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2018.9.23 ふるさと納税・返礼品・税収の使途について (2018年9月24、25日追加)

                                 218.9.20西日本新聞

(図の説明:左の図のように、ふるさと納税寄付額は、2008年の制度導入以降、大きく増加した。また、中央の図の佐賀県みやき町の返礼品に電気製品があったのは、都会では考えられないかも知れないが、地元の電気屋さんを残すためだったそうで、佐賀県上峰町の場合は、返礼割合は普通だが気合の入った質のよい返礼品が送られて来る。なお、佐賀県唐津市は唐津市出身の人が社長であるDHCに原料として唐津産のオリーブを使ってもらったり、宣伝してもらったりしているようだ。他はよく知らないが、それぞれ苦心の後が見えるのはよいと思う。さらに、右の図の部活動については、専門家が指導しなければ時間を使う割には根性論に陥って上達しないため、どうせやるのなら、給料を払ってオリンピックメダリストやオリンピックを目指したような選手をコーチとして雇い、時間の無駄なくうまくなれるようにした方がよいと思う)

(1)ふるさと納税に対するクレームについて
1)クレームの内容と反論
 私が提唱してでき、多くの方のアイデアと協力で大きく育った「ふるさと納税」が、*1-1のように、「①返礼品の抑制が広がる中でも増えた」「②ガソリン税に匹敵する規模で自治体の主要な収入源になった」「③幅広いアイデアが寄付を押し上げた」というのは嬉しいことだ。

 これに対し、*1-2のように、645億円の流出超過となった東京都などが、「待機児童対策に響く」等と指摘しているが、東京など企業の本社・工場が多い地域で多く徴収される仕組みになっている法人住民税や生産年齢人口の割合が高い都会で多く徴収される個人住民税などによる税収格差を是正するために、私は「ふるさと納税」を作ったので、都市から地方の自治体に税収が流れるのは最初から意図したことだった。

 なお、私は大学時代から30代後半まで東京都内に住んでいたのでよく知っているが、東京都の待機児童対策がふるさと納税制度制定前に進んでいたかと言えば全くそうではなく、莫大な無駄遣いが多いことは誰もが知っている事実だ。そのため、東京都が「待機児童対策に響く」などと指摘しているのは、持ち出しにクレームを言うための耳ざわりのいい口実にすぎない。

 さらに、「ふるさと納税」を集めるチャンスはどの自治体も平等に持っており、魅力的な製品やサービスを発掘(もしくは開発)して返礼品にした自治体が多くのふるさと納税を集めるられるのは、単なる税金の分捕合戦ではなく、地方自治体が自らの地域の長所を見つけて魅力ある産物を増やす工夫をすることに繋がっている。つまり、「うちには、何もない」と思っていた地方の人たちが、自らの産物に対する消費者の人気を肌で感じ、ネット通販やクラウドファンディングのノウハウを習得する機会になったのである。

 にもかかわらず、*1-3のように、日経新聞は、「ふるさと納税は原点に戻れ」と題して、「①寄付額の3割を超える高額な返礼品が増えた」「②地元の特産物以外の商品を送る市町村も多い」「③総務省の要請には法的な拘束力はないが、ルールに従う地域からみれば不公平」「④ふるさと納税は、富裕層に有利」「⑤ふるさと納税が日本の寄付文化を育んでいる面もあるが、自然災害の被災地には返礼品がなくても多額の寄付が集まっている」「⑥ふるさと納税は、故郷や気になる地域を個人の自由意思で応援する制度だ」「⑦見直しで高額な返礼品がなくなり、寄付額が減ったとしても仕方ない」などの批判をしている。

 しかし、私がふるさと納税制度の創設を提唱したのは、純粋な寄付文化を育むためではなく、育った地方に税源を与えつつ、地方を刺激するためであるため、⑤⑥⑦は、あまり努力しなかった自治体のクレームにすぎない。また、①③は、特に条文がないので、租税法定主義から考えて自由であり、それよりも根拠のないルールを作って「ルールだから守れ」と言う方が問題だ。

 ただ、②のように、地元の特産物以外の商品を多額の返礼品にすれば、地元の産業を育てるチャンスを失い、税収も増えないため、総務省より地元住民がクレームを言うべきだろう。

2)控除限度額の計算
 上の④の「ふるさと納税は、富裕層に有利」というのは、税法の知識のない人が“富裕層(範囲も不明)”さえ叩けば批判になると勘違いしているお粗末な例で、このようなワンパターンの批判は止めるべきである。

 ふるさと納税の控除限度額は、*1-4のように、所得税からの控除限度額が「a)+b)」で、住民税からの控除限度額が「c)」であるため、「a)+b)+c)」の金額である。そして、返礼品がなければ2000円分はどこからも戻ってこず、寄付をしない人より多く税を納めることになるので、この2000円の方が問題だ。
  a)所得税からの控除額=(寄付金-2000円)×所得税率
  b)復興特別所得税から控除額=所得税からの控除額×復興特別所得税率2.1%
  c)住民税からの控除(基本分)=(寄付金-2000円)×住民税率10%

 つまり、所得が大きい人の控除限度額が大きくなるのは当然で、所得が大きい人は累進課税により多額の所得税・住民税を支払っているということなのだ。

3)返礼品の発祥と規制の非妥当性
 そのため、この2000円をカバーしようとして考えだされたのが、ふるさと納税を受けた地域からのお礼の品であり、香典を持って行って香典返しをもらうことに例えられる。また、地元の産品であればもちろん産業振興になり、地元産には原料が地元産の場合もあるし、地元の電気屋さんがなくなったら困るため、そこの商品だったりする場合もある。従って、よく事情を聞かなければ妥当性は不明だ。

 ただ、「香川県直島町の担当者が、特産品が少なく簡単にはいかない」と言っているのは、役所の人が返礼品を考えるからで、地元の農協・漁協・商工会などと相談して魅力的な産品(米・レモン・オリーブ油・魚でもよい)を作って返礼品にすれば、それこそ地域振興に繋がる。

 従って、私は、総務省が、返礼品を寄付額の3割以下にすることや地元の農産品に限ることを強制する根拠は法律にはないし、地方自治体は工夫して、「廃止されそうな鉄道の維持」や「送電線の敷設・地中化」に使うというような使用目的を出してもよいと考える。

(2)総務省の対応と自治体
 総務省は、*2-1のように、ふるさと納税の返礼品は地場産品だけにするように通知を出し、*2-2のように、特産品の少ない自治体はこれに困惑しているそうだが、地域の人が「何もない」と思っている地域に優れた農林水産物があったりするため、それこそ地域振興のために知恵を絞るべきだ。

 また、*2-3の埼玉県毛呂山町は、農家の高齢化が進んで収穫されないユズ畑が増えているそうだが、ゆずジュースにしたり、レモンやオレンジに転作したりと、畑や作物の利用余地は大きい。また、*2-5のように、イノシシの皮で起業する人もおり、このような時に、ふるさと納税を「ガバメントクラウドファンディング」として使うのもよいと考える。

 なお、*2-4のように、総務省は、2017年4月に、寄付金に対する「返礼率」を3割以下にし、家電・金券類を扱わないよう求める通知を出し、2018年4月に、返礼品は地場産品に限るよう新たに求め、2018年7月に、ルールを守っていない寄付額の規模が大きな自治体を公表し改善を求めたそうだが、その“ルール”は法律で決まっているものではないため、租税法定主義から強制はできない。

 ただ、無茶なことをしてふるさと納税を集めても地域のためにならないため、それについては地域の人が苦情を言ったり、よりよいアイデアを出したりすべきだろう。

 なお、*2-6のように、JA全中は、准組合員のJAへの意思反映や運営参画促進に向けた具体策を提起するそうだが、6次産業化を進めるには、加工やサービスを行って貢献してくれる人を准組合員にしたり、理事にしたりすると、アイデアが集ってよいと考える。そのため、農業従事者以外を農協から排除する方が営業センスがない。

(3)問題の本質
 問題の本質について、*3のように、西日本新聞が「①返礼品の過当競争といわれても、ふるさと納税の寄付金に頼らざるを得ない地方財政の窮状がある」「②30%という線引きの基準は妥当か」「③税収格差が広がる中で、自治体同士が寄付という名の税金を奪い合う構図に陥っている」「④地方分権改革による国から地方への税源移譲こそが問題解決の本筋だ」「⑤原材料から製造・流通まで複雑に絡む『地元産品』を具体的にどう定義するのか」と記載している。

 私は、①④には賛成で、地方分権と言っても財源がなければ何もできないため、例えば企業の偏在とは関係のない消費税を全額地方税にするなどの税源移譲があってよいと考える。しかし、高所得者になる人を教育して都会に出した地方に見返りがあるのは自然であるため、ふるさとへの貢献をするふるさと納税があるのはよいことだと思う。

 また、②の30%基準は、まあそのくらいだろうという意味しかない。さらに、③については、単に自治体同士が税金を奪い合っているのではなく、それぞれの自治体の役所が、頭を絞って魅力的な産物を作ろうとしていることにも意味があり、新しい産物を軌道に乗せるため「ガバメントクラウドファンディング」を行って応援するのも名案だ。

 ⑤についても、確かに地元とはいろいろな関わり方があり、地元の産業振興に貢献してくれる企業は多いため、定義は困難だろう。

(4)ふるさと納税の使途
 ふるさと納税は、返礼品目的だとして批判されることが多いが、どの自治体も使途を選択できるようになっている。つまり、納税者が使途を指定することができるのが、他の税金とは異なるよい点で、自分が住んでいる地域に使途を指定してふるさと納税することもできる。
 
 例えば、*4-1のような産業スマート化センターの開設・IT導入を応援したり、*4-2のような剣道・体操・ヨット・バレーボール・化学などの部活指導を専門家に任せる資金を作ったり、*4-3のような障害者・高齢者のケアを充実する費用に充てたり、市長にお任せしたりと、地域も魅力的な使途を工夫するようになる点で意義深い。その時、単なる景気対策のバラマキような無駄遣いの使途に、ふるさと納税をする人はいないだろう。

<ふるさと納税に対するクレーム>
*1-1:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO30385930R10C18A5EA3000/?n_cid=SPTMG002 (日経新聞 2018年9月11日) ふるさと納税、3000億円視野 返礼品抑制でも伸び
 ふるさと納税が返礼品の抑制が広がるなかでも増えている。日本経済新聞が全国814市区を調査したところ、6割が2017年度の寄付額が増えると見込む。市区分だけでも2014億円と前年度より10%伸びており、都道府県や町村分を含めると3000億円の大台を突破する勢い。自治体の歳入としてはガソリン税に匹敵する規模で、主要な収入源になってきた。17年度の自治体別の増額幅をみると、最も多かったのは1億円未満で全体の45%を占める。5億円以上は3%にとどまっており、1億~5億円未満が11%だった。ふるさと納税が特定の自治体に集中するのではなく、利用の裾野が広がり多くの自治体で厚みを増している構図が浮かび上がる。総務省によると16年度の実績は2844億円。市区の合計額はふるさと納税全体の64%を占めていた。都道府県は1%で町村は35%だった。市区と町村の伸び率はこれまでほぼ同じ水準で推移しており、17年度は全国の総額で3000億円の大台を超える見通しだ。総務省は17年4月に資産性の高い返礼品などを自粛し、返礼割合も3割以下に抑えるよう各自治体に通知。18年4月には返礼品の見直しの徹底を改めて求める追加の通知を出している。通知後も高い返礼割合の自治体は残るが、集め方や使い道の工夫が広がっている。北海道夕張市はあらかじめ使途を明示した。インターネットで不特定多数の人から少額の寄付を募るクラウドファンディングの手法を採用。少子化に悩んでいた地元の高校を救うプロジェクトなどが共感を呼び、寄付額が3000万円増えた。青森県弘前市は重要文化財である弘前城の石垣修理や弘前公園の桜の管理といった街づくりに参加できる仕組みが人気を集め、前年度より1億6000万円上積みした。「高額」の返礼品だけでなく、幅広いアイデアが寄付を押し上げている。一方で16年度にトップ30だった市区のうち、6割が17年度は減少すると見込む。家電を返礼品から外した長野県伊那市(16年度2位)は66億円減少。パソコンの返礼品をやめた山形県米沢市(同5位)も17億円減った。ただ、全体では17年度も16年度より10%伸びる見通し。上位の減少分を幅広い自治体の増加分でカバーしている形だ。自治体の最大の歳入は約4割を占める地方税。16年度は約39兆円だったが、人口減時代を迎え今後の大幅な増収は見込みにくい。3000億円規模の歳入は自治体にとって、ガソリン税や自動車重量税の地方分と並ぶ規模になる。ふるさと納税が地方税の収入を上回る例も出ており、自治体の「財源」としての存在感は高まっている。16年度首位の宮崎県都城市を抑え、17年度の見込み額でトップになったのは大阪府泉佐野市(同6位)。関東、関西を中心に約130億円を集め、16年度より約95億円増えた。ふるさと納税の額は同市の16年度地方税収入の約6割にあたる。返礼品を大幅に増やして1000以上を用意。黒毛和牛などが人気で、3月までは宝飾品や自転車もそろえていた。返礼割合は17年度で約4割と総務省が求める基準より高かったが、18年度は約3割まで下げる方針だ。一方、税収が「流出」している自治体からは不満の声も漏れる。東京23区では16年度だけで386億円が流出。世田谷区では52億円減った。自治体によっては「既存事業や新規の事業計画に影響が出る可能性がある」と懸念するところもある。調査は2月下旬から4月下旬に実施。802の市区から回答を得た。
▼ふるさと納税 生まれ育った故郷や応援したい自治体に寄付できる制度。納税者が税の使い道に関心を持ったり、寄付を受けた地域を活性化させたりする目的で2008年度に導入された。寄付額から2000円を差し引いた金額(上限あり)が所得税と個人住民税から控除される。15年度から控除上限額を2倍に引き上げ、確定申告せずに税額控除の手続きができる特例制度を導入して利用が広がった。

*1-2:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO33497750X20C18A7EA1000/?n_cid=SPTMG022 (日経新聞 2018年9月11日) ふるさと納税、東京都から645億円の流出に
 総務省は27日、ふるさと納税で控除される住民税が2018年度に全国で約2448億円になると発表した。前年度に比べて37%増えた。都道府県別では、東京都内の控除が約645億円で最も多い。その分だけ、都内の自治体の税収が他の道府県に流出していることになる。待機児童対策などに響くとの指摘もあり、大都市圏の自治体にとっては頭の痛い状況だ。ふるさと納税は故郷や応援したい自治体に寄付できる制度で、原則として寄付金から2千円を引いた額が所得税や住民税から控除される。今回は18年度分の課税対象となる17年の寄付実績から、地方税である住民税の控除額を算出し、都道府県別に集計した。ふるさと納税による寄付の伸びを反映し、住民税の控除額も軒並み増えている。最大の東京都からの「流出額」は約180億円増えた。第2位の神奈川県は257億円と約70億円膨らんだ。こうした大都市圏の自治体からは「行政サービスに影響が出かねない」との声が漏れる。ふるさと納税を巡っては、自治体が高額な返礼品を用意することでより多くの寄付を集めようとする競争が過熱した問題がある。総務省は17年4月、大臣通知で各自治体に「良識のある対応」を要請し、返礼品を寄付額の3割以下にすることなどを求めた。子育て支援や街づくりなどに使い道を明確にするなど、既に多くの自治体は対応を見直している。返礼割合が3割を超える市区町村は、18年6月時点で1年前の半分以下の330自治体に減った。それでも制度自体の人気は根強い。ふるさと納税は17年度には初めて3千億円を突破した。一方、税収の流出に悩む大都市圏でも地域資源の活用などの工夫で、寄付を集める取り組みが広がる。大阪府枚方市は市長が案内する文化財見学ツアーを用意し、17年度に2億8000万円を受け入れた。東京都墨田区は「すみだの夢応援助成事業」と銘打って、農園開設などの民間プロジェクトを選んで寄付できるようにしている。

*1-3:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180920&ng=DGKKZO35549490Z10C18A9EA1000 (日経新聞社説 2018年9月20日) ふるさと納税は原点に戻れ
 野田聖子総務相がふるさと納税制度の見直しを表明した。過度な返礼品を送っている自治体への寄付は税制優遇の対象から外す方針だ。これを機に同制度の本来の趣旨を再確認したい。ふるさと納税は制度ができて今年で10年になる。当初、年間の寄付額は100億円前後で推移していたが、2013年度ごろから増え始め、17年度は3653億円と前年度よりも3割増えた。寄付が増えた最大の理由は高額な返礼品だ。ネット上で仲介する民間サイトが増えて比較しやすくなったこともあって、自治体間の返礼品競争が過熱した。総務省は17年4月に、返礼品の金額を寄付の3割以下にすることなどを要請したが、今年9月時点でも全国の約14%の自治体が従っていない。地元の特産物以外の商品を送る市町村も多い。総務省の要請には法的な拘束力はないが、ルールに従う地域からみれば納得できないだろう。現状では不公平感がぬぐえない。17年度に全国で最も寄付を集めた大阪府泉佐野市は、地元産品以外も含め肉やビール、宿泊券など1千種類以上の返礼品をそろえ、返礼率も最大で5割にのぼるという。もはやカタログ通販だ。こうした自治体がある以上、優遇税制を見直すのはやむを得ない。過度な返礼品以外にも、ふるさと納税には様々な批判がある。例えば富裕層に有利な点だ。所得が多い人ほど税金の控除額が増えるためだ。ふるさと納税が日本の寄付文化を育んでいる面もあるが、自然災害の被災地には、返礼品がなくても多額の寄付が集まっている。特産品の代わりに故郷にある墓を掃除したり、同制度を使って資金を募って過疎地での起業を後押ししたりする市町村もある。ふるさと納税はその名の通り、故郷や気になる地域を個人の自由意思で応援する制度だ。今回の見直しで高額な返礼品がなくなり、寄付額が減ったとしても、それは仕方がないのではないか。

*1-4:https://zuuonline.com/archives/165336 (抜粋) ふるさと納税の控除額の計算方法
 ふるさと納税には「納税」という言葉がついているが、寄付金控除のひとつだ。各自治体に寄付をすることで、原則として寄付額から2000円を差し引いた金額が、所得税と住民税から控除される。例えば1万円を寄付すると、2000円を差し引いた8000円が所得税と住民税から控除される。住民税の控除は、さらに基本分と特例分に分かれる。住民税控除の特例分はふるさと納税特有のもので、他の寄付金控除にはない。寄付金の額から2000円を引いた金額の全額を控除できるように、特別に考え出されたのが特例分なのだ。ただし、住民税の特例分には一定の上限(個人住民税所得税割の2割)があるので、注意が必要だ。ふるさと納税全体の計算式は以下のとおり。
  ふるさと納税控除=所得税控除(+復興特別所得税控除)+住民税控除(基本+特例)
●所得税からの控除
 ふるさと納税は原則、所得税と住民税からその控除額を計算する。所得税の確定申告における寄付金控除には、所得税率を掛ける前の所得から差し引かれる「所得控除」と、所得税率を掛けた後の税額から直接差し引かれる「税額控除」があるが、ふるさと納税は所得控除に該当する。そのため、ふるさと納税をした金額から2000円を引いたものに所得税率を掛けた額が、所得税からの控除額になる。2037年12月31日までは、所得税のほかに所得税率の2.1%の税率の復興特別所得税がかかり、ここからもふるさと納税の控除がおこなわれる。所得税等から差し引かれる控除額は、以下の算式の合計額となる。
  ①所得税からの控除額=(寄付金-2000円)×所得税率
  ②復興特別所得税から控除額=所得税からの控除額×復興特別所得税率2.1%
 所得税率は以下の表で確認できる。
   <所得税速算表>
   課税される所得金額      税率     控除額
   195万円以下          5%       0円
   195万円超 330万円以下    10%   9万7500円
   330万円超 695万円以下    20%    42万7500円
   695万円超 900万円以下    23%   63万6000円
   900万円超 1800万円以下    33%  153万6000円
   1800万円超 4000万円以下   40%  279万6000円
   4000万円超 45% 479万6000円
 ※課税される所得金額は、所得金額から所得控除を差し引いた後の金額。
●住民税からの控除(基本分)
 ふるさと納税は所得税だけでなく、住民税からも控除される。住民税は基本分と特例分にわかれるが、基本分はふるさと納税だけでなく、寄付金控除すべてに共通の基本的な計算方法だ。ふるさと納税をした金額から2000円を引いたものに、住民税率を掛けた額が住民税からの控除額(基本分)になる。計算式は以下の通り。
  ③住民税からの控除(基本分)=(寄付金-2000円)×住民税率10%
 ※住民税の内訳は道府県民税の税率が4%、市町村民税の税率が6%。
●住民税からの控除(特例分)
 住民税控除の特例分は、ふるさと納税をした金額から2000円を引いたもの全額が控除できるように考え出された、いわば「ふるさと納税のための控除」だ。所得税や住民税からの控除基本分から控除しきれなかったものを、特例分で控除するイメージとなる。計算式は以下の通り。
  ④住民税からの控除(特例分)=(寄付金-2000円)-所得税からの控除分
                            -住民税からの控除(基本分)
 ふるさと納税控除に占める特例分の割合は以下の式で求められる。
  ⑤特例分の税率=100%-「所得税の税率」×(100%+復興特別所得税率2.1%)
                         -「住民税からの控除(基本分)10%
 所得税率が5%の場合なら、ふるさと納税控除に占める特例分の割合は100%-5%×102.1%-10%=84.895%となり、所得税率が20%なら100%-20%×102.1%-10%=69.58%となる。所得税率が異なっていても、特例分の割合を調整することで誰もが「寄付金-2000円」の控除を受けることができるようになっている。ただし、特例分には上限があり、個人住民税所得税割の2割と決まっている。ふるさと納税の金額から2000円をマイナスした金額が、個人住民税所得割額の20%を超える場合の特例分は、上記の計算式に関係なく個人住民税所得割額×20%となる。寄付額を考える際に考慮してほしい。

<総務省の対応と自治体>
*2-1:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO28778380Q8A330C1MM0000/?n_cid=SPTMG053 (日経新聞 2018年9月11日) ふるさと納税、返礼品は地場産品だけに 総務省通知
 総務省はふるさと納税の返礼品を地場産品に限るよう自治体に求める。4月1日付で通知を発送する。海外のものなど「ふるさと」とは関係がなかったり、縁遠かったりするものを返礼品にする自治体がある。本来の目的から外れていることを問題視、自治体どうしの過剰な競争を防ぐ狙いだ。通知に強制力はないが、変更を迫られる自治体も多そうだ。ふるさと納税は2016年度の寄付額が15年度比72%増の2844億円と最高を更新。一方で、制度の趣旨に沿った運用ができるかがかねて課題になってきた。一部の自治体で、海外産のワインやシャンパン、関係のない地域の調理器具やフルーツなどを取り扱っているケースがある。今回の通知には「区域内で生産されたものや提供されるサービスとすることが適切」と明記する。「制度の趣旨に沿った良識のある対応」として地場産品に限るよう自粛要請する。たとえば岐阜県七宗町は民間のギフトカタログを返礼品にしている。町内の商店街に返礼品のアイデアを募り、ギフトカタログを返礼品に加えていた。町の担当者は今回の通知に「特産品の多い豊かな自治体と格差が広がるだけだ」と話した。総務省は17年4月にも寄付額のうち返礼品が占める価格を3割以下に抑え、家電や宝飾品などの換金性の高い品もやめるよう通知している。これに対しては、多くの自治体が返礼品の分量や寄付額を変更するなどして対応した。今回の通知では具体的な基準は示さないが、対応を迫られる自治体も多いとみられる。総務省は自治体のふるさと納税活用事例も公開し、地域振興に生かした事例を紹介。改めて高額返礼品の自粛を求めるなどして、ふるさと納税で起業や産業振興などを支援するよう自治体に促す。野田聖子総務相は30日の閣議後の記者会見で「結果として都市に本社を持つ企業の収益につながる事態になっている。新しい地場産品を作るという発想を持ってほしい」と話した。
■戸惑う自治体、モノからコトへ模索
 自治体側からは戸惑いの声が漏れる。輸入品のホーロー鍋を返礼品にしていた福島県南相馬市は「どう対応するか考えなければいけない」。東日本大震災の生活基盤再生を手掛けるNPOをふるさと納税で支援する形だが、総務省の通知に抵触するおそれもある。関西地方の自治体は別の自治体とふるさと納税で返礼品を融通する協定を結んだ。日用品などが割安で手に入るとして寄付額を伸ばした。「震災の被災地支援」としてこうした協定を結ぶ自治体も多く、「自治体の自主性を奪いかねない」との懸念もくすぶる。昨年の返礼率の引き下げを背景に、寄付金を起業や地域振興にいかそうという動きが相次ぐ。総務省は寄付金の使途を明確にして、ふるさと納税をクラウドファンディングのように募る「ガバメントクラウドファンディング」といった手法を促す。岐阜県池田町はローカル線の「養老線」の存続活動に寄付金を使う。鹿児島県霧島市は集めた寄付金で商店街のテナントを使った起業を支援する事業を始めた。ふるさと納税サイト「ふるさとチョイス」を運営するトラストバンク(東京・目黒)によると、同社が立ち上げたガバメントクラウドファンディングの本数は2017年に111件と前年の約2倍に増えた。須永珠代社長は「地域の自立を促す有効な制度となるよう、一定のルールを設けることが大切だ」と指摘する。ふるさと納税は返礼品を競う「モノ」から、「コト」へと比重を移しつつある。もっとも、16年度の寄付金受け入れ額では宮崎県都城市を筆頭に上位は牛肉など食品の人気が高い自治体が占めており、模索が続く。

*2-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180915&ng=DGKKZO35411780U8A910C1EA5000 (日経新聞 2018年9月15日) 総務省、ふるさと納税見直し、特産品少ない自治体、困惑
 総務省が「ふるさと納税」の見直しに動き始めた。目先の寄付金を集めようと豪華な返礼品をそろえる競争が過熱。地域と関係の薄い家電製品や高級酒などが返礼品になる例まで出ていた。自粛要請しても一部自治体は従わず、業を煮やした総務省は11日、過度な返礼品を用意する自治体への寄付を税優遇から除外する抜本策を表明した。2019年度税制改正での実現を目指す。「ふるさと納税は存続の危機にある。ショッピングではない」。11日の閣議後の記者会見。野田聖子総務相はいつになく厳しい表情で苦言を呈した。「制度の趣旨をゆがめているような団体については、ふるさと納税の対象外にすることもできるよう見直しを検討する」。ふるさと納税が始まったのは2008年度。自治体への寄付金に応じて税金を控除する制度で、故郷や災害の被災地などを応援するのが本来の狙い。都市部の住民が田舎の故郷や災害で傷ついた地域などを寄付金で応援するというわけだ。原則として寄付金から2千円を引いた額が住民税や所得税から控除される。当初は年100億円にも満たなかった寄付額は17年度には3653億円にまで拡大した。だが、理想と現実はかけ離れている。いびつな光景はそこかしこに広がる。ビールやギフトカードに化粧品、海外ホテルの宿泊券、都内料亭の食事券。ふるさと納税のインターネットサイトや自治体のホームページをのぞくと、そんな返礼品がズラリと並ぶ。寄付するお金とは別に原則2千円の自己負担で好みの返礼品を手に入れられる。その行為は買い物とかわりない。控除される税金は本来、寄付者の居住地で何らかの行政サービスに充てられるはずのものだ。それが別の地域に流れていく。その先で地場産品の消費拡大など地域振興につながるならまだしも、返礼品が地場産品ではないケースも目立つ。日本全体として貴重な税財源が嗜好品のお取り寄せに使われているとの見方もできる。総務省も問題を黙って見過ごしてきたわけではない。17年度には大臣通知で全国の自治体に「良識のある対応」を呼びかけた。具体的な目安として返礼品の調達価格を寄付金の3割以内に抑えることを求めた。地場産品以外の扱いも控えるよう要請した。18年度にも同様の大臣通知を改めて出した。この7月には、地場産品以外の過度に高額な返礼品で10億円以上の寄付を集める全国12市町の具体名を公表。警告の意味も込めた。ゆがみは徐々に是正されてはいる。返礼割合が3割を超える自治体は16年度で1156と全体の65%を占めていたが、直近の9月1日時点では246(14%)に減少した。民間のカタログギフトを返礼品にしていた岐阜県七宗町は総務省の通知を受けた今春に除外した。秋田市は10月までに3割超の返礼品を取り下げる予定。クルーズ船の乗船クーポン券はすでに申し込みサイトから削除した。一方で見直しに消極的な自治体も少なくない。香川県直島町の担当者は「見直さないわけにはいかないが、特産品が少なく簡単にはいかない」とこぼす。今後、見直す時期や意向が決まっていない自治体は174(10%)。ビールなどを返礼品として17年度に135億円と全国最多の寄付を集めた大阪府泉佐野市は総務省の調査に回答していない。それぞれの事情や言い分はあるにせよ、一定の税収を確保したいのが自治体の本音。通知を順守する自治体からは「正直者がバカをみないようにしてほしい」との声も上がる。制度の創設から丸10年。原点を改めて問い直す時期に来ている。

*2-3:https://digital.asahi.com/articles/CMTW1809211100003.html?iref=pc_ss_date (朝日新聞 2018年9月21日) 毛呂山のユズ「収穫して」
◇ボランティアと農家募集■高齢化で放置される畑増え
 古くからユズの産地として知られ「桂木ゆず」を特産する埼玉県毛呂山町は10月から、「収穫してほしい」農家と「収穫したい」ボランティアをそれぞれ募集する。農家の高齢化が進み、実がなっても収穫されないユズ畑が増えているため。ジュース製造など6次産業化を進めるなか、もったいないユズを減らして収量を増やすねらいだ。町では近年、11月中旬~12月下旬ごろの収穫期を過ぎ正月明けになっても、実を付けたままの木々が目立つようになった。町の高齢化率は今年8月1日に32・5%で、10年前から11・5ポイントも上昇。ユズ畑の多くは山の斜面にあり、木にはしごを掛けるなどして実をもいで、斜面を運び下るのは重労働だ。町の担当者によると、収穫を続ける農家からも「体がきついので、年々、とれる範囲が狭まっている」という声が上がっている。町内の栽培面積は計約10ヘクタールあり、150トンはとれるはずが、昨年度の出荷量は約100トン。「差のほとんどは、放置されている畑の分とみられる」うえ、収穫しないと木に新しい実がならなくなってしまうという。応募した農家は、募集に応じた摘み手「ゆず採り隊員」に収穫してもらい、出荷する。町は「隊員に収穫物の一部など若干の謝礼あり」としている。ともに募集期間は10月1日~31日。町産業振興課(049・295・2112)へ。

*2-4:https://dot.asahi.com/wa/2018082200060.html?page=1 (週刊朝日 2018.8.24) 過熱する「ふるさと納税」競争 “国と闘う”自治体の本音
 好きな自治体に寄付すれば、特産品などがもらえるふるさと納税。自治体間の競争は激しく、寄付金に対する「返礼率」が3割を超える商品も多数ある。家電や商品券など地場産品以外もあり国は改善を求めてきたが、従わないとして公表された自治体が複数ある。あえて“国と闘う”本音は?ふるさと納税のメリットは、地方の農林水産物や特産品などいろんな返礼品をもらえることだ。寄付金を集めるための返礼品競争が過熱する中で、総務省は引き締めを図ってきた。昨年4月には寄付金に対する「返礼率」を3割以下にすることや、家電や金券類を扱わないよう求める通知を出した。今年4月には、返礼品は地場産品に限るよう新たに求めた。7月にはルールを守っていない寄付額の規模が大きな自治体を公表し、改善を求めた。返礼率が3割以上で、地場産品以外を返礼品にしているにもかかわらず、通知に従わない12自治体だ。総務省は通知は強制ではないとしているが、自治体が受け入れないのは極めて異例だ。どんな事情があるのか。「うちは肉や米など人気を集める地場産品がない。“アイデア力”で勝負しなければ、自治体の格差が広がってしまうだけです」。こう主張するのは泉佐野市(大阪府)の担当者だ。2017年度の寄付額は135億円で全国トップ。前年度の約4倍と大きく伸びている。返礼品を紹介するサイトをのぞくと、「黒毛和牛切落し1.75キログラム」「魚沼産コシヒカリ 15キログラム」などが並ぶ。和牛は鹿児島県産などで、米は新潟県のものだ。格安航空会社(LCC)のピーチ・アビエーションの航空券に換えられるポイントといった、金券類に相当するものもある。品数は前年度から約400品増やして1千品以上になり、返礼率は全体で45%に達する。まるで大手通信販売のサイトのようだ。やり過ぎではないかとの批判もあるが、担当者はこう話す。「市内に本店、支店がある事業者に返礼品を提供してもらっている。和牛は地元の老舗が目利きしたお肉。航空会社のポイントは市内の関西空港の活性化につながった」。総務省の通知に従わない背景には、市の厳しい財政状況もある。関西空港へつながる道路や駅前整備などの費用がかさみ、04年に財政非常事態宣言を出し、09年には「財政健全化団体」に陥った。職員を6割減らすなどして14年に健全化団体から抜け出してはいるが、今後の地域活性化にはふるさと納税の寄付金に期待を寄せる。「財政難で市内の大半の小中学校でプールがない。ふるさと納税のおかげで新しくプールが一つ設置でき、これからも順次整備していく予定です」(担当者)。みやき町(佐賀県)は72億円と寄付額が全国4位。佐賀牛など地場産品もあるが、他にも人気の返礼品がある。タブレット端末iPad(アイパッド)や、旅行大手エイチ・アイ・エスのギフトカードだ。返礼品を選ぶサイトでは、この二つは8月上旬の時点で、人気のため数カ月待ちとなっている。担当者は返礼品の意図をこう説明する。「ギフトカードの使途は限定されていないが、みやき町への里帰りに使ってもらいたい。iPadには町の映像が見られるアプリがついていて、町内出身者には地元を思い出してもらい、町外の人にはPRになります」

*2-5:http://www.tokyo-np.co.jp/article/ibaraki/list/201809/CK2018092102000148.html (東京新聞 2018年9月21日) イノシシの皮で起業目指す 城里町の地域おこし協力隊員・瀬川さん
 城里町の地域おこし協力隊員として活動する瀬川礼江(ゆきえ)さん(26)が、食害が深刻なイノシシの皮を加工・販売する起業に向け、インターネットのクラウドファンディングで出資を募っている。「革製品の選択肢にイノシシを入れてもらえるようにしたい」と意気込む瀬川さん。田畑を荒らす「厄介者」を、資源として利用する文化を根付かせるための応援を呼び掛ける。瀬川さんは土浦市出身。東京で就職したが「地域や人とのつながりを持ち、人生の実になる仕事がしたい」と、町の地域おこし協力隊員に応募。二〇一六年四月の採用後すぐに町職員に誘われ、狩猟免許と散弾銃所持の許可を取得した。猟友会に同行すると、仕留めたイノシシの皮は、利用されることなく捨てられていた。他地域を調べると、西日本で加工・販売が事業として成り立っていることが分かった。イノシシ革の特徴について「なめすと牛革より柔らかい。傷も付きにくく、お手入れもほとんどいらない」と瀬川さん。野生のため、最初から傷が付いている場合もあるが「それも味だと思う」と話す。協力隊員の任期が切れる一九年四月の起業を目指して皮の加工方法を学び、工房として使える物件を探した。町内の元鮮魚店を借りられる目途が立ち、改装や設備に必要な七十五万円を集めるべく、クラウドファンディングサイト「Makuake」に登録した。クラウドファンディングの期間は十月十五日まで。出資してくれた人には、金額に応じてコースターや小物入れなどを贈る。二十日現在、目標額の三割強が集まっている。町農業政策課によると、町内で捕獲されたイノシシは一七年度に約二百五十頭に上り、一八年度も前年を上回るペース。瀬川さんは「捨てられていた物が、ちょっとした工夫で日常に彩りを加えてくれる。県の魅力も伝えていけるような物作りの場にしたい」と話している。

*2-6:https://www.agrinews.co.jp/p45246.html?page=1 (日本農業新聞 2018年9月20日) 准組参画の仕組みを JAごとに要領策定 全中が具体策提起
 JA全中は、准組合員のJAへの意思反映や運営参画促進に向けた具体策を提起した。今年度中に各JAで要領を策定し、仕組みを整備した上で来年度から実践する。対象者の選定や具体的な手法など検討のポイントを示した。准組合員モニターや准組合員総代制度などの例を参考に、JAごとに取り組みを進める。JAの准組合員は約608万人(2016年度)と正組合員を上回り、増加を続けている。ただ、協同組合でありながら、多くの准組合員にJAへの意思反映、運営参画への道が開かれていないとの課題があった。一方で2016年4月に施行された改正農協法では、施行後5年後までに准組合員の利用規制の在り方検討に向けた調査を行い、結論を得るとされる。准組合員の位置付けの明確化も重要になる。JAグループでは15年度の27回JA全国大会決議で、准組合員を「農業振興の応援団」と位置付け段階的に意思反映・運営参画を進めることを盛り込んでいた。来年3月の28回大会・県域大会の議案策定に向けた基本的考え方でも意思反映・運営参画の強化を明記。こうした方針を踏まえ、今回具体策をまとめた。全中はまず、各JAで正組合員も含めたJA自己改革の対話運動を通じた組合員の意思反映を重視する。その上で、各JAで准組合員の意思反映や運営参画を促す要領の策定を提起。全中によると、全国平均で准組合員のうち3、4割は農家出身者で、JAへの意思反映が一定にできているとみられる。事業利用などで加入した残りの6、7割を対象に、意思反映などができる仕組みを目指す。JAごとの実態に合わせて、准組合員の位置付け、意思反映などの手法を要領にまとめる。意思反映の希望の有無や事業利用量、接点の多さなどで対象を選定する手法も考えられるとした。具体例として、准組合員の集いや人数を限定したモニター、支店ふれあい委員への選出、准組合員総代制度などを挙げる。さまざまな仕組みを組み合わせて、段階を踏んで参画ができる仕組みが望ましいとした。こうした取り組みは既に実践しているJAもあり、全中は事例集や導入マニュアルも整備している。全中は「何らかの意思反映ができている准組合員の割合や現在設けている仕組みによって、取り組みは変わってくる。JAの実態に合わせて声を聴く機会を設けていくことが重要だ」(JA改革推進課)と強調する。

<問題の本質>
*3:https://www.nishinippon.co.jp/nnp/syasetu/article/450066/ (西日本新聞 2018年9月16日) ふるさと納税 高額返礼品だけの問題か
 野田聖子総務相が、ふるさと納税制度の抜本的な見直しを表明した。寄付金に対する自治体の行き過ぎた「豪華返礼品」などを排除して制度本来の趣旨を取り戻すのが狙いという。高価な返礼品で寄付金を集める手法は問題である。国が自粛を求めても応じようとしない自治体の姿勢も問われよう。ただ、法律を改正して強制的に排除する手法が妥当かどうかは議論の余地がある。同時に、返礼品の過当競争といわれても、ふるさと納税の寄付金に頼らざるを得ない地方財政の窮状にも目を向けたい。出身地の故郷や応援したい市町村など好きな自治体に寄付をすれば、自己負担の2千円を除く金額が所得税や住民税から差し引かれる。ふるさと納税制度は2008年4月に始まった。控除される寄付額の上限を2倍にするなど制度が拡充される一方、常に問題視されてきたのが自治体の返礼品だった。返礼品に関する法令上の規定はない。だが、制度が普及するにつれて一部の自治体は返礼品の豪華さを競い合うようになる。商品券や旅行券のように換金できるものや、地場産品とは無縁と思われる物品などで返礼するケースも続々と出てきた。総務省の調査(今月1日時点)によると、九州の64市町村を含む全国246の自治体が寄付額の3割を超す返礼品を贈っていた。これは、全国の自治体の13・8%に相当するという。総務省は寄付額の30%超の高額品や地元産以外の物品を除外するよう総務相通知で要請してきたが、これを法制化する。要請に応じている自治体は現状は不公平と訴えており、野田総務相は「一部自治体の突出した対応が続けば、制度自体が否定される」という。確かに一理ある。だが、他方で30%という線引きの基準は妥当か。原材料から製造・流通まで複雑に絡む「地元産品」を具体的にどう定義するのか。地方が納得する議論が必要だ。地方自治に関わる問題である。地方が国の言うことを聞かないから-という理由で法改正まで持ち出すのはいかがなものか。素朴な疑問も禁じ得ない。もちろん返礼品とは無関係にふるさと納税をしている人は、たくさんいる。自然災害の被災地にこの制度を活用した寄付が集まるようになったのも、望ましい効用の一つと評価したい。問題の核心は、税収格差が広がる中で、自治体同士が寄付という名の税金を奪い合う構図に陥っていることだ。地方が全体として豊かになるためにはどうすべきか。地方分権改革による国から地方への税源移譲こそが問題解決の本筋であろう。

<ふるさと納税の使途>
*4-1:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/277384 (佐賀新聞 2018.9.20) 佐賀県産業スマート化センター開設へ、10月、IT技術導入を支援
 人工知能(AI)やモノのインターネット(IoT)など最新テクノロジーを企業に積極的に導入してもらうとともに、IT産業の成長を支援しようと、佐賀県は10月1日、佐賀市の県工業技術センター内に「県産業スマート化センター」を開設する。県内外の企業のソフトやデバイスなど約20種類を無料で使うことができる。アドバイザーを配置し、相談対応や導入支援も行う。10月22日にオープニングイベントを開く。センターは工業技術センターの生産技術棟内に開設する。ショールームを設け、AIやIoTなどの最新技術を気軽に体験できる。他に人材育成やセミナーなど多彩なメニューを予定している。本部機能は県工業技術センター内に置くが、教育機関やコワーキングスペース(共有オフィス)、IT企業などの協力を得て、セミナー開催やソフトウエアの体験を行うサテライト拠点を県内に設置する展望も描いている。また、同センターの運営や、最新技術の体験・展示に協力するサポーティングカンパニーも県内外から多数参画する予定だ。県産業労働部の担当者は「最新技術を導入したい県内企業のニーズはあったが、IT事業者との接点がほとんどなかった。センターが両社をつなぐ役目を担えれば」と話す。

*4-2:http://qbiz.jp/article/141042/1/ (西日本新聞 2018年9月20日) 【あなたの特命取材班】「ブラック部活変えよう」教諭が発信 顧問は強制、休日返上 「苦しみ」共有 全国へ
 休みもなく、長時間化する部活動の練習が「ブラック部活」ともいわれ、学校現場を疲弊させている。西日本新聞あなたの特命取材班は5月に現状を報じたが、その後も変わらぬ状況に悲痛な声が絶えない。一方で、悩みを抱えるのは生徒だけではない。多くの学校で部活動の顧問が「強制」となっている中、部活の在り方に異議を唱え、発信する教諭が福岡にいる。「先生も生徒もみんな苦しんでいる」。思いは全国へ広がっている。福岡県の公立中学校に勤務する体育教諭、中村由美子さん(39)=仮名=は2014年、会員制交流サイト(SNS)上でつながった全国の教員仲間6人で「部活問題対策プロジェクト」を立ち上げた。インターネット上で(1)教諭に対する顧問の強制(2)生徒に対する入部の強制(3)採用試験で部活顧問の可否を質問すること−に反対する署名を集め続け、署名数は現在、延べ6万を超える。中村教諭は体育教諭だが本年度、部活の顧問を受け持たない。初めて「拒否」したのは15年。きっかけは自身の子どもの異変と病気だった。それまで長年、部活の指導を求める保護者や学校の期待に応えてきた。ソフトテニス、剣道、バレーボールなど、全て運動部の正顧問を受け持ち、平日の帰宅は午後9〜11時。土日は毎週練習試合を引率し、年間を通しての休みは盆と正月の数日のみ。帰宅後も、保護者から相談などの電話が自宅にかかってくる。その間、家庭に割く時間はなく、子どもの世話は両親頼み。10年前、ストレスをためた当時小学生だった長女の異変に気付けず、担任から、もっと長女に目を向けるよう指摘された。14年、次男の出産時に1歳だった長男の血液の病気が分かり、働き方を見直そうと決めた時、SNS上で同じような悩みを抱える教諭らと出会った。
   ■    ■   
 長時間化する部活は教員の多忙化の大きな原因だ。文部科学省の16年の調査では、中学教員が土日に部活指導に費やす時間は2時間10分と、10年前より1時間4分増えた。昨年のスポーツ庁の全国調査でも、公立中の平日の活動日数は休みなしの5日が52%で最も多く、土曜の活動は「原則毎週」が69%。本来は強制できないが、全教員が顧問になるのを原則としているのが6割で、顧問を担当する教員の半数以上が疲労や休息不足などの悩みを抱えていた。福岡都市圏の公立中学の50代男性教諭は「たくさん練習試合に連れて行ってくれるのがいい先生だという、保護者からのプレッシャーもある」と話す。
   ■    ■   
 中村教諭は部活の顧問を断った15年以降、これまで以上に生徒指導と授業研究に力を注ぐ。16、17年は副顧問として、保護者対応を受け持ち、顧問のサポート役に徹した。正式に部活を持たないからといって、保護者や生徒との関係に支障はなく、これまでできなかった新しい授業スタイルを考え、実践することもできるようになった。部活を熱心に指導する教諭については「すごいと思うし、ありがたい」。一方で、専門知識を持たずに顧問を受け持たされる教諭が多い現状に一番問題があると感じてもいる。「部活指導のスペシャリストはごく一部。最新の指導法や知識を学ぶ時間も与えられないまま指導にあたることが、長時間の練習や試合の詰め込みにつながっているのではないでしょうか」。教諭が黙っていては何も変わらない。教諭、生徒、保護者、それぞれの部活に対する温度差に悩みながらも、中村教諭はこれからも発信を続けるつもりだ。

*4-3:http://qbiz.jp/article/140099/1/ (西日本新聞 2018年9月2日) 【あなたの特命取材班】障害者施設切られる冷房 熱帯夜続きでも「午後9時半まで」 福岡近郊「熱中症が心配」
 岐阜市の病院で、エアコンが故障した部屋に入院していた患者5人が相次いで死亡する問題が発覚して2日で1週間。福岡市近郊の障害者支援施設に親族が入所中という女性から、特命取材班にSOSが届いた。「施設の冷房が午後9時半から朝まで消される。半身不随で感覚が鈍く体も不自由なので、熱中症が心配です」。こうした施設の暑さ対策はどうなっているのか。女性が情報を寄せた施設は福岡県が設置主体で、社会福祉法人に経営を委託している。女性によると、親族は脳梗塞で倒れ、リハビリのために入所している。この8月、夜に冷房がついたことは一度もなく、夜間は「送風」に設定されている。「熱い風が吹いている。窓を開けても風通しが悪くて涼しくならない。相部屋の人も『暑い』と言っており、冬場は寒くても暖房が切られるので毛布を着込まないといけない、と聞いた」。冷房を入れるよう施設側に頼んではと思うが、女性の親族は「やっと入れた施設に感謝している。苦情のようなことを言いたくない」と話しているという。施設がある自治体に気象台の観測地点がないため、近隣である福岡市の8月の気温を調べてみた。午後11時の月間平均気温は29度。夜の最低気温が25度以上の熱帯夜でなかったのは1日だけだった。施設に取材した。担当者は「確かに午後9時半〜午前7時半は冷房は効いていない」と認めた上で「窓は網戸付きで暑ければいつでも開けられる。扇風機の持ち込みも可能」と説明。夜間に冷房を切る理由を聞くと「以前からそう運用している。この夏も苦情などはなく、暑さで体調を崩した人もいない」と強調した。
      ■
 九州各地の障害者支援施設に尋ねてみると、対応には「温度差」が浮かぶ。熊本県社会福祉事業団の「県身体障がい者能力開発センター」(熊本市)は「毎日午前6時半から午前2時までエアコンをつけており、それ以降も暑ければ午前4時まで稼働する」。鹿児島県社会福祉事業団の「ゆすの里」(同県日置市)では「常時エアコンをつけ、湿度や温度に応じて職員が調整する」という。長崎県佐世保市の施設は昼夜問わず廊下だけ冷房を入れ、居室は入所者の希望に応じてつけたり、部屋の湿度や温度によって職員が調整したりしている。担当者は「1〜2人部屋で狭いため、冷えすぎて風邪をひく人もいる」と室温調整の難しさを語った。一方で、経済事情もちらつく。ある障害者施設の職員は「経営が苦しく、電気代節約のため夜間はなるべくエアコンを切るよう指示された」と打ち明けた。
      ■
 空調管理に関する国の基準はないのか。厚生労働省によると、障害者自立支援法に基づく通知で「空調設備等により施設内の適温の確保に努めること」と定めている。同省障害福祉課は「エアコン稼働などは施設の判断」とした上で、「利用者の状況を踏まえて空調など適切な生活環境を支援するのは、基本の基本」と指摘した。福祉サービスの苦情を受け付ける福岡県社会福祉協議会の運営適正化委員会の担当者は「施設利用者や家族、職員から『エアコンの効きが悪い。蒸し暑い』という相談がこの夏、数件あった。それでも夜間にエアコンを切るという施設は聞いたことがない」という。気象庁が「命の危険がある災害」と表現した猛暑。意思表示が難しい障害者もいるだけに、家族の心配は尽きない。女性が情報を寄せた冒頭の施設について、福岡県障がい福祉課は、本紙の取材をきっかけに「熱中症などの事故が起きないよう、必要に応じて冷房をつけるよう指導した」としている。

<美味しい冷凍総菜は必ず当たる>
PS(2018年9月24日追加): *5の農商工連携はよいと思う。これに関して、私は、昼間、日清の「食卓便」という冷凍おかずを食べることがあり、その理由は、①電子レンジ4分半の加熱で簡単に食べられる ②管理栄養士が栄養バランスを考えている ③一つ一つの惣菜は少ないが全体として満足感がある ④一食でもバランスよく食べておくと他の食事で少々偏っても何とかなる からだ。また、「低糖質」というジャンルもある。これらは、まずくはないが美味しいとも言えないため、このような栄養バランスを考えて作られた冷凍総菜がもっと美味しければ、当たると思う。そのため、農協・漁協・商工会・森林組合が協力し、採れたての新鮮な材料を使って作るとよいと考える。現在は、ネット通販で産地まで指定してモノを売買できる時代で、地方にもチャンスがあり、ガリバーなども使えば中国への輸出も容易になる。なお、駅弁で鍛えた九州の弁当は美味しいので、管理栄養士の企画・監修があれば、すぐ良い商品ができるだろう。

*5:https://www.agrinews.co.jp/p45295.html (日本農業新聞 2018年9月24日) 「共創の日」 農商工連携で地域振興
 きょう24日は「共創(きょうそう)」の日。JA全中と森林、漁業、商工の全5団体が互いの連携を通じて地方創生につなげようと、東京都内で初の大規模イベントを開く。地域に根差した各団体が手を組み、商品開発や販路開拓などで互いを身近なパートナーと認め合う契機としたい。5団体は、全中と全国森林組合連合会、全国漁業協同組合連合会、全国商工会連合会、日本商工会議所。2017年5月に全国・地域段階の団体同士の連携を通じて、地方創生につなげようと協定を結んだ。「共創」という言葉には、農林漁業と商工業で新たな産業を「共に創造していく」との思いを込めた。例えば商品開発。和歌山県のJAわかやまは、和歌山商工会議所と連携して、地元産ショウガを使ったジンジャーエールを開発している。きっかけとなったのは市を含めた3者の連携協定。商工会議所は飲料販売業者や卸先の小売店の紹介などで協力し、17年には160万本を売り上げる人気商品となった。商品開発の事例が多いが、山林を手入れした際の間伐材を森林組合が買い取る際に、一部を商工会の発行する商品券で支払うといったユニークな取り組みも生まれている。大企業にはまねのできない地域に根差した団体の連携は、国も着目する。今回のイベントは内閣官房が18年度に新設した「多業種連携型しごと創生推進事業」を活用した。業種の枠を超えた地域の民間団体が連携を深め、新たな事業を生み出し、成功例を広めるのが狙いだ。地方では少子高齢化に伴う人口減少、労力不足で産業衰退が大きな課題となっている。JAだけでこうした課題に立ち向かうには限界がある。このため自治体や地域運営組織、他の協同組合、商工団体と幅広く連携する必要がある。特に大きな可能性があるのは商工団体との連携だ。商工会は主に町村にあり、比較的小規模な会員が多く全国に1653ある。会員数は約80万。主に市にある商工会議所は全国に515あり、会員となる事業者数は125万に上る。地域に根差した産業を担い、地域の振興を目的とする団体でJAと相通じる部分は多い。会員企業は、販路や商品開発などのノウハウも持っている。連携は既に進んでいる。全国の商工会議所のうちJAが加入しているのは約半数。農林水産資源を活用した事業を手掛ける商工会議所のうち、3割がJAと連携している。ただ、JA側から積極的に連携を呼び掛ける例は少ないという。連携によって収益が増え、商品化に結び付くケースは多く、双方が「地域振興に向けたパートナー」と改めて認識する必要がある。まず成功例を共有しよう。地方の民間団体の底力を発信し、各地で「共創」が広がることを期待したい。

<北海道ブラックアウトと原発再稼働>
PS(2018年9月25日追加): *6-1のように、北海道地震があった日、太陽光発電施設も風力発電施設も壊れなかったが、北電が送電を停止したため全道で停電した。これに関して、①再エネ発電の不安定性 ②送電線の容量制限 などの言い訳がされるが、東日本大震災から既に7年半も経過しており、①②とも解決する技術がある。にもかかわらず、技術が活かされずに停電させた理由は、安定的な電力と主張する原発の再稼働を求める声が北海道に広がるのを待ったからではないのか。そもそも、電力自由化に伴って送配電会社の中立性は不可欠であるため、2020年にようやく大手電力の発電と送配電部門を切り離す発送電分離が始まるのでは、遅すぎて再エネ事業者には被害が続出している。つまり本気ではなかったということで、2020年に送配電部門を切り離したとしても、電力会社の支配下にあれば同じだ。従って、別の送電線を準備することが必要なのだ。
 そのような中、*6-2のように、佐賀県議会が本会議で、九電の玄海原発に貯蔵されている使用済核燃料に課税対象を拡大する条例を可決し、これによって税収は現行と合わせて5年間で約187億円になるそうだが、可能性が0ではない原発事故がいったん起これば、佐賀県の農林漁業は壊滅的打撃を受け、住民も長く住めなくなるため、もっと大きな損失になる。従って、原発は、使用済核燃料まで含めて、早々に手じまって欲しいのである。

*6-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180925&ng=DGKKZO35694020U8A920C1MM8000 (日経新聞 2018年9月25日) エネルギー日本の選択 再生エネ、なぜ生かせず? 北海道地震が問う危機(中)
 海道が地震に見舞われた6日、太陽光発電事業者のスパークス・グリーンエナジー&テクノロジーの谷脇栄秀社長は釧路市にある大規模太陽光発電施設(メガソーラー)に異常が無いとの報告に胸をなで下ろした。しかし、それもつかの間、別の問題が浮上した。北海道電力が送電再開を認めなかったのだ。一般家庭で約7000戸分の電力を発電しても送電できない状況が約1週間続いた。
●風力増加があだ
 北海道は地価が安く、広い土地を確保できるため、再生可能エネルギーを高値で買い取る制度(FIT)が始まった2012年以降、メガソーラーの新設が相次いだ。風況にも恵まれ、風力発電施設は国内の1割超が北海道に集まる。17年末時点で道内の太陽光や風力の発電容量は合計160万キロワット前後と、仮にフル稼働すれば道内の電力需要の半分をまかなえる計算だ。地震直後、停電で電力変換装置などが壊れるのを防ぐための安全装置が働き、太陽光や風力発電施設は送電を停止した。北海道電は停電を解消するため、老朽化した発電設備を再稼働したり、自家発電設備を持つ企業から電力をかき集めたりした。一方、送電再開をなかなか認められなかったのが太陽光や風力。天候で発電量が変動する「不安定電源」である点がネックとなった。通常は太陽光や風力の発電量に合わせて火力発電の出力を調整して需給バランスをとる。主力の苫東厚真火力発電所が停止した北海道電は本州から電力を送る「北本連系設備」をフル活用したが、調整余力は限られた。再生エネからの送電を再開すると天候などで出力が急低下した場合に対応できず、再びブラックアウトになる恐れがあった。
●電力補完に難題
 電気事業連合会の勝野哲会長(中部電力社長)は「(今回の停電を)検証し、再生エネのデメリットを打ち消せるような運用にしたい」と語る。国は新しいエネルギー基本計画で再生エネを「主力電源化」する方針を打ち出した。地震で浮かび上がったのは、再生エネが主役となる時代に避けて通れない課題だ。緊急時に機動力を欠く石炭火力から液化天然ガス(LNG)などへのシフトを進めないと再生エネとの補完関係を築くことは難しい。大手電力は地域間で予備電力を融通し、太陽光や風力の発電量の急変に備える体制作りを急いでいるが、今回の地震で電力を融通する送電線容量が小さいことが浮き彫りになった。欧州の電力システムは再生エネ仕様に姿を変えつつある。ドイツでは北部で発電した風力由来の電力を南部の消費地へ送る送電線建設の計画が進む。国境をまたいで調整力を融通し合っており、欧州の送電会社連合は30年までに約20兆円を投じて送電線を増強する計画を公表している。天候に左右される太陽光の発電量を予測しながら全体の需給を調整する仕組みもある。国内では10電力会社の地域独占が長く続き、それぞれが閉じた世界で需給のバランスをとってきた。20年にようやく大手電力の発電と送配電部門を切り離す発送電分離が始まり、再生エネ事業者がさらに参入しやすくなる可能性がある。今のうちに使いこなす仕組みを考えないと、「宝の持ち腐れ」は変わらない。

*6-2:http://qbiz.jp/article/141253/1/ (西日本新聞 2018年9月25日) 玄海原発への燃料税拡大条例可決 佐賀県議会、5年間で21億円
 佐賀県議会は25日に開いた本会議で、九州電力玄海原発(同県玄海町)で貯蔵されている使用済み核燃料に課税対象を拡大する条例を可決した。課税期間は2019年度から5年間で、総務相の同意が得られれば実施する。貯蔵期間が5年を超えた使用済み核燃料1キログラム当たり500円を課すもので、5年間で約21億円の税収を見込む。税収は現行の項目と合わせ、5年間で計約187億円になる。避難の際に使う道路や港の整備費などに充てる。県はこれまで、原子炉の出力や、使用される核燃料の価格に応じて課税してきた。東京電力福島第1原発事故を踏まえ、玄海原発でも全基が運転停止となったことや、玄海1号機の廃炉決定で税収が減ったため、使用済み核燃料も課税対象とするよう九電に求め、今年8月に合意に達した。九電は県議会での審議に当たり、核燃料税に関する情報発信強化や、歳出抑制に努めることなどを求める意見書を提出。これに対し、一部県議や市民団体から「県民の安心安全をないがしろにしている」「傲慢だ」など批判の声が出ていた。玄海原発は、6月までに3、4号機が再稼働し、1号機では既に廃炉作業が始まっている。2号機だけが再稼働か廃炉か扱いが決まっていない。

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2018.9.17 日本の国家予算の使い方と社会保障・災害など (2018年9月18、19、20、21、22日に追加あり)
(1)本当の無駄遣いは何か
1)2019年度予算概算要求について


2018.9.1西日本新聞 平成時代の国家予算増加 平成31年内訳 歳出・歳入・債務の推移  

(図の説明:平成時代は消費税導入とともに始まり、増税額以上の景気対策を行って、国と地方の債務合計は増加の一途を辿った時代だと総括できる。なお、平成31年度の概算要求内訳では、0金利の下でも国債利払いが9兆円もあるが、これは借り換えによって節約できる歳出だ。また、地方交付税は、地方自治体が稼ぐためのエンジンを持てば、減らすことのできる歳出である)

 各省庁の2019年度予算概算要求は、*1-1のように、過去最大の102兆円台後半となり、その理由は「①医療・介護などの社会保障が過去最高額」「②借金返済に回す国債費が全体を押し上げた」「③2019年10月の消費税増税に伴う景気対策や幼児教育無償化費用を上積み」「④地上配備型迎撃システムの取得で2352億円計上して防衛費が過去最高額」「⑤外国人材受入拡大に備えた入国在留管理庁(仮称)新設」「⑥国債費は低金利にもかかわらず5.5%増の24兆5874億円」「⑦地方交付税15兆8111億円」等と記載されている。

 このうち、②の国債返済は借金を減少させて利払いを減らす効果があるため問題はなく、借金の返済と他の歳出を同じ次元で取り上げる方がむしろ問題だ。また、⑥は、低金利を利用して国債を借り換えれば国債の利払費は小さくなる。

 また、①は、よく槍玉に挙げられるが、国民は社会保険料を支払った上でサービスを受けているため、発生主義で将来支払額を予想して合理的な積立金管理を行っておけば、問題になることはなかった筈だ。そのため、サービスを提供する時になって支払原資が足りないなどと言っているのは、管理者の放漫経営の責任であり、国民に迷惑をかける筋合いのものではない。

 さらに、③のうちの幼児教育無償化はよいものの、消費税増税に伴う景気対策に増税分以上を使うのなら、増税しない方が国民から絞り取らない分だけよい。また、災害復興や21世紀型の便利で安全な街づくりへの投資を行えば大型の景気対策にもなるので、景気対策だけを目的とする無駄遣いをする必要はない。

 なお、④は高すぎるし、⑤は入国在留管理庁を作って金と人材を無駄遣いするのではなく、入国管理局の名称を変更してここで行った方がよいと思われる。そして、入国管理局の仕事が増える分は、新規雇用ではなく、定年延長して余った人材をうまく配置して使えばよいだろう。

 さらに、⑦の地方交付税は、地方がよい製品やサービスを生産して自立すればするほど、息切れしそうな大型機関車の東京からの分配を減らすことができるため、機関車になれる地域を増やすことこそが全国民を豊かにする。

2)北海道地震・西日本豪雨のに対する補正予算について
 政府は、*1-2のように、北海道地震や西日本豪雨災害の復旧費を確保するため、1兆円超を準備するそうだ。しかし、標高の低い場所・川を埋め立てた場所・扇状地・天井川の傍の低い場所などに住宅を造って「堤防があるから安心」などと考えていたり、がけ崩れが起こりやすい場所に住宅を作ったりして被害に会ったのは、甘く見ていた自然に仕返しされたようなものだ。

 そのため、これらの住宅地を元の状態に戻す「復旧」ではなく、このような被害が二度と起こらず、さらに進化させた都市計画に基づく街づくりと復興を行うべきで、そうすれば災害復興は単なる景気対策ではなく、21世紀に向けた重要な投資となる。

3)国家予算をコントロールする方法
 来年度予算案の概算要求が5年連続で100兆円を超えて過去最大を更新し、*1-3は、「①危機感なき借金まみれの予算をいつまで続けるのか」「②法律で縛ったらどうか」などと記載している。

 しかし、財政健全化のために“国際公約”をして、「2020年度までに基礎的財政収支(クラブ)を黒字化する」というのも、不完全な現金主義であり、国民不在で意味がない。また、大災害があっても財政や貿易収支が黒字でなければならない理由はなく、必要な資材や労働力は輸入してでも速やかに復興するのが自然だ。そのため、いざという時に支出できるよう、平時は単なる景気対策のような無駄遣いは慎むものである。
 クラブ 税収・税外収入と歳出(国債費《国債の元本返済と利払費》を除く)の収支

 そのため、財政を法律で縛ったり国際公約したりするのではなく、合理的な歳出をするため国の経費も発生主義で把握するように、国に国際会計基準に基づく複式簿記による公会計制度を導入し、貸借対照表・収支計算書を迅速に作成して予算委員会における討議資料とし、国の予算を主権者である国民の監視下におく必要がある。

(2)安全を無視した街づくり
1)「備え」は甘すぎた
 西日本新聞が、*2-1-1・*2-1-2のように、「備えに隙はなかったか」「北海道地震の死者40人」という記事を書いているが、私には、すべての災害が「想定外」で、危機管理に基づく備えというものがあまりにも甘く、ゆとりがなさすぎたように思えた。

 例えば、北海道全体の停電という電力系統の脆弱さと土砂崩れや液状化が起こる場所での住宅地造成は人災と言わざるを得ない。また、関西空港が台風くらいで機能不全に陥ったのも唖然としたが、標高の低い干拓地であれば当然であるため、もっと海面との間にゆとりをとるべきだった。さらに、ブロック塀も、中に強い鉄筋でも入っていなければ地震の時に危ない上、景観も悪いため、もっと速やかに素敵な生垣などに変えておくべきだっただろう。

 なお、*2-1-3のように、地震発生前の2018年6月26日、「北海道南東部で震度6弱以上の大地震のリスクが上昇している」と朝日新聞に掲載されたが、「発電所が集中して立地しておりセキュリティーが甘い」「住宅地の立地が悪い」というのは短期間には修正のしようがないため、最初にしっかりした都市計画を行わなかったことが最大の問題である。

2)連続した大型台風と水害
 台風21号で、*2-2-1のように、関空が冠水し、「大阪湾沿岸を中心に記録的な高潮になった」「猛烈な風が大阪湾岸に吹きつけた」「140年に1度という想定を超える高潮だった」などの言い訳がされているが、要するに十分な「ゆとり」を見ていなかったのだと思う。

 そして、*2-3-1のように、これまで①浸水想定域に住宅を誘導し ②街の集約計画を掲げる主要な自治体の約9割で浸水リスクの高い地区にも居住を誘導している ということが、日経新聞の調べで分かったそうだ。都市の効率向上といっても、災害リスクの高い場所に建物を建てれば、「床上浸水」などで建物や家財道具を台無しにして資本効率を悪くするとともに、大切な人や二度と作れぬ思い出も失うことになるため、最初の都市計画が重要だ。

3)北海道地震

           2018.9.6、朝日新聞、中日新聞ほか

(図の説明:北海道地震で土砂崩れが多発して死者まで出たのは痛ましいが、崩れた土砂の中にある木は太くて良質の木材だ。そのため、全国の森林組合や木材会社の人等がボランティアに行って木材を集めておけば、あちこちの復興の手助けになると考える)

 北海道の厚真町は、*2-2-2のように、震度7の揺れに襲われて緑の山林に赤土がむき出しになった場所が散在する土砂崩れの現場となったが、よく見ると、山はこうしてあのような形になったのだと思われる光景であり、大昔から続いてきた土砂崩れのように見える。

 北海道地震では、*2-3-2のように、札幌市のベッドタウンが液状化による大きな被害を受け、道路が陥没したり、マイホームが大きく傾いたりし、専門家は、かつてあった川沿いに被害が集中していると分析して二次被害に注意を呼びかけている。市の宅地課は、河川を覆って地下に水路を残し、周辺から削った土砂で里塚地区を造成したと言っているそうだが、これは自然の水の流れをあまりにも軽視した宅地造成である。

 そのため、我が国が高齢化と人口減少に直面していることを活用して、高台にケアしやすいマンションを多く作り、危険度の高い地域から移転して、危険度の高い地域には住まないような進歩した都市計画が必要だ。

(3)大災害時代になった理由とそれに対する備え


    月の公転軌道     火星の公転軌道 現在の火星と水 40億年前の火星の海 
                      2018.7.26朝日新聞
(図の説明:1番左の図が月の公転軌道、左から2番目の図が火星の公転軌道で、どちらも少し楕円形であるため、地球に接近する時があり、両方が接近して太陽と一直線に並ぶ時、地球が受ける引力は最大になる。地球は、日頃から月の引力を受けて潮の満ち引きがあり、地球のマントルが冷えない理由に月の引力によって地球が揉まれていることが挙げられている。また、火星には40億年前は最大水深1600mの海が存在していたそうで、現在は、地表には氷・地下には水も存在するそうだ。なお、火星が冷えてしまったのは、月のような惑星を持たないことが理由で、火星の水が少なくなったのは、火星の引力が弱く大気が薄いため、蒸発した水が地表に戻らなかったことによるのかも知れない。そのため、地球の水が(100%かどうかはわからないが)循環して地表に戻り、生物の生存環境を保っていることには感謝すべきだろう)

 日本農業新聞が、2018年9月13日、*2-4-1のように、「大災害時代が人と社会の変革を迫る」という記事を書いており、近年の大災害がよくまとまっている。

 その内容は、専門家は「①大型災害が多発する『危険サイクル』に入ったと警告」「②地震が活動期に入って水害などと連動し、複合災害を起こしている」「③災害が多発する危険周期に入った」「④社会は、こうした巨大災害に対応できていない」「⑤縦割りの防災行政、司令塔機能の混乱、中央政府と当該自治体の連携不足」「⑥専門家や科学的知見の不足、情報伝達の不備などの問題が浮き彫りになっている」「⑦町村は、財政難や人材難に苦しみ機動的に対応できない」「⑧大災害は、人々の意識や社会システムの変革を迫っている」「⑨農村、都市問わず少子高齢化で地域力が衰退している」「⑩大規模災害のたびに過疎集落は存廃の危機に陥り、国土の荒廃が進むので、防災基点の国づくりこそ百年の計だ」などである。

 ④については、災害の大型化は常態化したので、「想定外」という言葉は通用せず、本当は「想定外」でもなく無視していただけと思われる局面も多い。また、近年は特に、以前よりもゆとりのない設計が多い印象であるため、予報・一時的避難・救済・復旧以前に、巨大災害に適応した街づくりへの迅速な復興が必要なのであり、⑤⑦だから防災庁が必要とはならない。

 また、①②③については、869年に起こった貞観(三陸)地震が参考になる。当時の陸奥国東方沖日本海溝付近を震源域として発生したマグニチュード8.3以上の貞観地震は巨大で、津波の被害も大きく、地震の前後には多くの火山噴火があった。また、貞観地震の5年前の864年には富士山の貞観大噴火も起きており、9年後の878年にM 7.4の相模・武蔵地震(現在の関東地方における地震)が起こり、西日本では前年の868年に播磨地震、18年後の887年に仁和地震(M 8.0 - 8.5、南海トラフ巨大地震と推定)が起こり、一定期間毎に同じことが起こっている。

 ⑥については、専門家に、日本で地震・火山・津波などが一定期間毎に多発する理由の科学的説明をして欲しい。私も大災害が続く理由はわからないが、*3-1、*3-2のように、「火星が地球に大接近し、同時に太陽や月と一直線になる時に地球にかかる引力が最大になり、地球内部のマントルが大きなエネルギーによって揉まれ、温度が上がって流動性が高くなるのではないか?」「そのため陸上だけでなく海底火山の噴火も増え、大型台風が発生しやすくなり、地球温暖化によって海水温が上昇しているため、なかなか衰えないのではないか?」と推測する。

 従って、⑧はそのとおりだが、⑨⑩のように、高齢化と人口減少が同時に起こっている現在、少しでも田畑を広くとるために崖のそばに住んだり、水害の出やすい場所に住んだりするよりも、高齢者は高台のマンションなどに移住して住宅管理や介護の手間を省き、他の人も安全性を重視した環境の良い街づくりを進めるのがよいと考える。

 なお、*2-4-2のように、「首都直下型地震が起これば、荒川や隅田川沿いの下町は壊滅する可能性がある」と書かれているが、海抜ゼロメートル地帯に居住するのは楽天的過ぎると思われ、軟弱地盤や谷底低地に当たるような場所は速やかに公表して対策を取るべきだ。

*1-1:http://qbiz.jp/article/140085/1/ (西日本新聞 2018年9月1日) 概算要求102兆円後半 医療、防衛、国債費が膨張 19年度
 財務省は31日、各省庁からの2019年度予算の概算要求を締め切った。基本的な経費を扱う一般会計の要求総額は過去最大の102兆円台後半に膨張。医療などの社会保障や防衛費が最高額になったほか、借金返済に回す国債費が全体を押し上げた。歳出抑制額の目安を設けないなど肥大化の歯止めを欠き、12月の編成後には当初予算で初めて100兆円の大台に乗る可能性が高まった。19年10月の消費税増税に伴う景気対策や幼児教育無償化などの費用を編成過程で上積みすることも拡大要因になる。来夏に参院選を控えた与党の歳出圧力は強く、暮らしに必要な経費を賄い財政健全化にも配慮するやりくりは険しそうだ。要求段階の100兆円超えは5年連続。国・地方の政策経費は78兆円前後に上り、省庁別では厚生労働省が18年度当初予算比2・5%増の31兆8956億円を占めた。他省庁分を含む社会保障費は医療や介護などの給付が増えて約6千億円多い32兆円超となり、財務省は査定で抑制する方針。防衛省は2・1%増の5兆2986億円を求めた。北朝鮮の脅威に対処する地上配備型迎撃システム「イージス・アショア」の取得関連で2352億円を見込んだ。各省は看板政策を優遇する「特別枠」を使い、増額要求を掲げた。西日本豪雨などを受けた防災分野や働き方改革、訪日客誘致を重視。外国人材の受け入れ拡大に備えた「入国在留管理庁」(仮称)の新設や、皇位継承の予算もある。自治体に配る地方交付税は一般会計ベースで15兆8111億円。政策関連と別にかかる国債費は5・5%増の24兆5874億円。近年は長期金利の低下で利払い費が圧縮されてきたが、今回は18年度要求と同じ1・2%と想定しており、超低金利の財政効果が表れにくくなっている。
   ◇   ◇
●景気優先で規律緩む一方 消費増税対策は別枠
 2019年度当初予算の各省庁からの概算要求総額は5年連続で100兆円を超え、過去最大となった。当初予算には19年10月の消費税増税に向けた経済対策も加わる見込みで、財務省が要求額を絞り込んでも、歳出総額は史上初の100兆円突破となる公算が大きい。目先の景気を優先し、社会保障費の増大にも目をつぶる。緩みっぱなしの財政規律がまたも後回しになりそうな気配が早くも漂う。
「消費税増税にきちんと対応したい。景気後退を招くようでは(10%への増税を)過去2回延期した意味がない」。概算要求締め切りに先立つ8月27日、麻生太郎財務相は予算編成を担う財務省幹部たちにこう訓示した。強調したのは財政規律ではなく、景気への配慮だった。予算編成の最大の焦点は、消費税増税後の消費の冷え込みを避けるための経済対策だ。政府は過去2度の消費税増税時にいずれも景気後退を招いたことを踏まえ、年末までに住宅や自動車の購入支援を柱とした対策をまとめる。関連予算は概算要求とは別枠で乗ることになる。14年4月に税率8%に上げた際の経済対策の規模は約5兆5千億円。日銀の試算では10%への引き上げに伴う家計負担増は年約2兆2千億円だが、与党内には10兆円規模の対策を求める声もある。来年の統一地方選や参院選をにらんだ政治の意向に押されれば、19年度当初予算は18年度当初(97兆7千億円)を大きく上回りかねない。予算の約3分の1を占める医療、介護などの社会保障費を抑制しようという機運も乏しい。厚生労働省の要求総額は過去最大の31兆8956億円。18年度まで5千億円に抑えていた高齢化に伴う社会保障費の伸びは6千億円と見込む。19年度予算編成では18年度までの3年間と異なり、伸びを年5千億円程度に抑える数値目標がない。渡りに船とばかりに他省も増額要求が目立つ。国土交通省は西日本豪雨を踏まえた水害対策などを掲げ、18年度当初予算比19%増の6兆9070億円を要求。防衛省の要求額も、北朝鮮の脅威を理由に装備増強などで過去最大になった。文部科学省も学校へのクーラー設置などで同11%増の5兆9351億円を要求している。企業収益が堅調で税収が増加傾向でも、歳出の2割超を借金返済が占め、歳入の3割超を新たな借金に頼る異常な財政構造は続く見通し。国と地方の借金残高は1千兆円を超え、国内総生産(GDP)の約2倍に達する先進国で最悪の水準。このままでは安倍政権の思惑通りに金融緩和で物価が上昇しても、金利上昇で国債の利払い費がかさみ、財政が行き詰まる恐れがある。9月の自民党総裁選で連続3選すれば、7年目の予算編成となる安倍政権。将来世代に痛みをつけ回す「大盤振る舞い」を改める気配はない。森友学園を巡る決裁文書改ざんなどで信頼を失った財務省が歳出抑制の主導権を握れるか。険しい予算編成になりそうだ。
   ◇   ◇
●「入国管理庁」創設など588億円 外国人就労拡大へ各省要求
 政府が来年4月から、新たな在留資格による外国人労働者の受け入れを拡大する中、各省の来年度予算の概算要求に関連経費が盛り込まれた。法務省は外国人の就労拡大に対応する「入国在留管理庁」(仮称)新設に伴う人件費やシステム改修費など588億円を計上。厚生労働省は外国人材受け入れの環境整備などで100億円を要求した。入国在留管理庁は入国管理局を格上げして設置。外国人の入国審査などを担う出入国管理部と、国内の外国人の生活や日本語習得を支援する在留管理支援部を置く。出入国審査と在留管理体制強化のため計585人の増員も要求している。厚労省は外国人を雇用する事業所への指導体制強化に10億円を要求。外国人技能実習生に対する相談事業の拡充と、企業などが適切に実習生を受け入れているかを検査する体制強化のために68億円、外国人留学生が日本で就職するよう促すため、職場で実施する日本語研修の支援費用などに8億6千万円を計上した。農林水産省は「農業支援外国人適正受け入れサポート事業」として3億8500万円を求めた。日本で即戦力となり得る知識や技能があるかを評価するため、現地で試験を実施する日本の民間団体への支援費用を盛り込み、外国人からの苦情相談窓口の設置も支援する。文部科学省は生活レベルの日本語を学ぶ環境を整えるための新規モデル事業に約3億円を計上。モデル自治体として15程度の都道府県、政令市を公募し、地域の実態を調査したり外国人と自治体などをつなぐコーディネーターを配置したりして先進事例の構築を目指す。

*1-2:http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2018090701001576.html (東京新聞 2018年9月7日) 政府、地震や豪雨で補正編成へ 1兆円超か、臨時国会冒頭に提出
 政府は7日、北海道の地震や西日本豪雨など相次ぐ災害の復旧費を確保するため、2018年度補正予算案を編成する方針を固めた。秋の臨時国会冒頭に提出する方向で与党と協議する。災害級とされた今夏の酷暑を踏まえ、小中学校のクーラー設置推進費なども想定しており、規模は1兆円を上回る可能性がある。補正予算は例年、税収見積もりの修正などを反映させて12月ごろに編成している。18年度は災害対応を進めた後、年末補正を組むという二段構えで臨むことになる。補正予算案には西日本豪雨による洪水で壊れた河川堤防の修理や土砂崩れの再発防止、北海道の地震の復旧費などを盛り込む。

*1-3:http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2018090302000176.html (東京新聞社説 2018年9月3日) 膨張する予算 法律で縛ったらどうか
 来年度当初予算案の概算要求は五年連続で百兆円を超え、過去最大を更新した。危機感なき借金まみれ予算をいつまで続けるのか。自ら抑制できないのなら、法律をつくって縛るしかないだろう。財政健全化の国際公約だった「二〇二〇年度までの基礎的財政収支(プライマリーバランス=PB)の黒字化目標」を六月に断念した直後の予算編成である。当然、厳しい概算要求基準を設けるかと思いきや、今回も歳出上限の設定を見送るなど相変わらずの締まりのなさだ。PB黒字化を実現できなかったのは経済成長率を甘く設定したためだ。成長頼みが通用しないのは明白なのに、いまだ政権が「経済再生なくして財政健全化なし」を基本方針とするのは危機感がなさすぎると言わざるを得ない。毎年繰り返される手法も問題がある。今回も、人づくり革命など政権が掲げる主要政策に優先的に予算を配分する「特別枠」を設け、一八年度より約一割増の四・四兆円に積み増した。歳出にメリハリを付けるのが特別枠の狙いというが、実態は各省庁が便乗して似たような要求を並べ、かえってメリハリを失っていると批判された。この手法がはたして政策効果を上げているのかどうか検証すべきだ。概算要求とは別枠で、一九年十月からの消費税増税の影響を和らげるための経済対策の予算も組む。自民党から十兆円規模を求める声がある。8%から10%に引き上げると税収増は五兆円程度だ。これでは右手で増税し、左手では税収増の倍の額をバラまくようなものだ。一体、何のための増税か分からない。来年は参院選や統一地方選があり、歳出圧力は例年になく強い。査定する財務省は不祥事が響いて弱体化しているのでなおさら心配だ。財政健全化が官僚や政治家任せでは進まないのであれば、法律で強制力を持たせるしかないのではないか。かつては、米国の包括財政調整法(OBRA)などにならい、財政健全化の具体策を盛り込んだ財政構造改革法を定めたこともある(一九九七年)。金融危機など日本経済が不況に直面して凍結されはしたが、欧州連合(EU)をはじめ多くの国・地域が法制度によって財政健全化に努めている。先進国で最悪の借金を抱え、少子高齢化が最も深刻な日本も再導入を検討すべきだ。 

<安全を無視した街づくり>
*2-1-1:https://www.nishinippon.co.jp/nnp/syasetu/article/447633/ (西日本新聞 2018年9月7日) 自然災害続発 「備え」に隙はなかったか
 記録的な猛暑に加え、豪雨、台風禍、そして今度は大地震が列島を襲った。ひと夏にこれだけ自然災害が続くのは異例で、非常事態といってもよかろう。しかし、「想定外」という言葉で済ますわけにはいかない。自然の脅威に対して、私たちの「備え」はなお脆弱(ぜいじゃく)である。その現実を見据え、被災地の支援などに全力を挙げたい。きのう未明、北海道で最大震度7の地震が起きた。強風と高潮で関西空港を閉鎖に追い込むなどした台風21号が過ぎ去った直後のことだった。揺れは広域に及んだ。大規模な土砂崩れや液状化現象による人的被害に加え、道全域が停電して二次被害が広がるなど、かつてない事態が生じた。政府は人命救助と併せ、本州からの送電や電源車両の手配など緊急対応に追われた。電力は言うまでもなく、ライフラインの要である。供給が長時間、広域にわたってストップすれば生活や生産の基盤は損なわれ、影響は計り知れない。まずは全面復旧が急務だが、北海道電力の地震対策や電力の需給管理システムに不備はなかったのか、詳しい検証を進める必要があろう。一方、地震直前の台風禍で関西空港が機能不全に陥ったのも衝撃的だった。滑走路が水没した上、強風で流されたタンカーが連絡橋に衝突し、多数の乗降客らが孤立する状況に陥った。海上に立地する同空港を巡っては、地盤の軟弱さや高潮対策の難しさが指摘されていた。今回は高潮とタンカーの衝突が重なり「想定外の事案」とされるが、当初3千人と伝えられた孤立した人の数が、時を追って5千人、8千人と変遷するなど危機管理の甘さが露呈した。九州の北九州、長崎両空港を含め、海上や海沿いに立地する全国各地の空港の災害対策も再点検すべきだろう。今夏の災害を振り返ると、6月の大阪府北部地震では、私たちの身近にあるブロック塀の倒壊で女子児童が死亡する惨事が起きた。ブロック塀の保守・点検の必要性は過去の震災で指摘されながら、全国的に進んでいない実態が明らかになった。岡山県で大規模な洪水が起きるなどした7月の西日本豪雨では、河川の改修工事が行き届いていなかったり、洪水の危険性を知らせるハザードマップが浸透していなかったり、基本的な対策の不備が指摘された。地震や火山噴火の予知は依然難しい。近年まれな気象現象が列島に災害をもたらしてもいる。自然は常に私たちの「想定」の隙を突いてくる。改めてそう胸に刻み、決して終わりのない「備え」に努めたい。

*2-1-2:http://qbiz.jp/article/140486/1/ (西日本新聞 2018年9月10日) 死者40人、捜索を終了 安否不明者なくなる、北海道地震
最大震度7を観測した北海道の地震で、道は10日、死者は40人になり、安否不明者はいなくなったと発表した。不明者の捜索が続いていた厚真町は、捜索を終了したと明らかにした。道内では電力の供給不足を補うため、節電の取り組みが本格化。北海道電力は、地震前の需要ピーク時に電力供給力が追いついていないとして、計画停電も検討している。官公庁や公共交通機関は、照明の減灯や運行本数の削減などを始める。道などによると、9日に安否不明だった2人が厚真町で見つかり、それまでに心肺停止で発見されていた2人と合わせ、4人の死亡が確認された。10日午前2時すぎにも同町の土砂崩れ現場で最後まで安否が分からなかった男性(77)が心肺停止の状態で見つかり、その後死亡が確認された。厚真町の死者は36人で、札幌市、苫小牧市、むかわ町、新ひだか町で各1人。同日午前10時現在で避難者は約2700人、断水は約8千戸。高橋はるみ知事は9日の記者会見で、平常より2割の電力削減が必要とした上で「大変に厳しいが、計画停電や再度の停電が生じれば、復旧途上にある暮らしや企業活動への影響は大きい」と道民や企業に協力を求めた。北海道と経済産業省は10日、地元の経済団体などとつくる連絡会を開催。効果的な節電方法について話し合う。道や札幌市は所有する施設で冷暖房やエレベーターなどの使用を抑制。JR北海道は札幌と旭川、室蘭を結ぶ特急の一部を運休する。札幌市営の地下鉄や路面電車も日中に運行本数を減らす。6日の地震で北電の最大の火力、苫東厚真火力発電所(厚真町)が停止し、電力需給バランスが崩れ、道内全域の約295万戸が一時停電。北電は苫東厚真の復旧に1週間以上かかる可能性があるとしており、供給不足が長期化する恐れがある。安倍晋三首相は9日の地震の関係閣僚会議で、死者数について「これまで42人の方々が亡くなられた」と述べた。

*2-1-3:https://digital.asahi.com/articles/ASL6Q4R1DL6QULBJ008.html?iref=comtop_8_02 (朝日新聞 2018年6月26日) 大地震のリスク、北海道南東部が上昇 18年版予測地図
 政府の地震調査研究推進本部は26日、今後30年以内に特定の地点が強い揺れに見舞われる確率を示す「全国地震動予測地図」の2018年版を公表した。震度6弱以上の確率は、北海道南東部で前年と比べて大きく上昇した。地図は地震の起きやすさと地盤の揺れやすさの調査をもとに作製。確率はすべて今年1月1日時点。政府が昨年末に見直した、千島海溝沿いの地震活動の評価を反映し、マグニチュード(M)8・8程度以上の超巨大地震などを考慮した。新たなデータを反映した結果、釧路市で69%(前年比22ポイント増)、根室市78%(15ポイント増)、帯広市22%(9ポイント増)などった。プレート境界で起きる大地震は100年前後の間隔で繰り返し発生する。南海トラフは前回発生した1940年代から70年以上経っており、東海から四国の太平洋側や首都圏は、静岡市70%、名古屋市46%、大阪市56%、高知市75%、千葉市85%など、前年同様に高い確率になっている。一方、活断層による地震は、プレート境界で起きる地震と比べて一般的に発生間隔が長く、陸域や日本海側の確率は新潟市13%、福岡市8・3%など、太平洋側に比べて低い。ただ、確率が低くても過去に大きな地震は発生している。18日に発生した大阪北部地震で、震度6弱を観測した大阪府高槻市は22・7%だったが、同本部地震調査委員長の平田直・東京大教授は「震度6弱以上の揺れが起きる確率がゼロの地域は全国にどこにもない。家庭や職場で備えを進めて欲しい」としている。予測地図は、防災科学技術研究所がつくるウェブサイト「地震ハザードステーション」(http://www.j-shis.bosai.go.jp/別ウインドウで開きます)で閲覧できる。任意の地点の発生確率や、地震のタイプ別の確率の違いなどを見ることができる。(

*2-2-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180914&ng=DGKKZO35322970T10C18A9TJN000 (日経新聞 2018.9.14) 猛烈な南風 高潮を増幅、台風21号で関空が冠水
 非常に強い台風21号の影響で、大阪湾沿岸を中心に記録的な高潮になり、関西国際空港(大阪府泉佐野市)の滑走路が冠水するなど大きな被害が出た。複数の要因が重なったが、特に南よりの猛烈な風が南西に開いた大阪湾の岸に吹きつけた影響が大きいという。大阪湾は高潮が起こりやすい。関空は護岸のかさ上げなどで対策を進めてきたが「140年に1度」という想定を超える高潮には、なすすべがなかった。台風21号が通過した4日、大阪市で3メートル29センチ、神戸市で2メートル33センチの潮位を記録した。いずれの地点も、死者194人を出した1961年の第2室戸台風時の潮位を上回った。国内最悪の高潮被害を出した1959年の伊勢湾台風での名古屋市の3メートル89センチ、2012年の台風16号で有明海に面する佐賀県太良町で観測した3メートル46センチに次ぐ水準だ。京都大学防災研究所准教授の森信人さんが各地の潮位データをもとに解析すると、大阪市南部から神戸市付近まで大阪湾奥の広い範囲で高さ3メートルに迫る高潮が発生していた。大阪湾の沿岸地域は第2室戸台風のほか、1950年のジェーン台風、1965年の台風23号などで大きな被害にあっている。森さんは「高潮発生リスクが高く危険な地域だ」と指摘する。
●気圧低下も要因
 高潮は台風などの強い低気圧が通過する際に、海面が高くなって波が岸へ押し寄せてくる現象だ。台風は周囲よりも気圧が低く、上昇気流によって掃除機に吸い上げられるように海面が上昇する。気圧が1ヘクトパスカル下がると、海面は1センチ上昇するとされる。さらに岸に向かって吹く強い風で海水が吹き寄せられ、海面が上昇する。風の威力は大きく、風速が2倍になれば海面の上昇幅は4倍になる。大阪湾を通過したころの台風21号の中心付近の気圧は950ヘクトパスカルほど。午後1時半すぎ、関西国際空港で瞬間風速が58.1メートルを記録した。猛烈な高潮になったのは、こうした要因がそろったからだ。京大の森さんの解析では、気圧低下の影響で海面が60~70センチ上昇した。満潮が近づいていたため、いつもより50センチ高かったという。ここに南西から南南西の猛烈な風が吹いたことで「さらに2メートルほど潮位が上昇した」。大阪湾では午後1時から2時にかけて、風向きが東よりから南よりに変わったタイミングで各地の潮位が上昇した。もし、台風21号の接近が一週間ずれていたら、潮位が最も高くなる大潮の時期と重なった。森さんは「潮位はさらに1メートル20センチほど高くなり、大きな被害を出した可能性が大きい」と警鐘を鳴らす。
●不十分だった対策
 高潮で最も深刻な被害を受けたのが関西国際空港だ。2本あるうちのA滑走路が水没し、第1ターミナルが水浸しになって停電した。海水は高潮や津波対策としてかさ上げした護岸を30センチほど乗り越えていた。暴風で流されたタンカーによって連絡橋が大きく損傷し、追い打ちをかけた。関空を運営する関西エアポートの担当者は5日夜の記者会見で「備えていたつもりだったが、甘かった。高潮は想定を超えていた」と説明した。だが、対策は十分だったとはいえない。関空のある人工島は軟らかい地盤にあり、地盤沈下が深刻だ。A滑走路は1994年の開港時から約3メートル40センチ沈んでおり、海面からの高さは最も低いところだと1メートル40センチほどだ。今も年に6センチほど沈んでいる。護岸のかさ上げは地盤が沈下した分を補っているにすぎない。護岸を高くするには、航空法の規制がある。むやみに護岸を高くすれば、航空機が着陸する際に邪魔になる。滑走路全体をかさ上げすれば解決するが、巨額の費用がかさむうえに工事中は便数を減らす必要があり、実現は難しい。地球温暖化が進むと海面の上昇が進むとされる。そうなると高潮のリスクは高まる。京大の森さんの研究によると、現在よりも気温が4度上昇すると、大阪湾で第2室戸台風に匹敵する2.5メートル以上の高潮が発生する頻度が増す。森さんは「台風による高潮は常に起こりうるリスクだと認識すべきだ」と呼びかける。

*2-2-2:https://digital.asahi.com/articles/ASL984TZRL98UTIL01Y.html?iref=comtop_8_03 (朝日新聞 2018年9月8日) 開墾してできた厚真町、覆った土砂 「ショックな光景」
 厚真町は、南端で太平洋に面する。海岸へと広がる地形と厚真川水系を生かした米づくりで知られる。海岸沿いには、今回の大停電のきっかけになった北海道電力の苫東(とまとう)厚真火力発電所がある。そんな町を震度7の揺れが襲った。死亡と心肺停止を合わせると33人(8日午後9時現在)。いずれも北部の山間地の集落だ。町長の宮坂尚市朗(しょういちろう)さん(62)の家は南部にある。地震後、自宅を出てから町役場まで、一見して大きな被害はなさそうに見えた。だが、テレビに映った北部の映像に言葉を失った。とりわけ被害が大きかったのは、34人が暮らす吉野地区だ。死亡と心肺停止を合わせて17人。広い土地にもかかわらず、民家が集まって立っていた。「町の初期に、発展の中心になった場所だからでしょう」と宮坂さんは言う。町のホームページによると、明治3年に新潟から移り住んだ人が原野を切り開いて小屋を建て、明治17年に北部も開墾したのが旧厚真村の始まりとされる。この町で生まれ育った農家の日西善博さん(65)は、地震当日にヘリで救助され、土砂崩れの状況を上空から見た。「あんな景色は生まれて初めて。緑の山林があるはずが、粘土層と赤土が見えて、ショックな光景だった」。8日までに、大半の世帯で電気は復旧した。だが、水道や通信網が元に戻るには、相当の時間が見込まれる。「全町民が被災者」と宮坂さんは言う。いま役場には、自衛隊や警察の車両が駐車場に並び、24時間、慌ただしく人々が出入りする。町長室で取材に応じた宮坂さんは、「長い戦いになる」と言った。

*2-3-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180902&ng=DGKKZO34840540R30C18A8MM8000 (日経新聞 2018.9.2) 浸水想定域に住宅誘導、まち集約の自治体9割で 防災後手、計画の再点検を
 西日本豪雨などで洪水被害が相次ぐ日本列島。天災への備えが一段と求められるなか、まちの集約計画を掲げる主要な自治体の約9割で、浸水リスクの高い地区にも居住を誘導していることが日本経済新聞の調べで分かった。こうした地区にはすでに住宅が集まっているケースもあり、都市の効率向上と災害対策を両立させる難しさが浮き彫りになった。まちづくりと防災対策を擦り合わせ、集約計画を再点検する必要がある。全国でコンパクトシティー形成をめざす「立地適正化計画」の策定が進んでおり、120以上の市町が居住を誘導する区域を設定している。都市密度を高めて1人あたりの行政費用を抑えるためで、区域外の開発には届け出を求めている。一方で各自治体は洪水時の浸水予測をハザードマップなどで公表。1メートル以上の浸水であれば一戸建ての床上、3メートル以上であれば2階まで浸水する恐れがあるとされる。
●「床上」リスク高く
 日本経済新聞は居住誘導区域を3月末までに発表した人口10万人以上の54市を対象に、調査表や聞き取りを通じて浸水想定区域との重なり具合を調べた。その結果、全体の89%となる48市で1メートル以上の浸水想定区域の一部が居住誘導区域となっていた。うち45市は大人の身長に近い2メートル以上の区域とも重なっていた。「床上浸水リスクは避けたほうがいい」。名古屋市の立地適正化計画を検討した有識者会議のある委員はこう主張した。3月にできた計画を見ると、庄内川沿いの広範囲で1メートル、2メートル以上の浸水の恐れがあるのに居住誘導区域となっている。市の原案に対し、「リスクが高い地区に誘導する必要があるのか」との異論は根強くあったが、既に市街地が形成されていると主張する市の事務局が押し切った。浸水想定3メートル以上の地区は外した。都市計画課は「2階に避難できるかどうかで判断した」と説明するが、足腰の悪いお年寄りが階段をのぼるのは難しい。市の都市計画審議会会長を務める名城大の福島茂教授は「5年ごとに計画を評価する。合意形成を進めて区域を見直せばいい」と語る。市によっては大きな河川のそばで、浸水想定区域をすべて避けるとまちづくりが成り立たない事情もある。信濃川に沿って街並みがある新潟県長岡市は居住誘導区域のほぼ全域が0.5~5メートルの浸水想定区域と重なる。淀川に面する大阪府枚方市も85%程度で1メートル以上、約6割で3メートル以上の浸水リスクがある。都市計画課は「浸水想定区域を除くのは極めて困難。洪水リスクの事前周知や避難体制の整備など対策を進める」と説明する。多くの自治体は防災対策を施せば浸水リスクを軽減できると主張する。だが、立地適正化計画をつくる段階で、都市整備と防災の部署がどこまで細部を擦り合わせたか。東日本のある自治体の防災担当は「居住誘導区域の詳細が分からない」と回答。都市整備担当も浸水想定区域との重複度合いについて「細かく把握していない」という。居住誘導区域に占める1メートル以上の浸水想定区域の割合は、高知市のように1%と低い市もあるが、多くが「把握していない」(千葉県佐倉市、神奈川県大和市、大阪府高槻市など)と答えた。
●西日本豪雨で被害
 西日本豪雨で被害を受けた広島県東広島市では居住誘導区域で浸水があった。一部は浸水リスクが指摘されていた。都市計画課は「誘導区域が今のままでいいとは思わないが、被害対策が最優先で都市計画の議論に着手できていない」という。「居住誘導区域内の浸水想定を詳細に分析すべきだ」と訴えるのは土木工学に詳しい日本大学の大沢昌玄教授だ。リスクの度合いに応じて防災対策の優先順位を決めやすくなるという。そのうえでリスクが高い地域については「誘導区域からできるだけ除外したほうがいい」と強調する。

