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2017.4.10 さまざまな分野のイノベーションとそれを可能にする教育・研究 (2017年4月12、13、14、15、16、17、19、21、23日追加)

      太陽電池        ミニ肝臓       新有田焼    宅急便   
                             2017.4.8   2017.4.5 
                             佐賀新聞    東京新聞

(図の説明:太陽電池は今一つデザインが悪かったが、外壁ユニットに組み込む型や薄膜型太陽電池も現れ、次第に建材の一部として使えるようになってきた。また、バイオテクノロジーではミニ肝臓ができ、再生医療が一歩進んだ。さらに、磁器は、素材を改良することによって複雑なデザインを表現しやすくなった。また、ヤマト運輸は、起業時は輸送におけるイノベーションの先駆者だったが、大企業となって従業員に「寄らば大樹の陰」という意識が出てきた時には、その企業は下り坂になりがちなため、気をつけるべきである)

(1)エネルギー
1)原発について 
 原発は、*1-1のように、東芝がウェスチングハウスの経営破綻を受け、インド・中国・英国の原発事業からも撤退を急いでいる。私は、他国の原発事業者が、フクイチ事故を受けて原発から撤退しようとしていた時に、その原発事業を高値で買収した日本企業は間が抜けており、撤退しようとしていた原発事業者は幸いだっただろうと推測する。

 それでも産経新聞は、2017年3月29日時点で、インドでの原発建設が白紙撤回となることを懸念していたり、「東芝が6割を出資している英子会社ニュージェネレーション株を売却したりすれば日英関係がぎくしゃくする可能性がある」などとしており、理科音痴が技術に鈍感で、とかく過去に戻したがる傾向があるのには呆れるほかない。

 このような中、*1-2のように、もんじゅは1兆円も投じながら殆ど稼働せずに破綻し、政府は昨年12月に廃炉を決めた。そのため、使用済核燃料を再利用するプルサーマル発電で出る使用済MOX燃料を処分する必要が出てきており、現在は原発の使用済核燃料プールに山ほど保管されているが、それは非常に危険であると同時に経済性もない。それでも佐賀県議会は、4月13日に「原発再稼働容認決議」を行うそうで、それは原発交付金が目的だが、これで事故が起これば、それこそ自己責任になるだろう。

2)電力・ガスの自由化
 *1-3のように、4月1日に家庭向けの都市ガス販売が自由化され、電力・ガスの自由化が完了する。これにより、地域の電力やガスの独占状態が和らいで競争が生じれば、これまでのように国民負担させて、エネルギー価格が産業や生活の足を引っ張ることはなくなるだろう。しかし、まだ制度はそこまで行ってはいない。
 
 私は、九電が進めているオール電化と再生可能エネルギーによる発電が定着すれば、海外にエネルギー関連の支払いをする必要がなくなるため、国民はずっと豊かになると考えている。

 また、「太陽光発電は・・・」と念仏のように同じことを言う人がいるが、*1-4のように、シャープは従来機に比べて容量が35%増の6・5キロワット時でありながらサイズをほぼ半分に抑えた蓄電池システムの新製品を発表し、「ゼロエネルギー住宅」への普及を期待しているそうだ。このほか、家庭用スマートメーターも投入するとのことだが、「ゼロエネルギー住宅」や「スマートメーター」は海外でも人気が出るだろう。特に、赤道に近い地域、日照時間の長い地域、戦争で破壊されて街の再生を要する地域でのゼロエネルギー住宅の普及や、高齢化した国でのスマートメーターを利用した見守りサービスは需要が高いと思われる。

(2)バイオテクノロジーと医療のイノベーション
 私が、1990年代の初め、夫に同伴してハンガリーのブダペストで開かれたヨーロッパ脊椎・脊髄病学会に出た時に注目された発表は、マウスの脊髄を一度切って再生させ、そのマウスが歩けるようになったというもので、この研究発表が終わった時には、そこにいた人の全員が立ち上がって(その研究者とマウスに)拍手した。何故なら、「脊髄や神経は再生しない」というのが医学の常識だったからである。

 あれから約25年、今ではヒトでそれができるかと言うと、*2-1のように、2017年2月10日、慶応大学の岡野教授らのグループが他人のiPS細胞を使って脊髄損傷を治療する臨床研究の計画を大学内の倫理委員会に申請した段階だ。しかし、他国では、本人の脂肪幹細胞を使って脊髄細胞を作って治したと言う人もいるし、ES細胞を使ったと言う人もあり、私は、いずれも可能性が大だと考えている。

 このほか、*2-2のように、ドナーを必要とする肝臓移植ではなく、iPS細胞からミニ肝臓を大量製造して肝不全のマウスに移植し、顕著な治療効果を発揮しているため、ヒトに応用できる日も近いだろう。

 また、*2-2、*2-3に書かれているように、複雑であるため造るのが難しいとされている膵臓や腎臓の製造も研究中だそうで、これが実用化されると、糖尿病で苦しみ続けたり、膨大な時間と費用を費やして人工透析を続けたりする必要がなくなるため、患者の福利が増すと同時に、医療費も節減される。

 このほか、*2-4のように、人間の臓器を動物の体内で作る方法も研究されているが、私は3Dプリンターができた現在では、動物の体を借りなくても、元に近い形のヒト臓器を作ることも可能だと考える。そのため、武器の開発よりも、このようなバイオテクノロジー製品の開発に予算をつけた方が、プリウスや自動運転車のように、世界でヒットして日本が株を上げることは間違いないだろう。

(3)中小企業とイノベーション
 それでは、伝統産業は古いままで、中小企業はイノベーションができないのかと言えば、決してそうではない。例えば、*3-1のように、有田焼では、佐賀県窯業技術センターが2014年度から3年がかりで開発して焼成時に縮まない陶土を開発し、薄さ、細さ、軽さを追求するデザイナー製品や収縮率の高い大型品が作れるようになる。これは、佐賀県を挙げて努力した結果だが、欲を言えば、強さや軽さも増してもらいたい。

 そして、*3-2のように、有田・伊万里の窯元・商社16社と気鋭のデザイナー16組が共同で手掛けた伝統と革新を融合させた有田焼は、世界28の国・地域で発行されているデザイン誌「エル・デコ」主催の「インターナショナル・デザインアワード」テーブルウェア部門で、世界的なデザイン賞を獲得したそうだ。新ブランドは2016年10月に販売を始め、現在は国内40社、海外は欧州を中心に10カ国で取引をしているそうで、これも県を挙げての推進の成果である。これは、他の伝統産業や中小企業にも応用できるだろう。

(4)運輸のイノベーション
1)JR北海道とJR九州の経営比較
 北海道旅客鉄道(株)《通称:JR北海道》は、1987年(昭和62年)4月1日に国鉄から鉄道事業を引き継いだ旅客鉄道会社の一つで、鉄道とバス事業を承継し、旅客鉄道株式会社と日本貨物鉄道株式会社に関する法律(JR会社法)による特殊会社で、独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構を介して日本国政府がすべての株式を所有している。

 そして、*4-1のように、30年でJR各社の明暗がはっきりし、JR北海道は、地域輸送を含めた基幹的交通機関として鉄道をどの程度必要としているかの役割を再検証し、鉄道をただ残しているだけでは無意味であるため、赤字路線は切るしかないとしているが、こういう解決策しか思い浮かばないのが国営の悪い点なのだ。

 一方、首都圏から同じくらいの遠距離にあるJR九州は、1987年の旧国鉄の分割・民営化によって発足してから29年で、東証1部に新規上場を果たした。もちろん、全体としては黒字だ。

 この結果の違いの原因は、JR北海道が列車やバスを走らせることしか考えていないのに対して、JR九州は、鉄道やそれぞれの街の一等地を所有している強みを活かして周辺不動産の開発を行い、不動産など非鉄道事業の売上高が全体の5割超を占めることである。そして、九州の食や観光を発信する観光列車も走らせており、JR九州の青柳社長が語る成長戦略は「中核である鉄道事業とそこから相乗効果を生み出す事業を両輪として、さらなる成長を目指していくこと」だが、これは北海道でも同じだろう。

 つまり、速やかに需要を把握し、さらに需要を発掘していくことが、国ではなく民が経営することの利点なのである。このよい例は、*4-5のように、ヤマト運輸ができてから、私たちは鉄道のチッキ(送る人は駅まで持って行き、受け取る人は駅まで取りに行かなければならなかった)を使わずに宅配便を使うようになり、さらに新しいサービスが増えて、その便利さからヤマトの宅配便は最高18・7億個となり、送る荷物が増えた(運輸部門のパイが大きくなった)ことである。これには、ITの普及や高齢化社会でインターネット通信販売のニーズが増えたことも影響している。

 そのため、JR貨物も、不便さを顧客に強いるのではなく、宅配便に劣らぬ便利さを持つようにすれば、安価に大量輸送できるため、客が増えると考えられる。

2)ドライバー不足に対するヤマト運輸の解決策は正しいか?
 ヤマト運輸が、*4-3、*4-4のように、宅配便の扱い量を抑えることを検討するそうで、これが、ドライバー不足とネット通販の拡大でドライバーの長時間労働に繋がっていることの解決策とのことである。

 しかし、この解決策は、利益獲得機会を労働力不足というネックで放棄しており、駅やロッカーで預かるのもサービスの低下に繋がる。その一方で、通販で買うものの中には軽いものも多いため、女性配達員を増やしたり、OBの高齢者を再雇用したりすればよい思われる。

 また、時間指定は現在ほど細かくしなくてもよいが、「配達して欲しいニーズの高い時間帯」があり、職場なら9時~17時、自宅なら18時以降か休日が多い筈だ。そのため、配達して欲しいニーズの高い時間帯に絞って荷物を受け付ければ無駄足が減り、生産性が上がると考える。

 なお、お茶・水・ジュースなどのように、重たくて買って帰るのが大変なため、アマゾン・アスクル・楽天などで購入して配達してもらうものもある。これを運ぶのは男性の方がよいかも知れないが、一人でいる家に行っても安全が確実な人なら、外国人でもかまわないだろう。

(5)イノベーション可能な教育・研究
 このようなイノベーションを起こすには、何も知らない人が想像で行うのではなく、知識を持った人が、国内だけでなく世界で起こる刺激に正しく反応して、正解を導くことができる創造力が必要なのである。

 そのため、*5-1のように、小学校から英語を学び、世界の情報を自在に手に入れることができるようになることは重要だ。また、最近では、世界の学会の会報や新聞・雑誌は世界共通語である英語で開示されているため、それを読めれば高校生でも大学生でも、簡単に最先端の情報を手に入れることができる。この点で、日本人は、インド・シンガポール・フィリピンなどの人よりも不利になっている。
 
 また、私の経験では、日本では日本語での教育が徹底しているため、専門用語の英語は別に覚えなければならない。そのため、最初に学ぶ時に日本語と英語の両方を教えるようにするとか、課目によっては英語で授業するようにした方が、苦労少なく世界で通用する人になれるのではないかと考える。

 さらに、*5-2のように、九州産業大学が、九州の伝統工芸品の販売戦略などを調査研究する「伝統みらい研究センター」を4月1日に設立したそうだが、価値ある伝統工芸を現在でも使い勝手の良い製品にするために、これは、自前での研究開発が難しい中小企業が多い業種でとりわけ重要なことである。

(エネルギー)
*1-1:http://www.sankei.com/economy/news/170329/ecn1703290053-n1.html
(産経新聞 2017.3.29) インドや英国の撤退も急ぐ 原発輸出に打撃
 東芝は巨額損失を出し続けてきた米原発子会社ウェスチングハウス・エレクトリック(WH)の経営破綻を受け、米国のほかインドや中国、英国で手掛ける原発事業からの撤退作業を急ぐ。保有するWHと英原発子会社の株式を早期に売却できるかが今後の焦点だ。インドでは、WHが計6基の原発を建設することで昨年6月に米国とインドの両政府が合意した。今年6月までに契約する方針だが、白紙撤回となる懸念がある。昨年11月にインドと原子力協定を結び、原発輸出をもくろんでいた日本政府も打撃を受けそうだ。東芝は、6割を出資する英子会社ニュージェネレーションを通じて英北西部ムーアサイドに原発3基を建設する計画だったが、WH問題を踏まえて方針を転換し、英子会社株も売却する考えだ。ただ、東芝が手を引けば日英関係がぎくしゃくする恐れもある。中国ではWHが三門原発(浙江省)と海陽原発(山東省)で原子炉を2基ずつ製造している。最も早い稼働予定は三門の1号機だが、当初計画から約3年遅れている。東芝はWH株売却により距離を置く考えだ。

*1-2:http://qbiz.jp/article/107011/1/ (西日本新聞 2017年4月6日) もんじゅ「破綻」後議論なく プルサーマル、課題山積 玄海再稼働13日「決議」へ
 佐賀県議会が13日にも「容認」を決議し、再稼働に向けた最終局面に入る九州電力玄海原発3、4号機。このうち3号機は、使用済み核燃料を再利用する国内初のプルサーマル発電だ。同発電と高速増殖原型炉は国が掲げる核燃料サイクルの2本柱。高速増殖原型炉もんじゅの廃炉が決まり、プルサーマル発電を巡る環境も激変している。3号機の再稼働に向けた議論に核燃料サイクルの「破綻」を受けた視点は抜け落ちている。もんじゅは原発の使用済み核燃料を再処理して取り出したプルトニウムと、ウランの混合酸化物(MOX)燃料を使い、発電しながら消費した以上の燃料を生み出す「夢の原子炉」。約1兆円を投じながら、トラブル続きでほとんど稼働しないまま政府は昨年12月に廃炉を決めた。一方、プルサーマル発電はMOX燃料を使うところまでは同じだが、使用済みMOX燃料は処分する必要がある。もともと高速増殖炉実用化までの「つなぎ」の位置付けだった。核兵器にも転用できるプルトニウムを日本は48トン保有し、国際社会から厳しい目が注がれる。もんじゅの廃炉で、プルトニウムを消費できるのは事実上プルサーマル発電のみとなった。プルサーマル発電は核燃料サイクルの「つなぎ」から主役に躍り出たと言える。
   §    §
 プルサーマル発電には固有の課題も多い。使用済みMOX燃料は、普通の使用済み核燃料に比べ発熱量が大きいが、国は処分方法をいまだに示していない。当面、原発の使用済み燃料プールに保管するしかない。経済性も疑問視され、資源エネルギー庁の試算によると、1キロワット時当たりのコストは普通の原発に比べ1・5倍。燃料となるプルトニウムは半減期が長い上、毒性が強く体内に取り込まれると発がんの危険性も高いため不安視する声も多い。導入への同意を検討する際には県も安全性を問題視し、2005年に公開討論会を実施。その後、九電による「やらせ問題」が発覚した経緯がある。再稼働への意見を聞く県の第三者委員会の柳瀬映二委員(62)は「プルサーマルは危険性が大きい。公開討論会でやらせがあっただけに不安視する県民の声をしっかり受け止めるべきだが、委員会で議論は深まらなかった」と話す。徳光清孝県議は「使用済みMOX燃料は地元で保管し続けないといけない。県は先行きの議論に絡み、国と協議するべきだ」と求めた。ほぼ全域が玄海原発から30キロ圏内にある同県伊万里市の塚部芳和市長(67)は「プルサーマルの議論はあいまいになったままだ。国策といえど、県に降りかかっている問題であり、あらためて是非を検証するべきだ」と提言した。
*プルサーマル発電 一般の原発で使った使用済み核燃料を再処理してプルトニウムを分離し、ウランと混ぜたMOX燃料を使う。2009年に玄海原発3号機で国内初の営業運転が始まった。福島第1原発事故前、電気事業連合会は15年度までに全国16〜18基で導入する計画だったが、現在稼働しているのは四国電力伊方原発3号機のみ。

*1-3:http://qbiz.jp/article/106532/1/ (西日本新聞 2017年3月30日) 西部ガスVS九電 対決激化 4月1日 ガス販売自由化スタート
 4月1日に家庭向けの都市ガス販売が自由化される。福岡、北九州の両都市圏に新規参入する九州電力が、ガスと電気のお得なセット割を打ち出すと、西部ガスも対抗値下げに踏み切るなど、早くも対決が過熱している。両社の料金とサービスを比較し、専門家に選択のポイントを聞いた。両社はお互いの現行料金からの割引率を公表しているが、それぞれの新料金プランは比較していない。西日本新聞は4人家族の新料金プランを比べるため、ガスと電気のセット料金の試算を両社に求めた。条件は電気使用量は月420キロワット時(契約容量40アンペア)、ガスは月41立方メートルと設定した。現在のガス料金は、西部ガスの一般契約が月1万301円。電気は、九州電力の従量電灯Bが月1万1280円で、光熱費は月額合計2万1581円となる。新料金メニューでは、西部ガスのガスと電気のセット割を契約した場合、ガス9757円、電気1万1082円で、計2万839円となる。一方、九電のセット割は、ガス9401円、電気1万1140円で、計2万541円。九電が1・43%、298円安い計算になった。年間では、3576円の差となる。ただセット割以外にも、西部ガスにはファンヒーターや床暖房など各家庭で使うガス機器によってお得になるプランが複数ある。九電は、電気代が大幅に安くなるオール電化を顧客に優先的に勧めている。また両社は、暮らし関連の支援サービスを有料で提供している。西部ガスの場合はセット割などの新料金メニューに契約すると、ガス機器が故障した場合の出張料と工賃が無料になる。水漏れやガラス割れ、鍵のトラブルの応急措置も2年間無料。いずれも本来は月324円なので、合わせて月648円お得になる。西部ガスは通常、すべての契約世帯を平均した月23立方メートルで試算。月41立方メートルが4人家族のモデルとは言えないと説明している。
●使用量把握し、自分に合う契約を
 料金プランを選ぶポイントについて、家庭の光熱費や省エネに詳しい消費生活アドバイザー・環境カウンセラーの林真実さんに聞いた。
     ◇   ◇
 電気とガスのセット割が始まる。西部ガスもかなり安くしてきたが、料金面では九電に分があるように見える。ただ、両社が出している料金比較は、あくまで平均的なモデルケースだ。実際は、その人その人で使い方が違う。自分自身の使い方を振り返り、それに合わせて、どちらがお得かを考えてほしい。まず過去の使用量を見てほしい。消費者の中には金額しか見ておらず、使用量を知らない人が多い。時間帯や季節での使用量の違い、機器のエネルギー消費量などを調べてほしい。効率が良く、無駄がないか。見える化することだ。例えば照明をLEDに変えるなど、料金プランより前に安くする方法がある。その上で料金比較サイトでシミュレーションするのがいい。企業独自のサイトもある。さらに、付加サービスもポイントになる。西部ガスの「住まいのトラブルかけつけサービス」2年間無料は、九電にはない。会社の社会的貢献や環境配慮など、社会的な姿勢も重要だ。経営方針、電源構成、ボランティアなど、消費者が勉強してほしい。好き嫌いもあるだろう。消費者が、ガスを購入する企業を選べるようになったのは画期的だ。今までは殿様商売的なところもあったが、消費者を向いてきたのはメリットといえる。ただ、セット割などが出てくる分、非常に複雑になり、自己責任の要素も生まれている。しょっちゅう契約を見直し、変えてもいい。

*1-4:http://qbiz.jp/article/107092/1/ (西日本新聞 2017年4月6日) シャープ蓄電池の販売2倍へ 住宅用新製品でシェア拡大狙う
 シャープは6日、2017年度の住宅用蓄電池の販売台数を1万台に伸ばし、16年度から倍増させることを目指すと明らかにした。エネルギー消費量が実質的にゼロになる省エネ住宅「ゼロエネルギー住宅」の普及が追い風になると期待し、新製品を投入してシェア拡大を狙う。シャープは同日、従来機に比べ容量が35%増の6・5キロワット時でありながらサイズをほぼ半分に抑えた蓄電池システムの新製品を発表。場所を取らずクローゼットなどにも設置できるのが売りだ。変換効率を高めた太陽光パネルや家庭のエネルギー管理システム(HEMS)の新製品も投入する。製品を組み合わせて販売して稼ぐ戦略で、担当者は「ゼロエネルギー住宅に対する国などの補助金も一つの起爆剤になる」と話す。ただ、再生可能エネルギーの買い取り価格下落の影響で太陽光パネルの需要は低調だ。割高で原材料を調達したことも響き、シャープの太陽光事業は赤字が続いている。パナソニックや京セラなどとの競争も激しく、計画通り売り上げが拡大するか不透明な面もある。

<医療のイノベーションとバイオテクノロジー>
*2-1:http://digital.asahi.com/articles/ASK2B4STGK2BULBJ008.html (朝日新聞 2017年2月10日) iPSで脊髄損傷治療、臨床研究を申請 慶応大
 慶応大学の岡野栄之(ひでゆき)教授らのグループは10日、他人のiPS細胞を使って脊髄(せきずい)損傷を治療する臨床研究の計画を大学内の倫理委員会に申請した。2018年前半の手術を目指す。計画では、京都大学iPS細胞研究所の「iPS細胞ストック」から供給される細胞を、神経細胞になる「神経前駆細胞」に変化させ、脊髄の損傷部分に注入する。交通事故などで脊髄損傷を起こしてから2~4週間の患者が対象で、18歳以上の7人に移植し、安全性やまひした手足などを動かす機能の回復具合を調べる。iPS細胞ストックでは、拒絶反応が起きにくい特殊な免疫の型を持つ提供者の血液からiPS細胞をつくり、備蓄している。今後、学内の倫理委員会と他の委員会での技術的な審査を経て、厚生労働省で計画が了承されれば、来年前半にも移植を実施したいという。まずは損傷から時間があまり経っていない患者を対象にするが、将来的には慢性期の患者にも広げたい考えだ。グループは、脊髄損傷を起こした小型のサルのマーモセットにヒトiPS細胞からつくった細胞を移植し、歩けるまでに回復させることに成功している。脊髄損傷は、国内に現在約20万人の患者がおり、毎年新たに5千人がなっているとみられる。リハビリ以外に確立された治療法はなく、岡野教授は「たくさんの患者が待っている。良い細胞を使って、治療につなげられるよう研究をすすめたい」と話す。

*2-2:http://toyokeizai.net/articles/-/59601 (東洋経済 2015年2月3日)移植医療に朗報!「臓器製造システム」の実力、"ミニ肝臓"で肝不全患者を治療へ
 「谷口君、肝臓を作れませんか?」。1989年12月、研修医1年目だった横浜市立大学の谷口英樹教授は、恩師で筑波大学の教授だった故・岩崎洋治氏からこう尋ねられた。岩崎氏は1984年に日本初の脳死患者からの膵・腎同時移植を行い、殺人罪で告訴されるなど波乱の中で移植医療を開拓した臓器移植の第一人者。谷口教授は岩崎氏を間近で見ながら、自ら外科医として肝臓移植などを執刀してきた。「ドナー臓器の不足を抜本的に解決しなくては移植医療の未来はない」――冒頭の問いかけに込められた岩崎氏の強い危機意識を、谷口教授も共有していた。
●iPS細胞からミニ肝臓を大量製造
 その日から25年余り経った今、肝臓をはじめとする臓器の作成は実現可能な夢になりつつある。横浜市立大学の先端医科学研究センター内では、世界唯一の「ヒト臓器製造システム」の構築が進む。全自動ではなく、人の作業をロボットが支援する「トヨタ方式」を採用してiPS細胞(人工多能性幹細胞)から直径5ミリメートルほどの“ミニ肝臓”を大量に作り、将来的に肝不全の治療に役立てる予定だ。谷口教授の研究グループは臓器作りで世界をリードしてきた。2013年にはiPS細胞からの血管構造を持つ人の肝臓の作成に成功。世界初の小さな立体臓器が科学界に与えた衝撃は計り知れない。それまで、世界の研究者はiPS細胞から「肝細胞」を作ることに固執していた。細胞の分化の分子生物学的なメカニズムを基に、iPS細胞にいろいろなタンパク質を段階的に振りかけて肝細胞を作る。それを患者に注射して病気を治そうという考え方だ。だがこの方法には、最終的に作られた細胞の品質がとても低く、大量生産が難しいという難点があった。治療法としても、臓器の機能を失った患者に対し、臓器移植よりも良い結果が得られるのかは不明だった。「外科医としての経験から、細胞を注射することで本当に患者を治せるのか疑問を抱いていた。一方、臓器移植は起死回生の手段であり、瀕死の患者が翌日には回復する高い治療効果を目の当たりにしてきた」(谷口教授)。そこで谷口教授らは発想を転換。「肝細胞」ではなく「肝臓」を作り出すことを目標に据え、胎児内で肝臓が作られるときに起こる細胞同士の相互作用の再現を試みた。iPS細胞から肝細胞になる手前の前駆細胞を作り、そこへ血管のもととなる内皮細胞、接着剤の役割を担う間葉系細胞の2種類の細胞を混ぜて培養。すると、すべての細胞が48~72時間でボール状に集まってきた。これが網目状の血管構造を持つミニ肝臓だ。ミニ肝臓をマウスに移植すると、血液が流れ込み、マウス体内に人に特有なタンパク質が分泌され、人の肝臓でしか代謝されない薬物の代謝産物が産生。ミニ肝臓が人の肝臓の機能を持っていることが示された。また、肝不全のマウスに移植すると、30日後の生存率が何もしなかったマウスの約3割に比べて約9割に向上。ミニ肝臓はマウスにおいて顕著な治療効果を発揮した。
●膵臓や腎臓の製造も研究中
 人での臨床研究は、子どもの肝臓病を対象として2019年をメドに開始する。ミニ肝臓が大量に必要になるため、クラレと量産技術を共同開発中。ほかの企業とも連携して「ヒト臓器製造システム」の整備を進め、臨床研究の準備を行っている。ミニ肝臓の次のフロンティアの一つは、肝臓以外のミニ臓器への展開だ。現実的なターゲットとして、血糖値を下げるホルモン、インスリンを分泌する膵臓や、腎臓の研究が進められている。もう一つは、ミニでない丸ごとの臓器を作ること。線維化して細胞が生着するスペースのない肝硬変のような病気や、全体の構造があって初めて機能を持つ心臓、子宮、肺等の病気などは、ミニ臓器では治療できず、丸ごとの臓器の移植が必要となることが多い。この分野は米国のハーバード大学やマサチューセッツ工科大学などに莫大な研究資金が投下されており、世界的にも注目が集まる。急ピッチで進む臓器研究だが、再生医療の中で、今まさに人への応用が進んでいるのは細胞が主役の方法だ。昨秋には理化学研究所の高橋政代プロジェクトリーダーらによって目の難病である加齢黄斑変性の患者にiPS細胞から作った網膜の細胞の世界初の移植手術が行われた。今後もパーキンソン病や心不全の患者にiPS細胞から分化させた細胞を移植する臨床研究が計画されている。立体臓器が活躍するのはそのさらに先の段階だ。谷口教授は「複雑な臓器形成は再生医療の中では最も困難なテーマの一つ。だが、重い臓器不全の患者には臓器移植以外に既存の治療法がなく、非常に強い医療ニーズがある」と強調する。肝臓移植の場合、ドナー臓器の待機中に死亡する患者は世界で年間2万5000人超。「究極の医療」として、臓器作りにかかる期待は大きい。

*2-3:http://mainichi.jp/articles/20170126/ddm/041/040/155000c (毎日新聞 2017年1月26日) 臓器移植 世界初 ラットで膵臓作り、糖尿病マウスに 異種で作製、治療成功 東大医科研チーム
 マウスのiPS細胞(人工多能性幹細胞)などから膵臓(すいぞう)をラットの体内で作り、その組織を糖尿病のマウスに移植して治療に成功したと、東京大医科学研究所の中内啓光教授らの研究チームが25日付の英科学誌ネイチャー電子版に発表した。異なる種の動物の体内で作った臓器を移植し、病気の治療効果を確認したのは世界初という。ラットはマウスより大きく、種が異なる。ブタなどの体内でヒトの臓器を作って移植する再生医療の実現につながる成果で、山口智之・東大医科研特任准教授(幹細胞生物学)は「今後は、よりヒトに近いサルの細胞で臓器を作る研究に進みたい」と話した。チームは、遺伝子操作で膵臓ができないようにしたラットの受精卵に、マウスのiPS細胞やES細胞(胚性幹細胞)を注入し、ラットの子宮に戻した。誕生したラットの膵臓はマウスのもので、一般的なマウスの膵臓の10倍ほどの大きさに育った。育った膵臓から、血糖値を下げるインスリンなどを分泌する膵島(すいとう)を取り出し、糖尿病を発症させたマウスに移植したところ、20日後には血糖値が正常になり、1年後でもその状態が維持された。がん化などの異常は確認されていないという。  ラットの体内で育った膵島を調べたところ、血管にラットとマウスの細胞が混じっていた。しかし、マウスに膵島を移植して約1年後に移植部位を調べると、ラット由来の細胞はなくなっていた。

*2-4:http://digital.asahi.com/articles/ASK2K74SFK2KULBJ01Q.html (朝日新聞 2017年2月23日) 人間の臓器、動物から作る 米で研究先行、日本は禁止
 iPS細胞やES細胞を使い、動物の体内でヒトの臓器を作る研究が進んでいる。1月には米国のグループがヒトの細胞が混じったブタの胎児の作製に成功した。日本では現在、このような研究が指針で禁じられており、改定に向けた議論が続いている。
■ブタ受精卵にiPS細胞
 米ソーク研究所(カリフォルニア州)のチームは1月、ヒトのiPS細胞をブタの受精卵に入れ、ヒトの細胞が混じったキメラ状態の胎児を作製したと発表した。米科学誌セルに掲載された論文によると、ブタの受精卵を、分裂が進んだ「胚盤胞(はいばんほう)」の状態まで成長させ、iPS細胞を注入。子宮に戻した1466個のうち、186個が胎児に成長した。妊娠3~4週間後に調べると、67個の筋肉などで、ヒトの細胞が混じっているのが確認できた。心臓や肝臓、膵臓(すいぞう)、腎臓などの複雑な臓器は、iPS細胞などから直接作ることが難しい。そのため動物の体内を利用して作る研究が世界中で進む。発生の仕組みがよく知られたブタは、ヒトと臓器の大きさが近く、最有力候補だ。東京大とスタンフォード大で、ブタなどでの膵臓作製の研究に取り組む中内啓光教授(幹細胞生物学)らは1月、ラットの体内で、マウスの膵臓を作り、糖尿病マウスに移植して治療することに成功したと発表した。遺伝子改変で膵臓を作れなくしたラットの胚盤胞に、マウスのES細胞を注入し、子宮に戻すとマウスの膵臓を持ったラットが生まれた。ただ、ラットとマウスが同じネズミ科で、受精から誕生までの妊娠期間がほぼ同じなのに対して、ブタの妊娠期間はヒトの半分以下。種としても離れており、キメラを作るのは簡単ではないとみられる。実際、ソーク研究所の作ったブタ胎児で確認されたヒトの細胞はブタの細胞10万個当たり1個程度だったという。中内さんは「成長すれば排除されてしまう可能性もある。改めてブタとヒトのキメラを作る難しさを示した」と指摘する。キメラになる要因の一つは受精卵の分裂速度にある。分裂の速度が違うと、片方だけの個体になったり、排除されたりしてしまう。動物の生殖に詳しい明治大の長嶋比呂志教授(発生工学)は「ブタの発生と整合性を持たせるため、注入するヒトの細胞の分化段階をいかに調整するかが今後の研究のポイントになるだろう」と話す。
■倫理的な懸念
 日本では、クローン技術規制法に基づく文部科学省の指針で、ヒトのiPS細胞やES細胞を入れた動物の受精卵を子宮に戻し、子どもを作ることは禁じられている。ヒトのような意識や人格を持った動物が生まれかねないといった倫理的な懸念があったためだ。そのためソーク研究所が実施したような実験は今のところできないが、規制が厳しいという声もあり、文科省の委員会で改定に向けた検討が進んでいる。昨年1月にまとまった科学的な検討結果では、臓器を作製できる可能性がある点では、iPS細胞などから直接作る他の手法より「優位」とし、子宮に戻すことによる研究の意義が示された。今年1月に了承された倫理的観点のまとめでは、臨床用ヒト臓器を作製する段階までの研究は「社会的妥当性が認められる可能性が高い」とされた。今後、作製が認められる臓器や、使う動物などについて議論する予定だが、「丁寧な説明で国民に許容されるか、総合的な検討が必要」としている。
     ◇
〈キメラ〉 遺伝子の異なる細胞を一つの体にあわせもつ生物。ギリシャ神話に登場するライオンの頭、ヤギの胴、ヘビの尾を持った怪獣に由来する。遺伝子が混じりあってできる雑種とは異なる。例えばオスのロバとメスのウマの交配から生まれるラバは、両方の遺伝子が混じりあった雑種で、キメラではない。

