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2018.6.22 原発に固執する資本生産性の低さと国民負担 (2018年6月23、24、25、26、27日、7月5、11、12日に追加あり)
  
         2017.12.14、2018.6.10西日本新聞

    
   Livedoor       2018.6.14西日本新聞       世界の発電コスト低減

(1)フクイチ事故のその後
1)事故を起こした原発の状況
 *1-1-1のように、東京電力は原発事故から7年後の2018年1月19日、初めてフクイチ2号機で格納容器底部に燃料集合体の一部が落下しているのを確認したそうで、これまで2号機はデブリの多くが圧力容器内に残り、一部が圧力容器の底を抜け格納容器の底部付近に落ちたと推定されていて確認していなかったそうだ。そして、残りの燃料集合体が何処に飛散したかは明らかにしておらず、その楽観論には呆れる。

 また、*1-1-2のように、3号機は覆うだけで2537日(約7年)もかかったそうで、その間は放射性物質をまき散らし続け、廃炉に30~40年かかるそうだが、その上、*1-1-3のように、また原子炉建屋を覆うカバー屋根を解体し、2020年度に貯蔵プールから核燃料を取り出すそうだ。そのため、その間は、3号機に残っている核燃料が、再度、露出状態になる。

 さらに、*1-1-4のように、2号機の核燃料を取り出すためとして、東京電力は2号機の原子炉建屋壁面に開口部を設ける工事を始めたが、2号機の使用済核燃料の取り出し開始は、速くても2023年度だそうだ。

 つまり、チェルノブイリ以上の爆発事故を起こしながら、東京電力と経産省は、放射性物質を迅速に閉じ込めず、のんびり拡散させている点が、ロシア以上に人権侵害なのである。

2)除染後の放射線量と除染土の扱い
 また、事故後の避難の範囲も狭すぎたが、*1-2-1のように、除染もいい加減で、2017年9〜10月に飯舘村・浪江町の避難指示解除区域で毎時0.2〜0.8マイクロシーベルトあり、政府目標の0.23マイクロシーベルトを超えていたそうだ。しかし、一般住民の許容被曝線量は世界基準では年間1ミリシーベルト(0.11マイクロシーベルト/時)以下であるため、日本基準(年間2ミリシーベルト《0.23マイクロシーベルト/時》以下)にはごまかしがある。

 その上、*1-2-2のように、環境省が農地造成に除染土を再利用する方針を出したのには驚いた。園芸作物は土ごと購入する場合もあり、そのうち境界が曖昧になって農作物の生産に使われるかもしれないため、せっかく大金をかけて集めた除染土を農地造成に利用して汚染を全国にばら撒くというのは、その感覚が疑われる。

   
        フクイチ1、3号基の爆発と直後の様子         放射性物質の飛散

(2)原発のツケ
 フクイチ事故から約6年後の2016年12月1日、政府の高速炉開発会議は、*2-1のように、「政府の高速炉開発会議は、約1兆円の国費をかけて20年以上殆ど運転できなかったもんじゅ廃炉が検討されている高速増殖原型炉もんじゅに代わって、より実用化に近い実証炉を国内に建設する」という方針を公表したそうだ。しかし、1兆円もかければ再エネは軌道に乗せることができるため、コストがかかる上、エネルギー自給率にも資さない原発にこれ以上の国費をつぎ込むのは無駄遣いである。

 さらに、*2-2-1は、「日本政府は、日立製作所が英国で進める原発新設事業に対して3兆円規模の債務保証をする」と書いているが、これは国民に3兆円規模(消費税1%分以上)の損失リスクを負わせることであり、とんでもない。そのため、*2-2-2のように、日立製作所の方が撤退も視野に英政府と事業継続に向けた最終協議に入るそうだが、日立は経済合理性から撤退したいのに日本政府が前のめりになっているように見える。残念なことに、*2-2-3のように、英政府も前のめりで日立と事業推進に向けた覚書を結んだそうだが、日立は、ここで撤退するのが最も安上がりだろう。

 また、*2-3の日印原子力協定でも、インドで原発事故が発生した際には電力会社がメーカーに賠償請求できるという(本当は当然の)法律があり、メーカーは巨額の賠償責任を問われる恐れがあるため、原発のコストは再エネより安いという論拠は成立しない。

 このように、民間企業が原発を輸出するにあたって国民にツケを回すことには、*2-4のように、国民の理解が得られる筈がない。そして、日本政府が強力な支援策を検討している資金は、国民の生活を支える社会保障を減らしながら国民負担を増やして得た金なのである。

(3)原発再稼働
 断続的に噴火している新燃岳や250年ぶりに噴火したえびの高原(硫黄山)など、活発な火山活動を続ける宮崎、鹿児島県境の霧島連山の地下に、最大15キロに及ぶ大規模なマグマだまりのあることが、*3-1のように、気象庁などの解析でわかっている。そして、これは、川内原発のすぐ東側だ。

 しかし、*3-2のように、玄海町議会は原発増設を国の計画に明記することを要求する意見書を可決しており、これなら、コストが決して低くないことが明らかになった原発は、再エネのコストが下がっている現在、国策ではなく町策にすぎない。そして、町策は、周囲に迷惑をかけない賢いものを考えるべきである。

 そして、周囲のあらゆる反対を押し切り、*3-3のように、九電は川内原発1、2号機、玄海3、4号機を再稼働したが、加圧水型でも爆発の危険性はかわらず、使用済核燃料が保管プールに水につかっただけで満杯になっていることにもかわりはない。これでは、せっかく福岡市郊外のベッドタウンとして機能できる位置にあっても、周囲に住む人が減るのは当然のことである。

 なお、私は、エネルギーのためなら公害を出しても景観を悪くしても許されるという19世紀・20世紀の発想には組しない。そして、*3-4のように、関係者が、「太陽光発電は晴天の昼間に発電量が増える一方、夜間は発電しないなど不安定な電源」などと10年1日の如く同じことを述べ、「従って、原発4基の稼働が実現したので、今秋の連休にも太陽光発電事業者の出力制御に踏み切る」というのは、世界の潮流に逆行しており、あまりにも愚鈍だ。

 そして、これが、せっかく最先端の事業のタネがあっても事業化すれば成功しない典型例で、日本では事業を起こすことはハイリスク・ローリターンであるため、起業が少ないのである。

<フクイチその後>
*1-1-1:https://www.shikoku-np.co.jp/national/science_environmental/20180119000633 (四国新聞 2018/1/19) 福島2号機で溶融核燃料初確認/第1原発調査、炉心から落下
 東京電力は19日、福島第1原発2号機でカメラ付きのパイプを使い、原子炉格納容器内部を調査した。格納容器底部に燃料集合体の一部が落下しているのを確認し、その周辺で見つかった堆積物は溶け落ちた核燃料(デブリ)と断定した。2号機でデブリを確認したのは初めて。記者会見した東電の木元崇宏原子力・立地本部長代理は「デブリで原子炉圧力容器の底部に穴が開き、中から燃料集合体が落下した。デブリに間違いないだろう」と述べた。これまでの解析では、2号機ではデブリの多くが圧力容器内に残り、一部が圧力容器の底を抜け、格納容器の底部付近に落ちたと推定されていた。

*1-1-2:https://digital.asahi.com/articles/ASL3D62XML3DUGTB00N.html?iref=comtop_8_01 (朝日新聞 2018年3月18日) 3号機、覆うだけで2537日 廃炉作業、厳しい道のり
 東京電力福島第一原発は2011年3月12日から15日の間に3度、爆発した。放射性物質をまき散らし、大地や水、人々の暮らしは今も深い傷を負っている。4号機の使用済み核燃料取り出しに続き、3号機では爆発から2537日目の2月21日、ようやく核燃料を運び出す準備が整った。「3号機廃炉作業所長」を務める鹿島の岡田信哉さん(54)はこの日、最上階で、半円柱のカバー(長さ約60メートル、高さ約18メートル)の最後の一片がはめ込まれ、燃料プールが覆い隠されるのを見守った。プール内の燃料は566体。カバーはこれらを取り出す際、放射性物質の飛散を防ぐために不可欠な設備だ。高さ36メートルの現場にはいつものように、ZARDの「負けないで」のメロディーが流れるエレベーターで昇ってきた。岡田さんは7年近く、約100人の部下を率い、高線量のがれきと格闘してきた。原発事故から10日後、本社(東京)に呼ばれ、3号機のカバー設置を検討するメンバーに入った。当時は東電柏崎刈羽原発(新潟)の工事事務所長で、その豊富な経験が買われた。初めて見た3号機の建屋は、めちゃくちゃに壊れた鉄骨やコンクリートが屋上で折り重なっていた。放射線量は最大で毎時2シーベルト(3~4時間で致死量に達する)を超える地点も。屋上のがれきを取り除き、プールを覆うカバーを設置しようにも、大型クレーンを建屋に近づけなければ何も始まらない。まずは建屋周辺の舗装に取りかかった。大型クレーンに耐えられるよう採石を1メートルほど積み上げ、その上に鉄板を敷いた。放射線を遮断する特別仕様の重機で作業を進めた。時に胸ポケットに入った「APD」(線量計)から高音の警報が鳴る。3回目が「現場から出る支度を」という合図。1班十数人での交代作業だが、至る所で音が鳴った。「自分か他人かわからない時もあった」。11年秋から屋上のがれき撤去に取りかかった。使用する大型クレーンは2基で、約100メートルのアームで狙うのは、山積するコンクリートや鉄骨のがれき。作業上の特徴は「遠隔操作」と「3Dを使ったシミュレーション(解析)」だ。クレーンは無人で、現場から約500メートル離れた免震重要棟から遠隔で行った。無人重機の運転席にはカメラやマイクが設置され、現場の状況が映像と音で確認できる。だから免震棟の一室からでも、運転席にいる感覚で操作できるという。もう一つがシミュレーションだ。入り組んだがれきの取り出しは戦略的に行われた。まず本社で3D画像や模型を使って現場を再現し、解析する。この鉄骨をここから切り込むとこう動く、ここを切ると反対側に倒れるかもしれない、といった予測だ。そのデータをもとに、現場ではアームの先端に付けた「フォーク(つかむ)」「カッター(切る)」「バケット(すくう)」「ペンチ(つまむ)」の4種類の機器を駆使し、がれきを地上に下ろした。がれきは重さ5キロの鉄板だったり、数トンの鉄骨だったり。「今日は2個、3個取れたとか、そんな報告を受けるような地道な作業が続いた」。がれきの撤去を終え、昨夏からカバーの設置作業を進めてきた。燃料の取り出しは今秋にも始まるが、その主体は東芝に移る。「うまくバトンタッチしたい」。岡田さんらは今、燃料取り出しに向けた道路の整備などにあたっている。この先も難路が続く。燃料取り出しは遠隔操作で2年ほどかかる。格納容器に溶け落ちた燃料(デブリ)の回収はそれからで、その方法はまだ決まってない。福島での単身生活は7年になる。中学生だった息子は大学生になった。岡田さんは「こんなに時間がかかるとは思いもしなかった。できればまた廃炉に関わっていきたい」と話した。7年間で取り除いたがれきは、25メートルプールで10杯ほど、約3200立方メートルに上った。
〈東京電力福島第一原発の廃炉計画〉 国と東京電力がつくる福島第一原発の廃炉工程表は、終了を2011年12月から30~40年後としている。大きく3期に分け、使用済み核燃料の取り出し開始までを1期(2年以内)、デブリの取り出しが開始されるまでを2期(10年以内)、以降を3期としている。1期は13年11月に4号機で作業が始まったのを機に終了。現在の2期に移行している。デブリの取り出しが始まると3期に入るが、時期は未定だ。

*1-1-3:https://www.nikkei.com/article/DGXLASGG28H03_Y5A720C1MM0000/ (日経新聞 2015/7/28) 福島第1原発1号機、解体に着手 カバー屋根取り外し
 東京電力は28日、福島第1原子力発電所1号機の原子炉建屋を覆うカバーの本格的な解体作業に着手した。まず屋根を取り外し、2016年度中の解体完了を目指す。20年度に始める貯蔵プールからの核燃料の取り出しに向け、1号機の廃炉工程が前進する。1号機では11年3月の事故の際に水素爆発が発生し、建屋が大破した。放射性物質が飛び散るのを防ぐため、11年10月に建屋全体を覆うカバーを設置した。28日早朝の作業では、屋根に6枚並ぶパネル(1枚あたり幅約7メートル、長さ約42メートル)のうち中央にある1枚をクレーンで取り外した。年内にもすべて撤去する。側面なども含め、1年以上かけて解体を終える計画だ。解体後は建屋内に散乱するがれきなどを撤去し、貯蔵プールに392体残る核燃料搬出に備える。カバーはもともと13~14年度に解体する計画だったが、作業に伴う放射性物質の飛散対策などに時間がかかり、大幅に遅れた。東電は今年5月に屋根の撤去に着手する予定だったが、建屋内の放射性物質の拡散を防ぐために設置したシートがずれているのが見つかり、延期していた。

*1-1-4:https://www.kahoku.co.jp/tohokunews/201804/20180417_63021.html (河北新報 2018年04月17日) <福島第1>2号機「燃料」取り出しへ 壁面に穴開け開始
 東京電力は16日、福島第1原発2号機の原子炉建屋壁面に開口部を設ける工事を始めた。6月までに穴を開け、ロボットなどで内部を調査。2023年度を目指す使用済み核燃料の取り出し開始につなげる。壁内側の空間放射線量は、12年6月時点で毎時880ミリシーベルトと非常に高い。放射性物質の飛散を防ぐため、工事は壁面に密接して新設した「前室」(幅23メートル、奥行き17メートル、高さ10メートル)の内部で実施。初日は技術者が立ち会い、厚さ20センチのコンクリート壁の3カ所を直径11センチの円柱状にくりぬいた。17日も6カ所で行う。開口部は使用済み燃料プール上部に通じる場所に設け、大きさは幅5メートル、高さ7メートル。壁を取り壊す際は重機を遠隔操作する。2号機は水素爆発せず、建屋上部が残っている。東電は建屋上部を解体して天井クレーンを設置し、燃料取り出しを進める計画。

*1-2-1:http://qbiz.jp/article/129054/1/ (西日本新聞 2018年3月2日) 除染後も目標の3倍 飯舘の放射線量、上昇地点も 民間調査
 福島県飯舘村の民家とその周辺では除染後も、東京電力福島第1原発事故後に政府が長期目標としている被ばく線量の約3倍の放射線量が計測され、1年前より上がっている場所もあったなどとする調査結果を1日、環境保護団体グリーンピースが発表した。調査は、2017年9〜10月に飯舘村と浪江町の避難指示が解除された地域などで実施、民家や森など計数万カ所で測定した。飯舘村の民家6軒では毎時0・2〜0・8マイクロシーベルトで、ほとんどが政府の目標を1時間当たりの空間放射線量に換算した同0・23マイクロシーベルトを超えた。周囲に森林が少ない村役場近くの1軒は16年の調査時から放射線量が下がっていたが、除染していない森林が周囲にある5軒は16年とほとんど変化がなかった。中には上がっている場所もあった。

*1-2-2:https://www.nikkei.com/article/DGKKZO31313110T00C18A6CR8000/ (日経新聞 2018/6/4) 農地造成にも除染土再利用 環境省方針
 環境省は3日までに、東京電力福島第1原発事故に伴う除染で生じた土を、園芸作物などを植える農地の造成にも再利用する方針を決めた。除染土の再利用に関する基本方針に新たな用途先として追加した。食用作物の農地は想定していない。工事中の作業員や周辺住民の被ばく線量が年間1ミリシーベルト以下になるよう、除染土1キログラムに含まれる放射性セシウム濃度を制限。くぼ地をならす作業に1年間継続して関わる場合は除染土1キログラム当たり5千ベクレル以下、1年のうち半年なら8千ベクレル以下とした。除染土は、最終的に厚さ50センチ以上の別の土で覆い、そこに花などを植える。福島県飯舘村の帰還困難区域で今年行う実証試験にも適用。村内の除染土を区域内に運び込んで分別し、5千ベクレル以下の土で農地を造成し花などの試験栽培を行う想定だ。

<原発のツケ>
*2-1:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12684302.html (朝日新聞 2016年12月1日) もんじゅ後継、国内に実証炉 開発体制、18年めど 政府会議方針
 政府の高速炉開発会議は30日、廃炉が検討されている高速増殖原型炉もんじゅに代わり、より実用化に近い実証炉を国内に建設するなどとする開発方針の骨子を公表した。2018年をめどに約10年間の開発体制を固める。約1兆円の国費をかけ、20年以上ほとんど運転できなかったもんじゅの反省は生かされず、高速炉開発ありきの議論が進む。会議は世耕弘成経済産業相が議長。松野博一文部科学相や日本原子力研究開発機構、電気事業連合会、三菱重工業がメンバー。骨子では、もんじゅを再運転した場合に得られる技術的な成果を「ほかの方法でも代替可能」と評価。蓄積された成果は活用するとしつつ、廃炉にしても実証炉建設への影響はないと結論づけた。もんじゅについて政府は廃炉を含め抜本的な見直しを決めている。高速炉は「実験炉」「原型炉」「実証炉」と進み、「商用炉」で実用化する。安全性の確認や発電技術の確立など、原型炉もんじゅで終えるべき課題を残し、次の実証炉に進む形だ。政府は、もんじゅを廃炉にした場合でも、フランスが30年ごろの運転開始を目指す実証炉「ASTRID(アストリッド)」計画に協力することで高速炉開発を維持するとしてきた。だが同会議は、エネルギー政策の根幹とされてきた核燃料サイクル事業の施設を不確実性のある海外の計画だけに頼るのはリスクがあるとの批判も考慮し、国内での実証炉開発を明示した。実証炉の建設時期や場所は未定。来年初めから実務レベルの作業グループを置き工程表策定を進める。骨子にはアストリッド計画を補完する施設として、原子力機構の高速増殖実験炉「常陽」やナトリウム研究施設「AtheNa(アテナ)」(いずれも茨城県)などの国内研究施設も示された。

*2-2-1:https://www.sankei.com/economy/news/180111/ecn1801110051-n1.html (産経新聞 2018.1.11) 日立の英原発計画、日英政府が支援 事業費3兆円確保へ
 日立製作所が英国で進める原発新設事業に対し、日本の3メガバンクが政府の債務保証を受けたうえで融資を行う方針が固まった。政府系の国際協力銀行(JBIC)も融資を行うほか、日本政策投資銀行が出資で参加する。政府は総額3兆円規模とされる事業費確保に向けた支援を進め、原発輸出を後押しする。日立は2012年に買収した英原発子会社ホライズン・ニュークリア・パワーを通じ、英西部アングルシー島で20年代前半の稼働を目指し、原発2基の新設計画を進めている。事業費は融資と出資で調達する。融資はJBICが軸となり、メガ3行も各千数百億円出す方向だ。民間分は政府が全額出資する日本貿易保険が債務保証する。出資は日立と政投銀が実施。大手電力会社にも打診している。英国の政府や銀行からの支援も受ける。日立は最終判断を19年に下す。米原発事業の損失で経営危機に陥った東芝を反面教師に、ホライズンを連結子会社から外せない場合は計画を断念する考え。政府支援には日立が抱え込むリスクを抑制する効果があるが、巨額損失が出た場合には国民負担が発生する懸念が大きくなる。

*2-2-2:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO29996700Z20C18A4MM8000/ (日経新聞 2018年4月29日) 日立、英政府と原発巡り最終協議へ 撤退も視野
 日立製作所が英国で建設を目指す原子力発電プロジェクトを巡って、英政府と事業継続に向けた最終協議に入ることがわかった。2020年代前半の稼働を見込むが、安全基準の強化で総事業費は約3兆円に膨らむ。リスクを抑えたい日立は中西宏明会長が近く渡英し、英政府の直接出資などを求めてメイ首相と交渉する。決裂すれば事業から撤退する方針だ。協議の行方は日本の原発産業だけでなく、日英両国の原発政策にも大きな影響を及ぼす。中西氏は週内にメイ氏と会談し、英中部アングルシー島で計画する原発新設事業について協議する。12年に現地事業会社の全株を890億円で買い取り、総額2千億円程度を投じて原子炉の設計や工事準備を進めてきた。17年末には英当局から炉の設計認証を受け、19年に予定する着工へ最終段階に入っている。関係者によると、4月下旬には英政府が「日英それぞれの政府・企業連合、日立が事業に各3千億円ずつ出資する」案を示してきたという。これまで英政府は原発新設プロジェクトへの直接出資に後ろ向きだったとされ、日立は直談判で英政府の出資確約と事業継続に必要な一段の支援策を求める見通しだ。日立が危機感を強めたのは、今年2月下旬だ。「公式文書で回答がなければ、ウィズドロー(撤退)します」。日立側が英政府に伝えたという。何度も期限を設け、英政府へ投融資など具体的な支援策を要請してきたが「口約束」にとどまってきたためだ。4月末現在も文書を交わす正式合意に至っていない。日立の英国事業については、16年に日英政府も協力の覚書を交わした。だが支援策を固める作業が難航。水面下の折衝は2年近く続くが、なお2つの溝が埋まらない。第一が英政府がどれだけ事業に関与するかだ。「19年までに事業を連結対象から外せなければ、着工しない」。日立は100%子会社となっている事業会社に英政府や現地企業に出資してもらうことで、出資比率を50%未満まで下げられるよう求めてきた。工事遅延などで巨額の損失が発生すれば、日立が100%かぶることになるからだ。だが英政府も財政悪化で「巨額投資に応える余裕がない」と主張する。原発推進派とされるメイ氏だが、欧州連合(EU)離脱交渉に追われるほか、支持率低下で議会の風当たりも強い。「日本政府と覚書を交わした16年から状況は一変した」(英政府関係者)。4月下旬に英国側が示した日英と日立で総額9千億円を出し合う枠組みは一定の譲歩案だった。しかし、これでも英国の出資比率は33.3%。日立や日本政府内では日本側が事業の主導権を握ることへの警戒感も強い。約2兆円と想定される事業に必要な借入金を巡っても、英政府がどれだけ保証を付けるか折り合えていない状況だ。建設後の電力買い取り価格を巡る議論も続く。日立は運営会社としても発電事業に関与する方針で、高い単価での政府買い取り保証を求めている。建設後の採算悪化を避け、長期間にわたって安定運営するためだ。だが英政府が提示している買い取り価格は、日立が求める水準より約2割低いもよう。英政府はフランスや中国が主導する英南西部の原発事業に高い買い取り価格を保証したが、高すぎて市民が払う電力料金は跳ね上がりかねない。世論の反発を招いており「日立にも高い保証を出すのは難しい」という立場だ。日立はメイ氏との直談判で妥協案を探るとみられる。支援を求めるのは「原発はリスクが大きく、民間企業だけで背負えなくなった」(幹部)とみるからだ。メイ氏自身も日立への支援に前向きとされ、交渉次第で支援策が進む可能性はある。11年3月の東日本大震災以降、世界的に安全基準を引き上げる動きが相次ぐ。関連メーカーや建設会社の安全対策費も急増しており、16年末には東芝の子会社だった米ウエスチングハウス(WH)で総額7千億円に及ぶ巨額損失が発覚した。日立の英原発プロジェクトも総事業費が当初の2倍となる3兆円に跳ね上がったとされる。誰が原発コストの負担をかぶるのか。仮に交渉が不調に終われば、日英ともに打撃は大きい。既存発電所の老朽化が進む英国は、今後10基以上の原発を新設して電力需要を賄う計画。日立の事業が頓挫すれば、エネルギー政策の見直しを迫られかねない。原発輸出を成長戦略に掲げてきた日本も、日立案件には政府の融資保証を付けて推す方針だ。三菱重工業のトルコ案件が大幅に遅れるなど各地で日本勢の苦戦が目立つだけに、日立の事業が難航すれば影響は関連メーカーに幅広く及ぶ。世界的に原発事業の難しさが浮き彫りになっている。

*2-2-3:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO3136307004062018MM8000/ (日経新聞 2018/6/5) 日立、英原発の推進で覚書 英政府と基本合意
 日立製作所は英国で進める原子力発電所の建設計画を巡り、英政府と事業推進に向けた覚書を結んだ。英政府との間で資金負担の内訳などで基本合意した。日立は2020年代前半の稼働を目指し、必要な許認可取得など原発新設の準備を進める。19年中の最終契約に向け、原発事業のリスク回避策などを詰める。英政府は現地の4日夕方(日本時間5日未明)にも覚書を結んだ旨の声明を公表する見通し。日立は5月28日開催の取締役会で、英中部アングルシー島で進める2基の原発の新設計画を継続する方針を確認し、英政府との間で覚書締結に向けた調整を続けてきた。日立は4月以降、英政府との間で、事業撤退も視野に入れた大詰めの交渉を進めてきた。5月3日には中西宏明会長がメイ英首相とロンドンで会談した。英政府は総事業費3兆円超のうち2兆円を超える融資を全額負担する支援策を表明。事業費のうち、原発の開発会社に対する9千億円の出資について、日立と日英の政府・企業連合の3者が3千億円ずつを投資する案も示した。原発新設が計画通りに進まなかった場合の損失リスクへの備えでも合意した。日立と日英の両政府・企業連合が各1500億円ずつを拠出する。建設計画の遅れなどの不測の事態が起きた際に資本に転換できる債券などを検討している。これらの条件を固めたことで、日立と英政府は覚書締結にこぎ着けた。日立は原発を新設するかどうかを19年に最終決定する。日立社内にはなお慎重論も根強く、原発リスクを軽減することへの要望が強い。最終契約に向け、なお残る条件を英政府と詰める。1つは英政府による電力の買い取り価格の水準だ。原発運営の事業採算に直結するため、日立は高い価格での買い取りを求めている。一方、英国にとっては電力料金を支払う住民負担につながるため、慎重な交渉が続いている。2つ目は原発事故など不慮の事態が起きた場合の損害賠償責任で、日立と英政府は引き続き協議を続けるもよう。企業連合に出資する参加企業もまだ確定しておらず、日立などは参加企業を募っている。

*2-3:https://mainichi.jp/articles/20170608/k00/00m/010/134000c (毎日新聞 2017年6月7日) 日印原子力協定:原発輸出、増すリスク
 政府は日印原子力協定の締結によって、原発輸出の拡大を目指す。しかし、福島第1原発事故後に原発の建設費用が上昇するなど海外事業のリスクは高まっており、米原発子会社の破綻で東芝が経営危機に陥るなど、日本企業による積極展開の機運はしぼんでいる。福島事故後に国内での新設が困難となる中、日本政府は成長戦略の一環として原発をインフラ輸出の柱に位置づけ、各国との協定締結を進めてきた。電力不足によって今後の新規建設ラッシュが見込めるインドは有望な市場だ。だが、インドには原発事故が発生した際、電力会社がメーカーに賠償請求できる法律があり、巨額の賠償責任を問われる恐れがある。日本メーカーは「インドは巨大な市場だが、賠償法の問題があり、今後の状況を注視していく」(三菱重工業)などと、期待の一方で、慎重な姿勢も目立つ。東芝子会社の米ウェスチングハウスは、米国での原発建設費用の高騰が破綻の引き金になるなど、事業リスクは増している。龍谷大学の大島堅一教授(環境経済学)は「再生可能エネルギーは費用も下がり、投資が拡大している。原発の退潮は明らかで、無理のある協定だ」と批判している。

*2-4:https://digital.asahi.com/articles/DA3S13323241.html (朝日新聞社説 2018年1月21日) 原発輸出 国民にツケを回すのか 
 苦境の原発産業を支えるために、国が高いリスクを肩代わりする。そんなやり方に、国民の理解が得られるだろうか。日立製作所が英国で計画する原発の建設・運営事業に対し、日本政府が資金面で強力な支援策を検討している。だが、福島第一原発の事故後、安全規制の強化で建設費が膨らむなど、世界的に原発ビジネスのリスクは大きくなっている。東芝が米国で失敗し、経営危機に陥ったことは記憶に新しい。万が一、大事故を起こした時の賠償責任の重さは、東京電力がまざまざと見せつけた。日立の事業がうまくいかなければ、支援をする政府系機関が巨額の損失を被り、最終的に国民にツケが回りかねない。政府は前のめりの姿勢を改め、リスクの大きさや政策上の必要性を慎重に見極めるべきだ。計画では、日立の子会社が原発を建設し、20年代半ばに運転を始める。現時点で3兆円ほどと見込まれる事業費は、日英の金融機関からの融資や新たに募るパートナー企業の出資などでまかなう想定だ。日立は採算性を見極めた上で、建設するかどうかを来年にも最終判断する。この計画に対しては、日本の大手銀行は慎重な一方で、「官」の肩入れが際立つ。政府系の国際協力銀行が数千億円を融資するほか、数千億円と見込む民間銀行による融資の全額を貿易保険制度の対象とし、返済を国が実質的に保証する方向で調整している。日本政策投資銀行も出資に加わるとみられる。ここまで政府が後押しするのは、原発産業を守る思惑があるからだ。福島の事故以降、国内では原発の新設が見込めず、経済産業省やメーカー、電力大手は、技術や人材の維持をにらんで海外市場に期待する。
だが、原発輸出はあくまでビジネスであることを忘れてはならない。リスクは、事業を手がける民間企業が負うのが本来の姿だ。それを国が引き受けるというなら、社会にとって有益であることが前提になる。国民の多くを納得させられるような意義はあるだろうか。政権と経済界は、原発などインフラ輸出の推進で足並みをそろえてきた。日立会長の中西宏明氏が近く経団連の会長に就くだけに、今回の支援策が合理性を欠けば、官民のもたれあいだと見られるだろう。そもそも、福島の事故を起こした日本が原発を海外に売ることには、根本的な疑問もある。政府や関係機関は、幅広い観点から検討を尽くし、国民に丁寧に説明しなければならない。

<原発再稼働>
*3-1:http://qbiz.jp/article/135439/1/ (西日本新聞 2018年6月10日) 霧島連山に大規模マグマだまり 気象庁など解析 最大で長さ15キロ、幅7キロ
 2011年以降、断続的に噴火する新燃岳(しんもえだけ)や、今年4月に250年ぶりに噴火したえびの高原(硫黄山)など活発な火山活動を続ける宮崎、鹿児島県境の霧島連山の地下に、最大15キロに及ぶ大規模なマグマだまりがあることが、気象庁気象研究所(茨城県つくば市)などの研究グループの解析で明らかになった。新燃岳の噴火を受けて国や大学、自治体などの観測網が強化され、豊富なデータが利用可能になったことが地下構造の解明につながった。研究グループには東京大の地震研究所と京都大の火山研究センターが参加。11年4月〜13年12月に霧島連山周辺に広がる37地点の地震計からノイズのような微細な地震波を大量に収集し、地盤の固さによって速度が変わる地震波の性質を利用して解析した。大規模マグマだまりは、海面を基準にして深さ5〜7キロ付近を頂点とし、御鉢から北西方向に長さ10〜15キロ、最大幅が7キロ、厚みが少なくとも5キロ以上あるとされる。同様の解析手法で明らかになった長野、群馬県境にある浅間山のマグマだまりの範囲(長さ7〜8キロ)を上回っている。これまでは衛星利用測位システム(GPS)を使った地殻変動の観測から、新燃岳噴火の前後に膨張収縮するエリアがえびの岳の地下深くにあり、これがマグマだまりとされていた。解析を担当した気象研究所火山研究部の長岡優研究官は「地殻変動が起こっていたエリアは、大規模なマグマだまりから新燃岳へマグマを供給する出口部分と考えられる」と指摘する。11年の新燃岳噴火を受けて気象庁や各大学、周辺自治体などが地震計やGPS、傾斜計、監視カメラなどを増強。観測装置は80を超え、噴火前の2倍以上となった。火山活動がより詳細に把握できるようになり、さらなる構造解明も期待される。長岡研究官は「マグマだまりが霧島山全体に広がっていることから、活動予測のためには御鉢周辺などより広い範囲での観測や研究が必要になる」と話している。

*3-2:http://qbiz.jp/article/129284/1/ (西日本新聞 2018年3月7日) 玄海町議会「原発増設を」 国計画に明記要求 意見書案可決へ
 九州電力玄海原発が立地する佐賀県玄海町議会が、年内にも改定される国のエネルギー基本計画に原発の新増設を明記するよう求める意見書案を3月議会で取りまとめることが分かった。19日の本会議に提出する。全町議10人が原発推進派のため可決される見通し。町議会総務文教委員会(5人)が5日、国へ意見書提出を求める請願を全会一致で採択。脇山伸太郎委員長は「原発立地町の責任に鑑みて、国のエネルギー政策に関する意見書を作りたい。内容は作成中でコメントは控える」と話した。意見書案が可決されれば政府に提出する。原発の新増設や建て替え(リプレース)について、岸本英雄町長は昨年12月議会で「リプレースはいずれ強い選択肢になる」と述べたが、山口祥義知事は否定的な見解を示している。請願は、商工団体などで組織する一般社団法人「原子力国民会議」(東京)が昨年末から、玄海町を含む五つの原発立地自治体などに送付。国に対して基本計画に新増設の明記を求める内容で、関西電力高浜原発が立地する福井県高浜町議会が昨年12月議会で同様の意見書を可決した。エネルギー基本計画は現在、改定に向けて経済産業省の有識者会議で議論されている。2014年4月に策定された現行の基本計画は、原子力を「重要なベースロード電源」とし、原子力規制委員会の新規制基準に適合した場合、再稼働を進める方針を明記。ただし、原発の新増設やリプレースに関する表記はない。30年度の原発の電源構成比率を20〜22%とする中期目標の実現へ向け、新増設も検討課題となっている。
   ◇   ◇
●「現実的でない」町民疑問の声
 九州電力玄海原発3号機(佐賀県玄海町)の再稼働が今月下旬に控える中、国のエネルギー基本計画に原発の新増設を明記するよう求める町議会の動きが明らかになった6日、町内の原発賛成派と反対派の住民の双方から疑問の声が上がった。同町の漁業渡辺一夫さん(71)は「使える物は使おうという再稼働はしょうがないが、新増設は現実的に厳しいだろう」と指摘。「反対派からは福島であれだけの事故が起きたと言われる。議会に反対する人がいないためかもしれないが、もう少し慎重にするべきだ」と注文した。一方、同町の公務員小野政信さん(61)は「1号機が廃炉になる損失を補う考えだろうが、福島の現実を見たら再稼働ですら、とんでもないこと。新増設なんて考えられない」と町議会の姿勢を批判した。

*3-3:http://qbiz.jp/article/135851/1/ (西日本新聞 2018年6月17日) 九電 原発4基体制に 玄海4号機 6年半ぶり再稼働
 九州電力は16日、玄海原発4号機(佐賀県玄海町)を再稼働させた。定期検査で運転を停止した2011年12月以来、稼働するのは約6年半ぶり。東京電力福島第1原発事故を受けた新規制基準施行後、九電は川内原発1、2号機(鹿児島県薩摩川内市)、玄海3号機を既に再稼働しており、玄海4号機を加えて当面の経営目標としていた原発4基体制が整うことになる。安全対策を強化した新規制基準下で再稼働した原発は全国9基目。いずれも加圧水型で、今後は福島第1原発と同じ沸騰水型の審査と再稼働が焦点となる。玄海原発内の中央制御室ではこの日朝から運転員など約20人が作業。午前11時、原子炉内の核分裂を抑える制御棒を遠隔操作で引き抜き、原子炉を起動させた。16日深夜に核分裂が安定的に続く「臨界」に達した。20日に発電と送電を開始予定。順調に進めば7月中旬に営業運転に入る。玄海4号機は3号機とともに使用済み核燃料の処理が課題。保管プールの空き容量が少ないが、処理を担う日本原燃(青森県)の工場は操業の見通しが立たず、搬出できない状態での再稼働となる。九電はプールの容量増強や金属製容器に入れ陸上で一時保管する「乾式貯蔵」を検討している。玄海原発では、1号機で廃炉作業が始まっている一方、21年に運転期限の40年を迎える2号機について九電はまだ方針を決めていない。今後は、存廃の判断が注目される。地域の理解も課題だ。事故時の避難計画が必要な周辺30キロ圏の3県8市町のうち、4市が避難計画の実効性などを問題視して再稼働に反対を表明している。16日には原発前などで反原発団体の抗議活動があった。玄海4号機は17年1月に新規制基準に適合。5月24日にも再稼働する予定だったが、原子炉の冷却水を循環させるポンプの一部で異常が発生。緊急点検と修理作業を実施し、工程が約3週間遅れた。

*3-4:http://www.saga-s.co.jp/articles/-/231896 (佐賀新聞 2018.6.17) 太陽光出力制御、今秋にも、九電、原発4基稼働実現で
 東松浦郡玄海町の九州電力玄海原発4号機が16日に再稼働し、太陽光発電の普及が進む九州で原発が4基動く環境が整った。電力供給力が大幅に増えるため、九電が、今秋の連休にも太陽光発電事業者の出力制御に踏み切る事態が現実味を帯びる。出力制御が頻発すれば太陽光事業者の収支に影響が出るのは必至だ。電力需要が少ない時期に供給が大幅に上回れば広域的な停電を引き起こす恐れがあり、電力会社に出力抑制が認められている。ただ、これまで離島では実施例があるが、九州本土といった広域で行えば全国で初となる。太陽光発電は晴天の昼間に発電量が増える一方、夜間は発電しないなど不安定な電源で電力会社にとって扱いにくい。九電はこれまでも火力発電の稼働率の調整や、揚水発電所で昼間に水をくみ上げて夜間に発電するなどしてきたが、さらに上回ると見込まれる場合、事前に太陽光事業者に対し出力制御を指示する。連休中などはオフィスや工場の電力需要が下がるほか、家庭などで冷暖房も使わなければ電力需要は下がる。九電によると、今年4~5月の大型連休中は供給電力に占める太陽光の割合が一時81%を超えた。今秋には川内原発1、2号機(鹿児島県薩摩川内市)や玄海3、4号機がいずれも稼働している見通しだ。九電関係者は「原発が4基動き、電力需要が少なく晴天といった条件がそろえば、制御をすることになるだろう」と分析している。

<再生エネへのエネルギー転換へ>
PS(2018/6/23、27追加):川内原発の地元で世論調査を行った結果、*4-1のように、再エネへの移行を望む県民の強い意識が明らかになったそうだ。特に鹿児島県は、火山や地震で原発が危険な反面、地熱発電は期待できるため、再生エネの主力電源化を国より先行して実施すればよいと考える。また、玄海原発の周辺地域とされている唐津市は、原発事故が起これば1分以内に汚染され、帰還困難区域になる場所も多いため、リスクを負う以上、*4-2のように、原発の地元として「地元同意」の対象になるのが当然である。
 なお、*4-3のように、使用済核燃料の最終処分場所も決まっておらず、現在は原発建屋内の使用済核燃料プールに水につかっただけで大量に保管されており、九電は燃料の間隔を詰めるリラッキングや乾式貯蔵施設を検討しているそうだ。しかし、これは、原発周辺住民の安全性について、原発建設時よりも規制緩和された取り扱いであり、とても見過ごすことはできない。

   
30年以内の大地震発生         地熱発電とその資源分布

*4-1:https://373news.com/_column/syasetu.php?storyid=92345 (南日本新聞 2018/5/8) [原発世論調査] 再生エネへの転換を急げ
 調査で浮かび上がったのは、原発再稼働に対する賛否にかかわらず、再生可能エネルギーへの移行を望む県民の強い意識である。国や県は再生エネへの転換を積極的に進めるべきだ。南日本新聞社は九州電力川内原発について電話世論調査を行った。再稼働の賛否では「よくなかった」「どちらかといえばよくなかった」が計50.0%、「よかった」「どちらかといえばよかった」は合わせて43.7%だった。注目したいのが、それぞれの理由(複数回答)である。再稼働に否定的な理由は「できるだけ早く再生可能エネルギーに移行すべき」が最多の45.0%、次が「福島の事故原因が究明されていない」の33.5%だ。肯定派の理由も、「再生可能エネルギーへの移行まで当面必要」が43.7%で最も多く、2番目の「雇用、経済活動、地域の活性化維持に不可欠」の41.6%をわずかに上回った。今後の原発政策についての考えは、「すぐにやめるべき」「できるだけ早くやめるべき」を合わせると6割に迫る。再生エネへの期待と脱原発の支持は、根強いものがあると受け止めたい。県は、2018年度から5年間で取り組む再生エネ施策の指針となる新ビジョンを公表している。意義や目標を県民に丁寧に説明し、導入を促進してもらいたい。一方、国が示す再生エネの将来像は、まだまだ物足りないと言わざるを得ない。政府は先月、対象期間を30年から50年までに拡大した新しいエネルギー計画の骨子案を有識者会議に示した。再生エネの主力電源化を進めると明記したことは前進だ。だが、30年度の発電割合を原発20~22%、再生エネ22~24%とする方針は変更せず、50年の新たな数値目標も示さなかった。原発を「重要なベースロード電源」と位置づける考えは変えていない一方で、新増設については盛り込んでいない。これでは原発の在り方についても、曖昧にしたままといえよう。経済産業省によると、15年の再生エネの発電比率は英国25.9%、ドイツ30.6%に対し、日本は16年で15.3%と見劣りする。日本は温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」で、50年に温室効果ガスを8割削減する国際公約を掲げている。夏に閣議決定されるエネルギー基本計画で再生エネ推進の道筋を明確にできるか。国際社会も注目しているはずだ。

*4-2:http://qbiz.jp/article/136262/1/ (西日本新聞 2018年6月23日) 唐津市が「地元同意」要求へ 玄海原発巡り、市長意向
 九州電力玄海原発(佐賀県玄海町)の「地元同意」の範囲が県と同町に限られていることを巡り、町に隣接する同県唐津市の峰達郎市長は22日、市議会原発対策特別委員会で対象に同市も含めるよう求める考えを明らかにした。地元同意については3月、日本原子力発電東海第2原発(茨城県東海村)の再稼働と運転延長に関し、半径30キロ圏内の5市が加えられた。これを受け特別委も運転延長などで同意範囲の拡大を議論していた。峰市長は「5キロ圏も30キロ圏も人口は唐津市が玄海町より多い。(7月の玄海町長選後に)新町長と話の場を設けたい」と述べた。これに対し特別委に招致されていた九電立地コミュニケーション本部の八木繁部長は「(玄海と)東海第2とはリンクしない」と慎重な立場だった。

*4-3:http://www.saga-s.co.jp/articles/-/235911 (佐賀新聞 2018年6月27日) 玄海3、4号機 使用済み燃料対策「時間がない」 九電、危機感示す、県議会原子力特別委
 佐賀県議会の原子力安全・防災対策等特別委員会(八谷克幸委員長、11人)は26日、九州電力の幹部を参考人招致し、再稼働した玄海原発3、4号機(東松浦郡玄海町)の使用済み燃料対策や保守体制についてただした。九電幹部は使用済み燃料対策について「時間がない」と危機感を示しながらも、原子力規制委員会への申請や着工の時期については4号機の使用前検査が完了していないことなどを理由に「検討中」とするにとどめた。玄海原発の使用済み燃料は3号機が約7年、1、2号機とプールを共用する4号機が約5年で容量を超える見込み。九電は対策として燃料の間隔を詰めて貯蔵量を増やすリラッキングや、特殊な金属製の容器に入れて空冷する乾式貯蔵施設を検討している。現状を問われた山元春義取締役は「社内で詰めている状況で、(原子力)規制庁に相談する前の段階」と説明。東京電力ホールディングスと日本原子力発電が今年12月までに運用開始を目指している中間貯蔵施設(青森県むつ市)については、林田道生立地コミュニケーション本部副本部長が「活用は検討していない」と述べた。3号機で3月末に発生した2次系配管からの蒸気漏れに対し「明らかにさびが確認でき、現場の意識に問題があるのでは」と九電の保守・点検体制を疑問視する質疑も相次いだ。林田副本部長は「一つの担当課だけでなく、週に1回程度の会議体で情報を共有している」と改善策を説明。異常事態は全て自治体に連絡するよう安全協定を改定すべきではという意見には、否定的な見解を示した。2015年に再稼働した川内原発1、2号機(鹿児島県)と合わせ、九電の原発が4基体制となったことで、管内電源の約3割を原発が占めるという見通しも示された。

<“空気” は読むだけのものか?>
PS(2018/6/24追加):私のことを、「“空気”が読めない(略して“KY”)」と批判したド阿呆な週刊誌があった。しかし、私は、「空気が読めない」のではなく、①“空気”を読んでも、間違っていれば勇気を持ってその“空気”を変え ②間違った“空気”でも、いちいち対応していると大変なので小さな問題なら無視している だけであり、他の人にも自己保身だけを考えるのではなく、淀んだ空気は勇気を持って変える努力をして欲しいと考えているのだ。
 また、 “空気”とは、1)どの範囲の“空気”かも定義しなければならないし 2)大勢の“空気”は善と限れるか についても考慮すべきだ。そのうち、1)については、身の回りや日本国内だけの空気を見ればよいわけではなく、2)については、差別やいじめのように、大勢で誤った行動をしている場合には、自分1人しかいなくても勇気を出して変えなければならない。そして、推薦入学世代の日本人には、その判断力・勇気・正義感が不足しているように思う。
 なお、無視すべき“空気”か、変えなければならない“空気”か、同調すべき“空気”かを判断するには、知識・経験・正義感・勇気などの総合力が必要で、それは教育や仕事を通じた研鑽の賜物であるため、*5の論調は的外れである。しかし、そもそも「空気を読む」という発想自体が、言わなくてもわかる同質性を前提としており、主体性にも欠ける。

*5:https://www.nikkei.com/article/DGXLASDG21HAE_R20C17A9CR8000/ (日経新聞 2017/9/21) 必要な言葉の能力、「空気を読む」が大幅増 国語世論調査
 21日発表の文化庁の国語世論調査では「空気を読む」傾向が強まっていることが明らかになった。「これからの時代に特に必要な言葉の知識や能力」として「相手や場面を認識する能力」と回答した割合は19%で、2002年度の7%から大幅に増え、最も多い「説明したり発表したりする能力」(21%)に迫った。意見の表明や議論についての意識を聞いた質問では、人と意見が違うときに「なるべく事を荒立てないで収めたい方だ」という人の割合が62%で、同様の質問をした08年度より10ポイント高まった。交流サイト(SNS)などで特定の個人の投稿が拡散され、主に批判的なコメントが集まる「炎上」については「目撃した際に書き込みや拡散をするか」との問いに「(大体・たまに)すると思う」と答えた人の割合は3%にとどまった。年齢別で最も高いのは20代で、11%が「すると思う」と答えた。一方、言葉について困っていることや気になることを尋ねる質問(複数回答)には「流行語や新しい言葉の意味が分からない」と答えた人の割合が56%で、10年度より14ポイント高くなった。「年の離れた人たちが使っている言葉の意味が分からない」という人も31%と9ポイント増え、年代が上がると増える傾向があった。日本大の田中ゆかり教授は「(1980年前後生まれ以降を指す)デジタルネーティブ世代と高齢層の間では(言葉の)崖のようなものができつつある」とみている。

<玄海町・唐津市の新産業>
PS(2018/6/25追加):*6のように、各地で養蚕を先端技術でよみがえらせる取り組みが進んでいるそうだが、玄海町にもかつては桑畑があり、養蚕が下火になってからはタバコ栽培を行っている。しかし、タバコも健康に悪く、(遅ればせながら)日本でも禁止の方向にあるため、私は、玄海町は原発を辞めて山鹿市のような先端技術の養蚕を行い、医薬品や化粧品を九大・久光製薬・唐津市にある化粧品会社などと協力して作ってはどうかと考える。その方が高付加価値で、21世紀らしいスマートさがあるだろう。


    桑畑        山鹿市、蚕の無菌栽培      遺伝子組み替え蚕の大量栽培

*6:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO32129650S8A620C1ML0000/?nf=1 (日経新聞 2018/6/24) ハイテクが紡ぐ「蚕業革命」 通年生産・光る糸・医薬
 かつて日本の近代化を支えた養蚕を先端技術でよみがえらせる取り組みが各地で進んでいる。熊本県ではクリーンルームを備えた世界最大級の工場で繭の量産が始まり、新潟県や群馬県などの企業や農家は遺伝子組み換え技術を応用して光る生糸や化粧品・医薬品をつくり出そうとしている。政府も「蚕業(さんぎょう)革命」として後押しする。熊本県北部の山鹿市の廃校跡地。2017年に完成した洗練された外観の建物で繭の量産が始まった。求人案内のあつまるホールディングス(HD、熊本市)が約23億円を投じて建設した世界最大級の養蚕工場だ。延べ床面積は約4千平方メートル。高品質のシルクの原料を効率的に大量供給し、生産性向上を目指す。カイコは伝統的な飼育法では餌になる新鮮な桑の葉を確保できる春から秋に年3回程度しか繭が取れない。餌やりや掃除は手間がかかり、感染症にかかりやすい難点もある。ところが、あつまるHDの島田裕太常務執行役員は新工場で「年間を通して高品質の繭を出荷する」と強調する。熊本大学物質生命化学科の太田広人特任准教授らと連携し、カイコが1年を通じて食べ、餌やりの手間も減らせる人工飼料を開発している。近くの山頂の耕作放棄地に設けた25万平方メートルの桑畑で無農薬栽培した桑の葉を乾燥保存し、特殊な添加剤を加えて与える。工場は無菌のクリーンルームで感染症の危険もなくした。カイコにとり快適な温度や湿度も保つ。カイコは現在30万頭を飼い、できあがる繭を集める収繭(しゅうけん)も毎月手掛け始めた。3年で3千万頭とし、繭の生産量を年間50トンと国内最大の群馬県を上回る規模に増やす。高品質のシルクの原料を安定供給する体制を築き、「化粧品やバイオ医薬品などに応用範囲を広げる」(島田常務執行役員)。山鹿市の中嶋憲正市長は「新たな産業を生み出す大きな可能性がある」とみて、桑畑の候補地の紹介や廃校跡の提供などさまざまな形で事業を支援してきた。有数の産地だった山鹿市での養蚕復活へ、今後も「シルク産業に関連する研究施設の誘致など全面的に応援していく」方針だ。農林水産省によると、養蚕農家はピークの1930年に約220万戸あったが、現在は約350戸に激減し、高齢化も著しい。しかし、飼育管理方法の向上や遺伝子組み換え技術の応用により、新たな可能性が開けてきた。農水省は「農山漁村にバイオ産業と雇用を生み出せる」とみて蚕業革命と名付けたプロジェクトを各地で支援する。着物の手入れなどを手掛ける、きものブレイン(新潟県十日町市)も繭の通年生産に挑む。カイコに無菌状態で特殊なホルモンなどを加えた餌を与え生育を早める。現在の飼育数は養蚕に参入した3年前の3倍の180万頭に達する。岡元松男社長は「1300年の織物の歴史がある十日町で新たなシルク産業を生み出す」と意気込む。京ちりめんの産地、京都府京丹後市は市内の廃校の一角で京都工芸繊維大と連携してカイコを大量に育てる研究を進めている。現在3万~4万の飼育頭数を今秋には20万に引き上げる計画だ。生産設備のエム・エー・シー(新潟県上越市)は新潟県妙高市でカイコ4万頭の飼育を始めた。これらもクリーンルームなど生産管理手法を生かす。遺伝子組み換え技術などを用いて養蚕から新たな価値を生み出そうという動きも活発になってきた。群馬県の農家では17年、緑に発色する蛍光シルクを生み出す遺伝子組み換えカイコの飼育が始まった。組み換え生物を規制するカルタヘナ法に基づく農林水産相の承認を得て、「初めて研究室の外で飼育する」(農水省)取り組みだ。衣服のほか、光る壁紙などさまざまな生活用品への利用を見込む。群馬県蚕糸技術センター(前橋市)は青やオレンジ色に蛍光したり、色乗りが良くなったりするシルクの試験飼育も進める。シルク化粧品製造のアーダン(鹿児島県奄美市)は、生体になじみやすいなどシルクの特性を生かした独自技術で特許を取得した。繭に含まれるシルクフィブロインというたんぱく質を使い、傷口が直りやすく傷も残りにくい軟こうやフィルムの開発を進めている。遺伝子組み換えカイコを使い、一段と効果的な塗り薬も開発する。18年から奄美大島の1万8千平方メートルの畑で地元特産の島桑(しまぐわ)の栽培も始めた。同社の藤原義博・研究開発室長は「かつて栄えた奄美の養蚕で地域経済を活性化させたい」と話す。
■収益確保、需要開拓カギ
 「カイコの技術で日本は世界のトップランナー」。農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構、茨城県つくば市)の門野敬子・新産業開拓研究領域長は強調する。養蚕が伝わった1~2世紀以降、飼育や品種改良の工夫が積み重ねられ、基礎的な研究の成果も相当の厚みがあるという。2000年にはカイコの遺伝子組み換えに農研機構が世界で初めて成功。組み換えを生かした研究開発に弾みが付いた。企業では日東紡グループが血液診断薬、免疫生物研究所が化粧品原料の保湿成分を製品化。蛍光色を持つ生糸を使ったウエディングドレスなども登場している。1つの繭から取れる糸の長さは千メートル強。細さは0.01~0.02ミリだが同じ重さの鉄線より切れにくい。主成分がたんぱく質であり、人体から異物として排除されにくいといった利点もある。繊維のほかにも、医薬品関連など多方面の企業から「問い合わせが入ってくる」(門野領域長)という。ただ、先端分野でも中国などの追い上げが急で、「シルク産業の先行きは決してバラ色ではない」と京都工芸繊維大学の森肇教授は指摘する。中国からさえ新興国へ生産が移り、価格の国際競争は極めて厳しい。独自性があっても光る糸など新素材がどれだけ受け入れられるかは不透明だ。先端シルクの含有量を調節して価格を抑えたり、医薬など高付加価値品の比重を高めたりして、収益を確保しつつニーズを切り開く戦略も求められる。

<ゼロ・エミッションへの転換>
PS(2018年6月26日追加):*7-1のように、東京都の小池知事は温暖化ガス削減に向けて、都内の新車販売に占める排ガスゼロ車の割合を、2030年までに5割へ引き上げる方針を出されたが、私は、これを野心的だとは思わない。何故なら、日本のEV(日産自動車)・FCV(三菱自動車)は、世界のZEV(Zero Emission Vehicle)の先駆けだったにもかかわらず、メディアやガソリン関係の会社をはじめとする抵抗勢力の妨害によって遅れ、現在では中国はじめ各国の後塵を拝しているからだ。そのため、東京都は、2020年のオリンピック時には、ZEV以外の都内への乗り入れを禁止するくらいの措置をとってもよく、そうすれば乗用車・トラック・バスなどのZEV化が一気に進んで、ZEVの製造コストが下がる。なお、奈良・京都のような歴史的建造物を有する地域も、排気ガスによる汚れを防ぐため、同様の規制をした方がよいと考える。
 また、ガソリン需要の低減に伴い、*7-2のように、ガソリンスタンドは廃業が相次いでいるそうだが、ガソリンスタンドの役に立つ部分は残して、洗車や自動車用・家庭用の(タンクに充填された)燃料電池交換など、臨機応変に新たなニーズに対応すればよいだろう。

*7-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180626&ng=DGKKZO32183000V20C18A6L83000 (日経新聞 2018年6月26日) 都、排ガスゼロ車5割目標 国へ対抗意識鮮明に
 東京都の小池百合子知事は温暖化ガスの削減に向け、環境に配慮した自動車の新たな普及目標を打ち出した。都内の新車販売に占める排ガスゼロ車の割合を、2030年までに5割へ引き上げる。国の目標の3割を大幅に上回る野心的な数値だ。かつて自身が主導した「クールビズ」のようなムーブメントの再来を狙うが、課題は多い。「『ゼブ』を流行語大賞にしたい」。5月下旬、小池知事は日産自動車の電気自動車(EV)「リーフ」のフォーラムで訴えた。ゼブ(ZEV)とは、EVや燃料電池車(FCV)などの排ガスゼロ車を意味するZero Emission Vehicleの略。メーカー関係者にはなじみがあっても、一般には知られていない。都の推定によると、17年度の排ガスゼロ車の新車販売比率は都内で約2%にとどまる。EVの普及を妨げているのはエネルギーに使う電池の問題が大きい。リーフの航続距離は400キロメートルでガソリン車と開きがある。「街乗り」には適しているが、充電を忘れると長距離ドライブは難しい。小池知事は「メーカーにはペダルを踏んで頂きたい」と、さらなる技術開発を促した。普及を進めていくためには、充電施設の整備も不可欠になる。都内にはガソリンスタンドが約1千カ所あるが、EVの急速充電が可能な施設は270カ所ほど。しかも、充電器を1、2台しか備えていない施設も多い。FCVの燃料補給に必要となる水素ステーションに至っては都内で14カ所しかない。それでも小池知事があえて野心的な目標を掲げるのは、国への対抗意識がありそうだ。新車販売に占める排ガスゼロ車の目標は国が30%なのに対し、都は50%。受動喫煙防止対策で国を上回る規制方針を掲げたのと同様だ。都幹部は「施策を担当する環境局には、知事から期待とともにプレッシャーがかかっているようだ」と明かす。都はマンションに充電設備を設置する際の補助を始めたほか、都営バス車両にFCVの導入を進めるなど対応を急ぐが、独自の取り組みだけでは限度がある。今後、都民や企業の賛同や協力を地道に取り付けていくことが求められる。小池知事は8月に4年任期の折り返しを迎える。かつて環境相も経験し、環境政策は最も得意と自負する分野の一つだ。排ガスゼロ車の普及を目指した取り組みは、「環境の小池」を強くアピールし、再選戦略につなげようとする思惑もみえる。

*7-2:http://qbiz.jp/article/136361/1/ (西日本新聞 2018年6月26日) 廃業GSを解体せず活用 コインランドリーや車販売店に 屋根や駐車空間を生かし
 九州各地で廃業が相次ぐガソリンスタンド(GS)の跡地を、新たな店舗として活用する動きがさらに広がっている。建物を解体すると多額のコストがかかるため、屋根や事務所をそのまま利用。幹線道路沿いにあり駐車スペースも広いなど、GS特有の立地を生かしている。一方で残ったGSの拠点網をどう維持するか課題も多い。「大型トラックなども入れるよう道路からの間口が広く、お客さまが出入りしやすい」と説明するのは、コインランドリーを運営するWASHハウス(宮崎市)。同社は現在、九州の7カ所でGS跡地に出店。そのうち大分県と宮崎県の2カ所は、屋根や事務所などの建物をそのまま使っている。屋根が広く、雨天でも洗濯物がぬれずに済むなどのメリットがある。毎月1〜2回、子どもの布団の洗濯で挾間店(大分県由布市)を利用する近所の主婦(40)は、「屋根で日陰があり、暑い日も車の中で待てる」と話す。福岡市博多区の国道3号沿いにある福岡夜間救急動物病院も、2004年にGS跡地を活用して開業。幹線道路沿いで、遠方から駆け込む人にも屋根が目立つことなどが出店の決め手になったという。
   ◇    ◇
 GS運営会社も、跡地を活用した別業態の店舗運営に乗り出している。大分県と宮崎県でGS87店舗を運営する東九州石油(大分市)は、14年に新古車の販売業務を開始。16年には、閉店した大分県由布市挾間町のGSを、自動車販売店に改装した。通常、GSを更地に戻すには、地下にあるタンクや、店を囲む高さ2メートルの防火壁などの撤去費用が数百万から1千万円近くかかる。そのため同社も防火壁や事務所、洗車機はそのまま活用。敷地内に販売車を並べ、事務所は商談ルームに改装した。管理部本部の竹内誠治課長は「GSで給油していただいたお客さまに、車の買い替えから洗車、車検、保険手続きまで一括して請け負うことでサービスを強化したい」と話す。
   ◇    ◇
 GSの転換が続く背景には、ガソリンの需要減によるGS運営会社の経営悪化がある。自動車の燃費が向上したのに加え、11年の消防法改正で、古い地下タンクの改修が義務付けられたことも、廃業を加速させた。資源エネルギー庁によると、九州の給油所数は1994年度末の8223カ所から毎年減少し、16年度末には4369カ所とほぼ半減した。建物や地下タンクの撤去費用を出せないGSの中には、「休業」扱いで何年も閉店したままの店も少なくない。一方で、地域のインフラとしてGSの店舗網の維持も求められている。GSの経営改善を後押しするため、経済産業省は現在、規制緩和を検討。収益力向上のため、コンビニ併設などサービスの多角化や、電気自動車(EV)の充電設備や燃料電池車への水素供給など次世代燃料への対応、IT活用による人手不足解消などを後押しする方針だ。

<原発の高コスト体質>
PS(2018年7月5日追加):*8-1のように、世界では再エネのコストが下がり、再エネの短所と言われていたことも解決しつつあるのに、「エネルギー基本計画」で原発を「ベースロード電源」と位置付け、原発依存度をフクイチ以前に戻そうとしているのは、日本特有の思考停止であり、技術進歩の邪魔をしているものである。また、*8-2のように、原発は発電ゼロでも維持管理に膨大な人手を要し、使用済核燃料の保管にも資金と人手を要するものだ。

*8-1:https://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-753138.html (琉球新報社説 2018年7月5日)  エネルギー計画 見せかけだけの原発低減
 中長期のエネルギー政策の指針となる「エネルギー基本計画」を政府が閣議決定した。原子力発電については、2014年の前計画同様、可能な限り依存度を低減させる―とうたいながら、エネルギー供給の安定性に寄与する「ベースロード電源」と位置付けている。11年3月11日の福島第1原発事故によって明白になったのは原子力の制御技術に重大な不備があることだ。事故はいまなお収束に至らず、避難指示の対象は約2万4千人に上る。原発周辺住民の多くは「絶対安全」と力説する政府や東京電力の宣伝を信じた揚げ句、住まいや生活の糧を奪われ、健康を脅かされた。「国策詐欺」の被害者と言っていい。原発の安全性に対する不信感がある中で、政府は30年度の電源構成比率を15年に決定、原発は20~22%とした。エネルギー基本計画は、その実現を目指す方針を盛り込んでいる。原発の発電割合を見ると、東日本大震災前の10年度は25・1%だったが、原発事故を機に急落し16年度は1・7%にすぎない。20~22%の目標値は現状から比べると大幅な増大になる。経済産業省資源エネルギー庁がホームページに公開した資料「新しいエネルギー基本計画の概要」には、震災前と30年度(目標)の電源構成比率が記され、16年度の数値には触れていない。「依存度を低減させる」というのは表向きで、実際は、原発事故以前の水準に近づけようとしている。まるで「羊頭狗肉(ようとうくにく)」だ。政府は、原子力規制委員会の新規制基準に適合した原発について再稼働を進める方針だが、目標の実現には30基程度を稼働させる必要があり、非現実的との指摘がある。本音では、原発の新増設も視野に入れているのだろう。もともと10年のエネルギー基本計画では30年までに14基以上の原発を増設すると明記していた。原発の運転に伴い生成される猛毒のプルトニウムは「地獄の王の元素」と呼ばれる。プルトニウム239の場合、放射能が半分になる半減期は約2万4千年。気が遠くなるほどの年月だ。これほどの長い間、どうやって核のごみを管理できるのか。原発は、短期的には経済上のメリットをもたらすかもしれないが、放射能を完全に制御する技術が確立されていない中では、子々孫々に災いの種を残すだけだ。新たなエネルギー基本計画が、太陽光、風力、バイオマス、水力、地熱などの再生可能エネルギーを「主力電源化」すると明記したのは当然の流れと言えよう。日本の再生エネへの取り組みは欧州などに比べて立ち遅れている。集中的に研究開発を進めることで、真の意味で「原発依存度の低減」を実現すべきだ。

*8-2:https://digital.asahi.com/articles/DA3S13392314.html (朝日新聞 2018年3月8日) 発電ゼロ、人手は膨大 未稼働原発、千人単位で連日作業
 発電ゼロの原発に、5年間で計5兆円超ものお金が電気代からつぎ込まれていた。核燃料を扱う特殊な施設。止まっていても再稼働が見通せなくても、維持・管理には毎日数千人単位の人手が必要だ。東日本大震災で原子炉建屋にひびが入った東北電力女川原発(宮城県)。3基とも震災以降、一度も動いていない。しかし原発内では毎日、東北電やプラントメーカー、建設業者の作業員ら計約2千人が働いている。震災前より数百~1千人ほど多いという。3基はいずれも「定期検査中」の位置づけだ。原発は止まっていても、法令に基づき約1年に1度、安全維持のための検査が義務づけられている。防潮堤のかさ上げなど安全対策工事も加わる。女川原発の神田貴生・報道担当課長は「順番に1基ずつ止める通常の定期検査より、同時に止まっている今の方が作業は多い」と説明する。3基は運転開始から16~33年。女川3基と東通原発1号機(青森県)に費やした「原子力発電費」は2016年度、940億円だった。神田課長は「適合性審査が進む2号機に続き、1、3号機も準備が整えば審査の申請を考えたい」と話す。総発電量で世界最大規模の東京電力柏崎刈羽原発(新潟県)。福島第一原発事故の処理にあたる東電にとって、6、7号機の再稼働は会社の命運を握る。構内では約6千人が作業する。12年の全基停止から6年、作業員数は変わらない。東電によると、発電していなくても機器の保守や点検があり、防潮堤や貯水池、軽油の地下タンクの整備など一連の安全対策工事(6800億円)が続く。平日は毎朝、入構する車両で正門前に渋滞ができる。地元の電気設備業「品田電業社」(従業員35人)は、社員6人が同原発構内で作業している。品田史夫社長(44)は「安全対策工事で、売り上げに占める原発の割合は増えた」と話す一方、同工事の完了を見越し、「再稼働すれば東電は原発の設備投資を増やすはず」と期待を寄せる。
<電力各社でつくる電気事業連合会の話> エネルギー自給率が極めて低い日本の実情を考えれば、原子力を含めた多様なオプションを持っておくべきだ。このため電力各社は原発の安全確保に万全を期すため必要となる経営資源を投入し、対策及び設備の維持管理を行っている。安全が確認されたプラントについては立地地域をはじめ、広く社会の理解を得た上で、有効活用していきたいと考えている。
■<視点>現実みすえた選択必要
 平均すれば年に1兆円。福島原発事故後、中堅国の国家予算に匹敵する金額が毎年、発電ゼロの原発に費やされてきた。いまだ5万人超が避難する原発事故から7年近く。原子力規制委員会の審査は厳格化し、小型で老朽化した原発ほど再稼働のメリットは小さくなった。それでも電力各社は「いったん再稼働すれば効率的」と、維持費をかけ続けている。変化の兆しもある。関電は昨年12月、大飯1、2号機(福井県)の廃炉を決めた。再稼働には安全対策費がかさみ、大型炉でも採算が合わないと判断したとみられる。廃炉を選んでも費用はかかるが、原子力発電費から切り離され、支出の使途や日程は明確になる。原発には自然災害リスクや放射性廃棄物の最終処分という未解決の問題がある。世論調査でも再稼働に反対の意見が多い。発電ゼロで維持費を投じ続け、再稼働を求めるのか、廃炉か。厳しい選別が迫られている。

<健康被害等の大きなコスト>
PS(2018年7月11日追加):*9-1のように、東京電力福島第1原発事故の後、福島県内の全ての子ども38万人を対象に実施している甲状腺検査は2011年度に開始され、2018年に4巡目が始まって、これまでがんと確定したのは162人、疑いが36人いるが、これにも11人の集計漏れがあり、甲状腺癌の発生率は高い。
 放射線の人体への影響は、*9-2のように、2015年8月25日に休刊に追い込まれた月間宝島が2015年4月号に記載しているとおり、1)周産期死亡率の上昇 2)小児甲状腺癌の発症率上昇 3)白血病・その他の癌の年齢調整発症率上昇 4)急性心筋梗塞の年齢調整死亡率上昇 などがある。そして、*9-3のように、チェルノブイリ原発事故のケースに基づいて、原因分析も既に行われている。そのため、放射性物質が人体や動植物に与える影響を知らせることは、福島県の人への差別ではなく、正当な注意を行うための重要な情報であり、放射性物質の影響を過小評価すれば、大人も子どもも、いきとどいた健康診断や病気を発症した場合の正確な補償が行われないというむごい事態になる。
 それにもかかわらず、「不安を煽る」として、生物に対する膨大なコストを測定する正確な疫学調査も行わず、*9-4のように、経産省主導で次世代原子炉を官民共同開発し、「冷却に水ではなくガスを使うため非常時も水蒸気爆発を起こす懸念がない」などとしているのはあまりにも馬鹿げた無駄遣いである。原子炉を冷却した後の高温で放射脳を帯びた大量のガスは空気中に排出するのだろうが、それでは緊急時どころか平時から原発周辺では放射性物質関連の病気が多発することになり、気温も上がるからだ。



   
               2015.3.24、2015.3.9宝島ほか
                
*9-1:http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2018070701001949.html (東京新聞 2018年7月7日) 福島の甲状腺がん集計漏れ11人 検査の信頼性揺らぐ
 東京電力福島第1原発事故の後、福島県が県内全ての子ども約38万人を対象に実施している甲状腺検査で、集計から漏れていた甲状腺がん患者が11人いることが7日、関係者への取材で分かった。事故当時4歳以下も1人いた。県内で多く見つかっている子どもの甲状腺がんと事故との因果関係を調べる検査の信頼性が揺らいだ格好だ。福島市で8日に開かれる県の「県民健康調査」検討委員会の部会で報告される。県の検査は2011年度に開始、今年5月から4巡目が始まった。これまでがんと確定したのは162人、疑いは36人に上る。

*9-2:http://blog.takarajima.tkj.jp/archives/2015-03.html (宝島 2015年3月25日) 福島県の汚染地帯で新たな異変発覚!「胎児」「赤ちゃん」の死亡がなぜ多発するのか?~誰も書けなかった福島原発事故の健康被害 【第6回 後編】~
 最新2013年の「人口動態統計」データを入手した取材班は、高い放射能汚染に晒されている「17の市町村」で、周産期死亡率が急上昇している事実に辿り着いた。ジャーナリストが自力で行なう「原発事故による健康への影響調査」最終回!
■小児甲状腺ガン、急性心筋梗塞「汚染17市町村」で同時多発
 福島第一原発事故発生当時、18歳以下だった福島県民の人口は36万7707人。そのうち、14年12月末時点で甲状腺ガン、またはその疑いがある子どもの合計は117人である。この数字をもとに、福島県全体の小児甲状腺ガン発症率を計算してみると、10万人当たり31.8人となる。これでも相当な発症率であり、十分「多発」といえる。14年度の検査で新たに「甲状腺ガン、またはその疑いがある」と判定されたのは8人だが、そのうちの6人が「汚染17市町村」の子どもたちである。「汚染17市町村」における小児甲状腺ガン発症率を計算してみると、同33.0人と県平均を上回り、より多発していることがわかった。「汚染17市町村」では、急性心筋梗塞も多発している。【図5】は、同地域における過去5年間の「急性心筋梗塞」年齢調整死亡率を求めたものだ。最新13年の年齢調整死亡率は、福島県全体(同27.54人)を上回る同29.14人。おまけにこの数値は、12年(同29.97人)から“高止まり”している。つまり「汚染17市町村」が、福島県全体の同死亡率を押し上げていた。周産期死亡率、小児甲状腺ガン発症率、さらには急性心筋梗塞年齢調整死亡率のいずれもが、「汚染17市町村」で高くなる。これは、福島第一原発事故による「健康被害」そのものではないのか。それとも、偶然の一致なのか。本誌取材班は、東京電力を取材した。同社への質問は、
①原発事故発生後の「福島県における周産期死亡率の上昇」は、原発事故の影響によるものと
  考えるか。
②原発事故発生後の「汚染17市町村における周産期死亡率の上昇」は、原発事故の影響による
  ものと考えるか。
③「汚染17市町村」で周産期死亡率と急性心筋梗塞年齢調整死亡率がともに上昇していること
  は、この中に、被曝による「健康被害」が内包されている可能性を強く示唆している。
  これに対する見解をお聞きしたい。
という3点である。取材依頼書を送ったところ、東京電力広報部から電話がかかってきた。
       *
「(記事を)読む方が、心配になったりするような内容ではないんでしょうかね?」
─「心配になる内容」とは?
「質問書をいただいた限りだと、『震災以降、率が上がっている』といったところで、特に不安を煽るような内容になったりするのかなと、個人的に思ったものですから」
─「不安を煽る」とはどういうことでしょうか?質問した内容はすべて、国が公表したデータなど、事実(ファクト)に基づくものです。
「ファクトですか」
─はい。
「国等(とう)にも当社と同様にお聞きになった上で、記事にされるんでしょうかね?」
─はい。そうです。
      *
 その後、同社広報部からファクスで次のような“回答”が送られてきた。「人口動態統計での各死亡率等についての数値の変化については、さまざまな要因が複合的に関係していると思われ、それら変化と福島原子力事故との関係については、当社として分かりかねます」。しかし、「分かりかねる」で済む話ではない。そもそも、日本国民の「不安を煽る」不始末を仕出かしたのは東京電力なのである。それを棚に上げ、事実を指摘されただけで「不安を煽る」などという感情的かつ非科学的あるいは非論理的な言葉で因縁をつけてくるとは、不見識も甚だしい。自分の会社の不始末が「国民の不安を煽っている」という自覚と反省が不十分なようだ。猛省を促したい。<東京電力は、原因究明を「県民健康調査」に丸投げした>
■環境省「放射線健康管理」の正体を暴く
 続いて、国民の健康問題を所管する厚生労働省に尋ねた。
      *
「それは、環境省のほうに聞いていただく話かと思います」
─原発事故による住民の健康問題は、環境省に一本化されていると?
「そうですね」
      *
 ご指名に基づき、環境省を取材する。面談での取材は「国会対応のため、担当者の時間が取れない」との理由で頑なに拒まれ、質問への回答は、同省総合環境政策局環境保健部放射線健康管理担当参事官室よりメールで寄せられた。回答は以下のとおり。
「昨年12月22 日に公表された、『東京電力福島第一原子力発電所事故に伴う住民の健康管理のあり方に関する専門家会議』の中間取りまとめによれば、
●放射線被ばくにより遺伝性影響の増加が識別されるとは予想されないと判断する。
●さらに、今般の事故による住民の被ばく線量に鑑みると、不妊、胎児への影響のほか、心血管疾患、白内障を含む確定的影響(組織反応)が今後増加することも予想されない。とされています」。環境省は、たとえ周産期死亡率や急性心筋梗塞年齢調整死亡率が増加したとしても、それは原発事故の影響ではない─とした。その根拠は「専門家会議の中間取りまとめ」が、原発事故の影響でそうした疾患が増加することを予想していないからなのだという。ちなみに、「専門家会議」を所管しているのは、この回答の発信元である同省の「放射線健康管理担当参事官室」である。科学の権威たちが揃って予想だにしないことが起きたのが福島第一原発事故だったはずだが、あくまで「予想」に固執する環境省は同じ轍(てつ)を踏みそうだ。もちろん、科学が重視すべきは「予想」より「現実」である。環境省の説が正しいとすれば、原因は別のところにあることになり、それを明らかにするのが科学であり、それは環境省が拠りどころとする「専門家会議」の仕事のはずだ。だが、その原因を特定しないまま、環境省は端から全否定しようとするのである。なぜ、環境省は現実から目を逸らし、真正面から向き合おうとしないのか。身も蓋もない言い方だが、環境省が現実に目を向けることができないのは、昨年12月に出したばかりの「中間取りまとめ」を、環境省自身が否定することになりかねないからなのである。つまり、本誌取材班の検証で明らかになった「汚染17市町村」での周産期死亡率や急性心筋梗塞年齢調整死亡率の増加の事実は、「専門家会議の中間取りまとめ」の「予想」結果を根底から覆しつつ「権威」を失墜させ、その贋物性を白日の下に曝け出してしまうものだった。「中間取りまとめ」が予想していない疾患の増加はすべて「原発事故の健康被害ではない」として、頭ごなしに否定する環境省の姿勢は、かつて「日本の原発は事故を起こさない」と盛んに喧伝してきた電力御用学者たちの姿を彷彿とさせる。2012年7月に出された国会事故調(東京電力福島原子力発電所事故調査委員会)の報告書は、「歴代の規制当局と東電との関係においては、規制する立場とされる立場の『逆転関係』が起き、規制当局は電力事業者の『虜』となっていた。その結果、原子力安全についての監視・監督機能が崩壊していた」としていた。環境省もまた、電気事業者の「虜」となっているようだ。そう言われて悔しければ、「現実に向き合う」ほかに名誉挽回の道はない。このように不甲斐なく、頼りにならない環境省のおかげで、このままでは「汚染17市町村」での“健康異変”は十把一絡(じっぱひとから)げにされ、かつて「水俣病」が発覚当初に奇病扱いされたように、原因不明の奇病「福島病」とされてしまいそうである。メチル水銀中毒である「水俣病」に地域の名前が付けられたのは、加害企業の責任をごまかすべく御用学者が暗躍し、「砒素(ひそ)中毒説」などを唱えたことにより、原因究明が遅れたことが原因だった。これにより、病気に地域名が付けられ、被害者救済も大幅に遅れることになったのである。従って、「汚染17市町村」で多発する病気に「福島」の名が冠されるようになった時の原因と責任は、すべて環境省にある。(『宝島』2015年4月号)

*9-3:https://www.windfarm.co.jp/blog/blog_kaze/post-7051 (中村ブログ2011/10/12より抜粋)
  最近、セシウムの毒性に関する大変重要な冊子が、茨城大学名誉教授久保田護氏により翻訳、自費出版されました。元ゴメリ医大学長、バンダジェフスキー博士の『人体に入った放射性セシウムの医学的生物学的影響―チェルノブイリの教訓セシウム137による内臓の病変と対策―』です。(この本は売り切れて、新しい本『放射性セシウムが人体に与える医学的生物学的影響: チェルノブイリ・原発事故被曝の病理データ』(合同出版社)が出ています)。食物中のセシウム摂取による内部被曝の研究がほとんどない中、バンダジェフスキー博士は、大学病院で死亡した患者を解剖し、心臓、腎臓、肝臓などに蓄積したセシウム137の量と臓器の細胞組織の変化との環境を調べ、体内のセシウム137による被曝は低線量でも危険との結論に達しました。
以下に要点をまとめます。
【体全体への影響】
*セシウム137の体内における慢性被曝により、細胞の発育と活力プロセスがゆがめられ、体内器官(心臓、肝臓、腎臓)の不調の原因になる。
*大抵いくつかの器官が同時に放射線の毒作用を受け、代謝機能不全を引き起こす。
*セシウムの濃度に応じて、活力機構の破壊、たんぱく質の破壊が導かれ、組織発育が阻害される。
*セシウムの影響による体の病理変化は、合併症状を示し、長寿命体内放射能症候群(SLIR)といわれる。SLIRは、セシウムが体内に入ったときに現れ、その程度は入った量と時間とに相関する。
*SLIRは、血管、内分泌、免疫、生殖、消化、排尿、胆汁の系における組織的機能変化で明らかになっている。
*SLIRを引き起こすセシウムの量は、年齢、性別、系の機能の状態に依存するが、体内放射能レベルが50Bq/kg以上の子供は機関や系にかなりの病理変化を持っていた。心筋における代謝不調は20Bq/kgで記録された。
*汚染地帯、非汚染地帯の双方で、わずかな量の体内セシウムであっても、心臓、肝臓、腎臓をはじめとする生命維持に必要な器官への毒性効果が見られる。
【心臓への影響】
*生命維持に必要な多くの系で乱れが生じるが、その最初は心臓血管系である。心筋のように、細胞増殖が無視できるかまったくない器官や組織は、代謝プロセスや膜細胞組織に大きな影響が生じるため、最大の損傷を受ける。
*ミンスクの子供は20Bq/kg以上のセシウム137濃度を持ち、85%が心電図に病理変化を記録している。
*ミンスクの子供で、まれに体内放射能が認められない場合もあるが、その25%に心電図変化がある。このように濃度が低くても、心筋に重大な代謝変化を起こすのに十分である。
【血管系への影響】
*血管系が侵され、高血圧が幼児期からも見られることがある。
*セシウムは血管壁の抗血栓活性を減退させる。
*血管系の病理学的変化は、脳、心臓、腎臓、その他の機関の細胞の破壊を導く。
*体内のセシウム濃度の高い子供の間で、白血球の数の減少が見られた。最初に減ったのがバチルス核好中球と単球であり、同時にリンパ球の数が増大した。
*動物実験では、絶対的赤血球数と相対的核好中白血球の数の減少が起きた。
*40キュリー/km2以上の地域から汚染の少ない地域に移住した子供の骨髄球の生理状態が回復したことは注目に値する。
【腎臓への影響】
*セシウムは腎臓機能を破壊し、他の器官への毒作用や動脈高血圧をもたらす。ゴメリにおける突然死の89%が腎臓破壊を伴っている。
*腎臓もセシウムの影響を強く受けるが、放射線による腎臓の症状は特徴がある。また病気の進行が早く、悪性の動脈高血圧がしばしば急速に進む。2-3年すると、腎臓の損傷は慢性腎機能不全、脳と心臓との合併症、ハイパーニトロゲンミアを進展させる。
【肝臓への影響】
*肝臓においては、胎児肝臓病や肝硬変のような厳しい病理学的プロセスが導かれる。
*免疫系の損傷により、汚染地ではウィルス性肝炎が増大し、肝臓の機能不全と肝臓ガンの原因となっている。
【甲状腺への影響】
*セシウムは、甲状腺異常にヨウ素との相乗関係を持って寄与し、自己免疫甲状腺炎や甲状腺ガンの原因となる。
【母体と胎児への影響】
*セシウムは女性の生殖系の内分泌系機能の乱れをもたらし、不妊の重要因子となりえる。また、妊婦と胎児両方でホルモンの不調の原因となる。
*月経サイクルの不調、子宮筋腫、性器の炎症も見られる。
*母乳を通じ、母体は汚染が低くなるが、子供にセシウム汚染は移行する。多くの系がこの時期に作られるので、子供の体に悪影響を与える。
*1998年のゴメリ州での死亡率は14%に達したが、出生率は9%(発育不全と先天的障害者含む)だった。妊娠初期における胎児の死亡率がかなり高かった。
*セシウムは胎児の肝臓病を引き起こし、その場合胎児は肝臓に限らず、前進の代謝の乱れが生じる。
【免疫系への影響】
*免疫不全により、結核が増加している。
*免疫系の障害が、体内放射能に起因することは、中性白血球の食作用能力の減退で証明されている。
【神経系への影響】
*神経系は体内放射能に真っ先に反応する。脳の各部位、特に大脳半球に影響を及ぼし、さまざまな発育不良に反映される。
*生命維持に不可欠なアミンや神経に作用するアミノ酸の内部被曝による変動は外部被曝と比べ、顕著である。
*セシウム137の体内量と自律神経系の機能障害は相関する。
*動物実験で発情期のメスに神経反応の組織障害が起こる。
*ウクライナの学者は、大脳の差半球で辺縁系小胞体組織の異常があると述べている。
【消化器系】
*セシウムが体内に長期間入っている子供に、慢性胃腸病を引き起こす。
【視覚器官】
*ベトカとスベチロビッチ(15―40キュリー/km2)に住んでいる子供では、子供の視覚器官の変化はそれぞれ93.4%と94.6%だった。
*白内障発生率とセシウム137の量に明白な正比例関係が見られた。
【相乗作用】
*セシウムの影響は、ニコチン、アルコール、ハイポダイナミアと相乗して憎悪される。
【男女差】
*セシウムは男性により多く取り込まれやすく、女性より男性により強い影響が出ており、より多くのガン、心臓血管不調、寿命の低下が見られる。
【疫学調査】
*1976年と1995年のベラルーシの比較。悪性の腎臓腫瘍が男4倍以上、女2.8倍以上。悪性膀胱腫瘍が男2倍以上、女1.9倍以上。悪性甲状線腫瘍が男3.4倍以上 女5.6倍以上。悪性結腸腫瘍は男女とも2.1倍以上。
*ゴメリ州では腎臓ガンは男5倍、女3.76倍。甲状線ガンは男5倍、女10倍となった。
【セシウム排出製剤】
*セシウムの排出に、カリエイ土を加えたペクチン製剤のペクトパルは最も将来性がある製剤のひとつだが、セシウムが人体に入るのを防ぐほうが、それを排出したり乱れた代謝を正常にするより容易なことを心に留めるべきである。
     *      *      *
「チェルノブイリ原発事故による健康被害は、甲状腺ガンだけ」というのがウソだということが様々なデータや証言、動画などから明らかになっている。
★チェルノブイリによる放射能災害  国際共同研究報告書
ウクライナにおける事故影響の概要 から抜粋 
ドミトロ・M・グロジンスキー:ウクライナ科学アカデミー・細胞生物学遺伝子工学研究所(ウクライナ)
 穀物,野菜,牧草,果物,牛乳,乳製品,肉そして卵までもが放射能で汚染され,その汚染は時には,それらの食物を廃棄しなければならないほど強いものであった。ウクライナ人全体の被曝は主として,チェルノブイリ事故後に強制避難させられた地域以外の放射能汚染によってもたらされた。
<放射線生態学的影響>
 チェルノブイリ事故による放射線生態学的影響の主なものは以下のとおりである。
1、厖大な核分裂生成物が大気中に放出され,生態系に侵入した.放射能は,地上の生態系のあらゆる部分に拡がり,結果的に,微生物,きのこ,植物,昆虫,その他の動物,そして人間まで,すべての生き物が放射能で汚染された。
2、 放射能は地下水に移動し,また表層の水をも汚染した。
3、放射能が食物連鎖に入り込み,人間に達した.大人も子供も,また人間の周囲にあるあらゆるものが放射能で汚染された.たとえば,キエフ中心部の樹木の葉は,1986年に7万~40万Bq/kgの放射能を含んでいた。
4、放射能が生物圏に侵入したため,多数の人間を含めて,すべての生き物に対して,被曝を与えることとなった.チェルノブイリ原発事故の放射性降下物から人間が被曝する経路には次の3つがある.第1に,地表に沈着した放射性物質からの外部被曝,第2に,大気中を漂う放射性物質の吸入,第3に,汚染した食べ物を食べることである.全体の被曝の中で,汚染した食べ物を食べることから生じる被曝が特に大きい.外部被曝に比べて内部被曝の方が,はるかに高い生物学的な影響をおよぼすことにも注意しておこう。
5、天然のバックグラウンド以上に被曝することは,人間にさまざまな病気を引き起こすし,放射能汚染地域の動植物群の状態を変化させる。
<子供たちの健康状態>
 チェルノブイリ事故で被曝した子供では,1987年から1996年まで慢性疾患がたえず増加してきた.表14は,チェルノブイリ被災地域の子供の発病率と罹病率の値である。この約10年間で,罹病率は2.1倍に,発病率は2.5倍に増加した.罹病率の増加が最も激しいのは,腫瘍,先天的欠陥,血液,造血器系の病気であった.最も罹病率が高いのは,第3グループ(厳重な放射線管理下の住民)の子供たちである.同じ期間において,ウクライナ全体の子供の罹病率は,20.8%減少していることを指摘しておく。このように,被災地域の子供たちの罹病率は,全ウクライナ平均での子供の罹病率をはるかに超えている。同じ期間に,先天的欠陥の発生率は5.7倍に,循環器系および造血器系の罹病率は5.4倍に増加している。他の地域の子供に比べ,問題の子供たちのガン発生率も明らかに大きい.被災地域の子供の,腫瘍発生率は1987年からの10年間で3.6倍に増加している.ガンの種類によって,その死亡率の増加傾向は,必ずしも一定していない.しかし,汚染地域の子供のガン死亡率は,他の地域の子供よりも大きくなっている.

*9-4:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180711&ng=DGKKZO32841680Q8A710C1MM8000 (日経新聞 2018年7月11日) 次世代原子炉、官民で 年度内に協議体 安全・コスト減に力
 官民が共同で次世代の原子炉の開発に乗り出す。経済産業省は2018年度中をめどに、電力大手や原子炉メーカーなどが参加する協議体を作る検討に入った。より安全性を高めた低コストの原子炉の開発や事業化で連携する。東日本大震災後、国内の原発の稼働は落ち込んでいる。各社が協力する場を設けて新設を後押しし、業界再編の布石にすることも狙う。3日に閣議決定した新たなエネルギー基本計画では、原子力を今後も重要な電源として活用していく方針を示したが、活用に向けた具体策は先送りしていた。原発の新増設や建て替えを進めやすくするため、官民で協力する体制を整える。国内では2011年の東京電力・福島第1原発の事故後にすべての原発が停止。再稼働したのは関西電力や九州電力などの計9基のみだ。経産省は2030年の電源構成について原発で20~22%をめざすが、30基程度の稼働が必要となる。現在の大型炉は100万キロワット規模など大量の発電が可能だが、建設や安全対策の投資がかさむ。官民が共同で開発する次世代炉は、大型炉の改良のほか出力が10万~30万キロワット程度の小型炉も検討する。大型炉の建設費は1兆円規模だが、数千億円に抑えられる。「高温ガス炉」は冷却に水ではなくガスを使うため非常時も水蒸気爆発を起こす懸念がない。国内の原発は稼働から数十年が経過しているものが多いが、次世代炉は最新の制御技術などを導入。緊急時に被害が広がりにくいシステムを備える。経産省は電力大手各社に協議体への参画を打診する。東京電力ホールディングス(HD)や関西電力は国の要請があれば前向きに検討する方向だ。三菱重工業や日立製作所など原子炉メーカー、原発の建設を担うゼネコンにも参加を促す。国内の原発は大震災前のように稼働基数が増えず廃炉のコストも増える。次世代炉を実用化しても使用済み燃料の負担は残り、大手電力9社が別々に手がけていくのは厳しいとの見方もある。経産省は水素や高性能な蓄電池、分散型エネルギーなど、他の分野でも官民で連携する枠組みをつくる。原発の再稼働には慎重な世論もある。原発一辺倒でなく幅広い技術の研究開発に取り組み、エネルギーを安定供給できる体制をめざす。

<漁業の低迷理由は?>
PS(2018年7月12日):水産業は、良質の蛋白質を摂取するために重要で、我が国では優位性の高い産業である筈だが、*10のように、漁獲高は一貫して減少し、海面漁業の生産量はピーク時の3割・養殖業がやっと横ばいだそうだ。
 そして、海面漁業が九州、全国ともに減少している要因は、「1)海洋環境の変動などによる資源量の減少のためか」「2)業務ではなく調査していないため分からない」と書かれているが、1)の海洋環境変動には、海水温が上がって海藻はじめ海中の食物連鎖が維持できにくくなっていることがあり、その理由には、①地球温暖化 ②原発温排水の影響 ③海底火山噴火の活発化などが考えられる。そのほか、公海における他国の漁獲高上昇や日本における燃油価格高騰・賃金上昇で漁業が成り立たなくなり、廃業が増えて後継者も少ないことなど、2)のように、業務でないから調査しないわけには決していかず、しっかり調査して問題解決すべきである。何故なら、日本人も、ITやアニメや製造業だけを行い、食品は輸入して食べていけるわけではないからだ。

*10:http://qbiz.jp/article/136703/1/ (西日本新聞 2018年6月30日) 「漁獲」九州も減少傾向 山岡知且・九州農政局生産流通消費統計課長 漁業ピークの3割 養殖横ばい 17年86万トン全国2割
 沿岸に黒潮と対馬海流が流れ、サバ、アジ、イワシなどの豊かな漁場に恵まれている九州。漁業や養殖業が盛んで、生産量は全国の約2割を占めている。ただ海洋環境の変動などによる資源量の減少のためか、海面漁業の漁獲量は全国と同様に減少傾向だ。九州における海面漁業・養殖業の生産量調査を担当する九州農政局生産流通消費統計課の山岡知且(ともあき)課長に生産量の推移や特徴などを聞いた。九州の海面漁業・養殖業の生産量について1956年から調査を続けている。最新データの2017年は速報値で85万7725トン。うち海面漁業の漁獲量は56万6739トン(全体の66・1%)。海面養殖業の収穫量は29万986トン(33・9%)となっている。全国の生産量は424万2300トンで、うち海面漁業と海面養殖業はそれぞれ325て万7700トン(全体の76・8%)と98万4600トン(23・2%)。全国に占める九州の割合は生産量全体で20・2%。海面漁業17・4%、養殖業29・6%だ。九州は人口や面積、経済規模が全国のほぼ1割で「1割経済」と言われるが、漁業分野はこれを大きく上回り、活発に展開されていることを数字が物語っている。九州で漁獲量が多い上位5魚種は(1)サバ類約13万9千トン(2)イワシ類約12万7千トン(3)アジ類約8万8千トン(4)マグロ類約3万9千トン(5)カツオ類約2万7千トン−の順。県別では長崎県が約31万7千トンでダントツ。2番手は宮崎県の約9万7千トンとなっている。ただ海面漁業は九州、全国ともに減少傾向だ。九州の17年はピーク時(1988年、約191万5千トン)の29・6%、全国はピーク時(84年、1150万トン)の28・3%と、いずれも過去最高時の3割程度に落ち込んでいる。減少傾向の要因については私たちの業務では調査していないため、分からない。一方、九州の海面養殖業は2008年の32万811トンが過去最高で、ここ30年は24万〜32万トンの間で推移している。17年の種類別は板ノリが15万6730トン(主産地は佐賀、福岡、熊本)、ブリが6万4132トン(主産地は鹿児島、大分、宮崎)。カンパチは鹿児島だけで1万8299トンある。

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2018.5.23 現代農業と環境、種子法、特許権などについて (2018年5月25、26、28、31日、6月3、4、8、9、12、14、16、18、19日に追加あり)
(1)皇后の養蚕と現代科学の融合はいかが?