*2-3-2:https://digital.asahi.com/articles/DA3S13677813.html?ref=pcviewpage (朝日新聞 2018年9月14日)液状化「なぜ自分の家が」 新築に「危険」判定 北海道地震
 北海道地震で、札幌市のベッドタウンが液状化による大きな被害を受けた。道路が陥没したり、マイホームが大きく傾いたりした光景に、住人らはショックを隠せない。専門家は、かつてあった川沿いに被害が集中していると分析し、二次被害に注意を呼びかける。札幌市東部にある清田区里塚地区は、1970年代後半から住宅地として整備されてきた。この地区で暮らす建設業の清本翔馬さん(27)は、昨年建てたばかりの2階建て住宅が市の応急判定で「危険」とされた。妻の紗耶佳(さやか)さん(28)と「なぜ自分の家が」と頭を抱えている。6日未明、翔馬さんは激しい揺れで目が覚めた。恐る恐る外に出ると、雨が降っていないのに水が激しく流れる音がする。自宅前の道路が背丈ほど陥没し、濁流となっていた。40年ローンで建てたマイホーム。加入する地震保険では、建築費の3分の1しかカバーできない。「先は見えないが、親も里塚で暮らし、自分が生まれ育った場所。またここで暮らしたい」と翔馬さんは話す。市宅地課によると、里塚地区は河川を覆って地下に水路を残し、周辺から削った土砂で造成されたという。被害が大きかった地域は約5ヘクタールに及ぶ。市が7~12日に実施した応急危険度判定では、里塚地区などの計539件中、倒壊の恐れがある「危険」は85件、「要注意」は88件あった。同じ里塚地区でも、被害には大きな差が現れた。清本さん宅から直線距離で約200メートル離れた近藤陽子さん(43)宅は食器が落ちた程度で、液状化の影響をほとんど受けなかった。「同じ里塚なのに別世界のよう。私たちは被害が少なかったけれど、避難する方や陥没した道路を見るたびに、里塚の傷の大きさを痛感しています」
■被害、以前の川沿いに集中
 北海道大の渡部要一教授(地盤工学)は地震直後に札幌市清田区里塚周辺の現場に入り、地面の陥没や隆起、土砂が噴き出している様子などを調査した。12日、朝日新聞がチャーターしたヘリコプターに同乗し、現場周辺を目視した。渡部教授によると、現場周辺はかつて田んぼが広がり、川も流れていた。今回、被害が大きかった住宅や公園は、かつて流れていた川沿いに集中していることが上空からも確認出来たという。「地震による液状化で流動化した地盤が、土砂となってかつての川に沿って地下で動き、それが一気に地上にあふれた。そこに水道管の破裂によって生じた水が加わったことで、泥水が道路を冠水させたと考えられる」。渡部教授は「もし、仮説通りの液状化が起こっているとすれば、土砂が流れ出た後の地下の地盤は空洞化している恐れがあり、現場周辺では陥没などの地盤の変化を注意深く見守る必要がある」と話している。

*2-4-1:https://www.agrinews.co.jp/p45166.html (日本農業新聞 2018年9月13日) 大災害時代 「人と社会」の変革迫る
 北海道地震から1週間。近年、災害が大規模化し、繰り返し列島を襲う。異常が常態となり、「想定外」は通用しない。専門家は大型災害が多発する「危険サイクル」に入ったと警告する。大災害時代の防災、減災対策は今や国家的課題だ。大災害は、人々の意識や社会システムの変革を迫っている。災害は、地震や風水害だけではない。口蹄(こうてい)疫や鳥インフルエンザ、豚コレラなどの家畜伝染病、凶悪テロなどの犯罪も含む。災害は社会や経済状況を映す。自然災害も例外ではなく、地球温暖化の進展と比例して猛威を振るう。少子高齢化や過疎集落の増加、地域コミュニティーの弱体化など社会・産業構造の変化も被害を拡大させ、復旧・復興の長期化を招いている。北海道地震では、電源の一極集中が広域停電を引き起こした。半世紀にわたって防災・復興の研究と実践に携わる、室崎益輝・兵庫県立大学教授(減災復興政策研究科長)は、平成に入って災害が多様化し大規模化していると言う。地震が活動期に入り、水害などと連動し複合災害を引き起こしやすくなっていると指摘。「災害が多発する危険周期に入った」と警告する。事実、平成30年間の主な自然災害を見ると、北海道南西沖地震(1993年)、阪神・淡路大震災(95年)、新潟県中越地震(2004年)、そして未曽有の東日本大震災(11年)。近年も熊本地震(16年)、九州北部豪雨(17年)と続き、今年も大阪北部地震、西日本豪雨、台風21号、北海道地震と頻発する。問題は社会の側が、こうした巨大災害に対応できていないことだ。縦割りの防災行政、司令塔機能の混乱、中央政府と当該自治体の連携不足、専門家や科学的知見の不足、情報伝達の不備などの問題が浮き彫りになっている。加えて本来、防災・復旧・復興の当事者であるはずの市町村は、財政難や人材難に苦しみ機動的に対応できない。道路や橋、河川などインフラの老朽化も被害に拍車を掛ける。さらに目を向けなければならないのが、農村、都市問わず少子高齢化でコミュニティー機能が弱っていることだ。地域力の衰退は、共助の弱体化に直結し、被害の拡大を招く。大規模災害のたびに過疎集落は存廃の危機に陥り、国土の荒廃が進み、さらなる災害の引き金となる負の連鎖が止まらない。災害は社会の弱点や矛盾を映す。災害対策基本法など法制度の充実強化はもとより、防災教育、予防対策、初期対応、復旧・復興に向けて省庁の壁を越えて横断的に取り組む体制が不可欠だ。併せて、災害に強いインフラ整備に予算を重点投入すべきである。そして地域振興や1次産業の活性化は、国土防災につながるという視点が必要だ。地域の防災力を高めることが、大災害時代を生き抜く術になる。防災基点の国づくりこそ百年の計だ。

*2-4-2:https://news.nifty.com/article/domestic/society/12151-14868/ (niftyニュース 2018年2月28日) 首都直下型地震が起これば荒川や隅田川沿いの下町が壊滅する可能性
①東京都は首都直下型地震に備え、危険度を5段階にランク付けしたマップを公表した
②荒川や隅田川沿いなど、下町エリアに危険度が高い地域が集中しているという
③しかも、直下型を想定したこのマップでは、津波の被害が考慮されていないらしい
■「下町が壊滅する!」直下型地震で地獄と化す東京都ゼロメートル地帯
 2月15日、東京都は4年半ぶりに“危険度ランク”を発表。いつ発生しても不思議ではない首都直下型地震に備え、町や丁目で区切った5177カ所を対象に、危険度を5段階にランク付けしたマップを公表した。それを見ると、危険度が高い地域が下町エリアに集中していることが一目瞭然。荒川や隅田川沿いの下町に広がる軟弱な地盤や谷底低地に当たる場所は、地震が起きた際に揺れが増幅されやすく、しかも古い木造住宅が密集しているためだ。防災ジャーナリストの渡辺実氏は言う。「東京都は震災対策条例にもとづいて、1975年から約5年ごとに地震に対する建物倒壊や火災などの危険度を調査、公表してきました。しかし、開発が進んでいる地域では建物の耐震化が進んで評価が上昇しているのに対し、荒川、隅田、足立区では高齢化が進み、建て替えをしようというエネルギーもないというのが実状なんです」。木造住宅が密集している環状7号線の内側を中心としたドーナツ状のエリアや、JR中央線沿線でも火災危険度が高い。「首都直下型地震の際は帰宅難民の大量発生が指摘されていますが、都心から郊外の自宅へ帰宅する際、環状七号線一帯の火災により、都心へ戻る人が出てくる。それが新たな帰宅難民とぶつかることで、さらなる混乱も予想されます。そこへ、関東地震(1923年)の時に発生したような火災旋風が襲う可能性もあるのです」(同)。ただ、8回目の作成となった今回のマップでは、耐震性の高い建物への建て替えや、耐震改修工事などが反映され、倒壊危険度は前回に比べ平均で約20%低下している。また、火災の危険度では、延焼時間の想定が6時間から12時間にまで伸びたが、不燃性の建材を使った建物が増えたことや道路の拡幅工事、公園整備などが進んだ結果、リスクは平均約40%低下したという。しかし問題は、直下型を想定したこのマップでは、津波の被害が考慮されていない点だ。特に23区の東部にはゼロメートル地帯が広がっている。巨大地震の際は、ここに大きな水害が出る危険があるという。渡辺氏が続ける。「東京湾の満潮面より低い、いわゆるゼロメートル地帯が、墨田区、江東区に広がり、23区の面積の約20%にも及びます。そしてそこに、約150万人が生活をしている。考えておかなければならないのは、満潮時に地震が来た時です。火災や揺れで住民が動揺しているところへ、地震により防潮堤が破壊され大量の水が流れ込む。そうなった場合は、想定外の大パニックとなる可能性があるのです」。怖い順の格言である「地震雷火事親父」の親父の部分はかなり怪しくなってきたが、東日本大震災の恐怖は未だ脳裏から離れない。首都直下地震は30年以内に7割の確率で起こると言われているが、それは明日にもやってくるかも知れないのだ。

<火星の話>
*3-1:https://digital.asahi.com/articles/ASL7B5V8VL7BULBJ00Y.html (朝日新聞 2018年7月23日) 火星が大接近 観察は8月が狙い目、小型望遠鏡で模様も
 火星が31日、地球に大接近する。火星はおよそ2年2カ月ごとに接近するが、6千万キロ弱まで近づくのは15年ぶりだ。観察しやすいのは8月で、小型の望遠鏡でも模様が見える。近年は水の痕跡など、探査機による発見も相次いでいる。火星大接近を控えた先月16日、東京・中野にある光学メーカー「ケンコー・トキナー」本社で、望遠鏡の選び方や使い方を紹介する体験会が開かれた。親子連れら約20人が参加。光学デモンストレーターの渡辺一生さんが「火星は今回、土星と同じくらいの大きさに見える。鏡の直径が8センチクラスの望遠鏡でも模様が見えそう」と説明すると、参加者は「撮影には何が必要か」などと熱心に質問していた。父親と来ていた小学6年の男の子(11)は「望遠鏡の使い方のコツが分かったので、火星だけじゃなく木星や土星も見てみたい」と楽しみにしていた。火星は地球のすぐ外側の軌道を回っていて、地球はおよそ2年2カ月ごとに内側から追い越している。この時に最も近づくが、火星の軌道は地球より楕円(だえん)の度合いが強いため、接近する距離は毎回異なり、6千万キロより近づく「大接近」があったり、1億キロまでしか近づかない「小接近」があったりする。2003年の距離は5600万キロ弱で、「6万年ぶり」とも言われた超大接近だった。この夏の火星大接近は5800万キロ弱と、03年に匹敵する近さだ。「大シルチス」という表面の黒い模様や、ドライアイスなどでできた南北の極冠の様子も望遠鏡で見やすくなる。ただ、火星では今年5月に大規模な砂嵐が発生して、模様が広範囲で覆われる状態が続いている。砂嵐が収まるのはしばらく先になりそうだ。また、7月だとまだ火星が夜遅くにしか上がってこないこともあり、国立天文台も「観察しやすいのは8月や9月」として、観望会もその時期に予定している。
●火星の地下に氷残る?
 火星の大きさは地球と月の間くらいだが、地形は極めてダイナミックだ。最高峰のオリンポス山は高さ26キロで、太陽系で最大の山と言われる。すそ野の広がりは600キロに達する。東京―岡山間よりも長い距離だ。また、米探査機が発見したマリナー渓谷は全長5千キロ、幅100キロに及ぶ。地球によく似た特徴もある。1日の長さはほとんど同じ約24時間40分。地軸の傾きもほぼ一緒で夏や冬がある。地球の100分の1の大気圧とはいえ大気がある。気温は平均マイナス55度だが、夏には20度を超すことがある。氷が溶けて液体の水が存在できる温度だ。実際、1996年に打ち上げられた米探査機「マーズ・グローバル・サーベイヤー」が、地下からしみ出た水が地表を流れたように見える地形を上空から撮影した。今も地下に氷が残っているのではないかという期待が高まっている。最近の研究では、地球で生命が生まれた40億年ほど前、火星にも大量の水があったらしいことが分かってきた。であれば、微生物やその痕跡が残っていても不思議ではない。だが、火星の海は消え失せ、赤茶けた大地が広がる荒涼とした世界になった。米航空宇宙局(NASA)のジェイムズ・グリーン博士は5月に来日した際、「火星で起きたことは地球でも起こりうる。地球の運命がどうなるのかを理解するためには、火星を調べることが近道だ」と語った。
●各国が探査
 火星探査はかつて米ソが覇を争ったが、近年は日欧も計画を本格化させている。先陣を切ったのは旧ソ連だ。60年以降、探査機「マルス」シリーズを次々と打ち上げた。だが、軌道に乗せることが難しく、失敗が続いた。初めて火星を近くから撮影したのは65年の米探査機「マリナー」4号だった。さらに、米国は76年に、「バイキング」1、2号の着陸機を軟着陸させた。初めて地表の鮮明な写真が撮られ、大気も観測した。地表では現在、米国の探査車「オポチュニティー」と「キュリオシティ」が活動している。NASAは今年6月、キュリオシティが火星の岩石から炭素や水素を含む有機物を発見したと発表。しかし、生命がいた直接的な証拠は未発見だ。NASAは5月には火星の地中を掘って地質などを調べる着陸機「インサイト」も打ち上げた。将来的には火星の岩石を地球に持ち帰ったり、有人探査をしたりする野心的な計画を立てている。欧州宇宙機関(ESA)もロシアと協力し、火星の本格探査を始めた。16年に打ち上げた探査機は軌道投入に成功。20年には探査車を打ち上げる予定だ。日本も探査機「のぞみ」を1998年に打ち上げたが軌道投入に失敗。リベンジを計画している。狙うのは火星本体ではなく、二つある衛星「フォボス」と「ダイモス」だ。小惑星探査機「はやぶさ」で磨いた試料採取の技術などを応用し、どちらかの衛星から石や砂を持ち帰る火星衛星探査計画(MMX)を進めている。打ち上げは2024年度の予定だ。宇宙航空研究開発機構(JAXA)の川勝康弘・プリプロジェクトチーム長は「どういう小天体に水や有機物が多く含まれ、惑星に物質を運んだのかを突き止める手がかりにしたい」と話す。
●NASAの有人探査計画
 NASAは2030年代に宇宙飛行士を火星に送り込む探査を計画している。まず月の周りに宇宙ステーションを建設。そこを中継基地にして火星に向かう。ただ、片道でも1年ほどかかるため、飛行士の健康管理や被曝(ひばく)対策、事故への備えなど課題は尽きない。費用も巨額になりそうだ。

*3-2:https://digital.asahi.com/articles/ASL7S7GV8L7SULBJ01G.html (朝日新聞 2018年7月26日) 火星、氷床の下に大量の水? 「生命生き残れる環境」
 火星の南極にある氷床の下に大量の水をたたえた「湖」が存在する可能性が高いと、イタリア国立宇宙物理学研究所などのチームが25日、発表した。「生命が生き残れる環境だ」という。27日発行の米科学誌サイエンスに論文が掲載される。太陽から平均約2億2800万キロ離れた火星には、地球の約100分の1の大気があり、生命の「材料」とされる有機物も岩石から発見されている。約40億年前は大量の水に覆われていたと考えられ、現在も北極や南極周辺に氷床が残っている。研究チームは、欧州宇宙機関(ESA)の探査機「マーズ・エクスプレス」が2012~15年に得た南極周辺の観測データを分析。電波の反射具合から、厚さ約1・5キロの氷床の下に、水とみられる層が幅20キロにわたって湖のように存在することがわかった。水がある氷床の底の温度は零下約70度と推定されるが、塩分が濃いことや氷床の圧力がかかっていることで液体のまま存在できているらしい。研究所のロベルト・オロセイ氏は「生命にとって好ましい環境ではないが、水中では単細胞生物などが生き残れる可能性がある」としている。地球外での水の存在は、木星の衛星「エウロパ」や土星の「エンケラドス」などでも予想されているが、火星はより太陽に近く、光や熱で生命活動の元になる化学反応が起きやすい。宇宙航空研究開発機構(JAXA)宇宙科学研究所の臼井寛裕教授(岩石学・地球化学)は「火星に水があるなら、地球と似た生物がいる可能性が高まったと言える」と話している。

<復興と防災>
PS(2018年9月18日追加): 本文に私が、「高齢化と人口減少に直面していることを活用して、高台にケアしやすいマンションを作って危険度の高い地域から移転する都市計画」等と記載したのは、*4-1のように、多様な世代が暮らしやすい街を高台に作って移り住むことだ。こういう街への転居なら、生活がより安全で便利になるので、移転する人も満足できるだろう。
 また、*4-2のように、旧耐震基準で建てられた大型施設の1割に倒壊リスクのあることが明らかになったそうだ。そして、*4-3のように、台風21号による飛来物や倒木がぶつかったことで、福井、滋賀、京都、大阪、兵庫、奈良、和歌山の2府5県で、電柱600本以上が折れる被害が出て6日間24万戸超が停電したが、電線地中化や分散発電が進んでいれば、毎年来る台風でこのように多くの人が停電の不便を味わう必要はなかった筈である。
 さらに、*4-4のように、溜池の危険性が西日本豪雨などで浮き彫りになり、地震による決壊も続発しているそうだ。確かに、政府は溜池の補強を急いで防災と安全機能を高めるべきで、溜池に農業用電力を発電する小水力発電設備を取りつけてもよいと思われる。
 なお、都会でも、*4-5のように、南海トラフ巨大地震発生時に震度6弱以上の揺れが想定される地域を含む24府県にある37国立大のうち、保有する研究機器や歴史的史料を保護するための防災計画を策定している大学は4分の1に留まるそうだ。貴重な研究機器や史料は大学に限らず保管されていると思うが、近いうちに首都直下型地震が起こるとされている関東は準備ができているのだろうか。

*4-1:http://qbiz.jp/article/140105/1/ (西日本新聞 2018年9月3日) 旧公団 ついのすみかに 北九州市小倉南区 徳力団地に医療と福祉拠点 多様な世代が暮らす街へ
 小倉南区、徳力団地−。1960年代半ばに開発された約2300戸のこの旧公団住宅の一角に診療所と特別養護老人ホーム(特養)を併設した「メディカル&ケアとくりき」が8月1日、オープンした。「お父さん。私が毎日来られるようになって、よかろう」。入所者の家族、所紀世子さん(79)が話し掛けると「まあ、気持ちはいいよ」と車いすの夫、泰政さん(84)は照れくさそうにうなずいた。徳力団地に約20年前から住む所夫婦に転機が訪れたのは約10年前だった。泰政さんが脳出血で倒れ体が不自由になった。典型的な「老老介護」で夫の面倒を見続けた紀世子さんは介護7年目でついに倒れてしまった。介護疲れ。1カ月の入院生活を送り限界を悟った。泰政さんは宗像市の有料老人ホームに入所し、その間、紀代子さんは足の不調を覚え手術を受けた。入所していた約3年間、泰政さんの元に通えたのは5回ほどだった。泰政さんの体調も悪化した。「よその土地には、なじめんやった」と泰政さんは振り返る。メディカル&ケアとくりきに入所できた今、紀世子さんは自宅からつえをつきながら通える。「夫も明るく元気になった。友達もいる団地に住み続けられて助かる」。紀世子さんに笑みがこぼれた。
   ◆    ◆
 高度経済成長期の60〜70年代、都市部への人口集中に伴って大規模化していった旧公団住宅は急速に住民が高齢化している。都市再生機構(UR)が管理する1500団地73万戸を対象に2015年に実施した調査では住人の平均年齢は51・2歳で、65歳以上の割合は34・8%に上り、15歳未満は8・6%にとどまった。5年で平均年齢は4・6歳上昇し、高齢化率は9・7ポイント上がった。一方15歳未満の割合は2・2ポイント下がった。URは自治体などと協力し、メディカル&ケアとくりきのような医療と福祉を合わせた複合型拠点を2025年度までに150カ所設置する。14年度から始まり、全国各地で現在133団地で着手や検討が進む。九州では北九州市や福岡市、宗像市の8団地で病院を誘致するなど複合型拠点づくりに取り組んでいる。こうした複合型拠点の開設は、戦後の第1次ベビーブーム期に生まれた「団塊の世代」が75歳以上になる25年度をめどに住まいや医療、介護などの生活支援を一体的に提供する「地域包括ケア」を構築する国の政策にも沿う。URは「(旧公団住宅での)医療と福祉の複合型拠点形成を多様な世代が暮らせる街づくりの先行事例にしたい」と意欲を見せる。
   ◆    ◆
 高齢になっても住み慣れた地域で医療や介護、生活支援サービスを一体的に受けられる地域包括ケアの重要性にいち早く着目したのがメディカル&ケアとくりきの山家滋院長だった。住民基本台帳では3月現在、徳力団地は65歳以上が41%を占め、80歳以上11・4%、85歳以上でも4・8%に上る。自治会が実施した調査では80歳以上の独居高齢者は120人以上いた。50年以上にわたって同団地内で診療所を開いてきた「徳力団地診療所」は以前から往診も実施してきた。01年に診療所を引き継いだ山家院長は、50人以上の往診患者を抱えるうちに入院高齢者に比べ、回復が早く症状が緩和することを実感するようになった。「療養環境の変化はやはりストレスが大きい。自宅と変わらない風景と近所づきあいが続くことで患者の負担感が全然違うと気がついた」。山家院長は小倉南区の社会福祉法人「菅生会」の理事長も兼ねることになり、URに協力を要請。医院と社会福祉法人の協業による拠点開設にこぎ着けた。団地敷地内にあった診療所を4階建てビルに建て替え。無床の診療所、特養29床と併設ショートステイ10床が入居し地域との交流スペースもある。団地や近隣の高齢者たちが次々に入所している。

*4-2:https://digital.asahi.com/articles/DA3S13556772.html (朝日新聞 2018年6月26日) 震度6強―古い大型施設、1割倒壊リスク 学校や病院1万棟、国交省集計
 旧耐震基準で建てられた、病院や小中学校といった規模が大きい全国の建物1万棟余りのうち、1割弱にあたる約1千棟で、震度6強以上の地震が起きると倒壊や崩壊の危険性が高いことが国土交通省のまとめでわかった。大阪府北部を震源とする最大震度6弱の地震から25日で1週間。より強い地震が起きた場合、これらの建物は損壊し、大きな被害が出る恐れがある。現在の耐震基準は1981年6月に導入され、震度6強~7の地震でも倒壊、崩壊しないことが求められている。自治体は、旧耐震基準で建てられた3階建て5千平方メートル以上の旅館や店舗▽2階建て5千平方メートル以上の老人ホームなど、多くの人が出入りする一定規模以上の建物について、耐震性の診断結果を集約し、順次公表していった。同省は、今年4月までに公表された46都道府県(東京の一部と和歌山を除く)に関し、結果を取りまとめた。棟数は計約1万600棟で、▽9%にあたる約1千棟が震度6強~7の地震で倒壊・崩壊する危険性が高い▽7%にあたる約700棟が震度6強~7の地震で倒壊・崩壊する危険性がある――と判明した。合わせて16%となるこれらの建物について、同省は「耐震不足」と認定し、対応を求めている。また、危険性が高いとされた割合(公表時)は東京都が4%、福岡市が4%なのに対し、大阪市が14%、札幌市が18%と地域によって差も生じた。今回の診断は多くの人が出入りする大規模な建物に限られ、ほかにも耐震性が不足している建物は少なくないとみられる。同省は25年までに、「耐震不足」とされた建物の耐震化を完了させたい考えだ。個別の診断内容は、結果を公表している各自治体のホームページで確認できる。

*4-3:http://qbiz.jp/article/140332/1/ (西日本新聞 2018年9月6日) 台風で電柱600本以上折れる 関電、6日も24万戸超停電
 関西電力は6日、台風21号による飛来物や倒木がぶつかったことで、福井、滋賀、京都、大阪、兵庫、奈良、和歌山の2府5県で、電柱600本以上が折れる被害が出たと明らかにした。また、6日午後3時現在で約24万6千戸が停電しており、他の電力会社からの応援を含めた8千人超の態勢で、7日中に大部分を復旧させる方針を改めて強調した。6日午後3時までの延べ停電戸数は約219万戸で、阪神大震災の約260万戸に次ぐ規模となった。

*4-4:https://www.agrinews.co.jp/p45073.html (日本農業新聞 2018年9月3日) ため池管理 安全性高める補強急げ
 急がなければならない。ため池の危険性が西日本豪雨などで浮き彫りになった。地震による決壊も続発している。政府はため池の補強を急ぎ、防災機能と安全性を高めるべきだ。ため池は、西日本を中心に全国に約20万カ所ある。主に雨の少ない地域で農業用水を確保するために作られた。洪水調節や土砂流出を防止する効果に加え、生物の生息場所や地域の憩いの場になるなど多面的な機能を果たしている。農業にとって重要な施設だが、老朽化が進んでいる。2ヘクタール以上の農地に水を供給しているため池は約6万カ所で、このうち7割が江戸時代以前に作られた。担い手の減少や高齢化から管理が行き届かず、堤が崩れたり、排水部が詰まったりしている。農水省がまとめた全国調査によると、ため池の下流に住宅や公共施設ができ、決壊すると大きな被害が予想される「防災重点ため池」は1万カ所を上回った。さらに都道府県の詳細調査では、調査対象の5割強で耐震不足、4割弱で豪雨対策が必要だった。決壊した場合の浸水被害を予想したハザードマップを作り、地域に配っているのは半分に満たない。こんなお寒い状態で防災とはいえない。近年は都市住民との混住化が進み、災害の危険性は増している。ハザードマップを完備し、災害に備えるべきだ。最近10年のため池被災は、7割が豪雨、3割が地震で堤の決壊や流失を起こしている。記録的な豪雨は、常識では考えられない降水量をもたらす。昨年7月の九州北部豪雨や、今年7月の西日本豪雨では大きな被害につながった。この異常事態を念頭に置きながら、耐震性や洪水防止策を強めるなど安全性を強化するべきだ。一方、ため池の所有者が複数に及んだり、工事費用の負担が重かったりと、改修工事の合意形成も容易ではないのが実態だ。地方自治体任せにするのではなく、政府全体がしっかり支援すべきだ。現場のニーズに応えられるように予算を十分確保し、改修工事などの補助率を高めるなど、現場の負担を減らす方法も考えなければならない。ため池での死亡事故も続発している。ここ10年は年平均で20人以上が亡くなっている。60歳以上の高齢者が多く、水の利用が多くなる5~9月にかけて多発している。警戒を強めるべきだ。釣りなど娯楽中の事故も多い。ため池を管理している水利組合や行政、土地改良区は、子どもたちが危険な箇所に立ち寄らないよう注意喚起したり、安全柵を設置したりする対策も進める必要がある。農山村に人が少なくなり、管理の目は行き届かない。放置されたままのため池はないか。もう一度、下流域の住民を含めてみんなで点検し、必要な整備を急ぐ必要がある。政府や地方自治体は、一日でも早くため池の防災対策に取り組むべきだ。

*4-5:https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180901-00000022-mai-soci (毎日新聞 2018/9/1) <南海トラフ地震>機器や史料の保護対策 域内国立大25%
 南海トラフ巨大地震の発生時に震度6弱以上の揺れが想定される地域を含む24府県にある37国立大のうち、保有する研究機器や歴史的史料を保護するための防災計画を策定している大学は4分の1にとどまることが、毎日新聞のアンケートで明らかになった。大学には貴重な研究機器や史料が多く、対策が求められそうだ。アンケートは、6月の大阪北部地震で最大震度の6弱を観測した大阪府茨木市で、大阪大の研究施設に被害が出たことを受けて実施し、静岡大を除く36大学が回答した。地震や津波、火災などに備え、研究機器や二度と手に入らない古文書などの歴史的史料に対する免震装置の設置や防火対策など、物品が対象の防災計画を策定しているか尋ねたところ、策定済み9(25%)▽未策定24(67%)▽検討中2▽その他1--だった。策定済みの9大学のうち、名古屋大は東日本大震災(2011年)を受け、重要な機材や史料の損害を防ぐためにガイドラインを定めた。熊本大も熊本地震(16年)後に大規模災害対応マニュアルを改定し、大災害を機に計画を整備した大学が目立った。大阪北部地震で被害を受けた阪大は「策定の検討を始める予定」と回答した。未策定の24大学の多くは、人命の安全や2次災害防止が目的の防災計画はあるが、研究機器などは対象外。神戸大や広島大などは研究室や部局ごとに設備の転倒防止や防火対策を進めているが、「被害規模の想定が困難」(山梨大)と物品の防災の難しさを指摘する声もあった。被災時に必要な支援策では、28大学が「国による経済的支援が必要」と回答。機密文書の取り扱いに詳しい専門家の派遣や、施設を使えなくなった研究者の受け入れを他大学に求める意見もあった。一方、国立大学の研究施設や所蔵史料の防災対策に関して、国としての対応の有無を文部科学省に照会したが、確認できなかった。6月18日に起きた大阪北部地震では、阪大で1台約23億円する電子顕微鏡2台が損傷し、復旧まで1年以上かかる見通しだ。iPS細胞(人工多能性幹細胞)を使った世界初の心臓病治療の研究でも栄養管理が中断し、細胞の培養をやり直すことになった。

<防災庁と防災 ← 狭い視野では何もできないこと>
PS(2018年9月18日追加):(3)に記載したように、「①社会が災害に対応できていないから防災庁が必要」とする意見があり、*5-1のように、「②官僚は応答性と専門性があるが、専門性が身につかなければ若手は霞が関から離れる」「③少人数で政策を決めるトップダウンが進むほど、大多数の政策立案に関われない官僚たちはいらだつ」という記事もある。
 しかし、全体を見渡して重要性を判断する教育が徹底している公認会計士と全分野を担当する国会議員の両方を経験してきた私が官僚を見ると、②については、官僚機構は優秀な人を採用しているのに、入省年次と入省時の成績や学歴ですべてが決まり、リスクをとったら損をするシステムであるため、優秀な人を普通の人に育てているように見える(結果としては、さすがと思われる人も多いが・・)。また、2年毎に関連のない部署に異動させる官僚機構こそが、超ジェネラリスト(「何でも知っている」とされる何もできない人)を作り、スペシャリスト(専門家)を育てることができないシステムだ。そして、これは安倍首相や政治家が作った風土ではなく、官僚機構そのものの文化なのである。
 このような中、③については、内閣府は各省庁出身者を抱えているため、内閣府で決められる政策は単なるトップダウンではなく、各省庁の提言を踏まえている筈で、少人数で決めたものではない。また、国会議員とのすり合わせは、官僚も交えて自民党の専門部会や国会の各委員会で行われているため、残る問題は、どういう理念の下で提言を取捨選択したかであり、ここに民間議員の意見も入っている筈なのだ。そのため、官僚がいらだつのは、政策の取捨選択に関してだと思うが、私から見ると、官僚の政策は現場を見ておらず、省庁内の男社会という狭い視野であるため、疑問を感じることが多い。そして、官僚は主権者である有権者の選挙を経ていない。
 また、①については、災害対策は、気象庁・防衛省・警察庁・国土交通省・環境省・農水省・経産省・厚労省・財務省・総務省・文科省など殆どすべての省庁が関わるため、防災庁を作って防災しか考えたことのない官僚が行うよりも、内閣府を土台として内閣が政治決定した方が速やかで的確な判断ができる。そのため、省庁を細かく分けて小さな分野を専門とし、他のことはわからない狭い“専門家”を作るよりも、内閣府を司令塔にする方が合目的的なのである。
 例えば、*5-2のように、大型台風19号、20号も発生し、8月に発生した台風は8個に上り、*5-3のように、硫黄島では火山性地震が1日500回超に増加している。また、*5-4のように、地震調査委員会が全国地震動予測地図を公表しており、これに対応するには短期的避難では足りず、原因究明して都市計画や建築物の構造から考え直さなければならない。そのためには全省庁が知恵を絞る必要があり、その対応には内閣府の方が適しているわけである。

*5-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180918&ng=DGKKZO35362850U8A910C1MM8000 (日経新聞 2018年9月18日) 政と官 細る人財(2) 白書は「遺書」、頭脳流出の波
 「労使ともにリスクを避けて雇用の維持を優先している姿勢がみられる」。2017年夏に公表された経済財政白書は第1章で、雇用を守るために低賃金・長時間労働がはびこっていると問題提起した。内閣府で執筆に携わった森脇大輔氏。まだ30歳代だが「遺書のつもりで書いた」。
●1年で1685人離職
 年次と学歴ばかりを重視し、変化するリスクを拒む霞が関への批判を込めた。閉じた世界では変化は生まれない。そんな思いから白書公表の直前、サイバーエージェントに転職した。今はネット広告システムの研究開発を手掛ける一方、研究者として論文も書く。総務省の若手チームは6月、省内の働き方改革を提言した。メンバーの橋本怜子さんは自ら希望し、鎌倉市役所に出向した。霞が関は外との交流や勉強の時間が持てず、民間に比べ給料も低い。「優秀な若手が辞めていくのは当然」と思う。止まらぬ頭脳流出。霞が関の25~39歳の行政職の離職者は16年度に1685人。ここ5年、じわじわ増えている。一方、キャリア官僚の試験申込者数は17年度で2万3425人と前年度比4%減。20年間で約4割減った。財務省は10年度に官民交流拡大など50の提言をまとめたが「次官が代わるたびに改革の勢いが鈍った」(同省幹部)。官を取り巻く環境はさらに厳しさを増している。息子の大学入学に絡む汚職で幹部が逮捕された文部科学省。若手官僚は「国からではなく、現場から教育を変えようという人材が増えるだろう」と嘆く。安倍政権が教育無償化の具体化を進めるなか、教育行政の担い手が犯罪に手を染めた衝撃は計り知れない。
●官邸主導に不満
 明治大学の田中秀明教授は、官僚の役割として政治家からの要求に応える「応答性」と、制度などの深い知識を持つ「専門性」があると指摘する。「現政権は過度に応答性を重視するが、専門性が身につかなければ若手は霞が関から離れる」。かつて社会保障分野では、首相経験者の橋本龍太郎氏ら大物政治家がボスとして強い力を持っていた。10年ほど前までは尾辻秀久元参院副議長ら「4人会」が政策決定の中心。いわゆる族議員の「密室政治」だが、政治家が決めた政策の方向性を官僚が制度に落とし込むという政と官の一種の役割分担があり「役人としてやりがいを感じた」(元厚労省首脳)。いまは安倍政権下で官邸主導が進む。農林水産省の若手は「政府が掲げる『農産物輸出1兆円』の目標も、目標設定のための分析は不十分。単に切りがいい数字を挙げただけとしか思えない」という。少人数で政策を決めるトップダウンが進むほど、大多数の政策立案に関われない官僚たちはいらだちを募らせる。「70歳、80歳まで仕事する時代。戦力として働き続けたい」。安永崇伸氏(46)は昨夏、経済産業省を辞めた。将来の資源エネルギー庁長官とも嘱望されていたが、かねて考えていたように、コンサルタントとしてエネルギーを自身の生涯の仕事とする道を選んだ。官僚も人の子。機械の歯車ではない。官であれ民であれ、やりがいを見失えば、未来を信じて働くことは難しくなる。

*5-2:https://ryukyushimpo.jp/news/entry-785556.html (琉球新報 2018年8月20日) 台風19号、夜大東接近 20号も発生、今月8個目
 強い台風19号は、19日午後9時現在、東京都・小笠原諸島の父島の西南西約460キロにあり、ゆっくりした速さで西北西へ進んでいる。20日から21日にかけて沖縄地方に接近する恐れがあり、大東島地方では20日夜は非常に強い風が吹き、沿岸の海域では大しけとなる見込み。また、18日午後9時に発生した台風20号は19日午後9時現在、南鳥島近海にあり、西北西へ進んでいる。19日午後9時現在、台風19号の中心気圧は955ヘクトパスカルで、中心付近の最大風速は40メートル、最大瞬間風速は60メートル。中心から半径130キロ以内は風速25メートル以上の暴風域となっている。大東島地方は台風接近により20日午後から次第に北西の風が強く吹き、夜遅くには非常に強い風が吹く見込み。沖縄本島地方沿岸も20日からうねりを伴い波が高くなる見込み。台風の進路によっては21日から大しけとなる。8月に入って台風の発生が相次いでおり、20号で8個目となった。

*5-3:https://www.hokkaido-np.co.jp/article/226400?rct=news (北海道新聞 2018年9月8日) 硫黄島で火山性地震増加 1日で500回超、噴火の可能性
 気象庁は8日、東京の硫黄島で火山性地震が増加し、同日午前2時ごろから午後9時までに566回観測したと発表した。噴火する可能性がある。沿岸での小規模な海底噴火にも注意が必要。1日の地震回数が500回を超えたのは2012年4月27日以来。硫黄島は現在、海上、航空両自衛隊の基地があり、民間人の上陸は制限されている。

*5-4:http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201806/CK2018062602000279.html (東京新聞 2018年6月26日) 関東圏 震度6弱高確率 地震調査委予測 危険性変わらず
 政府の地震調査委員会(委員長・平田直(なおし)東京大教授)は二十六日、三十年以内に震度6弱以上の揺れに襲われる危険性を示す全国地震動予測地図二
〇一八年版を公表した。南海トラフ巨大地震が懸念される太平洋岸では静岡市が70%、長大活断層が走る四国は高知市が75%と各地で引き続き高い確率となった。沖合で新たに巨大地震が想定された北海道東部は、根室市が63%から78%となったのをはじめ大幅に上がった。地震調査委を所管する林芳正文部科学相は同日の記者会見で「地震はどこでも発生することを念頭に置いて、防災に役立ててほしい」と述べた。最大震度6弱を観測した大阪府北部地震が十八日にあった近畿地方でも、50%前後と高い数値が目立つ。活断層が多い上に、地盤が揺れやすい平野が広がるためという。神奈川県沖を走る相模トラフの巨大地震や、東京周辺を直撃する首都直下地震が懸念される関東地方も高いまま。六月に入って周辺で地震活動が活発化した千葉市が85%と都道府県庁所在地では最も高かった。揺れの計算には地盤の性質が反映されているが、プレートが複雑に重なる南関東では大地震が多数想定されており、横浜市、水戸市も80%を超えるなど強い揺れの確率も高くなっている。南海トラフ巨大地震の発生確率は毎年上昇するため、西日本の太平洋岸は名古屋市が46%、和歌山市が58%など一七年版と同じか、わずかに確率が上昇。近畿から四国、九州に延びる長大な活断層「中央構造線断層帯」などの評価を昨年見直したため、四国四県は確率が1~2ポイント高まった。北海道東部は沖合のプレート境界、千島海溝沿いで大津波を伴う巨大地震が繰り返していたとの研究結果を踏まえて、釧路市が47%から69%になるなど大幅に上昇した。評価は今年一月一日が基準。最新版は防災科学技術研究所のウェブサイトで公開され、住所から発生確率を検索できる。<全国地震動予測地図> ある場所がどのくらいの地震の揺れ(地震動)に襲われるのかを「今後30年間で震度6弱以上」といった表現で、全国規模で示した地図。プレートが沈み込む海溝で起きる地震や、内陸の活断層で起きる地震の評価結果を基に政府の地震調査委員会が作成、公表している。

<省庁再々編は改善になるか>
PS(2018年9月19、20、21日追加): *6-1のように、北海道地震から10日以上が経過し、被災地では中断していた農作業が再開し始めたが、人手不足が深刻化しているそうだ。厚真町で水稲や畑作物を33ha栽培する山崎さんは、既に大規模化している北海道の農業者であるため、この農業を体験しておくことは勉強になる。そのため、未だ田畑の区割りが小さな東北の農家で農作業が終わった人、農高や大学農学部の学生は、体験方々、ボランティアに行くとよいだろう。
 また、農業は、*6-2のように、「スマート農業」が始まり、農水省が2019年度から全国50カ所で「スマート実証農場」を整備して大規模な実証試験を始めるそうだ。次世代を担う高校生・大学生は、農業系・工業系を問わず見学に行き、「自分なら、何をどうする」ということを考えておく方がよいと思われる。
 このような中、*6-3のように、「①自民党本部で行政の効率化を議論する総会が開かれて省庁再々編の提言がまとまった」「②内閣府の担当領域の広さや子育て政策を担う部署の分散が問題視された」「③最も批判を集めて再々編の目玉になったのは厚労省で、法案作成が雑・データの扱いも粗末・法案の渋滞がひどい」「④国会の委員会は役所別に設置し、その所管法案を審議する。ある法案が審議入りしたらその採決まで別の法案は審議しない慣例がある」「⑤政治家が答弁するなら、官僚はより丁寧に準備しないといけないので、役所は大変になった」「⑥政と官は表裏一体だから、官を斬るなら政も血を流す覚悟が求められる」等が書かれている。
 このうち、②の内閣府の担当領域の広さは全分野をカバーするため当然だが、子育て政策を担う部署が厚労省と文科省に分散していたのは、確かに幼児教育と保育の改革を妨げてきた。また、③の厚労省で法案作成が雑・データの扱いも粗末・法案の渋滞がひどいと言われる理由は、忙しすぎたからではなく、「結果ありきの調査をして結論に合うデータを作ってもよい」という感覚で法案作成をしてきたからであるため、組織再編をするより、考え方を変えるべきである。
 また、⑤についても、主権者が選んだ政治家が答弁するのは民主主義の当然であるため、矛盾なく速やかに説明できる資料を普段から作っておくのは仕事の一部であり、それで役所が大変になったというのなら、農業のIT化・機械化を見習うべきである。さらに、⑥の「官を斬るなら政も血を流せ」などという発言は、議論してよりよい結果に辿り着こうとする民主主義の論理ではなく、パワハラを含む暴力発言であり、主権者への連絡係であるメディアがこの程度にしか民主主義を理解しておらず人権意識が薄いのが、最も大きな問題なのである。
 最後に、④の委員会を役所別に設置しているのは、英国のように提出法案毎に委員会を作ればよいと思うが、首相の370時間の答弁は、モリカケ問題のように全体から見れば小さな金額で本質を外した質問の繰り返しによるものが多かった。これは野党が悪いというよりは、個人の人格攻撃を行うやりとりしかスクープできないメディアの質の悪さと怠慢が原因であり、メディアはこのやり方を「国民に合わせて、視聴率を上げるため」などと弁解しているが、一般国民の方がメディアの製作者よりも質が高いというのが、これまで見てきた私の感想だ。
 ただし、*7-1のように、石破派の斎藤農相が、総裁選で安倍首相を支持しなかったことによって辞任圧力を受けたのは、経産省出身の議員だからこそ農林水産品の輸出に関して農相としてよい仕事をしていたのでもったいないことだ。なお、*7-2の「カツカレー食い逃げ事件」は、いつもの冷えたまずいカレー(私がカレールーを使って作った具沢山の鶏カレーの方が、よほどヘルシーで美味しい程度)だったので投票を辞めたか、首相サイドには秘書が偵察に来ていたか、最後に調整に動いた人がいるのか、ともかくあのカレーでは誘因にならない(笑)。

*6-1:https://www.agrinews.co.jp/p45229.html (日本農業新聞 2018年9月19日) 北海道地震 ジャガイモ、カボチャ最盛期 収穫遅れ小麦播種も迫る パート不足深刻 厚真町
 北海道地震から10日以上たち、被災地では中断していた農作業が再開し始める一方、人手不足が深刻化している。ジャガイモなどの収穫が最盛期だった北海道厚真町では、農作業のパートタイマーも被災。水稲の収穫や、小麦の播種(はしゅ)も始まるため焦燥感が募る。自ら人を集め、急ピッチで作業を進める農家も出てきた。特に人手が必要なのは、ジャガイモとカボチャだ。ジャガイモは4人ほどで収穫機に乗り、機械が掘り上げた芋をコンテナに詰める。カボチャは手作業で収穫する。元々、人手不足だったが、より人手が集まりにくい状況だ。JAとまこまい広域によると、地震発生前日の5日時点での集荷量は、ジャガイモが予定量1700トンのうち3割、カボチャは1200トンの2割にとどまる。厚真町で水稲や畑作物を33ヘクタール栽培する山崎基憲さん(44)は、自宅や倉庫の片付けが一段落し、17日からジャガイモの収穫を再開した。3・5ヘクタールのうち残りは7割で、例年より1週間以上遅れているという。「今後、水稲や小麦もある。早くしないと雪が降る前に作業を終えられない」と気をもむ。山崎さんはボランティアチーム「石狩思いやりの心届け隊」にジャガイモの収穫を依頼。17~24日のうち6日間、2、3人が来る予定だ。同チーム代表の熊谷雅之さん(50)は「農作業支援は初めて。少しでも早く収穫が進むよう、これからも協力したい」と話す。

*6-2:https://www.agrinews.co.jp/p45230.html (日本農業新聞 2018年9月19日) 「スマート農業」始動 見て 触って 使って…便利さ実感 実証農場50カ所 農水省19年度
 農水省は2019年度から、ロボット技術や情報通信技術(ICT)を活用したスマート農業の普及に向けて、全国50カ所に「スマート実証農場」を整備して大規模な実証試験を始める。水稲や野菜、果樹、畜産など各品目で、1作通して複数のスマート農業技術を組み合わせ、省力効果や経営効果を確認。最適な技術体系を確立する。全国8カ所で説明会を開き、協力する生産者やメーカーを募る。
●協力農家を募集 8会場で説明会
 19年度予算概算要求に「スマート農業加速化実証プロジェクト」事業として50億円を盛り込んだ。事業は19年4月~21年3月の2年間。「スマート実証農場」は、生産者や農機メーカー、研究機関、JA、自治体などでつくるコンソーシアムが運営する。各品目で、さまざまなスマート農業技術を導入したときの生産データや経営データを蓄積・分析する。同省は稲作で使える技術として、ロボットトラクター、自動運転田植え機、自動水管理システム、ドローン(小型無人飛行機)を使った種子・薬剤散布などを挙げる。その他にも、施設園芸では統合環境制御システム、接ぎ木ロボット、収穫ロボットなど、果樹では人工知能(AI)によるかん水制御、自動草刈り機、作業者が身に着けるアシストスーツなどの導入を提案する。事業では、これらの技術の導入や改良に要する費用、人件費などを補助する。事業を管轄する同省農林水産技術会議事務局は「スマート農業普及のためには、技術体系の確立だけでなく、農家に実際に見て使ってもらうことが重要」(研究推進課)と説明。実証農場には、農家の視察や農機の試乗などを積極的に受け入れるよう求める。事業説明会は18日の広島、島根を皮切りに、北海道、岩手、東京、愛知、香川、熊本で開く。参加希望者が定員を上回った会場もあり、追加で開くことも検討している。

*6-3:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180919&ng=DGKKZO35367050U8A910C1MM8000 (日経新聞 2018年9月19日) 政と官 細る人財(3) 滞る国会改革、すり減る現場
 9月5日、自民党本部で開いた会合で省庁再々編の提言がまとまった。行政の効率化を議論する行政改革推進本部の総会だ。内閣府の担当領域の広さや、子育て政策を担う部署が分散していることなどが問題視された。
●苦肉の分割構想
 1府12省庁で最も批判を集め、再々編の目玉になったのは厚生労働省だ。甘利明本部長は「現状で問題ないと言った歴代厚労相はいない」と分割を提言した。記者団にも「国会の答弁回数が2000回を超え、法案作成が雑だ。データの扱いも粗末だ」と説明した。構想が動き始めたのは2017年夏だ。自民党の国会対策委員会が「厚労委員会の法案の渋滞がひどい。対応してほしい」と首相官邸に求めた。直前の17年通常国会では厚労省の労働基準法改正案が成立しなかった。既に17年秋の臨時国会では、同省の働き方改革法案を提出する予定が入っていた。臨時国会で2法案を成立させたいが「重要法案は1国会1本」が相場とされる。もっと迅速に法案を処理できないか――という訴えだ。国会の委員会は役所別に設置し、その所管法案を審議する。ある法案が審議入りしたらその採決まで別の法案は審議しない慣例がある。この2つのルールに従うと医療や年金、雇用などの重要政策が集中する厚労委では法案が渋滞する。官邸は水面下で検討チームをつくった。「厚労相の他に特命担当相を設ける」「副大臣に答弁させる」などの案があがった。党では厚労委を2つに分ける話もでた。だが国会の機能に直接踏み込む案は野党が反発し、実行は難しい。1年かけて出てきたのが厚労省分割案だ。厚労省を割れば政策の遂行能力が高まるほか、役所に応じて設置される厚労委も割れて法案審議の場が増える。官にメスを入れて政を変えるやり方だ。
●首相出席370時間
 学習院大教授の野中尚人氏は「国会の仕組みは55年体制から変わらない。世の変化についていけていない」と語る。日本と同様に議院内閣制をとる英国は提出法案ごとに委員会をつくるため、法案は渋滞しない。首相や閣僚も委員会での法案審議にほとんど出席することはない。16年、安倍晋三首相は国会に約370時間出席したがキャメロン首相の議会出席は約50時間。審議は進み、内閣は外交に時間を割ける。自民党もこうした国会改革に動く。日本は01年の省庁再編と同時に副大臣・政務官制度を導入した。英国がモデルだが役割は中途半端だ。経済産業官僚出身の斎藤健農相は「役所の局長の答弁がなくなり、ほとんど政治家が答弁している」と話す。「政治家が答弁するなら、官僚はより丁寧に準備しないといけない。役所は大変になった」と強調する。政治家の答弁を増やした結果、裏で支える官僚の負荷は予想以上に高まり現場がすり減る。官僚の仕事の精度が落ちた理由は政治の側にもある。5日の自民党行革本部では「行革をやるには、すさまじいことになる覚悟が必要だ」との声が出席議員から上がった。行革は政が官に斬り込むもの、とみられがちだ。だが政と官は表裏一体だ。官を斬るなら政も血を流す覚悟が求められる。

*7-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180920&ng=DGKKZO35518800Z10C18A9PP8000 (日経新聞 2018.9.20) 農相への辞任圧力発言で応酬 、首相陣営「どーんと構えて」 石破氏「ウソ言う人でない」
 自民党石破派の斎藤健農相が党総裁選で安倍晋三首相(総裁)を支持する国会議員から辞任圧力を受けたと発言した問題で、首相と石破茂元幹事長の両陣営が応酬を繰り広げている。首相陣営の選挙対策本部の甘利明事務総長は19日「斎藤さんはどーんと構えて、それがどうしたというぐらいでやったほうが政治家としての格が上がる」と述べた。石破氏は「斎藤氏はウソを言う人ではない。昔はそういうことはよくあった、何が悪いんだという言い方は絶対間違っている」と強調した。斎藤氏は14日の千葉市での会合で、首相を支持する議員から「石破氏を応援するなら農相の辞表を書いてからやれと圧力を受けた」と発言した。首相は17日のテレビ番組で「陣営に聞いたらみんな『そんなことがあるはずがない』と怒っていた。そういう人がいるなら名前を言ってもらいたい」と反論した。

*7-2:https://digital.asahi.com/articles/ASL9N7WH2L9NUTFK03Q.html?iref=comtop_8_02(朝日新聞2018年9月21日)投票前のカツカレー「4人が食い逃げ」 安倍陣営嘆く
 カツカレーを食い逃げしたのはだれだ?――。自民党総裁選で安倍晋三首相(党総裁)の陣営が投開票直前に振る舞ったカツカレーを食べながら、実際に首相には投票しなかった議員がいるのではないか。首相陣営がこんな話題で持ちきりになっている。首相陣営は20日昼、東京都内のホテルで「必勝出陣の会」を開催。首相も出席して結束を確認した。首相を支持する衆参議員用に験担ぎのカツカレーが333食分振る舞われ、完食された。業界団体関係者ら議員以外の出席者用には別途、カレーが準備されていたという。ところが、実際に首相が得た議員票は329票。少なくとも4人がカレーを食べながら首相には投票しなかった計算になる。陣営幹部は嘆く。「カレーを食べて首相に投票しなかった議員がいる。一体だれなんだ」

<激甚災害の指定と復興>
PS(2018年9月20日追加): *8-1のように、北海道地震の道路・橋などの土木インフラの被害額は少なくとも1000億円に上るそうだが、この規模なら、*8-2の激甚災害の指定を受けることがができる。激甚災害の指定を受けると、被災した自治体が行う復旧事業に対する国からの補助率が、①道路や堤防などインフラの復旧事業は8割から9割程度 ②農業施設の復旧事業は9割程度 と上がり、中小企業も経営再建の融資を受けやすくなる。
 しかし、この制度の欠点は、復旧に重点を置くため、津波が来たり、天井川の傍だったりする危険な地域にも住宅地を再建して、「賽の河原の石積み」という大きな無駄遣いの繰り返しを促してしまうことだ。そのため、次の災害を予防する観点から、復旧ではなく、適切な都市計画に基づいた復興に誘導するよう、激甚災害の指定を改正するのがよいと考える。

*8-1:http://qbiz.jp/article/141077/1/ (西日本新聞 2018年9月20日) 北海道地震、土木の被害1000億円 道路や橋など、損壊多発
 北海道の地震で、道路や橋など土木インフラの被害額が少なくとも1千億円に上ることが20日、道への取材で分かった。被害が大きかった地域では調査が終わっておらず、さらに額は膨らむ見通しだ。土砂崩れで36人が死亡した厚真町などで道路の損壊が多発し、札幌市でも道路が陥没した。河川への土砂流入などの被害もあった。これとは別に、道は農林水産業の被害額が推計約397億円に上ったとしている。土砂崩れによる林や農地の被害が大きかった。観光分野では宿泊予約のキャンセルが延べ94万2千人に上り、全体の損失額を推計約292億円としていた。加えて、地震後の停電や節電による製造業への影響も見込まれる。高橋はるみ知事は20日の道議会本会議で、土木や農林など直接的な被害額だけで約1500億円に上ったと答弁。復旧に向けて「産業への影響の実態を、幅広く把握することが重要だ」と述べた。

*8-2:http://www.bousai.go.jp/kohou/oshirase/h12/120324/120324.html (内閣府) 「激甚災害指定基準」、「局地激甚災害指定基準」及び「激甚災害に対処するための特別の財政援助等に関する法律施行令」の一部改正について
1 改正の経緯
 激甚災害制度は、国民経済に著しい影響を与えるような激甚な災害が発生した場合に、公共土木施設や農地等の災害復旧に必要な費用の負担に関して国庫補助の嵩上げを行い、地方公共団体の財政負担を軽減することなどを目的として昭和37年に創設されました。公共土木施設災害復旧事業等に係る激甚災害の指定(全国的規模の本激の指定)については、制度発足当初は毎年1~2件指定されていましたが、市町村単位で行われるいわゆる「局激」を除けば、昭和59年以降の指定は阪神・淡路大震災の1件のみとなっています。このため、近年の地方公共団体における財政の逼迫状況等を踏まえ、被災した団体の財政負担の緩和を図るとともに、被災地域の円滑かつ早期の復旧を図ることを目的として、公共土木施設等に激甚な被害が発生した災害については、これを適切に激甚災害に指定できるよう、「激甚災害指定基準」(昭和37年中央防災会議決定)の一部、「局地激甚災害指定基準」(昭和43年中央防災会議決定)の一部及び「激甚災害に対処するための特別の財政援助等に関する法律施行令」(昭和37年政令第403号。以下「施行令」といいます。)の一部を改正しました。
2 激甚災害指定基準(公共土木施設関係)
 激甚災害の指定には、
  ① 全国的に大きな被害をもたらした災害を指定する場合(いわゆる本激)と
  ② 局地的な災害によって大きな復旧費用が必要になった市町村を指定する場合
    (いわゆる局激)の二つがあり、さらに①の本激には、
    A. 全国的に大規模な災害が生じた場合の基準(本激A基準)と
    B. Aの災害ほど大規模でなくとも、特定の都道府県の区域に大きな被害が
      もたらされた場合の基準(本激B基準)があります。
3 改正の概要
1)本激A基準
 本激Aの指定基準は、全国の査定見込額が全国の地方公共団体の標準税収入の一定割合を超えることを要件としていますが、この割合を大幅に引き下げることにしました。平成11年度の標準税収入(約30兆円)をもとに計算すれば、従来は約1兆2,000億円でしたが、改正後は約1,500億円を超える被害があれば本激の指定が可能になります。
     4%      →   0.5%
  約1兆2,000億円      約1,500億円
2)本激B基準
 本激B基準は、次の2つの要件を満たす必要があります。第1の要件は、全国の査定見込額が全国の地方公共団体の標準税収入の一定割合を超えることですが、この割合についても大幅に引き下げることとしました。平成11年度の標準税収入(約30兆円)をもとに計算すれば、従来は約3,600億円でしたが、改正後は約600億円を超える被害があれば、これを満たすことになります。
    1.2%      →   0.2%
  約3,600億円         約600億円
第2の要件は、次のいずれかを満たすことですが、これも大幅に引き下げることとしました。
  <中略>
4 改正日及び適用期日
・激甚災害指定基準及び局地激甚災害指定基準の改正
  平成12年3月24日 中央防災会議決定。
・激甚災害に対処するための特別の財政援助等に関する法律施行令の一部を改正する政令
  平成12年3月24日 閣議決定。
  平成12年3月29日 公布、施行。
当該改正基準等は、平成12年1月1日以後に発生した災害から適用されます。

<教育を疎かにすると、こうなるということ>
PS(2018/9/22追加): *9-1のように、ヨーロッパでは、鉄道車両も環境シフトして独シーメンスや仏アルストムが蓄電池駆動や水素燃料の新型車両を投入している。にもかかわらず、(私が提案して)最初にEVや太陽光発電を開発した筈の日本では、*9-2のように、未だに①節電要請 ②太陽光発電は不安定だから火力発電の更新が不可欠 ③電力自由化と安定供給の両立を立ち止まって点検すべき ④電力の安定供給には電源の最適な組み合わせと適切な設備更新が欠かせない などと言っている。
 このうち①については、LEDや断熱材の使用等でヒトに不便な思いをさせずに節電するのが文明だ。また、②については、火力や原子力で熱を発生させなければエネルギーの安定供給ができないと考えている阿保さが情けない。さらに、③については、電力会社が地域独占していたから競争がなくいつまでも進歩しなかったので、市場経済の中で電力を自由化し、複数の電力会社が切磋琢磨して良いサービスを工夫することこそが、安い電力を安全に安定供給するためのKeyである。さらに、④については、「電源の最適な組み合わせ」とは、合理性のない発電方法も含めて少しずつ何でもやるように人為的に決めるものだと思っているところに呆れる。
 そのため、日経新聞の記者は、経済学や独禁法も知らず、原発や火力発電が環境に与える影響も考慮できないのかと、記者になる人の知性の劣化に驚かされる。従って、高校卒業までは、文系もしっかり理系の勉強をする教育システムにしておかなければならず、スポーツばかりやって単純なルールを(不合理でも)守ることしかできない人間を作ってはならない。身体だけ強くても頭で考えられなければ、最初に機械やAIにとって代わられる人材になるからだ。


 独、seamens               トヨタ         中国     
 燃料電池電車    燃料電池船    燃料電池トラック     蓄電池特急

*9-1:https://www.nikkei.com/article/DGKKZO35640080R20C18A9EA6000/ (日経新聞2018/9/22)鉄道車両も環境シフト 独シーメンスや仏アルストム 蓄電池駆動や水素燃料
 自動車に続き鉄道車両でも環境負荷を減らす動きが広がってきた。独シーメンスは2019年に蓄電池で駆動する新型車両を投入する。仏アルストムは燃料電池で動く鉄道車両が営業運転を始めた。もともと環境に優しいとされる鉄道車両だが、欧州ではディーゼルエンジンで動く車両も多く、新技術を生かした環境対応が進む。ドイツ・ベルリンで21日まで開催した世界最大の鉄道ショー「イノトランス」。2年に1度のショーは、今後の鉄道業界の動向を占ううえで、関係者が最も関心を寄せる展示会だ。18年の今回、名だたる大手メーカーに共通したのはデジタル化と環境配慮の2本柱だ。独シーメンスはオーストリア連邦鉄道と共同で、蓄電池で駆動する試作車両「デジロML シティジェットエコ」を展示した。架線を通じ電気を受け取れる区間で列車の蓄電池を充電し、架線がない非電化区間では蓄電池から電気を取り出し走行する。ディーゼル駆動の旅客車両に比べて二酸化炭素(CO2)の排出量を最大50%削減できる。ディーゼルエンジン特有の騒音もない。19年後半に営業運転を始める計画だという。18年内に独シーメンスと鉄道部門で事業統合する予定の仏アルストムも環境対応車を投入。燃料電池で走る世界初の「水素電車」が営業運転を始めたと発表した。車両の上に燃料電池と水素タンクを備える。燃料電池で水素と空気中の酸素を反応させて発電し、モーターを回して走る。世界最大手の中国中車は素材に炭素繊維強化プラスチック(CFRP)を使った地下鉄向けのコンセプト車両を出展した。車体が軽くなり、エネルギー効率は13%向上するという。日本勢では東芝インフラシステムズが、鉄道車両向けのリチウムイオン電池として世界で初めて欧州規格を取得した製品を披露した。イノトランスの開幕イベントでは仏アルストムのアンリ・プパール=ラファルジュ最高経営責任者(CEO)が「もはや最高速度などは誰も口にしない。どれほどクリーンな電車を出せるかが重要だ」と強調した。広大な欧州大陸では郊外などで非電化路線が多いが、非電化路線はディーゼル機関車などが欠かせなかった。欧州鉄道産業連盟(UNIFE)は18日、世界の鉄道ビジネスが21~23年平均で1920億ユーロ(約25兆円)と、15~17年平均に比べ18%程度拡大すると発表した。「持続可能性のある移動手段としての利点が鉄道市場の成長に寄与する」と指摘した。自動車など他の交通システムと同様に、鉄道車両も環境性能が競争軸の一つになってきた。

*9-2:https://www.nikkei.com/article/DGKKZO35667860R20C18A9EA1000/ (日経新聞社説 2018/9/22) 北海道停電が示す安定供給の課題
 北海道電力は地震の影響で止まっていた苫東厚真火力発電所(厚真町)の1号機を再稼働させた。これに伴い、家庭や企業に求めていた1割の節電要請を解除した。電力需要が増える冬を控え、北海道の人々もまずは、ほっとしただろう。とはいえ、電源をかき集めた綱渡りの状態は変わらない。気を緩めるわけにはいかない。重要なのはなぜ、北海道全域が停電する「ブラックアウト」が起きたのか。その検証を急ぐことだ。そこから日本全体の安定供給への課題が見えてくるはずだ。
●自由化との両立点検を
 地震発生時、310万キロワットの需要のほぼ半分を、苫東厚真発電所が供給していた。一つの発電所に極端に集中した理由を考えるには、北海道電が置かれた経営の状況に目を向ける必要がある。北海道電の火力発電所は老朽化が進む。苫東厚真の4号機が2002年に稼働して以降、新設はない。最大の出力を持つ泊原子力発電所(泊村)は再稼働の前提となる安全審査の途中だ。泊原発の長期停止に伴い、北海道電は2度、値上げした。北海道電の電気料金は、沖縄電力を除く大手電力9社の中で最も高い。16年の電力小売りの全面自由化によって消費者は電力会社を選べるようになった。新規参入する事業者から見れば、電気料金の高い北海道は攻めどころだ。北海道では1割の家庭が北海道電から新電力に契約を変えた。この割合は東京電力や関西電力に次いで高い。中規模工場や商業施設向けの「高圧」と呼ぶ契約では約3割の顧客を失った。古くて小さな発電所は発電効率が悪い。北海道電は規模が大きく、コストが安い苫東厚真を最大限、活用せざるを得なかったのではないか。そんな無理が大停電であらわになったとすれば、電力自由化と安定供給の両立を立ち止まって点検すべきだろう。電力の安定供給には電源の最適な組み合わせと適切な設備更新が欠かせない。北海道で起きたことが、他の地域で起こらないとは言い切れない。電力システム改革の仕上げとして、20年には電力会社の発電部門と送電部門の経営を分ける発送電分離が実施される。分離後の供給責任を負うのは送配電会社だ。発電会社は新規参入する事業者を含め、自らの利益最大化のために動く。そうなると、投資が進まなかったり、特定の地域や発電方式に偏ったりする可能性がある。誰が日本全体の最適な供給のバランスを考え、長期的な視野で整備を促すのか。今回の大停電を受けて、その仕組みを再点検することが重要だ。電力改革の一環で、全国の送電網を一元管理するために設立された電力広域的運営推進機関の役割と責任は一段と大きくなるだろう。太陽光や風力など再生可能エネルギーの増加も、安定供給に課題を突きつけている。適地に恵まれる北海道の再エネ発電能力は約360万キロワット。そのうち170万キロワットを占める太陽光や風力は、停電からの復旧にあたり、送電網につながっていても全量を供給力として計算できなかった。時間や天候で発電量が変動する太陽光や風力は、過不足を補う別の電源が必要になるからだ。
●火力発電の更新不可欠
 平時でも同じ問題が立ちふさがる。夕刻になり日が陰ると太陽光発電の量は急に減る一方、夕食の準備や家路につく人々の電力消費が増える。需給バランスが崩れれば停電の引き金になりかねない。急減する太陽光を短時間で補う火力発電所や蓄電池が必要になる。温暖化ガスを出さない再エネは最大限伸ばしたい。そのためにも火力発電所の適切な更新が必要だが、太陽光の補完役だけでは稼働率が低く投資を回収できない。火力の更新投資を長期で促す制度を整えなければならない。太陽光や風力の適地は基幹送電線から離れた場所にあることも多い。基幹網につなげる送電線をつくるには多額の投資が必要だが、出力が変わる太陽光や風力は利用率が低い。結果的に消費者に過度の負担を強いる送電線の増強には慎重であるべきだ。北海道地震では本州からの電力融通も限られた。全国を10地域に分ける日本の電力供給体制の限界といえる。地域を越えて電力を効率的にやりとりする体制に変えていく必要がある。長期的には大型発電所の電気を送電線で運ぶ現行の仕組みから、地域ごとに電気をつくり、その場で使う分散電源へ電力インフラを再構築する発想も大切だろう。

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2018.8.30 日本は人権を大切にしない国である ← 精神障害者・教育・技術開発の視点から (2018年8月31日、9月1、2、4、5、7、8、9、11日に追加あり)

               正規分布のグラフ(小中学校で勉強済)

(図の説明:左は正規分布のグラフで、身長・体重でも成績でも運動能力でも、だいたいこういうグラフになる。このうち「普通」というのは、標準偏差が1σもしくは2σ以内の人で、1σ以内に68.27%、2σ以内に95.45%までの人が入る。しかし「普通でない」には、2σより右側と2σより左側の人がおり、右側は普通ではなく特に優れた人と言える。また、中央のグラフのように、集団によって山の位置や広がりが異なるが、多くの集団を合成するとやはり正規分布になる。さらに、右のグラフのように、2次元以上(多次元)の比較をすることもでき、誰でも多次元の要素を持っている。しかし、大切なことは、基礎学力がないと共通言語を持たないので、これを使った論理的な話をしても受けとれないということだ)

(1)「精神障害者≒犯罪者or潜在的犯罪者」とする科学的根拠はないこと
 *1-1のように、群馬県の医師が「①米国の病院では武装した警備員が精神疾患の患者を拘束したり、拳銃を発砲したりして、欧米の患者はテロ実行犯と同等に扱われるようになっている」と話したのを受け、日本精神科病院協会の山崎会長が「②精神科医にも拳銃を持たせてくれ」「③医療提供者もかけがえのない人たちだ」という意見を主張したのは、時代が50~60年も逆行したように感じられた。

 これに対し、「精神科医療の身体拘束を考える会」が、日本の精神科医療のトップが患者を危険な存在と差別しており、許されないとする集会を国会内で開催したのは、やはり現代である。

 外国では、テロの実行犯は犯罪者として逮捕したり、逮捕する際に射殺したりするため、①②③のように、「テロ実行犯を精神疾患の患者として拘束する」と言うのは、いかにも日本的な発想だ。また、テロの定義は、「政府または革命団体が、暴力を使用したり、組織的・集団的に威嚇したりして政治目的を達成する手段」であり、ある集団にとっては「テロ」であっても、他の集団からみれば「自由や解放を求める戦い」ということもあるため、テロは外国の内政に関わって戦争を行った国では起こり易いが、日本では原則として起こらない。

 なお、地下鉄サリン事件をテロと呼ぶ人もいるが、あれは、松本サリン事件の後、被害者の夫を加害者に仕立て上げずに、正確に犯人を特定して逮捕していれば防げた犯罪である。

 それでは、何故、日本には「精神障害者≒犯罪者or潜在的犯罪者」という誤った意識があり、精神障害者に対する時代遅れの拘束を推奨することになったのかと言えば、*1-2のように、明治13年に制定された刑法39条で「心神喪失者の行為は罰しない」「心神耗弱者の刑は減軽する」と規定されており、精神障害者がその主な対象になっているからだ。これは古い規定で、「心神喪失者」「心神耗弱者」という曖昧な用語を使っており、実際には「精神障害者は犯罪を起こしやすい」という科学的根拠があるわけではなく、精神障害者こそテロとは無関係だろう。

 ただ、統計データを採れば、犯罪者の刑を軽くするために「精神障害で責任能力がなかった」という論法が採られることが多いため、犯罪者に精神障害者が多いような結果が出ているかも知れない。そのため、日本精神科病院協会の山崎会長の発言は、精神医療の専門家としての科学的根拠に基づいた発言ではなく、これらの総合的効果で「精神科医にも拳銃を持たせてくれ」ということになったのだと推測される。

(2)精神障害の定義について
1)広がった精神障害の定義と人権侵害
 それでは、精神障害者はどういう病気の人かと言えば、私が習った1976年頃は、「統合失調症・躁うつ病・てんかん」が3大疾病で、特定の原因と結び付いているわけではなく、症状が似ている症候群だと言われていた。

 現在、これに発達障害・PTSD・パーソナリティー障害・適応障害・摂食障害・依存症・睡眠障害・認知症・性同一性障害まで加えて精神障害の範囲を広くしているが、原因があって起こる摂食障害・睡眠障害・PTSD・認知症・依存症・性同一性障害は、精神を病んでいるのではなく、原因を取り除けばなくなるものが多いと考える。

 また、私が誹謗中傷として言われたことのある“発達障害”“アスペルガー症候群”“パーソナリティー障害”などは、「自分と異なり理解できないから、普通ではなく異常だ」と主張する浅薄なもので人格権の侵害であるし、雅子妃殿下が言われている適応障害は、「ああいう家に嫁いで、キャリアのあることを悪意ある国民から叩かれるような事実があり、それに反論することもできなければ、適応障害というより当たり前だろう」と同情に値する局面が多い。

 つまり、正常範囲の人をパーソナリティー障害や適応障害と認定したり、成長過程の子どもを発達障害やPTSDと認定したりして、機会を奪ったり抗精神病薬を投与したりするのは、立派な人権侵害なのである。

2)発達障害の過大認定と人権侵害
 発達障害は、*2-2のように、「①生まれつきの脳機能発達のアンバランス」「②その人が過ごす環境や周囲の人とのかかわりのミスマッチから、社会生活に困難が発生する障害」と定義され、ADHD・自閉症スペクトラム障害(ASD)・学習障害(LD)などがあるとされている。

 しかし、①は、脳機能の発達が誰と比較してどうアンバランスで、それがどういう支障を生んでいるのかと言えば「普通と異なる」という程度であり、もともと人には個性があって工業製品のように同じではないため、基礎的な知識や思考力をつけた上で、その人の個性を伸ばすことこそ学校や家庭の役割である。そして、そういう個性ある個人が新発見をし、始めは周囲の人に変わった人だと思われているが、結果が出ると評価されてノーベル賞をもらったりするわけだ。

 また、*2-1の発達障害の1つとされるアスペルガー症候群は最近になって言われ始めたものだが、「③コミュニケーションの問題」「④対人関係の問題」「⑤限定された物事へのこだわり・興味」などが特徴とのことで、⑤だからこそ1つの事に集中できるのであり、③④は相手が狭量だったり、理解力がなかったりすれば成立しない相互関係なのである。

 なお、*2-3のように、“伝説”として、東大医学部出身者の2割近くが「発達障害(アスペルガー症候群)」だと書かれたブログもあり、「⑥集団の中で人に合わせることができない」「⑦相手の感情や場の雰囲気を読むことが不得手」「⑧どの局面でも人に合わせる能力が問われる現代社会で彼らは非常に生きにくい」「⑨IQは高い」などと書かれている。しかし、⑥⑦⑧ばかり気にしている人は、新発見や変革をすることなどできないし、⑨だからこそ、⑥⑦⑧を無視して自分を信じ自分の興味や信念に没頭できるわけだ。そのため、これらの文章を読んで、私には、歪んだ劣等感を持つ人の自己正当化による優越感の発露のように見えた。

 ただ、東大はじめ優秀な大学に入る人の割合が、私立の男女別学校に偏りすぎているのは問題だ。何故なら、男女別学は、多感な時期に男女の友人が机を並べて普通に話したり競争したりする機会を奪い、それぞれに空想上のジェンダー意識を持たせて、無意識の女性差別の原因になるからだ。また、私立校は、出自や家庭環境の似た人が集まっており、世の中全体のばらつきある人々と知り合いになる機会が少ないため、公立校は、もっと頑張らなければならない。

(3)教育と科学技術について
1)日本の研究力は、何故低下したのか
 *3-2のように、日本発の科学論文が減り、博士を目指す若者も少なくなっており、研究者を大切にしないと未来の日本の豊かさを支える科学技術が育たないことがクローズアップされている。では、日本は、研究者に報いる研究しやすい国なのか、徒労が多くて成果の出にくい国なのかについては後者であり、科学技術を担ったり、評価したりするための基礎学力も足りない。

ア)コマツ会長、元経済同友会副代表幹事 野路氏の意見について
 コマツ会長で経済同友会副代表幹事も務められた野路氏が、「①大学研究者の高齢化が進んだ」「②若い研究者の多くが有期雇用」と述べておられるが、①については、これから増える高齢者のニーズは高齢者の方が把握しやすいため、貢献度は年齢とは関係がなく個人差がある。また、②については、努力してきた研究者が他産業より待遇の悪い有期雇用の職しか得られないのは論外であるため、日本人の男性に下駄を履かせることなく、正確に実力評価を行い、民間の研究所も優秀な研究者を雇って先進的な研究をするポストを増やせばよいと考える。

 しかし、最も重要な問題点は、自然エネルギー・EV・自動運転のような新しい技術ができた時に、経営者や行政が先見の明を持って速やかにそれを育てる判断をできず、従来の技術を護ろうとした意思決定だ。何故なら、その意思決定により、実践段階で書くべき論文は、中国や欧米に譲らねばならないことになったからである。

イ)東京工業大学栄誉教授 大隅氏の意見について
 東京工業大学栄誉教授の大隅氏は、大学院生が減れば論文は減るが、数が減った以上に質の面でも日本の存在感が国際的に下がっているのが問題だとされている。誰にでも研究費をばら撒くわけにはいかないが、確かな評価の下、研究者が自分のやりたいことを続けられるポストを与えることは、最初にすべきことだろう。

 なお、グローバル化の中で、企業が中国やインドの学生の方が日本の学生よりいいと考える理由はあるのである。それは、日本人の学生よりも勉強しているからだ。にもかかわらず、女性と同様、優秀な外国人留学生をポストで冷遇したのは、日本の研究力を削いだ一因である。

ウ)財務省主計局次長 神田氏の意見について
 財務省主計局次長の神田氏は、「①国際的に注目される質の高い研究で日本のプレゼンスが下がり、特に新領域や学際分野で劣後して研究力が低下している」「②日本の研究現場は、閉鎖性・同質性が高いため生産性が低い」「③英オックスフォード大は、外部から資金を集める魅力と競争力をもち世界ランキングトップの評価を維持している」「④大学内の新陳代謝を進めて、若手に正規ポストを空けることも必要」と述べておられる。

 しかし、①はまさに、エネルギー・バイオテクノロジー・癌の免疫療法などで、政治や行政が変な選択をして邪魔をした分野で起こっていることを忘れてはならない。また、②を解決するためには、財務省は、先見の明を持ち、日本人男性に下駄をはかせることなく選抜された優秀な研究者が、やりたい研究テーマを研究できるポストを十分に与えられるようにすべきだ。

 さらに、③については、大学や中心となる人物への敬意がなければ外部からの資金は集まらないため、*2-3のような根拠なき誹謗中傷は止めさせるべきである。また、④については、新陳代謝して若返りしさえすればよいわけではなく、若手研究者にも正規のポストを与えた上で、実績を出した研究者を年齢・性別・国籍などによって差別することなく引き上げ、優秀な頭脳を集めて残していくべきだ。

2)外国人留学生の就職について
 *3-3に、就活の早期化が学業を優先する外国人留学生に逆風となっており、7月時点で内定(内々定を含む)を得た人の比率が4割強で、日本人学生の半分程度だったと書かれている。

 外国人留学生が学業を優先するのは、高い学費を払っても勉強しないで平気な日本人学生とは根本的に意識の差があるからだ。また、日本のように卒業前に就職が決まっていなければ有利な就職ができない国も他にはない。さらに、日本企業や研究所も、本当は外国人の登用に対する差別があるのではないだろうか。

3)何をするにも基礎学力は重要であること
 このような中、*3-1のように、朝日新聞が社説で、大阪市長が「小6と中3を対象とする全国学力調査の成績を校長や教員の人事評価とボーナスに反映させ、学校への予算配分も結果にあわせて増減させる」という決定をしたことについて、「学力を底上げするのが狙いだというが理解できず、成績が振るわない学校・地域を置き去りにして格差を広げかねない」と書いていた。

 しかし、公立校の基礎教育レベルが低いと、公立校の信頼度が低くなり、親の所得格差や家庭環境格差を子に承継する原因となるため、市長が動機付けとして校長や教員の人事評価・ボーナスに反映させたり、全国学力調査の結果にあわせて学校への予算配分を増減させたりするのは理解できる。ただ、校長や教員の頑張りとは関係のない地域による学力格差もあるため、それをどう解決していくかの対策を考えるためにも学力調査とその速やかな結果の開示は重要だ。

 なお、日本の子どもが外国の子どもと比べて勉強しない理由は、「学力調査で把握できるのは学力の1つの側面にすぎない」などという勉強しないことへの合理化論がまかり通っているからだ。先生が誤答している児童に合図をしたり、障害児の成績を集計から外したりする不正を行うのは論外だが、多様な子どもたちと粘り強く向き合ったから、正規の基礎学力を伸ばすことができなかったというのは言い訳にすぎないだろう。

(4)最初は相手にされなかった科学の事例
1)大陸移動説と地震・火山について

  

(図の説明:左のウェゲナーの大陸移動説は、最初は少数説だったが、現在のテクノロジーで証明されている。また、中央と右の日本近海の地図を見れば、プレートが沈み込んでいる少し先で火山が噴火していることがわかる)

 私は、高校時代に、地理か地学でウェゲナーの大陸移動説を習ったが、その時は、まさか地面が動くわけはないと思われていたので、少数説だった。しかし、東日本大震災の後、日本近海の海図や火山の分布、GPSで示された陸地の移動方向を見たところ、それはプレートの沈み込みと地面の移動を前提とする大陸移動説で、驚くほど筋を通してすべてを説明できた。

 そのため、*4-1のウェゲナーの大陸移動説は長く受容されなかったが、現在のテクノロジーで証明され、プレートテクトニクス理論で受け入れられたと考えている。

2)免疫チェックポイント阻害薬と攻めの免疫療法について
 *4-2-1の攻めの免疫療法を開発された中村教授は、2012年3月までは東大で研究しておられたが、日本では逆風が強すぎるため、2012年4月にシカゴ大学に籍を移して研究を続けられた人だ。そこまでして研究を続けられるのはすごい人だけで、成果が出ればノーベル賞ものだが、日本における逆風は情けない限りである。

 日本における逆風とは、*4-2-2のように、厚労省が「がん免疫療法」の有効性を認めず、地域の癌診療連携拠点病院では「標準治療(標準≠理想)」以外の治療を「科学的根拠が確立していない」として臨床研究以外では認めない方針にしていることだ。しかし、「標準治療」の効果と副作用の関係はお粗末なもので、「がん免疫療法」を専門家が行うのは、それだけの理論的・科学的根拠があるからだ。

 つまり、行政官のこのような誤った判断が、日本の頭脳を海外に流出させ、特許権を外国で取得させ、研究者本人にも嫌な思いをさせ、医療を国民のためのものから遠ざけているのである。

(5)“空気を読んで(?)”出遅れた事例
 太陽光発電は、1995年前後に私が経産省に提案してすぐ始まったので、日本が世界初で、公害のない油田を発見したのと同じ効果があった。そのため、ドイツは2000年代から普及に力を入れたが、日本の経産省は、*5-1のように、今でも再エネは国の補助政策や天候変動に左右されるとし、原発には莫大な国の補助を何十年もし続けているにもかかわらず、温暖化につながるCO₂を出さない電源だとして、再エネの普及を妨げているのだ。この理由は、空気を読んだ結果なのか、論理的・科学的思考に欠けているのか不明だが、国民の福利から程遠い。

 また、EVも、1995年前後に私が経産省に提案してすぐ始まったもので、日本が世界初なのだが、純粋なEVを作ったのはゴーン氏率いる日産自動車だけだった。そして、*5-2のように、中国に出遅れて初めて、トヨタやホンダもEVの中国投入を急いでいる始末なのである。

<「精神障害者≒犯罪者or潜在的犯罪者」と見る習慣の存在>
*1-1:http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201806/CK2018062202000250.html (東京新聞 2018年6月22日)「精神科医に拳銃を」病院団体会長が機関誌で引用
 全国の精神科病院でつくる「日本精神科病院協会」の山崎学会長が、協会の機関誌に「(患者への対応のため)精神科医に拳銃を持たせてくれ」という部下の医師の発言を引用して載せていたことが分かった。患者団体などでつくる「精神科医療の身体拘束を考える会」が問題視する集会を国会内で開催。「日本の精神科医療のトップが患者を危険な存在と差別し、許されない」と批判が出ている。山崎氏は機関誌の「協会雑誌」五月号の巻頭言で、自身が理事長を務める群馬県高崎市の病院医師が朝礼で話した内容を「興味深かった」と紹介した。この医師は、米国の病院では武装した警備員が精神疾患の患者を拘束したり、拳銃を発砲したりしており「欧米の患者はテロ実行犯と同等に扱われるようになってきている」と指摘。その上で「僕の意見は『精神科医にも拳銃を持たせてくれ』ということです」と主張している。患者団体は集会で、協会に対し質問状を出したと明らかにした。協会からは電子メールで「不快な思いをされた方がいたのであれば、今後は気を付けたい」と回答があった。一方で「対策を検討してほしいという願いを言いたかった。医療提供者もかけがえのない人たちだ」としている。

*1-2:https://keiji-pro.com/columns/164/#%E5%88%91%E6%B3%95%E7%AC%AC39%E6%9D%A1%E3%81%AE%E5%AF%BE%E8%B1%A1%E3%81%AB%E3%81%AA%E3%82%8B%E4%BA%BA (心神喪失及び心神耗弱 抜粋)
第39条 心神喪失者の行為は、罰しない。
   2  心神耗弱者の行為は、その刑を減軽する。
●刑法第39条の対象になる人
刑法第39条が適用されるのは、次のような人たちです。
①精神障害者
 精神障害者の中でも、行為の善悪の判断がまったくつかない人は“心神喪失者”として、判断能力が著しくつきにくい状態の人は“心神耗弱者”として扱われます。
②泥酔状態者・薬物乱用者
 精神障害を持っていなくても、上と同様に、行為の善悪の判断がまったくつかない人や判断能力が低い人ならば、刑法39条の適用対象になります。しかし、自らの意思で泥酔状態に陥ったような場合は、完全な刑事責任を問われる可能性もあるでしょう。

<精神障害者の過大な定義>
*2-1:https://h-navi.jp/column/article/136 (発達ナビ 2016/1/18) アスペルガー症候群(AS)とは?症状と年齢別の特徴を詳しく解説します。
 アスペルガー症候群は発達障害のひとつで、コミュニケーション能力や社会性、想像力に障害があり、対人関係がうまくいきづらい障害のことです。アスペルガー症候群は比較的最近になって理解され始めた発達障害であり、言語障害や知的障害の症状はないので、周りからは「変わった人」と思われがちです。アスペルガー症候群には大きく分けて3つの症状があります。「コミュニケーションの問題」「対人関係の問題」「限定された物事へのこだわり・興味」。これら詳しい症状や、年齢別の症状の現れ方、診断基準や相談先について解説します。

*2-2:https://h-navi.jp/column/article/134 (発達ナビ 2017/8/30) 発達障害とは?発達障害の分類・症状・特徴・診断方法はどのようなもの?
 発達障害とは、生まれつきの脳機能の発達のアンバランスさ・凸凹(でこぼこ)と、その人が過ごす環境や周囲の人とのかかわりのミスマッチから、社会生活に困難が発生する障害のことです。発達障害は見た目からは分かりにくく「本人の努力不足」や「親のしつけの問題」などと誤った解釈や批判を受けたりすることも少なくありません。この記事では、ADHD、自閉症スペクトラム障害(ASD)、学習障害(LD)などの障害別の特徴について詳しく解説するとともに、医療機関での診断方法などもふまえ、発達障害について詳しくお伝えします。

*2-3:https://gendai.ismedia.jp/articles/-/35409?page=5 (週刊ゲンダイ 2013.4.10) 【大研究】どこまで難しい? 東大理Ⅲのテスト 東大医学部に合格した人たち、日本でトップ0.01%の「頭脳」でも彼らは本当に幸せなの?
 その先輩は嫌われてはいなかったんですけど、サークル内ではなんとなく敬遠されていました。その場の空気に関係なくニヤニヤしたり、生年月日トークをしてきたり、かと思ったら急に女子に告白して、ストーカーまがいのことをしたりしたので……」(文学部3年女子)。東大医学部にまつわる、一つの伝説がある。「実は医学部出身者の2割近くが『発達障害』だと言われているんです。実感としてはもっと多いかもしれません」(医学部4年)。もちろん、明確なデータが存在するわけではない。しかし、東大OBでもある精神科医の吉田たかよし氏はこう断言する。「東大に発達障害が多いというのは事実です」。吉田氏は東大の本郷キャンパスの真ん前、本郷赤門前クリニックで発達障害に悩む受験生のカウンセリングを行う。氏は、相談に来た発達障害の学生に、東大受験を勧めている。理由は、東大生はお互いを尊重する傾向が強く、低レベルないじめは起きにくい、というのがひとつ。そしてもうひとつが、「東大の入試は、実は発達障害の生徒に向いているから」(吉田氏)だというから驚きである。なぜ発達障害の生徒に東大入試が向いているのか、それを記す前に発達障害についておさらいしておく。発達障害とは、落ち着きがなく、注意力に欠けるADHD(注意欠陥・多動性障害)や、コミュニケーション能力や社会性に難がある自閉症やアスペルガー症候群、あるいは読み書きが困難なLD(学習障害)などの総称だ。生まれつき、あるいは幼児期の段階において脳の発達が損なわれることで、前述のような様々な症状が現れる、脳機能障害である。'06年の厚労省の調査によれば、5歳児の8・2%~9・3%に発生し、近年では大人になって発達障害に気づく「大人の発達障害」が社会問題化している。特に有名なのがアスペルガー症候群だ。「アスペルガー症候群の人たちは、集団の中で人に合わせることができません。相手の感情や、その場の雰囲気を読むことが不得手だからです。どの局面でも人に合わせる能力が問われる現代社会では、彼らは非常に生きにくい」(吉田氏)
●IQが高いアスペルガー
 その一方で、アスペルガー症候群の人々には、IQが高い傾向がある。一般人のIQの正常値は85以上115未満と言われる。だがアスペルガー症候群の人々には、115以上のIQを示す人が少なくないのだ。
本題に戻る。なぜ発達障害の人は東大に向いているのか。吉田氏が説明する。
「まず東大受験において最重要科目とされる数学。知能の高い発達障害の人は論理思考が得意な傾向があるので、数学を苦にしません。それに2ちゃんねるが好きで、どんなに受験勉強が忙しくても、最低でも一日2時間は2ちゃんを見る、ということにしていて、センターや二次試験前日も欠かさず見ていました。それがいい精神安定剤になっていたんじゃないかな、と思います」。「趣味」を続ける余裕を持ちながら、軽々と理Ⅲに合格してしまったAさんは、少なくとも「受験勉強レベル」で見れば十分、天才の部類に入る人である。一方で、理Ⅲ生にもう一つ多いのが、「根っからの勉強好き、競争好き」タイプの人間だ。西の名門、灘高校出身の理Ⅲ合格者Bさんは、勉強マニアと言っていいほどの勉強好きだった。「一日の平均勉強時間は8時間くらいだったと思います。1月に入ってからは10時間以上やってました。勉強はやったらやった分点数が伸びるので、面白い。ただ自分の中では中学受験のほうがよく勉強したような感覚ですね。小学4年生から希学園という塾に通っていて、夜遅くまで勉強していた記憶があります。6年になると、授業が23時頃まであって、帰って風呂に入って、寝るのはいつも24時過ぎでした。灘中・高では、鉄緑会という塾に入って膨大な宿題をこなしました。6年間モチベーションを保つのは大変でしたが、高校に上がるときに、『高校から灘に入ってくる40人は学力が高いから、下から上がる奴らの順位は例年がくんと落ちる』という噂が流れてきたときは燃えました。やっぱり同じ面子で競っているよりは、新しい敵が来たほうが刺激になります」。今年の東大理Ⅲ合格者は、灘27名、開成8名。これに女子のトップ校・桜蔭高校の4名を加えれば39名に達する。年によってはこの3校だけで4割を超すこともある。開成の卒業生で東大医学部OBの作家・石井大地氏が語る。「東大理Ⅲの最大の特徴は、都市圏の中高一貫校出身者が7~8割程度を占めるということです。他の学部では合格者の母数がもっと多いので、地方の県立トップ高校の学生の割合が高く、ここまで寡占状態になることはありません」。理Ⅲ合格者のインタビュー集『天才たちのメッセージ 東大理Ⅲ』の昨年版で行ったアンケートによれば、理Ⅲの出身高校割合は「私立」が88・7%と、圧倒的だった。「こうした学校は、多くが男女別学です。別学の進学校というのは、どこも空気が似ていて、必然的に理Ⅲにはその別学進学校のムードが持ち込まれます。ですから大多数の理Ⅲ生にとって理Ⅲは、そのまま高校の延長線上にあり同じノリで生きられてしまうわけです」(石井氏)。中高の6年間、そして大学の6年間、あわせて12年間、同じような環境で生きることになる。裏を返せば、地方の公立校などで抜群に勉強ができる高校生でも、彼らと競って理Ⅲの入学テストを突破するのは、まさに至難の業ということになる。ある開成卒の東大医学部生は、研修医として外の病院に出たときにはじめて「世界は灘と開成だけじゃないんだと悟った」という。つまり、理Ⅲおよび東大医学部とは、それほどに同質的で、閉鎖的な世界なのである。(以下略)

<教育と科学技術>
*3-1:https://digital.asahi.com/articles/DA3S13653441.html (朝日新聞社説 2018年8月28日) 大阪市長 学力調査を乱用するな
 小6と中3が対象の全国学力調査の成績を、校長や教員の人事評価とボーナスに反映させる。各学校への予算配分も、結果にあわせて増減させる。大阪市の吉村洋文市長が、こんな方針を打ち出した。学力を底上げするのが狙いだというが、理解できない。成績が振るわない学校・地域を置き去りにし、格差を広げかねない。子どもの弱点をつかんで授業の改善に役立てるという調査の趣旨を逸脱し、過度な競争や序列化を招く恐れが強い。市長は方針を撤回すべきだ。大阪市は、全国20の政令指定都市のなかで、学力調査の平均正答率が2年続けて最下位だった。市長は危機感を示し、順位を上げると宣言。人事評価の具体的な仕組みは市教育委員会とともに協議するとしているが、数値目標を示し、達成したかどうかを目安にする考えだ。あまりに短絡的で乱暴だ。子どもの学力は家庭の経済状況と強い関係があることが、学力調査に伴う研究でわかっている。行政による支援は、貧困や不登校といった問題を抱える児童・生徒が目立つ学校や地域にこそ手厚くする必要がある。大阪市は昨年度、学力調査で課題があると判断した小中70校を対象に、独自の支援策を始めた。それを改善・充実させていくことに集中するべきだ。そもそも、学力調査で把握できるのは学力の一つの側面にすぎない。結果を絶対視すれば、さまざまなゆがみを生む。かつて東京都足立区では、都や区の試験中に先生が誤答している児童に合図をしたり、障害児の成績を集計から外したりする不正が生じた。その背景には、学校同士を競わせ、成績の伸び率を各校への予算配分に反映させる仕組みがあった。吉村市長は「結果に責任を負う制度に変える」「市長の予算権をフルに使って意識改革したい」と語った。しかし、テストの点数で先生を競争させるような仕組みを入れると、先生は教科指導に集中できる学校に赴任したがり、様々な課題に直面している学校を嫌う風潮を強めかねない。多様な子どもたちと粘り強く向き合う、そんな数値では測りにくい努力を軽視すれば、教育の根本が危うくなる。市長の方針に対し、学校の現場からは懸念や反発が噴き出している。当然だろう。まずはその声に耳を傾ける。学力調査の目的を再確認した上で、必要な対策を検討するよう指示する。それが市長の役割だ。