<中小企業とイノベーション>
*3-1:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/417521 (佐賀新聞 2017年3月29日) 焼いても縮まぬ陶土 県窯業技術センター開発、薄さ、複雑さ一層追求へ
 佐賀県窯業技術センター(西松浦郡有田町)は28日、焼成時に縮まない陶土を開発したと発表した。複数の鉱物を配合し、変形の原因になる10%程度の収縮を抑えた。薄さや細さを追求するデザイナー製品、収縮率が高い大型品が作れるようになる。担当者は「世界最高の精度を持つ陶磁器材料」と説明し、軽量食器やフィルターなどの新製品開発にもつながりそうだ。県の有田焼創業400年事業の一環で、2014年度から3年がかりで開発した。陶土に配合された複数の鉱物が高温で結晶化し、隙間が埋まらないような働きをして縮まなくなるという。これまで焼成時に割れていた複雑な形状でも製作が可能になるという。0・03ミリ以下の微細な穴が空き、従来の陶磁器より3割軽くなるため、軽量食器にも使える。吸水性にも優れ、アロマ用品やコーヒーフィルター、吸音材にも活用できるとしている。従来の磁器と同じ温度で焼くことができ、既存の設備を使用できる。配合した鉱物も廉価で、陶土の生産コストは変わらないという。県は製法と材料の特許を3月に出願しており、県内窯元など約500社だけが使えるようにする。窯業技術センター陶磁器部の蒲地伸明研究員は「焼成時の変形予測の労力を軽減し、デザイナーが求める創造的な形状に対応できるようにもなる。メーカーにとって恩恵は大きいと思う」と話した。

*3-2:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/420198
(佐賀新聞 2017年4月8日) 有田焼、新ブランドに最高賞 世界的デザイン賞
■伝統と革新「融合」
 有田焼の窯元・商社や国内外のデザイナーが共同開発した新ブランド「2016/」が、世界的なデザイン賞のテーブルウェア部門でグランプリを獲得した。高いデザイン性に加え、伝統工芸と革新的な創作者との「融合」で、産業振興の新たな可能性を示したことが高く評価された。
 世界28の国や地域で発行されているデザイン誌「エル・デコ」が主催する「インターナショナル・デザインアワード」で受賞した。新ブランドは昨年の有田焼創業400年に合わせ、有田や伊万里の窯元・商社16社と気鋭のデザイナー16組が共同で手掛けた。オランダやドイツのデザイナーが佐賀を訪れ、形状や色合いを窯元と調整しながら2年がかりで完成させた。日本時間の7日、イタリアの国際見本市「ミラノ・サローネ」に合わせて授賞式があり、商品を取り扱う2016株式会社(有田町)の百田憲由社長らが出席した。山口祥義知事は「デザインの力が地域を変えると信じてこのプロジェクトに取り組んだ。『2016/』『ARITA(アリタ)』が世界中の人に愛され続けることを祈っている」とコメントを寄せた。同社によると、新ブランドは昨年10月に販売を始め、現在は国内40社、海外は欧州を中心に10カ国で取引をしているという。今年は中国や米国にも販路を拡大する計画で、「受賞を追い風にブランドの確立を加速させたい」と話す。西松浦郡有田町の百田陶園の陶磁器ブランド「1616/arita japan」も2013年、テーブルウェア部門でグランプリを受賞した。

<運輸のイノベーション>
*4-1:http://toyokeizai.net/articles/-/160649 (東洋経済 2017年3月2日) 北海道「本当に残すべき鉄道」はどこなのか、JR30年「公共交通のあり方」再検討も必要だ
 1987年4月1日に国鉄がJRに変わってから間もなく30年になる。国鉄改革は概ね成功したというべきであろうが、ここにきてJR北海道の経営は風雲急を告げている。この連載の記事一覧はこちら 2016年に留萌本線の留萌-増毛間廃止が発表されたところまでは驚かなかったが、同年11月にJR北海道が「単独では維持することが困難な線区」を発表したときには、ついにこの日が来たか、という印象であった。
●30年でJR各社の格差がはっきり
 JR北海道が発表した「単独維持困難な路線」(JR北海道発表の資料をもとに一部簡略化して作成)JR北海道の発表によれば、「単独では維持することが困難な線区」は13線区・1237.2キロメートル、「単独で維持が可能な線区」は11線区1150.7キロメートル(札幌までの北海道新幹線予定区間も含む)とされている。JR北海道は「単独で維持困難」とされた区間全てを廃止すると現段階で明言してはいないが、今後、路線の存廃の議論は不可避である。30年が経過し、JR各社が独自色を打ち出しているのはよいことだが、経営状態の大きな格差は看過できるものではない。JR北海道が抱える経営難にどう対応すべきなのか、国鉄からJRへと分割民営化されたときの法律も見ながら考えてみることにしよう。JRの前身である国鉄は、1964年以降慢性的な赤字に悩まされるようになり、対応策として1980年に日本国有鉄道経営再建促進特別措置法(以下「国鉄再建法」)が成立する。
○その第1条「目的」では以下のように規定されていた。
この法律は、我が国の交通体系における基幹的交通機関である日本国有鉄道の経営の現状にかんがみ、その経営の再建を促進するため執るべき特別措置を定めるものとする。
○そして第2条では、「経営再建の目標」として、
日本国有鉄道の経営の再建の目標は、この法律に定めるその経営の再建を促進するための措置により、昭和60年度までにその経営の健全性を確保するための基盤を確立し、引き続き、速やかにその事業の収支の均衡の回復を図ることに置くものとする。
○第3条では、そのために「国鉄と国が取るべき責務」として、
日本国有鉄道は、その経営の再建が国民生活及び国民経済にとつて緊急の課題であることを深く認識し、その組織の全力を挙げて速やかにその経営の再建の目標を達成しなければならない。国は、日本国有鉄道に我が国の交通体系における基幹的交通機関としての機能を維持させるため、地域における効率的な輸送の確保に配慮しつつ、日本国有鉄道の経営の再建を促進するための措置を講ずるものとする。
と、それぞれ定められた。
●組織の維持が前提だった再建計画
 国鉄には「我が国の交通体系における基幹的交通機関」としての重要な立場があり、国鉄が破綻した場合の影響は計り知れない。そのためにも膨大な赤字を抱える国鉄の経営再建は急務とされ、国鉄のみならず国にも国鉄再建への責務が確認された。国鉄は組織を挙げて経営再建目標を達成することを求められ、国は「基幹的交通機関」である国鉄の機能を維持させ、地域における効率的な輸送の確保を配慮して経営再建促進の措置を講ずることが責務とされた。国鉄は、国鉄再建法で廃止対象とされた特定地方交通線以外の路線を維持して引き続き国の基幹的交通機関としての役割を担うべきとされ、国もそれを支援せよ、とされたのである。この段階では、未だ国鉄は組織の維持を前提に再建計画が進められることになっていた。ところが経営改善計画は進まず、国鉄のままでは十分な経営改善は図れないと判断されることになり、1986年に分割民営化につながる日本国有鉄道改革法(以下「国鉄改革法」)が成立する。そのことが第1条として以下のとおり書かれている。この法律は、日本国有鉄道による鉄道事業その他の事業の経営が破綻し、現行の公共企業体による全国一元的経営体制の下においてはその事業の適切かつ健全な運営を確保することが困難となっている事態に対処して、これらの事業に関し、輸送需要の動向に的確に対応し得る新たな経営体制を実現し、その下において我が国の基幹的輸送機関として果たすべき機能を効率的に発揮させることが、国民生活及び国民経済の安定及び向上を図る上で緊要な課題であることにかんがみ、これに即応した効率的な経営体制を確立するための日本国有鉄道の経営形態の抜本的な改革(以下「日本国有鉄道の改革」という。)に関する基本的な事項について定めるものとする。国鉄のような全国組織かつ非効率な経営主体に任せていても事業の健全な運営が困難であるので、輸送需要の動向に的確に対応する経営主体の下に国鉄が保有していた鉄道路線を移管させる、と、方針の大転換が図られたのである。
●累積債務30兆円超えからの出発
 そして、国鉄から鉄道事業を継承するJRについては、国鉄改革法第6条及び第7条において、
国は日本国有鉄道が経営している旅客鉄道事業について、主要都市を連絡する中距離の幹線輸送並びに大都市圏及び地方主要都市圏における輸送その他の地域輸送の分野において果たすべき役割にかんがみ、その役割を担うにふさわしい適正な経営規模のもとにおいて旅客輸送需要の動向に的確に対応した効率的な輸送が提供されるようその事業の経営を分割するとともに、その事業が明確な経営責任の下において自主的に運営されるようその経営組織を株式会社とするものとする。とされ、旅客事業は6つの会社に分割することとされた(第7条はJR貨物)。あわせて同日、旅客鉄道株式会社及び日本貨物鉄道株式会社に関する法律(「JR会社法」)が成立し、1987年4月1日のJR発足につながっていく。このとき、JR北海道など経営基盤の脆弱性が懸念される会社には、運用益で経営を支えるための経営安定基金が用意された(JR北海道は6822億円)。なお、JR発足当時、国鉄の累積債務は30兆円を大きく超えるに至っていた。JRが発足したとき日本はバブル経済を享受していた。発足1年後の1988年3月には青函トンネル開業、寝台特急「北斗星」の運転開始などがあり、JRの滑り出しは上々であった。しかし、それから30年が経過し、いまやJR北海道は経営難に直面している。もし、JR北海道のいう「単独で維持することが困難な路線」が、もはや国鉄改革法にいう地域輸送も含めた「国の基幹的交通機関」としての地位を失っていて、かつ回復させる必要もない、といえる路線なのであれば、国鉄改革法の趣旨からすればその路線を維持することに合理性はなく、廃止も一つの選択肢であろう。一方で、その路線が「国の基幹的交通機関」としての地位を未だ失っていないというのならば、その路線を維持することができないJR北海道は、むしろ「国の基幹的交通機関」を維持する組織として国鉄改革法から期待されたその経営能力を喪失しつつあるともいえる。
●JR北海道の「役割」再検証を
 そうだとすると、国鉄改革法が定めていた「主要都市を連絡する中距離の幹線輸送、大都市圏の輸送、地方主要都市圏における輸送、そのほかの地域輸送」という視点からJR北海道の全路線が果たすべき役割を今一度検証し、「その役割を担うにふさわしい経営規模」のもとで、「明確な経営責任の下において自主的に旅客輸送の動向に的確に対応する効率的な輸送を提供」できているかどうか、再検討をするべきであろう。そして、少子高齢化社会の進展に加え、厳しい気候や、人口が広く薄く点在しているという地理的条件など北海道特有の事情からJR北海道の経営が厳しくなるのは仕方がない、というのならば、現状のJR北海道の組織や経営規模がもはや適正ではないということである。全くの私見であるが、JR北海道として維持すべき路線は、民間企業が責任をもって運営できる範囲、すなわち収支がほぼ均衡する輸送密度8,000人以上の札幌圏(札幌を中心にして小樽、旭川、室蘭程度まで)のみに縮小することも考えるべきである。2015年度のデータをもとにすると、札幌圏に限れば、営業係数(100円の売上に必要な経費を示す指数)は管理費を勘案して111、管理費を勘案しなければ96と黒字になる。営業損益は管理費を勘案すると50億円の損失になるが、管理費を勘案しなければ190億円の利益を計上できる。運用益が年に350億円に達する経営安定基金は、50億円の赤字を埋められる程度に一部を残してJR北海道単独での札幌圏の鉄道事業の支援に使うか、上下分離方式を採用したうえで施設保有者に必要な範囲で譲渡する、という方法もあろう。そして、輸送密度8,000人を下回る路線は、鉄道として残すべきか再検討するべきである。巨額の赤字が見込まれ、かつ限定的な域内輸送の役割しか果たせておらず、冬季の状況を考えても代替交通手段で足りるという路線は廃止することになる。その一方、貨物列車や都市間高速列車のために不可欠という理由や、特別な価値があり、公共財としての側面が強く公的資金を投入しても維持するべきとされる路線は、必要な限度で別途の公共企業体などの運営で維持することになる。その場合、経営安定基金はJR北海道から分離される、輸送密度8,000人未満で収支困難な路線のために分割するということも考えられる。
●鉄道を「ただ残しても」意味はない
 もちろん、鉄道をどう維持していくかはJR北海道だけの問題ではない。近年、「交通政策基本法」や「地域公共交通の活性化及び再生に関する法律」が成立し、公共交通機関の活性化推進が地域や国民生活に必要不可欠であることが認識されるようになってはいる。しかし、交通機関の多様化などで残念ながら社会には昔のような「交通機関は鉄道一択」という風潮はない。鉄道をただ残しているだけでは無意味である。この国全体として地域輸送を含めた基幹的交通機関としての鉄道をどの程度必要としているのか、この国の鉄道全体、あるいはその地域ごとの鉄道について、鉄道を使って地域や国全体の利益をどのように維持増進しようとするのか、といったことを、国鉄分割民営化から30年が過ぎる今、公共交通機関のあり方の中から再検討するべきではないだろうか。

*4-2:http://shikiho.jp/tk/news/articles/0/142173 (会社四季報 2016年10月26日) JR九州・青柳社長が記者会見で語った将来への「意気込み」、民営化から29年
 九州旅客鉄道(JR九州・9142)が25日、東証1部に新規上場を果たした。1987年の旧国鉄の分割・民営化によって発足してから29年。もともと強い営業基盤を持ち経営が安定していた東日本や西日本、東海の「本州3社」が民営化から10年以内に上場したのに対し、九州は長い時間を要した。しかし、上場初日には公開価格(2600円)を19%上回る3100円の初値を付け、直後の記者会見で青柳俊彦社長は「上場はゴールではなく、新たなステージへの出発点」との認識を示した。初値について感想を聞かれた青柳氏は「(初めは買い気配で推移し)写真撮影の最中に初値が付いたため、その瞬間は見ていなかったが、その後も非常に活発な売買が行われてよかった。初値はわれわれに対する期待の反映と受け止めている」などと語った。今後の成長戦略については「中核である鉄道事業とそこから相乗効果を生み出す事業とを両輪として、さらなる成長を目指していきたい」という考えを表明。不動産など非鉄道事業の売上高が全体の5割超を占める同社だが、具体的には地盤の九州で新幹線の乗車率向上やインバウンド(訪日外国人客)需要の取り込みを進め、ローカル線でも鉄道ネットワークを維持したうえでマンションや商業施設などを建設することで沿線人口の増加に努めると強調した。九州以外の地域への展開に関しては「ホテルやマンションは今後も東京や大阪など、九州以外でも展開していきたい」と指摘。アジアを中心とした海外事業については「これまで色々と勉強してきている。5年前に中国・上海にレストランを開店し、現在は5店を運営している。今後はそれ以外の都市への展開も考えている」などと述べた。また、同社が始めた豪華寝台列車「ななつ星in九州」が好評で、来年にはJR東日本やJR西日本も参入する計画を打ち出していることについて、「ななつ星も3年目を迎え、来年の予約も順調に入っているようだ。来春に西日本と東日本も参入することによって、日本の旅の楽しさが3倍になることを期待している」などと語り、競争激化に対する警戒よりも、むしろ市場の活性化による相乗効果への期待をにじませた。また、上場までに約30年かかったことについて聞かれた青柳氏は「本当に長い道のりだった。30年前にJR各社が発足した際に、九州が上場することをイメージできた人がどれだけいたか。当初からはっきりした道標があったわけではないが、厳しい事業環境の中で上場できたというのは、これまでの一つひとつの努力が決して無駄ではなかったということだ」とした。また、「当社の上場が北海道や四国、貨物という(まだ上場していない)JR3社の参考になり、励みにもなるのではないか」とも語った。

*4-3:http://www.huffingtonpost.jp/2017/02/22/yamato_n_14950390.html (Huffpost Japan 2017年2月23日) クロネコヤマトの宅配量、抑制検討へ ネット通販拡大でドライバー不足に
 ヤマト運輸が、宅配便の扱い量を抑えることを検討する見通しとなった。宅配量の急増にドライバーの確保が追いつかなくなっており、同社の労働組合が2月上旬、春闘で会社側に要求した。ヤマト運輸によると、ネット通販の拡大などにより、宅配便の量は毎年増加傾向にある。2016年度の配達量は、15年度と比べて8%増え、過去最高の18億7000万個を見込んでいる。同社には約6万人のドライバーが所属しているが、配達量の増加にドライバーの確保が追いつかず、長時間労働に繋がっているという。このため労組は、宅配便の引き受けを抑え、取り扱い個数をこれ以上増やさないようを会社側に要求。終業から次の仕事まで最低10時間空ける「勤務インターバル」の導入なども求めた。ヤマト運輸労働組合は、NHKの取材に対し「今年度は特に荷物の量が増え、現場のしわ寄せが大きくなっている。1年間でサービス内容の見直しなどを進め、きちんと宅配便事業を続けられる体制を整えるべきだと申し入れている」と話した。ヤマト運輸は23日、ハフィントンポストの取材に対し、「ネット通販などにより、配達量が想定以上に増え、ドライバーの確保が追いついていない。集荷量の抑制を含め、労働者の働き方を見直しを検討する」と答えた。長時間労働の是正は、業界全体の課題となっている。ヤマト運輸では2月1日、働き方改革室を新設し、ドライバーの労働環境の改善を図っている。

*4-4:http://www.sankei.com/economy/news/170228/ecn1702280043-n1.html
(産経ニュース 2017.2.28) ヤマト運輸が昼の配達取りやめ検討 来年度にも実施
 ヤマト運輸が宅配サービスを抜本的に見直し、正午から午後2時の時間帯指定の配達を取りやめる方向で検討に入ったことが28日、分かった。現在午後9時までの夜の配達時間を早めに切り上げることも検討する。インターネット通販の普及で宅配個数が急増し、ドライバーを中心に人手不足で長時間労働が慢性化しているため。今後、労使協議で詰め、早ければ来年度の実施を目指す。ヤマト運輸の労働組合は平成29年春闘の労使交渉で、宅配便の荷受量の抑制や、終業から次の始業までに一定の休息を入れる「勤務インターバル」の制度導入などを求めていることに対応する。

*4-5:http://www.saga-s.co.jp/news/national/10201/419708 (佐賀新聞 2017年4月6日) ヤマト宅配便、最高18・7億個、16年度、通販普及で拡大
 宅配便最大手のヤマト運輸は6日、2016年度に取り扱った荷物が過去最高の約18億7千万個だったと発表した。インターネット通信販売の普及で宅配便の利用が急拡大し、これまで最高だった15年度の約17億3千万個と比べ7・9%増えた。荷物をさばく人手の不足が深刻化し、17年度は運賃値上げとサービスの縮小で荷物量や長時間労働を抑制する。ヤマトの宅配便は06年度の約11億7千万個と比べると、この10年間で約59%膨らんだ。特に、ネット通販最大手アマゾンジャパンの荷物を取り扱い始めた13年度には16億個を突破。配達の現場では急速に人手不足が進んだとされている。

<イノベーションを可能にする教育・研究>
*5-1:http://www.saga-s.co.jp/news/national/10201/418011 (佐賀新聞 2017年3月31日) 【教育ニュース】小学英語の教科化を告示 小中の新指導要領
 松野博一文部科学相は三十一日付で、各教科での「主体的、対話的で深い学び」に向けた授業改善の推進や、小学五、六年での英語教科化を柱とした小中学校の新しい学習指導要領を告示した。パブリックコメント(意見公募)を受け、小学校で「聖徳太子(厩戸王(うまやどのおう))」、中学校で「厩戸王(聖徳太子)」としていた表記を、小中とも現行指導要領と同じ「聖徳太子」に戻すなど、歴史用語中心に改定案を修正した。文科省は改定案を公表した二月十四日から今月十五日まで意見公募を実施。一万一千二百十件の意見が寄せられた。社会で教える聖徳太子を巡っては「歴史教育の連続性から、用語を変えるべきではない」といった意見を踏まえた。ただ、中学校では史実を深く学ぶことを重視し、古事記や日本書紀で「厩戸皇子(うまやどのおうじ)」などと表記され、後に「聖徳太子」と称されるようになったことに触れるよう新たに示した。改定案で消えた江戸時代の「鎖国」が小中ともに復活。中学校の「モンゴルの襲来(元寇(げんこう))」も「元寇(モンゴル帝国の襲来)」という現行に近い表記になった。東京電力福島第一原発事故でのいじめや風評被害に絡み、「放射線に関する正しい知識を体系的に指導すべきだ」という意見があり、小中の総則に「災害等を乗り越えて次代の社会を形成する」ための資質・能力を育むとの文言を追加した。中学校の保健体育では武道の内容の取り扱いで、競技人口や国体種目であることなどを考慮し、銃を模した用具を使い互いに突き合う「銃剣道」も例に加えた。小学校では英語より国語に力を入れるべきだとの意見もあったが、双方の充実を盛り込んでいるとして修正しなかった。

*5-2:http://qbiz.jp/article/105394/1/ (西日本新聞 2017年3月12日) 九州の伝統工芸、九産大が支援 研究センター設立へ、販売戦略練る
 九州産業大(福岡市)は11日、九州の伝統工芸品の販売戦略などを調査研究する「伝統みらい研究センター」を4月1日に設立すると発表した。博多織(福岡)や唐津焼(佐賀)、山鹿灯籠(熊本)など国指定伝統的工芸品21品目が対象。記者会見した山本盤男学長は「伝統技術を後世に伝え、持続可能な産業として再生する手法を確立して地域を支援したい」と話した。同大は2004年、有田焼(佐賀)の柿右衛門窯の作品データベース化などに取り組む柿右衛門様式陶芸研究センターを設立。さらに生産額や従業員数が減少している伝統工芸の支援にも手を広げ、センターは博多人形や久留米絣(がすり)(いずれも福岡)などの新商品開発にも関わってきた。新センターはこうした取り組みを拡充し、柿右衛門の研究部門と伝統工芸産業の発展に向けた研究の計2部門で構成。デザインや経営が専門の同大教授らが、まず今後3年間で福岡、佐賀両県の伝統的工芸品9品目の素材、技術などを調査。その後、販売戦略なども練り地域を支援する。新センターの所長に就く釜堀文孝教授は「衰退しつつある伝統工芸を核とした地域産業に貢献するシンクタンクを目指す」と意欲を語った。


PS(2017/4/12追加):*6-1のように、鉄道は、蓄電池や燃料電池による電動化と自動運転によるイノベーションが考えられ、こうすると、JR北海道を含む鉄道の採算がよくなって赤字路線が減る。また、駅舎や高架に太陽光発電を取り付ければ、広い面積で発電してエネルギーを自給することもできる。さらに、鉄道の敷地は連続した送電線を置くのに都合がよいため、例えば北海道の農山漁村で風力発電した電力を都市部に送電して送電料を得ることも可能だ。そのため、いわゆる赤字路線も利用して、現在のニーズに合うシナジー効果の高い事業を子会社で行えば、連結決算で黒字にすることも可能だろう。
 そのような中、東芝や日立などのインフラや鉄道関連製品を作っている会社は、ルールがなければ事業の新陳代謝ができないと言うのではなく、時勢に合った産業に速やかに移行できることが、経営者の能力である。何故なら、イノベーションや新製品は、過去数期間に黒字だったか赤字だったかというような単純なルールで今後の可能性が決まるものではなく、業種によっても状況が異なるため、業務の選択と拡大のやり方を誤らないことが、その企業のリーダーである経営者の役割だからだ。
 なお、*6-2に、農水省が減らない農作業中の農機での事故の原因分析を行うと書かれており、調査・分析をやるのはよいが遅すぎたくらいで、農作業中の事故は、無残で回復不能なものも多く、生産性と安全性を両立した農機具の設計が求められる。なお、実現すれば、これは世界で求められる実需であるため、輸出を伸ばすこともできるだろう。

   
    蓄電池電車     鉄道の敷地に引かれる送電線 太陽光発電付駅舎

*6-1:http://www.nikkei.com/article/DGXLASDZ12H7D_S7A410C1000000/?dg=1&nf=1 (日経新聞 2017/4/12) 老舗重電ライバル 東芝とシーメンスを分けたもの
 東芝が監査の適正意見がない異例の決算を発表した11日、独シーメンスがボンバルディア(カナダ)と鉄道関連事業の統合を検討していることが明らかになった。経営再建中の東芝に対し、シーメンスは不断の事業再編を繰り返し株価も好調だ。両社は日独を代表する老舗重電メーカーで、発電機や医療機器などで競い合ってきた。どこで道が分かれたのか。
■シーメンスは最高値更新
 12日の東京株式市場で東芝の株価は乱高下している。上場廃止の可能性もあり値動きの荒い展開が続きそうだ。方やシーメンスの株価は11日に最高値を更新し、ボンバルディアとの鉄道統合の報道も材料視されている。時価総額は1088億ユーロ(約12兆6200億円)と、東芝(約9300億円)の13倍強に達し、日本の重電の顔である日立製作所の約2兆8000億円も大きく上回る。「電動化、自動化、デジタル化にトレンドにあわせ、当社の中核事業を変えていく」。昨年末、シーメンスのローランド・ブッシュ最高技術責任者(CTO)は自社イベントでこう述べた。同社は近年、産業用ソフトウエアの企業を相次いで買収し、ソフトとサービスの両分野を強化。米ゼネラル・エレクトリック(GE)と競うように「脱・機器売り依存」を鮮明にしている。シーメンスはソフト・サービス関連を買収で内部に取り込む一方、従来型の重電メーカーに象徴される巨額の投資が必要な「重い」事業は柔軟に他社との統合に切り替える。背景にあるのは、あらゆるモノがネットにつながる「IoT」。自らがデータを集める「面」の広がりが重要で、機器売りの規模自体を追う重要性は下がりつつある。
■鉄道車両の首位浮上も
 最近は世界シェア大手の風力発電機事業をガメサ(スペイン)と統合したばかり。今回報じられたボンバルディアとの鉄道関連事業もこの一環とみられる。シーメンスの鉄道車両を含むモビリティー事業の売上高は78億ユーロ(約9050億円、2016年9月期)、ボンバルディアの鉄道車両事業は76億ドル(約8360億円、16年12月期)。合算すれば、中国国有大手の統合で生まれた中国中車を上回る世界最大の鉄道車両メーカーになる。ただシーメンスが買収・統合だけ続けては肥大化するだけだ。東芝との最大の違いは撤退の早さだろう。社内の「撤退ルール」を持ち、事業の入れ替えを繰り返す。黒字であっても期待収益を下回ったり、中核ではないと判断したりした事業は遠慮なく売却・上場する。特に13年に就任したジョー・ケーザー社長はその傾向が顕著だ。最高財務責任者(CFO)の経験が長く、各部門の収益構造やキャッシュフローには「現業部門よりも詳しい」(同社幹部)。水処理、病院向けIT(情報技術)、補聴器、家電、製鉄機械と相次ぎ売却や合弁化している。
■撤退基準の有無、原子力で明暗
 こうした文化が染みついたシーメンスと東芝の分かれ道は原子力部門の扱いだ。2011年3月の東京電力・福島第1原子力発電所の事故を受け、メルケル独政権はいったん取り下げた「脱原発」に再びかじを切った。軌を一にしてシーメンスは仏アレバとの原子力合弁の株式をアレバに売却。22年に国が原発ゼロになる前に、シーメンスは先に脱原発を果たし、ガス火力発電タービンと、風力発電を核とした再生可能エネルギーに絞り込んだ。もっともシーメンスは政治や世論の圧力で脱原発を決めたわけではない。欧州は再生エネの普及で世界を引っ張っり、「風力発電は火力発電並みの競争力を持つ」との社内の合意が形成された。さらにシェールガス革命で天然ガスを燃料にする火力発電のシェアも高まる。もともと社内では「他の電源と比べ原子力の事業性を疑問視する声があった」(エネルギー部門幹部)。福島の事故は原発の規制コストが上昇するとみて、撤退の背中を押す一因にはなったが、それまでの計算があったから決断も早かった。その後、シーメンスの保有株すべてを引き受けたアレバは業績不振にあえぎ、仏電力公社(EDF)の支援を求める状況だ。結果的にシーメンスはうまく“足抜け”した。一方、東芝は戦略部門と位置づけ買収した原子力子会社、米ウエスチングハウス(WH)の内部統制の不備があり、WHの買収による損失でさらに傷を負った。日本の電力業界では、かつて「原子力ルネサンス」の旗振り役だった経済産業省との密接な関係もあり、東芝側から容易に撤退を言い出せない背景も指摘される。
■医療機器はそろって売却・上場
 東芝は昨年、経営再建の一環で医療機器子会社の東芝メディカルシステムズを売却した。追い込まれて“虎の子”を手放さざるを得なかった。実はシーメンスも稼ぎ頭の医療機器子会社、シーメンス・ヘルシニアーズを年内にも上場させる計画だ。ケーザー社長は「分子診断、先端治療、サービスといった成長分野でより柔軟性を持ち強くなるため」と述べ、外部に切り出すことで医療機器の成長を狙う。平時から事業の撤退ルールをどう作るか。日本企業に広く問われる課題と言えそうだ。

*6-2:https://www.agrinews.co.jp/p40594.html (日本農業新聞 2017年4月12日) 事故原因を本格調査 報告書提出促す 農機の状態情報不十分 農水省
 農水省は、農作業事故の原因分析のため、本格的な調査に乗り出した。事故が起きた状況や使用していた農機の状態などの情報収集がこれまで不十分で、都道府県や農機メーカーから報告書の提出を強く求める。事故が大きく減らない中、集まった情報を専門機関で分析し、事故防止により効果的な対策を検討する。同省によると、農作業事故で毎年350人近くが亡くなっており、依然高い水準にある。過半数が農機での作業中の事故で、対策強化が急務となっている。具体策の検討に生かすため、同省は2007年度から農機メーカーに対し、農作業事故が起きた地形や農機の種類、事故原因に関する情報提供を要請。10年度からは都道府県にも対象を広げた。だが、報告書は記述式で記入が煩雑なことが敬遠され、未提出の団体もあるなど情報が思うように集まっていなかった。同省は本格的な調査に乗り出し、報告書の提出を強く促す。この1月には都道府県に対し、事故発生時に速やかに提出するよう求める生産局長名の通知を出した。さらに、報告書を記入しやすいチェックシート形式に改善した。業界団体にも同様の要請を出した。集まった情報は、農研機構・革新工学センターに提供し、専門家の視点での事故分析や農機の安全対策の研究などに役立てる。啓発資料や指導指針の策定、農機の一層の安全設計、メーカーや輸入業者への対応の要請などの活用を想定する。成果情報は同省のホームページや、農機の関係団体でつくる「農作業安全確認運動推進会議」などで報告し、普及につなげる考えだ。同省は「事故がどういう状況で起きたか、まずはデータを多く集めたい。原因を把握し万全な対策をまとめる」(技術普及課)考えだ。


