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2020.3.28~31 予防と治療の重要性、病人を差別する国民性、法律に基づく差別について (2020年4月1、2、3、4、6日に追加あり)

 2020.3.27   2020.3.16     2020.3.12       2020.3.21
 東京新聞     毎日新聞      中日新聞        毎日新聞

(図の説明:1番左の図は、2020年3月の世界における新型コロナウイルス感染者数推移で、左から2番目の図のように、中国では感染者数が頭打ちになったのに対し、中国以外では感染者数が等比級数的に増えている段階だ。右から2番目の図は、3月11日の世界の感染者が多い10ヶ国だが、検査数も影響しているようだ。1番右の図は、3月21日時点の日本国内の県別感染者数で、人口密集地帯に多いことがわかる)

   
2020.2.28   2020.3.23     2020.3.25      2020.3.8西日本新聞
東京新聞    朝日新聞       四国新聞       *1-2-5より

(図の説明:1番左の図は、2020年3月27日時点の新型コロナウイルス感染者が多い国・地域の感染者数と死者数だ。日本では、左から2番目の基準で学校を再開するが、右から2番目のチェックリストに従ってチェックすることになった。このように、連日、新型コロナウイルスの予防策が報道され浸透した結果、1番右の図のように、インフルエンザ患者数も前年より6割減少するという効果があったそうだ)

(1)新型コロナの感染・予防・治療について
1)欧米の感染者とその対応
 新型コロナは、*1-1-4のように、中国で始まって多数の死者を出したため、世界でアジア人やマスク姿の人が差別されていたが、現在は、*1-1-1・*1-1-2のように、欧米で蔓延している。日本でも、武漢ウイルスと呼んで中国人を差別する論調が多かったが、人種差別だけでなく病気にかかった人(感染源という加害者である以前に感染させられた被害者)を差別するのも、知識と教養の欠如による人権侵害だ。

 世界では、*1-1-1のように、3月26日20時現在、感染者47万人超、死者2万人超(イタリア7,500人超、スペイン3,600人超、米国1,000人超、フランス1300人超、英国460人超、オランダ350人超)であり、さらに、米国は、*1-1-2のように、3月下旬から感染者が急増して3月27日までに感染者が85,000人超となり、*1-1-3のように、全米の感染者数の3割がニューヨーク市に集中して病床や人工呼吸器が不足し、医療崩壊が懸念されているそうだ。

 米国でマスクが普及しなかったのはドレスコードになかったからだそうだが、欧米は難民や外国人労働者の流入も多く、貧しくて栄養が十分でなかったり、予防の知識・意識・ツールが乏しかったり、医療へのアクセスが悪かったりする人も多いと思われる。そのため、今後は、年齢や持病の有無だけでなく、感染して亡くなった方の背景も調査した方が良いだろう。

 このような中、日本では、花粉症を起こす杉花粉やフクイチ由来の放射性物質から防護する目的でマスクを常用している人が多く、栄養状態も全体としては悪くなく、予防の知識やツールもあるため、新型コロナやインフルエンザが流行しても、よほど意識の低い人でなければ一定の抵抗力はあると考える。

2)新興国(開発途上国)での感染と強制的対応
 インドネシアのジャカルタでは、*1-1-5のように、3月20日までに369人が感染して32人が死亡し、感染者の6割が首都ジャカルタに集中しているため、州知事が3月20日に非常事態宣言を出して州内の全企業にオフィス利用の停止を強く求めたほか、娯楽施設の営業を禁止し、非常事態宣言中は州内に軍や警察が展開して住民の外出を事実上制限するそうだ。

 また、インドでも、*1-1-6のように、3月24日、首相が国民向けにテレビ演説して、新型コロナの感染防止策として、3月25日から21日間、全土を封鎖すると表明している。インドやインドネシア等の新興国は、人口当たりの医師数や医療資源が乏しく、一般の衛生環境や教育・意識にもバラツキが大きいため、家にいる以外に予防手段がないというのは本当だろう。

3)日本での感染と対応
 日本の感染症のわかりやすい歴史は、1822年に世界的大流行が九州(長崎?)から日本に及んで初めてコレラが日本で発生し、1858年や1862年にも大流行が発生し、1879年と1886年に死者が10万人の大台を超えたものだ。コレラの予防には、衛生の改善と清潔な水へのアクセスが必要なのだが、江戸(東京)や大阪に人口が集中し、上下水道等の衛生関係インフラが整っていなかった時代に、免疫のないところに外国からコレラ菌が入ってきて大流行になったのである。

 現在の日本は、上下水道・衛生意識・医療などのインフラが整ってきている上、東大医科研のチームがコメに遺伝子組換技術を用いてコレラ毒素B鎖を発現させたコレラワクチン米を開発して常温保存可能な経口ワクチンを作っており、まだ臨床に応用されていないのが残念ではあるものの、よい技術を見つけているので、他の感染症にも応用が利きそうである。

 つまり、人口が密集して衛生環境の良くない大都市で、開国やグローバル化により一般人が免疫を持っていない菌が入った場合に感染症が大流行しているのであり、新型コロナも似ているため、開発途上国や先進国大都市の衛生弱者にリスクが高いと思われる。

 従って、外国で非常事態宣言を出したり、都市封鎖をしたりしたから、日本でも同様にしなければならないというわけではなく、*1-2-3のように、日本国内の感染者が3月25日午後10時までに1,269人に上り、東京都の感染者数が210人になって都道府県で初めて200人を超えたと書かれているものの、東京都の人口が13,935,645人(2019年9月1日現在)であることを考えると、感染者割合は(あまり検査していないせいかもしれないが)0%に近いのである。

 また、*1-2-4のように、「新型コロナの感染拡大が、重大局面を迎えつつある」「爆発的な急増を防ぐ措置として、東京都と関東近県が週末の往来を自粛するよう住民に求めたのはやむを得ない」「緊急事態宣言を出す」「首都封鎖」などと言うのは、騒ぎ過ぎだろう。ただし、東京都は下水道が古くて容量が足りず、上水道も節水しすぎて不潔なくらいであり、通勤・通学で近県から満員電車という密閉空間で1日300万人近くが往来するため、日本国内では感染リスクが高い方にあたる。 そのため、東京や大阪などの大都市で新型コロナが蔓延しているからといって、全国一斉に休校や自粛をする必要はないと思う。

 その新型コロナの感染が広がる一方で、*1-2-5のように、インフルエンザの患者数は前年と比較して6割減少しているそうだ。これは、新型コロナの感染予防で、手洗い・マスク着用・せきエチケットなどの取り組みが全国に浸透していったことが奏功しているそうで、これは、新型コロナの感染拡大防止にも繋がるものである。 

 なお、東京慈恵会医科大学の浦島教授が、*1-2-6のように、日本で新型コロナが感染爆発しない理由を挙げておられる。私は、これに加えて、ウイルスの弱毒化への変異があると思うが、その理由は、宿主を殺してしまえばウイルスは増殖できず、宿主を殺さない方向に変異したウイルスだけが次に感染する機会を得て増殖するからである。つまり、油断や楽観視は禁物だが、人権侵害になるほど騒ぎ過ぎる必要はないと思われるウイルスだ。

4)感染源特定と病人差別
 *1-2-1のように、医師の新型コロナ感染が判明した和歌山県有田病院の病棟内をドローンで撮影しようとしたり、ふるさと納税に対する有田町の返礼品を拒んで“地元いじめ”をしたり、感染者が悪いことをした犯人であるかのように追跡したり、感染者を見下すような報道をしたり、患者の住所を教えてほしいという要求をしたりして、新型コロナ感染者いじめをしたのは、(自分は“普通”だから上だと思っている)日本人の知識や教養に欠ける病人差別だ。

5)治療差別
 政府が、*1-2-2のように、(どのような病気であれ、病室に複数の人を収容するのは治療環境が悪すぎるが)感染症指定医療機関などに個室管理可能なベッドを1万2千床確保するのはよいことだ。ただ、厚労省は「爆発的感染拡大が起きれば、最悪で東京だけで1日4万5千人の感染者が出る」としているが、そもそも無症状や軽症者を病院に入院させておくことは他の病気ではありえない。感染防止のためなら、自宅やホテルなどの借り切りで、徹底して衛生管理すればよいと考える。

 しかし、重症化した人には治療するのが医療先進国であり、ここで“トリアージ”と呼んで年齢による治療差別を行うのはよくない。さらに、コロナ感染については、その重症化しやすさについて、必要以上に年齢差別して報道しているように見える。

(2)ハンセン病差別

   

(図の説明:左図のように、ハンセン病は1947年に治療薬ができた後も隔離政策が続き、本人だけでなく家族も著しい差別を受けた。国の隔離政策の根拠となった「らい予防法」は1996年にやっと廃止されたが、その後も元患者や家族に対する差別は続いている。中央の図は、ハンセン病への対処の歴史であり、人権よりも国家の対面を重んじるために隔離政策をとったことがわかる。そして、右図のように、その判断には科学的根拠がなく、それこそ国家の恥である)

 完治する病となり科学的根拠がなくなっても長く続いた隔離政策で、ハンセン病の元患者は、*2-2のように、社会からだけでなく家族からの偏見・差別・人権無視にも苦しんだ。例えば、元患者は家族に迷惑がかかるからと療養所内で偽名を使わせられ、隔離政策の誤りを国が認めた2001年の熊本地裁判決を機に実名に戻って故郷に帰ろうとしても家族が受け入れず、死んでも実家の墓に骨を引き取ってもらえないという状況があった。

 しかし、これは、家族が率先して社会復帰の壁になったわけではなく、長く引き離された上に日本社会から受けたすさまじい家族差別もあったため起こったことである。そのため、国の責任が認められ、元患者に補償がなされ、差別されながら顧みられかった元患者の家族に対しても、2019年11月22日に「ハンセン病元患者家族に対する補償金の支給等に関する法律」が公布・施行され、名誉回復にも言及されたのは遅すぎたとしてもないよりはずっとましだったのである。

 ハンセン病の元患者と家族は国の誤った政策により、*2-1のように、熊本地裁が指摘したとおり、人格形成や自己実現の機会が失われ、家族関係の形成を阻害されるという人生を台無しにされて取り返しのつかない「人生被害」を受けたのだから、国が賠償をするのは当然である。さらに、らい予防法廃止後も偏見や差別を除去しなかったことは驚きであると同時に憲法違反でもあるのに、この当たり前の判決が“画期的”なのである。

(3)「犯罪者≒精神障害者」とする精神障害者差別
1)責任能力の有無は本当の争点だったのか? ← 犯罪者を精神障害者に仕立て上げる日本の刑法の非科学性と精神障害者差別
 相模原市の知的障害者施設「津久井やまゆり園」で入所者45人を殺傷して殺人罪などに問われた植松被告の裁判員裁判が横浜地裁で開かれた。日本では、殺人が明白な場合の弁護側の方針は、*3-1のように、「精神病で判断力がなかった」という精神鑑定結果を出すことが多いが、ここで言われた大麻精神病などという精神病を私は聞いたことがない。

 それにもかかわらず、弁護士がこういう弁護方針を採用する理由は、*3-5のように、刑法第39条に「心神喪失者の行為は、罰しない。心神耗弱者の行為は、その刑を減軽する」と規定されているからで、その前提として、違法行為を行った者の責任を問うためには、責任能力(①事理弁識能力:物事の善し悪しが判断できる能力) ②行動抑制能力:自身の行動を律することができる能力)が必要とされているからだ。

 そして、“心神喪失者”とは「精神障害者の中でも行為の善悪の判断が全くつかない人」、“心神耗弱者”とは「精神障害者の中で判断能力が著しくつきにくい状態の人」とされているが、現在の精神病に“心神喪失”や“心神耗弱”という医学的症状はない。つまり、刑法第39条は、1907年に施行された刑法の枠組みのまま使われており、そこには現在の精神病医学の概念は入っておらず、医学的に正しくないのである。

 その上、刑法第39条は、「精神病者を、“平均人ならざる”ものであるため、“反社会的”で“危険な個人”である」と、精神医学とは全く関係なく位置付けており、法律で精神病患者を差別することになっている。そのため、“心神喪失”“心神耗弱”という言葉は正確に定義しなおし、そこに入れるべき人も検討し直すべきだ。さらに、「泥酔していたから」「薬物中毒だったから」というのは、「判断能力がなかった」等として責任を問わない理由にはならないと考える。

 植松被告の弁護側は、*3-1のように、「植松被告は2015年頃から大麻を乱用するようになって問題行動が増え、『障害者は不幸をつくるから殺す』という考えに至ったのは大麻乱用による飛躍や病的高揚感があったからだ」と指摘しているが、横浜地裁判決は、差別的な主張を繰り返した植松被告の事件当時の刑事責任能力を認めて、求刑通りの死刑判決を言い渡した。

 しかし、その裁判の進行中、検察側・弁護側・裁判所・メディアの報道は、「被告の障害者に対する差別的な考えが犯行を引き起こした」としていたが、その基になっている考え方が、非科学的な精神障害者差別そのものであることには、全く気を止めていなかった。

 一方、*3-3の埼玉県熊谷市の強盗殺人事件では、罪に問われたペルー国籍のナカダ・ルデナ・バイロン・ジョナタン被告に対して、東京高裁が「統合失調症の影響で心神耗弱状態だった」と判断して一審の死刑判決を破棄したが、「統合失調症による被害妄想→心神耗弱→強盗殺人」という論理にはそれこそ飛躍がある。そのため、東京高裁が被告の供述を持ち出して行動制御能力がないと結論づけたのは、真犯人ではないと気付いたからではないかと思うが、それなら真犯人を捕まえて罰すべきであり、刑法39条をこのように使えば、統合失調症患者にとってはいわれなき差別を助長されることになるわけだ。

 そして、このような裁判や報道が繰り返された結果、*3-4のように、全国には首長部局に知的・精神障害者を1人も雇用していない自治体が少なくとも41%あり、全体の13%は一般職員(短時間を含む)の募集条件からも知的・精神障害者を除外するという雇用差別を行うことになり、知的障害者や精神障害者に雇用の機会が与えられないという実害が生じているのである。

2)本当の論点は、家族や社会のためではなく、本人が主体として差別されず尊厳を持って幸福に生きられるか否かである
 裁判で「意思疎通のとれない人は社会の迷惑」「重度障害者がお金と時間を奪っている」等と語った「津久井やまゆり園」事件の本当の論点が、植松被告の責任能力でないことは確かだ。しかし、本当の論点を語るのは難しい上に、いわれなき非難を浴びる可能性も高い。そのため、「気の毒だが、距離を置こう」と考えるのが普通の人だが、それでは何も解決せず、誰も今より幸福にすることができない。

 そのような中、*3-4のように、重度身体障害があって18歳までの大半を施設で暮らした、れいわ新選組の木村参院議員が、障害者本人の立場から「津久井やまゆり園」事件について述べられたのは、参考になる。木村議員が、「①彼が言っていることは皆さんにとっては耳慣れなくて衝撃的でしょうが、同じような意味のことを、私は子どもの頃、施設の職員に言われ続けました」「②19歳で地域に出ていなければ、津久井やまゆり園に入所していたかもしれず、殺されていたのは私かもしれません」「③親が頼れるのは施設だけでしたが、私にとっては牢獄のような場所でした」「④食事を食べさせてもらえないこともありました」「⑤自由もプライバシーも制限され、希望すら失って決まった日常を過ごす利用者を見た人に偏見や差別の意識が生まれても不思議ではありません」と語っておられるのは、施設で人間としての尊厳を失って過ごすことを余儀なくされた経験のある本人にしか言えないことだろう。

 また、「⑥私は、被告だから事件を起こしたとは思えません」「⑦私は親から施設に捨てられた歓迎されない命だという思いを抱いて生きてきました」「⑧公園デビューをした時、息子と子どもたちが砂場で遊んでいて、車いすに乗った私が息子に声をかけ、私が母親だとわかった瞬間、周りのお母さん方が自分の子どもを抱き上げて帰ってしまいました」「⑨小学校の授業参観で教室が狭くて他のお母さんたちが入れないので『詰めていいですよ』と言っても、半径1メートル以内には近寄ってきません」「⑩社会から排除することそのものが差別です」というのは、「津久井やまゆり園」事件で如何にも人道主義者であるかのように植松被告を批判している多くの人が無意識に行っている行為だ。

 そして、「⑪福祉サービスは増えたが、重度訪問介護が就労中などに公的負担の対象外」「⑫移動支援が自治体により差がある」「⑬重度障害を理由に普通学校への入学が認められない例もある」については、高齢者のみに偏らない訪問介護が必要であり、尊厳を失わずに生きられるための普通教育も重要で、こうした課題を解決できた時に、「津久井やまゆり園」事件は意味を持てるのである。

 なお、重度障害者を家族や社会の都合ではなく、本人の幸福のためにどこまで治療して助けられるか、どこから本当の安楽死を認めるべきかという難しい論点も見逃されているが、これは、森鴎外の「高瀬舟」以来、日本では解決できていない重たすぎる課題である。

(4)後見制度について
 税理士は、事業承継が困難な中小企業や相続が発生しそうな事業主に普段から接し、税務に関する代理・税務書類の作成・アドバイスなどをしているため、成年後見や任意後見のニーズを知る機会の多い専門職だ。また、税理士法の1条、2条に基づき、独立・公正な立場で税務代理や税務書類の作成を行い、顧客の求めに応じて財務書類の作成や記帳代行も行うため、税理士が蓄積してきた知識・経験は成年後見人や成年後見監督人にも役立つものである。そのため、関東信越税理士会が、2019年11月、「成年後見人等養成研修」を行い、私もそれに参加したが、内容や資料が充実して気合いの入ったものだった。

 このような中、西日本新聞が、2019年11月26日、*4のように、「適正な類型をどう判断するか」「後見偏重の修正はこれからだ」と記載しており、私もそれに賛成だ。また、90代の父親から金を搾り取っている息子には呆れるが、そのように育てた父親にも責任の一部はあるし、他の兄弟とは異なる事情があるのかもしれないため、父親の本心をよく聞いた上で、遺産分割についての遺言を作っておいたらどうかと思う。

 なお、私は、本人の意思を尊重する指針が出て、法定後見が本人の意向が尊重される方向に改正されたのは、日本国憲法も「第11条:国民は、すべての基本的人権の享有を妨げられない」「第13条:すべて国民は個人として尊重され、生命・自由及び幸福追求に対する権利は、公共の福祉に反しない限り、最大の尊重をする」と定めていることから、よかったと考えている。

 従来の禁治産・準禁治産制度は、1898年に明治憲法下の明治民法で定められたもので、禁治産者・準禁治産者になると、その事実が公示され戸籍に記載されてプライバシーが侵害され、呼称が偏見や差別を生み、障害者本人の権利や利益の擁護はしておらず、障害者と取引を行った相手の取引の安全性も図られていなかったため、2000年の民法改正で本人の意思や自己決定権の尊重、ノーマライゼーションを理念として民法の成年後見制度が施行されたことはよかったのだ。しかし、これまで後見に慣れてきた専門家は、「後見にしておけば間違いない」という意識が強く、制度の利用が後見に偏りがちという欠点があるそうだ。
    
 関東信越税理士会の「成年後見人等養成研修」の研修の終わりに課せられ、研修内容を基にして私が書いたレポートの一部が下のとおりだが、ここでも「精神障害」を一括して後見の必要な人と定義しているため、医学的症状と整合性がとれ人権に配慮した用語への修正が必要だ。

1)現在の後見制度の種類
(イ)法定後見制度(民法838条~876条の10)
 従来の禁治産・準禁治産制度を、各人の判断能力や保護の必要性の程度に応じて、補助(新設)、保佐(準禁治産の改正)、後見(禁治産の改正)に改めたもので、被補助人・被保佐人・成年被後見人を支援するために、家庭裁判所が適当と認める者(補助人・保佐人・成年後見人)を選任して権限を付与するもので、開始時には裁判所が監督人を選任する。

①補助(民法876条の6~876条の10)
 「補助」は、比較的軽度な精神障害(認知症・知的障害・精神障害)がある人のための制度で、本人の重要な財産に影響を与える行為について、状況に応じて補助人に同意権や代理権を付与して保護を図るもので、本人・配偶者・四親等内の親族・後見人・後見監督人・保佐人・保佐監督人又は検察官が、裁判所に「補助開始の審判」を申立てることにより開始される。本人以外の者の申立てによって「補助開始の審判」を行う場合は、本人の同意を要する。申立により、家庭裁判所は、補助人を選任したり、当事者が選択した特定の法律行為に関して代理権や同意権を付与したり、代理権の追加・取消をしたり、補助の終了を行ったりする。

②保佐(民法876条~876条の5)
 「保佐」は、精神障害(認知症・知的障害・精神障害)により「事理を弁識する能力が著しく不十分な者」を対象とする制度で、一定の「重要な行為」について保佐人の同意を必要とすることで、本人が不利益を受けるのを防ごうとするものだ。保佐の開始も、本人・配偶者・四親等内の親族・後見人・後見監督人・補助人、補助監督人又は検察官・任意後見受任者・任意後見人・任意後見監督人・市町村長が、裁判所に「保佐開始の審判」を申立てることによって行われ、補助とは異なり本人の同意は不要で精神鑑定が必要である。

 これにより、家庭裁判所は本人のために保佐人を選任し、「重要な行為」を行うには保佐人の同意が必要となり、「重要な行為」でなくとも同意権付与の審判を経れば保佐人に同意権を付与することができ、特定の法律行為については、当事者が選択したものについて保佐人に代理権を付与することができる。本人の判断能力の回復により保佐開始の原因が止んだ時は、家庭裁判所は本人・配偶者・四親等内の親族・保佐人・保佐監督人等の請求により、保佐開始の審判を取り消さなければならない。また、判断能力の減退又は回復により、後見開始又は補助開始の審判に移行する時は、審判の重複を避けるため、家庭裁判所は職権で保佐開始の審判を取り消す。

③後見(民法843条~875条)
「後見」は、精神障害(認知症・知的障害・精神障害)により「事理を弁識する能力を欠く状況にある者」を対象とする制度で、自分の行動の意味や結果を理解できないため、単独で契約などを行った場合に不利益を被る恐れがある場合に、成年後見人が代わって契約等を行い、本人を保護する制度だ。後見の開始は、本人・配偶者・四親等内の親族・後見人・後見監督人・補助人、補助監督人又は検察官・任意後見受任者・任意後見人・任意後見監督人・市町村長が、裁判所に「後見開始の審判 」を申立てることによって行われ、本人の同意は不要だが、精神鑑定が必要である。

 家庭裁判所は後見開始の審判において、本人(成年被後見人)のために成年後見人を選任し、成年後見人には幅広い権限が付与される。本人の判断能力回復により後見開始の原因が止んだ時は、家庭裁判所は本人・配偶者・四親等内の親族・成年後見人・後見監督人等の請求により、後見開始の審判を取り消さなければならない。また、判断能力の回復により、保佐開始又は補助開始の審判に移行する時も、審判の重複を避けるため、家庭裁判所は職権で後見開始の審判を取り消す。成年後見人は、本人の財産に関する法律行為について代理権、同意権又は取消権を付与され、本人のためにその職務を行うとともに、善管注意義務を負う。具体的には、その職務を行うにあたり、「意思尊重義務」「身上配慮義務」が求められる。

④成年後見監督人等
 2000年の改正により、成年後見人・保佐人・補助人の権限乱用に配慮し、成年後見制度の信頼性や安全性をより確実なものにするため、法定後見制度で家庭裁判所が必要と認めた場合は、成年後見人の職務を監督する者(個人・法人とも可)を選任できる旨の規定が設けられた。そのため、成年後見監督人等の職務は、i)成年後見人等の事務を監督する ii) 成年後見人等が死亡で欠けた場合に、遅滞なく後任者の選任を家庭裁判所に請求する iii)急迫な事情がある場合は、成年後見人等に代わって必要な処置をする iv) 成年後見人等と本人の利益が相反する場合は本人を代理する などだ。そのほか、成年後見監督人等は、いつでも成年後見人等の事務に関する報告を求めて成年後見人等の事務や本人の財産状況を調査することができ、本人の財産の管理、その他後見等の事務について必要な処分を命ずることを家庭裁判所に請求したり、監督過程で不正行為を知った場合には、成年後見人等の解任を家庭裁判所に請求したりすることができる。

(ロ)現在の任意後見制度(任意後見契約に関する法律)
 任意後見制度は、2000年に施行された「任意後見契約に関する法律」で新設された制度で、本人が契約締結に必要な判断能力を有しているうちに、将来の判断能力低下に備えて任意後見人や支援の範囲等に関して公正証書により契約を行い、実際に判断能力が低下した時に、家庭裁判所による任意後見監督人の選任によってその契約の効力が生じる制度である。

①任意後見制度の特徴
 任意後見制度の特徴は、自らの意思で決める自己決定権の尊重と任意後見監督人の選任による信頼性の確保だ。

②任意後見契約の締結
 任意後見契約は、法務省令で定める公正証書によって代理権の有無・範囲を明確にして作成し、公証人が直接関与することによって委任者の真意による適法で有効な契約締結が担保することが意図され、登記所へは公証人が遺漏なく登記する。

③任意後見契約の開始と任意後見監督人の選任
 任意後見契約の締結後、本人の事務弁識能力が不十分な状態になった時は、本人の住所地を所管する家庭裁判所に対して、任意後見監督人の候補がいる場合にはその旨を記載し、通常は書面で審判の申立を行い、家庭裁判所が任意後見監督人を選任して任意後見契約が開始される。この申立ができるのは、本人・配偶者・四親等内の親族・任意後見受任者のみである。

④法定後見と任意後見契約の関係
 任意後見契約が登記されている場合には、本人の自己決定権を尊重する観点から、法定後見の開始の申立がなされた時は、任意後見を優先して裁判所は原則として法定後見開始の申立を却下する。ただし、任意後見に与えられている代理権の範囲が狭すぎ、悪質な訪問販売による被害の恐れが強い場合など、本人の利益のために特に必要があると認められる場合には、例外的に法定後見開始の審判をすることができる。

⑤任意後見制度の利用形態
 任意後見制度の利用形態には、i) 本来型(任意後見契約を単独で結び、本人の判断能力が低下してから任意後見を開始するもの) ii) 移行型(任意後見契約と民法の委任契約・代理権授与契約による財産管理等に関する契約を同時に締結し、本人の判断能力が低下してから任意後見を開始するもの) iii) 即効型(判断能力が多少不十分だが契約締結時に意思能力はある者が、任意後見契約の締結と同時に任意後見監督人の選任を申立て、直ちに契約を発効させるもの) がある。

(ハ)後見登記制度
 成年後見登記制度は、法定後見(補助・保佐・後見)及び任意後見に関する事柄を公示するための制度で、従来の禁治産宣告・準禁治産宣告の戸籍記載に代わる新たな方法として「後見登記に関する法律(平成11年法律152号)」に基づいて創設されたものだ。これは、後見に関する情報を「登記」という方法によって管理・証明し、この登記情報の開示を求めることができる者を限定することによって、取引の安全性と本人のプライバシー保護の両立を図ったものである。登記は、原則として裁判所書記官又は公証人の嘱託に基づいて行われ、申請に基づいて行われる登記は、変更又は終了の登記等の一部に限られる。

(二)2016年(平成28年)度の改正による影響
 ①成年後見人が、家庭裁判所の審判を得て、成年被後見人宛の郵便物の転送を受けることが
  できるようになった(郵便転送。民法第860条の2,第860条の3)
 ②成年後見人が、成年被後見人の死亡後にも行うことができる事務(死後事務)の内容と
  その手続が明確化された(民法第873条の2)

・・参考資料・・
*1-1-1:https://digital.asahi.com/articles/ASN3V6SR3N3VUHBI01J.html (朝日新聞 2020年3月26日) 新型コロナ、死者2万人超 イタリアとスペインで半数に
 世界で感染拡大する新型コロナウイルスによる死者数が26日、2万人を超えた。世界保健機関(WHO)や各国政府の発表をもとに集計している米ジョンズ・ホプキンス大学システム科学工学センターによると、イタリアが7500人超、スペインが3600人超で全体の半数以上を占めた。感染が急増している米国でも1千人を突破。世界の感染者数は同日午後8時現在で47万人を超えている。欧州での感染の中心となっているイタリア政府は25日、死者数が前日比で683人増え、7503人になったと発表した。感染者も7万4386人に達し、8万1千人超の中国に迫る勢いだ。イタリアでは移動の制限や公園の閉鎖などの措置が全土に広がっている。14日に政府が警戒事態を宣言したスペインでは死者数が前日より738人増えた。感染者数も4万9千人超となった。首都のあるマドリード州で被害が集中している。そのほかの死者数はフランスが1300人超、英国が460人超、オランダが350人超で、イタリア、スペインを含む欧州5カ国で計1万3千人超となり世界の死者数の6割を占める状況だ。

*1-1-2:https://www.tokyo-np.co.jp/article/world/list/202003/CK2020032702000301.html (東京新聞 2020年3月27日) <新型コロナ>世界感染50万人超 米が中国抜き最多
 米ジョンズ・ホプキンズ大の集計によると、新型コロナウイルスの感染者が二十六日、世界全体で五十万人を超えた。二十四日に四十万人に達したばかりで、二十日の二十五万人から一週間足らずで倍増。米国が初めて中国、イタリアを上回って世界最多となり、流行の拡大は新たな局面に入った。勢いは衰えず、終息の気配は見えない状態が続いている。三月は欧州で感染拡大が続いてきたが、下旬からは米国での感染者が急増し、二十七日までに八万五千人を超えた。中国は横ばいで推移、欧州ではイタリアで被害が最も大きい。世界全体の死者は二十五日に二万人を超え、二十六日時点で二万三千人に上っている。世界保健機関(WHO)の二十六日付状況報告によると、感染者の54%、死者の67%は欧州地域事務所管内(旧ソ連諸国を含む)に集中しており、三月に入り「パンデミック(世界的大流行)の中心地」(テドロスWHO事務局長)となったことを如実に反映している。同報告によると、前日からの新規感染者についても、欧州は世界全体の61%と多いが、単独で24%に上っているのが米国で、ここ数日は一日当たり一万人前後の増加が続いている。三億六千六百万人の人口を抱える米国での感染拡大防止策が効果を上げるか否かが、今後の世界的流行の情勢を左右することになる。二十一世紀に入ってからのコロナウイルスによる新たな感染症では、重症急性呼吸器症候群(SARS)が感染者約八千人で死者約八百人、中東呼吸器症候群(MERS)が感染者約二千五百人で死者約八百六十人の被害が出ている。

*1-1-3:https://digital.asahi.com/articles/DA3S14418428.html (朝日新聞 2020年3月27日)  感染集中、NYの医療窮地 病床、14万床必要なのに5万床 新型コロナ
 全米最大の都市、ニューヨーク(NY)市で新型コロナウイルスの感染拡大が止まらない。全米の感染者数の3割が集中。病床や人工呼吸器の数が不足しており、医療崩壊が懸念されている。25日昼、NY市のジョン・F・ケネディ空港の出発ロビーには、感染を避けようと防護服に身を包んだり、大型ゴーグルを着けたりする乗客たちの姿があった。「NYで暮らすリスクはあまりにも高すぎる」。市内の金融機関勤務のアジア系男性がマスクを押さえながら語った。「NYからの逃避」という言葉が、たびたび報じられている。
市内で感染者が最初に確認されたのは今月1日だが、3週間あまりで約2万人まで増え、死者も280人に達した。デブラシオ市長は25日夕、会見で「NY市はこの危機の中心地だ」と危機感をあらわにし、「4月は、3月より厳しい状況になる」と語った。感染者が次々と確認される中、医療態勢の不備が懸念されている。NY市によると、最も多くの感染者が出ているクイーンズ地区の公立病院「エルムハースト・ホスピタル・センター」(545床)では24時間のうちに感染患者13人が死亡した。集中治療室がいっぱいになり他の病気の患者を別の医療機関に移し始めた。NY州のクオモ知事によると、州内では今後2~3週間で感染者数がピークを迎え、最大で推計14万床必要だが、州内には約5万3千床。NY市内の大型会議場を含む4カ所に仮設病院を作っているが、まだ足りない。人工呼吸器も、NY市だけで1万5千個必要だが、その6分の1しかないという。NY市当局の初期対応にも注目が集まる。デブラシオ氏は今月2日時点で「1200床のベッドを確保している」と強調し、「我々には対処する能力がある」と封じ込めに自信を見せていた。12日に緊急事態宣言。その後も、1866校ある市内の公立校は「給食に頼っている子どもも多い」と続けており、保護者や教員の要請を受け、16日に休校した。ニューヨーク・タイムズ紙は「デブラシオ氏は、日常生活を送るよう市民を促し続けた」と批判し、保健当局の複数の担当者が「市長が態度を改めない限り、辞任する」としていると伝えた。市の対応が後手に回った感は否めない。

*1-1-4:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO55420100Y0A200C2000000/ (日経新聞 2020/2/8) 新型肺炎、各地で広がるアジア人差別 NYで暴行被害
 中国で多数の死者を出している新型コロナウイルスの拡大を受けて、世界各地でアジア人への差別が問題となっている。米ニューヨークの地下鉄の駅では男がマスクをつけたアジア系の女性に暴行を加える事件が発生した。SNS(交流サイト)の普及で差別的な発言やヘイトスピーチ(憎悪表現)が拡散しやすくなっており、冷静な対応が求められている。「マスクの中国人女性が暴行された」。ニューヨーク在住のトニー・ホー氏は4日、ツイッターに事件の様子をとらえた動画を投稿した。マンハッタンの地下鉄の駅内を走る女性の前に突然、男が立ちはだかり「俺に触るな」などと罵りながら傘や手でたたく様子が映っていた。ホー氏は「多くのアジア人は新型ウイルスが流行する前からマスクをつけているのに、急に脅威と感じるようになった」と嘆く。「アジア人が事件に巻き込まれても、その情報は広まらない。アジア人は従順で気が弱いと思っている」とも書き込んだ。移民に寛容なイメージの強い隣国カナダも例外ではない。トロント近郊の中国系住民が多く住む地区では、最近中国を訪れた家族のいる子どもをしばらく通学させないよう学校に求める署名運動が起きた。インターネット上で約1万人の署名が集まったが、学校側は「安全の確保という善意に基づいていたとしても、隔離を求めるのは人種差別だ」として要求を却下した。中国料理店のサイトへの人種差別的な書き込みや学校でのいじめなども報告されているという。欧州で初の感染者が確認されたフランスでも「アジア人には近づかないほうがいいと露骨に避けられた」などの声が上がっている。ジャーナリストのリンラン・ダオ氏はツイッターで「アジア人だからと侮辱され、公共交通機関から蹴り出される。これは冗談やネット上のヘイトではなく、現実に起こっていることだ」と訴えた。差別の対象となっているのは中国系住民だけではない。仏高級ブランド「ルイ・ヴィトン」の公式アカウントがSNSに掲載した日本人女優の広告には「コロナウイルスか?」といった差別的なコメントが多数寄せられた。問題のコメントは現在は削除されているが、ルイ・ヴィトン側が1週間近く対応を怠ったとしてネット上では非難の声が上がっている。仏紙パリジャンは「中国人か韓国人かなんて分からないから、アジア人の横には座らない。差別ではなく予防だ」という市民の意見も紹介した。米紙ニューヨーク・タイムズは、日本でもツイッターで「中国人は日本に来るな」がトレンド入りしたことを取り上げた。同紙は「中国の経済・軍事力の成長がアジアの隣国や西欧諸国を不安にさせる中で、新型コロナウイルスが中国本土の人に対する潜在的な偏見をあおっている」と分析している。フランスでは「私はウイルスではない(#JeNeSuisPasUnVirus)」として、ツイッターで人種差別をやめるよう訴える投稿が相次いでいる。仏国立人口学研究所のヤーハン・チャン氏は地元メディアの取材に対し「学校や公共機関での教育活動が必要だ。アジア人への人種差別を止めるため、やるべきことがたくさんある」と述べた。国連のグテレス事務総長は4日に新型肺炎を巡り「人種を理由にした差別や人権侵害を懸念している」と発言した。

*1-1-5:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO57057480R20C20A3I00000/ (日経新聞 2020/3/21) ジャカルタ、新型コロナで非常事態宣言 オフィス利用中止を要請
 インドネシアの首都ジャカルタのアニス州知事は20日、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて非常事態宣言を出した。州内の全企業にオフィス利用の停止を強く求めたほか、娯楽施設の営業を禁止した。人の移動を制限して感染拡大を食い止める狙いだが、ジャカルタには企業が集中していて、ビジネスに大きな影響が出ることは避けられない。当面、4月2日までの2週間を「災害非常事態」として、州内の全企業に原則としてオフィスを利用しないよう要請するほか、市内の映画館やバー、カラオケ店などの営業を禁止する。公共交通機関の運行も減らす。アニス氏は「責任のある態度とは、外での活動をすべてやめることだ」と述べ、住民に対して、仕事以外でも外出をしないよう求めた。インドネシアでは20日までに369人が感染し、32人が死亡した。感染者の6割がジャカルタに集中する。州政府は14日、全住民に対して外出しないように要請したが、強制力を伴わず、出勤を続ける住民も多かった。感染拡大が続くため、より強い対応が必要と判断した。非常事態宣言中は州内に軍や警察が展開して、住民の外出を事実上制限するという。周辺自治体も含めたジャカルタ首都圏には約3000万人が住む。ジャカルタ特別州だけでも個人企業もあわせて120万の企業が集まるインドネシアの経済の中心だ。首都の人の移動が大きく制限されることで、経済に大きな影響が出そうだ。

*1-1-6:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO57193700V20C20A3000000/ (日経新聞 2020/3/25) インド、新型コロナで全土封鎖 25日から21日間
 インドのモディ首相は24日、国民向けにテレビ演説し、新型コロナウイルスへの感染防止策として全土を25日から21日間、封鎖すると表明した。モディ氏は「ウイルスと戦うには社会的な距離を保つしかない。人々は外出が禁じられ、安全のため家で過ごしてほしい」と述べ、国民に外出を控えるよう呼びかけた。インドは22日に全土で外出禁止を命じ、その後は感染者が確認されていたデリーなどの75地区を31日まで封鎖する方針を示していた。モディ氏は「医療サービスが世界最高級とされたイタリアや米国でも感染拡大が防げていない。家にいる以外は手段がない」と強調し、一段と厳しい措置に踏み込むことを決めた。病院や検査機器などの医療インフラに対し、1500億ルピー(約2200億円)を拠出する考えも表明した。インドでは既に工場や航空便などが停止している。モディ氏は「経済的なコストが伴うが、ウイルスと戦うには断固とした措置が欠かせない」と言及。シタラマン財務相を中心に景気対策を検討しており、近く公表するとしている。


*1-2-1:https://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2020021601001755.html (東京新聞 2020年2月16日) “地元いじめ”に和歌山知事怒り ドローン撮影、返礼品拒否
 外科医らの新型コロナウイルス感染が判明した和歌山県湯浅町の済生会有田病院の病棟内をドローンで撮影しようとしたり、ふるさと納税に対する町の返礼品を拒んだりするなどの“地元いじめ”が相次ぎ、仁坂吉伸知事が16日の記者会見で怒りをあらわにした。県によると、感染した外科医の担当病棟がある3階付近を飛ぶドローンが14日から連日確認されているほか、「ふるさと納税の返礼品の受け取りは拒否できるか」との問い合わせが町にあった。本来は健康上の不安を相談するための県の電話窓口に「病院の患者の住所を教えてほしい」との要求まで来たという。仁坂知事は「怒りを感じる」と訴えた。

*1-2-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200326&ng=DGKKZO57239130V20C20A3EA2000 (日経新聞 2020.3.26) 入院 患者の選別カギに
 世界の感染者数は3日間で10万人増えるなどペースが加速している。東京都も25日、41人の新規感染を確認し、今週末の不要不急の外出自粛を求めた。患者が急増した場合、数が限られる病床を重症者に優先的に振り向ける対応が求められる。政府は感染症指定医療機関などで個室管理可能なベッドを1万2千床確保する。ただ爆発的な感染拡大が起きれば、厚生労働省の最悪の想定では東京だけで1日4万5千人の感染者が出ると推計される。そうした場合、政府は病床は重症者などに使い、無症状や軽症者には自宅療養を求める方針。もっとも、こうした「トリアージ」が円滑にいくかは不透明だ。都内の新型ウイルス専門外来の医師は「レントゲンでは明らかに肺炎なのに、本人は元気なことがある。見極めは簡単ではない」と話す。都の担当者も「入院している軽症者に『帰ってください』と説得できるのか。都で宿泊施設を確保するなど対応が必要になるかもしれない」と悩む。愛知県は24日、医療機関外で無症状や軽症の約100人を受け入れられる施設を月内にも開設すると発表した。相模原市も重症者に向けた病床を確保しておくため、一部の軽症患者らに自宅待機を要請しているという。
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 国内で25日に新型コロナウイルスの新規感染が確認されたのは午後9時現在78人で、感染者は41都道府県の1256人となった。東京都と北海道、愛知県でそれぞれ高齢者1人が死亡した。

*1-2-3:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO55811680Z10C20A2I00000/ (日経新聞 2020.3.25) 新型コロナ、41都道府県で1269人感染 都で新規41人 (3月25日午後10時現在)
 新型コロナウイルスの感染が国内で広がっている。各自治体などによると、国内での感染者は25日午後10時までに1日の感染確認として最多の91人の感染が新たに確認されて計1269人に上っている。東京都の感染者数は210人で、都道府県で初めて200人を超えた。感染確認は計41都道府県。このほか海外から入国して空港検疫で確認されたのは23人(25日正午現在)。手洗いの徹底など一人ひとりの感染症対策が重要となる。なお、前日午後10時より後に明らかになるなどした感染者や退院患者、死者は当日の新規分には含めていない。

*1-2-4:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200327&ng=DGKKZO57276430W0A320C2EA1000 (日経新聞 2020.3.27) 「首都封鎖」を防ぐために行動を見直そう
 新型コロナウイルスの感染拡大が「重大局面」を迎えつつあるのは間違いない。感染者が急増している東京都と関東近県が週末の往来を自粛するよう住民に求めた。感染者の爆発的な急増(オーバーシュート)を防ぐ措置として、やむを得ない。今週に入り、東京都内の新たな感染者の報告数は24日から25日にかけて、2倍以上に急増した。海外渡航者を起点にした感染者集団(クラスター)が、すでにいくつも形成されている恐れがある。外務省は全世界を対象に不要不急の渡航中止を求めた。北海道は外出自粛の効果もあり爆発的な増加を免れた。首都圏もこれをモデルに感染者集団を抑え込む努力が不可欠だ。しかし、東京は通勤・通学で近県から1日300万人近くが行き来する。感染経路の特定が難しく、封じ込めは容易ではない。政府は26日、改正新型インフルエンザ対策特別措置法に基づく対策本部を設置し、いつでも緊急事態宣言を出せるようにした。緊急事態宣言の目的は医療の機能不全を防ぐことだ。感染者の増加を遅らせ、その間に医療態勢を整えて死者を増やさないようにする。そのための措置が、厳しい外出制限だ。緊急事態を宣言すれば各国の「都市封鎖」に近い状態になり、社会や経済の活動が一段と制約される。今はその一歩手前だ。「首都封鎖」という最悪の事態を招かないためにも、一人ひとりが今の状況を自覚し、外出や飲食を伴う集まりを自粛するなど行動を見直すことが重要だ。住民に協力を求めるには、国や自治体が情報開示を徹底して信頼を得る必要がある。最悪の場合、感染はどこまで広がりうるのか、行動制限や外出自粛でどの程度抑制できるのか、どんな条件を満たせば普段の生活に戻れるのか。明確でわかりやすい説明が信頼を育み、対策の効果を上げる。政府の専門家会議は19日に大都市圏で感染者の爆発的な急増が起こる可能性が高いと指摘していたが、そのメッセージが浸透していたとは言い難い。政府が学校の休校を解除すると決めたのも、誤った安心感を与えた可能性がある。特に若い世代に危機感が薄い傾向があり、伝え方に工夫が必要だ。危機対応では専門家の知見を踏まえて国民に行動を促すのが、政治家の役割だということを改めて肝に銘じてほしい。

*1-2-5:https://www.nishinippon.co.jp/item/n/590238/ (西日本新聞 2020/3/8) インフル患者、前年から6割減 新型コロナで予防浸透
 新型コロナウイルスの感染が広がる一方で、インフルエンザの患者数が急減している。医療機関の報告を基にした厚生労働省の推計によると、2020年の全国の累計患者数(3月1日時点)は、前年同期(約1024万人)の4割を切る約397万人で、600万人以上減少した。新型コロナウイルスの感染予防で手洗いやマスク着用などが徹底されたことが奏功しているようだ。厚労省がまとめた約5千の定点医療機関からの報告によると、20年の患者数のピークは1月6~12日の週で1医療機関当たり平均18・33人。前年ピークの週(1月21~27日)の57・09人を7割近く下回った。九州各県も同様の傾向で、今年ピークとなった週の患者数は、熊本県が15・99人で前年ピークより約7割減少。福岡(23・55人)や大分(26・59人)なども約6割減った。厚労省は昨年11月15日、例年並みだった前年より1カ月ほど早く全国的な流行が始まったと発表した。昨年9月~12月末までの患者数は約315万人で、前年同期の約106万人を大きく上回る勢いだった。だが、昨年12月以降、中国・武漢市で新型コロナウイルスの感染が急拡大。1月15日には国内初の感染者が確認され、マスク着用やせきエチケットなどの感染予防の取り組みが全国に浸透していったとみられる。厚労省感染症情報管理室の梅田浩史室長は「一人一人の感染予防意識が高まったことが要因で予防対策の効果が示された。新型コロナウイルスの感染拡大防止にもつながるだろう」と分析した。 

*1-2-6:https://forbesjapan.com/articles/detail/33158 (Forbs JAPAN 2020/03/19) 日本で新型コロナが「感染爆発」しない理由 浦島充佳:東京慈恵会医科大学教授
 3月11日、ドイツのメルケル首相は、「ドイツ国民の60%から70%が新型コロナウイルスに感染する可能性がある」と警戒を呼びかけた。こんなことが本当に起こりえるのだろうか?これが現実になった場合、感染者のうち1~2割が重症化し、入院治療が必要になること考えると、医療崩壊は免れないだろう。しかし、私はそうはならないと考える。その理由は新型コロナの感染拡大パターンにある。
●新しい感染症が入ってくるとどうなる?
 メルケル首相の言葉は、新しい感染症に対する基本モデルに基づいている。ある感染者がその感染症に対する免疫を持たない集団に入ってきた場合、かなりの勢いで広がっていく。しかし、集団免疫という考え方がある。感染から回復し免疫を得た人々が「免疫の壁」として立ちはだかるようになり、未感染者が感染者から感染するのを阻止する形となるのだ。すると、一定の未感染者を残しながらも、感染拡大は停止する。ウイルスの感染力が弱まって感染拡大が止まるわけではない。
●60%から70%が感染のカラクリ
 ある感染者がその感染症に免疫を全く持たない集団に入ったとき、感染性期間に直接感染させる平均の人数を「基本再生産数」と呼ぶ。これが1より大きければ感染は拡大し、1であれば感染は定常状態となり、1未満になれば感染は終息に向かう。新型コロナ、インフルエンザ、SARS の基本再生産数はだいたい2~3といわれている。計算式に当てはめると、基本再生産数が3のとき、集団免疫による感染拡大停止までに67%が感染することになる。メルケル首相が、「国民の60%から70%が新型コロナウイルスに感染可能性」を示唆した背景には、この計算があるのだろう。しかし、これは集団が新型コロナに対して全く免疫を持っていないという仮定に基づいている。
●私たちは新型コロナウイルスへの免疫を持っている?
 2009年にパンデミック化した新型インフルエンザを思い出してほしい。基本再生産数が3だったとしても国民の6~7割が感染するようなことはなかった。季節性インフルエンザに対する免疫が、新型インフルエンザにもある程度有効だったと私は考える。そもそも「新型」ではない「コロナウイルス」は、主に子供の風邪のウイルスとしてありふれたものである。これは「新型コロナウイルス」とは別物であり、多くの人が年に1,2回は感染している。そのため、子ども、子育て世代、小児科医などは新型コロナに対しても免疫を持っているかもしれない。また、新型コロナは8割が軽症である。無症状で経過する人も相当数いる。日本には春節前から多くの中国人が訪れていた。あくまで推測の域をでないが、既に日本人の多くが自分でも知らない間に感染しているかもしれない。そうであれば、先に示した集団免疫の作用で感染爆発は起こり難い。またメルケル首相の発言には「仮に政府が何も対策をとらなかったら」という仮定も入っている。しかし、日本も含め多くの国が既に強い対策に打って出ており、また人々は行動変容を起こし、大勢の人が集まるところに出かけることを控えている。よって、無防備に感染が拡大するとは考えにくい。新型コロナの感染拡大パターンは、次のようなものである。
●新型コロナの感染パターン
 3月9日夜、新型コロナ対策専門家会議の記者会見があり、新型コロナ対策専門家会議・尾身茂副座長が疫学的知見を発表している。感染症が進行中の集団の、ある時点における、1人の感染者から発生した二次感染の平均の数である、「実効再生産数」について述べている部分を引用する。「現時点において、感染者の数は増加傾向にあります。また、一定条件を満たす場所において、一人の感染者が複数人に感染させた事例が、全国各地で相次いで報告されています。しかし、全体で見れば、これまでに国内で感染が確認された方のうち重症・軽症に関わらず約80%の方は、他の人に感染させていません。また、実効再生産数は日によって変動はあるものの概ね1程度で推移しています」。新型コロナの基本再生産数は2〜3である。対して、実効再生産数は1。要するに、日本国内で感染が広がっている速さを示す実効再生産数は、現在、ウイルスの持つ感染力を示す基本再生産数を下回っているということだ。
●新型コロナの感染状況をビジュアル化
 実効再生産数が1ということは、10人の患者から新たに10人の二次感染患者が再生産されることになる。しかし、専門家会議は「80%が誰にも感染させていない」としている。例えば、新型コロナウイルス感染患者が10人いたとする。そのうち8人は誰にも感染させず、2人が感染させる。一旦感染すると2週間など長期にわたって咽にウイルスをもち感染力を保ったまま活動できてしまうので感染が拡大する。そのため実効再生産数が1であっても、患者数は増加し得る。では、感染を終息に向かわせるにはどうするべきか?図3のように、例えば2つのライブハウスでの感染をブロックできれば、10人から3人の患者しか発生しないので、やがて患者数は減っていく。だれがウイルスをもっているか判らなく、感染力も強く、致死率が高い。このような場合で、かつ感染拡大パターンを最初に示した基本モデルで考えると、感染拡大を止めるにはどうしても外出自粛、休校、移動制限、地域封鎖となってしまう。新型コロナの場合、確かにだれがウイルスをもっているか判らないことが、人々に大きな恐怖心を植え付けている。しかし、私達は今までの経験からクラスター(集団感染)を形成しやすい条件を知っている。それは、換気の悪い室内で、不特定多数と長時間会話したり、食事をしたときだ。
●エアロゾル感染のリスクは「換気」で減らす
 3月9日の専門家会議の記者会見で「みなさまにお願いしたいこと」として以下の点が指摘された。1. 換気の悪い密閉空間、2. 多くの人が密集、3. 近距離(互いに手を伸ばせば届く距離)での会話や発声 という3つの条件が同時に揃う場所や場面を予測し、避ける行動をとってください。これを多くの市民が実施できれば、クラスター発生を予防でき、国が強権を発動せずとも感染は終息に向かうであろう。実際、諸外国と比べて日々の感染者数は数十人で収まっている。ただ、人は同じ説明を聞いても、何も気にせず日常生活を送れる人もいれば、家から一歩も出られない、仕事にも行けない人まで様々であろう。レストランで外食したり、会社で仕事をしたりというのは上記1・2・3にあてはまるからだ。そこで、人々の不安を少しでも解消し、対策の一助になればと思い、感染のメカニズムを解説したい。会話やくしゃみで飛沫が飛び散る。大きな飛沫は放物線を描いて地面に落ちる。しかし、目に見えないくらいの小さな飛沫粒子、いわゆるエアロゾルは数時間室内を空気のように浮遊する。大きな飛沫による感染は(3)の近距離での会話や発声に対応する。これは、お互いにマスクをしていれば予防できるし、マスクがない場合には1~2メートルなど距離を開ければ解消できる。エアロゾルによる感染は(1)の換気の悪い密閉空間に対応する。新型コロナウイルスは1時間で半減するものの、数時間は感染性を保ったままエアロゾルとして空中を浮遊することが最近アメリカの研究チームにより報告された。これは窓を開けて空気を入れ替えれば、解消される。外であれば、まず問題にならない。人数が数十人、数百人と多くなればなるほど、その中にウイルスをもった人がいる確率があがる。(2)の多くの人が密集というのは、このことを指している。しかし、新型コロナの発生がほとんどない地域では気にしなくてもよいかもしれない。「3つの条件が同時に揃う場所」を言い換えれば「1つの条件が解消されていれば避ける必要はない」ということである。例えば十分な換気をはかれればよいことになる。また十分な換気ができなければ、マスクをするか、距離をとればよいことになる。
●今後の日本は如何に?
 2月後半、1日の報告件数が10人、20人と増えだした。これに対して、日本政府は在宅勤務の推奨、大型のイベント自粛、休校を要請した。患者数の推移を海外と比較すると、日本は地域を封鎖したり、移動制限や外出自粛を強要したりすることもなく、何とかよく持ちこたえていると思う。これは政治決断の効果でもあり、日本人1人1人ができることをやっている成果であるとも思う。今後は、患者数の推移を慎重にみながら、屋外や換気を十分するといった条件で、社会活動を少しずつ再開してもよいのではないだろうか。とはいえ、大規模イベントや、今までクラスターのあった場所での活動の再開は慎重にするべきである。危機管理の基本は、初動において厳しい対応をして、様子を観ながら徐々に緩めるのが鉄則だ。

*1-3-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200315&ng=DGKKZO56809510U0A310C2MM8000 (日経新聞 2020.3.15) 米欧、新型コロナ対策総動員 検査拡充や企業支援、米、非常事態で5兆円
 新型コロナウイルスの感染が拡大する米国や欧州で、各国政府が緊急対策に動いている。トランプ米大統領は13日に国家非常事態を宣言し、最大5兆円超を投じてウイルス検査などを拡充することを決めた。欧州各国では医療体制の強化や企業の資金繰りの支援が広がる。感染拡大による社会の混乱や景気の失速を防ぐために、政策を総動員して対応にあたる。トランプ氏は13日、非常事態宣言によって「連邦政府の力を最大限に引き出す」と力説した。災害対策基金など最大500億ドル(約5兆4千億円)を地方政府に振り向ける。最大の柱はウイルス検査の見直しだ。米政権は規制を一時的に緩和し、スイス製薬大手ロシュが開発した24時間以内に4千件超を検査できるシステムを緊急で承認した。スーパーや薬局の駐車場での「ドライブスルー検査」も全米に広げる。米ジョンズ・ホプキンス大の集計では米の感染者は2100人を超え、死者は47人に達した。感染者は46州と首都ワシントンで確認し、ほぼ全米に広がっている。新型コロナで打撃を受けた企業や個人の支援も強化する。非常事態宣言により、新たに中小企業の支援に70億ドルのローンを提供できるようにした。戦略石油備蓄を積み増すため大量の原油を購入し、エネルギー会社も支援する。個人には学生ローンの利息支払いを免除する。14日には議会下院が野党・民主党の経済支援策も可決した。新型コロナの無償検査、有給の病気休暇、失業保険の拡充、低所得者向け食糧支援などを盛り込んだ。トランプ氏も法案に署名する考えで、近く成立する公算が大きい。感染者の広がりでは、欧州の置かれた状況はより深刻だ。感染者はイタリアが1万7千人超と中国に次いで多い。同国政府は最大250億ユーロ(約3兆円)程度の経済支援策を用意する計画だ。売り上げが大きく減った企業の支援、医療体制の拡充などに充てる。スペインでも感染者が5千人を超え、サンチェス首相は13日に非常事態を宣言した。政府が強制力を持って人の往来を制限したり、一定の物資を管理下に置いたりすることができるようになる。ドイツ政府は13日、新型コロナの感染拡大の影響を受けた企業の資金繰りを支援するため、総額に上限を設けない無制限の信用供与を実施すると発表。メルケル首相は同日「必要なことは何でもやるつもりだ」と語った。フランスは休校中の子供の世話などで欠勤せざるをえない従業員への給与補償、企業の納税の延期・一部免除などを順次実施する。こうした措置で数百億ユーロ(数兆円)の予算が必要になるとみられる。英国は2020年度の政府予算で300億ポンド(約4兆円)規模の経済対策を講じる方針だ。医療体制の強化や休業補償などにあてる。米国を中心に人の移動制限に加えて、財政政策も打ち出すことで、感染拡大と景気の落ち込みを食い止める狙いがある。

*1-3-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200326&ng=DGKKZO57209430V20C20A3MM8000 (日経新聞 2020.3.26) 現金給付、所得減世帯に 5月にも実施、経済対策50兆円超 GDPの1割
 政府は新型コロナウイルスの感染拡大を受けた緊急経済対策で、5月にも所得が大幅に減少した世帯に現金を給付する検討に入った。条件が当てはまる1世帯に20万~30万円程度とする案がある。売り上げの急減が予想される飲食業や観光業は割引券や商品券を発行して支える。経済対策の事業規模(総合2面きょうのことば)は名目国内総生産(GDP)の1割にあたる56兆円超をめざす。海外でも米国やオーストラリアなどは新型コロナを巡る経済対策でGDPの1割近い財政出動に踏み切る構えで、日本も足並みをそろえる。リーマン・ショック後の事業規模56兆8000億円を上回る過去最大とする方針だ。海外では事業規模を先に表明することが多いが、日本が目標値を先行させるのは異例となる。日本は個別の政策を積み上げ、積算した規模を公表してきたためだ。新型コロナに伴う株安をにらみ、市場の動揺を抑える狙いがある。安倍晋三首相は2020年度予算案が成立する27日にも経済対策の編成を指示する。裏付けとなる補正予算案を4月上旬にも閣議決定し、下旬の成立を見込む。5月にも給付を始める。事業規模は国による直接支出に加え、融資に伴う金融機関の貸し出し分などを含めた額だ。給付の仕組みは今後詰める。新型コロナの感染拡大を理由とした所得減かを見極めるのは簡単ではない。所得をどの程度減らした世帯を対象にするかや所得制限をかけるかが制度設計の論点だ。フリーランスといった所得の把握が難しい人への対応も課題となる。日本の世帯数は約5300万あり、一定の所得水準を設けて約1000万世帯に絞り込むことも検討する。給付の手法は緊急小口資金の制度を参考にする。同制度は自治体の社会福祉協議会に申請書を出せば、個人の口座に現金が振り込まれる。全国民に配った定額給付金は総額2兆円規模に膨らんだ。多くが貯金に回り消費下支えの効果は乏しかったとの反省がある。雇用確保に向けては従業員を休ませるなどして雇用を維持する企業に支給する「雇用調整助成金」を拡充する。中小企業の場合、賃金相当額の3分の2の助成率を5分の4に引き上げる案が軸となる。従業員を解雇しなかった例では9割の助成も考える。新卒で入社する社員など雇用期間が短いケースでも助成の対象になるよう要件を緩め、内定取り消しが広がらないよう目配りする。飲食業や観光業の支援は消費者が外食や旅行などに支払う料金の一部を国が助成する制度を設ける。日本政府が19年末にまとめた26兆円規模の経済対策は公共事業を中心に執行が進んでいない。緊急的な対応として未執行分の一部も新型コロナ対策に活用する。これに今後編成する30兆円超の対策費を上乗せする。海外では米国はGDP比9.3%にあたる2兆ドル(約220兆円)規模の対策をとりまとめる。

*1-3-3:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200322&ng=DGKKZO57075100R20C20A3MM8000 (日経新聞 2020.3.22) 外食・旅行消費に助成 売り上げ急減で重点支援 緊急経済対策
 政府は4月にまとめる新型コロナウイルスの感染拡大を受けた緊急経済対策で、売り上げが急減している飲食業や観光業などを重点的に支える。消費者が外食や旅行に支払う料金の一部を国が助成する制度を検討する。この個人消費への助成策(総合2面きょうのことば)の関連予算は1兆円規模になる可能性がある。新型コロナが直撃している産業に的を絞って強力な支援を実施し、関連業界の雇用を維持する。訪日外国人の減少に加え、政府が要請している大規模イベントの自粛でスポーツ行事やコンサートなどを中止・延期する措置が相次ぐ。旅行や外食を控える動きも広がっており、関連業界は大きな打撃を受けている。政府は観光や飲食のほか、イベント関連支出なども助成の対象にする方向で検討する。飛行機や新幹線など公共交通機関も対象に含める可能性もある。利用者の国籍は問わない。焦点となる国の助成率は今後詰める。たとえば20%を助成することになった場合、飲食店で一定の条件を満たして1000円の食事をしたら800円を消費者が負担し、残りを国が助成することを想定する。助成の仕組みは、政府が各店舗や宿泊施設などで割引となるクーポンを発行したり、インターネット上のホテルや飲食店などの予約サービスを使って支払いをした際に、一部をポイントで還元したりする案がある。高齢者はお金と時間に余裕がある人も多く、高齢者に限って通常より高い補助率を設定して、消費を一段と促すことも想定している。実施期間などは新型コロナの状況をみて判断する。飲食業や観光業などでは、赤字に転落する中小企業が続出することが予想される。そうした中小企業は赤字の規模に応じ、前年度までに支払った法人税の一部を還付してもらうことができるようにもする。「繰り戻し還付」と呼ばれる制度で、災害時には還付対象の企業を広げる規定もある。国税庁は大規模感染症も災害に該当しうると判断している。

*1-3-4:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO57269620W0A320C2MM8000/?n_cid=NMAIL006_20200326_Y (日経新聞 2020/3/26) G7、新型コロナワクチン開発支援へ 研究機関に拠出
 日米欧の主要7カ国(G7)の各政府は、新型コロナウイルスの世界的大流行(パンデミック)を受け、ワクチン開発支援で実績のある国際研究機関に数十億ドル規模を拠出する方向で調整に入った。民間では巨額の資金を出しにくいため、公的な資金を国際協調で集中させて早期の開発・実用化をめざす。中国やインドなど20カ国・地域(G20)に加盟する新興国にも参加を呼びかける。資金拠出の対象として検討しているのは、ノルウェーに拠点を置く官民連携でワクチン開発を推進する国際機関、感染症流行対策イノベーション連合(CEPI)。日欧などの政府の拠出で2017年に発足した。エボラ出血熱のような世界規模の流行が生じる恐れのある新興感染症に対するワクチン開発推進を主な活動目的としている。今週実施したG20財務相・中央銀行総裁やG7財務相の電話やテレビの会議では、ワクチン開発を効率的に進めるため、先進国を中心に共同で財政支出する必要性で合意していた。日本政府も数百億円を軸に拠出を検討する。中国やインドなどG20加盟国にも協力を求めていく。CEPIは少なくとも20億ドルが必要と試算している。今回のような未知の感染症は流行が続くのか短期で終息するのか判断がつきにくいため、民間企業はワクチンの開発に巨額の資金を投じにくい。このため各国の政府が出し合ったお金をもとに、CEPIが企業や研究所、大学の開発を援助し、治験を加速する考えだ。コロナウイルスが原因の中東呼吸器症候群(MERS)のワクチン開発を支援した実績があり、技術転用も期待できる。ワクチンは有効性を確認するための期間が治療薬よりも長く、開発に時間を要する。年単位の時間がかかることが一般的だ。CEPIが主体となって開発に成功した場合でも、日本で使うためには厚生労働省から承認を得ることが必要になるが、弾力的な運用も可能となりそうだ。厚労省は新型インフルエンザが流行した10年、輸入ワクチンについて手続きを簡略化する特例を承認した。

<ハンセン病差別>
*2-1:https://digital.asahi.com/articles/ASM6X56YGM6XUTIL02G.html (朝日新聞 2019年6月29日) らい予防法違憲判決から18年、家族の被害にようやく光
 ハンセン病の元患者の家族らが起こした訴訟で、熊本地裁はその苦しみを「人生被害」と指摘し、国に賠償を命じた。原告弁護団は高く評価し、今も消えない差別や偏見をなくす契機になればと期待する。一方、国側は今後の対応について明言を避けた。「画期的な判決だ。らい予防法廃止後も偏見と差別を除去しなかったことについて違法性を認めた」。判決後の記者会見で、弁護団の八尋光秀共同代表の表情は硬いままだったが、言葉は力強かった。就学拒否、結婚差別、就労拒否……。判決は、ハンセン病患者の家族について「人格形成や自己実現の機会が失われ、家族関係の形成が阻害された」と指摘した。国が患者の隔離政策を続けたことによって、家族までもが平穏に生活をする権利を侵害されたとして、明確に国の責任を認めた。ハンセン病は、らい菌による感染症。感染力は極めて弱いが、進行すると手足や顔に変形が起きうる。国は1931年に癩(らい)予防法を成立させ、患者の強制隔離政策を推進。戦後「らい予防法」と名を変えた法が廃止されたのは、半世紀以上が経った後の96年だった。元患者が起こした訴訟で熊本地裁は2001年、「予防法の違憲性は明らか」と断じたうえで、「60年以降、96年の法廃止まで、隔離の必要性が失われたことに伴う政策の抜本的な変換を怠った」と厚生相(当時)や国会の責任を認めた。28日の判決はこの判断を踏襲しつつ、96年以降も「偏見差別を取り除くため、正しい知識を普及する活動を行うべき義務を尽くさなかった」と、国の新しい責任を認定した。28日の判決は、人権啓発を担う法務相と、教育を担う文部相・文部科学相の責任に踏み込んだ点でも、01年の判決と異なる。予防法の廃止後も、法務相は「住戸や職場などへの働きかけがなく、活動として不十分だった」と判断。文部相は「教員に対し、誤った教育をしないよう適切な指導」や「差別の是正を含む人権啓発教育」が必要だったのに、怠ったと述べた。判決は一方で、02年以降は「不十分ながら、国などの人権啓発活動の効果が一定程度生じた」として、国の責任を認めなかった。01年の判決や政府の控訴断念、国会謝罪決議などの動きがあったことで、「02年以降は差別被害があっても、隔離政策が原因だったとはいえない」とした。今回の訴訟では、「不法行為を知ってから3年以内に提訴したか」という時効の起算点も争点だった。判決は、元患者の家族が鳥取地裁に起こした訴訟の判決が言い渡された15年を起算点とすることで、原告側の訴えを有効と認めた。鳥取地裁判決は請求を棄却しつつ、差別への対策を怠った国の過失に言及しており、熊本地裁への集団提訴のきっかけとなっていた。
●救済への課題これから
 元患者について国の責任を認めた、01年の判決確定から20年近く。なぜ、家族たちの苦しみに光が当たらなかったのか。「元患者に対する差別や偏見をどうなくしていくかが、あまりにも大きな課題だった。家族の問題までたどり着けなかった」。01年当時に厚生労働相で、控訴断念を決めた協議にも加わった坂口力さん(85)はこう振り返る。28日の判決の後には「家族に被害があったのは事実。裁判の結果にかかわらず、どう解決するかは、我々の大きな課題だ」と話した。家族訴訟弁護団共同代表の徳田靖之弁護士も、「差別と偏見に包まれ生きてきたから、元患者の家族であるという声を非常に上げづらかった」と説明する。元患者の訴訟に加わった遺族はわずかで、実名を公表できた人はほとんどいなかった。元患者の中には、「家族が悲惨な目に遭った。だからこの裁判をするんだ」と訴えた人がおり、弁護団も家族の被害は認識していたが、徳田弁護士は「自分たちが正面から採り上げ、提訴することを怠った」と悔やむ。ハンセン病に対する差別や偏見は根強く残る。13年には誤った認識を持った教員の授業を受けた小学生らが、「骨が溶ける病気」などと感想文を書き、教育委員会が翌年に謝罪したこともあった。28日の判決もこのことに触れ、「正確な知識に基づいた指導がなければ、社会から差別を除去することは困難だ」と指摘した。徳田弁護士は判決後の記者会見で、「国が総力を挙げて差別と偏見の解消に取り組まなければならないと認めたことは大きな前進」と述べ、こう強調した。「国に控訴させないという、大きなうねりを起こすことで、家族が置かれている状況を本質的に変えることが可能になるのでは」
●求められる政治判断
 ハンセン病について正しい情報を発信し、患者の家族への差別や偏見をなくすための義務を怠ったと認定された3省には、動揺が広がった。根本匠厚生労働相は記者団の取材に応じ、「国の主張が認められなかったと聞いている。今後の対応については、判決内容の詳細を確認した上で、各省庁と協議していきたい」と述べた。さらに質問を受けても「関係省庁と協議していきたい」と繰り返し、明言を避けた。厚労省内でも判決直後、担当部署の職員が慌ただしく出入りした。控訴するかどうかについて、ある職員は「判決は法務省や文科省の違法性にも触れている。我々だけでは決められないだろう」と話した。山下貴司法相は判決後、「判決内容を十分精査し、関係省庁と協議した上で、適切に対応する。ハンセン病をめぐる偏見・差別をなくし、理解を深めるための啓発活動を適切に実施する」とコメントした。一方、ある法務省幹部は「ここまで踏み込んで来るとは予想していなかった」と驚きを隠さない。「あまたある差別の中からハンセン病に的を絞った人権啓発を求めるのは、要求が高すぎる」と話した。文部科学省によると、人権教育を担う教師を対象とした研修会でハンセン病について説明するなどしてきた。担当者は「取り組みは裁判で示しているが、その上での判決。判決文をよく読んでみないと何とも言えない」と語る。元患者の裁判では原告の勝訴後、小泉純一郎首相(当時)が政治判断で控訴を断念し、判決を元に被害者の補償立法がなされた。元患者の家族についてはどうか。首相官邸関係者の一人は「まだ政治判断の段階ではない」と語る。菅義偉官房長官は28日午後の記者会見で「国の主張が認められなかったと報告を受けている。関係省庁で判決内容を精査した上で対応する」と述べるにとどめた。

*2-2:https://digital.asahi.com/articles/ASMCB6GNCMCBUTIL1MP.html (朝日新聞 2019年11月16日) 加害者でなく被害者だった家族 ハンセン病差別の根深さ
 長年にわたる国の隔離政策で、ハンセン病の元患者は社会からの偏見や差別に苦しんできた。裁判で国の責任が認められて元患者に補償がされた一方、差別にさらされながら顧みられてこなかったのが、元患者の家族たちだ。家族たちが起こした訴訟で、国に賠償を命じた熊本地裁の判決をきっかけに、家族への補償金支給を定めた補償法が15日に成立し、名誉回復に取り組むための法改正が実現した。元患者たちの取材を長く続けてきた北野隆一編集委員は、家族が起こした訴訟に当初、ある違和感を持っていた。それが「認識の浅さ」だったと思い知らされた経緯を振り返った。
●「家族が社会復帰の壁」という思い違い
ハンセン病の隔離を定めた「らい予防法」が1996年に廃止される前から、元患者への取材を続けてきたが、2016年に提訴された家族訴訟の取材は、初めは気が進まなかった。複数の元患者から「家族が社会復帰の壁になっている」と聞いていたからだ。元患者らは家族に迷惑がかかるからと療養所内で偽名を使っていたが、隔離政策を誤りとして国の責任を認めた01年の熊本地裁判決を機に実名に戻り、故郷に帰ろうとした。だが家族が受け入れず、死んでも実家の墓に骨を引き取ってもらえない――。そんな話だった。だが家族訴訟が結審した後の今年3月、東京で開かれた集会で原告らの話を聞き、私は自分の認識の浅さを思い知った。家族らがときに元患者に冷たく接したのは、日本社会から受けてきたすさまじい差別から身を守るためだった。家族は加害者というより、被害者だったということだ。社会の片隅で息を潜め、沈黙を続けていた家族の心を解きほぐすきっかけは、家族らが定期的に集まる「れんげ草の会」を、熊本で国宗直子弁護士が続けてきたことだった。その会で10年以上かけて家族らの話を聞いた福岡安則・埼玉大名誉教授と黒坂愛衣・東北学院大准教授が聞き書きを本にまとめたことで被害が可視化され、家族らの提訴に結びついた。成立したハンセン病家族補償法は前文で、家族が強いられた「苦痛や苦難」の重大性が認識されず、取り組みがされなかったことについて国会と政府が「深くおわびする」と明記した。知らなかったから許されるわけではないが、家族らが自ら差別の被害を語り始めた今は、もう見ぬふりはできない。補償法にうたわれた日本社会の偏見・差別を「根絶する決意」が問われているのは、国だけではない。

<「犯罪者≒精神障害者」とする精神障害者差別>
*3-1:https://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/202002/CK2020021102000137.html (東京新聞 2020年2月11日) 相模原殺傷公判 「大麻精神病が影響」弁護側の医師、鑑定否定
 相模原市の知的障害者施設「津久井やまゆり園」で入所者ら四十五人が殺傷された事件で、殺人罪などに問われた元施設職員植松聖(さとし)被告(30)の裁判員裁判の第十三回公判が十日、横浜地裁(青沼潔裁判長)で開かれた。被告の精神状態を調べた工藤行夫医師が弁護側証人として出廷し「被告は大麻乱用による大麻精神病で、判断力が著しく低下していた」と述べ、大麻の影響はないとした精神鑑定結果を否定する考えを示した。工藤医師は、関係者の供述調書や植松被告との面接などを踏まえ、事件一年前の二〇一五年ごろ、被告が大麻を乱用するようになり、信号無視や速度違反、けんかなどの問題行動が増えた点に注目。「障害者は不幸をつくる」との思考から「殺す」という考えに至った点には大麻乱用による「飛躍や病的な高揚感」があったと指摘。短時間に四十三人の入所者を殺傷した犯行そのものが「並外れたエネルギーと驚異的な行動力がなくてはできない。全ての行程に異常な精神状態が認められる」と話した。前回七日の公判での尋問で「大麻による行動への影響はなかったか、あっても小さかった」とした大沢達哉医師の鑑定結果について、工藤医師は「大麻による影響を著しく低く評価している」と否定した。公判の争点は刑事責任能力の有無や程度。検察側は「大麻の使用は犯行の決意が強まったり時期が早まったりしたにすぎず、完全な責任能力がある」と主張。弁護側は無罪を主張している。 

*3-2:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/500533 (佐賀新聞 2020.3.16) 相模原殺傷、植松被告に死刑判決、責任能力認定、横浜地裁
 相模原市の知的障害者施設「津久井やまゆり園」で2016年7月、入所者ら45人が殺傷された事件の裁判員裁判で、横浜地裁(青沼潔裁判長)は16日、殺人罪などに問われた元職員植松聖被告(30)に求刑通り死刑判決を言い渡した。障害者が狙われ、19人もの死者を出した事件。判決は、差別的な主張を繰り返した植松被告の事件当時の刑事責任能力を認めた。被告は初公判で起訴内容を認めたが、弁護側は、心神喪失状態で責任能力がなかったとして無罪を主張していた。争点となった責任能力について、検察側は「パーソナリティー障害」と判断した精神鑑定結果を引用し、特異な考えは人格の偏りにすぎず、正常心理の範囲内と述べた。大麻の影響も少なく、完全責任能力があったとして死刑を求刑していた。弁護側は、大麻による精神障害と反論。乱用によって人格が急変したと強調し、差別的な考えが事件にまで発展したのは「病的な飛躍」で、大麻の高揚感で引き起こしたと訴えていた。公判で被害者は1人を除き匿名で審理。傍聴席内に設けた遺族らの席はついたてで遮蔽する異例の措置を取った。起訴状によると、16年7月26日未明、入所者の男女を刃物で突き刺すなどして19人を殺害、24人に重軽傷を負わせたとされる。また職員5人を結束バンドで廊下の手すりに縛り付け、2人を負傷させたとしている。 

*3-3:https://digital.asahi.com/articles/ASMD54FDFMD5UTIL013.html?iref=comtop_8_03 (朝日新聞 2019年12月5日) 「生きる気力なくなった」遺族落胆 熊谷6人強殺の判決
 埼玉県熊谷市で2015年、7~84歳の6人を相次いで殺害したなどとして、強盗殺人罪などに問われたペルー国籍のナカダ・ルデナ・バイロン・ジョナタン被告(34)に対し、東京高裁は5日、統合失調症の影響で心神耗弱状態だったと判断し、一審の死刑判決を破棄。改めて無期懲役の判決を言い渡した。判決後、殺害された加藤美和子さん(当時41)ら妻子3人をなくした男性(46)らが都内で会見を開いた。「死刑がひっくり返ることはないと思っていた。裁判官は都合のいいところだけを見て判断した。やりきれないし、納得がいかない」と憤りをあらわにした。法廷で判決を聞いた瞬間、「何も言葉が出なかった」という。男性は「家族を失ってから、どうにか生きていこうと踏ん張ってきた。家族にどう報告したらいいのか……生きる気力がなくなったというのが今の気持ちです」と話した。会見に同席した遺族側代理人の高橋正人弁護士は「一審判決は被害妄想への影響を認めつつも、被告の行動は合理的で説明がつくと判断した。高裁は、被告の供述をことさらに持ち出し、行動制御能力がないと結論づけている。明らかに見誤っている」と批判。検察側に上告するよう求めたことを明らかにした。

*3-4:https://digital.asahi.com/articles/ASN3B5WR9N32UTFL01G.html?ref=weekly_mail_top (朝日新聞 2020年3月15日) 障害ある子生まれ「おめでとう」と言えますか 木村議員
 相模原市の障害者施設「津久井やまゆり園」で利用者19人の命が奪われるなどした事件の判決が、16日に予定されている。元職員である被告の言葉をどうみるか。事件が繰り返されないためには――。重い身体障害があり、18歳までの大半を施設で暮らした、れいわ新選組の木村英子参院議員(54)は、障害のある子の誕生に「おめでとう」と言える社会かどうかを問う。どういうことなのか。
●殺されていたのは私かも
 彼の言葉は心の傷に触れるので、集中して公判の報道を見ることができませんでした。施設にいたころの傷ついた自分の気持ちに戻っていくのです。
(裁判で被告は「意思疎通のとれない人は社会の迷惑」「重度障害者がお金と時間を奪っている」などと語った)
彼が言っていることはみなさんにとっては耳慣れなくて衝撃的なのでしょうが、同じような意味のことを私は子どものころ、施設の職員に言われ続けました。生きているだけでありがたいと思えとか、社会に出ても意味はないとか。事件は決してひとごとではありません。19歳で地域に出ていなければ、津久井やまゆり園に入所していたかもしれない。殺されていたのは私かもしれないという恐怖が今も私を苦しめます。私は横浜市で生まれ、生後8カ月のときに歩行器ごと玄関から落ち、首の骨が曲がる大けがをして重い身体障害を負いました。小学5年から中学3年の5年間を除き、18歳までの大半を施設で暮らしました。入所は親が決めました。重い障害のある私に医療や介護を受けさせたいという責任感と、施設に預けなければ家族が崩壊しかねなかった現実からです。私には24時間の介護が必要です。親は疲弊し、一家心中をしようとしたことも何度かあった。親が頼れるのは施設でした。やさしい職員もいましたが、私にとっては牢獄のような場所でした。施設が決めた時間に食事をしてお風呂に入って、自分の暮らしを主体的に決めることがない。食事を食べさせてもらえないことも。一番嫌だったのは「どうせ子どもを産まないのに生理があるの?」という言葉です。全ての施設がそうだとは思いませんが、私がいたのはそういう施設でした。時代が変わっても施設とはそういうものだと私は思っています。プライバシーも制限され、自由のない環境で希望すら失い決まった日常を過ごす利用者を見た人たちが、「ともに生きよう」と思えるでしょうか。偏見や差別の意識が生まれたとしても不思議ではありません。私は、被告だから事件を起こしたとは思えない。
●公園で浴びた排除の視線
(裁判では、新たな事実が明るみに出たものの、事件に及んだ動機や真相は十分には解明されなかった。同じような事件を繰り返さないためにどうすればいいのか)
 被告を罰しただけでは社会は変わらない。第2、第3の被告を生まないためには、子どものころから障害者とそうでない人が分け隔てなく、地域で暮らせる環境をつくることが必要です。私が望むのは、障害のある子どもが生まれたとき、「おめでとう」と言える社会。私は親から施設に捨てられた、歓迎されない命だという思いを抱いて生きてきました。うしろめたい存在だと思うことも、絶望感のなかで仕方のないことだとあきらめていた。歓迎されない命などない、と気づいたのは19歳で地域に出てからです。23歳で結婚し、息子を出産しました。不安だったのは、子どもをかわいいと思えるかでした。母に抱かれた記憶があまりない私は、母に対する愛情が持てなかった。でも出産した時は、子どもへのいとおしさがこみあげました。公園デビューをしたときのことです。息子と子どもたちが砂場で遊んでいるのを、車いすに乗った私が近くで見ていました。だれも私が母親だとは思っていない。私が息子に声をかけ、私が母親だとわかった瞬間、周りのお母さん方が自分の子どもを抱き上げて帰ってしまった。自分の子どもが私に近づくと「そっち行っちゃダメ」。小学校の授業参観でも教室が狭くて、他のお母さんたちが入れないので「詰めていいですよ」と言っても、半径1メートル以内には近寄ってこない。私と関わると厄介なことになる、巻き込まれたくない、といった意識が働くのでしょう。本人たちは差別とは思っていませんが、あからさまな差別です。障害のある人とそうでない人を分けることによってお互いが知り合う機会を奪われることから差別は生まれます。社会から排除することそのものが差別なのです。地域で暮らして35年。福祉サービスは増えましたが、重度訪問介護が就労中などに公的負担の対象外だったり、移動支援が自治体により差があったり。普通学校への入学が重度障害を理由に認められない例もある。こうした課題をみんなで解決できたとき、障害のある子が生まれて「おめでとう」と言える社会になる。それが事件を乗り越えることになるのではないでしょうか。

*3-4:https://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2020032201001730.html (東京新聞 2020年3月22日) 知的・精神障害者は雇わず41% 自治体調査、13%は募集除外
 全国の自治体(1788)を対象とした共同通信アンケートで、首長部局に知的、精神障害者を一人も雇用していないと回答した自治体が少なくとも41%の731自治体に上ることが22日、分かった。全体の13%に当たる230自治体は、一般職員(短時間を含む)の募集条件から知的、精神障害者を除外していた。障害者雇用を巡っては、中央省庁で2018年夏に採用人数の水増しが発覚。厚生労働省は同年12月、特定の障害種別によって応募を制限しないよう自治体に通知した。しかし知的、精神障害については、体調管理や仕事の創出が難しいことを理由に、障壁が解消されていない実態が浮かんだ。

*3-5:https://keiji-pro.com/columns/164/ (弁護士法人プラム綜合法律事務所、梅澤康二弁護士より抜粋) 刑法第39条の概要|責任能力有無の判断基準と39条が適用される対象
 刑法第39条には『刑事責任能力のない人は処罰の対象外とする、または、処罰を軽減する』という記述がされています。法律に違反したなら処罰されるのが当然に思えますが、なぜこうした犯罪者をかばうような法律があるのでしょうか。それは、違法な行為を行った者に対して責任を問うために、事理弁識能力(物事の善し悪しが判断できる能力)と行動抑制能力(自身の行動を律することができる能力)が必要とされているからです。例えば、事情のわからない赤ん坊が誤って機械のスイッチを押してしまい、それによって被害者を負傷させたとします。この場合、赤ん坊を罪に問えません。しかし、責任能力がなかったとしても罪を犯したことには変わらないので、納得がいかない人も多いかと思います。この記事では、刑法第39条についてみていきましょう。
●刑法第39条とは
 以下が刑法39条です。
(心神喪失及び心神耗弱)
第三九条 心神喪失者の行為は、罰しない。
2 心神耗弱者の行為は、その刑を減軽する。(引用元:刑法第39条)
●刑法第39条の対象になる人
 刑法第39条が適用されるのは、次のような人たちです。
●精神障害者
 精神障害者の中でも、行為の善悪の判断がまったくつかない人は“心神喪失者”として、判断能力が著しくつきにくい状態の人は“心神耗弱者”として扱われます。
●泥酔状態者・薬物乱用者
 精神障害を持っていなくても、上と同様に、行為の善悪の判断がまったくつかない人や判断能力が低い人ならば、刑法39条の適用対象になります。しかし、自らの意思で泥酔状態に陥ったような場合は、完全な刑事責任を問われる可能性もあるでしょう。
●刑法第39条が適用された事例
心神喪失が認められ、無罪・不起訴となった事例
 睦沢町で2014年2月、井戸掘削会社社長の男性=当時(61)=が自宅に侵入してきた男に刺殺された事件で、殺人などの罪に問われた無職の男(64)に対し、心神喪失として無罪を言い渡した千葉地裁判決について、千葉地検は30日、控訴を断念したことを明らかにした。控訴の期限の同日が過ぎれば、男の無罪が確定する。地検は「判決の内容を精査、検討したが、原判決を覆すことは困難と判断した」とコメント。今後、心神喪失者等医療観察法に基づく措置を地裁に申し立てる。千葉地裁は16日、男の殺害行為を認めたうえで、「統合失調症の影響を強く受けており、行動を制御することが困難だった。心神喪失状態だったとの合理的な疑いが残る」と述べ、男を無罪とした。検察側は「男は心神耗弱の限度で責任能力はある」と主張し、懲役10年を求刑していた。(引用元:睦沢男性刺殺事件 検察側が控訴断念 心神喪失で無罪判決 | 千葉日報オンライン)
●心神耗弱が認められ、減軽された事例
 東京都世田谷区の自宅で今年1月、生後3カ月の長女を浴槽に沈めて殺害したとして、殺人罪に問われた無職、鈴木由美子被告(39)に対し、東京地裁の裁判員裁判は30日、懲役3年、執行猶予5年(求刑・懲役4年)の有罪判決を言い渡した。島田一裁判長は「子を守るべき立場にありながら、水に沈めるなど犯行態様は悪い」と非難する一方、事件当時は心神耗弱状態だったと認め「治療の必要性が高い」として執行猶予を付けた。(引用元:東京地裁:乳児殺害 母に猶予判決 心神耗弱認める - 毎日新聞)

<法定後見制度>
*4:https://www.nishinippon.co.jp/item/n/562768/ (西日本新聞 2019/11/26) 適正な類型、どう判断 「後見偏重」修正これから
 【成年後見はいま・3】90代の男性が、質問によどみなく答えていく。「息子さんは来ます?」「全く。来ませんね」。福岡県内の高齢者施設。面会に訪れた50代の男性司法書士に「でも、そろそろ来るんじゃないかな。プレゼントをあげたから」。数年前の出来事を口にした。男性は成年後見制度を利用する。法定後見にある三つの類型のうち、判断能力の低下が中間程度の「保佐」とされた。この司法書士が保佐人として生活支援や財産管理に当たる。制度の助けを借りたのは、息子にたびたびお金を渡していたため。施設に来た息子と銀行に向かい、多い日は80万円ほど。渡した額が計400万円近くになった時、施設側が専門家に相談した。司法書士が保佐人になっても要求は続く。1回20万~30万円。男性本人に伝えると「あげてください」。数日空けて「この前の件、本当に振り込んでいいんですか」と尋ねると、理解できていないことがある。貯金は減っている。息子に一度、「お金は親族の体調不良のため」と言われ、親族に確認してみた。返ってきた言葉は「連絡は取っていません」だった。
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 法定後見は、判断能力が低い順に「後見」「保佐」「補助」の3類型がある。後見になると最も広い範囲で法的な手助けを受ける。保佐はこれが後見より狭くなり、逆に本人の意向がより尊重される。司法書士は、この本人の意思の尊重と、保佐人に課せられた財産管理の間で悩む。もし息子のきょうだいに「なぜ1人にだけ財産を渡すのか」と問われたら、責任を取れないとも思う。歯止めをかける方法はある。「類型を後見に変更する」「息子に一定額を送金する際は保佐人の同意を必要とする」ことを家庭裁判所に認めてもらえばいい。しかし、本人は一定の認知機能があり、息子のことを悪くは思っていない。自己決定権の尊重という制度の理念に、それは反しないか-。家裁に相談したが、納得いく答えはなかった。国は今、制度を普及させるため保佐と補助を増やす考えを示す。利用者の約8割を後見が占めている現状は、保佐や補助相当の人が手を挙げていないと見ているためだ。今月は、後見人らが勝手に判断せず、本人の意思を尊重する指針案を公表した。利用者に合った類型を当てはめ、意思も重視するという基本があらためて注目されている。ただ、司法書士は思う。「単に保佐や補助を増やすだけでいいのか疑問だし、意思を尊重するにも男性のような例がある。そんな時の対応も考えるべきだ」。後見に慣れた現場を変えるのも容易ではない。後見人は保佐人や補助人より強い権限で、本人を手厚く守ることができる。家裁や専門家、どの類型が適当か診断する医師の間には「後見にしておけば間違いはない」という意識が強い。九州のある司法書士は「保佐や補助は本人ができることと、できないことの見極めが難しい。ほぼ全てを任される後見の方が正直、仕事は楽」と打ち明けた。
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 その類型を巡り現場で意見が食い違うこともある。福岡県の女性(69)は頭の病気で倒れ、保佐を申し立てることにした。しかし、医師の診断書は「後見相当」。担当した40代の男性司法書士は「本人の状態に合わない」と、そのまま保佐を申し立てた。家裁が鑑定を行い、出した結論は保佐。鑑定費用約7万円は女性の負担になった。司法書士は「後見になると、本人ができることでも後見人が代わりにしてしまう。本人の能力を生かす類型は何か、もっと考える仕組みが必要」と語る。こうしたこともあり、国は今年4月、類型が記憶力や理解力を反映したものになるよう診断書の様式を改めた。福祉関係者が生活状況などを書く「本人情報シート」も作り、判断する材料を増やした。個人に合う類型を選び、意思を尊重する理念に立ち返ろうとする国と、後見偏重が染み付いた現場。理念とかみ合わぬ運用の修正はこれからになる。
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【ワードBOX】法定後見の3類型
 法定後見は、判断能力がほとんどない人は「後見」▽著しく不十分な人は「保佐」▽不十分な人は「補助」-の3類型がある。支援するのは後見人、保佐人、補助人。本人に代わって契約を結ぶ「代理権」、本人が結んだ不当な契約を取り消す「取り消し権」、本人が契約をする際、同意できる「同意権」があり、類型ごとに与えられる権限は異なる。後見人は代理権と取り消し権があり、日常生活に関する行為を除いて幅広い法的権限が与えられる。

<緊急事態宣言から緊急事態条項にならないために・・>
PS(2020年4月1、2、4、6日):メディアには「緊急事態宣言を出して欲しい」という論調のものが多いが、その原因は、*5-1のように、諮問委員会メンバーの釜萢日本医師会常任理事による「緊急事態宣言を出す時期だ」という発言や指示待ち族が多い国民性だろう。しかし、東京・大阪で患者数が増加しても、院内感染による多数の患者発生もあり、他の地域に患者の急増はないため、新型コロナにかこつけて「何でもあり」を行うのは危なすぎる。むしろ過度の外出自粛要請・指示は経済をストップさせ、消費税増税による消費減退に加えて経済活動をストップさせ、企業の倒産や雇用の消滅により別の意味で生命の危険に遭遇する人を増やしそうだ。
 WHOは、*5-3のように、世界各地で導入が進む移動制限について、「都市封鎖などの措置は、移動の自由を侵害するため慎重にやらなければならない」と指摘し、安易な運用を戒めている。実際に、*5-4・*5-5のように、新型コロナによる制限が実体経済に与えた影響は大きく、観光業界やイベント業界だけでなく、美容業界はじめ不特定多数の客を扱う店舗へのマイナスの影響が大きい。そのため、*5-6の治療薬アビガンなどはとっくに治療に使っているべきなのに、今から治験とは驚きだし、治療の前提となる検査も十分に行われていないので、「本当に治療する気があるのか?」と思うくらいだ。
 また、政府は、*5-2のように、新型コロナをきっかけとして携帯電話会社やIT大手に利用者の位置情報や検索ワード履歴を集めた統計情報の提供を要請したそうだが、これも新型コロナにかこつけたプライバシーの侵害であり、これは興味本位や営業目的にも使えるものである。
 さらに、「医療崩壊・・」という言葉も何度も聞いたが、*5-5のように、観光客の急減で破綻しそうなほど客が減っているホテルなどを軽症者の隔離に利用し、きちんと管理して入院施設の不足を防げばよいだろう。
 安倍首相が、*5-7のように、新型コロナ感染拡大防止のため布マスクを全世帯に2枚ずつ配る方針を示されたことについて、私は賛成だ。50年前の日本は、ガーゼを重ねたマスクが普通で、洗って何度も使うのが常識だった。現在は、中国製の紙マスクを使い捨てにするのが普通であるため、それしか知らない人は「布マスクは防護機能が低い」と言って品不足になっているが、布マスクも生地の選び方や重ね方で機能は変わり、紙マスクのように隙間ができないため防護機能をより高くできるかもしれない。また、*5-8のように、高級ファッションブランドのバレンシアガとサンローランが、同ブランドでマスクの生産を開始すると発表し製造に向けて準備中で、グッチもトスカーナ地方のファッション企業から要請を受けて数週間以内に110万枚のサージカルマスクと5万5000着の医療用オーバーオールを寄付する予定だそうだ。そのため、せっかくなら機能的でおしゃれなマスクや医療用オーバーオールができればよいと思う。さらに、*5-9のように、政府が自動車メーカーに人工呼吸器の部品を生産するよう求める動きが相次いでおり、米国はGMに生産を指示し、英国はマクラーレンが生産を計画しているそうだ。また、重症患者には「体外式膜型人工肺」が使われるが、数が少ないためニプロが増産準備を進めているとのことである。一般に、医療機器は、自動車や家電と比較して構造が簡単であるにもかかわらず、(顧みられることが少なかったためか)ちゃちな製品が多い。そのため、外国メーカーの臨機応変の対応に感心するとともに、改良に期待するわけだ。
 このような中、感染防止のために常時マスクをつけている医師が、メディアで「マスクは感染防止効果がない」などと言っているのは、自己矛盾であるとともに知識と見識が疑われる。
 厚労省が、*5-10のように、病院は重症者の治療に専念できるよう、軽症者や無症状の感染者は自治体の用意する施設・ホテル・自宅での療養を検討するよう、4月2日付で都道府県などに通知したことを受けて、東京・大阪だけでなく福岡でもホテル等の確保に向けた動きが出ているそうだ。私は、自宅療養すれば家族や周囲に感染させそうであるため、14日間くらいならホテル等できちんと管理しながら療養できる体制にした方が、皆にとって負担が少ないと考える。



(図の説明:1番左は、広島県の下着メーカーが伸縮性のある生地で作ったマスク、左から2番目は、今治産タオルのマスクだ。また、右の2つは、手作りマスクで、特に子供用にはかわいい柄付きや動物の鼻付きマスクも面白く、喜んで使ってもらえそうだ。なお、下のように工夫された生地もあるので、三密になりがちな国会議員は、気の利いたマスクをして議論したらどうか?)