*3-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180828&ng=DGKKZO34637750X20C18A8TCR000 (日経新聞 2018年8月28日) 日本の研究力 どう再興
 日本の研究力の低下が深刻だ。日本発の科学論文が減り、博士を目指す若者も少なくなっている。研究者が自由に力を発揮できる環境を整えないと、未来の日本の豊かさを支える科学技術の屋台骨が揺らぐ。大学・企業・政府の連携はどうあるべきか。「科学技術立国」の再生の道筋を探る。
   ◇  ◇
●産業界が若い人支援を コマツ会長 野路国夫氏 (のじ・くにお 1969年大阪大学卒、コマツに入社。社長兼最高経営責任者(CEO)などを経て2013年から現職。経済同友会副代表幹事も務めた。71歳。)
 博士課程に進学する若者が減り、日本が発表する科学論文が減少している。大学の研究者の高齢化が進み、若い研究者の多くが有期雇用にとどまり人事がよどんでいる。データを見ると日本の研究力は明らかに落ちてきている。知り合いの大学教授らの話を聞いても心配な状況だ。問題は複雑であり一つの課題を解けばすべてがうまくいくという性格のものではない。大学の問題は大学だけにとどまらない。政府と産業界も役割分担してこの複雑な方程式を解く必要がある。そのためには思い込みや誤解を捨て、みんなが歩み寄る必要がある。
大学との共同研究は企業にとって役に立つ。同時に大学側にもメリットがある。コマツではCTO(最高技術責任者)室を設け、自社の強みであるコア技術を磨くための技術戦略をつくった。技術革新が急速で、ひとつの課題解決にたくさんの異分野の知識が必要だ。コマツだけで取り組むには限界がある。いまは研究本部を廃止し国内外の約30大学との共同研究を進めている。自前主義をやめてオープンイノベーションにカジを切ったのだ。例えば、大阪大学とはキャンパス内の共同研究所で、若手の博士研究者(ポスドク)ら5人がコマツの研究者とともに働いている。その人件費はコマツの負担だ。大学にとってはその分だけ運営費交付金(政府から配分される経常的な資金)からの人件費支出を減らせ、独自の研究に回せるお金を増やせる。私たちが出す資金の半分ほどは「間接費」として大学の収入となり、一部は学長の裁量で使える。大学自身の判断で、企業から支援を受けるのが難しい基礎研究にも充てることができるはずだ。科学の新発見を成し遂げ、世界に存在していなかった新技術を編み出す基礎研究は、国民や産業が長期的に豊かになるうえで大事であり、それは大学が担うべきだ。人工知能(AI)の研究でも既存のAIを使ってイノベーションを起こすのは産業界の仕事だが、10年、20年先を見た研究をするのが大学だ。イノベーションはいま存在する技術の組み合わせで起こすものだ。インターネットは米国防総省の研究から生まれたが、ひとたび誕生すればマイクロソフトやグーグルなどがそれを活用して大きなビジネスをつくりだした。そうした産学連携ができればいい。政府の研究開発プロジェクトを通じて年間約1500億円を産業界は政府から受け取っている。私は大企業が政府から資金をもらう必要はないと思う。政府のお金はベンチャー企業育成と大学の研究費に回す方がよい。大学の先生たちは学生を自分の研究の手伝いに使い、学生たちに自分の頭で考え問題を解く機会を与えてこなかった。しかし、大学が困窮し、学生が研究者の道を選ばない事態は望ましくない。研究を続ける最低限の資金は必要だ。産業界全体で若い人たちのために行動しようという機運がほしい。産官学の関係者が互いに歩み寄り、好循環を生みたい。
   ◇  ◇
●「やりたいこと」こそ大事 東京工業大学栄誉教授 大隅良典氏 (おおすみ・よしのり 1974年東京大学大学院で博士号取得。自然科学研究機構基礎生物学研究所教授などを経て現職。2016年ノーベル生理学・医学賞受賞。73歳。)
 大学の研究を支える(博士課程の)大学院生が減れば、論文は必然的に減る。数が少なくなるという以上に問題なのは、質の面でも日本の存在感が国際的に下がっている。多くの生物系の学会で学生会員が減り大学院生の発表が少なくなった。博士課程に進学せず修士での就職が目標になると発表の意欲が減退するからだ。学会発表は一人前の研究者への一里塚だったが、今はそうでない。若い人が育たないのは、その人の能力の問題ではなく日本のシステムの問題だ。研究費を取るには、はやりの研究や短期間で成果の出る研究をせざるを得ない。私は効率とサイエンスは対極にあると考える。効率を求められる中で評価を厳しくすると、そうした評価における優秀な人しか育たない。長い時間を要することや他の人と違ったことをやる人が、どこかで花開くということがなくなる。はやりのテーマへの集中に頼っていると研究の裾野が広がらず、日本で独自に切り開く新しい研究が育たず、ノーベル賞を得るような成果が生まれてこなくなる。研究はすべてうまくいくことはあり得ない。科学は多くの人がチャレンジし、一見成功しなかった取り組みも含めて全体として進歩することを社会に理解してほしい。わがままに聞こえるかもしれないが、研究では研究者が自分のやりたいことを続けられることが一番大事だ。日本の研究者は来年は研究を続けられないかもしれないという恐れやプレッシャーにさいなまれ、やりたい研究ができていない。研究費申請や評価のための書類づくりなどがたくさんあって、論文執筆までもが後回しになっている。そんな苦労をしている教授をみると、学生たちの博士課程への進学意欲はさらに薄らいでしまう。研究に関する私の意見に共感してくれる企業のトップも多い。一方、今叫ばれている産学連携には安易に期待はできない。連携する以外に生き残れない状況に大学を追い込み、大学の研究室が企業の下請けとなるのを助長するのはよくない。大学でどんな研究をすべきか、企業と大学の役割分担を明確にせず、お金がもらえればいいという発想では大学の研究は破綻する。大学が基礎的な研究をし、その成果を企業の目利きが選んで活用するという仕分けが必要だ。米国では企業の連合体が資金を集めて優秀な研究者たちに自由に研究させ、その成果から必要なものを選別する試みが始まっている。基礎研究は必ずしも国が支えるものではなく、社会全体で支えるという認識が広がる必要があると思っている。企業に望むのは、政府があつらえたプロジェクトに横並びで加わるのではなく、大学と組んで本気でやってみたいと考えるテーマに大胆に資金を投じてほしい。そうした企業が1社、2社と現れることで今の閉塞状況が変わるかもしれない。グローバル化の波で、企業は手っ取り早く役に立つ中国やインドの学生の方が日本の学生よりいいと思うかもしれない。しかし100年後を考えて日本の大学を大事にしてもらいたい。
   ◇  ◇
●閉鎖性が生産性下げる 財務省主計局次長 神田真人氏 (かんだ・まさと 1987年東京大学卒、大蔵省(現在の財務省)入省。91年英オックスフォード大学大学院修了。主計官として科学技術予算などを担当し2017年から主計局次長。53歳。)
 研究力の低下を危惧している。国際的に注目される質の高い研究で日本のプレゼンスが下がり、特に新たな領域や学際分野で劣後している。その原因を公的支出に求める見方があるが、日本の科学技術予算はドイツと同水準で英仏より多く、国内総生産(GDP)比では米国と同レベルだ。多額の血税を投じても成果に結びつかないのは、研究の生産性にも原因がある。国際的に評価が高い論文1件当たりに投じられた研究開発費をみると、ドイツの340万ドル(約3億8千万円)に対し、日本は660万ドル(約7億3千万円)と2倍近い。生産性の低さは日本の研究現場が依然として閉鎖性、同質性が高いサイロ的構造を残していることにある。講座や学部、研究領域や大学間などに高い壁がある。それらが活力を奪い、オープンイノベーションや新分野開拓に不利な環境をもたらしている。学位を得た同じ大学で研究を続け、そのまま教授となる慣行は国際的には異例だ。官民連携や国際化を通じ、開放性や多様性の向上に努める研究者や組織を政府は資金、制度面で応援してきた。今後も強化する。地方大学でも世界最高水準の研究は少なくなく、過去にない5億円超の研究費がつく例もある。科学研究費補助金(科研費)は分野横断的に配れるようにし、研究の多様化を進めている。運営費交付金は国立大学法人化(2004年度)以降、激減したという声を聞くが、特殊要因を除くと約400億円の減少にとどまる。優れた研究を選んで支援する競争的資金などの補助金を増やした結果、国立大学の研究費は600億円以上増えて約1兆2800億円(16年度決算)に達する。教員1人当たりの研究費も417万円から653万円まで6割増えた。問題はその配分だ。大学での改革の進捗や研究者の努力と成果に公平に報いるため、補助金の傾斜配分は強まる。納税者への説明責任を果たすためにも当然だ。大学は民間資金や学長裁量経費などを生かし、真に必要とする研究に学内で適切に資金を再配分すべきだ。横並びや既得権益の維持に陥ってはいけない。大学は政府が出す研究費がどの学部にいくらいくかという基礎的な情報さえ公開していない。この点も改めてもらいたい。英オックスフォード大も国立だが、運営費交付金の依存度は15%。外部から資金を集める魅力と競争力をもち世界ランキングトップの評価を維持している。博士課程進学者は減少傾向にあるが、20歳代の人口も減り、人口比では減っていない。社会人からの進学が増え、博士課程の在籍者は7万人以上で高止まりしている。社会人の増加は大学の多様性や流動性を高める。大学内の人事の新陳代謝を進めて、若手に正規ポストを空けることも必要ではないか。日本企業が保有する現預金は210兆円超。企業の研究開発費のうち国内大学へ投じる割合は0.7%にすぎず、海外より著しく低い。日本の大学への投資を大きく増やしたい。日本の研究力は強化すべきだし、できるはずだ。

*3-3:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180828&ng=DGKKZO34658610X20C18A8TJ1000 (日経新聞 2018年8月28日) 外国人留学生、就活出遅れ 内定率、国内学生の半分 学業を優先
 就活の早期化が外国人留学生に逆風となっている。就職情報大手のディスコ(東京・文京)が27日に発表した調査では、7月時点で内定(内々定を含む)を得た人の比率が4割強と日本人学生の半分程度だった。留学生は学業を優先し、卒業までに就職先が決まればいいという考え方が強く、早期に活動を始める日本人学生に後れを取る傾向があるという。調査は同社の新卒就職情報サイト「キャリタス」で6月28日~7月18日に実施し、2019年春に卒業予定の外国人留学生モニター277人から回答を得た。出身国・地域は中国が6割以上で、東南アジア、韓国、台湾が続いた。7月時点での内定(内々定を含む)の有無を聞いたところ、42.6%の学生が「内定あり」と回答した。前年調査より4.4ポイント上昇した。内定社数は平均で2.0社と、前年(1.6社)を上回った。国内の日本人学生と同様に昨年よりも売り手市場の恩恵を享受しているともいえる。ただ国内の日本人学生の内定率(81.1%)と比べると半分ほどにとどまる。既に内定を得た人も含めて外国人留学生の71.8%が就活を継続していた。就職活動の難易度を聞いたところ、「とても厳しい」「やや厳しい」の合計は80.7%に上り日本人学生(39.8%)の倍以上に達した。留学生が就活を始める時期が国内の学生に比べ遅いことが原因の一つとみられている。経団連加盟企業の個別説明会が解禁となる3月以降に就活を始めた留学生は56.3%を占める。このうち「4年生の4月」が25.3%と最も多い。日本人学生の9割以上が「3年生の12月」までに始めるなど就活は早期化し、情報格差が広がっている。ディスコの担当者は「留学生は卒業時までに決まればいいという考えが主流で国内学生に比べ早く決めようという意識が薄い」と指摘する。大学院から留学する場合、来日して間もないころから就活に直面するため、早期化に対応しづらい面もあるという。日本の大学を卒業・修了して日本で就職する留学生は15年度で8367人。留学生全体の国内就職率は約35%にとどまる。政府は16年にまとめた「日本再興戦略」で留学生の日本企業への就職率を5割に高める目標を明記した。ディスコが17年12月に実施した調査では企業の57.8%が18年度に「採用する予定」と答えた。人手不足に加え、グローバル化を進める日本企業にとって留学生への期待は大きい。一方で17年度に採用実績のある企業は35.4%にとどまる。ディスコは「留学生の意欲が高くても日本語能力や出身国・地域のバランスを考慮して結果的に採用を見送るケースも多い」と分析している。中小企業が採用しようとしても、留学生の大手志向が強く、マッチングが難しい実情もあるようだ。

<最初は相手にされなかった科学の事例>
*4-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180121&ng=DGKKZO25899390Z10C18A1MY1000 (日経新聞 2018年1月21日) 大陸移動 100年越しの宿題、なぜ動く? 理論検証へ掘削
 ドイツの気候学者ウェゲナーが大陸が動くという大陸移動説を1915年に公表してからほぼ100年。それを裏付けるプレートテクトニクス理論が登場して50年の節目を迎える。大陸の移動を説明するだけでなく、巨大地震がどのように発生するかなどの研究に大きな進展をもたらした。何が大陸を動かしているのかなど未解決の宿題にも答えを出しつつある。プレートテクトニクスの基本原理は単純明快だ。地球の海底や大陸はいくつかのブロックにわかれていて、それぞれ1枚のプレート(岩板)として振る舞う。プレートの動き方は球面上の回転運動として表せる。例えば海洋プレートの動きは回転軸からの距離と角度の変化率を示す角速度で説明でき「わかりやすかったことが世界に普及した原因」と東京海洋大学の木村学特任教授は説明する。ウェゲナーが欧州やアフリカと、大西洋をはさんだ南北アメリカの地形がパズルのように一致することから大陸移動説を思い付いたという話は有名だ。大西洋の両側で地質や化石の分布などが共通していることも根拠とされた。過去に1つの大陸だったものが分裂し、大陸が移動してその間隔が広がることで大西洋ができた、と考えた。しかし弱点があった。なぜ、どのように大陸が動くのかを説明できないことだ。このため、ウェゲナーの死後、大陸移動説を巡る議論は停滞する。この宿題に答え、大陸移動説を復活させたのが、大陸がどのようなしくみで動いているかを説明するプレートテクトニクス理論の登場だ。同理論によると、大陸は分裂と合体を繰り返し、再びパンゲアのような超大陸ができる。動き方を説明するだけでなく、どのような力が大陸を動かしているのか、といった宿題にも答えつつある。最も有力と考えられているのが、大陸の下に沈みこんだ海洋プレートの重みでプレートが引きずられて動くというものだ。沈みこんだプレートが長い場所ほど、プレートの動きが速いことなどが証拠とされる。海洋プレートが造られる海嶺(かいれい)と呼ばれる海底山脈は周囲に比べて高く、できたプレートが山頂から滑り落ちる力もプレートを押し出していると考えられている。これ以外の力が働くとする考えもある。地殻の下のマントルとよばれる部分が長い時間かけて液体のように動き、この対流がプレートを動かすというマントル対流説だ。海洋研究開発機構の小平秀一上席研究員らは北海道南東沖の海底を調べ、1億2000万年前にプレートが海嶺周辺で生まれた際、マントルが海洋プレートを引きずって動かしている証拠をみつけた。海底のプレートが動いたときにできる割れ目の方向がマントルがプレートを引きずったと考えられる向きと同じだった。沈むプレートの重みで動く場合、プレートがマントルを引きずるため割れ目の方向が違う。こうした場所は米西海岸などでも見つかっている。少なくとも海嶺近くの一部ではマントルによる駆動が上回っているのではないか、というわけだ。海洋機構は地球深部探査船「ちきゅう」などを使って地殻を掘り進み、マントルを直接調べる計画だ。「プレートを動かす原動力を明らかにするのは大きなテーマだ」と小平上席研究員は話す。プレートテクトニクスでは、大陸はマントルの上に浮かび、海洋プレートに押される形で動いている。全地球測位システム(GPS)の発達で陸地の動きを詳細に観測できるようになった。従来考えられている以上に複雑な動き方をしていることがわかり、「大陸は海洋プレートのように一枚岩と考えてはいけない」と木村特任教授は話す。当初は地球全体で十数枚のプレートに分かれると考えられていたが、最近では50枚以上のプレートに分かれているとする研究もある。プレートテクトニクスはこの50年で大きく進歩したが、大きな宿題も残っている。「プレートテクトニクスがどのようにして始まったのかはわかっていない」。プレートテクトニクス理論の創始者のひとり、英ケンブリッジ大学のダン・マッケンジー名誉教授はこう指摘する。何がきっかけで大陸が分裂し、新しい海洋プレートが生まれて動き出すのかは依然として謎だ。約46億年の地球の歴史の中で、40億年ほど前にはすでにプレート運動は始まっていたと考えられている。しかし当時の海洋プレートはすでに地球の中に沈みこんでいて、調べることはできない。始まりの謎は、プレートテクトニクスは地球以外の惑星でも起こる一般的な現象なのか、といった問題の解明にもつながっている。

*4-2-1:https://bio.nikkeibp.co.jp/atcl/mag/btomail/18/07/03/00398/ (日経BP 2018.7.4) 中村教授が見据える、癌プレシジョン医療の可能性
 癌の治療成績は劇的に向上し、以前いわれた「死の病」ではなくなりました。しかし、癌と診断された人の半分は癌が原因で命を落とすという現実があります。幸いにして手術(治癒的切除)できる段階で見つかった癌患者でも、再発の問題がついて回ります。画像検査を頻繁に受けることは、日常生活を送る上で非常な困難がつきまといます。米Chicago大学の中村祐輔教授は、先日東京ビッグサイトで開催されたBIOtech2018の講演の中で、リキッドバイオプシーが5年以内に日常診療に導入されると展望しています。リキッドバイオプシーの良いところは、採血で済むために侵襲性が低く、簡便に検査できることです。しかも、最近の研究では画像で視認される6から9カ月も前に再発を検出できたという報告もあります。「定期的な画像検査を受けてきたが、発見時に進行していた」という悲劇的な事例を減らすことができます。早期の再発ならば、効果的な対応も可能です。中村教授は、攻めの免疫療法の必要性も力説しました。免疫チェックポイント阻害薬はあくまで免疫のストッパーを外す治療法です。奏効率が2から3割しかない背景には、患者の免疫力が弱体化していることが挙げられます。ストッパーを外しつつ、免疫そのものを増強する必要があります。ネオアンチゲン、オンコアンチゲンを標的にした治療の重要性を指摘しました。同教授は、最新の癌免疫治療を日本で大胆に導入するために、「がんプレシジョン医療プロジェクト」を発足させます。2018年7月13日に、ホテルニューオータニ(東京都・千代田区)で発足式典があります。プロジェクトの目的は、「プレシジョン医療ネットワーク」の構築です。リキッドバイオプシー、全エキソン解析、分子標的治療、ネオアンチゲン、オンコアンチゲンワクチンに加え、癌特異的TCRのクローニングをもとにしたTCR導入T細胞療法など、「ゲノム情報などを利用した医療を発展させるために必要な全ての分野・領域を包括的に組織化する」ことにあります。実現するためには人工知能の活用が欠かせません。癌の制圧に向け、プレーヤーは出そろっています。あとはそれを効率的に、経済的に組み合わせることが課題です。それが各要素技術の革新にフィードバックされ、より洗練されたものへと進歩していくはずです。
*バイオ研究者やバイオ産業に携わる方、約5万人に向けて月曜から金曜まで週5回配信している日経バイオテクONLINEメールに、水曜日と金曜日に掲載している記者によるコラムを掲載します。

*4-2-2:https://digital.asahi.com/articles/ASKCY7QGBKCYUBQU01H.html (朝日新聞 2017年11月29日) がん拠点5病院で研究外の免疫療法 厚労省調査
 地域のがん医療の中心となるがん診療連携拠点病院5カ所で、有効性が認められていない「がん免疫療法」を臨床研究以外の枠組みで実施していたことが29日、厚生労働省の調査でわかった。治療費が全額患者負担となる治療が、標準治療の提供が求められている拠点病院で確認された。厚労省は今後、科学的根拠が確立していない免疫療法は原則、臨床研究で実施するよう求めていく方針だ。
●がん免疫療法の実態調査へ 400の拠点病院で
 厚労省は、一部の拠点病院が科学的根拠のない免疫療法を実施しているという指摘を受け、全国の434拠点病院を調べた。今年9月1日時点で、84施設が保険適用外の免疫療法を実施。うち79施設は、科学的根拠を集めるため、治験などの臨床研究として行っていた。残り5施設は臨床研究ではなく患者の求めに応じるなどして実施し、うち1施設は治療法が妥当かチェックする院内の倫理審査委員会で審査していなかった。研究目的の臨床試験でなければ治療費は全額患者負担となる。免疫療法は、体内の異物を攻撃して排除する免疫のしくみを利用して、がんを治すことを目指すもの。オプジーボなどの「免疫チェックポイント阻害剤」という新しいタイプの薬は、一部の進行がんで保険適用されているが、多くは科学的な効果が確立されていない。

<“空気を読んで(?)”出遅れた事例>
*5-1:http://www.saga-s.co.jp/articles/-/199389 (佐賀新聞 2018年3月31日) 再エネ、50年の主力電源に、経産省が戦略素案
 経済産業省は30日、2050年の長期エネルギー政策の課題を話し合う有識者会議で、再生可能エネルギーについて「主力化の可能性が拡大している電源」とする戦略素案を示した。原発も「脱炭素化の選択肢」として活用余地を残す。温暖化対策を強化する狙い。再生エネや原発の発電割合は数値目標の設定を見送る方針だ。4月にも最終的に取りまとめる。素案は、太陽光や風力といった再生エネは世界的な価格低下やデジタル技術の進展を考慮して、主力化を目指すべき電源だと指摘した。余った電気を蓄電池にためたり、水素に変換してエネルギー源として使用したりすることで、国の補助政策や天候変動に左右されない自立した電源に成長させるとの方針を示した。原発は、温暖化につながる二酸化炭素(CO2)を出さない電源として、安全性向上やコスト改善の観点から、技術開発や人材育成の強化が重要になるとした。一方で、東京電力福島第1原発事故の反省を踏まえ、原発の依存度を可能な限り低減する従来方針は今後も変えない考えを示した。現在、発電の中核を担っている火力発電は非効率的な石炭火力を廃止し、比較的CO2の排出が少ないガス火力に移行させることが重要になると指摘した。日本は温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」で、50年に温室効果ガスを8割削減する目標を掲げている。政府は今夏に30年ごろの中期目標を中心にした新しいエネルギー基本計画を決める予定で、50年を見据えた戦略も一部反映させる。会議では、委員から再生エネを主力電源として強力に推進すべきだとの意見が出たが、特定の電源を重視するのは避けるべきだとの主張もあった。

*5-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180828&ng=DGKKZO34656450X20C18A8TJ1000 (日経新聞 2018年8月28日) 日産、中国でEV生産開始
 日産自動車は27日、中国の東風汽車集団との合弁会社が運営する花都工場(広東省)で電気自動車(EV)「シルフィ ゼロ・エミッション」の生産を始めた。日産ブランドとして中国に投入する初のEVとなる。現地の売れ筋セダン「シルフィ」にEV「リーフ」の技術を盛り込んで開発した。中国政府はEVなど一定数の新エネルギー車の生産を2019年に義務付ける。トヨタ自動車やホンダも現地でEVの投入を急いでいる。

<障害者雇用における役所の水増し>
PS(2018年8月31日、9月7日追加): *6-1のように、中央省庁が発表した約6,900人の障害者雇用数のうち3,460人が水増しで、その方法が障害者手帳等で確認もせずに「視力が弱い」「糖尿病」などの職員を勝手に障害者に算入していたことは問題だ。しかし、安倍首相に関しては、*6-2の2014年公布の「障害者の権利に関する条約」が安倍政権下で高村外務大臣によって調印され、2016年障害者雇用促進法強化も安倍政権下で行われ、首相が行政の細かい人事まで指示する立場にはないことから、行政の長だからといって責任はないと考える。むしろ、何があっても政治家に責任を負わせ、政治家が謝罪したり辞任したりして終わらせるという発想は、政争の具として利用されるだけで、現状を改善することはない。
 なお、*6-2の国連による「障害者の権利に関する条約」の理念は、「障害者は全ての人権及び基本的自由を差別なしに完全に享有することを保障する」「障害者の多様性を認める」「障害者にとって個人の自律及び自立(自ら選択する自由を含む。)が重要であることを認める」「障害者の大多数が貧困の状況下で生活している事実を強調し、貧困が障害者に及ぼす悪影響に対処することが真に必要であることを認める」等々としており完璧に近いので、中央省庁及び地方自治体は理解して守るべきである。
 また、障害者手帳を持っている障害者でも、配置によっては残っている機能で健常者と同様以上に働ける場合が多いため、「障害者1人1人に向き合ったフォロー」などと過度に言い立てて、女性労働者と同様、「区別」を「差別」の代替語にしないよう気を付けるべきだ。
 なお、*6-3のように、裁判所や国会も障害者雇用の半分超を不正算入して水増ししており、機会を奪われた障害者は訴える場所もなさそうだ。しかし、加藤厚労相が特定の組織だけをスケープゴートにして問題を終わらせるのではなく、都道府県・市区町村・独立行政法人・国立大学法人まで含めて全体の障害者雇用率を実態調査することにしたのは評価できる。

  
             日本国憲法27条             2018.8.29毎日新聞

    
   2018.9.7佐賀新聞           障害者雇用の推移

(図の説明:上の左図の日本国憲法27条に定められた「勤労の権利」や「勤労条件」でも、障害者を不利に扱うことは許されていない。しかし、上の右図及び下の図ように、障害者雇用は低迷しており、今回、裁判所も含む役所の水増しが明るみに出たわけだ)

*6-1:http://www.fukuishimbun.co.jp/articles/-/687754 (福井新聞 2018年8月30日) 障害者雇用水増し問題、働く機会奪った罪は重い
 中央省庁が障害者雇用数を水増ししていた問題で、昨年だけでも行政機関の8割となる27機関で3460人にも上っていた。法令無視は制度開始の1960年から横行していたとされる。膨大な数の障害者の働く機会を奪った罪は重いと言わざるを得ない。水増しは多くの地方自治体でも次々と発覚。県内では鯖江市や県警、新たに福井市でも判明した。相次ぐ発覚にいまだ全容はつかめないままで、故意に数字を操作したのか、法令解釈の誤りなのかも判然としない。政府は第三者の検証チームに原因究明を委ねるとしたが、国会は閉会中審査で真相解明に当たるべきだ。身体障害者雇用促進法は60年に制定され、76年に民間企業に雇用が義務付けられた。その後、対象に知的障害が加えられ、今年4月には精神障害にも拡大。法定雇用率は徐々に引き上げられ、現在は国や地方自治体で2・5%、企業で2・2%だ。雇用率に算入できる障害者は厚生労働省のガイドラインでは、各障害者手帳で確認するのが原則で、例外として指定医による診断書も認められている。政府の調査結果によると、昨年雇用していたと発表した約6900人のうち半数が水増しで、雇用率は法定を大きく下回る1・19%だった。この数字に障害者から怒りや不満の声が上がったのは当然だ。雇用率達成にまじめに取り組み、未達成時には納付金を納めるなどしてきた企業にすれば、冷水を浴びせられたとの思いだろう。手帳の確認を怠っただけでなく「視力が弱い」「糖尿病」といった職員を障害者として算入していたことが判明。さらには、健康診断など申告のあった資料を基に、本人に確認もせずに算入していた例もあったという。歴代の担当者らにこうした手法が受け継がれてきたとみられる。厚労省のガイドラインの分かりにくさを指摘する声もあるが、法令順守を第一とする公務員の弁とは思えない。障害者雇用促進法は、働く喜びを通じ、障害のある人の自立を支えることを理念に掲げる。範を示すべき「官」の背信は、障害者の萎縮、民間企業の雇用意欲減退にもつながりかねない。水増しは国税庁1022人、法務省539人に上った。国民の納税、人権意識への影響も懸念される。政府は今年中に雇用率に満たない人数を雇用するとしているが、これこそ実態を軽視するものだ。障害者一人一人に向き合った職場環境やフォロー体制などが整わない状態では、職場への定着が困難なことを理解していないのではないか。安倍晋三首相が表に出てこないのも不自然だ。財務省の文書改ざんなどでは「行政の長として責任を痛感している」などと弁明した。今回は安倍政権に起因するものではないと、ほおかむりするつもりなのか。4年前の厚労省所管の独立行政法人で水増しが発覚した際に省庁を含めた調査を行っていれば、との指摘がある。その時の行政の長は誰だったのか。

*6-2:http://www.dinf.ne.jp/doc/japanese/rights/adhoc8/convention131015.html#ARTICLE5 (障害者の権利に関する条約 2014年1月20日公布 抜粋) 
前文
この条約の締約国は、
(a)国際連合憲章において宣明された原則が、人類社会の全ての構成員の固有の尊厳及び価値並びに平等のかつ奪い得ない権利が世界における自由、正義及び平和の基礎を成すものであると認めていることを想起し、
(b)国際連合が、世界人権宣言及び人権に関する国際規約において、全ての人はいかなる差別もなしに同宣言及びこれらの規約に掲げる全ての権利及び自由を享有することができることを宣明し、及び合意したことを認め、
(c)全ての人権及び基本的自由が普遍的であり、不可分のものであり、相互に依存し、かつ、相互に関連を有すること並びに障害者が全ての人権及び基本的自由を差別なしに完全に享有することを保障することが必要であることを再確認し、
(d)経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約、市民的及び政治的権利に関する国際規約、あらゆる形態の人種差別の撤廃に関する国際条約、女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約、拷問及び他の残虐な、非人道的な又は品位を傷つける取扱い又は刑罰に関する条約、児童の権利に関する条約及び全ての移住労働者及びその家族の構成員の権利の保護に関する国際条約を想起し、
(e)障害が発展する概念であることを認め、また、障害が、機能障害を有する者とこれらの者に対する態度及び環境による障壁との間の相互作用であって、これらの者が他の者との平等を基礎として社会に完全かつ効果的に参加することを妨げるものによって生ずることを認め、
(f)障害者に関する世界行動計画及び障害者の機会均等化に関する標準規則に定める原則及び政策上の指針が、障害者の機会均等を更に促進するための国内的、地域的及び国際的な政策、計画及び行動の促進、作成及び評価に影響を及ぼす上で重要であることを認め、
(g)持続可能な開発に関連する戦略の不可分の一部として障害に関する問題を主流に組み入れることが重要であることを強調し、
(h)また、いかなる者に対する障害に基づく差別も、人間の固有の尊厳及び価値を侵害するものであることを認め、
(i)さらに、障害者の多様性を認め、
(j)全ての障害者(より多くの支援を必要とする障害者を含む。)の人権を促進し、及び保護することが必要であることを認め、
(k)これらの種々の文書及び約束にもかかわらず、障害者が、世界の全ての地域において社会の平等な構成員としての参加を妨げる障壁及び人権侵害に依然として直面していることを憂慮し、
(l)あらゆる国(特に開発途上国)における障害者の生活条件を改善するための国際協力が重要であることを認め、
(m)障害者が地域社会における全般的な福祉及び多様性に対して既に貴重な貢献をしており、又は貴重な貢献をし得ることを認め、また、障害者による人権及び基本的自由の完全な享有並びに完全な参加を促進することにより、その帰属意識が高められること並びに社会の人的、社会的及び経済的開発並びに貧困の撲滅に大きな前進がもたらされることを認め、
(n)障害者にとって個人の自律及び自立(自ら選択する自由を含む。)が重要であることを認め、
(o)障害者が、政策及び計画(障害者に直接関連する政策及び計画を含む。)に係る意思決定の過程に積極的に関与する機会を有すべきであることを考慮し、
(p)人種、皮膚の色、性、言語、宗教、政治的意見その他の意見、国民的な、種族的な、先住民族としての若しくは社会的な出身、財産、出生、年齢又は他の地位に基づく複合的又は加重的な形態の差別を受けている障害者が直面する困難な状況を憂慮し、
(q)障害のある女子が、家庭の内外で暴力、傷害若しくは虐待、放置若しくは怠慢な取扱い、不当な取扱い又は搾取を受ける一層大きな危険にしばしばさらされていることを認め、
(r)障害のある児童が他の児童との平等を基礎として全ての人権及び基本的自由を完全に享有すべきであることを認め、また、このため児童の権利に関する条約の締約国が負う義務を想起し、
(s)障害者による人権及び基本的自由の完全な享有を促進するためのあらゆる努力に性別の視点を組み込む必要があることを強調し、
(t)障害者の大多数が貧困の状況下で生活している事実を強調し、また、この点に関し、貧困が障害者に及ぼす悪影響に対処することが真に必要であることを認め、
(u)国際連合憲章に定める目的及び原則の十分な尊重並びに人権に関する適用可能な文書の遵守に基づく平和で安全な状況が、特に武力紛争及び外国による占領の期間中における障害者の十分な保護に不可欠であることに留意し、
(v)障害者が全ての人権及び基本的自由を完全に享有することを可能とするに当たっては、物理的、社会的、経済的及び文化的な環境並びに健康及び教育を享受しやすいようにし、並びに情報及び通信を利用しやすいようにすることが重要であることを認め、
(w)個人が、他人に対し及びその属する地域社会に対して義務を負うこと並びに国際人権章典において認められる権利の増進及び擁護のために努力する責任を有することを認識し、
(x)家族が、社会の自然かつ基礎的な単位であること並びに社会及び国家による保護を受ける権利を有することを確信し、また、障害者及びその家族の構成員が、障害者の権利の完全かつ平等な享有に向けて家族が貢献することを可能とするために必要な保護及び支援を受けるべきであることを確信し、
(y)障害者の権利及び尊厳を促進し、及び保護するための包括的かつ総合的な国際条約が、開発途上国及び先進国において、障害者の社会的に著しく不利な立場を是正することに重要な貢献を行うこと並びに障害者が市民的、政治的、経済的、社会的及び文化的分野に均等な機会により参加することを促進することを確信して、次のとおり協定した。
第一条 目的
 この条約は、全ての障害者によるあらゆる人権及び基本的自由の完全かつ平等な享有を促進し、保護し、及び確保すること並びに障害者の固有の尊厳の尊重を促進することを目的とする。障害者には、長期的な身体的、精神的、知的又は感覚的な機能障害であって、様々な障壁との相互作用により他の者との平等を基礎として社会に完全かつ効果的に参加することを妨げ得るものを有する者を含む。
第二条 定義
 この条約の適用上、
○「意思疎通」とは、言語、文字の表示、点字、触覚を使った意思疎通、拡大文字、利用しやすいマルチメディア並びに筆記、音声、平易な言葉、朗読その他の補助的及び代替的な意思疎通の形態、手段及び様式(利用しやすい情報通信機器を含む。)をいう。
○「言語」とは、音声言語及び手話その他の形態の非音声言語をいう。
○「障害に基づく差別」とは、障害に基づくあらゆる区別、排除又は制限であって、政治的、経済的、社会的、文化的、市民的その他のあらゆる分野において、他の者との平等を基礎として全ての人権及び基本的自由を認識し、享有し、又は行使することを害し、又は妨げる目的又は効果を有するものをいう。障害に基づく差別には、あらゆる形態の差別(合理的配慮の否定を含む。)を含む。
○「合理的配慮」とは、障害者が他の者との平等を基礎として全ての人権及び基本的自由を享有し、又は行使することを確保するための必要かつ適当な変更及び調整であって、特定の場合において必要とされるものであり、かつ、均衡を失した又は過度の負担を課さないものをいう。
○「ユニバーサルデザイン」とは、調整又は特別な設計を必要とすることなく、最大限可能な範囲で全ての人が使用することのできる製品、環境、計画及びサービスの設計をいう。ユニバーサルデザインは、特定の障害者の集団のための補装具が必要な場合には、これを排除するものではない。(以下略)

*6-3:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/271391 (佐賀新聞 2018年9月7日) 裁判所、国会も4百人水増し、障害者雇用、半分超を不正算入
 中央省庁の障害者雇用水増し問題で、厚生労働省は7日、全国の裁判所や国会でも国のガイドラインに反して計約440人を不正に算入していたと公表した。昨年は計約730人を雇用していたと発表しており、半分以上が水増しに当たる。裁判所と国会は当時の法定雇用率(2・3%)を達成したとしていたが、それぞれ0・97%、1・31%と激減した。加藤勝信厚労相は7日の記者会見で、独立行政法人や国立大学法人の計337機関についても昨年の障害者雇用率を調査すると明らかにした。今月末までに報告を求め、10月中に都道府県や市区町村への全国調査と併せてとりまとめる方針だ。

<大学入試の公正性とアファーマティブ・アクション>
PS(2018年9月1日追加): *7-1に書かれているように、「公平な入学選考を求める学生たち」が「ハーバード大は『曖昧な個人評価の基準』で、アジア系米国人の入学を妨げている」としてハーバード大を相手取って訴訟を起こし、司法長官が「誰も人種を理由に入学を拒否されるべきではない」として、「ハーバード大の入学選考は、アファーマティブ・アクションによってアジア系米国人を不当に排除している」ということになったそうだ。アファーマティブ・アクションは、これまでの歴史的背景から不利益を受け続けている集団を優遇するために必要な場合もあるが、*7-1の議論は、日本の大学入試論議よりもずっと先を行く話である。
 しかし、*7-2の「医学部人気の裏側で、大学側は適性や意欲も重視」というのは、それこそ『曖昧な個人評価の基準』で優秀な学生の入学を妨げて、入学者の質を落とすことになりかねない。何故なら、「理系ができる」というのは入学後の授業を理解するための必要条件であり、「患者に接する高いコミュニケーション能力」は知識・経験・理解力などを総合した説明力・受容力である上、免疫学・再生医療等の研究者になる場合には優先順位が低いため、東大の場合は、(将来ではなく)現在の第1線にいる教授が、偏見の入りやすい曖昧な基準で意図的に振り分けるのはやめた方がよいからである。

*7-1:https://digital.asahi.com/articles/DA3S13659683.html (朝日新聞 2018年9月1日) 「ハーバード大、アジア系を排除」 米司法省が意見書 少数優遇措置に波及も
 米国の名門私立大学ハーバード大の入学選考は、アジア系米国人が不当に排除されている―。米司法省は30日、こう指摘する意見書を提出した。セッションズ司法長官は「誰も、人種を理由に入学を拒否されるべきではない」と唱えるが、もともと少数派優遇に批判的なトランプ政権のもくろみが透けて見える。意見書は、NPO「公平な入学選考を求める学生たち」(SFA)がハーバード大を相手取って2014年にボストンの連邦地裁に起こした訴訟に提出された。同団体は、白人の保守系活動家が代表を務める。司法省は意見書で、SFAの主張を支持。ハーバードが「曖昧(あいまい)な個人評価の基準」で、アジア系米国人の入学を妨げているとした。米メディアによると、ハーバード大の13年の学内調査で、学業成績だけならアジア系米国人の割合は全入学者の43%になるはずが、他の評価を加えたことで19%まで下がったという。また、アジア系米国人がハーバードのような名門校に合格するには、2400点満点の共通テストで白人より140点、ヒスパニック系より270点、アフリカ系より450点高い点数を取る必要があるとの09年の調査結果もあるという。ここで問題となるのが、アファーマティブ・アクション(少数派優遇措置)だ。1960年代の公民権運動から生まれた考えで、黒人など少数者に優先枠を設けることで差別是正を試みる。米国の大学の入学選考では、学内の人種の多様性を確保するために広く実施されている。ただ「逆差別」ととらえる白人は多く、大学入試を巡ってはこれまでも訴訟に発展してきた。最高裁は03年に「措置そのものは合憲」と決定している。今回の訴訟では、本来は少数派であるアジア系がとりあげられた。だが白人の不満を背景にして、アファーマティブ・アクション撤廃への議論が拡大するのは必至だ。トランプ政権下では最高裁判事の多数を保守派が占めるとみられ、これまでの決定が覆される可能性もある。司法省の意見書に対し、ハーバード大は声明で、不公正との指摘を否定し、「大学は多様なコミュニティーを作るための自由や柔軟性を持たねばならない」と反論した。また同大のアジア系などの卒業生や在校生でつくる複数の団体は意見書を出し、「人種考慮を排除した入学許可が第一に利益をもたらすのは白人だ。アジア系ではない」と指摘した。

*7-2:https://digital.asahi.com/articles/DA3S13659697.html (朝日新聞、東洋経済 2018年9月1日) 医学部人気の裏側で 大学側は適性や意欲も重視
 文部科学省の元局長が、私大支援事業をめぐって受託収賄容疑で逮捕、起訴された汚職事件。息子の東京医科大への入学と引き換えに大学側に便宜を図ったというもの。医学部人気を改めて世に知らしめることになりました。7月に都内で開かれた医学部受験セミナーは、真剣なまなざしの高校生や保護者でいっぱいでした。高校でも医学部への進学実績を競う風潮があり、進路指導で「理系のできる子」に医学部受験を勧めることが多いそうです。一方、大学側は受験生の増加で喜んでいるかといえば、必ずしもそうではありません。「医者になれば食いっぱぐれがない」「親に言われて何となく受験する」。こうした受験生がどうしても一定数いるそうです。ある私立医科大の学長が内情を打ち明けます。「医師に向いていない子、意欲の低い子は、本人のためにも、社会のためにも早く方向転換させてあげたほうがいいのだが」。適性や意欲を確かめるのに、東京大は今春、主に医学部へ進む理科3類の前期日程試験から11年ぶりに面接を復活。学科の得点にかかわらず、面接の結果次第では不合格にする場合もあるそうです。医学部に入学できても、6年間に及ぶ厳しい勉強が待っています。卒業後も研修が続き、医師として一本立ちできるのは30歳近く。医学の進歩は速く、人の命を預かるには一生勉強を続けないといけません。患者に接するのに高いコミュニケーション能力も欠かせません。その覚悟を持った受験生がどれほどいるのか。いまの医学部人気には一抹の不安を覚えます。

<環境税と教育改革のあり方>
PS(2018年9月3日追加):*8-1に、新たな温暖化対策として炭素税の本格導入に向けた議論を環境省が審議会で始めたそうだが、公害を、出した者が得する外部経済のままにしておくべきでないため、炭素だけでなく環境を汚す物質に対してかける環境税ならよいと思う。しかし、環境税は森林環境税を包含しなければCO₂排出に対する二重課税になるし、排出量取引は形式的な取引をするだけで、全体の排出量を抑える効果はない。*8-1によると、日本では異論を言っている団体が多いということだが、欧州では1990年代から排気ガスを出す燃料には、それを理由として課税されていることを忘れてはならない。
 なお、*8-2のように、文科省が理数系科目の得意な高校生を地域の中核的大学に積極的に受け入れる入学枠を設けるなどの高校・大学一貫教育を行う新制度を始める方針を決めたそうだ。しかし、それより大切なことは、日本は主権在民の国であるため、無知によって科学技術の進展を妨げてしまうような阿保な人を無くすために、高校までは理系・文系を分けることなく理数系科目や法律学・経済学などをしっかり教えておくことが重要だ。

   

(図の説明:1番左の図のように、日本のCO₂削減目標は決して多い方ではない。また、左から2番目の図のように、炭素の排出価格は国によって異なり、科学的・論理的な算出方法ではなく政策によって決められている。しかし、右から2番目の図のように、原油を100%近く輸入している日本のガソリン課税は非常に小さく、1番右の図のように、環境税はまだ導入されていない)

*8-1:https://digital.asahi.com/articles/DA3S13662101.html (朝日新聞社説 2018年9月3日) 温暖化対策 「炭素課金」の検討急げ
 地球温暖化の原因となる二酸化炭素(CO2)は、ただで出すことはできない。そんな仕組みを日本でも真正面から考える時期に来ているのではないか。新たな温暖化対策として、CO2の排出に課す炭素税や企業間の排出量取引の本格導入に向けた議論を、環境省が審議会で始めた。排出に伴う社会的なコストをエネルギーなどの値段に反映し、関係者に負担させて排出の削減を促す仕組みだ。「カーボンプライシング(炭素の価格化)」と呼ばれる。長年、経済産業省や産業界は慎重論を唱えてきた。「企業の負担を増やし、競争力をそぐ懸念が強い」などと強調する。しかし世界では、市場メカニズムを使って効率よく社会や産業の転換を誘導する政策として、存在感が強まっている。ここ数年で先進国からアジアなどの新興国にも広がり、導入済みや導入を検討中の国・地方政府は、70ほどまで増えた。パリ協定発効で脱炭素化の機運が高まるなか、日本もいつまでも後ろ向きではいられない。環境省だけでなく政府全体で、具体策の検討を急ぐべきだ。国内では、CO2排出量に応じて石油や石炭などに課す「地球温暖化対策税」が12年に導入され、排出量取引は東京都と埼玉県が実施している。ただ、税率が低いことや対象が限られることから、排出抑制の効果は小さいとみられている。カーボンプライシングを本格的に導入し、きちんと機能させるには、多くの工夫を要する。税で言えば、さまざまなエネルギー関連の税制全体を見直し、排出量ベースの課税を広げるべきだ。化石燃料を多く使うメーカーの負担増や電気料金の上昇といった副作用をどうやわらげるかも、検討課題だろう。日本にとって、再生可能エネルギーの普及は大きな課題だ。CO2を出さない再エネの競争力を底上げする効果が、炭素税や排出量取引にはある。これらを恒久的な制度として拡充し、その代わり、再エネ支援のために発電コストを電気料金に上乗せする「固定価格買い取り制度(FIT)」を縮小していくという発想も、国民負担を抑えるうえで有用ではないか。温暖化対策は、税制やFITのような直接的な補助、規制など、数多くのやり方で進められている。カーボンプライシングの検討に当たっては、既存の施策も見直し、政策全体としての効果を高めるという視野が欠かせない。関係省庁に、いっそうの連携を求めたい。

*8-2:http://www.tokyo-np.co.jp/article/education/edu_national/CK2018082702000251.html (東京新聞 2018年8月27日) 理系 高校大学で一貫教育 文科省、19年度に新制度
 文部科学省が、理数系科目の得意な高校生を地域の中核的な大学に積極的に受け入れる入学枠を設けるなど、高校と大学で一貫した専門的な教育を行う新制度を始める方針を決めたことが二十七日、分かった。研究費不足などで「科学技術立国」の地盤沈下が指摘される中、日本の科学界を担う研究者の卵を育成することを目指す。初年度は全国から参加校を募り、モデルケース一カ所を選ぶことを想定。その後は大都市圏に偏らないよう配慮しながら、数年かけて数カ所に拡大する方針だ。関連予算を二〇一九年度概算要求に盛り込む。将来は優秀な生徒が高校卒業前に大学に入る「飛び入学」につながる可能性もある。一方、大学間や高校間で格差が広がる恐れもあり、多くの生徒が機会を得られるバランスの取れた運用が課題になりそうだ。新制度は、重点的に理数系教育を行う現行の「スーパーサイエンスハイスクール」の枠組みの一部として運用し、高校と大学が連名で申請する。私立も含めた理系教育で実績のある大学を中核に、地域の高校五校前後が集まって協議会をつくり、一貫教育のプログラムを決めてもらう。高校から大学まで切れ目のない専門教育を実現するため、大学教員が高校で出前授業をしたり、高校生が大学の研究室を訪問したりすることも可能になる。一貫教育に対応する新たな課程を、高校と大学にそれぞれ設置することも認める。大学と各高校が共通の評価基準を作り、優秀な生徒向けに進学枠を設けることもできる。一般的な試験だけに頼らないAO入試や、推薦入試のような形の選抜も想定している。今回の制度は、これまで特定の大学と高校が個別に行ってきた「高大連携」を大幅に拡張する形。大学にとっては早い段階から活躍が見込める優秀な研究者の卵を受け入れられる利点が生じる。

<就活ルールの廃止について>
PS(2018年9月4日追加):*9-1、*9-2のように、経団連の中西会長が「就活ルール」の廃止に言及されたのはよいことだ。何故なら、人材は、国籍・性別・年齢を越えて優秀な人を獲得しなければ企業も生き残れない時代となり、日本企業のように、新卒男子を優先して採用し年功序列で昇進させればよいわけではなくなったからだ。また、新卒男女の学生も、合わない会社に入っても我慢しなければならないのではなく、別の会社にハンディーなく就職し直すことができ、出産退職した女性も非正規雇用のような不利な条件ではなく、能力を認めてくれる会社にならハンディーなく正規雇用で再就職できるようになる。この時、大学が学業への配慮を求めるのはおかしく、企業から求められる能力を身につけた学生を育てておかなければ、就職できない学生が増えるということだ。
 なお、*9-3のように、「売り手市場」が続く就職活動でも女子が苦戦しており、金融機関などが女子学生に人気のある一般職の採用を絞ったことが一因ではないかと言われている。しかし、AIや機械で代替可能な仕事しかできない人は、男女にかかわらず、今後は就職難になるだろう。ただ、日本の金融機関は特に男女差別が大きく、後ろに立っているだけの男性社員より接客している女性社員の方が仕事ができるじゃないか思われる場面もよくある。そのため、女性も大学時代に、銀行で顧客が相続の相談をしたらすぐに必要事項のアドバイスができる税理士・司法書士の資格をとったり、個人の相談に乗れるFPの資格をとったり、銀行の担保となる固定資産の査定ができる不動産鑑定士の資格をとったり、企業経営の診断やアドバイスができる公認会計士・中小企業診断士などの資格をとったりして金融機関に応募すれば、労働の付加価値が高くなっているため、採用されやすいと考える。

*9-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180904&ng=DGKKZO34913280T00C18A9EA1000 (日経新聞 2018年9月4日) 経団連会長、就活ルール廃止に言及 首相は維持求める
 経団連の中西宏明会長は3日に開いた記者会見で、就職活動の時期などを定めた「就活ルール」の廃止に言及した。国境を越えた人材の獲得競争が広がり、経団連が個別企業の採用活動をしばるのは現実に合わないとの意識がある。一方で安倍晋三首相は同日夜、採用のルールを守るよう改めて要請。学業への配慮を求める大学側との調整が進みそうだ。「経団連が採用の日程に関して采配すること自体に極めて違和感がある」。中西氏は会見で、経団連が主体となってルールを定める現状に疑問を呈した。経団連がルールをなくせば自由な採用活動が一段と広がり、新卒一括採用を前提とする雇用慣行の転機となる。経団連は会員企業が新卒採用する際に参考とするルールとして「採用選考に関する指針」を定めている。現行のルールでは、2020年春入社の学生までは前年の6月1日に採用面接を解禁し、10月1日に内定を出すという日程を示している。21年以降のスケジュールは決まっていない。中西氏は会見で21年以降を対象としたルール策定状況を問われ「経団連としてまだ決めていないが、困ると言ってくる人がいないので、個人的に(廃止と)思っている」と語った。指針には会員企業に対する拘束力はない。発言の背景にあるのが、世界的な人材獲得競争だ。特に世界的に不足しているIT(情報技術)関連の人材は中国企業などが好待遇で囲い込んでいる。三菱ケミカルは同日、「通年採用を早く開始すべく検討を始めている。新卒採用は学業に影響のない方法があわせて検討されるべきだ」とのコメントを発表した。中西氏は会見で、学生を新卒で同時期に一括で採用し、ひとつの企業のなかでキャリアを積んでいくことを前提とした日本型の雇用慣行を見直す必要性にも触れた。「問題意識は共有する経営者も多い」とも話し、企業の人材確保について議論を詰める考えを示した。就活ルールについては自由な採用に縛りをかけたくない企業と、学生への影響を心配する大学側との調整が続いてきた。現在は面接を6月に解禁しているが、多くの企業は早期に事実上の採用活動を始めている。経団連に参加していないベンチャー企業などは有望な学生を早期に囲い込み、ルールが形骸化しているとの指摘は多い。安倍首相は3日夜、東京都内の自民党会合で「採用活動は6月開始というルールを作った。このルールをしっかり守っていただきたい」と語った。就活ルールは13年に、首相が学業への配慮を求めて経団連など経済界の首脳に繰り下げを申し入れた経緯がある。経団連は榊原定征前会長だった18年3月に、21年春入社以降の学生を対象とする新しい就活ルールの策定に着手した。就活の現状に合わせて解禁時期を3月に前倒しし、会員企業の一部にある早期化の意見に配慮することなどを検討していた。新しいルールは今秋に公表する予定だった。一方で大学側には採用面接が早期に始まることへの心配も多い。学生が3年生のうちから就活の準備に追われてしまうためだ。日本私立大学団体連合会(私大団連)は6月下旬に、21年春入社の学生について企業説明会を3月、採用面接を6月解禁とする経団連の指針を堅持すべきだとする考え方を公表している。

*9-2:https://digital.asahi.com/articles/DA3S13663291.html (朝日新聞 2018年9月4日) 就活、無制限は困る 学生「長引けば勉強に影響」 就活指針廃止表明
 経団連の中西宏明会長が、就活指針を取りやめる意向を示した。長年続いてきたルールだったが、急な撤廃の動きに大学の現場には戸惑いが広がる。一方、企業側では、経団連に加盟しているかどうかで、反応に温度差も見られた。「学生はどう動けばいいか悩むだろうし、現場は混乱するだろう」。経団連の中西会長が、就職活動にかかわる指針を廃止する方針を打ち出したことを受け、法政大キャリアセンターの内田貴之課長はこう心配する。現在の指針は、3月に説明会などの広報活動を、6月に面接などの選考を解禁すると定めている。大学の団体でつくる「就職問題懇談会」の昨年の調査では、5月までに選考を始めた「解禁破り」の大企業は56・4%に上り、39・7%が内々定を出すなど形骸化が指摘されているが、内田課長は「目安があったほうが、大学側も学生も動きやすい」と指摘する。就活塾「就活コーチ」(東京都)代表の広瀬泰幸さんは、人気企業の採用が終わらないと、他の企業の採用も終わらない可能性があるとみる。「学生は就活をいつスタートし、いつ終えればいいのかわからなくなるのでは」と話した。就活の長期化による学業への影響も懸念される。東京都の私立大3年の女子学生(20)は「目安があったおかげで就活スタートまでは学業に専念できる」と語る。ただ、3年生になってからは準備も含め就活が忙しく、勉強に支障が出ている学生も周囲にいる。「就活が長期化すると、もっと影響が出てしまう」と話す。文部科学省も学業への影響を考慮し、就活のルールについて経団連と話し合いながら決め、企業側に指針順守を要請してきた。それだけに、同省幹部は中西会長の発言について「事前に何も聞かされていない」と驚きを隠さなかった。「指針がなくなれば、就活が無期限に延長され、大学側も講義日程が組みにくくなる。大学側の意向も聞いて議論してほしい」と注文した。
■企業、評価も不安も
 企業側の意見は分かれている。経団連の指針がなくなれば人材の獲得競争にプラスになると評価する声がある一方、唐突な方針転換が採用現場に混乱をもたらすと不安視する声も出た。次世代車の開発競争が激化する自動車業界は、経団連に非加盟のIT企業とも人材の争奪戦を繰り広げている。ある自動車大手の担当者は「自由度があがり、自社の魅力をアピールする機会が増える」と好意的だ。一方、すでに指針に縛られていない企業は静観する構えだ。2011年に経団連を脱退した楽天は、エンジニアを通年で、その他の職種も4月・10月入社で採用活動をしていて「現時点で特段の影響はない」(広報)。ヤフーの広報担当者も「新卒、既卒ともに通年採用をしているため大きな影響はない」と話した。当惑や心配も広がった。日用品メーカーの採用担当者は、指針がなくなって採用活動が早まれば、内定を複数得た後に断る学生も増えるとみて、「採用活動を抜本的に変えないと良い人材を取れない」と危機感を口にした。飲料メーカー大手のキリンは「学生の混乱が想定される。産学で連携しながら戦略を練りたい」(広報)と慎重だ。中小企業の採用選考が本格化するのは例年、経団連に加盟する大企業の採用選考が進んだ後。中小企業の加盟が多い日本商工会議所の幹部は「大企業の動きはおそらく早くなるのでは。中小はそれ次第だ」と影響に気をもむ。
■解禁日変遷、形骸化目立つ
 就職活動の日程は頻繁に変わってきた。「朝鮮戦争特需」で新卒学生の定期採用が本格化した1953年、企業側と大学側が「就職協定」を結んで採用時期を定めたのがルール化の始まり。だが、高度成長期やバブル期に企業が協定を破って早期に内定を約束する「青田買い」が問題化し、協定は97年に廃止された。日経連(現経団連)は、早期の採用自粛を求める倫理憲章を定めたが、歯止めがかからず、2011年に説明会と選考活動の解禁日を設定した。賛同企業だけが対象で実効性はなかった。13年には安倍政権が「学業の時間確保」を求めて解禁日の後ろ倒しを経団連に要請。経団連加盟企業が対象の「指針」を新設した。それでも経団連に加盟しない外資系などが自由な採用活動を展開。加盟企業も解禁日前のインターンシップ(就業体験)を選考に使うなどルールの形骸化が目立っていた。
■何でもあり懸念
 児美川(こみかわ)孝一郎・法政大キャリアデザイン学部教授の話 守らない企業の方が多いとはいえ、指針があるのと、ないのとでは全く異なる。大学生は、企業が事実上選考に活用するインターンシップのため、3年生の夏前から準備を迫られる。歯止めがなくなることで何でもありになり、1年生から採用情報に追われることにならないか心配だ。
■ミスマッチ減る
 人材情報サービス会社アイデム「人と仕事研究所」の岸川宏所長の話 数年ごとに就活の「解禁」時期が変わり、企業も学生も対応が大変だった。選考は事実上前倒しされていた。形骸化した指針を取りやめるのは理解できる。学生がより早く業界研究や企業研究に取り組むようになれば、企業とのミスマッチが減るのではないか。
■経団連会長「個社の方針、大事に」
 経団連の中西宏明会長との記者会見での主なやり取りは以下の通り。
―指針についてどんな考えですか。
 「経団連が採用の日程について采配すること自体には違和感があると、ずっと感じていた。それは経団連の責任ですか、と。経団連が日程を決めて批判を浴びるのは、ほかのことは采配していないのに、おかしな話。何月解禁とは経団連としては言わない」
―指針は廃止するということですか。
 「ええ。それじゃ困ると誰も言ってきていない」
―当事者にとっては影響が大きいのでは。
 「(企業は)個社の方針を大事にしていく。違いがあってしかるべきだ。制度を作り直すには時間がかかるが、やっていくべきだ」
―指針も目安も出さないということですか。
 「今はそういうつもりだ。経団連としてはまだ決めていないが、各方面とそういう話をして誰も反対していないので、意見が通ると思っている」
―就職活動の日程は政府も関わってきました。
 「政府が多岐にわたる議論をするのであれば徹底的に付き合わなければと思う」
―学生への配慮は必要ではないですか。
 「そう思う。でも学生の混乱を経済団体がすべて収束するように動けるわけではない」
―機関決定していなくても会長発言は重い。
 「守っていない企業が圧倒的に多い。経団連以外は先にやっている。おかしい」

*9-3:https://digital.asahi.com/articles/ASL8061J4L80UTIL054.html (朝日新聞 2018年9月1日) 就活で苦戦する女子たち メガバンク採用、900人減少
 学生優位の「売り手市場」が続く就職活動で、女子が苦戦している。来年春に卒業する大学生の内定率は、女子だけが7月、8月と前年同月を下回った。人工知能(AI)の導入など業務の効率化を進める金融機関などが、女子学生に人気のある一般職の採用を絞ったことが一因ではないか、と専門家はみる。就職情報大手リクルートキャリアによると、8月1日の大学生の内定率は男子が89・8%で前年同月を7・7ポイント上回った一方、女子は86・0%で同0・8ポイント減った。女子は7月も前年を2・7ポイント下回る。前年を下回るのは3年前にこの採用日程が始まってから初めてだ。同社就職みらい研究所の増本全・主任研究員によると、女子に人気がある一般職は6月半ば以降に内定を出す企業が多いといい、「メガバンクを中心に一般職の採用が減った影響があるのでは」とみる。みずほフィナンシャルグループ(FG)は19年卒の採用計画を700人とし、前年の1365人からほぼ半減。うち一般職は約7割減らした。三菱UFJ、三井住友銀行も一般職を中心に採用を絞り、メガバンク3社で計900人の採用減。あるメガバンク関係者は「銀行業界では業務の自動化や効率化が進んでいる。その分、一般職の採用が減った」と話す。金融業界では、AIの導入も進んでおり、地方銀行や保険業界でも採用人員の削減が広がる可能性がある。昭和女子大(東京)は、上位就職先でみずほFGが3年連続で1位となるなど、金融機関の一般職が多くを占める。18年卒は34人もいたが、今年は内定が大幅に減る見込みという。磯野彰彦キャリア支援センター長は「AIの導入などによって一般職の採用基準も変わってきている。英語力や留学経験などを求める企業もあり、基準に答えられる人材を育てていきたい」と話す。リクルートキャリアの調査では、「AIの発達により、なくなる可能性のある職業」を意識して就職活動をした学生は、46・9%に上った。「なくなる可能性がある」業種を複数回答で聞いたところ、「銀行・信用金庫」が59・4%で1位。「生命保険・損害保険」が31・2%、「証券」が29・0%と続き、金融業界が上位を占めた。一般職を希望していた成城大4年の女性(21)は、ある地銀の説明会で「一般職も営業をするし、非常に厳しいノルマもある」と説明を受けた。「窓口で接客するだけのイメージがあったが、覆った」と話す。大手行で転勤のないエリア総合職に内定をもらい、営業もするという。「AIが騒がれているけど、どう思う?」。地銀の一般職で内定をもらった文京学院大4年の女性(22)は、複数の地銀の面接でこう聞かれた。「単純な仕事はなくなるかもしれないけど、お金を扱うには人との信頼関係がなくてはいけない」と答えた。3年ほどの窓口業務の後、営業などもするという。就職みらい研究所の増本主任研究員は「金融機関も含めて今後、一般職の採用が増えるとは考えにくい。変化への対応が必要で、女子の志望先もIT分野などに広がっていくだろう」とみる。

<ゲノム編集された作物に関するルールについて>
PS(2018年9月5日追加):*10の「ゲノム編集された作物に関するルール」は、①消費者の安全性 ②生態系への影響 の両方で決める必要がある。①の安全性は、食物の場合と光る絹糸や手術用絹糸の場合は異なり、食物の場合は殺虫成分を作りだす作物になっている場合に、それが人にとっては安全なのか否かを厳しくチェックしなければならない。しかし、蚕に外部遺伝子を挿入して光る絹糸や手術用糸を作る場合は、それが人の身体に接した時にアレルギーなどを起こさないかは調べる必要があるものの、大量に食べる食物よりは緩やかな基準になるだろう。
 もちろん、人工の生物を自然の中にばら撒いて生態系を壊してはいけないため、私は、EU司法裁判所の「従来と同様の規制対象にすべし」という判断に賛成だ。そして、食物ではなく自然にばら撒かれることもない場合には、別種の遺伝子を外部から組み込んでもよいと思われるが、消費者への開示は食品原材料に限らず徹底すべきである。
 なお、*10には、「ゲノム編集は、標的とする部分だけを切る技術だ」と書かれているが、外から遺伝子を挿入するのもゲノム編集であり、「病気に弱い特定の遺伝子を切断して病気に強くする」よりも「病気に強くなる遺伝子を挿入する」場合が多いだろう。また、「標的とする部分だけを切りとれば無害か?」と言えば、それまでその部分で抑えていた有害な蛋白質の生成を始めることもあるので、必ずしもそうは言えない。

*10:https://www.agrinews.co.jp/p45096.html (日本農業新聞 2018年9月5日) ゲノム編集 国民的な議論を尽くせ
 動植物の遺伝子を改変する「ゲノム編集」のルールづくりが各国で進んでいる。環境省は今秋にも取り扱い方針を決めるが、生態系への影響や安全性など国民的論議は不十分だ。遺伝子組み換え(GM)と同等の規制を求める声もある。拙速な推進の前に、生産者はどう見るのか、意見を積み上げることが先決である。環境省の諮問機関である中央環境審議会の専門委員会は8月30日、ゲノム編集について「別の種の遺伝子を外部から組み込まない場合は規制しない」との方針を了承した。GMと比べて生態系に影響を及ぼすリスクが少ないと判断したためで、環境省は国民からの意見を募り、今秋にも方針を策定する。ゲノムとは遺伝情報の全てを指す。ゲノム編集は、はさみの役割の遺伝子を導入し、標的とする部分だけを切る技術だ。切断後、導入したはさみの遺伝子は取り除くため、変えた跡は残らないのが特徴。その結果、従来の育種方法で開発した作物と区別がつかない。病害虫に弱い作物の場合は、病気に弱い特定の遺伝子を切断すれば、病気に強くもできる。従来の育種に比べて迅速にできるとあって、国内の研究機関や民間企業などもゲノム編集の研究を進める。国際的なルールづくりも始まっている。議論に一定の影響を与えそうなのが、欧州連合(EU)の司法裁判所の判断だ。7月に、ゲノム編集で開発した作物については「従来のGMと同様、規制の対象とすべし」との判断を示した。一方で、米国農務省は3月、「ゲノム編集は自然に起こり得る突然変異と区別できず、規制しない」との立場を明らかにしている。日本はどう見るのか。環境省は8月上旬、ゲノム編集についてDNAの一部を切り取って消す技術は、米国と同様「従来のGM技術に該当しない」との見解を示した。不安を募らせるのは、日本消費者連盟などの消費者団体だ。環境省の見解を受け、ゲノム編集技術などの新しい遺伝子操作技術について規制と表示を求める意見書を環境相、農相らに提出した。意見書では「ゲノム編集などの新技術は、従来のGM技術よりも安全とは認められない」と主張、GMと同等の規制と表示を求めている。日本では、GM農産物について消費者の多くが「きちんと表示をして非GMと区別してほしい」と厳格化を求めている。これに対し、米国ではGM農産物は一般の農産物と区別しないで流通している。日本の消費者は食の安全・安心に関心が高いことの現れだ。環境省は2018年度中に産業利用する場合のルールをまとめる方針だ。ルールができてしまってから意見を述べても手遅れだ。ゲノム編集という新技術はGMに該当しないのか、GMと同等に扱うべきなのか──。まずは生産者をはじめ国民の理解を深めることが先である。

<先進科学技術に移行しないと、日本の産業は遅れること>
PS(2018年9月8日追加):*11-1のように、トヨタが中国でHVの仲間作りを急いでいるそうだが、中国政府は、ガソリンエンジン技術が未熟だからではなく、あらゆる方向から検討した結果、EVへの移行を決断して環境規制を行っているため、中国でHVに参入する企業はないだろう。また、「仲間作りを足掛かりにHV比率を少なくとも3~4割までを引き上げる」というのは、中国にとっては迷惑でトヨタにとっては徒労だ。もし、どうしてもHVを販売したければ、中東のように原油が豊富な国なら可能かもしれないが、世界では、*11-2のように、アフリカ無電化地域の一般家庭に太陽光発電パネルと蓄電池を貸し出して、蓄電池やEVを通じて再生可能エネルギーの活用を促している状況であるため、過去から脱却できずに変化に時間ばかりかけている日本の産業は、アフリカより遅れるかも知れない。
 なお、*12-1のように、九州電力は、「今秋にも太陽光や風力発電事業者に出力制御を求める可能性が高まった」として発電事業者を困らせているが、未だに「電気は需要と供給のバランスが崩れると、発電設備が自動停止して大規模停電に繋がる」などと言いわけし、蓄電池や地域間融通の送電線も整備せず、電力の広域融通というビジネスチャンスを逃しているのは呆れるほかない。一方で、*12-2のように、震度7を観測した北海道地震では北海道全域で停電が起こり、「地震発生時に北海道電力の苫東厚真発電所が域内の約半分の電力需要を賄っていたから」などと理由にならない理由を説明しているが、①エリアを小さく分けたり配線を二重にしたりしていないセキュリティーの甘さ ②病院・学校・畜舎などの自家発電によるバックアップ体制の欠如 ③北海道・本州の連系線が交流変換装置の停電で使えなかったという緩み などの積み重ねが本当の理由であるため、停電は人災だ。
 さらに、北海道地震で台風の被害はすっかり影が薄くなったが、*13のように、台風21号の被害により和歌山・京都などの約3万1千戸がまだ停電しているのだそうだ。しかし、いつまでも明治時代と同じように電柱を立てて復旧するのではなく、道路や鉄道に沿って送電線を地下に埋設するなど、安全性と景観に配慮した投資価値のある復興をすべきだ。

*11-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180908&ng=DGKKZO35116600X00C18A9TJC000 (日経新聞 2018年9月8日) トヨタ、中国勢にHV技術、吉利に供与へ協議 EV普及に時間、燃費規制で需要
 トヨタ自動車が中国でハイブリッド車(HV)の仲間作りを急いでいる。現地大手の浙江吉利控股集団と、同社へのHV技術の供与に向け協議に入った。中国では今後、電気自動車(EV)の導入を促す規制が始まるが、当面は環境配慮型の車としてHVの需要が高まるとみている。トヨタは足元のHVと将来のEVの両にらみの戦略を迫られている。吉利は民営自動車大手で、スウェーデンのボルボ・カーの親会社となっている。トヨタは7日、吉利との協議について「(HVなどの)電動化技術についてはオープンポリシーで取り組んでいる」とコメント。一方で、具体的なことは決まっていないと説明した。トヨタは中国で、第一汽車集団など現地の自動車メーカー2社と合弁会社を設けてHVを生産している。吉利と協力関係を結べば中国重視の姿勢が一段と鮮明になる。具体的な協業の内容は今後詰める。モーターや電力変換装置、電池といったHV技術のライセンス供与やアドバイスになるとみられる。吉利はトヨタ系の部品大手、アイシン精機と自動変速機の生産合弁を設ける計画を持つなど、トヨタグループとつながりがある。トヨタは2030年に、HVやEVなど電動車の世界販売を全体の半分の550万台以上とすることを表明している。うちHVとプラグインハイブリッド車(PHV)が450万台で、主軸の位置付けだ。トヨタはHVの技術をマツダやSUBARU、スズキに提供してきた。米フォード・モーターと多目的スポーツ車(SUV)用のHVシステムの開発で覚書を結んだこともある。現在、この提携関係は終了している。次世代車のひとつとして世界の自動車メーカーがEVの開発を進めている。ただトヨタ幹部は「環境車は普及してこそ意味がある」と繰り返す。現行プリウスは最低グレードの車両価格が約240万円。部品会社も含めてコスト削減に努めてきたという自負がある。HVの仲間作りの主戦場とする中国で、カギになるのが「CAFE規制」だ。自動車メーカーごとに、販売した全車の平均燃費に規制をかける内容で、HVや小型車の販売が多いと有利になる。米国や欧州、中国などが採用、20年に30カ国ほどに広がる見通しだ。中国では20年までに、平均燃費の基準が100キロメートル当たり5リットルと、日本同等の水準まで段階的に引き上げられる。この達成のためにHVの需要があるとみている。中国では別の規制として19年、一定量の新エネルギー車の生産・販売を義務付ける「NEV規制」が始まる。同規制ではHVが新エネルギー車として認められておらず、メーカーはEVやPHVの扱いを増やす必要がある。トヨタは20年、新型EVを世界に先駆けて中国で発売する計画を持つ。吉利を巡っては今年2月、1兆円近くを使ってドイツ・ダイムラーの株式の10%近くを持つ筆頭株主になったことが明らかになった。狙いは、EVの電池を中心とする最新技術の取得にある。今回のトヨタとの協力にも、次世代の車の基盤技術を急いで手に入れたい考えがある。トヨタの中国での17年の新車販売台数は129万台。このなかにEVはなく、中国の合弁企業のブランド名で現地生産を始めたばかりだ。一方、販売の1割程度はHVが占めており、現地生産と日本からの輸出を含んでいる。仲間作りを足掛かりに少なくとも3~4割まで比率を引き上げる考え。ただ、EVを巡る各国政府の規制強化の流れは急で、メーカーの開発競争も激しい。中国で予想以上に普及が速まれば、HVを伸ばす戦略の見直しが必要になる。

*11-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180908&ng=DGKKZO35106920X00C18A9EA6000 (日経新聞 2018年9月8日) 仏社と蓄電池リース 三菱商事、アフリカ無電化地域で
 三菱商事は仏電力公社(EDF)と組み、海外で蓄電池関連のリース事業を始める。アフリカの無電化地域で一般家庭に太陽光発電パネルと蓄電池を貸し出すほか、欧州では自治体向けに電気自動車(EV)バスをリースする。蓄電池やEVなどを通じて、再生可能エネルギーの活用を広く促していく。EDFと共同でフランスに蓄電池関連のビジネスを手掛ける合弁会社を設立した。蓄電池を活用したサービスを企画し、案件ごとに出資者を募って事業を展開する。まず西アフリカのコートジボワールで一般家庭に太陽光パネルと蓄電池、家電をセットにして貸し出す事業を始める。同国では100万世帯が無電化地域に暮らす。月額10ユーロ(約1300円)から電気を使えるようにする。料金はモバイル決済による先払い式にして、未回収をなくす。5年内に数十万世帯への導入を目指す。年間数十億円の売上高を見込む。アフリカには約6億人が無電化地域に住むとされる。EDFが強いフランス語圏の西アフリカで事業を拡大する。アジアでの展開も検討する。欧州ではEVバスの車体と動力用の蓄電池、充電設備を地方自治体などにリースする。欧州は環境配慮でディーゼルエンジンのバスからEVバスへの転換が進んでいる。自治体が少ない初期負担でEVバスに切り替えられるようにする。EDFはフランスで既に自治体などに対するエネルギー関連のコンサルタント事業を手掛けている。三菱商事が英国やオランダに持つネットワークを生かして、他の欧州諸国にも売り込む。蓄電池を充電するための電力供給も担う考えだ。太陽光や風力などの再生エネは天候によって発電量が一定にならないという課題がある。電力をためられる蓄電池は再生エネの普及に欠かせない。調査会社の富士経済は電力貯蔵用と動力用の蓄電池の世界市場規模が、30年に17年比2.6倍の約3兆3000億円に拡大すると予測する。

*12-1:http://qbiz.jp/article/140426/1/ (西日本新聞 2018年9月8日) 太陽光・風力発電出力制御ヘ 九電が準備本格化 対象2万4000件にDM
 九州電力は7日、今秋にも太陽光・風力発電事業者に一時的な稼働停止を求める「出力制御」の可能性が高まったとして、対象事業者(契約件数約2万4千)に事前周知のダイレクトメール(DM)を発送したと発表した。自社ホームページ(HP)に出力制御の見通しに関するコーナーも開設するなど、離島以外では全国初となる出力制御に向け準備を本格化させている。出力制限の対象は、太陽光発電が約2万4千件、風力発電が約60件。今秋は、主に住宅に設置している出力10キロワット未満の太陽光発電は対象から外す。HPには天気予報や電力需要などを加味した向こう3日間の見通しを掲載する。電気は需要と供給のバランスが崩れると、発電設備が故障防止のため自動停止し、大規模な停電につながる可能性がある。九電は火力発電所の出力抑制や、揚水発電所の水をくみ上げる「揚水運転」などを実施しても電力供給が需要を上回る場合、太陽光と風力の出力制御に踏み切る。九州の太陽光と風力の発電能力は全国の約2割。太陽光は月5万キロワットのペースで増加しているのに加え、川内原発(鹿児島県薩摩川内市)と玄海原発(佐賀県玄海町)が再稼働するなど、供給力が高まっている。

*12-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180908&ng=DGKKZO35115090X00C18A9EA2000 (日経新聞 2018年9月8日) 電力網、災害時に弱点 北海道全域で停電、広域融通に制約 火力更新も後手
 北海道で震度7を観測した地震では北海道の電力がほぼすべて止まる「ブラックアウト」が発生した。東日本大震災後に電力を広域融通する仕組みをつくってきたはずなのに、なぜ域内全域で長時間の停電が起きる事態になったのか。欧州ではもっと広域かつ風力など多様な電源を融通しており、一つの火力発電所に電力を大きく依存していた北海道電力だけの問題とは言い切れない。地震発生時、北海道電力の苫東厚真発電所(厚真町)は域内の約半分の電力需要をまかなっていた。これが大規模停電が起きた原因とされる。依存度が高まったきっかけは、東日本大震災後の2012年に泊原子力発電所を停止したことだ。北海道や国は依存度の高さに危機感を覚え、18年度内にガス火力発電所を新設する計画を進めていた。「対策が間に合わなかったのは大変残念だ」。7日、世耕弘成経済産業相はこう語った。1カ所の火力発電所への電力依存度が大きい電力会社はほかにもある。例えば東北電力は東新潟火力、北陸電力は富山新港火力がそれぞれピークの電力需要の3割程度をまかなっている。こうしたところでは北海道電のようなリスクを抱えている可能性もある。停電する地域を限定できなかったことにも疑問が残る。東電も福島第1原発が停止した際、電力の需要が供給を上回る事態に陥った。この時は電力システムを保護する装置が自動で作動。一部の地域を停電させて需要と供給を一致させることで大規模な停電を防いだ。こうしたシステムは北海道電にもある。だが同社で送配電線を管理する橋本聡工務部長は「あまりに強い揺れで急激な供給力の喪失があったため、(送電網からの切り離しが)間に合わなかった。制御の現場がどうなっていたかも含め、調査する」と説明している。東北電力からの電力融通も動きが遅かった。7日朝までに30万キロワットの送電を始め、7日夜に計60万キロワット規模になったが、機能すれば影響を小さくできた可能性がある。北海道と本州をつなぐ「連系線」と呼ぶ送電線は直流で電力を送るが、実際に電力を使うには交流に変換する必要がある。この施設が停電で使えなかったという。大阪府立大の石亀篤司教授は「交流に変換する装置が稼働しなかったことが問題」と指摘する。北海道は東北としか連系線を結んでおらず、容量も小さい。こうした特殊性から経産相は電力融通の不調が「他の地域では起きない」とみる。だが欧州ではもっと広域で電力をうまく融通する仕組みができており、全体的に送電網の独立性が高い日本の仕組みが脆弱なのは否めない。欧州の送電網は「メッシュ(網の目)型」と呼ばれる。大陸の国々を網の目のように結ぶ広範な送電網がある。一地域で電力が不足しても素早く周辺国から調達できる。系統規模は約3.8億キロワットと日本の2倍超だ。北海道と本州とつなぐ送電線には容量を60万キロワットから90万キロワットに増やす計画があったが、これも間に合わなかった。経産省幹部は「原発にこだわらず、早めに手を打つべきだったのかもしれない」と漏らす。北海道電に限らず、電力各社は原発再稼働を目指すあまりに、火力など既存の電力設備への投資が後手に回っている可能性もある。北海道の再生可能エネルギーで現時点で電力系統に接続されているのは、電力供給が復旧した地域での家庭用の太陽光発電だけ。事業用の太陽光や風力発電は系統に接続されていない。

*13:https://digital.asahi.com/articles/ASL98549VL98PTIL009.html?iref=comtop_8_05 (朝日新聞 2018年9月8日)台風21号の停電、3万戸超が長期化の恐れ 和歌山など
 近畿地方を4日に襲った台風21号による大規模停電について、関西電力は8日、停電が長期化する恐れがあるのは和歌山や京都など6府県の約3万1千戸と発表した。復旧作業が進み、7日午前の約5万1千戸からは減ったが、道路上の倒木で現場に近づけないなどの理由で時間がかかっている。多くが山間部のため、通行ルートが限られているという。関電によると、管内の停電は延べ約219万1千戸にのぼり、1995年の阪神・淡路大震災に次ぐ規模となった。強風で飛来物や倒木も電線にひっかかり、電線が切れたり、電柱が折れたりして配電機能を失ったのが主な原因とみられる。電柱の強度を超える力が加わったという。8日午後10時50分時点で近畿では約3万3千戸が停電しているが、電柱の変圧器の故障や各家庭への引き込み線の切断などによる停電戸数は、把握しきれていないという。長期停電の恐れがある地域は7日午後5時時点で、和歌山(伊都郡、有田郡、日高郡など)2万10戸▽京都(京都市右京区、左京区、北区など)5030戸▽大阪(泉佐野市、箕面市など)2440戸▽奈良(吉野郡と五條市)2040戸▽滋賀(高島市、犬上郡など)1250戸▽兵庫(尼崎市)210戸。現場への立ち入りが可能になり次第、修復作業に着手するという。

<北海道ブラックアウトについて>
PS(2018/9/9追加):*14に、北海道地震でブラックアウトが発生した理由として、「①1つの火力発電所に大きく依存していた」「②ガス火力発電所新設計画が間に合わなかった」「③電力は需要が供給を上回ると電力システムを保護する装置が作動して自動停止する」「④連系線で送られる電力を交流に変換する施設が停電で使えなかった」「⑤北海道の特殊性があるので、経産相は電力融通の不調は『他の地域では起きない』とみている」「⑥欧州では広域で多様な電源を融通しており、送電網はメッシュ(網の目)型だ」と書かれている。
 このうち、①②については、原発か火力しか思い浮かばない点に落胆させられ、③については、自動的にすべての火力発電所が停止すると、その後は本当に人間が手も出せないのかと呆れた。また、④については、広域送電を本気でやろうとしていたのか疑われ、⑤については、東日本大震災後も楽観的な想定をする癖が抜けていないように見える。さらに、⑥については、セキュリティーと最短距離での送電を考えれば網目状に配線するのが最も合理的であり、単細胞生物の粘菌の栄養分輸送経路でさえ同じ網目状で、人間では血管網・鉄道網・道路網などの輸送ネットワークがこれに近いわけである。


2018.9.6時事    粘菌の輸送経路     日本の道路網     日本の鉄道網

*14:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO35115090X00C18A9EA2000/?n_cid=NMAIL006 (日経新聞 2018/9/8)電力網は災害時に弱点 北海道停電、広域融通も不発
 北海道で震度7を観測した地震では北海道の電力がほぼすべて止まる「ブラックアウト」が発生した。東日本大震災後に電力を広域融通する仕組みをつくってきたはずなのに、なぜ域内全域で長時間の停電が起きる事態になったのか。欧州ではもっと広域かつ風力など多様な電源を融通しており、一つの火力発電所に電力を大きく依存していた北海道電力だけの問題とは言い切れない。地震発生時、北海道電力の苫東厚真発電所(厚真町)は域内の約半分の電力需要をまかなっていた。これが大規模停電が起きた原因とされる。依存度が高まったきっかけは、東日本大震災後の2012年に泊原子力発電所を停止したことだ。北海道や国は依存度の高さに危機感を覚え、18年度内にガス火力発電所を新設する計画を進めていた。「対策が間に合わなかったのは大変残念だ」。7日、世耕弘成経済産業相はこう語った。1カ所の火力発電所への電力依存度が大きい電力会社はほかにもある。例えば東北電力は東新潟火力、北陸電力は富山新港火力がそれぞれピークの電力需要の3割程度をまかなっている。こうしたところでは北海道電のようなリスクを抱えている可能性もある。停電する地域を限定できなかったことにも疑問が残る。東電も福島第1原発が停止した際、電力の需要が供給を上回る事態に陥った。この時は電力システムを保護する装置が自動で作動。一部の地域を停電させて需要と供給を一致させることで大規模な停電を防いだ。こうしたシステムは北海道電にもある。だが同社で送配電線を管理する橋本聡工務部長は「あまりに強い揺れで急激な供給力の喪失があったため、(送電網からの切り離しが)間に合わなかった。制御の現場がどうなっていたかも含め、調査する」と説明している。東北電力からの電力融通も動きが遅かった。7日朝までに30万キロワットの送電を始め、7日夜に計60万キロワット規模になったが、機能すれば影響を小さくできた可能性がある。北海道と本州をつなぐ「連系線」と呼ぶ送電線は直流で電力を送るが、実際に電力を使うには交流に変換する必要がある。この施設が停電で使えなかったという。大阪府立大の石亀篤司教授は「交流に変換する装置が稼働しなかったことが問題」と指摘する。北海道は東北としか連系線を結んでおらず、容量も小さい。こうした特殊性から経産相は電力融通の不調が「他の地域では起きない」とみる。だが欧州ではもっと広域で電力をうまく融通する仕組みができており、全体的に送電網の独立性が高い日本の仕組みが脆弱なのは否めない。欧州の送電網は「メッシュ(網の目)型」と呼ばれる。大陸の国々を網の目のように結ぶ広範な送電網がある。一地域で電力が不足しても素早く周辺国から調達できる。系統規模は約3.8億キロワットと日本の2倍超だ。北海道と本州とつなぐ送電線には容量を60万キロワットから90万キロワットに増やす計画があったが、これも間に合わなかった。経産省幹部は「原発にこだわらず、早めに手を打つべきだったのかもしれない」と漏らす。北海道電に限らず、電力各社は原発再稼働を目指すあまりに、火力など既存の電力設備への投資が後手に回っている可能性もある。北海道の再生可能エネルギーで現時点で電力系統に接続されているのは、電力供給が復旧した地域での家庭用の太陽光発電だけ。事業用の太陽光や風力発電は系統に接続されていない。

<ふるさと納税制度とその使い方>
PS(2018年9月11日追加):私が提唱してでき、多くの方のアイデアと協力で大きく育った「ふるさと納税制度」が、*15-1のように、「①返礼品の抑制が広がる中でも増えた」「②ガソリン税に匹敵する規模で、自治体の主要な収入源になった」「③幅広いアイデアが寄付を押し上げている」というのは喜ばしいことだ。
 これに対し、*15-2のように、645億円の流出超過となった東京都が「待機児童対策などに響く」などと指摘しているが、私は、東京のように企業の本社・工場が多い地域で多く徴収される法人住民税や生産年齢人口を大量に吸収している地域で多く徴収される個人住民税による税収格差を是正するために「ふるさと納税制度」を作ったので、商工業地帯の都市から税収のあがりにくい農林漁業地帯の地方に税収が流れるのは、最初から意図していたことである。また、東京都の待機児童対策がふるさと納税制度の制定前には進んでいたかと言えば全くそうではなく、莫大な無駄遣いが多いことは誰もが知るところだ。
 さらに、「ふるさと納税」を集めるチャンスはどの自治体も平等に持っており、魅力的な製品(農水産物に限らない)やサービスを発掘して返礼品にした自治体が多くのふるさと納税を集めることができる。そのため、ふるさと納税は単なる税金の分捕合戦になっているのではなく、地方の自治体が地域の長所を見つけて魅力に繋げ、生産を増やす努力をすることにも繋がっている。従って、私は、総務省が、返礼品を寄付額の3割以下にすることや地元の農産品に限ることを強制するなど、地方自治体の箸の上げ下ろしにまで口を出しすぎて、地方自治体の工夫に水をさすのはよくないと考える。なお、地方の自治体は、「廃止されそうな鉄道の維持」や「送電線の敷設・地中化」に使うというような使用目的を提示してもよいと思う。

 
 ふるさと納税額の推移       2018.9.11東京新聞

(図の説明:ふるさと納税制度の利用は、地方自治体の工夫によって大きく伸びているが、機会は均等になっている。それを結果平等にすると、頑張る人が馬鹿を見て誰も努力しなくなり、ぶら下がる人ばかりになるので、規制には注意すべきだ。なお、地場産品でないものの中に、「スリランカ特産品」「人間ドック」「航空券割引」が入っているが、スリランカと姉妹都市だったりスリランカを応援していたりする場合もあるため、理由を聞かなければわからない。また、人間ドックの利用権を返礼品にするのは、地元の病院であれば地場産のサービスに当たるし、家族が重病になった時のために地元の拠点病院個室優先利用券などを返礼にすると、重病にならなければ利用されないので原価が小さくてすむ。さらに、「航空券割引」も、佐賀空港を使って神崎に帰省する人が増えればりっぱな返礼品になるため、見かけだけでは判断できない)

*15-1:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO30385930R10C18A5EA3000/?n_cid=SPTMG002 (日経新聞 2018年9月11日) ふるさと納税、3000億円視野 返礼品抑制でも伸び
 ふるさと納税が返礼品の抑制が広がるなかでも増えている。日本経済新聞が全国814市区を調査したところ、6割が2017年度の寄付額が増えると見込む。市区分だけでも2014億円と前年度より10%伸びており、都道府県や町村分を含めると3000億円の大台を突破する勢い。自治体の歳入としてはガソリン税に匹敵する規模で、主要な収入源になってきた。17年度の自治体別の増額幅をみると、最も多かったのは1億円未満で全体の45%を占める。5億円以上は3%にとどまっており、1億~5億円未満が11%だった。ふるさと納税が特定の自治体に集中するのではなく、利用の裾野が広がり多くの自治体で厚みを増している構図が浮かび上がる。総務省によると16年度の実績は2844億円。市区の合計額はふるさと納税全体の64%を占めていた。都道府県は1%で町村は35%だった。市区と町村の伸び率はこれまでほぼ同じ水準で推移しており、17年度は全国の総額で3000億円の大台を超える見通しだ。総務省は17年4月に資産性の高い返礼品などを自粛し、返礼割合も3割以下に抑えるよう各自治体に通知。18年4月には返礼品の見直しの徹底を改めて求める追加の通知を出している。通知後も高い返礼割合の自治体は残るが、集め方や使い道の工夫が広がっている。北海道夕張市はあらかじめ使途を明示した。インターネットで不特定多数の人から少額の寄付を募るクラウドファンディングの手法を採用。少子化に悩んでいた地元の高校を救うプロジェクトなどが共感を呼び、寄付額が3000万円増えた。青森県弘前市は重要文化財である弘前城の石垣修理や弘前公園の桜の管理といった街づくりに参加できる仕組みが人気を集め、前年度より1億6000万円上積みした。「高額」の返礼品だけでなく、幅広いアイデアが寄付を押し上げている。一方で16年度にトップ30だった市区のうち、6割が17年度は減少すると見込む。家電を返礼品から外した長野県伊那市(16年度2位)は66億円減少。パソコンの返礼品をやめた山形県米沢市(同5位)も17億円減った。ただ、全体では17年度も16年度より10%伸びる見通し。上位の減少分を幅広い自治体の増加分でカバーしている形だ。自治体の最大の歳入は約4割を占める地方税。16年度は約39兆円だったが、人口減時代を迎え今後の大幅な増収は見込みにくい。3000億円規模の歳入は自治体にとって、ガソリン税や自動車重量税の地方分と並ぶ規模になる。ふるさと納税が地方税の収入を上回る例も出ており、自治体の「財源」としての存在感は高まっている。16年度首位の宮崎県都城市を抑え、17年度の見込み額でトップになったのは大阪府泉佐野市(同6位)。関東、関西を中心に約130億円を集め、16年度より約95億円増えた。ふるさと納税の額は同市の16年度地方税収入の約6割にあたる。返礼品を大幅に増やして1000以上を用意。黒毛和牛などが人気で、3月までは宝飾品や自転車もそろえていた。返礼割合は17年度で約4割と総務省が求める基準より高かったが、18年度は約3割まで下げる方針だ。一方、税収が「流出」している自治体からは不満の声も漏れる。東京23区では16年度だけで386億円が流出。世田谷区では52億円減った。自治体によっては「既存事業や新規の事業計画に影響が出る可能性がある」と懸念するところもある。調査は2月下旬から4月下旬に実施。802の市区から回答を得た。
▼ふるさと納税 生まれ育った故郷や応援したい自治体に寄付できる制度。納税者が税の使い道に関心を持ったり、寄付を受けた地域を活性化させたりする目的で2008年度に導入された。寄付額から2000円を差し引いた金額(上限あり)が所得税と個人住民税から控除される。15年度から控除上限額を2倍に引き上げ、確定申告せずに税額控除の手続きができる特例制度を導入して利用が広がった。

*15-2:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO33497750X20C18A7EA1000/?n_cid=SPTMG022 (日経新聞 2018年9月11日)ふるさと納税、東京都から645億円の流出に
 総務省は27日、ふるさと納税で控除される住民税が2018年度に全国で約2448億円になると発表した。前年度に比べて37%増えた。都道府県別では、東京都内の控除が約645億円で最も多い。その分だけ、都内の自治体の税収が他の道府県に流出していることになる。待機児童対策などに響くとの指摘もあり、大都市圏の自治体にとっては頭の痛い状況だ。ふるさと納税は故郷や応援したい自治体に寄付できる制度で、原則として寄付金から2千円を引いた額が所得税や住民税から控除される。今回は18年度分の課税対象となる17年の寄付実績から、地方税である住民税の控除額を算出し、都道府県別に集計した。ふるさと納税による寄付の伸びを反映し、住民税の控除額も軒並み増えている。最大の東京都からの「流出額」は約180億円増えた。第2位の神奈川県は257億円と約70億円膨らんだ。こうした大都市圏の自治体からは「行政サービスに影響が出かねない」との声が漏れる。ふるさと納税を巡っては、自治体が高額な返礼品を用意することでより多くの寄付を集めようとする競争が過熱した問題がある。総務省は17年4月、大臣通知で各自治体に「良識のある対応」を要請し、返礼品を寄付額の3割以下にすることなどを求めた。子育て支援や街づくりなどに使い道を明確にするなど、既に多くの自治体は対応を見直している。返礼割合が3割を超える市区町村は、18年6月時点で1年前の半分以下の330自治体に減った。それでも制度自体の人気は根強い。ふるさと納税は17年度には初めて3千億円を突破した。一方、税収の流出に悩む大都市圏でも地域資源の活用などの工夫で、寄付を集める取り組みが広がる。大阪府枚方市は市長が案内する文化財見学ツアーを用意し、17年度に2億8000万円を受け入れた。東京都墨田区は「すみだの夢応援助成事業」と銘打って、農園開設などの民間プロジェクトを選んで寄付できるようにしている。

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2018.8.21 過疎地を含む地方を走るJRとその収益構造について (2018年8月22、24、25、26日に追加あり)
 
 北海道のジャガイモ畑   同、羊の放牧    同、乳牛の放牧  同、豚と山羊の放牧


  昭和新山   知床の紅葉     冬の摩周湖    釧路湿原   函館の朝市

(図の説明:北海道は、豊かな自然と食に恵まれ、再エネや観光資源にも事欠かない筈である)

(1)JR北海道の現状と解決策
1)JR北海道の改善策について
 石井国交大臣は、2018年7月27日、*1-1、*1-2のように、2019~20年度に400億円台の財政支援を実施することを決め、監督命令を出して経営改善策の着実な実行を指示し、北海道新幹線の札幌延伸後の2031年度中の経営自立を目指して、①外国人客を誘致するための観光列車の充実 ②不動産業など鉄道以外の部門の強化による収益増加と不採算路線のバス転換などのコスト削減を徹底するよう求めたそうだ。

 記事による改善策を見る限り、JR北海道の改善策はJR九州が行って成果を上げてきた内容と似ている。ただし、JR北海道は民営化していないため、経営に国交省が口を出し、営業センスのない選択をする場合があるのが、他のJRと異なる。国交省が営業センスのない事例は、国際線の成田と国内線の羽田を離れた場所に造って乗り換えを不便にしたり、羽田に行くのに浜松町からモノレールに乗らなければならないような不便な連結にしたりして、空港の利便性を損なう設計をしていることである。

 そのため、私は、北海道の自然や食を背景に持つJR北海道は、本当は素晴らしい潜在力を持っており、早々に民営化して、次第に持ち株会社が鉄道子会社・旅行子会社・運輸子会社・不動産子会社・送電子会社などを所有する形にした方がよいと考える。また、空港には、新幹線と在来線の両方か、少なくとも在来線が乗り入れるべきだ。

2)再エネと送電網
 大手電力は、*1-3のように、不当な顧客の囲い込みをしているだけでなく、*1-4のように、送電線の容量不足を理由に、再エネで発電された電力の買取制限を行って、再エネの普及を遅らせている。

 そのため、*1-4の送電網整備には、鉄道会社の敷地に鉄道会社が送電線を敷設して送電料をもらう仕組みを取り入れるのがよいと考える。何故なら、既にあるインフラを利用して最も安価に送電線を敷設でき、農地で発電された電力を消費地に送って送電料をもらい、廃線にする鉄道を最小にすることができるからだ。また、環境や景観に注意しながらも、農地で発電できれば農業補助金を減らすことが可能だ。

(2)JR九州について
 JR九州の場合は、*2-1、*2-2のように、東証1部に上場でき、「不動産事業」が快走を演出したそうだ。JR九州は、首都圏からはJR北海道と同じくらいの距離だが、鉄道事業を行っているメリットを活かし、運輸サービス・駅ビル・不動産などの事業を行って、現在のニーズに応えているのが成功の秘訣だ。

 そのため、今後、送電事業も行うとすれば、「JR九州」という社名も変更した方が利害関係者にわかりやすいと思われる。

(3)地方の新幹線について
 新幹線については、JR北海道はフル規格でスムーズに進んでいるため、*3のJR九州のようなフル規格化に関する議論はなく、簡単に見える。

 しかし、並行在来線を廃止すると確かに生活の足が損なわれるため、在来線がある場所に、そのまま在来線を走らせるか、私鉄もしくはバスを走らせるなどの代替案が必要になる。

<JR北海道について>
*1-1:http://qbiz.jp/article/138246/1/ (西日本新聞 2018年7月27日) JR北海道に経営改善指示 国交相が監督命令
 石井啓一国土交通相は27日、JR北海道にJR会社法に基づく監督命令を出し、経営改善策の着実な実行を指示した。北海道新幹線の札幌延伸後の2031年度中の経営自立を目指し、収益増加とコスト削減を徹底するよう求めた。JR北海道の島田修社長は、国交省で藤井直樹鉄道局長から命令書を受け取り「重く受け止め、不退転の決意で経営改善に取り組む」と述べた。監督命令では、19年度から30年度までの長期計画を定め、外国人客を誘致するための観光列車の充実や、不動産業など鉄道以外の部門の強化を求めた。国交省が計画の進み具合や効果を3カ月ごとに検証し、結果を公表する。同社への監督命令は、レール検査数値の改ざん問題などを受けて出した14年1月に続き2回目。経営改善の取り組みを怠った場合、取締役らに100万円以下の過料が科される。