PS(2017.4.13追加): *7に、「欧米の半導体・部品メーカーが自動運転など自動車の次世代技術を持つ企業を相次いで傘下に収めている世界の流れを踏まえ、日本の部品メーカーも積極的に先進技術獲得目的のM&Aを行うべきだ」と書かれている。しかし、自らは先進技術を持たない企業が金にあかしてM&Aを行っても、高いものについただけで破綻しかけているのが東芝のWH買収だ。何故そうなるのかと言えば、本当に先進技術を持つ優良企業は、シャープのような余程の事情がない限り、M&Aで一方的にその先進技術を他国企業に譲ることはないからだ。そのため、先進技術を持つ企業を買収したり、業務提携したりしたければ、自らも相手が欲しがる秀でた技術や販売力を持っている必要があり、それは欧米追随型の技術開発ではできず、日本独自にも役立つ先進技術を開発していなければならないのである。なお、スペインのバルセロナ空港にあったサムスンTVで、見慣れた顔のゴーン氏が「Inovation is exites!(訳:イノベーションは、素晴らしい)」という自動運転の広告をされているのを見たが、EVを世界で最初に作ったのはゴーン氏率いる日産であり、自動運転も最初に手がけられたと記憶している。しかし、日産のEVはデザインが今一つスマートでなく、航続距離も短いため、まだ改善の余地が大きい。

*7:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20170413&ng=DGKKZO15247030T10C17A4EA1000 (日経新聞社説 2017.4.13) 自動車部品会社は内向き脱せ
 欧米の半導体・部品メーカーが自動運転など自動車の次世代技術を持つ企業を相次いで傘下に収めている。自動車産業が「100年に1度」といわれる転換期に入ったことが背景にある。技術開発で自前主義が強い日本の部品メーカーも、こうした世界の流れをふまえて積極的にM&A(合併・買収)に動くべきだ。半導体大手の米インテルは年内に、自動運転車の「目」となる画像認識システムで先行するイスラエルのモービルアイを153億ドル(約1兆6800億円)で買収する。米クアルコムも車載半導体で世界首位のオランダNXPセミコンダクターズを470億ドルで傘下に入れる。自動運転技術や、通信で情報を外部とやり取りする次世代車が普及すると、自動車に搭載するセンサーや半導体が飛躍的に増える。異業種の企業も自動車分野の事業を拡大する好機となる。歴史が長い自動車関連の企業もM&Aに積極的に動いている。老舗タイヤメーカーの独コンチネンタルは15年間で約100社を傘下に収め、センサーなどの有力企業に成長した。愛知県豊田市のトヨタ自動車本社近くに100人規模の拠点を構え、同社に自動ブレーキの主要部品を供給する。日本に目を向けると、部品メーカーの動きは乏しい。トヨタ系列の部品メーカーは再編を進めてきたが、効率化を目的としたグループ内の事業集約にほぼ終始している。ブレーキ事業の統合に10年超を費やすなど、スピード感にも課題がある。独立系自動車部品メーカーや、半導体・電子部品メーカーを見ても、技術の獲得を目的としたM&Aはわずかだ。自動車もIT(情報技術)分野と同様、付加価値の源泉が部品とサービスに移る「スマイルカーブ現象」が進むとみられている。日本企業も部品の重要性が高まることを認識し、内向きな姿勢を改めて外部から先進技術を積極的に取り込むべきだ。


PS(2017年4月14日追加):*8-1、*8-2のように、食材(特に、水もの・野菜・果物)や日用品を買った時に、その日の夕方までに自宅に配送してくれるサービスがあると、休日にまとめ買いしている健康な人でも重い荷物を持ち帰る心配なく買い物することができるため、買う物が増えるだろう。また、自宅療養している人には、これは必要不可欠なサービスで、中食だけでなく、栄養管理された美味しい弁当を宅配してくれれば、生活の質が上がる。

*8-1:http://www.saga-s.co.jp/column/economy/22901/421592 (佐賀新聞 2017年4月14日) 食材と日用品、戸配事業統合 JAさがと全農、全国に先駆けサービス
■利便向上へ注文一本化 中山間地などの生活支援
 JAさがと全農は、それぞれが独自に手掛ける食材の戸別配達事業と日用品宅配サービスを統合した「生活総合宅配事業」を全国に先駆けて始めた。併用する利用者が多いことから注文窓口を一本化して利便性を高め、品ぞろえの充実を図る。中山間地などの生活支援を強化する取り組みとして効果を検証した上で、全農を通じて2018年度から県外の地域農協での事業展開を目指す。JAさがの戸別配達事業は、簡単な調理でおかずができる状態に加工した肉・魚や野菜などを家庭に届けるサービス。全農は食用油や小麦粉、加工食品などの日用品を宅配業者を通じて配達しており、県内でそれぞれ約6千人、約1万6千人が利用している。配達サービスは、生協や食材宅配の専門業者に加え、コンビニエンスストアや地場スーパーの参入も相次いでいる。JAグループが扱う農産物を中心に生鮮食品の品質、価格で差別化を図ることで利用者の減少を食い止め、初年度は会員数1万7千人、取扱高15億円を目指す。今月初めに神埼市のJAさが本所食材センターであった出発式では、JAさがの北村正弘生活燃料部長が「近くに商店がなく、買い物に困っている人もいる。地域のインフラとして定着できるよう改善に努めたい」とあいさつ。関係者のテープカットの後に第1便が出発した。総合宅配事業の利用対象者は、会員登録をした組合員と准組合員。専用の注文用紙やインターネットなどで受け付けている。JA全農は「サービスの拡充で地域の暮らしを支えるモデルを佐賀でつくりたい」と話している。

*8-2:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20170414&ng=DGKKASDZ13HZY_T10C17A4MM8000 (日経新聞 2017.4.14) セブン、宅配を外部委託、セイノーから配達員 加盟店の人材確保限界
 小売り大手が宅配網のてこ入れに乗り出す。セブン―イレブン・ジャパンはセイノーホールディングス(HD)と提携。セイノーHDがコンビニエンスストアに配達員を送り、宅配を代行する。ニトリホールディングスは家具を運ぶ提携運送会社向けにトラックを割安に貸し出す。流通業の代表企業が物流の末端まで支援しなければならないほど人手不足が深刻化している。資本力のある大手が先行して配達員の確保策を進めることで、人材獲得競争が一段と過熱する可能性がある。セブンは弁当を中心にコンビニで購入した商品を店員が自宅まで届ける宅配サービス「セブンミール」を全店の7割超の約1万5千店で展開する。店員は接客なども担うため、多くの店では十分な人手を割けなかった。セブンイレブンの各店舗は個人事業主の経営が多く、採用力にも限界があった。セイノーHDはセブンの宅配を代行する全額出資子会社を設立、5月から本格稼働する。まず約100人の配達員をそろえ、広島県など1都7県の約150店を担当する。将来は全国に広げる方針だ。セイノーHDは接客や運転技能に関する社内検定に合格した人のみを派遣する。商品は軽トラックで運ぶが、運転免許以外の資格は必要なく、担当も自宅に近いエリアに限られるため、比較的、配達員も集めやすいとみられる。主婦など女性を積極的に活用する。セブンはセイノーHDに宅配を委託することで配達の頻度を増やせる。5店舗で試行したところ、利用金額は10倍に増えた。関連コストは増える見込みだがメリットの方が大きいと判断した。セブンミールは500円以上の商品を購入した場合の送料は無料で、今後も料金は変更しない。セブンミールの売上高は2017年2月期で266億円。全売上高の1%にも満たないが、高齢者や女性向けに潜在需要は大きいと見込む。ニトリHDは20年までをメドに2トンと10トンのトラックを計1200台購入し、家具を運ぶ約100社の提携運送会社向けに割安に貸し出す。月々のリース料は通常に比べ少なくとも1割程度(数万円相当)抑えることができるとみられる。運送会社の負担を抑え、運転手の人件費確保などにつなげる。小売企業が配送網維持のために、車両のリースまで手がけるのは珍しい。労働人口の減少で人材は建設や小売りなど各業界をまたいで取り合いになっており、トラック運転手は確保しづらい。


PS(2017年4月15、17日追加):*9-1のように、熊本地震で壊れた南阿蘇鉄道の全線復旧費用を沿線自治体が負担しなければ出せないとのことだが、この地域は陸上に現れた大断層の交差点であることが地震で有名になったため、観光地としての価値は上がったと言える。そのため、私は、スイスのマッターホルンのように、居心地のよい観光鉄道を設置し、高すぎない料金で走らせて、世界から観光客を集めるのがよいと考える。ちなみに、マッターホルンの場合は、その基地となるツェルマット村では、1990年代から環境に配慮し、ガソリン車の乗り入れを禁止して村内の交通手段は電気自動車としており、静かな環境と澄んだ空気が保たれている。また、北海道も乗り心地のよい北海道周遊鉄道を走らせれば、夏だけでなく冬も素敵な鉄道旅ができ、北海道の墨絵のような雪景色やスキーは、暑い国に住む人たちにとって憧れになる可能性が高い。
 なお、熊本県の農業は秀でており、首都圏でも多くの農産品が販売されているが、*9-2のように、まだ復旧していない農地があるのなら全力を尽くして早期復旧すべきだ。しかし、私は、この機会に復旧のみを考えるのではなく、どこでも作りたがって余剰している米を減らして他の作物に転作し、付加価値や食料自給率を上げるのがよいと思う。その際に障害となるのが、国が米作偏重で渡している交付金なのだ。


  2017.4.15西日本新聞(*9)より     マッターホルンの鉄道とケーブルカー

(図の説明:南阿蘇鉄道は、眼下に大きな断層を見下ろしながら草地を走る世界でも珍しい鉄道であることを前面に出し、快適に地球の営みを見学する列車を走らせたらどうかと考える。そして、これにはスイスのマッターホルンの例が参考になるが、この鉄道は赤字だろうか?)

*9-1:http://qbiz.jp/article/107652/1/ (西日本新聞 2017年4月15日) 2016熊本地震、南阿蘇鉄道の全線復旧は数十億円 沿線自治体の負担焦点
 南阿蘇鉄道の復旧に向け事業者負担をゼロにするなど、政府が特別な支援策の創設に動きだした。ただ、この支援策では地元自治体が復旧費の50%を負担する必要がある。国土交通省の調査では、復旧費は総額70億〜80億円前後に達する可能性もあり、全線復旧には数十億円に上る自治体の負担軽減が焦点だ。事業者負担をゼロにして国の補助を50%に倍増する制度は、東日本大震災で被災した岩手県の三陸鉄道で活用例がある。復旧費約90億円のうち国が45億円、県と沿線8市町村が計45億円を負担した。ただ各自治体には震災復興特別交付税が支給され、事実上、国が全額負担した形だ。熊本地震の場合、復興特別交付税の制度はない。財政基盤の弱い沿線の南阿蘇村や高森町にとって「数億円の負担も厳しい」(関係者)状況で、特別な交付税の支給や、95%が交付税措置される「補助災害復旧事業債」の活用などを国に求める考えだ。新たな支援策は線路や駅などの鉄道施設を、自治体の所有に移すことが前提になる見通し。自治体と事業者の協議がまとまり次第、政府は支援策の検討を本格化する。南阿蘇鉄道は2016年7月に高森−中松で運行を再開したが、被害が深刻な中松−立野は復旧のめどが立っていない。

*9-2:https://www.agrinews.co.jp/p40613.html (日本農業新聞論説 2017年4月14日) 熊本地震から1年 営農の完全再建急ごう
 熊本地震から1年がたつ。農地や施設の復旧が進み、多くの農家が営農を再開している。しかし被害が深刻な地域では、いまだに農家の1割が営農を再開できていない状況だ。熊本県は2019年度までの完全復旧を目指す。道のりは険しいが、農家が安心して生活し、営農で震災前の所得水準を早く回復できるよう復旧を急ぎたい。国もその間の支援を継続すべきだ。熊本地震では4月14日、16日と2度、最大震度7を観測。震源地が地下10キロと浅く、益城町と西原村を中心に大きな被害をもたらした。13日現在、関連死も含めた死者は225人。熊本県内の仮設住宅に住む被災者は3月末でも4万4000人を超える。高齢者が圧倒的に多い。一刻も早く自宅に帰れるよう、行政は全力を挙げるべきだ。農水省によると、農林水産関連の被害総額は熊本県を中心に1793億円。うち農業関係は7割を占める。1年間で被災した農地や施設の復旧は一定に進んだ。しかし復旧が遅れ、営農再建のめどが立たない地域や農家が多いのも事実だ。農地や水路が絶たれたままで、稲作の再開どころか飲用水すら確保できないケースもある。生活インフラを含め、早期の完全復旧の実現には国の支援も不可欠だ。県やJAの頑張りは評価できる。営農再開を優先させ、水を確保できない水田では復旧に先駆けて大豆作に切り替えた。農家の営農意欲を失わせず、少しでも農業収入を確保してもらう効果は大きかった。こうした臨機応変の対応が重要だ。県は昨年末、19年度までに完全復旧を目指す「食料・農業・農村計画」を策定した。「稼げる農業の加速化」をテーマに掲げ、復旧作業と併せて担い手を育て、効率的に高い品質の農畜産物を生産できる産地づくりを目指す。担い手に8400ヘクタールの農地を集める他、新品種イチゴ「ゆうべに」を125ヘクタールまで広げ、情報通信技術(ICT)を活用した次世代型園芸施設を120ヘクタール設けるなどの構想を描く。復旧の遅れた地域も含め、全県的にビジョンを早く実現してもらいたい。11日に農水省を訪れた蒲島郁夫県知事は、山本有二農相に復旧と営農再開の状況を報告した。まだ1割の農家が営農を再開できていないと指摘、「創造的な復興」に必要な支援の継続を国に要請した。JA熊本中央会の小崎憲一会長も日本農業新聞のインタビューで、行政の震災事業は単年度事業が多いと指摘し「農家の意欲が続くよう、複数年の予算確保を訴えたい」と強調した。こうした声に国は誠意を持って応えるべきだ。JAグループの役割も大きい。熊本中央会は昨年末、県経済連、農林中金と共に、県と連携協定を結んだ。県の復興計画に沿って「創造的な復興」を果たすため、全力を挙げてほしい。全国のJAも引き続き支援をする必要がある。


PS(2017年4月16日追加):沖縄では海に点在する観光地を巡るため、*10のように、クルーズ船が便利だが、そのためには大型客船が入港できる岸壁を造ってハード・ソフトを整備するだけでなく、沖縄を一級のクルーズ船観光基地にする計画が必要だ。そこで、私は、カリブ海・地中海などのクルーズ先輩地域を視察したり調査したり、クルーズの先輩の意見を聞いたりして、しゃれた計画を立てた方がよいと考える。なお、沖縄の場合は海の中が美しいため、クルーズ船に海底が見える床が透明な部屋を準備すると長い船旅にも退屈しないだろう。

*10:http://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-478409.html (琉球新報社説 2017年4月14日) クルーズ船対応 受け入れ態勢の整備を急げ
 観光に関する調査研究機関・じゃらんリサーチセンターのまとめでは「地元の人のホスピタリティー(もてなしの心)を感じた」のは、沖縄県が2005年以来12年連続で1位を記録している。毎年2位に10ポイント以上の差をつけている。観光客を大事にする県民の意識の高さを示す証しといえる。だが観光地・沖縄としての受け入れ態勢は十分といえない。クルーズ船入港時の混乱を見れば不備は明らかだ。ソフト、ハードの整備に関係機関は今以上に注力してもらいたい。本紙記者の取材によると、那覇港新港ふ頭に大型客船が寄港した11日は約千人が下船したが、船客待合所で多くの人が1時間ほど足止めされた。最後の客がタクシーに乗るまで3時間を要した。新港ふ頭は本来貨物船が使用する岸壁である。15万トンを超える大型客船が入港できる岸壁がないため利用しているだけだ。しかし周囲は貨物運搬の車両が行き交い、観光客、荷役関係者双方の安全のためタクシーの乗り入れが制限されている。市内観光に行くにはタクシーに頼るしかないが、現状は受け入れ態勢の不備で観光客に不便を強いている。クルーズ船寄港は16年に387回で過去最多を記録し、17年度はさらに増えて502回を見込む。県の観光振興基本計画は21年度までの目標として観光客1200万人を掲げている。そのうち海路客は現在の25万人から8倍の200万人に設定している。クルーズ船客は船内で入国手続きを済ませる。下船できるのは8~10時間しかなく、限られた時間で沖縄観光を楽しむ。港を出るまでに1~3時間を消費していては、観光地としての魅力が損なわれるだけでなく、買い物や飲食店などに行く時間が減り、消費面でも機会損失が大きいといえる。大型客船に対応できる岸壁の整備は急務だ。国、県をはじめとする関係機関が早急に対策を打ち出すべきだ。一方でソフト面の整備も課題となる。11日の寄港で対応したボランティアはわずか11人しかいなかった。単純計算で1人のボランティアが90人を相手にしなければならない。那覇市観光協会は語学人材の育成を進めるが、絶対数が不足している。現状では観光地・沖縄の「もてなしの心」は看板倒れに終わりかねない。


PS(2017年4月16日追加):*11のように、「利幅が薄い」などとして家電部門を縮小する会社が多いため、家電の日本製品が少なくなったのは秋葉原の電気街に行けば一目瞭然だ。そして現在、信頼できる日本製家電はパナソニックくらいしかなくなっており、技術は生産している場所でしか受け継がれたり進歩したりしないということを、技術や実績に誇りを持つのではなく、訳もなく傲慢になった日本人は忘れたように見える。そのような中、イノベーションに熱心で先進的な技術を持つシャープが家電市場で存在感を上げようとしているのは歓迎だが、シャープには一つだけ注文がある。それは、「家電は単純な構造で(それは丈夫で生産コストを削減できる効果もあるだろう)、使い易くて手入れしやすい」というのも重要な価値で、私はシャープ製のプラズマ式エアコンを使って快適に過ごしていたが、エアコンクリーニングをする時に専門業者でも掃除ができず、壊れやすい部品もあって2度交換したため、パナソニック製に変えたという事実があることだ。これは、改善した方がよいと考える。

*11:http://digital.asahi.com/articles/ASK4H4Q37K4HPLFA001.html?iref=comtop_list_biz_n01 (朝日新聞 2017年4月15日) シャープ、家電で逆張り勝負 冷蔵庫・テレビ機種増へ
 シャープの戴正呉(たいせいご)社長は15日、国内で売るテレビや冷蔵庫といった家電製品の品ぞろえを、2017年度に大幅に増やす方針を明らかにした。利幅の薄い家電部門を縮小する他社があるなかで、あえて「逆張り」に出て、家電市場での存在感を上げようとしている。戴氏は堺市の本社で開いた退職者の会合にテレビ会議システムを使って参加し、方針を明らかにした。16年度と比べた品ぞろえを高画質の4Kテレビで45%、冷蔵庫で30%、掃除機で180%それぞれ増やし、20機種前後にするという。高機能品に加え、機能を絞って価格を抑えた製品も出す。法人向けは複合機で40%増、電子看板で20%増の35機種程度にする。戴氏はパナソニックやソニーとの比較で「シャープは幅広い家電を持つが、ラインアップが足りない。頑張りたい」などと語った。だが、費用がかさむ一方で、利益が増えない恐れもある。調査会社GfKジャパンの調べでは、16年の国内の家電小売市場は約7兆円で、前年より1・5%減った。シャープが比較的強いテレビなどの音響映像製品は同6%減と縮小。競合他社では品ぞろえを絞る動きもある。また、戴氏は3月末に終わった17年3月期の決算について「予想を達成できると思う」と話した。シャープは現段階で営業損益を474億円の黒字、利息の支払いなどを反映した経常損益を99億円の黒字と予想しており、ともに3年ぶりの黒字転換となる見込みだ。


PS(2017.4.17追加):*12-1のように、3Dプリンターの再生医療への活用が既に行われているのはよかったと思うし、これを可能にする3Dプリンターや作成プロセスが世界で最初に完成すれば日本の得意技として高い世界シェアを獲得できる。しかし、*12-2のように、「そのまま患者に移植できる臓器の再現はかなり先となりそうだ」などとして時間をかけていると、EV・太陽光発電・自動運転車のように、他国に先を越されて好機を逃し、最初に着手した日本には特許権料も世界シェアも手に入らなくなるので注意すべきだ。なお、現在の日本の経済学部出身者は、言っていることが外国で作られた理論の単純な丸暗記に基づいており、イノベーションを考慮できず、言うことがとろいため、経済学部は理系学部に変更した方がよいと思う。

*12-1:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20170417&ng=DGKKZO15375170W7A410C1TJM000 (日経新聞 2017.4.17) 科学技術:3Dプリンター、再生医療に活用 まず移植用組織、東大が皮膚の構造/福岡大は横隔膜の機能
 立体的な部品などを作る3次元(3D)プリンターを使った再生医療の研究が進んでいる。たんぱく質の微粒子や細胞の塊を積み重ね、移植用の組織や臓器を作る。東京大学は治りにくい傷の治療向けに皮膚の立体構造を再現した。福岡大学などは呼吸に欠かせない横隔膜の機能を果たす小さな組織を作り、動物で治療効果を確かめた。臨床応用できれば究極の再生医療の実現に近づく。3Dプリンターは原料の粉末などを少しずつ積み上げて立体構造を作る。再生医療向けでは、専用装置で生きた細胞の小さな集まりやコラーゲンなどのたんぱく質を積み重ねる。材料選びや使うタイミング、積み方などの工夫も研究の重要なテーマとなっている。東大の高戸毅教授と峰松健夫特任准教授は3Dプリンターを活用し、床ずれや糖尿病などで発症する皮膚の治りにくい傷を治療する研究に取り組む。高齢化などで患者は増えており、長期入院を余儀なくされたり治療後に痛みが残ったりして患者の負担となっている。皮膚には表面の表皮と内部の真皮の間をつなぐ役割を持つ微細な凹凸が並んでいる。皮膚の真皮まで傷付くと再生せず、平らになってしまう。高戸教授らは3Dプリンターで「RCP」というたんぱく質の微粒子を積み上げて表面に凹凸のある層を作り、皮膚の構造をまねた。傷を付けたマウスの皮膚に移植すると、表皮の再生を促した。今後はたんぱく質の微粒子の隙間に、脂肪から取り出した幹細胞を入れて、効果を高める。幹細胞が出す物質は皮膚が硬くなるのを抑える働きがあり、皮膚の再生も促せると見込む。損傷した真皮を補うためのスポンジ構造の材料も使い、表皮と真皮の立体構造を模倣した再生医療を目指す。福岡大の柳佑典助教と九州大学の田口智章教授は3Dプリンターで細胞を積み上げる手法を用い、人の皮膚の細胞で1センチ角の組織片を作った。胸と腹を区切る横隔膜に穴を開けたラットに移植した。横隔膜に穴が開くと呼吸に支障が出る。組織片を移植した5匹は横隔膜の穴が塞がり、3カ月以上生き延びた。効果は合成繊維の膜を移植するより高かった。今後はウサギなどでも実験する。横隔膜が生まれつきない患者などの治療に役立てたい考えだ。信州大学の今村哲也助教と九大発ベンチャーのサイフューズ(東京・文京)は、人の骨髄の細胞で数ミリ角の組織片を作った。膀胱(ぼうこう)が傷つき尿がためられないラットに移植すると、健康なラットのように排尿できる状態まで回復した。組織片から出たたんぱく質などが膀胱の再生を促したとみている。膀胱は伸縮する筋肉でできた袋状の臓器で、がんの放射線治療や病気が原因で硬くなると頻尿になる。今後iPS細胞の活用も検討し、10年以内に人への移植を目指す。

*12-2:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20170417&ng=DGKKZO15375210W7A410C1TJM000 (日経新聞 2017.4.17) 科学技術:臓器実現、蓄積地道に
 3次元(3D)プリンターは材料を積み重ね、複雑、微細な立体構造を作るのが得意だ。細胞やたんぱく質に応用できる機種の開発が、再生医療研究を後押ししている。皮膚の難病治療を目指す東京大学の峰松健夫特任准教授は「3Dプリンターができたからこそ研究に着手できた」と語る。再生医療の実用化では細胞をシート状に培養して移植する手法が先行する。動物を「工場」として活用するアイデアもある。ブタなどの受精卵に人のiPS細胞を注入し動物の体内で人の臓器を作る手法だ。ただ、いずれも発展途上で、1つに絞られたわけではない。臓器は血管や神経など様々な細胞が組み合わさり、立体的な構造を作っている。そのまま患者に移植できる臓器の再現はかなり先となりそうだ。小さな組織片の移植など一歩ずつ技術を積み重ねていくことが重要だ。


<観察技術の進歩と理論のイノベーション>
PS(2017年4月19日):肉食恐竜ティラノサウルスの手は、使うには小さすぎると思っていたが、これと似た大きさの手をしているのは飛べない鳥類(エミュー、ダチョウ、鶏など)で、これらの鳥類は顔も恐竜から進化したように見え、足の形は恐竜と同じだ。また、これらの鳥類は、子供の頃は羽がなく毛だけが生えており、「個体発生は系統発生を繰り返す」という原理から考えれば、(化石には残っていないが)ティラノサウルスにもこれら鳥類と同じような毛が生えていたと推測できる。この疑問を解決するには、エミューかダチョウか鶏の卵がかえる時に、卵の中の胎児の変化を観察するのがよいだろう。また、鳥類は、飛ぶ鳥が先に発生したのではなく、飛べない鳥が先に発生した後に進化して飛ぶ鳥が発生し、捕食者との関係で飛ぶ鳥の種の方が多く生き残ったのではないかと思われる。


  ティラノサウルス       エミュー          エミューの卵と雛
 2017.4.19佐賀新聞

   
          ダチョウ            鶏の雛    鶏の手羽

*13:http://www.saga-s.co.jp/news/national/10201/422867 (佐賀新聞 2017年4月19日) 肉食恐竜ティラノの分類に新説、トリケラトプスと近縁か
 ティラノサウルスのような二足歩行する肉食恐竜は、首の長い巨大草食恐竜と同じグループに属するという従来の分類よりも、むしろ角を持ったトリケラトプスの仲間に近いとの新説を英ケンブリッジ大などのチームが19日までに英科学誌ネイチャーに発表した。現在の分類では、恐竜は鳥に似た骨盤を持つ「鳥盤類」とトカゲに似た骨盤を持つ「竜盤類」に大きく分けられる。ティラノの仲間である獣脚類は鳥の起源と考えられているものの、これまでディプロドクスなど首の長い巨大草食恐竜が属する竜盤類に分類されてきた。新説ではティラノはトリケラトプスやステゴサウルスなどの鳥盤類と近縁となる。


PS(2017年4月21日追加):リコーが、*14のように、自社設備を拡充して太陽光やバイオマス発電による電力供給を増やし、足りない分は電力会社からグリーン電力を購入して再生エネ100%を目指して、国際イニシアチブ「RE100」に参加するのは、好感の持てる可能な目標だ。私は、鉄道会社がこれを行えば、①運行コストが下がって赤字路線が減る ②環境に貢献する ③鉄道会社の送電技術が進歩し、赤字路線も送電網として機能させることができる など、多くのメリットがあると考える。

*14:http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2017042101001072.html
(東京新聞 2017年4月21日) 【社会】 リコー、再生エネ100%へ パリ協定の脱炭素実現で
 事務機器大手のリコーは21日、国内外の事務所や工場で使う電力を、2050年までに全て再生可能エネルギーで賄う目標を明らかにした。マイクロソフトなど世界の約90社が参加し、再生可能エネルギー100%を目指す国際イニシアチブ「RE100」に日本企業として初めて加わった。パリ協定が目指す“脱炭素社会”の実現に向け、企業レベルの取り組みを強化する狙い。リコーは自社設備を拡充して太陽光やバイオマス発電による電力供給を増やし、足りない分は電力会社からグリーン電力を購入する。最初のステップとして30年に電力消費の30%以上を再生可能エネルギーにすることを目指す。


PS(2017.4.23追加):*15のような「人工知能(AI)の登場でロボットの存在感が増したら、人間が失業する」という論調はよく聞かれるが、それは間違いだと考える。何故なら、単純作業が自動化されれば人間はより高度で面白い仕事をすることができるようになるだけで、自動化したから人がいらなくなるわけではないからだ。例えば、全自動洗濯機は、これによって洗濯をする人がいらなくなったわけではなく、機械の方が人よりうまくやれる仕事を機械がしている時間に、人はもっと生産性の高い仕事や人にしかできない仕事にシフトすることができたという効果をもたらした。また、機械はあらかじめ導入されたソフトの範囲でしか働けないため、そのソフトを作った人以上の仕事はできない。
 そのため、例えば、弁護士が判例を探すのをAIが手伝えば、判例探しを個人の弁護士の知識と経験のみに頼らなくても済むため、弁護全体の底上げができるだろう。しかし、その判例を、①どう事例に当てはめるか ②過去の判例では対応できない事例ではないのか などの判断は、人間である弁護士の価値観や能力に基づくため、AIでは代替できない。これは、医療において、診断にAIを利用する場合も同じだろう。
 なお、自動車が普及して人力車がなくなった時には、確かに人力車の車夫という仕事はなくなったが、新しい仕事も多くできたため車夫だった人は別の仕事に移っただろう。つまり、教育は、人にしかできない仕事をできる人を育て、時代の変化に応じて仕事を変わることもできる能力を与えておかなければならないのである。


  *15より  会話ロボ 日本橋三越受付ロボ ポーターロボ  EV工場のロボット

(図の説明:いろいろなロボットがあるが、触ると望む方向に進み、飛行機の搭乗券をかざすと荷物を載せて案内しながら出発Gateに行くポーターロボが空港にあると便利そうだ)