   

(図の説明:1番左は、丹後ちりめんに鳥インフルエンザの抗ウイルス加工を施したマスク用生地で、左から2番目は、抗ウイルス加工を施した材料を使う事例だ。そのため、鳥インフルエンザに限らない抗ウイルス加工した資材を、特に駅・病院・ホテル・バス・列車などの公共空間に使ったらどうかと思う。右から2番目は、抗ウイルス加工した丹後ちりめんの説明で、一番右は、綿布に同じ加工を施した説明で、織物はじめ資材も進歩させることができるわけだ)

*5-1:https://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/202003/CK2020033102000172.html (東京新聞 2020年3月31日) <新型コロナ>「緊急事態宣言 出す時期」 政府諮問委の日医幹部
 新型コロナウイルス感染症の急拡大で緊急事態宣言を出す際に政府が判断を仰ぐ諮問委員会のメンバーを務める釜萢敏(かまやちさとし)日本医師会常任理事は三十日の記者会見で、宣言について「個人的には発出し、それに基づき対応する時期ではないかと思う」と話した。政府は、東京都を中心とした感染拡大の現状を踏まえ、発令の要件に適合するかどうか本格的な検討に入った。釜萢氏は、新型コロナウイルスの流行状況などの分析を行い、見解を示す政府の専門家会議と、緊急事態宣言に関する諮問委のメンバーを兼務している。釜萢氏によると、この日の専門家会議メンバーらによる非公式の電話会議でも「もう宣言をした方が良いのではないか」という意見がほとんどだったという。患者が急増する東京では、感染経路が不明の症例が相次ぎ、封じ込め対策が難航。医療機関では防護服やマスクといった必要な物資が不足し、病床(ベッド)が足りなくなる恐れも高まっている。菅義偉(すがよしひで)官房長官は会見で、「ぎりぎりの状態にある。各方面の専門的な知見に基づき、慎重に判断することが必要だ」と強調した。政府は宣言を出した際の経済的な悪影響を懸念してきた。だが、専門家から発令を求める意見が出始めてきたこともあり「そんなことを気にしている場合じゃない」(高官)と急速に危機感を強めている。立憲民主党の枝野幸男代表も「フェーズが変わりつつある。補償とセットになった緊急事態宣言を真剣に検討しなければならない段階に入った」と指摘した。特措法は「国民の生命、健康に重大な被害を与える恐れがある」「全国的かつ急速なまん延により国民生活と経済に甚大な影響を及ぼす恐れがある」の二つの要件を満たせば、首相が宣言を出せる。政府は既に「生命、健康に重大な被害」は該当するとしている。発令されれば、対象となった都道府県の知事が外出自粛の要請や、百貨店など大人数が集まる施設の使用制限、学校の使用制限を要請・指示することなどができる。

*5-2:https://mainichi.jp/articles/20200331/k00/00m/010/347000c (毎日新聞 2020年3月31日) 政府、通信事業者に任意で位置情報提供を要請 「クラスター」早期発見狙う プライバシー侵害懸念も
 新型コロナウイルスの感染拡大を受け、政府は31日、携帯電話会社やIT大手に対し、利用者の位置情報や検索ワードの履歴などを集めた統計情報の任意での提供を要請した。人の流れをビッグデータで把握することにより、クラスター(感染者集団)の早期発見につなげる狙いがある。要請先には、NTTドコモなど携帯電話大手3社のほか、ヤフーや楽天、「GAFA」と呼ばれる米IT大手4社も含まれる。これらの企業の統計データを使い、人が密集しやすい地域を早期に把握して注意を喚起したり、特定の検索語の増加と感染者の増加との関連性を見いだすことで、早期に医療体制を整えたりするといった活用法が期待されている。情報は企業側で匿名化するため「プライバシーの問題はない」(総務省総合通信基盤局)としている。同局は「単にデータだけもらっても政府で分析するのは難しい。データをどう使うか企業に提案してもらい、有効となれば施策に生かしたい」としている。ただ、要請に法的な根拠はなく、強制力はない。ヤフーは取材に対し、「顧客のプライバシー保護が大前提。ビッグデータの力で新型コロナの感染拡大防止に貢献できる方法が無いか検討したい」とコメント。携帯電話大手のKDDI(au)は「個人情報保護法などの法律の範囲内で対応したい」としており、アプリを通じて得られる位置情報の提供などを想定しているという。ITを使った感染防止策を巡っては、欧州各国で外出禁止措置の順守状況を確認するため、政府が通信会社と携帯電話の位置情報を共有する動きが出ている。シンガポールでは、一定の距離で接触した人の履歴を記録し、感染者が出た場合に濃厚接触者を割り出すスマートフォンアプリも開発され、感染源や感染先の特定に使われている。個人情報保護に詳しい日本情報経済社会推進協会の坂下哲也常務理事は「感染拡大防止のためにデータ活用するという方向性は理解できる。企業が政府の要請に応じる場合は、集めたデータをどのように匿名化するかを公表しプライバシー侵害の懸念の払拭(ふっしょく)に努めるべきだ」と話す。

*5-3:https://www.tokyo-np.co.jp/article/world/list/202003/CK2020033102000276.html (東京新聞 2020年3月31日) <新型コロナ>「移動制限」丁寧な説明が必須 WHO、安易な運用警鐘
 世界保健機関(WHO)で緊急事態対応を統括するライアン氏は三十日、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて世界各地で導入が進む移動制限措置について「各国政府は国民に対し、なぜ必要なのかを隠し立てせず、分かりやすく伝えることが肝要だ」と述べ、安易な運用を戒め、丁寧な説明が必須と強調した。ライアン氏は、都市封鎖などの措置は「移動の自由を侵害するので、非常に慎重にやらなければならない」と指摘。また「都市封鎖だけではウイルスを撲滅できない」と述べ、感染疑い例へのウイルス検査や感染経路の特定、隔離といった対策を決して怠らないようくぎを刺した。またテドロス事務局長も、都市封鎖などは感染拡大を遅らせ、医療体制崩壊を防ぐ「時間稼ぎ」には使えるとしながらも「社会保障制度が整っていない国もある」と指摘。「日々の糧を得るために、毎日働かなければならない人がいることを忘れてはならない」と強調し、移動制限や営業停止措置に伴って収入源を失う人々に配慮した対策を取るよう各国に求めた。ライアン氏は「社会が受け入れられるものであるかどうかを、各国政府は最重視しなければならない」と言明。移動制限を導入する場合、人々が順守して実効性のあるものにするためにも「影響を受ける国民の人権や尊厳が尊重されなければならない」と訴えた。

*5-4:https://www.jiji.com/jc/article?k=2020032401260&g=eco (時事 2020年3月24日) 自粛による損害、助成を イベント業界、政府に要望―経済対策・新型コロナ
 政府は24日、新型コロナウイルス感染症の実体経済への影響に関する集中ヒアリングを首相官邸で開いた。同日はイベント業界の代表者らが出席。中止や延期で影響を受けているイベント主催者らから、自粛で生じた損害への助成や、再開時に必要となる消毒液やマスクなどの費用負担の要望が相次いだ。チケット販売大手「ぴあ」の矢内広社長は感染拡大の影響でコンサートやスポーツなどの国内イベントが中止・延期となった結果、既に1750億円の損失が生じていると指摘。矢内社長は終了後、報道陣に対し、「自粛要請を受けて自らの判断で中止・延期した人たちへの補助をきちんとしてほしい」と訴えた。

*5-5:https://www.nishinippon.co.jp/item/n/596774/ (西日本新聞 2020/3/31) 九州初、福岡と佐賀の宿泊施設が経営破綻 新型コロナで観光客急減 
 新型コロナウイルスの感染拡大による観光客の急減などを受け、九州の2宿泊施設の経営破綻が31日、相次ぎ明らかになった。福岡県うきは市の旅館「原鶴温泉咸生閣(かんせいかく)」は福岡地裁久留米支部に破産を申請。佐賀県武雄市の「武雄センチュリーホテル」の運営会社も破産申請の準備に入り、営業を停止した。東京商工リサーチ福岡支社によると、咸生閣の負債総額は約2億円。新型コロナ感染拡大でキャンセルが相次ぎ、3月中旬から休業していた。創業50年を超える老舗で1998年5月期は売上高約2億5千万円を計上したが施設の老朽化などで集客力が低下。2019年5月期は売上高約7500万円と低迷していた。武雄センチュリーホテルによると、昨夏の記録的大雨や韓国人客の減少で売り上げが減少。新型コロナの感染拡大が追い打ちをかけた。運営会社は瑞穂商事(島根県)で、ホテル従業員約70人は3月31日付で解雇。ホテルを所有する静岡県の宗教法人は「新たな運営会社を早く見つけ、存続させたい」としている。帝国データバンクによると、瑞穂商事などグループ3社はスキー場やリゾートホテルも運営。負債は計約30億円が見込まれる。

*5-6:https://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2020033001002562.html (東京新聞 2020年3月30日) 富士フ、アビガン治験開始へ 新型コロナで、増産も
 富士フイルムホールディングス(HD)が、新型インフルエンザ治療薬「アビガン」について、新型コロナウイルス治療のための臨床試験(治験)を近く始めることが30日、分かった。増産も進める。アビガンについては、安倍晋三首相が28日の記者会見で、正式承認に向けた手続きを始める考えを示していた。アビガンを開発した富士フイルムHD傘下の製薬会社、富士フイルム富山化学(東京)が病院と連携して行う。感染拡大が深刻化している状況を踏まえ、治験後は早期に承認される可能性がある。生産能力拡大のため他社への生産委託も検討している。

*5-7:https://digital.asahi.com/articles/DA3S14426289.html (朝日新聞 2020年4月2日) 1世帯2枚ずつ、政府が布マスク 新型コロナ
 安倍晋三首相は1日、新型コロナウイルスの感染拡大防止のために、洗濯して繰り返し使える布マスクを5千万余りある全世帯に2枚配る方針を示した。再来週以降、感染者数の多い都道府県から順次配る。首相官邸で開かれた政府対策本部の会合で明らかにした。

*5-8:https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20200323-00010002-ampreview-bus_all (AMP 2020/3/23)バレンシアガとサンローラン、マスク生産 グッチは医療用衣類寄付
 高級ファッションブランドのバレンシアガとサンローランの親会社であるフランスのケリングが、同ブランドでマスクの生産を開始することを発表した。現在フランスに本拠地を置く同ブランドは、従業員に対して新型コロナウイルスへの十分な対策を行いながら、マスクの製造に向けて準備をしているという。生産工程と原料について正式に認可され次第、すぐに生産を開始するとのことだ。また同社は今回の新型コロナウイルスのパンデミックを受け、中国やイタリアに寄付を実施。さらに同社が運営するファッションブランド・グッチはトスカーナ地方のファッション企業からの要請を受け、今後数週間以内に110万枚のサージカルマスクと5万5,000着の医療用オーバーオールを寄付する予定だという。

*5-9:https://www.nikkei.com/article/DGXKZO57384230Z20C20A3NN1000/ (日経新聞 2020/3/30) 人工呼吸器とは 新型コロナで自動車メーカーも生産
 海外では、政府などが自動車メーカーに人工呼吸器の部品を生産するよう求める動きが相次いでいる。米国がゼネラル・モーターズ(GM)に生産を指示したのは、非常時に企業活動を指示できる「国防生産法」に基づく措置。英国ではマクラーレンが生産を計画しているという。重症の患者には「体外式膜型人工肺」と呼ばれる装置が使われる。血液をいったん患者の体外に取り出し、酸素を供給し二酸化炭素を排出してから体内に戻す。日本呼吸療法医学会などが調べた1558施設の設置台数は約1400台で、ほかのタイプより少ない。このためニプロが増産準備を進めている。取り扱いに高度な技量が必要で、扱える医療従事者の不足も懸念されている。
▼人工呼吸器 自力で呼吸できなくなったとき、肺への空気の出入りを補助する。息を吸う時は装置で圧力を高めて空気を肺に送り込む。吐く時は、圧力を低くして空気を排出しやすくする。気管にチューブを挿し込む一般的なタイプのほかに、口や鼻を覆うマスクタイプがある。使われていない装置が多かったが、新型コロナウイルスの感染拡大で不足する懸念が出てきた。

*5-10:https://www.nishinippon.co.jp/item/n/597841/ (西日本新聞 2020/4/4) ホテルや自宅療養、福岡も 軽症者対象 厚労省通知受け施設確保急ぐ
 厚生労働省は3日、新型コロナウイルスの感染拡大状況に応じて、軽症者や症状がない感染者については自治体の用意する施設やホテル、自宅での療養を検討するよう都道府県などに通知したと発表した。大都市圏では感染が急拡大し、入院患者を受け入れる病床が逼迫(ひっぱく)しつつある。重症者に対する治療を優先し、医療崩壊が起きるのを防ぐ狙い。通知は2日付。これを受けて、病床数不足が懸念されている福岡県内では施設確保に向けて個別のホテルなどと調整する動きが出ている。福岡市の高島宗一郎市長は3日の会見で「ホテルを借り切って軽症者に入ってもらったり、自宅で療養してもらったりする準備を進めている」と述べた。既に、宿泊施設側に意向や予約状況などの聞き取りを進めており、状況が整い次第、重症者以外は原則、病院外で療養させる医療体制に移行する考えを明かした。同県内では、同市や北九州市でクラスター(感染者集団)が相次いで発生。県や福岡市によると、2日現在、同市内の感染症病床8床は満床で、県内の66床も3分の2が埋まっている。感染者を受け入れられる一般病床の確保数は「数十床」で、感染が判明しても入院先がすぐに決まらず自宅待機を余儀なくされているケースが頻発している。新小文字病院の医療スタッフ19人が院内感染した北九州市では、21人の自宅待機が続く。入院先を調整していたさなかの厚労省の通知に担当者は「急激な感染者の増え方を見ると自宅療養など次の準備をしなければならない」と話した。同県の小川洋知事は3日の会見で、「今までも民間宿泊施設の活用ができないかという話はしていて、既に検討している。作業を加速させたい」と述べた。現時点で、感染者を受け入れられる病床に余裕がある大分県も医療体制の移行について検討を始める方針だ。3日までの感染者は31人だが、感染症病床と一般病床を合わせた118床を確保。県の担当者は「病床は重症者を優先しなければならない」と感染拡大期に向けた備えを万全にする構えを示した。

<感染症も考慮に入れた病院再編のあるべき方向性は?>
PS(2020年4月3日追加):*6-1のように、日本医師会が「①一部地域で病床不足になりつつある」として医療危機的状況宣言を発表したが、①については、*6-3の東京都内で97人の感染が確認されたという一部地域の問題で多くの院内感染を含むため、医師会はホテル借り上げなどの意思決定はできないことを考慮して、政治は国民に犠牲を強いない政策を考えるべきだ。
 また、医師会常任理事の釜萢氏は、*6-2に「②比較的症状が軽い患者を受け入れる“コロナ専門病院”を決めておくことを各地の医師会や行政に求めたい」としておられるが、②については、病名のわからない患者がコロナ専門病院を自ら選んで受診することは不可能であるため、地域の基幹病院が検査して振り分ける必要がある。
 そして、横浜市立市民病院感染症内科部長の立川氏は、「③新型コロナはいきなり呼吸不全に陥るのではなく、症状の軽い時期が数日続くため、この間に感染がわかれば重症化を防げる。疑わしきは検査し、重症度を判定して早めに治療すれば、入院患者も人工呼吸器の使用も減らせ、十分ウイルスと戦える。治療薬は別の病気の薬で新型コロナに効きそうなものが4種類はあり、当院でもこれらを組み合わせて効果が出ており、早期の検査と治療がカギだ」「④現在は、PCR検査で陽性なら入院となるため感染しても元気な人が入院し、その分、治療が必要ながん患者が入れないのでは本末転倒だ」「⑤軽症者は別の施設で経過を見て、病院には重症者だけを残す形に早く移行するのがよい」「⑥退院には2度のPCR検査で陰性になることが必要だが、これも見直すべきだ」としておられ、③⑤が治す気がある場合の正攻法である。
 一方、日経新聞は、*6-4のように、「⑦新型コロナの院内感染を防ぐため、ビデオ通話によるオンライン診療の活用を広げる規制緩和が、限定的な範囲に留まる恐れが出ている」「⑧これは、オンライン診療の拡大を恐れる日本医師会への配慮だ」などと記載している。しかし、医師は初診の患者が入ってきた時は、その愁訴を聞くだけではなく、服装・歩き方・顔色・匂い・触診・愁訴内容などのすべての情報から検査項目を決め、検査の結果によって病名を特定しているため、「⑨初診からオンライン診療では、対面に比べて診察時に得られる情報が限られる」という医師会の主張や「⑩受診歴のある慢性疾患の患者であれば可能」という厚労省の主張は正しい。そのため、⑦⑧のように、新型コロナにかこつけてオンライン診療を解禁させようとするのは、日本の医療水準を落として国民のためにならず、大きな問題である。
 さらに、厚労省は、公的病院のうち「急性期」「高度急性期」の病床を持つ1455施設に、2017年時点の手術実績で手術数の少ない病院に再編・縮小に向けた検討を求めて、*6-5のように、2019年9月にリストを発表したが、これには感染症が考慮されていなかったのだそうだ。しかし、インフルエンザ・肝炎・肺炎・結核・風疹・はしかなどの感染症は最も多い基礎的疾患であるため、これを考慮しないというのはあり得ず、金銭に関する稚拙な算術だけで医療を考えることの危うさをあらためて浮き彫りにした。


     死因別死亡率        人口10万対病床数   2019.10.3 2019.11.12 
                               朝日新聞  毎日新聞

(図の説明:1番左の図のように、日本の人口10万対死亡率は2011年から肺炎が3位に浮上している。しかし、左から2番目の図のように、日本は一般病床・精神病床が多すぎる割に感染症病床が殆どない。にもかかわらず、右の2つの図のように、厚労省は手術実績のみを基準として手術数の少ない病院に再編・縮小に向けた検討を求めており、改悪の方向になっている)

*6-1:https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200401/k10012362941000.html (NHK 2020年4月1日) 日本医師会が「医療危機的状況宣言」 病床不足の地域も
 新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、日本医師会は、一部の地域では病床が不足しつつあるとして、「医療危機的状況宣言」を独自に発表し、国民に感染を広げない対策や適切な受診行動を呼びかけました。新型コロナウイルス対策の特別措置法に基づく「緊急事態宣言」をめぐって、安倍総理大臣は1日の参議院決算委員会で「今、この時点で、出す状況ではない」と述べていて、政府は今後の感染者数の推移や経済への影響などを見極めながら、引き続き慎重に判断していく方針です。こうした中、日本医師会の横倉会長は記者会見で、「国の宣言は国民の生活や経済の影響を踏まえて発令をされるのだろうが、一部の地域では病床が不足しつつあり、感染爆発が起こってからでは遅い。今のうちに対策を講じるべきだ。現場は『医療危機的状況宣言』と言える状況だ」と述べました。そして医療提供体制を維持するために、国民に対し、みずからの健康管理や、感染を広げない対策、そして適切な受診行動をとるよう呼びかけました。一方で横倉会長は政府の新型コロナウイルス対応について、「今、物資の不足とか、体制が十分にとれていないという現実からみれば、もっと対応を加速してほしい」と述べました。

*6-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200402&ng=DGKKZO57515920R00C20A4TCS000 (日経新聞 2020.4.2 より抜粋) 「感染爆発」 社会をどう守る
 新型コロナウイルスの世界的な感染拡大が止まらない。国内でも東京都の小池百合子知事が「感染爆発の重大局面にある」と述べ、外出の自粛を呼びかけるなど、危機感が広がっている。救える命を救い、社会を守るために今何が必要なのか。専門家に聞いた。
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■地域ごとに「専門病院」を 日本医師会常任理事 釜萢敏氏
 体調を崩した人が真っ先に受診するかかりつけ医は感染症対応でも最前線に立つ。日ごろからインフルエンザや溶連菌などの検査を行っている所も多く、試料を採取する際に思いがけず新型コロナウイルスにさらされるリスクをはらむ。医療の現場を守りながら新型コロナに対応するためには、かかりつけ医はなるべく日常通り稼働してもらうことがよいと考えている。かかりつけ医の現状は厳しい。全国の診療所では目下、マスクが足りない。日本医師会は国に要望して計1700万枚ほどを配布したが、交換する頻度を減らすなどして何とかしのいでもらっている。新型コロナウイルスの検査に必要なだけの性能の防護服が十分にそろわない診療所もあるだろう。北海道の診療所で受診者のなかに感染者がいたため、内科医が感染した例もある。最大の問題は日本ではこれ以上、医師や病床などの医療資源を拡充するのが難しいことだ。イタリアは医療費削減のために医師の定年制を敷いてきたが、結果的に多くの医師経験者が再雇用された。ドイツでは医療資源が十分に確保できており死者が少ない。日本は高齢の医師が現役で働いているほど日ごろから医師が不足しており、急に増員する余裕はない。人工呼吸器や体外式膜型人工肺(ECMO)を増産しても使いこなせる人材がすぐには出てこない。オーバーシュート(爆発的な感染拡大)が起こり、患者を選ばなければならない事態になりかねない。医療の現場を守りながらコロナに対応するには、現存する医療資源をフル活用する方策を考えるしかない。具体策として、比較的症状が軽い患者を受け入れる「コロナ専門病院」を決めておくことを各地の医師会や行政に求めたい。かかりつけ医が疑わしい患者から電話相談をあらかじめ受けるようにし、必要に応じて「専門病院」を案内する。患者の動きを分けることで、かかりつけ医が感染したり長期の休診に陥るのを防ぎ、透析などで日常的に通院が必要な患者の受け皿を維持したい。「専門病院」には、たとえば夜間や休日に診療できる施設や、都道府県の公立病院などの施設になってもらうのが理想だ。人工呼吸器が必要かどうかという程度の患者まで診てもらい、さらに重度の患者は国立国際医療研究センターなどの病院で受ける。数段構えのイメージだ。都市ごとに各地の医師会と話し合い全国の整備状況を把握しようとしている。それでも病床は足りそうにない。まん延期を見据え、入院中だけれども症状が重くはない人に退院してもらい、なるべく病床を空けることが喫緊の課題だ。基本的には自宅にとどまってもらい、ハイリスクな家族への家庭内感染のおそれがある患者には滞在施設を設けて入ってもらう。宿泊施設などと調整を急ぐ。必要な情報が各診療所にすぐに届くような仕組みも必要だ。「感染者情報が遅い」「発症日ベースで感染者情報を出してほしい」という要望を受けているので、改善すべきだ。かまやち・さとし 78年日本医科大学卒。88年から群馬県の小泉小児科医院院長。高崎市医師会会長などを経て14年から現職。地域医療や感染症危機管理対策などを担当。66歳
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■早期の検査・治療カギ 横浜市立市民病院・感染症内科部長 立川夏夫氏
 これまで計30人近くの新型コロナ感染症患者を受け入れた。半数はクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」に乗船していた人たちだ。3人は集中治療室で処置した。現在も数人が入院している。第一種感染症指定医療機関として、エボラ出血熱など1類感染症の患者を受け入れられる態勢がある。それでも、クルーズ船の患者が数日の間に10人以上搬送されてきたのは想定外だった。感染症病床は一時すべて埋まり、それ以上は連携先の別の病院で受け入れてもらった。恐怖心がなかったわけではないが、中国のデータでは若い人の重症化例は少ない。当院の若手スタッフに万が一うつっても即、致死的とはならないのは救いだと感じた。一番の問題は、看護師の負担が増えたことだ。学会の推奨を上回る水準まで感染防護を強化しており、防護服で普段通りのケアをするのは大変だ。脱ぐときに接触感染が起きやすいため、別の人に見てもらう必要もある。他の診療科からも応援を頼み、その場で教えながら対応した。人工呼吸器を使った例はあるが、体外式膜型人工肺(ECMO)は患者の年齢、基礎疾患、家族の希望などを踏まえ使用していない。急に多数の患者が来れば機器が不足する心配はある。近隣病院ではマスクが悲劇的に不足している。市が優先的に回してくれる当院でも、できるだけ1日1枚の使用にとどめている。政府は国内感染者発生のピークを遅らせることに、ある程度成功してきた。受け入れ可能な病床数から逆算してPCR検査をしている結果、感染判明者が少ないのだろう。増加ペースが今くらいで、人材や機器の準備期間がとれれば対応はできる。だが、今後どうなるかはわからない。入退院に関しては課題がある。現状ではPCR検査で陽性なら入院となる。感染していても元気な人が入院し、その分、たとえば治療が必要ながん患者が入れないのでは本末転倒だ。政府は新型コロナのまん延期には、軽症者は自宅や別の施設で経過をみて、病院には重症者を残す形に移行するとしているが、まだその時期ではないという。早く移行すべきだ。また、退院するには2度のPCR検査で陰性になり、ウイルスがいなくなったのを確認できなければならない。これも状況に応じて柔軟に見直すべきだ。入退院の判断は医療者がするのがよい。新型コロナはいきなり呼吸不全に陥るわけではなく症状が軽い時期が数日続くので、この間に感染がわかれば重症化を防げる可能性がある。疑わしきはまず検査し、重症度を判定して早めに治療する。こうすれば入院患者も人工呼吸器の使用も減らせ、十分ウイルスと戦える。治療薬は別の病気の薬で新型コロナに効きそうなものが4種類はあり、当院でもこれらを組み合わせて効果が出ている。検査で感染の有無を確定させ、必要に応じて有望な薬を使う症例を積み重ねて、一刻も早くよい治療法にたどり着きたい。それが医療者の安心にもつながる。たちかわ・なつお 1990年佐賀医科大(現・佐賀大医学部)卒。国立国際医療センター(現・同研究センター)などで感染症治療にあたってきた。2008年から現職。60歳

*6-3:https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200402/k10012364551000.html (NHK 2020年4月2日) 東京都内で97人の感染確認 これまでで最多に
 東京都の関係者によりますと、2日都内で新たに97人が新型コロナウイルスに感染していることが確認されたということです。都が、1日に発表する数としては、3月31日の78人を上回ってこれまでで最も多くなりました。97人のうち、患者や医療従事者などすでに100人以上の院内感染が疑われている東京 台東区の永寿総合病院の関係者が21人いるほか、新宿区の慶応義塾大学病院の関係者も15人いるということです。これで都内で感染が確認されたのは合わせて684人になります。

*6-4:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200403&ng=DGKKZO57597170S0A400C2EA2000 (日経新聞 2020.4.3) オンライン診療、壁は厚労省、「初診解禁」かかりつけ医の紹介条件 医師会へ配慮にじむ
 新型コロナウイルスの病院内での感染を防ぐため、ビデオ通話などによるオンライン診療の活用を広げる規制緩和が限定的な範囲にとどまる恐れが出ている。焦点は受診歴のない患者でも初診からオンライン診療を認めるかどうか。厚生労働省は対面で得る情報の重要さを理由に、かかりつけ医から情報提供を受けた別の医療機関などに絞る方針だ。拡大を恐れる日本医師会への配慮がにじむ。「人類が経験したことのないようなことが起きている。あまりに生ぬるいというのが私の感覚だ」。2日、政府の規制改革推進会議の小林喜光議長(三菱ケミカルホールディングス会長)は落胆を隠さなかった。作業部会が提案した「受診歴のない患者にも初診からオンライン診療を可能とすべきではないか」との意見に対し、厚労省からの回答は「非常に距離があるものだった」(小林議長)。オンライン診療は、風邪や発熱といった軽症の人が自宅にいながら診断してもらえるようにするなど医療の利便性を高める力を持つ。新型コロナの感染が拡大してからは、通院先での感染を防ぐ手段としても期待が高まっている。3月31日の経済財政諮問会議で、安倍晋三首相は「現状の危機感を踏まえた緊急の対応措置を規制改革推進会議で至急取りまとめてほしい」と指示を出していた。規制改革推進会議の主張は、受診歴のない患者でも初診からオンライン診療を認めれば、通院を省け、患者も医療従事者も院内感染から守れるというものだ。一方、厚労省は受診歴のある患者で高血圧などの慢性疾患であれば可能だが「受診歴のない患者は認められない」と説明したという。厚労省がオンライン診療の拡大を阻もうとする背景には日本医師会の存在がある。オンライン診療は「対面に比べ診察時に得られる情報が限られる」というのが医師会の主張だ。通院にかかる時間をあまり気にしなくて済むため、評判のよい病院に人気が集中し、淘汰が進むのを恐れていることも抵抗の裏側にある。オンライン診療はあくまで対面診療を補完するものと位置づけられ、生活習慣病など慢性疾患に限られてきた。医療サービスの対価として受け取る「診療報酬」も対面より少なく、対面の場合と比較して半分以下となることもある。加藤勝信厚労相は3月31日、オンライン診療の初診解禁を検討すると表明した。だが、厚労省が4月2日に開いたオンライン診療の指針を議論する有識者検討会は、限定的な範囲にとどめる方向性で一致した。言葉のイメージ通り、受診歴のない患者に対して、初診でオンライン診療を認めるのは重症化の徴候を見逃すリスクなどがあるため難しいと判断した。患者が急増し、外来医療が危機的な状況にあるなど極めて限定された場合だけに認める方向で、具体的な条件を引き続き検討する。かかりつけ医から情報提供を受けた別の医療機関で、風邪などの症状をオンラインで診てもらうことは認めることになった。ただこれも、かかりつけの医療機関で院内感染が起き、普段と異なる医療機関を受診しなければならないケースを想定したものだ。オンライン診療は18年度に保険適用されたが、18年7月時点でオンライン診療を実施する医療機関は1000カ所程度で全国の医療機関の1%に満たない。オンライン診療に積極的な医師もいるが、規制の厳しさが利用拡大を阻む。オンライン診療に移行するには原則、事前に3カ月以上の対面診療が必要だ。新型コロナ感染症の広がりをうけ、厚労省はオンライン診療のルールを特例・臨時的に2度緩和してきたが、その範囲は限られている。

*6-5:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO54489680W0A110C2EE8000/?n_cid=SPTMG002 (日経新聞 2020/1/16) 公立病院の再編リストを修正へ 厚労省
 厚生労働省は再編や縮小を促す目的で昨年9月に実名公表した全国424の公立・公的病院のリストを一部修正する。データを精査した結果、新たに対象に加わったり、今のリストから外れたりする病院が出てくるためで、全体では増える見通しだ。17日に公表する方向で調整している。今回の修正でリストから外れる場合、病院の希望に応じて病院名を公表する。一方、新たにリストに加わる病院名は公表しない方針だ。厚労省は、自治体が運営する公立病院と、日本赤十字社などが運営する公的病院のうち、病気が発症した直後の「急性期」や「高度急性期」の病床を持つ1455施設に対し、2017年時点での手術実績などを分析。実績が乏しい病院もあり、再編や縮小に向けた検討を求める狙いで19年9月にリストを発表した。当時は「資料は暫定版で、今後精査した後に都道府県に確定版を通知する」としていた。近く公立・公的病院との競合状況を示す民間病院のデータも各都道府県に提供し、議論を促す考えだ。

<これを機会にステップアップしたら?>
PS(2020年4月4日追加):*7-1のように、新型コロナ感染拡大の影響で非正規を中心として職を失っており、会社の寮にいるため仕事を失えば住居もなくなる人もいる。そのため、政府は、企業の従業員解雇防止のために雇用調整助成金を拡充し、休業手当を払って従業員を休ませた企業には助成金を出すことにしたが、休業手当は一定割合を企業が負担するため、企業はコスト負担を敬遠して非正規の雇い止めを優先させる恐れがあるのだそうだ。一方、米国では、*7-2のように、新型コロナの感染拡大で経済活動が大きく制限され、ホテル・飲食店・小売店等が営業を大幅に縮小して従業員をレイオフ(解雇・一時帰休)した結果、失業保険の申請が664万件に上ったそうだ。日本では、(企業から見れば)終身雇用・年功序列制度の下で解雇が難しいため、従業員を正規と非正規に分けて非正規を雇用の調整弁として使っているが、米国は、正規と非正規の差別がないかわりに正規でも簡単にレイオフされて失業給付を受け取る。米国の方が、平等で雇用調整も速やかだが、これができるためには、労働市場が流動的で中途採用でも不利にならないことが要件になる。
 しかし、新型コロナの感染拡大はすべての業種で人手を余らせたわけではなく、*7-3のように、外国人技能実習生の入国見通しが立たないため、労働力確保の支援を求めている業種もある。そのため、企業は雇用調整助成金をもらった上で従業員を人手が足りない職種に派遣すれば、従業員が感染リスクの小さな農業地帯で農業に従事することによって、今まで見ていなかったICTやロボット技術のニーズを見て新製品を作ったり、*7-4のようなスマート農業が本格化する中、非正規という雇用の調整弁に甘んじるよりはスマート農業の担い手になったりなど、企業・従業員・地域のすべてに新しい閃きが生まれてプラスになると思う。現在、農業への転職については、*7-5のように、全国の農地情報がデジタル地図に集約されつつあり、*7-6のように、後継者のいない多くの集落営農組織が集落外から若者を受け入れて、地域全体で若い農業者を育てて経営刷新するという雰囲気になっている。
 さらに、国を挙げての再エネへのエネルギー変換には、*7-7のような徹底した発送電分離が必要で、それには21世紀型送電線の敷設が不可欠であり、農業地帯は副産物として電力を産出することが可能であるため、農業はやり方によっては21世紀の先端産業になり得るのだ。



(図の説明:1番左は、スマート農業の説明、左から2番目は、無人田植機を使った田植えの様子、中央は、ドローンを使った消毒作業《あらかじめ害虫の多い場所を把握して効率化している》、右の2つは、収穫ロボットを使ったトマトとブドウの収穫作業だ。収穫ロボットは、色・糖度・大きさ等を測って収穫し《人間より確実かも》、分類してパック詰めする)

*7-1:https://www.tokyo-np.co.jp/article/economics/list/202003/CK2020033102100017.html (東京新聞 2020年3月31日) <新型コロナ>非正規の雇い止め増加 雇用構造のもろさ露呈 現金給付で救済急務
 新型コロナウイルスの感染拡大で、非正規を中心に多くの人たちが職を失う危機に直面している。有効求人倍率の高さなど雇用をアベノミクス成功の証拠とアピールしてきた安倍晋三首相だが、労働市場の中身は、非正規割合が高まり景気悪化のショックには極めてもろい構造が露呈している。人々の仕事と暮らしをどう守るかは重い課題だ。
◆突然の契約終了通告
 「もう雇い止めも覚悟している」。日産自動車の栃木工場(上三川町)で、期間工として働く男性(47)が言う。コロナの影響による世界的販売不振と中国などからの部品供給の減少のダブルパンチの自動車業界。トヨタ、日産など大手各社は工場の一時停止による減産を発表。男性の働く栃木工場も四月六日から二十二日までの長期間、操業が止まる。昨春から三カ月ごとの契約で一年働いてきたが、「今の契約が切れる五月末で終わりになるだろう」。会社の寮にいるため、「仕事を失えば住まいもなくなる」と不安にさいなまれる。大阪府内の不動産会社で、住宅の設計をしていた二十代の派遣社員の女性は先週、四月末で契約終了と告げられた。昨年末にマンションを購入、ローンは夫と二人で払う。「いま仕事を失うとローンも返せない。この時期、職がすぐみつかるとも思えない」。働く人々の生活が揺らいでいる。
◆収入途絶えれば即生活危機に
 二〇〇八年の年末。東京・日比谷公園にはリーマン・ショックで雇い止めや派遣切りにあった人々があふれ、支援団体の提供する炊き出しやテントで暖をとった。この「年越し派遣村」の出現を機に、非正規労働の多さは問題化。民主党政権では製造業への労働者派遣を禁止する議論もあったが、企業の立場を重視する自民党の安倍政権は非正規を一段と増やす政策を推進した。一五年の派遣法改正では、それまで企業が派遣社員を使える上限が三年だったのを、働き手を代えればずっと派遣に任せられるようにし、正社員を派遣に置き換える流れを助長した。雇用されないフリーランスや個人事業主としての働き方も奨励。企業を人件費コストから解放する半面で安全網のない不安定な働き手が増加した。一方、非正規の低賃金労働は「貯蓄ゼロ」世帯を増加させた。昨年時点で23%と、二十年間でほぼ倍増。非正規切りで収入が途絶えれば、生活危機に直結する。
◆「正社員だけ守る差別やめて」
 政府は、企業が従業員を解雇するのを防ぐため、雇用調整助成金を拡充、休業手当を払って従業員を休ませた企業に助成金を出す。だが、雇用助成金は、あくまでも企業が自分から申請しないと支給されず、休業手当の一定割合は企業が負担するルール。このため企業がコストを敬遠し、非正規は雇い止めを優先させる恐れがある。労働問題に詳しい宮里邦雄弁護士は「正社員だけを守るような差別はしないよう企業に指導し、助成金支出にもそのような条件を付けるべきだ」と指摘する。
◆モノ言えない非正規への対策を
 働く人々に直接渡る現金給付など、所得補償も不可欠となりそうだ。リーマン時は金融危機が消費不振を招くまで一定の時間があったのに対し今回は需要が短期間で蒸発、所得の大幅低下などで人々の暮らしをすでに脅かしている。関根秀一郎派遣ユニオン書記長は「非正規は企業にモノを言えない弱い立場。現金給付や減税など直接生活を助ける対策が急務だ」という。

*7-2:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO57597950S0A400C2MM8000/ (日経新聞 2020/4/2) 米の失業保険申請、最大の664万件 解雇・一時帰休で
 米労働省が2日発表した失業保険の新規申請件数(季節調整済み)は、3月28日までの1週間で664万8千件となり、過去最大だった前週(330万件)からさらに2倍に膨らんだ。新型コロナウイルスで経済活動が大幅に制限され、飲食店や小売店などでは従業員の解雇や一時帰休が急増している。トランプ政権は給与補填などの経済対策を決めたが、迅速な執行が求められる。失業保険の申請数は市場予測(260万件)を大幅に上回った。新型コロナが発生する前は1982年10月の69万件が最大で、リーマン・ショック後でも2009年3月の66万件が最多だった。米経済は長く好況が続いていたが、ホテルや飲食店、小売店などは一気に営業を大幅に縮小。飲食業界では、3カ月で500万~700万人が失業する可能性があるとの試算もあった。米国の労働力人口は1億6500万人。2月時点の失業者数は580万人で、失業率も3.5%と50年ぶりの低水準にあった。失業保険の申請数は2週間で1000万件弱に膨らみ、失業率は6月には10%を超えるとの予測も浮かんでいる。米国の急激な雇用悪化は、従業員を一時的に解雇したり帰休させたりする「レイオフ」制度の影響もある。宿泊業などは3カ月などと期限を区切って従業員の一時解雇・帰休を決め、労働者の多くは失業給付を受け取って職場復帰を待つ。日欧は給与カットなどで労働者の維持を優先するが、米経済は雇用そのものの調整幅が大きくなる。ただ、経済活動が再開すれば職場復帰も加速するため、失業率は20年後半には低下軌道に戻ると分析される。トランプ政権も雇用維持を狙い、中小企業の給与支払いを事実上肩代わりする資金支援策を発表した。中小企業の半数は手元の運転資金が15日分以下しかないとされ、迅速な資金供給が不可欠だ。

*7-3:https://www.agrinews.co.jp/p50436.html (日本農業新聞 2020年4月1日) [新型コロナ]消費喚起、人手対策を 農家らが窮状訴え
 農水省は31日、新型コロナウイルス感染拡大を受けた緊急経済対策の策定に向け、農家らから意見を聴取した。需要減退で価格が下落している和牛や果実、野菜の生産者らが窮状を訴えた。外国人技能実習生の入国見通しが立たない問題を受け、労働力確保に向けた支援を求める声も出た。江藤拓農相は、生産現場の支援へ「強大な対策」を講じる考えを示した。感染拡大の情勢を踏まえ、テレビ会議方式で意見聴取した。江藤農相の他、伊東良孝、加藤寛治両副大臣、河野義博、藤木眞也両政務官ら同省幹部が同席。江藤農相は「現場の意見をしっかり聞いた上で経済対策案をまとめなければならない」と強調。安倍晋三首相の指示を踏まえ「前例にとらわれず強大な対策をやる」と述べた。農家らは、インバウンド(訪日外国人)やイベント自粛などの需要減退で打撃を受けている実態を報告。消費喚起策を求める意見が相次いだ。宮崎県高千穂町で和牛を一貫経営する興梠哲法氏は、地元家畜市場の3月の子牛相場が「前回比15万円の値下がりになった」と説明した。枝肉価格の下落で肥育経営が悪化、それに伴い子牛価格も下落し繁殖経営も「危機的状況」と訴えた。過剰の国産牛肉在庫の対策に向け「国の支援で消費者に求めやすい形で流通」するよう要望。ふるさと納税制度の活用やインターネット販売の運賃・手数料の支援などを求めた。温室メロン専門農協、静岡県温室農業協同組合の鈴木和雄組合長は、同組合が出荷したメロン価格が2月は前年比71%、3月は同67%に落ち込んだと説明。「原価を割っている」と訴え「前例のない対応」を求めた。長野県佐久市で野菜を栽培する小松園芸の小松真知子氏は、中国人実習生が「入国できなくなっている」と報告した。「どれだけ作付けられるのか悩み、苦労している」と明かした。今季に実習生が入国できなければ生産量と売り上げが「30%減になる」と説明。「いくらかでも労働力を送ってもらえるような方策をお願いしたい」と訴えた。

*7-4:https://www.sankei.com/economy/news/191223/ecn1912230002-n1.html (産経新聞 2019.12.23) いきなり特等米を獲得 スマート農業の実力は…
 担い手の高齢化や労働力不足に悩む日本の農業の課題解決に向け、ICT(情報通信技術)やロボット技術を使ったスマート農業の導入が加速している。リモコン一つで農機を遠隔操作、熟練農家の経験と勘を目に見えるデータに落とし込む-。誰もが高品質な作物を生産できる農業の時代はすぐそこまできているのかもしれない。兵庫県北部の養父市、山間部に急斜面の棚田が広がる能座地区は、65歳以上人口が57・65%と高齢化、過疎化が急速に進む集落だ。日本の農業の課題を抱え込んだようなこの土地で、先進技術を活用した農業を目指して農林水産省が採択した「スマート農業実証プロジェクト」が4月から進んでいる。「ハンドル操作の難しいぬかるんだ所も驚くほど真っすぐ進む」。同地区で酒米を作る「アムナック」の社員、大内良平さん(45)が驚くのはクボタが開発した無人運転のロボットトラクター。準天頂衛星「みちびき」による高精度の位置情報を活かして誤差数センチ以内でルートを正確に耕していく。また、人力で行えば半日以上かかる草刈りも、ラジコン操作によってわずか44分で済ませている。作業データはクラウド上で一括管理、手間取った作業とその解決法を“見える化”することで誰もがどこでもその経験を次に生かすことができるという。
●全国モデルに
 アムナックは兵庫県三木市に本社を置く建設会社の農業事業を行う子会社として平成27年に設立。今年4月からは京都大学やクボタ子会社、ソフトバンクなどと作る共同事業体で、スマート農業の技術開発のために角度30度超の、全国有数のきつい傾斜を持つ養父市能座地区の棚田11ヘクタールで稲作に挑んでいる。

*7-5:https://www.agrinews.co.jp/p50428.html (日本農業新聞 2020年3月31日) 全国の農地情報 デジタル地図へ集約 農水省22年度から一部運用
 農水省は、全国の農地情報のインターネット上での一元管理に乗り出す。行政機関や農業団体がばらばらに管理してきた農地情報を集約し、同省の地図データと組み合わせて「デジタル地図」を作成。2022年度から一部機能の運用を始める。生産者は補助金などの申請にかかる労力が大幅に減る他、将来的には農業機械の自動運転の活用などにもつなげる。「デジタル地図」は、各機関が持つ情報をひも付けして一元管理する。21年度から運用する「農林水産省共通申請サービス(eMAFF)」と組み合わせ、申請の窓口を一本化。農業者が申請した基本情報は保存され、再入力が省略でき、事務作業が軽減される。オンラインで自宅から申請でき、パソコンやスマートフォンの画面上の地図を見ながら作業が可能になるという。行政機関は、紙の申請書の打ち直しなど事務負担が省力できる。将来的には「デジタル地図」の情報と、人工衛星による位置予測を組み合わせ、トラクターやドローン(小型無人飛行機)の自動運転に活用できる可能性もある。衛星画像と人工知能の画像解析技術を組み合わせ、台風などの災害時に速やかな被災地域特定につなげることも期待される。20年度は、既存のデジタル区画情報と各機関の情報をひも付けすることや、農地関連データの標準化を検討する。農地情報は現状、各機関が農地情報を紙の地図で管理し、手続きに多くの労力がかかっている。例えば、農業委員会に農地の権利設定を申請する場合、農業者は土地の地番や面積などを記載した10枚程度の書類を提出する必要がある。同じ土地でも農業委員会、地域農業再生協議会、農業共済組合が別々に情報をまとめており、重複する情報提出に負担が掛かる。情報を管理する機関も、データ入力や現地調査に多大な労力を費やしている。

*7-6:https://www.agrinews.co.jp/p50404.html (日本農業新聞 2020年3月28日) [ゆらぐ基 問われる実効性](3) 農山村の再生 “よそ者” 継承に活路
 福井県あわら市。集落営農組織「グリーンファーム角屋」の代表、坪田清孝さん(69)が、誇らしげに胸を張る。集落外から若者を組織の代表候補として迎え入れ、米だけでなく、タマネギやイチゴの栽培に乗り出す新しい組織に、生まれ変わろうとしているためだ。「全国に水田農業に夢を描く若者はたくさんいる。継承がうまくいけば担い手不足に困る各地の集落営農組織の希望になる」と坪田さん。同組織には3年後、集落とは縁がなかった斎藤貴さん(43)に経営をバトンタッチする予定だ。今は継承に向かう並走期間。集落の住民らと斎藤さんが共同作業を積み重ね、信頼関係を紡いでいる。後継者がいない、高齢化、もうかりにくい米経営……。多くの集落営農組織が抱える課題に、同法人は集落外から若者を受け入れ、経営を刷新することで立ち向かう。
●人手の確保組織で議論
 農水省の調査によると、離農する小規模経営体の農地の受け皿で地域を支える集落営農組織数は、2019年2月時点で1万4949。2年連続で減少した。次期食料・農業・農村基本計画案では30年の農業者数は15年比33%減の140万人と見通しており、生産基盤の要である人材の育成・確保は、農業の最重要課題だ。グリーンファーム角屋は1999年、集落の兼業農家が共同で農業を守ろうと発足。設立から20年を前に後継者不在で組織の継続が危ぶまれた。坪田さんらは16年、全戸に意向調査。88%で「後継者がいない」「割り当てられた農作業が将来的に難しい」など課題が鮮明になった。合意形成に2年かけ、集落外から若者を呼び込むことにした。知人のつてや就農フェアに参加するなどして探し、知り合ったのが斎藤さんだ。埼玉県生まれの斎藤さん。農業に興味を持ち、石川県の農業法人に長年勤めていた。独立して稲作を模索する中、後継者を探す同組織の存在を知った。斎藤さんを迎え入れるため、18ヘクタールの米が中心だった経営にイチゴやダイコン、タマネギなど園芸作物を加え、農閑期の仕事を確保。継承を踏まえ株式会社化した。斎藤さんは「決算書も見て、信頼できると思った。地域の人と一緒に経営を発展させたい」と意気込む。集落の女性らに手伝ってもらって冬は加工にも取り組む考えだ。坪田さんは「代表が代わっても農業を地域から分断させるのではなく、地域と発展する集落営農の基本理念は変わらない。高齢者ばかりの集落に若い人が来たと歓迎されている」と笑顔だ。
●多様な主体活性化の鍵
 信州大学の小林みずき助教は「水田農業の若者の継承は、農村や農業の持続性を左右する」と強調する。預ける農地の選定も含め、地域全体が若い農業者を育てる意識を持つことが重要という。次期食料・農業・農村基本計画でも「多様な主体」を農業の持続的発展のポイントの一つに挙げる。小林助教は「米の消費が減り水田活用の方法が課題となる中、高齢者に比べ、母数が少ない農村の若い力を生かすことが課題解決の鍵を握る。そのための仕組みが必要だ」と指摘する。

*7-7:https://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2020040202000168.html (東京新聞社説 2020年4月2日) 発送電分離 電力改革はまだ途上だ
 昨日スタートした発送電分離。発電と送配電事業を切り分けて、大手電力による独占の壁を取り払う-。電力システム改革の“総仕上げ”とされているのだが、現状では劇的効果は期待できない。日本の電力供給は長らく、大手十社がそれぞれの“縄張り”で、発電と送配電、小売りを一手に担う「地域独占」だった。原発のような大規模集中型電源で大量の電気を一気につくり、決められた地域へ送り込むというやり方を続けてきた。福島第一原発事故で、その弱点があらわになった。他地域からの電力融通が思うように進まず、大消費地の首都圏は、計画停電を余儀なくされた。そんな地域独占の壁に風穴を開けるべく、政府による電力システム改革が加速した。大手電力会社を発電、送配電、小売りなどに分社化、つまり解体し、「新電力」と呼ばれる中小事業者の参入を図り、大規模集中から小規模分散に移行させる狙いがあった。二〇一六年、家庭向けも含めた電力小売りが自由化された。改革の「総仕上げ」とされるのが、発送電分離である。しかし、分離と言っても、送配電網の所有権を大手から切り離す「所有権分離」には踏み込めず、小売り同様、既存の大手が送配電会社を設立し、それぞれ子会社にするだけの「法的分離」にとどまった。送配電は従来通り、大手の支配下に残された。これまでも、大手が持つ原発の電力が優先的に接続されてきたように、「新電力」からの接続が、理由を付けて抑制される懸念はぬぐえない。分離による効果は恐らく限定的だ。「新電力」には、風力や太陽光を扱う事業者が多い。政府がエネルギー基本計画にうたう、再生可能エネルギーの主力電源化にも支障を来す恐れは強い。地域ごとに送配電子会社が残るのも非効率。欧米では、送配電網の運用そのものを電力会社から切り離し、「独立系統運用機関」(ISO)に委ねるシステムが主流という。そうなれば、全国規模での電力融通もスムーズになるだろう。接続の公平性が保たれて、再生エネの普及にとっても、強い追い風になるはずだ。発電量が天候に左右されやすいという再生エネの弱点を、例えば日照が豊富な九州と、風力の適地が多い東北・北海道などが、補完し合えるようにもなるだろう。送配電網の中立性が保証されるまで、電力改革は終われない。

<新型コロナは、社会保障を節約するのに都合のよいウイルスだが、まさか・・>
PS(2020年4月4日追加):*8-1・*8-2のように、安全保障や感染症の研究で知られる米ジョンズ・ホプキンス大学が、2018年にまとめた報告書で新型コロナの登場を予見するような分析をし、中でも最大の脅威は呼吸器系に悪さするRNAウイルスで、潜伏期間中・軽い症状の間でも感染してしまうタイプが特に危ないとしていた。そして、これは、新型コロナの性格と一致しており、現在は遺伝子操作したウイルスを使ったバイオテロもできる時代であるため、主たる被害者が高齢者と基礎疾患保有者であれば、新型コロナは社会保障を節約するのに都合よく作られたウイルスのように見える。そう考えると、*8-3のように、コロナ治療薬の有望候補が4つもあるのに、非科学的なことを言って検査も治療も行わず(犯人は政治ではないだろう)、保健所の人員増強等を主張していることと整合性がつくのである。
 そのような中、国民を犠牲にすることしか考えつかない行政はあてにならないため、*8-4のように、国民が手洗いを徹底し、人混みを避け、マスクをつけて予防した結果、インフルエンザ患者数も昨シーズンに比べて4割減ったそうだ。そのため、予防方法が同じ新型コロナも、同じ効果が出ていると思われる。

  

(図の説明:左図のように、日本は新型コロナの検査数が著しく少ないため患者数も少なく出ているが、これは実態を反映していない。また、治療薬はあるのに、できない理由を並べて使っていないが、検査しなければ使うこともできない。そのため、日本で新型コロナの致命率が低く出ているのは、単なる肺炎に入れられているケースが多いからだと思われる)
 
   
    2020.3.30東京新聞

(図の説明:何の治療もしないうちから、メディアが医療崩壊・医療崩壊と1カ月以上も騒いでいるため、「政府も医療もあてにならない」と感じて国民が予防を徹底した結果、左図のように、インフルエンザが昨年より4割減った。そのため、予防方法が同じ新型コロナも本来より4割減ったと考えるのが妥当だ。このまま、医療崩壊・医療崩壊と叫んで検査も治療もせず、対症療法も年齢でトリアージすれば、右図の日本の人口のうち団塊の世代より上の致死率が上がり、年金・医療・介護等の社会保障費が節約されるが、このやり方はあまりにあくどい)

*8-1:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO57636680T00C20A4I00000/ (日経新聞 2020/4/4) 新型コロナを予見 示唆に富む米大報告書
 地球規模の脅威となる感染症を引き起こす病原体とは、どんなものか。安全保障や感染症の研究で知られる米ジョンズ・ホプキンス大学が2018年にまとめた報告書は示唆に富む。いま世界を苦しめている、新型コロナウイルスの登場を予見するような分析がみられるからだ。今後の感染症対策にも役立つはずだ。報告書は同大の健康安全保障センターが120人以上の専門家への聞き取りをもとに作成した。様々な病原体の特徴、感染が引き起こす症状、病気の広がり方などに関する科学的知見を踏まえ、注意点や対策にあたっての勧告をまとめた。このなかで、最大の脅威に挙げたのが呼吸器系に悪さをするRNAウイルスだ。インフルエンザウイルスに比べ、コロナウイルスなどには十分な注意が向けられていないと警鐘を鳴らした。潜伏期間中や、軽い症状しかないときでも感染してしまうタイプが特に危ないと指摘しており、まさに新型コロナウイルスの場合と一致する。勧告は8項目ある。まず、呼吸器系に感染するRNAウイルスに焦点を当てつつも、幅広い種類の微生物に目配りする必要性を説いた。過去に経験し、要注意ウイルスなどとして記録されているものにとらわれすぎるべきではないという。コロナウイルスに関しては疫学的調査が重要だとした。抗ウイルス薬が極めて少ない現状に懸念を示し、治療薬やワクチン開発の加速を促している。製薬企業、政府、医療機器メーカーが資金を出し合い臨床試験を円滑に進める工夫をすべきだとした。さらに、新たなパンデミック(世界的大流行)の兆候をいち早くつかむため、全世界で診断に力を入れるよう提案。コストの問題はあっても、それに見合う効果が得られるはずだと指摘した。今となれば、どれももっともな内容だ。国境を越えたヒト、モノの移動が増えパンデミックが起きやすい状況なのは世界の共通認識だった。にもかかわらず、勧告は十分に生かされず備えは進まなかった。将来、より致死率の高い病原体が広がるかもしれない。新型コロナ対策の一つ一つの経験を確実に「次」への戦略づくりに生かしたい。ジョンズ・ホプキンス大学の報告書で指摘した8つの「勧告」の要約は以下の通り。
(1)脅威となるウイルスへの備えに投資を
 パンデミック(世界的大流行)を引き起こす可能性が最も高い病原体はRNAウイルス(注1)で、特に鼻やのど、肺などの呼吸器系に感染するタイプだ。この種のRNAウイルスは地球規模で壊滅的な被害をもたらす危険性が高く、調査・監視、科学研究、対策の開発に資源や資金を大規模に投じるべきだ。だが、インフルエンザと一部のコロナウイルスを除けば、ほとんど対策は講じられていない。あらゆる病原体の専門的な知識を育成・維持するとともに、動物から人間に感染する病気の情報を集めることで、パンデミックへの備えや研究につながる。
(2)過去の経験に基づく対策では不足
 過去の感染症の事例とバイオテロ対策にもとづき、米国や世界はパンデミックに備えてきた。しかし、取り上げられていない病原体への備えは早々に打ち切られてしまい、対策が硬直的になりがちだ。こうした従来型のやり方から決別し、病原体の性質に基づいてパンデミックのリスクを評価する必要がある。また評価については、綿密な医科学的分析の結果にもとづくべきだ。こうした改善に取り組むことで、パンデミックへの備えや病原体による地球規模のリスクに対する考え方を根づかせる。
(3)呼吸器系に感染するRNAウイルスを優先
 呼吸器系に感染するタイプのRNAウイルスはパンデミックを引き起こす可能性が高い。現時点で優先度が高いのは、インフルエンザと一部のコロナウイルスだ。重症急性呼吸器症候群(SARS)と中東呼吸器症候群(MERS)の流行をきっかけに、コロナウイルスへの理解を深める動きは出ているが、実験室で体系的に調べる取り組みは進んでいない。肺炎や気管支炎の原因となるライノウイルスやパラインフルエンザウイルス、呼吸器合胞体ウイルス(RSウイルス)、メタニューモウイルスなどでも同様に動きはない。この種のウイルスは将来、パンデミックを引き起こす危険性が高く、インフルエンザと同様の調査・監視体制を確立すべきだ。
(4)効果がある抗ウイルス薬の開発に重点
 呼吸器系に感染するRNAウイルスの治療薬として、現時点で米食品医薬品局(FDA)の承認を受けているのは、抗インフルエンザ薬としては「アマンタジン」や「リマンタジン」、「ザナミビル」、「オセルタミビル」、「ペラミビル」の5種類がある。いずれもインフルエンザウイルスだけに作用し、他のウイルスには効果がない。抗インフルエンザ薬以外では、C型肺炎などの治療に使われる「リバビリン」しかない。RSウイルスの治療で承認を受けているが、効果が弱く、強い副作用が懸念される。特定のウイルスに効く治療薬が開発できれば、パンデミックを抑えられる可能性は高まる。
(5)RNAウイルスのワクチン開発を優先
 呼吸器系RNAウイルス向けのワクチンも優先すべき課題だ。インフルエンザ向けはあるが、呼吸器系RNAウイルスのワクチンは存在しない。いくつかの重要な取り組みが存在する。例えば、官民連携でワクチン開発に取り組む感染症流行対策イノベーション連合(CEPI)はMERSを引き起こすコロナウイルスとパラミクソウイルス(ニパ)向けワクチンの開発を支援している。米国立衛生研究所(NIH)は、どんな型のインフルエンザにも効く汎用ワクチンの開発に資源を振り向けるようになった。最も怖いのが鳥インフルエンザウイルスの一種だ(注2)。汎用的なインフルエンザワクチンは、こうした地球規模で脅威となるウイルスに対して大きな予防策となりうる。
(6)科学的根拠にもとづいた治療法を官民医の連携で
 インフルエンザを除くと、呼吸器系ウイルスに対する治療は科学的根拠に乏しい。どのような治療が有効なのか、合併症で気をつける必要のある感染は何か、どの段階で人工呼吸器を使うのが適切なのか、といった疑問がある。こうした疑問への答えを見つけることで、パンデミックが起きたときに医師の対応力を高められるだろう。インフルエンザについて、抗ウイルス薬と炎症を抑える抗炎症薬、抗生物質を併用する治療法の報告が増えている。明確な治療指針を作るために、これらの治療効果がはっきりとわかれば、地球規模の脅威となるウイルスへの対応力につながる。
(7)RNAウイルスの研究には特別な注意を
 パンデミックを引き起こすウイルスに関する研究には特別な注意を払う必要がある。多くは低リスクだが、例えば抗ウイルス薬への耐性、ワクチンに対する抵抗性、感染力の増強といった実験は、国際的な基準である「バイオセーフティー」上の違反が起これば重大な問題を引き起こす。1977年に出現した「N1H1型」インフルエンザ(ソ連かぜ)は、なんらかのミスで研究所から漏れ出た可能性が指摘されている。こうしたウイルスを扱う実験については、リスクに見合った形で承認するプロセスが必要になる(注3)。
(8)診断法や診断装置の実用化を世界で
 診断技術と診断装置は適用できる病気の対象、診断速度、使いやすさで改良が進んでいる。普及が進めば、感染症に対する状況認識を高めるきっかけになるはずだ。呼吸器系に感染するRNAウイルスへの調査の強化と組み合わせることで、パンデミックを引き起こす病原体の初期のシグナルを捉える能力は大幅に高まる。コストや治療効果のほか、隔離病床など病院の資源の制約によって、こうした診断装置の採用が制限されている。しかし、パンデミックへの備えという観点から、費用対効果の見積もりも変わるはずだ。人工呼吸器やワクチン、抗ウイルス薬、抗生物質と同じように考えるべきだ。
(注1)ウイルスには、遺伝子がDNAだけのタイプとRNAだけのタイプがあり、RNAウイルスの方が突然変異しやすいため危険性が高いとされる。危険性の高いRNAウイルスには、コロナウイルスの一部のほか、インフルエンザやエボラ出血熱、デング熱などがある。
(注2)鳥インフルエンザの中で毒性が高い「H5N1型」が最も危険性が高いとされる。
(注3)バイオセーフティーは病原体を扱う施設の基準で、世界保健機関(WHO)が定めている。危険度に合わせて4段階ある。最も高いレベル4については、病原体が外に漏れ出ないような対策を講じている。例えば、施設内の気圧を低くし、空気が外に漏れないようになっている。

*8-2:https://iwj.co.jp/wj/open/archives/469833 (IWJ 2020.3.13より抜粋) IWJ調査レポート!新型コロナは「地球規模の破滅的な生物学的リスク(GCBR=Global Catastrophic Biological Risk)」!? ジョンズ・ホプキンス大学の『パンデミック報告書』が、2年前にコロナの出現を予見し、警告!
 2020年3月12日、WHOが正式に新型コロナウイルスの感染拡大を「パンデミック」であると発表した。こうした事態に至る約2年前、2018年5月10日に、世界最古の公衆衛生大学院と世界屈指の医学部を有する米国ジョンズ・ホプキンス大学の公衆衛生大学院、健康安全保障センターが、『パンデミック病原体の諸特徴』と題する報告書(以下『パンデミック報告書』)を発表した。この報告書の中で「地球規模の破滅的な生物学的リスク(GCBR=Global Catastrophic Biological Risk)という新しい概念を提示して、ウイルス、細菌などの病原体が近い将来、人間社会に破滅的な影響を及ぼす可能性を予見し、警告している。GCBRを引き起こす病原体の特徴として、高い感染力、低い致死率、呼吸器系疾患を引き起こすなど、7つの特徴を列挙している。これらの特徴は、ほとんど、現在流行中の新型コロナウイルスの特徴と一致するものである。さらに、驚くべきことは、GCBRを定義する中で、『パンデミック報告書』は、GCBRを引き起こす病原体が、自然由来ばかりでなく、人為的な操作によって生み出され、広がるリスクをも想定していたことである。『パンデミック報告書』からわかるのは、陽性ながら無自覚・無症状のまま日常生活を送り、周囲を感染させてゆく「ステルス・キラー」の対策と、その主な被害者になる高齢者と基礎疾患者への対策が、今後、非常に重要になる、ということである。

*8-3:https://toyokeizai.net/articles/-/340641?page=4 (東洋経済 2020/03/29より抜粋) コロナ治療薬「世界の救世主」探る臨床の最前線、有望候補薬は4つ、東大で感染阻止の研究も進む
 クロロキンは、アメリカのトランプ大統領が、「新型コロナウイルス感染症の治療に有効」と発言して注目を集めたものの、その後は服用者の中毒例や体調悪化が報道され混乱気味。日本でも過去、クロロキンによる網膜症が問題で訴訟になった経緯があり、効くとしても扱い方には注意が必要になりそうだ。また、治療薬の開発には大学、企業も乗り出している。東京大学医科学研究所は3月18日、急性膵炎治療薬「ナファモスタット」が新型コロナウイルスの感染を阻止する可能性を突き止めたと発表した。ナファモスタットは30年近く国内で使われている薬剤で、安全性のデータが十分あるなどメリットは大きい。日本では日医工が「フサン」の製品名で販売しているのをはじめ、各社が後発品を出している。安倍首相は3月28日の会見で、「観察研究として、患者の同意を得て投与を開始する予定」と述べた。このほかに、C型肝炎治療薬である「リバビリン」や「インターフェロン」も候補薬になると見られている。
●国は早期承認制度の適用も検討
さらに日本の製薬会社も、続々と開発に乗り出している。武田薬品は3月4日に、感染し回復した人の血液成分を使用した新薬(高免疫グロブリン製剤)をつくる。早ければ9カ月程度で実用化するという。また、スイス・ロシュグループ傘下の中外製薬は、関節リウマチ治療薬「アクテムラ」で、新型コロナウイルスを対象とした臨床試験を検討中だ。さらに、塩野義製薬やエーザイも、それぞれ開発を表明している。ただ、医薬品の開発は通常、人に対する安全性、有効性を確認する検証的な臨床試験だけで3~7年かかる。承認申請に必要な臨床試験がすべて終わるのを待っていては、今回の流行に間に合わない。このため加藤勝信厚生労働大臣は、製薬会社からの承認申請があれば、新たに導入した「医薬品の条件付き早期承認制度」を適用し、「可及的速やかに審査を行っていきたい」(3月26日・参議院予算員会)と答弁している。この制度を使えば、致死的な疾患で検証的な臨床試験に時間がかかる疾患であっても、一定の有効性、安全性が示されれば承認でき、早く国民に治療薬を届けることが可能となる。大曲氏は、臨床試験に関しても効果が見えそうなデータが揃った段階で、「(終わるのを)待たずに知見が出る可能性はある」と見る。開発に数年かかると見られる新型コロナウイルスの治療薬だが、臨床試験の状況によっては早期承認もありそうだ。

*8-4:https://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/202003/CK2020033002000209.html (東京新聞 2020年3月30日) 手洗い効果? インフル最少 昨季比4割減、流行ほぼ収束
 新型コロナウイルスの感染が広がる一方で、インフルエンザの患者数が昨シーズンに比べて激減している。医療機関の報告を基にした厚生労働省の推計で、今年第十二週(三月十六~二十二日)までの累計患者数は前年同期(千百六十四万人)より約四割少ない七百二十七万人。同省担当者は「一人一人が新型コロナ対策にもなる手洗いの徹底などに努めた結果」と受け止めている。厚労省は全国約五千カ所の定点医療機関からの報告を基にインフルエンザ患者数の推計値を毎週発表している。二十七日発表の第十二週までの累計は、比較可能な二〇一一~一二年シーズン以降で最少となった。今後も流行が続く可能性があることを示す「注意報」は全保健所管内で解除され、流行はほぼ収束したとみられる。ただ、過去には五月の大型連休前後に再流行した地域の例もあり、同省は「決して油断はしないで」と呼び掛ける。今シーズンの特徴は、昨年十二月まで例年を上回るペースで増加していた患者数が、ピーク時期になることが多い一月下旬~二月上旬にほとんど増えなかったことだ。一方、新型コロナウイルスは一月十五日に国内で初めて感染者が確認され、一月下旬以降、各地で感染が広がった。このため、例年以上に手洗いを徹底したり、人混みを避けたりして感染症の予防を心掛ける人が増えたとみられる。今シーズンは子どものインフルエンザ患者も少なかった。厚労省が自治体の報告を基にまとめた学校や保育所などの休校や学年・学級閉鎖の状況では、第十二週までの累計は昨シーズンに比べて全国で約二割少なかった。

| 日本国憲法::2019.3~ | 02:39 PM | comments (x) | trackback (x) |
2020.2.23 日本は、今後、何で食べていくつもりですか? ← 妄想に基づく優越感だけでは食べていけないこと (2020年2月24、26、27、29日、3月2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、13、14、16、18、19、20、22、23、25、26、27日追加)

   購買力平価ベースのGDP   2018.12.18朝日新聞   2019.12.21毎日新聞

(図の説明:物価上昇の影響を除いた購買力平価ベースのGDPは、左図のように、日本は停滞しており、現在はインドと接戦の状態だ。一方、中国は、等比級数的にGDPが伸びているが、これまでは安い人件費に支えられた製造業の発展が主な要因で、現在は先端産業にも進出している。アメリカは人件費が特に安いわけでもないのに、購買力平価ベースのGDPが順調に伸びており、開拓者精神と人材の多様性に支えられているのだろう。また、中央の図は、中国の近年の出来事とGDPの上昇をグラフに示したもので、中国は市場経済を目標にして以降、GDPの伸びが著しいことが明らかだ。右図の日本の2020年度予算は、予算委員会であまり議論されていない《又は議論していても報道されていない》が、持っている資産を活かし、無駄遣いを省いて教育を重視し、技術や人材を大切にしなければ、将来がおぼつかない)

 経産省はじめ政府が愚かなため、日本は1億人の人口を抱えながら、食料(自給率37%)やエネルギー(自給率7.4%)の殆どを輸入し、輸入するための金を稼ぐ手段である製造業やサービス業も他国に譲ってしまった。このままでは、将来は、食料やエネルギーを輸入する金もなくなるため、今日は、事例を挙げてそのことについて説明する。

(1)農林業生産物の外国依存
1)日本における食品の自給率低下
 農林水産省は、*1-1・*1-2のように、2030年度の食料自給率目標として輸入飼料を与えた国内の畜産物を「国産」に含めた数値を新たに設定する方針だそうだが、これを国産に含めていけない理由は、飼料の輸入が止まれば、その畜産物を生産できなくなるからだ。

 これは、政府が農産物の市場開放を優先したため政府が掲げた食料自給率の目標に達しないことを隠すためだろうが、そもそもカロリーだけで自給率が100%になっても生きてはいけない。まして、「45%の目標が37%に落ち込んだが、新たな算定方法で計算し直すと46%に跳ね上がった」などというのは、次元の低い数字遊びにすぎず、飼料増産・耕畜連携・国産飼料を与えた畜産物の消費という機運を削ぎ、食料安全保障の確立のための飼料自給率向上への取り組みを疎かにするものだ。

 また、*1-3のように、社会全体の「食の安全」への意識の高まりの中、国は2015年に食品表示法を施行して原産地表示の義務化を進めているが(日本政府が定めると妥協の産物になるため、EUと同じにした方がよい)、不十分なこの原産地表示でさえ、「中国産」を「国産」と偽るなどの虚偽表示が多いそうである。

2)榊(サカキ)も中国産
 日本の神事に欠かせないサカキは、国内に広く自生しているにもかかわらず、*2のように、殆ど中国産で、その理由は、国産材が売れなくなって森林の手入れが減り、木材の下に自生しているサカキを切り出して販売していた供給が減ったからだそうだ。

 佐藤幸次さんは、そこにビジネスチャンスを見つけて10年前に国産サカキの供給に乗り出したが、軌道に乗せるまでは大変だったそうだ。

(2)和服も中国製
 今回の新型コロナウイルス騒ぎで、日本で使われているマスクの80%が中国製だということがわかって驚いたが、日本文化の象徴とされる和服についても、*3のように、①絹糸の殆どが中国産で、made in Japanの着物生地は絶滅寸前であり ②仕立ての半分以上は、ベトナムなど海外の職人が行っており 流通する「日本の着物」の大半は、「中国産の糸」を用いて、日本で仕立てたか、ベトナムなど海外の工場で仕立てたものだそうだ。

 これは、品質管理を日本企業が行いつつ、人件費をはじめとするコストの安い中国・ベトナム・ミャンマーなどで生産するようになったためで、そうなった理由は、日本国内では人件費・水光熱費・地代等の必要経費は上がったが、それに見合った生産性向上ができなかったため、国内で生産すれば価格が高くなりすぎて一般市民が買えなくなったという日本市場の現実がある。

 この後、日本での生産が0になれば、品質管理ができる日本人もいなくなり、日本からは技術もなくなるが、この現象は、時間の差はあれ他産業にも起こったことで、主に東西冷戦終了後の1990年代から始まったことである。こうなってしまうと、仮に景気がよくなっても、国内ではなく輸入する相手国に金が落ちる仕組みとなる。

(3)工業製品も中国にシフト
 私は、東西冷戦が終了した1990年代にODA担当をしていたため、共産主義経済の国が経済敗北し、共産主義経済から市場主義経済に移行した国をずっと市場主義経済だった国が援助しつつ技術移転していた現場にいて、その内容を見てきた。そして、現在、(長くなりすぎるので1つ1つ例を挙げはしないが)市場主義経済の国だった筈の日本が、中国やロシアよりも共産主義経済の弱点を具現しているように見えるのである。

 例えば、国内メーカーだったが、日本で変に叩かれて台湾メーカーとなったシャープは、*4-1のように、初めて第5世代(5G)移動通信システムに対応したスマートフォンを発表したそうだ。メディアが的外れの叩き方をして、日本の優良メーカーを日本から追い出したのは本当に残念なことだった。

 一方、*4-2のように、中国で発生した新型コロナウイルスによる肺炎の拡大で、スマートフォンなど世界の電子機器の生産に影響が出ているのには、電子機器における中国の重要性が現れている。つまり、中国は、食品・軽工業製品を生産・輸出しているからといって重工業製品・IT産業で遅れているわけではなく、最先端の電子機器も生産しているのであり、これは一国の政策として当然のことなのだ。

 さらに、*4-3のように、新型コロナウイルスによる肺炎の感染拡大が続く中、中国からの部品供給が滞ったため、日産自動車は九州の完成車工場の稼働を一時停止するそうで、国際貿易センターによると、2019年の中国からの自動車部品の輸入額は30億ドル(約3300億円)と、重症急性呼吸器症候群(SARS)が流行した03年の約10倍になっているそうだ。

 つまり、日本が現状維持や後戻りばかりしている間に、中国はEVや自動運転車でも最先端を走っており、これは、国を挙げて本気でEVや自動運転車の開発を行う意思決定をし、それに基づいて皆が行動した結果だ。にもかかわらず、経産省は、「自動車だけは永遠に日本の方が優れている」と考えているようだが、それもいつまで続くかわからない幻想なのである。

(4)サービス業
 製造業は、コストの低い国が立地上の比較優位性を持つのに対し、サービス業は、消費地でしか生産できないため、日本にも立地の比較優位性があり、雇用吸収力もある産業だ。しかし、経産省はじめ日本政府は、製造業と比較すると、サービス業は眼中にないらしい。

1)観光業
 中国で発生した新型コロナウイルスによる肺炎拡大で中国政府が海外への団体旅行を禁止した1月末以降、旅客便の運休やクルーズ船の寄港取りやめが相次ぎ、沖縄県の観光施設・ショッピングモール・ドラッグストアなどから中国人団体客の姿が消えて、沖縄県経済の屋台骨である観光業に影を落としているそうだ。

 このように、「日本は中国はじめ外国の観光客を迎えて外貨を稼いでいるのに、メディアが『爆買い』などという嘲るような言い方をするのは罰当たりだ」と私は思っていたが、客の姿が消えて初めて、その有難味がわかったようだ。観光で行ける場所は世界に少なくないため、今後は観光客を疎かにしない方がよい。

2)医療・介護
 日本の医療は質が良かったにもかかわらず、近年は、*5-2のように、厚労省が医療費抑制しか考えずに医療叩きばかりしているため質が落ちた。医療の質が高ければ、人間ドック・医療・リハビリなどを目的とした観光を設定して稼ぐこともできたが、新型コロナウイルスへの対応を見ても諸外国から見劣りするもので、もともとあった付加価値の高い宝を、浅い思考と狭い視野でなきものにしようとしているわけである。

 さらに、介護も、実需に基づいた日本発のサービスで、高齢化とともに世界で実需が増えるサービスであるのに、厚労省や財務省には社会保障という名の無駄遣いにしか見えないらしく、ブラッシュアップするどころか人口減少による支え手不足を理由として高齢者の負担増・給付減しか考えていない。そして、40歳以上の人からのみ高額の介護保険料を徴収する不公正を是正しようという気配すらない。

(5)日本は、人材・熟練技術者やその育成を怠ってきた
 このような新しい製品やサービスを作って軌道に乗せるのは、科学的・論理的にモノを考えることのできる人材だ。しかし、日本は、人材を計画的に育てておらず、*6-1のように、①量子研究でも後れた ②日本発の再生可能エネルギーの使用も遅れた ③日本発の再生医療もiPS細胞に偏りすぎて遅れた ④日本発の癌免疫療法も遅れた 等の状況だ。その理由は、「司令塔がない」というよりは、「司令塔にふさわしい人材をリーダーにしていない」からである。

 さらに、知性が重要な時代になったのに、*6-2のように、高等教育を極めた高度人材に大学も企業も活躍の場を与えて育成していない。既に人口に占める博士の割合は増えているため、「博士≒高度研究者」である必要はなく、小・中・高校の教諭も博士を優先して採用してもよいと思う。なお、考えるための基礎知識は必要だが、覚えて終わりの知識では役にたたないのだ。

 また、基礎知識のある人が就職しても、本当の人材や熟練技術者になるためには、On the job training が欠かせない。そのため、*6-3のように、①“ゆとり教育”で基礎知識を減らしたのは人材の育成にマイナスだった ②“働き方改革”によって、知識の吸収期であり仕事に熱中している人にまで働かないことを強制するのはよくない ③労働基準法改正が日本人の「勤労は美徳」という勤労観にトドメを刺して、日本の競争力をますます無くさせている ④残業禁止でダブルワーカーが増えそうだ ⑤「手に職」が付かなくなり技能伝承がやりにくくなる ⑥このままでは何の保護も保障もなく勤勉に働いて日本社会に貢献してきた経営者の多くが労基法違反の“犯罪者”になる ⑦これでは中小企業の多くが消滅してしまうだろう ⑧日本人が働き過ぎだったのは、戦後日本を復興した前の世代のことである というのに、私は賛成だ。

<食品の自給率>
*1-1:https://www.hokkaido-np.co.jp/article/394897 (北海道新聞 2020/2/20) 食料自給率 失政覆う数値かさ上げ
 農林水産省が、2030年度の食料自給率目標として、輸入飼料を与えた国内の畜産物を「国産」に含めた数値を新たに設定する方針を示した。政府は現在、25年度にカロリーベースの自給率を45%に引き上げる目標を掲げている。18年度実績は過去最低の37%にまで落ち込んだが、新たな算定方法で計算し直すと46%に跳ね上がる。農産物の市場開放を優先し、自給率低迷を放置する安倍晋三政権の「攻めの農政」の欠陥を覆い隠そうとしている。そう勘繰られても仕方あるまい。安直な数値のかさ上げで、輸入飼料に依存する畜産業の実態を見えにくくするのは大いに問題だ。新しい自給率目標は、今春改定される農政指針「食料・農業・農村基本計画」に明示される。輸入飼料を与えた畜産物を除いた従来方式の指標と併記するという。今回の措置について、農水省は「畜産農家の生産努力を反映させ、国産品を購入する消費者の実感を高めるため」と説明するが、姑息(こそく)以外の何物でもない。輸入飼料を与えた畜産物は統計上、国産に含まれなかっただけであって、店頭で輸入品扱いされているわけでも、消費者が国産品と認めていないわけでもない。政府に問いたいのは、そもそもなぜ食料自給率向上を政策目標としてきたのかということである。地球規模で見れば、途上国の人口増、気候変動、疫病、戦争などで、いつ食料争奪戦が起きても不思議はない。自給率は、輸入を絶たれた場合でも国民の食を守れるかどうかの目安であるはずだ。新たな指標は輸入飼料への依存度をさらに高めかねず、政策本来の趣旨に逆行している。背景として思い当たるのが昨夏の日米首脳会談である。首相はトランプ大統領の要請をのみ、米中貿易摩擦でだぶついた飼料用トウモロコシの大量輸入を約束した。トウモロコシの輸入が増えても自給率が上がる算定方法をわざわざ用いるのは、農家のためではなく、日米両首脳にとって政治的に好都合だからではないのか。これは「国産飼料に立脚した畜産の確立」を掲げ、コメ農家に飼料用米への転作を促してきた従来の農政とは明らかに矛盾する。安倍政権は以前にも「国際基準に合わせる」などの理由で、国内総生産(GDP)を年間30兆円規模かさ上げした。経済指標を恣意(しい)的に扱い、成果を誇示するのはいいかげんにやめるべきだ。

*1-2:https://www.agrinews.co.jp/p50020.html (日本農業新聞 2020年02月15日) 新たな自給率目標 飼料増産の機運そぐな
 次期の食料・農業・農村基本計画で農水省は、飼料自給率を反映しない新たな自給率目標を設定する方針だ。畜産農家の生産努力を考慮するなどの狙いがあるが、飼料の多くを輸入し、その依存度が高まっているのが実態だ。食料安全保障の確立へ飼料自給率向上への取り組みがおろそかになってはならない。日本の飼料自給率は25%(2018年度)と低い。それを反映させた現行の自給率の算定では畜産物は低くなり、全体が上がらない要因になっている。現行のカロリーベースは過去最低の37%(同)。飼料自給率を高めないと、畜産農家が頑張って生産を増やしても全体の自給率の向上にはつながりにくい。新たな自給率目標はカロリーベース、生産額ベースともに飼料自給率を反映しない「産出段階」の数値。カロリーベースでは46%になる。現行基本計画の目標の45%を上回り、数値を高く見せるためではないかとの誤解を招きかねない。狙いについて分かりやすい説明が必要だ。また飼料自給率を反映しないと輸入飼料に依存している実態が見えにくくなる懸念がある。飼料自給率は3年連続で低下。そうした危機感が国民に伝わらず、飼料増産・耕畜連携や、国産飼料給与の畜産物を食べようといった機運がそがれるようなことがあってはならない。飼料自給率向上の要である飼料用米について現行基本計画は、25年度には、13年度の10倍に当たる110万トンに増やす目標を設定。しかし作付面積は米の生産調整を見直してから18、19年産と連続で減り、18年産の生産量は43万トンにとどまった。飼料自給率の低い日本は、飼料の輸入が滞れば畜産物生産に大きな影響が出る。食料安保が危ぶまれる中、新たな自給率目標設定を巡っては慎重な扱いを求める声が相次ぐ。自民党では「飼料の国産化にマイナスにならないように」、次期基本計画を議論する同省の食料・農業・農村政策審議会の企画部会でも「土地利用型の飼料作物の振興を」などの意見が出た。自給率目標を含む基本計画の根拠法である食料・農業・農村基本法は、「食料の安定供給の確保」のために「国内の農業生産の増大が基本」「国民生活の安定に著しい支障が出ないよう供給を確保」といった理念を掲げる。それを具現化するのが自給率目標だ。国内で作れるものは作るとの姿勢を堅持すべきだ。飼料用米をはじめ飼料生産は農地の有効活用の上でも重要で、自給力の確保にも役立つ。次期基本計画では、飼料自給率を反映した従来の自給率目標と反映しない新たな目標を、カロリーベースと生産額ベースそれぞれで設定、四つの数値が並ぶことになる。これに飼料自給率目標を加えると五つになる。新たな自給率目標の設定には、消費者に国産消費の意義を実感してもらう狙いもある。同省は、各目標の役割を丁寧に説明し理解を深める必要がある。

*1-3:https://www.nishinippon.co.jp/item/n/542448/ (西日本新聞 2019/9/12) 義務化でも消えぬ不正 相次ぐ産地偽装
 2000年代に入り全国各地で相次ぐ食品偽装。11日、福岡県北九州市の食品加工会社が「中国産」の梅を「国産」と偽って販売していたことが明らかになった。社会全体の「食の安全」への意識の高まりの中で、企業にとってそれまで培った信頼を大きく損なう問題だ。国は15年に食品表示法を施行、原産地表示の義務化を進めるが、不正は後を絶たない。02年に雪印食品(東京)が牛海綿状脳症(BSE)対策事業を悪用して外国産の肉を国産と偽装していたことが分かり、同社は解散した。日本食品や日本ハム子会社でも同様の偽装が明らかになった。07年には高級料亭「船場吉兆」(大阪)で、九州産の牛肉と認識しながら兵庫県の高級ブランド牛「但馬牛」「三田牛」のラベルを張る、ブロイラーを「地鶏」として販売するなどの偽装が発覚。賞味・消費期限の偽りや料理の使い回しなどの不正も明らかになった。料理部門で営業を再開したが、崩れた「老舗」の信頼を取り戻せず翌年に廃業した。食品加工会社「キャセイ食品」(東京)も08年、長崎工場で「九州産」「国産」として生産した冷凍野菜の一部に中国産を混ぜて出荷していたと明らかにした。同社は経営破綻した。
   ◇   ◇
 各地で相次いだ産地や賞味期限の偽装などを受け、国は2013年、それまで食品衛生法など3法で定めた食品の表示規定を一元化。食品表示法として施行され、加工食品の添加物、賞味期限などの表示基準を守るよう義務付けた。原料の原産地表示についても、来年3月末までに、全ての生鮮食品、輸入食品、一部の加工食品(もち、漬物、野菜冷凍食品、おにぎりなど)に義務付けた。さらに、22年4月までに、国内で製造したすべての加工食品について、重量割合が最も大きい原材料の原産地表示が義務化される。違反行為への罰則も強化。原産地について虚偽の表示をした食品の販売をした場合は2年以下の懲役または200万円以下の罰金に処する-などと定める。だが、食に関わる不祥事は消えない。昨年には大分市の水産品販売会社がギンザケをサーモントラウトと偽るなど不適正な表示で商品を販売。福岡県大牟田市の水産物卸売業も中国や韓国で1年ほど育てて輸入したアサリの成貝を、熊本県内で1~6カ月養殖した後に熊本産として流通業者に販売、九州農政局に是正を指示された。

<神事に用いるサカキも中国産>
*2:https://agri.mynavi.jp/2020_01_27_104254/ (マイナビ農業 2020年02月17日) 国産サカキを商機に。売り手優位のビジネス手法とは
 日本の神事にとって欠かせない植物であるサカキのほとんどは、じつは中国産だ。彩の榊(さいのさかき、東京都青梅市)を運営する佐藤幸次(さとう・こうじ)さんはそこにビジネスチャンスがあるとにらみ、約10年前に国産サカキの供給に乗り出した。だが経営を成長軌道に乗せるまでには、大きな試練が待ち受けていた。
●日本で売られるサカキのほとんどは中国産
 サカキは、緑の葉が茂った枝を束ねて神棚に供えたり、神社で参拝者が神前にささげる玉串(たまぐし)に使われたりする植物。名前の由来には、神と人間の境界にある境木(さかき)を語源とする説がある。一般に「サカキ」と呼ばれているものには、「ホンサカキ」と葉っぱがやや小さい「ヒサカキ」の2種類がある。いずれもツバキ科の常緑広葉樹で、国内に広く自生している。ここでは両者を区別せず、サカキと表記する。なぜ日本の神事に使うサカキが中国産なのか。背景の一つが林業の衰退だ。国産の杉やヒノキが売れていたときは、森林の手入れの一環として下に自生しているサカキを切り出し、販売していた。だが輸入木材に押されて林業の収益性が下がり、森林を手入れする機会が減るのに伴い、サカキの供給も細っていった。林業に携わる人が高齢化し、作業をする人が減ったことがこうした流れに拍車をかけた。そこに登場したのが中国産だ。今から30年ほど前に日本の業者が中国でサカキの栽培や加工の仕方を教え、日本向けに輸出し始めた。今や日本で流通しているサカキの8割以上は中国産と言われている。そこに商機を見いだしたのが、当時20代後半の佐藤さんだった。
●山の中で見つけた大量のサカキ
 佐藤さんは17歳で高校を中退し、埼玉県飯能市にある実家の花屋で働き始めた。高校を辞めたのはミュージシャンになりたかったからだ。音楽会社にデモテープを送ったりしてみたが、実力不足を感じ、家業を手伝うことにした。サカキに注目した理由はいくつかある。家の仕事を手伝うかたわら、修行のために大手の花屋で働いてみた。そこで中国産のサカキが1カ月に2000束も売れていることを知った。実家の50倍以上。佐藤さんは「サカキってこんなに売れるんだ」と驚いた。実家で売っていたサカキも中国産だった。段ボール箱に入ったサカキを市場から仕入れると、神棚などに供えるサカキの束を指す「造り榊(さかき)」が「シクリサカキ」と誤記されていたりした。もちろんその箱は店には置かないようにしていた。だがあるとき、客の一人から「おまえが売っているのはニセモノだ」と言われ、「これは日本のか」と厳しく問いつめられた。佐藤さんは「今なら違いがはっきりわかります」と話す。中国産は輸送効率を高めるために箱にぎゅうぎゅう詰めにすることが多く、葉っぱが蒸れて弱ってしまうことがあるからだ。その客は違いを一目で見抜くほど目が肥えていたのだった。この一件を通して、佐藤さんは国産のサカキに需要があることを知った。転機は29歳のときに訪れた。佐藤さんは折に触れ、祖母の眠る霊園に行く習慣があった。その日も墓前で手を合わせると、霊園に隣接する山に足を踏み入れた。佐藤さんにとって墓参後の散歩コースだった。ふと見ると、目の前にサカキの木があった。横を見ると、そこにもサカキの木。周囲を見回すと、霧が晴れて風景の輪郭がはっきりするように、大量のサカキが目に飛び込んできた。心の中で「うわーっ」と叫んだ。どれも葉っぱが大きくてツヤがあり、濃い緑色をしていた。自分が店で扱っているサカキとは別物だった。「これだけあれば商売ができる」。佐藤さんはその日のうちに、「花屋を辞める」と両親に告げた。山の持ち主を調べたところ、ある鉄道会社が所有していることがわかった。十数回電話してようやくアポイントメントを取り、担当者に会いに行くと「サカキを切っていいよ」と快諾してくれた。販売用に植えたものではなく、他のサカキと同様、自生したものだったからだ。ちょうどそのころ、鉄道会社は山の中に20キロもの長さの遊歩道を造ることを計画していた。もともとある山道の両側10メートルを整備し、幅20メートルほどの遊歩道を造るという構想だった。担当者と話し合った結果、地面から60センチの高さで切ったサカキの株を遊歩道に残すことが決まった。切った上の部分は佐藤さんが販売用に使う。株から枝が伸びてくれば、それも切って商品にすることができる。山道の両側に生えた雑草や雑木を刈る作業を請け負うことで、佐藤さんは販売用のサカキを無償で確保することができるようになった。一人でビジネスを立ち上げることを決め、実家を出て市内のアパートに移り住んだ。順調なスタートのはずだった。だがすぐに大きな壁に直面した。せっかく手に入れたサカキが思うように売れなかったのだ。
●売り手優位のビジネスを確立
 これまで花やサカキを仕入れていた近くの市場が、最初の販売の場になった。当時はセリにかけると5キロで2500円、花屋から事前に指名で注文が入っていると3500円が相場だった。初の出荷は50キロ。注文は取っていなかったので、「セリで2万5000円くらいで売れればいいな」と思って出した。ところがフタを開けてみると、合計で2500円。期待したほどセリで買い手がつかなかったのだ。「ショックでした」。佐藤さんはそのときのことをこうふり返る。昼はアルバイトでビルや住宅を解体する仕事をし、夜にサカキを切り出しに行く生活が始まった。サカキの販売ではとても生計が成り立たないからだ。そんな生活を始めて1年半ほどたったときのことだ。解体のバイトを終えてアパートに帰ると、路上に大量の荷物が積んであった。「邪魔だなあ」と思いながら近づいてみて驚いた。「うわっ、これ自分のだ」。丁寧に積まれた布団の上にサカキの枝が置いてあった。家財道具一式が自室から外に運び出されていたのだ。生活は困窮を極めていた。アパートに住んでほどなくしてまず携帯代を払えなくなり、1年たったころにはガスも電気も止まり、家賃も払えなくなっていた。そしてついにアパートを追い出され、車の中で寝泊まりするようになった。それから約1カ月。バイト先の解体業者のもとを、兄が訪れた。「おまえ何やってるんだ。やっと見つけたぞ。電話ぐらいつながるようにしとけ」。そう言って携帯代を貸してくれた。「一つ報告がある」。兄がバイト先を訪れたのは、携帯代を貸すことが本当の目的ではなかった。「花屋からおまえあてにサカキの注文が入ってるぞ」。これが佐藤さんにとって初の注文となった。注文は月に2回で、それぞれ50キロずつ。その後もずっと続く定期注文だった。値段は5キロで3500円で、1カ月で7万円の収入だ。市場に熱心に売り込みに来る佐藤さんの姿を見た花屋が、注文を出してくれたのだ。「うれしかった」。そうふり返るのも当然だろう。この注文からほどなくして、佐藤さんは東京都青梅市で事務所を借り、株式会社「彩の榊」を立ち上げた。飯能市を離れたのは、友人たちとの付き合いを断ち、サカキの仕事に本格的に集中するためだった。佐藤さんはその後、受注を徐々に増やしていった。それを可能にしたのが営業努力。市場を通した販売では限界があると考え、花屋を直接回るようにしたのだ。「注文につながるのは100軒に3軒くらい」(佐藤さん)しかなかったが、珍しい国産サカキを評価してくれる花屋が少しずつ増えていった。品質の高さも追い風になった。中国産のサカキが切り出してから日本の花屋に届くまで約40日かかるのに対し、彩の榊は3日。どちらのサカキが生き生きとしているかは言うまでもない。さらに中国産と品質面で差を出すため、効率優先で輸送時にサカキの束を箱にぎっしり詰めたりしなかった。彩の榊には現在、1カ月に20万束の注文が入る。収量に限りがあるため、そのうち対応できているのは1万5000束で、値段は5キロで5000円。圧倒的な売り手優位のビジネスだ。そのほか玉串用などの「1本モノ」も月に約5000本販売している。快進撃はこれにとどまらない。彩の榊は既存のサカキの商売の枠を超える新たなビジネスの手法を取り入れ、飛躍のときを迎えようとしている。

<和服も中国製>
*3:http://masaziro.com/?p=880 (MASAJIRO 2016.3.23より抜粋) メイドインジャパンの着物生地は絶滅寸前である。
 「絹糸のほとんどは中国産です。それより驚いたことに、仕立ての半分以上は、ベトナムなど海外の職人が行っていると言われています。」また、農林水産省によると、2014年の養蚕農家はわずか393戸で、生糸の生産量も27トン足らずとなっており、ピーク時の1934年(4万5000トン)から1600分の1に減少し、もはや「絶滅寸前」といっても差し支えない。つまり、流通する「日本の着物」の大半は、「中国産の糸」を用いて日本で仕立てたものか、ベトナムなど海外の工場で仕立てられたものだという現実があるのだ。だからこそ、MASAZIROは100年前、大正や昭和初期の着物生地に拘るのです。ご存じのように、絹糸の生産のピークは昭和9年、この時期を境にして生産量が減少し、ナイロンや化学繊維の出現により日本の養蚕業が衰退していったのです。2000年には殆ど国内生産は無くなりました、でも需要は旺盛になってきます。そこで人件費の安い中国やベトナム、ミャンマーで生産されるようになってくるのですが、もちろん品質管理は日本が行うのです、品質には間違いがないのですが、・・・。水を差すようですが、そこに日本の職人のプライドがあるように思えないのです、コストを下げ利益の増大を図る、経済の原則にのっとった大量産商品となっていくのです。あくまでも政次郎の偏った観かたかもしれませんが・・・。現在流通している着物生地には、国産の絹糸で国内で手織されてものは殆ど流通していないのです、あるとすれば価格に糸目をつけない裕福な人々の為に極々僅かに流通しているのに過ぎなく、まず、私たち庶民の目には触れることはありません。実は政次郎、そのことは統計を見るまでもなく肌で感じていたのです。(以下略)

<工業製品も中国にシフト>
*4-1:https://www.nishinippon.co.jp/item/o/584770/ (西日本新聞 2020/2/17) シャープが5Gスマホ発表
 シャープは17日、国内メーカーとして初めて第5世代(5G)移動通信システムに対応したスマートフォンを発表した。10億色の表現力を持つ独自の液晶技術「IGZO(イグゾー)」を採用し、超高精細の8Kカメラを搭載するなどの特色を打ち出し、先行する韓国や中国勢に対抗する。5Gは高速大容量が特長で、今春に予定される国内での商用サービス開始に合わせて発売する。シャープの新型スマホを用いると、映画などの動画データを数秒でダウンロードできる。肌の質感や青空の濃淡を忠実に表示できる液晶ディスプレーを採用し、強い日差しの下でも快適に視聴できる。

*4-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200219&ng=DGKKZO55798040Y0A210C2MM8000 (日経新聞 2020.2.19) スマホ 細る供給網、アップル、売上高「予想届かず」 新型肺炎で稼働率低く
 中国で発生した新型コロナウイルスによる肺炎の拡大が、スマートフォンなど世界の電子機器の生産を揺さぶっている。米アップルは17日、2020年1~3月期の売上高予想が達成できない見込みと発表した。電子機器の受託製造サービス(EMS)が集まる中国で主力のiPhoneの生産が滞れば、日本などアジアのスマホ部品メーカーに影響が広がる。中国は世界各地から電子部品などを輸入し、最終製品を輸出する。世界のスマホ生産台数の65%が中国に集まる。国際貿易センターによると、中国は19年1~11月にスマホやパソコンなどの頭脳となる集積回路を2783億ドル(約30兆6千億円)輸入し、携帯電話を1132億ドル輸出した。液晶パネルでは中国が世界の生産能力の半分を占めるほか、日本や韓国製のパネルをスマホ向けに組み立てる工場も多い。アップルはこのサプライチェーン(供給網)を効率よく生かしてきた。iPhoneの大半は中国に集まる台湾・鴻海(ホンハイ)精密工業などEMSの拠点で生産される。アップルが主要取引先の所在地をまとめたリストによると、世界で809ある取引先の拠点の47%が中国に集中する。アップルは従来1~3月期の売上高は前年同期比9~15%増の630億~670億ドルと予想していたが、17日に達成できないと発表。中国のiPhone関連工場の操業は同日までに全て再開したものの、省や市をまたぐ移動に制限がかかり、トラック運転手が不足し物流にも支障が出る。生産拠点で労働力の不足や部材の目詰まりが起き、「iPhoneの世界的な供給が一時的に制限される」(アップル)。アップルは新型肺炎の影響が見通せないとして新たな業績予想を控えた。野村グループの米インスティネットは17日付のリポートで、20年1~3月の売上高が会社の従来見通しを40億ドルほど下回ると分析。同期間のiPhone販売台数は市場予想を600万台下回る4200万台とみる。台湾の部品メーカーなど複数のサプライヤーによれば、中国のiPhone工場の稼働率は足元で30~50%で、3月いっぱいは影響が残る見込み。世界最大の製造拠点とされる鴻海の鄭州工場(河南省)は先週に地元当局の認可を得て生産を再開したが、稼働率は上がっていないもようだ。スマホの部品点数は1千点以上といわれる。生産は再開されても一部部品はスマホの工場に届かず、供給網は完全に復旧していない。台湾のEMS大手幹部によると、プリント基板の中国での調達に影響が出ている。スマホに数百個単位で搭載されるコンデンサーの需給も逼迫する。日本勢では村田製作所がアップルの高級スマホ向けにコンデンサーを供給しているとみられる。TDKはスマホ向け電池の最大手で中国に拠点を構える。米調査会社IDCは1~3月期の中国のスマホ出荷台数が30%以上減る可能性があるとみる。スマホ生産の停滞が長引けば、部品在庫も積み上がり部品メーカーが生産調整に入る可能性がある。