*1-2:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO34295450X10C18A8ML0000/ (日経新聞 2018/8/20) JR北に国が問う覚悟、長期援助拒み2年で成果迫る
 経営再建中のJR北海道に対し国土交通省は7月、2019~20年度に400億円台の財政支援を実施すると表明した。期限を設けてさらに身を切る改革を求め、同社への監視を強める新たな体制を敷く。過去に何度も国から支援を受け、待ったなしの状況にあるJR北は、この2年間で収益改善への覚悟が問われる。改革の行方は地域の足に影を落とす。「経営自立への取り組みを着実に進めることを求められたのを重く受け止める。不退転の覚悟で取り組む」。JR北の島田修社長は7月27日、国土交通省での記者会見で語った。これに先立ち、同省は同社にとって2度目となる行政処分「監督命令」を発令。事実上、経営を監視下に置いた。国が異例の2度目の監督命令を出したのは、度重なる支援に関わらず、一向に経営が改善しない体質にしびれを切らしたからだ。例えば直近では16年度から設備投資や修繕のために計1200億円を拠出。にもかかわらず同社の18年3月期の連結営業損益は過去最大の416億円の営業赤字と業績は悪化している。JR北は北海道新幹線の札幌延伸を予定する30年度まで12年間の財政支援を求めていた。新幹線が札幌までつながれば利用が拡大し収益に貢献するとの想定に基づく。国はこれを拒み、支援をまず20年度までとした。JR北が求める21年度以降の支援には関連法の改正も必要で、「国民の理解を得られるか」(同省幹部)が壁となる。そこで国は2年間と期限を区切り、JR北に「目に見える成果」(石井啓一国交相)を上げるよう求めた。たとえ再び税金を投入するとしても、広く納得を得られる実績が不可欠だからだ。島田社長は「改善のプロセスを確認してもらえるものを出すことが大切だ」とし、財政支援を踏まえた収支見通しや経営自立への行程表を早期に示す考え。国交省はこれらが「絵に描いた餅になってはいけない」とし、経営改善への具体策も求めている。国交省の求める「目に見える成果」とは何か。収益改善にはコスト削減と増収策が条件となる。コスト削減の最たるものが不採算路線の廃線だ。JR北は列車を走らせるだけで年間約160億円もの赤字を生む13区間を抱えている。国交省は特に利用が少ない5区間のバスへの転換を求める。その道筋を付けるため、沿線自治体などと協議を急ぐ必要がある。増収策では遊休地を生かした不動産事業などで稼ぐ力を付けつつ、急増する訪日客をどう鉄道利用に結び付けるかという視点が重要になる。約20年ぶりとなる運賃引き上げも視野に入れる。地域を巻き込んだ利用促進策も欠かせない。道東の釧網線(東釧路―網走)では、高速バス大手のウィラー(大阪市)が9月から同区間の鉄道と沿線駅を発着するバスが乗り放題になる乗車券を販売する。根室線(釧路―根室)では根室市がふるさと納税サイト運営会社と鉄路存続へ寄付金を募り始めた。だが、こうした試みは限定的だ。地元治体の主体性も欠かせない。国交省は地域との連携策として、区間ごとの利用目標の設定を例に挙げる。地域で一定の時期を定め、輸送人員や駅の利用者を何人増やすかなどの数値目標を掲げ、検証も交えながら集客を進めるというもの。豪雨災害からの全線復旧を目指す福島県の只見線は同様の取り組みを始めた。これら「宿題」と引き換えに得た国の支援を、JR北は設備増強などに生かす。不採算路線のうち維持を検討する8区間では、地元自治体が国と同水準の費用を負う条件で施設や車両を改修。道内外との物流を支えるJR貨物が走行する区間の設備修繕も進める。支援が一時の赤字穴埋めに終わらぬよう、国交省は四半期ごとに進捗を検証するなど目を光らせる。「2年間で目に見える成果を出す」。島田社長は国交省の監督命令発令後の記者会見でこう繰り返した。JR北は有言実行を迫られている。
■廃線対象の沿線自治体、対応に濃淡
 JR北海道が利用者の少なさから「単独では維持困難」とする留萌線の深川―留萌間にある石狩沼田駅。昼間に降りるのは地元の高校生と高齢住民の数人だけで、夕方には人気もなくなる。沼田町の玄関口としては寂しい光景だ。無人の駅舎内では「駅の利用実績を確保することが必要」と張り紙が訴えていた。同区間を含む5区間が廃線によるバス転換を迫られているが、沿線自治体との協議には濃淡がある。石勝線夕張支線(新夕張―夕張)は夕張市が2019年4月の廃線に合意。札沼線(北海道医療大学―新十津川)も沿線自治体が廃線容認へ調整を進める。日高線(鵡川―様似)は自治体側が道路も線路も走れる「デュアル・モード・ビークル(DMV)」など新交通の導入を断念し、バス転換も選択肢とした。一方で留萌線(深川―留萌)は路線維持を求める沿線4市町が「JR側からの説明を待つ」として受け身の姿勢。根室線(富良野―新得)は、16年夏の台風被害で東鹿越―新得間が不通となっていることもあり、早期復旧と路線維持をめざす住民運動が展開されている。いずれもJR北と直接協議に進んでいない。ただ、JR北への財政支援に際し、国土交通省は不採算路線のバス転換を推し進めるよう促した。留萌市の中西俊司市長も「現時点での国の姿勢と重く受け止める」と話す。赤字路線への国の直接的な支援が望み薄となった今、道内自治体も地域交通をどう守っていくかが問われている。

*1-3:http://qbiz.jp/article/139362/1/ (西日本新聞 2018年8月17日) 電力の不当な顧客囲い込み規制へ 大手と新電力の競争促進、経産省
 経済産業省が大手電力による不当な顧客囲い込みの規制に乗り出すことが17日、分かった。新電力に契約を切り替えようとする情報を利用し、安い料金プランを提示して引き留める「取り戻し営業」が対象。情報の「目的外利用」として電気事業法上の問題行為に位置付ける。大手と新電力の健全な競争促進に向け、年内にも指針案の取りまとめを目指す。電力小売りの自由化により、大手と新電力の競争は激化している。企業は家庭と比べて大量の電力を使うため、電力会社にとって収益への寄与が大きい。世耕弘成経産相は「できるだけ早く公正な競争条件を整えたい」と話している。取り戻し営業が問題視されていることについて大手電力は「新電力側のうがった見方だ。切り替えの情報を転用しないように、社内で契約管理と営業の部門で情報共有できない仕組みになっている」と反発している。新電力は顧客から契約先の切り替えの申し込みがあると、電力広域的運営推進機関(広域機関、東京)のシステムを使い、顧客に代わって大手電力に対し契約解除を取り次ぐのが一般的だ。大手電力は広域機関から連絡を受け、契約解除の手続きを行う。ただ機器工事のため新電力が供給を始めるまで最大2カ月程度の時間がかかる。その間に大手が大幅な割安料金を提示すれば、顧客に切り替えを思いとどまらせ、契約をつなぎとめることも可能だ。経産省が7月に開いた有識者会議では、大手電力による取り戻し営業の問題が取り上げられた。有識者の委員は割安な料金の提示は「不当廉売」に当たる可能性があると指摘し、「独禁法と(電力を適正に取引するよう求めている)電気事業法の二重の面で問題になる」と批判した。

*1-4:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180508&ng=DGKKZO30155150X00C18A5PP8000 (日経新聞 2018年5月8日) 送電網整備へ「財政支援を」 自民委が再生エネ提言案
 自民党の再生可能エネルギー普及拡大委員会(委員長・片山さつき参院議員)は、太陽光や風力など再生エネの普及に向け送電網の整備に財政支援を求める提言案をまとめた。送電網不足が導入を阻んでいるとして、財政投融資などの活用で整備を促すよう求める。8日に開く同委員会の会合で示し、政府と党執行部に申し入れる。電力大手が持つ送電網の空き容量が減り、再生エネの発電事業者が電気を送れない事態が起きている。

<JR九州の場合>
*2-1:https://www.nikkei.com/article/DGXLASDZ25H80_V21C16A0000000/ (日経新聞 2016/10/25 ) JR九州上場、快走演出した「不動産事業」
 九州旅客鉄道(JR九州)が25日、東京証券取引所第1部に上場した。朝方から買い注文が膨らみ、取引開始から30分ほどたって付けた初値は3100円と、売り出し価格(公開価格、2600円)を19%上回る水準。ひとまずは順調な「走り出し」といえそうだが、人気の背景を探ると、少し気掛かりな点も浮かび上がる。
■営業利益でみると「不動産会社」
 「現在は運輸サービス事業と駅ビル・不動産事業の利益がそれぞれ全体の4割。しばらくの間はこの構成で成長を目指す」。青柳俊彦社長は午前中、経済専門チャンネルの番組に出演し、成長のけん引役として不動産事業への期待感を隠さなかった。JR九州は社名の通り、鉄道事業が主力ではあるが、実は不動産事業が孝行息子。九州新幹線をはじめとする鉄道事業は2017年3月期にひとまず黒字化する計画だが、営業利益でみると連結全体の4割にすぎない。残る6割のうち、4割分を稼ぐのが駅ビル不動産事業。営業利益でみれば、鉄道事業と同じ規模なのだ。JR九州はJR博多駅の駅ビル「JR博多シティ」(福岡市)や4月に開業したオフィスビル「JRJP博多ビル」(同)など駅前の不動産を活用した商業施設や賃貸用不動産を運営しており、今後も駅ビルや駅ナカを開発していく方針を示す。保有不動産の収益力を高めるというストーリーは、東日本旅客鉄道(JR東日本)や東海旅客鉄道(JR東海)が歩んできた成長路線と重なる。初値時点でのJR九州の時価総額は4960億円と1兆~3兆円に達する、他のJR3社と比べると小粒だが、割安なJR九州に投資する理由は十分にある。
■不動産マネーの「逃げ場」にも
 完全民営化で経営の自由度が高まれば、成長のけん引役である駅ビル運営で大規模投資や他社との連携などに踏み切りやすくなる。楽天証券の窪田真之氏も、「高収益の駅ビル不動産事業は、これからさらに利益を拡大する余地がある」と指摘する。JR九州株の初値は、不動産事業への「期待料込み」ともいえる。実際、日本株の運用担当者の間では、「国内外の機関投資家がJR九州の不動産事業に注目して投資しようという動きも出ていた」という。そして、もう一つのJR九州にとっての追い風も吹いたのかもしれない。日本国内の不動産に向かっていた投資マネーの変調だ。ここ数年来の不動産価格の高騰で、投資額に見合う利回りを得にくくなっており、今年1~9月の累計で海外勢や国内の事業法人は不動産をこぞって売り越した。行き場を失った不動産への投資資金が向かいやすいのは、流動性が高く、一時期に比べて過熱感が薄れた不動産投資信託(REIT)や株式。つまり、巨大な投資マネーの流れの中で、JR九州株が資金の「一時的な逃げ場」になったのかもしれない。
■初値は「追い風参考記録」か
 もっとも、期待通りの水準だった初値が「追い風参考記録」になる恐れもある。JR九州が自社で保有する不動産は九州地方が中心で、東京や東海地域の一等地に資産を持つJR東日本やJR東海とは異なるからだ。不動産市況の過熱感が想定外に強まれば、新規の案件の取得や開発にかかるコストが膨らむ。今後、九州より不動産市場が大きな首都圏、成長著しいアジア地域で不動産ビジネスを拡大したとしても、リスクは消えない。25日のJR九州株は初値に比べて178円(5.7%)安い2922円で午前の取引を終えた。シナリオ通りに不動産事業を伸ばし、JR東日本など旧国鉄民営化の成功事例に加われるだろうか。

*2-2:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO30336810Q8A510C1LX0000/?n_cid=SPTMG002 (西日本新聞 2018/5/10) 九州が最高益 前期最終、鉄道の採算性なお課題
 JR九州が10日発表した2018年3月期の連結決算は、純利益が前の期比13%増の504億円と過去最高だった。運輸サービスや不動産などほぼ全ての部門で営業増益だった。主力の鉄道事業は2期連続の黒字を確保したが、16年3月期に実施した費用圧縮の会計処理の効果が大きい。処理前の基準では20億円の赤字に相当し鉄道事業の採算性はなお課題だ。売上高は8%増の4133億円だった。訪日客の増加などに伴う新幹線の旅客増や、熊本地震直後の減少の反動で鉄道収入が増えた。キャタピラー九州の連結子会社化も寄与した。営業損益では運輸サービス事業が14%増の292億円。不動産賃貸収入が増えた駅ビル・不動産業も232億円と2%増えた。営業利益、経常利益ともに5期連続で過去最高を更新した。ただ主力の鉄道事業の採算性にはなお課題が残る。16年3月期に5268億円分の固定資産を減損処理し、減価償却費を大幅に減らした。だが鉄道は毎年の安全投資が欠かせず、再び減価償却費が膨らむのは避けがたい。20年3月期からは国から受けていた固定資産税の減免措置もなくなり、さらに利益を圧迫する。青柳俊彦社長は「ローカル線の赤字はむしろ拡大している」と強調した。九州北部豪雨の影響で一部不通となっている日田彦山線では、復旧費用の算出や負担方法に関する自治体との協議が続いている。業績好調を受けJRの負担を求める自治体側の圧力が強まる可能性もあり、慎重な姿勢をみせた。
          ◇
 JR九州は10日、車両整備や駅構内業務などを手掛ける子会社3社を再編すると発表した。7月1日付で、JR九州メンテナンス(福岡市)が車両整備やビル設備管理部門を分割し、ケイ・エス・ケイ(同)が承継。社名は「JR九州エンジニアリング」に変更する。様々な駅業務を担うJR九州鉄道営業(同)をJR九州メンテナンスが吸収合併し、社名は「JR九州サービスサポート」とする。

<地方の新幹線>
*3:http://qbiz.jp/article/139384/1/ (西日本新聞 2018年8月18日) フル規格化、佐賀県市長会は要望見送り 新幹線西九州ルート
 佐賀県市長会(会長・秀島敏行佐賀市長)は17日、嬉野市で会合を開き、九州市長会(10月)に提案する事項などを協議した。武雄、嬉野両市から出されていた九州新幹線西九州(長崎)ルートの全線フル規格化を求める要望は見送った。会合の後、嬉野温泉駅(仮称)の建設現場を市長会として初めて見学した。会合では、新幹線を巡る各市の温度差が浮き彫りになった。橋本康志鳥栖市長は「フル規格になれば、長崎線全体が並行在来線となり、生活の足としての機能が損なわれる恐れがある。整備ルートも未定で、いつできるか不透明だ」と指摘。秀島市長が「市長会として見解をまとめられる状況にない」と述べた。武雄市の小松政市長は「引き続き議論する場を設けてほしい」と呼び掛けた。会合は、山口祥義知事に提出する要望書の取りまとめが主な議題で、JR九州の交通系ICカードの導入促進やスクールカウンセラーによる相談体制充実などを求める計26項目を決めた。30日に提出する。駅建設現場の視察では、市長たちは高架橋へ上り、鉄道・運輸機構の職員から土木工事が終わり、レールを敷設し、駅舎建設に向け着手する段階との説明を受けた。嬉野市の村上大祐市長は「実際に現場を見てもらい、新幹線について考えてもらうきっかけになったのでは」と話した。

<農業の進展と機械化・大規模化>
PS(2018年8月22、24日追加):農業及びそれに付随する食品産業は、地方の重要な産業だ。しかし、戦後、第一次産業が軽視されてきたため、我が国の食料自給率は減少の一途を辿り、他の先進国に著しく見劣りする状態になった。また、農業従事者の数は減り、他産業以上に高齢化しているが、農業を大規模化・機械化して担い手の所得を増やすためには、農業従事者の一定の減少は必要だった。
 そして、現在、*4-1のように、GPSに導かれて大規模農地を自動操舵するトラクターが普及期に入って省力化が期待されている。また、*4-2のように、新規就農者がAIで熟練農業者の技術を短期間で身に付ける学習支援システムも普及し始めた。そして、*4-3のように、農業の競争力強化のため、気象や土壌などの関連情報を集積したデータベースを作って開放する方針だそうで、これはいろいろな使い方ができそうだ。
 さらに、*4-4のように、農産物の輸出額は過去最高を更新し続けているが、相手のニーズに合ったものを作れば、さらに輸出を伸ばすことも可能だ。例えば、中国に中華料理の原材料や中食用加工品、EUに短時間でゆでられるスパゲッティやオリーブオイルなどである。中華料理の原材料で既に当たったものは、干ナマコと干クラゲだ。
 また、*4-5のように、農水省が米粉の本格輸出に向けて欧米で市場調査に乗り出したそうで、市場調査して輸出を図るのはよいものの、「水田があるから米を作り、グルテンを含まない小麦の代替品として米を売る」というのでは、考え方が逆なので需要に限界がある。つまり、「①小麦粉よりよい特性を持っているから米粉を売る(例:米粉のパンは固くならず、和風のおかずをサンドしても合う)」「②米でしかできないものを作って売る(例:酒・団子・餅・和菓子等の加工品を売る)」「③需要に合う作物を作る」「④小麦も品種改良し、より美味しいものを作って売る」というような姿勢でないと、農業は補助金ばかり使う産業になってしまう。

   
     各国の食料自給率      日本の食料自給率推移   農業就業人口の推移

*4-1:https://www.agrinews.co.jp/p44952.html(日本農業新聞 2018年8月22日)自動操舵装置、GPSシステム 導入進み出荷最多 北海道8割普及けん引 府県でも需要増
 トラクターの自動操舵(そうだ)装置と、運転を支援するGPS(衛星利用測位システム)ガイダンスシステムの2017年度の出荷台数が過去最多になったことが、北海道の調査で分かった。人手不足が深刻化する中、作業負担の軽減などを見込んで導入されたのが主な要因とみられる。今後も府県も含め、導入数は増える見通しだ。GPSガイダンスシステムは、トラクターなどに装着し、圃場(ほじょう)内での走行路をモニター上に表示する製品。正確、効率的な作業が見込め、省力化につながる。出荷台数は17年度、計2910台と、統計を取り始めた08年度以来の最多となった。そのうち、北海道向けは76%と、導入をけん引した。08年度からの累計出荷台数は1万1500台で、8割が北海道向けだ。GPSガイダンスシステム以上に省力化が見込めるトラクターの自動操舵装置の出荷台数も同年度で過去最多の1770台だった。08年度以降の累計出荷台数は4800台で、このうち92%が北海道向けとなった。こうした機器について、メーカー担当者は「北海道では通信環境の整備が進んだことや、利用者が増えて導入のハードルが下がったことなどが要因」とみる。自動操舵装置の新規販売が多かった別のメーカー担当者は「府県でも、担い手世代を中心に導入が増えた。家族経営でも使っており、疲労軽減や、初心者でも熟練者並みの作業ができるところが受けている」と指摘した。今後とも北海道を中心に、府県でも導入が進む見通しだ。道は「北海道内では、1戸の農家で複数台持つケースが増えた。規模拡大が進む中、少ない人数で適期に作業するために必要性が高まっている」(技術普及課)とみる。道が聞き取り調査した企業は、GPS機器を扱う井関農機、クボタ、クロダ農機、ジオサーフ、トプコン、ニコン・トリンブル、日本ニューホランド、ヤンマーアグリジャパン、IHIアグリテックの9社。調査企業は、16年度より1社増えた。

*4-2:https://www.agrinews.co.jp/p44893.html (日本農業新聞 2018年8月15日) AIで熟練技術習得 学習システム全国へ 17府県14産地が導入 農水省
 農水省は、人工知能(AI)を活用し、新規就農者が熟練農業者の技術を短期間で身に付ける学習支援システムの普及に力を入れる。熟練者の視線や行動をアイカメラなどで撮影し、データを収集。新規就農者がタブレット端末などでいつでも学べる仕組み。全国17府県の14産地が導入した。熟練者の技術継承が課題となる中、同省は全都道府県にシステムを広めたい考えだ。同省が、システム普及に乗り出したのは2016年度。その年の補正予算で1億円を措置。JAや県、メーカーなどでつくる協議会を対象に、システム整備にかかる費用の一部を助成した。この助成を活用し、計17府県の14協議会がシステムを導入。品目はブドウ、ミカンなどの果樹を中心に10品目以上に及ぶ。助成はもうないが、同省は、14協議会をモデルケースとして成果を発信し、他の産地にも導入を促している。14協議会の一つが、ミカンの産地であるJA三重南紀。熟練者がアイカメラを装着し、ミカンの剪定(せんてい)時の視線を撮影。若手農業者もカメラを付けて同じ作業をして、その映像をタブレット上で見比べる。両者の違いを示すことで、作業の改善に役立てることが目的だ。JAはクイズも作成。画面上で摘果に適するミカンを選ぶと、熟練者の答えが正解として表示される。JA営農柑橘(かんきつ)課はシステムについて「高齢化が進む熟練した農家の技術を若手に引き継いでいくために有効な手段」と期待している。

*4-3:http://qbiz.jp/article/139433/1/ (西日本新聞 2018年8月20日) 農業強化へデータ集積、政府 気象や土壌の情報、担い手に開放
 政府は20日、農業の競争力強化のため、気象や土壌などの関連情報を集積したデータベースをつくり、担い手や企業に開放する方針を決めた。農作業の効率化や農産物の品質向上に役立ててもらうのが狙いで、2019年4月の本格運用を目指す。環太平洋連携協定(TPP)の発効などを見据え、安価な海外産農産物の流入増に備える思惑もありそうだ。政府が構築するのは気象や土壌、農地の区画などの情報を集めた「農業データ連携基盤」。農家や農機メーカーなどが基盤にアクセスしてデータを活用する。17年12月に試験運用が始まった。背景には貿易自由化の進展がある。日本はTPPに加え、欧州連合(EU)との経済連携協定(EPA)発効も控える。海外農産物との競争激化は必至だ。今月から始まった米国との閣僚級貿易協議では一段の市場開放を迫られており、農業強化が急務になっている。農機メーカーは、データを活用した営農管理ソフトを独自に開発しているが、さまざまな情報を農家が一元的に利用できる仕組みはなかった。政府は、利用できる情報が飛躍的に増えることで、生産技術や農産物の品質が向上すると期待する。基盤には農産物の流通状況や市況情報も登録する。農家は商品が不足している市場にタイミング良く出荷したり、需要が高い作物の栽培面積を増やしたりして、収益拡大につなげることができそうだ。農機メーカーや有識者らでつくる「農業データ連携基盤協議会」の神成淳司会長(慶応大教授)は「情報を提供する企業が増えることで競争が発生し、より有益な情報が集まる。それを活用することで、農業強化につながる」と話している。

*4-4:http://qbiz.jp/article/139028/1/ (西日本新聞 2018年8月10日) 農産物輸出額、過去最高を更新 4358億円、上半期15%増
 農林水産省は10日、2018年上半期(1〜6月)の農林水産物・食品の輸出額が、前年同期比15・2%増の4358億円になったと発表した。今年は為替相場が輸出に不利な円高基調で推移したが、6年連続で過去最高を更新した。19年に通年で1兆円を目指す政府目標の実現へ大きく前進した。品目別では、サバが50・0%増の205億円だったほか、牛肉が37・4%増の108億円、日本酒が21・8%増の105億円。幅広い品目で輸出が伸びたのが特徴で、日本食品に対する支持が世界的に定着しつつあることがうかがえる。輸出先は1位が香港で、中国、米国が続く。トップ3は変わらなかったが、中国が前年同期比32・1%増と大きく伸びており、存在感が高まっている。下半期についても農水省の担当者は「悪材料はなく、引き続き伸びが期待できる」と分析。通年では9千億円規模になる公算だ。輸出は1品目20万円超の貨物が対象。農水省は今回初めて、少額(20万円以下)の輸出額を試算し、18年上半期は232億円と推計した。輸出額には算入しない参考値だが、今後増加が期待できる国をまたいだ電子商取引(越境EC)の状況把握につなげる狙いがある。

*4-5:https://www.agrinews.co.jp/p44940.html (日本農業新聞 2018年8月21日) 米粉輸出戦略 売り込め 日本ブランド
 米粉の本格輸出に向け、農水省が今月から欧米で市場調査に乗り出した。世界最高水準の表示制度を武器に国産米粉の販路拡大を目指す。コスト低減、現地ニーズに合った商品開発、輸出事業者への支援など課題も多い。水田をフルに生かしつつ、健康食材として注目の米粉を「ジャパンブランド」として世界に広めていこう。官民一体となって米粉輸出の機運が高まってきた。農水省は昨年9月、斎藤健農相の肝いりで「コメ海外市場拡大戦略プロジェクト」を立ち上げ、輸出事業者の支援を始めた。米や日本酒、米加工品の2019年の輸出目標を10万トンに設定。現状の4倍増という意欲的なものだ。その後、米粉麺業者など参加事業者は増え、約60社13万3000トンに積み上がっている。プロジェクト推進の観点からも米粉を戦略品目に位置付けるよう求めたい。米粉の輸出は緒に就いたばかりだ。17年の推計では5社50トン程度にとどまる。麺など加工品を加えても約80トンにすぎない。各社とも輸出を増やし、来年は総計で10倍となる目標を掲げるが、世界の市場規模と国産米粉の優位性を考えれば、飛躍的に伸ばせるはずだ。欧米では、小麦アレルギーの原因となるグルテンを含まない「グルテンフリー」食品の市場が急激に伸びている。日本貿易振興機構(ジェトロ)によると、米国の市場規模は5600億円(16年)で毎年約3割増と急成長。欧州は5年前に1200億円市場だったが、今年まで年率10%の伸びを見せる。日本では昨年、米粉の用途別基準と、グルテンを含まない「ノングルテン」の表示制度がスタート。この基準はグルテン含有量が1ppm以下で欧米の20分の1。世界最高レベルの基準で、欧米のグルテンフリー市場で優位に立つ。実際、NPO法人国内産米粉促進ネットワークが行った欧米市場調査でも大きな関心が寄せられた。日本の米粉は微細粉で溶けやすく、使いやすいと好評。パンやパスタ、菓子原料など用途も広く、現地の米粉などと差別化ができると手応えを感じている。同ネットは12月にスペインのグルテンフリー見本市で米粉製品の展示・商談会を開く計画だ。農水省も今月から欧米でグルテンフリー食品の市場調査を始めた。小麦粉の代替として、どの層に、どういう食材・商品として受け入れられるのか。価格帯や流通・販路と併せ、実態を調べる。日本食品海外プロモーションセンター(JFOODO)も米粉輸出の普及促進を支援。米国、フランスを重点に20年には2900トン、8億円の輸出戦略目標を描く。政府はこの好機に「ジャパンブランド」の米粉振興を国家戦略にすべきだ。米粉の本格輸出に向け、官民挙げて、製粉・販売コストの低減、市場調査、輸出環境の整備、商品開発、現地認証コストの負担軽減、販路開拓の取り組みを加速させよう。

<食料自給率に重要な漁業を国が軽視していること>
PS(2018年8月25日追加):*5-1のように、陸上自衛隊がオスプレイを佐賀空港に配備することを要請し、佐賀県の山口知事が着陸料として年に5億円を受け取ることで合意したそうだが、*5-2のように、佐賀空港の西側を33haも干拓して南西諸島の防衛力強化を行うというのは、ここが南西諸島から遠く離れ、標高の低い土地であるため合理性に欠ける。そのため、佐賀空港を選ぶ理由について、論理的かつ合理的な説明を要する。
 さらに、*5-3のように、オスプレイは開発段階から事故が相次ぎ、「ウィドウ・メーカー」(未亡人製造機)と呼ばれているが、確かに飛びやすそうな形状ではなく、積み荷には毒物も含むと思われる。そのため、年間5億円くらいなら既存のダムその他で発電する自然エネルギーで稼げるのに、オスプレイ基地を強要するのは、地方の重要な産業で食糧自給率にも影響する漁業を軽視している。また、干拓して海の環境を壊しながら、放流したり海底耕運したりしても、税金ばかり使って効果はなく、日本にはそのような無駄遣いをしている余裕はない。

   
 *5-1より  *5-2より           オスプレイ

(図の説明:佐賀空港の右側に見える黒いものは有明海苔の養殖網だ。私は、オスプレイの垂直離着陸の発想はよいが、空気抵抗から考えて飛びやすい形ではなく、これが米軍機も含めて日本中の空を飛び回れるというのは異様な判断だと思う)

*5-1:http://qbiz.jp/article/139739/1/ (西日本新聞 2018年8月25日) 佐賀オスプレイ受け入れ 知事表明 国が着陸料100億円 漁協、県と協議開始へ
 陸上自衛隊オスプレイの佐賀空港配備を要請されている佐賀県の山口祥義知事は24日、県庁で記者会見し、県として受け入れる考えを表明した。これに先立ち国と県は同日、オスプレイを含む自衛隊機の着陸料として国が県に20年間で100億円を支払い、県がこれを元に有明海漁業の振興を図る基金を創設することなどで合意。県は今後、空港を自衛隊に共用させないことを明記した県有明海漁協との公害防止協定覚書付属資料の見直しに向けた交渉に入る。山口知事は受け入れの理由について「防衛省の要請は国の根幹にかかわる国防安全保障に関することで県としては基本的に協力する。負担を分かち合う部分があると思う」と強調した。着陸料については、国が毎年5億円ずつを県に支払う。県は有明海の漁業振興のために国などが行う稚貝放流やしゅんせつなどの公共事業に合わせて裁量を持って使えるようにし、残りは事故が起きた場合の補償に充てるため積み立てる。このほか国、県、有明海漁協との間で環境保全や補償に関して話し合う協議会の設置や、自衛隊機が事故を起こした場合に備えて防衛省と県との間にホットラインを設けることなども合意した。配備計画は2014年7月に防衛省が県に要請。米軍機の事故が相次ぎ、今年2月には同県神埼市で陸自ヘリコプター事故が起きて協議が一時中断していた。今回の受け入れ表明でオスプレイ配備が大きく前進し、小野寺五典防衛相は「知事からご理解いただいたことはオスプレイ配備に向けて非常に大きな進展。感謝したい」とコメントした。山口知事は受け入れ表明後、県有明海漁協を訪れ、徳永重昭組合長と会談。公害防止協定覚書付属資料の見直しに向けた協議に入るよう要請した。徳永組合長は「知事の表明は組織として受け止めたい」と述べ、応じる構えを見せた。ただ、有明海の漁業者や配備予定地の地権者の中には、オスプレイの安全性や事故が起きた場合の深刻な被害に対する懸念は依然として根強く、見直しは難航も予想される。国の当初計画によると、佐賀空港にはオスプレイ17機のほか、陸上自衛隊目達原(めたばる)駐屯地(同県吉野ケ里町)のヘリコプター約50機も移駐し、隊員700〜800人を配置する。離着陸は1日約60回で年間約1万7千回。空港西側の干拓地33ヘクタールを造成し、駐機場や格納庫、弾薬庫、隊員の庁舎を整備する。

*5-2:http://qbiz.jp/article/139740/1/ (西日本新聞 2018年8月25日) 防衛省「大きな進展」 オスプレイ受け入れ表明 用地取得交渉へ
 佐賀県の山口祥義知事が24日、陸上自衛隊の輸送機オスプレイの佐賀空港での受け入れを表明したことで、配備計画は実現に向けて大きく動きだした。陸自相浦駐屯地(長崎県佐世保市)に本部を置く離島防衛部隊「水陸機動団」との一体運用を目指す防衛省は、相浦から約60キロの佐賀空港を最適地として2014年から交渉を続けてきた。防衛省幹部は「4年もかかったが理解が得られて良かった」と歓迎し、地権者でもある漁業者らとの協議も進めたい考えだ。計画では、佐賀空港西側の干拓地33ヘクタールを造成し、オスプレイ17機や陸自目達原(めたばる)駐屯地(佐賀県吉野ケ里町)のヘリコプター約50機を配備する。防衛省は、活発化する中国の海洋進出を見据えた南西諸島の防衛力強化に向け3月に水陸機動団を創設。上陸作戦に強い米海兵隊にならった「日本版海兵隊」で、他国に奪われた離島の奪還作戦を展開する際、オスプレイで隊員を輸送することなどを想定している。「非常に大きな進展だ。漁業者をはじめ県民の理解と協力を得られるよう誠心誠意対応していく」。佐賀県知事の表明を受け、交渉を担ってきた末永広防衛計画課長は防衛省で記者団に語った。漁業者らとの用地取得交渉は、公害防止協定を巡る佐賀県と同県有明海漁協の協議が調うのを待って行う方針。オスプレイの騒音によるコノシロ(コハダ)漁への影響について追加調査も早期に実施する考えで、防衛計画課は「県と漁協の議論に歩調を合わせる形で漁業者の懸念を払拭(ふっしょく)することが必要だ」としている。20年間で100億円とした着陸料の支払時期については「着陸料という性格上、実際に佐賀空港に機体が配置されてからになる」との考えを示した。佐賀空港の米軍利用となる在沖縄米軍オスプレイの訓練移転については、15年10月に中谷元・防衛相(当時)が提案を取り下げており、同課は「その状況は変わっていない」としながらも、沖縄の基地負担の軽減のため、今後も他の都道府県と同様に訓練移転の候補地になる可能性を示唆した。

*5-3:https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/195787 (日刊ゲンダイ 2016年12月14日) 沖縄だけじゃない オスプレイ墜落の恐怖は全国に拡大する
 米軍普天間基地(沖縄県宜野湾市)所属の垂直離着陸機オスプレイが13日夜、沖縄本島東方の海岸付近に墜落。機体はバラバラに壊れ、海中に沈んだ。これがもし市街地だったらと思うと、背筋が寒くなる。オスプレイは開発段階から事故が相次ぎ、犠牲者は40人近くに上るため、「ウイドーメーカー」(未亡人製造機)と呼ばれている。オスプレイが普天間基地に配備された2012年以降もモロッコや米フロリダ州、ノースカロライナ州、ハワイ州、カリフォルニア州で墜落や不時着するトラブルを起こしている。普天間基地には現在24機が配備されており、今月に入って宜野座村の民家の上空で物資の吊り下げ訓練を行い、地元住民が抗議したばかり。今回の事故に地元住民からは「市街地に墜落していたら大惨事だった」「オスプレイ配備を受け入れた日本政府の責任は大きい」などと怒りの声が上がっている。
■日本各地の米軍基地に飛来
 だが、オスプレイ墜落の恐怖は沖縄県に限ったことではない。年明け早々には、米軍のオスプレイの定期整備を陸上自衛隊木更津駐屯地(千葉県木更津市)で行うことが決まっている。定期整備のたびに首都圏上空をオスプレイが飛び回ることになる。さらに、防衛省は昨年5月、オスプレイ17機を約30億ドル(当時のレートで約3570億円)で購入することを決め、19年度から陸上自衛隊が佐賀空港(佐賀県佐賀市)で順次配備する計画だ。また、米軍は17年にオスプレイ3機を東京都の横田基地に配備し、21年までに10機を常駐させると発表した。オスプレイはこれまでも沖縄以外に山口県の岩国、横田、静岡県のキャンプ富士、神奈川県の厚木の各米軍基地に飛来している。このままでは、日本中どこにいてもオスプレイ墜落の恐怖が付きまとうことになる。

<地方の有望産業である林業を、軽視からスマート化・産業化へ>
PS(2018年8月26日追加):*6-1、*6-3のように、所有者が管理放棄したり、所有者が不明だったりして手入れされずに荒れた森林を、2024年度から「森林環境税」を導入して市町村が管理するそうだ。これは遅すぎるくらいの話だが、今まで放っておいた森林が手入れされたところで所有者が現れて「所有権の侵害だ」などと言うのは、憲法12条に定められた権利の濫用に当たるだろう。何故なら、所有者不明ということは、所有者にとって不要な資産で、所有権を放棄しており、固定資産税も払っていないため、市町村が収容していて当然だからである。
 また、既に森林環境税を導入している自治体は、「二重課税」にならないよう自治体の森林環境税を廃止して、森林・田畑・藻場・街路樹・公園などの緑地面積に応じて国の森林環境税を配分してもらう必要がある。都市で多く排出されるCO₂を緑が光合成してO₂に変えているため、都市住民にも森林環境税を負担させるのが公正であり、それが国で森林環境税を導入する意味であるため、*6-2のように、日経新聞が「森林環境税は直接的な恩恵を感じづらい都市住民の理解を得られない」などと書いているのは、都市住民のエゴにすぎない。
 さらに、*6-3に、「民間企業による伐採を国有林でも拡大する動きもある」と書かれているが、国有林の立木は国民の財産であり資源でもあるため、不当に安い価格で私企業に利用させるのは筋が通らない。国や地方自治体に林業に詳しい職員が少ないのであれば、効率化が進む事務系の職員を減らして森林管理の専門家を増やすべきだろう。また、民間に委託した場合も立木の代金はもらうべきで、国民の資源であり財産でもある立木を無料もしくは市場価格以下の安値で譲渡するのは、民法400条の「善良なる管理者の注意義務」に反する。
 なお、林業も、*6-4のように、ICTや航空機を利用してスマート化しつつあり、戦後に各地で植林された杉・ヒノキ等が利用時期を迎えているため、成長産業として期待できる筈だ。

     
      福岡県の説明      スマート林業   2017.12.8   2017.12.8
                            東京新聞    産経新聞

(図の説明:1番左の図のように、福岡県が森林環境税の必要性を説明している。このように、森林環境税は既に導入している自治体が多いため、国で導入するのは都市部で森林の少ない地域の国民にも森林環境税を負担してもらうことが目的なのだ。また、2番目の図のように、林業もスマート化しつつある。そのため、ただでさえ負担増・給付減の中で課税される森林環境税は、国民の森林資源を最大限に活かしつつ、環境を維持するために使うべきである)

*6-1:https://www.agrinews.co.jp/p43805.html (日本農業新聞 2018年4月14日) 森林経営管理法案 国民理解に審議尽くせ
 所有者が放置している森林を市町村や業者が代わって管理する森林経営管理法案の本格審議が始まった。国民に新たな負担となる森林環境税の導入が前提となる。森林管理に国民理解が進むように丁寧な審議を望む。森林の所有者である林家は、9割近くが10ヘクタール以下の零細経営で、4分の1が地元不在者だ。木材価格の低迷や人手不足で伐採が進まず、伐採適期を迎えた人工林がもうすぐ5割に達する。間伐ができず、荒廃が進む森林も多い。法案は、森林所有者の責務を明確にし、伐採などの責務を果たせない場合に、市町村や業者が代わって管理できる仕組みを導入するものだ。50年を上限とする「経営管理権」と「経営管理実施権」の二つの新しい権限をつくり、市町村や森林業者が間伐や伐採ができるようにする。伐採した木材の販売も行える。所有者の同意が前提だが、所有者が見つからないときに市町村の勧告や知事の裁定で同意したと見なす「公告制度」を新設する。似たような方式は、農地で導入されている。所有者の特定が困難な森林の整備を進めるにはやむを得ない措置といえる。ただ、突然、所有者が現れたときなどの対応を明確にして、所有権の侵害にならないように慎重な取り扱いが必要だ。政府は、国会審議を通じて林家の不安を払拭(ふっしょく)するべきだ。管理を引き受ける業者がどれくらい現れるかが、新しい制度の要になる。斎藤健農相は「地域の雇用に貢献する民間事業者を優先する」としているが、結局、採算の見込める森林だけに限られ、大半が市町村に集中する可能性が高い。そこで政府は、「森林環境税」を2024年度から導入し、市町村の管理費の財源を確保する。それまでの19~23年度は地方譲与税を配分する。市町村に過度に押し付けるようなことがあってはならない。地方自治体の職員は限られており、人的支援も重要だ。「森林環境税」は、1人当たり年1000円を個人住民税に上乗せして徴収するものだ。既に37府県と横浜市は森林整備のための独自税を導入しており、「二重課税」にならないように使い分けが重要だ。混乱しないように国会できちんと説明する必要がある。森林経営が魅力を失った背景には、木材の輸入自由化政策がある。国産材の利用を促す方策も急ぐべきだ。1000万ヘクタールの人工林は約半分が主伐期を迎える。国産材を優先して使った場合の支援も厚くしたい。二酸化炭素の森林吸収目標を達成したり、水源のかん養など70兆円に及ぶ多面的機能を維持したりするには、間伐や伐採が欠かせない。根付きの悪い「もやし林」が増え、豪雨時の防災機能の弱体化も指摘されている。こうした山の窮状を国民に知ってもらう必要もある。市町村にだけ森林管理を押し付けるようなことがあってならない。

*6-2:https://www.nikkei.com/article/DGXKZO23659070Y7A111C1EA1000/ (日経新聞 2017/11/18 ) 森林環境税を導入する前に
 手入れがされずに放置されている人工林を集約する新たな制度を林野庁がつくる。市町村が仲介役になって意欲のある林業経営者に貸与し、経営規模を拡大する。所有者がわからない森林などは市町村が直接管理するという。森林を適切に管理することは地球温暖化対策として重要なうえ、保水力を高めて土砂災害を防ぐ効果もあるが、問題は財源だ。政府・与党は「森林環境税」の創設を打ち出した。他の予算を見直して財源を捻出するのが先だろう。日本の国土面積の3分の2は森林で、その4割はスギやヒノキなどの人工林が占める。戦後植林した木々が成長して伐採期を迎えているが、零細な所有者が多いこともあって、多くが利用されていないのが現状だ。「森林バンク」と名付けた新制度は所有者が間伐などをできない場合、市町村が管理を受託し、やる気のある事業者に再委託する仕組みだ。一度に伐採や間伐をする森林を集約できれば、作業効率が向上してコストが下がる。近くに作業道がないなど条件が悪い森林は市町村がまず手を入れたうえで再委託する。所有者が不明で放置されている森林についても一定の手続きを経たうえで利用権を設定し、市町村が扱う。現在、国産材の用途拡大が進み始めている。経営規模の拡大を通じて林業を再生する好機だ。財政力が弱い市町村が継続的に事業に取り組むためには安定財源が要ることは理解できる。しかし、森林環境税は個人住民税に上乗せして徴収する方針だ。直接的な恩恵を感じづらい都市住民の理解を得られるだろうか。全国の8割の都道府県や横浜市はすでに、似たような税金を徴収している。都道府県と市町村の役割がどうなるのかについても判然としない。人材が乏しい市町村では、都道府県が作業を代行する手もあるだろう。森林整備は必要とはいえ、新税の前に検討すべき課題が多いと言わざるを得ない。

*6-3:https://www.agrinews.co.jp/p44236.html (日本農業新聞 2018年6月2日) 17年度林業白書 新たな森林管理を注視
 2017年度の林業白書がまとまった。手入れが行き届かない森林を整備するため、来年度から新たに導入する森林管理システムを取り上げた。財源となる森林環境税の創設と併せ、森林・林業行政は新たな段階に踏み出す。安い外材輸入に頼って国内の森林を放置してきた弊害が随所に出ている。特に民有林は、山に入る機会が減り、管理が不十分で荒廃が進む森林も多い。伐採期を迎えても切れず、「宝の持ち腐れ」が懸念される。83万戸の林家の9割近くが10ヘクタール以下の零細経営で高齢化も進む。しかも4分の1近くが不在村だ。持ち主が不明な林地も多い。このまま放ってはおけないと政府は、所有者が放置している森林を市町村が代わって管理する新しい仕組みを導入する。白書は、その経過と仕組みを重点的に説明した。所有者が伐採や造林、保育などの「責務」を果たせなければ、立木伐採などの管理を第三者が行えるようにする。今国会で成立した森林経営管理法では経営管理権と経営管理実施権の二つの新しい権限を創設し、市町村や林業経営者に与える。所有者の同意が原則だが、管理が適正に行われていないと市町村が判断した場合には、同意したと見なす制度を新設する。所有者不明で同意が得られなくても伐採ができるようにするためだ。伐採に適さない森林は市町村が管理する。財源に「森林環境税」を充てることも決まっている。森林を守る新しい仕組みを白書で大きく取り上げたのは、政府の意欲の表れであろう。国民にも負担を課すものであり、林家などに一定の責務を求めるのはやむを得ない。懸念がないわけではない。新システムは安倍政権が目指す「林業・木材産業の成長産業化」を踏まえたものだが、民間企業が主体の伐採業者による「乱伐」を引き起こすのではないかとの指摘が出ている。民間企業による伐採を国有林でも拡大する動きもあり、国民的財産を企業の営利目的に利用することへの批判も出始めている。新システムは市町村の役割を高める。しかし、林業に詳しい職員はごく一部に限られる。森林管理を市町村に過度に押し付けることになり、混乱をもたらしかねない。こうした国民の疑問に白書が十分に応えているとは言い難い。森林をきちんと維持する基本は、現地に住む林家の経営を安定させ、きめ細かな管理が行えるように環境を整えることだろう。規模拡大も含め後継者が育つように、新しい技術の導入や販売先の確保などへの支援が必要だ。白書は、林家育成の視点が弱い。今後の課題である。大きな政策転換には、当事者はもとより、国民の理解が重要だ。政府は、あらゆる機会を通じて森林の果たしている役割と、管理の大切さを国民に訴えていかなければならない。

*6-4:http://qbiz.jp/article/137407/1/ (西日本新聞 2018年7月13日) ICT活用し「スマート林業」 政府、安定供給目指す
 政府は航空機からのレーザーを使った測量で得られる詳細な地理空間情報や情報通信技術(ICT)を活用し、担い手不足や高齢化が進む林業を再生させる「スマート林業」の取り組みを始めた。植林した木の本数や高さを正確に把握し、作業の効率化や国産材の安定供給につなげる考えだ。2018年度は熊本など5県をモデル地域に選び、実践事業を開始した。計画では、軽飛行機や小型無人機ドローンに搭載したレーザーを山林に照射。木の高さを測定し、一定の範囲に何本あるかを把握する。幹の太さも推定できるという。実施主体は都道府県ごとに、市町村や林業の事業者らで構成する「地域協議会」。測量で得た山林のデータをインターネットのクラウド上で協議会メンバーが共有し、山林の管理や、需要に応じた木材の産出をより効率的に行う仕組みだ。山林情報は従来、実際に山へ入り、どの種類の木が何本あるかを手作業で記してきた。測量データを使えば、大幅な省力化が期待できるという。18年度は石川、長野、愛知、山口、熊本の5県で実践事業を開始。課題を分析し、3年後の21年度には5都道府県程度で本格的な運用を目指す。林野庁によると、1980年に約14・6万人いた林業従事者は、2015年には4・5万人に減少。65歳以上の割合は25%に上る。一方、戦後に各地で植えられた杉やヒノキといった人工林は成長が進み、本格的な利用時期を迎えている。

| 経済・雇用::2018.1~ | 05:20 PM | comments (x) | trackback (x) |
2018.8.14 日本は人権を大切にしない国である ← データの売買・利用に関する意識から (2018年8月15、16、17、18、20日に追加あり)
  

(図の説明:日本国憲法は、一番左の図のように、「国民主権」「基本的人権の尊重」「平和主義」の3本柱から成る。そのうち「基本的人権の尊重」は「自由権」を含み、監視社会は「自由権」を奪うものだ。また、「国民主権」は国民が選挙で為政者を選ぶことだが、これが有効に機能するためにはメディアの質の高い分析と先入観や偏見のない真実の報道が必要だ。さらに、「介護は節約しさえすればよい」という主張は、基本的人権の中の生存権を脅かしている)

(1)経産省による個人情報及び個人データの利用推進はおかしい
1)個人のデータは個人のものである
 経産省は、データの活用は企業の競争力を左右するとして、*1-1のように、補助金などの新制度を設け、企業間の産業データ共有を支援する制度を始めるそうだ。そして、これを受け、日本の産業界では企業の枠を超えてデータの活用が広がり、セブン&アイ、NTTドコモ、東急電鉄、三井物産、三井住友フィナンシャルグループなど10社が、2018年6月からビッグデータの共同利用をするとのことである。

 しかし、個人のデータは個人情報であって、本人が予定していない企業に勝手に提供されては迷惑である。何故なら、ビッグデータやAIを使ったデータ分析と呼んで見ても、*1-3のように、匿名性に関しては何が起こるかわからない上、予定外の第三者に勝手に個人データを使用されるなど、とんでもない話だからだ。

 また、マーケティングのためなら、各社がそれぞれの会社に有用なデータを集めればすむため、「ビッグデータを共有しなければならない」「経産省が補助金をつけて推進している」というのは、国民を管理する別の目的があるように見える。

2)「データ売買取引所」を設けるとは!
 そのような中、博報堂ホールディングスは、*1-2のように、2019年度、企業が持つ商品の販売データなどを売買する「取引所」事業に参入するそうだ。また、日立・オムロンはセンサーデータなどを流通させる環境を官民連携で整えて、安全を確保したデータ流通基盤を米欧に先行して整えるとのことだが、これは、日本が「米欧に先行している」のではなく、「米欧に比べて人権意識が低い」ことの証明である。

3)個人情報の第三者への提供は、政府に届け出れば問題がないわけではない
 また、ベネッセコーポレーションの個人情報流出事件で犯人が不正取得したデータを名簿業者に売却し他の名簿業者を通じて拡散した対策としては、*1-3のように、本人が拒否した場合のみ第三者に提供しない「オプトアウト方式」でデータを提供する業者には政府の個人情報保護委員会への届け出を義務付けたそうだが、第三者に提供してよいか否かは、政府に届け出ればよいのではなく、すべて本人に確認するのが筋である。

 何故なら、病歴・犯罪歴等の開示は差別を助長するだけでなく、しつこい営業もはなはだ迷惑であり、いずれもプライバシーの侵害だからである。

(2)EUのデータ規制が正常である
 EUは、*2-1のように、名前・住所・メールアドレス・IPアドレス・ネットの閲覧履歴・GPSによる位置情報・顔画像・指紋認証・遺伝子情報等を規制対象にしており、これらを対象にしていない日本の規制が甘すぎて、人権侵害になっているのだ。

 そこで、EUは、*2-2のように、企業が欧州市民の情報を保管するにあたっては、プライバシー保護の水準が十分でない国のサーバーへの保管を禁じている。私は、日本も日本企業の海外赴任の従業員情報なら移転してよいなどとするように交渉するのではなく、日本国民にもEU並みのプライバシー保護規則を導入すべきだと考える。

(3)医療・介護の個人情報共有(?!)
 このような中、3-1、*3-2のように、本人の了承なく治療・服薬履歴・介護サービスの利用実績などの医療・介護にかかわる個人情報を全国の関係者が共有できる仕組みを政府が作るとしたのには驚いた。医療・介護は、セカンド・オピニオンを得るために患者が別の病院を受診することもあり、これは先入観の入らない診断が独立的に行われて初めて機能するため、医療・介護にかかわる個人情報を全国の関係者が共有すると機能しなくなる。

 また、電子カルテの普及はよいが、患者に関する情報は患者のものであり、医療費を減らす目的などで本人の了承なく勝手に他者に受け渡しすることは、著しい個人情報の侵害・プライバシーの侵害である。そのため、患者が必要とする時のみ、患者が電子カルテのコピーデータを別の病院に持参できるようにすべきだ。

 さらに、科学的な観点から効率的に医療・介護サービスを提供するには、役所の都合で医療・介護の重要な要素である守秘義務を廃するのではなく、それぞれの専門家が綿密な計画を立ててから調査するのが有効だ。

(4)メディア報道の質について
 このようなことが議論されている最中、TVは殺人・犯罪・スポーツ・天気の話ばかりだったが、日本の民主主義は、既に「依らしむべし、知らしむべからず」という時代を終えている。

 そのため、メディアは、主権者に対して正確に分析された質の高い真実の情報を提供することによって、本物の民主主義を実現させなければならない。

<経産省の個人情報データ利用推進>
*1-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180601&ng=DGKKZO31239970R00C18A6MM8000 (日経新聞 2018年6月1日) データ共有で競争力 セブンなど10社、経産省も補助金など新制度
 日本の産業界で企業の枠を超えたデータ活用が広がる。セブン&アイ・ホールディングス(HD)やNTTドコモなど10社は6月から、ビッグデータ(総合2面きょうのことば)の共同活用に乗り出す。これとは別に経済産業省は企業間の産業データ共有を支援する制度を始める。人工知能(AI)の進化を受け、データの活用法は企業の競争力を左右する。「データ資源」を求め企業が手を組む動きが加速する。セブン&アイとドコモのほか、東京急行電鉄や三井物産、三井住友フィナンシャルグループなど異業種の10社がビッグデータ活用で協力する。1日、研究組織「セブン&アイ・データラボ」を発足。データ共有の手法や事業化の検討を進める。セブン&アイは1日約2300万人分の消費データを得ている一方、ドコモは約7600万件の携帯利用者を抱える。各社はデータを共有することで情報量を増やし、AIを使ったデータ分析の精度向上や、以前は得られなかった解析結果の取得につなげる。例えばセブン&アイの消費データとドコモの携帯電話の位置情報を掛け合わせる。日常の買い物が不便な地域を割り出し、ネットスーパーの展開に役立てることができる。人の動きや嗜好を組み合わせれば、魅力的な街づくりや効果的な出店計画なども可能になる。まずセブン&アイと他社が1対1でデータを共有し分析結果を参加企業で共有。全社のデータを一元的に活用する仕組みを検討するほか、10社以外にも参加を呼びかける。データは個人を特定できない形に加工し、プライバシーを保護する。一方、経産省は製造ノウハウなど産業データの共有を支援する制度を始める。参画する企業に補助金を出すほか、6月にも施行する生産性向上特別措置法をもとに減税措置を取る。日本郵船、商船三井などはこの制度を活用し、船舶の運航データを共有。気象条件によってエンジンがどのように動くのかなどのデータを共有し、省エネ船や自動運航船の開発につなげる。JXTGエネルギーや出光興産など石油元売り大手も、製油所の配管の腐食データなどを共有し、効率的な保守点検を目指す。各社は競合関係にあるが、データの一部を共有することで無駄をなくし、個別の注力分野に人材や資金など経営資源を集中的に投下する。ドイツでは工場にあるロボットの稼働状況を企業間で共有して効率化を図るなど、データを活用した生産改革の動きが広がる。日本は現場での擦り合わせに強みを持つ一方、企業の枠を超えたデータ共有による生産性の向上は遅れていた。これまでは技術力やブランド力が企業の価値の中核を占めた。経済のデジタル化が進むなか、企業の価値にデータ資源が加わる。今後、データ獲得へ向け企業の合従連衡が進む可能性がある。公正取引委員会は2017年6月に独占禁止法の適用指針を公表。データの集積や利活用は競争を促す一方、寡占により競争が損なわれる場合は独禁法による規制が考えられるとした。産業全体でデータを活用し価値を生むための仕組み作りが必要になる。

*1-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180525&ng=DGKKZO30923060U8A520C1TJ2000 (日経新聞 2018年5月25日) データ売買に「取引所」 博報堂DYが参入、安全な基盤整備、利用促す
 企業が持つ様々なデータを相互利用し、新サービス創出などにつなげようとする試みが広がってきた。博報堂DYホールディングスは2019年度に、企業が持つ商品の販売データなどを売買する「取引所」事業に参入する。日立製作所やオムロンはセンサーデータなどを流通させる環境を官民連携で整える。個人情報の流出が問題となる中、安全を確保したデータ流通基盤を米欧に先行して整える。博報堂DYは8月にも、データ取引所事業の実証実験を始める。カード会社や小売企業が参加し、自社のデータを売ったり、他社のデータを買ったりする。企業は購入したデータを基に消費者像をより具体的に絞り込み、効果的な広告配信や商品開発につなげられる。例えば、自動車の販売会社が近隣のホームセンターの販売データを入手できれば、キャンプ関連商品の販売が増えている場合に、キャンプで使いやすい多目的スポーツ車(SUV)の品ぞろえを増やすなどの販売戦略を立てることができる。データの販売価格や受け渡し方法などを検証し、19年度から本格展開する。博報堂DYはデータ活用支援など周辺サービスの需要を開拓する。海外企業からデータを集めるなど取引所事業の海外展開も視野に入れる。企業が保有するデータ量は、あらゆるものがネットにつながるIoTなどの普及で大幅に増えている。各社が持つ様々なデータを互いに利用できれば、新たな製品やサービスの迅速な開発につなげられる可能性が高く、企業間でデータを取引できる仕組みやルールの整備が急務になっている。日立製作所やオムロン、ソフトバンクなど100以上の企業と団体でつくるデータ流通推進協議会は、企業やデータ取引会社の枠を超え、横断的にデータ検索・取引ができる方法の検討に着手した。経済産業省などとも連携し、検索しやすいようデータの形式を整えたり、信頼できる取引参加者の認定をしたりする。ヤフーも検索など同社のサービスで蓄積したデータを、企業や行政のデータと組み合わせ、新商品開発などにつなげる取り組みを始めた。日産自動車やサッカーJリーグ、神戸市など十数の企業・団体が参加する。米フェイスブックの個人情報流出が問題となり、欧州連合(EU)も25日、新たな個人情報保護ルール「一般データ保護規則」(GDPR)を施行するなど、データ管理に求められる安全性のハードルは高まっている。博報堂DYは個人情報を数十~数百件ごとにまとめて統計処理してつくった仮想の個人データを取引所で提供することで、個人を特定できないようにする。仮想データは元のデータと統計的に同じように活用できる一方、仮想データはGDPRの規制の対象外となるという。データ流通推進協議会もGDPRやEU域内でのデータ流通に関する有識者研究会を設け、対応を進める。交流サイト(SNS)など個人の情報流通基盤では米欧が先行したが、企業が持つIoTや販売データの流通基盤は米欧でも固まっていないという。日本勢は企業のビッグデータが安全に流通する仕組みを早期に整え、主導権を狙う。

*1-3:https://www.nikkei.com/article/DGKKZO15317100U7A410C1TCJ000/ (日経新聞 2017/4/17) 〈情報を極める〉個人情報保護法(2) 第三者への提供、ルール厳格に
 5月30日に全面施行される改正個人情報保護法では、企業などが保有する個人データを第三者に提供する際のルールが厳格になった。2014年に発覚したベネッセコーポレーションの個人情報流出事件で、犯人が不正取得したデータを名簿業者に売却し、他の名簿業者を通じて拡散したことなどがきっかけだ。名簿業者を意識した対策の1つめとして、本人が拒否した場合のみ第三者に提供しない「オプトアウト方式」でデータを提供する業者には、政府の個人情報保護委員会への届け出を義務付けた。個人データを第三者に提供するには原則として本人同意が必要であり、オプトアウト方式は名簿業者が多用するためだ。加えて、病歴や犯罪歴など特に慎重に扱うべき「要配慮個人情報」は、本人の同意なしには第三者に提供できないこととした。対策の2つめとして、個人データを第三者とやり取りした業者には、新たに記録の作成と保存の義務を課した。データを提供する場合は第三者の社名や氏名、情報の項目など、提供を受ける場合は第三者の社名や氏名、相手側がそのデータを取得した経緯などを記録し、原則3年間保存しなければならない。不正な利益を得るために個人情報データベースなどを盗用・提供した者には1年以下の懲役または50万円以下の罰金を科す。外国にある第三者に個人情報を提供する場合も厳しく規制する。合併、委託、共同利用も対象となる。提供できるのは、現時点では「あらかじめ外国にある第三者への提供を認める本人の同意を得る」か「外国にある第三者が個人情報保護委員会の規則で定める基準に適合する情報保護体制を整備する」場合だ。この国外移転規制は海外のコールセンターを活用する企業などで要注意となる。個人情報保護に詳しい上村哲史弁護士は「データの国外移転を実施・検討する企業は今、海外のグループ会社や拠点先の保護体制を担保するための内規や契約を策定中だ」と指摘する。

<EUのデータ規制>
*2-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180525&ng=DGKKZO30946670V20C18A5TJ2000 (日経新聞 2018年5月25日) よくわかるEUデータ規制(1)企業はまず何から? 所有情報の棚卸し重要
 欧州連合(EU)は25日、個人情報保護の新ルール「一般データ保護規則(GDPR)」を施行する。日本より厳しいルールのポイントについて4回にわたり考える。1回目は企業が何をすべきかを取り上げる。規制の対象となる情報は名前や住所、メールアドレスだけではない。インターネットの住所を指すIPアドレス、「クッキー」と呼ぶネットの閲覧履歴、スマートフォンの全地球測位システムによる位置情報も入る。顔画像や指紋認証、遺伝子の情報も対象になる。企業は対策を取る上で、EUに住む人の個人情報について「社内にどんな種類の情報を、どれだけ持っているか調べる必要がある」(PwCコンサルティングの松浦大マネージャー)。ビジネスに個人情報をどう使っているか把握することも重要だ。こうした所有情報の棚卸し作業をデータマッピングと呼ぶ。EUの現地法人や日本の本社はもちろん、各国にある拠点で調べることが欠かせない。企業は棚卸ししたデータをもとに、消費者から情報の利用目的について同意を得なければならない。例えば日本に本社のある企業のフランス現地法人で働くAさん。商品を店舗やネットで販売する際、消費者に記入してもらう情報を巡って「こういう目的で利用してよいですか」と聞き、同意を取る必要がある。一方、社内では安全に管理する仕組みを整える。暗号化などでセキュリティ水準を高めたり、情報を扱える人を限定したりする。情報漏洩が発覚した際にはEU当局に72時間以内に通知する体制も求められている。日本の個人情報保護法にも報告義務はあるが、制限時間は決めていない。GDPRの規則を守るための責任者として、大企業などは「データ保護オフィサー」の設置が義務付けられている。EUは規則違反に高い制裁金を科す。最大で世界での年間売上高の4%か2千万ユーロ(約26億円)の高い方を科される。日本IBMで企業に助言している中山裕之氏は「これほど高い罰金の設定は他国にない」と話す。

*2-2:https://jp.reuters.com/article/eu-data-japan-idJPKBN1K800B (ロイター 2018年7月18日) EUと日本、個人データ相互移転で最終合意 年内実施へ
 日本と欧州連合(EU)は17日、日本とEU間で企業による個人データの円滑な移転を認めることで最終合意した。これにより、7年に及んだデータ移転を巡る協議が終了。年内の実施に向け、欧州委員会と日本政府は今後、最終的な詰めの作業に入る。欧州委のヨウロバー委員(司法担当)は声明で、「データは世界経済の原動力であり、今回の合意により、EUと日本の間での安全なデータの移転が可能になり、双方の市民と経済に恩恵がもたらされる」と述べた。EUは厳格なデータ保護規則を導入し、企業が欧州市民の情報を保管するにあたって、プライバシー保護の水準が十分でない国のサーバーへの保管を禁じている。欧州委によると、今回の日欧合意により、欧州経済領域(EEA)から日本への個人データの移転が特段の手続きを経ることなく行えるようになる。企業が重視する越境データには、海外赴任の従業員情報やオンライン取引の完了に必要なクレジットカード情報、消費者のインターネットの閲覧傾向などが含まれる。17日には東京で日欧首脳会談が開催され、日欧経済連携協定(EPA)への署名が行われた。

<医療・介護の個人情報共有>
*3-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180729&ng=DGKKZO33542830Y8A720C1MM8000 (日経新聞 2018年7月29日) 医療・介護の個人情報共有 全国の病院、適切処置で費用抑制
 政府は治療や服薬の履歴、介護サービスの利用実績など医療や介護にかかわる個人情報を全国の関係者が共有できる仕組みをつくる。今は地域ごとに管理しているデータベースを順次統合し、2020年度には全国の医療機関などが同じデータを利用する体制を目指す。データを適切な医療に役立てつつ、重複した投薬などを避けて医療費の抑制につなげる。今は270に分かれた地域ごとに医療の情報を共有する仕組みはあるが、この地域をまたぐとオンラインでの情報共有はできない。介護施設で受けたケアの内容や、会社で受ける健康診断の結果などもバラバラに保管され、医療データと結びつけられていない。データを連携できない理由の一つが、保存する形式がそれぞれ異なることにある。政府は20年度までにデータ統合の仕組みを整え、入退院や介護などの情報を既存のデータベースから政府が新たに整備する「健康・医療・介護情報基盤(仮称)」に移す。内閣官房や厚生労働省、総務省など関係府省で構成する「健康・医療・介護情報基盤検討タスクフォース(TF)」で、年内に具体的な方法を決める。医療や介護の個人別データベースは、国の支出の3分の1を占める社会保障費(18年度は約33兆円)の抑制に欠かせない。野村総合研究所は情報の共有が進めば、医療費を5千億円近く減らせると試算している。電子カルテの普及は日本が3割程度で、9割を超えるノルウェーやオランダなど欧米に劣っている。今年5月に施行された次世代医療基盤法では患者の同意があればデータを匿名加工して大学や製薬会社が研究に使えるようになっており、今後は診療情報のデータ整備が官民で進みそうだ。

*3-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180812&ng=DGKKZO34080450R10C18A8MM8000 (日経新聞 2018年8月12日) 介護データ、厚労省が民間開放 サービス効率化へ知恵生かす
 厚生労働省は介護保険サービスの利用状況や利用者の状態などに関するデータを民間の研究機関などに開放する。膨大なデータを民間の知恵を生かして分析することで、介護サービスの効果的な提供の手法や効率化策などの発見につながる可能性があると判断した。9月末までに利用目的などの提案を募り、年内にも提供先の第1陣が決まる見通し。提供するのは要介護状態の区分や利用するサービスなどを記載した「介護レセプト」と、利用者の心身の状態を詳細に記載した「要介護認定データ」の2つ。現在は個人情報を匿名化した上で市町村などから厚労省に提供されており、計9億件のデータがある。いまは行政だけがデータを利用し、第三者への提供はしていない。医療では診療や検診のデータを大学や研究機関などに提供する取り組みが始まっており、介護でも求める声が出ていた。介護費は医療や年金を上回るペースで増加が見込まれており、より科学的な観点から効率的に介護サービスを提供する必要性が指摘されている。民間へのデータ開放によって要介護度の進行や介護サービスの有効性、地域差などの精緻な分析が進み、有効な対策が見いだされることを期待している。データを提供する際は、利用目的に公益性があるかどうかなどを有識者が審査し、その助言に基づいて厚労相が最終的に可否を決める。

<高齢者の人権と被介護者主体の介護サービスへの転換>
PS(2018年8月15日追加):*4には、「介護離職を本気で減らすため」と題して、①政府・企業は介護と仕事の両立に本気で取り組むべき ②両立に向けて社員が努力しやすい環境(短時間勤務制度など)を整えるべき ③業務が滞らないために介護に時間をとられやすい社員のカバー体制も必要 ④管理職は代わりに仕事をこなす人を日頃から決めておくべき ⑤介護サービスも利用しやすくしなくてはならないが、人手不足が深刻なので介護現場で働く人の収入を増やすべき ⑥介護保険外のサービスを事業者が柔軟に提供できるように、規制改革を推進すべき などが記載されている。
 このうち①②③④は、税金で運営されている役所や人手にゆとりのある大企業しか実現できず、生産性と報酬から考えて、介護に時間をとられやすい社員(女性が多い)と認定されれば、医学科の入試だけでなく就職や昇進でも不利な扱いを受けるものだ。しかし、この主張の根本的な問題は、「介護は愛のある家族ならできる」という発想があることで、実際には、介護はプロの知識と経験を要するものなのである。
 さらに、⑤は、「介護保険料は高いが介護サービスは足りない」現状で、どうやって介護現場で働く人の収入を増やすかの解決策が考えられていない。しかし、そもそも介護サービスは被介護者のために作ったものであり、条件のよい雇用を増やすために作ったものではないため、考え方の優先順位が違う。なお、私自身は、外国人労働者も含めた組織的介護(グループ介護)を行うことによって、限られた財源で、知識と経験のある熟練した介護者には十分な報酬を支払うことも可能になると考えている。
 ⑥については、被介護者になるとできなくなってしまう生活補助などのサービスも柔軟に行えるよう混合介護が認められるようにするのがよく、多くの人が満額を払ってでも使うサービスは、本当に必要とされるサービスなので、速やかに介護保険の対象にすることが必要だ。

*4:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180814&ng=DGKKZO34118470T10C18A8EA1000 (日経新聞 2018年8月14日) 介護離職を本気で減らそう
 家族の介護のために仕事をやめる人が、依然として多い。働き盛りの社員の退職は、企業にとっても国民経済にとっても損失だ。経営者は介護離職防止を重要課題ととらえ、手を打つ必要がある。総務省の2017年の就業構造基本調査によると、過去1年間に介護や看護を理由に離職した人は9万9100人にのぼる。前回12年調査の10万1100人に比べ、ほぼ横ばいだ。政府は「介護離職ゼロ」を掲げているが、目標達成にはほど遠い。会社勤めなど雇用されて働きながら介護をしている人は299万9200人で、12年調査より59万9900人増えた。介護と仕事の両立に、政府も企業も本気で取り組まなければならない。企業の役割は、両立に向けて社員が努力しやすい環境を整えることだ。短時間勤務制度など柔軟に働ける仕組みが欠かせない。国の介護休業制度や企業独自の休暇制度などを社員が理解できるように、マニュアルをつくることも求められる。一定の年齢に達した社員を対象に、説明会を開催することも必要だろう。家族の介護をすることになった社員の心理的負担は大きい。これを軽減できるよう、企業は丁寧な情報提供に努めるべきだ。一方で、業務が滞らないよう、介護に時間をとられやすい社員のカバー体制も大切だ。管理職などについては一人ひとり、代わりに仕事をこなす人を日ごろから決めておくといいだろう。補完体制づくりが、本人が安心して介護に携われることにもつながる。介護サービスも利用しやすくしなくてはならない。ただ、介護の現場では人手不足が深刻だ。新しい在留資格を設けるなど、外国から人材を受け入れる間口を政府は広げているが、限界がある。介護現場で働く人の収入を増やすことで人手不足を和らげていくのが本筋だ。介護保険外の付加価値の高いサービスを事業者が柔軟に提供できるよう、規制改革を政府は強力に推進すべきだ。

<幼児教育・保育と子どもの人権>
PS(2018/8/16追加):*5の「3~5歳の子全員と保育所に通う0~2歳の住民税非課税世帯の子について、幼児教育と保育の費用を無償化する」というのは賛成だが、保育サービスについては1995年くらいから大きく問題にしている実需であるため、まだ量が足りないと言っている自治体は不作為だ。また、年少でも、やり直しのきかない体験を子どもにさせるため、質も重要であり、無認可保育所まで無償化の対象に加えるのは疑問だ。
 なお、せっかく子どもを預かるのなら、単に居場所を作るだけでなく、家庭ではできない教育(言語・音感・読み書き・計算・ダンス・食・自然と親しむ等々)をした方がよいので、小学校の入学年齢を3歳にし、余っている小学校のインフラを改修して使うのがよいと思われる。そうして保育を0~2歳児と学童保育に特化すれば、待機児童はなくなるだろう。

*5:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO31009550W8A520C1MM0000/?n_cid=SPTMG022 (日経新聞 2018/5/26) 幼児教育・保育の無償化 19年10月から全面実施
 政府は2019年10月から幼児教育・保育の無償化を全面的に実施する方針を固めた。これまでは19年4月から5歳児のみを無償化し、20年度から全体に広げる予定だったが、半年前倒しする。19年10月に予定する消費税率10%への引き上げに合わせることで子育て世帯の暮らしに配慮する。幼稚園や認可保育所に加え、預かり保育などの認可外施設も対象にする。6月にまとめる経済財政運営の基本方針(骨太の方針)に盛り込む。教育無償化は昨年の衆院選で安倍晋三首相が公約に掲げていた。消費税増税による増収分の一部を財源に使う。幼稚園や保育所に通う3~5歳の全ての子どもと、保育所に通う0~2歳の住民税非課税世帯の子どもについて、利用料を無料にする。増税に伴う税収がすべて入るのは20年度。そのため、これまでは税収の確保に合わせて、19年4月と20年4月の2段階で無償化する予定だった。無償化を半年前倒しすると、19年度に2000億~3000億円程度の追加予算が必要になる可能性がある。税収による財源確保の前に歳出が膨らむため、財政に悪影響がでる。それでも政府が前倒しに踏み切るのは、14年4月に消費税率を8%に引き上げた際の経緯が背景にある。当時は増税に向けた駆け込み需要の反動で、増税後の半年間は消費が落ち込んだ。政府は19年10月の消費税率引き上げが景気に与える影響を少しでも抑えたい考え。増税に合わせて教育無償化を全面的に実施すれば、子育て世帯の暮らしを支援できる。増税への理解も広がると判断した。無償化の対象は預かり保育やベビーホテルといった認可外施設も含む方針だ。市区町村から保育が必要と認定された世帯であれば、施設の種類を問わず支援を受けられるようにする。ただ、認可外施設は原則として国や自治体が定める一定の基準を満たしたところに限る。5年間は経過措置として、基準を満たしていない場合も無償化対象に加える。認可外は施設によっては保育料が高額になるため、認可保育所の保育料の全国平均額を上限に支援する。

<人権とは関係ないが、お祭りの話>
PS(2018年8月16、17日追加):*6のように、「阿波踊り」の人出が1974年以降最少だったそうだが、徳島市を中心とする実行委員会が観覧席の入場料収入を増やそうと決定した「総踊りの中止」は、営業センスのない「阿呆」の発想だ。何故なら、「阿波踊り」が人を集める最大の魅力は、千人以上の上手な踊り手が1つの演舞場に集って踊る華やかさにあるからで、有料の演舞場に分かれて見なければならないのなら「祭」ではなくショーになる。そのため、徳島市がやった方がいいのは、唐津くんち(2015年にユネスコ無形文化遺産に登録)のように、ユネスコ無形文化遺産に登録してもらって国から継続のための少々の補助金をもらったり、ふるさと納税で「阿波踊り保存のための寄付金」を全国の徳島県人会から集めたりすることである。
 また、*7-1のように、2020年の東京五輪・パラリンピックを機にサマータイムを導入する話もあるが、暑さ対策なら「サマータイム」より開催時期を9月末頃の収穫と紅葉の時期に合わせた方が根本的な解決策になるし、ついでに観光して帰る外国人客も増えるだろう。
 一方、「サマータイム」を導入して時間を操作すると、現在の時間を前提として住宅を買い通勤している人の健康に悪い。そのため、*7-2のように、EUは廃止を検討しているのだ。日本の場合は、東西の距離が短く明石標準時を使っているため、「日の出」「日の入り」が速いと感じられるのは関東以東だけであり、西日本は時間と日照はずれていない。しかし、関東地方は通勤時間が長いため、始業時を早めると健康への悪影響がより大きいのである。

*6:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180816&ng=DGKKZO34211040W8A810C1CC0000 (日経新聞 2018年8月16日) 阿波おどり 人出最少に 徳島、「総踊り」巡る対立影響か
 15日に閉幕した徳島の夏の風物詩「阿波おどり」の人出が昨年より約15万人少ない約108万人で、記録が残る1974年以降、最少だったことが16日、徳島市への取材で分かった。有力踊り手団体が、市を中心とする実行委員会の中止決定に反して「総踊り」を強行するなど運営を巡る対立が影響した可能性があり、市は原因を検証する。昨年まで主催していた市観光協会が多額の累積赤字を抱えて破産。今年から、市主導でつくる実行委が新たな主催者となった。毎年8月12~15日に開催しており、市によると、雨天で一部の日程が開催できなかった年を除き、これまでの最少は2014年の約114万人だった。今年は雨が降った15日の人出が落ち込んだという。総踊りは期間中、毎晩のクライマックスとして千人以上の踊り手が1つの演舞場に集まって踊る演出で人気が高いが、実行委は複数の演舞場に踊り手と観客を分散させて観覧席の入場料収入を増やそうと中止を決定。14の踊り手グループでつくる「阿波おどり振興協会」がこれに反発し、13日夜、市の制止を振り切って総踊りを実施した。

*7-1:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO33528920X20C18A7CC1000/?n_cid=DSREA001 (日経新聞 2018/7/27) サマータイム導入 五輪組織委、暑さ対策で要望
 2020年東京五輪・パラリンピック大会組織委員会の森喜朗会長は27日、安倍晋三首相と首相官邸で面会し、暑さ対策のため、大会に合わせて全国一律で時間を早める「サマータイム」の導入を求めたことを明らかにした。安倍首相は「ひとつの解決策かもしれない」と応じたという。森会長は今夏の猛暑に「来年、再来年に今のような状況になっているとスポーツを進めるのは非常に難しい」と指摘。面会に同席した武藤敏郎事務総長は「国民の理解が得られてその後もサマータイムが続けば、東京大会のレガシー(遺産)となる」としている。観客や選手の暑さ対策は大会の大きな課題。組織委は屋外競技のスタート時間を早朝に前倒しするなどしたほか、競技会場ごとにテントや冷風機の設置を検討している。

*7-2:http://qbiz.jp/article/139321/1/ (西日本新聞 2018年8月17日) EUが夏時間廃止を検討 睡眠障害招く 省エネ効果薄く
 2020年東京五輪・パラリンピックの暑さ対策として、安倍晋三首相が時間を夏季だけ早めるサマータイム(夏時間)導入の可否を検討するよう自民党に指示する中、欧州連合(EU)は長年続ける夏時間の存廃の検討を本格化させている。標準時を年2回、1時間前後させることによる健康への悪影響や、想定されたほどの省エネ効果が得られないことなどが指摘されるためだ。EU欧州委員会は16日まで実施するパブリックコメント(意見公募)も参考に方針を決める。欧州委によると、欧州諸国の多くは夜間の明るい時間を増やして電力を節約することを主目的に、1970年代ごろまでに夏時間を採用した。EUが2000年代初頭に定めた法令では、3月下旬〜10月下旬に夏時間を一斉実施するとしている。交通事故防止や仕事後の余暇時間の拡大も重要な効果だ。しかし、欧州メディアによると、北欧フィンランドで昨年、夏時間廃止を求める7万人超の署名が議会に提出された。首都ヘルシンキは北緯60度に位置し、6月下旬の日没は午後10時50分。夏時間がなくても夜は明るい。フィンランド議会の委員会は専門家からの意見聴取も重ね、標準時を動かすことで睡眠障害を引き起こすなど夏時間は問題が大きいと結論付けた。同国政府はこれを受け、欧州委に対応を要求。リトアニアなど高緯度の加盟国も同様の声を上げ、EU欧州議会は今年2月、欧州委に存否の検討を求める決議を採択した。EUのブルツ欧州委員(運輸担当)は夏時間の採用が各国ばらばらになると、列車の運行など「運輸部門にかなり大きな問題が生じる」と訴える。欧州委は意見公募の参考資料として、「省エネ効果は薄い。地理的要因が左右する」「体内リズムへの悪影響はこれまで考えられていた以上に大きい可能性も」などと研究結果を紹介している。

<「表現の自由」はメディアだけにあるのではなく、人権に優先しないこと>
PS(2018年8月18日追加):*8-1のように、「ア)自由な報道は民主主義の存立基盤」「イ)近年、メディアに対する政治の敵視が目立つ」「ウ)『言論、出版、その他一切の表現の自由』が、憲法21条に定められている」「エ)どんな政権に対しても、メディアは沈黙してはならない」と書かれている。
 しかし、*8-3のように、日本国憲法は、「①すべての国民に基本的人権を認める」「②憲法が国民に保障する自由・権利は、国民の不断の努力によつて保持しなければならない」「③すべての国民は法の下に平等」「④すべて国民は、個人として尊重される」「⑤思想・良心の自由を侵してはならない」「⑥集会・結社・言論・出版その他一切の表現の自由を保障する」「⑦検閲をしてはならない」「⑧通信の秘密を侵してはならない」「⑨何人も職業選択の自由を有する」という立派な条文を持っており、「表現の自由」は、メディアに限らず国民すべてが平等に持っており、嘘や偏見に満ちた記事を書いて他人の人権を侵害してはならないのである。
 そして、メディアが行政の記者発表を報道しているだけで分析力や人権意識に欠けた記事を書いていたり、女性蔑視の価値観を表現していたり、変な印象付けをしたりして、正確な報道をしていない事例は枚挙にいとまがない。そのため、トランプ大統領が「フェイクニュースだ」と言っていることの一部に私は賛成で、米国民が選んだトランプ大統領の政策が正解かどうかは、メディアの評価ではなく歴史が証明するだろう。
 また、日本国憲法は、「検閲の禁止・通信の秘密」も明記しているが、*8-2のように、データを繋げさえすればよいという論調も多い。さらに、「グーグルなどのネット企業は競争法違反やプライバシー侵害といった批判を受けているが、業績は拡大している」というように、業績が拡大しさえすれば人権侵害をしても何をしてもよいという論調も多く、メディアが正しいことを言っているとは限らない。そのため、まずメディアの姿勢が問われるのである。

*8-1:https://digital.asahi.com/articles/DA3S13640288.html (朝日新聞社説 2018年8月18日) 自由な報道 民主主義の存立基盤だ
 社会の中に「敵」をつくり、自分の支持層の歓心をかう。そんな分断の政治が招く破局は、世界史にしばしば現れる。近年、各地で政治による敵視が目立つのはメディアである。とりわけ民主主義の旗手を自任してきた米国の大統領が、「国民の敵」と公言した。明確にしておく。言論の自由は民主主義の基盤である。政権に都合の悪いことも含めて情報を集め、報じるメディアは民主社会を支える必須の存在だ。米国の多くの新聞や雑誌が、一斉に社説を掲げた。「ジャーナリストは敵ではない」(ボストン・グローブ紙)とし、政治的な立場や規模を問わず、結束を示した。その決意に敬意を表したい。報道への敵視や弾圧は広がっている。中国のような共産党一党体制の国だけでなく、フィリピンやトルコなど民主主義国家でも強権政治によるメディアの閉鎖が相次いでいる。そのうえ米国で自由が揺らげば、「世界の独裁者をより大胆にさせる」と、ニューヨークの組織「ジャーナリスト保護委員会」は懸念している。米国の多くの社説がよりどころとしているのは、米国憲法の修正第1条だ。建国後間もない18世紀に報道の自由をうたった条項は、今でも米社会で広く引用され、尊重されている。その原則は、日本でも保障されている。「言論、出版、その他一切の表現の自由」が、憲法21条に定められている。ところが他の国々と同様に、日本にも厳しい目が注がれている。国連の専門家は、特定秘密保護法の成立などを理由に「報道の独立性が重大な脅威に直面している」と警鐘を鳴らした。自民党による一部テレビ局に対する聴取が起きたのは記憶に新しい。近年相次いで発覚した財務省や防衛省による公文書の改ざんや隠蔽(いんぺい)は、都合の悪い事実を国民の目から遠ざけようとする公権力の体質の表れだ。光の当たらぬ事実や隠された歴史を掘り起こすとともに、人びとの声をすくい上げ、問題点を探る。そのジャーナリズムの営みなくして、国民の「知る権利」は完結しない。報道や論評自体ももちろん、批判や検証の対象である。報道への信頼を保つ責任はつねに、朝日新聞を含む世界のメディアが自覚せねばならない。「国民の本当の敵は、無知であり、権力の乱用であり、腐敗とウソである」(ミシガン州のデッドライン・デトロイト)。どんな政権に対しても、メディアは沈黙してはなるまい。

*8-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180816&ng=DGKKZO34198400V10C18A8EA1000 (日経新聞社説 2018年8月16日) データ社会3.0 世界と競える利用基盤をつくろう
 身の回りの情報機器や様々な機械が生み出すデータの量が急速に増えている。こうしたデータを活用する能力が社会や経済、産業の競争力を大きく左右する傾向が強まり、世界的な競争が激しくなってきた。日本もこの課題に真剣に取り組み、後れを取らないようにする必要がある。
●800億個がつながる
 データが急増するのは自動車や産業機械、医療機器といったあらゆるモノがネットにつながる「IoT」が普及するのが一因だ。米調査会社のIDCによると、2025年に世界のネットにつながるモノは800億個に増え、1年間に生まれるデータの量も10年前の約10倍に膨らむ。まず1990年代にパソコンが普及し、デジタルのデータが身近になった。次の変化はネットの普及だ。データを動かす速度が上がり、コストは大幅に下がった。IoTや人工知能(AI)といった技術革新は過去2回に続くデータ社会の大きな転換点となる。「データ社会3.0」ではあらゆる分野で競争の構図が大きく変わる可能性が高い。広告業界はいち早く変化に直面し、世界のネット広告費は今年、テレビなどを上回る見通しだ。世界最大の広告市場である米国ではデータを高度に利用したグーグルとフェイスブックの2社が合計で約6割のシェアを握った。グーグルなどのネット企業は競争法違反やプライバシー侵害といった批判を受けているが、業績は拡大している。ひとたびデータを集める基盤を押さえると、そこにより多くのデータが集まる。強者がますます強くなるというのが広告市場から学ぶべき教訓だ。今後、ネットにつながる多くのモノがデータを生み、広告以外の様々な市場でも、収集や分析、活用の基盤が必要になる。日本企業も世界に通用する基盤づくりを急ぐべきだ。まず重要なのは、多くの企業や利用者が使う開かれた基盤とすることだ。日本企業は以前、家電製品などで自社製品だけをつなぐ閉じた仕組みをつくり、利用者を十分に取り込めなかった。こうした反省を生かす必要がある。参考になるのは建機大手のコマツの事例だ。以前は自社の製品のみを対象としたデータ基盤を運営していたが、今年から他社にも開放した。利用企業はコマツ以外の建機からもデータを取り込み、外部企業がつくったソフトで業務の効率を高められる。コマツの大橋徹二社長は開かれた基盤により「人口減少やインフラの老朽化といった社会課題を解決する」と話す。多くの企業や利用者に参画してもらうには、明確な目標を示して共有することが前提となる。人材の確保も課題になる。資源開発や農業などのために超小型衛星から撮影した画像を販売するアクセルスペース(東京・中央)は社内にデータ活用の基盤を開発する部門を設け、イタリア人をトップに据えた。約15人の担当者の過半が海外出身だ。
●「課題先進国」を生かす
 日本は統計学を学ぶ学生が少ないなど、データを扱う人材が不足している。大学のカリキュラムの見直しや社会人の再教育などはもちろんだが、スピードを上げるために必要に応じて海外から優秀な人材を受け入れるべきだ。米国ではネット企業が新たな基盤をつくる動きをけん引する。欧州では産官学が連携し、自動車などの競争力が高い産業を基盤づくりに積極的に活用している。世界的な競争に勝つには、日本もその強みを利用する必要がある。画像データを活用した介護支援サービスを手がけるエクサウィザーズ(東京・港)は年内に中国と欧州に進出する。同社の石山洸社長は「超高齢化が進む日本はデータを集めやすい」と日本から世界を目指す理由を説明する。「課題先進国」としての強みを利用して技術力を高め、海外に広げていく手もある。政府は未来投資戦略などでデータの活用を進める方針を示している。重要なのは利用者の安心や安全を前提に、企業がデータを活用しやすい環境を整えることだ。障害となる規制の緩和などにスピード感をもって取り組む必要がある。規模の大小や国籍に関係なく、企業が公正に競争できるルールの整備も急ぐべきだ。

*8-3:http://www.houko.com/00/01/S21/000.HTM (日本国憲法抜粋)
第3章 国民の権利及び義務
第11条 国民は、すべての基本的人権の享有を妨げられない。この憲法が国民に保障する基本
    的人権は、侵すことのできない永久の権利として、現在及び将来の国民に与へられる。
第12条 この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によつて、これを保持
    しなければならない。又、国民は、これを濫用してはならないのであつて、常に
    公共の福祉のためにこれを利用する責任を負ふ。
第13条 すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利
    については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を
    必要とする。
第14条 すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地に
    より、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。
第19条 思想及び良心の自由は、これを侵してはならない。
第21条 集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。
   2 検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない。
第22条 何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する。
   2 何人も、外国に移住し、又は国籍を離脱する自由を侵されない。

<ない責任を押し付けるのは人権侵害である>
PS(2018年8月20日追加):*9-1に、「既婚で子どもがいない女性の5割超が周囲の言葉で『肩身が狭い』と感じた経験を持つと書かれているが、「子どもは?」という言葉を繰り返すのはセクハラだ。私は既婚だが、仕事をとって子どもを持たない選択をし、この場合は、*9-2のような「ロールモデルになれない」という理由で不利な扱いを受けた。これは昇進における間接差別(形式的には差別していないが、無理な要件を課して実質的に差別することで、欧米では禁止)で、セクハラと同様、日本国憲法13、14、19条に違反する人権侵害である。
 また、*9-2の①仕事で成果を上げ ②結婚と出産を経験し ③育児と仕事を両立させ ④マネジャーに昇進した女性 は、家事や育児を他人に任せられる状態にあった人以外にはないと私は確信する。何故なら、②③は育児休業期間だけではなく1人の子どもに10年以上続くため、①④とは両立不可能だからだ。そして、「ロールモデル論でトクする人」とは、不作為によって実需である保育所を増やさず必要以上の少子化に至らしめた2000年代前半までの厚労省はじめ為政者で、「官のすることに間違いはない」という体裁にするために、「女性が頑張らなかったから少子化した」などという論理にしているのである。

*9-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180820&ng=DGKKZO34326930Z10C18A8CR8000 (日経新聞 2018年8月20日) 「子供なく肩身狭い」5割 30~40代前半の既婚女性、多様な生き方、理解必要 民間調査
 既婚で子供がいない30代~40代前半の女性の5割超が周囲の言葉などで「肩身が狭い」などと感じた経験を持つことが、明治安田生活福祉研究所(東京)の調査で分かった。同研究所は「既婚者は子供がいて当然とする考えがまだ社会にある」と指摘する。個々の家庭の事情への配慮や、多様な生き方への理解を広げることが求められている。調査は2018年3月、25~44歳の男女約1万2千人を対象に実施。結婚状況や子供の有無に応じて、出産や子育てに関する意識を調べた。調査対象のうち子供がいないと答えた人は6592人で、うち既婚者は2472人。「子供がいないことで肩身の狭い思いやハラスメントを感じているか」との問いに対し、「よく感じる」「感じることがある」と答えた既婚女性の割合は20代後半で41.1%、30代前半では51.7%。30代後半では66.7%、40代前半は66.0%に達し、およそ3人に2人が当てはまった。既婚男性は既婚女性に比べると低く、20代後半で24.9%、30代前半で32.4%。ただ、30代後半は40.5%、40代前半でも37.6%と、40歳前後の層は約4割が嫌な思いをしている。未婚者は男女とも既婚者に比べると低い傾向がみられ、40代前半女性で44.7%、同男性で27.6%だった。調査では、具体的にどのような周囲の言動、場面で肩身の狭い思いをしたかまでは尋ねていない。同研究所は「年齢が上がるにつれ、身内や知人からの『なんで子供ができないの』『子供はいつできる』などの問いに傷ついている人が増えるのではないか」と推測する。子供の有無を巡っては、自民党の杉田水脈衆院議員が性的少数者(LGBT)のカップルを念頭に「彼ら彼女らは子供を作らない、つまり『生産性』がない」などと月刊誌に寄稿。批判が集まり、同党は杉田議員を指導した。明治安田生活福祉研究所は「身体的な理由や経済的な事情などで子供ができなかったり、持たない選択をしたりした夫婦もいる。社会全体がそうした人々の生き方に配慮する必要がある」としている。

*9-2:https://diamond.jp/articles/-/175292 (DIAMOND 2018.8.2) 「ロールモデルがいないから女性は活躍できない」は本当か? 中原淳:立教大学 経営学部 教授

 女性活躍推進法が施行されて数年になるが、「女性活躍推進」という言葉にある種のモヤモヤを感じている人もいるはずだ。たとえば、「女性が活躍できないのは、ロールモデルがいないから」という言説はどこまで本当なのだろうか? 「7,400人への徹底リサーチ」と「人材開発の研究・理論」に基づいて、立教大学教授・中原淳氏らがまとめた最新刊『女性の視点で見直す人材育成――だれもが働きやすい「最高の職場」をつくる』から、一部を抜粋してお送りする。
●模範となる「完璧な女性」はどこにいるのか?
 女性が活躍できる状況をつくろうというとき、多くの人が真っ先に語るのが、ロールモデルとなる女性の存在です。女性活躍推進の旗を振る政府も「ロールモデル創出」を謳っていますし、メディアでもそれを前提とした報道が繰り返されています。じつは、そもそもこの言葉が何を意味しているのかもあまり明確ではないのですが、ほとんどの人が「ロールモデル」に相応しいと考えているのは、次のような複数の条件を満たす女性のことではないかと思います。
 条件1 仕事で成果を上げていて、
 条件2 結婚と出産も経験し、
 条件3 育児と仕事を両立させ、
 条件4 マネジャーに昇進した女性
 多くの企業は、程度の差こそあれ、4つの条件すべてを満たす女性をロールモデルとして掲げているように思います。こういう女性を企業が発掘し、高く掲げておけば、女性従業員たちは「私も彼女みたいになれるようにがんばろう!」とやる気になるはずだ―ごくごく大づかみではありますが、ロールモデル論はこういう考え方に支配されているように僕には思えます。しかし、このような複数の条件を満たす女性は、いったいどのくらいいるのでしょうか? また、このような女性像は、多くの女性が目指すべき「ロールモデル」として本当に機能するのでしょうか?あくまで単純化した議論ですが、それぞれの分岐における達成確率を50%とした場合でも、4条件すべてを達成できる可能性は6%ちょっとです。ひょっとすると、実際の達成確率は50%よりも低いかもしれません。そんなわずかな可能性に、僕たちは将来の希望を託すべきなのでしょうか? そのような女性が現れるのを待っているだけで、女性活躍は進むのでしょうか?もちろん、仕事で成果を上げて、結婚・出産を経験し、産休・育休の制度を使いながら仕事と育事を両立させ、管理職としてバリバリ働く女性が、会社にとって貴重であることは言うまでもありません。そのような女性たちの奮闘には、心から賞賛を贈りたくなります。しかし、多くの働く一般の方々にとって、こうした女性たちは、わずか6%の可能性でしかありません。一般の女性から見れば、会社が設定したロールモデルは、目指したくても到達できない「高嶺の花」のように受け取られないか、心配になります。
●ロールモデル論でじつはトクする人たち
 「でも、もしそんな優秀な先輩女性がいれば、それに越したことはないのでは?」と思う人もいるでしょう。そのとおりです。現にそういう女性はいるでしょうし、懸命に努力している女性や企業さんもたくさんあります。一方で、もう一つ指摘しておきたいことがあります。じつは、「女性にはロールモデルがいない」という前提そのものが、かなりあやしいのかもしれないということです。次のデータをご覧ください。ご覧のとおり、4人中3人(75.1%)の女性は「自分にはロールモデルがいる」と考えているようです。だとすると、「女性にはロールモデルがいない」「だから会社がなんとかすべきだ」という議論自体も、根拠は薄いのかもしれません。また、人事担当者のなかには、「女性陣に意識を変えてほしくて、社内で特別セミナーを開催した」という人もいるかもしれません。なんらかの女性活躍推進策を講じねばならないので、外部講師や専門家を招いて、女性社員向けのイベントを行うというケースもあるようです。しかし、こうしたイベント型の女性活躍推進もまた、ロールモデル論と本質的には同じです。ワンワードで申し上げれば、両者に共通するのは「個人の力」に頼る発想、「女性社員に手本や刺激を与えて、個々の女性に努力させていけば、女性が活躍する組織をつくれる」という考え方です。このイベント型施策には大きく2つの問題点があります。まず何よりも、それは、一過性のイベントであるがゆえに、継続性がないということです。「女性のみなさん、もっと自信を持っていいんです。自分らしく仕事をしましょう!」と励まされれば、誰だってその場では「明日からがんばるぞ!」とモティベーションが高まります。とはいえ、これはいわば「徹夜を覚悟したときに飲む栄養剤」のようなもので、たしかに一瞬元気になりますが、根本的な解決にはなりません。そして、もう1つの問題は多くの場合、こうした講演は「個人の経験談」にならざるを得ないということです。セミナーにしろ書籍にしろ、語り手のほとんどは、自ら活躍の道を切り開いてきたスーパーウーマン(=ロールモデル)です。彼女たちは、自分の経験をベースに、聴衆・読者に何が足りていないのかを延々と語ります。「私もかつてはみなさんと同じような普通の女性でした。しかし……」という具合です。しかし、その「個人の経験談」が、ほかの一般的な女性にもあてはまると考えるのは早計です。彼女が「活躍」できたのは、その奮闘が認められるような環境が、たまたまそこにあったおかげかもしれないからです。
●なぜ女性は「入社2年目」で昇進をあきらめるのか?
 ロールモデルもダメ、うまくいった個人の自分語りもダメ……そうだとすれば、何が現実を変えられるのでしょうか? そこで見ていただきたいのが、次のデータです。注目すべきポイントは2つです。まず、入社1年目の段階で管理職志向には大きな男女差があること。入社1年目の男性は94.1%が管理職を目指したいと考えているのに対し、女性でそう答えているのは64.7%。男女でじつに30ポイントほどの開きがあることになります。みなさんの実感と照らし合わせてみて、いかがでしょうか?しかし、より重要なのはもう1つの点です。2年目以降も継続して「管理職を目指したい」と考えている男性は、9ポイントほどしか減っていませんが(85.2%)、女性ではなんと20ポイント以上の減少が見られます(44.1%)。驚くべきことに、職場での日々の仕事をしていくなかで、入社2年目の段階にキャリア見通しを「下方修正」する女性がかなり多くいるというわけです。データ上にここまで大きな男女差が出ているとなると、女性のモティベーションを一気に低下させる「構造的要因」の存在が推測されます。これは、本人の努力や個人の資質だけに着目して女性の労働問題を語っていてはなかなか見えてこない「現実」です。個人がどれだけ成果を上げられるか、どこまで成長できるか、どんな価値観を持つかといったことは、本人の努力もあるのですが、彼女たちにどのような職場でどのような仕事を任せるかに大きく左右されます。予告的に言えば、女性活躍推進に最も必要なのは「(1)女性たちが働く職場づくり」と「(2)キャリアステージに応じた支援」なのです。だとすれば、みなさん(経営者・人事担当者・マネジャー、そして働く女性たち自身)がまずもって捨てなければならないのは、女性だけの努力に頼りきって女性の労働問題にアプローチしようとする発想です。僕たちは、女性をはじめとした「多様な働き方を求める人々」が、もっと働きやすくなるよう、自らの組織や職場のあり方を見直していく必要があるのです。
●なぜいま、「女性の働く」を科学するのか?
―著者・中原淳からのメッセージ
 このたび、『女性の視点で見直す人材育成―だれもが働きやすい「最高の職場」をつくる』という本をトーマツ イノベーションのみなさんと一緒に執筆させていただきました。この本の内容は、あえてアカデミックな言い方をすれば、「ジェンダー(文化的性差)の視点を取り入れた人材育成研究」ということになります。誤解しないでいただきたいのですが、同書は決して女性のためだけの本ではありませんし、ましてや男性のためだけの本でもありません。この本には 
 ・部下を持つリーダーやマネジャー
 ・社内の人材育成を担当する人事・研修担当者
 ・社員の採用・育成に責任を持つ経営者や経営幹部
の皆さんにぜひ知っていただきたい「これからの時代の人材育成のヒント」が凝縮されています。
●では、なぜ、わざわざジェンダーに着目して、企業内の人材育成を見直すのでしょうか?
 僕たちが働く職場では、日々、なんらかの機能不全が起こっています。こうした職場の機能不全は、順調にキャリアを積み上げている職場のマジョリティ(多数派)には、なかなか見えづらいものです。あるいは、これらの事実に気づいても、見えないふりをするかもしれません。一方、現代の職場では、育児・介護・ハンディキャップ・病気など、さまざまな事情を抱えながら働く人々――いわば職場のマイノリティ(少数派)が増えてきています。これから数十年のあいだに、おそらく「ダイバーシティ」のような言葉は、おおよそ「死語」になっていくでしょう。わざわざそんな言葉を使わずとも、おそらく職場は“そのようなもの”になっていくからです。しかし目下のところでは、組織が抱える問題のしわ寄せを真っ先に受けるのはいつも、そうしたマイノリティたちです。子育て中のワーキングマザー、家族の介護をしている人、病気を抱えつつ働いている人……彼らこそがまず、「職場の課題」に相対し、「うちの職場はココがおかしい!」と疑念を持ちはじめます。「さまざまな事情を抱えた人々が、やりがいを感じながら長く働き続け、かつ、幸せな人生を営むためには、何が必要なのか?」。これがいまの僕の、最も大きな関心事です。そして、それを考えていくうえでの「思考のファーストステップ」として、僕たちは、「ジェンダー(文化的性差)」の視点を選び取りました。誤解を恐れず言えば、男性中心文化がいまだ支配的な日本の職場において、女性には“最もメジャーなマイノリティ”としての側面があるからです。僕たちは信じています。今後、女性にすらやさしいチーム・職場・企業をつくれない人・組織は、ダイバーシティの荒波に直面したときに、まず間違いなく暗礁に乗り上げます。そうした職場は、魅力的な人材を採用することも、志溢れるプロジェクトを率いるリーダーを育成することも難しくなり、人手不足に苦しむことになるでしょう。未来の職場において結果を出し続けたいと願うマネジャー、優秀な社員に働き続けてほしい人事担当者・経営者……これらすべての人にとって、「女性視点での職場の見直し」は、今後の成否を大きく左右する試金石の一つとも言えます。ぜひ『女性の視点で見直す人材育成』を参考に、だれもが働きやすい「最高の職場」をつくっていただければと思います。
*中原 淳(なかはら・じゅん):立教大学経営学部 教授/同リーダーシップ研究所 副所長/立教大学BLP(ビジネスリーダーシッププログラム)主査/大阪大学博士(人間科学)
 1975年北海道旭川市生まれ。東京大学教育学部卒業、大阪大学大学院 人間科学研究科、メディア教育開発センター(現・放送大学)、米国マサチューセッツ工科大学、東京大学などを経て、2018年より現職。「大人の学びを科学する」をテーマに、企業・組織における人材開発、リーダーシップ開発について研究している。専門は経営学習論・人的資源開発論。妻はフルタイムで働くワーキングマザーで、2人の男の子(4歳と11歳 ※本書刊行時点)の父親でもある。 著書に今回発売となった『女性の視点で見直す人材育成』のほか、『企業内人材育成入門』『研修開発入門』『アルバイト・パート[採用・育成]入門』(以上、ダイヤモンド社)等多数。
*トーマツ イノベーション株式会社
 デロイト トーマツ グループの法人で2006年に設立。中堅中小ベンチャー企業を中心に、人材育成の総合的な支援を行うプロフェッショナルファーム。支援実績は累計1万社以上、研修の受講者数は累計200万人以上と業界トップクラス。定額制研修サービス「Biz CAMPUS Basic」、モバイルラーニングと反転学習を融合した「Mobile Knowledge」など、業界初の革新的な教育プログラムを次々と開発・提供している。著書に『女性の視点で見直す人材育成』『人材育成ハンドブック――いま知っておくべき100のテーマ』(ともにダイヤモンド社)がある。

| 日本国憲法::2016.6~ | 10:15 AM | comments (x) | trackback (x) |
2018.8.2 教育における量と質の充実 → 社会的性差を作るジェンダー教育は廃止すべき (2018年8月3、4、6、8、9、11、12日に追加あり)
    
       図1                  図2             
             ベネッセ教育総合研究所

       
            図3
  東京大学社会科学研究所・ベネッセ教育総合研究所  2018.3.6朝日新聞

(図の説明:図1~3のように、小学生では同程度である男女の理系性向は、中学・高校と年齢が進むに従って女性で下降する。これは、学校教育のみならず、保護者や社会から受ける社会的性差別への子どもの適応と考えられる。また、「賢人」や「物知り」と言えば男女とも男性をイメージしがちなのは、メディアを始め社会における女性蔑視表現の責任が大きい)

(1)多くの大人の感動を呼んだ沖縄14歳少女の「平和の詩」
 私も、*1-1に書かれているとおり、中学3年生の相良倫子さんが自作の「平和の詩」を沖縄全戦没者追悼式で朗読するのを聞き、感心して、100点満点中120点の出来だ思った。その詩の内容は、沖縄に育って郷土史を学び、先祖の話を聞いたり、「ひめゆりの塔」などで行われている解説を聞いたりしていれば書けると思うが、「マントルの熱を伝える大地を踏みしめ」「私の生きるこの島は、何と美しい島だろう」という現代っ子だから書ける科学的知識や見識を織り込んだたくましさを感じたとともに、相良さんは今後も伸びて欲しいと思った。

 しかし、途中で、「頭じゃなくて、その心で」と頭と心は異なるような見解を述べた時、私は100点満点中98点に減点した。何故なら、人間の心は心臓にあるのではなく頭にあり、頭で知識・経験・相手の立場を考慮する倫理観などを総合的に組み合わせて感情も作っているからだ。

 この詩に対し、岡本純子さんは、*1-2のように、「衝撃的」と表現しておられる。

(2)ジェンダーと教育
 日本にはまだ、「女子は文系、男子は理系」「女性は感情、男性は論理」というような偏見が残っており、理系に進む女性が少ないが、これについて、*2-1のように、東京大学社会科学研究所とベネッセ教育総合研究所が科学的な調査をしているのは面白い。

 結論から言って、「①小学生では理系分野に対する興味・関心に性差はない」「②男子は、小学生時点から自分が理系に向いていると考えている人が多く、この傾向は高校生になっても大きく下がらない」「③女子は、学校段階が上がるにつれ、理系教科に苦手意識を抱いたり、興味・関心が低下したりして性差が生じている」とのことである。

 その理由は、「女子は理系より文系に進んだほうがいい」という社会的に作られた性差(ジェンダー)があり、親がしっかり守れなければ、子どもはジェンダーに染まるからである。

 しかし、社会人に必要とされる論理的思考には理系・文系双方の基礎力を要するため、「男子だから」「女子だから」といった先入観なく、男女ともどちらも勉強しておくことが必要だ。

 そのような中、*2-2のように、北九州市は、理工系分野に進学・就職する理系女子(リケジョ)を増やすため、女子中学生を対象に「リケ女(ジョ)部」を行うとのことだが、リケジョが増えると異なる発想で技術も変わるため、よい取り組みだと思う。

(3)全国学力調査について ← 男女別にも集計して、原因究明してみては?
 文科省は、*2-3のように、2018年7月31日に、2018年4月に全国の小学6年と中学3年生が受けた全国学力調査の結果を公表し、理科でも解釈・記述が苦手としているが、解釈は知識や経験がモノを言うため、小中学生に解釈力を求めるのは酷である。それよりも、基礎的な論理や知識をしっかり身につけさせておくことが、大人になってからの調査力・思考力・解釈力を育てるためによい。また、せっかく調査をするのなら、男女別の得点やそうなる理由についても、背景を含めて正確に調査するのがよいと考える。

 なお、*2-3のように、中3理科の台風進路予想や風向きから特定の位置で予想される風向きを東西南北から選ぶ問題の正答率が37.8%に留まったそうだが、これは地形や気圧差など他の要素も関わる気象庁でも誤るファジーな問題であり、問いとして適格だろうか。また、ガスバーナーの空気の量を変えながら炎の色と金網につくススの量の関係を調べる実験で「変えない条件」を記述させる問題なら、私は、「まずガスの量」だと思ったため、「金網の位置」や「炎に金網を当てる時間」と答える人はキャンプでしか料理をしたことがない男性教諭ではないか?

