負担を大幅に軽くする。リスクが大きい開発初期の調査を国が主導することで民間が積極的に参画できる環境をつくりたい考えだ。地熱開発は長期の官民の関与が必要だ。掘削して地下構造などをはかる「初期調査」に約5年、発電に必要な蒸気の噴出量をはかる「探査事業」などに約2年かかる。その後、事業化する判断をした後も、環境アセスメントや発電所の建設などに7年程度かかる。中でもリスクが大きいのが初期調査だ。地面に穴を開け、発電に適した地層の構造になっているか、企業が1回あたり数億円かけて入念に調べる必要がある。ただその結果、地層が発電に適していなければ失敗に終わる。調査はこれまでも国が費用の一部を補助していたが、企業側からは国がより関与すべきだとの声が多かった。JOGMECは初期調査のうち、地中に発電に不可欠な熱水や蒸気が十分に含まれているかの調査を代行する。期間は20年度から6年程度としたい考えで、企業が将来計画をたてやすくする。企業が掘削に慎重なのは、多方面との調整作業が難航しがちという事情もある。地熱に適しているとされる地域の多くは、国立公園や国定公園のなかにある。そこで掘削をしようとすると、近くの温泉などへの影響を懸念する地元自治体や、環境省、林野庁などとの難しい調整が必要になる。こうした調整を経産省やJOGMECが担うことで、開発に向けた調整がスムーズになる可能性がある。

<首都圏における災害とインフラ、人口密度など>
PS(2019.9.14、15、16追加):*6-1のように、台風15号は千葉県で大規模停電を引き起こし、今後の対策として老朽インフラを新しいインフラに更新していくことに私も賛成だが、台風・豪雨だけでなく地震・津波が起こることも前提として街づくりは行う必要がある。
 このような中、*6-2のように、日本の首都である東京は、大雨・台風の際には処理能力を超えるため下水処理されずに直接川に流された汚水が、お台場に到達して“トイレ臭”を発し、大腸菌の数も基準を超えるという不潔な状態であることが、先日の五輪テスト大会で明白になった。このように、古くて処理能力が不十分な下水道を使っているため東京の川はいつも汚いが、その汚水を入り江に張った膜で防御するという改善策を聞いた時にはさらに呆れて、オリンピックのお祭り騒ぎよりも、きちんとしたインフラ整備が先ではないかと思った。
 今では東京に1300万人、東京・神奈川・埼玉・千葉の東京圏に3600万人(日本全体の人口の1/3)が住むようになり、下水道だけでなく上水道も質が悪かったり量が少なかったりして節水を強い、不潔な状態になっている。そして、地震・津波に襲われる危険がある東京で、さらにインフラを拡大をするのは金がかかりすぎる上、無駄遣いになるリスクもある。
 そのため、私は、*6-3のように、国会議事堂やその関連施設などの主要な首都機能を安全な場所に移転(もしくは疎開)してはどうかと考える。移転する場所は、栃木県・福島県南部は原発事故の影響で適切でなくなり、岐阜・愛知地域や三重・畿央地域は既に人口が多いため、涼しくて地震・津波の心配がない長野県松本市付近にし、新しい国会議事堂は英国のように議論しやすい民主主義向きの設計にしてはどうかと思う次第だ。
 一方で、*6-4の佐賀県三瀬地区のように、よい農産物を生産する重要な地域であるにもかかわらず、人口が少ないためバスの運行も採算が合いにくい地域もある。私は、将来、マイクロバスやジャンボタクシーも自動運転の電動車にすれば、さらにコストを減らして運行数を増やすことができると考える。
 なお、敬老の日の2019年9月16日、徳島新聞が社説で、*6-5のように、「運転免許の返納が高齢者の生活の質の低下に繋がらないよう、『高齢者の足』の確保を」という記事を書いており、全くそのとおりだと思う。ただ、運転免許を返納しなければならないほど衰えてくると、自宅で家事(火や薬品を使う)をするのも心もとなくなるため、選択肢の1つとして、朝に迎えに来て、食事・風呂・運動・娯楽・文化活動を提供し、夕方に家に送り届ける宅老所を中心部に作ればよいと思う。ただし、8Kテレビで高齢者が若い頃に感動した映画を見ることができたり、多種の新聞・雑誌・本などが置いてあったり、書道・手芸・カラオケができたり、歩いて買い物や病院に行ったりなど、家にいるより便利で居心地が良い場所にしなければならない。

  

(図の説明:左の図は、人口の多い順に都道府県を並べたもので、中央の図は、上位と下位それぞれ10都道府県の人口・面積・人口密度を示したものだ。また、右の図は、日本地図に都道府県別の人口密度を示したもので、赤色の地域は人口密度が高い)

*6-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190914&ng=DGKKZO49820850T10C19A9MM8000 (日経新聞 ) 老朽インフラ、日本の岐路に 、台風で停電、復旧あと2週間 送電網や道路橋、更新コスト重く
 大規模停電を引き起こした台風15号は生活インフラが抱える災害リスクを浮き彫りにした。なお17万戸が停電し影響はライフラインに広がる。1970年代に整備が進んだ送電施設は更新時期が迫り老いるインフラは道路などにも共通する課題だ。国と地方を合わせた借金が1千兆円と財政が厳しく社会保障費も膨らむなか、巨額投資によりインフラをどこまで維持していくか、重い判断が迫られる。台風15号が首都圏を直撃した9日以降、千葉県南部を中心に停電が続く。東京電力パワーグリッドは13日夜、東京都内で記者会見し、「今後、2週間以内におおむね復旧見込み」と発表した。同社は当初、11日に全面復旧するとの見通しを発表していたが、会見で「過去の被害規模から過小な想定をしてしまった。複雑な難工事に直面している」と釈明した。房総半島の送電網は山林に張り巡らされており、倒木によって大規模に損傷しているという。台風による被害は広範囲に及び、停電の全面復旧は時間がかかる傾向にある。2018年に関西を襲った台風21号の被害は、全面復旧まで17日間を要した。停電はライフライン全体に影響を及ぼした。携帯電話の電波を飛ばす基地局が多くの場所で機能せず、スマートフォンの電源も確保できなくなったため、11年の東日本大震災の際には避難所や支援物資の情報共有で力を発揮したSNS(交流サイト)の効果も限定的なものになった。市役所などに設置された充電設備には電源を求める人で長蛇の列ができた。被害が広がった背景として、想定外の強風に加え、送電設備の老朽化も指摘されている。送電線の鉄塔は70年代に建てられたものが大部分を占める。倒壊し、10万戸の大規模停電につながった千葉県君津市の鉄塔は72年に完成したものだった。電力各社などでつくる電力広域的運営推進機関によると、15年度末の時点で約25万基ある送電鉄塔のうち、製造年が00年代のものは年約千基ペースなのに対し、70年代は年6千~8千基にのぼる。東京電力管内の鉄塔の平均使用年数は42年。設置場所や塗装などによって違いはあるが、老朽化は着実に進行している。広域機関は既存の設備を現在のペースで全て更新した場合、鉄塔で250年程度かかる計算としている。台風に有効とされるのが、電柱の地中化だ。だが、電柱は1キロメートル当たりの復旧費が2千万~3千万円で済むのに対し、地中化は同4億~5億円に上る。東京電力ホールディングスは東日本大震災の原発事故で経営危機に陥り、送電関連の設備投資を抑えることで収益を確保してきた。91年に送電や配電設備などに約9千億円を投じたが、15年に8割減の約2千億円まで減少。発送電分離など電力が自由化に進むなか、耐久性があると判断した設備は更新を先延ばしするなどして、できる限り投資を抑えているのが実情だ。インフラの老朽化は電力以外でも深刻だ。建設から50年以上が経過する施設の割合は18年3月時点で73万ある道路橋の25%、1万超のトンネルの20%、5千の港湾岸壁の17%に及ぶ。時間が経過すれば割合はさらに増える。33年には道路橋の6割超、トンネルでも4割が建設から50年を超える。国土交通相に就任した赤羽一嘉氏は、大規模自然災害について「発生のたびに100年に1度の規模だといわれるが、今後は毎年起きると思って対策を進める必要がある」と指摘する。国交省の推計では今後30年間で必要となる費用は最大で約195兆円に及ぶ。ただ、日本の財政状況は先進国で最悪だ。人口減少に備えて既存インフラの廃止や、住宅や商業施設を集約する「コンパクトシティー」も重要な選択肢だ。しかし名古屋大学の中村光教授は「住民の反発を恐れて自治体での議論はほとんど進んでいない」と警鐘を鳴らす。維持すべき施設を選別する方法論は専門家の間でも議論は深まっていないという。

*6-2:https://news.livedoor.com/article/detail/16921713/ (日刊ゲンダイ 2019年8月13日) 五輪テスト大会で選手から悲鳴 お台場の海“トイレ臭”を専門家が解説
 1年後の東京五輪に向けて、水泳競技「オープンウオーター」のテスト大会が11日、東京・お台場海浜公園で開催されたが、参加選手から高水温や悪臭に対する不満の声が相次ぐ散々な結果だった。国際水連は競技実施の条件として会場の水温を16度以上31度以下と定めている。この日の水温は午前5時の時点で29・9度(競技中の水温はなぜか非公開)。そのため午前10時だった男子の開始時間を、女子とほぼ同じ午前7時に前倒しした。ロンドンとリオ五輪の日本女子代表の貴田裕美(コナミスポーツ)は「水温も気温も高く、日差しも強くて過酷だった。泳ぎながら熱中症になるんじゃないかという不安が拭えなかった」と悲鳴を上げた。ロンドン五輪金メダルのウサマ・メルーリ(チュニジア)も「今まで経験した中で最も水温が高く感じた」とヘトヘトだった。
■「すぐに競技場所を変更すべき」
 さらに、選手に酷だったのがニオイだ。約1時間泳いだ男性選手は「正直、くさいです。トイレみたいな臭いがする」と衝撃の証言をした。だが、お台場の海が“くさい”のは必然だという。元東京都衛生局職員で、環境・医事ジャーナリストの志村岳氏がこう言う。「お台場はゴミで埋め立てられた場所。海底のゴミが、海水を汚染しています。ただでさえ、隅田川などが運ぶ汚水が流れ込むうえ、大雨や台風の際は、下水の処理能力を超えた汚水が川に放出され、お台場に到達する。しかも、地形が入り組んでいるため、これらの汚水が外海に出て行かず、よどんでしまう。お台場は東京でもっとも泳いではいけない海なのです」。お台場はかつて、海水浴禁止だったが、2014年から港区が期間限定で海水浴場として開放。期間中、汚水の流入を防ぐ膜を設置して“泳げる海”にしている。今回のテスト大会でも、入り江口に約400メートルの膜を張った。苦情を受けて、本番では膜を3重に厚くするという。「焼け石に水です。例えば、いくら3重にしたところで、膜では、トイレ臭の原因と考えられるアンモニアの流入は防げません。都の職員も分かっているはずです。五輪開催1年前に問題が表面化したのに、小手先の対策でごまかせば、各国は黙っていないでしょう。すぐに、競技場所を変更すべきです」(志村岳氏)。東京五輪の暑さ対策で整備された「遮熱性舗装」は、空間気温がかえって上昇することが指摘されているが、今度は海水のトイレ臭。「くさいものにフタ」は許されない。

*6-3:https://www.excite.co.jp/news/article/B_chive_economics-politics-japanese-politics-capitaltransfer-candidate/ (エキサイト 2019年2月21日) 首都移転議論の候補地は?
 首都移転は常に議論の俎上に載せられるテーマです。現在の首都である東京への一極集中が問題視されているためです。この首都はどこへ移転すべきと議論されているのでしょうか。
●3つある
 首都移転の候補地は大きくわけて3つあります。ひとつは栃木県や福島県南部のあたりです。東京から新幹線で1時間ほどでアクセスできることに加えて、夏場は比較的涼しい場所のため、候補地のひとつとされてきました。
●岐阜、愛知地域
 もうひとつが岐阜、愛知地域です。日本の3大都市と言える東京、名古屋、大坂において、中間点である名古屋の周辺に首都移転計画がありました。確かに日本のほぼ中央といえる場所にありますから、交通などにおいては便利かもしれません。さらに、東京と大阪の中間点といった位置づけにもなりますし、北陸方面からのアクセス回路も作ることができます。
●三重、畿央地域
 もうひとつの候補地が三重県や畿央と呼ばれる場所です。奈良県などを含むものでしょう。もともと平城京があり、史実の上でも日本の首都であったわけですから、原点回帰とも言えるかもしれません。さらに、リニア中央新幹線が名古屋から先の大坂まで通った場合には、名古屋と大坂の中間点くらいの場所に新たな首都が作られるといった可能性も考えられるでしょう。しかしながら、首都移転には莫大な費用がかかるため、実現に向けてはさまざまな問題点が山積みになっているというのが現状となっています。

*6-4:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/427543 (佐賀新聞 2019年9月15日) <昭和バス再編>代替にマイクロバス購入を 三瀬地区、運行案固まる
 昭和自動車(唐津市)の路線バス再編に伴い代替交通手段を考える三瀬地区公共交通検討会議(会長・井上文昭三瀬自治会長)が13日夜、佐賀市三瀬支所で会合を開き、運行本数や料金体系などの案を取りまとめた。同一路線を利用する神埼市と協議していく。これまでの会合で、三瀬支所から横武(神埼清明高校前)まで中型バスかマイクロバスを定時定路線で運行する方針を決めていた。今回の案では、29人乗りのマイクロバスを購入し、乗客が少ない場合や点検時は神埼市脊振で使用するジャンボタクシーを併用する。平日が神埼行き7便、三瀬行き8便で、土曜が各5便、日曜・祝日が各4便と、現在の三瀬発着便とほぼ同じ規模にする。三瀬支所~横武の運賃を抑えるなど、神埼経由でJRを使い佐賀市街地の高校に通う生徒の負担が変わらないようにする。委員は「学生が安心して通学できる」と今回の案を評価しつつ「バス停は今まで通りでいいが、どこでも降車できるようにしてはどうか」と注文もしていた。

*6-5:https://www.topics.or.jp/articles/-/257805 (徳島新聞社説 2019年9月16日) 敬老の日 「高齢者の足」の確保を
 きょうは「敬老の日」である。本県の100歳以上は533人を数える。医療の進歩、食生活や公衆衛生の向上などにより、超長寿社会が実現したことは喜ばしい。一方で高齢化に絡む痛ましいニュースが少なくない。その一つが、自動車のアクセルとブレーキの踏み間違えが原因とみられる交通事故だ。誰しも年をとると、体力や視力が衰える。健康に不安を感じたら、運転免許証を自主返納することが望ましい。問題は、その後の「生活の足」をどう確保するかだ。県警によると、2018年の自主返納者は3082人で過去最高だった。今年は6月までで1791人と、昨年を上回るペースで返納されている。4月、母子が犠牲になった東京・池袋の事故が心理的に影響しているという。とはいえ、県内の公共交通機関は脆弱である。返納が高齢者の生活の質低下につながってはならない。近年、健康寿命を平均寿命に近づけることへの意識が高まってきた。介護に頼らず、いつまでも元気で生き生きしていたいと思うのは当然のことである。そのためには、生活習慣病の予防など健康に留意することはもちろん、積極的に社会参加し、日々、生きがいや喜びを感じながら暮らすことが大事だろう。だが遠出できず、買い物に行くこともままならないとなれば、食の偏りや低栄養を招きかねない。1人暮らしだと、孤独に陥ってしまうこともあろう。運転免許返納後の不自由をなくすため、過疎地の自治体などは、自主返納者らを対象に、さまざまな優遇措置を打ち出している。主なものは、運行するバスの運賃半額や割引、タクシー料金の一部助成などだ。バス会社も路線バスの運賃半額を実施している。料金を1割引きとするタクシー会社(個人を含む)も増えてきた。ただ、バスは本数が限られている。割引の区間やサービスの利用回数が限定されているケースも多い。求められるのは利便性の向上だ。そのためには鉄道、路線バス、貸し切りバス、コミュニティーバス、スクールバス、タクシー、福祉車両といった、あらゆる交通手段を柔軟に組み合わせることが欠かせない。国や県、市町村などは今、そうした方法を模索している。交通網の最適化が図られ、乗り継ぎや長距離移動が楽になれば、全体の利用者増も期待できよう。運行形態の抜本的な見直しによる交通機関の維持なくして、自主返納者を含む高齢者の足確保やサービス拡充はありえない。本県の高齢化率は33・1%に達している。3人に1人が高齢者である現実を直視し、地域の足を全員で支える意識を共有したい。

<全世代型社会保障とは>
PS(2019年9月16、21、22日追加):*7-2のように、総務省が9月16日の敬老の日にあわせてまとめた9月15日の人口推計では、65歳以上の“高齢者”人口が総人口の28.4%で、後期高齢者医療制度の対象となる75歳以上は14.7%(7人に1人)になった。また、労働力調査によると、65歳以上の“高齢者”の就業率は非正規雇用が多いものの、2018年時点で24.3%であり、政府は70歳までの就労機会を拡大する法改正を準備しているそうだが、私は75歳を視野に入れた法改正をしてもよいと思う。ちなみに、埼玉県内の企業は、*7-3のように、65歳以降の雇用に87%が肯定的で、「熟練の技術や知見を持つ高齢者への期待が高まっている」とのことだ。
 そのような中、日経新聞が社説で、*7-1のように、「①介護費用は2019年度予算で11.7兆円に達し」「②65歳以上の高齢者が支払う保険料は全国平均で月5869円、40~64歳の保険料も上昇して現役世代の大きな負担だ」「③高齢化が進む中で制度を維持するために介護保険の給付と負担の見直しが必須」「④厳しい現実を直視し、痛みを伴う改革に踏み込むべきだが、痛みはみなで分かちあいたい」「⑤給付を効率化することが欠かせず、掃除や料理を手伝う生活援助サービスは大きな課題」「⑥介護サービスを利用する際の自己負担は原則1割だが、原則2割にすべき」「⑦介護サービスのケアプランづくりも一定の負担が必要」などと記載している。
 このうち、①については、2000年から始まった介護保険制度であり、始まった当初は足りないものだらけだったため増えるのが当然であり、増えたのは単なる景気対策と違ってニーズが高かったということである。また、②については、40歳未満の人は介護保険料を支払っていないため、働いている人すべてが介護保険料を支払うように制度改革し、合わせて介護制度は病児の介護も担うようにすべきだ。さらに、⑤は、男性には定年制を言いながら、家事・介護の労働負担を考慮しないドアホさであり、⑦は、家のリフォームの仕方を相談しただけで金をとるのと同じくらいあくどい。さらに、⑥は、以上のすべてを改善し、何事も無料はよくないため子どもの医療費負担も1割にしてから考えるべきである。そして、③④のように、事実を無視して痛み分けばかり述べるのは、高校まではゆとり教育、大学時代は麻雀づけ、就職してからは家事・育児・介護には関係ないと思っている人が記事を書いているからだろう。そのため、労働市場で高齢者が担う役割は大きいし、新聞社や役所などの幅広い視野を要する組織は、1年以上の長期育児休暇や介護休暇取得を義務付け、従業員に家事・育児・介護等を経験させるのがよいと思う。
 これが、全世代型社会保障の輪郭で、*7-4の幼保無償化もよいし、地方自治体が独自財源で不足部分を補うのもよいとは思うが、正しい理念を持った政策にして欲しい。
 なお、*7-5に、八田達夫氏が「⑦無償化で需要が増えて待機児童問題は悪化した」「⑧認可保育所の0歳児枠は基本的に廃止せよ」「⑨全員が保育士との要件を6割まで緩めよ」と書いておられる。そして、⑦の理由について、「⑩無償化は高所得世帯ほど恩恵が大きく、子の貧困を救うために使えた財源を中高所得者が奪う結果をもたらす」「⑪保育サービスの供給量は保育士の数がネック」としておられるが、これだけ無駄遣いをしている日本政府が幼保無償化と待機児童対策の二者択一を行う必要はなく、単なる景気対策を削減すべきだ。さらに、3~5歳児の全世帯無償化は義務教育の3歳開始を視野にしており、貧困対策ではないため、⑩は反論になっていない。従って、⑨⑪の保育士不足は、幼稚園・小学校の教員免許取得者・栄養士・外部講師・雑用係などでチームを組んで教育・保育を提供しながら埋めるのが適切だ。さらに、⑧については、「⑫0歳児保育を不必要に多く生み出しているから」と書かれているが、育児休業を取れるのは実際には職場である程度の実績を積んだ正規雇用の女性だけであるため、認可保育所の0歳児枠を廃止すれば子を持てない夫婦が増える。また、「⑬都会では認可保育所が足りない」と書かれているのは事実だが、地方には比較的広い教室や園庭を持つ認可保育所に空きがあるため、これが首都圏に過度に人口を集中させ地価をはじめ物価を上昇させた弊害なのである。
 さらに、*7-6のように、国公私立大学・短期大学の97%にあたる1043校が住民税非課税世帯向けに開始される大学・短大の無償化対象となり、該当する学生には授業料の最大年70万円減免と給付型奨学金の最大91万円支給が行われるそうだ。住民税非課税世帯とは、独身者・単身者なら年収100万円以下、障害者・未成年者・寡婦(寡夫)なら年収約204万円以下の人で、対象はかなり絞られたがないよりはよくなった(https://www.amazon.co.jp/ref=dra_a_ms_hp_ho_xx_P1700_1000?tag=dradisplay0jp-22&ascsubtag=7e93be7451ad705a3c98e4f9e11c2625_CT# 参照)。しかし、子を大学まで出した上で2000万円以上の老後生活費を準備するのは、住民税非課税世帯でなくとも困難だ。教育は、(集団に埋没するのではなく)革新や生産性向上のために考えながら働くことのできる人材を創るために必要な国家的投資でもあるため、今後は、国立大学授業料の低減や対象者の要件緩和が必要だ。

  
日本の出生数・合計特殊出生率推移 介護産業の市場規模    年齢階級別平均所得

(図の説明:左図のように、戦後の1947~1949年に第一次ベビーブームが起こり、出生率が高くなって団塊の世代が生じ、その子が1973年前後に生まれて第二次ベビーブームとなった。そのため、団塊の世代が後期高齢者になる頃の社会保障が心配されているが、生産性向上と支え手の拡大で乗り切るべきだ。中央の図の介護保険制度は、女性の社会進出と核家族化の要請により日本で生まれた制度だ。しかし、2000年に始まったばかりの制度で実需でもあるため、増加するのは当然だ。その介護保険料は、日本では40歳以上しか納付していないが、右図のように所得の少ない高齢者に多く負担させるよりも、働く人すべてで負担するのが公正・公平である)
 
*7-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190916&ng=DGKKZO49842270U9A910C1PE8000 (日経新聞社説 2019年9月16日) 介護保険は給付と負担の双方に切り込め
 介護保険制度の見直しに向けた本格的な議論が、社会保障審議会の部会で始まった。高齢化がさらに進むなかで制度を維持するためには、給付と負担の見直しが必須だ。厳しい現実を直視し、痛みを伴う改革に踏み込むべきだ。介護保険は3年に1度、制度を見直している。今回の議論は2021年度からの実施に生かすためのものだ。介護保険の現状は厳しい。介護費用は19年度の予算ベースで11.7兆円に達した。制度創設時の00年度の3倍以上にあたる。65歳以上の高齢者が払う保険料も全国平均で月5869円で、00年度の約2倍に増えた。40~64歳の保険料も同様に上昇しており、現役世代の大きな負担だ。介護費用には税も投入されるが、過度に膨らめば、制度の持続が難しくなる。団塊の世代が全員75歳以上になる25年は、もう目前だ。介護予防の取り組みで健康寿命を延ばし、できるだけ介護が必要にならないようにするのは一つの手だが、今の給付を効率化することが欠かせない。なかでも掃除や料理などを手伝う生活援助サービスは、大きな課題だ。訪問介護の一種だが、介護の必要性が比較的低い軽度者については、自治体の事業に移すことを検討すべきだ。一方、一人暮らしの高齢者や老々介護の人は多く、現役世代の介護離職も防がねばならない。給付抑制だけでは限界がある。負担増をどう分かちあうか、正面から議論する必要がある。高齢者が介護サービスを利用するさいの自己負担は「原則1割」だ。収入の多い一部の人のみ、2、3割となっている。経済的に苦しい人には配慮しつつ、原則を2割にすることが望ましいだろう。介護サービスの利用計画(ケアプラン)づくりは現在は自己負担がないが、これも一定の負担が必要ではないか。そもそも介護は、人手不足が深刻だ。処遇改善を着実に進めることはもちろん、介護ロボットの活用などで働きやすい環境づくりを急がねばならない。高齢者、とりわけ75歳以上が増える一方、現役世代の人口は減少していく。改革の遅れは、将来への付け回しを増やすばかりだ。介護だけでなく、医療でも高齢者に一定の負担を求める改革を進める必要があろう。痛みはみなで分かちあいたい。

*7-2:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO49851150V10C19A9MM8000/ (日経新聞 2019/9/15) 65歳以上人口が最高28.4% 7人に1人が75歳以上
 総務省が16日の敬老の日にあわせてまとめた15日時点の人口推計によると、65歳以上の高齢者人口は前年比32万人増の3588万人だった。過去最多を更新し、総人口の28.4%を占めた。後期高齢者医療制度の対象となる75歳以上は53万人増え1848万人となった。総人口の14.7%とおよそ7人に1人に上り、超高齢化社会を支える制度づくりが急務だ。70歳以上の人口は98万人増の2715万人で、総人口に占める割合は21.5%に上った。ほかの年齢層に比べて増加数が多いのは1947~49年生まれの「団塊の世代」が含まれるためだ。同省によると65歳以上の割合は世界201の国・地域のうち最も高い。2位のイタリア(23.0%)を大幅に上回っている。国立社会保障・人口問題研究所の推計では今後も上昇し、2025年に30.0%、40年には35.3%に上る見込みだ。働く高齢者数も増加している。労働力調査によると、65歳以上の就業者数は18年、862万人と過去最多を更新した。15年連続で前年より増えた。約半数の469万人が企業などに雇用され、このうち76.3%にあたる358万人がパートなど非正規雇用だった。非正規職に就く理由は男女ともに「自分の都合のよい時間に働きたいから」が最多となった。日本の高齢者の就業率は18年時点で24.3%。男女別では男性が33.2%、女性が17.4%だった。主要国の中でも高い水準にあり、米国は18.9%、カナダは13.4%だった。政府は人手不足などの問題を解決するために、70歳までの就労機会を拡大する法改正を準備している。企業が深刻な人手不足に直面し、労働市場で高齢者が担う役割が拡大している。

*7-3:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO38911390T11C18A2L72000/?n_cid=SPTMG002 (日経新聞 2018/12/13)埼玉県内企業、65歳以降の雇用 87%が肯定的
 埼玉りそな産業経済振興財団(さいたま市)が実施した埼玉県内企業の高齢者雇用に関する調査で、65歳以降の雇用に肯定的な回答は9割近くに上った。同財団は「企業の人手不足感が強まり、熟練の技術や知見を持つ高齢者への期待が高まっている」と分析している。65歳以上の高齢者を「積極的に雇用したい」「環境、条件などが整備されれば雇用したい」が合わせて87%だった。65歳以降の雇用が「ある」との回答は70%。政府は70歳までの就労機会の確保を目指しているが、多くの県内企業ですでに65歳以上の高齢者が働いている現状が浮き彫りになった。高齢者に期待することを複数回答で聞いたところ「熟練した技術や知見の活用、伝承」が88%で最多。次いで「人手不足への対応」(71%)、「若手の育成」(64%)の順だった。高齢者雇用の課題は「健康管理」(78%)が最も多かった。調査は10月中旬に実施し、236社から回答を得た。

*7-4:https://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201909/CK2019091502000122.html (東京新聞 2019年9月15日) 幼保無償化「国以上」6割 さいたまや千葉 独自財源で拡大
 幼児教育・保育の無償化に関し共同通信が県庁所在地など計百三自治体に行った調査で、国の基準では無償化とならない世帯に、独自財源で何らかの経済的支援を実施または検討している自治体が六十二市区と約六割に上ったことが十四日、分かった。国の制度以外に取り組む予定がないと答えたのは四十一市町だった。安倍政権は「三~五歳の全ての子どもを無償化する」と看板政策をアピールしてきた。しかし、実際には恩恵を受けられない家庭もある。待機児童問題も解消されない中、自治体が国の制度設計の不備を補う形で独自策を講じている実態が浮き彫りになった。調査は八~九月、県庁所在地と政令市、東京二十三区、昨年四月時点で待機児童が百人以上の計百三自治体を対象に実施。九月十三日時点の結果をまとめた。国の制度では、認可保育所や認定こども園などに通う三~五歳児の場合、保育料は無料となる。一方、認可外保育所などを利用する場合は全額無料とはならず、上限付きで利用料が補助される。ゼロ~二歳児は年収が低い住民税非課税世帯に対象が限られる。国を上回る取り組みとして最も多かったのは「利用料補助の上限額引き上げ」で、さいたま、千葉など二十市区。さいたま市では、市が一定の保育の質があると判断した認可外施設に限り、国より二万円上乗せし、実質的に月五万七千円まで補助できるようにした。鳥取や高知など十五市区は「対象外の世帯を一部無償化する」と回答。例えば大阪市や鳥取市は、母親が働いていないなど国基準では「保育の必要性が認められない世帯」も対象とする。山形、宇都宮など八市区は、住民税非課税世帯以外のゼロ~二歳児について保育料を値下げするなどとした。

*7-5:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190920&ng=DGKKZO49983690Z10C19A9KE8000 (日経新聞 2019.9.20) 経済教室幼保無償化の論点(上)待機児童の解消 最優先で、八田達夫・アジア成長研究所所長(1943年生まれ。ジョンズ・ホプキンス大博士(経済学)。専門は公共経済学)
<ポイント>
○無償化で需要増え待機児童問題は悪化へ
○認可保育所の0歳児枠は基本的に廃止を
○全員が保育士との要件を6割まで緩めよ
 政府は2019年10月から、幼児教育・保育の認可保育所の無償化を全面的に実施する。認可保育所に子どもを預ける場合、0~2歳児については住民税非課税の低所得世帯、3~5歳児については全世帯がそれぞれ無償化の対象となる。本稿では、この改革を政策目的の観点から評価する。 保育政策の重要な目的は、子どもを欲しい親が子どもを持てるようにすることだ。それができていない主因は以下の2つである。第1に低所得者の多くが子どもを健全に養っていくには貧困すぎる。結婚をためらう若者は多い。第2に都会の中所得者の場合は、子どもが待機児童になる可能性が子どもを産みにくくしている。待機児童になると、無認可保育所に入れるか、労働参画を諦めねばならない。入所の可否が極端に大きな差をもたらす仕組みは、若い夫婦が将来保育コストを予測することを不可能にしている。これらの問題は無償化では解消しない。まず生活保護世帯は現在も保育料が無償だし、低所得者に対する保育料軽減策は既にある。子どもの貧困対策には保育所だけを無償にしても役立たない。少なくとも所得税の給付付き税額控除(低所得者への所得水準に応じた補助金)を別途用意する必要がある。加えて今回の無償化は高所得世帯ほど恩恵が大きい。子どもの貧困を救うために使えた財源を中高所得者が奪う結果をもたらす。しかも中産階級にとっての障害である待機児童数は増えてしまう。認可保育所を無償にすれば認可保育サービスへの需要量は大幅に増えるが、供給量は保育士の数により制限されているからだ。その状況での無償化は入所選考で落とされた親に何の恩恵も与えない。待機児童をなくすことこそ、保育政策の喫緊の課題だ。最小の財政支出で実現し余裕の資金を低所得者の生活一般に使えるようにすることを基本とすべきだ。待機児童とは、認可保育所あるいは認証保育所などに入れない児童のことをいう。認可保育所とは、児童福祉法に基づき施設の広さや保育士数などの設置基準を満たし都道府県知事により認可された施設である。設置基準が厳しいため、児童1人あたり費用は高い。情報公開されている東京都板橋区では、1人あたり費用が0歳で月42万円、1歳で21万円、4歳以上で11万円だ。一方で多額の国費負担により保育料は極めて低く抑えられている。保護者の年収が500万円の場合、月額保育料は3万円未満(0歳と1歳)から2万円未満(4歳)の範囲だ。認可保育所に申し込んだ児童の入所選考は、自治体がその地域の児童福祉を必要とする人の数に合う保育サービス供給量を算定し、一定の入所基準に基づき提供する「配給制度」だ。従って認可保育所と保護者が直接に入所の契約をするのではなく、保護者は自治体が指定する認可保育所に子どもを預けねばならない。都会では認可保育所が足りないので、すぐに入所できないケースが多い。入所基準は、両親ともフルタイムで働いている場合は優先順位が高く、一方がパートタイムで働いている場合は低い。そのため例えば両親ともフルタイムで外資系企業で働く高所得世帯の子が認可保育所に入れる一方、パートタイムの職にしか就けない比較的低所得の親の子が入れない。仮に中高所得者の保育料を引き上げられれば、需給調整がなされ供給不足は解消するはずだ。経済学的には、待機児童とは「多額の国費がつぎ込まれている認可保育所の保育料を行政が需給均衡水準より過度に低く決めているために発生している認可および認証保育所サービスの供給不足のこと」だ。今回の無償化はもともと低く設定されている保育料をさらにゼロまで引き下げるのだから、待機児童問題を悪化させる。このダメージを和らげるには、無償化とは関係なく待機児童問題対策の王道を実施することだ。都会の中産階級が最も必要とする待機児童問題に有効な対策を提案したい。追加的な費用をかけずに実行できる。第1は現制度が生み出している0歳児保育への過剰な需要を減らすことだ。現在は0歳児を持つ母親の多くは、子どもが1歳に達するまで育児休業をとれる。しかし1歳になってから保育所に入れようとしても、保育所は0歳から入る子どもで埋まっている。そこで1歳からの枠を確保するために、0歳時点では育休を諦めて保育所に預け、出産後まもなく職場に復帰するという現象が起きている。0歳児保育を不必要に多く生み出している。国の0歳児に対する保育士配置基準は1歳児の2倍だ。0歳児保育の増加は1歳児以上の保育所収容数を減らし、待機児童全体を不必要に増やしている。この問題の解決策は認可保育所の0歳児枠を基本的に廃止することである。そうすれば保育士が0歳児保育から解放され、1歳からの入所に十分な枠を確保でき、親は0歳の時は家庭保育、1歳になったら復職という選択が可能となる。その一方で、育児休業をとれない母親については、保育ママやベビーシッターに対する費用を行政が支援すれば、月額40万円前後の0歳児認可保育費用に比べてコストを大幅に節約できる。この方策は基本的に東京都江戸川区で取り入れられ成功してきた。国の改革としても導入すべきだ。第2は認可保育所の全員が保育士でなければならないという現行要件を6割まで引き下げることだ。「東京都の認証保育所」は保育サービス提供者の総数では認可保育所と同等で、6割が保育士であることが要件だが、問題は生じていない。認可保育所の保育士要件をこの水準まで引き下げて、減少分を保育士以外の人で補えば、保育士が認可保育所から解放される。それにより認証保育所の増設が可能となり、差し引きで待機児童数を減らせる。1997年創設の横浜保育室や、01年創設の東京都認証保育所など認証保育所への国費投入はほぼないため、認可保育所より高い保育料と自治体からの補助で大半の財政を賄っている。東京都の場合、平均保育料は約6.5万円である。認証保育所は、認可保育所に劣らない高い評価を得ている。表で示したように、東京都江東区での保護者の評判が高い保育園ランキングでも明らかである。東京都全域での平均でみても、認証保育所の方が認可保育所より評価が高い。教育内容などで利用者の要望に応えているからだろう。認証保育所の緩やかな保育士要件が特段の質の低下をもたらしているわけではない。認可保育所の保育士要件をこの水準まで引き下げれば保育の質を下げることなく、待機児童数を減らせる。まずこれらの王道対策を実施しダメージを和らげた後で、低所得者以外の無償化を廃止し、認可保育所の保育料を認証保育所の水準以上に引き上げ、生み出された財源を保育士の待遇改善と給付付き税額控除の創設に投入すべきだ。

*7-6:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190921&ng=DGKKZO50021120Q9A920C1CR8000 (日経新聞 2019.9.21) 無償化、大学・短大97%の1043校が対象、低所得世帯向け、4月開始 31校は申請見送り
 2020年4月に始まる低所得世帯を対象とした高等教育の無償化制度を巡り、文部科学省は20日、募集停止などを除いた国公私立の大学・短期大学1043校(全体の97%)が制度の利用を申請し、全校が要件を満たして対象になったと発表した。一方、私立の大学・短大31校と国公私立の専門学校1024校は自ら申請を見送るなどして対象外となった。無償化制度は住民税非課税世帯やそれに準じる世帯が対象。授業料を最大で年70万円減免するほか、生活費として返済不要の給付型奨学金を最大で同91万円支給する。大学などが制度の対象となるには、教育体制や経営・財務について一定の要件を満たす必要がある。文科省によると、国公立の大学・短大186校と、国公私立の高等専門学校57校はいずれも利用を申請し、全てが要件を満たした。私立の大学・短大は888校のうち857校が申請し、全校が要件を満たした。この中には留学生が行方不明になり不適切管理が指摘された東京福祉大も含まれる。31校は各校の判断で申請を見送った。文科省によると、このうち10校弱が経営上の要件を満たせないとみられる。ほかは「規模が小さく対象者が見込まれない」「独自の奨学金制度がある」などが理由で、医学部などは授業料が高く、支援額では大幅に不足するため利用を見送ったようだ。国公私立の専門学校は2713校中1696校が申請。1017校が見送った。申請したうちの7校は要件を満たさず、1校は審査継続中で、無償化対象となったのは全体の62%にとどまる。申請見送りは「社会人が多い」「準備が整わない」などが理由という。私大は今春で3割が定員割れに陥っているが、ほとんどが無償化対象になったことについて、文科省は「制度は低所得者に高等教育への道を開くことを第一にしている。一定程度(経営に)しっかり取り組んでいれば要件は満たせる仕組みだ」と説明する。無償化の対象校は同省のサイトで確認できる。一方、文科省は低所得世帯を対象とした今回の制度開始により、国立大の学部生のうち、中所得世帯などの1万9千人は授業料負担が増えると推計している。各大学独自の中所得世帯向けの支援制度がなくなる見通しであることなどが理由だ。同省は家計への影響を抑えるため、経過措置を検討する。無償化制度の財源は10月の消費増税で賄う。無償化で低所得世帯の高等教育進学率が将来的に8割まで上がった場合、年約7600億円が必要になると試算されている。桜美林大の小林雅之教授(教育社会学)は「学生が教育を受ける機会が広がったことは評価できる。低所得世帯の学生がより多く通う専門学校は、対象を増やしていく必要がある。制度を知らずに支援を受けられない学生が出ないよう、制度の周知も大きな課題になる」と話している。

<幼保無償化について>
PS(2019年9月23日追加):1990年代に、仕事との両立が不可能なので子を作らないと決めた時から、私は「少子化の原因は、職住接近していないことと保育所の不備にある」と考えて、保育所の整備を主張してきた。また、私の東大の後輩は、学童保育がなかったため子を他人の家に預けて研究を続けながら、学童保育の必要性を主張してきた。それから、四半世紀後の現在でも保育や学童保育が不足しているが、その人の子は既に結婚し、これらは行政のアクションのトロさを示すものだ。そして、そういう私に「シニア民主主義」などと言った人は、権力(?)に対する建設的な批判をしたのではなく、高齢者差別を奨める罵詈雑言を言ったにすぎない。
 そのような中、*8-1のように、日経新聞が、2019年9月23日、幼保無償化の論点として、①地方で虐待予防や女性活躍推進など意義 ②待機児童増で保育所受け入れ拡大圧力も ③保育の質低下回避へ無償化の制度修正を という記事を書いている。①のように、虐待予防や女性活躍推進などの意義を掘り下げて書いているのは「現在だからこそ」と評価できるが、②のように、いまだに「無償化によって保育所利用が増え保育所への受け入れ圧力が拡大する」「待機児童が増える」というのを無償化の欠点としているのは問題だ。何故なら、これらの潜在的ニーズは女性の犠牲によって潜在化しているだけなのであり、子育てにおける女性のストレスを増加させているからだ。さらに、保育所を利用するのに共働きが求められるというおかしさも、家庭生活に対する行政のいらぬ介入により子育てに関する女性のストレスを増やしている。しかし、これらの論点は、幼保無償化によって再度リスト化されたので、③のように幼保無償化を後退させるのではなく、前進させながら解決すべきだ。
 また、*8-2も、④子どもの安全や保育の質の確保という課題が残されたまま ⑤幼稚園が無償化に必要な申請をしていない ⑥保護者は幼稚園に文句を言いづらい ⑦自治体の「保育の必要性」認定が一大作業 ⑧給食費をめぐって混乱 などと記載しているが、④⑧はこれまでもやってきたことを正確に行えばよいだけである。また、⑤⑥は、保護者の立場に立った運営をしていないため、地方自治体や幼稚園の方に問題がある。さらに、⑦は、ニーズのある人は誰でも利用できるようにすべきで、行政が勝手に「保育の必要性がない」と決めつけること自体に問題があるのだ。従って、政府の混乱というよりは、これまでの地方自治体や厚労省の不作為・不効率のツケが廻ってきたのだと思われる。
 さらに、*8-3は、⑨制度を支える保育士の待遇が悪い ⑩潜在保育士が多い ⑪保育士の平均就業年数に対して支給される処遇改善費は平均10年以上に対する12%で頭打ちで、経験の長い保育士がいても昇給させにくい ⑫保育士不足は待機児童問題に直結している と書いている。⑨⑪の給与の決め方は、女性が多い保育士は10年程度働いた後は結婚して辞めることを前提としているようだ。さらに、女性が主体となる職業は、(女性差別のため)看護師・介護師なども平均給与が低く設定されているが、それが⑩⑫の結果を招いているため、経験や実力のある保育士はそれ相応の高給にすべきなのである。

   
2018.5.15帆足Blog   2018.6.1朝日新聞   2019.7.7朝日新聞 2019.9.15東京新聞
 
(図の説明:1番左の図のように、幼稚園は文科省の管轄、保育所は厚労省の管轄であるため、小学校の入学年齢を満3才として教育し始め、0~2歳と学童保育を保育とするのがよいと、私は考える。左から2番目の図のように、専業主婦の0~2歳児は「保育の必要性がない」として今回は無償化されていないが、専業主婦も求職活動・介護・第2子の出産などのさまざまな理由で保育の必要性が生じることはあるため、専業主婦を差別するのはよくない。また、右から2番目の図のように、認可外保育所の設置基準は緩いため、質の向上は重要だ。さらに、国の基準は最低を確保するものであるため、右図のように、自治体独自の基準や補助もあってよいが、どうしても国の基準にすべきと考えられるものは、現場からの要請で次第に改善していけばよいだろう)