*4-3:https://www.nikkei.com/nkd/industry/article/?DisplayType=2&n_m_code=042&ng=DGKKZO55501650R10C20A2TJC000 (日経新聞 2020/2/12) 車部品輸入の3割 中国製 エンジン周辺の中核も 、新型肺炎、供給に影響 国内各社、代替生産の動き
 新型コロナウイルスによる肺炎の感染拡大が続くなか、国内の自動車生産にも影響が出てきた。中国からの部品供給が滞り、日産自動車は九州の完成車工場の稼働を一時停止する。日本では車部品の中国からの輸入が、輸入全体の3割超を占め存在感を示している。エンジン周辺の基幹部品などを輸入する企業もあり、部品各社は対応に追われている。「日本で使う中国の部品は多い。在庫を細かく調べるには時間もかかる」。ある日産幹部はこう話す。九州工場では日本で売るミニバン「セレナ」や、北米への輸出が多い多目的スポーツ車(SUV)を生産する。同工場の稼働停止は物流網の混乱が要因とみられるが、調達自体が難しくなっている部品も出ている。ある部品会社によるとハイブリッド車(HV)などに使う電装品の一部で調達が難しくなっており、「(日産は)日本国内で代替調達できないか検討しているようだ」という。調達を巡る混乱は長期化する可能性もでている。国際貿易センターによると2019年の中国からの自動車部品の輸入額は30億ドル(約3300億円)と、重症急性呼吸器症候群(SARS)が流行した03年の約10倍となった。約22兆円とされる日本の車部品市場全体に占める比率は2%弱だが、日本は輸入部品のうち、37%(19年)を中国から輸入し、中国比率が米国などに比べ高い。多くはバネや繊維・樹脂製の部品、素材など、小さく輸送コストがかかりにくいもののようだ。中国では一部地域で企業活動が再開されたが、ホンダは11日、中国・広東省広州市の乗用車工場について、17日以降の生産再開を目指す方針を明らかにした。一部従業員は10日に出勤を始めたものの、広州市から新型肺炎の感染防止の対応策を申請するよう求められ、生産準備に時間がかかるという。従来は「できるだけ早く生産を再開したい」としていた。広州市などで運営する乗用車向けのエンジンやトランスミッションなどの部品工場も、17日以降の生産開始を目指す方針を示した。新型肺炎が最初に広がった武漢市にある工場の生産再開時期は引き続き「17日の週」で変えなかった。部品のサプライチェーン(供給網)の正常化には時間がかかりそうで、代替生産などを視野に入れる企業も相次ぐ。内装部品の寿屋フロンテ(東京・港)はシートなどの布素材を中国から仕入れる。3月上旬までの在庫は確保しているが「長期化に備えて生産設備のある日本で代替できるか設備の確認を始めた」(同社)。足回り部品のエフテックは武漢工場でつくるブレーキペダルをフィリピンで代替生産することを決めた。「一時的に他の企業からの調達に切り替えてもらう必要があるかもしれない」と話すのは、ホンダとの取引が多いショーワだ。ドアなどの開閉を補助するガススプリングを中国で生産し、日本にも輸入するが他の地域に生産設備がない。トヨタ自動車系の中央発条はドアロックケーブルなどを日本に供給しており、「すぐに代替生産ができない品目もある」という。自動車部品メーカーは2000年代から東南アジアなどに調達先を分散させる「チャイナプラス1」の動きを進めてきた。「車内の内張りシートは人件費の安いバングラデシュ経由からの調達を増やしており、中国への依存は低い」(シート大手のテイ・エステック)との声も聞かれる。ただ近年は中国の技術力が上がり、エンジンなど「難易度の高さから日本での生産に依存していた領域で中国への生産移管が増えている」(伊藤忠総研の深尾三四郎主任研究員)。自動車の心臓部となる部品だけに、少量でも供給が滞れば国内生産に支障が出やすい。いすゞ自動車が調達するエンジン周辺部品のターボチャージャー(過給器)は一部が武漢で生産されており、「武漢以外の地域で調達する予定だ」(南真介取締役)。他の部品も中国から調達しているものがあるため、在庫を確認し、生産移管などの必要性を慎重に見極めるという。供給網の混乱などが「長期化すれば(国内の生産に)影響が出る可能性もある」と南氏は話す。中国政府は次世代車の国産化を推奨し、電動化に欠かせない部品の生産拠点は中国に集まりつつある。車載電池では寧徳時代新能源科技(CATL)など2社で世界で2割超のシェアを持ち、トヨタなど日本勢も協業を進める。中国の動向が日本の自動車生産に影響を与える構図は一段と強まりそうだ。

<サービス業>
*5-1:https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/538085 (沖縄タイムス社説 2020年2月22日) [新型肺炎と県経済]難局というべき状況だ
 中国で発生した新型コロナウイルスによる肺炎拡大が、県経済の屋台骨である観光業に影を落としている。裾野の広い産業だけに、地域全体への影響が心配される。楽観を許さない状況だ。人気の観光施設やショッピングモール、ドラッグストアから中国人団体客の姿が消えて、1カ月近くになる。中国政府が海外への団体旅行を禁止した1月末以降、旅客便の運休やクルーズ船の寄港取りやめが相次いだためだ。影響は甚大で、県内の総合スーパーや百貨店のほとんどで、春節期間中の免税品売上高が前年より10%も低下した。国際通りの小売店やタクシーも売り上げが落ち込み、ホテルや観光バスも厳しい状況が続く。2019年に沖縄を訪れた外国人は約293万人。中でも中国人の伸びが目立ち、4人に1人に当たる約75万人を占めていた。懸念されるのは、感染を恐れて外出や旅行を控える動きが国内でも広がりつつあることだ。南西地域産業活性化センターは、新型肺炎の影響が半年ほど続き、中国人を中心に入域観光客が50万人減った場合、観光収入は281億円減少すると試算する。01年の米同時多発テロ後の風評被害で観光客が激減した際、観光収入が200億円余も減る憂き目に遭った。しかし終息のめどが立たず、誘客活動などが打ち出しにくいという点では、今回の方が深刻といえる。
   ■    ■
 感染封じ込めに時間がかかれば、地域経済へのダメージは大きくなる。特に地方の中小零細企業にとっては資金繰りが不安材料だ。政府は緊急対策として、中小企業を支援するための5千億円規模の貸し付けや保証枠を確保。経営が苦しくても雇用を維持する企業には、雇用調整助成金の支給要件緩和を決めた。県内でも観光事業者らでつくる沖縄ツーリズム産業団体協議会が、玉城デニー知事を訪ね、経営支援や雇用対策助成の拡充などを要請したばかりだ。既に県には支援融資制度などに関する問い合わせが相次いでいる。県経済への影響を最小限に抑えるためにも、官民で危機意識を共有し、取れる対策の全てをスピード感をもって進めなければならない。同時に「安全宣言」後の戦略も、今から練っておく必要がある。
   ■    ■
 好調に推移してきた県経済だが、昨夏以降、日韓関係の悪化による韓国人旅行者の減少、観光の目玉でもある首里城火災、豚熱感染など、いくつもの試練に見舞われている。一番怖いのは「旅行は控えよう」という消費マインドの冷え込みという。情報をしっかりと伝え、風評被害の防止にも努めたい。沖縄ツーリズム産業団体協議会は、県民の県内旅行の促進も求めている。県経済の正念場だ。この難局に一丸となって立ち向かおう。

*5-2:https://www.agrinews.co.jp/p49066.html (日本農業新聞 2019年10月24日) 「病院再編リスト」 農村部に波紋 「実情分かってない」
 厚生労働省が医療費抑制のため、競合地域にある病院との再編・統合を促す必要があるとして病院を実名で公表したことに、農村部の住民から戸惑いの声が上がっている。診療実績が乏しいと判断した病院をリスト化したもので、強制力はないが「身近な病院がなくなってしまう」「地域の事情を考えていない」などと声が上がる。同省は再編・統合について本格的な議論を要請。来年9月までに結論を求める。
●実績ありき疑問 人口減少考慮を
 秋田県八郎潟町の湖東厚生病院は2010年、医師不足から存廃論議になったが、住民の署名運動で守った。「湖東病院を守る会」代表で、水稲30ヘクタールを栽培する同町の齊藤久治郎さん(72)は、近隣の3町村の代表らと協力して、3万件の署名を集めた。必死の訴えに同病院は新体制で再編し、在宅療養支援に力を入れ、14年に再スタートした。齊藤さんは「守り抜いたと思ったが、再編・統合の話が再度出て困惑している」と肩を落とす。救急は秋田市の病院と連携し、慢性疾患や在宅医療を主にして医師不足の課題をクリアした。JA秋田厚生連は「がんや救急医療のデータを抜き出して“診療実績が乏しい”というが、役割分担したから当たり前。地域実情を理解していない」と疑問を投げ掛ける。福島県は3カ所の厚生連病院の名が上がった。JA福島厚生連は「あまりに唐突。地方の高齢化、人口減少が一切考慮されていない。都会と同じ物差しで測っているのではないか」と憤る。
●国の狙いは医療費抑制
 医療費は団塊世代が75歳以上となる25年に急増する見込み。17年度の国民医療費は43兆710億円で、25年には56兆円にまで膨らむ見通しだ。そのため同省は医療費抑制に向け、各都道府県に対し、25年に必要なベッド数などを定めた地域医療構想を策定させ、見直しを求めていた。だが、各地で議論は膠着(こうちゃく)しており、同省は全国の1455の公的な医療機関を調べ、診療実績が乏しいなどを理由に424機関の実名を公表。統合再編に向けた議論の活性化を呼び掛けた。だが、突然の実名公表に現場からは不満の声が続出している。リストには農村地域の医療機関が多く含まれる。患者の高齢化が進む。公共バスの廃止などで通院に悩む人も多い。実態を考慮せずに医療費削減と病床数だけでの線引きには疑問の声が上がる。地域医療の在り方を再検証する意味合いが強いが、地域での調整は難航が見込まれる。

<人材>
*6-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200219&ng=DGKKZO55800690Z10C20A2MM8000 (日経新聞 2020.2.19) 革新攻防(上) 米中2強、資金力突出 日本、技術競争退場の危機
 米国と中国が激しく覇権を争う先端技術の開発で、日本の存在感の低下に歯止めがかからない。世界のテクノロジーの潮流から脱落する危機が迫る。
●量子研究で後れ
 政府が1月に決定した「量子技術イノベーション戦略」。世界に後れる現状に危機感を示すとともに、異例の反省が盛り込まれた。「政府全体として必ずしも整合性ある取組が行われてこなかった」。次世代の高速計算機、量子コンピューターなどの量子技術は米中が開発にしのぎを削る主戦場だが、日本は戦う体制すら整っていなかった。全米科学財団によると、民間を含む研究開発費の世界首位は米国で5490億ドル(約60兆円、2017年時点)。中国も4960億ドルに達する。日本は1709億ドルで米中の3分の1だ。もはや資金力の差は埋めようがない。科学技術立国の幻想にとらわれ、あらゆる研究を望み続けたらいずれの成果も取り損ねる。量子技術の開発は関係省庁のそれぞれの都合で進められ、後手に回った。量子コンピューターも研究初期はNECが先行したが、国をあげて技術を開花させる発想はなかった。その間、米グーグルはカリフォルニア大学のグループの技術に着目。傘下に迎えて19年に最先端のスーパーコンピューターを上回る性能を実証し、世界を驚かせた。
●司令塔見当たらず
 米中が技術覇権を争い、かつてない速さで研究開発が進むいま、有望な技術をいち早く見いだせるかは死活問題。日本の将来につながる技術の支援を優先し、旧弊やしがらみを断って実行に移す覚悟が必要だ。批判もあるが中国はトップダウンで研究を進め、米国にも強い指導力でイノベーションを創出する国防高等研究計画局(DARPA)のような組織がある。日本には技術を見極める目や投資の決断力を持つ司令塔が見当たらない。日本発のiPS細胞の研究支援も中途半端。基礎から応用までを見渡す米国などに見劣りする。量子技術や人工知能(AI)への投資も不十分になる恐れがある。最先端のテクノロジーは将来の産業競争力や安全保障を左右する。中国は16年に打ち上げた人工衛星「墨子号」を使った量子暗号の実験などで先行。衛星を使えば、世界規模で通信の機密を守る究極の盾が手に入る。研究を率いてきた潘建偉氏は中国で「量子の父」と呼ばれ、習近平(シー・ジンピン)国家主席も高い期待を寄せるとされる。量子暗号は量子コンピューターが既存の暗号を破ると危惧される20年先も通信や金融取引の安全を守る。米調査会社クラリベイト・アナリティクスによると14~18年の量子暗号の研究論文数で中国は世界首位。東芝が最高速の暗号化技術をもつなど日本の研究水準も高いが、このままでは中国の独走を許しかねない。米国も「量子科学における中国の躍進は軍事的、戦略的バランスに影響を与えうる」(新米国安全保障研究所)と警戒する。日米は19年末に量子技術で協力する声明を発表した。24年までに宇宙飛行士を月に送る計画でも米国は日本に連携を迫る。日本は応じる方針だが、米国との連携にかけるなら、その中で存在感を高める戦略が問われる。

*6-2:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO54013110S0A100C2SHF000/?n_cid=SPTMG002 (日経新聞社説 2020/1/4) 若い博士が広く活躍できる社会に、次代拓く人材を(中)
 日本の社会は若い博士たちに冷たい。高等教育を極めた高度人材の卵に、大学も企業も十分な活躍の場を与えていない。グローバル化に対応しながら明日を切り開くイノベーションの創出を目指すなら、博士をうまく生かす社会に転じなければならない。
●給付型奨学金を広げよ
 日本で毎年新たに博士になる人の数が減少している。100万人あたりの博士号取得者数が米国やドイツ、英国、韓国に比べて半分以下で、さらにこの10年で1割以上も減った(2016年度)。先進国ではあまりみられない、由々しき事態だ。1990年代、政府は科学技術創造立国を目指し、若手の博士研究者を増やす政策をとった。しかし、大学にも企業にも見合った数のポストを用意しなかった。定職につけない高学歴な博士はポスドクと呼ばれ、「漂流する頭脳」として社会問題にもなった。科技政策の失敗といえる。若者にとって博士は将来への不安を抱える「不安定な身分」の代名詞に変質した。優秀でも修士のまま卒業する方が就職に有利と、博士を目指す人も減る。選考のハードルを下げて博士課程の定員を死守する大学院も少なくない。海外は知的集約型社会に向き合うため、国も企業も優れた博士の獲得を競う。日本の博士冷遇は世界の潮流に逆らっている。早急に「負の連鎖」を断ち切らなければならない。まず取り組むべきは、博士の育成環境を改善することだ。欧米や中国では優秀な博士課程の学生を一人前の研究者として扱う。学費は事実上免除し給与も払う。日本の場合、年間50万円超の学費が重くのしかかる。奨学金でまかなっても将来、返せる当てはない。生活費もアルバイトで稼がなければならない。金銭面で博士を敬遠する修士も多い。手始めに給付型奨学金を拡充してみてはどうだろう。2011年に開設した沖縄科学技術大学院大学は、学費を含め年間約300万円を支援金として学生に給付し、学業や研究に専念させる。同大学院大は19年、質の高い論文に関するランキングで世界トップ10に入った。若手の活躍が結果を生む証しとなった。大学の研究室の「構造改革」も急務だ。博士の多くは大学での研究職を希望する。しかし、教授を頂点にしたピラミッド構造が残っており、ポスドクや博士課程の学生は雑務が多く研究もままならない。こうした「ブラック研究室」は時代遅れでしかない。若手人材の正規ポストを確保するには、シニア世代の研究者が流動化する仕組みも要る。国立大学では定年延長に伴って50歳代、60歳代が増えた。これでは教授、准教授といったポストがなかなかあかない。大学力を磨くのに新陳代謝は欠かせないが、柔軟な発想を持つ若手研究者だけが任期付きで割をくうのはおかしい。博士が活躍できる場は大学や研究機関とは限らない。海外では企業の研究者やベンチャー経営者、投資家、官僚など実に多彩だ。
●知識でなく疑う力磨け
 日本製鉄には新卒採用とは別に博士課程の学生やポスドクに特化した制度がある。年俸制で3年間雇い、研究のプロとして働いてもらう。その後は本人と相談の上、正社員として採用する。出会いを作るユニークな取り組みだ。産学が協力し、半年、1年といった長期のインターンシップ(就業体験)を導入、博士と企業とが相互に理解を深める機会こそ有意義ではないだろうか。博士が在籍する企業はそうでない企業より製品やサービスでイノベーションを起こす確率が高いとの調査結果もある。中小、中堅企業での効果が顕著だという。大学も博士の質は担保してほしい。なり手が減っているからといって、適性や能力を見極めずに量の確保に走るのでは本末転倒だ。どんな情報もネットで手に入るデジタル社会では、単なる知識よりも疑う力や解決する力が高度人材には求められる。これまでの日本の高等教育は学問が細分化された結果、視野の狭い専門家が育つ傾向が強かった。2つ以上の専門領域を習得する「ダブルメジャー」を目指す仕組みがあってもいい。社会が求める博士像を追求し、育んでいくことが大切だ。

*6-3:http://tingin.jp/opinion3.html (北見式賃金研究所 北見昌朗 平成30年8月) “働かない改革”は“ゆとり教育”の二の舞になる! 中国に負けて、日本は二流国に転落へ
●働き方改革は選挙の美辞麗句
 安倍首相は、働き方改革を主要政策に掲げる。「生産性を向上して、ベースアップを実現して暮らしの向上を図る」と語る。だが、北見昌朗はそもそも生産性がなぜ急に上がるのか理解できない。これまで遊んでいたわけではないのに、なぜ、どうして生産性が上がるのか? そんなの選挙用の美辞麗句であり、根拠がないプロパガンダだと言わざるを得ない。
●ゆとり教育は土曜日に働かない人を産み出した
 働き方改革と二重写しになってしまうのは、ゆとり教育だ。政府は学習時間と内容を減らしてゆとりある学校を目指し、2002年4月6日から公立小中学校及び高等学校の多くで毎週土曜日が休みになり完全な週5日制となった。ゆとり教育はデメリットが取りざたされることが多いが、代表的なものが「学力低下」だ。それまで相対評価と言われていた通知表の評価を個人ごとに見る「絶対評価」に変えた。また「競争社会」をやめようと、運動会の徒競走は全員1位、学芸会では全員主役になるといった内容も物議を呼んだ。だが、「順位を付けない」という考えは現実社会とはかけ離れており、社会に出てから挫折する子供が増えてしまった。この“ゆとり教育”の悪影響は大きかった。土曜日に授業が休みだったために、社会に出ても土曜日の勤務を嫌がる若者にしてしまった。
●「仕事が終わるまでやる」のは日本人の美徳
 新労働基準法では、残業が厳しく制限される。一定時間を過ぎてしまうと、企業側が違法になってしまうので、帰らせるほかなくなってしまう。目の前にドッサリと仕事が残っていても、サッサと帰るのである。それによる顧客離れは当然予想される。そもそも日本人は昔から仕事をやりきってから帰った。みなで一緒に汗を流して、やり切ってきた。「勤労は美徳だ」という勤労観は、わずかながら残っていたと思うが、それにトドメを刺すのが今回の労働基準法改正である。これでは米国人や中国人に負けてしまう。
●ダブルワーカーが増える
 残業削減は、従業員にとっても厳しい問題だ。残業代が減った分だけ年収が減ってしまうだろう。大手企業ならば、ベースアップという形で利潤を従業員に還元できるかもしれないが、中小企業には元々そんな余裕はない。会社側は、副業を禁止している就業規則を見直し、アルバイトを黙認する方向になるだろう。残業代減を補うため、従業員は終業後にアルバイトに精を出すようになる。夜遅くまで働いたら、それこそ身体を痛めそうだ。
●「手に職」が付かなくなり技能伝承がなくなる
 厳しい残業規制により、成り立たなくなる仕事がある。長い修業が必要な職人仕事だ。例えば「宮大工」という仕事がある。社寺の建築や修復を行う仕事だが、それには長い下積み時代が必要である。カンナがけは、今なら機械で一瞬でできるが、それでは腕が身に付かないので、あくまでも人間が行う必要がある。このような職人芸は、たくさんある。和食職人、和菓子職人、陶器職人、木工職人など枚挙に暇がない。それらが消滅しかねないのだ。
●このままでは経営者の多くが労基法違反の“犯罪者”になる
 北見昌朗は顧客からこう言われるようになってきた。「これだけ残業規制が厳しくなるともうやっていけない。モノ造りを止めろというのと一緒だ」。このように言われると、北見昌朗は返す言葉もない。社会保険労務士として労働基準法の遵守を求めるのが仕事だ。だが、現実には困難なことを知っている。このグラフを見てほしい。「愛知県 中小 製造業 男性社員 残業時間数」だ。縦軸は残業時間数で、横軸は年齢である。縦軸に赤ラインが引いてあるのが30時間で、36協定の遵守ラインだ。これを超過すると違法になりかねないが、超過しているのは52.9%いる。従業員に違法残業をさせると、経営者は労働基準法違反ということで犯罪者になってしまう。中小企業の経営者は、勤勉に働いて日本社会に貢献してきた。今の日本社会で、一番猛烈に働いてきたのは、社長さんたちだ。何の保護もなし、保障もなしで身を粉にして働いてきた方々だ。社長が経営の自信を喪失してしまうと、誰も継がなくなり、いよいよ後継者難で、中小企業が消滅してしまうだろう。
●「日本人は働き過ぎ」は過去の話
 そもそも、日本人が働き過ぎだったのは、前の世代のことだ。戦後の日本を復興した方々のことだ。北見昌朗は午後5時過ぎに名古屋駅から電車に乗ると、思わず車内を見渡してしまう。ネクタイを締めた中高年男性がいっぱい乗っているのだ。おそらく17時に会社を出て、18時までに帰宅するのであろう。働き盛りの男が、そんなに早く帰って、いったいどうするのか? と言いたくなる。公庁や大手企業では、年間休日120日が一般的になっているが、年休20日を取得したら、1年間の4割も休むことになる。こんなことで、日本はやっていけるのだろうか? 資源もないのに。日本人は、もっと働くべきだ。次の世代のためにも、もっと、もっと働こう!

<新型肺炎の治療、病院船など>
PS(2020年2月24日追加):*7-1のように、政府は専門家会議を開いて重症化リスクの高い新型肺炎患者の治療を優先するための基本方針の作成を進めているそうだが、拡大ペースを遅らせ、重症化させないためには早期発見・早期治療が必要であるのに、「風邪の症状や37.5度以上の発熱が4日以上続く場合や強いだるさ(倦怠感)や息苦しさ(呼吸困難)がある場合は、最寄りの保健所などに設置される『帰国者・接触者相談センター』に問い合わせる」という現在の指針では誰でも重症化する。そのため、本当に治療する気があるのなら、インフルエンザと同様、かかりつけ医を受診すれば必要な検査や薬は保険適用できるようにするのがBestだ。
 また、*7-2のように、1~2隻くらいは大型の病院船を持っておくのがよいと思われ、これなら感染症の封じ込めだけでなく、国内外の災害時に派遣して海上から被災地に医療提供することが可能だ。この場合、病院船の所属や運行責任は、日赤か防衛省になるだろう。さらに、離島の多い自治体が小型の病院船を保有していれば、*7-3の「平時の利用法」として、医師のいない離島を1週間に1度は廻って、健診・診療・薬の処方・リハビリなどを行うことができ、この場合の病院船の所属や運行責任は、民間病院か地方自治体になると思われる。

 
 2020.2.24琉球新報                 病院船

*7-1:https://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2020022401001191.html (東京新聞 2020年2月24日) 新型肺炎、重症化防止へ基本方針 専門家会議で作成、急増に備え
 国内での新型コロナウイルスによる肺炎(COVID19)の拡大を受け、政府は24日、専門家会議を開き重症化のリスクが高い新型肺炎の患者の治療を優先するための基本方針の作成を進めた。25日にも開く政府の対策本部で決定する。基本方針は、患者が国内で大幅に増える事態に備えるのが目的。会議では、重症化しやすい高齢者や持病がある人の治療を優先するとともに、拡大のペースを遅らせることを目指した対策を議論する。これまでに策定した新型インフルエンザ対策の基本方針を一部参考にするとみられる。

*7-2:https://www.nishinippon.co.jp/item/n/586613/ (西日本新聞 2020/2/24) 病院船で新型肺炎封じ込めへ 超党派議連27日に発足
 新型コロナウイルスによる肺炎(COVID19)が拡大する中、大規模災害時や感染症の流行危機事態に医師や医療設備を乗せて治療に当たる「病院船」構想に注目が集まり始めた。閣僚から活用に前向きな発言も飛び出し、27日には超党派の国会議員らでつくる病院船の新議員連盟も発足する。国に導入を働き掛けてきた関係者は、機運をさらに高めたい意向だ。「配備の在り方を加速的に検討していく必要がある」。12日の衆院予算委員会で、新型肺炎に絡み病院船への見解を問われた加藤勝信厚生労働相は、こう明言した。河野太郎防衛相も14日の記者会見で、導入に向けた検討に意欲を見せた。患者を隔離して専門治療を集中的に施し、感染症を封じ込める機能が期待される病院船のニーズを、関係閣僚が相次いで認めた形だ。病院船構想が生まれたのは、1995年の阪神大震災がきっかけ。米国などの実例を参考に、陸上交通が寸断されるような災害時に、海上から被災地に医療を提供するシステムを探る議論が起こった。2011年の東日本大震災後には一時、内閣府も「災害時多目的船」の導入を模索した。だが、建造や維持管理に巨額のコストがかかることや、法改正を伴うことから見送られた経緯がある。その後、14年には自民、公明両党による「海洋国日本の災害医療の未来を考える議員連盟」(会長・額賀福志郎元財務相)が設立され、19年3月、病院船の活用を国に促す法案の骨子をまとめた。議員立法として早期成立を目指すため、今月27日には新たに野党を加えた7党による「災害医療船舶利活用推進議員連盟」を立ち上げる。関係者によると、新議連は条文化の作業を進め、今国会に法案を提出したい考え。災害時医療などに船舶を組み込むことを国に義務付け、法施行の1年後をめどに必要な個別法の追加整備を求める内容という。自民中堅は「耳目が集まっている今、議論をしっかり積み上げたい」と話す。

*7-3:https://www.nishinippon.co.jp/item/n/586614/ (西日本新聞 2020/2/24) 病院船導入 災害時有効な医療アプローチ 元九州大特任教授に聞く
 「病院船」導入に向けた活動に長年取り組み、議員連盟の設立にも携わる元九州大特任教授で公益社団法人モバイル・ホスピタル・インターナショナルの砂田向壱理事長=福岡市=に、今後の見通しや課題を聞いた。
-なぜ導入を急ぐのか。
 「災害大国の日本で、陸上の交通手段が遮断されたときに、海からの医療アプローチは軽視できない。東日本大震災の津波被害を考えれば、その利点はイメージしやすい。病院船は、南海トラフ巨大地震や首都直下地震の発生前に整備しておかないと手遅れになる。船は医療施設だけでなく、避難所機能としても有効だ」
-災害が発生していない平常時の利用法がネックになっていると聞く。
 「平常時も、全国一律の医療サービスが提供できるよう市町村のスキルアップに用いることができるし、沿岸部の巡視船という役割も担える。国民の財産としての使い道は幅広い」
-巨額の建造費に国民の理解は得られるか。
 「中古の船を買い取り、内部を改造して最新鋭の医療機器を備えれば、コストは抑えられる。国民のニーズによって船の規模や隻数は決まる。必ずしも大きければ良いというものでもない」
-理想的な災害時の医療体制とは。
 「現在の復興庁を『災害庁』のような組織に改編し、研究や装備開発、訓練を一元的に管轄できるようにしたい。全国に技術支援できる仕組みも必要だ。新しい議連では、民間のノウハウや知恵を積極的に活用していく。国民の合意を得るために奔走したい」

<日本政府がPCR検査を渋る理由は何か?>
PS(2020年2月26、29日追加): 2月5~19日の期間は船内で隔離しなければならなかったダイアモンドプリンセス号内は、*8-1のように、“検疫”として船内の感染管理・健康管理に不備があったため、COVID-19の船内感染を起こしてしまった。にもかかわらず、下船基準は検疫期間中には感染がなかったものとして扱い、クルーズ船で旅するほど元気だった人を死亡させて「高齢者だから仕方がない」としている点が不誠実である。本来は、2月5~19日の期間に同乗した家族が同室だったとしても、それ以外は船内の隔離と健康管理を徹底しなければならなかったのだ。また、クルーズ船の乗客には退職後の比較的ゆとりある高齢者が多いため、乗客の中には社会的地位の高かった人も多かった(元医師を含む)だろう。そのため、ダイアモンドプリンセス号のスタッフは、隔離を開始した時に全員のPCR検査を行ってその後の清潔を徹底すべきだったし、これらがいい加減であれば、各国で(批判のための批判ではない)科学的な批判が出る。
 なお、*8-2・*8-3のように、インド・デリー大学とインド理工学院に所属する研究者たちがまとめた「新型コロナウイルスはSARSウイルスとエイズウイルスを武漢ウイルス研究所が人工的に合成したものでは」とする論文があり、この研究者たちは「このウイルスが自然発生することは考えられない」としている。また、ハーバード大学公衆衛生学教授のエリック・ファイグルーディン博士は自身のツイッターで「武漢市の海鮮市場はウイルスの発生源ではない」と発信されたそうだ。「生物兵器」であれば、SARSウイルスのように若い兵隊に打撃を与えるウイルスの方が合目的的だが、年金や社会保障を要する基礎疾患のある高齢者に打撃を与えて大騒ぎになる新型コロナウイルスなら厚労省や財務省に都合がよさそうだ。そのため、今後は広くPCR検査して完治させるとともに、どこで感染拡大するかを見極めるべきである。
 世界保健機関(WHO)は2月28日、*8-4のように、COVID19の地域別の危険性評価を、世界全体を「非常に高い」に引き上げ、WHOで緊急事態対応を統括するライアン氏が各国に感染拡大防止態勢の強化を訴えられた。日本では、2月27日、安倍首相が新型コロナウイルス感染対策として全国の小中学校や高校などに臨時休校を要請する方針を表明し、これについてはさまざまな意見があるものの、*8-5のように、65%(60代:75・1%、10代:73・6%、70代以上:70・1%)の人が賛成だそうだ。一方、子育て世代の多い年齢層で反対が比較的多いが、佐賀県では、*8-6のように、学童保育の受け入れ先が春休みや夏休みと同じ体制で受け入れるようで、学童保育の整備が何とか進んでいたのはよかった。ただ、*8-7のように、PCR検査システムの問題による検査難民が出ているので、検査を早急に保険適用にし、医師の指示があれば検査できるようにすべきだ。

   
  2020.2.7東京新聞  2020.1.31朝日新聞  2020.2.20中日新聞 2020.2.20朝日新聞

(図の説明:1番左の図のように、新型コロナウイルスの感染力はインフルエンザと比較して著しく高くはないが、スーパースプレッダーもいた。その結果、左から2番目の図のように、中国の感染者は1月中に等比級数的に増え、現在は他国でも広がり始めている。日本では、右から2番目の図のように、武漢からチャーター便で帰国した人の中には死亡者はいないが、“検疫”としてクルーズ船に閉じ込められた人の中からは死亡者が出ている。その死亡者は、1番右の図のように、80代ではあるが、元々はクルーズ船で旅行できるほど元気だった人なのだ)

*8-1:https://www.niid.go.jp/niid/ja/diseases/ka/corona-virus/2019-ncov/2484-idsc/9422-covid-dp-2.html (国立感染症研究所 2020年2月26日更新) 現場からの概況:ダイアモンドプリンセス号におけるCOVID-19症例
●背景
 背景情報は2月19日掲載の「現場からの概況:ダイアモンドプリンセス号におけるCOVID-19症例」(以下、「現場からの概況2月19日掲載版」)を参照されたい。(https://www.niid.go.jp/niid/ja/diseases/ka/corona-virus/2019-ncov/2484-idsc/9410-covid-dp-01.html)
●検疫の状況
 2月5日-19日の間、クルーズ船ダイアモンドプリンセス号(以下クルーズ船)に対し検疫が実施された。検疫期間中、陽性者の「濃厚接触者」等追加的なリスクがあった者については検疫期間が延長された旨、乗客に通知している。
●下船手順
 下船基準は次の3つの項目、1)陽性者と部屋を共有していない14日間の検疫期間が完了していること、2)検疫期間最終日までに採取した検体がPCR検査でSARS-CoV-2陰性であること、3)検疫期間の最終日の健康診断で異常が確認されないこと、を全て満たす者である。2月20日時点で1600人以上が既に下船している。検査は当初高リスクの乗客から実施されたが、2月11日からは全ての乗客が検査対象に拡大実施された。検査は80歳以上の乗客から実施され、75歳以上、70歳以上、70歳未満と順次実施拡大された。全乗客の検査実施後、検査対象が全乗員へ拡大された。COVID-19に関し国際的なガイドラインではPCR検査の実施を考慮した検疫は求められていないが、日本政府はより確実性を高めるためにPCR検査を実施した。
●データ収集
 「現場からの概況2月19日掲載版」 (https://www.niid.go.jp/niid/ja/diseases/ka/corona-virus/2019-ncov/2484-idsc/9410-covid-dp-01.html)に記載されているデータ収集方法に加え、船内の常設診療所からの後方視的な情報収集が開始された。
●暫定的な結果
 2月20日の時点で、82名の乗員と537名の乗客を含む、619名が陽性者であった(2月5日時点の乗船者の16.7%)。合計3,011検体が検査され、重複の者も含め延べ621検体が陽性(20.6%)であった。乗客のうち70歳から89歳が最も感染していた(表1)。発症日の情報が確認できたCOVID-19症例(n = 197)のうち、終日検疫が実施された最初の日である2月6日より前に発症した人が34名(17.3%)、2月6日以降に発症した人が163名(82.7%)であった(図1)。197例のうち163例(乗員48名、乗客115名)は検疫期間中に判明し、定員が2名以上の各客室で最初の陽性者であった者は52名(最小)から92名(最大)の範囲であった(この範囲には、無症候性症例及び発症日が不明の有症状症例が含まれる)。そのうち3名(最小)から7名(最大)が2月6日から開始された検疫期間の7日目以降に報告された者である(表2)。各客室別の乗客人数が増加するに従いCOVID-19陽性者の割合も増加している(図2)。陽性者のうち318名(51%、乗員10名、乗客308名)は、検体が採取された時点では無症状であった。
●暫定的な結論
 現在入手可能な疫学情報に基づいて評価すると、2月3日にクルーズ船が横浜に入港する前にCOVID-19の実質的な伝播が起こっていたことが分かる。発症日が報告されている陽性者数の減少は、アウトブレイクの自然経過、検疫の実施、またはその他の未知の要因によって説明が可能と思われる。各客室の乗客人数別確定症例の割合と、陽性者と客室を共有した確定例の数に基づいて検討すると、客室内の乗客は共通の曝露があったか、客室内でウイルスが伝播した可能性がある。 船の性質上、乗船しているすべての人を個別に隔離することはできず、客室の共有が必要であった。また、乗客が乗船している間、一部の乗員はクルーズ船の機能やサービスを維持するため任務を継続する必要があった。 遅れ報告を考慮した結果、発症日がわかっている陽性者数のピークは2月7日であった。 最近陽性者の報告数が多くなっていることは、検査対象者の拡大によって説明できるが、そのほとんどは無症候性症例である。クルーズ船の乗員乗客で報告された無症候性症例の割合は、他の場所で報告されているものよりもかなり高い。 この主な要因は、2月11日から体系的な検査が実施されその数が日々増加したことが一因と考えられる。一部の症例は、客室内での二次感染例であった可能性はあるが、検疫が始まる前に感染した可能性も否定できず、実際にいつ感染したか、判断は難しい。しかし、これらの無症候性症例は下船後入院し、同室者は濃厚接触者として最終接触日から新たに14日間の隔離期間を開始している。無症候性症例が下船前に判明したことを考えると、この体系立てた検体採取には意義があったと考えられる。現時点では、無症候性症例からの感染伝播に関する知見は国際的にも乏しい。そのため、船内の無症候性症例に関する継続的な調査により得られる情報は、世界的なCOVID-19アウトブレイクにおいて重要である。 (無症候性症例の下船後の発症状況に関する情報が収集されている)。クルーズ船において判明した症例は、感染症発生動向調査(NESID)に報告された情報も含め、臨床症状、重症度、および無症候性症例の評価のためついてさらなる調査が継続して行われている。 この情報は、このクルーズ船事例とCOVID-19の世界的な状況の理解に重要である。
●暫定的対応とガイダンス
 下船者のほとんどが14日間の検疫を確定患者と部屋を共有せず終了し、PCRの検査で陰性、健康チェックにより症状(発熱、咳、呼吸困難など)がない事を確認された。陽性確定例との接触がある者は、最終接触日から14日間が隔離期間となる。この該当者には隔離期間中の乗客に対する食事の配膳等の生活支援に貢献していた、乗員の大半が含まれる。1600人を超える乗客が下船し、今後の焦点は乗員の感染予防となる。下船者は、PCR検査陰性、下船時の健康チェック異常なし、および症状なく14日間の検疫期間を経過しているが、追加の予防措置として絶対に必要な場合を除き、14日間自宅にとどまるよう求められている。また、自分自身で健康チェックを実施し、症状を認めれば医療機関に連絡することになっている。追記:本稿のデータ収集にあたり、クルーズ船に乗船し、乗員乗客の健康管理のために多大な努力と貢献をされた医療チームや関係者、クルーズ船の機能維持に貢献されたダイアモンドプリンセス号のスタッフと本社のご協力に謝意を表します。

*8-2:https://www.msn.com/ja-jp/news/world/%E6%96%B0%・・・ (女性セブン 2020年3月5日号) 新型コロナウイルス 「研究所から流出」説の真偽を追う
 連日新型コロナウイルスの話題が後を絶たない。全世界での感染者は7万人を超え、死者は約2000人となった(2月19日現在)。当初、ウイルスは自然発生と報道されていたが、ここにきて、武漢にある研究所からの流出疑惑が持ち上がっている──。中国・武漢市に世界トップレベルのウイルス研究所「中国科学院武漢病毒(ウイルス)研究所」がある。この研究所が備える最新鋭の設備の1つが、BSL4(バイオセーフティーレベル4)実験室だ。実験室では、SARSやエボラ出血熱のような、感染力が強くて危険なウイルスのコントロールも可能で、洪水の被害が及ばない場所に設置され、マグニチュード7の揺れにも耐えうるという。しかしいま、この研究所から新型コロナウイルスが流出したのではないかという疑惑が持ち上がっている。1月末、インド・デリー大学とインド理工学院に所属する研究者たちがまとめた「新型コロナウイルスにエイズウイルスと不自然な類似点がある」とする論文が物議をかもした。さらにこの研究者たちは「このウイルスが自然発生することは考えられない」とした。この論文は大バッシングののちに撤回されたが、一部のネットユーザーの間で内容が拡散。「新型コロナウイルスはSARSウイルスとエイズウイルスを武漢ウイルス研究所が人工的に合成したものでは」という憶測も飛び交い、不安が高まったのだ。さらに1月28日、ハーバード大学公衆衛生学教授のエリック・ファイグルーディン博士は自身のツイッターで「武漢市の海鮮市場はウイルスの発生源ではない」と発信。たちまち世界中のメディアで取り上げられた。中国メディア『大紀元』は、2月6日、オンラインゲーム開発会社の会長が自身のSNSで「武漢の研究所が新型コロナウイルスの発生源」と発言したと報じている。この人物は、かつて中国の生物学者が動物実験で使った牛や豚を食肉業者などに転売していた事件があったことから、新型コロナウイルスに感染した動物が市場で売られたのではないかと疑っているという。現在、中国版Googleともいわれる検索サイト「百度」で「武漢病毒研究所」と検索すると、検索候補に「泄露(漏洩)」という文字が。疑惑は広まる一方のようだ。
◆何度も北京の実験室からSARSが流出
 中国では過去にも“ヒューマンエラー”が起きたことがある。2004年、北京にあるBSL3の要件を満たす実験室から、SARSウイルスが流出する事件が発生し、責任者が処罰されている。中国メディアの報道などによると、研究員がBSL3実験室からSARSウイルスを持ち出し、一般の実験室で研究をしたことで感染が広まった。感染した研究者の1人は、症状が出たあと自力で病院に移動。看護師に感染させ、鉄道で実家に向かったことが確認されている。さらに、この研究者を看病した母親が感染、死亡している。元産経新聞北京特派員の福島香織さんが言う。「この頃、研究所からのウイルス流出や実験動物のずさんな管理が何度か問題になっていました。例えば、動物実験ではウイルスを動物に感染させたりするのですが、実験が終わったらウイルスを不活化、つまり無害化させる処理をしなければいけない。ところが、処理が完璧ではない状態でゴミ箱に捨てたり、外に廃棄したりしたことからSARSウイルスの感染が拡大したと指摘されています」
◆武漢ではコウモリに宿るウイルスを研究
 冒頭の最新ウイルス研究施設は、新型コロナウイルスの発生源とされている華南海鮮市場から約30km離れた場所にある。「世界有数のウイルス研究所を擁するフランスの技術協力を得て完成しました。SARS事件があったのと同じ2004年頃から研究所を整備する計画が始まり、北京五輪やチベット問題などの紆余曲折があった末、2015年に竣工し、2018年から稼働しています」(福島さん)。今回疑惑を向けられている武漢ウイルス研究所のBSL4実験室の評価は高かった。中国メディア『財新』は、この実験室のチームが2017年に、複数のコウモリを起源とするSARS型コロナウイルスが変異したものがSARSウイルスであることを突き止めたと報じた。チームリーダーでBSL4実験室副主任の女性研究者は「コウモリ女傑」とも呼ばれ、コウモリの研究で政府から表彰されたこともあった。そのコウモリの実験で発生したウイルスが華南海鮮市場に流出した可能性はあるのだろうか。しかし、先の女性研究者は、SNSで一連の疑惑を真っ向から否定。「新型コロナウイルスと研究所は無関係であることを私は命をかけて保証する」という内容の投稿をした。中国メディア『財経』も、仮に実験室から流出したとしたら研究スタッフが真っ先に感染しているはずだが、そうではなかったと疑惑を打ち消す報道をしている。しかし今度は香港メディアが華南海鮮市場から300mほどの場所にある実験室「武漢疾病予防管理センター」からウイルスが流出したという内容の論文(のちに削除)の存在を報じるなど、依然ウイルスの出所には疑惑がつきまとう。発生源は華南海鮮市場ではないのだろうか。「医学誌『ランセット』に中国の医師たちが寄稿した分析によると、新型コロナウイルスの患者41人を調べたところ、発生源とされる華南海鮮市場に関係しているのは27人。さらに最も早い昨年12月1日に入院した初期患者4人のうち、3人が市場とは無関係でした」(福島さん)。中国事情に詳しいジャーナリストの富坂聰さんは「そもそも野生動物の市場取引は中国でも違法」と話す。「中国当局もSARSの経験を教訓に厳しく取り締まってきましたが、時間と共にそれが緩くなり、武漢では堂々とヤミ市場が開かれていました。違法だからこそ希少価値が出て、野生動物の値段が上がってしまう。中国に限ったことではありませんが、お金さえもらえればなんでもする人はたくさんいます。いまも違法な野生動物のヤミ市場は開かれているでしょう。武漢ではないところでウイルスが出てもおかしくない状況でした」
◆いまも中国のどこかで新型コロナウイルスの研究が
 新型コロナウイルスは猛威を振るい続けている。「香港大学医学院は1月27日に、新型コロナウイルスの感染者は約1週間ごとに倍増しており、4~5月頃にピークを迎え、夏頃までに減退していくと発表しました」(福島さん)。ただ、ひと段落着いたとしても安心はできない。7月24日から東京五輪が始まり、今年だけで世界中から3600万人もの人が訪日すると予想されている。一旦収束したように見えても群衆の中で知らぬ間に感染し、それをまた本国に持ち帰る人がいてもおかしくない。本当のパンデミックは夏以降にやってくるかもしれないのだ。昭和大学医学部内科学講座臨床感染症学部門主任教授の二木芳人さんが言う。「ウイルスは宿主に感染を繰り返すことによって更に変化が生じます。インフルエンザウイルスのように変異し、またタイプの異なるコロナウイルスが大流行を引き起こす恐れもあります」。今回、武漢の研究所から流出したわけではなかったとしても、今後流出が起こらないとは限らない。ある感染症の専門医は言う。「SARSウイルスと同様、新型コロナウイルスも再発防止のため、すでにどこかの研究所に保管され、研究が進められているはず。人の手がかかわる以上、ヒューマンエラー発生のリスクは伴います」。発生源の根源にあるのは、“人の愚かさ”か。

*8-3:https://news.yahoo.co.jp/byline/kazuhirotaira/20200225-00164456/ (Yahoo 2020.2.25)新型コロナウイルス:「生物兵器」の陰謀論、政治家やメディアが振りまく
 新型コロナウイルスの感染源をめぐり、これが「生物兵器」だとする陰謀論の拡散が続く。ネットを舞台とした拡散に加えて、メディアや政治家などが、それを後押ししていることも大きい。そして拡散の背景として、中国政府の情報開示への不信感もつきまとう。だがこのような陰謀論の氾濫は、結果として人種差別を呼び起こしたり、感染拡大を悪化させてしまう危険性も指摘される。19日には公衆衛生や感染学の専門家である著名な科学者ら27人が、この陰謀論を否定する共同声明を英医学誌「ランセット」に発表。陰謀論の拡散を批判している。リアルの感染拡大と陰謀論の拡散。その二つを結びつけるのは、なお正体が明らかにならない新型ウイルスへの不安感だ。
●上院議員と「生物兵器」
 新型コロナウイルスと「生物兵器」を結びつける陰謀論は、米国のテレビ4大ネットワークの一つ、FOXでも取り上げられている。共和党の上院議員、トム・コットン氏はFOXニュースに16日夜に出演し、新型コロナウイルスについて、中国・武漢のウイルス研究所からの「流出疑惑」を主張した。コットン氏は、新型コロナウイルスの感染源として、ツイッターなどで武漢の「ウイルス研究所」を名指ししてきた。現在、世界保健機関(WHO)が新型コロナウイルスの感染源としているのは、武漢市江漢区にあり、野生動物なども取引されてきた武漢華南海鮮卸売市場だ。コットン氏はFOXニュースの中で、感染源は海鮮市場ではない、と述べる。そして海鮮市場から数マイルの場所に「バイオセーフティレベル4の感染症の特別研究所がある」としている。コットン氏が名指ししているのは、長江を挟んだ対岸、12キロ(7.5マイル)ほど南東にある武漢市武昌区の中国科学院武漢ウイルス研究所の施設「武漢国家生物安全実験室」だ。「武漢国家生物安全実験室」は危険度の高い病原体を扱うことができる安全対策が施された「バイオセーフティレベル4(BSL-4)」の研究所。日本では国立感染症研究所村山庁舎(東京都武蔵村山市)がBSL-4施設だ。コットン氏は、断定はしないものの、新型コロナウイルスと「武漢国家生物安全実験室」について、こう発言している。この感染症の感染源がここ(ウイルス研究所)だという証拠はない。ただ中国はこの問題発覚当初から、二枚舌とうそばかりだ。我々は少なくとも証拠をもとに問いただしていく必要がある。だが中国は、そのための証拠すら一切明らかにしようとはしていない。
●メディアが火をつける
 新型コロナウイルスを「武漢国家生物安全実験室」や「生物兵器」と結び付ける陰謀論は、すでに様々な専門家から繰り返し否定されてきている。だが、これに火がつくきっかけの一つが、メディアだった。英大衆紙のデイリーメールは新型コロナウイルスによって武漢市の「封鎖」が始まった1月23日、「武漢国家生物安全実験室」のことを取り上げている。記事の中で同紙は、同研究所が2018年に中国初のBSL-4施設として稼働する前、病原体の「流出」を懸念する声が米科学者らから上がった、などと指摘。また、地図付きで海鮮市場と実験室の位置関係も掲載している。さらに、中国では2004年に北京の研究所でSARSウイルスが「流出」した経緯がある、などとしていた。デイリーメールの記事には、いくつかの事実がある。一つは2017年2月の科学誌「ネイチャー」の記事で、「武漢国家生物安全実験室」の安全性に米専門家らが懸念を表明していた点だ。さらに、2004年に北京でSARSの集団発生が起きた際には、北京の国立ウイルス学研究所で、BSL-3の実験室のSARSコロナウイルスを、一般の実験室に持ち出して実験に使ったことが感染源となったことも、公表されている事実だ。ただ、今回の新型コロナウイルスの感染と「武漢国家生物安全実験室」を結びつけるデータは、これまで明らかになっていない。また上述の「ネイチャー」の記事には、2020年1月付で「編集者追記」が掲載され、新型ウイルスと「実験室」を結びつける証拠はなく、新型ウイルスの感染源は市場と見られている、と述べられている。
●陰謀論、拡散と否定
 米保守紙のワシントン・タイムズは2019年1月26日、イスラエルの軍事専門家のコメントとして、新型コロナウイルスの感染源が「武漢ウイルス研究所」の可能性があり、同研究所が関わる「生物兵器計画」とつながっている、などと報じている。この記事を、トランプ政権の元首席戦略官兼大統領上級顧問で、右派サイト「ブライトバート・ニュース」の会長だったスティーブン・バノン氏が、自身のポッドキャストで拡散しているという。さらに1月31日、インドの研究グループが、新型コロナウイルスに、HIVウイルスとの「異様な類似点がある」などとする論文を公開。ウイルスへの「人為的操作」の憶測が拡散する。だが、調査手法や結論に関する専門家らからの批判を受け、論文は2日後に撤回されている。刺激的な情報は広く拡散する。ネット調査会社「バズスモー」のデータによれば、デイリーメールの最初の記事はフェイスブックで20万回以上共有され、ワシントン・タイムズの記事もやはりフェイスブックで16万回以上共有されている。撤回されたインドの研究チームの論文も、フェイスブックでは2万回以上共有された。中国の崔天凱・駐米大使は2月9日、米CBSの報道番組「フェイス・ザ・ネイション」に出演し、新型コロナウイルスと武漢の研究所を結びつけることを批判し、こう述べている。憶測やうわさを扇動し、人々に拡散させるのは極めて有害で、危険なことだ。それらはパニックを引き起こしてしまう。そして、人種差別、外国人差別を煽ることになる。これらはウイルス対策への協力態勢を著しく損なうものだ。ただ混乱の背景には、中国の情報開示についての不信感も影を落とす。象徴的なのが武漢の眼科医、李文亮氏のケースだ。李氏は「原因不明」だった今回の新型コロナウイルスについて、2019年12月30日という早い段階でネット上で感染への注意喚起をし、警察の事情聴取を受けた。さらに李氏は、自らも感染し、2月7日に亡くなっている。FOXニュースに出演したコットン氏も、李氏のケースを取り上げ、中国政府の対応を批判した。
●27人の専門家が否定する
 新型コロナウイルスの感染源をめぐるこれらの陰謀論やデマの氾濫に対し、世界的に知られる公衆衛生の専門家27人は2月19日、英医学誌「ランセット」に共同声明を発表した。共同声明に名を連ねているのは、SARSの感染源とコウモリを結び付けた研究など知られる国際NPO「エコヘルス・アライアンス」代表のピーター・ダスザック氏、全米科学財団(NSF)長官などを歴任し、ジョンズ・ホプキンス大学公衆衛生大学院特別教授、沖縄科学技術大学院大学学園理事なども務めるリタ・コルウェル氏、英医学研究支援団体「ウェルカム・トラスト」代表で、2003年にベトナムでSARS患者の治療にあたったジェレミー・ファラー氏、元米国立感染症センター(NCID)所長で米エモリー大学大学院教授、ジェームズ・ヒューズ氏ら。声明は、各国の専門家による研究は、いずれも新型コロナウイルスが野生生物由来だと指摘。さらに、陰謀論の氾濫について、こう述べている。陰謀論は、ただ不安やうわさ、偏見をかき立て、今回のウイルスに対する世界的な協力の取り組みを危険にさらす。科学的エビデンスと、虚偽情報や憶測への団結した取り組みの推進。我々は、WHOのアダノム事務局長によるこの呼びかけを支持する。
●陰謀論の被害
 陰謀論やデマには、具体的な被害が伴う。今回の新型コロナウイルス感染拡大にともなって、中国人を中心としたアジア系に対する差別や排斥の動きが欧米などで広まっている。また、感染症に関するデマの拡散によって適切な対策が取られず、感染そのものの拡大に悪影響を及ぼす。そんなシミュレーション結果を英国立イーストアングリア大学教授で感染症を専門とするポール・ハンター氏らが発表している。ただ、従来のデマや陰謀論がそうであるように、新型コロナウイルスをめぐっても、情報戦の様相もある。感染源にまつわる陰謀論には、バリエーションがあり、その一つが、米国の陰謀である、とするものだ。フォーリン・ポリシーによれば、ロシアメディアでは、新型コロナウイルスが、米国の「生物兵器」、もしくは米国の製薬会社による策略、との陰謀論が流布している、という。不安の拡大には、それに乗じた様々な意図も入り込む。冷静さは常に必要だ。

*8-4:https://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2020022990135918.html(東京新聞 2020年2月29日)<新型コロナ>WHO「危険性最高」評価引き上げ 感染55カ国・地域に
 世界保健機関(WHO)は二十八日(日本時間二十九日未明)、新型コロナウイルスによる肺炎(COVID(コビッド)19)の地域別の危険性評価で、世界全体と日本を含む中国周辺地域を「高い」から、中国と同じ最高レベルの「非常に高い」に引き上げた。ウイルス感染が世界各地に拡大し、死者・感染者数の増加に歯止めがかからないことから、世界的に流行していると認定した形だ。中国を発端に韓国、イラン、イタリアなどで大規模感染が確認され、日本でも市中感染とみられる例が相次いでおり、終息の見通しが立たない現状に危機感を示し、各国に一層の警戒を呼び掛けた。事態は急速に変化しているが、WHOのテドロス事務局長は記者会見で、多くの国では大規模な市中感染は起きておらず「抑え込みは依然可能だ」と語った。WHOで緊急事態対応を統括するライアン氏は「危機が高まっている」と述べ、各国に感染拡大防止態勢の強化を訴えた。二十八日付のWHOの状況報告によると感染者は五十五カ国・地域の八万人以上に上った。中国では新規感染者が少なくなる傾向にあるが、感染は世界の五大陸(ユーラシア、アフリカ、北米、南米、オーストラリア)に波及。テドロス氏によると、イタリアに関連した感染者二十四人が十四カ国で、イランに関連した九十七人が十一カ国で確認された。中国以外の国からも感染者が「輸出」される事例が増え、世界的な危険性が高まったと認めざるを得なくなった。WHOはこれまで、世界各地の感染例は中国と比べると格段に数が少なく大半の感染経路も把握できているとしていた。WHOは一月三十日に国際保健規則に基づき、新型コロナウイルスの感染拡大が「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」に該当すると宣言。危険性評価は一月二十三日付のWHOの状況報告から掲載され(1)中国(2)中国周辺地域(3)世界全体-の区域で評価。これまで中国は「非常に高い」、世界全体と中国周辺地域は「高い」となっていた。

*8-5:https://www.nishinippon.co.jp/item/n/587674/ (西日本新聞 2020/2/27) 「臨時休校」65%が賛成 高齢者と10代割合高く あな特通信員アンケ
 新型コロナウイルス感染対策として全国の小中学校や高校などに臨時休校を要請する方針を安倍晋三首相が表明したことを受け、「あなたの特命取材班」は27日夜、無料通信アプリLINE(ライン)でつながる全国約1万1千人の通信員に緊急アンケートを実施した。2251人が回答、方針への「賛成」が約65%を占めた。年代別では、60代の賛成の割合が最も高い75・1%に上り、次いで10代(73・6%)、70代以上(70・1%)の順だった。「このくらいのことをしないと感染は広がるばかり」(福岡県・男性)、「初動指示が遅すぎた」(同県・男性)という声が上がった。子育て世代が多い年齢層では反対が比較的多く、30代では反対が最多の41・1%、次いで40代(36・5%)。「仕事を休めない。子どもだけ置いて行けない」(大分県・女性)のほか「急すぎる」、春休みまでという期間に「長すぎる」という声が目立った。男女別では男性の賛成が68・8%に対し、女性は62・5%。感染が確認された福岡、熊本両県ではそれぞれ64・7%、77・1%が賛成した。「子どもの面倒を誰が見ますか」という質問には、「誰もいない」という切実な声が一斉に寄せられた。小学校高学年や中学生の子どもについては、心配でも「子どもだけで留守番させる」(福岡県・女性)という人が多かった。子どもが低学年で、祖父母など頼れる人がいない場合は「夫婦交代で仕事を休むしかない」(同県・女性)との嘆きが漏れた。収入減少を懸念する声も多く「国が休業補償すべきだ」(鹿児島県・女性)、「どうしても面倒を見られない家庭のための緊急施設の整備が急務」(福岡県・男性)という意見があった。

*8-6:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/494188 (佐賀新聞 2020/2/27) 〈防ごう 新型コロナ〉学童の受け入れ先
※土日は休みの自治体もあります。
【佐賀市】受け入れ先=児童クラブで検討中▶日時=3日から、午前8時~午後6時半▶対象=利用申し込みをして決定が出ている児童▶問い合わせ=市子育て総務課、電話0952(40)7285
【唐津市】検討中。2日までに詳細を決め、保護者に通知する
【鳥栖市】受け入れ先=放課後児童クラブ▶日時=3~15日(日曜除く)、午前8時~午後6時▶対象=通年で登録している児童のみ▶問い合わせは市生涯学習課、電話0942(85)3694
【多久市】受け入れ先=各校のなかよしクラブ▶日時=3日から、正午~午後7時▶対象=本年度の利用申し込みをしている児童▶問い合わせ=市学校教育課、電話0952(75)2227。
【伊万里市】受け入れ先=各学校の留守家庭児童クラブ▶日時=3~14日、午前8時~午後7時▶対象=本年度の利用申し込みをしている児童▶問い合わせ=市教育総務課、電話0955(23)2125
【武雄市】受け入れ先=小学校の放課後児童クラブ▶日時=3日から、午前8時~午後7時▶対象=利用申し込みをしていない児童でも、保護者の事情によっては受け入れ可能▶問い合わせ=各児童クラブ、こどもみらい課、電話0954(23)9215
【鹿島市】受け入れ先=各校の児童クラブ▶日時=3日から、午前7時半~午後6時10分(延長は午後7時)、弁当を持参▶対象=市内の児童で子どもを見る人がいない家庭。新規利用は就労証明が必要で、市役所に申請する▶問い合わせ=市福祉課、電話0954(63)2119
【小城市】受け入れ先=各校の放課後児童クラブ▶日時=3日から、午前8時~午後7時までで検討中▶対象=本年度の利用申し込みをしている児童▶問い合わせ=市教育総務課、電話0952(37)6130
【嬉野市】受け入れ先=各校の放課後児童クラブ▶日時=3~15日、午前7時半から午後7時まで▶受付期間=3日~15日まで▶対象=通常の利用申し込みをしている児童、長期休暇時のみ申し込みをしている人▶問い合わせ=市子育て未来課、電話0954(66)9121、もしくは、市福祉課、電話0954(42)3306
【神埼市】検討中。2日までに詳細を決め、保護者に通知する▶問い合わせ=市社会教育課、電話0952(44)2731
【吉野ヶ里町】受け入れ先=各小学校の放課後児童クラブ▶日時=3~15日、午前7時半~午後6時(1時間延長可)▶対象=1、2月の平日に利用している児童のみ▶問い合わせ=町社会教育課、0952(37)0341
【基山町】受け入れ先=放課後児童クラブ▶日時=3日から、午前8時~午後7時▶対象=普段から利用している児童のうち1年生から3年生まで受け入れ予定▶問い合わせ=町こども課、電話0942(92)7968
【上峰町】受け入れ先=放課後児童クラブ▶日時=3日から、午前8時~午後7時▶対象=通常から利用している児童のうち1、2年生を受け入れ。学校で受け入れるなどの対応も検討中▶問い合わせ=町住民課、0952(52)7412
【みやき町】受け入れ先=放課後児童クラブ▶日時=3日から、午前7時半~午後7時▶対象=利用登録している児童。学校を開けることも含めて検討中▶問い合わせ=町こども未来課、0942(89)4097
【玄海町】受け入れ先=さくら児童館、みどり児童館▶日時=3日から、午前8時~午後6時▶対象=どうしても預ける必要がある場合のみ対応。申請のない児童生徒の対応も検討中▶問い合わせ=両児童館、町住民課こども・くらし係、電話0955(52)2158
【有田町】受け入れ先=放課後児童クラブ▶日時=3~14日、月~土曜の午前8時~午後6時(延長30分)、日曜は休み▶対象=既に登録をしている児童のみ▶問い合わせ=有田町子育て支援課、電話0955(25)9200
【大町町】検討中
【白石町】受け入れ先=各校の放課後児童クラブ▶日時=3~15日、午前7時40分~午後6時▶対象=利用申し込みしている人。申し込みしていない人の対応も検討している▶問い合わせ=町保健福祉課、電話0952(84)7116
【江北町】受け入れ先=各小中学校、江北小にある放課後児童クラブ、町子どもセンター「うるる」▶日時・対象=午前8時15分~午後2時15分は学校の教室を開放して受け入れ。放課後児童クラブは利用申し込みをしている児童が対象で午後6時半まで▶問い合わせ=町子ども教育課、電話0952(86)5621
【太良町】受け入れ先=各校の児童クラブ▶日時=3~15日、午前8時半~午後6時▶対象=申し込みをしている児童。新規利用は要望次第で検討する▶問い合わせ=町民福祉課、電話0954(67)0718

*8-7:https://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-1081535.html (琉球新報社説 2020年2月28日) 政府の新型肺炎対策 検査体制の拡充が急務だ
 政府の危機管理能力のなさが鮮明になってきた。新型コロナウイルスによる肺炎(COVID19)の感染拡大阻止で安倍政権の対応が後手に回り、国民の間に不安と混乱を広げている。その最大の要因は、新型コロナウイルスの有無を調べるPCR検査が十分に行われておらず、感染がどれだけ広がっているのか実態を把握しきれていないことにある。発熱やせきが続いても新型コロナウイルスの検査を受けられず、医療機関をたらい回しにされる事例が報告されている。感染者数を増やさないために、検査を制限しているのではないかと疑いの目を向けられても仕方がない。政府はこれまで1日最大約3800件の検査能力があると説明してきたが、この1週間の実績は1日平均約900件にとどまっている。これに対し隣国の韓国は1日平均約3400件の検査を実施し、これまでの検査総数は約5万3千件となっている。韓国では2015年に中東呼吸器症候群(MERS)への対応が遅れ、政権が批判された。これが教訓となり韓国政府はPCR検査の検査時間を短縮し、民間病院に検査キットを配布して検査の網を拡大してきた。日本では厚生労働省が当初「国内では人から人への持続的な感染は認められない」との認識を示すなど、事態を楽観視していた。集団感染が起きたクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」への対応を巡っても、感染防止対策に不備があったと指摘されている。大きな失態だ。陰性が確認された乗客をクルーズ船から下船させたが、栃木や徳島、千葉県では公共交通を利用して帰宅した下船者の感染が判明する事態になった。政府の泥縄式の対応がウイルスを拡散させている可能性が否定できない。終息の道筋が見えない中で、スポーツや文化行事の開催自粛も広がっている。25日に厚労省が発表した基本方針では「全国一律の自粛要請を行うものではない」としていた。だが、安倍晋三首相が翌26日に「国が判断しなければならない。大規模な感染リスクがある」と中止の要請へと方針を一転させたことで、イベント当日に公演中止が決まるなど混乱を招いた。現場に負担を押し付けるやり方は市民生活や経済活動を混乱させる。「最終的な責任は市や町にあると国が逃げている」(谷本正憲石川県知事)との指摘や厚労省に任せきりにしているとの批判もある。首相は3月2日から春休みが明けるまで全国の小中高校などに臨時休校を要請する意向を示した。感染の広がりが不明な中で、場当たり的な印象も否めない。政府は検査の規模と速度を上げる必要がある。検査を希望する全ての人が検査を受けられるよう、民間機関への検査委託の拡大など診断体制を早急に強化すべきだ。

<普及せずに失う日本発の先進技術とその理由>
PS(2020/2/27追加):*9-1のように、パナソニックもテスラの「ソーラールーフ」で採用されるはずだった黒屋根のような太陽電池のデザインと発電効率の両立が難しく、テスラの求める仕様に合わないとして共同生産を解消するそうだ。そして、テスラの現行のソーラールーフは、コストも安い中国企業などの電池を採用しているそうで、太陽光発電装置が日本発だったことを考えると情けない。パナソニックが生産した太陽電池は日本のハウスメーカーなどが使っているそうだが、それもデザインが今一つで、設置の傾斜角度を30度にするため、見た目がさらに悪くなっている。日本では、「環境保護≒その他のすべてを犠牲にしてよい」と考えているようだが、この発想は改めるべきだ。
 また、ジョンソン英首相は、*9-2のように、「ガソリン車(ハイブリッド車を含む)とディーゼル車の販売禁止を従来より5年早い2035年から実施する」と表明するそうだが、2030年からでよいのではないだろうか。首相がそう表明すれば、充電施設は整備され、大量生産によりEVの値段も下がる。日本は、現状維持や妥協の発想と妨害によってEVも遅れたが・・。

*9-1:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO56059920W0A220C2MM0000/?n_cid=SPTMG002 (日経新聞 2020/2/26) テスラとパナソニック、太陽電池の共同生産解消へ
 米電気自動車(EV)メーカーのテスラとパナソニックは太陽電池の共同生産を解消する。テスラの太陽光パネルに使う太陽電池を生産するため、両社は米ニューヨーク州で工場を運営してきた。ただ実際はテスラ製パネルでの採用はほとんどなく、生産量が増えないため近く稼働を止める。中国勢が台頭する中、日本の太陽電池メーカーの退潮が鮮明になる。テスラにとって太陽光事業はEVに次ぐ柱だが、当初の戦略を修正する。両社は米ネバダ州にある車載電池工場「ギガファクトリー1」を軸としたEV向け電池の共同生産は引き続き維持する。テスラとパナソニックは2016年に太陽電池の生産で提携すると発表。米ニューヨーク州バッファロー市に「ギガファクトリー2」と呼ぶ工場を設け、17年から太陽光パネルの中核部材である太陽電池などの生産を始めた。工場の運営主体はテスラでパナソニックは製造設備の購入など投資の一部を負担。主にパナソニックが生産を担当する太陽電池は、テスラの主力の太陽光パネルである「ソーラールーフ」で採用されるはずだった。ソーラールーフは黒い屋根のように見えるデザイン性が最大の特長だが、パナソニック製の太陽電池は見た目と発電効率の両立が難しくテスラの求める仕様に合わなかった。現行のソーラールーフはコストも安い中国企業などの電池を採用しているもよう。パナソニックは同工場で生産した太陽電池を、テスラの代わりに日本のハウスメーカーなどに販売してきた。

*9-2:https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2020/02/20355.php (Newsweek 2020年2月4日) イギリス、2035年からガソリン車とディーゼル車を販売禁止へ 5年前倒し
 ジョンソン英首相は4日に行う講演で、ガソリン車とディーゼル車の販売禁止について、従来より5年前倒しの2035年から実施すると表明する見通し。英国は今年、11月にグラスゴーで開かれる国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)の議長国を務める。4日にロンドンで開かれる関連イベントでの講演を前に、ジョンソン首相は声明で「COP26の開催は英国と世界各国にとって気候変動対策強化の重要な機会になる」と指摘。「2050年排出実質ゼロの目標に向けた今年の英国の計画を明らかにするともに、諸外国に排出実質ゼロを英国とともに公約するよう求めるつもりだ」とした。ジョンソン氏は、排出実質ゼロの早期達成に向け、クリーンな技術への投資や自然生息地の保全、気候変動の影響への耐性を高めるための方策を含めた国際的な取り組みを呼び掛ける見通し。ガソリン車とディーゼル車の販売禁止については、2035年か、可能であればさらに早い時期に前倒しで実施する計画を示す。ガソリンエンジンと電気モーターを併用するハイブリッド車も含まれるという。実施前に意見公募を行う。英国以外にも、フランスは2040年以降、ガソリン車とディーゼル車の販売を禁止する方針で、ノルウェーの議会は、25年までに国内の全ての車を排出ゼロにする法的拘束力のない目標を採択した。ただ、英国ではディーゼル車とガソリン車が国内販売の9割を依然占めており、充電施設の数が少なく、エコカーのモデルも限定的で割高との声が聞かれる。

<新型コロナウイルス対策としての全国一斉休校>
PS(2020年3月2、3、16日追加):*10-3のように、重要な仕事をしている女性が多いとは思わず、家庭へのしわ寄せを考えずに、安倍首相が新型コロナウイルス感染防止として、2020年3月2日から全国の小中高校・特別支援学校を一斉に休校にする方針を出された時には、私も「原発廃止と再エネによる分散発電やEV化ではなく、勉強させない方向への意思決定は随分速やかだ」と思った。つまり、感染者が1人も確認されていない自治体(離島を含む)にまで休校を要請する必要性はないと思われるため、全国一斉休校にした科学的根拠を明確にすべきだ。ただし、学校に行くのは全員の義務だが、保育園や学童保育を使うのは親が必要と判断した家庭だけであるため、この期間に保育園や学童保育を開所するのに矛盾はない。
 また、学校給食の停止で、*10-2のように、学校給食向け牛乳・野菜等のキャンセルが相次いで供給者が困っているそうだが、それだけではなく、これを給食として児童・生徒に与えて健康を維持させているため(これには親は感謝すべきだ)、一斉休校で免疫力や体力が低下する児童・生徒も出そうだ。そのため、*10-1のように、参院予算委員会は、2020年度予算案全体ではなく(??)、新型コロナウイルス対応策などが中心的な議題になるとのことである。
 なお、新型コロナウイルスの感染防止のために始まった全国小中高校の一斉休校で、*10-4のように、朝から預かる学童保育の負担が重くなり、同時に感染をどう防ぐかが問題となっているそうだが、朝から預かる必要性は、休みの日なら日常のことであり、感染防止も新型コロナウイルスに限らずインフルエンザ・はしか・水疱瘡など他の感染症でも同じだ。従って、私は東大女子同窓会を通して1990年代から必要性を言っていたので、未だに保育所や学童保育の不備に慌てている自治体があるとすれば、それは働く女性のニーズを無視して女性に負担を押し付けてきた自治体の怠慢であり、同情の余地はないと思う。むしろ、新型コロナのおかげで、必要不可欠なインフラの未整備が浮き彫りになったことに感謝すべきだ。
 このような中、*10-5のように、マイクロソフトの創業者ビル・ゲイツ氏が取締役を退任し、①気候変動 ②教育 ③公衆衛生 に関わる慈善事業に専念されるそうだ。これは本当に偉いことだが、①②③の命題は、今後のITに求められる技術であるため、ゲイツ氏の判断は長期的には新製品や新サービスのBig market(大市場)を創造することになり、慈善事業に終わらないだろう。例えば、IT教育なら、*10-6のように、オンラインで動画を使った教育をすることもでき、日本に居ながら外国の授業を受けることもできる。これは、学校に行く意義とは別に、開発途上国や地方ではなくてはならないものだ。ちなみに、私は「Nature」の日本法人で、地球45億年の歴史を5分くらいに短縮した大陸移動説の動画を見せていただいたことがあるが、想像を超える科学的事実が画像で表わされており、特に注目したい場所(例えば、恐竜時代の日本など)を拡大して見ることもできて感動した。このほか、イギリスやアメリカの授業を聞けば、他の学科を英語で学習することもできるため、テレビサイズに大きくできるYuTubeがあれば助かる。また、「そこまでやると、学習時間が足りない!」という問題については、*10-7のように、佐賀県は、(私の提案で)私立だけでなく公立高校も中高一貫併設校になっているところが4か所あり、このように中高一貫校の6年間や幼稚園・小中一貫校で年齢に応じた内容を効果的に学べるようにすれば、「時間が足りない」という問題は解決できる。そのため、必要なのは、学習内容をできるだけ前倒しし、学習計画を効率化しながら再編することである。

*10-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200302&ng=DGKKZO56249020R00C20A3PE8000 (日経新聞 2020.3.2) 新型コロナ対応で与野党論戦 自民・世耕氏「休校は有効」 国民・大塚氏「経緯説明を」
 参院予算委員会は2日から安倍晋三首相と全閣僚が出席し、2020年度予算案の基本的質疑に入る。新型コロナウイルスの対応策などが中心的な議題となる。それに先立ち与野党の参院幹部は1日のNHK番組で、政府の対応策について討論した。自民党の世耕弘成参院幹事長は首相の休校要請に関して「迅速に対応することが重要だ。全国的にどこで広がるか明確でない状況で、休校は有効だ」と評価した。「休業補償を具体化するなど不安の払拭に努めることが重要だ」と訴えた。公明党の西田実仁参院会長も「休業補償や子供の居場所づくりなどセットで公表するほうが混乱は少ない」と指摘した。世耕氏は国会論戦を前に「今は批判や糾弾の段階ではなく、政府が能力を存分に発揮できるようにサポートすべき時期だ」とも強調した。立憲民主党の長浜博行参院議員会長は「自治体に責任を押しつけるのではなく、国として何をすべきかだ」と述べた。国民民主党の大塚耕平代表代行も休校要請について「なぜこういう判断に至ったか説明を聞きたい」と語った。共産党の小池晃書記局長は専門家を国会に参考人として呼び、政府の対応を検証すべきだと主張した。大塚氏は休校で学校給食がなくなり、材料を納入する業者などに悪影響が出ることに懸念を示した。日本維新の会の片山虎之助共同代表は「国が一律に要請するのはいかがか」と批判し、地方自治体の判断に任せるべきだとの考えを示した。日本経済全体への影響について、大塚氏は「事業者が決済できない状況が発生している」として、政府が支払い猶予措置などを講じるべきだと提案した。イベント中止によるキャンセル料を念頭に、イベント業者らへの損害をなくすように求める考えを示した。小池氏は消費税率を5%に引き下げるように主張し、世耕氏は否定した。

*10-2:https://www.agrinews.co.jp/p50163.html (日本農業新聞 2020年2月29日) 新型肺炎で臨時休校 給食停止で産地混乱 生乳、野菜行き場なく
 新型コロナウイルスの感染拡大防止へ、政府が示した全国小中高校の臨時休校方針で学校給食が停止がすることを受け、農畜産物の供給に混乱が生じている。学校給食向けの牛乳(学乳)は飲用向け生乳の1割近くで、供給先を失った産地やメーカーは対応に苦慮する。野菜でも給食向け取引のキャンセルが相次ぐなど影響が広がっている。学校給食に提供する生乳は、全国の飲用向け(年間約400万トン)の1割弱で全て国産。うち最も供給量の多い関東は年間10万トンを学乳に仕向ける。管内の公立学校が2週間休校になると、このままでは7500トンもの生乳が行き先を失う。関東生乳販連は28日午後4時現在で、取引メーカーからキャンセルが相次ぐ。キャンセル分は日量最大で80トンを見込む。余力のある乳業メーカーに引き受けてもらい、難しければ長期休みに稼働率を上げる乳製品工場に納めたい考え。実質、春休みが前倒しになる形だが、工場の人員確保は難しく、どこまで対応できるかは不透明だ。「暖冬で生乳生産が上向く一方、飲用需要も全体的に下がっている。学乳の停止でダブルパンチ」(同生乳販連)と嘆く。乳用牛など50頭を管理し、千葉酪農農業協同組合を通じ小学校に牛乳を出荷する千葉県内の牧場の代表は「まだ損害は出ていないが、先行きが見えない。影響の長期化が心配」と不安視する。北海道では都府県に定期的に移送する生乳のキャンセルの多発を懸念する。キャンセル分は道内の乳業メーカーが引き受け、主に加工向けに振り向ける。生乳増産と飲用向け需要の低迷に加え、観光客の減少で土産用の加工品需要も低下している。大手乳業関係者は「乳業各社や指定団体と協力して生乳需給が崩れないようにしたい」と話す。文部科学省によると、学校給食の1人1食当たりの食品別摂取量(2017年度)は、牛乳が200グラムで最多。野菜類が91グラム、米が52グラムと続く。学校給食向けに出荷する産地やJAなどにも影響が及ぶ見通しだ。東京都小平市の小中学校に食材を提供してきたJA東京むさし小平支店は、3月分の野菜などの契約4・5トンがキャンセルとなった。同JAは「非常に混乱している。市場に荷が集中し相場に影響が出るのも心配」と話す。月約200万円分の野菜を東広島市内の給食センターなどに供給してきたJA広島中央は「学校給食は安定した単価で買い取ってもらっていた」ため、供給停止を懸念する。学校給食材の供給などを担う各都道府県学校給食会でつくる全国学校給食会連合会は「給食メニューや食材調達は約1カ月前に決めるところが多い。食材キャンセルなど影響は出る」とみる。文科省は28日、学校給食に供給してきた産地やJA、業者の支援について「現時点で補填(ほてん)などは想定していないが、影響を踏まえ各省と連携し検討する」としている。

*10-3:https://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-1082245.html (琉球新報社説 2020年2月29日) 新型コロナ休校要請 「全国一斉」の根拠説明を
 あまりにも唐突で場当たり的と言わざるを得ない。安倍晋三首相が、新型コロナウイルスの感染防止のため3月2日から春休みに入るまで全国の小中学校、高校や特別支援学校を臨時休校にするよう要請する方針を打ち出したのである。萩生田光一文部科学相は「専門家から、学校が集団感染のリスクが高いとかねて意見があり、政府が大方針を示した」と理由を説明する。だが、感染者が出た都道府県だけでなく、1人も確認されていない県を含め、一律に休校を求める必要があるのか。混乱を拡大させるだけではないのか。一斉休校の科学的根拠をしっかりと説明することが不可欠だ。新型コロナウイルスを巡るこの間の政府の対応は後手後手だった。集団感染が起きたクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」で乗員乗客を船内に隔離したものの、封じ込めに失敗した。未曽有の事態に対処できず右往左往する政府の無策ぶりは日を追うごとに鮮明になっている。一斉休校の要請は、高まる批判を払拭(ふっしょく)する狙いがあるとみられるが、短兵急で稚拙な印象は否めない。知事や市長などから戸惑いや懸念、批判の声が出た。「家庭の負担が大きい」などとして要請に従わない自治体もある。かえって指導力のなさを露呈した。文科省が一斉休校の要請を通知する一方で、厚生労働省は小学生を放課後に預かる放課後児童クラブ(学童保育)などは原則として開所するよう都道府県に通知した。ちぐはぐな対応に映る。休校による保護者の負担は大きい。学習に遅れが出る。学校現場は混乱している。少なくとも、もっと早い段階で休校要請の用意があることを周知しておくべきだった。首相は、休校に伴うさまざまな課題について「政府として責任を持って対応する」と明言した。きめ細かな対策が欠かせない。「急速な拡大の瀬戸際にある」と専門家は指摘するが、どこまで感染が広がっているかは分かっていない。ウイルスの有無を調べるPCR検査の体制が整っていないからだ。検査費用の公的医療保険適用を含め、必要な対策が大きく立ち遅れている。首相周辺の危機意識も薄い。秋葉賢也首相補佐官は首相が全国的なイベントの自粛を要請した26日の夜、地元仙台市で出版記念パーティーを開いた。集団感染が起きやすいとされる立食形式だ。これでは示しがつかない。麻生太郎財務相は、臨時休校要請を巡り、働く母親などがいる家庭への対応を質問した記者に「つまんないこと聞くねえ」とつぶやいた。つまらないのは自身の態度だ。不謹慎としか言いようがない。首相は、一生懸命に取り組んでいるという印象を与えるためのパフォーマンスではなく、実効性のある方策を着実に実行してもらいたい。

*10-4:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200303&ng=DGKKZO56282830S0A300C2CC1000 (日経新聞 2020.3.3) 学童保育の負担ずしり 新型コロナ、一斉休校初日、朝から預かり/「感染どう防ぐ」
 新型コロナウイルスの感染防止に向け、2日から始まった全国小中高校の一斉休校。子どもを預かる各地の放課後児童クラブ(学童保育)は開所時間を前倒しし、朝から対応に追われた。働く親たちは「受け入れてくれて助かった」と安堵したが、預かる施設側は「密集空間でどう感染を防げばいいのか」「人手が足りなくなるのでは」と悩んでいる。文部科学省の2月28日の通知を受け、感染者のいない島根県を除く46都道府県の小中高校で2日から順次、一斉休校が始まった。各地の学童保育では、通常は放課後の開所時間を朝に前倒しし、仕事などで親が自宅で見られない子どもの受け皿となった。区立小学校が休校になった東京都文京区の学童クラブには2日午前8時前から続々と児童が集まった。小学校1年の娘を預けに来た男性会社員(50)は、学童側から「登録済みで保育が必要な場合は午前中から受け入れる」との通知を2月28日に受け取ったという。「共働きで、ここが受け入れてくれなかったら、どうしていいのか分からなかった」と話した。福岡市でも2日朝から、市内139カ所の放課後児童クラブで児童の受け入れを始めた。同市博多区の同クラブでは小学1~6年の児童約40人が手洗いやアルコール消毒をして中に入った。市によると、臨時休校が決まった2月28日以降、新たに約1千人が同クラブに入会したという。臨時休校中の児童の受け皿として期待されている学童には問い合わせが増えているが、施設側は悩みを抱える。「どこまで(感染を)防げるのかはわからない」。東京都葛飾区の区立梅田小学校内の学童保育クラブ責任者、佐々木美緒子さんは心配そうに話す。密集を避けるため、児童約50人を2班に分けたが「結局、学校の教室と同じ人数や環境で集まっている」と話す。大阪府寝屋川市の小学校では2日から24日までの休校期間中、午前8時から午後5時まで預かる児童には給食を提供している。この日、市立石津小学校では預かった35人を4つの教室に分散させ、給食時は全員が前を向いて極力会話しないように注意を促した。森本朋美校長は「保護者の負担を少しでも軽減するため給食の提供は続けたい」と話した。名古屋市緑区の学童保育クラブの男性職員は「子どもを1カ所に集めないために休校にしたのに、学校より小さく、設備が乏しい学童に集めてもいいのだろうか」と困惑する。開所を朝に早めたが、職員の人数は変わらず負担は増している。「アルバイトのシフトを調整できなければ、常勤職員が朝から晩まで働くしかない」と語った。学童保育約100カ所で児童を午前から受け入れた東京都足立区。一部の区営施設には新型コロナ対策で閉鎖中の高齢者施設から職員が応援に入ったが、運営を民間に委託する施設では職員の人手不足や長時間労働の恐れが出ている。区の担当者は「預かりを希望する家庭が増える可能性もあり、今後の受け入れ数は読めない」と語った。

*10-5:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO56792950U0A310C2000000/?n_cid=SPTMG002 (日経新聞 2020/3/14) ビル・ゲイツ氏、マイクロソフト取締役を退任
 米マイクロソフトは13日、創業者のビル・ゲイツ氏(64)が同社の取締役を退任したと発表した。自ら設立した財団で取り組んでいる気候変動や教育、公衆衛生に関わる慈善事業に専念するため。サティア・ナデラ最高経営責任者(CEO)らへの「テクノロジーアドバイザー」の役割は続ける。ゲイツ氏は1975年に友人のポール・アレン氏とマイクロソフトを創業し、パソコン用基本ソフト(OS)「ウィンドウズ」で一時代を築いた。2000年までマイクロソフトのCEOを、14年まで取締役会長を務めた。一方で2000年には妻のメリンダ氏とともに、環境問題や新興国の病気など社会課題を扱うビル&メリンダ・ゲイツ財団を設立。財団活動に軸足を移すため、08年以降はマイクロソフトの仕事は「非常勤」にしていた。今回取締役も辞めることで、慈善事業に費やす時間を一段と増やす。ゲイツ氏は友人のウォーレン・バフェット氏が率いる米投資会社バークシャー・ハザウェイの取締役も退任する。ゲイツ氏は「リンクトイン」への投稿で「バークシャーとマイクロソフトのリーダーシップはかつてなく強くなっているため、このステップを踏むのに適切な時期だ」と説明した。ただ、ゲイツ氏は「マイクロソフトの取締役を退任することは会社から完全に離れることではない」とも述べ、技術面のアドバイザーとして関与を続ける意思を示した。ナデラ氏は13日に声明を出し「マイクロソフトはビルの継続的な技術に対する情熱とアドバイスを受けて、製品とサービスを前進させていく」と述べた。新型コロナウイルスの感染拡大が続くなか、ゲイツ財団は同分野でも活動を積極化している。最近は2月に新型コロナウイルス対策に最大1億ドル(約108億円)を拠出すると発表した。

*10-6:https://www.nishinippon.co.jp/item/n/592277/ (西日本新聞 2020/3/16) にわかに注目、オンライン学習 新型コロナで突然の休校… 企業も支援
●学校の意義見つめ直す機会にも
 新型コロナウイルスの感染拡大の影響で小中高校の臨時休校が続く中、子どもたちが自宅にいても学べるオンライン学習が注目されている。企業による教材の無料公開が相次いでいるほか、学校現場も教師が課題の送信や質疑応答などを工夫。情報通信技術(ICT)を使った教育の浸透と、教室で学ぶ意義の見直しにもつながっている。「楽しみだったし、ドキドキした」。福岡市中央区の福岡雙葉高2年の香山礼美さん(17)は11日、ビデオ会議システムによる学級の朝礼に臨んだ。スマートフォンに並んだ級友や担任の表情に触れて「安心した」と香山さん。臨時休校に入って以降、初めて顔を見る人が大半だったという。ICT教育に力を入れ始めた同校では本年度、全ての教師にタブレット端末を配備した。その環境を利用して教師たちは休校中、生徒向けに小テストや添削、解説動画に加え、黒板の前で撮影した授業の動画を配信。1本の動画を5分にまとめたり、別の教師が生徒役をしたりするなどの工夫を凝らす。ただ、授業の代替ではないため、どこまで取り組むかは生徒次第だ。生徒の関心を伸ばす鍵の一つが教師の「素顔」。今春、定年を迎える教師のメッセージ動画を配信すると生徒間で大きな話題となった。その反響を受け、歌に合わせて踊る教師の姿なども見られるようになった。一方で授業動画は思わぬ効果も。「生徒がノートに書いたり、自分たちが板書したりする時間を省くと50分でやっていた内容を約15分にまとめられた。自分の動画を見て話す早さや滑舌も見直せた」と甲斐恭平教諭(29)は話した。
   ◇   ◇
 福岡市西区の福岡西陵高では臨時休校に入った3日、教師たちが学校のタブレットを手にオンライン学習の手法を確認し合った。九州大と連携し、デジタル教材の活用法を探る同校は生徒と教師に保護者も加えて学級、部活動など設定したグループ内で文章や写真、動画を送受信できるシステムを導入。生徒たちには休校前、自宅のパソコンやスマートフォンを使って交信するよう伝えていた。「生徒を個別に呼び出して指導ができるわけではない。いかに生徒がやりたくなる課題を提供できるかが大切」と、中心になって進める吉本悟教諭(39)は言う。休校から10日余り。連絡事項や課題の伝達に加え、テレビ会議システムで一部の補習授業も実践した。今後は海外の学校とつなぎ、生徒間の交流会も計画している。
   ◇   ◇
 こうした学校現場の取り組みに、教育関連企業も積極的に“参戦”する姿勢を見せている。通信教育事業のZ会(静岡県三島市)や小学館集英社プロダクション(東京)、学研ホールディングス(東京)などの業界大手はそれぞれ、専用サイトを設けるなどし、学習方法や授業解説の動画といった教材を相次いで公開している。経済産業省は2月28日に家庭学習に役立つ取り組みを紹介するサイトを開設。50社・団体以上を載せており、担当課には一時、対応できないほど掲載の要望が殺到したという。4月からプログラミング教育が小学校で必須となるのをにらんだ企画もある。福岡市のベンチャー企業「しくみデザイン」は4月上旬まで、同社が無料で提供しているアプリを使ったデジタル作品を応募してもらうコンテストを実施中だ。パソコンやスマホがあれば、どこでも学べるオンライン学習。それでも、多くの生徒は教室で気軽に話し合い、学び合える友人が隣にいないことに不都合を感じている。福岡雙葉高の甲斐教諭は「生徒たちが集まらないとできないことは何なのかを突き詰めないといけない」と話す。突然の臨時休校は、学校での学びの意義をあらためて感じる機会でもあるようだ。

*10-7:https://www.gakkou.net/kou/src/?srcmode=ci&ci=2&p=41 (中高一貫教育校併設型高校より抜粋)
1.佐賀県立唐津東高等学校 佐賀県唐津市 公立 普通科 中高一貫教育校
2.弘学館高等学校 佐賀県佐賀市 私立 普通科 中高一貫教育校
3.佐賀清和高等学校 佐賀県佐賀市 私立 普通科 専門学科 中高一貫教育校
4.佐賀県立武雄高等学校 佐賀県武雄市 公立 普通科 中高一貫教育校
5.佐賀県立致遠館高等学校 佐賀県佐賀市 公立 普通科 専門学科 中高一貫教育校
6.東明館高等学校 佐賀県基山町 私立 普通科 中高一貫教育校 
7.佐賀県立烏栖高等学校 佐賀県鳥栖市 公立 普通科 中高一貫教育校
8.龍谷高等学校 佐賀県佐賀市 私立 普通科 中高一貫教育校
9.早稲田佐賀高等学校 佐賀県唐津市 私立 普通科 中高一貫教育校

<新型コロナウイルスの治療法と特措法>
PS(2020年3月4日追加):新型コロナウイルス「COVID-19」が怖いのは、「有効な治療法がないから」と言われるが、*11-1のように、治療薬として①抗ウイルス薬レムデシビル ②抗HIV薬「カレトラ」 ③抗インフルエンザウイルス薬「アビガン」 の3種類が有望視されており、レムデシビルは、現在は承認されていないが、エボラ出血熱の治療薬として開発され、コロナウイルスが引き起こすMERSやSARSへの効果も示唆されて、中国と米国では既に臨床試験が始まっており、日本でも承認申請に向けた試験を3月にスタートするそうだ。ただし、ワクチンは予防には役立つが、既に罹患している人には無意味だ。そのような中、中国では罹患して治った人の血清を注射することによって重傷者が回復した例があり、これなら自分の免疫で回復しきれないほどの重症患者にも有効だろうが、人間の血清は供給に限度がある。
 そのため、私は、MERS・SARS・COVID-19がコロナウイルスであることから、*11-2のように、コロナウイルスに効く血清を医療用の無菌豚で作っておけば重症患者の治療に汎用することができ、乳牛で作って牛乳に免疫を出せれば、(乳児が母乳から免疫をもらうように)牛乳を飲んで免疫を作ることもできると思う。
 このように、現在の日本は感染症への対処法が多くなっているため、私は、*11-3のように、「政府や自治体の権限強化は抑制的であるべきで、憲法に反する法律で人権を制限しすぎるべきではない」という意見に賛成だ。

*11-1:https://answers.ten-navi.com/pharmanews/17853/ (AnswersNews 2020/2/28) 新型コロナウイルス 治療薬・ワクチンの開発動向まとめ【COVID-19】
 世界各地で広がる新型コロナウイルス感染症「COVID-19」。治療薬やワクチンの開発動向をまとめました(2020年2月28日昼時点の情報をもとに執筆。内容は随時更新する予定です。
●治療薬
 2月28日時点でCOVID-19の治療薬として有望視されているのは、▽米ギリアド・サイエンシズの抗ウイルス薬レムデシビル▽米アッヴィの抗HIV薬「カレトラ」(一般名・ロピナビル/リトナビル)▽富士フイルム富山化学の抗インフルエンザウイルス薬「アビガン」(ファビピラビル)――の3種類。レムデシビルは、現時点では世界中のどの国でも承認されていません。日本では、国立国際医療研究センターの研究班による観察研究として、一部の医療機関でこれら3種類の薬剤の投与が始まっています。3月には、レムデシビルの承認申請に向けた医師主導治験がスタートする予定。日本感染症学会は2月26日、3種類の薬剤のうち国内で承認されているカレトラとアビガンをCOVID-19に使用する際の留意点などをまとめた指針を発表しました。
●レムデシビル(米ギリアド)
 ギリアドは2月26日、COVID-19を対象にレムデシビルの臨床第3相(P3)試験を始めると発表しました。試験は、重症患者400人を対象としたものと、中等症患者600人を対象としたものの2本で、アジアを中心に診断例が多い世界各国の医療機関が参加。いずれも、レムデシビルを5日間または10日間、静脈内投与し、発熱と酸素飽和度を指標として有効性を評価します。レムデシビルはすでに、中国(中日友好医院主導)と米国(国立アレルギー・感染症研究所=NIAID主導)で臨床試験が始まっており、ギリアドによる企業治験はこれらの試験データを補完するものになるとみられています。中国での試験は4月に結果が得られる見通し。日本でも承認申請に向けた医師主導治験が3月にスタートする予定です。レムデシビルはもともと、エボラ出血熱の治療薬として開発されていた核酸アナログ。これまでの研究では、コロナウイルスが引き起こすMERS(中東呼吸器症候群)やSARS(重症急性呼吸器症候群)への効果が示唆されており、ギリアドは2月3日に発表した声明で「今回の新型コロナウイルス以外のコロナウイルスで得られているデータは希望を与える内容だ」としています。
●カレトラ(米アッヴィ)
 カレトラは、ウイルスの増殖を抑えるプロテアーゼ阻害薬ロピナビルと、その効果を増強するリトナビルの配合剤。日本では2000年にHIV感染症に対する治療薬として承認されています。これまでのin vitroや動物モデルを使った研究では、MERSへの有効性が示されており、COVID-19に対してもバーチャルスクリーニングで有効である可能性が示されています。米国の臨床試験登録サイト「CrinicalTrials.gov」によると、中国ではCOVID-19を対象としたカレトラの臨床試験が複数、実施中。日本感染症学会の指針によると、国内では2月21日までに国立国際医療研究センターで7人の患者に投与されています。
●アビガン(富士フイルム富山化学)
 アビガンは2014年に日本で承認された抗インフルエンザウイルス薬。新型インフルエンザが発生した場合にしか使用できないため、市場には流通していませんが、国は新型インフルエンザに備えて200万人分を備蓄しています。アビガンは、インフルエンザウイルスの遺伝子複製酵素であるRNAポリメラーゼを阻害することでウイルスの増殖を抑制します。COVID-19を引き起こす新型コロナウイルスもインフルエンザウイルスと同じRNAウイルスであることから、効果を示す可能性があると期待されています。ただし、動物実験で催奇形性が確認されているため、妊婦や妊娠している可能性がある人には使うことができず、妊娠する可能性がある場合は男女ともに避妊を確実に行う必要があります。中国の臨床試験登録サイト「Chinese Clinical Trial Registry(ChiCTR)」によると、中国では2月28日時点でCOVID-19に対するアビガンの臨床試験が4本進行中です。
●その他
 これら3つの薬剤以外では、米リジェネロン・ファーマシューティカルズがCOVID-19に対する抗体医薬の開発に向けて米国保健福祉省(HHS)と提携。米ジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)は、中国の医療機関からの要請に応じて抗HIV薬「プレジコビックス」(ダルナビル/コビシスタット)を提供し、同薬を使った臨床試験が行われています。CrinicalTrials.govやChiCTRによると、抗マラリア薬のクロロキンや抗ウイルス薬のインターフェロン、抗インフルエンザウイルス薬の「タミフル」(オセルタミビル)や「ゾフルーザ」(バロキサビル)などが、中国でCOVID-19を対象とした臨床試験が行われています(2月28日時点)。
●ワクチン
 COVID-19を予防するワクチンの臨床試験も近く始まる見通しです。米バイオベンチャーのモデルナは2月24日、開発中のコロナウイルスに対するワクチン「mRNA-1273」の治験薬を初めて出荷したと発表しました。米NIAIDが近くP1試験を始める予定です。CrinicalTrials.govに登録されている情報によると、mRNA-1237のP1試験は18~55歳の健康な男女45人を対象に実施。ワクチンを4週間隔で2回投与し、安全性と免疫原性を評価します。新型コロナウイルスに対するワクチンの開発をめぐっては、ノルウェーに本部を置く「感染症流行対策イノベーション連合(CEPI)」が、▽米イノビオ▽豪クイーンズランド大▽モデルナ・NIADI▽独キュアバック――とパートナーシップを締結。英グラクソ・スミスクラインはアジュバント技術の提供でCEPIの開発プログラムに協力しています。仏サノフィとJ&Jは、米HHS傘下の米国生物医学先端研究開発局(BARDA)と協力してワクチン開発を進めると発表しました。日本企業では、アイロムグループ子会社のIDファーマが、復旦大付属上海公衆衛生臨床センターとワクチンの共同開発で合意。両者はセンダイウイルスベクターを使った結核ワクチンを共同開発しており、その経験を生かして新型コロナウイルスに対するワクチンの開発を目指すといいます。