 また、*2-4の「理科と算数・数学の勉強は好きか」「社会に出て役に立つと思うか」などについては、小中学生に好きかどうかを聞くよりも理解して好きになれる教え方や動機付けをするのが指導力だ。また、その知識を社会で使ったことがない小中学生に、「社会に出て役に立つか否か」を尋ねて勉強しない口実を与えるよりも、指導者が料理・製品の選択・環境保護のような身近なものにまで理科の知識を使っていることを、具体的・論理的に教えるべきである。

(4)女性の成果に対する過小評価
 *3-1のように、DNAの「二重らせん」構造は、女性物理化学者ロザリンド・フランクリンが撮影したDNA結晶のX線写真が「二重らせん」の形をしていたことからワトソンたちが思いついたもので、どちらも「二重らせん」の発見に重要な役割を果たした。しかし、ロザリンド・フランクリンを知って評価している人は少なく、その理由には当時の物理学会における女性の立場の弱さがあった。

 一方、日本では、現在でも、*3-2のように、企業の女性管理職11.5%で、役員が減り、課長級が増えたと報告されている。これについて、厚労省は「なり手が限られる役員が減ったことで全体を押し下げたが、部長・課長は増加しており、女性活躍推進の流れが後退したとは考えていない」と話しているそうだが、本当になり手が少ないのではなく、女性に対しては過度な謙虚さの要求、いちゃもん付け、業績の過小評価などによる不利益が残っていると私は考える。

 こう書くと、「そんなことはない」と言う人が多いので、極端でわかりやすい例を挙げると、サウジアラビアでは、*3-3のように、2018年6月24日、初めて女性の自動車運転が解禁され、これまでに数千人の女性が運転免許取得済で、産業界からは女性の雇用推進への好影響を期待する声が高まっているにもかかわらず、モスクで祈りをささげていた男性の中には、「サウジの女性には運転する十分な能力がない」と断言する人もいるわけだ。

 このように、極端なジェンダーの事例なら納得する日本人は多いが、その中間については、未だに「そんなことはない」「日本女性は能力や適性がないのだ」などと考えて憚らない人がいるのは問題である。

<感動を呼んだ14歳少女の「平和の詩」>
*1-1:https://ryukyushimpo.jp/news/entry-746561.html (琉球新報 2018年6月26日) 「平和の詩」がネットで反響呼ぶ 相良倫子さんの自作詩「生きる」 著名人もツイッターで絶賛
 「慰霊の日」の6月23日、沖縄県糸満市の平和祈念公園で行われた沖縄全戦没者追悼式で、浦添市立港川中学校3年の相良倫子さんが読み上げた自作の「平和の詩」がインターネット上で反響を呼んでいる。多くの政治家や芸能人、アーティストら著名人がツイッターなどで詩の内容や朗読を絶賛している。「平和の詩」の題名は「生きる」。不戦を誓い、未来の平和を築く決意が込められている詩の内容はもとより、追悼式での7分半に及ぶ力強い朗読にも温かい拍手が送られた。音楽評論家の湯川れい子さんは「素晴らしい決意の表明であり、見事な自作の詩、力の籠もった言葉でした」と評価した。朗読には「文字を読むことなく、輝きに溢(あふ)れた眼力」「この人の20年後を見守っていて上げて下さい。この人が輝ける日本でありますように」とつづった。人気ロックバンド、アジアンカンフージェネレーションのボーカル、後藤正文(ゴッチ)さんは「とてもいい。僕はこういう詩にこそ『愛国』を感じる。郷土への愛と、未来に手渡すべきもの」「何度観ても鳥肌が立つ。センテンスに合わせて表情が変わる。言葉と身体や感情の距離になにかがつかかっていないように感じる」などと絶賛した。相良さんの詩や朗読について4回に渡って投稿した。落語家の立川談四楼さんは「胸を打たれた。73年前の戦禍に想いを馳せ、戦没者を哀悼し、沖縄の美しさを謳い上げ、平和を希求するこの心。これを本当の愛国心と言うのだと。変に抑揚をつけない相良さんの読み方もよかった。名文は真っすぐに届くのだ」とつづった。漫才コンビ、ウーマンラッシュアワーの村本大輔さんは朗読の動画を示し、「今日はどのニュース番組もこれをどんどん取り扱って欲しい。すごい」と書いた。歴史学者の住友陽文さんは「名文とあると同時に、現代史の史料として長く保存されるべき文章だ」と絶賛した。相良倫子さんが朗読した「生きる」の全文や、追悼式での朗読の様子を伝えた記事、「平和の詩」に「生きる」が決まったときの会見の様子を伝える記事などを下記にまとめています。ぜひお読みください。
   < 平和の詩全文 >(原文のまま、沖縄県平和祈念資料館提供)
    生きる        浦添市立港川中学校3年 相良 倫子
    私は、生きている。
    マントルの熱を伝える大地を踏みしめ、
    心地よい湿気を孕んだ風を全身に受け、
    草の匂いを鼻孔に感じ、
    遠くから聞こえてくる潮騒に耳を傾けて。
    私は今、生きている。
    私の生きるこの島は、
    何と美しい島だろう。
    青く輝く海、
    岩に打ち寄せしぶきを上げて光る波、
    山羊の嘶き、    
    畑に続く小道、
    萌え出づる山の緑、
    優しい三線の響き、
    照りつける太陽の光。
    私はなんと美しい島に、
    生まれ育ったのだろう。
    ありったけの私の感覚器で、感受性で、
    島を感じる。心がじわりと熱くなる。
    私はこの瞬間を、生きている。
    この瞬間の素晴らしさが
    この瞬間の愛おしさが
    今と言う安らぎとなり
    私の中に広がりゆく。
    たまらなく込み上げるこの気持ちを
    どう表現しよう。
    大切な今よ
    かけがえのない今よ
    私の生きる、この今よ。
    七十三年前、
    私の愛する島が、死の島と化したあの日。
    小鳥のさえずりは、恐怖の悲鳴と変わった。
    優しく響く三線は、爆撃の轟に消えた。
    青く広がる大空は、鉄の雨に見えなくなった。
    草の匂いは死臭で濁り、
    光り輝いていた海の水面は、
    戦艦で埋め尽くされた。
    火炎放射器から吹き出す炎、幼子の泣き声、
    燃えつくされた民家、火薬の匂い。
    着弾に揺れる大地。血に染まった海。
    魑魅魍魎の如く、姿を変えた人々。
    阿鼻叫喚の壮絶な戦の記憶。
    みんな、生きていたのだ。
    私と何も変わらない、
    懸命に生きる命だったのだ。
    彼らの人生を、それぞれの未来を。
    疑うことなく、思い描いていたんだ。
    家族がいて、仲間がいて、恋人がいた。
    仕事があった。生きがいがあった。
    日々の小さな幸せを喜んだ。手をとり合って生きてきた、私と同じ、人間だった。
    それなのに。
    壊されて、奪われた。
    生きた時代が違う。ただ、それだけで。
    無辜の命を。あたり前に生きていた、あの日々を。
    摩文仁の丘。眼下に広がる穏やかな海。
    悲しくて、忘れることのできない、この島の全て。
    私は手を強く握り、誓う。
    奪われた命に想いを馳せて、
    心から、誓う。
    私が生きている限り、
    こんなにもたくさんの命を犠牲にした戦争を、絶対に許さないことを。
    もう二度と過去を未来にしないこと。
    全ての人間が、国境を越え、人種を越え、宗教を越え、あらゆる利害を越えて、
    平和である世界を目指すこと。
    生きる事、命を大切にできることを、
    誰からも侵されない世界を創ること。
    平和を創造する努力を、厭わないことを。
    あなたも、感じるだろう。
    この島の美しさを。
    あなたも、知っているだろう。
    この島の悲しみを。
    そして、あなたも、
    私と同じこの瞬間(とき)を
    一緒に生きているのだ。
    今を一緒に、生きているのだ。
    だから、きっとわかるはずなんだ。
    戦争の無意味さを。本当の平和を。
    頭じゃなくて、その心で。
    戦力という愚かな力を持つことで、
    得られる平和など、本当は無いことを。
    平和とは、あたり前に生きること。
    その命を精一杯輝かせて生きることだということを。
    私は、今を生きている。
    みんなと一緒に。
    そして、これからも生きていく。
    一日一日を大切に。
    平和を想って。平和を祈って。
    なぜなら、未来は、
    つまり、未来は、今なんだ。
    大好きな、私の島。
    誇り高き、みんなの島。
    そして、この島に生きる、すべての命。
    私と共に今を生きる、私の友。私の家族。
    これからも、共に生きてゆこう。
    この青に囲まれた美しい故郷から。
    真の平和を発進しよう。
    一人一人が立ち上がって、
    みんなで未来を歩んでいこう。
    摩文仁の丘の風に吹かれ、
    私の命が鳴っている。
    過去と現在、未来の共鳴。
    鎮魂歌よ届け。悲しみの過去に。
    命よ響け。生きゆく未来に。
    私は今を、生きていく。

*1-2:https://toyokeizai.net/articles/-/226656 (東洋経済 2018/6/25) 沖縄14歳少女が読み上げた「平和の詩」の衝撃、壮大な詩に込められた「生きた言葉」の数々
 本記事は隔週火曜日に「コミュニケーション力」に関するコラムを書いている岡本純子さんによる番外編コラムです。株主総会シーズン真っ盛りである。エグゼクティブへのコミュニケーションコーチングなどを生業としている筆者は、超少数株主の一員として、趣味と勉強を兼ね、役員たちの生プレゼンを見学に行き、勝手に採点して回っている。残念ながら、まるでロボットのように無表情、無感情、無味乾燥のプレゼンと応答ぶりに、がっくりと肩を落として会場を後にすることがほとんどだ。典型的なおじさんプレゼンに食傷していたところ、たまたまつけたテレビで、衝撃的なシーンを目にした。
●堂々としたたたずまい
 6月23日、沖縄慰霊の日に、自作の詩を披露した浦添市立港川中学校3年生の相良倫子(りんこ)さんの朗読シーンだった。ピンと背中を伸ばし、始まった瞬間から、その場の空気を支配する堂々としたたたずまいにくぎ付けになった。この詩の巧拙については、専門家ではないので、評する立場にはないが、隠喩、倒置、反復、対照法、畳みかける、列挙法、省略法、韻などといったレトリック(修辞法)を余すところなく活用していることは見て取れた。しかし、こうした技巧を超越して、聞き手の心をとらえたのは、何よりも五感を刺激するその言葉と伝え方だ。「マントルの熱を伝える大地」「心地よい湿気を孕(はら)んだ風」「草の匂いを鼻孔に感じ」「遠くから聞こえてくる潮騒」「岩に打ち寄せしぶきを上げて光る波」「山羊の嘶(いなな)き」「畑に続く小道」。聞き手の脳に情景が鮮明に浮かび上がる描写の数々。熱気、湿気、匂い、海のさざ波・・・・・・。筆者を含め、だれもが、摩文仁の丘に立っているかのような錯覚を覚えたことだろう。難しい言葉は一切ない。ただただ、美しい島の情景を写真でも見せるかのように、聞き手の脳裏に焼き付ける。(以下略)

<ジェンダーと教育>
*2-1:http://blogos.com/article/263115/?p=1 (BLOGOS 2017年12月4日) 「女子は文系、男子は理系」の意識はいつごろ生まれる?
 男子で国語が好きな子もいれば、女子で算数が得意な子もいます。「そんな当たり前のことを」と思う方もいるかもしれませんが、これまで、「男の子は理系のほうが得意よね」「女の子だから文系じゃない?」などと言われたことはありませんか?現在、“リケジョ(理系女子)”を増やす教育的な取り組みも行われていますが、まだまだ理系に進むのは男子が多い。では、こうした意識はどの時点で形成されるのでしょうか。ベネッセ教育総合研究所の調査から考えてみましょう。
●理系教科に対する興味・関心や向き・不向きに性差はない?
 小さい頃は、理科や算数への興味・関心について、男女差を感じなかったと思いませんか?どの子も、生き物や自然の不思議さや、計算や解き方のおもしろさなどを感じているものでしょう。そして、どの子も、それらの勉強がわかるようになったら「楽しい」と感じるものです。調査でも、そうした結果が出ています。【図1】は、「算数(数学)の考え方や解き方を『すばらしい』とか『ふしぎだな』と感じる」割合(「よくある」+「時々ある」)を示していますが、小学生では男女ともに7割強であるのに対して、高校生では男子が6割台、女子は約5割と、10ポイント以上も差があります。小学生段階では性差があまりみられなかった算数への興味・関心の割合が、中学生・高校生では徐々に差が大きくなっています。一方、【図2】をみると、小学生で、「算数は男子のほうが向いている」(「とても」+「まあ」)と思っている男子は3.5割、女子は2割で、女子よりも男子自身のほうが「算数は男子(自分)のほうが向いている」と思っています。しかし、高校生になると、女子の「そう思う」(「とても」+「まあ」)の割合が高くなり、男子よりも女子自身が、「数学は男子のほうが向いている(女子のほうが向いていない)」と考えるようになっていきます。【図1】と【図2】から、小学生の頃は、理系分野に対する興味・関心に性差はないということがわかりました。一方で、小学生の時点から、男子は自分自身が理系教科に向いていると考えており、高校生になっても理系分野に対する興味・関心が大きく下がっていません。それに対して、女子は学校段階が上がるにつれて、理系教科に苦手意識を抱きやすくなったり、興味・関心が大きく低下したりして、性差が生じていることがわかりました。
●子どもたちの文系理系意識は、いつ生まれる?
 もう少し、子どもたちの文系理系に関する意識を掘り下げてみましょう。【図3】では、小学4年生から高校3年生までの子どもに、自分のことを文系だと思うか、それとも理系だと思うかを尋ねています。小学生では、男女ともに、理系だと答える割合(「はっきり理系」+「どちらかといえば理系」)が男子は6割、女子は4割弱と、中学生・高校生よりも高いことがわかります。さらに、小学生女子は、文系よりも自分が理系だと考える子のほうが、1割弱多いということも保護者のほうにとっては意外な点かもしれませんね。では、中学生はどうでしょう。男女ともに、「どちらともいえない」が増えます。中学生になると、学習がグッと難しくなります。つまずく教科なども出てくる中で、自分が理系か文系かに迷いが出てくるのかもしれません。しかし、高校生になると、男女ともに「どちらともいえない」が減り、男女ともに文系の割合がぐんと増えるのです。これは、理系から文系に変わったというよりは、中学生時点で「どちらともいえない」と答えていた人が文系に流れたと読み取れます。保護者のみなさんも、高校時代を少し思い返してみてください。全体的に理系に進む生徒は減り、また、理系クラスは男子が大半で女子は少数派ではありませんでしたか? 【図3】からも、高校になると自分は理系だと回答(「はっきり理系」+「どちらかといえば理系」)する女子が減少していることがわかります。高校では、多くの場合、1年生で進路志望に合わせて文理選択をし、2年生では文系クラス・理系クラスに分かれます。いやがおうでも、自分が文系か理系かを明確にしなければいけません。そのため、「どちらともいえない」が減るのです。しかし、中には、「迫られて文系を選んだが、本当は理系も好き」、あるいは「理系の一部の教科は好き」という子どもたちも、もしかしたらやむをえず文系へ進んでいる可能性があると思われます。
●子どもの適性を早めに捉え、可能性を広げよう
 【図3】をみると、文系か理系かの自己認識は、最初から固定して変わらないものではなく、どちらにも変わる可能性があることがわかります。この調査で、文系か理系かの自己認識について同じ子どもの1年間の変化をみたところ、1年間で「文系に変わった」、あるいは「理系に変わった」という子どもが、小中高全ての学校段階で、それぞれ1割程度いました。また、「どちらともいえない」と迷っている子どもも一定程度いますので、特に、自分の適性への迷いが大きくなると思われる中学生のタイミングや、より早い小学生の段階で、学校や保護者は子どもの興味・関心に合わせてさまざまな体験をする機会を設けたり声かけをしたりすることができるといいですね。これからの時代は、理系・文系両方の素養や視点を持っていることで仕事の幅が広がっていきます。例えば、社会人に必要とされているロジカルシンキング(論理的思考力)は、理系・文系双方の力が素地となります。実際に、高い進学実績を誇る学校の中には文理選択をせず、全員が高いレベルの5教科7科目の学びを3年生まで続けるところがあります。文理の枠にとらわれずに、幅広い興味・関心や知識のつながりを育むことが社会で活躍するためには必要だと考えているからでしょう。「女子だから、理系より文系に進んだほうがいい」という意識にとらわれることなく、小さい頃から地域の自然教室に行ってみたり、図鑑を一緒に眺めたりすることで、自然科学に対する興味・関心を育てることができます。また料理のお手伝いの中から化学的な視点を得るという方法もオススメです。家庭や学校において多様な機会を用意することで、「男子だから」「女子だから」といった先入観なく、子どもの可能性を伸ばしていくことができるはずです。多くのお子さまが、男女という性別にとらわれず、自分に合った道を歩んでいけるようになれるとよいですね。
   <調査データ>
1.ベネッセ教育総合研究所「第5回学習基本調査」(2015年実施)
http://berd.benesse.jp/shotouchutou/research/detail1.php?id=4801
2.東京大学社会科学研究所・ベネッセ教育総合研究所 「子どもの生活と学びに関する親子調査2016」 http://berd.benesse.jp/shotouchutou/research/detail1.php?id=5095

*2-2:http://qbiz.jp/article/136113/1/ (西日本新聞 2018年6月21日) 「リケ女」育成へ職業体験事業 ものづくりのまち北九州市 全中学生に参加呼び掛け 
 北九州市は20日、理工系分野へ進学・就職する理系女子「リケジョ」を増やすため、夏休みに企業、大学の職場や研究室を体験してもらう市内の女子中学生対象の事業「リケ女(ジョ)部!」を行うと発表した。全国的にも珍しい取り組みという。市によると、理工系への進学は中学時代に決める生徒が多く、「ものづくりのまち」としてリケジョを増やそうと市内の女子中学生全員にチラシを配り、参加を呼び掛ける。協力するのは地元の安川電機、ゼンリン、西部ガス、スターフライヤーのほか、北九州市立大と九州工業大。各企業は事業内容を解説し、女性社員らとの交流会も設ける。大学では実験などを行い理工系分野への進学、就職イメージを育んでもらう。職場体験などは7月24日〜8月28日に順次実施。定員は約160人。参加は1人1企業か1大学に限る。申し込みはインターネットやはがきで。市女性活躍推進課=093(551)0091。

*2-3:https://digital.asahi.com/articles/DA3S13615529.html?_requesturl=articles/DA3S13615529.html&rm=150 (朝日新聞 2018年8月1日) 理科でも解釈・記述が苦手 小6・中3、学力調査
 文部科学省は31日、今年4月に全国の小学6年と中学3年が受けた全国学力調査の結果を公表した。調査は11回目で、国公私立学校の小6と中3の計200万人余りが国語と算数・数学、理科を受けた。結果の公表時期は例年より1カ月前倒しされ、教育現場では夏休み明けから授業に役立てようという動きもある。理科は2012年度、15年度に続いて3回目。国語や算数・数学と同様に、解釈や記述の力に課題が浮かんだ。自然現象に関する知識や情報を日常生活と関連づけて考えたり、実験の計画のため条件を考えて記述したりする問題の平均正答率が低かった。例えば中3理科(全体の平均正答率66.5%)では、台風の進路予想や風向きを表す図を見て、特定の位置で予想される風向きを東西南北から選ぶ問題の正答率が37.8%にとどまった。また、ガスバーナーの空気の量を変えながら炎の色と金網につくススの量の関係を調べる実験で、「変えない条件」を記述させる問題が出た。正答は「金網の位置」「炎に金網を当てる時間」などで、正答率は44.5%だった。調査とともに実施されたアンケートでは、理科と算数・数学への考え方も尋ねた。それぞれの勉強は好きかどうかの設問で、小中とも理科の方が算数・数学よりも肯定的な回答の割合が上回った。一方、「社会に出て役に立つと思うか」を問うと、肯定的な回答は、小6は算数90.3%、理科73.0%。中3は数学72.6%、理科56.1%で、小中とも理科が算数・数学より15ポイント以上低かった。都道府県別の平均正答率では、多くの教科で例年と同様に石川県や秋田県、福井県が上位だった。来年度から、中3向けに新たに英語の調査が導入される。

*2-4:https://digital.asahi.com/articles/DA3S13615529.html?_requesturl=articles/DA3S13615529.html&rm=150 (朝日新聞 2018年8月1日) 理科でも解釈・記述が苦手 小6・中3、学力調査
 文部科学省は31日、今年4月に全国の小学6年と中学3年が受けた全国学力調査の結果を公表した。調査は11回目で、国公私立学校の小6と中3の計200万人余りが国語と算数・数学、理科を受けた。結果の公表時期は例年より1カ月前倒しされ、教育現場では夏休み明けから授業に役立てようという動きもある。理科は2012年度、15年度に続いて3回目。国語や算数・数学と同様に、解釈や記述の力に課題が浮かんだ。自然現象に関する知識や情報を日常生活と関連づけて考えたり、実験の計画のため条件を考えて記述したりする問題の平均正答率が低かった。例えば中3理科(全体の平均正答率66.5%)では、台風の進路予想や風向きを表す図を見て、特定の位置で予想される風向きを東西南北から選ぶ問題の正答率が37.8%にとどまった。また、ガスバーナーの空気の量を変えながら炎の色と金網につくススの量の関係を調べる実験で、「変えない条件」を記述させる問題が出た。正答は「金網の位置」「炎に金網を当てる時間」などで、正答率は44.5%だった。調査とともに実施されたアンケートでは、理科と算数・数学への考え方も尋ねた。それぞれの勉強は好きかどうかの設問で、小中とも理科の方が算数・数学よりも肯定的な回答の割合が上回った。一方、「社会に出て役に立つと思うか」を問うと、肯定的な回答は、小6は算数90.3%、理科73.0%。中3は数学72.6%、理科56.1%で、小中とも理科が算数・数学より15ポイント以上低かった。都道府県別の平均正答率では、多くの教科で例年と同様に石川県や秋田県、福井県が上位だった。来年度から、中3向けに新たに英語の調査が導入される。

<女性の成果に対する過小評価>
*3-1:http://business.nikkeibp.co.jp/article/life/20061031/112822/ (日経ビジネス 2006年11月22日) 世紀の発見『二重らせん』がパクリで訴えられない理由、ノーベル賞科学者は「憎みきれないろくでなし」
 「知的財産の侵害で訴えてやる!」と、怒るほどのものではなくても、知識社会において、ちょっとした“パクりパクられ”の問題はよく起こる。「日ごろ力説していた持論が、会議でボスの口から発せられていた」とか「同僚が書いたこの企画書、どうも俺のアイディアっぽい」とか…。こうした数々のパクリ。こじれにこじれて裁判沙汰に発展する場合もあれば、逆に、いつの間にかパクった側のオリジナルとして既成事実化してしまう場合だってある。この違い、いったいどこにあるのだろう?
●輝かしい業績に残る一点のシミ
 見過ごせるくらいチッポケなパクリだとか、文句をつける暇がないとか、そうした事情に左右されるのは当然のこと。でも、もう一点、あまり気づかないけれど意外と重要なポイントがあるように思う。考える種は『二重らせん』の中にある。著者の米国人生物学者ジェームズ・ワトソンは、英国ケンブリッジ大学で研究仲間のフランシス・クリックとともに、DNA(デオキシリボ核酸)の二重らせん構造を“解明”した。1953年、弱冠25歳の春だ。そして、62年にノーベル生理学・医学賞を受賞した。本書は受賞から5年後の67年に、ワトソン自身が著した輝かしい業績の回顧録である。DNAの二重らせん構造の解明は、その後、生命の謎を一気に雲散霧消させただけでなく、遺伝子治療や食品開発などのバイオテクノロジー分野で次々と花を咲かせる土台にもなった。けれども、ワトソンの業績に、一点の“シミ”が付いている事実を知っている人はあまり多くない。ワトソンは、別の大学の女性物理化学者ロザリンド・フランクリンが撮影したDNA結晶のX線写真を、断りもなく自分たちの研究成果に取り込んでしまったのだ。『ネイチャー』に発表した論文でも、ロザリンドに対しては、「未発表の実験結果の全体像や考察を教えていただいたことで、非常に啓発された」と書くにとどまった。なお、ロザリンドは、58年に37歳で亡くなっている。周囲の連中も企てに加担したものの、ワトソンは論文の筆頭著者。50年以上も前の古い時代とはいえ、他人の成果を無断で使うとは、許された話ではない。それに、ロザリンドのX線結晶写真を見なければ、ワトソンの偉業は他の研究者の手に渡っていたかもしれない。
●「パクリ」と言われない重要ポイント
 ところが、無断使用が本書でさり気なくうち明かされた後も、ワトソンのパクリがノーベル賞剥奪のような大問題に発展することは決してなかった(これからもないだろう)。そしてワトソンはいま、「遺伝学の第一人者」として神格化されている。

*3-2:http://qbiz.jp/article/138341/1/ (西日本新聞 2018年7月30日) 企業の女性管理職11・5% 役員減り、課長級増える
 企業の管理職(課長級以上)に占める女性の割合は、2017年度で11・5%だったことが30日、厚生労働省の雇用均等基本調査(確報版)で分かった。女性役員が減り、前年度より0・6ポイント減少した。部長、課長相当職はそれぞれ上昇した。政府は20年までに指導的立場に占める女性の割合を30%とする目標を掲げているが、厳しい現状が浮かんだ。調査は17年10月、事業規模10人以上の約6千社を対象に実施。約3600社から有効回答を得た。その結果、課長級が9・3%(前年度8・9%)で0・4ポイント、部長が6・6%(6・5%)で0・1ポイント、それぞれ増加した。一方、役員は20・7%で2ポイントの減少となった。企業規模別で見ると、5千人以上の企業で6・2%、千〜4999人で6・5%、30〜99人で14・3%、10〜29人で19・2%と、大企業ほど少ない傾向が続いている。厚労省は「今回は、なり手が限られる役員が減ったことで全体を押し下げた。部長や課長は増加しており、女性活躍推進の流れが後退したとは考えていない」と話している。

*3-3:http://qbiz.jp/article/136293/1/ (西日本新聞 2018年6月25日) サウジ女性の車運転解禁 イスラム社会改革の象徴
 サウジアラビアで24日、女性の自動車運転が解禁された。イスラム教の厳格な解釈を背景に世界で唯一女性の運転を禁じていたが、ムハンマド・ビン・サルマン皇太子が推進する大規模な経済社会改革の一環として自由化に踏み切った。国民の多くが「改革の象徴」と歓迎する一方、保守派からは反発の声も聞かれた。首都リヤドの目抜き通りでは、24日午前0時(日本時間同6時)を過ぎたとたんに女性が運転する車が目につき始めた。全身を覆う黒い衣装でハンドルを握った女性らは「とても興奮しています」などと語った。地元メディアによると、既に数千人の女性が運転免許を取得済み。今後約600万人が免許を申請するとみられている。産業界からは、女性の雇用推進への好影響を期待する声が高まっている。イスラム教ワッハーブ派の厳格な教義が尊重されてきたサウジは極めて保守的な社会。映画や演劇の上演も最近まで禁じられていた。女性は全身を覆う衣装の着用を求められ、男性の許可がなければ就労も結婚もできない。車社会のサウジで、女性は家族や運転手の助けがなければ外出できず、社会参加を妨げる要因の一つと指摘されていた。ムハンマド皇太子は、原油依存からの脱却を目指す構造改革「ビジョン2030」を推進すると同時に、イスラム教の穏健化を進めると宣言、社会の自由化も推進している。ただ、改革への反対意見を強権で封殺しているとの批判もある。
   ◇   ◇
●ハンドル握り「自立」実感 保守派から反発 強権で異論封殺
 サウジアラビアの女性が24日、初めて運転席に座ってハンドルを握った。「ようやく自立できる」。女性たちは全身を覆う黒い衣装からのぞかせた目を、生き生きと輝かせた。世界で最も保守的なサウジが女性の自動車運転を解禁し「変革」の象徴的な一歩を進めた。だが異論を封殺する強権体制に揺るぎはなく、保守派の不満も根強い。自由が訪れると楽観するのは尚早だ。「自分の国で運転するのは初めて。わくわくする。サウジは変わります」。24日未明、首都リヤド中心部のタハリア通り。妹と兄を乗せたアブラさん(27)は日付が変わった直後、ハンドルを握って通りに繰り出した。まだ免許を持っていない20代のマダウィ・ザハラニさんは羨望(せんぼう)のまなざしだ。「コーヒーが飲みたければ、自分で運転して出かけられる。すごい!」。これまでは家族か運転手がいなければ、どこにも行けなかった。アミーラ・カーセムさん(21)は「長い間奪われていた権利がようやく手に入る。サウジ女性にだって何でもできると世界に示せる」。自動車学校の受講を申し込んだが「長い長い順番待ち」だという。原油に依存した経済からの脱却を急ぎ、広範な改革を推進するムハンマド皇太子は「世界と共存できる穏健なイスラム教」を取り戻すと宣言した。極端な保守性を打破し「普通の国」になることは、国外からの信頼と投資を獲得し国力を拡充するために必要。女性の運転解禁、映画と演劇の自由化はその流れにある。賛成意見ばかりではない。モスク(礼拝所)で祈りをささげていた男性ジャマル・アブワセムさん(50)は、女性の「急激な権利拡大」に嫌悪感を隠さない。「サウジの女性には、運転をするだけの十分な能力がない」と断言した。公務員のハリド・スルタンさん(40)は「女性が運転すれば男性を伴わず単独で外出できる。それを恐れる人が多い」と指摘。女性の行動を管理できなくなることを嫌がる男性が多いという。インターネット上には、運転する女性を脅迫するような内容の書き込みも目立つ。だが反対意見は前面に出てこない。複数の外交筋によると、サウジ当局は国民のネット上での発信や携帯電話の通信を徹底的に監視、王室批判の動きがあればすぐに摘発する。「皇太子に異を唱えるなんて、リスクが大きすぎて絶対無理」(30歳の男性リヤド市民)というのが国民の本音だ。運転解禁に公然と反対を表明したイスラム教指導者は拘束され、投獄されたままだ。

<教育は重要であること>
PS(2018年8月3日追加):私も、いちいちLGBT・LGBTと騒ぎすぎで、静かに必要な対応をすればよいだろうと思うが、自民党の杉田議員が、*4-1、*4-2のように、LGBTの人たちについて「彼ら彼女らは子どもを作らない、つまり『生産性』がない」としたことについては、①日本ではLGBTと呼ばれる人が実際よりも多くカウントされている ②杉田議員はじめ多くのメディアが、「生産性」という言葉を誤って使っている ③「個性」「多様性」という言葉の使い方も誤っている と考える。
 その理由は、①については、生物学的「性」(DNAの違いで決まる)と本人が認識する「性」が何らかの理由で異なる場合をLGBT(これは障害者)と呼ぶが、日本では教育などによって社会的に作られた性(いわゆる“男らしさ”“女らしさ”)に適合しない人まで、LGBTにカウントしているようだからだ。
 また、②の「生産性」の定義は、経済学で生産活動に対する労働・資本などの生産要素や資源から付加価値を産み出す効率のことであり、(家畜や養殖魚ではなく)人間が子どもを作ることを「生産」と呼ぶのは、経済学に無知であるだけでなく、誰にとっても人権侵害だ。
 さらに、③については、日本では、「個性」「多様性」という言葉を障害者に対して使うことが多いが、身長・体重と同様、能力・性格・嗜好なども人によって異なるのが当然で、それを「個性」「多様性」と呼ぶため、「個性」「多様性」を障害と同義に捉えるのは誤りだ。
 そして、リーダーやメディアが、このように誤った言葉を流布しながら、子どもに正しい日本語を覚えさせようというのは無理な話である。

*4-1:https://www3.nhk.or.jp/news/html/20180727/k10011552471000.html (NHK 2018年7月27日) 自民 杉田議員の「LGBTは生産性ない」に抗議集会
 自民党の杉田水脈衆議院議員が、LGBT、性的マイノリティーの人たちについて、「『生産性』がない」などという考えを示したことに対し、27日夜、当事者団体などが東京・永田町の自民党本部の前で抗議の集会を開きました。自民党の杉田水脈衆議院議員は今月発売された月刊誌で、LGBTの人たちについて、「彼ら彼女らは子どもを作らない、つまり『生産性』がない。そこに税金を投入することが果たしていいのか」などという考えを示しました。これについて、LGBTの当事者団体などは「許容できない」として27日夜、自民党本部の前で抗議の集会を開き、主催者の発表でおよそ4000人が参加しました。この中で、LGBTへの差別を禁止する法律の制定を求めている団体の原ミナ汰共同代表は「私たちの生き方に最低限の敬意を払ってほしい」と訴えたほか、ゲイやレズビアンの当事者などが「多くの人が傷ついている」「国会議員の発言として許されない」と口々に訴えました。そして集まった人たちが「他人の価値を勝手にはかるな」「差別をするな」などとシュプレヒコールをあげていました。杉田議員の考えをめぐってはインターネット上でも、「子どもがいない人や病気や障害がある人も排除している」とか、「生産性で人間の価値が決められるような社会にはしたくない」といった批判が相次いでいます。

*4-2:https://digital.asahi.com/articles/DA3S13619053.html?_requesturl=articles/DA3S13619053.html&rm=150 (朝日新聞 2018年8月3日) LGBT団体「不十分」 自民、杉田議員に指導
 自民党の杉田水脈(みお)衆院議員が同性カップルを念頭に「生産性がない」などと主張した問題で、安倍晋三首相は2日、記者団に「人権が尊重され、多様性が尊重される社会を目指すのは当然だ」と述べた。同党は同日、杉田氏を指導したことをホームページ上で明らかにしたものの、関係団体などからは「不十分」との指摘が出ている。自民党は、杉田氏が月刊誌への寄稿で、同性カップルを念頭に「子供を作らない、つまり『生産性』がない」などと主張したことに対し、「問題への理解不足と関係者への配慮を欠いた表現がある」として、杉田氏に今後注意するよう指導したとの見解をホームページに掲載。杉田氏は朝日新聞に対し、「真摯(しんし)に受け止め、今後研鑽(けんさん)につとめて参りたい」などとするコメントを出した。首相は視察先の宮城県東松島市で記者団の質問に応じ、杉田氏の主張について「自民党としてすでに見解を表明しているものと承知している」としたうえで、人権や多様性の尊重は「政府・与党の方針だ」と答えた。これに対し、性的少数者が抱える困難を解消する法整備をめざす全国組織のLGBT法連合会は「杉田氏が『指導』を受け止めた上で撤回も含めた対応を検討しているかなども明らかではないため、不十分であると言わざるを得ない。引き続き厳正な対応を求める」との声明を発表。国民民主党の大塚耕平共同代表は「(首相発言は)極めて表面的で、問題の深刻さについての認識を感じさせない」と批判している。

<女性が差別されないためには?>
PS(2018年8月4、11日追加):東京医大が、*5-1のように、①結婚や出産を機に職場を離れる女性が多いことを理由に ②系列病院などの医師不足を回避する目的で ③女子合格者数を抑えるため女子受験者の得点を改ざんし、国内で批判されていると同時に、海外メディアにも「大学の性差別」として報道された。日本国憲法は、14条で性別による差別を禁止しているが、「憲法を守る義務は公務員に限る」とする勢力に言わせれば、「私大や私企業が女性を差別しても違憲ではない。女子医大のように入学者を女子のみに限っている私大もあるのだから、お茶の水女子大のような公立大学を男女平等にするのが先だ」ということになる。これが、③について、初めから募集要項に男子○人、女子○人と書いてあれば問題なかったとされる理由だ。また、官庁や私企業も、同じ理由で採用時に受験者の得点を調整して採用したい男女比にしていると言われ、医大は「入学者数≒卒業者数≒就職者数」になるため同じ論理を採ったと思われる。
 しかし、そもそも①②の理由は、*5-2のように、女性が仕事と家事(子育てを含む)の両立を強いられるからで、それだけでハードな医師の仕事とやはりハードな子育てを両立するのは、人の2倍の体力を要するため、不可能なのである。それを回避するため、女性医師は比較的労働のきつくない診療科に集中する傾向があり、女性の割合が低ければそれを包含することができるが、女性の割合が高くなるとそれでは回らなくなるわけだ。
 一方、医療や教育などのやり直しが利かない仕事は、患者や保護者も、女性だからといって仕事以外の時間を家事に費やして勉強不足になっている人に担当されたくはないものだ。そのため、*5-2にもまだ書かれていないが、女性が能力を存分に発揮できる環境は、家政婦など家族以外の第三者に家事を委託して、女性が家事労働から解放され得る社会である。
 なお、東京医大の入試不正問題を受けて、文科省は、*5-3のように、全国に81ある国公私立大学の医学部医学科を対象に、入試の公正性を問う緊急調査を始めたそうだ。結果は興味深いが、法学部・経済学部・商学部なども非常に男子の割合が高いため、合格者の男女別割合調整は、医学部だけでなくいろいろな学部で、またさまざまな形で行われていたのかも知れない。


      日本国憲法14条     東京医大入学者   上   女性管理職割合推移
                         医師の男女別就業率

(図の説明:憲法には男女平等が規定されており、私は国民全員が憲法を護るべきだと思うが、公務員が護ればよいという説もある。また、医師になった女性が仕事を継続する率は男性と比較して遜色ないが、特定の診療科に集中したり、子育て期に一時退職し、後にパートで復帰する人も多い。日本では、女性管理職の割合も低いが、これらは働く女性に家事を押し付けた上で、その責任を女性に取らせているのが原因だ)

*5-1:http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201808/CK2018080302000147.html (東京新聞 2018年8月3日) 女子減点、合格率抑える 東京医大入試 高い離職率理由
 東京医科大(東京都新宿区)の一般入試の得点操作疑惑で、女子受験者の得点を一律に減点する際、年度ごとに決めた係数を掛けたとみられることが関係者への取材で分かった。女子合格者を全体の三割前後に抑える目的があったとされ、二〇一一年度入学者の試験以降、女子の合格率が男子を上回ったことはなかった。結婚や出産を機に職場を離れる女性が多く、系列病院などの医師不足を回避する目的だったというが、性別を理由とした得点操作が明らかになるのは極めて異例だ。東京医大は文部科学省の私大支援事業を巡る贈賄罪で前理事長らが在宅起訴された事件を受け、弁護士に委託して内部調査を実施している。この過程で得点操作を把握したとみられ、来週にも公表見通しの調査結果に、上層部の関与や意思決定の経緯が盛り込まれるかどうかが焦点。東京医大医学部医学科の一般入試では、マークシート方式の一次試験と面接や小論文による二次試験が課される。関係者によると、大学幹部らは一次試験の結果などを勘案し、「90%」「85%」といった係数を決定。それを女子受験者の結果に掛けて、二次試験に進む女子受験者を恣意(しい)的に少なくしていたという。募集要項に出願要件や定員などは記載されているが、男女別の定員は明記されていない。受験者側に得点操作の説明はなかった。東京医大によると、〇九年度一般入試の受験者数に対する最終的な合格率は男子7・9%、女子5・0%で、合格者に占める女子の割合は24・5%。一〇年度は男子8・6%、女子10・2%で女子が合格者の38・1%を占めた。一一年度以降の合格率は男子4・8~8・8%、女子2・9~6・4%で推移。女子が男子を上回ることは一度もなく、一律減点が固定化されたとみられる。一八年度は女子が合格者に占める割合は17・5%に下がった。事情を知る関係者は「女性医師は結婚や出産で職場を離れたり、深夜勤務ができなくなったりして、偏在の問題が起きる。これを避けるため、女子合格者を三割程度になるよう調整していたようだ」と話した。
◆海外メディア速報「大学の性差別暴露」
 海外メディアも二日、相次いで速報、高い関心をうかがわせた。ロイター通信は東京発で、安倍政権が「女性活躍社会」を掲げ、出生率向上を目指していると指摘。だが現実は「女性は今なお就職で苦戦を強いられ、出産後の職場復帰でも困難に直面している」などと報じた。英BBC放送(電子版)も「日本の有名医科大学の一つが女子受験者の得点を改ざんしていた」として、インターネット上で激しい抗議がわき起こっていると伝えた。国会議員や経営者などの女性比率が極めて低い現状の改善に日本政府が取り組む中で、東京医科大の不正疑惑が明らかになったのは皮肉だとの声も報じた。中国メディアは「大学の性差別が暴露された」と驚きをもって伝えた。中国でも企業や研究機関の採用などで男性が優先されることが問題視されており、関心が高まっている。

*5-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180804&ng=DGKKZO33769990T00C18A8TM1000 (日経新聞 2018年8月4日) 女性が職場進出 企業期待の戦力に 、家庭との両立・管理職登用になお壁 パラダイムシフト(4)
 この30年、女性の職場進出は目覚ましい。結婚退社が職場の不文律だった昭和と比べて格段に働きやすくなっている。育児休業などを活用して出産後の就業継続も可能になった。半面、管理職比率が伸び悩むなど課題も残る。女性が力を存分に発揮するには、さらなる職場風土の見直しが不可欠だ。「会社を辞めたら『だから女は…』と言われる。後輩の女性のためにも辞められなかった」。野村証券の専務執行役員、鳥海智絵氏は入社当時を振り返る。1989(平成元)年に総合職としてキャリアをスタートし、今春まで野村信託銀行社長を務めていた。大手銀行トップに女性が就くのは初めてだった。86年施行の男女雇用機会均等法が男性と伍して働く道を開いた。時代はバブル末期。「社内全体が忙しく、性別に分け隔てなく仕事を任せてもらえた」。入社7年目に社費で米国スタンフォード大学に留学し、経営学修士(MBA)を取得。今日のキャリアの礎を築いた。「評価は平等。女性だからと不利を感じたことはない」と言い切る。総務省「労働力調査」では、女性の非農林業雇用者は89年1738万人から17年2564万人へと48%増。同期間の男性の増加率10%を上回る。後押ししたのは均等法。「大卒採用は男子限定」「女性は結婚したら退職する」――高度経済成長に許容されていた男女差別を封じた効果だ。ただし鳥海氏のように職場環境に恵まれた事例は多くない。大半の企業は女性をどう戦力化すれば良いかが分からなかった。関西学院大学准教授の大内章子氏は中高で鳥海氏の同級生だ。平成元年に大手商社に総合職として就職したが、3年で辞めた。商社には「OL」と呼ばれる先輩女性が多数いた。主に事務を担い、男性とは役割も責任も異なる。大内氏は男性総合職と同等に残業や休日出勤をこなす一方で、お茶くみなどOLの役割も求められた。「朝と午後3時に全員にお茶を配る。一人ひとり使う湯飲みや好みのお茶の温度が違う。覚えるのが大変だった」。両方に身を置き、企業社会の矛盾を感じた。男性は家のことは妻任せ。残業は月100時間を超える。「女性の私が結婚・出産したら、男性のようには働けない。この社会って、おかしい」。解決の糸口を探ろうと退社を決意。研究者の道を選んだ。折しもバブル経済が崩壊し、企業は女性活躍に智恵を絞る余裕がなかった。せっかく大学で学び、就職しても結婚・出産後に仕事との両立の壁に直面し、退社した女性も多い。経済協力開発機構(OECD)調査によれば日本は高学歴女性の就業率が著しく低く、この当時の負の遺産を今も引きずっている。変化は90年代後半に訪れる。バブル経済崩壊後の余剰人員の見直しが一巡。少数精鋭で経営を強化しようと企業は考え、均等法以降、社内に増えていた女性に目を向けた。男性とは異なる発想・体験をイノベーションにつなげるダイバーシティ(人材の多様性)の視点だ。日本IBMは98年に「女性のさらなる活躍支援」を宣言した。翌年東京都内で会社の本気を伝える“総決起集会”を開催。北城恪太郎社長(当時)が全国から集結した1500人の女性社員に「人類の半分は女性。男性だけに頼った経営では優秀な人材を集めきれない」と意識改革を訴えた。2000年代に入ると一部の先進企業は「女性活躍推進室」(帝人)や「ダイバーシティ・ディベロップメント・オフィス」(日産自動車)など専門部署を立ち上げ、女性活躍を経営戦略に据えた。ただ大半の企業はこの時期も、少子化対策として子育て支援を拡充するにとどまっていた。女性が能力を存分に発揮できる環境を整えようとは考えていなかった。その証拠に、リーマンショックで景気が冷え込むと、再び企業は女性活躍への関心を失う。企業社会全体が女性活躍にようやく真剣に向き合うのは10年代以降。人口減少が経済に影を落とし始めてからだ。「女性が輝く社会を実現する」。安倍晋三首相は13年2月に国会の施政方針演説でこう宣言し、政府は女性活躍推進に大きく舵(かじ)を切った。女性の登用計画づくりを企業に義務付ける女性活躍推進法が16年に完全施行されるなど、女性活躍の動きは企業と行政を巻き込んで加速している。「採用の門戸が広がり、結婚や出産が就業継続のハードルではなくなった。この30年で女性が働きやすい制度や仕組みは整った」と鳥海氏は指摘する。ただ、男女格差の解消はいまだ実現していないとみる。「責任が伴う仕事は男性に優先的に配分される。こうした経験の積み重ねでキャリアに差が開き、女性は管理職に就きにくい。職場内でも性別役割分担を見直さないと女性の活躍は実現しない」

*5-3:http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201808/CK2018081002000279.html (東京新聞 2018年8月10日) 医学部入試 公正性を調査 文科省、全国81大学を対象に初実施
 東京医科大(東京都新宿区)の入試不正問題を受け、文部科学省は十日、全国に八十一ある国公私立大学の医学部医学科を対象に、入試が公正かどうかを問う緊急調査を始めた。回答は二十四日が期限。分析した上で、大学名も含めて公表するとしている。文科省が入試不正に関する全国調査をするのは初。調査はアンケート方式で、入試選抜に関する学内規則・マニュアルの有無や、過去六年間の男女・年齢別の受験者数や合格者数、その結果についての大学としての分析を質問。さらに、特定の受験者や性別、年齢、属性によって、事前の説明なく特定の加点を行ったことがあるかについても聞く。男女や年齢などによって合否に差異を設けたことがないと答えた場合、募集要項や規定に沿って行われたことを示す資料の有無も問う。同省は「数字に乖離(かいり)があり、合理的説明がされていない場合は、個別に調査する」としている。林芳正文科相は十日の閣議後会見で「各大学には誠実に回答いただきたいと要請した」と述べた。

<生物系リケジョの視点から>
PS(2018年8月6日追加):私は、自然に近い佐賀県で育った生物系のリケジョで、仕事では公認会計士・税理士として知識と経験を積んだため、農業の産業化について考えれば右に出るものはいないと自認していたが、そういう女性は想定外のせいか、メディアや一般有権者にはそう考える人が少なかった。これは、先入観が女性に対する過小評価や女性差別を作る一例であり、よく知らない第三者による評価の限界でもある。
 その私は、①農業の規模拡大やエネルギー変換によるコストダウン ②付加価値の上昇 ③輸出産業化 などを提唱し、そのうち①は次第に進みつつある。②③も進んではいるが、日本の場合は、*6のように、輸出するのに相手のニーズに合わせるのではなく、和食や高価格品にこだわりすぎているのが、今後の限界になるだろう。
 茶に関しては、先日、上海で感心したのだが、中国では、霊芝、金蓮、甘片、青花、留留、黄仙、黒玉などいろいろな薬効のあるお茶が生産されており、工夫が多い。一方、日本は何百年も緑茶だけであり、馬鹿の一つ覚えが過ぎるのではないかと思う。ちなみに、中国女性に太った人が少ないのは、これらの茶や野菜に含まれる物質が原因のようだ。
 そのため、食品を健康の元と捉えれば、中国は必ず衛生的なよい環境でそれらの食品を作ってもらいたいし、日本は高価で強制的に動物性脂肪を摂らされる霜降り和牛や緑茶のみを自慢する状況から、早く卒業してもらいたい。

*6:https://www.agrinews.co.jp/p44803.html (日本農業新聞 2018年8月5日) 和食ブーム、アジア向け輸出けん引 牛肉・日本酒100億円超 18年1~6月貿易統計
 2018年上半期(1~6月)の農畜産物や加工品の輸出額で、牛肉や日本酒などの品目で過去最高を更新していることが、財務省の貿易統計で分かった。牛肉は、昨年に輸出が再開された台湾がけん引し、日本酒は日本食ブームが追い風となって、共に上半期で初めて100億円を突破した。緑茶は欧米で支持を集め、花きはベトナム向けが好調で、大きく輸出を伸ばしている。
●緑茶・花好調 品目に偏りも
 上半期の国産牛肉の輸出額は前年同期比37%増の108億円、輸出量は44%増の1544トンで、共に統計がある1988年以降で最高。台湾など新興市場を中心に和牛の認知度が高まった。高級部位のサーロインに加え、モモ肉など低級部位も増え、数量の伸び率が大きかった。国・地域別では昨年9月に輸出が再開した台湾が首位となり22億円、322トン。東京都内の輸出業者は「現地の消費者で和牛の認知度が上がり、食べ方が広まっている。需要が旺盛だ」と話す。金額で2番目に多かったのはカンボジアで36%増の20億円。冷凍サーロインを中心に、輸出量は46%増の288トンだった。日本酒は金額が前年同期を22%上回る105億円で、輸出量は14%増の1万2722キロリットルとなった。日本酒造組合中央会は「海外での日本食レストランの増加が後押しした」と分析する。国・地域別で輸出額が最大だったのは米国で、2%増の31億円。次いで、中国(7割増の18億円)、香港(4割増の17億円)が続いた。上半期で初めて中国が香港を上回った。緑茶は2%増の69億円で、上半期の過去最高を更新した。国・地域別で輸出額が最も多いのは米国で、前年同期比5%増の29億円。ドイツが24%増の6億円だった。日本貿易振興機構(ジェトロ)農林水産食品部は「近年の抹茶ブームに加え、米国や欧州で高級な煎茶の消費が増えている」とみる。花きも、これまでで最も多い90億円で、8%増だった。特に顕著な伸びを見せたのはベトナムで、輸出額は56%増の25億円。全国花き輸出拡大協議会は「公共事業や個人宅向けで日本産植木の使用が増えている」と分析する。最大の輸出先となる中国は11%増の42億円だった。農林水産物・食品の輸出は主力品目が好調だが、全体で見ると伸びる品目に偏りが出ている。そのため17年通年の輸出実績は前年比8%増の8071億円で、伸び率が鈍化した。政府は19年に輸出額を1兆円に増やす目標を掲げるが、目標達成には成長品目の幅を広げられるかが課題となる。

<誤った日本語遣いと教育への影響>
PS(2018年8月8日追加):*7には、「線路や駅舎などの固定資産は自治体が保有して維持費を負担し、運行はJR九州が行う『上下分離方式』を沿線自治体に提案する」と書かれているが、これは内容以前に言葉遣いがおかしいので、子どもや一般の人に誤った日本語を覚えさせる。つまり、上下分離とは上下を分けることで、所有権と使用権を分けることではない。
 しかし、この際、自治体は、JR九州が価値が低いと判断した固定資産を収益還元価値で安く購入し、①観光なども含めて有効に利用できる私鉄(例えば、ロマンスカーを走らせて箱根を観光地にした小田急電鉄や東横線沿線を高級住宅地にした東急電鉄等)に売却又はリースしたり ②地下に送電線を敷設し、1階は自転車・歩行者専用道にし、2階は自動車道、3階には鉄道もしくはリニアを走らせたりすれば、より面白い展開になるかもしれない。

*7:http://qbiz.jp/article/138856/1/ (西日本新聞 2018年8月8日) 日田彦山線 JR九州が上下分離提案へ 自治体負担増で反発
 昨年7月の九州豪雨で一部区間が不通となっているJR日田彦山線について、JR九州は、線路や駅舎などを自治体が保有、維持費を負担し、同社が運行する「上下分離方式」を沿線自治体に提案する方針を示した。赤字が続く路線維持へ抜本的な収支改善策が必要との考えだが、負担増となる自治体からは反発の声が相次いでいる。今年4月に始まったJR九州と福岡、大分両県などの沿線自治体による復旧会議では、来年4月までに鉄道による復旧策と復旧後の継続的な運行確保について議論を終え、速やかに着工することを確認している。ただJR九州によると同線は利用者の減少が続き、不通区間(添田−夜明)の2016年度の輸送密度(1キロ当たりの1日平均通過人数)は131人、収支は2億6600万円の赤字。旧国鉄時代に路線維持の目安とされた2千人を大きく下回っている。青柳俊彦社長は会見で、上下分離方式について「(次回以降の復旧会議で)議論すると思うし、提案しないといけない」と表明。また「(現在自治体が提言している)観光振興策などでの利用促進では(赤字解消は)難しい」として、自治体による復旧費の軽減策と復旧後の運行支援策が固まるまでは、復旧に着手しない考えを示した。自治体側は、復旧費の負担には柔軟に対応する方針だが、継続的に費用負担が増える上下分離方式に否定的。福岡県の小川洋知事は7日の定例会見で「上下分離は考えていない」と述べた。大分県の広瀬勝貞知事も「議論する気持ちはさらさらない」と批判、同県日田市の原田啓介市長も「レールを使うことでの九州への経済効果や貢献を真摯(しんし)に考えてもらいたい」と訴えている。JR九州と自治体の溝は大きく、来年4月までに議論が終わるかは不透明な状況だ。

<頭の固い選択は癌治療の発展も遅らせること>
PS(2018.8.9追加):*7-1、*7-2のように、公約を果たすべく最後まで辺野古新基地反対貫いた沖縄県知事の翁長氏が、2018年8月8日に、67歳で膵臓癌により亡くなったのは残念だ。私は、辺野古新基地建設に伴う埋め立て承認の撤回は、知事に就任してすぐ行えばよかったのにと思うが、命を削ってでも主権者との公約を守ったのは政治家として尊敬に値する。
 しかし、癌の標準治療には疑問が残った。何故なら、人間ドックで発見したステージ2の早期癌に標準治療(手術と抗がん剤治療)を行った結果、副作用でみるみる痩せて頭髪がなくなり、死期を早めたように見えるからである。癌の標準治療は、数年の延命を目的として患者に副作用による多大な犠牲を強いるが、その割には、たいした延命もできていないのが実状だ。
 にもかかわらず、*7-3のように、厚労省は「標準治療」の適用を進め、「標準治療」を受けた患者の割合が上がったという調査結果が出ている。しかし、標準治療の化学療法は、癌細胞のみを特定して叩くわけではなく、激しく細胞分裂の起こっている細胞をすべて叩くため、副作用が大きくなるわけだ。一方、免疫療法は、もともと人間に備わっている免疫を利用するため、癌細胞だけを特定して叩くことができ、正常な細胞までは殺さず、癌が消えることもある。従って、外国では既に「免疫療法で癌は治せる時代になった」と言っているのに、厚労省が「標準治療」に固執しているのは変なのだ。確かに、免疫療法で癌を治せるようになれば、化学療法の薬剤を販売している会社が儲からなくなったり、放射線治療の専門医がいらなくなったりするかもしれないが、医療は患者の回復と社会復帰を第一に考えるべきであるため、もう「効果と副作用(失う機能も含む)」に関する正確で科学的な比較をする時に来ている。

 
 2018.4.10Yahoo           2018.8.9東京新聞ほか   
   癌治療前                癌治療後

(写真の説明:2018年4月の癌治療前の翁長知事と、2018年6月以降の癌治療後の翁長知事を比較すると、癌治療によって激ヤセし頭髪も抜けたことがわかる。しかし、その代償によって実現した延命期間は、マイナスだったかもしれない) 

*7-1:http://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/296082 (沖縄タイムス社説 2018年8月9日) [翁長雄志知事急逝]命を削り公約守り抜く
 翁長雄志知事が8日夕、膵臓(すいぞう)がんのため、入院中の浦添市内の病院で急逝した。67歳だった。そのわずか1時間半ほど前、謝花喜一郎副知事が県庁で記者会見し、知事の職務代理を置くことを発表したばかりだった。あまりにも突然の訃報というしかない。翁長知事は4月に膵臓の腫瘍の摘出手術を受け、ステージ2の膵臓がんだったことを公表していた。5月に退院した後は、抗がん剤治療を受けながら県議会や慰霊の日の式典など公務をこなしてきた。しかし新基地建設を巡り埋め立て承認撤回を表明した7月27日の会見以降、公の場には姿を見せていなかった。がんは肝臓にも転移し、7月30日に再入院していたという。糸満市摩文仁で開かれた慰霊の日の沖縄全戦没者追悼式で、知事は直前までかぶっていた帽子を脱ぎ、安倍晋三首相を前にして、声を振り絞って平和宣言を読み上げた。「新基地を造らせないという私の決意は県民とともにあり、これからもみじんも揺らぐことはありません」。翁長知事は在任中の4年間、安倍政権にいじめ抜かれたが、この姿勢が揺らぐことはなかった。安易な妥協を拒否し、理不尽な基地政策にあらがい続ける姿勢は、国際的にも大きな反響をよんだ。知事は文字通り命を削るように、辺野古反対を貫き、沖縄の自治と民主主義を守るために政府と対峙(たいじ)し続けたのである。その功績は末永く後世まで語り継がれるに違いない。心から哀悼の意を表したい。
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 翁長知事は政治家一家で育った。旧真和志村長だった父助静さんは、軍用地の一括払いなどを巡る「島ぐるみ闘争」の超党派代表団に選ばれ、沖縄の声を全国に伝えた。元副知事の兄助裕さんは、1994年の知事選に立候補し「保革を超え、県民の心を一つにした県政を」と訴えた。翁長知事は父親や兄から保守中道の姿勢を受け継ぎ、県民が心を一つにして基地問題に取り組むことが必要だと説き続けた。仲井真弘多前知事が2010年11月、再選を期して立候補した時、辺野古反対を公約に掲げるよう仲井真氏に直談判したのは翁長知事である。4年前の知事選では翁長氏が仲井真氏に10万票近い大差をつけて当選、保革を超えた新しい政治潮流の台頭に全国から多くの期待が寄せられた。
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 公選法により後継を選ぶ知事選は、県選挙管理委員会に死亡を通知後、50日以内に実施される。9月中となる見込みだ。県政奪還を狙う自民党県連などでつくる候補者選考委員会は既に宜野湾市の佐喜真淳市長の擁立を決めている。県政与党や知事を支える県選出国会議員、オール沖縄の代表は、一日も早く今後の対応を協議し、志半ばに倒れた翁長知事の遺志を受け継ぐ後継候補を決めなければならない。県内政治の流動化が一気に加速しそうだ。

*7-2:http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/obituaries/CK2018080902100005.html (東京新聞 2018年8月9日) 翁長沖縄知事が死去 辺野古阻止、政権と対立
 米軍普天間(ふてんま)飛行場(沖縄県宜野湾(ぎのわん)市)の名護市辺野古(へのこ)への移設に伴う新基地建設阻止を掲げ、反対運動の象徴的存在だった翁長雄志(おながたけし)知事が八日午後六時四十三分、膵(すい)がんのため同県浦添市の病院で死去した。六十七歳。葬儀・告別式などは未定。翁長氏は新基地建設を巡り、七月に埋め立て承認撤回方針を表明しており、九日に県が沖縄防衛局から弁明を聞く聴聞が実施される予定だった。死去は新基地建設問題に大きく影響する可能性がある。職務代理は副知事が務める。任期満了に伴う知事選が十一月投開票の予定だったが、公選法では、後継を選ぶ知事選は県選挙管理委員会に死亡を通知後、五十日以内に実施されることになっており、九月中に前倒しされる見込み。翁長氏は四月に受けた人間ドックがきっかけで膵がんが判明。手術を受け病名を公表、闘病中だった。謝花喜一郎(じゃはなきいちろう)副知事によると、翁長知事は七月三十日に再入院。今月四日、病院で面会した際には、自ら意思決定できない状況になった場合などの対応を任された。「承認撤回は自分でしっかりやりたい」と話したという。七日から意思決定に支障が出る状態になった。謝花氏は後継については「聞いていない」と説明した。翁長氏は七月二十七日に埋め立て承認の撤回表明の記者会見に臨んだ後、検討していた東京出張を見合わせるなど、公の場にほとんど姿を見せていなかった。翁長氏はこれまで、十二月の任期満了に伴う知事選への態度を表明しておらず、建設反対派の候補者擁立の動きも停滞している。反対派は死去を受け、候補者調整を急ぐ方針だ。一方で移設を進める政権与党は、宜野湾市の佐喜真淳(さきまあつし)市長の擁立を決めている。翁長氏は那覇市出身。一九七五年法政大卒。会社役員を経て八五年に那覇市議に初当選し、県議、那覇市長を歴任し、市長四期目の途中で二〇一四年に県知事選に初当選した。沖縄県によると、職務代理は八~十二日は謝花副知事、十三日から当分の間は富川盛武(とみかわもりたけ)副知事が務める。

*7-3:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180802&ng=DGKKZO33674800R00C18A8CR8000 (日経新聞 2018.8.2) がん標準治療 広がる、国立がんセンター 実施率、6項目で上昇
 国立がん研究センターは2日、2014年にがんと診断された患者のうち、専門医が推奨する治療法の「標準治療」を受けた患者の割合が73%だったとの調査結果を公表した。前年を1ポイント上回り、胃がんや肺がんなど9項目の標準治療のうち6項目で前年の実施率を上回った。同センターは「標準治療を受けられる体制が一定は整備されている」と分析している。調査では全国の病院424施設でがんと診断された約56万人分のデータを分析。大腸がん、肺がん、乳がん、胃がん、肝臓がんの5種類それぞれの標準治療と、各臓器に共通する計9種類の標準治療の実施状況を調べた。昨年公表した13年分より病院数が約130施設増加し、対象人数も約11万人増えた。最も実施率が高かった肝臓がん切除の初回手術前に行う肝臓の機能検査で90.9%。前年より1.4ポイント減ったが9割を超えた。初期の肺がんに対する手術や放射線治療も88.7%と高かった。一方、肺がんの手術後に行う抗がん剤治療は44.1%、乳がんで乳房切除後に再発リスクが高い患者が受ける放射線療法は35.7%にとどまっていた。調査の公表は今年で3回目。実施率の全体平均は初回が68%、2回目が72%、3回目の今回が73%だった。標準治療を実施しなかった理由のうち、患者などの希望や他の病気との兼ね合いなどの合理的な理由で取りやめた事例を除くと、9つの標準治療項目のうち6つで実施率が推計90%以上だった。国立がん研究センターの東尚弘がん臨床情報部長は「治療の質を充実させるため、各病院は標準治療を実施していない理由を詳しく調べ、適切に治療方針を検討したのかどうかを検証してほしい」と求めている。
<標準治療>医学的な根拠に基づいた学会のガイドラインなどに沿った専門医らが推奨する治療方法。一般的により多くの患者に有効であるとされるが、実際の患者によっては併せ持つ病気や体の状態によって避けた方がいい場合もある。がん分野では、かつて病院や医師によって同じ患者の状態でも治療法が大きく異なることもあった。このため2007年に施行したがん対策基本法では、全国どの病院でも標準治療を受けられる医療体制の整備が主要政策の一つになっている。

<厳しい環境で生きてきた女性は、生産性の低い税金の無駄遣いや甘ったれは嫌いである>
PS(2018年8月11日追加):*8に、「①森林の所在地に住所のない不在村者の保有が4分の1に及ぶ」「②所有者不明の林地も2割を超えた」「③全市町村の7割以上で林務担当者が0~2人しかいない」「④森林の多面的機能を維持しつつ豊かな山を次代につなぐのは、国民の責務だ」と書かれている。
 確かに、④のために森林環境税が創設されたのだが、①は、森林の管理を市町村か誰かに委託すべきであり、②は、固定資産税も払っていないだろうから市町村が収容して合理的な管理・使用を考えるべきで、ここまで国民全体に負担させるのは甘えすぎだ。また、③は、各市町村に担当者をおくとコストがかかるため、県に専門家である担当者を置き、市町村は県と協調しながら機械化された森林管理を行えばよいと考える。つまり、税金や補助金に頼って無駄遣いするのではなく、森林資源をうまく活用して最大の税外収入を得るくらいの姿勢があって欲しい。


  山口県の杉    吉野杉    木曽ヒノキ     青森ひば     2018.7.13
                                     西日本新聞

(図の説明:木材も、付加価値の高いものは「吉野杉」「木曽ヒノキ」「青森ひば」などのブランド名があり、計画的に育てている。また、林業も一番右の図のようにスマート化されつつあり、やり方によっては魅力的な産業になりそうだ)

*8:https://www.agrinews.co.jp/p44857.html (日本農業新聞 2018年8月11日) 山の日 みんなで森を生かそう
 森のため息が聞こえるだろうか。放置されたままの森林が人の手入れを待っている。11日の「山の日」に、森林の管理を考える。日本は国土の7割を森林が占める。急峻(きゅうしゅん)な地形で雨が多く、治山が欠かせない。民有林は農山村に住む人々が山に入り、豊かな森林を維持してきた。しかし、安価な外材の輸入で国産材が低迷し、採算が合わなくなると、山に入る人はめっきり減った。森林があるところに住所を持たない「不在村者」の保有が4分の1にも及ぶ。誰の山林か分からない、所有者不明の林地も2割を超えた。誰がこれからの森林を管理するのか。この難題に立ち向かう道筋が徐々に見えてきた。政府は来年度から森林経営管理法を施行し、所有者が管理できない森林を市町村が仲介し、林業者や企業に集約する仕組みを作った。林業に適さない場合は市町村が管理し、所有者の同意が得られなくても間伐などの管理を行える。そうした財源を確保するため2024年度からは「森林環境税」を導入する。1人当たり年間1000円を個人住民税に上乗せし、年間600億円の財源を確保、国民全体で森林を維持する。本来、民有林は所有者が管理するのが筋だが、所有者不明の林地がここまで増えた現状を踏まえれば、行政に頼るのもやむを得ないだろう。ただ、伐採が可能な樹齢50年の森林が増えたからといって、営利優先で皆伐に走り、「はげ山」を作り出すようなことがあってはならない。伐採業者への監視を怠るべきではない。合理化が進む市町村に人的資源があるかどうかも課題だ。全市町村の7割以上で林務担当者が0~2人しかいない。過度な負担を掛ければ市町村行政が立ち行かなくなる恐れがある。政府の人的支援が必要だ。森林は伐採や間伐、植林などの手入れをしないと維持できない。長く放置してきたつけが回って根付きの悪い「もやし林」が増えるなど、豪雨時の防災機能の弱体化が指摘されている。政府の専門家会議でも、山里や山林などが適切に管理されていないことが土砂災害を招く一因との指摘が出ている。防災上も管理を急ぐ必要がある。そうした中、国産材を見直そうという機運が高まっている。再生可能エネルギーを生み出す木材チップ需要の高まりや、直交集成板(CLT)の開発などで木材価格が持ち直している。18・8%(02年)だった木材自給率は上昇を続け、16年は34・8%に。移住者や若者が山を借りて伐採や運搬を行う「自伐型林業」は、地域経済の活性化につながる。この芽を摘んではならない。災害を防ぎ、空気を清浄化し、心に癒やしをもたらす。多面的機能を維持しながら豊かな山を次代につなぐ。それは国民の責務でもある。

<理系教育を疎かにしたツケ>
PS(2018年8月12日追加):*9-1に書かれている「経産省がEV・HV・FCVなどの次世代車普及に躍起になっている」というのは、最初に(私の提案で)EVを作った日本にしてはかなり遅れており、その間にガソリンエンジンやHVの開発に使った金は無駄になった。
 一方、中国は、*9-2のように、その間にEVを進め、先見の明を持って希少金属調達網を握る努力をしてきたため、今さら日本に有利な条件で希少金属調達などの提携話をするわけがない。この状況は、「中国がEVの油田を爆買い」「違法な露天掘り」「児童労働の横行」などとケチをつけても変わるわけではないため、日本は、「現実的」と称する「思考力の欠如」や「先見の明のなさ」を反省し、二度と同じことを繰り返さないようにすべきだ。
 そのため、*9-3のような「車の電動化戦略で官は民の補完役」どころか、このような根本的な技術革新時代には、国は先見性を持って技術革新の背景を整えるバックアップをすべきなのだ。しかし、経産省は、日本の海底資源である希少金属を採掘する努力もせず、中国には周回遅れとなっており、これでは“東夷”と馬鹿にされても仕方ないだろう。

*9-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180812&ng=DGKKZO34045750Q8A810C1TM3000 (日経新聞 2018/8/12) 自動車の新時代戦略 国・企業で温度差
 経済産業省が電気自動車(EV)やハイブリッド車(HV)、水素などを使う燃料電池車(FCV)といった「次世代車」の普及に躍起になっている。2050年までに世界で販売する日本の乗用車をすべて電動化する目標を公表。蓄電池技術の開発などで企業間の協力を促す。ただ、肝心の企業側からは戸惑いの声も漏れ、温度差は否めない。7月24日、同省や有識者、企業関係者が集まった自動車新時代戦略会議。3カ月にわたり議論した内容の中間報告会で、自動車産業が引き続き世界で存在感を示すための長期戦略を確認した。地球温暖化対策の国際的な枠組み「パリ協定」の達成に向け、乗用車1台あたりの温暖化ガス排出量を10年比で9割削減する目標を設定。蓄電池や高性能半導体などの技術開発を「協調領域」と位置づけ、企業の壁を越えた協力を推進する。18年中にロードマップを策定する方針だ。蓄電池の原材料となる希少金属のコバルトの調達でも企業の提携を促すことを掲げた。世耕弘成経産相は会議で「電動化で先行してきた強みを生かして世界に貢献していくため、野心的な長期ゴールをまとめた」と胸を張った。
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 ただ、企業側の事情は複雑だ。たとえばトヨタ自動車は「プリウス」をはじめHVに注力。「MIRAI」などFCVにも積極投資する。一方の日産自動車は「リーフ」を筆頭にEVシフトを進める。エンジン開発に重点投資してきたマツダにとっては、電動化の推進で戦略の見直しが迫られる。次世代自動車普及のカギを握る蓄電池の開発でも、ライバル社に技術を開示することに抵抗がある企業は多い。自動車大手の幹部からは「日本の自動車産業のため協調するという総論は賛成だが、各論になると難しい」との声が上がる。経産省は「会合では反対意見は出なかった」と説明するが、ある大手首脳は「なぜ経産省が出てくるのか。業界団体の日本自動車工業会で十分にできる」と不満を漏らす。国が有望な分野を見つけてビジョンを描き、産業を育てて経済成長を実現する――。戦後、前身の通商産業省の官僚が業界を主導して成功したという思いがいまも経産省内には根強く残る。テレビドラマ化もされた小説『官僚たちの夏』は、城山三郎氏が佐橋滋ら「国士型」の通産官僚の姿に想を得た。1976年に設立した超大規模集積回路(LSI)技術研究組合では、通産省と富士通や日立製作所、NECなどが協調して次世代集積回路を開発。日本の半導体産業が世界のトップに躍り出た。
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 だが、近年はうまくいっているとは言い難い。経産省が富士通やNECなどを巻き込んで国産検索エンジンの開発を目指した「情報大航海プロジェクト」は、総額150億円を投じたものの、実用化を事実上断念。「国の悲願」として三菱重工業の開発を後押しした国産旅客機「MRJ」は、何度となく商用化を延期している。産業界からは「役所に次世代の成長産業が分かるのか」との疑問の声は消えない。一方で「国から要請されれば断れない」「断って目をつけられると面倒だ」と「お上」への難しい立場があったり、「失敗しても国が救済してくれるし、お付き合いだ」と甘えの構造がうまれやすかったりするのも事実だ。過去に産業政策を主導した元経産省幹部の一人は「国がプランを立案し、それに企業に従ってもらうという考えは時代遅れだ。業界を指導・監督する経産省の製造産業局はもはや解体してもいい」と指摘する。経産省、産業界で同床異夢の次世代車の普及構想。目標に向けて順調に走り続けられるかはまだ見通せない。

*9-2:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO33484020X20C18A7000000/ (日経新聞 2018.7.30) 中国が爆買いするEVの「油田」
 ガソリンエンジンを積んだ自動車の誕生から130年。自動車は原油の動向に悩まされ続けてきた。電気自動車(EV)は、こうした「燃料の呪縛」から人々を解き放つはずだった。が、新たなボトルネックが生まれている。電池の原料となるコバルトだ。EV市場規模で世界シェアトップに躍り出た中国がその調達網を握ろうとしている。
■日産の電池売却、突然白紙に
 「何でこんなことになったんだ」――。6月29日、金曜日。横浜・みなとみらい地区を見下ろす日産自動車グローバル本社の会議室で、同社幹部らは言葉を失った。「一部の投資家が資金調達をできなかったと説明しています」。その場に呼び出された中国の投資ファンド、GSRキャピタルの担当者は絞り出すように答えた。この日、車載用リチウムイオン電池をつくる日産とNECの共同出資会社「オートモーティブエナジーサプライ」(AESC、神奈川県座間市)をGSRに売却する手続きが完了する予定だった。GSRは北京や米シリコンバレーにオフィスを構える投資ファンド。世界の環境技術動向に強く、他の投資先とAESCの相乗効果も期待できた。だが何度確認しても入金されるはずの資金が振り込まれない。週明けの月曜日には記者発表も計画していた。日産から「新生」AESCに出向する社員への辞令も出し終わった後で、日産の社内システムにつながるパソコンのアクセス権も停止したばかり。週初にできるはずの会社が突然なくなる。日産は7月2日、GSRへの株式譲渡を「中止する」とだけ発表。AESCは現状のまま事業を続けている。売却予定金額は1000億円程度で、日産にとっては2017年に売却した系列最大の部品大手、カルソニックカンセイに並ぶ事業売却になるはずだった。日産関係者は「もう、中国側にとってAESCは必要でなくなったということじゃないか」と話す。
■「リーフ」から10年で環境激変
 日産は2010年に量産型EV「リーフ」を発売、日本のEV市場をけん引してきた。それを支えたのがリチウムイオン電池の内製化だ。NECとの共同出資で2007年に設立されたのがAESCだった。クルマに積みやすい、薄いラミネート型の電池の開発・量産に成功しリーフ向けの受注を一手に引き受けてきた。ただ、規模で勝る海外勢がリチウムイオン電池への投資を加速した結果、価格競争力を失う。2013年には、官民ファンドの産業革新機構から出資を受けてソニーのリチウムイオン電池事業と統合するシナリオも検討されたが、破談となる。「韓国勢から調達してはどうか」。当時最高経営責任者(CEO)のカルロス・ゴーン氏はこのころから外部調達の可能性に言及していた。技術の国外流出を懸念する経済産業省への説得や入札を繰り返し、2017年夏にようやく中国のGSRに売却することを発表した。だが、その後もディールはまとまらない。当初は2017年末の締結を目指していたが、延期は今回で4回目だ。その間、さらに環境は変わった。中国で寧徳時代新能源科技(CATL)が世界の自動車大手への電池供給を獲得し、車載用リチウムイオン電池で最大手になった。 6月末には独BMWがCATLに数十億ユーロ(数千億円)規模の発注をしたことが判明。独フォルクスワーゲン(VW)に加えて、ホンダも中国用EV電池をCATLから調達する計画だ。中国のEV市場拡大を追い風に、日本や韓国大手をあっという間に追い抜いた。実は、まだ発表されていないが日産自身も2018年に中国で発売する予定の量産EVセダン「シルフィ ゼロ・エミッション」でCATL製電池を調達する方針を固めたばかりだ。「AESCの最大の強みだった日産との取引関係もうまみではなくなったのでは」(日産関係者)。
■コンゴで「爆買い」
 潮が引くような日本からの撤退ぶり。そこにはもう一つの理由がある。EVの最上流から下流まで、中国が長い年月をかけて開削してきた「運河」が開通しつつあるのだ。「お国からも遠いし、あそこでの駐在は大変だったでしょう?」「いえいえ、そんなことはないですよ。最近ではチャイナタウンもあるし、白酒も毎晩、飲んでいましたよ」。広大なアフリカ大陸の中央部に位置するコンゴ民主共和国(旧ザイール)。国内大手商社マンは最近、同地から戻ったばかりという中国人ビジネスマンとこんな会話を交わした。乾いた大地が広がるアフリカの最深部で中国資本による「爆買い」が進む。お目当ての品は、リチウムイオン電池の正極材の材料として欠かせないレアメタル(希少金属)のコバルトだ。コンゴと隣国ザンビアの国境付近に広がる、世界有数の銅山地帯「カッパーベルト」。コバルトは銅生産の副産物として産出され、現在では世界生産の約6割をコンゴ産が占める。同地には中国資本が相次ぎ進出。コバルトの調達網を次々と押さえ始めている。今年3月には中国のバッテリーリサイクル企業、格林美(GEM)が、コンゴに権益を持つスイスの資源大手、グレンコアから3年間で約5万3000トン相当のコバルトを購入する長期契約を締結した。グレンコアは世界最大のコバルト生産者として知られ、GEMが調達するコバルトはグレンコアの2018~2020年の推定生産量の3分の1に相当する。2016年始めには、中国・洛陽モリブデン集団が米フリーポート・マクモランから「テンケ・フングルーメ」の権益の過半を取得した。テンケ・フングルーメは世界最大級の銅・コバルト鉱山として知られる。
■「油田を押さえるようなもの」
 EVは、スマートフォンのような電子機器と比べものにならないほど巨大なリチウムイオン電池を搭載する。その普及拡大を受けて、コバルトの価格は急騰を続けている。国際指標となるロンドン市場の取引価格は2年前に比べて4倍に値上がりした。コバルトはリチウムイオン電池に使われる他のレアメタルと比べても、生産地が圧倒的にコンゴに偏っている。もちろんコバルトの使用量を減らす次世代電池の開発も進むが、量産化には時間がかかる。中国政府主導で進められる急激なEVシフトに対応するためには、世界の電池メーカーや自動車メーカー各社は当面、コンゴ産コバルトに頼らざるを得ない。「中東の油田を根こそぎ押さえにかかっているようなものだ」。経済産業省自動車課はこう例えて警戒する。だがもっとやっかいかもしれない。紛争と協調を繰り返して石油の安定調達にメドをつけた中東の原産国に比べると、政局が不安定なコンゴ産コバルトの調達・取引ルールは未整備だ。EVの普及が進めば進むほど、供給源が限られるコバルトの価格は高騰を続けるとみられる。さらに複雑なのは、正規の取引ルートを経ないコバルトがコンゴから中国に流れ込んでいることだ。
■違法の露天掘り、児童労働が横行
 有刺鉄線とコンクリート塀に囲まれた大手資本のコバルト鉱山の周りに、ぼろぼろの布で作られた質素なテントが点在する――。4年前にコンゴを訪れた先の商社マンはこんな光景を目にした。現地住民による、手掘りのコバルト違法採掘現場だ。そこでは数年前から露天掘りによる違法採掘が急増している。簡素な木組みの足場をたよりに地中深くまで掘り進む露天掘りは、事故の危険が常につきまとう。コンゴで採掘されるコバルトの1割が違法採掘によるもの、との指摘もある。国際人権団体のアムネスティ・インターナショナルによると、こうした露天掘りでは児童労働が横行している。アムネスティは子どもたちの手で掘られた違法コバルトが中国系部材メーカーに流れ、最終的に世界で販売されているIT(情報技術)製品やEVに使われている可能性があると指摘した。2016年の報告書では、中国・製錬大手の華友コバルトを名指しで批判。日産の資本提携先である仏ルノーなどに対しても、コバルト調達網の透明性確保を求めている。ただ「コンゴ産コバルトが中国に入った瞬間に、何がクリーンで、何がそうでないかを保証する方法はほぼない」(商社関係者)のが現状という。「世界最先端の自動車工場になるだろう」。米テスラのイーロン・マスクCEOは7月10日、上海市トップの李強党委書記との記念撮影におさまった。同日、テスラは同市にEVの開発・製造拠点となる工場を設立することで合意した。テスラ中国工場の年間生産規模は、通常の自動車工場の2倍以上の50万台。EVで最も強力なブランド力を持つテスラの工場は、他のメーカーの工場建設の呼び水にもなる。上流から下流まで、中国が「世界のEV工場」となる運河の最後がつながりつつある。
■経産省に集まった首脳たち
 7月24日午後。東京・霞が関の経済産業省17階の特別会議室に、日産の西川広人CEOや、トヨタ自動車の寺師茂樹副社長、ホンダの倉石誠司副社長ら国内自動車メーカーの首脳が一堂に顔をそろえた。経産省主導で2050年までの日本車の電動化戦略を立案する「自動車新時代戦略会議」の第2回会合だ。「コバルトの調達が大きなネックになる」「1社で調達するのはリスクが高すぎる」「なんとか政府としてバックアップできないか」。話題に上がったのが、コバルトの調達問題だった。日本勢はこれまで、トヨタを筆頭にパナソニックなどの国内電池大手から車載電池を調達してきた。パナソニックがコバルト調達で頼るのは住友金属鉱山など。住友金属鉱山はフィリピンの鉱山で採掘されたニッケル鉱石などからコバルトを採取しており、日本勢は世界最大の産地コンゴに確固たる足場を持たない。「政情が不安定で、中国資本が根づくコンゴに日本メーカーが単独で食い込むのは難しい」。経産省自動車課は「官民でのコバルトなどの資源を共同で調達・備蓄できる仕組みを検討する」とし、2018年中に安定調達できる仕組みを立ち上げるほか、児童労働によるコバルトを検知できる国際的な枠組みづくりでも各国と協調することを決めた。コバルトが不足することは今わかったわけではない。日本貿易振興機構(JETRO)によると中国はアフリカに2007年からの2年で90億ドル近い支援を表明。インフラ開発や鉱山投資事業の見返りに得たのはコンゴの銅やコバルトの採掘権だった。当時はリーマンショック前後で、各国はこの動きを不審な眼差しで見ていたが、中国のEV源流獲得はすでにこの頃から布石が打たれていた。日本を含め欧米の自動車大国やメーカーは、むしろEVの時代が唐突には訪れないと過信してきた。コバルトに目を向けなかったのも当然だ。中国は長い時間をかけ、周到に「21世紀の石油」を掌握しようとしている。日産の水面化のAESC売却交渉は今週も続く。GSRは買い手から外れ、新たな買い手も浮上しているもようだ。「新生」AESCへの出向が決まっていた社員や日産幹部らの疲労の色は濃くなっている。

*9-3:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180804&ng=DGKKZO33814400U8A800C1EA1000 (日経新聞 2018年8月4日) 車の電動化戦略で官は民の補完役に
 世界で販売する日本車を2050年までにすべて電動車にするという目標を経済産業省が決めた。電気自動車(EV)の普及について、英仏などの欧州諸国や中国が思い切った目標や規制を導入した。「自動車大国」「環境先進国」を自任する日本が遅ればせとはいえ、長期ビジョンを策定するのは意味のないことではない。この目標のミソは、EVではなく「電動車」を対象にしたことだ。エコカー戦略をめぐっては自動車メーカーごとに、排ガスゼロのEV重視か、より実用性の高いハイブリッド系の技術に力点を置くのか、戦略に違いがある。燃料電池車を含め、ほぼすべてのエコカーを包含する「電動車」という概念でくくったのは、ひとつの知恵というより、それ以外のやり方では自動車各社のコンセンサスが取れなかったためだろう。もう一つの特徴は、英仏や中国の目標が自国内で走る車を対象にしているのに対し、日本政府の目標は日本メーカーが世界で売るすべての車を対象にしたことだ。日本車は世界市場の3割を占める国籍別シェア1位の存在だ。日本車の電動化に連動して世界の車の電動化が進み、地球規模での大気汚染の低減や温暖化抑止につながる展開を期待したい。環境技術の革新や魅力的なエコカー開発の主役が個々のメーカーであることは言うまでもない。国内企業どうしの激しい競争が日本車の品質や技術を磨き、世界市場で飛躍する土台ともなった。だが、技術や事業モデルががらりと変わる局面では、それを社会や消費者に円滑に受け入れてもらうために、ライバル同士が手を組んで進めたほうがいい「協調領域」と呼ばれる分野のテーマも増えるだろう。例えば、電動車に使われた中古リチウムイオン電池はリサイクル技術や残存性能の評価手法が確立していない。こうした課題については各社バラバラではなく、官と民が呼吸を合わせて共同で取り組むのが理にかなっている。また、原産地が一部の国に偏る電池原料のコバルトなどを安定的に確保するには、政府の関与が必須である。自動車産業は100年に1度の変革期を迎えたといわれる。過去の成功体験が日本メーカーの弱みになるかもしれない。日本の官民は十分な危機意識をもって、新時代の競争に臨んでほしい。

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2018.7.26 日本経済と外国人労働者 (2018年7月27、28、30日に追加あり)
    
2018.7.26西日本新聞  外国人労働者推移(国籍別)  中間管理職の月給比較

(1)外国人労働者の受入拡大について
 政府は、*1-1のように、特に人手不足が深刻な農業・介護・建設・宿泊・造船で外国人の就労を認める新たな在留資格の創設について、2019年4月を目指して準備を進めていたが、他業界からも外国人労働者受入を求める声が上がっていることを受けて、*1-3のように、水産・食品加工・外食・製造業など、さらに約10分野を対象に加える方針だそうだ。

 日本には、既に外国人労働者に支えられている産業も多く、外国人労働者を使うという選択肢があれば、これまでに海外に出ていってしまった産業のうち、国内で製造できるようになるものも多いため、生産年齢人口が減少して人手不足になる局面で規制緩和を行うのは良いと思う。

 また、介護は、*1-2のように、1万人の受入をベトナム政府と合意し、数値目標方式をインドネシア・カンボジア・ラオスなどにも広げて人材を確保するそうだが、こうなると、日本では、介護や生活支援を、①出産時 ②病児 ③退院直後 などを含む全世代に広げることが可能になる。また、他の国でも介護保険制度を作り、条約で相互に同様のサービスを受けられるようにすると、助かる人が多いだろう。

 もちろん、外国人労働者も生活者でもあるため、受入拡大のためには、環境づくりが必要だ。しかし、「来日後1年内に日本語で日常会話ができる『N3』の能力を得なければ帰国」というのは厳しすぎ、私は介護に日本語は不可欠でないため、「N3」のレベルに達しなかった人でもチーム介護の1員として働けば、帰国しなければならないほどではないと考える。

 なお、*1-3に書かれている「入国管理庁」の新設については、最近、「○○庁」の新設が多いが、これは行政改革の趣旨に反する。そのため、本当に「庁」を作る必要があるか否かについては、検証を要する。

(2)おかしな反対論
 日経新聞が、2018年7月26日、*2-1に、「政府が外国人の受け入れ拡大を表明しているので、①安い賃金で働く外国人が増え ②物価の下押し圧力になりかねない」としている。

 しかし、①のような外国人を日本に受け入れなければ、その企業は賃金の安い外国に移転するか、廃業するかして、日本の産業はますます空洞化する。また、②のように、「物価を上げることが目的」というのは、日本国民や日本経済のためになる政策ではない。何故なら、日本が自由貿易をする限り、高コスト構造の日本製品ではなく、安い賃金の国の安価な製品が売れるグローバルな時代になっているからである。その時、技術は生産している場所で発達するため、輸出国の製品が次第に良くなり、日本からは技術が消える。

 そのため、*2-2のように、「人手不足はバブル時代以来の水準だが、当時と大きく違うのは消費も国内総生産(GDP)もほとんど増えていない」というのは、年金生活者も含めて収入が増えない以上、物価を上げれば購入数量が減るからで、当然のことである。