*8-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190923&ng=DGKKZO50033540Q9A920C1KE8000 (日経新聞 2019年9月23日) 幼保無償化の論点(中)上限額設定・所得制限検討を、柴田悠・京都大学准教授(1978年生まれ。京都大卒、同大博士(人間・環境学)。専門は社会学、社会保障論)
<ポイント>
○地方で虐待予防や女性活躍推進など意義
○待機児童増で保育所受け入れ拡大圧力も
○保育の質低下回避へ無償化の制度修正を
 10月から幼児教育・保育無償化により、3~5歳は全員無償、0~2歳は住民税非課税世帯のみ無償となる(幼稚園と認可外保育施設は上限額まで無償化)。無償化には一定の意義があるが、課題も多い。第1の意義は地方で虐待予防が進むことだ。虐待などの不適切な養育は、幼児の脳を物理的に変形させ、その後の社会生活を困難にする。山口慎太郎・東大准教授らが全国調査データを分析した研究によれば、母親が高卒未満の家庭では不適切な養育が生じやすく、子どもの社会的発達が遅れやすいが、子どもが2歳半時に保育所に通っていると、不適切な養育が予防されやすく社会的発達が健全になりやすい。従って保育所定員に余裕のある地方では無償化により、社会経済的に不利な家庭の保育利用が増え、虐待予防が進むと期待できる。第2の意義は地方での人手不足緩和と女性活躍だ。無償化により認可保育所(認定こども園を含む)への申し込みが増えると見込まれる。岡山市が2018年に実施した保護者対象のアンケート調査によれば、無償化により認可保育所の利用希望者数が3歳児でも4歳児でも2割増える見込みだ。特に4歳児では幼稚園から保育所への需要の移動が見込まれる。5歳児は調査されていないが、おそらく4歳児と同様だろう。日経新聞と日経DUALが18年に実施した主要143自治体へのアンケート調査でも、約8割が「無償化により保育所への利用申し込みが増える」と回答した。保育所を利用するには、基本的に共働きが求められる。そのため保育所定員に余裕のある地方では無償化により母親の就業が増え、人手不足緩和や女性活躍が進むと期待できる。第3の意義として育児費用の減少により、産みたい人が産みやすくなるという少子化対策効果が挙げられるが、効果は限定的だろう。確かに全国の50歳未満有配偶女性を対象としたアンケート調査(15年国立社会保障・人口問題研究所実施)では「理想の子ども数を持たない理由」の第1位は「子育てや教育にお金がかかりすぎるから」(56%)だ。しかし全国20~59歳男女対象のアンケート調査(12年内閣府実施)では「子育て全体にかかる経済的な負担として大きいと思われること」の第1位は「大学・専門学校などの高等教育費」(69%)、第2位は「塾などの学校外教育費」(49%)、第3位は「小・中・高の学校教育費」(47%)で、「保育所・幼稚園・認定こども園の費用」は第4位(45%)だった。つまり幼保無償化により「子育ての経済的負担感が減る」と感じる人は子育て世代の半分弱にすぎない。むしろ専門学校や大学などの高等教育費を軽減するほうが、子育て世代の約7割の負担感軽減につながる。多くの人々にとって産みやすい環境を整えるという意味では、幼保無償化よりも高等教育費軽減のほうが効果が大きそうだ。またより根本的な対策としては働き方の柔軟化こそが必要だ。一方、最大の課題は主に都市部で待機児童が増えることだ。野村総合研究所による18年実施の全国アンケート調査に基づく試算をみてみよう。女性の就業率が今後国の目標通りに上昇すれば、保育の定員は、18年度から20年度末にかけて32万人分増やす政府の計画が実現してもなお、23年には28万人分不足するという。政府の計画では「保育の申し込みをしたがかなわなかった数」(顕在的待機児童数)を基に32万人という将来需要を想定する。一方、野村総研の試算は「保育(幼稚園の預かり保育を除く)を希望していたが諦めて申し込みをしなかった数」(潜在的待機児童数)も含めて将来需要を想定しており、「待機児童の完全解消に必要な定員数」により近い。岡山市の調査でみたように、無償化により保育所の利用希望者はさらに増えると見込まれる。待機児童がいる都市部では待機児童が一層増える公算が大きい。待機児童が増えると何が問題なのか。第1に保育の質が低下し子どもの発達に悪影響が生じかねない。第2に職場復帰がかなわなかった母親は、孤立育児によるストレスが高まり、虐待リスクが高まりかねない。第3に職場復帰できなかった母親の持つスキルが職場で生かされず、人手不足にも拍車がかかり、企業経営や経済成長に悪影響が生じる。第4にそれらが総じて育児環境の悪化につながり少子化が一層進行する。以下では、第1の問題について詳しくみていこう。待機児童が増えると、厚生労働省から自治体に対して「国の基準ギリギリにまで児童を保育所に受け入れてほしい」という要請が、これまで以上に強まる可能性がある。厚労省は16年、待機児童の多い114市区町村などに対し「人員配置や面積基準について、国の基準を上回る基準を設定している市区町村では、国の基準を上回る部分を活用して1人でも多くの児童を受け入れる」よう要請した。いずれの自治体も「保育の質が下がる」との懸念から要請を退けたが、今後無償化により待機児童が増えた場合、同様の要請が強まり「国の基準ギリギリにまで児童を受け入れる」自治体が増える可能性がある。1人の保育士・幼稚園教諭が何人まで児童をみてよいかを示す日本の保育士・幼稚園教諭配置基準は、0~2歳については先進16カ国平均(0~3歳で7人)よりも手厚い(0歳で3人、1~2歳で6人)。しかし3~5歳については先進19カ国平均(3歳以上で18人)よりもはるかに悪く、先進19カ国で最悪だ(3歳で20人/保育士、4~5歳で30人/保育士、3~5歳で35人/幼稚園教諭)(12年経済協力開発機構報告)。また保育士の学歴は先進諸国の中で中程度だが、仮に保育所が3~5歳児童を国の基準ギリギリにまで受け入れれば、そこでの保育士の労働環境と保育の質は先進諸国の中ではかなり悪いレベルになるだろう。「幼児教育・保育の質が園児の発達に与える影響」に関する最新の国際比較研究によれば、質の低下した保育所に通った場合、子どもの発達(認知能力および非認知能力の短期的・長期的発達)は、通わない場合よりも悪くなる可能性が高い(図参照)。主に都市部では無償化により待機児童が増えることで、保育の質が低下し子どもの発達に悪影響が生じかねない。ではどうすればよいか。待機児童を減らすとともに保育士の給与・労働環境を改善し、保育の質を守る必要がある。そのための財源は無償化の制度を一部修正すれば捻出できる。幼稚園と同様に月2万5700円までを3~5歳保育無償化の上限額とすれば、約2千億円の財源が浮く。3~5歳幼保無償化を、0~2歳保育無償化と同様に住民税非課税世帯に限定すれば、約7千億円の財源が浮く。上限額設定や所得制限は虐待予防などの意義を大きく損なうことなく、待機児童の増加や子どもの発達の悪化も防止できる。政府にはぜひ検討してほしい。

*8-2:https://digital.asahi.com/articles/DA3S14188766.html (朝日新聞 2019年9月23日) 準備、大丈夫? 幼保無償化 預かり保育「無償化辞退」各地で
 幼児教育・保育の無償化が10月から始まる。すべての3~5歳児と、低所得世帯の0~2歳児が対象だ。安倍晋三首相が2年前の衆院選で打ち出した少子化対策だが、制度の検討や周知は十分ではなく、現場では混乱も起きている。子どもの安全や保育の質の確保といった課題も残されたままだ。関西のある自治体にこの夏、問い合わせの電話が入った。「近所の幼稚園の預かり保育が、無償化の対象にならないと聞いたが、どういうことか」。自治体職員が確認すると、幼稚園は無償化に必要な申請をしておらず、こう説明した。「預かり保育は希望者が多く、利用できない人もいる。利用者だけ無料では不公平になる」。保護者の一人は「仕事を続けるには、預かり保育を利用するしかないので、幼稚園に文句は言いづらい」と思い悩む。幼稚園が夕方まで行う「預かり保育」は無償化の対象だが、園側の申請が必要で、無償化するかどうかは各園の判断次第だ。内閣府や文部科学省によると、「申請手続きが手間」「無償化で利用者が増えれば職員増が必要になり、人件費がかさむ」などの理由で、こうした「無償化辞退」が各地で起きているという。また子どもを認可外施設などに預ける場合、利用者が無償化の対象になるには、自治体から「保育の必要性の認定」を受ける必要がある。この認定も自治体にとっては一大作業だ。子育て世代の転入が増えているさいたま市では、6月末から認定申請の受け付けを始めたところ、2週間近く、無償化の上限額などに関する問い合わせの電話が殺到。7月末の締め切りまでに2万件超の認定申請があり、結果の通知作業は委託業者の力を借りても9月後半までかかった。無償化の対象になれば、保育料は必要なくなったり減額されたりするため、施設側も混乱する。さいたま市内の複数の幼稚園では、金融機関への手続きが遅れ、10月分として従来と同額の保育料などを引き落とすという通知が保護者に届いた。市は全幼稚園に書面で注意を呼びかけた。岡山市は8月から庁舎内の会議室に専用の相談・対応窓口を置き、スタッフ3人が約370件の相談を受けた。専用コールセンターには「自分は対象か」「待機児童対策が先」などの問い合わせや意見が約820件も寄せられた。市は無償化を歓迎しつつ保育ニーズの増加に気をもむ。2020年度の認可保育所などの入所申し込み数を1万9424人と試算していたが、最大4千人増える可能性もあるとする。4月時点の待機児童数は全国で4番目に多い353人。19年度末の待機児童解消を掲げ、施設整備や保育士の処遇改善に取り組むが「達成は厳しくなっている」。
■おかず代、実費化めぐりドタバタ
 給食費をめぐっても混乱が起きている。これまで3~5歳児が認可保育所などに通う場合、主食代の月約3千円は実費で保育所に、おかず代約4500円は保育料の一部として自治体に払ってきた。10月分からは、保育料と一緒におかず代も無償になるのを避けるため、おかず代は実費で払うようになる。施設側などは支払い方法の変更について保護者に説明を進めたが、内閣府は8月22日付の自治体への通知で、これまで国と自治体が実際におかず代として施設側に渡してきたのは、物価調整分の約680円を足した約5180円だったと説明した。約4500円を実費でもらうだけでは、施設側の収入は差し引き約680円減ることになる。直前になって保護者に負担増を求めるのは難しく、保育所などの経営者は、施設側が約680円を負担せざるを得なくなると強く反発。自治体からも「680円は国が負担するべきだ」と批判の声が上がった。結局、内閣府は9月18日付で約680円は国と自治体で負担し、おかず代は約4500円のままにすると通知した。滋賀県内の認定こども園は「経営に直結する問題だった。政府の混乱ぶりが露呈した」とあきれる。
■安全・保育の質、課題残したまま
 無償化が動き始めたのは17年9月。安倍首相が衆院解散・総選挙に踏み切る際、消費税率10%への引き上げによる増収分の使い道を変え、無償化に充てると表明した。具体的な制度設計は後回しだった。政府は当初、無償化の対象は認可施設の利用者を想定していたが、認可外施設の利用者や与党から「不公平だ」と批判されると認可外も対象に。認可外は保育士の配置などの基準が緩いが、5年間は基準を満たさなくても対象にすることにした。今度は子どもの安全や保育の質が担保されないとの懸念が強まったが、自治体が条例で対象施設を限ることを認めるにとどめた。東京都杉並区は条例を定め、埼玉県朝霞市は検討中だが、こうした動きは一部にとどまる見通しだ。内閣府によると、保育施設で昨年起きた死亡事故は、認可保育所(約2万3500カ所)で2件、認可外施設(約7700カ所)で6件。04年からの累計では認可61件、認可外137件だ。都道府県などによる認可外への立ち入り調査は、17年度は対象施設の7割にとどまり、このうち4割超が国の基準に違反していた。ベビーシッターは立ち入り調査の対象外だ。全国保育団体連絡会の実方伸子副会長は「本当に心配。国が責任をもって、子どもの安全と保育の質の確保に向けた対応を早急に講じるべきだ」と訴える。無償化よりも、保育所整備や保育士の処遇改善で、待機児童の解消を優先すべきだとの声はやまない。企業主導型保育所では定員割れや休園などが相次ぎ、審査や指導監査の甘さが問題となっている。課題を残したまま、国と地方を合わせて年8千億円を投じる無償化がスタートする。

*8-3:https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/474227 (沖縄タイムス社説 2019年9月22日) [保育士の低賃金]待遇改善待ったなしだ
 10月1日の幼児教育・保育無償化まで10日を切った。日本の保育制度の大きな変革だが、制度を支える保育士の待遇の問題が残されたままのスタートとなることに、危機感を覚える。〈沖縄の保育士のリアルな給料 自分は保育経験トータル7年目で(手取り)12万6千354円。生活できません〉県内の認可保育園で働く女性保育士は、総支給額17万1500円の給与明細とともにツイッターでそう発信した。保育士の賃金の低さはかねて問題視されてきた。2018年度の賃金構造基本統計調査によると、県内の保育士の月給は20万8千円。全国平均月給より3万1300円低く、県内全産業の平均を5万7300円下回る。手取りとなるとさらに減り、保育士がツイッターで訴えた「生活できない」はリアルな叫びといっていい。保育士の有効求人倍率は県平均の3倍を超え、仕事はあるが、なり手がいないのが現状だ。県内には保育士の資格を持つ人が2万人以上いるが、およそ半分が、保育士として働いていない「潜在保育士」となっている。子どもの命を預かり、成長を促す保育士。責任が重く、専門性が高い仕事に、賃金が見合っていないと感じる人が多いということだろう。保育士自身が日々の生活に不安を抱えていては、丁寧に子どもたちと関わることもままならない。
    ■    ■
 なぜ保育士の賃金は低いのか。認可保育園のほとんどを占める私立保育園は、地域や施設規模などを基に国が定め、支給する「公定価格」が運営費の原資になる。国はこれまで増額してきたがまだ低い。各園は公定価格に基づいた委託費を人件費や管理費、事業費に充てるが配分はその園の裁量に任されており、園の状況によって給料が異なる。保育士の平均就業年数に対して処遇改善費が支給されるが、平均10年以上に対する12%で頭打ちのため、経験の長い保育士がいても、園側は昇給させにくい。国は、例えば0歳児3人につき保育士1人などの配置基準を定める。より丁寧な保育をしようと基準以上の保育士を配置すると、1人当たりの人件費が少なくなる。公定価格は、公務員の給与水準を基に八つに地域区分されるが、沖縄は最低水準地域で、最高水準地域に比べ20%も公定価格が低く設定されている。しかも、沖縄の保育士の給与は、同じ地域区分の青森より3万円ほど低いという。沖縄の賃金が際立って低い原因は何か。県はしっかり調査し対策を取る必要がある。
    ■    ■
 ことし4月時点で、県内の認可保育園142園で314人の保育士が不足している。待機児童数は全国で2番目に多い1702人。保育士がいなければ、ハコがあっても子どもを預かれない。保育士不足は待機児童問題に直結している。無償化で保育ニーズはさらに高まる。子どもたちのため保育士の待遇改善が急務だ。

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2019.8.30 高齢者差別や人権無視という病根がはびこる理由は何なのか? (2019年8月31日、9月1、2、3、5、7日に追加あり)
 
   日本の出生数推移      一人当たりGDP比較     2019年度政府予算
                               2018.12.21産経新聞

(図の説明:左図のように、日本の出生数・出生率は戦後の1947~1949年を最高として漸減しているが、中央の図のように、一人当たりGDPは著しく増加している。個人の豊かさは、一人当たりGDPの方がよく表すが、近年は世界の一人当たりGDPも上がり、世界と比較した場合の日本の一人当たりGDP倍率は下がっている。また、右の2つの図のように、政府支出は過去最高に達しているが、社会保障についてはその充実や高齢者の増加で仕方がない面があるものの、投資に当たらない景気対策と称する生産性の低い支出は国全体の生産性向上の足を引っ張っている)

(1)高齢ドライバーに対する運転免許返納の大合唱は正しくないこと
1)高齢者の免許証返納を奨める高齢者いじめ
 *1-1のように、高齢ドライバーの同一の事故が繰り返し報道され、家族に高齢の親に免許返納を提案させたり、強引に免許証を取り上げさせたりして、高齢者に免許返納させようという動きがある。

 報道を信じた家族は、「よかれ」と思って善意で老親に免許返納を奨めるわけだが、同世代の高齢ドライバーによる事故が報じられたからといって、運転の必要性や老化の程度は人によって異なるため、他の高齢ドライバーが起こした事故を個人に敷衍するのは妥当ではない。

 さらに、まだ運転できる人に無理に免許を返納させれば、仕事や買い物に支障をきたしたり、高齢者を引きこもりにしたりして、健康寿命を縮める。そのため、「運転の自信を失った」「必要でなくなった」と本当に自分で感じる人以外は、家族の勧めがあっても免許を返納する必要はないと、私は考える。

 このような中、*1-5のように、警察庁が、①高齢ドライバーに実技試験を課し ②技能に課題があれば安全機能を備えた車のみに限って運転を認める「限定免許」の対象とする 方針を出した。しかし、教習は、高齢者だけを対象とするのではなく、長くペーパードライバーだった人が再度運転を始める時や自動車の仕組みが大きく変わった時もやる必要があると、私は思う。

 なお、高齢ドライバーによる事故には、ハンドルやブレーキ操作ミスが多いそうだが、個人を犠牲にして免許を返納させるよりも、安全装置を導入する方が理にかなっている上、それによって新時代のニーズにあった自動車ができるのである。

2)生産年齢人口にあたる人が起こした事故
 しかし、*1-2のような生産年齢人口にあたる人の「あおり運転」もたびたび起こっており、これは、1)とは異なり、意図的であって許し難い。そのため、何故、すぐに対策を講じなかったのかが疑問だ。そして、一般の人が気を付けるべきことは、必ずドライブレコーダーを装備して運転時の証拠を残し、事故時に冤罪を押し付けられないようにすることとなる。

 また、*1-3のケースは、ワゴン車とバイクの追突死亡事故が発生し、ワゴン車の運転手はスマホの画面でミステリーやホラー系の漫画を読みながら運転を続け、夜間だったことからその様子がフロントガラスに反射して写り、それが本人の車のドライブレコーダーにはっきりと記録されていたのだそうで、このようにたるんだ人が運転しているのは恐ろしいことである。

3)根本的な解決
 自動車は既に贅沢品ではなく生活必需品となっており、とりわけ足の悪い人には便利な移動ツールだ。そのため、私が10年以上前から言っているように、*1-4のような手放し運転できる運転支援システムや安全装置の搭載は、EV・燃料電池車・ガソリン車などのエネルギー源や大型・中型・小型車といった車種を問わず、どの車種でも速やかに行うべきである。

(2)個人情報の無断使用と個人情報保護について
1)就職情報サイト「リクナビ」の「内定辞退率」予測データ販売
 日経新聞は、*2-1のように、①就職情報サイト「リクナビ」を運営するリクルートキャリアが、学生の同意を得ずに「内定辞退率」の予測データを売っていたこと ②リクナビが就職活動の代表的な情報プラットフォームになっていること ③学生の信頼を裏切ったこと について、「個人情報を扱う自覚はあるか」と厳しく糾弾している。

 しかし、*2-2のように、日経新聞は経産省の「信頼ある自由なデータ流通政策」に協力してきた。上の③のように「信頼したから」と言ってそれに応える人ばかりではないし、②のように情報プラットフォームになって多数の情報を扱うからより正確な結果が出せるのであり、購入価値のあるデータを作るには多量のデータを分析することが必要だろう。そのため、「プラットフォーマー」だったことが問題なのではなく、個人情報を他の用途で勝手に使用してよいことにしたのが問題なのである。さらに、①の予測は、AIが統計的に推測できるような“普通”の行動をする人にしか当てはまらないことにも留意すべきだ。

 また、2013年にJR東日本が「Suica」の乗降データを匿名化して社外に販売し、個人情報保護に反すると批判が相次いだことについて、*2-3のように、匿名化されたビッグデータでもいくつかのデータを組み合わせれば、高確率で個人を特定できることが指摘されている。つまり、「匿名加工すれば個人情報の扱いではなくなり、本人の同意がなくても第三者に提供できる」という指針が間違っているのだ。

2)医療ビッグデータの活用!?
 日経新聞は2019年8月21日の社説で、*2-4のように、「①医療ビッグデータを使いこなせ」「②高齢化が進む中、効率的で質のよい医療の提供は重要な課題だが、それを支える検査や治療の記録などの膨大な医療ビッグデータの活用が進まない」「③デジタル技術が生かされておらず、宝の持ち腐れで、医療産業の国際競争力も低下しかねない」などと記載している。

 しかし、①は個人情報の悪用に繋がる可能性が高く、②③はデータ提供者の同意の上で治験を行ったり、医療保険会社が使用された薬と治療効果を比較したりすれば、ビッグデータでなくても検証できる。さらに、「新薬開発のためなら個人の権利を無視してもよい」と考える製薬会社があるとすれば、その会社の薬が患者の側に立って開発されたとは思えない。

 そのため、厚労省の有識者会議で「用途に公益性があると認められた場合」といってもそれがどういう場合かを吟味する必要があるくらいで、私は、EUのやり方の方が見識があると思う。日本もルールづくりに関与したいのなら、まず「人権」「個人情報」「個性」「差別」などの正しい意味を理解してからにすべきだ。

3)ゲノムデータの収集
 東芝は、*2-5のように、従業員のゲノムデータを収集して数万人規模のデータベースを構築するそうだ。断りにくいという社内のプレッシャーはあるものの、これは希望者を対象にしている点で許せる。しかし、個人の生活や遺伝的要因を会社に調べられるのは、(どうにでも使えるという)リスクがある。

 なお、東芝は、これによって多くのデータを分析し、特徴別に複数のパターンに分けることで、最適な予防法・治療法の開発に繋げることが可能になるとしているそうだ。

4)マイナンバーカードによる強引なデータ収集
 政府は、*2-6のように、個人番号が記載されたマイナンバーカードの普及率を高めるため、年度末までに国・地方の全ての公務員にマイナンバーカードを取得させるそうだ。

 国がそうまでするのは、国民一人一人に割り当てられた12桁のマイナンバーで年金・税金・社会保障などを照合し、国民を効率的に監視下に置くのが目的だ。そのため、マイナンバーカードの取得が進まないのであり、その国民の判断は、国が率先してビッグデータを活用して個人情報を使うことを奨めている人権無視の政策を進めていることから見ても正しい。

(3)論調に見る「個人の権利」「社会保障」の軽視
1)年金制度は効率的に運用されているか
 日経新聞はじめ多くのメディアは、*3-1のように、①日本の社会保障は「中福祉・低負担」で ②その差を財政赤字が埋めているため ③負担を中レベルに引き上げるべきだ とする。しかし、ここには年金保険料を支払ってきた割に年金をもらえているか、つまり、i)年金資産運用の適格性 ii)年金保険料集金の網羅性 iii)年金管理事務の効率性 iv)年金関係法令の妥当性 に関して検討がなく、足りなくなれば負担増・給付減して国民にしわ寄せすればよいという省庁の発想の受け売りがあるにすぎない。

 私から見ると、i) ii)とも不十分で、iv)の年金関係法令が“きめ細やか”と表現される無意味な複雑さも手伝って、iii)の効率性は著しく低い。また、*3-3のように、未納者が多い上に未納者データを紛失したりなど、年金保険料をきちんと集めて管理する風土があるのか否かが疑問という民間企業ではありえないようなことが続いているわけである。

2)支え手の拡大
 上記、1)のiv)の年金関係法令に関しては、*3-4のように、支え手を拡大するために、会社員らの入る厚生年金の適用を拡大し、高齢者やパートらの加入を増やす改革に乗り出すとのことだが、パートだから厚生年金の適用がなかったというのは、パート労働者(多くは女性)の生活を全く考えていない法体系だったということだ。

 そのため、*3-2の「支え手」を増やす改革を急ぐのは賛成であるものの、「支払われた年金保険料を誠意をもって大切に管理し、できるだけ多くの年金支払いをする」というコンセプトが共有されないまま、負担増・給付減をいくらやっても無駄遣いが増えるだけだと考える。

 「少子高齢化の進行で『支える側』の現役世代が減り、『支えられる側』の高齢者の割合が増えた」というフレーズも何度も聞いたが、それは人口構成を見れば1980年代からわかっていたことで、1985年に積立方式を賦課課税方式に変更してばら撒くのではなく、積立方式のまま年金支払いに十分なだけの積立金を備えておくべきだったのだ。

 また、「現役世代の手取り収入に対して厚生年金の給付水準『所得代替率』は50%以上あればよい」というのも理由が不明であり、政府の言う「モデル世帯」に国民の何%が当たるのか、さらに国民の一部に関する試算だけをやればよいのか についても疑問である。

 平均寿命や健康寿命が延びたので、私は、高齢者も*3-5のように68歳と言わず、75歳であっても「支える側」に入れることにやぶさかではないが、そのためには、就業における高齢者差別がなく、気持ちよく働ける仕事のあることが大前提になるわけだ。

<高齢者いじめ>
*1-1:https://www.sankei.com/west/news/190603/wst1906030013-n1.html (産経新聞 2019.6.3) 高齢者の免許返納、説得のポイントは
 相次ぐ高齢ドライバーによる事故で、免許証の自主返納を呼びかける動きが広まっている。高齢の親に返納を提案する家族も増えているが、応じないケースが少なくない現状も。半ば強引に免許証を取り上げるなどの強行な手段も考えられるが、家庭内でのトラブルにもつながりかねず、高齢者自身が納得した上で返納することが重要な課題になる。どうすれば説得を受け入れてもらえるのか。「免許を返納した方がいい」。大阪府内に住む80代男性は昨年、同居する50代の息子から免許の返納を持ちかけられた。同世代の高齢ドライバーによる事故が相次いで報じられていたが、それでも返納には抵抗があった。しかし息子も譲らず、妻や孫も加勢。説得は最終的に男性が返納に応じるまで続いたという。「説得に悩む家族の話はよく聞くが、頭ごなしに返納を求めるだけでは、かえってかたくなになってしまう」。高齢社会の問題に詳しいNPO法人「老いの工学研究所」の川口雅裕理事長(55)は指摘する。警察庁が平成27年に75歳以上のドライバーと免許返納者約1500人ずつを対象とした調査では、「家族らの勧め」を返納理由とした人が33%で最も多く、「運転への自信を失った」や「必要性を感じなくなった」を上回った。一方、運転を継続しているドライバーは67・3%が「返納しようと思ったことはない」と回答。「家族の勧めで返納について考えたことがある」は4・7%にとどまっている。高齢者の車の運転に対するスタンスはさまざまで、単なる移動手段としてではなく、運転そのものを楽しみに感じていたり、苦労して手にした免許や車そのものに特別な思い入れを抱いていたりするケースもある。川口さんは「まずは免許や車が親にとってどういう存在なのかを理解することが大切」と話す。車を使う頻度や目的によって、効果的な説得方法は変わってくる。例えば、免許返納者への公共交通機関やタクシーの割引などのサービスは、移動手段として車を利用してきた人には有効だ。一方で、運転自体を趣味にしている場合はメリットとは感じず、車に思い入れがある場合、その“喪失感”を埋めることにはならない。重要なのは、返納後の生活に対して「ポジティブな提案」をすること。車の維持費に充てていた資金で旅行に行くことや、日常生活での新たな趣味や地域活動への参加を提案することが挙げられる。川口さんは「親と同居している人もいれば、疎遠になっている人もいる。返納が必要だと感じたら、まずはコミュニケーションを取ることから始めてみてほしい」と話している。
■年間40万人超返納も後絶たぬ事故
 運転免許の自主返納制度は平成10年に始まった。スタート初年は年間2596人だったが、30年には42万1190人が返納。このうち、75歳以上が半数以上を占める。返納が進む一方、高齢者による事故は後を絶たない。警察庁の調査では、29年の免許保有者10万人当たりの死亡事故件数は85歳以上が年間14・6件。運転免許を取得したばかりの16~19歳の11・4件を大きく上回った。また、75歳以上と75歳未満で比較すると、75歳未満が3・7件なのに対し、75歳以上は7・7件と2倍以上になり、高齢になるほど事故が多くなることが明らかになった。高齢者の免許保有者も増えており、75歳以上の免許保有者は19年に283万人だったのが、30年には564万人に。このうち、80歳以上は98万人だったのが、227万人となっている。

*1-2:https://digital.asahi.com/articles/ASM8N55NSM8NUJHB017.html (朝日新聞 2019年8月20日) 「車遅く頭にきた」容疑者供述 あおり運転自体も捜査へ
 茨城県守谷市の常磐自動車道であおり運転を受けた後、男性会社員(24)が殴られ負傷した事件で、傷害容疑で逮捕された会社役員宮崎文夫容疑者(43)=大阪市東住吉区=が「男性の車が遅く、進行を妨害されたと感じて頭にきた」と話していることが、捜査関係者への取材でわかった。男性のドライブレコーダーには、宮崎容疑者が数キロにわたってあおり運転をする様子が映っていたという。県警は20日、宮崎容疑者と、あおり運転の際に同乗し同容疑者をかくまったとして犯人蔵匿・隠避容疑で逮捕された喜本(きもと)奈津子容疑者(51)を送検した。捜査関係者によると、宮崎容疑者は「車をぶつけられたので殴った」と傷害容疑について認める一方、「危険な運転をしたつもりはない」と供述。しかし県警は、ドライブレコーダーの映像などから危険な運転があったのは明らかとみている。そのため、傷害容疑とともに、あおり運転そのものについても、道交法違反(車間距離保持義務違反など)や、あおり運転で被害者に恐怖心を与えたとして暴行容疑などを視野に調べる方針だ。一方、より刑罰の重い自動車運転死傷処罰法の危険運転致傷の適用について、捜査幹部は「現時点で法律の要件を満たす上で困難な部分がある」との見方を示している。同幹部は「今回はあおり運転後に、手で殴りけがをさせた事案で、危険な運転行為で直接的に衝突などの事故により負傷したものでない」と話す。自室で宮崎容疑者をかくまったとして逮捕された交際相手の喜本容疑者は、高速道路上で宮崎容疑者が殴る様子を携帯電話で撮影していたことを認めている。県警は、宮崎容疑者の暴行を止めなかったなどとして、傷害幇助(ほうじょ)容疑も視野に調べを進めている。

*1-3:https://news.yahoo.co.jp/byline/yanagiharamika/20190630-00132169/ (Yahoo 2019/6/30) スマホ漫画で追突死亡事故 真実を明らかにしたのはドラレコだった
■楽しかった夫婦ツーリングが、一瞬の追突事故で暗転
 まずは、この写真をご覧ください。高速道路の事故現場から引きあげられた250ccのオートバイが、レッカー車の荷台に横倒しの状態で積まれています。ハンドル周りは原形をとどめず、車体も大破しています。つい数時間前まで、このバイクには39歳の女性が乗っていました。夫婦で2台のバイクを連ね、ヘルメットに装着された無線機で楽しい会話を交わしながら、泊りがけのツーリング……。しかしその楽しい旅は、自宅まであと少しというところで断ち切られてしまったのです。2018年9月10日、午後9時11分、事故は関越自動車道下り線、大和PAから小出ICの間の見通しのよい片側2車線の直線道路で発生しました。夫の井口貴之さんは左車線を、妻の百合子さん(当時39)はその後ろを走っていました。制限時速80キロの区間でしたが、百合子さんは時速約70キロで走行していたところ、後ろから運送会社のワゴン車が時速100キロのスピードで追突。百合子さんは避ける間もなく、そのままワゴン車の前後輪に轢かれたのです。
■高速道路上に横たわる妻の変わり果てた姿
 無線での会話が、突然の百合子さんの悲鳴とともに途切れたことに異変を感じた貴之さんは、すぐに自分のバイクを路肩に止め、百合子さんの姿を確認しに後方へと戻りました。しかし、目に入ったのは無残な光景でした。百合子さんは40~50秒後に走行してきた後続車にも轢かれ、脳挫傷等の致命傷を負い、命を奪われたのです。現場はその後、7時間にわたって通行止めになったほどの大事故でした。事故の翌朝、ワゴン車の運転手は、「なぜこんなことになったんだ」と詰め寄った貴之さんにこう説明したそうです。「対向車に気を取られて、わき見してしまった」 。結局、運転手は逮捕されることはなく、事故処理されました。
■ドライブレコーダーに写っていた「スマホ漫画」の動かぬ証拠
 ところが、事故から1週間後、思わぬ展開を見せます。新潟県警は、ワゴン車を運転していた男性(当時50)を、自動車運転死傷行為処罰法違反(過失運転致死)の疑いで逮捕したのです。夫の貴之さんは語ります。「逮捕後、警察からその理由を聞いて驚きました。わき見という当初の説明は全くの嘘で、加害者は、高速道路に入ってからもスマホの小さな画面で、ミステリーやホラー系の漫画を読みながら、十分に前を見ず運転を続けていたそうです。そして、前方の妻のオートバイに気づかずに追突したのです」 。実は、加害者がスマホで漫画を読み続けていたことは、本人の車のドライブレコーダーにはっきりと記録されていました。夜間だったことから、その様子はフロントガラスに反射して写っており、約4時間にわたってその映像が残されていたというのです。この映像をもとに警察が加害者から事情を聞いたところ、本人が「わき見」ではなく「ながらスマホ(漫画読み)」をしていたことを認めました。また、加害者の車には、運転手の目の動きを感知し、居眠りや脇見を3秒以上検知すると警報ブザーが鳴る装置も取り付けられていましたが、それすらも無視し、マンガを読みふけっていたといいます。時速100キロの車は、10秒間に約280メートル進みます。高速道路で10秒以上前方から視線をそらすことが、どれほど危険な行為なのか……。検察官は、「これは目隠しをして走っているのと同じだ」と述べたそうです。夫の貴之さんは、今回、私に直接連絡をくださった理由について、こう話してくださいました。「加害者の言い分だけで処理をされた交通事故のことを『Yahoo!ニュース』の柳原さんの記事で知り、妻の事故と全く同じだと思いました。もし、ドライブレコーダーに映像が写っていなければ、この事故は単純なわき見運転で処理されていた可能性が大だったでしょう。なぜこんなことで妻は殺され、私たちの人生が壊されなければならなかったのか……。私は、ながらスマホの危険性、そして加害者が嘘をつくことの悪質性を広く世間に知っていただきたいと思うのです」
■マンガを読みながらの運転は悪質な「危険運転」
 この事故は現在、新潟地裁長岡支部で刑事裁判が進行中です。夫の貴之さんは、事故後、心身に大きなダメージを受け、仕事復帰にも長い時間がかかったそうですが、被害者参加制度を利用してご自身も検察官と共に法廷に立ち、6月24日には被告に対して直接尋問を行いました。被告が運送業務に携わるプロドライバーであるにもかかわらず、スマホで漫画を読みながら高速走行をしていたこと、そして、事故直後にそのときの閲覧履歴を消去するなどして事実を隠し、「対向車線のほうをわき見していた」と嘘の供述をしていたことの悪質性に言及し、危険運転致死など重い罪を課してほしいと述べたそうです。「ながらスマホ」による事故のニュースをたびたび耳にする昨今ですが、実際に車を運転していると、信号待ちなどで明らかにスマホに夢中になっているようなドライバーをたびたび見かけます。ドライバーはこの行為の危険性を改めて認識すべきでしょう。ましてや、スマホの小さな画面でコマ割りされた漫画を読みながら、クルマを運転するなど論外です。次の裁判は、7月16日。被告人に対しての論告求刑が行われる予定です。

*1-4:https://news.livedoor.com/article/detail/16991243/ (読売新聞 2019年8月28日) 高速「手放し運転可能」、BMWが国内初実用化
 独BMWの日本法人は27日、渋滞した高速道路で手放し運転ができる運転支援システムの搭載を今月から始めたと発表した。同社によると、手放し運転ができる自動車の実用化は国内で初めてという。支援システムはドライバーの疲労軽減が目的で、安全確認は運転手が行う。ドライバーが前方を注視しているかどうかを車内カメラで監視し、よそ見や居眠りの状態が続いたと判断されると警告音などで注意を促す。時速60キロを超えた場合も、ハンドルに手を添える必要がある。報道陣向けの試乗会では、高速道路で前の車に追従して走行し、暗いトンネル内でも車線をはみ出すことはなく、加速や減速もスムーズにこなした。7月生産分以降の最新型「3シリーズ」や「8シリーズ」などに標準装備している。すでに購入した人も、販売店で制御ソフトの更新を有償で行えばシステムが使える。日産自動車も高速道で手放し運転が可能な新型「スカイライン」を9月に発売する。高精度な3次元の地図データなどを駆使して実用にこぎ着けた。

*1-5:https://r.nikkei.com/article/DGXMZO49134150Z20C19A8MM0000?s=1 (日経新聞 2019年8月29日) 高齢ドライバーに実技試験 警察庁、事故対策へ検討
 高齢ドライバーによる交通事故対策として、警察庁は運転技能を調べる実車試験を導入する検討を始めた。高齢者を対象にブレーキやアクセルの操作を試験し、技能に課題があれば、安全機能を備えた車のみに限って運転を認める「限定免許」の対象とする。高齢者による事故の原因は操作ミスが多く、事故のリスクを軽減する狙いがある。2020年度予算の概算要求に調査費2700万円を計上する。高齢者向けの限定免許は早ければ21年度に創設される見通しで、実車試験も同時期の導入を念頭に制度設計を進める。現在は75歳以上のドライバーを対象に免許更新時に認知機能検査を義務付け、検査を経て医師に認知症と診断されれば免許取り消しか停止になる。ただ認知機能に問題がなくても運転技能が衰えているケースがあり、専門家から実車試験の導入を求める声が上がっていた。実車試験の対象者は認知機能検査を受ける高齢ドライバーを想定。アクセルとブレーキの踏み間違いや、対向車線へのはみ出しといった危険な運転の兆候がないかどうかなどを調べる。20年度の調査ではこうした危険な運転について、車の安全機能でどの程度制御できるかを実証する。限定免許の創設は、相次ぐ事故を受けて政府が6月に決めた緊急対策に盛り込まれた。ドイツやスイス、オランダといった先行して限定免許を導入している国では、医師による診断や実車試験の結果などに基づき対象者を決めている。警察庁はこうした各国の事例を基に、新たに導入する限定免許の対象者を判断する基準として、実車試験の結果を活用する方針だ。具体的な試験の項目などについては、対象となる高齢者の負担が重くなりすぎないように配慮する。75歳以上の運転免許保有者は2018年末時点で563万人で、社会の高齢化とともに20年に600万人に増えると推計される。75歳以上による死亡事故は18年に460件発生し、全体に占める割合(14.8%)は過去最高だった。東京・池袋で4月に80代のドライバーの車が暴走し母子2人が死亡するなど、重大事故も後を絶たない。19年上半期(1~6月)に発生した高齢ドライバーによる事故を警察庁が分析したところ、34%はハンドルやブレーキの操作ミスが原因だった。自動車各社は操作ミスの影響を軽減する安全装置の導入を急いでおり、新車の17年の搭載率は加速抑制機能が65.2%、自動ブレーキが77.8%だった。後付けの装置の商品化も広がっている。実車試験の導入を巡っては警察庁が17年に設置した有識者会議の分科会でも議論されたが、「どのような運転が事故のリスクが高いと言えるかという判断基準が明確でない」などの課題が示され、結論は出なかった。

<個人情報の無断使用と個人の特定>
*2-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190829&ng=DGKKZO49110140Y9A820C1EA1000 (日経新聞社説 2019.8.29) 個人情報を扱う自覚はあるか
 個人データを扱う企業としての自覚を問われている。就職情報サイト「リクナビ」を運営するリクルートキャリア(東京・千代田)が学生の同意を得ずに「内定辞退率」の予測データを売っていた問題で、政府の個人情報保護委員会が是正を求める勧告を出した。人材サービスへの信頼が損なわれれば、人的資源を効率的に配分する柔軟な労働市場づくりにもマイナスだ。同社は影響の大きさを認識し、再発防止に向けた具体策を早急に示すべきだ。リクナビに登録した学生がどの企業の情報を閲覧したかを、同社は人工知能(AI)で分析。それをもとに内定を辞退する確率を推計するサービスを始め、計38社と契約した。これまでに約8千人分の個人データを本人の同意を得ないまま提供していた。個人情報保護法違反と判断されたのは当然だ。十分に説明しないまま分析に使ったデータも約7万5千人分にのぼり、個人情報保護委は改善を指導した。見過ごせないのはリクナビが就職活動の代表的な情報プラットフォームになっている点だ。学生の間では、これを使わずに就活を進めるのは難しいとの声が多い。他のサイトに比べた優位性を利用して個人データを集めていたのだとしたら、まさに学生の信頼を裏切る行為である。面接でAIが応募者と対話して適性を探るなど、採用選考や人事管理にIT(情報技術)を活用する動きが広がり始めている。業務効率化につながるが、個人データの扱いが公正なことが前提だ。リクルートキャリアには徹底した再発防止策を講じる責任がある。学生にとっては、自分のデータがどの企業に提供されていたのかなどが不明なままだ。同社は説明を尽くさなければならない。個人データの購入企業にも説明責任がある。合否判定に使っていた例は出てきていないが、データの購入目的について、学生の納得のゆく情報開示が求められる。

*2-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190820&ng=DGKKZO48719040Z10C19A8MM8000 (日経新聞 2019年8月20日) ワタシという商品(上) リクナビのつまずき 革新の波、使う知恵試す
 データエコノミーの落とし穴があらわになった。人工知能(AI)が個人の心理を読む時代が現実となり、日本では学生データの利用を巡る「リクナビ問題」が起きた。個人情報を扱う責任を負いながら、便利なデータ社会を実現できるか。課題に直面している。8月上旬、経済産業省にいら立ちが広がった。「最悪のタイミングだ」。職員の一人は唇をかんだ。政府が20カ国・地域首脳会議(G20サミット)で「信頼ある自由なデータ流通」を提唱。リクナビ問題が発覚したのは、経産省がこの構想を後押しするデータ活用事例集の公表準備を進めているさなかだった。
●年80万人が利用
 就職情報サイト「リクナビ」を運営するリクルートキャリア(東京・千代田)は2018年以降、学生の十分な同意を得ずに内定辞退率の予測データを38社に販売するなどしていた。年80万人が使うなくてはならない就活の「プラットフォーマー」が震源地だったことで問題は深刻になった。トヨタ自動車やNTTグループ、三菱電機などデータを購入した企業も説明に追われる。日本企業はデータ利用で米国勢などに出遅れ、その経験不足は個人情報の保護意識も鈍らせた。環境や人権に配慮した経営で知られる英蘭ユニリーバは、2年前からAIを採用に使う。「欧州本社も加わり、情報の用途や対象を何重にも確認する」。日本法人でデータ保護を統括する北島敬之さんは話す。データエコノミーの進展は、新たな技術を次々と生んでいる。個人の信用や将来性まで点数化されるようになったが、問われるのは使い手である人の知恵だ。米カリフォルニア州は20年の新規制で、AIで趣味や思想を割り出す手法を制限する。欧州もAIの決定に異議を唱える権利を定めた。慶応大学の山本龍彦教授は「日本は企業倫理も法制度もAI時代に追いついていない」と指摘する。
●「スイカ」の教訓
 マッキンゼー・アンド・カンパニーの推定では、30年までにAIは世界で1400兆円の経済活動を生む。日本も立ちすくんでいては巨大な情報鉱脈にたどり着けない。教訓は13年の「スイカ・ショック」だ。JR東日本がIC乗車券「Suica」の乗降データ活用に動いた直後だった。匿名化して社外に販売したが、説明が足りず個人情報保護に反すると批判が相次いだ。多くの企業が個人データを使う新事業の立ち上げに慎重になった。「国が白黒の判断を下さず、グレーのままにしたのが問題だった」。国立情報学研究所の佐藤一郎教授は振り返る。ルールが曖昧なままでは前に進めない。リクナビも丁寧な説明が欠かせなかった。適切な手続きを踏めば、学生を特定しない企業単位の辞退数予測などの形で、人材難の各社が機動的な採用に使えた可能性がある。個人も意識を高める必要がある。「後輩には他のサイトと使い分けるよう伝える」。早稲田大学4年の女子学生は憤る一方、内定を得たのもリクナビのおかげと割り切り、最適解を探す。個人情報はデータの世紀の資源だ。使いこなせば、豊かさをもたらす。「ワタシという商品」を巡るトラブルは問題解決の好機だ。企業も政府も個人も、やるべきことは見えている。

*2-3:https://digital.asahi.com/articles/ASM8B2394M8BULBJ002.html?iref=pc_extlink (朝日新聞2019年8月11日)進む匿名データの第三者提供に警鐘 日本でも特定の恐れ 
 客の購入動向やニーズに応じた商品やサービスを薦めたり、企業の業務の効率化につながったり。ビッグデータは幅広い分野で利活用が広がっているが、前提となるデータの匿名性は保たれているのか――。今回の論文は警鐘を鳴らす。
●ビッグデータ、匿名化でも高確率で個人特定 海外で指摘
 欧米では、先月発表されたこの研究内容は関心を集めた。米紙ニューヨーク・タイムズは「あなたのデータは匿名化されている? だが科学者はあなたを特定できている」、英紙ガーディアンは「データは指紋 ネットの世界ではあなたはあなたが思っているほど匿名ではない」との見出しでそれぞれ報じた。匿名データからの個人の特定をめぐっては、過去に別の研究者が、公開情報に含まれる生年月日、性別、郵便番号から米州知事の病歴記録を特定した。また、有料動画配信サービス・ネットフリックスが提供した匿名化された閲覧履歴情報を使い、研究者が公開の映画レビューサイトの内容と照合して、個人を特定したケースなどもある。米国ではデータがオンライン公開されることが多く、属性にまつわるさまざまなデータが日本より入手しやすい事情はある。ただ、日本でも匿名化して、まとめられたビッグデータの提供が進みつつあり、対岸の火事とはいえない。個人情報保護法が改正され「匿名加工情報」の考えが導入された。2013年、JR東日本が外部に販売していたICカード「Suica(スイカ)」の乗降履歴から、個人が特定される恐れがあると批判を浴びたことがきっかけだった。匿名加工には基準があり、特定の個人の識別につながる氏名や生年月日、住所などの全部または一部を削除したり、住所を県や市までにあいまいにしたりといった要件を満たせば個人情報の扱いではなくなり、本人同意がなくても第三者に提供できる。ただ、匿名加工に関する政府の指針は、あらゆる手法によって特定できないということまでは求めず、現在の一般的な技術レベルで特定できなければよいとしている。また、匿名化の方法の細かいところは必ずしも明確ではないとされる。産業技術総合研究所の高木浩光主任研究員は、個人が識別されない適切な匿名加工の必要性を強調。そのうえで「論文が指摘している問題は匿名加工情報の制度設計でも議論された。一人しかいないようなデータがあれば、どうしてもリスクが高くなる」と話す。個人を特定するために、例えば交通系ICカードの乗降履歴と、別会社のポイントカードの購買履歴などを突き合わせる行為は「照合」と呼ばれ、個人情報保護法で禁じている。政府の「パーソナルデータに関する検討会」の技術担当会合で主査を務めた国立情報学研究所の佐藤一郎教授は、「購買履歴や治療履歴などは人によって大きく異なるので、(特定につながる)リスクがあると知っておいてほしい」と語る。ただ、データの削除や、あいまいにする加工を進めすぎると、ビッグデータ活用の芽を摘むことになる。国の個人情報保護委員会の担当者は「個人情報保護と利活用のバランスを取り、最新の技術動向も注視していきたい」と話す。