  
2014.11.3産経新聞 2016.2.25毎日新聞      できた光る繭と絹糸


       日本の絹のスカーフ         絹シフォン、友禅染のスカーフ

 明治時代の養蚕は、良質の生糸を大量に輸出して「外貨獲得産業」となり、日露戦争の軍艦はじめ近代兵器は絹糸の輸出による外貨で購入されたといっても過言ではなく、日本の近代化(=富国強兵)の礎を築いた。そのため、皇居の養蚕は、*1-1のように、明治天皇の后だった昭憲皇太后が産業奨励のために始められ、歴代の皇后に受け継がれて、現在は美智子皇后がやっておられ、来年の天皇陛下の退位後は、雅子妃殿下に引き継がれるそうだ。

 しかし、雅子妃殿下に引き継がれるのなら、明治時代と同じやり方を引き継ぐのではなく、この際、*1-2の「遺伝子組み換えの光るカイコ」を、*1-3のような飼育方法で年間を通じて飼育し、品質が高くて色あせしない生糸から、上品でおしゃれなスカーフを作り、「Empress Masako」というブランドで皇居に来た人に差し上げると、記念になってよいと思う。

 外国の賓客や日本に赴任して挨拶に来た外交官やその婦人などは、驚いて世界にこの生糸を宣伝してくれることは間違いなく、単に同じことを続けるのではなく日本の産業を振興することが、昭憲皇太后はじめ明治時代の人が意図したことだったと思われる。そして、もちろん紅型・友禅染・江戸小紋・その他の柄で、他の一般業者も暗いところでライトが当たると光るスカーフなどを、高すぎない価格で、オリンピックまでに作れば、売れる大きなチャンスになるだろう。

(2)種子や製造方法の特許権について
 上の蚕の品種や育て方に特許権があることには誰も異論がないと思うが、*2-2のように、種子法が廃止されたのには驚いた。何故なら、これまで作られた種子には特許権があり、日本の農業の50%以上は良質な種子で支えられており、良質な種子は国民の財産だからだ。

 しかし、品種改良を国主導ではなく民間が行うようになると、地域毎に異なる気候に合わせた種子ができる筈はない。何故なら、佐賀県のコメが高温障害でできにくくなった時に種子を改良して2~3年で特A評価を得られる品種ができたのも、近年のトマトやカボチャやとうもろこしが非常に美味しいのも、地域の地道な品種改良があってのことで、地域ブランドになる少量品種の品種改良を民間企業はやらないからである。

 さらに、*2-3のように、種苗の自家増殖を原則禁止するなど、農水省は種苗会社の利益のために農家をやりにくくしているように見える。何故なら、例えば、みかん農家は、より美味しい品種を作ろうと工夫を重ね、農家が作った美味しい品種も多数あるからで、優良品種の海外流出を防ぐことが狙いなら、新品種を作った人が特許権をグローバルにとりやすくすればよいからだ。そのため、農水省は世界特許を容易に取れるシステムを世界で作るべきなのであり、種苗の自家増殖を原則禁止するのは、日本の農家をやりにくくする逆の政策である。

 また、*2-1のように、日本の平均気温はこの100年で1.19度上昇したそうで、日本農業新聞は「温暖化への備えに、新技術や資材を生かそう」と呼び掛けている。確かに、新品種の開発やヒートポンプ・ハウス内環境制御装置の利用などの資材の進歩は素晴らしいが、私は気温が高くなることは日本の農業にとってはマイナスばかりではないと考える。何故なら、東北の冷害はなくなり、北海道の米も美味しくなったし、高温でこれまでの作物が作れなくなった地域はより暖かい地域の作物に転作したり品種改良したりすれば、獲れる作物の種類と量が増えるからだ。消費者は、多種の作物が近くで獲れた方が嬉しいのである。

(3)農業と環境
 森林を壊してコンクリートの工業地帯を作ると、光合成をしないためCO₂(二酸化炭素)を吸収してO₂(酸素)を作る機能がなくなり、土壌がないため保水力もなくなり、環境に悪いことは明らかだ。それに対し、森林を壊して農業地帯を作った場合は、生物多様性は少なくなるが、光合成をするためCO₂を吸収してO₂を作る機能は残り、土壌があるので保水力も維持される。これが、工業と農業の環境に与える負荷の差である。

 さらに、*3-2のエコファーマーのように、田んぼの生き物調査を行い、天敵を活用する農業を普及し、有機肥料を使って、農薬や化学肥料を減らして土づくりを進める農業者は、より生物多様性を保全し、環境を壊さない農業を行うことができ、生産物の味や栄養にも深みがある。そのため、エコファーマーの認定を受けると交付金が支払われる制度になっていたのだが、今回の農薬や化学肥料の削減を求めない「グローバルGAP」への誘導は、この点で後退なのだ。もちろん、輸出するにはグローバルGAPの認証が必要だが、環境保全型で価値ある農産物を作るエコファーマーも優遇すべきだろう。

 そして、*3-1のように、持続可能な社会づくりを促すためには、産業における農業の役割は重要で、そのゴールとなる目標は「飢餓と貧困をなくす」「全ての人に健康と福祉を」「質の高い教育をみんなに」「陸と海の豊かさを守る」「クリーンなエネルギーを」「つくる責任・つかう責任」などで、直面する課題への共通認識がある。私も、これらは大切なことだと思うが、日本政府の農協改革は事業弱体化の方向で進められており、改悪政策は問題だと考える。

 また、メディアは「新自由主義」を批判の言葉としてよく使うが、「新自由主義」の明確な定義は不明だ。現代では、日本国憲法にも記載されているとおり、「自由」は紛れもなく重要で、不自由や拘束される方が良いと思う人はいない。また、市場原理は、競争に基づく現在の経済現象を説明するツールであり、これを批判すれば共産主義や配給制がよいのかということになるが、これらは頑張って働く動機付けをなくすため歴史的に失敗してきた経済制度である。さらに、「格差」のみを取り上げて問題視する人もいるが、全員が上に合わせることは不可能であるため、全員が下に合わせて貧乏になれば格差はなくなるが、それでよい筈はない。

 なお、市場原理の中にあっても、原発などで環境を破壊すれば、*3-3のように、取返しのつかない大きな損失を負って持続可能でなくなり、経済は破綻する。従って、環境は、市場原理と併立して、(“外部不経済《経済学用語》”にしておかず)環境維持コストを経済に組み込んで維持すべきなのである。

<皇后陛下の養蚕と現代科学の融合>
*1-1:http://www.yomiuri.co.jp/national/20180521-OYT1T50073.html (読売新聞 2018年5月21日) 皇后さま、最後の「給桑」…雅子さまが引き継ぎ
 皇后さまは21日、皇居内の紅葉山御養蚕所で、蚕に桑の葉を与える「給桑きゅうそう」をされた。養蚕所では日本純産種の「小石丸」など3種類の蚕を飼育。皇后さまは小石丸に桑の葉を与え、葉を食べる音に耳を澄まされていた。この日は、蚕が繭を作る場所となる「藁蔟わらまぶし」を編む作業が公開され、皇后さまは「リズムが出ると楽しいですね」と話されていた。皇居の養蚕は明治天皇の后きさきだった昭憲皇太后が始め、歴代の皇后に受け継がれており、来年の天皇陛下の退位後は皇太子妃雅子さまが引き継がれる。

*1-2:https://www.sankei.com/life/news/141103/lif1411030034-n1.html (産経新聞 2014.11.3 16:40) 遺伝子組み換えカイコ 「光るドレス」、医療に応用も 養蚕業の再興へ研究本格化
 カイコの遺伝子を組み換えて、従来の絹糸に代わる新たな需要を創出する研究が本格化している。「光るドレス」や医療材料など幅広い分野で応用が期待されており、大量飼育を目指す実験も始まった。衰退の一途をたどってきた養蚕業が、遺伝子組み換え技術で再興する可能性が出てきた。
◆日本に強み
 カイコは「カイコガ」というガの仲間。幼虫は桑の葉を食べて体長7センチほどに成長し、口から長さ計1・2キロほどの絹糸を出して繭を作る。野生の「クワコ」が先祖で、約5千年前に中国で家畜化されて分かれた。絹糸は高級品として重用され、明治以降に日本の主要な輸出品となり近代化を支えた。だが戦後は化学繊維の普及や安価な中国製の台頭で養蚕業は衰退を続けている。こうした中、農業生物資源研究所(茨城県つくば市)は2000年、卵に穴を開け、他の生物の遺伝子を注入することでカイコの遺伝子組み換えに初めて成功した。遺伝子が生殖細胞に組み込まれると、次世代の一部は全ての細胞に目的の遺伝子が組み込まれたカイコとなり、その性質が代々、受け継がれる。カイコは餌を探す能力がなく、成虫は飛べないので逃げ出すことはなく、扱いやすい。短期間で成長し、タンパク質でできた絹糸を効率よく作るため、目的の遺伝子を組み込めば、優れた性質の絹糸やタンパク質を大量に得られると期待される。同研究所の瀬筒秀樹ユニット長は「日本は養蚕業が盛んだったので、飼育のノウハウや研究の蓄積があるのが強み」と強調する。
◆11色の絹糸
 同研究所ではクラゲやサンゴなどの蛍光タンパク質の遺伝子をカイコに組み込むことで、緑、赤、オレンジなど11色の光る絹糸を作製。青色発光ダイオード(LED)などの光を当てると美しく光るのが魅力で、婚礼用や舞台用などのドレスが試作された。また、遺伝子組み換えで光沢のよい極細の絹糸を開発。クモの遺伝子を注入することで、切れにくいクモの糸のような強い絹糸を作ることにも成功した。組み換え技術の手法も改良が進んでいる。従来は目的の遺伝子をゲノム(全遺伝情報)のどこに入れるか制御できず、効率が悪かったが、近年は特定の遺伝子を破壊したり、別の遺伝子に置き換えたりする「ゲノム編集」の研究が進展し、多様なカイコを効率良く作れるようになった。遺伝子組み換え動物は生態系に影響を与える恐れがあるため通常、厳重に閉鎖した環境でしか飼育できない。これでは農家への普及は難しく、大量生産できない。このため同研究所は国の承認を得て今年7月、組み換えカイコを養蚕農家と同様の状態で飼育し、問題がないかを確かめる実験を始めた。
◆麻薬も探知?
 組み換えカイコは絹糸から取り出したタンパク質の利用も進んでおり、血液検査薬や化粧品が既に実用化している。細くて血栓ができにくい人工血管や手術糸などの開発や、電子部品のコンデンサーに使ってオーディオ機器の音質を高める構想もある。成虫を生きたまま利用することも考えられる。雌のフェロモンに反応する雄の遺伝子を別の遺伝子に置き換えると、雄は臭いや光、熱に反応して羽をばたつかせる。この性質を利用すれば、例えば麻薬の探知に役立つ可能性がある。麻薬探知犬のような訓練や世話は不要だ。食品のカビや有害物質を検知したり、人間の呼気をかがせて病気を見つけたりするアイデアも。マウスなどに代わる実験動物として、ヒトの遺伝子を入れたカイコを使う研究も進んでいる。養蚕農家は数が減少している上、高齢化で後継者難を抱えている。瀬筒氏は「養蚕業を再興させるには、組み換えカイコの実用化を急ぐ必要がある」と指摘する。米国や中国の研究水準も高く、競争は激化しているという。今年6月には旧富岡製糸場(群馬県富岡市)が世界文化遺産に登録された。日本の絹産業が見直される中、養蚕が最先端の技術で復権できるか注目される。

*1-3:https://www.sankei.com/region/news/160728/rgn1607280005-n1.html (産経新聞 2016.7.28) 山鹿市で無菌の大規模養蚕工場起工式
 無菌状態で蚕を育て高品質のシルク原料を生産する養蚕工場の起工式が27日、熊本県山鹿市で開かれた。熊本市の求人広告会社「雇用促進事業会」が養蚕事業に新規参入した。同社は「大手商社を通じてシルク生地にし、欧州の高級ブランドへの売り込みも図りたい」としている。国内最大の産地である群馬県の生産量に匹敵する年間約50トンの繭の出荷を目標とする。雇用促進事業会は参入に当たり新会社「あつまる山鹿シルク」(熊本市)を設立した。23億円をかけて約4200平方メートルの平屋建て工場を建設する。来年3月に完成予定で、飼料に使う桑の畑約25ヘクタールも確保した。蚕は病気に弱いが、この工場では温度と湿度を蚕に最適な状態にした無菌室で飼育する。桑を原料にした人工飼料を成長段階に応じて量を調整しながら与えると、年間を通じて品質の高い繭が生産できるという。あつまる山鹿シルクの島田俊郎社長は記者団に「この工場の繭からは、色あせしない生糸ができる。熊本からのシルクロードを世界につなげていきたい」と述べた。

<種子・製造方法の特許>
*2-1:https://www.agrinews.co.jp/p44130.html (日本農業新聞論説 2018年5月21日) 温暖化への備え 新技術や資材生かそう
 気象庁によると、日本の平均気温はこの100年で1・19度上昇した。特に1990年代に入り、高温の年が増えた。温暖化の影響をどの産業よりも大きく受ける農業。地球規模で加速する温度上昇を見据え、環境制御など最新の技術や装置、品種などを駆使して対抗できる生産基盤を整えたい。2017年の年平均気温は、1981~2010年の平均に比べ0・26度高かった。わずかな上昇幅に見えるが、温度で栄養成長や生殖成長を切り替える植物にとっては大きな変化だ。また、農作物の収穫時期や収量には積算温度が大きく影響する。わずかな温度上昇でも積もり積もれば収穫の前倒しなど生産計画の狂いを生む。今春の野菜価格の下落も、気温の変動にうまく対応できなかったことが大きな要因だ。夏の暑さが際立つ温暖化だが、最も気候変動が激しいのは冬だという指摘もある。狭い範囲で大雪が降る地域があれば、積雪が減った地域も増えている。厳しい寒波の到来もあるが、長期的には冬の気温が高まりつつあるため、一定の低温が必要な果樹で休眠打破がうまくいかない、施設園芸やトンネル被覆の開閉の見極めが難しく作物の生育不良を招くといった影響が出ている。地球規模で起きる気候変動を抑えることは難しい。一方で、施設園芸を中心に環境制御技術が大きく進化している。重油高騰を受けて、導入が進んだヒートポンプは冷房機能があるため、夏の遮熱対策に有効だ。熱を吸収する被覆フィルムや、保温効果の高いフィルムなども市販化されている。ハウス内の温度、湿度、日射量、かん水量などを総合的に管理する環境制御装置も、スマートフォンの利用で扱いやすくなってきた。露地でも遮熱効果や保湿効果の高い被覆資材が相次いで開発された。耐暑性や耐寒性など機能性を強めた品種も多く育成されている。10年前と比べて、異常気象への対抗策は増えたといえる。篤農家と呼ばれている人に共通しているのは、気象を読み取る力だ。天候の変化を誰よりもいち早く感じ取り、栽培管理に生かしている。気象では、“観測史上最高”という言葉をよく耳にするようになった。温暖化の影響でこれまでの常識を超えた異常気象が頻発する時代である。天候の変化をいち早く察知し対応する力が農業者に求められる。篤農家が経験と技で身に付けた天候の予測は、気象や栽培データの「見える化」で補うことが可能になってきた。気象庁が出した7月までの季節予報では、気温は高く推移するとみられる。目前に迫る夏を乗り切る対策も重要だが、長期的な視野に立って、環境制御技術の深化や品種開発など総合的な対策が望まれる。指導機関やJAも一体となって、最新技術や資材などの活用を進めたい。

*2-2:https://www.agrinews.co.jp/p44066.html (日本農業新聞 2018年5月14日) 種子法廃止への懸念 品種改良は危機管理 農林中金総合研究所客員研究員 田家康
 米や麦、大豆の優良種子の安定供給を都道府県に義務付けてきた主用農作物種子法(種子法)が4月1日をもって廃止され、70年近い歴史に幕を下ろした。規制改革の一環で、品種改良を国の主導ではなく、民間活力を利用して官民一体で行う趣旨という。だが、米などの品種改良は農業におけるセーフティーネット(安全網)であり、国家の危機管理からの視点も必要ではないだろうか。米の品種を巡る歴史は長い。『万葉集』編さんに関わった歌人の大伴家持が「早田」という表現で、早稲を歌っている。平安時代中期の『倭名類聚抄(わみょうるいじゅしょう)』には早稲(わせ)・中稲(なかて)・晩稲(おくて)という登熟期による区分けもある。
●用途別に多様化
 天候への耐久性、酒造などの用途別といった品種の多様化は鎌倉時代以降から見ることができる。中国から渡来した「大唐米(たいとうまい)」は干ばつに強いとされ、山陽地方を中心に普及した。国内産では酒造用の早稲や多収性の品種など用途別に多様化が進んだ。良い品種といっても、干ばつや冷害に強い品種、収穫量の多い品種、食味の良い品種などさまざまある。そして、こうした性質は往々にして相いれない。江戸時代に東北地方を中心に天明の飢饉(ききん)、天保の飢饉などの大冷害が起きたが、その背景には品種の選択があった。津軽では味が悪いものの冷害に強い赤米があったが、領主も農民も作況が良ければ豊作が約束される晩稲の「岩山」の栽培にこだわった。明治時代以降も冷害が何度も繰り返され、耐冷性があり、収穫量の多い品種の開発は国家的な課題であった。冷害に強い「陸羽132号」は1921年、秋田県にあった国立農事試験場陸羽支場で育成された日本初の人工交配による優良水稲で、戦後まで長年、作付面積トップの座を占めた。「陸羽132号」をさらに改良して誕生したのが「水稲農林1号」。「水稲農林1号」と「水稲農林22号」を掛け合わせて育成された「コシヒカリ」は、偶然にも良食味品種の代表になり今日に至っている。
●進行する温暖化
 大気中の温室効果ガス増加による温暖化は、今世紀末には一層進行するだろう。登熟期に高温になると背白粒が増え、1等米比率の減少が見込まれるため、新品種開発が課題となっている。農水省は研究プロジェクトを公募しているが、委託先のほとんどが国立大学や県の試験場である。収量が多く食味が優れる品種であれば、すぐにビジネスとして成り立つだろう。だが、年々の気温の上下動は大きく、地球温暖化による気候の変動はいつどのような形で顕在化するかも分からない。品種改良とは、将来の異常気象に備える農業生産におけるセーフティーネットであり、危機管理の視点が必要となる。これは民間の知恵で解決できる問題ではない。種子法の廃止が、品種改良への国や各県などの関与を緩めることがないよう心から願うばかりだ。
<プロフィル> たんげ・やすし
 1959年生まれ。農林中央金庫森林担当部長などを経て、農林中金総合研究所客員研究員。2001年気象予報士資格を取得し、日本気象予報士会東京支部長。日本気象学会所属。『気候で読み解く日本の歴史』などの著書。

*2-3:https://www.agrinews.co.jp/p44074.html (日本農業新聞 2018年5月15日) 種苗の自家増殖 「原則禁止」へ転換 海外流出食い止め 法改正視野、例外も 農水省
 農水省は、農家が購入した種苗から栽培して得た種や苗を次期作に使う「自家増殖」について、原則禁止する方向で検討に入った。これまでの原則容認から規定を改正し、方針を転換する。優良品種の海外流出を防ぐ狙いで、関係する種苗法の改正を視野に入れる。自家増殖の制限を強化するため、農家への影響が懸念される。これまで通り、在来種や慣行的に自家増殖してきた植物は例外的に認める方針だが、農家経営に影響が出ないよう、慎重な検討が必要だ。自家増殖は、植物の新品種に関する国際条約(UPOV条約)や欧米の法律では原則禁じられている。新品種開発を促すために種苗会社などが独占的に種苗を利用できる権利「育成者権」を保護するためだ。一方、日本の種苗法では自家増殖を「原則容認」し、例外的に禁止する対象作物を省令で定めてきた。その上で、同省は育成者権の保護強化に向け、禁止対象を徐々に拡大。現在は花や野菜など約350種類に上る。今後は自家増殖を「原則禁止」し、例外的に容認する方向に転換する。そのため、自家増殖禁止の品目が拡大する見通しだ。同省は、今回自家増殖の原則禁止に踏み込むのは、相次ぐ日本の優良品種の海外流出を食い止めるためと説明。自家増殖による無秩序な種苗の拡散で、開発した種苗業者や研究機関がどこまで種苗が広がっているか把握できないケースも出ているという。中国への流出が問題となったブドウ品種「シャインマスカット」も流出ルートが複数あるとされる。民間企業の品種開発を後押しする狙いもある。2015年の品種登録出願数は10年前と比べると、中国では2・5倍に伸びているが、日本は3割減。日本の民間企業は野菜や花の品種開発を盛んに行うが、1本の苗木で農家が半永久的に増殖できる果樹などへの参入は少ない。このため同省は、育成者権の保護強化で参入を促す。仮に自家増殖を全面禁止にすれば、農業経営に打撃となりかねない。同省はこれまで、農家に自家増殖の慣行がある植物は禁止対象から外し、農業経営への影響も考慮してきた。今回の原則禁止に当たっても、一部品種は例外的に自家増殖を認める方針だ。自家増殖の原則禁止は品種登録した品種が対象。在来種のように農家が自家採種してきたものは対象外で、これまで通り認められる。昨年政府がまとめた知的財産推進計画では、自家増殖について「農業現場の影響に配慮し、育成者権の効力が及ぶ植物範囲を拡大する」と掲げている。

<農業と環境>
*3-1:https://www.agrinews.co.jp/p44040.html (日本農業新聞論説 2018年5月11日) 国連・持続可能目標 協同活動で貢献しよう
 地球と人類がこの先も続くように、国連が各国に産業や暮らしの変革を呼び掛けている。食・農・環境・教育・福祉などの分野で17目標を設定し、持続可能な社会づくりを促す。どれも日本の協同組合が取り組む課題だ。国際協同組合同盟(ICA)も目標達成に全面的な貢献を約束する。協同活動の今日的意義と役割を再認識しよう。正式名は「持続可能な開発目標」(SDGs=エスディージーズ)。2015年の国連サミットで採択された。30年を期限とし「2030アジェンダ」とも呼ばれる。ゴールとなる目標は17分野169項目。「飢餓と貧困をなくそう」「全ての人に健康と福祉を」「質の高い教育をみんなに」「陸と海の豊かさを守ろう」「クリーンなエネルギーを」「つくる責任・つかう責任」など直面する課題への共通認識から生まれた。世界を変え、救う処方箋といえる。注目すべきは、協同組合活動との親和性の高さだ。国連教育科学文化機関(ユネスコ)が、協同組合を無形文化遺産に登録した主な理由は、社会的問題への解決能力であった。中でも日本の協同組合、とりわけ総合事業を展開するJAは、その先駆的な役割を果たしてきた。昨年11月のICA総会では、SDGsに積極的に取り組むことを確認し、「協同組合の存在感を高めていく」(グアルコ会長)とした。また、今年の国際協同組合デー(7月7日)のテーマを「持続可能な消費と生産」に設定し、国連目標へのより積極的な貢献を打ち出す。SDGsで日本の推進役を担うのが、JAや生協、労協などの協同組合を横断的につなぐ連携組織として今春生まれた「日本協同組合連携機構」(JCA)だ。先日の公開研究会でもこのテーマを取り上げ、協同組合の果たす役割と意義を再確認した。特に、国連目標をそれぞれの協同組合組織の活動に落とし込み進化させること、協同組合間同士の連携を深めることが再確認された。同研究会でJAふくしま未来の菅野孝志組合長は「農業を基軸とする持続可能な地域づくり」を提起。「JAの活動は国連の定めた17目標に全てつながっている」とし、地域、農業、暮らしを守る運動の重要性を訴えたが、同感である。まさに総合事業だからこそできる地域貢献の姿がそこにある。残念なのは日本政府の取り組み方針だ。協同組合との連携に触れているが位置付けが弱い。しかも一連の農協改革は総合事業を弱体化させる方向で進んでおり、世界の潮流と逆行する。市場原理優先の農政改革、原発依存のエネルギー政策、企業視点の働き方改革にも共通する。そこには今日の貧困や格差、環境破壊が新自由主義に起因していることへの反省や洞察はない。持続可能な社会づくりへの大胆な政策転換、強欲な金融資本主義に代わる新たな経済モデルの構築が求められる。

*3-2:https://www.agrinews.co.jp/44059?page=2 (日本農業新聞 2018年5月13日)エコファーマー 環境支払い除外なぜ? 農家疑問の声 GAPありきか ハードル高まる
 「見直しはおかしい」。宮城県大崎市で有機栽培や特別栽培による水稲3ヘクタールを経営する佐々木陽悦さん(71)は、方針転換に納得がいかない。田んぼの生き物調査を行い、天敵を活用する農業を普及してきた。エコファーマーで交付金を受けてきたが、現場の努力が後退しかねないと危ぶむ。環境支払いは、地球温暖化防止や生物多様性保全の営農活動を支援する制度。11年度に創設した。交付額は10アール最大8000円。エコファーマー認定が要件の一つだった。今年度から国際水準GAPの研修を受けた上でGAPを実施し、「理解度・実施内容確認書」を提出しなければならない。国際水準GAPには第三者認証の「グローバルGAP」「ASIAGAP」「JGAP」がある。グローバルGAP認証を取得したエコファーマー、北海道洞爺湖町の佐伯昌彦さん(63)は「GAPは否定しないが要件とするには違和感があり、無理やり誘導している感がある」と断じる。GAPは労働安全、食品安全、環境保全など幅広く規定している。だが、農薬や化学肥料の削減は求めていない。一方、エコファーマーは持続農業法に基づき農薬や化学肥料を減らし、土づくりを進める農業者。直接支払いの趣旨と合致する。全国エコファーマーネットワークの香取政典会長は「GAPに取り組むかどうかは農家の経営判断だ」とし、肝心の環境保全型農業が置き去りになりかねないかと心配する。自治体も悩ましい。宮城県登米市は3月末に生産者を集め、制度変更の説明会を開いた。17年度の環境支払い水田は約1200ヘクタール、37組織に上る。市は「制度のハードルが高くなり、そこまでやるのかと身構えてしまう農家が出そう」と、不安を口にする。
●農水省「導入へ研修など支援」
 農水省は要件からエコファーマーを外した理由について、生産者の高齢化などでエコファーマーの認定期間の5年を終えると更新しないケースが増えてきたためとし、「持続可能で環境保全型農業の拡大のためにはGAP導入の方が有益」(生産局農業環境対策課)と強調する。環境支払いは昨年6月、農水省の行政事業レビューで交付要件の見直しが指摘された。同省は「質の高い経営レベルに誘導していくためにGAPに取り組んでもらいたい」とし、GAP研修の予算措置や無料オンライン研修を用意していく。

*3-3:http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201805/CK2018052102000239.html (東京新聞 2018年5月21日) 【社会】福島農業、遠い再建 避難指示地域 農家4割「再開断念」
 東京電力福島第一原発事故から七年が過ぎ、福島県では避難指示解除とともに農業再開の動きも広がる。しかし避難中に田畑は荒れ、人手不足や高齢化といった課題は山積している。国などの調査に被災地の農家の四割以上が「再開するつもりはない」と回答し、今後の見通しは厳しい。「先祖代々の田畑が台無しになった。一からのやり直しは考えられない」。南相馬市小高区の横田芳朝(よしとも)さん(73)は、雑草が生えた荒れ地を前にため息をついた。事故前は約五百本のナシの木が茂っていたが、避難中にほとんどが病気になり、昨年すべて切り倒した。「七十五歳までは農業を続けようと思っていたが、これから除染をして、土を耕さなければならない。風評も厳しいし、再開しても見合わない」。かつてはコメも作っており、田植えや稲刈りは隣近所で手伝い合った。しかし事故はそのようなコミュニティーも破壊した。近所で帰還した農家はまばらで「農業は一軒だけではできない」とこぼす。横田さんも長女が暮らす埼玉県に避難中で、戻るかどうか、決心がつかないでいる。農業を再開しても苦労は絶えない。福島県富岡町で仲間と米作りに取り組む渡辺康男さん(67)は「元の景色を取り戻したい一心でやってきた」と話す。避難先の同県西郷村から片道約二時間かけて通う。今年の作付けは約五ヘクタールで、事故前の四分の一にとどまる。悩みはイノシシなどの鳥獣による被害。避難中に人里に慣れ、人間を恐れることなく田畑を荒らし回る現状は「動物天国」だという。電気柵で囲ってもイノシシは侵入し、平気で田んぼで水浴びをしたり、稲を引っこ抜いたりする。困難続きの日々だが「自分の経験を伝えることで、再開を迷っている人を少しでも後押しできれば」と願う。国や県、地元企業でつくる合同チームの調査によると、事故で避難指示が出た十二市町村の農家約千人のうち、42%が「再開するつもりはない」と回答している。高齢化や地域の労働力不足、古里への帰還を諦めたことが理由に挙がった。チームの担当者は「若い担い手の帰還が見込めず、再開に踏み切れない農家が多い」と分析している。 

<農業の近代化とその資金>
PS(2018年5月25日追加):農業は、*4のように、集落営農組織の法人化が進んでおり、高齢化してもそれぞれの構成員に役割を与えながら持続可能な経営体でいられる準備ができつつある。法人化のメリットは、①多数決でよいため意思決定が早く ②規模拡大して ③人材や資金の確保がしやすい ことである。法人化のメリットは、水産業についても同じだろう。

*4:https://www.agrinews.co.jp/p44061.html (日本農業新聞論説 2018年5月13日) 集落営農の法人化 総力挙げて経営安定を
 集落営農組織の法人化が進んでいる。農水省の調査によると、法人率は34%で10年以上伸び続けている。しかし法人化がゴールではない。経営を軌道に乗せることが重要だ。地域農業を担う持続可能な経営体の育成に向け、JAや行政が継続的に支援すべきだ。2018年2月現在で集落営農数は1万5111。地域別では水田農業の比重が高い東北3344件が最も多く、九州2415件、北陸2383件と続く。数はほぼ前年並みだが、農事組合法人などの法人数は5106件、前年より413件増えた。法人化率は初めて30%台を突破した17年を上回った。法人化が進む背景の一つとして、人材確保の有利性が挙げられる。同省の調査では、30ヘクタール以上を集積する法人は全体の4割を占める。高齢化でリタイアする人たちの農地の受け皿役を果たしている。だが、オペレーターと呼ばれる作業者の高齢化も進む。将来に渡って組織を存続させるには次世代の人材が必要だ。そのためには社会保障などの雇用条件を整えることが必須で法人化を選ぶ。法人化には農地集積への合意形成や登記、定款策定など、やらなければならない事務作業が多い。行政やJAのサポートも法人増加の背景にある。しかし、法人化が済めば地域農業の抱える課題が解決するわけではない。経営内容を充実させ、将来に渡って組織が存続するようにしなければならない。秋田県大仙市の農事組合法人・新興エコファームは、水稲にエダマメなどの園芸品目や野菜加工を組み合わせて収入を確保し、地元農家から引き受けた50ヘクタールを維持する。作業が重複する品目もあるが、農家間で人員を融通するなど工夫を凝らす。農地集積が進み、経営面積は設立当初と比べて20ヘクタール増えた。同法人の役員は「今後も農地は集まる」との考えから、若手の人材育成を重視。20~40代の3人を雇い入れた。法人経営の安定には役員の手腕が大きいが、当事者任せにしてはならない。経営を長持ちさせるためには、高齢の農地提供者も何らかの形で経営に関わり、「自分たちの組織」という意識を持たせることが重要だ。「少数精鋭」では限界がある。野菜作りや直売所、加工品などの多角化を進める上でも女性活用がポイントになる。だからこそ国や県、市町村、JAによる経営支援への期待は大きい。宮城県のJA南三陸は「担い手サポート班」を設け、作物ごとに担当を配置。法人や若手農家らへの支援を充実させ、頻繁に通うことで「あの人に相談すればいい」という関係を築き、経営を下支えしている。技術指導はもとより、労務、税務面の管理や資金調達、実需者とのマッチング、6次産業化の相談・助言など、行政やJAが法人に対し、できることは多い。地域農業の将来像を描く端緒が開けるはずだ。

<農業の6次産業化>
PS(2018年5月26、28日追加):*5-1のように、「海外で原材料を安く仕入れて安価な製品を流通させるのではなく、現地が持続的に潤う生産体制を」という考えに基づくファッションブランドがあるそうで、よいことだと思う。そして、これは農林漁業の6次産業化と同様、原料を安く販売するよりもそれに加工を加えて販売(輸出)すれば、そのための雇用が発生し、技術が育ち、特に女性の賃金獲得に貢献する。しかし、これを持続的に行えるためには、善意や倫理だけではない本当の市場ニーズを満たす商品を作る必要があり、それには、①デザイン ②品質 ③コスト で世界と勝負できる製品を作らなければならない。
 それには、バッグや小物なら、単に流行にとらわれないだけではなく、本当によいデザイン(エチオピアの製品なら、アフリカの太陽の下での明るい原色を使った製品やアフリカの自然を思い出させる図案など、現地の人がデザインしたものの方がエキゾチックで面白いだろう)と品質を追究すべきだ。そして、これは、鹿・山羊・羊等の皮がある日本も同様である。
 また、中米グアテマラの極彩色で緻密な手織りである「コルテ」なら、それを自動織機で生産して、新しくデザインの良いものを高すぎない価格で販売できるようにした方が、現地の人のためにもよいと思われる。これは、日本各地に伝承された優れた織物や染色についても同じだ。
 なお、日本では、*5-2のように、これまで保護してきた野生鳥獣が増えて、農林業への鳥獣害が深刻化する状況になったため、狩猟ビジネス学校もでき始め、良質の肉や皮を手に入れることが可能になりつつある。


     2018.5.25西日本新聞     スキッとおしゃれなスペイン製  フランス製

    
     かわいいイタリア製        アフリカの色使いとファッション

*5-1:http://qbiz.jp/article/134586/1/ (西日本新聞 2018年5月25日) 「持続可能なファッションを」 2ブランドが福岡市・大名で展示販売会
 海外で原材料を安く仕入れて安価な製品を流通させるのではなく、現地が持続的に潤うような生産体制を――。こんな考え方に基づく二つのファッションブランドが、福岡市で26日まで展示販売会を開いている。実用性とデザイン性、そして倫理性(エシカル)を備えた製品が並んでいる。エチオピアで育ったヒツジの皮を使ったバッグや小物を並べているのは「andu amet(アンドゥ・アメット)」(東京)。福岡での展示販売は初めてだ。柔らかくて軽い上に丈夫な「エチオピアシープスキン」は世界有数の高品質な皮革とされる。ただ、現地に加工技術や商品化のノウハウがなく、これまでは欧米の有名ブランドに原皮を提供するのが主だった。青年海外協力隊でエチオピアに赴任した経験を持つ鮫島弘子さんは、「それでは現地に雇用が生まれず、技術も残らない」と2012年、現地で生産体制を整える形でアンドゥ・アメットを立ち上げた。現在、直営の現地工場で働くのは10人。給与はエチオピアの平均的な労働者の3倍程度という。「大量消費の競争に巻き込まれないように、流行にとらわれないデザインを意識している」と鮫島さん。今後も、地方での展示販売会を企画していく方針だ。
◇   ◇   ◇
 もう一つのブランドは、中米グアテマラの民族衣装を再利用した巻きスカートなどを制作している「ilo itoo(イロイト)」。福岡市出身のデザイナー大久保綾さんが12年に設立。今年4月に法人化した。グアテマラの女性が身に着ける巻きスカート「コルテ」は緻密な手織りで、極彩色の模様と丈夫さが特長。大久保さんは服飾を学んだ大学生時代にコルテを知り、グアテマラを訪問。技術力の高さの割に経済的な対価を受け取っていない現地の状況を知った。使われなくなったコルテを現代風に仕立て直して販売すれば、現地が潤う上に技術も継承されると考えたという。「自分たちが織ったコルテが外国で売れることを知ると織り手の女性たちもすごく喜んでくれる」と大久保さん。イロイトが仕立てる巻きスカートは体型を気にせず着られ、妊婦も着やすいという。「一過性ではなく、年月を重ねても着られる。幅広い世代に使ってもらいたい」。目指す姿はアンドゥ・アメットの製品と共通している。
◇   ◇   ◇
 展示販売の会場は福岡市中央区大名1丁目3−7のサウスステージ1。26日は午前11時〜午後7時。

*5-2:https://www.agrinews.co.jp/p44189.html (日本農業新聞 2018年5月28日) 狩猟ビジネスで学校 捕獲から開業みっちり 千葉県君津市
 農林業への鳥獣害が深刻化する千葉県君津市で、次代の捕獲者を育てようと「君津市狩猟ビジネス学校」が始動した。2018年度の1年間、受講者は鹿やイノシシ、キョンの解体、くくりわなの仕掛け方、ジビエ(野生鳥獣の肉)料理店の運営などを総合的に学ぶ。4、5月の入門編を終え、6月から人数を絞り込んで専門編が始まる。同市周南公民館で今月、2回目の講習があった。50人の募集に対し受講者は60人に上り、県外からが3割ほどを占めた。年齢も20~70代と幅広い。市内から参加した春木政人さん(36)は兼業農家で、イノシシの被害に悩まされてきた。「猟や止め刺しをする人が足りない現状で、自分も動かないとまずいと思った。市がいい機会で学校を始めてくれた」と動機を語った。隣接する木更津市でレストランを営む野口利一さん(36)は、一般的な洋食の他に季節のジビエ料理を出す。「店でイノシシや鹿を扱うが、猟師としての視点も欲しい」と、弟の晃平さん(29)と受講した。今回の講習はイノシシの解体。当日朝、公民館近くに仕掛けた箱わなに子どものイノシシがかかり、内臓を取り出す「腹出し」作業から実習した。午後は林業について学んだ。講習を取り仕切る原田祐介さん(45)は「もちろん技術も教えるが、メインではない。いかにお金にするかだ。ビジネスに特化した狩猟学校は初めてではないか」と話す。狩猟に農業や林業を組み合わせ地域で生計を立てられる人材を育てるため、実技だけでなく座学にも時間を割く。原田さんが代表を務める「猟師工房」は、埼玉県飯能市を拠点に狩猟や野生鳥獣の調査研究などを手掛ける。君津市にも解体処理場を置く縁で、市から学校の開校に際して声が掛かった。同市の農作物被害は、16年度で4900万円を超え県内最多。捕獲者の高齢化、担い手不足で駆除が追い付かない。市内には全国的に珍しく獣肉処理施設が3カ所あるが、捕獲物の活用にも限界がある。そこで市は、地方創生交付金を生かし同学校を立ち上げた。来年3月まで全12回を予定する。1、2回目の入門編は50人を募集。6月からの専門編では30人に絞り込む。過去2回の参加者から回収したアンケートなどを基に“本気度”を見定めて人選。プロレベルの解体法や野外活動の知識などを身に付けてもらう。市外からの移住を含めた捕獲従事者をはじめ、多彩な狩猟ビジネスの担い手を育てる構想だ。市農政課鳥獣対策係の岡本忠大係長は「学校で学んだ人がジビエレストランを目指し、市内で取れる肉を使ってもらえれば、有効利用の一つになる」と期待。捕獲増に伴う販路拡大も見据える。

<中食産業について>
PS(2018年5月28日追加):共働き世帯・高齢世帯では家事の合理化が必要であるため、全自動洗濯機・乾燥機・食洗機・掃除ロボットなどが役に立っているが、それらをうまく使うには、家・家具・食器・衣類の適応も重要だ。また、コンロも自動調整機能がついて便利になったものの、原材料を買って調理するのは時間と労力を要し、高齢者は火事や怪我のリスクもあるため、中食産業が拡大しているわけである。そのため、*6の中食食品は、単身者・共働き世帯・高齢世帯のいずれの需要も拡大しており、生産者にとっては、加工の雇用が生まれる上、品種改良された穀物・野菜・果物などのタネが出回らないというメリットもある。

*6:https://www.agrinews.co.jp/p44191.html (日本農業新聞 2018年5月28日) 17年中食市場 10兆円突破、過去最高 共働き増え需要拡大
 総菜や弁当といった中食市場の拡大が続いている。2017年の市場規模は初めて10兆円を突破。共働き世帯の増加などで、調理済み食品を自宅で手軽に食べるニーズが高い。コンビニエンスストアやスーパーは国産原料などのこだわり商品を投入し、需要を盛り上げる。原料農産物を手掛ける国内産地の仕向け先として、中食が存在感を高めている。
●共働き増え需要拡大
 日本惣菜協会の調査によると、17年の市場規模は前年比2%増の10兆555億円で過去最高を更新。この10年で2割強増えた。業態別に最も伸びが大きいのは「コンビニ」で前年比4%増の3兆2300億円。全体の3割強を占める。店舗数が多く営業時間も長いため、働く女性から高齢者まで、幅広く支持を受けている。「専門店」が1%増の2兆9200億円、「食品スーパー」は3%増の2兆6200億円で、コンビニに比べると伸びは小幅だった。購入品目別では、おにぎりや弁当など「米飯類」が1%増の1兆9800億円で最大。おにぎりはコンビニ各社が新潟「コシヒカリ」を使うなどこだわり商品を投入しながら、値上げに踏み切ったことも背景にある。サラダなど「一般総菜」は2%増の1兆800億円。健康を気遣う人が手軽に野菜を取れるとして、注目している。特に伸びが大きいのは、肉じゃがやハンバーグ、豚のショウガ焼きなどをパックした「袋物総菜」。前年比22%増の4200億円となった。中食市場が伸びる背景に消費者の生活様式の変化がある。厚生労働省によると17年の共働き世帯は1188万世帯で10年で2割近く増え、単身世帯も増加傾向。そのため家庭で調理することが減り、手軽に食べられる総菜需要が広がっている。日本惣菜協会は「国内の人口が減る一方、小売各社は国産素材や機能性を押し出した付加価値商品を売り込んでいる。今後も中食市場の成長は続く」と指摘。国産農畜産物の売り先として、注目度は高まる一方だ。

<運輸業の対応>
PS(2018年5月31日追加):「配達が夜に集中すると残業を増やすだろう」と忖度し、なるべく昼の時間帯に荷物が着くように指定すると、受け取り先が留守で再配達になったりする。つまり、女性が普通に働いている時代、「昼間は誰も家にいない」という前提で動かなければ二度手間になるだけであるため、*7のヤマト運輸が、夜間中心の配達要員の確保を急いでいるのは合理的だ。さらに、遠慮なく夜の時間帯を指定できるような「注意書き」が送り状に書かれている方が良いだろう。なお、疲れるため誰もが嫌がる時間帯に勤務する人は、同じ給与でも勤務時間が短いのは当然である。

*7:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180531&ng=DGKKZO31149580Q8A530C1EA1000 (日経新聞 2018年5月31日) 「朝だけ」「夜だけ」勤務OK、JR東が運転士も育児・介護に、ヤマトは再配達に5000人確保
 JR東日本は2018年度末をめどに、運転士や車掌が朝のラッシュ時だけ短時間乗務できるよう制度を改める。ヤマトホールディングス傘下のヤマト運輸も12月までに、宅配便の再配達が多い夜だけ働く社員を約5千人確保する。介護などで特定時間帯だけ働きたい社員の希望と、業務が集中する時間帯の人手を確保したい企業のニーズをマッチさせ、人手不足を乗り越えようとする動きが広がってきた。厚生労働省の29日の発表によると、輸送業の4月の有効求人倍率は2.37倍と高く、深刻な人手不足が続く。鉄道乗務員や宅配運転手は資格や経験が必要なためすぐに大量採用するわけにいかず、人手確保のため一歩進んだ働き方の見直しに踏み込む。
●車掌も対象
 JR東は運転士や車掌の勤務体系を見直す一環として、「朝だけ勤務」ができるようにする。親の介護や育児が必要な乗務員を対象とする。今後、労働組合と交渉する。通常、運転士や車掌は平均9~10時間の勤務時間がある。介護や育児などの理由があれば6時間に短縮できるが、電車に乗務できるのは日中だけなどと働き方が限られていた。これを柔軟にする。例えば昼すぎに退社を希望する日は、早朝に出社した上で、ラッシュ時の2~3時間に乗務し、その後、事務作業などをしてから退社できるようにする。夕方だけ、など乗務可能な時間帯も増やす。過去に運転士や車掌を経験した社員も、乗務できるようにする。JR東日本は現在、1日に約1万2千本の列車を走らせており、運転士と車掌が合計で約1万1千人いる。今後、旧国鉄時代に採用した55歳以上の社員約1万4千人の退職が相次ぐが、東京圏への人口流入が続き鉄道利用が増えるため、運行本数は減らしにくい。女性社員の積極採用など、可能な対応策を進める。国会では多様な働き方の実現を目指す働き方改革関連法案の審議が大詰めを迎えているが、深刻な人手不足を背景に企業では先行して取り組みが進む。ヤマト運輸は「アンカーキャスト」と呼ぶ夜間中心の配達要員の確保を急ぐ。19年度までに1万人規模にする計画だ。同社の現在の配達体制は、朝~夕方に配達や集荷、営業を同時にこなす運転手が主力。だが近年はインターネット通販の利用者が不在の場合の再配達が増え、夜間業務に偏り、残業を迫られている。
●分業で対応
 そこで既存のパート・契約社員からの転換や新規採用で夜間配達員を確保し、運転手と分業することで再配達をこなす考え。今春時点では数百人規模だった。12月は歳暮やクリスマス、年末年始の贈答需要で荷物が増える繁忙期となるため、それまでに計画の約半数に上る5千人超まで増やして体制を整える。人手が足りない時間帯を短時間勤務などで乗り切る取り組みは、資格などが必要ない業種や職種で先行している。外食業界では、タリーズコーヒージャパンが17年に2時間から働ける制度を導入。すかいらーくは1日の労働時間を4時間から12時間まで5つのパターンから選べるようにした。4月の全体の有効求人倍率(季節調整値)は前の月と同じ1.59倍で高止まりしている。企業がとくに採用を増やしている正社員は1.09倍と過去最高を更新した。

<欠点を克服せよ>
PS(2018年6月3日追加):加賀友禅の色留袖に佐賀錦の帯を締めると、上品で華やかな和装となり、外国で開かれた国際色豊かなパーティーで着たら、ファッションの国フランスの人にも感心された(ただし、私の佐賀錦の帯は母からの借り物)。しかし、現在、これを買うと数百万円などという途方もない金額になり、買うことが困難なほど高価で、手入れも大変な和装は、衰退しつつある。そこで、着物や帯の価値は価格や手間にあるのではなく、ファッションにあるという原点に戻れば、*8のように、①糸を1色しか使わないシンプルな布でも1日に織れるのは7〜8センチで ②使う色の種類が多く、模様が複雑な布になると1日に1センチも織れない というのでは、できあがりがよくても生産性が低すぎて現代の賃金体系では産業として成立しない。が、コンピューター制御の自動織機を使えば、同じパターンを繰り返す織物などは得意中の得意で、模様が「菱」「網代」「亀甲」「鳳凰」などの複雑なものでも、プログラムさえ組んでしまえば色やパターンを変えて迅速かつ正確にいくらでも織れる。私は、佐賀錦や博多帯の糸に光る絹糸などを使って、新しい時代の帯を品質を落とさず安価に作れば売れると思う。

  
          現在の佐賀錦の帯         現在の博多織の帯  光る絹糸

*8:http://qbiz.jp/article/134866/1/ (西日本新聞 2018年6月3日) 繊細 金銀織りなす「佐賀錦」 旧福田家で手織り体験
 鮮やかな絹糸と金銀の糸が織りなす模様が、光を反射して滑らかな布に浮かび上がる。佐賀市内の土産物店で、県指定伝統的地場産品の「佐賀錦」を使った小物に目を奪われた。キーホルダー、入れ、ペンダント…。繊細で整然とした模様の全てが、手作業で織られているという。「どのように作るのだろうか。近くで見てみたい」。佐賀市松原4丁目の「旧福田家」で手織り作業の見学や体験ができると知り、訪ねてみた。
●地道な作業 模様は無限
 旧福田家は今年で築100年を迎える和風住宅。近くの「旧古賀銀行」や「旧牛島家」などの歴史的建造物とともに市歴史民俗館として一般公開されている。玄関の引き戸を開けると、畳敷きの部屋に置かれたガラスケースの中に、佐賀錦で作られたバッグや人形がずらり。淡く光沢を放つ作品たちは、家屋の重厚な雰囲気によく映えていた。「佐賀錦はとにかく時間がかかる工芸で、一日に数センチずつしか織り進められない。大きな作品では完成まで1年以上かかるものもあり、大量生産はできません」。この家を拠点に技術の継承や新商品の開発などに取り組む佐賀錦振興協議会の会長、松本美紀子さん(68)が、佐賀錦の歴史や作り方などを教えてくれた。佐賀錦は江戸時代末期、鹿島藩鍋島家の第9代藩主夫人が病床で天井の模様「網代(あじろ)組み」を見て「この模様で日用品を作れないか」と側近へ相談したのを始まりとする説が有力という。城中の女性たちの手習いとして伝承され、明治初期に一度は衰退したが大隈重信の奨励で再興。1910年には英国ロンドンで催された日英大博覧会で「佐賀錦」の名で出品されて有名になった。材料は金銀の箔(はく)や漆などを貼った和紙を1ミリほどの細さに裁断した経(たて)糸と、カラフルに染色した絹の緯(よこ)糸。木製の台に経糸を張り、方眼紙を使った図案通りに経糸を竹のへらで浮かしたり、押さえたりしながら、緯糸を通していく。糸を1色しか使わないシンプルな布でも、1日に織れるのは7〜8センチほど。使う色の種類が多く、模様が複雑な布になると1センチも織れないという。「菱」や「網代」、「亀甲」など伝統の模様はあるが、色やパターンを変えることで模様は無限にできると松本さん。「地道な作業だけど、図案を考えて自分だけの作品ができる。色の組み合わせを変えるだけでも違う趣になるし、変化に富んだ見応えのある作品になります」。手織りを体験させてもらった。会員の女性に教わりながら、細い和紙の経糸をへらで1本ずつ慎重にすくう作業を繰り返す。しかし、へらを通すべき糸と糸の境目すら分からず苦戦。パターン通りになどとても織れない。「そんなに力を入れなくても大丈夫」。アドバイスをもらうが、集中すればするほど手に力が入って糸を切りそうになってしまう。気付けば2〜3段を織るのに40分ほどが経過。やっとのことで数ミリ織った布の目は粗く、模様もばらばらになってしまった。こんなに細かい作業は、相当に器用な人でないとできないのではないか。尋ねると、「手間はかかるが、慣れれば繰り返しの作業。感性や根気があるかどうかの方が大切だと思います」と松本さん。「織り上がれば、作業の苦労が全て報われます」と話す笑顔に、見る人を魅了する佐賀錦のあの輝きは織り手一人一人の情熱と絶え間ない集中のたまものだ、と実感した。月曜日と祝日の翌日、年末年始を除いた日の午前10時〜午後3時に手織り体験を開いている。手織り体験のみは無料、キーホルダーやアクセサリー作りができる有料のコースもある。5人以上での参加は3日前の午後4時までに予約が必要。同協議会=0952(22)4477。

<一般企業の従業員と農作業>
PS(2018年6月4日追加):*9のようなボランティアではなくても、一般企業の従業員が農作業を受託すると、食品関係の会社なら原料の製造過程を知る機会になったり、その農家と取引関係ができたり、その他の業種なら普段と異なる体験ができたりするのでよいと思われる。一般企業には余剰人員がいる場合もあるし、人を集める力もあるのではないだろうか?さらに、農水省・経産省・環境省のお役人は、自然や農林水産業の現場を知って改善策を考えるため、農業・林業・水産業の作業を必須の研修科目にすべきだ。

*9:http://qbiz.jp/article/134648/1/ (西日本新聞 2018年6月4日) 「棚田ボランティア」企業が汗 人手不足の農家で従業員が農作業 佐賀県、16年度からの試み広がる
 農業の後継者不足が深刻な佐賀県内の棚田で、生産者が地場企業の人手を借りて農作業をする「棚田ボランティア」の試みが広がっている。勾配がある棚田は平地に比べて作業効率が悪く人手が必要なため、企業の従業員に田植えや草刈りを手伝ってもらう。企業側にとっても従業員のリフレッシュや社会貢献につながり、歓迎されているという。7・7ヘクタールの棚田が広がる多久市西多久町の平野地区。19日、多久ケーブルメディア(同市)とIT企業のプライム(佐賀市)の従業員ら約20人が集まり、地元農家から手ほどきを受けて田植えを手伝った。プライムの一番ケ瀬博史総務部長は「屋外で体を動かして気分転換になり楽しかった。社員同士や生産者との親睦が深まった」と話した。棚田ボランティアは、県や市町、生産者でつくる「さが棚田ネットワーク」(事務局・県農山漁村課)が2016年度に始めた。同ネットワークが橋渡し役となり、これまでに25企業・団体と13地域が協定を締結。17年度は延べ426人が計39回活動をした。県農山漁村課によると、05年の調査で、県内の水田に占める棚田の割合は13%。棚田は水田が狭くてあぜが多く、草刈りに手間がかかる。勾配での農作業は「平地に比べて2倍以上の労働力が必要」(同課)という。平野地区の農家でつくる振興協議会の小園敏則会長(71)は「働き手の高齢化が深刻で、棚田での作業は体力の消耗がきつい」と吐露。「若者や子どもがにぎやかな雰囲気で手伝ってくれると元気をもらえるし、棚田米のアピールにもなる」と喜ぶ。さが棚田ネットワークは試みを広げたい考えだが、一部の地域は企業側と連絡や調整をするリーダーがいないなど課題もある。同課の川路勝係長は「市町や生産者の協力を得ながら取り組みを広げていきたい」と話す。

<女性の活躍>
PS(2018/6/7追加):政府が、*10-1のように、中小企業に女性が働きやすい環境を整えるため、従業員数101人~300人の企業に女性登用の数値目標を盛り込んだ行動計画を作る義務付けをするのはよいが、食品・織物・保育・介護・家事サービスなどの中小企業で働く女性は多いので、2016年施行の女性活躍推進法が301人以上の企業にのみ行動計画づくりを義務付けたのは変だった。また、役員を含む課長相当職以上の管理職に占める女性比率が2016年度に1割に満たないというのも、人材という資源の無駄遣いであるため、「女性は採用したくない」「女性を男性と同様には昇進させたくない」と答える企業や「働きたくない」と答える女性には、その本当の理由を聞き、そうなった背景を改善することが重要である。
 なお、*10-2のように、封建的と思われている農業分野でも前から女性農業者は活躍していたが(10人以下の企業や家族労働が多い)、JA役員や農業委員で女性登用を増やすためには組織リーダーである男性の意識改革をさらに進めなければならないし、女性の能力発揮には、地域をはじめとする社会全体の理解が必要だ。

   
 人口ピラミッド    2018.6.8日経新聞      農業女子       大島紬
2018.5.7西日本新聞

(図の説明:人口構成は次第に細長い逆台形になるため、高齢者や女性もできるだけ働く方が健康に良いだけでなく、支える側にいることができる。しかし、女性の場合、左から2番目のグラフのように、努力に比して昇進が遅かったり、職場で不快な思いをしたりすることも多いため、その状況を改善すべきだ。また、農業は機械化すれば女性がカバーできる範囲を増やすことができ、織物も自動化や先端技術の導入で、生産性と付加価値の両方を上げることが可能だろう)

*10-1:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO31498220X00C18A6MM8000/?n_cid=NMAIL006 (日経新聞 2018/6/7) 女性の登用計画、中小にも義務付け 政府検討、活躍推進法改正へ
 政府は従業員数101人以上300人以下の企業に女性登用の数値目標を盛り込んだ行動計画をつくるよう義務付ける検討に入った。人手不足が深刻な中小企業に女性が働きやすい環境を整えるよう促すのが狙いだ。2019年にも女性活躍推進法を改正し、20年の運用開始をめざす。日本の労働力の見通しは厳しい。15~64歳の生産年齢人口は40年度に18年度比で約1500万人減る見込み。政府は高齢者や外国人が働きやすい環境づくりにも取り組む。女性の15~64歳の就業率は17年に67.4%となり、比較可能な1968年以降で最高となった。将来に向けて女性の労働力はさらに重みを持つ。16年4月に施行した女性活躍推進法は301人以上の企業に行動計画づくりを義務付けた。厚生労働省によると、301人以上の企業のうち届け出た企業は今年3月末時点で1万6千社あまり。全体の99.6%に達した。従業員数30人以上の企業のうち、役員を含む課長相当職以上の管理職に占める女性比率は16年度に1割に満たないが、前年度比で0.9ポイント上がった。上場企業に占める女性役員の比率は17年に3.7%と前年と比べて0.3ポイント上昇し、1500人を上回った。行動計画づくりの義務付けは罰則はないものの、効果は徐々に上がっている。一方、行動計画づくり義務付けの対象外だった300人以下の企業の届け出は約4500社にとどまった。中小企業全体の1%未満だ。日本の企業は中小が99.7%。政府は300人以下の企業にも義務付けの対象を広げ、女性が働きやすい環境づくりを後押しする。行動計画には女性の採用や管理職への起用、育児休業の取得率の向上など数値目標と実現のための取り組みを盛り込む。計画とは別に企業は厚労省が省令で定める14項目のうち1項目以上について、現状の数値を公表しなければならない。女性管理職の比率や、採用者数に占める女性の割合、男女別の育児休業の取得率などだ。みずほ総合研究所の堀江奈保子上席主任研究員は「中小企業にも女性登用の意識は広がりつつあるが、企業によって差がある」と指摘。「一定規模の中小にも義務付ければ、全ての経営者が意識せざるを得なくなり、取り組みが一歩進む可能性がある」と評価する。安倍晋三首相は女性や高齢者など誰もが活躍できる「一億総活躍社会」の実現を政権の重要課題として掲げる。政府や企業などで20年までに指導的地位に占める女性の割合を30%にする目標を打ち出す。中小が行動計画を作成すれば、女性の働きやすい環境ができるわけではない。政府が達成状況を検証し、その時々で改善を求める作業も必要になる。

*10-2:https://www.agrinews.co.jp/p41934.html (日本農業新聞論説 2017年9月18日) 女性農業者の活躍 能力発揮へ地域の理解
 農水省の農業女子プロジェクトのメンバーが9月下旬から、香港でイベントを開く。日本の農産物や加工品をアピールし、輸出の足掛かりになると期待される。こうした女性農業者の活躍が最近、目覚ましい。農業に夢を描き、その実現へ奮闘する彼女たちをもっと支援しよう。家族に加え、地域の理解が欠かせない。思う存分能力を発揮できる環境を整えたい。香港のイベントは27日から10月31日まで。今年1月に続く2回目だ。百貨店やスーパーでの試食PR・店頭販売の他、農業女子が講師となり、自ら生産した農産物を使った料理レッスンを開き、現地レストランで特別メニューを提供する。初回のフェアをきっかけに香港への輸出を始めたメンバーもおり、販路開拓の意気込みは盛んだ。女性農業者の活躍が求められる背景の一つに、農業の6次産業化がある。農業者自身が生産・加工・販売に取り組む形は、これまでの「作れば売れる」から「売れるものを作る」発想への転換が必要となる。女性農業者は、生産者であると同時に家庭を切り盛りする生活者・消費者の視点を持つ。買い物好き、ネットワークづくりに優れた人も多い。そんな彼女たちの感性が、6次産業化を進める上で不可欠だ。生産物の品質はもちろん、消費者ニーズを捉えた加工品開発、見栄えのいい包装、直売やカフェに売り場を広げるなどして顧客の心をつかみ、起業家や経営者としての手腕を発揮する。一方、男性を中心とした農村社会の構図は依然として残る。「夫が経営の収支を教えてくれない」「妻は労働力としか思われていない」といった意見をいまだに聞く。農業女子からさえも「自治体からの通知がないと会合に外出しづらい」との声が出る。活躍する姿の裏に、こうした課題が潜んでいることを見逃してはならない。女性農業者はかつて無報酬労働が当然とされ、子どもの服を買う小遣いすらままならなかった。彼女らは思い切って義父母に要望したり、こっそりと内職をしたりして、わずかでも自由になる小遣いを稼いできた。そんな中で生活改善を進め、家族経営協定を結び、少しずつ地位向上を果たしてきた歩みがある。支えたのは義父母や夫、子どもたちなど家族の理解だ。現在、農業者の高齢・減少化が深刻さを増し、女性農業者の活躍が農村社会の活性化に欠かせなくなっている。これを後押しするには、家族の理解だけでなく、農村社会の中軸であり地域農業に従事する男性の協力が必要だ。JA役員や農業委員で女性登用を増やすため、こうした組織リーダーである男性の意識改革をさらに進めなければならない。政府が女性活躍推進へ積極的に取り組む今こそ、真の意味で女性が輝ける仕組みをつくり上げるべきだ。農業発展の鍵を握る女性たちが、活躍する“芽”を育てていこう。

<補助金頼みは他の国民に迷惑>
PS(2018年6月9日追加):*11に、「所有者不明農地が山林化して、現場はお手上げだ」と書かれているが、所有者が死亡して子孫が分からない土地の固定資産税(納税義務者=所有者)は誰が払っているのだろうか?まさか都道府県は、固定資産税が不納になっても放置するような不作為を行っているわけではないだろう。従って、固定資産税が不納になったら督促状を出し、それでも納付されなければ、その土地で物納させれば、その土地は公有財産になる。そのため、九州を上回る推計約410万ヘクタールもの所有者不明の土地を、知事の判断で期限付きなら公益目的で使える特別措置法を作ったというのは、ぬるま湯すぎる。
 さらに、方針が決まらなければインフラ整備も進まないので、借り手農家がなければ農業生産法人に貸し、産出物があるのなら道路も作ればよいだろう。つまり、「中山間地の実態とは懸け離れているから・・(補助金を出せ)」というのは他の国民に甘えすぎであり、249ヘクタールもの耕作放棄地をどう利用するかはまず地元が方針を決めるべきなのだ。そして、選択肢は、①放置して林野に戻す(=住民も税収もなくなる) ②放牧する ③みかん・レモン・オリーブ・アーモンドなど適地適作をする など多岐にわたり、規模拡大だけが経営方法ではなく、経営体や労働力の確保にも選択肢は増えたが、経営方針を決めるのは経営者と地元が主体なのだ。

*11:https://www.agrinews.co.jp/p44299.html (日本農業新聞 2018年6月9日) 所有者不明農地が山林化 現場「お手上げ」
 所有者不明の農地が増え続け、近隣農家や農業委員会に重い負担となっている。中山間地では山林化した土地が多く調査は難航、所有者が死亡し子孫が分からないケースも多い。農水省は所有者不明の耕作放棄地を知事裁定で農家に貸し出す仕組みを始めた。ただ、開墾が必要な農地も多く「誰が管理するのか」「活用できない農地こそ問題」と切実な声が出る。条件の厳しい中山間地で、所有者不明の農地の問題が深刻さを増す。
●借り手農家少なく 静岡県東伊豆町
 急傾斜地の農地が点在する静岡県東伊豆町。軽トラック1台がやっと通れる細い山道を上り、ミカンを作る楠山節雄さん(69)は「規模拡大や集約化と盛んに言われるが、伊豆の山間地の実態とは懸け離れている」と険しい表情を見せる。同町の耕地面積は249ヘクタール。大半は車が通れない山奥にあり、農家は消毒タンクを背負い山道を何往復も“登山”する。収穫も重労働だ。同町では毎年、農家と役場職員が農地の利用状況を調査する。対象農地は7300筆を超え、地図と照らし合わせる確認作業は時間を要する。登記上は農地でも、山林化した耕作放棄地は相当数ある。その面積は把握できず、多くは所有者も分からない。「現場から言うとお手上げ」(同町農林水産課)の状況だ。同町は2017年、所有者不明の農地889平方メートルを全国で初めて知事裁定し、農地中間管理機構(農地集積バンク)を通じて農家に貸し付けた。同町が戸籍をたどると、所有者は戦後間もなく死亡し、5人の子どもも孫も亡くなっていた。ひ孫まで調べたが、所有者がつかめなかったことから知事裁定に至ったという。雑草どころか雑木が生え、花のハウスの日照を阻害していた耕作放棄地は現在、借りる農家が、かんきつ栽培に向け農地に復元する作業を進める。ただ同町によると、金と手間をかけて耕作放棄地を解消したいとする農家は一握り。農業委員会会長も務める楠山さんは「脚立を真っすぐ立てられないほどの急傾斜の農地ばかりで、高齢で耕作を諦める人が多い。農地を相続するメリットが乏しく、所有者不明の農地は増えるばかり」とみる。政府は6月、登記の義務化や、所有者が土地を放棄する制度を検討する方針を示した。8日に閣議決定した土地白書でも、8割が土地の所有権を「放棄を認めても良い」と回答する。ただ、同町農業委員会の梅原巧事務局長は「放棄後に費用をかけて農地に復旧しても、誰が管理するのか」と不安を募らす。
●九州超す410万ヘクタール
 民間調査によると、16年時点の所有者不明の土地面積は九州を上回る推計約410万ヘクタール。6日の参院本会議では、所有者不明の土地を知事の判断で、期限付きで公益目的で使える特別措置法が成立した。農水省は14年の農地法改正で、所有者が不明の耕作放棄地に知事裁定による利用権を設定し、農地集積バンクを通じて貸し出す仕組みを導入した。同省によると、これまでに4市3町1村で11件4・6ヘクタールの農地を貸し出している。静岡県内では、公示後に所有者が名乗り出た自治体もある。
●中山間地でより深刻に
 中山間地では、活用しにくい所有者不明の農地こそ深刻な課題だ。鹿児島県指宿市の農業委員会会長で、オクラなどを栽培する諏訪園一行さん(78)は「相続未登記農地の追跡調査を重ねてきたが、解決は難しい。法制度を整備しても、解決するのは現場感覚では非常に厳しい」と話す。青森県五戸町農業委員会会長でリンゴ農家の岩井壽美雄さん(67)は「誰も使いたがらない、機械が入らないような狭い農地こそ所有者不明になる。こうした農地を今後どうするのかが問われている」と指摘する。

<ビワ好きからの一言>
PS(2018年6月12日追加):私は、高校を卒業するまでは九州に住んでいたため、ビワの季節には毎日のようにビワを食べられたが、大人になって関東に住むようになってからは、高価で年に一度くらいしか食べられなくなった。しかし、果物を食べるのに遠慮しなくてはならない国民は、世界でも少ないだろう。そのため、*12は何とか労働力を確保してビワ作りを続けてもらいたいわけだが、ビワの産地でない地域の人には「ビワは種が大きくて、食べるところが少い」と言われることもある。確かにそうなので、美味しさはそのまま、種なしや種の小さな品種のビワを作れば、さらにビワのファンが増えると考える。

*12:https://www.agrinews.co.jp/p44316.html (日本農業新聞 2018年6月12日) ビワ日本一 でも高齢化進み収量半減 産地どう守る 長崎県
 100年の歴史を誇るビワのトップ産地・長崎県で生産基盤の弱体化が深刻だ。生産者の高齢化などで出荷量は10年前の約半分。80歳を超える農家が産地を支えるが、近年は気候変動の影響で1年置きに寒波が襲い、収量減で意欲を削がれた人が徐々にリタイア。瀬戸際にある産地を救おうと県やJA全農ながさきなどが対策に乗り出した。産地復活は、急傾斜地での栽培という課題を克服できるかが鍵を握る。
●傾斜きつく作業困難 1年置きの寒波追い打ち
 県内最大の産地、長崎市茂木地区。急傾斜の園地に高さ3メートル以上のビワの木が並ぶ。農家は脚立を使い、一つずつ幼果に袋を掛けて栽培する。白い袋に包まれた実が出荷を待つ一方、管理されず放置された“裸ビワ園”が増えている。JA長崎せいひ長崎びわ部会の山崎繁好部会長は「放置した木では果実が木の養分を使ってしまい、次期作に影響が出てしまう」と指摘。悪循環に陥る危険性を訴える。同県の出荷量は全国の約3割を占め、全国トップ。しかし急傾斜で作業負担が重く、多い時は700人を超えた部会員は500人まで減った。さらに近年、2年に1度の頻度で低温が襲う。今年1月の寒波では14センチの積雪を観測。直後は大きな被害は確認されなかったが2月以降、幼果の種子が凍死し肥大が進まない果実が多発した。同JAは「肥大せず階級が計画より1、2段階下がった」と肩を落とす。全農ながさきは「今季は豊作だった17年産の8割を予定したが、6割ほどしかない」という。
●ジュース用に買い取り JAやシェフ活用応援
 ビワ産出額の減少を食い止めようと、県は簡易ハウスの導入と優良品種「なつたより」への改植支援、果樹共済の推進を強化。同品種に改植する場合、国が半額助成する改植費に県が1割上乗せする。100年続く産地をどう守るのか。山崎部会長は「寒波の克服には、簡易ハウスの導入が必要。ただ、段々畑でハウスの施工費は高い。共済金の導入や安価な資材を充実してもらわないと産地が消えてしまう」と危機感を募らせる。農家の収入減を食い止めようと、全農ながさきは今季から放任園の果実をジュース用として買い取る考え。腐敗果や未熟果、虫食い以外の果実を1キロ100円で買い取り、系統工場で加工する予定。山﨑部会長は「低木にし果汁専用木を作るなど継続的に出荷できる仕組みを作り産地を守りたい」と力を込める。市内の料理店のシェフらも、産地を支援する。14店舗が協力し、旬に合わせ「びわスイーツフェスタ」を実施した。イタリア料理店「Muggina」のシェフ、鈴木貴之さん(42)が企画。鈴木さんは畑に何度も足を運び、高齢化で荒れた園地を見て心が動いた。「料理人は食材を作る農家あっての仕事。傷物やはねものなどを有効活用していきたい」(同)と意気込む。鈴木さんは、クリームチーズとビワを混ぜたアイスケーキ「茂木びわのカッサータ」を考案した。試作用のビワは同JAなどでつくる「長崎びわ産地活性化推進協議会」が無料で提供した。
●千葉・鹿児島も2~4割減
 農水省によると全国の栽培面積は過去10年で3割減、出荷量は4割減。長崎に次ぐ主産地、千葉や鹿児島でも2~4割減り、各地で荒園や放任園が目立つ。千葉県のJA安房によると急傾斜地で作業する後継者が不足。袋掛けができない荒地にはイノシシが入り、高齢農家を悩ませる。JAは「台風や低温の影響で今季は過去10年で最も少ない」と話しており、情勢は深刻だ。

<外国人労働者とその家族>
PS(2018年6月14日):*13-1のように、沖縄県は農業に外国人労働者を受け入れるため国家戦略特区が認定される見通しになったそうだが、*12のビワ農家はじめ、労働力がネックとなって産業の衰退が起こりつつある他の地域や産業にも同じニーズがあると思われる。そして、外国人労働者を受け入れた場合、本人や家族が日本語や日本で必要になる知識を習得するためには、*13-2のような夜間中学・夜間高校などの教育支援が必要であり、このニーズは戦中・戦後の混乱で義務教育を修了できなかった日本人にだけあるのではない。さらに、*13-3の結城紬の「糸取り」など伝統工芸の担い手は、日本人だけでなく外国人労働者の妻もできそうで、この場合、祖国の多様性が魅力的な新製品を生み出すかも知れない。

*13-1:https://ryukyushimpo.jp/news/entry-728694.html (琉球新報 2018年5月30日) 沖縄県、農業支援に外国人 国家戦略特区 計画認定の見通し
 30日に都内で開かれる国家戦略特区会議で、沖縄県が申請する農業支援外国人受け入れ計画が審議される。計画は認められる見通し。特区会議の後、近く開かれる国家戦略特区諮問会議の答申を経て、首相が認定する。特区になれば、外国人の農業就労が認められ、成長基調にある沖縄の農業分野で即戦力人材の確保につながり、関係者は農業基盤の確立や発展に貢献すると期待している。農業支援外国人の受け入れは、即戦力となる技術や語学力を持つ外国人を農業現場に受け入れ、農家経営を支援することを目的とした事業。今年3月に愛知県、京都府、新潟市の3区域が特区に認定された。沖縄県は今年2月に県内で外国人材が必要な品目や時期を調査するなど、準備してきた。県農林水産部の島尻勝広部長は「生産現場の強い要望で申請した。事業を活用して、さらなる農業の成長産業化や競争力の強化が期待できる」とコメントを出した。特区が認定されれば、県は、沖縄総合事務局や入国管理局、労働局を交えた「適正受け入れ管理協議会」を早期に設立。外国人材の受け入れを希望する企業などの「特定機関」を公募する。外国人材は特定機関と雇用契約を結び、特定機関と派遣先の農業経営法人などは労働者派遣契約を結ぶ。外国人は通算3年の期間で、農作業や製造、加工などと付随する作業に従事できる。特区導入を求めてきたJA沖縄中央会の砂川博紀会長は「認定されれば、今後の農業振興・発展に弾みがつくと大いに期待している」と述べた。

*13-2:https://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-735609.html (琉球新報社説 2018年6月10日) 夜間中学支援再開 教育確保は行政の責務だ
 県教育庁は2017年度で打ち切ったNPO法人珊瑚舎スコーレの自主夜間中学校に対する支援について、18年度内に再開する方針を決めた。多くの人々が支援継続を求めており、署名は2万305筆に上った。県がこうした声に耳を傾け、支援再開に踏み切ることを高く評価したい。県教育庁は戦中・戦後期の混乱で義務教育を修了できなかった人の学びを後押しするため、11年度から支援事業を開始した。講師の手当や光熱費、施設の賃借料の一部を補助していた。支援対象者は1932年~41年生まれの今年86歳から77歳になる人たちだ。17年度時点で珊瑚舎スコーレなど3事業所が支援を受けていた。2事業所は17年度までに対象者の受け入れを終えていたが、珊瑚舎スコーレは7人の対象者のうち、5人は18年度も在籍予定となっていた。珊瑚舎スコーレの17年度支援額は395万円だった。ところが県教育庁は事業の当初終了予定が15年度だったことを理由に、この年度に入学した対象者が卒業する17年度で支援を打ち切った。理由について「事業の成果はある程度出た」と説明していたが、5人の在籍者がいる中での打ち切りは拙速な判断だったと言わざるを得ない。珊瑚舎スコーレは現在、義務教育未修了の人は無料、学び直しの人には年額3万円で授業を提供している。その理由を星野人史代表は「貧困のために義務教育を諦めなければならなかった人たちに、お金で再び学問を諦めさせるわけにはいかない」と説明する。運営費は寄付などに頼らざるを得ず、行政の支援は不可欠だ。教育基本法の4条は「すべて国民は、ひとしく、その能力に応じた教育を受ける機会を与えられなければならず、人種、信条、性別、社会的身分、経済的地位又は門地によって、教育上差別されない」とうたっている。国と地方公共団体には、経済的理由による修学困難者への支援を講じるよう定めてもいる。教育の機会を等しく確保することは行政の責務だ。夜間中学は戦後の混乱や不登校などを理由に、義務教育を修了できず学齢期を過ぎた人たちが学び直しをしている。全国8都県に市町村立の夜間中学が31校ある。しかし県内には公立の夜間中学は1校もない。珊瑚舎スコーレなどの民間が受け皿となってきた。県は現在、公立中学校夜間学級等設置検討委員会を設置して、課題を洗い出し、需要調査を進めている。15年度に発表した県子どもの貧困対策計画でも夜間中学の設置検討を挙げている。文部科学省も全都道府県での夜間中学の設置方針を掲げている。県は公立設置までは、民間の夜間中学への支援事業を継続すべきだ。現在設けている支援対象の年齢枠も取り払い、支援を拡大してほしい。

*13-3:http://www.tokyo-np.co.jp/article/ibaraki/list/201806/CK2018061402000162.html (東京新聞 2018年6月14日) 結城紬の未来を紡ぐ 「糸取り」養成に本腰
 日本を代表する高級絹織物で、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の無形文化遺産にも登録されている結城紬(ゆうきつむぎ)の生産の先行きが危ぶまれている。材料の糸を紡ぐ職人「糸取り」が減少し、高齢化も著しいためだ。産地・結城市の関係者が、後継者の養成に乗り出した。「糸がなくなれば、結城紬もなくなる。絶やさないためには、一人でも多くの方の力添えが必要だ」。結城市で二月上旬に開かれた会合で、本場結城紬卸商協同組合の藤貫成一副理事長(56)がそう訴えた。会合は、初めて糸を紡ぐ人向けの道具や糸の見本、解説DVDなど一式を「スターターズキット」として貸し出すための説明会だ。キットを借りた人は、一定期間内に決められた量の糸を納め、対価を受け取る。定期的な講習会でスキルアップを促し、職人として定着してもらう。参加者は二十六人。関東だけでなく、山形県や山梨県の人もいた。結城市の森律子さん(41)は、幼い長女を連れて参加。母親が糸取りで、以前から興味があったという。「糸が足りなくなりそうだとは知らなかった。地元の伝統工芸に少しでも貢献したい」と力を込めた。結城紬には、糸取りが真綿から手で紡いだ撚(よ)りのない無撚糸(ねんし)が使用される。軽い上に暖かく、肌触りも良い特有の風合いは、この工程が鍵を握る。作業を担う職人が「糸取り」。従来は主に農家の女性たちが副業的に担ってきた。本場結城紬原料商共同組合の鈴木孝一理事長(62)によると、昭和五十年代は七千~八千人ほどがいたが、生活を保証するほどの収入にならず働き口が多様化する中、担い手は年々減少。今では三百~四百人程度で平均年齢は七十五歳を超えているとみられる。鈴木理事長は「毎年二十人くらいずつ養成していかないと行き詰まる」と危機感を口にする。結城紬の生産量は、ピークだった昭和五十年代の二十分の一以下ともされるが、二〇一〇年の無形文化遺産の登録などで復活の兆しもあり、約一年前から糸不足が深刻化してきた。そこで原料供給、生産、卸など、結城紬に関わる五つの組合が連携し、糸取りの後継者養成に本腰を入れることになった。説明会で糸紡ぎの実演を披露した国認定の伝統工芸士の植野智恵さん(下妻市)は「地域だけでは担い手が足りなくなる。一人でも多くの後継者をつくりたい」と、産地外からの参加者を歓迎した。
     ◇
 卸商協同組合によると、一八年度は筑西、下妻の二市でも新たに糸取り説明会を開く予定という。スターターズキットも四十セットほど貸し出したため、追加で五十セット用意する。
<結城紬> 結城市と栃木県小山市を中心に生産されている絹織物。全工程が手作業で、起源は奈良時代とされる。作業で重要な3工程の糸紡ぎ、絣(かすり)くくり、地機(じばた)織りは1956年に国の重要無形文化財に登録。結城市では、市長や市議らが結城紬の着物で議会に臨む「紬議会」も開催している。

<農林漁業地域の自然は美しくて有益>
PS(2018年6月16日追加):*14-1のように、九州北部には雄大な山や美しい海がある。*14-1で紹介されているのは九大の演習林だが、*14-2の水力発電の水源かん養目的で九電が所有している社有林のように、美しさと実益を兼ね備えた森林も多い。また、長崎県五島市にある福江島の本土最西端の灯台付近も美しいようだ。「イルカと海に帰る日」を書いたジャック・マイヨールは、この近くの玄界灘で初めてイルカと出会い、その後、一緒に海に潜っている。そこで、これからの100年を見据えて森林や藻場の設計についてアドバイスするのは、九大はじめ地域の大学の役割だろう。

   
    2018.6.16西日本新聞         玄海灘    2017.10.1朝日新聞 上 
                      宗像大社の「みあれ祭」での漁船のパレード

*14-1:http://qbiz.jp/article/135387/1/ (西日本新聞 2018年6月16日より抜粋) 心ふるえる感動トリップへ!一度は見ておきたい、九州北部の夏絶景5選
 雄大な山々や美しい海。九州には、自然が織りなす絶景スポットが多くある。神秘的な水辺の森はじめ、九州本土最西端の灯台で眺める夕日や、自然と融合したデジタルアートなど、今回は6月から夏休みシーズンに楽しめる九州北部の夏絶景を紹介する。
●神々しい雰囲気に包まれる水辺の森
 九州大学が所有する演習林(えんしゅうりん)で、同敷地の西端に位置する「篠栗九大の森」。都市近郊に残存する森の一部を、同大学と篠栗町が共同で整備し、2010年より一般公開を始めた。17ヘクタールの森は、自然の回復力を主体とする最低限の管理に留め、今もなお約90種類の樹木や野生の動物が生息している。森の中心にある池を一周する約2kmの遊歩道は、高低差が少なく、気軽に森林浴を楽しめるコースとなっている。見どころはなんといっても“水辺の森”。樹齢を重ねた落羽松が、その根を水辺にひたしながら立ち並ぶ姿はまさに幻想的だ。
●“九州本土最西端”で眺めるロマンチックな大瀬崎灯台の夕日
 長崎県・五島市の福江島に、九州本土最西端に位置する「大瀬崎灯台」がある。歴史がある灯台自体も見どころだが、なにより素晴らしいのはそこから見える風景。昼は真っ白な灯台、周囲の青い海、崖に打ち付ける荒波と、鮮やかかつ壮大な景色に感動する。日没15分前ごろからは、灯台のバックに沈む美しい夕日が見られる。“九州本土最西端”ということは、九州本土で最後に夕日に出合える場所ということ。そのロマンチックな事実とともに、この夕日はぜひ大切な人と一緒に楽しみたい。昼間は駐車場から遊歩道を進んで灯台まで行けるが、日没後は真っ暗なため、展望台から観賞しよう。

*14-2:http://qbiz.jp/article/135646/1/ (西日本新聞 2018年6月14日) 新国立競技場に九電産のスギ材 大分の社有林から伐採
 九州電力は13日、東京都新宿区で建設が進む新国立競技場の屋根材に、大分県の社有林で伐採したスギが使われたと発表した。契約上の問題で使用量や価格は公表していない。九電は水力発電の水源かん養を目的に、同県九重町や由布市で約4447ヘクタールの社有林を管理している。伐採したスギやヒノキは市場に出荷しており、2017年度は15万立方メートルを販売した。新国立競技場は19年11月完成予定。20年東京五輪・パラリンピックの開閉会式や陸上競技の会場となる。「杜(もり)のスタジアム」を掲げ、国内各地の木材を多く使用する。

<シルクの魅力>
PS(2018年6月18日追加):*15-1の緑色に光るシルクは、実需者の関心が高く、養蚕農家の飼育頭数が2年目で2.6倍の31万頭に増加したそうだが、これは先端技術による付加価値増加の典型例であり、これが日本だけでなく世界の織物(例えば、ペルシャ絨毯など)に使われるようになると面白いと思われる。そのほか、蛍光だけではなく、太刀魚の銀色やオオゴマダラの金色のシルクができると、銀糸・金糸を使う必要がなくなるので魅力的だ。
 また、日本は、エネルギー・賃金・不動産などの高コスト構造により種々の産業を国内では成り立たなくして外国に追い出し、残った伝統産業も存続の危機に瀕しているため、*15-2のように、受け入れ環境を向上させて外国人の就労を促しつつ生産性を高めることによって、本当は必要なのだが成り立たなくなってしまっている産業を復活させるべきだ。

*15-1:https://www.agrinews.co.jp/p44355.html (日本農業新聞 2018年6月16日) 群馬県内新開発蚕の飼育頭数増加 光るシルク世界で輝け 2年目2・6倍、31万頭 実需者からの関心高く
 緑色に光るシルクをつくる蚕の飼育頭数が増えている。世界で初めて昨年から群馬県で実用生産が始まった。開発した農研機構が実需者と契約を結び、県内の養蚕農家に蚕の生産を委託しており、今後は衣料やインテリア素材など幅広い分野での利用が想定されている。海外産の安いシルクの流入で押され気味だった養蚕業だが、日本だけの新たな素材で盛り上げたいと産地は意気込む。緑色に光るシルクをつくる蚕は、農研機構が遺伝子組み換えの技術を使って開発、群馬県蚕糸技術センターと共同で実用化に向けた研究を行ってきた。国の承認を受け、昨年から群馬県内の農家の施設で実用生産が始まっていた。2年目の飼養頭数は、昨年の2・6倍に当たる31万5000頭に増えることが明らかになった。外部への逃亡や近縁野生種との交配など、自然界に影響を与えないよう、施設の側面に網を張るなどの対策を取り、細心の注意を払って飼育するため管理に手間がかかる面はあるが、縮小する養蚕業にあって農家の期待は大きい。飼育する農家は生産量が増えたことに「需要が出ている」と受け止めている。昨年は、農研機構が京都市にある西陣織の老舗、細尾と契約した。生産農家で組織する前橋遺伝子組換えカイコ飼育組合が飼育を、長野県の宮坂製糸所が操糸を、それぞれ委託されていた。細尾は、インテリアやアート作品に利用する方向だ。今年産については、農研機構が新たな実需者と契約し、需要の広がりを見せている。契約先は今のところ非公表。飼育は、県技術センターが蚕の卵をかえし、4齢まで育成してから前橋遺伝子組換えカイコ飼育組合に渡し、同組合の農家が飼育して繭を生産する流れ。蚕期は、昨年は10月5日にスタートした初冬蚕だけで、飼育頭数は12万頭だった。これに対し、今年は計4蚕期で31万5000頭になる予定。5月18日から春蚕が7万5000頭で始まり、6月の夏蚕と9月の晩秋蚕が6万頭ずつ、10月の初冬蚕が12万頭の予定だ。蚕を供給する群馬県蚕糸技術センターは「使いたいという業者は多く、需要はある。世界のどこにもない繊維素材で、若い人が憧れる養蚕業をつくれれば」と期待する。
●高単価に期待農家「夢ある」
 緑色に光るシルクを吐き出す蚕は、一般の蚕に比べて繭の収量は低いものの取引価格が高いことから、今の価格で取引されれば経営上はやや有利になる。「なにより夢がある」と養蚕農家は話している。前橋遺伝子組換えカイコ飼育組合によると、1箱(3万頭)当たりの収繭量は一般の蚕が50キロ以上になるのに対し、緑色の蛍光シルクを吐き出す蚕だと40~45キロと1、2割少なかった。一般的な生繭の取引価格は1キロ当たり2200円ほど。これに加え、群馬県の場合、県から最大1キロ900円、さらに市町村から200~1200円の助成金が出る。緑色に光る繭の取引価格は明らかにされていないが「県や市の助成がなくても、一般の繭より高い」と同組合。1キロ6000~7000円程度になるとみられ、コスト分を勘案しても、収益は一般の蚕より高くなる。同組合の松村哲也組合長は「価格だけでなく、(緑色蛍光シルクには)夢がある」と、新しい素材生産に魅力を感じている。

*15-2:https://www.agrinews.co.jp/p44357.html (日本農業新聞 2018年6月16日) 外国人就労の緩和 受け入れ環境向上が鍵
 政府は外国人の就労規制を緩和する方針を打ち出した。農業を含めて人材難に苦しむ業界からは“即戦力確保”への期待が高い。一方で、本当に人手不足解消につながるのか、治安の悪化を招かないかといった不安も少なくない。関連法制度の整備に当たり、解決すべき課題は多い。農業界も受け入れ環境の向上へ自己努力が求められる。15日に閣議決定した経済財政運営の基本方針(骨太方針)に、外国人の新たな在留資格を作る方針を盛り込んだ。技能実習制度や国家戦略特区での外国人受け入れに加えて今回、新たな仕組みを設けるのは、産業界が外国人材の受け入れ拡大を強く要望しているためだ。新たな制度は農業、介護、建設、宿泊、造船の5業種を対象にする見込みだ。技能実習制度の修了者や、それと同等の技能・日本語能力を問う試験に合格した外国人に就労を認める。報酬は日本人と同等以上、就労期間は通算5年を上限とする。詳細は政府が今後詰める。今回の規制緩和に農業界の期待は大きい。だが、狙い通り即戦力を確保し、労働力不足を解消できるかは未知数だ。人不足は日本に限った問題ではない。アジア労働人材の争奪戦には、韓国、台湾なども参入する。賃金や待遇面で必ずしも日本に優位性があるわけではない。さらに、就労先に日本が選ばれたとしても、農業で働くとは限らない。国境を越えた人材獲得競争、国内での業種間競争の二つが待ち構える。農業の人手不足は今後、一段と深刻化するのは必至だ。法人経営体の推進や規模拡大が進むほど、雇用労働力への依存度は高くなる。既に多くの産地では、人不足のために潜在生産力をフルに発揮できない問題に直面する。まさに「人の確保こそ最大の成長戦略」である。二つの競争に勝ち抜けるかは、優位性のある賃金水準や労働環境を実現できるかにかかる。「安い労働力」という意識では結局、虎の子を失う事態になる。一方で、農業経営体は他の業態に比べれば中小零細であり、経営体力に限界もある。今月上旬、関連農業団体と農水省が「農業技能実習事業協議会」を設立した。実習生の失踪や受け入れ側の不正行為などの改善策を考え、実習生が安定的に従事できる環境整備に取り組む。こうした自己努力が重要である。例えばファンドをつくって技術研修や初期渡航費に助成するなど踏み込んだ対策も考えられる。国への支援要望をまとめる必要もあろう。スピーディーな検討がポイントだ。政府は今回の規制緩和について、移民政策と一線を画すとの立場だ。ただ、欧米ではこの問題が国家の深刻な分断の震源と化している。安い労働力への過度の依存は、日本人の低賃金化や技術革新を活用した労働生産性向上に水を差すとの指摘もある。国家の将来像と絡めて国民的な議論を深める時である。

<農業の法人化と設備投資>
PS(2018年6月19日追加):*16-1のように、農業の規模拡大で資金需要が高まり、農業法人投資育成制度を活用した農業法人への出資件数が5月末時点で累計500件を超えて、出資先の売上高が平均で4割増えたそうだが、返済する資金計画があるのなら大変よいことである。しかし、農産物は付加価値の高いものだけでなく普通のものも作らなければならないため、利益率が高いとは限らない。このような中、*16-2のような地域の新電力会社が、農業地帯で再エネ発電した電力を買い取って地産地消の電力を供給するようにすれば、農業に副収入ができて経営が容易になる。

  
   牧場の風力発電       畑の風力発電       茶畑の風力発電

*16-1:https://www.agrinews.co.jp/p44383.html?page=1 (日本農業新聞 2018年6月19日) 法人出資500件超え JAが窓口機能 所得増大後押し アグリ社
 JAグループと日本政策金融公庫(日本公庫)が設立したアグリビジネス投資育成(アグリ社)は18日、農業法人投資育成制度を活用した農業法人への出資件数が5月末時点で累計500件を超えたと発表した。農林中央金庫によると、同社の出資件数は制度全体の約9割を占める。規模拡大で資金需要が高まる中、JAが窓口機能を果たした。出資先の売上高は平均で4割増えており、所得増大に貢献している。アグリ社は2017年度、計74件に10億2000万円を出資。02年度の創設から5月末時点までの累計では出資件数が512件、出資額は83億4000万円となった。累計の品目別では野菜(32%)が最も多く、畜産(23%)、稲作(17%)が続く。農林中金によると、規模拡大に伴う設備投資資金の調達が多い。農業法人は増えているが、自己資本が脆弱(ぜいじゃく)で資金調達が課題。農業法人投資育成制度はこれを支援するもので、民間金融機関が専門の投資組織を立ち上げて出資する。出資は、資金の使い道に制約がなく、対外信用力の向上で融資が受けやすくなるメリットもある。投資組織はアグリ社の他に17組織あるが、農林中金によると、17組織の出資件数は全て合わせても累計80件程度。アグリ社が群を抜くのは「JAが持つ地域のネットワークが強み」(農林中金食農法人営業本部)のためだ。JAが農業者への訪問活動で得た情報を、農林中金を通じて同社につなぎ出資につなげるなど、地域の窓口機能を果たしている。出資は、JAグループが自己改革で目指す農業者の所得増大や農業生産の拡大にも貢献する。アグリ社が10年度から16年度の出資先の343社の売上高を調べたところ、出資前に比べて平均で1億100万円(42%)増えた。利益が増え、配当を支払う出資先も増加傾向にあるという。農林中金は「(同社を通じて)出資に加え、法人の従業員向けのセミナーなど経営支援にも取り組み、農業の成長産業化に貢献したい」(同)としている。

*16-2:
http://qbiz.jp/article/135540/1/ (西日本新聞 2018年6月18日) 「くるめエネルギー」始動 新電力「住みよい街へ貢献」 収益の一部 防犯カメラや公園整備へ
 福岡県久留米市の久留米商工会議所青年部を母体とする地域新電力会社「くるめエネルギー」(安丸真一社長、同市)の事業開始式典が11日、市内のホテルであった。安価な電力供給とともに、収益の一部を市内の防犯やインフラ整備に充てる地域還元型のビジネスモデルを目指す。同社は、青年部の有志14社が昨年6月に設立した。市内の電気利用者が、市外資本の電力会社に支払う電気料金を「地域資産の流出」と位置付け、電気利用をくるめエネルギーに切り替えてもらうことで流出を食い止め、地域還元や活性化の観点から、収益の一部を街灯や防犯カメラの設置、公園整備に充てる。地元事業者から出資を募ったところ、132社から応募があった。くるめエネルギーの契約者が、出資店舗や事業所を利用した場合には、割引などのサービスを提供する。2月には、大手商社丸紅グループの「丸紅新電力」と業務提携の基本合意を交わしており、丸紅側のノウハウを今後の事業展開に生かすという。この日の式典では、地域新電力の先輩に当たる「やめエネルギー」の本村勇一郎社長が「競合相手ではなく、互いの地域を尊重しながら、共存できる活動ができたら」とあいさつ。安丸社長は「住みよい街づくりに貢献したい。1人でも多くの人が久留米に住みたいと思う環境をつくっていく」と決意を語った。九州電力より2〜5%安い価格で電力を供給する。初年度の契約目標は、工場やオフィス向けの高圧100件、一般家庭や商店向けの低圧2300件。3年後には、高圧350件、低圧7300件、年間売り上げ10億円を目指す。くるめエネルギー=0942(80)5968。

| 農林漁業::2015.10~ | 11:12 PM | comments (x) | trackback (x) |
2018.5.14 経済と環境の必然性から見た自動車、エネルギー、医療・介護の進路 (2018年5月15、16、19、20、21日に追加あり)
     
        2018.5.12日経新聞     2018.5.10、2018.5.13日経新聞  

(図の説明:日産とルノーはどちらがグループの利益に貢献しているかという論調になっているが、経営方針を間違わずに必要な投資を行うことが最も重要である。そして、日産・ルノー組の成功は、日本人でないゴーン社長の経営方針決定による成功によるため、今後とも日産の経営陣がイニシアティブをとらないのが成功への道だろう。しかし、再生医療に関しては、多くのヒト幹細胞候補があって次々と応用に供せられているため、集中と選択をするのはまだ早すぎる)

    
        2018.5.13東京新聞           2018.5.10日経新聞

(図の説明:経産省の次期エネルギー基本計画骨子案は、再エネの普及が世界より大きく遅れ、世界では手終い始めている原発に20%以上も依存をしようとしており、経産省の思考停止が明らかだ。そのため、経産省に任せておいては、中国はじめアジア諸国にも遅れることになる)

(1)自動車の進路は明確であること
1)競争ルールの変化とライバルの増加
 自動車の競争ルールは明らかで、「①地球環境の維持目的から、アジアだけでなくアフリカ大陸まで自動車が普及しても環境を汚さないこと」「②少子高齢化の進行から、自動運転や高度な運転支援を行えること」が、必要条件になる。

 そのような中、2018年3月期に過去最高益を更新したトヨタ自動車の豊田社長は、*1-1のように、「ライバルも競争ルールも変わり、生死をかけた闘いであり、テクノロジーカンパニーは我々の数倍のスピード、豊富な資金で新技術に投資を続けている」としているが、これは日本では20年前から予測できたことであるため、最初からEVとFCVに集中投資していれば、遅れることはなかった筈だ。

 また、コストには、コスト削減と原価低減があり、コスト削減は既にある技術を改善して地道にコストを減らすことで、これはトヨタはじめ日本企業のお家芸だ。一方、原価低減は、スキームを変えて劇的にコストを減らすことで、例えばガソリンエンジンをやめてEVにしたり、原発や化石燃料をやめて再エネに替えたりすることなどであり、コスト削減効果がずっと大きい。

 しかし、日本政府や日本企業は、自らスキームを変えて原価低減する判断をすることができず、他国がやって初めてあわてて追いつこうとする(これは、日本における文系への理数教育の不十分さによるだろう)。EVのケースでも、私が1995年頃にEVの提案をした後、すぐEVの開発・販売を行う決断をしたのはゴーン氏率いるルノー・日産組であり、日本人を社長とする他の自動車大手は、燃費の改善やハイブリッド車でお茶を濁した。

 そして、現在は、*1-4のように、「日産・ルノーはどちらが牽引役か」という問いになっているが、先見の明ある判断こそが無駄な開発コストをかけずに収益力を上げる重要な要素であるため、ルノーの方が牽引役としてふさわしく、ゴーン氏の任期が切れる時期を視野にしているのなら、再度、フランスから優秀なCEOを招くのが、双方が納得できる有効な方法になろう。
 
 なお、EV・FCV・自動運転・再エネによる自家発電などの技術を確立すれば、*1-3のような鉄道も含め、移動手段全体をもっと合理的にできる筈だ。そのため、このエネルギー変革は、自動車会社・JR・地域にとって、大きなチャンスにすることが可能である。

2)世界の市場へ
 *1-2のように、トヨタが総力戦でアフリカ大陸の開拓を始めたのは面白い。アジアの次はアフリカであるため、アフリカの豊かな自然を壊さないように、アフリカでハイウェイや高速鉄道を整備しながら、EV・FCVやそれらの電車を走らせ、太陽光・地熱などの再エネ発電で経済を進めればよいと考える。つまり、日本で行った途中の試行錯誤は省略してよいのだ。

 また、自動運転には地図が不可欠だが、日本にはパイオニアなどのナビを作る会社やゼンリンなどの正確な地図を作る会社もあり、自動運転車の必需品となる地図は、世界をグーグルに独占させなくても、現在ある地図を世界地図に変えれば、既存の技術で世界市場が視野に入る。

(2)研究開発の遅れと武田薬品のシャイアー買収
1)先進技術を獲得することの重要性
 日本は、*1-5のように、再生医療分野の応用研究に関する特許出願で、欧米・中国・韓国の後じんを拝しているそうだが、再生医療の応用研究を始めたのは1995年頃であり、経産省・厚労省・文科省が協力して本格的に始めたのは、私が衆議院議員をしていた2007年頃のことであり、どちらもそれを言い出したのは私であり、世界の先を行っていた。

 にもかかわらず、現在、日本の特許出願や論文が欧米中韓を下回っているのは、①iPS細胞以外の再生医療を排除したので、iPS細胞以外の研究者は国内で研究しにくくなり、外国に脱出して研究している人もいること ②常識や多数を善とする先端科学とは反する価値観を浸透させたこと ③日本のメディアが、科学とは無関係の自らの基準で論文を叩きすぎたこと ④勉強しないことや理数系に弱いことをファッションにする傾向があり、理数系の勉強を疎かにしたこと などが原因だ。

 しかし、ルノーが日産と合併したいと考えるのは、日産・三菱がEVやFCVの技術を持っているからであり、武田薬品のシャイアー買収のように、遅れたから低金利の金にモノを言わせて買収し、技術を獲得しようという試みは、相手会社に歓迎されないのでうまくいかない。つまり、自らが得意分野を持っていない提携や買収は相手会社に歓迎されず、高い買い物になって買収価格も回収できないケースが多いのである。

2)武田薬品のシャイアー買収について
 武田薬品が、*1-6のように、アイルランドのシャイアーを総額7兆円弱の過去最大金額で買収したとして新聞が大騒ぎしていたが、やはり裏に投資銀行の暗躍があり、この案件は、関係者の利益が最大の目的で成立したのではないかと思われた。

 何故なら、シャイアーが開発して特許を持っているのは難病薬であるため、利益率がいいと言っても大量に売れるわけではなく、それが総額7兆円もの買収価格に相当するかどうか不明だからである。

 日本企業は、金融緩和で低金利の金にモノを言わせ、持たぬ技術を獲得するために敵対的M&Aを行って得意になっていることがあるが、そのようにして失敗した事例に、東芝のウェスティングハウス買収がある。そのため、せっかくよい製品を持っている武田薬品が似た運命を辿らないことを、私は希望している。