 従って、少子高齢化で日本の産業や総人口を支える労働力が不足するのなら、外国人労働者を受け入れればよく、働く能力も意欲もある高齢者や女性に雇用を保障するためには、年齢や性別による差別を禁止をすればよい。つまり、「物価上昇」や「インフレ率の目標達成」こそ、変な目標なのである。

(3)外交と経済
 日経新聞が実施した2018年度の「研究開発活動に関する調査」で、*3-1のように、回答企業の43.9%が日本の科学技術力が低下していると指摘したそうだ。その理由は、中国やインドなど新興国の台頭で、10年後の研究開発力はインドや中国が日本を抜くと予想されているそうだが、どちらも人口が多く、熱心に教育を行い、開発された技術の採用判断に無駄がない。それが、油断して無駄遣いばかりしている日本との違いである。

 また、「企業は研究分野の選択と集中が必要だ」としているが、誤った選択と集中は大きな発見を見過ごす場合がある。そのため、的確な判断と予算付けが必要なのだが、これは官僚がやるのではなく、意識の高い専門家の助言を得る必要がある。

 なお、日本で外国人労働者の受け入れに反対している人が、*3-2のトランプ大統領の ①米国第一主義 ②保護主義 ③雇用の確保 ④国境管理の厳格化 をのべつまくなく批判し続けてきたのは自己矛盾である上、我が国の外交にも悪影響を与えてきた。私は、どの国にも産業政策はあり、その国に必要な産業は育てなくてはならず、既にいる国民の雇用も守らなければならないため、「日本は特別な国」という発想は甘えだと考える。また、雇用の確保や国境管理は日本の方がずっと厳しく、かなり制限された外国人労働者の受け入れでさえ、*2-1、*2-2のような反論が出ているということを忘れてはならない。

<外国人労働者の受入拡大>
*1-1:https://www.agrinews.co.jp/p44690.html (日本農業新聞 2018年7月25日) 外国人就労新在留資格 来年4月に創設へ 受け入れ業種拡大も 首相指示
 政府は24日、外国人労働者の受け入れ拡大に向けた初の関係閣僚会議を首相官邸で開いた。安倍晋三首相は、人手不足が深刻な業種で外国人の就労を認める新たな在留資格の創設ついて、「来年4月を目指して準備を進めたい」と述べ、検討を加速するよう指示。今後、外国人の受け入れ対象業種について、従来検討してきた農業や介護など5業種以外にも広げることや、外国人の在留管理を一元的に担う官庁の立ち上げも検討する。政府は6月に決めた経済財政運営の基本方針「骨太の方針」に新たな在留資格の創設を盛り込んだ。一定の技能、日本語能力を問う試験に合格した外国人を対象に、通算5年を上限に就労を認める。3年間の技能実習の修了者は試験を免除する。秋の臨時国会に関連法案を提出する方針だ。閣僚会議には安倍首相の他、上川陽子法相、斎藤健農相らが出席。安倍首相は「法案の早期提出、受け入れ業種の選定などの準備を速やかに進めてもらうようお願いする」と述べた。法務省には、増加が見込まれる在留外国人の管理を行うため、組織の抜本見直しを指示した。受け入れ業種の選定では、政府は、特に人手不足が深刻な農業、介護、建設、宿泊、造船を念頭に検討を進めてきた。一方、水産業や食品関連業など他の業界からも受け入れを求める声が上がっていることを受け、業種の追加も検討。政府は関連法の成立後に決める受け入れの基本方針で、具体的な基準を示し、年内にも受け入れ業種を正式決定する見通しだ。

*1-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180725&ng=DGKKZO33346320U8A720C1MM8000 (日経新聞 2018年7月25日) 介護人材1万人受け入れ ベトナムと合意、政府20年目標、インドネシアにも打診
 政府はベトナム政府と同国からの介護人材の受け入れ拡大で合意した。政府は1年以内に3000人、2020年夏までに1万人の数値目標を設け、ベトナム側もこれに協力する。期限と受け入れ数を掲げ、環境整備を急ぐ。介護分野の人手不足は深刻で、今回の数値目標方式をインドネシアなど他国にも広げ、介護人材を確保する。政府の健康・医療戦略推進本部(本部長・安倍晋三首相)がベトナムの労働・傷病兵・社会問題省と6月に日本への介護の人材受け入れ促進で合意したことが判明した。首相は24日、外国人労働者の受け入れ拡大への環境づくりを関係閣僚に指示した。日越首脳は年内にも介護・医療で日本とアジア各国が協力を進める「アジア健康構想」で覚書を結ぶ見通し。介護人材の受け入れ強化も柱の一つにする。政府はインドネシアやカンボジア、ラオスなどからも受け入れ拡大を進める。ベトナムからの人材の受け入れは昨年11月から介護分野でも始まった外国人技能実習制度を活用する。日本語試験で、ある程度日常会話ができる「N4」の能力を持つ人を対象に最長5年の滞在を認める。技能実習を修了した人はさらに最長5年の就労資格を得られる新制度も創設する。介護の技能実習制度の利用者はまだ数人しかいない。来日後1年内に、日本語で日常会話ができる「N3」の能力を得なければ帰国しなければいけない。学習費用の自己負担が重荷になり、来日に二の足を踏むためだ。政府はベトナム人の学習費用を支援し、高齢者の「自立支援」の手法も学べる優良法人を選ぶ。日本人と同様の給与水準も保証。第1弾で12業者を選定した。12業者で3千人を受け入れられる。ベトナム政府もまず6つの優良業者を人材を送り出す機関として認定する。現在、介護人材は経済連携協定(EPA)を通じて来日している。08年~17年の累計で約3500人で、新たに3千人来日すれば、海外の人材はほぼ倍になる。政府の予算で実施するEPAによる受け入れ拡大には限界があり、政府は今後、技能実習制度を活用する。経済産業省によると15年に日本の介護人材は4万人足りなかった。外国から1万人来ても3万人超足りない。35年には人材不足は79万人に達するという。人手が足りないことを主因に15~17年度に全国で整備された特別養護老人ホームは計画の7割にとどまる。国際的な人材獲得競争は激しい。韓国は外国人労働者の人数の枠を決めて受け入れを進める。日本も数値目標を定めて受け入れ拡大を目指すものの、外国人技能実習制度で一定の条件を定めているため、簡単に人数が伸びるかはわからない。

*1-3:http://qbiz.jp/article/138036/1/ (西日本新聞 2018年7月25日) 「外国人就労」10分野追加 新在留資格で外食、製造、漁業 政府方針 「入国管理庁」新設も検討
 人手不足を補うために外国人の就労を認める新たな在留資格に関し、政府が、これまで想定していた介護など5分野だけでなく、外食産業や製造業などさらに約10分野を対象に加える方針であることが分かった。実質的に単純労働の分野にも門戸を広げる。安倍晋三首相は24日の関係閣僚会議で、来年4月からの制度開始に向け、準備を加速するよう指示。上川陽子法相は同日の記者会見で、法務省の組織改編で「入国管理庁」のような新たな官庁を設置する検討に入ったことを明らかにした。新資格の受け入れ業種で想定していた5分野は、建設、介護、農業、宿泊、造船。政府関係者によると、これに加え、製造業では金属プレスや鋳造などの金属加工業を追加する方針。非製造業でも、食品加工業や漁業などを追加し、10分野ほど増やす方向で検討しているという。いずれも重労働で人手不足が深刻な分野。各省庁が業界の要望も聴き、受け入れ業種の詳細を詰める。閣僚会議で首相は「法案の早期提出、受け入れ業種の選定などの準備を速やかに進めてほしい」と指示。「外国人を社会の一員として受け入れ、円滑に生活できる環境整備をすることが重要な課題だ」と述べた。新たな在留資格創設により、国内で暮らす外国人は大幅な増加が見込まれる。政府が「入国管理庁」の新設を検討するのは、外国人に対する日本語教育や医療面などでの支援のほか、出入国管理の体制強化が必要になるからだ。この日の閣議では、法務省に受け入れ体制整備に向けた総合調整権限を与えることを決めた。上川氏は会見で「(法務省の)入国管理局を抜本的に組織改編し、入国管理庁のような外局を設けることも含め、検討を進める」と述べた。新たな在留資格では、在留期間は最長5年とし、家族の帯同は認めない。日本語能力や技能に関する試験を実施する一方、技能実習の修了者は試験を免除する。政府は来年4月の制度開始に向け、今秋に想定される臨時国会に入管難民法改正案を提出する方針。
   ◇   ◇
●人手確保へ見切り発車 体制、支援策 これから
 政府は、新たな在留資格による外国人労働者の受け入れを、当初想定の5分野からさらに10分野ほど増やし、一気に拡大する。2025年ごろに約50万人の受け入れが必要と試算してきたが、さらに数十万人単位での受け入れが見込まれる。人手不足の解消が期待される半面、来年4月に迫る制度開始に向けた政府の受け入れ体制や外国人への支援策は検討が始まったばかり。外国人政策は国の在り方を大きく変えるだけに、“見切り発車”への不安は拭えない。「既に外国人なしに成り立たない業種は多い。少子高齢化を見据えれば、今やるしかないんだ」。30年までに700万人超の働き手が減るとされる中、政府関係者は、受け入れ拡大を急ぐ理由をこう強調した。政府が受け入れ方針に転じた外食産業などのサービス業は現在、日本語学校などで学ぶ多くの外国人留学生が支えている。製造業でも、技術習得を名目にした技能実習生が重労働を担っている。いずれのケースも就労時間などに制約があるため、政府は就労を目的とした新資格で正面から外国人を受け入れ、より効率的に長時間、働いてもらいたいという狙いがある。人手不足に悩むのは、地方の中小企業や農家など自民党を支えてきた層とも重なる。新制度の開始を急ぐ背景には、来年の統一地方選や参院選を控える政権の思惑もにじむ。政府は24日、外国人との共生を目指し、日本語教育の充実や相談窓口の整備などを盛り込んだ「総合的対応策」の案を示したが、法務省関係者は「正直に言うと、これまでと同じ言葉を並べただけ」と漏らす。新設を検討する「入国管理庁」も、大掛かりな組織改編が必要になる。政府内には、建設業など実質的な単純労働の分野で多くの外国人を受け入れれば、景気悪化時に職を失った日本人とのあつれきが生まれるとの懸念も根強い。現行の技能実習制度を巡っても、人手不足の解消を求める業界団体の要望を受ける形で、制度が始まった1993年の17業種から、17年12月時点で77業種へとなし崩し的に対象を拡大。低賃金で長時間労働を強いるなどの問題が指摘されてきた。支援団体などからは「外国人がモノ扱いされることがないよう、丁寧な制度設計をしてほしい」と求める声が上がっている。

<おかしな反対論>
*2-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180726&ng=DGKKZO33417090V20C18A7EE8000 (日経新聞 2018年7月26日) 上がらぬ物価を探る(3)外国人増、賃金伸び鈍化 高収入の人材少なく
 6月半ば、大阪府東大阪市の工場ではベトナム人やインドネシア人らが朝から金属部品を熱心に磨いていた。京セラに燃料電池、マツダに自動車の部品などを納める従業員約110人の三共製作所。製造にかかわる働き手は実に約6割が外国人の技能実習生だ。
●人件費の調整弁
 「人手不足を解消し固定費を下げるには外国人を増やすしかなかった」。同社の松本輝雅社長はこう語る。「技術を学んで母国でいかしたい」。こう話す23歳のネパール人実習生、シグデル・ススマさんの月収は15万円ほどだ。厚生労働省の調べでは日本で働く外国人は2017年に128万人だった。日本の就業者全体の2%。この5年で人数も割合も倍増した。BNPパリバ証券によると12年から17年にかけては外国人の留学生と技能実習生は合計で30万人弱増えた。一方専門的な資格をもつ人材は10万人強しか増えていない。同社の河野龍太郎氏は「留学生や技能実習生が人手不足を背景にコンビニや工場などで安い賃金で働いている。日本の労働需給が逼迫しても賃金が上がらないのはこうした外国人労働者が増えたことが一因だ」と指摘する。
●平均月収13万円
 大和総研によると、日本の常用雇用者4926万人の平均月収は35万4855円なのに対し、外国人の技能実習生は同13万円ほどだという。日銀の簡易な推計でも、技能実習生の時給は約800円にすぎず、日本人のパート時給などよりも安いとみている。5月の完全失業率は2.2%と25年ぶりの低さだったが賃金の足取りは鈍い。政府は外国人の受け入れ拡大を表明している。政府関係者は「官邸が介護の人手不足に業を煮やして決めた。将来は年間20万人規模の受け入れが目安」と明かす。安い賃金で働く外国人は確実に増える。物価の下押し圧力になりかねない。

*2-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180726&ng=DGKKZO33414870V20C18A7EN2000 (日経新聞 2018年7月26日) 外国人労働者受け入れの是非
 政府は外国人労働者の在留資格の基準を緩め、就労を促進しようとしている。人手不足が特に深刻な農業や建設に外国人労働者で対応しようという意図だ。本当のところ、日本は人手不足なのか。データをみると、実際に雇用数は拡大し、労働市場が逼迫して完全失業率も低下している。人手不足はバブル時代以来の水準という声さえある。しかし、当時と大きく違うのは、消費も国内総生産(GDP)もほとんど増えていないということだ。完全失業率とは、労働人口のうち全く働いていない者の割合だ。1時間でも働いていれば完全失業者にはならない。つまり、数字上の失業率が減っても、雇用の中身が劣化していれば、生産は増えない。実際、GDPが増えていない以上、実労働時間は増えていないはずだ。もし増えているなら、効率が低下しているということだ。望ましいことではない。そもそも消費が増えていない以上、生産量を増やしても意味がない。こうした状況で利益を確保するなら、賃金を抑えるしかない。そのための外国人労働者導入だ。そんな目先の話ではなく、少子高齢化によって、総人口を支えるための労働力が不足するから、外国人労働者の導入は絶対に必要だという見方もある。実際、総人口当たりの64歳までの労働人口の比率をみると、減少傾向にある。ところが、同じ比率を65歳以上まで含めて計算すると増えている。これは寿命が延び、働く能力も意欲もある高齢者が増えているからだ。高齢者は支えられるだけでなく、支える側にもなる。雇用と景気の健全な回復は需要が伸び、必要な生産量が増えてはじめて可能だ。それが賃金の上昇につながり、物価も上昇して、ようやくインフレ率の目標達成が視野に入る。ところが需要は回復していない。限られた需要で利益を確保しようと、低賃金で働かせることを考える企業もある。手っ取り早いのは外国人労働者だ。実際、外国人労働者の劣悪な雇用状態が問題になっている。経済停滞の原因は需要の伸び悩みにある。低賃金の維持ばかり考え、雇用の質を落として労働者を確保しても、数字上の雇用が改善するだけだ。需要が伸びなければ景気の本格回復はない。

<外交と経済>
*3-1:https://www.nikkei.com/article/DGKKZO33416300V20C18A7TJ2000/ (日経新聞 2018/7/26) 「日本の技術力低下」43% 本社調査 10年後、中印と逆転も
 日本経済新聞社が実施した2018年度の「研究開発活動に関する調査」では、回答企業の43.9%が日本の科学技術力が低下していると指摘した。上がったとの見方は289社中10社にとどまった。中国やインドなど新興国の台頭が理由で、10年後の研究開発力ではインドや中国が日本を抜くと予想する。現状と10年後の研究開発力を、国別に5点満点で評価してもらった。現状について、インドは平均3.0、中国は3.5と日本の3.8より低い。だが、10年後にはインドは3.8、中国は4.3で日本の3.7を上回った。業界別でみると自動車・自動車部品では、中国が日本や米国を上回り、欧州に次ぐ実力になるという結果だった。日本の科学技術力の低下を指摘しているのはITや機械・エンジニアリング・造船、素材で多く、いずれも50%を超えた。文部科学省科学技術・学術政策研究所によると、研究の質の高い研究論文数は2013~15年平均で日本は世界9位。10年前の4位から急落した。10年前には6位の中国が米に次ぐ2位に上昇した。論文は5~10年後の国の科学技術力を映す先行指標といわれており企業も危機感を強めている様子がうかがえる。こうした状況への対策として各企業が挙げたのは研究分野の選択と集中、企業と大学が共同で研究を進める産学官連携だ。国内での連携については47.1%、海外での連携については36.7%の企業が増やす方針を示した。徹底できるかが今後のカギを握りそうだ。だが国内大学との連携について、企業の44.6%は「迅速な成果を期待できない」などと問題点を指摘した。政府は大学改革をてこにイノベーション創出を目指すが、学問の自由が失われることに大学側の反発も強くどこまで進むか不透明だ。このままでは、米中との差が広がりかねない。

*3-2:https://www.nikkei.com/article/DGXLASGM21H33_R20C17A1EB1000/ (日経新聞 2017/1/21) 各国メディア、トランプ氏の政策疑問視
 米国の第45代大統領にドナルド・トランプ氏が20日就任したことを受け、米国や世界のメディアは就任式の模様や今後の国際情勢の展望を詳報した。米メディアはトランプ氏の就任演説が既存の政治・社会の批判に終始した点を疑問視した。国外では欧州やメキシコのメディアが「米国第一」の姿勢を不安視する一方、ロシアメディアは米国との関係改善への期待を報じた。米紙ニューヨーク・タイムズ(電子版)が注目したのは「エスタブリッシュメント(支配階級)の拒絶を続けるトランプ氏の姿勢」だった。これまでの米大統領は改革を主張しつつ、ある程度、そうした層と付き合ってきたことを指摘。「トランプ氏はどうやって彼らと協力して国を治めるつもりなのだろうか」と、就任演説で示された政策方針に疑問を呈した。一方、ワシントン・ポスト(電子版)はトランプ氏の演説内容が、都市犯罪や雇用の流出など米国の現状に対する非難に終始したと指摘。「オバマ前大統領の民主党政権から共和党政権への移行というより、新しい形の独立した権力や政治を作ると話しているようだった」と評した。英紙ガーディアン(電子版)はトランプ氏が言及した「米国第一」について「オバマ政権の多国間主義に代わる、外交・安全保障政策の中核になることがはっきりした」と述べた。その上で「米国の核兵器や通常戦力を強化するが、他国の防衛や海外の紛争解決のために使う意志は薄いということだ」と読み解いた。仏紙ルモンド(電子版)は就任演説を冷静に報じつつも、米国だけでなくフィリピン、ドイツ、英国でも反トランプのデモがあったことを「世界中でデモ」との見出しで紹介。警戒感が米国外にも広く高まっていることを指摘した。トランプ氏を批判的に報じてきた独紙フランクフルター・アルゲマイネは米欧関係が「複雑になる」と断じた。独誌シュピーゲルはトランプ氏が就任演説で「反対派との闘争を宣言した。世界に不安が広がった」などと指摘した。メキシコの主要各紙の電子版は、新政権の写真や記事で埋め尽くされた。「トランプ氏、環太平洋経済連携協定(TPP)からの離脱、北米自由貿易協定(NAFTA)の再交渉、壁建設を繰り返す」(フィナンシエロ紙)のように関心の高い通商・移民政策に関しての記事が大半を占めた。中国の国営新華社などは就任を速報し、関心の高さを示した。新華社は「米国第一主義を主とし、保護主義を基調とする就任演説」だと指摘。雇用の確保や国境管理の厳格化に関する発言を伝えた。米大統領就任の際の反対派デモ活動がこれまでにない規模だったことにも触れた。ただ、中国国営中央テレビは就任式の様子を中継しなかった。就任演説で中国への批判が出る可能性を懸念した可能性がある。ロシアの国営テレビ「ロシア1」は1時間半のニュース番組枠で40分以上を割いて就任式を伝えた。「(ロシアとの関係改善を主張する)トランプ氏は大統領選での勝利以来、圧力にさらされてきた」「米メディアはロシアとの関係を巡る疑惑を執拗に取り上げ、式典を台無しにしようとした」などと批判の矛先を米メディアに向けた。韓国・聯合ニュースは米韓関係について「(トランプ政権が)防衛費負担の引き上げや、米韓自由貿易協定(FTA)の見直しを要求すれば、同盟が揺れる可能性がある」と分析。中国製品に高い関税をかければ米中の対立が深まって「朝鮮半島に影響が及ぶ可能性が非常に大きい」との見方も示した。

<上海のリニアモーターカーと蘇州刺繍>
PS(2018年7月27、30日追加):公認会計士協会埼玉会の親睦兼視察旅行で、3日間、上海に行ってきた。帰路に、龍陽路から浦東空港まで*4-1のリニアモーターカーに乗り、最高時速は300 km/hだったが、10分程度で空港に到着した。確かに、横幅が広く座席配置は6列で新幹線より1列多く、日本のように地下を走るのではなく、地上を走る設計なので景色がよかった。シートの青色カバーは、モノレール程度の感覚だった。中国は、2001年 3月1日に、このリニアモーターカーの建設を開始し、2004年1月1日には商業運行を開始しているのだから迅速だ。そのほか、上海近郊の道路は6~8車線となっており、高層ビルが立ち並び、長期の街づくり計画もよいと思われた。「百聞は一見に如かず」と言うため、見聞に行かれるとよいと思う。「羽田空港⇔上海浦東空港」は3時間、「福岡空港or九州佐賀国際空港⇔上海浦東空港」なら2時間弱の飛行距離である。
 なお、*4-2のように、九州佐賀国際空港から台湾の格安航空会社LCCが運航し始め、「佐賀⇔台北」での搭乗利用が2018年7月29日にスタートしたそうだ。九州は、これから中産階級の人口が20億人に達するアジア諸国に東京より近いため、他も含めてアジアの航空会社が乗り入れると、次の展開が見えてくるだろう。


     上海のリニアモーターカー           蘇州刺繍

(図の説明:上海のリニアモーターカーと蘇州刺繍の写真。蘇州刺繍は薄い絹地に裏と表で別の図案を刺繍したものや、日本の帯や着物地があったのは驚きだった。日本の光る絹糸をここに輸出すると、面白い製品ができそうだ)

*4-1:http://flyfromrjgg.hatenablog.com/entry/shanghai_linear_maglev (イケてる航空総合研究所 2016.9.11) 上海に行ったらリニアモーターカーに乗れ!
 上海浦東から上海市内に出る最速の方法はリニアモーターカーです。おおっと、リニアモーターカーは和製英語でしたね。英語では「マグレブ」って言うんでした。さぁ、マグレブに乗って上海の街へと繰り出しましょう。ん~やっぱり「マグレブ」って日本語で呼ぶことに違和感があります。「リニア」って呼んだ方が日本語ではしっくりきます。ということで、自分で「マグレブ」が正しいと言っておきながら「マグレブ」は使わずに「リニア」を使うことにします。日本にリニアが開業したあかつきには、きっと「リニア」が世界標準になりますので…。
●片道50元で龍陽路まで
 リニアに乗るには発券カウンターで「往復(Round Trip)」か「片道(One Way)」かを伝えるだけです。片道は50元(750円)。往復で買うと片道40元となり往復で80元(1,200円)となります。乗車時間は7~8分なのに片道750円は高い気がしてしまいますが、速いんだから仕方ありません。距離で考えれば結構長い距離を走っていますので、合理的な値段と言えば合理的な値段です。切符はここで買いましょう。リニアの終点は龍陽路(ロンヤンルー)。上海市内と言ってもあまり中心部には近くないです。上海の中心部に行きたい場合は、龍陽路から地下鉄かタクシーに乗らなければいけません。龍陽路から延伸する計画があったようですが、上手く話が進まずに開業から12年経った今でも開業区間は空港から龍陽路までです。もう少し中心部まで言ってくれたら随分と便利になると思うんですけどね。ホームは待合室の下にあり、時間まではホームに入れません。僕が乗った朝9時台は20分間隔の運行で、たまたま前の列車が出た直後とあり、20分も待たされることになりました。いくら速いと言っても20分も待たされるとせっかくの高速移動が無駄になっちゃいますよね。運行間隔がもう少し短かかったらなぁと思います。
●未来鉄道リニアらしからぬ車内
 リニアが入線してきました。地下鉄並の大きさを想像していると意外と横幅が広くて焦ります。1両の長さも結構長く、地下鉄並の長さを想定しているとかなり長く感じます。車内に足を踏み入れると、豪華なのか質素なのか分からない雰囲気にやや違和感を覚えます。照明や壁などの内装はそこそこなんですが、シートがダサ過ぎるんです。「何?この青色のカバー被ったシート?」ってな感じでお世辞にも格好いいシートとは言えません。座席配置は3-3で新幹線よりも1列多いです。シートは回転させることはできず、前向きの座席と後ろ向きの座席がちょうど真ん中で向かい合う方式を採っています。グループで座る場合はここが一番快適でしょう。シートピッチは意外と狭いです。基本的にガラガラですので、もう少しシートピッチを広くして欲しいと思います。本当に窮屈なんですよ。未来鉄道のリニアのはずなのにシートピッチはLCC並。何回乗ってもシートピッチだけは大きな違和感を覚えます。
●最高時速は430km/h
 浦東空港から龍陽路までの所要時間は約8分。最高時速は430km/hです。ただ、430km/hと言っても最高時速が出ている時間は30秒程度で、残りの時間は加減速に使われておしまいです。しかしやはり加速していくのは気持ちが良いもので、僕は最初の加速フェーズがたまらなく好きです。そして430km/hに達するとかなり速いと感じます。また減速していくのも面白くて200km/hくらいになると異常に遅く感じるんです。加速していく過程の200km/hと減速していく過程の200km/hは、まるで速さの感覚が違うんですよ。相対的な感覚ってホント不思議ですよねぇ。龍陽路に到着しました。わずか8分の高速移動体験でした。「もう終わりかよ」ってな感じです。降りるとこんな風。リニアの龍陽路駅は地下鉄の龍陽路駅と繋がっており、ガラスの向こう側は地下鉄からの人波です。5月1日に行った時の1日目の上海滞在は時刻表上で約6時間半。9時に着いて15時半には次の目的地へ出発します。上海市内で観光できる時間はそんなに長くはありません。それで急いでリニアに乗ったというわけです。
●最高時速300km/hのときもある
 そして空港に戻る時にもリニアに乗ることにしました。20分間隔の運行ではタイミングって非常に重要ですね。8分の所要時間で20分待つのは何だか不合理な気がします。こいつ、結構可愛いヤツなんです。この時の最高時速は301km/h。理由は分かりませんが、たまにこういうことがあるみたいですね。300km/hでも十分に速いんですが、行きの430km/hと比べたらうんと遅いです。300km/hですと中国新幹線よりも遅いことになりますから…。行きよりも遅い300km/hで走った割には、そんなに所要時間が変わることもなく空港に到着。430km/h出してる時間が短いですので影響も少ないんです。
●リニアは一種の観光スポット
 最後に。最高時速430km/hのリニアモーターカー。ここまで速い地上鉄道に乗れるのも世界で上海くらいなもんです。上海リニアは一種の観光スポットだと思って下さい。現地ではあんまり人気のないところが、観光スポット的な感じがします。僕は何度上海に来てもこれに乗りたくなってしまうんです。速い乗り物って無性に乗りたくなりません?何だか鉄道の速度で430km/hと聞くと未体験ゾーンな気がして何だかウズウズしちゃうわけです。そんなわけで、上海に行ったのなら乗ったことがあってもなくてもリニアに乗りましょう。

*4-2:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/252338 (佐賀新聞 2018年7月30日) 佐賀空港の台北線、佐賀からの搭乗スタート
 台湾の格安航空会社(LCC)タイガーエア台湾が運航する佐賀-台北線で、佐賀空港からの搭乗利用が29日、スタートした。従来、台湾からのツアー客を対象に運航していたが、佐賀空港から出発する人も利用できるようになった。カウンター前では、第1便となる午後12時30分発の搭乗手続きのため、日本国内での観光を終えた台湾の家族連れらでごった返した。佐賀空港での記念式典で山口祥義知事は「佐賀からの利用が可能になり、台湾の人は佐賀と近くなったと実感しているのでは」と歓迎の言葉を述べた。タイガーエア台湾の張鴻鐘董事長は、昨年6月から始まったツアー客限定のチャーター便の就航に至る経緯を振り返り「台北-佐賀間の定期便就航の手続きは最終段階にある。台北への第1便には当然、山口知事に乗ってもらうつもり」と話し、関係者の笑いを誘った。佐賀を中心に4日間、家族4人で観光地を巡った台北市の林芊彣さん(15)は「唐津城と祐徳稲荷神社が印象に残った」と話した。日本には数え切れないほど訪れたといい「佐賀を含め、日本と台湾を結ぶ拠点が多くなるのは喜ばしい」と笑みを浮かべた。台北便は週2往復で、木曜と日曜に運航している。

<豪雨被害から将来を見据えた安全な街づくりへ>
PS(2018/7/28追加):*5-1のように、記録的豪雨を含む大雨被害があった西日本地域に「激甚災害の指定」を行って復旧事業の補助率を上げるそうで、大災害が発生した地域が激甚災害の指定を受けて補助率を上げてもらえるのは有難いものの、激甚災害の指定は、「復旧事業」に限られているのが問題だ。何故なら、例えば、広島県倉敷市のように、住宅地が天井川の底より低い場所にあり、堤防だけが頼りなどというセキュリティーを無視した街づくりをしている場所に、年中復旧費用を出しているほど我が国の財政はゆとりがないため、少子高齢化して人口が減少している現在、住宅地には高い安全な場所だけを選び、災害リスクのある地域は農漁業地帯にするなど、激甚災害の指定は「復旧」に限らず「街づくり」をも応援しなければならないからだ。具体的には、住宅地は高所に作って一戸建てやマンションを分譲し、これまでの住宅と等価交換できるようにすればよく、高齢世帯は介護サービス等を受けやすい便利なマンションに移るのがよいと思われる。
 なお、*5-2のように、農業も甚大な被害は受けるのだが、住宅と比較すればやり直しが効く被害だと言える。そのため、専門家のアドバイスを受けながら、その土地にあった農産物の再配置を考えるのがよいだろう。

   
      2018.7.14朝日新聞          土砂と災害ゴミ

(図の説明:災害に遭われた方々にはお見舞い申し上げるが、自然条件から考えて災害に遭いやすい地域で、今後も同じことが起こり易い場所が多いように見える。そのため、必要な場所は災害ゴミと土砂を使って埋め立てたり、住宅は高台に移転したりするなど、国民の努力と血税が「賽の河原の石積み」にならないような復興計画を立てるべきだ)

*5-1:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO33321010U8A720C1EAF000/ (日経新聞 2018/7/24) 西日本豪雨を激甚災害指定 政府、復旧事業の補助率上げ
 政府は24日、西日本を襲った記録的豪雨を含む大雨被害の激甚災害指定を閣議決定した。指定は27日付。国から被災自治体の復旧事業に対する補助率を1~2割程度引き上げる。自治体の財政負担を軽くし、道路や河川、農地などの復旧事業を後押しする。指定対象は梅雨前線の停滞などに伴う被害。地域は限定せず、西日本豪雨より前に発生した北海道の大雨被害も含む。公民館や学校といった公共施設の復旧事業も支援する。被災した中小企業の借り入れを債務保証する「災害関係保証」を適用し、資金繰りを支える。激甚指定は従来、数カ月かかることもあった。政府は昨年12月に運用を見直し、最速1週間程度で指定見込みを公表できるよう改めた。安倍晋三首相は15日、運用改善後初となる指定見込みを公表。21日に広島県を視察した際、24日の閣議決定を表明した。激甚災害は政府の中央防災会議が定めた基準に基づき指定する。復旧に必要となりそうな費用の額などを踏まえ、判定する仕組み。近年では、2017年6~7月にかけての九州北部豪雨や16年の熊本地震を指定した。

*5-2:https://www.agrinews.co.jp/p44709.html (日本農業新聞 2018年7月27日) 西日本豪雨 ミカン島の被害甚大 若手 逆境に再興誓う 松山市
 西日本豪雨は、新規就農者や若い後継者の田畑を直撃した。若手農家とともにブランド化を進めてきた矢先の大被害に、産地は苦境に立たされている。松山市の興居島では、通行止めの解消など生活環境の復旧に伴い、農業被害が次々と明るみになっていく厳しい現実の中、若手らは消防団の活動に励む。つらい気持ちを抑え「ミカンの島を必ず復興する」と誓う。
●園地復旧 「一歩ずつ」
 「甘平」「紅まどんな」「せとか」など愛媛県が誇る中晩かんの木が根こそぎになる土砂崩れが各地で発生した松山市泊町。研修を経て4月に就農したばかりの川根勝弘さん(45)の園地も半分が被害に遭った。同町には30、40代の若手農家が毎年増えていた。JA松山市に出荷する仲間とともに、安定収入が見込める「紅まどんな」で勝負をかけようとしていた矢先の大打撃だった。川根さんは水槽まで流される豪雨の猛威を目の当たりにした。「まだ生きている木もあるが、パイプも水源も被害に遭い、防除も摘果もできない。どうすればいいのか」と落ち込む。川根さんら若い農家は連日、消防団活動に出向く。あまりの打撃に離農を口にする高齢者もいるという。園地の面積が小さく高齢化が進む同町では、規模拡大が難しい。かんきつは木を植えて収入が見込めるまで年数を要し、並大抵の努力では復旧できないことは川根さん自身が痛感している。それでも「ここまでブランドをつくってきた。一人じゃない。一歩ずつ頑張れば5年、10年と時間はかかっても復活できる」と園地に向かう。
●先輩農家と手携えて
 松山市由良町は代々、急傾斜地を切り開いてミカンを作ってきた。近年は、JAえひめ中央と農家が団結して「紅まどんな」などを地域ぐるみで栽培。そんな、小さくても光る産地を豪雨が襲った。同JA経営支援課の林諭さん(40)は「後継者が多く、産地を挙げて高級かんきつを生産する目標に向けて盛り上がっていた」と肩を落とす。1・5ヘクタールを栽培する坂本和久さん(35)は、伊予カンの園地が崩れ、水源の池が流され、「紅まどんな」のハウスも被害に遭った。島の至る所が被害に見舞われ「これから帰ろうとする若者の足止めになるのが心配。農業には自然災害のリスクがあると教訓にするしかない」と冷静に語る。坂本さんら若手農家は連日、消防団活動や復旧に泥まみれで作業する。そんな若者の姿に、地域の年配者らも「若い後継者のためにも踏ん張ろう」と考えている。「島の若い農家が重機で道路の土砂を取り除き、行けるようになった園地もある。泣いてばかりはいられない」と農家の石田六一郎さん(75)。農家の山岡建夫さん(66)は「後継者世代の被害も深刻。だが、若者のためにも水や防除を何とかしたい」と繰り返す。JAの林さんは「農業がないと地域は成り立たない。水害前、地域は活気に満ちていた。若者と先輩農家が手を携え復旧する」と力を込める。

| 経済・雇用::2018.1~ | 07:48 PM | comments (x) | trackback (x) |
2018.6.22 原発に固執する資本生産性の低さと国民負担 (2018年6月23、24、25、26、27日、7月5、11、12、22、24、26日に追加あり)
  
         2017.12.14、2018.6.10西日本新聞

    
   Livedoor       2018.6.14西日本新聞       世界の発電コスト低減

(1)フクイチ事故のその後
1)事故を起こした原発の状況
 *1-1-1のように、東京電力は原発事故から7年後の2018年1月19日、初めてフクイチ2号機で格納容器底部に燃料集合体の一部が落下しているのを確認したそうで、これまで2号機はデブリの多くが圧力容器内に残り、一部が圧力容器の底を抜け格納容器の底部付近に落ちたと推定されていて確認していなかったそうだ。そして、残りの燃料集合体が何処に飛散したかは明らかにしておらず、その楽観論には呆れる。

 また、*1-1-2のように、3号機は覆うだけで2537日(約7年)もかかったそうで、その間は放射性物質をまき散らし続け、廃炉に30~40年かかるそうだが、その上、*1-1-3のように、また原子炉建屋を覆うカバー屋根を解体し、2020年度に貯蔵プールから核燃料を取り出すそうだ。そのため、その間は、3号機に残っている核燃料が、再度、露出状態になる。

 さらに、*1-1-4のように、2号機の核燃料を取り出すためとして、東京電力は2号機の原子炉建屋壁面に開口部を設ける工事を始めたが、2号機の使用済核燃料の取り出し開始は、速くても2023年度だそうだ。

 つまり、チェルノブイリ以上の爆発事故を起こしながら、東京電力と経産省は、放射性物質を迅速に閉じ込めず、のんびり拡散させている点が、ロシア以上に人権侵害なのである。

2)除染後の放射線量と除染土の扱い
 また、事故後の避難の範囲も狭すぎたが、*1-2-1のように、除染もいい加減で、2017年9〜10月に飯舘村・浪江町の避難指示解除区域で毎時0.2〜0.8マイクロシーベルトあり、政府目標の0.23マイクロシーベルトを超えていたそうだ。しかし、一般住民の許容被曝線量は世界基準では年間1ミリシーベルト(0.11マイクロシーベルト/時)以下であるため、日本基準(年間2ミリシーベルト《0.23マイクロシーベルト/時》以下)にはごまかしがある。

 その上、*1-2-2のように、環境省が農地造成に除染土を再利用する方針を出したのには驚いた。園芸作物は土ごと購入する場合もあり、そのうち境界が曖昧になって農作物の生産に使われるかもしれないため、せっかく大金をかけて集めた除染土を農地造成に利用して汚染を全国にばら撒くというのは、その感覚が疑われる。

   
        フクイチ1、3号基の爆発と直後の様子         放射性物質の飛散

(2)原発のツケ
 フクイチ事故から約6年後の2016年12月1日、政府の高速炉開発会議は、*2-1のように、「政府の高速炉開発会議は、約1兆円の国費をかけて20年以上殆ど運転できなかったもんじゅ廃炉が検討されている高速増殖原型炉もんじゅに代わって、より実用化に近い実証炉を国内に建設する」という方針を公表したそうだ。しかし、1兆円もかければ再エネは軌道に乗せることができるため、コストがかかる上、エネルギー自給率にも資さない原発にこれ以上の国費をつぎ込むのは無駄遣いである。

 さらに、*2-2-1は、「日本政府は、日立製作所が英国で進める原発新設事業に対して3兆円規模の債務保証をする」と書いているが、これは国民に3兆円規模(消費税1%分以上)の損失リスクを負わせることであり、とんでもない。そのため、*2-2-2のように、日立製作所の方が撤退も視野に英政府と事業継続に向けた最終協議に入るそうだが、日立は経済合理性から撤退したいのに日本政府が前のめりになっているように見える。残念なことに、*2-2-3のように、英政府も前のめりで日立と事業推進に向けた覚書を結んだそうだが、日立は、ここで撤退するのが最も安上がりだろう。

 また、*2-3の日印原子力協定でも、インドで原発事故が発生した際には電力会社がメーカーに賠償請求できるという(本当は当然の)法律があり、メーカーは巨額の賠償責任を問われる恐れがあるため、原発のコストは再エネより安いという論拠は成立しない。

 このように、民間企業が原発を輸出するにあたって国民にツケを回すことには、*2-4のように、国民の理解が得られる筈がない。そして、日本政府が強力な支援策を検討している資金は、国民の生活を支える社会保障を減らしながら国民負担を増やして得た金なのである。

(3)原発再稼働
 断続的に噴火している新燃岳や250年ぶりに噴火したえびの高原(硫黄山)など、活発な火山活動を続ける宮崎、鹿児島県境の霧島連山の地下に、最大15キロに及ぶ大規模なマグマだまりのあることが、*3-1のように、気象庁などの解析でわかっている。そして、これは、川内原発のすぐ東側だ。

 しかし、*3-2のように、玄海町議会は原発増設を国の計画に明記することを要求する意見書を可決しており、これなら、コストが決して低くないことが明らかになった原発は、再エネのコストが下がっている現在、国策ではなく町策にすぎない。そして、町策は、周囲に迷惑をかけない賢いものを考えるべきである。

 そして、周囲のあらゆる反対を押し切り、*3-3のように、九電は川内原発1、2号機、玄海3、4号機を再稼働したが、加圧水型でも爆発の危険性はかわらず、使用済核燃料が保管プールに水につかっただけで満杯になっていることにもかわりはない。これでは、せっかく福岡市郊外のベッドタウンとして機能できる位置にあっても、周囲に住む人が減るのは当然のことである。

 なお、私は、エネルギーのためなら公害を出しても景観を悪くしても許されるという19世紀・20世紀の発想には組しない。そして、*3-4のように、関係者が、「太陽光発電は晴天の昼間に発電量が増える一方、夜間は発電しないなど不安定な電源」などと10年1日の如く同じことを述べ、「従って、原発4基の稼働が実現したので、今秋の連休にも太陽光発電事業者の出力制御に踏み切る」というのは、世界の潮流に逆行しており、あまりにも愚鈍だ。

 そして、これが、せっかく最先端の事業のタネがあっても事業化すれば成功しない典型例で、日本では事業を起こすことはハイリスク・ローリターンであるため、起業が少ないのである。

<フクイチその後>
*1-1-1:https://www.shikoku-np.co.jp/national/science_environmental/20180119000633 (四国新聞 2018/1/19) 福島2号機で溶融核燃料初確認/第1原発調査、炉心から落下
 東京電力は19日、福島第1原発2号機でカメラ付きのパイプを使い、原子炉格納容器内部を調査した。格納容器底部に燃料集合体の一部が落下しているのを確認し、その周辺で見つかった堆積物は溶け落ちた核燃料(デブリ)と断定した。2号機でデブリを確認したのは初めて。記者会見した東電の木元崇宏原子力・立地本部長代理は「デブリで原子炉圧力容器の底部に穴が開き、中から燃料集合体が落下した。デブリに間違いないだろう」と述べた。これまでの解析では、2号機ではデブリの多くが圧力容器内に残り、一部が圧力容器の底を抜け、格納容器の底部付近に落ちたと推定されていた。

*1-1-2:https://digital.asahi.com/articles/ASL3D62XML3DUGTB00N.html?iref=comtop_8_01 (朝日新聞 2018年3月18日) 3号機、覆うだけで2537日 廃炉作業、厳しい道のり
 東京電力福島第一原発は2011年3月12日から15日の間に3度、爆発した。放射性物質をまき散らし、大地や水、人々の暮らしは今も深い傷を負っている。4号機の使用済み核燃料取り出しに続き、3号機では爆発から2537日目の2月21日、ようやく核燃料を運び出す準備が整った。「3号機廃炉作業所長」を務める鹿島の岡田信哉さん(54)はこの日、最上階で、半円柱のカバー(長さ約60メートル、高さ約18メートル)の最後の一片がはめ込まれ、燃料プールが覆い隠されるのを見守った。プール内の燃料は566体。カバーはこれらを取り出す際、放射性物質の飛散を防ぐために不可欠な設備だ。高さ36メートルの現場にはいつものように、ZARDの「負けないで」のメロディーが流れるエレベーターで昇ってきた。岡田さんは7年近く、約100人の部下を率い、高線量のがれきと格闘してきた。原発事故から10日後、本社(東京)に呼ばれ、3号機のカバー設置を検討するメンバーに入った。当時は東電柏崎刈羽原発(新潟)の工事事務所長で、その豊富な経験が買われた。初めて見た3号機の建屋は、めちゃくちゃに壊れた鉄骨やコンクリートが屋上で折り重なっていた。放射線量は最大で毎時2シーベルト(3~4時間で致死量に達する)を超える地点も。屋上のがれきを取り除き、プールを覆うカバーを設置しようにも、大型クレーンを建屋に近づけなければ何も始まらない。まずは建屋周辺の舗装に取りかかった。大型クレーンに耐えられるよう採石を1メートルほど積み上げ、その上に鉄板を敷いた。放射線を遮断する特別仕様の重機で作業を進めた。時に胸ポケットに入った「APD」(線量計)から高音の警報が鳴る。3回目が「現場から出る支度を」という合図。1班十数人での交代作業だが、至る所で音が鳴った。「自分か他人かわからない時もあった」。11年秋から屋上のがれき撤去に取りかかった。使用する大型クレーンは2基で、約100メートルのアームで狙うのは、山積するコンクリートや鉄骨のがれき。作業上の特徴は「遠隔操作」と「3Dを使ったシミュレーション(解析)」だ。クレーンは無人で、現場から約500メートル離れた免震重要棟から遠隔で行った。無人重機の運転席にはカメラやマイクが設置され、現場の状況が映像と音で確認できる。だから免震棟の一室からでも、運転席にいる感覚で操作できるという。もう一つがシミュレーションだ。入り組んだがれきの取り出しは戦略的に行われた。まず本社で3D画像や模型を使って現場を再現し、解析する。この鉄骨をここから切り込むとこう動く、ここを切ると反対側に倒れるかもしれない、といった予測だ。そのデータをもとに、現場ではアームの先端に付けた「フォーク(つかむ)」「カッター(切る)」「バケット(すくう)」「ペンチ(つまむ)」の4種類の機器を駆使し、がれきを地上に下ろした。がれきは重さ5キロの鉄板だったり、数トンの鉄骨だったり。「今日は2個、3個取れたとか、そんな報告を受けるような地道な作業が続いた」。がれきの撤去を終え、昨夏からカバーの設置作業を進めてきた。燃料の取り出しは今秋にも始まるが、その主体は東芝に移る。「うまくバトンタッチしたい」。岡田さんらは今、燃料取り出しに向けた道路の整備などにあたっている。この先も難路が続く。燃料取り出しは遠隔操作で2年ほどかかる。格納容器に溶け落ちた燃料(デブリ)の回収はそれからで、その方法はまだ決まってない。福島での単身生活は7年になる。中学生だった息子は大学生になった。岡田さんは「こんなに時間がかかるとは思いもしなかった。できればまた廃炉に関わっていきたい」と話した。7年間で取り除いたがれきは、25メートルプールで10杯ほど、約3200立方メートルに上った。
〈東京電力福島第一原発の廃炉計画〉 国と東京電力がつくる福島第一原発の廃炉工程表は、終了を2011年12月から30~40年後としている。大きく3期に分け、使用済み核燃料の取り出し開始までを1期(2年以内)、デブリの取り出しが開始されるまでを2期(10年以内)、以降を3期としている。1期は13年11月に4号機で作業が始まったのを機に終了。現在の2期に移行している。デブリの取り出しが始まると3期に入るが、時期は未定だ。

*1-1-3:https://www.nikkei.com/article/DGXLASGG28H03_Y5A720C1MM0000/ (日経新聞 2015/7/28) 福島第1原発1号機、解体に着手 カバー屋根取り外し
 東京電力は28日、福島第1原子力発電所1号機の原子炉建屋を覆うカバーの本格的な解体作業に着手した。まず屋根を取り外し、2016年度中の解体完了を目指す。20年度に始める貯蔵プールからの核燃料の取り出しに向け、1号機の廃炉工程が前進する。1号機では11年3月の事故の際に水素爆発が発生し、建屋が大破した。放射性物質が飛び散るのを防ぐため、11年10月に建屋全体を覆うカバーを設置した。28日早朝の作業では、屋根に6枚並ぶパネル(1枚あたり幅約7メートル、長さ約42メートル)のうち中央にある1枚をクレーンで取り外した。年内にもすべて撤去する。側面なども含め、1年以上かけて解体を終える計画だ。解体後は建屋内に散乱するがれきなどを撤去し、貯蔵プールに392体残る核燃料搬出に備える。カバーはもともと13~14年度に解体する計画だったが、作業に伴う放射性物質の飛散対策などに時間がかかり、大幅に遅れた。東電は今年5月に屋根の撤去に着手する予定だったが、建屋内の放射性物質の拡散を防ぐために設置したシートがずれているのが見つかり、延期していた。

*1-1-4:https://www.kahoku.co.jp/tohokunews/201804/20180417_63021.html (河北新報 2018年04月17日) <福島第1>2号機「燃料」取り出しへ 壁面に穴開け開始
 東京電力は16日、福島第1原発2号機の原子炉建屋壁面に開口部を設ける工事を始めた。6月までに穴を開け、ロボットなどで内部を調査。2023年度を目指す使用済み核燃料の取り出し開始につなげる。壁内側の空間放射線量は、12年6月時点で毎時880ミリシーベルトと非常に高い。放射性物質の飛散を防ぐため、工事は壁面に密接して新設した「前室」(幅23メートル、奥行き17メートル、高さ10メートル)の内部で実施。初日は技術者が立ち会い、厚さ20センチのコンクリート壁の3カ所を直径11センチの円柱状にくりぬいた。17日も6カ所で行う。開口部は使用済み燃料プール上部に通じる場所に設け、大きさは幅5メートル、高さ7メートル。壁を取り壊す際は重機を遠隔操作する。2号機は水素爆発せず、建屋上部が残っている。東電は建屋上部を解体して天井クレーンを設置し、燃料取り出しを進める計画。

*1-2-1:http://qbiz.jp/article/129054/1/ (西日本新聞 2018年3月2日) 除染後も目標の3倍 飯舘の放射線量、上昇地点も 民間調査
 福島県飯舘村の民家とその周辺では除染後も、東京電力福島第1原発事故後に政府が長期目標としている被ばく線量の約3倍の放射線量が計測され、1年前より上がっている場所もあったなどとする調査結果を1日、環境保護団体グリーンピースが発表した。調査は、2017年9〜10月に飯舘村と浪江町の避難指示が解除された地域などで実施、民家や森など計数万カ所で測定した。飯舘村の民家6軒では毎時0・2〜0・8マイクロシーベルトで、ほとんどが政府の目標を1時間当たりの空間放射線量に換算した同0・23マイクロシーベルトを超えた。周囲に森林が少ない村役場近くの1軒は16年の調査時から放射線量が下がっていたが、除染していない森林が周囲にある5軒は16年とほとんど変化がなかった。中には上がっている場所もあった。

*1-2-2:https://www.nikkei.com/article/DGKKZO31313110T00C18A6CR8000/ (日経新聞 2018/6/4) 農地造成にも除染土再利用 環境省方針
 環境省は3日までに、東京電力福島第1原発事故に伴う除染で生じた土を、園芸作物などを植える農地の造成にも再利用する方針を決めた。除染土の再利用に関する基本方針に新たな用途先として追加した。食用作物の農地は想定していない。工事中の作業員や周辺住民の被ばく線量が年間1ミリシーベルト以下になるよう、除染土1キログラムに含まれる放射性セシウム濃度を制限。くぼ地をならす作業に1年間継続して関わる場合は除染土1キログラム当たり5千ベクレル以下、1年のうち半年なら8千ベクレル以下とした。除染土は、最終的に厚さ50センチ以上の別の土で覆い、そこに花などを植える。福島県飯舘村の帰還困難区域で今年行う実証試験にも適用。村内の除染土を区域内に運び込んで分別し、5千ベクレル以下の土で農地を造成し花などの試験栽培を行う想定だ。

<原発のツケ>
*2-1:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12684302.html (朝日新聞 2016年12月1日) もんじゅ後継、国内に実証炉 開発体制、18年めど 政府会議方針
 政府の高速炉開発会議は30日、廃炉が検討されている高速増殖原型炉もんじゅに代わり、より実用化に近い実証炉を国内に建設するなどとする開発方針の骨子を公表した。2018年をめどに約10年間の開発体制を固める。約1兆円の国費をかけ、20年以上ほとんど運転できなかったもんじゅの反省は生かされず、高速炉開発ありきの議論が進む。会議は世耕弘成経済産業相が議長。松野博一文部科学相や日本原子力研究開発機構、電気事業連合会、三菱重工業がメンバー。骨子では、もんじゅを再運転した場合に得られる技術的な成果を「ほかの方法でも代替可能」と評価。蓄積された成果は活用するとしつつ、廃炉にしても実証炉建設への影響はないと結論づけた。もんじゅについて政府は廃炉を含め抜本的な見直しを決めている。高速炉は「実験炉」「原型炉」「実証炉」と進み、「商用炉」で実用化する。安全性の確認や発電技術の確立など、原型炉もんじゅで終えるべき課題を残し、次の実証炉に進む形だ。政府は、もんじゅを廃炉にした場合でも、フランスが30年ごろの運転開始を目指す実証炉「ASTRID(アストリッド)」計画に協力することで高速炉開発を維持するとしてきた。だが同会議は、エネルギー政策の根幹とされてきた核燃料サイクル事業の施設を不確実性のある海外の計画だけに頼るのはリスクがあるとの批判も考慮し、国内での実証炉開発を明示した。実証炉の建設時期や場所は未定。来年初めから実務レベルの作業グループを置き工程表策定を進める。骨子にはアストリッド計画を補完する施設として、原子力機構の高速増殖実験炉「常陽」やナトリウム研究施設「AtheNa(アテナ)」(いずれも茨城県)などの国内研究施設も示された。

*2-2-1:https://www.sankei.com/economy/news/180111/ecn1801110051-n1.html (産経新聞 2018.1.11) 日立の英原発計画、日英政府が支援 事業費3兆円確保へ
 日立製作所が英国で進める原発新設事業に対し、日本の3メガバンクが政府の債務保証を受けたうえで融資を行う方針が固まった。政府系の国際協力銀行(JBIC)も融資を行うほか、日本政策投資銀行が出資で参加する。政府は総額3兆円規模とされる事業費確保に向けた支援を進め、原発輸出を後押しする。日立は2012年に買収した英原発子会社ホライズン・ニュークリア・パワーを通じ、英西部アングルシー島で20年代前半の稼働を目指し、原発2基の新設計画を進めている。事業費は融資と出資で調達する。融資はJBICが軸となり、メガ3行も各千数百億円出す方向だ。民間分は政府が全額出資する日本貿易保険が債務保証する。出資は日立と政投銀が実施。大手電力会社にも打診している。英国の政府や銀行からの支援も受ける。日立は最終判断を19年に下す。米原発事業の損失で経営危機に陥った東芝を反面教師に、ホライズンを連結子会社から外せない場合は計画を断念する考え。政府支援には日立が抱え込むリスクを抑制する効果があるが、巨額損失が出た場合には国民負担が発生する懸念が大きくなる。

*2-2-2:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO29996700Z20C18A4MM8000/ (日経新聞 2018年4月29日) 日立、英政府と原発巡り最終協議へ 撤退も視野
 日立製作所が英国で建設を目指す原子力発電プロジェクトを巡って、英政府と事業継続に向けた最終協議に入ることがわかった。2020年代前半の稼働を見込むが、安全基準の強化で総事業費は約3兆円に膨らむ。リスクを抑えたい日立は中西宏明会長が近く渡英し、英政府の直接出資などを求めてメイ首相と交渉する。決裂すれば事業から撤退する方針だ。協議の行方は日本の原発産業だけでなく、日英両国の原発政策にも大きな影響を及ぼす。中西氏は週内にメイ氏と会談し、英中部アングルシー島で計画する原発新設事業について協議する。12年に現地事業会社の全株を890億円で買い取り、総額2千億円程度を投じて原子炉の設計や工事準備を進めてきた。17年末には英当局から炉の設計認証を受け、19年に予定する着工へ最終段階に入っている。関係者によると、4月下旬には英政府が「日英それぞれの政府・企業連合、日立が事業に各3千億円ずつ出資する」案を示してきたという。これまで英政府は原発新設プロジェクトへの直接出資に後ろ向きだったとされ、日立は直談判で英政府の出資確約と事業継続に必要な一段の支援策を求める見通しだ。日立が危機感を強めたのは、今年2月下旬だ。「公式文書で回答がなければ、ウィズドロー(撤退)します」。日立側が英政府に伝えたという。何度も期限を設け、英政府へ投融資など具体的な支援策を要請してきたが「口約束」にとどまってきたためだ。4月末現在も文書を交わす正式合意に至っていない。日立の英国事業については、16年に日英政府も協力の覚書を交わした。だが支援策を固める作業が難航。水面下の折衝は2年近く続くが、なお2つの溝が埋まらない。第一が英政府がどれだけ事業に関与するかだ。「19年までに事業を連結対象から外せなければ、着工しない」。日立は100%子会社となっている事業会社に英政府や現地企業に出資してもらうことで、出資比率を50%未満まで下げられるよう求めてきた。工事遅延などで巨額の損失が発生すれば、日立が100%かぶることになるからだ。だが英政府も財政悪化で「巨額投資に応える余裕がない」と主張する。原発推進派とされるメイ氏だが、欧州連合(EU)離脱交渉に追われるほか、支持率低下で議会の風当たりも強い。「日本政府と覚書を交わした16年から状況は一変した」(英政府関係者)。4月下旬に英国側が示した日英と日立で総額9千億円を出し合う枠組みは一定の譲歩案だった。しかし、これでも英国の出資比率は33.3%。日立や日本政府内では日本側が事業の主導権を握ることへの警戒感も強い。約2兆円と想定される事業に必要な借入金を巡っても、英政府がどれだけ保証を付けるか折り合えていない状況だ。建設後の電力買い取り価格を巡る議論も続く。日立は運営会社としても発電事業に関与する方針で、高い単価での政府買い取り保証を求めている。建設後の採算悪化を避け、長期間にわたって安定運営するためだ。だが英政府が提示している買い取り価格は、日立が求める水準より約2割低いもよう。英政府はフランスや中国が主導する英南西部の原発事業に高い買い取り価格を保証したが、高すぎて市民が払う電力料金は跳ね上がりかねない。世論の反発を招いており「日立にも高い保証を出すのは難しい」という立場だ。日立はメイ氏との直談判で妥協案を探るとみられる。支援を求めるのは「原発はリスクが大きく、民間企業だけで背負えなくなった」(幹部)とみるからだ。メイ氏自身も日立への支援に前向きとされ、交渉次第で支援策が進む可能性はある。11年3月の東日本大震災以降、世界的に安全基準を引き上げる動きが相次ぐ。関連メーカーや建設会社の安全対策費も急増しており、16年末には東芝の子会社だった米ウエスチングハウス(WH)で総額7千億円に及ぶ巨額損失が発覚した。日立の英原発プロジェクトも総事業費が当初の2倍となる3兆円に跳ね上がったとされる。誰が原発コストの負担をかぶるのか。仮に交渉が不調に終われば、日英ともに打撃は大きい。既存発電所の老朽化が進む英国は、今後10基以上の原発を新設して電力需要を賄う計画。日立の事業が頓挫すれば、エネルギー政策の見直しを迫られかねない。原発輸出を成長戦略に掲げてきた日本も、日立案件には政府の融資保証を付けて推す方針だ。三菱重工業のトルコ案件が大幅に遅れるなど各地で日本勢の苦戦が目立つだけに、日立の事業が難航すれば影響は関連メーカーに幅広く及ぶ。世界的に原発事業の難しさが浮き彫りになっている。

*2-2-3:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO3136307004062018MM8000/ (日経新聞 2018/6/5) 日立、英原発の推進で覚書 英政府と基本合意
 日立製作所は英国で進める原子力発電所の建設計画を巡り、英政府と事業推進に向けた覚書を結んだ。英政府との間で資金負担の内訳などで基本合意した。日立は2020年代前半の稼働を目指し、必要な許認可取得など原発新設の準備を進める。19年中の最終契約に向け、原発事業のリスク回避策などを詰める。英政府は現地の4日夕方(日本時間5日未明)にも覚書を結んだ旨の声明を公表する見通し。日立は5月28日開催の取締役会で、英中部アングルシー島で進める2基の原発の新設計画を継続する方針を確認し、英政府との間で覚書締結に向けた調整を続けてきた。日立は4月以降、英政府との間で、事業撤退も視野に入れた大詰めの交渉を進めてきた。5月3日には中西宏明会長がメイ英首相とロンドンで会談した。英政府は総事業費3兆円超のうち2兆円を超える融資を全額負担する支援策を表明。事業費のうち、原発の開発会社に対する9千億円の出資について、日立と日英の政府・企業連合の3者が3千億円ずつを投資する案も示した。原発新設が計画通りに進まなかった場合の損失リスクへの備えでも合意した。日立と日英の両政府・企業連合が各1500億円ずつを拠出する。建設計画の遅れなどの不測の事態が起きた際に資本に転換できる債券などを検討している。これらの条件を固めたことで、日立と英政府は覚書締結にこぎ着けた。日立は原発を新設するかどうかを19年に最終決定する。日立社内にはなお慎重論も根強く、原発リスクを軽減することへの要望が強い。最終契約に向け、なお残る条件を英政府と詰める。1つは英政府による電力の買い取り価格の水準だ。原発運営の事業採算に直結するため、日立は高い価格での買い取りを求めている。一方、英国にとっては電力料金を支払う住民負担につながるため、慎重な交渉が続いている。2つ目は原発事故など不慮の事態が起きた場合の損害賠償責任で、日立と英政府は引き続き協議を続けるもよう。企業連合に出資する参加企業もまだ確定しておらず、日立などは参加企業を募っている。

*2-3:https://mainichi.jp/articles/20170608/k00/00m/010/134000c (毎日新聞 2017年6月7日) 日印原子力協定:原発輸出、増すリスク
 政府は日印原子力協定の締結によって、原発輸出の拡大を目指す。しかし、福島第1原発事故後に原発の建設費用が上昇するなど海外事業のリスクは高まっており、米原発子会社の破綻で東芝が経営危機に陥るなど、日本企業による積極展開の機運はしぼんでいる。福島事故後に国内での新設が困難となる中、日本政府は成長戦略の一環として原発をインフラ輸出の柱に位置づけ、各国との協定締結を進めてきた。電力不足によって今後の新規建設ラッシュが見込めるインドは有望な市場だ。だが、インドには原発事故が発生した際、電力会社がメーカーに賠償請求できる法律があり、巨額の賠償責任を問われる恐れがある。日本メーカーは「インドは巨大な市場だが、賠償法の問題があり、今後の状況を注視していく」(三菱重工業)などと、期待の一方で、慎重な姿勢も目立つ。東芝子会社の米ウェスチングハウスは、米国での原発建設費用の高騰が破綻の引き金になるなど、事業リスクは増している。龍谷大学の大島堅一教授(環境経済学)は「再生可能エネルギーは費用も下がり、投資が拡大している。原発の退潮は明らかで、無理のある協定だ」と批判している。

*2-4:https://digital.asahi.com/articles/DA3S13323241.html (朝日新聞社説 2018年1月21日) 原発輸出 国民にツケを回すのか 
 苦境の原発産業を支えるために、国が高いリスクを肩代わりする。そんなやり方に、国民の理解が得られるだろうか。日立製作所が英国で計画する原発の建設・運営事業に対し、日本政府が資金面で強力な支援策を検討している。だが、福島第一原発の事故後、安全規制の強化で建設費が膨らむなど、世界的に原発ビジネスのリスクは大きくなっている。東芝が米国で失敗し、経営危機に陥ったことは記憶に新しい。万が一、大事故を起こした時の賠償責任の重さは、東京電力がまざまざと見せつけた。日立の事業がうまくいかなければ、支援をする政府系機関が巨額の損失を被り、最終的に国民にツケが回りかねない。政府は前のめりの姿勢を改め、リスクの大きさや政策上の必要性を慎重に見極めるべきだ。計画では、日立の子会社が原発を建設し、20年代半ばに運転を始める。現時点で3兆円ほどと見込まれる事業費は、日英の金融機関からの融資や新たに募るパートナー企業の出資などでまかなう想定だ。日立は採算性を見極めた上で、建設するかどうかを来年にも最終判断する。この計画に対しては、日本の大手銀行は慎重な一方で、「官」の肩入れが際立つ。政府系の国際協力銀行が数千億円を融資するほか、数千億円と見込む民間銀行による融資の全額を貿易保険制度の対象とし、返済を国が実質的に保証する方向で調整している。日本政策投資銀行も出資に加わるとみられる。ここまで政府が後押しするのは、原発産業を守る思惑があるからだ。福島の事故以降、国内では原発の新設が見込めず、経済産業省やメーカー、電力大手は、技術や人材の維持をにらんで海外市場に期待する。
だが、原発輸出はあくまでビジネスであることを忘れてはならない。リスクは、事業を手がける民間企業が負うのが本来の姿だ。それを国が引き受けるというなら、社会にとって有益であることが前提になる。国民の多くを納得させられるような意義はあるだろうか。政権と経済界は、原発などインフラ輸出の推進で足並みをそろえてきた。日立会長の中西宏明氏が近く経団連の会長に就くだけに、今回の支援策が合理性を欠けば、官民のもたれあいだと見られるだろう。そもそも、福島の事故を起こした日本が原発を海外に売ることには、根本的な疑問もある。政府や関係機関は、幅広い観点から検討を尽くし、国民に丁寧に説明しなければならない。

<原発再稼働>
*3-1:http://qbiz.jp/article/135439/1/ (西日本新聞 2018年6月10日) 霧島連山に大規模マグマだまり 気象庁など解析 最大で長さ15キロ、幅7キロ
 2011年以降、断続的に噴火する新燃岳(しんもえだけ)や、今年4月に250年ぶりに噴火したえびの高原(硫黄山)など活発な火山活動を続ける宮崎、鹿児島県境の霧島連山の地下に、最大15キロに及ぶ大規模なマグマだまりがあることが、気象庁気象研究所(茨城県つくば市)などの研究グループの解析で明らかになった。新燃岳の噴火を受けて国や大学、自治体などの観測網が強化され、豊富なデータが利用可能になったことが地下構造の解明につながった。研究グループには東京大の地震研究所と京都大の火山研究センターが参加。11年4月〜13年12月に霧島連山周辺に広がる37地点の地震計からノイズのような微細な地震波を大量に収集し、地盤の固さによって速度が変わる地震波の性質を利用して解析した。大規模マグマだまりは、海面を基準にして深さ5〜7キロ付近を頂点とし、御鉢から北西方向に長さ10〜15キロ、最大幅が7キロ、厚みが少なくとも5キロ以上あるとされる。同様の解析手法で明らかになった長野、群馬県境にある浅間山のマグマだまりの範囲(長さ7〜8キロ)を上回っている。これまでは衛星利用測位システム(GPS)を使った地殻変動の観測から、新燃岳噴火の前後に膨張収縮するエリアがえびの岳の地下深くにあり、これがマグマだまりとされていた。解析を担当した気象研究所火山研究部の長岡優研究官は「地殻変動が起こっていたエリアは、大規模なマグマだまりから新燃岳へマグマを供給する出口部分と考えられる」と指摘する。11年の新燃岳噴火を受けて気象庁や各大学、周辺自治体などが地震計やGPS、傾斜計、監視カメラなどを増強。観測装置は80を超え、噴火前の2倍以上となった。火山活動がより詳細に把握できるようになり、さらなる構造解明も期待される。長岡研究官は「マグマだまりが霧島山全体に広がっていることから、活動予測のためには御鉢周辺などより広い範囲での観測や研究が必要になる」と話している。

*3-2:http://qbiz.jp/article/129284/1/ (西日本新聞 2018年3月7日) 玄海町議会「原発増設を」 国計画に明記要求 意見書案可決へ
 九州電力玄海原発が立地する佐賀県玄海町議会が、年内にも改定される国のエネルギー基本計画に原発の新増設を明記するよう求める意見書案を3月議会で取りまとめることが分かった。19日の本会議に提出する。全町議10人が原発推進派のため可決される見通し。町議会総務文教委員会(5人)が5日、国へ意見書提出を求める請願を全会一致で採択。脇山伸太郎委員長は「原発立地町の責任に鑑みて、国のエネルギー政策に関する意見書を作りたい。内容は作成中でコメントは控える」と話した。意見書案が可決されれば政府に提出する。原発の新増設や建て替え(リプレース)について、岸本英雄町長は昨年12月議会で「リプレースはいずれ強い選択肢になる」と述べたが、山口祥義知事は否定的な見解を示している。請願は、商工団体などで組織する一般社団法人「原子力国民会議」(東京)が昨年末から、玄海町を含む五つの原発立地自治体などに送付。国に対して基本計画に新増設の明記を求める内容で、関西電力高浜原発が立地する福井県高浜町議会が昨年12月議会で同様の意見書を可決した。エネルギー基本計画は現在、改定に向けて経済産業省の有識者会議で議論されている。2014年4月に策定された現行の基本計画は、原子力を「重要なベースロード電源」とし、原子力規制委員会の新規制基準に適合した場合、再稼働を進める方針を明記。ただし、原発の新増設やリプレースに関する表記はない。30年度の原発の電源構成比率を20〜22%とする中期目標の実現へ向け、新増設も検討課題となっている。
   ◇   ◇
●「現実的でない」町民疑問の声
 九州電力玄海原発3号機(佐賀県玄海町)の再稼働が今月下旬に控える中、国のエネルギー基本計画に原発の新増設を明記するよう求める町議会の動きが明らかになった6日、町内の原発賛成派と反対派の住民の双方から疑問の声が上がった。同町の漁業渡辺一夫さん(71)は「使える物は使おうという再稼働はしょうがないが、新増設は現実的に厳しいだろう」と指摘。「反対派からは福島であれだけの事故が起きたと言われる。議会に反対する人がいないためかもしれないが、もう少し慎重にするべきだ」と注文した。一方、同町の公務員小野政信さん(61)は「1号機が廃炉になる損失を補う考えだろうが、福島の現実を見たら再稼働ですら、とんでもないこと。新増設なんて考えられない」と町議会の姿勢を批判した。

*3-3:http://qbiz.jp/article/135851/1/ (西日本新聞 2018年6月17日) 九電 原発4基体制に 玄海4号機 6年半ぶり再稼働
 九州電力は16日、玄海原発4号機(佐賀県玄海町)を再稼働させた。定期検査で運転を停止した2011年12月以来、稼働するのは約6年半ぶり。東京電力福島第1原発事故を受けた新規制基準施行後、九電は川内原発1、2号機(鹿児島県薩摩川内市)、玄海3号機を既に再稼働しており、玄海4号機を加えて当面の経営目標としていた原発4基体制が整うことになる。安全対策を強化した新規制基準下で再稼働した原発は全国9基目。いずれも加圧水型で、今後は福島第1原発と同じ沸騰水型の審査と再稼働が焦点となる。玄海原発内の中央制御室ではこの日朝から運転員など約20人が作業。午前11時、原子炉内の核分裂を抑える制御棒を遠隔操作で引き抜き、原子炉を起動させた。16日深夜に核分裂が安定的に続く「臨界」に達した。20日に発電と送電を開始予定。順調に進めば7月中旬に営業運転に入る。玄海4号機は3号機とともに使用済み核燃料の処理が課題。保管プールの空き容量が少ないが、処理を担う日本原燃(青森県)の工場は操業の見通しが立たず、搬出できない状態での再稼働となる。九電はプールの容量増強や金属製容器に入れ陸上で一時保管する「乾式貯蔵」を検討している。玄海原発では、1号機で廃炉作業が始まっている一方、21年に運転期限の40年を迎える2号機について九電はまだ方針を決めていない。今後は、存廃の判断が注目される。地域の理解も課題だ。事故時の避難計画が必要な周辺30キロ圏の3県8市町のうち、4市が避難計画の実効性などを問題視して再稼働に反対を表明している。16日には原発前などで反原発団体の抗議活動があった。玄海4号機は17年1月に新規制基準に適合。5月24日にも再稼働する予定だったが、原子炉の冷却水を循環させるポンプの一部で異常が発生。緊急点検と修理作業を実施し、工程が約3週間遅れた。

*3-4:http://www.saga-s.co.jp/articles/-/231896 (佐賀新聞 2018.6.17) 太陽光出力制御、今秋にも、九電、原発4基稼働実現で
 東松浦郡玄海町の九州電力玄海原発4号機が16日に再稼働し、太陽光発電の普及が進む九州で原発が4基動く環境が整った。電力供給力が大幅に増えるため、九電が、今秋の連休にも太陽光発電事業者の出力制御に踏み切る事態が現実味を帯びる。出力制御が頻発すれば太陽光事業者の収支に影響が出るのは必至だ。電力需要が少ない時期に供給が大幅に上回れば広域的な停電を引き起こす恐れがあり、電力会社に出力抑制が認められている。ただ、これまで離島では実施例があるが、九州本土といった広域で行えば全国で初となる。太陽光発電は晴天の昼間に発電量が増える一方、夜間は発電しないなど不安定な電源で電力会社にとって扱いにくい。九電はこれまでも火力発電の稼働率の調整や、揚水発電所で昼間に水をくみ上げて夜間に発電するなどしてきたが、さらに上回ると見込まれる場合、事前に太陽光事業者に対し出力制御を指示する。連休中などはオフィスや工場の電力需要が下がるほか、家庭などで冷暖房も使わなければ電力需要は下がる。九電によると、今年4~5月の大型連休中は供給電力に占める太陽光の割合が一時81%を超えた。今秋には川内原発1、2号機(鹿児島県薩摩川内市)や玄海3、4号機がいずれも稼働している見通しだ。九電関係者は「原発が4基動き、電力需要が少なく晴天といった条件がそろえば、制御をすることになるだろう」と分析している。

<再生エネへのエネルギー転換へ>
PS(2018/6/23、27追加):川内原発の地元で世論調査を行った結果、*4-1のように、再エネへの移行を望む県民の強い意識が明らかになったそうだ。特に鹿児島県は、火山や地震で原発が危険な反面、地熱発電は期待できるため、再生エネの主力電源化を国より先行して実施すればよいと考える。また、玄海原発の周辺地域とされている唐津市は、原発事故が起これば1分以内に汚染され、帰還困難区域になる場所も多いため、リスクを負う以上、*4-2のように、原発の地元として「地元同意」の対象になるのが当然である。
 なお、*4-3のように、使用済核燃料の最終処分場所も決まっておらず、現在は原発建屋内の使用済核燃料プールに水につかっただけで大量に保管されており、九電は燃料の間隔を詰めるリラッキングや乾式貯蔵施設を検討しているそうだ。しかし、これは、原発周辺住民の安全性について、原発建設時よりも規制緩和された取り扱いであり、とても見過ごすことはできない。

   
30年以内の大地震発生         地熱発電とその資源分布

*4-1:https://373news.com/_column/syasetu.php?storyid=92345 (南日本新聞 2018/5/8) [原発世論調査] 再生エネへの転換を急げ
 調査で浮かび上がったのは、原発再稼働に対する賛否にかかわらず、再生可能エネルギーへの移行を望む県民の強い意識である。国や県は再生エネへの転換を積極的に進めるべきだ。南日本新聞社は九州電力川内原発について電話世論調査を行った。再稼働の賛否では「よくなかった」「どちらかといえばよくなかった」が計50.0%、「よかった」「どちらかといえばよかった」は合わせて43.7%だった。注目したいのが、それぞれの理由(複数回答)である。再稼働に否定的な理由は「できるだけ早く再生可能エネルギーに移行すべき」が最多の45.0%、次が「福島の事故原因が究明されていない」の33.5%だ。肯定派の理由も、「再生可能エネルギーへの移行まで当面必要」が43.7%で最も多く、2番目の「雇用、経済活動、地域の活性化維持に不可欠」の41.6%をわずかに上回った。今後の原発政策についての考えは、「すぐにやめるべき」「できるだけ早くやめるべき」を合わせると6割に迫る。再生エネへの期待と脱原発の支持は、根強いものがあると受け止めたい。県は、2018年度から5年間で取り組む再生エネ施策の指針となる新ビジョンを公表している。意義や目標を県民に丁寧に説明し、導入を促進してもらいたい。一方、国が示す再生エネの将来像は、まだまだ物足りないと言わざるを得ない。政府は先月、対象期間を30年から50年までに拡大した新しいエネルギー計画の骨子案を有識者会議に示した。再生エネの主力電源化を進めると明記したことは前進だ。だが、30年度の発電割合を原発20~22%、再生エネ22~24%とする方針は変更せず、50年の新たな数値目標も示さなかった。原発を「重要なベースロード電源」と位置づける考えは変えていない一方で、新増設については盛り込んでいない。これでは原発の在り方についても、曖昧にしたままといえよう。経済産業省によると、15年の再生エネの発電比率は英国25.9%、ドイツ30.6%に対し、日本は16年で15.3%と見劣りする。日本は温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」で、50年に温室効果ガスを8割削減する国際公約を掲げている。夏に閣議決定されるエネルギー基本計画で再生エネ推進の道筋を明確にできるか。国際社会も注目しているはずだ。

*4-2:http://qbiz.jp/article/136262/1/ (西日本新聞 2018年6月23日) 唐津市が「地元同意」要求へ 玄海原発巡り、市長意向
 九州電力玄海原発(佐賀県玄海町)の「地元同意」の範囲が県と同町に限られていることを巡り、町に隣接する同県唐津市の峰達郎市長は22日、市議会原発対策特別委員会で対象に同市も含めるよう求める考えを明らかにした。地元同意については3月、日本原子力発電東海第2原発(茨城県東海村)の再稼働と運転延長に関し、半径30キロ圏内の5市が加えられた。これを受け特別委も運転延長などで同意範囲の拡大を議論していた。峰市長は「5キロ圏も30キロ圏も人口は唐津市が玄海町より多い。(7月の玄海町長選後に)新町長と話の場を設けたい」と述べた。これに対し特別委に招致されていた九電立地コミュニケーション本部の八木繁部長は「(玄海と)東海第2とはリンクしない」と慎重な立場だった。

*4-3:http://www.saga-s.co.jp/articles/-/235911 (佐賀新聞 2018年6月27日) 玄海3、4号機 使用済み燃料対策「時間がない」 九電、危機感示す、県議会原子力特別委
 佐賀県議会の原子力安全・防災対策等特別委員会(八谷克幸委員長、11人)は26日、九州電力の幹部を参考人招致し、再稼働した玄海原発3、4号機(東松浦郡玄海町)の使用済み燃料対策や保守体制についてただした。九電幹部は使用済み燃料対策について「時間がない」と危機感を示しながらも、原子力規制委員会への申請や着工の時期については4号機の使用前検査が完了していないことなどを理由に「検討中」とするにとどめた。玄海原発の使用済み燃料は3号機が約7年、1、2号機とプールを共用する4号機が約5年で容量を超える見込み。九電は対策として燃料の間隔を詰めて貯蔵量を増やすリラッキングや、特殊な金属製の容器に入れて空冷する乾式貯蔵施設を検討している。現状を問われた山元春義取締役は「社内で詰めている状況で、(原子力)規制庁に相談する前の段階」と説明。東京電力ホールディングスと日本原子力発電が今年12月までに運用開始を目指している中間貯蔵施設(青森県むつ市)については、林田道生立地コミュニケーション本部副本部長が「活用は検討していない」と述べた。3号機で3月末に発生した2次系配管からの蒸気漏れに対し「明らかにさびが確認でき、現場の意識に問題があるのでは」と九電の保守・点検体制を疑問視する質疑も相次いだ。林田副本部長は「一つの担当課だけでなく、週に1回程度の会議体で情報を共有している」と改善策を説明。異常事態は全て自治体に連絡するよう安全協定を改定すべきではという意見には、否定的な見解を示した。2015年に再稼働した川内原発1、2号機(鹿児島県)と合わせ、九電の原発が4基体制となったことで、管内電源の約3割を原発が占めるという見通しも示された。

<“空気” は読むだけのものか?>
PS(2018/6/24追加):私のことを、「“空気”が読めない(略して“KY”)」と批判したド阿呆な週刊誌があった。しかし、私は、「空気が読めない」のではなく、①“空気”を読んでも、間違っていれば勇気を持ってその“空気”を変え ②間違った“空気”でも、いちいち対応していると大変なので小さな問題なら無視している だけであり、他の人にも自己保身だけを考えるのではなく、淀んだ空気は勇気を持って変える努力をして欲しいと考えているのだ。
 また、 “空気”とは、1)どの範囲の“空気”かも定義しなければならないし 2)大勢の“空気”は善と限れるか についても考慮すべきだ。そのうち、1)については、身の回りや日本国内だけの空気を見ればよいわけではなく、2)については、差別やいじめのように、大勢で誤った行動をしている場合には、自分1人しかいなくても勇気を出して変えなければならない。そして、推薦入学世代の日本人には、その判断力・勇気・正義感が不足しているように思う。
 なお、無視すべき“空気”か、変えなければならない“空気”か、同調すべき“空気”かを判断するには、知識・経験・正義感・勇気などの総合力が必要で、それは教育や仕事を通じた研鑽の賜物であるため、*5の論調は的外れである。しかし、そもそも「空気を読む」という発想自体が、言わなくてもわかる同質性を前提としており、主体性にも欠ける。

*5:https://www.nikkei.com/article/DGXLASDG21HAE_R20C17A9CR8000/ (日経新聞 2017/9/21) 必要な言葉の能力、「空気を読む」が大幅増 国語世論調査
 21日発表の文化庁の国語世論調査では「空気を読む」傾向が強まっていることが明らかになった。「これからの時代に特に必要な言葉の知識や能力」として「相手や場面を認識する能力」と回答した割合は19%で、2002年度の7%から大幅に増え、最も多い「説明したり発表したりする能力」(21%)に迫った。意見の表明や議論についての意識を聞いた質問では、人と意見が違うときに「なるべく事を荒立てないで収めたい方だ」という人の割合が62%で、同様の質問をした08年度より10ポイント高まった。交流サイト(SNS)などで特定の個人の投稿が拡散され、主に批判的なコメントが集まる「炎上」については「目撃した際に書き込みや拡散をするか」との問いに「(大体・たまに)すると思う」と答えた人の割合は3%にとどまった。年齢別で最も高いのは20代で、11%が「すると思う」と答えた。一方、言葉について困っていることや気になることを尋ねる質問(複数回答)には「流行語や新しい言葉の意味が分からない」と答えた人の割合が56%で、10年度より14ポイント高くなった。「年の離れた人たちが使っている言葉の意味が分からない」という人も31%と9ポイント増え、年代が上がると増える傾向があった。日本大の田中ゆかり教授は「(1980年前後生まれ以降を指す)デジタルネーティブ世代と高齢層の間では(言葉の)崖のようなものができつつある」とみている。

<玄海町・唐津市の新産業>
PS(2018/6/25追加):*6のように、各地で養蚕を先端技術でよみがえらせる取り組みが進んでいるそうだが、玄海町にもかつては桑畑があり、養蚕が下火になってからはタバコ栽培を行っている。しかし、タバコも健康に悪く、(遅ればせながら)日本でも禁止の方向にあるため、私は、玄海町は原発を辞めて山鹿市のような先端技術の養蚕を行い、医薬品や化粧品を九大・久光製薬・唐津市にある化粧品会社などと協力して作ってはどうかと考える。その方が高付加価値で、21世紀らしいスマートさがあるだろう。


    桑畑        山鹿市、蚕の無菌栽培      遺伝子組み替え蚕の大量栽培

*6:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO32129650S8A620C1ML0000/?nf=1 (日経新聞 2018/6/24) ハイテクが紡ぐ「蚕業革命」 通年生産・光る糸・医薬
 かつて日本の近代化を支えた養蚕を先端技術でよみがえらせる取り組みが各地で進んでいる。熊本県ではクリーンルームを備えた世界最大級の工場で繭の量産が始まり、新潟県や群馬県などの企業や農家は遺伝子組み換え技術を応用して光る生糸や化粧品・医薬品をつくり出そうとしている。政府も「蚕業(さんぎょう)革命」として後押しする。熊本県北部の山鹿市の廃校跡地。2017年に完成した洗練された外観の建物で繭の量産が始まった。求人案内のあつまるホールディングス(HD、熊本市)が約23億円を投じて建設した世界最大級の養蚕工場だ。延べ床面積は約4千平方メートル。高品質のシルクの原料を効率的に大量供給し、生産性向上を目指す。カイコは伝統的な飼育法では餌になる新鮮な桑の葉を確保できる春から秋に年3回程度しか繭が取れない。餌やりや掃除は手間がかかり、感染症にかかりやすい難点もある。ところが、あつまるHDの島田裕太常務執行役員は新工場で「年間を通して高品質の繭を出荷する」と強調する。熊本大学物質生命化学科の太田広人特任准教授らと連携し、カイコが1年を通じて食べ、餌やりの手間も減らせる人工飼料を開発している。近くの山頂の耕作放棄地に設けた25万平方メートルの桑畑で無農薬栽培した桑の葉を乾燥保存し、特殊な添加剤を加えて与える。工場は無菌のクリーンルームで感染症の危険もなくした。カイコにとり快適な温度や湿度も保つ。カイコは現在30万頭を飼い、できあがる繭を集める収繭(しゅうけん)も毎月手掛け始めた。3年で3千万頭とし、繭の生産量を年間50トンと国内最大の群馬県を上回る規模に増やす。高品質のシルクの原料を安定供給する体制を築き、「化粧品やバイオ医薬品などに応用範囲を広げる」(島田常務執行役員)。山鹿市の中嶋憲正市長は「新たな産業を生み出す大きな可能性がある」とみて、桑畑の候補地の紹介や廃校跡の提供などさまざまな形で事業を支援してきた。有数の産地だった山鹿市での養蚕復活へ、今後も「シルク産業に関連する研究施設の誘致など全面的に応援していく」方針だ。農林水産省によると、養蚕農家はピークの1930年に約220万戸あったが、現在は約350戸に激減し、高齢化も著しい。しかし、飼育管理方法の向上や遺伝子組み換え技術の応用により、新たな可能性が開けてきた。農水省は「農山漁村にバイオ産業と雇用を生み出せる」とみて蚕業革命と名付けたプロジェクトを各地で支援する。着物の手入れなどを手掛ける、きものブレイン(新潟県十日町市)も繭の通年生産に挑む。カイコに無菌状態で特殊なホルモンなどを加えた餌を与え生育を早める。現在の飼育数は養蚕に参入した3年前の3倍の180万頭に達する。岡元松男社長は「1300年の織物の歴史がある十日町で新たなシルク産業を生み出す」と意気込む。京ちりめんの産地、京都府京丹後市は市内の廃校の一角で京都工芸繊維大と連携してカイコを大量に育てる研究を進めている。現在3万~4万の飼育頭数を今秋には20万に引き上げる計画だ。生産設備のエム・エー・シー(新潟県上越市)は新潟県妙高市でカイコ4万頭の飼育を始めた。これらもクリーンルームなど生産管理手法を生かす。遺伝子組み換え技術などを用いて養蚕から新たな価値を生み出そうという動きも活発になってきた。群馬県の農家では17年、緑に発色する蛍光シルクを生み出す遺伝子組み換えカイコの飼育が始まった。組み換え生物を規制するカルタヘナ法に基づく農林水産相の承認を得て、「初めて研究室の外で飼育する」(農水省)取り組みだ。衣服のほか、光る壁紙などさまざまな生活用品への利用を見込む。群馬県蚕糸技術センター(前橋市)は青やオレンジ色に蛍光したり、色乗りが良くなったりするシルクの試験飼育も進める。シルク化粧品製造のアーダン(鹿児島県奄美市)は、生体になじみやすいなどシルクの特性を生かした独自技術で特許を取得した。繭に含まれるシルクフィブロインというたんぱく質を使い、傷口が直りやすく傷も残りにくい軟こうやフィルムの開発を進めている。遺伝子組み換えカイコを使い、一段と効果的な塗り薬も開発する。18年から奄美大島の1万8千平方メートルの畑で地元特産の島桑(しまぐわ)の栽培も始めた。同社の藤原義博・研究開発室長は「かつて栄えた奄美の養蚕で地域経済を活性化させたい」と話す。
■収益確保、需要開拓カギ
 「カイコの技術で日本は世界のトップランナー」。農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構、茨城県つくば市)の門野敬子・新産業開拓研究領域長は強調する。養蚕が伝わった1~2世紀以降、飼育や品種改良の工夫が積み重ねられ、基礎的な研究の成果も相当の厚みがあるという。2000年にはカイコの遺伝子組み換えに農研機構が世界で初めて成功。組み換えを生かした研究開発に弾みが付いた。企業では日東紡グループが血液診断薬、免疫生物研究所が化粧品原料の保湿成分を製品化。蛍光色を持つ生糸を使ったウエディングドレスなども登場している。1つの繭から取れる糸の長さは千メートル強。細さは0.01~0.02ミリだが同じ重さの鉄線より切れにくい。主成分がたんぱく質であり、人体から異物として排除されにくいといった利点もある。繊維のほかにも、医薬品関連など多方面の企業から「問い合わせが入ってくる」(門野領域長)という。ただ、先端分野でも中国などの追い上げが急で、「シルク産業の先行きは決してバラ色ではない」と京都工芸繊維大学の森肇教授は指摘する。中国からさえ新興国へ生産が移り、価格の国際競争は極めて厳しい。独自性があっても光る糸など新素材がどれだけ受け入れられるかは不透明だ。先端シルクの含有量を調節して価格を抑えたり、医薬など高付加価値品の比重を高めたりして、収益を確保しつつニーズを切り開く戦略も求められる。

<ゼロ・エミッションへの転換>
PS(2018年6月26日追加):*7-1のように、東京都の小池知事は温暖化ガス削減に向けて、都内の新車販売に占める排ガスゼロ車の割合を、2030年までに5割へ引き上げる方針を出されたが、私は、これを野心的だとは思わない。何故なら、日本のEV(日産自動車)・FCV(三菱自動車)は、世界のZEV(Zero Emission Vehicle)の先駆けだったにもかかわらず、メディアやガソリン関係の会社をはじめとする抵抗勢力の妨害によって遅れ、現在では中国はじめ各国の後塵を拝しているからだ。そのため、東京都は、2020年のオリンピック時には、ZEV以外の都内への乗り入れを禁止するくらいの措置をとってもよく、そうすれば乗用車・トラック・バスなどのZEV化が一気に進んで、ZEVの製造コストが下がる。なお、奈良・京都のような歴史的建造物を有する地域も、排気ガスによる汚れを防ぐため、同様の規制をした方がよいと考える。
 また、ガソリン需要の低減に伴い、*7-2のように、ガソリンスタンドは廃業が相次いでいるそうだが、ガソリンスタンドの役に立つ部分は残して、洗車や自動車用・家庭用の(タンクに充填された)燃料電池交換など、臨機応変に新たなニーズに対応すればよいだろう。

*7-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180626&ng=DGKKZO32183000V20C18A6L83000 (日経新聞 2018年6月26日) 都、排ガスゼロ車5割目標 国へ対抗意識鮮明に
 東京都の小池百合子知事は温暖化ガスの削減に向け、環境に配慮した自動車の新たな普及目標を打ち出した。都内の新車販売に占める排ガスゼロ車の割合を、2030年までに5割へ引き上げる。国の目標の3割を大幅に上回る野心的な数値だ。かつて自身が主導した「クールビズ」のようなムーブメントの再来を狙うが、課題は多い。「『ゼブ』を流行語大賞にしたい」。5月下旬、小池知事は日産自動車の電気自動車(EV)「リーフ」のフォーラムで訴えた。ゼブ(ZEV)とは、EVや燃料電池車(FCV)などの排ガスゼロ車を意味するZero Emission Vehicleの略。メーカー関係者にはなじみがあっても、一般には知られていない。都の推定によると、17年度の排ガスゼロ車の新車販売比率は都内で約2%にとどまる。EVの普及を妨げているのはエネルギーに使う電池の問題が大きい。リーフの航続距離は400キロメートルでガソリン車と開きがある。「街乗り」には適しているが、充電を忘れると長距離ドライブは難しい。小池知事は「メーカーにはペダルを踏んで頂きたい」と、さらなる技術開発を促した。普及を進めていくためには、充電施設の整備も不可欠になる。都内にはガソリンスタンドが約1千カ所あるが、EVの急速充電が可能な施設は270カ所ほど。しかも、充電器を1、2台しか備えていない施設も多い。FCVの燃料補給に必要となる水素ステーションに至っては都内で14カ所しかない。それでも小池知事があえて野心的な目標を掲げるのは、国への対抗意識がありそうだ。新車販売に占める排ガスゼロ車の目標は国が30%なのに対し、都は50%。受動喫煙防止対策で国を上回る規制方針を掲げたのと同様だ。都幹部は「施策を担当する環境局には、知事から期待とともにプレッシャーがかかっているようだ」と明かす。都はマンションに充電設備を設置する際の補助を始めたほか、都営バス車両にFCVの導入を進めるなど対応を急ぐが、独自の取り組みだけでは限度がある。今後、都民や企業の賛同や協力を地道に取り付けていくことが求められる。小池知事は8月に4年任期の折り返しを迎える。かつて環境相も経験し、環境政策は最も得意と自負する分野の一つだ。排ガスゼロ車の普及を目指した取り組みは、「環境の小池」を強くアピールし、再選戦略につなげようとする思惑もみえる。

*7-2:http://qbiz.jp/article/136361/1/ (西日本新聞 2018年6月26日) 廃業GSを解体せず活用 コインランドリーや車販売店に 屋根や駐車空間を生かし
 九州各地で廃業が相次ぐガソリンスタンド(GS)の跡地を、新たな店舗として活用する動きがさらに広がっている。建物を解体すると多額のコストがかかるため、屋根や事務所をそのまま利用。幹線道路沿いにあり駐車スペースも広いなど、GS特有の立地を生かしている。一方で残ったGSの拠点網をどう維持するか課題も多い。「大型トラックなども入れるよう道路からの間口が広く、お客さまが出入りしやすい」と説明するのは、コインランドリーを運営するWASHハウス(宮崎市)。同社は現在、九州の7カ所でGS跡地に出店。そのうち大分県と宮崎県の2カ所は、屋根や事務所などの建物をそのまま使っている。屋根が広く、雨天でも洗濯物がぬれずに済むなどのメリットがある。毎月1〜2回、子どもの布団の洗濯で挾間店(大分県由布市)を利用する近所の主婦(40)は、「屋根で日陰があり、暑い日も車の中で待てる」と話す。福岡市博多区の国道3号沿いにある福岡夜間救急動物病院も、2004年にGS跡地を活用して開業。幹線道路沿いで、遠方から駆け込む人にも屋根が目立つことなどが出店の決め手になったという。
   ◇    ◇
 GS運営会社も、跡地を活用した別業態の店舗運営に乗り出している。大分県と宮崎県でGS87店舗を運営する東九州石油(大分市)は、14年に新古車の販売業務を開始。16年には、閉店した大分県由布市挾間町のGSを、自動車販売店に改装した。通常、GSを更地に戻すには、地下にあるタンクや、店を囲む高さ2メートルの防火壁などの撤去費用が数百万から1千万円近くかかる。そのため同社も防火壁や事務所、洗車機はそのまま活用。敷地内に販売車を並べ、事務所は商談ルームに改装した。管理部本部の竹内誠治課長は「GSで給油していただいたお客さまに、車の買い替えから洗車、車検、保険手続きまで一括して請け負うことでサービスを強化したい」と話す。
   ◇    ◇
 GSの転換が続く背景には、ガソリンの需要減によるGS運営会社の経営悪化がある。自動車の燃費が向上したのに加え、11年の消防法改正で、古い地下タンクの改修が義務付けられたことも、廃業を加速させた。資源エネルギー庁によると、九州の給油所数は1994年度末の8223カ所から毎年減少し、16年度末には4369カ所とほぼ半減した。建物や地下タンクの撤去費用を出せないGSの中には、「休業」扱いで何年も閉店したままの店も少なくない。一方で、地域のインフラとしてGSの店舗網の維持も求められている。GSの経営改善を後押しするため、経済産業省は現在、規制緩和を検討。収益力向上のため、コンビニ併設などサービスの多角化や、電気自動車(EV)の充電設備や燃料電池車への水素供給など次世代燃料への対応、IT活用による人手不足解消などを後押しする方針だ。

<原発の高コスト体質>
PS(2018年7月5日追加):*8-1のように、世界では再エネのコストが下がり、再エネの短所と言われていたことも解決しつつあるのに、「エネルギー基本計画」で原発を「ベースロード電源」と位置付け、原発依存度をフクイチ以前に戻そうとしているのは、日本特有の思考停止であり、技術進歩の邪魔をしているものである。また、*8-2のように、原発は発電ゼロでも維持管理に膨大な人手を要し、使用済核燃料の保管にも資金と人手を要するものだ。