*2-4:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190821&ng=DGKKZO48773980Q9A820C1EA1000 (日経新聞社説 2019年8月21日) デジタル社会を創る 「医療ビッグデータ」を使いこなせ
 高齢化が進むなか効率的で質のよい医療の提供は重要な課題だ。しかし、それを支える検査や治療の記録など膨大な「医療ビッグデータ」の活用が進まず、デジタル技術が生かされていない。宝の持ち腐れでは、医療産業の国際競争力も低下しかねない。
●新薬開発に使いにくく
 医療ビッグデータは問診記録や検査結果、投薬情報など多岐にわたる。個人情報として慎重な取り扱いが必要だが、新薬開発や病気予防、健康管理に役立ち医療費抑制にもつながると期待される。国は2018年、個人を特定できないよう医療情報を匿名化して使う仕組みを定めた「次世代医療基盤法」を施行した。医療ビッグデータの利用推進が目的だ。だが製薬企業などにとって使い勝手が悪いという。匿名化したデータでは病気ごとの患者数や薬の処方実績などの統計は出せても、一人ひとりの薬の効き目や症状の推移を把握できないからだ。医療情報は従来、活用よりも保護を重視する考え方が強かった。発想を変えて、十分な情報漏洩対策は施しつつも、創薬などのニーズに即した活用をもっと重視した制度設計にすべきだろう。日本には世界有数の規模を誇る診療報酬明細書(レセプト)の情報を集めた「ナショナル・データベース」がある。ことし5月の法改正で介護データと照らし合わせて解析できるようになった。一歩前進だが、制約はなお大きい。厚生労働省の有識者会議で用途に公益性があると認められた場合にしか、企業は利用できない。自社製品の開発や販売に生かせなければデータの魅力は薄れる。大学や研究機関でも、認められた人が専用の部屋でネットに接続できない端末でのみ使える。クラウドを上手に活用し利便性を高めるなど改善の余地は大きい。電子カルテの情報を使いこなすのも大きな課題だ。記載の仕方が病院や担当科ごとに異なり、国の標準化計画は進展が遅い。医療現場は診療業務に追われシステム改修の余裕がないというが、それだけではない。縦割り組織やメーカーの顧客囲い込み、研究者によるデータ独占など、あしき慣習を絶つ必要がある。医薬品医療機器総合機構(PMDA)は18年から、全国23の病院の協力を得てレセプトと電子カルテの情報の統合データベースを運用し始めた。副作用の把握を目的としているが、用途や対象病院の拡大を検討してはどうか。利用価値は高いのに基盤整備が途上の分野もある。コンピューター断層撮影装置(CT)や磁気共鳴画像装置(MRI)による診断画像のデータベース構築だ。画像をAIに学習させ、がんや脳疾患の診断を支援するサービスが大きく伸びると予想される。信頼できるデータが豊富なほど診断精度は上がる。ところが、多くの大学や病院がもつ画像は紙焼き写真のみで、もとになるがん組織の保存状態も悪い。関係学会による画像のデジタル化を国が継続的に支援すべきだ。
●国際ルール積極関与を
 今後は遺伝子データの収集も進む。19年から全国の拠点病院で、がん患者の遺伝子を解析して最適な治療薬を探す「がんゲノム(全遺伝情報)医療」が始まった。一定の条件を満たせば公的保険の対象となり、年間数万人分の解析が実施される見通しだ。国立がん研究センターは集約したデータを製薬企業などに最大限開放し、がんの新薬開発などに生かしてほしい。米国のように、データの提供サービスに民間の参入を認めるのも検討に値する。身近なところでは、スマートフォンや腕時計型センサーによる心拍数や血圧、体温、血糖値などの測定が広がり、データが集まりだしている。病気の発症や進行を遅らせ、健康寿命を延ばす研究などに生かせる。こうした遠隔の測定や投薬管理サービスでは米欧のIT企業や製薬企業が先行する。日本人のデータが知らぬ間に海外に流出する可能性もある。データ利用に関する同意項目などに、一人ひとりが注意する習慣をつけたい。個人情報に配慮しながら国境を越えて医療データをやりとりする、データシェアリングの方式を標準化する動きも米欧を中心に活発になってきた。日本も率先してルールづくりに加わるべきだ。

*2-5:https://tech.nikkeibp.co.jp/atcl/nxt/news/18/04940/ (日経BP 2019/5/15) 東芝が従業員のゲノムデータを収集へ、数万人規模のデータベース構築
 東芝は、「東芝Nextプラン」で新規成長事業の1つに位置付けた精密医療の取り組みの一環として、日本人に特徴的な遺伝子を効率的に解析する「ジャポニカアレイ」によるゲノムデータの収集開始を決定した。また、医療分野のスタートアップ投資に実績のあるBeyond Next Venturesと業務提携契約を締結した。東芝グループは、2018年11月8日に全社変革計画「東芝Nextプラン」を発表し、「超早期発見」「個別化治療」を特徴とした精密医療を中核とする医療事業への本格的な再参入を表明した。また、東芝のDNAであるベンチャースピリットを呼び覚まして新規事業を創出する新たな仕組みとして、100億円規模のコーポレートベンチャーキャピタル(CVC)機能を導入している。疾病は個人の生活パターンや遺伝的要因(体質)によって異なるため、より多くのデータを分析し、特徴別に複数のパターンに分けることで、最適な予防法・治療法の開発につなげることが可能となる。「ジャポニカアレイ」によるゲノムデータの収集開始はその第一歩で、国内グループ従業員の希望者を対象に、ゲノムデータや複数年の健康診断結果などを含む数万人規模のデータベースを構築する。これにより東芝は、「予防医療」の実現に向けた研究開発を、医療研究者をはじめとする医療・ライフサイエンスに携わる機関や企業と共同で推進する。また、精密医療事業の事業化や収益化には社外の力を積極的に活用することも重要となることから、Beyond Next Venturesとの連携を通じ、優良な医療系ベンチャー企業の探索や協業の検討を推進していく。このほか東芝は、精密医療事業を本格的に推進するため「一人ひとりのクオリティ・オブ・ライフ(QOL)の向上を応援します」「積み重ねた技術力と、新たなパートナーシップでこれからの先進医療・ライフサイエンスを支えます」「次の世代も見据えた予防医療にデジタルの力を活かします」の3つを目標とする「精密医療ビジョン」を新たに作成した。東芝グループは、このビジョンのもとに予防から治療にわたる複数のテーマで要素技術などの技術開発に着手しており、研究から実用化に向けたさまざまなパートナーシップを組みながら事業の成長を目指す。

*2-6:https://www.shinmai.co.jp/news/nagano/20190821/KT190820ETI090002000.php (信濃毎日新聞 2019年8月21日) マイナンバー 強引なカード普及促進策
 個人番号が記載されたマイナンバーカードの普及率を高めるため政府は年度末までに国と地方の全ての公務員に取得させる考えだ。そうまでする必要があるのか。カードの普及が自己目的化しているかの強引なやり方には疑問が拭えない。国、地方それぞれの共済組合から職場を通じて交付申請書を配布し、手続きを促す。申請書には家族分を含め、あらかじめ名前などを印字する。霞が関の中央省庁で始めている身分証との一体化も出先機関や自治体に順次広げる。実質的な取得の義務化だ。マイナンバーは、国民一人一人に割り当てられた12桁の番号である。年金や税金などの個人情報を番号で照会し、事務を効率化するとして2016年1月に導入された。預金口座にも適用し、国民の所得や資産を正確につかむことで脱税などを防ぐことも狙う。希望者には、顔写真付きのICカードが交付される。番号のほか氏名、住所、生年月日が載り、身分証明書になる。政府は、22年度にほとんどの住民がカードを持つことを想定するものの、現状は程遠い。交付は今月8日時点で1755万枚、人口比で13・8%にとどまる。申請書を受け取った公務員は提出を拒みにくいだろう。公務員だからといって、本人の希望が前提であるカード取得を強いていいのか。まして扶養家族まで対象に含めるのは普及促進の度が過ぎる。内閣府の世論調査では、カードを「取得していないし、今後も取得する予定はない」との回答が半数を超えている。理由は「必要性が感じられない」が最多で「身分証になるものは他にある」「情報漏えいが心配」と続いた。利点が乏しい一方で不安が残る制度―。国民のそんな受け止めが見て取れる。公務員への働き掛けのほかにも政府は普及策をあれこれ打ち出している。消費税増税に伴う景気対策ではカードを活用した「自治体ポイント」を計画する。21年には過去の投薬履歴を見られる「お薬手帳」の機能も持たせる。カードの利点をアピールしようと活用範囲を拡大していけば、その分、情報漏れや不正利用の心配が膨らむ。脱税防止といった本来の目的がかすんでもいく。普及を図りたいなら、強引な促進策ではなく、制度への国民の理解を広げる努力が先決だ。何のための個人番号か、なぜカード取得を促すのか。出発点に立ち返って丁寧に説明するべきである。

<個人の権利や社会保障の軽視>
*3-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190820&ng=DGKKZO48739010Z10C19A8EN2000 (日経新聞 2019年8月20日) 社会保障を巡る認識ギャップ
 日本の社会保障は「中福祉・低負担」であり、その差を財政赤字が埋めている。これに対して専門家は負担を中レベルに引き上げるべきだと考えている。一方で、多くの国民は福祉水準の方を高レベルに引き上げてほしいと願っている。そして政治は票を意識して国民意識に寄り添おうとするから、認識ギャップは放置され、財政赤字だけが拡大していくことになる。この放置された巨大な認識ギャップこそが社会保障問題の解決を難しくしている最大の原因だ。このギャップを少しでも小さくしていくためには、まずは政治が短期的な人気取りではなく、長期的な国民福祉の安定を考えた議論を展開すべきだ。国民の側も次のような点で社会保障への理解(社会保障リテラシー)を高めていくことが必要だ。第1は、社会保障の給付と負担は一体だという認識を持つことだ。これは当然のようにみえて結構難しい。例えば消費税率を引き上げようとすると「それにより社会保障がどう改善されるのかを示すべきだ」という意見が出る。しかし、現在の低すぎる負担レベルを正そうと消費税率を引き上げるのだから、税率を上げても社会保障のレベルが高まるわけではない。第2は、適切な期待を持つことだ。例えば年金について「百歳までも安心して暮らしていける年金水準にすべきだ」というのは過度な期待である。年金制度があっても自ら老後に備えるのは当然だ。一方、若者たちの中には「自分たちが老人になる頃には年金はもらえない(文字通り受け取る年金がゼロ)」と悲観する向きも多いが、これはあまりにも期待レベルが低い。現行の年金制度は長生きリスクに備えて自己努力を補う有力な手段となっている。第3は、自分自身がどんな形で負担しているかを知ることだ。近年、消費税率の引き上げが遅々として進まなかったこともあって、社会保険料の引き上げが続いてきた。このため勤労者と企業が相対的に重い負担をすることになってしまっている。これは、勤労者が負担する社会保険料は給料から天引きされているため、本人も負担の高まりを認識していないからだ。政治の側と国民の側の双方が社会保障を巡る巨大な認識ギャップを埋める努力をしてほしいものだ。

*3-2:https://www.nishinippon.co.jp/item/n/538855/ (西日本新聞社説 2019/8/29) 年金の将来 「支え手」増やす改革急げ
 5年ぶりの健康診断は厳しい結果だった。放置すれば命を縮めかねない。すぐに大手術をするわけにはいかないが、体力の増強などやるべきことに早急に取り組む必要がある-。厚生労働省が公表した公的年金の財政検証結果から読み取るべきは、こんな結論だろう。少子高齢化の進行で「支える側」の現役世代が減り、「支えられる側」の高齢者が受け取る年金給付水準の低下は避けられない。老後に対する国民の不安は募るばかりだ。厚生年金の加入対象者を拡大するなど、支え手を増やす制度改革で国民の不安解消に努めるべきだ。財政検証では、現役世代の手取り収入に対する厚生年金の給付水準「所得代替率」を試算した。政府にとっては、モデル世帯で所得代替率50%以上を維持という約束が、将来も守られるかが焦点の一つだった。経済成長の度合いによって6通りで試算し、高成長3ケースでは約30年後も約束は守られるとした。5年前の試算結果とほぼ同じで、根本匠厚労相は「経済成長と労働参加が進めば、一定の給付水準が確保されながら約100年間の負担と給付が均衡し、持続可能となる」と強調した。年金制度の「100年安心」をアピールする狙いだ。ただ、それでも現在の所得代替率61・7%からは大幅に低下する。しかも、この3ケースは経済成長と高齢者の就労が順調に進むという甘い条件設定での見積もりだ。それらが低迷するケースでは40%台に落ち込む。楽観を排して見通せば、年金制度も受給者の生活も「100年安心」とは言い難い。不安解消には、年金給付水準の低下抑制が欠かせない。厚生年金の加入対象者を中小企業のパートにまで広げたり、賃金要件を緩和したりすれば、給付水準は改善する。厚生年金の保険料は労使で折半するため企業側の反発が予想されるが、支え手の層を厚くするためにも腰を据えた議論が必要だ。現在は20歳から60歳まで40年間となっている基礎年金加入期間を45年に延ばす案や、厚生年金の加入上限年齢を75歳に引き上げる案などについても、給付水準の改善につながるという試算が出た。これらについても検討してほしい。「就職氷河期世代」の非正規労働者など、老後への備えが十分ではない人は少なくない。無年金や低年金への対策は待ったなしだ。政府は検証結果を踏まえて制度改革案をまとめ、関連法案を来年の通常国会に提出するという。与野党とも政治の責任として、より望ましい年金の将来像づくりに合意できるよう議論を尽くすべきだ。

*3-3:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/403840 (佐賀新聞 2019年7月22日) 年金機構が個人情報紛失、未納者データのDVD
 日本年金機構の東京広域事務センター(東京都江東区)が、国民年金の未納者の個人情報が入ったDVDを紛失したことが22日、機構への取材で分かった。未納者の氏名や住所、電話番号が含まれている可能性があるが、情報の流出や悪用は確認されていないという。機構によると、機構は国民年金の保険料未納者に支払いを訪問や電話で催促する業務を外部業者に委託。業者が状況を報告するための情報を記録したDVDを同センターに送付し、届いた後に行方不明になった。機構の担当者は「具体的な個人情報の内容や人数、行方不明になった時期は調査中」としている。

*3-4:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO49083190X20C19A8SHA000/?n_cid=NMAIL006(日経新聞2019/8/27)年金、支え手拡大急ぐ パート加入増で給付水準上げへ
 厚生労働省が27日公表した公的年金の財政検証では、少子高齢化で先細りする公的年金の未来像が改めて示された。日本経済のマイナス成長が続き、労働参加も進まなければ2052年度には国民年金(基礎年金)の積立金が枯渇する。厚生労働省は一定の年金水準を確保できるよう、会社員らの入る厚生年金の適用を拡大し、高齢者やパートらの加入を増やす改革に乗り出す。

*3-5:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO49054290X20C19A8SHA000/?n_cid=NMAIL006 (日経新聞 2019/8/27) 年金、現状水準には68歳就労 財政検証 制度改革が急務
 厚生労働省は27日、公的年金制度の財政検証結果を公表した。経済成長率が最も高いシナリオでも将来の給付水準(所得代替率)は今より16%下がり、成長率の横ばいが続くケースでは3割弱も低下する。60歳まで働いて65歳で年金を受給する今の高齢者と同水準の年金を現在20歳の人がもらうには68歳まで働く必要があるとの試算も示した。年金制度の改革が急務であることが改めて浮き彫りになった。

<インフラ整備は最初の都市計画が重要であること>
PS(2019年8月31日、9月3日追加):*4-1のように、熊本地震からの復興と将来の都市づくりのため、「中心市街地を『歩いて暮らせる上質な生活都市』に転換する新たな街づくりが必要」として、熊本市の大西市長・市の幹部・市の職員・市議など28名の視察団がフランスに派遣されることになり、これに対して、「①市長や議員が飛行機でビジネスクラスを利用する」「②生活再建できない熊本地震の被災者が残される中で、議員が物見遊山のように海外視察に行くことは納税者の理解を得られない」との批判があるそうだ。しかし、①については、一般企業の常識から考えると、市長・議員・市の幹部などが出張時にビジネスクラスを利用するのは当たり前であり、②についても、街づくりが進む前に都市計画をしておくことが重要だ。ただ、本当に都市計画のための見聞であることは大切で、そのためには議員は少人数づつに分かれてあちこちの街を視察し、必要な質問を行い、正確な報告書を提出して、その後の議論に資するのでなければならない。その時は、共産党の議員も分担して、中国・ロシア・東ヨーロッパなどの開発の進みつつあるモデルにしたい都市を視察して報告すると役に立つと思う。
 なお、*4-2のように、横浜市で第7回アフリカ開発会議(TICAD)が開かれ、「横浜宣言」に「自由で開かれたインド太平洋」「海洋安全保障」などが入れられたそうだが、それはアフリカの開発とはあまり関係ないだろう。また、尖閣諸島に関しては抗議が甘いのに、何に関しても中国の悪口を言ったり、投資額だけでなく中国独自の取り組みとの違いも際立たせたいなどと中国と競争するためにアフリカ開発援助をしているような発言をしているのは日本の意識が低いと言わざるを得ない。私は、*4-5のように、アフリカ開発銀行のアデシナ総裁が、中国の経済圏構想『一帯一路』について、「アフリカの経済成長に寄与する」「中国が『債務のワナ』の意図を持っているとは思わない」とされているとおり、現在のアフリカは、1950年代の日本と同様に、今から経済成長する地域で、そのためにインフラ整備を必要としており、人口増加しつつある平均年齢の低い国が多いため、借金は経済発展すれば返せると思う。
 そして、日本が援助するのなら、アフリカの貴重な自然を破壊せずに開発を進めるため、都市計画を先にたて、民間企業を中心として上下水道・再エネによる分散電源・EV・FCV・携帯電話・パソコン使用などを前提とする「質の高いインフラ投資」をすべきだ。
 さらに、*4-3のように、G7首脳会議で日米欧が素早く一致したとおり、2050年までにアフリカ大陸は人口が倍増して25億人になると予想されるため、治安の悪化を防ぐには雇用創出しなければならないが、日本はこの状態を1940~1950年代に経験済であり、これらを解決する方法は、女性も含めた教育・人材づくり・家族計画・経済成長であることがわかっている。そのため、中国と同様、一時的な格差拡大を恐れずに、できる所からやっていくことが必要だろう。
 2019年9月1日、日本農業新聞が、*4-6のように、「①人口が倍増するアフリカは、今後の有望成長地域で食料輸入国が多い」「②農業振興で成長を後押ししたい」「③アフリカの食料安全保障も大問題」と記載している。私は、エネルギーは全く排気ガスを出さない再エネ由来の電動にすべきだと思うので、わざわざ食料を作れる田畑でバイオ燃料を作ることには反対で、さらにスマート農業にしすぎると人口増のアフリカで雇用吸収力が低くなるのではないかとも思うが、①であるからこそ②③は非常に重要で、JAグループ等の農業関係団体は技術協力や人材育成が可能だと思う。また、アフリカで技術協力した日本人の方にも貴重な経験になるし、アフリカの家族農業をまとめた農業協同組合との連携や6次産業化もできるだろう。
 なお、JA全農が、*4-7のように、組合員の家庭や営農施設向けの電力の販売に乗り出すそうだが、各地域の電力会社から電力を調達するのでなく、ハウス・畜舎・田畑などで再エネ発電を行えば、完全なグリーン電力にでき、営農の大きなコストダウンや農家の副収入確保が可能になる。また、この方式は、アフリカなど電力インフラの遅れている地域でも活用できる。


アフリカのGDPと経済成長率 アフリカの人口ピラミッド 日本の人口ピラミッドの変化

(図の説明:左図のように、アフリカ諸国は変動はあるものの世界平均より経済成長率が高く、これから成長する国々である。中央の図のケニア・ナイジェリア・エチオピアの人口構成は、右図の日本の1940年代、南アフリカの人口構成は1955年くらいに当たり、先進国の援助でスピードが速まりつつ、インフラ・経済・医療・教育の充実は似たような道を辿ると思われる)

   
世界では最安値の太陽光発電      改良型風力発電機        地熱発電

*4-1:https://digital.asahi.com/articles/ASM8V5392M8VTLVB00B.html?iref=comtop_8_05 (朝日新聞 2019年8月30日) 熊本市、海外視察に1850万円 市長はビジネスクラス
 熊本市が今秋、大西一史市長をはじめ、市幹部や市職員、市議ら28人からなる視察団をフランスに派遣することになった。6泊8日で、市負担の予算は計約1850万円。市は視察の理由を、熊本地震からの復興と将来の都市づくりには中心市街地を「歩いて暮らせる上質な生活都市」へと転換する新たなまちづくりが必要で、フランスが欧州の先進事例と説明している。今年6月、熊本市と交流都市の関係にあるエクサンプロバンス市から「日仏自治体交流会議」の準備会議への招待状が大西市長に届き、倉重徹議長にも議員との交流を求める招待状が届いた。これに合わせる形でフランスの3都市を巡る視察団の派遣を企画した。市都市政策課によると、一行は10月30日に熊本を出発。同日夕にストラスブール市に到着。31日に同市の市長を表敬後、公共交通を優先したまちづくりを視察。11月2日にオルレアン市を回り、3日に交流都市のエクサンプロバンス市に移動。翌4日に同市の市長を表敬し、5日まで市内を視察して6日に帰国する。大西市長は県産農産物品の売り込みのため視察の途中でイタリア・ミラノ市を訪問し、エクサンプロバンス市で合流する予定だ。市議会からは倉重議長のほか、自民の寺本義勝議員、小佐井賀瑞宜議員、光永邦保議員、公明の井本正広議員、市民連合の福永洋一議員が参加する予定。参加議員は各会派の代表として選ばれた。視察の準備は昨年から始め、市幹部と職員の費用は今年度当初予算で議決済み。市議会分については、9月定例会に770万円の補正予算案を提出する。経済界から参加する4人の旅費は自己負担という。市長や議員は飛行機でビジネスクラスを利用する予定。市議会事務局によると、交通費や滞在費を含む議員1人あたりの旅費約106万円は全額公費から支出する。議員は視察後の報告書提出の義務が無く、議会事務局が感想を聞き取って報告書を作成する。海外視察の事例については「近年は無く、少なくとも改選前の前期の4年間は無かった」としている。市議6人が同行する海外視察ついて、大西市長は27日の記者会見で「派遣する議員数については議会がお決めになること。熊本市の市電延伸にも色んなご意見があり、多様な方が実際に現地を見て違う角度から将来の熊本について検討する機会。視察の目的も明確でまちづくりの知見を深められる」と説明。倉重議長も取材に対し、「路面電車をいかしたまちづくりやコンパクトシティーを実現した先進国で、なるべくたくさんの議員に一緒に交通体系を体験してもらい、その意見を将来の熊本のまちづくりにいかす」と話す。一方、これまで市議会の海外視察に加わってこなかった共産の上野美恵子議員は「市民の代表として市長と議長の表敬訪問は理解できる。しかし、まだ生活を再建できない熊本地震の被災者が残されるなかで、議員が物見遊山や大名行列のようにゾロゾロと海外視察に行くことは納税者の理解を得られると思えない」と批判している。

*4-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190830&ng=DGKKZO49193050Q9A830C1MM0000 (日経新聞 2019年8月31日) TICAD横浜宣言、インド太平洋構想を明記、中国念頭に 民間重視を強調
 横浜市で開いた第7回アフリカ開発会議(TICAD)は30日午後、「横浜宣言」を採択して閉幕した。安倍晋三首相が提唱する「自由で開かれたインド太平洋」構想にTICADの成果文書として初めて触れ、重要性について認識を共有した。今後のアフリカ開発では民間ビジネスを重視していく姿勢も前面に出した。インド太平洋構想はアジアとアフリカを結ぶインド洋や太平洋地域で、法の支配や航行の自由、経済連携を推し進めるものだ。首相が2016年8月にケニアで開いた前回TICADの基調演説で打ち出した。横浜宣言では同構想に「好意的に留意する」と言及した。中国が主導する広域経済圏構想「一帯一路」を意識し、アフリカ諸国が中国に傾斜しすぎないよう促すものだ。アフリカでのインフラ開発では中国の融資に頼り、巨額の債務を負った事例が指摘される。6月の20カ国・地域首脳会議(G20大阪サミット)でまとめた首脳宣言や「質の高いインフラ投資原則」を共通認識として歓迎することも盛り込んだ。相手国に返済が難しいほど過剰な債務を負わせないよう、透明性と持続可能性を重視する内容だ。優先事項の一つでも海洋安全保障を挙げ、中国の海洋進出を念頭に「国際法の諸原則に基づくルールを基礎とした海洋秩序の維持」を訴えた。経済連携では「アフリカ開発における民間部門の役割を認識」と盛り込んだ。民間ビジネスを活性化してアフリカ経済の自律性を高める狙いで、政府間が主導する中国の対アフリカ支援との違いを訴えた。首相は閉会式で「民間企業のアフリカにおけるさらなる活動を後押しするため支援を惜しまない」と強調した。アジアでの開発で日本が取り組んだ経験がアフリカでも役立つことを確認し、日本がアフリカ諸国での人材育成を支援する「ABEイニシアチブ3.0」を評価した。日本への留学やインターンを促進し、今後6年間で3000人の産業人材の育成を目指す仕組みだ。女性起業家への支援も歓迎する考えを明記した。アフリカ開発を巡っては中国も00年から中国アフリカ協力フォーラムを計7回開き、18年の会合では3年間で約600億ドルの拠出を表明した。首相も28日の基調演説で今後3年間で200億ドルを上回る民間投資の実現を後押しする考えを示した。ただ投資額だけで対抗するのではなく、中国独自の取り組みとの違いも際立たせたい考えだ。横浜宣言ではTICADの基本理念として日本とアフリカだけでなく国際機関や第三国にも開かれた枠組みだと強調した。同宣言では日本が目指す国連安全保障理事会の常任理事国の拡大を念頭に「安保理を含む国連諸組織を早急に改革する決意を再確認」することも明記した。次回の第8回TICADは22年にアフリカで開く。TICADは前回初めてアフリカで開いており、3年ごとに日本とアフリカで交互に開催する方向性を明確にした。日本が1993年に立ち上げたTICADでは参加する日本やアフリカ諸国で共通する問題意識を盛り込んだ宣言を出すのが通例だ。28日に開幕した今回はアフリカ54カ国のうち過去最高の42カ国の首脳級が参加した。

*4-3:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190831&ng=DGKKZO49225340Q9A830C1EA3000 (日経新聞 2019年8月31日) 人口増リスク、欧米が注視
 対立が目立った26日までのフランスでの主要7カ国(G7)首脳会議で日米欧が素早く一致した分野がある。西アフリカのサハラ砂漠南部「サヘル地域」での雇用創出などを通じた開発支援だ。マリやチャドなどサヘル地域5カ国は世界のアフリカへの成長期待をよそに治安が悪化し、統治が機能していない。背景には人口が増えるなかで貧困や若年層の失業が膨らみ、過激派勢力が不満を募らす若者を引き込む負の構図が浮かぶ。2050年までに人口が倍増して25億人になるアフリカ大陸。欧米は「最後の市場」としての潜在性よりも、リスクへの意識を強めているように見える。西アフリカのある高成長国の閣僚も「雇用創出できなければ、人口は文字通りに爆発し、世界の問題になる」と話す。特に地理的に近い欧州は大量の難民流入やテロのリスクに直面する。アフリカの安定成長を促して人口増に伴う雇用を確保し、インフラや衛生整備を進めなければ、食料不足や疫病の流行といった危機も招きかねない。今回のアフリカ開発会議(TICAD)で安倍晋三首相が平和構築への協力を打ち出し、教育や医療支援も強調したのは欧米の懸念に呼応した動きといえる。「スクランブル(先を競った奪い合い)」と形容される最後の市場を巡る各国の競争は思わぬ結果を生む可能性もある。改革を進め、外資を呼び込んで成長する国と、負のサイクルから抜け出せない国との格差が広がる兆しがある。人口予測通りにいけば、50年には世界の4人に1人はアフリカ人となる。世界銀行総裁候補だったナイジェリアのオコンジョイウェアラ元財務相は訴える。「アフリカを育むことは世界の未来に直結する」

*4-4:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190831&ng=DGKKZO49216720Q9A830C1EA3000 (日経新聞 2019年8月31日) アフリカ投資拡大へ「人づくり」前面 TICAD閉幕 、膨らむ債務 対処後押し 支援先行の中国を意識
 第7回アフリカ開発会議(TICAD)は30日、アフリカの経済成長の進展をめざす「横浜宣言」を採択して閉幕した。日本は会議を通じて民間主導の投資を訴え、政府としては投資拡大の環境を整える人材育成を前面に掲げた。中国の融資で過剰債務を抱える国などの実態を踏まえ、投資や支援で先行する中国に傾斜しすぎないよう促す狙いもある。安倍晋三首相は30日のTICAD閉幕後の記者会見で「日本とアフリカの懸け橋となる人材の育成に力を入れていく」と強調した。治安から公的債務、保健、産業まで投資拡大の前提となる能力向上をはかる。具体策のひとつが今後3年間でのべ30カ国に公的債務のリスク管理研修を実施することだ。ガーナやザンビアへの債務管理やマクロ経済政策を助言する専門家の派遣を決めた。ケニアの鉄道など中国の融資で重い債務を抱えた例が指摘される。財政が悪化すれば円借款などを用いたインフラ支援などが難しくなる。横浜宣言には6月の20カ国・地域首脳会議(G20大阪サミット)でまとめた首脳宣言や「質の高いインフラ投資原則」の歓迎を盛り込んだ。過剰な債務を負わせないよう透明性と持続可能性を重視する内容だ。首相は記者会見で「支援は対象国の債務負担が過剰にならないようにしなければならない」と述べた。宣言で「自由で開かれたインド太平洋構想」の評価に初めて触れたのは、中国の「一帯一路」構想を意識した。アフリカ側にも「投資や援助を受ける国を多様化したい」(ジブチのユスフ外相)との声がある。30日の「平和と安定」に関する会合では、河野太郎外相がアフリカ諸国の国連平和維持活動(PKO)の能力向上支援に触れた。ケニアなどのPKO訓練センターで日本の自衛官らによるPKO部隊の研修を充実させる。アフリカでは治安が悪化している地域が多く、地域格差拡大の要因にもなる。アフリカ市場が発展し民間投資が増えるためには情勢の安定が重要だ。

*4-5:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190831&ng=DGKKZO49221200Q9A830C1FF8000 (日経新聞 2019年8月31日) アフリカ開銀総裁「一帯一路は成長寄与」 債務のワナ否定
 アフリカ開発銀行(AfDB)のアデシナ総裁は30日、日本経済新聞のインタビューに対し、中国の経済圏構想「一帯一路」について「アフリカの経済成長に寄与する」と評価した。中国が過剰債務の代償としてインフラ権益を奪う「債務のワナ」について「中国がそうした意図を持っているとは思わない」と述べ、中国のインフラ投資を歓迎する姿勢を見せた。アデシナ氏はアフリカの持続的な経済成長にはインフラ整備が欠かせないと述べた。不足している資金を最大で1080億ドル(約11兆円)と予測し、海外から投資を呼び込むことが重要との考えを示した。「一帯一路」については「アフリカの発展に寄与する」と評価した。また、アフリカの一部の国で対外債務が増えていると指摘し、各国が「債務についての透明性を確保し、処理の道筋を示すことが非常に重要だ」と述べた。一方で「アフリカで債務危機に陥っている国はない」と述べ、現時点でのアフリカ諸国の債務水準は問題視しない考えを示した。足元のアフリカ経済については良好との認識を示した。「2019年の平均成長率は4.1%を確保できる」と述べた。今後のリスクに米中貿易戦争と英国の欧州連合(EU)離脱、インドとパキスタンの緊張の3つを挙げた。アデシナ氏は8月28~30日に横浜市で開いたTICADに出席するため来日した。

*4-6:https://www.agrinews.co.jp/p48606.html (日本農業新聞論説 2019年9月1日) 日・アフリカ会議 農業支援で関係強化を
 日本政府が主導する第7回アフリカ開発会議(TICAD7)は、民間企業の投資強化など「横浜宣言」を採択して閉幕した。人口が倍増するアフリカは、今後の有望な経済成長地域だ。一方で食料輸入国が多い。日本の先進技術を含め、農業振興で成長を後押ししたい。「後進地域がゆえの先進性」──潜在的な成長力を秘めるアフリカ大陸の可能性はこう表現できる。「横浜宣言」で、民間投資の大幅拡充やデジタル革命へ対応を明記した理由だ。農業面でも同じ。JAグループが6月開設した戦略拠点「イノベーションラボ」。ベンチャー企業と連携し、幅広い分野でITを活用した新規事業の創出を目指す。その一つ、日本植物燃料(神奈川)は、アフリカのモザンビークで新たな挑戦を進める。現地農家にバイオ燃料作物栽培を推進。それを契機に農家に電子マネーを広げ、少額融資などを行う。鍵は普及している携帯電話の活用だ。合田真代表は、情報通信技術(ICT)を駆使し、農林中金やJA全農など総合事業を行うJAグループと連携すれば、「さらに現地の農村を発展できる」と強調する。吉川貴盛農相はTICAD期間中、「農業」部門に参加し、アフリカの食料安全保障確立に関連し、専門家派遣の拡充や、先端技術を駆使したスマート農業の振興などを強調した。TICADでは、二つの視点が欠かせない。地球規模の食料安保と中国の存在感だ。アフリカ諸国はかつて農産物の輸出大国でもあった。だが度重なる紛争や気象災害で国土は荒廃した。豊富な鉱物資源は多国籍企業の収奪に遭う。土地収奪も重なり、アフリカ農業は衰退の一途をたどる。基礎的食料さえも不足し食料輸入大国に転落した。人口増と食料輸入の同時進行は、世界の食料安全保障上も大問題となりかねない。アフリカ大陸の経済成長の潜在力は大きい。今年5月には域内の関税撤廃などを目指す自由貿易協定も発効し、巨大な統一市場への期待も膨らむ。中国やインドに匹敵する13億人の人口で、2050年には25億人と倍増し世界の4分の1を占める見通しだ。巨大な胃袋をどうやって満たすのか。いま一つの視点は中国の動き。2000年からアフリカ協力フォーラムを7回開催。昨年は、3年間で600億ドルを拠出する巨額支援を表明した。米中貿易紛争の激化は、安全保障問題も絡む。こうした中で、今回のTICADでは中国に対抗し日本の存在感を強める戦略的な意味合いも一段と強めた。一方、食料自給率の向上は喫緊の課題だ。農業分野支援は、日本の高い技術力を生かせる。既に干ばつに強い多収性の「ネリカ米」振興は高い評価を受けている。JAグループなど農業団体はアジアの途上国を中心に人材育成に力を入れてきた。今後はアフリカを含め日本の“農協力”発揮の時でもある。

*4-7:https://www.agrinews.co.jp/p48629.html (日本農業新聞 2019年9月3日) 全農 電力販売を本格化 割安提供 家計、営農後押し
 JA全農は、JA組合員の家庭や営農施設向けの電力の販売に本格的に乗り出す。各地域の電力会社より安価に供給し、家計の負担や営農コストの削減を後押しする。地方では電力小売りへの参入業者が少ないが、「JAでんき」の愛称で北海道と沖縄県、一部の離島を除く全国で展開。2021年度までに累計35万戸の契約を目指す。子会社の全農エネルギーが各地域の電力会社などから電力を調達し、正・准組合員やJAグループ役職員の家庭、営農施設に届ける。電力会社の送電網を使うため、電力の安定性は従来と変わらない。JAを通じて申し込むが、地域のJAが同社や全農と代理事業契約を結ぶ必要がある。家庭用電力の料金は、各地域の電力会社より割安に設定する。自前の発電所などを持たないため料金を抑えられる。全農によると、標準的な4人家族の使用量で、電気料金は5%前後安くなる。使用量が多いほど割安な料金体系で、世帯人数が多い農家は、さらに電気料金の引き下げメリットが受けられるという。ハウスや畜舎などの営農施設向けには、使用実態の調査や料金の試算を個別に行った上で、値下げが見込める場合に切り替えを提案する。営農施設には、地域の電力会社も規模や使用量に応じて割安な料金を設定している場合があるためだ。16年の電力小売り全面自由化で、家庭や小規模事業者も電力会社を選べるようになった。だが、JAの組合員が多い地方では、大都市圏に比べ参入業者が少なく、切り替えが進んでいない。全農はその受け皿となり、組合員の電力コスト削減を目指す。16年に電力事業に参入後、電力の使用規模が大きい精米や食肉などの加工工場、物流センターといったJAグループの施設向けに先行して取り組み、全国的に供給できる態勢を整えてきた。全農は現在、電力事業に取り組んでもらうJAへの説明や提案を進めている。19年度は50JA程度でモデル的に供給を開始。20年度以降、対象となる全てのJAに広げたい考えだ。19年度からの3カ年計画では、契約件数の目標を21年度までの累計で35万戸と掲げた。全農は「安価な電力の供給で家計負担の抑制や営農コストの削減に貢献したい」(総合エネルギー部)とする。従来のLPガスや灯油と組み合わせたエネルギー利用の提案や、営農用エネルギーの総合診断なども展開していく方針だ。

<“普通”信奉(≒同質主義)は、病根の一つである>
PS(2019年9月2日追加):持って生まれたDNAと周囲の環境の違いのために発現する多様な個性を、*5のように、“普通”でないから脳機能障害による発達障害だとし、“グレーゾーン”まで含めて医療機関の受診を奨める報道は少なくないが、これは間違った知識を一般の人に与えるのでよくない。何故なら、医師が「経過をみましょう」と言っても、母親が「ママ友」の繋がりで発達障害と診断してくれるクリニックを捜して「むしろ安心した」と言うような状況になるからだ。人の性格や生育スピードにはばらつきがあるので、周囲の大人が「普通でない」と感じたからといって脳機能障害と考えるのは間違いであり、その子に対する人権侵害でもある。
 学校や社会に適応できない理由には、くだらないことで仲間外れにしたり、いじめたりする影響があるからで、発達障害というよりは“文化”の方を変えなければならない側面が大きい。そして、社会に出てまで支援を受ける人の割合が多いのは困るため、それぞれの個性を活かした教育や能力開発が必要だ。さらに、普通に働いている大人まで「見過ごされた人」として、その症状を「①空気が読めない」「②ミスを繰り返す」などとしているが、①は、空気を読んで周囲に合わせることしかできない深刻な無思考(他人依存)症候群であり、②は、慣れないことは誰にとっても難しいため仕事ができるためには熟練しなければならないということだ。



(図の説明:最近、左及び中央の図のように、程度の差こそあれ誰にでもある多様性の範囲に入るものまで発達障害として精神障害に入れ、右図のように、相談してケアされることを奨めているが、これはむしろ教育や躾の妨げとなって子どもの機会を奪う)



(図の説明:左図のように、人は成績・身体能力・所得・貯蓄高等と同様、性格にも多様性があり、普通と言うのは中央から2σ《95.4%が入る》か3σ《99.7%が入る》内の人だ。そして、3σより向こうの両端にも0.3%《1000人に3人》の人がおり、右端《0.15%、1000人に1.5人》には優秀な人がおり、左端《0.15%、1000人に1.5人》には駄目な人がいて、普通が最もよいわけではない。また、中央の図のように、ばらつきが左右対称に分布している場合は平均値・中央値・最頻値は一致するが、歪んだ分布をしている場合には平均値・中央値・最頻値は異なる。そして、日本は何でも精神障害ということにする結果、世界でも突出して精神病床の多い人権侵害国になっている。ただ、既製服や既成靴を買う場合は「普通」の範疇に入る人の方が品物が豊富でよいのだが、この「普通」も国によって大きく異なることは誰もが知っているとおりだ)

*5:https://digital.asahi.com/articles/DA3S14160488.html (朝日新聞 2019年9月2日) (記者解説)発達障害、寄り添うため 特性は多様、早めに専門機関へ 生活文化部・土井恵里奈
 ・脳の機能障害が原因とされ、手術や投薬では解決しない。障害特性は一人ひとり違う
 ・専門家や専門機関と早めにつながり、社会生活上の困難を小さくすることが大切
 ・障害を見過ごされた大人、診断されない「グレーゾーン」の人たちの支援も課題
■診察のため予約殺到
 東京都江戸川区の児童精神科クリニック「まめの木クリニック」には、発達障害かどうか診察を求める電話が後を絶たない。「健康診断や学校で(発達の凸凹を)指摘されて来る人、自分で調べて来る人が多い」。上林靖子院長はそう話す。初診予約は年内すでにいっぱい。2年待ちの時もあった。東京都内の女性の長男(中2)は発語が遅く、あちこちにふらふら行くなど落ち着きがなかった。1歳半の健診では「経過をみましょう」と言われ、病院を受診しても「発達障害の疑いはありますが……」とあいまいだった。「ママ友」のつながりで同クリニックを知った。約10カ月待ち、長男が2歳のころ受診。発達障害と診断された。女性はこう振り返る。「むしろ安心した。それまでは情報が得られなくて先が見えなかったから」。今も定期的に長男と通院し、医師や臨床心理士らに相談する。女性は「最初は長男がなぜこんな行動をするのか共感してあげられなかった。子どもへの接し方を学び、子どもが穏やかに生活できるようになった」と話す。発達障害の特性による育てにくさに直面し、周囲に言えなかったり理解されなかったりして悩んでいる人は多い。発達障害かどうかは、成育歴を聞き取る問診や知能検査などを経て医師らが診断する。厚生労働省によると、特性を適切に把握できる児童精神科医は少ない。発達障害の原因は脳の機能障害とされる。手術や投薬で治ることはなく、当事者は特性と生涯向き合う必要がある。だから、医師や臨床心理士といった専門家と早くからつながることが大切だ。上林院長は「発達障害の特性ゆえのやりにくさをうまく乗り越えていけるようにして、社会に送り出してあげることが大切」と指摘する。発達障害は一様ではない。読み書きや計算など特定の課題の学習につまずく「学習障害」(LD)、こだわりが強く、他人の気持ちを想像したり共感したりするのが苦手な「自閉スペクトラム症」(ASD)、衝動性が強かったり、忘れ物や遅刻などの不注意が多かったり落ち着きがなかったりする「注意欠陥・多動性障害」(ADHD)がある。複数の特性が重複していることもよくある。特性から光や音、接触に過敏だったり、暑さや寒さ、痛みに鈍感だったりする人もいる。
■高校でも支援の動き
 政府も後押ししている。2005年に発達障害者支援法が施行され、早期の発達支援が重要と条文にうたわれた。学校や社会に適応できずに不登校やうつ、引きこもりといった「二次障害」を防ぐためで、「障害の早期発見のため必要な措置を講じること」が国と地方公共団体の責務となった。だからこそ発達障害の疑いのある子どもがいれば、いち早く地元の市役所や町村役場を頼りたい。行政機関は求めに応じて医療機関を紹介してくれる。ただ地域格差があり、都道府県と政令指定市に設置されている「発達障害者支援センター」も支援の窓口だ。発達段階に応じた児童発達支援(未就学児対象)や放課後等デイサービス(小学生から原則高校生まで)も制度化されている。専門性を持った職員から社会的スキルなどを学ぶが、こうした情報も行政とつながることで得られやすくなる。幼稚園や保育所、小中学校には教員や支援員が増やされることがある。高校でも、通常学級に在籍しながら発達の程度に応じた特別な指導(通級指導)を受けることができる。一方、義務教育が終わると支援が行き届かない場面が増える。孤立しないよう、積極的に向き合う高校もある。和歌山県立和歌山東高校では、発達に課題がある生徒の保護者とは入学前の早い時期に面談している。読み書きを苦手にしている生徒に対しては、在籍する通常学級で黒板を書き写しやすくするため、重要なことを黄色の線で囲むなど工夫している。こうした配慮は他の生徒にも好評で、退学者が減るなど全体に好影響をもたらしている。石田晋司校長(58)は「社会に出ると多様な人と関わっていく。得手不得手を助けたり助けられたりすることを学ぶことは、どの子にとってもプラス。人を理解する力をつけることにつながる」と話す。
■「見過ごされた」大人
 困難を抱えていたのに、子どもの時に「見過ごされた」人たちがいる。大人の発達障害だ。昭和大付属烏山病院(東京都世田谷区)には大人の発達障害専門の外来があり、来院者が絶えない。臨床心理士らに付き添われ、怒りや不安の感情との向き合い方や時間を管理するスキルなどを学ぶ。仕事や生活での具体的な困り事を当事者同士が話し合うプログラムもある。「家に食材をため込む」「体調が悪い時は特に片付けが苦手」。当事者たちは日頃の悩みを互いに打ち明ける中で自己理解を深め、解決のアイデアを共有する。障害の傾向はあっても発達障害と診断されない、「グレーゾーン」に置かれる人たちもいる。困難や生きづらさはあるのに、支援の手が届きにくい。神奈川県の男性会社員(31)は子どもの時から忘れ物や遅刻、不注意が多かった。周囲から孤立し、22歳でうつに。発達障害を疑って受診したが、医師からは「ADHDの傾向はあるが断定できない」と言われた。就職活動時はリーマン・ショック。特性を職場に伝えるのはマイナスと考え、言えなかった。職場では複数の業務を同時にこなすのに苦労。転職を繰り返した。2年前、グレーゾーン当事者の支援団体「OMgray事務局」をつくった。定期的に東京に集まり、就労や生活の困り事の解決策などを情報交換する。男性は「社会に普通にいる存在として受け止めてほしい」と話す。女性の当事者会「Decojo」には、診断を受けた人もグレーゾーンの人も参加し、困り事をブログに書き込んでいる。代表の沢口千寛さん(27)は「当事者だけでなく、私たちの行動を理解できず振り回されている人や社会にも見てほしい。理解し合い、歩み寄れるようになれば」と話す。
■「普通」に見える、でも困っている 学校で職場で手をさしのべて
 23万人。発達障害の診断などを受けるために医療機関を受診した人の推計(17年度)だ。受診者といっても、学校に通ったり働いたり子育てしたりと「普通」に見える。でも壮絶に困っている。生きづらさを抱えたまま社会に紛れている。「空気が読めない」「ミスを繰り返す」。当事者の困りごとは切実だが、外からは見えにくい。「怠けている」「だらしない」と責められやすい。「グレーゾーン」だと、相談先も十分でない。病気のように重いほどつらいとは限らないことも、この障害の特徴だ。子どもは自分で苦しさを伝えづらく、いじめにつながりやすい。無理を重ね不登校になった子もいる。大人になると、周囲が助けてくれる場面は少なくなる。特性を抱えながらも、発達障害という言葉さえ知られていない時代に子どもだった人は今、30代、40代を過ぎている。就職氷河期のロストジェネレーション世代とも重なり、非正規雇用など不安定な生活を強いられている人は多い。ひきこもりに陥るなど社会からの孤立が心配だ。当事者の言葉は重い。「人生で普通の人の100倍怒られてきた」「パターンをたたき込んで普通になろうともがく。努力して努力して、でもなれなくて。自分はダメと思い、殻に閉じこもっていく」「社会に出たら迷惑をかける。出ないことが社会貢献」。当事者を縛る「普通」とは何だろう。常識? 標準? ものさしは一つ? いろんな国や言語があるように、一人ひとりの普通は違う。学校にも職場にも地域にも、「苦手ならちょっと代わりに」とさしのべる手がたくさんあるといい。発達障害の痛みを和らげるには、医療より社会にできることが大きい。特効薬がない障害の鎖をほどいてゆく力になるのは、医師や専門家だけじゃない。どこにでも普通にいる私たちだ。