(3)日中韓首脳会談
 安倍首相と李克強首相が、*2-1のように、経済を軸とした実務レベルの合意を行って日中両国の雪解けを演出したのはよかったのだが、尖閣諸島問題は棚上げにしてそのままだった。

 また、会談後の共同記者発表で、安倍首相は「日本と中国が力を合わせてアジアの旺盛なインフラ需要に応えていく」と述べられ、李首相も「中日は世界の主要経済大国だ。共に国際貿易の自由化を守り、経済グローバル化の発展を推進することで合意した」と語られ、よいことだ。

 しかし、*2-2のように、中国の李克強首相は、日本の経済界が東京都内で開いた歓迎レセプションで、「日中両国は世界の主要経済国として、保護主義に反対し自由貿易を守る責任がある」と述べられたそうで、それは尤もなことではあるが、既に中国が食品・EV・太陽光発電などで対日輸出の方が多くなる状況であることを考えると、油断していた日本は、米国と同様、自由貿易を喜んでばかりいる立場ではない。

 なお、李首相が、「日中が連携して世界経済の発展に貢献すべきだ」「『一帯一路(現代版シルクロード)』と日本を繋ぎたい」と述べられたのにも、私は賛成だ。

(4)エネルギーの転換
 *4-1、*4-2のとおり、現在は、再生可能エネルギー(再エネ)を拡大するエネルギー計画の方針転換に踏み込むべき時だが、経産省は、次期エネルギー基本計画の骨子案で、「原発依存度を下げる」としながら「原発は重要なベースロード電源」と位置付けて2030年度の原発の発電割合を20〜22%としており、自己矛盾だらけで本気度が感じられない。

 世界は、既に再エネへのシフトに舵を切っており、やっぱり日本は遅れた。しかし、私は、フクイチ事故後、速やかにこのブログにその解決策を記載しており、それは、全体から見て唯一の解決策であるため、世界は「パリ協定」でその解決策を速やかに取り入れ、再生エネの普及と価格低下を実現して、論理ではなく感情で突っ走った日本は時代遅れになったわけである。

 また、技術進歩により再エネの普及割合は経産省の予想を超えるスピードで進んでいるため、経産省が長期的な電源毎の発電割合を決めるのは、むしろ再エネの普及を妨げる。そのため、できるだけ、再エネを推進する方針で原発の再稼働を控えればよいのだ。そのために必要な原発地元への支援も、フクイチ事故後すぐにこのブログに記載している。

 なお、*4-3のように、小泉元首相も「原発支援のカネを自然エネルギーに向ければ、原発が供給していた30%程度の電力は、10年で自然エネルギーによって供給でき、将来、全電源を自然エネルギーにできる」と言っておられるが、まさにそのとおりで、電源こそ選択と集中を行うべき時期なのである。

(5)医療・介護の一部産業化
 介護制度についても、*3-1のように、「2025年には未曽有の超寿社会になるため、医療や介護サービスの需要が急増して費用も大幅に膨らむ」というような報道が多い。しかし、70代後半になると足腰が弱って介護を必要とする機会が増えるのは、65歳前後で定年を迎えて運動量・緊張感ともに減るからで、退職年齢を70歳以上に上げるか、定年を無くすかすれば医療・介護費は減るだろう。

 また、①1人暮らし ②高齢者数の増加 ③医療・介護費の増大 も課題とされることが多いが、これを問題としか捉えない点が、厚労省はじめ政府リーダーの頭の悪さだ。何故なら、人口の年齢構成が変われば市場のニーズが変わるのは当然であり、日本はこの意味で中流階級の多い課題先進国であるため、必要とされるサービスを的確に供給すれば、上記の中国はじめ世界で歓迎される新しい産業を作ることができるからである。

 そのためには、政府の社会保障だけでなく、*3-3のセコムの見守りサービス・ホームサービスや、*3-4の東急グループが知識とノウハウを結集して作る誇りをもって住める上質なシニアレジデンスのように、民間企業の知見と実行力がモノを言うため、政府・自治体は、これらを後押しするのもよいと思われる。

 なお、「若者が足りない」という発言もよく聞くが、*3-2のように、広い視野で外国人の受け入れを一般的に行えば、国民負担増なく、世界と日本の問題を同時に解決できるのである。

<自動車の進路>
*1-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180510&ng=DGKKZO30285370Z00C18A5EA2000 (日経新聞 2018年5月10日) トヨタ、異業種と生存競争 社長「ルール変わった」 研究開発、今期も1兆円超
 トヨタ自動車は2018年3月期に過去最高益を更新し、19年3月期も底堅い業績が続く見通しだ。それでも豊田章男社長は9日、「ライバルも競争のルールも変わり、生死をかけた闘い」などと事業環境の厳しさを強調した。今期の研究開発費と設備投資の合計額は2兆4500億円と、11年ぶりに過去最高を更新する。自動運転など新たな領域で、海外IT大手など異業種の巨人との競争に備える意味合いがある。「テクノロジーカンパニーは我々の数倍のスピード、豊富な資金で新技術に投資を続けている」。東京本社(東京・文京)での決算説明会で、豊田社長の論点は「未知の世界」という競争環境、「お家芸」である原価低減、トヨタ生産方式の徹底など多岐にわたった。成果が出るまで時間のかかる自動運転や電動化、コネクテッドカー(つながる車)への投資が増え、経営方針を正確に理解してもらう必要があるためで、説明会は2時間超と異例の長さになった。19年3月期の研究開発費は1兆800億円と2年連続で過去最高で、次世代技術には35%を費やす。設備投資額との合計は5年前と比べて3割増やす。3月にはデンソー、アイシン精機と自動運転を開発する新会社を設立。元グーグル幹部をトップに据え、数年で3000億円以上を投じる。6月には主力車を刷新し、コネクテッドカーの市販車を公開することも明らかにした。トヨタの視線の先にあるのは海外IT大手の姿だ。米グーグルは米国で地球200周分の公道テストを終え、年内に世界初の無人輸送サービスを始める計画。中国の百度(バイドゥ)も、独ダイムラーなど世界企業約50社と組んで、自動運転開発「アポロ計画」を進める。自動運転などの新領域が主戦場となり、研究開発にどれだけの金額を投入できるかが今後の競争力を左右する。企業財務のデータベース、QUICKファクトセットでみると直近1年間のトヨタの研究開発費は約94億ドル。ダイムラーや独BMWを上回り、自動車業界では高い水準にある。ただ、海外IT大手との比較では安心はできない。米アップルは約127億ドルと自動車業界で研究開発費が最大の独フォルクスワーゲン(VW)に迫り、グーグルは約177億ドルとトヨタの2倍近い規模だ。研究開発費などの原資となる現金創出力(営業キャッシュフロー)でも差がある。トヨタは365億ドルとVW(約29億ドル)などを突き放し、自動車業界では抜きんでている。しかし、グーグル(約391億ドル)にはとどかず、アップル(約674億ドル)ははるか先を行く。「トヨタの真骨頂はトヨタ生産方式と原価低減の2つ。未来を生き抜くために徹底的に磨く」。研究開発費や投資の拡大が避けられないだけに、既存車種の開発や生産の方法の見直しには今まで以上に力を入れる。トヨタ生産方式をさらに徹底するため、提携したスズキやマツダのノウハウも吸収していく。4月には子会社の日野自動車がVWの商用車部門と次世代技術などで提携。「まさか乗用車のライバルと合意するとは」(トヨタ系部品首脳)と衝撃が走った。大きな転換期を「100年に一度の大チャンスととらえ、これまでにない発想でチャレンジする」(豊田社長)という。

*1-2:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO29917750X20C18A4940M00/ (日経新聞 2018/5/7) 最後の「辺境」 総力戦でアフリカ開拓(トヨタの未来)
 南アフリカ共和国のダーバンにあるホテル。アフリカの約40カ国をカバーするトヨタ自動車の販売代理店の代表者が3月に集まった。「顧客に近づいて強みを伸ばしていこう」。アフリカ本部トップの今井斗志光常務役員は代表者会議で檄(げき)を飛ばした。今井氏は1月、豊田通商からトヨタに役員として招かれた異色の経歴を持つ。豊田通商でアフリカ事業に約30年関わってきた。「中長期でトヨタをさらにアフリカで強くして欲しい」。今井氏が昨年11月、トヨタの豊田章男社長から言い渡されたミッションの一つがアフリカ攻略だ。アフリカの人口は2050年に25億人と中国を抜く規模に拡大する見込み。新車市場はまだ年間約120万台だが、人口増と経済発展で将来は巨大市場に育つと予測される。トヨタの販売台数はアフリカでまだ約20万台と、グローバルの約2%にとどまるが存在感は大きい。これから本格的に車の普及期に入る地域でマーケットリーダーの地位を守っていけるかはトヨタの未来の成長力を左右する。「フリートデー」と呼ぶイベントが数回に分けて南アフリカで昨年開かれた。アフリカの一般消費者にとって車は高根の花で、新車を買うのは政府や企業、非政府組織(NGO)が中心。こうした顧客を50団体ほど招き、工場やテストコースを見てもらう。フリートデーはトヨタや豊田通商など「オールトヨタ」で実施した初のイベントで優良顧客にトヨタをより身近に感じてもらい、ブランド力を高めるのが狙いだ。トヨタがアフリカで事業を始めたのは1950年代後半と早い。南アフリカなどに多目的スポーツ車(SUV)「ランドクルーザー」を輸出したのが始まりだ。62年には南アフリカで工場を稼働させ、地道にアフリカ各地に販売、サービス拠点も整備していった。自然が豊かなアフリカでは車の故障が命に関わるアクシデントになる。「頑丈で壊れにくい」といった評判が広がり人気となった。今井氏は「アフリカでは多くの人がトヨタ車を買いたいと言い、それを裏切ってこなかった。信頼の『残高』が高いと思う」という。ただアフリカでは中国や韓国勢の参入も相次ぎ、競争は激化している。車のシェアなど新サービスの浸透も予測され、従来の延長線ではない戦略も必要だ。「ウーバーのドライバーになるなら、トヨタ車はどうだい」。米ウーバーテクノロジーズがケニアに設けた拠点。ここでウーバーに新規登録する運転手に試験的に中古車を売り込んでいるのは豊田通商グループのトヨツウオートマートケニアだ。アフリカでは固定電話を飛び越え、スマートフォンが普及した。先回りしてニーズを取り込む。トヨタの新興国での存在感は東南アジアを除けば十分ではない。巨大市場に育った中国やインドでは出遅れが目立ち、巻き返しを急ぐ。そうした中、アフリカは長い年月をかけて市場を切り開き、開拓者としての強さを残す地域。試行錯誤を重ねながら「最後の辺境」で勝ち抜けるか。オールトヨタの総力戦が続く。

*1-3:http://qbiz.jp/article/133601/1/ (西日本新聞 2018年5月11日) JR九州が過去最高益 鉄道の収益も改善 3月期連結
 JR九州が10日発表した2018年3月期連結決算は、訪日外国人客の増加を受け鉄道旅客運輸収入が増えたことなどで、売上高が前期比8・0%増の4133億7100万円だった。経常利益が10・7%増の670億4500万円、純利益が12・6%増の504億1千万円となり、売上高、利益ともに過去最高だった。
新幹線利用客の増加や熊本地震の反動などで鉄道旅客運輸収入が46億円増加したほか、キャタピラー九州の連結子会社化などにより増収となった。九州豪雨や台風18号の災害による特別損失を38億円計上したものの、熊本地震があった前期より特別損益は改善した。単体の鉄道事業は282億円の営業利益を確保。株式上場に伴う経営安定基金の取り崩しなどによる利益押し上げ効果を除くと、実質的には約20億円の赤字だったが、増収や効率化で前期より大幅に改善した。青柳俊彦社長は記者会見で「ローカル線の赤字はさらに拡大している」とし、地方路線はなお厳しい状況にあると説明。自治体などの理解を得るため「鉄道事業の収支構造をある程度、お話しすることになるのではないか」と述べ、路線別の収支などを公表する可能性を示唆した。時期は未定としている。次期は、鉄道事業の減価償却費増加などにより、増収減益を見込む。

*1-4:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO30433100S8A510C1EA5000/?nf=1 (日経新聞 2018/5/12) ルノー・日産、主従は? 資本の論理か「実力」か
 仏ルノーが資本提携先の日産自動車からの利益を支えに業績を回復させている。ルノーの連結純利益に占める日産からの貢献分は5割を超えた。両社には資本関係を見直す構想も浮上しているが、どちらが連合のけん引役なのか考え方に相違がある。資本の論理か企業の実力か――。巨大自動車連合が新たな経営形態を模索する上で亀裂が生じる可能性がある。「あらゆる選択肢を排除しない」。両社の会長を務めるカルロス・ゴーン氏は、ルノーの最高経営責任者(CEO)としての任期が切れる2022年までに連合の新しい枠組みを築く意向を示す。背景には「日産をルノー傘下にしっかり組み込み、両社の関係を不可逆的なものにする」という仏政府の意向がある。ルノーと日産は99年に資本提携し、三菱自動車を加えた3社で連合を組んでいる。ルノーは日産に43%、日産もルノーに15%それぞれ出資しており、日産は三菱自株式の34%を保有する。ルノーは欧州債務危機などで業績が低迷した時期があったが、14年12月期以降は4期連続で連結純利益が増えた。株価も上昇し、13年末に約2兆2000億円だった時価総額は足元で約3兆4千億円と、一時は2倍近い開きがあった日産に近づきつつある。一見、ルノー本体の快走による好循環に見えるが、実は業績拡大を陰で支えているのは日産への出資から得た「持ち分法投資利益」だ。ルノーの純利益に占める日産からの利益の割合を有価証券報告書などをもとに計算(一部日経推定含む)すると、17年12月期のルノーの純利益51億ユーロ(約6600億円)のうち、約5割を日産からの利益が占める。13年12月期からの5カ年でみても、毎年5割以上を日産分が占め、多い年では純利益の全てを日産から得ている年もあった。日産株から受け取る配当金も巨額だ。日産は17年3月期に900億円近くをルノーに支払った。ルノーにとって日産は自動車産業のパートナーという立場を超え、「経営上もはや欠くことのできない存在」(外資系証券アナリスト)といえる。そのため、資本の論理でいえば43%を出資するルノーが企業連合の盟主になるが、日産からしてみると、ルノーの業績を支えている稼ぎ頭の「我こそが主役」という意識が強い。17年の販売台数も日産の581万台に対しルノーは376万台。ある日産幹部は「企業としての力は当社の方が上だ」と言い切る。日産とルノーが資本関係を見直す検討をしている背景には、ルノーに15%を出資する筆頭株主の仏政府からの圧力があるとされる。仏政府からすれば、時価総額が日産に近づきつつある今こそ、経営統合などルノー主導での日産の取り込みに絶好のタイミングと見ていてもおかしくない。日産の西川広人社長兼CEOは「会社ごと一体化することにメリットは見えない」と合併などの経営統合には慎重姿勢だ。新たな経営形態の骨格が固まるには水面下での綱引きがしばらく続きそうだ。

*1-5:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180513&ng=DGKKZO30433300S8A510C1EA1000 (日経新聞 2018年5月13日) 再生医療 応用で見劣り 日本の特許出願・論文、欧米中韓下回る
 iPS細胞をはじめとする再生医療分野で、応用研究に関連する特許出願では日本が欧米や中国、韓国の後じんを拝していることが、特許庁による調査で分かった。再生医療の国内市場規模は2030年には1兆8000億円になるとの試算もある。知的財産をおさえられると、将来的に市場を奪われかねない実態が浮き彫りになった。同庁は新産業につながる注目技術について、特許出願や学術論文の状況を調べる技術動向調査を毎年実施。今回は再生医療につながる「ヒト幹細胞」関連技術や電気自動車(EV)に使う蓄電池「リチウム2次電池」など12テーマを調べた。調査結果は14日発表する。ヒト幹細胞は様々な細胞に分化し、傷ついた組織や臓器の機能を戻す。07~15年では、幹細胞の分離精製・増殖など基礎技術の出願数は日本は米中と拮抗したが、細胞移植など応用に関する「再生医療・細胞治療」は米国は日本の約5倍、中国が約2倍に達し、欧州と韓国も日本を上回った。米中はiPS細胞より実用化で先行する胚性幹細胞(ES細胞)で応用技術を開発。同庁は「iPS細胞による再生医療産業の発展に影響する可能性がある」と分析する。論文数では出願者のランキング(07~15年)はトップは米カリフォルニア大学。仏国立保健医学研究機構、韓国のソウル大学校が続き、iPS細胞を発明した山中伸弥教授が所属する京都大学は8位だった。特許取得が現状の研究開発力を示すなら、学術論文は5~10年先の中長期の研究開発力を占う指標。日本の競争力に陰りが出ている。EVの走行距離を高める次世代電池として期待される「リチウム2次電池」の調査でも、日本の遅れが懸念された。リチウムイオン電池より性能が高い全固体電池は顕著だ。中核となる電解質材料に関する特許出願で酸化物系や硫化物系などを含めると日本は09~15年で1243件と222件で2位の韓国の6倍近く特許を出願するなど他国を圧倒した。トヨタ自動車は硫化物系、酸化物系ともに世界の主要企業を上回った。ただ中長期の研究力を測る論文数では日本は米や欧州、中国より少なかった。酸化物系は12~13年こそ日本の論文数は多いが、14年に米や中国、韓国とほぼ同じ水準。16年は米と欧州の論文数の半分。硫化物系は日本勢が16年も1位だが、米や欧州、中国、韓国との差は縮んできている。リチウム2次電池全体で見ても、出願者ではトヨタが2位、パナソニックが3位など日本が健闘するが、論文になると状況は変わる。12~16年の論文では1位の中国科学院から4位の清華大学まで中国勢が上位を独占。10位以内に中国籍の機関が8つ入る一方、日本は1つも入っていない。

*1-6:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180510&ng=DGKKZO30251050Z00C18A5EE9000 (日経新聞 2018.5.10) 武田メガ買収 投資銀が陰の主役、助言役、有力日米6社が獲得 野村とゴールドマン主導
 武田薬品工業によるアイルランド製薬大手シャイアーの買収は、日本のM&A(合併・買収)史を塗り替える案件になる。買収総額は7兆円弱と日本企業のM&Aで過去最大。舞台裏では案件獲得を狙う投資銀行の攻防があった。最終的に助言役に名を連ねたのは「オールスター」とも呼ぶべき日米の有力6社。欧州勢は苦杯をなめ、明暗をわけた。グローバルな再編を繰り返してきた製薬業界。日本勢は蚊帳の外に置かれてきたが、武田がついに社運を懸けて動いた。水面下で案件を主導したのが、国内証券最大手の野村ホールディングスだ。主幹事として築いた武田との長年の関わりを武器に、新株発行と現金を組み合わせた買収の仕組みを整えた。野村は昨年度のM&A助言の国内ランキングで首位だった。今回の1件だけで、野村が昨年度手がけたM&A総額(6兆7千億円)に並んだ。この巨額買収に関われたかどうか。投資銀行業界に与える影響は甚大だ。武田側には米JPモルガン・チェースも付いた。外貨調達など資金面でも支援する。フランス出身の武田のクリストフ・ウェバー社長が信頼を置くフランス人バンカーが在籍する米エバコアも助言役に入った。買収交渉はシャイアーが米国本社を置く米ボストン近郊、アイルランド、英国ロンドンなどを舞台に行われた。投資銀行が仲介し頻繁に国際電話をつないで詳細を詰めていったようだ。シャイアー側に付いたのはゴールドマン・サックス、シティグループ、モルガン・スタンレーの米大手3社。中でもゴールドマンが交渉を主導した。M&A助言業務は「売り手」の会社に付くのが鉄則。交渉が頓挫しない限り、確実に案件をものにできるからだ。投資銀6社が受け取る報酬総額は空前の200億円規模になる可能性もある。シャイアー買収を巡って武田と争ったアイルランド製薬大手アラガンは、買収検討を表明後に株価が急落。わずか数時間後に提案を取り下げた。米国勢で漏れたバンクオブアメリカ・メリルリンチはアラガンに助言していた。UBSやドイツ銀行といった欧州勢も苦杯をなめた。製薬業界では対抗提案が出ることも少なくない。ただ今回は日米6社が武田案件に関与し、競合他社が即座に対抗案を出すのが難しくなっている面もある。武田の買収がもたらす恩恵は助言業務以外にも広がる。約3兆円のつなぎ融資の後に想定される社債などの引き受けを巡り、すでに投資銀各社の動きが激しい。ただ、先行きは予断を許さない。巨額買収の負担を嫌気し武田株は年初来高値の1月中旬から3割強下げた。株主の支持を得られるかは不透明。今回は買収成立時に得られる成功報酬の比率が高いとされているのも難しい案件の証しだろう。日本企業では珍しい株式交換を活用し、巨額の買収に乗り出した武田。ある投資銀の幹部は「無事に成立すれば、成長を加速させる日本企業の大型M&Aへの道を開く」と期待を寄せる。

<日中韓首脳会談>
*2-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180510&ng=DGKKZO30285630Z00C18A5PP8000 (日経新聞 2018年5月10日) 日中、急速に「雪解け」 トランプ氏への危機感 後押し、自由貿易で連携強調 元建て債券の投資緩和
 安倍晋三首相と中国の李克強(リー・クォーチャン)首相は9日の会談で、経済を軸とした実務レベルの合意を成果として並べ、日中両国の雪解けを演出した。保護主義を強めるトランプ米大統領への危機感が、結果的に日中の関係改善を加速した形だ。ただ、両首相は、沖縄県・尖閣諸島をめぐる問題や歴史問題など両国間に横たわる火種は素通りした。安倍首相と李首相は9日の会談で、経済分野での連携姿勢を強調した。日本の金融機関が人民元建てで中国の株式や債券に投資する際の規制緩和や、日本産食品の輸入規制緩和に向けた協議体設立など合意事項をずらりとそろえた。2012年に日本政府が踏み切った尖閣諸島の国有化を機に、日中関係は「戦後最悪の状況」(日中外交関係者)に陥った。今回の合意は、関係が実務協力を進める段階まで回復したことを示す。急速な関係改善を後押ししたのはトランプ米大統領の「米国第一」の姿勢だ。中国は貿易問題などでの緊張を受け、日本を含む近隣国との関係修復を急いでいる。安倍首相には秋の自民党総裁選をにらみ外交成果を打ち出したい思惑があり、両国の利害が一致した。両首相がアピールしたのが経済協力だ。安倍首相は会談で「戦略的互恵関係の下、全面的な関係改善を進め、日中関係を新たな段階へ押し上げていきたい」と表明。会談後の共同記者発表では「日本と中国が力を合わせてアジアの旺盛なインフラ需要に応えていく」と述べた。李首相も「中日は世界の主要経済大国だ。共に国際貿易の自由化を守り、経済グローバル化の発展を推進することで合意した」と語った。 日中間で停滞していた金融協力で踏み込んだ。中国には機関投資家を対象に、元建てでの中国の株式や債券への投資を認める人民元適格外国人機関投資家(RQFII)の投資枠がある。取得しているのはアジアや欧米など10以上の国・地域で、日本の金融機関は政治情勢などを理由に与えられていない。今回の首相会談で2千億元(3.4兆円)の投資枠の付与で合意した。中国は外資の投資に規制をかけているが、RQFIIの枠を得た金融機関は新規株式公開(IPO)などに参加できる。枠を得ようとするメガバンクや証券会社などの動きが活発になる見通しだ。両国の通貨交換(スワップ)協定の再開に向けた協議入りでも合意。同協定は金融危機時などに互いに通貨を融通しあう仕組みだ。市場の混乱などで元の調達が難しくなった際、日銀を通じて調達できるようになる。第三国へのインフラ輸出でも協力。アジア開発銀行(ADB)の試算によると、アジアのインフラ需要は年1.7兆ドル(約185兆円)。両国は電力や交通、デジタル分野の輸出拡大に向け、企業経営者や関係閣僚による新たな枠組みをつくることで合意した。ただ、自由貿易の推進も、各論に入れば温度差がある。中国が震源とされる鉄鋼の過剰生産について、世耕弘成経済産業相は9日午前、中国の鍾山商務相に「市場歪曲(わいきょく)的な措置の除去が重要」と是正を求めた。知的財産の侵害問題でも、中国が外資企業に事実上、強制的な技術移転を求める制度などを温存している。

*2-2:http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2018051001001290.html (東京新聞 2018年5月10日) 【経済】日中両国で保護主義反対を 李首相が連携呼び掛け
 中国の李克強首相は10日、日本の経済界などが東京都内で開いた歓迎レセプションで「日中両国は世界の主要経済国として、保護主義に反対し、自由貿易を守る責任がある」と述べ、日中が連携して世界経済の発展に貢献すべきだと強調した。李氏は「(中国の現代版シルクロード構想)『一帯一路』と日本の成長戦略をつなぎ合わせたい」とも述べた。中国は、保護主義色を強めるトランプ米政権との間で貿易摩擦が激化する中、貿易や投資の面で日本との連携を強化したいとの思惑がある。「一帯一路」の日本への協力呼び掛けは、インフラ建設などで両国間の協力を深め、同構想を推進させたい考えがある。

<医療・介護の一部産業化>
*3-1:http://qbiz.jp/article/133273/1/ (西日本新聞 2018年5月7日) 2025年、未曽有の「超寿社会」 団塊の世代は全員75歳以上に 医療、介護費10年で膨脹
 今から7年後の2025年。人口に占める65歳以上の割合が3分の1に近づき、お年寄りの10人に6人は後期高齢者という未曽有の局面を迎える。「超寿社会」とでも呼ぶべき新たな時代だ。膨張する医療や介護の費用。急がれる認知症や孤独死への対策。18年度は政府のさまざまな取り組みが動きだす重要な節目だ。日本が直面する「2025年問題」を考える。
Q 「2025年問題」とは。
A 2025年は戦後の1947〜49年に生まれた「団塊の世代」全員が75歳以上に
  なる年です。第1次ベビーブーム世代とも呼ばれ、2015年の国勢調査によると
  約638万人。突出して人口の多いこの世代の高齢化が進むため、医療や介護サー
  ビスの需要が急増し、費用も大幅に膨らむと懸念されています。
Q なぜ75歳に着目するのでしょう。
A 個人差はあるものの、一般的には70代後半になると病気がちになり、足腰が
  弱って介護を必要とする機会が増えます。75歳以上は「後期高齢者」と位置付
  けられ、国の医療保険制度も別立ての仕組みになっています。高齢者の定義は
  65歳以上とされていますが、14年のデータによると65〜74歳の1人当たり
  年間医療費は平均で55万4千円なのに対し、75歳以上では90万7千円と1・6
  倍に。介護費も5万5千円から53万2千円と、10倍近くに跳ね上がります。
Q 1人暮らしや認知症の高齢者の増加も課題になりそうです。
A 未婚のまま老後を迎える人も増え、25年には65歳以上の5分の1は1人暮らし
  になります。認知症の高齢者は6年前のデータでは全国に462万人でしたが、
  25年には700万人程度まで増えるとみられています。1人暮らしだと家族が
  介護するのは難しいですし、認知症の人の介護には多くのマンパワーが必要で
  す。独居と認知症の増加により、高齢者人口の伸び以上に必要とされるサービス
  の量が増える可能性があります。
Q 医療や介護の費用はどこまで膨らむのでしょうか。
A 政府の推計では、25年度に年金や子育て費用も含め、社会保障給付費は
  148兆9千億円に上ります。このうち、医療には54兆円、介護に19兆8千億円
  を要します。15年度と比べると、医療は1・4倍、介護は1・9倍に膨らむ計算で、
  医療と介護がいかに社会保障費を押し上げるかが分かります。
Q 少子化も進んでいますし、社会保障の費用を誰が負担するのか難しい時代になりますね。
A はい。25年の高齢化率(総人口に占める65歳以上の割合)は30%。75歳
  以上だけでも2180万人で18%に上ります。「高齢者の高齢化」が進み、現役
  世代の負担の重さに拍車がかかります。1人の高齢者を税金や保険料で支える
  のに、1960年代は20〜64歳が9・1人の「胴上げ型」だったのが、2025年には
  1・8人で支える形となり、50年代には支え手が1・2人しかいない「肩車型」に
  なると説明されることがあります。そこで政府は、支え手を増やそうと女性の就労
  や高齢者の長期雇用を促しています。一部には外国人労働者の活用拡大を
  主張する声もあります。
    ◇   ◇
●人材確保へ待遇改善を 清家篤・慶応大客員教授
 2025年問題が深刻なのは、高齢者の増加で医療や介護の費用が加速度的に膨らむ点だ。年金の給付は受給者数に比例して伸びていくだけだが、医療・介護分野では、病気や要介護になりやすい75歳以上の後期高齢者の増加によって、給付は高齢者全体の増加率を上回るペースで増える。医療や介護は単なるお金の問題だけでなく、医師や看護師、介護福祉士といった人材を確保しなければならない点で、年金よりもずっと難しい。彼らが気持ちよく働いてもらう上で必要な人材育成や待遇改善を抜きにサービスの充実はあり得ず、そのための財源の確保は欠かせない。「介護離職」への対応も強化していく必要がある。自分の親や配偶者の親、あるいは配偶者の介護は切実な問題。仕事を続けたくても、介護サービスの供給が追いつかなければ、離職を余儀なくされる。労働者本人はもちろん、企業にとっても痛手だし、何よりも働き手が減るのは大きな社会的損失だ。何も手を打たなければ、これから30年までに800万人もの労働力人口が減少するとの推計もある。働く意思と能力のある人たちが、年齢にかかわりなく能力を発揮できる生涯現役社会をつくる。これが、豊かさと活力を維持していく鍵になる。高齢者や女性の就労を促進すると同時に、外国人雇用を広げることも視野に入ってくるだろう。
    ×   ×
*清家篤(せいけ・あつし) 慶応大商学部客員教授、日本私立学校振興・共済事業団理事長。専門は労働経済。2009〜17年、慶応義塾長。政府の社会保障制度改革国民会議で会長を務めた。1954年生まれ。東京都出身。

*3-2:https://www.agrinews.co.jp/p43816.html (日本農業新聞 2018年4月16日) 外国人受け入れ 労働環境 他産業並みに
 愛知県、新潟市、京都府は国家戦略特区制度を活用し、外国人労働者の受け入れを始める。より良い人材の確保と雇用後の混乱を避けるためには、農業も他産業並みの労働環境・条件にしていく必要がある。全国に先駆けた取り組みで、内閣府や自治体などで構成する「適正受入管理協議会」が設置され次第、受け入れが始まる見通しだ。懸念されるのは、特区の仕組みとこれまでの技能実習生とは、割増賃金、休日などの労働条件が違うことだ。認識不足のまま受け入れた場合、現場での混乱が心配される。国内の労力不足が深刻化する中、外国人に産業を支えてもらおうと各地で受け入れが進んでいる。法務省が発表した2017年末の在留外国人の数は前年比7・5%増の256万人で過去最多を更新した。農業分野も、今や大規模な産地ほど外国人の力なしに成立しない状況になっている。国家戦略特区制度を活用して外国人労働者の受け入れを表明した愛知県は、18年度予算に農業支援外国人受入事業308万円を計上。出身地の母国語に対応できる電話相談窓口を設け、長期雇用できる環境を整えることで“強い農業”の実現につなげたい考えだ。留意すべきは、特区制度を利用して農業現場で働く外国人労働者と技能実習生とは労働条件に違いがあることだ。労働基準法では、休憩時間を除き1日8時間、1週40時間までと法定労働時間を設けている。だが、農業は気象条件に左右されやすく、悪天候の日や農閑期に休みが取れるため、この規定の適用除外となっている。つまり、1日8時間を超えて働かせてよいなど、労働時間や休日、休憩を自由に設定できる。所定の労働時間を超えた場合は超過分の賃金を払う必要はあるが、法律で定めた「割増賃金」を払う必要はない。一方、技能実習生は「労働生産性の向上のために、適切な時間労働管理を行い、他産業並みの労働環境を目指していくことが必要」(農水省就農・女性課)との観点から、法に準拠した労働時間や休憩、休日などが求められ、残業した場合も割増賃金を支払う必要がある。特区雇用の外国人と外国人実習生の間に、割増賃金の支払いをはじめとする労働条件の差を持ち込んだ場合、現場が混乱する恐れがある。農業法人などで働く日本人の労働者も同様だ。農業の労務管理に詳しい特定社会保険労務士の入来院重宏氏は「雇用確保に向け、最近では農業でも1日8時間を超えて労働させた場合などは割増賃金を支給するケースが増えている」と指摘する。農水省で農業の働き方改革について検討が始まり、他産業並みの労働条件に見直す動きも相次いでいる。農産物を購入する消費者を含めて「安ければいい」という考えを根本的に改める時にきているのではないか。

*3-3:https://www.secom.co.jp/lp/hs/s14/?utm_source=yahoo&utm_medium=cpc&utm_campaign=AG502yss&wapr=5adf286e セコム見守りサービス、セコムホームサービス 

*3-4:http://www.tokyu-welina.jp/ 東急ウェリナ、東急電鉄のシニアレジデンス
シニア世代の皆さまに安心で心豊かな人生を過ごしていただきたい。東急ウェリナは、東急電鉄の100%子会社である東急ウェルネスが運営するシニアレジデンスです。東急電鉄は、これまで街づくりを事業の根幹に置き、長年にわたって沿線に暮らす人々の生活に密着した様々なサービスを提供してきました。そんな東急電鉄が街づくりの集大成として掲げた事業がシニアのための住まい、生活区間の提供です。「この国の発展を担ってこられたシニア世代の皆さまに安心で心豊かな人生を過ごしていただきたい。『終のすみかとしてここを選んでよかった』と思っていただける住まいとしたい」。それが私たち東急ウェリナの使命と捉え、東急グループの知識とノウハウを結集し、住む方が誇りをもってお住まいいただける上質な住環境をお届けいたします。

<エネルギーの転換>
*4-1:http://www.shinmai.co.jp/news/nagano/20180430/KT180428ETI090006000.php (信濃毎日新聞 2018年4月30日) エネルギー計画 方針転換に踏み込む時
 方針転換を先送りにした計画では、エネルギー安定供給の要請に応えられない。
経済産業省が有識者会議に示した次期エネルギー基本計画の骨子案である。国の中長期的なエネルギー政策の指針となる。原発依存度をどう下げるか。再生可能エネルギーをどう拡大するか。道筋を示していない。計画は3年ごとに見直される。いまの計画は、2030年度の原発の発電割合を20〜22%、再生エネを22〜24%としている。骨子案は、これを据え置いている。原発は12年の原子炉等規制法の改正で、運転開始後40年の廃炉が原則になった。現在ある原発は老朽化が進む。ルールを徹底すると、30年の原発比率は2割を大きく下回ると指摘されている。据え置かれた原発の割合を達成するには、新増設や運転延長が前提となる。福島第1原発事故を踏まえれば、安全面からも認められない。世論の批判が強い原発を温存するのに加え、「重要なベースロード電源」との位置付けも踏襲している。原発が低コストとする根拠も揺らいでいる。事故後に厳しくなった国の新規制基準に対応するには、大規模な安全対策が必要だ。仮に20年の運転延長が認められても、最長60年で廃炉になる。出力が小さい原発ほど採算は合わない。四国電力伊方2号機など、採算面から廃炉を選ぶ事例も増えている。骨子案は原発の「再構築」を提言しているが、具体的内容がはっきりしない。これではエネルギー政策の指針の役目は果たせない。新増設は経済面からも厳しくなっている現実を直視すべきだ。次期計画は、2050年に温室効果ガスを8割削減する国際公約に対応する必要がある。このため、30年に加え、50年に向けた長期戦略を含む内容となる。骨子案は太陽光や風力などの再生エネについて、主力電源化を進めると明記した。一方、50年の発電割合目標を示すことは見送った。本気度が疑われる。原発が実質的に高コスト化する一方で、再生エネへのシフトは世界的な潮流となっている。日本は立ち遅れている。再生エネの普及に向けた課題解決には、公正な競争を促す電力市場の整備や、送電網の適正な運用といった取り組みが欠かせない。原発依存から脱却して再生エネに比重を移す―。政府は、転換方針を計画でより具体的に打ち出していくべきだ。

*4-2:http://www.kyoto-np.co.jp/info/syasetsu/20180429_3.html (京都新聞社説  2018年4月29日) 再生エネ転換  主力電源化へ具体策示せ
 経済産業省が新しいエネルギー基本計画の骨子案を策定した。再生可能エネルギーの「主力電源化」を初めて盛り込む一方、原子力や火力発電も温存し、時代遅れの感は否めない。太陽光や風力といった再生エネへの転換を急ぐ世界的な潮流に日本だけが取り残されてはなるまい。経産省の有識者会議がまとめた2050年を見据えたエネルギー長期戦略の提言を踏まえ、30年に向けた指針に加え、50年への戦略を示した。新計画は今夏にも閣議決定される。温暖化対策の国際枠組みである「パリ協定」に基づき、日本は50年に温室効果ガスの排出量を8割削減する目標を掲げている。脱炭素化に向けて、これまで軽視されがちだった再生エネ転換に本腰を入れる姿勢は一歩前進であり、評価できる。だが長期的な電源ごとの発電割合や具体的な道筋は示さなかった。技術革新の進展の予想は難しいとはいえ物足りない。日本は原子力や火力を重視してきたため、再生エネの発電比率は15年で14・6%にとどまり、イタリア39・8%、スペイン35・3%、ドイツ30・6%などに比べ遅れが際立つ。コスト面でも16年に欧州平均で1キロワット時当たり10円の太陽光発電費用が日本では20円と割高だ。再生エネ転換の遅れを取り戻すには、価格引き下げや安定供給への技術開発が鍵となる。発電効率の向上に加え、発電量が天候に左右されやすいため需給の調整技術や高性能な蓄電池の開発、電力需要の大きい都市部への送電網の増強-といった課題を一つずつ着実に解決していかねばならない。最も疑問符が付くのは原発の将来像だ。東京電力福島第1原発事故後、脱原発を求める世論は根強く、「原子力政策の再構築」を掲げた。「可能な限り依存度を低減する」という現行の政府方針を維持して原発の新増設にも言及しなかったものの、安全性の高い原子炉の開発や核燃料サイクル政策を進めるという。原発のあり方が曖昧な状況が今後も続きそうだ。国内産業は発電コストの安い原発抜きに海外と勝負できないとの経済界の意向が透ける。だが福島事故後、安全対策費用がかさむ原発は割安な電源と言い難い。脱原発を鮮明にしてこそ、原発に頼らない新技術の開発や投資も強い動きとなろう。「化石燃料の効率的・安定的利用」にも固執した。効率の悪い石炭火力を廃止してCO2の排出が比較的少ないガス火力への移行は当然だが、火力発電の温存は脱炭素化に逆行する。これとは別に政府は先日、本年度から5年間程度で取り組む第5次環境基本計画を閣議決定した。環境省主導で再生エネ活用を推進する方針だが、経済活動への影響を懸念する経産省の戦略とは相いれない。双方の整合性が欠かせない。新計画でも再生エネの発電割合を30年度に22~24%という目標は据え置くが、原子力や火力に過度に依存していては再生エネへの転換は進まない。国際水準に比べて遜色なく、国民の理解を得られる再生エネ戦略の道筋を明確に示すべきだ。

*4-3:http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201805/CK2018051302000140.html (東京新聞 2018年5月13日) 【政治】<原発のない国へ>全電源、自然エネにできる 小泉純一郎元首相インタビュー
 小泉純一郎元首相(76)が本紙のインタビューに応じ、原発事故後も原発稼働を前提とする安倍政権のエネルギー政策を「反省がない」と批判するとともに、「原発支援のカネを自然エネルギーに向ければ、原発が供給していた30%程度の電力は10年で自然エネルギーで供給でき、将来、全電源を自然エネルギーでできる国になる」と、原発稼働を直ちにやめ、自然エネルギーへの転換を促進すべきだとの考えを強調した。小泉氏は「首相の権限は強い。もし首相が(原発ゼロを)決断すれば、自民党はそんなに反対しない」と政治決断を求めるが、安倍晋三首相では「やめられない」とも述べ、原発ゼロの実現には首相交代が必要だとの考えを強調した。原発ゼロの実現を期待できる政治家として河野太郎外相の名を挙げた。自らが進める原発ゼロに向けた運動と野党との連携については「自民党の首相がそういう(原発ゼロの)決断をすれば、野党は黙っていても喜んで協力する」と否定した。小泉氏は福島第一原発事故後、「安全で、コストが一番安く、永遠のクリーンエネルギーだという原発推進論者の三つの大義名分がうそだと分かった」と指摘。「(原発事故後の)七年間(事実上の)原発なしで一日も(大きな)停電がない。原発ゼロでやっていけることを証明している」と、原発ゼロは即時可能だと強調した。また、使用済み核燃料の最終処分場建設の見通しが立っていないことに関し、「処分場を見つけられない原発を政府が認めることが不思議で仕方がない」と厳しく批判した。使用済み燃料を再処理して、燃料として再利用する核燃料サイクル事業は「破綻している。永遠の夢の原子炉と言われたもんじゅは故障で幻の原子炉になった。まさに無駄遣いだ」と撤退を提唱した。安倍政権が進める原発輸出政策については「危険性があり、自分の国で(原発建設が)できないから外国に売り込もうとする発想が分からない」と批判。潜在的な核抑止力になるとして原発を推進する意見には「なんで抑止力というのか分からない。日本が核兵器を持てるわけがない。そういうことを言う人の理論が分からない」とした。このインタビューは十一日午後、東京都品川区の城南信用金庫本店で行われた。
<こいずみ・じゅんいちろう> 1972年の衆院選で初当選、連続12期務める。厚相、郵政相を歴任し、2001年に首相就任。戦後4位となる5年5カ月の長期政権を築いた。09年に政界引退。東京電力福島第一原発事故後、原発ゼロを訴えて講演活動を続ける。近著に「決断のとき-トモダチ作戦と涙の基金」。76歳。
◆世界2040年に再生エネ66%予測
 2011年の東京電力福島第一原発事故後、国内の全ての原発が運転を停止した。しかし政府は再稼働を急いでおり、現在は関西電力大飯原発(福井県おおい町)など5基が稼働中。発電に占める原発の割合は16年度には1.7%に低下したが、政府はこの数値を30年度には20~22%に高める目標をエネルギー基本計画で示している。政府は来月下旬にも決める新たな基本計画でも、この数値を維持する方針だ。一方、海外では福島の原発事故後、ドイツ、韓国が原発ゼロ政策に転換。依存度引き下げを目標に掲げる国も相次ぐ。米情報会社ブルームバーグ・グループによると、40年時点で世界全体の発電に占める原発の割合は3.5%に低下。逆に、再生可能エネルギーは66.3%に上がる見通し。

<対馬・沖縄の開発について>
PS(2018年5月15日追加):*5-1には、人手不足で新たに福岡から2人を雇い、近くに従業員用アパートを建てる計画だと書かれているが、韓国語のできる日本人より日本語のできる韓国人の方が多いため、日本語のできる韓国人を雇用した方が早いし、韓国人のニーズを把握しやすいのではないだろうか。さらに、対馬に来れば日本のものは何でも買えたり、日本の最先端医療・リハビリ・介護などを利用できたりするようにしておけば、中国・韓国などから買物や治療目的で定期的に来る人も増えるだろう。
 なお、*5-2の沖縄は、観光客は増えたものの在日米軍専用施設がまだ約70%も存在し、県民本位の経済開発になっていない。そのため、どうすれば長所を伸ばして県民本位の発展ができるかについて、内閣府特命担当大臣(沖縄及び北方対策、海洋政策)の福井氏を交えて沖縄開発総合計画を作り、実行すればよいと考える。福井氏は、国土交通省出身で沖縄担当大臣になる前に海洋基本法を中心となって作られ、地盤の高知県でも同じように地域振興の問題を解決しようとしておられるので、こちらから行った方が話が速いと考える。

*5-1:http://qbiz.jp/article/132240/1/ (西日本新聞 2018年4月20日) 韓国人客26万人に焦る過疎の町 「商機」でも…店、人手不足 対馬の玄関口・比田勝港
 近年、観光地として韓国人に人気の長崎県対馬市で、急増する旅行者の受け入れ態勢づくりが追い付かないでいる。特に北部の玄関口、比田勝(ひたかつ)港周辺では観光客向け施設や店舗が足りず、働き手不足にも悩む。地元の商工会は「韓国人観光客を照準にした創業相談も増えているが、十分なサービスを提供するには程遠い状況」と、過疎の町に訪れた商機を生かせない現状に気をもむ。比田勝から韓国・釜山までは直線距離で50キロ余り。日韓の5社が高速船を運航し、最短1時間10分で結ぶ。韓国人観光客が増える契機となったのが2011年3月の東日本大震災。韓国で日本への観光旅行が敬遠される中、同年10月にJR九州高速船(福岡市)が比田勝−釜山に「ビートル」の定期航路を開設すると、韓国人に「近場の対馬なら」という機運が広がり、手頃で自然豊かな海外旅行先として人気となった。11年まで年間2万人前後だった比田勝港への入国者数は、12年に約8万人と激増。その後も年々増え続け、17年は26万人余りが比田勝港から入国し、対馬市への総入国者の72%が利用、対馬中心部の厳原港より約16万人も多かった。だが、比田勝地区周辺は人口1500人程度の過疎の町。そこに出国者も含めると、多い日で3千人前後の韓国人が行き来するため、既存の店舗や施設ではとてもさばききれない。韓国人観光客向けの新規店舗を開業しても、地元には働き手がなく、韓国語を話せる人材も皆無に等しい。港近くにある創業70年のすし店「みなと寿し」では毎日、昼時に行列ができる。客の急増を受け、昨年春に20代の職人を福岡市から呼び寄せた。「まだ人手は足りないが、地元に雇える人もいない」と3代目店主の武末智彦(のりひこ)さん(42)。5月までに新たに福岡から2人を雇い、近くに従業員用アパートを建てる計画だ。今月27日には、比田勝港国際ターミナル前に、地域初のコンビニ「ポプラ」が開店予定。フランチャイズ契約するJTC(福岡市)によると「当初、求人への反応は鈍かったが、何とか開店できる形を整えた」と、従業員5人を確保した。ただ、年中無休の店舗を運営するには「ぎりぎり」で、求人を継続するという。対馬市商工会上対馬支所ではハングル講座も開かれている。4月に支所長となった山岡審司さん(55)は比田勝出身。子どもの頃から過疎化が進む故郷を見てきただけに「町の変化には驚くばかり。このチャンスを逃さないよう、対応策をしっかりと考えたい」と話している。

*5-2:https://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-718771.html (琉球新報社説 2018年5月15日) 日本復帰46年 沖縄振興の根本的転換を
 1972年の5月15日、沖縄は日本に復帰した。その前年の71年11月、沖縄国会と言われた第67臨時国会に、琉球政府の屋良朝苗行政主席は復帰措置に関する建議書を提出した。建議書は「はじめに」の項で「基地のない平和の島としての復帰」を望んだ。復帰後も改善されない最も大きな障害は米軍基地の存在だ。在日米軍専用施設の集中度は復帰時の約75%から約70%に減るにとどまり、整理縮小は進んでいない。2016年の米軍属女性暴行殺人事件、米軍普天間飛行場所属の垂直離着陸輸送機MV22オスプレイの名護市安部墜落、17年の普天間第二小学校への米軍ヘリ窓落下事故など事件事故が頻発し、県民の命が脅かされている。しかし基地の負担を軽減するどころか、安倍政権は普天間飛行場の名護市辺野古への新基地建設を強行している。沖縄県知事が明確に反対し、新基地建設の賛否が争点となった全県選挙ではほぼ反対の候補者が当選した。建議書が掲げた「地方自治の確立」は、新基地建設を強行する政府によって妨げられている。建議書は「県民本位の経済開発」も掲げた。本土に比べて大きく立ち遅れた沖縄の振興策として、約10兆円の「振興開発費」が投下された。確かに道路や港湾などインフラは大きく進んだ。しかし県民所得は全国平均の約7割、失業率は全国ワーストといった貧しさの部分は解消していない。子どもの貧困率は全国平均の2倍に上る。保育サービスが貧弱で、待機児童が多く、保育料は高い。離島の過疎化も深刻だ。過去の沖縄振興は社会資本整備に偏り、教育福祉施策を充実させる努力を怠ってきた。沖縄振興の仕組みを根本から見直す必要がある。12年に始まった沖縄振興一括交付金は、地域主権に基づいた沖縄の裁量による予算との当初の意義付けは失われ、基地政策の見返りで予算の多寡が決まる、国にとって都合のよいものとなってしまった。それが沖縄振興のゆがみを増幅している。復帰と同時に始まった沖縄振興開発特別措置法に基づく沖縄振興計画は第5次の折り返し点を過ぎた。私たちは第5次の終わりと、次の沖縄振興の仕組みを真剣に論議し、真の「県民本位の経済開発」を考えねばならない時期に来ている。建議書が挙げた新生沖縄像は、国家に押し付けられるのではなく、自らの未来を自らが決めるという姿だ。苛(か)烈(れつ)な沖縄戦と米国統治による圧政を経験した呻吟(しんぎん)の中から生み出された県民全体の願いと言えよう。自立と自律。これを実現することこそ、次世代に対する私たち世代の責任だ。沖縄自治構想会議は「沖縄エンパワーメント」と題した構想を発表し、沖縄振興と自治の在り方の根本的転換を提唱している。沖縄の将来について考える日としたい。

<経産省の阿保ぶり>
PS(2018年5月16日追加):経産省は、*6のように、2030年に向けて中長期的エネルギー政策の方向性を示す「第五次エネルギー基本計画」の素案を公表したが、その内容は、①再生可能エネルギーの主力電源化を打ちだし ②原発への依存度を可能な限り低減するとしながら ③原発を「重要なベースロード電源(?)」と位置付けて ④2030年度に目指す電力量のうち20~22%を原発で賄うとする電源比率の目標を維持する(??) というものだ。しかし、2030年度に20~22%なら現在よりもずっと高い比率であるため、原発への依存度を可能な限り低減するという内容と、完全に矛盾する。つまり、環境・エネルギー政策・地域経済のいずれも、経産省を当てにしてはならないということになる。

*6:http://www.tokyo-np.co.jp/article/economics/list/201805/CK2018051602000255.html (東京新聞 2018年5月16日) 【経済】原発のない国 機運高まる中 エネ計画 原発推進鮮明
 経済産業省は十六日、二〇三〇年に向けた中長期的なエネルギー政策の方向性を示す「第五次エネルギー基本計画」の素案を公表、審議会に示した。原発については「重要なベースロード(基幹)電源」と位置付けるとともに、「原子力政策の再構築」を掲げ、再稼働や核燃料サイクル、原発輸出などの推進姿勢を明示した。基本計画は三~四年に一回、見直す。三〇年度に目指す電力量のうち、原発で20~22%をまかなうとする電源比率の目標は維持する。目標達成には、原子力規制委員会で審査中の全原発でも足りない三十基程度が必要とされ、実現性を疑問視する声は根強い。素案は原発に関し「可能な限り依存度を低減」としつつも、再稼働を進めるという従来の方針を踏襲。今回は新たに、五〇年までに温室効果ガスを大幅に削減するための「実用段階にある選択肢」との位置付けも加えた。高速増殖原型炉もんじゅ(福井県敦賀市)の廃炉などで実現が見通せない核燃料サイクルも、推進姿勢を変えなかった。新増設は明記しなかったが「安全性・経済性・機動性に優れた炉の追求」を掲げ、その余地を残した。一方、再生可能エネルギーは主力電源化を打ちだし、送電網への受け入れ強化や不安定さを補う技術などの課題解決を進める。ただ、委員から「主力電源にするなら目標も変えるべきだ」との意見が出ていた三〇年度時点の目標は、従来の22~24%に据え置いた。経産省は素案を取りまとめ、与党と調整した上でパブリックコメント(意見公募)を実施し、六月末にも閣議決定したい考えだ。
◆4年の変化反映せず
 経済産業省のエネルギー基本計画の素案は、二〇一四年以来四年ぶりの見直しをうたいながら、この間の情勢変化に正面から向き合ったとは言えない内容となっている。東京電力福島第一原発事故以降、再稼働した原発は八基で、一六年度の電力量に占める原発の割合は1・7%。三〇年度の目標の20~22%を実現するには、稼働から四十年たった古い原発を十数基、運転延長したり、原発を新設したりすることが必要となる。どちらも実現性に乏しい。福島の事故以降、原発の安全対策規制が強化され建設費用は増加。工期の遅れも常態化している。米原発大手ウェスチングハウス・エレクトリックは、米国で原発新設の工期遅れを繰り返し一七年三月に破綻。三菱重工業などがトルコで進める原発計画は、総事業費が当初想定の二倍の四兆円以上に膨らむとみられ、伊藤忠商事が三月に撤退した。日立製作所が進める英国の原発新設も総事業費が三兆円規模に膨らむことから、支援を巡る英政府との協議が難航している。一方、再生可能エネルギーはコスト低下と導入拡大が進む。一七年の太陽光発電の平均入札価格は一〇年の三分の一以下の十一円に低下。一五年には累積設備容量で風力発電が原発を超え、一七年には太陽光発電も原発を追い抜いた。この四年の変化を踏まえれば原発の目標を下げ、再生エネの目標を引き上げるのが自然だ。だが、両方とも変えずに据え置くという経産省の姿勢からは、原発の存続を目指す意図が透けてみえる。

<風力発電機の改良>
PS(2018年5月19日追加):*7-1のように2重羽根にするよりも、扇風機のような6枚羽にした方が、安価で風をエネルギーに変える力が強いのではないだろうか。また、①鳥を巻き込まない ②音や低周波を出さない などの環境に配慮したスマートな構造にすることは必要不可欠で、それには、農協などの身近に需要のあるところと組んで農家の要望を取り入れて改良し、よいものができれば、これも日本だけでなく世界で売れる製品になると考える。
 なお、風力発電機に監視カメラを付けて見張り役も兼ねさせ、*7-2、*7-3のように人間が相手の場合は警察やセコムなどが駆けつけて逮捕し、*7-4のように、有害鳥獣が相手の場合は捕獲するか、DNAに嫌だと刻みこまれた天敵の鳴き声を発して追い払うかするシステムにすればよいのではないだろうか。


*7-1より             その他の工夫型風力発電機

*7-1:http://qbiz.jp/article/134170/1/ (西日本新聞 2018年5月19日) 電力新時代:2重羽根で発電に新風 元九大生起業のベンチャーが実用化 小型「風洞」も今夏販売
 風力発電機の羽根を前後2重にして発電効率を高める装置を開発したベンチャー企業「日本風洞製作所」(福岡県久留米市)が、第1号の製品を納品した。開発の過程で生まれた小型の風洞試験装置も商品化のめどがついて今夏に販売開始予定。新しい発想の製品で“風”を巻き起こすか注目される。同社は、九州大で風車の研究をしていたローン・ジョシュアさん(23)=長崎市出身=が在学中の2016年に起業した。羽根を2重にすると風を受け止めやすく有効に使える一方、前後の羽根の回転数が異なり、エネルギーを発電機にうまく伝えにくい課題が生じる。ローンさんは動力を統合して効率よく伝える装置を考案、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の助成を受けて実証試験をした後、17年から受注生産を始めた。第1号は高さ4メートル、羽根の直径2・2メートル、出力1キロワットの風力発電機を2基。2月末、福岡市東区の原看護専門学校の屋上に取り付けた。年間の総発電量は同等サイズの発電機の約2倍を見込み、駐車場の照明などに利用する。風車は強風による故障が課題だが、風速25メートル以上になると自動で風車を倒して保護する最新のシステムも取り入れた。今後は出力5キロワットや20キロワットなど製品の大型化を進める。既に西日本シティ銀行などが設立したファンドや一般企業から開発資金を調達。汎用(はんよう)の部品も活用し、導入経費を抑え「通常よりコストパフォーマンスが50%高い風車を売りにする」とローンさんは意気込む。風車研究の一環で造った風洞試験装置も注目されている。人工的に風を起こして空気抵抗を測る装置で、高さ、幅ともに1・5メートルほどに小型化したのが特徴。大学や大手企業が持っているこれまでの風洞装置は一戸建て住宅ほどの大きさがあったという。空気抵抗が重要な自転車産業の見本市に17年に出展したところ、約100社から問い合わせがあり、受注にもつながった。「研究開発に使いたいという需要が多い」とローンさん。風洞と風力発電機の相乗効果にも期待する。

*7-2:https://www.agrinews.co.jp/p43677.html (日本農業新聞 2018年3月31日) 果樹盗難 感知、警告 山梨・JAこま野と富士通がシステム 市内全域に導入
 JAこま野と富士通、富士通アイ・ネットワークは、4月から果樹盗難抑止システムの運用を始める。JAが管轄する南アルプス市内全域で導入。ここまで広範囲の導入は全国初の試みだ。果樹園への不審者の侵入を感知し、サイレンなどで警告することで果樹の盗難被害を減らす狙い。電源は太陽光発電を利用により、低コストで稼働できる。JAの依頼で富士通などが3年前から開発に取り組んできた。遠赤外線センサーで直径30メートルの範囲を360度監視、侵入者を感知すると威嚇音と赤色灯で警告し、園主にはメールで通知する。小動物などによる誤作動を防ぐため、水平方向と下方向に向けた二つの遠赤外線センサーを組み合わせて対応する。JAは30台を用意し、希望する農家に月額のリース契約で貸し出す予定。農家は盗難の危険がある収穫期だけ契約できるため、費用負担の軽減につながる。JAの小池通義組合長は「多くの農家に利用してもらい、防犯センサーがあるという情報が広まることで、盗難防止につなげたい」と期待を込める。JAは組合員向けの説明会を開き、順次農家へのリースを開始する。園地での使用を考えて電源はソーラーパネルで発電、消費電力の少ない無線方式を導入。太陽光がなくても4日間は稼働できる。設置や移動が簡単なため、収穫時期に合わせて、園地を移動させて使うこともできる。オプションで気温や湿度を計るセンサーの取り付けも可能で、さまざまなデータ管理ができる。28日には、JA本所で「果樹盗難抑止サービス導入に関する協定」の調印式を開いた。

*7-3:https://www.agrinews.co.jp/p44091.html (日本農業新聞 2018年5月17日) 野菜盗難相次ぐ 被害者落胆 「栽培やめる」 宮崎県延岡市
 宮崎県延岡市で、野菜の盗難が相次いでいる。収穫直前の野菜を、時期を見計らったかのように盗む手口だ。被害に遭った農家は「悔しい。苦労を踏みにじる行為で許せない」と口をそろえる。「栽培をやめる」と意欲をなくす人も出ており、野菜泥棒が地域農業の大きな問題になっている。同市大貫町の富山重利さん(82)は11日、JA延岡の直売所「ふるさと市場」に出荷する直前だったニンニク30本以上を盗まれた。午前7時ごろに畑に行き、ニンニクがごっそりなくなっている光景にがくぜんとした。富山さんは50アールの畑でブロッコリーやエダマメ、レタスなどを通年栽培する。以前から盗難に遭っていたが、今年に入り度重なる盗難に悩まされるようになった。富山さんは「自転車で周辺を見回っているような不審な人物を見掛けた。近所の人たちも知っている。証拠がないので何とも言えないが」と、やるせない表情だ。すぐに警察に相談し、「自分でも看板を設置するなど対策をしてほしい」とのアドバイスを受けた。畑の周囲にネットを張ったが、「無駄な労力と経費。今後も続くようなことがあれば、被害届を出す」と話す。また、出荷前の野菜を何度も盗まれた同市片田町の70代の女性は「1、2個程度なら諦めもつくが、大量に持って行かれるとやる気がなくなる」と話す。軽トラックなどを使った大胆な手口という。「もう気力もなえた。栽培中の野菜もあるので年内は農業を続けるが、その後はやめようと思う」と肩を落とす。野菜だけでなく、肥料を入れるバケツや、トラクターなどを圃場(ほじょう)に入れる際に使う農機ブリッジなどの資材を盗まれる被害もある。

*7-4:http://www.saga-s.co.jp/articles/-/213180 (佐賀新聞 2018年5月19日) 有害鳥獣の駆除学ぶ 行政、農業関係者ら、上峰町で11人
 上峰町の有害鳥獣対策講習会が1日、野生獣類捕獲技術研修センター(みやき町)であった。行政関係者や農業者、地域住民、狩猟免許所持者ら11人が、狩猟と有害鳥獣駆除の違いやわなの構造などについて知識を深めた。上峰町は昨年11月、狩猟免許取得費用に補助金を出すなど、有害鳥獣駆除に力を入れている。講習会は有害鳥獣の「捕獲駆除隊」発足に向け、関係者の知識や技術の向上を目指そうと開き、今後も月1回程度実施する予定。同町と連携協定を結ぶ捕獲用品開発製造の「三生」(鳥栖市)の和田三生社長が講師を務めた。講習会では、和田社長が狩猟と有害鳥獣駆除の違いについて、「有害駆除は農業や林業に被害があった場合の緊急避難的な捕獲で、短期間で終息させるのが大事」などと説明。わなの性能に加え、それを使う人の技術力が重要だと強調した。また、同社が開発・製造したイノシシや小動物用の箱わなを見学。参加者はわなの構造や、動物がかかった時の器具の動きなどを興味深く観察した。自ら狩猟免許を取得し、講習にも参加した武広勇平町長は「箱わなの種類が数多くあるなど知らないことばかり。有害鳥獣の被害軽減に向け、駆除のICT化などにも取り組みたい」と話した。上峰町内の狩猟免許所持者は現在5人。イノシシやカラスによる農作物への被害が増加しているほか、水路や法面の破壊も問題となっており、町によると被害額は年間数百万円に上るという。

<中国の壮大な都市計画と日本>
PS(2018年5月20、21日追加):中国は、*8-1のように、「1000年の大計画」として次世代の先端技術を活用した自動運転のスマートシティーを北京の南西約100kmの農村に作るそうで、計画性なく掘ったり埋めたりして無駄遣いしながら進歩していない日本と違い、計画が壮大で羨ましい。ただ、道路や鉄道などの交通インフラを地下に作ると、走りながら街を見て暗黙知の情報を得たり、景色を見たりする楽しみがなくなるのは残念だ。日本の場合は、定期的に地震・津波が来るため地下は危険であり、3階建ての道路網・鉄道網を作った方がよいと思う。
 なお、こうなると、産業だけでなく街づくりや環境も中国の方がよくなり、*8-2のように、「日本語を勉強して日本で技術を学んだのは損だった」という結果になる。そのため、これからも外国人に来てもらえる国であるためには、外国人差別を止め、労働者として働く資格を与え、技能の資格取得者には高度な専門性を持つ人材と同様に永住資格を認めるべきである。
 また、*8-3のように、トラックのドライバーが不足し、情報誌で求人しても反応がなく、廃業や事業売却を余儀なくされる業者もあるそうだが、ニューヨークでタクシーに乗るとインドやバングラデシュ出身の運転手が多い。トラックは、(和英両用の)ナビと運転技術があれば、日本語がうまくなくても運転できるため、運転手にも外国人を採用したらどうかと考える。


  *8-1より                        *8-2より

(図の説明:中国は、北京市近郊に2035年に1000年の大計画で未来都市を作り上げるそうで、全体としては魅力的だが、自動車道や鉄道が地下に埋設されて風景を楽しむことができなくなるのは残念だ。日本の場合は、地震・津波の多い国であるため、地下は危険であり3階建くらいの道路・鉄道網がよい。どちらにしても、世界では人口ボーナスがあるうちに外国人労働者を入れなければ、それぞれの国が少子高齢化社会になってからでは外国人労働者も来ないだろう)

*8-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180520&ng=DGKKZO30735500Z10C18A5MM8000 (日経新聞 2018年5月20日) 中国、自動運転の新都市 2035年にも、新・開発独裁 米と覇権争い
 中国が自動運転のアクセルを踏み込む。北京市近郊に2035年につくり上げる習近平(シー・ジンピン)国家主席肝煎りの未来都市で、個人の乗用車を世界で初めて全て自動運転にする。共産党がすべてを取り仕切り、インフラや法制度を整え技術も磨く。経済大国になってもなお国家主導で産業振興を進めようとする中国。企業の自由競争を前提にイノベーションで世界をリードしてきた米国に、「新・開発独裁」で中国が挑む構図が鮮明になってきた。新しい都市「雄安新区」は「千年の大計画」として昨年発表した壮大なプロジェクトだ。北京から南西約100キロメートルの河北省の農村につくり、次世代の先端技術を活用したスマートシティー(環境配慮型都市)にする。22年に基礎インフラを整え、最終的な面積は東京都に匹敵する2千平方キロメートル規模。将来の人口は200万人以上を見込む。総投資額は2兆元(約35兆円)との試算もある。
●個人用の全車に
 政府が4月に発表した新区の計画概要などによると、人工知能(AI)を駆使して自動運転を実現するモデル地区を設けて関連産業を振興する。計画の草案づくりに参加した徐匡迪・元上海市長は「道路や鉄道などの大部分の交通インフラは地下に構築する」と語る。その道路では「公共交通を中心に据え、個人が使う車は自動運転車で補完的役割を担う」と新区の建設計画のトップを務める陳剛・同区党工委書記は明らかにした。まっさらな土地に自動運転車を前提に設計する新しい都市は、非自動運転車や歩行者が入り交じる既存インフラとの調和という課題と無縁だ。未来都市のモデルとして世界への誇示をもくろむ。米アリゾナ州では3月に公道で実験中だったウーバーテクノロジーズの自動運転車が歩行者をはねて死亡させる事故が発生し、想定外の条件への対応の難しさを浮き彫りにした。世界各国ではドライバーの注意や監視を前提とするジュネーブ条約やウィーン条約が足かせになり、自動レベルの高い車を実用化する法制度の整備がままならない。中国は両条約とも批准しておらず、共産党がこうと決めれば法規制などの環境は一気に整う。現在の中国の自動運転技術の水準は、中国長安汽車集団が4月に公開した新車に搭載した加減速などを支援する「レベル2」程度とみられる。17年秋に「レベル3」の機能がある高級セダンを発売した独アウディなど日米欧勢に遅れており、政府主導で開発の速度も上げる。国家プロジェクトの認定を与えたネット大手、百度(バイドゥ)は、雄安新区ができる河北省政府とAIなどを取り入れた運転技術の研究を開始。交通インフラと自動運転を一体で開発するのが特徴で、3月には中国国有通信大手、中国電信集団(チャイナテレコム)などと共同で次世代高速通信規格「5G」を使う実証試験を始めている。国家総動員ともいえる体制で開発する自動運転車と関連インフラを世界に広める構想を掲げる中国に、米国は警戒をあらわにしている。通商政策担当のナバロ大統領補佐官は「中国はAIや自動運転など未来の産業の支配をもくろんでいる」と指摘。中国との貿易摩擦の主題を赤字削減からハイテク分野での覇権抑え込みに移している。米国は知的財産侵害のほか、補助金などの政府の政策も激しく批判。両国の対峙は「自由主義対国家主義」の様相だ。
●群がる海外大手
 経済発展の途上にある国家が国民の民主的な政治参加を制限して急速な成長と近代化を実現する開発独裁は、1960年代からアジアや南米にみられた。多くは発展とともに民主主義国家に移行したが、中国は例外だ。世界第2位の経済大国になりながら一党独裁の共産党の号令で国有、民間を問わずに企業が目標実現へ一斉に動く新・開発独裁は、自由主義陣営からは異質に映る。それでも海外の自動車・IT(情報技術)大手は中国に群がる。百度が主導する開発プロジェクトには米フォード・モーター、独ダイムラーに加え、米インテル、米エヌビディア、米マイクロソフトなどが並ぶ。中国も先端技術導入や海外展開をにらみ外国企業の参加を呼び掛けている。中国の17年の新車販売台数は世界首位の2887万台。2位の米国の1.7倍、日本の5.5倍に達する。知財侵害への警戒はあっても「政府の強い後押しで自動運転の実現に向けて進む世界最大市場を無視できない」。ある海外自動車大手の幹部は打ち明けた。

*8-2:http://qbiz.jp/article/134211/1/ (西日本新聞 2018年5月20日) 外国人就労受け入れ拡大に政府転換 新資格の創設着手 骨太に明記へ
 政府は、人手不足が深刻な分野の労働力を補うため、外国人の受け入れ拡大へ大きくかじを切る。最長5年間の技能実習を終えた外国人が、さらに5年間働ける新たな在留資格「特定技能(仮称)」の創設に着手。高い専門性があると認められれば、その後の長期雇用を可能とすることも検討している。従来の技能取得という名目から、就労を目的とした受け入れ施策に転換する。6月に決定する「骨太方針」に外国人との「共生」を初めて盛り込み、日本語学習教育の支援などにも取り組む方針だ。現行制度では、高度な専門性を持つ人材を除き、外国人労働者を積極的に受け入れていない。農業やサービス業などの分野で、技術取得を名目とした技能実習生や留学生がアルバイトで対応しているのが現状だ。政府が検討する新たな在留資格「特定技能(仮称)」は就労を目的とする制度。農業、介護、建設、造船などの分野が対象となる。現行の技能実習の修了者だけでなく、各業界団体が実施する日本語能力や専門技能に関する試験に合格すれば資格が与えられる。政府は新たな在留資格の導入を前提に、目標とする外国人労働者数を試算。介護分野は毎年1万人増、農業分野では2017年の約2万7千人が23年には最大10万3千人に大幅に拡大すると試算。建設分野で17年の約5万5千人を25年時点で30万人以上に拡大、造船分野は25年までに2万1千人を確保することが必要としている。外国人観光客の急増により、地方の旅館やホテルを中心に人手不足が深刻化している宿泊業も技能実習の対象に追加する方針。今年3月時点で、留学生のアルバイトなど約3万8千人が働いているが、30年までにさらに8万5千人を確保したい考えだ。また、大学や専門学校を卒業した留学生が就労できる分野の拡大や、在留資格手続きの簡素化なども検討している。外国人が増加することで、地域での孤立やトラブルも予想される。政府は、外国人の仕事や生活が充実するよう、相談体制強化や日本人との交流促進などにも力を入れる。
   ◇   ◇
●「開国」に欠かせぬ共生 
 【解説】 政府が「労働開国」に踏み切る背景には「外国人をどれだけ受け入れるかではなく、どうすれば来てもらえるかという時代になってきた」(官邸筋)との危機感がある。人口減と少子高齢化が進む日本だけでなく世界各国で人手不足が深刻化し、人材の争奪戦が過熱しているためだ。これまで安倍晋三首相は「いわゆる移民政策は取らない」と繰り返してきた。現実は「裏口からそっと入れて人手不足を補うのが国策」(与党議員)だった。外国人労働者は昨年10月までの1年で約20万人も増え、約128万人と過去最多を記録した。うち4割は途上国からの留学生のアルバイトと、技術の海外移転が目的の技能実習生だ。いずれも建前上は「学びたい人」で、留学生に就労時間の制限があるなど労働者の権利が制限されている。こうした建前と現実のひずみが、不法就労や過酷労働の温床となってきた。実習生の就労や長期雇用を可能にする制度の創設、大学や専門学校を卒業した留学生の就労拡大…。学びたい人から働きたい人へ、スムーズに転換できるよう制度を整備しつつ、徐々に「開国」していく狙いだ。一方で外国人に「来てもらえる国」となるには、労働者としてだけでなく、生活者として受け入れる施策が車の両輪となる。実習生は職場移転の自由や家族帯同が認められていない。長期就労に道を開くなら許可すべきだ。日本語教育や多言語対応の相談窓口の充実も欠かせない。出入国管理を含む政策を一元的に担う「外国人庁」創設、課題を地域で把握して対応する自治体の部署の整備も求められる。他人の不幸の上に自分の幸福を築くような「移民ネグレクト(放置)」に終止符を打ち、共生の施策を政府が打ち出せるか、注視したい。

*8-3:http://qbiz.jp/article/133881/1/ (西日本新聞 2018年5月21日) ドライバー不足深刻 福岡・筑後地区で県トラック協会 人材確保へ初の合同説明会
 運輸、物流業界を支えるドライバー不足が全国的に深刻さを増している。福岡県筑後地区でも同様の悩みを抱えており、県トラック協会久留米分会は20日午後1〜4時、久留米市東合川の「地場産くるめ」で、初の「求人転職合同説明会」を開く。未経験者にも対象を広げて人材確保を図る。
●情報誌に求人、反応なし、廃業、事業売却の業者も
 説明会には、久留米市や小郡市、うきは市などに事業所がある22社が参加予定。求人する職種はドライバーに限らず、整備、クレーン作業、倉庫内作業、一般事務など幅広い。対象は、20〜60代の正社員採用やアルバイトを希望する男女。普通免許しか持っていない場合でも、採用後に中型や大型免許などを取得できる助成制度があるという。北野運輸(久留米市)の堀江藤樹社長は「ハローワークや情報誌に求人を出しても、電話一本来ない。状況は深刻。5年後はどうなるか…」と語り、業界全体の行方に危機感を募らせる。40人いるドライバーの平均年齢は48歳で、年々、高齢化が進む。将来への不安や後継者不足から、廃業や事業売却に踏み切る同業者も増えているという。ブリヂストンの工業製品を主に扱う「チクホー」(同)では、高校新卒者の採用を始めた。以前は経験者の中途採用が中心だったが、それでは人が集まらず、大型免許が取得できる21歳まで、働きながら免許取得にかかる費用を補助している。「今は免許がないのが当たり前。高卒の新人を4年かけて育てています」(村田潤一郎社長)という。新たに車両を増やそうとしてもドライバーを確保できるめどが立たず二の足を踏んだり、長距離の運送の人繰りが難しくなったりと、経営への影響も出ているという。特に若い世代のドライバーの層が薄く、村田社長は「本人よりも、親の世代に3K(きつい、汚い、危険)や、(映画の)トラック野郎のイメージがあって、いい顔をされない」と明かす。帝国データバンク福岡支店の今年1月の調査によると、九州・沖縄の企業で、正社員の従業員が不足していると回答した割合は52・8%で、過去最高を更新した。業種別の「運輸・倉庫」では56・8%だった。説明会は参加無料。事前予約や履歴書は不要。問い合わせは久留米分会=0942(40)8701。

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2018.5.5 セクハラと女性差別の範囲(2018年5月6、7、8、12、16、17、19、22日追加)

                 2018.4.30日経新聞

(図の説明:セクハラを受ける相手は同じ会社の上司が多いが、顧客・銀行・監督官庁等の場合は事業主だけでは対応できない上、セクハラ被害を受ける人は仕事の遂行力(=能力)がないことになるため、被害を訴えにくい。その結果、被害者は相談することができなかったり、相談してもマイナスの結果になったりすることが多いわけだ。従って、「セクハラは女性蔑視に基づく女性に対する人権侵害である」という社会的コンセンサスが必要であり、現代のセクハラの範囲は、性に直接まつわる言動だけでなく、女性上司を軽く見て部下が女性上司の指示を無視したり、銀行が女性事業者への融資に消極的だったり、相手方の担当者が女性の場合に嫌な顔をしたりするなど多岐に渡るのである)

(1)政治家や行政官のゴシップ
1)財務事務次官のセクハラについて
 財務省は、*1-1のように、2018年4月16日、週刊新潮で報じられた福田次官の女性記者に対するセクハラ疑惑に関する福田氏からの聞き取り調査の結果を発表し、福田氏は「報道は事実と異なる」「女性記者との間でこのようなやりとりをしたことはない」「相手が本当に女性記者かも全く分からない」「女性記者にセクハラに該当する発言をしたという認識はない」などと疑惑を否定し、記者クラブ加盟社に女性記者の調査への協力を要請した。

 私は、テレ朝(もしくは朝日新聞)の記者に、あやふやな情報を週刊文春に持って行かれ、事実とは異なるキャリアウーマン否定のヘイト記事を書かれて大変な迷惑をしたことがあるため(私が「名誉棄損」「侮辱」で提訴して勝訴済)、「テレ朝の記者が週刊新潮に情報を持ち込むのはどうか」と思ったが、週刊新潮の音声データはごく初歩のセクハラ発言で、本当にこのような発言をしたとすれば、福田次官に認識の低さと脇の甘さを感じざるを得ない。

 しかし、私も、*1-2のように、セクハラは問題だと考えるが、セクハラにせよパワハラにせよ被害者・加害者の職業は無関係であり、加害者扱いされたからといってそれが事実とは限らないため、証拠で確認することは必要不可欠である。また、「部下である官僚のセクハラで大臣が辞めろ」という要求は、報道各社のスタッフの誰かがセクハラをしても、その監督責任を理由として必ず社長が辞めなければならないわけではないのと同じで、法の下の平等に反する。

2)ある議員の認識について
 自民党の長尾衆院議員が、*1-3のように、セクハラをめぐる問題に抗議する野党の女性国会議員らを「セクハラとは縁遠い方々」とツイッターで揶揄されたそうだが、この女性蔑視の認識が男性に悪びれもせずセクハラさせる理由だろう。つまり、「セクハラは魅力ある女性に対して行うもので、議員のような女性はこれに該当せず、一般にセクハラされた女性は喜ぶものだ」という根拠なき妄想である。

 こういう男性は、遊び相手の女性と奥さんしか知らず、女性とセックス抜きの対等な立場で友人になったり、競争で女性に負けたりしたことがないのだろうと思うので、ここではっきり言っておくが、女性にも好みがあるので相手によってはセクハラをされると嫌悪感を感じ、仕事の邪魔をして足を引っ張る人は男女を問わず大嫌いなのである。

 さらに、私は、公認会計士や税理士などのプロ集団の中にいる時はこれほど初歩的なセクハラを受けたことはないが、国会議員になっていろいろな人と関わるようになると、初歩的なセクハラ発言から高度なセクハラまで、いちいち指摘すればきりがないほど出合ったので、女性国会議員はセクハラと縁遠くはないと思う。

3)セクハラの罪
 麻生財務相(77歳、戦前生まれの九州男児)は、2018年5月4日、*1-4のように、「役所に迷惑を掛けたとか品位を傷つけたとかいう理由で処分した」「『セクハラ罪』という罪はない。殺人とか強制わいせつとは違う」と発言されたそうだ。

 セクシュアルハラスメントは男女雇用機会均等法で定義されており、「事業主が、職場において行われる性的な言動に対するその雇用する労働者の対応により当該労働者がその労働条件につき不利益を受けたり、または性的な言動により当該労働者の就業環境が害されたりすることのないよう雇用管理上必要な措置を講じなければならない」とされている。そのため、(1)1)の事業主(社長)が責任を取らなければならない場合とは、雇用管理上必要な措置を講じていない場合だが、その場合も厚労大臣による行政指導が行われるものの、事業主に対する罰則はない。(http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11900000-Koyoukintoujidoukateikyoku/00.pdf#search=%27%E3%82%BB%E3%82%AF%E3%82%B7%E3%83%A3%E3%83%AB%E3%83%8F%E3%83%A9%E3%82%B9%E3%83%A1%E3%83%B3%E3%83%88%E3%81%AB%E9%96%A2%E3%81%99%E3%82%8B%E5%9D%87%E7%AD%89%E6%B3%95%E6%8C%87%E9%87%9D%27 参照)

 また、職場におけるセクシュアルハラスメントは「対価型」と「環境型」の二つに分類され、上記のケースは対価型と環境型が合わさっているようである。

 そして、セクシュアルハラスメントを受けた労働者は、被害を回復するため、セクシュアルハラスメントの行為者やその雇い主である企業に対して損害賠償を請求することが可能で、裁判例では、セクシュアルハラスメントが被害者の人格権ないし人格的利益を侵害したと認められる場合には不法行為(民法709条)に基づく損害賠償責任を認めている。

 なお、日本一、女性蔑視がきついと思われる鹿児島県の南日本新聞も、*1-5のように、「セクハラは人権侵害で許されない行為」「被害者に隙があったのではないかなどの指摘は的外れで、加害者に非があるのは当然」「男女に関係なく互いを尊重し、職場で十分に力を発揮するためにも、セクハラに寛容な社会を許してはならない」と書いており、かなり進歩している。

4)セクハラの範囲
 ここまで書いてきたのは、性的言動を行うあからさまなセクハラだが、セクハラには、「女性は馬鹿で能力がないかのような表現をする」「女性の昇進を評価で妨げる」「女性にはリーダーの資質がないかのような先入観を植え付ける」「強い女性は悪い女性であるかのように書く」など、性的な言動は伴わないが仕事に悪影響を与える深刻な嫌がらせも多く存在する。

 そのため、性的言動を行うあからさまなセクハラはもちろんだが、性的言動は伴わないけれども仕事に悪影響を与えるこのような深刻な嫌がらせも現代のセクハラの範囲には含めるべきだ。そして、これは、米国では今から30年くらい前の1980年代後半には既に言われていたことである(「セクシャルハラスメントの社会学」参照)。

(2)セクハラへの対応
1)メディアの対応
 日経新聞社が、働く女性1000人に緊急調査したところ、*2-1のように、セクハラを受けた6割超が「仕事に悪影響を与えるから我慢した」そうで、女性活躍の推進には、働きやすい環境が欠かせず、防止対策と併せ意識改革が求められるとしている。ただし、ここでも「セクハラは性的な言動による嫌がらせ」とセクハラを狭く定義しているが、働きやすい環境とは、女性蔑視により女性の価値を減じられない環境のことである。

 なお、*2-2の民放労連や*2-3の新聞労連は、「財務省事務次官によるテレビ朝日女性記者へのセクシャル・ハラスメントは看過できない」と抗議しており、それ自体はよいと思うが、米国のハリウッド女優などに対するセクシャル・ハラスメントは、芸能関係者が女優に対して行ったセクハラを発端とし、「#Me Too」として全世界に広がりを見せているのである。

 そのため、私は、放送産業内での女性に対するセクハラもなくすべきで、メディア内でセクハラや女性蔑視に関する認識が高まれば、社会の認識は変革できると考える。

2)総務大臣の対応
 野田総務相は、*2-4のように、再発防止に向けた法整備を検討する考えを明らかにされたが、それには、セクハラの範囲を性的言動に限らず広げて環境を整えることを義務化し、罰則をつけるのがよいと考える。

 ただ、セクハラを受けたテレビ朝日の女性社員が、財務次官にそのような性癖のあることがわかっていたのなら、録音するよりも他の記者と2人以上で行った方が、マイクをとりあげられる心配もなく、確実に身を護る方法になっただろう。

(3)セクハラの根源には、女性を性的対象としか見ない女性蔑視・女性差別があること
 「世界経済フォーラム」の2017年の男女格差指数で144カ国中138位(日本の順位は、144か国中114位であり、他の先進国よりもずっとサウジアラビアに近い)のサウジアラビアでは、*3のように、ムハンマド皇太子が改革を進めており、就業する女性割合を22%から30%に伸ばす目標を掲げて、国際社会から「女性抑圧」の象徴とされた自動車運転を解禁し、女性が働ける職場も増えつつあり、政府は女性の起業に必要だった男性の許可を廃止したそうだ。

 しかし、①男性の給油係と接するのをためらう女性ドライバーがいたり ②女性が給油係として働くことを中傷したり ③兄弟でさえ冷たい視線を投げかけたり するのに対して、女性が個人的に対応することは不可能であるため、サウジアラビアは早急に女子差別撤廃条約(http://www.gender.go.jp/international/int_kaigi/int_teppai/joyaku.html 参照)の締約国となり、日本と同様に男女雇用機会均等法を作るのがよいと考える。

<政治家・行政官のゴシップ>
*1-1:http://www.tokyo-np.co.jp/article/economics/list/201804/CK2018041702000123.html (東京新聞 2018年4月17日) 【経済】女性記者に協力要請 財務省調査 次官セクハラ否定
 財務省は十六日、週刊新潮で報じられた福田淳一次官の女性記者に対するセクハラ疑惑について、福田氏からの聞き取り調査の結果を発表した。福田氏は「報道は事実と異なる」として疑惑を否定した上で、辞任しない考えを表明した。財務省は同省と顧問契約を結んでいる弁護士に委託して調査を続ける方針を示し、記者クラブ加盟社には女性記者の調査への協力を要請した。立憲民主党など野党は政府に福田氏の更迭を重ねて要求した。財務省によると、福田氏の部下である矢野康治官房長が福田氏から聴取。福田氏は週刊新潮が自社のニュースサイトで公開した音声データについて「女性記者との間でこのようなやりとりをしたことはない」と話し「相手が本当に女性記者かも全く分からない」と答えた。ただ、音声が福田氏自身のものかについては明確にしていない。福田氏が複数の女性にセクハラ発言をしていたと報じられた点に関しては「女性が接客しているお店に行き、女性と言葉遊びを楽しむことはある」としながらも「女性記者にセクハラに該当する発言をしたという認識はない」と答えた。福田氏は新潮社を名誉毀損(きそん)で訴える準備を進めているという。進退については「反省の上、緊張感を持って職務に取り組む」と辞任を否定した。先週十二日発売の週刊新潮は福田氏が会食などの席で、財務省担当の女性記者に「胸触っていい?」などのセクハラ言動を繰り返していたと報道。麻生太郎財務相は内部調査せず、口頭注意でとどめる方針を示していたが、十三日に音声データが公開され、一転して調査を指示した。麻生氏は十六日の参院決算委員会で国費を使って弁護士に調査を依頼したことに関し「双方の言い分を聞くのは当然だ」と述べた。週刊新潮編集部は、「記事は全て事実に基づいたものです」とコメントした。

*1-2:https://mainichi.jp/articles/20180430/ddm/005/070/002000c (毎日新聞社説 2018年4月30日) セクハラと日本社会 これが21世紀の先進国か
 セクハラの実態を正確につかむことは不可能に近い。被害がなかなか報告されないのだ。なぜか。 財務事務次官を辞任した福田淳一氏のセクハラ問題は、その答えをわかりすぎるほどわからせてくれた。調査もせず口頭注意で済ませる。それが発覚直後の財務省の態度だった。報道した週刊新潮が問題発言の録音を公開し、「調査」を始めたが、被害者に「名乗り出よ」と言わんばかりの乱暴な手法だった。福田氏は「全体として見るとセクハラではない」と説明にならない説明を繰り返し、法廷で争うという。だが最も深刻なのは、次官を監督する立場にある閣僚が、セクハラの本質やその重大性をおよそ理解しているとは言い難い点である。
●被害者批判の理不尽
 「(加害者扱いを受けている)福田の人権は、なしってわけですか」「(福田氏が女性に)はめられて訴えられたとの意見も世の中にはある」。安倍政権ナンバー2の副総理でもある麻生太郎財務相は、福田氏をかばう一方で、被害女性があたかも福田氏をワナにかけたかのような発言をためらいもなく重ねた。財務省はようやく福田氏のセクハラを認め、処分を発表したが、その場に麻生氏の姿はなかった。セクハラと正面から向き合うという姿勢がみじんも感じられない。21世紀の先進国政府で起きているとは信じ難い恥ずべき事態である。「女性の活躍」を看板政策に掲げる安倍晋三首相はなぜ怒らないのか。さらに驚くのは、女性側の仕事に制限を求めるような主張が少なくないことだ。日本の経済界を代表する経団連の榊原定征会長は、福田氏の行為を「極めて不見識」と批判する一方、記者が異性と1対1で会うことは「さまざまな誤解を生みかねない」と記者会見で述べた。取材を受ける側の大半が男性である現状と合わせて考えれば、女性記者は誤解を招かぬよう夜間の1対1の取材は控えよ、という意味になる。また、異性間のセクハラのみを前提にするのも時代遅れだ。影響力のある人たちによる見当違いの発言は、被害者たたきをしても構わないという間違ったサインとなる。インターネット上で中傷が勢いづく。セクハラに甘い環境はそのままで、被害はいつまでも減らない。今回のセクハラ問題は被害者が記者だったことから、報道する側の倫理を問う意見も少なくなかった。まず、セクハラにせよパワハラにせよ、被害者の職業は無関係だということを指摘しておく。政治家でも警察官でも被害者は守られるべきだ。その上で述べたい。セクハラの立証は非常に厳しい。音声や画像など客観的証拠が乏しければ、逆に加害者から名誉毀損(きそん)で訴えられかねない。今回の録音は被害を訴える際不可欠な証拠である。
●社会全体が損をする
 セクハラ被害の報告を受けたテレビ朝日は自ら財務省に抗議し、そのことを報じるべきだった。それができなかったがために、記者はやむなく情報を週刊誌に提供した模様だ。もし彼女が途中であきらめていたら、今も福田氏はセクハラ発言を続けていたことだろう。今回の事例は氷山の一角だ。声を上げられないまま精神を病んだり、命を絶ったりする被害者もいる。発信の手段を持つ記者でさえ、セクハラと闘おうとすればひどい目に遭う。今回の事例が多くの女性に無力感を与え、口をつぐむ被害者が増えはしないか心配だ。あらゆるハラスメントは悪い。ただ、男性被害者も多いパワハラに対し、セクハラの被害者は女性に集中している。有効な防止策が打たれず被害が闇に葬られ続ける背景には、改善を主導できる地位にあまりにも女性が少ない現実がある。働く女性が性的対象としてしか見られない、尊厳が傷つけられてもあまり問題にされない社会で損をするのは女性ばかりではない。社会全体が活力を失い、国際社会からも尊敬されない国になる。英国では先週、女性の参政権100周年を記念し、運動家ミリセント・フォーセットの銅像が国会議事堂前の広場に建立された。「勇気は至る所で勇気を呼ぶ」。自身の演説の一節を記した旗を手にしている。基本的な権利を守ろうと立ち上がった一人の勇気がつぶされ、至る所で勇気の芽が摘まれる。そんな国は、現代の国際社会で名誉ある地位を占めることなどできない。

*1-3:https://digital.asahi.com/articles/ASL4S32YLL4SUTFK005.html (朝日新聞 2018年4月24日) 自民・長尾氏が謝罪 「セクハラと縁遠い方々」ツイート
 財務省の福田淳一事務次官のセクハラをめぐる問題に抗議する野党の女性国会議員らを「セクハラとは縁遠い方々」とツイッターで揶揄(やゆ)した自民党の長尾敬衆院議員(大阪14区)は24日朝、国会内で記者団に「『縁遠い』という表現は全くもって不適切だった。心から反省している」と陳謝した。長尾氏は「前回の厚生労働委員会の審議中、審議拒否という形で『#Me Too』行動されていた議員のみなさんの姿を拝見し、憤りを禁じ得なかった」と釈明した。長尾氏は20日、自身のツイッターに「#Me Too」と書いたプラカードを掲げて黒い服装で抗議する女性議員らの写真を掲載し、「セクハラはあってはなりません。こちらの方々は、少なくとも私にとって、セクハラとは縁遠い方々です。私は皆さんに、絶対セクハラは致しませんことを、宣言致します!」などと書き込み、後に削除した。

*1-4:https://ryukyushimpo.jp/kyodo/entry-712938.html (琉球新報 2018年5月5日) 減給理由は「役所に迷惑」 次官セクハラ巡り麻生氏
 麻生太郎財務相は4日、女性記者へのセクハラを報じられ財務事務次官を辞任した福田淳一氏について「役所に迷惑を掛けたとか品位を傷つけたとかいろんな表現があるが、(そういう理由で)処分した」と述べた。マニラでの記者会見で語った。セクハラ行為を認定した上で減給とした財務省の対応とは食い違う説明になる。麻生氏は「『セクハラ罪』という罪はない。殺人とか強制わいせつとは違う」とも発言した。その上で、福田氏がセクハラを否定していることを踏まえ「(福田氏の)人権を考えないといけない。言い分を聞かないと公平を欠く」と、これまでの主張を繰り返した。

*1-5:https://373news.com/_column/syasetu.php?storyid=92281 (南日本新聞 2018/5/4) [セクハラ問題] 人権侵害の認識持とう
 財務省は事務次官を辞任した福田淳一氏の女性記者へのセクハラ行為を認め、処分を発表した。福田氏の女性記者に対する言動は言うまでもなく、この問題を巡る財務省の対応や国会議員の発言はセクハラに対する理解不足や常識のなさを露呈した。その感覚の鈍さに驚くばかりだ。厚生労働省では局長が女性職員に対するセクハラで懲戒処分を受けた。これを機に、セクハラは人権侵害で許されない行為だという認識を社会全体で改めて共有したい。国内でセクハラという言葉が浸透したのは1989年である。上司から言葉による性的嫌がらせを受け退職を余儀なくされた女性が、元上司と会社に損害賠償を求めて福岡地裁に提訴。地裁は女性の訴えを認めた。初めてのセクハラ訴訟は広く関心を集めた。被害者を法的に救済すべきだとの認識が高まり、改正男女雇用機会均等法で99年に事業主にセクハラ防止配慮義務が課された。だが、今回の財務省の件で、法制化から約20年がたっても理解が深まっていない状況が浮き彫りになった。セクハラは職場での労働者の意に反する性的言動が対象となる。力関係を背景に弱い立場の人に対し、歓迎されない性的関心を一方的に向けることで起きることが多い。性的な冗談やからかいも含まれる。被害者、加害者ともに性別を問わない。意図はどうであれ、相手に不快な思いをさせればセクハラだ。被害者に対する「隙があったのではないか」などの指摘は的外れで、加害者に非があるのは当然といえよう。防止のためには、どんな言動がセクハラに当たるか認識しなくてはならない。企業側は研修の場や情報の提供に努める必要がある。法制化に伴い、各職場で相談窓口の設置など環境改善が進んでいる。だが、問題が大きくなることや二次被害を恐れ、被害者が声を上げにくい状況にも配慮したい。鹿児島労働局にはセクハラに関する相談が2016年度に79件、17年度も70件近く寄せられた。企業側は防止策が有効に機能するよう一層努めてもらいたい。これまで、被害者の大半を占める女性の側がセクハラをうまくかわすことが求められる傾向にあった。周囲には見て見ぬふりをした人もいるのではないか。だが、それではセクハラはなくせまい。男女に関係なく互いを尊重し、職場で十分に力を発揮するためにも、セクハラに寛容な社会を許してはならない。

<セクハラへのメディア等の対応>
*2-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180430&ng=DGKKZO29923370X20C18A4TY5000 (日経新聞 2018年4月30日) セクハラ受けた6割超が我慢「仕事に悪影響」、働く女性1000人 緊急調査
 財務省事務次官の辞任に発展したセクハラ疑惑の問題を受け、日本経済新聞社は、働く女性1000人を対象にセクハラに関する緊急調査を実施。被害に遭った女性の6割超が「我慢した」と答え、その多くが「仕事に悪影響を及ぼすから」と相談もできずにいる実態が分かった。女性活躍の推進には、働きやすい環境が欠かせず、防止対策と併せ意識改革が求められる。セクハラは性的な言動による嫌がらせのこと。1986年の男女雇用機会均等法の施行により女性の社会進出が進んだことや、企業の海外進出が進み、米国で日本企業が現地社員らに訴えられたことなどで、経営課題として認識されるようになった。企業には、99年施行の改正男女雇用機会均等法でセクハラ防止の配慮義務が課され、2007年の法改正でセクハラ対策は措置義務になった。だが意識改革はなかなか進んでいない。男性中心の企業文化が残るなか、被害に遭っても行動に出られない女性が多い。セクハラを受けた女性(全体の42.5%)にその際の対応(複数回答)を尋ねると「我慢した」は相手が社内の場合(以下、社内)で61.3%。相手が社外の場合(以下、社外)は67.7%と7割近くに高まる。女性らの間に、かえって状況悪化を招きかねないとの懸念が強いとみられる。我慢した理由(複数回答)は「仕事に悪影響が出るから」が社内外を問わず最多。社外は57.8%と6割近くで社内(42.2%)を15ポイント以上引き離す。商談への影響を考え、社内以上に対応に苦慮している。続いて多かったのは、社内・社外ともに「相談しても状況は改善・解消しないと思った」で3割超だ。過半数が我慢する一方、少数ながら被害を受けて動く人もいる。相手に「直接抗議した」は社内の場合で18.4%。「相談した」は社内・社外ともに24%台だった。相談した相手(複数回答)は、社内外ともに「会社の同僚」が4割超でトップ(社内49.5%、社外42.4%)。専門的な対応が見込める「会社の相談窓口・担当者」は社内の場合で24.2%。「労働局」は同7.7%だった。ただ、相談しても状況の改善・解消にはつながりにくいようだ。相談した人にその後の状況を聞くと、社内の場合、過去からの案件も含め「改善・解消」は17.6%にとどまった。一方で「すべて何も変わらなかった」は28.6%と3割近く。これに「一部は改善・解消」(53.9%)を合わせると、相談しても納得できなかった案件がある割合は82.5%と8割を超える。法律では企業にセクハラ相談窓口の整備が義務付けられている。職場のセクハラ防止策(複数回答)はどうなっているか尋ねたところ、最も回答割合が高い「セクハラ防止に向けた社内規定がある」でも28.4%と3割に満たない。「社内に相談窓口がある」は24.8%。「セクハラ防止のための研修がある」は14.8%。対策の遅れが目立った。仕事相手からのセクハラ防止に向けて必要なこと(複数回答)を尋ねると「社会全体として男性の意識改革を進める」が45.5%でトップ。被害実態に関する自由回答にも「大人なんだからそれくらい良いだろ、とこっちが悪いみたいな言い方をされた」(メーカー営業、35歳)などの記述があり、セクハラ被害への認識は男女に大きな開きがある。「セクハラ」という言葉が日本企業に広まったのは80年代後半のこと。いつまで女性は我慢しなければいけないのか。男性が被害者の痛みと真剣に向き合わないと問題は解決しない。
*【調査の概要】正社員・正職員として働く20~50代の女性を対象に2018年4月24~26日、調査会社マイボイスコム(東京・千代田)を通じてインターネット上で実施。各年代250人ずつ計1000人から回答を得た。