*15:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20170423&ng=DGKKZO15581470R20C17A4MM8000 (日経新聞 2017.4.23) ロボットと競えますか?日本の仕事、5割代替 主要国トップ
 人工知能(AI)の登場でロボットの存在感が世界で増している。日本経済新聞と英フィナンシャル・タイムズ(FT)が実施した共同の調査研究では、人が携わる約2千種類の仕事(業務)のうち3割はロボットへの置き換えが可能なことが分かった。焦点を日本に絞ると主要国で最大となる5割強の業務を自動化できることも明らかになった。人とロボットが仕事を競い合う時代はすでに始まっている。日経とFTは、読者が自分の職業を選択・入力するとロボットに仕事を奪われる確率をはじき出す分析ツールを共同開発し、22日に日経電子版で公開した。米マッキンゼー・アンド・カンパニーが820種の職業に含まれる計2069業務の自動化動向をまとめた膨大なデータを日経・FTが再集計し、ツールの開発と共同調査に活用した。
■丸ごと自動化も
 調査の結果、全業務の34%に当たる710の業務がロボットに置き換え可能と分かった。一部の眼科技師や食品加工、石こうの塗装工などの職業では、すべての業務が丸ごとロボットに置き換わる可能性があることも判明した。ただ、明日は我が身と過度に心配する必要はない。大半の職業はロボットでは代替できない複雑な業務が残るため、完全自動化できる職業は全体の5%未満にとどまる。19世紀の産業革命に始まる製造業の歴史は、自動化への挑戦そのものだった。200年を経た今、AIの進化が新たな自動化の波を起こしつつある。マッキンゼーによるとエンジンを組み立てる工場労働者の場合、77ある業務の75%が自動化できる。部品の組み立てや製品の箱詰め作業などだ。米ゼネラル・モーターズ(GM)は世界各国に合計3万台のロボットを導入しており、うち8500台のロボットは稼働情報を共有して生産ラインに故障の前兆がないかAIが目を光らせている。自動化の流れは、難しいとされたホワイトカラーや事務系職場にも押し寄せる。米通信大手のAT&Tは顧客の注文の文書化やパスワードのリセット作業など500業務相当をソフトウエアロボットで自動化している。データ抽出や数値計算は人より高速にできるため「2017年末にはさらに3倍に増やす」(同社)計画だ。ホワイトカラーの象徴といえる金融機関でも自動化が進む。事務職では60ある業務のうちファイル作成など65%がロボットに代替できる。米ゴールドマン・サックスでは00年に600人いたトレーダーが株式売買の自動化システムに置き換わり現在は数人に減った。著名投資家のジム・ロジャーズ氏も「AIが進化すれば証券ブローカーなどの仕事は消える」と断言する。一方で意思決定や計画立案にかかわる仕事、想像力を働かせる仕事はロボットの苦手分野だ。最高経営責任者(CEO)など経営幹部には63の業務があるが、ロボット化が可能なのは業務進捗表の作成など22%にとどまる。俳優や音楽家など芸術関連の職業も65ある業務のうち自動化対象は17%にすぎない。
■人手不足の解
 今ある業務が自動化される割合を国別に比較すると、日本はロボットの導入余地が主要国の中で最も大きいことが明らかになった。マッキンゼーの試算では自動化が可能な業務の割合は日本が55%で、米国の46%、欧州の47%を上回る。農業や製造業など人手に頼る職業の比重が大きい中国(51%)やインド(52%)をも上回る結果となった。日本は金融・保険、官公庁の事務職や製造業で、他国よりもロボットに適した資料作成など単純業務の割合が高いという。米国などに比べ弁護士や官公庁事務職などで業務の自動化が遅れている面もある。米国の大手法律事務所では膨大な資料の山から証拠を見つけ出す作業にAIを使う動きが急速に広がっているが、日本はこれからだ。一部の職場ではすでに雇用が失われ始めるなどロボット化には負の側面が確かにある。それでも生産年齢人口が50年後に4割減る見通しの日本では、ロボットに任せられる業務は任せて生産性を高めることが国力の維持に欠かせない。

 この記事は日経とFTの共同プロジェクトの一環として掲載しました。

| 教育・研究開発::2016.12~ | 02:46 PM | comments (x) | trackback (x) |
2017.3.19 教育基本法と教育勅語の根本的な違いは、主権の所在と教育の目的である - 教育勅語と森友学園の建設地問題から(2017年3月20、21、23、24、28、31日、4月4、15日追加)

    教育勅語本文         教育勅語の読み方      上郵便振替用紙

(図の説明:左の2つは、教育勅語だ。一番右は、森友学園の籠池理事長が安倍昭恵夫人からの寄付だと主張している100万円だが、森友学園から森友学園への振込になっており、白い訂正の下には安倍晋三と記載してあるものの、文字が乱雑で感謝の心のこもった100万円の振込ではなさそうに見える)

   
森友学園校舎 横浜市立小学校校舎 松本開智学校校舎 ロンドン小学校校舎 米国高校校舎

(図の説明:森友学園の校舎は確かにあまり趣味がよくないが、横浜市立光が丘小学校も校庭が狭く、アスファルトで舗装してあり(転んだら痛そうで、思い切り運動ができないだろう)、日本の標準形の校舎だが個性や魅力がなく、子ども中心に考えられていない。そのため、日本最初の小学校である松本市の開智学校の方が気合が入って凛としており、ロンドンの小学校やアメリカの高校もよい。義務教育学校は、子どもが長期間通ってセンスを養う場所であるため、大学の建築学科の学生の卒業論文として義務教育学校の設計を提出させ、建て換えにあたってその中からよいものを採用したらどうかと考える)

(1)森友学園問題の本当のポイントは何か
1)国有財産の安値売却は、財務省の国民への背信行為であること
 *1-1のように、財務省が生活ゴミや廃材などが大量に埋まっていたという理由で、8億円値引きした安値で国有地を「森友学園」に払い下げたことについて、その土地が国有化される前に住んでいた住民は、財務省の主張を疑問視しており、森友学園による学校建設に憤っているそうだ。何故なら、その土地は、そこに災害時の一時避難地としての役割も担う公園を建設することを豊中市議会が平成11年(1999年)決議した土地だからだそうだ。

 そのため、政治家を陥れるために、メディアがステレオタイプに政治とカネを結びつけて、いっせいに国民感情を煽る報道をするだけでは、政治家への信用を落とし続け、国民の政治参加への意識を下げるだけで、民主主義に貢献してはいない。従って、問題の本質を見極めて真実を報道すべきだ。

 そこで、豊中市が土地の半分に対して支払った金額は14億2,300万円であり、豊中市が買えなかった残りの半分の評価額は9億5,600万円とされており、財務省は、その土地の地下にある埋設物の除去費用を差し引いて1億3,400万円で森友学園に売却した上、埋設物の除去及び土壌汚染対策費として、1億3,200万円を森友学園に支払ったため、森友学園は200万円でその土地を買えたわけである。この段階では、森友学園の籠池理事長はよい買い物をしただけで、非難される理由にはならず、財務省が国有財産を異常に安い値段で売却したという国民への背信行為だけが問題だったのである。

 地下の埋設物については、旧住民の乗光さんが「あの土地にゴミなんか埋まってないですよ。1960年代、私があの土地に家を建てた際、それまで水田や畑でしたから3メートルほど地面を掘ってコンクリートをしくなどの基礎工事をしっかり行いましたが、その時もゴミなんか出ませんでした。私たちが立ち退きする際、それまであった住宅は全て解体し、産廃業者が運んで行きました。立ち退き後、土地はフェンスに囲まれ、関係者以外立ち入りできなくなっていました。私たちは毎日のように、土地の状況を見続けてきましたが、(処理費8億円に相当する)トラック4,000台分のゴミが運び込まれたり、そのために大きな穴を掘り返したりというようなことが行われている様子は今まで見たことがありません」と証言している。

2)教育施設や福祉施設の立地適地は?
 学校を建てるのに、一部で報道されているような沼地でゴミが捨てられていたような場所や水田・中洲だった場所は、子どもの安全や希望・地域の中心的避難場所という意味で適していないと私は考える。入学式の頃には桜のトンネルができる坂道を登って丘の上の学校に行き、学校の鐘が周囲にも聞こえるような学校が、学校を地域の中心に据えて子どもたちを大切にしているように、私には思われる。

3)安倍首相、昭恵夫人と森友学園の関係は、ブラックではないこと
 森友学園の籠池理事長は、*1-2のように、3月16日に行われた参院予算委員会の現地調査で、「安倍首相から昭恵夫人を通じて100万円の寄付を受けた」と証言し、上の写真の郵便振込用紙が出てきたそうで、その日付は昭恵夫人が森友学園の依頼で講演を行い、名誉校長に就任した日のすぐ後とのことである。しかし、森友学園が寄付して安倍首相と関係を持ちたい理由はあっても、安倍首相がわざわざリスクを冒して森友学園に寄付する理由はなく、仮に安倍首相が政治資金から寄付したとすれば、それは監査済の政治資金収支報告書に掲載されている筈だが、今のところ、そういう指摘はない。

 また、*1-3のように、「2015年9月頃、籠池氏が安倍首相から昭恵夫人を通して100万円をもらった」として、上の写真の郵便振替用紙を証拠として示しているが、この郵便振替用紙は森友学園が森友学園に振り込んだことを示すもので、安倍首相が寄付した証拠にはならない。そのため、森友学園の監査人に、この振込用紙の金の出所は森友学園自身の他の口座でないのかを聞きたいものである。

 そして、百歩譲って、昭恵夫人(森永創業者の孫で安倍首相より金持ち)が個人で100万円を森友学園に寄付していたとしても、家族だからといって昭恵夫人が完全に首相のコントロール下にあるわけではなく、講演を頼まれ名誉校長(名誉市長と同様、何の権限もない)にも就任させてもらったから寄付したとも考えられる上、寄付すること自体は罪ではない。さらに、有名人に講演を依頼するというのは、既に親しいからではなく、親しくなるためにするケースが多く、昭恵夫人は罠にはまったように見えるのだ。

 そのため、私は、安倍首相が「私や妻が(国有地売却や学校認可に)関係していたことになれば首相も国会議員も辞める」「複数の中でお目にかかったかもしれないが、少人数ではなく、個人的な関係は全くない」と言われたのは本心だろうと思う。なお、森友学園の籠池理事長は、とかく有名政治家との関係を誇示したがるが、パーティーで握手したり、会話したりするのは、政治家にとっては普通のことであり、そうしたからといって出会った多くの人の中の一人を、特別の特徴がない限り覚えているわけではない。

(2)森友学園の教育内容は現代日本にふさわしくないことが、問題の本質だ
1)日本国憲法に基づく教育の目的と理念
 日本国憲法に基づく教育の目的と理念は、*2-1のように教育基本法に記載されており、教育の目的は、「本人の人格完成を目指して、平和で民主的な国家及び社会の形成者として必要な資質を備えた国民を育てること」である。そのために、①幅広い知識と教養、真理を求める態度を養う ②豊かな情操と道徳心を培う ③健やかな身体を養う ④個人の能力を伸ばして創造性を培う ⑤自主・自律の精神を養う ⑥勤労を重んずる態度を養う ⑦正義と責任、男女の平等、自他の敬愛と協力を重んじ、公共の精神に基づいて主体的に社会の形成に参画し、その発展に寄与する態度を養う ⑦生命を尊び、自然を大切にし、環境の保全に寄与する態度を養う ⑧伝統・文化を尊重し、それらを育んできた我が国と郷土を愛するとともに、他国を尊重し、国際社会の平和と発展に寄与する態度を養う 等としている。

 その中で、1)学校教育は公の性質を有する 2)学校では教育の目標が達成されるように教育を受ける者の心身の発達に応じて体系的な教育を組織的に行う 3)私立学校は、公の性質及び学校教育において果たす重要な役割に鑑み、国及び地方公共団体が自主性を尊重しつつ助成その他の適当な方法によって私立学校教育の振興に努めなければならない とされており、政治教育については、4)良識ある公民として必要な政治的教養は、教育上尊重されなければならない 5)法律に定める学校は、特定の政党を支持し、又はこれに反対するための政治教育その他政治的活動をしてはならないとしている。

 このうち、上の1)3)が、大阪府や国が学校の設置に協力した論拠になるが、森友学園は2)5)に反しており、学校法人としての認可を与えたのが適切か否かが問われる。

 さらに、森友学園の園児が暗唱している敎育勅語は、*2-2のように、「①朕(ちん)惟(おも)フ(う)ニ 我(わ)カ(が)皇祖(こうそ)皇宗(こうそう) 國(くに)ヲ肇(はじ)ムルコト宏遠(こうえん)ニ 德(とく)ヲ樹(た)ツルコト深厚(しんこう)ナリ」「我(わ)カ(が)臣民(しんみん) 克(よ)ク忠(ちゅう)ニ 」と、天皇主権を前提に国民を天皇の臣下と位置づけ、天皇に忠を尽くすよう教えているため、日本国憲法に反する。

 また、「②克(よ)ク孝(こう)ニ」というのは、自分を犠牲にして親や家に尽くすことを要求し、親が決めた相手と結婚させられる悲劇が多かったため、日本国憲法は、第25条で「婚姻は両性の合意のみに基いて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない」「配偶者の選択、財産権、相続、住居の選定、離婚並びに婚姻及び家族に関するその他の事項に関して、法律は、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して制定されなければならない」としたのである。

 その上、敎育勅語の「一旦(いったん)緩急(かんきゅう)アレハ(ば) 義勇(ぎゆう)公(こう)ニ奉(ほう)シ(じ) 以(もっ)テ天壤(てんじょう)無窮(むきゅう)ノ皇運(こううん)ヲ扶翼(ふよく)スヘ(べ)シ」というのは、*2-4のように、第二次世界大戦中、老若男女を問わず、国民に異論を言わせず戦争に駆り立て、死ぬことを強要する根拠となったものだ。

 そのため、日本国憲法は、第9条で戦争の放棄を定め、第11条ですべての国民に基本的人権を認め、第12条で国民の不断の努力によつてこれを維持しなければならない としているのである。

2)稲田朋美防衛大臣の資質問題について
 安倍首相は、右寄りの稲田防衛大臣を引き立てて育てているが、左よりの元内閣府特命担当大臣(消費者・食品安全、少子化、男女共同参画)の森雅子氏も同様に引き立てており、この2人の選択根拠は、①女性の抜擢 ②どちらも旧森派 ③どちらも選挙区で勝利 など、稲田氏が右よりだからではない。

 その稲田防衛大臣は、*2-3のように、「教育勅語の精神を取り戻すべきだと今も思う」「文科省の方に『教育勅語のどこがいけないのか』と聞きました」「教育勅語の精神である日本が道義国家を目指すべきであること、そして親孝行だとか友達を大切にするとか、そういう核の部分は今も大切なものとして維持している」等と述べている。しかし、私自身は、教育勅語の推進は、第二次世界大戦の敗因を真摯に受け止めておらず、国民主権をないがしろにしている点で、大きな憲法違反だと考えている。

 そのため、日本国憲法は第19条で「思想及び良心の自由は、これを侵してはならない」としているものの、憲法違反の考えを推進する政治家や行政官に関しては、全政治家の品位を低く印象付ける政治とカネ問題や嘘をついた等の人格問題や道義的責任などという法律に定めのない曖昧な責任問題にすり変えるのではなく、憲法違反の思想信条や国造りの方針について単刀直入に追求すべきだと考える。

*1-1:https://news.yahoo.co.jp/byline/shivarei/20170313-00068645/ (YAHOO 2017/3/13) 【森友学園】裏切られた元地権者たち―8億円埋設物も「そんなものはない」、志葉玲 | フリージャーナリスト(環境、人権、戦争と平和)
 政府がただ同然の安値で、学校法人「森友学園」に、国有地を払い下げた問題で、その土地が国有化される前に住んでいた住民達の代表が、筆者のインタビューに応じた。元々の地権者たち157名は、皆、森友学園による学校建設に憤っており、また生活ゴミや廃材などの大量の埋設物がその土地に埋まっていたという政府の主張に対しても疑問視しているという。
○裏切られた元地権者達
 今回、インタビューに応じたのは、乗光恭生さん。森友学園が「安倍晋三記念小学校」こと、「瑞穂の国記念小学院」を建設している大阪府豊中市野田町で町内会長をしている。今回問題になっている土地には、かつて157人の住民がいたと乗光さんは言う。航空機の騒音対策や阪神淡路大震災を受けての避難場所確保という目的から、1970年代から1990年代にかけ、国は豊中市の協力のもとで土地の国有化を進めてきた。だが、乗光さんは当初の目的と違うかたちで土地が使われていることに、「裏切られた」と憤っているという。「今、森友学園が小学校を建設している土地は、本来、そこに災害時の一時避難地としての役割も担う公園を建設するということを豊中市議会が平成11年(1999年)決議した土地です。野田町も阪神淡路大震災で大きな被害を受けましたから、私たち住民は地域のため、被災者支援のためにと、区画整理に応じ、あの土地から立ち退き、多額のお金を投じて新たに住居を立てたのです。私自身、元の家の解体と今の家の建築に3000万円ものお金を使いました。全ては、地域のため、公園をつくるためにしたことです」(乗光さん) 。野田市による公園建設の計画書。公園の右側になるはずの土地を森友学園が取得ところが、豊中市はその後、いつまでたっても公園の建設を始めない。森友学園による国有地取得の経緯について、最初にその問題を告発した木村真・豊中市議会議員はこう語る。「乗光さん達が住んでらっしゃった土地の確保やその後の公園建設という使い道については、国と豊中市で合意していたはずでした。ところが、国は急に態度を変え、公園をつくりたいなら、土地を相応の値で買え、と強硬に迫ったのです。豊中市は財政的事情から、本来、公園するはずだった土地の半分しか買えませんでした。買えなかったもう半分の土地というのが、森友学園が国土交通省大阪航空局と財務省近畿財務局から取得し、『瑞穂の国記念小学院』を建設している土地なのです」。既に報道されているように、豊中市が本来取得するはずの土地の半分に支払った金額は、14億2300万円。他方、豊中市が買えなかった、もう半分の土地は評価額が「9億5600万円」とされ、さらに土地の地下にある埋設物の除去費用を差し引いて、1億3400万円で森友学園に売却された。その上、国側は埋設物除去や土壌汚染対策として、1億3200万円の有益費を森友学園を支払った。つまり、本来は地域の人々のための公園になるはずだった土地を、国は豊中市に対しては値下げしない一方、森友学園には実質200万円で売却してしまったのである。乗光さんは、やるせない思いを吐露する。「あそこが公園になって、(住居の移転のため)お金を出した価値が戻るのであって、そうならないのなら、私たちにとっては損失ばかりです。しかも、あんな酷い学校を建てるなんて…」「もう、私も年ですから、そう長くは生きられないでしょう。妻にも去年、先立たれました。あの土地が公園になって地域に残せてこそ、私も安心して逝けます」(乗光さん)。
○埋設物は本当にあったのか?
 森友学園による国有地取得の際の8億1900万円の控除と、1億3200万円の有益費の根拠とされている地下埋設物についても疑問が残る。乗光さんは「あの土地にゴミなんか埋まってないですよ」と語る。「1960年代、私があの土地に家を建てた際、それまでは水田や畑でしたから、3メートルほど地面を掘ってコンクリートをしくなど基礎工事をしっかり行いましたが、その時もゴミなんか出てきませんでした。私たちが立ち退きする際、それまであった住宅は全て解体し、産廃業者が運んでいきました。立ち退き後も、土地はフェンスに囲まれ、関係者以外立ち入りできないようになっていました。私達の新たな住居も、あの土地のすぐそばで、私たちは毎日のように、土地の状況を見続けてきました。しかし、(処理費8億円に相当する)トラック4000台のゴミが運び込まれたり、そのために大きな穴を掘り返したりというようなことが行われている様子を、私たちは今まで見たことがありません」(乗光さん) 。もし、乗光さんの言うように、トラック4000台分という膨大な埋設物が実際に埋まっていないとしたら、最初から森友学園に激安で土地を提供するため、埋設物についての調査結果をねつ造したのではないか―そんな疑念が出てくる。そして、仮にそうだとしたら、なぜ官僚たちがそこまでしたのか、誰からの圧力があったのか、ということも明らかにしないといけないだろう。
○疑惑の解明はこれからだ
 「瑞穂の国記念小学院」については、森友学園側は認可申請を取り下げ、籠池泰典理事長も辞任する意向を表明した。だが、あくまで森友学園側は、土地を所有し続け、「瑞穂の国記念小学院」の認可もあきらめていないという。国側が買い戻すにしても、国有地が不正に払い下げられた疑惑を解明するべきだ。そして、その土地の国有化の経緯を考えれば、乗光さんら元地権者の意見を尊重すべきだろう。

*1-2:http://digital.asahi.com/articles/ASK3J6GKDK3JUTFK01N.html
(朝日新聞 2017年3月16日) 籠池理事長を23日に証人喚問 自民・民進が合意
 学校法人「森友学園」(大阪市)への国有地売却問題をめぐり、学園の籠池(かごいけ)泰典理事長は16日の参院予算委員会の現地調査で「安倍晋三首相から昭恵夫人を通じて100万円の寄付を受けた」と証言した。首相側は即座に寄付を否定。自民、民進両党は、籠池氏の証人喚問を23日に衆参各院で行うことで合意した。籠池氏の新証言で、籠池氏との個人的な関係を否定してきた首相の答弁の信用性が問われかねない事態になり、これまで参考人招致を拒んできた自民側が、うそをついた場合に偽証罪に問える証人喚問が必要と判断し、民進側に提案した。籠池氏は大阪府豊中市の小学校建設現場を視察した参院予算委の与野党メンバーに対し、2015年9月に学園の幼稚園に講演に来た昭恵氏から「どうぞこれをお使い下さい。安倍晋三からです」と言われ、建設寄付金として100万円を手渡されたと証言。「名前は書いていないが、日付が入ったものはある」とも述べた。これに対し、菅義偉官房長官は記者会見で、「首相に確認をしたところ、『自分では寄付はしていない。昭恵夫人、事務所等、第三者を通じても寄付していない』ということだった」と述べた。昭恵氏が個人として寄付したかどうかは確認しているという。首相も記者団に「官房長官から話があった通り」と語った。証言を受け、自民、公明両党の国会対策委員長は国会内で会談。「首相に対する侮辱だ」(自民の竹下亘国対委員長)として証人喚問に応じる考えで一致。竹下氏は民進の山井和則国対委員長と電話会談し、衆参それぞれの予算委員会で23日に証人喚問を行うことで合意した。17日に正式決定する。国有地売却の不透明な経緯や政治家の関与が国会で議論となるなか、首相は「私や妻が(国有地売却や学校認可に)関係していたことになれば首相も国会議員も辞める」(2月17日の衆院予算委)と断言。籠池氏については「複数の中でお目にかかったかもしれないが、少人数ではない。個人的な関係は全くない」(同28日の参院予算委)と答弁していた。
     ◇
〈証人喚問〉 国会の国政調査権を定めた憲法62条に基づく制度。うそをついた場合は、議院証言法に基づき国会から告発され、偽証罪(3カ月以上10年以下の懲役)に問われる。正当な理由なく、出頭や証言を拒否しても禁錮刑や罰金を科せられる。近年では、2012年4月にAIJ投資顧問による年金資産詐取事件の浅川和彦社長、07年10月に防衛汚職事件の守屋武昌・元防衛事務次官、05年12月に耐震偽装事件の元建築士らが喚問された。

*1-3:http://digital.asahi.com/articles/ASK3J520TK3JUTFK00P.html
(朝日新聞 2017年3月16日) 籠池氏、調査に「首相から100万円」 官房長官は否定
 学校法人「森友学園」(大阪市)への国有地払い下げ問題をめぐる参院予算委員会の16日の現地調査で、籠池(かごいけ)泰典理事長への聞き取り調査を終えた舟山康江氏(民進)が記者団に「(籠池氏が)安倍(晋三)首相から、(昭恵)夫人を通して100万円をもらった、と語った。時期は2015年9月ごろ」と説明した。一方、菅義偉官房長官は同日午後の記者会見で、首相に確認したところ、「自分では寄付していない。昭恵夫人、事務所等、第三者を通じても寄付していない」との説明があったことを明らかにした。昭恵氏が個人として寄付したかどうかについても、念のために確認していることも説明した。現地調査では、山本一太委員長ら11人が学園が開校をめざしていた大阪府豊中市の小学校建設現場も視察した。敷地内では、籠池氏の案内を受けた。学園や籠池氏について、首相はこれまで、国会で「私や妻が(国有地売却や学校認可に)関係していたことになれば首相も国会議員も辞める」(2月17日の衆院予算委)、「複数の中でお目にかかったかもしれないが、少人数ではない。個人的な関係は全くない」(同28日の参院予算委)と答弁している。

*2-1:http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H18/H18HO120.html
教育基本法 (平成十八年十二月二十二日法律第百二十号)
第一章 教育の目的及び理念
(教育の目的)
第一条  教育は、人格の完成を目指し、平和で民主的な国家及び社会の形成者として必要な資質を備えた心身ともに健康な国民の育成を期して行われなければならない。
(教育の目標)
第二条  教育は、その目的を実現するため、学問の自由を尊重しつつ、次に掲げる目標を達成するよう行われるものとする。
一  幅広い知識と教養を身に付け、真理を求める態度を養い、豊かな情操と道徳心を培うとともに、健やかな身体を養うこと。
二  個人の価値を尊重して、その能力を伸ばし、創造性を培い、自主及び自律の精神を養うとともに、職業及び生活との関連を重視し、勤労を重んずる態度を養うこと。
三  正義と責任、男女の平等、自他の敬愛と協力を重んずるとともに、公共の精神に基づき、主体的に社会の形成に参画し、その発展に寄与する態度を養うこと。
四  生命を尊び、自然を大切にし、環境の保全に寄与する態度を養うこと。
五  伝統と文化を尊重し、それらをはぐくんできた我が国と郷土を愛するとともに、他国を尊重し、国際社会の平和と発展に寄与する態度を養うこと。
(生涯学習の理念)
第三条  国民一人一人が、自己の人格を磨き、豊かな人生を送ることができるよう、その生涯にわたって、あらゆる機会に、あらゆる場所において学習することができ、その成果を適切に生かすことのできる社会の実現が図られなければならない。
(教育の機会均等)
第四条  すべて国民は、ひとしく、その能力に応じた教育を受ける機会を与えられなければならず、人種、信条、性別、社会的身分、経済的地位又は門地によって、教育上差別されない。
2  国及び地方公共団体は、障害のある者が、その障害の状態に応じ、十分な教育を受けられるよう、教育上必要な支援を講じなければならない。
3  国及び地方公共団体は、能力があるにもかかわらず、経済的理由によって修学が困難な者に対して、奨学の措置を講じなければならない。
第二章 教育の実施に関する基本
(義務教育)
第五条  国民は、その保護する子に、別に法律で定めるところにより、普通教育を受けさせる義務を負う。
2  義務教育として行われる普通教育は、各個人の有する能力を伸ばしつつ社会において自立的に生きる基礎を培い、また、国家及び社会の形成者として必要とされる基本的な資質を養うことを目的として行われるものとする。
3  国及び地方公共団体は、義務教育の機会を保障し、その水準を確保するため、適切な役割分担及び相互の協力の下、その実施に責任を負う。
4  国又は地方公共団体の設置する学校における義務教育については、授業料を徴収しない。
(学校教育)
第六条  法律に定める学校は、公の性質を有するものであって、国、地方公共団体及び法律に定める法人のみが、これを設置することができる。
2  前項の学校においては、教育の目標が達成されるよう、教育を受ける者の心身の発達に応じて、体系的な教育が組織的に行われなければならない。この場合において、教育を受ける者が、学校生活を営む上で必要な規律を重んずるとともに、自ら進んで学習に取り組む意欲を高めることを重視して行われなければならない。
(大学)
第七条  大学は、学術の中心として、高い教養と専門的能力を培うとともに、深く真理を探究して新たな知見を創造し、これらの成果を広く社会に提供することにより、社会の発展に寄与するものとする。
2  大学については、自主性、自律性その他の大学における教育及び研究の特性が尊重されなければならない。
(私立学校)
第八条  私立学校の有する公の性質及び学校教育において果たす重要な役割にかんがみ、国及び地方公共団体は、その自主性を尊重しつつ、助成その他の適当な方法によって私立学校教育の振興に努めなければならない。
(教員)
第九条  法律に定める学校の教員は、自己の崇高な使命を深く自覚し、絶えず研究と修養に励み、その職責の遂行に努めなければならない。
2  前項の教員については、その使命と職責の重要性にかんがみ、その身分は尊重され、待遇の適正が期せられるとともに、養成と研修の充実が図られなければならない。
(家庭教育)
第十条  父母その他の保護者は、子の教育について第一義的責任を有するものであって、生活のために必要な習慣を身に付けさせるとともに、自立心を育成し、心身の調和のとれた発達を図るよう努めるものとする。
2  国及び地方公共団体は、家庭教育の自主性を尊重しつつ、保護者に対する学習の機会及び情報の提供その他の家庭教育を支援するために必要な施策を講ずるよう努めなければならない。
(幼児期の教育)
第十一条  幼児期の教育は、生涯にわたる人格形成の基礎を培う重要なものであることにかんがみ、国及び地方公共団体は、幼児の健やかな成長に資する良好な環境の整備その他適当な方法によって、その振興に努めなければならない。
(社会教育)
第十二条  個人の要望や社会の要請にこたえ、社会において行われる教育は、国及び地方公共団体によって奨励されなければならない。
2  国及び地方公共団体は、図書館、博物館、公民館その他の社会教育施設の設置、学校の施設の利用、学習の機会及び情報の提供その他の適当な方法によって社会教育の振興に努めなければならない。
(学校、家庭及び地域住民等の相互の連携協力)
第十三条  学校、家庭及び地域住民その他の関係者は、教育におけるそれぞれの役割と責任を自覚するとともに、相互の連携及び協力に努めるものとする。
(政治教育)
第十四条  良識ある公民として必要な政治的教養は、教育上尊重されなければならない。
2  法律に定める学校は、特定の政党を支持し、又はこれに反対するための政治教育その他政治的活動をしてはならない。
(宗教教育)
第十五条  宗教に関する寛容の態度、宗教に関する一般的な教養及び宗教の社会生活における地位は、教育上尊重されなければならない。
2  国及び地方公共団体が設置する学校は、特定の宗教のための宗教教育その他宗教的活動をしてはならない。
第三章 教育行政
(教育行政)
第十六条  教育は、不当な支配に服することなく、この法律及び他の法律の定めるところにより行われるべきものであり、教育行政は、国と地方公共団体との適切な役割分担及び相互の協力の下、公正かつ適正に行われなければならない。
2  国は、全国的な教育の機会均等と教育水準の維持向上を図るため、教育に関する施策を総合的に策定し、実施しなければならない。
3  地方公共団体は、その地域における教育の振興を図るため、その実情に応じた教育に関する施策を策定し、実施しなければならない。
4  国及び地方公共団体は、教育が円滑かつ継続的に実施されるよう、必要な財政上の措置を講じなければならない。
(教育振興基本計画)
第十七条  政府は、教育の振興に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、教育の振興に関する施策についての基本的な方針及び講ずべき施策その他必要な事項について、基本的な計画を定め、これを国会に報告するとともに、公表しなければならない。
2  地方公共団体は、前項の計画を参酌し、その地域の実情に応じ、当該地方公共団体における教育の振興のための施策に関する基本的な計画を定めるよう努めなければならない。
第四章 法令の制定
第十八条  この法律に規定する諸条項を実施するため、必要な法令が制定されなければならない。
   附 則 抄
(施行期日)
1  この法律は、公布の日から施行する。

*2-2:http://www.inaco.co.jp/isaac/shiryo/kyoiku_chokugo.htm
敎育ニ關スル勅語(全文)
 朕惟フニ我カ皇祖皇宗國ヲ肇ムルコト宏遠ニ徳ヲ樹ツルコト深厚ナリ我カ臣民克ク忠ニ克ク孝ニ億兆心ヲ一ニシテ世々厥ノ美ヲ濟セルハ此レ我カ國體ノ精華ニシテ敎育ノ淵源亦實ニ此ニ存ス爾臣民父母ニ孝ニ兄弟ニ友ニ夫婦相和シ朋友相信シ恭儉己レヲ持シ博愛衆ニ及ホシ學ヲ修メ業ヲ習ヒ以テ智能ヲ啓發シ徳器ヲ成就シ進テ公益ヲ廣メ世務ヲ開キ常ニ國憲ヲ重ジ國法ニ遵ヒ一旦緩急アレハ義勇公ニ奉シ以テ天壌無窮ノ皇運ヲ扶翼スヘシ是ノ如キハ獨リ朕カ忠良ノ臣民タルノミナラス又以テ爾祖先ノ遺風ヲ顯彰スルニ足ラン
斯ノ道ハ實ニ我カ皇祖皇宗ノ遺訓ニシテ子孫臣民ノ倶ニ遵守スヘキ所之ヲ古今ニ通シテ謬ラス之ヲ中外ニ施シテ悖ラス朕爾臣民ト倶ニ拳々服膺シテ咸其徳ヲ一ニセンコトヲ庶幾フ
明治二十三年十月三十日
御名御璽