<日本は、本当に法治国家か?>
PS(2019年9月3日追加): 総務省が、ふるさと納税の新制度から大阪府泉佐野市を除外した件を審査した「国地方係争処理委員会」が、*6-1・*6-2のように、除外決定の再検討を石田総務相に勧告することを決めて総務省は敗訴したが、これは新制度への参加が認められなかった静岡県小山町、和歌山県高野町、佐賀県みやき町も同じであるため、提訴すれば速やかに結論が出るだろう。何故なら、日本国憲法に「第84条:あらたに租税を課し、又は現行の租税を変更するには、法律又は法律の定める条件によることを必要とする」と定められており(租税法律主義)、新たに定められた法律が施行前に遡って効力を持つこと(遡及効)はないからだ。さらに、総務省の通知は、国税庁の通達と同様に一つの考え方であって法律ではないため、総務省が「メチャクチャだ」と感じたとしても通知の順守を強要すれば憲法違反になる。そのため、大阪府知事が、*6-3のように、「総務省のおごり」「国は真摯に受け止めて見直すべき」としているのは妥当であり、メディアや行政は、もっと法律を勉強しておく必要がある(笑)。
 なお、佐賀県は、(私の提案で)日本の中でも病院のネットワーク化が進んでいるので、*6-4の東多久町に建設する新病院は、①どのような先進医療を ②どういう新しい施設で市民に提供するか についてのコンセプトを決め、新病院の建設を使い道として県人会や同窓会などで「ふるさと納税」を集めればよいと思う。

   
 2019.9.3東京新聞 2019.8.27朝日新聞

(図の説明:左図には、泉佐野市の勝因は地方税法違反と書かれているが、そもそも租税法律主義を定めた憲法違反である。また、中央の図には、泉佐野市は肉・カニ・米の三種の神器がないと書かれているが、私は農産物でなくても地域を振興する何かであればよいと思う。確かに、右図のように、大阪府泉佐野市・静岡県小山町・和歌山県高野町・佐賀県みやき町は頑張ったわけだが、これは上記の法的根拠で除外される理由にはならないわけだ)

*6-1:https://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201909/CK2019090302000146.html (東京新聞 2019年9月3日) ふるさと納税 泉佐野市除外、違法か 係争委、再検討勧告へ
 ふるさと納税の新制度から、大阪府泉佐野市が除外された問題を審査した第三者機関「国地方係争処理委員会」は二日、除外決定の再検討を石田真敏総務相に勧告することを決めた。過去に不適切な寄付集めをしたとして除外した総務省の対応は、新制度を定めた改正地方税法に違反する恐れがあると指摘した。同省が事実上の「敗訴」となる極めて異例の判断を下した。総務省には、勧告の文書を受け取ってから三十日以内に、再検討の結果を泉佐野市へ通知するよう求める。同省は再検討を義務付けられるが、別の理由で改めて除外するのは可能。審査を申し出た市は「主張がおおむね理解された」とコメントした。同様に新制度への参加が認められなかった静岡県小山町、和歌山県高野町、佐賀県みやき町の三町は勧告の対象外。委員長の富越和厚元東京高裁長官は記者会見で、泉佐野市による寄付集めを「制度の存続が危ぶまれる状況を招き、是正が求められるものだった」と述べ、問題があったとの認識を示した。ただ、それを除外の根拠にすることは認められないと指摘。理由として「改正地方税法に基づく新制度の目的は過去の行為を罰することではない」と説明した。六月開始の新制度は、改正法に基づく総務相の告示で「昨年十一月以降、制度の趣旨に反する方法で、著しく多額の寄付を集めていない」ことが参加基準の一つになった。市はインターネット通販「アマゾン」のギフト券などを贈り、昨年十一月~今年三月に三百三十二億円を獲得。総務省は基準を満たしていないとして五月に除外を決めた。

*6-2:https://digital.asahi.com/articles/ASM9263JXM92ULFA03B.html?iref=pc_rellink (朝日新聞 2019年9月2日) 総務省、泉佐野市に完敗 「メチャクチャだったのに…」
 ふるさと納税制度からの除外をめぐる総務省と大阪府泉佐野市の対立で、同省の第三者機関・国地方係争処理委員会が2日、石田真敏総務相に除外の内容を見直すよう求めた。係争委は、法的拘束力のない通知への違反を除外理由にしたことを「法に違反する恐れがある」と認定しており、事実上、総務省の「完敗」となった。係争委の富越和厚委員長は委員会後の会見で、6月の地方税法の改正前の泉佐野市の行為は「世間にやり過ぎと見られるかもしれないが、強制力がない通知に従わなくても違法ではない」と説明した。係争委は今回、改正法の施行後に守るべきものとして総務省がつくった基準を、法改正前の行為にあてはめて除外を判断したとして、違法の疑いがあると認定。同省に直接、除外の判断の撤回までは求めなかったが、総務省が除外の根幹として掲げていた理由は「少なくとも本件で使うべきではない」と退けた。富越委員長は、総務省が泉佐野市を除外する判断を続ける場合は、新たな法的根拠を提示する必要があるとの見解を示した。係争委の勧告に、総務省内では戸惑いの声が上がった。同省幹部の一人は朝日新聞の取材に「泉佐野市の集め方はメチャクチャだったのに。係争委の厳しい判断は受け入れがたい」と話す。一方、政権幹部の一人は「今後訴訟になった時に対応できるよう整理するということ。根本的な問題ではないのでは」との見方を示した。

*6-3:https://digital.asahi.com/articles/ASM933HCLM93PTIL005.html?iref=comtop_list_nat_n05 (朝日新聞 2019年9月3日) 大阪府知事「総務省のおごり」 ふるさと納税の勧告受け
 ふるさと納税制度から大阪府泉佐野市を除外した総務省の判断に対し、同省の第三者機関・国地方係争処理委員会が「法に違反する恐れがある」と見直しを求めたことについて、大阪府の吉村洋文知事は3日、記者団に「妥当な判断。国は真摯(しんし)に受け止めて見直すべきだ」と述べた。吉村知事は、国が元々通知として出し、6月施行の改正地方税法に盛り込んだ「返礼品は寄付額の3割以下の地場産品に限る」とのルールを、法改正前の泉佐野市の行為にあてはめて除外したと指摘。「法律を遡及(そきゅう)適用しないのは大原則。新しい制度から外すのは総務省のおごりだ」と批判した。
菅義偉官房長官は記者会見で「総務省において対応について検討が行われる。各自治体で使途や返礼品について知恵を絞り、健全な競争が行われ、地域の活性化につなげていくことが大事だ」と述べた。

*6-4:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/421806 (佐賀新聞 2019年9月3日) 新病院は東多久町に 建設地を選定多久、小城検討委
 多久市立病院(多久市多久町)と小城市民病院(小城市小城町)の統合計画で、多久、小城の両市は2日、新しい統合病院の建設予定地が多久市東多久町に選定されたと発表した。選定の理由は「両市民の利便性や経営の安定性に加え、医療機関が特定の地域に偏らないことなどを総合的に判断した」としている。今後は地権者との協議を進め、新病院の建設費に関する負担割合や診療科目などを両市で議論する。両市長や医師会、両病院の代表者らで構成する建設地の検討委員会が8月30日、佐賀市で3回目の会議を非公開で開き、候補地5カ所の中から適地を選んだ。両市の事務局によると、多久、小城市はそれぞれ、自らの市域への建設を会議で要望した。民間の病院が少ない多久市は「公立病院がなくなれば医療過疎地になる」とし、財政支援などで経営の安定に努力すると訴えた。建設予定地は東多久町別府の約2・6ヘクタールの範囲。現在は水田などが広がり、北東に佐賀LIXIL(リクシル)製作所の佐賀工場がある。両市長が2日、両市議会に選定の概要を説明した。今後は両市で新病院の準備室を立ち上げ、具体的な協議に入る。2020年に診療科目や病床数を定めた基本計画の策定を目指す。検討委の委員長を務める池田秀夫佐賀県医師会長は「両病院ともに老朽化が進んでおり、必要な医療を継続して両市民に提供するためにも、早期の病院建設を望む」とのコメントを出した。

PS(2019年9月5日追加):*7-1のように、「情報社会でデータを使ってなら人権侵害をしてもよい」という感覚は早急に正すべきだが、そういうことをする人の心の底には、他を貶めたり差別したりすることによって自分の優位を保とうとする誤った意識がある。そのため、私は、「表現の自由」「日本文化」の名の下にあらゆる角度から女性差別された嫌な経験から、「他人を差別した人が有利になることはない」ということを徹底しなければならないと考えている。
 そして、*7-1には、被差別部落の事例が掲載されているが、*7-2の外国人のケースも、「包丁購入=殺人犯」とするのは飛躍しすぎているため重傷を負った裕子さんが話せるようになってから犯人について聞くことが不可欠なのに、警察もまた孤立無援に近い外国人を差別を利用して犯人に仕立て上げることが多いわけだ。例えば、*7-3のゴビンダさんの冤罪事件は有名だが、その他にも人権侵害にあたる事件は多い。

*7-1:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/422734 (佐賀新聞 2019年9月5日) 情報社会と権利侵害、感覚が鈍っていないか
 個人情報やプライバシーをめぐってインターネットの負の側面を象徴するような出来事が続く。就職情報サイト「リクナビ」の運営会社は学生の閲覧履歴を基に内定辞退率を予測し、個人を特定する形で企業に販売していた。常磐自動車道でのあおり運転事件で無関係の女性が「同乗者」と名指しされ、実名と写真がさらされた。就職活動に関わる情報は学生の人生を左右しうる。それが本人も知らない間に採用側に提供される。事件のたび虚実ない交ぜの情報がネット上で飛び交い、平穏な日常を送っていたら突然、デマ情報で「犯罪者」扱いされる。企業しかり、個人しかり。個人データや情報、名誉権に対する意識の希薄さを浮き彫りにする。身近なところで気になっていることがある。今年3月、被差別部落(同和地区)の地名や戸数、人口などを掲載した『全国部落調査』の復刻版が、ネットのフリーマーケット「メルカリ」に佐賀県内から出品されていた件だ。『全国部落調査』は1936年、政府の外郭団体が融和事業を進めるため作成した報告書で、70年代、企業や調査会社が就職や結婚の際の身元調査のために購入し、社会問題となった『部落地名総鑑』の原本とされる。それが2016年、神奈川県の出版社が復刻版発行をネットで予告し、出版は差し止め処分が出たが、ネット上でダウンロードできた。出品物はデータを個人で印刷したとみられ、約200ページ、売価3500円で、行政関係者が気づいた時は既に3冊が売れていた。出自をめぐる差別は普段は見えないが、就職や結婚など人生の節目に出現する。そして人を排除し、引き裂く。購入者は一体何のために買ったのか。出品者はコトの重大性を認識しているのか。そんな資料が公然と出回っている現実は、長きにわたる部落差別撤廃の取り組みの内実を問う。同様に、差別をあおる行為は特定の国の人々やマイノリティーに対して顕著だ。国際社会での日本の経済力が低下し、格差が拡大する中、雇用や社会保障への不安と不満が募っていることが関係するのか。いら立ちが社会的弱者に向かい、それがネットという匿名性の空間に噴出している。インターネットの普及でさまざまな情報が瞬時に手に入るようになり、個人が自由に情報発信できる時代になった。ただ、利便性ゆえ、社会規範を逸脱した行為や権利侵害を誘発しやすい。一度ネット上で広がれば長期間残り、不特定多数の目に触れるという点で、影響は大きく、深刻だ。デマ情報問題では女性が投稿者の法的責任を追及する方針だが、情報の洪水の中で、こうした権利侵害行為への感覚が鈍っていないか。自戒したい。

*7-2:https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190903-00000061-asahi-soci (朝日新聞 2019/9/3) 逮捕のベトナム人実習生、容疑を否認 包丁購入は認める
 茨城県八千代町の住宅で8月24日、大里功さん(76)が殺害され、妻の裕子さん(73)が刺されて重傷を負った事件で、裕子さんに対する殺人未遂容疑で逮捕されたベトナム国籍の農業実習生グエン・ディン・ハイ容疑者(21)が「現場に行っておらず、刺してもいない」と容疑を否認していることが3日、捜査関係者への取材でわかった。茨城県警は同日、ハイ容疑者を水戸地検に送検した。捜査関係者によると、ハイ容疑者は容疑を否認する一方で、事件前日の午後5時ごろ、近くのホームセンターで包丁を購入したことは認めている。購入したのは、現場に落ちていた凶器とみられる包丁と同じ型のものだったという。県警は、同店の防犯カメラの映像などからハイ容疑者を特定したという。県警によると、ハイ容疑者は農業実習生として昨年11月から1年間の期限で在留しており、大里さん宅から約2キロの宿舎に他の実習生らと住んでいた。大里さん宅近くの畑で野菜を栽培するなどしていたという。ただ大里さんは元会社員で、実習生の受け入れなどは確認されていないという。県警は、事前に凶器を準備した計画的犯行とみるとともに、室内が物色された形跡がないことなどから、夫婦との間に何らかのトラブルがあった可能性があるとみて調べている。

*7-3:http://www.jca.apc.org/~grillo/ (ウイズダムアイズ 2019.9.5) 外国人冤罪事件から日本が見える
 ウイズダムアイズは真実を見通す眼です。私たちが裁判官に期待したい眼です。
●ゴビンダさん冤罪事件
 1997年3月、東京都渋谷区で一人の日本人女性が殺される事件が発生しました。
間もなく、近くに住んでいたネパール人のゴビンダ・プラサド・マイナリさんが逮捕されました。一審無罪、それにも関わらず勾留が続き、新しい証拠調べもないままに2000年12月高裁での逆転有罪・・・と異様な経過をたどる事となりました。
●ロザールさん冤罪事件
 1997年11月、フィリピン人女性マナリリ・ビリヤヌエバ・ロザールさんは、恋人と同居していたアパートのベッドで恋人が刺されているのを発見しました。ロザールさんはすぐにY病院に駆け込み、助けを呼びました。救急隊員は、硬直の状況等を多少確認しただけで警察に通報しました。その直後、ロザールさんは松戸署に連行され、その後逮捕状もないまま拘束され、二度と釈放されませんでした。 
●トクナガさん冤罪事件
 2000年6月27日長野県警豊科署は、3歳の長女に暴行を加え死亡させたとして傷害致死の疑いで、同県穂高町穂高に住む日系ブラジル人の工員トクナガ・ロベルト・ヒデオ・デ・フレイタス容疑者(23)を逮捕しました。トクナガさんの逮捕容疑は同年6月25日ごろ、長女のマユミちゃんが自分になつかないことに腹を立て、全身を殴るけるなどの暴行を加え死に至らしめたというもの。
公判では一貫して「暴行したのは当時の妻」と無罪を主張。一審長野地裁では無罪判決を受けました。しかしその後も「無罪勾留」が続き、東京高裁は2002年6月8日、1審無罪判決を破棄し、懲役5年を言い渡した。弁護人は閉廷後、「控訴審は、当時を知る元妻らを証人として出廷させず、事件について真摯(しんし)な検討を加えたとは言い難い」としています。
●姫路冤罪事件(ジャスティスさん冤罪事件)
 兵庫県姫路市2001年6月19日、市内の花田郵便局に、目出し帽をかぶった2人組の強盗が入り、約2200万円が奪取されました。その犯人とされたのが、ナイジェリア人のジャスティスさん。この事件については担当の池田弁護士のサイトがくわしいです。
●ニック・ベイカーさん冤罪事件
 2002年にサッカーワールドカップを見に日本にやってきたイギリス人のベイカーさんが成田空港で麻薬の不法所持で逮捕された事件。ベイカーさんはプルーニエという男にだまされて鞄を持たされたと主張しましたが、日本の警察はこのプルーニエを調べもしないで出国させました。ところがその後、このプルーニエがベルギーで、他人をだまして麻薬を運ばせようとした容疑で逮捕されました。このことを証拠として申請した弁護側の要求を蹴って、東京地裁は2003年6月にベイカー氏に懲役14年の判決をくだしました。2005年10月、控訴審でも有罪となり、上告はせずに服役した。
●モラガさん無罪勾留事件
 チリ国籍のモラガさんは2001年8月、知人と共謀し東京都内と諏訪市で窃盗を働いた容疑で逮捕された。2003年5月29日、諏訪簡裁で無罪判決。検察控訴の後、8月29日、東京高裁の決定により再勾留されました。2004年年8月17日逆転有罪。最高裁第二小法廷(滝井繁男裁判長)は2004年12月14日付けで上告を棄却する決定をし、懲役二年が確定した。11月上旬に上告趣意書を提出し、わずか一カ月余りで最高裁は十分な審理をしたとは思えない。一審の無罪判決が軽んじられている決定である。

<高齢者差別による活動制限は人権侵害である>
PS(2019/9/7追加):すべてのメディアで長時間に渡って繰り返し繰り返し高齢ドライバーによる交通事故が報道された後、*8-1のように、九州の240自治体にアンケートで尋ねた結果、18自治体が「①免許更新を厳格化すべき」とし、「②65歳以上のサポカー購入に1人1台に3万円補助している」「③後付け装置の購入を支援している」とする自治体もあり、「④交付税措置を検討してほしい」とする自治体もあったそうだ。政府は「⑤75歳以上を対象にサポカーだけを運転できる限定免許を導入する方針」としているが、①は、“高齢者”だけを一律に厳格化すれば、老化に程度の差がある高齢者に対して差別になり、②も65歳以上の全員を運動機能の衰えた高齢者とすることには無理がある。そのため、私は高齢か否か、故意か過失かを問わず、自動車運転が事故に繋がらないように運転支援車の普及を義務化しつつ、既に所有されている自動車にも国の補助をつけて車検時に運転支援プログラムを導入するのがよいと考える。
 なお、*8-2のように、「車の運転をやめて移動手段を失った高齢者は、要介護状態になるリスクが2.2倍になる」という研究結果が日本疫学会誌に発表されたが、これは当たり前のことで、要介護状態になれば支える側から支えられる側になるのである。当たり前である理由は、筋力と同様に頭脳も使わなければ衰えるため、頭脳がつかさどる言語能力・思考力・健康維持力なども落ちるからで、事故のリスクだけが人体への悪影響ではないことを考慮すべきだ。

*8-1:https://www.nishinippon.co.jp/item/n/539398/ (西日本新聞 2019/8/31) 高齢事故防止 広がる助成 九州5市町導入、26自治体検討
 高齢ドライバーによる交通事故が相次ぐ中、事故防止につながる「安全運転サポート車」(サポカー)や後付け安全装置への関心が高まっている。西日本新聞は九州7県の全自治体にアンケートを行い、5市町がサポカーや後付け装置購入に助成していることが分かった。26自治体は検討中とした。公共交通が乏しい地域を抱える自治体は、助成の必要性は感じているものの「財源がない」と国の財政支援を求めた。18自治体が「免許更新を厳格化するべきだ」と回答した。アンケートは九州の7県と市町村の計240自治体に送付、今月までに218自治体(回収率90・8%)が回答した。助成制度の有無や検討状況、国への要望などを聞いた。助成制度がある5市町のうち、福岡県苅田町は65歳以上がペダルの踏み間違い加速抑制装置などを備えたサポカー購入時、1人1台に限り3万円を補助する。同県うきは市、熊本県玉名市、大分県日出町は、後付け装置の購入を支援。玉名市は地元企業が開発した踏み間違い防止ペダルの取り付けに5万円まで出す。宮崎県新富町はサポカーと後付け装置の購入両方に3万~5万円を補助する。サポカーと後付け装置の両方の助成を検討するのは13自治体。ほかに13自治体が後付け装置の補助を検討している。制度のない自治体のうち、少なくとも50自治体が「交付税措置を検討してほしい」(熊本県八代市)などと回答した。政府は75歳以上を対象にサポカーだけ運転できる「限定免許」を導入する方針で、福岡県須恵町など8自治体が支持した。10自治体は高齢者を中心に免許更新の厳格化に言及した。同県柳川市は「急発進防止機能装置の義務化や更新時の技能指導が必要」、熊本県甲佐町は「実技試験の導入」を提案した。独自の取り組みをしている自治体もある。宮崎県都城市は4月から65歳以上を対象に自動車学校での実技訓練やサポカーの試乗を始めた。同県美郷町は10月、ドライバーが自ら運転する時間や場所の条件を申告する「補償運転」を始める。免許返納者らの「足」確保を手助けする自治体も多かった。長崎県西海市は4月から事前予約制の乗合ワゴンを運行。高齢者へタクシー券を配布する自治体も多い。

*8-2:https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190905-00000137-kyodonews-soci (KYODO 2019/9/5) 高齢者運転中止、要介護リスク倍 外出減、健康に悪影響か
 車の運転をやめて自由に移動する手段を失った高齢者は、運転を続けている人と比べ、要介護状態になるリスクが2.2倍になるとの研究結果を、筑波大の市川政雄教授(社会医学)らのチームが5日までに日本疫学会誌に発表した。運転をやめたが公共交通機関や自転車を使って外出している人は、リスクが1.7倍だった。高齢者の事故が問題になり、免許返納を勧めるなど運転をやめるよう促す機運が高まっている。だが市川教授は「運転をやめると閉じこもりがちになり、健康に悪いのではないか。事故の危険だけを考えるのではなくバス路線を維持・充実させるなど活動的な生活を送る支援も必要だ」と話す。

| 年金・社会保障::2019.7~ | 11:03 PM | comments (x) | trackback (x) |
2019.8.19 日本の農林漁業の今後は? ← 工夫次第だろう (2019年8月20、21、24、25、29、30日に追加あり)
  

(図の説明:日本の農業の代表がワインだとは思わないが、地球温暖化の影響で葡萄の産地が山梨県から長野県の高原にまで広がり、現在、長野県塩尻市では各種の葡萄ワインのほかリンゴ、桃のワインもできている。そのほか、各地でミカンやラフランスのワイン、桃のスパークリングワインなどもできており、私は、輸出するならリンゴ・ミカン・ラフランスのワインや桃のスパークリングワインが、ONLY ONEで有利な競争ができるのではないかと思う)

(1)食料自給率の低下と生産力の弱まり
1)食料自給率低下の理由
 日本における2018年度のカロリーベースの食料自給率は、*1-1-1・*1-1-2・*1-1-3・のように、37%となり大冷害の1993年度と並ぶ過去最低になった。しかし、今回は、災害による低下ではなく、1965年度には73%あった食料自給率が一貫して下がり続けてきた構造的な問題であり、1993年度よりも深刻である。

 一方、日本政府は2025年度に食料自給率を45%に高めるという低い目標を掲げているが、これも達成できそうにない。また、カロリーベースを目標とすることに疑問の声は多いが、価格が高くなると生産量が増えたように見える価格ベースよりは参考になる。そして、人口減少しつつある現在では、食料自給率100%を達成する目標を立てても少しもおかしくないのだ。なお、国内飼育の肉類も輸入飼料で育てると、輸入飼料が入らなくなれば国内飼育もできなくなるため、「自給」に入れないわけである。

 長期的な食料自給率低下の原因は、①農業経営体と担い手の減少 ②担い手の高齢化による離農 ③人手不足による新規就農者の減少 ③耕地面積の急減 ④輸入品との競争 などによる国内生産力の弱まりだそうだ。

 しかし、*1-1-2のように、今回の食料自給率低下は、北海道の夏の低温と日照不足による小麦・大豆の生産落ち込みが主因で、これに牛肉・乳製品の輸入増加に伴う国内生産の伸び悩みが重なったのだそうで、TPPとEUとのEPAの影響が出てくるのはこれからだが、これに加えてトランプ米大統領が農産物の巨額購入を要求しており、ここにも米国との安全保障条約の見返りに日本の長期的安全保障に関わる農業を犠牲にする構図が見えるのである。

2)日本の農業政策失敗の原因は?
 食料自給率が過去最低になったことから、*1-1-3・*1-1-4に、農業の持続可能性を目指すべきことや、食料自給率を上昇に転じる道筋を示すべきことが書かれている。

 食料自給率が過去最低になった理由の一つには、地球温暖化を背景とする2018年度の天候不順による影響もあるが、地球温暖化は既に織り込んで対応しなければならない時である。また、農業への若者の参入が少ないため、担い手不足や高齢化が止まらないのは、他産業と比較して①農業所得が低かったり ②所得の不安定性が高かったり ③農業に誇りを持てなかったり ④農業に従事すると仕事以外での制約が増えたりする からだと思われる。

 このうち、①②③は、地形や気候を活かした稼げる農業を企画してこなかったことに原因がある。そして、それができなかった理由は、戦後の食料難時代を過ぎてコメ離れが進み、肉を多く食べるような食生活の変化があっても、中央政府が全国一律に米作奨励の補助金を出して他の作物を不利に扱ってきたからだ。これによって、TPPやEUとのEPAの発効で安い農産物が輸入されると、日本の農業は敗退することになってしまったが、“中山間地”という地形が原因でないことは、スイスやコルシカ島の農業が敗退していないことで明らかである。

 しかし、それぞれの地形や気候を活かした稼げる農業経営に移行するためには、中央政府が日本全国の農業を一律に企画することに限界があるのだろう。そのため、(個の農家毎では規模が小さすぎるものの)地方自治体くらいが、どういう農業を行って魅力的で稼げる農業を作り、海外と自由貿易しても勝てるようにするかの基本的デザインをすべきだと考える。

 なお、④については、*2-5-2に、「家族農業守れる農政を」と書かれているが、「家族農業が基本」とする現在の農村文化は、①配偶者との結婚生活 ②両親を含めた生活形態 ③配偶者の職業 等を制限してしまうため、それでも農業をやりたいという人が等比級数的に減る。それを解決するには、農業経営を法人化して多様な就労形態や生活形態に対応できるようにし、報酬や年金に関する心配を減らすのがよいだろう。

 また、現在は、有無を言わせないグローバル競争の時代になっているため、安全保障や外交の代償として農業やその他の産業を使っても日本経済が成立する時代ではなくなり、食料確保のためには食糧自給率アップも不可欠であることを、経産省はじめ中央政府は再認識すべきだ。また、「もうかる農業」を作るツールは、農地集約による大規模化や輸出だけでなく無数に存在するため、国内や諸外国の先進ケースを調査しながら地域全体で企画するのがよいと思われる。

 このような中、「小規模農家の切り捨て」に関しては、小規模だからといって甘える時代も早く終わるようにすべきで、農地の「洪水防止」「景観保持」等の機能については、それに見合った適切な金額を環境維持費用として国の予算から支出するのが妥当だ。

 なお、担い手不足解消のため、省力化の先端技術を活用したり、農業分野への門戸を外国人労働者に広げたりしたことは重要だ。JA全中は、*1-3のように、政府の2020年度の農業関係予算要請で①食料安全保障の確立に向けた万全な予算の確保 ②新規就農者の育成 ③スマート農業支援の拡充 ④中小経営を含めた青果や畜産の生産基盤強化策 ⑤輸出の拡大 ⑥農泊・農福連携への支援 ⑦鳥獣被害の減少に向けた十分な対策 ⑧災害に強い農業づくりに向けた支援の拡充 などの具体的な要請をしている。また、公認会計士監査への移行に伴ってJAに実質的負担増がないよう支援も求めるそうだが、公認会計士は他産業の経営も多く見てきているため、経営に関するアドバイスを聞けば有益で、単なるコスト増ではなく使いようなのだ。

(2)G20農相宣言について
 日本が議長国を務めるG20農相会合で、*1-2のように、世界人口と食料需要増に対応するため、農業の生産性向上や持続可能性をどう確保していくかを議論して「G20農相宣言」を採択するそうだ。

 しかし、吉川農相が「(特に中国、韓国とは)フクイチ事故に伴う放射能汚染による日本産食品の輸入規制の緩和・撤廃を中心に話したい」と強調したのは、歓迎レセプションで福島県産などの食材を提供したからといって安全だという証明にはならない上、中国・韓国だけを名指しするのもおかしいため、むしろ日本政府の意識の低さを示すことになりそうだ。

(3)農業経営と人材
1)日本の人材不足
 *2-1のように、離農者の農地を引き受けて地域の農地を守りつつ、規模を拡大してきた担い手の労働力が離農者に比べて不足し、今では限界を迎えつつあるそうだ。例えば、両親と3人で農事組合法人を経営して45haを耕作する永須さん(38)は、平場で営農条件は悪くないものの、繁忙期には地域の臨時雇用で人手を賄っていたのに、地域の高齢化でその確保も難しくなり、両親が60代後半となり、マンパワー不足でこれ以上は引き受けられないのだそうだ。

 また、JA全青協の副会長を務める杉山さんは、急傾斜地で、両親や弟とミカン2haなどを経営しているが、人手確保や新たな投資に加えて、元の持ち主との仕立て方も違い、老木の改植など果樹特有の課題もあるため、自身は高齢農家に農地の引き受けを求められても、やむなく断ることがあるそうだ。

 このように、2018年の農業就業人口は「基幹的農業従事者」「雇用労働力」とも、*2-1のように、175万人と1998年の389万人から55%減少し、全国の農業経営体数も、*2-2のように、120万を割って過去10年で最少規模となり、今後は多様な担い手をどう育成するかが問われているとのことである。

 また、*2-3-1のように、若手新規就農者数が2万人を割り込んだのは、他産業との人材獲得競争が激しく雇用就農者が減ったことが影響したからで、このような中、*2-3-2のように、新規就農者を支援する国の「農業次世代人材投資事業」の2019年度予算が、年齢を引き上げて対象が拡大されたにもかかわらず減額されたのは、自治体にとって頭の痛いことである。

 しかし、全体としては、既にある農地をどうやって活かすかが問われているのであり、食糧不足で農地も少なかった時代と比べれば、解決が容易な悩みと言える。

2)一般企業の農業参入
 一般企業の農業参入条件が緩和された農地法改正から10年を迎え、参入した法人数は全国で3000社を超えて、農家の高齢化や跡継ぎ不足で耕作放棄地が増える中、*2-5-1のように、有力企業も動き出しているそうだ。

 イオンは、借地面積約350haと国内最大規模を誇り、有機野菜を栽培する認定農場も運営しており、人間の経験と先端技術を融合した効率的な生産を行って、2025年度までに借地面積を1000haに広げる計画だそうだ。食品小売業者が農業生産法人を作って農業に進出するのは理にかなっており、ブランド化も容易だろう。

 ただ、植物工場の収支状況は全体の49%が赤字なのも尤もで、安全で栄養豊富な有機野菜が求められるのに、人工光線と液肥のみで育った植物工場の野菜に価値がつくわけはなさそうだ。

3)外国人材の受け入れ
 日本政府は、*2-4-1のように、外国人労働者の受け入れを拡大する改正出入国管理法を成立させ、2019年4月から新たな特定技能制度による受け入れを始めた。新制度の下で働く場合、耕種か畜産の農業技能測定試験と日本語能力の試験を受ける必要はあるが、約3年の技能実習を修了していれば、試験は免除されるそうだ。

 農業分野では、受け入れ元の直接雇用に加えて、派遣形態の雇用も認めるため、1)2)の人材不足を補うことができる筈だが、住居の確保やさまざまな支援は必要になる。そのため、*2-4-2のように、福岡県は「福岡県外国人材受入対策協議会」を発足させ、生活・労働情報・課題などを共有して受け入れ環境の向上を図るそうだ。

 このような中、*2-4-3のように、日本に入国して強制退去処分を受けたナイジェリア出身の外国人が収容中の施設内で死亡し、大村市の教会を訪れたクルド人の男性(30)は、2カ月間、仮放免の許可を求めて食事を拒むハンガーストライキをして、2年近く収容されていた大村入国管理センターから「仮放免」が認められたのだそうだ。

 いずれも、難民や移民の人権を無視し、不法滞在として長期に渡って無為に拘束し、施設で収容中に死亡した外国人が15人(うち自殺者5人)もいるそうで、これは日本国憲法違反であると同時に、もったいないことをしていると思う。

<食料自給率低下と生産力の弱まり>
*1-1-1:https://www.iwate-np.co.jp/article/2019/8/12/62220 (岩手日報 2019.8.12) 食料自給率最低 生産力の弱まりを映す
 日本の食料自給率が、再び過去最低となった。2018年度のカロリーベースは前年度より1ポイント低い37%で、1993年度と並ぶ。93年度といえば「平成の大冷害」で、米が記録的な凶作に見舞われた。青立ちのまま実らぬ稲が今も語り草になる。その年と同じとは、いかに低い水準かが分かる。自給率低下は、天候不順により小麦や大豆の生産が落ち込んだことが大きい。特に主産地である北海道の生産減が響く。だが、天候だけに原因は求められない。65年度に73%あった食料自給率は、ほぼ一貫して下がり続けている。9年前に40%を割り込んだ後は、30%台後半のままだ。もはや構造的な問題と言えよう。政府は25年度に45%に高める目標を掲げるが、一段と遠のいた。米離れに加えて安価な輸入農産物が増え続ける現状のままでは、達成は極めて困難とみられる。もっとも、食料の重さを熱量換算したカロリーベースを目標とすることには疑問の声が多い。熱量の高い米の比重が大きく、野菜はほとんど評価されないからだ。消費量が増えている肉類は、国内の飼育でも、輸入飼料で育てられると「自給」と見なされない難点もある。このためカロリーベース目標には風当たりが強い。だが、飼料が国産・輸入のいずれかに関係なく計算しても、自給率は46%にとどまる。食料の半分以上を輸入に頼る構図は変わらない。やはり自給率の低下は、国内生産力の弱まりを映すと見るべきだろう。そこから目を背けずに、対策を打たなければならない。生産力が弱まる一因に、農業を担う人の減少が挙げられる。全国の農業経営体数は120万を割り、この10年で50万も少なくなった。耕地面積も急減している。現場では担い手の高齢化が著しい。とりわけ輸入品との競争に直面する畜産・酪農では、やめていく人が増えた。そうなると飼料用の米作りも持続が難しくなる。岩手の17年度の食料自給率は101%で、2ポイント落ちた。100を超えて農業県の面目を保つものの、下落傾向は続く。やはり生産力の弱まりが背景にあるとみられる。現代日本で食料難は想像もできないが、最新の国連推計で30年後、気候変動により穀物価格が最大23%上がると公表された。国家間で食料の争奪が激しくなると見込まれ、輸入頼みは危うい。自給率を上げるには、農地の保全と活用が不可欠だ。中山間地にも農業を営む人がいる必要がある。農業の場合は産業政策とともに、地域を守る政策の拡充を望みたい。

*1-1-2:https://www.hokkaido-np.co.jp/article/335650 (北海道新聞社説 2019/8/18) 食料自給率最低 政権の危機感が足りぬ
 農林水産省が発表した2018年度の食料自給率は、カロリーベースで前年度比1ポイント低下の37%に落ち込んだ。記録的冷夏でコメが凶作となった1993年度と並ぶ過去最低の数値である。自給率が40%を下回るのは、これで9年連続となる。25年度に45%に引き上げるという国家目標は遠のくばかりだ。長期低迷の原因は、農業の生産基盤が弱体化していることに尽きる。高齢化による離農が増え、人手不足のあおりで新規就農者は減少している。これでは国民の食を守ることはできない。政府は農業を安心して続けられる環境整備と、担い手を増やす施策に力を入れるべきだ。今回の自給率低下は、北海道の夏の低温と日照不足により小麦と大豆の生産が大幅に落ち込んだことが主因となった。これに牛肉や乳製品の輸入増加に伴う国内生産の伸び悩みが重なった。ただ、昨年末の環太平洋連携協定(TPP)、今年2月の欧州連合(EU)との経済連携協定(EPA)の発効の影響が出てくるのはこれからである。加えてトランプ米大統領も安倍晋三首相に農産物の巨額購入を直接要求している。輸入農産物の攻勢が本格化する19年度以降、自給率がさらに下落する懸念は拭えない。米国や欧州主要国の自給率は最低でも60%を上回っており、40%未満が常態化している日本の食料事情は極めて深刻である。なのに、安倍政権には全く危機感が感じられない。それどころか、自らの農業政策について、生産農業所得が3年連続で増加しているデータを挙げて「アベノミクスの成果」と自画自賛している。生産農業所得は災害や不作による農作物価格の上昇にも左右される。増えたからといって、農業が強くなった証拠にはならない。昨年までの5年間で国内の耕地面積は約10万ヘクタール、農業経営体は約20万件も減っている。49歳以下の若手就農者数も昨年、5年ぶりに2万人を割り込んだ。政権に都合の良い数値をアピールするのではなく、農地と担い手の減少という現実を直視し、歯止めをかける政策こそが必要だ。国連の気候変動に関する政府間パネルは今月、干ばつの増加などで50年の穀物価格が最大23%上昇する恐れがあると警告した。世界的な食糧難が予測される中で、日本が安易な輸入頼みを続けている場合ではないはずである。

*1-1-3:https://www.chugoku-np.co.jp/column/article/article.php?comment_id=562805&comment_sub_id=0&category_id=142 (中国新聞 2019/8/18) 食料自給率過去最低 持続可能な「農」目指せ
 2018年度の食料自給率はカロリーベースで前年度より1ポイント低い37%だった。コメの記録的な凶作に見舞われた1993年度と並び過去最低となった。地球温暖化を背景とする18年度の天候不順で、北海道などで穀物生産が減ったのが響いた。とはいえ、この10年、自給率は下がり続けており、危機的と言わざるを得ない。今後も上昇は困難だ。というのも農業の担い手不足や高齢化が止まらない上、環太平洋連携協定(TPP)などの発効で安い農産物輸入が増えるからだ。政府が目標とする25年度の45%達成には赤信号がともった。必要な食料を自国内で賄う「食料安全保障」は破綻していると言えよう。農林水産物の増産や担い手づくりにつながる、持続可能な「農」への抜本的対策を政府は打ち出すべきだ。18年度の国内生産量を見ると大豆が16・6%落ち込み、小麦は15・7%減った。悪天候が理由だが、自給率は09年度の40%から徐々に下がり、近年は30%後半を推移している。コメ離れが進み、輸入肉などを多く食べる食生活への変化が主な理由だ。気になるのは、深刻さを増す生産現場の担い手不足だ。農業就業人口は約168万人と10年前に比べ4割減った。うち7割が65歳以上で高齢化も著しい。新規就農も進まない。49歳以下の若手就農者は18年に約1万9千人と5年ぶりに2万人を割った。あおりで耕地面積も約440万ヘクタールと、10年前より約20万ヘクタール少なくなっている。一方、海外からの農産物は増える。TPPに加え、欧州連合(EU)との経済連携協定(EPA)が昨年度相次いで発効した。輸入の肉類や乳製品が国内に大量に流れ込んでいる。来週、米国との貿易交渉が再開される。結果次第では、農産物輸入が増える。自動車など日本の工業製品を守るためとはいえ、これ以上、国内農業を犠牲にすることは許されない。世界では自給率上昇に力を入れる国が多い。13年には米国とフランスが100%を超え、ドイツ95%、英国63%と、日本は大きく水をあけられている。国家間の食料争奪戦は今後、激しさを増す。人口増は止まらず温暖化による干ばつや豪雨が増えれば、農産物の生産量が減りかねない。食料確保のため、自給率アップは不可欠である。政府は4月、担い手不足解消のため、農業分野への門戸を外国人労働者に広げた。だが在留期間は5年と短く応急措置にすぎない。省力化のためロボット技術や人工知能(AI)など先端技術の活用も必要で政府の対応が急がれる。安倍晋三首相は1月の施政方針演説で「強い農業」推進を訴えた。農地集約で大規模農家をつくり農産物輸出を増やす「もうかる農業」の重視である。それは、小規模農家の切り捨てにならないか。中国地方は島や山が多く、農地の大規模化や大型機械の導入は進めにくい。棚田は、食料生産に加え、洪水防止や景観保持など多面的な役割を果たしている。それを維持しているのが中山間地域の農家である。忘れてはなるまい。私たちも消費者として農林水産業への理解を深め、「食」という恵みを生み出す農山漁村の担い手を支援すべきである。

*1-1-4:https://www.niigata-nippo.co.jp/opinion/editorial/20190816489029.html (新潟日報社説 2019年8月16日) 食料自給率 上昇に転じる道筋を示せ
 このままでは日本の食料安全保障が揺らぐ恐れがある。政府はもっと危機感を持って、食料自給率の上昇へ向けた取り組みを強化しなければならない。2018年度の食料自給率がカロリーベースで前年度より1ポイント減の37%になった。記録的なコメの凶作となった1993年度と並ぶ最低の水準だ。65年度は73%あったが、コメ離れや肉を多く食べる食生活の変化などで漸減し、2010年度以降は40%を切っている。国の「食料・農業・農村基本計画」では、25年度までに自給率を45%にする目標を掲げている。計画ができたのは00年だが、一向に改善できずにきた政府の責任は重い。気掛かりなのは、18年度が過去最低となった要因として、農林水産省が天候不順で小麦や大豆の国内生産量が大きく減ったことを挙げている点だ。地球温暖化により世界各地で干ばつや豪雨などが増えている。国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は、50年には穀物価格が最大23%上がり、食料不足や飢餓のリスクが高まるとの報告書をまとめた。こうした中で、日本の自給率は小麦が12%、大豆は21%にとどまっている。これらの輸入は米国、カナダ、オーストラリアなどに頼っている。輸出国が異常気象で作物が凶作となった場合、これまで通り安定的に供給できるのか。食料安全保障に不安を覚える。来年3月に新たな「食料・農業・農村基本計画」を策定する国は、目標との乖離(かいり)を検証すると同時に、将来の食料危機も見込んだ対策を示してほしい。農水省は45%の目標達成に向けて主要品目ごとの生産目標も示している。コメは100%達成しているが、小麦は18年度実績より18万トン増の95万トン、大豆も11万トン増の32万トンに引き上げねばならない。国内の生産を強化するには、担い手の減少や耕作放棄地の増加といった課題の解決が不可欠だ。国も対策に取り組んできたが、効果は上がっていない。担い手は10年には全国で約205万人いたが、18年は60万人減の145万人になった。高齢化も急速に進み、集落の維持が困難になっている地域も増えている。本県も同様の傾向だ。集落や地域農業も含めたさまざまな観点から対策を強化することが欠かせない。農作業の負担軽減や生産性の向上につなげるため、ロボットや人工知能(AI)などの最新技術を活用する「スマート農業」の実用化を急ぐことも柱の一つだろう。先の参院選では、野党も高い自給率の目標数値を公約に掲げていた。与野党問わず、実現に向けて知恵を出してほしい。都道府県別の自給率では、本県はコメの不作の影響で前年度より9ポイント減の103%だった。安定した収量と品質の確保に向けて、県や農業団体などは品種の改良やきめ細かな技術指導などに最大限の努力を図ってもらいたい。

*1-2:https://www.agrinews.co.jp/p47616.html (日本農業新聞 2019年5月11日) きょうからG20農相会合 持続可能性で議論 日本産輸入規制撤廃も
 日本が議長国を務める20カ国・地域(G20)農相会合が11日、新潟市で開幕する。12日までの日程。世界の人口と食料需要の増加に対応するため、農業の生産性向上や持続可能性をどう確保していくかを議論し、「G20農相宣言」を採択する。吉川貴盛農相は10日の閣議後会見で、各国閣僚との会談を通じ、中国や韓国など日本産食品の輸入を規制している国に対して、早期の規制緩和、撤廃を求めていくとした。6月に大阪市で開かれるG20首脳会議(サミット)に向けた一連の閣僚会合の第1弾。吉川農相は閣議後会見で、農業・食品分野の持続可能性の実現に向けて、各国の優良事例を集め、有効策を見いだす考えを示した。 また、東京電力福島第1原子力発電所事故に伴う、日本産食品の輸入規制の緩和、撤廃に向け「特に中国、韓国とは、そのようなこと(規制緩和、撤廃)を中心に話したい」と強調。11日の歓迎レセプションでは新潟県や農相の地元の北海道に加え、岩手、宮城、福島各県の食材も提供。日本産の安全性をアピールする。期間中は、米国のパーデュー農務長官との会談も予定されている。日米貿易協定交渉が本格化する中、パーデュー氏とは「農業全般の諸問題について率直に意見交換したい」と述べた。

*1-3:https://www.agrinews.co.jp/p48137.html (日本農業新聞 2019年7月7日) 食料安保を最重視 人材・スマート化拡充 全中 予算要請へ
 JA全中は、政府の2020年度農業関係予算への要請内容を決めた。食料安全保障の確立に向けた万全な予算の確保を最重視。新規就農者の育成やスマート農業の支援の拡充、中小経営を含めた青果や畜産の生産基盤強化策などを求める。参院選後、8月末の概算要求を前に政府・与党への働き掛けを強める。20年度は新たな食料・農業・農村基本計画の実践初年度のため、全中は同計画とともに予算でも食料安保の重視を訴える。農業者の急速な減少・高齢化による担い手や人手の不足を受け、19年度予算で減額された農業次世代人材投資事業などの充実を要請。生産性向上や労働力不足の解消に向け、スマート農業の導入支援の拡充も求める。多くの割合を占める中小規模・家族経営も含めて生産基盤を強化するため、野菜・果樹対策では産地パワーアップ事業や強い農業・担い手づくり総合支援交付金とともに、省力樹形への改植支援などを求める。畜産・酪農対策では、畜産クラスター事業に加え、キャトルステーションなど外部支援組織や経営継承への総合的な支援を要請。豚コレラ終息に向けた防疫態勢や、水際対策の強化なども求める。19年産米の需給緩和が懸念される中、水田農業対策では、水田活用の直接支払交付金をはじめ、水田フル活用に関する交付体系や予算の恒久的な確保、産地交付金の運用見直しなどを要請する。農地中間管理機構(農地集積バンク)の見直しを受け、地域の話し合いの活性化に向けた支援の拡充なども求める。農業・農村への理解の促進や、国産農畜産物の消費拡大に向けた官民の取り組みの強化も訴える。輸出の拡大や農泊、農福連携への支援の他、鳥獣被害の減少に向けた十分な対策、災害に強い農業づくりに向けた支援の拡充なども要請する。JAグループの自己改革をさらに後押しするため、公認会計士監査への移行に伴うJAの実質的な負担増がないよう、引き続き支援も求める。