*11-2:https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/16/050900160/ (日経BP 2016.5.10) 18種の毒ヘビに有効、画期的な血清製造法を開発、アジアの毒ヘビからアフリカの種の血清も!年間9万人超を救えるか
 毎年、全世界で9万4000人もの人々が毒ヘビに咬まれて命を落としている。死者数が特に多い地域は、南アジアとサハラ以南のアフリカだ。彼らの命を救えないのは、抗ヘビ毒の血清が手に入りにくいからだ。ヘビ毒は複数の種類のタンパク質からなり、ヘビの種類によって成分や構成が異なる。そのためかなり最近まで、毒ヘビに咬まれたら、その種類のヘビの毒にだけ効く専用の抗毒血清で治療するのが最善とされてきた。だが、それには約600種の毒ヘビのうち、どれに咬まれたのか正確に分かる必要があるうえ、各種のヘビ毒に効く血清を備蓄しておくコストもかかる。また、アフリカには複数種のクサリヘビやコブラの毒に効く抗毒血清があり、現在はそれを使った治療が最も有効だ。しかし、報道によると、この血清の備蓄は2016年6月にも枯渇するという。血清の大半を製造していたフランスの製薬会社が、利益の出ない血清の生産をやめてしまったからである。このたび、タイの科学者たちが、アジアとアフリカの18種のヘビの毒に効く抗毒血清を作る方法を発見したと、いわゆる「顧みられない熱帯病(neglected tropical disease)」の研究を扱う科学誌『PLOS Neglected Tropical Diseases』に研究成果を発表した。研究チームは、自分たちの血清は従来のものより安く、より広い範囲のヘビ毒に効果があるので、血清を最も必要とする貧しい地域にも供給できると主張している。
●ヘビ毒をろ過して濃度を高める
 タイ、バンコクのチュラポーン研究所のカヴィ・ラタナバナンクーン氏は、ヘビ毒の恐ろしさを何度もじかに経験している。「私はこれまでに15匹の犬を飼いましたが、そのうちの5匹がコブラに咬まれて死んでいます」と彼は言う。「自宅の庭に体長1.5mのコブラが現れることもあります。私たちにとって、毒ヘビは身近な問題なのです」。より多くの種類のヘビ毒に効く血清を開発するため、ラタナバナンクーン氏の研究チームは、アジアの主要な毒ヘビである4種のコブラと2種のアマガサヘビから12種類のヘビ毒のサンプルを採取した。なかでもアマガサヘビ(Bungarus multicinctus)は手に入りにくかったので、野生のヘビを1匹100ドルで買い取るという口コミを広めて入手したという。捕獲されたヘビは、タイ赤十字社が運営するスネークファームが保護して、研究チームのために毒を採取した。抗ヘビ毒血清の一般的な作製法では、致死量に満たないヘビ毒を天然のままの状態でウマに注射し、できてきた抗体を回収する。けれども今回の研究では、12種類のサンプルのうち9種類を「超ろ過」して最も致死性の高い毒性タンパク質を取り出し、ろ過できるだけの量がなかった残りの3種類のヘビ毒と一緒に投与した。研究チームは、毒以外の成分を減らし、ヘビ毒の最も重要なタンパク質の濃度をあげることで、複数のヘビ毒に効く抗体の多い血清を一度に作れると考えたのだ。彼らの論文によると、こうして得られた血清を、ヘビ毒を注射したマウスに注射したところ、そのすべてが回復したという。さらに、この血清は、研究に用いた6種のヘビの毒だけでなく、類縁種の12種のヘビの毒にも効果があることが明らかになった。ラタナバナンクーン氏が特に驚いたのは、この血清が、アフリカのエジプトとカメルーン原産のヘビの毒にも効いたことだった。これらはいずれもコブラの仲間なので、毒素も似ているせいかもしれない。研究チームは、この方法で、アジアとアフリカのコブラ科のすべてのヘビの毒に効く血清を作れるようになるだろうと考えている。
●「特許を取得する予定はありません」
 米アリゾナ大学VIPER研究所のレスリー・ボイヤー所長は、実験で作られた抗体の数は、血清の有効性の指標となるもので、なかなか立派な数字であるが、他の開発中の抗毒血清に比べて特に多くはないと言う。また、ラタナバナンクーン氏らの研究が小規模で、新しい血清による治療の結果を、伝統的な専用の血清による治療の結果と直接比較していない点は問題だと指摘する。けれども彼女は、この研究は原理を証明したよい実験であり、ハイテク技術を駆使して合成抗毒血清を開発しようとする取り組みに比べると泥臭いが、より実用的なアプローチであるかもしれないと言う。「私自身は、彼らの方法は好きですね。アジアの小さな国々では、めずらしいヘビによる咬傷を治療する方法がなくて困っていると聞きます。ラタナバナンクーン氏らの血清が実用化されれば、こうした国々の公衆衛生は大幅に向上するでしょう」とボイヤー氏。彼女は、タイの研究チームが、もっと多くの研究資金を獲得して、より大規模な比較対照試験を実施できるようになることを願っている。動物を使っての試験が終わったら、今度はヒトでの臨床試験だ。研究チームは、自分たちのマルチ血清を市販するときには、手頃な価格で容易に入手できるようにするつもりだと強調する。ラタナバナンクーン氏は言う。「製造プロセスは非常に簡単なので、特許を取得する予定はありません」

*11-3:https://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2020030402000175.html (東京新聞社説 2020年3月4日) 新型コロナ 特措法の検討は慎重に
 安倍晋三首相は、新型コロナウイルス対策に立法措置を表明した。事態悪化を想定した対応は重要だが、目指す法整備は政府などの権限を強めるものだ。必要な対応なのか慎重な検討が求められる。首相が唐突に表明したイベントの自粛や小中高校の一斉休校の要請に法的な強制力はない。そこに批判があったことも要因なのだろう。法整備を言い出している。感染症の封じ込めにはあらゆる対策を取りたいが、政府や自治体の権限強化は抑制的であるべきで十分な議論が要る。想定されているのは新型インフルエンザ等対策特別措置法(特措法)の改正である。今国会での早期の成立を目指している。特措法は、感染症拡大防止のため企業活動や国民生活を規制する法律で、二〇〇九年の新型インフルエンザの流行を機に検討が始まり一二年に成立した。鳥インフルエンザが発生し、深刻な被害を招く新型インフルエンザに変異して人から人への感染が懸念された一三年に施行された。特措法では重大な被害の恐れがある新型インフルエンザが国内で発生、急速なまん延の恐れがあると政府が判断した場合、緊急事態を宣言する。自治体はあらかじめ定めた計画に沿って対応する。懸念されるのは国民の私権を制限する権限が知事などにあることだ。不要不急の外出の自粛を要請できる。劇場、学校などの使用制限を管理者に要請し、従わなければ指示できる。集会や移動の自由が大きく制限されかねない。土地や建物を借りて臨時の医療施設を設置できるが、所有者の同意がなくても強制使用できる。新型インフルエンザ被害が深刻な場合、国内死亡者は十七万~六十四万人と想定されている。それでも当時、日弁連などから規制は人権が侵害されかねないとの批判が出た。新型コロナウイルスもどんな被害を及ぼすのか不明な点は多い。だが、首相は一斉休校が必要だと判断した根拠を示していない。専門家の意見も聞いていなかった。独断で決める姿勢では「有事」を理由に過剰な制限を求められる不安は消えない。一斉休校の要請に際し文部科学省や厚生労働省との連携が不十分で学校や保育所、雇用などへの支援が後手に回っている。政府はまず政府内の連携を密にし、国民が自主的に判断できるよう正確な情報発信を心掛けるべきだ。現状でもすべきことはある。

<厚労省や保健所が積極的に検査をしなかった理由は・・>
PS(2020年3月5日追加):先進国であり、国民皆保険制度を持つ国である日本で、*12-1のように、医師が必要と判断しても保健所が認めずPCR検査を実施できなかった例が全国で30件以上あり、大半が理由不明であるというのは問題だ。保健所が認めなかった理由は「重症でない(5件)」「濃厚接触者でない(1件)」「理由不明(残り)」だが、民間検査会社が参入すれば対応可能件数は増えるため、このようなことが起こった理由を考える必要がある。ただし、保険適用した後の自費負担分まで公費で補填する必要はないと思う。
 このような中、2020年2月28日、日経新聞が、*12-2の「①中小企業の健康保険料の地域差が拡大している」「②格差を縮める措置が2019年度で終わり、労使折半の保険料の負担は企業で年数百万円、個人で年数万円の差になる」「③医療費がかさみ保険料が高い地域は、医療の効率を高める努力を一段と迫られる」「④保険料率が高い地域ではその分、企業の投資や個人消費に回らなくなり、地域経済にマイナス」「⑤高齢化が進む中で医療費を抑えるには、医療費がかさみやすい生活習慣病の予防などが欠かせない」という記事を掲載した。しかし、①は真実だが、これまでの国家による資本投資額の地域差、それによるサラリーマンと自営業者の比率差、高齢者と生産年齢人口の比率差などがあるため、健康保険料を県単位で決め、②のように格差を縮める措置を2019年度で辞める制度にしたこと自体が間違っているのだ。従って、③の「保険料が高い地域は医療の効率が悪い」と言うのは何も考えていない単純さがある。また、④は日本全国で保険料を同じにすることや(長くは書かないが)治療の効率化・言い値での薬価支払いを見直すことで医療保険を無駄遣いしないように厚労省が努力するのが筋である。さらに、⑤の生活習慣病の予防はもちろん重要だが、どんなに生活習慣病を予防しても生物である以上は必ず死ぬため、高齢になれば何らかの病気をもつ人が増えるのは当然なのだ。
 このような中、*12-3・*12-4のように、厚労省が都内で開いた社会保障審議会の医療保険部会で、「⑥現役世代の重荷になるため、75歳以上の高齢者の医療費の窓口負担を原則2割に引き上げる」ための議論が交わされたそうだ。私は、本当に現役並み所得(その金額が問題)があるのなら3割自己負担にしてもよいと思うが、高額療養費制度で月毎の自己負担に低い上限を設けて低所得になっても医療費を払えることを徹底しなければ、日本は高齢者になると病気をしても検査も治療も受けられないとんでもない国になると考える。さらに、「高齢者が増え続ける中、負担の仕組みを変えない限り現役世代の過度な負担になる」というのは、世代毎の疾病罹患率は違うのに、罹患率の低い若い世代のみを企業の健康保険制度に入れ、罹患率が上がった定年後の世代は国民健康保険に入れ、75歳を過ぎると高齢者医療制度に入れる仕組み自体が保険の仕組みから外れているのだ。つまり、リスクの低い時に保険料を支払った場所でリスクが高くなった後もケアしなければ保険として成立せず、リスクの高い高齢者だけをケアする保険が赤字になるのは当たり前なのである。また、後期高齢者医療制度なら1割負担の人の医療費の半分は公費で賄われるが、3割負担の人の医療費は公費負担がなく現役世代の保険料で賄うため、3割負担の人が増えれば現役世代の負担が増えるなどとみみっちいことを言っているが、3割負担できるほどの所得は健康でなければ稼得できないし、働いている方が健康でもいられるのである。
 このように、厚労省はじめ厚生労働族の議員は、複雑なだけで理論的でない医療保険制度を作っておきながら高齢者を邪魔者扱いしているため、高齢者を狙い撃ちするウイルスなどは非常に都合がよく、検査や治療もしたくないのではないかと推測する次第である。

*12-1:https://digital.asahi.com/articles/DA3S14390352.html (朝日新聞 2020年3月5日) PCR検査、保健所「認めず」30件 大半は理由不明 新型コロナ
 新型コロナウイルスの感染を判定するPCR検査をめぐり、日本医師会は4日の記者会見で、医師が必要と判断しても保健所が認めずに検査を実施できなかった例が全国で30件あまり確認されたと明らかにした。集計途中といい、13日以降に最終結果をまとめる。新型コロナウイルスのPCR検査は現在、感染症法に基づく「行政検査」とされ、保健所が認めないと実施できない。日本医師会によると、保健所が認めなかった理由は「重症ではない」が5件、「濃厚接触者ではない」が1件などで、大半は理由が不明という。厚生労働省は行政検査は続ける一方で、保険を適用して保健所を介さない検査も始める方針。保険適用で民間検査会社の参入が進めば、対応件数が増える可能性がある。厚労省は当初5日に適用する方針だったが調整に時間がかかり、6日に適用すると発表した。

*12-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200228&ng=DGKKZO56123960X20C20A2MM8000 (日経新聞 2020.2.28) 健康保険料 広がる地域差 中小従業員、年数万円 地方経済に影響も
 中小企業が加入する健康保険で、保険料の地域差が拡大している。2020年度は最も高い佐賀県が10.73%で、最も低い新潟県より1.15ポイント高くなる。格差を縮める措置が19年度で終わり、労使折半の保険料の負担は企業で年数百万円、個人では年数万円の差になる。医療費がかさみ保険料が高い地域は、医療の効率を高める努力を一段と迫られる。主に中小企業を対象とする全国健康保険協会(協会けんぽ)が20年度の保険料率を決めた。全国平均の料率は12年度以降、10.0%を保っているが、実際の料率は都道府県ごとに異なる。加入者1人あたりの医療費が多いほど料率が高くなる。最も高い県と低い県の料率をみると、20年度の差は6年前の4倍近くに広がる。協会けんぽ佐賀支部の試算によると、従業員300人で平均の標準報酬月額が30万円の企業の場合、企業の負担は最も料率が低い新潟県と比べて年621万円多い。従業員も同額を負担するため、1人あたりの収入は年2万円超少なくなる。佐賀支部は「企業の存続にかかわる重大事」として、格差が広がりにくい仕組みを求めている。保険料が高いと企業と個人の負担が増す。大和総研の神田慶司氏は「保険料率が高い地域ではその分、企業の投資や個人消費に回らなくなり、地域経済にマイナスだ」と指摘する。高齢化が進む中で医療費を抑えるには、医療費がかさみやすい生活習慣病の予防などが欠かせない。20年度の保険料率が最も低い新潟県は、生活習慣病を予防するための健診の受診率が高い。実施体制を備えた健診機関と協力して事業所に受診を呼びかけている。都道府県ごとに保険料率を定めるのは、地域ごとに医療費の抑制を促すためだ。協会けんぽは09年度に全国一律から都道府県別の料率に切り替え、格差が急に広がらないよう経過措置を講じてきた。それが徐々に縮小されて19年度で終わり、20年度は一段と格差が広がることになった。企業は赤字なら法人税の負担はなくなるが、社会保険料は業績にかかわらず払う。協会けんぽの料率には65歳以上の高齢者医療制度を支えるための「仕送り分」を含む。19年度は1.73%の介護保険料、18.3%の厚生年金保険料を加え、中小企業の社会保険料は平均で計30.03%となった。

*12-3:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200228&ng=DGKKZO56129440X20C20A2EE8000 (日経新聞 2020.2.28) 窓口負担のゆくえ(下) 高齢者「2割」 どこまで 現役世代の重荷を左右
 「原則2割負担にすることが必要ではないか。対象を絞ると効果が限定的になる」。厚生労働省が27日、都内で開いた社会保障審議会(厚労相の諮問機関)の医療保険部会。75歳以上の高齢者の医療費の窓口負担の引き上げを巡って議論が交わされた。現役世代が公的医療で支払う窓口負担は診察でかかった医療費の3割。ただ75歳以上の高齢者は原則として1割で、現役並み所得のある人のみが3割を負担している。政府の全世代型社会保障検討会議が2019年12月にまとめた中間報告では「22年度までに、75歳以上であっても一定所得以上なら負担割合を2割とする」と明記した。これを受け、厚労省では2割負担とする人の所得水準を線引きする議論を進めている。年40兆円を超す医療費の財源は、主に現役世代が払い込む保険料が49.4%、税金などの公費が38.4%だ。患者負担は11.6%。重い病気やけがをした人の負担を抑えるために月ごとの自己負担に上限を設ける高額療養費制度があるため、窓口負担割合が原則3割でも全体でみると低い水準に抑えられている。国際的に見ると、日本の医療の自己負担は比較的軽い。経済協力開発機構(OECD)によると、家計の最終消費支出に占める医療費負担の割合は2.6%でOECD平均(3.3%)を下回っている。一方、医療支出に税や保険料といった公的な財源が占める割合は84%で加盟国で3番目に高い。医療費は高齢になるほど高くなる傾向にある。高齢者が増え続けるなかで負担の仕組みを変えない限り、現役世代が支払う保険料や税金を上げ続けるしかない。実際、大企業の社員が入る健康保険組合の平均保険料率は上昇する一方だ。19年度は9.2%(これを労使折半)で、22年度には9.8%になると見込む。75歳以上の負担割合に新たに2割の区分を設けるのは、こうした現役世代の負担増をやわらげる狙いがある。ただし、対象者が少なければ、現役世代が背負う荷を軽くする効果は小さくなる。高齢者の負担を増やす改革が骨抜きになれば、いずれ必要になるのは「給付の抑制」(厚労省幹部)だ。例えば、外来で医療機関を受診する際に一律で数百円を支払う「ワンコイン負担」。全世代型社会保障検討会議で検討されたものの、導入は見送られた。医療費の負担などを定める健康保険法は02年の改正時に「将来にわたって7割の給付を維持する」とする付則をつけた。ワンコインが追加で生じると自己負担が3割を超え、この付則に反することになる。日本医師会などはこれも論拠に定額負担の導入に強く反対してきた。ただし現役世代に過度な負担を求め続ければ、付則を見直し、3割という窓口負担の「上限」を突破せざるを得ない日がやってくる。「上限3割」という医療保険制度の基盤を少しでも長く維持するためにも、高齢者の負担の見直しを着実に進めていく必要がある。奥田宏二、新井惇太郎が担当しました。

*12-4:https://digital.asahi.com/articles/ASN2W7GWCN2WUTFL00W.html (朝日新聞 2020年2月28日) 75歳以上の医療費どうなる 現役世代負担増の可能性も
 75歳以上が診療所や病院の窓口で払う、医療費の自己負担割合の引き上げをめぐる具体的な議論が27日、始まった。今は原則1割で一定の所得があれば3割だが、政府は昨年末の全世代型社会保障検討会議の中間報告で、2割の区分を新設する方針を表明。その対象とする所得の線引きだけでなく、3割負担の対象を広げるかも焦点になる。75歳以上は後期高齢者医療制度の対象で、約1700万人いる。現役並みの所得があるとして3割負担になるのは、単身世帯なら年収約383万円以上、課税対象となる所得が145万円以上の場合。政府は、この基準の見直しも検討項目に盛り込んだ。少子高齢化で医療費の増加が課題になる中、自己負担を増やすことで、医療制度を支える現役世代の負担を軽くする狙いがある。ところが27日の社会保障審議会部会では、3割負担の人を増やすと、逆に「現役世代の負担増になりかねない」との指摘が出た。後期高齢者医療制度では、1割負担の人の医療費は半分が公費で賄われる一方、3割負担の人の医療費は公費負担がなく、その分は現役世代の保険料で賄っている。そのため3割負担の人が増えれば、公費負担は軽くなるが、現役世代の負担は増える構図だ。この点をどう考え、実際に所得基準を見直すかが論点になる。一方、新設する2割負担の対象規模をめぐっては、「『原則2割』に」(経済団体)、「乱暴ではないか」(日本医師会)などと意見が割れた。政府内でも、財務省などは「半分以上を2割負担に」との主張が根強いが、厚生労働省は「75歳以上は所得が減り、医療費がかかる。多くの人に2割負担を求めるのは非現実的だ」(幹部)と慎重だ。政府は6月の「骨太の方針」までに具体策を決める。

<クルーズ船による観光は高齢化社会のトレンドなのに・・>
PS(2020年3月6日追加): 米大型クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」の姉妹船「グランド・プリンセス」に、新型コロナに感染して死亡した高齢男性が乗っていたため、*13-1のように、カリフォルニア州のニューサム知事の要請を受けて沖合に停泊し、検査キットをヘリコプターで運んで船内で数時間のうちに検査を終えたそうだ。日本も乗船者全員を速やかに検査し、結果に応じた対応をとっていれば、船内隔離は成功していたのにと思う。
 そのような中、*13-2は「①沖縄ツーリストが観光客減による経営悪化を受け、社員の4割以上に当たる最大250人の計画的休業に踏み切った」「②同社の計画的休業は、新型コロナによる感染拡大が企業経営を直撃し、自助努力だけでは立ち行かない深刻な局面に入ったことを意味する」「③厚労省は雇用調整助成金の特例を感染拡大で売り上げが落ちた企業にも幅広く適用し、イベント自粛で従業員を休ませた場合でも適用するので周知を徹底し経済的停滞感を払拭に努めなければならない」としている。しかし、クルーズ船への対応で「さすが日本の医療は信頼できる」という評判をとっておけば、一時的に沈んだとしても日本の観光産業の今後は明るかったのに、ピンチをチャンスに変える方法も考えずにクルーズ船の入港を拒否し、政府助成に頼ろうとする発想では今後の回復もおぼつかないだろう。
 
*13-1:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO56464480W0A300C2000000/ (日経新聞 2020/3/6) 米クルーズ船、沖合で乗客乗員の検査開始 キットを空輸
 新型コロナウイルスに感染して死亡した高齢男性が搭乗していた米大型クルーズ船「グランド・プリンセス」が5日までに、当初の予定を変更して出港地の米サンフランシスコ沖合まで戻った。男性と同じ時期に乗船していた約20人に感染の兆候がある。同船は港に接岸せず、米当局は検査キットをヘリコプターで運び込んで実態調査を始めた。グランド・プリンセスは米カーニバルが運航し、新型コロナの集団感染が発生して多数の乗客を横浜港で隔離した「ダイヤモンド・プリンセス」の姉妹船に当たる。カーニバルなどによると、死亡した男性は2月にグランド・プリンセスに乗船した。同船は2月下旬に乗客の大半をサンフランシスコで入れ替えてハワイに向かったが、途中で男性の感染と死亡が判明。検査のためにメキシコの手前で引き返し、サンフランシスコに向かっていた。4日に記者会見した米カリフォルニア州のニューサム知事によると、乗客・乗員21人に感染の兆候がある。また、米メディアによると、死亡した男性と同時に搭乗していた約60人が現在も乗船している。5日朝、100人未満を対象に米疾病対策センター(CDC)などが検査を始めた。グランド・プリンセスは当初、サンフランシスコ港に直接戻る予定だったが、ニューサム知事などの要請を受けて沖合に停泊して検査を実施する方針に切り替えた。取材に応じたカリフォルニア州公衆衛生局の担当者によると、空輸したキットを使って船内での検査を数時間で終え、キットをサンフランシスコ郊外の同局の拠点に運んで感染の有無を調べる。米国では、ダイヤモンド・プリンセスの集団感染に対する日本政府の対応を批判する声が出ていた。米ワシントン・ポスト(電子版)によると、米上院が5日に開いた公聴会で米国土安全保障省の幹部は日本の隔離が効果的であれば感染拡大を防げたと発言した。だが、グランド・プリンセスも「洋上隔離」が長期に及べば、同様に問題となる可能性がある。

*13-2:https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/542929 (沖縄タイムス社説 2020年3月5日) [新型肺炎 観光直撃]雇用守る有効な対策を
 県内旅行業大手の沖縄ツーリスト(OTS)は、観光客減による経営悪化を受け、社員の4割以上に当たる最大250人の計画的休業に踏み切った。観光分野で沖縄経済を支えてきた同社の計画的休業は、新型コロナウイルスによる感染拡大が企業経営を直撃し、もはや自助努力だけでは立ち行かない深刻な局面に入ったことを示している。厚生労働省が休業手当の一部を補助する雇用調整助成金の対象を拡大したことを受けたもので、休業期間中の給与は満額支給するという。OTS以外にも観光関連産業を中心に、従業員の休業を余儀なくされる企業が相次いでいる。沖縄観光は逆風の真っただ中にある。県によると2月時点で、海外と県内を結ぶ航空路線は前年同月比で73便減り、クルーズ船寄港も56隻が中止になった。日韓関係の悪化や香港の情勢不安によるインバウンド(訪日観光客)減少に続き、新型コロナに伴う中国団体客、さらに国内客の旅行マインドの冷え込みで、出口が見えない状況が続いている。影響は旅行業やホテルなどの宿泊施設にとどまらず、観光バス、飲食業や行楽施設など幅広い業界に広がっている。本土では、中国客のキャンセルを受けた老舗旅館、食品製造業者が破綻に追い込まれるケースが出てきている。県内では倒産は発生していないものの、長期化すれば、持ちこたえられない会社も出てくるのではないか。
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 体力の弱い中小零細企業や自営業者への支援に猶予はない。厚労省は雇用調整助成金の特例を感染拡大で売り上げが落ちた企業にも幅広く運用。イベントの自粛で従業員を休ませた場合でも適用する。周知を徹底し、経済的停滞感を払拭(ふっしょく)するよう努めなければならない。政府は近く2700億円を超える第2弾となる緊急対応策をまとめる。くらし全般を覆う不安を少しでも解消することが、喫緊の課題だ。自民党がまとめた提言には「コロナ対策特別貸付」の創設、観光業へのクーポンやポイント発行などを通じた支援、休校措置で休業せざるを得なくなった個人事業主や非正規雇用者への支援が盛り込まれている。野党と協力して検討を加速してほしい。感染の抑止と経済対策を両輪として、政府には全力を尽くしてもらいたい。
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 沖縄観光コンベンションビューローの委員会は、感染拡大が及ぼす今後3カ月の影響について、入域観光客数が前年同期と比べ152万人減って、県内消費額も1024億円減少すると推計している。現在の状況が続けば、2001年の米同時多発テロ後の被害を上回る。雇用悪化への懸念が高まり、長期的な景気後退への分水嶺(れい)に立っている。目前の危機を直視し、政治主導による踏み込んだ対策が必要だ。取り得る施策を総動員し、乗り越えなければならない。

<休職する保護者の支援範囲について>
PS(2020年3月7、8、9、14日追加):*14-1・*14-2に、「①COVID19の拡大による全国一斉休校で、子のために休職する保護者の所得減少を補償するため、正規・非正規を問わず休職した保護者を対象に新助成金制度を創設する」「②従業員を休業させた企業に支払う雇用調整助成金による支援を1月までさかのぼって実施する」「③フリーランス(個人事業主)や自営業者は対象にならないため、怒りの声が上がった」「④仕事を休んだ従業員に給料を全額払った企業を対象に正規、非正規雇用を問わず、1人当たり日額上限8,330円の助成金を払う」「⑤医療態勢を強化する」などが書かれている。
 私は、①②③④について、“多様な働き方を後押しする”として、労働基準法や男女雇用機会均等法による最低保障すらされない非正規やフリーランスを増やすことにはずっと反対してきた。しかし、正規雇用の就職先を探してもそういう仕事が見つからないため仕方なく非正規・フリーランスの仕事を選択したのではなく、自分の都合で非正規・フリーランス・自営業などを選択した人は自己責任が当然であり、自ら所得補償保険等に入っておくべきだったのである。そのため、「国の意思決定が科学的根拠もないのに行われ、損失を被ったので損害賠償すべきだ」と考える人は、裁判で争うのが筋であって、他の人が納めた血税の配分をねだるのはおかしい。また、⑤については、徹底して速やかにやるべきで、遅すぎたくらいだ。
 なお、*14-3のように、少子化対策・生産性向上・地方活性化の三つの課題を中心にこれまでの対応策などを検証して骨太の方針に反映させるそうだが、生産性の向上には人材の質の向上(≒教育+On the job training)が重要な役割を果たすため、“少子化対策”は単に出生数を増やすために金をばら撒けばよいわけではない。また、地方活性化には、産業構造を見据えた効果的な地方への投資が不可欠である。
 *14-4は、新型コロナ対策で公立小中学校が一斉休校となったことに関して、「⑥休校2週間をどう過ごすのか」「⑦保護者からストレスをため込むことを心配する声」「⑧図書館は席に着いての読書や学習などは控えるよう呼び掛けている」「⑨学習塾も休校期間中は在宅学習」「⑩体を動かさないから寝付きが悪い」「⑪休校期間の基本は自宅で過ごすを守ってもらう」と記載しているが、⑥⑦については、前の学年で使った主要科目の教科書を通しで読んで理解し、時間が余ったら次の学年で学習する主要科目の教科書を予習しておくのがよく、私は、春休みにはそうしていた。そうすれば、前の学年で学んだことを理解した上で次の学年に進むことができるからだ。⑧⑨⑪は、自宅の環境によるので、自宅で落ち着いて勉強や読書ができる人はそうすればよいが、自宅では落ち着かない家庭は臨機応変にするしかない。⑩については、頭を使うこともエネルギーを使うため、勉強や読書をすれば眠れる筈だ。ただ、運動も大切なので、家の手伝いをしたり、犬を散歩に連れて行ったり、学校に行って鉄棒の練習をしたり、走ったりすればよく、遊ぶことだけが運動ではないので、子どもを甘やかしすぎるのはむしろよくない。それどころか、勉強もさせずに子どもを甘やかしていると、科学的思考もできず、高齢者への思いやりもない自己中の人間になるため、親の顔が見たいような人間に育てないよう注意すべきだ。
 *14-5のように、高校で文理をコース分けして数Ⅲ(微分・積分)を学ばない人を80%近く作ることや大学で理・工・農・医・薬学などを専攻する理系学生の割合が全体の約26%にすぎないことは、論理的・科学的思考力に欠ける人材を数多く作り、労働生産性低迷の要因になっている。実は、経済学も行動学・微分・積分・統計学を通じてミクロとマクロが繋がっているのだが、ミクロとマクロは別物だと断じる経済学者は多く、誤った経済政策の温床となっている。そのため、「⑫高校段階での文理コース分けを止めて全ての生徒が数Ⅲまで学べようにすること」「⑬(殆どの人が高校を卒業する時代に合わせて)初等~中等教育のカリキュラムを合理化し、数Ⅲまで十分に学べるようにすること」「⑭初等・中等教育段階から理数系学問の面白さを生徒に伝えられるようにすること」は必要不可欠である。
 PCR検査力には問題がなかったのに新型コロナに対する日本の検査数が海外と比較して少ない理由を、日経新聞が2020年3月12日、*14-6のように、「⑮早期発見できても早期治療に繋がらないから」「⑯病気の特徴や広がりなどの感染の全体像をつかむ積極的疫学調査で患者を検査して治療する医療行為ではなかったから」「⑰公衆衛生の発想は感染防止策を探るなど病気から社会全体を守ることで、ロシュの検査キットを使って国内の民間会社が検査をし出すと性能のばらつきで疫学調査に最も大切なデータの収集が難しくなるから」などと記載していた。しかし、新型コロナの治療法の候補も多くなっているため、⑮は誤りだし、疫学調査はサンプル調査で全体を推計することが可能なため、⑯のように国立感染症研究所が積極的疫学調査をしているからといって、国内の民間検査会社がロシュの検査キットを使ってPCR検査をやってはならない理由にはならない。むしろ、多く検査した方が重症化率・死亡率が正確に出る上、治療法も考えやすいのだ。さらに、⑰の「公衆衛生の発想は感染防止策を探るなど病気から社会全体を守ることで、一人一人の患者を治療することではない」というのも、学問の自由から公衆衛生もいろいろな調査をすることができるため、決めつけである。例えば、日本公衆衛生雑誌の2020年2月号には、「要支援高齢者のフレイルと近隣住民ボランティアのソーシャル・キャピタルの関連」「幼児を持つ親の家族のエンパワメント尺度の開発」「高齢者の自立喪失に及ぼす生活習慣病、機能的健康の関連因子の影響:草津町研究」等の論文が掲載されており、治療や予防のために研究をするのであって、研究のために治療を犠牲にするという発想はない。つまり、⑮⑯⑰は、陸軍病院が発祥の国立感染症研究所と厚労省の主張であり、公衆衛生一般の発想ではない。そのため、(たぶん文系の)新聞記者も、分野によって担当を分けて日本公衆衛生雑誌くらいの科学誌は普段から読んでおいて記事を書かなければ、誤った記事を書いて有害無益になるのである。

*14-1:https://www.nishinippon.co.jp/item/n/588268/ (西日本新聞 2020/3/1) 安倍首相、休職保護者の所得補償を表明 新型肺炎対策第2弾策定へ 
 新型コロナウイルスによる肺炎(COVID19)拡大を受け、安倍晋三首相は29日、首相官邸で初めて記者会見した。全国の小中高校、特別支援学校に一斉の臨時休校を要請したことに理解を求め、子どものために休職する保護者の所得減少を補償する新たな助成金制度の創設を表明。従業員を休業させた企業に支払う雇用調整助成金による支援を、特例的に1月までさかのぼって実施するとした。首相は、卒業や進学、進級の節目を控えた時期に一斉休校を要請したのは「断腸の思い」と発言。発表が唐突すぎるとの指摘が出ていることに対し、「十分な説明がなかったのはその通りだが、責任ある立場として判断をしなければならず、時間をかけているいとまはなかった。どうか理解をいただきたい」と述べた。新型肺炎の現状については、専門家の見解を基に「今からの2週間程度、感染拡大を防止するため、あらゆる手を尽くすべきだと判断した」と説明。正規、非正規を問わず休職した保護者を対象にする新助成金制度をはじめ、本年度の予備費を活用した緊急対策の第2弾を今後、10日間程度でまとめる考えを示した。医療態勢の強化では、3月の第1週中にウイルス検査に医療保険を適用するとともに、時間を15分程度に短縮できる新たな簡易検査機器を月内に導入する見通しを明らかにした。新型肺炎にも一定の有効性が認められている新型インフルエンザ治療薬「アビガン」など三つの薬を使用し、治療薬の早期開発につなげていくとした。終息に向け一刻も早い立法措置が必要とし、野党にも協力を依頼したいと話した。今夏の東京五輪・パラリンピックを予定通り行うかを問われ、「アスリートや観客にとって安全、安心な大会となるよう万全の準備を整えていく」と答えた。首相は「道のりは予断を許さない。大変な苦労を国民の皆さまにおかけするが、お一人お一人の協力を深く深くお願いする」と頭を下げた。

*14-2:https://digital.asahi.com/articles/DA3S14390313.html (朝日新聞 2020年3月5日) 休業へ助成なし、フリーランス悲鳴 多様な働き方推進、政権の姿勢と矛盾 新型コロナ
 安倍政権が打ち出した新型コロナウイルスの感染対策に対し、企業に雇われずに働くフリーランス(個人事業主)が怒りの声を上げている。政権は臨時休校に伴って仕事を休んだ保護者の支援策を発表したが、フリーランスは対象にならなかった。「多様な働き方」を推進する政権はフリーランスを保護する姿勢を示してきたにもかかわらず、矛盾する対応に与党内からも見直しを求める声が出ている。校正の仕事を自宅で請け負う埼玉県の女性(41)は頭を抱える。安倍晋三首相が突然表明した「全国一斉休校」の要請で小学5年、2年の男児の世話に追われ、仕事に専念できなくなったからだ。毎月8万円ほどの収入が欠かせないが、「今月は稼げそうにない。4月も引き続き一斉休校なんてことにならないか不安です」。厚生労働省は2日、仕事を休んだ従業員に給料を全額払った企業を対象に正規、非正規雇用を問わず、1人当たり日額上限8330円の助成金を出す新制度を発表した。だが、フリーランスや自営業者が対象外とされたことに、女性は「納得できない」と憤る。「自営やフリーは自己責任なのか。国は多様な働き方を後押しするなら、多様なセーフティーネットも用意するべきだ」と訴える。カメラマンや編集者、俳優などフリーランスの働き手は国内300万人超とされる。だが、労働法制は会社と雇用契約を結んだ働き手を前提とするため、フリーランスはしばしばその網からこぼれ落ちてしまう。加藤勝信厚労相は参院予算委で「フリーランスの仕事は多様で、このスキーム(枠組み)を適用することは非常に難しい」と答弁。安倍首相は「その声をうかがう仕組みを作り、強力な資金繰り支援をはじめ対策を考えたい」と述べた。政府が想定するのは、5千億円の緊急貸し付け・保証枠の活用だが、これは訪日中国人客らの激減などで打撃を受けた観光産業などの支援を念頭に置く。あくまでも返済が必要な「融資」であり、金融機関の審査も受ける。政府の対応に与党内からも不満が出ている。公明党の斉藤鉄夫幹事長は4日、菅義偉官房長官と面会し、「フリーランスは資金繰り(支援)ではとても持たない」などとして対応を求めた。斉藤氏によると、菅氏は「踏み込んでやる」と答えたという。法政大の浜村彰教授(労働法)は「現行制度の枠組みでは、フリーの人たちに救いの手を差し伸べるのは難しい。セーフティーネットを整えないまま、こうした働き方を政策として進めていいのかという問題が提起されている」と指摘した。

*14-3:https://digital.asahi.com/articles/DA3S14390354.html (朝日新聞 2020年3月5日) 少子化対策を検証へ
 内閣府は4日、西村康稔経済再生相が主宰する有識者懇談会「選択する未来2・0」を設置すると発表した。少子化対策と生産性の向上、地方活性化の三つの課題を中心にこれまでの対応策などを検証し、今夏とりまとめる骨太の方針に反映させることを目指す。

*14-4:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/497485 (佐賀新聞 2020.3.8) <新型コロナ>休校2週間どう過ごす ストレスや運動不足、保護者は心配
 新型コロナウイルス対策で佐賀県内の公立小中学校が一斉臨時休校となって5日が過ぎた。放課後児童クラブ(学童保育)を利用しない児童の多くは、家で過ごすことになり、保護者からはストレスをため込むことを心配する声も上がる。学校側は不要な外出は控えるよう求めているが、約2週間に及ぶ「在宅」生活に保護者らは「子どもがかわいそう」「どう過ごせばいいの」と悩ましげだ。県こども未来課によると、県内では通常、小学生の4人に1人が学童保育を利用している。臨時休校中の利用状況は「通常の半分くらい」といい、大半の児童は自宅や親族の家で毎日過ごしていることになる。学童保育の利用が懸念したほど多くない現状に対し、「保護者には臨時休校の目的を理解してもらっている」と同課の担当者。ただ、学童保育の現場の支援員は「家に居ることが飽きた子や友達と会いたい子など、今後は増えるのではないか」とみている。休校中の過ごし方について行政や学校は「大勢が集まる場所への外出は避け、基本的に自宅で過ごす」ことを求めており、学校以外で子どもが多かった場所も軒並み利用を制限している。市町の図書館は本の貸し出しは行うが、席に着いての読書や学習など長時間の滞在は控えるよう呼び掛ける。学習塾も「休校期間中は在宅学習にする」(公文教育研究会)など休講にしている所が多い。6日昼の武雄市の商業施設。県外から祖父母の所に遊びに来ていた2人の小学生の母親(35)は「昨日までほとんど家にいて体を動かさないから寝付きも悪く、『食っちゃ寝』の繰り返しで生活のリズムが崩れている。ストレスがたまっているようだし、土日はどこかに連れて行ってあげたい」と話す。小学4年の姪(めい)を連れた伊万里市の女性(51)は「息抜きをさせようと思ってここまでドライブ。何だか子どもがかわいそうで」と同情した。子どものストレス対策について県教委は「配慮が必要な児童生徒への家庭訪問やスクールカウンセラーの派遣など、各現場で個別に対応する」としている。運動や体力づくりも自宅で行うことを求め、休校期間はあくまでも「基本は自宅で過ごす」を守ってもらう考えだ。国立病院機構嬉野医療センター感染対策室の重松孝誠・感染管理認定看護師は「原則は外出しないこと」とした上でこう述べる。「元々、元気に遊んでいた子が1、2週間も家でじっとしていると、免疫力に影響する基礎体力を低下させる心配もある。大人の観察が行き届き、手洗いなどの対策をしっかり行うのであれば、少人数の友達と外で気分転換程度に遊んでもいいのではないか」

*14-5:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200309&ng=DGKKZO56523740X00C20A3CK8000 (日経新聞 2020.3.9) 高校の文・理コース分け 労働生産性低迷の要因に、関西学院大学長 村田治 数学成績と相関/AI理解に数3必須
 村田治・関西学院大学長は、国際学力テストの数学の成績と国の経済成長率や生産性は正の相関関係にあるのに、数学の成績がトップクラスの日本が当てはまらないのは、高校の2、3年で文系・理系に分かれ、数学の学習をやめる生徒が多いからだと指摘する。昨年12月に発表された経済協力開発機構(OECD)の「生徒の学習到達度調査(PISA2018年)」で、わが国の読解力が参加国・地域の中で15位(OECD加盟国中では11位)に転落したことが大きなニュースになった。読解力のスコアが下がったこと自体は残念であるが、数学や科学のスコアはそれぞれOECD加盟国では1位と2位を維持した。
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 読解力、数学、科学の3つのリテラシーの中で、これからの世界において特に重要と考えられるのが数学リテラシーである。昨年3月に経済産業省が発表した報告書「数理資本主義の時代」において、「第4次産業革命を主導し、さらにその限界すら超えて先に進むために、どうしても欠かすことのできない科学が三つある。それは、第一に数学、第二に数学、そして第三に数学である!」とうたわれている。
また、昨年6月に統合イノベーション戦略推進会議の報告書「AI戦略 2019」が発表されたが、人工知能(AI)や情報科学の理解には微分、線型代数、統計学の数学能力が欠かせないといわれている。数学に絞ると、OECD加盟国中で09年は4位、12年は2位、15年は1位、18年も1位とトップクラスにある。この傾向は03年から変わらず、数学の学力は15年間トップクラスを維持している。実は、国際学力テストの数学スコアと経済成長率等の間には正の相関関係が観察されるとの研究成果がある。1980年代以降、経済成長論の分野では人的資本ストックの水準が研究開発やイノベーションを通じて技術進歩を促し、経済成長率や生産性成長率を上昇させられるかどうかという実証研究が盛んに行われた。多くの研究は人的資本の代理変数として教育の量的指標である初等・中等教育から高等教育に至る就学年数を用いたが、必ずしも確定的な実証結果を見いだせずにいた。これに対して、米国の経済学者ハヌシェックらは、教育の質が重要だとしてPISAなどの国際学力テストのスコアを用いて経済成長率等への影響を分析した。その結果、数学や科学の学力が経済成長率や生産性成長率にプラスの影響を与えることを見いだした。この関係を簡単な図で示したのが左図である。図の横軸はOECD主要加盟国の03年のPISA数学スコアの国別平均値を示しており、縦軸は16~18年の労働生産性成長率の3カ年平均値を表している。03年のPISA数学スコアと16~18年の労働生産性成長率の3カ年平均値の関係を見るのは、PISAは15歳(高校1年生)で受けるため、生徒たちが社会に出て活躍するまでのタイムラグを考慮したためである。図からわかるように、数学スコアと労働生産性成長率の間には正の相関が見いだされる。他方、わが国の労働生産性は18年のデータによるとOECD加盟国中21位、16~18年の労働生産性の平均成長率は約0.56%とOECD加盟国中20位である。
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 このように、わが国の数学の学力はOECD加盟国でトップクラス(03年以降の6回のPISAの数学の平均順位は3位)にありながら、近年の労働生産性、労働生産性成長率は下位に低迷する。これはPISA数学スコアと労働生産性成長率の正の相関関係から、わが国が大きく逸脱していることを意味する。なぜ、わが国はPISAの数学スコアがトップクラスにありながら、労働生産性成長率は下位にあるのだろうか。この謎を解く鍵はPISAの実施年齢にあると考えられる。PISAは高校1年生が対象となる。従って、高校1年生までは、わが国の高校生の数学リテラシーはOECD加盟国でトップクラスであることは間違いない。だが、多くの高校は早ければ2年生、遅くとも3年生になると文系と理系にコースを分ける。13年3月の国立教育政策研究所「中学校・高等学校における理系選択に関する研究最終報告書」によると、高校3年生全体に占める理系コースの比率は約22%である。また、文部科学省の「15年度公立高等学校における教育課程の編成・実施状況調査」によると、数学3を履修している生徒の割合は21.6%にすぎない。さらに19年度「学校基本調査」によると、大学で理学、工学、農学、医・薬学などを専攻する理系学生の割合は全体の約26%である。高校1年生段階まではOECD加盟国でトップクラスの数学リテラシーを誇っていたわが国の高校生は、その後、文系と理系のコース分けによって、80%近くが数学を学ばなくなってしまう。このため、十分な数学リテラシーを伴った人的資本の蓄積が進まず、わが国経済において技術進歩やイノベーションが起こりにくく労働生産性上昇率が鈍化していると推察される。一刻も早く、高校段階での理系と文系のコース別編成を止め、全ての生徒が数学3まで学べようにすべきだと考える。さらに、AIの理解に必要な微分が数学3の範囲であることを考慮すると、現在の高校段階での文理の区別を止めることは喫緊の課題である。そのためには、初等・中等教育段階から数学それ自体の面白さを生徒に伝える工夫も必要となる。

*14-6:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200312&ng=DGKKZO56692180S0A310C2EA1000 (日経新聞 2020.3.12) 「疫学調査」優先の誤算 、新型コロナ検査数、日本少なく 不安と不満生む
 新型コロナウイルスに対する日本の検査数はなぜ海外に比べて少ないのだろう。感染の有無をみるPCRの検査力に問題があったわけではない。厚生労働省が当初、医療行為としてではなく、感染拡大を抑える「疫学調査」と位置づけたからだ。ただ、思うように封じ込めはできず、世界でも感染が拡大。専門家と一般の人々の認識にずれが生じ「過少検査」への不安と不満が生まれた。がんにしろ生活習慣病にしろ、現代医療のイロハは「早期発見」だ。早い段階で診断がつけば治療の選択肢も増え、症状が悪くなったり死に至ったりするリスクは減る。
●公衆衛生の発想
 今回の新型コロナウイルスによる肺炎のように治療薬のない病気だと話は違ってくる。早期発見できても必ずしも「早期治療」にはつながらない。医療としてみれば検査をする意味は薄れる。PCR検査を担ってきた国立感染症研究所は3月1日、脇田隆字所長名で「市民の皆様へ」と題した文書をホームページ上に公表した。「検査数を抑えることで感染者数を少なくみせかけようとしている」という批判に対し、事実誤認だと反論した。この文書に「積極的疫学調査」という医学用語が何度も登場する。厚労省や感染研が検査を慎重に進めた理由を知るキーワードだ。疫学調査とは新しい感染症が発生した際、感染者や濃厚接触者、疑いがある人の健康状態を調べ、病気の特徴や広がりといった感染の全体像をつかむ調査だ。患者一人一人を検査して治療する医療行為ではなく、感染防止策を探るなど病気から社会全体を守る公衆衛生の発想に基づく。だからこそ感染研は必要な試薬や装置を組み合わせて自前で確立した検査手法にこだわった。中国・武漢をはじめ世界に供給していた製薬世界大手ロシュの検査キットを使って国内の民間会社が検査をし出すと、性能のばらつきで疫学調査にとって最も大切なデータの収集が難しくなる。これが検査能力の拡大を阻むボトルネックとなった。「検査漬け」という言葉があるように、日本では誰でも病気になったら医師の判断で血液検査や画像検査を受けられる。国民皆保険なので自己負担も少ない。これほど臨床検査のハードルが低い「検査大国」は珍しい。ウイルスの国内侵入を防ぐ水際対策は不発に終わり、ヒトからヒトへの感染例が続く。日に日に増す不安から、検査慣れした日本社会では、なぜ新型コロナウイルスへのPCR検査が受けられないのかという疑問が、やがて不信、不満へと変わっていった。
●早く適正検査に
 韓国がドライブスルー方式を活用し積極的にPCR検査を実施する様子が伝わると、検査の目的をきちんと伝えてこなかった厚労省や感染研に対し「感染隠し」の疑念が生まれた。政治介入もあったのだろう。厚労省は2月半ば、臨床検査として保険適用にする方向にかじを切らざるを得なくなった。ロシュが供給する試薬は臨床試験を経ていない研究用だが、感染研の手法と同レベルの性能であると「お墨付き」を与えた。3月6日から保険適用が始まった。新型コロナウイルスに対するPCR検査は医療行為の一環の臨床検査となった。しかし当面はかかりつけ医などが血液検査のように民間会社に直接委託するのではなく、全国約860カ所の「帰国者・接触者外来」の医師が検査の必要性を判断しなければならない。新型コロナウイルスに感染しても8割は軽症のまま回復する。肺炎の症状が確認されない段階で多くの人が検査を求めると、今の日本の医療体制では現場が混乱し重症患者への治療に支障をきたすことにもなりかねないとの懸念が医療関係者にはある。ただ早期発見の検査が阻まれる現状のままでは、社会の不安や不満はなかなか消えない。検査が広がり陽性者が早く見つかれば感染拡大を抑える効果も期待できる。未知の感染症に対する検査のあり方に正解はないが、早く過少検査を「適正検査」にしなければならない。

<社会保障のうちの介護保険制度とその財源>
PS(2020年3月9、10日追加):*15-1は、「①市区町村の99%が全国共通の要介護度判定を2次審査で変更し、同じ状態でも利用できるサービスが地域で異なる」「②自治体は独自の判断理由を住民に周知しなければ公平性が保てない」「③要介護度を上げる自治体が多く、財政負担が増す方向」「④国の指針は介護の手間を基準とし、病気の重さや同居人の有無を理由に変更はできないとしているが、家族介護が見込めると要介護度を下げる自治体もある」としている。
 しかし、*15-2のように、現在の介護保険制度は、65歳以上の第1号被保険者の保険料は所得に応じて市区町村が決め、その保険料は市区町村ごとに異なるため、要介護度判定に市区町村の考えが入るのは当然だ。ただし、40~64歳の第2号被保険者は加入している医療保険の算定方法に基づいて保険料が決まり、16の特定疾病が原因で要支援・要介護となった人にのみ支給される。40歳未満は保険料を納めない代わりに介護も受けられず、40~64歳は保険料は納めるが特定疾病以外では介護を受けられない。そして、65歳以上は所得の割に高い保険料を市区町村に収めながら、介護を受けるとつべこべ言われる。私は、介護保険制度は、複雑なだけで公平・公正でない制度を改め、年齢にかかわらず所得のある人はすべて所得に応じて保険料を支払い、介護が必要な時には遠慮なく介護を受けられる制度にすべきだと思う。そうすれば、出産、病児、障害児のケアなど40歳未満で介護が必要になった人も利用でき、多くの問題が解決する。
 にもかかわらず、「介護保険料の負担は重い」などと自己中なことを言う人も多いため、国民負担を増やすことばかり考えるのではなく、*15-3の世界需要の数百年分も存在するレアアースやメタンハイドレートなどの国有鉱物資源を速やかに採掘し、*15-4のような地熱発電所の積極的開発でエネルギー変換を行い、国は税収以外の収入を獲得して国民負担を減らすのがよいと思う。そのため、エネルギーは電力を主とし、*15-5のように、発送電分離を徹底して再エネ発電による電力を集めやすいシステムを早急に作る必要がある。ただし、全国で唯一の公的電力網を作れば、今度はそれが独占や既得権となって進歩が阻害されるため、地方自治体・鉄道会社・ガス会社・通信会社・電力会社などが地下等に電線を整備し、電力や送電に自由競争を導入してエネルギーコストを下げるのが、日本にとって必要不可欠なことである。
 昨年10~12月期の国内総生産(GDP)が実質で前期より1.8%(年換算7.1%)減ったのは、*15-6のように、新型コロナウイルスとは全く関係がなく、昨年10月の消費増税で個人消費が減ったからにすぎない。台風被害の影響を書くメディアも多いが、台風被害は有無を言わせず家屋や家電の消費を促すため、これを日本のGDPに取り込めないのは製造業が中国はじめ外国へ移転してしまっているという情けない結果だ。そして、製造業が外国に移転してしまった理由は、人件費の高騰・古い規制や習慣による支配・エネルギーの高止まり等々、産業政策の失敗の結果である。また、そういう将来性の薄い国がいくら金融緩和しても、企業が国内で設備投資を行う理由に乏しいため、国内投資は増えない。そのような中で、天災のように見える新型コロナウイルスは、メディアからそれらの本質的議論を隠した功労者になっている。


                  *15-2より
(図の説明:左と中央の図のように、介護保険の財源は、被保険者が支払った介護保険料50%、国25%、都道府県12.5%、市町村12.5%となっている。そして、右図のように、年金生活者の多い65歳以上の1号被保険者が財源の23%を支払っており、40歳未満は全く支払っていない。そのため、40歳未満も保険料を支払って介護保険に加入させるとともに、社会保障には国民負担だけでなく国有財産から得る収入を多く投入して負担を軽くすべきだ)

*15-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200307&ng=DGKKZO56519820W0A300C2MM8000 (日経新聞 2020.3.7) 要介護度 ばらつく認定、判定、99%の自治体が変更 独自の裁量 住民に見えず
「全国一律」という介護保険制度の前提が崩れている。サービスを受けたい人の要介護度の認定(総合2面きょうのことば)を巡り、市区町村の99%が全国共通の判定を2次審査で変更。申請件数に占める変更比率は自治体でゼロから41%までばらつきがあることがわかった。同じ身体状態でも利用できるサービスが地域で異なることになる。自治体は独自の判断理由を住民に周知しないと、公平性が保てなくなる。要介護度は介助が必要な度合いに応じ、軽い順に要支援1~2、要介護1~5の7段階。立ち上がるのに支えが要る程度なら要支援1、寝たきりの場合は要介護5に相当する。生活上の自律性や認知機能を問う全国共通の調査票に基づきコンピューターで判定。その後、個別事情を考慮し、医師などで構成する介護認定審査会が決める。審査会で議論する材料は自治体で異なる。要介護度を上げれば、利用できるサービス量や種類は増える。要介護5の場合、介護保険からの支給限度額は月約36万円で要介護1は約17万円。むやみに上げると介護需要が膨らみ、保険財政の負担が増す。不必要に下げれば適切なサービスを利用できない懸念が出る。日本経済新聞は厚生労働省に情報公開請求し、2次審査で判断を変えた比率の自治体別データを入手した。最新の2018年10~11月で100件以上を審査した904市区町村が対象だ。
●指針から逸脱も
892市区町村が要介護度を変えていた。変更率は平均9.7%。変更率が5%未満の自治体数は3割、10%以上は4割だった。77市区町で20%を超し、ばらつきが大きい。ゼロは12市町。多くの自治体で上げる事例と下げる事例が混在しているが、相対的に上げている自治体が多く、財政負担が増す方向に働いている。国の指針は介護の手間を基準とし、病気の重さや同居人の有無を理由に変更はできないとしている。だが、変更率が高い自治体では指針に合わない事例があった。変更率が35%と3番目に高い東京都国立市は大半が要介護度を引き上げていた。末期がん患者は一律に要介護5とする独自運用があるからだ。高齢者支援課は「容体が急変しても対応できるようにするためだ」という。1次審査より要介護度を引き上げる割合が30%超の自治体は埼玉県三郷市や三重県四日市市など8つ。千葉県銚子市も末期がんは要介護2以上にする慣習があるという。21%で要介護度を下げた埼玉県和光市の審査会委員は「家族介護が見込めると下げる」という。宮崎市や兵庫県西宮市も同居人の有無が影響している可能性があるという。変更率が41%で、下げた割合が33%弱の福岡県みやこ町は「調査票の特記事項にある事情を議論した結果」と述べた。日本介護支援専門員協会の浜田和則副会長は「自治体が独自基準を設けてもおかしくない」と指摘する。認定は市区町村の自治事務だからだ。
●住む場所が左右
問題は独自基準が明文化されておらず、審査も非公開である点だ。19年に長野市から埼玉県内に移った80代女性は要支援1から要介護1に上がった。親族は「住む場所でこれほど違うのか」と驚いた。NPO法人「となりのかいご」の川内潤代表理事は「独自基準があるなら住民に丁寧に説明すべきだ」と訴える。国は18年度、要介護度を維持・改善した自治体に交付金を手厚く配る制度を設けた。ニッセイ基礎研究所の三原岳主任研究員は「自治体の方針で変わる要介護度を指標にすると、交付金狙いで要介護度を下げようとする地域が出かねない」と語る。

*15-2:https://kaigo.homes.co.jp/manual/insurance/decision/ (LIFULLより抜粋) 介護保険の仕組み、保険料はどうやって決まるのか
(1)介護保険の仕組み
 介護保険とは、介護を必要とする人が少ない負担で介護サービスを受けられるように、社会全体で支えることを目的とした保険制度です。
*介護保険の対象となる人
 40歳以上の健康保険加入者全員が必須で加入(被保険者になる)します。40歳になった月(実際は、40歳の誕生日の前日)から保険料の支払い義務が発生し、それ以降は生涯に渡り保険料を支払うことになります。もし介護サービスが必要な要支援や要介護の認定を受けた場合、被保険者は収入に応じた自己負担割合で、その介護度に応じた介護サービスを受けることができます。ただし、介護保険サービスを利用する人になっても、介護保険料の支払いは続きます。要介護になったからといって、保険料支払いが免除されるというものではありません。介護保険サービスの利用料は、利用する本人は1~3割負担となっており、残りの費用は自治体が支払う形となっています。では、その財源はどのように調達しているのでしょうか。
(2)被保険者には2種類の区分がある
 介護保険の加入者は65歳以上の第1号被保険者と、40歳から64歳の第2号被保険者に区分されています。
 区分             第1号被保険者      第2号号被保険者
①年齢             65歳以上の人      40歳以上65歳未満の
                           公的医療保険加入者 
②介護保険サービスを      要支援・要介護の    16の特定疾病※が原因で
  利用できる人        認定を受けた人    要支援・要介護となった人
③保険料            所得に応じて市区    加入している医療保険の 
                町村が決める     算定方法に基づいて決まる                   
 第1号被保険者の場合、要介護状態になった理由が何であれ、介護保険サービスを利用できます。それに対して第2号被保険者がサービスを利用できるのは、厚生労働省が定める16種類の特定疾病が要介護状態の原因となった場合に限られます。そのため、たとえば事故などで要介護状態になったとしても、第2号被保険者は介護保険サービスを利用することはできないのです。
※16の特定疾病とは
・末期がん、関節リウマチ、筋萎縮性側索硬化症、後縦靭帯骨化症、骨折を伴う骨粗鬆症、初老期における認知症、パーキンソン病関連疾患、脊髄小脳変性症、脊柱管狭窄症、早老症、多系統萎縮症、糖尿病性神経障害・糖尿病性腎症および糖尿病性網膜症、脳血管疾患、閉塞性動脈硬化症、慢性閉塞性肺疾患、両側の膝関節または股関節に著しい変形を伴う変形性関節症
(3)介護保険料は健康保険料とともに給与天引き
 現役世代である第2号被保険者と65歳以上の第1号被保険者では、介護保険料の支払い方法も保険料の計算法も違います。40歳から64歳までのいわゆる現役世代、第2号被保険者の場合は、給料をもらっている人は、健康保険料と一緒に給料から天引きされます。保険料は、健康保険料・厚生年金保険料と同じように、標準報酬月額を使って計算します。
*標準報酬月額とは
毎年4月~6月の給与額を平均し、その平均した額を、標準報酬月額表の等級(報酬額の区分)にあてはめて決めるものです。その等級によって「健康保険料」「介護保険料」「厚生年金保険料」が決まるというわけです。保険料は、その年の9月から翌年の8月まで基本同じ金額を使用します。たとえば、東京都で4月~6月の給与の平均額が40万円だった場合、協会けんぽを例にとると、等級27(厚生年金の等級は24)の39万5,000円~42万5,000円の間に入ります。この範囲にあてはまる人の標準報酬月額は41万円となり、健康保険料と介護保険料をあわせた額は2万3,841.5円と決まります。この標準報酬月額表は、都道府県で異なり、また各健康保険組合でも異なるため、健康保険料・介護保険料・厚生年金の額は、自分がどこに所属しているかで変わります。なお介護保険料は、健康保険料・厚生年金保険料と同様に、原則、被保険者と事業主が同額ずつ負担します。
*自営業の場合は国民健康保険に上乗せして納付
自営業の場合、国民健康保険に加入をしていますので、国民健康保険料に上乗せして納付します。40歳になる年に、介護保険料の上乗せがない金額で先に国民健康保険料の納付金額の通知が届き、介護保険料については別途納付書が届きます。そのため、最初の年は納付を忘れないよう覚えておきましょう。なお、介護保険料の金額は自治体によって多少異なります。
(4)第1号被保険者の保険料は自治体ごとに異なる
 65歳以上である第1号被保険者の介護保険料は、自治体ごとに決められています。各自治体は、3年ごとに介護サービスに必要な給付額の見込みを立て、予算を組みます。その予算のうち、国が25%、都道府県と市町村が12.5%ずつ。そして27%が第2号被保険者の保険料、残りの23%が第1号被保険者の納める保険料となっています。
*介護保険料の基準額
 全員一律で同じ保険料にしてしまうと、収入によっては負担が大きくなってしまいます。そのため、所得基準を段階に分けて、それぞれの保険料率を掛け合わせて金額を決める定額保険料となっています。この所得段階は国の指針だと0.45倍~1.7倍までの9段階ですが、自治体によってはもっと細かい区分を使用しているところもあります。例えば東京都新宿区の場合では、段階区分は16段階となり、0.4倍~3.7倍まで料率に差をつけて公平性を保っています(※2019年4月1日時点)。第1号被保険者になると、保険料は基本的には年金から天引きされる「特別徴収」となり、年金の支払いにあわせて2カ月ごとに2カ月分が差し引かれます。ただし、年金の額が年額18万円に満たない場合は、「普通徴収」となり、納入書で支払うことになっています。また、第2号被保険者に扶養されているサラリーマンの妻などは、健康保険料を自分で納めていませんので、64歳までは扶養家族として介護保険料も支払っていません。ただし、65歳になり、第1号被保険者に変わるタイミングで、年金から介護保険料が天引きされるようになります。介護保険料は、居住している自治体によって金額が変わります。第2号被保険者の場合、入っている健康保険によっても金額は変わります。また、自分が第1号被保険者なのか、第2号被保険者なのかによって、金額の計算方法も納入の仕方も異なるのです。40歳になるとき、そして65歳になるときは注意が必要です。
監修者:森 裕司 株式会社HOPE代表、介護支援専門員、社会福祉士、精神保健福祉士、障がい支援専門員、医療ソーシャルワーカーを11年間経験後、ケアマネジャーとして相談援助をする傍ら、医療機関でのソーシャルワーカーの教育、医療・介護関連の執筆・監修者としても活動。企業の医療・介護系アドバイザーとしても活躍中。

*15-3:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO29216170Q8A410C1EA2000/ (日経新聞 2018/4/10)南鳥島のレアアース、世界需要の数百年分、早大・東大などが分析
 早稲田大学の高谷雄太郎講師と東京大学の加藤泰浩教授らの研究チームは、日本の最東端にある南鳥島(東京都)周辺の海底下にあるレアアース(希土類)の資源量が世界の消費量の数百年分に相当する1600万トン超に達することを明らかにした。詳細な資源量を明らかにしたのは初めて。レアアースを効率よく回収する技術も確立した。政府や民間企業と協力して採掘を検討する。レアアースはハイブリッド車や電気自動車、風力発電機などの強力な磁石、発光ダイオード(LED)の蛍光材料といった多くの最先端技術に使われる。だが、中国への依存度が高いのが問題視されてきた。日本の排他的経済水域(EEZ)に眠る資源を取り出すことができれば資源小国から脱却できる可能性がある。研究チームは、南鳥島の南方にある約2500平方キロメートルの海域で海底のサンプルを25カ所で採集し、レアアースの濃度を分析した。その結果、ハイブリッド車などの強力な磁石に使うジスプロシウムは世界需要の730年分、レーザーなどに使うイットリウムは780年分に相当した。研究チームはまたレアアースを効率的に回収する技術も確立した。レアアースを高い濃度で含む生物の歯や骨を構成するリン酸カルシウムに着目。遠心力を使って分離したところ、濃度は2.6倍に高められた。これは中国の陸上にある鉱床の20倍に相当する濃度だ。東大の加藤教授は「経済性が大幅に向上したことで、レアアースの資源開発の実現が視野に入ってきた」と強調する。レアアースを巡っては、日本は大部分を中国からの輸入に依存する。中国は全世界の生産量の約9割を握るため、価格の高騰や供給が不安定になる事態が発生してきた。一方、東大の加藤教授らは2012年に南鳥島周辺でレアアースを大量に含む可能性が高い泥を発見。14年には三井海洋開発、トヨタ自動車などと「レアアース泥開発推進コンソーシアム」を設立し、回収技術の開発に取り組んできた。研究成果は英科学誌サイエンティフィック・リポーツ(電子版)に10日掲載された。

*15-4:https://www.sankei.com/economy/news/150303/ecn1503030022-n1.html (産経新聞 2015.3.3) 日本も見習うべきか 「資源小国」から「地熱大国」へ変貌したアイスランド いまや電力輸出も視野
 世界最北の島国アイスランドは、地熱発電所の積極的な開発を続け、エネルギーを化石燃料の輸入に頼る「資源小国」からの脱却を果たした。いまや自国の電力需要は地熱などの再生可能エネルギーだけで賄うことができ、近年は電力の輸出にも関心を寄せる。日本も豊富な地熱資源量を持つとされるが、法規制などが障壁となり、アイスランドのような“地熱大国”への道のりは遠い。
               ◇
 首都レイキャビクから東に約20キロ。広大な火山の裾野にある同国最大のヘトリスヘイジ地熱発電所からは、猛烈な勢いで水蒸気がわき上がっていた。同発電所は約30万キロワットの発電と、約13万キロワット相当の熱水供給能力を持つ。同発電所は2006年に、レイキャビク・エナジー社が運転を開始した。同社の担当者は、「地熱はアイスランドの石油だ」とほほえんだ。発電に使用しているタービンは日本製だという。
◆かつては輸入頼み
 人口約32万人のアイスランドは、かつて典型的な資源小国だった。1973年の石油危機を機に、地熱の開発を本格化したのは「国内に石炭や石油などの天然資源がなかった」(グンロイグソン首相)ためだ。

*15-5:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200309&ng=DGKKZO56477670W0A300C2KE8000 (日経新聞 2020.3.9) 発送電分離の課題(下)系統運用、公的機関へ移行を、伊藤公一朗・シカゴ大学准教授(1982年生まれ。カリフォルニア大バークレー校博士。専門はエネルギー経済学)
<ポイント>
○法的分離では公平な送配電線利用は困難
○地域ごとに送配電会社設けるのは非効率
○災害や再生エネ見据えた全国系統運用を
 欧米諸国は約20年前に発送電分離を終えており、各国の経験やデータ分析結果が蓄積されている。その知見を基に日本政府の計画を検証すると、重大な懸念材料とさらなる改革が必要である点がみえてくる。本稿では、電力網のような公共的インフラ(社会基盤)を運用するうえで重要となる「独立性」と「網羅性」の2つのキーワードを柱に、論点整理と提言をしたい。現在の日本では電柱や電線といった送配電網の系統運用は、大手電力会社が地域独占的に手掛けている。例えばある時間帯に誰に送電線を使わせるか、どんな使用料金を課すか、どこに新規の送電線を引くかという決定は地域独占企業が担っている。だが大手電力会社は発電部門や小売部門も抱えている。そのため自社の利益追求の手段として、新規参入の発電事業者や小売業者が送配電網を利用することを制限したり、送配電網の利用料金を高く設定したりする懸念が生じる。この懸念を払拭するには系統運用の独立性を確保する必要がある。現行の政府案は法的分離と呼ばれる方式だ。大手電力会社は、自社の送配電部門を子会社化し、その子会社は持ち株会社の傘下に置かれる。そのうえで政府は監視と規制により、親会社と子会社の独立性を目指すという。しかし経済理論、各国の経験および学術的データ分析結果に鑑みると、この方法で独立性を確保できる可能性は非常に低い。第1に営利企業である大手電力会社は持ち株会社一体としての利益を追求するため、親会社と子会社のつながりが消える保証はない。第2に政府の監視と規制には「情報の非対称性」の問題がつきまとう。送配電網の運用では運用者しか知り得ない緻密な情報が付随する。また営利企業は情報を政府に示さないインセンティブ(誘因)がある。情報を直接持たない政府が適切な監視・規制をするのは難しく、監視精度を高めようとするほど莫大な税金が投じられることになる。以上の理由から欧米のほぼ全地域で法的分離は採用されていない。世界的な主流は、公的な第三者組織である独立系統運用機関(ISO=Independent System Operator)を設立し、送配電網の系統運用を完全移行する方式だ。大手電力会社には送配電網を運用する組織はなくなり、系統運用は公的組織に任せられる。同方式のもう一つの特徴は、送配電網の所有権は大手電力会社に残したままでもよい点だ。英国は所有分離という最も強い発送電分離を実施し、大手電力会社から送配電網の所有権を奪った。しかし所有分離は財産権を巡る訴訟を生む可能性があり、大手電力会社の財務的ダメージも大きい。そのため送配電網の所有権は大手電力会社に残し、運用だけを独立系統運用機関へ移行する方法が最善との見解が有力になっている。電力網運用でもう一つの重要な要素は網羅性だ。政府案では、法的分離後も10社の送配電会社が各地域の大手電力会社の子会社として存続する。だが国際的には、電力網のような公共的ネットワークを運用する際は狭い地域ごとでなく、広域的運用が望ましいとの見解が一般的だ。実際に欧州、北米、南米では電力網の系統運用統合が進んでいる。日本でも電力網の系統運用を全国的に一括する便益は大きい。第1に東日本大震災や北海道地震などの災害時、電力が過剰な地域から不足地域へスムーズに送電できる。第2に全国的にみて低コストの発電所から優先的に発電させる「広域的メリットオーダー」という方法を採ることで、電力料金を低下させられる。第3に再生可能エネルギー拡大に向けても全国的な電力網の運用が鍵になる。再生エネの弱点は気候条件に左右される発電量の不安定性だ。だが近年のデータ分析結果によれば、地域間で多様な日本の気候条件は発電量の不安定性を是正できる可能性を秘めている。太平洋側で風力が弱いとか、太陽が出ていない場合でも、日本海側では風が吹き太陽が出ている場合がある。そのとき、電力網が広域的に運用されていれば、ある地域で落ちた発電量を別地域からの電力で調整できる。国土が広くない日本で10社もの送配電会社を残すことは合理的ではない。以上のような独立性と網羅性の確保を考えた場合、日本でも公的な独立系統運用機関を設立し、全国的な送配電網を一括して運用することが望ましい。有識者や政府内にもこの認識はあり、電力システム改革の第1段階として電力広域的運営推進機関が2015年に設立された。今のところ同機関の業務の中心は独立系統運用機関が手掛ける業務の一部に限られる。政府はできる限り早い段階で公的な独立系統運用機関を設立し、全国的な送配電網の系統運用を実施すべきだ。政府案では法的分離を進める根拠として、法的分離を採用したフランスの事例を挙げる。だがフランスは実質的国有企業である1社が全国の電力供給網を担っている。従って法的分離で送配電部門が子会社化した際には、国有の1企業が全国の送電網を運用することになり、実質的には公的な独立系統運用機関が設立されたのと近い形態だった。また電力システム改革に反対する意見として、発送電分離を実施すると安定供給が失われる、送電設備への投資が低下する、発電費用が上昇するという論考がある。だがこの主張を裏付ける科学的エビデンス(証拠)は存在しない。拙著「データ分析の力」で解説しているように、これらの主張は相関関係を因果関係と誤って解釈しているものが多く注意が必要だ。例えば発送電分離をした地域としていない地域を単純比較した分析があるが、気候、発電所の形態、燃料費、環境規制など地域間の様々な違いが考慮されておらず、因果関係を示していない。では発送電分離や電力システム改革の効果について因果関係を検証したエビデンスは存在するのか。この20年間、経済学の実証研究と呼ばれる分野では様々なデータ分析を駆使して研究が進んだ。例えばナンシー・ローズ米マサチューセッツ工科大(MIT)教授らの研究グループは、発送電分離を進めたうえで発電部門の総括原価方式を廃止し、卸売市場取引での自由競争を導入すると、発電所の生産効率性が向上し、発電費用が下がることを示した。さらにスティーブ・シカラ米シカゴ大助教授は全米の発電所の毎時発電データと費用データを分析し、発送電分離後の卸売市場を通じた電力取引は高コストの発電所の生産量を減らし、低コストの発電所の生産量を増やすため、社会全体の発電費用も下がることを示した。いずれも国際的学術誌「アメリカン・エコノミック・レビュー」に発表されたもので、慎重に因果関係を検証した分析結果だ。電力システム改革は大きな利害が絡む難しい政治課題だ。だからこそ諸外国の経験や科学的エビデンスを基に政策決定をして、国民全体の便益を主眼とした改革を追求していくべきだ。

*15-6:https://digital.asahi.com/articles/DA3S14396623.html (朝日新聞 2020年3月10日) GDP年7.1%減
 内閣府が9日発表した昨年10~12月期の国内総生産(GDP)の2次速報は、実質(季節調整値)で前期(7~9月期)より1・8%減った。年率換算では7・1%減。1次速報(年率6・3%減)から下方修正された。マイナス成長は5四半期ぶり。昨年10月の消費増税に加え、台風被害などの影響もあり、個人消費と企業の設備投資が大きく落ち込んだ。減少幅は、前回の増税があった14年4~6月期(年率7・4%減)に近い水準となった。下方修正の主因は設備投資の下ぶれで、1次速報の前期比3・7%減から4・6%減に下方修正された。個人消費は2・9%減から2・8%減に上方修正された。今年1~3月期は新型コロナウイルスの悪影響が強く出るとみられ、国内景気はさらに厳しい局面に入っている。

<東日本大震災からの復興検証←無駄遣いはなかったか>
PS(2020年3月10、12、13日追加):*16-1のように、政府は3月10日、東日本大震災とフクイチ事故から9年となるのを前に、復興推進会議と原子力災害対策本部の合同会合を首相官邸で開き、安倍首相が「必要な復興事業を確実に実施するための財源を確保し、被災地が安心して復興に取り組めるようにする」と述べられたそうだが、残っている事業とその予算はいくらだろうか?このような災害は、実際にモノがなくなったり、住めなくなったりしているため、その損害を回復することが重要であって、心のケア(具体的に何?)の問題ではないと、私は考える。また、原発事故については、激烈な毒物を放出したため、廃炉も汚染水対策も困難で、被災者に寄り添うとすれば、「①フレコンバッグは積みっぱなし」「②汚染水を海に放出」「③避難指示を解除したから、住民を呼び戻す」などという選択肢はない。納税者は復興税を黙って支払ってきたので、これまでの復興税の使い方とその効果を開示してもらいたいと思う。
 また、前原子力規制委員長の田中俊一氏は、*16-2のように、現在は福島県飯舘村で暮らし、「原発はいずれ消滅します」と言っておられる。ただ、住民が戻らない理由を「避難の長期化で新たな仕事をもった」「子どもの学校の関係」「診療所の問題」「福島県産食品への風評被害」と考えておられるのは、(本当は危険な場所には住みたくないからであるため)甘い。また、「食品規格の国際基準は、一般食品の放射性セシウムの基準値を1キロあたり1000ベクレルと定めているが、日本は原発事故後、より厳しい同100ベクレルとしている」としておられるのは嘘である。何故なら、*16-3のように、食品の国際規格を作成しているコーデックス委員会の指標は年間1mSVを超えないよう設定されており、日本の食品中の放射性物質の新基準は、食品からの被曝上限を暫定の年間5mSVから年間1mSVに引き下げたものだからだ。つまり、田中氏は、国民の健康に無関心なのだ。
 さらに、*16-4のように、東日本大震災の津波で被災した土地に総額4,600億円投じてかさ上げされた土地区画整理事業は、宮城など被災3県で造成された宅地の約35%にあたる約238haが未利用になっているそうだが、岩手県陸前高田市の場合は30mの津波が来たのに10mしかかさ上げしていないため55%の未利用はむしろ少ないくらいなのである。そのほか、宮城県気仙沼市、福島県いわき市などの未利用地も単に時間がかかっただけが理由ではないと思われるため、正確な原因分析が必要だ。
 原発は、事故を起こせば猛毒の放射性物質をとてつもなく広い環境にばら撒き、人間が近づいてそれを処理することはできず、事故の可能性を0にすることなど不可能であるため、私がこのブログで記載してきたように、脱原発して再エネに転換するのが、日本にとってあらゆる面で最善の策なのである。しかし、*16-5のように、全原発の即時運転停止を記した「原発ゼロ法案」や「分散型エネルギー利用促進法案」は、(野党が提出したためか)一度も審議されていない。もちろん、原発立地地域は、1974年に制定された電源三法交付金制度によって原発から利益を得ているが、それを負担しているのは国民である上、危険を伴う原発立地地域は人口が全国平均より早く減少し、高齢化率も全国平均より高い。従って、他の産業による地域再生を盛り込んだ「原発ゼロ法案」は、日本全体のみならず原発立地地域にとってもプラスなのであり、原発にすがりついて現状維持を図ることこそ、最も安易で政治の責任を果たさないやり方なのだ。
 原発事故で猛毒の放射性物質により汚染された環境には内水面や海も含み、*16-6のように、韓国はじめ各国による水産物の禁輸や規制措置が行われている。韓国の禁輸措置については、日本はWTOに提訴して2019年に敗訴したが、その理由は、安全性の問題を自由貿易とすり替えたことである。しかし、この提訴によって、日本食品の安全性は日本政府によって担保されないことを世界にアピールしたことになり、日本国民も、「協力」や「付き合い」でリスクのある食品を食べさせられては困るのである。そして、これを「不安」「風評」「差別」などと強弁するのは見え透いた逃げ口上にすぎない。そのため、これまで東北沿岸部の経済を支えてきた水産業は、最新の設備を備えた(化石燃料を使わない)船を使って遠洋に出るしかなく、そのためにかかる増加コスト(漁船の新造費、燃料・人件費などの増加コスト)は原発被害として東電か政府に補償してもらうべきだ。また、地球温暖化で海水温が上がれば、従来の魚種を捕獲することができないのは当然で、魚種を変えるか北に移動して漁獲するしかない。さらに、養殖も、汚染が0でないその付近の水や餌を使うと価値がなくなるのである。

 

(図の説明:1番左の図のように、福島第一原子力発電所は、もともと周囲と同じような高台だった場所を削って低くして作り、その結果、左から2番目の図のように、津波に襲われた。この時、非常用電源も地下に置いていたため、津波で使えなくなった。つまり、今回の原発事故は、想定を甘くした結果の連続として招かれたため、甘い想定と安全神話による人災なのだ。また、原発事故後は(山林を除いて)除染を行い、右から2番目の図のように、大量の除染土が今でも放置されており、台風時に流された。さらに、大量に出る汚染水は、浄化後もストロンチウム等を含むため安全ではないが、経産省は「トリチウムしか含まないため安全で、薄めて海洋放出するか空中放出するしかない」と言っているのである)

*16-1:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/498155 (佐賀新聞 2020.3.10) 被災地復興へ「財源確保」と首相、大震災9年で政府合同会合
 政府は10日、東日本大震災や東京電力福島第1原発事故から11日で9年となるのを前に、復興推進会議と原子力災害対策本部の合同会合を首相官邸で開いた。安倍晋三首相は「必要な復興事業を確実に実施するための財源を確保し、被災地が安心して復興に取り組めるようにする」と述べた。安倍首相は、被災地の現状について「復興は着実に進展している一方、被災者の心のケアや廃炉・汚染水対策などの課題は残されている」と指摘。2021年度以降5年間で必要となる復興事業の財源を今年夏ごろまでに示す考えを重ねて示した。合同会合では、避難者が震災直後の47万人から今年2月時点で4万8千人まで減少したことや、住宅再建や交通網整備の進捗状況を田中和徳復興相が報告した。田中復興相は記者会見で「現場主義を徹底し、被災者に寄り添いながら全力で復興に取り組む」と述べた。政府は21年度以降の復興政策を定めた法案を今国会に提出しており、早期成立を目指す。法案は、復興庁の設置期限を30年度末まで10年間延長し、引き続き復興相を置く内容。原発事故の影響が続く福島県の支援では、避難指示を解除した地域に住民を呼び込む施策を拡充する。復興推進会議の議長と原子力災害対策本部長は、首相が務めている。

*16-2:https://mainichi.jp/articles/20200306/dde/012/040/020000c (毎日新聞 2020年3月6日) 原発はいずれ消滅します 福島・飯舘村で暮らす、前原子力規制委員長・田中俊一さん
 東京電力福島第1原発事故から間もなく9年。あの人は今、何を思っているだろうか。事故後に設置された、原発の安全審査を担う原子力規制委員会の初代委員長、田中俊一さん(75)のことだ。2017年に退任後、「復興アドバイザー」として暮らす福島県飯舘村を訪ねた。飯舘村を南北に走る国道399号から細い山道を上っていくと、田中さんが1人で暮らす木造平屋建ての一軒家があった。前日降った雪がうっすらと積もっている。「今年は降ってもすぐに解けます。暖冬の影響ですね。ここで暮らして3度目の冬ですが、過去2年は雪が一度積もったら春まで残っていた」。村が所有するこの家を賃借したのは、原子力規制委の委員長を退任した3カ月後、17年12月のことである。旧知の菅野典雄村長から「静養にいいですよ」と誘われたのがきっかけだった。「飯舘山荘」と名付けたこの借家と、茨城県ひたちなか市の自宅を行ったり来たり。月の半分は飯舘村で過ごし、無償の復興アドバイザーとして、国と村の橋渡し役になったり、視察に訪れる人たちに村の現状を説明したりしている。「事故後、『原子力ムラ』にいた自分に何ができるかを考え、11年5月に放射線量が非常に高い飯舘村長泥(ながどろ)地区で除染実験を行った。この地区は今も帰還困難区域のまま。事故に向き合う私の原点がこの村にあります」。そんな田中さんに復興の進捗(しんちょく)度を尋ねると、渋い顔になった。「なかなか進みません。少しずつ努力していますが、元々暮らしていた住民の多くが戻ってこない。避難が長期になり、新たな仕事をもったり、子どもの学校の関係があったりして、村外に家を建てた人も多い。特に、若い人は都会志向が強い」。長泥地区を除き村の避難指示が解除されたのは17年春のことだ。震災前の人口は約6200人だが、現在暮らすのは約1400人。震災前、村内の小中学校には約530人が通っていたが、20年度は65人の見通しだ。「避難先の学校に子どもを通わせる親の多くはわざわざ村内の学校に戻らせようとしません。村には診療所が1カ所ありますが、開いているのは週2日。病を抱えている人は戻りにくい」。そして、いまだに続く福島県産食品への風評被害を強調する。食品規格の国際基準では、一般食品の放射性セシウムの基準値を1キロあたり1000ベクレルと定めているが、日本は原発事故後、より厳しい同100ベクレルとしている。「あなたは、あえて厳しく制限している地域のものを食べたいと思いますか? セシウムは検出されないのに『買いたくない』という心理が働き、風評を固定化している。福島県産食品の輸入停止を続ける国がまだあるのはそのためです。現実を無視した前提で決められた現在の基準を見直さなければ、福島の農水産業の復興はできません」。食品の「安心・安全」観に一石を投じる。福島県は郷里でもある。東北大で原子核工学を学び、日本原子力研究所(現日本原子力研究開発機構)へ。原発事故前は日本原子力学会の会長や、内閣府原子力委員会の委員長代理を務めた。原子力ムラの中枢を歩んできたとの印象だが、本人は傍流だと自嘲する。「私は核燃料サイクルの実現は技術的に無理だと言ってきたので『村八分』の存在です。使用済み核燃料を再処理して高速増殖炉でプルトニウムを増やして、1000年先、2000年先のエネルギー資源を確保しようと言っているのは世界でも日本だけ。安全神話も私は信じていなかった。科学的に『絶対安全』はあり得ない。日本の原子力政策はうそだらけでした」。こんなエピソードがある。原発事故まっただ中の11年3月15日、皇居で当時の天皇、皇后両陛下に原発事故についての解説を求められた。地震の影響で茨城の自宅と東京を結ぶJR常磐線も高速道も不通だった。(以下略)

*16-3:https://www.mhlw.go.jp/shinsai_jouhou/dl/leaflet_120329.pdf#search=%27%E4%B8%80%E8%・・ (食品中の放射性物の新たな基準値)
 東京電⼒福島第⼀原⼦⼒発電所の事故後、厚生労働省では、⾷品中の放射性物質の暫定規制値を設定し、原子力災害対策本部の決定に基づき、暫定規制値を超える食品が市場に流通しないよう出荷制限などの措置をとってきました。暫定規制値を下回っている食品は、健康への影響はないと一般的に評価され、安全性は確保されています。しかし、より一層、食品の安全と安心を確保するために、事故後の緊急的な対応としてではなく、長期的な観点から新たな基準値を設定しました(平成24年4月1日から施行)。放射性物質を含む食品からの被ばく線量の上限を、年間5ミリシーベルトから年間1ミリシーベルトに引き下げ、これをもとに放射性セシウムの基準値を設定しました。
●放射性セシウムの暫定規制値(単位:ベクレル/kg)
食品群   野菜類 穀類 肉・卵・魚 その他  牛乳・乳製品  飲料水
規制値          500                 200      200
●新たな基準
食品群  一般食品  乳児用食品  牛乳  飲料水
規制値   100       50       50    10
※線量の上限を1ミリシーベルトとした理由
○食品の国際規格を作成しているコーデックス委員会の指標が、年間1ミリシーベルトを超えないように設定されていること。
○多くの食品の放射性物質の濃度が、時間の経過とともに相当程度低下傾向にあること。
※食品区分の考え方
○特別な配慮が必要な「飲料水」「乳児用食品」「牛乳」は区分し、それ以外の食品は、個人の食習慣の違い(飲食する食品の偏り)の影響を最小限にするため、一括して「一般食品」と区分しています。(以下略)

*16-4:https://digital.asahi.com/articles/DA3S14396621.html?iref=mor_articlelink02 (朝日新聞 2020年3月10日) (東日本大震災9年)かさ上げ宅地、35%未利用 国交省、検証へ 被災3県
 東日本大震災の津波で被災した土地をかさ上げする土地区画整理事業で、宮城など被災3県で造成された宅地の約35%にあたる約238ヘクタールが未利用になっていることが、国土交通省の調査でわかった。東京ドーム約51個分で、国交省は新年度に事業の検証を始める。3県の未利用地の総面積が判明するのは初めて。区画整理事業は、土地をかさ上げして宅地や道路を造り、元の地権者に新たな宅地を割り当てる手法。復興庁によると、岩手、宮城、福島3県の21市町村で実施され、総額4600億円が投じられた。事業は9割以上進み、2020年度末の完成をめざしている。国交省によると、調査は昨年10~11月、21市町村を対象に行い、昨年9月末時点の活用状況を調べた。住宅や店舗などが建設済みや建設中の場合を「利用済み」とした。残りは未利用地となるが、今後利用される予定の土地も含まれる。住宅向けの宅地を整備していない4市町を除く17市町村では、造成済みの674・8ヘクタールのうち、237・9ヘクタールが利用されていなかった。未利用の割合は、岩手県陸前高田市が55%と最多で、次いで宮城県気仙沼市が51%、福島県いわき市が49%だった。未利用地が生まれたのは、地権者の同意やかさ上げに時間がかかり、避難先などでの再建を選んだ人が相次いだためだ。国交省は新年度、有識者らによる検証委員会を立ち上げ、来年3月までに対策をとりまとめる。南海トラフ巨大地震など次の大災害が起きた時に同様の未利用地が発生することを防ぐ。

*16-5:https://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/202003/CK2020030902000135.html (東京新聞 2020年3月9日) <東日本大震災9年>原発ゼロ法案 2年たなざらし 与党、再生エネも審議応じず
 脱原発や再生可能エネルギーの推進を目指して野党が提出した法案が、一度も審議されず最長で二年間取り置かれている。政府・与党も再生エネの普及に言及しているものの、野党提出法案は原発の再稼働を進める安倍政権の姿勢と対立するため、与党が審議に応じないからだ。たなざらしの関連法案は五本。立憲民主、共産などの四党は二〇一八年三月、全原発の即時運転停止を記した「原発ゼロ基本法案」を衆院に提出した。法施行後五年以内の全原発廃炉や電力供給量に占める再生エネの割合を三〇年に40%に上げることを盛り込んだ。翌一九年六月には、再生エネの普及を確実にするため、エネルギーの地産地消を促す「分散型エネルギー利用促進法案」など四法案も追加で提出した。うち三法案には国民民主党も提出に加わった。法案はいずれも衆院経済産業委員会に付託されたが一度も審議されていない。議員立法は政府が提出した法案の後に審議されるのが通例だ。衆院経産委理事の自民党議員は「野党提出法案を、政府提出法案より優先して審議することは難しい」と話す。政府提出法案の審議後でも、多数を占める与党が認めなければ野党提出法案は扱われない。一八年六月に会期が一カ月余延長された際、同委では「原発ゼロ」以外に審議する法案がなかったのに、自民党は委員会開催すら応じなかった。原発を基幹電源とする政権の方針を踏まえたためだ。安倍晋三首相は今国会で「原発ゼロは責任あるエネルギー政策とはいえない。再稼働は原子力規制委員会が認めた原発のみ、地元の理解を得ながら進めていく」と強調した。立民の枝野幸男代表は本紙の取材に「審議する時間は十分にあった。原発事故を経験した国の国会として、あまりに無責任だ」と自民党の対応を批判した。

*16-6:https://digital.asahi.com/articles/DA3S14399438.html (朝日新聞 2020年3月12日) (東日本大震災9年)海と生きる町、岐路 サンマ大不漁、韓国のホヤ禁輸続く
 東日本大震災で大きな被害を受けた岩手、宮城の水産業が岐路に立たされている。全国有数の水揚げ量を誇ってきたが、昨年秋にはサンマの記録的な不漁に見舞われ、韓国によるホヤの禁輸措置も長引く。なりわい再生の中心となる水産加工業も、人手不足や販路喪失に苦しんでいる。「大変な年だった。今までのようには魚がとれなくなっている」。本州一のサンマの水揚げ量を誇る岩手県大船渡市。漁獲から加工・販売まで手がける鎌田水産の鎌田仁社長(46)は話す。保有していたサンマ漁船2隻のうち1隻を震災で焼失したが、その後5隻を新造し事業を拡大してきた。ところが昨年、半世紀ぶりの不漁に直面し、水揚げ量は例年の約3分の1に沈んだ。単価の上昇はあったが、水揚げ金額は3割減。イワシなど他の魚種の扱いを増やして補ったという。全国さんま棒受網漁業協同組合によると、震災前に約20万~30万トンあった全国のサンマ水揚げ量は、直近5年間は10万トン前後に低迷。昨年はさらに4万トンまで落ち込んだ。不漁対策として水産庁は昨年、公海での通年操業を解禁。鎌田水産も9億円を投じて遠方で操業できる漁船を建造中だ。鎌田社長は「サンマをやめる選択肢はない。ただ、他の魚の扱いを増やすとか、柔軟に対応していかないといけない」と話す。全国一の生産量を誇った宮城県のホヤも苦しい。震災前、ホヤは年間約1万5千トンの水揚げがあり、7割を韓国に輸出していた。だが、原発事故の影響で、韓国は2013年から輸入を禁止。日本は世界貿易機関(WTO)に提訴したが昨年敗訴し、韓国による輸入再開の見通しは立っていない。県や漁業者らは首都圏などで消費拡大のキャンペーンを進めてきた。国内消費量は震災前の2倍となる5千トンまで増えたが、それでも消費し切れず、県漁協は16年から3年続けて計1万5千トンを焼却処分した。東京電力からの補償も20年度で終わる。石巻市のホヤ漁師は「出荷先が少ないために生産量を制限し、東電の補償で食いつないでいるようなもの」と話す。
■水産加工業、人手足りず販路も失う
 沿岸部の経済を支える水産加工業は、国が震災後に新設したグループ補助金などを活用して再起を図った。中小企業が工場などを再建する費用の75%を国と県が負担する制度だが、自己負担分を賄うために県の無利子貸付制度を利用した事業者も多い。宮城県石巻市にある水産加工会社は今年2月、事業承継のため同業者に株式譲渡した。震災の翌年、グループ補助金と県の無利子貸付制度を使い、被災した工場を約2億円かけて再建。13年には別の補助金で計6億円かけて本社と新工場を造った。ところが、従業員を募っても復興特需が続く建設業などに流れた。売り上げの7割を占めたイカの不漁に加え、ホヤも韓国の禁輸措置で行き場を失った。売り上げは震災前の半分ほどに低迷し、2年連続の赤字。男性社長(67)は昨年夏、金融機関の支店長にM&A(企業合併・買収)の意向を伝えた。県の貸付金など1億円を超す借金返済が数カ月後から順次始まる予定だった。社長は「人より早く再開すれば客はついてくると思ったが、現実は違った」と振り返る。岩手県宮古市の水産加工会社「須藤水産」は約6億円のグループ補助金を使って冷凍・冷蔵設備を再建したが、全容量の1割の約100トンしか使っていない。昨年、仕入れができたサンマは例年の1割の約400トン。不漁で、仕入れ価格が2倍近くにはね上がったためだ。昨年の売り上げは例年の3割減の約10億円。3年ほど前からコンビニに土地を貸し、賃料収入で売り上げを補う。須藤一保専務(47)は「魚屋だけでやっていくのが難しくなっている」と訴える。福島を含む3県によると、今年1月末現在、グループ補助金を利用した事業者のうち74事業者が倒産しており、業種別では水産加工が3割と最も多い。
■経営モデル、転換課題
 水産加工業は岩手、宮城のなりわい再生の核だ。生鮮冷凍水産物の生産量は宮城が全国3位、岩手が8位(いずれも2018年)と上位に食い込む。食料品製造業に携わる事業所のうち、水産加工業の割合は宮城が45%、岩手も25%を占める。長年、売り上げを支えてきた手法は、近くの港に豊富に水揚げされる魚を安値で大量に仕入れて冷凍。高値になる時期に、大手の流通業者や量販店に販売するものだった。だが、冷凍したり切り身にしたりする程度で加工度は低く、別の地域の事業者でも代替しやすかった。震災で休止している間に、流通業者は海外や国内の別の地域の加工業者と取引を結んでいったという。再開しても、不漁と人手不足で出荷量が安定せず販路を取り戻せていない。国は首都圏などのスーパーや百貨店のバイヤーなどを三陸に招き、100社以上の水産加工業者と引き合わせる商談会の開催を支援。経営コンサルタントによる事業計画見直しや海外輸出の後押しをしてきた。宮城県石巻市の水産加工会社「ヤマナカ」は、19年度から韓国系商社と組み、ホヤを米国のコリアンタウン向けにサンプル供給するほか、ベトナムへの輸出も始めた。だが、震災前のビジネスモデルから転換できた業者は一部にとどまる。福島を含む3県の沿岸37市町村に朝日新聞が行ったアンケートでは、回答があった30市町村のうち、水産加工業の業況が「震災前の水準まで回復していない」と答えた自治体が8割を超えた。東北大地域イノベーション研究センター長の藤本雅彦教授(経営学)は「専門家の助言や事業者同士の連携で、加工度が高く付加価値がある独自商品の開発を、長い時間をかけて進めるべきだ」と指摘。「海外も含めて市場開拓していこうという意欲ある経営者を、育てていく必要がある」と話している。

<日本は、なぜ合理的な判断ができないのか?>
PS(2020年3月18日追加):*17-1のように、米国カリフォルニア州の米産地で水をためた冬の水田でサケを育て、3月末に数千のキングサーモンの稚魚を河川に放流して太平洋に向かわせる計画が進んでいるそうだ。日本も一毛作地帯なら冬の水田で何かをできるだろうに、いつまでも工夫がないのは不思議である。さらに、*17-2のように、政府は再エネ普及に使い道が限られている金をフクイチ事故の処理費用にも使えるようにしたいそうだが、(事故を起こした電力会社を清算して財産を充当し、脱原発してからならまだわかるが)「原発・化石燃料のコストが安く、再エネは高い」などと言いながら再エネ促進費を原発事故処理に転用するなど論外だ。
 さらに、*17-3のJAの経営基盤強化をするには、農地や農業設備を活用した発電を進め、JAが電力を集めて販売する仕組みにすれば、農業補助金も削減でき、金利の低い今なら設備投資がやりやすいだろうが、従来と同じスキームから決して抜け出せないのが不思議だ。
 また、*17-4のように、大分県日田市はJR日田彦山線の不通区間で「次世代モビリティ」導入に向けた実証実験を行うそうだが、そのEVはゴルフ場を走るカートのようなおもちゃで、これでは住民生活には使えない。*17-5の2010年2月3日の記事に紹介されているように、スイスのマッターホルン山麓にあるツェルマットでは、1990年代から排気ガスによる大気汚染防止のための自治体条例によってEVか観光用馬車しか走っておらず、私も1998年にツェルマットでこのEVに乗った時は感心したものの、EVの運転士に「馬力が足りなくないですか」と尋ねたくらいだったが、運転士の答えは「大気汚染防止のためだから、我慢しなくちゃ」というものでさらに感心したのである。日本なら大手自動車会社も多いので、不便なく走れるEVもすぐ作れると思って経産省に提案したのだが、社会保障を減らして外国に多額の燃料費を払うのが目的としか思えないような行動しかしておらず、未だにEVは希少車種である。これらは、太平洋戦争という航空戦の時代に、日露戦争の巨艦主義から抜け出せなかったのと同じであり、これでは何をやっても決して勝てないと思う。
 このような中、ゴーン氏が1999年に社長として就任した日産自動車だけが、*17-6のように、批判を浴びながらEVを発売した。ゴーン氏の「リバイバルプラン」は、調整型の日本人社長にはできない系列部品会社の淘汰や資本提携の解消を伴っており、これはコストカットしたり、通常のガソリン車からEVや自動運転車に転換する場合に必要なのだが、恨まれるので誰もやりたくない仕事だ。そのため、私は、ゴーン氏の逮捕理由や新社長のメッセージを聞いただけで、優秀なリーダーを失った日産の現在の漂流と低迷は予測できたのである。
 なお、日本は、*17-7のように、地価の上昇をよいことだとして地価上昇を促す金融緩和策を採っているが、これは人件費の高騰とあいまって産業の空洞化を招いている。何故なら、地価の上昇分は製品原価に加えられて製品価格を高くすると同時に、製品に占める人件費の割合を低くするからだ。そのため、このカンフル剤は、不動産業以外の産業にとってはディメリットであり、ゴーン氏が地価や人件費の安い新興国で生産体制の増強を進めたのは、多くのグローバル企業が行っている正攻法の経営手法なのだ。それでも日本に製造業を誘致したい地域があれば、工場用地を安く貸し出したり、外国人労働者の導入などで他国と競争力のある人件費にしなければならない。生産性の向上は、他国もすぐ追いつき、これまで基盤のなかった国・地域の方が整理の時間がかからない分だけ早いかもしれないのである。

  
  2020.3.10東京新聞      2018.11.5朝日新聞  

(図の説明:左図のように、日本は豊富にある再エネを使わず、衰退期にある原子力と化石燃料に執着している。また、中央の図のように、農業は継承者が少なく、既にある資産の農地も1/3に減少させたが、これは《長くは書かないが》今までの農業政策の誤りによる。さらに、右図のように、資源が豊富な林業も1/3に減らしており、これらの理由は工夫がないことに尽きる)

  

(図の説明:左図のように、水産業もピーク時の1/3程度の漁獲高になっており、右図のように、GDPに占める製造業の生産高や製造業就業者割合も低下の一途を辿っている。残りは、サービス業と無職であり、日本のモノづくりは猛烈な勢いで衰退していると言える)