教育勅語の読み
朕(ちん)惟(おも)フ(う)ニ 我(わ)カ(が)皇祖(こうそ)皇宗(こうそう) 國(くに)ヲ肇(はじ)ムルコト宏遠(こうえん)ニ 德(とく)ヲ樹(た)ツルコト深厚(しんこう)ナリ
我(わ)カ(が)臣民(しんみん) 克(よ)ク忠(ちゅう)ニ 克(よ)ク孝(こう)ニ 億兆(おくちょう)心(こころ)ヲ一(いつ)ニシテ 世(よ)世(よ)厥(そ)ノ美(び)ヲ濟(な)セルハ 此(こ)レ我(わ)カ(が)國體(こくたい)ノ精華(せいか)ニシテ 教育(きょういく)ノ淵源(えんげん)亦(また)實(じつ)ニ此(ここ)ニ存(そん)ス
爾(なんじ)臣民(しんみん) 父母(ふぼ)ニ孝(こう)ニ 兄弟(けいてい)ニ友(ゆう)ニ 夫婦(ふうふ)相(あい)和(わ)シ 朋友(ほうゆう)相(あい)信(しん)シ(じ) 恭儉(きょうけん)己(おの)レヲ持(じ)シ 博愛(はくあい)衆(しゅう)ニ及(およ)ホ(ぼ)シ 學(がく)ヲ修(おさ)メ 業(ぎょう)ヲ習(なら)ヒ(い) 以(もっ)テ智能(ちのう)ヲ啓發(けいはつ)シ 德噐(とくき)ヲ成就(じょうじゅ)シ 進(すすん)テ(で)公益(こうえき)ヲ廣(ひろ)メ 世務(せいむ)ヲ開(ひら)キ 常(つね)ニ國憲(こくけん)ヲ重(おもん)シ(じ) 國法(こくほう)ニ遵(したが)ヒ(い) 一旦(いったん)緩急(かんきゅう)アレハ(ば) 義勇(ぎゆう)公(こう)ニ奉(ほう)シ(じ) 以(もっ)テ天壤(てんじょう)無窮(むきゅう)ノ皇運(こううん)ヲ扶翼(ふよく)スヘ(べ)シ 是(かく)ノ如(ごと)キハ 獨(ひと)リ朕(ちん)カ(が)忠良(ちゅうりょう)ノ臣民(しんみん)タルノミナラス(ず) 又(また)以(もっ)テ爾(なんじ)祖先(そせん)ノ遺風(いふう)ヲ顯彰(けんしょう)スルニ足(た)ラン
斯(こ)ノ道(みち)ハ 實(じつ)ニ我(わ)カ(が)皇祖(こうそ)皇宗(こうそう)ノ遺訓(いくん)ニシテ 子孫(しそん)臣民(しんみん)ノ倶(とも)ニ遵守(じゅんしゅ)スヘ(べ)キ所(ところ) 之(これ)ヲ古今(ここん)ニ通(つう)シ(じ)テ謬(あやま)ラス(ず) 之(これ)ヲ中外(ちゅうがい)ニ施(ほどこ)シテ悖(もと)ラス(ず) 朕(ちん)爾(なんじ)臣民(しんみん)ト倶(とも)ニ 拳拳(けんけん)服膺(ふくよう)シテ 咸(みな)其(その)德(とく)ヲ一(いつ)ニセンコトヲ庶(こい)幾(ねが)フ(う)
明治二十三年十月三十日
御名(ぎょめい) 御璽(ぎょじ)

*2-3:http://digital.asahi.com/articles/ASK385H5KK38UTFK00M.html (朝日新聞 2017年3月8日) 稲田氏「教育勅語の精神、取り戻すべきだと今も思う」
 稲田朋美防衛相は8日の参院予算委員会で、天皇を頂点とする秩序をめざし、戦前の教育の基本理念を示した教育勅語について、「日本が道義国家を目指すというその精神は今も取り戻すべきだと考えている」と述べた。社民党の福島瑞穂氏に答えた。学校法人「森友学園」が運営する幼稚園で教育勅語を素読させていることに文部科学省が「適当ではない」とコメントしたことについて、稲田氏は2006年10月の月刊誌で「文科省の方に『教育勅語のどこがいけないのか』と聞きました」と擁護していた。福島氏は「今もこの考えを変えていないのか」と問うた。稲田氏は「教育勅語の精神である日本が道義国家を目指すべきであること、そして親孝行だとか友達を大切にするとか、そういう核の部分は今も大切なものとして維持をしているところだ」と述べた。福島氏が、教育勅語が終戦後の1948年に衆参両院が排除・失効の確認を決議していることを指摘すると、「教育勅語自体が全く誤っているというのは私は違うと思う」と反論。三重県の私立高校を例に挙げて、「今も教育勅語の碑を校庭に置き、父母の日に教育勅語を全部写させている学校もある」と述べた。福島氏から「教育勅語が戦前、国民の道徳の規範になって問題を起こしたという意識はあるか」と問われると、「そういうような一面的な考え方はしていない」と答えた。稲田氏は2月23日の衆院予算委員会でも民進党の辻元清美氏から教育勅語に対する考え方を問われ、「教育勅語の中の親孝行とかは良い面だ。文科省が言う、(教育勅語を)丸覚えさせることに問題があるということはどうなのかと思う。どういう教育をするかは教育機関の自由だ」と答えていた。

*2-4:http://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-461489.html (琉球新報社説 2017年3月16日) 全学徒隊の碑 「強制動員」の歴史忘れまい
 糸満市摩文仁の平和祈念公園内に「全学徒隊の碑」が建立された。今から72年前、県内21の中等学校、師範学校などの生徒(学徒)が沖縄戦に動員され犠牲になった事実を伝える。沖縄に配備された日本軍の任務は、沖縄を守り抜くことではなく、米軍を一日でも長く引きつけて「出血消耗」させ、日本本土への攻撃を遅らせることだった。そのために少年少女たちは半ば強制的に動員され、約半数が命を落とした。学徒隊として「ひめゆり」や一中、二中、師範の鉄血勤皇隊が知られるが、その他の学徒隊はあまり知られていない。全学徒隊の碑の建立を機に、改めて沖縄戦の実相を明らかにし後世に伝える重要性を確認したい。動員された学徒のうち、男子は14歳から19歳で、上級生は「鉄血勤皇隊」に、下級生は「通信隊」に編成された。女子は15歳から19歳で、主に負傷兵の看護活動に当たった。正確な数字は不明だが、ひめゆり平和祈念資料館によると、男女1900人以上が動員され981人が死亡した。男子学徒の動員は「志願」という形を取っているが、結果的に強制だった。米軍押収史料によると、軍が県と覚書を交わして、14歳以上の生徒の名簿をあらかじめ軍に提出させていた。その名簿に基づいて3月末、有無を言わせず学徒たちを召集し、2等兵として従軍させた。女子生徒の動員に対し、県は抵抗したが軍に押し切られた。軍の強制とはいえ、県が軍に協力した事実を忘れてはならない。爆薬を背負って米軍戦車めがけて自爆することを命令された学徒もいる。刀や手りゅう弾だけで敵に向かっていく斬り込みも命じられた。命を武器として扱う特攻である。学徒の犠牲は日本軍が首里の司令部を放棄して南部撤退後に多くなる。米軍が迫って来た6月上旬~下旬、学徒隊ごとに解散命令が出た。周りを米軍に囲まれ、砲弾が降り注ぐ中、逃げ惑い、悲惨な最期を遂げた。沖縄戦は終わったが、今でも世界の紛争地には多くの少年たちが徴兵・徴用されている。今回建立された碑は、沖縄戦の実相を伝えると同時に、子どもの生命を脅かし夢と希望を奪う行為を許してはならない-というメッセージを発信する場となってほしい。


PS(2017年3月20日追加):*3によると、昭恵夫人は「寄付した記憶は全くない」と話しておられるそうだが、「記憶がない」という言葉は、「①寄付したが言わない」「②寄付したかも知れないが忘れた」「③寄付していない」のどの場合にも使うことができ、これまで①の場合に使う人が多かったため、かえって疑いが濃くなる。そのため、寄付したことを明確に否定するか、寄付したのならその理由を明確に説明するのがよいだろう。いずれにしても、夫人であって首相本人ではない。

*3:http://mainichi.jp/articles/20170317/k00/00e/040/219000c (毎日新聞 2017年3月17日) 昭恵夫人が100万円の寄付否定
 菅義偉官房長官は17日午前の記者会見で、大阪市の学校法人「森友学園」の籠池(かごいけ)泰典理事長が発言した「安倍晋三首相から昭恵夫人を通じて100万円の寄付を受けた」との事実を否定した。「安倍事務所を通じて夫人に確認したところ、領収書等の記録もなく、夫人個人としても寄付は行っていないということだった」と述べた。衆院予算委員会は17日昼、籠池氏の証人喚問を23日に行うことを全会一致で議決した。参院予算委も同じく23日の喚問を議決した。政府関係者によると、昭恵さんは「寄付した記憶は全くない」と話している。籠池氏が寄付を受けたと主張した2015年9月の昭恵さんの講演に同行した政府職員も「寄付をするような場面はなかった」と証言しているという。菅氏は証人喚問について「国会でお決めになることだ。政府は説明を丁寧に行っていくことに尽きる」と述べた。証人喚問は12年4月、AIJ投資顧問の年金消失問題で同社社長(当時)に行って以来。自民、公明両党は17日午前、幹事長らが国会内で会談し、証人喚問を行う方針を確認した。自民党の二階俊博幹事長は記者会見で、16日の参院予算委の視察で籠池氏が首相の寄付に言及したことについて「物事をはっきりしてもらいたい。首相とああいう人(籠池氏)を一緒にしないでもらいたい」と語った。証人喚問は出頭を拒否したり虚偽答弁をしたりすれば、議院証言法に基づき罪に問われる。与党は籠池氏の真意をただす必要があると判断。野党も応じた。民進党の蓮舫代表は党会合で「首相が侮辱されたから国会に招くのではない。国有地が首相の知人に不当に払い下げられたのではないか。この視点を間違えてはいけない」と語った。森友学園の民事訴訟に出廷していたことを認めた稲田朋美防衛相は「しっかり事実関係、真実を話してほしい」と発言。籠池氏が言及した首相の寄付に関して「全く承知していない」と語った。


PS(2017年3月23日追加):話は変わるが、*4のように、学童保育を高齢者の介護施設に併設すると、子どもは高齢者から勉強や遊び方、昔話、高齢者のやさしさなどを教えてもらうことができ、高齢者は子どもの元気を分けてもらうことができるので、お互いによいと思われる。

*4:https://www.agrinews.co.jp/p40429.html (日本農業新聞 2017年3月22日) 福祉施設に併設 子育て 地域ぐるみ 熊本・JAくま 直営学童保育
 熊本県のJAくまが、中山間地域のあさぎり町で学童保育(学童)の運営に乗り出している。既存の施設が人手不足や採算性の悪さで維持が難しくなったため、JAが手を挙げた。学童をJAの高齢者介護施設に併設し、両施設で人員を融通することで安定的な経営を実現した。保護者や地元行政から喜ばれており、専門家は「地域に根差す取り組み。JA直営は全国的にも珍しい」と指摘する。


PS(2017年3月24日追加):昨日の参院及び衆院予算員会で籠池氏の証人喚問を聞き、①西田議員(自民党、税理士)の質問で、籠池氏が8億円程度の資金不足だったこと ②竹谷議員(公明党、公認会計士)の質問で、籠池氏が真実のみを回答しているわけではないこと がよくわかった。さらに、現在、焦点となっている「昭恵夫人が100万円の寄付をしたか」については、国会議員は悪意で何を言われるかわからないので、必ず秘書等と一緒に人(メディアも含む)と会うようにしており、昭恵夫人の場合も人払いをしたというのは嘘だと思われる。
 また、*5の籠池氏が国有地の借地権延長に関して谷氏に手紙を出した回答のFaxは、昭恵夫人は電話がかかってきた時に出ておらず、夫人担当の政府職員が調べて0回答したもので瑕疵はないように見える。国会議員(夫人も)はこういうことを陳情する支持者に明確に断るとカドがたつため、こういう曖昧な断り方をすることがあり、これは断っている態度だ。しかし、その後、ゴミが埋まっていたとして8億円値引きして国有地が売却され、学校建設のために足りなかった費用の埋め合わせができており、籠池氏は「職員の働き掛けで物事が動いた」と証言している。もし、首相や昭恵夫人が何も言わないのに勝手に“忖度(そんたく)”したのなら、国民の財産を自分の出世ために安売りしたのであるため財務省担当者に責任があり、もし首相の指示があって物事が動いたのなら首相の責任になる。

 
 2017.3.23   2017.3.6  2017.2.21goo  2017.3.23goo  2017.3.24
 毎日新聞    朝日新聞                     朝日新聞  

(図の説明:籠池氏は「ゴミの除去は建物の下のみやった」と述べているが、本当にゴミがあったのなら運動場の方が子どもへの影響が大きいため重大だ。また、国の査定額と大阪府私学審議会への報告の差額は8億円程度であり、8億円の土地値引きがあると資金繰りに整合性が出る)

*5:http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2017032301001653.html (東京新聞《共同》 2017年3月23日) 森友、昭恵夫人の担当職員関与 財務省に照会、菅氏は影響否定
 菅義偉官房長官は23日の記者会見で、大阪市の学校法人「森友学園」の国有地払い下げ問題に絡み、学園理事長の退任意向を表明している籠池泰典氏の問い合わせに対し、安倍昭恵首相夫人を担当する政府職員が回答した2015年のファクスを公表した。ファクスは国有地に関し財務省に問い合わせ、結果を昭恵夫人に報告したと明記した。籠池氏は同日の衆院予算委員会の証人喚問で職員の働き掛けで「物事が動いた」と証言した。菅氏は昭恵夫人の関与や照会の影響を否定した。森友学園が小学校建設を計画した国有地を評価額よりも8億円安く取得した問題を巡り、昭恵夫人側の関与が明らかになった格好だ。


PS(2017.3.28追加):監査経験のある公認会計士の目で見ると、財務省は定期借地権の延長や借地料の値下げは(影響が長期に及び、関係者が多数になるため?)できず、売買に切り替えてゴミ撤去費用の名目で8億円値引きし、周辺の地価と比べて9割安の条件で土地を売却したというシナリオが矛盾が最も少ない。しかし、その際には、①新年度予算のうち他の兆円単位、1000億円単位の無駄遣いと比較して大きいか否か ②学校用地として8億円値引きして払い下げるのは不適切か ③経産省や財務省への政治家の指示があったか否か などが問題となる。
 私は、①については、8億円でも無駄遣いはやめて欲しいが、財務省や国会議員は、他の兆円単位や1000億円単位の無駄遣いを野放しにして、国民の生命線である福祉を削ったり、消費税を上げなければ財源がないなどとは決して言って欲しくない。また、②については、教育基本法第八条に、「私立学校も助成その他の適当な方法で私立学校教育の振興に努める」と規定されているため、よい学校への土地の低廉譲渡は違法ではないが、森友学園の場合は教育勅語をバイブルとし、籠池理事長が証人喚問で「皇国日本に役立つ国民を育てる」と連呼するなど、民主主義や主権在民を無視した教育を行う人であるため、そもそも認可したり優遇したりすべき学校ではなかったのだと考える。そして、③については、政治家の指示があったか否かは不明だが、このような学校に関わってその教育方針を褒めちぎっていたことについては、やはり昭恵夫人や安倍首相の感性に疑問を感じざるを得ない。
 そのため、この土地は、豊中市か大阪府か国が建物とともに買い、建物は他の学校にするとか、避難所にするなど、他の有意義な使い方をするのがよいと思われる。

*6:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12863223.html
(朝日新聞社説 2017年3月28日)森友と財務省 納税者を甘く見るな
 森友学園(大阪市)を巡る様々な問題について国会で激しい論戦が続くなか、国の新年度予算が成立した。与党からは「次のステージに向かう時だ」との声があがり、幕引きを急ごうとする動きが見られる。とんでもない。学園の籠池(かごいけ)泰典氏の証人喚問を経ても疑惑は晴れない。安倍首相夫人の昭恵氏や昭恵氏付の政府職員の行動が、学園への異例づくしの国有地売却などに影響したのか、事実関係の徹底解明が不可欠だ。見過ごせないのは、取引の経緯を詳しく説明しようとしない財務省の姿勢である。国有地の売却ではその金額を原則公表してきたのに、森友側との取引では伏せた。財務省近畿財務局によるこの異例の対応が一連の疑惑の発端になった。遊休国有地の取引は売買が主流なのに、定期借地契約を認めた。その後売買に切り替えたが、ゴミ撤去費用を巡る不明朗な見積もりを経て、周辺の地価と比べて9割安という破格の条件になった。財務省は「適正に処理した」と繰り返す。交渉記録は廃棄したから残っていない。法令違反はない。関係者への聞き取り調査はしていない――。最近になって一部の調査結果を公表したが、自分たちが正しいから信じろと言わんばかりだ。国会では当時の理財局長と近畿財務局長の参考人招致が実現したが、「報告がなかった」「政治的配慮はしていない」との発言にとどまった。財務省の仕事は、国有財産の管理と不要な資産の処分にとどまらない。税制を考え、それに基づいて税金を徴収し、予算案として配分を練るという政府の仕事の中核を担っている。そうした役割は納税者・国民の理解と納得に支えられている。財務省を含む政府の説明が明らかに足りないと考える人が多数を占める現状に、危機感はないのだろうか。ただちに関係者から話を聞き、誰がどう動いたかを再現して、国会で説明するべきだ。自ら調べる意思がないのなら、第三者に任せるしかない。土地の売却契約の成立から1年もたたずに記録を廃棄したとしているのも適切でない。内規に基づく措置だというが、内規自体が情報公開を充実させる基本に反していることを自覚し、猛省しなければならない。かたくなな財務省は何を心配しているのだろう。自らの組織の防衛か、森友問題で浮上した政治家への配慮なのか。納税者の目は厳しい。甘く見れば必ずしっぺ返しがある。


PS(2017年3月28日追加):「安倍首相の妻昭恵氏が公人か私人か」については、私は公人として報酬をもらっていない以上、私人だと考える。これに対し、①首相の外遊への同行など首相の公務遂行を補助する活動を行っている ②夫人付き職員が首相関連の公的活動を支援するために配置されている 等の理由で公人だという主張があるが、①については、首相夫人は選挙で選ばれた議員ではなく、首相の外交にプラスαの付加価値をつけるため無償で行っている内助の功にすぎないため、公人と考えるべきではないだろう。また、②については、配置されている夫人付き職員は報酬をもらってプロの仕事をしているので公人だが、夫人は無償で内助の功をしているにすぎないため、公人ではないだろう。そして、仮に配偶者が公人であるとすれば、配偶者にも報酬を支払うべきであり、その職務に耐えうる配偶者を持っている人でなければ首相になることはできないため、変なことになる。つまり、何でも政治家に不都合なように拡大解釈してケチをつけると常識外れになり、むしろ支持率が下がるのだ。

*7:http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201703/CK2017032802000108.html (東京新聞 2017年3月28日) 【政治】「昭恵氏は私人」に野党が異議 首相夫人付き職員が「職務外」の照会報告
 学校法人「森友学園」に国有地が格安で払い下げられた問題で、安倍晋三首相の妻昭恵氏が、公人か私人かが問われている。首相は昭恵氏を「私人」と主張し証人喚問を拒否している。だが、学園に関連して、首相夫人付き職員が本来の職務を超えて対応している実態をみると、昭恵氏が「私人」との主張には疑問符が付く。 政府によると、夫人は公務員ではないが、首相外遊への同行など「首相の公務遂行を補助する活動」を行う。夫人付き職員は、首相に関連した公的活動を支援するため配置されている。第一次安倍政権で昭恵氏に初めて配置され、その後一人だったが、第二次安倍政権で常勤、非常勤で計五人に増員された。学園の籠池(かごいけ)泰典氏の依頼で、夫人付き職員が財務省に問い合わせてファクスで回答したことについて、菅義偉官房長官は二十七日の参院予算委員会で、夫人とは関係ない職務外の行為であり、「職員個人の行為」だと強調した。さらに、土生(はぶ)栄二内閣審議官は「職務ではなく『国民の方』の問い合わせに対する公務員としての『丁寧な対応』」と説明した。しかし、職員は昭恵氏に照会や回答について報告。そのことを籠池氏にも伝えている。民進党の白真勲氏は同委員会で「詭弁(きべん)だ」と反発した。職員は、昭恵氏が学園系列の幼稚園で講演し、小学校の名誉校長になった際に「連絡・調整が必要になる場合に備えて」同行した時に籠池氏と面識を持ったとみられる。職員が昭恵氏に報告したのは、籠池氏との関係を知っていたからだ。首相夫人付き職員は学園での講演のように、昭恵氏の私的な行為にも同行している。「夫人は公務員ではないから公人ではない」との説明には野党から批判が出ている。


PS(2017年3月31日、4月4日追加):*8-1に、「政府は、憲法や教育基本法等に反しない形で教育勅語を教材として用いることは否定されないと閣議決定した」と書かれているが、*2-2の最後には、「教育勅語に書かれていることは、天皇のためだけでなく、祖先の遺した文化であり、この道徳は皇祖・皇宗の遺訓であって子孫・臣民が倶に遵守すべきだから、古今に通じて護らなければならない」と記載されている。そのため、それなら、このどこを憲法や教育基本法等に反しない形で教材として利用できるのかを明示すべきだ。私自身は、教育勅語は日本史や文化人類学の教科書で教えることができるにすぎず、民主主義の下で日進月歩しており、古今で決して同じではない人類の生活様式やそれに基づく考え方とは相いれない。さらに、日本史や世界史は、「古事記や日本書紀等の文書に残されていないから、そういう事実はなかった」とするような非科学的な史実ではなく、地理学・遺伝学・考古学・行動学・社会学・比較文化等のあらゆる手法を駆使して、人類の誕生・気候変動・地殻変動・人類の地球上での拡散・それに伴って起こった戦争や文化の拡散などを、体系的かつ矛盾なく明らかにすべき時に来ており、現在の科学は既にその手法を持っている。そして、そうすることによって歴史は暗記科目ではなく筋の通った科学にすることができ、その中で、実験することが不可能な人間の行動や社会現象は過去の歴史を見れば過去にも似たようなことが起こっていて参考になることがあるわけだ。
 なお、*8-2の4月4日の記事に書かれているように、松野文科相は、「(教育勅語の)どの部分が憲法に反する、反しないに関して文科省は判断しない」として判断基準を明示しなかったそうだが、それなら文科省は教科書検定も行うことができない筈だ。しかし、本当は、(首相の問題と言うより)自民党の党是であり自民党のDNAと言われる自民党憲法改正草案(①天皇元首制 ②日本国民→日本国への変更 ③基本的人権の制限 等)や特定秘密保護法、共謀罪、安保法制と、この教育勅語復活論は考え方が同根で、下位の法律からのなし崩し的憲法改悪であるため、関連付けて考えるのがポイントである。

   
   教育勅語の排除・失効   稲田大臣の答弁  2017.3.31、2017.4.4朝日新聞

*8-1:http://digital.asahi.com/articles/ASK3045LBK30ULFA00Q.html?iref=comtop_8_01 (朝日新聞 2017年3月31日) 教育勅語、教材で用いること否定せず 政府が答弁書
 政府は31日、戦前・戦中の教育勅語を学校教育で使うことについて、「勅語を我が国の教育の唯一の根本とするような指導を行うことは不適切である」としたうえで、「憲法や教育基本法等に反しないような形で教材として用いることまでは否定されることではない」との答弁書を閣議決定した。民進党の初鹿明博衆院議員の質問主意書に答えた。勅語については、太平洋戦争後の1948年、衆参両院が排除・失効の確認を決議している。また、稲田朋美防衛相が国会答弁で「親孝行や友達を大切にするとか、そういう(勅語の)核の部分は今も大切なもの」と述べたことの是非について、答弁書は「政治家個人としての見解」とし、政府としての見解を示さなかった。

*8-2:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12875229.html
(朝日新聞 2017年4月4日) 教育勅語、説明避ける内閣 教材で使用認める閣議決定
 戦前・戦中に道徳や教育の基本方針とされた「教育勅語(ちょくご)」を教材で使うことを認めた政府答弁書の閣議決定について、安倍内閣が詳しい説明を避けている。学校法人「森友学園」(大阪市)への国有地売却問題を追及されるなか、教育勅語が注目されるきっかけをつくった稲田朋美防衛相も口を閉ざした。
■判断基準、文科相明示せず
 3日の衆院決算行政監視委員会。共産党の宮本徹氏は、「教育勅語の中で憲法に反しない部分は1カ所でもあるのか」と政府の見解を問うた。先月31日に安倍内閣が閣議決定した政府答弁書は、過去に国会が排除・失効の確認を決議した教育勅語を「憲法や教育基本法等に反しないような形」で教材として使うことを認めたからだ。使用を認めるのであれば、政府として具体的な判断基準を示す必要があるが、松野博一文部科学相は「(教育勅語の)どの部分が憲法に反する、反しないに関しての判断を文部科学省でするものではない」と解釈を避けた。そのうえで「教え方がポイントだ。我が国の歴史について理解を深める観点から教材として用いることは問題がない」と説明した。菅義偉官房長官も3日の記者会見で、教育勅語の本質や戦争中に教育勅語が果たした役割を問われたが、「法制上の効力は喪失している」と繰り返し、教材として教育現場で使うことは問題ないとの立場を強調。「教育勅語を我が国の教育の唯一の根本となるような指導を行うことは不適切だ」とする一方で、親孝行や夫婦仲良くといった徳目は評価する見方を示した。政権を支持する保守層には、教育勅語を評価する声が少なくない。記者たちから「教育勅語の内容を評価すると、戦前の否定をあいまいにすることになるのではないか」と問われると、「あいまいにしていないじゃないですか。法制上の効力は完全に消滅している」と、声を荒らげた。
■森友巡る防衛相答弁端緒
 論争のきっかけは、森友学園への国有地売却問題を追及された稲田氏の答弁だった。
 稲田氏は、教育勅語を幼稚園児に素読させている学園の教育方針を2006年の雑誌の対談で評価していた。2月23日の衆院予算委員会や3月8日の参院予算委でこの考え方を問われ、「教育勅語に流れているところの核の部分は取り戻すべきだ」などと発言した。稲田氏の一連の発言を受けて質問主意書を出し、今回の政府答弁書を引き出した民進党の初鹿明博氏は、「教育勅語の核は(天皇中心の)神話的国体観であり、それに閣僚が賛意を示すことは国際社会に疑念を与えてしまう」と話す。文科省によると、教育勅語の学校現場での使われ方に言及した答弁書は今回が初めて。作成に関わった同省生涯学習政策局政策課は「意図的に踏み込んで言ったわけではない。明治時代に出されたことを教えることまで禁止できないことを表現するためにあの書き方になった」と説明する。これに対して、共産の小池晃書記局長は3日の会見で、「ひとたび事が起これば天皇のため命を捧げるという教育勅語の根本は戦後、憲法や当時の教育基本法に反するから排除された。いいところがあるから使おうと閣議決定するところに、安倍政権の危険な姿勢が表れている」と批判した。共産の宮本氏はこの日の衆院決算行政監視委で、海上自衛隊OBらがつくる「水交会」の行事に海自幹部が出席するなか、森友学園の幼稚園児たちが教育勅語を唱和していたとも指摘。「おかしいと思う幹部はいなかったのか」とただした。稲田氏は「部外の団体主催の行事の内容について、防衛省としてお答えする立場にはない」と述べ、具体的な回答を避けた。


PS(2017年4月4日追加):教育勅語は、「天皇の臣民である日本国民が、心を一つにして忠孝に励むのが教育の目的である」としている。そのため、それを校是としている学校を認可するのは、いくら私学に入ってきてもらいたいといってもいかがなものかと考える。何故なら、それぞれの段階の教育は、その人にとっては一生に一度しか受けられないやり直し不可能なものであるため、単なる煩雑な手続ならともかく、教育の内容や質については、規制緩和すればよいというものではないからだ。
 なお、私は、先日、夫の学会(癌やバイオテクノロジーが中心で、これに関しては後で詳述する)に同伴してスペインに行き、マドリッドのプラド美術館とバルセロナのピカソ美術館・ミロ美術館に寄ってきたが、幼稚園から高校までの生徒が先生に引率されてひっきりなしに来ており、絵の前で説明を受けたり、ディスカッションしたり、あらかじめ配布された用紙に答えを書いたりしていたのに感心した。私は、このように広い裾野の生徒にセンスのよい創造力を身につけさせるため本物を見せる教育こそ、単純労働はロボットに置き替えられる時代の人間にとって必要不可欠だと考える。何故なら、そういう基礎があって初めて、部屋・レストランのコーディネートや服・カバン・靴・家電のデザインで、思わぬ色や形を組み合わせながら、センスのよさが光っているのだからである。

    
     教育勅語     籠池氏経営、塚本幼稚園の教育  松井大阪府知事の話 
 
*9:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12875189.html
(朝日新聞社説 2017年4月4日) 森友学園問題 大阪府も解明に全力を
 学校法人・森友学園の問題では、小学校の設置認可をめぐる様々な疑問も未解明のままだ。学園側の申請に対し、大阪府私学審議会には多くの異論があったのに、なぜ「認可適当」と答申したのか。学校用地に関する財務省と府の言い分も大きく食い違う。政府をチェックする国会はもちろん、認可に責任をもつ府も徹底調査すべきだ。学園が府に認可を申請したのは14年10月。同年12月の府私学審では、「永続的に小学校を運営できるか疑問」「思想教育のような部分がある」などの指摘が噴出した。だが翌年1月に臨時に開かれた審議会は、「進捗(しんちょく)状況を報告させる」という条件つきで、認可適当とした。府私学審の梶田叡一会長は先月の府議会で「学園が用地を取得する前に、認可の審議に入ったのは極めて異例だった」としたうえで、府が認可の見通しを出せば、国(近畿財務局)の審議会で森友側に国有地が渡る「確約があった」と語った。疑義に目をつむって、府と財務局が認可の流れを作ったように受け取れる。公平な審査がなされたのか、大いに疑問だ。松井一郎知事も会見で、「国から『認可の見込みと発表してくれ』と言われた」と、国側の要請があったことを認めた。しかし財務省は否定する。両者で責任を押しつけあっていては、らちが明かない。双方が公の場で詳細を語るしかない。府議会では、この問題のための百条委員会の設置案が否決された。自民の提案に、大阪維新の会と公明が反対した。維新の会代表の松井知事は賛意を示していたのに、理解に苦しむ。反対理由は「まず参考人招致をするのが筋」だった。ならば速やかに財務省や大阪航空局の担当者を招き、府議会として事実関係をただすべきだ。理事長を退いた籠池(かごいけ)泰典氏は国会の証人喚問で、協力を求めた複数の議員名をあげた。中には自民や維新の元府議もいる。真相にどこまで迫れるか、府議会の本気度が問われる。知事は、安倍昭恵氏が小学校の名誉校長だったことに触れ、「役所組織みんなでおもんぱかったのだろう」と語った。公正であるべき行政手続きを逸脱しなかったか、検証する必要がある。昭恵氏が名誉校長に就任したのは15年9月。14年12月にも、学園が運営する幼稚園で講演している。まさに府が認可を審査していた時期だ。府は補助金不正受給の疑いで幼稚園を調査したが、それ以外にも明らかにすべき点は多い。幕引きモードは許されない。