<農業経営と人材>
*2-1:https://www.agrinews.co.jp/p48103.html (日本農業新聞 2019年7月3日) [ゆらぐ基 持続への危機](3) 担い手 規模拡大 限界 重い負担 経営リスク
 「一面の水田を前にこれ以上の規模拡大は難しい」と話す永須さん(秋田県横手市で)。離農者の農地を担い手が引き受け、地域の農地を守りつつ、規模を拡大する。そんなサイクルが今、限界を迎えつつある。離農者に比べて担い手や労働力が不足し、一定以上の規模拡大には経営リスクが付きまとう。
●平場地域でも
 「頼まれても、これ以上は増やせない」。2600ヘクタール超の水田が広がる秋田県横手市平鹿町。高齢農家の離農で「農地を引き受けてほしい」との声が毎年のように上がるが、水稲「あきたこまち」など、地域有数の規模の45ヘクタールを経営する永須巧さん(38)は難色を示す。平場地域で営農条件は悪くないにもかかわらず、なぜか──。最大の要因は「マンパワーが足りない」ことだ。永須さんは両親と3人で農事組合法人を経営。田植えや収穫は、地域内からの臨時雇用で人手を賄う。だが、住民の高齢化でその確保が難しくなり、両親も60代後半となった。その分、負担は永須さんに集中する。今年は田植えに1カ月以上を要し、作業中に「もう限界」と感じた。繁閑の差が大きい水稲は通年で人を雇うのが難しい。冬の作業確保で園芸作物を導入するにも、豪雪地帯の同市ではハウスなどに大きな投資が必要だ。これ以上の水稲の拡大も、現在の農機や施設では対応しきれない。自宅近くに農地を集積しているが、分散して非効率となる恐れもある。米価が不透明な中、「リスクを背負えない」と経営面からも二の足を踏む。地元のJA秋田ふるさと平鹿営農センターによると、農機の更新などを機に離農する2、3ヘクタール規模の高齢農家が多い。20~30ヘクタール規模の担い手や集落営農組織も存在するが、作業者の不足や高齢化などの課題を抱える。農地中間管理機構(農地集積バンク)を使っても受け手がなかなか決まらない場合があるという。一方、農地を集めた担い手の病気やけがで、一度に大量の農地が宙に浮いてしまうリスクもある。同JA管内でも数年前に10ヘクタール程度を耕作していた農家が病気となり、周囲で分担したが、一部は作付けできなかったという。
●誇りだけでは
 水稲より規模拡大が難しい果樹。「新たに引き受けるには、別の農地を返さざるを得ない」と語るのは、静岡市清水区の農家、杉山祥丈さん(40)だ。全国農協青年組織協議会(JA全青協)の副会長を務める杉山さんは、急傾斜地の農地で、両親・弟とミカン2ヘクタールなどを経営。地域内でも基盤整備された農地は引き受け手があるというが、自身は高齢農家に農地の引き受けを求められても、やむなく断る場合があるという。人手の確保や新たな投資に加え、元の持ち主との仕立て方の違い、老木の改植など果樹特有の課題もあり、規模拡大のメリットは期待しにくい。「農地を荒らしたくない気持ちはあるが……」。政府は2023年までに、全農地面積の8割を担い手に集積する目標を掲げる。全青協の飯野芳彦参与は「その分、リスクや負担も集中する」と指摘。「担い手の使命感や誇りで地域の農地を維持していくにも限度がある」と話す。
●労働力 7万人不足
 18年の農業就業人口は175万人で、1998年の389万人から20年間で55%減った。このうち「基幹的農業従事者」は98年が241万人、18年が145万人で40%減った。一方、17年の新規就農者は5万5670人。49歳以下の若手は4年連続で2万人を超えたが、離農者を補うには及ばない。人口減少局面で、雇用労働力も不足。政府は農業での不足が19年度に7万人、24年度に13万人と見込む。

*2-2:https://www.agrinews.co.jp/p48314.html (日本農業新聞 2019年7月29日) 農業経営体 120万割れ 大規模でも農地減少
 全国の農業経営体数が120万を割り込み、過去10年で最少規模となったことが、農水省の調べで分かった。全体の9割以上を占める家族経営体が前年比2・7%減の115万2800に落ち込んだ。労働力不足、高齢化が深刻で生産基盤が揺らぐ実態が浮かび上がった。小規模の家族経営体の農地の受け皿だった大規模経営体の耕地面積も減少に転じ、多様な担い手をどう育成するかが問われている。農業経営体数の合計数は前年比2・6%減の118万8800。10年前の167万9100と比べると、減り幅は49万を超え、約3割の減少となっている。組織経営体のうち、農産物を生産する法人数は2万3400。前年から3%程度増えた。半面、小規模の家族経営体は減少に歯止めがかかっていない。国内の経営耕地面積353万1600ヘクタールのうち、1ヘクタール未満の経営体が占める割合は9・3%。5年前の14年は12・8%と1割を超えていたが、減少が続く。国内の経営耕地面積の半分以上となる53・3%は、10ヘクタール以上の経営体がカバーする。ただ、大規模経営が手掛けている耕地面積は今回、減少に転じた。10ヘクタール以上の経営体の耕地面積は、前年から8700ヘクタール減り、188万ヘクタールとなった。同省は「担い手への集積はある程度進んだが、新たな集積は停滞している」(経営・構造統計課)とみる。小規模農家の離農が加速し、大規模経営が農地を受け切れず、国内の経営耕地面積そのものも、約6万ヘクタール減の353万ヘクタールに縮小した。労働力の不足と高齢化も、歯止めがかかっていない。販売農家の基幹的農業従事者は140万4100人で、前年から3・2%減った。基幹的農業従事者の年齢構成を見ると、70歳以上が59万100人と全体の42%を占める。49歳以下は14万7800人にとどまり、前年と比べると2・9%減っている。雇用労働も、常雇い数は前年比1・7%減の23万6100人。20代から70歳以上まで、年齢構成に大きな偏りはなく、それぞれ10、20%台だが人数全体では増えていない。

*2-3-1:https://www.agrinews.co.jp/p48420.html (日本農業新聞 2019年8月10日) 若手就農 2万人割れ 他産業と取り合い 18年
 49歳以下の若手新規就農者数が2018年は1万9290人となり、前年から7%減り、5年ぶりに2万人を割り込んだことが9日、農水省の調べで分かった。他産業との人材獲得競争が激しさを増し、雇用就農者が減ったことが影響した。新規就農者全体は前年と同水準の5万5810人で、2年連続で5万人台にとどまった。15、16年は6万人台だった。生産基盤の再建に向け、新たな人材をどう確保するかが課題に浮かび上がった。14年以降、49歳以下の若年層は4年連続で2万人を超えていた。だが、16年から減少傾向が続いていた。就農形態別に見て、49歳以下の減少が特に目立ったのは、法人などへの雇用就農者だ。前年比11%減の7060人だった。自営農業就農者は1万人を割り、同2%減の9870人。土地や資金を独自に調達して就農した「新規参入者」は、同13%減の2360人と、軒並み減少している。減少に転じた理由について、同省は「各産業とも人手不足が深刻化し、人材獲得競争が激しさを増している」(就農・女性課)と説明。18年の有効求人倍率は1・61で、14年に1・09と1点台に乗って以降、上昇が続いており、若手が他産業に流れているとみられる。一方、全世代を含む新規就農者5万5810人は、前年から140人増。このうち、自営農業就業者は同3%増の4万2750人だった。60歳以上が2万7000人と同11%増となり、全体を押し上げた。同省は定年帰農者などの増加を要因の一つに挙げる。雇用就農者と新規参入者は、全世代を含めても前年から減少していた。雇用就農者は4年ぶりに1万人を割り込み、同7%減の9820人。15年に、統計を取り始めた06年以来初めて1万人を突破し、3年連続で1万人台を維持していたが、その傾向が途絶えた。新規参入者は3240人と、前年から11%減った。前年は増加傾向に転じていたが、再び減少傾向に戻った格好だ。
[解説] 担い手確保 具体策を
 生産基盤を再建する上で、重要な役割を果たす新規就農者が増えていない。将来を担う若年層の49歳以下の新規就農者数は2万人を切った。離農が加速する中、新たな人材をどう確保するか。具体策が求められている。14年以降、4年連続で49歳以下の新規就農者が2万人を超えていたことは、安倍晋三首相が農政改革の成果の一つとして強調してきた。それだけに今回の2万人割れを、安倍政権は重く受け止めるべきだ。他産業でも人材獲得競争が激しくなる中、いかにして農業の魅力を高めるかが問われている。他産業並みの収入確保、省力化などによる労働環境の向上など課題は多い。農政の中長期的な指針を示す食料・農業・農村基本計画の見直し期限が2020年3月に迫る。政府・与党は、新たな基本計画の策定に向けて、現在の政策を徹底的に検証し、実効性のある政策を構築すべきだ。支援策が十分かどうかも検証が必要だ。新規就農者らを資金面でサポートする農水省の「農業次世代人材投資事業」の19年度予算額は、前年度から1割以上減っている。20年度予算での財源確保も大きな焦点となる。

*2-3-2:https://www.agrinews.co.jp/p48454.html (日本農業新聞 2019年8月15日) 就農支援 交付できぬ 予算減額で自治体混乱 
 新規就農者を支援する国の「農業次世代人材投資事業」の2019年度予算の減額で、地方自治体が対応に苦慮している。経営開始型の新規採択を予定する新規就農者に対し交付をいまだ決定できない自治体や、全額交付の確約がないまま半額分の上期支払いを決定した自治体もある。現場の混乱に、農水省は「必要性が高い人に優先的に配分してほしい」とする。
●追加配分 要望相次ぐ
 同事業は12年度に前身の就農給付金事業から始まり、就農前の研修期間に最大150万円を2年間交付する準備型と、定着に向け最長5年間同額を交付する経営開始型の2本立てで構成する。19年度からは年齢を原則45歳未満から50歳未満に引き上げ、対象を拡大したにもかかわらず、予算は154億7000万円で、18年度の175億3400万円に比べて12%、20億円以上減額した。事業の減額で、要望額を大きく下回る配分額を同省から提示された自治体が続出。支援を営農計画に織り込んで生計を立てている新規就農者もいるだけに、波紋が広がっている。佐賀県では、同省の配布額では現時点で5000万円足りない。市町村に対し、国からの配布額が減額したことを説明した上で、営農意欲など事業の要件を満たした交付希望者全員に上期分(最大75万円)の支払いを決定した。残りの下期分は国から支払われるか不透明だが、同県は「経営開始型の5年間の交付は農家との約束だ」として、影響を最小限にとどめるために上期分は例年通りの時期に決定したという。同県は「万が一、国からの予算がこのまま大きく足りない状況だと、半額しかもらえない若者が出てきてしまう。そうならないよう、農水省に強くお願いする」と強調する。岡山県も交付希望者全員に上期分(最大75万円)の支払いを決定した。残る半額は同省の追加配分を待つという。岐阜県では経営開始型の新規採択予定者の交付はストップしている状況だ。多くの自治体から、予定していたのに交付されない新規就農者が出ることがないよう、追加配分に向けて強い要望が同省に相次ぐ。
●調整では限界 国は対応検討
 同省は、都道府県の要望額や前年度実績などを踏まえ、配分額を決定する。例年、予定していた新規就農者が病気で交付申請をやめるなどして当初の見積もりを下回り、配分額から返却する自治体がある。同省では毎年11月に予算の執行調査を行い、返却分から足りない自治体に追加配分するなどしてきた。19年度はこうした自治体間の調整は小まめに行う方針だという。ただ、19年度は前年度比20億円以上もの減額で、大半の自治体で配布額が要望額に満たず、調整だけでは限界がある。同省は「現場の苦慮する声は聞いている。予算の執行状況を丁寧に調査し、どう対応できるか考えていく」と説明している。
●就農支援減額に不満の声 頼みの綱…「死活問題」
 山間部に30戸が暮らす佐賀市三瀬村の井手野集落。5年前に大阪からUターンした庄島英史さん(44)は、ピーマンを栽培する。あぜ道が多く耕地面積を上回る古里で農業をする厳しさは、稲作農家の両親の経営を見て痛感していた。それでも「会社員生活でいろいろな地を訪れたが、古里以上の場所はない」と就農した。今年は経営開始型交付の最終年に当たる5年目。これまで綿密な営農計画を提出し、給付金はトラクターや運搬車、パソコンの購入費用に活用してきた。規模拡大や効率化に限界がある農地だったが、同事業が大きな支えになった。庄島さんは「支援がないと農業を続けるのは厳しかったかもしれない」と振り返る。来年度から経営を自立できる見通しだが、それも経営が安定しない初期段階に同事業の補助金を受給できたからだという。古里に仲間を呼び込みたいと考え、同事業をPRし、若者に就農を勧めてきた庄島さん。「この事業を頼りにする後輩もいる。打ち切りになればあまりに影響が大きい」と訴える。庄島さんの後輩で、同集落に移住し、無農薬で少量多品目を栽培する佐藤剛さん(35)は、今年度の受給が不透明な現状に困惑する。同事業があるから、無農薬栽培や新たな生産方法などにチャレンジできていたという。「非常に貴重で頼りにしていた支援。農家出身ではなく、基盤がない移住者なので、事業の減額は死活問題だ」と主張する。同市で経営開始型の補助を受けるのは、庄島さん、佐藤さんを含めて48人。これまで1年間まとめて県から市に予算が振り込まれてきたが、今年は予算が足りないとの理由で上期分だけだった。市は「急に『支払えない』とは、現場で頑張る新規就農者に言えない。非常に大きな問題だ」と憤る。JAや県と新規就農者の呼び込みに力を入れてきた同市。同事業も就農を呼び掛ける材料の一つにしてきたが、今後はこの事業についてどう説明すればいいのか途方に暮れているという。
●自治体も困惑「説明できぬ」「寝耳に水」 「信頼揺らぐ」市が補正予算
 現状、経営開始型の新規採択者には給付金を支払っていない岐阜県。同県飛騨市では、トマトで就農を目指す3人への給付が不透明なままだ。このため市は緊急の対応として補正予算を組んだ。全額国費の同事業に、自治体が補正予算で対応するのは異例だ。都竹淳也市長は「制度としての信頼が揺らぐ深刻な問題。新規採択予定者の不安な状況を避けるために、緊急避難的な対応としてやむを得ず補正予算を組んだ」と説明する。都竹市長が事態を知ったのは5月。会議で他の自治体首長から問題提起があったという。現場の混乱が想定される大きな予算の減額に国から説明がなく、「寝耳に水。情報伝達の面でも大きな問題だ」と語気を強める。他の自治体からも「年齢を引き上げ、対象を拡大したのに予算を減らすのはおかしい。追加配分してほしい」「受給できる前提で営農計画を組んでいる若者に説明できない」との声が相次ぐ。「農業の産地ではなく、国の予算が少ないからという理由で補正予算を求めても財政部門や議会が納得してくれない」と話す市の担当者もいる。同事業は17年度までの6年間で準備型8916人、経営開始型1万8235人が受給し、新規就農者の育成に大きく貢献してきた。新規就農者や自治体が同事業の必要性を訴える一方、同事業には2017年秋の行政改革推進会議などでは厳しい指摘があり、財務省からは緊縮財政の中で予算削減を求められている。農水省は新規就農者の苦慮する状況について「どういう対応ができるかを検討している」と説明している。

*2-4-1:https://www.agrinews.co.jp/p48240.html (日本農業新聞 2019年7月20日) 外国人材受け入れ 特区 特定技能に移行 来年度から 円滑な契約 課題
 政府は、改正出入国管理法に基づく特定技能制度が始動したことを受け、農業分野での国家戦略特区制度の外国人労働者受け入れは2020年度以降、新制度に移行する方針を決めた。特区制度での契約終了後も外国人が働き続けるには、新制度の資格を得る必要がある。円滑な移行ができるかが焦点となる。国家戦略特区を活用し、農業分野で外国人労働者の受け入れが始まったのは、18年10月。特区の認定を受けた愛知県、京都府、新潟市、沖縄県で、19年6月1日までに52人が派遣元と契約し、入国している。一方、外国人労働者の受け入れを拡大する改正出入国管理法が成立。4月からは、新たな特定技能制度による受け入れが始まった。特区制度と新制度が並存する中、政府は今後の運用方針を決定。20年度からは、新制度での受け入れを求める。移行期間を設け、19年度までは特区制度で派遣業者が外国人労働者と雇用契約を結べるようにした。19年度中に特区制度に基づいて契約した外国人は、契約締結時点から通算3年を上限に就労できる。契約後、新制度に移行できれば、新制度の通算5年と合わせて合計8年の就労が可能となる。今後、特区制度での契約が順次切れていく中、外国人労働者が新制度の資格を取得し、引き続き今の現場で働くことができるかが課題となる。新制度の下で働く場合、耕種か畜産の農業技能測定試験と日本語能力の試験を受ける必要がある。だが、約3年の技能実習を修了していれば、試験は免除される。特区制度で働く外国人は、既に技能実習を修了しているため、新制度への移行時は試験が免除となる。農業分野では、受け入れ元の直接雇用に加え、派遣形態の雇用も認める。特区制度での受け入れ実績を持つ派遣業者が新制度でも受け入れ先になるには、住居の確保など生活を支える支援計画を策定する必要がある。同省は「計画策定などは、社会保険労務士や農業団体など登録支援機関が支援する。新制度へ円滑な移行を促したい」(就農・女性課)と話す。

*2-4-2:https://www.nishinippon.co.jp/item/n/513963/ (西日本新聞 2019/5/29) 福岡県、外国人材受け入れへ協議会 官民56団体連携
 外国人就労を拡大する改正入管難民法の4月施行を受け、福岡県や市町村、業界団体、留学生支援団体などは6月に「県外国人材受入対策協議会」を発足させる。生活、労働情報や課題を共有し、受け入れ環境向上を図る狙いだ。外国人材に関連した官民の横断的な組織の設立は九州で初めて。県は9月にも市町村と連携した広域の外国人相談窓口の設置を予定している。法務省によると、県内の在留外国人は7万3876人(昨年6月現在)。改正法は新たな在留資格「特定技能」を創設。県内でも農業、介護、建設などの分野に従事する外国人数の増加が見込まれる。協議会は県に事務局を置き、福岡市、北九州市、県市長会、県町村会、福岡労働局をはじめ、農業や介護のほか外食、宿泊、建設など13業種の業界団体を含む計56団体で構成。アンケートなどで就労や生活面の不安、事業者が抱く制度の課題点や困り事を把握し、必要な対策につなげる。新設する相談窓口は「県外国人相談センター」(仮称)。政令市を除く58市町村に寄せられる相談をセンターと共有できるネットワーク体制を構築する。(1)外国人と担当の市町村職員(2)センターのスタッフ(3)通訳業者‐の3者が機器で同時通話できるシステムを活用。スタッフが生活、就労、医療など相談内容次第で各専門機関にもつなぐ。県は、関連経費として計約2300万円を2019年度一般会計当初予算案に計上する方針。

*2-4-3:https://www.nishinippon.co.jp/item/n/527877/ (西日本新聞 2019/7/18) サニーさんの死なぜ 大村入管のナイジェリア人 収容3年7ヵ月
 強制退去処分を受けた外国人を収容する西日本唯一の施設「大村入国管理センター」(長崎県大村市)で6月下旬、収容中の40代のナイジェリア人男性が死亡した。男性は施設内で「サニーさん」と呼ばれ、慕われていた。収容期間は3年7カ月に及び、亡くなる前は隔離された状態で衰弱していたという。センターは死因や状況を明らかにしておらず、支援者からは第三者機関による原因究明を求める声が上がっている。「外に出られたことを神に感謝している」。今月8日午後、大村市の教会を訪れたクルド人男性(30)はキリスト像を前に頭を垂れ、じっと動かなかった。2年近く収容されていた大村入国管理センターから「仮放免」が認められ、その足で向かったのが教会だった。目は落ち込み、頬はこけていた。男性は収容中の3月から2カ月間、仮放免の許可を求めて食事を拒むハンガーストライキをした。一時は他の外国人と隔離され、複数の部屋が並ぶ「3C」と呼ばれる居住区にいた。その隣の部屋に、サニーさんがいた。「彼は食事を取っておらず体力がなかった。『水くらいは飲んで』と伝えたんだが…」。最後に見た時はやせ細り、骨と皮ばかりになっていたという。支援者によると、サニーさんが収容されたのは2015年11月。日本人女性との間に子どもがおり「出国すると子どもに会えなくなる」と帰国を拒んでいたという。「3C」で意識を失っているサニーさんを職員が見つけたのは6月24日午後1時すぎ。搬送先の病院で死亡が確認された。法務省によると、記録が残る07年以降、大村入国管理センターで収容中の外国人が死亡したのは初めてだった。2日後、施設内の一室に献花台が設けられた。同じナイジェリア出身の男性は「助けてあげられなくてごめんね」と涙を浮かべた。「親切」「穏やか」。収容されている外国人はそう口をそろえ、同じ部屋で過ごしたフィリピン人男性は「兄のような存在。食事が足りない時には分けてくれた」と振り返った。支援者や収容者によると、サニーさんはこれまで仮放免の申請を4回却下されていた。ハンストしていたとの情報もあるが明確な証言はない。その最期は覚悟の上だったのか。それとも‐。「3C」にはサニーさんや、後に仮放免されたクルド人男性など、食事を取らなかった複数の外国人が各部屋に隔離されていたという。その理由についてもセンターは「個別事案には答えられない」(総務課)と公表していない。サニーさんの死亡について、出入国在留管理庁は調査チームを設置。福岡難民弁護団は第三者機関による原因究明と調査結果の公表を求める声明を発表している。
   ◇    ◇
●ハンスト後絶たず
 強制退去処分を受けた外国人の収容の長期化が指摘される中、全国の入管施設では仮放免の要求や長期収容への抗議のためのハンガーストライキが後を絶たない。大村入国管理センターで外国人との面会活動を続けている牧師の柚之原寛史さん(51)によると、同センターではサニーさんの死後、ハンストがさらに広がっているといい「収容期間が長い人ほど精神的に追い詰められており、このままでは第二、第三の犠牲者が出かねない」と危機感を募らせる。サニーさん死亡を受け、山下貴司法相は2日の閣議後会見で「健康上の問題などで速やかな送還の見込みが立たない場合は、人道上の観点から仮放免制度を弾力的に運用する」と説明。これに対し、全国難民弁護団連絡会世話人で外国人収容問題に詳しい児玉晃一弁護士(東京)は「命を懸けたハンストが広がる背景には、理由の説明もないまま長期間収容する入管側に問題がある」と指摘。「ハンストすれば仮放免の道が開けるという情報が収容者に広がれば危険だ。難民申請中などで早期の出国が見込めないケースなどは原則として仮放免を認めるべきだ」とし、場当たり的な対応ではなく根本的な政策の見直しを訴えている。
【ワードBOX】外国人の収容
 不法滞在などで強制退去処分を受けた外国人は、出国まで全国17カ所の入管施設に収容される。うち出国のめどが立たないケースは東日本入国管理センター(茨城県)か、大村入国管理センターに移送される。大村の収容者数は2018年末時点で100人。在留を特別に認める「仮放免」制度などがあるが、ここ数年は収容期間の長期化も指摘され、大村では収容者の94%が半年以上に及ぶ。法務省によると記録がある07年以降、全国の施設で収容中に亡くなった外国人は15人。うち自殺者は5人。

*2-5-1:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO48474260Q9A810C1EA1000/ (日経新聞 2019/8/10) 農業参入3000社、収益確保なお途上 農地法改正10年
■イオン、借地面積3倍へ
 一般企業の農業参入の条件が緩和された農地法改正から10年を迎えた。参入した法人数は全国で3千を超え、農家の高齢化や跡継ぎ不足で耕作放棄地が増えるなか、有力企業も動き出す。イオンは借地面積を2025年度までに3倍に拡大し、他の民間による植物工場の新設も相次ぐ。ただ大規模な農業経営は期待されたほど進んでいない。農業ビジネスの収益性の低さが改めて課題となっている。改正農地法は09年に施行され、農地を借りる形であれば完全に自由となった。家族経営に支えられてきた従来の農業が行き詰まりを見せるなか、新たな担い手として民間企業が名乗りを上げ、株式会社などの参入は順調に増えてきた。代表格がイオンだ。全額出資子会社のイオンアグリ創造(千葉市)を通じ09年に農業に参入し、現在、全国20カ所に直営農場を持つ。借地面積は約350ヘクタールと国内で最大規模を誇る。有機野菜を栽培する認定農場も運営している。特徴は人間の経験と先端技術を融合した効率的な生産だ。収穫など単純作業はロボットに置き換え、20カ所の農場で様々なデータを集める。収集したデータを人工知能(AI)で分析し、地道な栽培技術の向上に役立てている。イオンは生産から販売まで担う製造小売業(SPA)の「農業版」を目指す。イオンアグリ創造の福永庸明社長は「農地を借りてほしいとの引き合いは強い」という。25年度までに借地面積を現在の3倍の1000ヘクタール規模に広げる計画だ。農林水産省によると、株式会社を含む一般法人の参入数は17年12月末で3030法人。改正前の10倍に拡大した。農業や食品関連に加え、建設業や製造業など異業種からの参入も多い。13年に参入した食品スーパーのいなげやは、国内33カ所で約9ヘクタールの農場を運営する。主に長ネギやニンジンなどの野菜を栽培する。自社店舗で販売し、関連会社が手掛ける給食事業でも使う。植物工場を建設する新たな動きもみられる。半導体・電子部品商社のレスターホールディングスは18年12月、秋田県鹿角市に完全閉鎖型の植物工場を稼働した。国内5カ所目でリーフレタスなど1日当たり1万7千株を生産する方針だ。新設した工場では発芽した苗の移植工程を自動化し、肥料や照明、生産実績などをクラウド上で管理する。レタスなどはコンビニエンスストアのサンドイッチやスーパーにも供給する。課題は残る。1法人当たりの経営面積は平均で3ヘクタール弱と一般的な農家とほぼ変わらない。農地法の改正で民間企業が参入し、運営規模の拡大や生産量の増加が期待されたが、現実は農業が長年抱えてきた構造的な問題を引きずっている。
■「黒字化のメド立たず」
 小規模経営は収益性の低さにもつながる。参入した民間が手がける栽培品目の中心は野菜だ。野菜は天候で収穫量や販売価格が変動しやすく、規模が小さいとリスク分散も難しい。企業は機械化を進め効率的な生産を目指したが、人間の勘や経験に頼る面は色濃く残る。企業からは「現時点で黒字化のメドは立っていない」(いなげや)との声が聞かれる。日本施設園芸協会がまとめた18年度の植物工場の収支状況では全体の49%が赤字だった。黒字の工場も増え18年度で全体の31%と3年で6ポイント改善してはいるが、黒字化には数年かかるとされる。企業も手をこまねいているわけではない。システムやサービスの提供といった新たな切り口で農業に携わり効率化を支援する動きが広がる。カゴメは地域の契約農家や自社が出資する農業生産法人を通じ、全国のスーパーで発売するトマトを生産している。屋内の栽培施設ではトマトが育ちやすい温度や二酸化炭素(CO2)の環境を細かく管理する。契約農家には自社が培った栽培技術などを助言する。NTTドコモはビッグデータを使い安定生産できるサービスを提案している。野村総合研究所の佐野啓介上級コンサルタントは企業の参入を促す上で「販路や物流網の整備が重要になる」と指摘する。農作物の売り先確保などで企業のノウハウが生かせる余地はありそうだ。佐野氏は「一部で見られる地域商社などによる生鮮品の共同輸送や、栽培品目などの情報を集め買い手と売り手をつなぐプラットフォームも有効だ」と話す。国内の農業従事者の平均年齢は65歳を超えた。耕作放棄地は今後も増え、農業の未来に向け残された時間は長くない。受け皿となる企業が農業で安定した経営基盤を築くことが急務だ。

*2-5-2:https://www.agrinews.co.jp/p48352.html (日本農業新聞 2019年8月3日) 基本計画 家族農業守れる農政を
 官邸主導の農業の構造改革路線を軌道修正できるか。参院選後の焦点はそこにある。生産現場の不満を踏まえ、自民党は参院選公約で家族農業を含む多様な農業を守ると訴えた。それでも1人区では苦戦した。今後の農政のかじ取りで現場の不満や不安を解消すべきだ。選挙戦で与党は農産物輸出の拡大やスマート農業の加速など農業の成長産業化を柱に掲げた。これに対し野党は、戸別所得補償による農業経営の維持を訴えた。過去の国政選挙で繰り返されたなじみの対決構図だが、その中の変化を見過ごせない。変化は与党の側だ。自民党は選挙公約に「家族農業、中山間地農業など多様で多面的な農業を守り、地域振興を図ります」と明記した。安倍政権は当初から「農業の成長産業化」を旗印に農政改革を加速。10年間に農地利用の8割を担い手に集積し、法人経営体を5万法人に増やすなどの構造政策に力を注ぎ、家族農業に配慮する姿勢は弱かった。家族農業の重視は、むしろ野党側が力を入れてきた主張である。そうした与野党対決の構図の中で、自民党公約は従来より中道寄りに歩み出してきたように見える。家族農業を守ることは、農業・農村の実情を踏まえると極めて現実的な対応というべきだ。中小規模農家の経営縮小や離農によって流出する農地を、担い手の規模拡大では受け止め切れなくなっているからだ。2019年の農業経営体数は119万で、09年の175万と比べて56万(32%)も減った。そのほとんどを家族経営体が占める。特にこの5年間はそのスピードが速まり、14年からは28万(19%)の減少となった。深刻なのが、農地の減少である。30ヘクタール以上層がカバーする経営耕地面積は19年、合計119万ヘクタールに及び、全体の3分の1を占める。ただ、これまで一貫して増加基調だったのが、19年は初めて減少に転じた。規模拡大だけでは農地を守り切れなくなっている状況で、構造政策をどう進めるのか、今後の重要な問題となる。農地利用の8割を担い手に集積するという現行の政府目標は現実離れしており、担い手が受け止め切れずに行き場の見つからない荒廃農地を増やす心配すらある。集積目標は現場のスピードに合わせながら、家族農業経営が持続できるような政策を充実させて農地の流出をできるだけ食い止めることこそが、むしろ大事ではないか。今秋に始まる食料・農業・農村基本計画の審議では、こうした人と農地の問題を軸に、生産基盤の立て直しが最大の論点となる。食料自給率向上の大前提となる問題であり、現行計画の延長にとどまらない、踏み込んだ議論が求められる。政権与党である自民党は公約で家族農業を守るとした。これを基本計画に反映させることが、農家との約束を果たす第一歩となる。

<林業について>
PS(2019年8月20日追加): 国は、*3-1・*3-2のように、2024年度より全国民から徴収される年1000円の森林環境税を前借りする形で、本年9月より自治体に森林整備資金を配り、資金の一部を人口に応じて割り振るため政令指定都市の平均(全国20市)は全市区町村平均の7倍を超えるそうだ。しかし、森林環境税を財源として配る森林整備資金なら整備する森林の面積に比例して配分すべきであり、基準を人口にすれば、森林整備の目的が達せられない。
 また、私有林の3割近くが登記簿で所有者がわからず、境界がはっきりしない森林も多く、市町村が山林所有者から山林を預かって管理する制度はできたが、所有者探しや地籍調査も並行して行わなければならないそうだ。しかし、登記簿で所有者がわからず境界もはっきりしないような山林の所有者探しは、「2年以内に名乗りでなければ公有にする」とアナウンスして、名乗り出ない人はその山林を必要としていないので公有化するというのが、所得のない人まで含めた全国民から年1000円の森林環境税を徴収する以上、公正である。


    森林の働き     健全な森林サイクル   森林と人工林   所沢ユリ園

*3-1:https://www.hokkaido-np.co.jp/article/334835?rct=n_politics (北海道新聞 2019年8月14日)森林整備資金、政令市が7倍超 市区町村に比べ、反発も
 国が本年度から自治体に配る森林整備の資金は、全市区町村の平均が年間920万円に対し、政令指定都市(全国20市)は7倍超の平均6880万円に上る見込みであることが14日、分かった。資金の一部を人口に応じて割り振るためだ。総務省は「都市の木材消費を促す事業も重要」と説明しているが、一部自治体は「少額で事業ができない」と反発している。政令市でつくる指定都市市長会が本年度の配分額を試算した。自治体ごとの配分額は、総務省が9月中にも公表する。配分基準は法令で定められているが、大都市が有利な仕組みが妥当かどうか検証が求められそうだ。

*3-2:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO48475070Q9A810C1SHF000/ (日経新聞社説 2019/8/11) 森林を預ける制度の活用を
 お盆は里帰りや行楽で山を間近で感じることが多い。放置された山林が増えるなか、私有の人工林を市町村に預けて管理を任せる制度が4月に始まった。山の日を森林を考える機会にしたい。森林は国土の3分の2を占める。うち57%は民間が所有し、その管理は所有者に任されてきた。しかし私有人工林の3分の2は適切に管理されず、土砂災害の原因になったりしている。新制度では市町村が所有者から山林を預かり管理権を持つ。その山林を使いたい民間の木材業者などがいれば、改めて管理を委ね国産材の活用を促す。いなければ市町村が管理し間伐などを担う。埼玉県秩父市は7月から2カ所の山林を所有者から預かり、管理を始めた。新制度を適用した第1号である。この制度を知った所有者から市に預けたいと申し出があり、スムーズに運んだ。私有林の4割は所有者がその市町村に住んでいない。都市部に住みながら相続で山林を持つことになった人も多いだろう。管理に手が回らないようなら、市町村に預けることを帰省の際に親族で話し合ってはどうだろうか。所有者が預ける意向を持っているか、多くの市町村はこれから調査するところだ。実は私有林のうち3割近くは登記簿では所有者がわからない。境界がはっきりしない森林も残る。所有者探しや地籍調査も並行して行うため、新しい管理制度への移行が終わるには15年ほどかかる、と林野庁はみている。新制度の財源になるのが、年1人1000円を負担する森林環境税だ。徴収は2024年度からだが、それを前借りする形で9月から自治体に配り始める。山村だけでなく都市部にも配分がある。新制度は伐採期を迎えた国産材の活用を促すねらいもあり、都市部では新しい財源の使い道として公共施設に国産材を使うことなどが想定される。木のぬくもりが増えることは好ましいが、無駄な使い方がないか目を光らせたい。

<農林水産業の担い手>
PS(2019/8/21、24追加):北海道初山別村では、*4-1のように、業種によって繁忙期が異なることを利用し、労働力不足解消に向けて農業・建設などの異業種が連携した新たな取り組みが進んでいるそうだ。具体的には、建設会社が派遣業の許可を取って社員を農漁業の現場に送り込んで作業しており、建設業と農業などの給与差が課題になるそうだが、それは建設会社が人材派遣業を別会社にして日本人だけでなく外国人も雇用し、仕事の難易度・熟練度・作業量・責任の重さ等に応じて給与を変える方法で解決できるだろう。ただ、外国人を就労させる場合には、*4-2のように、教育はじめ社会インフラの環境整備が必要になるため、同一言語を使用するグループを市町村毎にまとめて住まわせた方が、言語対応にかかるコストが少なくてすむわけだ。
 なお、*4-3のように、農林漁業には宝が豊富であるため、それを利用できるか否かがKeyになるが、それにもアイデアと人手を要するわけだ。*4-4の鶏卵価格の低迷による生産調整は「もったいない」の一言につき、生だけでなく惣菜や菓子に加工したものを国内外で販売すれば収益源になるし、*4-5の食品宅配は、高齢化と共働き化によって伸びることが明らかだ。そして、JAらしい新鮮でこだわった食材による地域貢献が期待されるが、これらもアイデアと人手の問題になる。
 2019年8月24日、朝日新聞が、*4-6のように、「①新在留資格の『特定技能』を持つ外国人労働者の生活を支援する1800を超える『登録支援機関』が続々誕生」「②質が保てるか懸念」「③外国人支援代行手数料の相場は月数万円」等と記載している。既に国外に製造・販売ネットワークを持つ会社が人材養成校を作って日本に外国人労働者を送り出したり、人材派遣会社が登録支援機関になったりすれば、これまでに蓄積したノウハウとのシナジー効果が発揮できるのでよいが、①②によって支援の質が低下したり、③のような高すぎる手数料をとって外国人労働者から搾取したりすれば、せっかく日本を選んで来た外国人労働者が日本に関する悪いイメージを持って本国に帰ることになり、長期的には国益にならないので注意すべきだ。

    
  2018.5.30     2018.11.20    2019.1.26  2018.12.8  2018.10.12   
  西日本新聞     日本農業新聞    西日本新聞   東京新聞   東京新聞

(図の説明:1番左の図のように、OECD諸国のうち移住外国人が多いのはドイツ・アメリカで、日本は少ない方である。しかし、左から2番目の図のように、日本でも農漁業はじめ多くの産業で外国人労働者を必要としている。また、中央の図のように、日本でも外国人労働者は漸増しており、その出身国は中国・ベトナム・フィリピンの順になっているが、人権に配慮した雇用については問題の多いことが指摘されている。そのため、右の2つの図のように、入管難民法が改正されたが、これも改善すべき点が多いわけだ)

*4-1:https://www.agrinews.co.jp/p48473.html (日本農業新聞 2019年8月17日) 派遣元は建設会社 農漁現場へ人材融通 新たな連携手応え 北海道初山別村
 北海道留萌地方にある人口1200人ほどの初山別村で、労働力不足解消に向け農業、建設など異業種が連携した新たな取り組みが進んでいる。業種間で繁忙期が異なることから、建設会社の社員を農漁業の繁忙期に派遣し、成果を上げている。人口減少が進む中、今ある労働力を地域内で活用する動きは、経済産業省北海道経済産業局なども着目。来年にも同村の手法を他地域に広げる計画で注目が高まっている。同村では高齢化や人口減少が進み、人手不足による廃業などが課題となっていた。村の基幹産業の一つである農業も、これまで親戚などに手伝ってもらっていたが、人手を集めにくくなり、生産者から労働力の確保を求める声が高まっていた。同村の商工会やJAオロロン、漁協などは、連携して2017年に「初山別村労働力調整協議会」を立ち上げ、検討に着手。同村を含め周辺地域も過疎化が進んで人材を呼び込むことが難しい中、18年度から人材融通の仕組みを始めた。具体的には、建設会社が派遣業の許可を取り、社員を農業や漁業の現場に送り込み作業してもらう。実施したのは、4月の養殖ホタテの稚貝を他の網に移す作業や5月の米の田植えなどが集中する、春先だ。18年度は漁業に6人、農業に4人を派遣。19年度は漁業に3人が入った。経験のない人を受け入れることに最初は不安を抱える農家もいたが、簡単な作業を割り振り教えることで対応できたという。受け入れ農家の調整を担った、JA初山別支所は「農家からは助かったという声が多く、希望者も増えている」と話す。農家にとっては、個人ではなく建設会社と契約することで、安心感もある。基幹産業の一つである第1次産業の衰退は、地域の衰退になることから異業種が結束したという。一方、仕組みを持続させるための課題も浮かび上がっている。同商工会によると、建設業の方が農漁業よりも給与が高い傾向にあり、社員を送り出す建設会社に対して村が差額を補填(ほてん)している状況だ。また、人手を求める需要に対し、融通できる人員は限られており、ネットワークの拡大も欠かせない。留萌地方は、他の地域よりも有効求人倍率が高く労働力不足が顕著。北海道経済産業局と北海道留萌振興局は同村の取り組みを処方箋にしようと、来春にも同地方南部でも仕組みを広げる考えだ。留萌振興局は「課題などを含め今後、細部を詰めながら進めたい」(産業振興部)とする。

*4-2:https://www.nishinippon.co.jp/item/n/536299/ (西日本新聞 2019/8/20) 日本語できぬ親への対応は? 就労拡大…教育現場、追い付かず
 「子どもの同級生の親は日本語ができない。学校が配布するプリントは読めず、配慮が足りないのでは」。福岡県久留米市の女性(53)から、特命取材班にそんな声が寄せられた。改正入管難民法が4月に施行され、外国人の就労拡大が見込まれる。家族を呼び寄せたり、日本で子どもをもうけたりするケースは今後さらに増える見通しだが、教育現場の環境整備は進んでいるのか。女性には小学3年の子どもがおり、昨秋、クラスにフィリピンから男児が転校してきた。今春、クラスのPTA役員決めの際、男児の母親が何も話せず困っているのに気付いた。「大事なことはきちんと伝えないと」と思い、母親と無料通信アプリLINE(ライン)の連絡先を交換した。5月の金曜日。母親からLINEを通じて「子どもが明日学校があると言っている。本当か」と英語で聞かれた。土曜日は授業参観の予定で、プリントで案内されていたが母親は内容を理解していなかった。以後、女性は学校から配られるお知らせをスマートフォンの翻訳アプリで英訳し、LINEで母親に知らせるようになった。女性は「先生たちは忙しく、これ以上負担を増やすのは難しい」と理解を示しつつ、「振り仮名を付けるだけでは配慮になっていない。理解できていないという現状を学校現場は理解してほしい」と願う。
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 文部科学省によると、日本語の指導が必要な児童生徒数は2016年5月の調査で4万3947人。前回14年調査から約6800人増えた。うち福岡県は小学生415人、中学生142人、高校生ゼロだった。女性が住む久留米市の教育委員会に聞くと、8月14日現在、28小中学校に149人が在籍。10校に日本語指導担当教員13人を、地域で外国語を話せる人にサポートしてもらう非常勤の外国人児童等授業介助員も28校に配置している。一方、日本語を話せない保護者への対応は追い付いていない。ようやく本年度から日本語指導担当教員がいる学校に翻訳機を導入し、家庭訪問の際に担任が持参している。
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 法務省によると、18年末時点の在留外国人数は過去最多の約273万1千人。日本語指導が必要な外国人の数はかなりの規模に上るとみられる。吸収力の高い成長期の子どもに比べ、大人の方が語学習得に苦労しがち。保護者も含め、日本語を話せない人をどう受け入れ、意思疎通をしていくかが教育現場の課題になりつつある。今年6月、外国人への日本語教育の推進を国や自治体などの責務と位置付ける日本語教育推進法が成立した。国は今後、基本方針を取りまとめるが、本格的な検討はこれからという。福岡県内の教育委員会関係者は言う。「都市部に比べ、地方ほど予算がなく、態勢が整わずに困惑している。外国人受け入れを国策として打ち出す以上、国が重点的に予算や人材を確保することが必要だ」。教育現場だけでなく、地域社会にとっても無視できない問題だ。近年、外国人の定住者が増えたという長野市の50代女性会社員は「子どもたちは仲良くしていても、周りの大人が外国人と距離を置く。外国人の保護者と会話をしただけで、白い目で見られた」と特命取材班に憤りの声を寄せ、こう訴えた。「これからもっと外国人は増える。閉鎖的な“ムラ意識”は改めないといけないのでは」

*4-3:https://www.agrinews.co.jp/p48270.html (日本農業新聞 2019年7月24日) 磯荒らす厄介者名産に ミカンの皮、キャベツ残さが餌ウニ養殖 神奈川県小田原市漁協青年部
 神奈川県小田原市漁業協同組合青年部17人が、魚介類を育む磯を荒らす厄介者のウニに特産のミカンの皮やキャベツを与える養殖に取り組み、地域の新しい名産にしようと奮闘している。今月、念願の初出荷を迎えた。農業分野の資源を生かし、漁業の課題を解決する取り組みとして地域から期待が高まっている。同手法で養殖されたウニの出荷は神奈川県内では初めて。養殖するのはムラサキウニ。近年、海水温上昇などによりウニは増加傾向にあり、海藻が食い荒らされ減ってしまう「磯焼け」の懸念が高まっていた。一方、ムラサキウニは天然の状態では身が詰まっておらず、売り物にならないため捕獲されずにいた。「このままでは海藻類が食べ尽くされてしまう。深刻になる前に、何かできないか」と部員が立ち上がった。キャベツなどを餌にしたウニの養殖技術を開発していた県水産技術センターを3月、同部員が技術のノウハウを学ぶために視察。3月下旬から約1000個を捕獲し、養殖をスタートさせた。餌は地元農家などから廃棄するミカンの皮などを譲ってもらっている。週2回、スーパーなどから出るキャベツの外皮をもらって、100匹当たり約1・5玉分を与える。色を良くするため、養殖始めや出荷1週間前に冷凍保存していたミカンの皮を与えた。ウニは小田原漁港周辺の食堂で提供される他、スーパーなどで販売する。同青年部の古谷玄明部長は「小田原のウニが有名になり、知名度が上がれば部員の生産意欲にもつながる。手頃な価格でおいしいウニを喜んで食べてもらえたらうれしい」と思いを語った。