*17-1:https://www.agrinews.co.jp/p50312.html (日本農業新聞 2020年3月16日) 冬の水田サケ養殖 多面的な機能PR 放流で資源回復 米・カリフォルニア米産地
 米国カリフォルニア州の米産地では、水をためた冬の水田でサケを育てる計画が進んでいる。3月末には丸々と太った数千のキングサーモン稚魚が河川に放流され、サンフランシスコのゴールデンゲートを通って太平洋に向かう。自然保護に熱心な地元住民に水田の多面的機能を訴えるのが狙いだ。「昨年の試験は洪水で(稚魚の成育が)理想的な環境にならなかった。2年目となる今年は、改善を加え成育は順調。期待している」と語るのは、カリフォルニア州米委員会(CRC)のジム・モリス部長。30年以上も米業界を見守っている専門家だ。放流される稚魚のうち1000匹には無線発信装置を付け、放流後の行動を調べる。これまでの試験で、暖かい水田で育つため、稚魚は自然界を上回る成育ぶりを示している。試験が成功すれば、商業化の道を模索するという。ただ、サクラメント市周辺に広がる約20万ヘクタールの水田で、河川と結んでたん水状態にできるのはごく一部。全ての水田で稚魚を育てるのは難しい。並行して計画するのが、水田を利用した大量のプランクトンの供給だ。稚魚は川を下りながら餌を探すが、河川は浄化が進みプランクトンが少ない。冬の間、水田でプランクトンを育て、稚魚の通過のタイミングに合わせ、水田の水口から必要なプランクトンをたっぷりと与える。米産地がサケ対策に動き始めたのは8年前。環境保護団体などによると、サンフランシスコ湾に流れ込む河川流域は、かつてキングサーモンなどが成育する場所だったが、ダム建設や水不足で匹数が激減している。そこで上流にあるカリフォルニア米の冬水田んぼに目を付けた。サケの稚魚を養殖しそのまま放流できれば、資源回復につながる可能性があるとして研究プロジェクトが始まった。同州は大気汚染を理由に、2001年ごろから稲わらの焼却を厳しく規制。農家の多くが冬場のたん水で稲わらを分解させるようになった。冬場に餌を求めて数百万羽の野鳥が集まり、観光客やハンターが詰めかけるようになった。思わぬ好展開に、米業界は「水田の多面的な機能」を大々的に宣伝し始めた。自然保護の象徴でもあるサケの資源回復で“二匹目のどじょう”を狙う。

*17-2:https://digital.asahi.com/articles/DA3S14406691.html (朝日新聞 2020年3月18日) 原発事故処理に再エネ財源 目的外使用、可能に 政府法案
 政府は、再生可能エネルギーの普及などに使い道が限られているお金を、東京電力福島第一原発事故の処理費用にも使えるようにする。処理費用が想定よりさらに膨らむ恐れがあり、財源が逼迫(ひっぱく)することに備えるという。使ったお金は将来、返すとしているが、一時的でも原発政策の失敗を別の目的で集めたお金で穴埋めすることになる。原発のお金を今の仕組みでは賄えなくなってきている。政府は一般会計予算とは別に、エネルギーの関連予算を「エネルギー対策特別会計」(エネ特)で管理している。さらにエネ特の中で目的別に財布を分けていて、原発の立地対策など主に原子力政策に使う「電源開発促進勘定」(電促勘定、年3千億円ほど)、再生エネや省エネの普及、燃料の安定供給などに使う「エネルギー需給勘定」(エネ需勘定、年8千億円ほど)などがある。電促勘定の財源は、電気利用者の電力料金に上乗せされている電源開発促進税で、エネ需勘定は石油や石炭を輸入する事業者などから集める石油石炭税となっている。両税はいずれも、それぞれの勘定の目的にしか使えない特定財源だ。ところが、政府は今月3日、エネ需勘定から「原子力災害からの福島の復興及び再生に関する施策」に使う資金を、電促勘定に繰り入れられるようにするための改正特別会計法案を閣議決定し、国会に提出した。エネ特で勘定間の繰り入れを可能にする変更は初めてという。背景には、電促勘定の苦しい台所事情がある。同勘定の収入は例年大きく変わらない。ただ、東電が負担するはずの原発事故の処理費用について、2013年12月の閣議決定で一部を政府が負担することになり、14年度から汚染土などの廃棄物を保管する中間貯蔵の費用を電促勘定から毎年約350億円計上してきた。その処理費用は当初想定より膨らんでいる。経済産業省が16年末に公表した試算で、中間貯蔵事業は1・1兆円から1・6兆円になり、電促勘定からの支出は17年度から年約470億円に増えた。政府関係者によると、今後さらに増える可能性があり、財源が足りなくなりかねないという。政府は改正法案を今の国会で成立させ、来年4月の施行をめざす。法案では繰り入れた資金は将来、エネ需勘定に戻すことも定めているので問題ないとする。ただ、再エネ普及などのために集めたお金を一時的にでも、国民の間で賛否が割れる原発のために使えるようにする変更には反発も予想される。青山学院大学の三木義一・前学長(税法)は「特別会計は一般会計に比べ、国会で審議される機会が少なくチェックが利きにくい。今回の変更の内容は原発に関わるだけに重大で、異論を唱える国民もいるのではないか。適切な改正なのかどうか、政府は国民にわかりやすく説明する必要がある」と話す。

*17-3:https://www.agrinews.co.jp/p50288.html (日本農業新聞 2020年3月13日) 進むJA経営強化 グループ挙げ強み発揮
 全国のJAで経営基盤強化に向けた動きが活発化している。店舗再編や経済事業の見直しなど、具体策に既に着手しているJAも多い。JAグループの強みは総合事業と全国ネットワークだ。単に人員や施設の合理化だけでしのぐのではなく、地域や組合員のニーズに応えた事業を広げることが重要だ。
金融機関を巡る環境は厳しい。農林中央金庫は2019年から信連やJAの預金に対する金利(奨励金)の引き下げを始めた。共済事業も苦戦しており、JA経営は難しさを増す。しかし、JAの対策は既に始まっている。1月にJA全中が全国6カ所で開いた「自己改革実践トップフォーラム」では、11JAが主に経営基盤強化に向けた実践内容を報告した。各JAでは、店舗再編や施設集約といった効率化戦略と、農業生産の拡大などにつながる経済事業をはじめとした成長戦略を併せて進めている。埼玉県のJAあさか野は、08年ごろから支店再編を検討し、昨年までに17店舗を9店舗にした。同時に相談機能を強化し、相談件数や貸出金を伸ばす。岩手県のJA新いわては、支所や施設の再編、園芸品目の生産・販売強化など13の具体策をまとめた。具体的な効果を金額で示し、事業利益の確保を目指す。農村では、過疎化や高齢化、労働力不足など多くの課題が出ている。情報通信技術(ICT)などを活用し、組合員の暮らしを総合的にサポートするといった新たな事業も構想したい。総合事業を手掛けるJAとして、事業間連携強化の工夫も考えられる。自動車事業と自動車共済、ローンを結び付け事業を安定させているJAもある。JAグループの強みのもう一つが、全国ネットワークだ。600のJAがあり、県域、全国域に連合会がある。連携した事業展開やノウハウの共有、専門性の発揮などができる。県域によって体制は異なるが、経営基盤強化でも、全中・中央会と農林中金・信連、全農・経済連が連携してJAを支援。財務分析や経済事業改革の提案などを進める。先に挙げたJA新いわては、全国連・県連が連携して支援し、具体的な計画を策定した。JAグループ全体の基本方針は4月にも決める。全中の中家徹会長は6日の記者会見で、経営基盤強化は経済事業の収支改善や店舗再編をはじめとする効率化が柱となると指摘。「JAが多様化している中で、現場実態に合わせた取り組みになる」として、JAごとの工夫を重視する。信用・共済事業に依存しがちだったJAの収益構造はこの機に見直す必要があるだろう。大事なのは事業を縮小するのではなく、総合事業を手掛ける協同組合として、いかに営農と地域を支えていくかという視点だ。組合員や住民のニーズに応えつつ、収益の上がる事業モデルを探っていく必要がある。

*17-4:https://www.nishinippon.co.jp/item/n/591722/ (西日本新聞 2020/3/13) 日田彦山線不通地区でEV実験 日田市、住民の足確保へ利便性検証
 大分県日田市は今秋、同市大鶴地区と夜明地区で新たな移動手段「次世代モビリティ」導入に向けた実証実験を行う。九州豪雨で被災したJR日田彦山線の不通区間の両地区は過疎化、高齢化が進んでおり、住民の足確保だけでなく復興の象徴にもしたい考え。市は、路線バスの充実していない市周辺部の新たな交通手段としてコスト面や環境面を考慮し、ゴルフ場を走るカートのような電気自動車(EV)の導入を検討。昨年3月には国土交通省も同市大山町で低速のEVを走らせる実験を実施したが渋滞が発生したため、市は交通量が比較的少ない両地区の市道で効果を調べることにした。EVの定員は運転手を含め7人で、時速20キロ未満。バスに比べ小型で小回りが利き、細い路地まで乗り入れられるため、住民の自宅そばまで送迎が可能。バス停まで歩くことが難しい高齢者の利用を想定している。実証実験は、JR今山駅を中間地点にした市道約7キロを中心に実施する。2台のEVを大鶴地区方面、夜明地区方面からそれぞれ発車し、運行する。運行方法は今後詰めるが、前日までの事前予約に基づき、ルートを決定し、乗車希望者の自宅近くまで送迎する予定。今山駅付近では国道を走る日田彦山線の代行バスとの乗り継ぎも試し、採算性や利便性を確認する。約1カ月実施し効果が認められれば、2021年度に両地区で本格導入する。認知度が高まれば、別の地域での導入も検討する。EVは窓がなく開放感があり、景色を楽しめるのが特徴。日田彦山線は、車窓からサクラや菜の花など季節の花々が楽しめたことから、ゆっくり走るEVでのどかな風景を楽しんでもらい復興も印象づける狙い。原田啓介市長は記者会見で「新しい切り口での観光につなげられないかと思っている」と期待を込めた。

*17-5:https://www.itmedia.co.jp/makoto/articles/1002/03/news010.html (2010.2.3) 電気自動車と馬車しか走れない――ある観光都市の交通政策
 スイス・マッターホルン山麓にあるツェルマットは高級リゾート地として世界にその名を知られている。夏は登山、冬はウィンタースポーツを楽しむ人々でにぎわい、三角錐(さんかくすい)の頂を持つ名峰マッターホルンをはじめとした4000メートル級の山や氷河へ通じる山岳鉄道の基地でもある。最寄の都市ヴィスプからツェルマットまでは道路も通じているが、主要交通機関は鉄道だ。雪深い土地のため狭い渓谷を縫うようにして走る道路は不便であり、またエンジン自動車の多用は排気ガスによる大気汚染を引き起こしてしまう。特筆すべきはツェルマットの特異な「EV交通政策」だ。ツェルマット市街地は自治体の条例によりEV(電気自動車)しか走れない決まりになっており、市街地を走るのはEVと観光用の馬車のみ。最新技術のEVと前時代的な馬車が混在する光景は正直いって奇妙だが、環境と都市交通をテーマとしている筆者にとっては刺激的な組み合わせでもある。
●EVが500台
 EVの実用化に対する世界的な関心が盛り上がってきたのはここ数年なのに対し、ツェルマットがEV利用に取り組みだしたのは20年以上も前のこと。ツェルマット交通局のEV路線バス運行責任者ベアート氏もいつからEV交通政策が始まったのか正確には分からないそうだ。現在、ツェルマットを走るEVは計500台(EV路線バス6台)。にわかにEV利用を始めた都市とは歴史の長さが違う。ヴィスプからおよそ1時間ほどで列車は終点のツェルマットに到着する。タクシー、バス、配送用のクルマを含め、駅前に停まっているクルマはすべてEVだ。ただし、除雪車やブルドーザーなど、高いパワーを長時間要する作業用EVはまだ実用化されていないため、通常のエンジン車両が利用されている。住民がエンジン自動車を持つことは制限されていないが、市街地に乗り入れることはできないので市街地の端にある公共駐車場に停めなければならない。そこから自宅までは徒歩かEV路線バスを利用する。EVはタクシーや業務用に限られており、基本的に個人のEV所有はできない。さらに観光バスや観光客の自家用車の規制はもっと厳しく、ツェルマット市街地から数キロ離れた駐車場までしか乗り入れることができない。
●EVは町工場製
 さて、ツェルマットを走るEVには外観の共通点がある。シンプルな小型車が多く、平面と直線で構成されている車体はかなり角ばった印象だ。通常、大手メーカーが製造するエンジン自動車は曲線の組み合わせによって美しいボディーラインを作るので、それとは対照的なデザインである。そう言えば昔テレビで観たアニメ「サンダーバード」に登場するクルマが、ちょうどツェルマットを走るEVのような形をしていたように思う。「レトロなSFに出てくるクルマ」とでも表現できそうな前衛的デザインである。ツェルマットのEVがこのような形となるのには理由がある。地元の町工場が手作業で製造しているため、複雑な形状の車体を作るのが困難なのだ。作ろうと思えば作れないことはないはずだが、そうするとただでさえ高い価格(1台300万円程度)がさらに高くなってしまう。(そういったわけで「前衛的」という印象は筆者の勝手な思い込みである)。EVを製造する町工場は3つほどあるそうだ。シャシーは専門メーカーの製品を取り寄せ、モーターやバッテリー、制御装置、運転装置も市販の製品を利用する。早い話が組み立て工場であり、数人の従業員がいれば事業として成り立つ。もちろん、それぞれの町工場がノウハウを持っており、特に制御システムに独自の技術が必要という。これまでの自動車は何万人という従業員を抱えた巨大工場で製造されるものだったが、小さな町工場でも作れてしまうのがEVだ。自動車コンツェルンにとっては都合の悪い話かもしれないが、EV製造は地場産業として育成できる可能性がある。もちろん大手メーカーがEVの大量生産を始めれば小さな町工場の存続は脅かされるが、今のところ競合相手はいない。ツェルマットの厳しい自然条件が地元の町工場の味方をしているのだ。ツェルマットは標高1600メートルの高地にあり、冬の寒さが厳しく雪も多い。これだけ過酷な条件に耐え得るEVを製造できるメーカーはまだ存在しない。
●鉛蓄電池が最適
 寒冷地におけるEV利用の最大のネックはバッテリーだ。EV用バッテリーの主流となっているリチウム電池は、低温では出力が低下し凍結にも弱く、しかも価格が高い。そのためツェルマットのEVは、あえて昔ながらの鉛蓄電池を使っている。市街地とその周辺を走るEV路線バスも同様で、車体後部に巨大なバッテリーを搭載し、充電は最寄のバスステーションで行う。路線の長さは数キロ程度と短いが坂の多い土地のため電力消費が多く、夜間の充電だけで1日走ることはできない。観光のメインシーズンには運行回数が多くなるため、場合によってはバスステーションでバッテリーごと交換してしまう。交換作業に要する時間は運転手一人ならば5分程度、補助がいれば2分程度で済む。ツェルマットは「(エンジン)自動車のない山岳リゾート地」を掲げ、それを売りにしているわけだが、中にはEVを見て「聞いていた話と違う。クルマが走っているではないか?」と戸惑う観光客もいるそうだ。「EVも含めたクルマが一切ない」と誤解されてのことである。ツェルマットが徹底したEV交通政策を進める理由を交通局ベアート氏は次のように語っている。「観光のためです。きれいな空気を求めてツェルマットを訪れる観光客の期待を裏切りたくはありませんから」。この点はすべての観光客の期待を裏切らないはずだ。ツェルマットにEVがうまく「はまった」のは特殊条件があったからこそであり、すべての国と地域に当てはまるものではない。しかしながら、例えば離島の観光地などでも同様の手法をとれるかもしれない。やる気と工夫さえあればいろいろな応用が期待できる事例である。

*17-6:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200319&ng=DGKKZO56938890Y0A310C2EA1000 (日経新聞社説 2020.3.19) 日産見えぬ「ゴーン」後(3)「隠れケイレツ」も岐路
 3月初め、日産自動車と取引する部品会社の幹部数名が日産本社の会議室で社長の内田誠を囲んだ。各社の幹部らは内田に対し、「部品会社とのコミュニケーションがうまくとれていない」などと詰め寄った。日産元会長のカルロス・ゴーンは1999年に「リバイバルプラン」を掲げ、部品の調達費削減を進めた。一部の取引先は厳しい値引きに応じ、後の日産車の販売拡大の恩恵も受けた。しかし、今では肝心の新車販売が低迷し、部品会社の経営は厳しさを増す。内田は「調達を含め、今までのやり方を変えていきたい」とその場を収めた。ゴーン時代、日産と取引が多い系列部品会社は資本提携の解消や淘汰に見舞われたが、日産への依存度が高い「隠れケイレツ」はいまだ多い。彼らが気をもむのは一段の値引きと、ゴーンが新興国などで進めた過剰な生産体制の整理の行方だ。かつて日産との資本提携を解消した足回り部品のヨロズ。なお売上高の7割が日産グループ向けの隠れケイレツの一社だ。「日産の稼働の延期が決まりました」。2月9日夕、ヨロズの常務執行役員、春田力は中国・広東省広州市の駐在員から電話を受けた。新型コロナウイルスで止まっていた広州工場では翌10日の稼働に向け、従業員を迎え入れる準備の最中だった。広州でつくる部品の6割以上を納める日産が延期を決めたことで、ヨロズも歩調を合わせるしかなかった。後日、広州は再稼働したが、日産頼みの構造が改めて浮き彫りになった。日産向けが多いある部品会社の幹部は「日産への依存を減らすべきだとは思うが簡単じゃない」と話す。脳裏をよぎるのは米ゼネラル・モーターズ(GM)の新規受注を逃し、昨年に私的整理の事業再生ADR(裁判以外の紛争解決)を申請した曙ブレーキ工業だ。日産、トヨタ自動車とも取引し、GM向けの売上高比率は3割近くでそこまで高くなかった。取引先を分散する独立系でさえ厳しい。それなら日産にどうしがみつくかを考えた方が現実的とみる。「内田なら直言しやすい」との雰囲気が漂うが、安易な協調路線は双方に必要な改革の妨げになる可能性もある。自動運転など「CASE」時代に向け、日立製作所系とホンダ系の部品会社が統合を決めるなど業界は揺れている。良くも悪くも部品会社を巻き込んで改革を進めたゴーンはいない。部品会社もまた岐路に立っている。

*17-7:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200319&ng=DGKKZO56952070Y0A310C2EA1000 (日経新聞社説 2020.3.19) 地価の先行きを注視したい
 緩やかな上昇を続けてきた地価の先行きに不透明感が強まっている。新型コロナウイルスの感染拡大で地価を支えてきた訪日客需要が急減しており、不動産マネーの動向も気がかりだ。国土交通省が18日まとめた公示地価は、調査時点が新型コロナが広がる前の1月1日とあって全国平均は5年連続で上昇した。上昇地点が地方中小都市に広がり、地方圏はバブル崩壊後の1992年以来、28年ぶりに上昇に転じた。県庁所在都市などでは、高齢化で郊外の戸建てを手放し、再開発で利便性が高まった中心部のマンションに移り住む動きが広がる。これに訪日客向けのホテル需要も重なって地価を押し上げた。地価に災害リスクが反映されるケースも目立ってきた。こうした情報を、災害に強い安全な街づくりに生かしたい。一方、三大都市圏の地価は頭打ち傾向だ。上昇率をみると東京圏はわずかに伸びたが、名古屋圏は鈍った。不動産マネーは収益性を求めて投資対象を選別する動きを強めている。地価上昇は金融緩和による低金利が支えてきた。オフィスビルなどに投資した利回りから長期金利を差し引いた利回りで、東京はロンドンやニューヨークより有利とされ、資金が流入してきた。こうした環境に金融市場の混乱がどう影響するか見極めたい。すでに不動産投資信託(REIT)は訪日客の急減でホテルなどの収益が見通せず、指数が急落した。株価の下落は富裕層の不動産投資を慎重にさせ、不動産価格に波及する可能性がある。日銀は追加緩和策でREITの購入目標を年1800億円に倍増した。今後も市場動向には十分に目配りしてほしい。都市部でオフィス需要を支える企業の人材確保意欲は根強い。ただ、テレワークの広がりはオフィス需要にも変化をもたらす可能性がある。東京五輪の行方も都心の再開発に影響する。地価の先行きを注視したい。

<ニーズに合ったサービスを迅速に行うべき>
PS(2020年3月20日追加):*18-1のように、日経新聞が「①厚労省が新型コロナ感染者だけを受け入れる病院や病棟の設置を検討するよう各都道府県に通知する」「②これは感染が急拡大した時に診療を効率化し、他の患者への院内感染を防ぐ狙い」「③感染者を診療しない病院も設定して診療する医療機関を明確化」「④厚労省の推計では感染防止策を全く行わない最悪のケースで、東京都ではピーク時に入院が必要な患者が2万人、重症者が700人発生する」等としている。しかし、①②は既に治療薬が出始めており、新型コロナ感染者だけを受診する病院を作れば診療も不効率になるだろう。もちろん、②の院内感染防止は重要で小さな診療所への感染症患者の受診も制限が必要だろうが、それには基幹病院が感染症患者専用の入り口や入院病棟(もしくは階)を作ればすむことだ。イタリアは社会保障をカットしすぎたため、医療破綻が起きて死亡率も高くなっているが、日本は普段から栄養をとって健康意識も高くしているため、(欧米は生物兵器も視野に入れて防御しているようだが)ウイルスを使って意図的に健康弱者を攻撃しない限り、④のような蔓延はないと思われる。
 そのため、*18-2のように、地域医療の中核として命や健康を支えている公的病院を効率化の論理だけで再編する方が問題で、普段から余裕のあることが感染症患者専用の入り口や入院病棟(もしくは階)を作るために必要なのだ。なお、感染症は、コレラ・結核・はしか・水疱瘡・インフルエンザなど医師にとっては基本的疾患であるため、国家試験を通った医師なら必要なことはわかっている筈であり、厚労省の方がどこか変である。
 なお、*18-3の介護保険についても、厚労省は負担増・給付減に余念がないが、日頃の負担ばかり重くていざという時に役立たないようではしようがない。私は、高齢者は1階やエレベーターの近くに優先的に住まわせた方がよいと思うが、自宅療養するのに生活介助は欠かせない。さらに、今回の新型コロナ感染者も「軽症の人は自宅療養」としているが、自宅療養中は全く自宅を出なくてよいという人は、自宅では何もしなくても食事が出てくる人であり、それは多くの人にとって不可能なことで、自宅療養するには介護者が必要な筈なのである。


       2020.3.18、2020.3.19東京新聞より

(図の説明:65歳以上を特に介護が必要な高齢者とするのは実態に合っておらず、何歳であっても介護が必要な人はいるし、90歳で元気な人もいる。しかし、左図のように、介護保険は年齢で制度をわけており、特に65歳以上の負担が大きいという変な制度になってしまった。中央の図は、介護が必要になった時の初期費用と月々の費用のイメージで、費用がかさむことは間違いない。なお、介護の社会的負担は、右図のように、施設に入った場合の方が大きく、在宅の方が小さくなっているが、本来は同じ障害でも在宅の方が生活が変わらず快適なかわりに、訪問介護になる分だけ手間がかかって高いのが当たり前なので、誰のための介護かわからなくなっている)

*18-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200320&ng=DGKKZO57042550Z10C20A3CC1000 (日経新聞 2020.3.20) 新型コロナ専門病院設置 検討を 厚労省、自治体へ通知
 厚生労働省は19日、入院が必要な新型コロナウイルスの感染者だけを受け入れる病院や病棟の設置を検討するよう、各都道府県に通知すると発表した。今後、感染が急激に拡大したときに診療を効率化するとともに、ほかの患者への院内感染を防ぐ狙いがある。感染者を診療しない病院も設定するなど各医療機関の役割を明確にする。厚労省の患者推計によれば、感染防止策を全く行わない最悪のケースの場合、東京都ではピーク時に入院が必要な患者が2万人、重症者が700人発生する。厚労省はこの状況に対応できる病床数や、重症者向けの人工呼吸器などの整備を求めている。今回の通知で整備すべき医療体制をより具体化した。厚労省は各都道府県に対し、新型コロナの患者だけを受け入れる病院の検討を求める。感染症の治療経験が豊富な医師や看護師を集約するなどして効率化を図る。さらに重篤患者向けの人工肺も扱える病院などを、外来も行わずに入院に特化した病院として指定する。医療機関ごとの受け入れ調整を担う組織を都道府県ごとに設置するほか、各地方ごとに広域調整本部もつくり、都道府県内で受け入れきれなくなった患者を周辺に搬送する。持病がある人や妊産婦など感染すると重症化する恐れがある人が安心して受診できるよう、新型ウイルスの患者を診療しない病院の指定も求める。

*18-2:https://www.agrinews.co.jp/p49069.html (日本農業新聞 2019年10月25日) 公的病院の再編 実態即し丁寧な議論を
 地域医療の中核的存在である公立・公的病院は、命や健康を支える最重要のインフラだ。住民が置き去りの拙速で乱暴な再編統合論議は許されない。厚生労働省は、全国の公立病院と赤十字や済生会といった公的病院のうち、再編統合の議論が必要と位置付けた424医療機関の実名を公表。全国に105あるJA厚生連病院も3割に当たる31病院が対象となった。同省が、救急やがん、脳卒中などで診療実績が少なく、近隣に当該病院の機能を代替できる病院があることなどを勘案して公表した。424医療機関の内訳は公立が257、公的が167。見直しの権限は自治体側にあり、強制力はない。再編の手法も統廃合に限定しない。病床数の削減や機能の集約化なども含め、地域の実情を踏まえて検討することになる。だが、来年9月までに具体的な結論を出すこととなっており、残された時間は少ない。このため、農村部からは「身近な病院がなくなる」「地域の事情を考えていない」など不安や不満を訴える声が上がっている。北海道帯広市で開かれた日本農村医学会学術総会でも、厚生連病院関係者から今回の公表や議論の在り方に疑問を投げ掛ける意見が出された。ある関係者は、調査が2017年6月の診療実績に基づき行われたことについて「6月は農繁期で農村部なら患者が減る時期。恣意(しい)的と感じる」と指摘する。その上で、各病院は医師不足に悩んでいるとして、「病院名の公表でさらに医師確保が困難になるのでは」と懸念する。全国知事会でも「リスト返上」を求める意見が出た。全国市長会からも批判が相次いでいる。JA全厚連は、「議論は必要」としながら「一部データを基準に再編・統合ありきにしてはいけない」とくぎを刺し、地域住民の意見に耳を傾けた丁寧な議論を求める。今回の公表の背景には、医療費を抑制したい国の考えがあるとみられる。17年度の国民医療費は43兆710億円だったが、団塊世代が75歳以上となる25年には56兆円にまで増えるとの見込みもあるためだ。とはいえ、17年6月という一時期の単純なデータで機械的に評価し、再編を促す議論の進め方は乱暴過ぎる。公立・公的病院は地方で医療を提供する重要な役割を担ってきた。特に民間病院が少ない離島などで、病院がなくなったり、機能が一部失われたりした場合、そこに住み続けられなくなる恐れもある。国はこれまでも、医療費が膨らむ要因として病床数の削減を促してきた。だが、病床数が議論の根底なのか。医師不足の問題はどう考えるのか。命と健康に関わる問題だけに効率化だけで議論すべきではない。公立・公的病院なくして地方創生は成り立たない。地域医療を担っている現実をもっと認識し、住民本位の医療供給体制について議論すべきだ。

*18-3:https://www.tokyo-np.co.jp/article/living/life/202003/CK2020031802000178.html (東京新聞 2020年3月18日) <支え合う 介護保険20年>(1)給付外し  負担増し減るサービス
 介護保険が始まり、四月で二十年。社会で介護を支えることを目指して始まった制度は生活に定着し、欠かせないものになった。だが、高齢化の進展に伴い、費用も急増。そのひずみも表れている。安心して暮らし続けるために「支え合う」仕組みの今と、これからを考える。(介護保険取材班)。しょうゆの入った一リットルのペットボトルは、ずっしりと重い。持病で腰や膝を曲げられず、シンクの縁に手をかけ、ゆっくりと下の棚に収める。東海地方に住む女性(83)は週一回、ヘルパーが買ってきてくれた食品を棚や冷蔵庫に収める。以前はヘルパーが収納してくれたが、昨年十月から業者が代わり、サービス時間が十五分少ない四十五分に。収納まで行う余裕がなくなった。「脚が痛く、冷蔵庫に入れるだけでも大変」。エレベーターのない市営住宅の三階に一人暮らし。背骨の病気を患い、長時間は歩けない。畳のへりにもつまずく。腰や膝が痛くて曲げられず、床に落ちたものを取るのも難しい。若いころに夫を亡くし、二人の子を育て上げた。だが、近隣に住む娘は仕事が忙しく、あまり頼れない。五年ほど前から介護保険を使い、ヘルパーに買い物と部屋の掃除を依頼。週二回の訪問が女性の生活を支えてきた。生活にどれだけ介助が必要かを示す要介護度では要支援2。七段階のうち軽い方から二番目だが、「ヘルパーが頼り」という。事業者が代わった原因は、二〇一五年度の制度改正。要支援の人への在宅サービスの中で、女性も受ける生活援助など介護予防の「訪問介護」と、「通所介護(デイサービス)」が保険の給付対象から外され、市区町村の事業になった。給付対象だと、事業所の基準や報酬などを国が決め、全国一律だ。だが、市区町村事業では、自治体が事業費の範囲で決める。女性の市では改正後も経過措置で保険給付時と同じ水準の報酬を支払っていたが、昨年九月末で終了。ヘルパー資格がない人もサービスができるようになり、報酬も八割に引き下げた。これに伴い、四十七事業所のうち八事業所が撤退した。女性が昨年まで依頼していた事業者もその一つ。ヘルパーに八月、突然「十月から来られない」と言われ、途方に暮れた。スーパーに行くにも手押し車を三階から一人で下ろすのは難しい。週一度の通院にはタクシーを使うが、月六千円はかかる。収入は一カ月八万五千円の年金だけ。「これ以上タクシー代がかさめば生活できない」。夜も眠れず、泣いた。利用計画を作るケアマネジャーが奔走し、別の事業所が見つかったのは九月中旬だった。減った十五分は大きかった。以前はヘルパーと会話する時間もあり、話し相手がいない女性には貴重だった。一方、保険料は年金から天引きされるなどし、毎月二千円以上の利用料もかかる。「保険料も利用料も払っているのにサービスが減るなんて」。低所得者向けの減免措置は受けているが、負担感は増している。市の担当者は「今後団塊の世代が七十五歳を超え、訪問介護を利用する人が増える。ヘルパーの確保も難しく、経過措置から切り替えた」。民間が国の補助で行った一八年度の調査では、保険給付時の基準が緩和され、報酬などが下がったサービスについて調査に応じた全国千六百八十六市町村の六割が「実施主体や担い手がいない」と答えた。別の市で生活援助を提供する事業者は嘆く。「利用者が多いほど赤字。事業者がいなくなれば、『保険あってサービスなし』になりかねない」 
◆相次ぐ改正 揺らぐ理念
 高齢化の進行で、介護保険の要介護認定者数や総費用、保険料は制度の始まった二〇〇〇年度から右肩上がりに伸び続けている。国は制度の維持に向け、給付の削減と、合理化を進めてきた。その結果、制度開始前に掲げられた「必要なサービスを自由に選べる」「家族の負担を軽減」などの理念は大きく揺らいでいる。厚生労働省によると、要介護認定者は制度開始時の二百十八万人から一九年四月は六百五十九万人に。総費用は三兆六千億円から膨らみ続け、二〇年度当初予算案で十二兆円を超えた。六十五歳以上の保険料の全国平均は改定のたびに上がり、第七期(一八~二〇年度)は月額五千八百六十九円と一期の二倍超に。団塊ジュニアが六十五歳以上になる四〇年度には九千二百円に達する試算もある。標的になったのが、在宅で掃除や調理、洗濯などの家事を行う生活援助だ。一九九六年に制度創設を答申した老人保健福祉審議会は、要支援の人への生活援助について「寝たきりの予防や自立支援につながる形でサービス提供を給付の対象にすべきだ」と明記。だが、開始後は審議会などで「ヘルパーを家政婦代わりに使っている」「家事代行型のサービスは高齢者の能力を奪う」などと批判され、時間や介護報酬が削減されてきた=年表。一五年度には要支援の人の生活援助を含む訪問介護とデイサービスを保険給付から外し市区町村の事業に移した。介護保険は保険給付により全国一律で同じ水準のサービスを受けられるようにしたはずだった。だが、自治体の財政力による地域格差が生まれている。ヘルパー不足に加え、報酬単価が切り下げられ、「採算が取れない」と事業者が相次いで撤退。同居家族がいる場合には、生活援助を認めない自治体もある。一八年には月に一定回数以上の生活援助を組み込む場合はケアマネジャーに市区町村への事前の届け出を義務付け、事実上の抑制策に。今年の法改正では要介護1と2の人への生活援助を給付から外す案が出た。「在宅介護を続けられない人が続出する」などと批判が噴出し、受け皿の住民ボランティアなどの態勢が整わず見送られたが、介護関係者は危機感を募らせる。一方、施設サービスでも〇五年から居住費や食費は自己負担に。特別養護老人ホームの入所は一五年四月から原則要介護3以上に制限された。制度開始前、当時の厚生省は「家族の負担軽減」「サービスを自由に選べる」などとアピール。だが、今も年間十万人の介護離職者がおり、介護者による殺人や虐待も続いている。
◆介護保険の給付抑制の動き
2000年 介護保険制度スタート
      厚生省(当時)が「生活援助の不適切事例」として家族の調理、洗濯、
       買い物などを例示
2005年 施設の居住費・食費を自己負担に
2006年 要支援の人の訪問介護は時間単位の従量制から、月単位の定額制に
2012年 生活援助で、1回当たりの提供時間を15分減らして45分(20分~45分
       未満と45分以上)を基本とし、介護報酬を引き下げ
2015年 要支援の人への訪問介護とデイサービスが給付対象から外れる
       ▽特養への入居は原則要介護3以上に
       ▽「一定以上の所得」がある人の利用料は2割に
2018年 「特に所得の高い層」の利用料を3割に
<介護保険制度> 介護が必要と認定された高齢者らに介護サービスを提供する公的保険。市区町村が保険者で、保険料は65歳以上の高齢者は原則年金から天引き、40~64歳は健康保険料と一緒に徴収される。要支援1から要介護5まで(7段階)の認定を受けると、要介護度に応じて使えるサービスの限度額が決まる。利用料は所得に応じ、費用の1~3割。残りが保険から給付され、財源は税金が50%(国25%、都道府県と市区町村が12・5%ずつ)、保険料50%。

<政策が的外れで遅い理由は何か?>
PS(2020年3月22、23、25、26日):*19-1のように、介護は担い手不足で廃業や休床の事業所が出ているそうだが、サービスの需要があるのに取りこぼしている工夫のなさは、介護の100%を国の制度に依存しているからかもしれない。そのため、自由診療ならぬ自由介護を同時に行えば、経営に工夫の余地が大きくなると思うが、慢性的なヘルパー不足であるのに、介護士になろうとして来てくれた外国人を日本人介護士の賃金が下がらないように、日本語能力の不十分性を建前として国が追い返しているのはどうしようもない。しかし、介護制度は、介護サービスを行う人に高い賃金を払うために行っているのではなく、介護を受ける人に不便がないように行っているものであるため、この本末転倒の考え方が何をやっても失敗に終わらせているのである。
 さらに、日本には使っていない資源が多く、木材もその一つで、国有林の木材は国の資産・自治体林の木材は自治体の資産であるため、*19-2のように、国産材の利活用を進めれば、それぞれの税外収入になるにもかかわらず、これも人手が足りない等と言って利用しない。建材はもちろん、買い物袋も減プラして強い紙を使用することはでき、そうすれば税外収入・環境・原料の自給率向上など、あらゆる面でプラスになるのに、である。
 そして、*19-3のように、新型コロナの治療に、インフルエンザ薬「アビガン」とエボラ出血熱薬「レムデシビル」が有望視されており、アビガンは2014年3月に製造販売承認を取得して備蓄もあるのに使わず、「レムデシビル」「ギリアド」は他国では4月にも臨床試験(治験)の結果が出るのに、日本では数カ月先しか使わず、*19-4のように、30兆円規模の緊急経済対策を行って赤字国債を検討しているのだそうで、これでは、いくら国民に現金を配っても老後の心配が大きいため老後のための貯蓄にいそしむしかない。つまり、ポイントを外したことばかり行いながら、(選挙のためか)大きな無駄遣いをしているのである。
 また、*19-6のように、日本の製薬会社「富士フイルム富山化学」が開発し、国内では未だ臨床試験中のインフルエンザ薬「アビガン」が、軽症者に限れば投与後7日以内に新型コロナ肺炎患者の回復率7割超で治療に有効だとする研究成果を中国の武漢大等のチームが23日までにまとめ、中国は既にアビガンを政府の診療方針に採用すると表明したそうだ。「新型コロナには経済対策より治療薬」と言われており、相変わらずの日本のとろさにはがっかりする。
 このような中、*19-5のように、北九州市や地元企業等が出資する電力小売業「北九州パワー」などが、国のFITを終了した家庭用太陽光発電(出力10キロワット未満)の余剰電力を九電の買取価格(7円)よりも高い価格(7.5円)で買い取って公共施設に供給し、エネルギーの地産地消を目指すそうだ。太陽光も地域資源であり、クリーンエネルギーでもあるため、これによって地域を豊かにしながら次に進むのはよいと考える。
 しかし、日経新聞が、*19-7のように、「①大阪医科大元講師の男性医師が無許可施設で人の脂肪幹細胞を培養して40代女性に国に無届けで投与し再生医療を行った」「②再生医療安全性確保法違反の罪で略式起訴され、罰金30万円の略式命令を受けた」「③その背景には研究資金のメドが立たずに成果を焦ったことがある」「④日本再生医療学会は『認定医』の資格を持つ大阪医科大の元講師を除名する方針」「⑤再生医療安全性確保法が14年に施行され、医療機関に対し専門家による委員会の審査を経た再生医療の提供計画を国に提出するよう規定して、計画に基づかずに医療行為を実施した医師には懲役や罰金を科すと定めている」としている。再生医療は、これまでは治療できなかった病気やけがから回復させることを期待できる治療法で、例えば、*19-8の首の骨が曲がる大けがをして重い身体障害者となった木村参院議員のような脊髄損傷も治すことができると考えられる。私は、脊椎・脊髄の専門家である夫の学会に随行した時に、南米の大先生が「脂肪幹細胞を使って脊髄損傷を既に治療した」と話しているのを聞いたことがあり、日本では再生医療と言えばiPS細胞しか認めていないのがむしろおかしいと思っている。また、対象が「アンチエイジング」だったとしても、治験しなければ効果はわからないため、研究するにあたっては、⑤のような競争相手になる専門家の審査を要するようにしたことが問題で、④の対応もおかしいだろう。つまり、治療法の確立には、幅広いアイデアを取り入れた治験を速やかに行い、最善の結果を迅速に出せるよう、資金を投入すべきなのである。
 一方、中国は、*19-9のように、科学で世界一になることを目指し、この20年間、外国で活躍した研究者を呼び戻し、多額の資金を投じて高給で迎え、そこに若い優秀な中国人学生が集まって在学中に1~2年の欧米留学をして共同研究し、欧米で学位を取得する体制も確立しており、中国のトップレベルの学生は意欲と自信に満ちて貪欲に研究するそうだ。その理由は、中国政治家のトップがほぼ理科系出身で占められ、科学・技術の発展を通じて中国を世界一の大国にするという意思が共有されているからだそうで、中国はその歴史からか、確かに普通の人まで「世界一になる」という意識を持っている国である。そして、研究投資は、既に成功した人だけではなく可能性を秘めた者に広く厚く行っているところが日本とは逆であり、これが質の高い技術の醸成を通じてGDPの成長に繋がるのは間違いない。
 なお、私は1992年に中国に進出した日本企業のコンサルティングで深圳に行ったことがあるためよく知っているのだが、1990年代の中国は、*19-9のように、まだ衛生状態を疑う店やホテルが多く、従業員も不愛想で官僚的だった。これは共産主義経済の名残であり、共産主義経済でそうなる理由は、客(需要・消費者)あっての営業という認識がなく、労働自体に価値があると考えすぎて労働者が官僚のようになり、報酬と努力に相関関係がないため努力と工夫の動機づけに欠けるからである。その反省が、1980年代に鄧小平政権が改革開放路線として始めた社会主義市場経済体制の採用で、当時の日本は、大国が共産主義経済体制をとって市場に参入していなかった千載一遇の幸運のおかげで経済発展し、アドバイスする立場にあったのだ。
 しかし、その後の油断と努力不足によってその優位性を維持することはできず、*19-10のように、今では「全日本造船構想(オールジャパン造船)」などという国内では競争のない造船会社を作ろうとしているが、このような官主導の大規模化が産業や経営を弱めることは、共産主義経済下の企業を見ればわかることだ。具体的には、日本の造船業は、大規模な船舶を作るためだけにあるのでも他国の造船会社と規模による競争で一瞬勝つためだけにあるのでもなく、本当に便利で快適な船を作って競争力で勝ち、自然とシェアを上げることが必要なのだ。そして、「本当に便利で快適な船」は目的によって異なり、漁船・採掘船・病院船・運搬船・観光船等々の種類によって必要な最新装備は違うのであって、これらの多様な要請に応えるためには多様な主体が存在することが必要なのである。しかし、今後、エネルギーの変換・魚群探知・自動運転・衛生等の技術は必要な装備になるため、産業を超えた互いの技術供与が役立つだろう。

    
   2018.1.25、2018.10.14産経新聞

(図の説明:1番左の図のように、科学技術に関する論文数は、中国と米国は40万件台だが、日本は10万件にも満たず、6位になっている。また、左から2番目の図のように、労働力不足による倒産も増えた。しかし、右から2番目の図のように、外国人労働者の雇用には未だ厳しい制限があり、物価だけが上がった結果、1番右の図のように、日本の購買力平価に基づくGDPはインドより低い4位になってしまった)

*19-1:https://www.tokyo-np.co.jp/article/living/life/202003/CK2020032002000189.html (日本農業新聞 2020年3月20日) <支え合う 介護保険20年>(3)担い手不足 廃業、休床の事業所も
 「本当に心苦しいのですが、経営は限界でした」。社会福祉法人「宮城厚生福祉会」(仙台市)法人事務局長の大内誠さん(39)は言葉を絞り出した。同法人は昨年十月、同市宮城野区で十五年間運営してきた訪問介護事業所を閉じた。きっかけは土日の訪問介護を引き受けていた七十二歳の女性ヘルパーからの「もう体力的に無理」との申し出だった。当時、事業所は約四十人の利用者がおり、ヘルパー七、八人で対応。ヘルパーの平均年齢は六十歳を超え、入浴介助などの身体介護は体力的に厳しくなっていた。女性の退職で勤務が回らなくなり、閉鎖を決断。利用者は近隣の複数の事業所に懇願して引き継いでもらった。「受けてもいいけどヘルパーをよこして、と言われた」。同じころ、隣接する宮城県多賀城市の社会福祉協議会が、一九九七年から運営する訪問介護事業所を年度内で閉じると利用者に通知。社協は地域福祉を担う公的性格の強い民間団体で、「まさか」と地元の福祉関係者に衝撃が走った。同社協事務局長の菅野昌彦さん(62)は「ヘルパーが集まらず、年間赤字が約一千万円に達したため」と話す。東海地方のある市の社協も昨年四月、訪問入浴サービスを廃止。ヘルパー数人と看護師一人がチームで行っていたが、利用者が少なかったことに加え、必要な人数のヘルパーも集まらなかった。担当者は「人手がかかり、収支が合わなくなった」と話す。東京商工リサーチによると、二〇一九年の介護サービス事業者の倒産件数(負債額一千万円以上)は百十一件で、過去最多の一七年に並ぶ。このうち、訪問介護事業者が半数以上の五十八件を占めた。担当者によると、事業所間でヘルパーの奪い合いが起きており、募集をかけても集まらなかったり、給料を上げて赤字になったりして倒産に追い込まれるケースが多い。慢性的なヘルパー不足は、介護保険のサービスを根底から崩し始めている。在宅だけでなく、施設サービスも深刻だ。宮城厚生福祉会が一六年四月に多賀城市に新設した小規模特別養護老人ホーム「風の音サテライト史(ふみ)」は、介護職不足のため定員の二十九人に対応できず、開設以来、十九人の入所に制限。約十人の介護職が二つのユニットを回すのにぎりぎりの体制で、施設長も日常的に夜勤に入る。残り一ユニットは真新しいまま一度も使われていない。同会によると、職員を確保できない懸念は当初からあった。だが、同市内には特養が少なく、行政側の強い要請もあり開所。県内の高校や東北六県の介護福祉士養成校を訪問して奨学金制度や就職祝い金をアピールするなどして募ったが、効果は薄かったという。特養に入りたくても入れない待機者は同市と近隣一市三町で約百五十人。既に四、五年待っている人もいるといい、「入りたい人がいるのになぜ、閉めているのか」という声も。厚生労働省によると、全国の待機者は、昨年四月一日時点で約三十二万六千人に上る。一方、独立行政法人「福祉医療機構」(東京)が昨年、全国の特養に実施した介護人材に関する調査で、八百五十三施設(回答率24%)の73%が「不足」と回答。13%が利用者の受け入れを制限していた。人材確保が難しい理由で最も多かったのが「近隣施設との競合」で六割に上った。
介護問題に詳しい淑徳大の結城康博教授(社会福祉学)は「このまま人材不足が進めば、地域の介護が崩壊する」と危惧する。
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*19-2:https://www.agrinews.co.jp/p50357.html (日本農業新聞 2020年3月22日) 民間で「木造」広がる 7階建てビル、コンビニ 建築物に国産材を利用 需要確保へ推進継続 林野庁
 林野庁は、民間建築物への木材利用促進を目指す懇親会「ウッド・チェンジ・ネットワーク」の会員企業の進捗(しんちょく)状況を取りまとめた。国産材を積極的に使う動きが広がり、純木造高層ビルの建築計画も動きだしている。利用期を迎えた国内の人工林の需要確保に向けて、公共建築物だけでなく民間建築物も取り込むため、引き続き働き掛ける方針だ。政府は、林業の成長産業化を目指し、2017年に約3000万立方メートルだった国産材の供給・利用量を25年までに4000万立方メートルに伸ばすことを目標に掲げる。都市部の建築物に国産材を積極利用する「木質化」を成長産業化の柱の一つに据えており、木材の需要拡大へ民間も取り込みたい考えだ。そのため19年に同ネットワークを設立した。現在は、31の企業・団体が参加しており、3月中旬に開いた会合で、各企業が進捗を報告した。木造建築のシェルター(山形市)は、木質耐火部材を開発。中高層ビルへの利用が可能となったことを受け、21年春、純木造7階建てビルを仙台市のJR仙台駅東口エリアに竣工(しゅんこう)する予定だ。主要構造部には主に東北の杉材を使用する。同社は「製材での高層ビル建設で、新たな木材利用の提案ができる」と展望する。住宅建材のナイス(横浜市)は、地域産材を使った建材が流通しやすくなるよう、木材を規格化した。今後、地域の木材販売業者や施工業者を通じ、脱プラ・木質化を提案していく方針だ。コンビニエンスストア大手のセブン―イレブン・ジャパン(東京都千代田区)は環境配慮の観点から、木造店舗を複数展開する計画を立てている。実用化に向けて、コストや工期の効率化などを検討する。同ネットワークに参加する森林研究・整備機構森林総合研究所の原田寿郎氏は「どれだけ木材を使えば地域に還元できるかという観点が必要」と指摘する。同庁は、民間建築物の木造化を加速させるには「さらに施主に働き掛ける必要がある」(木材利用課)とし、同ネットワークを通じて導入実績を増やしたい考えだ。

*19-3:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO56948630Y0A310C2MM8000/?n_cid=NMAIL006_20200318_Y (日経新聞 2020/3/18) コロナ治療薬 米社製、4月にも治験結果
 新型コロナウイルスの治療に既存の抗ウイルス薬が有望だとわかり、早期に使える可能性が出てきた。インフルエンザ薬「アビガン」とエボラ出血熱薬「レムデシビル」が特に有望視されている。レムデシビルは4月にも臨床試験(治験)の結果が出る見通しだ。実用化できれば世界規模の死者増加を抑え、経済への打撃を緩和することにもつながる。アビガンは国内では2014年3月にインフルエンザ薬として製造販売承認を取得し、16年に中国製薬会社の浙江海正薬業(浙江省)にライセンスを供与していた。浙江海正薬業は2月に中国当局から生産認可を得ており、量産を本格化する。日本でも医師の判断によって新型コロナの患者に投与されている。政府はアビガンを200万人分備蓄しており、富士フイルム側は「政府から増産を検討するように要請を受けている」と説明する。実際の増産には原材料の確保などの課題もありそうだ。エボラ出血熱の治療用に開発されていた米ギリアド・サイエンシズのレムデシビルは各国で未承認だが、中国で新型コロナの患者に投与したところ効果が確認され、同社は日米中などでの治験を始めた。1千人程度の患者で効果を見ている。ギリアドは「まず中国で4月にも結果が出る」と説明。厚生労働省が緊急措置として審査を急ぎ、条件付きの仮承認を出すなどすれば、日本でも数カ月のうちに医療現場で使えるようになる可能性がある。商業生産されている薬ではないため、大量供給するには新たに製造体制を構築する必要がある。米アッヴィの抗エイズウイルス(HIV)薬「カレトラ」も中国でコロナ治療に使われ、他の薬剤と組み合わせた治験が進む。日本では2000年に承認されてエイズ治療に広く使われており、新型コロナで有効性が確認された場合、早期の大量供給も可能とみられる。いずれの薬剤も副作用のリスクがあり、軽症患者の治療には向かない可能性が高い。アビガンは動物実験で胎児への影響が確認され、妊婦への使用は厳禁だ。重篤な肝障害などの副作用も報告されている。カレトラは膵炎(すいえん)や肝障害が報告されている。レムデシビルの副作用はまだ不明で、低血圧障害などの可能性が指摘される。国内ではこのほか、ぜんそく薬「シクレソニド」で解熱などの効果が見られたとして症例研究が進んでいる。東京大学の井上純一郎教授らは18日、急性膵炎の治療薬「ナファモスタット」を試験投与して効果を調べると発表した。

*19-4:https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20200321-00000055-kyodonews-bus_all (Yahoo 2020/3/21)緊急経済対策、赤字国債を検討 補正予算財源、借金さらに増加
 新型コロナウイルスの感染症拡大に伴う緊急経済対策で、政府が必要な財源として新たな借金となる赤字国債の発行を検討していることが21日、分かった。与野党から30兆円規模の経済対策を求める声が上がっており、経済対策を反映する2020年度補正予算の財源として活用する可能性がある。新型コロナの日本経済への影響は、08年のリーマン・ショックを超えるとの指摘も出ている。国民に現金を配る現金給付のほか、売り上げが落ち込んだ観光業への支援策が検討されている。赤字国債の発行で国の借金は増えることになり、財政健全化の目標達成はさらに厳しくなる。

*19-5:https://www.nishinippon.co.jp/item/n/593911/ (西日本新聞 2020/3/22) エネルギー地産地消へ 太陽光余剰電力買い取り公共施設に 北九州市
 北九州市や地元企業などが出資する電力小売業の「北九州パワー」(同市)などが、国の固定価格買い取り制度(FIT)適用が終了した家庭用太陽光発電(出力10キロワット未満)の余剰電力を買い取るサービスを始めた。市内で生み出した「卒FIT」電力を九州電力より高く買い取り、小倉城など地域の公共施設に供給してエネルギーの地産地消を目指す。電力はNTTスマイルエナジー(NTTSE、大阪市)が市民から買い取り、北九州パワーを通じて区役所や市立美術館などの公共施設に供給。1月から買い取りサービスを始めた。家庭用太陽光発電など再生可能エネルギーの普及を目的としたFITは2009年に始まり、昨年11月から順次、家庭用で10年間のFIT期間が終了した世帯が発生。FITでは当初、買い取り価格が1キロワット時当たり40円代だった。九電の買い取り価格は同7円だが、NTTSEは7・5円に設定している。市は07年度から6年間、太陽光発電の導入に補助制度を設け、約5千世帯(総出力約2万キロワット)が補助を受けた。このうち本年度にFIT適用が終了する約500世帯に同市がNTTSEへの切り替えを促す文書を送付したという。市は昨年5月、クリーンエネルギーの普及を目指しNTTSE、北九州パワーなどと連携協定を締結。市地域エネルギー推進課は「地域の太陽光エネルギーを地域で使う全国的にも珍しい取り組み。補助金世帯の半分に当たる1万キロワット分を切り替えてもらうのが目標だ」としている。

*19-6:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/503400 (佐賀新聞 2020.3.23) 「アビガン」、7日で7割回復、軽症者に中国チーム
 インフルエンザ薬「アビガン」が新型コロナウイルスに感染した肺炎患者の治療に有効だとする研究成果を中国・武漢大などのチームが23日までにまとめた。軽症者に限ると投与後7日以内の回復率が7割を超えた。多くは4日間で症状が消えた。チームは「高血圧や糖尿病など持病がある人には、早期の症状改善が重要だ」として、有望な薬剤だとしている。中国は既にアビガンを政府の診療方針に採用することを表明している。チームは2月から3月にかけ、同大病院など三つの病院で18歳以上の116人の患者に対しアビガンを投与。1日当たりの用量はインフルエンザ治療と同じにして、熱やせきなど症状が出てから12日以内に錠剤を飲んでもらった。1週間後の状態でみると、98人いた比較的軽い患者では70人(71%)が、18人いた重症者の中でも1人が回復した。全体では61%の回復率だった。副作用は37人で出たが、尿酸値の上昇や肝機能の数値の異常などで深刻なものはなく、退院時には正常に戻ったという。アビガンは日本の製薬会社「富士フイルム富山化学」(東京)が開発。日本国内でも臨床試験が進められている。

*19-7:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200323&ng=DGKKZO57054110Q0A320C2CR0000 (日経新聞 20200323) 無許可再生医療、功を焦った末に、大阪医科大元講師に罰金命令 学会、動画で「注意を」
 大阪医科大(大阪府高槻市)元講師の男性医師(52)が、無許可施設で人の幹細胞を培養する再生医療をしたとして再生医療安全性確保法違反の罪で略式起訴され、罰金30万円の略式命令を受けた。背景には研究資金のメドが立たずに成果を焦ったことがあるとみられている。再生医療をめぐるトラブルを防ぐため、学会は受診者向けの動画などを公開して注意を促している。「人に投与して効果や安全性が確認できれば、新治療薬が視野に入る」。大阪府警に逮捕された元講師は調べにこう供述したという。府警や大学によると、元講師は2019年3~5月、無許可施設で4人から採取した脂肪幹細胞を培養。4人のうち40代女性に対して培養した脂肪幹細胞を国に無届けで投与したとされる。元講師は略式起訴され、簡裁は2月28日付で罰金30万円の略式命令を出した。脂肪幹細胞は骨や筋肉などの細胞や組織になる能力を持つ。元講師は脂肪幹細胞に薬剤を取り込ませて能力を高める技術を開発し、大学も16年以降、特許を申請した。培養にはその技術を用いていたとされるが、効果はマウスでしか確認されていない。元講師は府警の調べに「培養施設の新設には膨大なコストがかかる」と供述。一連の施術は医療設備のない研究棟の廊下で行われており、捜査関係者は「実現したい研究計画に対して資金が足りず、委員会の審査にかけても通らないと思っていたのだろう」とみる。再生医療はこれまで治療できなかった病気やけがの回復が期待される。一方で、保険適用外の自由診療として安全性や効果が不透明なまま治療が行われている実態があった。京都市の民間クリニックで治療を受けた外国人男性が死亡したとの報告例もある。こうした状況を改善するため再生医療安全性確保法が14年に施行された。医療機関などに対し、専門家による委員会の審査を経た再生医療の提供計画を国に提出するよう規定。計画に基づかずに医療行為を実施した医師などには懲役や罰金を科すと定めた。同法施行後の17年には、他人の臍帯(さいたい)血を国に無届けで投与したとして、東京都内のクリニックの医師ら4人が有罪判決を受けている。アンチエイジングなどの治療を目的に安全性が確立されていない方法で投与したとされる。日本再生医療学会は今後、「認定医」の資格を持つ大阪医科大の元講師を除名とする方針だ。同学会理事長の澤芳樹・大阪大教授は「再生医療安全性確保法は研究者の安易な臨床研究を防ぐ抑止力にもなっている。法令順守を徹底させる仕組みの議論が必要になるのではないか」と話す。同学会は事件後、再生医療を受けることを検討している人向けに、国に届けられた全ての提供計画を見ることができる同学会のポータルサイトを確認するよう注意を促した。3月には再生医療を受ける際の注意事項をまとめた動画も公開し、自由診療を受ける際に「届け出がなされているか」「予期される効果や危険」などを確認するよう呼びかけている。

*19-8:https://digital.asahi.com/articles/ASN3B5WR9N32UTFL01G.html?ref=weekly_mail_top (朝日新聞 2020年3月15日) 障害ある子生まれ「おめでとう」と言えますか 木村議員
 相模原市の障害者施設「津久井やまゆり園」で利用者19人の命が奪われるなどした事件の判決が、16日に予定されている。元職員である被告の言葉をどうみるか。事件が繰り返されないためには――。重い身体障害があり、18歳までの大半を施設で暮らした、れいわ新選組の木村英子参院議員(54)は、障害のある子の誕生に「おめでとう」と言える社会かどうかを問う。どういうことなのか。
●殺されていたのは私かも
 彼の言葉は心の傷に触れるので、集中して公判の報道を見ることができませんでした。施設にいたころの傷ついた自分の気持ちに戻っていくのです。
△裁判で被告は「意思疎通のとれない人は社会の迷惑」「重度障害者がお金と時間を奪っている」などと語った
彼が言っていることはみなさんにとっては耳慣れなくて衝撃的なのでしょうが、同じような意味のことを私は子どものころ、施設の職員に言われ続けました。生きているだけでありがたいと思えとか、社会に出ても意味はないとか。事件は決してひとごとではありません。19歳で地域に出ていなければ、津久井やまゆり園に入所していたかもしれない。殺されていたのは私かもしれないという恐怖が今も私を苦しめます。私は横浜市で生まれ、生後8カ月のときに歩行器ごと玄関から落ち、首の骨が曲がる大けがをして重い身体障害を負いました。小学5年から中学3年の5年間を除き、18歳までの大半を施設で暮らしました。入所は親が決めました。重い障害のある私に医療や介護を受けさせたいという責任感と、施設に預けなければ家族が崩壊しかねなかった現実からです。私には24時間の介護が必要です。親は疲弊し、一家心中をしようとしたことも何度かあった。親が頼れるのは施設でした。やさしい職員もいましたが、私にとっては牢獄のような場所でした。施設が決めた時間に食事をしてお風呂に入って、自分の暮らしを主体的に決めることがない。食事を食べさせてもらえないことも。一番嫌だったのは「どうせ子どもを産まないのに生理があるの?」という言葉です。全ての施設がそうだとは思いませんが、私がいたのはそういう施設でした。時代が変わっても施設とはそういうものだと私は思っています。プライバシーも制限され、自由のない環境で希望すら失い決まった日常を過ごす利用者を見た人たちが、「ともに生きよう」と思えるでしょうか。偏見や差別の意識が生まれたとしても不思議ではありません。私は、被告だから事件を起こしたとは思えない。
●公園で浴びた排除の視線
△裁判では、新たな事実が明るみに出たものの、事件に及んだ動機や真相は十分には解明されなかった。同じような事件を繰り返さないためにどうすればいいのか
 被告を罰しただけでは社会は変わらない。第2、第3の被告を生まないためには、子どものころから障害者とそうでない人が分け隔てなく、地域で暮らせる環境をつくることが必要です。私が望むのは、障害のある子どもが生まれたとき、「おめでとう」と言える社会。私は親から施設に捨てられた、歓迎されない命だという思いを抱いて生きてきました。うしろめたい存在だと思うことも、絶望感のなかで仕方のないことだとあきらめていた。歓迎されない命などない、と気づいたのは19歳で地域に出てからです。23歳で結婚し、息子を出産しました。不安だったのは、子どもをかわいいと思えるかでした。母に抱かれた記憶があまりない私は、母に対する愛情が持てなかった。でも出産した時は、子どもへのいとおしさがこみあげました。公園デビューをしたときのことです。息子と子どもたちが砂場で遊んでいるのを、車いすに乗った私が近くで見ていました。だれも私が母親だとは思っていない。私が息子に声をかけ、私が母親だとわかった瞬間、周りのお母さん方が自分の子どもを抱き上げて帰ってしまった。自分の子どもが私に近づくと「そっち行っちゃダメ」。小学校の授業参観でも教室が狭くて、他のお母さんたちが入れないので「詰めていいですよ」と言っても、半径1メートル以内には近寄ってこない。私と関わると厄介なことになる、巻き込まれたくない、といった意識が働くのでしょう。本人たちは差別とは思っていませんが、あからさまな差別です。障害のある人とそうでない人を分けることによってお互いが知り合う機会を奪われることから差別は生まれます。社会から排除することそのものが差別なのです。地域で暮らして35年。福祉サービスは増えましたが、重度訪問介護が就労中などに公的負担の対象外だったり、移動支援が自治体により差があったり。普通学校への入学が重度障害を理由に認められない例もある。こうした課題をみんなで解決できたとき、障害のある子が生まれて「おめでとう」と言える社会になる。それが事件を乗り越えることになるのではないでしょうか。

*19-9:https://webronza.asahi.com/science/articles/2017122900002.html (論座 2018年1月5日) 中国が科学で世界一になる時代、上海から日本の未来を考える 須藤靖 東京大学教授(宇宙物理学)
 2017年12月に、太陽系外惑星に関する上海の国際会議に出席した。すでに様々なところで繰り返し述べられていることではあるが、中国の発展の凄まじさを改めて実感したので、その体験をいくつか紹介してみたい。私が初めて中国を訪れたのは今から20年前の1998年。ドイツのマックスプランク協会が上海天文台に宇宙論のグループを設立することになり、その準備を兼ねた国際会議を開催した。当時、私の研究室で博士研究員をしていた景益鵬氏が2年後にそのグループリーダーに抜擢されることになったので、その会議に招待されたのだった(彼はその後も優れた研究を継続し、数年前に中国科学アカデミー会員に選出されたほどの大活躍をしている)。
●研究レベルは着実に進歩
 正直なところ、当時の中国の天文学研究レベルはかなり低かった。その会議でも、中国側の研究発表は年長者ばかり。すでにあまり意味がないような古いテーマを、しかもほとんど聞き取り不能な英語でしゃべるのみであった。もちろん優れた中国人研究者も参加してはいた。しかし、彼らはほぼ例外なしにアメリカやヨーロッパで学位を取得し、外国にとどまって研究を続けていた。当時は、特に優秀な層ほど、中国に帰って研究するという発想など論外だったのだ。この会議のみならず、初めて上海を訪れた際に私が受けた印象はかなり強烈であった。信じられない数の自転車が道路を占拠している。バスや車の運転は荒く、信号が赤になり歩行者が道路を横断し始めようと、止まる気配はない。横断歩道では緊張しながら全力で走った。街中の至る所でビルが建設中で、土埃だらけ。そのなかを、自転車の荷台に生肉を平気でくくり付けて配達中の人々をしばしば見かけた。にもかかわらず、衛生状態を疑うようなお店であろうと、驚くほど美味しい料理をしかも日本の20分の1から30分の1の値段で提供してくれた。観光客向けの店で、お土産を買おうとしたところ、女性がレジの前の机に顔を伏せたまま眠りこけていて起きる気配がない。何度も声をかけたあげく、ようやくその奥でおしゃべりをしていた別の女性が近づいてきて、のろのろと対応してくれた。しかし、支払いの際にはお釣りを投げつけるように返された。客などありがたいどころか、逆に労働をさせられる邪魔な存在だったのだろう。19世紀後半から20世紀前半における外国人居留区であった外灘は、上海の有名な観光地の一つである。川を隔てた向こう側には当時からすでに多くの高層ビルが立ち並ぶ、近代的エリアとなっていた。景氏によれば、船で5分もあれば向こう岸に渡れるというので、行ってみることにした。改札は無人だったので購入した切符を投入口に入れると、どこからか「謝謝」という声がする。しかしどこにも人がいる気配はない。驚くべきことに切符を投入すると自動的に音声が流れる近代的仕組みだったのだ。景氏と一緒に「上海で親切なのは機械だけだ」と大笑いしたことをよく覚えている(むろん、今や中国のサービスのレベルは著しく向上しており、さすがに日本ほどではないにせよ、欧米の平均レベル程度にはなっている。)。その後、今回を含めて中国には5回訪問した。そのたびに、研究レベルが着実に進歩していることを実感した。過去20年間にわたり、中国政府は景氏のように外国で活躍した研究者を呼び戻す方針を立て、多額の資金を注入した。高給で迎えられた彼らは、新たなグループを次々と立ち上げ、そこには若い優秀な中国人学生が集まった。しかも彼らは在学中に1、2年間、ヨーロッパやアメリカの大学に滞在して共同研究をし、場合によってはそこで学位を取得する体制まで確立している。おかげで、中国国内の学生や博士研究員の研究と英語のレベルが著しく向上した。そもそも、中国のトップレベルの学生は、意欲と自信に満ちており、熱心というよりもむしろ貪欲に研究する。その迫力は、少なくとも私の周りの日本人(私自身も含めて)とは雲泥の差である。実は、太陽系外惑星の研究グループはまだ中国にはほとんど存在していない。一方、この分野には、中国出身でアメリカの主要大学の教授として活躍している研究者が数多い。彼らは、中国の大学の客員教授を兼任しながら、多くの中国人学生や博士研究員を指導し、さらにアメリカで受け入れることで、最先端の研究を展開している。この分野は、歴史的には日本の研究レベルがかなり高いのだが、外国で活躍する中国人による研究まで合わせれば、中国はすでに日本を凌駕してしまった感すらある。
●世界の覇権を握る戦略
 さて、過去20年間でなぜ中国の科学がここまで飛躍的発展を遂げることができたのか。これはすでに数多く議論が展開されているはずなので、ここでは私が直接見聞きした現場からの印象に限って紹介してみたい。
【A 政策】 中国政治家のトップはほぼ理科系出身で占められている。そのためかどうかはわからないが、科学・技術の発展を通じて、中国を世界一の大国にするという意思が確立し共有されている。つまり科学を発展させることは良いことだ、などといった甘い価値観ではなく、それ自身が国家にとって本質的な「投資」だとみなされている。巨額の予算を要する科学プロジェクトが比較的容易に認められる。特に、「世界一」というスローガンをもつプロジェクトは最優先である。科学・技術の発展を通じて中国を世界一にするための人材を育成する大学には、過去10年以上、毎年の中国の経済成長率以上の割合で予算が増額され配分され続けている。この間、大学の運営交付金が1割以上削減された日本とは雲泥の差である。
【B 予算】 さらに科学・技術研究には中央政府のみならず、市からも独自に巨額の予算措置がなされる。特に大都市にある有名大学は、中央政府からの交付金と同額以上をそれぞれの市からも支給されている。北京大学や上海交通大学には北京市や上海市に居住していない学生の入学定数が厳しく決められている(実は、東京大学に入学する中国人学生のかなりの割合は、中国のトップ大学に入学が制限されている地方出身の優秀な学生層なのである)。これには不公平であるとの批判も多い一方、大学がそれぞれの市の多額の税金によって援助されている事実の反映でもある。このように、大学や科学・技術研究には、企業はもとより、様々なレベルの公的組織や団体から手厚い財政的サポートがなされている。これもまた、基本的には政府機関に財布の紐をきつく縛られている日本の大学とは雲泥の差である。
【C 報酬】大学教員の給料が高い。過去数年間で平均的に5割以上は増額されている上、最近中国で高騰している住宅が格安で提供される(かつては5年以上勤務すると、借りていたアパートの所有権を得ることもできた。上海や北京の中心部にあるそれらは今では一億円以上の資産価値となっているものもあるらしい)。さらに、研究者の給料は、論文の出版数はもとより、どの雑誌に出版されたか、どれだけ引用されたか、などの具体的数値指標によって大きく左右される。特に、NatureやScienceなどのいわゆる一流雑誌に掲載されると、1年分の給料に相当するボーナスが与えられることもある。その結果、研究者がこぞって良い論文を良い雑誌に出版しようとやっきになっているのだ。北京のある有名な天文学研究所に就職した米国人研究者から、中国ではあまりに競争が激しいため自分もまた他の同僚も疲弊しきっているという話を聞いた。しかし、研究者の絶対数が多いおかげで、そのような自然淘汰が適者生存につながり、トップの研究レベルが飛躍的に向上し続けているのも事実である。日本から見ると、【A】と【B】は羨ましい限りである。しかも、科学・技術は最終的には人類平和のためとかいった「哲学的」あるいは「倫理学的」論理ではなく、中国が世界の覇権を握るためになすべき最大の投資との透徹した明確な戦略のもとに進められている点も、ある意味では清々しいほどだ。仮に日本で【C】のような行き過ぎた業績主義が提唱されれば私は断固反対する。それは長い目で見れば、深い科学の発展を阻害するに違いないからだ。しかしながら、私のような牧歌的科学感をよそ目に、日本ではありえないほどの成果主義を取り入れた結果、過去20年間で中国の科学がトップに躍り出たことは紛れもない事実である。少なくとも、極めて低い研究レベルを短期間に引き上げる政策としては、もっとも効率の高いやり方であったことは認めざるを得ない。今後、日本でもこの業績主義が議論される可能性が高いのであえて付け加えておくならば、優れた研究者に相応の報酬をという点は必ずしも否定するものではないが、それは中国のように単純に総額もプラスの場合である。日本の場合は、ゼロサムルール、さらにはネガティブサムルールが前提なので、結果として、次世代を担う若手研究者を減らすあるいは冷遇することになる。これでは中国の場合とは全く異なり、全体としては百害あって一利なしである。研究者は決して高給をめざして研究しているわけではないからだ。
●「資金に制限無し」
 ところで、現在の中国はインターネット閲覧規制が厳しい。グーグル、日本経済新聞、讀賣新聞などのサイトには全く接続できない(朝日新聞、毎日新聞には問題なくアクセスできる。これは何となく分かる気もするのだが、産経新聞も同じくサクサク読めてしまうので、いかなる基準で判定しているのか、個人的には興味深い)。私は通常、gmailを使用しているので、とても困った。結局ある方法でなんとかアクセスできるようになり事なきを得た。おかげで、自分の日常が、いかにある特定の組織に依存、というか支配されているのかを思い知ることとなった。外国人が中国に行くと、グーグル検索ができないことで、中国では思想や自由が制限されていると、違和感を抱き、当然批判する。しかし、中国には、百度というグーグルに対応する検索サイトがあるので、中国人はまったく困っていない。中国政府の方針に沿った活動をしている限り、全く不自由はないのだ(しかも、自由に外国のインターネットサイトにアクセスするための方法も存在するので、必要な人々は外国からほしい情報を得ている)。その意味で、科学・技術研究に没頭している限り、現在の中国は世界で最も恵まれた国といえる。科学者に限らず、今回の滞在を通じて、大半の中国人は現在の体制に満足しているという印象をもった(むろん、少数民族や地方の労働者など、政府の方針を支持しない、あるいは大都市以外に住む人々はその限りではないのだろう。私の知っている中国人が、ある意味では現代中国の方針とうまく適合している層に偏っているのも事実ではある)。今回の会議は、新しく設立されるT.D.Lee研究所(T.D.LeeはC.N.Yangとともに、弱い相互作用におけるパリティーの非保存を理論的に予言し、それが実験的に確かめられたことで1957年のノーベル物理学賞を受賞した素粒子物理学者)に、天体物理学グループを立ち上げるお披露目会をも兼ねていた。上海市の完全な資金援助のもと、上海国際空港の近くの浦東市に広大な敷地を提供され、高層ビルを建築中である。会議冒頭の挨拶では、景氏が「この研究所では、実質的にスペースも資金もunlimitedである。優れた研究者を大歓迎する」と述べて、出席者をどよめかせた。このような状況では、今後、日本が中国に一層差をつけられるのは避けようがなかろう。科学・技術において世界のトップに立つべしとの価値観が正しいかどうかは別としても、やはり投資なくして成果はありえない。しかも投資は、すでに成功した人にではなく、これからの可能性を秘めた若者に広く厚く行うべきである。教育と研究に関する人的および財政支援を削減し続けておきながら、成果主義を振りかざして研究者に責任を押し付ける日本政府にこそ、中国政府の透徹した科学・技術戦略を少しは学んでほしいものだ。

*19-10:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200326&ng=DGKKZO57237170V20C20A3TJ1000 (日経新聞 2020.3.26) 動き出す「全日本造船」構想、今治・JMU提携を端緒に浮上 大再編 中韓勢に対抗
 造船業界で再編が加速している。27日には首位の今治造船(愛媛県今治市)と2位のジャパンマリンユナイテッド(JMU)が共同で開発・営業会社を設立し資本提携を発表する。三菱重工業も造船事業の大幅縮小を決めた。背景にあるのが韓国・中国勢との競争だ。切り札として国内の主要15社の造船会社を集約し「オールジャパン造船」をつくる構想も水面下でくすぶる。日本のものづくりの象徴だった造船は、生き残りに向けた最終段階に入った。「韓国にやられてきた状況で、さらに受注がストップしている。底が見えない」JMU幹部は危機感を募らせる。造船業界では受注残を示す手持ち工事量が1800万総トンを割り、20年ぶりの低水準に達した。新型コロナウイルスの感染拡大の影響で造船の国際見本市は相次ぎ中止となり、欧州などの船主と商談すらできない。世界の造船は大型再編へと突き進んでいる。中国首位の中国船舶工業集団(CSSC)と2位の中国船舶重工集団(CSIC)が経営統合し、韓国は現代重工業が大宇造船海洋と統合作業を進める。両陣営だけで世界の建造量で4割のシェアを占めるが、日本は中小造船所が乱立している。「受け皿を一本化しないと入札すらできなくなる」。国土交通省の関係者は語る。大型船では韓国メーカーが4~5隻を一気に大量受注して傘下の造船所で分担建造する動きがある。規模に乏しい造船所はいまや受注そのものに参加できない。こうした中、国交省主導で業界と共に模索が始まったのが造船の「オールジャパン構想」だ。日本には約50カ所の造船所があるが、まずは開発や設計・受注などの上工程を一本化し、建造業務を分担。最終的には造船所の閉鎖や集約を目指す。国内造船は総合重工系と独立系に大別できる。JFEホールディングスとIHIが造船事業を統合したJMUのほか、三井E&Sホールディングス(旧三井造船)や三菱重工業が総合重工系の代表格。独立系は今治造船、大島造船所(長崎県西海市)、常石造船(広島県福山市)などがある。これらを含む主要15社が仮にまとまると建造量シェアは世界で2割と、中韓の首位グループに並ぶとみられる。試金石はJMUと今治が折半出資で設立する開発・営業新会社だ。中韓勢と同じ土俵で競うことが業界共通の課題となるなか「同陣営への集約も視野に、造船所の再編が始まる」とみる関係者は多い。航空事業などへのシフトを進めるなか、重工系は造船事業の縮小に乗り出している。三菱重工は創業の地である長崎造船所・香焼工場(長崎市)を大島造船所に売却する。IHIは愛知工場(愛知県知多市)を閉鎖したほか、三井E&Sは千葉工場(千葉県市原市)の造船からも撤退した。そんな中、大再編の主役に躍り出たのが今治造船だ。丸亀事業本部(香川県丸亀市)にある全長610メートルのドックを中心に、瀬戸内海の造船所を取りまとめる。描くのは「複数の部品を受け持ちし、瀬戸内海全体を1つの巨大な造船所とみなして受注を獲得する戦略」(造船大手幹部)。「瀬戸内海連合」は韓国を追う手立ての一つだ。その今治造船とJMUが手を組むことで連合が全国規模に広がる。これまでもオールジャパン構想は浮かんでは消えていたが「受注が枯渇し、今回こそは業界を変えようという危機感が強い」(大手造船会社役員)。布石はすでに打たれている。国交省などは造船の協業・提携に必要な投資などを補助する策を検討している。再編の引き金になりそうなのが環境規制への対応だ。国際海事機関(IMO)は20年からの硫黄酸化物規制に加え、50年に08年比50%の二酸化炭素排出削減を迫る。「まず環境技術で日本勢同士の協力が必要」(日本造船工業会の斎藤保会長)との声は強まっている。造船各社の受注残は1年半分ほど。JMUは20年3月期の純損益が360億円の赤字を見込むほか、三井E&Sも同期の連結最終損益が3期連続で赤字の予想だ。業界再編のタイムリミットはすぐそこに迫っている。

<グローバルで勝つためには?>
PS(2020.3.27追加):*20-1のように、新型コロナの感染拡大によってヒト・モノが国境を越えられなくなったことで、世界の株式時価総額が1月に比べて米国・日本のGDP合計を上回る30兆ドル近くも吹き飛んだそうだが、株式時価総額は将来性に関する気分が影響する数字であって実体経済ではないため、多いからと言って生活に役立つわけではない。また、外国の製品に依存しすぎている現在、技術維持のために自給率向上や国産化を志向するのは当然であり、島国化を志向しているわけではない。それより、国際協調を叫んでみても、独立して力強く生きられる国が協調するのではなく、他者に依存しなければ生きていけない国が集まっても、力強い協調にはならないので、むしろ邪魔者扱いされるだろう。そのため、「独立して力強く生きられる国になれば、生活水準を落とす」という状態を変えなければならないのである。なお、多くの日本企業は、千載一遇の幸運があったおかげで、グローバル化の担い手になる実力を持っているが、強いままでいられるためには、合理的な経営を続けることが不可欠である。そして、合理的なグローバル経営は、①市場の大きな国で ②市場に合った製品を安価に作り ③できるだけ税金の安い国で利益を出して利益を最大化し ④次の有望な投資に繋げること であり、日本は②③が劣っている上、変な規制や不合理な邪魔が多いため、④の有望さもなくしているわけだ。
 なお、*20-2は、「⑤2018年度の日本企業の内部留保が金融・保険業を除く全産業で463兆円となり過去最高を更新した」「⑥しかし、設備投資は2001年度がピークでその後は5%近く減少したままである」「⑦従業員への賃金支払い減少で国内市場は縮小し、企業は海外に出ていくという悪循環が生まれた」「⑧そのため内部留保課税すべき」としている。しかし、2000年以降は従業員への賃金支払いも減少したかもしれないが、年金支給額も減ったため、日本は①の市場がしぼみ、それでも②③は新興国と比較して高いため、④の有望な投資先でなくなるという悪循環に陥っている。つまり、国民から高い税金をとり社会保障を削減して、国が生産性の低い事業(原発・辺野古埋立等々)につぎ込めばつぎ込むほど、全体の生産性が低くなり、さらに有望な市場ではなくなって、企業・産業・金を追い出すことになるわけだ。

*20-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200327&ng=DGKKZO57276300W0A320C2MM8000 (日経新聞 2020.3.27) コロナ危機との戦い(5)「島国化」は繁栄生まぬ
 世界の株式時価総額は一時、1月に比べて30兆ドル近くも吹き飛んだ。失われた富は、米国と日本の年間国内総生産(GDP)の合計を上回る。新型コロナウイルスの感染拡大で、ヒトやモノが国境を越えられなくなることが、どれだけ深刻かが目の当たりになった。人は、旅行にも出張にも、出稼ぎにも留学にも行けない。外国の製品を注文しても届かない。企業は、外国からの部品の調達も有能な人材の採用も難しい。経営者は業績の見通しすら語れず、雇用を減らし、株安で人々が保有する財産の価値を傷つけている。「悪いのはウイルス」。確かにそうだが、混乱はいずれ起きていたのではないか。それほど世界の分断は進んでいた。起点は2016年にある。英国が欧州連合からの離脱を決めた「ブレグジット」と、米国第一主義を掲げるトランプ氏が大統領選を制した年だ。それ以降の世界は貿易戦争の連鎖など内向きの姿勢だけが目立った。世界は「島国化」、つまり外国との交流を好まない島国の集合体にすら例えられるようになった。コロナ危機は今、「16年体制」に共感した人々に問いかけている。「生活の水準を落としてでも島国化を進めたいのか」と。「もちろん」と自信を持って答えられる人は激減しているだろう。焦点は強制的な分断が解ける「コロナ後」だ。内向きの根底にある人々の不満を抑え、今度こそグローバル化を持続的にできるかどうか。覇権主義と結びついたグローバル化は反発を受けるだけだ。中国が「ワン・チャイナ」を押しつけたからこそ、香港人は大規模デモで逆襲した。大企業のエゴも障害だ。低コストのみを追った途上国での劣悪な労働環境、地元での雇用や納税を軽んじる姿勢での海外進出……。ゆがんだグローバル戦略への批判は世界的な資本主義の見直し論議に発展している。多くの日本企業にはグローバル化の担い手になるチャンスがある。欧米企業と異なり、海外企業を買収する豊富な現金がある。国内の人口減で課題だった海外市場の開拓を進めるときだ。2008年のリーマン危機で、三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)は破綻寸前の米モルガン・スタンレーに出資した。モルガンはその後、MUFGの連結利益を年平均1000億円以上押し上げてきた。株価の暴落は、それ以降の世界を変える。リーマン危機の際、世界は保護主義への誘惑を断ち、逆に20カ国・地域(G20)が新たに連携して危機を封じ込めた。1929年10月24日の米株価大暴落「暗黒の木曜日」は、世界恐慌を招いた。保護主義が経済のブロック化を経て第2次世界大戦につながった。収まらない米中の緊張や、原油産出量の調整に背を向けたサウジアラビアやロシアの姿勢には、当時のきな臭さがある。大強気相場の死と繁栄の時代の終わり――。フレデリック・アレンは20年代の米国の熱狂と終幕を描いた「オンリー・イエスタデイ」で、29年の暴落をこう位置づけた。強気相場は去ったが、繁栄まで終わりにしてはならない。

*20-2: https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200305&ng=DGKKZO56376870U0A300C2KE8000 (日経新聞 2020.3.5) 積み上がる内部留保(下)年間増加分に課税も一案 小栗崇資・駒沢大学教授(おぐり・たかし 1950年生まれ。中央大法学部卒、明治大博士(商学)。専門は会計学・経営分析)
<ポイント>
○00年度までは売上高増を設備投資に充当
○人件費削減と法人減税で内部留保が急増
○設備投資や賃上げに活用なら控除可能に
 財務省「法人企業統計」によると、2018年度の日本企業の内部留保は金融業・保険業を除く全産業ベースで463兆円となり、過去最高を更新した。本稿では、なぜ内部留保は増え続けるのか、その活用は可能なのかを考えたい。内部留保とは当期純利益から配当を差し引いた残りの利益で、企業内に蓄積された分をいう。利益剰余金として開示されるのが「公表内部留保」だ。さらに法人企業統計は、引当金・準備金やその他資本剰余金などを付加したものも内部留保としており、これに資本準備金を加えたものを「実質内部留保」とする。内部留保は企業にとっては設備投資などに活用可能な内部資金となる。内部留保の形成過程や使途をみることは、日本経済の資金面の状況を明らかにするのに重要な手掛かりとなる。ここでは資本金10億円以上の約5千社(金融業・保険業を除く)の内部留保をみる。大企業は全法人の2%に満たないのに、その内部留保は234兆円(利益剰余金)と日本全体の半分を占めており、内部資金の動態を決定づけている。図は内部留保の歴史的推移を、経済の節目ごとに区切って示したものだ。1971~85年度は通貨危機や石油危機の影響で高度成長が減速し、景気回復を経てバブル直前に至る段階だ。内部留保の要因となるのは大幅な売上高の増加(4.7倍)で、公表内部留保は28兆円増えている。実質内部留保や借入金も加わり、使途としては設備投資が71兆円増加している。1986~2000年度はバブル経済の隆盛と崩壊後の不況に陥る段階だ。売上高が1.5倍増となったのを要因に、公表内部留保は52兆円増えている。実質内部留保も加わり、使途としては設備投資が115兆円増加している。不況下でも内部留保が積み上がり、設備投資がかつてなく増大した。2つの段階の共通した特徴は、内部留保の主たる要因が売上高の大幅な増加にあった点と、その使途が設備投資だった点にある。だが2001年度以降の段階は様相が一変する。2001~18年度はかつてなく膨大な内部留保が形成され、1986~2000年度と比べて3倍近くに激増した。それ以前の段階と異なり、主たる要因は売上高増加ではない。売上高は1.1倍程度とほとんど伸びていないのに、なぜ多額の利益が生まれ、内部留保は急増したのだろうか。要因は2つある。一つ1990年代末から始まった非正規雇用の拡大や賃金削減による人件費削減だ。福利厚生を加えた従業員1人当たりの給付は2001年度の763万円をピークに減り続け、2009年度には668万円まで落ち込んだ。ここ数年上昇がみられるが、現在も700万円を切る状態にある。人件費削減により売上高が増えなくても利益が増える仕組みがつくられた。仮にピーク時の763万円が毎年、従業員全員に支払われたと仮定し、実際の給付額との差を計算すると、18年間の差額合計は82兆円にのぼる。そうした人件費削減分が内部留保に回ったとみることができる。もう一つの要因は法人税減税だ。法人税率は1997年度まで37.5%だったが、段階的に引き下げられ現在では23.2%にまで低下している。住民税、事業税を加えた法人3税の実効税率(東京)でみると1997年度の49.98%から大幅に低下している。仮に49.98%の実効税率が続いていたとすると、2001~2018年度の18年間で実際の税額との差額合計は46兆円となる。税負担にならなかった分がやはり内部留保に回ったとみることができる。海外子会社からの配当なども加わるが、公表内部留保増加分149兆円の大半(128兆円)は2つの要因から生み出されている。さらに実質内部留保増加分44兆円も加えた内部資金は何に使われたのだろうか。2001年度以降の内部留保の主な使途は設備投資ではない。設備投資は2001年度がピークで、それ以降は5%近く減少したままだ。それ以前は、内部留保は設備投資に回っていたが、2001年度以降は主に金融投資や自社株買い、子会社投資、M&A(合併・買収)に投入されている。なお、海外子会社での設備投資については別途検討が必要だ。このように内部留保の構造は大きく変化している。21世紀に入って以降、日本企業は売り上げ増でなく、人件費削減や法人税減税から得た利益を内部留保に回し、設備投資ではなく金融投資や子会社投資に投入している。その結果、従業員への賃金支払いの減少により国内市場は縮小し、企業は海外に出ていくという悪循環が生まれている。内部留保が設備投資に投入され雇用が生まれるのを「良い内部留保」とすれば、金融投資などに回るだけで雇用や市場拡大につながらない内部留保は「悪い内部留保」と言わざるを得ない。膨大な内部留保は、不況やグローバル化に対する恐怖心を契機に生まれたが、国内に投資先が見いだせないまま今日では「金余り」の状態にある。それは富の偏在を通じて格差を生み出す結果をもたらしている。それでは、内部留保をどのように社会的に活用すべきだろうか。有効活用を求める声は高まっているが、残念ながら個々の企業の自主性には期待できない。そこで考えられるのが内部留保への課税だ。日本の税制は法人擬制説に立っており、利益はすべて株主に配当されることを建前とする。利益には1段階目で法人税が課され、2段階目で株主に回った配当に所得税が課される。内部留保課税は「二重課税」という批判があるが、日本企業は配当よりも内部留保の割合が高く、2段階目の多くの部分に課税されていない。内部留保課税は、2段階目の所得課税を補完するものであり「二重課税」ではない。米国では1930年代のニューディール政策の一環として内部留保課税が導入され、現在まで続いている。配当を支払わず合理的な必要なしに留保された利益に課税される(税率20%)。日本での同族会社(資本金1億円以上)への内部留保課税と狙いは同じだが、全法人に適用される。近年では、台湾でも98年から実施され(現行税率5%)、15年からは韓国でも実施されている(現行税率22%)。いずれもフローベースで、毎期の内部留保の増加分に課税される。台湾では全法人が対象となり、未配当利益に控除なしに課税される。韓国では自己資本500億ウォン(約45億円)超の約4千社が対象となり、設備投資や賃上げに活用した場合は控除される。台湾では配当を促進する効果、韓国では設備投資や賃上げを促すインセンティブ(誘因)を持つと考えられる。日本では個人株主が少なく配当促進効果が期待できないので、韓国型の内部留保課税が参考になる。仮に資本金1億円以上の法人の内部留保増加分(20兆円)に控除を経て税率20%で課税した場合、毎期3兆円の税収が見込まれる。内部留保の社会的活用を目的とし、教育や研究、社会保障などのために利用することで、企業や国民の同意を得られるのではないか。

| 経済・雇用::2018.12~ | 09:26 PM | comments (x) | trackback (x) |
2020.1.23 現在の日米同盟の必要性・コスト・リスクと今後に向けての再検討 (2020年1月24、25、27、28、29、30、31日、2月1、2、5、7、8、11、12、13、15、16、19、23日追加)
  

(図の説明:左図のように、米軍基地は関東と沖縄に集中しており、中央と右図のように、沖縄は約2億3千万m₂と日本全体の約74%を占める。これは、太平洋戦争後の状況に応じて設置されたもので、現在の自衛ニーズに合わせた配置ではない。また、首都圏に6箇所もの広大な基地があるのは土地の無駄使いである上、合目的的でもなく、沖縄は全体が基地の島になっているのに尖閣諸島の領海に中国船が頻繁に入っているのは、自衛のニーズに合っていない証拠である)

(1)日米同盟の必要性
1)日米リーダーの認識
 2020年1月19日で日米安全保障条約改定から60年となるのに合わせ、米国のトランプ大統領は、*1-3のように、「①60年間の強固な同盟関係は、米国、日本、インド太平洋地域、そして世界平和、安全、繁栄に不可欠だった」「②安全保障環境が変わって新たな課題が出てくる中、同盟をさらに強化・深化させることが不可欠で、日本の貢献が増すことを求める」という声明を発表し、米国国務省のオータガス報道官も、2020年1月17日、「③負担は公平でなければならない」とした。

 日本の安倍首相は、2020年1月19日、日米安全保障条約署名60周年を記念する式典で、*1-4のように、「④日米安保条約は、アジアとインド太平洋、世界の平和を守り、繁栄を保証する不動の柱だ」「⑤60年・100年先まで日米同盟を守って強くしていこう」と呼びかけた。

 私は、日本のみでは自衛することも不可能で、人権や世界情勢に疎い日本政府のみの判断で猛進されるとむしろ危険であるため、日米同盟は必要だが、それには、以下に述べる多くの問題点を解決することが必要だと考える。

2)問題点
 信濃毎日新聞は、*1-1のように、「①日米安全保障条約は、朝鮮戦争中の1951年に締結され、米軍の日本駐留がサンフランシスコ講和条約を結ぶ上での条件だった」「②1960年1月19日に改定され、米国の日本防衛義務が5条に盛られると同時に、日本に防衛力の維持・発展を義務付け、在日米軍を守る義務も課した」「③60年経過したので、そろそろ外交の基軸を築き直せ」と記載している。

 1991年にイラクがクウェート侵攻した時は、日本は、平和憲法のおかげでExcuseできて自衛隊を派遣せずにすんだが、130億ドル(約1兆3千億円)の資金拠出をしても、今一つ感謝されなかった。その後、日本は、海賊から自国の船を護るためと言いつつ自衛隊を海外派遣するようになったが、集団的自衛権は認めていないというExcuseにより、米国と一緒に戦争に参加することはなかった。

 しかし、2000年代になって米中枢同時テロ後、日本は、テロとの戦いを宣言した米国を支持してテロ対策特別措置法を成立させ、海上自衛隊をインド洋での給油活動に従事させた。また、国連決議のないイラク戦争でも、日本はイラク復興支援特措法を設けて、サマワに陸上自衛隊を駐屯させた。集団的自衛権も自衛権のうちだが、それを認めた現在では、米軍の活動に対する自衛隊支援の地理的制約が機能しにくくなった。

 このような中、日本は、米国から兵器を大量購入し、米軍との連携領域を宇宙やサイバーへと広げ、唯一の被爆国でありながら核兵器禁止条約に参加できず、防衛費や在日米軍経費を膨らませ、日米地位協定の改定もせずに、内政面でも不利な日米貿易協定を呑んだ。

 また、北海道新聞が、*1-2に記載しているように、戦後の日本は、冷戦の中で米国と経済・安保の両面で協調することによって発展を遂げたが、国際情勢は冷戦期から大きく変わり、米国はトランプ政権の下で「世界の警察官」の立場から降りようとしている。また、米軍との連携を目的にした自衛隊の中東派遣は、海外での武力行使を禁じた日本国憲法に違反しており、行き過ぎた対米追従は平和憲法という宝を失う行為となる。

 そのため、「外交・防衛は、親分の米国を頼って日米安保のみ」という構図は考え直し、米国とは密に連携しながらも多国間協調や平和を大切にする独立した大人の外交が、今後の日本には求められる。

(2)日米同盟の具体的なコストと効果
1)膨張する防衛費は、専守防衛に適合したものか?
 政府は、北朝鮮の核・ミサイル開発や中国の軍拡など安全保障環境の厳しさを強調し、防衛費を拡大させ、*2-2・*2-3のように、トランプ米大統領の求めに応じて対外有償軍事援助(FMS)として米国製の高額な最新鋭兵器を買っているが、日本の厳しい財政事情の下、その目的と費用対効果は厳しく吟味すべきだ。

 つまり、2020年度の当初予算案で、防衛費は5兆3133億円で、文教・科学振興費の5兆5055億円に匹敵し、公共事業費の6兆8571億円に近づく規模だからで、「防衛費のために社会保障費を削る」というのは、国民生活を直撃することによって個人の命をないがしろにしており、それこそ「国民の命を護る」という理念から外れる。

 私は、外交や防衛の専門家ではないが、会計・税務・財務の専門家として、31億円もかけて護衛艦を空母に改修するのは、艦の安全性を害さないのか、ミサイル時代に意味があるのか、について疑問に思う。また、そこで運用される米国製の最新鋭ステルス戦闘機F35Bも6機で793億円もし、陸上配備型迎撃ミサイルシステムは、(配備先がまだ決まっていないのに)米国からの発射装置の取得等に129億円を投じ、最終的には東西2基で5千億円を超える巨額だそうで、他にもあるだろうから、これこそ合計額とその明細を明らかにすべきである。

 そして、昨年末に改定された「防衛計画の大綱」「中期防衛力整備計画」は、「陸海空のみならず宇宙・サイバー空間などの新たな領域への対応」を掲げており、これらは日本の専守防衛の方針に合致しているのか疑問であるため、国会の予算審議では導入の必要性や是非から議論してもらいたく、これらの議論は、刑事事件にならない「桜を見る会」やちゃちな公選法違反の追及よりも、文字通り桁違いに重要なのである。

 ただ、トランプ米大統領の強い要請から、安倍首相が米国への政治的配慮をせざるを得ない事情はわかる。それは、親分である米国を頼って好き勝手なことをしながら、日本国内のメディアがトランプ大統領をコケにする報道をしたり、交渉の担い手である安倍首相の続投を危うくさせたりしているからで、これではトランプ大統領には、とりわけ高い報酬をもらわなければ、安倍首相と交渉して日米同盟を続けるメリットはないわけである。

 つまり、日本メディアの問題点は、官僚が政策のKeyを握っており、(それを知っているにもかかわらず)責任だけを政治家にかぶせ、本当はあまり力のない政治家を批判して権力と闘っているポーズをとっていることで、この形だけの民主主義は本物の民主主義国では通用しないということなのである。

2)辺野古新基地と馬毛島・グアム移転の並立は不要な筈である
 沖縄県名護市辺野古の新基地建設は、日本を護るための費用対効果が低すぎるため、日米同盟の維持に不可欠というよりも、公共事業者への利益誘導に変質してしまったようだ。

 具体的には、*2-4-1・*2-4-2のように、米軍普天間飛行場の移設は、辺野古に軟弱地盤が存在するため、地盤改良5年、埋め立て5年、施設整備3年を要し、合計13年以上かかり、総工費は最大2兆6500億円まで膨らむそうだ。政府の試算は確かに杜撰であるため、費用対効果からみた辺野古新基地建設の必要性を早急に再検討すべきだ。

 また、埋め立て予定海域への外部の土砂の投入も生態系を破壊しており、*2-4-3のように、鹿児島県の馬毛島に基地のうち日本の防衛に必要な部分を移転すれば、埋め立てや自然破壊は不要である。にもかかわらず、政府が前のめりに突き進んでいるのは、米政権の意向より、政府の対面や公共事業の既得権益の影響の方が大きいのではないだろうか。

 さらに、日本の防衛に不必要な部分は、*2-4-4のように、グアムに移転すればよく、米軍は2024年10月から約5千人の海兵隊員が移転を始め、約一年半かけて完了させる方針だそうで、米国もまた安全保障環境の変化に応じて柔軟に対応すればよいのである。

 そして、2012年に日米両政府が修正合意した米軍再編計画では、在沖縄海兵隊約1万9千人のうち約9千人をグアムやハワイなどへ移転させることや、米軍普天間飛行場の辺野古移設が盛り込まれたそうだが、石垣島や宮古島に自衛隊基地ができ、自衛隊と米軍の運用の一体化がいっそう進む以上、もっと多くの海兵隊員をグアムやハワイ、場合によっては台湾やその他の地域に移転させることが可能であろう。

3)「思いやり予算」について
 第二次世界大戦終結から75年、冷戦終結から30年が経過して、安全保障環境が変化した結果、米国は、*2-5のように、在日米軍駐留経費の日本側負担(思いやり予算)を約20億ドルから約80億ドル(80億ドルX109円/ドル=8720億円)に増額することを要求している。

 これは、米国にとって日本に置く基地の必要性が下がったということであるため、米軍は世界規模でやるべきことが他に山ほどあることにも鑑み、トランプ大統領に米軍駐留経費負担を現在の4倍以上に増額することを求められたのをよい機会として、日本の自衛のために役立っている米軍基地だけを残して日本にある米軍基地を1/4以下に減らし、駐留経費を現状維持するか、それ以下に下げるのが日本にとっても都合がよいと考える。