*8-1:https://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-753138.html (琉球新報社説 2018年7月5日)  エネルギー計画 見せかけだけの原発低減
 中長期のエネルギー政策の指針となる「エネルギー基本計画」を政府が閣議決定した。原子力発電については、2014年の前計画同様、可能な限り依存度を低減させる―とうたいながら、エネルギー供給の安定性に寄与する「ベースロード電源」と位置付けている。11年3月11日の福島第1原発事故によって明白になったのは原子力の制御技術に重大な不備があることだ。事故はいまなお収束に至らず、避難指示の対象は約2万4千人に上る。原発周辺住民の多くは「絶対安全」と力説する政府や東京電力の宣伝を信じた揚げ句、住まいや生活の糧を奪われ、健康を脅かされた。「国策詐欺」の被害者と言っていい。原発の安全性に対する不信感がある中で、政府は30年度の電源構成比率を15年に決定、原発は20~22%とした。エネルギー基本計画は、その実現を目指す方針を盛り込んでいる。原発の発電割合を見ると、東日本大震災前の10年度は25・1%だったが、原発事故を機に急落し16年度は1・7%にすぎない。20~22%の目標値は現状から比べると大幅な増大になる。経済産業省資源エネルギー庁がホームページに公開した資料「新しいエネルギー基本計画の概要」には、震災前と30年度(目標)の電源構成比率が記され、16年度の数値には触れていない。「依存度を低減させる」というのは表向きで、実際は、原発事故以前の水準に近づけようとしている。まるで「羊頭狗肉(ようとうくにく)」だ。政府は、原子力規制委員会の新規制基準に適合した原発について再稼働を進める方針だが、目標の実現には30基程度を稼働させる必要があり、非現実的との指摘がある。本音では、原発の新増設も視野に入れているのだろう。もともと10年のエネルギー基本計画では30年までに14基以上の原発を増設すると明記していた。原発の運転に伴い生成される猛毒のプルトニウムは「地獄の王の元素」と呼ばれる。プルトニウム239の場合、放射能が半分になる半減期は約2万4千年。気が遠くなるほどの年月だ。これほどの長い間、どうやって核のごみを管理できるのか。原発は、短期的には経済上のメリットをもたらすかもしれないが、放射能を完全に制御する技術が確立されていない中では、子々孫々に災いの種を残すだけだ。新たなエネルギー基本計画が、太陽光、風力、バイオマス、水力、地熱などの再生可能エネルギーを「主力電源化」すると明記したのは当然の流れと言えよう。日本の再生エネへの取り組みは欧州などに比べて立ち遅れている。集中的に研究開発を進めることで、真の意味で「原発依存度の低減」を実現すべきだ。

*8-2:https://digital.asahi.com/articles/DA3S13392314.html (朝日新聞 2018年3月8日) 発電ゼロ、人手は膨大 未稼働原発、千人単位で連日作業
 発電ゼロの原発に、5年間で計5兆円超ものお金が電気代からつぎ込まれていた。核燃料を扱う特殊な施設。止まっていても再稼働が見通せなくても、維持・管理には毎日数千人単位の人手が必要だ。東日本大震災で原子炉建屋にひびが入った東北電力女川原発(宮城県)。3基とも震災以降、一度も動いていない。しかし原発内では毎日、東北電やプラントメーカー、建設業者の作業員ら計約2千人が働いている。震災前より数百~1千人ほど多いという。3基はいずれも「定期検査中」の位置づけだ。原発は止まっていても、法令に基づき約1年に1度、安全維持のための検査が義務づけられている。防潮堤のかさ上げなど安全対策工事も加わる。女川原発の神田貴生・報道担当課長は「順番に1基ずつ止める通常の定期検査より、同時に止まっている今の方が作業は多い」と説明する。3基は運転開始から16~33年。女川3基と東通原発1号機(青森県)に費やした「原子力発電費」は2016年度、940億円だった。神田課長は「適合性審査が進む2号機に続き、1、3号機も準備が整えば審査の申請を考えたい」と話す。総発電量で世界最大規模の東京電力柏崎刈羽原発(新潟県)。福島第一原発事故の処理にあたる東電にとって、6、7号機の再稼働は会社の命運を握る。構内では約6千人が作業する。12年の全基停止から6年、作業員数は変わらない。東電によると、発電していなくても機器の保守や点検があり、防潮堤や貯水池、軽油の地下タンクの整備など一連の安全対策工事(6800億円)が続く。平日は毎朝、入構する車両で正門前に渋滞ができる。地元の電気設備業「品田電業社」(従業員35人)は、社員6人が同原発構内で作業している。品田史夫社長(44)は「安全対策工事で、売り上げに占める原発の割合は増えた」と話す一方、同工事の完了を見越し、「再稼働すれば東電は原発の設備投資を増やすはず」と期待を寄せる。
<電力各社でつくる電気事業連合会の話> エネルギー自給率が極めて低い日本の実情を考えれば、原子力を含めた多様なオプションを持っておくべきだ。このため電力各社は原発の安全確保に万全を期すため必要となる経営資源を投入し、対策及び設備の維持管理を行っている。安全が確認されたプラントについては立地地域をはじめ、広く社会の理解を得た上で、有効活用していきたいと考えている。
■<視点>現実みすえた選択必要
 平均すれば年に1兆円。福島原発事故後、中堅国の国家予算に匹敵する金額が毎年、発電ゼロの原発に費やされてきた。いまだ5万人超が避難する原発事故から7年近く。原子力規制委員会の審査は厳格化し、小型で老朽化した原発ほど再稼働のメリットは小さくなった。それでも電力各社は「いったん再稼働すれば効率的」と、維持費をかけ続けている。変化の兆しもある。関電は昨年12月、大飯1、2号機(福井県)の廃炉を決めた。再稼働には安全対策費がかさみ、大型炉でも採算が合わないと判断したとみられる。廃炉を選んでも費用はかかるが、原子力発電費から切り離され、支出の使途や日程は明確になる。原発には自然災害リスクや放射性廃棄物の最終処分という未解決の問題がある。世論調査でも再稼働に反対の意見が多い。発電ゼロで維持費を投じ続け、再稼働を求めるのか、廃炉か。厳しい選別が迫られている。

<健康被害等の大きなコスト>
PS(2018年7月11日追加):*9-1のように、東京電力福島第1原発事故の後、福島県内の全ての子ども38万人を対象に実施している甲状腺検査は2011年度に開始され、2018年に4巡目が始まって、これまでがんと確定したのは162人、疑いが36人いるが、これにも11人の集計漏れがあり、甲状腺癌の発生率は高い。
 放射線の人体への影響は、*9-2のように、2015年8月25日に休刊に追い込まれた月間宝島が2015年4月号に記載しているとおり、1)周産期死亡率の上昇 2)小児甲状腺癌の発症率上昇 3)白血病・その他の癌の年齢調整発症率上昇 4)急性心筋梗塞の年齢調整死亡率上昇 などがある。そして、*9-3のように、チェルノブイリ原発事故のケースに基づいて、原因分析も既に行われている。そのため、放射性物質が人体や動植物に与える影響を知らせることは、福島県の人への差別ではなく、正当な注意を行うための重要な情報であり、放射性物質の影響を過小評価すれば、大人も子どもも、いきとどいた健康診断や病気を発症した場合の正確な補償が行われないというむごい事態になる。
 それにもかかわらず、「不安を煽る」として、生物に対する膨大なコストを測定する正確な疫学調査も行わず、*9-4のように、経産省主導で次世代原子炉を官民共同開発し、「冷却に水ではなくガスを使うため非常時も水蒸気爆発を起こす懸念がない」などとしているのはあまりにも馬鹿げた無駄遣いである。原子炉を冷却した後の高温で放射脳を帯びた大量のガスは空気中に排出するのだろうが、それでは緊急時どころか平時から原発周辺では放射性物質関連の病気が多発することになり、気温も上がるからだ。



   
               2015.3.24、2015.3.9宝島ほか
                
*9-1:http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2018070701001949.html (東京新聞 2018年7月7日) 福島の甲状腺がん集計漏れ11人 検査の信頼性揺らぐ
 東京電力福島第1原発事故の後、福島県が県内全ての子ども約38万人を対象に実施している甲状腺検査で、集計から漏れていた甲状腺がん患者が11人いることが7日、関係者への取材で分かった。事故当時4歳以下も1人いた。県内で多く見つかっている子どもの甲状腺がんと事故との因果関係を調べる検査の信頼性が揺らいだ格好だ。福島市で8日に開かれる県の「県民健康調査」検討委員会の部会で報告される。県の検査は2011年度に開始、今年5月から4巡目が始まった。これまでがんと確定したのは162人、疑いは36人に上る。

*9-2:http://blog.takarajima.tkj.jp/archives/2015-03.html (宝島 2015年3月25日) 福島県の汚染地帯で新たな異変発覚!「胎児」「赤ちゃん」の死亡がなぜ多発するのか?~誰も書けなかった福島原発事故の健康被害 【第6回 後編】~
 最新2013年の「人口動態統計」データを入手した取材班は、高い放射能汚染に晒されている「17の市町村」で、周産期死亡率が急上昇している事実に辿り着いた。ジャーナリストが自力で行なう「原発事故による健康への影響調査」最終回!
■小児甲状腺ガン、急性心筋梗塞「汚染17市町村」で同時多発
 福島第一原発事故発生当時、18歳以下だった福島県民の人口は36万7707人。そのうち、14年12月末時点で甲状腺ガン、またはその疑いがある子どもの合計は117人である。この数字をもとに、福島県全体の小児甲状腺ガン発症率を計算してみると、10万人当たり31.8人となる。これでも相当な発症率であり、十分「多発」といえる。14年度の検査で新たに「甲状腺ガン、またはその疑いがある」と判定されたのは8人だが、そのうちの6人が「汚染17市町村」の子どもたちである。「汚染17市町村」における小児甲状腺ガン発症率を計算してみると、同33.0人と県平均を上回り、より多発していることがわかった。「汚染17市町村」では、急性心筋梗塞も多発している。【図5】は、同地域における過去5年間の「急性心筋梗塞」年齢調整死亡率を求めたものだ。最新13年の年齢調整死亡率は、福島県全体(同27.54人)を上回る同29.14人。おまけにこの数値は、12年(同29.97人)から“高止まり”している。つまり「汚染17市町村」が、福島県全体の同死亡率を押し上げていた。周産期死亡率、小児甲状腺ガン発症率、さらには急性心筋梗塞年齢調整死亡率のいずれもが、「汚染17市町村」で高くなる。これは、福島第一原発事故による「健康被害」そのものではないのか。それとも、偶然の一致なのか。本誌取材班は、東京電力を取材した。同社への質問は、
①原発事故発生後の「福島県における周産期死亡率の上昇」は、原発事故の影響によるものと
  考えるか。
②原発事故発生後の「汚染17市町村における周産期死亡率の上昇」は、原発事故の影響による
  ものと考えるか。
③「汚染17市町村」で周産期死亡率と急性心筋梗塞年齢調整死亡率がともに上昇していること
  は、この中に、被曝による「健康被害」が内包されている可能性を強く示唆している。
  これに対する見解をお聞きしたい。
という3点である。取材依頼書を送ったところ、東京電力広報部から電話がかかってきた。
       *
「(記事を)読む方が、心配になったりするような内容ではないんでしょうかね?」
─「心配になる内容」とは?
「質問書をいただいた限りだと、『震災以降、率が上がっている』といったところで、特に不安を煽るような内容になったりするのかなと、個人的に思ったものですから」
─「不安を煽る」とはどういうことでしょうか?質問した内容はすべて、国が公表したデータなど、事実(ファクト)に基づくものです。
「ファクトですか」
─はい。
「国等(とう)にも当社と同様にお聞きになった上で、記事にされるんでしょうかね?」
─はい。そうです。
      *
 その後、同社広報部からファクスで次のような“回答”が送られてきた。「人口動態統計での各死亡率等についての数値の変化については、さまざまな要因が複合的に関係していると思われ、それら変化と福島原子力事故との関係については、当社として分かりかねます」。しかし、「分かりかねる」で済む話ではない。そもそも、日本国民の「不安を煽る」不始末を仕出かしたのは東京電力なのである。それを棚に上げ、事実を指摘されただけで「不安を煽る」などという感情的かつ非科学的あるいは非論理的な言葉で因縁をつけてくるとは、不見識も甚だしい。自分の会社の不始末が「国民の不安を煽っている」という自覚と反省が不十分なようだ。猛省を促したい。<東京電力は、原因究明を「県民健康調査」に丸投げした>
■環境省「放射線健康管理」の正体を暴く
 続いて、国民の健康問題を所管する厚生労働省に尋ねた。
      *
「それは、環境省のほうに聞いていただく話かと思います」
─原発事故による住民の健康問題は、環境省に一本化されていると?
「そうですね」
      *
 ご指名に基づき、環境省を取材する。面談での取材は「国会対応のため、担当者の時間が取れない」との理由で頑なに拒まれ、質問への回答は、同省総合環境政策局環境保健部放射線健康管理担当参事官室よりメールで寄せられた。回答は以下のとおり。
「昨年12月22 日に公表された、『東京電力福島第一原子力発電所事故に伴う住民の健康管理のあり方に関する専門家会議』の中間取りまとめによれば、
●放射線被ばくにより遺伝性影響の増加が識別されるとは予想されないと判断する。
●さらに、今般の事故による住民の被ばく線量に鑑みると、不妊、胎児への影響のほか、心血管疾患、白内障を含む確定的影響(組織反応)が今後増加することも予想されない。とされています」。環境省は、たとえ周産期死亡率や急性心筋梗塞年齢調整死亡率が増加したとしても、それは原発事故の影響ではない─とした。その根拠は「専門家会議の中間取りまとめ」が、原発事故の影響でそうした疾患が増加することを予想していないからなのだという。ちなみに、「専門家会議」を所管しているのは、この回答の発信元である同省の「放射線健康管理担当参事官室」である。科学の権威たちが揃って予想だにしないことが起きたのが福島第一原発事故だったはずだが、あくまで「予想」に固執する環境省は同じ轍(てつ)を踏みそうだ。もちろん、科学が重視すべきは「予想」より「現実」である。環境省の説が正しいとすれば、原因は別のところにあることになり、それを明らかにするのが科学であり、それは環境省が拠りどころとする「専門家会議」の仕事のはずだ。だが、その原因を特定しないまま、環境省は端から全否定しようとするのである。なぜ、環境省は現実から目を逸らし、真正面から向き合おうとしないのか。身も蓋もない言い方だが、環境省が現実に目を向けることができないのは、昨年12月に出したばかりの「中間取りまとめ」を、環境省自身が否定することになりかねないからなのである。つまり、本誌取材班の検証で明らかになった「汚染17市町村」での周産期死亡率や急性心筋梗塞年齢調整死亡率の増加の事実は、「専門家会議の中間取りまとめ」の「予想」結果を根底から覆しつつ「権威」を失墜させ、その贋物性を白日の下に曝け出してしまうものだった。「中間取りまとめ」が予想していない疾患の増加はすべて「原発事故の健康被害ではない」として、頭ごなしに否定する環境省の姿勢は、かつて「日本の原発は事故を起こさない」と盛んに喧伝してきた電力御用学者たちの姿を彷彿とさせる。2012年7月に出された国会事故調(東京電力福島原子力発電所事故調査委員会)の報告書は、「歴代の規制当局と東電との関係においては、規制する立場とされる立場の『逆転関係』が起き、規制当局は電力事業者の『虜』となっていた。その結果、原子力安全についての監視・監督機能が崩壊していた」としていた。環境省もまた、電気事業者の「虜」となっているようだ。そう言われて悔しければ、「現実に向き合う」ほかに名誉挽回の道はない。このように不甲斐なく、頼りにならない環境省のおかげで、このままでは「汚染17市町村」での“健康異変”は十把一絡(じっぱひとから)げにされ、かつて「水俣病」が発覚当初に奇病扱いされたように、原因不明の奇病「福島病」とされてしまいそうである。メチル水銀中毒である「水俣病」に地域の名前が付けられたのは、加害企業の責任をごまかすべく御用学者が暗躍し、「砒素(ひそ)中毒説」などを唱えたことにより、原因究明が遅れたことが原因だった。これにより、病気に地域名が付けられ、被害者救済も大幅に遅れることになったのである。従って、「汚染17市町村」で多発する病気に「福島」の名が冠されるようになった時の原因と責任は、すべて環境省にある。(『宝島』2015年4月号)

*9-3:https://www.windfarm.co.jp/blog/blog_kaze/post-7051 (中村ブログ2011/10/12より抜粋)
  最近、セシウムの毒性に関する大変重要な冊子が、茨城大学名誉教授久保田護氏により翻訳、自費出版されました。元ゴメリ医大学長、バンダジェフスキー博士の『人体に入った放射性セシウムの医学的生物学的影響―チェルノブイリの教訓セシウム137による内臓の病変と対策―』です。(この本は売り切れて、新しい本『放射性セシウムが人体に与える医学的生物学的影響: チェルノブイリ・原発事故被曝の病理データ』(合同出版社)が出ています)。食物中のセシウム摂取による内部被曝の研究がほとんどない中、バンダジェフスキー博士は、大学病院で死亡した患者を解剖し、心臓、腎臓、肝臓などに蓄積したセシウム137の量と臓器の細胞組織の変化との環境を調べ、体内のセシウム137による被曝は低線量でも危険との結論に達しました。
以下に要点をまとめます。
【体全体への影響】
*セシウム137の体内における慢性被曝により、細胞の発育と活力プロセスがゆがめられ、体内器官(心臓、肝臓、腎臓)の不調の原因になる。
*大抵いくつかの器官が同時に放射線の毒作用を受け、代謝機能不全を引き起こす。
*セシウムの濃度に応じて、活力機構の破壊、たんぱく質の破壊が導かれ、組織発育が阻害される。
*セシウムの影響による体の病理変化は、合併症状を示し、長寿命体内放射能症候群(SLIR)といわれる。SLIRは、セシウムが体内に入ったときに現れ、その程度は入った量と時間とに相関する。
*SLIRは、血管、内分泌、免疫、生殖、消化、排尿、胆汁の系における組織的機能変化で明らかになっている。
*SLIRを引き起こすセシウムの量は、年齢、性別、系の機能の状態に依存するが、体内放射能レベルが50Bq/kg以上の子供は機関や系にかなりの病理変化を持っていた。心筋における代謝不調は20Bq/kgで記録された。
*汚染地帯、非汚染地帯の双方で、わずかな量の体内セシウムであっても、心臓、肝臓、腎臓をはじめとする生命維持に必要な器官への毒性効果が見られる。
【心臓への影響】
*生命維持に必要な多くの系で乱れが生じるが、その最初は心臓血管系である。心筋のように、細胞増殖が無視できるかまったくない器官や組織は、代謝プロセスや膜細胞組織に大きな影響が生じるため、最大の損傷を受ける。
*ミンスクの子供は20Bq/kg以上のセシウム137濃度を持ち、85%が心電図に病理変化を記録している。
*ミンスクの子供で、まれに体内放射能が認められない場合もあるが、その25%に心電図変化がある。このように濃度が低くても、心筋に重大な代謝変化を起こすのに十分である。
【血管系への影響】
*血管系が侵され、高血圧が幼児期からも見られることがある。
*セシウムは血管壁の抗血栓活性を減退させる。
*血管系の病理学的変化は、脳、心臓、腎臓、その他の機関の細胞の破壊を導く。
*体内のセシウム濃度の高い子供の間で、白血球の数の減少が見られた。最初に減ったのがバチルス核好中球と単球であり、同時にリンパ球の数が増大した。
*動物実験では、絶対的赤血球数と相対的核好中白血球の数の減少が起きた。
*40キュリー/km2以上の地域から汚染の少ない地域に移住した子供の骨髄球の生理状態が回復したことは注目に値する。
【腎臓への影響】
*セシウムは腎臓機能を破壊し、他の器官への毒作用や動脈高血圧をもたらす。ゴメリにおける突然死の89%が腎臓破壊を伴っている。
*腎臓もセシウムの影響を強く受けるが、放射線による腎臓の症状は特徴がある。また病気の進行が早く、悪性の動脈高血圧がしばしば急速に進む。2-3年すると、腎臓の損傷は慢性腎機能不全、脳と心臓との合併症、ハイパーニトロゲンミアを進展させる。
【肝臓への影響】
*肝臓においては、胎児肝臓病や肝硬変のような厳しい病理学的プロセスが導かれる。
*免疫系の損傷により、汚染地ではウィルス性肝炎が増大し、肝臓の機能不全と肝臓ガンの原因となっている。
【甲状腺への影響】
*セシウムは、甲状腺異常にヨウ素との相乗関係を持って寄与し、自己免疫甲状腺炎や甲状腺ガンの原因となる。
【母体と胎児への影響】
*セシウムは女性の生殖系の内分泌系機能の乱れをもたらし、不妊の重要因子となりえる。また、妊婦と胎児両方でホルモンの不調の原因となる。
*月経サイクルの不調、子宮筋腫、性器の炎症も見られる。
*母乳を通じ、母体は汚染が低くなるが、子供にセシウム汚染は移行する。多くの系がこの時期に作られるので、子供の体に悪影響を与える。
*1998年のゴメリ州での死亡率は14%に達したが、出生率は9%(発育不全と先天的障害者含む)だった。妊娠初期における胎児の死亡率がかなり高かった。
*セシウムは胎児の肝臓病を引き起こし、その場合胎児は肝臓に限らず、前進の代謝の乱れが生じる。
【免疫系への影響】
*免疫不全により、結核が増加している。
*免疫系の障害が、体内放射能に起因することは、中性白血球の食作用能力の減退で証明されている。
【神経系への影響】
*神経系は体内放射能に真っ先に反応する。脳の各部位、特に大脳半球に影響を及ぼし、さまざまな発育不良に反映される。
*生命維持に不可欠なアミンや神経に作用するアミノ酸の内部被曝による変動は外部被曝と比べ、顕著である。
*セシウム137の体内量と自律神経系の機能障害は相関する。
*動物実験で発情期のメスに神経反応の組織障害が起こる。
*ウクライナの学者は、大脳の差半球で辺縁系小胞体組織の異常があると述べている。
【消化器系】
*セシウムが体内に長期間入っている子供に、慢性胃腸病を引き起こす。
【視覚器官】
*ベトカとスベチロビッチ(15―40キュリー/km2)に住んでいる子供では、子供の視覚器官の変化はそれぞれ93.4%と94.6%だった。
*白内障発生率とセシウム137の量に明白な正比例関係が見られた。
【相乗作用】
*セシウムの影響は、ニコチン、アルコール、ハイポダイナミアと相乗して憎悪される。
【男女差】
*セシウムは男性により多く取り込まれやすく、女性より男性により強い影響が出ており、より多くのガン、心臓血管不調、寿命の低下が見られる。
【疫学調査】
*1976年と1995年のベラルーシの比較。悪性の腎臓腫瘍が男4倍以上、女2.8倍以上。悪性膀胱腫瘍が男2倍以上、女1.9倍以上。悪性甲状線腫瘍が男3.4倍以上 女5.6倍以上。悪性結腸腫瘍は男女とも2.1倍以上。
*ゴメリ州では腎臓ガンは男5倍、女3.76倍。甲状線ガンは男5倍、女10倍となった。
【セシウム排出製剤】
*セシウムの排出に、カリエイ土を加えたペクチン製剤のペクトパルは最も将来性がある製剤のひとつだが、セシウムが人体に入るのを防ぐほうが、それを排出したり乱れた代謝を正常にするより容易なことを心に留めるべきである。
     *      *      *
「チェルノブイリ原発事故による健康被害は、甲状腺ガンだけ」というのがウソだということが様々なデータや証言、動画などから明らかになっている。
★チェルノブイリによる放射能災害  国際共同研究報告書
ウクライナにおける事故影響の概要 から抜粋 
ドミトロ・M・グロジンスキー:ウクライナ科学アカデミー・細胞生物学遺伝子工学研究所(ウクライナ)
 穀物,野菜,牧草,果物,牛乳,乳製品,肉そして卵までもが放射能で汚染され,その汚染は時には,それらの食物を廃棄しなければならないほど強いものであった。ウクライナ人全体の被曝は主として,チェルノブイリ事故後に強制避難させられた地域以外の放射能汚染によってもたらされた。
<放射線生態学的影響>
 チェルノブイリ事故による放射線生態学的影響の主なものは以下のとおりである。
1、厖大な核分裂生成物が大気中に放出され,生態系に侵入した.放射能は,地上の生態系のあらゆる部分に拡がり,結果的に,微生物,きのこ,植物,昆虫,その他の動物,そして人間まで,すべての生き物が放射能で汚染された。
2、 放射能は地下水に移動し,また表層の水をも汚染した。
3、放射能が食物連鎖に入り込み,人間に達した.大人も子供も,また人間の周囲にあるあらゆるものが放射能で汚染された.たとえば,キエフ中心部の樹木の葉は,1986年に7万~40万Bq/kgの放射能を含んでいた。
4、放射能が生物圏に侵入したため,多数の人間を含めて,すべての生き物に対して,被曝を与えることとなった.チェルノブイリ原発事故の放射性降下物から人間が被曝する経路には次の3つがある.第1に,地表に沈着した放射性物質からの外部被曝,第2に,大気中を漂う放射性物質の吸入,第3に,汚染した食べ物を食べることである.全体の被曝の中で,汚染した食べ物を食べることから生じる被曝が特に大きい.外部被曝に比べて内部被曝の方が,はるかに高い生物学的な影響をおよぼすことにも注意しておこう。
5、天然のバックグラウンド以上に被曝することは,人間にさまざまな病気を引き起こすし,放射能汚染地域の動植物群の状態を変化させる。
<子供たちの健康状態>
 チェルノブイリ事故で被曝した子供では,1987年から1996年まで慢性疾患がたえず増加してきた.表14は,チェルノブイリ被災地域の子供の発病率と罹病率の値である。この約10年間で,罹病率は2.1倍に,発病率は2.5倍に増加した.罹病率の増加が最も激しいのは,腫瘍,先天的欠陥,血液,造血器系の病気であった.最も罹病率が高いのは,第3グループ(厳重な放射線管理下の住民)の子供たちである.同じ期間において,ウクライナ全体の子供の罹病率は,20.8%減少していることを指摘しておく。このように,被災地域の子供たちの罹病率は,全ウクライナ平均での子供の罹病率をはるかに超えている。同じ期間に,先天的欠陥の発生率は5.7倍に,循環器系および造血器系の罹病率は5.4倍に増加している。他の地域の子供に比べ,問題の子供たちのガン発生率も明らかに大きい.被災地域の子供の,腫瘍発生率は1987年からの10年間で3.6倍に増加している.ガンの種類によって,その死亡率の増加傾向は,必ずしも一定していない.しかし,汚染地域の子供のガン死亡率は,他の地域の子供よりも大きくなっている.

*9-4:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180711&ng=DGKKZO32841680Q8A710C1MM8000 (日経新聞 2018年7月11日) 次世代原子炉、官民で 年度内に協議体 安全・コスト減に力
 官民が共同で次世代の原子炉の開発に乗り出す。経済産業省は2018年度中をめどに、電力大手や原子炉メーカーなどが参加する協議体を作る検討に入った。より安全性を高めた低コストの原子炉の開発や事業化で連携する。東日本大震災後、国内の原発の稼働は落ち込んでいる。各社が協力する場を設けて新設を後押しし、業界再編の布石にすることも狙う。3日に閣議決定した新たなエネルギー基本計画では、原子力を今後も重要な電源として活用していく方針を示したが、活用に向けた具体策は先送りしていた。原発の新増設や建て替えを進めやすくするため、官民で協力する体制を整える。国内では2011年の東京電力・福島第1原発の事故後にすべての原発が停止。再稼働したのは関西電力や九州電力などの計9基のみだ。経産省は2030年の電源構成について原発で20~22%をめざすが、30基程度の稼働が必要となる。現在の大型炉は100万キロワット規模など大量の発電が可能だが、建設や安全対策の投資がかさむ。官民が共同で開発する次世代炉は、大型炉の改良のほか出力が10万~30万キロワット程度の小型炉も検討する。大型炉の建設費は1兆円規模だが、数千億円に抑えられる。「高温ガス炉」は冷却に水ではなくガスを使うため非常時も水蒸気爆発を起こす懸念がない。国内の原発は稼働から数十年が経過しているものが多いが、次世代炉は最新の制御技術などを導入。緊急時に被害が広がりにくいシステムを備える。経産省は電力大手各社に協議体への参画を打診する。東京電力ホールディングス(HD)や関西電力は国の要請があれば前向きに検討する方向だ。三菱重工業や日立製作所など原子炉メーカー、原発の建設を担うゼネコンにも参加を促す。国内の原発は大震災前のように稼働基数が増えず廃炉のコストも増える。次世代炉を実用化しても使用済み燃料の負担は残り、大手電力9社が別々に手がけていくのは厳しいとの見方もある。経産省は水素や高性能な蓄電池、分散型エネルギーなど、他の分野でも官民で連携する枠組みをつくる。原発の再稼働には慎重な世論もある。原発一辺倒でなく幅広い技術の研究開発に取り組み、エネルギーを安定供給できる体制をめざす。

<漁業の低迷理由は?>
PS(2018年7月12日):水産業は、良質の蛋白質を摂取するために重要で、我が国では優位性の高い産業である筈だが、*10のように、漁獲高は一貫して減少し、海面漁業の生産量はピーク時の3割・養殖業がやっと横ばいだそうだ。
 そして、海面漁業が九州、全国ともに減少している要因は、「1)海洋環境の変動などによる資源量の減少のためか」「2)業務ではなく調査していないため分からない」と書かれているが、1)の海洋環境変動には、海水温が上がって海藻はじめ海中の食物連鎖が維持できにくくなっていることがあり、その理由には、①地球温暖化 ②原発温排水の影響 ③海底火山噴火の活発化などが考えられる。そのほか、公海における他国の漁獲高上昇や日本における燃油価格高騰・賃金上昇で漁業が成り立たなくなり、廃業が増えて後継者も少ないことなど、2)のように、業務でないから調査しないわけには決していかず、しっかり調査して問題解決すべきである。何故なら、日本人も、ITやアニメや製造業だけを行い、食品は輸入して食べていけるわけではないからだ。

*10:http://qbiz.jp/article/136703/1/ (西日本新聞 2018年6月30日) 「漁獲」九州も減少傾向 山岡知且・九州農政局生産流通消費統計課長 漁業ピークの3割 養殖横ばい 17年86万トン全国2割
 沿岸に黒潮と対馬海流が流れ、サバ、アジ、イワシなどの豊かな漁場に恵まれている九州。漁業や養殖業が盛んで、生産量は全国の約2割を占めている。ただ海洋環境の変動などによる資源量の減少のためか、海面漁業の漁獲量は全国と同様に減少傾向だ。九州における海面漁業・養殖業の生産量調査を担当する九州農政局生産流通消費統計課の山岡知且(ともあき)課長に生産量の推移や特徴などを聞いた。九州の海面漁業・養殖業の生産量について1956年から調査を続けている。最新データの2017年は速報値で85万7725トン。うち海面漁業の漁獲量は56万6739トン(全体の66・1%)。海面養殖業の収穫量は29万986トン(33・9%)となっている。全国の生産量は424万2300トンで、うち海面漁業と海面養殖業はそれぞれ325て万7700トン(全体の76・8%)と98万4600トン(23・2%)。全国に占める九州の割合は生産量全体で20・2%。海面漁業17・4%、養殖業29・6%だ。九州は人口や面積、経済規模が全国のほぼ1割で「1割経済」と言われるが、漁業分野はこれを大きく上回り、活発に展開されていることを数字が物語っている。九州で漁獲量が多い上位5魚種は(1)サバ類約13万9千トン(2)イワシ類約12万7千トン(3)アジ類約8万8千トン(4)マグロ類約3万9千トン(5)カツオ類約2万7千トン−の順。県別では長崎県が約31万7千トンでダントツ。2番手は宮崎県の約9万7千トンとなっている。ただ海面漁業は九州、全国ともに減少傾向だ。九州の17年はピーク時(1988年、約191万5千トン)の29・6%、全国はピーク時(84年、1150万トン)の28・3%と、いずれも過去最高時の3割程度に落ち込んでいる。減少傾向の要因については私たちの業務では調査していないため、分からない。一方、九州の海面養殖業は2008年の32万811トンが過去最高で、ここ30年は24万〜32万トンの間で推移している。17年の種類別は板ノリが15万6730トン(主産地は佐賀、福岡、熊本)、ブリが6万4132トン(主産地は鹿児島、大分、宮崎)。カンパチは鹿児島だけで1万8299トンある。

<どうして国民にマイナスの政策が多いのだろう?>
PS(2018年7月22日追加):「カジノを解禁してギャンブル依存症対策を行う」というのは、「麻薬を解禁して麻薬依存症対策を行う」とか「山崩れしそうな山の山肌に砂防ダムがあるから安全だと信じる」などと同様、大きな流れを小さな人工物で食い止めようとするもので意味がないだろう。そのため、私は、*11と同様、カジノ解禁が日本全体の経済成長に繋がるとは思えず、カジノ解禁は生産年齢人口減少時代に廃人のようになる日本人を増やして国力を削ぐと考える。また、IRによる観光立国はむしろ観光の質を落とし、日本は歴史・地理・自然を活かした観光をテーマにした方が日本らしくて質が高く、世界の評価が上がると思われる。

*11:https://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-766295.html (琉球新報社説 2018年7月22日) カジノ法成立 国民不幸にして金儲けか
 カジノ解禁を含む統合型リゾート施設(IR)整備法が国会で可決、成立した。カジノを刑法の賭博罪の対象から除外する同法を根拠に、政府は2020年代半ばにも民間によるカジノ開業を目指す。IR整備法といっても実際は賭博合法化法だ。賭博を認める法律がなぜ必要なのか。強い疑問が残る。ギャンブル依存症の拡大や治安悪化が懸念され、国民の不安は根強い。6月の共同通信の世論調査では69%が「今国会で成立させる必要はない」と回答している。カジノ解禁への理解は進んでいない。それにもかかわらず、あまりにも拙速に成立させた。世論軽視の強行と言わざるを得ない。政府は昨年3月、ギャンブル依存症の実態把握のための成人2200人を対象にした初の面接調査の結果を発表した。回答した993人のうち生涯で依存症の経験が疑われる人は2・7%だった。一方、各国のギャンブル依存症が疑われる人の割合は、調査対象数や調査方法にばらつきがあるものの、米国や韓国など11カ国と香港では0・2~2・4%だった。つまり日本はギャンブル依存症の割合が各国と比べても高い水準にある。国内で依存症経験が疑われる人は320万人に上るとの推計もある。そこにカジノを解禁すれば、依存症の割合がさらに高まるのは目に見えている。法案では依存症対策として、日本人のカジノ入場にマイナンバーカードを使った本人確認を義務付け、週3回、月10回という上限を設定している。安易な利用を減らそうと入場料6千円を徴収するほか、国が事業者を厳しく監督する免許制度も導入するとしている。しかし年間120日まで入場できる仕組みで依存症の歯止めになるのか。極めて疑問だ。政府はカジノを含むIRによる観光立国をアピールする。しかし訪日外国人客は過去6年間で4・6倍と急拡大している。カジノに頼る必要などない。むしろカジノ客の7~8割は日本人が占めるとの民間や自治体の推計もある。安倍晋三首相は「IRが日本全体の経済成長につながる」と主張する。しかし政府は「現時点では経済効果額の試算はできない」と説明する。数字の裏付けのない経済効果をアピールされても、判断のしようがない。政府は賭博を刑法で処罰してきた根拠に立ち返るべきだ。最高裁の判例では賭博について「国民をして怠惰浪費の弊風を生ぜしめ健康で文化的な社会の基礎を成す勤労の美風を害する」などと示している。カジノ合法化の法律を成立させるべきではなかった。政府は国民を不幸にさらしてでも金儲けを優先させようというのか。そうでないというのなら、早期に廃止すべきだ。

<もう環境を犠牲にしてよい時代ではない>
PS(2018.7.24追加):*12に、防衛大臣が来佐したと書かれているが、大臣が何度も訪問すれば公害が起こらなくなるわけではない。また、佐賀県では、海産物は重要な産物であるため、海を汚染する可能性のある施設を誘致して交付金をもらうスキームを作るべきではない。そのため、オスプレイを配備すると仮定しても、合理的な場所は佐賀空港ではないだろう。

*12:http://www.saga-s.co.jp/articles/-/249548 (佐賀新聞 2018.7.24) 防衛相来佐 県と佐賀市、漁協の三者、異なる反応
 小野寺五典防衛相が佐賀県を訪れ、佐賀空港への自衛隊輸送機オスプレイ配備計画に関する交渉が再開した23日、県と佐賀市、県有明海漁協は異なる反応を示した。神埼市での陸上自衛隊ヘリコプター墜落事故の対応を含めて一定の評価をした山口祥義知事に対し、市と漁協は従来の慎重な立場を崩さなかった。
○県・議会
 佐賀県民の信頼回復と不安解消の重要性に何度も触れながら、オスプレイの安全性に問題がないことを強調した小野寺防衛相の説明に対し、山口祥義知事は「今後、精査・確認する」と冷静に受け止めつつ「一定の説明があった」と評価した。オスプレイの安全性に関する情報連絡のルールづくりが可能かどうか尋ねるなど、従来より踏み込んだ姿勢をにじませた。防衛省側の説明後、山口知事は神埼市で墜落した陸自ヘリと同型機の取り扱いと、県内でのオスプレイの訓練について確認を求めた。ヘリ事故の原因究明と再発防止が図られるまでは、同型機を佐賀空港に移駐しないと答えた小野寺氏に対し、山口知事は「大臣の言葉を重く受け止める」と述べた。過去に米軍機の事故原因になった空中給油などの訓練を有明海や県内上空では実施しないとの説明には「厳しい訓練、リスクを伴う訓練は実施しないということか」と念を押した。オスプレイを受け入れるかどうかの判断時期については、報道陣に「安全性と(漁業振興や補償の枠組みで国と)漁業者をつなぐという2点について、ある程度整理がついたタイミング」と答え、県議会などで発言していた「しかるべき時期」という考え方を具体的に示した。県議会では、応対した指山清範副議長がヘリ墜落事故について「目達原駐屯地は地域住民や吉野ヶ里町、上峰町と寄り添って信頼関係を築き上げてきた。その中での事故は非常に残念だし、遺憾と言わざるを得ない」とし、「しっかり原因を究明して報告してほしい」と求めた。
●「国の事業に不信感」組合長
○有明海漁協
 オスプレイ配備計画で、駐屯地建設予定地の地権者の多くが所属する佐賀県有明海漁協。徳永重昭組合長は「県営空港なので県の判断が必要」と述べ、今後、要請があれば協議自体には応じる考えを示した。一方で、長崎県の諫早湾干拓事業をはじめとする国の事業への漁業者の不信感は依然根強いとし、「ほとんどの人が今のような計画では駄目だという認識は持っていると思う」と述べた。約15分の会談で、小野寺防衛相はノリ養殖やコノシロ漁への影響、万一の事故の際の対応に配慮する考えを説明した。漁協側は、配備計画への漁業者の不安を伝え、自衛隊との共用を禁止した公害防止協定を「解釈」の問題で片付けないようくぎを刺した。配備計画に関して昨年に開かれた地権者説明会や漁協全支所の意見聴取では、計画への反対意見が大勢を占めた。徳永組合長は会談後、漁業者の心境の変化を尋ねる報道陣の質問に「そのままでしょうね」と答えた。諫早湾干拓事業の開門問題に絡む訴訟で、福岡高裁が30日、開門を命じた確定判決を無効化する判決を出す可能性に触れた上で「漁業者からいろんな反発は出るだろう」と、配備計画への影響を推し量った。また、県内から「いま返事をしないと、よそ(の県)から取られるよ」という声が聞こえてくると切り出し、「それくらいの考えだったら持ってくるなと言いたい」と強調した。
●「公害協定重い」市長 「情報提供密に」議会
○佐賀市・議会
 小野寺五典防衛相は佐賀市役所で23日、秀島敏行市長、武藤恭博議長らと相次いで会談した。自衛隊との共用を禁じる「公害防止協定」の取り扱いを持ち出した秀島市長とのやりとりでは、小野寺氏は終始硬い表情だったが、オスプレイ受け入れの「容認決議」をした市議会では一転してにこやかな表情を見せた。
秀島市長との面会は10分足らずだった。小野寺氏は「まだ県の判断が出ていないので、その判断を仰ぎつつ、同時並行で説明したい」と理解を求めた。秀島市長は「(要請があった)4年前に『困惑』という言葉を使ったが、その気持ちは今も変わっていない」とした上で、公害防止協定が結ばれた経緯を挙げて「約束というのは行政にとって大変重要なものだ。協定の立会人の立場を引き継ぐのが私だ」と述べた。会談後、秀島市長は「4年間動かなかったのは、そう簡単に動くような約束事ではなかったということ。誰が来ようとも約束事が大切だと、地元の者として捉えている」と話した。昨年12月に佐賀空港への配備を容認する決議を賛成多数で可決した佐賀市議会では、小野寺氏が自ら決議に触れて「後押しする決議で、日本の安全保障についてしっかりとご判断をいただいた」と感謝した。武藤議長らは緊密な情報の提供を求めた。
●「オスプレイ危険」市民団体抗議
 自衛隊輸送機オスプレイの佐賀空港への配備計画に反対する市民団体は23日、佐賀県庁前で抗議活動を行った。小野寺五典防衛相の来佐に対し、約80人が「危険なオスプレイを飛ばすな」「神埼市の自衛隊ヘリ墜落事故は原因が分からず、まだ終わっていない」などと反発した。参加者は横断幕やのぼりを手にして「防衛省は断念しろ」などと声を合わせた。小野寺氏が乗った車が県庁に入る際には「帰れ」と怒号を上げた。県平和運動センター副議長の松永憲明佐賀市議は「相次ぐオスプレイの事故の検証は米軍任せ。日本の主権が及んでいない状況が許されていいのか」と批判した。計画に反対している「住民の会」の古賀初次会長(佐賀市川副町)は「ヘリ事故の影響は続いているのに大臣が訪問するなんて、住民の気持ちを踏みにじっている」と憤った。その上で「オスプレイが配備されれば、施設からの排水などで有明海のノリ養殖に被害が出てしまう」と強い懸念を示した。
●「協議再開早い」 陸自ヘリ墜落の神埼
 神埼市千代田町に陸上自衛隊目達原駐屯地(神埼郡吉野ヶ里町)所属の戦闘ヘリが墜落した事故から半年が経過するのを前に、小野寺五典防衛相が佐賀県を訪れ、オスプレイ配備計画の協議再開を申し入れた。事故現場の地元住民は、原因究明途上での協議再開に複雑な思いを抱く。「タイミングははっきり言って早い」。事故現場で区長を務める樋口邦敏さん(68)は憤りを隠せない。8月5日で事故から半年を迎える。防衛省が6月に公表した事故の中間報告では、最終的な原因究明には至っていない。「オスプレイは別件かもしれないけど、国の思うようにされているようで…。ちょっと強引じゃないだろうか」。一方、松本茂幸神埼市長は配備の賛否は明言しなかったが「国防上必要であれば(配備は)やむを得ないのでは」とした上で、ヘリ事故で協議が中断していたことに触れ「だからといって(計画を)止めてしまうと国民の安全が守られない」と指摘。協議再開に理解を示した。

<国内資源開発の重要性>
PS(2018年7月26日追加):*13-1の日本の海洋資源である石油・天然ガスを掘削する会社こそ、最初は国費で援助しても伸ばすべきだった。その理由は、①シェールオイルは安価でも外国に支払う金であり、日本のエネルギー自給率を上げないこと ②*13-2のように、エネルギーがすべて水素や電力に変わったとしても、化学工業に石油・天然ガスは必要であること などだ。そして、経産省が、このような近視眼的で世界の産業振興を見ていない政策を採ることこそが国民経済の足を引っ張っているのであるため、現状維持(実際には現状維持もできない)や過去への回帰(世界が前進している時に日本だけ後退する)志向はやめるべきである。

  
  賃金推移国際比較   1人当たり国民総所得国際比較   実質・名目賃金推移   

(図の説明:日本は、再エネやEVで世界の先頭だったにもかかわらず、馬鹿げたバックラッシュが多いため、他国に後れをとった。しかし、これは一例であり、賢い選択と予算配分を行わないのが、一人当たり国民所得が先進国中最低である原因だ。また、日本だけ、賃金が下降傾向である。もちろん、実質賃金も上がっていない)

*13-1:https://www.asahi.com/articles/DA3S13606419.html#MainInner (朝日新聞 2018年7月26日) 海の石油・ガス掘削、苦境 シェールオイル本格化で一転
 「会社が苦しいのは分かっていたが、まさか破綻(はたん)するとは……」。6月29日、東京・秋葉原で開かれた日本海洋掘削の株主総会。出席した株主の男性がため息をついたのも無理はない。東京地裁に会社更生法の適用を申請したのは、総会の1週間前のことだった。同社は、海洋資源である石油や天然ガスの掘削を日本で唯一手がける専門会社。「リグ」と呼ばれる巨大な掘削装置で世界中の海底に眠る資源を取り出すのが仕事だ。高度成長期の1968年に石油開発公団(現・石油資源開発)や三菱鉱業(現・三菱マテリアル)などが出資して設立され、2009年に東証1部に上場した。主力のリグ「ジャッキアップ型」は35階建てのビルに相当する高さで、100人以上のクルーが寝泊まりする。資源メジャーと呼ばれる石油開発企業などから依頼を受けて油田を掘り、その工賃が収入になる。リグは1基あたり数百億円。受注を続けながら購入やリースにかかる費用を支払う形で、5基ほどを運用してきた。世界で初めて海底地下のメタンハイドレートからガスを掘り出すことに成功した海洋研究開発機構の地球深部探査船「ちきゅう」もリグの一種で、子会社が運用を受託している。転機は05年ごろに訪れた。中国やブラジルなど新興国の成長に伴い原油の需要が急増。相場は過熱し、08年の原油価格は1999年の約5倍になった。14年3月期には過去最高の売上高を記録。受注が増えると見込んで拡大路線にかじを切り、14年秋にリグを10基に増やすことを決めたが、直後に原油市場に異変が起きた。米国でシェールオイルの生産が本格化し、15年の原油価格は2年前の5割ほどに急落。資源メジャーによる海洋開発需要も落ち込んだ。かつては原油価格が下がっても1~2年すれば回復し、受注も戻るのが常だった。「過去の経験に頼った投資判断のミス。シェールオイルの出現で原油市場のメカニズムが変わった」(広報)。低迷が3年も続いたのは想定外だった。16年3月期に純損益が赤字に転落。その後も赤字幅は拡大し、18年3月期に155億円の債務超過に陥った。4月下旬に記者会見した市川祐一郎社長(当時)は退任の意向を表明し、スポンサーを探して再建への道筋をつけると述べた。この時点では、債権者の同意によって再建計画をまとめる「私的整理」を目指していた。だが、経営の先行きについて金融機関など大口債権者の見方は厳しく、再建計画をまとめるには至らなかった。7月下旬に迫っていたリグに関する費用の支払いができない見込みになり、法的整理を選択せざるをえなくなった。設立にかかわった大株主2社も支援には消極的で、ともに増資を見送った。筆頭株主の石油資源開発は「原油価格の低迷で弊社も業績は良くない。もともとべったりの関係ではない」(広報)と素っ気ない。2位株主の三菱マテリアルも「石油は国際情勢の影響を大きく受けるし、先行きがどうなるか読みづらい」(首脳)と慎重だった。原油価格は昨年以降、復調気配にある。破綻後に社長に昇格した安井泰朗氏は、受注が増えていることを理由に再建への自信をにじませるが、シェールオイルの生産量が読み切れているわけではなく、原油価格が急落する恐れは残る。石油の調達先が多角化し、掘削への期待も高まってはいない。株主総会の終了後、別の男性株主は漏らした。「なかなかスポンサーが見つからないという事実は、この会社への期待感が薄いことを表している。技術を生かせる新たな仕事を探さないと生き残れない」

*13-2:http://qbiz.jp/article/138100/1/ (西日本新聞 2018年7月26日) 水素タウン再始動 東京五輪後の選手村で活用 北九州で実証実験開始
 北九州市とガス・エネルギー関連事業を展開する岩谷産業(大阪市)は、水素を活用したエネルギー供給の実証実験を7月から、「北九州水素タウン」(北九州市市八幡東区東田地区)で再開した。2020年の東京オリンピック・パラリンピック大会後の選手村地区で、東京都による水素エネルギー供給事業が本格始動することを受け、都市部で実証実験が可能な国内唯一の立地条件を生かし、実証実験に取り組む。北九州水素タウンは1・2キロのパイプラインを備える。実証実験では、パイプラインを使って水素漏れを検知するセンサーの開発に取り組み、既に住人が居住している東田地区の「水素燃料電池実証住宅」で、最新型の燃料電池の耐久性を検証するなどする。選手村地区でのエネルギー供給事業は、現地に水素ステーションを設置し、燃料電池バスや自動車に供給したり、住宅での発電に活用したりして、水素を生かした街づくりを進める。北九州水素タウンでは、2010〜14年度に新日鉄住金八幡製鉄所で発生した水素をパイプラインに流し、商業施設などに設置した燃料電池で発電する世界初の試みに取り組んだ経緯がある。市関係者は「東京五輪を契機に『環境都市』としての取り組みを世界にアピールし、水素ビジネスに取り組む企業に実証フィールドが北九州にあることを周知していきたい」と意気込む。

| 資源・エネルギー::2017.1~ | 11:39 AM | comments (x) | trackback (x) |
2018.5.23 現代農業と環境、種子法、特許権などについて (2018年5月25、26、28、31日、6月3、4、8、9、12、14、16、18、19日に追加あり)
(1)皇后の養蚕と現代科学の融合はいかが?

  
2014.11.3産経新聞 2016.2.25毎日新聞      できた光る繭と絹糸


       日本の絹のスカーフ         絹シフォン、友禅染のスカーフ

 明治時代の養蚕は、良質の生糸を大量に輸出して「外貨獲得産業」となり、日露戦争の軍艦はじめ近代兵器は絹糸の輸出による外貨で購入されたといっても過言ではなく、日本の近代化(=富国強兵)の礎を築いた。そのため、皇居の養蚕は、*1-1のように、明治天皇の后だった昭憲皇太后が産業奨励のために始められ、歴代の皇后に受け継がれて、現在は美智子皇后がやっておられ、来年の天皇陛下の退位後は、雅子妃殿下に引き継がれるそうだ。

 しかし、雅子妃殿下に引き継がれるのなら、明治時代と同じやり方を引き継ぐのではなく、この際、*1-2の「遺伝子組み換えの光るカイコ」を、*1-3のような飼育方法で年間を通じて飼育し、品質が高くて色あせしない生糸から、上品でおしゃれなスカーフを作り、「Empress Masako」というブランドで皇居に来た人に差し上げると、記念になってよいと思う。

 外国の賓客や日本に赴任して挨拶に来た外交官やその婦人などは、驚いて世界にこの生糸を宣伝してくれることは間違いなく、単に同じことを続けるのではなく日本の産業を振興することが、昭憲皇太后はじめ明治時代の人が意図したことだったと思われる。そして、もちろん紅型・友禅染・江戸小紋・その他の柄で、他の一般業者も暗いところでライトが当たると光るスカーフなどを、高すぎない価格で、オリンピックまでに作れば、売れる大きなチャンスになるだろう。

(2)種子や製造方法の特許権について
 上の蚕の品種や育て方に特許権があることには誰も異論がないと思うが、*2-2のように、種子法が廃止されたのには驚いた。何故なら、これまで作られた種子には特許権があり、日本の農業の50%以上は良質な種子で支えられており、良質な種子は国民の財産だからだ。

 しかし、品種改良を国主導ではなく民間が行うようになると、地域毎に異なる気候に合わせた種子ができる筈はない。何故なら、佐賀県のコメが高温障害でできにくくなった時に種子を改良して2~3年で特A評価を得られる品種ができたのも、近年のトマトやカボチャやとうもろこしが非常に美味しいのも、地域の地道な品種改良があってのことで、地域ブランドになる少量品種の品種改良を民間企業はやらないからである。

 さらに、*2-3のように、種苗の自家増殖を原則禁止するなど、農水省は種苗会社の利益のために農家をやりにくくしているように見える。何故なら、例えば、みかん農家は、より美味しい品種を作ろうと工夫を重ね、農家が作った美味しい品種も多数あるからで、優良品種の海外流出を防ぐことが狙いなら、新品種を作った人が特許権をグローバルにとりやすくすればよいからだ。そのため、農水省は世界特許を容易に取れるシステムを世界で作るべきなのであり、種苗の自家増殖を原則禁止するのは、日本の農家をやりにくくする逆の政策である。

 また、*2-1のように、日本の平均気温はこの100年で1.19度上昇したそうで、日本農業新聞は「温暖化への備えに、新技術や資材を生かそう」と呼び掛けている。確かに、新品種の開発やヒートポンプ・ハウス内環境制御装置の利用などの資材の進歩は素晴らしいが、私は気温が高くなることは日本の農業にとってはマイナスばかりではないと考える。何故なら、東北の冷害はなくなり、北海道の米も美味しくなったし、高温でこれまでの作物が作れなくなった地域はより暖かい地域の作物に転作したり品種改良したりすれば、獲れる作物の種類と量が増えるからだ。消費者は、多種の作物が近くで獲れた方が嬉しいのである。

(3)農業と環境
 森林を壊してコンクリートの工業地帯を作ると、光合成をしないためCO₂(二酸化炭素)を吸収してO₂(酸素)を作る機能がなくなり、土壌がないため保水力もなくなり、環境に悪いことは明らかだ。それに対し、森林を壊して農業地帯を作った場合は、生物多様性は少なくなるが、光合成をするためCO₂を吸収してO₂を作る機能は残り、土壌があるので保水力も維持される。これが、工業と農業の環境に与える負荷の差である。

 さらに、*3-2のエコファーマーのように、田んぼの生き物調査を行い、天敵を活用する農業を普及し、有機肥料を使って、農薬や化学肥料を減らして土づくりを進める農業者は、より生物多様性を保全し、環境を壊さない農業を行うことができ、生産物の味や栄養にも深みがある。そのため、エコファーマーの認定を受けると交付金が支払われる制度になっていたのだが、今回の農薬や化学肥料の削減を求めない「グローバルGAP」への誘導は、この点で後退なのだ。もちろん、輸出するにはグローバルGAPの認証が必要だが、環境保全型で価値ある農産物を作るエコファーマーも優遇すべきだろう。

 そして、*3-1のように、持続可能な社会づくりを促すためには、産業における農業の役割は重要で、そのゴールとなる目標は「飢餓と貧困をなくす」「全ての人に健康と福祉を」「質の高い教育をみんなに」「陸と海の豊かさを守る」「クリーンなエネルギーを」「つくる責任・つかう責任」などで、直面する課題への共通認識がある。私も、これらは大切なことだと思うが、日本政府の農協改革は事業弱体化の方向で進められており、改悪政策は問題だと考える。

 また、メディアは「新自由主義」を批判の言葉としてよく使うが、「新自由主義」の明確な定義は不明だ。現代では、日本国憲法にも記載されているとおり、「自由」は紛れもなく重要で、不自由や拘束される方が良いと思う人はいない。また、市場原理は、競争に基づく現在の経済現象を説明するツールであり、これを批判すれば共産主義や配給制がよいのかということになるが、これらは頑張って働く動機付けをなくすため歴史的に失敗してきた経済制度である。さらに、「格差」のみを取り上げて問題視する人もいるが、全員が上に合わせることは不可能であるため、全員が下に合わせて貧乏になれば格差はなくなるが、それでよい筈はない。

 なお、市場原理の中にあっても、原発などで環境を破壊すれば、*3-3のように、取返しのつかない大きな損失を負って持続可能でなくなり、経済は破綻する。従って、環境は、市場原理と併立して、(“外部不経済《経済学用語》”にしておかず)環境維持コストを経済に組み込んで維持すべきなのである。

<皇后陛下の養蚕と現代科学の融合>
*1-1:http://www.yomiuri.co.jp/national/20180521-OYT1T50073.html (読売新聞 2018年5月21日) 皇后さま、最後の「給桑」…雅子さまが引き継ぎ
 皇后さまは21日、皇居内の紅葉山御養蚕所で、蚕に桑の葉を与える「給桑きゅうそう」をされた。養蚕所では日本純産種の「小石丸」など3種類の蚕を飼育。皇后さまは小石丸に桑の葉を与え、葉を食べる音に耳を澄まされていた。この日は、蚕が繭を作る場所となる「藁蔟わらまぶし」を編む作業が公開され、皇后さまは「リズムが出ると楽しいですね」と話されていた。皇居の養蚕は明治天皇の后きさきだった昭憲皇太后が始め、歴代の皇后に受け継がれており、来年の天皇陛下の退位後は皇太子妃雅子さまが引き継がれる。

*1-2:https://www.sankei.com/life/news/141103/lif1411030034-n1.html (産経新聞 2014.11.3 16:40) 遺伝子組み換えカイコ 「光るドレス」、医療に応用も 養蚕業の再興へ研究本格化
 カイコの遺伝子を組み換えて、従来の絹糸に代わる新たな需要を創出する研究が本格化している。「光るドレス」や医療材料など幅広い分野で応用が期待されており、大量飼育を目指す実験も始まった。衰退の一途をたどってきた養蚕業が、遺伝子組み換え技術で再興する可能性が出てきた。
◆日本に強み
 カイコは「カイコガ」というガの仲間。幼虫は桑の葉を食べて体長7センチほどに成長し、口から長さ計1・2キロほどの絹糸を出して繭を作る。野生の「クワコ」が先祖で、約5千年前に中国で家畜化されて分かれた。絹糸は高級品として重用され、明治以降に日本の主要な輸出品となり近代化を支えた。だが戦後は化学繊維の普及や安価な中国製の台頭で養蚕業は衰退を続けている。こうした中、農業生物資源研究所(茨城県つくば市)は2000年、卵に穴を開け、他の生物の遺伝子を注入することでカイコの遺伝子組み換えに初めて成功した。遺伝子が生殖細胞に組み込まれると、次世代の一部は全ての細胞に目的の遺伝子が組み込まれたカイコとなり、その性質が代々、受け継がれる。カイコは餌を探す能力がなく、成虫は飛べないので逃げ出すことはなく、扱いやすい。短期間で成長し、タンパク質でできた絹糸を効率よく作るため、目的の遺伝子を組み込めば、優れた性質の絹糸やタンパク質を大量に得られると期待される。同研究所の瀬筒秀樹ユニット長は「日本は養蚕業が盛んだったので、飼育のノウハウや研究の蓄積があるのが強み」と強調する。
◆11色の絹糸
 同研究所ではクラゲやサンゴなどの蛍光タンパク質の遺伝子をカイコに組み込むことで、緑、赤、オレンジなど11色の光る絹糸を作製。青色発光ダイオード(LED)などの光を当てると美しく光るのが魅力で、婚礼用や舞台用などのドレスが試作された。また、遺伝子組み換えで光沢のよい極細の絹糸を開発。クモの遺伝子を注入することで、切れにくいクモの糸のような強い絹糸を作ることにも成功した。組み換え技術の手法も改良が進んでいる。従来は目的の遺伝子をゲノム(全遺伝情報)のどこに入れるか制御できず、効率が悪かったが、近年は特定の遺伝子を破壊したり、別の遺伝子に置き換えたりする「ゲノム編集」の研究が進展し、多様なカイコを効率良く作れるようになった。遺伝子組み換え動物は生態系に影響を与える恐れがあるため通常、厳重に閉鎖した環境でしか飼育できない。これでは農家への普及は難しく、大量生産できない。このため同研究所は国の承認を得て今年7月、組み換えカイコを養蚕農家と同様の状態で飼育し、問題がないかを確かめる実験を始めた。
◆麻薬も探知?
 組み換えカイコは絹糸から取り出したタンパク質の利用も進んでおり、血液検査薬や化粧品が既に実用化している。細くて血栓ができにくい人工血管や手術糸などの開発や、電子部品のコンデンサーに使ってオーディオ機器の音質を高める構想もある。成虫を生きたまま利用することも考えられる。雌のフェロモンに反応する雄の遺伝子を別の遺伝子に置き換えると、雄は臭いや光、熱に反応して羽をばたつかせる。この性質を利用すれば、例えば麻薬の探知に役立つ可能性がある。麻薬探知犬のような訓練や世話は不要だ。食品のカビや有害物質を検知したり、人間の呼気をかがせて病気を見つけたりするアイデアも。マウスなどに代わる実験動物として、ヒトの遺伝子を入れたカイコを使う研究も進んでいる。養蚕農家は数が減少している上、高齢化で後継者難を抱えている。瀬筒氏は「養蚕業を再興させるには、組み換えカイコの実用化を急ぐ必要がある」と指摘する。米国や中国の研究水準も高く、競争は激化しているという。今年6月には旧富岡製糸場(群馬県富岡市)が世界文化遺産に登録された。日本の絹産業が見直される中、養蚕が最先端の技術で復権できるか注目される。

*1-3:https://www.sankei.com/region/news/160728/rgn1607280005-n1.html (産経新聞 2016.7.28) 山鹿市で無菌の大規模養蚕工場起工式
 無菌状態で蚕を育て高品質のシルク原料を生産する養蚕工場の起工式が27日、熊本県山鹿市で開かれた。熊本市の求人広告会社「雇用促進事業会」が養蚕事業に新規参入した。同社は「大手商社を通じてシルク生地にし、欧州の高級ブランドへの売り込みも図りたい」としている。国内最大の産地である群馬県の生産量に匹敵する年間約50トンの繭の出荷を目標とする。雇用促進事業会は参入に当たり新会社「あつまる山鹿シルク」(熊本市)を設立した。23億円をかけて約4200平方メートルの平屋建て工場を建設する。来年3月に完成予定で、飼料に使う桑の畑約25ヘクタールも確保した。蚕は病気に弱いが、この工場では温度と湿度を蚕に最適な状態にした無菌室で飼育する。桑を原料にした人工飼料を成長段階に応じて量を調整しながら与えると、年間を通じて品質の高い繭が生産できるという。あつまる山鹿シルクの島田俊郎社長は記者団に「この工場の繭からは、色あせしない生糸ができる。熊本からのシルクロードを世界につなげていきたい」と述べた。

<種子・製造方法の特許>
*2-1:https://www.agrinews.co.jp/p44130.html (日本農業新聞論説 2018年5月21日) 温暖化への備え 新技術や資材生かそう
 気象庁によると、日本の平均気温はこの100年で1・19度上昇した。特に1990年代に入り、高温の年が増えた。温暖化の影響をどの産業よりも大きく受ける農業。地球規模で加速する温度上昇を見据え、環境制御など最新の技術や装置、品種などを駆使して対抗できる生産基盤を整えたい。2017年の年平均気温は、1981~2010年の平均に比べ0・26度高かった。わずかな上昇幅に見えるが、温度で栄養成長や生殖成長を切り替える植物にとっては大きな変化だ。また、農作物の収穫時期や収量には積算温度が大きく影響する。わずかな温度上昇でも積もり積もれば収穫の前倒しなど生産計画の狂いを生む。今春の野菜価格の下落も、気温の変動にうまく対応できなかったことが大きな要因だ。夏の暑さが際立つ温暖化だが、最も気候変動が激しいのは冬だという指摘もある。狭い範囲で大雪が降る地域があれば、積雪が減った地域も増えている。厳しい寒波の到来もあるが、長期的には冬の気温が高まりつつあるため、一定の低温が必要な果樹で休眠打破がうまくいかない、施設園芸やトンネル被覆の開閉の見極めが難しく作物の生育不良を招くといった影響が出ている。地球規模で起きる気候変動を抑えることは難しい。一方で、施設園芸を中心に環境制御技術が大きく進化している。重油高騰を受けて、導入が進んだヒートポンプは冷房機能があるため、夏の遮熱対策に有効だ。熱を吸収する被覆フィルムや、保温効果の高いフィルムなども市販化されている。ハウス内の温度、湿度、日射量、かん水量などを総合的に管理する環境制御装置も、スマートフォンの利用で扱いやすくなってきた。露地でも遮熱効果や保湿効果の高い被覆資材が相次いで開発された。耐暑性や耐寒性など機能性を強めた品種も多く育成されている。10年前と比べて、異常気象への対抗策は増えたといえる。篤農家と呼ばれている人に共通しているのは、気象を読み取る力だ。天候の変化を誰よりもいち早く感じ取り、栽培管理に生かしている。気象では、“観測史上最高”という言葉をよく耳にするようになった。温暖化の影響でこれまでの常識を超えた異常気象が頻発する時代である。天候の変化をいち早く察知し対応する力が農業者に求められる。篤農家が経験と技で身に付けた天候の予測は、気象や栽培データの「見える化」で補うことが可能になってきた。気象庁が出した7月までの季節予報では、気温は高く推移するとみられる。目前に迫る夏を乗り切る対策も重要だが、長期的な視野に立って、環境制御技術の深化や品種開発など総合的な対策が望まれる。指導機関やJAも一体となって、最新技術や資材などの活用を進めたい。

*2-2:https://www.agrinews.co.jp/p44066.html (日本農業新聞 2018年5月14日) 種子法廃止への懸念 品種改良は危機管理 農林中金総合研究所客員研究員 田家康
 米や麦、大豆の優良種子の安定供給を都道府県に義務付けてきた主用農作物種子法(種子法)が4月1日をもって廃止され、70年近い歴史に幕を下ろした。規制改革の一環で、品種改良を国の主導ではなく、民間活力を利用して官民一体で行う趣旨という。だが、米などの品種改良は農業におけるセーフティーネット(安全網)であり、国家の危機管理からの視点も必要ではないだろうか。米の品種を巡る歴史は長い。『万葉集』編さんに関わった歌人の大伴家持が「早田」という表現で、早稲を歌っている。平安時代中期の『倭名類聚抄(わみょうるいじゅしょう)』には早稲(わせ)・中稲(なかて)・晩稲(おくて)という登熟期による区分けもある。
●用途別に多様化
 天候への耐久性、酒造などの用途別といった品種の多様化は鎌倉時代以降から見ることができる。中国から渡来した「大唐米(たいとうまい)」は干ばつに強いとされ、山陽地方を中心に普及した。国内産では酒造用の早稲や多収性の品種など用途別に多様化が進んだ。良い品種といっても、干ばつや冷害に強い品種、収穫量の多い品種、食味の良い品種などさまざまある。そして、こうした性質は往々にして相いれない。江戸時代に東北地方を中心に天明の飢饉(ききん)、天保の飢饉などの大冷害が起きたが、その背景には品種の選択があった。津軽では味が悪いものの冷害に強い赤米があったが、領主も農民も作況が良ければ豊作が約束される晩稲の「岩山」の栽培にこだわった。明治時代以降も冷害が何度も繰り返され、耐冷性があり、収穫量の多い品種の開発は国家的な課題であった。冷害に強い「陸羽132号」は1921年、秋田県にあった国立農事試験場陸羽支場で育成された日本初の人工交配による優良水稲で、戦後まで長年、作付面積トップの座を占めた。「陸羽132号」をさらに改良して誕生したのが「水稲農林1号」。「水稲農林1号」と「水稲農林22号」を掛け合わせて育成された「コシヒカリ」は、偶然にも良食味品種の代表になり今日に至っている。
●進行する温暖化
 大気中の温室効果ガス増加による温暖化は、今世紀末には一層進行するだろう。登熟期に高温になると背白粒が増え、1等米比率の減少が見込まれるため、新品種開発が課題となっている。農水省は研究プロジェクトを公募しているが、委託先のほとんどが国立大学や県の試験場である。収量が多く食味が優れる品種であれば、すぐにビジネスとして成り立つだろう。だが、年々の気温の上下動は大きく、地球温暖化による気候の変動はいつどのような形で顕在化するかも分からない。品種改良とは、将来の異常気象に備える農業生産におけるセーフティーネットであり、危機管理の視点が必要となる。これは民間の知恵で解決できる問題ではない。種子法の廃止が、品種改良への国や各県などの関与を緩めることがないよう心から願うばかりだ。
<プロフィル> たんげ・やすし
 1959年生まれ。農林中央金庫森林担当部長などを経て、農林中金総合研究所客員研究員。2001年気象予報士資格を取得し、日本気象予報士会東京支部長。日本気象学会所属。『気候で読み解く日本の歴史』などの著書。

*2-3:https://www.agrinews.co.jp/p44074.html (日本農業新聞 2018年5月15日) 種苗の自家増殖 「原則禁止」へ転換 海外流出食い止め 法改正視野、例外も 農水省
 農水省は、農家が購入した種苗から栽培して得た種や苗を次期作に使う「自家増殖」について、原則禁止する方向で検討に入った。これまでの原則容認から規定を改正し、方針を転換する。優良品種の海外流出を防ぐ狙いで、関係する種苗法の改正を視野に入れる。自家増殖の制限を強化するため、農家への影響が懸念される。これまで通り、在来種や慣行的に自家増殖してきた植物は例外的に認める方針だが、農家経営に影響が出ないよう、慎重な検討が必要だ。自家増殖は、植物の新品種に関する国際条約(UPOV条約)や欧米の法律では原則禁じられている。新品種開発を促すために種苗会社などが独占的に種苗を利用できる権利「育成者権」を保護するためだ。一方、日本の種苗法では自家増殖を「原則容認」し、例外的に禁止する対象作物を省令で定めてきた。その上で、同省は育成者権の保護強化に向け、禁止対象を徐々に拡大。現在は花や野菜など約350種類に上る。今後は自家増殖を「原則禁止」し、例外的に容認する方向に転換する。そのため、自家増殖禁止の品目が拡大する見通しだ。同省は、今回自家増殖の原則禁止に踏み込むのは、相次ぐ日本の優良品種の海外流出を食い止めるためと説明。自家増殖による無秩序な種苗の拡散で、開発した種苗業者や研究機関がどこまで種苗が広がっているか把握できないケースも出ているという。中国への流出が問題となったブドウ品種「シャインマスカット」も流出ルートが複数あるとされる。民間企業の品種開発を後押しする狙いもある。2015年の品種登録出願数は10年前と比べると、中国では2・5倍に伸びているが、日本は3割減。日本の民間企業は野菜や花の品種開発を盛んに行うが、1本の苗木で農家が半永久的に増殖できる果樹などへの参入は少ない。このため同省は、育成者権の保護強化で参入を促す。仮に自家増殖を全面禁止にすれば、農業経営に打撃となりかねない。同省はこれまで、農家に自家増殖の慣行がある植物は禁止対象から外し、農業経営への影響も考慮してきた。今回の原則禁止に当たっても、一部品種は例外的に自家増殖を認める方針だ。自家増殖の原則禁止は品種登録した品種が対象。在来種のように農家が自家採種してきたものは対象外で、これまで通り認められる。昨年政府がまとめた知的財産推進計画では、自家増殖について「農業現場の影響に配慮し、育成者権の効力が及ぶ植物範囲を拡大する」と掲げている。

<農業と環境>
*3-1:https://www.agrinews.co.jp/p44040.html (日本農業新聞論説 2018年5月11日) 国連・持続可能目標 協同活動で貢献しよう
 地球と人類がこの先も続くように、国連が各国に産業や暮らしの変革を呼び掛けている。食・農・環境・教育・福祉などの分野で17目標を設定し、持続可能な社会づくりを促す。どれも日本の協同組合が取り組む課題だ。国際協同組合同盟(ICA)も目標達成に全面的な貢献を約束する。協同活動の今日的意義と役割を再認識しよう。正式名は「持続可能な開発目標」(SDGs=エスディージーズ)。2015年の国連サミットで採択された。30年を期限とし「2030アジェンダ」とも呼ばれる。ゴールとなる目標は17分野169項目。「飢餓と貧困をなくそう」「全ての人に健康と福祉を」「質の高い教育をみんなに」「陸と海の豊かさを守ろう」「クリーンなエネルギーを」「つくる責任・つかう責任」など直面する課題への共通認識から生まれた。世界を変え、救う処方箋といえる。注目すべきは、協同組合活動との親和性の高さだ。国連教育科学文化機関(ユネスコ)が、協同組合を無形文化遺産に登録した主な理由は、社会的問題への解決能力であった。中でも日本の協同組合、とりわけ総合事業を展開するJAは、その先駆的な役割を果たしてきた。昨年11月のICA総会では、SDGsに積極的に取り組むことを確認し、「協同組合の存在感を高めていく」(グアルコ会長)とした。また、今年の国際協同組合デー(7月7日)のテーマを「持続可能な消費と生産」に設定し、国連目標へのより積極的な貢献を打ち出す。SDGsで日本の推進役を担うのが、JAや生協、労協などの協同組合を横断的につなぐ連携組織として今春生まれた「日本協同組合連携機構」(JCA)だ。先日の公開研究会でもこのテーマを取り上げ、協同組合の果たす役割と意義を再確認した。特に、国連目標をそれぞれの協同組合組織の活動に落とし込み進化させること、協同組合間同士の連携を深めることが再確認された。同研究会でJAふくしま未来の菅野孝志組合長は「農業を基軸とする持続可能な地域づくり」を提起。「JAの活動は国連の定めた17目標に全てつながっている」とし、地域、農業、暮らしを守る運動の重要性を訴えたが、同感である。まさに総合事業だからこそできる地域貢献の姿がそこにある。残念なのは日本政府の取り組み方針だ。協同組合との連携に触れているが位置付けが弱い。しかも一連の農協改革は総合事業を弱体化させる方向で進んでおり、世界の潮流と逆行する。市場原理優先の農政改革、原発依存のエネルギー政策、企業視点の働き方改革にも共通する。そこには今日の貧困や格差、環境破壊が新自由主義に起因していることへの反省や洞察はない。持続可能な社会づくりへの大胆な政策転換、強欲な金融資本主義に代わる新たな経済モデルの構築が求められる。

*3-2:https://www.agrinews.co.jp/44059?page=2 (日本農業新聞 2018年5月13日)エコファーマー 環境支払い除外なぜ? 農家疑問の声 GAPありきか ハードル高まる
 「見直しはおかしい」。宮城県大崎市で有機栽培や特別栽培による水稲3ヘクタールを経営する佐々木陽悦さん(71)は、方針転換に納得がいかない。田んぼの生き物調査を行い、天敵を活用する農業を普及してきた。エコファーマーで交付金を受けてきたが、現場の努力が後退しかねないと危ぶむ。環境支払いは、地球温暖化防止や生物多様性保全の営農活動を支援する制度。11年度に創設した。交付額は10アール最大8000円。エコファーマー認定が要件の一つだった。今年度から国際水準GAPの研修を受けた上でGAPを実施し、「理解度・実施内容確認書」を提出しなければならない。国際水準GAPには第三者認証の「グローバルGAP」「ASIAGAP」「JGAP」がある。グローバルGAP認証を取得したエコファーマー、北海道洞爺湖町の佐伯昌彦さん(63)は「GAPは否定しないが要件とするには違和感があり、無理やり誘導している感がある」と断じる。GAPは労働安全、食品安全、環境保全など幅広く規定している。だが、農薬や化学肥料の削減は求めていない。一方、エコファーマーは持続農業法に基づき農薬や化学肥料を減らし、土づくりを進める農業者。直接支払いの趣旨と合致する。全国エコファーマーネットワークの香取政典会長は「GAPに取り組むかどうかは農家の経営判断だ」とし、肝心の環境保全型農業が置き去りになりかねないかと心配する。自治体も悩ましい。宮城県登米市は3月末に生産者を集め、制度変更の説明会を開いた。17年度の環境支払い水田は約1200ヘクタール、37組織に上る。市は「制度のハードルが高くなり、そこまでやるのかと身構えてしまう農家が出そう」と、不安を口にする。
●農水省「導入へ研修など支援」
 農水省は要件からエコファーマーを外した理由について、生産者の高齢化などでエコファーマーの認定期間の5年を終えると更新しないケースが増えてきたためとし、「持続可能で環境保全型農業の拡大のためにはGAP導入の方が有益」(生産局農業環境対策課)と強調する。環境支払いは昨年6月、農水省の行政事業レビューで交付要件の見直しが指摘された。同省は「質の高い経営レベルに誘導していくためにGAPに取り組んでもらいたい」とし、GAP研修の予算措置や無料オンライン研修を用意していく。

*3-3:http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201805/CK2018052102000239.html (東京新聞 2018年5月21日) 【社会】福島農業、遠い再建 避難指示地域 農家4割「再開断念」
 東京電力福島第一原発事故から七年が過ぎ、福島県では避難指示解除とともに農業再開の動きも広がる。しかし避難中に田畑は荒れ、人手不足や高齢化といった課題は山積している。国などの調査に被災地の農家の四割以上が「再開するつもりはない」と回答し、今後の見通しは厳しい。「先祖代々の田畑が台無しになった。一からのやり直しは考えられない」。南相馬市小高区の横田芳朝(よしとも)さん(73)は、雑草が生えた荒れ地を前にため息をついた。事故前は約五百本のナシの木が茂っていたが、避難中にほとんどが病気になり、昨年すべて切り倒した。「七十五歳までは農業を続けようと思っていたが、これから除染をして、土を耕さなければならない。風評も厳しいし、再開しても見合わない」。かつてはコメも作っており、田植えや稲刈りは隣近所で手伝い合った。しかし事故はそのようなコミュニティーも破壊した。近所で帰還した農家はまばらで「農業は一軒だけではできない」とこぼす。横田さんも長女が暮らす埼玉県に避難中で、戻るかどうか、決心がつかないでいる。農業を再開しても苦労は絶えない。福島県富岡町で仲間と米作りに取り組む渡辺康男さん(67)は「元の景色を取り戻したい一心でやってきた」と話す。避難先の同県西郷村から片道約二時間かけて通う。今年の作付けは約五ヘクタールで、事故前の四分の一にとどまる。悩みはイノシシなどの鳥獣による被害。避難中に人里に慣れ、人間を恐れることなく田畑を荒らし回る現状は「動物天国」だという。電気柵で囲ってもイノシシは侵入し、平気で田んぼで水浴びをしたり、稲を引っこ抜いたりする。困難続きの日々だが「自分の経験を伝えることで、再開を迷っている人を少しでも後押しできれば」と願う。国や県、地元企業でつくる合同チームの調査によると、事故で避難指示が出た十二市町村の農家約千人のうち、42%が「再開するつもりはない」と回答している。高齢化や地域の労働力不足、古里への帰還を諦めたことが理由に挙がった。チームの担当者は「若い担い手の帰還が見込めず、再開に踏み切れない農家が多い」と分析している。 

<農業の近代化とその資金>
PS(2018年5月25日追加):農業は、*4のように、集落営農組織の法人化が進んでおり、高齢化してもそれぞれの構成員に役割を与えながら持続可能な経営体でいられる準備ができつつある。法人化のメリットは、①多数決でよいため意思決定が早く ②規模拡大して ③人材や資金の確保がしやすい ことである。法人化のメリットは、水産業についても同じだろう。

*4:https://www.agrinews.co.jp/p44061.html (日本農業新聞論説 2018年5月13日) 集落営農の法人化 総力挙げて経営安定を
 集落営農組織の法人化が進んでいる。農水省の調査によると、法人率は34%で10年以上伸び続けている。しかし法人化がゴールではない。経営を軌道に乗せることが重要だ。地域農業を担う持続可能な経営体の育成に向け、JAや行政が継続的に支援すべきだ。2018年2月現在で集落営農数は1万5111。地域別では水田農業の比重が高い東北3344件が最も多く、九州2415件、北陸2383件と続く。数はほぼ前年並みだが、農事組合法人などの法人数は5106件、前年より413件増えた。法人化率は初めて30%台を突破した17年を上回った。法人化が進む背景の一つとして、人材確保の有利性が挙げられる。同省の調査では、30ヘクタール以上を集積する法人は全体の4割を占める。高齢化でリタイアする人たちの農地の受け皿役を果たしている。だが、オペレーターと呼ばれる作業者の高齢化も進む。将来に渡って組織を存続させるには次世代の人材が必要だ。そのためには社会保障などの雇用条件を整えることが必須で法人化を選ぶ。法人化には農地集積への合意形成や登記、定款策定など、やらなければならない事務作業が多い。行政やJAのサポートも法人増加の背景にある。しかし、法人化が済めば地域農業の抱える課題が解決するわけではない。経営内容を充実させ、将来に渡って組織が存続するようにしなければならない。秋田県大仙市の農事組合法人・新興エコファームは、水稲にエダマメなどの園芸品目や野菜加工を組み合わせて収入を確保し、地元農家から引き受けた50ヘクタールを維持する。作業が重複する品目もあるが、農家間で人員を融通するなど工夫を凝らす。農地集積が進み、経営面積は設立当初と比べて20ヘクタール増えた。同法人の役員は「今後も農地は集まる」との考えから、若手の人材育成を重視。20~40代の3人を雇い入れた。法人経営の安定には役員の手腕が大きいが、当事者任せにしてはならない。経営を長持ちさせるためには、高齢の農地提供者も何らかの形で経営に関わり、「自分たちの組織」という意識を持たせることが重要だ。「少数精鋭」では限界がある。野菜作りや直売所、加工品などの多角化を進める上でも女性活用がポイントになる。だからこそ国や県、市町村、JAによる経営支援への期待は大きい。宮城県のJA南三陸は「担い手サポート班」を設け、作物ごとに担当を配置。法人や若手農家らへの支援を充実させ、頻繁に通うことで「あの人に相談すればいい」という関係を築き、経営を下支えしている。技術指導はもとより、労務、税務面の管理や資金調達、実需者とのマッチング、6次産業化の相談・助言など、行政やJAが法人に対し、できることは多い。地域農業の将来像を描く端緒が開けるはずだ。

<農業の6次産業化>
PS(2018年5月26、28日追加):*5-1のように、「海外で原材料を安く仕入れて安価な製品を流通させるのではなく、現地が持続的に潤う生産体制を」という考えに基づくファッションブランドがあるそうで、よいことだと思う。そして、これは農林漁業の6次産業化と同様、原料を安く販売するよりもそれに加工を加えて販売(輸出)すれば、そのための雇用が発生し、技術が育ち、特に女性の賃金獲得に貢献する。しかし、これを持続的に行えるためには、善意や倫理だけではない本当の市場ニーズを満たす商品を作る必要があり、それには、①デザイン ②品質 ③コスト で世界と勝負できる製品を作らなければならない。
 それには、バッグや小物なら、単に流行にとらわれないだけではなく、本当によいデザイン(エチオピアの製品なら、アフリカの太陽の下での明るい原色を使った製品やアフリカの自然を思い出させる図案など、現地の人がデザインしたものの方がエキゾチックで面白いだろう)と品質を追究すべきだ。そして、これは、鹿・山羊・羊等の皮がある日本も同様である。
 また、中米グアテマラの極彩色で緻密な手織りである「コルテ」なら、それを自動織機で生産して、新しくデザインの良いものを高すぎない価格で販売できるようにした方が、現地の人のためにもよいと思われる。これは、日本各地に伝承された優れた織物や染色についても同じだ。
 なお、日本では、*5-2のように、これまで保護してきた野生鳥獣が増えて、農林業への鳥獣害が深刻化する状況になったため、狩猟ビジネス学校もでき始め、良質の肉や皮を手に入れることが可能になりつつある。


     2018.5.25西日本新聞     スキッとおしゃれなスペイン製  フランス製

    
     かわいいイタリア製        アフリカの色使いとファッション

*5-1:http://qbiz.jp/article/134586/1/ (西日本新聞 2018年5月25日) 「持続可能なファッションを」 2ブランドが福岡市・大名で展示販売会
 海外で原材料を安く仕入れて安価な製品を流通させるのではなく、現地が持続的に潤うような生産体制を――。こんな考え方に基づく二つのファッションブランドが、福岡市で26日まで展示販売会を開いている。実用性とデザイン性、そして倫理性(エシカル)を備えた製品が並んでいる。エチオピアで育ったヒツジの皮を使ったバッグや小物を並べているのは「andu amet(アンドゥ・アメット)」(東京)。福岡での展示販売は初めてだ。柔らかくて軽い上に丈夫な「エチオピアシープスキン」は世界有数の高品質な皮革とされる。ただ、現地に加工技術や商品化のノウハウがなく、これまでは欧米の有名ブランドに原皮を提供するのが主だった。青年海外協力隊でエチオピアに赴任した経験を持つ鮫島弘子さんは、「それでは現地に雇用が生まれず、技術も残らない」と2012年、現地で生産体制を整える形でアンドゥ・アメットを立ち上げた。現在、直営の現地工場で働くのは10人。給与はエチオピアの平均的な労働者の3倍程度という。「大量消費の競争に巻き込まれないように、流行にとらわれないデザインを意識している」と鮫島さん。今後も、地方での展示販売会を企画していく方針だ。
◇   ◇   ◇
 もう一つのブランドは、中米グアテマラの民族衣装を再利用した巻きスカートなどを制作している「ilo itoo(イロイト)」。福岡市出身のデザイナー大久保綾さんが12年に設立。今年4月に法人化した。グアテマラの女性が身に着ける巻きスカート「コルテ」は緻密な手織りで、極彩色の模様と丈夫さが特長。大久保さんは服飾を学んだ大学生時代にコルテを知り、グアテマラを訪問。技術力の高さの割に経済的な対価を受け取っていない現地の状況を知った。使われなくなったコルテを現代風に仕立て直して販売すれば、現地が潤う上に技術も継承されると考えたという。「自分たちが織ったコルテが外国で売れることを知ると織り手の女性たちもすごく喜んでくれる」と大久保さん。イロイトが仕立てる巻きスカートは体型を気にせず着られ、妊婦も着やすいという。「一過性ではなく、年月を重ねても着られる。幅広い世代に使ってもらいたい」。目指す姿はアンドゥ・アメットの製品と共通している。
◇   ◇   ◇
 展示販売の会場は福岡市中央区大名1丁目3−7のサウスステージ1。26日は午前11時〜午後7時。

*5-2:https://www.agrinews.co.jp/p44189.html (日本農業新聞 2018年5月28日) 狩猟ビジネスで学校 捕獲から開業みっちり 千葉県君津市
 農林業への鳥獣害が深刻化する千葉県君津市で、次代の捕獲者を育てようと「君津市狩猟ビジネス学校」が始動した。2018年度の1年間、受講者は鹿やイノシシ、キョンの解体、くくりわなの仕掛け方、ジビエ(野生鳥獣の肉)料理店の運営などを総合的に学ぶ。4、5月の入門編を終え、6月から人数を絞り込んで専門編が始まる。同市周南公民館で今月、2回目の講習があった。50人の募集に対し受講者は60人に上り、県外からが3割ほどを占めた。年齢も20~70代と幅広い。市内から参加した春木政人さん(36)は兼業農家で、イノシシの被害に悩まされてきた。「猟や止め刺しをする人が足りない現状で、自分も動かないとまずいと思った。市がいい機会で学校を始めてくれた」と動機を語った。隣接する木更津市でレストランを営む野口利一さん(36)は、一般的な洋食の他に季節のジビエ料理を出す。「店でイノシシや鹿を扱うが、猟師としての視点も欲しい」と、弟の晃平さん(29)と受講した。今回の講習はイノシシの解体。当日朝、公民館近くに仕掛けた箱わなに子どものイノシシがかかり、内臓を取り出す「腹出し」作業から実習した。午後は林業について学んだ。講習を取り仕切る原田祐介さん(45)は「もちろん技術も教えるが、メインではない。いかにお金にするかだ。ビジネスに特化した狩猟学校は初めてではないか」と話す。狩猟に農業や林業を組み合わせ地域で生計を立てられる人材を育てるため、実技だけでなく座学にも時間を割く。原田さんが代表を務める「猟師工房」は、埼玉県飯能市を拠点に狩猟や野生鳥獣の調査研究などを手掛ける。君津市にも解体処理場を置く縁で、市から学校の開校に際して声が掛かった。同市の農作物被害は、16年度で4900万円を超え県内最多。捕獲者の高齢化、担い手不足で駆除が追い付かない。市内には全国的に珍しく獣肉処理施設が3カ所あるが、捕獲物の活用にも限界がある。そこで市は、地方創生交付金を生かし同学校を立ち上げた。来年3月まで全12回を予定する。1、2回目の入門編は50人を募集。6月からの専門編では30人に絞り込む。過去2回の参加者から回収したアンケートなどを基に“本気度”を見定めて人選。プロレベルの解体法や野外活動の知識などを身に付けてもらう。市外からの移住を含めた捕獲従事者をはじめ、多彩な狩猟ビジネスの担い手を育てる構想だ。市農政課鳥獣対策係の岡本忠大係長は「学校で学んだ人がジビエレストランを目指し、市内で取れる肉を使ってもらえれば、有効利用の一つになる」と期待。捕獲増に伴う販路拡大も見据える。

<中食産業について>
PS(2018年5月28日追加):共働き世帯・高齢世帯では家事の合理化が必要であるため、全自動洗濯機・乾燥機・食洗機・掃除ロボットなどが役に立っているが、それらをうまく使うには、家・家具・食器・衣類の適応も重要だ。また、コンロも自動調整機能がついて便利になったものの、原材料を買って調理するのは時間と労力を要し、高齢者は火事や怪我のリスクもあるため、中食産業が拡大しているわけである。そのため、*6の中食食品は、単身者・共働き世帯・高齢世帯のいずれの需要も拡大しており、生産者にとっては、加工の雇用が生まれる上、品種改良された穀物・野菜・果物などのタネが出回らないというメリットもある。

*6:https://www.agrinews.co.jp/p44191.html (日本農業新聞 2018年5月28日) 17年中食市場 10兆円突破、過去最高 共働き増え需要拡大
 総菜や弁当といった中食市場の拡大が続いている。2017年の市場規模は初めて10兆円を突破。共働き世帯の増加などで、調理済み食品を自宅で手軽に食べるニーズが高い。コンビニエンスストアやスーパーは国産原料などのこだわり商品を投入し、需要を盛り上げる。原料農産物を手掛ける国内産地の仕向け先として、中食が存在感を高めている。
●共働き増え需要拡大
 日本惣菜協会の調査によると、17年の市場規模は前年比2%増の10兆555億円で過去最高を更新。この10年で2割強増えた。業態別に最も伸びが大きいのは「コンビニ」で前年比4%増の3兆2300億円。全体の3割強を占める。店舗数が多く営業時間も長いため、働く女性から高齢者まで、幅広く支持を受けている。「専門店」が1%増の2兆9200億円、「食品スーパー」は3%増の2兆6200億円で、コンビニに比べると伸びは小幅だった。購入品目別では、おにぎりや弁当など「米飯類」が1%増の1兆9800億円で最大。おにぎりはコンビニ各社が新潟「コシヒカリ」を使うなどこだわり商品を投入しながら、値上げに踏み切ったことも背景にある。サラダなど「一般総菜」は2%増の1兆800億円。健康を気遣う人が手軽に野菜を取れるとして、注目している。特に伸びが大きいのは、肉じゃがやハンバーグ、豚のショウガ焼きなどをパックした「袋物総菜」。前年比22%増の4200億円となった。中食市場が伸びる背景に消費者の生活様式の変化がある。厚生労働省によると17年の共働き世帯は1188万世帯で10年で2割近く増え、単身世帯も増加傾向。そのため家庭で調理することが減り、手軽に食べられる総菜需要が広がっている。日本惣菜協会は「国内の人口が減る一方、小売各社は国産素材や機能性を押し出した付加価値商品を売り込んでいる。今後も中食市場の成長は続く」と指摘。国産農畜産物の売り先として、注目度は高まる一方だ。

<運輸業の対応>
PS(2018年5月31日追加):「配達が夜に集中すると残業を増やすだろう」と忖度し、なるべく昼の時間帯に荷物が着くように指定すると、受け取り先が留守で再配達になったりする。つまり、女性が普通に働いている時代、「昼間は誰も家にいない」という前提で動かなければ二度手間になるだけであるため、*7のヤマト運輸が、夜間中心の配達要員の確保を急いでいるのは合理的だ。さらに、遠慮なく夜の時間帯を指定できるような「注意書き」が送り状に書かれている方が良いだろう。なお、疲れるため誰もが嫌がる時間帯に勤務する人は、同じ給与でも勤務時間が短いのは当然である。

*7:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180531&ng=DGKKZO31149580Q8A530C1EA1000 (日経新聞 2018年5月31日) 「朝だけ」「夜だけ」勤務OK、JR東が運転士も育児・介護に、ヤマトは再配達に5000人確保
 JR東日本は2018年度末をめどに、運転士や車掌が朝のラッシュ時だけ短時間乗務できるよう制度を改める。ヤマトホールディングス傘下のヤマト運輸も12月までに、宅配便の再配達が多い夜だけ働く社員を約5千人確保する。介護などで特定時間帯だけ働きたい社員の希望と、業務が集中する時間帯の人手を確保したい企業のニーズをマッチさせ、人手不足を乗り越えようとする動きが広がってきた。厚生労働省の29日の発表によると、輸送業の4月の有効求人倍率は2.37倍と高く、深刻な人手不足が続く。鉄道乗務員や宅配運転手は資格や経験が必要なためすぐに大量採用するわけにいかず、人手確保のため一歩進んだ働き方の見直しに踏み込む。
●車掌も対象
 JR東は運転士や車掌の勤務体系を見直す一環として、「朝だけ勤務」ができるようにする。親の介護や育児が必要な乗務員を対象とする。今後、労働組合と交渉する。通常、運転士や車掌は平均9~10時間の勤務時間がある。介護や育児などの理由があれば6時間に短縮できるが、電車に乗務できるのは日中だけなどと働き方が限られていた。これを柔軟にする。例えば昼すぎに退社を希望する日は、早朝に出社した上で、ラッシュ時の2~3時間に乗務し、その後、事務作業などをしてから退社できるようにする。夕方だけ、など乗務可能な時間帯も増やす。過去に運転士や車掌を経験した社員も、乗務できるようにする。JR東日本は現在、1日に約1万2千本の列車を走らせており、運転士と車掌が合計で約1万1千人いる。今後、旧国鉄時代に採用した55歳以上の社員約1万4千人の退職が相次ぐが、東京圏への人口流入が続き鉄道利用が増えるため、運行本数は減らしにくい。女性社員の積極採用など、可能な対応策を進める。国会では多様な働き方の実現を目指す働き方改革関連法案の審議が大詰めを迎えているが、深刻な人手不足を背景に企業では先行して取り組みが進む。ヤマト運輸は「アンカーキャスト」と呼ぶ夜間中心の配達要員の確保を急ぐ。19年度までに1万人規模にする計画だ。同社の現在の配達体制は、朝~夕方に配達や集荷、営業を同時にこなす運転手が主力。だが近年はインターネット通販の利用者が不在の場合の再配達が増え、夜間業務に偏り、残業を迫られている。
●分業で対応
 そこで既存のパート・契約社員からの転換や新規採用で夜間配達員を確保し、運転手と分業することで再配達をこなす考え。今春時点では数百人規模だった。12月は歳暮やクリスマス、年末年始の贈答需要で荷物が増える繁忙期となるため、それまでに計画の約半数に上る5千人超まで増やして体制を整える。人手が足りない時間帯を短時間勤務などで乗り切る取り組みは、資格などが必要ない業種や職種で先行している。外食業界では、タリーズコーヒージャパンが17年に2時間から働ける制度を導入。すかいらーくは1日の労働時間を4時間から12時間まで5つのパターンから選べるようにした。4月の全体の有効求人倍率(季節調整値)は前の月と同じ1.59倍で高止まりしている。企業がとくに採用を増やしている正社員は1.09倍と過去最高を更新した。

<欠点を克服せよ>
PS(2018年6月3日追加):加賀友禅の色留袖に佐賀錦の帯を締めると、上品で華やかな和装となり、外国で開かれた国際色豊かなパーティーで着たら、ファッションの国フランスの人にも感心された(ただし、私の佐賀錦の帯は母からの借り物)。しかし、現在、これを買うと数百万円などという途方もない金額になり、買うことが困難なほど高価で、手入れも大変な和装は、衰退しつつある。そこで、着物や帯の価値は価格や手間にあるのではなく、ファッションにあるという原点に戻れば、*8のように、①糸を1色しか使わないシンプルな布でも1日に織れるのは7〜8センチで ②使う色の種類が多く、模様が複雑な布になると1日に1センチも織れない というのでは、できあがりがよくても生産性が低すぎて現代の賃金体系では産業として成立しない。が、コンピューター制御の自動織機を使えば、同じパターンを繰り返す織物などは得意中の得意で、模様が「菱」「網代」「亀甲」「鳳凰」などの複雑なものでも、プログラムさえ組んでしまえば色やパターンを変えて迅速かつ正確にいくらでも織れる。私は、佐賀錦や博多帯の糸に光る絹糸などを使って、新しい時代の帯を品質を落とさず安価に作れば売れると思う。