*4-4:https://www.agrinews.co.jp/p48264.html (日本農業新聞 2019年7月23日) 鶏卵低迷が長期化 生産調整の効果出ず
 鶏卵の価格低迷が長期化している。今月のJA全農たまごの東京地区のM級価格は1キロ150円で推移し、前年同期を1割下回る。成鶏の早期出荷を促す国の生産調整事業が発動してから2カ月を超えたが、価格が上向く気配はない。専門業者の処理が追い付いていないためだ。需要は加工卵中心に鈍い。梅雨明けも、需給緩和状態の解消は見込みにくく、「軟調で推移する」と東京都内の流通業者はみる。東京地区のM級は6月上旬からもちあいで推移する。前年同期(175円)と比べると14%(25円)安だ。2018年度も供給過剰により価格は低迷していたが、7月に入り上向いた。「昨夏は猛暑の影響で生産量が落ちた」(都内の流通業者)ことが影響したためだ。今年は冷涼で、鶏や卵のサイズへの影響は現状ではないという。生産調整を促す成鶏更新・空舎延長事業は5月20日に発動した。価格が上向かず、今回の発動期間は直近2年間で最長となる見込み。成鶏を早期出荷し、ひなを新たに導入せず鶏舎を一定期間空舎にした生産者に対して奨励金を国が支払う。だが、廃鶏処理業者の対応が追い付かない状況が続いている。処理業者の三和食鶏(茨城県古河市)は「年内いっぱいの処理は予約で埋まっている」と話す。成鶏処理後の加工品の販売先がなく、工場の稼働率を高めることができないという。「事業が機能していない」と指摘する流通業者もいる。生産者が自主的に生産調整も行うが「需給を大きく改善するほどではない」という。鶏卵の販売は苦戦している。夏場に需要が増える加工卵の荷動きが悪い。雨天続きで外食からの注文が例年より少なく、「冷やし麺などに使う温泉卵や煮卵などの需要が思うように伸びていない」(流通業者)。梅雨明け後には「外食需要への期待はあるが、家庭消費が落ちる」(同)ため、販売全体では苦戦が続きそう。供給過剰の改善も見込めず「価格低迷が続く」見通しだ。

*4-5:https://www.agrinews.co.jp/p46450.html (日本農業新聞論説 2019年1月17日) 伸びる食品宅配 JAらしい地域貢献を
 食品の宅配市場が伸びている。共働きや高齢世帯の増加に伴い、買い物に手軽さを求める消費者が増えているためだ。特に次代の消費を担う若い世代ほど宅配の利用に関心が高い。農家やJAも宅配事業の可能性を探り、参入を考える時だ。調査会社の矢野経済研究所の推計では、2018年度の食品宅配市場は2兆2000億円を超える見込みだ。12年度以降、毎年3%前後の成長が続く。スーパー270社の総売上高10兆円超(17年)には及ばないが、スーパーの売上高が4年ぶりに前年を割り込んだことと比べると勢いの差は明らかだ。生協は「共同購入」から組合員宅に届ける「個配」への転換が進む。日本生活協同組合連合会に所属する地域生協では個配が全体の7割に達する。昨年は有機食材を手掛ける宅配大手3社が合流して「オイシックス・ラ・大地」が発足、物流を効率化して事業を拡大している。異業種の参入も相次ぐ。17年にインターネット通販最大手のアマゾンジャパンが「アマゾンフレッシュ」を立ち上げ、昨年は「楽天西友ネットスーパー」が誕生した。事業伸長の理由は明らかだ。買い物に行くのが難しい高齢者や日中忙しい共働きの世帯が増え、食材調達と調理の簡便化が求められているためだ。中でも、伸びが著しいのが「ミールキット」だ。1食分の献立に必要な下ごしらえが済んだ野菜や肉などの食材と調味料、レシピをセットして家庭に届ける。包丁を使わず簡単に調理でき、材料を余らせることもない。ミールキットは若い世代ほど魅力を感じている。タキイ種苗によると20、30代の4割が「興味がある」と答え、50代(2割以下)とは対照的だった。食品卸大手の19年の消費トレンド予想でもミールキットの需要は今後も拡大し、月額制で多様な料理を楽しむサービスが増えると分析する。「食の簡便化」という消費動向に、産地側も乗り遅れてはならない。地産地消を広げ、地域貢献につなげたい。JA全農とちぎは、昨年からJAふれあい食材の配達員による高齢者の「見守りサービス」を始めた。配達中に独居高齢者宅などを訪問し、会話を交わし安否を確認する。食材宅配サービスと合わせると利用料金が割安になる。地域貢献を兼ねたJAならではの宅配事業だ。JA静岡経済連も昨年から、地元の生協と協業しJA組合員に宅配利用を勧めている。組合員のニーズに応え、生協に県産食材を提供する機会を増やす。阪神・淡路大震災が発生してきょうで24年。大震災以降、防災の備えや被災時の救出活動など、地域住民の「共助」を呼び掛ける声が強まった。住民と触れ合う機会が増える宅配事業は共助の意識を高めるきっかけになるはずだ。地域の連帯を促すJAらしい事業に育てよう。

*4-6:https://digital.asahi.com/articles/DA3S14150463.html (朝日新聞 2019年8月24日) 特定技能外国人の支援、参入続々 住居確保・生活指南など代行機関
 新たな在留資格「特定技能」を持つ外国人労働者の生活を支援する「登録支援機関」が続々と誕生している。政府は今後5年間で最大34万5千人の受け入れを見込む。支援業務が商機になるとみて、企業を中心に各地で1800を超える機関が法務省に登録した。短期間に大量の支援機関が誕生することで、支援の「質」が保てるのか、懸念もある。特定技能の外国人に対し、受け入れ企業は出入国時の送迎や住居の確保、銀行口座の開設、携帯電話の契約などで支援することが法律で義務づけられている。登録支援機関は、そうしたノウハウがない中小企業に代わって外国人支援を「代行」し、1人当たり月数万円が相場とされる委託費を受け取る。すでに8月22日時点で全国で1808機関が登録した。うち、関東、甲信越の10都県を管轄する東京出入国在留管理局には738機関が登録。同管理局の福山宏局長は「半分弱は株式会社。外国人の受け入れ会社から委託費を受け取れるので外国人支援を『業』として展開できる好機、と踏んで参入している」とみる。登録支援機関になったTSB・ケア・アカデミー(東京都調布市)が6月に都内で開いた説明会には、外国人労働者の受け入れを検討している介護事業者ら約40人が参加した。アカデミーの親会社は電子部品の商社で、中国や東南アジアに製造・販売ネットワークを持つ。すでにベトナムに3校、フィリピンとラオスに1校ずつ人材養成学校をつくっており、早ければ年内にも日本へ送り出しを始めたい考えだ。外国人技能実習生の日本側の受け入れ窓口である「監理団体」が登録支援機関を兼ねる例も目立つ。実習生として3年の経験がある外国人は事実上、特定技能の資格が自動的に得られるからだ。主に造船業の実習生をフィリピンなどから受け入れる監理団体「ワールドスター国際交流事業協同組合」(愛媛県今治市)もその一つだ。代表理事の橋田祥二さんは「企業から『実習終了後も引き続き、特定技能の在留資格で外国人に働き続けてもらいたい』という声があり、手を挙げた」と話す。大手も動き出した。人材派遣のパソナ(東京都千代田区)は8月9日に登録支援機関になった。企業からの支援依頼が見込まれるためだという。個人も名乗りを上げる。なかでも行政書士は、外国人の在留資格の申請手続きなどに必要な書類を作成しており、登録が相次ぐ。神奈川県のある行政書士は「いまの仕事量だけでは生活が厳しい」として、外国人ビジネスへの参入を決めた。
■申請書の提出「簡単」
 支援機関になるためのハードルは高くない。日本語学習支援の取り組みなどを確認する申請書を法務省に提出する。だが、「ほとんどがチェックボックス式の回答なので簡単。拍子抜けだ」と東海地方の人材派遣会社の幹部は言う。申請書類には、外国語で対応できる担当者名を明記する必要があるが、「記した人物がどれだけ外国語会話ができるかなど詳細は聞かれない。架空でも通る」(幹部)。一方、法務省は「必要に応じて警察当局をはじめ関係省庁に照会している。ハードルを低くしていない」(出入国在留管理庁在留管理課)と強調する。「大量生産」に伴って懸念もふくらんでいる。支援機関は、契約先の企業で働く外国人と定期的に面談するが、この場で「残業代をもらっていない」などと訴えられた場合、労働基準監督署などの関係行政機関に通報しなければならない。だが、支援機関にとって受け入れ企業は、委託費をくれる「顧客」でもある。その顧客の不正を自ら明るみに出せるのか。法務省は「まずは通報しないといけない。できる、できないの話ではない」(在留管理課)と言い切る。劣悪な労働環境が批判を浴びている技能実習生の場合、受け入れ企業から集めたお金で運営される監理団体が甘いチェックで不正を見逃す例が数多く指摘されてきた。支援機関の立ち位置もこの監理団体と同じだ。現状では、特定技能の資格を得て在留している外国人は7月末時点で44人と少ないため、トラブルは表に出ていないが、大量にできた支援機関が十分な「質」を伴わず、チェック機能を果たさない事態が相次ぐ可能性がある。外国人の受け入れ制度に詳しい弁護士の杉田昌平氏は、企業は「我が社の外国人従業員の生活をきちんと支援してくれる支援機関を選ぶ」という意識を強く持つべきだ、と指摘。支援機関に関する情報を業界で共有することなどを提言する。

<時代にあった新作物>
PS(2019年8月24日追加):*5-1のように、栃木県宇都宮市や東京都立川市がレモンの産地化を進めているだけでなく、福島県も地球温暖化適応策としてレモンの栽培実証を始めたそうだ。私も安心して皮まで食べられる国産レモンは貴重だと思い、毎年、佐賀県太良町のマイヤーレモン(レモンとオレンジをかけ合わせたもので、酸味がまろやかで美味しい)をふるさと納税の返礼品にもらって親戚まで配っているくらいだから、日本産の各種レモンができれば有望だと思う。また、福島県のミカンは、露地ミカンよりハウスミカンやハウスレモンにした方が、栽培しやすい上、他の産地と異なる季節に出荷でき、放射能汚染も少ないと思う。
 さらに、*5-2のように、秋田県立大学が多収で難消化性のでんぷんを含む「あきたさらり」を育成したそうで、確かにダイエットに有効そうだ。収穫期が「あきたこまち」より1週間遅くて作業分散できるのもよく、今後は植物の品種改良という高度な技術力にも期待したい。そして、もちろん、種苗には、知的所有権があるわけだ。

  

(図の説明:1番左はマイヤーレモン、左から2番目は瀬戸内のレモンで、右から2番目はレモンケーキ、1番右は100%レモン果汁だ。日本製のレモンで100%レモン果汁を豊富に作れると、レモン果汁を使うのが容易になって、さらに消費が進むと思われる)

*5-1:https://www.agrinews.co.jp/p47680.html (日本農業新聞 2019年5月17日) かんきつ産地 北へ 国産に需要 温暖化対策 関東、東北で試行錯誤
 かんきつ産地に北上の兆し──。温暖な地域で栽培されているレモンの産地化が関東で進んでいる。輸入品が約9割を占めているが、防かび剤などを使っているため、安心して皮まで利用できる国産の需要が高まっているためだ。宇都宮市周辺では空いたハウスを活用し結実。東京都立川市では、消費地に近いことを生かし、町おこしの起爆剤に位置付ける。一方、福島県のJAふくしま未来は、地球温暖化への適応策として、栽培実証を始めた。
●遊休施設 有効に ハウスレモン 宇都宮市
 2018年、宇都宮市で「レモン研究会」が設立された。農家8人で、産地化に向けて新規栽培者の確保や栽培技術の確立を進めている。レモンへの可能性を感じて栽培に取り組む、研究会会長の竹原俊夫さん(65)は、18年にハウス3アールで14本の木から約600個のレモンを収穫した。現在は、栃木県内4店の飲食店などに販売している。竹原さんは「酸味がまろやかなので、フルーツ感覚でサラダなどにして提供する店もある。レモンの固定概念を変えたい」と説明。飲食店などからの国産へのニーズを感じ取った竹原さんは今年、需要拡大を見越して規模を拡大し、新たに20本の苗木を植えた。レモン栽培は、高齢化で遊休化する花きやイチゴのハウス活用としての側面もある。同市周辺は、冬に気温が氷点下になるほどで、レモン栽培には向いていないが、研究会はハウスを有効利用すれば栽培できると考えた。イチゴなどに比べ、管理が手軽なのも利点だ。現在「璃の香(りのか)」と「リスボン」の2品種を栽培する竹原さん。「ハウスを加温するとコストが上がるので、耐寒性のテストが必要だ。仲間と試行錯誤して、宇都宮産レモンを根付かせたい」と意気込む。
●商店街おこし 新しい名物を 東京都立川市
 東京では商店街がレモンで町おこしに取り組む。「立川に名産品をつくろう」と考えた立川市商店街連合会のメンバーらが「立川レモンプロジェクト」を始動。「とびしま」と呼ばれ、レモンの島々が浮かぶ広島県呉市から、18年に苗木を取り寄せ、市内の「なかざと農園」に植えた。「とびしま生まれ立川育ちの“立川とびしまレモン”」として、23年の出荷を目指す。現在は、10アールの園地に26本のレモンの木が育っている。同園の中里邦彦さん(47)は「寒さをどのように克服するかが課題だが、頑張りたい」と話す。プロジェクトリーダーの岩下光明さん(61)は「飲食店を経営している人からは、地元の新鮮なレモンがあれば使いたいとの声を聞く。消費地が近いことを生かして、立川といえばレモンと言われるような名物にしたい」と期待する。16年の財務省の貿易統計によると、国内に流通する輸入レモンは約4万9000トン。一方で、農水省の特産果樹生産動態等調査によると、国産は広島県や愛媛県などから約6000トン。国内で流通するレモンの多くは輸入品だ。
●将来見据え 実証 露地ミカン JAふくしま未来
 JAふくしま未来は、露地ミカンの試作を今年度から始めた。地球温暖化の進展により農産物の適地が移動することを見越し、中山間地域や海岸地域など条件の異なる管内4地区で営利生産に向けた栽培観察と検証を行う。収穫は2022年の予定。商業ベースに乗れば、現在の北限とされている茨城県・筑波山西麓に代わる露地ミカン生産の北限となる。試作導入するのは、早生種の「興津早生」100本と晩生種の「青島温州」10本。管内の希望する農家20人に配布した。試作する農家の一人、伊達市霊山町の佐藤孝一さん(64)は、4月中旬に「興津早生」4本を定植した。佐藤さんは「温暖化が進み、作ってみたいと思った。普段はあんぽ柿を作っているが、ミカンを作る選択肢ができるようになればいい。後継者がミカンもできるんだと思えるように栽培技術が確立することを期待している」と話す。今回植えたのは2年生苗。JAは、主産地である静岡県のJAみっかびと連携しながら同JAの栽培指導の資料を基に、技術を指導していく。22年に初収穫したミカンは、試作者全員で試食し、適地の確定と推進策を検討する。JAは「地球温暖化は進んでおり、将来の産地を維持する対策が必要になる。品質、量ともに安定生産できるめどが立てば、露地ミカンを桃、柿に続く果樹品目として普及を検討していきたい」と話している。

*5-2:https://www.agrinews.co.jp/p46461.html (日本農業新聞 2019年1月18日) 米粉用で多収品種 難消化性でんぷん豊富 ダイエット食材に 秋田県立大など
 秋田県立大学などが、多収で消化しにくいでんぷん(難消化性でんぷん=RS)を含む新たな米粉向け品種「あきたさらり」を育成した。10アール当たり収量が800キロ程度と多収で、栽培コスト低減が期待できる。RSの含量は3%で、「あきたこまち」の3倍以上と多い。ダイエットなど健康志向の消費者にPRできることから、県内企業と、同品種の米粉を使ったうどんなどの商品開発を進めている。「あきたさらり」は同大と県農業試験場、国際農林水産業研究センター(JIRCAS)などが育成。2018年秋に農水省に品種登録出願を申請し、出願が公表された。米粉は製粉費用がかかるが、多収で栽培コストを下げることでカバーする。熟期は「あきたこまち」より1週間遅く、作業分散が期待できる。同大と企業の共同研究で、米粉を小麦粉に20%ほど混ぜてうどんを作ると、腰が強く、ゆでた後もべたつきにくい麺が作れることが分かった。「あきたさらり」はアミロース含量が高く、大粒で米粉適性が高い。同大生物資源科学部の藤田直子教授は「小麦アレルギーの人向けに、グルテンフリーのうどんなども作れる可能性がある。水田転作にも役立つ」と期待する。現在の栽培面積は約1ヘクタールだが、さらに拡大する見込みだ。

<都会の暑さとCO₂を利用>
PS(2019年8月25日追加):*6-1のように、東京都千代田区の住友商事ビルのエアコン室外機近くにつった布袋でサツマイモを栽培し、給水や給肥はチューブを通して自動で行って、猛暑でも順調に育っているそうだ。その狙いは葉や茎から出る水蒸気が周辺の温度を下げる省エネ効果で、室外機の運転効率が1割ほど向上し、ヒートアイランド現象対策にも繋がるとのことだが、都会で豊富なCO₂もプラスに働くので、*6-2のキャッサバもよさそうだ。


          2019.8.22日本農業新聞       2019.2.10東京新聞

(図の説明:左の2つは、*6-1のサツマイモ、右の2つはタピオカ原料のキャッサバ芋で、どちらも暑さに強く、炭素を固定化するのが得意なので、都会のビルの屋上にうってつけだ)

*6-1:https://www.agrinews.co.jp/p48509.html (日本農業新聞 2019年8月22日) 都会の温暖化 “救世主”は芋
 ビルの屋上に緑のしま模様を描くサツマイモの葉──。東京都千代田区にある住友商事美土代ビルの、エアコンの室外機周りにつった布袋で芋を栽培する屋上緑化が注目されている。住友商事と設計事務所の日建設計が2014年に始めた。9階建てビルの屋上に土が入った150の袋が並び、それぞれサツマイモが2株植えてある。給水や給肥はチューブを通して自動で行う。狙いは省エネだ。葉や茎から出る水蒸気が周辺の温度を下げる効果で、夏場は室外機の運転効率が1割ほど向上。ヒートアイランド現象対策にもつながるという。毎年秋に地元高校生と住友商事の社員らで芋を収穫。熊本県の造り酒屋で、屋上にちなんだ「頂(いただき)」と銘打った芋焼酎にしている。同社ビル事業部の高橋俊貴さん(26)は「猛暑でも毎年順調に育つサツマイモの強さは驚きだ」と話す。

*6-2:https://www.agrinews.co.jp/p48511.html (日本農業新聞 2019年8月22日) ブーム続く タピオカミルクティー 牛乳消費 盛り上げ 若者需要けん引期待
 若い女性を中心としたタピオカミルクティーの一大ブームで、牛乳特需が起きている。熊本県の人気店では、1日に約100リットルの加工乳を消費。東京のチェーン店では、8店舗で牛乳1000リットルを使う。酪農関係者は「飲食店としては類を見ない消費量」と驚く。若者向けの新需要として、期待を集めている。熊本市にある「熊本ミルクティー」。休日は開店から閉店まで、列が途切れない人気店だ。メイン客である10、20代の女性の心をつかむのがタピオカミルクティー(500ミリリットル、500円)。濃く煮出した台湾茶に冷たい加工乳をたっぷり注いで作る。1日に約900杯を売る。他店との違いは、ミルクへのこだわりだ。ショーケースには、地元の熊本県酪連(らくのうマザーズ)が県産生乳から作る加工乳「らくのう特濃4・3」のパックがずらり。購入した20代のOLは「ミルクが濃厚だ」とほほ笑む。同店で使う加工乳は、1日約100リットル。新原一季店長は「ミルクは味を決める重要なもの。今の原材料を使い続ける」と強調する。東京を中心に8店舗を展開するTAPISTAでは、成分無調整牛乳を使ったタピオカミルクティーが支持を集める。8店舗で使う量は1日1000リットル。同店は「甘さと強いこくがあるものを選んでいる」と説明。他に、25店を展開する人気チェーンの「THE ALLEY」も一部メニューに牛乳を使っている。近年、健康志向の高まりで牛乳消費は堅調に推移。ただ、けん引するのは高齢者で、若者の消費は伸び悩んでいた。若者の牛乳消費を引き上げるタピオカミルクティーに、酪農業界も期待。らくのうマザーズは「一過性に終わらず、販路として広がってほしい」と話す。
<ことば> タピオカミルクティー
 ミルクティーに、キャッサバ芋のでんぷんで作った粒「タピオカ」を入れた飲み物。2018年にブームに火が付き、19年も新規出店が相次いでいる。1990年代や2000年代にも流行した。台湾発祥。現地では脱脂粉乳を使うのが主流だが、日本では牛乳や加工乳を使う店も出てきている。

<温暖化と豪雨>
PS(2019年8月29、30日追加):近年は明らかに豪雨が増え、長崎県・佐賀県・福岡県に大雨を降らせた*7-1-1・*7-1-2の北部九州豪雨は記録的だった。これだけ大きければ激甚災害の指定を受けられるだろうが、被害状況を見ると、少し高い場所にある住宅は浸水を免れており、今後は豪雨も想定した災害に強い街づくりをすべきだ。農業は、保険をかけているものとそうでないもので明暗が分かれるが、稲が水没しても比較的被害が少ないことにはいつも感心する。
 しかし、*7-2のように、かんきつ類を除く常緑果樹(オリーブ・マンゴー・アボカドなど)の栽培面積が10年間で5割増加して1000ヘクタールを突破し、国産原料をアピールする食品会社や飲食店などから引き合いが強くて、産地が栽培規模を拡大しているそうだ。マンゴーの伸び悩みの原因は価格を高く設定しすぎて日常使いになれなかったことなので、オリーブオイルも高すぎない価格設定にしなければ同様になると私は思うが、地球温暖化の影響で作物の変更がやりやすくなった。そして、*7-3のバニラも有望で、タコは中国や欧米で需要が急増しているため、日本が農林水産物の自給率アップだけではなく、輸出国にもなれるような基盤整備をすれば、面白いビジネスができると思われる。
 また、*7-4のように、人口増・食の洋風化でカカオ豆の消費が世界的に伸び、サイクロン被害も手伝って、カカオ豆やバニラ豆の輸入価格が上昇傾向だそうだ。バニラ豆もカカオ豆も赤道付近が栽培に最適でアフリカ以外に調達先を広げるのは容易ではないと書かれているが、バニラは刀豆とかけ合わせるなどして、健康に良く日本でも大量に栽培できる農産品にできないか?
 なお、*8のように、豪雨で冠水被害などに見舞われた佐賀県武雄市や大町町などが、災害ボランティアの受け付けを8月31日から始めるそうだが、それに加えて、県か被害のなかった市町村がふるさと納税の募集を代行してはどうだろうか?

 
 2019.8.28天気            2019.8.28毎日新聞


日本のバニラ栽培   鹿児島の刀豆   日本のマンゴー栽培   日本のアーモンド並木

*7-1-1:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/419657 (佐賀新聞 2019年8月28日) 【佐賀豪雨】濁流一気「まるで川」 武雄市、広範囲に被害
 「通りが川になり、瞬く間に水が入ってきた」。28日未明からの記録的大雨は、佐賀県中西部に大きな被害をもたらした。武雄市では市が「数百件に及ぶため把握不能」とするほど広範囲で浸水。飲食店が集まる武雄町の中心部では何店もが「数日は営業は無理」と口をそろえ深刻な被害が広がった。北方町や杵島郡大町町では水が引かずに孤立する人が相次ぎ、夜になってもボートによる救助や物資運びが続いた。「変な音でドアを開けたら一気に水が入ってきた。通りは川みたいで、あわてて隣のビルの2階に逃げた」。武雄市中心部の飲食街中町通りの飲食店主は、28日午前4時ごろに急変した町の様子を語った。スナック経営の女性は「雨がひどくて帰れず、店で寝ていたら冷たい水を感じて起こされた。ひざ上まで水が入り冷蔵庫が水に浮いた。何もできなかった。電気もつかない。しばらく店は開けられない」と途方に暮れた。周辺の店も同様で、疲れた様子で片付けを続けていた。松浦川が氾濫した武内町も広範囲で冠水した。自宅前のビニールハウスがつぶされたアスパラ農家の浦郷敏郎さん(66)は「濁流にのまれるハウスをただ見ているしかなかった。ハウスは保険で建て直せるけど、作物は全部ダメになった」と肩を落とした、勤め人を辞めて就農して7年目。「これからどやんしゅうか。もう(農業を)やめないかんかなあ」と漏らした。車に乗ったまま水に流され男性1人が死亡した現場は武雄町西部の住宅街。道路から10メートルほど離れた田んぼの中に男性が乗っていた軽乗用車があった。近くの人は「道路脇の小川があふれて道に水が流れ込んでうずになり、水が車をさらうように田んぼに流したと聞いた」と話した。車の周囲の稲穂は乱れもなく、屋根付近まで水につかったとみられる。別の車も水田横の店の一角に乗り上げていた。大雨の影響で市役所も1階が浸水して窓口業務を休止。スーパーや飲食店も休店や開店遅れが相次いだ。

*7-1-2:https://www.nishinippon.co.jp/item/n/538800/ (西日本新聞 2019/8/29) 九州北部記録的大雨 2人死亡88万人避難指示 3県に特別警報
 対馬海峡付近に停滞する秋雨前線の影響で、九州北部地方は28日、観測史上最大を記録する猛烈な雨となり、佐賀県などで冠水被害が相次いだ。気象庁は一時、同県の全20市町、福岡県筑後地方の14市町村、長崎県の7市町に大雨特別警報を発表、3県で最大約37万700世帯、88万2800人に避難指示が出た。福岡県八女市で車から泳いで避難していた浜砂国男さん(84)と、佐賀県武雄市で車ごと流された50代男性が死亡した。特別警報は同日午後に解除されたが、29日も非常に激しい雨と土砂災害に厳重な警戒が必要だ。九州北部に、積乱雲が次々と発達して帯状に連なる「線状降水帯」が発生した影響で、佐賀県では28日明け方に1時間100ミリ超の猛烈な雨が降り、広範囲で冠水した。午前5時15分ごろには、同県武雄市武雄町武雄の武雄川で「軽乗用車が流されている」と通行人から110番があった。約2時間後、田んぼで水没した車が見つかり、運転席にいた50代男性の死亡が確認された。福岡県八女市立花町では午前7時50分ごろ、近くの浜砂さんが運転する車が冠水した道路を走行中に流された。浜砂さんは近くの男性から助け出され、泳いで避難している途中で用水路に流された。約2時間後に近くで心肺停止の状態で見つかり、搬送先の病院で死亡が確認された。佐賀市水ケ江では、70代女性の軽乗用車が水路に転落。女性は水没した車の運転席から救助されたが意識不明の重体という。佐賀県警によると、車で仕事に向かった武雄市武内町の50代女性が行方不明。車は武雄川の下流で水没した状態で見つかった。佐賀県大町町では「佐賀鉄工所」が冠水し、タンクから大量の油が流出。近くの住宅地や病院に流れ込んだ。流出した油は最大で8万リットル。近くの六角川や有明海への流出は確認されていないという。気象庁によると、降り始めから28日午後10時までの総降水量は、長崎県平戸市527ミリ▽佐賀市458ミリ▽福岡県久留米市399ミリで、いずれも8月の平年降水量の倍以上を記録。佐賀市では同日明け方の1時間雨量が観測史上最大の110ミリに達した。福岡県久留米市の巨瀬川、佐賀県多久市と小城市の牛津川、同県伊万里市の松浦川が一時、氾濫した。佐賀市では土砂崩れで送水管と配水管が破損、約750世帯で断水している。28日午後10時現在、佐賀、長崎両県の計約17万3700世帯、計41万2200人、福岡県で久留米市など3市村の約11万7800世帯、26万9400人に避難指示が出ている。3県の避難者は計約3200人。前線の停滞は30日にかけて続き、30日午前0時までの24時間降水量は多いところで福岡、佐賀、長崎150ミリ、大分120ミリ、熊本100ミリの見込み。
   ◇    ◇
■病院冠水201人孤立 佐賀・大町
 28日の記録的な大雨で佐賀県大町町の順天堂病院が冠水し、患者や職員ら201人が孤立状態となっている。病院には近くの鉄工所から流出した油を含んだ水も流入、患者らは上階に避難している。全身の筋肉が萎縮していく難病の筋ジストロフィー症などで人工呼吸器を付けた重症患者も多く、別の病院への避難は難しいという。県は自衛隊などと連携し、支援策を検討している。県医務課などによると、敷地内には3階建ての病院のほかに、2階建ての老人保健施設がある。入院患者110人、施設利用者は70人。病院職員や介護職員の多くは出勤できておらず、県などは看護師らスタッフの送り込みを検討中。電気やガスに影響はないが、水道が止まっており、予備のタンク(1・5日分)で対応している。同病院の看護師は電話取材に「容態が切迫した患者さんはいません。大丈夫です」とだけ話した。

*7-2:https://www.agrinews.co.jp/p48543.html (日本農業新聞 2019年8月25日) 常緑果樹1000ヘクタール突破 かんきつ除き農水省が調査 06年→16年 5割増加 輸入より国産 オリーブ7倍
 オリーブやマンゴーなどの常緑果樹(かんきつ類を除く)の栽培面積が1000ヘクタールを突破したことが農水省の調べで分かった。10年間で5割増えた。常緑果樹は輸入に頼る品目が多いが、国産原料をアピールする食品会社や飲食店などから引き合いが強く、産地が栽培規模を拡大している。同省は2016年、都道府県単位で50アール以上栽培されているなどの要件を満たす常緑果樹について調査。栽培は14品目、1082ヘクタールに上った。10アール以上の栽培がある品目を対象にした06年の調査では16品目、715ヘクタール。10年間で51%増えた。増加が目立ったのはオリーブで、06年の61ヘクタールから7倍の423ヘクタールに拡大した。栽培地域は2県から14県に増えた。同省は「若者を中心にオリーブオイルが注目され、国産原料の需要が増えて各地で栽培が広がった」(園芸作物課)と指摘。収穫後の劣化が早いため、国産需要の確保・拡大には、搾油のための加工場の整備など、6次産業化が必要とみる。マンゴーは421ヘクタール。面積はオリーブに次ぐ2位だが、06年で348ヘクタールと一定の規模が栽培されていた。ブームが落ち着いたことが影響し、11年の454ヘクタールをピークに減少傾向にある。栽培面積はまだ少ないが、生産が本格化しつつあるのがアボカド。14年の調査で3ヘクタールの栽培を初めて確認し、16年は9ヘクタールに増えた。同省によると、国内流通の大半は輸入品。国産需要の獲得に向けて、同省は栽培マニュアルをまとめるなどして導入を推進している。

*7-3:https://digital.asahi.com/articles/DA3S14154991.html (朝日新聞 2019年8月27日)(アフリカはいま TICAD7)異変、バニラバブル 5年で10倍、銀より高値
 庶民の味として親しまれてきたタコやバニラが高級品になりつつある。異変が起きた理由が、日本から遠く離れたアフリカにあった。アフリカ大陸の東方に浮かぶ島国マダガスカル。世界のバニラ豆の約8割を生産し、日本は9割強をここからの輸入に頼っている。首都アンタナナリボから北東に約500キロ離れたサバ地方は温暖で適度な湿度が保たれ、特に生産に適している。アンタラハという町から小型のボートで1時間揺られた先に、広大なバニラ農園が見えてきた。バニラ農家のファーリン・ジュディさん(26)は「土壌によって手入れの仕方を変えるなどして、品質を保つよう努めている」と語った。この地で異変が起きたのは5年ほど前。天然のバニラ人気が強まった欧米に加え、中国などでケーキやアイスクリームに使うバニラの需要が増え、取り扱う業者が急増。投機的な買い上げの動きもあり、2013年に1キロ当たり約5千円だった取引価格は、急上昇した。さらに追い打ちをかけたのが、自然災害だ。17年にサイクロンの被害を受けて一時、約6万円まで高騰。18年も価格は高止まりし、1キロあたりの取引価格は同じ年の銀の1キロ当たりの輸入価格(約5万5千円)を超えた。30年前からこの地に進出し、バニラ豆を輸入してきたミコヤ香商(東京)の水野年純社長(59)は「バブル状態が続いている」と話す。高騰などを受けて、ハーゲンダッツジャパンは今年6月出荷分から主力のアイスクリーム約20品目を23~85円値上げ。同社広報部は「バニラ味のアイスは一番人気だが、バニラの仕入れ価格はこの数年で10倍になった」と頭を抱える。1人当たりの国民総所得(GNI)が約400ドル(約4万2千円)にとどまるマダガスカル。トタンなどでできた家で暮らす人も多い。だが、サバ地方では、欧州や日本製の高級車を頻繁に見かけた。水野社長は「バニラ高騰でもうけた業者たちだ」と言った。地元で「バニラ御殿」と呼ばれる豪邸も点在していた。一方、価格高騰で農家らを悩ませているのが「バニラ泥棒」の増加だ。英誌エコノミストによると、年間の収穫物の15%以上が盗難にあうため、被害を防ぐために十分に育つ前に収穫する農家も出てきたという。バニラ輸出業者の「アグリ・リソース・マダガスカル」でも今年、バニラ豆の一部が盗まれた。マチュー・ルーガー最高経営責任者(CEO)(39)は「夜にパトロールをしていても、完全に食い止めるのは難しい」とぼやく。
■タコも高騰、欧米でも需要急増
 サハラ砂漠の西側にあるモーリタニア西部の港町ヌアディブ。タコつぼ漁を終えた漁師が12メートルほどの木製ボートで次々に漁港に戻ってきた。近くの水産加工会社のジャミラ・ベルハディール社長は「5年ほど前までは、タコのほとんどは日本向けだった。それが、最近は欧州勢が次々に参入して輸出先の8割が欧州になった」と明かす。タコ輸入業者などによると、日本で流通するタコの約半数が、モーリタニアかモロッコ産。現地はタコの餌となる貝が豊富で、日本は古くから地元でタコつぼ漁などの指導にあたってきた。欧米ではかつて、タコは「デビルフィッシュ(悪魔の魚)」と呼ばれ、競争相手は少なかったという。ところが、両国と距離が近いスペインやイタリアに加え、ヒスパニック系住民が増えた米国などで需要が増加。日本が仕入れる大きさのタコでは、昨年のモーリタニア産の仕入れ価格は一時、5年前の約2倍になり、過去最高水準を記録した。別の水産加工会社のヤクブ・エルナミ社長は「今は世界中でタコを食べるのが一種のファッション。日本の支援には感謝しているが、高く買ってくれるところに売るのがビジネス」と語る一方、「中国漁船が一気に増えて、他の魚と一緒に小さなタコも取ってしまっている」と打ち明けた。現地の邦人企業の担当者は「タコが大衆向けだった時代は終わった。たこ焼き屋でも、タコの粒を小さくしたり、別の国から仕入れたりするところも出ている。質は西アフリカ産が一番だが」と話した。

*7-4:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190829&ng=DGKKZO49088230Y9A820C1QM8000 (日経新聞 2019年8月29日) カカオ豆、価格引き上げへ 西アフリカ2カ国が「COPEC」 農家の手取り増狙う
 チョコレート原料のカカオ豆の取引価格を引き上げる動きが出ている。主産地のアフリカのコートジボワールとガーナが今夏、カカオの販売価格の引き上げで協調した。取り組みは原油市場の石油輸出国機構(OPEC)と似ており、カカオの頭文字をとって「COPEC(コペック)」とも呼ばれる。農家の手取りを増やす試みでカカオ豆が値上がりする可能性もある。カカオは年間の平均気温が27度以上の高温多湿な場所で栽培され、西アフリカが主産地。世界では生産量1位のコートジボワールと2位のガーナの両国で約6割のシェアを占める。その両国がカカオ豆の価格底上げを目指して今夏、1トン2600ドル(約2100ポンド)を最低販売価格とすることを国際会議で提案した。指標となるロンドン市場のカカオ豆先物相場は過去2年ほど1400~1900ポンド前後で推移していた。5年ぶりの低水準で生産者の間で不満が募っていた。両国の提案は価格水準を引き上げ、農家への配当拡大や持続可能な生産につなげる狙いがある。両国の提案を巡っては「市場価格と乖離(かいり)し、需要家企業と折り合いがつかなかった」(専門商社)ため流れたもようだ。代わりに両国が2020~21年度産で販売する全契約分に1トン400ドルの価格を上乗せする方針となった。国内のカカオ豆のトレーダーや食品会社には「価格押し上げ要因になる」との懸念が広がる。人口増や食の洋風化でカカオ豆の消費は世界的に伸びている。足元の相場は1700ポンド台に下がったが、7月上旬には産地の降雨不足と高値維持姿勢が材料視され、1年2カ月ぶりの高値をつけた。天候の変動に加え、生産国の価格政策が値動きを荒くさせている。同じくアフリカのシェアが高い農産物でも、高値が長期化しているのがアイスクリームなどの香料に使うバニラ豆だ。インド洋に浮かぶ島国のマダガスカルは日本の輸入元シェアでも約9割を占める。世界的にアイスクリームやケーキ向けの需要が伸びる一方、2年前に産地を襲ったサイクロンで花の受粉がうまくいかず生産が減った。日本の輸入価格も上昇傾向で、貿易統計によると19年1~6月平均で1キロ当たり4万8千円。サイクロン被害前の16年平均と比べると2倍以上だ。香料の原料を扱う輸入会社は「高値が限界点を超えた印象」と話す。日本では原料高でハーゲンダッツジャパンなどがアイス値上げに動いた。バニラもマダガスカルなどの安価な労働力が供給を支えてきたが、同国では18年の全産業の最低賃金が前年比で8%上昇。産地のドル建て価格も上昇している。パティシエなどが使う製菓向けの高級品は1キロ550~600ドル程度と、15~16年度の2倍近い水準だ。高値が新たな供給不安を誘発するケースも起きている。マダガスカル産地では価格が上昇したバニラビーンズを略奪するため、窃盗集団が栽培農家を襲撃するトラブルも相次ぐ。業界では「バニラ戦争」とも呼ばれる。農家は自衛手段を迫られ、生産コストを押し上げる要因になっている。バニラ豆もカカオ豆も赤道付近が栽培に最適とされ、アフリカ以外に調達先を広げるのは容易ではない。需要家企業などは天候や政情、産地の価格政策など苦い供給リスクに対して一段の備えが必要だ。

*8:https://www.nishinippon.co.jp/item/o/539248/ (西日本新聞 2019/8/30) 佐賀でボランティア受け付け開始
 猛烈な雨で冠水被害などに見舞われた佐賀県武雄市や大町町などは、災害ボランティアセンターを設置し、31日から受け付けを始める。避難所への救援物資の運搬のほか、浸水した路上の泥のかき出し作業や住宅の清掃などを想定している。避難中で自宅に戻れない住民も多く、ニーズの把握が困難なこともあり、武雄市と大町町は31日のボランティアは、原則的に県民に限定する。大町町社会福祉協議会によると、30日にセンターを設置して以降、県内外から問い合わせの電話が相次いでいるという。

| 農林漁業::2019.8~ | 03:16 PM | comments (x) | trackback (x) |
2019.8.1 日本の防衛・外交と日米安全保障条約について (2019年8月1、2、3、4、5、6、8、9日に追加あり)
    
   2019.7.26Goo      原発所在地  使用済核燃料所在地 2017.3.7朝日新聞

(図の説明:左図のように、北朝鮮が2019年7月25日に発射した短距離ミサイルは、方向を変えれば、釜山はじめ中央の2つの図の西日本にある原発及び大量の使用済核燃料保管場所に届く距離を飛行した。これは、核兵器を積まなくても、核攻撃して目標国の国力を削ぐことが可能であることを意味する。仮に釜山で原発が爆発すれば、右図のように、放射性物質は日本国内の広範囲を直撃し、対馬海流に乗って日本海に広がる)

    
    米軍基地の所在地とその面積       南西諸島     自衛隊の増強

(図の説明:左の2つの図のように、在日米軍基地は驚くほど多いが、現在は、その多くが不要だと思われる。また、1番右の図のように、自衛隊の増強計画も進んでいるが、どちらも日本国民や日本の領土・領海を護る目的に適合した最小限の規模にすべきだ)

(1)朝鮮半島・領土・ホルムズ海峡の問題について
1)日本と米国・韓国・北朝鮮の関係
 トランプ米大統領は、*1-1-1のように、米朝首脳会談後に米韓合同軍事演習の中止を表明し、米朝高官協議を通じて非核化に向けた道筋づくりを急ぐ考えだそうだ。

 しかし、*1-1-2に、トランプ米大統領が米朝首脳会談で朝鮮戦争の終結合意に署名して朝鮮戦争が終結すれば日本の横田基地にいる国連軍が撤退することになるため、それは日本の安全保障に影響し、日本にとって不利益だと書かれている。私は、1950年から70年近くも経過しているのに、日本のために朝鮮戦争終結を邪魔して現状維持を続けさせるのは利己的だと思うが、朝鮮戦争終結の条件には、朝鮮半島の民主化を課した方がよいし、朝鮮戦争を終結させて横田基地を返還してもらった方が日本も良いのではないかと思う。

 このような中、*1-1-3のように、2019年7月25日、北朝鮮が東部の元山付近から日本海に向けて飛翔体(韓国政府が「ミサイル」と特定)を発射し、その飛行距離は1発目が約430km(韓国、釜山に到達する距離)、2発目が約690km(日本、玄海原発・島根原発・伊方原発を含み四国に届く距離)だった。地図上でコンパスを回せばすぐわかるように、これは日本に届く日本を標的にするものだと思われる。しかし、日本政府が、これをミサイルと特定もできずに、「飛翔体」「情報を集める」と連発していたのは情けない。

2)竹島
 2019年7月23日には、*1-2-1・*1-2-2のように、ロシア機2機、中国機2機が、島根県の竹島(韓国名・独島)の韓国が主張する防空識別圏(KADIZ)に進入し、ロシア機1機が竹島上空を領空侵犯したため、韓国軍が戦闘機を緊急発進させて360発の警告射撃を行った。

 これに対し、日本の自衛隊機も緊急発進し、政府はロシアと韓国の両方に形式的に抗議したそうだが、これらの対応は、竹島の領有権が韓国にあることを世界に印象付けたように思う。

3)尖閣諸島
 日本が実効支配している尖閣諸島についても、*1-3-1・*1-3-2のように、沖縄・尖閣諸島周辺の日本の領海に領有権を主張する中国の公船が盛んに侵入し、中国海警局に所属する公船が領海の外側を2カ月以上連続航行したり、領海に侵入したりしたが、日本ではTVで報道されることもなく、海上保安庁が警戒を強めているだけだ。しかし、日中関係が良好か否かとは別に、これは国境警備であるため、本気で領有権を主張するのなら海上自衛隊が出るべきだ。

 日本の防衛省は、*3-2のように、尖閣諸島・南西諸島の防衛力強化を既にすませており、尖閣諸島の領有権が中国にあることを示したい中国の行為については、既に情報分析ばかりしている時期ではない筈だ。

4)ホルムズ海峡
 「イランが日本の船舶を攻撃した」として始まったホルムズ海峡の緊張は、*1-4-2のように、「船舶の安全確保に向けた有志連合」ができつつある。しかし、この有志連合は、国連安保理決議を経ずに行う軍事行動で、イランは日本の船舶を攻撃したことを否定しているため、平和憲法を有する日本の自衛隊が、自らの国境警備はさておいて、こういう場所に出ていくのは適切ではない。

 さらに、ホルムズ海峡は日本が輸入する原油の約8割が通るエネルギー供給の生命線と言われ続けているが、いつまでもここの原油にエネルギーの大半を依存していることこそ、日本が最も改善すべき問題だろう。

 なお、イランが6月に米軍の無人偵察機を撃墜し、7月には米軍がイランの無人機を撃墜したが、トランプ大統領は、6月に米軍の無人偵察機が撃墜された翌日には、イランへの報復攻撃を準備して攻撃10分前に中止を命じていたそうだ。これは、かなり乱暴な気がする。

 一方、英国のハント外相は、*1-4-1のように、中東のホルムズ海峡で英国船籍のタンカーがイランの革命防衛隊(イラン政府との関係は不明)に拿捕された問題については欧州各国と共同でこの付近を航行する船舶の安全を確保する作戦を展開する方針を発表し、イランへの圧力を強める米国主導の「有志連合」には一定の距離を置いたそうだ。

 では、「日本はどうすべきか?」については、イラン政府の指示ではない「海賊行為」なら、それに対応すべき組織は、日本の自衛隊ではなく、ホルムズ海峡を領海とする国の海上警察だと、私は考える。

5)核兵器廃絶
 核兵器については、(北朝鮮だけでなく)イランについても英国と米仏独中ロが対イラン間で核兵器開発を制限する代わりに金融制裁や原油取引制限などを緩和する合意を結び、米国は昨年5月、この合意から離脱したそうだ。

 しかし、核兵器を使えば地球が汚染されるため、どの国も核兵器を廃棄し核兵器の開発は中止して欲いもので、それこそ日本がはまり役になる最も重要な仕事だろう。これには、*4-1のような被爆地の活動も極めて重要だが、*4-2のように世界の宗教指導者が宗教の枠を超えてテロや核の問題について話し合い、原発も含めてメッセージを出すことは、日本人の想像以上に影響力があるかも知れない。

(2)日米安全保障条約について
 よくタブーに切り込む米国のトランプ大統領が、*2-1のように、「日米安全保障条約は米国にとって不公平な合意だ」と主張し、見直しに言及したそうだ。日本にとって日米安全保障条約は、平和憲法下の安全保障政策の基盤になってきただけに重大な発言なのだが、「トランプ氏の主張は正確な認識に基づかず、一方的だ」とするのも、日本をひいき目で見すぎである。

 何故なら、トランプ大統領は「日本が攻撃されたら米国は日本のために戦わなくてはならないが、米国が攻撃されても日本は戦わなくてもいい。不公平だ」と述べておられるからで、トランプ大統領に限らず米国大統領は米国の有権者によって選ばれるため、日本が基地を提供して在日米軍駐留経費・騒音対策費を負担していても、日本を護るために米国人の血が流れれば大統領の再選が危うくなり、他の人でも同じことを言う可能性が高いからである。また、近年は大陸間弾道ミサイルができ、サイバー攻撃も盛んになったため、基地の重要性は低下しているだろう。

 ここで考えておくべきことは、第二次世界大戦後、戦争をし続けてきた米軍に自衛隊が一体化しすぎて一緒に戦争をすることにならないためには、集団的自衛権の行使を解禁する安保関連法が制定されてしまった現在、日本国憲法の平和主義は絶対に守らなければならない最後の砦になったということだ。