4)日米安保条約60年の平和主義を前提とした効果的な再構築は?
 熊本日日新聞も、*2-1のように、「①日米安全保障条約は2020年1月19日で60年を迎えた」「②戦後の復興と繁栄を支える土台となった安保体制の重要性は今後も変わらない」「③日本では、米国の戦争に巻き込まれるリスクへの懸念が根強く、過度な一体化を危ぶむ声もある」「④日本は憲法が掲げる平和主義を前提に、米国との関係をどうつくるのかを再検討する時期に来ている」「⑤在日米軍人らの特権を認めた日米地位協定も抜本的な見直しが急務だ」としており、そのとおりだと思う。

(3)中東への自衛隊派遣について
 政府は、*3-1・*3-4のように、トランプ大統領の要請に応じ、自衛隊を中東に独自派遣する方針となったが、徳島新聞が記載しているとおり、この局面での日本のトランプ大統領への追従は高リスクだと私も思う。

 このように、民主主義国である米国の行動に問題がある中で、中国との関係修復を進めているが、中国は国内の民主化が課題の国であり、日本は、日本国憲法に基づいた独立的な距離感を持つことが求められる。

 なお、*3-2・*3-3のように、ホルムズ海峡周辺への自衛隊派遣は、自衛隊法に基づいておらず、自衛隊の海外派遣を日常化させたい日本政府が米国からの有志連合への参加呼びかけを「渡りに船」で選択したものだと言われており、安保法制の下で日本が紛争に巻き込まれたり、日本が武力行使を行うことになる恐れがある。そのため、外国での武力による威嚇や武力行使を禁止する日本国憲法9条に反すると思う。

・・参考資料・・
<日米同盟の必要性>
*1-1:https://www.shinmai.co.jp/news/nagano/20200119/KT200118ETI090005000.php (信濃毎日新聞 2020.1.19) 日米安保60年 「外交の基軸」を築き直せ
 1991年秋、米国の大学に留学中の筆者は、教室で学生からの“総口撃”にさらされた。イラクのクウェート侵攻を受けた湾岸戦争から半年余り。「なぜ日本は自衛隊を派遣しなかったのか」「カネでは協力にならない」「そんな同盟国は要らない」。日本が対米傾斜を深め、自衛隊の海外派遣に道を開いた戦争だったことは後で知った。いまなら米国の学生たちに、どんな意見を返すだろう。
<湾岸戦争を契機に>
 日米安全保障条約は朝鮮戦争さなかの1951年に結ばれた。日本が防衛手段を持つまでの「暫定措置」とされたものの、米軍の日本駐留は、サンフランシスコ講和条約を結ぶ上での条件だった。米国がこの権益を手放すことはなく、60年前のきょう、新日米安保条約に改定されている。旧条約で曖昧だった米国の日本防衛義務が5条に盛られた。日本に防衛力の維持・発展を義務付け、在日米軍を守る義務も課した点は見落とせない。米国が防衛力増強と負担分担を、日本に繰り返し迫る根拠となった。条文は在日米軍の活動範囲を日本と極東に限っている。が、ベトナム戦争や70年代からの中東危機で、この制約は当初からないがしろにされてきた。安保体制が大きく変容し始めたのは冷戦が終わってからだ。湾岸戦争を前に、米国は日本に人的貢献を求めた。海部俊樹政権は「平和憲法がある」とし、130億ドル(約1兆3千億円)の資金拠出で応えている。この対応は「小切手外交だ」との猛烈な批判を招く。米国に見限られる―。日本の外務・防衛当局に不安が広がったという。海部政権は結局、初の自衛隊海外派遣に踏み切り、戦後のペルシャ湾で機雷掃海に当たらせた。冷戦終結で薄れつつあった安保の意義は、極東条項を離れ「アジア太平洋地域の安定と繁栄の基礎」に再定義される。「湾岸のトラウマ」と呼ばれた政府の経験は、世紀が変わって間もなく起きた米中枢同時テロ後の反応となって表れる。テロとの戦いを宣言した米大統領を小泉純一郎首相はいち早く支持し、おざなりな国会審議でテロ対策特別措置法を成立させる。海上自衛隊はインド洋での給油活動に従事した。国連決議のないイラク戦争も日本は認めた。イラク復興支援特措法を設け、陸上自衛隊は安全とは言えないサマワに駐屯する。安保の定義は「世界課題への対処」へとさらに範囲を広げている。
<際限なき軍拡より>
 違憲性も安保条約の枠も顧みず、米国の世界戦略に追随する路線を安倍晋三政権も踏襲する。憲法解釈を変更して集団的自衛権の行使を容認。在日米軍の活動範囲と自衛隊による後方支援の地理的制約を取り払った。台頭する中国へのけん制を意図し、専守防衛から懸け離れた兵器を大量に購入、米軍との連携領域を宇宙やサイバーへと広げつつある。安倍政権は日米同盟を「外交の基軸」に据える。国際社会への協力と対米協力が同義となった日本の外交と政策は主体性を失っている。トランプ米政権がパリ協定から離脱しても意見できない。唯一の被爆国でありながら、イラン核合意や中距離核戦力(INF)廃棄条約の破棄も止められず、米国の反発を恐れて核兵器禁止条約への参加に二の足を踏む。内政面でも、不利な日米貿易協定をのまざるを得なかった。防衛費や在日米軍経費は膨らみ、基地を抱える地域の危険除去に欠かせない日米地位協定の抜本的な改定すら言い出せずにいる。あのころの米国の学生たちに、こう伝えてみたい。「小切手外交」も無意味ではなかった。東日本大震災の際、クウェートでは「私たちが支援する番だ」との声が上がり、多額の義援金が寄せられた。たくさんの原油を無償提供してくれた。戦後の経済支援は東南アジアで日本への信頼を培った。日本が本気になって多国間協調による地域の平和構築を提唱すれば、戦禍を被ったアジアの国々が背を向けるとは思えない、と。そのためには、凝り固まった外交=安保の構図を解きほぐす必要がある。アジアや国際社会の安定に向けた日本の役割を整理する。安保の適用範囲を極東に戻して米国の世界戦略と一線を画し、自律した外交構想に組み入れたい。不安定な世界情勢で安保体制の見直しは現実的でない―。そんな声が聞かれる。際限のない軍拡競争は対立の大本を正しはしない。条約を逸脱した日米安保の現状こそが、北東アジアの秩序を揺さぶっている現実に、もっと目を向けなくてはならない。

*1-2:https://www.hokkaido-np.co.jp/article/384535 (北海道新聞 2020.1.19) 日米安保60年 追従ばかりでは危うい
現行の日米安全保障条約の署名から、きょうで60年を迎えた。戦後日本は米国と経済、安保両面で協調することによって発展を遂げてきた。だがいま、安保協力の中身と、取り巻く国際情勢は、冷戦期から大きく変質している。その一つは、安倍晋三政権が自衛隊と米軍の一体化を加速させていることだ。今月には米軍との連携を事実上の目的にした自衛隊の中東派遣に、国会の熟議もなく踏み切った。憲法は海外での武力行使を禁じている。専守防衛を逸脱しかねない行き過ぎた対米追従は危うい。米国はトランプ政権の下で自国第一主義に走っている。「世界の警察官」の立場から降りようとし、同盟国には見返りを求めている。安保条約の趣旨は、日本が米国の言いなりになることではない。中国が軍事面でも台頭し、テロも多極化する中、日本が平和国家の道をどう歩み続けるのか。対米連携とともに、多国間の協調に軸足を置いた外交・安保に力を注ぐのが取るべき道だろう。今年直面するのが米軍駐留経費を巡る特別協定の改定交渉だ。トランプ政権が11月の大統領選を見据え、日本に一層の負担増を求めてくることは間違いない。本来は米側が支払うべき人件費などについて、日本側が負担する「思いやり予算」は本年度、1974億円に上る。日本の負担割合は同盟国の中で突出して高く、すでに8割を超えているとされる。にもかかわらず、米側は昨年夏、瀬踏みをするかのように現行の5倍の負担を求めてきたという。論外である。米軍は中国や北朝鮮、ロシアなどの脅威を見据え、在日米軍基地をアジア・太平洋地域の戦略拠点としている。こうした米側の利益を踏まえ、一方的な主張に対しては明確に反論すべきだ。日米安保によって、沖縄には国内の米軍専用施設の7割が集中する。戦後はまだ終わっていない。県民が反対する中、安倍政権が工事を強行する、米軍普天間飛行場の辺野古移設がその象徴だ。米海兵隊の輸送機オスプレイの訓練が今週から道内で実施される。沖縄の負担軽減を名目に、日本全体にその負担がじわじわ広がっていることも見過ごせない。米軍の特権的な法的地位を定めた日米地位協定は一度も改定されていない。米国に追従する前に安倍政権がなすべき懸案は山積している。

*1-3:https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200119/k10012250921000.html (NHK 2020年1月19日) 日米安保60年 トランプ大統領が同盟の意義を強調
 日米安全保障条約の改定から19日で60年となるのに合わせ、アメリカのトランプ大統領は「60年にわたり両国の強固な同盟関係は世界の平和、安全、繁栄に不可欠なものだった」などとする声明を発表しました。1960年に改定された今の日米安全保障条約は、19日で署名から60年となります。これに合わせ、アメリカのトランプ大統領は18日、声明を発表しました。この中でトランプ大統領は、「過去60年にわたり、両国の強固な同盟関係はアメリカ、日本、インド太平洋地域、そして世界の平和、安全、繁栄に不可欠なものだった」と同盟の意義を強調しています。そのうえで、「安全保障をめぐる環境の変化が続き、新たな課題が生じる中で、日米同盟を一層強化し深めることが不可欠だ。今後、相互の安全保障への日本の貢献がさらに増し、同盟関係が引き続き発展していくと確信している」として、日本のさらなる貢献に期待を示しました。日米同盟をめぐっては、アメリカ国務省のオータガス報道官が17日、NHKとの単独インタビューで、「負担は公平でなければならない」と述べるなど、トランプ政権はことし夏にも本格化する見通しの日本とのアメリカ軍の駐留経費をめぐる交渉で、日本に対しさらなる負担を求めていく姿勢を示しています。

*1-4:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200120&ng=DGKKZO54579580Z10C20A1MM8000 (日経新聞 2020.1.20) 首相、日米安保条約は「不動の柱」 署名60年記念式典で
 安倍晋三首相は19日、現行の日米安全保障条約署名60周年を記念する式典に出席した。日米安保条約に関し「今やいつの時代にもまして不滅の柱。アジアとインド太平洋、世界の平和を守り、繁栄を保証する不動の柱だ」と述べた。「60年、100年先まで日米同盟を堅牢(けんろう)に守り、強くしていこう」とも呼びかけた。首相は「宇宙、サイバースペースの安全や平和を守る柱として、同盟を充実させる責任がある」と強調し、新たな課題に対処するため同盟関係の拡充をめざす考えを示した。日米同盟を「希望の同盟」と表現し「歩むべき道はただ一筋。その希望の光をもっと輝かせることだ」と語った。トランプ米大統領は記念式典に先立ち、18日に声明を発表し「安全保障環境が変わり新たな課題が出てくるのに伴い、同盟をさらに強化し深化させることが不可欠だ」と訴えた。「日本の貢献の拡大と同盟の発展が続くことを確信している」との期待感も示した。19日に都内で開いた記念式典には日本側から麻生太郎副総理・財務相や茂木敏充外相、河野太郎防衛相らが出席した。米側からはヤング駐日臨時代理大使やシュナイダー在日米軍司令官らのほか、条約署名時に大統領だったアイゼンハワー氏の孫らも参加した。現行の安保条約は1960年1月19日に、首相の祖父である当時の岸信介首相とアイゼンハワー氏のもとで結んだ。岸氏とハーター国務長官らが署名し、51年に結ばれた旧条約を全面改定した。首相は記念式典で「岸は日本の首相として米大統領とゴルフをした最初の人物だった。2番目は私だ。アイゼンハワーと岸が培った友情は新しい安保条約となって実を結んだ」と振り返った。

<日米同盟の費用対効果>
*2-1:https://kumanichi.com/column/syasetsu/1329075/ (熊本日日新聞 2020年1月21日) 日米安保条約60年 平和主義前提に再構築を
 日本と米国の相互協力をうたった現行の日米安全保障条約は、19日で署名から60年を迎えた。米国に日本防衛の義務を課す一方、米軍に基地を提供する条約は、日本の外交・安全保障政策の基軸と位置付けられてきた。戦後の復興と繁栄を支える土台となった安保体制の重要性は、新しい時代においても変わらないだろう。しかし「米国第一主義」を掲げるトランプ米大統領は、批判の矛先を日米安保にも向ける。さらに中国の台頭や北朝鮮の核危機など国際情勢は不安定さを増している。こうした中で日本は、憲法が掲げる平和主義を前提に米国との関係をどうつくるのか、再検討する時期に来ている。冷戦後の日米安保体制は、1996年の安保共同宣言が転機となった。湾岸戦争や朝鮮半島危機を経て、同盟の目的を「アジア太平洋地域の安定的繁栄」と再定義。翌97年に自衛隊と米軍の役割を定めた日米防衛協力指針(ガイドライン)を改定し、自衛隊と米軍の運用の一体化がいっそう進んだ。さらに、2015年に安倍晋三政権下で成立した安全保障関連法は、集団的自衛権の行使を解禁し、地理的な制約なく米軍の後方支援を可能とした。日本では、米国の戦争に巻き込まれるリスクへの懸念は根強く、過度な一体化を危ぶむ声もある。こうした対米追随の進行にもかかわらず、日米同盟は盤石とは言えない。トランプ氏は、防衛義務と基地提供という「非対称」の負担を、「不公平だ」と主張する。改定交渉が本格化する在日米軍駐留経費は、負担増が求められるに違いない。米政権が迫る巨額の米国製の防衛装備品の調達により、防衛予算は膨らみ続けている。安保条約と同時に署名され、在日米軍人らの特権を認めた日米地位協定も、抜本的な見直しが急務だ。沖縄をはじめ各地で住民の暮らしが脅かされる状況が続く限り、国民の信頼は得られない。内向き志向を強める米国は、国際社会での影響力低下は避けられないだろう。日本は日米安保体制を基軸としながら、中国との互恵関係や、対北朝鮮での韓国との連携など多角的な外交を展開し、これからの時代に合った安全保障の枠組みを築いていく必要がある。

*2-2:https://digital.asahi.com/articles/DA3S14303890.html (朝日新聞社説 2019年12月23日) 膨らむ防衛費 ゆがみを生む対米配慮
 トランプ米大統領の求めに呼応するかのように、米国製の高額な最新鋭兵器を買いまくることが、防衛予算のあり方をゆがめはしないか。厳しい財政事情の下、その費用対効果が厳しく吟味されなければならない。
安倍政権が決めた2020年度の当初予算案で、防衛費が今年度当初に比べ、1・1%増の5兆3133億円となり、6年連続で過去最大を更新した。文教・科学振興費(5兆5055億円)に匹敵し、公共事業費(6兆8571億円)に近づく規模である。社会保障費の自然増などで財政の硬直化が進むなか、防衛予算を聖域化することなく、国民生活全体に目配りした配分が必要だ。専守防衛からの逸脱だとして、朝日新聞の社説が一貫して反対してきた護衛艦の空母への改修に31億円が計上された。そこで運用される米国製の最新鋭ステルス戦闘機F35Bは、まず6機を793億円で購入する。陸上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」には、配備先がまだ決まっていないというのに、米国からの発射装置の取得などに129億円を投じる。最終的には東西2基で5千億円を超える巨額の事業である。国会の予算審議では、導入の是非から議論するよう、改めて強く求める。安倍首相は1月の施政方針演説で、安全保障環境の激変に対応した防衛力の構築に向け、「従来とは抜本的に異なる速度で変革を推し進める」と語った。その帰結が米国製兵器の大量購入だとすれば、トランプ氏への政治的配慮が優先され、妥当性の分析がおろそかになっていると言わざるを得ない。安倍政権下ではすでに、米政府から直接兵器を買う有償軍事援助(FMS)が急増している。11年度の432億円が、19年度は7013億円に。20年度も4713億円と高い水準だ。高額な兵器は複数年の分割払いとなるため、「後年度負担」が将来の予算を圧迫する。20年度の契約に基づき、21年度以降に支払われる額は2兆5633億円にのぼり、訓練など本来必要な予算にしわ寄せが及ぶことが懸念される。昨年末に改定された「防衛計画の大綱」「中期防衛力整備計画」は、陸海空にとどまらず、宇宙やサイバー空間といった新たな領域への対応を掲げた。ただ、今回の予算案全体を見渡しても、さまざまな課題への優先順位は明確でない。徹底した取捨選択を進め、効率的な防衛力のあり方を主体的に考え抜かねばならない。近隣外交による緊張緩和を地道に進めながら、日本の安全保障を確かなものとすべきだ。

*2-3:https://www.nishinippon.co.jp/item/n/570817/ (西日本新聞社説 2019/12/24) 膨張する防衛費 「専守」から逸脱しないか
 その規模の膨張だけでなく、中身の変質にも重大な懸念を抱かされる。2020年度政府予算案の防衛関係費のことだ。過去最高の5兆3133億円が計上された。第2次安倍晋三政権発足後、8年連続の増額となる。政府は、北朝鮮の核・ミサイル開発や中国の軍拡など安全保障環境の厳しさを強調し、防衛費を拡大させる一方だ。総額を押し上げた要因に、米政府から直接、兵器を購入する対外有償軍事援助(FMS)がある。20年度も4713億円と安倍政権下で実に4倍に増えた。トランプ米大統領からの強い要請に応じたのではないか。地上配備型迎撃システム「イージス・アショア」関連費も計上したが、まだ配備先も確定していない状況である。その必要性について十分に吟味したのか甚だ疑問だ。ここでも米国への政治的配慮が目立つ。さらに政策の変質もうかがえる。戦後日本が安全保障の基本原則としてきた「専守防衛」から、自衛隊が逸脱してしまうのではないかと疑念を生じさせる内容が含まれている。専守防衛とは、他国から攻撃されて初めて、自衛のため最小限度の防衛力を行使する-憲法9条に基づく考え方である。自衛隊は「盾」の役割に徹するため、攻撃型空母や戦略爆撃機は保有できないというのが、長年の政府見解だった。そこから変質した象徴が「いずも」型護衛艦の「空母化」改修費だ。米国から初めて取得する最新鋭ステルス戦闘機F35Bの搭載を想定し、離着陸できる甲板に改修する。遠洋でも運用可能にする計画である。今年の防衛白書では、戦闘機搭載は「必要な場合」に限り「多機能な護衛艦に変わりない」と記した。だが実態は専守防衛とは相いれない「敵基地攻撃能力」に該当するのではないか。政府は、戦闘機に搭載し、敵の射程圏外から反撃できる長距離巡航ミサイル「JSM」も導入する方針だ。護衛艦の空母化とともに、従来の政府見解との整合性を国内外に分かりやすく説明すべきだろう。自衛隊と米軍の一体化が進む中、自衛隊の運用面で専守防衛が有名無実化する恐れは否定できない。安倍政権は集団的自衛権の行使を可能にした安全保障関連法制定をはじめ、専守防衛を空洞化させる動きを進めてきた。国民の理解を得ないまま既成事実を積み重ね、安保政策の基本をゆがめることは許されない。予算案には宇宙やサイバー、電磁波など新領域に備える組織の関連費用も盛られた。専守防衛を課された自衛隊がどこまで対応するのか。年明けの国会審議で徹底した議論を求めたい。

*2-4-1:https://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-1047123.html (琉球新報社説 2019年12月24日) 辺野古埋め立て 血税の浪費直ちにやめよ
 米軍普天間飛行場の移設に伴う名護市辺野古の新基地建設を巡り、埋め立てに10年程度を要すると政府が見積もっていることが分かった。軟弱地盤が存在するためだ。順調に進んだとしても、普天間飛行場の返還は2030年代になる。辺野古移設が普天間の早期の危険性除去につながらないことは明らかだ。沖縄の民意に反するばかりか、貴重な自然を破壊し、血税の浪費につながる新基地建設は即刻中止すべきだ。県は昨年の時点で、地盤改良に5年、埋め立てに5年、施設整備に3年を要し、合わせて13年以上かかると指摘していた。大幅に長期化するという見通しの正しさが裏付けられた格好だ。県の試算によると、総工費は最大2兆6500億円まで膨らむ。投入される国費が莫大(ばくだい)な金額になるのは間違いない。だが政府は、埋め立て工事に要する総事業費を「少なくとも3500億円以上」としか説明していない。いつ完成するのか、費用はいくらかかるのか、といった肝心の部分を置き去りにしたまま、見切り発車で工事を始めたからだ。政府のやり方は泥縄式であり、ずさんの極みと言うほかない。日米両政府が13年に合意した現行の基地返還計画は、埋め立てに5年、施設整備に3年を見込み、普天間飛行場の返還は「22年度またはその後」とされた。工事は当初計画よりも大幅に遅れ、埋め立て工事の進捗(しんちょく)率は県の推計で全体の1%にとどまっている。埋め立てに「10年程度」かかるというが、実際はさらに長引く可能性もある。大浦湾側に軟弱地盤が存在することは昨年3月、市民が情報開示請求で入手した沖縄防衛局の地質調査報告書によって公になった。防衛省は把握していたが、認めたのは今年1月だ。都合の悪い情報を隠してきたのである。地盤の改良が必要な海域は73ヘクタールにも及ぶ。深いところでは海面から約90メートルに達している。砂を締め固めたくいを約7万7千本打ち込む工法が示されている。国内で前例のない難工事である。そもそも実現性さえ疑わしい。防衛省は地盤改良工事に入るための計画変更を年明け以降に県に申請するという。県は承認しない構えだ。新基地建設反対は玉城デニー知事の公約なのだから当然である。今後、新たな法廷闘争につながる可能性もある。埋め立ての賛否が問われた2月の県民投票で投票者の7割超が反対した。民意の重みをないがしろにし、問答無用で新基地建設を強行するさまは、およそ民主主義国家の振る舞いとは思えない。政府は新基地の建設を断念し、県内移設を伴わない普天間飛行場の速やかな全面返還を米国に提起すべきだ。この先10年以上も普天間飛行場の脅威が続く事態は断じて容認できない。

*2-4-2:https://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-1049092.html (琉球新報社説 2019年12月27日) 辺野古9300億円 埋め立てを即時中止せよ
 防衛省は25日、名護市辺野古の新基地建設の総工費を9300億円、完成までの期間を約12年とする試算を示した。大浦湾側に広がる軟弱地盤への対応で、総工費は2014年に明示した3500億円の約2・7倍になり、22年度以降とした普天間飛行場の返還時期は30年代以降にずれ込むことが確実になった。県が指摘してきた通り、国の新基地建設計画は大幅な見直しを余儀なくされた。県内の公共事業としては空前の規模だが、国民の反発を避けるため数字を過小に見積もったと見た方が妥当だ。国内に前例のない難工事であり、工費も期間もさらに膨れ上がる可能性が大きい。沖縄防衛局によると、移設事業に投じた予算は既に約1471億円に上っている。現時点で投入された土砂は埋め立て区域全体の1%程度にすぎないにもかかわらず、当初示した3500億円の3分の1以上を使っている。さらにこれから大規模な地盤改良工事が始まるというのに、9300億円でとどまるとは到底考えにくい。どのような工法でどれほどの費用を見込むのか、積算の根拠をまず説明すべきだ。そもそも政府は、大浦湾側に軟弱地盤が広がることを把握しながら、その存在を国民にひた隠しにしてきた。16年3月にまとめられた沖縄防衛局のボーリング調査報告書には、地盤の強さを示すN値がゼロという「マヨネーズ」並みの軟弱さを示す結果が示されていた。18年3月に市民の情報開示請求で報告書が明らかになった後も、政府は軟弱地盤の存在を明確にしなかった。同年9月の県知事選で、政権が支援する候補者に不利になると考えたからではないか。新基地建設に反対する玉城デニー知事が当選すると、政府は知事選までの間は止めていた海上工事を再開。昨年12月に、埋め立て予定海域への土砂の投入を強行した。費用や期間が大幅に膨れ上がると知りながら、土砂投入に突き進んだ。埋め立ては止められないという既成事実をつくるためとみられる。沖縄の民意の無視はもちろん、税金で基地建設費を負担する国民を欺く行為だ。国の借金は国内総生産(GDP)と比べた比率で、主要国最悪の水準だ。富を生み出さない米軍基地の建設に、天文学的な額の税金を費やすなどばかげている。玉城知事は総工費が最大2兆6500億円、完成までの年数は13年以上という独自の試算を示し、普天間の危険性除去について新たな道を探る対話を政府に訴えた。軟弱地盤をはじめ基地建設に適さない条件を抱える辺野古は、もはや唯一の解決策ではない。 現計画に固執すれば、国の財政規律をゆがめ、普天間の危険性除去が一層遠のく。政府は埋め立て工事を即刻中止し、県との協議に臨むべきだ。

*2-4-3:https://www.nishinippon.co.jp/item/n/569722/ (西日本新聞 2019/12/20) 馬毛島買収、評価額の3倍超に疑問も 米艦載機の訓練移転用地
 米軍艦載機の訓練移転候補地として、政府が進める鹿児島県・馬毛島(西之表市)の買収に疑問の声が上がっている。地権者と再合意した買収金額約160億円は、政府が2016年度に算定した評価額の3倍超に。国の公害等調整委員会が「森林法への抵触」を認定した、地権者による独自工事の費用を上乗せしたためとみられる。なりふり構わぬ買収劇の背景には、安全保障に「応分の負担」を迫る米トランプ政権の圧力がある。政府は11月29日、馬毛島(約8平方キロ)の99%を所有する開発会社「タストン・エアポート」(東京)と売買の再合意にこぎ着けたが、それまでには紆余(うよ)曲折があった。関係者によると、タストン社には土地売却後も島に拠点を残し、資材の供給などで訓練場建設に参画したい意向があり、交渉過程で「4万坪(0・13平方キロ)は訓練場の完成まで売らない」と主張。防衛省は島全体の国有化を目指しており、一時期は決裂寸前になった。だが、菅義偉官房長官、和泉洋人首相補佐官を中心とする首相官邸が「全面譲歩」を防衛省に指示。政府はこの4万坪を買収する際、タストン社の要求に応じ、さらに5億円程度を追加して支払うことも検討しているという。「国の用地買収としては異例の譲歩」(官邸幹部)を重ねたプロセスだった。
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 政府が前のめりに突き進んだのは、米政権の意向が大きい。馬毛島で計画されているのは、陸地を空母に見立てて離着陸を繰り返すFCLPと呼ばれる訓練で、「空母の能力を維持する上で最も重要」(防衛省幹部)。現在は硫黄島(東京)で行われているが、艦載機部隊の置かれる米軍岩国基地(山口県)から約1400キロと遠く、米国は航続距離の短い機種には危険が伴うと懸念していた。平たんな無人島の馬毛島は岩国から約400キロの位置にあり、日米両政府は11年6月に訓練移転候補地として合意したが、年月が経過していた。政府関係者によると、トランプ大統領は安倍晋三首相に対し、「マゲシマ」の名前を挙げてFCLPの早期移転を重ねて要求。トランプ氏が在日米軍駐留経費(思いやり予算)の大幅な増額を求める構えを崩していないこともあり、日本政府はこれをなだめる「ディール(取引)」の材料として馬毛島を位置付け、買収交渉を加速させた。タストン社は、当初の日米合意を見越して独自に島に滑走路を造成し、その建設費用も含め400億円台での売却を主張していた。一方、防衛省は16年度に行った不動産鑑定で島の評価額を45億円と積算。両者の隔たりは大きかったが、官邸はタストン社に歩み寄る形で買収金額を約160億円まで引き上げた。タストン社も、親会社の経営悪化などから資金繰りに窮して態度を軟化させ、今年1月の仮契約を経て再合意となった。「今回の買収合意は、最近の日米関係で最大のヒットだ」。菅氏は周囲にこう誇る。政府は、中国軍が海洋進出を活発化させていることをにらみ、馬毛島を南西諸島の防衛拠点として整備し、日米による“不沈空母化”も検討している。
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 ただ、タストン社が実施した滑走路造成については国の公害等調整委員会が16年、「森林法の許可申請、届け出の範囲を超える開発、伐採が推認される」と認定している。滑走路も織り込んだ買収は、政府が違法造成を容認したと受け取られかねない。この点をただした共産党の田村貴昭衆院議員の質問主意書に対し、政府は今月17日、「森林法違反で何らかの処分が行われたとは承知していない」とする答弁書を閣議決定。約160億円の積算根拠も「購入手続きに支障を及ぼす」と説明を拒んだ。日米安保緊密化の名の下に急展開した馬毛島買収に対し、「強引すぎる」との声は与党幹部からも漏れている。

*2-4-4:https://www.tokyo-np.co.jp/article/world/list/201905/CK2019050402000125.html (東京新聞 2019年5月4日) グアム移転 24年10月にも 沖縄海兵隊 米軍が現地に伝達
 日米両政府が合意している在沖縄海兵隊の米領グアムへの移転計画で、米軍が二〇二五米会計年度の前半(二四年十月~二五年三月)に移転を始め、約一年半かけて完了させる方針を地元議会に伝えていたことが分かった。建設中の新たな海兵隊基地の名称は「キャンプ・ブラズ」となる予定。米軍筋が共同通信の取材に明らかにした。米軍筋によると、移転する海兵隊員は約五千人と見込まれ、このうち約千七百人がグアムに常駐し、残りは半年ごとに入れ替わる部隊となる。沖縄から移転する隊員数はこれまで約四千人と公表されていた。米軍は今年二月四日、移転計画の最新案をグアム議会のティナ・ムニャバーンズ議長に説明した。米軍筋は、トランプ政権の方針や来年の米大統領選の結果などによって、移転計画の遅延や変更もあり得るとしている。海兵隊の新基地はグアム北部のアンダーセン空軍基地近くに建設中で、二六年までに完成予定。名称は海兵隊准将やグアム選出の米下院準議員を歴任した地元出身の故ベン・ブラズ氏に由来する。アンダーセン空軍基地近くのフィネガヤン地区では、日本政府からの資金提供も活用し、下士官用宿舎などの整備も進んでいる。隊員の家族を帯同することから、島内では人口増加に対応しようと道路や医療施設なども建設されているが、労働者不足のため整備の遅れが指摘されている。一二年に日米両政府が修正合意した米軍再編計画には、在沖縄海兵隊約一万九千人のうち約九千人をグアムやハワイなどへ移転させることや、米軍普天間(ふてんま)飛行場(沖縄県宜野湾(ぎのわん)市)の名護市辺野古(へのこ)への移設が盛り込まれた。沖縄では昨年十二月、辺野古沿岸部への土砂投入が始まり、今年二月二十四日実施の県民投票では、埋め立て反対が多数となっていた。日米はグアム移転を、普天間飛行場移設の進展とは切り離し二〇年代前半に始めることを確認している。
<在沖縄海兵隊のグアム移転> 日米両政府は2012年4月、在沖縄米海兵隊約9000人を国外へ移転し、米領グアムなどに分散するとの内容を盛り込んだ在日米軍再編見直しの共同文書を発表した。グアム移転は米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古移設の進展状況とは切り離して進めることでも合意しているが、菅義偉官房長官は昨年10月の記者会見で「結果的にリンクしている」と発言し、移設が実現しなければグアム移転も進まないとの認識を示した。

*2-5:https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2019/11/post-13400.php (NewsweekJapan 2019年11月16日) トランプが日本に突き付けた「思いやり予算」4倍の請求書、21年3月末の日米特別協定更新の期限を前に、日本が負担している約20億ドルを約80億ドルに増やすことを日本政府に求めた
トランプ米大統領が日本政府に対し、在日米軍駐留経費の日本側負担(思いやり予算)を大幅に増やすよう要求していることが分かった。事情を知る米政府関係者および元米政府関係者がフォーリン・ポリシー誌に語った話によれば、トランプ政権は日本政府に米軍駐留経費負担を現在の4倍以上に増額することを求めているという。7月に日本を訪問したジョン・ボルトン国家安全保障担当大統領補佐官とマット・ポティンジャーNSCアジア上級部長(いずれも当時)が要求を伝えたとのことだ。米政府が米軍駐留経費の負担増を要求しているアジアの同盟国は、日本だけではない。ボルトンとポティンジャーは韓国にも、経費負担を現在の約5倍に増やすよう求めたと、同じ消息筋は語っている。日本には約5万4000人、韓国には約2万8500人の米兵が駐留している。「このように法外な要求を一方的に突き付けるやり方は、反米感情に火を付けかねない」と、元CIA分析官でもあるヘリテージ財団のブルース・クリングナー北東アジア担当上級研究員は懸念する。「同盟が揺らぎ、米軍のプレゼンスが縮小して抑止力が弱まるようなことがあれば、恩恵に浴するのは北朝鮮や中国、ロシアだ」
●基地整備や兵器購入も
 トランプ政権の日韓両国政府への要求は、世界規模で同盟国に国防支出を増やさせようとする動きの一環と位置付けられる。トランプは以前から、ヨーロッパの同盟国の国防予算が少な過ぎると批判していた。そうした圧力は効果を発揮したらしい。NATO諸国は来年末までに、国防予算を2016年の水準に比べて1000億ドル以上積み増すことにした。トランプがNATOの次に目を向けたのがアジアの同盟国だったようだ。アジアでは、中国が軍事力を増強している上に、北朝鮮の軍事的脅威も再び高まっている。日本は、アメリカとの特別協定の下、米軍駐留経費として約20億ドルを拠出している。現在の特別協定は、21年3月末に更新期限を迎える。3人の元米国防総省当局者によれば、米政府は協定更新に向けた交渉が本格化するのを前に、この予算を約80億ドルに増やすことを日本政府に求めた。韓国も年内に同様の協定の更新期限を迎える。ある元米国防総省当局者によれば、米政府は韓国政府に対し、駐留経費負担を約50億ドルに引き上げるよう要求している。しかし、日本と韓国は既に米軍の活動のために莫大な費用を負担している。米議会調査局によると、日本は、第二次大戦後の米軍外国基地建設プロジェクトの中でもとりわけ大規模な3つに関して費用のかなりの部分を負担する。具体的には、沖縄県の普天間飛行場代替施設建設に121億ドル(費用の全額)、山口県岩国の海兵隊航空基地建設に45億ドル(費用の94%)、そして、海兵隊員4800人が沖縄から移転することになるグアムの施設に31億ドル(費用の36%)である。日本の経済的負担は、米軍駐留経費だけではない。日本は防衛装備品の90%以上をアメリカ企業から購入している。ロッキード・マーティン社の最新鋭ステルス戦闘機F35やボーイング社のKC46空中給油機などだ。膨張し続けるトランプの要求に対して、日本政府は頭を悩ませることになりそうだ。

<中東への自衛隊派遣>
*3-1:https://www.sankei.com/politics/news/191027/plt1910270009-n1.html (産経新聞 2019.10.27) 自衛隊中東派遣、ホルムズ海峡排除せず どうなる武器使用
 政府は、緊張が高まっている中東海域での情報収集態勢を強化するため、早ければ年明けに自衛隊を独自派遣する方針だ。ただ、派遣の方法や法的整合性の検討、部隊への教育訓練の実施期間を踏まえると来春にずれ込む可能性がある。国家安全保障局を中心に外務省、防衛省などで活動場所や時期の調整を進めている。政府内には「与野党から反対や慎重な意見が相次いでいる。3カ月後(年明け)というのは難しいのではないか」(防衛省幹部)との声もある。自衛隊派遣の検討を具体化したのは、サウジアラビアの石油施設への攻撃、イラン国営会社所有のタンカーの爆発など情勢が緊迫化する中、石油輸入を中東に依存する日本が主体的に情報収集に関わらざるを得なくなったからだ。得た情報は米国主導の有志連合構想に加わる国などに提供する方向で調整している。菅義偉(すが・よしひで)官房長官は18日の記者会見で、派遣先として「オマーン湾」「アラビア海北部」「バべルマンデブ海峡東側」を中心に検討すると発表。事態が最も緊迫し、情報収集の必要性が高いホルムズ海峡には言及しなかった。河野太郎防衛相は25日の記者会見で「中東地域のどこかを特筆して排除していない」と述べ、ホルムズ海峡で活動する可能性も排除せずに検討する考えを示した。
     ◇
 政府は自衛隊の中東派遣の具体的な方法について、海上自衛隊の護衛艦1隻を新たに派遣する案を軸に検討している。すでに中東近隣で海賊対処の任務についている海自のP3C哨戒機2機のうち1機の任務を今回の情報収集に変更することも選択肢に入る。防衛省の統合幕僚監部の検討チームでは、さまざまな事態を想定しながら必要な装備などについてケーススタディーを進めている。河野太郎防衛相は25日の記者会見で「新規の船(護衛艦)の派遣と、ジブチを拠点とするP3C哨戒機や護衛艦の活用も検討対象にしている」と説明した。すでにソマリア沖アデン湾での海賊対処のため、護衛艦1隻とP3C哨戒機2機がアフリカ東部のジブチを拠点に他国と連携して活動している。ジブチは情報収集を目的とする今回の派遣候補地に近い。このため、日本から護衛艦1隻を追加派遣して計2隻態勢とすれば、「1隻は既存の海賊対処を継続し、もう1隻は新たな情報収集」という2つの任務の両立が可能となる。海上自衛隊が保有する護衛艦は48隻で、能力や装備が今回の任務に適しているのは20隻余り。中国の海洋進出が強まる中、「東シナ海などに展開する護衛艦を減らして警戒監視を弱めるわけにいかない。現場のやりくりに余裕はない」(自衛隊幹部)と不安視する向きもある。ただ、海賊対処部隊は平成28年、海賊事案の減少に伴い2隻態勢だったのを1隻に減らした。防衛省関係者は「『もともと2隻だろう』といわれれば、その通りだ」と語る。一方、派遣済みのP3C哨戒機2機のうち1機を海賊対処から情報収集に転用する場合、活動場所はバべルマンデブ海峡東側の公海の上空になる公算が大きい。オマーン湾はジブチから2千キロ余り離れており、所要時間や航続距離を考えると往復するだけでほぼ終わってしまうからだ。今回の派遣は、防衛省設置法で定められる省の担当業務「調査・研究」を法的根拠としている。常日頃の日本周辺海域での警戒・監視の根拠規定にもなっている。つまり、中東派遣は通常の任務の延長線上に位置づけられる。正当防衛以外での武器使用はできず、日本関係船舶を武器を使用して護衛することは法的に難しい。

*3-2:https://2019constitution.fc2.net/blog-entry-1.html (憲法研究者 2019/11/1) ホルムズ海峡周辺へ自衛隊を派遣することについての憲法研究者声明
1、2019年10月18日の国家安全保障会議で、首相は、ホルムズ海峡周辺のオマーン湾などに自衛隊を派遣することを検討するよう指示したと報じられている。わたしたち憲法研究者は、以下の理由から、この自衛隊派遣は認めることができないと考える。
2、2019年春以来、周辺海域では、民間船舶に対する襲撃や、イラン・アメリカ両国軍の衝突が生じている。それは、イランの核兵器開発を制限するために、イラン・アメリカ等との間で結ばれた核合意から、アメリカ政府が一方的に離脱し、イランに対する経済制裁を強化したことと無関係ではないだろう。中東の非核化と緊張緩和のために、イラン・アメリカ両国は相互に軍事力の使用を控え、またただちに核合意に立ち戻るべきである。
3、日本政府は、西アジアにおける中立外交の実績によって、周辺地域・周辺国・周辺民衆から強い信頼を得てきた。今回の問題でもその立場を堅持し、イラン・アメリカの仲介役に徹することは十分可能なことである。またそのような立場の外交こそ、日本国憲法の定めた国際協調主義に沿ったものである。
4、今回の自衛隊派遣は、自衛隊の海外派遣を日常化させたい日本政府が、アメリカからの有志連合への参加呼びかけを「渡りに船」で選択したものである。
 自衛隊を派遣すれば、有志連合の一員という形式をとらなくとも、実質的には、近隣に展開するアメリカ軍など他国軍と事実上の共同した活動は避けられない。しかも菅官房長官は記者会見で「米国とは緊密に連携していく」と述べているのである。ほとんどの国が、この有志連合への参加を見送っており、現在までのところ、イギリスやサウジアラビアなどの5カ国程度にとどまっている。このことはアメリカの呼びかけた有志連合の組織と活動に対する国際的合意はまったく得られていないことを如実に示している。そこに自衛隊が参加する合理性も必要性もない。
5、日本政府は、今回の自衛隊派遣について、防衛省設置法に基づく「調査・研究」であると説明する。
 しかし防衛省設置法4条が規定する防衛省所掌事務のうち、第18号「所掌事務の遂行に必要な調査及び研究を行うこと」とは、どのような状況において、自衛隊が調査・研究を行うのか、一切の定めがない。それどころか調査・研究活動の期間、地理的制約、方法、装備のいずれも白紙である。さらに国会の関与も一切定められていない。このように法的にまったく野放し状態のままで自衛隊の海外派遣をすることは、平和主義にとってもまた民主主義にとってもきわめて危険なことである。
6、わたしたちは安保法制のもとで、日本が紛争に巻き込まれたり、日本が武力を行使するおそれを指摘してきた。今回の自衛隊派遣は、それを現実化させかねない。 第一に、周辺海域に展開するアメリカ軍に対する攻撃があった場合には、集団的自衛権の行使について要件を満たすものとして、日本の集団的自衛権の行使につながるであろう。第二に、「現に戦闘行為が行われている現場」以外であれば、自衛隊はアメリカ軍の武器等防護をおこなうことができる。このことは、自衛隊がアメリカの戦争と一体化することにつながるであろう。第三に、日本政府は、ホルムズ海峡に機雷が敷設された場合について、存立危機事態として集団的自衛権の行使ができるという理解をとっている。しかし機雷掃海自体、極めて危険な行為である。また戦闘中の機雷掃海は、国際法では戦闘行為とみなされるため、この点でも攻撃を誘発するおそれがある。このように、この自衛隊派遣によって、自衛隊が紛争にまきこまれたり、武力を行使する危険をまねく点で、憲法9条の平和主義に反する。またそのことは、自衛隊員の生命・身体を徒に危険にさらすことも意味する。したがって日本政府は、自衛隊を派遣するべきではない。  

*3-3:https://www.nichibenren.or.jp/document/statement/year/2019/191227.html (2019年(令和元年)12月27日  日本弁護士連合会会長 菊地裕太郎 ) 中東海域への自衛隊派遣に反対する会長声明
 2019年12月27日、日本政府は日本関係船舶の安全確保に必要な情報収集活動を目的として、護衛艦1隻及び海賊対策のためにソマリア沖に派遣中の固定翼哨戒機P-3C1機を、中東アデン湾等へ派遣することを閣議決定した。2018年5月に米国がイラン核合意を離脱後、ホルムズ海峡を通過するタンカーへの攻撃等が発生していることから、米国はホルムズ海峡の航行安全のため、日本を含む同盟国に対して有志連合方式による艦隊派遣を求めてきた。これに対し日本は、イランとの伝統的な友好関係に配慮し、米国の有志連合には参加せずに上記派遣を決定するに至った。今般の自衛隊の中東海域への派遣は、防衛省設置法第4条第1項第18号の「調査及び研究」を根拠としている。しかし、同条は防衛省のつかさどる事務として定めている。そもそも、自衛隊の任務、行動及び権限等は「自衛隊法の定めるところによる」とされている(防衛省設置法第5条)。自衛隊の調査研究に関しても、自衛隊法は個別規定により対象となる分野を限定的に定めている(第25条、第26条、第27条及び第27条の2など)。ところが、今般の自衛隊の中東海域への派遣は、自衛隊法に基づかずに実施されるものであり、防衛省設置法第5条に違反する疑いがある。日本国憲法は、平和的生存権保障(前文)、戦争放棄(第9条第1項)、戦力不保持・交戦権否認(第9条第2項)という徹底した恒久平和主義の下、自衛隊に認められる任務・権限を自衛隊法で定められているものに限定し、自衛隊法に定められていない任務・権限は認めないとすることで、自衛隊の活動を規制している。自衛隊法ではなく、防衛省設置法第4条第1項第18号の「調査及び研究」を自衛隊の活動の法的根拠とすることが許されるならば、自衛隊の活動に対する歯止めがなくなり、憲法で国家機関を縛るという立憲主義の趣旨に反する危険性がある。しかも、今般の自衛隊の中東海域への派遣に関しては、「諸外国等と必要な意思疎通や連携を行う」としていることから米国等有志連合諸国の軍隊との間で情報共有が行われる可能性は否定できず、武力行使を許容されている有志連合諸国の軍隊に対して自衛隊が情報提供を行った場合には、日本国憲法第9条が禁じている「武力の行使」と一体化するおそれがある。また、今般の閣議決定では、日本関係船舶の安全確保に必要な情報の収集について、中東海域で不測の事態の発生など状況が変化する場合における日本関係船舶防護のための海上警備行動(自衛隊法第82条及び第93条)に関し、その要否に係る判断や発令時の円滑な実施に必要であるとしているが、海上警備行動や武器等防護(自衛隊法第95条及び第95条の2)での武器使用が国又は国に準ずる組織に対して行われた場合には、日本国憲法第9条の「武力の行使」の禁止に抵触し、更に戦闘行為に発展するおそれもある。このようなおそれのある活動を自衛隊法に基づかずに自衛隊員に行わせることには、重大な問題があると言わざるを得ない。政府は、今回の措置について、活動期間を1年間とし、延長時には再び閣議決定を行い、閣議決定と活動終了時には国会報告を行うこととしている。しかし、今般の自衛隊の中東海域への派遣には憲法上重大な問題が含まれており、国会への事後報告等によりその問題が解消されるわけではない。中東海域における日本関係船舶の安全確保が日本政府として対処すべき課題であると認識するのであれば、政府は国会においてその対処の必要性や法的根拠について説明責任を果たし、十分に審議を行った上で、憲法上許容される対処措置が決められるべきである。よって、当連合会は、今般の自衛隊の中東海域への派遣について、防衛省設置法第5条や、恒久平和主義、立憲主義の趣旨に反するおそれがあるにもかかわらず、国会における審議すら十分になされずに閣議決定のみで自衛隊の海外派遣が決められたことに対して反対する。

*3-4:https://www.topics.or.jp/articles/-/305910 (徳島新聞社説 2020年1月6日) 国際展望 トランプ追従は高リスク
 トランプ米大統領の決断が、幕が開いた2020年の世界を震わせている。イランのソレイマニ司令官爆殺は「宣戦布告」に等しい。イランは引くに引けず、報復に出る可能性が高まっている。トランプ氏は作戦実行後、「強い米国」をアピールするように、写真投稿アプリに星条旗の画像だけを掲げた。大統領選挙に勝つためなら何でもやりかねない。そんなトランプリスクが、今年の世界を覆っている。少なくとも、北朝鮮の非核化は、実現が遠のいたと言えるだろう。11月の米大統領選は、一層の関心事となった。焦点はトランプ政治の継続か否か。民主党の候補が誰になろうが変わらない。敗れるなら、米国の政策は一変する。温暖化抑制、移民対策、銃規制など、多くの分野で逆方向に動き出すだろう。鍵を握るのは、対抗馬が持つ「勢い」だ。トランプ氏は白人の農家や労働者に底堅い支持基盤を持つが、広がりはない。支持者が喜ぶ政策を実行し、相手をおとしめて勢いをそぐ。戦術はそれしかない。共和、民主両党が拮抗する「スイングステート(揺れる州)」が勝負を決める。前回の勝利に直結した中西部「ラストベルト」の諸州は、今回も注目の的だ。楽勝が見通せない中で、トランプ氏は米国第一主義を強める。激戦州の有権者に受ける成果を求め、国際関係に及ぼす長期的な悪影響など省みない。その典型が、米軍撤収で混迷を深めたシリア情勢だ。昨年10月、「イスラム国」(IS)掃討で共に戦ったクルド人勢力を見捨て、トルコ軍のシリア侵攻を誘発した。同盟への「裏切り」がアジアで再現されない保証はない。民主党の候補者を絞り込む予備選は2月上旬のアイオワ州で始まり、13州が集中する3月3日で流れが固まる。現在の主要論点は、医療保険制度や移民問題など日常に関わるテーマだ。外交は隅に置かれている。だからこそ、現役候補にとって独占的なアピール手段となりやすい。一方、民主党が政権を奪還しても、中国への強硬姿勢には大きな変化がない、との見方が有力だ。安全保障を理由とした「技術冷戦」は、既に超党派の動きとなり、目先の妥協を許さない状況だ。昨年始まった米中貿易戦争は、人工知能(AI)や宇宙空間を巡る長期的な覇権争いの幕開けにすぎない。習近平国家主席は昨年末、共産党政治局から「人民の領袖」とたたえられ、かつての毛沢東に匹敵する権威を確立しつつある。絶対的な権力の下で、ウイグル自治区で起きているような人民管理体制は強固になっていく。米国との対立と反比例するように、日本への接近姿勢は強まっている。春には習主席の国賓来日が予定される。わが国の立ち位置が問われる局面が増えるだろう。トランプ追従一辺倒では通用しない。

<「軍事力による現状変更を認めない」の意味は何?>
PS(2020.1.24追加): 尖閣諸島を領有していると主張する中国は、*4-3のように、国防白書に「①南シナ海の諸島や沖縄県の尖閣諸島(中国名・釣魚島)は、中国固有の領土と強調し」「②武器使用も放棄せず、一切譲歩しない」等としている。これに対し、安倍首相はじめ日本の関係者は、*4-1のように、「③中国が軍事力などを使って現状を変更する試みは、受け入れられない」と繰り返し述べるに留まり、日本の外務省は、*4-2のように、「④尖閣諸島が日本固有の領土であることは、歴史的・国際法上明らか」「⑤日本が実効支配している」「⑥従って尖閣諸島をめぐって解決しなければならない領有権の問題は存在しない」「⑦日本は領土を保全するために毅然かつ冷静に対応する」とする。
 しかし、③の言い方では、「軍事力を使わない(中国の国内法による)変更ならよい」と思われても仕方なく、④の尖閣諸島が日本固有の領土であることも主張していない。また、本当に固有の領土であれば、現状変更をせずに永遠に放置する必要はない。さらに、⑤は事実だが、①②を前提として中国船が領海内に頻繁に侵入しても、⑥のように「領有権の問題は存在しない」として、⑦の領土・領海の保全もしておらず、自衛権の行使もしていないのが現状なのである。それでも、米軍基地や自衛軍は必要か?

*4-1:https://www.nikkei.com/article/DGXNASFK27001_X20C14A1000000/ (日経新聞 2014/1/27) 首相「軍事力による現状変更認めず」 中国けん制、米CNNインタビューで
 米CNNテレビは26日、安倍晋三首相とのインタビューを報じた。CNNによると、安倍氏は「中国が軍事力などを使って現状を変更する試みは、いかなるものも受け入れられないと理解することが重要だ」と述べ、中国をけん制した。沖縄県・尖閣諸島をめぐる問題を念頭に置いた発言。CNNの英語通訳によると、安倍氏は中国が過去20年間、軍事費を毎年約10%も増加させてきたと指摘し「アジア各国と同様に日本の懸念材料だ」と批判。軍備拡張は中国の経済成長や繁栄に貢献しないとし、中国側がこれを確実に理解するよう取り組んでいきたいと述べた。また、中国と軍事的に対抗する意図はないと強調。一方で、首相として日本の領海や領土を守る責任を果たしていくと訴えた。安倍氏は政権の経済政策、アベノミクスの「三本の矢」にも言及。成長戦略のための構造改革について「抵抗する人たちにも、私が行ってきたことを正しいと納得させ、取り組むようにさせることが重要だ」と語った。インタビューは、安倍氏が世界経済フォーラム(WEF)年次総会(ダボス会議)出席のため、スイスを訪れた際に行われた。

*4-2:https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/senkaku/index.html (外務省 平成28年10月18日) 日本の領土をめぐる情勢、尖閣諸島について
 尖閣諸島が日本固有の領土であることは歴史的にも国際法上も明らかであり, 現に我が国はこれを有効に支配しています。したがって,尖閣諸島をめぐって解決し なければならない領有権の問題はそもそも存在しません。日本は領土を保全するために毅然としてかつ冷静に対応していきます。日本は国際法の遵守を通じた地域の平和と安定の確立を求めています。

*4-3:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO47712610U9A720C1000000/ (日経新聞 2019/7/24) 尖閣諸島は「固有の領土」 中国が4年ぶり国防白書、台湾統一に「武力放棄せず」
 中国政府は24日、「新時代の中国の国防」と題した国防白書を発表した。国防白書の発表は2015年5月以来、4年ぶり。南シナ海の諸島や沖縄県・尖閣諸島(中国名・釣魚島)は「中国固有の領土だ」と強調した。台湾を巡っても統一のため「武器使用は放棄しない。あらゆる措置をとる」と主張し、領土・領海問題を巡り周辺国に一切譲歩しない考えを強調した。米国など関係国とのあつれきが高まるのは必至だ。白書は世界情勢について「覇権主義や強権政治が台頭し、国際的な秩序は衝撃を受けている」と指摘した。米国を名指しして「単独主義に走り大国間の競争を引き起こし、軍事費を大幅に増やしている」と批判。日本についても「戦後体制を突破し、軍事の外向性を強めている」と主張した。

<沖縄の地の利と気候、さくらを見る会>
PS(2020年1月25日、2月14日追加):*5-1のように、名護市の名護城公園周辺を約1万本のヒカンザクラが彩り、「第58回名護さくら祭り」が始まり、気温が25度を超える陽気となった那覇市では、*5-2のように、かりゆしウエアを着た会社員の姿が目立ち、かりゆしウエアの制服や通年着用を認める会社も多いそうだ。私自身は模様の多すぎる「かりゆしウエア」は好きでないが、「沖縄は冬服がいらないので経済的だ(=冬服を着る機会はない)」と言う人もおり、沖縄は地の利と気候を生かして基地よりも生産性の高い産業を作ることができる筈である。
 このように予算に関する重要案件が多い中、*5-3のように、「『桜を見る会』懇親会の契約主体が個々人だというのは不自然で首相の説明通りだったとしても脱法行為だ」などと予算委員会で野党の国会議員が桜の会ばかりを追及しているのは、白でもグレイか黒だと印象付けて議員の価値を貶める自殺行為だ。何故なら、私は地元が九州で旅行代金が高くなる上、秘書の手も廻らなかったのでそういう企画はしなかったが、野田聖子さん(岐阜が地元)はじめ地元からバスで東京に来れる範囲の国会議員は、旅行会社を通して後援会の中の希望者を東京にバス旅行させ、そこに国会見学を組み込んで議員が国会案内等をする人が多かったからだ。その際の旅行代金はもちろん個々の後援会員の負担だと思われるが、そうでなければ旅行に参加した後援会員と参加しなかった後援会員の間に不公平が起こる。安倍首相のケースでも、ホテルと会費支払いの契約を結んだ主体は個々の参加者であり、首相の事務所が会費を受け取ってホテルに渡したのは、煩雑な仕事を手伝ったにすぎないと思われる。さらに、そのホテルの得意先だったり、このように煩雑な事務を手伝ったり、立食パーティーに参加者全員分ではなく40~50%分の食事を出したりすることによって、1人5千円の会費支払いで済ませることは経済合理性もある。そのため、政策に関する議論をさしおいて、政治資金規正法違反等の刑事事件もどきに仕立てあげ、辞めさせたい政治家の根拠なき人格攻撃を行うのは、民主主義の議論の仕方ではないと思う。なお、私は、会計・監査・税務の専門家で、衆議院議員だった時に現在の政治資金規正法改正に加わり、これは単式簿記に基づいて作成されるため網羅性・検証可能性に乏しく、監査証明も限定されているため完全とは言えないものの、一昔前のような大きな不正・買収は起こらなくなっているので、メディアはじめ皆が頭を切り替えるべき時だと考える。


                   *5-1より       *5-3より
(図の説明:左図のように、沖縄は、地球の海水面が低かった時代には、九州から台湾まで続く陸地だったようだ。現在は、中央の図のように、既に桜が咲き始めている常夏の島である。また、右図は、「さくらを見る会」の話だが、宛名なしの領収書は(推奨はしないが)一般によく見られるものであるため、推論に人格攻撃を目的とした強引さがある)

*5-1:https://ryukyushimpo.jp/news/entry-1063110.html (琉球新報 2020年1月25日) 名護さくら祭りが開幕 ピンク色の彩り、観光客たちが楽しむ 26日まで、オレンジレンジのライブも
 沖縄本島北部に位置する名護市の名護城公園周辺を約1万本のヒカンザクラが彩る「第58回名護さくら祭り」(同実行委員会主催)が25日、同公園などで始まった。26日まで仮装パレードやオレンジレンジのライブなどでさまざまなイベントが開かれる。実行委員会によると現在の開花状況は二~三分咲き。晴天となった名護城公園ではピンクや白に色づき始めた桜が名護市民や観光客を楽しませていた。25日、名護城入口でオープニングセレモニーが開かれ、渡具知武豊名護市長が「たくさんの花と樹木がお待ちしている。各種イベントも時間が許す限り楽しんでほしい」と呼びかけた。

*5-2:https://ryukyushimpo.jp/news/entry-1062912.html (琉球新報 2020年1月25日) 冬だけど「かりゆし」  暑い沖縄、通年着用の人増えてます
 「暑いし、かりゆし」。一年で一番寒い時期にもかかわらず、連日夏日を記録し“常夏”の雰囲気も漂う沖縄では、一年中かりゆしウエアを着る人がじわじわ増えている。県内企業では一年を通してかりゆしウエアでの出勤を認めている会社もあり、通年着用を後押ししている。気温が25度を超え汗ばむ陽気となった24日の那覇市。県庁北口交差点ではセーターを着込んだ観光客の姿を尻目に、かりゆしウエアを着た会社員の姿が目立った。ランチタイムを終えた昼すぎ、明るい緑のかりゆしウエアを着た医療事務の高江洲達さん(31)=那覇市=は「今日からかりゆし」と笑顔で語る。3年ほど前まで福岡で生活していたこともあり「沖縄はずっとかりゆしでいける。楽だし、私服っぽいのが好き」と仕事に戻っていった。国際通りにある店舗で勤務する40代男性は「制服がかりゆしなので一年中かりゆしを着ている。寒い時は上から羽織る」と語る。実際、かりゆしウエアを制服にしたり、通年での着用を認めたりする会社は多い。「元祖紅いもタルト」でおなじみの御菓子御殿は「紅芋カラー」のかりゆしウエアが制服。日本トランスオーシャン航空(JTA)は乗客と接触しない本社勤務などの「間接部門」で通年着用を許可している。同社担当者によると、夏日の24日は「かりゆしが多かった」と語った。この動きに縫製業者も機敏に反応している。メーカー関係者は「観光客の需要もあるが、1月の売り上げは伸びている。いつでも新作を投入できるように急ピッチで準備を進めている」と明かした。沖縄が冬でも暖かくなったのは地球温暖化の影響で、もろ手を挙げて喜べないが、“常夏”が進めばかりゆしウエアの需要はさらに伸びるかもしれない。

*5-3:https://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/202002/CK2020021402000135.html (東京新聞 2020年2月14日) <点検「桜を見る会」>懇親会 「契約主体は個々」不自然
 安倍晋三首相の後援会が「桜を見る会」前夜に東京都内のホテルで毎年開いてきた懇親会。首相は後援会の主催としながらも、ホテルと会費の支払い契約を結んだ「主体」は、あくまで個々の参加者だったと主張している。後援会の指示に従って会費を払っただけの参加者が「ホテルと契約した」との解釈は不自然だが、首相は国会答弁でこの説明を繰り返している。後援会がホテルと契約していないとの見解を変えない理由は、政治資金収支報告書に、懇親会の収支が記載されていないことを正当化するためとみられる。政治団体の収支があったにもかかわらず不記載だった場合は、政治資金規正法に違反するからだ。首相は、一人五千円の会費の支払いについて「集金した全ての現金を、その場でホテル側に手渡す形で、参加者から支払いがなされた」と話す。首相の事務所は、会費を受け取ってホテルに渡しただけなので、後援会に入金や出金はなかったという理屈だ。さらに首相は「(ホテルとの)段取りを行ったにすぎない事務所職員は、契約上の主体にはならない」とする。だが一方で、会場を予約したのは事務所の職員で、昨年の懇親会の準備経費は自身の選挙区支部から支出したと認めている。これに対し野党は、ホテルと主体的に契約したのは後援会だと指摘。首相の説明通りであったとしても脱法行為に当たると批判している。

<外交に役立つ国際貢献>
PS(2020年1月27、29、30日、2月2日追加):*6-1のように、中国では、春節時・流通の要所である武漢市という最大の間の悪さで新型コロナウイルスによる肺炎が発生し、国内での死者数が80人に達したそうだ。このため、武漢市では、①病院に診療待ちの人があふれ ②医療従事者用の白い防護服などの物資が不足し ③上海市などの大都市から医師団が続々と武漢市へ派遣され ④武漢市は市内の交通を遮断する封鎖措置に踏み切るなどして感染の拡大防止策を採り ⑤中国政府は、海外への感染拡大を防止するため海外団体旅行中止を通達したそうだ。日本は、「イ.空路で来日したバスツアーの旅行客に新型肺炎の感染者を確認した」「ロ.客のキャンセルが相次いで困った」などと騒いでいるだけでなく、日本政府や日頃から中国と関係のある日本企業は、電子レンジか湯煎で温めれば食べられるような餃子・シュウマイなどの中華料理やみかん(ビタミンCが豊富)・マスク等を武漢市民に寄付したらどうか?
 東日本大震災の時と同様、人は困った時に助けられるのが最も有り難いため、これが今後の外交や食品輸出に寄与することは間違いなく、日本は、*6-2のように、「i)恒久の平和を念願し」「ii)偏狭を地上から永遠に除去しようと努め」「iii)全世界の国民が恐怖と欠乏から免がれて平和に生存する権利を有することを確認し」「iv)いずれの国家も自国のことのみに専念して他国を無視してはならないと信じ」「v)日本国民は、国家の名誉にかけ、全力をあげてこの崇高な理想と目的を達成することを誓う」とする立派な日本国憲法を持っており、国民は、「こんなのは理想に過ぎないから、現実に合わせてレベルを落としたい」とは思っていないのである。
 しかし、*6-3のように、「①自民党女性局は平易な文章にイラストを織り交ぜ、『女性に読んでほしい』と憲法冊子を作成し」「②憲法は幸せのカタチを守る基本的なルールで、幸せのカタチは時代によって変わっていく」「③三原じゅん子局長は『憲法の話は苦手と思っている女性にこそ読んでほしい』と話した」「④『青年に音楽を演奏する機会を与える』と書かれたスイス憲法や「⑤同性婚を認める」アイルランド憲法などの例を紹介している」とのことだ。
 このうち①③については、日本国憲法は義務教育である中学校社会科(現在は、公民)の教科書に添付されて勉強したため、男女とも「読んだことがない」と言うのは不可能で、「女性は平易な文章でなければ理解できない」「女性は憲法の話は苦手」などと決めつけるのは女性蔑視である。また、憲法(原文:The Constitution of Japan)は国の骨格と方針を定めたもので、その13条に「すべて国民は、個人として尊重される(原文:All of the people shall be respected as individuals.)」と書かれているとおり、個人は自由な生き方を尊重され、②のように「国や憲法が(個人の)幸せのカタチを決める」わけではない。
 さらに、④は、第26条で「すべて国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する」と定めているため、音楽のみを取りださなくても政府の意思決定次第で教育できる。また、⑤については、24条で「婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない」としているが、この両性は異性でなければならないとは書かれていないため同性婚を排除しておらず、14条で「すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において差別されない」としているため、敢えて憲法で同性婚を認めると取り上げて書く必要はないと考える。それよりも、もともと人間は多様なのに「多様性≒同性婚、障害者」というような誤った議論が多いのが問題だ。つまり、「現行憲法は時代に合っていない」などと言っている人の話をよく聞くと、その人こそ現行憲法を理解していなかったり、読んですらいなかったりするのである。
 このような中、*6-4・*6-5のように、大分市はじめ東京都・他の地方自治体・日本政府などが、武漢市(湖北省)への民間チャーター機の往路等で中国政府にマスクや防護服などの緊急援助物資を運び、「雪中送炭」と中国のネット上で感謝の声が広がったそうだ。なお、メディアでは武漢市にあるユニクロがクローズしているところが報道されたが、伸縮性のある布で顔にフィットするマスクを急いで作り、店先で販売したらよいだろうと思った。
 *6-6のように、台湾でもマスクが不足して「1人3枚まで」にしているそうだが、台湾と関係の深い自治体や民間企業は寄付したらいかがか? 

*6-1:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO54875690X20C20A1AM1000/ (日経新聞 2020/1/27) 新型肺炎、拡大加速 「患者1000人増加も」武漢市長、春節連休を3日間延長
 中国の湖北省武漢市で発生した新型コロナウイルスによる肺炎の猛威が止まらない。武漢市の周先旺市長は26日夜、記者会見し、今後患者数は「1000人近く増加する可能性がある」と話した。中国国内の死者数が27日時点で80人に達するなど感染拡大を受け、中国政府は同日、春節(旧正月)の連休を2月2日まで延長すると発表した。武漢市を中心に医療機関の受け入れ体制や物資の不足なども深刻化している。「新型肺炎の疑いがある患者が2209人、発熱外来が643人。このうち45%前後に新型肺炎の診断が下る可能性がある」。周市長は26日夜、武漢市内の診療状況について説明した。武漢市のある湖北省では既に約700人が新型肺炎にかかり76人が死亡している。市民がSNS(交流サイト)に投稿した動画などによると、武漢市では病院内に診療待ちの人があふれかえっており、医療従事者用の白い防護服などの物資が不足しているという。武漢市は急増する患者の診察・治療体制の整備を急ピッチで進めている。国営新華社通信によると、同市内で少なくとも2つの新型肺炎に特化した病院を建設する予定で、ベッド数は計2千床を超えるとみられる。また上海市などの大都市から医師団も続々と武漢市へ派遣されている。中国では武漢市が23日から市内の交通を遮断する封鎖措置に踏み切るなど感染の拡大防止策を採っているが、食い止められていない。中国の保健当局は27日、国内の患者数は累計で2744人となり、死者は80人にのぼると発表した。直近半日で患者は約700人増えた。さらなる感染防止措置として国務院(政府)は27日、春節休暇を従来の1月30日までから2月2日まで3日間延長すると発表した。新型肺炎は発熱など患者の自覚症状がないケースもあるという情報があり、こうした人からオフィスや学校などでウイルスが広まるのを防ぐ狙いだ。国内の対応とともに海外への感染拡大防止にも動いている。中国政府は27日から海外団体旅行を中止するよう国内の旅行会社に対して通達した。ただ春節休暇を利用した中国人による海外への渡航ピークは既に過ぎている。日本の厚生労働省は26日、国内で4例目の新型肺炎の感染者を確認したと発表した。武漢市から観光で来日した40代の男性で愛知県の医療機関に入院している。男性はバスツアーの旅行客で、22日に空路で来日したという。陸路で中国本土とつながる香港とマカオは独自の入境制限に踏み切った。香港政府は26日夜、27日から中国湖北省の居住者と過去14日間に同省を訪れた人の入境を禁止すると発表した。マカオ政府も湖北省の居住者が入境する際に感染していないとする医師の証明書を提示するよう求める。一方、世界保健機関(WHO)のテドロス事務局長は26日、新型肺炎への対応を協議するため北京へ向かっていると、SNS上で明かした。WHOはこれまでの会合で、加盟国の検疫体制の強化などが求められる「緊急事態宣言」を見送った。しかし、その後も日本など中国国外でも患者数が増加しているため、事務局長自らの中国入りを判断したとみられる。

*6-2:http://www.japaneselawtranslation.go.jp/law/detail_main?id=174 (昭和二十一年十一月三日公布の日本国憲法より抜粋) 日本国憲法前文
 日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し、われらとわれらの子孫のために、諸国民との協和による成果とわが国全土にわたつて自由のもたらす恵沢を確保し、政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意し、ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する。そもそも国政は、国民の厳粛な信託によるものであつて、その権威は国民に由来し、その権力は国民の代表者がこれを行使し、その福利は国民がこれを享受する。これは人類普遍の原理であり、この憲法は、かかる原理に基くものである。われらは、これに反する一切の憲法、法令及び詔勅を排除する。日本国民は恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであつて、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めてゐる国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ。われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する。われらは、いづれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならないのであつて、政治道徳の法則は、普遍的なものであり、この法則に従ふことは、自国の主権を維持し、他国と対等関係に立たうとする各国の責務であると信ずる。日本国民は、国家の名誉にかけ、全力をあげてこの崇高な理想と目的を達成することを誓ふ。

*6-3:https://ryukyushimpo.jp/kyodo/entry-1064852.html (琉球新報 2020年1月28日) 自民、世論喚起へ憲法冊子を作成 「女性に読んでほしい」
 自民党女性局は28日、憲法改正を目指す党の考え方をまとめた小冊子を作成した。平易な文章にイラストを織り交ぜた仕上げで、改憲への世論喚起が狙い。「憲法は幸せのカタチを守る基本的なルール」などとしている。三原じゅん子局長は取材に「憲法の話は苦手と思っている女性にこそ読んでほしい」と話す。「青年に音楽を演奏する機会を与える」と書かれたスイス憲法、同性婚を認めるアイルランド憲法などの例を紹介。「幸せのカタチは時代によって変わっていく」と改正の意義を説いた。小冊子は見開きA5判10ページ。党の各都道府県連に2千部ずつ配布する。

*6-4:https://www.nishinippon.co.jp/item/n/579783/ (西日本新聞 2020/1/30) 「武漢頑張れ」激励込めマスク3万枚を大分市が寄贈 中国から感謝も
 新型コロナウイルスによる肺炎が拡大する中国で、日本の支援に称賛の声が広がっている。大分市が27日、友好都市の湖北省武漢市に「武漢加油(頑張れ)」のメッセージを添えてマスク3万枚を送ったところ、短文投稿サイト微博(ウェイボ)に「感動した」などの投稿が続出。閲覧数は3億7千万回を超えた。邦人を帰国させるため武漢入りした日本政府のチャーター機が物資を届けたことにも感謝の投稿が相次いだ。大分市のマスク寄贈は、中国共産党機関紙の人民日報が28日に報じた。マスクの入った段ボール箱に「武漢加油!」の紙が貼られていたことや、大分市が財政的に余裕がない中で支援に乗り出したことを伝えた記事は微博で瞬く間に拡散。「中国語の“頑張れ”には本当に心がこもっている」「裕福でないのに、こんなにたくさん寄付してくれるなんて」「大分市に行ってお礼を言いたい」といった書き込みが相次いだ。政府チャーター機が28日にマスクなど支援物資を運んだニュースも、微博の閲覧数が7千万回を超えた。2008年の四川大地震で日本の救援隊がいち早く現地入りしたことに触れ「あの時も助けに来てくれた」と感謝する投稿や、中国人客の減少で苦境に陥っている日本の観光地を励ます書き込みも見られた。大分市は29日にも防護服200着を武漢市に送った。マスクを送った際、他に不足している物資を尋ねる手紙を添えたところ、武漢市側から要望があったという。防護服は地元医師会の協力を得て集めた。大分市には市民などから物資の支援や寄付金の申し出が相次いでおり、市は今週にも受け入れ態勢を整える予定。担当者は「反響の大きさに驚いている。武漢は長く交流してきた友人のような存在で、早く平穏な生活に戻ってほしい」と話した。

*6-5:https://digital.asahi.com/articles/ASN1Z3VHBN1YUHBI04J.html?iref=comtop_8_01 (朝日新聞 2020年1月30日) 日本の援助、「いいね」中国で15万超 新型肺炎めぐり
 日本政府は、新型コロナウイルスによる肺炎が発生した中国・武漢市(湖北省)への民間チャーター機の往路で、中国政府への緊急援助物資を運んだ。中国のネット上では感謝の声が広がっている。328日深夜に武漢に到着した第1便には、中国向けに日本政府が手配したマスク約1万5千枚や手袋5万組、防護眼鏡や防護服などが積み込まれた。30日に到着した第2便も、地方自治体からの支援物資を運んだ。東京都は二つの便の合計で約2万着の防護服を提供しているという。外務省によると、茂木敏充外相が26日にあった中国の王毅(ワンイー)外相との電話協議で協力を申し出て、中国側から求めがあった物資を送った。昨年はエボラ出血熱が流行するコンゴ民主共和国へ防護服を支援するなど、政府は感染症の流行に見舞われた地域への緊急援助を続けている。日本政府からの支援が届いたというニュースは、中国版ツイッターの「微博(ウェイボー)」で広く拡散されており、15万を超える「いいね」がつけられた投稿もある。全国的に交通機関の停止や商業施設の閉鎖などが相次ぐ苦境の中の明るい話題として称賛を集めている。28日午後には、武漢市と友好都市の関係にある大分市が医療用マスクを送り、その箱に「武漢加油(がんばれ)」と記されているというニュースが投稿された。「中国語で書いてくれるなんて」「心の底からありがとう」などと感動を伝える書き込みがあふれ、関連する投稿の閲覧総数は、29日までに3億8千万回にも上っている。ほかにも、日本国内の店などが中国人向けに掲げた「同舟共済(ともに乗り越えよう)」「最重要的朋友(一番大切な友だち)」などといったメッセージの画像も、SNSで広く拡散されている。2008年の四川大地震の被災地での日本の救援隊の活動を記憶している人も多く、つらいときに本当に必要な物を送ってくれることを意味する「雪中送炭」という四字熟語とともに、感謝を伝える人もいる。「日本に行ってみたくなった」と記す人もいるが、中国では感染拡大を防ぐために、27日から海外への団体旅行は禁止されている。ただ、中国客の激減で日本の観光地が打撃を受けていることも広く知られており、こんな書き込みもあった。「ウイルスが去ったら絶対日本に応援に行く」「微力でも、今度は私があなたたち日本の経済に貢献します」

*6-6:https://digital.asahi.com/articles/ASN21645BN21UHBI02T.html?iref=pc_rellink_01 (朝日新聞 2020年2月1日) 台湾、マスク販売を統制「1人3枚まで、1枚は20円」
 新型コロナウイルスによる肺炎でマスク需要が高まるなか、台湾当局はマスクを販売する際、1人3枚までに制限し、価格も一律1枚6台湾ドル(約20円)と定める措置を始めた。2月中旬まで続く見通しで、中国など海外へのマスクの輸出も禁じている。台湾で初の感染者が確認された1月21日以降、台北市内の雑貨店では「マスク売り切れ」の貼り紙が掲げられ、入荷してもすぐに無くなる状況が続く。春節の休みも影響し、マスクの生産量は1日に約400万枚にとどまる。約2300万人の市場の需要には追い付かない状況だ。

<日米安保条約の見直しについて>
PS(2020年1月28日追加):これに先立ち、G20サミット後の記者会見で米国のトランプ大統領は、*7-1に佐賀新聞が記載しているとおり、「①日本が攻撃されたら米国は日本のために戦わなくてはならないが、米国が攻撃されても日本は戦わなくてよいため、日米安全保障条約は米国にとって不公平だ」「②条約破棄は全く考えていないが、以前から安倍首相にも問題提起している」としていた。現在の日米安全保障条約は、*7-3のように、どちらからでも条約終了の意思を通告することができ、その場合、通告後1年で終了することになっているが、日本は、*7-4のように、日本国憲法で戦争を放棄し、陸海空軍その他の戦力は保持しないことになっているため、国際連合憲章に定める自衛のためにも日米安全保障条約は必要なのである。
 また、新潟日報は、2020年1月27日、*7-2のように、「③日米安全保障条約が1960年1月に改定署名されてから60年経過した」「④宇宙やサイバーの新たな領域で日米同盟を強化することも必要になった」「⑤日米同盟の下で、日本は軽武装政策を取って戦後の驚異的経済成長を成し遂げることができた」「⑥米国の戦争に巻き込まれるリスクが高まらないか」「⑦条約改定60年の節目に同盟関係のゆがみを正すのは、戦後外交の総決算を掲げる安倍首相にふさわしい仕事」等と記載しており、何とか軽武装で自衛する方法を考える必要があるわけだ。

*7-1:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/395893 (佐賀新聞 2019年7月4日) 日米安保見直し発言、認識を正し、本質の議論を
 米国のトランプ大統領が日米安全保障条約について「米国にとって不公平な合意だ」と主張し、見直しに言及した。20カ国・地域首脳会議(G20サミット)後の記者会見での発言で、「条約破棄は全く考えていない」としたものの、以前から安倍晋三首相にも問題提起していると述べた。戦後日本の安保政策の基軸となってきた日米安保条約に関わる、極めて重大な発言である。だが、トランプ氏の主張は正確な認識に基づかず、一方的過ぎる。日本政府は日米間で条約見直しの議論は一切ないと否定するが、まず大統領に認識を正すよう求めていく必要があろう。発言の背景には、日米貿易交渉に安保政策を絡めて取引材料とする狙いもあるだろう。その真意を見極めたい。日米の同盟関係は近年、自衛隊と米軍の一体化が進んでいる。今回の発言も日本の役割拡大を求める圧力の一環ともみられる。その現状でいいのか。あるべき同盟関係の姿や、今後の日本の安保政策について本質的な議論に取り組むべきだ。トランプ氏は記者会見で「日本が攻撃されたら米国は日本のために戦わなくてはならないが、米国が攻撃されても日本は戦わなくてもいい。不公平だ」と述べた。2016年の大統領選中にも同様の主張をしているが、現職大統領としての発言であり、看過できない。まず、その認識を正すべきだ。1960年に全面改定された日米安保条約は、第5条で日本有事の際に米国が日本を守ると義務付ける一方、第6条で日本が極東の安定確保のため米軍に基地を提供すると定めている。それぞれのリスクとコストが非対称的なため、以前から米国に不満があったのも事実だ。トランプ氏の発言には来年の大統領選をにらんだ国内向けの側面もあるだろう。だが在日米軍基地は、世界に展開する米軍の戦略的拠点として米国のメリットになっている。一方、日本は年約2千億円の在日米軍駐留経費のほか騒音対策費など応分の負担をしている。「双方の義務はバランスが取れている」というのが日本政府の見解だ。この認識を改めて確認すべきだ。トランプ氏の発言には、この夏から本格化する貿易交渉で日本に譲歩を迫る戦略や、対日貿易赤字削減のための巨額の防衛装備品購入を求める狙いもあるだろう。駐留経費負担の増額を要求してくる可能性もある。だが、圧力の下で交渉の主導権を握られる事態は避けなければならない。公正な交渉を進めるべきだ。解せないのは、G20の際に行われた首脳会談での安倍首相の対応だ。安保条約に対するトランプ氏の不満は来日直前に米メディアが報じていた。にもかかわらず首相は真意をたださなかったという。トランプ氏の会見後、首相は「自衛隊と憲法の関係で何ができるかは説明してきた」と述べたが、日米間でどういう協議があったのかを国民にきちんと説明すべきだ。安倍政権の下、安保政策は対米偏重が進んできた。集団的自衛権の行使を解禁する安保関連法を制定、日米防衛協力指針(ガイドライン)を改定し、日米連携の一層の緊密化を掲げる。だが、米国の戦略に巻き込まれる懸念も膨らむ。近隣諸国との関係構築に努め、安保環境を整備していく構想に日本が主体的に取り組むべきではないか。

*7-2:https://www.niigata-nippo.co.jp/opinion/editorial/20200127521024.html (新潟日報 2020年1月27日) 安保改定60年 同盟の在り方が問われる
 日本を取り巻く安全保障環境が大きく変容する中で、条約に基づく日米同盟はどうあるべきか。その在り方が問われる。現行の日米安全保障条約が、1960年1月に改定署名されてから60年が過ぎた。米軍による日本駐留や内乱鎮圧を認めた旧条約を全面改定した現行の安保条約は、米国の対日防衛義務や日本による米国への基地提供義務を定めている。安倍晋三首相は署名60年の日本政府主催の記念式典で、「今や日米安保条約は、いつの時代にも増して不滅の柱。世界の平和を守り、繁栄を保証する不動の柱だ」と表明した。同時に、宇宙やサイバーの新たな領域で日米同盟を強化する意向も強調した。日米安保条約とそれに基づく日米同盟は日本外交の基軸である。同盟の下で、日本は軽武装政策を取り、戦後の驚異的な経済成長を成し遂げたといえる。冷戦終了後、北朝鮮の核の脅威や中国の軍事力増強など北東アジアに緊張が解けない中でも、大きな役割を担ってきた。一方で、米国第一主義を唱え国際社会の分断を増幅するような政策を打ち出しているトランプ米政権の存在は同盟を巡る不安要因となっている。懸念するのは、日本の対米傾斜が加速すれば米国の戦争に巻き込まれるリスクが高まらないか、ということだ。日米安保体制は冷戦終結や湾岸戦争などを機に、たびたび変質してきた。91年のソ連崩壊後には、安保体制の目的を「アジア太平洋地域の安定的な繁栄」へ再定義し、安保条約の「日本と極東」の範囲を踏み越えた。こうした米国の世界戦略に引っ張られる形で進んだ自衛隊と米軍の一体運用が、安倍政権になって加速している。安倍政権は歴代政権が憲法上許されないとしてきた集団的自衛権の行使を容認し、安全保障関連法を成立させた。対日赤字の是正を求めるトランプ氏に対しては、最新鋭戦闘機F35といった米国製武器を大量購入している。それでもトランプ氏は「米国第一」優先、同盟関係軽視の姿勢を改めない。日米安保条約は「不公平」と批判し、日本側にさらなる負担を迫っている。「豊かな国が十分な負担をしないで、米軍の抑止力の恩恵を受けるのは米国を食い物にする行為だ」とし、在日米軍の駐留経費負担(思いやり予算)の5倍増を求めているという。だが日本は米軍駐留経費のうち7割以上を負担している。沖縄をはじめ、米軍機の騒音や事故リスクなど基地周辺の市民生活に与える負の影響は大きい。さらに、米兵の法的地位や基地の運用を定めた日米地位協定の抜本的な見直しは実現していない。これでは対等な同盟とは言えまい。条約改定60年の節目を機に、同盟関係のゆがみを正す。それは、「戦後外交の総決算」を掲げる安倍首相にふさわしい仕事のはずだ。

*7-3:https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/usa/hosho/jyoyaku.html (外務省) 日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約
 日本国及びアメリカ合衆国は、両国の間に伝統的に存在する平和及び友好の関係を強化し、並びに民主主義の諸原則、個人の自由及び法の支配を擁護することを希望し、また、両国の間の一層緊密な経済的協力を促進し、並びにそれぞれの国における経済的安定及び福祉の条件を助長することを希望し、国際連合憲章の目的及び原則に対する信念並びにすべての国民及びすべての政府とともに平和のうちに生きようとする願望を再確認し、両国が国際連合憲章に定める個別的又は集団的自衛の固有の権利を有していることを確認し、両国が極東における国際の平和及び安全の維持に共通の関心を有することを考慮し、相互協力及び安全保障条約を締結することを決意し、よつて、次のとおり協定する。
第一条 締約国は、国際連合憲章に定めるところに従い、それぞれが関係することのある国際紛争を平和的手段によつて国際の平和及び安全並びに正義を危うくしないように解決し、並びにそれぞれの国際関係において、武力による威嚇又は武力の行使を、いかなる国の領土保全又は政治的独立に対するものも、また、国際連合の目的と両立しない他のいかなる方法によるものも慎むことを約束する。締約国は、他の平和愛好国と協同して、国際の平和及び安全を維持する国際連合の任務が一層効果的に遂行されるように国際連合を強化することに努力する。
第二条 締約国は、その自由な諸制度を強化することにより、これらの制度の基礎をなす原則の理解を促進することにより、並びに安定及び福祉の条件を助長することによつて、平和的かつ友好的な国際関係の一層の発展に貢献する。締約国は、その国際経済政策におけるくい違いを除くことに努め、また、両国の間の経済的協力を促進する。
第三条 締約国は、個別的に及び相互に協力して、継続的かつ効果的な自助及び相互援助により、武力攻撃に抵抗するそれぞれの能力を、憲法上の規定に従うことを条件として、維持し発展させる。
第四条 締約国は、この条約の実施に関して随時協議し、また、日本国の安全又は極東における国際の平和及び安全に対する脅威が生じたときはいつでも、いずれか一方の締約国の要請により協議する。
第五条 各締約国は、日本国の施政の下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃が、自国の平和及び安全を危うくするものであることを認め、自国の憲法上の規定及び手続に従つて共通の危険に対処するように行動することを宣言する。前記の武力攻撃及びその結果として執つたすべての措置は、国際連合憲章第五十一条の規定に従つて直ちに国際連合安全保障理事会に報告しなければならない。その措置は、安全保障理事会が国際の平和及び安全を回復し及び維持するために必要な措置を執つたときは、終止しなければならない。
第六条 日本国の安全に寄与し、並びに極東における国際の平和及び安全の維持に寄与するため、アメリカ合衆国は、その陸軍、空軍及び海軍が日本国において施設及び区域を使用することを許される。
前記の施設及び区域の使用並びに日本国における合衆国軍隊の地位は、千九百五十二年二月二十八日に東京で署名された日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約第三条に基く行政協定(改正を含む。)に代わる別個の協定及び合意される他の取極により規律される。
第七条 この条約は、国際連合憲章に基づく締約国の権利及び義務又は国際の平和及び安全を維持する国際連合の責任に対しては、どのような影響も及ぼすものではなく、また、及ぼすものと解釈してはならない。
第八条 この条約は、日本国及びアメリカ合衆国により各自の憲法上の手続に従つて批准されなければならない。この条約は、両国が東京で批准書を交換した日に効力を生ずる。
第九条 千九百五十一年九月八日にサン・フランシスコ市で署名された日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約は、この条約の効力発生の時に効力を失う。
第十条 この条約は、日本区域における国際の平和及び安全の維持のため十分な定めをする国際連合の措置が効力を生じたと日本国政府及びアメリカ合衆国政府が認める時まで効力を有する。
もつとも、この条約が十年間効力を存続した後は、いずれの締約国も、他方の締約国に対しこの条約を終了させる意思を通告することができ、その場合には、この条約は、そのような通告が行なわれた後一年で終了する。上の証拠として、下名の全権委員は、この条約に署名した。千九百六十年一月十九日にワシントンで、ひとしく正文である日本語及び英語により本書二通を作成した。

日本国のために         アメリカ合衆国のために
  岸信介             クリスチャン・A・ハーター
  藤山愛一郎           ダグラス・マックアーサー二世
  石井光次郎           J・グレイアム・パースンズ
  足立正
  朝海浩一郎

*7-4:http://www.japaneselawtranslation.go.jp/law/detail_main?id=174 日本国憲法 昭和二十一年十一月三日憲法より抜粋
第二章 戦争の放棄
第九条 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては永久にこれを放棄する。
前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。

<日本のみで防衛することが危険な理由>
PS(2020.1.28追加):厚労省をはじめとする日本政府は、*8-1のように、「マクロ経済スライドによって年金給付額の上げ幅を賃金水準や消費者物価上昇率よりも低くすることによって、年金保険料支払時よりも年金給付額を目減りさせる」という契約違反(≒詐欺)を行った。そして、日経新聞はさらに、「①年金財政が行き詰まるのを防ぐため、高齢世代に痛みを求めるのは当然」「②現役世代が不利益を被ることがないように年金のマイナス改定を可能にする制度改革が不可欠」「③マクロ経済スライドの制度化以降、日本経済は長期デフレに直面したため、実質年金額は上がる傾向にある」等と記載している。しかし、①は、私がこのブログに何度も記載したとおり、本質的原因のないところに原因を押し付けて35%にも達する65歳以上の高齢者の生活を困窮させ、③の状況を導いているものだ。また、上記のように無駄遣いが多い中、②のように、国民を現役世代と高齢者とに分断し、高齢者のせいにして年金のマイナス改定を要求するような人権侵害体質であるため、日本だけで物事を決めると人権を護れず危険なのである。
 なお、*8-2に「④三菱電機に大規模なサイバー攻撃があり」「⑤個人情報や企業機密が外部に流出した可能性がある」「⑥防衛・電力・鉄道などの情報や取引先との製品の受注・開発に関する情報、幹部会議の資料などが流出した情報に含まれている」等が書かれているが、このような情報は専用線を使うなどして外部からアクセスできない状態にしておくことが1980年代から専門家の中では常識であったため、中国系のハッカー集団が関与していたとしても、防衛以前の緩さで運用している日本側に問題がある。このように、超時代遅れで、国民負担により費用だけ莫大に使う体質であるため、日本のみで防衛を行うことは不可能なのだ。



(図の説明:左図のように、人口構成が変わるのは1970~80年代には既にわかっていた。それにもかかわらず、対応をとらずに年金積立金を無駄遣いしてきたのが日本の厚労省なのであり、その結果、中央の図のように高齢化率が30%を超え、現在は「年金給付額を下げればよい」などとと言っているのだ。また、右図のように、「日本の人口が0になりそうだ」などと少子化自体を問題視して煽る論調もよく見かけるが、人間も生物であるため減り方はこのようなカーブにはならない上、少子化を人口減少と結び付けて「産めよ、増やせよ」論にしてしまう態度も、女子差別撤廃条約に反する人権侵害なのである)

*8-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200128&ng=DGKKZO54893990X20C20A1EA1000 (日経新聞社説 2020.1.28) 年金のマイナス改定を可能に
 厚生労働省は2020年度の年金支給額を0.2%引き上げる。04年の年金改革法に定めたマクロ経済スライドによって、現役世代の賃金水準や消費者物価の上昇幅より年金の上げ幅を低くする。賃金・物価情勢との比較で年金の増額幅を抑えるのは2年連続になる。将来、年金財政が行き詰まるのを防ぐために高齢世代に一定の痛みを求めるのは当然である。だがマクロスライドには欠陥がある。原則、名目年金額を前年度より減らさない仕組みだ。現役世代が大きな不利益を被ることがないよう、年金のマイナス改定を可能にする制度改革が不可欠だ。マクロスライドをひと言で表すと、年金の実質価値を毎年度小刻みに目減りさせる仕組みになる。もっとも制度化以降、日本経済は長期のデフレに直面してきた。このため名目年金額を減らさない仕組みに阻まれ、年金の実質価値は逆に上がる傾向にある。当初、厚労省は19年間で年金の減額調整を終える計画だった。しかし先送りを繰り返した結果、今後さらに30年近く調整を続ける必要があるという見通しを、19年の財政検証に際して出している。これは、高齢者が年金をもらいすぎていることにほかならない。会計検査院は国の17年度決算の検査報告にあわせ、この欠陥がなければ04年度以降に3兆3千億円の税財源が節約できたと推計した。年金マイナス改定によって経済情勢の影響を受けないようにすれば現役世代の不利益は和らぐ。無年金・低年金に陥る可能性がある現役世代への対策も必要だ。就職氷河期世代に代表されるように、無職だったり望まないのに非正規社員として働き続けたりしている人は、保険料を払う余裕に乏しく、満足な年金をもらえない将来を感じとっている。年金の最低保障機能を強めるために、基礎年金に限ってマクロスライドの適用を外すのが一案だ。確定拠出年金を充実させるのも、厚生年金などの実質価値目減りを補うのに有効である。

*8-2:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO54586740Q0A120C2MM0000/ (日経新聞 2020/1/20) 三菱電機にサイバー攻撃 中国系か、防衛情報流出恐れ
 三菱電機は20日、大規模なサイバー攻撃を受け、個人情報や企業機密が外部に流出した可能性があると発表した。流出した情報には防衛や電力、鉄道などの社会インフラに関する情報や、取引先との製品の受注・開発に関する情報、幹部会議の資料などが含まれているもようだ。三菱電機は「社会インフラに関する機微な情報や機密性の高い技術情報、取引先に関わる重要な情報は流出していないことを確認した」としている。関係者によると、中国系のハッカー集団「Tick(ティック)」が関与した可能性がある。三菱電機は「(流出を確認するための)ログが消去されており実際に流出したかどうかの確認はできない」とし、一部が流出した恐れがあるという。同社によると、国内外のパソコン、サーバーの少なくとも数十台以上で不正に侵入された形跡が見つかった。不正アクセスされたデータ量は文書を中心に約200メガバイト。防衛省や原子力規制委員会、資源エネルギー庁などの官公庁に加え、電力や通信、JR・私鉄、自動車大手など国内外の企業に関する複数の情報が不正アクセスを受けた。同社が不正アクセスに気づいたのは2019年6月28日で、国内拠点のサーバーで不審なファイルの動作を検知した。同様のファイルが中国など複数国の拠点で見つかったため、大規模なサイバー攻撃を受けた可能性があるとし、対象端末について外部からのアクセスを制限した。同社は社内調査を理由に公表していなかった。同社は企業など向けにセキュリティー対策を講じる事業を手掛けており、今回の不正アクセスが影響する可能性もある。公共施設やオフィスビル、データセンターなどの制御システム向けサイバーセキュリティーサービスを19年7月から提供。あらゆるモノがネットにつながる「IoT」を導入した工場がサイバー攻撃を受けた箇所を特定する技術も開発している。