PS(2017.4.15追加):*8-1のように、教育勅語の教材化を否定しないことを閣議決定した上、*10のように、ヒトラーの「わが闘争」の教材使用を可能とする政府答弁書を出すなど、この頃、内閣はどうかしている。なお、歴史としてなら、これまでも日本史や世界史で教えており、わざわざ閣議決定をしたり、政府報告書を出したりする必要はない。

*10:http://www.jiji.com/jc/article?k=2017041401032&g=pol (時事ドットコム 2017.4.14) 「わが闘争」の教材使用可能=政府答弁書
 政府は14日の持ち回り閣議で、ナチス・ドイツの独裁者ヒトラーの自伝的著書「わが闘争」の教材使用について、「教育基本法等の趣旨に従っていること等の留意事項を踏まえた有益適切なものである限り、校長や学校設置者の責任と判断で使用できる」とする答弁書を決定した。民進党の宮崎岳志氏の質問主意書に答えた。答弁書では、「同書の一部を引用した教材を使用して、執筆当時の歴史的な背景を考察させる授業が行われている例がある」と紹介。その上で、「仮に人種に基づく差別を助長させる形で使用するならば、同法等の趣旨に合致せず、不適切であることは明らかだ」と指摘し、そうした指導があった場合は「所轄庁や設置者において厳正に対処すべきものだ」としている。

| 教育・研究開発::2016.12~ | 11:23 AM | comments (x) | trackback (x) |
2017.3.10 東芝・三菱重工・日立の原発による損失と原発の手終い方 - まず日本が再稼働せずに直ちに脱原発し、廃炉・使用済核燃料の処理に取り掛かるべきである (2017年3月11、12、14、15、16、17、20日、4月6、8、12日に追加あり)
  
 事故前後の   2号機の   除染された表土     従来の放射性廃棄物 
福島第一原発  ロボット調査   の野積み            の保存法
      2017.2.10東京新聞  毎日新聞

(図の説明:2号機のロボット調査で毎時650シーベルトの放射線量が観測されたが、2号機は被害が小さかった原発であり、3号機は爆発して放射性物質が噴出しており、その結果、関東まで含む広い範囲が放射性物質で汚染されているのである)


 2015.5.22   軍艦島            池島         池島の坑道
 朝日新聞
(図の説明:高レベル放射性廃棄物の最終処分場は、一番左の図のように地下300メートル以下とされているが、軍艦島や池島の深い坑道なら、水の下で人が近づくこともなく、既に地下がある。そのため、防御をしっかりすれば比較的安価に高レベル放射性廃棄物の最終処分場を作れるのではないだろうか)

(1)東芝・三菱重工・日立の原発による損失について
1)東芝の原発による損失
 東芝は、*1-1、*1-2のように、2017年2月14日に、2016年4~12月期連結決算で、ウェスチングハウス(以下、“WH”と記載)などの原子力事業に7,125億円の損失を計上すると発表したが、これで2015年3月期に計上した2,476億円の損失と合わせて1兆円弱の原子力事業に関わる損失を計上することとなった。しかし、WHが米国の原発4基の完成をあきらめて撤退すると、さらにWHの電力会社への違約金が生じる契約で、その親会社保証が2016年3月末で約7,935億円あるそうだ。

 しかし、「世界でエネルギー事情が変化しても、米国での原発建設を2020年末までに終えなければ、WHが工事費の増加とは別に違約金を負担し、それを親会社の東芝が保証する」という契約は、あまりにも東芝に不利にできており、このような契約を結ぶのは、営業や経営の実力のなさである。そして、このように災害に似たリスクを負う場合は保険をかけるのが通常であるため、保険もかけていなかったとすればお粗末すぎる。

 さらに、2017年3月9日の報道によれば、*1-3のように、建設工事の遅れで今後発生する損失を抑えるため、東芝が米原発子会社WHに米連邦破産法11条の適用を申請する方向で調整に入るそうだが、米国政府がWHの事業に83億ドル(約9,500億円)の債務保証をしていたとしても、契約通り処理して米原発子会社WHを破綻させるのが、誰もが納得できる問題の少ない解決策である。この際、米国民の負担や米政府の反応を気にして、日本政府が日本国民の税金を投入する理由は全くなく、徹底した契約社会で法治国家の米国は、日本政府が言い出さない限り、そのような解決策は期待しないだろう。

2)東芝の半導体事業について
 東芝は、*1-3、*1-4のように、1982年という日本では最も早い時期に超LSI研究所を設置し、クリーンルームに230億円の設備投資をした、半導体では先進的な会社であり、半導体は東芝の中核事業になっていた。にもかかわらず、東芝は、その半導体事業を分社化して設立する新会社の全株式売却も視野に入札手続きを進め、その売却額を1兆5千億〜2兆5千億円と想定しているそうだ。

 しかし、経営者と原発事業部長の判断ミスによる原発損失を半導体事業部など他の事業部の売却等で賄うと、それまでこれらの事業部で小さな製品を作りながら着実に頑張ってきた従業員はたまったものではない。従って、(私が提案してできた)持株会社方式を使って事業部毎に子会社とし、それぞれの事業部を独立採算制にしておけばよかったのだ。また、現在の日本には、(これも私が提案して)連結納税制度もできているため、事業部毎に100%子会社にすれば支払税金は増えず、事業部毎に直面している異なる市場環境で適切な意志決定を迅速に行うことができ、さらに現場から経営者までの階層が短くなるため、情報伝達が容易になった筈なのだ。

 東芝は、2017年1月27日の取締役会で、*1-4のように、半導体メモリー事業を分社化し、それをWHの巨額損失を補填するために売却することを決定した。そのような中で、東芝の半導体メモリー事業が、*1-5のような投資ファンドの餌食にならないためには、売却する相手はシナジー効果の出る他の製造業でもよいが、半導体事業部の有志が出資して銀行借り入れを行い、「東芝メモリー(仮称)」のような独立した会社を作るマネージド・バイ・アウトという方法もある。こうすると、東芝が解体された後で、優良部門だけが集まって東芝を再構築する機会もできる。

3)三菱重工、日立について
 原発で損をしそうなのは東芝だけではなく、*1-6のように、三菱重工業も、66億ドルという巨額の損害賠償請求訴訟を起こされているそうだ。

 また、*1-7のように、日立の子会社は、英国中部に2020年代前半の稼働を目指し、総事業費2兆円超の原発2基を建設するが、受注競争のためにJBICや政投銀が日立の子会社に融資や株式の買い取り支援を行うそうなのだ。ここでも、原発という過去のエネルギーに対して、日本政府が日本国民の金を「兆円」単位で投入しており、その結果が国民負担になるのは目に見えている。

(2)使用済核燃料の最終処分について
 事故を起こしていない原発にも、*2-1のように、使用済核燃料の最終処分という問題がある。九州電力は玄海原発3、4号機(佐賀県玄海町)の再稼働後を見据えて、使用済核燃料の乾式貯蔵施設を建設する敷地内候補地の選定作業に着手し、①まず3号機の貯蔵プールの容量を増強し ②次の段階として原発敷地内での乾式貯蔵施設の新設 を挙げている。

 また、原子力規制委員会は、*2-2のように、水や電気を要しない空冷の保管容器の導入を促すために、原発の使用済核燃料の保管に関する基準を緩和する方針を決めたそうだ。

 しかし、フクイチ事故を見ればわかるように、多量の使用済核燃料を貯蔵していること自体も危険で、乾式貯蔵のように空気の通りがよい場所で保管すれば、空気が汚染される危険性が高いので、使用済核燃料の貯蔵に関しても、少くも30km圏内の近隣住民の同意を要件とすべきだ。

 私自身は、*2-3のように、過去のエネルギーである原発廃棄物の最終処分場の建設やその運営に「3.7兆円+α」を支払うよりは、すでに石炭採掘後の広い地下空間があり、海面下の地下深くで人が近づかず、安全に保管できる長崎県の池島か軍艦島の深い坑道に空冷の保管容器を保存するように整備するのが、過去のエネルギーという点では一致しており、安価で、新しい観光スポットにもなるため、よいと考える。もちろん、島民のうち原発廃棄物の最終処分場建設に伴って移住したい人には、その費用を負担すればよいだろう。

(3)玄海原発再稼働について
 九州電力玄海原発3、4号機の再稼働に関して、佐賀県は、*3-1のように、2月21日に初めての県民説明会を唐津市民会館で開き、唐津市や玄海町だけでなく佐賀県内各地から192人が参加し、会場からは原発の必要性や安全対策を疑問視するなど、再稼働への反対や懸念を示す意見が相次いだそうだ。住民は真剣に考えた上で反対しているのであるため、説明会を単なるプロセスとして形式的に説明会さえ終われば再稼働してもよいなどと考えるべきではない。

 また、*3-2のように、半径30キロ圏外では初めて武雄市文化会館で開かれた説明会には、周辺市町の首長・職員・住民ら117人が参加し、会場から「再生可能エネルギーや蓄電池などの開発に国策を転換して」などの意見が上がったそうだ。再稼働に慎重姿勢の谷口嬉野市長は、エネ庁の法的に地元の同意は必要ないとの明言について、「事故があればわれわれも避難する立場であり、同意を取ってほしい」としており、尤もだ。

 さらに、*3-3のように、原発再稼働に関する佐賀市の住民説明会には234人が参加して不満が噴出したそうだ。原発は、平時でも海水を利用して熱を逃がしているため、「海温め装置」と言われており、漁業環境を変化させて漁獲減に繋がっている。

 原発再稼働に関する佐賀県内4カ所目の県民説明会は、*3-4のように、2月28日に伊万里市民会館で開催され、周辺市町の住民らを含めて388人が参加し、安全性などへの疑問点を質問し、会場からは「福島原発事故の収束や原因究明も終わらない状態で、なぜ再稼働を急ぐのか」「避難訓練が必要なほどのリスクの中で進める理由が分からない」との批判や「再稼働ありきで検討が進んでいる」との不信感も漏れ、使用済核燃料保管の問題や、テロなどでの航空機墜落事故の際の安全対策への疑問が出たそうで、全く尤もである。

 *3-5のように、佐賀県では5会場での県民説明会を終え、国と九電が再稼働の必要性や安全対策に関する紋切り型の説明をしたが、参加者から容認する意見はなく、安全性への不安や必要性への疑問が相次ぎ、九大大学院の吉岡教授(科学史)は、県民の参加状況に関して、「周知不足だけではなく、県の姿勢に期待が持てず『形だけのスケジュールを消化している』と多くの住民が判断したのではないか」と見ているそうだ。

 玄海原発の再稼働に反対する佐賀県内の複数の団体は、*3-6のように、3月9日に説明会を要望し、全市町での県民説明会の開催や再稼働に反対・慎重の意見を持つ専門家の説明会などを佐賀県に求めたそうで、これは必要なことだ。

 また、九電玄海原発3、4号機の再稼働に同意した岸本玄海町長に対しては、*3-7のように、脱原発を訴える市民団体のメンバーが、町役場で抗議して同意撤回を求めている。

(4)リーダーたちの見解
 大震災から6年経過したが、*4-1のように、①原発被災地では今も8万人が避難生活を強いられ ②地域社会の再生は見えず ③除染が終わったと連絡が来ても線量は十分に下がっておらず ④避難指示解除とともに東電が家賃の支払いを停止する のは問題だとして抗議している状況だ。

 原子炉は炉心溶融を起こしたとされているが、それは事実とは思えず、3号機は爆発して核燃料を噴出したというのが正しいだろう。その証拠は、爆発時の映像、ぐにゃりと曲がった鉄骨だけの建物の残骸、「まだわからない」とされている惨状である。そして、東電がロボットを投入した2号機は、1、3号機よりは被害が小さかったが、650シーベルトの放射線量を記録しており、溶け落ちた核燃料を取り出す道筋は見当もつかないのだそうで、その対応の無責任さには呆れるほかない。

 原発の賠償・除染・廃炉等の費用について、経産省は昨年末、総額21.5兆円にのぼるとの見通しを示し、これは従来想定の2倍で、巨額の負担が電気料金や税金として国民にのしかかるが、21.5兆円という金額は年間消費税の8.6%分だ。従って、原発のコストは非常に高く、早々に再稼働なしの脱原発を進めるべきなのである。

 このような中、*4-2のように、日本カトリック司教団は、 2016年11月11日、「地球という共通の家に暮らすすべての人」に向け、「原子力発電の撤廃を―福島原子力発電所事故から5年半後の日本カトリック教会からの提言」と題するメッセージを発表して原発撤廃を呼び掛け、世界のカトリック教会に協力と連帯を要請したそうだ。これは、世界が共通の認識を持つための重要な一歩になる。

 これに先立って、日本仏教の多くの宗派も、*4-3のように、2012年6月26日の段階で原発への反対表明をしており、今後は世界の仏教圏へのアクセスが望まれる。

 政治では、*4-4のように、民進党が3月7日、「原発ゼロ基本法案」の国会提出を明記した政策方針を了承したそうだ。私は、再稼働なしの原発ゼロ実現に向けて、自然再生可能エネルギーの利用を促進し、これまでの原発立地自治体には、他の産業で成り立つ方法を提供するのがよいと考えている。

<東芝・三菱重工・日立について>
*1-1:http://mainichi.jp/premier/business/articles/20170215/biz/00m/010/032000c (毎日新聞 2017年2月17日)「撤退なら違約金8000億円」米原発やめられない東芝
●債務超過に転落(3)
 東芝は2月14日、2016年4~12月期連結決算で、ウェスチングハウスなど原子力事業に関して7125億円の損失を計上すると発表した。15年3月期にもウェスチングハウスで2476億円の損失を計上しており、原子力事業は2年間で9601億円もの損失を出したことになる。ほぼ1兆円という莫大(ばくだい)な損失。2011年の福島第1原発事故以降、原発をめぐる社会環境が一変したことに、東芝の経営陣は目をつぶってきた。そのツケが一気に噴出したのだ。急激な環境変化にもっと早く対応していれば、ここまで大きな損失にはならなかったのではないか。14日の記者会見で、東芝の綱川智社長は、原子力事業について(1)米国4基、中国4基の建設中の原発はあらゆるコストを削減して完成させる(2)原発新設は原子炉供給などに特化し、今後、土木建築工事は受注しない(3)原子力事業の売上高の8割は既存原発の燃料・サービスであり、安定したビジネスとして継続する(4)再稼働、メンテナンス、廃炉事業は継続するーーと説明した。
●新たな損失の可能性は?
1兆円近い損失を出した8基の原発新設で、今後、新たな損失が出ることは本当にないのか。二度あることは三度あるのではないか。もっと抜本的に原発事業を見直さないと、また別の損失が出てくるのではないか。記者の質問はそこに集中した。記者の一人と、綱川社長の会見に同席した畠澤守・常務原子力事業部長との間で次の質疑があった。  記者「海外の原発建設で、今後、東芝のコスト負担は最悪どのくらい出てくると見込んでいるのか」。原子力事業部長「今回発表の損失に見込んだ将来コストの見積もりは、かなり保守的に積み上げた数字だ。将来のコストなので、リスクがないと言えばうそになる。ただ、そのリスクの最小化に努めていく」。記者「現状でまだ見えていないリスクはあり得るのか」。原子力事業部長「我々はこれから(原発の建設に関する)効率改善に取り組むが、それが期待通りにいかないリスクはある。ただ、今の最悪の状態が続く前提で損失額を計上した。改善しないという可能性はゼロではないが、少ないと思っている」
●電力会社への支払い保証
これだけひどい目にあった建設中の原発から、東芝が全面撤退することはできないのか。その手がかりになる事情が、14日に公表された東芝の資料の一番最後にあった。「ウェスチングハウスに対する親会社保証」と書かれた1枚の資料だ。そこには「16年3月期 有価証券報告書の記載額(偶発債務及び保証類似行為)」として「16年3月末 7934億9900万円 ※米国AP1000の客先に対する支払い保証が90%弱」と書かれていた。さらに、「米国AP1000プロジェクトにおいてウェスチングハウスの客先への支払い義務(プロジェクトを完工できなかった場合の損害賠償請求を含む)を履行できなかった場合、東芝はウェスチングハウスの親会社として、客先にこれを支払うことが要求されている」との注記があった。AP1000は、ウェスチングハウスが建設中の原発に導入する予定の新型原子炉だ。客先とは、原発建設をウェスチングハウスに発注した電力会社のことだ。もしいま、ウェスチングハウスが米国の原発4基の完成をあきらめて撤退すると、電力会社に「7934億円」の違約金を支払う義務があるということだ。そして、東芝は親会社としてそれを保証しているのだ。この保証は現時点も続いている。すでに損失1兆円が発生した事業。ここで退けば、さらなる地獄が待っているという状況の一端が、この1枚のペーパーに記されていた。

*1-2:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12832302.html (朝日新聞 2017年3月9日) 東芝、新たな損失恐れ 20年末に税制優遇期限 米原発建設
 東芝が、米国で手がける原発4基の建設工事を2020年末までに終えられなければ、工事費用の増加とは別に、新たな損失が最大数千億円規模で生じる可能性があることが分かった。発注元の電力会社が米政府の税制優遇を受けられなくなり、東芝側に補償を求める公算が大きいためだ。工期を期限ぎりぎりの20年12月まで延長した原発もあり、さらに遅れれば再び大きな損失が出かねない。05年に定められた米政府の税制優遇では、20年末までに運転を開始した新設の原発は、発電量1キロワット時当たり1・8セントを税金から差し引く「税額控除」を8年間受けられる。海外電力調査会などによると、この4基の税額控除は1基当たり最大11億ドル(約1250億円)になる見込み。4基とも間に合わなければ、電力会社は5千億円規模の税制優遇を失う計算で、東芝側が求められる補償も数千億円規模になる可能性がある。東芝の米原発子会社ウェスチングハウス(WH)は先月、原発4基について3度目となる工期延長を電力会社2社に要請。最も遅いサマー3号機は20年12月の完成を見込み、1カ月の遅れも許されない状況だ。WHは4基を08年に受注。13年に工事を始めたが、4年経ったいまも約3割しか終わっていない。世界の原発事情に詳しい環境エネルギー政策研究所の飯田哲也所長は「過去の経緯からみて、さらに工期が遅れる可能性は高い。その際、電力会社が東芝側に補償を求めるのは自然な流れ」と話す。補償を求められる可能性について、東芝は「コメントできない。現在の目標で工事を終わらせるよう努力する」(広報担当)としている。税制優遇を巡っては昨年、地元下院議員が20年末の期限を撤廃する法案を議会に提出したが、廃案になった。今年も同趣旨の法案を提出する動きがあるが、成立するかは不透明な状況だ。

*1-3:http://qbiz.jp/article/105252/1/ (西日本新聞 2017年3月9日) 東芝、WHに米破産法申請で調整 銀行団へ数千億融資要請を検討
 経営再建中の東芝が、米原発子会社ウェスチングハウス・エレクトリック(WH)に米連邦破産法11条の適用を申請する方向で調整に入ったことが9日、分かった。日本の民事再生法に相当する制度を活用し、建設工事の遅れで今後発生する損失を抑える狙いだ。近く最終判断する。WHの事業には米国政府が83億ドル(約9500億円)の債務保証をしている。破産法が適用された場合、米国民の負担が発生して外交問題に発展する恐れがあり、米政府の理解を得られるか流動的な側面もある。東芝もWHの事業に債務保証をしており、破産法適用が認められたとしても、今後も原発の建設費用などで応分の負担を迫られる。このため東芝は、取引銀行団に数千億円規模の追加融資を要請する検討に入った。この2年で東芝がWH関連で計上する損失額は1兆円規模に上る。WHが米国で進める原発建設は工事の遅れが常態化している。来年度以降も巨額の損失が発生すれば、東芝の経営が立ち行かなくなる危険があり、経営陣は破産法の活用に傾いたもようだ。社内には「(適用申請には)数カ月かからない」(幹部)との声もある。東芝は、半導体事業を分社して設立する新会社について、全株式売却も視野に入札手続きを進める。売却額は1兆5千億〜2兆5千億円を想定しているが、売却完了は2017年度後半となる見通し。それまでに原発建設の費用が膨らみ、手元資金が不足する恐れがあるため、銀行借り入れで乗り切りたい考えだ。支援を受けるため、半導体の新会社の株式を一時的に融資の担保とする案が浮上している。建設中の米原発は、当初16年から順次稼働する計画だったが、延期を繰り返している。東芝は現段階でも人件費などで計61億ドル(約7千億円)のコスト増になると試算しており、完成が遅れると費用はさらに拡大する。

*1-4:http://mainichi.jp/premier/business/articles/20170203/biz/00m/010/002000c (毎日新聞 2017年2月6日) 「8500億円半導体事業切り売り」は東芝解体の第一歩
●東芝解体の危機(6)
 東芝は1月27日に開いた取締役会で、半導体メモリー事業の分社化を決めた。分社化後、株式の2割弱を入札で売却し、得た資金で米原子力事業の巨額損失を補てんする。すでに10社程度の売却候補の名前があがったり消えたりしている。半導体メモリーは、東芝の中核事業だ。その2割弱の株式を外部に売ることは、どんな意味を持つのか。 2016年1月26日付の毎日新聞東京朝刊より  東芝の発表によると、分社化の対象は、東芝の社内カンパニーであるストレージ&デバイスソリューション社のメモリー事業。「NAND型フラッシュメモリー」の開発、製造、販売部門だ。東芝の主力製品であり、稼ぎ頭である。製造拠点は三重県の四日市工場だ。分社化する部門の2015年度の売上高は8456億円、営業損益は1100億円の黒字。売上高に対する営業利益の比率は13%で、かなり高い利益率をあげている。東芝は15年度、不正会計が発覚し、連結売上高5兆6000億円に対し、営業損益は7191億円の大赤字だった。半導体メモリーだけがまとまった稼ぎをあげていた。
●NANDの世界シェアは2位
 「NAND」は「ナンド」と読む。小型の記憶媒体のことだ。スマホや携帯音楽プレーヤーの記憶装置に多用され、デジカメのメモリーカードや、パソコンに接続するUSBメモリーにも使われている。「NAND」という名前は、コンピューターの演算の種類である「Not」と「AND」を組み合わせたものだ。フラッシュメモリーの「フラッシュ」は、書き込んだ内容を一瞬で消せることから付けられた。NAND型フラッシュメモリーは東芝が1980年代に開発した。携帯音楽プレーヤーやスマホが広がるにつれ、需要が急速に伸びてきた。ただし、世界シェアのトップは、韓国サムスン電子。東芝は2位、3位は四日市工場で東芝と共同で投資を行っているウエスタン・デジタルだ。もともと東芝の半導体は、「DRAM(ディーラム)」と呼ばれるコンピューターに使われる製品が主流だった。80年代に生産量が世界一になったこともある。当時は東芝、日立製作所、NECがシェア上位を競っていた。ところがその後、サムスン電子など韓国勢が大がかりな投資で製品を量産して価格攻勢をかけ、東芝は競争に負けて00年代はじめに撤退する。代わって力を入れたNAND型フラッシュメモリーが、スマホなどの普及で東芝の屋台骨に育った。
●後ろ向きの分社化
 半導体部門の分社化は、経営の意思決定のスピードアップや、設備投資に振り向ける巨額資金を外部から調達するという前向きの狙いでこれまでも検討されてきた。ただし、外部資本を入れると、その分、配当という形で利益の一部を外部に流出させることになり、決断までに至らなかった。今回は、原子力事業の巨額損失の穴埋めのために、分社化することになった。打って出る前向きの分社化ではない。1月27日の東芝の記者会見でも、記者から次のような質問が相次いだ。「稼ぎ頭であるNANDを切り離し、それで得る資金を成長分野に振り向けるシナリオもあったが、それができなくなった。追い込まれる前にやっておくべきだったのでは」「主力事業を切り売りする形になって、本当に東芝の再生は果たせるのか」 東芝の綱川智社長=2017年1月27日、根岸基弘撮影  これに対して綱川智社長は「分社化がNAND事業を強化する一助になればと考えている。再建に向かって頑張りたい」と通り一遍の回答だった。半導体事業を担当する成毛康雄副社長は「東芝全体の危機と受け止めて、乗り切ることに注力したい」と短く回答するのみだった。半導体は分社化して2割弱の外部資本を導入した後、どういう道を歩むのだろうか。これは、どんな外部資本が株式を保有するかにかかっている。次回はそのあたりを詳しく解説する。

*1-5:http://mainichi.jp/premier/business/articles/20170206/biz/00m/010/006000c (毎日新聞 2017年2月7日) 東芝半導体新会社に群がるファンドの百鬼夜行
●東芝解体の危機(7)
 半導体メモリー事業の分社化を決めた東芝は、さっそく、入札で株式の2割弱を売却する手続きに入った。すでに、10社前後の売却候補の名前が挙がったり消えたりしている。投資ファンド、銀行系ファンド、事業会社だ。このなかで、有力なのは投資ファンドだ。入札するかどうかは判明していないが、事前に名前が挙がったのは米コールバーグ・クラビス・ロバーツ(KKR)、米ベインキャピタル、米シルバーレイク・パートナーズ、英ペルミラといった名前だ。いずれも世界的に名前の知られたファンドで、日本でも実績のある大どころが並ぶ。投資ファンドに詳しいある関係者は、「まだほかのファンドが出てくる可能性がある。半導体メモリー事業に興味があるファンドは多いはず」と見る。投資ファンドの目的ははっきりしている。数年後に新会社を上場させ、株式の価値が上がったところで売却して利益を出すことだ。手を挙げるファンドがたくさん出て、競争が激しくなれば、東芝は思った以上に株式を高く売れるかもしれない。ただし、高値になればなるほど、数年後、投資ファンドが株式を手放す「出口」にたどり着いたときのハードルは高くなる。
●「出口」で大もめした投資ファンド
 「出口」で大もめしたのは、西武鉄道に出資した投資ファンド、サーベラスが記憶に新しい。西武鉄道(その後西武ホールディングス)は2004年に有価証券報告書の虚偽記載が発覚し上場廃止となった。東芝と同じくらいの窮地だった。そこにサーベラスが約1000億円を出資し、約32%の筆頭株主となった。10年後、再建を果たした西武は再上場した。その過程で、思ったほど売却益が出ないと考えたサーベラスは、路線廃止や球団売却を要求したり、株式の公開買い付け(TOB)で経営陣に揺さぶりをかけたり大騒ぎした。アベノミクスで全体の株価が底上げされ、そこそこの売却益が出ることになったため、静かになったが……。サーベラスは10年も出資をしてきた。言ってみれば「寝かせていた」ため、それなりの見返りを求めた。東芝が分社化する半導体メモリー事業について、投資ファンドは2~3年後の上場を想定し、少なくとも2~3割の売却益を目指すだろう。原子力事業の大損失がなく、戦略的に分社化・上場ができたなら、東芝が手にできたはずの利益だ。
●銀行系ファンドも有力候補
 銀行系ファンドも売却先の候補に挙がっている。その筆頭格が日本政策投資銀行(政投銀)が出資する投資ファンドだ。政投銀系の投資ファンドはベンチャー企業などに投資実績があり、企業再生に向けた出資も行っている。ただし、東芝のような大企業の再建支援に、政府系金融機関が乗り出せば、批判の声が上がる可能性がある。「投資ファンドや民間銀行系ファンドに任せればいい、なぜ政府系が手を出すのか」という批判である。政投銀は15年前、経営難に陥った大手スーパー、ダイエーの再建支援で、民間銀行とともに再建ファンドを作って出資し、このファンドがダイエーの筆頭株主になったことがある。このときも「国策救済」と批判された。結局、再建はうまくいかず、ダイエーは産業再生機構の支援を受け、最終的にイオンの傘下に入った。いま、ダイエーは店舗名からもほとんど姿を消している。仮に政投銀系ファンドが半導体新会社に出資することになったとしても、ダイエーの二の舞いにならないとは限らない。このほか、三井住友銀行やみずほ銀行、三菱東京UFJ銀行などメガバンク系のファンドも候補になる。政投銀やメガバンクのファンドは、東芝の半導体新会社の2割弱の株式をすべて手に入れることは想定していないだろう。金額が大きすぎるからだ。他の出資者と組むことが考えられる。東芝側は、外国系の投資ファンドが売却先の主体になった場合でも、政投銀や銀行系ファンドに一部出資してほしいと考えているはずだ。信用力と、話のわかる相手だからである。入札にはキヤノンなど、事業会社の名も挙がっていた。だが、キヤノンは「大変難しい」と事実上、参加しない方針を明らかにしている。次回は、そのあたりの事情を解説する。

*1-6:http://mainichi.jp/premier/business/articles/20170123/biz/00m/010/001000c (毎日新聞 2017年1月24日) 東芝だけじゃない 三菱重に賠償請求66億ドルの衝撃
●米国での原発新設(3)
 米国内では2013年以降、原子力発電所の廃炉が相次いでいる。「シェールガス革命」で電力価格が下がり、福島第1原発事故の影響で安全規制が強化され、原発のコストが上昇したことを受けた動きだ。米国内の原発新設計画も大きな影響を受けた。東芝の子会社、米ウェスチングハウスは、08年に受注したボーグル原発2基、VCサマー原発2基以外に、フロリダ州レビィ原発1、2号機を09年に受注していた。ところが、レビィ原発は当初の予定通りに米原子力規制委員会の建設運転認可がとれず、契約が解除された。東芝本体も、09年にテキサス州サウス・テキサス・プロジェクト原発3、4号機の建設を受注していた。東芝としては初の海外での原発受注だった。だが、このプロジェクトに共同出資を計画していた東京電力が、福島原発事故で断念した。さらに、プロジェクトの主体だった米電力大手も、福島原発事故直後に投資を打ち切ると発表した。2基は16年2月に建設・運転認可を受けたが、東芝は「テキサス州では電力価格が低迷していることから、電力市況を見極めながらパートナー企業を募集し、適切な時期に建設開始を判断する」と発表し、事業は凍結された。
●3割しか工事が進んでいないボーグル、VCサマー原発
 ウェスチングハウスと東芝の両社で米国内で受注した8基は、当初の予定では16年に4基、17年に3基が完成するはずだった。ところが建設が開始されたのはボーグル原発、VCサマー原発の計4基にとどまった。その4基の工期も予定より大幅に遅れている。原発回帰の流れにのって、米国内で原発を次々新設するという東芝・ウェスチングハウスの狙いは、大きく外れてしまったのだ。建設中のボーグル原発、VCサマー原発は今のところ、19年と20年に2基ずつ運転を開始することになっている。東芝が数千億円損失の可能性を公表したのはこの4基の建設についてだ。建設工事は全体の3割しか進んでいないことも明らかになった。ウェスチングハウスも、親会社の東芝も、巨額の損失で債務超過の恐れが出ている。そうした企業に、3割しか建設が進んでいない原発を完成させることができるのか、という疑問が湧いてくる。
●三菱重工に対して起こされた巨額の損害賠償請求
 米国内での原発事業で大変な目にあっているのは東芝・ウェスチングハウス連合ばかりではない。巨額の損害賠償請求訴訟を起こされている日本企業がある。三菱重工業だ。カリフォルニア州のサンオノフレ原発2、3号機のうち、3号機で12年、加圧水型原子炉の重要設備である蒸気発生器の配管が破損し、放射性物質が漏れた。定期点検中の2号機でも多数の配管の摩耗が見つかった。蒸気発生器は三菱重工製で、交換されて2年以内のものだった。米原子力規制委員会は三菱重工のコンピュータ分析のミスが、設計上の不具合につながったと結論づけた。地元住民が再稼働に反対し、米原子力規制委の調査も長期化するなかで、電力会社は13年に廃炉に追い込まれた。電力会社は三菱重工に対し、廃炉費用を含め、75億7000万ドル(今の為替レートで約8600億円)という巨額の損害賠償を求めた。三菱重工は契約上、支払いは最大1億3700万ドル(約155億円)だと主張。請求額はその後66億6700万ドル(約7570億円)に減額されたが、争いはパリの国際商業会議所の国際仲裁裁判所で係争中だ。東芝が抱えた数千億円の損失といい、三菱重工が抱える巨額の損害賠償請求といい、原発事業のリスクがいかに大きいかを物語っている。