 *2-2の日米安全保障条約の重要な点を見ると、「①前文:締約国は、他の平和愛好国と協同して国際平和と安全を維持する国際連合の任務が効果的に遂行されるように国際連合を強化することに努力する」「②第4条:締約国は、この条約の実施に関して随時協議し、日本の安全や極東における国際平和と安全に対する脅威が生じた時は一方の締約国の要請により協議する」「③第5条:各締約国は、日本の施政下にある領域での一方に対する武力攻撃が自国の平和と安全を危うくすることを認め、自国の憲法上の規定・手続に従つて共通の危険に対処するように行動することを宣言する」「④最後:この条約が十年間効力を存続した後は、いずれの締約国も他方の締約国に対しこの条約を終了させる意思を通告することができ、その場合、この条約は、通告後一年で終了する」と書かれている。

 このうち①②③はよいが、④で1970年以降はどちらの締約国からも条約終了の意思を通告することができるとされており、日本は、自らの領土・領海を護ることをもっと真剣に考えなければならない。

 このような中、*2-3のように、改憲の国民投票に「賛成」が全体で52%、18~29歳の若者は63%というのは、戦争になればよほど大変になる若者が、それを理解した上で意見を持っているのか不明だ。

(3)米軍基地の返還を進めて1/10まで縮小しよう 
          ← 最優先は普天間基地の辺野古移設なき返還
 トランプ米政権は、*3-4のように、「同盟のコストを米国ばかりが負担しているのは不公平だ」として、在日米軍駐留経費の日本側負担の3~5倍の増額を日本政府に求めているそうだ。確かに米国人から見れば米軍の外国駐留は公金の無駄遣いに見えそうだが、日本は米国とのFTAを通じて経済上の譲歩を迫られる可能性が高く、それでは日本経済を犠牲にするため、この機会に同盟のあり方を見直すのがよいと思う。

 例えば、①膨大な米軍基地を本当に必要な最小限の場所に絞り ②他は返還を進めて米軍基地を現在の1/10以下に減らし ③日本の国防のために本当に必要な場合は自衛隊基地を共用する などである。そうすれば、在日米軍駐留経費を現在の1/2以下に減らし、日米地位協定の問題を解決し、在日米軍には日本の防衛にのみ確実に付き合ってもらうことが可能になる。

 まずは、*3-1のように、基地を過重負担している沖縄の米軍基地を大きく減らし、全国知事会が言っているような跡地利用を行えば、新しい街づくりがやりやすくなって経済効果が高く、これは沖縄だけでなく他の地域でも同じだ。そして、米軍は、現在必要とされる国に配置換えすればよいだろう。

 なお、尖閣諸島を含む南西諸島の防衛のため、*3-2のように、沖縄県の石垣島・宮古島・与那国島、鹿児島県の奄美などに陸上自衛隊が配備されつつあるが、陸自だけで島嶼防衛は不可能であるため、海自・空自との連携は不可欠だ。しかし、住民を調査・監視したり、島嶼戦争の対スパイ戦の任務に当たらせるなどもってのほかであり、また、ここまで多くの島に基地を必要とするかも甚だ疑問だ。

 これまでの安全保障政策を見ていると、*3-3のように、国は、防衛省を拡大するために動いているだけで、本当に国民や領土を守るための行動はしておらず、セクショナリズムも太平洋戦争時と変わらないように見える。しかし、それでは困るし、日本国憲法にも反するのである。

<朝鮮半島・領土・ホルムズ海峡問題>
*1-1-1:http://qbiz.jp/article/135877/1/ (西日本新聞 2018年6月18日) 米韓軍事演習の中止「私が要請」 北朝鮮に譲歩の批判にトランプ氏
 トランプ米大統領は17日、米朝首脳会談後に表明した米韓合同軍事演習の中止について「私(から)の要請だ」とツイッターに書き込んだ。自分自身の判断に基づく提案であり、北朝鮮に譲歩したとの批判は当たらないとの主張。トランプ氏は最近、北朝鮮の金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長と17日に電話協議する可能性を示唆した。今週にも始まるとされる米朝高官協議を通じて非核化に向けた道筋づくりを急ぐ考えだ。トランプ氏はこの日、北朝鮮に関し複数のツイートを投稿した。軍事演習は「非常に金がかかり、誠実な交渉に悪影響を及ぼす。挑発的でもある」と持論を繰り返した。一方で「交渉が決裂したら即座に(演習を)始められる」ともくぎを刺した。12日の首脳会談に関し「北朝鮮との非核化合意はアジア全域から称賛、祝福されている。彼らはとても幸せだ」とアピール。「わが国には、トランプに勝利を与えるくらいなら、歴史的な合意が失敗した方がましだと思う人がいる。大勢の命を救えるかもしれないのにだ!」と非難した。

*1-1-2:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO31476480X00C18A6PP8000/?nf=1 (日経新聞 2018/6/7) 「朝鮮国連軍」撤退なら日本は… 横田に後方司令部、北朝鮮 米朝首脳会談 政治 朝鮮半島
 トランプ米大統領は7日の安倍晋三首相との会談後の共同記者会見で、12日に予定する米朝首脳会談では朝鮮戦争の終結合意に署名する方向で調整していることを明らかにした。朝鮮戦争が正式に終結すれば、米軍を中心とする朝鮮国連軍の扱いが論点になる。日本の米軍横田基地(東京都)には朝鮮国連軍の後方司令部があり、平和協定を結べば撤退することになる。朝鮮国連軍の撤退は日本の安全保障にも影響する。
朝鮮国連軍は1950年6月の朝鮮戦争勃発に伴い、安全保障理事会決議に基づいて組織された。現在、司令部はソウルに置かれ、司令官は在韓米軍ブルックス司令官が兼務する。参加国はオーストラリア、カナダ、韓国、英国など18カ国。再び交戦状態になった場合は各国が戦力を派遣する。ただ、実際に部隊を常駐させておらず、防衛省幹部は「今は実態はほとんどない」と語る。もともと朝鮮国連軍は米軍が主体だ。休戦協定を結んだ後も韓国に残った在韓米軍が実質的な朝鮮国連軍になっている。もし国連軍としての撤退が決まっても、休戦協定後に結んだ米韓相互防衛条約に基づき在韓米軍としては駐留を続ける。朝鮮国連軍は「国連軍」を冠した唯一の事例だが、国連憲章で想定する正規の国連軍とは微妙に異なる。国連憲章第7章は安保理が経済制裁などでは不十分と判断した場合、集団安全保障の一環で軍事行動をとることができると定める。特別協定に基づき国連加盟国が提供する兵力で組織し、常任理事国の代表者らで組織する軍事参謀委員会が指揮する。だが冷戦下の米ソ対立もあり、これまでこうした正規の国連軍が組織されたことはない。朝鮮国連軍の派遣は、当時のソ連が安保理を欠席するなか米国の主導で決まった。実質的にも米国が指揮していた。派遣時の司令部は東京にあった。休戦協定締結後の1957年にソウルに移転し、日本に後方司令部が残った。当初は米軍キャンプ座間(神奈川県)に所在していたが、横田基地にある在日米軍司令部との調整が増えてきたため、2007年に同基地に移転した。現在は豪空軍大佐のウィリアムズ司令官を含め4人が常駐。朝鮮半島有事の際には韓国に兵力を送る支援をする。在日米軍の権利を定める日米地位協定と同じように、朝鮮国連軍地位協定もある。協定に基づき在日米軍のキャンプ座間のほか、横須賀基地(神奈川県)や普天間基地(沖縄県)など7カ所の使用を認めている。家族らに免税などの権利も与えている。朝鮮国連軍の枠組みが生かされている事例はいまもある。たとえば、海上で積み荷を移し替え北朝鮮に石油などを密輸する「瀬取り」の監視だ。4月末に始めたオーストラリアとカナダによる航空機での監視活動は、朝鮮国連軍地位協定に基づき米軍嘉手納基地(沖縄県)を利用した。外務省関係者は「国連の旗の下に連携しているという象徴的な意味がある」と話す。仮に朝鮮戦争の終結が宣言されれば、どこかの段階で朝鮮国連軍は撤退することになる。地位協定は、後方司令部について朝鮮国連軍撤退後、90日以内に撤退すると定める。だが朝鮮国連軍が撤退する条件などは明確でなく、外務省によると「国際社会で議論する必要がある」という。日本政府内には朝鮮国連軍が撤退しても「大きな影響はない」との見方が多いが、米国以外の軍の艦船や航空機は在日米軍の基地を使いにくくなる。多国間の連携に影響が出る可能性がある。

*1-1-3:https://digital.asahi.com/articles/ASM7T4JLBM7TUHBI01P.html (朝日新聞 2019年7月25日) 北朝鮮の飛翔体は「ミサイル」 韓国政府が分析結果発表
 韓国軍の合同参謀本部は25日、北朝鮮が同日午前5時半すぎと同6時前に東部の元山付近から日本海に向け、短距離ミサイルをそれぞれ1発ずつ発射したと発表した。韓国政府は同日午後、「新型の短距離弾道ミサイル」だとする分析結果を発表した。国連安全保障理事会の決議に違反することになり、今後、韓米でさらに分析するとしている。韓国軍によると、飛行距離は1発目が約430キロ、2発目は約690キロ。高度はいずれも約50キロで、海上に落下したとみられる。北朝鮮のミサイル発射は5月9日以来。韓国外交省の李度勲(イドフン)朝鮮半島平和交渉本部長は金杉憲治・外務省アジア大洋州局長、米国のビーガン北朝鮮政策特別代表と電話会談。日米韓で情報共有することを確認した。安倍晋三首相は25日午前、静養先の山梨県で「我が国の安全保障に影響を与える事態ではないことは確認している」と述べ、ゴルフを続けた。5月9日のミサイルについて、日米は弾道ミサイルと分析したが、韓国は断定を避けてきた。韓国の専門家は、今回のミサイルは約50キロという高度から、5月に発射されたロシア製の短距離弾道ミサイル「イスカンデル」の改良型とみる。北朝鮮が再びミサイルを撃ったのは、非核化をめぐる米朝協議が思惑通りに進まず、米国を牽制(けんせい)して譲歩を迫る狙いがあるとの見方がある。北朝鮮はこのところ、米韓が8月に予定する合同軍事演習を繰り返し批判。先月の板門店での米朝首脳会談で合意した「実務者協議の再開に影響する」と反発していた。米韓の軍事演習は2017年まで毎夏実施されていたが、昨年6月にシンガポールであった初の米朝首脳会談を受け、トランプ米大統領が中止した。一方、今年は規模を縮小して行う予定だ。

*1-2-1:https://www.j-cast.com/2019/07/23363316.html?p=all (J-CASTニュース 2019/7/23) 竹島上空の韓国機「警告射撃」 ロシア、そして中国の思惑はどこにあるのか
 島根県の竹島(韓国名・独島)で、2019年7月23日午前、韓国が主張する「領空」をロシア空軍機が2度にわたって侵犯し、韓国軍は戦闘機を緊急発進させて警告射撃を行った。韓国軍の合同参謀本部が発表した。 韓国側は、ロシア機が韓国に対して「領空」侵犯したのは初めてだと説明している。特に韓国側が神経をとがらせているのは、「領空」侵犯の前に、中国機とロシア機がそろって、韓国が主張する防空識別圏(KADIZ)に進入したことだ。この狙いはどこにあるのか。
●ロシア機2機、中国機2機が韓国主張のADIZに進入
 韓国側の発表によると、ロシアの軍用機1機が午前9時9分ごろ、竹島上空の「領空」を侵犯。韓国軍は空軍の戦闘機を出撃させ、フレア投下と警告射撃などで対応したところ、ロシア機は9時12分に「領空」を抜け、さらにその3分後にKADIZの外に出た。だが、ロシア機は9時28分に再び「領空」を侵犯。韓国軍の警告射撃を再び受け、9時37分に竹島「領空」を離脱して北上し、9時56分頃KADIZを抜けた。ロシア機による「領空」侵犯は初めてだという。防空識別圏(ADIZ)は、領空に近づく航空機が敵機かどうかを判別するために設けられた空域のことで、他国機が事前通告なく飛行すると、国籍不明機として緊急発進の対象になりうる。中国はKADIZへの無断進入を繰り返しており、韓国が警戒する中での事案だ。今回の「領空」侵犯に先立って、中国、ロシアの軍用機が活発な動きを見せていた。6時44分、7時49分の2回にわたって中国機が2度にわたってKADIZに進入。その後、中国機は北朝鮮と韓国の海上の境界線にあたる、日本海上の北方限界線(NLL)付近まで上昇し、ロシア軍機2機と合流。8時40分頃、計4機で鬱陵島北方からKADIZに進入した。この後、別のロシア機が「領空」侵犯した。
●日本は韓国とロシアに抗議
 この背景にあるとみられるのが、韓国と米国が8月5日から23日にかけて予定している合同軍事演習だ。ソウル新聞では、「中ロの軍用機が東海(日本海)上空で合流して飛行したのは異例」で、「中ロの合同訓練を行ったものと推定される」とする軍関係者の声を紹介。米韓合同軍事演習を狙った「一種の対米圧迫形の『武力示威』だという分析も出ている」と伝えている。日本は韓国が竹島を「不法占拠」していると主張しており、竹島をADIZに指定できていない。ただ、今回のロシア機の行動に対して自衛隊機も緊急発進しており、日本はロシアと韓国の両方に抗議している。菅義偉官房長官は7月23日午後の記者会見で、「韓国軍用機が警告射撃を実施したことは、竹島の領有権に関する我が国の立場に照らして到底受け入れられずきわめて遺憾であり、韓国に対して強く抗議するとともに再発防止を求めた」
などと話した。

*1-2-2:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/404223 (佐賀新聞 2019年7月23日) ロシア軍機に警告射撃360発、竹島周辺、韓国軍「領空侵犯」
 韓国軍合同参謀本部は23日、島根県・竹島(韓国名・独島)周辺に領空侵犯したとするロシア軍機はA50空中警戒管制機で、2回の領空侵犯に対し、韓国軍機がロシア軍機の前方約1キロに向け計約360発の警告射撃をしたと明らかにした。ロシアや中国軍機は日本の防空識別圏にも入っており、菅義偉官房長官は23日の記者会見で、自衛隊機の緊急発進(スクランブル)で対応したと表明した。日本政府関係者によると、政府は韓ロ両政府に対し「わが国の領土での、こうした行為は受け入れられない」と外交ルートを通じて抗議した。韓国外務省当局者は「これを一蹴した」と述べた。

*1-3-1:https://digital.asahi.com/articles/ASM6L4VX0M6LUTIL01Y.html (朝日新聞 2019年6月24日) 中国公船の尖閣領海侵入、再び活発化 透ける習氏の思惑
 沖縄・尖閣諸島周辺の日本領海に、尖閣の領有権を主張する中国の公船が盛んに侵入している。日本の海上保安庁にあたる海警局に所属する公船は、領海の外側を2カ月以上連続で航行。これまでにない動きに、海保は警戒を強めている。その背景を読み解いた。尖閣をめぐる緊張関係は、民主党政権時代の2010年9月にさかのぼる。尖閣沖で海保の巡視船に衝突した中国漁船の船長が逮捕された事件をきっかけに、日本国内で領土保全を求める世論が高まった。その後、日本政府は12年9月に尖閣を国有化。以降、中国公船による領海への侵入や接続水域の航行が続いている。昨年まで減少傾向にあったその回数が目に見えて増え始めたのは、今年に入ってからだ。領海侵入は昨年9~11月は月1回、12月に国有化以降では初めてゼロとなった。ところが今年1~4月は毎月3回、5月は4回に増えた。6月19日までに侵入したのは延べ70隻に上り、すでに昨年1年間に並ぶ。接続水域の航行は、4月12日から6月14日にかけて過去最長の64日間連続を記録した。「依然として予断を許さない状況だ。事態をエスカレートさせることがないよう毅然(きぜん)として対応したい」。海保の岩並秀一長官は今月19日の会見でこう述べ、活発になる公船の動きに警戒感をあらわにした。なぜ突然、動きが活発になったのか。考えられるのは、中国軍が影響を与えている可能性だ。海警局は昨年7月、中央軍事委員会の指揮下にある部隊に編入された。日中関係に詳しい小原凡司・笹川平和財団上席研究員は、公船の動きは習近平・国家主席の意思にもとづくと分析する。「日中関係が良好になるなかで、国内からの『弱腰』批判を抑える政治的な意図があるのではないか」と指摘。「中国が尖閣を領有しようと圧力をかけ続ける長期的な構図は変わらない。海保はこうした動きに対応できるように体制の整備を急ぐべきだ」と訴える。ただ、現状では日中の「体制」には格差がある。中国は尖閣周辺に送る船の大型化を進める。大型になれば荒れた海でも安定して長期間活動でき、3千トン以上や5千トン以上の船も多くなった。今年に入ってからは8割ほどが3千トン以上という。一方の海保。尖閣警備に専従する巡視船計12隻を石垣島(沖縄県石垣市)と那覇市に配備しているが、ほとんどが1千トン級だ。ヘリコプターを2機搭載できる大型巡視船4隻を全国から順次派遣し、中国の大型船に対応している。さらに20年度中には6千~6500トンの3隻を鹿児島港に、21年度中に1隻を石垣島にそれぞれ新たに配備する方針を打ち出し、地元の自治体と調整している。尖閣周辺では中国海軍の軍艦も確認されており、日本側は神経をとがらせる。16年6月には戦闘艦艇が初めて接続水域に入ると、18年1月には潜水艦の航行も確認された。今月には沖縄本島と宮古島の間の公海を空母「遼寧」が航行した。通算で3度目のことだ。18年度の防衛白書は、中国側の動きについて「尖閣諸島周辺を含めてその活動範囲を一層拡大するなど、わが国周辺海空域における行動を一方的にエスカレートさせている」と指摘し、警戒している。防衛省は尖閣諸島を含む南西諸島の防衛強化を目的に、「日本版海兵隊」と言われる水陸機動団を昨年新設するなど「南西シフト」を進めている。尖閣周辺で見られる中国公船の動きに、海上自衛隊トップの山村浩海上幕僚長は18日の記者会見で「何か意図があって、命令があって彼らは動いているものだと思う」と述べ、「今後いろんな面で分析していく必要がある」と話した。

*1-3-2:https://news.biglobe.ne.jp/domestic/0727/ym_190727_8905001501.html (BIGLOBE、読売新聞 2019年7月27日) 中国公船4隻、尖閣諸島沖領海に一時侵入
 第11管区海上保安本部(那覇市)によると、27日午前10時17分から34分頃にかけ、中国公船4隻が相次いで沖縄県石垣市の尖閣諸島・久場島沖の領海に侵入した。4隻とも正午頃までに領海を出て同島沖の接続水域(領海の外側約22キロ)内を航行している。

*1-4-1:https://digital.asahi.com/articles/ASM7R23NHM7RUHBI003.html (朝日新聞 2019年7月23日) ホルムズ海峡、英は有志連合と距離 欧州各国と共同作戦
 中東のホルムズ海峡で英国船籍のタンカーがイランの精鋭部隊・革命防衛隊に拿捕(だほ)された問題で、英国のハント外相は22日、欧州各国と共同で、この付近を航行する船舶の安全を確保する作戦を展開する方針を発表した。イランへの圧力を強める米国主導の「有志連合」構想には一定の距離を置いた形だ。
●米主導の有志連合、慎重姿勢の国多く 自衛隊派遣には壁
 ハント外相は英議会で、イランの対応は「海賊行為」と非難。海峡に面したオマーンや米仏独などの外相と協議したと明かし、「この重要な地域で、乗組員と積み荷の安全な航行を支援するため、欧州主導で海上保護の作戦を展開するよう努める」と語った。ハント氏は「この作戦はイランに最大限の圧力をかける米国の政策の一部ではない。我々はイラン核合意の保護に引き続き努めている」と語った。イランを過度に刺激するのは避けた形だが、米国との協力については協議を続けるという。英国とイランの関係は急速に悪化している。英領ジブラルタル自治政府が今月4日、シリアに原油を輸送しようとした疑いのあるイランのタンカーを拿捕したことに、イラン側が強く反発。英国はペルシャ湾に配備した海軍艦艇で民間船舶を護衛しているが、英国の力だけではすべての船は守れないと指摘されていた。英国と米仏独中ロは2015年、イランとの間で、イランが核開発を制限する代わりに金融制裁や原油取引制限などを緩和する合意を結んだ。米国が昨年5月、この合意から離脱したが、欧州各国は維持を表明。英国は今回の問題があっても立場を変えておらず、一部で報道された制裁再開は見送った。

*1-4-2:https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/451127 (沖縄タイムス社説 2019年7月28日) [有志連合参加要請]緊張緩和へ役割果たせ
 緊張感が高まる中東・イラン沖のホルムズ海峡周辺を巡り、ポンペオ米国務長官は日本に船舶の安全確保に向けた有志連合への参加を呼び掛けている。テレビニュースのインタビューで明らかにしたもので、米国が公式に日本に参加要請を認めるのは初めて。有志連合は国連安保理決議などを経ずに行う軍事行動である。米側は対イラン包囲網の構築を目指し結成を急ぎたい考えだが、各国は慎重姿勢を崩さない。岩屋毅防衛相も自衛隊派遣に否定的な見解を重ねて示している。日本船舶への攻撃が続いているわけでもなく、法的根拠もはっきりない。当然の判断だ。ホルムズ海峡は、タンカーが通過できる幅は6キロ程度にすぎない。日本が輸入する原油の約8割が通り、エネルギー供給の生命線である。なぜ、軍事的衝突が懸念される事態を招いたのか。原因はトランプ米大統領にある。イラン核合意は、2002年に核開発計画が発覚したイランと、核兵器保有を止めたい米英仏中ロにドイツを加えた6カ国が15年7月に合意した。オバマ米政権時代のことで、イランが核開発を大幅に制限する見返りに制裁を解除し、イランは原油輸出などができるようなった。しかしトランプ大統領は18年5月、核合意から一方的に脱退し制裁を全面復活。イランの反発を引き起こした。米国主導の有志連合に大義はないのである。日本は米国に言われるがまま追従することがあってはならない。
    ■    ■
 有志連合は5月と6月に相次いだタンカー攻撃をイランの行為と決めつけた米国の発案である。イランは関与を否定。米国がイランの脅威をあおり、軍事的圧力を高める狙いがあるとみられる。米国はイランとの衝突のリスクを抑えるのが有志連合の目的と主張するが、実際は対イラン包囲網である。イラク戦争を思い出す。米国はイラクが大量破壊兵器を保有していると主張してイラク攻撃を始めたが、大量破壊兵器はなかった。同じ過ちを繰り返してはならない。6月にイランが米軍の無人偵察機を、7月には米軍がイランの無人機を撃墜した。報復はエスカレートしている。震撼(しんかん)させたのはトランプ大統領が6月の米国の無人偵察機撃墜を受け、翌日にイランへの報復攻撃を準備。攻撃の10分前に中止を命じていたことを明かしたことだ。軍事衝突が起きかねない事態だ。
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 6月には安倍晋三首相が最高指導者ハメネイ氏らと会談するなど米国との仲介役を目指した。大きな成果を上げることはできなかったものの、緊張緩和に向けたその後の動きが見られない。イランは日本と伝統的な友好国である。日本が有志連合に参加すれば、仲介の会談は何だったのか。イランからは敵性国とみられ、長く築いてきた友好関係が損なわれるのは間違いないだろう。日本の役割は、国際社会と歩調を合わせ、イランだけでなく、トランプ大統領にも、自制を促すよう外交努力を尽くすことである。

<日米安全保障条約と米国のスタンス>
*2-1:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/395893 (佐賀新聞 2019年7月4日) 日米安保見直し発言、認識を正し、本質の議論を
 米国のトランプ大統領が日米安全保障条約について「米国にとって不公平な合意だ」と主張し、見直しに言及した。20カ国・地域首脳会議(G20サミット)後の記者会見での発言で、「条約破棄は全く考えていない」としたものの、以前から安倍晋三首相にも問題提起していると述べた。戦後日本の安保政策の基軸となってきた日米安保条約に関わる、極めて重大な発言である。だが、トランプ氏の主張は正確な認識に基づかず、一方的過ぎる。日本政府は日米間で条約見直しの議論は一切ないと否定するが、まず大統領に認識を正すよう求めていく必要があろう。発言の背景には、日米貿易交渉に安保政策を絡めて取引材料とする狙いもあるだろう。その真意を見極めたい。日米の同盟関係は近年、自衛隊と米軍の一体化が進んでいる。今回の発言も日本の役割拡大を求める圧力の一環ともみられる。その現状でいいのか。あるべき同盟関係の姿や、今後の日本の安保政策について本質的な議論に取り組むべきだ。トランプ氏は記者会見で「日本が攻撃されたら米国は日本のために戦わなくてはならないが、米国が攻撃されても日本は戦わなくてもいい。不公平だ」と述べた。2016年の大統領選中にも同様の主張をしているが、現職大統領としての発言であり、看過できない。まず、その認識を正すべきだ。1960年に全面改定された日米安保条約は、第5条で日本有事の際に米国が日本を守ると義務付ける一方、第6条で日本が極東の安定確保のため米軍に基地を提供すると定めている。それぞれのリスクとコストが非対称的なため、以前から米国に不満があったのも事実だ。トランプ氏の発言には来年の大統領選をにらんだ国内向けの側面もあるだろう。だが在日米軍基地は、世界に展開する米軍の戦略的拠点として米国のメリットになっている。一方、日本は年約2千億円の在日米軍駐留経費のほか騒音対策費など応分の負担をしている。「双方の義務はバランスが取れている」というのが日本政府の見解だ。この認識を改めて確認すべきだ。トランプ氏の発言には、この夏から本格化する貿易交渉で日本に譲歩を迫る戦略や、対日貿易赤字削減のための巨額の防衛装備品購入を求める狙いもあるだろう。駐留経費負担の増額を要求してくる可能性もある。だが、圧力の下で交渉の主導権を握られる事態は避けなければならない。公正な交渉を進めるべきだ。解せないのは、G20の際に行われた首脳会談での安倍首相の対応だ。安保条約に対するトランプ氏の不満は来日直前に米メディアが報じていた。にもかかわらず首相は真意をたださなかったという。トランプ氏の会見後、首相は「自衛隊と憲法の関係で何ができるかは説明してきた」と述べたが、日米間でどういう協議があったのかを国民にきちんと説明すべきだ。安倍政権の下、安保政策は対米偏重が進んできた。集団的自衛権の行使を解禁する安保関連法を制定、日米防衛協力指針(ガイドライン)を改定し、日米連携の一層の緊密化を掲げる。だが、米国の戦略に巻き込まれる懸念も膨らむ。近隣諸国との関係構築に努め、安保環境を整備していく構想に日本が主体的に取り組むべきではないか。

*2-2:https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/usa/hosho/jyoyaku.html 日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約
 日本国及びアメリカ合衆国は、両国の間に伝統的に存在する平和及び友好の関係を強化し、並びに民主主義の諸原則、個人の自由及び法の支配を擁護することを希望し、また、両国の間の一層緊密な経済的協力を促進し、並びにそれぞれの国における経済的安定及び福祉の条件を助長することを希望し、国際連合憲章の目的及び原則に対する信念並びにすべての国民及びすべての政府とともに平和のうちに生きようとする願望を再確認し、両国が国際連合憲章に定める個別的又は集団的自衛の固有の権利を有していることを確認し、両国が極東における国際の平和及び安全の維持に共通の関心を有することを考慮し、相互協力及び安全保障条約を締結することを決意し、よつて、次のとおり協定する。
第一条 締約国は、国際連合憲章に定めるところに従い、それぞれが関係することのある国際紛争を平和的手段によつて国際の平和及び安全並びに正義を危うくしないように解決し、並びにそれぞれの国際関係において、武力による威嚇又は武力の行使を、いかなる国の領土保全又は政治的独立に対するものも、また、国際連合の目的と両立しない他のいかなる方法によるものも慎むことを約束する。
 締約国は、他の平和愛好国と協同して、国際の平和及び安全を維持する国際連合の任務が一層効果的に遂行されるように国際連合を強化することに努力する。
第二条 締約国は、その自由な諸制度を強化することにより、これらの制度の基礎をなす原則の理解を促進することにより、並びに安定及び福祉の条件を助長することによつて、平和的かつ友好的な国際関係の一層の発展に貢献する。締約国は、その国際経済政策におけるくい違いを除くことに努め、また、両国の間の経済的協力を促進する。
第三条 締約国は、個別的に及び相互に協力して、継続的かつ効果的な自助及び相互援助により、武力攻撃に抵抗するそれぞれの能力を、憲法上の規定に従うことを条件として、維持し発展させる。
第四条 締約国は、この条約の実施に関して随時協議し、また、日本国の安全又は極東における国際の平和及び安全に対する脅威が生じたときはいつでも、いずれか一方の締約国の要請により協議する。
第五条 各締約国は、日本国の施政の下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃が、自国の平和及び安全を危うくするものであることを認め、自国の憲法上の規定及び手続に従つて共通の危険に対処するように行動することを宣言する。前記の武力攻撃及びその結果として執つたすべての措置は、国際連合憲章第五十一条の規定に従つて直ちに国際連合安全保障理事会に報告しなければならない。その措置は、安全保障理事会が国際の平和及び安全を回復し及び維持するために必要な措置を執つたときは、終止しなければならない。
第六条 日本国の安全に寄与し、並びに極東における国際の平和及び安全の維持に寄与するため、アメリカ合衆国は、その陸軍、空軍及び海軍が日本国において施設及び区域を使用することを許される。前記の施設及び区域の使用並びに日本国における合衆国軍隊の地位は、千九百五十二年二月二十八日に東京で署名された日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約第三条に基く行政協定(改正を含む。)に代わる別個の協定及び合意される他の取極により規律される。
第七条 この条約は、国際連合憲章に基づく締約国の権利及び義務又は国際の平和及び安全を維持する国際連合の責任に対しては、どのような影響も及ぼすものではなく、また、及ぼすものと解釈してはならない。
第八条 この条約は、日本国及びアメリカ合衆国により各自の憲法上の手続に従つて批准されなければならない。この条約は、両国が東京で批准書を交換した日に効力を生ずる。
第九条 千九百五十一年九月八日にサン・フランシスコ市で署名された日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約は、この条約の効力発生の時に効力を失う。
第十条 この条約は、日本区域における国際の平和及び安全の維持のため十分な定めをする国際連合の措置が効力を生じたと日本国政府及びアメリカ合衆国政府が認める時まで効力を有する。
 もつとも、この条約が十年間効力を存続した後は、いずれの締約国も、他方の締約国に対しこの条約を終了させる意思を通告することができ、その場合には、この条約は、そのような通告が行なわれた後一年で終了する。以上の証拠として、下名の全権委員は、この条約に署名した。千九百六十年一月十九日にワシントンで、ひとしく正文である日本語及び英語により本書二通を作成した。
 日本国のために
   岸信介
   藤山愛一郎
   石井光次郎
   足立正
   朝海浩一郎
 アメリカ合衆国のために
   クリスチャン・A・ハーター
   ダグラス・マックアーサー二世
   J・グレイアム・パースンズ

*2-3:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190729&ng=DGKKZO47891420Y9A720C1PE8000 (日経新聞 2019年7月29日) 改憲国民投票「賛成」52% 18~29歳では63%、世論調査 無党派43%、反対上回る
 日本経済新聞社の26~28日の世論調査で、安倍晋三首相が自身の自民党総裁任期中に憲法改正の国民投票を実施したいと表明したことについて聞いた。首相の考えに賛成と答えた人は52%で反対の33%を上回った。18~29歳では賛成が63%を占め、無党派層でも賛成が43%と反対を10ポイント上回った。首相の党総裁任期は2021年9月まで。首相は参院選投開票日の21日に民放番組で「総裁任期中に改憲の国会発議と国民投票を実施したいか」を問われて「期限ありきではないが私の任期中に何とか実現したい」と述べていた。今回の調査で「任期中の国民投票」への賛否を世代別に見ると、若年層ほど賛成が多く、反対が少なかった。18~29歳は賛成が63%、反対が26%だった。18~39歳でみても賛成が64%で反対が25%、40~59歳は同58%と30%、60歳以上は同43%と40%だった。高齢層ほど反対が多かったが、全世代で賛成が上回った。内閣支持層では賛成が67%にのぼったのに対し、内閣不支持層では賛成が36%で反対が54%だった。自公以外の野党の支持層でも反対が50%で賛成の43%を上回り、立憲民主党の支持層では反対が6割を超えた。一方で無党派層では賛成が反対を上回った。今回の調査は国民投票の実施についての考え方を聞いており、改憲そのものの是非を質問したわけではない。6月の前回調査では、首相が20年に新憲法を施行する考えを示すことへの賛否を聞き、賛成が37%、反対が45%だった。この時も18~29歳は賛成が55%で反対が35%、60歳以上は賛成が27%で反対が55%と若年層ほど賛成が多かった。首相は今回の参院選で改憲の是非ではなく「改憲の議論をすべきかどうか」を訴えてきた。改憲そのものより、その前段階である国民投票の方が賛成が多い今回の結果をみると、首相の参院選戦略は一定の成果を上げたともいえそうだ。参院選では自民党や公明党、日本維新の会など憲法改正に前向きな勢力が3分の2を割り込んだ。この結果については内閣支持層でも「ちょうどよい」が52%に上った。「もっと多くてもよかった」は30%、「もっと少なくてもよかった」は9%だった。内閣不支持層ではトップは「もっと少なくてもよかった」の43%で「ちょうどよい」が28%、「もっと多くてもよかった」が21%だった。首相に期待する政策では改憲を求める声は乏しい。7つの政策を示し複数回答で聞くと「憲法改正」と答えた人は10%で7位だった。トップは「社会保障の充実」の46%で「景気回復」の39%、「外交・安全保障」の29.5%、「教育の充実」の28.8%が続いた。18年12月~19年5月まで過去5回の同様の質問でも「憲法改正」と答えた人は10~11%で7位が続いていた。

<普天間基地の辺野古移設>
*3-1:https://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-544708.html (琉球新報社説 2017年7月30日) 全国知事会 沖縄の現状理解広げたい
 2008~15年の8年間に在日米軍人・軍属とその家族による犯罪摘発件数が沖縄県だけで全国の総数の47・4%を占めていることが分かった。全国知事会に設置されている米軍基地負担に関する研究会のまとめで判明した。全国47都道府県のうち、1県だけで全体の半数近くの米軍関係犯罪が摘発されている実態は、沖縄への過重な基地集中を意味する。基地に起因する事故、騒音や環境汚染などの基地公害に加え、治安悪化という大きな負担も県民が背負わされている。基地の過重負担を解消しなければ、こうした状況は今後も続くことになる。たまったものではない。研究会は16年7月に設置された。翁長雄志沖縄県知事の「沖縄の基地問題をわがこととして真剣に考えてもらうようお願いしたい」との要望を受けてのものだ。これまで3回の研究会を開催し、沖縄の基地負担の現状や日米同盟などについて問題意識の共有を重ねている。28日に岩手県で開催された全国知事会議ではこのほか、在沖米軍基地の現状や跡地利用の経済効果などの報告があり、研究会座長の上田清司埼玉県知事が「基地関連収入の比重は大幅に低下しており『沖縄は基地の経済でもっている。基地とは離れられない』という話は誤解だと共通認識を持てるのではないか」と指摘した。全国知事会のこうした沖縄への理解を深め、誤解を解く取り組みを高く評価したい。全国知事会だけでなく、沖縄の基地問題に取り組む全国的な動きが出ている。全国都道府県議会議長会が25日の総会で、米軍普天間飛行場の「5年以内の運用停止」の確実な実現要求を盛り込んだ議案を採択した。沖縄側からの提案に呼応したものだ。「5年以内の運用停止」は13年、当時の仲井真弘多県知事が要請し、安倍晋三首相が「最大限実現するよう努力したい」と受け入れた約束だ。しかし首相は翁長知事が名護市辺野古への新基地建設に反対していることを理由に実現困難との姿勢に転じた。47都道府県の議会議長のうち42人が政権与党の自民党所属だ。全国議長会で「5年以内」が都道府県議会の総意として採択された意義は大きい。一方で、まだ認識を全国で共有できていない動きもみられた。今年2月の全国町村議会議長会で、沖縄側から基地関係協議会の設置を求める動議が出されたが、賛成8、反対37で否決された。議長会の国への要望活動に影響することを懸念したためだ。極めて残念だ。全国知事会の研究会は10月後半以降に、日米地位協定を主題に会議を開く予定だ。翁長知事が求めた「沖縄の基地問題をわがこととして真剣に考えてもらう」取り組みが知事会にとどまらず、今後も各界に広がるよう期待したい。

*3-2:https://ryukyushimpo.jp/news/entry-949264.html (琉球新報 2019年7月6日) 陸自、宮古・与那国に情報保全隊 専門家「住民監視も」
 宮古島市と与那国町への陸上自衛隊配備に関し、自衛隊内外の情報を収集・整理する情報保全隊も配置されていたことが5日までに分かった。情報公開請求で組織図を明らかにした軍事評論家の小西誠氏は「住民を調査・監視し、島嶼(とうしょ)戦争の対スパイ戦の任務に当たることが想定される」と指摘している。情報保全隊は2007年に自衛隊のイラク派遣反対の活動をした団体・個人を監視し、問題となった。防衛省によると、宮古島と与那国島に配置された情報保全隊はそれぞれ数人程度。県内の自衛隊増強と連動して警備隊とミサイル部隊が発足した鹿児島県奄美市の駐屯地にも情報保全隊が配置された。石垣市で建設中の駐屯地にも完成後、配置される可能性がある。県内ではすでに陸海空の情報保全隊が配置され、那覇市を拠点に活動している。南西方面での防衛力強化に向けた離島への陸自配備でさらに活動が拡大することになる。宮古島や与那国島への部隊配備に当たって政府は事前に情報保全隊を配置する計画は説明していなかった。防衛省の担当者は情報保全隊について「重要文書や情報の保管など内部管理の部隊で、北海道から沖縄まで配置されている。与那国や宮古島への配置が特別というわけではない」と説明した。宮古島駐屯地は今年3月に警備隊380人で開設された。20年以降、ミサイル部隊も配備され計700~800人規模になる計画だ。先立って与那国島には16年から160人規模の沿岸監視隊が駐屯している。

*3-3:https://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201903/CK2019032902000140.html (東京新聞 2019年3月29日) 「国は国民を守らない」 安保法施行3年 違憲訴訟原告の戦争孤児
 二十九日で施行三年となった安全保障関連法は違憲だとする集団訴訟の審理が、全国二十二の地裁で進んでいる。原告総数は七千六百七十五人。東京地裁での訴訟の原告で戦争孤児の金田茉莉(まり)さん(83)=埼玉県蕨市=は、安保法によって他国を武力で守る集団的自衛権の行使に道を開いたことで「日本がアメリカの手先になって、戦争に巻き込まれる可能性が高まっている」と危機感を募らせる。「国の政策で疎開による孤児がでたのに、国は孤児たちを保護してくれませんでした」。東京地裁で十八日にあった口頭弁論で、金田さんはこう強調した。東京大空襲直後の一九四五年三月十日朝、九歳だった金田さんは学童疎開先の宮城県から東京に戻った。列車が着いた上野は一面、焼け野原。浅草の自宅は焼失し、母と姉、妹が死亡。父は幼いころに病死しており、孤児になった。九人の大家族の親戚に預けられ、「朝から晩まで小間使いのように働かされ、『親と一緒に死んでいたら良かったのにね』と言われた」。子育てが終わり、戦争孤児の聞き取りを始めると、自分以上の壮絶な体験を知った。金田さんは「上野の地下道は戦争孤児であふれ、大勢の子どもたちが餓死し凍死した。お金も食べ物もなく『浮浪児』になった孤児は捕まってトラックに山積みにされ『収容所』に送られたり、親戚宅を逃げ出して人身売買されたり、農家で奴隷のようにこきつかわれたりした」と説明。「戦争になったら弱者は捨てられる」と感じる。二〇一九年度から五年間で購入する兵器を定めた政府の中期防衛力整備計画(中期防)は安保法などで変質した国防の在り方を装備面で追認し、日米の軍事一体化を進めたのが最大の特徴。一九年度予算の防衛費は五兆二千五百七十四億円と、過去最大を更新した。「軍事費をどんどん使い憲法も変え、戦争をする国にしようとしている」と金田さん。「『国を守るためには自衛隊が必要だ』なんて言っても、国は国民を守らない。昔も『聖戦だ』とかうまいことを言い、私たちをだました。守ってもくれなかった」と語る。金田さんは長年、戦争孤児の証言や資料を集めて実態を伝えてきたことが評価され、一九年度の吉川英治文化賞の受賞が決まった。「悲惨な体験の記憶を封印している戦争孤児は少なくない。それでも話してくれる人が増えているのは、再び戦争孤児をつくってはいけないとの必死の思いから。私たちが遺言として残しておかなくちゃいけない」
<安保法制違憲訴訟> 集団的自衛権の行使を可能にした安全保障関連法は違憲だとして、同法に基づく自衛隊出動の差し止めや、憲法が保障する平和的生存権などの侵害に対する国家賠償を求め、東京や大阪、名古屋など全国22地裁で25件の集団訴訟が起こされている。

*3-4:https://www.asahi.com/articles/DA3S14122366.html (朝日新聞 2019年8月1日) 米軍駐留費負担「大幅増を」 日本に「5倍」要求も
 トランプ米政権が、在日米軍駐留経費の日本側負担について、大幅な増額を日本政府に求めていたことがわかった。各国と結ぶ同盟のコストを米国ばかりが負担しているのは不公平だと訴えるトランプ大統領の意向に基づくとみられる。来年にも始まる経費負担をめぐる日米交渉は、同盟関係を不安定にさせかねない厳しいものになりそうだ。複数の米政府関係者によると、ボルトン大統領補佐官(国家安全保障担当)が7月21、22日に来日し、谷内正太郎国家安全保障局長らと会談した際に要求したという。今後の交渉で求める可能性がある増額の規模として日本側に示した数字について、関係者の一人は「5倍」、別の関係者は「3倍以上」と述べた。ただ、交渉前の「言い値」の可能性もある。米メディアは3月、トランプ政権が駐留経費の総額にその5割以上を加えた額の支払いを同盟国に求めることを検討していると報道。現在の5~6倍に当たる額を要求される国も出てくるとしていた。「思いやり予算」とも呼ばれる在日米軍駐留経費の日本側負担は2016~20年度の5年間で計9465億円に及ぶ。オバマ前政権と結んだ現在の経費負担に関する特別協定は21年3月末に期限を迎え、新たな協定を結ぶ交渉が来年始まる予定だ。日本は思いやり予算以外に、米軍再編関係費なども負担しており、総額は年約6千億円になる。米政府関係者は、ボルトン氏が具体的に、どの予算を増額させたい意向を示したかについては明らかにしていない。トランプ氏は米軍の外国駐留は公金の無駄遣いだと訴え、同盟国に「公平な負担」を求めている。在日米軍についても、駐留経費を日本が全額負担しなければ、米軍の撤退もありうると牽制(けんせい)してきた。ボルトン氏は日本の後に韓国も訪問。日米韓の各政府関係者によると、24日にソウルで康京和(カンギョンファ)外相らと会談し、在韓米軍の駐留経費負担の大幅増額を求めるトランプ氏の意向を伝えたという。米国はともにアジアの同盟国である日韓に同時に負担増を要求した形だ。菅義偉官房長官は31日午後の記者会見で、米国が米軍駐留経費の日本側負担について5倍増を提示したという朝日新聞の報道について「そのような事実はない」と述べた。その上で、「現在、在日米軍駐留経費は日米両政府の合意に基づき、適切に分担されていると考えている」と語った。

<核兵器>
*4-1:https://www.nishinippon.co.jp/item/n/517063/ (西日本新聞 2019/6/9) 原爆の惨状伝える詩引用 長崎平和宣言、市が素案を提示
 長崎原爆の日(8月9日)の平和祈念式典で長崎市長が読み上げる「長崎平和宣言」の第2回起草委員会が8日、長崎市内で開かれ、市が素案を示した。核兵器を巡る米国とロシアの対立による不透明な情勢を懸念して原爆の非人道性を訴えるため、原爆投下直後の光景を表した詩を引用。「核の傘」にある日本や、保有国に廃絶を迫る文言が盛り込まれた。委員からは、さらに強い表現を求める声も上がった。宣言の冒頭に引用する詩は、爆風や熱線で傷ついた遺体、現場の惨状を描く内容で素案の3割を占める。市によると異例のケースとしており、すべての委員が賛同した。来年の核拡散防止条約(NPT)再検討会議に向けて保有国には核軍縮を、日本には北東アジアの非核兵器地帯構想の実現を求める文言も示されたが、委員からは軍縮を「義務」として強く迫るべきだ、との意見があった。憲法の平和理念への言及がないことも指摘された。7月6日の第3回起草委で修正案を示し、同月末ごろ決定する。

*4-2:http://digital.asahi.com/articles/ASK845TW3K84PTFC01D.html (朝日新聞 2017年8月5日) 世界の宗教指導者、比叡山から「核廃絶」 宗教の枠超え
 世界の宗教指導者らが宗教の枠を超えてテロや核の問題などについて話し合う「世界宗教者平和の祈りの集い」は4日、比叡山延暦寺(大津市)で、核廃絶を強く訴えるなどの「比叡山メッセージ2017」を採択した。2日間の日程で行われた集いは、この日閉幕した。メッセージでは、7月に採択された核兵器禁止条約を念頭に、「核兵器の廃絶は、高齢になった被爆者が存命している今こそ、さらに強く訴えていくべきである」と指摘。原発について「原子力の利用の限界を深く自覚し(中略)核廃棄物を残す核エネルギーの利用に未来がない」と訴えた。国連の持続可能な開発目標(SDGs、エスディージーズ)にも言及。「地球上の誰一人として取り残さない」という理念について「まさに宗教者の立場と一致しており、これを強く支持したい」とした。主催した日本宗教代表者会議の事務局顧問、杉谷義純さんは記者会見で「日本は被爆国でありながら核の傘にあり、核兵器禁止条約に批准していない。人間の生みだしたものは人間の力で解決する。条約がすべての国で批准されることを望む」と話した。