*2-2:http://www.minpororen.jp/?cat=7 (日本民間放送労働組合連合会中央執行委員長 赤塚オホロ 2018年4月25日) 声明・報告:民放連へ「セクハラ問題」で緊急の申し入れ
一般社団法人日本民間放送連盟会長 井上弘 殿
 財務省事務次官によるテレビ朝日女性記者へのセクシャル・ハラスメントがあったとして、大きな社会問題となっています。アメリカでのハリウッド女優などに対するセクシャル・ハラスメントが、ソーシャルメディアで「#Me Too」として全世界に広がりを見せていることからも、私たちはジャーナリズムに携わる労働者として看過できません。そして、今回の問題に限らず、民放産業内でも職場や仕事先でセクハラ、パワハラ、マタハラなどで心身に大きな影響を受けて、休職や退職に追い込まれている例があります。私たち民放労連は、運動方針で「あらゆる性差別やハラスメントに反対し、職場での周知徹底と研修を求め、相談窓口の設置と相談者の側に立った具体的な救済措置」を経営者に要求しています。これは、放送で働くすべての労働者と、その労働者が働くすべての職場や場所が対象です。そして相談者のプライバシー保護はもとより、その相談事案に対する最大限の救済措置を求めているものです。各社では法令に則り、相談窓口の設置と担当者を配置しているものと考えますが、各種ハラスメントは被害者と加害者で意識の違いが大きく、相談窓口担当者の意識の違いもその後の対応に大きく影響します。相談窓口担当者には兼務・兼任が多い現状を考えると、日々の仕事の忙しさの中でハラスメントに対する教育と研修、そして相談者への対応がおざなりになっていないでしょうか。今回の事例を、個人的な問題あるいは個別の放送局の問題だと矮小化するのではなく、民放産業全体で取り組まねばならない重要な課題であると捉え、個人の尊厳を著しく傷つける行為である各種ハラスメントに対し、民間放送各社を束ねる貴連盟が強いリーダシップを発揮して、ハラスメント根絶に向けて取り組まれるよう強く申し入れます。

*2-3:http://www.shinbunroren.or.jp/seimei/180422-1.html (新聞労連 2018年4月22日) セクハラに我慢するのはもうやめよう
 権力を笠に着る者たちからの、人としての尊厳を傷つけられる行為に我慢するのはやめよう。「私に非があったのかもしれない」と自分を責めるのはもうやめよう。同僚や先輩、上司に訴えても聞き入れられず、「受け流せ」「事を荒立てるな」と言われて黙認され、屈辱的な気持ちを抱えてきた。取材先で、取引先で、社内で、耐えることが評価の材料にされ、都合の良いルールを押しつけられてきた。訴えようとすると、「会社の恥を出すな」「面倒な奴」だと揶揄され、なかったことにされてきた。財務省の福田淳一事務次官のセクハラ疑惑を訴えた仲間をはじめ、これまでも意を決してセクハラを訴え出た仲間に敬意を表したい。守ってくれると信じて打ち明けた上司に受け止めてもらえなかった仲間の気持ちを思うと、どんなにつらく、腹立たしい思いをしたのだろう。私たちもショックで、悔しくてならない。仲間の勇気ある行動に続いて、私たちは手を携え、真実を追求し、向き合っていく。健全なジャーナリズム組織であり続けるために、会社は最優先で私たちの人権を守ってきただろうか。セクハラを黙殺するような対応を取り、泣き寝入りを強いることがあってはならない。社内・社外ともにセクハラは断固として許さないという強い決意や、加害者と闘う姿勢を見せてほしい。もし、取材先や取引先の担当から女性を外せば問題は起きない、と考えているとしたら、根本的解決から逃げている。セクハラや性暴力を告発する米国発の「#MeToo」運動を、自らの身に引きつけて振り返ってみると、私たちも長い間セクハラをやり過ごしてきた。セクハラで傷つき、職を辞した仲間たちを見てきた。これ以上、このような状況を見過ごし、受け入れることはできない。こんな不条理や屈辱はもう終わりにしよう。セクハラは性差別であり、性暴力であり、人権侵害だ。力の差を利用したセクハラの容認は、人権侵害と権力側の暴挙を許しているのと同じことだ。そうした態度が、権力側に見透かされ、つけ入る隙を与えている。私たちが無くしていかなければならないのは、セクハラ行為と、その加害者や行為を黙認する態度や組織だ。性差を超えて、立ち向かおう。仕事にセクハラはいらない。私たちは、言葉を社会に届ける専門職集団だ。セクハラにNOと言おう。言葉でNOと示そう。私たちは一人じゃない。
女性集会参加者一同

*2-4:http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201804/CK2018042902000126.html (東京新聞 2018年4月29日) 【政治】セクハラ防止「法整備検討」 野田総務相、被害経験も語る
 野田聖子女性活躍担当相は二十八日、前財務次官のセクハラ問題を踏まえ、再発防止に向けた法整備を検討する考えを明らかにした。「セクハラを完全に解決できるよう法律をつくり替えるのか、新法をつくるのか、いろんなやり方がある」と、神戸市で開かれたシンポジウムで述べた。野田氏はセクハラの実態を把握するため、新聞やテレビなどの女性記者と懇談の場を設ける意向を示しており、法整備の議論に活用するとみられる。シンポジウムでは、自身の落選中に男性有権者からセクハラを受けていたことを明かし「耐えて耐えて耐えるしかなかった」と振り返った。セクハラを受けたテレビ朝日の女性社員が福田氏と一対一で会食したことに、一部から批判が出ていることについては「それをしなければ生きていけないというシチュエーションは実際にある。私もそういう経験をした」と理解を示した。

<女性差別とセクハラ>
*3:http://www.tokyo-np.co.jp/article/world/list/201805/CK2018050402000131.html (東京新聞 2018年5月4日) 【国際】<サウジ維新 普通の国へ>(上)女性初のGS管理者 自由へのハンドル応援
 ペルシャ湾に面したサウジアラビア東部アルコバール。海水浴場のそばにあるガソリンスタンドの店で、全身を覆う黒い衣装アバヤ(ニカブ)を着たメルバト・ブクハリさん(43)が慌ただしく動き回っていた。サウジ初といわれる女性のスタンド管理責任者。「清掃は行き届いているか」など毎週本社に提出する点検表に従って確認作業を続ける。昨年十月の開店から携わり、六月に迫る女性の自動車運転解禁を見据えて工夫を凝らした店だ。男性の給油係と接するのをためらう女性ドライバーが一人で給油できるようにコイン式を導入した。飲食店やホテル、子どもの遊具広場を備えた複合施設の中にあり「女性が訪れやすいようにするには、きれいなのが一番」と胸を張る。ところが、同じ言葉をツイッターに投稿した途端、「女性が給油係として働いている」と勘違いした人たちの中傷が相次いだ。「私は管理職です。給油ノズルは握らない」。そう釈明しても、兄弟でさえ冷たい視線を投げかけた。「この侮辱は、後に続く女性のために乗り越えなければならない階段ね」とブクハリさん。会社は病院経営やホテル事業も手掛け、女性社員が三割を占める。イスラム教スンニ派の中でも戒律が厳しいワッハーブ派が主流のサウジは、女性は「保護する存在」との教えに基づき、家事育児に専念すべきだとの考えが根強い男社会だ。「世界経済フォーラム」が策定した二〇一七年の男女格差指数では百四十四カ国中、百三十八位。ブクハリさんは十六歳でお見合い結婚し、子育てしながら高校に通った。しかし、望んでいた大学進学はかなわなかった。そんなブクハリさんにとって、ムハンマド皇太子が進める改革は「ドアが開いた」ようで、まぶしく映る。改革プランでは、就業する女性の割合を22%から30%に伸ばす目標を掲げ、国際社会から「女性抑圧」の象徴とされた自動車運転を解禁。女性が働ける職場は増えつつあり、政府は女性の起業に必要だった男性の許可も廃止した。ブクハリさんはスタンド管理の傍ら、新事業開始の準備にも追われている。起業したい女性に月一千リアル(約三万円)で展示場所を貸し、自作のデザイン雑貨や刺しゅう作品、香水などを販売してもらう計画だ。「今は考えている時ではない。好きなことに挑戦しチャンスをつかまないと時間の無駄になる」。アバヤからのぞく目が力強く輝いた。
    ◇  ◇
 中東の産油国サウジアラビアで、次期国王と目されるムハンマド皇太子(32)が二〇一六年四月に国家改革プラン「ビジョン2030」を発表してから二年が過ぎた。石油依存からの脱却を目指す構造改革は、イスラム教の教えを厳格に守るお国柄も変えようとしている。伝統と変革のはざまで揺れるサウジを歩いた。

<日本の銀行は、女性や新規事業に配慮してきたか>
PS(2018年5月6、7日追加):*4の「郵貯銀行の上限撤廃は民業圧迫の懸念が拭えない」という記事は誤っている。何故なら、郵貯銀行は、2017年9月30日現在、金融機関2.27%・金融商品取引業者0.28%・その他法人74.45%・外国法人等1.82%・個人その他21.16%が45億株の資本金のすべてを占めており、政府及び地方公共団体の出資は0であるため、既に官業ではなく民業だからだ。従って、顧客の利便性を高めるのは民間企業として当然で、その経営方法は公取法等の我が国の法律に違反しない限り自由である。
 それでも郵貯銀行の限度額撤廃で地銀からの預金流出が起こるとすれば、それは、長い期間、銀行業務をやってきたにもかかわらず、顧客を育てファンを増やすことをしなかった地銀側の怠慢によるだろう。私がこう言う理由は、日本の銀行は優秀な人材を採用してきたにもかかわらず、著しく男尊女卑で、顧客ニーズよりも金融庁(旧大蔵省)を見て仕事をし、女性行員のアイデアや女性事業者の立場はあまり考慮せず、顧客ニーズをとらえた仕事をしてこなかったことを知っているからだ。そのため、競争相手が増え、本当の顧客ニーズをつかまなければやっていけない(当たり前の)状況になるのはよいことなのである。
 なお、*4-2のような空き家改修にあわせて銀行が残りの資金を提供するなど、人口減少社会でも本当に必要とされる信用性の高い債権は、いくらでも創造できる。
 また、*4-3のように、「離島留学」が広がっているそうだが、これは「過疎地の活性化」に役立つだけでなく、透き通った海と山が近い離島で子どもたちを過ごさせれば、自然に親しみ、都会でゲームをしているよりずっと感性の形成に役立つ。そのため、東京・大阪などの大都市だけでなく、福岡・佐賀などの地方都市の子どもにもこういう教育は必要で、国交省だけでなく文科省や財務省も推奨して、そのための空家や学校の改修費は優遇すればよいと考える。なお、公務員や企業など大人の研修施設や研究所も離島の空き校舎を改修して作れば、自然に近い環境で繁華街に繰り出すこともなく、研修や研究に集中できるだろう。

*4-1:https://www.hokkaido-np.co.jp/article/186826 (北海道新聞 2018年5月6日) 郵貯の上限撤廃 民業圧迫の懸念拭えぬ
 郵便貯金の預入限度額について、ゆうちょ銀行の親会社・日本郵政が撤廃を求めている。退職金などまとまったお金を受け入れられるよう仕組みを改め、利便性を高めたいのだという。道内などの過疎地には、ゆうちょ銀しか預け先がない地域もあり、利便性向上は必要だ。だが、地方銀行の代理店になるといった形で民間と連携・協業すれば、限度額を撤廃しなくとも使い勝手は良くなるだろう。政府が間接的に所有するゆうちょ銀は、国の信用を後ろ盾に巨額の貯金を集めている。民間との間で、公平な競争条件が確保されているとは言えまい。地銀からの預金流出など地域金融に歪(ゆが)みも生じさせかねない限度額撤廃は、時期尚早ではないか。この問題を審議している政府の郵政民営化委員会には慎重な検討を求めたい。政府が過半を出資する日本郵政は、将来ゆうちょ銀株を手放すことにしている。ただ、完全民営化の具体的道筋は未定だ。そうした中で、官業肥大の歯止めだけをなくす規制緩和に幅広い理解が得られるとは思えない。見過ごせないのは、日本郵政が限度額撤廃を求める理由として利便性向上のほか、事務コスト削減や省力化を挙げていることだ。限度額は、通常貯金と定期・定額貯金の口座を合計して1人1300万円と定められている。1300万円を超えた場合、利用者に通知したり振替貯金(無利子、上限なし)に移したりする。この費用と手間を省きたいという理屈だが、それはまず、ゆうちょ銀が現在のシステムを改善して解決すべきことだ。国内金融機関で飛び抜けて多額な180兆円の貯金を有するゆうちょ銀が、さらにお金を集めることにも危うさを覚える。ゆうちょ銀には融資業務がなく、貯金は運用に回す。超低金利を受け、運用では低利回りの日本国債を減らし、高利回り・高リスクの外国債券を増やしてきた。限度額撤廃で貯金がさらに集まれば外債比率が一段と高まり、運用リスクが上昇しかねない。巨大なゆうちょ銀の経営が揺らげば、日本経済全体に影を落とそう。古くから預貯金獲得を競ってきた地銀と郵貯は最近、地域活性化を後押しする投資基金の創設などで手を組む場面が増えている。ゆうちょ銀の拡大は協調の機運に水を差し、双方に無益な競争を再燃させる恐れもある。

*4-2:https://www.agrinews.co.jp/p43998.html?page=1 (日本農業新聞 2018年5月6日) 空き家改修費を助成 営農と生活 共に支援 山口県
 山口県は、雇用と独立双方での就農者の増加、定着を目指し、営農と生活を共に支援する事業の強化に乗り出した。従業員や構成員として受け入れる集落営農法人やJAに対し、住居となる空き家の改修費用を助成。住居の確保が就農の支障となる例が多いことから「県域では珍しい」(県農業振興課)パッケージ支援に踏み切った。法人など、就業者を受け入れる経営体を対象に、2017年度に事業を始めた。事業主体と住宅所有者が、5年以上の賃貸契約を結ぶことが条件。1カ所当たり改修費300万円を上限に、市町と3分の1ずつ助成する。18年度は、雇用以外に独立就農者を受け入れるJAなどにも門戸を広げた。営農面では、新規就業者らの受け入れに必要な機械や施設の整備を支援する事業がある。補助率は3分の1、整備費は10アール当たり2000万円が上限。住宅支援と合わせ、18年度は1億7400万円を計上した。県は「住む場所がなく、希望先に就農できないという声も多い。営農だけではなく、生活とのパッケージ支援が必要だ」(同課)と説明する。美祢市の農事組合法人第13営農組合では4月、福岡県から移住した常盤雄一さん(52)、佳子さん(51)夫妻が就業した。同法人は、集落にある築45年の空き家を、水回りを中心に約300万円かけて改修。県の事業を活用した。自己負担分の約100万円も法人が出した。夫妻は県立農業大学校で1年間、水稲や野菜栽培の基礎を学んだ。法人の一員として、米麦の基幹作業を担いながら、アスパラガス栽培を手掛ける。雄一さんは「独立就農は農地確保や初期投資のハードルが高く、就業を選んだ。生活拠点がなく資金面も余裕がなかったので事業は助かる」と喜ぶ。経営面積47ヘクタールの同法人は、高齢化や離農による人材難に悩んでいた。代表の吉村徹さん(71)は「新たな人材の確保、定着には周年の仕事と収入はもちろん、生活のサポートが不可欠だ」と強調する。

*4-3:http://qbiz.jp/article/133251/1/ (西日本新聞 2018年5月7日) 「離島留学」広がる 3年で倍の18市町村に 過疎地の活性化に期待
 自然豊かな島の小中学校に島外の子供を受け入れる「離島留学」が広がりつつある。人口流出と少子高齢化が進む中でも児童・生徒を確保して学校を存続させ、地域活性化につなげる狙いもある。子供たちにとっては、住民らに見守られて、島の伝統や文化に触れる貴重な機会になる。
●人のつながりや自然が魅力
 伊勢湾に浮かぶ答志島(三重県鳥羽市)は2018年度から留学制度を始め、名古屋市の岸上沙耶子さん(34)と小学1年の正太郎君(6)が親子で移住する「家族留学」を決めた。旅行で訪れたことがあり、夫も理解してくれたという。受け入れた子供には、地元のワカメ養殖などを体験してもらう。背景には中学校の生徒が22年度に30人を下回る見通しで、統廃合の対象となることへの危機感があった。沙耶子さんは「みんな子供を気にかけてくれて暮らしやすい。子供も年上の友達ができて自立心がついてきた」と話す。最初の3カ月は改装した空き家に月1万円で住むことができ、市から月2万円の補助金が2年間まで受けられる。島の有志らでつくる留学実施委員会の浜口正久会長(49)は「人のつながりが島の魅力。留学をきっかけに島に愛着を持つ人が増えてほしい」と歓迎する。
●九州の離島も次々と
 離島留学は、島内の家庭で子供を受け入れる「里親型」も多く、食費などに充てる委託料として月6万〜7万円程度を保護者らから受け取る。多くの自治体は離島振興法に基づく活性化交付金で委託料の一部を負担。16年度からは自治体負担の半額を国が支援できるようになった。このほか沖縄や鹿児島・奄美群島でも特別措置法に基づく留学制度がある。国土交通省によると、活性化交付金を使える離島留学は15年度の3県9市町村が18年度は7県18市町村へ増加。九州では、福岡県の地島(宗像市)、長崎県の久賀島(五島市)、佐賀県の馬渡島(唐津市)などで実施された。18年度は新たに長崎県の小値賀島(小値賀町)でも夏以降に児童・生徒を迎える見通し。国交省の担当者は「離島の暮らしを体験し、魅力を感じてもらえれば地域の活性化につながる」と期待する。

<セクハラに罰則は必要であること>
PS(2018年5月8日追加):*5-1の麻生財務相が、「セクハラ罪はない」「セクハラは親告罪で、傷害罪などと違って訴えられない限りは罪にならない」と言われたのは現在の事実であり、加害者が福田前財務事務次官であれ誰であれ、法の下に平等でなければならないのは確かだ。しかし、罰則がなければザル法であり、被害者の不利益が大きすぎるため、私は、*5-2で野田総務相が「セクハラへ罰則を必要なら検討する」とされているのは甘すぎるくらいで、洗練された巧妙なセクハラも含めて、ただちに罰則をつけるべきだと考える。
 なお、*5-3のように、「セクハラ発言は、受け流した世代の責任だ」と言うのは簡単だが、実際に責任をとることはできない。何故なら、セクハラの定義ができたのは1985年だが、未だ罰則もない状態で、立場が下の女性からは受け流すかかわす以外にやりようがなかったからである。さらに、セクハラに苦労していたのは、セクハラの定義ができた1985年以降だけではなく、それ以前はもっとひどかったわけで、それにもかかわらずセクハラに関係する法律は未だザル法で、実質的に社会を変える機会はやっときたということなのだ。

*5-1:http://qbiz.jp/article/133345/1/ (西日本新聞 2018年5月8日) 麻生氏、また「セクハラ罪ない」 持論重ねて主張、反発必至
 麻生太郎財務相は8日の閣議後の記者会見で、福田淳一前財務事務次官のセクハラ問題に関連し「『セクハラ罪』という罪はない」との持論を改めて主張した。訪問先のマニラで行った4日の会見で同様の発言をし、女性団体関係者らに抗議の動きが広がっていた。8日の会見で記者が「批判が出ている」とただしたのに対し、麻生氏は「事実を述べただけだ」と答えた。セクハラを容認する意図はないとも強調したが、重ねての発言に反発が強まるのは必至だ。麻生氏は「セクハラ罪はない」と述べる一方で「親告罪であり、傷害罪などと違って訴えられない限りは罪にはならない」との説明も繰り返した。

*5-2:https://digital.asahi.com/articles/DA3S13483039.html (朝日新聞 2018年5月8日) セクハラへ罰則、「必要なら検討」 野田総務相が言及
 財務省の福田淳一・前事務次官のセクハラ問題を受け、野田聖子総務相兼男女共同参画担当相は7日、BS11の番組収録で、セクハラへの罰則を含めた法規制について「必要があれば検討していけばいい」と述べた。内閣府に有識者会議を設けて幅広く対策を検討する考えも示した。野田氏は、大型連休中に報道機関を含む民間企業で働く女性らから、セクハラ被害などの実態を聞き取ったという。具体的な内容には触れなかったが、収録後に記者団に対し「麻生大臣もセクハラ罪はないとおっしゃった。触ったらわいせつ罪などになるが、(セクハラの)言動はないとするならば議論しないといけない」と述べ、「(罰則が)あった方が抑止力になるのか、考えていきたい」と話した。会議の設置時期については「まだ考えていない」とした。

*5-3:https://digital.asahi.com/articles/DA3S13482941.html (朝日新聞 2018年5月8日) (HUFFPOST)セクハラ発言、受け流した世代の責任
 財務省の福田淳一事務次官(4月に辞任)によるテレビ朝日の女性記者へのセクハラ問題で、ハフポスト日本版編集主幹の長野智子さん=写真=が声を上げた。同局の「サンデーステーション」キャスターも務める長野さんは、「85年、私はアナウンサーになった。セクハラ発言『乗り越えてきた』世代が感じる責任」(4月21日)で、思いを明かした。長野さんは1985年、フジテレビにアナウンサーとして入局。当時、女性に対するセクハラ発言などは日常的に飛び交っていたが、この年、男女雇用機会均等法が成立していただけに、女性たちは「だから女は」と言われないよう、必死に耐え、受け流してきたという。福田氏は報道陣に対し、「言葉遊びのところが批判を受けて、なるほど今の時代はそうなのかと」と発言。長野さんは「昔は平気だったと言いたいのか」と憤り、「こういう男性を増長させたのは我々世代の女性なのか」とも記した。社会の様々な問題を伝えるメディア業界が変わらなければ、「社会は変わらない」とし、自身も努力したいと語った。

<女性の価値は子を産むことだけとは!>
PS(2018年5月12日追加):*6のように、「①あなたが結婚しなければ、子どもが生まれないわけで、人さまの子どもの税金で老人ホームに行くことになります」「②必ず新郎新婦に3人以上の子どもを産み育てていただきたい」などと言う為政者は少なくないため、私は、「それなら老後に年金をもらわなくてもいいので、契約で支払った分を直ちに返して欲しい」と言いたくなる。そうすると、独身やDINKSで働き続けた人には多くの払い戻しがあるが、専業主婦で子育てした主婦には借りこそあれ払い戻しはなく、その借りは、夫や子に払ってもらうのが筋だということが目に見えてわかるからである。また、人生にはいろいろな生き甲斐や成果があるため、「子どもに恵まれなかった」などという哀れみの文言は不要であり、「本当に公平・公正にやればこうなる」ということは、明確にしておくべきだ。
 さらに、専業主婦と子のいる夫は、妻と子の扶養控除を取って所得税もかなり減額されており、国や地方自治体が払う教育費は独身やDINKSの夫婦が支払った多額の税金で賄われていることも忘れてはならない。「しかし、少子化だから・・・」と言う人も少なくないが、このように言われながら育った子より外国人労働者の方がずっと高齢者に親切であろうし、そもそも少子化になった理由は厚労省はじめ政府の政策ミスであるため、仕事を選んで子を持てなかった人に対しては損害賠償をすることこそあれ、その人の責任にすべきではないのである。
 また、結婚式の席上で①②のようなことを言うのは、「いろいろなことを同時に考えられない」という意味で頭の悪さ丸出しである上、「子を産むことだけが貴女の価値だ」と言っている点で花嫁やその家族に失礼である(なお、子を産むだけなら、人間より鮭や蛙の方が優秀だ)。

*6:http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2018051001001831.html (東京新聞 2018年5月10日) 「3人以上の子どもを」と発言 自民・加藤氏、その後撤回
 自民党の加藤寛治衆院議員(72)=長崎2区=が10日の細田派会合で、結婚披露宴に出席した際に「必ず新郎新婦に3人以上の子どもを産み育てていただきたい」と呼び掛けていると紹介した。会合に出席した女性議員らから「これこそセクハラだ」と不快感を示す声が続出。その後、加藤氏は発言を撤回するコメントを発表した。会合で加藤氏は「いくら努力しても子どもに恵まれない方がおり、無理を言うのは酷だ」と指摘。披露宴では若い女性に対し「あなたが結婚しなければ、子どもが生まれないわけですから、人さまの子どもの税金で老人ホームに行くことになります」などと話していることを紹介した。

<政治分野の男女共同参画推進法成立>
PS(2018年5月16、17日追加):*7-1のように、「政治分野の男女共同参画推進法」が、5月16日に参院本会議で全会一致により可決・成立したが、TVはどの局もお天気(暑い)、新潟県での女児殺害(犯人が捕まった)などを繰り返すニュースばかりで、最も重要な「政治分野の男女共同参画推進法」については、その成立も意味も議論の過程も問題点も報道する局がないので、私は驚いた。カネか女に関わるゴシップにしか興味のないのが、現在の報道番組作成者のレベルだが、このような情報提供では選挙で国民が正しい選択をするのは難しい。
 しかし、高知新聞は、2018年5月17日、*7-2のように、①女性参政権が認められて70年以上経つのに女性議員の割合は国・地方とも著しく低い ②1980年代から政治分野の男女均等化を進めてきた海外とは歴然とした差がある ③条文は政党や政治団体が男女の候補者数に目標を設定するなど自主的に取り組むよう努めることも規定しており、各党に積極的対応が求められる ④日本の衆院は10.1%で世界でも下位に位置し、都道府県議会の状況も厳しい ⑤高知県はその平均も下回る5.4%に留まる 等として、「社会の意識から変えていくきっかけにしたい」と書いており、この状況は田舎に行くほど著しいように思う。
 なお、*7-3のように、朝日新聞が、2018年5月17日、「赤松良子さんはじめ女性たちの粘りが道を広げた」と書いているのはよいが、私は、ずっと全力投球してきたのに社会から理不尽な差別を受け、遅れさせられたり不利益を蒙ったりしたため、女性差別によって蒙った損害については損害賠償請求したいくらいであって、悔しいから初めて頑張るようなレベルの低い人間ではない。そのため、「悔しさを力に」などと言うのは差別された側に対して著しく失礼な態度であり、何を考えているのかと思う。

   
           2018.5.17東京新聞   2018.5.17日経新聞

(図の説明:自民党・国民民主党・日本維新の会・公明党の女性国会議員割合は、10%代かそれ以下で著しく低いが、地方議員に占める女性割合はさらに低い。この状況が、男性目線に偏った政策ばかり行われてきた理由であると考えられ、当面、各党とも2020年までに女性議員の割合を30%以上にすることが目標となるだろう。しかし、女性でも票集めのパンダばかりでは政策を合理的に変更することはできないため《票も大切ではあるが・・》、人選は重要だ)

*7-1:https://ryukyushimpo.jp/kyodo/entry-719806.html (琉球新報 2018年5月16日) 政治:選挙の候補者数「男女均等」に 政治分野の共同参画法が成立
 議員立法の「政治分野の男女共同参画推進法」が16日、参院本会議で全会一致により可決、成立した。国会や地方議会の女性議員を増やすため、選挙の候補者数を「できる限り男女均等」にするよう政党に促す。遅れている女性の政界進出を後押しする狙いだが、努力義務にとどめているため、各党の実行力が課題となる。条文は、衆院選や参院選、地方議会選に臨む政党と政治団体は、男女の候補者数の目標設定に「自主的に取り組むよう努める」と規定。国や地方自治体は(1)実態調査(2)啓発活動(3)環境整備(4)人材育成―で協力するよう求めた。罰則はない。公布日に施行される。

*7-2:https://www.kochinews.co.jp/article/183612/ (高知新聞 2018年5月17日) 【女性の政治進出】社会の意識から変えよう
 国会や地方議会の女性議員を増やすための「政治分野の男女共同参画推進法」が参院本会議で可決され、成立した。衆院選や参院選、地方議会選挙で男女の立候補者数を「できる限り均等」にすることを目指す。女性の参政権が認められて70年以上がたつが、女性議員の割合は国、地方ともに著しく低いのが現状だ。国際比較でも歴然とした差がある。女性の政界進出の遅れや共同参画社会の未熟さを象徴するものだ。新法は、男女が共同して参画する「民主政治の発展」を目的に掲げている。罰則のない努力義務ではあるが、全会一致で成立した。各党などには積極的な対応が求められる。条文は、政党や政治団体が男女の候補者数に目標を設定するなど「自主的に取り組むよう努める」ことも規定した。国や自治体には、国内外の実態調査や啓発活動、人材育成などを要請している。海外では1980年代から、政治分野の男女均等化が進んできた。国によっては法で候補者や議席に男女の比率を定めたり、政党が自主的に均等化に取り組んだりしている。国会議員の国際組織「列国議会同盟」(本部ジュネーブ)によると、昨年の国会議員(下院もしくは一院制)の平均女性比率は23.6%と、4人に1人に近い。先進7カ国ではフランスが約40%に上る。これに対し日本の衆院は10.1%で、世界でも下位集団に位置する。先進7カ国では最下位である。都道府県議会の状況も厳しい。総務省によると、2016年末時点の女性議員割合は全国平均9.9%と1割に満たない。高知県はその平均も大きく下回る5.4%にとどまっている。新法が超党派の議員立法でようやく成立し、努力義務にとどまったことも、日本の政界の意識を示すものだろう。過去、女性を「産む機械」と発言した国会議員がいた。都議会では、男性議員が質問中の女性議員に「産めないのか」などとやじを飛ばし、批判された。最近は財務省のセクハラ問題で政府中枢の人権感覚が疑われている。女性議員が少ない現実と問題の根はつながっていよう。政官界だけの問題ではない。女性への偏見や女性の社会進出の遅れは社会全体の課題といえる。スイスの国際機関が発表した17年版「男女格差報告」で、日本の男女の平等さは144カ国中114位だった。企業の女性の管理職登用も遅々としている。子どもが保育園に入れず、女性が仕事復帰を諦めるケースが後を絶たない。子育てや家事は男性より女性の負担が大きい傾向にある。こうした問題が解決しなければ、女性の議員候補者も増えまい。新法の効果には不安も拭えないが、重要な一歩ではある。社会の意識から変えていくきっかけにしたい。もちろん先達となるべきは政界や官界の意識改革であろう。関係機関の姿勢が問われる。

*7-3:https://digital.asahi.com/articles/DA3S13497275.html (朝日新聞 2018年5月17日) 女性たちの粘り、道広げた 候補者均等法「次世代のために」
 「私たちがやるしかない」――。女性議員を増やすことをめざす候補者男女均等法の成立に向けて尽力したのは、中心メンバーが70~80代の女性たちだった。性別ゆえに悔しい思いを重ね、何年もかけて粘り強く訴えてきた。その思いに刺激を受けた若い世代も、動き始めている。
■「長かったね」
 16日、東京・永田町にある国会の傍聴席には、法を後押しした約60人の女性たちの姿があった。電光掲示板に「賛成234、反対0」と表示され、法が可決した瞬間、小さくどよめきが起こった。傍聴したのは、女性の政治参画をめざす市民団体「クオータ制を推進する会(Qの会)」のメンバーら。「長かったね」「これからが大事だね」と喜びを分かち合った。国会議事堂の前で記念撮影をした際、女性たちは一輪のカーネーションを手にしていた。会の代表を務める赤松良子さん(88)は1985年、職場での男女平等に道を開いた「男女雇用機会均等法」を旧労働省の局長として成立させ、「均等法の母」と呼ばれる。「候補者男女均等法」が成立したこの日、赤松さんは体調不良で国会に来ることができなかったが、二つの「均等法の母」になった赤松さんへの感謝を込めたという。結婚退職が当たり前だった時代から働く女性の地位向上に力を尽くした赤松さんが、退官後に力を注いだのが政治への女性の進出だった。99年から女性候補に資金援助する活動を始めたが、女性議員がなかなか増えない。「日本は男女格差の国際ランキングで順位がとんでもなく低い。何とか引き上げるためには、政治に女性を増やさなきゃ」。そこで、候補者に占める男女の割合を定めるなどの仕組みが必要だと、会を2012年に立ち上げた。
■悔しさを力に
 会に集まったのは、志を同じくする労働省時代の同期や後輩、議員経験者、女性団体の活動を続けてきた高齢女性たちだった。議員会館で集会を開いては議員らを呼んで機運を高め、15年2月に超党派の議連が発足した。各政党での女性の進出への理解度の差や与野党間の対立もあり、法は何度も頓挫したが、粘り強くロビー活動を続けた。議員会館では衆参合わせて700人を超える議員の部屋をチラシを持って訪ね歩き、法の必要性を訴えて回った。赤松さんの労働省の後輩で、のちに参院議員を2期務めた川橋幸子さん(80)は、「1人だと心が折れちゃうから、2~3人のグループを3班つくって、半日かけて回った。みんな70歳を超えているから、本当に肉体労働だった」と振り返る。入省当時、霞が関で女性を採用していたのは労働省だけ。子連れで地方へ赴任した際は「(夫を)置き去り赴任」と批判された。「私たちの世代はずいぶん悔しい思いをした。次世代の女性たちのためにもっと道を広げたい」。そんな思いが、この法のためにかけずり回る原動力になった。メンバーがそれぞれの現役時代の経験や人脈を持ち寄り、会結成から6年で悲願がかなった。乳がんと闘いながら活動した埼玉県八潮市議の矢沢江美子さん(71)は、「私たちがやるしかない、という使命感があった」と振り返る。
■若い世代動く
 活動は、若い世代も巻き込んだ。母の友人に誘われて参加した武蔵野市の天野妙さん(43)は、議員会館での集会開催や議員へのアプローチなどのノウハウを学び、のちに待機児童問題を訴える「#保育園に入りたい」運動のリーダーになった。女性が直面する様々な課題を解決していこうと高校時代に学生団体を立ち上げた都内の私立大1年、大山友理さん(18)も「Qの会の人たちの強い思いに刺激を受けた」一人だ。女性議員が少ないことは「当たり前の風景」すぎて疑問を持たずにきたが、「専業主婦は『活躍』の対象外?」「女性だけが仕事も育児も頑張らなきゃいけないの?」といったモヤモヤした思いの一因は、議会の多様性のなさにあるのでは、と思うようになった。「多様な議員の姿は、社会にもプラスの影響を与えてくれるのでは」と期待している。

<セクハラへのILOの介入>
PS(2018年5月19日追加):女性に対して仕事上の不利益を与えることを罪だと思わない社会では、*8-1のように、女性への賃金格差だけでなく年金格差も生まれ、女性の経済的不利益は計り知れない。そして、これは、本人の努力で改善することのできないものであるため、私は、*8-2のように、国連の国際労働機関(ILO)が職場での暴力やハラスメントをなくすための新たな国際基準を作って拘束力を伴わせることに賛成だ。また、ハラスメントの定義は、「身体的、精神的、性的または経済的危害を引き起こす行為・慣行」にすればよいと考える。

*8-1:http://www.tokyo-np.co.jp/article/living/life/201712/CK2017121402000167.html (東京新聞 2017年12月14日) 【暮らし】<年金プア 不安の中で>79歳女性 月額9万4000円、貯蓄200万円 賃金格差が受給額に直結
 夫が病気で働けなくなったなどの事情から女性が家計を支えた場合、老後に年金受給額が少なく、苦しい生活を強いられるケースが多い。会社員など厚生年金加入者の年金受給額は給与額に比例する仕組みで、女性は多くの場合、男性より大幅に給与が抑えられてきたからだ。中部地方に住む79歳の女性の事例をもとに、女性の老後について考えてみた。女性は平屋建ての古い一軒家に一人暮らし。周辺には農地が目立つ。腰を痛めており、リハビリ施設に通っている。昨年亡くなった夫との間に娘が三人。「毎年の正月に三人がそろって来てくれます。『ずっと元気でいてね』と言ってくれ、うれしいです」。収入は老齢基礎年金と老齢厚生年金を合わせた月額九万四千円余り。介護保険料やリハビリ費用、眼科などの医療費を除いた約八万円でやりくりしている。わずかな農地で若いころから兼業農家の生活を送り、今も野菜は自分が食べる分は作っているという。それでも、冠婚葬祭など急な出費があったときは赤字になる。貯金は約二百万円あるが「介護の施設に入るようになったら、出費がかさんで貯金がいずれ尽き、娘に迷惑をかける。それが嫌なんです」と漏らした。四十五年前、会社員だった夫が脳梗塞で倒れ、半身不随に。夫の障害厚生年金で月額約五万円が支給されたが、まだ幼い娘三人を抱え、女性は勤めに出ざるを得なくなった。それ以降、六十六歳まで、繊維工場や清掃会社などでパート従業員として働いた。仕事のある平日は午前八時に工場に出勤して午後五時すぎに帰宅。自宅では食事の用意などの家事をこなし、床に就くのはいつも日付が変わってからだった。時期によっては早朝に農作業をする日もあった。それでも収入は手取りで月十五万円ほどと、正社員の男性の半分以下だった。低い給与額が、そのまま年金受給額にはね返る。「せめて男性並みだったら、年金受給額はあと五万円は多かったのでは。近所の寄り合いで、同じ年頃の男性があちこち旅行に行ったという話を耳にすると、落ち込みます」
◆1人暮らしの女性 厳しい老後の生活
 女性の社会進出が進んだといわれているが、非正規雇用が多く、給与所得は男性に比べてまだまだ低い。国税庁の二〇一五年分の民間給与実態統計によると、女性の給与所得者の年間給与額の平均は二百八十万円。男性の五百二十一万円の約54%の水準だ。これがそのまま年金の受給額に直結する。厚生労働省がまとめた一五年度の「厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、厚生年金受給者の平均受給月額は、男性が十六万六千百二十円、女性は十万二千百三十一円と男性より約六万四千円も少なかった。受給月額別の受給者数のデータでは、男性は十七万~二十二万円が最も多く、女性は大半が七万~十二万円だった=グラフ参照。働く女性が増える一方、結婚する男女は減少傾向で、給与所得の低い一人暮らしの女性が増えているとみられる。将来的には、年金受給額が低い「年金プア」の高齢女性が増えるとの指摘もある。年金受給者の実態を調べている岐阜経済大の高木博史准教授は「一人暮らしの年金受給者の場合、生活は女性の方が苦しいと考えられる。放置すると孤独死につながるケースもある。行政などは実態把握から始めて対策を考えるべきだ」と解説する。

*8-2:http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201805/CK2018051902000138.html (東京新聞 2018年5月19日) 【政治】ILO、セクハラに初の国際基準 拘束力伴う条約目指す
 国連の国際労働機関(ILO)は年次総会を二十八日から六月八日までスイス・ジュネーブで開き、職場での暴力やハラスメントをなくすための新たな国際基準を話し合う。セクハラを含め、仕事に関わるハラスメント全般を直接扱った国際基準はこれまでなく、今回の議論を経て来年の総会で採択を目指す。条約で基準に拘束力を持たせることができるかどうかが焦点となる。ILOはハラスメントを世界共通の深刻な差別としてとらえた議論を二〇〇九年にまとめ、加盟各国に適切な措置を呼び掛けてきた。今回の総会では、加盟百八十七カ国の政府・労働者・使用者の代表が、事前に各国の見解をまとめた「たたき台」を基に討議する。基準を(1)拘束力を伴う条約(2)拘束力のない勧告(3)拘束力を伴う条約を勧告で補完-のいずれにするかが議論の争点となる。ハラスメントの定義や対象となる労働者や行為者の範囲、防止措置や被害者支援も議論する。たたき台は最も拘束力のある(3)を支持し、ハラスメントを「身体的、精神的、性的または経済的危害を引き起こす」「許容しがたい一連の行為と慣行」と定義。労働者の範囲は求職者やボランティアなども包括的に設定する内容となっている。ILOがたたき台の作成に先立ち八十カ国の現状を調査した結果、仕事に関する暴力やハラスメントを規制する国は六十カ国で、日本は「規制がない国」に分類された。日本は、男女雇用機会均等法で職場のセクハラ防止措置を事業主に義務付けるが、セクハラの定義や禁止規定はなく、被害者保護、救済の壁になっている。

<女性議員増加の効用>
PS(2018年5月22日追加):日本の衆議院議員の女性比率は1割強(193カ国中158位)で、*9-1のように、男女の候補者数を均等にすることを目指す「政治分野における男女共同参画推進法」が成立したが、立候補しても当選しなければ議員にはなれない。そして、女性の政界進出を阻む壁は、外注費以上の報酬があれば外注も可能な育児・介護負担ではなく、「知識や経験があって論理的思考ができるのは男であり、女は感情的で実績もなく劣っている」という有権者の意識で、この先入観を作っているのは、メディアの偏見に満ち満ちた表現なのである。
 なお、知識や経験のある女性議員が増えれば、*9-2のような「要介護高齢者が2025年度には770万人になり、社会保障費が大幅に増加するのは問題だ」という発想はなくなるだろう。何故なら、(私が提案してできた)介護保険制度がなく、家族がすべての世話をしなければならない状態では、家族の負担が大きすぎ、専門家でもないため十分なケアができず、家庭崩壊に繋がることすらあることを、女性は容易に想像できるからである。
 では、*9-3のように、「2040年度に190兆円に上る」と推計される介護費用を誰が支払うのかについては、まず介護費用の徴収面で高齢者に偏って負担をさせているのは公平でも公正でもないため、直接ケアする負担を免れている家族のうち働いている人のすべて(全世代)で負担するのが妥当だ。また支出面では、「介護保険が出るから」と、本当は不要だったり高すぎる価格設定をしたりした器具を1割負担で買えるようにしておくのも問題である。
 そのほか、私が、このブログで何度も書いているとおり、日本の海洋資源を開発して税外収入を得ることは国民負担を減らす究極の方法になるが、*9-4のように、政府は(私が提案して)2008年に策定された海洋基本計画を、資源開発から安保重視へ転換する閣議決定したそうで、国民負担を減らすどころか増やすように工夫しているようだ。そもそも領海や海洋権益を守る必要があるのは海洋資源があるからで、領土や外国から資源を輸入するための航行の自由を守ることだけが重要なのではない。つまり、女性議員が増えると、国民生活を豊かにするために知恵を絞る人が増えるのである。

      
 2018.5.21日経新聞            2018.5.22西日本新聞

(図の説明:介護保険料は、物価水準が安く高齢者の多い事情のある地域で高くなっているが、地域によって異なるのが問題なのであり、国で統一すべきだ。また、社会保障費がこれだけ伸びるということは、それに関わる産業も伸びが大きいということであるため、一般企業が参入して洗練された高齢化製品を作るのがよいと思われる。なお、国民負担を重くすればするほど、国民生活は貧困になり、可処分所得が減るため実需が減る)

*9-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180520&ng=DGKKZO30735470Z10C18A5EA1000 (日経新聞社説 2018年5月20日) 政治にもっと女性の力を
 政治分野における男女共同参画推進法が成立した。国政選挙と地方議会の選挙で、男女の候補者数をできる限り均等にすることを目指している。多様な人材が議会に参加し、より現実に即したきめ細かな政策の実現につながることを期待したい。法案は超党派の議員立法で提出され、衆参両院で全会一致で可決された。政党や政治団体に対し、数値目標の設定などの自主的な取り組みを促す内容だ。強制力はなく、理念法ではある。それでも大きな一歩だろう。日本の政治は国際的にみて、あまりに女性の進出が遅れてきた。世界の国会議員が参加する列国議会同盟によると、日本の衆院の女性比率は1割強で、193カ国中158位にとどまる。市区町村議会では、女性が1人もいないところが2割を占める。海外には男女格差を是正しようと、候補者数や議席数の一定割合を女性に割り当てる「クオータ制」を法で義務付けている国もある。だが日本の現状を考えれば、一足飛びには弊害があるだろう。まずは女性候補者の発掘と育成に真剣に取り組むべきだ。与野党各党は選挙のたびに、「男女共同参画」や「女性活躍」の推進を公約の柱として訴えてきた。しかし党本部や地方組織での候補者選びは、ベテランの男性幹部が担う場合が多く、人材の発掘が政治家の親族や支持団体の幹部ら男性に偏ってきた面がある。意欲と能力ある人材は、地域に必ずいる。さまざまな視点や経歴を持つ候補者が増えれば、投票する選択肢が広がるだろう。来年は春に統一地方選、夏に参院選がある。私たちも有権者として政党の取り組みを注視したい。女性の政界進出を阻む社会的な要因も直視すべきだ。託児所の整備などは大事だが、問題はそれだけではない。女性に偏った育児や介護の負担、政治は男性のものという意識などが壁になっている。根っこの部分から変えていかねばならない。

*9-2:http://qbiz.jp/article/134220/1/ (西日本新聞 2018年5月22日) 要介護高齢者25年度に770万人
 65歳以上のうち介護が必要になる人が、7年後の2025年度に全国で現在より約141万人増え、1.22倍の約770万人と推計されることが、47都道府県の介護保険事業支援計画を基にした共同通信の集計で20日、分かった。25年は団塊の世代が全員75歳以上になり、社会保障費の大幅増が予想されることから「2025年問題」と呼ばれる。介護保険も要介護者数の増加で費用が膨らみ、財源確保策が課題となるほか、サービスの整備や担い手不足への対策が求められそうだ。介護の必要度は、最も軽い要支援1から最重度の要介護5まで7段階に分かれる。要介護認定を受けた人は17年12月現在では約629万人。25年度にかけて要介護者が最も急激に増えるのは、千葉県で1.37倍。神奈川県の1.35倍、埼玉県の1.34倍と続く。増加幅が小さいのは和歌山、島根両県の1.05倍、山形県の1.07倍などだった。高齢者人口に占める要介護者数の割合(要介護認定率)は、全国平均で17年12月の18.1%から25年度には21.3%に上昇する見通し。最も高くなるのは大阪府で25.9%。最も低いのは山梨県の17.2%。厚生労働省の3年前の集計では、25年度の要介護者数は約826万人と推計されており、今回は約56万人減った。17年の要介護者も3年前の推計値に比べ、既に約39万人少なくなっている。介護予防の取り組みが進んだことや、高齢者の健康意識の高まりなどが作用したとみられる。

*9-3:http://www.saga-s.co.jp/articles/-/220073 (佐賀新聞 2018年5月21日) 40年度の社会保障費190兆円、政府が推計公表
 政府は21日の経済財政諮問会議で、医療や介護、年金などにかかる社会保障給付費について、高齢者数がピークに近づく2040年度に約190兆円に上るとの推計結果を初めて公表した。18年度の約121兆円から1・5倍以上に膨らむ。給付費の財源は主に国と自治体の公費や保険料で賄われ、18年度と比べ公費、保険料とも30兆円超増やす必要がある。政府は推計を基に、長期的な視野に立った費用抑制策や税・保険料負担の在り方を検討していくことになる。190兆円は18年度予算の一般会計総額の約2倍に相当する。

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2018.4.22 データは、集め方、解釈、使い方が重要で、そのためには、その分野に関する総合的な知識が必要なのである ← しかし、みんなで考えれば、よい解決策も出るだろう (2018年4月23、25、26、27、28、30日、5月2、3日追加)
   
  名目と購買力平価によるGDP      欧州・中国・日本の電源構成
                       2018.4.17、14東京新聞   

(図の説明:日本は物価水準が高いため、名目GDPでは中国との差が小さいが、購買力平価換算では中国との差が大きい。また、日本は、最も自国に有利で環境にも良いエネルギーである再生可能エネルギーの採用を進めず、電源構成に占める再エネ割合はヨーロッパだけでなく中国よりも小さい上、今後の普及計画も見劣りする)

   
 アジアの再エネ  世界の再エネ  日本のレアアース      原発再稼働への
  導入ペース   普及と電力価格               九州電力の執念 
  2018.4.19   2018.4.15    2018.4.19        2018.4.21
  日経新聞     東京新聞    西日本新聞        西日本新聞

(図の説明:世界は、再エネの普及時代に入り、それに伴って電力価格が下がっている。また、アジアの再エネ普及は他地域を上回っている。日本は、南鳥島付近の海底にレアアースが大量に存在することがわかり、21世紀の電源構成を邪魔する者は、現在は既得権益者しかいない)

(1)経済発展には総合的知識に基づいた計画性が必要であること
1)中国の出資規制緩和について
 中国は、1992年10月の14回党大会以降、市場経済に基づく社会主義(社会主義市場経済)と世界経済への参入に進路を明確化し、*1-1、*1-2のように、外資系企業が中国へ進出する際には、中国企業(もしくは個人)と合弁させ、外国資本の出資割合は50%以下しか認めなかった。これは、中国が市場を開放するにあたって自国の産業を育成するためで、技術を吸い尽くしていらなくなった外資は、追い出すこともできるようにした。私は、この頃、中国に進出する日本企業のケアをするために中国の外資規制を調査して、その巧みさに感心して唸った。
 
 その中国政府は、2018年4月17日、乗用車分野への外国企業の出資規制を、2018年中にEVなどの新エネルギー車、2020年にトラックやバスなどの商用車、2022年に乗用車で撤廃すると発表した。しかし、今や中国の新エネルギー車は国際競争力を持っており、新エネルギー車で出遅れた日本や米国の自動車メーカーにとっては、特に事業拡大の機会にはならないだろう。日本の経産省は、馬鹿の一つ覚えのように自由貿易のみを提唱しているが、1980年代と同様、日本の自動車産業の方が進んでいると考えている点が思考停止で甘い。

 しかし、中国政府は、2018年末までに造船・航空機の外資規制も撤廃するそうで、これらはまだ世界中でガソリン・エンジンを使っているため、日本が新エネルギー製品を投入すればリードできそうだが、日本の経産省は現状維持に汲々としており、環境でリードしようという先進的な意気込みがない。 
 
2)再エネに関する日本の遅れ
 また、中国では、*1-3のように、政府が2007年に再エネ拡大計画を立てて再エネが急速に増え、2017年の発電に占める再エネ割合は約33%となり、2050年には再エネを中心にするそうだ。また、世界1位、2位の企業を含めて200社以上の太陽光発電機器メーカーが激しく競い合い、値下げ競争をしているため、太陽光電力の価格が下がっているとのことである。

 さらに、日本の東電福島第一原発事故を受けて中国政府が原発の建設計画を大幅に見直し、2013年以降、原発の新規建設計画を承認しておらず、2050年には大半の電気を再エネで賄い、EVも再エネで動くことになるそうで、これは、私が、1995年前後に、日本で(もちろん世界でも)最初に提唱し、馬鹿者どもの逆噴射でつぶされたことだった。

 また、再エネは、*1-4のように、アジアでも急伸し、世界全体の伸び率の5割を大きく上回って5年で倍増しており、それを牽引しているのは中国とインドとのことだ。また、アラブ首長国連邦(UAE)やサウジアラビアなどでは、100万キロワット以上のギガソーラーが相次いで建設されており、エネルギーの脱炭素化と脱原発は進むであろう。

 しかし、日本では、*1-5のように、25年経ってもまだ「再エネを主力電源にするには技術上の課題がある」などとしているが、競争力はやっている人につき、やらない人にはつかないので、最初から見極めることなどできない。そもそも、20~25年もの間、「再エネは自然条件による変動の大きい」などとして解決策を講じず、それを解決しないのも論外である。

 さらに、日本の場合は、*1-9のように、大手電力会社が自らの経営のために原発再稼働を望み、まだ原子力か火力で発電することしか考えず、*1-6のように、「送電線に空き容量がない」として再エネ電力の送電を拒んで、新規参入してきた再エネ事業者を破たんさせてきた。このシステムは、日本で起業が少なく、*1-8のようにイノベーションが進まない理由の一つである。

3)レアアース
 希少金属のレアアース等は、自動車産業、電子産業を始めとして広い分野で使われ、現在の先端技術に不可欠な資源だが、その殆どは中国で産出されている。そして、経産省は「資源は輸入するもの」という頭を切り替えられず、日本の先端産業は中国の意図次第で左右されるようになっている。

 そのような中、*1-7のように、海洋研究開発機構や東大のチームが、日本の排他的経済水域内の南鳥島沖にレアアース等が1600万トン超埋蔵されているとの推計を発表した。国としてやればすぐできるのに、相変わらず「現時点で利用できる見通しは立っていない」「今後10年で採掘技術を開発する」など、国の真剣さがないわけだ。

4)化粧品の「爆買い」と品切れ
 このようにぼけっとしていながら、*1-10のように、中国人客が「爆買い」して中国で転売されるとして、ブランドイメージ低下を懸念して、日本の化粧品メーカーが顧客に購入個数の制限を求めたそうだ。

 しかし、同じアジア人であるため、化粧品に望まれることが近く、今は売れるのが当たり前の時で、これは有難いことであって、今のうちに中国に販売ルートを作って必要な特許を取り、ブランドイメージを打ち立てなければならないにもかかわらず、「アルバイトを使って買い占めた」「化粧品の爆買い」などと客を馬鹿にしたり、購入禁止にしたりしている。そんな態度では、それに近いものが中国で安く生産され、日本人もそちらを買うようになるだろう。
 
 つまり、日本人は、日本人を持ち上げるために、中国などの中進国や後進国の人を馬鹿にすることが多いが、実際には、日本は、1980年代から30年に渡って進んでいないことに、謙虚に気付くべきである。

(2)教育研究の重要性
1)研究とイノベーション
 全米科学財団(NSF)がこのほどまとめた報告書で、*2-1のように、科学技術の論文数で中国が米国を上回り世界1位となったそうだ。2016年に発表された論文数は、中国が約43万本で約41万本の米国を抜き、3位以下は、インド、ドイツ、英国で、日本は6位だった。

 研究はイノベーションに直結するため、研究者の質と量の確保が重要なのだが、日本だけ研究論文数が13%減っているのである。これは、「勉強だけできても」などと無意味な比較をしたり、理数系教育を疎かにしたり、研究者をポスドクにして冷遇したりしたせいで、*2-2のように、過度に不正を言い立てて研究者の地位を魅力ないものにしたことも一因だろう。

2)個人情報の利用はどこまで認められるか
 日経新聞は、*2-4のように、「データの世紀だ」「データは情報資源だ」「データを集めろ」「データは新たな石油だ」などと言っているが、データは、①誰が ②何の目的で ③どういう集め方をして ④どのように比較したりトレースしたりして結果を出すか についてきちんと計画していなければ、ただのゴミだったり、個人情報の不正利用になったり、監視社会を作ったりする。私は、誰かが失敗するまで、それがわからないのを不思議に思う。

 そして、*2-5のように、8700万人の会員情報を不正流出させた米フェイスブックのマーク・ザッカーバーグ最高経営責任者は、米議会上院の公聴会で証言して全面的に謝罪したが、利用者の個人情報を利用して利益を得る組織はフェイスブックだけではない。また、*2-6のように、利用者の個人情報を悪用するのもIT関連企業だけではなく、コンピューターウイルスの作成者でさえ野放しになっている現在、悪用の防止は不可能である。

 そのため、欧州では2018年5月に、企業などに個人情報の厳格な扱いを義務づける「一般データ保護規則」が施行されるそうで、日本も、欧州や米国などの先進国並みに個人情報保護を重視すべきだ。

(3)データ分析と研究
 日立製作所・ヤマトホールディングスなどの大手企業9社が、*3-1のように、データ分析の専門家「データサイエンティスト」の育成に乗り出し、そのデータサイエンティストには統計学に加え、データを取捨選択して問題解決につなげる能力も求めるそうだ。

 しかし、問題解決は、その分野の十分な知識がなければできないため、それぞれの分野(例えば、医学・薬学・マーケティングなど)の人がデータ分析の知識を持つべきなのであり、“データ分析のプロ”が問題解決をできるわけがない。また、“統計学を専門に教える大学”で、統計学しか勉強しなかった人が、どういう問題なら解決できるのか疑問だ。

 さらに、*3-2のように、日本の科学研究の実力が急速に低下しているのは、科学者や研究者を大切に育成しなかったことが原因である。そして、政府支出を評価する「独立財政機関」を設置しても、そこが正しい評価をできなければ、天下り先として政府支出がさらに増えるだけで、「政府研究開発投資はGDP比の1%にすることを目指す」というような支出金額の目標しか立てられないのであれば、単なる無駄遣いになるだろう。

 それでは、何故、そのようなお粗末な結果になってしまっているのかと言えば、*3-3の「全国学力テストの小6と中3で、これまで国語と算数・数学しかテストしていなかったが、3年ぶりに理科を加えて3教科で実施する」というように、近年、勉強することをないがしろにしているからである。

 そう言う理由は、上に書いたように、イノベーションのもとになる研究があっても、経営者・官僚・政治家・メディア・国民などがその価値を認めて前に進める態勢をとらなければ、イノベーションの種を殺してしまうからで、そのためには、文系・理系を問わず、必要な知識を持っておくことが必要不可欠だからである。

(4)データの読み方


  平均寿命の推移    医師数/人口1000人     GDPの推移  家電普及率推移

(図の説明:日本人の平均寿命は、1950年には男58.0歳、女61.5歳だったが、1965年まで急激に上昇し、その後2010年までは少し緩やかなカーブで上昇している。そして、2011年の東日本大震災で短縮したが、その後、さらに緩やかなカーブで上昇し始め、90歳~100歳の間で収束するように見える。1965年までの急激な上昇は、栄養状態・衛生状態の改善により乳児死亡率(0歳で死亡するため平均値を下げる)が減ったためだと言われている。その後、1965~2010年のカーブは少し緩やかになって漸増している。この平均寿命のカーブは、人口1000人当たりの医師数のカーブより、人口一人当たりのGDPのカーブや洗濯機・冷蔵庫などの家電普及率のカーブに似ている。そのため、長寿には、まず十分でバランスの良い栄養による体力づくりや清潔さが必要で、それでも病気になった場合に医師が関与して治癒させることが大切だということがわかる。なお、2011年の東日本大震災を境に寿命の伸びが緩やかになり、これを生活習慣病が原因だとする人もいるが、生活習慣病だけが原因なら1990年頃から寿命の伸びが緩やかになってよかった筈だと思うので、死亡原因別の死亡率推移も比較すべきだ)

1)県毎の平均寿命・健康寿命の比較
 2015年の都道府県別平均寿命は、滋賀県が長野県を抜き、男性が全国1位、女性が4位となって、長野県は30年ぶりに男性トップを奪われたそうだ。*4-1のように、どちらも健康を重視していることには変わりないが、県ごとに原因追及を行って対策を講じるのはよいことだ。

 また、*4-2のように、男女を合わせた平均寿命を1990年と2015年で比べると、都道府県の格差は広がっており、2015年トップの滋賀県(84.7歳)と最下位の青森県(81.6歳)は3.1歳の差があるそうだ。そのため、生活習慣(喫煙、食生活など)の見直しは必要で、都道府県間の格差分析は生活環境や実態の違いを把握するのに有効だろう。

2)介護保険制度について
 厚労省は、*4-3のように、介護が必要な高齢者の身の回りを世話する「生活援助」について、平均以上の利用回数になる介護計画を市町村に届けるよう義務づけ、過剰な利用を洗い出し、本人の自立支援や重度になるのを防ぐ中身かどうか検証するそうだ。

 しかし、何が過剰かの判断は重要で、生活援助を減らすと新たに施設に入らなければならない高齢者も出るため、施設を増やして高齢者を収容した方が安上がりで高齢者のQOLが高くなるのか否か熟考すべきだ。何故なら、月30~40回(1日1~2回)と生活援助の利用回数が多い高齢者というのは、甘えている人というより、重篤だが自宅で過ごそうとしている独立性の高い高齢者だと思われるからである。

 なお、介護サービスの需要は実需であり、介護保険制度は始まって20年未満であるため、介護給付費が2025年にかけて現状の2倍の20兆円規模まで膨らむと予想されるのは全く自然で、生活援助が給付費の1%程度であるにもかかわらず無駄遣いを指摘する声が多いのは、「家事は仕事のうちに入らない楽なものである」と考える人が少なくないからだろう。しかし、多くの老夫婦世帯で生活援助は必要不可欠であるし、男性だけが残った世帯ではさらに重要になっている。

 そのため、生活援助のより安価な担い手を確保したり、保険適用と保険不適用(自由)の混合介護をやりやすくして、安いから頼むのではない実需を探って適正額を決め、必要と認められるものは速やかに保険適用にしていくのがよいと考える。

 なお、*4-4のように、介護保険料を8割の自治体で上げ、健保組合は全国の約1400組合のうち3割が2018年度に保険料率を引き上げたので、給付抑制が必要だとする意見がある。しかし、現在の介護保険料は40歳以上からしか徴収していないため、まず受益者である働く人すべてから介護保険料を徴収するように改正し、価格の高すぎる機材の必要性とその価格の見直しから始めるべきだ。

<経済発展への総合的知識の必要性>
*1-1:http://qbiz.jp/article/132030/1/ (西日本新聞 2018年4月17日) 中国、車の外資規制撤廃へ EV18年、乗用車22年に
 中国政府は17日、乗用車分野への外国企業の出資規制を、2022年に撤廃すると発表した。現在は現地合弁企業に対する50%までの出資しか認めていないが、この規制を取り除く。電気自動車(EV)などの新エネルギー車は18年中に、商用車では20年に、それぞれ出資規制を撤廃する。日本の自動車メーカーにとっては、中国事業拡大のチャンスになりそうだ。自動車分野の規制緩和は、米国や日本が強く求めてきた。米中貿易摩擦などで中国市場の閉鎖性への批判が高まる中、基幹産業である乗用車分野の開放策を打ち出すことで、改革・開放政策の継続を印象付ける狙いだ。中国政府は、ガソリン車などを含む乗用車での撤廃により、自動車業界での出資規制は全てなくなると説明している。中国の習近平国家主席は10日の演説で、改革・開放政策を進めるために自動車などの分野で市場開放に取り組む姿勢を示していた。

*1-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180418&ng=DGKKZO29492320X10C18A4MM8000 (日経新聞 2018年4月18日) 中国、車の外資規制撤廃 22年に、市場開放アピール
 中国政府は17日、外資系自動車メーカーの乗用車分野の出資規制を2022年に撤廃すると発表した。同年までに電気自動車(EV)や商用車など自動車産業の外資規制をすべて撤廃する。米国との貿易摩擦をにらみ、市場開放をアピールするのが狙い。世界最大の自動車市場で日本勢を含む外資メーカーの経営戦略の自由度が高まりそうだ。国家発展改革委員会が新しい政策を発表した。習近平(シー・ジンピン)国家主席が10日に博鰲(ボーアオ)アジアフォーラムで表明した自動車産業などの外資規制の緩和方針を受け、自動車の分野別にロードマップを明らかにした。これまでは外資の出資は50%が上限だった。外資規制撤廃の時期は、18年中にEVなどの新エネルギー車、20年にトラックやバスなどの商用車、22年に乗用車とする。中国政府が17年4月に発表した自動車産業の中長期発展計画では「25年までの外資規制の緩和」としており、時期を前倒しするとともに撤廃にまで踏み込んだ。過半出資にこだわって中国進出が難航する米電気自動車メーカー、テスラなどを後押しする狙いとみられる。新エネ車を除き原則2社までだった中国での自動車生産の合弁会社数の制限も22年に撤廃する。中国政府の新しい外資規制撤廃で、日本勢を含む外資メーカーは中国市場での経営の自由度が高まる。一方、外資系自動車大手幹部は「中国側の協力を得られなくなると中国事業にマイナスに働くので、出資比率の引き上げは慎重に考える必要がある」と漏らす。具体的な規制緩和の扱いについても「これから公表される詳細な細則などをみないと分からない」(外資系メーカー幹部)との指摘もある。中国政府は自動車以外でも、18年末までに造船、航空機製造の外資規制を撤廃する。すでに公表した金融以外でも、18年以降にエネルギーや資源、インフラ、交通、流通分野で規制緩和を順次進める方針を打ち出した。中国の新車販売台数は17年で2887万台。世界2位の米国の1.7倍、日本の5.5倍に達する。乗用車を中心に独フォルクスワーゲン(VW)、米ゼネラル・モーターズ(GM)、日産自動車、ホンダ、トヨタ自動車が合弁で生産するブランドが上位を占める。規制緩和によって中国市場で外資と中国メーカーの競争が進み、業界再編が進むとの見方も出ている。

*1-3:http://www.tokyo-np.co.jp/article/economics/list/201804/CK2018041402000147.html (東京新聞 2018年4月14日) 【経済】<原発のない国へ 世界潮流を聞く> (1)中国「50年には再生エネ中心」
◆中国国家気候変動戦略研・李俊峰教授
 世界各国で太陽光、風力など再生可能エネルギーが飛躍的な拡大を続けている。日本政府が依然、原発を基幹電源として位置付け、再生エネルギーが伸び悩んでいるのと対照的だ。世界潮流から何を学ぶべきか。国内各地の再生エネ導入の現場をルポした第一部に続き、研究者やビジネスマンなど世界の専門家たちにエネルギー事情の最前線を聞く。
-中国の再生エネの導入状況は。
 「中国政府が二〇〇七年に再生エネの拡大計画を立ててから、再生エネが急速に増えており、一七年の発電に占める再生エネの割合は計約33%に増えている。これまでは水力、風力の割合が大きかったが今後は太陽光が急増する。二〇年の目標は35%だが、前倒しで達成できるかもしれない。経済政策を立案する国家発展改革委員会は三〇年の目標として、温室効果ガスを排出しない非化石電力である再生エネと原子力で電気の50%超を賄うことを掲げている。原子力はこのうち5%にも満たないだろう」
-再生エネ増加の背景は。
 「技術が進歩し、大量生産が可能になった。太陽光発電用のパネルなど設備投資費用は〇七年から十年間で八分の一まで下がり、いまも急速に下がり続けている」
「これに伴い発電費用は下がるので、電力会社が発電会社から買い取る際の固定価格も大規模太陽光は今年は一キロワット時当たり〇・五五元(九・二円)まで下がっている。これも日本(本年度十七円)の半額だ。二五年には石炭より安くなり、買い取り制度そのものが不要になるだろう」
-なぜそれほど設備投資費用が下がっているのか。
 「太陽光発電設備を作るメーカーが激しく競っているためだ。中国では太陽光メーカーは世界一、二位の企業を含め二百社以上がひしめき合っている。いまや中国メーカーが世界の太陽光生産の70%を占める。風力タービンのメーカーも二十社以上ある。受注を巡って値下げ競争が起きている」
-原発政策は。
 「中国政府は日本の東京電力福島第一原発事故を受け、原発の建設計画を大幅に見直した。一三年以降は新規の建設計画を承認していない。すでに建設中の原発はあるが、二〇年時点の原発の設備容量の目標はもともとの百二十ギガワットから半分以下の五十五ギガワットに大幅に下方修正している」。「建設途上にある国産原子炉が成功すれば、流れが変わるかもしれないが、原発の問題は高い建設費用と安全性だ。人口が大きい中国ではどこに建てたとしても集住地域が近くにあり、安全面のリスクが高い。中国の国土は広いが、最終処分場をつくるメドもたっていない」
-中国は自動車もガソリン車から電気自動車(EV)に転換する計画を発表しているが、発電以外の計画は。
 「二〇五〇年には大半の電気を非化石電力で賄うことになり、再生エネが中心になっているだろう。EVの電気も再生エネで賄うことになる」
<り・しゅんほう> 中国国家気候変動戦略研究・国際協力センター教授。同センターはエネルギー政策を研究し政府に助言している。過去には中国の国家戦略を立案する国家発展改革委員会のエネルギー研究所副所長も務め、政府の再生エネの関連法や中長期計画の立案に携わった。

*1-4:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180419&ng=DGKKZO29568160Z10C18A4MM0000 (日経新聞 2018年4月19日) 再生エネ、アジアで急伸 5年で倍増、中国けん引
 再生可能エネルギーの導入がアジアで急拡大している。国際再生可能エネルギー機関(IRENA)の調べによると2017年末の発電容量は5年でほぼ倍増。世界全体の伸び率の5割を大きく上回った。太陽光発電を推進する中国やインドの伸びが大きい。環境意識が強い欧州などに加えアジアでも採用が増え、世界で再生エネの存在感がいっそう高まりそうだ。17年末の再生エネの発電容量は21億7900万キロワットだった。発電方式別では水力が53%、風力が24%、太陽光が18%と続く。太陽光の構成比が過去5年で約2.6倍となり、伸びが大きい。けん引するのが中国で、太陽光が5年で36倍に増えた。13年に再生エネを高い価格で買い取る制度を導入して大気汚染の一因とされる石炭火力発電を抑制。太陽光発電施設の新設が相次ぎ、中国資本の太陽電池メーカーも育った。太陽光発電はパネルの価格下落で発電コストが5年で約半分に下がったうえ「風力ほど設置や運営のノウハウが要らない」(自然エネルギー財団の大林ミカ氏)。中国では17年も16年に比べ68%増えるなど増加率は高水準が続く。水力発電も過去5年で36%増えた。足元で再生エネの導入が急速に進んでいるのがインドだ。17年の増加率は18%と、比較可能な01年以降で最高となった。ソフトバンクグループが合計2千万キロワットの再生エネ発電所を建てる計画を掲げ、17年4月に一部設備が稼働した。日本では過去5年で2.1倍に増えた。増加分の96%が太陽光だ。発電容量の地域別構成比はアジアが42%、欧州が24%だ。欧州も過去5年で30%増えたが伸び率はアジアより低かった。国際エネルギー機関(IEA)によると、再生エネが世界の総発電量に占める比率は16年に24%に高まった。40年には再生エネの発電量が2.6倍に増え、総発電量の40%に高まるとみている。アラブ首長国連邦(UAE)やサウジアラビアなどでは100万キロワット以上の太陽光発電施設「ギガソーラー」が相次いで建設されている。

*1-5:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180411&ng=DGKKZO29216810Q8A410C1EE8000 (日経新聞 2018年4月11日) 再生エネ「主力」へ技術課題 2050年戦略、競争力見極め難しく
 経済産業省は10日、省内の有識者会議で2050年に向けた国の長期エネルギー戦略の提言を取りまとめた。太陽光や風力など再生可能エネルギーを「主力電源」にする目標を明記した。ただ再生エネを主力にするには技術的な課題も多い。火力なども含めてどの電源や技術に経済性や競争力があるのか、今後も難しい見極めが迫られる。今夏をめどに閣議決定するエネルギー基本計画に反映する。再生エネを主軸としつつ蓄電池や火力、原子力など多様な技術や電源を組み合わせて変化に対応できるようにする。エネルギー情勢を客観的に分析し、最適な選択に向けた判断材料を示す新組織も設立する。再生エネは海外に比べて高コストから脱却できておらず、発電システムの一層の効率化を事業者に促す。再生エネの大量導入を受け入れられる送配電網の整備も課題。天候や季節で出力が変動する弱点を補うためには、火力発電など他の手段の活用も必要になる。それぞれに技術的な課題が多く50年の明確なエネルギー構成は示せなかった。原子力は依存度を低減する方針を明記する一方、「脱炭素化の選択肢」として「安全性や経済性、機動性に優れた炉の追求」も続ける。10日の会議では原子力について、「地球温暖化への対応を考えると依存度低減は合理的ではない。逃げてはだめだ」(コマツの坂根正弘相談役)といった意見が出た。一方で「推進しないほうがいい」(イーズの枝広淳子代表取締役)との異論もあり、明確な方向付けはできなかった。

*1-6:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180418&ng=DGKKZO29496450X10C18A4EE8000 (日経新聞 2018年4月18日) 再生エネ拡大へ、送電線空き活用 経産省会議が対応策
 再生可能エネルギーの普及拡大を議論する経済産業省の有識者会議は17日、発電コストの低減策や、送電線の空き容量を柔軟に運用するルールなどを盛り込んだ対応策の骨子をまとめた。今夏にも改定するエネルギー基本計画に反映する。有識者会議は送電線の利用ルールを見直し、使える容量を拡大する「コネクトアンドマネージ」を2018年度から順次導入する方針を示した。空き容量をどこまで活用できるかを今後、経産省と電力会社で詰める。自然条件による変動の大きい太陽光や風力などの再生エネを大量に導入する場合、電力の需給バランスを保つ方法を確保する必要がある。骨子では蓄電池や水素などのコスト低減を目指し、技術開発を加速する方針も明記した。政府は2030年度に再生エネ比率を22~24%にする目標を掲げている。再生エネを主力電源とするためには、詳細な制度づくりや技術開発に課題が残る。

*1-7:http://qbiz.jp/article/132184/1/ (西日本新聞 2018年4月19日) 南鳥島沖の深海に希土類1000万トン超 世界消費の数百年分
 海洋研究開発機構や東京大のチームは、太平洋の南鳥島沖の深海底で見つかったレアアース(希土類)を含む泥の濃度を調査した結果、2500平方キロの範囲で埋蔵量が1600万トンを超すとの推計を発表した。周辺は日本の排他的経済水域(EEZ)内で、世界で消費されるレアアースの数百年分に相当する大量の資源だとしている。ただ実用レベルの採掘技術が存在しないため、現時点で利用できる見通しは立っていない。東京大の加藤泰浩教授は「企業や研究機関と検討を進め、今後10年で実際に使える採掘技術を開発したい」と話している。チームはこれまでに南鳥島沖の水深約5千メートルの海底にジスプロシウムやイットリウムなどを含む泥が2500平方キロにわたって広がっているのを発見している。調査船で25カ所の海底を掘削して泥に含まれるレアアースの濃度を調べると、北西部の約100平方キロで特に濃度が高かった。この海域だけで120万トン、全体では1600万トンを超す埋蔵量があると推定される。泥に含まれる粒状の生物の骨や歯には多くのレアアースが含まれ、それらをすくい上げて回収することで採掘コストを抑えることができるとチームはみている。

*1-8:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180411&ng=DGKKZO29236340Q8A410C1CR8000 (日経新聞 2018年4月11日) イノベーション、日本勢創出難しく 研究者3000人調査 「国際的成果少ない」26%
 文部科学省科学技術・学術政策研究所は10日、日本の産学の研究者約3000人を対象とした意識調査の結果を発表した。国際的に突出した成果が日本から出ているか、との質問では回答者の26%が前回調査に比べて状況が悪化していると回答した。政府は画期的な研究成果をイノベーションにつなげて経済成長を実現する方針だが、研究現場の認識と大きな開きがあることがうかがえる。同研究所は、研究現場の意識変化を継続的に追う目的で2016年に調査を初めて実施。17年末に同じ回答者を対象に2回目の調査を実施して1回目と比較。対象者は大学や公的研究機関に所属する約2100人、企業に所属する約700人で回答率は92.3%だった。国際的に突出した成果が生み出されているかとの質問は26%が前回よりも悪化しているとした。変化なしは68%で、改善したとするのは5%だけだった。状況を10点満点にすると回答者の平均は大学所属の研究者が4.1と前回に比べ0.58ポイント低下、産業界も0.5ポイント減の4だった。研究成果がイノベーションにつながっているかという質問でも20%の回答者が悪化とした。ポイントも大学で0.4ポイント低下の4.1、産業界は0.29ポイント減の3.3だった。日本の研究状況が悪化している理由として、中国やインドの台頭による国際的な地位低下、学術論文の動向などを挙げた。ベテラン研究者の固定観念が若手研究者の自由な発想を妨げているのではとの回答もあった。ノーベル賞の受賞などは近年目立つものの、過去の蓄積によるもので今後は研究力が落ちる一方という意見も多かった。

*1-9:http://qbiz.jp/article/132329/1/ (西日本新聞 2018年4月21日) 九電、社長交代で成長戦略へかじ 原発4基実現へ、経営再建にめど
 九州電力のトップが約6年ぶりに交代する人事が固まった。2011年の東京電力福島第1原発事故後、大きく傷んだ経営を立て直す環境づくりに一定のめどがついたことが背景にある。今後、重要度が増すのは成長戦略。瓜生道明社長から後を継ぐ池辺和弘氏が、成長の歩みをどのように進めるのかが焦点だ。原発の長期停止による火力発電の燃料費負担増加で、九電の財務は急激に悪化。2012年3月期から4年連続で赤字を計上し、有利子負債は約1・5倍に膨らんだ。収支改善と電力の供給力確保が喫緊の課題となる中、瓜生氏は原発再稼働を推進。川内原発1号機(鹿児島県薩摩川内市)は福島事故後で全国第1号となった。並行して経費削減を徹底。16年の電力、17年のガスと続いた小売り全面自由化、20年の発送電分離に向けた「カンパニー制」導入など、重要課題への対応も指揮した。3月の会見では「嫌というほど濃密な6年間だった」と振り返った。最後の大きな課題が川内1、2号機と玄海3、4号機(佐賀県玄海町)の原発4基体制の実現。玄海3号機が蒸気漏れで一時発送電が停止になったものの、4号機の再稼働への影響は抑えられ、「経営の大きな節目」(九電幹部)を乗り越える見通しがついた。役員の序列では10人抜きで社長に昇格する池辺氏。昨年6月に22人抜きで取締役常務執行役員に就いた後は、若手社員のアイデアや他社技術を活用した新規事業創出に携わり、トップとして成長戦略を進めるための布石との見方もあった。一方、財務は好転しているとはいえ、自由化で競争は激化し、経営環境はなお厳しい。池辺氏も策定に関わった中期的な財務目標では連結の経常利益を17〜21年度の平均で1100億円以上などと掲げるが、社内でも「かなり高い目標」との見方がある。池辺氏は2月、役員制度の見直しに関する記者会見で「意思決定の迅速化が重要」と語った。九電が目指す「日本一のエネルギーサービスを提供する企業グループ」実現のためには、スピード感ある対応が鍵を握る。

*1-10:https://digital.asahi.com/articles/ASL3Z52XCL3ZULFA00Z.html (朝日新聞 2018年3月31日) 化粧品「爆買い」制限広がる 品切れ・海外への転売懸念
 化粧品メーカーが顧客に商品の購入個数の制限を求める動きが広がっている。訪日客向け販売の急増による品切れや、一部が海外で転売されていることが背景にある。訪日客への販売増で業界は好調だが、品切れによる既存顧客への悪影響や、転売によるイメージ低下の懸念から、購入制限を求めざるを得なくなっている。
●「バイト20人で買い占め」 化粧品「爆買い」の実態
 ファンケルは2月、メイク落とし「マイルドクレンジングオイル」の購入個数を「1週間に1人10個まで」とする日中2カ国語の顧客向け通知を直営店に出した。中国人客が「爆買い」したとみられる商品が現地で転売される例が見つかり、ブランドイメージ低下を懸念した。コーセー子会社のアルビオンは昨年末から、「アルビオン」ブランドの乳液の購入を1日1個に制限。ネットに顧客向けの「お願い」を日中英3カ国語で出した。訪日客への販売増で生産が追いつかなくなったという。資生堂は2月ごろから、銀座の百貨店などで「SHISEIDO」ブランドの美容液の購入を1日1個に制限。店頭に営利目的購入を禁じる日中英3カ国語の掲示も出した。制限は「多くのお客様に届けるため」(広報)という。購入制限は訪日客増とともに2015年ごろから目立ち始めた。最近は対象商品が増え、1回あたりの個数の上限も減らす傾向にある。訪日客向けが好調で、資生堂とポーラは直近の決算で営業利益が過去最高、コーセーも最高益の見込みだが、急増した販売の「副作用」が購入制限という形で表面化している。

<データと研究>
*2-1:https://www.sankei.com/world/news/180125/wor1801250041-n1.html (産経新聞 2018.1.25) 科学・工学分野の論文数、中国が初の首位 米国抜く 日本6位 米財団調査
 各国の科学技術力の分析に当たる全米科学財団(NSF)がこのほどまとめた報告書で、科学技術の論文数で中国が初めて米国を上回り世界首位となったことが分かった。日本は6位となり、新興国ではインドにも追い抜かれており、科学技術立国としての基盤低下が懸念されそうだ。報告書はNSFが2年ごとにまとめている。2016年に発表された論文数は中国が約43万本となり、米国の約41万本を抜いた。3位以下はインド、ドイツ、英国が続き、日本は6位と低迷した。7位以下はフランス、イタリア、韓国。報告書がまとめた統計によると、直近10年間の国別の論文数の推移は、中国が約124%増と大きく飛躍。インドも182%増と伸び、新興国の躍進が著しい。日本は13%減った。米国が7%増、欧州連合(EU)域内は28%増だった。論文数を分野別にみると、中国は工学分野で欧米を上回ったが、医学・生物学分野では米国などが優位を保った。中国は科学研究の底上げのため、民間を含む研究開発費を増加させている。論文数増加は、こうした事情が背景にあるとみられる。

*2-2:https://digital.asahi.com/articles/ASL454HRCL45PLBJ005.html?iref=comtop_8_03 (朝日新聞 2018年4月12日) 研究不正、大学教育で防げ 「インチキ論文」見破り方も
 東京大分子細胞生物学研究所や京都大iPS細胞研究所など、著名な機関で研究をめぐる不正が相次いでいる。国は大学や研究機関に対して、ビデオ教材などによる不正防止教育を求めているが、効果はいま一つだ。そうした中、危機感を募らせた大学の間では、学生たちが不正に手を染めないようにと、独自の教育プログラムを取り入れる試みが広がり始めている。「どこが、どう怪しいのか。どう修正すべきか。考えをまとめてください」。滋賀県立大の高倉耕一准教授(生態学)が、学生たちに呼びかけた。受講する十数人の学生が持ち寄ったのは、健康器具や化粧品などのチラシ。他社製品との違いをアピールする言葉が並ぶ。「事例紹介ばかりで、肝心のデータがない」「グラフの目盛りを操作して効果を大きく見せている」。学生たちが、互いに意見をぶつけあう。大学院の「環境研究倫理特論」という授業のひとコマだ。
●不正見抜くソフトの使い方も
 「身近なチラシの観察は、自分が不正に手を染めず、上からの不正の指示に批判的に対処するためのトレーニングです」と高倉さん。この授業は昨秋から今年2月まで15回行われ、学内外の9人が講師を務めた。「インチキ論文」を見破る技術として、画像の切り貼り・使い回しや不正な統計処理などを見抜くソフトの使い方を教えたり、過去の研究不正の裁判記録を読み解いたりした。「特論」を企画した原田英美子准教授(植物科学)は、主任教授などの上司が指示し、若手を巻き込んで組織的に行われる「トップダウン型」の不正を念頭に置いたという。若手は生活のために、人事権者の理不尽な指示に従わざるを得ない。「学生には怪しい論文や研究室を見抜く目を持ち、近づかないようにしてほしい」と話す。互いに意見を出し合って問題の解決策を探るアクティブ・ラーニング(参加型)の授業は学生に好評で、今秋にも同様のプログラムを予定している。
●過去の不正を題材に議論
 東京工業大でも、大学院の修士課程で、選択科目として研究倫理の講義を行っている。2016年度は約290人、17年度は約240人が受講した。座学のほか、ほぼ毎回グループ討議を行う。過去の不正事例を題材に「科学者が重視すべき価値」、「不正が起きた原因や背景」などについて、学生同士で話し合う。講義を担当した東工大の札野順教授(科学技術倫理)は「論文の作成・出版は、本来、研究成果を共有し、研究をより進める手段にすぎない。しかし、それ自体が目的化していることが不正の背景にある」と指摘する。「研究する意味や目的を正しく知れば不正はおのずと減るはず」。19年度からは、対象を学部1年生から博士課程までに拡充する計画だ。
●「不安定な雇用環境が背景」指摘も
 京都大iPS細胞研究所で1月に発覚した研究不正は、任期付きで採用された30歳代の研究者が起こした。成果を出さないと次のポストが得られない若手の不安定な雇用環境が、不正の背景として指摘されている。若手だけでなく、研究代表者らも、国からの補助金が減り続ける中で予算獲得の強い圧力の下にある。科学界全体が過度の成果主義にさらされている。研究不正の防止に特効薬はなく、海外でも大きな課題となっている。東京大医科学研究所の技術専門職員で、日本医療研究開発機構の主査として海外の事例を調査した池上徹さんによると、たとえばカリフォルニア大学のある教員は、「倫理、および『生き抜く』術」と題した討議やロールプレー(役割演技)などのプログラムを導入。研究倫理上問題となる具体的な状況を参加者たちが自ら設定し、論文の責任著者、研究グループの代表者、雑誌の編集者、資金を出した機関の人などの立場で対応を演じ合う。研究者として生き残るため、正解のない問題に対して、自分ならどうするかを考えてもらう試みだ。他大学の教員らの間でも、同様の取り組みが草の根的に広まりつつあるという。
●文科省の不正防止教育「不十分」
 日本では文部科学省が、国の研究費を受ける条件として、不正防止教育を大学などに課している。ただ、ビデオ教材を視聴する「eラーニング」が中心で、不正防止には不十分との指摘は多い。一方、東工大や滋賀大のように教育カリキュラムに組み込む大学独自の参加型のプログラムは、まだ全国でも数えるほど。国立大学の法人化を機に、国からの運営費交付金が減り、新たな教育プログラムに必要な専門の教員を雇う十分なお金が大学側にないという事情もある。池上さんは「研究倫理を、大学の研究教育の一分野として確立する必要がある。そのための予算と教員の措置は、ぜひとも必要だ」と指摘する。

*2-4:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180403&ng=DGKKZO28878060S8A400C1MM8000 (日経新聞 2018年4月3日) データの世紀 情報資源、世界を一変、始まった攻防(1)人体から宇宙まで 企業・国、先頭競う
 世界各地で毎日、企業の活動や個人の行動などから膨大な量のデータが生み出される。つぶさに分析すれば成長の原動力になる「新たな資源」だが、人の行動を支配しうるリスクも抱える。企業や国を巻き込んだ攻防も始まり、世界はデータの世紀に入った。3月27日。英下院の委員会に、赤く染めた短髪にスーツ姿の男性が現れた。米フェイスブックで約5千万人分のデータが不正流出し米大統領選の選挙工作に使われた疑いが浮上。男性は問題を内部告発した英データ分析会社、ケンブリッジ・アナリティカの元社員だ。この会社は流出データの提供を受けていた。証言に費やされた時間は延々、3時間半。米国では大統領選への関与が注目されている。一方、英国で議論を呼んだのは、委員の質問に淡々と答えていたこの男性が、2016年の英国の欧州連合(EU)離脱を問う国民投票にも関与していたと示唆したことだ。委員「もしその関与がなかったら?」。男性「国民投票の結果は、違っていたかもしれません」
●「新たな石油」
 データ分析は個人の行動をも動かす領域にまで高度化した。全世界のフェイスブックの利用者は月間20億人以上。「フェイスブック上での反応を分析して広告を打てば、消費者を大きく動かせる」。米コロンビア大学のサンドラ・マッツ准教授らの研究では、「いいね!」ボタンの押し方などから得た嗜好に沿ってその個人に合った化粧品の広告を流すと「購買数は54%増えた」という。全世界で1年間に生み出されるデータの量は既にギガ(10億)の1兆倍を意味する「ゼタ」バイトの規模に達する。米調査会社IDCの予測では、25年に163ゼタバイトと16年比10倍に増える。これは全人類一人一人が、世界最大の米議会図書館の蔵書に相当するデータを生み出すような規模だ。ネットの検索履歴や車の走行情報が新サービスを生み、経済や政治のデータがマネーを動かす。「データは新たな資源」「新たな石油」。米インテルやIBM、中国アリババ集団などIT(情報技術)大手の経営者は口をそろえる。限りある石油と違い猛烈な勢いで膨張するデータを、世界中の企業が吸い上げる。宇宙からは、モノの動きを見逃すまいと人工衛星の「目」が光る。港のタンカーの出入りやスーパーの駐車場の稼働状況から、公式情報より早く経済の動向を予測。データを駆使するヘッジファンドが利益を上げる。「全世界を毎日撮影する」。日本でも超小型人工衛星開発のアクセルスペース(東京・中央)が18年秋、大きさ数十センチメートルの衛星を3基打ち上げ、最終的に50基に増やす。「衛星画像を様々なデータなどと組み合わせて分析すれば、ビジネスになる」(中村友哉社長)
●病気リスク軽減
 データは命をも救いうる。米アルファベットは17年4月、傘下企業を通じ1万人の心拍などの健康情報を少なくとも4年間集めるプロジェクトを始めた。日本でも内閣府と東京大学や京都大学が共同で18年6月から、あらゆるモノがネットにつながる「IoT」技術を使い生活環境と血圧の関係を即時測定する実証実験を始める。病気リスクの軽減が狙いだ。20世紀を石油の世紀とすれば、21世紀はデータの世紀。その先頭を走るのがグーグルやアップルなど「GAFA」と呼ばれる米IT4社だ。合計時価総額は10年代前半、かつて「セブン・シスターズ」と呼ばれた石油大手4社を逆転した。急拡大ぶりは、勃興時の石油産業の姿にも重なる。石油の大量供給は世界で自動車産業の発展をもたらした。一方、巨大化の弊害も指摘された。ジョン・ロックフェラー氏らが19世紀後半に設立したスタンダード石油は1911年に反トラスト法(独占禁止法)で分割。後に栄えたエクソンやテキサコなど巨大7社も、今は4社に集約された。現在は、肥大化したGAFAに対する逆風が世界で強まる。歴史は繰り返す。データの世紀が問いかけるのは、産業構造の転換や企業間の攻防にとどまらない。石油の世紀には、石油輸出国機構(OPEC)が誕生。中東諸国による石油支配を生み出し、石油危機を通じて先進国経済を大きく揺さぶった。そのアキレスけんを守ろうと米国が同地域に軍事介入する結果となった。データの世紀は米国1強にもみえる。だが世界のルールと一線を画す独自政策で、官民を挙げて世界中からデータの収集にかかる中国のような国もある。ロシアもデータの力で世界を揺さぶる。「宗教や民族や国家といった従来の枠組みに代わり、情報を軸とした新たな世界秩序の構築が始まる」。慶応義塾大学の山本龍彦教授は、そう予言する。その行き先を、まだ誰も知らない。

*2-5:https://digital.asahi.com/articles/DA3S13446853.html (朝日新聞 2018年4月12日) FB全面謝罪、議会追及かわす 情報流出でザッカーバーグ氏、米公聴会証言
 米フェイスブック(FB)のマーク・ザッカーバーグ最高経営責任者(CEO)が10日、米議会上院の公聴会で証言し、最大8700万人の会員情報が不正流出した問題について全面的に謝罪した。だが、利用者の個人情報を利用して収益をあげる巨大IT企業の事業モデルそのものへの不信感は拭えていない。(ワシントン=香取啓介、青山直篤、江渕崇)
■対策講じ、低姿勢貫く
 ダービン議員「昨日どこのホテルに泊まったか教えてくれませんか?」。ザッカーバーグ氏「ここでは明らかにしたくありません」。ダービン氏「これがプライバシー。FBが集めている情報なのです」。公聴会では上院定数の半数近い44人の議員が次々と質問。追及は5時間近くにわたった。普段のTシャツ姿ではなく、紺色のスーツに水色のネクタイを締めて臨んだザッカーバーグ氏。「我々は会社を経営する上でたくさんの間違いを犯してきました」などと対策の遅れや不十分さを謝罪し、低姿勢を貫いた。「世界の人々をつなぐ」との理想を掲げるFBは、誰でも無料で使える。その代わり、利用者がインターネット上に出す個人情報を元にして広告主に広告スペースを提供し、収入を得る。創業14年で、利用者は世界で20億人を超えた。情報の不正流出が発覚したのは3月。アプリを通じて利用者の個人情報が抜き取られ、2016年の米大統領選でトランプ陣営を支援した英選挙コンサル会社に不正利用された疑惑が持ち上がった。偽ニュースの拡散を許し、選挙への介入を招いたとの批判もある。FBは先週来、アプリ開発者の情報へのアクセス制限や広告表示の自主規制など、対策を発表。議員からは政府による規制に関する質問も相次いだが、ザッカーバーグ氏は「正しい規制なら歓迎する」と応じ、論戦にならないようにした。広告なしの有料版を検討しているか問われると「広告モデルが10億人単位の人々にサービスを届ける唯一の道だ」と答えた。追及をかわしたかにみえるザッカーバーグ氏だが、不信感はくすぶっている。「使命よりも広告の価値を上位に置く事業モデルなのに、米国人のプライバシーを守るために自らの意思で本当に変われるとどうして信じられるだろうか」。ハッサン上院議員はこう問いかけた。
■規制強化求める声も
 問題が深刻になった背景には、米巨大IT企業が情報や富を独占し、米政治や社会がその悪影響への懸念を強めていることがある。米調査会社によると、フェイスブックとグーグルだけで昨年の米デジタル広告市場の6割以上を稼ぎ、寡占度合いは年々高まる。欧州に比べ、独占に甘い競争政策をとってきた米国だが、今回の問題を契機に流れが変わる可能性はある。欧州では5月、企業などに個人情報の厳格な扱いを義務づける「一般データ保護規則」が施行される予定で、ザッカーバーグ氏も順守を誓った。米国でも同様の厳しい規制が必要だとする見方が出ている。ニューヨーク大学のロバート・シーマンズ准教授は「データの収集や利用について人々が注意を払うきっかけになった。消費者が完璧なプライバシーを得ることはできなくなっている」と話す。

*2-6:http://www.saga-s.co.jp/articles/-/204114 (佐賀新聞 2018年4月12日) FB悪用対策「不十分」
 米交流サイト大手フェイスブック(FB)のマーク・ザッカーバーグ最高経営責任者(CEO)は10日、個人情報の不正利用やFBを通じたロシアの米大統領選介入など一連の問題について、対策の不備を認めて陳謝した。「悪用防止に十分な対応をしていなかったのは明らかだ。私の過ちで、申し訳ない」と述べた。上院司法委員会と商業科学運輸委員会の合同公聴会に出席した。サイト利用者保護のため、偽アカウントや投稿内容を確認する要員を年内に5千人増やし、約2万人にすると表明。個人情報の収集や利用に関し、規制強化の必要性を指摘する議員らに「正しい規制であれば歓迎する」と一定の理解を示した。一連の問題でのザッカーバーグ氏の議会証言は初めて。反省の姿勢を強調し、イメージ悪化や利用者離れの食い止めを図った。株式市場では再発防止策の説明が評価され、FBの株価は前日と比べ、4・5%上昇した。ザッカーバーグ氏は、モラー特別検察官によるロシア疑惑捜査にFBが協力中だと明らかにした。自身は聴取を受けていないと語った。最大8700万人分の利用者の個人情報を不正取得した英政治コンサルティング会社ケンブリッジ・アナリティカについて、2015年に情報削除を要求したが実際は消されず、確認が足りなかったと責任を認めた。同社は16年米大統領選でトランプ陣営のために個人情報を使ったとされる。大統領選中にFBに虚偽情報を投稿していたロシア企業インターネット・リサーチ・エージェンシーに関し「約470のアカウントやページがあり、約8万件の投稿をしていた。約1億2600万人が影響を受けたと推定される」と説明した。

<研究とデータ分析>
*3-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180402&ng=DGKKZO28858360R00C18A4MM8000 (日経新聞 2018年4月2日) データ分析のプロ、産学で育成 日立など9社、5大学と
 日立製作所やヤマトホールディングスなど大手企業9社がデータ分析の専門家「データサイエンティスト」の育成に乗り出す。東京大学など5大学と組み、企業が持つビッグデータを使った大学院生の育成プログラムを始める。産業のデジタル化と人工知能(AI)の導入が進むなか、データを扱える専門家の層の厚さは企業の競争力を左右する。産学が手を携え実践的な専門家を育てる。データサイエンティストには数値の規則性を探り出したりする統計学に加え、データを取捨選択して問題解決につなげる能力も求められる。業界ごとの課題を理解し企業のエンジニアと意思疎通することも要求される。フリーマーケットアプリ大手のメルカリ(東京・港)ではデータサイエンティストが利用履歴などをもとに、サイト画面の改善や顧客動向の予測につなげている。パナソニックは17年、製品の故障予測などを目指し、優秀なデータサイエンティストが在籍する米企業を数十億円で買収した。日本では統計学を専門に教える大学が少ないなど、育成体制に課題があった。課題解決に向け「一般社団法人サーキュラーエコノミー推進機構」を立ち上げた。日立やヤマトに加え、アステラス製薬、NTTドコモ、MS&ADインシュアランスグループホールディングスなどが参画。元経済産業事務次官の望月晴文氏が代表理事に就いた。推進機構は東大、京都大など5大学と育成プログラムを立ち上げ、大学院生を対象に7週間、データの分析手法を教える。まずは特定の研究室の学生が原則費用負担なしで受講できるようにする。初年度は20~30人を育成し、早期に年間100人体制に増やす。プログラムは参画する事業会社の持つデータを使い、経営課題を解決する人材の確保にもつなげる。物流会社の配送ルートの策定や新薬候補物質の探索方法といったテーマが浮上しているようだ。大学側はプログラムを授業の一環として組み込んだり、単位認定したりすることを検討する。データサイエンティストは争奪戦が激しく、求人情報大手が扱う求人は1年間で6倍近くに増えた。