*1-7:http://digital.asahi.com/articles/ASJDH3WLZJDHULFA00N.html (朝日新聞 2016年12月15日) 日立受注の英原発に資金支援 政府系金融機関
 政府系金融機関の国際協力銀行(JBIC)や日本政策投資銀行は、日立製作所が英国で進めている原子力発電事業に資金支援する方針を固めた。設計から運営までを担う日立の子会社に、融資などを行う。原発の輸出ビジネスに官民で取り組む姿勢を明確にする。
●日立が日本原電と協定 英国での原発建設へ協力要請
 日立の子会社は英中部に原発2基を建設する。2020年代前半の稼働を目指し、総事業費は2兆円超とされる。JBICや政投銀は、同社への融資や株式の買い取りを検討する。来年中に支援の大枠を固める。英国では中国の原子炉の導入が予定されている原発計画もある。安全面などから逆風が吹く原発ビジネスに官民で取り組む姿勢を示し、受注競争を有利に進めるねらいがある。来日したハモンド英財務相は15日、麻生太郎財務相と会談。原発事業への資金支援についても話し合ったもようだ。ハモンド氏は会談前、朝日新聞などのインタビューに応じ、日本の支援について、「前向きに考えてくれていることをうれしく思っている」と述べた。年内には、世耕弘成経済産業相とクラーク英ビジネス・エネルギー・産業戦略相も会談し、原発分野での協力を話し合う見通しだ。

<核燃料の最終処分>
*2-1:http://qbiz.jp/article/101074/1/ (西日本新聞 2017年1月3日) 玄海原発敷地内に乾式貯蔵施設 九電、候補地選びに着手 
 九州電力が玄海原発3、4号機(佐賀県玄海町)の再稼働後を見据え、使用済み核燃料の乾式貯蔵施設を建設する敷地内候補地の選定作業に着手したことが分かった。玄海原発が再稼働すれば、同原発の使用済み核燃料貯蔵プールを全て使っても、4〜5年程度で満杯になる見通し。このため、まず3号機の貯蔵プールの容量を増強。次の段階として、乾式施設も新設する方針。
●再稼働後を見据え容量拡大
 玄海原発では、使用済み核燃料を原発内の貯蔵プールで保管しており、既に容量の約6割が埋まった状態。九電は2010年2月、3号機の貯蔵プール容量を燃料集合体1050体から2084体に約2倍に増やすリラッキング工事の計画を国に申請していた。しかし、11年3月の東京電力福島第1原発事故で、電源喪失のため貯蔵プールが冷却できなくなるトラブルが発生。事故後に発足した原子力規制委員会の田中俊一委員長は、同様の問題が起きなかった乾式施設の新設を電力各社に強く要求している。九電は規制委の求めに応えて、乾式施設の新設も具体化させる。ただ、関係者によると九電は、乾式施設よりも貯蔵プール増強の方が完成が早いと判断。再稼働後にプールが満杯になる事態を避けるため、3号機のプール増強を優先する。着工から完成まで4年程度と見積もっていた従来の増強計画の設計を、福島第1原発事故後の新規制基準に適合するよう変更した上で、再稼働後なるべく早い時期に国へ工事の認可を申請する方針。乾式施設建設のための調査も始動。再稼働に向けた安全対策で手狭になった敷地内に施設を置くための、具体的な建設レイアウトの検討に入った。貯蔵容器をコンクリート製にするか金属にするかなど技術面に関する検討も進めている。使用済み核燃料を巡っては、青森県六ケ所村の再処理工場稼働の見通しが立っておらず、九電は原発敷地外への持ち出しができない状態。16年8月には、玄海原発の対岸にある佐賀県唐津市鎮西町串地区の住民が、中間貯蔵施設誘致の要望書を市に提出するなど、使用済み核燃料の取り扱いが再稼働に伴う大きな焦点となっている。
◆使用済み核燃料の貯蔵方法 プールに貯蔵する「湿式」と、キャスクという密閉容器に入れる「乾式」がある。使用済み核燃料が出す熱をプールの水の循環で冷やす湿式には、電源や水が必要なため、電源が失われると冷却できなくなる危険性がある。乾式は使用済み核燃料をキャスクに入れて建屋に保存し、空気の自然換気で冷却する。海外では安全性が高く保守・点検が簡単な乾式が普及。日本でも福島第1原発事故後に原子力規制委員会が導入を促している。

*2-2:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12765433.html (朝日新聞 2017年1月26日) 原発の使用済み燃料、空冷保管を促進 規制委、基準緩和へ
 原発の使用済み燃料の保管について、原子力規制委員会は25日、水や電気を必要としない空冷の保管容器の導入を促すために基準を緩和する方針を決めた。プールでなく、地表に置いた容器で燃料を保管する方法で、乾式貯蔵と呼ばれる。使用済み燃料は通常、燃料プールで保管し、ポンプで水を循環させて冷やしているが、地震などで停電すると冷却機能が失われかねない。東京電力福島第一原発の事故では、4号機プールで1千体以上が冷やせなくなり、燃料がむき出しになることが懸念された。乾式貯蔵はプールで十分に冷やされた燃料を専用の容器に入れて密封し、空気の通りがよい場所で保管するもの。規制委が導入を促す容器は燃料の輸送用で、高さ9メートルからの落下試験や高温の炎に耐える試験にも通っている。この保管法は欧米で導入が進んでいる。これまで国内では耐震性の高い建屋が必要だったり、地震の揺れの想定が必要だったりして、導入のハードルが高かった。そのため、日本原子力発電東海第二原発(茨城県)など一部でしか導入されていない。規制委の田中俊一委員長は乾式貯蔵について、「プールで保管するより安全度がはるかに高い」と話した。電気事業連合会によると、全国の17原発にある使用済み燃料は計約1万5千トン。プールなどの保管施設は7割が埋まっている。乾式貯蔵で保管できるようになれば、プールに余裕が出るため電力会社も導入に前向きだ。ただ、原発が立地する自治体には、燃料の新たな保管場所ができることで、敷地での保管が長期化しかねないとの懸念も強い。

*2-3:http://www.tokyo-np.co.jp/article/economics/list/201703/CK2017030602000168.html (東京新聞 2017年3月6日) <原発からの請求書>(5) 最終処分場建設、運営に3.7兆円 増額の可能性も
Q 原発から出る核のごみを受け入れる最終処分場にはいくらかかりますか。
A 経済産業省の試算では建設・運営費で計三兆七千億円かかります。東京五輪向け新国立競技場(総工費約千五百億円)が二十四個できる金額です。
Q なぜそんなにかかるのですか。
A 燃料は再利用しますが、廃液など「高レベル放射性廃棄物」が出るからです。人が近づくとすぐ死亡するほど危険なので、ガラスに混ぜて固め、三百メートル以上の地下に埋めます。日本は地震が多いので耐震性を高め、完全な地下水対策も必要。その状態で最長十万年管理し、やっと放射線が減少するのです。その分、費用はかさみます。東京電力・福島第一原発事故の溶解燃料も受け入れる可能性があり、その場合もっと高くなるでしょう。
Q お金はだれが払うのですか。
A わたしたち電気を利用する国民が払っています。大手電力が出資する専門組織が建設・運営するのですが、費用は電気料金に上乗せされ、積み立てられています。東電の上乗せ額は一キロワット時あたり〇・〇四二五円で、約三百六十キロワット時使用した家庭(図のケース)では月十五円。家庭が電力会社を選べるようになった昨春以降は主に大手電力の利用者が負担しています。二〇一六年三月末時点の積立金は約一兆円にとどまっており、本紙試算では最低四十六年上乗せを続けないと必要額に達しません。
Q 原発を持たない新電力と契約すれば負担をしなくてよいのですか。
A いいえ、一部は負担を迫られます。経産省は〇五年に最終処分対象の核のごみの種類を増やし、見積総額も約八千億円上積みしました。燃料のリサイクルに必要な費用も膨らんでいたので、まとめて計二兆七千億円分を十五年かけて電線使用料である「託送料」に上乗せして集めると決めたのです。検針票の裏に小さく記されている「使用済燃料再処理等既発電費相当額」という長い名前の項目です。一キロワット時につき〇・一一二円の負担で、図の家庭は約四十円の負担。従来負担と合わせ月五十五円。東電管内の平均家庭(月間使用量二百六十キロワット時)は毎年計千六百七十五円ずつ積み立てに協力している計算です。
Q 処分場はいつできるのですか。
A 政府は長年候補地を探してきましたが、人々の抵抗感は強く、みつかりません。経産省は断層の状況などから有望地域を示す地図を昨年末までに示す予定でしたが、先送りにしています。ごみの受け入れ先がないにもかかわらず、政府と電力会社は原発再稼働を急いでおり「無責任」との批判があります。日本学術会議も「いまの科学で十万年の安全確保は証明できない」としており、建設計画は難航が必至。資金面でも作業が進めば、三兆七千億円の見積もりを大きく超え、国民は電気代からの積み立て増額などを迫られる可能性があります。原発政策と電気代についての疑問、意見をお寄せください。ツイッター上からハッシュタグ #原発からの請求書 をつけて投稿してください。メールは keizai@tokyo-np.co.jp  ファクスは03(3595)6914

<玄海原発再稼働>
*3-1:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/407816 (佐賀新聞 2017年2月22日) 玄海再稼働 唐津市で県民説明会始まる、住民から不安、疑問 国と九電は対策強調
 九州電力玄海原発3、4号機(東松浦郡玄海町)の再稼働に関し、佐賀県は21日、初めての県民説明会を唐津市民会館で開いた。エネルギー政策、適合性審査の概要、原子力防災の取り組み、原発の安全対策の4分野について、国と九電の担当者が説明し、再稼働への理解を求めた。会場からは原発の必要性や安全対策を疑問視するなど再稼働に反対や懸念を示す意見が相次ぎ、終了時間を1時間近く延ばして対応した。唐津市や玄海町だけでなく、県内各地から192人が参加した。原子力規制庁、資源エネルギー庁、内閣府、九電の担当者が各分野の概要や取り組みを挙げ、福島第1原発事故を教訓に「審査に通ることがゴールではない」「原子力に対する不安の声に真剣に向き合う」などと述べた。会場からは「熊本地震のように複数の地震に対する審査をしたのか」「福島の事故は終わっていない」など、震災を踏まえて再稼働に反対する質問が噴出し、国や九電の担当者は説明に追われた。質問時間が1人1分間と短いことへの不満や、再度の説明会開催を求める声も上がった。主催した佐賀県の山口祥義知事は「再稼働する、しないにかかわらず玄海原発はそこにある。時間が足りないというのはよく分かるが、われわれもプロセスを大切にしたい」と語った。県は県内首長にも案内を出し、参加を呼び掛けた。唐津市の峰達郎市長は「文言が専門的すぎる。一方的な説明の仕方が印象的で、住民は分からないのではないか」と感想を話した。玄海町の岸本英雄町長は「町議会特別委員会で説明を受けた内容と同じで、わざわざ出る必要はない」として欠席した。県は、この日の県民説明会をインターネットで中継したほか、動画も見られるようにする。今後は22日に武雄市、27日に佐賀市、28日に伊万里市、3月3日に鳥栖市で開催する。玄海原発3、4号機の再稼働に関しては1月18日、規制委の適合性審査に合格した。これを受け国は県と玄海町に理解を求め、山口知事は県民から広く意見を聞く姿勢を示している。

*3-2:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/408220 (佐賀新聞 2017年2月23日) 武雄で玄海再稼働に関する県民説明会、水蒸気爆発想定審査せず
 九州電力玄海原発3、4号機(東松浦郡玄海町)の再稼働に関する県民説明会が22日、半径30キロ圏外では初めてとなる武雄市文化会館で開かれ、周辺市町の首長や職員、住民ら117人が参加した。国と九電が、エネルギー政策や安全対策などを説明した上で再稼働に理解を求め、住民からの質疑に答えた。会場からは「再生可能エネルギーや蓄電池などの開発に国策を転換して」などの意見が上がった。資源エネルギー庁は再稼働の必要性について「現状では電力の安定供給、経済性、温暖化対策でリスクがあり、今すぐ原発を代替できるものではない」などと説明した。適合性審査を担当した原子力規制庁には、重大事故が発生した場合に水蒸気爆発が起こるかどうかに質問が集中した。規制庁は「海外の知見も踏まえて水蒸気爆発が起きないことを確認している」と繰り返し、万が一、爆発が起こる想定に関しては「審査していない」と答えた。参加した武雄市朝日町の朝重節男さん(82)は、国の説明を聞いて「安全対策が十分かどうかは判断できないが丁寧だった」と話した。会場は前日の唐津会場に続いて空席が目立ち、市内の会社員の女性(31)は「若い人がいない。周知が足りないのか関心がないのか…」と首をかしげた。再稼働に慎重姿勢の谷口太一郎嬉野市長は、エネ庁が法的に地元の同意が必要ないことを明言したことに対し「はっきり言われて驚いた。事故があればわれわれも避難する立場であり、同意を取ってほしい」と顔をしかめた。説明会は今後、27日に佐賀市、28日に伊万里市、3月3日に鳥栖市で開催する。

*3-3:http://qbiz.jp/article/104555/1/ (西日本新聞 2017年2月28日) 原発再稼働、佐賀市でも不満噴出 住民説明会
 佐賀県は27日夜、佐賀市日の出1丁目の市文化会館で、九州電力玄海原発3、4号機(玄海町)の再稼働に関する3回目の住民説明会を開き、234人が参加した。前回までと同様、参加者からは事故への不安を訴える声が相次いだ。原子力規制庁の荒木真一原子力規制企画課長は、玄海原発が福島第1原発事故を踏まえた新規制基準に適合し、格納容器の破損を防ぐ冷却手段の強化や、海水を利用して熱を逃がす対策を確認したことを説明し、理解を求めた。参加者からの質問は1、2回目の説明会と同じく1人1分以内に限られ、不満が噴出。出席者が「福島の事故が収まっていない中で、世界一といえる基準が作れるのか」と訴えたのに対し、規制庁の担当者は「分かってきている基本的な部分を参考に新基準を作った。必要なものがあれば追加する」と回答した。「海外のように(炉心溶融時に溶けた核燃料を閉じ込める)コアキャッチャーは設置しないのか」との質問には「同様の機能を持たせている」と答えた。

*3-4:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/410217 (佐賀新聞 2017年3月1日) 玄海原発再稼働、伊万里説明会 市長「反対変わらぬ」、「なぜ急ぐ」住民も批判
 九州電力玄海原発3、4号機(東松浦郡玄海町)の再稼働に関する県内4カ所目の県民説明会(佐賀県主催)が28日、伊万里市民会館であった。周辺市町の住民らを含め388人が参加、安全性などへの疑問点を質問した。地元の塚部芳和市長は「参加者の不安や疑問に国や九電は答えていない。再稼働に反対の立場は変わらない」と述べた。原子力規制庁と資源エネルギー庁、内閣府、九電の担当者が防災の取り組みや国のエネルギー政策などを説明した。会場からは福島原発事故の収束や原因究明が終わらない状態で「なぜ再稼働を急ぐのか」「避難訓練が必要なほどのリスクの中で進める理由が分からない」と批判の声や、「再稼働ありきで検討が進んでいる」と不信感も漏れた。このほか、使用済み核燃料の保管の問題や、テロなどでの航空機落下事故の際の安全対策への疑問が出た。伊万里市のほぼ全域は原発から半径30キロ圏内にあり、緊急時防護措置準備区域(UPZ)にあたる。塚部市長は、国が再稼働の必要性についてエネルギーの安定供給に終始したことに触れ、「原発の安全安心とエネルギー問題は同列で論じられない。不安への回答になっていない」と指摘した。その上で会場から再稼働への疑念を示す意見ばかりが出されたことを挙げ「県がどのような判断を下すか、注目したい」と話した。
■4カ所目、最多388人参加 市長「市民の関心、不安表れ」
 首長が再稼働反対を主張する伊万里市の会場で開かれた4回目の県民説明会。これまでの最多となる388人(県発表)の参加に、塚部芳和市長は「市民の原発に対する関心の高さと不安への思いの表れだ」と強調した。唐津市と武雄市の参加者が少なかったため、伊万里市には市民から「市が周知すべきだ」と意見が寄せられた。市は24日、各公民館長に対して区長に住民への周知を促すよう呼び掛ける文書を発送。その効果もあったのか、会場には行政関係者や区長以外に一般住民の姿も目立ち、住民ならではの「命の訴え」が相次いだ。70代女性は「既成事実のための説明会という印象」と切り捨てた上で、「みんな本当に反対しているのだと分かった。市長はあくまで反対を貫き通してほしい」と求めた。一方、70代男性は「反原発団体の関係者の殺気だった質問と怒号が目立ち、あんな雰囲気の中でごく普通の市民は質問できない」と違和感を訴え、「公民館で開かれるなら、もう一度聞きたい」と期待を寄せた。説明会を巡って伊万里市と市議会は2月17日、県に市内全地区の公民館(13カ所)での開催を申し入れ、「まず伊万里での県民説明会の様子を見て、改めて協議したい」と県の回答を得ていた。終了後、塚部市長は「県がどう判断するかだが、聞き入れられなければ市議会と相談する」と地区別での実施を求めていく姿勢を示した。

*3-5:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/411493 (佐賀新聞 2017年3月6日) 原発県民説明会 容認意見なく、空席目立つ
■専門家「県の説明必要」
 九州電力玄海原発3、4号機(東松浦郡玄海町)の再稼働に関し、佐賀県は5会場での県民説明会を終えた。国と九電が再稼働の必要性や安全対策を説明し、参加者から容認する意見はなく、安全性への不安や必要性への疑問が相次いだ。説明内容の分かりづらさや質問時間の短さを指摘、追加開催の要望も上がった。1000人以上収容できる各会場は空席が目立ち、有識者は事故被害の甚大さを踏まえ、県民意向調査の実施を訴えている。各会場の受け付けでは開始時間が過ぎても参加者用の資料がうずたかく積まれたまま。「多くの県民に説明を聞いてほしいが、難しい」と県幹部はこぼした。説明会は、国が説明責任を果たすことを条件に県が主催した。2月21日~3月3日に半径30キロ圏の唐津、伊万里両市と佐賀、武雄、鳥栖市で開いた。参加者数は伊万里の388人が最多で、佐賀234人、唐津192人、武雄と鳥栖は各117人の計1048人。夜の開催で、子育て世代や若者は少なかった。説明会の運営では説明内容や質疑時間を巡り課題が指摘された。説明者の答えがかみ合わず、紋切り型の説明が繰り返され、怒号が飛び交う会場もあった。質疑時間は、原子力規制庁が適合性審査の概要説明後に20分、資源エネルギー庁がエネルギー政策、内閣府が避難計画、九電が原発の安全対策を説明した後に2回目を30分設け、「規制」と「推進」で分けた。県は「多くの意見を聞く」として質問を原則1人1問で1分間に限定。質問中に「30秒前」「まとめてください」と書いたボードをステージ上で掲げた。会場からは「重大な問題なのに短すぎる」「もう一度説明会を開いて」と批判が出た。ただ、多くは1分を超えたものの、司会者が遮ることはほとんどなく、各会場とも終了予定時間を1時間近くオーバーした。県民説明会について九州大大学院の吉岡斉教授(科学史)は「再稼働を判断する立場にある佐賀県の説明が必要だった」と指摘する。県民の参加状況に関しては、周知不足だけではなく「県の姿勢に期待が持てず『形だけのスケジュールを消化している』と多くの住民が判断したのではないか」と読み解く。住民避難に特化した説明会の必要性も挙げた上で「何より県が、県民の生命・健康を守る立場から徹底的に安全性を評価し、県民世論を幅広く収集することが大切。これまでのように政府や業界に従う姿勢は改めるべき」と述べ、住民意向調査を行うよう求めた。唐津と佐賀の説明会に出席した山口祥義知事は「福島の事故を経験して不安の声が多かった」と感想を述べた。県はメールや書面で意見を受け付け、18日には20市町の首長の考えを聞く。開会中の県議会は、再稼働容認の自民議員が多数を占める。「県議会の意見は極めて大切」と強調する山口知事。追加の説明会を開くのかどうか、幅広い声をどうそしゃくし、いつ判断を下すのか。過程を重視する知事の説明責任も重要さを増している。

*3-6:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/412564 (佐賀新聞 2017年3月10日) 玄海原発 反原発団体も説明会を要望、県に24項目の要請書
 九州電力玄海原発3、4号機(東松浦郡玄海町)の再稼働に関し、反対する県内の複数の団体が9日、全市町での県民説明会の開催や再稼働に反対・慎重な意見を持つ専門家の説明会などを佐賀県に求めた。山口祥義知事が判断材料にする会合が3月中旬に集中し、慎重な対応を求めた形だ。再稼働に反対する県内9団体で構成する脱原発佐賀ネットワークは、県内5カ所で開かれた県民説明会では不十分として、子育て世代や離島住民も参加できるよう、昼間や休日に説明会を追加開催することや、公開討論会の実施など24項目の要請書を提出した。県外住民の参加を認めることや、健康への影響、避難計画を検証する委員会の設置などを盛り込んでいる。県内各界の代表が委員を務める広く意見を聴く委員会の委員を出している県労連(北野修議長)は、再稼働に疑問を持つ専門家による説明会を求める要望書を提出した。2月の第2回会合では、再稼働を推進する国と九電の説明を聞いており「幅広い見地からの検討が必要」と指摘し、中立性を保つため県に選任を求めた。また共産党県委員会は、岸本英雄玄海町長が玄海3、4号機の再稼働に同意したことに対し抗議声明を発表した。広く意見を聴く委員会は13日、県議会原子力安全対策等特別委員会は15、16の両日、山口知事が県内首長の意見を聞く会合「GM21ミーティング」は18日に、それぞれ開かれる。

*3-7:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/412275 (佐賀新聞 2017年3月9日) 玄海原発、町長の再稼働同意撤回を 市民団体が抗議
 東松浦郡玄海町の岸本英雄町長が町内に立地する九州電力玄海原発3、4号機の再稼働に同意してから一夜明けた8日、脱原発を訴える市民団体のメンバーらが町役場で抗議活動し、同意の撤回を求めた。玄海原発対策住民会議(会長・藤浦晧玄海町議)をはじめ、佐賀市や武雄市などから集まった20人余りが、役場前でマイクを手に「再稼働は町長や議会だけで判断できるものではない」「玄海町で福島原発の二の舞いが起きてはいけない」などと声を張り上げた。その後、庁舎内に移動し、同意表明の撤回を求める要求書を、体調不良という岸本町長に代わって対応した町の担当者に手渡した。提出に先立ち、庁舎内の混乱を避けようと代表者だけの入庁を求める町職員に対し、「みんなが町民、県民の代表だ」とメンバーが詰め寄る一幕もあった。

<リーダーの見解>
*4-1:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12832205.html (朝日新聞社説 2017年3月9日) 大震災から6年 「原発は安い」では済まぬ
 東日本大震災からまもなく6年。復興はまだ道半ばだが、とりわけ原発被災地の福島県では今も8万人が避難生活を強いられ、地域社会の再生は見えない。原発事故の被害とその処理費用も膨らみ続けている。にもかかわらず、政権は原発を「重要な基幹電源」として、今後も積極的に使う構えだ。事故の惨禍を目の当たりにしてもなお、原発に頼り続けることに理はあるのだろうか。政府や電力業界が言うように、本当に「原発は安い」のか。
■膨らみ続ける費用
 東京都内のホール。福島第一原発の事故で全町避難を強いられた福島県浪江町が2月に開いた住民との懇談会で、避難者たちが次々に悲痛な声を上げた。「除染が終わったと連絡が来たが、線量は十分に下がっていない。これでは家に帰れない」。「私たちは原発事故で町を追い出された。帰れない人には東電が家賃を払い続けるべきだ」。浪江町の中心部は今月末に避難指示が解除され、住民は戻れるようになる。ただ、楢葉町など指示がすでに解除された地区では帰還率が1割ほどのところが多く、先行きは厳しい。炉心溶融を起こした原子炉の内部は、惨状がようやく見え始めたところだ。高熱で曲がった鉄格子、こびりついた黒い塊……。東京電力は2号機に調査ロボットを投入したが、人間なら数分足らずで致死量に達する強い放射線や堆積(たいせき)物に途中で阻まれた。溶け落ちた核燃料を取り出す道筋は見当もつかない。賠償や除染、廃炉などの費用について経済産業省は昨年末、総額21・5兆円にのぼるとの見通しを示した。従来想定の2倍で、巨額の負担が電気料金や税金として国民にのしかかる。そもそも、壊された生活や地域社会など金銭では表せない被害もある。痛手は計り知れない。
■保護ありきの政府
 政府は東電をつぶさないため、支援策のてこ入れに乗り出した。東電や原発を持つ電力大手各社が負担してきた賠償費を、今後40年間にわたって、電力自由化で参入した「新電力」にも一部負担させる方針だ。これは、自由化でめざす消費者の利益より、原発の保護を優先するやり方にほかならない。原発を持たない新電力にも原発固有のコストを押しつけ、大手の負担を軽くするからだ。なりふり構わぬ姿勢から浮かび上がるのは、原発はもはや強力な政策支援がないと成り立たないという実態である。それでも、経産省は「福島事故の費用を織り込んでも、原発のコスト面の優位性は変わらない」と言う。引き合いに出すのは15年に示した試算だ。原発を新設する場合の発電コストについて、火力や自然エネルギーなど他の電源より低いとする。30年度時点で必要な電気の2割ほどを原発でまかなう政策の根拠としている。だが、これにはさまざまな疑問が出ている。原発に批判的な専門家は「試算は、原発を大きなトラブルなく長く運転できることが前提。過去の稼働状況や費用の実績をもとに計算すれば、発電コストは高くなる。建設費用も震災後は世界的に上昇している」と指摘する。経産省の試算には、費用の見積もりが仮置きにすぎない項目も目につく。たとえば核燃料サイクルは技術が確立されておらず、具体的な進め方も未定の部分が多い。長年の懸案である高レベル放射性廃棄物の最終処分地選びは遅々として進まない。これらは既存の原発にもかかわる問題だ。歴代の政権は、原発推進の旗を振りつつ、「負の課題」については先送りやその場しのぎを繰り返してきた。そんなやり方は、もはや限界だ。
■脱原発への具体策を
 今年は国のエネルギー基本計画を見直す時期に当たる。この機をとらえ、原発をはじめ各電源の経済性やリスク、利点を精査し、新計画に反映させるべきだ。原発推進派だけでなく、批判的な専門家も招き、多角的に検討することが欠かせない。海外に目を向ければ、ドイツや台湾が脱原発を決めた。他の先進国でも原発を前倒しで閉鎖したり、原発への依存度を下げる目標を掲げたりする動きが出ている。安全性を重視する社会では、事故や廃棄物への対策が解決できていない原発は、手に余るものになりつつある。そのきっかけとなったのが、福島の事故だった。安全規制の強化とコストの上昇は最近の東芝の経営危機にもつながった。安倍政権がなすべきなのは、原発を取り巻く現実や再稼働に慎重な民意に向き合い、原発への依存度を着実に下げていく具体策を真剣に練ることである。閉鎖的な「原子力ムラ」の論理が幅を利かせ、安全神話がはびこった結果、福島で何が起きたか。この6年間をいま一度思い起こし、エネルギー政策を合理的で持続可能なものに作り替えなければならない。

*4-2:http://www.kirishin.com/2016/11/20161126.html (キリスト新聞 2016年11月26日) 司教団が原発撤廃を呼び掛け 世界のカトリック教会に協力と連帯要請
 日本カトリック司教団は11月11日、「地球という共通の家に暮らすすべての人」に向けて、「原子力発電の撤廃を――福島原子力発電所事故から5年半後の日本カトリック教会からの提言」と題するメッセージを発表した。同司教団は東日本大震災後の2011年11月、「いますぐ原発の廃止を」と訴えるメッセージを発表。その後、韓国のカトリック司教団とも原発について学びを重ねてきた。今回のメッセージでは、被災者が現在も経済的・社会的・精神的な苦境に立たされており、東京電力福島第一原子力発電所事故の収束の見通しも立っていないことを指摘。放射性廃棄物の根本的な処理方法が確立されていないにもかかわらず、日本政府は48基の原子炉を順次再稼働し始め、新原子力発電所建設計画の再開、原発輸出に向けた動きを加速していると述べた。そして、「一国の司教団が、世界に向けてメッセージを発するのはきわめて異例のことかもしれません」とした上で、「しかし、福島原発事故から5年半が経過し、日本がこのような事態に陥ってしまった中で日本司教団は、原子力発電の危険を世界のすべての人に知らせ、その撤廃を呼びかけるほかはないと考えるに至った」と、メッセージを発表した理由を説明した。メッセージは、「なぜ日本司教団は呼びかけるのか」「5年半をへて分かったことと学んだこと」「原子力発電を推進する国家の姿勢」「キリスト教信仰の視点から」「国際的な連帯の呼びかけ」の5項目から成り立っている。「国際的な連帯の呼びかけ」では、原子力発電の撤廃は、国際的な連帯がなければ実現困難だとし、世界中のカトリック教会に協力と連帯を要請。特に各国の司教団に対して、原子力発電の危険性を理解し、その是非について福音的立場から議論するよう求めた。最後に、「原子力発電の是非を将来世代をも含めたすべての人間の尊厳を守るという一点から判断しなければならない」と主張。また、核エネルギーを利用している国々が選択すべき道は、原子力発電の撤廃を決定し、再生可能エネルギーの利用拡大を推進していくことだと強調。「今一度立ち止まり、人類社会の目指すべき発展とは何か、真の豊かさとは何かを問い直さなければなりません」とし、それは「新たな豊かさに向けての前進」だと訴えた。