<新型肺炎患者や中国人に対して差別をするのは無知すぎること>
PS(2020年1月30、31日、2月1、5、7、8、11、12、13、16、19、23日追加): 中国の武漢市で新型コロナウイルスによる肺炎が発症し、世界に感染が広がったが、*9-1・*9-2のように、一般的なインフルエンザと同様、せきエチケット・こまめな手洗い・人混みを避けることなどで予防でき、症状も軽そうだ。にもかかわらず、ハンセン病の強制隔離を彷彿とさせるような感染者に対する差別や強制隔離の要請が多いのは気にかかる。なお、手洗いは、いつでもこまめで丁寧に行うのが原則で、最近、アルコールを手にすり込めば消毒が終わったと考える人が多いのは、その手でいろいろなものを触るので問題である。また、せきやくしゃみが出る人がマスクを着けるのは当然のマナーであるのに、電車の中などで大きな口を開けて平気でせきをする人がいるのは、新型コロナウイルスに限らず迷惑だ。そのため、私はいつでも電車に乗る時はマスクをして予防しているが、本当は、感染している人にマスクをしたり、せきエチケットを守ったりして欲しいのである。
 また、新型コロナウイルスは、最初は動物から人に感染したかもしれないが、ウイルスもDNAを変化(進化)させながら代を重ね、一代の時間は短く、そのうち人から人に感染する性質を得たものだけが次の人に感染するため、人から人にも感染する性質に変わる。従って、ウイルスの特徴は最初から最後まで一定ではなく、ウイルスに抗生物質は効かず、抗ウイルス薬なら効くとされている(https://weathernews.jp/s/topics/201811/080175/)。しかし、ウイルスに効くものには、このほか身体が備えている免疫があるため、日頃から栄養を十分取って免疫を強くしておくことが重要だ。しかし、抗生物質を使って他の細菌を排除し、自分の免疫(兵力)をウイルスに集中させる方法もあるというのが、私の経験だ。なお、最も感染しやすい場所は、マスクを買うための行列や混み合った医療機関の待合室だろう。
 なお、武漢からチャーター便で帰国した人をどう扱うかについては、*9-3・*9-4のように、中国の衛生当局が新型ウイルスは発症していない人からも感染する可能性があるとしているため、①フランスは1カ所に集めて14日間経過観察 ②オーストラリアは2週間の離島隔離 ③米国は適切な証拠に基づく公衆衛生対策を講じ、3日~2週間の隔離が必要になるかもしれない としているが、私は、オーストラリアの2週間の離島隔離がBestだと思う。日本の場合なら、例えば沖縄空港に着陸して琉球大学で検査し、暖かい場所で14日間過ごして、症状のない人や回復した人は開放するというイメージだ。
 このような中、*9-5のように、厚労省は、チャーター機の第1便で帰国した日本人のうち3人が感染していたと発表し、このうち2人は国立国際医療研究センターで検査を受けた後、発熱やせきなどの症状がないため千葉県内のホテルに相部屋で滞在させられ、陽性の結果を受けて県内の医療機関に入院したそうだが、中国では、感染しても症状が出なかったり、症状が出ないまま他の人に感染することが報告されていたため、厚労省の担当者が「想定外だった」としているのは、とても専門家の判断とは思えない。
 そのため、*9-6のように、経産省がフクイチ汚染処理水の処分方法について、①前例ある海洋と大気への放出が現実的選択肢 ②放射性物質監視の面から海洋放出の方が確実に実施可能 ③(危険と言うのは風評被害にすぎないため)風評被害対策の徹底が必要 としていることに、想定外はないと言えるのか? 実際には、想定外ばかりであるため、その後に起こることについて誰がどういう形で責任を持つのか明確にすべきだ。誰かが辞めても何の意味もない。
 2020年2月1日、*9-7のように、日本農業新聞が、「①低所得者ほど栄養バランスの取れた食生活ができず、子どもや高齢者が十分な栄養を取れずに健康が脅かされている」「②低所得層の子どもは、成長に欠かせないタンパク質、カルシウム、鉄の摂取量が少ない」「③所得の低いお年寄りほど健康な体を維持するために必要な栄養素が足りない『低栄養』に陥っている」「④多くの人が依然、主食・主菜・副菜を組み合わせた栄養バランスの取れた食生活をしていない」「⑤注目したいのは子どもに無料か低額で食事を提供する『子ども食堂』だが、国の支援が欠かせない」「⑥食育も忘れてはならない」「⑦所得200万円未満の人に主食・主菜・副菜を組み合わせられない理由を聞くと、『時間がない』という回答が多かった」などを記載している。
 農業界が栄養バランスに問題意識を持ってくれたのはよいことで、その結果は、「主食の米さえ作ればよい」という発想を変えることに繋がると思うが、①③は、高齢者の負担増・給付減など高齢者に関する施策が貧しすぎることが原因で、②④⑥のために給食を充実させようとしているのだが、その意味を理解していない学校も少なくない。さらに、女性は必要な栄養学を中学・高校で学んでいるが男性は学んでいないため、食事作りや政策・経営に関する意思決定に栄養学の知識がいかされず、この問題の本質は教育なのである。また、⑤を実践している人には敬意を表するが、夫婦2馬力で子育てすれば食品くらいは不自由しない世の中になっているため、よく考えて結婚相手を選び離婚せずに育児を行うようにして、国に甘えすぎるのはやめて欲しい。⑦についても、野菜ジュース・牛乳・卵・総菜など、共働きや単身者を前提とした比較的安価で時間のなさを補う製品も多く出たため、現在は栄養の知識があるか否かが分かれ目になっている。
 なお、佐賀新聞が、*9-8に、「小泉環境相の『育休』どう考える?」という記事を掲載しているが、「父親が取得する育児休暇のアピールにはなったが、育児のために早退や欠席をすると職場での不利益に繋がるのは男女とも同じで、8日間くらいなら有給休暇をとればよいだろう」と、私は思った。実際、このくらいの期間なら、お手伝いのお手伝いくらいしかできないため、この程度なら休みであって「育休をとった」「子育てをした」などと胸を張るのはおこがましい。また、男女にかかわらず、出産や子育ては夫婦2人の労働だけではできない大変さがあるため、「(同じ職業の人の)男女間格差を放っておきながら、(職業の違う人の)女性間格差が問題だというようなくだらないことを言わずに、家事労働への外国人労働者の導入を行えばよい」と、私は30年近く前から言ったり書いたりしていたわけである。
 2020年2月5日、*9-9のように、さだまさしさんが「存在理由」と名付けたオリジナルアルバムを制作しており、アルバムの軸に「中村医師に捧げる歌を据えたい」とされているそうで楽しみだが、職業の違う人と生きざまが違うからといって落胆する必要はなく、自分の存在理由(私にもある)を存分に発揮すればよい。中村医師が医療をさておき農業・食料増産に努められたのは、下の図のように栄養失調・不潔・過労などの状態にありながら薬で病気の治療だけを行っても、焼石に水だからである。
 日本政府が、*9-10のように、米ホーランド・アメリカ・ラインの「ウエステルダム」に石垣港に入港しないよう求めたのは、観光立国を標榜する日本としては逆の行動だ。「ウエステルダム」が石垣港の後に那覇に行く予定だったのなら、まっすぐ那覇港に入港させて12.5日間船内に隔離し、「ダイヤモンド・プリンセス」と同様に検査して陽性の患者は琉球大学病院で適切にケアし、同時に船に医薬品や食料品等を補給させるのが筋である。台湾・韓国・フィリピン・ベトナム等が事実上拒否しているからといって医療観光も視野に入れている日本が拒否すべきではなく、むしろ他国でケアできないクルーズ船も入港させて同じようにケアするのが今後のためだ。いざという時に入港を拒否して景気の心配をしているのは、誤りだ。
 なお、日本政府の対応は、*9-11のように、福岡市の高島市長がクルーズ船の入港や外国人観光客の入国を制限できる基準とルールを定めるよう求める意見書を法務省に提出し、宮崎政務官が出入国在留管理庁に対してその対応を指示されたのだそうだが、福岡なら対処できる病院も多い筈で、検査が済みリスクがなくなるまで乗客をクルーズ船から降ろさなければ問題はないため、両人そろって不合理で非人道的な行動を戸惑いもなく行った点が怖いのである。
 また、*9-12のように、クルーズ船の寄港にむけて一生懸命に商談しており、クルーズ船会社や自治体の関係者を集めた商談会が2月6日に福岡県で予定されていたのに、外国の船会社関係者が出席できずに商談会が中止となり、営業活動に影響が出ているそうだ。唐津市には5月14日に中国の上海を出発した客船が寄港する予定になっており、担当者が「その頃までに感染が終息していればいいが」とこぼすのも無理はない。
 2020年2月11日には、*9-13をはじめ、クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」で新たに検査結果が判明した103人のうち65人の感染が確認され、全体で135人の感染が判明したので拡大が止まらない事態だと報道しているメディアが多いが、①乗客乗員約3700人のうちの135人は3.6%にすぎないこと ②潜伏期間(感染したけれども症状が出ていない期間)に発症する人がいるのは当然であること から、船内で隔離された後に感染したのでなければ、隔離に成功したと言える。そのため、必要なものを補給しながら潜伏期間が過ぎるのを待つ方が、乗客にとって快適だろう。また下船する際の全員のウイルス検査は実施した方が安心だろうが、潜伏期間が過ぎても発症していない人は感染していなかったと言えるため、検査キットや人材が足りない中で優先順位をつけるのは仕方がない。それより、*9-14のように、新型肺炎に対応するため急にマスクを買うというのは、インフルエンザの時期で、放射性物質も飛んでいる関東では、あまりに無防備だ。また、その不備に乗じて、マスクの買い占めをするなど論外である。
 2020年2月12日には、「『ダイヤモンド・プリンセス』の船内では医療行為が行われないため、乗客を全員降ろしたらどうか」と主張するメディアがあるが、医療行為が必要な人のみを降ろし、必要なものを補給しながら潜伏期を過ぎるのを待つべきだと考える。何故なら、「可哀想だから、乗客全員を降ろす」ということになれば、国内で新型コロナウイルスによる肺炎の感染が拡大するため、クルーズ船の寄港自体に反対運動が起きるからだ。例えば、*9-15の日本への入国を断られたクルーズ船「ウエステルダム号」は、入港させる国がなく、こちらの方が深刻で人道に反する行為である。また、「人権があるから、何も強制できない」と主張する人もいるが、日本国憲法は「12条:この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によつて、これを保持しなければならない。又、国民は、これを濫用してはならないのであつて、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負ふ」「13条:すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする」と定めており、公共の福祉に反しても自由にする権利があるとはしていないのである。
 また、*9-16に、「新型肺炎で寄港を拒否され、海をさまようクルーズ船はどこが助けるのか」という問いに対し、国交省が「①明確な決まりはなく、船籍や自国民の割合で国が対応するかどうか考える」「②人命の危機が迫っていれば人道的な面から近隣国ということもある」「③船には入港しないよう要請し、港湾を管理する自治体には入港を認めないよう頼んでいる」「④条約の想定外なので、国際ルールが必要」等と答えているが、③については、あらかじめ入港を許可していたクルーズ船に入港しないよう要請すれば、契約違反による損害賠償が発生しそうだ。さらに、①②④については、病人が出たため海難救助に準じて予定していなかった港にでも寄港させるというのならありうるが、病人が出たので予定していた港にも寄港させず、医療を受ける機会を逃させるというのは、自国民でなくても人道に反すると考える。
 2020年2月13日、日本農業新聞が、*9-17のように、新型コロナウイルスのため中国で人の移動が制限された結果、収穫や流通が停滞して中国産野菜の日本への輸入が滞り始めたと記載している。日本で使われているマスクの80%が中国製というのにも驚いたが、2月の財務省貿易統計では、タマネギ・ニンジン・ネギ・キャベツなどの8割以上が中国産とのことで、日本では耕作放棄地を増やしながら農業を粗末にし、外国人労働者の入国制限も厳しくして柔軟な対応をせず、中国で割安に加工まで行う業務用野菜の輸入に頼って中国が風邪を引いたら日本で品不足が起こる状態になっている。他にも多くの仕事が中国に流れたため、(作っている場所で磨かれる)技術も日本からなくなるのは時間の問題で、優越感だけではやっていけないのである。
 *9-18のように、新型コロナウイルスの感染が起きている大型クルーズ船ダイヤモンド・プリンセス号に米国人やその家族が約380人乗っており、米国民を退避させるために在日米国大使館がチャーター機を手配しているのはよいことで、船内感染が起こっていたのなら米国内でもう2週間隔離するという米国の判断は正しいし、他国も速やかにそうすればよいだろう。私はクルーズ船を病院船に使って徹底的にケアするのが、乗客が最も快適に過ごせる隔離方法だと考えていたが、感染症の検疫官とは思えないような無防備な検疫官が船内感染していたり、感染した乗員に乗客のケアをさせていたり、船内が不潔であったりしたのなら、日本国内でもさらに2週間隔離したいくらいであり、「既に国内で散発的に流行し始めたから、水際での阻止は不要だ」という議論にはならない。そのため、*9-19のように、ダイヤモンド・プリンセス号の全乗客をウイルス検査して、陰性の場合は14日間の経過観察期間が終わる19日から健康状態に問題がなければ順次下船させるというのは、船内感染させたのはクルーズ船の船主と日本政府の失敗だから仕方がないとしか言えない。なお、*9-20のように、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて各国・地域の政府が相次いでクルーズ船の入港を拒否したが、これが最も人道に反する行為であり、クルーズ船を入港させた上でクルーズ船を病院船として使って乗客を隔離したり、陽性の人を陸上の病院や自衛隊の病院船で治療したりするのがあるべき姿だったと思う。
 *9-21のように、感染症対策に詳しい神戸大医学部の岩田教授が、クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」に乗船し、「①船内の2次感染リスクの管理が不十分だった」「②クリーンゾーンとレッドゾーンが区分けされていなかった」「③熱のある方が部屋から出て歩いて医務室に行っていた」「④感染症のプロなら、あの環境では怖い」と指摘された。私も、乗員の検査は最初に行い、外部の人を含めたクリーンな人のみが乗客へのサービスを行うべきで、食事もクリーンで栄養バランスのとれたものを外部から運んだ方がよかったと思う。しかし、クルーズ船内では香港で下船した乗客が新型コロナウイルスに感染していたことがわかった後も、2月5日までビュッフェスタイルで食事が出され、乗員・乗客は近距離で接していたため、高齢者を多く乗船させている割には衛生管理に疎いと思われ、衛生意識が今後のクルーズ船の改善点だ。なお、自民党にも医師の議員はいるため、そういう人を厚労省の大臣・副大臣・政務官のいずれかに任命しておかなければ、専門知識のない素人ばかりでは状況に応じた判断ができないのである。
 クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」の乗客を14日間も船に止めおきながら、その期間中に必要な検査をしなかったという*9-22のミスがあったのは、厚労省の仕事のレベルの低さを露呈するものだ。そのため、米国・カナダ・英国・韓国・香港などの14日間の施設隔離は妥当で、日本は厚労省や保健所でトリアージなどしているより、早急に検査と治療の体制を整えるべきだ。そもそも、今の時代に病院が複数の患者を同室に入院させるのは、感染症でなくても治療環境が悪すぎるし、感染症は新型肺炎だけではないのである。


        インフルエンザによる死亡率        耐久消費財の世帯普及率推移

(図の説明:左図の1900年以降の日本におけるインフルエンザ死亡率を見ると、1955年頃からみるみる減少し、1990年以降は人口10万人当たり3人以下になっている。これは、医療の進歩の影響よりも、右図の耐久消費財の普及で現わされる日本における栄養状態・清潔に関する意識・正しい情報の共有・文化度の向上による影響の方が大きいと言われている)

*9-1:https://www.nishinippon.co.jp/item/n/579261/ (西日本新聞 2020年1月27日) コロナウイルス感染 どう防ぐ? 新型肺炎対策を専門医に聞いた
●手洗い、せきエチケット…「正しい方法」で
 中国湖北省武漢市で発生した新型コロナウイルスによる肺炎の発症者が急増し、米国やタイなど世界的に感染が広がっている。中国政府は「人から人への感染が認められる」としており、日本国内で発症者が増える可能性も否定できない。専門家は「現段階では、一般的な風邪やインフルエンザの予防策の徹底」を呼び掛ける。あらためて感染予防に必要なことを聞いた。コロナウイルスは、人や動物に感染するウイルスの一種。国立感染症研究所(東京)によると、コロナウイルスが原因となる風邪は10~15%(流行期35%)で、軽い症状にとどまるものが多い。ただ、中には2003年に中国で流行した重症急性呼吸器症候群(SARS)や、中東地域で発生している中東呼吸器症候群(MERS)のように重症化しやすいものもある。輸入感染症に詳しい国立国際医療研究センター国際感染症センター(東京)の忽那賢志(くつなさとし)医師は「新型ウイルスの感染力はまだ比較が難しいが、重症化するリスクや致死率はSARSやMERSに比べて低い」とみる。ただ、高齢者や持病がある人など抵抗力が低下している人は注意が必要という。国内での感染拡大については「感染から発症まで時間があるため、感染者が知らずに入国し、ウイルスが侵入するリスクはある」。その上で「発症者が受診した医療機関で迅速に診断し、的確に対応する備えが重要だ」と強調する。市民生活では「外出を控えるなどの過剰な反応は必要なく、手洗いやせきエチケットなどを正しい方法で行えば十分」と話す。飯塚病院(福岡県飯塚市)感染症科の的野多加志(たかし)部長も「風邪やインフルエンザの一般的な予防法を徹底することが大切」と言う。手洗いは、指の間や手首などもせっけんを使って念入りに洗うなど、正しい方法でこまめに行う。水やせっけんがない場合はアルコール消毒も有効だ。せきやくしゃみが出る人はマスクを着ける。手のひらで口や鼻を押さえると、付着したウイルスを周囲に広げてしまうため、マスクがない場合は、ハンカチやティッシュペーパーか、二の腕で押さえると良い。「意外と正しい方法を知らない人も多いので、この機会に確認してみてほしい」と的野部長。また、インターネットなどで過度に不安をあおる誤った情報が拡散していることを懸念。「厚生労働省や国立感染症研究所などの信頼できる情報源から正しい情報を収集し、冷静に対応して」とも呼び掛けている。

*9-2:https://digital.asahi.com/articles/ASN1Y74S9N1YULBJ00Y.html (朝日新聞 2020年1月29日) 新型肺炎、SARSより強い感染力か 致死率は低く推移
 中国国内の新型コロナウイルスによる肺炎の感染者は、中国政府の29日の発表で5974人。同じコロナウイルスによって起き、2002~03年に流行した重症急性呼吸器症候群(SARS)の中国国内の感染者数5327人(世界保健機関=WHO調べ)を上回った。SARSと比べて、新型ウイルスはどんな特徴があるのか。WHOなどによると、SARSでは患者のおよそ20%が呼吸不全などで重症化し、中国国内では7%、世界全体では9・6%が亡くなった。一方、新型ウイルスではこれまでに約20%が重症化し、2・3%が死亡している。SARSの流行時にWHOで封じ込めに当たった東北大の押谷仁教授(ウイルス学)は、新型ウイルスによる致死率がSARSよりも低いことに着目。「重症な肺炎に進行せず、発熱やせき、くしゃみといった症状で収まる人が今回は多いのでは」とみる。一方、患者数は最近急増している。WHOは23日、新型ウイルスが1人の患者から1・4~2・5人に感染していると発表したが、「実際にはもっと多く、感染はさらに広がるのではないか」。その理由として押谷さんは、新型ウイルスはより軽症の患者でも、感染力を持っているためではないか、と推測する。SARSは、重症の患者を見つけて隔離して感染の広がりを防げたから封じ込めに成功した。今回は、軽症の患者が感染に気付かないまま、ほかの人に広げている可能性があるという。いまのところ、今回の患者の8割ほどは軽症とみられている。ただ、東京医科大の濱田篤郎教授(渡航医学)は、軽症にみえても、高齢者では発熱しないまま呼吸不全に陥ることがあり、注意が必要だという。感染者や死亡者についての情報は日々、変わっている。国立感染症研究所の鈴木基感染症疫学センター長は、「最初の感染者が発表されてまだ1カ月余りで、現地での調査もまだ十分できているとはいえないようだ。病原性などについても正確な数値はまだ分からない」としている。
●こまめな手洗いが有効
 新型肺炎の感染はどうやったら防げるのか。東北医科薬科大の賀来満夫特任教授(感染制御学)によると、ウイルスは鼻や口、目などの粘膜から入ることで感染すると考えられるという。様々な物を触る中で手に付着しやすいため、予防には「手についたウイルスをこまめな手洗いで洗い落とすことが有効」と話す。日常生活で目や口、鼻など顔を触るくせのある人は注意してほしいという。こうした点は、かぜやインフルエンザの予防と同じだ。患者がマスクを着けると感染を広げない効果があることは分かっている。健康な人のマスク着用は「立証は難しいが、一定の効果があると考えていい」という。ただ、手洗いもマスクも感染を完全には防げない。組み合わせてリスクを下げてほしいという。厚生労働省は28日、国民からの相談を受け付ける電話相談窓口(03・3595・2285)を設置した。医学的知識を持った職員が相談に答える。今後は外国語にも対応する予定という。受付時間は土日祝日を含む午前9時~午後9時。
●医師「新型インフルの教訓も生かして」
 国内でも新型コロナウイルスのヒトからヒトへの二次感染が初めて確認され、国内流行の懸念が高まっている。この先どんなことが起き、何に気をつければいいのか。2009年に海外から持ち込まれ、国内で推計2千万人がかかった「新型インフルエンザ」の教訓について、元厚生労働省技官の沖縄県立中部病院、高山義浩医師(49)に聞いた。ヒトからヒトに感染する新型の豚インフルは09年、4月にメキシコや米国で確認され、世界的に拡大した。日本では5月に神戸市で国内感染が判明し、8月に初の死者が沖縄県で出るなど全国に広がった。09年度の推計国内患者は2061万人で、約200人が死亡した。厚労省の感染症専門医として奔走した高山さんは「今回と同様、専門医も病原性や感染力が十分わからない中で初期対応を迫られ、混乱が起きた」と振り返る。市民に大きな影響が出たのが「新型インフルにかかったかどうか、検査が受けられなくなった」ことだ。厚労省や都道府県の方針では、発生当初は封じ込めのため軽症でも感染が疑われる人はウイルス検査をし、隔離のために入院するなど手厚い対応をとる。一方、一度流行が確認された後は、死亡や重症患者を減らすために健康リスクの高い人が手厚い対応を受けられるよう方針が変わる。このため軽症の人が医療機関にかかってもウイルス検査が受けられずに帰宅を求められ、「そんな話は聞いていない」と押し問答になったこともあった。高山さんは「医療機関の検査体制にも限界がある。国内での流行とともに検査対象が絞り込まれていくことを知っておいてほしい」。新型コロナウイルスも流行後は医療機関のパンクを避けるため、軽症者に受診を控えるよう呼びかける可能性があるという。受診できる医療機関も制限がかかる可能性がある。新型インフルは当初、感染が疑われる人に専門で対応する「発熱外来」が地域の中核病院などに設置された(現在は名称が「帰国者・接触者外来」に変更)。受診前には電話をする必要がある。一方で、若い患者が多かった新型インフルと異なり、新型コロナウイルスの死者は高齢者や持病のある人が多いとされる。高山さんは「高齢者施設ではマスクやグローブなどの感染対策の資材が、病院に比べてそろっていない恐れがある。入居者の通院を一時的に訪問診療で集約するなど、病院に行かなくても済む方法を検討すべきだ」。肺炎リスクを下げるため、肺炎球菌やインフルワクチンの接種も勧める。「現時点では(02~03年にアジアで流行した)重症急性呼吸器症候群(SARS)ほどの致死率はなく、感染力もインフルほどはないと考えられる。適切な感染対策でリスクの高い人も守れる可能性はある」と高山さん。「新型インフルが流行した10年前と比べて国外からの観光客が増え、新興感染症は常に持ち込まれる恐れがある。手洗いやせきエチケットなどインフルと同様の対策を取り、感染が不安な人は人ごみを避けてほしい」と話している。

*9-3:https://www.cnn.co.jp/world/35148651.html (CNN 2020.1.29) 武漢からの帰国者は隔離すべきか、当局が迫られる難しい判断
 中国湖北省武漢市から退避する米国人を乗せたチャーター便が、現地時間の29日に米カリフォルニア州オンタリオに到着する。同便に搭乗している約240人の中には、新型コロナウイルスの感染者がいる可能性もある。同便が到着した時点で、衛生当局は難しい選択を迫られる。たとえ症状が出ていなくても、人との接触を避けるためにオンタリオで隔離すべきなのか。隔離する場合、どの程度の期間が必要なのか。中国の衛生当局は、新型ウイルスは発症していない人からも感染する可能性があるとの見解を示した。しかし米衛生当局は、それが事実かどうかの確証はないとしている。そうした事情が、武漢市から帰国する米国人にどう対応すべきかをめぐる判断を一層難しくしている。乗客の中には、30人あまりの外交官やその家族が含まれる。28日に記者会見した米保健福祉省のアレックス・アザー長官も、乗客に対する具体的な対応については言葉を濁し、「適切な証拠に基づく公衆衛生対策を講じる」と話すにとどめた。カリフォルニア州サンバーナーディノ郡の当局者は同日、チャーター便で到着する人は、3日~2週間の隔離が必要になるかもしれないと説明。感染の兆候が出ている人はいないとしながらも、隔離された場所にベッドや携帯電話の充電器、テレビを用意していることを明らかにした。空港でも公共エリアには立ち入らせず、米疾病対策センター(CDC)が許可を出すまでは一般の人と接触させないとしている。一方、フランスの衛生相は26日、武漢から帰国させるフランス人は1カ所に集めて経過を観察し、14日間拘束すると説明していた。

*9-4:https://news.tbs.co.jp/newseye/tbs_newseye3892022.html (TBS 2020.1.29) オーストラリア政府、帰国者を2週間 離島隔離へ
 オーストラリアのモリソン首相は29日、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、中国・武漢市などに滞在しているオーストラリア人を退避させ、2週間、離島で隔離する方針を明らかにしました。「私たちはけさ、武漢で孤立しているオーストラリア人の出国支援に取りかかることを決断しました」(オーストラリア モリソン首相)。モリソン首相は29日、チャーター便などで移送される帰国者を離島で2週間隔離し、新型コロナウイルスの感染検査を行う予定だと明らかにしました。オーストラリア政府によりますと、現在、武漢市のある湖北省には、600人以上のオーストラリア人が滞在登録をしています。帰国者が隔離されるのはオーストラリアの北西に浮かぶクリスマス島で、密航者の収容施設などがある離島です。退避計画の詳細は現在検討中だということですが、子どもや高齢者、短期旅行者が優先的に移送されるとみられています。

*9-5:https://digital.asahi.com/articles/DA3S14347707.html (朝日新聞 2020年1月31日 より抜粋) 症状ない帰国者2人感染 新型肺炎、厚労省「想定外」
 中国の湖北省武漢市を中心に新型コロナウイルスによる肺炎が広がっている問題で、厚生労働省は30日、チャーター機の第1便で帰国した日本人のうち3人が感染していたと発表した。このうち2人は、発熱やせきなどの症状がない国内初の感染例だった。また、東京都と三重県、京都府でも新たに感染が確認された。国内の感染者は14人となった。厚労省によると、チャーター機で帰国後、症状がないのに検査で陽性反応が出たのは40代男性と50代女性の2人。国立国際医療研究センター(東京都新宿区)で検査を受け、千葉県内のホテルに滞在していた。陽性の結果を受け県内の医療機関に入院した。2人はそれぞれ別の帰国者と相部屋だったが、ほかに症状を訴えている人はいないという。感染しても症状が出ない「不顕性感染」か、症状が出る前だった可能性がある。自覚のないまま感染を広げる恐れがあり、中国では報告されていたが、厚労省の担当者は「想定外だった」と話した。これを受け、安倍晋三首相は30日、「新型コロナウイルス感染症対策本部」の会合で「水際対策などのフェーズをもう一段引き上げていく必要がある」と語った。武漢市など感染者の多い地域に滞在したことがあるすべての入国者の健康状態と日本国内での連絡先を確認する方針だ。第1便の帰国者は、検査で陰性反応が出ればホテルから自宅に戻れる予定だったが、2週間は待機してもらうことにした。相部屋もやめる。第2便の帰国者も、症状がなくても基本的に警察大学校(東京都府中市)と西ケ原研修合同庁舎(同北区)に滞在してもらう。厚労省によると、3人のうちもう1人は50代男性。羽田空港に到着した時は症状がなかったが、その後、鼻水やのどの痛みが出て都内の病院に入院していた。容体は安定しているという。また、検査に同意せずに帰宅していた2人も、30日になって検査を受けたいと申し出てきたという。ほかに感染が確認されたのは、中国湖南省から東京に来ていた30代女性と三重県在住の50代男性、京都府在住の20代女性。いずれも武漢市に一時滞在していたという。世界保健機関(WHO、スイス・ジュネーブ)は30日、専門家委員会による緊急会合を始めた。
■第2便、入院26人
 武漢市から帰国を希望する日本人を乗せた日本政府の民間チャーター機の第2便が30日、羽田空港に到着し、210人が帰国した。13人が体調不良を訴え、空港から東京都内の医療機関に搬送。このほか症状のなかった13人も帰国後の検査の後に医師の判断で入院し、入院者は計26人になった。第3便も30日夜、羽田空港を出発。帰国者を乗せ、31日午前に日本に到着する予定。外務省によると、約200人を乗せるとしている。第4便は来週の派遣になる見込みという。第2便では、搭乗前の中国当局の検査で熱やせきの症状があった2人の出国が認められなかった。政府によると、30日時点の帰国希望者は約300人だが、人数が増える可能性もある。
     ◇
 中国国家衛生健康委員会は30日、感染者は前日より1737人増の7711人、死者は38人増の170人に達したと発表した。チベット自治区でも初の感染者が確認され、感染は中国本土の全ての省・自治区・直轄市に広がった。
■新型肺炎の感染者数(日本時間30日午後11時現在。各国・地域の政府発表・報道から累計)
 中国      7711(死亡170)
 日本        14
 香港        10
 タイ        14
 シンガポール    13
注)10人未満の国・地域は省略したが、数字からは新型肺炎を中国国内に封じ込めることに、だいたい成功していると言える。

*9-6:https://www.nishinippon.co.jp/item/o/580192/ (西日本新聞 2020/1/31) 処理水、海洋放出の利点強調
 東京電力福島第1原発で増え続ける処理水の処分方法などを議論する政府小委員会で、経済産業省は31日、前例のある海洋と大気への放出を「現実的な選択肢」とし、うち放射性物質監視などの面から「海洋放出の方が確実に実施できる」と強調する提言案を新たに示した。地元など幅広い関係者の意見を丁寧に聴きながら方針決定するよう政府に要請。放出に際しては風評被害対策の徹底を求めた。小委は地層注入、水素放出、地下埋設も含めた五つの処分方法を検討し、経産省は前回会合で、国内外で処分実績のある海洋と大気の放出を軸にした具体的な3案を示したが今回、こうした書きぶりは修正した。

*9-7:https://www.agrinews.co.jp/p49889.html (日本農業新聞 2020年2月1日) 低所得者の食生活 栄養格差の解消を急げ
 低所得者ほど栄養バランスの取れた食生活ができていない──。そんな結果が厚生労働省の2018年国民健康・栄養調査で出た。所得の違いで、子どもや高齢者が十分な栄養が取れず、健康が脅かされる事態は見過ごせない。栄養格差の解消に国は一層力を入れるべきだ。調査は生活習慣病対策の参考にするため、健康増進法に基づき毎年実施。今回は18年11月、5032世帯を対象に行い、1月中旬に公表した。浮かび上がったのは、多くの人が依然、主食・主菜・副菜を組み合わせた栄養バランスの取れた食生活から遠ざかっているという厳しい現実だ。栄養バランスの取れた食事を、どのくらいの頻度で取っているか聞いたところ、1日2回以上が「ほとんど毎日」という人は男性45・4%、女性49%で半数に満たない。「ほとんどない」も男性、女性いずれも1割前後いた。「ほとんどない」の割合を年間世帯所得別に見ると、より深刻な問題が見えてきた。所得が最も低い「200万円未満」の割合は男性20・8%、女性13・4%。所得が最も高い「600万円以上」と比べ、男女ともに2倍近く高かった。低所得者ほど栄養バランスの取れた食生活が送れていない栄養格差が浮き彫りになった格好だ。「低所得層の子どもは、成長に欠かせないタンパク質や鉄の摂取量が少ない」「所得の低いお年寄りほど健康な体を維持するために必要な栄養が足りない『低栄養』に陥っている」。こうした栄養格差は研究者のこれまでの調査でも明らかになっている。厚労省が定める国民健康づくり運動「健康日本21」(13~22年度)では、「健康寿命の延伸と健康格差の縮小」を重点に掲げ、低栄養や生活習慣病などの予防・改善活動を展開しているが、解消には至っていない。栄養格差の解消に何が必要か。低所得者への経済的支援の充実はもちろんだが、注目したいのは子どもに無料か低額で食事を提供する「子ども食堂」だ。設置数は19年が3718カ所。各地で広がりをみせる一方、運営資金が課題となっており、国の支援が欠かせない。子ども食堂に食材を無償提供するJAも増えており、こうした動きを広めることも有効だろう。食育も忘れてはならない。今回の調査では、所得200万円未満の人に主食・主菜・副菜を組み合わせられない理由を聞くと、「食費の余裕がない」よりも「手間がかかる」「時間がない」という回答が多かった。栄養バランスの取れた食事の重要性を地道に訴え、理解を深めてもらう必要がある。農水省は新しい食育推進基本計画を来年3月に策定する予定で、近く議論を本格化させる。栄養格差の解消へ、どのような処方箋を描けるか。知恵を絞り、意欲的な目標と効果的な方針・施策を打ち出してほしい。

*9-8:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/483693 (佐賀新聞 2020年2月1日) 小泉環境相の「育休」どう考える? 佐賀県内男性の取得鈍く トップ、上司次第で意識変化も
 第1子が誕生した小泉進次郎環境相が「育児休業」を取得する意向を表明した。「大臣という要職にありながら大丈夫か」と懸念する意見がある一方、「率先して範を示し、今後につなげてほしい」と歓迎する声も上がる。佐賀の男性の育児休業取得事情を調べてみた。佐賀県選出の山下雄平参院議員も4歳の娘がいて、小泉環境相の育休取得を歓迎している一人だ。山下議員も政治活動で地域の会合に出席する機会が多いが、「育児のために早退したり、欠席したりするのは言いづらい雰囲気がある」と語る。子どもに熱が出て病院に連れて行く時さえも「なかなか言い出しづらい」といい、小泉環境相の育休取得が、議員に限らず男性も子育てをするという雰囲気につながればと期待する。総務省から鳥取県庁に出向中、3人目の子どもが生まれ、2週間の育児休業を取得した山口祥義知事も小泉環境相の育休宣言を「英断」と評価する。佐賀県庁では、出産後の「出産補助休暇」(3日間)と出産前後の「配偶者出産時育児休暇」(5日間)を合わせた「8日間の育児休暇」の取得を促す。2016年度は知事部局の対象職員82人中21人(25%)、17年度は70人中36人(51%)、18年度は86人中51人(59%)が取得し、年々増加している。だが、「育児休業」の取得率となるとめっきり減る。育児休業は子が2歳までに1度、1日から長期まで選んで取れるが、18年度の男性職員の取得率は対象81人中わずか4人(4・9%)。県人事課は「育児休暇の取得率を高めつつ、利用促進を図りたい」と話す。民間事業所内でも男性の育休取得の動きは鈍い。県労働条件等実態調査をみると、調査事業所では2006~09年度は0%で、以降も1割にも届いていない。そのような状況の中、先進例と言えるのが半導体や液晶パネル向け精密化学品製造の「JSRマイクロ九州」(佐賀市、約110人)。1週間から約3カ月といった期間で、これまでに7人の男性社員が育児休業を取得した。最初の一人は、上司や同僚が取得を強く促して実現したという。その後は「子どもが誕生したら取るもの」という認識が広がった。父親の育児参加を支援するNPO法人ファザーリング・ジャパン九州の森島孝理事(40)は、男性の育休取得が広がらない大きな要因を「会社の雰囲気」や「周りに迷惑がかかる」などの思いがあると指摘する。一方で、業務の見える化や効率化ができていなければ育休取得を促すのは難しく、そうした環境の改善は「会社の考え方や体制を見直し、働きやすく、強い会社をつくるチャンスでもある」と強調する。JSRマイクロ九州もワークライフバランスの充実を図り、会社の付加価値を高める視点で取り組んでいるという。男性、女性社員に関わらず長期育休で欠員が出れば一時的に派遣社員を雇用してバックアップするなど環境を整えている。「『育休の対象者は限られていて、独身者や子育てが終わった世代は関係ない』と思われているのが現状では」と森島さん。「育休は会社のトップや上司が取ると取りやすくなる。『大臣が取ったから』と言えばもっと取りやすくなる。小泉環境相の発言は、意義が大きい」と話す。
●記者の目 「当たり前」変える契機に
 5年ほど前、会合で沖縄の新聞社を訪れた。「うちの職場は2人が育休中で」。そう話す社員に、そういえば私は取らなかったと明かすと、「なぜ取らないんですか?」と奇異な目で見られた。当時、私には男性社員が育休を取るという考え自体がなかった。意識の違いで、これほどまでに「当たり前」が違ってくる。取材中、育児休業は本来、仕事を継続していくための準備期間という位置づけなのだと聞いた。実際、ある取得者は「育休を取っていなかったら仕事を理由に子育てに参加しなかったかもしれない。夫婦で互いにサポートする体制を手に入れたことが何より」と話していて、準備期間だという話に深く納得がいった。一言に「育児休業」と言っても、本来の狙い、目的や取得による効果や影響など、知っているようで知らないこと、誤解したままのことは多いのではないかと感じた。小泉環境相の取得宣言をきっかけに、多くの「当たり前」を変えていくために必要なことを考えていきたい。

*9-9:https://www.nishinippon.co.jp/item/n/581518/ (西日本新聞 2020/2/5) 「中村哲医師にささげる歌を」 さだまさしさんがアルバム制作へ
 長崎市出身のシンガー・ソングライターさだまさしさん(67)が、「存在理由」と名付けたオリジナルアルバムを制作している。デビューから46年、あえて自らの立ち位置を問い直すテーマに取り組むきっかけとなったのは、アフガニスタンを支援する非政府組織(NGO)「ペシャワール会」現地代表、中村哲医師=享年73=の非業の死だったという。「中村医師のことが胸から離れない」と語るさださん。アルバムの軸には「中村医師にささげる歌を据えたい」とも話している。さださんは、自ら提唱して建設したナガサキピースミュージアム(長崎市)の主催で2004年に中村さんの講演会、10年にはペシャワール会の活動報告展を開いたが、直接の面識はない。ただ、「お互い侠客(きょうかく)の血を引く者として常に意識してきた」存在だという。中村さんの祖父は、北九州・若松港の石炭荷役請負業「玉井組」を率いた玉井金五郎。金五郎の長男、火野葦平の自伝的小説「花と龍」のモデルとして知られ、中村さんも生前、金五郎の生きざまに大きな影響を受けたと語っている。さださんの母方の曽祖父、岡本安太郎も明治時代、長崎港で港湾荷役を取り仕切った「岡本組」の元締。最盛期には気性の荒い沖仲仕(おきなかし)500人を束ね、任侠(にんきょう)の大親分として地元で語り継がれている。中村さんの行動は「無私の精神」で知られるが、東日本大震災や豪雨などの被災地で支援ライブを続けるさださんの行動理念にも義と情の部分で共通するものがある。一方で、ルーツは似ていても実際の生きざまの違いに落胆しているとも言う。「玉井金五郎の孫と岡本安太郎のひ孫があまりにも差がありすぎて、正直めげている」「俺は今まで何をやってきたんだと、自分のアイデンティティーに疑問を持っているところ。のうのうと生きてきたなあとね」。中村さんが銃弾に倒れた時、さださんはすでにアルバム制作に取り掛かっていたが、その死が頭から離れず「花と龍」を再読。わが身と照らし合わせながらたどり着いた答えが、自らの「存在理由」をテーマに据えることだったという。「とりあえず自分に問いかけてみる。『いったい歌作りの矜持(きょうじ)とは何ぞや』と。大したものはできないかもしれないが、やらずにはいられない」。中村さんにささげる歌は「まだ格闘中」(さださん)だが、アルバムと同じく「存在理由」と銘打ったコンサートツアーは4月中旬にスタート。アルバムは5月ごろ発売の予定だ。

*9-10:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO55373830X00C20A2EA2000/ (日経新聞 2020.2.7) 新型肺炎、さまようクルーズ船 入港拒否相次ぐ
 新型コロナウイルスによる肺炎を巡り、日本や中国周辺を回る大型クルーズ船の運航に支障を来す例が相次いでいる。横浜に到着した船の乗客多数が感染していたことを受け、日本やアジアの国や地域で入港を拒否する動きが広がっているためだ。1月以降に中国を訪れた大型船21隻は全てアジア・オセアニア地域にとどまり、うち複数の船が次の寄港地が決まっていない。向かう先で入港できず、次でも断られ、行き場を失う船が出てきた。日本経済新聞は情報会社リフィニティブとIHIジェットサービス(東京都昭島市)がそれぞれ展開する船舶の位置情報配信サービスを活用し、過去の航跡と現在位置を地理情報システムなどを使って分析した。日本時間7日午後5時までの航跡をみると、日本が石垣入港を拒否した米ホーランド・アメリカ・ラインの「ウエステルダム」(定員約1960人、乗組員約800人)は、1日に香港を出航した。台湾の高雄経由で、6日午後に石垣港の南西約100キロメートルまで近づいたが、入港しなかった。当初はその後那覇に行く予定だったが、太平洋を南下する針路を取っている。イタリアのコスタクルーズ社が運航する「コスタ・セレーナ」と「コスタ・ベネチア」は、韓国周辺の東シナ海上にとどまっている。米シーボーンクルーズラインの「シーボーン・オベーション」は2日ごろ香港を出港、フィリピン方面に向かったものの、途中でベトナムに向けてほぼ直角に針路を変えて同国中部沖まで航行した。しかし港に寄らずに南下し、7日朝タイ中部の港にようやく入った。日本政府は7日、ウエステルダムが石垣港に入港しないよう求めたことを明らかにした。乗員乗客の大多数が外国人だった。赤羽一嘉国土交通相は同日「8日の那覇寄港を取りやめ、当面のスケジュールを白紙とし、次の寄港地を検討すると連絡が入った」と述べた。台湾や韓国、フィリピン、ベトナム当局も事実上拒否している。1月以降に中国に寄港したクルーズ船は合計21隻ある。許可がおりる港を探して移動を続けている船のほか、次の寄港地がみつからず、港にとどまっている船も多数あるとみられることがデータから読み取れる。中には横浜の「ダイヤモンド・プリンセス」のように、乗客乗員が船から出られないケースも出ている。クルーズ船は数百~数千人の乗客とその半数程度の乗務員を乗せている。一般的に寄港地に半日~1日程度停泊し、一部の乗客を入れ替えながら現地ツアーを開く。東アジアでは日本や中国、東南アジア諸国などを回ることが多い。海上移動は数日かかることもあり、その間、乗客乗員は同じ空間で過ごす。日本には日本郵船系の「飛鳥2」や商船三井系の「にっぽん丸」など外航クルーズ船が3隻あり、ほとんどのツアーは乗客の9割以上が日本人だという。外国籍の船では日本発着でも外国人が半数程度を占めているとみられ、アジアでは中国人客が最も多い。データ分析では、1月以降に中国に寄港した21隻のうち11隻が日本に入港したことも分かった。運べる旅客数は最大計3万5000人に上り、乗務員も含めると5万人程度に及ぶとみられる。福岡や長崎、那覇に複数回入港した船もあった。新型肺炎の影響拡大で、世界の主要クルーズ企業が加盟するクルーズライン・インターナショナル・アソシエーションの加盟各社は、過去14日間に中国本土に出入りした乗客乗員の乗船を拒否する対応をとっている。中国への寄港はできず中国ツアーは中止や目的地変更が相次ぐ。米プリンセス・クルーズは「ダイヤモンド・プリンセス」の沖縄・台湾行き2本を中止した。MSCクルーズ(スイス)や米ロイヤル・カリビアン・インターナショナルも上海発着をやめた。日本クルーズ客船の「ぱしふぃっくびいなす」は9日の三亜(中国海南省)と11~12日のアモイ(福建省)から台湾の台南と高雄、花蓮に寄港地を変えた。同社によると「例年に比べキャンセルが増えてきている」という。旅行各社はキャンセル対応に追われ、日本旅行は「事態が長期化すると困る」とこぼす。国交省によると、外国籍クルーズ船は2月に123回来る予定だったが、75回に減った。クルーズ旅行は世界的に人気が高まっており、寄港地経済への恩恵が大きい。各地で打撃が出る可能性もある。外資系クルーズ大手の日本代理店は「クルーズ自体にネガティブなイメージが付かなければいいが」と心配する。運航会社の株価にも影響が出ている。グループ会社がダイヤモンド・プリンセスを運航する米カーニバルの株価は、6日の終値が19年末から13.9%下落した。

*9-11:https://www.nishinippon.co.jp/item/n/582424/ (西日本新聞 2020/2/7) 「有事の際の入国基準を」 福岡市長が新型肺炎拡大で国に意見書
 福岡市の高島宗一郎市長は7日、新型コロナウイルスによる肺炎の感染拡大を受け、クルーズ船の入港や外国人観光客の入国を制限できる基準とルールを定めるよう求める意見書を、法務省に提出した。高島市長は1月30日、自身のブログで「当面は中国本土からのクルーズ船の寄港を拒否すべきだと思っている」と主張していた。7日、宮崎政久法務政務官と面会した高島市長は「例えば、下船する際に解熱剤を飲んで検疫をすり抜けるようなケースもあると聞いている。国には有事の際の入国基準をしっかり策定してほしい」と要望。宮崎政務官は、出入国在留管理庁に対し遺漏のない対応をするよう指示を出したとした上で、「市民の不安を拭い去るため、現場の皆さんと緊密に連携していく」と応じた。面会後、高島市長は「われわれの考えに共感してもらえた。国には経済対策も併せて対応をお願いしたい」と話した。

*9-12:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/486420 (佐賀新聞 2020.2.8) 唐津市「寄港キャンセルなし」 新型肺炎でクルーズ船
 小型の高級客船の誘致に成功し、寄港数を伸ばしている佐賀県唐津市。昨年の唐津港への寄港数は過去最多の11回で計3827人が上陸、今年は9回の寄港予約が入っているが、新型コロナウイルス感染拡大の影響について唐津市は「現在のところはキャンセルは出ていない」と話す。ただ、営業活動に影響が出ている。クルーズ船会社や自治体の関係者を集めた商談会が6日、福岡県で予定されていたが、外国の船会社関係者が出席できず中止になった。市みなと振興課の担当者は「新型コロナウイルスへの対応で商談どころではなくなったようだ。販路拡大に向けた貴重な営業の場がなくなってしまった」と肩を落とす。市には5月14日、中国・上海を出発した客船が寄港する予定になっている。担当者は「そのころまでに感染が終息していればいいが」とこぼした。

*9-13:https://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/202002/CK2020021102000171.html (東京新聞 2020年2月11日) 新型肺炎感染 クルーズ船 新たに65人 全員検査 判断揺れる
 クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」で起きた新型コロナウイルスの集団感染で、厚生労働省は十日、新たに検査結果が判明した百三人のうち六十五人の感染が確認されたと発表した。クルーズ船では検査した延べ四百三十九人のうち百三十五人の感染が判明し、拡大が止まらない事態になっている。中国湖北省武漢市から帰国した邦人らを合わせると、国内の検査で陽性となった感染者は百六十一人となった。厚労省は、船内に待機する約三千六百人の乗客乗員全員に対し、下船する際のウイルス検査の実施を検討していると明らかにした。全員検査を実施する場合、結果を待ってからの下船になるとした。加藤勝信厚労相は検討理由について「国民の不安や懸念にしっかり対応する必要がある」と述べた。一方、菅義偉官房長官は会見で、全員検査は難しいとの認識を示した。船内の感染者数が百三十人を超えたことについて、厚労省の幹部は「乗船者に客室待機してもらう対策を講じた後に増えているのかどうかは分からない。疫学調査や専門家の意見を踏まえて判断したい」と述べた。日本環境感染学会は拡大を防ぐために感染制御に詳しい医師や看護師の専門チームを十一日にクルーズ船に派遣する。厚労省は九日も、検査結果が判明した五十七人のうち六人の感染を確認したと発表した。うち五人は乗員で陽性の結果が出るまで業務に従事していた。不足する医薬品については、九日までに乗客延べ約千八百五十人分の要望があり、同日までに同約七百五十人分を船内に搬入。残りも手配を急ぐ。
◆「一般病院も受け入れ可」 厚労省転換に自治体困惑
 クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」の乗客らに新型コロナウイルスの感染者が相次いでいる問題で厚生労働省が「感染症の指定医療機関でなくても、患者を受け入れて良い」と全国の都道府県などに通知していたことが十日、分かった。厚労省は「感染症法に沿った対応」と説明、個室など一定の設備がある病院を前提とするが、一般の病院での感染者受け入れにつながる突然の方針変更に、自治体は困惑している。厚労省の通知は九日付。感染症法は「緊急その他やむを得ない理由があるとき」は、指定医療機関以外の病院で指定感染症の患者を入院させられると定めている。感染者が増えていることから、規定に沿って通知を出したという。現在、感染者を受け入れている神奈川、東京、埼玉、千葉、静岡にある指定医療機関は四十九病院計三百四十五床。室内の空気や細菌が流出しないよう気圧を低くする陰圧制御や、他室とは独立させた換気設備などを備えている。通知を受け、関東地方のある自治体は十日、管轄病院に感染者を受け入れられるかの確認に追われた。ただ、この自治体の幹部は一般の病院で受け入れが決まったわけでないとしながら「地域がパニックになるのではないか」と不安を隠さない。
◆態勢整う病院あるか
<岡山大の津田敏秀教授(環境疫学)の話> 病院には体の弱っている人や高齢者がいる。一般の病院で受け入れるとき注意しないといけないのは院内感染だ。だが、例えば感染した人を受け入れるために急に一フロアを空けるなどということができる病院が、どれだけあるのだろう。これまで国の対応は後手後手に回ってきた。仕方のない面もあるが、これからは先を見て対応することが大事だ。中国での湖北省以外の感染者がどのように推移するか。日本での広がりを考えるうえで参考になるのではないか。

*9-14:https://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/202002/CK2020021002100042.html (東京新聞 2020年2月10日) 新型肺炎で「マスク狂騒曲」止まらず 欠品、高値転売、詐欺まで
 新型コロナウイルスによる肺炎が広がる中、感染への不安心理による「マスク騒動」が収まらない。買い占めによって店頭から消え、売り上げは例年の9倍近くまで跳ね上がる。インターネット上では高額転売が横行し、騒ぎに便乗したサイバー攻撃まで登場。一体、どこまで広がるのか。(中沢佳子)
◆どこにもない…定価の数倍で転売
 「購入はお一人さま二点まで」。七日に東京・銀座のドラッグストアを訪れると、そんな張り紙が掲げられていた。しかし、そこにあるのは商品名と値段が書かれた札のみ。「売り切れなんです。次回の入荷も全く分からなくて」と店員の女性。周辺の五店回るも、どこも「メーカー在庫希薄のため欠品」「入荷は未定」と断り書きが出ていた。高額転売も横行。フリーマーケットアプリ「メルカリ」では、公式ブログが「適切な範囲での出品・購入にご協力を」と呼びかけていながら、この日も箱入りマスクなどが定価の数倍以上で出品されていた。
◆マスク売上、例年同期比の8.9倍
 市場調査会社「インテージ」によると、一月二十七日~二月二日の全国のスーパーやコンビニ、ドラッグストア計四千店のマスクの売り上げは約百八十七億一千六百万円。同時期の例年平均の約八・九倍に上る。二〇〇九年の新型インフルエンザ拡大のピーク(約六十五億四千万円)をはるかに超え、手指消毒剤やマスク用除菌スプレーの売り上げも例年の十倍以上だった。「過去にない異常な事態。メーカーはどこもフル稼働で増産し、毎日出荷している」と明かすのは、マスクやおむつなどのメーカーでつくる「日本衛生材料工業連合会」の高橋紳哉専務理事。この時期は花粉症やインフルエンザへの備えで出荷が増えるとはいえ、例年の比ではないという。「購入量が多すぎて生産が追い付かない。節度ある買い方をしてほしいのだが」
◆詐欺サイトにつながるサイバー攻撃も
 サイバー攻撃も現れた。ネットセキュリティー専門会社「トレンドマイクロ」によると、「マスクを無料送付、確認をお願いします」というメッセージが拡散。URLをクリックすると詐欺サイトに誘導され、クレジットカード情報が盗まれる恐れがある。保健所からの注意喚起を装い、ウイルスに感染するファイルを添付したメールも登場している。物が消える不安から買い占めに走る群集心理は今も昔も変わらない。一九七三年のオイルショック時は、トイレットペーパーがなくなるといううわさに、人々が血眼になって店に殺到した。記録的な冷害でコメ不足に陥った九三年は、外米の輸入でしのごうとした政府の思惑をよそに国産米を求める行列が絶えず、「平成のコメ騒動」といわれた。
◆「正しい情報がパニックを防ぐ」
 「買い占めは不安を解消するための獲得競争であり、自衛行動」と東京女子大の広瀬弘忠名誉教授(災害・リスク心理学)は指摘する。無駄になるかもしれないと思っても、あれば買ってしまう。今回のように感染症の被害状況や先行きが見通せない時に目立つといい、冷静な行動を促すには不安の増幅に歯止めをかける必要があると説く。「客船での足止めやマスクの買いだめなどがショッキングに報道され、不安があおられている面もある。感染の広がりやマスクの供給状況など、正しい情報やデータを出すことがパニックを防ぐ方策だ」

*9-15:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200212&ng=DGKKZO55498990R10C20A2TJC000 (日経新聞 2020.2.12) 日本が拒否したクルーズ船 タイも国内反発で拒否
 タイ政府は11日、新型コロナウイルスによる肺炎の感染拡大防止で日本に入国を断られたクルーズ船「ウエステルダム号」について、タイも入港を拒否すると発表した。当初は受け入れる予定だったが、国内で反発があり、方針転換した。同号はタイに向かっていたが、今後、どのような針路を取るかは不透明だ。同号の運航会社は10日、「13日にタイに入国し、乗客は空路で帰国する」と明らかにしていた。タイ政府はこの情報がインターネット上に広がり、パニックになったことを入港拒否の理由の一つに挙げた。今後、他のクルーズ船の受け入れも拒むかは不明だ。フィリピンやベトナムに入国を断られた別のクルーズ船「シーボーン・オベーション号」はタイに入港を認められ、7日に着岸した。他のクルーズ船にもタイへ向かう動きがみられていた。

*9-16:https://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/202002/CK2020021202100021.html (東京新聞 2020年2月12日) 新型肺炎で海をさまようクルーズ船 どこが助けるの?
 新型コロナウイルスによる肺炎の影響で、港に入れないクルーズ船が日本近海をさまよっている。クルーズ船は寄港先で食料や燃料を補給していく。どこにも受け入れてもらえなければ、いずれ乗客乗員の人命にかかわる事態になる。そんな状況になったらどの国が責任を負うのか。専門家に聞くと、どうやら国際的な取り決めは、ない。
◆あちこちで寄港を拒否され…
 台湾・高雄から横浜へ向かっていたクルーズ船「ウエステルダム」。寄港予定だった沖縄県・石垣島や那覇で入港を「拒否」された。乗客乗員計二千人余りの一部に新型肺炎の発症者がいたためだ。十日現在も寄港先が決まっていない。六日に那覇を出発したクルーズ船「スーパースター・アクエリアス」は、行き先の台湾、出港した那覇から寄港を拒否される事態に陥った。結局、台湾が受け入れることになり、予定より遅れて八日に到着した。東南アジアを巡っている日本船籍のクルーズ船「ぱしふぃっくびいなす」は台湾での寄港を拒否され、長崎港へ向かっている。横浜・大黒ふ頭に着岸している「ダイヤモンド・プリンセス」も、乗客乗員は中に留め置かれている。つらい状況だろうが、海の上をさまよっている船があることを考えると、まだましなのかもしれない。
◆食料は10日ほどで尽きる
 入港させてくれる港がなければ、船はどうなるのか。あり得なさそうな事態が、日本近海で起こりそうになっている。「豪華客船は数千人乗客乗員がいる。食料は一週間か十日間でなくなり、燃料も補給しないといけない。通常は寄港先で調達するのだが…」と、神戸大の若林伸和教授(航海システム学)は語る。つまり、客船が洋上にさまよっていられる日数は、この程度。これより長くなると、人道上の問題になりかねない。どの国が救いの手を差し伸べる決まりになっているのか。
◆船籍や自国民の割合を考慮
 外国からの船の入港には、検疫、出入国、港湾の管理で三つの役所がかかわる。入港拒否は港湾を所管する国土交通省の担当だ。問い合わせてみると…。「明確な決まりはない。事案に応じて適切に対処するとしか言えない」。海事局外航課の長井総和課長はこう説明し、「頭の体操になってしまうが、船籍や自国民の割合で、国が対応するかどうかを考える。人命の危機が迫っていれば人道的な面から近隣国ということもあるだろう」と続けた。ちなみに、国交省に制度上、入港拒否権はなく、「船に入港しないよう要請するとともに、実際に港湾を管理している自治体に入港を認めないよう頼んでいる」(長井課長)という。
◆条約の想定外 国際ルールが必要
 今回の事態をみると、日本政府は、日本人の比率を重視して対応を変えているようだ。ダイヤモンド・プリンセス号は乗客の半分が日本人だったのに対し、寄港拒否された二つの船では、乗客が外国人中心だったからだ。若林氏は「ダイヤモンド・プリンセス号は、邦人保護の観点から入港が許されたのだろう」と語る。現在の扱いは「検疫法に基づく検疫が続いているという整理で乗客を留め置いている」(厚生労働省結核感染症課の加藤拓馬課長補佐)という状態だ。若林氏は「海上のさまざまな権益を取り決める国連海洋法条約では、今回のような寄港先が決まらないという事態は想定されていなかった。どの国が船に対して責任を持つのか、早急に議論して国際ルールを作るべきだ」と警鐘を鳴らす。

*9-17:https://www.agrinews.co.jp/p50006.html (日本農業新聞 2020年2月13日) 新型肺炎の混乱 野菜にも 中国産輸入が停滞 移動制限で収穫できず 国産切り替えも
 猛威を振るう新型コロナウイルスの影響で、中国産野菜の日本への輸入が滞り始めた。例年2月はタマネギやニンジンなどの輸入野菜が多くなり中国産が主力だ。現地で人の移動が制限され、収穫や流通が停滞し、解消の見通しは立たない状況だ。混乱が長期化する様相の中、一部の流通業者には国産に切り替えようとする動きが出ている。生鮮野菜の輸入量は、年間で2、3月が特に多い。昨年2月の財務省の貿易統計では、タマネギやニンジン、ネギ、キャベツなどの8割以上が中国産だ。中国政府は、ウイルスまん延を防ぐため、人の移動を厳しく規制している。地域によっては「3人以上集まってはいけない」などと制限。人員確保が難しく野菜を収穫できず、出荷適期を過ぎても畑に放置されている模様だ。今の時期、日本に輸入される中国産タマネギは、前年10月に内陸部の甘粛省で収穫、貯蔵後、山東省の加工場で皮をむき、袋詰めしたものが多い。日本の輸入業者によると「山東省政府は1月末、省内の各企業に2月9日まで加工場などを稼働しないよう通達を出した」という。10日から一部で稼働は再開したが、「出荷量は限定的。野菜を梱包(こんぽう)する段ボールやビニール工場などの稼働遅れも問題になっている」(同)。青ネギやニンジンは、主産地が山東省から福建省に移っている。「産地移行に合わせ、山東省の労働者が福建省に出稼ぎに行き、加工を担うことが多い」(同)が、移動制限で作業が停滞している。輸出する港でも混乱が生じている。港で働く従業員の多くが春節期間中に帰省したが、移動規制で職場に戻れず、人員不足による作業遅れで積み下ろしや積み替えを待つコンテナが増えている。主要な輸出港の天津港(天津市)。90人の従業員が働くコンテナ運営会社によると、同社は通常、毎日150~200個のコンテナをさばく。だが、従業員の6割が現場復帰できず、6000個のコンテナが港で滞留。同社は「港に処理待ちのコンテナがあふれている」と指摘。冷蔵・冷凍コンテナで運ぶが、電力不足で野菜などは品質低下が発生している。影響の程度や期間が見通せない状況を受け、国産需要が高まりそうだ。日本の輸入業者は「中国産タマネギの仕入れ値は2倍近くに上がっている。現時点は各業者が輸入在庫を抱え、国産へのシフトは限定的。ただ、3月以降も長期化すれば状況は変わってくる」とみる。業務用カット野菜の製造業者も「今後の調達が大変」と漏らす。国内主力のタマネギ産地、ホクレンは「2月に入って、大手外食チェーンなどから問い合わせがある」(玉ねぎ馬鈴しょ課)と説明する。北海道産タマネギは潤沢で量はそろうが、「国内の皮むき加工業者は人手不足」(同)で、需要が増えた場合にどれだけ対応できるかは不透明という。

*9-18:https://digital.asahi.com/articles/ASN2J0FFJN2HUTIL025.html?iref=comtop_8_04 (朝日新聞 2020年2月16日) 米から救出機「遅すぎ。乗らない」 拒むクルーズ船客も
 新型コロナウイルスの集団感染が起きている大型クルーズ船ダイヤモンド・プリンセス号。横浜港に停泊中の船から米国民を退避させるため、在日米国大使館はチャーター機を手配していると15日に公表した。米紙ウォールストリート・ジャーナルによると、船には米国人やその家族が約380人乗っている。船室内からも出られない状況が続き、ツイッターやフェイスブックなどで窮状を訴えたり、情報発信や交流をはかったりする人もいる。その中に「チャーター機には乗らない」と話す人がいた。カリフォルニア州から妻と乗船しているマシュー・スミスさん(57)だ。スミスさんは船内のアナウンスや食事などの様子とともに、「船内が危険だというネット上のデマにだまされないで」といった趣旨のツイートをした。15日、米政府がチャーター便を手配すると発表すると、「船内で検疫を終えた方がいい」とも発信した。朝日新聞の電話取材に応じたスミスさんの説明は次のような内容だった。予定された14日間の検疫期間が終わるまではあと数日。そのタイミングでの米政府のチャーター機派遣という決定は、「遅すぎた」。また、「検疫期間中でウイルスの検査結果も出ていない人々をまとめてバスに乗せ、飛行機で帰国させるという対応は、ここまで船室内で我慢してきた努力を無駄にするようなものだ」とも話した。その上で「しかも米国内でさらにもう2週間検疫するという。シンプルにばかげている」。感染の有無を調べる検査を受けていなかったり、検査の結果がまだ出ていなかったりする多くの人とともにバスや飛行機に乗る方がリスクが高い――。スミスさん夫妻はそう考え、船にとどまることを選んだという。また、チャーター機に持ち込める荷物は1人1個で70ポンド(約30キロ)までとされていることも問題だと話す。船に残した荷物がどうなるのかについても米大使館から説明がないため、戸惑っている米国人の乗客もいるという。大使館は、チャーター機で帰国しない米国人は一定期間、米国への入国は認められないと説明している。だが、その期間がいつまでなのかも明らかにされていないという。スミスさんは言った。「船で検疫を終え、検査結果が陰性となった時点で日本政府が上陸を許可してくれればいい。帰国できるようになるまでの間、東京に滞在するかもしれない」

*9-19:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200216&ng=DGKKZO55697760V10C20A2CC1000 (日経新聞 2020.2.16) クルーズ船、全乗客検査へ
 新型コロナウイルスの集団感染が発生し、横浜港で検疫中のクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」を巡り、加藤勝信厚生労働相は15日、全乗客をウイルス検査する方針を明らかにした。同船では新たに67人の感染が確認されたことも発表し、同船の感染者は計285人となった。同船には当初、乗客乗員約3700人が乗船。検査能力の限界から全員一斉の検査は見送っていた。厚生労働省は民間検査機関などに協力を要請。年齢などで区切って順次検査を進めることで、乗客全員を検査できるメドが立ったという。感染者と同室だった人を除く70歳以上の高齢者には検査を実施しており、70歳未満の乗客についても16日をめどに順次、検査を実施。陰性と判明した場合は、14日間の経過観察期間が終わる19日から健康状態に問題がなければ順次下船する。東北医科薬科大学の賀来満夫特任教授(感染症学)は「より早い段階で全員のウイルス検査に踏み切るべきだったが、受け入れ施設や検査体制の確保でやむを得なかった面もある」と話す。「下船した乗客の感染を確認した香港や、船籍国の英国、運航会社のある米国との情報共有を徹底していれば、横浜到着前に検査や感染防止の体制を整えることができた可能性がある」と指摘している。

*9-20:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200216&ng=DGKKZO55697800V10C20A2CC1000 (日経新聞 2020.2.16) 入港拒否、各地で相次ぐ 国際ルールに穴
 新型コロナウイルスによる肺炎の感染拡大を受け、各国・地域の政府によるクルーズ船の入港拒否が相次いだ。根拠が不明確なケースもあるが、感染症を想定した国際的な取り決めはなく、ルールの穴が浮かんでいる。日本人5人を含む約2200人を乗せたオランダ籍のクルーズ船「ウエステルダム」が13日、カンボジア南部の港に到着し、14日から一部乗客の下船が始まった。同国のフン・セン首相は「私たちは責任をもって乗客を助けなければならない」と表明した。米国企業が運航する同船は2月1日に香港、5日に台湾・高雄を出て沖縄・石垣港に向かっていたが、日本政府から「新型肺炎を発症した恐れのある人が確認された」として外国人の乗客乗員の入国を拒否された。11日にはタイ政府からも入港を拒否されていた。香港の企業が運航するバハマ籍の「スーパースターアクエリアス」も台湾で寄港を断られて那覇に向かっていたところ、7日に日本政府から入港辞退を求められた。その後、台湾は受け入れに転じ、台湾当局の検疫では乗客乗員に感染者は確認されなかったとされる。国土交通省の外航課は「乗客らに感染の可能性がある場合、受け入れは個別判断になる。運航会社の拠点、船籍国、乗客の多い国が判断要素となる」と説明している。香港や韓国、フィリピンなどもクルーズ船の入港を事実上拒否しているが、個別の船について感染者の有無は必ずしも明らかではない。世界保健機関(WHO)のテドロス事務局長は12日に「科学的な証拠に基づいたリスク評価をしていないことが多い」と苦言を呈した。

*9-21:https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20200219-00000029-mai-pol (毎日新聞 2020/2/19) クルーズ船「乗船」の神戸大教授が対応批判 菅氏は「感染拡大防止を徹底」と反論
 感染症対策に詳しい神戸大医学部の岩田健太郎教授が18日、政府の許可を得て、横浜港で検疫中のクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」に乗船した経験として、船内の2次感染リスクの管理が不十分だったと指摘する動画を公開した。菅義偉官房長官は19日の記者会見で「感染拡大防止に徹底して取り組んできている」と反論したが、政府高官は「いろいろな指摘には謙虚に耳を傾けたい」と述べた。岩田氏の説明によると、厚生労働省の協力を得て、災害派遣医療チーム(DMAT)の一員として18日に乗船した。18日夕方に下船後、動画投稿サイトで「ウイルスが全くない安全なグリーンゾーンと、ウイルスがいるかもしれない危ないレッドゾーンが、ぐちゃぐちゃになっていて、どこが危なくて、どこが危なくないのか全く区別がつかない」「熱のある方が自分の部屋から出て、歩いて医務室に行っている」「感染症のプロだったら、あんな環境に行ったら、ものすごく怖くてしょうがない」などと訴えた。菅氏は19日の会見で、「レッドゾーンとグリーンゾーンがぐちゃぐちゃ」との指摘に対して、「イエスかノーで答えることはできない」と回答。また感染対策の例として「乗員はマスクの着用、手洗い、アルコール消毒などの感染防御策を徹底するとともに、乗員の感染が確認された場合には同室の乗員も自室待機にするなど感染拡大防止を徹底している」と述べた。しかし、岩田氏の指摘は、こうした「感染確認後の対応」ではなく、それ以前の「検疫の初期段階にとるべき対応」に関するものだ。菅氏自身、18日の会見でクルーズ船への対応について「良かった点も、悪かった点もある」と認めている。クルーズ船は19日から下船が始まったが、政府は今後、一連の対応について検証する方針を示しており、岩田氏の指摘についても議論になるとみられる。

*9-22:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/491777 (佐賀新聞 2020.2.23) 下船の1人、新型肺炎発症、栃木の女性、感染確認
 クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」の新型コロナウイルスによる肺炎(COVID19)集団感染で、栃木県は22日、検査で陰性となり19日に下船した60代の日本人女性1人の感染が確認されたと発表した。クルーズ船を下船して帰宅した人の陽性確認は初めて。厚生労働省は22日、下船した乗客23人について、2月5日以降の健康観察期間中にウイルス検査をしなかったミスがあったと発表。加藤勝信厚労相は「深く反省する。こうしたミスが起きないよう徹底したい」と謝罪した。政府が乗客乗員約3千人超に2週間にわたって船内待機を求め、実施した大規模検疫と下船の判断は大きな課題を残した。栃木県によると、女性は21日に発熱があり、22日のウイルス検査で陽性と確認された。下船後は公共交通機関で栃木県内に戻り、最寄り駅から自宅までは友人が車で送った。移動中はマスクをしていた。厚労省によると、検査漏れのあった23人の内訳は日本人19人と外国人4人。下船後の精査で判明した。23人には再検査を要請し、3人は陰性だった。残る20人とは検査時期を調整する。感染拡大防止策を取った5日以前に一度検査していずれも陰性だったが、下船前に改めて検体を取る際に部屋に不在だったり、検査時期を確認しなかったりしたのがミスの原因という。症状が出れば地元で対応する。政府は新型肺炎対応策をまとめた基本的対処方針を25日にも公表する見通し。厚労省は、船内で作業をした同省職員は医療関係者らを除き、検査をすることも22日公表した。対象は41人。下船後2週間は自宅勤務する。22日は感染者と同室だった濃厚接触者89人が下船した。健康観察のため、埼玉県和光市の税務大学校に滞在する。日本人乗客らの下船はほぼ終了した。下船者の感染確認は、外国政府のチャーター機で帰国した人にも相次いでいる。厚労省によると計25人の感染が判明。米国籍の18人、イスラエル国籍の1人、オーストラリア国籍の6人だった。下船者への対応は日本と海外で異なる。米国やカナダ、英国、韓国、香港は14日間、施設で隔離。日本では日常生活に戻り、健康状態を2週間チェックし、不要不急の外出自粛を求めている。

<個性から新品種へ>
PS(2020年2月2日追加):冬枯れになる冬は、花が少なく閑散とした街並みが多いが、*10のように、JA庄内みどりが冬に咲く桜「啓翁桜」を栽培したそうだ。今後は、広大な敷地での栽培や管理にドローン・自動草刈機等での省力化を必要としているそうだが、輸出だけでなく国内にも植えて欲しい。国内の桜は、4月前後に一斉に咲いて短い期間で散り、華やかな期間が短すぎるため、季節をずらして咲く桜があれば、一年にわたって寂しくないからだ。このように、最初は「狂い咲き」と呼ばれながら個性の違いで生じた桜を繁殖させて新品種にすると、その希少さが価値を高くする。他の花にも、季節のずれた品種があればよいと思う。

 
     椿       蝋梅      水仙        白とピンクの梅
(図の説明:1番左は12月・1月に咲いていた椿、左から2番目は今咲き始めた蝋梅《ろうばい》、中央の水仙と右2つの梅はこれから咲く花だが、これに桜その他の花が加わると、冬も明るいだろう)

*10:https://www.agrinews.co.jp/p49902.html (日本農業新聞 2020年2月2日) 輸出拡大へ省力化を 北村地方創生相 山形県を視察
 北村誠吾地方創生担当相は1日、地域のニーズを把握するために山形県を訪れ、JA庄内みどりを視察した。同JAが輸出に取り組む、冬に咲く桜「啓翁桜」の栽培を見学した。意見交換したJAや生産者は輸出やスマート農業への支援を求めた。JAは啓翁桜を県内でも先駆けて香港やベトナムに輸出し、年々栽培規模を拡大させている。田村久義組合長は「新規の輸出先としてロシアと商談中」と説明。北村担当相は「ロシア大使館に魅力を伝え、売り込みたい。関係省庁で連携し、産地を支援していく」と応えた。JA花木専門部長の高橋正幸さん(53)は、啓翁桜の栽培法や広大な敷地を管理する苦労を説明。北村担当相は「ドローン(小型無人飛行機)や自動草刈り機の導入など、迅速な省力化の必要性が分かった」と述べた他、「啓翁桜の栽培体験など、教育機関と連携して子どもたちに特産物について教えてほしい」と地域での魅力発信にエールを送った。JAの視察後は、水田に囲まれ「庄内のウユニ塩湖」と呼ばれる宿泊施設「ショウナイホテル スイデンテラス」や、木を基調にした児童遊戯施設「キッズドーム ソライ」などを巡った。

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2020.1.15~16 女性リーダーと社会の受入体制 (2020年1月17、18、20、21日追加)
  
2020年1月11日の総統選で勝利した蔡英文氏    日本のジェンダー・ギャップ指数 

(図の説明:中国と向き合うにはかなりの覚悟が必要だが、左の2つの図のように、2020年1月11日の総統選では、中国と向き合う台湾の女性総統である蔡英文氏が圧勝した。日本は、右の2つの図のように、世界経済フォーラムの2019年ジェンダー・ギャップ指数で、総合121位《中国、韓国、インド以下》となり、特に政治分野における順位が144位と低い)

(1)台湾の民意と関係諸外国の対応
1)台湾総統選での蔡英文氏の圧勝を祝福する
 台湾の総統選(2020年1月11日投開票)で、*1-1のように、蔡英文候補が圧勝されたことを心から祝福する。高い投票率と蔡氏の過去最多得票により、台湾の民意は「中国との距離を保って自由で民主的な社会であり続けることだ」と明確に示された。

 これには、香港の状況を目の当たりにした台湾の有権者の切実な危機感と昨年1月の習近平中国国家主席の「一国二制度」による統一を迫る演説が影響し、総統選前に中国が台湾海峡を航行させた国産空母も台湾住民の反発を招いたそうだ。その理由は、自由や人権の有り難みを知っている人は、それが踏みにじられようとすれば必死でそれを護ろうとする上、台湾の人口構成は中国系ばかりではないからだろう。

2)米国の対応
 このような中、*1-2のように、トランプ米政権は、軍事・経済の両面で台湾を支援しており、今後は米国が世界における自国の「抑止力の源泉」と位置づける軍事と経済の両分野で中国の覇権的な攻勢の最前線に立つ台湾を積極支援していく考えだそうで、これには私も賛成だ。

 米国は、2018年に米高官の台湾訪問や定期的な武器売却を求める「アジア再保証イニシアチブ法」をトランプ大統領の署名で成立させ、「自由で開かれたインド太平洋地域」の推進に向けた台湾支援を着実に進めてきた。トランプ政権は、台湾経済が中国への依存度を急速に強めていることにも危機感を募らせ、現在、議会や政府内部で米国と台湾との経済関係の緊密化に向けた自由貿易協定(FTA)の締結を提唱する声が広がりつつあるそうだ。

 ここが、*1-1に書かれている「①台湾独立志向の蔡政権に対して中国は牽制を強め、台湾と国交を持つ国は中国の圧力で15ヶ国まで減った」「②蔡氏は中国が主張する『一つの中国』を受け入れないが、民進党が綱領で定める『独立』も封印してきており、そのバランス感覚を持ち続けてほしい」などと言うような強い側について、前例どおりに、いつまでも現状維持すればよいとする日本人の態度とは異なる。私自身は、台湾(中華民国)が中国から独立したままでいてよいと考える。

3)中国の対応
 2016年、トランプ米次期大統領が1979年以来の前例を破って正式な外交関係のない台湾の蔡英文総統と電話会談した時には、*1-3のように、中国は米政府に「米中関係の大局が不要な妨害を受けることがないよう、『1つの中国』政策を守って台湾問題を扱うよう促した」とのことである。

 また、2020年の台湾総統選における蔡総統の再選について、日米英の高官らが歓迎の談話を出したことについて、*1-4のように、中国外務省報道局長は「一つの中国の原則に反するやり方で、強烈な不満と断固とした反対を表明する」とのコメントを発表して各国に抗議した。

4)日本の対応
 日本は、*1-5のように、日経新聞も「台湾の中国離れ加速が米中対立の火種になる」などと記載しているが、台湾は親日的な国であり、火種になっても弱者を犠牲にすればよいのではなく、やらなければならないことはある。
 
 さらに、「台湾(中華民国)が独立したままでは、中国とよい経済関係を持てない」ということはあってはならない筈で、日本はじめ他の独立国は中国と経済関係を持ち貿易をしている。そのため、台湾は中華民国として国連に加入し、台湾の「経済的利益」をWTOを通して、または米国・ヨーロッパなどとのFTAで保ちながら、「国家の安全」と「経済的利益」を両立させればよいと考える。その方が、近くの日本も安心して付き合いやすい。

(2)女性に「控えめであること」を要求する日本文化
 台湾総統選では、台湾人の人権や一国二制度への賛否が重要なテーマになったため、今回は蔡英文氏への女性差別どころではなかったと思うが、*2-1のように、男女は発信についても機会均等ではない。

 私自身は、ディスカッション時には積極的に挙手して堂々と発言する方だが、そうすると、女性の場合は「声が大きい」「でしゃばり」「人の意見を聞かない」「独善的」等々の男性ならありえない批判に晒されることが多い。しかし、発言も発信もしなければ認められないため、女性の場合は矛盾した要求の下に置かれるわけだ。

 また、黙っていても周りが実績を理解し評価して昇進させてくれるほど世の中は甘くないため、上を目指せば自分の経歴や実績をアピールせざるを得ないが、女性がそれを行うと「謙虚でない」「目立ちたがり」「性格が悪い」等々のマイナス評価もついてくる。つまり、女性が発言や発信に控えめになるのは、生まれつきの「男女の違い」や「女性の不得意部分」などではなく、女性に「控えめであること」を要求する文化によるものであり、女性への矛盾した要求が女性の活躍を妨害しているわけである。

 そのため、*2-3のように、女性リーダーの育成において、まるで女性に覚悟が足りないかのように女性に覚悟の大切さを学ばせるというのは、本当の理由を理解しておらず、女性に対して失礼である。

(3)女性の実績と評価
 「ウィキペディア」の記事も、*2-2のように、男性の記事が8割を占めるそうだが、リーダーに占める女性の割合が低ければ、実績があっても「ウィキペディア」に載らないため、「ウィキペディア」だけが是正を目指しても限界があるだろう。

 さらに、「ウィキペディア」はじめメディアやネットに掲載されている記事は、その多くが本人ではなく他人が書いたものであるため、社会の一般常識と同様、女性を過小評価したり、頑張る女性をちゃかしたり、馬鹿にしたりする女性蔑視を含んだものが多い。そして、これが長く露出し続けるため、その評判が定着するというのが、私の経験である。

(4)農業における女性の参画とリーダーシップ
 農業は食品を扱う業種であるため、消費者の心をつかむには、*3-1のように、マーケティングが重要であると同時に、食品に関する知識が多くマーケットで商品選択の主体になっている女性を活躍させることがKeyである。そもそも「道の駅」の原点は、自分で作った農産物をリヤカーに積んで道端で売っていた農家の主婦で、彼女たちが持ってきた新鮮で安価な農産物や行き届いたサービス・料理に関するアドバイスなどが消費者の人気を集めていたのだった。

 そのため、*3-2のように、農漁業の経営が6次産業化を進める中、生産者であると同時に、生活者・消費者の視点を併せ持つ女性の役割が重要であることは明らかである。それにもかかわらず、農山漁村の女性の地位が低く、女性の社会参画促進や地位向上への啓発を今頃やっているのは、(何もしないよりはずっとよいが)遅すぎる。

 そして、2017年3月5日の記事によると、JA女性役員、女性農業委員の割合は10%には届かず、①役員になり外出が増えると夫が嫌な顔をし ②男性役員ばかりの中で意見が通らず ③組織化されていない農業女子の集まりでさえ出掛けるのに家族の許可がいる のだそうだ。

 日本農業新聞の2020年1月13日の記事では、*3-3のように、国連がジェンダー平等を含む持続可能な開発目標(SDGs)達成の担い手に協同組合を位置付け、JAグループが女性参画の数値目標を決めて女性参画を進展させた結果、2019年7月末時点で正組合員や役員比率の全てが前年を超し、女性正組合員比率が22.36%、女性総代が9.4%、全役員に占める女性割合は8.4%と増えたそうだ。しかし、役員どころか、女性正組合員比率も22.36%しかないのでは、日本の農村地帯におけるジェンダー平等はまだまだだと言わざるを得ない。

・・参考資料・・
<台湾の民意と関係諸外国の対応>
*1-1:https://www.nishinippon.co.jp/item/n/575782/ (西日本新聞社説 2020/1/15) 台湾総統選 中国は危機感受け止めよ
 中国とは距離を保ち、現在の自由で民主的な社会を守るという民意が明確に示された。台湾総統選(11日投開票)は中国との統一を拒否する与党民進党の現職蔡英文氏が過去最多得票で圧勝し、再選された。高い投票率も考え合わせると、半年以上に及ぶ香港の混乱を自国の将来と重ねた有権者の切実な危機感の表れと言えるだろう。蔡氏勝利の流れをつくったのは昨年1月の台湾政策に関する習近平中国国家主席の演説である。高度な自治を認める「一国二制度」による統一を迫った。当時、蔡氏は窮地に立たされていた。前年の統一地方選で年金制度改革など内政の混乱が響いて民進党が大敗し、党主席辞任に追い込まれ、総統再選も容易ではないとみられていた。習氏の演説以降、風向きは変わり、台湾で中国への警戒感が高まった。6月以降、香港で起こった大規模な反政府デモは「一国二制度」が形骸化している現実を国際社会に示し、それを目の当たりにした台湾では総統選の流れを決定的にした。「今日の香港は明日の台湾」と訴えた蔡氏の言葉が有権者の心をつかみ、総統選と同時に行われた立法委員(国会議員)選も民進党が過半数を維持した。中国にとっては民主派が圧勝した昨年の香港区議選に続く受け入れ難い結果だろう。だが、強権政治への拒否感が香港や台湾で広がっている現実を真剣に受け止めなければならない。台湾独立志向である民進党の蔡政権に対し、中国はけん制を強めてきた。台湾と国交を持つ国は中国の圧力で7カ国が断交し、今や15まで減った。総統選前には初の国産空母を台湾海峡で航行させた。こうした行為は台湾住民の反発を招くだけで、逆効果だったことは選挙結果から一目瞭然である。今後さらに台湾へ圧力をかけ続ければ、蔡政権を積極的に支援するトランプ米政権との対立も一段と深まりかねない。米国は昨年、インド太平洋戦略で「強力なパートナーシップ」を結ぶ相手と台湾を位置付け、戦闘機などの兵器売却を決めた。大国となった中国には、武力統一もちらつかせる強権的態度を慎み、香港や台湾の声に耳を傾ける懐の深さを示す-そうした振る舞いが求められる。蔡氏は、中国が主張する「一つの中国」を受け入れない一方で民進党が綱領で定める「独立」を封印してきた。中台間の緊張を不必要に高めない現実的な判断だろう。中台関係は東アジア情勢にも悪影響を及ぼしかねない。米中の覇権争いの最前線でもあり、難しいかじ取りを迫られるが、そうしたバランス感覚は持ち続けてほしい。

*1-2:https://www.sankei.com/world/news/200112/wor2001120024-n1.html (産経新聞 2020.1.12) トランプ政権 軍事・経済の両面で台湾支援へ
 トランプ米政権は台湾総統選での蔡英文氏の再選に関し、中国の脅威をにらんだ米台連携を円滑に継続できるとして歓迎する立場を明確に打ち出した。今後は、米国が世界における自国の「抑止力の源泉」と位置づける軍事と経済の両分野で、中国の覇権的な攻勢の最前線に立つ台湾を積極支援していく考えだ。ポンペオ国務長官は11日に発表した声明で、蔡氏について「(中国からの)容赦ない圧力にさらされる中、中台関係の安定維持に取り組んできたことを称賛する」と強調。さらに「台湾が蔡氏の下、自由、繁栄、国民のためのより良き道を希求する国々の輝かしい手本となり続けることを期待する」と表明した。米国では2018年、米高官の台湾訪問や定期的な武器売却を求める「アジア再保証イニシアチブ法」がトランプ大統領の署名で成立し、「自由で開かれたインド太平洋地域」の推進に向けた台湾支援が着実に進められてきた。中国問題に詳しい政策研究機関「戦略国際問題研究所」(CSIS)のボニー・グレイザー研究員は今後の中国の出方について「当面は米台の動向を見極め、台湾に圧力をかける機会を模索するだろう」と分析。近い将来に中台が武力衝突する可能性は否定しつつも、「米国は台湾の抑止力強化に向け一層の協力を図るべきだ」と訴えた。トランプ政権は一方で、台湾経済が中国への依存度を急速に強めていることに危機感を募らせている。議会や政府内部では、米国と台湾との経済関係の緊密化に向けた自由貿易協定(FTA)の締結を提唱する声が広がりつつある。政策研究機関「ヘリテージ財団」のライリー・ウォルターズ研究員は、米台がFTA交渉に向けた「高官級の経済対話」の枠組みを構築すべきだと指摘する。同財団のウォルター・ローマン氏も「トランプ政権が中国や日本などと貿易合意に達し、蔡氏が再選した今こそが米台FTAに向けた好機だ」と強調した。

*1-3:https://www.bbc.com/japanese/38204570 (BBC 2016年12月5日) 中国、トランプ氏と台湾総統の電話会談に抗議
ドナルド・トランプ米次期大統領が1979年以来の前例を破り、正式な外交関係のない台湾の蔡英文総統と電話会談したことについて、中国外交部は3日、「米国の関係各方面に厳正な申し入れをした」と明らかにした。中国国営メディアによると、外交部は米政府に「米中関係の大局が不要な妨害を受けることがないよう」、「1つの中国」政策を守り、台湾問題を「慎重に、適切に扱うよう」促したという。またこれに先立ち王毅外相は3日朝、台湾側による「つまらない策略だ」と台湾を批判した。トランプ氏と蔡総統は2日に電話会談。トランプ陣営側が台湾総統に電話をしたという情報もあるが、トランプ氏は2日、「大統領に当選しておめでとうと、台湾総統から電話してきた」とツイートした(強調原文ママ)。トランプ陣営によると、トランプ氏は蔡総統に今年1月の総統就任への祝辞を述べたと言う。米国は1979年に中国と国交を樹立し、台湾とは断交した。それ以来、大統領や次期大統領が台湾首脳と直接会話したことはないとされている。中国の反発を呼ぶ可能性についてメディアが報道すると、トランプ氏は「米国は台湾に何十億ドルもの兵器を売ってるのに、おめでとうの電話を受けちゃいけないって、興味深いな」とツイートした。ホワイトハウスは、トランプ氏と台湾総統との電話会談は、米外交政策の転換を意味するものではないと強調。米メディア報道によると、ホワイトハウスも電話会談の後に知らされたという。トランプ氏の報道担当は、次期大統領は米国の台湾政策について「よく承知している」と述べた。
●何が問題なのか
国共内戦で毛沢東率いる中国共和党軍に敗れた中華民国と国民党は1949年、台湾に移動。中華民国は国連代表権を維持し、欧米諸国には唯一の中国政府と承認されていたが、1971年に国連総会が中華人民共和国を唯一の中国の正統な政府と承認。中華民国は国連を脱退した。米政府は1979年に台湾と断交し、中華人民共和国の「一国二制度」を支持した。しかし断交してもなお、台湾にとって米国は唯一の同盟相手で最大の友好国だ。米国の台湾関係法ではは、台湾防衛用のみに限り米国製兵器を提供すると約束し、台湾の安全などを脅かす武力行使などに対抗し得る防衛力を米政府が維持すると約束している。中国は台湾に向けて多数のミサイルを配備しており、もし台湾が公式に独立を宣言すれば武力行使も辞さないと言明している。今年1月に圧勝した蔡総統率いる民進党は、伝統的に台湾独立を綱領としており、蔡政権は「一国二制度」政策を受け入れていない。
<解説1> 懸念から危機感と怒りへ キャリー・グレイシーBBC中国編集長
台湾に関する米政府の40年近くにおよぶ慣例をトランプ氏が破り、台湾総統と直接会談したことは、中国政府関係者を驚嘆させた。11月8日の当選以来、中国政府はトランプ氏のアジア政策顧問が誰で、対中政策がどうなるのか理解しようと、躍起になっている。台湾総統との電話会談は、これまで懸念だったものを怒りに変質させるだろう。中国政府は台湾を一地方自治体とみなしている。独立主権国家としての形式を一切否定することが、中国外交政策の主要優先事項なのだ。
<解説2> 穏やかな反応 シンディ・スイBBC記者、台北
中国の反応は比較的穏やかだった。最初からいきなりトランプ氏とぎくしゃくしたくないからだ。加えて中国は、トランプ氏は政治家として経験不足だとみているので、今のところはとりたてて騒がず、見逃すつもりだ。米政府が、中国と台湾に関する政策に変化はないと表明したことも、中国にとってはある程度の安心材料だろう。しかし舞台裏では中国はほぼ間違いなく、このような外交失態を二度と起こさないよう、トランプ陣営を懸命に「教育」しているに違いない。蔡総統のこの動きを受けて、中国政府はいっそう蔡氏に対して怒り、不信感を抱き、中国からの正式独立を目指しているものとみなすだろう。

*1-4:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO54333200S0A110C2FF8000/?n_cid=TRPN0017 (日経新聞 2020.1.12) 中国が日米英に不満表明 蔡氏への祝意に反発
 中国外務省の耿爽副報道局長は12日、台湾の蔡英文(ツァイ・インウェン)総統の再選に日米英の高官らが歓迎の談話を出したことに「(中国大陸と台湾は一つの国に属するという)一つの中国の原則に反するやり方で、強烈な不満と断固とした反対を表明する」とのコメントを発表した。すでに各国へ抗議したという。耿氏は「台湾地区の選挙は中国の一地方のことだ」と指摘。「台湾問題は中国の核心的利益だ。中国と国交を結ぶ国と台湾とのいかなる形の政府間往来にも反対する」と強調した。

*1-5:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO54327820R10C20A1EA2000/ (日経新聞 2020/1/11) 台湾、「中国離れ」加速 米中対立の火種に
 統一を遠ざけるため距離を置くか、経済交流の果実を求めて接近するか――。中国との距離を巡る「自立と繁栄のジレンマ」と呼ばれる問題を巡り、台湾の民意は揺れ動いてきた。鴻海(ホンハイ)精密工業など台湾企業は1990年代から中国に進出し、連携を深めた。2001年の世界貿易機関(WTO)加盟で中国の経済成長に弾みがつくと、中台経済の一体化を求める声が強まり、08年には対中融和を掲げる国民党の馬英九政権が発足した。だが情勢は一変した。台湾の中央研究院による19年3月の世論調査では、対中関係で「国家安全を重視する」との回答が58%に上り、「経済利益を優先する」を27ポイントも上回った。呉介民・副研究員は「統一への危機感の高まりに加え、米中摩擦で対中接近が必ずしも利益に結びつかなくなった面もある」と分析する。対中強硬路線を鮮明にする蔡氏の再選で、台湾を巡る米中対立が激化するのも確実だ。米国は1979年に台湾と断交して中国と国交を樹立。その後は「台湾関係法」に基づき台湾の安全保障を支える一方、対中協調を重視して台湾独立を綱領に掲げる民進党と距離を置いてきた。だがトランプ米大統領は就任直前の16年12月に蔡氏と電話で直接やりとりし、19年にはF16戦闘機の台湾への売却を決めるなど、中国への配慮で封印されてきた「タブー」は次々と破られた。蔡政権は中国大陸と台湾が1つの国に属するという「一つの中国」原則を認めない一方、党が持つ独立志向を封印する立場をとる。「現実路線で米の信頼を得る戦略」(民進党幹部)だ。米国防総省は19年のインド太平洋戦略の報告書で、台湾をシンガポールなどと並ぶ「有能なパートナー」とした。蔡氏は「米国との関係は過去最高にある」と誇り、2期目では同戦略への協力や米との軍事接近を鮮明にする公算が大きい。中国にとって台湾は海洋進出の出入り口に位置し、東アジアへの米国の介入を防ぐ安保体制を築くうえでも譲れない「核心的利益」だ。米台の接近は中国の激しい反発を引き起こすのが必至だ。半導体受託生産最大手、台湾積体電路製造(TSMC)など次世代通信規格「5G」の核心技術を握る企業が存在する台湾は米中ハイテク摩擦の最前線にもなる。米国がハイテク分野で中国とのデカップリング(切り離し)を本格化すれば台湾を避けて通れず、供給網で深く関わる日本にも影響が及びかねない。

<女性に「控えめであること」を要求する文化>
*2-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20191202&ng=DGKKZO52770090Z21C19A1TY5000 (日経新聞 2019.12.2) 男女の発信スタイルの違い 機会平等を担保しよう OECD東京センター所長 村上由美子
 米ハーバード・ビジネススクールでは、成績上位5%の学生にベイカー・スカラーという最優秀賞を与える。MBA(経営学修士)を取得する女子学生は4割を超えたが、ベイカー・スカラーの女性比率は2割程度にとどまっていた。学力や潜在的能力など男性と同じ条件を満たして入学した女性達。入学後に苦戦したのは、クラスでのディスカッションだった。ハーバードでは成績の50%がディスカッションへの参加で決まる。積極的に高々と挙手し、ものおじせず発言する男性に比べ、女性の参加は控えめだった。この問題に気がついた大学側は、意識的に発言機会を男女平等にするよう教授陣を促した。その結果、ベイカー・スカラーの男女比率は改善。ついに昨年は男女間の成績の差異は完全に消滅した。男女のコミュニケーションや発信スタイルの違いに配慮することで、機会平等を担保するという興味深い例だ。私自身にも経験がある。ニューヨークの投資銀行で管理職に昇進した時だ。ボーナスシーズン前に自分の功績をアピールしにくる部下は全員男性だった。女性の部下が昇進やボーナスの交渉に来る事はめったになかった。私自身も新入社員時代「主張せずとも上司は私の成果を認めてくれている」と勝手に思い込んでいた。部下を評価する立場になって初めて、男性がいかに積極的に自己アピールしていたかに気づいたのだ。公平な評価・判断には、男女の違いを意識し、自らにインプットされる情報の偏りを精査する必要があると学んだ。日本でも女性を積極的に採用し、昇進を促進する企業は増えた。しかし彼女達の声は経営に生かされているだろうか。男女の違いを理解した上で、女性の持つ能力を開花させる取り組みが必要だ。効果的に会議に参加するためのコーチングを提供したり、司会役が女性に積極的に発言機会を与えたり、意識的に女性の背中を押し議論への参加を促すことが効果的だ。経済協力開発機構(OECD)の調査では、宿題にかける時間は女子学生の方が男子学生よりも長いという結果が出ている。女性は準備を周到に整える傾向があるが、自己肯定力は男性の方が往々にして高い。このような特性を理解した上で、女性の不得意部分を補う工夫を施せば、自らの能力を発揮し活躍する女性がさらに増えるはずだ。

*2-2:https://www.nishinippon.co.jp/item/n/570293/ (西日本新聞 2019/12/22) 「ウィキペディア」にも男女格差 ネット事典、男性記事が8割占める
●是正目指す「ウィキギャップ」
 インターネット上の百科事典「ウィキペディア」。何かを検索したら上位に出てくるおなじみのサイトだ。ただ、人物を紹介する記事の約8割は男性で、女性は実績があって著名でも記事が存在しないケースも多いという。そこで、ウィキペディアに女性の記事を増やし、ネット上の男女格差をなくそうというイベント「ウィキギャップ」が世界各地で開かれている。新たな試みが目指すゴールは、ネット上だけでなく、実社会における格差解消だ。2001年に登場したウィキペディアは、誰もが無料で自由に編集に参加できるのが特徴で、世界約300言語で展開されている。11月末、福岡市内のビルの一室で、女性を中心に15人ほどがパソコンに向き合い、作業に没頭していた。それぞれが詩人や経済学者など「載せるにふさわしい」と思う女性の業績や経歴を調べ、3時間ほどかけて執筆した。参加した司書の古島信子さん(50)はネットサーフィンという言葉を普及させたとされる司書「ジーン・アーマー・ポリー」について翻訳。「興味を持った人が彼女を知るツールの一つになればうれしい」。なぜ男性の記事が多いのか。「執筆者に男性が多いので、女性著名人や女性の関心が高い事柄は軽視されやすい」と指摘するのはウィキペディアに詳しい武蔵大の北村紗衣准教授(フェミニズム批評)。英王室キャサリン妃のウエディングドレスに関する記事やブラックホールの撮影に携わった女性科学者に関する記事が「百科事典として取り上げるに足らない話題」として“削除依頼”が出されたこともあるそうだ。運営するウィキメディア財団によると執筆者の9割が男性と推測される。北村准教授は「書く人の多様性がないと内容にも偏りが生じる。女性執筆者が増えることが女性記事の増加、百科事典の質の向上につながる」と力を込める。そもそも、現在「活躍する立場」の多くを男性が占めているのが現状で、男性の人物記事が多いのは当然という指摘も。特に日本は、先日発表された男女格差を指数化した報告書でも世界153カ国中、121位と低迷。女性議員(衆議院)や女性管理職の割合は1割程度にすぎない。政治分野の男女共同参画推進法や女性活躍推進法など法整備が進んでも、実態の改善には時間がかかりそうだ。一方で、ウィキペディアに女性の記事を増やす取り組みは、さまざまな立場の人が参加しやすい。北村准教授は「ネット上の男女格差解消の動きが、実社会に波及することも期待できる」と話す。
【ウィキギャップ】スウェーデン外務省などの呼びかけで「ネットの男女格差を埋めよう」と2017年に始まり、約60カ国で開催。30の言語で約3万2000本の記事が編集された。国内では東京や大阪でも開催され、今後も横浜などである予定。福岡のイベントは丸

*2-3:http://qbiz.jp/article/103068/1/ (西日本新聞 2017年2月5日) 女性リーダー育成 覚悟の大切さ学ぶ 福岡市で研修
 企業など組織の担い手となる女性を育成する「女性トップリーダー育成研修」が2〜4日、福岡市で開かれた。福岡県内の企業役員や管理職などの女性20人が参加し、さらに飛躍するために必要なことを学んだ。研修は福岡女子大(同市東区)が初めて企画。2泊3日を共にして交流を深め、将来につながる人脈を築く狙いがあるという。国際基督教大の北城恪太郎理事長や地元経済界トップらがリーダーに欠かせない心構えや教養を伝授した。4日のグループワークでは、参加者が目指すリーダー像を議論。「周囲の意見を聞きすぎて、自分らしさを出せていない」「リスクを避けようとすると部下が育たずさじ加減が難しい」などと悩みを語り合い、自分の克服すべき弱点や強みをあぶり出した。参加した福岡空港ビルディング営業部次長の鰺坂裕子さん(49)は「意識して上を目指す覚悟が必要だと感じた。ここでできたネットワークは財産になると思う」と手応えを語った。参加者は3月の最終研修までに目指すリーダー像を固め、それを実現する行動計画を発表する。

<農業における女性の参画とリーダーシップ>
*3-1:https://www.agrinews.co.jp/p39945.html
(日本農業新聞 2017年1月19日) 販売革新へ戦略を 人材育成で初講習会 全中・全農
 JA全中とJA全農は18日、農畜産物のブランド化など販売戦略の企画・実践力を向上させるための講習会を東京都町田市で初開催した。JAや連合会の販売事業戦略担当職員らが、「販売革新」をテーマに少人数のグループ討議を展開。どんな戦略をとれば販売力アップが見込めるかを参加者が提案し合うスタイルで、消費者の心をつかむ方策について議論を掘り下げた。20日まで開く。担当者と経営側との間に立つ職員を対象とし、11人が参加した。2、3人のグループでの討議で、参加者のJAが抱える販売戦略の課題克服や、JA内の意識改革をどう進めるかなど販売革新の方向性を話し合った。JA高知市が展開する、野菜「芥藍菜(かいらんさい)」の認知度向上策に関して、試食や貯金・共済の粗品とすることで消費者の認知度を高めていくとの提案があった。新潟県JA新潟みらいのカレー専用米の販路拡大に向けては、他産地との差別化のため「米どころ新潟が本気で作った専用米」とPRしたり、既存の有名カレー商品とタイアップ販売したりしてみてはどうか、といった意見が参加者から示された。これに先立ち、農産物流通に詳しい流通経済研究所の南部哲宏特任研究員が講義。マーケティングの意義について、卸売市場だけでなく「実際に食べてくれる人たちの情報を集めて意味を見つけ、どういうことが求められるのかを発見することが大事」と強調した。JAグループは自己改革でマーケットイン(需要に応じた生産・販売)に基づく事業方式への転換を目指している。講習会は、抜本的な改革が求められる中、実需・消費者の潜在的なニーズを掘り起こし、新たな販売戦略を中心となって担う人材の育成を狙って企画した。2日目は課題解決に向けた販売事業戦略の提案書を作成するためグループ討議を実施し、最終日に発表する。