*3-2:https://toyokeizai.net/articles/-/176110? (東洋経済 2017年6月16日) 日本の科学研究の実力が急速に低下している、政府支出を評価する「独立財政機関」の設置を
末廣 徹 : みずほ証券 シニアマーケットエコノミスト
 2017年度版の「科学技術白書」(6月2日政府、閣議決定)によると、主要な科学論文誌に発表された論文のうち、引用された件数の多い論文の国別順位で、日本はこの10年間で4位から10位に下がっており、基礎研究力の低下が著しいと指摘されている。すでに日本の基礎研究力の低下は議論されており、政府は4月に行われた総合科学技術・イノベーション会議(議長は安倍晋三首相)で名目GDP(国内総生産)600兆円の達成に向け、技術革新を推進するための研究開発への投資額を来年度から3000億円上積みする方針を固めた。生産性向上のためには科学技術のブレークスルーが必要となるが、日本の財政を考えると大盤振る舞いできる状況にはない。第5期科学技術基本計画で示されている「(政府研究開発投資は)対GDP比の1%にすることを目指す」を中心に議論せざるをえないため、研究開発投資の金額を増やすためにはGDPを増やす必要がある。これはつまり、「高い経済成長をするためには高い経済成長が必要である」と言っていることになり、とても苦しい状況だ。3月23日に英国の科学誌『ネイチャー』(Nature)は「日本の科学成果発表の水準は低下しており、ここ10年間で他の科学先進国に後れを取っている」と発表した。世界の8000以上の大学や研究機関における研究を指数化したNature Index(科学論文の本数を指数化したもの)において、日本の論文の割合が2012年から2016年にかけて6%低下したという。指数の水準は米国、中国、ドイツ、英国に続く5位につけているが、2~4位の国とは距離が拡大しつつある。(以下略)

*3-3:http://qbiz.jp/article/131976/1/ (西日本新聞 2018年4月17日) 全国学力テスト、小6と中3で実施 理科加え3教科、7月に結果公表
 小学6年と中学3年の全員を対象にした文部科学省の「全国学力・学習状況調査」(全国学力テスト)が17日、一斉に行われた。国語と算数・数学に加え、3年ぶりに理科を加え3教科で実施し、計約213万4千人が参加。結果は7月に公表する。参加は小学校1万9629校の約107万2千人と、中学校1万80校の約106万2千人。国公立は全校で、私立の参加率は49・8%。東日本大震災で事実上実施できなかった2011年度を除き、今回で11回目となる。同時に子どもたちに学習意欲や生活習慣などを尋ねる質問調査も実施し、さまざまな分析に役立てる。

<データの読み方>
*4-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180402&ng=DGKKZO28791810Q8A330C1TCC000 (日経新聞 2018年4月2日) 寿命 データ活用で延ばす、滋賀県、長野抜き男性1位に 課題見つけ改善策具体的に
 2017年12月に厚生労働省が発表した15年の都道府県別平均寿命で、滋賀県が男性で全国1位、女性で4位となり、長寿県として注目を集める。30年ぶりに男性トップを奪われた長野県は、滋賀県との違いをデータ分析した報告をまとめ、5年後の首位奪還を目指す。全都道府県で平均寿命と健康寿命は延びているものの、データ分析を踏まえた食事、喫煙、運動など生活習慣病の長期的な対策などによって明暗が分かれている。「一に健康、二に健康、三に健康。健やかな滋賀をつくろう」。滋賀県の三日月大造知事は18年1月、年頭の記者会見で「健康」を繰り返して強調し、医療・福祉・保健のネットワーク基盤の拡充と同時に、ビッグデータを活用して取り組むことを宣言した。
●もとは平均以下
 同県は15年の都道府県別の平均寿命で、男性が81.78歳で初めて全国トップになった。女性も87.57歳で4位。三日月知事は「滋賀県民は長生きだと注目された」と喜ぶ。もともと長寿県だったわけではない。約50年前の1965年時点では滋賀県の男性の平均寿命は67.26歳で、全国平均(67.74歳)を下回って全国27位。女性も72.48歳で全国平均(72.92歳)より低く、全国31位にとどまっていた。転機は約30年前から本格的に取り組んだ生活習慣病対策だ。その一つが86年から始めた「滋賀の健康・栄養マップ」調査だ。当時、県民の食事や生活習慣に関するデータは十分に把握できていなかった。「県の情報処理システムが改善され、大きなデータを扱えるようになり、県独自に初めて実施した」(県健康寿命推進課)。5年に1度の調査で県内の地域ごとに県民の健康状態を分析。データに基づき、栄養バランスや運動、余暇、虫歯予防の大切さを伝えるガイドブックを作り、県内全世帯に配った。「健康への1%投資運動」として、1日24時間の1%となる15分程度を散歩や体操など運動に充てることを具体的に県民に呼びかけた。県健康寿命推進課は「主体的に健康づくりに取り組む県民が増えるきっかけにつながった」とみる。喫煙率も男性は5割超だったが、県の計画で2001年に「喫煙率を半減させることが望ましい」と努力目標を設定。数値目標を掲げる自治体は珍しかったが、禁煙か完全分煙を行っているとして登録した飲食店を「受動喫煙ゼロのお店」と公表して後押しした。その結果、喫煙率は激減し、16年に男性で20.6%と全国で最も低い県となった。対策の広がりとともに県の平均寿命の順位は上昇した。男性は05年、10年の調査で2位、今回(15年)調査で初めて1位になった。女性も05年に13位で全国平均を上回り、10年は12位、今回は4位に食い込んだ。
●健康寿命も長く
 自立した生活を過ごせる健康寿命も滋賀県は長い。東京大学大学院の国際保健政策学教室と米ワシントン大学の共同調査によると、滋賀県は男女合わせた健康寿命は15年までの25年間で4.1歳延び、福岡、佐賀と並び全国で最も延びた。「滋賀県と比べ、働き盛り世代で運動習慣のある人が少ない」。0.03歳の僅差で男性の平均寿命トップから30年ぶりに陥落して2位だった長野県は「長野県の健康課題~平均寿命男性1位の滋賀県との対比から」という報告をまとめた。働き盛り世代の運動不足のほか、滋賀県と比べて食塩の摂取量や喫煙者も多いことがトップ陥落の主因として、18年1月中旬に開いた健康づくり推進県民会議で報告を公表。データで課題を明確にし、県民に健康づくりを呼びかけていく。生活習慣病対策を放置すると、平均寿命に大きく響く。長寿県で知られていた沖縄県は00年の調査で女性はトップを維持したが男性は前回調査の4位から一気に26位まで転落。40~50代の脳卒中や糖尿病による死亡率の高さが原因だった。平均寿命が延びても、健康寿命が延びなければ、寝たきりの高齢者が増え、医療・介護費の大幅増になるだけだ。寿命を延ばすための生活習慣病対策は同じ県内でも地域で異なる。財政に限りがある中、データ分析で不十分な分野を見直し、有効な対策を地域ぐるみで採り入れる工夫が必要だ。

*4-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180402&ng=DGKKZO28791850Q8A330C1TCC000 (日経新聞 2018年4月2日) 地域格差、最大で3.1歳 「喫煙対策 強化が必要」
 男女を合わせた平均寿命を1990年と2015年で比べると、都道府県の格差は広がっている。両年とも全国平均以上だったのは19都府県あり、逆にいずれも平均未満だったのは18道府県と二極化している。平均以上から平均未満に転落した県、平均未満から平均以上に改善した県もそれぞれ5県あった。男女合わせた都道府県ごとの寿命のデータは、東京大学大学院の国際保健政策学教室が米ワシントン大と共同で分析した。調査によると、1990年に男女合わせた平均寿命が最も長い長野県(80.2歳)と最も短い青森県(77.7歳)の差は2.5歳だったが、2015年にはトップの滋賀県(84.7歳)と最下位の青森県(81.6歳)の差は3.1歳。25年間で差は0.6歳広がった。健康寿命も1990年に最も長い長野県(71.5歳)と最も短い高知県(69.2歳)の差は2.3歳だったが、2015年にはトップの滋賀県(75.3歳)と最下位の青森県(72.6歳)の差は2.7歳で、0.4歳拡大した。分析した東大大学院の渋谷健司教授は「喫煙対策は強化する必要がある。男女とも食生活の見直しも不可欠」と指摘。「今後、都道府県格差をさらに詳しく分析し、実態を踏まえた対策が必要」と話している。

*4-3:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180403&ng=DGKKZO28902210S8A400C1MM8000 (日経新聞 2018年4月3日) 生活援助 使いすぎ抑制 厚労省 介護計画、月30~40回で届け出
 厚生労働省は介護が必要な高齢者の身の回りを世話する「生活援助」について、平均以上の利用回数になる介護計画(ケアプラン)を市町村に届けるよう義務づける。過剰な利用を洗い出し、本人の自立支援や重度になるのを防ぐ中身かどうか検証する。介護費用の膨張を抑制する狙い。4月中にも正式に決定し、10月から始める。生活援助は介護が必要な高齢者の家を訪問し、掃除や調理、買い物など身の回りを世話する訪問介護サービスの一つ。自己負担は1回数百円と安価に利用できる。その半面、平均を大きく上回る過剰利用が問題視される。厚労省は、利用回数が平均を大きく上回る場合、ケアプランをつくるケアマネジャーに届け出を義務づける。市町村は「必要以上の利用になっていないか」「他のサービスで代替できないのか」などの観点からプランを検証。必要に応じて変更を求める。対象は介護の必要性の度合いで異なるが、おおむね月30~40回前後の利用とし、対象者は年間で数万人規模に上るとみられる。2016年9月のデータによると、生活援助の利用者(48万5千人)は月間平均で11回程度使っている。そのうち31回以上の利用者が2万5千人を占め、100回を超える例もあった。介護給付費は25年にかけて現状の2倍の20兆円規模まで膨らむと予想される。生活援助は給付費の1%程度だが、無駄遣いを指摘する声も多い。定額制の別のサービスがあるのに生活援助を使ったり、生活援助を使いすぎて本人の自立がかえって難しくなったりしていると指摘され、効率化が急務だ。利用回数の上限設定や軽度者の対象除外の是非も議論になっている。厚労省は、不足する生活援助の担い手の育成も始める。新設の短期研修を受ければ、利用者の自宅を訪問して生活援助できる資格を与える。

*4-4:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180419&ng=DGKKZO29537990Y8A410C1MM8000 (日経新聞 2018年4月19日) 介護保険料 止まらぬ上昇、自治体の8割上げ/健保も3割 給付抑制が急務
 介護保険料の引き上げが広がっている。日本経済新聞の調べでは、65歳以上の介護保険料は8割の市区町村で上がった。現役世代が加入する企業の健康保険組合では、全国の約1400組合のうち3割が2018年度に保険料率を引き上げた。介護給付費は過去10年間で57%増え、医療費の伸びを大きく上回る。介護保険制度(総合2面きょうのことば)の維持には給付抑制が課題だ。65歳以上の介護保険は市区町村や広域連合が運営する。保険料は介護サービスに必要な費用の見通しなどをもとに自治体が3年ごとに見直す。18~20年度の基準月額を15~17年度より引き上げた自治体は全体の8割。月額6000円を超える自治体は前期の1割強から4割に増えた。制度が始まった00年度の全国平均は2911円で2倍の水準にあたる。7000円超の自治体も50を上回り、3倍以上になった。基準月額が最も高かったのは福島県葛尾村。9800円と前期から3割引き上げた。「東日本大震災の避難生活の影響もあってか、村内の要介護認定率が高まっている。人口減少で被保険者の数自体も限られている」(住民生活課)。東京都は8700円の青ケ島村、大阪府では大阪市の7927円が最も高かった。最も低かったのは北海道音威子府村で前期と同じ3000円に据え置いた。「村には介護サービスが乏しく給付が少ない。住民も介護が必要になる前にサービスが充実する都市部に転出していく」(住民課)という。40~64歳の会社員らが負担する介護保険料は18年度の月平均が5723円。10年前に比べ45%増えた。特に収入の多い大企業で負担が増している。18年度に保険料率を引き上げたのは450程度で健保全体の3割を占める。JRグループ、ファーストリテイリング、新日鉄住金などの健保が引き上げた。要因は健保加入者の平均収入に応じて、介護納付金の負担額を決める「総報酬割」の導入だ。17年度から段階的に導入しており、20年度に完全実施する。厚生労働省の試算では導入前に比べ、平均で月700円程度の負担増になる見込みだ。社会保険料の負担が増えれば、賃上げ効果が薄まる可能性もある。介護給付費は15年度で約9兆円。10年間で57%増えた。この間の国民医療費の伸びは3割弱だ。一定の給付抑制策は欠かせない。例えば、軽度な要介護者向け料理などの生活援助サービスは一部の利用者が月100回以上使う例がある。回数制限など抜本的な見直しが必要になる。今後の見通しも厳しい。「団塊の世代」が全員75歳以上となる25年度には、65歳以上の保険料はさらに上昇する。沖縄県と大阪府は9000円を超えると推計。東京や京都、石川など11都府県が8000円以上を見込む。保険料は年間で10万円の大台が迫ってくる。調査は日本経済新聞社が4月上旬、全国1571の市区町村などの保険者をまとめている都道府県を対象に実施。広島県を除く46都道府県が回答した。25年度の推計は31都道府県が答えた。

<原発は地球では過去のエネルギー>
PS(2018年4月23、25、28日追加):*5-1のパナソニックのように、新興国や途上国に、教育や地場産業創出の支援として太陽光発電・蓄電システムや照明を寄贈するのはよいことで、パナソニックや日本のよいイメージを新興国や途上国の人に定着させることもできる。
 一方、*5-2のように、日本の経産省有識者会議は「再生可能エネルギーを主力電源にする」という提言をしたが、「原発は温暖化対策のための選択肢として維持し続ける」という姿勢を変えなかった。しかし、公害は二酸化炭素の排出だけでなく、原発によるものもあるため(そんなことも知らずに、気を付けている人に対して、「風評被害」「ポピュリズム」などと言っているのが呆れる)、日本政府は世界に遅れている。また、現在は原発0でも電力に困らないため、可能な限り低減するなら原発は0になるのに、*5-5のように、経産省は新エネルギー基本計画骨子案を示し、再エネを主力電源化するが原発は脱炭素化の選択肢として「可能な限り依存度を低減する」としている。
 なお、*5-3のように、九電は、管内で再稼働を目指していた原発4基全ての再稼働のめどが立ったことで経営を刷新し、新しい取締役常務執行役員の池辺和弘氏は「エネルギーサービスで日本一の会社にしたい」と意気込んでいるそうだ。しかしながら、こういう判断では、世界進出も日本一も難しいと、私は考える。何故なら、*5-4のように、原発輸出は福島原発事故で状況が一変して、多くの原発関連会社が①採算悪化 ②破綻 ③撤退 しているので、もし九電がアフリカでインフラ整備に進出するとすれば、日本と同じ段階を踏む必要はなく、初めから地熱・太陽光等の再エネを基本とした方が世界の潮流に乗っており、感謝されるからだ。

 
 爆発直後の原発  何年も野積みされている除染土  増える汚染水タンク 原発輸出状況
           福島第一原発事故の現実              *5-4より

(図の説明:福島原発事故は過小報道されたが、実際は広い地域が放射性物質で汚染され、その除染土は今でも野済みされたままである。また、汚染水は完全には除染できないため、タンクに溜まっていくばかりだ。もちろん、核廃棄物の最終処分場もない。このように何の解決もできず、国の補助金で成り立っているにもかかわらず、安いから今後も原発を稼働させるというのは、環境と国の財政負担を無視した姿勢である)

*5-1:http://qbiz.jp/article/132436/1/ (西日本新聞 2018年4月23日) パナ、太陽光発電で開発支援 100周年で途上国に
 パナソニックは23日、創業100周年に合わせてアジアやアフリカなどの新興国や途上国を対象に、太陽光発電システムを活用した教育や地場産業の創出といった開発支援を始めたと発表した。十分な電力供給のない地域に太陽光発電・蓄電システムや照明を寄贈するなどして、地域の発展や貧困解消を目指す。まずインドネシア、ミャンマー、ケニアの3カ国で、現地で活動する非政府組織(NGO)などと共同で支援を開始し、対象国・地域を順次拡大する。寄贈したシステムは家庭や学校、集会場の明かりとして使ってもらったり、発電した電気を活用して農産物や水産物の加工といった産業づくりに役立ててもらったりする。パナソニックは、これまでも電力供給のない地域に太陽電池付きの小型照明を寄贈する「ソーラーランタン10万台プロジェクト」を実施。2013年以降、30カ国で10万台以上を無償提供している。

*5-2:http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2018042302000131.html (東京新聞社説 2018年4月23日) 再生可能エネ 主役に起用するのなら
 「再生可能エネルギーを主力化する」-。経済産業省の有識者会議からの提言だ。風力や太陽光を電力の未来を担う主役に据える、というのなら、それなりの舞台と待遇を用意すべきではないか。風力や太陽光といった再生可能エネルギーを「主力電源」にすると持ち上げる一方で、原発は温暖化対策のための「選択肢」として維持し続ける-。二〇五〇年のエネルギー政策はどうあるべきかを考える、経済産業省の有識者会議による提言だ。風力や太陽光は増やしましょう。だが原発に関しても、依存度は小さくするが、なくすわけではないという。相変わらず、どっちつかずと言うしかない。第一に「主力電源」という位置付けが、よく分からない。四年前に閣議決定された国の第四次エネルギー基本計画でも、再生可能エネは「有望かつ重要な低炭素の国産エネルギー」と位置付けられて、最大限、導入を加速するとされてきた。政府は現在、三〇年時点の再生可能エネの比率は、原発とほぼ同じ、22~24%と決めている。“先進国”と言われるドイツは、五〇年までに消費電力の少なくとも80%を再生可能エネルギーで賄う目標を掲げている。そのために、太陽光と風力を最優先で利用してもらい、足らない分を揚水発電やバイオマス発電などで補うよう、電力の供給体制も変えてきた。「主力電源」とうたうからには、少なくとも現行を大幅に上回る導入の数値目標、そして、基幹送電線への優先接続など給電システムの改革案を具体的に明示すべきなのである。送電網の拡充などに時間と費用がかかるという意見もある。しかし、3・11を経験し、原発の新増設は、もう不可能と言っていい。老朽化していく原発に膨大な費用を投じて安全対策を施しながら、あと三十年、恐る恐る使い続けていくよりは、はるかに安上がりかつ合理的ではあるまいか。原発維持は、温室効果ガスの排出をなくしていくためだという。しかし、原発の燃料であるウランの採掘などの過程で、かなりの二酸化炭素(CO2)が排出されるという指摘もある。再生可能エネ普及の加速こそ、脱炭素化の王道でもあり、世界の主流なのである。「脱炭素化のため」と言われても、原発維持の口実にしか聞こえない。

*5-3:http://qbiz.jp/article/132437/1/ (西日本新聞 2018年4月23日) 再稼働めどで九電社長交代 昇格の池辺氏「日本一の会社に」
 九州電力は23日、瓜生道明社長(69)の後任に取締役常務執行役員の池辺和弘氏(60)を昇格する人事を発表した。管内で再稼働を目指していた原発4基全ての再稼働のめどが立ったことで経営を刷新する。6月就任予定で社長交代は6年ぶり。福岡市で記者会見した池辺氏は「エネルギーサービスで日本一の会社にしたい」と意気込んだ。瓜生氏は代表権のある会長に就く。貫正義会長(73)は相談役に退く見通し。瓜生氏は池辺氏を後任の社用に抜てきした理由について「知識もあるが、視野の広さが突出している。今後の難局を乗り越えられる」と述べた。池辺 和弘氏(いけべ・かずひろ)東大卒。81年九州電力。執行役員を経て17年6月から取締役常務執行役員。大分県出身。

*5-4:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180425&ng=DGKKZO29808960V20C18A4EA2000 (日経新聞 2018.4.25) 原発輸出 福島の事故で状況一変
▽…安倍政権は原子力発電所の海外展開を成長戦略の柱に位置づける。民主党政権時代の2009年、アラブ首長国連邦(UAE)の原発新設計画で有力視されていた日立製作所と米ゼネラル・エレクトリック(GE)の企業連合が、官民一体で取り組んだ韓国勢に受注競争で敗れたのがきっかけになった。▽…11年の東京電力福島第1原発の事故を機に状況が変わる。10年にベトナムの原発計画で三菱重工業などが受注する方針が固まったが、ベトナム政府が16年、財政難などを理由に計画中止を決定。トルコ・シノプの原発計画も当初は東芝と東京電力の企業連合が受注する予定だった。▽…国内だけでなく、ドイツやスイス、韓国など脱原発を掲げる国が増え、世界的に需要増は見込めない。仏原発大手、アレバ(現フラマトム社)は原発計画の遅れから採算悪化に陥り、仏政府主導で経営再建を選んだ。東芝も米原発子会社ウエスチングハウスの経営破綻を機に海外事業から撤退。新設計画の先細りに加え、供給体制の弱体化が起きるなど状況が大きく変わっている。

*5-5:http://qbiz.jp/article/132909/1/ (西日本新聞 2018年4月28日) エネルギー基本計画の骨子案を提示 「再生」導入加速促す
 経済産業省は27日、新しいエネルギー基本計画の骨子案を有識者会議に示した。再生可能エネルギーの導入を加速して主力電源化する一方で、原発を「脱炭素化の選択肢」として今後も活用していくのが柱。5月に原案をまとめ、夏にも政府が閣議決定する。基本計画は、これまで2030年に向けた方針を示してきたが、50年を見据えた長期的な視点を取り入れた。地球温暖化対策の国際的な枠組み「パリ協定」で、50年に温室効果ガスを8割削減する目標を掲げており、その達成を目指す。骨子案では、再生エネの発電コストを下げ、余った電気をためる蓄電池などの技術開発を進める。原発については、可能な限り依存度を低減する方針を維持したものの、原発発電比率など50年段階での数値目標は示さなかった。会議では、原発の新増設が明記されていない骨子案に対し、原発推進派の委員から「原発の位置付けがはっきりしない」などと批判が相次いだ。脱原発派の委員からも「原発低減の文言は残っているが、(具体的な)施策が盛り込まれていない」との声が上がった。

<電力へのエネルギーシフト>
PS(2018年4月25、26、27日、5月3日追加):世界最大級の北京国際自動車ショーの報道向け公開が始まり、*6-1のように、世界14カ国・地域から計1200社余りが参加して1000台以上の自動車が展示される見通しで、中国はEVを機にゲームチェンジを図る狙いが伺えるそうだが、中国の政策ならそれが可能だろう。しかし、世界でEV車に変えることは、中国・インドが本格的に市場参入してきた1995年前後に私が日本の経産省に提案したが、日本メーカーは日産自動車以外はEVを作らず、ハイブリッド車でお茶を濁したのである。そして、日本における最初の“空気”は「EVは音がしないから危険だ」「EVは走行距離が短い」などとEVをくさすものばかりで、それを改善しようという努力はなかった。つまり、何に対しても、日本人は、“その場の空気を読む”だけの役立たずが多く、「空気を変えよう」とか「空気をきれいにしよう」と志す人が「変人」や「発達障害」扱いされてイノベーションを阻害するのである。
 そのような中、*6-2のように、安川電機がワイヤレス充電できる電動船を世界で初めて開発したのはよかった。電動タイプを漁船に利用すれば、離島なども地域で発電した電力で操作性の良い漁船を使うことができ、電動タイプを大型船に利用すれば港の水をきれいすることができる。そのため、これは、欧州や中国だけでなく、日本でも普及を推進すべきである。なお、「乗り物が電動化すれば産油国が困るのでは?」と高いエネルギー代を支払いながら言っているド阿呆な日本人もいるが、*6-3のように、サウジアラビア政府は、ムハンマド・ビン・サルマン皇太子の指揮下で脱石油依存の経済改革を進めており、こちらは技術協力した方が感謝される。
 また、日欧の自動車大手は、*6-4のように、中国でEVの現地生産を広げるそうで、特に独BMWのように次世代EVを先行投入するのは競争に勝つための英断だ。日本でもEV化が最も遅れている自動車大手のホンダは、2018年に合弁会社の広汽本田が中国初となるEV生産を開始するそうだが、私の夫は日本でホンダ車に乗っており、そろそろ買い変え時期だが何度も買い変えたくはないのでホンダが日本でEVを発売するまで待っており、私は最近のホンダの動きにとろさを感じている。社内で煮詰まっていると変化できないので、ホンダならBMW・ボルボ等と出資関係を持って取締役を交換してはどうかと考える。
 ジョイントベンチャー(JV)の好事例は、*6-5の富士写真フイルムと英国ゼロックス社の合弁により1962年に創立された「富士ゼロックス(株)」で、ゼロックスの謄写に関するアイデアと富士写真フイルムの確かな写真技術が組み合わさって優秀なコピー機ができている。しかし、富士フイルムホールディングスが米事務大手ゼロックスを全部買収しようとすると、株主から提訴されたりする上、いらぬ部分まで買うことになる。そのため、私は、新ビジネスに有用な部分だけ出し合って新会社を作り、持株会社の下につけた方が双方の株主が納得する上、新会社の階層が浅くて風通しがよく、経営しやすいのではないかと考える。
 なお、*6-6のように、パナソニック、天津力神電池などが数年内に中国で始まるEV電池市場の争奪戦を始めたそうだが、日本は1995年頃からEV電池の開発をしていたのに、日系電池メーカーが何度も戦略転換を強いられるような逆噴射が多く、今頃、あわてて争奪戦に加わっていることが情けない。同じかそれ以上の技術なら、物価水準の低い中国産の方が安くてよいに決まっており、これが変化を嫌がる体質と高コスト構造が日本の製造業を外国に追い出した理由なのである。


*6-4より 北京国際自動車ショー(左から、日産、トヨタ、ホンダ、比亜迪のEV)  

*6-1:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO29814760V20C18A4MM0000/?nf=1 (日経新聞 2018/4/25) 中国、EVで覇権狙う 北京自動車ショー開幕
 世界最大級の自動車展示会、北京国際自動車ショーの報道向け公開が25日午前に始まった。電気自動車(EV)に傾斜する中国メーカーに加え現地で一定の生産比率を義務付けられる日米欧勢も電動技術を誇示した。エンジン車では先進国の壁を越えられなかった中国がEVを機にゲームチェンジを図る狙いが展示からうかがえる。世界14カ国・地域から計1200社余りが参加し、展示する自動車は1000台を上回る見通し。このうち新しいEVとプラグインハイブリッド車(PHV)だけで170台が出展される。会場は中国勢のEVが目立つ。北京汽車集団傘下の北京新能源汽車は人工知能(AI)でエネルギー効率や安全性を高めた車種を披露。北京汽車の徐和誼董事長は「EVやPHVを成長戦略の中心とし世界トップクラス入りを狙う」と話した。日本車では日産自動車が中国で生産するEVを2018年後半に現地で発売すると発表した。トヨタ自動車は20年までに新たに10の電動車を中国で追加する計画を明らかにした。開幕に先立ち独フォルクスワーゲン(VW)のヘルベルト・ディース社長は「中国は世界の自動車産業のカギとなる市場だ」と強調した。中国政府の統計によると、17年のEVとPHVの世界販売台数は142万台。このうち中国は55%を占め78万台と2位の米国の約3.5倍に相当するという。メーカー別でも13万台の比亜迪(BYD)のほか北京汽車と浙江吉利控股集団の年間販売が10万台規模に達した。先進国メーカーでは米テスラが10万3千台で日産自動車は7万3千台。中国勢の販売は大半が現地だが物量の実績で日米欧メーカーに優位に立っている。中国政府は大気汚染や渋滞の対策としてガソリン車の規制を強め、市場が広がった。これを受け現地大手がこぞってEVやPHVに参入し完成車や専用部品を手掛ける300社ものスタートアップが勃興している。将来の基幹産業の芽が育ち、苗●(つちへんに于)・工業情報化相は「市場としての世界一は3年連続だ」と胸を張る。19年にはEVやPHVで一定比率の生産を義務付ける。巨大市場をバックに外資が技術を持ち込まなければ売らせないという得意の誘導策を持ち出した。EVなどで一定比率を生産できないメーカーはクリアしている競合の余剰分を「クレジット」として買い入れないとガソリン車の生産制限を受ける可能性がある。EVの現地生産で出遅れれば成長が難しくなる。一方、50%までとしている自動車メーカーへの外資出資ルールは22年までに全廃する。目指すのは米テスラをはじめとするEVメーカーの誘致だ。規制の強化と緩和の両面の取り組みで中国にEV工場を引き込もうともくろむ。「ガソリン車では外資にかなわなかったがEVでは接近した勝負になる」。工業情報化省幹部は言う。部品点数が減るEVでは先進国メーカーと横一線で開発をスタートできると読む。多くの中国メーカーは出資規制緩和で外資と競うようになる。自動車ショーでは中国勢がその水準に達しているか否かを世界の競合が見定めようとしている。

*6-2:http://qbiz.jp/article/132575/1/ (西日本新聞 2018年4月25日) 世界初、電動船ワイヤレス充電 安川電機が開発 プラグ接続不要、煩雑さ軽減
 安川電機(北九州市)は24日、電気で動く「電気推進船」向けの非接触型(ワイヤレス)充電システムを世界で初めて開発したと明らかにした。欧州を皮切りに中国などで本格販売を始める。二酸化炭素(CO2)削減を目的とした欧州の環境規制などで電気推進船の導入拡大が見込まれており、充電システムを含む船舶関連事業を新たな収益事業の一つに育てる構えだ。電気推進船はバッテリーにためた電気で動く「電気タイプ」と、重油などを使い船内の発電機でモーターを動かす「ハイブリッドタイプ」があり、同社のシステムは電気タイプ向け。港の岸壁に送電設備を設置し、受電設備のある船が近づくと、電気を供給する仕組み。バッテリーに充電して推進用のモーターを動かすほか、船内の照明や空調などの電気設備に利用する。現在は岸壁の充電スタンドからプラグを接続して給電しており、システム導入で充電の煩雑さの軽減が図れる。国土交通省によると国内の電気推進船は現在33隻。ディーゼルエンジンの船舶に比べ揺れが少ないため、多くが旅客船として活用されているという。環境面に加え、大型のエンジンが不要で船内の空きスペースが増えるなどのメリットもあり、欧州や中国でも小、中型の観光船や貨物船に導入され、大型化に向けた研究開発も進んでいる。安川電機は2020年に欧州で船舶に対する排ガス規制が強化されるため、電気推進船の導入が進むと予想。16年に買収したフィンランドの船舶エンジン機器メーカー「バルチラ社」の船舶用電気推進装置部門のノウハウと、自社のコンバーター技術を融合させ、今回の充電システムを開発したという。18年2月期に10億円弱だった船舶事業売上高を、21年2月期には80億円まで伸ばすことを目指す。扇博幸システムエンジニアリング部長は「技術を強みに競争力を高め、新たな分野を開拓していく」と話した。

*6-3:http://qbiz.jp/article/132599/1/ (西日本新聞 2018年4月25日) サウジ、石油外収入1.2兆円 脱依存へ数値目標
 サウジアラビア政府は24日、ムハンマド・ビン・サルマン皇太子の指揮下で進める脱石油依存の経済改革で、国営企業の民営化などにより2020年までに石油以外の収入として90億ドル〜110億ドル(約9800億〜1兆2千億円)を達成することを柱とする計画文書を発表した。ロイター通信などが報じた。サウジ政府は世界最大の石油企業である国営サウジ・アラムコの新規株式公開を目玉に、石油依存からの脱却を目指す経済構造改革「ビジョン2030」を推進中。今回の文書は20年までの数値目標を示しており、最大1万2千人の雇用創出も盛り込んだ。

*6-4:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180426&ng=DGKKZO29830190V20C18A4EA2000 (日経新聞 2018年4月26日) トヨタ、自社開発EVを中国生産 20年発売 北京自動車ショー 日産・BMWも現地投入
 日欧の自動車大手が中国で電気自動車(EV)の現地生産を広げる。トヨタ自動車は25日に開幕した北京国際自動車ショーで、自社開発のEVを中国で生産して2020年に発売する戦略を示した。独BMWなどは次世代EVを先行投入する。中国は世界最先端のエコカー市場になり重要度が一段と高まる。「EVを他地域に先駆けてやっていく」。トヨタ自動車の中国本部長、小林一弘専務役員は同日、モーターショー会場でこう述べた。自社開発EVを中国で現地生産することを初めて示した。中国政府は19年にEVなどを一定比率生産することを義務付けた。これに対応できないメーカーは対応済みの競合メーカーの余剰分を「クレジット」として買い入れないとガソリン車の生産制限を受ける可能性がある。トヨタは中国の合弁相手2社からEVを調達し、19年にも販売することを検討していた。中国のEV市場拡大と規制強化をにらみ、現地生産に踏み切る。「カローラ」と「レビン」のプラグインハイブリッド車(PHV)を19年から現地生産で発売する。20年までにPHVやEVなど新たに電動車10車種を追加し、電動車の中核部品の現地生産も進める考えを示した。日産自動車はトヨタに先駆けて、中国で生産するEVを18年後半に現地で発売する。ホンダも18年に合弁会社の広汽本田が中国初となるEVの生産を開始。19年にはもう一つの合弁会社の東風本田でもEVの生産を始める計画だ。EVシフトで先行する欧州メーカーも中国で生産・開発を強化する。独BMWはEVやPHVの「iシリーズ」から多目的スポーツ車(SUV)の「iX3」のコンセプト車を初公開した。20年に中国で世界に先行して発売する計画。中国以外の発売は未定で現地生産も予定する。ハラルト・クリューガー社長は「(iX3は)ゲームチェンジャーになる。中国はあらゆる車で先行する」と話した。独フォルクスワーゲン(VW)は21年までに中国の6工場でEVなど電動車の生産を始める。22年までに中国で電動化や自動運転、コネクテッド技術などへの投資に150億ユーロ(約2兆円)を充てる方針を発表した。全世界で340億ユーロ(約4兆6600億円)の投資を計画するうち、4割以上を中国に投じる計算だ。中国の吉利傘下のスウェーデンの自動車大手、ボルボ・カーも25年までに販売台数の半分をEVにすると発表した。

*6-5:http://qbiz.jp/article/132867/1/ (西日本新聞 2018年4月27日) ゼロックス買収交渉再開か 富士フイルム、ロイター報道
 富士フイルムホールディングス(HD)による米事務大手ゼロックスの買収計画を巡り、ロイター通信は26日、米ゼロックス側がニューヨークの裁判所に富士フイルムHDとの交渉再開を伝えたと報じた。関係者の話としている。米ゼロックスは、計画が富士フイルムHD側に有利な内容だとして反対する米国の物言う株主から提訴されている。富士フイルムHDが1月に発表した買収計画は、米ゼロックスと合弁子会社の富士ゼロックスを経営統合させ、米ゼロックス株の過半を取得する内容。今年7〜9月期の手続き完了を目指すとしていた。ペーパーレス化が進む事務機市場で生き残るための大型再編が狙い。

*6-6:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO30095740S8A500C1XA0000/ (日経新聞 2018年5月3日、日経産業新聞 2018年5月2日) 「EV電池」争奪戦前夜、最大手パナも正念場
 中国で数年内に始まると確実視されるのが、電気自動車(EV)電池市場の争奪戦だ。中国政府の政策変更で日本勢が苦しんできた中国勢優位のハンディは解消に向かう。野心的な中国メーカーの追い上げを許すまいと、世界首位のパナソニックも将来の市場拡大に備える。日中企業同士のつばぜり合いがにわかに激しさを増してきた。北京市内から南東方面に2時間ほど車を走らせると、中国電池大手、天津力神電池の本社が見えてくる。力神は中国国有企業の傘下で、1997年に創業。米アップル、米デル、韓国サムスン電子グループ、華為技術(ファーウェイ)など向けにパソコンやスマホの電池を供給してきた。2019年に始まる新エネルギー車(NEV)規制では自動車メーカーが一定比率のEVやPHVなどNEVの製造・販売を義務付けられる。大量の電池を確保できるかは死活問題。力神のある社員は「日本車向けにまだ実績はないが、検討中の話はある」と明かす。
■驚異的な成長曲線、中国勢が大増産
 力神は車載電池では12年に電動バス向けの供給を始めたにすぎない新興メーカーだが、驚異的な成長曲線を描く。17年には車載用と民生用を合わせた電池の生産能力で10ギガワット時に到達した。すべてが車載向けではないが「電気自動車(EV)需要の高まりに対応するため、20年には30ギガワット時、25年には60ギガワット時まで伸ばしていく」(同社)と威勢が良い。世界首位のパナソニックが米テスラとネバダ州に建設した巨大電池工場「ギガファクトリー」の能力が35ギガワット時。中国新興メーカーの工場のスケールの大きさがわかる。「将来EVブームに本当に火がつけば、大きな電池のキャパが必要になる。例えば(2000億円前後を投資した)ギガファクトリーが10個分くらい。そのときが本当の勝負。そのときに勝てるよう準備を進めていきたい」。パナソニックの津賀一宏社長は電池事業の将来像をこう語る。
■政策変更で日本勢にも勝機
 ただ近年、日系電池メーカーは何度も戦略転換を強いられてきた。日産自動車はNECと共同出資した車載電池子会社を中国の投資ファンドに売却。GSユアサは独ボッシュなどとの車載電池セル開発の合弁会社を解消した。パナソニックはトヨタと協業検討する形で、テスラ傾倒のリスクを分散する方針に転じた。防戦一方の展開を強いられる要因だったのが、中国の自国優位の政策だった。ただ政府が補助金を与える電池メーカーを選ぶ「ホワイトリスト」制度が事実上形骸化した。ホワイトリストに代わって16年ごろから始まった現在の電動車向け補助金制度は、日系電池メーカーの電池を搭載した車も対象になりそうだ。日系や欧米の自動車メーカーによるNEVの製造・販売は19年から本格化する見込み。トヨタ自動車は4月25日に開幕した北京国際自動車ショーで、自社開発のEVを中国で生産して20年に発売する戦略を明らかにした。ホンダもEVやプラグインハイブリッド車(PHV)など20車種超を25年までに投入する計画を発表。中国でのビジネスチャンス拡大の可能性は大きく広がってきた。中国勢は強気の投資計画をぶち上げる。中国電池最大手の寧徳時代新能源科技(CATL)は20年に50ギガワット時規模まで増産する計画を発表。NEVへの対応を急ぐ日系自動車などグローバルメーカーへの供給拡大をもくろむ考えが透ける。日本も負けていない。出荷量ベースで自動車向けリチウムイオン電池世界首位のパナソニックは、大連工場(遼寧省)で3月から車載用リチウムイオン電池の量産出荷を始めた。まずは北米向け出荷から始めたが「早ければ年内にも中国合弁向けに出荷を始める」(車載担当の久田元史氏)と、鼻息は荒い。1年後に控えるNEV規制という号砲は、従来の完成車メーカーと電池メーカーの序列を変える可能性すら秘める。パナソニックを筆頭とする「日の丸電池」にとっては難しいかじ取りを迫られる半面、最大のチャンスにもなる。

<バラマキ外交と国民負担増>
PS(2018年4月30日):*7-1のように、世耕経産相が北極圏ヤマル半島で昨年末に生産を始めた液化天然ガス施設や積出港の視察でロシアを訪問し、日本のLNG購入や事業出資で日ロ経済協力計画を進める方針とのことである。しかし、購買力平価によるGDPも技術力(分野によっては日本より上)もさほど変わらないロシアからLNGを高く買うことで、エネルギーのために国富を流出させて経済協力しようという頭は20~30年古い(もちろん、他より高く買えば売る国からは喜ばれるが、それは売る側には能力があるが買う側は馬鹿ということだ)。
 一方で、*7-2のように、日本にも「メタンハイドレート」という天然ガス資源が無尽蔵に存在し、既にガス生産に成功しており、こちらなら国富が国内で循環して海外に出ない。エネルギーとしてなら、水素や再エネによる電力の方が公害を出さないため優れているが、天然ガスを使うのなら国産を使うべきだ。
 また、日本政府は、これだけ無能な放漫経営をして国民に負担をかけながら、福祉となると、*7-3のように、財政逼迫として負担増・給付減を続けている。そのため、政府・メディア関係者は、憲法改正を言う前に、まず現在の日本国憲法(特に第25条)をよく理解すべきだ。

*7-1:http://qbiz.jp/article/132952/1/ (西日本新聞 2018年4月29日) 北極LNG事業に日本参加を期待 ロシア閣僚、世耕経産相を案内
 世耕弘成経済産業相は29日、北極圏のロシア北部ヤマル半島で進む天然ガス開発で、昨年末に生産を始めた液化天然ガス(LNG)施設や積み出し港を視察するため、ヤマロ・ネネツ自治管区サベッタを訪れた。日本のLNG購入や事業出資に期待するロシアのオレシキン経済発展相が案内した。「ヤマル」は「サハリン2」に続くロシアで2番目のLNG事業。ロシア天然ガス大手ノバテクが主導し、フランスのトタル、中国石油天然ガス集団(CNPC)も出資するが、日本側の購入契約はない。ノバテクは2022年以降に予定する新たなLNG事業「北極2」に出資するよう日本に促している。ヤマルの生産能力は年550万トン。19年には1650万トンに増やし、サハリン2を上回る見通し。近隣の北極2も同等の巨大事業で、日本政府は「LNGの一大供給源」になると注目している。ノバテク幹部は29日、世耕氏や同行した日本企業幹部らに対し、北極2について説明。ただ北極2は、冬に氷で覆われる北極海航路を使うため、輸送コストや供給の安定性に問題がある。また、日本勢が出資し日本の輸入の約1割を占めるサハリン2も生産拡大を検討中で、北極2と競合する恐れがある。世耕氏は28日、モスクワでシュワロフ第1副首相らと会談した。5月下旬に予定される安倍晋三首相のロシア訪問に向け、日ロ経済協力計画を進め、成果にする方針だ。

*7-2:http://www.itmedia.co.jp/smartjapan/articles/1705/09/news077.html (スマートジャパン 2017年5月9日) 自然エネルギー:夢の国産天然ガス資源「メタンハイドレート」、4年ぶりにガス産出に成功
 日本近海の海底に分布し、国産の天然ガス資源として期待されている「メタンハイドレート」。資源エネルギー庁が愛知県と三重県の沖合で進めているメタンハイドレートら天然ガスを取り出す海洋試験で、4年ぶりにガス生産に成功した。メタンハイドレートは天然ガスの主成分であるメタンと水が低温かつ高圧の状態で結晶化した物質で、地球上では極地や深海にのみ存在する。過去の政府の調査で東部南海トラフ海域には、メタンに換算して約1.1兆m3の砂層型メタンハイドレートが存在すると推定されている。これは日本の2015年のLNG輸入量に換算して、約11年分に相当する量だ。国内で消費するLNGのほとんどを海外からの輸入に頼る日本にとって、メタンハイドレートを資源として利用できるようにするメリットは大きい。ポイントは、水深1000m以深のさらに海底下数百mに分布するメタンハイドレートから、いかに天然ガスの主成分であるメタンガスを取り出すかだ。深海の地層の中に固体として存在するメタンハイドレートをエネルギーとして利用するには、分解してメタンガスと水に分け、さらにメタンガスだけを回収する必要がある。資源エネルギー庁は2013年3月に今回と同じ愛知県と三重県の沖合にある第二渥美海丘で、メタンハイドレートからメタンガスを生産する第1回の海洋産出試験を実施している。地球深部探査船「ちきゅう」を使用して約6日間にわたってメタンガスを連続生産することができた。そして2017年4月7日から4年ぶりとなる第2回の海洋産出試験を実施し、5月4日の10時頃にメタンガスの生産を確認できた。第2回の試験では、第1回と同様に「減圧法」という手法でメタンハイドレートからメタンガスを取り出している。これは坑井内の圧力を減少させてメタンハイドレートを分解する方法だ。この他には坑井内に温水を循環させてメタンハイドレートを加温て分解する「温水循環法」などがある。減圧法で課題となるのが、出砂対策だ。第二渥美海丘にある砂層型と呼ばれるメタンハイドレートからメタンガスを取り出すと、同時に砂が出てくる。第1回の試験ではこの砂がパイプつまるトラブルが発生したため、当初の予定より早く生産を打ち切らなくてはならなかった。そこで今回は異なる出砂対策を施した2本の生産用坑井を用い、まず一方の坑井で3~4週間程度のガスの連続生産を行うことが1つの目標となっている。次にもう一方の坑井において、1週間程度のガスの連続生産を試みる。試験は2016年6月下旬頃まで行う予定だ。

*7-3:https://www.agrinews.co.jp/p43861.html (日本農業新聞論説 2018年4月21日) 改正介護保険法 利用者に不安与えるな
 改正介護保険法が4月、スタートした。介護保険財政の逼迫(ひっぱく)は深刻な現実だが、給付費削減へ向けて利用者や事業者に負担を求めるだけでは課題は解決しない。「介護の社会化で生活の質を高める」という創設の原点に立ち返って、「地域福祉」の在り方を考える必要がある。今回の制度改定は「2025年問題」への対策が柱。自己負担額の見直しや、介護予防を強化し「自立支援」に積極的に取り組む事業者への報酬を手厚くすることなどが特徴だ。「2025年問題」とは、団塊の世代が75歳以上となって超高齢社会が到来し、介護や医療など社会保障の給付と負担が一段と増すことを指す。25年には、75歳以上が約2200万人になるという推計があり、総人口に占める割合は2割。1割だった10年に比べると、急速に高齢化が進んでいく。この問題を視野に入れた主な改正のポイントは、自己負担額での3割負担の導入や、介護予防による「自立支援」を重視したことだ。医療との連携や、リハビリテーションの強化で介護不要な状態までの改善を目指し、成果を上げた事業者へ報酬を手厚くする。だが、事業者が改善の見込みがある人だけを選んだり、保険料を払っても望むサービスを受けられなくなったりする懸念がある。身体的な介護予防に力点を置いた場合、認知症の人への支援はどうするのかなど、さまざまな課題がある。介護保険制度は2000年にスタート。背景にあったのは、①家族介護で特に女性に重い負担がかかる②在宅介護ができないと病院へ(社会的入院)③病院で尊厳が軽視される──といった社会状況だった。制度導入前、介護は家族内の問題であり、“できれば家の奥に隠しておきたいこと”だった。取材を受けてくれる家族を探すのも困難だった。公的介護サービスが当たり前になっている現在と比べると、制度が定着していることを実感する。状況は明らかに改善した。一方で、3年ごとに行われる制度の見直しが財政面にばかりに目が向くきらいがある。制度の安定的な運用は重要だが、「高齢者自らがサービスを選び、決定することで尊厳が守られる」とした制度の理念を置き去りにするようなことは許されない。介護サービスを必要とする高齢者が安心して利用できる制度が「尊厳」の出発点となる。介護の目的は食事や排せつ、入浴などの支援(サービス提供)だけにあるのではない。人と人の良い関係に基づいた支援により、人間らしい生活を送ることにある。地域に密着したJAの強みは、このような関係性を築いてきたことだ。地域の食と農を生かし、女性部パワーを活用したきめ細かな対応で、利用者に喜ばれる高齢者支援活動を続けていきたい。

<自然を知って活用すべき>
PS(2018/5/2追加):*8-1のように、今治市の松山刑務所大井造船作業場から脱走した平尾受刑者は尾道市の向島から泳いで本州に渡ったそうだが、警察もメディアも流れが速く水温が低いので島内での潜伏を有力視して、警察犬も導入し延べ1万5000人(日当1万円とすると、人だけで1.5億円)を投じて向島内を捜索していた。しかし、尾道水道は最も狭い所で200メートルしかなく、満潮・干潮間の潮目が変わる時には流れが止まり(この潮流変化を利用したのが「壇ノ浦の戦い」で、源氏が平家に勝った戦法である)、泳ぐとエネルギーを使って暑くなるのでこのくらいの水温は問題なく、私でも泳いで渡ることができる。そのため、海辺で育った男性なら潜って渡ることも可能だろうと、私は思っていた。しかし、警察やメディアは、「季節や日によっては潮の流れが速い」などと言って、1日に2回ある満潮・干潮間の潮流の停止を未だ知らないようである。この警察やメディアの問題点は、地元の人に聞けばすぐわかる情報を入手せず、自然に関する知識もないため、判断が誤っているということだ。そして、これは、警察やメディアに限らず農水省・国土交通省の官僚や裁判官にもそういう人が多いため、根の深い問題なのである。ただ、この事件が長期間報道されたおかげで、この地域は島が多く流れの早くなる場所も多いため潮流発電に向いており、オリーブやアーモンドなど地中海のような作物を植えて、計画的に都会や海外から新しい住民を呼び寄せたらよいということもわかった。
 このような中、*8-2のように、佐賀、福岡、熊本3県の漁業団体は1日、福岡高裁が示した開門に代わる100億円基金案による和解を「強く期待する」との統一文書を発表したそうだが、確かに本質ではなく策略でゲームのように国を動かそうとする官僚や政治家は多い。しかし、人間は自然の代弁者にすぎないため、このやり方では、人間は動かせても自然の仕返しを受けるだろう。私も、この状況なら、調整池からの排水が有明海に行き渡るようにこまめに排水する必要があると思うが、それは潮受け堤防の排水口に発電機をつけて干満差6メートルの海で満潮・干潮毎に発電しながら行えば、ポンプを使うよりも排水のメリットが出て、安価にこまめな排水ができると考える。

*8-1:https://www.jiji.com/jc/article?k=2018050100122&g=soc (時事通信 2018/5/1) 「泳いだ」海、最短200メートル=逃走経路の解明急ぐ-受刑者脱走 
 愛媛県今治市の松山刑務所大井造船作業場から受刑者の平尾龍磨容疑者(27)が脱走し22日ぶりに逮捕された事件で、県警などは1日、逃走経路などについて本格的な捜査を始めた。平尾容疑者は潜伏していた広島県尾道市の向島から「泳いで本州に渡った」と供述。対岸の同市内までは最短距離で200メートルほどで、泳いで渡ることは可能という。向島は広さ約22平方キロメートル。山林に覆われ、空き家が1000戸以上点在する。広島、愛媛両県警は、平尾容疑者が脱走した4月8日から延べ1万5000人を投じて捜索。同24日には、島北部の防犯カメラに平尾容疑者とみられる男が映っていたことが分かった。両県警は、島内の港や本州につながる道路で検問を実施していることや、海水の温度が15度前後と低いことから、島内での潜伏を有力視していた。平尾容疑者は、向島と本州の間にある尾道水道を泳いで渡ったとみられる。尾道海上保安部によると、尾道水道は最も狭い所で200メートルほど。季節や日によっては潮の流れが速いが、「泳ぎの得意な人なら、泳ぎ切ることはできる。場所を選べば渡れる」という。平尾容疑者は向島で「空き家に潜伏していた」と供述。逮捕された際は、脱走時と異なる衣服を着ていた。現金などを盗みながら空き家を転々としていた可能性があり、両県警は足取りを詳しく調べる。愛媛県警は1日午後、平尾容疑者を送検した。

*8-2:http://qbiz.jp/article/133103/1/ (西日本新聞 2018年5月2日) 佐賀県漁協が諫干「非開門」容認に転換 原告の漁業者側は反発
 国営諫早湾干拓事業(長崎県諫早市)の潮受け堤防開門を巡る訴訟の和解協議に関し、佐賀、福岡、熊本3県の漁業団体は1日、福岡高裁が示した開門に代わる100億円基金案による和解を「強く期待する」との統一文書を発表した。佐賀県有明海漁協は100億円基金案に一貫して反対してきたが、容認にかじを切った形だ。訴訟当事者の漁業者側の孤立化は必至だが、和解協議を拒否する姿勢を崩しておらず、和解成立が厳しい状況に変わりはない。3県の漁業団体は訴訟の当事者ではないが、基金を運営する立場。統一文書では「高裁が示した開門しない前提の和解協議を進めて欲しいとの考えで一致」と明記し、国の基金案とともに有明海再生事業の継続やこまめな排水の確実な実施、基金とは別枠での排水ポンプの増設を和解協議で取り上げるよう求めている。佐賀県の漁協では諫早湾に近い西南部5支所が、干拓による漁業被害を訴えており、開門調査を求める意見は根強いが、統一文書の文言調整については4月24日の運営委員長会議で執行部に一任されていた。福岡、熊本の漁業団体トップと1日に福岡県柳川市で会見した佐賀県有明海漁協の徳永重昭組合長は、報道陣に方針転換かどうかを問われ「裁判所が開門しないことを前提に勧告しているので、そう捉えざるを得ない」と説明。「有明海再生に向け、いろんな意味で弾みがついてほしい」と話した。一方、漁業者側の馬奈木昭雄弁護団長は統一文書について「和解実現を望む思いは受け止めるが、非開門を前提とする和解案は明らかに間違っている」と強調し、従来通り和解協議を拒否する考えを示した。3県漁業団体は8日、統一文書を斎藤健農相に提出する方針。判決期日は7月30日。
   ◇   ◇
●開門見えず苦肉の容認 「和解拒めば基金逃す」 国予算でも揺さぶられ
 「福岡高裁が示した和解の実現を強く期待する」。国営諫早湾干拓事業の開門を巡る訴訟の和解協議に関し、佐賀県有明海漁協が1日、開門によらない和解を容認する姿勢に転じた。湾の潮受け堤防が閉め切られて21年。これまで開門断念につながるような選択は突っぱねてきた。何が契機となったのか。
■福岡、熊本に歩調
 和解案容認派の福岡、熊本両県の漁業団体に、佐賀も歩調を合わせた。
3県のトップが顔をそろえ、統一文書を発表した1日の記者会見。佐賀の徳永重昭組合長は「ここ(統一文書)に書いていることが全て」と険しい表情を浮かべた。一方で、福岡高裁が和解勧告で示した開門に代わる基金案については最後まで言及を避けた。佐賀には、国に開門を求める裁判の原告漁業者や諫早湾の近くで赤潮被害に苦しむ漁業者がいる。これが福岡、熊本の漁業団体との「最大の違い」(漁協幹部)で、非開門の和解案を拒んできた理由だ。
しかし、漁協幹部や県関係者には懸念が広がっていた。昨年4月に「開門しない」と方針決定した国に反発し続ければ「予算を削られかねない」。2018年度政府予算では、開門調査を命じた10年の確定判決後、農林水産省が計上してきた開門準備経費が消えた。毎年約18億円を計上する有明海再生事業も「国の予算は単年度ごとに決まる」(農水省)と見直しに含みを持たせる。
■漁業者から不安
 「開門」を求める佐賀の有明海西南部の漁業者からも「基金案を拒み続けたら開門も基金も逃しかねない」との声が出てきた。7月に予定される福岡高裁判決は和解勧告を踏まえ「非開門の決断が下される」とみられているためだ。国の“揺さぶり”に呼応するように、福岡、熊本両県の漁業団体が佐賀説得に動いた。佐賀県漁協内部は「原告団の一部がいるのに、容認は口が裂けても言えない」「福岡、熊本から『俺たちの気持ちをくんでほしい』と言われる」との意見が交錯。板挟みとなった。
■「包囲網」が完成
 こうした状況に佐賀県も現実路線に転じた。これまで開門を求め「漁業者に寄り添う」としてきた山口祥義知事は今、「漁協に寄り添う」と県漁協の組織決定に重きを置く。県幹部も、諫早湾を閉め切った調整池からの小まめな排水で有明海が再生すれば「開門調査に代わりうる」と3月の県議会で説明。地元県議は「県の対応は以前とまったく変わった。高裁の和解勧告が引き金になった」と憤る。決着を急ぎたい国は判決ではなく、和解による解決を望んでいるが、原告漁業者が協議を拒んでいる。佐賀県漁協の「和解容認」で、原告を協議のテーブルへ引っ張り出す“包囲網”が完成したといえる。「ニンジンをぶら下げて(相手を)動かす。国には策士がいる」。佐賀県漁協の幹部は歯がみした。

| 経済・雇用::2018.1~ | 03:35 PM | comments (x) | trackback (x) |
2018.4.6 女性活躍を、女性の地位向上ではなく、少子化対策と捉えた点が誤りなのである (2018年4月7、8、11、12、13、14、15、18、19日に追加あり)
   
 出生数と合計特殊出生率   人口の高齢化  未来予測     日本の人口推移
             2018.3.31朝日新聞
(図の説明:1番左のグラフのように、戦後しばらくは合計特殊出生率が2~5で人口過剰が懸念されたが、1970年以降は一貫して2を下回り、次第に下がった。その結果、左から2番目のグラフのように高齢者の割合が増えたが、これは戦後の特殊状況・産業革命・医療の進歩などによる一過性のもので、第1次及び第2次ベビーブーム世代が亡くなると、人口は漸減しながら安定する。しかし、人間も生物であるため、人口密度が低くなって住みやすくなると出生率が上がって均衡人口に達するため、一番右のグラフのような産業革命前まで戻る著しい減少はしない)

(1)文明の進歩とともに向上すべき女性の地位
1)女性を土俵に上げないという伝統
 多々見市長が土俵上で倒れ、すぐに女性2人が土俵に上がって心臓マッサージを始めたのに対し、*1-1のように、行司が、「(「お客様の中に医療関係者はいませんか?」ではなく)女性は土俵を降りて下さい」とアナウンスし、「行司が動揺したため」と弁解されているが、「①土俵は神聖な場所であるため、女性を上げないことが何より重要」「②人命にかかわる緊急時のみ不適切な対応だった」としており、これは相撲文化の本質的な問題である。

 そして、①は江戸期からの伝統だそうだが、「女性は不浄だから神聖な場所には入れない」という伝統こそ昔から行われている仏教や儒教に基づく女性差別の継承であり、女性に対して失礼である。これに疑問のある人は、「女性は不浄だ」という理由を挙げ、それは現在も本当か否かを考えてみればよい。

 また、②は、「緊急時に女性を使うことだけ許す」と言っているのであり、やはり女性蔑視だ。さらに、*1-2のように、兵庫県宝塚市で4月6日に開かれる大相撲「宝塚場所」では、同市の中川智子市長が、巡業実行委員会に「土俵上で挨拶したい」と意向を伝えたところ、「土俵の下で挨拶して欲しい」と断られたそうだが、かつて、森山眞弓官房長官や大田房江大阪府知事も土俵に上がるのを断られた経緯がある。

 そのため、女性首長に対して敬意がなく、「女性は不浄だから男性だけ神聖な場所に入る資格がある」などと考えているスポーツに女性ファンがいることの方が不思議であり、相撲は自らの顧客に女性がいることを忘れてはならない。

2)女人禁制の伝統に疑問を持たない女性活躍相は、ジェンダーの解消に役立たない
 野田女性活躍相は、*1-3のように、「土俵上での医療従事者の救命活動は当たり前」としながらも、「この国の伝統を重んじる一人として、これまで(女性が土俵に上がれないことに)疑問を持ってこなかった」としている。しかし、このようなジェンダーギャップに疑問を感じない女性活躍相では、いくらその地位にいても本当にやるべき改革はできない。

 このように、伝統や歴史の名の下に、女性を多くの土俵から締め出した結果、*1-4のように、世界経済フォーラムが2017年11月2日に発表したグローバル・ジェンダー・ギャップ指数で、日本は144カ国のうち114位となった。そして、*1-5のように、英誌が発表した「ガラスの天井ランキング(2018年版)」でも、主要29カ国中28位とワースト2位となり、OECDによると、日本の大卒女性の就業率は諸外国に比べて低く、日本は高学歴女性を生かしていないとのことである。また、日本は女性管理職比率や所得の男女差など10項目のほとんどで各国平均を下回っており、日本は存在する人材を活かして使っていないという結果になっている。

(2)ジェンダー(社会的性差別)はどうやって作られるのか 
1)女性への専業主婦の勧め
 私は、専業主婦を選択した女性が「働いていない」「活躍していない」と考えたことはなく、“お役所仕事”をしている人(男女とも)よりも、毎日、マルチタスクで結果を出さなければならない仕事をしていると思っている。

 しかし、*2-1のように、「①専業主婦の私は輝ける」「②夫や息子の幸せを支えるのが誇り」などと、自分の選択を正当化して唱えなければならないところが専業主婦の気の毒なところで、これは、家事がシャドウ・ワークであり、金を稼ぐことで評価されないからだが、家事を全部外部委託すれば、20~40万円/月の外部委託費がかかるので、外部委託していない人は、それだけの働きを自分でしていることになる。

 が、栄養が十分な現在、“土鍋で炊いた十六穀米”は過剰だろうし、オートミールクッキー・ヨーグルトババロアの手作りは、品質のよいそれらの既製品が容易に手に入る以上、効率性を欠いており、趣味の領域に入るだろう。

 ただ、「みんなの幸せを支えているのは私」と誇るのはよいが、人を支えるだけが誇りと言うのは女性に強いられる悲しいジェンダーであり、「で、貴女自身は何を志したの?」と、働き続けることを選択した私は言いたくなるのだが、本当は、どの選択をするのも自由な筈である。しかし、働き続けたくても社会的サポート不足でそれがかなわず、女性に二者択一を迫って少子化に導いたのが日本政府なのだ。
 
2)お母さんに強要される専業主婦と非正規雇用(雇用主から見れば、安価で雇用調整しやすい便利な労働力) ← 子供に降り注ぐジェンダー観
 *2-2のように、子ども番組の歌のお兄さんが、①母親になる前はヒールをはき ②ネイルをして立派に働けるって強がっていた ③おかあさんになった今、爪を切り、走ることができる服を着て、パートに行く と、日本全国の子どもたちに向かって歌って聞かせる。

 ネイルをするのは、爪の健康に悪い上、しっかり手を洗えないので衛生的でなく、知的とは言えないが、ヒールのある靴を履いてかっこよくおしゃれをしながら、いつも走って立派に働いているのは、教育を受けた女性なら当然のことだ。しかし、子どもの頃から、それを「強がり」と刷り込むのが、我が国のジェンダー(社会的性差)教育の始まりなのである。

 また、女性に対する自己犠牲の奨めが強く、それでも「おかあさんになれてよかった」と女性を締めさせ、子どもを産まない女性やバリバリ働く女性は間違っていると子どもに刷り込む。そのような社会的刺激のシャワーの中で育った子どもたちは、どういう母や女性を理想とするようになるか。こうして、女性に自発的に自由を捨て去ることを強い、女性差別を維持しようとしているのが、我が国の現在の問題なのである。

3)「主役として地位を得たがる女性は性格が悪い」という刷り込み
 政治家で、いろいろな組織の理事や監事をしている人は多いが、*2-3のように、熊本市議会議員の北口氏は兼業禁止規定に違反したとして、議員資格なしとする資格決定書を熊本市議会が全会一致で議決したそうだ。

 しかし、何を言われるかわからないので兼業しない私には、長く役職についておらずブランクが長いとして立候補にマイナスであるかのように言う人が少なくなく、女性が男性を支えるのではなく議員や管理職などの役職に就くのが気に入らないため、何とかケチをつけているのが見え見えである。

 そして、こういうことを多くの人が疑問を感じずに受け入れる理由は、「自己を犠牲にして夫や子どもを支えるのではなく、主役として地位を得たがる女性は性格が悪い」という、(2)2)のような幼い頃からの刷り込みのシャワーがあるからだ。

 なお、北口氏は市職員にパワハラ行為があったともされているが、若くない女性がいたらない部下に注意をするとパワハラと言われることが多いのも女性の仕事をやりにくくしており、これは私も経験済みで、長く働いている女性を「お局様」と言う陰口が今でも通っているのと同じ古い感覚によるものである。

(3)人口減という論点設定の誤り
 少子化と人口減が問題だと説き、1番上の1番右のグラフのような架空の人口動態を示して騒ぐ論調は多いが、*3-1のように、女性やシニアの労働参加率が上昇すれば、人口減の中でも、しばらくは就業者の数が増え続ける。その増加カーブが頭打ちになる頃には、AI利用による生産性の向上を失業なく行うことができ、外国人労働者も導入して、世界に貢献しながら日本の労働力を満たすことができるだろう。

 さらに、*3-2のように、 ①人口増加は経済成長の大きな要因でない ②終戦直後には人口過剰問題への懸念が強かった ③生産性の継続的な上昇を促す経済政策を行うべき と主張する人もおり、私はこれに賛成だ。つまり、労働者に差別なく経験を積ませて生産性を上げれば、人々の福利を増しつつ明るい未来を作り出すことができるが、そのためには、我が国に逆方向に突っ走っている余裕などはないのである。

<女性は土俵に上げない伝統>
*1-1:https://digital.asahi.com/articles/DA3S13438719.html (朝日新聞 2018年4月6日) 「女性は土俵降りて」、波紋 大相撲巡業、救助中アナウンス
 京都府舞鶴市で4日にあった大相撲春巡業の舞鶴場所で、「女人禁制」の土俵上で倒れた多々見良三・同市長(67)の救助をした女性に、行司が土俵から降りるようアナウンスをした問題をめぐり、波紋が広がっている。日本相撲協会は5日、女性に直接謝罪したい意向を示した。
■「女人禁制」 行司「動揺し」
 4日午後2時過ぎ。土俵であいさつをしていた多々見市長が倒れた。70代男性は、市長のあいさつする声がいつもより力んでいるように聞こえたといい、「張り切っているんだな」と感じた。だが、間もなく市長は、何の前触れもなく後ろへ倒れたという。土俵の近くで見ていた60代女性によると、すぐに女性2人が土俵に上がり、「胸を開けてください」と叫ぶと心臓マッサージを始めたという。その後、「女性の方は土俵から降りてください」とのアナウンスが繰り返し流れたが、救急隊員らが交代するまで救助活動を続けた。70代男性は「なぜ降りろ、というかわからず、後になって女人禁制のことだとわかった」という。主催した実行委員会の河田友宏委員長(78)は「しきたりはしきたりだが、人の命がかかっているときに言うことではない。救命措置がなかったらどうなっていたかと思うし、とても感謝している」。女性たちには看護師も含まれていた。舞鶴市によると、多々見市長が倒れた原因は、くも膜下出血といい、市内の病院で手術を終え、経過は良好という。声を発したのは進行役の若手行司だった。「動揺した。女性が上がっているというのが頭の中で膨らんだ」と説明したという。八角理事長(元横綱北勝海)は同日夜、「とっさの応急処置をしてくださった女性の方々に深く感謝申し上げます」とした上で、アナウンスについて「人命にかかわる状況には不適切な対応でした。深くお詫(わ)び申し上げます」とコメントを出した。
■江戸期からの「伝統」
 女人禁制は、江戸時代の勧進相撲の頃から続いている。協会に残る資料には「女子は土俵に上がれない。固く禁じられている。理由は土俵は神聖なる場所であるため、このしきたりは勧進相撲当初より守られている」とある。現在も、引退相撲の際の断髪でも女性は国技館の土俵には上がれず、土俵下ではさみを入れている。協会は伝統・文化としての相撲道を守る立場として、ちょんまげや着物姿と同様に女人禁制も維持したい考えだ。米国出身のリー・トンプソン早大教授(スポーツ社会学)は「『女性であること』を何よりも優先する考えは時代遅れ」と指摘する。八角理事長のコメントに触れ、「かたくなに女性が土俵に上がることを拒否してきた協会が、緊急時では土俵に上がって良いと許容した。ある意味で『進歩』」と話す。ノンフィクション作家の長田渚左さんはアナウンスには「臨機応変な対応が出来ない。女性ならずともあきれかえったのではないか」とした上で、「協会が自分たちで作ったルールならそれはそれで結構。ただし、今後に備えて対応は考えて欲しい」とした。横綱白鵬は取材に「世界大会で女性が土俵に上がるのを見たこともあるし、(女性がいるのは)あまり違和感はない。本場所だったらまた別の話だけど」と話した。報告を受けた協会ナンバー2の尾車事業部長(元大関琴風)は「人命第一なのは誰もが分かっていること。女性が土俵に上がれないのは次元が違う話」と述べ、救命活動にあたった女性らに、八角理事長が直接感謝と謝罪を伝えたい意向があることも明らかにした。

*1-2:https://digital.asahi.com/articles/DA3S13438721.html?ref=pcviewpage (朝日新聞 2018年4月6日) 土俵上あいさつ、女性市長できず 「宝塚場所」、実行委断る 大相撲巡業
 兵庫県宝塚市で6日に開かれる予定の大相撲の地方巡業「宝塚場所」で、同市の中川智子市長が、企業などでつくる巡業の実行委員会に「土俵上であいさつしたい」との意向を伝えたところ、断られていたことがわかった。中川市長によると、5日朝、土俵上でのあいさつについて実行委に打診したが、日本相撲協会と相談した結果として「相撲の伝統に配慮し、土俵の下であいさつしてほしい」と断られたという。中川市長は昨年の「宝塚場所」でも土俵の下であいさつしており、昨年同様の対応を求められたという。中川市長は「平等の観点からおかしいのではないか」と話している。

*1-3:https://digital.asahi.com/articles/ASL4632BVL46UTFK004.html?iref=comtop_8_03 (朝日新聞 2018年4月6日) 野田女性活躍相、土俵上の救命活動「至極当たり前」
 京都府舞鶴市での大相撲春巡業で、「女人禁制」の土俵上で倒れた市長を救助した女性に、行司が土俵から降りるようアナウンスしたことについて、野田聖子・女性活躍担当相は6日の閣議後会見で、「日本相撲協会が不適切だったと謝罪したのは、その通りだ」と述べ、行司の対応に問題があったとの認識を示した。野田氏は「土俵の上とはいえ、市長は生命の危機にあり、医療従事者が救命活動をすることは至極当たり前」と強調。土俵の女人禁制について「この国の伝統を重んじる一人として、これまで疑問を持ってこなかった」とも述べた。今後のあり方については「相撲協会が今回の事例を受けてどう歩んでいくか決めてほしい」とした。

*1-4:https://www.nichibenren.or.jp/activity/document/statement/year/2017/171201.html (日弁連会長声明 2017年12月1日 日本弁護士連合会会長 中本和洋) 世界経済フォーラムのジェンダーギャップ指数に対する会長談話
 世界経済フォーラム(WEF、本部・ジュネーブ)は、2017年11月2日、同年の世界各国の男女平等の度合を指数化した「グローバル・ジェンダー・ギャップ」を発表した。日本は、調査対象144か国のうち、114位と前年より3つ順位を落とし、過去最低となった。2015年が101位、2016年が111位と年々順位を落としている。ジェンダーギャップ指数は、女性の地位を、経済、政治、教育、健康の4分野で分析し、ランク付けしているが、日本は、経済114位、政治参画123位であるのに対し、教育74位、健康1位と分野間のばらつきが大きい。特に、女性の地位改善の鍵ともいうべき政治分野が最も順位が低く、国会議員の男女比が129位、閣僚の男女比は昨年の50位から88位と大幅に落ち込んでいる。生活の基盤となる経済は昨年の118位から若干改善したが、給与格差、管理職や専門職での男女比は、いずれも100位以下と低い。教育の分野では、初等・中等教育や識字率が1位であるため、教育全体では74位であるが、高等教育は101位といまだに低い水準にとどまっている。日本政府は、「すべての女性が輝く社会づくり」をその重点課題に掲げ、2017年6月6日には「女性活躍加速のための重点方針2017」を明らかにした。その中で、女性の職業生活における活躍の推進に関する法律が完全に施行されてから1年余りが経過し、「女性活躍は大きなうねりになっている」との現状認識を示し、また女性活躍の実現に不可欠な働き方改革の取組を今後も強力に進めるとしている。しかし、2017年のジェンダーギャップ指数は調査が始まってから過去最低の順位を記録しており、上記施策が十分に成果を上げたとは言いがたい。国民の半数を占める女性の意見が十分に反映されてこそ、男女平等の視点を有する各種施策の立案が可能となることから、女性の政治参加は、あらゆる分野における女性の地位向上のための必須の条件である。当連合会においても、会内における男女共同参画の重点課題として、意思決定過程への女性会員の参画拡大に取り組んでいるところである。また、高等教育における格差解消は、社会に出てからの経済分野や政治分野における男女格差の改善に大きな影響を及ぼすことから、政府の掲げる女性活躍推進における有効な布石となるはずである。したがって、当連合会は、日本政府に対し、2017年のジェンダーギャップ指数の順位が過去最低となった事実を厳粛に受け止め、女性活躍を更に推進するために、働き方改革の取組にとどまらず、女性の政治参加及び高等教育における男女格差解消を重点課題とし、我が国のあらゆる分野にはびこっている性差別を根絶するためのより実効性のある具体的措置、施策を早急に講じるよう求めるものである。

*1-5:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO27824790X00C18A3EA1000/?nf=1 (日経新聞 2018/3/7) 大卒女性、生かせぬ日本 先進国で就業率の低さ顕著
 3月8日は国連が定めた国際女性デー。英誌がこの日にあわせ発表した「ガラスの天井」ランキング(2018年版)で、日本は主要29カ国中28位とワースト2位に甘んじた。経済協力開発機構(OECD)によると、大卒女性の就業率が日本は諸外国に比べ低く、高学歴女性を生かしきれていない。労働力人口が縮むなか、「眠れる宝」の掘り起こしは急務だ。英エコノミスト誌のランキングは、女性管理職比率や所得の男女差など10項目のデータを基に計算。日本はほとんどの項目で各国平均を下回り、17年版と同じ28位。韓国と最下位を争った。安倍晋三首相が施政方針演説で「女性が輝く日本」をつくると明言したのは13年2月。17年の女性就業者が2859万人に上るなど、働く女性は5年間で200万人増えた。子育て期に就業率が下がる「M字カーブ」現象も解消されつつある。ただ、非正規女性の増加が数字を押し上げている面もあり、企業の女性管理職比率は12.1%(16年度)、役員比率は3.7%(17年、上場企業)にとどまる。女性活躍の質が伴わない一因は高学歴女性の就業率の低さにある。OECDの最新データ(16年)によると、日本の大卒女性就業率は74%でOECD加盟35カ国中29位。先進国の間でも低さが際立つ。男女格差も著しい。教育投資が経済活動に十分還元されておらず、社会的な損失は大きい。大卒女性の就業率が低いのは、仕事と生活の両立が難しく、結婚・出産での退職が多かったからだ。再就職先はパートタイムや定型業務などに限られがちで収入も低い。日本女子大学はこんな高学歴主婦らの再就職支援プログラム「リカレント教育課程」を開いている。会計学などを1年学び実践力を磨き直す。受講生の7割は他大出身。慶応大と東京女子大、早稲田大が上位を占める。人手不足を背景に企業も目を向ける。同教育課程が2月に開いた就職合同会社説明会には37社が参加した。「数年前まで参加は10社程度だった。ブランクはあるものの、高い潜在能力に企業も気づいた」(事務局)。女性総合職の離職を防ぎ、幹部候補として養成を急ぐ動きもある。サントリーホールディングスは育児休業でのキャリアロスを防ぐため、早期復帰を支援。保育所に入れなくてもベビーシッターを会社が手配するなど、希望時期に必ず復職できるようにした。女性役員養成に国も動く。内閣府は17年度、役員候補女性を育てる研修を開いた。グローバル経営など経営幹部に必要な知識を教えた。女性活躍の推進で多様な価値観を組織に入れると企業の競争力は高まる。先進国が取り組みを急ぐなか、その遅れは日本企業がグローバル市場で戦う際にマイナスとなる。OECD東京センターの村上由美子所長は「日本は取り組みのスピードが遅く、海外との差はむしろ広がっている。年功序列から成果主義への転換など、労働市場の構造改革が必要だ」と話す。

<日本における専業主婦と非正規雇用のススメ>
*2-1:https://digital.asahi.com/articles/DA3S13299330.html (朝日新聞 2018年1月4日) (家族って:3)専業主婦の私、輝けるのに 夫や息子の幸せ、支える誇り
 かつて「男は仕事、女は主婦」が理想とされた時代がありました。「女性活躍」の波が押し寄せるなか、専業主婦たちはやり場のない思いを抱えます。家族を送り出した後、リビングで1人。水戸市の斉藤綾さん(43)は、いつものように朝食をとりながら朝刊をめくる。安倍政権が掲げる「女性活躍」の記事を見るたび、ため息が漏れる。「専業主婦は、活躍していないの?」長男(17)の妊娠を機に勤めを辞めた。午前6時に起きて朝食作り。家族の健康のため、平日は土鍋で炊いた十六穀米と、ネギとすりゴマ入りの納豆を欠かさず用意する。午前7時40分からが自分の朝食の時間。起床後、初めて腰を下ろす。その後は朝から3回転させた洗濯物を干す。ベランダの限られたスペースに、乾きやすく干すよう気を配る。そして掃除機をかけ、床や窓を拭く。3LDKすべての部屋をきれいにする。次男(12)が下校すると、おやつの時間だ。オートミールクッキーやヨーグルトババロアは手作り。その後、宿題を見て、習い事へ送る。会社員の夫(46)と長男は帰宅時間が異なるため、それぞれに夕食を温め直して出す。後片付けや翌日のお弁当の準備を終えると、午後11時を回る。疲れと満足感で、すぐ眠りに落ちる。毎日、ほぼ同じ流れを繰り返す。昨年のクリスマスイブ。子どもたちと作ったピザやケーキで食卓を囲むと、夫が「幸せだな」とつぶやいた。「みんなの幸せを支えているのは私」。誇らしかった。ずっと勤めに出ないでいると、「具合でも悪いの?」と心配する人もいた。友人からは「働かざる者食うべからずよ」と言われた。専業主婦世帯は1997年以降、共働き世帯を下回り続けている。女性の社会進出に加え、景気の低迷から共働きでないと生活できない世帯が増えたことも背景にある。斉藤さんも、司書の資格を取って図書館で働きたいと思うこともある。でも、一番力を注ぎたいのは家族のサポート。外でパワー全開で頑張れるよう、日常のすべてを整えることに徹したい。家族の予定や健康の管理など、物事を同時並行でこなす家事は「マルチタスク」だと思う。専業主婦には多くの能力が必要とされる。そんな自負がある。「女性活躍」を押し出して女性に働くことを奨励する政権に、「家事や育児だって働く人と同じように輝けるのに」と感じる。仕事をしたい女性が働きやすい社会にするのは大事なこと。でも、こんな思いはぬぐえない。「国は働け働けと言うけれど、専業主婦は十分働いている。社会は、どんな選択も受け入れてほしい」
■子どもが成長した後は…焦りも
 覚悟したはずだった。それなのに、子どもの寝顔を見ながら自分の存在価値を確かめたくなる夜がある。福島県の真由美さん(34)は、会社員の夫と2歳の長男の3人暮らし。大学卒業後、大手証券会社の専門職などで働いた。遠距離恋愛の末に結婚した夫は、毎年のように転勤がある。「一緒にいたい」という思いが勝り、専業主婦になった。夫は激務。ほとんどの時間を長男と過ごす。スイミングやリトミックと、2人一緒にいるのは楽しい。だけど、いつも不安と隣り合わせだ。「息子が成長した時、自分には何が残っているんだろう」。為替の動きを注視し、情報の最先端に触れていた日々は遠くなった。夫の転勤のたびに転職はできないが、「社会の波に乗っていない」と感じる。ブランクが長くなるほど仕事を見つけづらくなる。焦りを覚える。東京都の佑子さん(32)は金融機関で働き、早朝から夜まで仕事に明け暮れていた。やりがいを感じていたが、子育て中の社員はほとんどいなかった。5年前の結婚を機に転職。その会社も妊娠中に入院が長引き退職した。4歳になった長女は、ひらがなを覚え、ピアノで曲も弾けるようになった。なのに、自分は何も変わっていない。娘の幼稚園ではパートに出るママ友が増えた。娘の教育費のために自分も働きたい。でも、夫は残業が多く、休日も出勤する。夫に相談すると「申し訳ないけど、家のことはお手伝い程度しかできないと思う」と返された。遠方に住む両親には頼れない。「仕事をしたら自分に負担がかかるのは目に見えている」。専業主婦は365日営業。終わりが見えない。

*2-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180212&ng=DGKKZO26738260Z00C18A2TY5000 (日経新聞 2018.2.12) 歌詞が「自己犠牲を美化」と炎上 何とも苛烈な「理想の母」 詩人・社会学者 水無田気流
 絵本作家・のぶみ作詞、元NHKの子ども番組の歌のお兄さん・横山だいすけ歌の「あたし おかあさんだから」の歌詞が、ネット上で炎上している。とりわけ当事者である母親たちからは反発され、ツイッター上には「あたし おかあさんだけど」という反論があふれている。歌詞は「母になって我慢するようになったこと」が列挙される構成で、批判の内容は(1)母の過度の自己犠牲の当然視、(2)働く女性や子どもを産んでいない女性への無自覚な非難の2点に集約される。作者は実際に母親たちの話を聴いて作ったと説明するが、反感を買ったのはなぜか。第一に「子どものためにすべてをささげて自己犠牲に励む母」対「自分のことだけ考えるキャリアウーマン」の二項対立図式が、独善的だからであろう。歌詞が描く「おかあさん」はこうだ。母親になる前はヒールをはき、ネイルをして「立派に働けるって強がってた」。しかし今は、爪を切り、走ることができる服を着て、パートに行く。なぜなら、「あたし おかあさんだから」。これでは、子どもを産まない女性やバリバリ働く女性は間違っていると読めてしまう。第二に、母の自己犠牲の程度が極端で、俗世を離れ一切の我欲を捨てるべしという、修行僧か修験者のような子育てを推奨する点だ。歌の中で「おかあさん」は、好きなことも服を買うこともやめて、食事も趣味も子ども中心に変え、「それ全部より おかあさんになれてよかった」と締める。最後まで父親は不在だ。私見では、母子の生活とは、他の家族や地域コミュニティなどからなる日常生活の一環だ。そしていつか、子どもは社会に出ていく。そのときまでには、親が子を一方的に守るだけではない、互いに独立した個人として尊重し合う人間関係を築く必要がある。だが「あなたのために、すべてあきらめて尽くしたのに……」という母では、健全な巣立ちも子どもの自立も困難になるのではあるまいか。女性は「母」になると「個人」として生きることが困難になる。自由は誰もが保障された権利だが、極論すればこの国で「理想の母親」となることは、「人として当たり前の自由や権利の放棄」に結びつくほど苛烈だ。しかもそれは、「美しい」「正しい」母親像の称揚によって、女性たちに「自発的に」自由を捨て去ることを強いてきた。本件が示す問題の根は深い。

*2-3:https://mainichi.jp/articles/20180327/k00/00m/010/100000c (毎日新聞 2018年3月26日) 熊本市議会:北口和皇氏が失職 兼業禁止規定に違反
 熊本市議会は26日、北口和皇(かずこ)市議(59)が地方自治法の兼業禁止規定に違反したとして、議員資格なしとする「資格決定書」を全会一致で議決した。同日付で失職した北口氏は決定の取り消しを求め熊本県知事に審査請求する方針。市議会によると、北口氏が組合長だった市漁協は、北口氏が会長を務める別の団体からの再委託分を含めると、市からの業務委託費が2015年度に事業収入の6割を超えていた。市議会特別委員会は議員が自治体と請負関係になることを禁じた兼業禁止規定に抵触するとしていた。北口氏は「再委託は請負と評価すべきではない」と反論しており「最後まで徹底的に争いたい」とコメントした。北口氏を巡っては市職員へのパワハラ行為があったなどとして、15年11月以降、議員辞職勧告を4回受けていた。

<人口減という論点設定の誤り>
*3-1:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO25268100Q7A231C1SHA000/?n_cid=NMAIL006 (日経新聞 2017/12/31) 人口減でも増える労働力 18年最多へ、女性けん引
 働く人の数が2018年に過去最高となりそうだ。人口が減少する中でも女性やシニアの労働参加率が上昇しているためで、就業者の数は当面、増え続ける見通し。ただいずれ臨界点が訪れ、20年代前半にも就業者の増加カーブが頭打ちになるとの観測も広がる。今後の成長には誰もが働きやすい労働慣行づくりや、人工知能(AI)などによる生産性向上が一段と重要になる。主な働き手となってきた15~64歳の「生産年齢人口」は現在、約7600万人。少子高齢化が進み、この20年で約1割減った。主要国の中でも突出したテンポで減少が続いている。にもかかわらず実際に働く就業者数は伸び続けている。17年は11月までの平均で6528万人と、前年を約1%上回った。過去2番目の水準だった98年の6514万人を超えるのが確実だ。18年も過去5年並みの伸び率が実現すれば、統計が残る53年以降で最高だった97年の6557万人を突破する可能性が高い。高度成長期の「いざなぎ景気」を上回る長さで12年末から続く緩やかな景気回復で労働参加が増え、働く意思のある人のうち就業している人はこの5年で急増した。生産年齢人口に対する比率で見ても13年に初めて8割を超え、足元では85%を上回る。けん引しているのは女性やシニアだ。15~64歳の女性で働いている人の割合は11月に68.2%と5年前に比べて6.7ポイント上昇し、過去最高水準にある。経済協力開発機構(OECD)によると、生産年齢人口に占める女性の就業率は米国を13年に抜き、主要先進国と遜色ない水準まできた。65歳以上の働くシニアの割合も98年以来の高さで、体力が必要で若い人を求めてきた介護現場で働く人も増えている。すでに働く意思を持つほぼ全員が職に就ける完全雇用の状態にある。問題は働く人をどこまで増やせるかにある。SMBC日興証券は人口の動きから判断して、最も楽観的なケースで就業者数は6950万人くらいが限界だとはじく。息の長い景気回復で各年齢層の労働参加率の上昇テンポが2倍に速まると仮定すると、働く人は年およそ50万人ずつ増やせる。女性の労働参加率が男性並みに高まるという前提だ。ただいずれ女性の働き手も枯渇し、25年をピークにいよいよ減少に転じる見込み。今のような景気回復が続けば「20年代前半に頭打ちになる可能性が高い」(同社の宮前耕也氏)。さらに厳しい見方もある。みずほ総合研究所の堀江奈保子氏は「人口減少と高齢化で労働参加率が今後上昇する余地は限られており、20年ごろには減少に転じるとみるのが現実的」とみる。失業率や各年齢層の労働参加率がほぼ変わらないと仮定して推計すると、25年に就業者数は6000万人を割るという。働く人の数が減少し始める中で成長し続けるには、従業員1人当たりの付加価値(労働生産性)向上が必要になる。日本生産性本部によると、16年の1人当たり労働生産性はOECD加盟35カ国の中で21位にとどまっている。人手不足を受けて企業は省力化の設備投資を増やしている。リクルートワークス研究所によるとAIや機械による労働の代替が進んで労働力が余り、今は24年ぶりの低水準にある失業率が25年までに再び大きく上がる可能性がある。多くの企業では余剰人員が生まれるため、より成長性の高い分野に人が転職しやすい市場を整備すれば、人材難を緩和できそうだ。より少ない人数で多くの付加価値を生み出せるようになれば収益力は落とさずにすむ。大きな課題としては、外国人労働者の受け入れもある。日本で働く外国人は16年10月時点で108万人と5年間で5割以上増えた。ただ留学生のアルバイトや、国際貢献を建前として受け入れている技能実習生が全体の4割を占める。日本総合研究所の山田久主席研究員は「意欲や能力が高い外国人を真正面から受け入れる制度にすべきだ」という。共働きの制約となっている配偶者控除など、税制面でも抜本的な見直しが必要との指摘は多い。働く女性を支えるため、男性が育児休業を取得しやすくするような環境も大切だ。年金制度を含む社会保障制度についても、高齢者の就労をさらに促進する方向で改革を進める。労働供給のカベとの闘いは、これからが本番となる。

*3-2: https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180109&ng=DGKKZO25360070V00C18A1KE8000 (日経新聞 2018.1.9) 時代の節目に考える(4)人口減・高齢化言い訳にせず、逆手に生産性上昇めざせ 星岳雄(ほしたけお:スタンフォード大学教授 1960年生まれ。東京大教養卒、MIT博士。専門は金融・日本経済)
<ポイント>
  ○人口増加は経済成長の大きな要因でない
  ○終戦直後には人口過剰問題への懸念強く
  ○生産性の継続的な上昇を促す経済政策を
 2018年はいろいろな意味で節目の年である。世界金融危機から10年、日本の銀行危機のピークからも20年になる。そして平成の時代は30年目を迎え、19年には元号が改まることになった。また中国の改革開放が始まったのは40年前であり、全世界で反体制のデモや暴動が広がった「動乱の1968年」からも50年だ。もっと長期的にみると、18年は明治維新から150年にあたる。この150年間、日本は目覚ましい成長を遂げた。明治初期には3500万人に満たなかった人口は、大正に5千万人、昭和に6千万人を超えた。67年に1億人に達した後も増え続け、今世紀には1億2700万人台に達した。1人あたり国内総生産(GDP)は、明治初期には750ドル程度(各国の購買力平価と物価変動率を基に90年時点のドルに換算)だったが、1916年には2倍の1500ドルを超えた。第2次世界大戦など多くのショックはあったが、57年にそのまた2倍の3千ドルに達し、高度成長期を経て90年代半ばには2万ドルを超えた(英経済学者アンガス・マディソン氏の統計による)。しかし2000年代半ばになると人口は減少に転じ、50年代には1億人を切る見通しだ。2115年には大正初期の人口とほぼ同じ5千万人に戻ってしまうと予測される。経済成長もこのところ停滞が続いている。2017年の成長率は久しぶりに2%に近づきそうだが、この好景気が長く続くとみる人は少ない。人口減少と高齢化は今後の経済成長にどのような影響を与えるのか。それを考えるのが本稿の目的だ。人口が減少する中で、経済も停滞を続け、このままでは日本は超長期的には消滅してしまうのか。新春にふさわしくない話題だと読むのをやめる読者がいると困るので結論を先に言うと、人口減少と高齢化は経済の停滞を運命づけるものではない。むしろ場合によっては、人口減少や高齢化が経済を活性化する可能性すらある。人口減少と経済成長を考えるとき、GDPなどにより測られる経済全体の産出量を、「人口」「労働力/人口」「産出量/労働力」の3つに分解すると説明しやすい。すなわち産出量は人口と労働参加率と労働生産性を掛け合わせたものであり、経済成長率は人口増加率、労働参加率の上昇率、そして生産性上昇率の3つの要因を足し合わせたものになる。表は、この数式に1956年から2015年の日本の数値を当てはめて計算した結果を示したものだ。日本の経済成長率がここ60年で著しく低下したことが明らかにみてとれる。高度成長時代の年率約8%の成長率が、1970年代後半からは3~4%に低下し、90年代半ば以降は1%程度に落ちてしまった。また高度成長への人口要因の直接的な貢献(人口増加率と労働参加率の上昇率を足したもの)は1~1.5%にすぎなかったこともわかる。残りの7%程度の成長は生産性上昇によるものだった。76~95年の期間は、人口要因の貢献がほとんど変わらなかったにもかかわらず、経済成長率が鈍化した時代だった。そして96年以降は、最終的には人口要因により、年率0.1%以下ではあるが、成長に対してマイナスの影響を与えるようになった。さらに生産性上昇率が一段と低下することにより、日本経済は停滞に陥った。こうして実際の数値をみると、人口増加は経済成長の大きな要因ではなかったことがわかる。同様に最近の人口減少と高齢化も経済成長にマイナスの影響を与えるものの、決定的な要因とは言えない。高度成長にしても最近の経済停滞にしても、人口要因の直接的な影響よりも、生産性上昇のほうがより大きな役割を果たしたのである。経済成長が人口増加によりもたらされるわけではなく、経済停滞も人口減少の必然的結果ではない。そもそも人口減少が経済成長の大きな制約要因と認識されるようになったのは最近のことだ。70年前の1948年、日本の人口が8千万人を超えた年に、読売新聞(9月14日付)は「人口問題に関心を持て」という社説を掲載した。ここでの人口問題とは人口過剰問題だ。日本の国土に相応な5千万人程度の人口を超える無責任な人口増加が「戦争誘致の最大なる原因」だったと指摘した。人口8千万人という「われわれの歴史あつて以来初めて」の状況でまた過ちを繰り返さないように、「国民が如何(いか)なる原因でこうした非合理な無自覚な出産をつゞけているかという根本問題」を考えなければならないと論じた。人口問題とは人口過剰問題であるという認識は、当時は常識的なものだった。実際にはその後、日本は高度成長を達成することで、8千万人が何とか生活を維持できるかどうかという状態から、1億人以上の人々が豊かな生活を実現できるまでに発展した。人口増加が経済成長を引き起こしたのではなく、むしろ経済成長が人口増加を可能にしたのである。こう考えると人口が減少すると、極端に高い生産性の上昇がなくても、豊かな社会の維持が可能になることがわかる。人口減少と高齢化が進むので、経済の停滞は避けられないという議論は、単なる言い訳にすぎない。重要なのは、人口が減っても高い経済成長を実現する生産性の上昇であり、それを可能にする経済改革である。具体的にはどのような改革なのか。詳しく立ち入ることはできないが、アニル・カシャップ米シカゴ大教授との共著「何が日本の経済成長を止めたのか」(2013年)での結論を繰り返そう。最も重要なのは、規制改革、国際的経済活動の自由化、健全な競争を妨げるような弱者保護の政策の是正などの思い切った施策を通じて日本経済の新陳代謝を高め、最新の知識や技術がより早く経済活動に反映される環境を整えていくことだ。人口減少と高齢化は、経済成長に与える負の影響がそれほど大きくないだけでなく、むしろ逆手に取ることで生産性の上昇の誘因ともなる。例えば日銀の2017年7月の「経済・物価情勢の展望」では興味深い分析を報告している。産業レベルでみると、人手不足の度合いが高い産業で、IT(Information Technology=情報技術)を活用した効率化投資がより活発になっているというのだ。人口減少と高齢化が、従来の生産方法の継続に大きな課題を与えるときに、労働生産性を上げていくような投資が起こりやすくなるのは、理にかなったことだ。こうしたことが実際に起きているのか、今後緻密な実証研究が期待される。人口減少は、AI(Artificial Intelligence=人工知能)の発達により今後人間の職がなくなっていくという、現在注目を浴びている問題にも関わってくる。労働力人口が減っていく社会では、そうしたAIによる人間労働の代替は、むしろ歓迎される可能性が高い。日本の持続的な経済成長にとって、人口減少と高齢化は致命的な問題ではない。生産性の継続的な上昇を可能にするような経済改革を実現することにより、日本経済は成長を続けることができる。こう考えると、日本経済の近未来は明るくなる。人口減少を恐れるべきではない。

<ジェンダー押し付けの結果>
PS(2018年4月7日追加):遺伝子によって生物学的に決まる性以外に、人間には社会的に押し付けられる性(ジェンダー)が存在する。この社会的性差は、時代によって変化する上、同時代の人の中にも当然バラエティーがある。しかし、近年は、誰でも“普通”でなければならないかのような圧力が強く、よほどしっかりした人でなければ自分が性同一性障害と勘違いしてしまうこともありそうであるため、不可逆的な性別適合手術を行うにあたっては、必ず遺伝子検査をして生物学的性が第二次性徴と異なるか否かを確かめる等、慎重な対応が求められる。

*4:https://ryukyushimpo.jp/kyodo/entry-696427.html (琉球新報 2018年4月7日) 性別適合手術で保険初適用 岡山大病院、負担3割に
 心と体の性が一致しない性同一性障害(GID)の人の性別適合手術で、公的医療保険の対象となる全国初の手術が岡山市の岡山大病院で実施されたことが7日、分かった。今月から始まった制度で、保険適用により自己負担は3割となる。GID学会理事長の中塚幹也・岡山大大学院教授(生殖医学)によると、手術を受けたのは近畿地方に住む20代。女性から男性の体にするため、6日に乳房を切除した。性別適合手術は保険外のホルモン療法を受けている場合、全額自己負担となる。患者の多くはホルモン療法を受けるが、今回の当事者はまだ始めていなかった。

<農業の人材不足と外国人労働者・女性活躍>
PS(2018年4月8日追加):*5-1のように、農業の労働力不足は深刻で、沖縄では6割の自治体が労働力不足としており、花卉・野菜・キビなどの「耕種分野」は145の経営体で外国人材の雇用を要望しているそうだ。そのため、JA沖縄中央会は外国人材の採用に関する特区導入を希望しているが、言語や生活習慣の違い、農業技術の流出などの課題もあるとのことである。
 文化の違いについては、①沖縄からアメリカやブラジル等に移住した人の子孫を募集すれば、文化の違いが克服しやすい ②日本の都会で人材募集すれば、沖縄独特の自然の豊かさから日本人の男女でも手を挙げる人は少なくない ③外国人であれば、国別に住居をまとめて住んでもらい、その地域の公共施設はその国の言語にも対応できるようにする などの方法がある。
 また、*5-2のように、近年、女性農業者の活躍が目覚ましく、彼女たちが思う存分能力を発揮できる環境を整えれば貴重な人材となる上、*5-3のように、各地の大学や学科で本格的に食や農を学ぶ農学系女子(ノケジョ)も増えているそうだ。女性は、農業関連の知識だけでなく、食の安全・安心や産地と栄養・料理(=ニーズ)の関連、農山村の可能性など、具体的で広い関心を持っている点が特徴である。