<日韓問題>
PS(2019年8月1、2、3、5日追加): *5-1のように、ポンペオ米国務長官が輸出規制や元徴用工訴訟問題で対立が深まる日韓両政府に対し、日韓両国が「休止協定」への署名を検討するよう提案したそうだ。私は、元徴用工訴訟問題に関する韓国の司法判決にも異議はあるが、それとは別に、韓国は北朝鮮と親密になっており、北朝鮮はミサイル実験をして日本を脅かしたり、中国・ロシアと親密であったりする上、韓国もまた日本に対して好意を持っている態度はしていない。そのため、日本政府が韓国を「ホワイト国」から除外して輸出管理をする普通の国にするのは当然であり、時間稼ぎに妥協するのはむしろよくないと考える。
 なお、*5-2のように、2019年8月2日の午前2時59分及び午前3時23分に、北朝鮮が東部ハムギョン(咸鏡)南道ヨンフン(永興)付近から日本海に向けて短距離ミサイルを発射し、トランプ大統領は「短距離ミサイルに関してはキム・ジョンウン(金正恩)朝鮮労働党委員長と発射中止などの約束は交わしていない」として問題視しない考えを示されたそうだ。日本政府は、「現時点において、わが国の安全保障に直ちに影響を与えるような事態は確認されていない」としているが、発射する位置・方向・ミサイルの種類を変えれば、米国には届かなくても日本のどこでも射程内になるということであるため、悠長に考えすぎるのは問題だろう。
 一方、韓国の文在寅大統領は、*5-3のように、日本が韓国を「ホワイト国」のリストから外す政令改正を決めたことに関して臨時閣僚会議を開き、「①今後起こる事態の責任は全面的に日本政府にある」「②日本の措置は元徴用工訴訟の報復だ」「③相応する措置をとる」「④加害者である日本が盗っ人たけだけしい」と非難したそうだ。②は、元徴用工訴訟で韓国の最高裁判所が日本に損害賠償判決を出したたことに関する発言だが、日韓両政府とも1965年の日韓請求権協定で解決したとしているため、元徴用工に対する賠償は韓国政府が責任を持って行うべきで、これこそ、日本は国際司法裁判所に提訴すればよかったのだ。なお、徴用工は「挺身隊」として徴用されたそうだが、日本人である私の母や叔母も女学校時代に勉強もできずに「挺身隊」と呼ばれて工場で働かされており、当時は日本人の多くも強制労働に近いものをさせられていたようだ。そのようなわけで、元徴用工訴訟に端を発していたとしても、①③は韓国の誤りであり、曾祖父母の時代に起こった被害に関して、④のように現在の日本人に何度も謝罪や損害賠償を求めて金を引き出そうとするのを、決して容認すべきでない。
 さらに、*5-4のように、「⑤韓国政府は元徴用工訴訟に関する政府間協議を『司法の判断を尊重する』として対応しなかった」「⑥韓国社会では日本製品の不買運動や日本旅行自粛、自治体や民間の交流事業を相次いで中止するなど対抗の動きが広がっている」「⑦韓国も日本を『ホワイト国』から除外し、日本だけが入る最下位のランクを作った」など、韓国政府はかなり意地が悪いが、日本政府の悪い点は、これらを理路整然と国際社会にアピールするように言えない点であり、この問題は妥協すれば解決するどころか何度も同じことが起こると思われるのだ。
 しかし、出口は見えており、それはトランプ大統領と文在寅大統領という役者が揃っている間に朝鮮戦争を終わらせ、南北朝鮮が協力して経済発展することである。その後、朝鮮半島が日本にとって「ホワイト国」であるか否かは状況次第だ。
 また、*5-5のように、韓国政府が日韓軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の破棄を示唆しているが、日本に対していくつもひどいことをしながら軍事情報包括保護協定もあったものではない。日本の自衛隊も韓国から情報をもらわなければ人工衛星かミサイルかの判別さえできないわけではないだろうから、今後の朝鮮半島の状況が見えるまで更新しなくてよいと考える。


    2019.7.25中日新聞                      Livedoor
                    日韓の主張比較

*5-1:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO48000050R30C19A7000000/ (日経新聞 2019/7/31) 米、日韓対立仲介の意向 ホワイト国除外延期促す
 ポンペオ米国務長官は30日、輸出規制や元徴用工訴訟問題で対立が深まる日韓両政府に対し、仲介に乗り出す考えを示した。東南アジア諸国連合(ASEAN)関連会合に参加するためバンコクに向かう機内で記者団に明らかにした。「両国はすばらしいパートナー国だ。前進する道を見つけるよう勧める予定だ」と述べた。日韓の関係悪化を食い止める糸口を探るとみられる。日米韓3カ国は31日、8月2日にバンコクで3カ国外相会談を開く方向で調整に入った。ポンペオ氏が、日本の河野太郎外相と韓国の康京和(カン・ギョンファ)外相と会って関係改善に向けて調整する。ポンペオ氏は「両国にとって望ましい落としどころが見つかるよう手助けができれば、それは米国にとっても明確に重要なことだ」とも述べた。ロイター通信は30日、米政府高官が、日韓両国が一定期間は新たな対抗措置を取らない「休止協定」への署名を検討するよう提案したと報じた。日本政府は8月2日にも、輸出管理上の信頼関係があると認めた「ホワイト国」から韓国を除外する政令改正を閣議決定する方向で調整しており、延期をうながす内容とみられる。同高官は協定に関して、日韓が協議する時間を稼ぐことが目的だと説明した。協定の有効期間は定めず、日韓が抱える問題を根本的に解決するものではないとも指摘した。トランプ政権は当初、歴史問題などがからむ日韓問題への関与に慎重な立場をとっていた。だが日韓関係の悪化に拍車がかかると、米国務省高官は26日に「両国の緊張を懸念している」と語った。ボルトン大統領補佐官(国家安全保障担当)も7月下旬に日韓を訪れていた。トランプ大統領は19日、日韓の緊張緩和に向けた仲介を韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領から依頼されたと明らかにし、日本からも要請があれば仲介を検討する考えを表明していた。

*5-2:https://www3.nhk.or.jp/news/html/20190802/k10012018361000.html (NHK 2019年8月2日) 北朝鮮 ミサイル2発を発射 米大統領は問題視せず
 アメリカ国防総省は北朝鮮がけさ早く2発のミサイルを発射したと明らかにしました。この1週間余りで発射が相次ぐなか、トランプ大統領は短距離ミサイルは問題視しない考えを改めて示し、北朝鮮に非核化協議に応じるよう呼びかけていく姿勢を強調しました。アメリカ国防総省は北朝鮮が日本時間の2日、2発のミサイルを発射したと明らかにしました。韓国軍の合同参謀本部によりますと、2日午前2時59分ごろと午前3時23分ごろ、短距離の飛しょう体を東部ハムギョン(咸鏡)南道ヨンフン(永興)付近から日本海に向けて発射したということです。北朝鮮は先月25日に短距離弾道ミサイルとみられる飛しょう体2発を、先月31日にも飛しょう体2発を発射していて、北朝鮮による発射はこの1週間余りで3回目になります。トランプ大統領は相次ぐ北朝鮮の発射について記者団の取材に対し、「私としては問題ない。ありふれた短距離ミサイルだ。われわれは短距離ミサイルについては何も合意していない」と述べ、短距離ミサイルに関してはキム・ジョンウン(金正恩)朝鮮労働党委員長と発射中止などの約束は交わしていないとして、問題視しない考えを改めて示しました。さらに「北朝鮮との交渉を続けるか」と問われたのに対し、「そのとおりだ。なぜならこれまで短距離ミサイルは協議していない。協議しているのは核だ」と述べ、北朝鮮との対話路線を維持し、非核化協議に応じるよう呼びかけていく姿勢を強調しました。ただアメリカ政府内では、短距離弾道ミサイルであれば国連の安全保障理事会の決議に違反するという指摘が出ているほか、トランプ大統領とキム委員長が3回目の米朝首脳会談で合意した非核化の実務協議もいまだ再開されていません。さらに北朝鮮は米韓が今月予定している合同軍事演習に強く反発していて、米朝の対話路線の行方は一段と不透明になっています。
●北東に向け複数の飛しょう体
 防衛省幹部によりますと、2日午前3時ごろ、北朝鮮が、北朝鮮から北東に向かって複数の飛しょう体を発射したということです。防衛省は、軌道や種類、飛しょう距離などについて分析を進めています。
●政府「日本の安全保障に影響与えず」
 北朝鮮が新たに飛しょう体を発射したことについて、政府は、「わが国の領域や排他的経済水域への弾道ミサイルの飛来は確認されておらず、現時点において、わが国の安全保障に直ちに影響を与えるような事態は確認されていない」としています。
●岩屋防衛相「警戒・監視に万全を期すように指示」
 岩屋防衛大臣は、午前6時半ごろ、防衛省で記者団に対し、「きょう午前3時前後に、北朝鮮が何らかの飛しょう体を発射したと承知している。幹部会議で、情報の収集と分析に努めている。引き続き、警戒・監視に万全を期すように指示した」と述べました。

*5-3:https://digital.asahi.com/articles/ASM824JR2M82UHBI01B.html?iref=comtop_8_07 (朝日新聞2019年8月2日)文大統領「日本、盗っ人猛々しい」 ホワイト国除外で
 韓国の文在寅(ムンジェイン)大統領は2日午後、臨時の閣僚会議を開き、安倍政権が輸出手続きを簡略化できる「ホワイト国」のリストから韓国を外す政令改正を決めたことについて、「とても無謀な決定であり、深い遺憾を表明する」と語った。文氏は、米国が状況をこれ以上悪化させないよう交渉する時間を持つよう求めた提案に、日本は「応えることはなかった」と非難した。そのうえで、「今後起こる事態の責任は全面的に日本政府にあることをはっきり警告する」と語った。文氏はまた、今回の日本の措置について、元徴用工訴訟で昨年10月に韓国大法院(最高裁)が日本企業に賠償を命じた判決に対する「明白な経済報復だ」と指摘。「人類の普遍的な価値と国際法の大原則に違反する」とも訴えた。さらに、韓国経済への攻撃であり、その未来の成長を妨げようとする明らかな意図を持つものだと主張。「両国関係における重大な挑戦だ。利己的な弊害をもたらす行為として国際社会からの指弾を免れることはできない」と語った。今後の対応についても言及。「相応する措置を断固としてとる。日本は経済強国だが、対抗できる手段は持っている」と訴えた。また、「加害者である日本が、盗っ人たけだけしく、むしろ大きな声で騒ぐ状況は絶対に座視しない」と強い言葉で非難した。一方で、「悪循環は望まない。止まることができる方法はたった一つ、日本政府が一方的で不当な措置を一日も早く撤回し、対話の道に出てくることだ」と呼びかけた。韓国の国民に対しては、「この挑戦をむしろ機会と捉え、新しい経済の跳躍の契機とすれば、我々は十分に日本に勝つことができる」「勝利の歴史を国民とともにもう一度つくる。我々は成し遂げられる」と呼びかけた。

*5-4:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/408654 (佐賀新聞 2019年8月3日) 対韓国輸出規制 冷静に対立解きほぐせ
 不信と対立が拡大しながら悪循環する状況をコントロールする覚悟があるのだろうか。日本政府が輸出管理で優遇措置を与える「ホワイト国」から韓国を除外する政令改正を閣議決定した。これを受け、韓国の文在寅大統領は「盗っ人たけだけしい」「状況悪化の責任は日本政府にある」などと強い口調で反発した。元徴用工訴訟で韓国最高裁が昨年10月、日本企業に賠償支払いを命じる確定判決を出して以降、日韓政府間の議論はかみ合わないまま、時間だけを浪費してしまった。事態収拾のために日本が要請した政府間協議について、「司法の判断を尊重する」と具体的な対応を先送りしてきた韓国の姿勢が葛藤の根底にあるのは明らか。だが、韓国に対応を迫る手段として、日本が通商カードを持ち出すことに効果があるとも言い切れない。それは、半導体材料の対韓輸出手続きの厳格化を実施してからこの約1カ月の動きを見ても明白だ。韓国は国会の与野党対立を一時休戦して超党派での対応に乗り出し、韓国社会では日本製品の不買運動や日本旅行自粛、自治体や民間の交流事業を相次いで中止するなど、これまでにない対抗の動きが広がっている。このような険悪な流れを沈静化させる構えを両国政府が見せないまま決定された「ホワイト国」除外方針は、文字通り「火に油を注ぐ」結果を招きつつある。対話により摩擦を解きほぐす環境づくりが今こそ求められている。日本は通商分野での圧力を徹底させれば、韓国は遠からず譲歩してくると予測しているようだが、読み誤る危険性を抱えている。日本統治下の1919年に起きた抵抗運動「三・一運動」から今年で100年の節目を迎えている韓国では、民族意識が高まっている。特に、日本統治からの解放記念日「光復節」を8月15日に控えた時点での「ホワイト国」除外決定は、日本の「暴挙」(韓国メディア)と受け止められている。文大統領は談話で、「日本がわれわれの経済を攻撃」しているとの厳しい認識を示したことも、歴史的な意識が背景にあろう。韓国政府は対抗措置の一つとして、韓国も日本を「ホワイト国」から除外すると表明した。65年の国交正常化以来、両国企業人の努力によって積み上げられてきた相互依存の経済環境が損なわれるのは確実だ。日韓両政府が全面衝突している現状が長期化、さらに常態化することは、北東アジアの経済圏だけでなく、安全保障環境も不安定にする。米国は、新たな措置を取らず時間をかけて交渉する「据え置き協定」の仲裁案の受け入れを日韓両国に働きかけている。対立が深刻化すれば、北東アジアの安全保障を巡る日米韓3カ国の連携に支障が出かねないとの懸念からだ。米国は、現在の対決局面が日韓2国間の問題として収拾する一線を越えているとの危機感を抱いているのだろう。日韓両首脳は、米国だけでなく国際社会からどのような視線が注がれているのかを冷静に考え、真剣に対立を解きほぐす努力をすべきだ。米国の仲裁案も検討する価値がある。関係修復の可能性すら摘み取ってしまうような応酬は、日韓双方の国益を損なう打撃となって跳ね返ってくるのだ。

*5-5:https://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2019080501001849.html (東京新聞 2019年8月5日) 規制継続なら軍事協定破棄、韓国 米に日本説得を要求
 韓国政府が8月下旬に更新の判断期限を迎える日韓の軍事情報包括保護協定(GSOMIA)について、日本が強硬な輸出規制を続けるなら破棄するとして、規制撤回を日本に働き掛けるよう米政府に求めたことが5日、分かった。米当局者が明らかにした。米政府は北朝鮮への対処で日米韓連携に亀裂が生じるのを懸念しており、エスパー米国防長官が7日以降、日韓両国を訪問、協定維持を働き掛ける。安全保障上の輸出管理で優遇措置を取る「ホワイト国」から韓国を除外した日本に対抗し、韓国が軍事協定を盾に取り米国により積極的な仲介を求めた形だ。

<北方領土問題>
PS(2019年8月4日追加):北方四島の領土問題は、*6-1のように、「2島だけの返還」に後退しても打開できなかった。これについて、朝日新聞は、いつものように「安倍政権の失敗だ」としているが、ロシアはアジア諸国とは異なり、特定の人との繋がりではなく論理で動く国であるため、日本国内で安倍首相を引きずりおろそうとする力が強まり、安倍政権の持続が危うくなれば、四島返還どころか、*6-2のように、何とかかんとか言って一島も返還しないだろう。何故なら、その方がロシアにとっては国益だからで、安倍首相の努力が足りなかったことが原因ではない。むしろ、北方領土返還交渉のための努力をしている最中に、世界が見ている日本の報道などが、安倍批判・ロシア批判・プーチン批判をし続けたような視野の狭い無責任な報道が大きなスキームをぶち壊したと私は思う。
 また、1991年12月にソ連が崩壊し、1993年にエリツィン大統領が4島返還に合意した時に即4島を返還してもらい、そのかわり日本がロシアに経済協力していれば両方に国益があったので4島返還も実現した筈だが、今では島を返還することにロシア側の国益はなくなったのだ。これは、「先送り」が好きで「現状維持」や「安定」を過度に嗜好する日本人が唯一のタイミングを逸した大失敗なのであり、交渉決裂時の首相や政治家に責任を負わせても「覆水、盆に返らず」であることを素直に認めて改善しなければ、今後とも同じようなことが続くだろう。
 なお、*6-3のように、ロシアのメドベージェフ首相が北方領土の択捉島を四年ぶりに訪問され、日本政府が外交ルートを通じて訪問に抗議したそうだが、形だけの抗議よりも行動の方が強いのは明らかである。


2019.1.22朝日新聞   2019.1.19産経新聞      面積で2等分する解決法

(図の説明:1番左の図のように、エリツィン大統領が4島返還に合意したが、左から2番目の図のように、現在、ロシアは1島も返還しないという理論構成をしている。もともと日本好きだったプーチン大統領は、右から2番目の図のように、面積で2等分することを提案したこともあり、1番右の図のように、他国との交渉でも面積で2等分する解決法が多いが、日本は経済協力した上に放棄させられそうなのだ。私自身は、国後島まで返還してもらい、両国ともあまり開発せずに千島列島とあわせて世界自然遺産にするのがよいと思う)

*6-1:https://digital.asahi.com/articles/DA3S14078207.html (朝日新聞社説 2019年7月2日) 日ロの交渉 失敗認め構想練り直せ
 ロシアとの平和条約交渉の行き詰まりが明らかになった。北方四島の領土問題について「2島だけの返還」へ譲歩したが、打開できなかった。安倍政権はこの失敗を率直に認め、交渉の構えを見直すべきだ。プーチン大統領が来日するG20会議を機に、大筋合意を打ち出したい。安倍政権内にはそんな思惑もあったが、結局、具体的な成果はなかった。昨年11月の日ロ首脳会談以降の動きは、日本の一方的な譲歩だった。「四島返還」や「固有の領土」の言葉は封印された。日本外交の概要をまとめた外交青書では、「四島は日本に帰属する」との見解が消された。一方のロシアは、強硬な原則論を繰り返している。四島をロシア領と認めない限り交渉できないとし、「北方領土」という用語も受け入れない。日本の安全保障政策の根幹である日米安保体制をも問題視している。11月の会談後、安倍首相は領土問題について二つの合意があると国民に説明してきた。(1)歯舞(はぼまい)と色丹(しこたん)の引き渡しを記した1956年の日ソ共同宣言を基礎に交渉を加速する(2)自らの手で終止符を打つ決意をプーチン氏と共有している――。だが、いずれの点でも実質が伴っていなかった。56年宣言についてプーチン氏は、2島の主権の引き渡しは確約されていないと主張し、日本側と根本から相いれない。また、プーチン氏は領土問題を「自らの手で解決する」とは一度も公言していない。プーチン氏は昨年9月、「前提条件のない平和条約」の締結を突然提案した。領土問題を棚上げする意図だったが、安倍氏は「条約が必要だという意欲の表れ」と受け止めて、2島だけを交渉対象とする方針に転換した。大きな判断ミスだ。両首脳の会談は今回の大阪で26回目。2人だけの意見交換も長時間重ねてきた。なのに真意をつかめていなかったとすれば、稚拙というしかない。ロシアの対米関係悪化や中国への接近などの国際情勢を十分に考慮せず、首脳間の個人的関係を頼む「抱きつき外交」では道は開けないことがはっきりした。7月の参院選前に成果を上げようと前のめりになった面もあっただろう。領土問題での方針変更について、安倍氏は国会で正面から説明していない。クリミア半島の併合など国際法違反を犯したロシアと今、平和条約をめざすことにも疑問符がつく。ロシアとの建設的な対話は続けながら、平和条約の交渉は巨視的な思考で取り組むべきだ。独り相撲をこれ以上、続けるべきではない。

*6-2:https://toyokeizai.net/articles/-/150477 (東洋経済 2016/12/20) プーチン氏「2島さえ返さない」発言の衝撃度、日ロ首脳会談で北方領土問題は振り出しに
 久しぶりに注目された日ロ首脳会談だったが、結果は自民党の二階俊博幹事長が「国民の大半はがっかりしている」と発言したように、外交的成果の乏しいものだった。特に最大の関心事である北方領土問題については、公表された文書にも安倍晋三首相とプーチン大統領との共同記者会見でも、言及されることさえなかった。12月16日の首脳会談終了後、深夜までテレビ番組をはしごした安倍首相が強調したのは、4島の元住民の墓参など自由訪問の拡充の検討や、4島での共同経済活動を実現するための交渉開始で合意したことだった。領土問題で一歩も譲らないロシアに対し、経済分野での協力で日ロ間の協議をつなぎとめるというあたりが真相だろう。2日間の過密スケジュールをこなした安倍首相が休む間もなくメディアに露出し成果を強調したのは、それだけ国民の期待とかけ離れたものだったと自覚している表れだろう。欧米諸国の首脳に比べると、権威主義国家であるロシアのプーチン大統領が議会やメディアに登場して自らの考えを語る機会は少ない。それだけに首脳会談後の12月16日に行われた共同記者会見、さらには12月14日朝刊に掲載された日本テレビと読売新聞によるプーチン大統領への単独インタビューは、プーチン大統領が日ロ関係や北方領土問題、さらには現在の世界情勢などをどう考えているかを知る絶好の機会となった。そこで明らかになったのは以下のような点である。プーチン氏「4島一括返還は議題にすらできない」。まず北方領土問題だが、プーチン大統領の基本的立場は、「日本とロシアとの間に領土問題はない。あると考えているのは日本である」(日本テレビ・読売新聞の単独インタビュー)であって、長く交渉が途絶えていた冷戦時代のソビエト連邦と変わらないものだった。ただプーチン大統領は、1956年に鳩山一郎首相(当時、以下同じ)がソ連を訪問してブルガーニン首相との間で合意した「日ソ共同宣言」については、両国が批准した法律的文書として、その有効性を認めている。問題はその解釈だ。共同宣言には「日ソ両国は引き続き平和条約締結交渉を行い、条約締結後にソ連は日本へ歯舞群島と色丹島を引き渡す」と書かれている。プーチン大統領は、共同宣言に書かれているのは4島ではなく、歯舞、色丹の2島であるにもかかわらず、日本は4島の返還を持ちだしてきた。「これは共同宣言の枠を超えている。まったく別の話だ」と主張している。つまりプーチン大統領は、日ソ共同宣言は認めるが、それは平和条約締結後の2島引き渡しを書いているだけで、日本政府がこれまで主張してきた4島一括返還などということは議題にもできないという立場である。今回の首脳会談でもこの立場に変化はなかったようで、共同記者会見で両首脳からは「4島の協議」という言葉さえ出てこなかった。これまで日ロ間では、1993年10月に細川護熙首相とエリツィン大統領が、「北方4島の帰属問題を解決して平和条約を締結する」という東京宣言に合意し、2001年3月には森喜朗首相とプーチン大統領が東京宣言の内容を再確認している。さらに2003年1月に、プーチン大統領は小泉純一郎首相との会談で、日ソ共同宣言や東京宣言など日ロ間の一連の合意を平和条約交渉の基礎であると確認した。つまりプーチン大統領は「4島の帰属問題」を協議することを一度は認めていたのだが、いまはそれを完全に否定している。そして、安倍首相の発言を見る限り、日本側もそれを跳ね返すことはできなかったようだ。つまり北方領土交渉は振り出しに戻ったといえるだろう。
●2島を返還すればロシア軍の活動は制約される
 そればかりではない。プーチン大統領は共同記者会見で別の問題も提起している。記者会見の終盤に大統領は次のような発言をした。「(1956年の共同宣言合意の時)米国のダレス国務長官が日本に対して実質的に最後通牒を突きつけた。もし日本が米国の利益に反することをするのなら、沖縄は完全に米国の管轄権に属すことになる、というものだった。なぜ私が今、この話を述べるのか。現在、ロシアはウラジオストック周辺に2つの大きな海軍基地を持ち、我々の艦船が太平洋に出て行く。一方、日本と米国の間には安全保障条約があり、条約上の義務を負っている。我々が柔軟性について述べる時、我々は日本の同僚と友人がこれらすべての微妙さとロシア側の懸念を考慮することを望む」。この発言は非常にわかりにくい。そのためか日本のメディアはほとんど報じていない。まず、ダレス国務長官の発言は、当時の日ソ交渉過程で二島返還論受け入れに傾いた重光外相に対し、「承服しがたい。もし日本が国後、択捉をソ連に帰属させたら、沖縄をアメリカの領土とする」と述べた事件のことであり、この発言は「ダレスの恫喝」として知られる。当時は冷戦の真っただ中で、米国は日本がソ連に接近し西側陣営に風穴があくことを極度に警戒しており、ダレス長官の発言には日ソ交渉の進展を妨害する明確な意図があった。プーチン大統領が「ダレスの恫喝」を引き合いに出して米国に言及したのは、1956年と同じように現在もオホーツク海周辺で米軍とロシア軍が緊張関係にあることを示したのだ。したがって、仮にロシアが2島を日本に帰した場合、その島が日米安保条約の適用対象になれば、オホーツク海などでのロシア軍の活動が制約を受けることになる。安全保障政策上、ロシアはそういう事態は受け入れることができないという意思を示したのだ。つまり、共同宣言には平和条約締結後の2島引き渡しを書いているが、ロシアの安全保障政策上、自国の利益が保てないのであれば引き渡しはもとより、条約締結さえ難しいということを意味する発言なのである。同時に「日本の同僚と友人がこれらすべての微妙さとロシア側の懸念を考慮することを望む」というのは、米国との同盟関係にある日本が米国の意に沿わないことをどこまでやれますかという挑発的な問いかけにもなっている。
●米ロ関係に縛られ、独自外交の展開は困難
 そして、プーチン大統領の発言はさらに踏み込んだ。「1956年の日ソ共同宣言は2島の日本への返還を想定しているが、どのような基礎の上で行われるのかは明らかではない。確かに共同宣言は発効したが、そこには平和条約締結の後に、とも記されている」。日本側は当然、日本の領土として返還されることを意味していると主張している。しかし、プーチン大統領は共同宣言にはどういう条件で引き渡すかまでは書かれていないと解釈している。つまり、「引き渡し」は主権を含むのか施政権などそれ以外にとどまるのか明確ではないというのだ。ロシアからすれば、仮に日本に引き渡しても、その後、米軍が日米安保条約に基づいてその島に軍事施設を作るなど自由に使えるようになってはたまったものではない。したがって、引き渡しについての言質を与えようとしていないのである。プーチン大統領がここまで強い態度に出た背景には、近年の米ロ関係の悪化があるだろう。実際、日ロ首脳会談が行われているその日に、米国では中央情報局(CIA)が米国大統領選で共和党のトランプ氏が勝つようロシアがサイバー攻撃を仕掛けたと調査結果を公表し、オバマ大統領が記者会見で「これはプーチン大統領の関与なしにロシアでは起きないことだ」とプーチン大統領を名指しで批判している。そんな空気の中で、米国と同盟関係にある日本と蜜月関係を築くことなどできようはずもない。日ソ共同宣言から60年たっても、北方領土問題は米ロ関係に縛られ、日本が独自外交を展開することは難しい問題なのである。

*6-3:https://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201908/CK2019080302000131.html (東京新聞 2019年8月3日) ロ首相、4年ぶり択捉島 日本側抗議 工場・学校など視察
 ロシアのメドベージェフ首相は二日、北方領土の択捉島(えとろふとう)を四年ぶりに訪問した。日本政府の中止要請に応じず強行した。インタファクス通信などが伝えた。ロシアによる実効支配を誇示し、日本との領土交渉で譲歩しない姿勢を示す狙いがあるとみられる。日本政府は外交ルートを通じ、訪問に強く抗議した。メドベージェフ氏は北方領土を事実上管轄する極東サハリン州訪問の一環として択捉島入り。水産加工場や学校、住宅の建設現場、温泉施設などを視察。現地に駐留するロシア軍の戦闘機乗務員らも激励した。河野太郎外相は二日、「日本の一貫した立場と相いれず、国民感情を傷つけて極めて遺憾だ。領土問題が未解決で、平和条約交渉が行われる中、受け入れられない」との談話を発表。外務省の正木靖欧州局長がロシアのビリチェフスキー駐日臨時代理大使に抗議した。一方、メドベージェフ氏は現地で記者団の取材に応じ、日本の抗議について「われわれの領土を訪れるのに何の心配もいらない。日本側の怒りが伝えられるほど、今後も訪問の理由が増える」と反論した。メドベージェフ氏は大統領だった二〇一〇年十一月、ロシア大統領としては初の北方領土訪問として、国後島(くなしりとう)に上陸。首相となってからも一二年七月に国後、一五年八月には択捉を訪れ、今回が計四度目の訪問となった。

<慰安婦像は芸術か?>
PS(2019年8月5日追加):*7-1の「あいちトリエンナーレ2019」で、「表現の不自由展・その後」と題して、慰安婦像を「表現の場から排除された芸術作品」として展示し、「①感情を揺さぶるのが芸術なのに、『誰かの感情を害する』という理由で自由な表現が制限された」「②政治的主張をする企画展ではない」と主張しているのに、私は最初に記事を読んだ時から違和感を覚えた。何故なら、慰安婦像は、設置された場所からわかるように、まさに②の政治的主張のために作られた立看の立体版であって芸術ではなく、既に日韓請求権協定によって解決済で韓国政府が対応すべきものだからだ。また、慰安婦像の設置によって傷つけられるのは、元慰安婦の女性・慰安婦を募集した人・利用した人などであり、真実性が最も重要で、興味本位で“自由な表現”をすれば名誉棄損・侮辱・人権侵害の性格を持つものである。
 このような中、*7-2のように、「テロや脅迫ともとれる抗議があり、安全な運営が危ぶまれる状況」として実行委が企画全体の中止を決め、芸術監督を務める津田氏が「想定を超えた抗議があり、表現の自由を後退させてしまった」と述べ、ペンクラブも「展示は続けられるべきだ」と声明を発表したそうだが、慰安婦像には(これまでの経緯から明らかなように)存命の加害者と被害者がおり、被害者にとっては二次的セクハラに当たるもので、制作者が真実性を無視して自由に話を作ったり、受け手が自由に鑑賞したりすればよいという性格のものではない。

  
あいちトリエンナーレ        世界で設置されている慰安婦像
 2019の慰安婦像

*7-1:https://digital.asahi.com/articles/ASM7W5KJPM7WOIPE00M.html?ref=weekly_mail&spMailingID=2593510&spUserID=MTAxNDQ3NTg5MjY5S0&spJobID=1060016657&spReportId=MTA2MDAxNjY1NwS2 (朝日新聞 2019年7月31日) 表現の場を奪われた作品展 少女像・九条俳句…再び問う
 3年に1度開かれる国際芸術祭「あいちトリエンナーレ2019」が8月1日、名古屋市と愛知県豊田市で開幕する。国内外のアーティスト90組以上が参加。美術館や劇場、街なかを作品で彩る。10月14日まで。2010年に始まり、4回目となる今回は、ジャーナリストの津田大介さんが芸術監督を務め、「情の時代」をテーマに掲げた。感情、情報、情け。3種類の「情」にまつわる作品が各会場に並ぶ。国際現代美術▽パフォーミングアーツ(舞台芸術)▽映像▽音楽▽ラーニングの5部門があり、モチーフや手法を複合的に組み合わせた作品も多い。なかには、部門を超えて来場者らと語り合う「エクステンション企画」を出展するアーティストもいる。
●津田大介さん「実物見て、判断する場を」
 8月1日に愛知県で開幕する国際芸術祭「あいちトリエンナーレ2019」で、企画展「表現の不自由展・その後」が開かれる。愛知芸術文化センター(名古屋市東区)を会場に、様々な理由で表現の場を奪われたという二十数点の作品が展示される。なかには、慰安婦をめぐって日本と韓国との間で論争になっている少女像も含まれる。今回の企画展は、2012年に東京の新宿ニコンサロンが、韓国人写真家安世鴻(アンセホン)さんによる元慰安婦の写真展をいったん中止にした問題をきっかけに、市民による実行委員会が東京・練馬のギャラリーで15年に開いた表現の不自由展の続編にあたる。今回のあいちトリエンナーレで芸術監督を務めるジャーナリストの津田大介さんは、15年の表現の不自由展を鑑賞し、「表現の場から排除された作品群に衝撃を受けた」という。昨年、当時の実行委員に再び開催することを打診。新たに結成した5人の実行委員会とともに準備を進めてきた。15年以降に展示できなかった作品も加え、17組が出品する。展示されるのは、安さんの作品のほか、さいたま市の公民館だよりへの掲載を拒否された憲法9条をテーマにした俳句など。少女像は、韓国人彫刻家のキム・ソギョンさんと夫のキム・ウンソンさんが「元慰安婦の苦痛を記憶する」ための象徴として手がけ、「平和の少女像」と呼んでいる。今回は15年と同じ2体を展示する。このうち、韓国の日本大使館前などに設置されている像のミニチュアは、12年に東京都美術館で展示されたが、途中で撤去されたものだ。公立施設での展示は、それ以来となる。元徴用工への補償問題などで日韓関係が悪化するなか、主催者側には、会場での妨害活動などを懸念する声もあったが、警察などとも連携して警備を整え、展示することを決めた。津田さんは「感情を揺さぶるのが芸術なのに、『誰かの感情を害する』という理由で、自由な表現が制限されるケースが増えている。政治的主張をする企画展ではない。実物を見て、それぞれが判断する場を提供したい」と話している。

*7-2:https://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201908/CK2019080402000215.html (東京新聞 2019年8月4日) 少女像展示の企画展、中止 津田氏「表現の自由後退」
 愛知県で開催中の国際芸術祭「あいちトリエンナーレ2019」実行委員会は三日、慰安婦を象徴した「平和の少女像」などの展示を同日までで中止すると発表した。実行委会長の大村秀章・同県知事が記者会見し「テロや脅迫ともとれる抗議があり、安全な運営が危ぶまれる状況だ」と理由を述べた。少女像は国内の美術館やイベントで近年、撤去や公開中止となった作品を集めた企画「表現の不自由展・その後」の一つとして出品。実行委は企画全体の中止を決めた。事務局によると、開幕からの二日間で抗議の電話とメールは計約千四百件に上ったという。大村知事は「(抗議が)これ以上エスカレートすると、安心安全の確保が難しい」と説明。事務局に「ガソリン携行缶を持って(会場の)美術館に行く」とのファクスがあったことも明らかにした。芸術祭の芸術監督を務めるジャーナリストの津田大介氏も会見し、「想定を超えた抗議があった。表現の自由を後退させてしまった」と述べた。一方、不自由展の実施団体は「中止決定は一方的に通告されたもので、契約書の趣旨に反する行為。法的対抗手段も検討している」との抗議声明を出した。実行委会長代行の河村たかし名古屋市長は二日、大村知事に抗議文を出し少女像などの展示中止を要求。文化庁の補助事業でもあり、菅義偉官房長官も同日、補助金交付を慎重に判断する考えを示した。
◆政治的圧力 検閲につながる ペンクラブ声明
 中止が決まった企画展について、日本ペンクラブ(吉岡忍会長)は3日、「展示は続けられるべきだ」との声明を発表した。声明は芸術について「制作者が自由に制作し、受け手もまた自由に鑑賞する。同感であれ、反発であれ、制作と鑑賞の間に意思を疎通し合う空間がなければ、芸術の意義は失われ、社会の推進力たる自由の気風も萎縮させてしまう」と強調。河村たかし名古屋市長や菅義偉官房長官の発言にも触れ、「政治的圧力そのものであり、憲法21条2項が禁じている検閲にもつながる」と批判している。

<原発の廃炉と使用済核燃料、LNG、再エネのコスト比較>
PS(2019年8月6日追加):東日本大震災時の原発事故を境に、原発は経済的に見合わなくなり既に「大廃炉時代」に入っていて、東電の福島第二原発廃炉も、*8-1のように正式に決定したそうだ。しかし、①危険な廃炉作業に当たる人材 ②40年超とする完了までの長時間 ③使用済核燃料と廃炉解体で生じる大量の放射性廃棄物の処分 などの負の遺産が山積みで、特に②③については、40年超も「とりあえず原発敷地内の地上で仮置きする」というのは、これまでずっと書いてきたように怖いことである。また、廃炉やこれらのごみ処理費用は、誰がどういう形で負担するのかを明確にして、すべて原発のコストに加えなければ、他のエネルギー源との正確なコスト比較はできないわけだ。
 そのような中、正確なコスト比較もせず、*8-2のように、1910年代に、チャーチルが「世界の産油国から分散して調達すれば問題ない」と主張したのを引き合いに出して、「エネルギー安保には調達先の多様性があればよい」と記載している記事もあるが、欧州はじめ世界では、*8-4のように、既に再エネを急増させており、これが正解だ。そのため、今から燃料用にロシアからLNGを購入するシステムを整えるのは無駄遣いで、LNGなら日本近海に大量に存在するため、輸出することを考えたほうがよいくらいなのである。
 また、*8-3のように、経産省は、「再エネは、固定価格買い取り制度により、買い取り費用が電気を使う家庭や企業への賦課金で賄われて毎月の電気料金に上乗せされるので、国民負担の増大に繋がった」としているが、再エネのコストは賦課金で賄われた金額が全てであるため、税金で支払われるコストやさまざまなリスクも含めて正確な原価計算をすれば、再エネは、今でも原発や化石燃料と比較して国民負担が少ない上、環境や安全保障にも優れている。従って、発電時のコストを下げることは重要であるものの、「再エネのコストが高く、国民負担の増大に繋がった」という表現は印象操作である。


                   *8-4より
  世界の再エネ導入量     世界の太陽光発電導入量    世界の再エネ投資額 

(図の説明:左図のように、世界の再エネ導入量は等比級数的に増加し、中央の図のように、特に太陽光発電で著しく増加した。また、右図のように、再エネへの投資額も増えている。その理由は、日本のように結果ありきの無茶な議論を展開せず、論理的思考をするからだ)

*8-1:https://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2019080302000140.html (東京新聞社説 2019年8月3日) 福島第二原発 大廃炉時代の範となれ
 東京電力福島第二原発の廃炉が正式に決定した。3・11を境に経済的に見合わなくなったこともあり、世はすでに「大廃炉時代」に入っている。出遅れを取り戻し、時代の先頭を走ってもらいたい。福島県と県内の全市町村が、県内の全原発を廃炉にするよう求めていた。住民感情に照らしてみれば、当然のことではないか。原発事故から八年余。東電は再稼働による収益改善にこだわった。「遅すぎた決断」との批判も、また当然だ。廃炉決定の報告を受けた福島県の内堀雅雄知事は、安堵(あんど)の表情を見せたという。だが、本当に大変なのはこれからだ。三基がメルトダウン(炉心溶融)を起こした第一原発と合わせて計十基。同時並行の廃炉事業は世界に例がなく、並大抵のことではない。完了までに四十年超とする東電の見込み通りに作業が進む保証はない。危険な作業に携わる人材が、将来にわたって確保できるかどうかも定かでない。それ以上にやっかいなのが、廃炉に伴う“ごみ”である。まずは使用済み核燃料。福島第二原発の燃料プールには、四基計一万七十六体が保管されている。搬出先は「今後検討」。とりあえずは空冷の金属容器に入れて、地上で厳重管理(乾式貯蔵)するしかない。原発敷地内での仮置きだ。その上、廃炉解体によって生じる放射性廃棄物の総量は、五万トンを超えるという。どうすれば、福島は心から安堵できるのか。核のごみの最終処分場を探し始めてかれこれ二十年。いまだ候補地が見つかる気配はない。東電は、もう一つある柏崎刈羽原発の再稼働に前向きだ。しかし、こと原子力に関しては、未曽有の事故の当事者として、ごみ処理を含む廃炉事業に全力を傾注すべきではないか。福島の事故以前に表明した三基を含め計二十四基が廃炉を決めた。「大廃炉時代」は、とうに始まっていた。法律で定められた四十年の寿命が尽きて廃炉に至る原発は、今後も増える。なのに、政府は運転延長や新増設を視野に入れ、原発を「基幹電源」に位置付けたままである。時代遅れというしかない。効率的な廃炉技術の開発や最終処分場の選定を政府も全力で後押ししつつ、再生可能エネルギーの普及を加速-。廃炉時代とは、そういう時代なのではないか。

*8-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190805&ng=DGKKZO48193210U9A800C1TJC000 (日経新聞 2019年8月5日) エネルギー安保に多様性 編集委員 竹田忍 北極圏、新たな選択肢に
 原油輸送の大動脈であるホルムズ海峡で米英両国とイランが対立、緊張が増している。非中東のエネルギー資源を求める各国は今、北極圏に熱い視線を注ぐ。米地質調査所(USGS)によればこの地域に眠る未発見の石油は世界の13%、天然ガスは30%を占める。ロシアのエネルギー・金融研究所のアレクセイ・グロモフ・エネルギー担当部長は1月、新潟市の講演で「ロシアのガス輸出で大半を占める欧州は再生可能エネルギーが急増している。今後のガス輸出は東方に向かう」と東アジア重視を強調した。呼応するかのように三井物産と石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)は6月、ロシア企業が北極圏で進める液化天然ガス(LNG)事業「アークティック2」に計10%の出資を表明した。同月には北極海に面したロシアのヤマル半島で生産したLNGを積んだタンカーが北極海を西に進み、ヨーロッパを回りスエズ運河経由で「戸畑LNG基地」(北九州市)に到着した。これが「西回り北極海航路」というルートだ。同基地を管理する北九州エル・エヌ・ジーには九州電力と日本製鉄が出資している。だが今後、重要なのは北極海を東進して、ロシアとアラスカの間を通る「東回り北極海航路」だ。温暖化で夏季は海氷が緩み、ベーリング海を通るルートが使えるようになった。ヤマルから東アジアへの航海日数は西回りに比べ18日短縮でき、二酸化炭素(CO2)排出量が約30%減る。西部ガスは中国などに向かう東回り北極海航路のLNG中継基地に自社施設を活用する構想を打ち出した。大気汚染対策で石炭から天然ガスへの切り替えを急ぐ中国は東回り北極海航路の最適ルート開拓に精力的だ。中国沿岸部から日本海を経て宗谷海峡を抜け、オホーツク海を北上、ベーリング海から北極海に入る。ただロシアはオホーツク海に安全保障の中核を担うミサイル搭載原子力潜水艦を配備している。防衛省防衛研究所の兵頭慎治・地域研究部長は「オホーツク海を頻繁に通過する中国船にロシアは神経をとがらせている」と話す。千島列島に新規配備する地対艦ミサイルでロシアがにらみを利かせる相手は、北極海航路を行く西側諸国の船に限らない。米国への対抗策で結びつく中ロの蜜月は盤石と言い難い。その点、日本の立ち位置は地域の信頼関係醸成に役立つのではないか。ロシアから北極圏の石油・ガスを輸入することに地政学的リスクはある。だが大阪ガスの尾崎裕会長は「北極圏開発に巨費を投じたロシアは資源を売って早期回収したいはず」と読む。エネルギー安全保障の要諦は分散化だ。海軍大臣だったチャーチルは1910年代に燃料を石炭から石油に転換し、英海軍の近代化に成功した。英国産石炭から輸入の石油への切り替えに反対は強かったが、チャーチルは世界の産油国から分散して調達すれば問題ないと主張し押し切った。「エネルギー白書2019」によれば日本の原油の中東依存度は87.3%と極端に高い。北極圏という新たな選択肢は日本にとって貴重であり、企業が果たす役割も大きい。

*8-3:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190806&ng=DGKKZO48225300V00C19A8EA2000 (日経新聞 2019年8月6日) 再エネ、コスト重視 普及優先の買取制から転換 経産省、市場活用へ新制度
 経済産業省は5日、太陽光や風力発電の事業者がつくった電気を大手電力があらかじめ決めた価格で買い取る制度を新規認定分から終了し、別の制度に切り替える案をまとめた。東日本大震災後に再生可能エネルギーの普及を最優先した「量」重視の現行制度は、国民負担の増大につながったためだ。発電時のコストを下げさせる「価格」重視への転換を図る。5日の総合資源エネルギー調査会の小委員会で中間整理案として示した。今後詳細を詰めたうえで2020年にも関連法の改正を目指す。固定価格買い取り制度(FIT)は11年の震災や原子力発電所事故などで再生エネの導入機運が高まる中で12年から始まった。買い取り費用は、電気を使う家庭や企業などから広く集める賦課金でまかなわれ、毎月の電気料金に上乗せされている。当初、事業用太陽光の買い取り価格は1キロワット時あたり40円と「普及を急ぎ海外比で割高に設定してしまった」(経産省幹部)。価格を年々引き下げ19年度には同14円となったものの、国民負担は膨らみ続けた。19年度の買い取り費用のうち、家庭や企業に転嫁する分は約2.4兆円と、消費税に換算すると1%程度に相当する。中間整理案では大規模の事業用太陽光や風力について、発電事業者自らが販売先を見つけたり、電力卸市場で売ったりすることを求める代わりに「投資回収について一定の予見性を確保できる仕組み」を新たに目指すとした。卸市場で電力価格が急落して基準価格を下回った場合に国が補填する仕組みなどが有力だ。切り替えは「電源ごとの案件の形成状況を見ながら」としており、普及が進んだ太陽光から先に適用する見通し。新制度が適用されるのは新規認定する案件で、既存案件は認定から20年の買い取り期間が終わるまで現行制度のままとなり、国民負担の引き下げにつながるまでには時間がかかる。家庭用太陽光は現行制度から変わらず、余剰電力を固定価格で一定期間買い取る。ただ前身となる家庭用太陽光を対象にした余剰電力買い取り制度は09年に始まっており、19年11月から10年間の買い取り期間が終わる「卒FIT」の家庭が出始める。この電力では電力の安定調達や集客を狙い、大手電力や新電力