  
          現在の佐賀錦の帯         現在の博多織の帯  光る絹糸

*8:http://qbiz.jp/article/134866/1/ (西日本新聞 2018年6月3日) 繊細 金銀織りなす「佐賀錦」 旧福田家で手織り体験
 鮮やかな絹糸と金銀の糸が織りなす模様が、光を反射して滑らかな布に浮かび上がる。佐賀市内の土産物店で、県指定伝統的地場産品の「佐賀錦」を使った小物に目を奪われた。キーホルダー、入れ、ペンダント…。繊細で整然とした模様の全てが、手作業で織られているという。「どのように作るのだろうか。近くで見てみたい」。佐賀市松原4丁目の「旧福田家」で手織り作業の見学や体験ができると知り、訪ねてみた。
●地道な作業 模様は無限
 旧福田家は今年で築100年を迎える和風住宅。近くの「旧古賀銀行」や「旧牛島家」などの歴史的建造物とともに市歴史民俗館として一般公開されている。玄関の引き戸を開けると、畳敷きの部屋に置かれたガラスケースの中に、佐賀錦で作られたバッグや人形がずらり。淡く光沢を放つ作品たちは、家屋の重厚な雰囲気によく映えていた。「佐賀錦はとにかく時間がかかる工芸で、一日に数センチずつしか織り進められない。大きな作品では完成まで1年以上かかるものもあり、大量生産はできません」。この家を拠点に技術の継承や新商品の開発などに取り組む佐賀錦振興協議会の会長、松本美紀子さん(68)が、佐賀錦の歴史や作り方などを教えてくれた。佐賀錦は江戸時代末期、鹿島藩鍋島家の第9代藩主夫人が病床で天井の模様「網代(あじろ)組み」を見て「この模様で日用品を作れないか」と側近へ相談したのを始まりとする説が有力という。城中の女性たちの手習いとして伝承され、明治初期に一度は衰退したが大隈重信の奨励で再興。1910年には英国ロンドンで催された日英大博覧会で「佐賀錦」の名で出品されて有名になった。材料は金銀の箔(はく)や漆などを貼った和紙を1ミリほどの細さに裁断した経(たて)糸と、カラフルに染色した絹の緯(よこ)糸。木製の台に経糸を張り、方眼紙を使った図案通りに経糸を竹のへらで浮かしたり、押さえたりしながら、緯糸を通していく。糸を1色しか使わないシンプルな布でも、1日に織れるのは7〜8センチほど。使う色の種類が多く、模様が複雑な布になると1センチも織れないという。「菱」や「網代」、「亀甲」など伝統の模様はあるが、色やパターンを変えることで模様は無限にできると松本さん。「地道な作業だけど、図案を考えて自分だけの作品ができる。色の組み合わせを変えるだけでも違う趣になるし、変化に富んだ見応えのある作品になります」。手織りを体験させてもらった。会員の女性に教わりながら、細い和紙の経糸をへらで1本ずつ慎重にすくう作業を繰り返す。しかし、へらを通すべき糸と糸の境目すら分からず苦戦。パターン通りになどとても織れない。「そんなに力を入れなくても大丈夫」。アドバイスをもらうが、集中すればするほど手に力が入って糸を切りそうになってしまう。気付けば2〜3段を織るのに40分ほどが経過。やっとのことで数ミリ織った布の目は粗く、模様もばらばらになってしまった。こんなに細かい作業は、相当に器用な人でないとできないのではないか。尋ねると、「手間はかかるが、慣れれば繰り返しの作業。感性や根気があるかどうかの方が大切だと思います」と松本さん。「織り上がれば、作業の苦労が全て報われます」と話す笑顔に、見る人を魅了する佐賀錦のあの輝きは織り手一人一人の情熱と絶え間ない集中のたまものだ、と実感した。月曜日と祝日の翌日、年末年始を除いた日の午前10時〜午後3時に手織り体験を開いている。手織り体験のみは無料、キーホルダーやアクセサリー作りができる有料のコースもある。5人以上での参加は3日前の午後4時までに予約が必要。同協議会=0952(22)4477。

<一般企業の従業員と農作業>
PS(2018年6月4日追加):*9のようなボランティアではなくても、一般企業の従業員が農作業を受託すると、食品関係の会社なら原料の製造過程を知る機会になったり、その農家と取引関係ができたり、その他の業種なら普段と異なる体験ができたりするのでよいと思われる。一般企業には余剰人員がいる場合もあるし、人を集める力もあるのではないだろうか?さらに、農水省・経産省・環境省のお役人は、自然や農林水産業の現場を知って改善策を考えるため、農業・林業・水産業の作業を必須の研修科目にすべきだ。

*9:http://qbiz.jp/article/134648/1/ (西日本新聞 2018年6月4日) 「棚田ボランティア」企業が汗 人手不足の農家で従業員が農作業 佐賀県、16年度からの試み広がる
 農業の後継者不足が深刻な佐賀県内の棚田で、生産者が地場企業の人手を借りて農作業をする「棚田ボランティア」の試みが広がっている。勾配がある棚田は平地に比べて作業効率が悪く人手が必要なため、企業の従業員に田植えや草刈りを手伝ってもらう。企業側にとっても従業員のリフレッシュや社会貢献につながり、歓迎されているという。7・7ヘクタールの棚田が広がる多久市西多久町の平野地区。19日、多久ケーブルメディア(同市)とIT企業のプライム(佐賀市)の従業員ら約20人が集まり、地元農家から手ほどきを受けて田植えを手伝った。プライムの一番ケ瀬博史総務部長は「屋外で体を動かして気分転換になり楽しかった。社員同士や生産者との親睦が深まった」と話した。棚田ボランティアは、県や市町、生産者でつくる「さが棚田ネットワーク」(事務局・県農山漁村課)が2016年度に始めた。同ネットワークが橋渡し役となり、これまでに25企業・団体と13地域が協定を締結。17年度は延べ426人が計39回活動をした。県農山漁村課によると、05年の調査で、県内の水田に占める棚田の割合は13%。棚田は水田が狭くてあぜが多く、草刈りに手間がかかる。勾配での農作業は「平地に比べて2倍以上の労働力が必要」(同課)という。平野地区の農家でつくる振興協議会の小園敏則会長(71)は「働き手の高齢化が深刻で、棚田での作業は体力の消耗がきつい」と吐露。「若者や子どもがにぎやかな雰囲気で手伝ってくれると元気をもらえるし、棚田米のアピールにもなる」と喜ぶ。さが棚田ネットワークは試みを広げたい考えだが、一部の地域は企業側と連絡や調整をするリーダーがいないなど課題もある。同課の川路勝係長は「市町や生産者の協力を得ながら取り組みを広げていきたい」と話す。

<女性の活躍>
PS(2018/6/7追加):政府が、*10-1のように、中小企業に女性が働きやすい環境を整えるため、従業員数101人~300人の企業に女性登用の数値目標を盛り込んだ行動計画を作る義務付けをするのはよいが、食品・織物・保育・介護・家事サービスなどの中小企業で働く女性は多いので、2016年施行の女性活躍推進法が301人以上の企業にのみ行動計画づくりを義務付けたのは変だった。また、役員を含む課長相当職以上の管理職に占める女性比率が2016年度に1割に満たないというのも、人材という資源の無駄遣いであるため、「女性は採用したくない」「女性を男性と同様には昇進させたくない」と答える企業や「働きたくない」と答える女性には、その本当の理由を聞き、そうなった背景を改善することが重要である。
 なお、*10-2のように、封建的と思われている農業分野でも前から女性農業者は活躍していたが(10人以下の企業や家族労働が多い)、JA役員や農業委員で女性登用を増やすためには組織リーダーである男性の意識改革をさらに進めなければならないし、女性の能力発揮には、地域をはじめとする社会全体の理解が必要だ。

   
 人口ピラミッド    2018.6.8日経新聞      農業女子       大島紬
2018.5.7西日本新聞

(図の説明:人口構成は次第に細長い逆台形になるため、高齢者や女性もできるだけ働く方が健康に良いだけでなく、支える側にいることができる。しかし、女性の場合、左から2番目のグラフのように、努力に比して昇進が遅かったり、職場で不快な思いをしたりすることも多いため、その状況を改善すべきだ。また、農業は機械化すれば女性がカバーできる範囲を増やすことができ、織物も自動化や先端技術の導入で、生産性と付加価値の両方を上げることが可能だろう)

*10-1:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO31498220X00C18A6MM8000/?n_cid=NMAIL006 (日経新聞 2018/6/7) 女性の登用計画、中小にも義務付け 政府検討、活躍推進法改正へ
 政府は従業員数101人以上300人以下の企業に女性登用の数値目標を盛り込んだ行動計画をつくるよう義務付ける検討に入った。人手不足が深刻な中小企業に女性が働きやすい環境を整えるよう促すのが狙いだ。2019年にも女性活躍推進法を改正し、20年の運用開始をめざす。日本の労働力の見通しは厳しい。15~64歳の生産年齢人口は40年度に18年度比で約1500万人減る見込み。政府は高齢者や外国人が働きやすい環境づくりにも取り組む。女性の15~64歳の就業率は17年に67.4%となり、比較可能な1968年以降で最高となった。将来に向けて女性の労働力はさらに重みを持つ。16年4月に施行した女性活躍推進法は301人以上の企業に行動計画づくりを義務付けた。厚生労働省によると、301人以上の企業のうち届け出た企業は今年3月末時点で1万6千社あまり。全体の99.6%に達した。従業員数30人以上の企業のうち、役員を含む課長相当職以上の管理職に占める女性比率は16年度に1割に満たないが、前年度比で0.9ポイント上がった。上場企業に占める女性役員の比率は17年に3.7%と前年と比べて0.3ポイント上昇し、1500人を上回った。行動計画づくりの義務付けは罰則はないものの、効果は徐々に上がっている。一方、行動計画づくり義務付けの対象外だった300人以下の企業の届け出は約4500社にとどまった。中小企業全体の1%未満だ。日本の企業は中小が99.7%。政府は300人以下の企業にも義務付けの対象を広げ、女性が働きやすい環境づくりを後押しする。行動計画には女性の採用や管理職への起用、育児休業の取得率の向上など数値目標と実現のための取り組みを盛り込む。計画とは別に企業は厚労省が省令で定める14項目のうち1項目以上について、現状の数値を公表しなければならない。女性管理職の比率や、採用者数に占める女性の割合、男女別の育児休業の取得率などだ。みずほ総合研究所の堀江奈保子上席主任研究員は「中小企業にも女性登用の意識は広がりつつあるが、企業によって差がある」と指摘。「一定規模の中小にも義務付ければ、全ての経営者が意識せざるを得なくなり、取り組みが一歩進む可能性がある」と評価する。安倍晋三首相は女性や高齢者など誰もが活躍できる「一億総活躍社会」の実現を政権の重要課題として掲げる。政府や企業などで20年までに指導的地位に占める女性の割合を30%にする目標を打ち出す。中小が行動計画を作成すれば、女性の働きやすい環境ができるわけではない。政府が達成状況を検証し、その時々で改善を求める作業も必要になる。

*10-2:https://www.agrinews.co.jp/p41934.html (日本農業新聞論説 2017年9月18日) 女性農業者の活躍 能力発揮へ地域の理解
 農水省の農業女子プロジェクトのメンバーが9月下旬から、香港でイベントを開く。日本の農産物や加工品をアピールし、輸出の足掛かりになると期待される。こうした女性農業者の活躍が最近、目覚ましい。農業に夢を描き、その実現へ奮闘する彼女たちをもっと支援しよう。家族に加え、地域の理解が欠かせない。思う存分能力を発揮できる環境を整えたい。香港のイベントは27日から10月31日まで。今年1月に続く2回目だ。百貨店やスーパーでの試食PR・店頭販売の他、農業女子が講師となり、自ら生産した農産物を使った料理レッスンを開き、現地レストランで特別メニューを提供する。初回のフェアをきっかけに香港への輸出を始めたメンバーもおり、販路開拓の意気込みは盛んだ。女性農業者の活躍が求められる背景の一つに、農業の6次産業化がある。農業者自身が生産・加工・販売に取り組む形は、これまでの「作れば売れる」から「売れるものを作る」発想への転換が必要となる。女性農業者は、生産者であると同時に家庭を切り盛りする生活者・消費者の視点を持つ。買い物好き、ネットワークづくりに優れた人も多い。そんな彼女たちの感性が、6次産業化を進める上で不可欠だ。生産物の品質はもちろん、消費者ニーズを捉えた加工品開発、見栄えのいい包装、直売やカフェに売り場を広げるなどして顧客の心をつかみ、起業家や経営者としての手腕を発揮する。一方、男性を中心とした農村社会の構図は依然として残る。「夫が経営の収支を教えてくれない」「妻は労働力としか思われていない」といった意見をいまだに聞く。農業女子からさえも「自治体からの通知がないと会合に外出しづらい」との声が出る。活躍する姿の裏に、こうした課題が潜んでいることを見逃してはならない。女性農業者はかつて無報酬労働が当然とされ、子どもの服を買う小遣いすらままならなかった。彼女らは思い切って義父母に要望したり、こっそりと内職をしたりして、わずかでも自由になる小遣いを稼いできた。そんな中で生活改善を進め、家族経営協定を結び、少しずつ地位向上を果たしてきた歩みがある。支えたのは義父母や夫、子どもたちなど家族の理解だ。現在、農業者の高齢・減少化が深刻さを増し、女性農業者の活躍が農村社会の活性化に欠かせなくなっている。これを後押しするには、家族の理解だけでなく、農村社会の中軸であり地域農業に従事する男性の協力が必要だ。JA役員や農業委員で女性登用を増やすため、こうした組織リーダーである男性の意識改革をさらに進めなければならない。政府が女性活躍推進へ積極的に取り組む今こそ、真の意味で女性が輝ける仕組みをつくり上げるべきだ。農業発展の鍵を握る女性たちが、活躍する“芽”を育てていこう。

<補助金頼みは他の国民に迷惑>
PS(2018年6月9日追加):*11に、「所有者不明農地が山林化して、現場はお手上げだ」と書かれているが、所有者が死亡して子孫が分からない土地の固定資産税(納税義務者=所有者)は誰が払っているのだろうか?まさか都道府県は、固定資産税が不納になっても放置するような不作為を行っているわけではないだろう。従って、固定資産税が不納になったら督促状を出し、それでも納付されなければ、その土地で物納させれば、その土地は公有財産になる。そのため、九州を上回る推計約410万ヘクタールもの所有者不明の土地を、知事の判断で期限付きなら公益目的で使える特別措置法を作ったというのは、ぬるま湯すぎる。
 さらに、方針が決まらなければインフラ整備も進まないので、借り手農家がなければ農業生産法人に貸し、産出物があるのなら道路も作ればよいだろう。つまり、「中山間地の実態とは懸け離れているから・・(補助金を出せ)」というのは他の国民に甘えすぎであり、249ヘクタールもの耕作放棄地をどう利用するかはまず地元が方針を決めるべきなのだ。そして、選択肢は、①放置して林野に戻す(=住民も税収もなくなる) ②放牧する ③みかん・レモン・オリーブ・アーモンドなど適地適作をする など多岐にわたり、規模拡大だけが経営方法ではなく、経営体や労働力の確保にも選択肢は増えたが、経営方針を決めるのは経営者と地元が主体なのだ。

*11:https://www.agrinews.co.jp/p44299.html (日本農業新聞 2018年6月9日) 所有者不明農地が山林化 現場「お手上げ」
 所有者不明の農地が増え続け、近隣農家や農業委員会に重い負担となっている。中山間地では山林化した土地が多く調査は難航、所有者が死亡し子孫が分からないケースも多い。農水省は所有者不明の耕作放棄地を知事裁定で農家に貸し出す仕組みを始めた。ただ、開墾が必要な農地も多く「誰が管理するのか」「活用できない農地こそ問題」と切実な声が出る。条件の厳しい中山間地で、所有者不明の農地の問題が深刻さを増す。
●借り手農家少なく 静岡県東伊豆町
 急傾斜地の農地が点在する静岡県東伊豆町。軽トラック1台がやっと通れる細い山道を上り、ミカンを作る楠山節雄さん(69)は「規模拡大や集約化と盛んに言われるが、伊豆の山間地の実態とは懸け離れている」と険しい表情を見せる。同町の耕地面積は249ヘクタール。大半は車が通れない山奥にあり、農家は消毒タンクを背負い山道を何往復も“登山”する。収穫も重労働だ。同町では毎年、農家と役場職員が農地の利用状況を調査する。対象農地は7300筆を超え、地図と照らし合わせる確認作業は時間を要する。登記上は農地でも、山林化した耕作放棄地は相当数ある。その面積は把握できず、多くは所有者も分からない。「現場から言うとお手上げ」(同町農林水産課)の状況だ。同町は2017年、所有者不明の農地889平方メートルを全国で初めて知事裁定し、農地中間管理機構(農地集積バンク)を通じて農家に貸し付けた。同町が戸籍をたどると、所有者は戦後間もなく死亡し、5人の子どもも孫も亡くなっていた。ひ孫まで調べたが、所有者がつかめなかったことから知事裁定に至ったという。雑草どころか雑木が生え、花のハウスの日照を阻害していた耕作放棄地は現在、借りる農家が、かんきつ栽培に向け農地に復元する作業を進める。ただ同町によると、金と手間をかけて耕作放棄地を解消したいとする農家は一握り。農業委員会会長も務める楠山さんは「脚立を真っすぐ立てられないほどの急傾斜の農地ばかりで、高齢で耕作を諦める人が多い。農地を相続するメリットが乏しく、所有者不明の農地は増えるばかり」とみる。政府は6月、登記の義務化や、所有者が土地を放棄する制度を検討する方針を示した。8日に閣議決定した土地白書でも、8割が土地の所有権を「放棄を認めても良い」と回答する。ただ、同町農業委員会の梅原巧事務局長は「放棄後に費用をかけて農地に復旧しても、誰が管理するのか」と不安を募らす。
●九州超す410万ヘクタール
 民間調査によると、16年時点の所有者不明の土地面積は九州を上回る推計約410万ヘクタール。6日の参院本会議では、所有者不明の土地を知事の判断で、期限付きで公益目的で使える特別措置法が成立した。農水省は14年の農地法改正で、所有者が不明の耕作放棄地に知事裁定による利用権を設定し、農地集積バンクを通じて貸し出す仕組みを導入した。同省によると、これまでに4市3町1村で11件4・6ヘクタールの農地を貸し出している。静岡県内では、公示後に所有者が名乗り出た自治体もある。
●中山間地でより深刻に
 中山間地では、活用しにくい所有者不明の農地こそ深刻な課題だ。鹿児島県指宿市の農業委員会会長で、オクラなどを栽培する諏訪園一行さん(78)は「相続未登記農地の追跡調査を重ねてきたが、解決は難しい。法制度を整備しても、解決するのは現場感覚では非常に厳しい」と話す。青森県五戸町農業委員会会長でリンゴ農家の岩井壽美雄さん(67)は「誰も使いたがらない、機械が入らないような狭い農地こそ所有者不明になる。こうした農地を今後どうするのかが問われている」と指摘する。

<ビワ好きからの一言>
PS(2018年6月12日追加):私は、高校を卒業するまでは九州に住んでいたため、ビワの季節には毎日のようにビワを食べられたが、大人になって関東に住むようになってからは、高価で年に一度くらいしか食べられなくなった。しかし、果物を食べるのに遠慮しなくてはならない国民は、世界でも少ないだろう。そのため、*12は何とか労働力を確保してビワ作りを続けてもらいたいわけだが、ビワの産地でない地域の人には「ビワは種が大きくて、食べるところが少い」と言われることもある。確かにそうなので、美味しさはそのまま、種なしや種の小さな品種のビワを作れば、さらにビワのファンが増えると考える。

*12:https://www.agrinews.co.jp/p44316.html (日本農業新聞 2018年6月12日) ビワ日本一 でも高齢化進み収量半減 産地どう守る 長崎県
 100年の歴史を誇るビワのトップ産地・長崎県で生産基盤の弱体化が深刻だ。生産者の高齢化などで出荷量は10年前の約半分。80歳を超える農家が産地を支えるが、近年は気候変動の影響で1年置きに寒波が襲い、収量減で意欲を削がれた人が徐々にリタイア。瀬戸際にある産地を救おうと県やJA全農ながさきなどが対策に乗り出した。産地復活は、急傾斜地での栽培という課題を克服できるかが鍵を握る。
●傾斜きつく作業困難 1年置きの寒波追い打ち
 県内最大の産地、長崎市茂木地区。急傾斜の園地に高さ3メートル以上のビワの木が並ぶ。農家は脚立を使い、一つずつ幼果に袋を掛けて栽培する。白い袋に包まれた実が出荷を待つ一方、管理されず放置された“裸ビワ園”が増えている。JA長崎せいひ長崎びわ部会の山崎繁好部会長は「放置した木では果実が木の養分を使ってしまい、次期作に影響が出てしまう」と指摘。悪循環に陥る危険性を訴える。同県の出荷量は全国の約3割を占め、全国トップ。しかし急傾斜で作業負担が重く、多い時は700人を超えた部会員は500人まで減った。さらに近年、2年に1度の頻度で低温が襲う。今年1月の寒波では14センチの積雪を観測。直後は大きな被害は確認されなかったが2月以降、幼果の種子が凍死し肥大が進まない果実が多発した。同JAは「肥大せず階級が計画より1、2段階下がった」と肩を落とす。全農ながさきは「今季は豊作だった17年産の8割を予定したが、6割ほどしかない」という。
●ジュース用に買い取り JAやシェフ活用応援
 ビワ産出額の減少を食い止めようと、県は簡易ハウスの導入と優良品種「なつたより」への改植支援、果樹共済の推進を強化。同品種に改植する場合、国が半額助成する改植費に県が1割上乗せする。100年続く産地をどう守るのか。山崎部会長は「寒波の克服には、簡易ハウスの導入が必要。ただ、段々畑でハウスの施工費は高い。共済金の導入や安価な資材を充実してもらわないと産地が消えてしまう」と危機感を募らせる。農家の収入減を食い止めようと、全農ながさきは今季から放任園の果実をジュース用として買い取る考え。腐敗果や未熟果、虫食い以外の果実を1キロ100円で買い取り、系統工場で加工する予定。山﨑部会長は「低木にし果汁専用木を作るなど継続的に出荷できる仕組みを作り産地を守りたい」と力を込める。市内の料理店のシェフらも、産地を支援する。14店舗が協力し、旬に合わせ「びわスイーツフェスタ」を実施した。イタリア料理店「Muggina」のシェフ、鈴木貴之さん(42)が企画。鈴木さんは畑に何度も足を運び、高齢化で荒れた園地を見て心が動いた。「料理人は食材を作る農家あっての仕事。傷物やはねものなどを有効活用していきたい」(同)と意気込む。鈴木さんは、クリームチーズとビワを混ぜたアイスケーキ「茂木びわのカッサータ」を考案した。試作用のビワは同JAなどでつくる「長崎びわ産地活性化推進協議会」が無料で提供した。
●千葉・鹿児島も2~4割減
 農水省によると全国の栽培面積は過去10年で3割減、出荷量は4割減。長崎に次ぐ主産地、千葉や鹿児島でも2~4割減り、各地で荒園や放任園が目立つ。千葉県のJA安房によると急傾斜地で作業する後継者が不足。袋掛けができない荒地にはイノシシが入り、高齢農家を悩ませる。JAは「台風や低温の影響で今季は過去10年で最も少ない」と話しており、情勢は深刻だ。

<外国人労働者とその家族>
PS(2018年6月14日):*13-1のように、沖縄県は農業に外国人労働者を受け入れるため国家戦略特区が認定される見通しになったそうだが、*12のビワ農家はじめ、労働力がネックとなって産業の衰退が起こりつつある他の地域や産業にも同じニーズがあると思われる。そして、外国人労働者を受け入れた場合、本人や家族が日本語や日本で必要になる知識を習得するためには、*13-2のような夜間中学・夜間高校などの教育支援が必要であり、このニーズは戦中・戦後の混乱で義務教育を修了できなかった日本人にだけあるのではない。さらに、*13-3の結城紬の「糸取り」など伝統工芸の担い手は、日本人だけでなく外国人労働者の妻もできそうで、この場合、祖国の多様性が魅力的な新製品を生み出すかも知れない。

*13-1:https://ryukyushimpo.jp/news/entry-728694.html (琉球新報 2018年5月30日) 沖縄県、農業支援に外国人 国家戦略特区 計画認定の見通し
 30日に都内で開かれる国家戦略特区会議で、沖縄県が申請する農業支援外国人受け入れ計画が審議される。計画は認められる見通し。特区会議の後、近く開かれる国家戦略特区諮問会議の答申を経て、首相が認定する。特区になれば、外国人の農業就労が認められ、成長基調にある沖縄の農業分野で即戦力人材の確保につながり、関係者は農業基盤の確立や発展に貢献すると期待している。農業支援外国人の受け入れは、即戦力となる技術や語学力を持つ外国人を農業現場に受け入れ、農家経営を支援することを目的とした事業。今年3月に愛知県、京都府、新潟市の3区域が特区に認定された。沖縄県は今年2月に県内で外国人材が必要な品目や時期を調査するなど、準備してきた。県農林水産部の島尻勝広部長は「生産現場の強い要望で申請した。事業を活用して、さらなる農業の成長産業化や競争力の強化が期待できる」とコメントを出した。特区が認定されれば、県は、沖縄総合事務局や入国管理局、労働局を交えた「適正受け入れ管理協議会」を早期に設立。外国人材の受け入れを希望する企業などの「特定機関」を公募する。外国人材は特定機関と雇用契約を結び、特定機関と派遣先の農業経営法人などは労働者派遣契約を結ぶ。外国人は通算3年の期間で、農作業や製造、加工などと付随する作業に従事できる。特区導入を求めてきたJA沖縄中央会の砂川博紀会長は「認定されれば、今後の農業振興・発展に弾みがつくと大いに期待している」と述べた。

*13-2:https://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-735609.html (琉球新報社説 2018年6月10日) 夜間中学支援再開 教育確保は行政の責務だ
 県教育庁は2017年度で打ち切ったNPO法人珊瑚舎スコーレの自主夜間中学校に対する支援について、18年度内に再開する方針を決めた。多くの人々が支援継続を求めており、署名は2万305筆に上った。県がこうした声に耳を傾け、支援再開に踏み切ることを高く評価したい。県教育庁は戦中・戦後期の混乱で義務教育を修了できなかった人の学びを後押しするため、11年度から支援事業を開始した。講師の手当や光熱費、施設の賃借料の一部を補助していた。支援対象者は1932年~41年生まれの今年86歳から77歳になる人たちだ。17年度時点で珊瑚舎スコーレなど3事業所が支援を受けていた。2事業所は17年度までに対象者の受け入れを終えていたが、珊瑚舎スコーレは7人の対象者のうち、5人は18年度も在籍予定となっていた。珊瑚舎スコーレの17年度支援額は395万円だった。ところが県教育庁は事業の当初終了予定が15年度だったことを理由に、この年度に入学した対象者が卒業する17年度で支援を打ち切った。理由について「事業の成果はある程度出た」と説明していたが、5人の在籍者がいる中での打ち切りは拙速な判断だったと言わざるを得ない。珊瑚舎スコーレは現在、義務教育未修了の人は無料、学び直しの人には年額3万円で授業を提供している。その理由を星野人史代表は「貧困のために義務教育を諦めなければならなかった人たちに、お金で再び学問を諦めさせるわけにはいかない」と説明する。運営費は寄付などに頼らざるを得ず、行政の支援は不可欠だ。教育基本法の4条は「すべて国民は、ひとしく、その能力に応じた教育を受ける機会を与えられなければならず、人種、信条、性別、社会的身分、経済的地位又は門地によって、教育上差別されない」とうたっている。国と地方公共団体には、経済的理由による修学困難者への支援を講じるよう定めてもいる。教育の機会を等しく確保することは行政の責務だ。夜間中学は戦後の混乱や不登校などを理由に、義務教育を修了できず学齢期を過ぎた人たちが学び直しをしている。全国8都県に市町村立の夜間中学が31校ある。しかし県内には公立の夜間中学は1校もない。珊瑚舎スコーレなどの民間が受け皿となってきた。県は現在、公立中学校夜間学級等設置検討委員会を設置して、課題を洗い出し、需要調査を進めている。15年度に発表した県子どもの貧困対策計画でも夜間中学の設置検討を挙げている。文部科学省も全都道府県での夜間中学の設置方針を掲げている。県は公立設置までは、民間の夜間中学への支援事業を継続すべきだ。現在設けている支援対象の年齢枠も取り払い、支援を拡大してほしい。

*13-3:http://www.tokyo-np.co.jp/article/ibaraki/list/201806/CK2018061402000162.html (東京新聞 2018年6月14日) 結城紬の未来を紡ぐ 「糸取り」養成に本腰
 日本を代表する高級絹織物で、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の無形文化遺産にも登録されている結城紬(ゆうきつむぎ)の生産の先行きが危ぶまれている。材料の糸を紡ぐ職人「糸取り」が減少し、高齢化も著しいためだ。産地・結城市の関係者が、後継者の養成に乗り出した。「糸がなくなれば、結城紬もなくなる。絶やさないためには、一人でも多くの方の力添えが必要だ」。結城市で二月上旬に開かれた会合で、本場結城紬卸商協同組合の藤貫成一副理事長(56)がそう訴えた。会合は、初めて糸を紡ぐ人向けの道具や糸の見本、解説DVDなど一式を「スターターズキット」として貸し出すための説明会だ。キットを借りた人は、一定期間内に決められた量の糸を納め、対価を受け取る。定期的な講習会でスキルアップを促し、職人として定着してもらう。参加者は二十六人。関東だけでなく、山形県や山梨県の人もいた。結城市の森律子さん(41)は、幼い長女を連れて参加。母親が糸取りで、以前から興味があったという。「糸が足りなくなりそうだとは知らなかった。地元の伝統工芸に少しでも貢献したい」と力を込めた。結城紬には、糸取りが真綿から手で紡いだ撚(よ)りのない無撚糸(ねんし)が使用される。軽い上に暖かく、肌触りも良い特有の風合いは、この工程が鍵を握る。作業を担う職人が「糸取り」。従来は主に農家の女性たちが副業的に担ってきた。本場結城紬原料商共同組合の鈴木孝一理事長(62)によると、昭和五十年代は七千~八千人ほどがいたが、生活を保証するほどの収入にならず働き口が多様化する中、担い手は年々減少。今では三百~四百人程度で平均年齢は七十五歳を超えているとみられる。鈴木理事長は「毎年二十人くらいずつ養成していかないと行き詰まる」と危機感を口にする。結城紬の生産量は、ピークだった昭和五十年代の二十分の一以下ともされるが、二〇一〇年の無形文化遺産の登録などで復活の兆しもあり、約一年前から糸不足が深刻化してきた。そこで原料供給、生産、卸など、結城紬に関わる五つの組合が連携し、糸取りの後継者養成に本腰を入れることになった。説明会で糸紡ぎの実演を披露した国認定の伝統工芸士の植野智恵さん(下妻市)は「地域だけでは担い手が足りなくなる。一人でも多くの後継者をつくりたい」と、産地外からの参加者を歓迎した。
     ◇
 卸商協同組合によると、一八年度は筑西、下妻の二市でも新たに糸取り説明会を開く予定という。スターターズキットも四十セットほど貸し出したため、追加で五十セット用意する。
<結城紬> 結城市と栃木県小山市を中心に生産されている絹織物。全工程が手作業で、起源は奈良時代とされる。作業で重要な3工程の糸紡ぎ、絣(かすり)くくり、地機(じばた)織りは1956年に国の重要無形文化財に登録。結城市では、市長や市議らが結城紬の着物で議会に臨む「紬議会」も開催している。

<農林漁業地域の自然は美しくて有益>
PS(2018年6月16日追加):*14-1のように、九州北部には雄大な山や美しい海がある。*14-1で紹介されているのは九大の演習林だが、*14-2の水力発電の水源かん養目的で九電が所有している社有林のように、美しさと実益を兼ね備えた森林も多い。また、長崎県五島市にある福江島の本土最西端の灯台付近も美しいようだ。「イルカと海に帰る日」を書いたジャック・マイヨールは、この近くの玄界灘で初めてイルカと出会い、その後、一緒に海に潜っている。そこで、これからの100年を見据えて森林や藻場の設計についてアドバイスするのは、九大はじめ地域の大学の役割だろう。

   
    2018.6.16西日本新聞         玄海灘    2017.10.1朝日新聞 上 
                      宗像大社の「みあれ祭」での漁船のパレード

*14-1:http://qbiz.jp/article/135387/1/ (西日本新聞 2018年6月16日より抜粋) 心ふるえる感動トリップへ!一度は見ておきたい、九州北部の夏絶景5選
 雄大な山々や美しい海。九州には、自然が織りなす絶景スポットが多くある。神秘的な水辺の森はじめ、九州本土最西端の灯台で眺める夕日や、自然と融合したデジタルアートなど、今回は6月から夏休みシーズンに楽しめる九州北部の夏絶景を紹介する。
●神々しい雰囲気に包まれる水辺の森
 九州大学が所有する演習林(えんしゅうりん)で、同敷地の西端に位置する「篠栗九大の森」。都市近郊に残存する森の一部を、同大学と篠栗町が共同で整備し、2010年より一般公開を始めた。17ヘクタールの森は、自然の回復力を主体とする最低限の管理に留め、今もなお約90種類の樹木や野生の動物が生息している。森の中心にある池を一周する約2kmの遊歩道は、高低差が少なく、気軽に森林浴を楽しめるコースとなっている。見どころはなんといっても“水辺の森”。樹齢を重ねた落羽松が、その根を水辺にひたしながら立ち並ぶ姿はまさに幻想的だ。
●“九州本土最西端”で眺めるロマンチックな大瀬崎灯台の夕日
 長崎県・五島市の福江島に、九州本土最西端に位置する「大瀬崎灯台」がある。歴史がある灯台自体も見どころだが、なにより素晴らしいのはそこから見える風景。昼は真っ白な灯台、周囲の青い海、崖に打ち付ける荒波と、鮮やかかつ壮大な景色に感動する。日没15分前ごろからは、灯台のバックに沈む美しい夕日が見られる。“九州本土最西端”ということは、九州本土で最後に夕日に出合える場所ということ。そのロマンチックな事実とともに、この夕日はぜひ大切な人と一緒に楽しみたい。昼間は駐車場から遊歩道を進んで灯台まで行けるが、日没後は真っ暗なため、展望台から観賞しよう。

*14-2:http://qbiz.jp/article/135646/1/ (西日本新聞 2018年6月14日) 新国立競技場に九電産のスギ材 大分の社有林から伐採
 九州電力は13日、東京都新宿区で建設が進む新国立競技場の屋根材に、大分県の社有林で伐採したスギが使われたと発表した。契約上の問題で使用量や価格は公表していない。九電は水力発電の水源かん養を目的に、同県九重町や由布市で約4447ヘクタールの社有林を管理している。伐採したスギやヒノキは市場に出荷しており、2017年度は15万立方メートルを販売した。新国立競技場は19年11月完成予定。20年東京五輪・パラリンピックの開閉会式や陸上競技の会場となる。「杜(もり)のスタジアム」を掲げ、国内各地の木材を多く使用する。

<シルクの魅力>
PS(2018年6月18日追加):*15-1の緑色に光るシルクは、実需者の関心が高く、養蚕農家の飼育頭数が2年目で2.6倍の31万頭に増加したそうだが、これは先端技術による付加価値増加の典型例であり、これが日本だけでなく世界の織物(例えば、ペルシャ絨毯など)に使われるようになると面白いと思われる。そのほか、蛍光だけではなく、太刀魚の銀色やオオゴマダラの金色のシルクができると、銀糸・金糸を使う必要がなくなるので魅力的だ。
 また、日本は、エネルギー・賃金・不動産などの高コスト構造により種々の産業を国内では成り立たなくして外国に追い出し、残った伝統産業も存続の危機に瀕しているため、*15-2のように、受け入れ環境を向上させて外国人の就労を促しつつ生産性を高めることによって、本当は必要なのだが成り立たなくなってしまっている産業を復活させるべきだ。

*15-1:https://www.agrinews.co.jp/p44355.html (日本農業新聞 2018年6月16日) 群馬県内新開発蚕の飼育頭数増加 光るシルク世界で輝け 2年目2・6倍、31万頭 実需者からの関心高く
 緑色に光るシルクをつくる蚕の飼育頭数が増えている。世界で初めて昨年から群馬県で実用生産が始まった。開発した農研機構が実需者と契約を結び、県内の養蚕農家に蚕の生産を委託しており、今後は衣料やインテリア素材など幅広い分野での利用が想定されている。海外産の安いシルクの流入で押され気味だった養蚕業だが、日本だけの新たな素材で盛り上げたいと産地は意気込む。緑色に光るシルクをつくる蚕は、農研機構が遺伝子組み換えの技術を使って開発、群馬県蚕糸技術センターと共同で実用化に向けた研究を行ってきた。国の承認を受け、昨年から群馬県内の農家の施設で実用生産が始まっていた。2年目の飼養頭数は、昨年の2・6倍に当たる31万5000頭に増えることが明らかになった。外部への逃亡や近縁野生種との交配など、自然界に影響を与えないよう、施設の側面に網を張るなどの対策を取り、細心の注意を払って飼育するため管理に手間がかかる面はあるが、縮小する養蚕業にあって農家の期待は大きい。飼育する農家は生産量が増えたことに「需要が出ている」と受け止めている。昨年は、農研機構が京都市にある西陣織の老舗、細尾と契約した。生産農家で組織する前橋遺伝子組換えカイコ飼育組合が飼育を、長野県の宮坂製糸所が操糸を、それぞれ委託されていた。細尾は、インテリアやアート作品に利用する方向だ。今年産については、農研機構が新たな実需者と契約し、需要の広がりを見せている。契約先は今のところ非公表。飼育は、県技術センターが蚕の卵をかえし、4齢まで育成してから前橋遺伝子組換えカイコ飼育組合に渡し、同組合の農家が飼育して繭を生産する流れ。蚕期は、昨年は10月5日にスタートした初冬蚕だけで、飼育頭数は12万頭だった。これに対し、今年は計4蚕期で31万5000頭になる予定。5月18日から春蚕が7万5000頭で始まり、6月の夏蚕と9月の晩秋蚕が6万頭ずつ、10月の初冬蚕が12万頭の予定だ。蚕を供給する群馬県蚕糸技術センターは「使いたいという業者は多く、需要はある。世界のどこにもない繊維素材で、若い人が憧れる養蚕業をつくれれば」と期待する。
●高単価に期待農家「夢ある」
 緑色に光るシルクを吐き出す蚕は、一般の蚕に比べて繭の収量は低いものの取引価格が高いことから、今の価格で取引されれば経営上はやや有利になる。「なにより夢がある」と養蚕農家は話している。前橋遺伝子組換えカイコ飼育組合によると、1箱(3万頭)当たりの収繭量は一般の蚕が50キロ以上になるのに対し、緑色の蛍光シルクを吐き出す蚕だと40~45キロと1、2割少なかった。一般的な生繭の取引価格は1キロ当たり2200円ほど。これに加え、群馬県の場合、県から最大1キロ900円、さらに市町村から200~1200円の助成金が出る。緑色に光る繭の取引価格は明らかにされていないが「県や市の助成がなくても、一般の繭より高い」と同組合。1キロ6000~7000円程度になるとみられ、コスト分を勘案しても、収益は一般の蚕より高くなる。同組合の松村哲也組合長は「価格だけでなく、(緑色蛍光シルクには)夢がある」と、新しい素材生産に魅力を感じている。

*15-2:https://www.agrinews.co.jp/p44357.html (日本農業新聞 2018年6月16日) 外国人就労の緩和 受け入れ環境向上が鍵
 政府は外国人の就労規制を緩和する方針を打ち出した。農業を含めて人材難に苦しむ業界からは“即戦力確保”への期待が高い。一方で、本当に人手不足解消につながるのか、治安の悪化を招かないかといった不安も少なくない。関連法制度の整備に当たり、解決すべき課題は多い。農業界も受け入れ環境の向上へ自己努力が求められる。15日に閣議決定した経済財政運営の基本方針(骨太方針)に、外国人の新たな在留資格を作る方針を盛り込んだ。技能実習制度や国家戦略特区での外国人受け入れに加えて今回、新たな仕組みを設けるのは、産業界が外国人材の受け入れ拡大を強く要望しているためだ。新たな制度は農業、介護、建設、宿泊、造船の5業種を対象にする見込みだ。技能実習制度の修了者や、それと同等の技能・日本語能力を問う試験に合格した外国人に就労を認める。報酬は日本人と同等以上、就労期間は通算5年を上限とする。詳細は政府が今後詰める。今回の規制緩和に農業界の期待は大きい。だが、狙い通り即戦力を確保し、労働力不足を解消できるかは未知数だ。人不足は日本に限った問題ではない。アジア労働人材の争奪戦には、韓国、台湾なども参入する。賃金や待遇面で必ずしも日本に優位性があるわけではない。さらに、就労先に日本が選ばれたとしても、農業で働くとは限らない。国境を越えた人材獲得競争、国内での業種間競争の二つが待ち構える。農業の人手不足は今後、一段と深刻化するのは必至だ。法人経営体の推進や規模拡大が進むほど、雇用労働力への依存度は高くなる。既に多くの産地では、人不足のために潜在生産力をフルに発揮できない問題に直面する。まさに「人の確保こそ最大の成長戦略」である。二つの競争に勝ち抜けるかは、優位性のある賃金水準や労働環境を実現できるかにかかる。「安い労働力」という意識では結局、虎の子を失う事態になる。一方で、農業経営体は他の業態に比べれば中小零細であり、経営体力に限界もある。今月上旬、関連農業団体と農水省が「農業技能実習事業協議会」を設立した。実習生の失踪や受け入れ側の不正行為などの改善策を考え、実習生が安定的に従事できる環境整備に取り組む。こうした自己努力が重要である。例えばファンドをつくって技術研修や初期渡航費に助成するなど踏み込んだ対策も考えられる。国への支援要望をまとめる必要もあろう。スピーディーな検討がポイントだ。政府は今回の規制緩和について、移民政策と一線を画すとの立場だ。ただ、欧米ではこの問題が国家の深刻な分断の震源と化している。安い労働力への過度の依存は、日本人の低賃金化や技術革新を活用した労働生産性向上に水を差すとの指摘もある。国家の将来像と絡めて国民的な議論を深める時である。

<農業の法人化と設備投資>
PS(2018年6月19日追加):*16-1のように、農業の規模拡大で資金需要が高まり、農業法人投資育成制度を活用した農業法人への出資件数が5月末時点で累計500件を超えて、出資先の売上高が平均で4割増えたそうだが、返済する資金計画があるのなら大変よいことである。しかし、農産物は付加価値の高いものだけでなく普通のものも作らなければならないため、利益率が高いとは限らない。このような中、*16-2のような地域の新電力会社が、農業地帯で再エネ発電した電力を買い取って地産地消の電力を供給するようにすれば、農業に副収入ができて経営が容易になる。

  
   牧場の風力発電       畑の風力発電       茶畑の風力発電

*16-1:https://www.agrinews.co.jp/p44383.html?page=1 (日本農業新聞 2018年6月19日) 法人出資500件超え JAが窓口機能 所得増大後押し アグリ社
 JAグループと日本政策金融公庫(日本公庫)が設立したアグリビジネス投資育成(アグリ社)は18日、農業法人投資育成制度を活用した農業法人への出資件数が5月末時点で累計500件を超えたと発表した。農林中央金庫によると、同社の出資件数は制度全体の約9割を占める。規模拡大で資金需要が高まる中、JAが窓口機能を果たした。出資先の売上高は平均で4割増えており、所得増大に貢献している。アグリ社は2017年度、計74件に10億2000万円を出資。02年度の創設から5月末時点までの累計では出資件数が512件、出資額は83億4000万円となった。累計の品目別では野菜(32%)が最も多く、畜産(23%)、稲作(17%)が続く。農林中金によると、規模拡大に伴う設備投資資金の調達が多い。農業法人は増えているが、自己資本が脆弱(ぜいじゃく)で資金調達が課題。農業法人投資育成制度はこれを支援するもので、民間金融機関が専門の投資組織を立ち上げて出資する。出資は、資金の使い道に制約がなく、対外信用力の向上で融資が受けやすくなるメリットもある。投資組織はアグリ社の他に17組織あるが、農林中金によると、17組織の出資件数は全て合わせても累計80件程度。アグリ社が群を抜くのは「JAが持つ地域のネットワークが強み」(農林中金食農法人営業本部)のためだ。JAが農業者への訪問活動で得た情報を、農林中金を通じて同社につなぎ出資につなげるなど、地域の窓口機能を果たしている。出資は、JAグループが自己改革で目指す農業者の所得増大や農業生産の拡大にも貢献する。アグリ社が10年度から16年度の出資先の343社の売上高を調べたところ、出資前に比べて平均で1億100万円(42%)増えた。利益が増え、配当を支払う出資先も増加傾向にあるという。農林中金は「(同社を通じて)出資に加え、法人の従業員向けのセミナーなど経営支援にも取り組み、農業の成長産業化に貢献したい」(同)としている。

*16-2:
http://qbiz.jp/article/135540/1/ (西日本新聞 2018年6月18日) 「くるめエネルギー」始動 新電力「住みよい街へ貢献」 収益の一部 防犯カメラや公園整備へ
 福岡県久留米市の久留米商工会議所青年部を母体とする地域新電力会社「くるめエネルギー」(安丸真一社長、同市)の事業開始式典が11日、市内のホテルであった。安価な電力供給とともに、収益の一部を市内の防犯やインフラ整備に充てる地域還元型のビジネスモデルを目指す。同社は、青年部の有志14社が昨年6月に設立した。市内の電気利用者が、市外資本の電力会社に支払う電気料金を「地域資産の流出」と位置付け、電気利用をくるめエネルギーに切り替えてもらうことで流出を食い止め、地域還元や活性化の観点から、収益の一部を街灯や防犯カメラの設置、公園整備に充てる。地元事業者から出資を募ったところ、132社から応募があった。くるめエネルギーの契約者が、出資店舗や事業所を利用した場合には、割引などのサービスを提供する。2月には、大手商社丸紅グループの「丸紅新電力」と業務提携の基本合意を交わしており、丸紅側のノウハウを今後の事業展開に生かすという。この日の式典では、地域新電力の先輩に当たる「やめエネルギー」の本村勇一郎社長が「競合相手ではなく、互いの地域を尊重しながら、共存できる活動ができたら」とあいさつ。安丸社長は「住みよい街づくりに貢献したい。1人でも多くの人が久留米に住みたいと思う環境をつくっていく」と決意を語った。九州電力より2〜5%安い価格で電力を供給する。初年度の契約目標は、工場やオフィス向けの高圧100件、一般家庭や商店向けの低圧2300件。3年後には、高圧350件、低圧7300件、年間売り上げ10億円を目指す。くるめエネルギー=0942(80)5968。

| 農林漁業::2015.10~ | 11:12 PM | comments (x) | trackback (x) |
2018.5.14 経済と環境の必然性から見た自動車、エネルギー、医療・介護の進路 (2018年5月15、16、19、20、21日に追加あり)
     
        2018.5.12日経新聞     2018.5.10、2018.5.13日経新聞  

(図の説明:日産とルノーはどちらがグループの利益に貢献しているかという論調になっているが、経営方針を間違わずに必要な投資を行うことが最も重要である。そして、日産・ルノー組の成功は、日本人でないゴーン社長の経営方針決定による成功によるため、今後とも日産の経営陣がイニシアティブをとらないのが成功への道だろう。しかし、再生医療に関しては、多くのヒト幹細胞候補があって次々と応用に供せられているため、集中と選択をするのはまだ早すぎる)

    
        2018.5.13東京新聞           2018.5.10日経新聞

(図の説明:経産省の次期エネルギー基本計画骨子案は、再エネの普及が世界より大きく遅れ、世界では手終い始めている原発に20%以上も依存をしようとしており、経産省の思考停止が明らかだ。そのため、経産省に任せておいては、中国はじめアジア諸国にも遅れることになる)

(1)自動車の進路は明確であること
1)競争ルールの変化とライバルの増加
 自動車の競争ルールは明らかで、「①地球環境の維持目的から、アジアだけでなくアフリカ大陸まで自動車が普及しても環境を汚さないこと」「②少子高齢化の進行から、自動運転や高度な運転支援を行えること」が、必要条件になる。

 そのような中、2018年3月期に過去最高益を更新したトヨタ自動車の豊田社長は、*1-1のように、「ライバルも競争ルールも変わり、生死をかけた闘いであり、テクノロジーカンパニーは我々の数倍のスピード、豊富な資金で新技術に投資を続けている」としているが、これは日本では20年前から予測できたことであるため、最初からEVとFCVに集中投資していれば、遅れることはなかった筈だ。

 また、コストには、コスト削減と原価低減があり、コスト削減は既にある技術を改善して地道にコストを減らすことで、これはトヨタはじめ日本企業のお家芸だ。一方、原価低減は、スキームを変えて劇的にコストを減らすことで、例えばガソリンエンジンをやめてEVにしたり、原発や化石燃料をやめて再エネに替えたりすることなどであり、コスト削減効果がずっと大きい。

 しかし、日本政府や日本企業は、自らスキームを変えて原価低減する判断をすることができず、他国がやって初めてあわてて追いつこうとする(これは、日本における文系への理数教育の不十分さによるだろう)。EVのケースでも、私が1995年頃にEVの提案をした後、すぐEVの開発・販売を行う決断をしたのはゴーン氏率いるルノー・日産組であり、日本人を社長とする他の自動車大手は、燃費の改善やハイブリッド車でお茶を濁した。

 そして、現在は、*1-4のように、「日産・ルノーはどちらが牽引役か」という問いになっているが、先見の明ある判断こそが無駄な開発コストをかけずに収益力を上げる重要な要素であるため、ルノーの方が牽引役としてふさわしく、ゴーン氏の任期が切れる時期を視野にしているのなら、再度、フランスから優秀なCEOを招くのが、双方が納得できる有効な方法になろう。
 
 なお、EV・FCV・自動運転・再エネによる自家発電などの技術を確立すれば、*1-3のような鉄道も含め、移動手段全体をもっと合理的にできる筈だ。そのため、このエネルギー変革は、自動車会社・JR・地域にとって、大きなチャンスにすることが可能である。

2)世界の市場へ
 *1-2のように、トヨタが総力戦でアフリカ大陸の開拓を始めたのは面白い。アジアの次はアフリカであるため、アフリカの豊かな自然を壊さないように、アフリカでハイウェイや高速鉄道を整備しながら、EV・FCVやそれらの電車を走らせ、太陽光・地熱などの再エネ発電で経済を進めればよいと考える。つまり、日本で行った途中の試行錯誤は省略してよいのだ。

 また、自動運転には地図が不可欠だが、日本にはパイオニアなどのナビを作る会社やゼンリンなどの正確な地図を作る会社もあり、自動運転車の必需品となる地図は、世界をグーグルに独占させなくても、現在ある地図を世界地図に変えれば、既存の技術で世界市場が視野に入る。

(2)研究開発の遅れと武田薬品のシャイアー買収
1)先進技術を獲得することの重要性
 日本は、*1-5のように、再生医療分野の応用研究に関する特許出願で、欧米・中国・韓国の後じんを拝しているそうだが、再生医療の応用研究を始めたのは1995年頃であり、経産省・厚労省・文科省が協力して本格的に始めたのは、私が衆議院議員をしていた2007年頃のことであり、どちらもそれを言い出したのは私であり、世界の先を行っていた。

 にもかかわらず、現在、日本の特許出願や論文が欧米中韓を下回っているのは、①iPS細胞以外の再生医療を排除したので、iPS細胞以外の研究者は国内で研究しにくくなり、外国に脱出して研究している人もいること ②常識や多数を善とする先端科学とは反する価値観を浸透させたこと ③日本のメディアが、科学とは無関係の自らの基準で論文を叩きすぎたこと ④勉強しないことや理数系に弱いことをファッションにする傾向があり、理数系の勉強を疎かにしたこと などが原因だ。

 しかし、ルノーが日産と合併したいと考えるのは、日産・三菱がEVやFCVの技術を持っているからであり、武田薬品のシャイアー買収のように、遅れたから低金利の金にモノを言わせて買収し、技術を獲得しようという試みは、相手会社に歓迎されないのでうまくいかない。つまり、自らが得意分野を持っていない提携や買収は相手会社に歓迎されず、高い買い物になって買収価格も回収できないケースが多いのである。

2)武田薬品のシャイアー買収について
 武田薬品が、*1-6のように、アイルランドのシャイアーを総額7兆円弱の過去最大金額で買収したとして新聞が大騒ぎしていたが、やはり裏に投資銀行の暗躍があり、この案件は、関係者の利益が最大の目的で成立したのではないかと思われた。

 何故なら、シャイアーが開発して特許を持っているのは難病薬であるため、利益率がいいと言っても大量に売れるわけではなく、それが総額7兆円もの買収価格に相当するかどうか不明だからである。

 日本企業は、金融緩和で低金利の金にモノを言わせ、持たぬ技術を獲得するために敵対的M&Aを行って得意になっていることがあるが、そのようにして失敗した事例に、東芝のウェスティングハウス買収がある。そのため、せっかくよい製品を持っている武田薬品が似た運命を辿らないことを、私は希望している。

(3)日中韓首脳会談
 安倍首相と李克強首相が、*2-1のように、経済を軸とした実務レベルの合意を行って日中両国の雪解けを演出したのはよかったのだが、尖閣諸島問題は棚上げにしてそのままだった。

 また、会談後の共同記者発表で、安倍首相は「日本と中国が力を合わせてアジアの旺盛なインフラ需要に応えていく」と述べられ、李首相も「中日は世界の主要経済大国だ。共に国際貿易の自由化を守り、経済グローバル化の発展を推進することで合意した」と語られ、よいことだ。

 しかし、*2-2のように、中国の李克強首相は、日本の経済界が東京都内で開いた歓迎レセプションで、「日中両国は世界の主要経済国として、保護主義に反対し自由貿易を守る責任がある」と述べられたそうで、それは尤もなことではあるが、既に中国が食品・EV・太陽光発電などで対日輸出の方が多くなる状況であることを考えると、油断していた日本は、米国と同様、自由貿易を喜んでばかりいる立場ではない。

 なお、李首相が、「日中が連携して世界経済の発展に貢献すべきだ」「『一帯一路(現代版シルクロード)』と日本を繋ぎたい」と述べられたのにも、私は賛成だ。

(4)エネルギーの転換
 *4-1、*4-2のとおり、現在は、再生可能エネルギー(再エネ)を拡大するエネルギー計画の方針転換に踏み込むべき時だが、経産省は、次期エネルギー基本計画の骨子案で、「原発依存度を下げる」としながら「原発は重要なベースロード電源」と位置付けて2030年度の原発の発電割合を20〜22%としており、自己矛盾だらけで本気度が感じられない。

 世界は、既に再エネへのシフトに舵を切っており、やっぱり日本は遅れた。しかし、私は、フクイチ事故後、速やかにこのブログにその解決策を記載しており、それは、全体から見て唯一の解決策であるため、世界は「パリ協定」でその解決策を速やかに取り入れ、再生エネの普及と価格低下を実現して、論理ではなく感情で突っ走った日本は時代遅れになったわけである。

 また、技術進歩により再エネの普及割合は経産省の予想を超えるスピードで進んでいるため、経産省が長期的な電源毎の発電割合を決めるのは、むしろ再エネの普及を妨げる。そのため、できるだけ、再エネを推進する方針で原発の再稼働を控えればよいのだ。そのために必要な原発地元への支援も、フクイチ事故後すぐにこのブログに記載している。

 なお、*4-3のように、小泉元首相も「原発支援のカネを自然エネルギーに向ければ、原発が供給していた30%程度の電力は、10年で自然エネルギーによって供給でき、将来、全電源を自然エネルギーにできる」と言っておられるが、まさにそのとおりで、電源こそ選択と集中を行うべき時期なのである。

(5)医療・介護の一部産業化
 介護制度についても、*3-1のように、「2025年には未曽有の超寿社会になるため、医療や介護サービスの需要が急増して費用も大幅に膨らむ」というような報道が多い。しかし、70代後半になると足腰が弱って介護を必要とする機会が増えるのは、65歳前後で定年を迎えて運動量・緊張感ともに減るからで、退職年齢を70歳以上に上げるか、定年を無くすかすれば医療・介護費は減るだろう。

 また、①1人暮らし ②高齢者数の増加 ③医療・介護費の増大 も課題とされることが多いが、これを問題としか捉えない点が、厚労省はじめ政府リーダーの頭の悪さだ。何故なら、人口の年齢構成が変われば市場のニーズが変わるのは当然であり、日本はこの意味で中流階級の多い課題先進国であるため、必要とされるサービスを的確に供給すれば、上記の中国はじめ世界で歓迎される新しい産業を作ることができるからである。

 そのためには、政府の社会保障だけでなく、*3-3のセコムの見守りサービス・ホームサービスや、*3-4の東急グループが知識とノウハウを結集して作る誇りをもって住める上質なシニアレジデンスのように、民間企業の知見と実行力がモノを言うため、政府・自治体は、これらを後押しするのもよいと思われる。

 なお、「若者が足りない」という発言もよく聞くが、*3-2のように、広い視野で外国人の受け入れを一般的に行えば、国民負担増なく、世界と日本の問題を同時に解決できるのである。

<自動車の進路>
*1-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180510&ng=DGKKZO30285370Z00C18A5EA2000 (日経新聞 2018年5月10日) トヨタ、異業種と生存競争 社長「ルール変わった」 研究開発、今期も1兆円超
 トヨタ自動車は2018年3月期に過去最高益を更新し、19年3月期も底堅い業績が続く見通しだ。それでも豊田章男社長は9日、「ライバルも競争のルールも変わり、生死をかけた闘い」などと事業環境の厳しさを強調した。今期の研究開発費と設備投資の合計額は2兆4500億円と、11年ぶりに過去最高を更新する。自動運転など新たな領域で、海外IT大手など異業種の巨人との競争に備える意味合いがある。「テクノロジーカンパニーは我々の数倍のスピード、豊富な資金で新技術に投資を続けている」。東京本社(東京・文京)での決算説明会で、豊田社長の論点は「未知の世界」という競争環境、「お家芸」である原価低減、トヨタ生産方式の徹底など多岐にわたった。成果が出るまで時間のかかる自動運転や電動化、コネクテッドカー(つながる車)への投資が増え、経営方針を正確に理解してもらう必要があるためで、説明会は2時間超と異例の長さになった。19年3月期の研究開発費は1兆800億円と2年連続で過去最高で、次世代技術には35%を費やす。設備投資額との合計は5年前と比べて3割増やす。3月にはデンソー、アイシン精機と自動運転を開発する新会社を設立。元グーグル幹部をトップに据え、数年で3000億円以上を投じる。6月には主力車を刷新し、コネクテッドカーの市販車を公開することも明らかにした。トヨタの視線の先にあるのは海外IT大手の姿だ。米グーグルは米国で地球200周分の公道テストを終え、年内に世界初の無人輸送サービスを始める計画。中国の百度(バイドゥ)も、独ダイムラーなど世界企業約50社と組んで、自動運転開発「アポロ計画」を進める。自動運転などの新領域が主戦場となり、研究開発にどれだけの金額を投入できるかが今後の競争力を左右する。企業財務のデータベース、QUICKファクトセットでみると直近1年間のトヨタの研究開発費は約94億ドル。ダイムラーや独BMWを上回り、自動車業界では高い水準にある。ただ、海外IT大手との比較では安心はできない。米アップルは約127億ドルと自動車業界で研究開発費が最大の独フォルクスワーゲン(VW)に迫り、グーグルは約177億ドルとトヨタの2倍近い規模だ。研究開発費などの原資となる現金創出力(営業キャッシュフロー)でも差がある。トヨタは365億ドルとVW(約29億ドル)などを突き放し、自動車業界では抜きんでている。しかし、グーグル(約391億ドル)にはとどかず、アップル(約674億ドル)ははるか先を行く。「トヨタの真骨頂はトヨタ生産方式と原価低減の2つ。未来を生き抜くために徹底的に磨く」。研究開発費や投資の拡大が避けられないだけに、既存車種の開発や生産の方法の見直しには今まで以上に力を入れる。トヨタ生産方式をさらに徹底するため、提携したスズキやマツダのノウハウも吸収していく。4月には子会社の日野自動車がVWの商用車部門と次世代技術などで提携。「まさか乗用車のライバルと合意するとは」(トヨタ系部品首脳)と衝撃が走った。大きな転換期を「100年に一度の大チャンスととらえ、これまでにない発想でチャレンジする」(豊田社長)という。

*1-2:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO29917750X20C18A4940M00/ (日経新聞 2018/5/7) 最後の「辺境」 総力戦でアフリカ開拓(トヨタの未来)
 南アフリカ共和国のダーバンにあるホテル。アフリカの約40カ国をカバーするトヨタ自動車の販売代理店の代表者が3月に集まった。「顧客に近づいて強みを伸ばしていこう」。アフリカ本部トップの今井斗志光常務役員は代表者会議で檄(げき)を飛ばした。今井氏は1月、豊田通商からトヨタに役員として招かれた異色の経歴を持つ。豊田通商でアフリカ事業に約30年関わってきた。「中長期でトヨタをさらにアフリカで強くして欲しい」。今井氏が昨年11月、トヨタの豊田章男社長から言い渡されたミッションの一つがアフリカ攻略だ。アフリカの人口は2050年に25億人と中国を抜く規模に拡大する見込み。新車市場はまだ年間約120万台だが、人口増と経済発展で将来は巨大市場に育つと予測される。トヨタの販売台数はアフリカでまだ約20万台と、グローバルの約2%にとどまるが存在感は大きい。これから本格的に車の普及期に入る地域でマーケットリーダーの地位を守っていけるかはトヨタの未来の成長力を左右する。「フリートデー」と呼ぶイベントが数回に分けて南アフリカで昨年開かれた。アフリカの一般消費者にとって車は高根の花で、新車を買うのは政府や企業、非政府組織(NGO)が中心。こうした顧客を50団体ほど招き、工場やテストコースを見てもらう。フリートデーはトヨタや豊田通商など「オールトヨタ」で実施した初のイベントで優良顧客にトヨタをより身近に感じてもらい、ブランド力を高めるのが狙いだ。トヨタがアフリカで事業を始めたのは1950年代後半と早い。南アフリカなどに多目的スポーツ車(SUV)「ランドクルーザー」を輸出したのが始まりだ。62年には南アフリカで工場を稼働させ、地道にアフリカ各地に販売、サービス拠点も整備していった。自然が豊かなアフリカでは車の故障が命に関わるアクシデントになる。「頑丈で壊れにくい」といった評判が広がり人気となった。今井氏は「アフリカでは多くの人がトヨタ車を買いたいと言い、それを裏切ってこなかった。信頼の『残高』が高いと思う」という。ただアフリカでは中国や韓国勢の参入も相次ぎ、競争は激化している。車のシェアなど新サービスの浸透も予測され、従来の延長線ではない戦略も必要だ。「ウーバーのドライバーになるなら、トヨタ車はどうだい」。米ウーバーテクノロジーズがケニアに設けた拠点。ここでウーバーに新規登録する運転手に試験的に中古車を売り込んでいるのは豊田通商グループのトヨツウオートマートケニアだ。アフリカでは固定電話を飛び越え、スマートフォンが普及した。先回りしてニーズを取り込む。トヨタの新興国での存在感は東南アジアを除けば十分ではない。巨大市場に育った中国やインドでは出遅れが目立ち、巻き返しを急ぐ。そうした中、アフリカは長い年月をかけて市場を切り開き、開拓者としての強さを残す地域。試行錯誤を重ねながら「最後の辺境」で勝ち抜けるか。オールトヨタの総力戦が続く。

*1-3:http://qbiz.jp/article/133601/1/ (西日本新聞 2018年5月11日) JR九州が過去最高益 鉄道の収益も改善 3月期連結
 JR九州が10日発表した2018年3月期連結決算は、訪日外国人客の増加を受け鉄道旅客運輸収入が増えたことなどで、売上高が前期比8・0%増の4133億7100万円だった。経常利益が10・7%増の670億4500万円、純利益が12・6%増の504億1千万円となり、売上高、利益ともに過去最高だった。
新幹線利用客の増加や熊本地震の反動などで鉄道旅客運輸収入が46億円増加したほか、キャタピラー九州の連結子会社化などにより増収となった。九州豪雨や台風18号の災害による特別損失を38億円計上したものの、熊本地震があった前期より特別損益は改善した。単体の鉄道事業は282億円の営業利益を確保。株式上場に伴う経営安定基金の取り崩しなどによる利益押し上げ効果を除くと、実質的には約20億円の赤字だったが、増収や効率化で前期より大幅に改善した。青柳俊彦社長は記者会見で「ローカル線の赤字はさらに拡大している」とし、地方路線はなお厳しい状況にあると説明。自治体などの理解を得るため「鉄道事業の収支構造をある程度、お話しすることになるのではないか」と述べ、路線別の収支などを公表する可能性を示唆した。時期は未定としている。次期は、鉄道事業の減価償却費増加などにより、増収減益を見込む。

*1-4:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO30433100S8A510C1EA5000/?nf=1 (日経新聞 2018/5/12) ルノー・日産、主従は? 資本の論理か「実力」か
 仏ルノーが資本提携先の日産自動車からの利益を支えに業績を回復させている。ルノーの連結純利益に占める日産からの貢献分は5割を超えた。両社には資本関係を見直す構想も浮上しているが、どちらが連合のけん引役なのか考え方に相違がある。資本の論理か企業の実力か――。巨大自動車連合が新たな経営形態を模索する上で亀裂が生じる可能性がある。「あらゆる選択肢を排除しない」。両社の会長を務めるカルロス・ゴーン氏は、ルノーの最高経営責任者(CEO)としての任期が切れる2022年までに連合の新しい枠組みを築く意向を示す。背景には「日産をルノー傘下にしっかり組み込み、両社の関係を不可逆的なものにする」という仏政府の意向がある。ルノーと日産は99年に資本提携し、三菱自動車を加えた3社で連合を組んでいる。ルノーは日産に43%、日産もルノーに15%それぞれ出資しており、日産は三菱自株式の34%を保有する。ルノーは欧州債務危機などで業績が低迷した時期があったが、14年12月期以降は4期連続で連結純利益が増えた。株価も上昇し、13年末に約2兆2000億円だった時価総額は足元で約3兆4千億円と、一時は2倍近い開きがあった日産に近づきつつある。一見、ルノー本体の快走による好循環に見えるが、実は業績拡大を陰で支えているのは日産への出資から得た「持ち分法投資利益」だ。ルノーの純利益に占める日産からの利益の割合を有価証券報告書などをもとに計算(一部日経推定含む)すると、17年12月期のルノーの純利益51億ユーロ(約6600億円)のうち、約5割を日産からの利益が占める。13年12月期からの5カ年でみても、毎年5割以上を日産分が占め、多い年では純利益の全てを日産から得ている年もあった。日産株から受け取る配当金も巨額だ。日産は17年3月期に900億円近くをルノーに支払った。ルノーにとって日産は自動車産業のパートナーという立場を超え、「経営上もはや欠くことのできない存在」(外資系証券アナリスト)といえる。そのため、資本の論理でいえば43%を出資するルノーが企業連合の盟主になるが、日産からしてみると、ルノーの業績を支えている稼ぎ頭の「我こそが主役」という意識が強い。17年の販売台数も日産の581万台に対しルノーは376万台。ある日産幹部は「企業としての力は当社の方が上だ」と言い切る。日産とルノーが資本関係を見直す検討をしている背景には、ルノーに15%を出資する筆頭株主の仏政府からの圧力があるとされる。仏政府からすれば、時価総額が日産に近づきつつある今こそ、経営統合などルノー主導での日産の取り込みに絶好のタイミングと見ていてもおかしくない。日産の西川広人社長兼CEOは「会社ごと一体化することにメリットは見えない」と合併などの経営統合には慎重姿勢だ。新たな経営形態の骨格が固まるには水面下での綱引きがしばらく続きそうだ。

*1-5:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180513&ng=DGKKZO30433300S8A510C1EA1000 (日経新聞 2018年5月13日) 再生医療 応用で見劣り 日本の特許出願・論文、欧米中韓下回る
 iPS細胞をはじめとする再生医療分野で、応用研究に関連する特許出願では日本が欧米や中国、韓国の後じんを拝していることが、特許庁による調査で分かった。再生医療の国内市場規模は2030年には1兆8000億円になるとの試算もある。知的財産をおさえられると、将来的に市場を奪われかねない実態が浮き彫りになった。同庁は新産業につながる注目技術について、特許出願や学術論文の状況を調べる技術動向調査を毎年実施。今回は再生医療につながる「ヒト幹細胞」関連技術や電気自動車(EV)に使う蓄電池「リチウム2次電池」など12テーマを調べた。調査結果は14日発表する。ヒト幹細胞は様々な細胞に分化し、傷ついた組織や臓器の機能を戻す。07~15年では、幹細胞の分離精製・増殖など基礎技術の出願数は日本は米中と拮抗したが、細胞移植など応用に関する「再生医療・細胞治療」は米国は日本の約5倍、中国が約2倍に達し、欧州と韓国も日本を上回った。米中はiPS細胞より実用化で先行する胚性幹細胞(ES細胞)で応用技術を開発。同庁は「iPS細胞による再生医療産業の発展に影響する可能性がある」と分析する。論文数では出願者のランキング(07~15年)はトップは米カリフォルニア大学。仏国立保健医学研究機構、韓国のソウル大学校が続き、iPS細胞を発明した山中伸弥教授が所属する京都大学は8位だった。特許取得が現状の研究開発力を示すなら、学術論文は5~10年先の中長期の研究開発力を占う指標。日本の競争力に陰りが出ている。EVの走行距離を高める次世代電池として期待される「リチウム2次電池」の調査でも、日本の遅れが懸念された。リチウムイオン電池より性能が高い全固体電池は顕著だ。中核となる電解質材料に関する特許出願で酸化物系や硫化物系などを含めると日本は09~15年で1243件と222件で2位の韓国の6倍近く特許を出願するなど他国を圧倒した。トヨタ自動車は硫化物系、酸化物系ともに世界の主要企業を上回った。ただ中長期の研究力を測る論文数では日本は米や欧州、中国より少なかった。酸化物系は12~13年こそ日本の論文数は多いが、14年に米や中国、韓国とほぼ同じ水準。16年は米と欧州の論文数の半分。硫化物系は日本勢が16年も1位だが、米や欧州、中国、韓国との差は縮んできている。リチウム2次電池全体で見ても、出願者ではトヨタが2位、パナソニックが3位など日本が健闘するが、論文になると状況は変わる。12~16年の論文では1位の中国科学院から4位の清華大学まで中国勢が上位を独占。10位以内に中国籍の機関が8つ入る一方、日本は1つも入っていない。

*1-6:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180510&ng=DGKKZO30251050Z00C18A5EE9000 (日経新聞 2018.5.10) 武田メガ買収 投資銀が陰の主役、助言役、有力日米6社が獲得 野村とゴールドマン主導
 武田薬品工業によるアイルランド製薬大手シャイアーの買収は、日本のM&A(合併・買収)史を塗り替える案件になる。買収総額は7兆円弱と日本企業のM&Aで過去最大。舞台裏では案件獲得を狙う投資銀行の攻防があった。最終的に助言役に名を連ねたのは「オールスター」とも呼ぶべき日米の有力6社。欧州勢は苦杯をなめ、明暗をわけた。グローバルな再編を繰り返してきた製薬業界。日本勢は蚊帳の外に置かれてきたが、武田がついに社運を懸けて動いた。水面下で案件を主導したのが、国内証券最大手の野村ホールディングスだ。主幹事として築いた武田との長年の関わりを武器に、新株発行と現金を組み合わせた買収の仕組みを整えた。野村は昨年度のM&A助言の国内ランキングで首位だった。今回の1件だけで、野村が昨年度手がけたM&A総額(6兆7千億円)に並んだ。この巨額買収に関われたかどうか。投資銀行業界に与える影響は甚大だ。武田側には米JPモルガン・チェースも付いた。外貨調達など資金面でも支援する。フランス出身の武田のクリストフ・ウェバー社長が信頼を置くフランス人バンカーが在籍する米エバコアも助言役に入った。買収交渉はシャイアーが米国本社を置く米ボストン近郊、アイルランド、英国ロンドンなどを舞台に行われた。投資銀行が仲介し頻繁に国際電話をつないで詳細を詰めていったようだ。シャイアー側に付いたのはゴールドマン・サックス、シティグループ、モルガン・スタンレーの米大手3社。中でもゴールドマンが交渉を主導した。M&A助言業務は「売り手」の会社に付くのが鉄則。交渉が頓挫しない限り、確実に案件をものにできるからだ。投資銀6社が受け取る報酬総額は空前の200億円規模になる可能性もある。シャイアー買収を巡って武田と争ったアイルランド製薬大手アラガンは、買収検討を表明後に株価が急落。わずか数時間後に提案を取り下げた。米国勢で漏れたバンクオブアメリカ・メリルリンチはアラガンに助言していた。UBSやドイツ銀行といった欧州勢も苦杯をなめた。製薬業界では対抗提案が出ることも少なくない。ただ今回は日米6社が武田案件に関与し、競合他社が即座に対抗案を出すのが難しくなっている面もある。武田の買収がもたらす恩恵は助言業務以外にも広がる。約3兆円のつなぎ融資の後に想定される社債などの引き受けを巡り、すでに投資銀各社の動きが激しい。ただ、先行きは予断を許さない。巨額買収の負担を嫌気し武田株は年初来高値の1月中旬から3割強下げた。株主の支持を得られるかは不透明。今回は買収成立時に得られる成功報酬の比率が高いとされているのも難しい案件の証しだろう。日本企業では珍しい株式交換を活用し、巨額の買収に乗り出した武田。ある投資銀の幹部は「無事に成立すれば、成長を加速させる日本企業の大型M&Aへの道を開く」と期待を寄せる。

<日中韓首脳会談>
*2-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180510&ng=DGKKZO30285630Z00C18A5PP8000 (日経新聞 2018年5月10日) 日中、急速に「雪解け」 トランプ氏への危機感 後押し、自由貿易で連携強調 元建て債券の投資緩和
 安倍晋三首相と中国の李克強(リー・クォーチャン)首相は9日の会談で、経済を軸とした実務レベルの合意を成果として並べ、日中両国の雪解けを演出した。保護主義を強めるトランプ米大統領への危機感が、結果的に日中の関係改善を加速した形だ。ただ、両首相は、沖縄県・尖閣諸島をめぐる問題や歴史問題など両国間に横たわる火種は素通りした。安倍首相と李首相は9日の会談で、経済分野での連携姿勢を強調した。日本の金融機関が人民元建てで中国の株式や債券に投資する際の規制緩和や、日本産食品の輸入規制緩和に向けた協議体設立など合意事項をずらりとそろえた。2012年に日本政府が踏み切った尖閣諸島の国有化を機に、日中関係は「戦後最悪の状況」(日中外交関係者)に陥った。今回の合意は、関係が実務協力を進める段階まで回復したことを示す。急速な関係改善を後押ししたのはトランプ米大統領の「米国第一」の姿勢だ。中国は貿易問題などでの緊張を受け、日本を含む近隣国との関係修復を急いでいる。安倍首相には秋の自民党総裁選をにらみ外交成果を打ち出したい思惑があり、両国の利害が一致した。両首相がアピールしたのが経済協力だ。安倍首相は会談で「戦略的互恵関係の下、全面的な関係改善を進め、日中関係を新たな段階へ押し上げていきたい」と表明。会談後の共同記者発表では「日本と中国が力を合わせてアジアの旺盛なインフラ需要に応えていく」と述べた。李首相も「中日は世界の主要経済大国だ。共に国際貿易の自由化を守り、経済グローバル化の発展を推進することで合意した」と語った。 日中間で停滞していた金融協力で踏み込んだ。中国には機関投資家を対象に、元建てでの中国の株式や債券への投資を認める人民元適格外国人機関投資家(RQFII)の投資枠がある。取得しているのはアジアや欧米など10以上の国・地域で、日本の金融機関は政治情勢などを理由に与えられていない。今回の首相会談で2千億元(3.4兆円)の投資枠の付与で合意した。中国は外資の投資に規制をかけているが、RQFIIの枠を得た金融機関は新規株式公開(IPO)などに参加できる。枠を得ようとするメガバンクや証券会社などの動きが活発になる見通しだ。両国の通貨交換(スワップ)協定の再開に向けた協議入りでも合意。同協定は金融危機時などに互いに通貨を融通しあう仕組みだ。市場の混乱などで元の調達が難しくなった際、日銀を通じて調達できるようになる。第三国へのインフラ輸出でも協力。アジア開発銀行(ADB)の試算によると、アジアのインフラ需要は年1.7兆ドル(約185兆円)。両国は電力や交通、デジタル分野の輸出拡大に向け、企業経営者や関係閣僚による新たな枠組みをつくることで合意した。ただ、自由貿易の推進も、各論に入れば温度差がある。中国が震源とされる鉄鋼の過剰生産について、世耕弘成経済産業相は9日午前、中国の鍾山商務相に「市場歪曲(わいきょく)的な措置の除去が重要」と是正を求めた。知的財産の侵害問題でも、中国が外資企業に事実上、強制的な技術移転を求める制度などを温存している。

*2-2:http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2018051001001290.html (東京新聞 2018年5月10日) 【経済】日中両国で保護主義反対を 李首相が連携呼び掛け
 中国の李克強首相は10日、日本の経済界などが東京都内で開いた歓迎レセプションで「日中両国は世界の主要経済国として、保護主義に反対し、自由貿易を守る責任がある」と述べ、日中が連携して世界経済の発展に貢献すべきだと強調した。李氏は「(中国の現代版シルクロード構想)『一帯一路』と日本の成長戦略をつなぎ合わせたい」とも述べた。中国は、保護主義色を強めるトランプ米政権との間で貿易摩擦が激化する中、貿易や投資の面で日本との連携を強化したいとの思惑がある。「一帯一路」の日本への協力呼び掛けは、インフラ建設などで両国間の協力を深め、同構想を推進させたい考えがある。

<医療・介護の一部産業化>
*3-1:http://qbiz.jp/article/133273/1/ (西日本新聞 2018年5月7日) 2025年、未曽有の「超寿社会」 団塊の世代は全員75歳以上に 医療、介護費10年で膨脹
 今から7年後の2025年。人口に占める65歳以上の割合が3分の1に近づき、お年寄りの10人に6人は後期高齢者という未曽有の局面を迎える。「超寿社会」とでも呼ぶべき新たな時代だ。膨張する医療や介護の費用。急がれる認知症や孤独死への対策。18年度は政府のさまざまな取り組みが動きだす重要な節目だ。日本が直面する「2025年問題」を考える。
Q 「2025年問題」とは。
A 2025年は戦後の1947〜49年に生まれた「団塊の世代」全員が75歳以上に
  なる年です。第1次ベビーブーム世代とも呼ばれ、2015年の国勢調査によると
  約638万人。突出して人口の多いこの世代の高齢化が進むため、医療や介護サー
  ビスの需要が急増し、費用も大幅に膨らむと懸念されています。
Q なぜ75歳に着目するのでしょう。
A 個人差はあるものの、一般的には70代後半になると病気がちになり、足腰が
  弱って介護を必要とする機会が増えます。75歳以上は「後期高齢者」と位置付
  けられ、国の医療保険制度も別立ての仕組みになっています。高齢者の定義は
  65歳以上とされていますが、14年のデータによると65〜74歳の1人当たり
  年間医療費は平均で55万4千円なのに対し、75歳以上では90万7千円と1・6
  倍に。介護費も5万5千円から53万2千円と、10倍近くに跳ね上がります。
Q 1人暮らしや認知症の高齢者の増加も課題になりそうです。
A 未婚のまま老後を迎える人も増え、25年には65歳以上の5分の1は1人暮らし
  になります。認知症の高齢者は6年前のデータでは全国に462万人でしたが、
  25年には700万人程度まで増えるとみられています。1人暮らしだと家族が
  介護するのは難しいですし、認知症の人の介護には多くのマンパワーが必要で
  す。独居と認知症の増加により、高齢者人口の伸び以上に必要とされるサービス
  の量が増える可能性があります。
Q 医療や介護の費用はどこまで膨らむのでしょうか。
A 政府の推計では、25年度に年金や子育て費用も含め、社会保障給付費は
  148兆9千億円に上ります。このうち、医療には54兆円、介護に19兆8千億円
  を要します。15年度と比べると、医療は1・4倍、介護は1・9倍に膨らむ計算で、
  医療と介護がいかに社会保障費を押し上げるかが分かります。
Q 少子化も進んでいますし、社会保障の費用を誰が負担するのか難しい時代になりますね。
A はい。25年の高齢化率(総人口に占める65歳以上の割合)は30%。75歳
  以上だけでも2180万人で18%に上ります。「高齢者の高齢化」が進み、現役
  世代の負担の重さに拍車がかかります。1人の高齢者を税金や保険料で支える
  のに、1960年代は20〜64歳が9・1人の「胴上げ型」だったのが、2025年には
  1・8人で支える形となり、50年代には支え手が1・2人しかいない「肩車型」に
  なると説明されることがあります。そこで政府は、支え手を増やそうと女性の就労
  や高齢者の長期雇用を促しています。一部には外国人労働者の活用拡大を
  主張する声もあります。
    ◇   ◇
●人材確保へ待遇改善を 清家篤・慶応大客員教授
 2025年問題が深刻なのは、高齢者の増加で医療や介護の費用が加速度的に膨らむ点だ。年金の給付は受給者数に比例して伸びていくだけだが、医療・介護分野では、病気や要介護になりやすい75歳以上の後期高齢者の増加によって、給付は高齢者全体の増加率を上回るペースで増える。医療や介護は単なるお金の問題だけでなく、医師や看護師、介護福祉士といった人材を確保しなければならない点で、年金よりもずっと難しい。彼らが気持ちよく働いてもらう上で必要な人材育成や待遇改善を抜きにサービスの充実はあり得ず、そのための財源の確保は欠かせない。「介護離職」への対応も強化していく必要がある。自分の親や配偶者の親、あるいは配偶者の介護は切実な問題。仕事を続けたくても、介護サービスの供給が追いつかなければ、離職を余儀なくされる。労働者本人はもちろん、企業にとっても痛手だし、何よりも働き手が減るのは大きな社会的損失だ。何も手を打たなければ、これから30年までに800万人もの労働力人口が減少するとの推計もある。働く意思と能力のある人たちが、年齢にかかわりなく能力を発揮できる生涯現役社会をつくる。これが、豊かさと活力を維持していく鍵になる。高齢者や女性の就労を促進すると同時に、外国人雇用を広げることも視野に入ってくるだろう。
    ×   ×
*清家篤(せいけ・あつし) 慶応大商学部客員教授、日本私立学校振興・共済事業団理事長。専門は労働経済。2009〜17年、慶応義塾長。政府の社会保障制度改革国民会議で会長を務めた。1954年生まれ。東京都出身。

*3-2:https://www.agrinews.co.jp/p43816.html (日本農業新聞 2018年4月16日) 外国人受け入れ 労働環境 他産業並みに
 愛知県、新潟市、京都府は国家戦略特区制度を活用し、外国人労働者の受け入れを始める。より良い人材の確保と雇用後の混乱を避けるためには、農業も他産業並みの労働環境・条件にしていく必要がある。全国に先駆けた取り組みで、内閣府や自治体などで構成する「適正受入管理協議会」が設置され次第、受け入れが始まる見通しだ。懸念されるのは、特区の仕組みとこれまでの技能実習生とは、割増賃金、休日などの労働条件が違うことだ。認識不足のまま受け入れた場合、現場での混乱が心配される。国内の労力不足が深刻化する中、外国人に産業を支えてもらおうと各地で受け入れが進んでいる。法務省が発表した2017年末の在留外国人の数は前年比7・5%増の256万人で過去最多を更新した。農業分野も、今や大規模な産地ほど外国人の力なしに成立しない状況になっている。国家戦略特区制度を活用して外国人労働者の受け入れを表明した愛知県は、18年度予算に農業支援外国人受入事業308万円を計上。出身地の母国語に対応できる電話相談窓口を設け、長期雇用できる環境を整えることで“強い農業”の実現につなげたい考えだ。留意すべきは、特区制度を利用して農業現場で働く外国人労働者と技能実習生とは労働条件に違いがあることだ。労働基準法では、休憩時間を除き1日8時間、1週40時間までと法定労働時間を設けている。だが、農業は気象条件に左右されやすく、悪天候の日や農閑期に休みが取れるため、この規定の適用除外となっている。つまり、1日8時間を超えて働かせてよいなど、労働時間や休日、休憩を自由に設定できる。所定の労働時間を超えた場合は超過分の賃金を払う必要はあるが、法律で定めた「割増賃金」を払う必要はない。一方、技能実習生は「労働生産性の向上のために、適切な時間労働管理を行い、他産業並みの労働環境を目指していくことが必要」(農水省就農・女性課)との観点から、法に準拠した労働時間や休憩、休日などが求められ、残業した場合も割増賃金を支払う必要がある。特区雇用の外国人と外国人実習生の間に、割増賃金の支払いをはじめとする労働条件の差を持ち込んだ場合、現場が混乱する恐れがある。農業法人などで働く日本人の労働者も同様だ。農業の労務管理に詳しい特定社会保険労務士の入来院重宏氏は「雇用確保に向け、最近では農業でも1日8時間を超えて労働させた場合などは割増賃金を支給するケースが増えている」と指摘する。農水省で農業の働き方改革について検討が始まり、他産業並みの労働条件に見直す動きも相次いでいる。農産物を購入する消費者を含めて「安ければいい」という考えを根本的に改める時にきているのではないか。

*3-3:https://www.secom.co.jp/lp/hs/s14/?utm_source=yahoo&utm_medium=cpc&utm_campaign=AG502yss&wapr=5adf286e セコム見守りサービス、セコムホームサービス 

*3-4:http://www.tokyu-welina.jp/ 東急ウェリナ、東急電鉄のシニアレジデンス
シニア世代の皆さまに安心で心豊かな人生を過ごしていただきたい。東急ウェリナは、東急電鉄の100%子会社である東急ウェルネスが運営するシニアレジデンスです。東急電鉄は、これまで街づくりを事業の根幹に置き、長年にわたって沿線に暮らす人々の生活に密着した様々なサービスを提供してきました。そんな東急電鉄が街づくりの集大成として掲げた事業がシニアのための住まい、生活区間の提供です。「この国の発展を担ってこられたシニア世代の皆さまに安心で心豊かな人生を過ごしていただきたい。『終のすみかとしてここを選んでよかった』と思っていただける住まいとしたい」。それが私たち東急ウェリナの使命と捉え、東急グループの知識とノウハウを結集し、住む方が誇りをもってお住まいいただける上質な住環境をお届けいたします。

<エネルギーの転換>
*4-1:http://www.shinmai.co.jp/news/nagano/20180430/KT180428ETI090006000.php (信濃毎日新聞 2018年4月30日) エネルギー計画 方針転換に踏み込む時
 方針転換を先送りにした計画では、エネルギー安定供給の要請に応えられない。
経済産業省が有識者会議に示した次期エネルギー基本計画の骨子案である。国の中長期的なエネルギー政策の指針となる。原発依存度をどう下げるか。再生可能エネルギーをどう拡大するか。道筋を示していない。計画は3年ごとに見直される。いまの計画は、2030年度の原発の発電割合を20〜22%、再生エネを22〜24%としている。骨子案は、これを据え置いている。原発は12年の原子炉等規制法の改正で、運転開始後40年の廃炉が原則になった。現在ある原発は老朽化が進む。ルールを徹底すると、30年の原発比率は2割を大きく下回ると指摘されている。据え置かれた原発の割合を達成するには、新増設や運転延長が前提となる。福島第1原発事故を踏まえれば、安全面からも認められない。世論の批判が強い原発を温存するのに加え、「重要なベースロード電源」との位置付けも踏襲している。原発が低コストとする根拠も揺らいでいる。事故後に厳しくなった国の新規制基準に対応するには、大規模な安全対策が必要だ。仮に20年の運転延長が認められても、最長60年で廃炉になる。出力が小さい原発ほど採算は合わない。四国電力伊方2号機など、採算面から廃炉を選ぶ事例も増えている。骨子案は原発の「再構築」を提言しているが、具体的内容がはっきりしない。これではエネルギー政策の指針の役目は果たせない。新増設は経済面からも厳しくなっている現実を直視すべきだ。次期計画は、2050年に温室効果ガスを8割削減する国際公約に対応する必要がある。このため、30年に加え、50年に向けた長期戦略を含む内容となる。骨子案は太陽光や風力などの再生エネについて、主力電源化を進めると明記した。一方、50年の発電割合目標を示すことは見送った。本気度が疑われる。原発が実質的に高コスト化する一方で、再生エネへのシフトは世界的な潮流となっている。日本は立ち遅れている。再生エネの普及に向けた課題解決には、公正な競争を促す電力市場の整備や、送電網の適正な運用といった取り組みが欠かせない。原発依存から脱却して再生エネに比重を移す―。政府は、転換方針を計画でより具体的に打ち出していくべきだ。

*4-2:http://www.kyoto-np.co.jp/info/syasetsu/20180429_3.html (京都新聞社説  2018年4月29日) 再生エネ転換  主力電源化へ具体策示せ
 経済産業省が新しいエネルギー基本計画の骨子案を策定した。再生可能エネルギーの「主力電源化」を初めて盛り込む一方、原子力や火力発電も温存し、時代遅れの感は否めない。太陽光や風力といった再生エネへの転換を急ぐ世界的な潮流に日本だけが取り残されてはなるまい。経産省の有識者会議がまとめた2050年を見据えたエネルギー長期戦略の提言を踏まえ、30年に向けた指針に加え、50年への戦略を示した。新計画は今夏にも閣議決定される。温暖化対策の国際枠組みである「パリ協定」に基づき、日本は50年に温室効果ガスの排出量を8割削減する目標を掲げている。脱炭素化に向けて、これまで軽視されがちだった再生エネ転換に本腰を入れる姿勢は一歩前進であり、評価できる。だが長期的な電源ごとの発電割合や具体的な道筋は示さなかった。技術革新の進展の予想は難しいとはいえ物足りない。日本は原子力や火力を重視してきたため、再生エネの発電比率は15年で14・6%にとどまり、イタリア39・8%、スペイン35・3%、ドイツ30・6%などに比べ遅れが際立つ。コスト面でも16年に欧州平均で1キロワット時当たり10円の太陽光発電費用が日本では20円と割高だ。再生エネ転換の遅れを取り戻すには、価格引き下げや安定供給への技術開発が鍵となる。発電効率の向上に加え、発電量が天候に左右されやすいため需給の調整技術や高性能な蓄電池の開発、電力需要の大きい都市部への送電網の増強-といった課題を一つずつ着実に解決していかねばならない。最も疑問符が付くのは原発の将来像だ。東京電力福島第1原発事故後、脱原発を求める世論は根強く、「原子力政策の再構築」を掲げた。「可能な限り依存度を低減する」という現行の政府方針を維持して原発の新増設にも言及しなかったものの、安全性の高い原子炉の開発や核燃料サイクル政策を進めるという。原発のあり方が曖昧な状況が今後も続きそうだ。国内産業は発電コストの安い原発抜きに海外と勝負できないとの経済界の意向が透ける。だが福島事故後、安全対策費用がかさむ原発は割安な電源と言い難い。脱原発を鮮明にしてこそ、原発に頼らない新技術の開発や投資も強い動きとなろう。「化石燃料の効率的・安定的利用」にも固執した。効率の悪い石炭火力を廃止してCO2の排出が比較的少ないガス火力への移行は当然だが、火力発電の温存は脱炭素化に逆行する。これとは別に政府は先日、本年度から5年間程度で取り組む第5次環境基本計画を閣議決定した。環境省主導で再生エネ活用を推進する方針だが、経済活動への影響を懸念する経産省の戦略とは相いれない。双方の整合性が欠かせない。新計画でも再生エネの発電割合を30年度に22~24%という目標は据え置くが、原子力や火力に過度に依存していては再生エネへの転換は進まない。国際水準に比べて遜色なく、国民の理解を得られる再生エネ戦略の道筋を明確に示すべきだ。

*4-3:http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201805/CK2018051302000140.html (東京新聞 2018年5月13日) 【政治】<原発のない国へ>全電源、自然エネにできる 小泉純一郎元首相インタビュー
 小泉純一郎元首相(76)が本紙のインタビューに応じ、原発事故後も原発稼働を前提とする安倍政権のエネルギー政策を「反省がない」と批判するとともに、「原発支援のカネを自然エネルギーに向ければ、原発が供給していた30%程度の電力は10年で自然エネルギーで供給でき、将来、全電源を自然エネルギーでできる国になる」と、原発稼働を直ちにやめ、自然エネルギーへの転換を促進すべきだとの考えを強調した。小泉氏は「首相の権限は強い。もし首相が(原発ゼロを)決断すれば、自民党はそんなに反対しない」と政治決断を求めるが、安倍晋三首相では「やめられない」とも述べ、原発ゼロの実現には首相交代が必要だとの考えを強調した。原発ゼロの実現を期待できる政治家として河野太郎外相の名を挙げた。自らが進める原発ゼロに向けた運動と野党との連携については「自民党の首相がそういう(原発ゼロの)決断をすれば、野党は黙っていても喜んで協力する」と否定した。小泉氏は福島第一原発事故後、「安全で、コストが一番安く、永遠のクリーンエネルギーだという原発推進論者の三つの大義名分がうそだと分かった」と指摘。「(原発事故後の)七年間(事実上の)原発なしで一日も(大きな)停電がない。原発ゼロでやっていけることを証明している」と、原発ゼロは即時可能だと強調した。また、使用済み核燃料の最終処分場建設の見通しが立っていないことに関し、「処分場を見つけられない原発を政府が認めることが不思議で仕方がない」と厳しく批判した。使用済み燃料を再処理して、燃料として再利用する核燃料サイクル事業は「破綻している。永遠の夢の原子炉と言われたもんじゅは故障で幻の原子炉になった。まさに無駄遣いだ」と撤退を提唱した。安倍政権が進める原発輸出政策については「危険性があり、自分の国で(原発建設が)できないから外国に売り込もうとする発想が分からない」と批判。潜在的な核抑止力になるとして原発を推進する意見には「なんで抑止力というのか分からない。日本が核兵器を持てるわけがない。そういうことを言う人の理論が分からない」とした。このインタビューは十一日午後、東京都品川区の城南信用金庫本店で行われた。
<こいずみ・じゅんいちろう> 1972年の衆院選で初当選、連続12期務める。厚相、郵政相を歴任し、2001年に首相就任。戦後4位となる5年5カ月の長期政権を築いた。09年に政界引退。東京電力福島第一原発事故後、原発ゼロを訴えて講演活動を続ける。近著に「決断のとき-トモダチ作戦と涙の基金」。76歳。
◆世界2040年に再生エネ66%予測
 2011年の東京電力福島第一原発事故後、国内の全ての原発が運転を停止した。しかし政府は再稼働を急いでおり、現在は関西電力大飯原発(福井県おおい町)など5基が稼働中。発電に占める原発の割合は16年度には1.7%に低下したが、政府はこの数値を30年度には20~22%に高める目標をエネルギー基本計画で示している。政府は来月下旬にも決める新たな基本計画でも、この数値を維持する方針だ。一方、海外では福島の原発事故後、ドイツ、韓国が原発ゼロ政策に転換。依存度引き下げを目標に掲げる国も相次ぐ。米情報会社ブルームバーグ・グループによると、40年時点で世界全体の発電に占める原発の割合は3.5%に低下。逆に、再生可能エネルギーは66.3%に上がる見通し。

<対馬・沖縄の開発について>
PS(2018年5月15日追加):*5-1には、人手不足で新たに福岡から2人を雇い、近くに従業員用アパートを建てる計画だと書かれているが、韓国語のできる日本人より日本語のできる韓国人の方が多いため、日本語のできる韓国人を雇用した方が早いし、韓国人のニーズを把握しやすいのではないだろうか。さらに、対馬に来れば日本のものは何でも買えたり、日本の最先端医療・リハビリ・介護などを利用できたりするようにしておけば、中国・韓国などから買物や治療目的で定期的に来る人も増えるだろう。
 なお、*5-2の沖縄は、観光客は増えたものの在日米軍専用施設がまだ約70%も存在し、県民本位の経済開発になっていない。そのため、どうすれば長所を伸ばして県民本位の発展ができるかについて、内閣府特命担当大臣(沖縄及び北方対策、海洋政策)の福井氏を交えて沖縄開発総合計画を作り、実行すればよいと考える。福井氏は、国土交通省出身で沖縄担当大臣になる前に海洋基本法を中心となって作られ、地盤の高知県でも同じように地域振興の問題を解決しようとしておられるので、こちらから行った方が話が速いと考える。

*5-1:http://qbiz.jp/article/132240/1/ (西日本新聞 2018年4月20日) 韓国人客26万人に焦る過疎の町 「商機」でも…店、人手不足 対馬の玄関口・比田勝港
 近年、観光地として韓国人に人気の長崎県対馬市で、急増する旅行者の受け入れ態勢づくりが追い付かないでいる。特に北部の玄関口、比田勝(ひたかつ)港周辺では観光客向け施設や店舗が足りず、働き手不足にも悩む。地元の商工会は「韓国人観光客を照準にした創業相談も増えているが、十分なサービスを提供するには程遠い状況」と、過疎の