*5-1:https://ryukyushimpo.jp/news/entry-669143.html (琉球新報 2018年2月21日) 労働力不足、農業も深刻 沖縄、6割の自治体「不足」 花卉、野菜、キビ…外国人受け入れに期待も
 沖縄県内の農業・畜産業の労働力に関して都市部以外の市町村を中心に、約6割の自治体が「労働力が不足している」と認識していることが、県の調査で20日までに分かった。品目別では花卉(かき)、野菜、サトウキビなどで不足し、12月~3月の冬春期に不足人数が多かった。他の期間にも常に100人以上が不足するなど、農業の労働力不足の深刻さが浮き彫りとなっている。県が導入を検討する国家戦略特区の農業の外国人材の受け入れに関し、県農林水産部が調査した。調査は昨年12月から今年1月、県内41市町村と農業関係11団体を対象に実施。市町村の労働力不足については、29市町村が回答し、18市町村(62%)が「不足している」と答えた。農業団体の調査で農業生産に関わる労働力不足人数を月別に見ると、12月から3月までの冬春期に最大282人が不足していた。沖縄は県外が寒くなる冬春期に農業生産が活発で、とりわけ季節性があり通年雇用が困難なことから労働力の確保が難しいとみられる。年間を通じて100人以上が不足していた。花卉や野菜・キビなどの「耕種分野」は145の経営体で外国人材の雇用を要望しているが、一方で「畜産分野」の要望は8経営体にとどまった。畜産では海外の伝染病などの侵入を懸念し、受け入れに慎重な声もある。アンケートでは他に、外国人材の採用に関し、言語や生活習慣の違い、農業技術の流出などの課題が挙がった。労働力の確保には前向きな意見もある半面、国内の若手就労者、後継者などへの支援充実に注力すべきとの指摘もあった。現在、県内で受け入れが進む外国人技能実習生と比較して、農業特区の外国人材は活動範囲の広さなど関係者の期待も大きい。JA沖縄中央会の担当者は本紙の取材に「(特区の導入は)当然、必要だ。かなりの人数で労働力が必要となり、特区に期待している」と述べた。別の農業関係者は「外国人材に慎重な人もいるだろうが、潜在的な需要はまだまだある」と話した。

*5-2:https://www.agrinews.co.jp/p41934.html (日本農業新聞 2017年9月18日) 女性農業者の活躍 能力発揮へ地域の理解
 農水省の農業女子プロジェクトのメンバーが9月下旬から、香港でイベントを開く。日本の農産物や加工品をアピールし、輸出の足掛かりになると期待される。こうした女性農業者の活躍が最近、目覚ましい。農業に夢を描き、その実現へ奮闘する彼女たちをもっと支援しよう。家族に加え、地域の理解が欠かせない。思う存分能力を発揮できる環境を整えたい。香港のイベントは27日から10月31日まで。今年1月に続く2回目だ。百貨店やスーパーでの試食PR・店頭販売の他、農業女子が講師となり、自ら生産した農産物を使った料理レッスンを開き、現地レストランで特別メニューを提供する。初回のフェアをきっかけに香港への輸出を始めたメンバーもおり、販路開拓の意気込みは盛んだ。女性農業者の活躍が求められる背景の一つに、農業の6次産業化がある。農業者自身が生産・加工・販売に取り組む形は、これまでの「作れば売れる」から「売れるものを作る」発想への転換が必要となる。女性農業者は、生産者であると同時に家庭を切り盛りする生活者・消費者の視点を持つ。買い物好き、ネットワークづくりに優れた人も多い。そんな彼女たちの感性が、6次産業化を進める上で不可欠だ。生産物の品質はもちろん、消費者ニーズを捉えた加工品開発、見栄えのいい包装、直売やカフェに売り場を広げるなどして顧客の心をつかみ、起業家や経営者としての手腕を発揮する。一方、男性を中心とした農村社会の構図は依然として残る。「夫が経営の収支を教えてくれない」「妻は労働力としか思われていない」といった意見をいまだに聞く。農業女子からさえも「自治体からの通知がないと会合に外出しづらい」との声が出る。活躍する姿の裏に、こうした課題が潜んでいることを見逃してはならない。女性農業者はかつて無報酬労働が当然とされ、子どもの服を買う小遣いすらままならなかった。彼女らは思い切って義父母に要望したり、こっそりと内職をしたりして、わずかでも自由になる小遣いを稼いできた。そんな中で生活改善を進め、家族経営協定を結び、少しずつ地位向上を果たしてきた歩みがある。支えたのは義父母や夫、子どもたちなど家族の理解だ。現在、農業者の高齢・減少化が深刻さを増し、女性農業者の活躍が農村社会の活性化に欠かせなくなっている。これを後押しするには、家族の理解だけでなく、農村社会の中軸であり地域農業に従事する男性の協力が必要だ。JA役員や農業委員で女性登用を増やすため、こうした組織リーダーである男性の意識改革をさらに進めなければならない。政府が女性活躍推進へ積極的に取り組む今こそ、真の意味で女性が輝ける仕組みをつくり上げるべきだ。農業発展の鍵を握る女性たちが、活躍する“芽”を育てていこう。

*5-3:https://www.agrinews.co.jp/p43752.html (日本農業新聞 2018年4月7日) 農学系女子 ノケジョ 食・農の未来「任せて」 年々増加 今や半数近くに 大学側も期待
 入学シーズンを迎える中、各地の大学や学科で食や農を学ぶ農学系女子(ノケジョ)が増えている。既存の農業系の学校だけでなく、今春開設した食・農学系の大学や学部でも、ノケジョ率は高い。農業関連の知識だけでなく、食の安全・安心や産地との連携、農山村の可能性などを幅広く学べるところが人気の要因だ。
●男性しのぎ 続々入学
 6日に入学式をした日本農業経営大学校(東京都港区)では、新入生16人のうち女性は過去最多の5人。昨年は女子の入学はゼロで、例年は1、2人だった。青森県南部町の果樹農家出身の沼畑恵夢さん(20)は「地元には後継者がいないために土地を手放した農家が多数いる。女性の力で現状を打破したい」と意気込む。東京農業大学は今春、神奈川県厚木市の農学部に新たに生物資源開発学科、デザイン農学科の2学科を開設した。特に、デザイン農学科は新入生126人のうち71人が女性。同大は「農業生産の研究だけでなく、食の安全・安心や農村の持続性など幅広い分野を学べる農学部に、女性の支持が集まっている」(厚木キャンパス事務部)と分析する。
●酒造り人気に
 今春、吉備国際大学は兵庫県南あわじ市の農学部に新たに醸造学科を開設した。酒造りの世界は男性のイメージがある中、新入生20人のうち女性は5人。大学への問い合わせも女性が多かったという。同学科の井上守正教授は「酒造りだけでなく、チーズやバター、漬物などモノづくりに関する女性のポテンシャルは高まっている。来年度以降、女性の割合はさらに高まる」と見込む。新設した新潟食料農業大学(新潟市)は7日、入学式を迎える。少子高齢化で学生の絶対数が少なくなる中での開校は大きな挑戦だったというが、県内外の調査で女性の進学希望が多かったことも設立を後押しした。新入生99人のうち、女性は25人。同大は「女性の潜在的な入学希望はもっとあるはず。来年度からはさらに女性比率を高めるよう、情報発信したい」(入試広報課)と意欲を示す。
●獣医師志望も
 3日に入学式を終えた学校法人「加計学園」が運営する岡山理科大学獣医学部(愛媛県今治市)は、新入生186人のうち、女性は男性を上回る95人を占めた。同大学は「昔は獣医師は男性のイメージがあったが、女性を集めることが安定的な学校運営につながる。命を扱う獣医師に女性は向いており、畜産農家に貢献できる人材育成を進めたい」(入試広報部)と狙う。
●細やかさ生かし新時代けん引を
 新設される学部だけでなく、既存の大学農学部でもノケジョが目立つ。文部科学省によると、最新の2017年の調査では、農学を学ぶ大学生は10年前より3703人も増え7万6676人。うち女性の割合は45%。10年前は39・5%だった。農学部の女性は10年間で5472人も増えている。早稲田大学名誉教授で、日本農業経営大学校の堀口健治校長は「6次産業化などで農の付加価値を高めるべき時代に、女性の細やかな視点が生かせる場面は多い。農業をけん引してほしい」と期待する。 

<民営化後の郵便局の利用>
PS(2018年4月11日追加):*6のように、郵便局が自治体事務の一部を受託してくれれば、近くに郵便局しかない離島・山間部の人は便利になる上、コンピューターネットワークを駆使すればそれは可能で、外国語対応も安価にできそうだ。また、全国で郵便局や社宅の跡地を開発する司令塔になるのもよいだろう。しかし、ゆうちょ銀行が民営化した以上、通常貯金の預入限度額は撤廃すべきだと考える。何故なら、「地方銀行からゆうちょ銀行に預金が流出して民業圧迫する」というのは、これまで長く銀行業務をやってきて、地域の事情や銀行業務のノウハウに精通している筈の地方銀行の甘えにすぎないからである。

*6:http://qbiz.jp/article/131625/1/ (西日本新聞 2018年4月11日) 郵政社長、郵便局機能絞り込みも 将来的な可能性を示唆
 日本郵政の長門正貢社長(69)は11日、共同通信のインタビューに応じ、全国約2万4千の郵便局網に関して「全て同じ機能を持つ必要があるかという議論はある」と述べ、将来的な機能絞り込みの可能性を示唆した。首都圏など都市部で担当エリアが重複する店舗の統廃合を進める一方で、過疎地などでは利用状況に応じた平日休業といった運営形態の見直しが今後、議論されそうだ。郵便局で自治体事務を受託することについては「収益は踏まえるが、かなり引き受けられる」と積極姿勢を示し、「全国一律のサービスは今後も守る」と強調した。4月2日に設立した不動産開発の100%子会社の日本郵政不動産は、東京や大阪での案件を皮切りに、全国で郵便局や社宅の跡地を開発する「司令塔になる」との考えを示した。一方、政府の郵政民営化委員会が近く是非を判断する、ゆうちょ銀行の通常貯金の預入限度額撤廃案に関しては「撤廃を希望する考えを取り下げるつもりはない」と明言した。地方銀行などからゆうちょ銀に預金が流出し、民業を圧迫するとの懸念に対しては「預金集めではなく、投資信託の販売など資産形成支援に注力していく」と否定的な見方を示した。策定中の新中期経営計画で対象となる2018〜20年度は、低金利の長期化が見込まれるとして「収益を上げるには最も厳しい3年間になる」と語った。

<外国人労働者の必要性と待遇>
PS(2018年4月12日追加):*7-1のように、政府は2019年4月にも外国人労働者向けに新たな在留資格を作り、最長5年間の技能実習を修了した外国人に、さらに最長5年間の就労資格を与えるそうだ。対象は農業・介護・建設などとしているが、*7-2のように、林業や水産業も人手不足で、さらに中小企業も事業承継する人がいないという問題を抱えているところが多いため、業種は限らない方がよいと考える。なお、技能実習終了後は母国に帰って再来日した後に新資格を与え、「引き続き10年以上の在留」という外国人の永住権取得の要件に当てはまらないようにするそうだが、世界の人材獲得競争の中で条件を悪くすれば、研究者の動向と同様、選択肢の多い優秀な人ほど日本に来なくなるので注意すべきだ。

    
                       2018.4.12日経新聞
(図の説明:先進国に先駆けて日本の高齢化率は高く、生産年齢人口の割合は低くなるが、これに対応するには、高齢者の定義変更や女性労働力の活用だけでなく、外国人労働者も重要だ。しかし、外国人に対する処遇を差別的なものにしすぎると、優れた人ほど他国に行ってしまい、その結果は、現在、研究者の母集団の数と多様性によって科学技術分野の論文数に現れている)

*7-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180412&ng=DGKKZO29256530R10C18A4MM8000 (日経新聞 2018年4月12日) 外国人、実習後に就労資格、最長5年、本格受け入れ 農業や介護、人材を確保
 政府は2019年4月にも外国人労働者向けに新たな在留資格をつくる。最長5年間の技能実習を修了した外国人に、さらに最長で5年間、就労できる資格を与える。対象は農業や介護などで、試験に合格すれば、家族を招いたり、より長く国内で働いたりできる資格に移行できる。5年間が過ぎれば帰国してしまう人材を就労資格で残し、人手不足に対処する。外国人労働の本格拡大にカジを切る。政府は単純労働者の受け入れを原則、認めていない。一方で働きながら技能を身につける技能実習の範囲拡大や期間延長で事実上、単純労働者の受け皿をつくってきた。幅広く就労の在留資格を与える制度の導入は大きな政策の転換点になる。政府は今秋の臨時国会にも入国管理法改正案を提出し、来年4月にも新制度を始める方針だ。新設する資格は「特定技能(仮称)」。17年10月末で25万人いる技能実習生に、さらに最長5年間、就労の道を開く。技能実習は農業や介護などが対象。新設する資格とあわせれば、通算で最長10年間、国内で働き続けることができる。新資格で就労すれば技能実習より待遇がよくなるため、技能実習から移行を希望する外国人は多いとみられる。政府は少なくとも年間数万人は外国人労働者が増えるとみている。農業、介護、建設など人手不足の業界を対象にする。そもそも技能実習は学んだ技術を母国に伝えることが前提。経験を積んだ人材も実習後に国外に退去しなければならない。長く働きたい外国人や、実習で経験を積んだ外国人を育てた国内の雇用主からは、改善を求める声があった。技能実習制度とその本来の目的は維持するため、新資格は一定期間、母国に帰って再来日した後に与える。外国人の永住権取得の要件の一つに「引き続き10年以上の在留」がある。いったん帰国してもらうため、技能実習と新資格で通算10年を過ごしても、直ちに永住権取得の要件にはあたらないようになる。外国人労働者をさらに増やすため、実習修了者と同程度の技能を持つ人にも新資格を付与する方針だ。既に実習を終えて帰国した人も対象になる見通しで、経験豊かな労働者を確保できる。新資格の保有者は、より専門性が高い在留資格に変更できるようにする。専門技能を問う試験に合格すれば、海外の家族の受け入れや、在留期間の更新ができる既存の資格に切り替えられる。国内では25年度に介護職員が約38万人不足する見込み。農業人口はこの10年で約4割減り、人手不足が深刻だ。技能実習生の多くが新資格に移行すれば、長期間、国内労働力に定着させることができる。アジア各国の賃金上昇で外国人労働力の獲得は難しくなっているが、人材獲得競争にもプラスに働くと見ている。日本の労働力人口は約6600万人。17年10月末時点の外国人労働者数は技能実習生の増加などがけん引し127万人と過去最高を更新した。労働力の50人に1人は外国人が担う状況だが、政府はさらに増やす方針だ。ただ多くの外国人の受け入れを前提とした社会基盤については整備が遅れており、受け皿づくりに向けた国民的議論を進めることが急務となる。

*7-2:https://www.agrinews.co.jp/p43787.html (日本農業新聞 2018年4月12日) 新たな森林管理制度 人員確保策が焦点 衆院農林水産委員会
 手入れが行き届いていない森林を、担い手に集約化する新たな森林管理制度の創設を目的とした森林経営管理法案が、11日の衆院農林水産委員会で本格審議に入った。農水省が今国会に提出した9法案の目玉の一つ。安倍政権が掲げる林業改革の具体化を目指す。林業の人手不足が深刻化する中、管理を担う人員をどう確保するか現場の懸念は根強く、今後の審議の大きな論点となる。同法案は、所有者が管理できない森林を、市町村を介して、意欲と能力ある民間事業者に集約化する制度を創設する。条件不利で収益が見込めない森林は、市町村が管理する。今国会の重要議案に位置付けられ、委員会審議に先立ち、先月29日の衆院本会議で、斎藤健農相による趣旨説明と、与野党による代表質問が行われた。12日には同委員会で参考人質疑も予定する。11日の同委員会では、新制度で市町村が担う森林の所有者や境界の特定といった業務に対して、「明らかに(人員が)不足している」(立憲民主党の神谷裕氏)などと懸念する声が続出。市町村の林務の専門職員は全国で約3000人で、3分の2の市町村は、こうした職員がゼロか1人という現状が背景にある。同省は、林業従事者らを対象に市町村の林務を全般的に支援する「地域林政アドバイザー」の資格取得を進め、市町村がアドバイザーを雇う経費などを地方交付税で措置し、体制整備を後押しすると説明。近隣市町村と共同での新制度の運用や、都道府県による事務の代替も可能だとした。国は市町村が新制度を運用する財源として、新税「森林環境税」を元手にした「森林環境譲与税」を配分する。野党からは、その使途も幅広くするよう求める声が上がった。斎藤農相は、新制度の当初の目的は私有林の整備促進だとしつつ「私有林よりも公有林の整備が優先される事態に対しては、市町村の判断で公有林の整備に当てることは可能だ」と説明。一方で同省は、財源の適正な利用へ、地方公共団体にインターネット上などでの使途の公表を義務付けるとした。

<高齢者いじめをしている馬鹿は誰なのか>
PS(2018年4月13日追加):人口構造の変化で高齢者に対する年金・医療・介護などの社会保障負担に堪えられないため、「高齢者(⁉)への負担増・給付減を行うべきだ」とする官製の論調に対しては、メディアだけでなく国会議員の中にも疑問を持たずに同じことを言う人が多い。しかし、この官製の論調は、「他のあらゆる努力をした上で、仕方なく高齢者の権利を奪う選択もする」というのではなく、他では無駄遣いを垂れ流し愚策を重ねながら、高齢者から巻き上げることで解決しようとするものであるため、説得されてしまう人は頭が弱いと言わざるを得ない。ただ、*8-1のように、八方を幸福にしながら社会保障費を削ることには、私も賛成だ。
 また、*8-2のように、政府は経済財政諮問会議で、2019年度からの3年程度、社会保障費の抑制に向けて歳出の目安を設ける方向で検討に入り、医療・介護などの社会保障費の自然増を抑えるとのことだが、必要だから受けている医療・介護を削って国民一人当たりの福利を減少させるのは問題だ。特に、生活支援に対する扱いが悪いが、高齢化社会で医療・介護・生活支援は必要不可欠なサービスで、これは、現在から将来にわたって世界で必要とされる(無駄遣いではない)本物のニーズであるため、これを磨いておくことは、我が国の高度なサービス産業の育成にもなるのである。そのため、そんなこともわからずに、EV・再生可能エネルギー・再生医療の二の舞にしようとしているのは、我が国の官製政策の重大な欠陥である。
 なお、*8-3のように、日本年金機構の外部委託業者の情報処理にミスがあり、その委託業者は、機械の読み込みではミスが出やすい氏名などの入力作業を中国の関連企業にやらせていたそうだが、国民は、日本年金機構や厚生労働省に個人情報を知られることを了承したものの、外部委託業者や再委託業者に個人情報を知られることを了承した覚えはない。つまり、個人情報保護や人権に無頓着というのが我が国の官僚機構で、その無神経さに呆れるのである。


                  2018.1.27日経新聞     2016.2.18毎日新聞

(図の説明:金融緩和して貨幣価値を下げる政策をとったため実質賃金は下がり、年金が減らされ介護保険料負担が増えたため年金生活者はこれら3つの影響でさらに実質手取額が減った。そのため、いくつかのメリットはあったかもしれないが、実需の国内需要が増えるわけはないのである。また、本当に必要とされ利用が進んでいる医療・介護サービスをめくらめっぽう減らし、介護保険料負担は40歳以上のみのまま高齢者負担を増やしたため、人口の30%以上を占める高齢者の生活が危うくなった。そのため、どういう人が考えるとこういう政策になるのかを、主権者である国民はよく考えるべきである)

*8-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180413&ng=DGKKZO29334950S8A410C1EN2000 (日経新聞 2018年4月13日) 高齢者の就業促進
 日本では、生産年齢人口(15~64歳)が絶対数でも人口比でも減少するという「人口オーナス」が進行中である。人口オーナスは人手不足をもたらし、社会保障制度の持続可能性を脅かし、地域を衰退させる。この人口オーナスに対抗する有力な道が、高齢者の就業促進である。高齢者の就業が増えれば、一石四鳥の効果をもたらす。第1に、働き手が増えるから人手不足が緩和される。第2に、年金の支給開始年齢を引き上げるなどの社会保障改革を進めることができる。第3に、就業に伴い所得が増えるから、高齢者家計の将来不安も軽減される。そして第4に、医療費の削減にも寄与するだろう。高齢者の労働参加率が高い地域は高齢者ひとり当たり医療費が少ないという関係があるからだ。こうした期待に応えて、高齢者の就業はかなり増えている。総務省「労働力調査」によれば、2012年から17年までの間に、55歳以上の就業者数は140万人も増えている。これはこの間の全就業者ベースの増加数の56%に相当する。人口オーナスによる人手不足の顕在化を、相当程度高齢者の就業増加が防いだことになる。一方で、大きな課題も残されている。それは、同一企業内での就業促進になっていることだ。高齢者の継続雇用を法律で義務付けられた企業が、多くの場合、定年後の雇用に対して別途の制度を設けて雇用の場を提供しているからだ。企業内の高齢者就業促進は誰にとっても不満を残すことになる。法律上の義務を果たすために、企業が無理に高齢者のための就業の場をつくり出しているとすれば、企業全体の効率性は損なわれるだろう。賃金水準が低く、高齢者の側にも「自らの能力と経験にふさわしい場が得られない」という不満が残る。定年を迎えた高齢者に最もふさわしい仕事が、同じ企業内に存在するとも限らない。現状のような不幸な就業形態を防ぐには、高齢者に限らず雇用の流動性を高めるなかで、企業の枠を超えて高齢者の就業の場を確保していくことが必要である。流動性が高まって、高齢者が能力と経験にふさわしい就業の場を持てるようになれば、前述の一石四鳥の効果はさらに高まる。働き方改革の重要なテーマである。

*8-2:https://digital.asahi.com/articles/DA3S13448427.html (朝日新聞 2018年4月13日) 社会保障費抑制へ、歳出の目安を検討 来年度から3年間 政府
 政府は12日の経済財政諮問会議で、2019年度からの3年程度、社会保障費の抑制に向けて歳出の目安を設ける方向で検討に入った。団塊の世代が75歳になり始める22年度以降、社会保障費が大幅に膨らむためで、6月にまとめる新たな財政再建計画に盛り込む。安倍晋三首相は「今後3年程度で取り組む改革の方向性について、歳出の水準も含め、しっかりと検討する必要がある」と述べ、社会保障費の目安を検討するよう指示した。内閣府の試算では、医療費や介護費などの社会保障費の自然増は、これまでの年6500億円から、22年度以降は年9千億円に膨らむ見通し。政府は18年度までの3年間、予算編成で社会保障費の伸びを年5千億円程度に抑える目安を設けてきたが、19年度以降も歳出抑制のための目安が必要と判断した。厚生労働省は次回以降の諮問会議で、40年までの社会保障費の伸びの推計を公表予定で、これが議論のベースになる。一方、経団連は12日、社会保障や公共事業などの政策経費を税収などでどのくらいまかなえるかを示すプライマリーバランス(基礎的財政収支、PB)の黒字化の達成時期について「20年代半ばを目標とすべきだ」との提言をまとめた。政府はもともと20年度までに黒字化する目標を掲げていたが、補正予算の編成や税収下ぶれ、消費増税延期などを受けて目標達成を断念した。財政再建計画には、黒字化の新たな目標時期も盛り込む方針だ。

*8-3:http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2018041302000178.html (東京新聞 2018年4月13日) 【社説】年金支給ミス 制度の信頼を壊すな
 日本年金機構の情報管理のずさんさがまた露呈した。外部の委託業者の情報処理にミスがあった。調査委員会が検証を始めたが、適切な情報管理と運用が年金制度の信頼の基本と自覚すべきだ。約十万人の年金の二月支給分が少なかった。総額約二十億円になる。一方で多く支払われていた人も約四万五千人いた。発覚の端緒は、二月に入り年金額が減ることに気付いた受給者から問い合わせが増えたことだった。年金を頼りに生活している人にすれば、少しの減額でも敏感になることは当然だろう。加えて四月から、介護保険料が多くの自治体で値上げされる。七十五歳以上の医療保険料も上がる地域がある。機構は、負担増や給付減が生活に影響する受給者の実情を認識する必要がある。支給ミスは機構がデータ入力を委託した外部業者の処理がずさんだったためだ。年金に所得税がかかる人の控除手続きに必要な書類のデータ入力作業で発生した。機構によると、契約では入力後に担当者二人が確認する手順だったが、書類を機械で読み取らせていた。そのため誤入力が発生した。入力漏れもあった。委託業者は、機械の読み込みではミスが出やすい氏名などの入力作業を中国の関連企業にやらせていた。これも契約違反だという。委託業者は五百万人を超える大規模作業は初めてで、人材不足からこうした対応になったようだ。厳重な管理が求められる公的年金情報を扱う責任感が欠けていた。機構は委託業者の対応能力についてチェックが不十分だった。しかもミスに気付いた後も代わりの業者が見つからないという理由で委託を続けた。機構は業者へ損害賠償請求を行う方針だが、自身の責任も重い。機構を監督する厚生労働省も責任を自覚すべきだ。その後、別の業者も入力作業を外部に委託していたことが分かった。業務量が増え外部委託が避けられないのなら、業者の管理体制を再考する必要がある。機構は有識者による調査委員会を設け十日に初会合を開いた。業務委託のあり方などを検証し六月に報告書をまとめる。調査に協力し管理体制を見直してほしい。機構は、旧社会保険庁時代の「宙に浮いた年金記録」問題や二〇一五年のサイバー攻撃による年金情報百二十五万件の流出など情報管理の不祥事が絶えない。高齢期の生活を支える制度を担っていると肝に銘じるべきだ。

<メディアの報道内容のレベルの低さ>
PS(2018年4月14日追加):メディアはモリカケ問題を通じて権力闘争を煽るような報道しかせず、その内容もレベルが低い。しかし、*9のように、政治分野で男女比率が均等になるように推進する法案が衆議院で成立しており、各党が目標設定すれば、「秘書や後援会員には女性もいるが、議員は男性」という形が減って女性議員が増え、「女性は支える立場で、主役やリーダーの器ではない」というような誤った“常識”は消えていくことが期待できる。

*9:https://mainichi.jp/articles/20180412/k00/00m/010/063000c (毎日新聞 2018年4月11日) 政治の男女均等推進法案成立へ 各党に取り組み促す
 国政選挙などで候補者の男女比率を均等にするよう政党に努力義務を課す「政治分野における男女共同参画推進法案」は11日、衆院内閣委員会で採決され、全会一致で可決された。12日に衆院を通過し、今国会で成立する見通しとなった。同法案は衆参両院や地方議会の選挙について、各党に候補者の男女比率が「できる限り均等」となるよう求めている。各党に目標設定など自主的な取り組みを促すもので、罰則規定はないが、国際的にも遅れた日本での女性の政治参画を後押しすることが期待される。

<リケジョの作物選び>
PS(2018年4月15、18日追加):*10-1のような種苗の品種改良と特許権の取得は重要だが、沖縄で菊の栽培に取り組むのは、他の地域と異なる季節に花を咲かせやすいなどのメリットがあるからだろうか?そう言う理由は、私にとって菊は、①切り花が長持ちするという長所はあるものの ②バラのように華やかではなく、ユリや胡蝶蘭のように優雅でもなく ③どこか寂しくて仏壇以外で使いたいとは思わない(仏壇でも、白い他の花の方が気品があって美しかったりする) ④どこにでもある 花だからである。もし、特にメリットがなければ、ブーゲンビリア(鮮やかな花)やキャッサバ(タピオカの原料)のように、沖縄に自生しているため地元の人は雑草のようにしか思っていないが他地域の人には価値ある植物を、他地域でも楽しめるように生産した方が、オンリーワンの製品を安価に作れるだろうと思った次第だ。
 なお、*10-2のように、熊本県宇城市の大規模洋蘭農家は、形が出荷に向かず廃棄していた花でグラスブーケを作り、生花を持ち込めない病院のお見舞いなどに役立てているそうだ。花は、香水の原料にもなり、これからが楽しみである。

*10-1:https://www.agrinews.co.jp/p43603.html (日本農業新聞 2018年3月22日) [改革最前線 生産コスト低減 6] 種苗 JAおきなわ 許諾料2000万円超削減 独自育種 「半額以下」に
 JAおきなわは、菊の品種開発、育成を独自で行うことで、生産者のコスト低減につなげた。菊は購入した種苗で農家が自家増殖する場合は、その購入先にロイヤルティー(許諾料)の支払いが発生する。JAがその許諾料を種苗会社の半額以下に抑えた品種を提供。JAの試算によると管内の生産者が支払う許諾料を、1年間で2325万円削減する効果があるという。100万円以上手取りが増えた農家も数多い。JAが専用施設を作り、単独で育種をするのは全国でも珍しい取り組みだ。
●小菊33%占有
 オレンジ、紫、白・・・。沖縄本島の最南端・糸満市にあるJAの花き実験農場。所狭しと色とりどりの花が並ぶ。草丈も茎の太さもばらばらなのは、多様な特徴を持つ「新品種候補」を育て、その中から有望なものを見つけ出すためだ。これまでに16品種がこの畑から誕生。現在は県内で作る大菊の65%、小菊の33%をJAの品種が占めるまでになった。生産者の支持を集める理由が許諾料の安さだ。種苗会社だと自家増殖した場合、1本当たり2、3円のコストがかかるが、JAの品種は1円以下で済む。同県では年間100万本以上を出荷する生産者も多い。JAの品種を使えば、数十万円単位で削減できる。取り組みを始めた当初は、いくつも課題があった。種苗会社や都道府県の試験場と違い、品種改良の専門知識を持つ人材がいなかった。「プロと戦って太刀打ちできるはずがない」。JA内外からそんな不安の声が聞こえてきた。新品種の育成は困難を極めた。さまざまな品種を掛け合わせ年間80万粒の種を作るが、実用化できる花は滅多に生まれない。ようやくできても、生産者や花卸の目にかなわず、栽培が広がらなかったこともあった。それでもJAは農家負担軽減を目指し、毎年数百万円をかけて挑戦を続けた。花の交配はJA営農販売部の徳元清春さんが一手に担う。開発に行き詰まったときは、他県の試験農場に足を運んで研究した。徳元さんが作った赤い小菊「琉のあやか」は2014年に品種登録を受けた。樹姿が良く病害虫に強い同種は、小菊出荷量全国一の同県で欠かせない品種になった。徳元さんが作ったものは品種名に「琉球」の「琉」の字を使っている。同県には種苗会社の研究農場がなく、同県での生産に特化した品種はほとんどない。「ただ安いだけではなく、沖縄に合った品種を作りたい」。思いが込められている。
●実用化加速へ
 今では、3年に1品種のペースで実用化するまでになった。依然はリスクを恐れて慎重だったJAの姿勢も、変わってきた。JAの上江洌進常務は「良いと思ったら、迷わず普及しろ」と担当者にげきを飛ばす。今後は、実用化ペースを1年1品種に高める方針だ。

*10-2:https://www.agrinews.co.jp/p43832.html (日本農業新聞 2018年4月18日) [活写] 咲かせてみせましょもう “一花”
 熊本県宇城市の宮川洋蘭が作る、規格外のランの花を使ったボトルフラワーが人気だ。デンファレやカトレアを乾かしてガラス容器に密封し5年以上、色が保たれるという。同社は約300種類のランを栽培し、年間およそ20万鉢を出荷する。形が出荷に向かず廃棄していた花を生かそうと、水分が多いランの花を1週間ほどかけて乾かす方法を考案。「森のグラスブーケ」と名付け2013年に売り出した。製作担当の小田美佐登さん(37)は「乾かした花は破けやすく、丁寧に作業している」と話す。贈り物向けに人気を集め、インターネットなどを通して年間約3万個を販売。1個1500円(税別)から。専務の宮川将人さん(39)は「生花を持ち込めない病院の場合でもお見舞いに役立っている。多くの人に華やぐ気持ちを味わってほしい」と話す。

<セクハラの範囲>
PS(2018年4月19日追加):「セクハラは人権侵害で、女性の仕事をやりにくくする」というのには私も賛成だが、*11-1の女性記者に対する財務省の福田次官のセクハラは、普段から男社会でセクハラへの認識が甘い財務官僚が、権力闘争のために仕組まれたセクハラ問題に乗ってしまった感があった。何故なら、人事は財務省内で大筋が決まっており、そのような部下の不始末の責任までとらされたらたまったものではない麻生財務相や安倍首相の任命責任にまで言及しているからで、週刊新潮に録音されたマイクを渡した記者が傷ついたり、メディアと政治家・官僚の間にメディアの方が弱いという力の差があるとも思えないからである。ちなみに、私は電車の中で少し美人の女性が横にきて座り、「足を擦りつけてきた」と言って因縁をつけられた経験がある。それは、私がレズビアンだとでも言いたげで、周囲に人もいたため、「何で私が貴女に足を擦りつけなければならないのですか?気持ち悪い!」と大きな声で言って追っ払ったが、「被害者だ」と主張する女性には、そういう人もいるわけだ。
 ところで、セクハラは身体を触ることだけでなく、*11-2のように、救命活動をする女性に「(女人禁制だから)土俵から降りて」とアナウンスしたり、出産や月経の血で穢すとして女性市長に土俵上で挨拶させなかったり、特定の儀礼に女性を参加させないようにしたりするような男尊女卑も立派なセクハラである。しかし、こういうセクハラには感受性が鈍いせいか、メディアも疎いのが我が国の問題だと、私は日頃から感じている。

*11-1:http://www.shinbunroren.or.jp/seimei/180418.html (日本新聞労働組合連合 中央執行委員長 小林基秀 2018年4月18日) 「セクハラは人権侵害」財務省は認識せよ
 女性記者に対する財務省・福田淳一事務次官のセクシャルハラスメント疑惑に関し、麻生太郎財務相や同省の一連の対応は、セクハラが人権侵害だとの認識が欠如していると言わざるを得ない。セクハラは、圧倒的な力関係の差がある状況で起きることを理解しているとも思えない。新聞労連は同省の対応に強く抗議するとともに、被害者保護のため早急に対応を改めるよう求める。週刊新潮が福田次官のセクハラ疑惑を報じた際、麻生財務相が当初、事実関係の調査や処分はしない方針を示したことは、セクハラが人権侵害であるという基本を理解していない表れだ。その後、音声データが出てから調査に踏み切ったのは遅きに失しており、国際的にみても恥ずかしい対応であり、看過できない。セクハラの二次被害を生み出さないためにも、被害者を矢面に立たせないための配慮は調査の最優先事項だ。財務省が、同省と顧問契約を結ぶ弁護士事務所に被害者本人が名乗りでるよう求めていることは容認できない。被害者への恫喝であると同時に、報道機関に対する圧力、攻撃にほかならない。「女性活躍」を掲げる安倍晋三政権は、疑惑を持たれた人物が官僚のトップである財務省に調査を任せて良いのか。省庁を統轄する首相官邸がリーダーシップを発揮して、福田次官に厳格な事情聴取を行うことがなぜできないのか。それなしに、被害女性に名乗り出ろという見識を疑う。政府はこれを機に、全省庁に対し、他にセクハラ事案がないか徹底調査を指示するべきだ。福田次官にも問いたい。あなたは本当に女性記者の尊厳を傷つける発言をしたことはないと断言できるのか。であれば堂々と、記者会見を開いてあらゆる質問に答えてほしい。新聞社が新規採用する記者の半数近くが女性だ。多くの女性記者は、取材先と自社との関係悪化を恐れ、セクハラ発言を受け流したり、腰や肩に回された手を黙って本人の膝に戻したりすることを余儀なくされてきた。屈辱的で悔しい思いをしながら、声を上げられず我慢を強いられてきた。こうした状況は、もう終わりにしなければならない。今回の件を含め、記者が取材先からセクハラ被害を受けたと訴え出た場合、会社は記者の人権や働く環境を守るため、速やかに毅然とした対応を取るべきだ。「事を荒立てるな」「適当にうまくやれ」など記者に忍耐を強いる指示や黙認は、セクハラを容認しているのと同じであり、到底許されない。いまなお、女性記者が取材先からセクハラ被害を受ける事例は後を絶たない。新聞労連は性差を超えた社会問題としてセクハラを巡る問題に正面から向き合い、今後も会社や社会に対しメッセージを発信していく。                       以上

*11-2:https://digital.asahi.com/articles/ASL4F56VXL4FUCVL01Y.html?iref=comtop_8_02 (朝日新聞 2018年4月18日) 学者も「よく分からない」 大相撲の女人禁制、起源とは
 土俵上で懸命に救命活動をする女性に「降りて」とアナウンスした日本相撲協会の対応が物議を醸している。大相撲における「女人禁制」はどのように「伝統」となったのか。奈良時代の古事記や日本書紀に記述があり、1500年以上の歴史があるとされる相撲。なぜ、大相撲の土俵は女人禁制になったのか、いつからなのか。高埜(たかの)利彦・前学習院大教授(日本近世史)は「よく分からない」と話す。一方、中世から寺社の造営や修復の費用を集めるために開かれてきた「勧進(かんじん)相撲」が、江戸時代に権威と人気を得て大相撲につながる過程で、タブーが強化された可能性を指摘する。まず、江戸時代の勧進相撲では「女性の観戦は禁じられていた。土俵の周辺に女性の姿はなく、女人禁制と言うまでもなかった」。背景として考えられるのが5代将軍徳川綱吉の「服忌(ぶっき)令」だ。生類憐(あわ)れみの令と同じ頃、近親の死で喪に服す期間を定めた。死を忌み嫌い、血の穢(けが)れを排する公家や神道の価値観を武家社会が取り入れ、武士以外にも浸透した。高埜さんは「このころから、女性の月経や出産を遠ざける傾向が強まったのではないか」とみる。「勧進相撲」は江戸時代に、庶民の辻相撲などとの違いを強調し、権威を得ていく。18世紀半ば、8代吉宗の時代には年4回の「四季勧進相撲」が幕府公認に。11代家斉の時代には将軍上覧相撲が開かれ、横綱が白い麻で編んだしめ縄を締め、地鎮祭の地固めにちなむ四股を踏むなどの神事的な要素も導入された。大相撲と呼ばれるようになる過程で「神事」「伝統」が結びつき、土俵から女性を遠ざけた可能性がある。明治維新になると、文明化を目指す新政府によって「男女相撲」が禁じられる。「女相撲や座頭(盲人)相撲など多様な相撲のあり方は『野蛮』だとして排除された」と今西一・小樽商科大名誉教授(日本近現代史)は指摘する。一方、幕府や大名家の支援を失い、一時は危機に見舞われた大相撲は、国家神道の確立やナショナリズムの盛り上がりを追い風に、「聖なるもの」としての側面を強調していく。明治天皇による「天覧相撲」は回を重ね、相撲常設館は「国技館」と命名された。昭和には「相撲道」が強調され、国威発揚の一翼を担う。今西さんは「天皇を頂点とした身分制や家族制度のもとで男尊女卑が強まり、土俵の女人禁制は当然のこととされていく」と話す。
●出産・月経「穢れ」の宗教的観念
 女人禁制はそもそも、聖域への立ち入り禁止、特定の儀礼に参加させない、など宗教に関わる領域で目立つ慣習だ。だが「古代においては男女を問わなかったが、時代をおうごとに女性への禁忌が強まった」と鈴木正崇・慶応大名誉教授(文化人類学)は話す。古来の山岳信仰では、修行者や僧侶が山自体を修行場として霊力を得ようとして、俗人の立ち入りを禁じた。僧侶の修行の妨げになるという仏教上の戒律による女人禁制は、尼寺では男子禁制となった。それが平安時代になり、女性は男性に一度変身してからでないと成仏できないという変成男子(へんじょうなんし)思想や、女性は梵天(ぼんてん)・帝釈天などになれない五障といった差別的な教えが広まる。さらに「女性を劣位に置く慣習を決定づけた」と鈴木さんが指摘するのは、「血の穢(けが)れ」の観念だ。もともと平安時代の法令集「延喜式(えんぎしき)」では、死や出産を穢れと定めていたが、期間限定のものだった。ところが、室町時代に中国伝来の偽経「血盆経(けつぼんきょう)」が広まり、出産や月経の血で大地を汚すという女性の不浄観を浸透させたという。島薗進・上智大教授(宗教学)も「卑弥呼の時代から女性は神に近い存在。神事だから女性は立ち入れないというのは、歴史的にも宗教学的にも当たり前の話ではない」と指摘する。現代でも大峯山(奈良県)など一部に女人禁制は残るが、「修験道は修行全体が厳しい掟(おきて)に支えられていて、急にそれを変えられない面がある」と島薗さんは理解を示す。一方で大相撲については「土俵の女人禁制がどれだけ意義深いものなのか」と疑問視。「国民的行事であり、特定の信仰を持つ人たちのものではない。相撲協会は時代の変化に対応すべきだ」

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2018.3.21~23 農林水産業の可能性を伸ばす ← みんなで考えれば、よい知恵も出ること (2018年3月24、25、26、28、29、30、31日に追加あり)
     
 先進主要国の食料自給率  農林水産物輸出額推移 木材輸出額推移  再生エネ導入
                          2018.2.14   2018.1.21
                          西日本新聞    日経新聞

(図の説明:フランス・アメリカなどの先進主要国の食料自給率は殆どの時代で100%を超えており、ドイツも2012年で92%だが、日本の食料自給率は1965年の70%程度から一貫して下がり続けて2013年には39%になった。その理由は第2次産業偏重だが、アジア・アフリカ諸国が低賃金を武器に第2次産業に参入している現在、変革にのろい日本の比較優位がいつまでも続くわけではない。従って、第1次・第3次産業もバランスよく大切にすべきで、農林水産物の輸出額が次第に増えているのは望ましいことなのだ。また、再エネ導入量も増えるため、農林水産業地域で再エネ発電をすれば農林水産業に基礎収入を上乗せさせることができて補助金を払う必要がなくなり、また外国に燃料費を支払う必要もなくなって、日本人をより豊かにできる)

   
   外国人労働者推移   難民申請数・認定数 日本産オリーブ 日本産レモン
               2017.12.19    2017.12.21  太良町
                日経新聞     西日本新聞

(図の説明:日本で働く外国人労働者や外国人を雇用する事業所は8年で2倍になり、2016年には日本で108万人超の外国人労働者が働いている。しかし、日本の難民認定数は1万人以上の希望者のうち30人程度であり、欧米諸国と比較して冷たい。現在はオリーブやレモンの生産量も増えつつあり、日本には難民が働けそうな場所もあるため、外国人労働者や難民の入国をプラスに働かせることができる局面は多くの産業であるだろう)

(1)農林水産業と食料自給率
 農林水産大臣が、*1-1のように、衆参両院の農林水産委員会で所信を表明し、農業の成長産業化に向けた改革を続けることに強い意欲を示されたのはよいことだが、自由貿易さえすればよいという発想では農業を衰退産業にしてしまうので、80%くらいの食料自給率と輸出の増加は目標にしてもらいたい。
 
 私も、農業者の高齢化や引退が進む中、農地の集積・集約化が進んで大規模化し、生産性が上がったことはよいと思うが、農業総産出額の増加は物価上昇によるところが大きく、食料自給率は38%に下がっており、農業生産量が増えたわけではないと考える。

 なお、*1-1、*1-2に、中山間地域は農地集積が進まないと書かれているが、どこでも同じ穀物を作り、そのために農地を集積することが農業収入を上げる方法ではなく、その地域にあった作物を見つけ、付加価値をつけて売ることが収益を上げる方法である。そのため、国が一律に指導することはできず、地方自治体・地域の農協・農業試験場・地域の大学などが協力して市場調査・品種改良・栽培方法の改善を行うしかない。

 また、*1-4のように、この10年間で農業の経営規模が1.5倍に拡大し、規模拡大に伴って従業員の雇用や設備投資の拡大を積極的に進める傾向が出たのはよいことだが、農業は今後、それこそ働き方改革ができるようにならなければ人材が集まりにくいだろう。

 しかし、このような生産者の苦労を無視して、*1-3のように、政府は、経産省の政策であるTPPの参加11カ国の新協定に署名することを閣議決定した。茂木担当相は閣議後記者会見で、「早期発効に向けて引き続き主導的な役割を果たしていきたい」と語られたそうだが、やはり主導的にTPP協定を進めていたのは日本だった。ただ、*3-1のように、ISD条項が外されたのは朗報だ。

 TPP協定が発効した場合、日本も農林水産物を輸出できなければマイナスが多すぎる。そこで、*1-5を見ると、2011年の日本の水産物輸出は、東電福島第一原発の事故による各国の輸入規制や円高等の影響により数量で前年比25%減少の42万トンとなり、これに対して日本政府は、水産物の放射性物質に係る調査結果や安全確保の措置等を説明するなどの働きかけを行っているそうだが、少しなら有害物質を含んでいても食べたいという人はどの国にもおらず、これは鮮度や味以前の問題である。そのため、有害物質を含まず質の高い日本産水産物を提供しなければ海外市場であっても拡大は難しく、そのための環境整備が必要なのである。

(2)農林業の新技術と新製品
 九大大学院農学研究院昆虫ゲノム科学研究室の日下部教授のグループは、*2-1のように、ワクチンの原料となるタンパク質を大量に作るカイコを探し出し、カイコを使って医薬品の原料を作る「昆虫工場」の事業化に乗り出すそうだ。また、*2-5のように、シラカバ樹液・ハーブ類・ヘべス果汁などで体調不良を予防できるシロップを商品化した女性もいる。

 さらに、大分大理工学部の衣本助教は、*2-2のように、竹を原料とした次世代素材セルロースナノファイバーの製造法を開発した。これは、広い産業で活用が期待される素材で、放置竹林の解消にも繋がり、この技術の利用のためには竹の安定調達が必要とのことである。

 米の食味ランキングで4年連続「特A」を取得した青森県の「青天の霹靂」は、*2-3のように、人工衛星で水田を観測して米の生育や食味を判断する仕組みを取り入れており、埼玉県では梅の害虫被害を宇宙から監視して防除する実証も進んでいるそうで、農業の近代化や効率化が期待される。*2-4のような大規模営農発電を行って、農家の基礎的収入を上げると同時に、耕作放棄地が解消する技術もできた。

 農水省が、*2-6のように、ジビエの利用拡大を進めているが、もうそろそろ野生鳥獣も愚痴ばかりではなく、プラスの存在にすべきだろう。

 *2-7のように、2017年の丸太輸出額は、中国の旺盛な需要を取り込んで前年比61.7%増の137億円と過去最高を記録し、杉を中心とする九州産が7割超を占めて、「今後は、より良質な木材の輸出にも取り組んでいきたい」と、さらなる意欲を見せているそうだ。しかし、*2-8のように、森林伐採や植樹などを担う「林業従事者」の減少は加速しており、新規就業者の育成が必要な状態である。

(3)長所を伸ばす経営へ
 *3-2のように、日本は全頭検査していたにもかかわらず、BSEに関する日本の安全基準は、米国産牛の基準に合わせるため、なし崩し的に緩和された。最初は、吉野屋が米国産牛を輸入したくて要望したからだが、国産牛まで変える必要は無かった。何故なら、国産牛まで米国基準に合わせると、国産牛の安全性の長所が失われるからである。その点、畜産が重要な産業であるオーストラリアには原発がなく、その徹底ぶりは感心だ。

 しかし、*3-3のように、農産物の輸出額は8073億円となり、5年連続で過去最高を更新した。これは、これまで輸出に積極的でなかったせいもあるが、さらに高い目標を持っているのはよい。ただ、日本で福島第1原発事故が起こったため、輸出先の国・地域が輸入規制を設けたが、これを緩和させたり、撤廃させたりするように動くよりも、徹底して安全な検査済のものを輸出するようにしなければ、日本産全体の評価が下がる。

 なお、*3-4のように、沖縄活性化ファンドは、子牛の肥育だけをしていたが、繁殖から肥育までの一貫した経営を進めようとしている「もとぶ牧場」への投資を決定したそうだ。口蹄疫や東日本大震災で国内有数の産地が打撃を受け、畜産農家の後継者不足で子牛相場が上昇しているため、伊藤ハムが自社の繁殖事業のノウハウを「もとぶ牧場」に提供するほか、メインバンクの琉球銀行も発情発見システムなど生産管理を効率化するIT導入の支援を行うそうで面白い。

 また、*3-5のように、離島や中山間地域などの“田舎の田舎”ほど若者が集まっており、増加率の上位を占めている離島や山間部には、若者や女性が活躍する場があり、お互いの顔が見えて、小さな自治体は若者の居場所をつくっているからだそうだ。そして、五島列島最北端の離島宇久島に、20~30代の牛飼いが8人となり、この8人が飼う牛は300頭を超えて島の2割を占め、島の大きな推進力になっているそうだ。

(4)農林漁業の担い手
 集落営農や農業経営の法人化に官民挙げて取り組んだ理由は、農業の大規模化と世代交代にむけての担い手確保にあった。その集落営農で、*4-1のように、まとめ役や機械作業をする人が見つからず困っているケースが全国的に見られるそうだ。しかし、既に器ができているので、農業は若者にとって魅力的な産業になっており、次世代のリーダーやオペレーターを確保するのは容易になった筈だ。

 そのような中、佐賀県白石町の農事組合法人ほくめいが、15の集落営農を合併して2016年に誕生し、経営面積は640ヘクタールに上るそうだが、これならオーストラリアの農業とも競争できそうだ。

 なお、このような大規模農業を行うには、*4-3のように、外国人労働者を受け入れたり、*4-4のように、難民に対する冷たい「鎖国」をやめ、協同組合や農林水産業法人で就業させる方法もある。さらに、労働の担い手には、*4-5のようなロボットもいる。

 また、*4-2のように、大手スーパーが、異業種と連携して生鮮食品の宅配サービスに相次いで参入しているそうだが、これは共働き夫婦だけではなく、高齢世帯や単身世帯にとっても重要なサービスだ。何故なら、重たい生鮮食品を、(「迷惑そうに」とか「恩着せがましく」ではなく)仕事として爽やかに家まで運んでもらいたいため、私も、水・お茶・液体洗剤などは、既にアマゾンなどのネット販売に変えた状況だからだ。

 さらに、生鮮食品なら、産地指定や有機栽培等の選択ができるのもネット販売のメリットだ。そのため、ネット販売は、今や決済の安全性だけが問題なのであり、大手スーパーも産地や有機農産物などの選択肢を増やして一カ所で買い物が終わるようになるとよいと思っている次第だ。

<農林水産業と食料自給率>
*1-1:https://www.agrinews.co.jp/p43506.html (日本農業新聞論説 2018年3月12日) 農相所信表明 現場重視で改革着実に
 斎藤健農相は衆参両院の農林水産委員会で所信を表明し、農業の成長産業化に向けた改革を続けることに強い意欲を示した。しかし、急進的な改革路線には疑問の声も根強い。生産現場の実態を見据えた着実な改革を目指すべきである。斎藤農相は、これまでの農政改革の成果として、農業総産出額が過去17年で最高の9・2兆円に、生産農業所得も過去18年で最高の3・8兆円になったことなどを強調した。しかし、これらは生産基盤の弱体化による農畜産物価格の上昇が主な要因とみられ、改革関連政策の効果を疑問視する指摘もある。踏み込んだ検証を求めたい。農相が力を入れる施策として第一に取り上げたのは、農地の集積・集約化の一層の加速だ。農業者の高齢化・引退が進む中、大規模経営への構造改革を急ぐ考えだが、現実は容易ではない。2016年度に担い手に集積できた面積は6万2000ヘクタールで、前年度より2万ヘクタール弱減った。目標達成に必要な面積(約15万ヘクタール)の4割水準にとどまる。加速どころか、集積テンポが落ちてきている。農地集積が進まない背景には、中山間地域などの条件不利地や樹園地での集積が難しいことが挙げられる。平場も中山間地域も一律に農地集積を進めようとしても限界がある。23年度までに担い手への集積を8割にする目標自体に無理はないか、慎重に考えるべきだ。農協改革には、「農業者の所得向上に全力投球できる農協の実現に向け、協力していく」として、19年5月までの期間内に具体的な成果を上げるように求めた。現在、JAグループは自己改革の実践に懸命に取り組んでいる。その自主性の尊重が農協改革の出発点である。規制改革推進会議の主張に見られる過度の介入は慎むべきだ。農業現場で今深刻な労働力不足問題には触れなかったのは物足りない。人手不足を理由に規模拡大を断念したり経営縮小したりする農業者が出始めている。改善対策を示す時だ。車の両輪と言いながら、農村政策への言及は、6次産業化の展開や都市農村交流、農泊などを挙げるにとどまり、目新しさに欠ける。安倍政権の地方創生に見劣りしない重厚な農村政策を打ち出すべきだ。米政策は、18年産から生産調整配分への行政関与がなくなる。農相は、情報提供を行うだけにとどめ、主食の安定供給に対する政府の責務には触れずじまいだった。主産地をはじめとして生産調整見直しに対する農家の不安は根強く、今後の論戦でただすべきことは多い。最大の課題は、38%に下がった食料自給率を引き上げることだろう。政府が目指す45%を実現するための具体策が見えない。環太平洋連携協定(TPP)などで農産物貿易の高水準な自由化を進めながら、どのようにして自給率を上げるのか。論戦の中核に据えるべきだ。

*1-2:https://www.agrinews.co.jp/p43238.html (日本農業新聞論説 2018年2月10日) 難航する農地集積 中山間地での進展が鍵
 農地の利用を「担い手」に集める国の取り組みが難航している。目標の8割集積には、生産条件が悪い中山間地での集積が鍵を握る。地域農業の「担い手」を確保し、実態を踏まえた集積を急ぐ必要がある。農地は食料の生産基盤で、長い年月をかけて整備してきた貴重な社会資本である。食料自給率向上に欠かせない土台でもある。ところが農業者の高齢化が加速し、耕作を続けることが困難な農地が続出している。農水省は2023年度までに担い手への集積を8割に高める目標を掲げ、農地の維持や構造改革に躍起だ。しかし、16年度の集積率は54%。1年間に集積できた面積は6万2000ヘクタールで、前年度より2万ヘクタール弱減った。目標達成に必要な面積(約15万ヘクタール)の4割水準にとどまる。特に食料生産の4割を占める中山間地域の条件不利地や樹園地での集積が進んでいない。耕作を引き受ける担い手が見当たらず、耕作放棄につながる農地も多い。「中山間地域での集積が政府目標を達成する鍵を握る」との指摘がある。政府は、実態調査を急ぐべきだ。農水省は、農地中間管理機構(農地集積バンク)を仲介した集積を目指している。18年度からは、連たん化や20%のコスト低減などの条件が整えば、バンクに貸し出した農地の整備は農家負担なしで行えるようにする。農業委員会制度の見直しで導入した「農地利用最適化推進委員」を動員して、集積を加速したい考えだ。「8割」を押し付けるような「上からの集積」では地域の理解は得られない。自主的な取り組みこそ大切だ。地域で担い手を明確にする「人・農地プラン」をもう一度見直し、「理解と納得」を前提にした集積が重要だ。担い手に位置付けられる認定農業者の経営改善計画の確実な実現や、地元大学との連携、コーディネート育成も欠かせない。「農地利用最適化推進委員」が動きやすいように活動費助成の充実も考えるべきだろう。農地集積バンクに集まった農地を借りるには法人格が必要となる。各地の集落営農組織の法人化を急ぎ、整地された農地の受け皿になれるようにすべきだ。JAが出資法人を立ち上げて引き受けることも考えたい。地域の実情に合った集積方法が最も有効である。JAが主に担ってきた農地利用集積円滑化事業を通した農地集積も活用すべきだ。国の支援が農地集積バンクに偏り過ぎだとの声や、株式会社の農地所有につながるのではないかとの警戒心も根強い。農地集積バンク以外の取り組みへの支援も行うべきだ。相続未登記で集積が困難な農地は、その恐れも含めると90万ヘクタールを超す。水管理を担う土地改良区の維持が困難になるなど、食料生産の屋台骨が揺らいでいる。農地の縮小は国民的な損失である。安倍政権は、中山間地域も含め総合的な生産基盤の立て直しを急ぐ必要がある。

*1-3:https://www.agrinews.co.jp/p43465.html (日本農業新聞 2018年3月7日) TPP11 署名を閣議決定
 政府は6日、米国を除く環太平洋連携協定(TPP)参加国の新協定「TPP11」に署名することを閣議決定した。参加国は署名式を南米チリのサンティアゴで8日午後(日本時間9日未明)に開き、日本からは茂木敏充TPP担当相が出席する見通し。安倍晋三首相は同日、オーストラリアのターンブル、カナダのトルドー両首相と電話会談し、早期発効に向けた連携を確認した。茂木担当相は同日の閣議後会見で、「早期発効に向け、参加国の進捗状況もにらみながら、引き続き主導的な役割を果たしていきたい」と語った。署名式に先駆け閣僚会合も開き、新規加盟国の扱いなどを議論する。個別の2国間会談も行う。協定に署名後、共同会見を開く。署名後、11カ国は発効に向けて国内手続きを急ぐ。日本政府は3月中に協定承認案と関連法案を国会に提出する。

*1-4:https://www.agrinews.co.jp/p43536.html (日本農業新聞 2018年3月15日) 17年度農業白書骨子案 「若手農家」規模1・5倍 直近10年 従業員雇用割合も増
 農水省は14日、2017年度食料・農業・農村白書の骨子案を公表した。49歳以下の担い手や後継者がいる経営体(若手農家)について、直近10年間の動向を分析。稲作や畑作では経営規模が1・5倍に拡大していた。若手農家以外はほぼ横ばいだった。経営規模の拡大に伴い、従業員の雇用や設備投資の拡大を積極的に進める傾向も浮かび、これらの負担軽減策が今後の課題の一つになりそうだ。食料・農業・農村政策審議会企画部会(部会長=大橋弘東京大学大学院教授)で示した。同部会は4月中旬に次回会合を開いて最終案を議論。5月下旬の閣議決定を目指す。今回の骨子案では、今後の日本農業をけん引する若手農家がいる経営体に着目。目玉となる特集面で、農林業センサスなどの調査結果を基に、直近10年間の動向を分析した。若手農家は14万戸(15年)で販売農家全体の1割だった。経営規模を品目別に見ると、稲作単一経営の1戸当たりの経営耕地面積は平均7・1ヘクタール。05年の4・7ヘクタールから1・5倍に増えた。非若手農家はほぼ横ばいだった。稲作以外でも05年に比べ畑作で5割、露地野菜、乳用牛、肉用牛はそれぞれ2割以上経営規模が拡大した。経営規模拡大に伴い、従業員を雇う経営体も増えている。1年のうち7カ月以上働く従業員らを雇う経営体は10年間で約6000戸増えて1万7740戸。全ての若手農家に占める割合は7・3ポイント増え、12・6%になった。省力化や低コスト化に向けて積極的に投資も行っている。機械や設備の投資規模を示す「農業固定資産装備率」は、水田作で2930円で、非若手農家の1・2倍。酪農は6629円で、同1・9倍だった。省力化が進み、水田作10アール当たりの労働時間は4割削減。酪農では搾乳牛1頭当たり4分の3に短縮している。

*1-5:http://www.jfa.maff.go.jp/j/kikaku/wpaper/h23_h/trend/1/t1_2_1_3.html (水産庁) 「水産物の輸出入の動向」より抜粋
(我が国の水産物輸出の動向)
 平成23(2011)年における我が国の水産物輸出は、東電福島第一原発の事故による各国の輸入規制や円高等の影響により数量で前年比25%減少の42万トン、金額で前年比11%減少の1,741億円となりました。原発事故の後、輸出先国による規制が強化され、水産物を含む日本産食品の輸出が困難になるという事態が一部の国・地域で発生したことに対応し、政府としては、各国に対し、水産物の放射性物質に係る調査結果や安全確保の措置等を説明するなどの働きかけを行っており、今後ともこのような取組を継続していくこととしています。日本産水産物の品質は、漁獲物の取扱いの丁寧さや発達したコールドチェーンに支えられた鮮度保持の確かさから、世界で高い評価を得ています。さらに日本食の人気が海外で高まっていることも相まって、日本産水産物に対しては世界各国・地域において根強い需要があります。加えて水産物に対する需要は世界的に増大していることから、今後、日本産水産物の海外市場はさらに拡大する可能性があります。水産物は、農産物・畜産物とは異なり、動植物検疫に関する輸入規制の対象となる品目が少ないものの近年、各国の消費者の間で食品衛生問題への関心が高まっていることから、各国の当局が衛生証明書の発行や輸出加工施設の登録を要求するケースが増加しています。このため、政府としては、相手国政府との協議等を通じ、各国の規制や条件に適合するための体制を整備しています。また、海外市場調査に対する支援、展示商談会への出展等の取組を行い、日本産水産物の輸出を促進しています。

<農林業の新技術と新製品>
*2-1:http://qbiz.jp/article/125513/1/ (西日本新聞 2018年1月3日) “昆虫工場”カイコで薬 九大・日下部教授ら春に事業化 100年の研究応用、安定供給目指す
 九州大大学院農学研究院昆虫ゲノム科学研究室の日下部宜宏教授のグループは、カイコを使い医薬品の原料を作る「昆虫工場」の事業化に乗り出す。九大は約100年前からカイコの研究、保存を続けており、約480種の中から、ワクチンなどの原料となるタンパク質を大量に作るカイコを探し出した。日下部教授らは4月に会社を設立し、第1弾として動物用医薬品の原料製造を目指す。インフルエンザなど感染症予防に使うワクチンは、毒性を弱めるなどしたウイルスを増殖して作る。鶏の受精卵や動物の細胞に感染させて増やすのが一般的。一方、日下部教授らは、病気を引き起こす病原ウイルスの遺伝子の一部を、「遺伝子の運び屋」(ベクター)と呼ばれる物質を使ってカイコに注入。病原ウイルスに形は似ているが感染力はなく、安全なタンパク質(ウイルス様粒子=VLP)を体内で生成させる。VLPは取り出して精製すると、ワクチンの原料になる。日下部教授らは約7年かけ、VLPを効率的に作るカイコを探し出した。カイコは飼育が比較的容易で大型施設なども不要なため、製造コスト低減などが期待できるという。九大が1921(大正10)年から続けている学術用カイコの“コレクション”は世界最大。生物資源を戦略的に収集して活用する国の「ナショナルバイオリソースプロジェクト」の拠点にもなっている。日下部教授は「カイコの活用は、九大が積み上げてきた研究成果を社会に還元するのが目的。安全性が高い次世代型ワクチンは、海外の製薬会社などが特許を持っていることが多く、将来的には安全な国産ワクチンの安定供給につなげたい」としている。日下部教授らが設立する会社は福岡市西区の産学連携交流センターに置く予定。国内の医薬品メーカーとペット用診断薬の原料を製造することで基本合意しており、国の許可が得られれば、製造を始める。ノロウイルスやロタウイルス、子宮頸(けい)がんワクチンに関する研究も進めており、人の医薬品の原料も手掛ける方針。
■ナショナルバイオリソースプロジェクト(NBRP) 日本が生命科学の分野で国際競争力を維持するため、世界最高水準の生物資源を戦略的に収集・保存し、研究機関などに提供する事業。2002年度に始まり、現在、約40の研究機関が連携して30種の動物や植物、微生物などを収集・保存している。九州では九州大がカイコとアサガオ、宮崎大がミヤコグサとダイズの拠点(代表機関)となっている。

*2-2:http://qbiz.jp/article/126245/1/ (西日本新聞 2018年1月17日) 竹で次世代繊維開発 軽量、丈夫、おむつから航空機まで 大分大助教
 大分大理工学部(大分市)の衣本(きぬもと)太郎助教(42)が、竹を原料とした次世代素材セルロースナノファイバー(CNF)の製造法を開発した。広い産業で活用が期待されている素材で、パルプなどを原料とする従来の製法よりコストを約10分の1に抑えられるのが特長。放置竹林の拡大が全国的な問題となる中、その解消にもつなげたい考えだ。CNFは、植物由来の天然素材。植物繊維の主成分であるセルロースをナノサイズ(1ナノメートルは10億分の1メートル)まで細かくし、鉄の5分の1の重さで5倍の強度を持つとされる。大手製紙会社がパルプの需要減を補う用途開発として主に研究しており、一部で実用化。表面積の大きさを生かした吸水性の高いおむつシート、インクに混ぜ粘性を増して書きやすくしたボールペンなどが生まれている。将来的には自動車や航空機、住宅部材の他、医療や食品にも活用が期待されており、国は、2030年の市場規模を1兆円と試算している。衣本助教は、放置竹林で多くが伐採、廃棄されるだけの竹を資源として活用できないかと発想。開発した製法は、薄くつぶした竹を圧力釜で煮て、ミキサーで綿状の繊維にした後、薬品処理をして再びミキサーで解きほぐす。できたCNFは直径16ナノメートルの細さ。圧力釜やミキサーなど装置や薬品は市販品で、1キログラム当たり4千〜1万円とされる現在のコストを、数百円に抑えられるという。製法特許を出願中だ。国立研究開発法人・科学技術振興機構(JST)から助成を受け事業化を進めており、当面は竹林がある地域で廃校や空き家などを拠点にしながら地域の雇用にも生かしていく方針。衣本助教は「特別な道具や技術は必要なく、高齢者など誰にでもできる。新産業として地域振興にもつなげたい」と構想を膨らませている。
   ◇   ◇
■竹の安定調達が鍵
 放置竹林問題に詳しい北九州市立大のデワンカー・バート教授(都市計画)の話 CNFは最先端の分野で市場は確実に広がっている。事業化が確立されれば竹林対策へ大きな前進だ。ただ、課題は原料を低コストで安定的に調達できるかどうか。竹は山間部に広がっており、伐採する人件費も必要。森林環境税の活用など里山を整備する国や自治体との連携も有効な手段になるだろう。

*2-3:https://www.agrinews.co.jp/p43533.html (日本農業新聞 2018年3月14日) 農業変える 宇宙の目
 宇宙から得た情報を農業生産に活用する動きが広がっている。人工衛星で水田を観測して、米の生育や食味を判断する仕組みを取り入れている青森県の新品種「青天の霹靂(へきれき)」は、米の食味ランキングで4年連続「特A」を取得。埼玉県では、梅の害虫被害を宇宙から監視し、防除に生かす実証が進む。高齢化や人手不足が深刻化する中、相次ぐ人工衛星打ち上げを利用した農業の省力・効率化が期待される。(猪塚麻紀子)
●青森産米「青天の霹靂」 収穫期・食味 マップに
 青森県が10年かけて開発した「青天の霹靂」。デビュー早々の2014年産から連続で「特A」を獲得できた秘訣は、宇宙からの観測データを生かした生産にある。県は16年産から、人工衛星から地球を観測するリモートセンシング技術を導入。津軽地方3000平方キロを撮影した衛星画像を分析して「たんぱくマップ」と「収穫適期マップ」(青森県産業技術センター農林総合研究所提供)を作成、産地の水田約8000枚を1枚ごとに色分けして示すことに成功した。タンパク質は米の食味を左右するため、同品種は厳しい出荷基準を設けている。8月中旬~9月の登熟期の葉色から含有量を判別。これを基に県、JAの営農担当者が指導を行い、次年度以降の施肥設計に活用する仕組みだ。17年産からは、水田ごとの収穫適期をスマートフォンで知らせるアプリを農家も活用し、良食味米の生産につなげた。農水省によると、17年産「青天の霹靂」の1等比率は、10月末時点で98・9%と過去最高の出来。技術を開発した県産業技術センター農林総合研究所の境谷栄二生産環境部長は「人工衛星の情報を活用すれば、産地全体で品質の維持が期待できる」と話す。
●埼玉の梅農園 虫害ピタリ、適切防除
 埼玉県では、宇宙からの“目”が梅の害虫被害を監視する。越生町で梅の生産・加工を手掛ける山口農園は、リモートセンシング技術による適期防除の実証に取り組む。農家の高齢化や人手不足が深刻化する中、同園は1ヘクタールの自作地に加え、地域の農家の防除を請け負っている。山口由美代表が「消毒や収穫の時期をピンポイントで見極めて作業の負担を減らしたい」と、城西大学薬学部の松本明世教授、リモート・センシング技術センター(東京都)と実証試験をスタートした。梅の葉は、アブラムシが付くとしおれて変色する。この色の変化を上空から見極め、被害状況や発生場所を割り出す。近赤外線による観測で、人の目では見分けにくい色の違いを識別でき、高所の様子も分かるため、より効果的な防除につなげられるという。研究を導くのは農家の声だ。山口代表が、梅の陥没症対策や収穫時期の予測など、現場が必要とする技術を提案し、研究員が実証化を探る。「知恵や力を借りることで農業の可能性が広がる」と期待する。同センターは同園での試験を基に、他の果実への応用や海外への普及も視野に入れる。
●「農家の勘」数値化
 人工衛星打ち上げに民間が参入するようになり、安価に活用できる環境が整ってきた。農研機構・農業環境変動研究センターによると、リモートセンシングの利点は「広く見える」「時間による変化が分かる」「人の目で見えないものも見える」ことだ。産地単位のデータを分析して、「農家の勘」を数値化することが期待できる。

*2-4:https://www.agrinews.co.jp/p42845.html (日本農業新聞 2017年12月24日) 3.2ヘクタール 最大規模の営農発電 売電収入で雇用創出 耕作放棄地も解消 大豆や小麦生産 千葉県匝瑳市の農家ら合同会社
 千葉県匝瑳市の農家が設立した匝瑳メガソーラーシェアリング合同会社が3.2ヘクタールの農地上の高さ約3メートルに、太陽光パネルを整備した。圃場(ほじょう)で農作物の生産と発電を同時にするソーラーシェアリングの取り組みで国内最大規模。パネルの下で大豆と小麦を栽培する。売電収入は年間4700万円を見込み、その収入と農産物販売で収益を上げる新しいビジネスモデルだ。同社は、高さ2・8~3・5メートルの架台を建て、上に横190センチ、縦37センチのパネルを、南向きに約1万枚並べた。2017年3月に通電し、年間の発電量は一般家庭288世帯分の年間消費量に相当する142万キロワットを見込む。パネルを設置する農地は地権者が8人で、半分が耕作放棄地だった。合同会社の椿茂雄代表は「地域では廃棄物の不法投棄も横行し、悩みの種だった」と振り返る。発電所周辺は葉タバコ生産が盛んだったが、徐々に減り、耕作放棄地に替わっていった。その課題解決のため、地元農家や新規就農者に、パネルの下で耕作してもらう仕組みを作った。農地全てをパネルで覆うのではなく、3分の1の面積で発電し、残りの農地は太陽光が当たるようにして大豆と小麦を育てる。人件費は、再生可能エネルギー固定価格買取制度を利用し1キロワット31円(税別)で東京電力に売電した収入から、1人当たり年200万円を支払う。総工費3億円のうち、2億6000万円を信用金庫の融資と社債で調達した。売電収入から、人件費と地代、地域環境を守るための基金、パネルのメンテナンス費用の計約1000万円を差し引いた残り3700万円を、返済に充てる計画だ。既に6月まきの大豆を11月に初収穫した。10アール収量は120キロほどで「この辺りでは上々」と椿代表。まだ売り先は決まっていないが、直売とみそなど加工販売を計画している。後作は、小麦の栽培を計画する。椿代表は「耕作放棄地を農地に戻すため、この仕組みを地域に広げていきたい」と展望する。農水省が農地の一時転用を許可したソーラーシェアリングの件数は、15年度までに全国775件(152・1ヘクタール)。調査を始めた13年度の約8倍で、増加基調という。発電しても、作物の収量が地域平均の8割以上を維持できることが条件の一つで、事業者は毎年、収量や品質の報告義務がある。売電価格は、規模や開始年度で変わる。

*2-5:https://www.agrinews.co.jp/p43504.html (日本農業新聞 2018年3月12日) 子どもの体調不良予防へ シラカバでシロップ 長野の川上さん
 長野県川上村のレタス農家、川上知美さん(37)は、村有林で自ら採取したシラカバの樹液をベースにしたシロップを商品化した。小児科医がいない村で子育てをする中で、体調不良を予防できるようなものを作りたいという母心から企画。村のアイデアコンテストで最優秀賞を獲得し、商品開発を村が支援した。商品名は「白樺(しらかば)樹液のハーブコーディアル」。樹液にマロウブルー、ホーリーバジルなどのハーブ類、北海道産のテンサイ糖、宮崎県産のかんきつ「ヘべス」の果汁を材料に作った。優しい甘味と、かんきつの爽やかな香りや酸味があるシロップで、そのままなめたり、お湯や紅茶、炭酸水で割ったりして飲める。村の直売所などで1瓶(100ミリリットル)1200円で販売する。開発のきっかけは、村での子育て中に感じた不便さだ。村には小児科医院がなく、近隣の病院までは車で片道1時間半かかる。そこでハーブ類などの自然の力で、体調不良を予防する方法がないかと考えた。川上さんは「森の手当て屋さん」と題し、2016年に村が地方創生の取り組みで開いたアイデアコンテストで発表。最優秀賞を獲得した。その副賞の事業化の支援を使い、商品を開発した。目を付けたのが村有林に生えるシラカバの木。北欧では、不調を癒す「看護婦さんの木」と呼ばれる。その樹液をベースに、小児科で処方される甘いシロップ剤をイメージした商品に仕上げた。樹液は村の許可を得て川上さんが240リットルを自ら採取。他の材料も国産や有機栽培、無農薬のものにこだわった。味の決め手のヘべス果汁は、川上さんの出身地、宮崎県のJA日向から取り寄せた。樹液の保存などの苦労はあったが、活動に共感してくれた「農業女子」の仲間が協力し、昨年の秋に完成した。川上さんは「商品開発をきっかけに多くの人と出会うことができた。この商品を通じて村や農産物を発信していきたい」と思いを込めている。

*2-6:https://www.agrinews.co.jp/p43489.html (日本農業新聞 2018年3月10日) ジビエ利用へ体制整備 モデル17地区選出 農水省
 農水省は9日、鹿やイノシシなど野生鳥獣の肉(ジビエ)の利用拡大を進めるモデル地区に、全国17地域を選出したと発表した。衛生管理された良質なジビエを、安定的に供給できる体制作りを支援する。政府は、年間172億円(2016年度)にも上る農作物被害を減らそうと、ジビエの利用拡大を推進。16年度の利用量(1283トン)を19年度に倍増させる目標を掲げる。同省は18年度予算案などに「ジビエ倍増モデル整備事業」を新たに盛り込んだ。全国にモデル地区を設置し、捕獲や処理加工、衛生管理に関わる人材の育成や、拠点となる処理加工施設の整備、「移動式解体処理車」(ジビエカー)の導入などを支援する。モデル地区は、それぞれが設定した19年度の処理頭数目標に向けたジビエの利用拡大の他、衛生管理の徹底などに取り組む。斎藤健農相は同日の閣議後会見で「有害鳥獣は有効に活用すればプラスの存在になるという意識が変わるようジビエ利用を推進していく」と取り組みに期待を示した。今回選定されたモデル地区は次の通り。
▽北海道空知地区▽長野市▽石川県南加賀地区▽岐阜県西濃ブランチ▽三重県伊賀市・いなべ市▽京都府・大阪府=京都丹波・大阪北摂地区▽京都府中丹地区▽兵庫県内広域▽和歌山県紀北地区▽同県古座川町▽岡山県美作地区▽鳥取県東部地区▽徳島県内広域▽熊本県内全域▽大分県内全域▽宮崎県延岡地区▽鹿児島県阿久根地区

*2-7:http://qbiz.jp/article/127869/1/ (西日本新聞 2018年2月10日) 九州が「丸太急増」けん引 輸出額の7割超 中国向け杉安定供給
 2017年の丸太輸出額は中国の旺盛な需要を取り込み、前年比61・7%増の137億円と過去最高を記録した。このうち、杉を中心とする九州産が7割超を占める。日本木材輸出振興協会によると、丸太の港別輸出額では、九州の港が上位に並ぶ。トップは鹿児島・志布志港の38億円で、87%が中国向けだ。2位は熊本・八代港の13億円。宮崎・細島港が12億円で続く。志布志港の輸出額が多いのは、港を使う鹿児島、宮崎両県の4森林組合が輸出のための協議会を立ち上げ、安定供給できる態勢をつくっているからだ。中国向けの丸太は現在、工業製品の梱包(こんぽう)材用など品質の高くないものが多いが、協議会の堂園司会長は「今後はより良質な木材の輸出にも取り組んでいきたい」と、さらなる輸出増加に意欲を見せている。

*2-8:https://www.agrinews.co.jp/p43582.html (日本農業新聞 2018年3月20日) 林業従事5万人割る 人材獲得競争が激化 15年
 森林の伐採や苗木の植樹などの整備を担う「林業従事者」の減少が加速している。林野庁が公表した2015年時点の従事者数は4万5440人で、前回調査(10年)より11%も減少。初めて5万人を割り込んだ。高齢化に加え、他産業との人材獲得競争が激しくなっていることも影響したとみられる。政府は、意欲のある担い手に森林を集約する新たな森林管理制度を19年度から始める方針。林業従事者が減る中、同制度をてこに、必要な森林整備を行う体制を整えたい考えだ。同庁は、総務省が5年ごとに実施する国勢調査を基に、林業従事者数をまとめており、今回は15年時点の結果を公表した。林業従事者は、国産材の価格の低迷による収益性の低下などで、1980年の14万6321人から減少の一途をたどってきた。前回(10年)は5万1200人で、05年比の減少率は2%。新規就業者の育成を支援する「緑の雇用事業」の効果もあって、減少幅も小さくなっていたが、15年は4万5440人と大きく減少した。原因の一つが、林業従事者の高齢化だ。年代別に見ると、65歳以上の従事者が占める割合(高齢化率)は10年から4ポイント増の25%、35歳未満の割合(若年者率)は同1ポイント減の17%となった。働き手が不足し、他業種との人材獲得競争が激しくなっていることも背景にあるとみられる。農業の有効求人倍率は、全産業平均を上回って推移している。政府は25年までに国産材の供給量を4000万立方メートルに増やす目標を掲げる。これに伴い、同庁は、目標の達成に5万3000人程度の林業従事者が必要と試算しているが、15年は大きく下回っている。

<長所を伸ばす経営へ>
*3-1:https://www.agrinews.co.jp/p43522.html (日本農業新聞 2018年3月13日) 米国のISD否定 はしご外された日本 東京大学大学院教授 鈴木宣弘氏
 グローバル企業が引き起こす健康・環境被害を規制しようとしても、逆に損害賠償を命じられるISD(投資家・国家訴訟)条項。米国とそれに盲目的に追従する日本が環太平洋連携協定(TPP)で強く推進したが、オーストラリアを筆頭に他国は反対だ。日欧経済連携協定(EPA)で、欧州連合(EU)はISDを「死んだもの」(マルムストローム欧州委員)とさえ言った。北米自由貿易協定(NAFTA)の再交渉で、「震源地」の米国がISDを否定する事態となり、米国に追従してISDを必要不可欠と言い続けた日本だけがはしごを外され、孤立する事態となってきた。「賃金は下がり失業は増える」「国家主権の侵害」「食の安全が脅かされる」との米国民のTPP反対の声は大統領選前の世論調査で78%に達し、トランプ氏に限らず大統領候補全員がTPPを否定せざるを得なくなった。これが米国がTPPを破棄した背景である。この「国家主権の侵害」は、ISD条項を指している。NAFTAにおける訴訟状況を見ると、勝訴または和解(実質的勝訴)しているのは米国企業の12件だけ(2017年3月現在)で、国際法廷の判決が米国企業に有利と言われてきた。だから、グローバル企業と結び付く米国政治家はISDを推進しようとした。しかし、その米国で17年9月、中小企業の社長100人が連名でISD条項削除を求める手紙を出し、最高裁首席判事のジョン・ロバーツ氏も同条項に懸念を表明。ISDを推進したいグローバル企業と結び付く政治家の声を抑えて、トランプ政権はISDを否定する方向にかじを切った。そして、NAFTAで米国は「選択制」を提案した。訴訟に際し、国際法廷に委ねるISDを使うか、国内法廷で裁くかは、各国が選択できることにし、米国は国内法廷で裁く(ISDは使わない)と宣言した。カナダとメキシコはそもそもISD削除を求めていたので、仮に米国提案の選択制を受け入れたとしても、ISDは使わない選択をすることは明白である。つまり、米国提案の選択制はNAFTAにおいて実質的にISDを否定することになる。TPP11では、ISDの投資部分を凍結することで、ISDの懸念をかなり抑制しているが、ISD適用範囲を広く解釈すれば、理不尽な訴訟が起こり得る。米国への「忖度(そんたく)」で、TPP11では中途半端に凍結しているが、そもそも、米国がISDを使わないと宣言した以上、TPP11で残す必要はなくなったと言える。この期に及んで、「死に体」のISDに日本だけがいつまで固執するのだろうか。自身でしっかり考えず、米国に追従してはしごを外される哀れな国から早く卒業すべきである。

*3-2:https://www.agrinews.co.jp/p43151.html (日本農業新聞 2018年1月30日) 戦略的外交は茶番劇 食の安全基準 犠牲に 東京大学大学院教授 鈴木宣弘氏
 日本にとっての「戦略的外交」とは、「対日年次改革要望書」や米国在日商工会議所の意見書などに着々と応えていく(その窓口が規制改革推進会議)だけである。全部いっぺんに応えてしまうとやることがなくなってしまうので、必死で交渉しているポーズを取りつつ、一つ一つ順に応えていくのが戦略といえば戦略だ。いずれにせよ、際限なく国益が失われていく「あり地獄」「底なし沼」である。その時、食の安全基準は一層の国益差し出しの格好の材料になる。たくさんの要望がリストアップされているから、それに順次応えていくのにちょうどよい。だから、「日本の安全基準が環太平洋連携協定(TPP)などで影響を受けたことも、今後受けることもない」という政府の国会答弁は「偽証」である。例えば、米国の牛には牛海綿状脳症(BSE)の危険性がある。日本はこれまで、BSEの発症例がほとんどない20カ月齢以下の牛に限定して輸入を認めていた。ところが2010年、米国から「TPPに参加したいなら規制を緩めろ」と言われたため、「入場料」として、「自主的に」(=米国の言う通りに)30カ月齢以下に緩めてしまった。米国はBSEの「清浄国」となっているが、BSE検査率は1%未満でほとんど検査されていないだけだ。と畜段階でのしっかりとした特定危険部位の除去も行われていない。24カ月齢のBSE感染牛も出ている。だから、30カ月齢に緩めることはリスクがある。しかし、食品安全委員会は「科学的根拠に基づいて判断した」と言い張り、本当は、米国へのお土産のための結論ありきだった。さらに、茶番劇が繰り返されようとしている。「清浄国」に対しては30カ月齢以下という月齢制限そのものが問題になる。そこで、15年のTPPの大筋合意後は、日本政府は米国からの「清浄国」に対する月齢制限を撤廃しろとの要求を見越して、「今日言われたら今日にでも撤廃できるように準備万端整えてスタンバイしている」状況が食品安全委員会では1年以上前からできている。そして、ついに、今年の1月13日、米国が月齢制限の撤廃を求めていると日本のメディアが報じ、その要求に対して、「日本は科学的観点から慎重に検討する方針だ」と報じた。本当は、とっくの昔に撤廃の準備はできているのに。またしても見え透いた茶番劇で国民が欺かれるのである。

*3-3:http://qbiz.jp/article/127868/1/ (西日本新聞 2018年2月10日) 農産物輸出8073億円、最高 牛肉41%増、イチゴ56%増 17年速報値
 農林水産省は9日、2017年の農林水産物・食品の輸出額(速報値)が前年比7・6%増の8073億円となり、5年連続で過去最高を更新したと発表した。8千億円突破は初めて。和食ブームを受け、牛肉や緑茶などが伸びた。ただ、「19年に1兆円」の政府目標の達成はなお遠い。輸出先は、香港の1877億円がトップ。1115億円の米国、1008億円の中国が続いた。アジアが全体の73・1%を占めた。品目別では、牛肉、緑茶、イチゴ、コメなどが軒並み過去最高になった。鹿児島や宮崎が有力産地の牛肉は41・4%増の192億円。台湾向け輸出が解禁されたことなども後押しした。緑茶は海外の健康志向の高まりを受け、24・3%増の144億円だった。香港や台湾向けが多いイチゴは「あまおう」などが人気で、56・6%増の18億円だった。コメは海外の和食店増加を追い風に18・1%増の32億円。日本酒を含むアルコール飲料も26・8%増だった。みそ、しょうゆなど調味料も伸びた。一方、リンゴは台湾で贈答用に高値が付く大玉が不作で17・7%減だった。農産物全体では8・1%増の4968億円。鹿児島県での養殖が多いブリが好調だった水産物は4・2%増の2750億円。丸太が伸びた林産物は32・3%増の355億円だった。1兆円の目標達成には、新たな市場の開拓のほか、輸出先の各国・地域が福島第1原発事故後に設けた輸入規制の緩和、撤廃などが課題となる。

*3-4:https://ryukyushimpo.jp/news/entry-677860.html (琉球新報 2018年3月7日) もとぶ牧場、繁殖拡大へ 沖縄ファンドが1.5億投資
 政府系ファンドの地域経済活性化支援機構(REVIC、東京)と地元金融機関などが立ち上げた沖縄活性化ファンドは6日、農業生産法人もとぶ牧場(本部町、坂口泰司社長)への投資決定を発表した。優先株と社債を引き受ける形で1億5千万円を拠出する。もとぶ牧場は競り市場で購入した子牛を育てて県産黒毛和牛のブランド「もとぶ牛」として販売展開しているが、近年の子牛価格の高騰を受け、自社牧場での子牛繁殖から肥育まで一貫経営化を進めていく。坂口社長、REVIC地域活性化支援部の小川淳史ディレクター、もとぶ牧場と業務提携する伊藤ハム(兵庫県)の山崎征二国内生産事業部長、琉球銀行の宜保諭常務が那覇市の琉銀本店で会見した。もとぶ牧場は生後9カ月程度で競りに出される子牛を購入し、月齢30カ月まで肥育した上で年間千頭程度を出荷している。3年前から自社で100頭ほどの子牛の繁殖を始めており、沖縄活性化ファンドからの資金調達を基に母牛の導入や牛舎の整備を進め、繁殖頭数を年間500頭と5倍の規模に拡大する。坂口社長は「5~6年前に35万円だった子牛の値段が倍の70万円まで上がり、経営にも影響が出ている」と繁殖事業を本格化させる背景を説明した。口蹄(こうてい)疫や東日本大震災で国内有数の産地が打撃を受けたことや畜産農家の後継者不足で子牛不足が全国的に高まり、子牛相場の上昇につながっている。伊藤ハムは自社の繁殖事業のノウハウをもとぶ牧場に提供するほか、メインバンクの琉球銀行は発情発見システムなど畜産業の生産管理を効率化するIT導入支援を行う。

*3-5:https://www.agrinews.co.jp/p43453.html (日本農業新聞 2018年3月6日) 「縁辺革命」 牛の島にぎわい新た
 「縁辺(えんぺん)革命」。今、離島や中山間地域など“田舎の田舎”ほど、若者が集まっている現象を指す。持続可能な地域社会総合研究所の藤山浩所長が名付けた。若い女性の推移を見ると、過疎指定市町村の4割を超える327市町村で流入が超過している。転入者が転出者を上回る人口の「社会増」を実現した過疎市町村も1割を超える。増加率の上位を占めているのは離島や山間部の小さな町村だ。藤山所長は「若者や女性の活躍する場があり、互いの顔が見える範囲の地域に、若者が向かう。小さな自治体こそ、若者の居場所をつくっている」と分析する。
●8人で300頭超
 五島列島最北端の離島、長崎県佐世保市の宇久島。佐世保港からの高速船は1日1便。人口は2000人、15年間で半減した。高校を卒業すれば誰もが島外へ出ていく。人口減の流れが当たり前だった島に「縁辺革命」が起きている。「20年前だったら、想定すらできないことが起きている。仲間ができてうれしい」。畜産農家の西尾光隆さん(31)が笑顔で語る。8年前に就農した西尾さんは当時、20年ぶりの農家と言われ、た。しかし今、20、30代の牛飼いは島に8人。畜産農家90戸1400頭のうち、8人が飼う牛は300頭を超え2割を占めるほどだ。「最終的に、無人島になるんじゃないかと不安だった。だから少しでも手伝えば、高齢農家が牛を飼い続けることができると思って、草刈りや種付け、できることは何でもやった」と振り返る西尾さん。家畜人工授精師として島を周り、父親と増頭を進めた。そんなふうに頑張っていると、同世代が毎年1人ずつのペースで畜産農家としてUターンしてきた。その一人、繁殖雌牛30頭を飼育する辻直哉さん(28)。県外に就職したが、島のコミュニティーと大きく異なる環境になじめず、3年前に島に戻った。実家の畜産を手伝う中で、獣医や西尾さんら仲間と知り合い、少しずつ経営に参画。今では「センスがある」と獣医師から褒められる。1年1産を上回る繁殖成績を残す。「廃れていくだけの島にはしたくない。同世代が多く、牛で島を盛り上げることがきっとできる」。都会の会社員時代は実感できなかった、役割と手応えを感じる。
●大きな推進力
 総務省が2月に発表した田園回帰の調査でも、人口が少ない地域ほど移住者が増えていることが分かった。北海道豊浦町、高知県大川村、鹿児島県十島村など人口5000人に満たない地域が並ぶ。佐世保市と合併した宇久島の潮流は、数字上で成果としては表れにくい。わずか8人。ただ島にとっては、大きな推進力だ。和牛部会会長の西尾政喜さん(58)は若手農家の台頭で、島が活気づいていると感じる。「最近『若者の立場で考えよう』と言う農家が増えたよ。農家以外から声を掛けられる機会も多く、明るい話題が島に広がってきた」と喜ぶ。島の基幹産業だった養蚕、福原オレンジが廃れた今、西尾さんは「島に残るは牛。若者が帰り、牛の島の将来像が描ける」と見据える。地域に、希望が見えている。
●2015年 実質社会増減率
 持続可能な地域社会総合研究所が、死亡者数を除いた転出入による社会増減率を算出すると、都市部より条件の厳しい小さな自治体で人口の社会増を実現していた。熱心な移住促進策で人口を増やしている。発足して3年目。イベントの参加者は小さな子どもから社会人まで広がりました。これからも、幅広い世代に食や農への関心を持ってもらい、面白さや奥深さを知ってもらえるよう活動していきます。(代表・篠崎智子=新潟大学)

<農林漁業の担い手>
*4-1:https://www.agrinews.co.jp/p43245.html (日本農業新聞 2018年2月11日) 集落営農世代交代 担い手づくり再起動を
 集落営農が世代交代期を迎えている。まとめ役や機械作業をする人が見つからず困っているケースが全国的に見られる。集落営農の組織化や法人化に官民挙げて取り組んで10年。世代交代期を乗り切るため、担い手づくり運動の再起動が必要だ。集落営農は2002年の米政策大綱で「集落型経営体」に位置付けられ、国の政策支援の対象になった。07年の品目横断的経営安定対策の導入に合わせ、農水省や県、JAグループなどの農業団体が一体で育成に取り組んだ経緯がある。それから10年。集落営農数は全国に約1万5000(17年2月現在)に増えた。法人化した集落営農は約4700で全体の3割を占める。農水省は23年までに5万の目標を掲げ、法人化を促進する。集落営農もその対象の一つだ。集落営農が抱える主要な課題は2点ある。設立や運営の中核を担ってきたメンバーが引退時期を迎えたときに次の世代の新たなリーダ―を確保できるか。作業委託する高齢組合員が土地持ち非農家化し、地域農業との関係が薄くなることである。後継者のいない地域では、花や野菜を作るJAの青年部員に何度も頭を下げてオペレーターを引き受けてもらうなど、組織の継続に難儀している実態が各地で少なくない。中山間地域ほど人の手当てが深刻だ。新規の法人を増やすのも重要だが、設立して10年以上経過した集落営農の継続対策も怠ってはならない。“要員不足解散”を防がなければならない。そういう中、注目される動きの一つは集落営農の広域化である。佐賀県白石町の農事組合法人ほくめいは15の集落営農組織が合併して16年に誕生。経営面積は640ヘクタールに上る。合併前は集落単位の集落営農組織が後継者不足で役員が交代できない、オペレーターも成り手がないという問題を抱えていた。広域法人化までは一気にいかないが、集落営農法人同士でオペレーターや大型農機をやりくりして、農繁期の人手不足や機械の効率利用を図るという動きも各地に出てきている。愛知県農業振興協会が提案する「地域まるっと中間管理方式」も興味深い。地域の農地を全ていったん、農地中間管理機構に預け、その地域内に設立した一般社団法人が借り受ける。担い手・自作希望農家のすみ分けを柔軟に行う。農地集積率が高く、一社の設立手続きが容易、地域集積協力金の非課税化などのメリットを期待できる。こうした新たな展開を進める上で重要なのは、地域内の合意形成だ。何のための改革か、組合員が果たすべき役割は何か。こうした点が関係者全体に落ちないと、地域の農地を守るという目的の達成は難しくなる。その意味からいま一度、担い手づくり運動を行政、農業団体一体で再起動し、次の一手に踏み出してはどうか。農地集積にも良い効果を生み出すはずだ。

*4-2:https://www.agrinews.co.jp/p43243.html (日本農業新聞 2018年2月11日) 生鮮食品宅配が過熱 スーパー 続々と参入 異業種と連携強化 多様な需要に対応
 青果や食肉などの食材や総菜など加工品を自宅に届ける宅配商戦が、過熱している。共働き世帯の増加など、利便性を求めるニーズの高まりを受けたものだ。大手スーパーが、異業種と連携して相次ぎ参入。主に首都圏で展開し、スーパーの常設店舗で伸び悩む売り上げを補う狙いがある。有機農産物を扱う宅配業者も主力3社が経営統合し、配送網の効率化を図り対抗する。食の宅配市場で、熾烈(しれつ)な主導権争いが始まっている。消費者の購買行動が変化している。矢野経済研究所によると、食品宅配市場の事業規模は2016年に2兆782億円となり、17年以降も年3%ずつ成長すると見通す。一方、17年の食品スーパーの売上高は10兆2806億円で、前年より0・4%減。青果物や食肉などの高値で減少幅は小さく映るが、中長期的に見ると減少傾向にある。食の宅配事業は、スーパー業界の将来をかけた、新たな戦略ともいえる。大手スーパーのイトーヨーカ堂を展開するセブン&アイ・ホールディングス(HD、東京都千代田区)は17年11月、通販メ業者のアスクルと連携した生鮮宅配「IY(アイワイ)フレッシュ」をスタートさせた。アスクルの物流機能を活用し、イトーヨーカ堂の宅配拠点から生鮮品を届ける。配送時間は1時間単位で細かく使用でき、利用者は40代の働く世代が中心だという。「まとめ買いではなく、簡便性の高い商品や調理キットなどを少しずつ注文する消費者をターゲットにしている」(同HD)。現在は東京都内の2区だけだが、18年度中に23区全体へ拡大する。
●ネット事業展開
 スーパーの西友(東京都北区)を傘下にする米・ウォルマート・ストアーズは1月、ネット通販大手の楽天と業務提携を結び、9月までにネットスーパー事業を展開すると発表した。イオン(千葉市)も、ソフトバンクやヤフーと、近くインターネット通販事業で提携する方向だ。ソフトバンクとヤフーが持つ顧客基盤と、イオンの食品をはじめとする幅広い商品力や物流網を組み合わせる。17年4月に先行して生鮮宅配に参入したアマゾンジャパンが存在感を高める中で、影響力のある買い物サイトの構築を進めていく。
●有機は経営統合
 これまで食品の宅配事業をけん引してきた有機農産物の宅配メーカーは、経営統合に活路を見いだす。最大手のオイシックスドット大地(東京都品川区)は、オイシックスと「大地を守る会」が17年10月に経営統合して誕生した。今年2月には「らでぃっしゅぼーや」を子会社化し、年間売上額は550億円を超える見通しだ。30、40代の子育て世代に強いオイシックス、シニアをターゲット層にする「大地を守る会」、東北から関西まで19の都市部で自社便の配送網を持つ「らでぃっしゅぼーや」と3社の強みを発揮し、販売拡大を図る。3社は連携後も、農産物にこだわる幅広い年齢層をターゲットに支持層の拡大を進める。有機農産物の登録生産者数を従来の2倍に当たる5100人に増強し調達力を高めたことに加え、物流経路を共有し効率を高める。大手スーパーに、有機農産物という付加価値で対抗する戦略だ。