*3-2:https://www.agrinews.co.jp/p40297.html (日本農業新聞 2017年3月5日) 農山漁村女性の日 発展の鍵握る活躍期待
 3月10日は「農山漁村女性の日」。この日を前後して、農山漁村女性の社会参画促進や地位向上へ、さまざまな啓発行事が行われる。女性は農業従事者の約半数を占め、農村社会と農業の発展に欠かせない存在だ。農業経営が6次産業化を進める中、生産者であり、かつ生活者と消費者の視点も併せ持つ女性の役割は、ますます重要さを増していくはずだ。その役割の価値を見つめ直すきっかけにしよう。農業経営やJAなどの方針決定の場へ、女性の参画が増えている。農水省の調査によると、女性の認定農業者は2016年3月で1万1241人と前年より429人増えた。12年から毎年400人以上増え続けている。JA女性役員は1305人(16年7月)で、全役員に占める割合は7.5%と前年比0.3ポイント増。女性農業委員も2636人(15年9月)で、全委員に占める割合は7.4%と同0.1ポイント増となった。農水省の「農業女子プロジェクト」も4年目を迎え、農業女子メンバーは、今では500人を超える。企業と提携して商品を開発したり、教育機関と組んで学生に就農を促したりと活動が盛んだ。ことし初めて、農業女子の取り組みを表彰するイベントを開いてPRを強める。ただ、社会参画への進み方は遅い。女性認定農業者が増えているとはいえ、全体の4.6%だ。JA女性役員、女性農業委員も、第4次男女共同参画基本計画で共に早期目標に掲げる10%には届かない。「役員になり外出が増えると、夫が嫌な顔をする」「男性役員ばかりの中で意見が通らない」。JA女性役員からは、そういった不満の声が上がる。一方、組織化せず活動の自由度が高く見える農業女子の集まりの中でさえ「出掛けるには家族の許可がいる」と悩む声を聞く。家族経営が主流で、かつ男性が中心となっている農村社会の閉鎖的な構図が、依然としてうかがえる。女性農業者が真に活躍し、能力を発揮するにはまだ厚い壁があるのだ。家族の後押しはもちろん、活動を受け止める男性らがさらに理解を深める必要がある。日本政策金融公庫が16年に発表した調査では、女性が経営に関与している経営体は、関与していない経営体よりも経常利益の増加率が2倍以上高かった。特に、女性が6次産業化や営業・販売を担当している経営体で、経常利益の増加率が高い傾向にあった。買い物好きでコミュニケーション能力が高い女性だからこそ、的確に消費者ニーズを把握できていることの表れだ。農業収益を増やし、経営発展の鍵を握るのは女性農業者だ。「農山漁村女性の日」が3月10日とされたのは、女性の三つの能力である知恵、技、経験をトータル(10)に発揮してほしい――との願いが込められている。もっと活躍できる社会へ、家族、地域挙げて環境整備を急ぐべきだ。

*3-3:https://www.agrinews.co.jp/p49717.html (日本農業新聞 2020年1月13日) 女性参画が進展 JA新目標着実に
 JAの運営で女性の参画が進んでいることが、JA全中の調査で分かった。正組合員と総代、役員(理事など)全ての女性参画割合が前年を上回った。国連は、ジェンダー平等を含む持続可能な開発目標(SDGs)の達成の担い手に協同組合を位置付けており、識者は「けん引する勢いで取り組んでほしい」とJAグループに期待する。
●正組や役員率全て前年超す 19年7月末
 JAグループは、2019年3月の第28回JA全国大会で、従来を上回る女性参画の数値目標を決めた。①正組合員30%以上②総代15%以上③理事など15%以上──を掲げた。第4次男女共同参画基本計画やJA全国女性組織協議会の独自目標を踏まえた。19年7月末現在の女性正組合員比率は、22・36%と前年から0・49ポイント上昇。総代は9・4%と同0・4ポイント増えた。全役員に占める女性の割合は8・4%で同0・4ポイント増だった。女性役員総数は同9人減の1366人。JAの大規模合併で、役員総数が847人減の1万6260人と大幅に減った影響とみられる。一方、100JAで女性役員がゼロだった。全中は「女性参画の推進には、JA経営トップ層の理解が欠かせない。トップ層が集まる会議で必要性や意義を伝え、理解を求めていきたい」としている。
●SDGsけん引を
△協同組合や農村女性の活躍に詳しい奈良女子大学の青木美紗講師の話
 SDGsの視点で見ると、数値を引き上げ、高い目標を持つことは大切だ。協同組合は、SDGsの推進で大切な事業や活動をしている。JAが、けん引する勢いで取り組んでほしい。一方、数値目標が独り歩きしないようにすべきだ。女性参画のメリットは、女性目線の事業提案ができること。女性組合員や生活者の視点に立った提案の実行でJA事業の拡大も期待できる。女性の意見に耳を傾け、否定しないことが重要だ。家事や育児などを行うことの多い女性が、参加しやすい環境を整えることも大事。女性参画が進めば、性別や立場を問わずさまざまな人がJAの経営や事業に参画しやすくなるはずだ。

<EU委員長の意思決定と日本の政治・行政>
PS(2020年1月17日追加):*4-1のように、EUは、域内での温室効果ガスの排出を2050年に実質0にする目標達成に向けて、経済・社会構造を転換していくために、低炭素社会への移行を支える技術革新への投資を今後10年間で少なくとも約122兆円行い、これによって再エネへの転換を図って経済成長に繋げるそうだ。これは覚悟のいる大胆な判断で、かつ科学的・合理的な判断でもあり、フォンデアライエン欧州委員長も女性だ。
 一方、私が提案して(私がこう言うと、必ず嘘だと決めつける人がいるが)太陽光発電・EV・自動運転車を世界で最初に市場投入した日本は、*4-3のように、原発と石炭を“ベースロード電源”に指定したり、送電網のコストを太陽光企業にツケ回したりするなど、再エネやEVの普及を妨害するための経産省の後ろ向きの対応にことかかない。そして、こういうことが続けば、日本に豊富な再エネの利用が阻害され、日本国民を豊かにすることはできない。
 このような中、*4-2のように、農業では無人田植え機の電動版もできたそうで、これなら日本だけでなく世界でニーズがあると思われるが、メーカー希望小売価格が1468万1700円では高すぎて国内でもなかなか普及できず、世界で普及するのは中国製をはじめとする他国製になるだろう。これが、名目インフレ(名目物価上昇)の悪弊の一つなのである。
 このように、日本では殆ど男性の“(同じ仕事を続けてきた国内志向で視野の狭い)ベテラン”と言われる政治家・行政官が政治・行政を担当してきた結果、*4-4のように、税収が伸び悩んで2025年の「基礎的財政収支」は国・地方あわせて3兆6千億円の赤字になるのだそうだ。そして、その原因に必ず世界経済の減速というような外的要因を挙げるが、景気対策と呼ぶ無駄遣いが多く、根本的解決になる投資をしないのが本当の原因であるため、これまでどおりではいけないということだ。

*4-1:https://www.tokyo-np.co.jp/article/world/list/202001/CK2020011502000274.html (東京新聞 2020年1月15日) 温室ガスゼロへ122兆円投資 EU、技術革新へ今後10年で
 欧州連合(EU)欧州委員会は十四日、EU域内で温室効果ガス排出を二〇五〇年に実質ゼロにする目標の達成に向けて経済・社会構造を転換していくため、今後十年で少なくとも一兆ユーロ(約百二十二兆円)を投資する計画を発表した。低炭素社会移行を支える技術革新への投資を通じて経済成長を図る一方、石炭発電の比率が高い東欧などに対し、再生可能エネルギーへの転換を支援する構え。投資計画は、フォンデアライエン欧州委員長の総合環境政策「欧州グリーンディール」の資金面の裏付けとなる。一兆ユーロの約半分はEU予算で賄い、残りは加盟国や公的機関、民間などが拠出する。投資計画はEU欧州議会と加盟国の承認が必要。フォンデアライエン氏は十四日、フランス・ストラスブールで開かれた欧州議会本会議で「行動し損ねた場合のコストは巨大なものになる。今、投資するしか選択肢がないのだ」と訴え、巨額の出資に理解を求めた。「欧州グリーンディール」は先月就任したフォンデアライエン氏の看板政策。欧州委は現在策定中の二一~二七年のEU中期予算の25%を気候変動対策に充てる方針を既に示すなど、気候変動対策を急いでいる。フォンデアライエン氏は「われわれを待ち受ける(経済・社会の)転換は前例がない」と強調。構造転換の波に激しく揺さぶられる「人々や地域を支援」しつつ、「グリーン経済の投資の波を起こす」と訴えた。石炭への依存度が特に高いポーランドは、低炭素社会移行に莫大(ばくだい)な費用がかかるとして、昨年十二月のEU首脳会議で「五〇年に排出ゼロ」のEU目標への合意を留保するなど、資金調達が重要な問題となっている。

*4-2:https://www.agrinews.co.jp/p49749.html (日本農業新聞 2020年1月16日) 業界初 無人田植え機 電動コンセプトも クボタ展示会
 農機メーカーのクボタは15日、京都市内で製品展示見学会を開き、基地局の設置が必要ない自動運転トラクターや、業界で初となる無人運転田植え機を発表した。同社は、トラクターと田植え機、コンバインで自動運転農機をそろえることになる。無人運転の電動トラクターなどコンセプト農機、創立130周年記念の特別モデルも展示。スマート農業の普及につながる製品を充実させた形だ。新しく発表した「アグリロボトラクタMR1000A」は、単独で自動運転ができる機種だ。従来の無人トラクターは自動運転の際、近くに移動基地局の設置が必要で、農家にとって負担になっていた。新製品は、国の電子基準点情報を利用することで、基地局を設けなくてもよい初めての機種となった。今月中に発売。メーカー希望小売価格は1468万1700円とした。会場ではトラクターと田植え機、コンバインで、自動運転のラインアップをそろえたことをアピールした。10月に発売する「アグリロボ田植機NW8SA」は、業界初の無人運転田植え機だ。有人自動運転ができる自脱型コンバイン「アグリロボDR6130A」は昨年12月に発売した。新型機械「X(クロス)トラクター」のコンセプト機も披露した。完全無人運転の電動トラクターで、4輪クローラーで動く。車高を変える機能を備え、水田でも畑でも使えるのが特徴だ。有人運転の電動機は2023年の発売を目指す。同社は20年に創立130周年を迎えることから、会場には記念特別モデルも展示した。オレンジメタリックの特装色で、田植え機や耕運機などを用意した。この他、衛星利用測位システム(GPS)直進アシスト機能付きトラクターなどの試乗も行った。展示見学会は16日まで。2日間で代理店の担当者ら5000人の来場を見込む。

*4-3:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200117&ng=DGKKZO54478640W0A110C2EA1000 (日経新聞 2020.1.17) 送電網コスト、誰が負担? 太陽光企業にツケ回し案、国「後出し」非難受け修正も
 再生可能エネルギーの普及に向け、費用負担のルールを決める議論が紛糾している。焦点は送配電網の維持費用を誰が負担するか。普及させるには国民負担をできるだけ減らす必要があるが、新たなコスト負担を強いられる見込みが濃厚な再エネ事業者側からは、海外勢を含めて「後出しじゃんけん」との非難が噴出。今年度内の着地に向け、大詰めを迎えている。もめているのは、政府が2023年度に導入見込みの「発電側基本料金」制度の詳細だ。これまで電力の小売事業者が託送料金で負担していた送配電設備費用を発電事業者にも分担させる。負担の公平性の確保や電力システム全体のコスト低減につなげるのが狙いだ。23年度の制度導入を目指すことは19年9月の経済産業相直属の専門会合で決まっていた。ただFIT(再生可能エネルギー固定価格買い取り制度)の発電事業者については、追加コストと同水準を補填して調整する措置(調整措置)を置くことを検討することになっていた。FIT事業者が販売価格への転嫁ができないことに配慮した。ところが、前後して「利潤配慮期間」と呼ばれる12年7月~15年6月に認定された電源については、買い取り価格自体が高額に設定されていることを理由に、調整措置の対象外という案が19年夏に浮上した。これに驚いたのが、この期間に高額な買い取り価格を当て込んで日本の太陽光発電事業に参入した発電事業者らだ。
●10年間で6000億円
 太陽光発電を手掛けるオリックスの関係者は「こんなひどい後出しじゃんけんは見たことがない。当社の株主は外国人投資家も多い。日本の再エネ制度への信頼を損なう制度変更だ」と憤る。発電事業者らの試算によると、該当する期間の電源で稼働済みの全案件を対象にすると、23年度以降の10年間で計約6千億円の課金につながるという。カナディアン・ソーラー・アセットマネジメントの中村哲也社長は「予定していた利益を遡及的に奪う制度変更で納得できない。将来の投資も難しくなる」と話す。事業者からは、このまま利潤配慮期間に何の調整措置も講じられない場合、日本も加盟するエネルギー憲章条約に基づき「投資家に対する公正待遇義務に違反する」として、国との仲裁を求める訴えを起こすとの発言も飛び出す。再エネ制度の変更をめぐるトラブルが起きているのは日本だけではない。スペイン政府は10年に制度変更を行い、海外の発電事業者らから30件以上の仲裁を申し立てられた。資源エネルギー庁は「スペインの例は買い取り価格自体を引き下げるなど、より直接的な制度の不利益変更だった。日本のようにコストが上昇して間接的に利益が減ることまで条約違反といえるかは疑問」と反論する。国は高まる事業者らの不満を収めるため、19年12月17日の専門会合で新たな制度案を示した。発電側の課金によって負担が減る小売事業者と、FITの発電事業者が交渉して新たな取引価格を決める内容だ。小売り側が取引価格に一定程度を補填することを見越した案だ。
●普及へ透明性を
 結局、負担をグルグル付け替えているだけで、誰が何を負担しているのか理解しにくい構図になっている。新提案への発電事業者の反応は「少しでも補填してもらえるならありがたい」というものから「交渉力が劣る事業者が損をするのでは解決にならない」など温度差がある。1月以降も制度設計を巡る議論が続く見通しだが、結論が出るかどうかは微妙だ。再エネを普及させるために政府が当初高い収益モデルを示し、国内外から投資を呼び込む手法は欧州など海外政府も活用している。ただその後、持続可能性の観点から参入事業者に不利な制度に変え、事業者が不信感を抱く事態が繰り返されれば、再生エネの普及自体が遠のく。必要な負担をどう配分するのか。丁寧な説明も含めて、透明性の高い制度設計が欠かせない。

*4-4:https://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2020011701001236.html (東京新聞 2020年1月17日) 25年度の赤字額は3・6兆円に 基礎的財政収支、税収伸び悩み
 政府は17日、経済財政諮問会議を開き、中長期財政試算を示した。重要指標の「基礎的財政収支」は、高い成長率が続く楽観的な想定でも、黒字化を目指す2025年度に国・地方の合計で3兆6千億円の赤字になる。世界経済の減速で税収が伸び悩み、赤字額は昨年7月試算の2兆3千億円から拡大。目標達成に向け、一段の歳出抑制と歳入増加策が必要となる。GDP成長率は、昨年12月に決定した経済対策の効果などで、23年度に実質で2%、名目で3%台の高成長を実現すると想定した。この場合、基礎的収支は前回試算と同じ27年度に黒字化するが、黒字額は1兆6千億円から3千億円に縮小した。

<農林中金は職員を地方に多く置くべき>
PS(2020年1月18日追加):農林中金は、*5-1のように、①2022年にも本店を有楽町から大手町に移転する ②都内の複数の事務所を集約して効率化に繋げる ③賃料等で年間約20億円のコスト削減をする ④ペーパーレス化等で職員1人当たりのスペースを半減させる ⑤JAグループ一体となって効率的で働きがいのある職場づくりを目指す としているが、農林中金の役割は、農協が地方の農業者から集めた預金を農業の発展のために使うことであり、都市銀行と同様に外国で散財することではない。そのため、地方の農協に支店を置いて優秀な人材を配置し、農業地帯を歩いて実情を知った上で、農業の発展のためにできることを企画すべきだ。
 従って、①②はよいと思うが、農林中金本社に約1200人もの職員を置いておく必要はなく、本社は300人くらいにして残りは地方に配置し、農村地帯で経験を積ませるのがよいだろう。何故なら、そうすれば農業現場のニーズを知ってスキームを作ることができ、③の賃料も格段に安くなる上、地方に人材が供給されるからである。ただし、人の能力が結果を左右するため、優秀な人材を採用する必要があり、そのためには④のように職員1人当たりのスペースを半減させるのではなく、外資系並みのゆとりある快適なオフィスを作って、⑤を達成させるべきである。
 なお、現在は、*5-2のように、政府が技術革新でCO2を削減するために、今後10年間で官民あわせて30兆円を研究開発に投資し、2050年までに世界で予想される排出量以上の年600億トン以上を削減する目標を掲げているが、ここで重要な役割を果たすのは、地方にある再エネ資源と農林漁業なのだ。
 さらに、*5-3のように、台湾の鴻海がFCAと中国でのEVの合弁会社設立に向けて交渉する時代となり、再エネ・EV・自動運転は農林漁業や地方で大きな役割を果たすのである。

*5-1:https://www.agrinews.co.jp/p49765.html (日本農業新聞 2020年1月18日) 農林中金本店移転へ 東京・大手町に 事務所集約し効率化
 農林中央金庫が本店を東京・有楽町から大手町に移転する方向で検討していることが17日、分かった。都内にある複数の事務所を集約し、効率化につなげる。賃料などで、年間約20億円のコスト減を見込む。年度内をめどに移転を巡る方針を正式決定。2022年にも移転する。農林中金は1923年に創立し、当初は日本橋に本店があった。1933年に現在の場所にあった「農林中央金庫有楽町ビル」に移った。93年に第一生命ビルと一体化し、現在の「DNタワー21」となった。農林中金は土地の約4分の1、建物の3分の1強を所有している。現在のビルには農林中金の職員約1200人が勤めており、同ビル近くや豊洲、大手町のJAビルにも本店機能を持つ事務所がある。どこまで集約するかは調整中だが、これらを集約し移転することで、賃料をはじめとした運営コストの削減につなげる。移転先は、JA全中やJA全農が入るJAビル近隣のビルで調整。複数フロアを購入する方向だ。22年から1年程度で段階的に移転をしていく。厳しい事業環境を受けて、JAが経営基盤強化に取り組む中で、農林中金としても効率化を進める。ペーパーレス化などを通じて、新たなビルではこれまでに比べて、職員1人当たりのスペースを半減させることを目指す。JAビルの近くとすることで、JAグループ内の連携強化にもつなげる。農林中金は「関係者と調整中だが、本店機能集約は検討している。創立100周年に向けて、JAグループ一体となり、効率的で働きやすく、働きがいのある職場づくりを目指したい」として、移転を働き方改革にもつなげる考えだ。

*5-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200118&ng=DGKKZO54509560X10C20A1EA3000 (日経新聞 2020.1.18) 技術革新でCO2削減 政府新戦略、10年で官民30兆円投資
 政府は技術革新で世界の二酸化炭素(CO2)排出削減をめざす新戦略をまとめた。CO2吸収素材を活用したセメントの普及など日本が得意とする先端技術の研究を加速し、今後10年間で官民あわせて30兆円を研究開発に投資する。2050年までに世界で予想される排出量を上回る年600億トン以上を削減する目標を掲げた。政府が21日に開く統合イノベーション戦略推進会議で、革新的環境イノベーション戦略として決定する。政府は地球温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」実現のため19年6月に長期戦略を閣議決定した。今回の戦略はこれを補完し、日本が強みを持つエネルギー・環境分野の施策を打ち出し、世界のCO2削減を先導する役割を強調する。各国の研究機関をつなぐ拠点となるゼロエミッション国際共同研究センターを立ち上げる。ノーベル化学賞を受賞した旭化成の吉野彰名誉フェローが研究センター長に就く。吉野氏は17日、安倍晋三首相と面会し「地球環境問題は人類共通の課題。高い目標があるほど研究者は一生懸命頑張る」と述べた。内閣府などによると、世界全体では毎年500億トン規模のCO2が排出され、30年には570億トンになる見込みだ。600億トン以上削減できる技術の達成をめざす。

*5-3:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200118&ng=DGKKZO54539960X10C20A1FFN000 (日経新聞 2020.1.18) FCA、EVで巻き返し、鴻海と「空白地」中国攻略へ
欧米自動車大手フィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)は17日、台湾の電子機器の受託製造サービス(EMS)世界最大手、鴻海(ホンハイ)精密工業と中国での電気自動車(EV)の合弁会社設立に向け交渉していると発表した。FCAにとって中国とEVはほぼ「空白地」。自動車生産のノウハウが薄い鴻海と組む異例の戦略で巻き返しを図る。鴻海側は16日に合弁を設立する方針だと発表。FCAの17日の声明では、「最終的な合意に至るとは限らない」との注記をつけたうえで、2~3カ月以内に拘束力のある合意を目指すとした。FCAによると折半出資で次世代のEVと「つながるクルマ」を開発・生産する新会社も設立を目指す。鴻海は同社からの直接出資は4割を超えないとし、残りは関連会社などを通じた出資になる見通しだ。FCAの自動車生産のノウハウと、鴻海のスマートフォンなどデジタル機器製造のノウハウを融合し、つながるEVの生産を目指す。EVなどの次世代車の生産を巡り、自動運転技術開発の米ウェイモと自動車部品大手のマグナ・インターナショナル(カナダ)が組んだり、中国新興EV大手の上海蔚来汽車(NIO)が中堅自動車メーカーの安徽江淮汽車集団(JAC)に生産委託をするなどの動きが出ている。ソフトに強みを持つ新興企業と伝統的な自動車産業のプレーヤーが組む動きが多く、大手自動車メーカーとEMSという今回の組み合わせは異例だ。鴻海は中国の配車サービス最大手、滴滴出行に出資、FCAはウェイモと協業しており、今後こうした新興企業が合弁に合流する可能性も注目される。FCAは2019年12月に仏グループPSAと対等合併で合意、規模を生かしてEVを強化する方針を示していた。ただ両社にとって中国を含むアジアは空白地だ。調査会社のLMCオートモーティブによると、両社を合わせてもアジア全体の販売台数は約50万台(18年)でシェアは約1%にとどまる。中国のEV市場は足元では停滞しているが、長期的には成長が見込まれる。FCAは中国では広州汽車集団と自動車合弁を組んでいるが、広州汽車はトヨタ自動車やホンダとも広くEVを生産している。FCAとPSAの統合が完了すれば、鴻海との合弁を軸に、PSAが欧州で培ったEVのノウハウもつぎ込みながら、巨大市場を開拓する考えとみられる。

<女性議員や閣僚も標的になりやすいこと>
PS(2020.1.20追加):「選挙が汚れて国会議員の質は悪い」というイメージ操作が頻繁に行われ、今回は女性である河井案里氏が、昨夏の参院選で違法な報酬を支払ったと運動員が証言したと話題になっている。しかし、*6-1に書かれている「①2019年夏の参院選でウグイス嬢に法定金額を上回る、3万円の日当を支払った」「②ビラ配り、のぼりを持ったり、手を振ったりなど、選挙事務所や現場で選挙運動に直接かかわったAさんに11日で15万5千円の報酬を支払った」「③時給1000円くらいで上限は日当15000円までになると言われた」「④最初から報酬を約束されていた」「⑤数十万円の報酬を受け取った運動員が地元紙で報じられている」「⑥公職選挙法で認められていない運動員に報酬を支払った容疑」を、*6-2の現在の公職選挙法に照らして見ると、選挙運動員には報酬を支給することはできないが、うぐいす嬢には1日 1 人につき15,000円以内(超過勤務手当は支給できない)を支給することができ、労務者(人数制限はない)にも1日 1 人につき15,000円以内(10,000円+超過勤務手当はの上限5,000 円を支給することができる。そのため、①については、ウグイス嬢が手振りやビラ配りなどの単純労働も行っていれば(ウグイス嬢は、ふつう雑用も行い、地元の人とは限らないため買収しても仕方なく、こういう少額では買収されないだろう)市場価格と言われる3万円の日当を払っても法令違反とは言えないだろう。また、Aさんは単純労働しかしていないため、②③④は公職選挙法違反ではない。さらに、⑤⑥は、事実なら違法だが、検察はこの点は指摘していない。
 つまり、女性である河井案里氏を標的にして「国会議員は金で汚れている」というイメージを作っているが、現在は収支報告書で収支を報告し、監査も受けているため、昔のようなビッグな金の動きはないのである。

*6-1:https://dot.asahi.com/wa/2020011500092.html?page=1 (週刊朝日 2020.1.15) 河井案里参院議員が違法報酬も 昨夏の参院選で運動員が証言
 2019年夏の参院選で、車上運動員(ウグイス嬢)に法定金額を上回る、3万円の日当を支払ったとして刑事告発されている、河井案里参院議員。広島地検は15日、河井議員と夫で前法相の克行衆院議員の事務所を強制捜索した。さらに案里議員にはウグイス嬢への「日当疑惑」だけではなく、選挙運動した男性、Aさんにも15万5千円の報酬を支払っていたことが本誌の調べでわかった。公職選挙法では、ウグイス嬢や、選挙運動に直接関わらない事務スタッフに限り報酬の支払いが認められる。Aさんは選挙運動に直接かかわり、報酬をもらっていた。ウグイス嬢と同様に、その支払いは買収になる可能性がある。Aさんによれば、参院選の少し前に、案里議員の知り合いから選挙を手伝ってくれないかと話があったという。「4月の統一地方選で広島の地方議員さんの事務所に出入りしていたことがあった。その関係で声がかかりました」。予定が空いていたAさんは承諾。当時をこう証言する。「時給1000円くらいで、上限は日当で15000円までになるけど、いいかと聞かれました。週刊文春でも名前が出ていた、Tという秘書からでした」。ビラ配り、のぼりを持ったり、手を振ったり、選挙事務所や現場で直接、選挙運動に加わった。7月6日から選挙が終わるまで合計11日間、手伝ったという。その後、T秘書から「時間がある時に、寄ってほしい」と言われて、指定された広島市安佐南区にある案里議員の夫、克行衆院議員の政治資金管理団体「河井克行を育てる会」の事務所(広島市安佐南区安東)を訪れたのは、7月31日だった。「T秘書から封筒に入った現金112500円を渡されました。そして『残りは振り込みます』と言われました。スマートフォンで銀行口座をチェックしたところ、同じ日に43000円が案里議員の自民党広島県参議院選挙区第7支部から振り込まれていた。合計で155000円をもらったことになります」。Aさんは本誌にこう証言し、スマートフォンで銀行の取引履歴を見せてくれた。そこには<20190731 43000円 ジユウミンシュトウヒロシマケンサンギインセンキョクダイナナシブ>と記されていた。自民党広島県参議院選挙区第7支部は案里議員が支部長を務めている。「口座番号は選挙期間中に聞かれたのでメモして渡したように記憶しています。最初から報酬を約束されていましたから」(Aさん)。また、案里議員の選挙を手伝っていたBさんも報酬を打診されたという。「案里議員の選対責任者から、30万円でと言われた。断ると50万円でどうかと言われた。内容からして、公選法に引っかかるかもと辞退した。私以外にも、複数の人が報酬をもらっていると聞いた」(Bさん)。すでに、数十万円の報酬を受け取った運動員が地元紙で報じられている。「ウグイス嬢への法定で決められた金額以上の日当を払っていたという疑いや、公職選挙法で認められていない運動員に報酬を支払った容疑も浮上している。運動員への報酬は支払いがあるだけでアウトだ。そちらも捜査を進めている」(捜査関係者)。Aさんはこう言う。「公選法で受け取ることができない金とは知らなかった。取材を受けて認識しました。何か対応を考えたいと思っています」。案里議員の事務所は取材に対し、こう回答した。「刑事事件の進捗や捜査への支障の有無などを勘案し、適切な時期に皆様に説明致したい」

*6-2:https://www.city.kumagaya.lg.jp/about/soshiki/senkyo/senkyokanriiinkai/oshirase/20181106.files/senkyoundouhiyou.pdf#search=%27%E9%81%B8%E6%8C%99%E9%81%8B%E5%8B%95%E3%81%AE%E5%A0%B1%E9%85%AC%E4%B8%8A%E9%99%90%27 (「選挙運動費用の制限と届出」より抜粋) 報酬及び実費弁償の支給
<選挙運動従事者、労務者に支給することができる報酬>
①選挙運動員                 支給できない
②選挙運動のために使用する車上運動員     1日 1 人につき15,000円以内
(いわゆるうぐいす嬢 等)          (超過勤務手当は支給できない)
③専ら手話通訳のために使用する者       1日 1 人につき15,000円以内
                      (超過勤務手当は支給できない)
④専ら要約筆記のために使用する者       1日 1 人につき15,000円以内
                       (超過勤務手当は支給できない)
⑤労務者(人数制限はない)          1日 1 人につき10,000円以内
                      (超過勤務手当は10,000 円の 5 割以内)

<女性がリードした環境政策とエネルギー変換>
PS(2020.1.21追加):太陽光発電・分散発電・電気自動車は、1995年前後に私がインドに行った時、人口の多いインドで自動車が普及し始めたのを見て「化石燃料では必ず行き詰る」と考え、日本の経産省に提案したものだ。しかし、これを「私が最初に提唱した」と言うと、必ず「嘘だ。謙虚でない。そんなことは誰でもできるのに傲慢な思い込みだ」などと言われた。その後、誰でもできるのならさっさと他の人がやればよいのに、日本は大したこともせずにくだらない妨害行為を行い、ドイツのメルケル首相やヨーロッパ諸国、中国などが先に採用して、日本はまたまた外国に追随するという情けない結果となった。
 世界では、*7-1のように、ドイツで再エネによる分散発電が進みつつあり、日本では、*7-2・*7-3のように、広島高裁が伊方原発3号機の運転を認めない仮処分決定をしたところだ。原発に絶対安全はなく、事故が起これば広い地域を壊滅させる猛烈な公害を引き起こし、伊方原発は中央構造線の上にあるのに災害想定が甘すぎる上、原発を海水で冷却することによって海に大量の熱を捨てて海水温度を上げているのだが、四国電力は、まだ「極めて遺憾で、到底承服できない」として不服申し立てをしようとしている。さらに、経産省は依然として原発を重要なベースロード電源と位置付け、2030年度の電源構成に占める割合を20~22%に引き上げる計画で、脱原発を求める国民世論と大きな乖離があるのだ。そのため、安全対策の拡充で発電コストが上がり、核燃サイクル計画も破綻し、日本が世界有数の火山国で地震も極めて多いことを考えれば、今国会で速やかにエネルギー政策を考え直すべきである。
 そして、後輩の皆さん、*7-4のように、佐賀県立唐津東高校の校歌は下村湖人作詞で、大きな志や開拓者精神、希望を歌に込めた素晴らしいものだが、私はこれを歌っていた生徒の頃には、「われらの理想は祖国の理想、 祖国の理想は世界の理想」というのはどうやって実現するのか、全くわからなかった。しかし、本物の理想を追求すれば、祖国がついてきたり、祖国がすぐについてこなくても世界で採用されて祖国が後から追随してきたりすることもあり、こういうことも可能だったのだ。そして、ここに表現されている自然も護らないと・・。

    
2020.1.18毎日新聞 2020.1.17 2017.12.14朝日新聞    2019.9.12東京新聞
           中日新聞
(図の説明:左から1番目と2番目の図のように、広島高裁が伊方原発3号機の運転を認めない仮処分決定をした。右から2番目の図のように、阿蘇山から160km以内にある原発は、このほかに玄海原発と川内原発がある。また、1番右の図のように、福島第一原発事故では、広い範囲が放射性物質で汚染され、成長中で細胞分裂の激しい若い人が特に帰還できない状況だ)

*7-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200121&ng=DGKKZO54622930Q0A120C2MM8000 (日経新聞 2020.1.21) エネルギーバトル 電力、代わる主役(上) 技術が変える供給網、大手介さず個人で融通
 電力の主役が電力会社から個人や新興企業に移ろうとしている。自然エネルギーを使った発電技術とIT(情報技術)が急速に発展し、個人間や地域内で電力を自在にやりとりできるようになったためだ。電力会社が大型発電所でつくった電気を自社の送電網で送るという当たり前だった景色が変わりつつある。「不便を感じずに環境に貢献できてうれしい」。独南部に住むエンジニアのトーマス・フリューガーさんは、独ゾネンの蓄電池を使った電力サービスをこう評価する。2010年創業の同社は契約者間で電力を融通し合う仕組みを実用化。顧客は欧州で5万人いる。
●月額料金はゼロ
 蓄電池とソーラーパネルを家庭に取り付ける初期費用に平均200万円かかるが、月に約20ユーロ(2400円)支払うフリューガーさんは年間の電気代が6分の1程度になった。今は月額料金ゼロが標準プランだ。電気は需要と供給が一致しないと停電が起きる。日本の電力会社は多くの発電所を抱え、その稼働率の変化で供給量を調整して対応する役割を担ってきたが、ゾネンはそれを崩す。強みは人工知能(AI)に基づくアルゴリズムによる調整だ。電気が余分なところから足りないところへ、安くつくれる場所から市場で高く売れる場所へと自動で判断する。利用者は自ら気づかない間に電気を融通し合い、家庭で必要な分をまかなう。クリストフ・オスターマン最高経営責任者(CEO)は「旧来の電力会社のモデルは時代遅れだ。巨大な発電所が国全体に電力を供給するモデルは機能しなくなる」と話す。国際再生可能エネルギー機関(IRENA)は蓄電池の価格が30年までに16年の約4割に下がるとみる。中国企業の増産を背景に、さらに下がると指摘する関係者もおり、ゾネンのような活用は広がりそうだ。
●巨額投資不要に
 国際エネルギー機関(IEA)によると、新興国の経済成長を背景に電力需要は40年に17年の1.5倍に増える。その4割を太陽光などの再生エネが占める見込みで、発電の主役も石炭から交代する。大型の石炭火力や原子力発電所の発電能力は約100万キロワット。国内の家庭の電力消費量は1カ月250~260キロワット時で、家庭用太陽光の月間発電量は300キロワット時超が多いとされる。蓄電池でためたり、地域で融通できたりすればマネジメントは可能だ。大型発電所や、それをつなぐ長い送電網を巨額の投資で作らなくても、電力ビジネスを展開できるようになる。国内で地域ごとに独占権を持つ電力会社が「発電・送配電・小売り」の事業をまとめて手掛けるようになったのは1951年。再生エネやテクノロジーの進化が、70年の慣行を変える。電力自由化で先行した欧州では電気をつくる会社、送る会社、売る会社など、機能ごとの再編が進んだ。既に英独では石炭などの化石燃料よりも再生エネの発電量が上回る月もある。電力大手は石炭やガス、原子力などの大型発電所の効率をどう高めるかにばかり力を入れてきた。ただ、競争のルールそのものが大きくかわり、エネルギー産業は転換期を迎えている。

*7-2:https://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-1059877.html (琉球新報社説 2020年1月20日) 伊方差し止め 原発ゼロへ転換すべきだ
 四国電力伊方原発3号機(愛媛県伊方町)について、広島高裁が運転を認めない仮処分決定をした。伊方3号機の運転を禁じる司法判断は、2017年の広島高裁仮処分決定以来2回目だ。再び出た差し止め決定を業界や政府は重く受け止めるべきである。今回主な争点となったのは、耐震設計の目安となる地震の揺れ(基準地震動)や、約130キロ離れた熊本県・阿蘇カルデラの火山リスクに関する四国電や原子力規制委員会の評価の妥当性だった。地震に対する安全性について四国電は、伊方原発がある佐田岬半島北岸部に活断層は存在せず、活断層が敷地に極めて近い場合の地震動評価は必要ないと主張していた。だが高裁は「敷地2キロ以内にある中央構造線自体が横ずれ断層である可能性は否定できない」ことを根拠に挙げ、「四国電は十分な調査をしないまま安全性審査を申請し、規制委も問題ないと判断したが、その過程は過誤ないし欠落があった」と指摘した。火山の危険性を巡っては、最初の禁止判断となった17年の仮処分決定は阿蘇カルデラの破局的噴火による火砕流到達の可能性に言及したが、その後の原発訴訟などでリスクを否定する判断が続いた。だが今回は「破局的噴火に至らない程度の噴火も考慮すべきだ」として、その場合でも噴出量は四国電想定の3~5倍に上り、降下火砕物などの想定が過小だと指摘した。それを前提とした規制委の判断も不合理だと結論付けた。東京電力福島第1原発事故で得られた教訓は「安全に絶対はない」という大原則だ。最優先されるべきは住民の安全であり、災害想定の甘さを批判した今回の決定は当然である。四国電は「極めて遺憾で、到底承服できない」と反発し、不服申し立てをする方針を示した。政府も原発の再稼働方針は変わらないとしている。だがむしろ原発ありきの姿勢を改める契機とすべきだ。共同通信の集計によると原発の再稼働や維持、廃炉に関わる費用の総額は全国で約13兆5千億円に上る。費用はさらに膨らみ、最終的には国民負担となる見通しだ。原発の価格競争力は既に失われている。電力会社には訴訟などの経営リスクも小さくない。一方、関西電力役員らの金品受領問題では原発立地地域に不明瞭な資金が流れ込んでいる実態が浮かび上がった。原発マネーの流れにも疑念の目が向けられている。政府は依然、原発を重要なベースロード電源と位置付け、2030年度に電源構成に占める割合を20~22%に引き上げる計画だ。脱原発を求める国民世論とは大きな乖離(かいり)があり、再生可能エネルギーを拡大させている世界の潮流からも取り残されつつある。政府や電力業界は原発神話の呪縛からいい加減抜け出し、現実的な政策として原発ゼロを追求すべきである。

*7-3:https://www.nishinippon.co.jp/item/n/576849/ (西日本新聞社説 2020/1/19) 伊方差し止め 甘い災害想定に重い警鐘
 原発再稼働を進める電力各社の安全対策と、それを容認している原子力規制委員会の判断は妥当なのか。その根幹に疑問を投げ掛ける司法判断である。四国電力伊方原発3号機(愛媛県伊方町)の運転禁止を求めて、50キロ圏内である山口県の住民3人が申し立てた仮処分の即時抗告審で、広島高裁が運転を差し止める決定をした。伊方原発は細く延びる佐田岬半島の根元にある。深刻な事故が起きれば半島住民の避難は困難を極める。対岸約40キロの大分県を含む九州や中国地方にも甚大な被害が広がりかねない。伊方原発のそばを国内最大規模の中央構造線断層帯が走り、約130キロ離れた熊本県・阿蘇山も活発に活動を続けている。地震と噴火による災害リスクが適切に調査、判断された結果として、再稼働が認められたのか-。これが争点だった。決定は調査、判断ともに「甘い」との結論になった。地震については、原発周辺の活断層の調査が不十分と指摘した。阿蘇カルデラの噴火によるリスク評価も過小と判断した。加えて、安全性に問題がないとした原子力規制委の判断も誤りで不合理と断定している。福島第1原発の事故後、政府は「世界最高レベルの新たな規制基準」に適合した原発の再稼働を進めてきた。伊方3号もその一つだ。今回の決定は、規制基準へ適合させてきた電力会社の調査と、規制委の判断がともに不十分と指弾しており、「基準適合」に対する国民の信頼が揺らぐことは間違いない。規制委は最新の知見を踏まえながら、不断に基準を見直す努力を重ねる必要がある。電力各社も災害リスク調査のあり方などを改めて検証すべきだ。原発に関する司法判断はかつて、行政や専門家の判断を追認するものが大半だった。福島の事故後は裁判官によって従来より厳しい判断も出るようになった。運転差し止めを認めたのは今回で5例目であり、伊方3号機の運転を認めない仮処分決定は2017年に続き2回目だ。政府は福島事故後も原発をベースロード電源と位置付け、30年度に電源構成に占める割合を20~22%に引き上げる計画だ。ただ再稼働できたのは5原発9基にとどまる。再稼働しても、司法判断で止まる可能性があることが今回改めて示された。安全対策の拡充で、発電コストにおける原発の優位性は後退している。核燃サイクル計画も事実上、破綻したと言えよう。日本は世界有数の火山国で地震も極めて多い。ここで将来にわたり原発と共存していけるのか。今回の決定はエネルギー政策を考え直す契機ともしたい。

*7-4:http://www.people-i.ne.jp/~kakujyo/kooka.htm (佐賀県立唐津東高等学校校歌 下村湖人作詞、諸井三郎作曲) 天日輝き
1.天日かがやき大地は匂い 潮風平和を奏づる郷に
息づくわれらは松浦の浜の 光の学徒  光、光、光の学徒
2.はてなく広ごる真理の海に 抜手をきりつつ浪また浪を
こえゆくわれらは松浦の浜の 力の学徒  力、力、力の学徒
3. 平和と真理に生命をうけて 久遠の花咲く文化の園を
耕すわれらは松浦の浜の 希望の学徒  希望、希望、希望の学徒
4.われらの理想は祖国の理想  祖国の理想は世界の理想
理想を見つめて日毎に進む  われらは学徒  光、力、希望の学徒

| 男女平等::2019.3~ | 02:58 PM | comments (x) | trackback (x) |
2019.1.11~12 まともな議論ができない立法府、議論の土台となる正確な資料を作れない行政府、不勉強なくせに傲慢な検察のゴーン氏逮捕と日本の司法の闇について (2020年1月13、14、17日に追加あり)
(1)日米貿易協定発効


 2019.9.26   2019.10.19     2019.11.19      2019.11.16
日本農業新聞   日本農業新聞      Yahoo        東京新聞

(図の説明:さくら国会であまり話題に上らなかったが、日米貿易協定では、左の2つの図のように、農業への影響が大きいにもかかわらず、右の2つの図のように、本質を突いた議論があまりなされなかった。これは、日本では、感覚の遅れた行政が調整して政策を決め、国会はそれに追随しているだけで、民主主義がうまく機能していないことを意味する)

 2020年1月1日に、*1-1のように、日米貿易協定が発効したが、TPPは2018年末に、EUとのEPA2019年2月に発効しているため、これによって日本の農業生産額は減少すると思われる。国会議決の際に与党が賛成、野党が反対だったのは、実際には貿易自由化を進めたのが経産省だからだ。

 一方、日本は自動車及びその部品をの攻めの分野として“カード”として使おうとしたが、関税撤廃は継続協議となり、得たものはなかった。

 そして、農業に関しては、いつも生産基盤強化や農業者の支援のためとして予算がつけられるが、これまでも同様の政策がなされてきたのに離農者が多いため、その費用対効果は検証する必要があり、効果が低いのなら「桜を見る会」どころではない額の選挙目的のバラマキであるため、政策を根本的に考え直す必要がある。従って、費用対効果を正確に把握できる国の会計処理と正確な統計が必要なのである。

 なお、*1-2のように、政府は、「①日米貿易協定が発効しても日本の農家の所得や生産量は一切減らない」「②万全の国内対策を打つ」と述べているそうだが、①はあり得ないので「③日本農業が受ける影響はどの程度か」を正確に見積もらなければ、②の万全の対策は打てない筈だ。このように、日本の立法・行政は理論的で建設的な議論を行わず、感情的な言葉だけが飛び跳ねているわけである。

(2)日本の自動車産業は本当に強いのか?

   

(図の説明:左図のように、2018年11月逮捕時のゴーン氏の容疑は、役員報酬の過少記載による金融取引法違反だったが、「これだけでは罪にならない」と見て、検察は2019年4月に会社資金の私的流用による会社法違反を罪状に加えた。しかし、日産と司法取引して逮捕したのなら、最初から容疑はすべてわかって書面によるバクアップもあった筈なので、こういうところからもゴーン氏を有罪に陥れるためにない頭を絞って罪を探していることがわかり、これが人権侵害なのである。さらに、中央の図のように、日産と司法取引しながら、たったこれだけの容疑を整理するのに2年もかかっているのはのろく、これでは最高裁まで闘ったら高齢になっても結論が出ておらず、人権侵害も甚だしいわけである。この際、一人の人間が築き上げた人生を台無しにするのに、「忙しいから時間がかかった」などというのは言い訳にもならない)

1)ゴーン氏逮捕事件の本質
 私は、このブログの2018年12月4日・2019年4月6日などに記載したとおり、「ゴーン事件の本質は、経営上の争いに司法取引を用い、“私利私欲にまみれた独裁者”というレッテルを張って実績あるリーダーを追い出したことだ」と最初から見ていた。

 そのため、先見の明を持ってリーダーシップを発揮していた(こうすると日本では“独裁者”と言われることが多いのだが)ゴーン氏をなくした日産が、経済産業省出身で社外取締役の豊田氏が薦めるガバナンス改革を行えば、漂流し始めることは予測できたので、*2-2のように、日産の業績が悪化し、*2-1のように、西川氏が辞任することになったのは想定内だった。

 また、2010年にオランダに設立された子会社「ジーア社」は、法務部門を所管する外国人の専務執行役員の告発によると、リオデジャネイロやベイルートでゴーンが使う住宅の購入費・改修費を支払っていたそうだが、「イ.その告発は正確なのか」「ロ.刑事事件に相当する違法行為なのか」についても検討する必要があった筈だ。

 東京地検特捜部はゴーン氏に、「①役員報酬の未払い分を隠した金融商品取引法違反」「②日産の資金を不正送金した会社法違反」という容疑を示したが、①は本来ゴーン氏が受け取れる筈の役員報酬をメディアが多すぎると叩いてできた法律で、株主が納得していれば問題ない性格のものである。そして、このような経営者叩きを続けていれば、外国人のみならず日本人でも有能な人は日本で会社を作らず上場もしなくなる。また、②は、日本人にはなじみのないやり方でも、販促であって不正でない場合もあるため、短絡的な解釈は禁物だ。

 そして、ゴーン氏は、2019年6月24日に東京地裁で行われた公判前整理手続きにケリー氏とともに主席し、保釈中、弘中弁護士の事務所に通って弁護団と議論を重ね、弁護団はゴーン氏の認識や記憶を前提に公判での主張を組み立てて公判で予定する主張内容を、2019年10月17日、既に裁判所に提出しているので、日本の検察や裁判所はいつでもそれを参照できる。しかし、それ以上の証明や反論は、日本の司法の支配下にいてはできない事情があるのである。

2)ゴーン氏の出国
 検察が容疑者としてメディアに発表した途端、日本のメディアは、*3-1のように、「ゴーン被告」と呼んで犯罪人扱いをし、殺人犯かレイプ犯ででもあるかのような保釈条件を求めた。つまり、ここでは「無罪の推定」は働いておらず、日本のメディアは「有罪の推定」を働かせ、「言論の自由」「表現の自由」と称して無節操なイメージ操作をしてきたのである。

 そのため、無断ででも出国しなければ、日本メディアのしつこい情報操作に負ける上、検察が書類を押収して都合の悪い証拠は出さず、このままでは本人が無罪の証拠を出すこともできないため、ゴーン氏は出国を選んだのだろう。私は、出国に成功してよかったと思う。

 日本の検察は、有罪が確定する前からまるで有罪が確定しているかのようにメディアに知らせ、メディアは疑問も持たずに裁判抜きで人を貶める報道をいっせいにしたのだから、ここでゴーン氏が日本のメディアを外して他国を中心としたメディアと自由にコミュニケーションを取ったのは当然である。

 また、ゴーン氏は、*3-5のように、プロの力を借り、プライベートジェットを使って、出国に際しては楽器箱に隠れて関西空港からトルコ経由でレバノンに入り、*3-2のように、「有罪が前提の政治的な迫害を逃れた」という声明を発表し、*3-4・*3-6のように、「事件は自らを引きずり下ろすクーデターだ」等々と記者会見で述べているが、これを批判するのは当たらないと思う。

3)今度は「違法出国」が罪とは・・
 このように、ゴーン氏の容疑内容は、2019年6月24日の公判前整理手続きで既に行われており、出国するにはそれだけの理由があったため、*3-3のように「違法出国が法秩序を踏みにじる行為だ」などという主張をする前に、ゴーン氏の刑事事件としての逮捕と長期の拘束が日本国憲法に定められた人権侵害にあたらないのかを反省すべきだ。

 森雅子法相は、*3-3のように、「刑事裁判そのものから逃避し、許されない」と批判し、東京地検の斎藤次席検事は「日本の刑事司法制度を不当におとしめる主張で到底受け入れられない」とコメントしているが、刑事裁判に当たる事案か否かも含め、日本の司法の公正性が信頼できないので避けたのだから、この根本を忘れずに日本国憲法に沿った司法に改めるべきだ。

 上記が、*3-7の琉球新報社説への私の説明でもあり、さらにゴーン氏の場合は、大切な人を人質にとられたのではなく自分が不当に長く拘束され、権利を大きく制限されたのだから、「人質司法」というよりは「拷問」「人権侵害」と言う方が正しい。

 また、日本では検察が起訴した途端に「推定有罪となり、検察のメンツのために無罪の人が刑務所に入れられ、有罪率が99.4%で、反証は殆ど取り上げられない」ため、その本質を改革すべき森雅子法相が、「(逃亡は)どの国の制度でも許されない」と批判したのは本質を理解しておらず、*3-8のように、ゴーン氏が「法相の発言は愚か」と言うのは理解できる。

 なお、法務省は、森雅子法相が「潔白だと言うのなら、(日本の)司法の場で正々堂々と無罪を証明すべきだ」と発言したことを3カ国語でHPに掲載したそうだが、刑事裁判では「推定無罪」の原則が働き、逮捕するにあたっては逮捕時に逮捕理由を説明し、検察官が有罪を立証しなければならないのであるため、森雅子法相は弁護士の割には知らなすぎる。

(3)単なる情報戦ではなく、人権を求める戦いである
 ゴーン氏の出国については、*4-1・*4-2のように、海外メディアは好意的だそうだが、私は中国でもとっくの昔に卒業した“文化大革命”のようなことを言っている日本のメディアの方がおかしいと思っていたため、ゴーン氏の出国が成功してよかったと思う。また、レバノンと日本の間に“犯罪人”引渡条約がないのは幸いしたが、今後は、レバノン政府が日本の圧力に屈しないことが必要だ。

 また、ゴーン氏は、これだけ負のイメージを擦りつけられたのだから、*4-3のように、ハリウッド映画化して、ビジネス界・自動車革命の時代背景・各国の世論・日産社内の経営権争いに司法が介入した日本の事情などをリアルに表現すれば、これまでにないものすごいビジネス映画になると考える。ただし、命に気を付けて行動して欲しいくらいの真剣勝負になる。

 このような中、日経新聞は社説で、*4-4のように、「日本の法廷の場なら議論が深まったかもしれない」などとありもしない嘘を書いているが、司法制度が違っても人権が大切なことは普遍であるのに、それがない日本の司法を改革しなければ、そうはならない。ゴーン氏がSECとは争わずに100万ドルの課徴金を支払ったのは、同時に多くの敵を作らないためだろう。

 なお、日本は特殊な国であるという日本の立場の説明は、言い訳としていろいろな分野でよく聞かれるが、グローバルな世界でそれは通用しない。また、プライベートジェットには不特定多数の人は乗らないため、手荷物チェックが緩いのは当然である。

(4)日本はこうして遅れていく
 「日本の自動車産業は今後も強いか」については、結論から言って「危うい」というのが私の見方だ。その理由は、ゴーン氏が率いていた日産・三菱・ルノー組を、将を捕えることによって漂流させて護ったのは、*5-1のトヨタだからである。トヨタは、EVではなくハイブリッド車に妥協した会社で、国を挙げてEVを推進していた中国の環境規制も緩めさせるように働いた。

 そのため、*5-2のように、欧州の自動車大手が事業活動に伴うCO2の純排出量もゼロにする「カーボンニュートラル」を相次いで宣言し、2019年11月4日には、独フォルクスワーゲン(VW)がEVを量産し始め、メルケル首相が「独自動車産業の未来の礎石となる」と述べ、VWのディース社長が「VWの新しい歴史が始まる」としているのは希望が持てる。私は、次に自動車を買うなら、高すぎなければポルシェかベンツのEVにしたいと思っているくらいなので、外国人労働者と組み合わせて九州のどこかで工場誘致したらどうかと考える。

 そのような中、*5-3のように、日経新聞は社説で「①2018年度に国内で消費した1次エネルギーの約9割は化石燃料に支えられている」「②化石燃料から水素を取り出して使う」「③千代田化工建設などのグループは、天然ガスから取り出した水素を別の化学物質に変えて日本に持ち込む計画」「④資源国にとっても保有資源を有効に使い続ける道になるはずだ」「⑤水素利用技術の確立に向けて、資源国と連携した取り組みを加速していかねばならない」などと、馬鹿なことを書いている。

 何故なら、①は、先見の明のなさによるものであり、②③④については、化石燃料から水素を作るなど愚の骨頂で、⑤については、「日本には資源がないから、資源は輸入しなければならない」という先入観から抜けられない頭だからだ。こうして日本はどんどん遅れて行き、国民は貧しくなっていくが、私は、このようにして作られた水素は使わないつもりだ。

 なお、*5-4のように、地球温暖化対策のパリ協定に関する目標や政策の評価で、日本は、六段階評価で下から二番目の「極めて不十分」と判定されたそうだが、全体として尤もである。

・・参考資料・・
<日米貿易協定>
*1-1:https://www.agrinews.co.jp/p49413.html (日本農業新聞 2019年12月5日) 日米協定“拙速”承認 来年1月1日発効へ 参院
 日米貿易協定は4日、参院本会議で与党などの賛成多数で可決、承認された。来年1月1日に発効する見通し。牛肉、豚肉などは環太平洋連携協定(TPP)と同様に関税を削減。生産額の減少は過去の大型協定に匹敵する。昨年末に発効したTPP、今年2月に発効した欧州連合(EU)との経済連携協定(EPA)に続き大型協定の発効が迫り、日本農業はかつてない自由化に足を踏み入れる。同協定を巡る交渉は4月に開始。9月に最終合意し、10月に署名した。合意内容の公表から協定の国会審議までは1カ月足らず。TPPなど過去の大型協定と比べても異例の短さで、情報開示や国民的な議論の不十分さが目立った。同日の採決では、自民、公明両党と日本維新の会などが賛成。立憲民主党、国民民主党などの共同会派や共産党は反対した。政府は今後、関連する政令改正などの国内手続きを終え、米国に通知する。米国側は国内法の特例に基づき議会審議を省く方針。両国の合意で発効日を決められ、米国の要望に応じて1月1日の発効となる見通しだ。発効後、日米は追加交渉に向けた予備協議に入り、4カ月以内に交渉分野を決める。政府は関税交渉について「自動車・自動車部品を想定しており、農産品を含めてそれ以外は想定していない」(茂木敏充外相)としているが、具体的な交渉範囲は協議次第だ。協定では、牛肉は関税率を最終的に9%まで削減する。セーフガード(緊急輸入制限措置=SG)を設定した一方、発動した場合、発動基準をさらに高くする協議に入る。TPPのSGと併存し、低関税で輸入できる量がTPPを超えるため、政府は加盟国との修正協議に乗り出す。今後、追加交渉での農産品の扱いやSGの発動基準数量の引き上げの動向などが焦点になる。日本の攻めの分野の自動車・同部品の関税撤廃は継続協議となった。政府の影響試算では、農林水産物の生産額は、米国抜きのTPP11の影響も踏まえると最大2000億円減る。国会審議で野党は、日欧EPAなど発効済みの他の貿易協定も含めたより精緻な試算を求めたが、政府・与党は応じなかった。政府・与党は現在、中長期的な農政の指針となる食料・農業・農村基本計画の見直しの議論を進めている。一連の大型協定による農産品の自由化にどう対応するか具体策が問われている。
●国内対策 農家規模問わず
 政府は4日、日米貿易協定に伴い、国内対策の指針となる「TPP等関連政策大綱」改定案を自民、公明両党に示し、了承された。農業分野では、中山間地を含めた生産基盤強化の必要性を強調し、「規模の大小を問わず、意欲的な農林漁業者」を支援する方針を明記。新たに肉用牛や酪農の増頭・増産対策などを盛り込んだ。政府は5日に正式決定し、2019年度補正予算に農林水産業の対策費として3250億円程度を計上する。改定案では、国内外の需要に応え、国内生産を拡充するため農林水産業の生産基盤を強化する必要性を指摘。畜産クラスター事業による中小・家族経営支援の拡充や、条件不利地域も含めたスマート農業の活用も盛り込んだ。規模要件の緩和や優先採択枠の設置で対応する。自民党TPP・日EU・日米TAG等経済協定対策本部(本部長=森山裕国対委員長)などの会合で、西村康稔経済再生担当相は「(農業の)国内生産を確実に拡大するため、中山間地域も含めた生産基盤を強化していく」と述べた。森山本部長は会合後、「(家族経営を)政策の横に置くのではなく、中心に据えてやっていくことが大事だ」と記者団に語った。改定案には輸出向けの施設整備、堆肥活用による全国的な土づくりの展開、家畜排せつ物の処理円滑化対策、日本で開発した農産物の新品種や和牛遺伝資源の海外流出対策なども盛り込んだ。農林水産分野の対策の財源について、既存の農林水産予算に支障のないよう「政府全体で責任を持って」確保する方針は改定案でも維持した。TPPの牛肉SGの発動基準見直しを巡っては、「日米貿易協定の発効後の実際の輸入状況などを見極めつつ、適切なタイミングで関係国と相談を行っていく」との記述にとどめた。
●日米協定国会承認 期限ありき審議不足 再協議規定 農業扱い不透明
 日米貿易協定は、踏み込んだ議論には至らないまま、国会審議が終結した。来年1月1日発効を目指す政府・与党は、野党側の資料請求にも応じず、議論がかみ合わないまま審議が進展。野党も最終的には4日の参院本会議での採決に応じたため、農産品の再協議の可能性をはじめとした懸念を掘り下げることなく、協定は承認された。衆参両院の委員会審議は22時間余り。過去の経済連携協定を大きく下回る。参院本会議では、これまでの委員会審議と同様に、農産品について、米国が「特恵的な待遇を追求する」と明記した再協議規定への懸念が続出。採決の最終盤となっても不明瞭な部分が残っている実態が改めて浮き彫りになった。国民民主党の羽田雄一郎氏が再協議規定について「米国の強い意志を感じる」と指摘。大統領再選を目指すトランプ氏の強硬姿勢を警戒した。協定に賛成した日本維新の会の浅田均氏も「米国がさらに強気の姿勢で交渉に臨んでくるのは不可避。積み残しになった自動車・同部品の関税撤廃の確定も含め、交渉は一筋縄ではいかない」と警鐘を鳴らした。ただ、野党側は採決を容認。会議場内では「反対」などの声が出たが、賛否の投票作業は淡々と進んだ。衆参両院を通じて、審議不足は否めない結果となった。衆院では、自動車の追加関税の回避の根拠となる議事録など示さない政府・与党に対し、主要野党が反発して退席。与党側が審議時間の消化を優先。質問者不在のまま割当時間を消化する「空回し」を含めても、審議時間は22時間余りにとどまる。一方、環太平洋連携協定(TPP)は2016年、衆参両院に特別委員会を設けて計130時間以上審議。日米協定の審議時間は短さが際立つ。さらに衆院では、協定の審議が「桜を見る会」の説明責任を巡る与野党の駆け引き材料になった部分も多い。野党内からも「政争の具にせず、審議の充実を追求していくべきだった」(幹部)と審議運営を批判する声が出ている。

*1-2:https://www.agrinews.co.jp/p49059.html (日本農業新聞 2019年10月24日) 日米影響試算 審議の材料たり得ない
 日米貿易協定が発効しても、万全の国内対策を打つので日本の農家の所得や生産量は一切減らない──。政府がそんな影響試算を発表した。現実離れしていると言わざるを得ない。これでは国会審議の材料になるはずもない。政府は納得感の得られる試算を出し直すべきだ。日米協定の承認案は24日から衆院本会議で審議が始まる。審議を進める上で重要な材料の一つとなるのが、日米協定によって日本農業が受ける影響試算だろう。日米協定発効に伴い、日本農業が受ける打撃はどの程度か。影響をしっかり試算した上で必要な国内対策を考える。これこそが本来あるべき姿のはずだ。だが、政府が先週発表した影響試算は、そうした期待に沿う内容とは言い難い。試算によると、日米協定発効に伴い、安い米国産農林水産物が日本に押し寄せた結果、国産の価格も低下。国内の農林水産物の生産額は600億~1100億円減る。減少額がとりわけ大きいのが牛肉で、最大約474億円に達するという。不思議なのはここからだ。生産額が減るにもかかわらず、国内の農家の所得、生産量は一切減らないという。コスト低減や経営安定につながる万全な国内対策を措置するからで、食料自給率も変わらないという。そもそも国内対策の検討が始まるのはこれからで、まだ決まっていない。にもかかわらず、なぜ日本の農家所得や生産量に影響なしと言い切れるのか。首をかしげたくなる農家も少なくないだろう。環太平洋連携協定(TPP)や欧州連合(EU)との経済連携協定(EPA)に合意した際も政府は影響試算を発表。今回同様に国内対策の効果で、日本の農家所得や生産量に影響なしという内容だった。政府には、農家の不安を大きくしたくない気持ちがあるのかもしれない。だが、貿易自由化に伴う打撃に目を背けたままでは、十分な国内対策が出来上がるとは思えない。今回の影響試算には、国内対策を考える以外にも、もう一つ重要な意味合いがある。来年3月の策定に向けて議論が本格化している新しい食料・農業・農村基本計画だ。同計画は今後10年間の農政の指針となる。10年後と言えば、日米協定やTPP、日欧EPA発効に伴う関税削減が、今よりずっと進んでいる時期。その時に日本農業が受ける打撃はどの程度か。それをきちんと踏まえて新たな基本計画を策定する必要がある。「農家の不安にもしっかり向き合い、生産基盤の強化など十分な対策を講じる」。安倍晋三首相は臨時国会冒頭の所信表明演説で力強く宣言した。ならば、まずは現実離れした一連の影響試算を見直すべきだ。このまま国会審議に突き進んでも議論は深まらず、生産基盤強化という首相の決意にも疑問符が付きかねない。

<日本の自動車産業は強いか>
*2-1:https://digital.asahi.com/articles/ASMCK71NCMCKULFA00L.html?iref=comtop_favorite_01 (朝日新聞 2019年11月18日) ゴーン氏追放、西川氏の大誤算 主導した改革は己の身に
 日産自動車前会長のカルロス・ゴーンを東京地検特捜部が電撃的に逮捕してから19日で1年になる。世界に衝撃を与えた事件の裁判は来春にも始まる。ゴーンはすべての事件で無罪を主張している。弁護側は捜査の手続きそのものが違法だとして争点化する方針で、検察側と弁護側の全面対決となる。ゴーンに代わって経営トップにのぼりつめた社長の西川(さいかわ)広人も、自らの報酬不正の責任を問われて今年9月に辞任に追い込まれた。極秘に進めた社内調査をもとに特捜部の捜査に全面協力し、ゴーンを「追放」した日産にとっても、この1年は想定外の連続だった。
     ◇
 「おかしな会社があるぞ」。日産自動車が「ベンチャー投資」目的で2010年にオランダに設立した子会社「ジーア」に対し、社内では疑問の声がたびたびあがっていた。「投資活動を全然していない」「休眠法人ではないか」。設立の数年後にはこうした指摘が上層部に寄せられ、役員が「すぐ調査を」と指示していた。だが実態がつかめない。「その下にまた会社があって、仕組みが複雑すぎるんです」(当時の役員)。調査に関わった監査役(当時)も「手を尽くして調べても、よくわからなかった」と振り返る。暗礁に乗り上げた調査の突破口は「有力な内部告発だった」と複数の日産関係者は明かす。前会長カルロス・ゴーンの部下で法務部門を所管する外国人の専務執行役員が「これ以上、不正につきあわされるのはごめんだ」とジーア社の実態を監査役に打ち明けたというのだ。ベンチャー投資をするはずのジーア社は、リオデジャネイロやベイルートでゴーンが使う住宅の購入費や改修費を支払っていた。この専務執行役員はその後、司法取引に応じ、東京地検特捜部の捜査に全面協力することになる。監査役らは昨年春から、米法律事務所レイサム&ワトキンスと組んでゴーンの不正の調査に本格的に着手した。ゴーンはもちろん、社長の西川(さいかわ)広人にも知らせずに動き出した。それは、ゴーン側近の西川に知らせたら「どう反応するかわからない」(幹部)と警戒していたからに他ならない。監査役が証拠を示してゴーンの不正を西川に初めて説明したのは昨年秋。ゴーンが電撃的に逮捕された11月19日の1カ月前だった。すでに特捜部との間で司法取引の協議が進んでいた。幹部らは「全てが整った段階で説明した」と明かす。西川はこのころ、仏政府の要求を受け、連合を組む仏ルノーと日産の経営統合に意欲を示すようになったゴーンと対立。ゴーンに疎まれ、社長の座を追われそうになっていた。「窮鼠(きゅうそ)猫をかむ」のたとえ通り、「西川はゴーン降ろしに最後に乗っかった」(幹部)。11月19日午後10時。横浜市の日産本社で緊急記者会見に1人で臨んだ西川は「当然、解任に値する」と強調し、ゴーンとの決別を宣言した。それから1年足らず。自らも報酬不正で社長の座を追われることになろうとは、西川は思いもしなかった。この1年は多くの日産関係者にとっても誤算続きだった。
●旗振った改革、辞任迫られる誤算
 「会社の仕組みが形骸化し、透明性が低い。ガバナンス(企業統治)の問題が大きい」。ゴーンが逮捕された昨年11月19日夜の記者会見で、日産自動車社長(当時)の西川(さいかわ)広人はゴーンの不正を長年見抜けなかった理由をそう説明した。その後の日産の動きは素早かった。3日後に臨時取締役会を開いてゴーンの会長職を解任。12月17日の取締役会で「ガバナンス改善特別委員会」を設置し、外部有識者から改善策の提言を受けることを決めた。逮捕直後から、ゴーンの不正を止められなかった西川の責任を問う声が社内外でくすぶっていた。カリスマのゴーンを「追放」して経営トップに就いた西川にとって、自らの求心力を高めるにはガバナンス改革という旗が必要だった。特別委は今年3月にまとめた報告書で、人事・報酬の決定権のゴーンへの集中が不正を招いた原因だと指摘。社外取締役の権限を強める「指名委員会等設置会社」への移行を提言し、日産は6月の株主総会で移行に必要な議案を提案した。仏ルノーが一時、この議案への投票を棄権する意向を示すと、西川は強く反発。改革の頓挫を避けたい日産はルノー出身者のポストを増やして人事面で譲歩し、なんとかルノーの賛成をとりつけた。経済産業省も、同省OBで社外取締役の豊田正和を通じて改革の実現を促した。だが、会社の形を大きく変える改革には「副作用」も伴う。「自分たちの思い通りの人事をすることができなくなりますよ」。日産から水面下で相談を受けた法務アドバイザーは「移行は危険だ」と伝えていた。懸念は現実のものとなる。ゴーンの不正を追及する急先鋒(きゅうせんぽう)だった西川自身の報酬不正が社内調査で判明。9月9日の取締役会では、取締役11人のうち7人を占める社外取締役の多くが西川に辞任を迫った。この時点での辞任を否定していた西川の外堀は一気に埋まった。旗を振って進めたガバナンス改革が機能した結果、自らが辞任に追い込まれたとは皮肉だ。社外取締役は「ポスト西川」選びも主導した。首脳人事の決定権を握る指名委員会が次期社長に指名したのは専務執行役員の内田誠。社内では西川の辞任後に暫定的に社長代行を務める山内康裕の昇格を期待する声が多く、取締役でもない内田の起用に驚く声もあった。指名委も6人中5人を社外取締役が占め、残る1人はルノー会長のジャンドミニク・スナール。スナールは他の社外取締役と水面下で人選を調整し、トップ人事に積極的に関わった。経営トップを自らの手で決められないもどかしさに、「結局、日産への影響力を強めたのはスナールではないか」と幹部は嘆く。来月1日に発足する内田新体制の前途は多難だ。今月12日に2020年3月期の業績予想を下方修正。ゴーンが進めた拡大路線の修正は難しく、純利益は前年比65・5%の大幅減益になる見込みだ。日産三菱・ルノーの3社連合に安定をもたらしていた「ゴーン1強」体制が崩れたいま、ルノーが経営統合を求めて再び圧力を強める可能性もある。「将来の展望や野心的な戦略がない。3社の関係がゆがんで成長が滞っている」。ゴーンは最近、知人にこう漏らし、日産の行く末を案じたという。=敬称略
●来春にも公判、全面対決の構図鮮明
 ビジネスジェット機で羽田に到着した日産自動車のカルロス・ゴーン前会長を東京地検特捜部が電撃的に逮捕してから19日で1年。世界に衝撃を与えた事件は、来春にも始まるとみられる公判に向けた手続きが進む。検察、弁護側双方の大まかな主張が出そろい、全面対決の構図が鮮明となっている。ゴーン前会長は今年4月までに計4回逮捕され、役員報酬の未払い分を隠したとする金融商品取引法違反事件と、日産の資金を不正送金したなどとする会社法違反事件で起訴された。今月11日に記者会見した弁護団の弘中惇一郎弁護士によると、保釈中のゴーン前会長は弘中氏の事務所に通って裁判の記録を読むなどし、週に何回も弁護団と議論を重ねている。弁護団は前会長の認識や記憶を前提に、公判での主張を組み立てているという。弁護側は公判で予定する主張内容を10月17日に裁判所に提出した。すべての事件で無罪を主張するだけでなく、捜査の手続きそのものが違法だと争点化し、公訴(起訴)棄却を申し立てる方針を示した。裁判で公訴棄却が認められて確定した例はまれだが、主任弁護人の河津博史弁護士は「過去に例のないほど違法な捜査が行われた。単なる戦術ではない」と強調する。焦点の一つが、特捜部が日産幹部2人と交わした司法取引の違法性だ。本来は部下がトップの不正を明らかにする代わりに罪を減免されるようなケースが主に想定されている。弁護側は、日産の経営陣がゴーン前会長を失脚させる目的だったとし、「実質的な当事者は日産だ」と指摘。「2人は業務命令で司法取引したにすぎず、法の趣旨に反する」と主張する。これに対し、検察幹部は「弁護団の筋書きは根拠がなく妄想だ」と一蹴。「裁判所が違法性を認めるとは思えない」と自信を見せる。今後も公判に向けて証拠や争点を絞り込む公判前整理手続きが進められるが、弁護側は検察側が提出する供述調書の大半について、証拠採用に同意しないとみられる。このため、検察側は司法取引に応じた2人を含め多くの日産幹部を証人申請することが予想される。弁護側は西川前社長も一連の行為に関与したとして証人申請するとみられ、状況によっては公判が長期化する可能性もある。地裁は、金商法違反事件について初公判を来年4月にも開きたいとの意向を示している。審理は来年いっぱいは週3日のペースで隔週行う案も示しているという。ただ、会社法違反事件の審理については未定になっており、公判のスケジュールはなお流動的だ。

*2-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20191203&ng=DGKKZO52882830S9A201C1MM8000 (日経新聞 2019.12.3) 日産、ルノー連携で事業再建 新社長、中計見直し
 日産自動車の内田誠社長兼最高経営責任者(CEO)は2日、就任後初めて記者会見し、仏ルノー、三菱自動車との関係について「アライアンスの活動を通して利益を上げていくことに注力する」と語った。日産は値引き頼みの販売が重荷となり業績悪化が深刻だ。世界主要市場の縮小や次世代技術対応など事業環境が厳しさを増すなか、日仏連合をテコに業績回復を目指す考えだ。内田氏は「私が指揮を執って新たな事業計画を策定する」と述べ、中期計画を見直す方針も示した。日産に43%出資する筆頭株主の仏ルノーは仏政府の意向を受ける形で19年春、日産に経営統合を打診。内田社長は経営統合の協議について「ルノー会長とも今は全くしていない」と述べ、少なくとも当面は進めない考えを示した。ただ、将来の関係については言及しなかった。西川広人前社長は「ネガティブなインパクトが大きく、否定的だ」と明確に反対していた。日産の業績は大きく悪化している。20年3月期の連結純利益は1100億円と前期比66%減る見通しだ。立て直しに向けて日仏連合での協力を拡大する。拡大路線を進めるために過大な目標を設定して無理を重ねた反省から、企業風土の改革も進めると表明した。内田氏は1日付で就任した。元会長カルロス・ゴーン被告の後を継いだ西川前社長が報酬問題で辞任したのを受けたものだ。

<ゴーン氏の出国>
*3-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200101&ng=DGKKZO54007910R00C20A1MM8000 (日経新聞 2020.1.1) ゴーン元会長、レバノンへ無断出国 保釈条件違反
 日産自動車元会長のカルロス・ゴーン被告(65)が日本を出国し、中東レバノンに入ったことが31日、分かった。元会長は保釈条件で海外渡航が禁じられており、無断出国とみられる。日本とレバノンの間に犯罪人引き渡し条約はなく、4月にも始まる見込みだった元会長の刑事裁判は事実上、困難になった。元会長はレバノン国籍を持っており、「私は今、レバノンにいる。有罪が予想される日本の偏った司法制度の下でのとらわれの身ではなくなった」などと声明を出した。同国外務省は元会長が30日に合法的に入国したとの声明を出した。東京地裁は31日、東京地検の請求を受けて元会長の保釈を取り消す決定をした。保釈保証金計15億円は没収される。現地メディアなどによると、元会長はプライベートジェットを使い、トルコ経由でレバノンに入った。出国に際して元会長が楽器箱に隠れたとし、レバノン入国後、同国大統領と面会したとの報道もある。日本の出入国在留管理庁関係者によると、元会長名での出国記録はなく、日本で正規の出国手続きを経ていない可能性がある。外務省関係者は事実関係や出国の経緯について「現地の日本大使館などを通じて確認中」と語った。元会長の弁護人を務める弘中惇一郎弁護士は31日、東京都内で報道陣の取材に「事実とすれば保釈条件に違反している」と話した。

*3-2:https://digital.asahi.com/articles/ASMD04H87MD0UHBI00J.html (朝日新聞 2019年12月31日) ゴーン被告「有罪が前提、政治的な迫害逃れた」声明全文
 日産自動車のカルロス・ゴーン前会長の広報担当者は米東部時間30日夜(日本時間31日昼)、取材に対してゴーン前会長の英文の声明を発表した。全文の訳は以下の通り。
     ◇
 私は現在レバノンにいます。もうこれ以上、不正な日本の司法制度にとらわれることはなくなります。日本の司法制度は、国際法・条約下における自国の法的義務を著しく無視しており、有罪が前提で、差別が横行し、基本的人権が否定されています。私は正義から逃げたわけではありません。不正と政治的な迫害から逃れたのです。やっと、メディアのみなさんと自由にコミュニケーションを取ることができます。来週から始められることを、楽しみにしております。(原文は英語)
●レバノン大使館の関係者?は無言
 東京都港区の駐日レバノン大使館が入るビルの前には、31日午前から報道陣が集まった。ビル入り口のインターホンはスイッチが切られているのか呼び出し音は鳴らず、レバノン大使館の関係者とみられる男性が出入りしたが、記者の問いかけには一切応じなかった。

*3-3:https://digital.asahi.com/articles/DA3S14317743.html (朝日新聞社説 2020年1月7日) ゴーン被告逃亡 身柄引き渡しに全力を
 世界を驚かせた逃走劇から1週間が過ぎた。情報が交錯し、経緯にはいまだ不明な点が多いが、保釈中の日産自動車前会長カルロス・ゴーン被告が、国籍をもつレバノンに違法に出国したことは間違いない。法秩序を踏みにじる行為であり、断じて許されるものではない。森雅子法相はきのう記者会見し、国際機関などと連携して、日本での刑事手続きが適正に行われるよう、できる限りの措置を講じる考えを示した。会社法違反などの罪に問われたゴーン被告は無罪を主張し、東京地検が日産関係者と交わした司法取引についても違法だと訴えていた。被告が不在のままでは裁判は開かれず、事件は宙に浮くことになりかねない。レバノン政府とねばり強く交渉するのはもちろん、日本の司法制度について丁寧に情報を発信するなど、あらゆる外交努力を尽くし、ゴーン被告の身柄の引き渡しを実現させる。それが政府の責務だ。あわせて、前代未聞の逃走を許してしまった原因は何か、究明を急ぐ必要がある。ゴーン被告はプライベートジェット機を使って関西空港から出国した可能性が高いとみられる。一連の審査手続きに不備や緩みはなかったか。国民に対する説明と適切な改革が求められるのは言うまでもない。ゴーン被告は起訴・保釈・再逮捕などの曲折を経て、昨年4月末から身体拘束を解かれていた。住居玄関への監視カメラ設置、パソコンや携帯電話の利用制限など、弁護側が示した条件を裁判所が認めた。にもかかわらず、結果として今回の事態を防げなかったことを、関係者は重く受け止めねばならない。15億円という保釈保証金は、富豪であるゴーン被告に対するものとして適切だったか。弁護士にすべて預けるはずだった複数の旅券を、途中から1冊に限ってとはいえ、被告が携帯することを認めたことに問題はなかったか――。他にも点検すべき事項はあるはずだ。日本では容疑を認めない人を長く拘束する悪弊が続き、国内外の批判を招いていた。それが裁判員制度の導入などを機に見直しが進み、保釈が認められるケースが増えてきている。ゴーン被告の処遇は象徴的な事例の一つであり、運用をさらに良い方向に変えていくステップになるべきものだった。その意味でも衝撃は大きいが、だからといって時計の針を戻すことはあってはならない。捜査・公判の遂行と人権の保障。両者のバランスがとれた保釈のあり方を模索する営みを続けるためにも、今回の逃走の徹底した検証を求める。

*3-4:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200109&ng=DGKKZO54192030Z00C20A1MM8000 (日経新聞 2020.1.9) ゴーン元会長「無実」強調 レバノンで会見 逃亡経緯語らず
 保釈条件に違反して逃亡した日産自動車元会長のカルロス・ゴーン被告は日本時間の8日午後10時から、レバノンで記者会見した。一連の事件について「日本の検察や日産の経営陣が画策したもの」と無実だという従来の主張を繰り返した。事件は自らを引きずり下ろすクーデターだとしたが、検察など日本の関係者は事実と異なると反論した。ゴーン元会長が会見するのは、2018年11月に逮捕されて以来、初めて。元会長は会見で「日本の司法は非人道的。公正な裁判を受けられないと判断した」などと述べ、自らの逃亡を正当化。勾留の長さを強調するなど日本の刑事司法制度の批判を展開したが、逃亡方法などについては一切話すつもりはないとした。ゴーン元会長は起訴された一連の事件について「検察や日産の経営陣によるもの」とし、西川広人前社長兼最高経営責任者(CEO)ら日産の元幹部ら6人の名前を挙げた。元会長は逃亡後、米メディアの取材に対し日本政府の関係者の名前を会見で挙げる意向も示していたがレバノン政府への配慮を理由に見送った。森雅子法相は9日未明に会見し「刑事裁判そのものから逃避し、許されない」と批判。東京地検の斎藤隆博次席検事は「日本の刑事司法制度を不当におとしめる主張で到底受け入れられない」とのコメントを出した。日産の広報担当者は「当社はすでに(反論の)声明を出しており、新たなコメントは必要ない」と述べた。ある日産幹部は「茶番劇だ」などと反論。別の幹部も「不正の証拠もたくさんあり、ゴーン元会長の主張は議論のすり替えにすぎない」と厳しく指摘した。

*3-5:https://digital.asahi.com/articles/ASN142T3QN14UHBI00F.html?iref=comtop_8_05 (朝日新聞 2020年1月4日) ゴーン被告、プロが逃がす?元グリーンベレーの名前浮上
 日産自動車の前会長カルロス・ゴーン被告(65)がレバノンに逃亡した問題で、米紙ウォールストリート・ジャーナルは3日、ゴーン前会長が米陸軍特殊部隊出身とみられる男性ら2人の助けを借り、音響機器を入れる箱に隠れて日本を出国したと報じた。同紙によると、ゴーン前会長は12月29日、プライベートジェットで関西空港を発ち、30日にトルコ・イスタンブールに到着。大雨の降る中、車で約90メートル移動してより小型のジェット機に乗り換え、レバノンにたどり着いた。いずれも機内にはゴーン前会長ら乗客の他にパイロット2人、乗務員1人が乗っていたという。トルコの航空会社は、ゴーン前会長の逃亡に際して記録を改ざんしたとして、従業員を刑事告訴。同紙はトルコ当局の捜査に詳しい関係者らの話として、この従業員が、ゴーン前会長が関空で飛行機に乗り込むまでに箱がどのように使われたかを捜査員に証言したと伝えている。同紙が写真で確認したこの箱は、角が金属で強化されており、機体後部近くの通路に押し込まれていた。もう一つの箱にはスピーカーが入っていたという。同紙はまた、関空からイスタンブールへの飛行計画書には、米国のパスポートを持つ男性2人だけが乗客として書かれていたと指摘。2人はその後、ゴーン前会長が乗った小型機ではなく民間機でレバノンまで向かったという。この米国人のうち1人は陸軍特殊部隊グリーンベレーの出身者で、2009年にアフガニスタンで武装グループに拉致された米紙ニューヨーク・タイムズの記者を救出したことで知られる人物と同姓同名。民間警備業界では著名だという。もう1人は、この男性と関係のある会社の従業員として働いたことがある人物だという。ゴーン前会長の米国の広報担当者は、朝日新聞の取材に「ゴーン氏の日本出国をめぐるいかなる報道についても、現時点ではコメントはしない」と回答した。

*3-6:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200109&ng=DGKKZO54192800Z00C20A1EA2000 (日経新聞 2020.1.9) ゴーン元会長、司法・日産批判に終始 日本メディア大半排除
 日産自動車元会長のカルロス・ゴーン被告は8日のレバノンでの記者会見で改めて無実を主張した。事件は当時の日産経営陣の「策略」とし、日本の司法は「非人道的」だと非難。会見では日本メディアの大半を排除し、一方的に主張を展開した。国際手配を受けるなど不安定な立場が続くなか、国際世論を味方に付けたいとの思惑が透けた。ゴーン元会長は会見で、自身が日本で罪に問われた内容について「中傷のキャンペーンに過ぎず、想像の産物」「検察が日産の幹部と画策したものだ」などと批判した。元会長は、中東の知人側に資金を流出させるなどして日産に損害を与えた会社法違反(特別背任)の罪と、役員報酬の「未払い分」約91億円を有価証券報告書に記載しなかった金融商品取引法違反の罪で起訴された。元会長は特別背任罪に問われた資金の支出について、社内の適正な手続きを経ていたなどと主張。報酬の過少記載については「支払われていない報酬が容疑とは理解に苦しむ」と述べた。元会長が日本に戻らなければ裁判は始まらず、事件の真相解明は宙に浮く。元会長は「公正さが確保されればいかなる所でも裁判に臨む」としたが、「(日本は)有罪率が99%を超え、公正な裁判は受けられない」などと話した。この日の会見は元会長側の意向により「過去に関係を築いたメディア」だけを招待する形で行われた。フランスや中東のメディアが大半を占め、日本メディアの参加は数人にとどまった。元会長は会見で事件に関する日本メディアの報道も批判し、日本メディアの多くを排除した理由を問われると「客観的な見方ができると判断した人を選んだ」と答えた。日本の捜査当局は国際刑事警察機構(ICPO)を通じて元会長を国際手配し、7日に駐レバノン大使がアウン大統領と面会して協力を求めた。だが、元会長はレバノンの政財界に太いパイプを持ち、同国政府はこれまで一貫して元会長を擁護する立場を取ってきた。捜査関係者は「レバノン政府が元会長を日本に引き渡すとは思えない」と悲観的な見方を示す。元会長はレバノンに長期間滞在する考えを示し、「数週間以内に全ての証拠を開示し、嫌疑を晴らしたい。真実を明らかにしたい」とした。安倍晋三首相は8日夜、都内で自民党の河村建夫元官房長官らと会食した。河村氏によると、首相はゴーン元会長を巡る問題について「本来、日産の中で片付けてもらいたかった」と述べたという。

*3-7:https://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-1052965.html (琉球新報社説 2020年1月7日) ゴーン被告国外逃亡 裁判で無罪主張すべきだ
 まるでスパイ映画を見ているような衝撃的な事件だからこそ、冷静に問題を見極める必要がある。会社法違反罪などで起訴され保釈中の前日産自動車会長カルロス・ゴーン被告が日本を出国し、国籍があるレバノンに逃亡した。保釈の条件として海外渡航は禁止されていた。東京地裁は保釈を取り消し、保証金15億円を没収する。ゴーン氏は逃亡後、次のような声明を出した。「私はもはや有罪が前提で、差別がはびこり、基本的人権が否定されている不正な日本の司法制度の人質ではなくなる。日本の司法制度は、国際法や条約に基づく法的義務を著しく無視している。私は裁きから逃れたのではなく、不正と政治的迫害から逃れた」。否認すれば勾留が長引く「人質司法」は日本の司法制度の問題点として、かねて批判されてきた。早く解放されたいがために、やってもいない罪を認めてしまうなど冤罪の温床ともいわれる。裁判で有罪が確定するまで罪を犯していないものとして扱う「無罪の推定」原則にもとる人権上の問題も指摘されている。その意味でゴーン氏が指摘する「人質司法」の問題は、日本の司法制度の欠陥として改善すべき点が多い。その点は指摘を真摯(しんし)に受け止めるべきである。しかしその問題と、今回ゴーン氏が違法と知りつつ企てて実行した国外逃亡の責任は別の問題だ。ゴーン氏は日本の制度下で保障された権利でもって経済活動をし、多大な報酬と高い地位を得ていた。その中で日本の刑事法により罪に問われた以上、法の手続きにのっとって裁判で主張すべきだ。それが義務である。そうせずに国外に逃亡した責任は厳しく問われるべきだ。法的責任だけではない。金さえあれば違法行為もまかり通るという悪印象を世界に与えた責任も重い。逃亡の過程では、米国の警備会社やトルコの航空会社職員を含め組織的に違法行為を重ねた疑いがある。日本では入管難民法違反の疑いがあるだけでなく、出入国を巡る国際的な司法への挑戦とも受け取れる。ただ、今回の事件を保釈条件の厳格化につなげてはならない。国際的に批判を浴びている身柄拘束の在り方を是認する意見が強まることを危惧する。日本の保釈率は最近10年、わずかに上がる傾向にある。人権に配慮する流れを止めてはならない。重要なのは、ゴーン氏がなぜ国外へ逃亡できたかを詳細に検証することだ。関係当局にとっては、映画のような逃亡劇を現実に許した大失態である。重大に受け止め、再発防止を徹底する必要がある。ゴーン氏は、自身が「無罪だ」と主張するのなら、日本の裁判の場で身の潔白を証明すべきだ。そうしてこそ、日本の司法制度の欠陥に対する自身の指摘に説得力を持たせることもできる。国外逃亡は道理から外れた道だ。

*3-8:https://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/202001/CK2020011002000256.html (東京新聞 2020年1月10日) 森法相「誤った喧伝看過できない」 ゴーン被告「法相の発言は愚か」
 レバノンに逃亡した前日産自動車会長カルロス・ゴーン被告は九日、森雅子法相が被告の記者会見を受けて「わが国の法制度や運用について誤った事実を殊更に喧伝(けんでん)し、到底看過できない」などと批判したことに対し「非常に愚かだ」と反発した。レバノンのテレビインタビューに答えた。ゴーン被告は八日の記者会見で、日本の司法制度について「『推定有罪』の原則がはびこっている」と非難。森氏も九日に二回にわたって記者会見し「適正な手続きを定め、適正に運用されている」と反論するなど、非難の応酬となっている。被告は森氏の記者会見を受けた九日のテレビインタビューで「日本の司法制度は時代遅れだ」と主張。「有罪率は99・4%で、司法制度が腐敗している。(罪のない)多くの人が刑務所に入れられている」と述べた。法相が個別事件に関して会見すること自体が極めて珍しい。保釈がなかなか認められないとするゴーン被告の主張に欧米やレバノンの一部メディアが同調。日本政府は国際社会に被告への賛同が広がるのを打ち消そうと躍起になっている。
◆3カ国語でHP掲載 法務省
 法務省は九日、ゴーン被告のレバノン逃亡をめぐる森雅子法相の記者会見でのコメントを、日本語のほか、英語、フランス語でもホームページに掲載した。ゴーン被告が八日に開いた記者会見を受け、森氏は九日に会見を二回開催。「(逃亡は)どの国の制度でも許されない」などと批判した。
◆被告が「無罪証明すべき」 法相、発言を訂正
 森雅子法相は九日、日本の司法制度に対するゴーン被告の批判に反論するため、同日未明に開いた記者会見での発言内容の一部を訂正したとツイッターで明らかにした。「無罪を主張」と言うべきところを「無罪を証明」と言い間違えたとしている。森氏は会見で「潔白だと言うのなら、(日本の)司法の場で正々堂々と無罪を証明するべきだ」と発言。刑事裁判では、あくまで「推定無罪」の原則があり、その中で検察官が有罪を立証する仕組みになっているため、インターネット上で批判が出ていた。

<単なる情報戦ではなく、人権を求める戦いである>
*4-1:https://www.tokyo-np.co.jp/article/world/list/202001/CK2020010102000104.html (東京新聞 2020年1月1日) ゴーン被告逃亡 海外報道は好意的 レバノンや仏メディア
 日産自動車の前会長カルロス・ゴーン被告の国外逃亡について、逃亡先のレバノンや国籍を持つフランスのメディアはおおむね好意的に伝えた。レバノン紙によると、ゴーン被告は三十日に首都ベイルートの国際空港に到着。大手紙アンナハル記者は「レバノン市民として合法的に入国した。アウン大統領と面会した」としているが、真偽は不明。レバノン政府は今のところ正式なコメントを出していない。両親の出身地で被告が少年時代を過ごしたレバノンでは、立身出世の「英雄」として被告を擁護する声が多い。友人の一人は「新年に訪れた奇跡だ」と歓迎し、「彼はいま、適切な保護下にある」と明かした。別の友人は本紙取材に「彼はレバノンだけではなく、日仏にとって偉大な経営者。母国で無実を証明すればいい」と話した。「ゴーン氏の華々しい新展開」と伝えた仏経済紙レゼコーは、未確認情報ながら「警戒が厳しい大きな空港を避け、人目につく機会が少ない小さな空港からプライベートジェット機で飛んだようだ」と解説。仏高級紙ルモンドは、再保釈された四月から監視下に置かれ「妻と会い、話す権利すらなかった」と一定の理解を示した。一方、仏左派紙リベラシオンは「裁判所による禁止に違反して出国した」「脱獄」などと表現するなど批判的な論調で伝えた。
◆レバノンと引渡条約なし 外務省幹部「逃げ得の可能性」
 外務省幹部は三十一日、前日産自動車会長カルロス・ゴーン被告が日本から逃亡し、国籍があるレバノンに入国したと表明したことに関し「事実関係を確認中だ」と取材に答えた。政府関係者は身柄引き渡しについて「さまざまな方策を考える必要がある」と述べ、レバノン政府への要請も視野に検討する考えを示した。外務省幹部は、日本とレバノンは犯罪人引渡条約を結んでいないとして「基本的には相手国の理解を得ないと被告人は引き渡されない」と説明。「現段階で、レバノン政府が協力的かどうかは不明だ」と語った。別の外務省幹部は一般論と断った上で「法務省と協議し、外交ルートを通じて引き渡しを求めることになるだろう。ただ、レバノン政府が応じず、『逃げ得』になる可能性がある」と述べた。自民党の葉梨康弘元法務副大臣は取材に対し「公的機関は被告人を監視できるわけではなく、信義則が破られた。想定外で、結果は言語道断だ」と強調した。
◆楽器箱に隠れ日本脱出?
 レバノンの主要テレビMTV(電子版)は三十一日、カルロス・ゴーン被告が楽器箱に隠れ、日本の地方空港から出国したと報じた。出国に際し、民間警備会社のようなグループの支援を受けたとしている。情報源は明らかにしておらず、信ぴょう性は不明。レバノン紙アフバルアルヨウムも「警備会社を使い、箱に隠れて密出国した」と報じた。MTVによると、このグループはクリスマスディナーの音楽隊を装ってゴーン被告の滞在先に入り、楽器箱に隠して連れ出した。映画のような脱出劇で、日本の当局者は気付かなかったとした。その後に出国し、トルコ経由でレバノンに入国したが、その際はフランスのパスポートを所持していたと伝えた。

*4-2:https://digital.asahi.com/articles/ASN142HVZN14UHBI007.html?iref=comtop_8_06 (朝日新聞 2020年1月4日) ゴーン被告逃亡「正しかった」8割 仏紙読者アンケート
 仏紙ルモンドは3日、日産自動車と仏自動車大手ルノーの会長だったカルロス・ゴーン被告(65)のレバノン逃亡についての論評を掲載し、「本当に汚名をすすぎたかったのなら、裁きから逃れた理由がわからない」として、日本で裁判を受けるべきだったと主張した。ゴーン前会長が声明で、逃亡の理由を「不正な日本の司法制度」から逃れるためとした説明に反論した形だ。同紙は「民主主義国家での裁きを拒み、裁かれる場所をもっとも自分の都合のいいように選ぶ可能性を不当に手に入れた」と前会長の逃亡を批判。「西欧人はゴーン氏の事件を通じて、日本の司法の特殊性、ある意味においてはその厳しさに気づくことになった」と伝えつつ、「彼が逃げ出せたのは、批判されていたほどは(保釈条件が)厳しくなかったからだ」とも指摘した。日本の犯罪率の低さといった要素を踏まえずに「中世のような(遅れた)司法システム」と非難するのは、「日本の文化の正しい理解にもとづかない」ものだと論じた。ただ、日本の司法システムを批判する論調が支配的なフランスでは、ゴーン前会長の逃亡容認論が根強い。仏紙フィガロが2日、「ゴーン氏が日本から逃げ出したのは正しかったか」と読者に尋ねたところ、そうだと応じた人が77%に上った。同紙は毎日、主要ニュースについてのアンケートを実施している。紙面にその日の質問を載せて同紙のサイトで投票してもらい、翌日の紙面で結果を伝える仕組みだ。ゴーン前会長の逃亡問題には、8万6798人が投票した。投票ページに寄せられたコメントには「有罪がまったく証明されていないのに非人間的な扱いをする日本人の爪から抜け出した。見事だ」「ゴーン氏は何年間もフランスの最も主要な企業の一つ(ルノー)に奉仕した偉大な人物だ」「日本の司法は全く偏っている。逃げ出せてようやくゴーン氏は説明の場を持てる」など、逃亡を肯定する書き込みが並ぶ。「この逃亡は、フランスのイメージを悪くするだろう。日本人は、どこかフランスを体現しているこの男(ゴーン前会長)の恥ずべき逃避を忘れないだろう」といった声も寄せられている。

*4-3:https://digital.asahi.com/articles/ASN132TS1N13UHBI009.html?iref=comtop_8_04 (朝日新聞 2020年1月3日) ゴーン被告、ハリウッド映画プロデューサーと面会 米紙
 米紙ニューヨーク・タイムズは2日、レバノンに逃亡した日産自動車の前会長カルロス・ゴーン被告(65)が昨年12月、東京都内の住居で、ハリウッドの映画プロデューサーと面会していたと報じた。ゴーン前会長は日本の司法制度への不満を語っていたといい、同紙は「2人の会話が、ゴーン前会長の当時の思考の一端を知るヒントになるかもしれない」としている。同紙によると、ゴーン前会長が面会したのは、米アカデミー賞作品賞などを受賞した「バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)」(2014年)のプロデューサーを務めたジョン・レッシャー氏。ゴーン前会長はレッシャー氏に対して日本の司法制度を批判し、無実の証明に苦心していることを説明。映画をつくれば、人びとがより自らに同情的になってくれるかどうかを気にしていたという。ゴーン前会長を知る複数の人物の話として同紙が報じたところでは、ゴーン前会長は日本での初公判に向けた手続きが進む中、著名人の裁判について調べていた。極めて高い確率で有罪になる日本では、公正な裁判が受けられないと確信するようになったという。楽器を入れる箱に隠れ、プライベートジェットを使ったなどといわれるゴーン前会長の逃亡をめぐっては、欧米メディアが「スパイ映画のよう」などと報道。同紙も「ハリウッドらしい要素は全てそろっている」と伝えている。ただ、レッシャー氏との面会が、ゴーン前会長の逃亡方法に影響を与えたかは定かではない。レッシャー氏は、日本の新聞社に在籍していた米国人記者の体験記をもとにしたドラマの制作陣に名を連ねている。朝日新聞は、レッシャー氏が代表を務める米カリフォルニア州のプロダクションに連絡したが、2日夜時点でコメントは得られていない。

*4-4:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200110&ng=DGKKZO54227140Z00C20A1EA1000 (日経新聞社説 2020.1.10) ゴーン元会長の「情報戦」に有効な反論を
 特別背任などの罪で起訴され、保釈中に密出国した日産自動車の元会長、カルロス・ゴーン被告が逃亡先のレバノンで記者会見した。日本の刑事司法を批判し、逮捕は検察と日産の共謀によるもので自分は無実などと、これまでとほぼ同じ主張を繰り返した。これが日本の法廷の場であれば議論が深まったかもしれない。そう思うと残念だ。世界を驚かせた日産をめぐる事件の裁判は開かれず、真相は分からないままになってしまう可能性が高い。歴史、文化や国内の治安情勢が違うのだから、日本とレバノン、フランスなどとでは司法制度もそれぞれ異なる。異なる制度のもとで刑事訴追されたことへの驚きや失意は理解できなくもない。だが元会長が繰り返す日本異質論には誤解や一方的な思い込みが多い。自身の報酬に関する虚偽記載についても無実であれば、なぜ米証券取引委員会(SEC)からの同様の指摘には、争わず100万ドルの課徴金を支払ったのか。納得できるような説明はなく、一方的主張との印象が強い。保釈中に妻と会えなかった点も繰り返し批判している。だが捜査関係者によれば、妻は日産の資金が元会長側に流れたとされる企業の代表を務めていた。通常は「事件関係者」ということになり、接触の禁止は十分ありうる措置だ。東京地検は妻に対しても偽証の疑いで逮捕状を取っている。ゴーン元会長はこの先も、同じような批判をいろいろな場面で繰り返すだろう。元会長に共感する海外メディアも多く、「情報戦」に敗れれば誤ったイメージが定着し、日本の信頼を大きく傷つける。ひいては海外の人たちが、日本で生活することをためらうような事態さえ招きかねない。ゴーン元会長が会見した直後、森雅子法相が未明に会見を開いてすぐに反論したことは評価したい。だが国内だけでなく、あらゆる手段を使って海外に向け、日本の立場や考え方を正しく伝えていく必要がある。今