*4-3:https://www.agrinews.co.jp/p43264.html (日本農業新聞 2018年2月13日) 外国人技能実習制度 受け入れ団体52農協 1月末時点「優良」認定は3
 昨年11月に新制度に移行した外国人技能実習制度で、実習生を受け入れる監理団体の許可を受けた農協数は、1月末時点で52に上ることが政府のまとめで分かった。うち、研修生の受け入れ期間や人数を拡大できる「優良」認定を受けたのは3農協。優良認定を得るには、実習生の技能習得の支援や人権保護など、基本的な取り組みの積み重ねが求められる。新制度は実習生の保護などを目的に、実習生の受け入れ農家や監理団体を監督する「外国人技能実習機構」を新設。同機構から農家、監理団体ともに体制や取り組みが「優良」と認定されれば、実習生の受け入れ期間は最長3年から5年に、受け入れ人数の上限は倍にできる。旧制度では農業の監理団体は592団体(2015年度)で、うち、農協は79で、他は事業協同組合など。新制度の開始から1月末までに認定を受けた52農協のうち、優良認定は北海道のJAオホーツクはまなすと熊本県のJA熊本うき、茨城県の茨城中央園芸農協。農協以外の監理団体がどの程度、優良認定を受けたかは示されていない。他産業も含む全体では認定された監理団体は1888で、うち、優良認定は661だった。優良と認定されるには、同機構から120点満点で採点され、6割以上の得点が必要だ。受け入れ農家数に比べ十分な数の常勤役職員がいるかといった業務体制や、実習生が研修修了時に受ける試験の合格率、実習生の日本語学習への支援状況などが評価される他、実習生の失踪など問題が発生すれば減点される。JA熊本うきによると、優良認定を受けるのは決して簡単ではないとし、実習生との丁寧な関係づくりで、失踪を未然に防ぐなどの対応が重要になるとみる。一方、優良認定を得られていない関東のあるJAは、実習生の試験合格率などで得点が伸びなかったという。実習生にはこれまで試験の受験義務はなく、受験率が低かった状況も影響したとみられる。一方、冬場に作業がなく、実習生が1年未満で帰国する形態が定着している産地もあり、「そもそも優良認定を目指さない監理団体があることも想定される」(農水省)状況だ。
●熟知した職員 確保を
 外国人技能実習制度に詳しい日本農業経営大学校の堀口健治校長の話
優良認定を得た監理団体の中に農協系が少ないように見えるが、監理団体の認定は今後も進む見通しであり、数の多少に対する評価は現時点では難しい。実習生が農業現場に円滑に定着するには、農業の実態を十分に理解している監理団体が望ましい。その意味では、農協系の監理団体の役割への期待は大きい。だが、監理団体としての仕事に特化した専門家がいる事業協同組合と比べると、農協の場合、制度を熟知した職員の確保など、工夫が望まれる。(優良認定外の)特定監理団体としてまずは出発して、今後は、優良認定を目指す農協も出てくるのではないか。今後の動向に注目していきたい。

*4-4:http://www.kochinews.co.jp/article/160257/ (高知新聞 2018.2.14) 難民保護】冷たい「鎖国」続けるのか
 不法滞在で入国管理施設に収容された外国人が、条件付きで解放された後、再び収容される事例が増えている。過去5年で約4倍に膨らんでいるという。入国管理当局が取り締まりを強化しているためだ。就労禁止違反などが理由になっている。問題は、再収容者には難民認定への申請者が多いことだ。認定審査は長期化する傾向にある。複数年に及ぶケースもある。生活のためにやむなく働く人が少なくない。取り締まり強化の理由も、納得しがたい。政府は2020年東京五輪に向けた治安対策を挙げる。不法滞在が犯罪の温床になる客観的なデータがないにもかかわらずだ。これでは本当に保護が必要な難民を救済できないばかりか、非人道的だと非難されても仕方がない。難民の保護義務を課した難民条約の精神にも反しないだろうか。日本はこれまで、難民の受け入れに消極的な「難民鎖国」と内外から批判されてきた。難民申請数は年々増加している。16年には前年比約44%増の1万901人が申請したが、実際の認定数はわずか28人だった。過去5年間でも30人を超えた年はない。欧米諸国は毎年、数千人、数万人単位で受け入れている。環境が違うとはいえ、桁が違いすぎる。再収容者の増加も、こうした政府の消極姿勢と無関係ではあるまい。日本はこの先も、冷たい「鎖国」のままでいいのだろうか。入国管理施設は原則、在留資格がなく強制送還の対象となる外国人を一時的に収容している。難民申請をしていたり、母国が身柄の引き取りを拒否したりする場合には収容が長期になる。入管当局は病気や人道上の理由から、拘束を解く「仮放免」にすることがある。就労の禁止や保証金の納付などが条件だが、ハードルが高い。精査する必要がありはしないか。仮放免になっても生活費を確保できなければ暮らしていけない。政府によれば、最初から就労を目的にした難民申請者も増えているという。仮にそうだとしても一律に就労を禁じれば、本当の難民を保護できない恐れがある。難民条約が不法入国を理由に処罰することを禁じていることも忘れてはならない。そもそも合法的に入国したり、準備万端で申請できたりする難民は少ないはずだ。移民や難民の受け入れには消極的な一方で、政府は数年間日本で働く外国人技能実習生の受け入れに力を入れている。本来、途上国の若者らに日本の技能を教え、母国の経済発展に生かしてもらう制度だ。ところが、現実には日本の労働力不足を補う手段になっている。実習生が低賃金や長時間労働を強いられる例も後を絶たない。国際社会に理解が得られない政策だ。政府のこうした姿勢の背景には、国民の関心の低さもあろう。抜本的な論議が求められる。

*4-5:https://www.agrinews.co.jp/p43240.html (日本農業新聞 2018年2月10日) ロボットで処理数増 食肉加工技術発表会
 日本食肉生産技術開発センターは9日、ロボットなど先端装置を使った食肉加工技術を紹介する研究発表会を東京都内で開いた。食肉加工の機械化を進めることで省力化を図り、業界全体で人手不足に対応する。メーカーは、食肉加工の工程にロボットを導入することで、処理能力が高まったことを報告した。食肉加工メーカーのスターゼンミートプロセッサーは昨年から同社の食肉加工工場に、豚モモ肉の骨を自動で取り除く処理ロボットを導入した。ロボットの導入に伴い脱骨作業に携わっていた人員を5人減らすことに成功。また、1時間当たりの処理頭数が約2割増えたと報告した。機械メーカーのマトヤ技研工業は、豚枝肉の残毛を自動で除去するロボットを紹介した。食肉処理施設でと畜・解体された枝肉は、皮剥ぎ工程で残毛が付着してしまうことがあるという。手作業ではなくロボットで処理することで、正確性と生産性を高めることができる。2018年度中に開発予定だ。同センターの関川和孝理事長は、労働力不足や働き方改革が進む中で、「安全・安心で高品質な食肉生産を消費者に提供する必要がある」と強調した。研究発表会ではモノのインターネット(IoT)の活用についても報告があった。全国の食肉業者ら約150人が参加した。

<水産業>
PS(2018年3月24日追加):*5のようなクロマグロはじめマダイ・フグ・コイ・貝類・ノリ・コンブ等々、現在では多くの水産物が養殖されている。このうち魚の場合は、生産コストの半分以上をえさ代が占めるため、安価な飼料を開発すれば輸出可能で、昆虫・ユーグレナ・植物など魚粉以外の飼料を検討するのがよいと考える。

*5:http://qbiz.jp/article/130191/1/ (西日本新聞 2018年3月21日) 鷹島でマグロ「完全養殖」 双日グループ 9月出荷へ、18年は2000尾
 長崎県松浦市の鷹島でクロマグロの養殖事業を手掛ける大手総合商社の双日が、人工的に卵からふ化させる「完全養殖」に参入し、9月ごろ出荷を始める。クロマグロは近年資源量が減少し、天然の稚魚を使う通常の養殖に対していけすの上限などの規制がかけられていることから、水産大手や商社が相次いで完全養殖に参入。双日も市場の動向やコストを見極めて生産量を拡大する方針だ。鷹島での通常の養殖は、双日子会社の「双日ツナファーム鷹島」が2008年に始め、現在年間約1万尾(約400トン)を出荷。長崎県の対馬や五島列島などの養殖場と比較して、海水温が低いことから身が締まっているのが特徴で、特に赤身の人気が高いという。18年は完全養殖のクロマグロ約2千尾の出荷を予定している。今後、通常の養殖を含めて年間最大1万3千尾まで増やす計画。双日によると、完全養殖は通常の養殖よりも成育期間が長めで、生産コストの半分以上を占めるえさ代の抑制が課題だという。クロマグロの完全養殖はすでに、マルハニチロ、極洋、日本水産の水産大手3社のほか、商社の豊田通商などが実施。双日の担当者は「資源の安定供給のために完全養殖は必要だが、消費者の認知度はまだまだ。まずは他社とともに完全養殖の市場拡大を図りたい」としている。

<種子の特許権>
PS(2018年3月25日追加):*6のように、民間企業の参入促進のため、種子の安定供給を都道府県に義務付けてきた種子法を3月末に廃止するそうだが、デュポンパイオニアやサカタのタネなど、意欲的に種子の生産に参入して成功してきた企業は多い。一方で、各地域の気候に適応し、日本人のニーズに合った種子を開発して、高すぎない価格で販売するには民間企業では不十分で、何でも民営化さえすればよいというものではない。従って、種子は農業発展の重要な要素であるため、都道府県が現行の体制を維持することは必要で、国民の税金を投入して開発した優秀な種子の特許権(国民の財産)は、世界でとっておくことが必要だと考える。

*6:https://www.agrinews.co.jp/p43590.html (日本農業新聞 2018年3月21日) 「種子法」廃止受け 都道府県 18年度は体制維持 新ルール作り検討 本紙調べ
 種子の安定供給を都道府県に義務付けてきた主要農作物種子法(種子法)が3月末に廃止される中、2018年度は、全都道府県が種子関連事業をおおむね維持し、安定供給の体制を継続する方針であることが20日、日本農業新聞の調べで分かった。地域に適した品種の維持は行政の管理が不可欠との姿勢。種子生産に行政が責任を持つ新たなルール作りに動く県も出始めた。ただ、同法廃止の狙いは民間の参入促進にあるため、種子を企業が握る危うさは残る。19年度以降も、行政の動向に注視が必要だ。全都道府県に、聞き取り調査した。その結果、18年度は種子法に代わる要綱を作成するなどして現行の体制を維持する方針。その上で、新たな制度や仕組みを設ける動きも出ている。全国一の種もみ産地の富山県は18年度、新規事業で種もみ生産技術拠点の整備に着手する。民間や他県の育成品種の原種を病気のない状態で供給するため、隔離圃場(ほじょう)や検定温室を整備する。埼玉県は18年度から、種子産地の強化と若返りを図る新規事業を始める。他産地との連携や共同乾燥施設の設置といった解決策を探る。若い生産者の掘り起こしや技術継承の方策なども検討して「産地強化計画」を作成する方針だ。米産地の新潟県は、同法に代わり稲などの種子の安定生産と供給体制を維持する条例を作成する。2月に条例案を県議会に提出し、4月1日の施行を目指す。兵庫県も新たな条例の制定を進めており、4月1日の施行を目指す。北海道は18年度に現行の体制を維持しつつ、19年度以降に条例制定を含めて検討する方針だ。都道府県から共通して「優良品種の維持と供給に行政の関与は不可欠」との声が上がった。この他、「地域の気候に適した独自の品種が求められ、育成者の県が主体的に関わることが不可欠」(東北の県)などと、行政が一定の役割を果たす意向が多数を占めた。「なぜ種子法を廃止したのか分からない」などとして、廃止理由に疑念を示す声もあった。同法は1952年の公布以来、米、麦類、大豆の優良な種子の安定供給を都道府県に義務付けてきた。しかし、規制緩和を図る政府は17年、同法が「民間の品種開発意欲を阻害している」として廃止法案を成立させた。農水省は同法廃止について17年11月、都道府県に対して通知を発出。「これまで実施してきた業務を直ちに取りやめることを求めていない」としつつ、種子生産について「民間の参入が進むまでの間、行政の知見を維持し、民間への知見提供を促進すること」とし、民間の参入を促す取り組みを求めている。

<最先端のハウス>
PS(2018/3/26追加):JA全農は、*7のように、生産・販売のノウハウを持つJAさが及び全国屈指の収量を誇る地元篤農家と連携して大規模なハウスを建設し、温度・湿度・CO2濃度などの複合制御技術を導入してキュウリの生育に最適な環境を作り、清掃工場で発生する余熱やCO2を活用して、佐賀県内平均の約2倍となる10アール当たり50トンの目標収量を掲げているそうだ。これは、環境にはプラスで安価に生産性を上げようとしている点が頼もしい。

*7:http://www.saga-s.co.jp/articles/-/196558 (佐賀新聞 2018/3/24) キュウリ実証施設整備へ 全農、佐賀市に全国3例目、JAさが、篤農家と連携 大規模多収モデル確立
JA全農は、キュウリ栽培の高機能実証施設「ゆめファーム全農」を佐賀市に整備する準備を進めている。生産と販売のノウハウを持つJAさがと、全国屈指の収量を誇る地元の篤農家と連携し、施設の設置から栽培管理・収穫販売までのノウハウを蓄積。農業の担い手減少が課題となる中、大規模・多収のモデルとしてパッケージ化し、全国に普及を目指す。「稼げる農業」の確立を目指した取り組み。県内は施設キュウリの栽培レベルが高いことから計画地に選ばれた。正式決定すれば、栃木県の施設トマト、高知県の施設ナスに続いて全国3例目となる。施設は約1ヘクタールと大規模で、高収量が期待できる高軒高ハウスを建設する。温度や湿度、二酸化炭素(CO2)濃度の複合制御技術を導入してキュウリの生育に最適な環境を作り出し、情報通信技術(ICT)で栽培管理データを蓄積、解析するという。建設場所は佐賀市高木瀬の清掃工場西側で、市は新年度当初予算に約4億3千万円を計上、約2・5ヘクタールを取得、整備する。清掃工場で発生するCO2や余熱を活用し、10アール当たりの目標収量は県内平均の約2倍となる50トンを掲げる。全農やJAさがの担当者らは昨年、先進地のオランダを視察。今月13日には、武雄市にある新規就農者の研修施設「トレーニングファーム」を見学し、高い技術や収量を誇る県内の生産者とも意見交換した。JA全農の担当者は「生産者数が減る中、今の国産の生産量を維持するためにも、生産量の最大化と面積の拡大にこだわっている」と説明。「全農としてキュウリ栽培の能力があるわけではなく、地元の生産者に指導していただく立場になる。全農とJA、生産者が三位一体となり、全国展開できる普及の形態を考えていきたい」と話す。

<食品のサイズ>
PS(2018年3月28日追加):*8のように、一口サイズのフルーツに注目が集まっているそうだが、私は、前から、長野県のリンゴなど日本の果実は一個のサイズが大きすぎると思っていた。これは、ニュージーランド産のリンゴを見た時に意識したことで、その大きさなら切って食べても一度で完食でき、保存の際に生じる色や味の劣化がなくて便利だと思われた。なお、長野産リンゴの味はよいので、サイズの変更は、品種ではなく栽培の仕方を変え、一枝につく実を多くすれば、利益を増やしながら直ちにできる。また、贈答用でも、日本の果実は大きくすることに力を入れすぎていて、一人暮らしや核家族のニーズを調査していないように見える。

*8:https://www.agrinews.co.jp/p43649.html (日本農業新聞 2018年3月28日) ミニ果実 “歓迎”単身世帯 スイーツに“最適” 「切らずに」「丸かじり」
 手軽にフルーツを食べたいという消費者のニーズが高まる中、一口サイズのミニフルーツに注目が集まっている。各産地は、食べやすさや加工のしやすさをアピールし、消費者や製菓店などに売り込む。丸ごとケーキに使えるなど、見た目のインパクトも特徴。食べ切りサイズで無駄がなく、増加する単身世帯や核家族向けの商材としても期待が掛かる。(斯波希)
●有望品種拡大へ 大阪府でイチジク
 イチジクの生産量全国3位を誇る大阪府は、ミニイチジクの産地化に乗り出している。主力品種「桝井ドーフィン」の3分の1の20~40グラムの大きさで、皮ごと食べられる簡便さや加工のしやすさが売りだ。府産のミニイチジクを「宝石フィコ」の統一ブランドでPRする戦略を描く。府内では約41ヘクタールでイチジクが生産され、全国の収穫量の1割ほどを占める。簡便さを求める消費者や、果実を食べる習慣がない消費者向けの販売戦略として、ほとんど栽培されていないミニイチジクに着目した。品種は海外原産の「イスキア・ブラック」と「ネグローネ」が中心。癖がなく食べやすいのが特徴という。病害虫への抵抗性が強く、栽培しやすいメリットもある。生産者らでつくる大阪府果樹振興会や研究機関が連携し、ブドウに続く特産品の柱に育てたい考えだ。同振興会の講習会で紹介するなど、生産拡大を目指している。本格的な流通は2、3年後を見込む。2017年産では、3個入りパック二つをセットにして1000円で試験販売したところ、24セットが完売したという。丸ごと包んだ「イチジク大福」を府内の和菓子メーカーと共同開発するなど、製菓店向けのアピールにも力を入れる。約40アールでミニイチジクを栽培する、羽曳野市のふじいいちじく園の藤井延康さんは「仲間を増やしてブランド化し、高単価につなげたい」と期待する。ミニイチジクは、富山県でも栽培が広がっている。稲作農家が水稲の育苗ハウスを活用し、新たな園芸品目として導入する動きが盛んだ。ケーキなどの素材として、洋菓子店などから引き合いが強いという。
●キウイ、リンゴ、柿
 香川県では、県と香川大学が育成した一口サイズのキウイフルーツ「さぬきキウイっこ」の生産が広がっている。平均40グラムほどで、爪で割って一口ゼリーのように簡単に食べられるのが特徴だ。平均糖度が高く、キウイ特有のひりひり感もない。県によると、栽培面積は7・5ヘクタール(16年度)。「簡便さと、他にはないかわいらしさが受けている」(県産品振興課)と手応えをつかむ。“丸かじり用”としてミニサイズのリンゴをアピールするのは長野県だ。県果樹試験場が、一般的な品種の半分程度、150~200グラムの「シナノピッコロ」と「シナノプッチ」を育成。切らずにそのまま食べ切れるリンゴとして、直売所などで流通する。「贈答用は大きいサイズが好まれるが、少人数の家族が増え、食べ切りサイズが求められている」(栽培部)。岐阜県や新潟県などで生産されている柿「ベビーパーシモン」も、直径約3センチ、20~30グラムほどの一口サイズで、皮をむかずに食べられる。岐阜県では17年度からスーパーでの取り扱いが始まるなど、出荷量が拡大しているという。
●希少性生かし まず業務向け
 果実の流通に詳しい青果物健康推進協会の近藤卓志事務局長は「まずは、希少性や特異性を生かし業務向けで生産を拡大した上で、簡便さを求める消費者向けにアピールする長期的な視点が必要だ」と話す。

<地方の豊かさ>
PS(2018年3月29日追加):*9-1のように、鹿児島県志布志市のJAそお鹿児島ピーマン専門部会は新規就農者育成の先進地として有名だそうだ。しかし、近年は農業法人もできたため、最初は農業法人で給料をもらって働きながら技術を学び資金を貯めて独立する方法もあり、こちらの方が新規就農者にとっては経済的不安がないかもしれない。どちらにしても、稼げる農業を行えることが前提になる。また、*9-2のように、人口減による収入減で小規模な市町村の水道事業の経営が厳しくなるそうだが、こういう地域は、都会のように不潔で不愉快な過度の節水を行う必要はなく、水道の水を飲んだり、新鮮な農水産物を食べたりすることも可能で、暮らしは豊かなのである。さらに、きれいな水が余っている場所なら、ミネラルウオーター・炭酸水・お茶などを作ったり、電気分解して水素燃料を作ったりすれば、水も収入源にできる。

*9-1:https://www.agrinews.co.jp/p43654.html (日本農業新聞 2018年3月28日) [未来へ2]小さな一歩積み重ね
 技術も農地もない都会の若者が次々と就農する産地がある。新規就農者育成の先進地として全国でも有名な鹿児島県志布志市のJAそお鹿児島ピーマン専門部会。部会92人のうち7割が農外からの就農者で、平均年齢は40代。就農し子どもを育て家を建てるIターンを見て、「農業では生活できない」と思い込んでいた地元の後継者が就農するケースも目立つようになった。新規就農の実績を残してきた。だが、それでも、地元の農家やJA、農業公社の担当者は口をそろえる。「若者育成に成功した地では、決してない」と。研修生を呼び込み、国に先駆けて就農支援の仕組みを構築したが、当初は夜逃げ同然に都会に戻ったり、地域住民と衝突したりする若者もいた。地元農家の有野喜代一さん(51)は「失敗をいっぱい経験した。ただ、実績が上がらなくても、ばかみたいに長年若者の受け入れを続けてきた」と振り返る。若者と地元農家が価値観やルールの擦り合わせを「一歩ずつ積み重ねただけだ」と言う。その模索は今でも続く。年間300もの視察を受け入れる同部会。恵まれた日照条件やJA、行政の連携体制など、「特殊事例」と見られることも多い。だが、目に見える好条件だけに、若者が引き寄せられるわけではない。鹿児島市から移住し研修中の安田有佑さん(27)は「移住や就農の条件で挑戦の地を決めたわけではなく、紹介してもらった縁が大きい」と明かす。縁が生まれたのも、地域が危機感を持ち、努力を重ねてきた裏返しでもある。新規就農を分析するJC総研の和泉真里客員研究員は、先進地に対し他の産地やJAは、「あの地域だからできた」と別格扱いし、学ぶ姿勢を持たない場合が多いと感じている。「素人の若者を農家に育てる道のりは、ひたすらに地道で時間がかかる。営農指導員や先輩農家が温かく声を掛ける、小さくても具体的な取り組みをまずはまねすることが、若者育成のポイントだ」と指摘する。地方創生の“トップランナー”とされる島根県海士町。若い移住者を多く受け入れ、高校を再生するなど、数々の取り組みを実践する。群馬県出身で、同町に移住した農家、宮崎雅也さん(36)は、地方創生について、自らの体験を基に、こう感じている。「夢を抱いて入ってくる若い世代と地域を長年守ってきた高齢者たちが連携し、息長い取り組みを積み重ねるしかない」。若者と築く農業・農村の未来には、正解も特効薬もない。長い年月を要する。模索する道のりに、若者が育つ可能性が見えてくる。
<現場からの提言>
・世代間連携を密に
・特効薬はない、息長く
・先進地の経験に学ぶ

*9-2:http://qbiz.jp/article/130444/1/ (西日本新聞 2018年3月26日) 水道事業の維持策検討 人口減少による料金収入減に備え
 総務省は、小規模な市町村を中心に今後、人口減少で料金収入が減り、水道事業の経営が厳しくなるとして対策の検討に乗り出した。有識者研究会が、料金値上げの在り方や広域化推進などサービス維持策を話し合い、10月ごろ報告書をまとめる。水道事業は原則、市町村が経営する。水の需要は、人口減や節水機器の普及で減っており、厚生労働省は、2065年には00年の6割程度になると推計。料金収入は04年度をピークに減少している。一方で高度経済成長期に整備した水道管などが老朽化、改修費用の増加が見込まれる。総務省は、周辺との事業統合といった広域化や民間委託の検討を促してきた。しかし地理的な問題や料金に開きがあることなどが理由で、自治体間の調整が進まないケースがある。研究会は、人口規模に応じて収支を試算し、適正な料金の値上げ幅を検討。事業全体の統合が難しい場合の対策として、情報通信技術(ICT)を活用した一部連携の有効性を探る。民間委託の推進策や国の支援策も検討する。

PS(2018年3月29日追加):*10-1のように、総合商社は優秀な男子大学卒業生を集めながら、他国より高い価格で原油を購入することしかできず(そんなことなら、誰でもできる)、他産業に迷惑をかけてきた。そのため、エネルギー改革に伴い、原油・石炭・ウランなどのエネルギー資源の輸入に携わっていた外国語のできる社員の多くを農林水産物や水素燃料の輸出に回し、しっかりした市場調査の上、高い付加価値で輸出できるようにしたらどうかと考える。なお、*10-2のように、九州7県の工場立地件数が前年比18.8%増で、食料品が最も多く、輸送用機械器具や金属製品も増加したのはよかった。

  
 大学生の人気就職口      九州の工場立地件数        新国富指標(豊かさ)
  *10-1より        *10-2より        2018.3.26西日本新聞

*10-1:http://qbiz.jp/article/130722/1/  (西日本新聞 2018年3月29日) 男子は総合商社が上位3社独占 大学生の就職人気企業ランキング
 就職情報会社ダイヤモンド・ヒューマンリソース(東京)が28日発表した2019年卒業予定の大学生らの就職人気企業ランキングによると、男子文系の首位は三井物産で、上位3社を総合商社が独占した。人気を誇ってきた銀行は、26年ぶりに10位以内に一つも入らなかった。女子の首位は文系が3年連続で東京海上日動火災保険。理系は明治グループだった。女性が長く働きやすい環境づくりが評価されたとみられる。銀行の低迷について、ヒューマンリソース社は「マイナス金利政策に伴う事業環境の厳しさや、人工知能(AI)活用による業務量削減などが影響した」と分析している。

*10-2:http://qbiz.jp/article/130695/1/ (西日本新聞 2018年3月29日) 九州の工場立地 18.8%増の95件 リーマン後2番目の高水準、設備投資が活発化
 九州経済産業局が28日発表した2017年の九州7県の工場立地件数(電気業を除く、速報)は前年比18・8%増の95件だった。工場立地面積は同2・4倍の139・3ヘクタール。いずれも2年ぶりに前年を上回り、リーマン・ショック後の2009年以降、2番目に高い水準となった。全国に占める工場立地件数の割合は9・4%と前年から1・3ポイント、工場立地面積の割合は11・3%と6・1ポイント上昇した。業種別では、食料品が最も多い25件で、前年を上回った。輸送用機械器具(15件)、金属製品(11件)も増加した。県別では、福岡県(34件)、長崎県(12件)、熊本県(13件)、宮崎県(12件)で増加。佐賀県(7件)と鹿児島県(10件)は横ばいだった。大分県(7件)は前年を下回った。設備投資予定額は1134億円で、6年ぶりに1千億円を超えた。予定従業員数は3395人で前年のほぼ2倍となった。経産局は「投資見込みの伸びに歩調を合わせて、工場立地としての用地取得が伸びたのではないか」とみている。

<ふるさと納税と農林漁業>
PS(2018.3.30追加):*11の「ふるさと納税」は、①子どもの教育費や高齢者の医療・介護費を地方が負担しながら、生産年齢人口になると都会に住んで税を支払う人が多いため、地方が財政難に陥る構造を緩和すること ②主権者である納税者が使い道を指定して寄付する文化を育てること などを目的として、私が提案してできたものである。その私は、返礼品の割合を指定するなど、総務省が地方自治体の箸の上げ下ろしにまで口を出すことには反対で、何をどうするかは寄付を受ける地方自治体が決めるのがよいと考える。もちろん、返礼品を地場産品にした方がその地域の産業振興に寄与するが、それには地域の工芸品も含んでよい筈で、それは寄付を受ける自治体と寄付をする納税者が選択することで、総務省が指示すべきことではないように思う。ところで、今年の自治体別「ふるさと納税額」とその順位はどうだったのだろう?


    梅    桜と菜の花     桃        梨      みかん
       (問題:どの順番に、また何月に咲くか、知っていますか?)

*11:http://www.sankei.com/economy/news/180328/ecn1803280003-n1.html (産経新聞 2018.3.28) ふるさと納税の返礼品に地場産品を! 総務省が通知へ
 総務省が「ふるさと納税」の返礼品について、原則として地場産品とするよう地方自治体に求める通知を近く出すことが27日、分かった。納税額を増やすため、他地域の特産品やカタログギフトなどを返礼品にする自治体も出てきている。通知を通じ、生まれ故郷や被災地に対する貢献や、地場産業の振興といったふるさと納税の本来の趣旨を徹底する狙いがある。総務省は昨年4月の通知で、返礼品の調達額を寄付額の「3割以下」とする目安を示したほか、商品券や家電など換金性や資産性の高いものは送らないよう求めた。今年の通知では、初めて返礼品を地場産品とするよう自治体に適切な対応を求める。ただ、姉妹都市の特産品は可能とするなど例外も認める方向だ。背景には、自治体間の返礼品競争が過熱し、「ふるさと納税の趣旨とかけ離れてきている」(政府関係者)という現状がある。具体的には、佐賀県の自治体が北海道夕張市の「夕張メロン」を、長野県の自治体がフランス産高級シャンパンを返礼品にしたり、岐阜県の自治体が「松阪牛」などが選べるカタログギフトを返礼品にしたりするケースがあった。

<農業の後継者と法人化>
PS(2018年3月31日追加):*12-1のように、大分県産の干しシイタケ生産量が高齢化と後継者不足で半数以下に減ったのは、それを使っている私にとっては人事ではないが、農業生産法人にして人を雇用すれば、品質を維持しながら生産を続けられるのではないだろうか。また、*12-2のように、Iターン・脱サラでアスパラを生産して成功している人もいる。なお、佐賀県のアスパラは、このブランドではないが、関東でも販売され、私も使用している。

*12-1:http://qbiz.jp/article/130913/1/ (西日本新聞 2018年3月31日) 干しシイタケ生産者激減に危機感 30年で半数以下、平均73歳 生産量トップの大分県、移住研修者に給付金
 干しシイタケの生産量が全国トップの大分県。一方で、高齢化や後継者不足により、生産者がここ30年近くで半数以下に減っている。危機感を強める大分県は2018年度から後継者育成の新事業を実施する。3月下旬、大分県別府市の天間地区。スギ林の下に、長さ約1・2メートルのクヌギの原木がずらりと並ぶ。原木に生えたシイタケを、小川健(たてき)さん(70)が次々と収穫していた。この道30年以上のベテラン。昨年の「第65回全国乾椎茸(ほししいたけ)品評会」(日本椎茸農業協同組合連合会など主催)で最高賞の農林水産大臣賞を受賞した腕前だが「まだ満足していない」と、品質向上に余念がない。作業は妻康子さん(66)と2人。子ども2人は独立し「後継者がいないのが悩み」という。県によると、県内の干しシイタケ生産者数は1989年が9406だったが、2016年は半分以下の4015に減少。高齢化も進み、平均年齢は16年時点で73歳だ。原木を伐採する作業が重労働で、後継者不足を招いているという。生産量も16年は1144トンで、2302トンだった1989年の半分以下。それでも全国の4割以上のシェアを誇る。技術力も高く、第65回全国乾椎茸品評会で、大分県は19年連続51回目の団体優勝を果たした。県は「質、量ともに日本一の全国ブランドを守り続けたい」と、18年度から後継者育成の新事業を導入する。県外から移住して干しシイタケづくりの研修に取り組む55歳未満の人に、年間50万〜75万円を給付する。給付金の半額は受け入れ市町村が負担、研修先は優良生産者が担う。小川さんも「習いたい人がいれば喜んで教える」と意気込む。「50代でも十分若手」と県の担当者。収入については「生産規模が小さいうちは専業で生計を立てるのは難しいが、作業が一段落する夏場に別の仕事をすれば大丈夫」としている。県林産振興室=097(506)3836。
    ◇      ◇
●中国産に押され生産量大幅減少
 林野庁によると、全国の生シイタケ生産量はここ約30年、年間6万5千〜8万トン前後で推移。これに対し干しシイタケは1986年の約1万4千トンから、2016年は2734トンと大幅に減少した。干しシイタケは水で戻す手間がかかり、消費が減少していることが背景にある。安い中国産に押されている面もある。シイタケ生産は屋外での原木栽培と屋内での菌床栽培がある。大分県によると、干しシイタケは原木栽培が中心。菌床栽培で育つシイタケは、乾燥させると小ぶりになるためという。大分県に続く干しシイタケの生産地は宮崎県(16年に523トン)で、3位は熊本県(205トン)。大分、宮崎、熊本の3県で全国生産量の7割近くを占める。

*12-2:http://qbiz.jp/article/128119/1/ (西日本新聞 2018年2月18日) Iターン就農の成功モデルに 脱サラ後アスパラ生産 佐賀・太良町の安東さん
 佐賀県太良町多良のアスパラガス農家、安東浩太郎さん(38)がIターン就農の成功モデルとして注目されている。“脱サラ”して大阪市から移り住み5年前に栽培を始め、独自の生育方法と販路を確立した。多良岳の清らかな水で育てた商品は「森のアスパラ」としてブランド化し、東京の八百屋や福岡の飲食店に直接出荷している。今春からは研修生を受け入れる予定で培った技術の普及にも力を入れる。
●独自の栽培、経営確立
 林野庁の「水源の森百選」に認定された多良岳のふもと。南向きで日当たりの良い標高約150メートルの山肌にビニールハウス14棟(計約30アール)が並ぶ。「夏は平地より涼しく風通しがいい。高温障害になりにくいこの土地はアスパラ作りに最適です」。1月下旬、安東さんは2月末〜10月末の収穫期に向けてハウス内に堆肥をまいた。北九州市出身。2002年に福岡県内の大学を卒業し、大阪市内で不動産会社などに勤務した。「退職後は地元の九州に戻って、のんびり自給自足の生活をしよう」と考えていた。転機は09年1月だった。同市であった就農支援のイベント「新・農業人フェア」で吉野ケ里町の農業法人に興味を持つ。「農業は担い手の高齢化が進んでいる。若いうちに参入した方がビジネスチャンスがあるはず」。意を決して10年4月に会社を辞めた。
   ■    ■   
 吉野ケ里町の農業法人で2年間、キャベツやコメの生産と経営を学び、妻の美由紀さん(37)の出身地、太良町で営農しようとしたが農地が見つからなかった。農協の契約社員として同町や鹿島市の農家を手伝い、地元との信頼関係を築くうちに知人から荒れたミカン畑を紹介された。安東さんは同町で盛んなミカン栽培での競争を避け、植え替えが不要など初期投資を抑えられるアスパラに懸けることにした。県と太良町の補助金を活用してハウスの整備を進めて13年に農業に就いた。「ベテラン農家との違いを出すため出荷量より味で勝負する」。液肥、固形、化学、有機など複数の肥料を試し、一番アスパラに合う肥料を選んだ。酸性の土壌を中和するため、カルシウム分を含む竹崎カニやカキの殻を肥料に混ぜた。試行錯誤の末に商品化した森のアスパラは鮮やかなエメラルドグリーン色が特徴で筋が少ない。みずみずしくて軟らかいので生でも食べることができる。料理人からは「うま味が強い」「味が濃い」と好評だ。
   ■    ■   
 安東さんは農業団体を介さずに直接出荷している。「肥料の種類や出荷先、収量は全て自分で決める。補助金をうまく使って栽培法を研究すれば農業の独立経営やブランド化は可能」と力を込める。小規模事業者の経営相談に無料で応じる「県よろず支援拠点」の協力でホームページを作成し、独自のロゴもデザインした。Iターン就農のモデルとして県から評価され、本年度の佐賀農業賞「若い農業経営者の部」で最優秀賞に輝いた。今春からは、希望者に無償で農業技術や経営について教える。「農地探しやビジネスを確立するまでに苦労した経験を研修生に伝えたい」と意気込む。研修を予定する熊本県出身の元会社員の冨士川聡さん(39)は「友人やお客さんに農作物で喜んでもらい、感謝の声を聞きながら働くのが夢」と目を輝かせる。安東さんは「太良にはカキやカニ、金星佐賀豚、牛肉と『うまかもん』がたくさんある。大好きなこの町にどんどん移住者が来るようにしたい」と話し、町の活性化にも一役買う。

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2018.3.9~11 働き方改革・雇用・人口減少など (2018年3月12、15、17、19、20、21日に追加あり)
(1)働き方改革・裁量労働制・高度プロフェッショナル制度について

    
   2018.1.22日経新聞     2017.8.24、2018.2.15東京新聞 2018.2.24佐賀新聞

1)裁量労働制について
 「裁量労働制は、i)平均的な方で比べれば ii)一般労働者より勤務時間が短い というデータもある」等と政府は答弁してきたが、*1-1-1のように、i)の「平均」は、統計的に求めた平均値でも最頻値でもなく(この統計学は小学校で勉強済)、企業が勝手に選んだ者だった。また、ii)の根拠となったデータは、裁量労働制で働く労働者と一般労働者への質問内容が異なり、比較できるシロモノではなかった。

 これに対して、日経新聞は、*1-1-2のように、「①政争している場合か」「②一人ひとりの能力を最大限に生かし、生産性を高める多様な働き方ができる土俵づくりを急がなければならない」「③日本の1人当たり労働生産性は経済協力開発機構(OECD)加盟35カ国の中で21番目と欧米諸国に劣後したままだ」「④反対があるから延期するでは、あまりに稚拙」等と反論した。

 確かに、誰かを辞めさせるための政争の具としてのみ追及する党には眉をひそめる点もあるが、重要なのは、本当に裁量労働制の下で働く労働者が一般労働者よりも仕事の進め方や労働時間を自分で工夫でき、モチベーションが上がって生産性を上げられているかどうかである。これについては、経産省・経団連など企業側の要請で裁量労働制を拡大するために、厚労省が故意に結果ありきの非科学的な調査をしたことが明らかで、裁量労働制を拡大すれば本当に労働生産性が上がるわけではない。そして、小学校でも習うような統計を国会議員も中央省庁の役人も理解しておらず、議論のツールにできていない状態こそが、日本の労働生産性の低さを招いているのである(ちなみに、医学・薬学の分野では、当然のこととして正確な調査と統計処理を行うため、私はじめ医学部卒の人なら、30分も話を聞けばいい加減な調査をしたことがわかる)。

 そして、安倍首相は、*1-1-3のように、裁量労働を巡る残業データに異常な数値117件が見つかった問題を受け、衆院予算委員会で聞き取った1万件超の全データを再精査すると表明されたが、これは、データの誤入力や聞き取りミスのような小さなミスではなく、調査そのものが真実を知る目的で科学的に設計されたものではないという大きな問題であるため、やるとすれば科学的に設計した調査をやり直さなければならないのだ。

 そのため、この状況は、加藤厚労大臣が引責辞任すればすむような問題ではなく、法律を変更すればよりよくなるという実証もないのに変更して改悪する事例で、国民の経済活動を政府が邪魔しているものだ。加藤厚労相は東大法学部卒で大蔵省出身の典型的なエリートだが、それでも、いい加減な調査に基づいた効能より害の方が大きそうな法律変更であることを理解してストップをかけることができなかったのだから、首相や担当大臣を変えればすむような問題ではなく、他の人がやっても同じかそれ以下のことしかできないかもしれないという問題なのである。

 これは、東大はじめ、他国の法律を翻訳することしかやってこなかった法学部教育に問題があるからで、多くの官僚を出している東大は、事実を正確に調査・分析してから法律変更する法学部教育に率先して改めるべきである。そして、これは、事実の科学的調査と法律の変更、法律変更後の影響のフォローアップなどを卒論で経験させれば簡単にできるものだ。

 そのため、私は、*1-1-4の佐賀新聞の「裁量労働制を削除して、議論を一からやり直せ」という佐賀新聞の記事が正しいと考える。また、高度プロフェッショナル制度も、本当に仕事の進め方や労働時間を自分で管理できる人だけが対象になっているわけではないため、なくすのがBetterで、現在の労基法のように自ら仕事を管理できる立場の管理職に残業手当がつかなければ十分だろう。

2)高度プロフェッショナル制度について
 高度プロフェッショナル制度の対象も、①研究開発・金融・コンサルタントなどの高度な専門的知識を要する業務に就く年収1075万円以上の労働者で ②労働者本人が希望し ③職務の範囲を明確にする などの要件をみたせば、労働者が労働時間管理の対象から外れる制度だ。

 しかし「高度な専門的知識を要する業務に就く年収1075万円以上の労働者だから、必ず経営者との交渉力があって希望が通る」とは限らない。また、何故、研究開発・金融・コンサルタントを、高度な専門的知識を要する業務と定義したかも不明だ。

 つまり、“高度な専門的知識を要する業務”としたことで納得したような気になっている人が多いが、これら専門職の人も最初から高度なわけではなく、仕事をしながらOn the job trainingを積んで次第に高度になっていくものだ。その典型例は、*1-2-1の医師で、医師国家試験を通ったからといってすぐ高度と言えるわけではなく、多くの事例に遭遇しながら先輩医師の指導を受け、経験を積み重ねることによって、次第に“高度”になっていくものである。

 そのため、私は、年収要件をつけ職業の特定をしたから残業代は0でよいというのは間違いで、*1-2-2のように、生産性を重視する経済界の要請で2015年4月に国会提出された高度プロフェッショナル制度は、働く人の視点に立てば働き方改革法案から削除すべきだと考える。

3)では、何が不十分なのか
 労働基準法は、第2次産業の労働者を主な対象として昭和22年に制定された法律で、当時はベルトコンベアーで運ばれてくる部品を組み立てるなど労働時間と成果が一致する働き方をしている人が多く、状況に合っていた。しかし、そうでない労働者が増えた現在では、能力評価の視点も加わり、労働時間の長さではなく成果で労働者の待遇を決めるニーズが増えたということに、私も賛成だ(https://bengoshihoken-mikata.jp/archives/1568 参照)。

 しかし、成果によって労働者の待遇を決めるために必要なことは、裁量労働制や高度プロフェッショナル制度のような残業代を0にする法律ではなく、公正に実績を評価して賃金や昇進に反映させる仕組みだ。しかし、日本人は、自ら経験のない人が多いせいか、上から下まで公正な実績評価を苦手とする場合が多く、(3)3)で書くとおり、うまく機能しないのである。
 
(2)人口減少と労働力


     世界の人口       日本の人口推移   老齢年金の額  働きたい高齢者

 「少子化の影響により、産業界では現役世代の人口減少が既に深刻な労働力不足をもたらしている」「対処法としては、①ITなどによる省力化 ②国内の潜在労働力の活用 ③外国からの移入 の3点が挙げられる」と、*2-1で、西日本新聞が記載している。

 しかし、これまでは、生産年齢人口の男性のポストを増やすために、分けない方がよい職務を細切れに分け、女性や高齢者を何とか辞めさせようとし、外国人に門を閉ざしてきたのだ。そのため、まず、65歳定年制を無くして働きたい人は働けるようにすれば、支える側から支えられる側に移る人が減るとともに、健康寿命が延びて医療費・介護費の増加を抑制できる。

 また、細かすぎる職務の区割りを適切にして、もう少し広い視野で仕事ができるようにすべきであるとともに、これまで女性は働かない方がよいかのように言われ、専業主婦への不可逆的移動圧力が社会的にあったが、働きたい女性が気持ちよく働ける社会環境を作れば、労働力不足の解消に確実に役立つだろう。

 さらに、現在は、外国人労働者なしでは日本社会は回らなくなったと言われるほどだが、地球全体は人口が増えすぎて困っている状況であるため、日本は入国した外国人労働者を正規の労働者と認めて労働基準法を適用すべきだ。そして、高齢者・女性・外国人労働者などの多様な人材が活躍している方が、それらの人々のニーズを知ってビジネスに繋げやすいのである。

 なお、*2-2のように、九州生産性本部は、「2017年度 人事部門の抱える課題とその取り組みの実態調査」の結果、「企業や団体が直面している課題は優秀な人材の確保・定着」「人手不足が深刻」と回答した割合がどちらも70%前後あったことを明らかにした。その影響は、「技術継承ができない(55.8%)」「商品・サービスの質の低下(29.6%)」「失注の増加(22.6%)」などだそうだ。

(3)これまで労働市場から締め出していた潜在労働力の活用
1)高齢者の雇用
 政府は、*3-1のように、高齢者施策の指針となる高齢社会対策大綱を閣議決定した。その内容は、65歳以上を一律に高齢者とみることをやめ、公的年金の受給開始時期を70歳超も選択できるようにし、高齢者の就労を促すことを狙って、年齢にかかわらず柔軟に働ける環境を整備することだそうだ。

 しかし、65歳を過ぎてから新規雇用・再雇用される高齢者の70%がパートなどの非正規で、正規は女性19%、男性35%しかいない。これでは、高齢者が安心して気持ちよく働ける状態からは程遠く、それさえ改善すれば働いた方が年金を受給するよりも高額の所得を得られるため、高齢者も文句はないだろう。それより、「高齢者=不健康」「高齢者=ボランティア活動で満足すべき」などと決めつけるのは、年齢による差別である。そして、社会貢献する必要がある人に年齢制限はなく、慣れた仕事を通した社会貢献が最も強力である。

 また、九州経済調査協会は、*3-2のように、九州のニュータウンの調査を行い、2015年の高齢化率(65歳以上)は20.8%で、九州全体の高齢化率28.0%は下回ったが、30%を超えるニュータウンも少なくなく、再生に向けた支援や取り組みが必要だとした。古い「ニュータウン」は便利な場所にあり、似たような世代の人が購入しているため、保育・教育・介護などのニーズが一斉に変化するのが特徴だ。しかし、訪問診療・訪問看護・訪問介護は、同じニーズの人が集まった場所の方が効率的にできるため、便利な場所にあるニュータウンは、容積率の制限を緩和して高さを増し、従来の住民は無料で新築に住み替えることができる形で建て替えて、新たな住民も募集してはどうかと、私は考える。

2)女性の雇用


 2018.3.7 2018.2.28 2017.12.25  65歳以上の介護保険料  大学別平均年収
    日経新聞      東京新聞

 世界経済フォーラムが発表したジェンダーギャップ指数について、*4-1のように、日本弁護士連合会会長が「①日本は、調査対象144カ国中114位と前年より順位を落とした」「②日本は、健康1位、教育74位という女性の現状よりも、経済114位、政治参画123位など女性の地位で順位が低い」「③特に国会議員の男女比は129位、閣僚の男女比は88位と大幅に低いが、女性の政治参加は、あらゆる分野における女性の地位向上の必須条件である」「④経済は若干改善したものの、給与格差、管理職や専門職での男女比が100位以下と低い」「⑤女性活躍推進法の完全施行で女性活躍は大きなうねりになった」等の談話を公表している。

 このうち①②③④については、他国は本気で努力しているのに、日本は「形だけ」や「やっているふり」をしている地域・職種が多いため、次第に置いて行かれたものである。また、⑤については、(私が資料を付けて手紙で頼んだ)安倍首相はじめ何人かの国会議員の力が大きい。

 さらに、*4-2のように、政府が上場企業に女性取締役の起用を促すため、改定予定のコーポレートガバナンス・コードで取締役会に女性がいない企業は投資家に理由を説明するよう求めたのはよいことだが、こうすると、*4-3のように、候補者が少ない(又は、いない)という言い訳が必ず出てくる。

 しかし、最初の男女雇用機会均等法施行は1985年で、男女の雇用機会均等を努力義務から義務に変更した改正男女雇用機会均等法施行は1999年であるため、現在も女性取締役候補者が少ないと言う企業は、最初の14年間は女性を育てる努力をせず、後の19年間は脱法行為をしており、その間、労働基準監督署もそれを見て見ぬふりしていたということになる。

 なお、女性に取締役となる資質がないわけでないことは、他国との女性取締役比率の比較を見れば明らかで、日本では、能力ある女性もさまざまな社会的圧力や社会環境によって昇進を妨げられたり、離職したりしたのだということを、世界経済フォーラムのジェンダーギャップ指数は物語っているのである。

 しかし、女性が取締役となる資質を有するには、仕事を継続して男性と同レベルの知識や経験を有していなければならず、その妨げになっているのは、*4-6のような保育所・学童保育施設の不備、*4-4のような介護負担による離職などだ。つまり、女性に家事負担を押し付け、その家事負担を支えるインフラは心もとないわけである。

 にもかかわらず、*4-5のように、「40歳以上からしか介護保険料を徴収しない」「高齢者の介護保険料を上げる」「介護サービスを減らす」などと言うのは、自分は介護を担当しないと考えている男性の視点であり、まさに国会議員や閣僚に女性が少なく、女性のニーズを政治に織り込めていない例になっている。

3)成果主義(=能力主義)の採用について
 それでは、0歳から保育所に預けられた子どもの発育は、祖父母・父母・叔父・叔母などを含む家族が見ていた場合と比べてよいか否かについては、(私は、3歳児神話を信じているわけではないが)1人の子どもを複数の家族が暖かいまなざしで見守っている場合と複数の0歳児を保育士が仕事で見守っている場合では、その子の注目のされ方・愛情の与えられ方・手のかけられ方は違うと考える。

 その違いが子どもに与える影響は、正確な調査をしなければわからないが、やり方によっては、家族ではできないプロの教育を保育所・幼稚園・児童館などはできる可能性もあるため、子どもにとってどれが一番よいかは、場合によって異なるだろう。

 そのような中、女性は出産や夫の転勤を機に離職や転職を迫られることが多いので、*4-7のように、勤務年数ではなく公正な成果の測定による「成果型(=実績主義or能力主義)」で給料を払ってもらわなければ大損なのである。一方、男性は、1つの会社で勤め上げることが可能な人が多いため、年齢が高くなるほど年功序列型が得なわけだが、それができるなら女性も年功序列の方が楽でよいに違いない。

 しかし、公正に成果を測定して「成果型(=実績主義or能力主義)」で給料を支払う仕組みこそが、労働者を年齢・性別・学歴・国籍などの属性で決めつけずに、高齢者・女性・外国人が気持ちよく活躍できる社会を作るための必要条件なのである。なお、転勤が多い人は、いつも慣れない仕事をしているため、本当は労働生産性が低いと思われる。

(4)外国人労働者の雇用
 厚労省は、2018年1月26日に、*5-1のように、「2017年10月末時点の外国人労働者数が127万8,670人で、日本の雇用者総数の約2%を占める水準だった」と発表した。国籍は、中国が全体の29.1%、ベトナムが18.8%、フィリピンが11.5%で、立場は技能実習生と留学生が多く、専門的・技術的分野もいたそうだ。

 日本の外国人労働者の受入体制は遅れており、政府は単純労働者の受け入れを認めていないが、私は、企業・農協・漁協・森林組合・人材派遣会社等を通して、雇用のある単純労働者を受け入れれば、海外に出てしまった第一次・第二次産業を地方で再生することも可能だと考える。

 そのような中、政府は、*5-2のように、国家戦略特区に指定した新潟市、愛知県、京都府で外国人の農業就労を解禁する方針を固めたそうだが、「①国家戦略特区のみに限定」「②1年以上の農業実務経験が必要」「③農業に関する専門知識や技術を持つことも条件」「④受け入れる人材は、農作業に必要な日本語を話せる外国人」「⑤受入期間3年以内」などの規制をするそうで、本当に受け入れる姿勢とは思えない。また、独立して農業をやるわけではなく、企業・農協・農業生産法人などの従業員として農業やその関連産業に従事するのであれば、この①~⑤は、双方のニーズに合わない規制だ。

 ただ、合計特殊出生率が2016年で1.44人の日本人の中に同出生率が3~6人の異民族が移住してくると、次世代は2~4倍の割合になる(例えば、1世代目が10%なら2世代目は20~40%になる)。これは米国で実際に起こっており、ドイツのメルケル首相も難しい立場に立たされている事象であるため、移住総数や出生率には注意しなければならないだろう。

<働き方“改革”・裁量労働制・高度プロフェッショナル制度>
*1-1-1:https://digital.asahi.com/articles/DA3S13368806.html (朝日新聞社説 2018年2月21日) 裁量労働制 政府の説明は通らない
 もともと比べられないデータを比べ、国会で説明したのはまずかった。しかし政策の中身には影響がないから、法案は予定通り、近く国会に出す。安倍首相の国会答弁とその撤回を巡って論戦が続く裁量労働制の適用拡大について、政府の姿勢をまとめれば、こうなる。こんな説明は通らない。野党が求める通り、政策論議の基礎となるしっかりしたデータをそろえてから議論するのが筋だ。問題となっているのは、あらかじめ定めた時間を働いたとみなす裁量労働の人と、一般の労働者の1日の労働時間を比べたデータだ。「裁量労働制の拡大は長時間労働を助長しかねない」と懸念する野党に対し、首相は1月末の国会答弁でこのデータに基づき「平均的な方で比べれば一般労働者より短いというデータもある」と反論した。しかし、裁量労働の人と一般労働者では質問内容が異なり、両者は比較できないものだった。厚生労働省によると、調査の担当者とは別の職員が15年に野党への説明資料として作り、国会審議でも使われてきた。あくまでミスだったという。だが、こんな重要な資料を大臣に報告もせず職員が勝手に作るとは、にわかに信じがたい。誰の指示で、どんな意図で作られたのか。徹底的に解明することが不可欠だ。問題となった比較データそのものは、裁量労働制拡大を検討した厚労省の労働政策審議会には示されていない。従って法改正を進めることに問題はない。政府はそう強調する。しかし政府はこのデータを、長時間労働への懸念に反論する支えとしてきた。誤った説明を繰り返し、賛否が分かれる論点の議論を尽くさずにきたこと自体が、大きな問題である。疑問に答える先頭に立つべきは、行政の責任者である首相だ。裁量労働を広げても心配ないと言わんばかりだった基本認識が問われる。ところが首相は「厚労省から上がってきた答弁(案)にデータがあったから、紹介した」「すべて私が詳細を把握しているわけではない」と、ひとごとのようだ。データ比較は不適切だと厚労省が認識したのは、最初の首相答弁から4日後の今月2日。7日には加藤厚労相に報告されたのに、首相が答弁を撤回したのは14日だった。2週間近くも問題が放置されたことになる。政府の対応はあまりに鈍く、国会軽視もはなはだしい。こんな状況で、法案を国会で審議するわけにはいかない。政府に再考を求める。

*1-1-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180222&ng=DGKKZO27219470R20C18A2EA2000 (日経新聞 2018年2月22日) 政争している場合か
 なぜこうも時間ばかりが費やされるのだろうか。政府は野党の反発を踏まえて働き方改革関連法案を修正し、裁量労働制の拡大など大半の制度の施行を1年遅らせる検討に入った。日本は人口減で働き手が減る。人工知能(AI)の登場で従来通りの働き方は通用しなくなる。一人ひとりの能力を最大限に生かし、生産性を高める多様な働き方ができる土俵づくりを急がなければならない。働き方改革を政争の具にしている場合ではない。日本生産性本部によると、日本の1人当たり労働生産性は経済協力開発機構(OECD)加盟35カ国の中で21番目と欧米諸国に劣後したままだ。そんな状況にもかかわらず、裁量労働制の拡大も脱時間給制度導入も3年前の国会で提案されながら、審議もされずにずるずると今に至っている。野党などの「かえって長時間労働を助長する」といった批判が強かったためだ。そのような声には長時間労働を防ぎ、労働者の健康を守る仕組みづくりで対応するのが筋。「反対があるから延期する」では、あまりに稚拙ではないだろうか。仕事の進め方や労働時間を自分で工夫し、モチベーションを上げ、生産性を上げられる人は少なくないはずだ。そういう人たちには制度面で後押しし、日本の成長につなげる必要がある。マイナス面を是正し、プラス面を生かす議論こそが求められている。働き方改革の法案には長時間労働の是正や同一労働同一賃金なども盛り込まれている。「多くを詰め込んだ一つの法案にまとめるのは乱暴」との批判もあるが、世界的に進む大きな環境変化に、大きな対応の素地をつくっておくのは間違いではない。すべての世代が性別に関係なく、生き生き働ける環境は欠かせない。改革に「待った」をかけ続けるだけでは何も進まない。

*1-1-3:https://mainichi.jp/articles/20180223/k00/00m/010/124000c (毎日新聞 2018年2月22日 ) 裁量労働制:安倍首相「全データ1万件超を再精査」
衆院予算委で表明 加藤厚労相の引責辞任を否定
 安倍晋三首相は22日の衆院予算委員会の集中審議で、裁量労働を巡る残業データに異常な数値117件が見つかった問題を受け、個々の事業場から聞き取った1万件超の全データを再精査すると表明した。加藤勝信厚生労働相の引責辞任は否定し、裁量労働制の拡大を含む働き方改革関連法案を今国会へ提出する方針も変えないとした。一方で加藤氏は、法案の内容を「妥当」と結論づけた厚労省の労働政策審議会(労政審)で、一般労働と裁量労働の労働時間を比べた議論はしていなかったと明らかにした。「長時間労働が問題だという認識は、(労政審の)各委員にあった」と釈明したが、裁量労働制の拡大に反対する野党は「根拠のない法案だ」と撤回を要求。政府が月内を予定した法案の提出は3月以降にずれ込む見通しだ。首相は予算委で、異常なデータについて「改めておわびする」と陳謝。データの基になった調査票が厚労省の倉庫から発見されたことを受け、「調査票と(それを基に)入力したデータを突き合わせ、精査しなければいけない」と述べた。再精査の期限は「1万件以上あり、いつまでにとは言えない」とした。加藤氏は調査票の現物を国会へ提出する考えを示した。問題になった「2013年度労働時間等総合実態調査」は、全国の1万1575事業場から労働基準監督官が聞き取りなどを実施。厚労省は21日に異常な数値が117件(87事業場)見つかったと発表した。野党は働き方改革法案が「間違ったデータに基づいていた」とし、労政審で議論をやり直すよう要求。だが加藤氏は「(異常があったのは)主たるデータではない。全体として結論は変える必要がない」と拒否した。 予算委では与党議員からも、「(首相が答弁を撤回した)性格の異なるデータ比較は極めて不適切だ。猛省を促す」(公明・佐藤茂樹氏)と政府の対応に批判が相次いだ。首相は法案に盛り込む裁量労働制の拡大に関し、(1)労使の合意や労働者本人の同意が前提(2)みなし労働時間と実態がかけ離れた場合は、適切に指導する(3)対象を限定し、営業職全体に広がるという懸念を払拭(ふっしょく)する--などとして理解を求めた。

*1-1-4:http://www.saga-s.co.jp/articles/-/187727 (佐賀新聞 2018年3月2日) 裁量労働制の削除、議論を一からやり直せ
 政府が今国会の最重要法案と位置付ける働き方改革関連法案を巡り、安倍晋三首相は「不適切データ」の発覚によって批判が噴出した裁量労働制の拡大を削除すると正式に表明した。骨格部分の切り離しは政権への大きな打撃となるが、世論の反発が強まれば、9月の自民党総裁選での連続3選に影響すると判断したとの見方も出ている。裁量制拡大は罰則付きの残業時間規制、非正規労働者の処遇改善に向けた同一労働同一賃金、高収入の一部専門職を労働時間規制から外す高度プロフェッショナル制度(高プロ)と並ぶ4本柱の一つ。政府は残り三つの柱は維持して今国会に法案を出し、成立を目指す方針を変えていない。だが裁量制の断念で法案に対する不信や不安は拭いがたいものになった。もともと8本の法案を一本化し、労働環境の改善に資する規制の強化とともに緩和も実現させようというやり方に野党や労働組合は強く反対していた。さらに規制強化について、経済界の要望から中小企業の残業規制を1年延期する修正案が用意されるなど改革の後退に不満が募っている。残業規制が施行後5年間猶予される医師や建設業労働者らの懸念も根強い。裁量制を除外してしまえば、あとは予定通りにというわけにはいかない。規制強化と緩和の切り離しも含め、議論を一からやり直すべきだ。実際に働いた時間ではなく、あらかじめ決められた時間に基づいて賃金を支払う裁量労働制の対象業務拡大を巡っては野党が「長時間労働を助長し、過労死を増やしかねない」と批判。安倍首相は1月末に厚生労働省の裁量労働データを持ち出して「裁量労働制で働く人の労働時間は一般労働者より短いというデータもある」と反論した。ところが野党の追及で、一般労働者に「1カ月で最も長く働いた日の残業時間」を聞き、裁量制で働く人には単に1日の労働時間を尋ねるという不適切な調査手法が明らかになり、首相は答弁を撤回。その後も「異常値」が次々に発覚した。政府が盛んに強調した裁量制の労働時間縮減効果を支える根拠が崩れたのだから、今回の削除は当然だ。ただ問題はまだまだある。まず野党が「残業代ゼロ法案」と批判する高プロの導入。高収入の金融ディーラーや研究開発職などは時間外労働をしても割増賃金をもらえなくなるが、どれくらいの人に影響が及ぶのか、はっきりしない。サービス残業の実態についても厚労省は調査していない。さらに働く人のためになるはずの残業規制では、中小企業に限って適用を1年延期する修正案が先に厚労省から自民党に提示されている。やはり中小の同一労働同一賃金や残業代割増率引き上げも遅らせる。「人手不足に残業規制が重なると、労働力が確保できなくなる」との経済界の訴えが反映された。もう一つ忘れてはならないのは、医師や建設業労働者は残業規制の適用が施行後5年間猶予されることだ。厚労省の調査でも医師は長時間労働を余儀なくされ、建設業については2020年東京五輪・パラリンピックに向け労働環境が厳しくなることが予想される。どうすれば、過重労働や過労死をなくせるか、本当に働く人のためになるのかという根本に立ち返り、制度設計について議論を尽くすべきだ。

*1-2-1:http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201802/CK2018022402000152.html (東京新聞 2018年2月24日) 医師の長時間労働 特定機能病院7割に勧告
 大規模病院で違法残業や残業代の未払いが相次ぎ発覚している問題で、高度医療を担う全国八十五の特定機能病院のうち、七割超の六十四病院で労働基準法違反があったとして労働基準監督署が是正勧告し、少なくとも二十八病院に複数回の勧告をしていたことが二十三日、明らかになった。共同通信が二〇一三~一七年の関係資料を入手した。藤田保健衛生大病院(愛知県)など五病院に関しては勧告が四回繰り返され、労使協定(三六協定)の未締結や労基署への無届けを指摘された病院も六病院あった。勤務医らの長時間労働の根深さが裏付けられ、医師の働き方改革の議論に影響がありそうだ。勧告を受けた病院や運営法人の中には、三六協定の上限時間を引き上げることで違反状態を解消しようとする病院もあった。がん研究会有明病院(東京都)を運営するがん研究会は、三六協定に基づく医師の残業上限(月八十時間)を超える残業をさせたなどとして一六年十二月に勧告を受け、「過労死ライン」とされる百時間を大幅に上回る百五十五時間を上限とする協定を結び直していた。四回の勧告があったのは藤田保健衛生大、奈良県立医大、山口大、愛媛大、長崎大の各病院。長崎大病院は、時間外労働に関する労使協定の上限時間(月八十時間)を超える月九十五時間の残業をさせたなどとして一三年三月に是正勧告を受け、一七年六月までほぼ毎年、違法残業か割増賃金の未払いで勧告を受けた。未払い分は既に支払ったという。藤田保健衛生大のほか、千葉大、日本医大(東京都)、横浜市立大、京都府立医大の各病院と静岡県立静岡がんセンターは、医師らとの間に三六協定を結んでいなかったり労基署に届け出ていなかったりしたにもかかわらず残業させたとして勧告を受けた。いずれも現在は協定を結び、届け出もしているとしている。医師の長時間労働は、診療の求めを原則拒めないと医師法が規定する「応召義務」も一因とされ、厚生労働省の検討会が在り方について議論。患者への説明など一部の業務を他の職種に任せるタスク・シフティング(業務移管)の推進を柱とした緊急対策をまとめた。
◆是正勧告を受けた関東の21特定機能病院
【東京】
杏林大学医学部付属病院
慶応義塾大学病院
がん研究会有明病院
昭和大学病院
帝京大学医学部付属病院
東京医科歯科大学医学部付属病院
東京医科大学病院
東京慈恵会医科大学付属病院
東京大学医学部付属病院
東邦大学医療センター大森病院
国立国際医療研究センター病院
日本医科大学付属病院
日本大学医学部付属板橋病院
【神奈川】
北里大学病院
横浜市立大学付属病院
聖マリアンナ医科大学病院
東海大学医学部付属病院
【千葉】
千葉大学医学部付属病院
国立がん研究センター東病院
【栃木】
独協医科大学病院
【茨城】
筑波大学付属病院

*1-2-2:http://www.shinmai.co.jp/news/nagano/20180302/KT180301ETI090007000.php (信濃毎日新聞 2018年3月2日) 働き方改革 高プロ創設も切り離せ
 安倍晋三首相が今国会に提出予定の働き方改革関連法案から、裁量労働制の対象拡大の部分を切り離すことを決めた。実際の労働時間に関係なく、あらかじめ決めた時間を働いたとみなし、賃金を支払う制度である。労働時間に応じた残業代を支払う必要がないため、長時間労働を招く懸念が付きまとう。政府は裁量制で働く人たちの労働時間や業務量の変化などを調査せずに、対象拡大を法案に盛り込もうとした。影響が不明のまま審議することはできない。法案作成に使った厚生労働省の調査も、調査目的が違う上、大量の異常値が見つかった。法案から切り離すのは当然だ。安倍首相は裁量制の実態調査を実施する方針を示している。慎重かつ厳密に行わなければならない。厚労省調査のデータ異常の原因を突き詰め、手法を改善しなければ信頼性は保てない。調査結果だけでなく、すべてのデータも最初から公表するべきである。関連法案には容認できない点がまだ残る。最大の問題は「高度プロフェッショナル制度(高プロ)」創設である。労働基準法上、労働時間の上限は週40時間、1日8時間とされ、超えた場合は時間外労働として残業代を支払う必要がある。残業代には働かせすぎた会社に対するペナルティーの意味がある。高プロは、収入1075万円以上で「高度な専門的知識を必要とし、労働時間と成果の関連が高くない」仕事の人を、この規制から外す。安倍首相は「柔軟な働き方を可能にする」と述べている。果たしてそうだろうか。どんな長時間労働も労働者の判断として扱われ、残業代はない。企業の刑事責任が問われる範囲は狭くなる。会社から過大な成果や仕事を求められる心配もある。法案に設けられている健康確保措置も十分ではなく、過重労働に歯止めがかからないだろう。経営者には年収要件の引き下げを求める声もある。導入後、対象が拡大していく懸念は拭えない。高プロ創設は、生産性を重視する経済界の要請で2015年4月に国会提出された。過労死を増やすとして野党が反対し、審議入りが見送られてきた経緯がある。単独では難しいからといって、労働団体が要望してきた残業規制などとセットにして成立を図るのは認められない。安倍首相がいう「働く人の視点に立つ働き方改革」が真実なら、法案から削除するべきである。

<人口減少と労働力>
*2-1:https://mainichi.jp/articles/20180109/ddm/005/070/038000c (毎日新聞社説 2018年1月9日) 論始め2018 人口減少と労働力 従来の枠組みを超えよう
 2017年に生まれた子どもは推計94万人で、過去最少となった。死亡数から出生数を引いた「自然減」は40万人を超える。これはまだ序の口で、25年には64万人、40年は89万人、60年には94万人が1年間に減っていく。人口の少ない県や政令市が毎年一つずつ消えていくようなものだ。産業界では現役世代の人口減少がすでに深刻な労働力不足をもたらしている。20年には416万人が不足するとの試算もある。従来の枠組みを超えた取り組みが必要だ。労働力不足への対処法としては、(1)ITなどによる省力化(2)国内の潜在労働力の活用(3)外国からの移入--の3点が挙げられる。ITを使った事務の省力化は医療や介護の現場でも少しずつ進んでいる。膨大な情報を瞬時に処理できる人工知能(AI)や、力仕事を人に代わって行うロボットも期待される。しかし、AIやロボットでは置き換えることが難しい仕事も多い。
●「65歳定年」の見直しを
 現在は働いていない高齢者や専業主婦は貴重な潜在労働力だ。各種統計で使われている「生産年齢人口」(15~64歳)は、50年には約2500万人も減るとされている。しかし、「生産年齢」と言っても、現在は10~20代前半で働いている人は少ない。むしろ65歳を過ぎても働いている人の方が多い。今後も65歳以上の人口は増えていく。日本人の健康寿命は延びており、65歳で定年とする制度や慣行の見直しが必要ではないか。元気で働く意欲のある高齢者、高学歴で専門職のキャリアがありながら育児や介護のため離職している女性などが働けるようになれば、労働力不足の解消に大きく貢献するだろう。自宅や近くのオフィスで働くテレワークを導入する企業も増えている。さまざまな事情で通勤が難しい人の活用も進めていくべきだ。問題は外国人労働者である。一昨年、日本で働く外国人は初めて100万人を超えて108万人となった。特に多いのがアジア諸国からの技能実習生や就労目的の留学生だ。技能実習生は約21万1000人、留学生は約20万9000人で、それぞれ前年より25%も増えた。都市部のコンビニ店ではアジア系留学生の働く姿がよく見られる。彼らの存在なしでは日本の社会は回らなくなったと思えるほどだ。技能実習制度は「開発途上国への技能移転」を名目に1993年に始まった。小さな繊維関係の会社や農業・漁業などで働く人が多い。一部を除けば、日本人がやりたがらない過重労働や危険な仕事を担っており、労働者としての権利保障の枠外に置かれているのが実態だ。実習生はブローカーに多額の仲介料や保証金を取られる上、日本に滞在できるのは原則3年。決められた会社でしか働けないため、低賃金で劣悪な職場環境に不満があっても転職ができない。
●矛盾多い外国人労働者
 こうした技能実習制度は国内外から強い批判を浴びてきた。政府は受け入れ期間の3年から5年への延長、実習生からの保証金や違約金の徴収禁止などに取り組んでいる。17年には「外国人技能実習機構」を新設し、実習計画のチェックを厳しくすることにした。それでも政府の基本姿勢は、日本への定住は認めず、安価な労働力として活用する、という枠内にとどまっている。生活習慣や宗教・文化の異なる集団が大量に国内に流入し、定住することで生じる摩擦を警戒する意見は根強い。労働力不足を補うために拙速な政策変更を行えば混乱が生じることにもなるだろう。ただ、現行の技能実習や留学の制度は、本来の目的とかけ離れている。働き手不足を補ってくれる貴重な戦力なのに、制度の隙間(すきま)で使い捨てにしているのも同然ではないか。少なくとも、労働者として認められる最低賃金や労働時間のルールを実習生らにも適用すべきである。最近では中国沿岸部の上海など、日本より賃金が高い都市も出てきた。韓国やタイで働くベトナムやミャンマーの労働者も増えている。このままでは日本を訪れる外国人労働者はいなくなるのではないか。日本の社会が人口減で縮小し、活気を失わないためには、これまでの発想を変えるべきだ。高齢者や女性、外国人労働者など多様な人材が活躍できる社会を目指したい。

*2-2:http://qbiz.jp/article/129128/1/ (西日本新聞 2018年3月3日) 7割が人手不足「深刻」 九州生産性本部調査 技術継承に懸念
 九州生産性本部(会長=田中優次西部ガス会長)は2日、2017年度「人事部門の抱える課題とその取り組みの実態調査」の結果を発表した。企業や団体が直面している課題として最も多かったのは「優秀な人材の確保・定着」の69・1%で、人手不足について「深刻化している」「やや深刻化している」と回答した割合も70・7%に上った。調査は昨年11〜12月、九州7県の企業・団体を対象に実施し、328件の回答を得た。人手不足が「深刻化」「やや深刻化」と答えた企業・団体に、その影響を尋ねると「技術継承ができない」(55・8%)が最も多く、「商品・サービスの質の低下」(29・6%)▽受注に失敗するなど「失注の増加」(22・6%)▽「利益の減少」(19・9%)−が続いた。18年春新卒の採用活動で「予定通り採用できなかった」と答えたのは36・7%で、前年調査に比べ4・5ポイント上昇。19年春の新卒採用を増やすのは22・0%に倍増した。働き方改革には8割以上取り組んでおり、具体的には「長時間労働の管理・是正」(90・0%)や「育児休業や短時間勤務など子育て世代の支援」(63・6%)が多かった。「テレワークなどの在宅勤務」「副業・兼業の容認」は数%にとどまり、同本部は「想定よりも取り組む企業が少なかった」としている。

<高齢者の雇用>
*3-1:https://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-669102.html (琉球新報社説 2018年2月21日) 高齢社会対策大綱 「老後の安心保障」基本に
 政府は高齢者施策の指針となる高齢社会対策大綱を閣議決定した。65歳以上を一律に高齢者とみることを見直し、公的年金の受給開始時期を70歳超も選択できるようにする。高齢者の就労を促すことを狙い、年齢にかかわらず柔軟に働ける環境の整備を打ち出した。高齢者を一律で65歳以上とみる考え方は、確かに現実的ではない。高齢でも自立生活が送れる「健康寿命」は男性71・19歳、女性74・21歳である。厚生労働省が2016年に実施した調査では「高齢者だと思う年齢」の質問に「70歳以上」との回答が41・1%で最も多かった。日本老年学会なども17年に「高齢者」の定義を現在の65歳から10歳引き上げて75歳以上に見直し、前期高齢者の65~74歳を「准高齢者」として社会の支え手と捉え直すよう求める提言を発表している。一方、16年版厚生労働白書によると、60歳以上を対象にした調査で65歳を超えても働きたいと7割が希望しているものの、実際に働いている人は2割にとどまっている。厚労省の調査では、昨年1月から7月までに65歳を過ぎてから新たに雇用、または再雇用された高齢者約65万人のうち、70%がパートなどの非正規だった。正社員は女性19%、男性35%でしかない。現状は「年齢にかかわらず柔軟に働ける環境」には程遠い。その改善は急務である。高齢者の年齢を見直す大きな理由の一つに年金支給額の抑制があるのは確実だ。25年には全人口の3人に1人が65歳以上で占める。働き盛りの世代が高齢者を支えることを前提につくられた年金制度は、現行のままでは維持できなくなってきている。受給開始を70歳以上も選択できるようにしたのは「選択肢の幅を広げる」(加藤勝信厚労相)ためではない。幅を広げることで、早めに受給する人への支給額を減らし、全体として支給額を抑制するのが目的である。国は年金支給水準を抑制する政策を既に実施している。支給額をこれ以上、減額することは断じて認められない。安倍晋三首相は高齢社会対策会議で「高齢化はますます進行し、地方人口の減少も見込まれている。全ての世代が幅広く活躍できるような社会を実現することが重要だ」と述べた。安倍首相が言う「活躍」とは、働くことで日本経済に貢献することなのだろう。強い違和感を禁じ得ない。加齢や障がいが原因で働けない高齢者もいることを忘れてはいないか。それぞれの立場で、社会に貢献できることはあるはずである。高齢者の雇用確保も重要である。だが、高齢者施策の基本は「老後の安心」を保障することである。就労促進と併せ、支えが必要になったときに安心して暮らせる仕組みを充実させなければ、超高齢社会は乗り越えられない。

*3-2:http://qbiz.jp/article/129402/1/ (西日本新聞 2018年3月8日) ニュータウンの高齢化率2割超 40%近い地域も 九経調調査
 九州経済調査協会(福岡市)が行った九州のニュータウンに関する調査によると、2015年の高齢化率(65歳以上)は20・8%(推計値)だった。九州全体の高齢化率28・0%を下回ったが、30%を超えるニュータウンも少なくなく、再生に向けた支援や取り組みが必要としている。国土交通省が13年度に作成したニュータウンリスト(対象は計画戸数が千戸以上もしくは計画人口3千人以上など)と国勢調査を組み合わせて推計し、3月の九州経済調査月報でリポートとしてまとめた。県別でみると鹿児島、長崎、宮崎、大分で高齢化率が20%を超えた。九経調によると、この4県は1960〜70年代に開発されたニュータウンが多く、鹿児島県では40%に迫る地域も複数あった。福岡県は1980年代以降も開発が進んだこともあり、高齢化率は九州平均を下回った。ただ福岡市東部から宗像市にかけたエリアのほか、大野城市や北九州市小倉北区、小倉南区などで高齢化率が30%を超えるニュータウンが目立った。九経調の竹下和希研究員は「全てのニュータウンで若者の流入を前提とした再生を期待するのは困難」と指摘。リポートでは団地住民が農業を通じてにぎわいを生み出している福岡県宗像市の「日の里ファーム」を紹介し、「高齢者を地域の担い手として位置付け、生きがい創出に重点を置くなど、多様な再生が必要になる」としている。

<女性の雇用>
*4-1:https://www.nichibenren.or.jp/activity/document/statement/year/2017/171201.html (日弁連会長声明 2017年12月1日 日本弁護士連合会会長 中本和洋) 世界経済フォーラムのジェンダーギャップ指数に対する会長談話
 世界経済フォーラム(WEF、本部・ジュネーブ)は、2017年11月2日、同年の世界各国の男女平等の度合を指数化した「グローバル・ジェンダー・ギャップ」を発表した。日本は、調査対象144か国のうち、114位と前年より3つ順位を落とし、過去最低となった。2015年が101位、2016年が111位と年々順位を落としている。ジェンダーギャップ指数は、女性の地位を、経済、政治、教育、健康の4分野で分析し、ランク付けしているが、日本は、経済114位、政治参画123位であるのに対し、教育74位、健康1位と分野間のばらつきが大きい。特に、女性の地位改善の鍵ともいうべき政治分野が最も順位が低く、国会議員の男女比が129位、閣僚の男女比は昨年の50位から88位と大幅に落ち込んでいる。生活の基盤となる経済は昨年の118位から若干改善したが、給与格差、管理職や専門職での男女比は、いずれも100位以下と低い。教育の分野では、初等・中等教育や識字率が1位であるため、教育全体では74位であるが、高等教育は101位といまだに低い水準にとどまっている。日本政府は、「すべての女性が輝く社会づくり」をその重点課題に掲げ、2017年6月6日には「女性活躍加速のための重点方針2017」を明らかにした。その中で、女性の職業生活における活躍の推進に関する法律が完全に施行されてから1年余りが経過し、「女性活躍は大きなうねりになっている」との現状認識を示し、また女性活躍の実現に不可欠な働き方改革の取組を今後も強力に進めるとしている。しかし、2017年のジェンダーギャップ指数は調査が始まってから過去最低の順位を記録しており、上記施策が十分に成果を上げたとは言いがたい。国民の半数を占める女性の意見が十分に反映されてこそ、男女平等の視点を有する各種施策の立案が可能となることから、女性の政治参加は、あらゆる分野における女性の地位向上のための必須の条件である。当連合会においても、会内における男女共同参画の重点課題として、意思決定過程への女性会員の参画拡大に取り組んでいるところである。また、高等教育における格差解消は、社会に出てからの経済分野や政治分野における男女格差の改善に大きな影響を及ぼすことから、政府の掲げる女性活躍推進における有効な布石となるはずである。したがって、当連合会は、日本政府に対し、2017年のジェンダーギャップ指数の順位が過去最低となった事実を厳粛に受け止め、女性活躍を更に推進するために、働き方改革の取組にとどまらず、女性の政治参加及び高等教育における男女格差解消を重点課題とし、我が国のあらゆる分野にはびこっている性差別を根絶するためのより実効性のある具体的措置、施策を早急に講じるよう求めるものである。

*4-2:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO27450860X20C18A2SHA000/ (日経新聞 2018年2月28日) 女性取締役増を統治指針に 政府方針、企業に説明責任
 政府は上場企業に女性取締役の起用を促す。今春に改定するコーポレートガバナンス・コード(企業統治指針に方針を示し、取締役会に女性がいない企業は投資家に理由を説明するよう求める。上場企業の役員に占める女性の割合は、欧米は2~3割だが日本は4%弱にすぎない。国際標準に近づける仕組みづくりが急務だった。同指針は東京証券取引所が上場企業向けに定める企業統治の規範で、取締役会のあり方や役員報酬の決め方などを規定する。強制力はない。金融庁は3月にも、有識者を交えた同庁の会合で指針の改定案を示す。「ジェンダーや国際性の面を含む多様性」を求める規定を盛り込む。パブリックコメント(意見公募)を経て5月中に改定案を固め、それを踏まえ東証が導入する予定だ。指針の実効性を高めるため、新たに「投資家と企業の対話ガイドライン」をつくる。社内・社外の取締役に関して「ジェンダーや国際性の面を含む多様性を十分に確保した形で構成されているか」「取締役として女性が選任されているか」を企業に問う内容だ。ガイドラインにも強制力はないが、女性取締役を起用しない上場企業は、決算説明会や投資家向け説明会などで機関投資家や株主、マスメディアなどに理由を明らかにする必要が生じる。内閣府の資料によると、監査役なども含む「役員」に占める女性の割合は、日本の上場企業は2017年に3.7%。15年のフランスの34.4%や英国の23.2%、米国の17.9%などに比べ、圧倒的に少ない。欧州では役職の一定数を女性に割り当てる「クオータ制」の導入で女性登用が制度化されている。03年にノルウェーが採用後、フランスやドイツ、イタリアなどに広がった。多くの国では役員への女性登用の水準を3~4割としており、満たさない企業に罰金などの処分を科す国もある。自主的な取り組みもある。英国では女性役員比率を3割以上に引き上げることを目指す上場企業でつくる「30%クラブ」がある。米国やカナダなどに支部があり機関投資家なども加盟できる。日本は政府の男女共同参画基本計画で20年までに上場企業の女性役員の割合を10%以上にする目標を掲げている。安倍晋三首相は13年に上場企業の役員のうち1人は女性を起用するよう経済界に要請。15年には有価証券報告書で女性役員比率を示すよう義務付けていた。同指針を改定するのは、15年に導入して以来、初めてとなる。女性活躍や多様性の確保に加えて、今回の改定では社外取締役の増員も検討する。現行の指針の「2人以上」を「3分の1以上」に変更する方針だ。安倍政権は、日本企業の国際競争力を高める重要施策としてコーポレートガバナンスの強化を進めてきた。こうした施策を盛り込んだ指針を導入した後、外国人投資家の日本株の保有比率は上昇している。16年度の保有比率も30.1%と、15年度比で0.3ポイント上がった。海外勢の保有額は約174兆7000億円と同時期に13%増えた。

*4-3:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO27457780X20C18A2EE8000/?n_cid=SPTMG002 (日経新聞 2018年2月28日) 候補少ない女性取締役、人材争奪戦も
 政府が女性取締役の起用を求めることで取締役会の顔ぶれが多様になれば、企業統治が前進し機関投資家の投資マネーを呼び込みやすくなる。一方で女性の役員は候補者が少なく、現在でも複数の企業で役員を兼任する事例は珍しくない。女性取締役の起用が広がれば人材の獲得競争が一段と激しくなりそうだ。コーポレートガバナンス・コード(企業統治指針)に強制力はないが、企業は実質的に説明責任を負う。指針改定で取締役に女性を起用する企業が増える可能性は高い。日本企業の取締役会は多くの場合、生え抜きの中高年男性で構成され多様性に欠けるとの批判があった。経営コンサルティングのエゴンゼンダー(東京・千代田)の佃秀昭社長は「取締役会に女性を迎えれば長年の慣習にとらわれない議論ができる」と指摘する。年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)や米運用会社のJPモルガン・アセット・マネジメントなども女性比率の引き上げを求めている。女性取締役の起用が進めば機関投資家が投資しやすくなり、株式市場の活性化につながる。ただ、企業にとっては候補者探しが課題だ。厚生労働省の雇用均等基本調査によると16年度の女性管理職の比率は12.1%だった。部長相当の役職では6.5%にとどまる。生え抜きの女性役員を登用するには女性の管理職を一段と増やす取り組みが欠かせない。社外で探すのも簡単ではない。ガバナンス助言会社プロネッド(東京・港)の昨年7月の調査によると、東証1部上場企業の社外役員(監査役含む)を4社以上兼任する女性は12人いた。弁護士や大学教授といった経歴が多く「これらの職種では獲得競争が激しくなる」(酒井功社長)。労務行政研究所の調査では2016年度の社外取締役の年間報酬は平均で669万円だった。候補者の争奪戦が激しくなれば報酬が一段と高くなる恐れもある。この調査では女性の社外役員を選任する企業の割合は株式時価総額1兆円以上の企業で71%なのに対し100億円未満では16%で、企業規模により対応に差が生じる可能性もある。

*4-4:http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201712/CK2017122502000209.html (東京新聞 2017年12月25日) 「介護離職考えた」半数 管理職 業務との両立悩む
 介護を経験した管理職の半数近くが、退職を検討したことが人材会社アデコの調査で分かった。60%以上が公的な介護休暇・休業や社内制度を利用しづらいと感じていることも判明。「業務に支障が出る」などとして仕事との両立に悩む姿が浮かんだ。政府は介護離職ゼロを目指しているが、実現の見通しは立っておらず、働き続けるための環境整備が緊急に求められそうだ。企業の管理職は介護と仕事の両立を迫られる可能性が高い年代。調査は十月、親族を介護した経験がある部長職、課長職六百人を対象にインターネットで実施した。介護離職について20%が「何度も考えた」、28%が「一、二回考えた」と回答。「考えたことは一度もない」は53%だった。離職を考えた人の理由で最も多かったのは「体力・精神的な負担や不安」で、考えたことがない人は「収入面での不安」が多かった。介護で会社を休んだことがある四百二人が利用した制度を複数回答で尋ねたところ、最多は有給休暇で88%。育児・介護休業法で定められている介護休暇は16%、介護休業はわずか3%だった。同社は「介護休暇中は無給の企業が多く、雇用保険から給付金が支給される介護休業も事前の手続きがハードルになっている」と分析している。社内制度では半日・時間単位休暇の利用が多かったが、「制度自体がない」との回答も目立った。「介護関連制度が利用しづらい」と答えた人は63%。理由は「自身の業務に支障が出る」「部下の業務に支障が出る」「介護を理由に休みを取る管理職がいない」などだった。介護に携わる部下がいる二百八十四人のうち92%が「部下を支援したい」と回答したが、「実際に支援できた」と答えたのは74%だった。
 ◇ 
 四捨五入のため、合計は100%になりません。

*4-5:http://www.saga-s.co.jp/articles/-/189884 (佐賀新聞 2018年3月7日) 介護保険料6千円超が65%、4月から85%の44市区で増額
 4月に3年ぶりに改定される65歳以上の高齢者の介護保険料(基準額)について、都道府県庁所在地(東京は都庁のある新宿区)と政令指定都市の計52市区のうち65%の34市区で月額6千円を超す見込みであることが7日、共同通信の調査で分かった。85%に当たる44市区で引き上げられ、据え置きは8市にとどまる。多くの自治体で値上げするのは、高齢化の進行で介護サービスの利用が増え給付費が増加することや、事業者に支払う報酬が4月から0・54%引き上げられるため。介護施設の整備を進めていることも影響した。

*4-6:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180105&ng=DGKKZO25320040U8A100C1EE8000 (日経新聞 2018.1.5) 保育ニーズ、正確に把握 厚労省、申込者以外も推計
 厚生労働省は待機児童の解消をめざし、保育のニーズの実態把握を正確にする。2018年度から、これまで集計してきた保育所の申込者数とは別に「保育所への入所が必要だが申し込まなかった」といったケースを含め把握する。市町村ごとに見込み数を集め、厚労省が公表する。原則、すべての市区町村を対象にする。待機児童がいる自治体だけでなく、今はいなくても保育ニーズの増加が今後想定される場合も対象にする。厚労省は「子育て安心プラン」で、20年度末までに新しい保育定員枠32万人分を整備する方針を示している。民間調査では、保育所を利用できなかった親の4割が申し込みをしていない。申込者だけでは保育需要を把握できないことが浮き彫りになっている。18年度からは毎年度、推計の中で実際には申し込みに至らないケースを把握し、実態との差があれば原因を分析する。需要の推計や実績は厚労省が市区町村ごとに一括して公表する。厚労省は実態の「見える化」を促し、自治体が需要の過小評価などによって、待機児童数を少なく見せることがないようにする。政府が保育の定員枠を増やすための予算確保をしても、需要が多い地域に局所的に保育所が足りないミスマッチや、保育需要の適正な把握がされなければ待機児童の解消にはつながらない。

*4-7:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20150105&ng=DGKKZO81541250U5A100C1M10700 (日経新聞 2015.1.5) 働く意識、多様化進む 男性は「年功序列」 / 女性は「成果型」
 働き手の仕事に対する意識は世代や性別で多様化している。年齢に応じて給料を払う「年功序列型」と、働きに応じて支払う「成果型」のどちらの賃金制度がいいか尋ねたところ、全体ではほぼ半々だったが、男性は年齢が高くなるほど年功型を好み、女性は成果型を支持する傾向があった。年功を支持する男性は20代が52.9%、50代は63.5%。大企業の中高年男性は1つの会社で勤め上げる人が多い。残業や転勤に耐えた長年の貢献に報いてほしいという意識が強い。一方、女性は転職経験がある人が58.8%と男性(40.7%)より高く、短期間の実績が給与につながる成果型に支持が集まった。女性は夫の転勤や出産を機に離職や転職を迫られやすい。男性に比べ会社への帰属意識が低く、生活環境の変化などに合わせて転職する人が少なくない。海外勤務志望については、働く人の78.2%が「海外で仕事をしたいと思わない」と答え、内向き志向が強かった。主な理由(3つまで選択)は「語学力に自信がない」が65.7%と最も多く、「治安が悪い」(45.8%)、「国内でもやりがいのある仕事はできる」(40.8%)と続いた。大手企業を中心に海外で働くグローバル人材の需要が高まっている一方、働く側の多くは国内を出たがらないようだ。年代別では、20~30代で「海外で仕事をしたい」と答えた人が24.6%と40代(21.6%)を上回り、若い層の海外志向はやや高い。大学教育の国際化対応で、英語での授業や海外留学が一般的になっていることもありそうだ。

<外国人の雇用>
*5-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180127&ng=DGKKZO26189750W8A120C1EA4000 (日経新聞 2018.1.27) 外国人労働者 最多に 10月末127万人、5年で60万人増 人手不足の職場補う
厚生労働省は26日、2017年10月末時点の外国人労働者数が127万8670人だったと発表した。前年同期から18%増え、増加は5年連続。企業の届け出を義務化した07年以降で過去最高を更新した。製造業で働く技能実習生やサービス業で働く留学生らの増加が目立ち、人手不足が深刻な職場を外国人で補う構図が強まっている。外国人労働者の数は12年から急激に増加し、5年間で約60万人増えた。日本の雇用者総数の約2%を占める水準だ。外国人を雇う事業所の数も、前年同期比12.6%増の19万4595カ所と過去最高になった。国籍別にみると、中国が37万2263人で全体の29.1%を占める。ベトナムの18.8%、フィリピンの11.5%が続いた。伸び率はベトナムが最も高く、前年同期と比べて約4割増えた。資格別にみると、労働現場で外国人労働者を実習生として受け入れる技能実習制度の在留資格が25万7788人、留学が25万9604人だ。ともに2割以上増えた。高度人材などの「専門的・技術的分野」も23万8412人と18.6%増。技能実習の8割近くが製造業か建設業で、留学の半数以上が卸小売業かサービス業で勤務している。日本での受け入れ体制整備は遅れている。政府は高度人材の受け入れに前向きだが、単純労働者の受け入れは認めていない。技能実習制度や留学生として事実上の単純労働者が急増しているのが実態だ。外国人を活用したいという企業も増えているものの、実習生の数や年数には限度がある。

*5-2:http://qbiz.jp/article/129389/1/ (西日本新聞 2018年3月7日) 新潟など3特区で外国人就農解禁 高齢化で人手不足が深刻化
 政府が国家戦略特区に指定している新潟市、愛知県、京都府の3自治体で外国人の農業就労を解禁する方針を固めたことが7日、分かった。1年以上の農業実務の経験を持つことが条件で、受け入れ期間は通算3年を上限とする。国内農業は高齢化が進んで人手不足が深刻化しており、経験や技能のある即戦力を海外から呼び込んで現場を活性化する狙いがある。外国人の就農は昨年9月施行の改正国家戦略特区法で認められた。この3自治体が第1弾となる見通しで、9日にも特区諮問会議を開いて決定する。特区で効果が確認された場合は、全国に広げることも検討する。受け入れる人材は、実務経験に加え、農作業に必要な日本語を話せる外国人の中から選ぶ。農業に関する専門知識や技術を持つことも条件とし、外国人に働きながら技術を学んでもらう技能実習制度とは区別する。対象者は人材派遣会社と雇用契約を結び、各地の農業生産法人や農家へ派遣される。農作業だけでなく、農作物の加工・販売を手掛ける「6次産業」にも従事できる。技能実習制度を巡っては、過重労働や賃金不払いが問題となっている。特区の就農受け入れではこうしたトラブルを防ぐため、日本人と同水準の賃金を保証。人材派遣会社に対し、受け入れ先での雇用状況を確認した上で、政府や自治体でつくる協議会に報告することを義務付ける。


<役所の労働生産性と資本生産性>
PS(2018年3月12、17、20日追加):労働生産性を高めることは常識となったが、資本生産性(資本1円投入あたりの生産量)については、未だ無視されている。しかし、*6-1-1のように、岩手県陸前高田市で10mかさ上げされた宅地(総費用:1,400億円、造成面積:約300ヘクタール)の引き渡しが始まったが、かさ上げした宅地は空き地が目立つそうだ。それは当然のことで、*6-1-2のように、陸前高田の津波は、海岸から約500メートルにあるガソリンスタンドで15.1mを記録しているため、10mしかかさ上げされていない地盤の弱い埋立地は安全ではないからである。そのため、国民が本来の所得税に2.1%上乗せして「東北の復興のため」にと黙って支払った復興特別所得税によるこの事業の資本生産性は0に近い。また、*6-1-1には、高台移転が間違っていたかのように書かれているが、津波高に対して十分な高さのある地盤の強い山側に移転する高台移転と、15m以上の津波が来る地域で10mしかかさ上げされていない地盤の弱い埋立地を作ることとは全く異なる。これを、事前に考えなかったのは、心のこもった復興ではなく、ヘリコプター・マネー(税金の無駄遣い)だったからである。
 さらに、*6-1-1は、女川町が公共施設や市街地を、元のJR女川駅周辺に集約したのがよいことであったかのように書いているが、女川町では、*6-1-3のように、17m超の津波に襲われ谷状の町が壊滅して、高台にある病院の1階部分も津波で激しく損傷したのだ。次の津波が来たら、また同じことを繰り返して、国民から復興税をとるつもりだろうか。しかし、次の災害時は、わかっていてやったことなので、自己責任にしてもらいたい。 怒
 その上、気仙沼市の大谷海岸地区では、*6-2-1のように、宮城県が55億円の予算で海抜9.8メートルの防潮堤を整備するそうだが、気仙沼市の津波の高さは20メートルを超えていたため、背後地約4.0haを防潮堤と同じ高さにかさ上げしても、陸前高田市と同様、誰も使わないだろう。それでも10m弱の防潮堤を作り、10mかさ上げすればよいと考えるのは愚かとしか言いようがなく、この事業の資本生産性はマイナスである。何故なら、役に立たないだけではなく、*6-2-2のように、生態系と景観を破壊するからだ。
 なお、津波の危険性だけでなく、福島第1原発事故による放射能汚染も環境を破壊し住民が近寄ることすら困難にして先が見えないが、*6-3-1の凍土遮水壁もまた金を使うことが目的の資本生産性の低い支出だった。原子力規制委員会は、国の基準以下に薄めて汚染水を海に放出する必要があるなどとしているが、2倍に薄めて2倍の分量を放出すれば放射性物質の放出量は変わらないため薄めることに意味はなく、こういう発想をする人たちが放射性物質汚染に対する注意を風評被害と呼ぶのは、あまりにもおこがましい。
 その上、原発立地自治体は、平時でも、*6-3-2のように、原発の再稼働や定期検査で作業員が来たり(この時、宿泊)、重機で工事をしたりして原発需要がある上、迷惑料である電源開発促進税などが入るが、それらは消費者が電力料金に含めて支払っているのだ。そして、今後も新たなテロ対策施設の建設が控えるとしているが、世界は卒原発の時代で、*6-3-3のように、東日本大震災前後から新燃岳の噴火や大地震が増えているにもかかわらず火山噴火のリスクを低く想定しているため、それこそ集中と選択で電源を自然エネルギーに移行し、玄海町は農産物・海産物・関連工業品やサービスにシフトするのがよいと考える。
 九電は、既にインドネシアで世界最大規模のサルーラ地熱発電に参画しており(http://www.kyuden.co.jp/press_h170322-1.html 参照)、また、*6-3-4のように、九電工がインドネシアのスンバ島で太陽光発電と蓄電池を組み合わせて電力を安定供給する「エネルギーマネジメントシステム(EMS)」の実証事業を始めたくらいで、再生可能エネルギーを活用した“地産地消”の電力供給も既にできる状況になり、これらは、「(日本を含む)世界中どこでも通用する技術」なのである。
 しかし、*6-3-5のように、佐賀地裁は、九電玄海原発3、4号機運転差し止めを求める仮処分の申し立てを退け、「原発なくそう! 九州玄海訴訟」本訴訟の原告団長元佐賀大学長の長谷川照さん等が「国内や世界の情勢を考えると司法は遅れている」と嘆かれた。司法は、内容だけでなく、お白洲で裁くような作りであり、明治時代から形式を変えていないのも遅れている。

*6-1-1:https://digital.asahi.com/articles/DA3S13398484.html (朝日新聞 2018年3月12日) (東日本大震災7年)高台移転に時間、戻らぬ被災者 大事業難航、戸数35%減
 東日本大震災の被災地でまちづくりが縮んでいる。宅地造成による住宅の計画戸数は約1万8300戸と、5年前の計画から35%減少した。復興までの期間が長引き、別の場所に居を構える選択をした住民が少なくないためだ。今後の震災を想定し、こうした教訓をいかす取り組みも始まっている。岩手、宮城、福島3県の自治体が実施する高台移転(防災集団移転や土地区画整理事業によるかさ上げなど)について、復興庁の資料を元に集計した。2012年12月時点で約2万8100戸だった高台移転による住宅の計画戸数は、17年9月時点で約1万8300戸(12年比35%減)。岩手が約7500戸(同26%減)、宮城が約9千戸(同42%減)、福島が約1900戸(同26%減)だった。
■陸前高田、用地交渉も壁
 津波で市街地が壊滅した岩手県陸前高田市。今年1月、かさ上げされた市の中心部で宅地の引き渡しが始まった。総費用1400億円、造成面積は東京ドーム64個分の約300ヘクタール。被災地最大となる住まいの再建事業はようやく出口に差し掛かった。だが、かさ上げした新たな宅地はいま、空き地が目立つ。市が行った最新の意向調査では、いまだ利用予定がない宅地は6割。長い歳月を要したことで、完成を待ちきれない人たちは別の地に住まいを求めた。上部徳七さん(88)は震災から5年後、内陸部に土地を購入して自宅を再建した。妻(86)とみなし仮設のアパートで暮らしていたが、かさ上げ部の宅地の引き渡しは2018年度の後半と伝えられた。「死ぬ前に一刻も早く家を建てたかった」と振り返る。復興事業に時間がかかったのはなぜか。市は山を削って高台移転を進めたほか、津波にのまれた旧市街地を10メートル前後かさ上げすることを決め、住民の私有地に宅地や道路を再整備する区画整理事業を活用した。大がかりな事業に最初から壁が立ちはだかる。まずは用地だ。地権者約2200人と交渉するため、北海道から長崎の離島まで足を運んだ。工事が始まってからも復興工事の集中や東京五輪関連の建設需要で資材や人手が不足した。時間が経つにつれ、かさ上げ同様、高台での住宅再建を望む被災者も減少。計画を見直し、区画数を縮小していった。結局、全体の事業認可は震災から3年後。すべての宅地ができるのは、計画から2年遅れの20年度の見通しだ。戸羽太市長は「5年ぐらいのスパンなら待ってくれる住民もいた。スピード感を持ってやらないと人の気持ちが変わって外に出て行ってしまう」と話す。
■「以前と同規模、非現実的」 女川、駅前に市街地集約
 被災地で人口流出が続く中、その現実を踏まえて計画を進める自治体もある。宮城県女川町。建物全体の8割以上が被害に遭い、人口は約6割に減少した。「震災の被害は人口減を加速させる」。そう考えた町は、地元企業と連携し、公共施設や市街地をJR女川駅周辺に集約。住宅約1420戸(12年12月)の計画を、昨年9月までに760戸に修正した。新たに造った交流センターの面積は被災した公民館の約7割にとどめた。「被災前と同規模の街を造るのは現実的ではない」と町の担当者は説明する。
■将来の被災想定、復興にも備え 次の街の姿、住民と共有
 南海トラフ地震の被害が想定される地域では、東日本大震災の教訓を踏まえた対策が始まっている。行政が住民とともに被災後の復興を考える「復興事前準備(事前復興)」だ。和歌山県は2月、「復興計画事前策定の手引き」をまとめた。東日本大震災では復興計画策定まで9カ月、そこから住民の合意を得て事業認可まで2年半という事例があった。時間がかかれば人口の流出を招くため、手引きは、街を高台で再建するのか、防潮堤を強化し、かさ上げして再建するのか、といった災害後の街の姿を、普段から行政と住民が共有することが重要と指摘。市町村には復興事業で使う用地に関し、地権者や境界の把握、埋蔵文化財の発掘調査などを済ませておくよう求めている。県の担当者は「被災から1年以内の事業着手も不可能ではない。住民参加型で市町村ごとに復興計画を作りたい」と話す。
■<視点>人口減前提の区画整理を
 土地区画整理事業で造ったまちに空き地が生まれることは懸念されていた。もともと高度経済成長期に都市部で頻繁に使われた手法だ。社会全体の人口が増えるため、宅地や公共用地の再整備に時間がかかっても、土地の利用が進むことを前提にしている。東北の多くは震災前から人口減と高齢化に悩む過疎のまちだった。震災で人口流出は加速し、時間がかかるかさ上げ工事での再建を待てない高齢者は多かった。人口増を前提とした区画整理は手法としてそぐわなかったが、当時はこれほど大規模なかさ上げと土地の造成ができる制度は、区画整理以外に用意されていなかった。人口減の時代、このままでは次の災害でも、同じような空き地を生み出すことになりかねない。東日本大震災の事例を検証し、より短期間で宅地や公共用地を造成できる制度のあり方を考えるべきだ。

*6-1-2:https://www.iwate-np.co.jp/article/2018/1/16/1642 (岩手日報 2018/1/16) 津波高さ示す看板撤去へ 陸前高田のガソリンスタンド
 東日本大震災で陸前高田市を襲った巨大津波の高さを示す同市高田町のガソリンスタンドの看板が、夏までに撤去される見通しになった。周辺の道路や土地がかさ上げされてスタンドが移転するためで、運営会社は津波の恐ろしさを伝える貴重な資料として市に保存を働き掛ける考えだ。スタンドは海岸から約500メートルにある「オカモトセルフ陸前高田」。津波で事務所は流失したが、2012年に同じ場所で営
*9-2業を再開した。看板は一部がへこんだり、はがれたりしたため補強工事を施し、津波到達地点を示す矢印と「津波水位15・1M」の文字を記した。スタンドは今年7月ごろ市内の別の場所に移転する予定。看板の移設も検討しているが、市などによると、屋外広告の面積を規制する県条例に抵触するため困難という。運営会社の担当者は「被害の大きさを感じられる看板。何とかして保存したい」と話している。

*6-1-3:https://www.nikkei.com/article/DGXNASFK05015_V00C11A4000000/ (日経新聞 2011/4/5) 高台の病院を襲った17m超の津波、宮城県女川町
 岩手県大船渡市から宮城県石巻市にかけて三陸沿岸の建物の被害を見て回った。なかでも、津波の破壊力という点で強く印象に残ったのが、宮城県女川(おながわ)町だ。女川町は石巻市の東側にある港町。県外の人にとっては、「女川原子力発電所のある町」といったほうが分かりやすいかもしれない(発電所の敷地は女川町と石巻市にまたがっている)。同原発は2011年3月11日の震災発生時に停止し、今のところ放射線漏れなどの被害は報告されていない。それもあって、一般メディアで女川町の津波被害に関する情報は少ない。しかし、建築・土木関係者は、この町で起きたことを知っておくべきだろう。下の写真を見てもらいたい。女川港を東に望む女川町立病院の駐車場付近から見た、女川町の街並みと病院の建物だ。谷状の町が津波でほぼ壊滅してしまっていることに驚かされる。それにも増して驚かされるのが、高台の上に建つ病院の1階部分が津波で激しく損傷していることだ。

*6-2-1:http://www.kahoku.co.jp/tohokunews/201801/20180121_13016.html (河北新報 2018年1月21日) 気仙沼・大谷海岸、復活へ一歩 防潮堤工事始まる 21年度には海水浴場再開へ
 東日本大震災で被災した宮城県気仙沼市本吉町の大谷海岸地区で、宮城県が海抜9.8メートルの防潮堤を整備し、気仙沼市が背後地に「道の駅」をつくる復旧工事が20日、始まった。砂浜が失われるとして、県が当初計画した防潮堤は住民が反対し、見直しを実現させた。位置を内陸に移し、国道との「兼用堤」とする工事は2020年度に完了し、21年度には海水浴場が再開する。防潮堤(長さ約680メートル)は見た目の高さが6~7メートル。国道の約980メートル区間を9.8メートルまでかさ上げして防潮堤の役目も持たせる。海側は緩やかな傾斜で階段を付け、海水浴客が休憩できるようにする。事業費は約55億円を見込む。市は背後地約4.0ヘクタールを防潮堤と同じ高さにかさ上げし、道の駅「大谷海岸」を復旧させる。事業費は25億円で20年度内の完成を目指す。県は当初、砂浜に防潮堤を築く計画を立てたが、住民が強く反発。地元の街づくり団体が建設位置を内陸に移し、国道との兼用堤とする対案を市に提出し、県が見直した。今回の工事で震災前と同じ約2.8ヘクタールの砂浜が確保される。現地であった着工式には県、市の関係者ら約90人が出席。くわ入れなどで工事の安全を祈った。山田義輝副知事は「砂浜を確保するために地域が一体となり、希望がある計画ができた」とあいさつ。菅原茂市長は「海水浴場と道の駅の復活、国道からの景観の確保を維持することができた」と強調した。大谷海岸の大谷海水浴場は環境省の「快水浴場百選」にも選ばれ、震災前の10年は約6万5000人が訪れた。ピーク時の1975年には約43万5000人でにぎわった。大谷地区振興会連絡協議会の鈴木治雄会長は「多くの行楽客でにぎわう、最高の海水浴場になるだろう」と歓迎。大谷里海(まち)づくり検討委員会の芳賀孝司副会長は「かつての大谷のにぎわいを取り戻す」と話した。

*6-2-2:https://www.nikkei.com/article/DGXNZO74004420Z00C14A7X93000/ (日経新聞 2014/7/12、日経産業新聞 2014年7月10日付) 巨大防潮堤、被災地で反対運動 議論に住民不在
 宮城県気仙沼市にある小泉海岸は白砂青松の砂浜で、環境省の「快水浴場百選」にも選ばれた浜辺である。ここに高さ14.7メートルと日本一の巨大防潮堤が計画され、物議をかもしている。底辺は90メートルにも及び、砂浜を覆いつくさんばかりだ。
■景観・生態系の破壊を疑問視
 小泉海岸は東日本大震災の津波で海岸線が200メートルも後退し、砂浜や松林が消失した。そこに事業費230億円の巨大防潮堤が計画された。「震災直後、高台移転とセットだと誤解して、防潮堤を受け入れざるを得ないと思った住民が多かった。今は防潮堤によって美しい海と暮らしが分断されるのが辛い」。地元の阿部正人氏らは巨大防潮堤に反対を訴えている。小泉海岸のように、被災地では巨大防潮堤に反対する住民運動が起きている。国は約1兆円を投じ、600カ所に総延長400キロメートルの防潮堤を整備する計画だ。しかし、高台移転で人が住まなくなる地域に巨額を投じて防潮堤を造ることや、景観や生態系が破壊されることを疑問視する声が高まり、建設を中止したり高さを下げたりする動きが広がっている。こうした中で国は6月4日に海岸法を15年ぶりに改正。海岸の防災・減災対策を検討する際に、住民や学識経験者が参加する「協議会」を都道府県が設置できるという新制度を打ち出した。これまで国や都道府県が決めていた防災・減災の方法を、今後は市民や研究者などが参加して決定できる。国の海岸行政の大転換でもある。「既に決定した計画への住民参加を狙ったものではない」(国土交通省)が、防潮堤建設に影響を与えるのは間違いない。そもそも巨大防潮堤に各地で反対運動が起きているのは「計画作りに住民が参加できなかったことが一因」と九州大学の清野聡子准教授は指摘する。震災後、国は地震の規模と津波をシミュレーションし、湾ごとに津波の高さを弾き出した。この数字を受けて県が防潮堤の高さを決めた。しかし「波が来る方向や浜辺近くの地形、河川の有無で津波の高さは変わるのに、細かな条件を入れずに国はシミュレーションした。本来なら地元住民にも加わってもらい、津波の遡上の仕方など過去の知見を生かすべきだった」と清野准教授は指摘する。このように国の計算結果には幅があった。その過程を住民にほとんど公開しないまま、数字だけが一人歩きしてしまったのである。
■住民による津波の測量も可能に
 震災から3年たって、小泉海岸には砂浜や干潟が復活し、豊かな生態系が戻りつつある。未来に残す故郷の風景をもう一度住民同士で話し合ってもらいたいと、首都大学東京の横山勝英准教授は被災地図に防潮堤をCGで合成した画像を作成した。防潮堤ができた後の町の様子を実感してもらうためだ。そこには防潮堤が要塞のように町を囲む姿が浮かび上がる。横山准教授は防潮堤を低くして陸側にセットバックし、海側の砂浜や汽水域を保全する方が、防災上も環境上も効果があると代替案を提案する。清野准教授は海岸法の改正により住民参加の法定協議会ができることを評価し「予算も付き、住民による津波の測量も可能になるだろう」という。建設が始まった巨大防潮堤の見直しにも弾みが付きそうだ。

*6-3-1:https://mainichi.jp/articles/20180303/ddm/005/070/041000c (毎日新聞社説 2018.3.3) 福島第1原発の凍土遮水壁 費用に見合う対策なのか
 東京電力が、福島第1原発で土壌を凍らせ地下水の流入を防ぐ「凍土遮水壁」の効果を初めて試算した。汚染水の発生削減効果は1日約95トンで、効果は限定的だとみられる。政府と東電は、凍土壁を汚染水対策の切り札と位置付け、国費約345億円が投入された。凍結の維持にも毎年十数億円かかる。費用に見合った効果が出ているのか。政府には、しっかりと検証し、今後の汚染水対策に生かす責務がある。凍土壁は1~4号機の建屋の周囲(全長約1・5キロ)に約1500本の凍結管を地下30メートルまで打ち込み、冷却液を循環させて造る。2017年11月に凍結作業をほぼ終えた。東電の発表によれば、雨水や地下水に起因する汚染水の発生量は、凍結後の3カ月間平均で1日約110トンだった。凍結前の15年冬に比べると約380トン減少していた。東電は、地下水をくみ上げる井戸を設置したり、雨水の浸透を防ぐために敷地を舗装したりする対策も同時に実施している。380トン削減はこうした対策を合わせた結果で、凍土壁による削減効果は、あくまでもその一部に過ぎない。それでも東電は、凍土壁などの成果で「建屋に地下水を近づけない水位管理システムが構築された」という。認識が甘くはないか。今回、汚染水の発生量を比較したのは降水量が少ない冬場だ。台風の接近が相次いだ昨秋には、降雨で汚染水の発生量が急増した。より長期間の評価が欠かせない。建屋の東側にはケーブルや配管を通すトンネルがある。そこには凍結管が入っておらず、凍土壁で地下水を完全に遮断することはできない。現状では、汚染水の発生がいつ止まるのか、分からないままだ。汚染水は「多核種除去装置」で浄化するが、放射性物質の一種のトリチウムだけは除去できない。浄化後の処理水は原発敷地内のタンクに貯蔵されており、20年度までしかタンクの増設計画は示されていない。原子力規制委員会は、国の基準以下に薄めて海に放出する必要があるとの立場だが、漁業関係者などの間では風評被害への懸念が根強い。処理水をどう処分するのかのめどが立たない限り、汚染水対策はいつ行き詰まってもおかしくない。

*6-3-2:http://qbiz.jp/article/129830/1/ (西日本新聞 2018年3月15日) 玄海再稼働で再び町に特需 「原発あるから」依存なお 廃炉時代の自立模索も
 6年余り全基停止していた九州電力玄海原発(佐賀県玄海町)の3号機が23日にも再稼働する。貧しい農漁村だった玄海町に原発建設計画が浮上したのは半世紀ほど前。以来、町は原発の受け入れと引き換えに経済的恩恵を受けてきた。東京電力福島第1原発事故を経てもなお、原発への依存は続く。「廃炉の時代」をにらみ、自立の道を探る動きも出ている。玄海原発の敷地に、作業員を乗せた大型バスが次々と乗り入れる。正門から数百メートル離れた場所にはショベルカーなどの重機が並び、新たな安全対策で手狭になった敷地を拡大する造成工事が急ピッチで進む。福島の事故から約9カ月後の2011年12月、玄海原発は全4基が停止した。大きな打撃を受けた町の経済は今、「再稼働特需」で息を吹き返しつつある。原発から南東へ約1キロ。溝上孝利さん(59)が営む民宿「要太郎」も原発停止後、宿泊客がぱたりと途絶えた。再び客が戻り始めたのは、再稼働に向けた安全対策が始まった13年ごろから。客室稼働率は停止以前より3割ほど増えた。この間、溝上さんは原発関連以外の収入を増やそうと、町のふるさと納税の返礼品となる海産物を販売したり、高校生のスポーツ合宿誘致に力を入れたりしてきた。「豊かな自然や食を生かして暮らしていけるよう、変えんといかん」。一方、原発では今後も新たなテロ対策施設の建設が控える。いずれ定期検査も行われ、作業員らでにぎわう。「やっぱり原発があるから町は大丈夫だ」。町民から、そんな声も漏れる。
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 原発の稼働と町の財政は直結する。18年度一般会計予算案の歳入は、国の交付金など原発関連が6割。原発停止に伴う税収減で17年度、23年ぶりに地方交付税(普通交付税)を受け取る「交付団体」になったが、「再稼働すれば税収が回復し、19年度は不交付団体に戻る」(岸本英雄町長)。町議会は昨年9月の選挙で、原発推進派が全議席を占めた。年内にも改定される国のエネルギー基本計画に、原発の新増設を明記するよう求める意見書案を19日の本会議で可決する。「意見書は原発立地町の責任だ」と町議会の脇山伸太郎総務文教委員長。原発に世論の厳しい視線が注がれる中、増設にこだわる背景には「税収減につながる1号機の廃炉決定がある」とみる町民もいる。「原発がある町から、原発“も”ある町へ」。岸本町長が唱えてきたキャッチフレーズだ。実際には町も町議会も、原発に依存する姿勢を変えていない。
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 町民の受け止め方は一様ではない。福島の事故で、原子力災害への不安は以前より高まっている。町の人口は1955年に9720人だったが、今年2月現在、5717人に減った。原発の恩恵を受けつつ、過疎化に歯止めはかからない。町とは対照的に、自立を模索する動きもある。農家や商業関係者が16年、町おこしチーム「Genkai Hot Runner(GHR)」を結成した。「若い人が減り、このままでは町が寂れる」。代表の世戸耕平さん(38)は危機感をあらわにする。目を付けたのはイチゴやハウスミカンなどの農産品だ。原発補助金を活用し、佐賀県内有数の産地になった。隣接する唐津市の飲料メーカーと共同でイチゴやミカンを使ったサイダーを商品化し、年間2千本を出荷。福岡市内にアンテナショップの開業も目指す。「原発があったから産地になれた」。GHRメンバーでイチゴ農家の渡辺高広さん(54)は言う。「でも、原発の増設は現実的には無理。地域が自立して生きていけるようにしなければ」

*6-3-3:http://qbiz.jp/article/130026/1/ (西日本新聞 2018年3月17日) 【玄海再稼働】原発まで130キロ阿蘇火山リスクは? 九電→破局的噴火の予兆わかる 専門家→データに限界、予測困難 安全性の見方定まらず
 原発に対する火山の危険性が注目されている。広島高裁は昨年12月、熊本県の阿蘇カルデラの噴火リスクを理由に四国電力伊方原発3号機(愛媛県伊方町)の運転差し止めを決定。群馬県の草津白根山や宮崎、鹿児島県境の霧島連山・新燃岳(しんもえだけ)など各地の火山で噴火も相次ぐ。再稼働が間近に迫る九州電力玄海原発3号機(佐賀県玄海町)と阿蘇カルデラの距離は、伊方原発とほぼ同じ約130キロ。安全性に問題はないのか。噴火の想定が難しいこともあり、見方は分かれる。原子力規制委員会は火山対策指針として「火山影響評価ガイド」を策定。原発から160キロ以内の火山を対象に、安全性確認や対応策を電力会社に求めている。九電は玄海原発に関し、阿蘇カルデラや雲仙岳、九重山など17火山を「将来活動の可能性がある」と判断。その上で、過去の噴火履歴や地質調査を根拠に、いずれも原発が稼働している今後数十年の間に火砕流が発生しても原発敷地内には達しないと結論づけた。火山灰が到達する可能性はあるが、降灰時も非常用発電機が機能を維持できるように昨年11月、吸気口にフィルターを設けた。広島高裁が指摘した「破局的噴火」のリスクについては、九州で過去に破局的噴火を起こした五つのカルデラを調査。約9万年前に阿蘇カルデラで発生した破局的噴火では山口県付近まで火砕流が到達したとされるが、活動周期や地下のマグマに関する文献から「破局的噴火の直前の状態ではない」とする。大規模噴火を起こすマグマの動きは地殻変動や地震を引き起こすことから「破局的噴火の予兆は捉えられる」と九電の瓜生道明社長は説明する。
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 一方、火山の専門家は噴火予測の難しさを指摘。東京大地震研究所の中田節也教授は噴火履歴に関するデータは限られており「巨大噴火の想定には限界がある」と語る。火山影響評価ガイドについては「立地選定の情報にするなら分かるが、既存の原発の安全性審査に用いるのは違和感がある」と疑問を呈す。熊本県阿蘇市にある京都大火山研究センターの大倉敬宏教授は、阿蘇カルデラで巨大噴火が起こる可能性は当面は低いとの認識を示しつつ「観測データから噴火の前兆はある程度捉えられるが、規模や時期まで予測するのは難しい」と話す。九電は「できるだけ多角的に捉えることが重要」とモニタリングを強化する方針だ。ただ、破局的噴火は九州全域に大被害をもたらすような規模。両教授とも「原発だけの問題ではなくなる。噴火規模をどこまで想定するか国民的な議論も必要」とする。

*6-3-4:http://qbiz.jp/article/129814/1/ (西日本新聞 2018年3月15日) インドネシアで「地産地消エネ」 九電工が実証開始 送電手段ない離島で活用
 九電工(福岡市)がインドネシアのスンバ島で取り組む、太陽光発電と蓄電池を組み合わせて電力を安定供給する「エネルギーマネジメントシステム(EMS)」の実証事業が始まった。基幹送電網の整備が進んでいない離島で、再生可能エネルギーを活用した“地産地消”の電力供給を図るもので、他地域にも広がるか注目を集める。スンバ島は首都ジャカルタから東に約1400キロに位置。面積は九州の約3分の1、人口は約50万人。九電工によると、近年は観光地として注目されており、電力需要は増加傾向にあるという。島内の電力は主にディーゼル発電機を利用しており、二酸化炭素(CO2)の排出や燃料費が課題。インドネシア政府は島を再エネ導入のモデル地域と位置付けて出力500キロワットの太陽光発電所を整備したものの、出力が不安定で十分な電力供給ができていなかった。九電工のEMSは、双方向通信が可能な電力計で需給の状況を把握し、発電や蓄電を制御。雨天時や夜間など発電が止まる時間帯でも安定的に電力を供給できる。「蓄電池まで含めて全てのデータを集約して一体的に制御できるシステムは珍しい」と九電工国際事業部の松村敏明担当部長。昨年、特許を取得している。スンバ島の実証事業は、環境省が海外で展開する補助事業として実施。200キロワット時の電力を昼間の6時間供給する計画で、1月から本格運用が始まった。今のところ、安定した電力供給が続いているという。蓄電には鉛蓄電池を使用。日本で一般的なリチウム電池と比べコストが3分の1程度に抑えられる上、扱いやすい。寿命の短さが課題だったが、2系統の供給系統を交互に使って充放電の効率を上げることで、最大20年ほど使える計算になるという。通信技術を生かし、遠隔地で運用できる点も現地で高く評価されている。稼働状況は九電工の本社で監視。現地での作業は定期的な設備の清掃や点検程度で、維持費用も抑えられる。10年ほど運用すれば初期投資を回収できると見込む。有人の離島が数千に上るインドネシアは電力供給網の整備が遅れている。スンバ島の実証事業は低コストで電力の安定供給に道を開くと期待される。九電工は無電化地域を想定してEMSを開発した。松村部長は「世界中どこでも通用する技術」と語り、海外での受注拡大も見据える。

*6-3-5:http://mainichi.jp/articles/20180320/k00/00e/040/287000c (毎日新聞 2018年3月20日) 玄海原発:「司法は遅れている」申立人の元佐賀大学長
●運転差し止め認めず
 佐賀地裁が20日、九州電力玄海原発3、4号機(佐賀県玄海町)の運転差し止めを求める仮処分の申し立てを退けた。九電は予定通り23日に3号機を再稼働できることになり、司法に望みを託した申立人らは「裁判所に声が届かなかった」と肩を落とした。「原発がどれだけ時代遅れか司法は気づいてくれない」。市民団体「原発なくそう! 九州玄海訴訟」の関係者が「不当決定」と書かれた垂れ幕を掲げると、佐賀地裁(佐賀市)前に詰め掛けた申立人らからはため息が漏れた。弁護団の板井優弁護士は「不当決定というよりも、これは違法だ」と憤りを見せた。申立人の一人で福岡市東区の立川由美さん(47)は「いくらこういう決定が出ようと、私たちは絶対にあきらめない」と涙を流した。今回の決定をした裁判長は、別の市民団体による同様の仮処分の申し立てについても、昨年6月に却下している。申立人の一人で元佐賀大学長の長谷川照(あきら)さん(79)=佐賀市=は立ちはだかった司法の壁に「国内や世界の情勢を考えると司法は遅れている」と嘆いた。早稲田大理工学部と京都大の大学院で原子核理論を学んだ。戦後復興の中で核の平和利用が議論されていた時代。大学の友人たちは原子力関連の企業に就職していった。長谷川さんにも企業から声がかかったが「平和利用と言っても、人命より金を優先するようになる」と考え、大学で学び続ける道を選んだ。6年間務めた学長を2009年9月に退任した後の11年3月、東日本大震災で津波被害を伝える映像に衝撃を受けた。子供の時に千葉で体験した空襲の記憶を思い起こした。「空襲では自宅も燃えた。がれきが残った様子やぽつんと電車がある様子が重なった」。津波は東京電力福島第1原発事故を引き起こした。「やっぱり原発はやめておいた方がいい」と感じた。原発訴訟に関わる弁護士に声をかけられ、12年1月、「原発なくそう! 九州玄海訴訟」の結成に参加。玄海原発の操業差し止めを求める本訴訟の原告団長に就いた。司法で原発を止めるのは「相当運がよくないと難しい」と考えているが、まだ本訴は続いている。「福島の事故は収束していない。再生可能エネルギーに転換しないといけない」。そう語気を強めた。


PS(2018年3月15日追加):*7のように、麻生財務相が、①佐川氏を呼び捨てにしたことを批判しつつ ②組織のトップが責任を足らなければ示しがつかない とするいくつかの記事を見たが、メディアは、こんな自己矛盾にも気がつかないのだろうか。②のように、「財務相トップの麻生氏が責任をとるべき」と言うのなら、同じ組織の人について外部の人に話す時は、①のように、謙譲の意味で呼び捨てにするのが正しい日本語で、これは、毎日新聞の社長が従業員のことを第三者に話す時に、様やさんを付けないのと同じである。
 また、②のように、「トップが必ず責任を足らなければならないか」については、日本では戦国時代に高松城開城と当主の切腹をもって毛利家と羽柴秀吉が和睦して以降、トップが責任をとって部下を助けることを美談としてきた。しかし、現在の経営学では「権限なきところに責任なし」というのが常識で、権限を持って指示した人に責任があり、権限がなく指示する立場でもない人に責任はない。そのため、事実を明らかにしなければ責任の所在は明らかにならない筈だが、何でもいいからトップが頭を下げ、引責辞任すればよいという日本の習慣は、むしろ問題をうやむやにして改善に向かわせないのである。
 なお、私は麻生財務相と仲がいいわけではないが、この際、複式簿記による公会計制度を導入して国の資産や税収の使い方をガラス張りにするのは、民間企業の社長出身で腕力のありそうな麻生氏が適任ではないかと思っている次第だ。 

*7:https://mainichi.jp/articles/20180314/k00/00e/010/275000c?fm=mnm (毎日新聞 2018年3月14日) 森友文書改ざん:「佐川が…」責任転嫁に躍起 国会審議
 「森友学園」(大阪市)との国有地取引に関する決裁文書の改ざん問題で、財務省が「書き換え」を認めてから初めての国会審議が14日始まった。野党が欠席する中、政府・与党からは、理財局長だった佐川宣寿前国税庁長官に責任を押し付けるような発言が相次ぎ、識者からは「国民の理解は得られない」と批判の声が上がった。「(佐川氏の)答弁が誤解を受けることのないようにした。『そんたく』した話ではない」。14日午前の参院予算委員会。自民党の西田昌司氏から、財務省が文書を削除するなどした理由を問われた麻生太郎財務相は言い切った。佐川氏を呼び捨てにし、「書き換えは本省の利害で行われたもの。(政治家の)不当な圧力はなかった」と繰り返し、自身や安倍晋三首相らの関与がなかったと強調した。「書き換えは佐川氏が自分に不都合なことを直したこと。自分のためにやった」「(削除された内容は)公表しても問題ない文書。書き換えにより、かえって(首相の)ご夫人や総理が迷惑を受けた」。西田氏の質問にも、改ざんの責任を同省に求めようとする思惑がにじむ。西田氏の矛先は、学園の籠池泰典前理事長にも向けられた。補助金の不正受給による詐欺罪などに問われていることを強調。昨年3月の証人喚問で、事実と異なる証言をしたなどとして「まさに詐欺の語り口。(国有地売却問題は)詐欺で容疑を受けた人が首謀した事件だ」と断じた。安倍首相も、決裁文書から削られた妻昭恵氏に関する記述について「(記載された発言は)籠池さんが(近畿財務局に)語ったこと」などと述べ、「書き換え前の文書を見ても、私や妻が関わっていないということは明らか」と断言した。質疑を通じ、改ざんなどの責任を財務省や籠池氏にとどめようとする政府と与党の「連係プレー」を印象づけた。政治アナリストの伊藤惇夫さんは「政府が佐川氏や財務省理財局に責任を押し付けようとしているのは見え見えで、このままでは国民の理解を得られない」と批判。「与党側に『重要法案の審議が進まない』という声があるが、そもそも森友問題を1年間もうやむやにしてきたのは政府・与党だ。こういう事態に陥った以上、与党側が佐川氏や昭恵氏の国会招致に応じなければ議論は進まないだろう」と語った。


PS(2018年3月19日追加):*8のように、全自動編み機の島精機製作所の株価が、アジアの賃金上昇や省人化の流れで急騰したそうだが、これは、課題先進国の日本が課題を解決する製品・サービスを作って、20~30年後に他のアジア諸国で売れ始めた良い例だ。私は、全自動織機やプリント型自動染色機も日本国内に生産拠点を戻すことができ、しばらくすれば他国でも売れ始めると考えている。

*8:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180319&ng=DGKKZO28300750Z10C18A3ENI000 (日経新聞 2018年3月19日) 島精機 全自動編み機、中国で好調、ゴールドマン報告書追い風
 全自動編み機を手掛ける島精機製作所の株価が16日、急騰した。一時は前日比860円(13%)高の7620円をつけた。終値は10%高の7440円。日経平均株価が反落するなか、東証1部の値上がり率で4位に入った。ゴールドマン・サックス証券が15日、新規にリポートを出したのがきっかけだ。ゴールドマンは15日付で、島精機の投資判断を3段階で最上位の「買い」、目標株価を1万円として調査を始めた。担当アナリストの劉京元氏は「アジアの賃金上昇や省人化の流れを見ると、成長余地は大きい」と指摘する。すでに島精機をカバーする証券会社は6社。そのうち大和証券と岩井コスモ証券の2社が目標株価を算出し、いずれも7500円に設定する。ゴールドマンが高い目標株価を掲げたのを受けて、機関投資家や個人に買いが広がった。島精機はニットなどを全自動で編む機械を世界で唯一、開発する。値段は一般の編み機に比べて約4倍と高価だが、人件費の高騰する中国などで販売が伸びている。2018年3月期は連結売上高が前期比17%増の730億円、純利益は39%増の100億円を見込む。岩井コスモの大西等氏は「為替の円高はリスクだが、中国市場で利益率の高い製品が普及期に入ったのはプラスだ」と評価する。今期の予想PER(株価収益率)は27倍とミシン大手のJUKI(13倍)より高い。ただ、17年4~12月期の純利益は通期計画の9割に達し、業績の上振れ期待が強い。今後の成長戦略が明確になれば、株価は一段高となる可能性もある。


PS(2018年3月20日追加):*9-1のように、JR鹿児島中央駅西口地区再開発を巡り、鹿児島県が市道の拡幅に必要な測量調査を1年以上拒否し続けているとのことだが、新幹線の駅ができると通院圏や購買圏が沿線に広がるため、再開発するチャンスである。長崎市新大工町一帯の再開発は、*9-2のように、長崎玉屋の田中丸氏が中心になって市と協力し、「国内外の観光客が楽しめる」「地域の可能性を発揮する」などのコンセプトで21世紀型の街づくりが進んでいる。鹿児島市の場合は、郵便局も協力すれば広いエリアの再開発ができるため、京都駅などを参考に鹿児島の長所を出せばよいと思われる。さらに、新しいマンションには、*9-3のようなAIスピーカーを装備すれば、自宅療養や一人暮らしの高齢者の役にも立つだろう。

    
   *9-1より      *9-2より    西日本新聞2018.1.21
  鹿児島市のケース     長崎市のケース    福岡市のケース

*9-1:http://qbiz.jp/article/130192/1/ (西日本新聞 2018年3月21日) 進まぬ再開発事業 JR鹿児島中央駅西口 県が道路測量拒否 JR九州の計画に影響も
 鹿児島市のJR鹿児島中央駅西口地区再開発を巡り、土地を所有する鹿児島県が市道の拡幅に必要な測量調査を1年以上拒否し続けている。市は再開発に伴う道路整備は欠かせないとしているが、実現の見通しは立たない。既にビル建設計画を進めているJR九州は、事業進捗(しんちょく)に影響が出る恐れもあるとして、県の対応に気をもんでいる。西口地区には県が約1万平方メートル▽JR九州が8500平方メートル▽日本郵便(JP)が5700平方メートル▽市が700平方メートル−をそれぞれ所有。4者は2006年、11年の九州新幹線全線開通を見据え、計2万5千平方メートルの一体的な開発を目指して連絡会を発足した。09年にはコンベンション施設やホテルなど望まれる機能の基本規模を提示。概算工事費などの調査報告書をまとめたが、周辺で同種施設の民間開発が相次いだため協議は停滞し、14年8月に個別活用を含め幅広く検討する方針に転換した。JR九州は16年8月、所有地に商業ビルやマンションを建設する計画を発表。市も17年1月の連絡会で、再開発区域内で市道拡幅などの道路整備を提案した。拡幅時には所有地の一部提供が想定され、JRとJPは受け入れたものの、県だけは「現有地を確保したい」として応じず、連絡会も以降開かれていない。県の姿勢にJR九州幹部は「困った」と戸惑う。既に敷地内の建物の解体を始めており「県があと半年テーブルにつかなければ、着工や開業が計画より遅れるかもしれない」と危ぶむ。
     ▽△
 県は3月県議会で、所有地について「県民にとって最も望ましい利活用方法を検討中」と繰り返し、方針を示す時期も明らかにしなかった。県議の一人は「県民の貴重な財産。何年も『検討しています』だけでは納得できない」と批判する。表向きは活用方針を検討中とする県だが、腹案があるとの見方は強い。老朽化した県立総合体育館の建て替え地だ。県は有識者の検討委員会を設置し、市中心部を想定したアリーナ的施設整備が望ましいとする提言を2月に受けた。西口の土地は提言に符合する。新体育館構想は県から非公式に連絡会側に伝えられているという。県の構想を進めるには県所有地だけでは手狭。残り3者の協力が不可欠だが、JR九州幹部は「50年に一度の開発で計画を変えるつもりはない」と話し、JPも取材に「(現在の施設を)今後も活用する方針だ」と答えた。再開発の行方は見通せない。
:http://qbiz.jp/article/130201/1/ (西日本新聞 2018年3月21日) 九州の都市再開発、新大工町再開発図を公表 市長「観光客楽しめるよう」 組合「可能性を発揮したい」
 長崎市新大工町一帯の再開発を進める「新大工町地区市街地再開発組合」(田中丸弘子理事長)が20日、田上富久市長に事業の進捗(しんちょく)状況を報告、2021年度に完成予定の再開発ビルのイメージ図を示した。田上市長は「国内外の観光客が楽しめるようにしてほしい」と要望、田中丸氏は「地域の可能性を発揮したい」と述べた。組合によると、地元商店街の雰囲気も大切に、長崎の食文化体験ゾーンも手掛ける考えという。一帯は長崎玉屋の閉店に伴って再開発に向けた動きが始まり、14年1月に準備組合が発足。4年がかりで協議を進め、今年2月の本組合設置にこぎ着けた。組合の事業計画によると、旧長崎玉屋ビルがある北街区3800平方メートルに26階建て複合ビルを建設。地下1階に駐車場、1〜3階に商業施設を配し、4〜26階は分譲マンション大手の大京グループ(東京)が購入して販売する。国道34号を挟む南街区1300平方メートルは12階建て駐車場ビルを建設し、11〜12階はオフィスとする。総事業費は163億円。再開発を契機に市は二つの再開発ビルをつなぐ歩道橋を掛け替える。国と県は長崎電気軌道・新大工町停留所の西側に横断歩道を設けてスロープでつなぎ、車いすでも乗降可能なバリアフリー構造とする方針。

*9-3:http://qbiz.jp/article/130111/1/ (西日本新聞 2018年3月20日) 九電がAIスピーカー参入 家電操作や節電アドバイス
 九州電力は、人工知能(AI)搭載の対話型スピーカーを使った新サービスを今夏から始める。さまざまなものをインターネットでつなぐIoT技術を生かし、家電の操作や節電アドバイス、防犯などができるようにする。AIスピーカー製造の技術を持つ企業と協力して独自の端末を開発。利用者の話し掛けに応じてサービスを提供する。蓄積したデータを端末が分析し、各家庭に合わせた電化製品の自動制御もできるという。19日には、スピーカーがアニメキャラクターの音声で応答するサービスを導入すると発表。第1弾として「妖怪ウォッチ」のウィスパーを起用する。利用者の指示に「了解でうぃっす!」などと答える。24、25日に東京であるアニメイベントで披露し、今後、キャラの追加を検討するという。電力の小売り全面自由化で競争が激化する中、利便性の高いサービス提供で顧客獲得につなげる。毎月利用料を徴収する料金体系を予定しており、新たな収益源をつくる狙いもある。料金や開始時期は今後詰める。無料モニターも募集する予定。

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2018.2.19~25 閑話休題 ― 平昌オリンピックの開会式とフィギュアスケート(2018年2月27日、3月5日に追加あり)
(1)開会式について

 




                 開会式とアトラクション

 私も平昌オリンピックの開会式を見たが、*1-1、*1-2に書かれているとおり、朝鮮半島の歴史が過去から未来までの深いスペクタクルになって、韓国文化の特徴が出ており、音楽や衣装のセンスも良かった。その開会式の式典総監督は、俳優で演出家の宋承桓(ソン・スンファン)さんだったそうだ。

 開会式で韓国の国宝が紹介され、「チャング」を持った踊りがあり、客席全体の色とりどりのLED照明が入場行進する選手たちのユニフォームを鮮やかに照らし出し、地元の77歳の男性歌手が朝鮮の服装をして蕎麦畑で朝鮮民謡の「アリラン」を歌い上げたのもよかった。

 また、“韓国のビートルズ”と呼ばれるロックグループのボーカル、チョン・イングォンさん(63歳)、イ・ウンミさん(51歳)ほか2名によってジョン・レノンの曲「Imagine(イマジン)」も歌われた。チョン・イングォンさんは韓国の若者からは旬を過ぎた歌手などと揶揄されたようだが、「Imagine」はビートルズのジョン・レノンの妻、オノ・ヨーコ(日本人)の詩集から引用され、ベトナム戦争の最中である1971年に平和を願って発表され、世界で大ヒットしたため、この歌声は特に50代以上の世界の人々の心に届いたと思われる。

 最後に、平昌がある江原道に住む1000人がろうそくの光を手に入場し、人々が動くと光はだんだんと2羽のハトになり、さらに一つになって「平和のハト」を作り上げると、飛び立つように光が舞い、それに1218台ドローンの光が加わって、空に五輪を描いたのは圧巻だった。

(2)開会式と韓国の政治的意図
 平昌オリンピックに先立って、*1-4のように、北朝鮮の楽団が江陵で公演し、韓国でも知られる北朝鮮歌謡や韓国の歌謡を歌った。また、開会式では、*1-3のように、韓国と北朝鮮は統一旗を掲げて「コリア」として入場し、トーマス・バッハIOC会長は、「私たちを分断しようとする勢力よりも、私たちの方が強い」と宣言した。

 日本は唯一の被爆国でありながら、日本政府は「アメリカの核の傘で護られているため、核兵器禁止条約に署名しない」という態度をとっており、メディアは総ぐるみで、拉致問題から北朝鮮の核・ミサイル開発に北朝鮮批判の対象を移動した。しかし、これは、太平洋戦争中に行われた「鬼畜米英」という批判が思い出されて疑問が多く、日本政府は誰でも納得できる理路整然とした説明を要する。

 なお、*1-5のように、北朝鮮の金正恩委員長は、平昌オリンピックを機に韓国を訪問した最高人民会議の金永南常任委員長や金与正党第1副部長ら高官代表団から文大統領との会談や米国の動向について詳細な報告を受け、韓国側の対応に謝意を示して今後の南北関係改善の方向を具体的に提示したそうだ。

 私は、そろそろ韓国主導で南北統一した方がよいと思うが、統一後の朝鮮半島は、人権を大切にする民主主義国家として理想憲法を持ち、誰でも安心して行ける国になって欲しいと考える。

(3)フィギュアスケート
1)男子(ショート・フリー)


         (画像の出所:日経新聞・朝日新聞・その他)
 これは殆ど見たが、*2-1のように、ショートプログラム1位の羽生結弦選手がフリーでも高得点を挙げて金メダルを獲得し、前回のソチに続く五輪2連覇を果たした。羽生選手は、2017年11月に右足関節外側靱帯を損傷した後だったが、4回転ジャンプを相次ぎ成功させるなどして合計317.85点を獲得した。また、日本の宇野昌磨選手も合計306.90点で銀メダルだった。

 羽生選手のフリーは、陰陽師に似た衣装で日本的な楽曲に合わせて切れの良いダンスに高度な技が織り込まれていたため、(ちょっとよろけたところさえなければ)完璧・2枚目であり、世界の人に新鮮さを感じさせたと思う。羽生選手はまだ23歳であるため、上手で魅力的な女性スケーターを見つけて能の要素を入れ、次は、アイスダンスで勝負したらどうだろうか。

 スペインのハビエル・フェルナンデスの演技やジャンプは失敗がなく安心して見ていられたが、*2-2のように、銅メダルだった。フェルナンデス選手は、ショートではチャップリン、フリーではドン・キホーテを演じ、どちらも面白くはあったが、3枚目の演技に徹していた感がある。ヨーロッパでフェルナンデスの容姿は、3枚目を演じなければオリンピックの切符を得られなかったのかも知れないが、スペインの選手であるため、衣装等のアドバイスを受け、フラメンコの曲や動作を入れると、ドン・キホーテよりも世界には受けたと思われる。

2)解説者の解説内容について
 平昌オリンピックフィギュアの解説者やコメンテーターは、*2-3のように、席を巡って椅子取り合戦状態だったそうだが、「①初めてのオリンピックで緊張しなかったか」「②高得点の選手の後でプレッシャーを感じなかったか」等の弱気のススメが多すぎて聞く方も不快だった。

 尋ねられた選手は、強気なことを言うと生意気だと言われかねないため、適当に弱気な返事をするしかないが、それを続けていると本当にそんな気になってくるものだ。しかし、①については、多くの観衆に注目されるのが好きだからエンターテイナーになっているのであり、それも素質の一つだ。また、②については、特定の誰かの点数を見てプレッシャーを感じているようでは決して1番にはなれず、自分の技量と冷静に相談してひたすら自分の得点を上げるしか勝つ方法はない。欧米諸国では、この原則どおり、コーチは選手を励まし、笑顔で自信を持って演技できるように持って行くのである。

 そのため、日本人選手が、“謙遜の美徳”や“怪我からの発奮復帰”のストーリーを押し付けられながら外国人と勝負しなければならないのは、文化的矛盾の中に置かれる。何故なら、自信なげに、しかめ面で演技すれば、エンターテイナーとしてはマイナス評価にしかならないからだ。

3)アイスダンス

 
        (画像の出所:日経新聞・朝日新聞・YAHOO・その他)

 アイスダンスは、*3のように、上の画像では左から、カナダのバーチュー・モイヤー組が合計206・07点で金メダル、フランスのパパダキス・シゼロン組が合計205・28点で銀メダル、米国のマイア・アレックス・シブタニ兄弟が合計192・59点で銅メダルで、日本の村元・リード組(右の2つ)は15位だった。

 カナダのバーチュー・モイヤー組は技術も表現も完璧で、女性コスチュームのデザインも良かったが、女性コスチュームの明度はもう少し明るくし、男女の明度差と色調の調和を考慮した方が、2人揃って見た時にさらによいと思われた。また、フランスのパパダキス・シゼロン組の女性コスチュームのデザインは動いた時に素敵で、ベートーベンの「月光」の曲に乗って本当に優雅に氷の上をすべった。米国のマイア・アレックス・シブタニ兄弟は、技術はよかったが、コスチュームは明度差や色調をさらに工夫した方がよい。日本の村元・リード組は15位だったが、桜のコスチュームへの早変わりが日本的で面白かった。

 なお、このように激しい動きのある時のコスチュームの色やデザインは、バレエやソーシャルダンスなどの踊りの専門家が得意であるため、アドバイスを受ければよいと思われた。

4)女子(ショート) ← リケジョの視点から  (敬称略)
                           

 ザギトワ   メドベージェワ    宮原    坂本    長洲  トゥルシンバエワ
          (画像の出所:朝日新聞・YAHOO・スポーツ・その他)

 いろいろと忙しいのに、2月21日に行われた女子シングルを見ていたわけだが、*4のように、確かに百花繚乱だった。そのうち1位のザギトワ(ロシア、総得点:82.92)と2位のメドベージェワ(ロシア、総得点:81.61)は、全くミスのない優雅な滑りを見せ、バレエの基礎を身に着けさせたロシアの英才教育の成果が見てとれた。

 もちろん、3位のオズモンド(カナダ、総得点:78.87)や6位のコストナー(イタリア、総得点:73.15)も、日本の宮原(4位、総得点:75.94)、坂本(5位、総得点:73.18)とともに魅力的な滑りだったが、ジャンプでよろけた人もいた。9位の長洲(総得点:66.93)はアメリカから出ているが日系人で、このような体操系の種目は、小柄な人の方が重力や遠心力に逆らう力が小さくてすむため、有利なのかもしれない。

 15位のトゥルシンバエワ(カザフスタン、総得点:57.95)、28位のオストランド(スウェーデン、総得点:49.14) は、ビゼーの「カルメン」の中の「ハバネラ」という曲を使い、それにあった素敵な衣装を着て演技をしたが、動きにスペイン風の情熱が感じられず普通になっていたため、曲にあっていなかった。

 今後は、本場をよく知り、それにあった姿をした人が、スペイン風・アラビア風などの動きをした方が魅力的でインパクトがあるだろう。そのため、評価には「芸術点」も加え、アドバイザーや審査員に舞踏の専門家も加えた方がよいと考える。

5)女子フリー ← 観客であるリケジョの視点から  (敬称略)

 
      (画像の出所:産経新聞・BIGLOBE・NHK・朝日新聞・その他)

 観客の私の目から見ると、女子フリーはメドベージェワとザギトワは同点ではなく、2~3点差でメドベージェワがザギトワより上で当然のように思えた。何故なら、トルストイの「アンナカレーニナ」の題材を使い、それに合った表現で優雅に舞い、コスチュームもメドベージェワの演技を引き立たせるものだったからだ。

 しかし、ザギトワは、*5のように、得点が1.1倍になる演技後半に7つのジャンプを跳ぶ戦略で、最初の3回転ルッツの失敗をカバーしてメドベージェワと同点にこぎつけ、ショートプログラムのリードで逃げ切って金メダルを獲得した。ザギトワはまだあどけなさが残っているため、私は、それに合ったコスチュームでチャイコフスキーの「くるみ割り人形」やシェイクスピアの「ロミオとジュリエット」などを演じた方が、芸術点があればそれが上がったと思う。

 この得点のからくりは、演技後半のジャンプは基礎点が1.1倍になるからで、今後は偏りを制限するそうだが、私はフリーの演技で制限するのは最小限にし、ボーナスを1.05倍などに減らして、ジャンプに偏った配点を改めるため芸術点を加えるのがよいと考える。

 日本の宮原も、プッチーニの「蝶々夫人」で演技し、ジャンプを決めて4位になったが、「蝶々夫人」なら彩やかな青ではなく、紫のグラデーションか黒のレースに和柄の布をあしらったコスチュームを着てどこかに蝶々を付け、初めは喜びから悲しみに、後は怒りで激しく舞って散った方が、芸術点があればそれが上がったと思われる。また、坂本も全力でやり切ったが、演技に物語が見えなかった。総合3位のオズモンド(カナダ)は、私が見損なってしまったので、早い機会の再放送を期待する。

 フィギュアスケートコーチの佐藤信夫氏は、「3回転の難しい連続ジャンプを跳ぶ構成は当たり前になり、女子でも4回転に挑戦していく時代になる」と言われているが、宮原は左股関節を疲労骨折し、メドベージェワは右足中足骨にヒビが入り、羽生も右足関節外側靭帯損傷になるなど、ベテラン選手でも深刻な怪我が堪えない。その理由は、体の構造ぎりぎりまで力の負荷をかけているため、何回も練習すると疲労骨折したり、足の甲の骨にヒビが入ったり、ちょっと氷の状況が異なると靭帯を損傷したりするからである。

 これは、いくら人間が練習を積んでも交通事故時に自動車に勝てるようにはならないのと同じ人体の構造上の問題であるため、安っぽい根性物語はやめ、観客がさして違いを感じないジャンプの回転数を増やすよりは芸術性も評価した方が、フィギュアスケートが内容豊かで安全なスポーツになると考える。

6)エキシビション

  

 
           (画像の出所:ハヒントンポスト・その他)

 2月25日に、*6のように、平昌冬季五輪フィギュアスケートのエキシビションがあり、競技とは異なる演技が行われた。私は、宮原・羽生・オズモンドなどの衣装や演技が好きだが、メドベージェワ・宇野・フェルナンデスなどは普段着風の衣装での健闘だった。ザギトワのトラの衣装は、私には、妖艶というよりも動物園から出てきた化け物のように見えた(マスコットになっている韓国のトラは白虎では?)。なお、北朝鮮のカップルも、「お会いできて嬉しいです」という音楽に合わせて頑張っていたと思う。
 
<開会式>
*1-1:http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2018/02/10/2018021000609.html (朝鮮日報日本語版 2018/2/10) 平昌五輪:開会式、海外メディアの反応は、CNN「開会式スペクタクル」、AP「韓国人の平和メッセージ」
 世界の主要メディアは9日に行われた平昌冬季五輪開会式を一斉にメーンニュースとして報道した。米CNNは同日、インターネット公式ページのメーン画面に、平昌五輪開幕に合わせて「試合時間になった!」というヘッドラインを出し、大きな花火の写真を掲載した。CNNはニュースで開会式の様子を生中継し、「スペクタクル(壮観だ)」と評価した。ニューヨーク・タイムズは開会式の記事で「寒いがオリンピック精神は高邁(こうまい)だ」という表現を使った。そして、南北合同選手団が韓半島旗(統一旗)を掲げて共同入場したのは、北朝鮮の核による恐怖を和らげると表現した。AP通信は「韓国が北朝鮮と協力したいという願いから、南北合同でテコンドーの演武を行い、5人の子どもたちが繰り広げるパフォーマンスで『韓国人が心に思い描いていた平和をこの子どもたちが見つけた』というメッセージを伝えた」と報じた。開会式の内容に関する関心も高かった。米ABCニュースとIT専門メディアWIREDは開会式の中でも光のショーを繰り広げるため使用されたドローンを集中的に取り上げた。WIREDは「開会式にはドローン1218台が使われた。これは昨年のスーパーボウルでの公演で使われたドローンの4倍だ」と伝えた。CNNは、生きているハトの代わりに風船のハトを飛ばしたことについて賢明な決定だと評価した。英BBCは1980年冬季五輪金メダリストのロビン・カズンズ氏が開会式を評価した文で、「すべてのパフォーマンスが細密で洗練されていた。あわてず、気ぜわしくならなくて非常にすばらしかった」と評した。外信各社は華やかな開会式の様子を伝えると共に、北朝鮮の核が引き起こした確執にも焦点を当てた。ワシントン・ポストは、北朝鮮応援団が開会式前にメーンスタジアムで国旗を振る写真に「五輪開幕で全視線が北朝鮮に注がれた」という見出しを付け、「ペンス米副大統領と朝鮮の金永南(キム・ヨンナム)最高人民会議常任委員長は開会式の同じ貴賓席にいたが、直接顔を合わせることはなかった」と書いた。CNNの取材記者は「平昌五輪をめぐってはすべての人が幸せなわけではない。北朝鮮のミサイル発射や軍事的挑発行為のために韓半島(朝鮮半島)情勢は微妙な状況にあるが、金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長の実妹・金与正(キム・ヨジョン)氏が今日この場に来た」と伝えた。BBCは開会式が行われている間も、この日のレセプションでペンス副大統領が金永南氏と同じテーブルに就かなかったことを集中的に取り上げた。

*1-2:https://mainichi.jp/sportsspecial/articles/20180210/k00/00m/050/212000c?fm=mnm (毎日新聞 2018年2月9日) 開会式 韓国文化の独自性にこだわり
 平昌冬季五輪の開会式が9日午後8時から、平昌五輪スタジアムで行われた。競技は8日に始まっているが、10日から本格化する。山間部の平昌地区で雪上競技、沿岸部の江陵(カンヌン)地区では氷上競技があり、7競技で102種目を実施する。スピードスケートのマススタート(男子、女子)、スノーボードのビッグエア(同)などが新たに採用され、冬季五輪で初めて100種目を超えた。韓国での五輪開催は1988年ソウル五輪以来30年ぶりで、冬季五輪は初めてとなる。平昌は2010年、14年の冬季五輪にも立候補したが落選。3度目の立候補の末に11年の国際オリンピック委員会(IOC)総会で開催が決まった祝祭が、ようやく開幕した。大会のスローガンは「Passion.Connected.(ひとつになった情熱)」。全てが一つになった情熱が人々を結びつけるという願いが込められている。開会式は、式典総監督を務めた俳優で演出家の宋承桓(ソン・スンファン)さんにより構成された。宋承桓さんは韓国文化の独自性を示すことにこだわった。さまざまなアトラクションでは、5人の子どもが過去と未来を旅し、随所に統一を想起させる表現を交えながら、最後は平和へ向けた大きなメッセージを発信するというストーリーが描かれた。子どもを主役にしたのはソウル五輪の開会式を思い出したという。序盤は韓国の国宝など文化遺産が紹介され、続いて伝統の打楽器「チャング」などで宇宙をイメージ。観客に配布された3万5000個の小さな太鼓も演奏を盛り上げた。韓国国旗の入場、韓国国歌の演奏に続いて入場行進が始まった。92カ国・地域などの選手たちは民謡から最新のKポップまで幅広い韓国音楽に乗って登場。ソウル五輪のテーマ曲も流れた。客席全体にはLED照明を使って各国・地域の国名や国旗などが映し出され、選手らを色とりどりに照らした。選手入場後は地元の77歳の男性歌手が朝鮮民謡「アリラン」を歌い上げた。そして韓国の急激な経済成長や、IT産業に象徴される未来像が表現された。大会組織委員会の李熙範会長、IOCのバッハ会長のあいさつの後、韓国の文在寅大統領が開会宣言。続いてジョン・レノンの曲「イマジン」の歌が響き、平昌がある江原道(カンウォンド、日本の県にあたる)に住む1000人がろうそくの光を手に入場。人々が動くと光はだんだんと2羽のハトになり、さらに一つになって「平和のハト」を作り上げると、空に飛び立つように光が舞った。

*1-3:http://www.bbc.com/japanese/43007498 (BBC 2018年2月10日) 2018年平昌冬季五輪、開幕 「コリア」選手は合同行進
 第23回冬季オリンピック競技平昌(ピョンチャン)大会が9日、開幕した。午後8時からの開会式で、主催者・韓国は北朝鮮との連帯を示し、統一旗を掲げて「コリア」として入場した。北朝鮮による核・ミサイル開発で朝鮮半島情勢の緊張が続くなかでの五輪となった。北朝鮮のアイスホッケー女子、ファン・チュングム選手と韓国のボブスレー男子、元允宗(ウォン・ユンジョン)選手が、統一旗の旗手を務めた。国際オリンピック委員会(IOC)のトーマス・バッハ会長は、「私たちを分断しようとする勢力よりも私たちの方が強い」と宣言した。英国選手団の旗手はスケルトン女子のリジー・ヤーノルド選手が務めた。国家ぐるみのドーピング認定で出場禁止となったロシアから、個人として出場した選手169人は、五輪旗の下で入場した。屋根のない五輪スタジアムに集まった観客約3万5000人には、カイロ、毛布、温熱座布団、ポンチョ、帽子、手袋などが配られた。2時間に及ぶ式典の最中、気温は時に零下6度にまで下がった。北朝鮮の核・ミサイル開発をめぐる対立の中心にいる北朝鮮と米国の政府関係者が、会場の貴賓席で近くに座った。北朝鮮の最高指導者、金正恩・朝鮮労働党委員長の妹、金与正氏は、マイク・ペンス米副大統領の後ろの列に座っていた。文在寅(ムン・ジェイン)韓国大統領は会場で与正氏と握手した。さらに式典で、「この機会を使って、コリアの人々から歓迎と友好のメッセージをお伝えしたい。1988年のソウル夏季五輪は、冷戦の壁を壊し、東西和解の道筋を開いた。あの夏季五輪の開催から30年たって、平昌五輪は世界中の人の平和の希望と共に始まる」と述べた。「世界で唯一分断された民族、コリアの人間は、冬季五輪の主催を熱望していた。平和の追求はオリンピック精神を鏡のように映し出す」と大統領は、南北和平への思いを強調した。北朝鮮の代表選手22人は5種目に出場する。アイスホッケー女子は韓国と南北合同チーム「コリア」として参加する。4日にはスウェーデンとの練習試合で、1-3で敗れた。
●文化と色彩の式典
 開会式では、光る無人飛行機(ドローン)1218機が夜空に五輪を描き出すなど、印象的な場面が続いた。パフォーマンスに使用されたドローンの数として、ギネス記録になるという。
東洋の陰陽五行思想と五輪にちなんで五角形に造られた会場では、まず守護神とされる白虎が登場した。韓国の伝統的な太鼓の合奏に続き、韓国国旗が描き出されたり、韓国歌手によるジョン・レノンの「イマジン」演奏に続き巨大な平和のハトが出現したりした。各国選手団の入場では、2016年リオデジャネイロ五輪開会式に上半身裸で登場して話題となったトンガの旗手、ピタ・タウファトファ選手が、厳しい寒さにも関わらずまたしても上半身裸で旗を手に行進した。バーミューダ選手団は、バーミューダ・ショーツを履いてさっそうと歩いた。聖火リレーの最終ランナーは、フィギュアスケート女子で2010年バンクーバー五輪金メダル、2014年ソチ五輪銀メダルのスター選手、キム・ヨナさんだった。
●英選手団はメダル5つ目標
 大会は18日間続く。93の旗の下で選手2925人が15種目で102個の金メダルを目指して競い合う。エクアドル、エリトリア、コソボ、マレーシア、ナイジェリア、シンガポールの6カ国が今回、冬季五輪に初出場だ。英国代表チームでは58人が競技に参加する。スピードスケートやフリースタイルスキーなどでメダルが期待されている。英政府のスポーツ振興政策を統括する「UKスポーツ」は、少なくともメダル5個を目標にしている。スノーボードのケイティー・オーメロッドもメダルが期待されていたが、練習中に足首と手首を折る事故に見舞われ、欠場することになった。

*1-4:https://mainichi.jp/sportsspecial/articles/20180209/k00/00m/050/175000c (毎日新聞 2018年2月9日) 平昌五輪:北朝鮮楽団、江陵で公演 五輪前、政治性薄める
 公演では南北問題に関し政治性を極力排除する一方、日本との領土問題を通じて南北融和を呼び掛ける意図があったとみられる。公演は韓国でも知られる北朝鮮歌謡「パンガプスムニダ(うれしいです)」で幕を開け約1時間半続いた。11日にはソウルの国立劇場で公演する。北朝鮮の司会者は「民族の慶事として喜ぶ人民の心」を込めるとあいさつ。

*1-5:http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2018021301001492.html (東京新聞 2018年2月13日) 金正恩氏、南北関係改善を指示 韓国の五輪対応に謝意
 北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長は12日、平昌冬季五輪を機に韓国を訪問した最高人民会議の金永南常任委員長や妹の金与正党第1副部長ら高官代表団から、文在寅大統領との会談や米国の動向について詳細な報告を受けた。正恩氏は韓国側の対応に謝意を示し、今後の南北関係改善の方向を具体的に提示した。朝鮮中央通信が13日伝えた。1月1日の「新年の辞」で示した南北関係改善への意志を強調し、韓国側の呼応を促した形。与正氏を通じて文氏に提案した首脳会談実現への意欲の表明とみられる。

<フィギュアスケート>
*2-1:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO27053340X10C18A2000000/?pye=1 (日経新聞 2018/2/17) 羽生が五輪2連覇、宇野は銀 フィギュア男子
 平昌冬季五輪第9日は17日にフィギュアスケート男子フリーを行い、ショートプログラム(SP)1位の羽生結弦(ANA)が金メダルを獲得、前回ソチ大会に続く五輪2連覇を果たした。連続優勝はフィギュア男子では66年ぶりで、冬季五輪の個人種目では日本勢初の快挙。今大会の日本選手団初の金メダルにもなった。SP3位の宇野昌磨(トヨタ自動車)が銀メダル、同2位のハビエル・フェルナンデス(スペイン)は銅メダルだった。田中刑事(倉敷芸術科学大大学院)は18位。羽生は4回転ジャンプを相次ぎ成功させるなど安定した演技で206.17点をマーク。SPとの合計で317.85点とした。宇野は冒頭の4回転ジャンプで失敗したが、羽生を上回る技術点を挙げ、合計306.90点とした。羽生は2017年11月、グランプリ(GP)シリーズ第4戦、NHK杯の公式練習でジャンプの着氷に失敗した際に右足関節外側靱帯(じんたい)を損傷。同大会を欠場し、5連覇が懸かっていた12月のファイナルも出場できなかった。今年1月にようやく氷上練習を再開し、五輪では団体への出場を回避。今回の個人種目が復帰後初の実戦だった。

*2-2:http://www.chunichi.co.jp/article/olympics/pyeongchang2018/news/CK2018021802000185.html (中日新聞 2018年2月18日) フェルナンデス、夢見た銅 「同門」羽生と表彰台
 これがラストチャンスと自覚して臨んだ26歳のフェルナンデスが、情熱的な演技で銅メダルをつかんだ。「何年も夢見てきて、ついに取れた。本当にうれしい」。前回のソチ五輪は、3回転ジャンプの跳びすぎ違反をとられるミスで4位に終わっただけに、感慨もひとしおだった。羽生の高得点に沸いた直後の出番。それでも「4年前の自分とは全くの別人だ」と言い切る自信は揺らがなかった。中盤に予定した4回転ジャンプが2回転になるミスこそあったものの、母国スペインの小説「ドンキホーテ」の騎士を力強く演じきった。セレモニーを控えたリンク脇。同じ練習拠点で切磋琢磨(せっさたくま)してきた羽生に「これが僕の最後の五輪になるかもしれない。2人で表彰台に立ててよかった」と伝えて金メダリストを涙させた。世界選手権2度優勝の実力者は「若くて才能ある選手が出てきて、僕がここで戦うのは大変なこと。今は本当に疲れている」。積年の努力が報われ、穏やかに笑った。

*2-3:http://www.news-postseven.com/archives/20180219_652941.html (NEWSポスト 2018.2.19) 平昌五輪フィギュア解説者椅子取り合戦の意外な勝者
 羽生結弦(23)が挑んだ4年に一度の大舞台の裏で、元選手による“リンク外の戦い”も白熱していた。「フィギュアの黄金世代の選手たちが次々と引退したため、今回は選手よりテレビ出演する“元選手”たちの方が層が厚い。解説やコメンテーターの席を巡って椅子取り合戦状態でした」。そう話すのは、キー局情報番組のプロデューサーだ。「トリノ五輪金メダリストの荒川静香(36)は日テレ、バンクーバー五輪の銅メダリストの高橋大輔(31)はフジ、鈴木明子(32)はTBSの“専属”だが、他にも長いキャリアのある村主章枝(37)や、『解説が上手くできない』とぶっちゃける安藤美姫(30)らが五輪関連の出演を増やした。なかでも評価が急上昇したのは村上佳菜子(23)です」。昨年4月に現役引退した村上は、専属でないぶん局をまたいで引っぱりだこだ。「解説者としては未知数でしたが、いざやってみるとなかなか見事。リンクの氷の質に着目したり、羽生選手のちょっとした仕草で『完全に治っていないのかな』と推測したりと、一味違う斬新な視点があった。アナウンススクールでレッスンも受けている努力家なので、今後さらに成長すると期待されています」(同前)。これだけの“タレント揃い”となると、コメンテーターの椅子取りゲームは代表枠争いよりも厳しくなる。

*3:https://www.nikkansports.com/olympic/pyeongchang2018/figureskate/news/201802200000353.html (日刊スポーツ 2018年2月20日) 村元哉中、クリス・リード組は15位 アイスダンス
 村元哉中、クリス・リード組(木下グループ)はフリー97・22点、合計160・63点で15位となった。冒頭の連続ターンのツイズルを華麗に決めると4つのリフトもミスなく決めた。ステップシーケンスもシンクロしたステップを刻んだ。演技後、村元はガッツポーズをみせ、クリス・リードと喜びをかみしめハグをしあった。テッサ・バーチュー、スコット・モイヤー組(カナダ)がフリー122・40点、合計206・07点で金メダル。ガブリエラ・パパダキス、ギヨーム・シゼロン組(フランス)が同123・35点、合計205・28点で銀メダル。マイア・シブタニ、アレックス・シブタニ組(米国)が合計192・59点で銅メダルを獲得した。

*4:http://www.sposoku.com/%E3%82%AA%E3%83%AA%E3%83%B3%E3%83%94%E3%83%83%E3%82%AF/%E5%B9%B3%E6%98%8C%E3%82%AA%E3%83%AA%E3%83%B3%E3%83%94%E3%83%83%E3%82%AF-%E3%83%95%E3%82%A3%E3%82%AE%E3%83%A5%E3%82%A2%E3%83%BB%E5%A5%B3%E5%AD%90%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%83%BC%E3%83%88%E3%81%AE%E6%BB%91/  (スポ速 2018年2月22日) 平昌オリンピック フィギュア・女子ショートの滑走順と結果速報!テレビ放送、時間は? 《抜粋》
 平昌オリンピック・フィギュア 女子ショートプログラムの結果速報、順位、得点(ポイント)!演技終了!平昌オリンピック・フィギュア 女子ショートプログラムの結果速報、順位、得点(ポイント)をここでお知らせします!
第1位:アリーナ・ザギトワ(ロシア)
 技術点:45.30 構成点:37.62 減点:0.00 総得点:82.92(女子SP世界記録!)
第2位:エフゲーニャ・メドベージェワ(ロシア)
 技術点:43.19 構成点:38.42 減点:0.00 総得点:81.61(女子SP世界第2位!)
第3位:ケイトリン・オズモンド(カナダ)
 技術点:41.83 構成点:37.04 減点:0.00 総得点:78.87(New SB!)
第4位:宮原知子(日本)
 技術点:40.25 構成点:35.69 減点:0.00 総得点:75.94(New SB!)
第5位:坂本花織(日本)
 技術点:40.36 構成点:32.82 減点:0.00 総得点:73.18(New SB!!)
第6位:カロリーナ・コストナー(イタリア)
 技術点:35.06 構成点:38.09 減点:0.00 総得点:73.15
第7位:ガブリエル・デールマン(カナダ)
 技術点:35.90 構成点:33.00 減点:0.00 総得点:68.90
第8位:チェ・ダビン(韓国)
 技術点:37.54 構成点:30.23 減点:0.00 総得点:67.77
第9位:長洲未来(アメリカ)
 技術点:37.24 構成点:30.69 減点:1.00 総得点:66.93
第10位:カレン・チェン(アメリカ)
 技術点:33.53 構成点:32.37 減点:0.00 総得点:65.90
11位:ブラディー・テネル(アメリカ)
 技術点:35.50 構成点:29.51 減点:1.00 総得点:64.01
12位:マリア・ソツコワ(ロシア)
 技術点:31.47 構成点:33.39 減点:1.00 総得点:63.86 
13位:ニコル・ラジコワ(スロバキア)
 技術点:32.36 構成点:28.23 減点:0.00 総得点:60.59
14位:ニコル・ショット(ドイツ)
 技術点:31.62 構成点:27.58 減点:0.00 総得点:59.20
15位:エリザベート・トゥルシンバエワ(カザフスタン)
 技術点:28.27 構成点:29.68 減点:0.00 総得点:57.95
28位:アニータ・オストランド(スウェーデン)
 技術点:25.35 構成点:23.79 減点:0.00 総得点:49.14

*5:https://digital.asahi.com/articles/DA3S13374241.html (朝日新聞 2018年2月24日) ザギトワ降臨 フィギュアスケート・女子フリー金 平昌五輪
■(ハイライト)15歳、華麗にミス帳消し
 ずば抜けた体力と精神力。アリーナ・ザギトワが、今季無敗で史上3人目となる15歳の五輪女王に駆け上がった要因だ。出場選手で唯一、得点が1・1倍になる演技後半に七つすべてのジャンプ要素を跳ぶ。最初の3回転ルッツ―3回転ループが2連続にならず単独になった。最大の得点源で失敗し、「ショックだった」。並の15歳なら、ガクンと気落ちする場面だ。だが「乗り越えなければならない試練」と切り替えた。二つの連続ジャンプを決めた後、さらにスピードを上げる。そして、単独の予定だった3回転ルッツに3回転ループをつけた。体力の消耗が激しい中、13・91点を得る美しいジャンプで、ミスを帳消しにした。最終滑走のメドベージェワも完璧な演技を見せたが、得点は自身と同じ156・65点。ショートプログラム(SP)のリードで逃げ切り、優勝が決まった。「10年近く頑張って、色々なものを乗り越えてきた金メダル」。西ウラルからモスクワに来て、祖母と暮らしながら努力を重ねてきた成果をかみしめた。リンクを離れればあどけなさも残る。ジュニア時代に同宿した坂本花織は、ファンからもらったお気に入りのスヌーピーのぬいぐるみを「欲しい」とせがまれた。坂本は「めっちゃ、ハグされて。『そこまで欲しいならどうぞ』って、根負けした」と振り返る。同じクラブには、4回転ジャンプを跳ぶジュニア選手もいる。だが「これまで積み重ねてきたことを、さらに続けたい」。向上心は尽きない。
■メドベ圧巻 銀
 演技を終え、泣いていたエフゲニア・メドベージェワは、数分後にはいつも通り明るかった。「重圧はなく、翼を広げた鳥のような気分だった。目標は後悔しないこと。それができた」と笑った。軽やかなジャンプを、演技全体の流れを切らずにすべて成功。不倫の末自殺する女性を演じ、演技構成点は全体トップで、フリーは同門のザギトワと同じ得点で1位だった。体が弱く、医師の勧めで競技を始めた。スタジオジブリのアニメが好き。グッズの店を見つけ、「どれくらいなら買ってもいい?」と母にメールしたこともある。人なつっこく、世界中に友達がいる。一方、両親は離婚し、母と祖母と暮らす。「私生活でそんな(悲しい)ことがあった。でもスケートができて幸せ」。スケートは人生だと言い、次の目標を語った。「最も愛していることを続けたい」
■宮原全開
 宮原知子が両拳を天に突き上げた。「4連覇を果たした全日本選手権以上のガッツポーズでした」。そう言って照れ笑いした。次々とジャンプを決めた。しかし、浜田コーチは終盤まで、喜ばずに見つめていた。七つのジャンプ要素のうち、演技終盤の六つ目のジャンプ、3回転サルコーが不安だったからだ。昨年11月のNHK杯で復帰して以来、徐々にジャンプの成功率を上げ、韓国入りしてから回転不足をなくした。計画通りだった。しかし、なぜか、サルコーだけミスをする。練習でも転ぶ姿があった。しかし、宮原は「自分を信じることを意識した」。不安はなかった。NHK杯まであと数週間という昨秋、浜田コーチに諭された。「5年後を目指そう。それでも、オリンピックにいけるよ」。3回転ジャンプをやり始めたばかり。フリーの曲を半分かけ、序盤のジャンプを跳ぶだけ。そんな状態だった。しかし、その直後、宮原は出水トレーナーに言った。「できます。オリンピックに行きたいです」。物静かだが、強い意志を持っていた。最高の舞台で最高の演技をし、「皆さんに自分の演技で『ありがとう』を伝えられた」。(後藤太輔)
■坂本全力
 五輪の扉をこじ開けた17歳の坂本花織は最後、少しの悔しさと達成感に包まれていた。
12日の団体フリーは、極度の緊張で自分を見失い、ジャンプの着氷が乱れた。9日後の女子ショートプログラム。演技前、中野コーチに言われた。「シュンとなるのか、笑顔で帰るか」。坂本に覚悟が宿った。緊張と向き合いながら、ノーミスの演技で応えた。迎えたこの日も誓った。「練習通りやる」。後半のダブルアクセル(2回転半)―3回転トーループ―2回転トーループの連続ジャンプ。高く跳び上がって決めた3回転に、バネの強さを誇る坂本の魅力が詰まっていた。出来栄え点(GOE)で1・40点の加点がついた。ミスは出たものの、6位に「やり切れて、ホッとしている」。地元神戸で一緒に五輪を目指してきた三原舞依(シスメックス)に一つ伝えたいことがある。「五輪の緊張、めっちゃやばいよ」。(榊原一生)
<総合3位のオズモンド(カナダ)> 「目標はソチ大会の13位以上。それが10個も順位を上げられるなんて。興奮している」
■(佐藤信夫の目)優劣つけがたかった2人
 ロシアから個人資格で参加したザギトワとメドベージェワの2人が、今日の内容ではずば抜けていた。特にメドベージェワはプログラムの完成度を含め、すべてが良かった。ザギトワも一つ一つの技が正確で、相当質の高い練習をしてきたのだろう。フリーを見る限り、ほぼ一緒の出来。ショートプログラムの差が結果に出た。それほど、優劣をつけがたかった。日本勢の2人も上出来だった。宮原は左股関節の疲労骨折から、ほぼ完璧に演技をするところまで状態を持ってこられたのは立派だった。坂本も普通ならプレッシャーで足が思うように動かないものだが、初めての舞台でのびのびと滑りきった。2人とも、今日の演技に関しては、とってもすばらしかった。3回転の難しい連続ジャンプを跳ぶ構成が当たり前になり、女子でも4回転に挑戦していく時代になる。次の世代には4回転を跳ぶ選手が当然出てくるだろうし、4年後はまた違う戦い方になると思う。我々が思っているより、世界の進歩は速い。ただ、難しいジャンプを跳ぶだけではなく、きれいなスケートを滑る基本的な技術も磨かないと、ステップアップはできない。(フィギュアスケートコーチ)
■頂点へ導いた技術力
 後半にすべてのジャンプを固めるザギトワの演技構成点の「振り付け」の項目は全体4位。だが、技術点は唯一の80点台。技術力の高さが頂点に導いた。メドベージェワは完成度で勝っていた。出来栄え点(GOE)は全選手最高の16・85点で、演技構成点も1位の77・47点。ただ、後半に2本予定していた2連続の3回転ジャンプのうち1本を冒頭にしたことで、GOEも含めると技術点で1点以上ロスした。宮原は回転不足が不安だった演技前半の2連続ジャンプを成功するなどGOE加点は12・36点だった。ただ、ジャンプの高さと滑りの伸びでは、オズモンドに分があった。(前田大輔)
▼演技後半のジャンプ、制限へ ボーナス得点を狙って基礎点が1・1倍となる演技後半にジャンプを集中させる構成が多くなったため、国際スケート連盟が6月の総会でルール改正を提案することが23日、関係者の話で分かった。後半のジャンプの数を制限し、偏りをなくすことを促すという。(共同)
▼フリー順位の決定法 国際スケート連盟(ISU)のルールによると、フリーが同点の場合、演技構成点の高い選手が上位になる。この日のフリーではザギトワとメドベージェワが同点で、演技構成点の高いメドベージェワがフリーで1位となった。

*6:https://digital.asahi.com/articles/ASL2T35STL2TUTQP00R.html?iref=comtop_photo (朝日新聞2018年2月25日)羽生結弦「白鳥」しなやかに エキシビ、メドベは黒衣装
 平昌(ピョンチャン)冬季五輪最終日の25日、江陵アイスアリーナでフィギュアスケートのエキシビションがあった。スケートリンクに韓国をテーマにした色とりどりの照明の中、オープニングの演技が行われた。韓国選手があめを観客席に投げ込み、盛り上げる場面もあった。日本からは男子銀メダルの宇野昌磨(トヨタ自動車)が4番目に登場し、映画で使われた曲「See you again」で滑り、情感たっぷりに表現した。男子銅メダルのハビエル・フェルナンデス(スペイン)は前半の最後に登場し、エアロビクスのダンスで腕立て伏せをしたり、ボトルの水をかぶってみたりとコミカルな演技で、会場を沸かせた。女子4位の宮原知子(関大)は15番目に登場。スペインの楽曲「アランフェス協奏曲」に乗せ、指先まで神経を行き届かせた繊細な演技で観客を魅了した。女子銀メダルのエフゲニア・メドベージェワ(OAR)は、黒の衣装で登場。美しい滑りと表現力を際立たせた。女子金メダルの15歳、アリーナ・ザギトワは全身タイツの衣装で登場。妖艶(ようえん)な演技を見せた。最後を締めた男子シングルで連覇を果たした羽生結弦(ANA)は、「白鳥」(サン・サーンス作曲)の男性ボーカルバージョンで表現力、柔軟性を見せた。トリプルアクセルを成功させた。


PS(2018年2月27日追加):*7の「①深いつもりで浅い知恵」「②浅いつもりで深い欲」「③高いつもりで低い教養」「④低いつもりで高い気位」は、“つもり”という言葉で表される自己評価は実際よりも高いと戒める「謙虚のススメ」だが、謙虚と称する消極性や努力不足を正当化している。ただし、①は、まさにメディア関係者に多く、三流が一流を評価するとこうなるのかと思うことも多い。②の欲にはいろいろなものがあるが、これは人間に生まれつき備わっているもので、市場経済はそれを認めて(不十分ではあるが)分析し、行動を起こす動機として利用し、社会的利益は規制で守るようにしたから成功したのである。反対に、個人の欲を認めないのがマルクス主義経済であり、これは成功しなかった。なお、③は、教養のない人を癒す言葉にすぎず、④の気位や意識は高いからこそさらなる高みを目指して頑張れるのであり、それがなければ集団や組織にぶら下がる人ばかりになるだろう。

*7:https://digital.asahi.com/articles/DA3S13378019.html (朝日新聞 2018年2月27日) 折々のことば:1034 鷲田清一
深いつもりで 浅いのが知恵、浅いつもりで 深いのが欲 (福寿園で使われている「つもり十訓」から)
     ◇
 福寿園は京都の製茶の老舗。「つもり」とはとんだ勘違いのこと。おのれを顧みて自重することのないこと。世の中には、謙虚という徳を横柄な口ぶりで説く人は少なくないし、懐疑の必要をつゆ疑わずに主張する人も珍しくない。同様の言葉は全国にいろいろあるようで、「高いつもりで低いのが教養。低いつもりで高いのが気位」という言い回しを耳にしたこともある。


PS(2018.3.5追加):著作権とは、*8-3のように、「知的財産権の一つで、著作物を財産として所有したり、他人に使用させる許可を与えたりする権利」だが、*8-1のように、音楽教室から著作権料を徴収するのは、どういう曲をどういう形で使用した場合なのだろうか? 私は、楽譜やCDの購入対価に含まれる形で著作権料を既に支払っているため、「営業目的で使うのなら、さらに著作権料を支払え」と言うのは、法的安定性を欠くと考える。また、*8-2の「ピアノの生演奏をウリにしていた73歳のスナック経営者が刑事告訴され、著作権法違反の疑いで逮捕された」というのも、著作権という契約に基づく民事事件に国家権力である警察が介入しており、暗黒社会の始まりのようだ。これでは、「日本の近年の作品は、危ないので使わない方がよい」ということになり、著作権者をむしろ害する上、教育上もよくないだろう。

*8-1:http://www.saga-s.co.jp/articles/-/189083 (佐賀新聞 2018.3.5) 音楽教室からの著作権料徴収容認、文化審議会、係争中は配慮要請
 文化審議会は5日、日本音楽著作権協会(JASRAC)による音楽教室からの著作権使用料の徴収を容認するとの結論をまとめた。音楽教室側が求めていた徴収の保留を認めなかった。ただ、徴収の是非を巡る訴訟が続いているため、JASRACに対し、係争中の音楽教室には判決の確定までは督促しないなどの配慮を求めた。同日中に文化庁長官に答申。これを受けて長官が近く裁定を通達する。JASRACは昨年2月、従来は対象外だった音楽教室からも徴収すると表明。ヤマハ音楽振興会(東京)など約250の事業者は昨年6月、JASRACに徴収権限がないことの確認を求めて東京地裁に提訴した。

*8-2:https://www.excite.co.jp/News/bit/00091166717797.html 音楽の著作権料、何はセーフで何がアウトなの?
 11月に、東京都の73歳のスナック経営者が、長年、ピアノの生演奏をウリにしながらも、著作権料を払わずに刑事告訴されるに至り、著作権法違反の疑いで逮捕されたというニュースが話題となった。これは異例のケースというが、一般には、音楽の著作権はどこまでがセーフで、どこからアウトなのか?ピアノの生演奏をしているあるお店に聞くと、「何の曲を弾いてるか根掘り葉掘り聞かれて、今は支払ってますよ」と言うが、あるライブ主宰者は、「ウチはライブでは版権フリーの曲を使ってるけど、だいたいのライブは無許可らしいよ」。さらに、六本木のあるカラオケバーの経営者は、「カラオケはリース会社が間に入って、JASRACと契約するようすすめるんですが、任意であって、強制じゃないから、古くからの店なんかは無視してますよ」。と言うではないか。JASRACに直接問い合わせてみると、「JASRACの管理楽曲は、作家の死後50年以内のものが対象です。クラシックなら全部OKというわけでもなく、『自由に使っていいもの』は著作権法第38条の『入場料をとらない』『営利目的じゃない』『出演者が報酬もらわない』の条件を満たす場合だけなんですよ」とのこと。つまり、カラオケも生演奏も歌声喫茶も、クラブDJも、モノマネパブも「全部著作権の対象になる」ということだ。また、学校の定期演奏会や老人会の発表会などでも、たった100円であっても、料金をとったら、著作権料を支払わなければいけないという。そういえば、あるバレエ教室の主宰者も、こんなことを言っていたっけ。「発表会で、衣装代や照明代、音響など、かなりの費用がかかるので、入場料を少しでもいただこうかと思ったんですけど、そうすると、逆に、著作権料のほうが大きくて。結局、赤字で運営したほうがラクだとわかりました」。また、テレビでの使用に関しては、「一括で点数化していますが、2012年目標で、全局、使った曲と番組名を書いて報告してもらうようにと話し合っています」(JASRAC担当者)。ちなみに、クドカンのドラマなど、番組内で登場人物が鼻歌を歌うケースもよくあるが、「鼻歌も対象です。担当者はチェックしていると思いますよ」とのこと。具体的にJASRACの管理楽曲に当たるかどうかは、ウェブサイトで200万曲以上の中から、検索できるそうだ。音楽を使っているお仕事の人は、すでにご存じかとは思いますが、念のため確認してみては?

*8-3:https://kotobank.jp/word/%E8%91%97%E4%BD%9C%E6%A8%A9-5821 (ASCII.jpデジタル用語辞典の解説) 著作権
 知的財産権のひとつ。コピーライトとも呼ばれる。著作物を他人に使用させる許可を与えたり、著作物を財産として所有したりすることのできる権利。ここでいう著作物には、音楽や文章などの他に、ソフトウェアも含まれる。著作権は、特に登録をしなくても、著作物を作成すると発生するが、正式な著作者であると証明したい場合は、文化庁で登録できる。個人の著作物の場合、著作権は死後50年を過ぎると適用されなくなる。

| 教育・研究開発::2016.12~ | 03:09 PM | comments (x) | trackback (x) |
2018.2.18 日本国憲法のその他の変更論点 - 地方自治・主権在民・1票の価値・教育の充実など
   
     日本の人口構造         2018.1.17日経新聞   2018.2.17
                                 西日本新聞    
(図の説明:1番左の図のように、日本の人口構造は高齢者の割合が増加している。そのため、定年を延長もしくは廃止して高齢者が働けるようにし、70歳超まで年金受給を遅らせることができる案が浮上している。また、外国人労働者は、国内の雇用を守るために現在は制限されているが、増やすことは容易であり、財・サービスの生産に役立つだろう)

    
             2018.2.2日経新聞(*2-2-1より)   
(図の説明:上の図のように、高齢者の割合が増え投票率も高齢者の方が高いため、高齢者の意見が通り易いという指摘があるが、高齢者は女性も含めた普通選挙を有難く思い、社会保障に頼る側になり政治の影響を大きく受けるようになったので、若者よりも積極的に投票するのである。それに対し、若者はこれから将来が開けるため、政治に関わっているよりも仕事に集中して自分の将来を拓く意欲が高く、住まいはまだ固定していないためその地域の議員とのなじみが薄い。そのため、若者の投票率が低いのは必然で、前からそういう傾向はあったのである)

(1)地方自治について
 昭和21年11月3日に公布され、昭和22年5月3日に施行された日本国憲法は、*1-1のように、地方自治を、第92条で「地方公共団体の組織及び運営に関する事項は、地方自治の本旨に基いて、法律でこれを定める」としているのみである。

 そして、昭和22年4月17日に公布され何度も改正されてきた地方自治法は、*1-2のように、日本国憲法を受け、第一条で「この法律は、地方自治の本旨に基いて、地方公共団体の区分並びに地方公共団体の組織及び運営に関する事項の大綱を定め、国と地方公共団体との間の基本的関係を確立し、地方公共団体における民主的で能率的な行政の確保を図り、地方公共団体の健全な発達を保障することを目的とする」としている。

 従って、*1-3のように、「地方自治の本旨」は、地方自治法で明確にすればよく、それは既になされており、足りなければ地方自治法を改正すればよいだけだ。例えば、道州制にして徹底した地方分権を行いたいのなら、それは憲法を変更する問題ではなく、「地方自治体」の区割りと税源配分の問題である。確かに、地方自治の展開を妨げているのは日本国憲法ではなく、地方分権を骨抜きにして権力を維持してきた官僚だろうが、知事会・県議会は、どこまで分権しても(地方の)人材を含めて自立できるかを考慮し、うまくいく分権改革案を提出すべきだ。

(2)合区の解消について
 自民党の憲法改正推進本部は、*2-1-3のように、参院選の合区を解消するための憲法改正条文案を了承し、改選毎に各都道府県から1人以上選出できる内容を盛り込み、細田会長が「法の下の平等と地方自治重視のバランスをとるための改正だ」と説明されたそうだが、地方自治重視は、沖縄県のように県を挙げて米軍基地の縮小や撤去を要望し、総合開発に取り組もうとしている県を応援するのが早道だと考える。

 これに対し、朝日新聞は社説で、*2-1-4のように、法の下の平等をうたい、投票価値の平等を求める憲法第14条と矛盾し、国会議員を全国民の代表と定める憲法第43条とも相いれないと記載している。

 衆議院議員は、*2-1-1のように定数465人(小選挙区選出議員289人、比例代表選出議員176人)で、*2-1-2のように憲法第45条で「任期4年・解散あり」と定められている。また、参議院議員は、定数242人(選挙区選出議員146人、比例代表選出議員96人)で、憲法第46条により「任期6年・解散なし・3年毎に半数入れ替え」と定められている。

 そして、*2-1-2の憲法第47条は、「選挙区、投票方法その他両議院の議員の選挙に関する事項は、法律(公職選挙法のこと)で定める」としているため、選挙区、投票方法その他選挙に関する事項は、基本的には公職選挙法で決めればよく、憲法を変更する必要はない。

 また、憲法第43条に「両議院の議員の定数は、法律で定める」と書かれているため、一票の価値を同じにしながら合区を無くしたければ、合区を無くした後の人口に合わせて他地域の小選挙区選出議員を増やす選択肢もあり、これは公職選挙法を改正すればできる。この場合は、参議院の比例代表選出を減らすか無くすのが、議員数を多くしすぎない方法になる。

 しかし、衆議院も地域代表になりがちな小選挙区を地盤とする議員が60%以上いるため、国民が政党の政策に対して意思表示を行い、解散・総選挙を通じて示された国民の意思が選挙結果に正確に反映されるためには、衆議院議員は全員を比例代表にするくらいでなければ、衆参両院のチェック機能が働かない。そして、どのような選び方をしても、国会議員は、(精神的にはともかく)形式的には全国民を代表するため、憲法の変更は不要なのである。
 
(3)法の下の平等と1票の価値について
 日本国憲法第14条1項で「すべて国民は法の下に平等であつて、人種・信条・性別・社会的身分又は門地により、政治的・経済的又は社会的関係において差別されない」と定められており、1票の価値が人によって異なることがあってはならない。これについては、司法も同じ見解だ。

 しかし、*2-2-1のように、日経新聞などいくつかのメディアや“研究者”が、①高齢者の意見が反映されやすい「シルバー民主主義」になるのはよくない ②「頑張って保険料を納付してきたのに、年金を減らされることは認めない」と言う高齢者は冷静でない ③社会保障給付は医療・年金・介護が約9割を占め、若い世代ほど給付より負担が重い ④投票率は若者が低く、高齢者は高い ⑤大票田は高齢者で、子育て世代や結婚・出産を考える世代は存在感が薄いため、団塊世代が年をとるにつれ「高齢者の声」が大きくなる ⑥18歳未満やこれから生まれてくる世代の声を誰がどのように政治に反映するかが問題だ 等として、*2-2-2のように、「イ.余命に応じて投票権に重みをつけ、若い人の一票を高齢者の一票よりも重くする」「ロ.投票権を持たない未成年に投票権を与え、親が代わりに投票する」などと書いた記事もある。

 しかし、①⑥の見解は、*2-1-2の憲法第14条1項「すべて国民は法の下に平等であつて、人種・信条・性別・社会的身分又は門地により、政治的・経済的又は社会的関係において差別されない」に反する。また、②の高齢者の主張は事実であり、厚労省の杜撰な管理により働き手が多かった時代に必要な年金資産を積み立てられなかったことが問題なのであって、勝手に減らすのは契約違反であるとともに、生存権・財産権の侵害に当たる。

 さらに、③のうちの年金・医療については、1980年代に予想可能だったため、厚労省と社会保険庁は支払時の資産を準備しておくのが当然であったし、介護保険制度については2000年に施行されものであるため、多くの高齢者が支払っていないのは当然なのである。そのかわり、高齢者は、自分がやりたいことを二の次にして親と同居し、生活補助や介護をした人が多いが、若者はそちらの方がよいのだろうか?

 また、④の投票率は若者が低く高齢者は高い ⑤の大票田は高齢者 というのは事実だが、高齢者の現在のみを考えて政策を練る議員はおらず、私も票田に媚びるために政策を提唱したことはない。それより、*2-2-2のように、若者の投票率が低いから選挙で若者を特別扱いするなどという発想は、憲法第14条1項に反するとともに、政治に関心がないから投票に行かないような人が政治関連の情報を普段からキャッチして正しい選択をする筈がないため、わけのわかっていない浮動票が増えて、かえって選挙結果を狂わせると考える。

 なお、少子化による労働力の減少は、*3-1のように、定年を延長・廃止して年金開始年齢を70歳超でも選択可能にしたり、働きたい女性を差別なく雇用したり、*3-2のように、外国人労働者を積極的に雇用したりすることによって解決できる。そして、これらハングリー精神を持つ人材の方が、甘えきった日本の若者より役に立つのは既に経験済みなのだ。

<地方自治>
*1-1:http://www.cc.kyoto-su.ac.jp/~kazyoshi/constitution/jobun/chap08.html (日本国憲法 昭和21年11月3日公布、昭和22年5月3日施行 より抜粋)
第8章 地方自治
第92条(地方自治の基本原則)
 地方公共団体の組織及び運営に関する事項は、地方自治の本旨に基いて法律でこれを定める。
第93条(地方公共団体の機関、その直接選挙) 1.地方公共団体には、法律の定めるところに
 より、その議事機関として議会を設置する。
 2.地方公共団体の長、その議会の議員及び法律の定めるその他の吏員は、その地方公共
 団体の住民が、直接これを選挙する。
第94条(地方公共団体の権能)
 地方公共団体は、その財産を管理し、事務を処理し、及び行政を執行する権能を有し、法律の
 範囲内で条例を制定することができる。
第95条(特別法の住民投票)
 一の地方公共団体のみに適用される特別法は、法律の定めるところにより、その地方公共団体
 の住民の投票においてその過半数の同意を得なければ、国会は、これを制定することができ
 ない。

*1-2:http://www.houko.com/00/01/S22/067.HTM (地方自治法 昭和22年4月17日公布、改正平成28年6月7日最終改正・平28年11月30日施行)
第一編 総 則
第一条 この法律は、地方自治の本旨に基いて、地方公共団体の区分並びに地方公共団体の
 組織及び運営に関する事項の大綱を定め、併せて国と地方公共団体との間の基本的関係を
 確立することにより、地方公共団体における民主的にして能率的な行政の確保を図るととも
 に、地方公共団体の健全な発達を保障することを目的とする。
第一条の二 地方公共団体は、住民の福祉の増進を図ることを基本として、地域における行政を
 自主的かつ総合的に実施する役割を広く担うものとする。《追加》平11法087
 2 国は、前項の規定の趣旨を達成するため、国においては国際社会における国家としての存
 立にかかわる事務、全国的に統一して定めることが望ましい国民の諸活動若しくは地方自治に
 関する基本的な準則に関する事務又は全国的な規模で若しくは全国的な視点に立つて行わな
 ければならない施策及び事業の実施その他の国が本来果たすべき役割を重点的に担い、住民
 に身近な行政はできる限り地方公共団体にゆだねることを基本として、地方公共団体との間で
 適切に役割を分担するとともに、地方公共団体に関する制度の策定及び施策の実施に当たつ
 て、地方公共団体の自主性及び自立性が十分に発揮されるようにしなければならない。
 《追加》平11法087
第一条の三 地方公共団体は、普通地方公共団体及び特別地方公共団体とする。
 2 普通地方公共団体は、都道府県及び市町村とする。
 3 特別地方公共団体は、特別区、地方公共団体の組合及び財産区とする。
 《改正》平23法035
第二条 地方公共団体は、法人とする。
 2 普通地方公共団体は、地域における事務及びその他の事務で法律又はこれに基づく政令に
 より処理することとされるものを処理する。《全改》平11法087《1項削除》平11法087
 3 市町村は、基礎的な地方公共団体として、第五項において都道府県が処理するものと
 されているものを除き、一般的に、前項の事務を処理するものとする。《改正》平23法035
 4 市町村は、前項の規定にかかわらず、次項に規定する事務のうち、その規模又は性質に
 おいて一般の市町村が処理することが適当でないと認められるものについては、当該市町村
 の規模及び能力に応じて、これを処理することができる。《全改》平23法035
 5 都道府県は、市町村を包括する広域の地方公共団体として、第二項の事務で、広域に
 わたるもの、市町村に関する連絡調整に関するもの及びその規模又は性質において一般の
 市町村が処理することが適当でないと認められるものを処理するものとする。
 《改正》平11法087
 6 都道府県及び市町村は、その事務を処理するに当つては、相互に競合しないように
 しなければならない。《3項削除》平11法087
 7 特別地方公共団体は、この法律の定めるところにより、その事務を処理する。
 8 この法律において「自治事務」とは、地方公共団体が処理する事務のうち、法定受託事務
 以外のものをいう。