*4-3:http://www.higan.net/news/2012/06/post-28.html (彼岸ネット 2012年6月26日) 日本仏教各宗派は原発についてどう考えている? 
 毎週金曜日夜、首相官邸前や大阪の関西電力本店前などで行われている、大飯原発再稼動決定に対する抗議デモはどんどん規模が大きくなっていますね。6月22日には、官邸前に4万5000人、大阪の関電本店前には1500人が集まったと言われています。日本の仏教界では、6月12日に東本願寺(真宗大谷派)が「大飯原子力発電所再稼動に関する声明」を発表。こちらもTwitterやFacebook上で話題になりました。ところで、日本仏教界の各宗派は、原発についてどんな意見を持っておられるのでしょうか。各宗派のウェブサイトに記載されている声明や談話を、震災後から時系列に沿ってまとめてみました。
●東本願寺「原子力に依存する現代生活」を問い直す姿勢を表明(2011年7月7日、安原晃宗務総長)
http://higashihonganji.or.jp/info/news/detail.php?id=337
 宗会(最高議決機関)において、安原晃宗務総長が「原子力に依存する現代生活」の問題は「人間の方向」の問題であると述べ、「放射能飛散と被ばくのいたましい現実から『原発』の誤謬性を思い知らされることであり、したがって極力、ていねいな議論が必要な最重要課題であります」。
●全日本仏教会 会長談話「原子力発電所事故から思うこと」(2011年8月25日、河野太通会長)
http://www.jbf.ne.jp/2011/08/post_206.html
 原発の利便性ゆえに便利な生活を享受してきた反面、事故による放射能汚染、廃棄物の処理について見通しがつかないという現状があることに言及したうえで、「私ども仏教徒は、仏陀の教えに連なるひとりとして、今を生きるひとりの人間として、また大切な地球の中に生きる者として利便性と経済的効果のみを追求せず、自らの足、実地を踏む良き道を選び、歩んでまいりたいと思います」。
●臨済宗妙心寺派「宣言(原子力発電に依存しない社会の実現)」(2011年9月29日、臨済宗妙心寺派宗議会)
http://www.myoshinji.or.jp/about/post_9.html
 平和利用とは言え、原子力発電が人類に制御できない危険なものであることが明らかになった今は「一刻も早く原発依存から脱却し、これに代わる安全なエネルギーへの転換に向け社会に働きかけなければいけない」としたうえで、「私たち仏教徒は、利便性や経済性のみを追求せず、仏教で説く「知足(足るを知る)」を実践し、持続可能な共生社会を作るために努力することをここに決意し、宣言します」。
●曹洞宗「原子力発電に対する曹洞宗の見解について」(2011年11月11日)
http://jiin.sotozen-net.or.jp/wp-content/uploads/2011/11/20111101aboutapg.pdf
 「現状において即時に全ての原子力発電を停止し、再生可能エネルギーに転換することは不可能」であり、火力や水力もCO2増加や環境への負荷がかかること、電力不足で経済が混乱するなどの問題があると指摘。原発を速やかに停止して再生可能エネルギーへと移行することが望ましいとしながらも「現時点で原子力発電の是非について述べることは非常に難しいのではないでしょうか」。
●全日本仏教会「原子力発電によらない生き方を求めて」(2011年12月1日、河野太通会長)
http://www.jbf.ne.jp/2011/12/post_214.html
 快適さや便利さを追い求める影で、原子力発電所立地の人々が事故による「いのち」の不安に脅かされ、処理不可能な放射性廃棄物を生みだして未来に問題を残しているという現実があることに言及。「「いのち」を脅かす原子力発電への依存を減らし、原子力発電に依らない持続可能なエネルギーによる社会の実現を目指します。誰かの犠牲の上に成り立つ豊かさを願うのではなく、個人の幸福が人類の福祉と調和する道を選ばなければなりません」。
●西本願寺 本願寺新報「まことの安穏を目指して」(2012年1月1日号、梯實圓先生)※6/26追記
 本願寺出版社が発行する『本願寺新報』2012年1月1日号表紙に、梯實圓先生の文章を掲載。震災以降、本願寺派の公式発行物で原発に触れた最初の記事だとされています。仏教の説く「三毒の煩悩」になぞらえて、自分と自分の属する集団の利潤を最優先することを戒められています。以下、一部を引用。「単純な自然災害でも、天災と人災が複雑に組み合っていますが、とりわけ今度のような原子力発電所の事故は、想定を超えた天災のせいだけではなく、経済的効果に惑わされて、想定を甘く設定した人災であったといわねばなりますまい。さらにいえば原子力発電そのものが、経済発展を最高の価値と見なす思想が生み出した危険な産物です。その意味でこの事故は経済的利潤の追求を、すべてに優先させている思潮への激しい警鐘と受け取るべきでしょう」
●東本願寺「原子力発電所の再稼働に対する真宗大谷派の見解」(2012年4月24日、真宗大谷派解放運動推進本部長 林治)
http://higashihonganji.or.jp/info/news/detail.php?id=391
 2011年末に、政府に対して「原子力発電に依存しない社会の実現を目指す」要望書を提出。「生きとし生けるもののいのちを脅かすことなく、さらに未来を生きる子どもたちのためにも、一刻も早く原子力発電に依存しない社会の実現」を求め、「すべての原発の運転停止と廃炉を通して、原子力に依存しない、共に生きあえる社会」へと歩みたいと表明。「私たちは、すべてのいのちを摂めとって捨てない仏の本願を仰いで生きんとする念仏者として、仏智によって照らし出される無明の闇と、事故の厳しい現実から目をそらしてはならないと思っています」。
●法華宗(本門流)「第66次定期宗会において声明文を発表」(2012年6月11日)※6/27追記
http://www.hokkeshu.or.jp/
 「一、東京電力福島第一原発事故の一日も早い収束を祈り、原子力発電にたよらない、持続可能な自然エネルギーによる社会の実現に向け、努力してまいります」。
●東本願寺宗派声明「大飯原子力発電所再稼動に関する声明」を発表(2012年6月12日、宗務総長 安原晃)
http://higashihonganji.or.jp/info/news/detail.php?id=402
 「福島第一原子力発電所の事故で多数の苦しんでおられる方がある中で、一旦停止した原子力発電所を再稼動する理由に、人のいのちよりも優先すべきことがあったのでしょうか」と問いかけ、野田内閣総理大臣による大飯原子力発電所再稼動表明に強い遺憾の意を表明。すべての原発が「決して再稼働することないよう念願するものであります」。

*4-4:http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2017030701001351.html (東京新聞 2017年3月7日) 民進、「原発ゼロ法案」を了承 蓮舫代表、党大会で表明へ
 民進党は7日、エネルギー環境調査会(玄葉光一郎調査会長)を国会内で開き「原発ゼロ基本法案」の国会提出を明記した政策方針を了承した。原発ゼロ実現に向け、再生可能エネルギーの利用促進などを盛り込んだ。蓮舫代表が12日の党大会で表明する原発エネルギー政策に反映させる。政策方針は「民進党のエネルギー政策(当面の論点メモ)」。「2030年代原発ゼロ」目標の「30年」への繰り上げ明示を見送った一方、「原発依存からの脱却が前倒しで実現可能となるよう、来る総選挙に向け検討を進める」とした。省エネ目標を上積みするほか風力や水力などの再生可能エネルギーの導入を加速する。


PS(2017年3月11日追加):*5-1のように、国は年間積算の空間線量が20ミリシーベルト以下の地域では避難解除を進めているが、この線量は原発の中と同じである上、加算しなければならない内部被曝を考慮していないため、帰還した一般市民は原発労働者より大きな放射線量を365日、24時間浴び続けることになる。にもかかわらず、「20ミリシーベルトは最大で普通はそれ以下だ」という言い訳も聞くが、基準はそういうもので、原発労働者も同じである。また、避難し続けるか帰還するかについては、放射能汚染の正確な情報を公開した上で意思決定させるべきであるのに、正確に計ることもせず、「放射能による健康被害はないから、心配するのは風評被害だ」と決めつけるなど、想定が甘く非科学的すぎる。その上、避難し続ける人を「必要以上に不安に思っている人」などと吹聴しており、これが避難生活をやりにくくして、周囲から驚くような内容の差別やいじめの言葉を引き出すことになっている。そのため、*5-2のように、科学的に説明した上で、希望する避難者へは支援を継続することが必要だ。
 なお、*5-3のように、フクイチの原子炉建屋を覆っていたカバーは、解体され、現在は取り外されたままである。そのため、放射性物質の付着した粉じんが舞い上がるのを防ぐために飛散防止剤を吹き付けたとしても、その効き目がそれほど長くて強いとは思われず、フクイチは現在、遮るものもなく解放されているわけである。その上、*5-4の約350億円の国費を投入した凍土遮水壁は、かなり前に凍結を開始したものの未だに目的を果たしておらず、これから夏や台風の季節になればさらに凍りにくくなって、フクイチは汚染水を垂れ流し続けることになる。
 さらに、*5-5、*5-6のように、フクイチ2号機に、堆積物除去ロボットを投入して調査したところ、空間放射線量が毎時650シーベルトと推定され格納容器内の高線量でカメラは2時間で故障したというお粗末な結果で、「ロボットが圧力容器下まで行けなかったためデブリの状況が確認できなかった」などと説明されたが、人工衛星・ドローン・ミュー電子・放射線に感光するフィルムなど他の方法も使用可能であるため、これは稚拙な言い訳に過ぎない。

 
   スイス気象台の      日本のフクイチ以前と以後の   2015.4.14現在の上    
 2017.3.11放射能拡散予測    放射性セシウム基準    日本産食品の輸入制限上    
    (http://blog.goo.ne.jp/1shig/e/578f13d84d4da457255da1d206ae0d55参照)

(図の説明:一番左の図のように、フクイチからの放射能は現在も拡散し続けており、累積では天文学的数字だ。また、フクイチ事故前の食品に含まれていた放射性物質は大変微量だったが、現在の基準である100ベクレル以下というのは決して小さくなく、食べ続けても安全という証明はない。また、日本産食品の輸入にあたっては、条件をつけたり産地制限したりしている国が多い)

<フクイチ事故とその後>
*5-1:http://fukushima20110311.blog.fc2.com/blog-entry-94.html (福島 フクシマ FUKUSHIMA、津波被害と原発震災に立ち向かう人々とともに) 「20ミリ基準で解除」は原発の中と同じだよ ――帰還目指す住民も汚染の実態に警鐘
 国は、「年間積算の空間線量が20ミリシーベルト以下」を基準に、避難区域の解除を進めている。4月1日、田村市都路(みやこじ)地区が、20キロ圏内の旧警戒区域では最初の解除となった。南相馬市は2年後の解除を決めている。しかし、このような避難解除の進め方に、疑問を抱いている住民は少なくない。その一人である木幡寛治さん(仮名)にお話を聞いた。木幡さんは、30数年来、福島第一原発を中心に原発作業員として働いてきた。しかし、原発事故によって木幡さんの自宅も避難区域とされ、現在は、仮設住宅で暮らしながら、除染作業などに従事している。木幡さんは、原発内の作業に長年携わってきた知識と経験から、「日常生活で20ミリシーベルトというのは到底了解できるものではない。まさに原発の中の放射線管理区域で暮らすということなんだから」と厳しく見ている。とくに、木幡さんは、空間線量以上に汚染の実態と内部被ばくのリスクについて警鐘を鳴らす。だから、空間線量だけを見せて、汚染の実態について知らせないという国のやり方に対して、「国による犯罪」だと批判する。その一方で、木幡さん自身は、自宅へ「戻る」ことを選択し、「戻る」人びとと共に地域再生に取り組むことを模索している。しかし、「その前に『戻らない』人たちの選択を守っていく必要が絶対にある」と訴える。また、「戻る」にあたっても、汚染の実態を正確に調査し開示して、住民が主体となって、内部被ばくを防護する対策を徹底する必要があるという考え方だ。そして、国が、事故を何ひとつ反省せず、原発の再稼働と増設に突き進むことに対して、「国がそういう態度なら、国民の側から転換をつくり出していく必要がある」という思いを持っている。
●外部放射線以上に汚染が問題
○4月1日に田村市都路地区の避難指示が解除になり、小高や浪江もそういう方向で進んでいます。
木幡:いつまでたっても復興事業ができないとか、このままだとコミュニティーが崩壊してしまうとか、国に限らず、市町村も、遮二無二解除しようとしているよね。で、放射線に対する防御よりも、復興を優先して行くような雰囲気がどんどん強まっているし、そういう圧力が高まっているね。これ以上、除染しても無理だと思うし、そういうところに戻って住むか住まないかは個人の判断によるしかないんだけど、もし、年間20ミリシーベルト近く被ばくをする可能性があるようなところで生活するというなら、それはまさに原発作業員と同じなんだから。だから、そうするんだったら、そういう管理をきちっとやれよという話なんだよね。
○木幡さんは30年以上、主に福島第一原発で作業員をやって来られましたね。その経験や知識からすると、20ミリシーベルト基準での解除には問題があると。
木幡:そうね、相当に問題があるんじゃないかな。原発で働いてきたから、職業被ばくとして、年間20ミリシーベルト〔※〕ということについては、まあ了解しているよ。でも、日常生活で20ミリシーベルトというのは到底了解できるものではない。〔※法定の限度は「実効線量で5年間に100ミリシーベルトを超えず、かつ、1年間に50ミリシーベルトを超えない」。それに準じて、東京電力や協力企業では、概ね年間20ミリシーベルトを管理基準にしてきた〕。放射線管理区域というのが法律で定められている。その基準は、外部放射線で言えば、3カ月で1.3ミリシーベルトを超えるところ。そういうところでは、被ばく管理や汚染管理をきちんとしなさいよと決められている。例えば、放射線管理区域の中で作業をするときには、APD(警報付ポケット線量計)とか、ガラスバッチ(個人積算線量計)をつけて外部被ばくの線量を管理している。それから、作業を終えて管理区域から出るときは、汚染を服や体にくっつけたまま持ち出してしまわないように、スクリーニングチェック(表面汚染検査で汚染者を選別する)を受けなければならないんだ。表面の汚染密度で基準を作っている。そこで引っかかると、落ちるまで洗わされるとか、服なんか取り上げられるとか、そういう風にやっていたんだよ。それから、3カ月に1回はホールボディーカウンターの検査、それに6カ月に1回の電離健康診断が義務づけられているんだ。で、そういう検査でもし基準以上の数値が出たりしたら、放射線管理区域の中での作業ができなくなるんだよ。20ミリシーベルトというのはそういう世界なんだから、そういう管理がなされないといけないという話なんだよね。
○外部放射線にだけに目が行ってしまいますが、放射線管理区域では、外部放射線に対する管理とともに、汚染濃度で内部被ばくに対する管理が行われていたのですね。
木幡:その通り。原発労働の経験からすると、外部被ばくだけを見ていたらだめだと思うんだ。土壌や空気中のダストの汚染濃度を見ないと。震災前の原発では、外部被ばくに対する管理では、年間20ミリシーベルトを超えないように管理しているし、実際にはそれよりさらに低く抑えるようにしていた。しかし、それ以上に、内部被ばくに対する管理が厳しかったと思うよ。外部被ばくの防護管理だけであれば、線量測定と時間管理だけで十分なんだけど、汚染管理やスクリーニングとかホールボディーカウンターというのは、内部被ばくに対する防護としてやっていたわけだからね。だから、法律で決められている放射線管理区域の条件も、三つの基準があるんだよ。ひとつは、外部放射線で、実効線量が3カ月で1.3ミリシーベルト。もうひとつは、空気中の放射性物質の濃度。三つ目が、体や物の表面の放射性物質の密度。二つ目の空気中のダストの場合は、基準が核種によって違っていて、たとえばセシウム137だったら、1立方センチ当たり3×10-3ベクレルが空気中の濃度限度で、その1/10が管理基準といった具合。で、これがマスクオーダーだった思うんだよね。それ以上のダストが予想される場合は全面マスクをしないといけない。大事なのは、三つの指標があって、決して外部放射線だけではなかったということなんだ。
○そうすると、国の20ミリシーベルト基準の問題点は、単に、外部被ばくの数値として高いかどうかではなく、内部被ばくのリスクを軽視している点にあると。
木幡:そういうことだね。原子力規制委員会が昨年11月に「帰還に向けた安全・安心対策に関する基本的考え方(線量水準に応じた防護措置の具体化のために)」という見解を出しているけど、それを見ても、最初から最後まで線量に対する防護措置だけを扱っているんだよ。でも、20ミリシーベルト以下であれ一定の空間線量があるということは、そこにそれだけの放射性物質が存在して汚染しているということでしょ。で、外部被ばくは、空間線量率で予測できるけど、内部被ばくは主に汚染濃度に影響されるわけだからね。そういう汚染がある所で生活するということは、それを取り込むリスクがあるわけだ。それが一番危険なのに、そのことをほとんど無視しているという点だよね。
●シーベルトで管理する狙い
○そうすると、国は、汚染を密度・濃度でとらえるということを、意図的にネグレクトしているということでしょうか?
木幡:私としては、そう思わざるをえないね。実際、管理基準を変えているんだよね。あまり知られていないけど。まず、震災前の管理がどうだったかということを、少し前に作ったものだけど、表にしてみたんだ。(「放射線管理区域内の区分と管理例」 )もちろんこういう規定があるという意味ではなく、自分の経験と記憶の範囲でしかないけど。3・11以前から原発に関わってきた人は、こういうものだと思って、そういう基準でやってきたわけ。ところが、原発がドーンとなって、汚染が噴出したら、基準もガーンと変わってしまうというね。それも一時的な緊急措置ならまだしも、汚染にかんする基準は元に戻っていないわけだから。放射線管理区域から出るときの表面汚染の基準、スクリーニングの基準だね、それは、もともとアルファ線核種以外では1平方センチ当たり4ベクレル以下、カウントで約1300cpmだった。ところが、3・11以降、緊急時ということで40ベクレル、1万3千カウントにして、さらにすぐに10万カウントに引き上げた。で、その年の9月に40ベクレルには戻したけど、それがいまも続いている。3・11以前の基準の10倍。これは意図的でしょう。要するに、もう4ベクレルで管理しようとしても、そこら中が汚染だらけで、対応できないということでしょう。そういう意味で、汚染密度とか濃度ということにはできるだけ触れないで、外部放射線のシーベルトでくくっていると、これは管理しやすい。住民もシーベルトしか測んないから、本当の汚染が高いのか低いのかは分かんない状態なんだよ。もちろん、中心にいてコントロールしている人は分かっているでしょう。放射線管理区域の基準がどうだったかとか、汚染と内部被ばくの問題とか。でも、そういうことには触れないで、20ミリシーベルトという線量で切って解除ということにしている。これは、国による犯罪に近い行為なんだよ。
○なるほどそういう手口だったのですね。
木幡:ただね、国の方には、こういう言い訳があるんじゃないかと思うんだ。つまり、外部被ばくにしても、汚染を内部に取り込んだときの被ばくにしても、結局、シーベルトで統一しているんだからいっしょだと。外部被ばくで1ミリシーベルトを浴びようと、内部被ばくで1ミリシーベルト浴びようと影響は同じだというわけ。ICRP(国際放射線防護委員会)などの考え方なんだけど、外部被ばくでも、内部被ばくや局所的な被ばくでも、体の単位体積での平均的な影響で計算してしまう。でも、これは、私は違うと思うよ。例えば、細い針で皮膚を突いたときと、太い筒で突いたときとでは、痛さ、ダメージは違うでしょ、同じ力で押しても。だから、ECRR(欧州放射線リスク委員会)2010勧告では、内部被ばくは、外部被ばくに対して100倍から1000倍ぐらいリスクが高いと指摘しているよね。だから、原子力規制委員会の見解は、内部被ばくのリスクを非常に軽視したものだと思うよ。
●不安とリスコミ
○ところで、復興加速化方針では、被ばくと健康リスクに関して、住民の不安を取り除くためのリスクコミュニケーションということを言っています。
木幡:そこのところが、一番、頭に来ているんだ。たしかに健康への影響は、すぐに出てくる場合もあるかも知れないけども、すぐには出て来ない方が多い。少なくとも、健康への影響は、「わからないことが多い」というのが正しい知見でしょう。だけど、国の加速化方針は、放射線の健康影響は実際にはないと決めてかかっているよね。で、住民の抱いている「不安」には科学的な根拠はないと。それでも「不安」だというから、そういう人にはリスクコミュニケーションで「不安」を取り除いてあげましょうと。外部被ばくの数字だけを見せておいて、「大丈夫ですよ」「戻れますよ」というやり方はほんとにおかしいよ。これだけの放射能汚染があるよということを情報としてきちんと開示するべきでしょう。それからだよ、戻るかどうかは。もちろんそれをちゃんと理解した上で戻るという選択はあると思うけど。だけど、そのためには、ちゃんとした環境データをつくらないと。放射能は測ればわかるんだから。誰でも計測器があれば測れるんだから。
○国は、今後は個人の線量を把握すると言っていますが。
木幡:個人線量計つけるかどうかじゃないよ。帰還する住民に個人線量計を持たせるとか、それが被ばく対策で帰還促進策だと言っているけど。ガラスバッチを各家庭に配って、3カ月単位で送り返すと。ガラスバッチで積算線量を測るには便利だけど、その最少単位が0.1ミリシーベルトなんだ。だから0.1ミリシーベルト以下は被ばくゼロになってしまうんだ。そんなんじゃなくて、身体汚染とか内部への取り込みとか、汚染拡大なんかを防止することに力を注ぐべきだよ。
●除染の目標は「除染前よりは下げる」
○ところで、木幡さんは除染作業員としてモデル除染からかかわっていますね。また、被災者としてご自宅が除染の対象になっているわけですが。
木幡:うーん、除染ね。除染は必要は必要だよね。住宅の除染はどうしても必要だよね。ただ、やってもダメなところはダメだし、こんなやり方ではやらない方がいいんじゃないかというのもあるよね。屋根はもうやんなくてもいいと思うんだよ。最初の頃は、たしかに、一階より二階の方が線量が高いといったことがあって、やっぱり屋根から来ているということだったけど、今は、もう雨で汚染が流れてしまっているからね。あと苔が生えているような屋根とかは、苔を取ればいい。錆びたトタン屋根とか、そういうのはもう張り替えるしかない。雨樋もあるよね。雨樋なんか取り換えればいい。だけど、今の除染マニュアルでは、取り換えないね。壊れているものがあってもそれをそのままの状態におくんだ。非常に硬直している。それから壁でも、拭き取りによって効果がある材質のものだったら、拭き取りをやればいいだろう。それから洗浄でもいいと思うんだよ。
○洗浄は水の回収の問題があるのでは?
木幡:私も、最初の頃は、洗浄したら、水を回収はどうするんだかと言っていたんだけど、下がコンクリートだったら側溝に堰を作って回収する。それから、土のところでは、流れた水は土に染み込むけど、後で表土を5センチはぎ取る作業をやるから、結局、回収できるんだ。放射性物質は表土にとどまっていているからね。
○そうすると除染の現場で感じている問題は?
木幡:一番の問題は、拭き取りのできない材質のものだな。最悪なのはブロック塀。ワイヤーブラッシでブラッシングしているんだよね。これが最悪。たしかにブロックは多孔質で、放射性物質が付着していてなかなか取れない。だから、ワイヤーブラッシでやったら、ああキレイになったというのはあるかも知れないけど、で、それはどこに行ったのって?飛び散っちゃうんだから。
○それは作業している人にとって非常に危険ですね。
木幡:そう、それを一番心配しているんだよ。
それから、線量が高い場所での除草作業でもそうなんだ。ベーラーと言って、コンバインみたいな機械を運転しながら草を刈っていくわけ。そうすると粉塵がすごい。思わずもう風上に逃げたよ。タイベックを着て、マスクをして、あとタオルを覆ったりしてやってるんだけど。しかも除染作業員は、原発作業員よりも、検査の回数とか少ないんだ。ホールボディーカウンターだって、最初に除染作業に入る前と辞めた後に1回ずつ受けるだけ。例えば、除染作業員を2年やっていたら、その間は受けられない。除染電離則(除染業務における放射線障害を防止する法律)というのはそういうひどい法律なんだよ。
○ところで除染の作業には、数値的な目標や基準はないのですか?
木幡:厳密な意味での基準はないね。
 最初のモデル除染(2011年11月から12年3月)のときは、一応、きつい基準でやってたよ。ゼネコンがそれぞれ独自に目標を掲げて、空間線量率で毎時0.23マイクロシーベルトとか、表面汚染密度で1平方センチ当たり1000カウントとか。でも、環境省がこの間、言ってきたのは、「長期的な目標として追加被ばく線量が年間1ミリシーベルト以下」、「2011年8月末と比べて物理的減衰等を含めて約50パーセント減少」〔『除染関係Q&A』環境省〕という目標だよね。でも、「長期的な」と言っている通り、1ミリシーベルトはあくまでも先の先ということでしょう。それから50%減少というけど、「物理的減衰等を含め」というところがミソ。セシウム134の半減期が2年だから、その効果で線量も下がってきているわけ。それから雨や風で流されていったりして下がることもあるし。だから、この3年についていえば、除染をしなくても線量はかなり下がっているんだよね。でもこれから先は、半減期が30年のセシウム137が支配的になるから、なかなか下がらないだろうね。ともかく、こういうことだから、環境省の目標は目標じゃないよ。
○そうすると現場ではどうしているのですか?
木幡:まずは、やってみないとわからないということだな。
 とくに、田畑や家の周囲の山林はとにかくやっているだけという感じ。実際、どうしようもないよね。
○除染して、住宅とその周囲は0.23マイクロシーベルト以下になったけど、住宅から10メートルも山の方に行ったらもう1マイクロシーベルトを超えているというような話がありますが。
木幡:山林や田畑はもうそれ以上、下げることはできないでしょう。スポット的に除染して下げることは可能かも知れないけど、全体では無理だと思う。
○宅地については?
木幡:宅地については、空間線量で見て、除染前よりも線量が高いときに再除染をしているな。除染でかえって汚染を拡散させて、除染後の線量を上げてしまうことだってあるんだよ。とにかく現場では、「除染前よりは下げる」ということでやるしかないんだな。「数字が下がっていることを見せる」というためにやっているという感じだな。何マイクロ以下といった数値目標はないね。結局、先ほどスクリーニングレベルでも言ったけど、1万3千カウントから下げてないんだから。作業者のスクリーニングで、1万カウントの汚染が出たらエライことで、よっぽど特殊なことをやらないとそういうのは出ないんだから。つまり、1万3千カウント、40ベクレルというスクリーニングレベルを基にしたら、そもそも除染なんてする必要もないということになるよね。除染も形だけでいいとなる理由もここにあると思うんだよ。
○ところで、この間、環境省と福島、郡山、相馬、伊達の各市長が会合をもって(4月14日)、除染をめぐる勉強会を初めて、「追加被ばく量年間1ミリシーベルト」という除染の一応の目標を見直し、緩めようという方向で動いていますが。
木幡:結局、除染がうまく行かなくて、それが復興の妨げになっているからって、目標そのものを変えてしまおうというやり方だよね。外部放射線で、追加被ばくが1ミリシーベルトという点については、意見に一定の幅があるところだと思うけど、狙いが、「戻れ、戻れ」というところにあるのが問題だよね。それから、いま話してきたことだけど、外部放射線だけとらえて、いいとか悪いとかという議論に引き込んで、結局、汚染と内部被ばくのリスクという問題から目を逸らさせていることが一番の問題だわな。
●インフラ工事で汚染拡大
○ところで、除染とは違いますが、インフラ復旧工事が、汚染拡散を防止する措置もなく進められています。巨大ダンプがひっきりなしに走ってますね。
木幡:これもね、根本には国が1平方センチ当たり40ベクレルからスクリーニングレベルを下げない以上はどうしようもないんだ。いま帰還困難区域の中を走って来たって、スクリーニングも受けないでそのまま出て来ちゃんだから。一応、受けてくださいとはいっているんだけど、個人の判断になっちゃう。だから、浪江のところのスクリーニング会場の人も暇そうにしているでしょ。国のやり方として、あれは無責任極まりないよ。警戒区域にしているときは、必ずやっていたんだよ。状況は変わってないんだから、本当はそういう管理をしないといけない。汚染が出たらどうするのか、公共の除染場もつくらないといけない。ただ、1平方センチあたり40ベクレルの汚染なんて、基準が緩すぎてほとんど出ることはない。だから形だけになっちゃう。そういう緩い基準で住民が慣れてしまうのを待っているようなもんだよね。だから汚染は拡散しっぱなしだ。
○そういう状態をどう見ていますか?
木幡:チェルノブイリの場合、食品の汚染が大きな問題になっているよね。汚染していると分かっているけど、貧しいから野生のキノコを食うしかないとか、野イチゴを食べるとか。そういうことで相当長いこと内部被ばくが続いている。日本では、現在のところでは、いろいろな取り組みもあって、一応、食品に関しては、そういう状況にはないだろうと思うけど。しかし、空気中のダストはわかんないよ。逆にチェルノブイリよりもひどいかもしれない。「除染だ、インフラだ」っていじって、余計に粉塵が舞い上がっちゃっている。そういう感じがするぐらい杜撰だよね。これが後々どういう影響がでるかが心配だよ。
●「戻らない」選択と「戻る」選択
○お話を伺っていると、空間線量だけを見て、戻るかどうかの議論や判断が行われていることに問題があると。つまり、汚染の実態ということを見ると、厳然と健康被害のリスクがあるというご指摘ですね。
木幡:そういうことだな。外部放射線だけでは、いいとも悪いともいえないところだと思うんだよ。ただ、そこで生活するという選択をする場合、やはり内部被ばくが問題になるわけでしょ。 そのリスクはあるんだから。だから、「戻りたい」という人たちの話の前に、そんな線量ではとても「戻れない」という人、とくに若い人、子育て世代、こういう人たちの選択があると思う。そういう選択の人たちを守っていく必要が絶対にあると思う。そういう人たちに対して、「じゃあ、帰んなくていいよ。その代り補償は打ち切るからね」なんていうやり方は絶対にしたらいけないよ。で、早く帰還する人には賠償を上乗せするなんて言ってるけど、そんなことをするんじゃなくて、むしろ賠償は、帰って来れない人がこれから生計を立てていくために使うべきでしょう。その上で、私自身は、戻ろうと思っているんだけどね。
○では翻って、「戻る」という住民にとっては、何が必要だと考えていますか?
木幡:木村真三さんの本(『「放射能汚染地図」の今』)を読むと、志田名(しだみょう:いわき市北部のホットスポット 本サイトの記事参照)の除染の話が出てくる。住民が出してくる意見にはかなり鋭いものがあって、そういう意見を取り入れながら進めたということがよくわかる。住民はその土地のことを良く知っているわけだからね。こういうやり方がやっぱり正しいんだと思うよ。もっとも、小高や浪江では、なかなかこうはいかないだろうね。志田名は小さい集落だからまとまれたかも知れないけど、やっぱり広いと簡単じゃない。それから、志田名の場合、そこに生活していたからできたんだと思う。小高や浪江は、避難しちゃってバラバラになっている。だから、いろいろ呼びかけても、それっきりになっちゃって、なかなか立ち上がって来ないわけね。だから、私としては、とりあえず、いま国でやっている除染は除染として一通り終わらせる。その後、帰還する人たちで、空間線量ももちろんだけど、土壌、空気中ダスト、水、食品、植物、動物などの環境モニタリングを詳細にやる必要があるでしょう。で、それに踏まえて、生活の中で、どうやったら内部被ばくを低減できるかという取り組みを具体的に詰めて行うことが必要だと思う。あるいはまた電離検診も義務付ける必要があるよね。それから、住民が調べた結果、まだ除染が必要だと判断すれば再除染を要請するとか。そういったことを町づくりというか町の再建の一環として、はじめていくということかなと考えている。それを住民の手でやっていくことが大切なんじゃないかと思う。
○住民が主体になる必要があると。
木幡:そう、だから、国には、避難解除をするならするんでいいけど、解除して終わりじゃなくて、それからやることがいろいろいっぱいあるだろって言っているんだよ。でも、今の政府のやり方は、除染のやり方でも解除の決め方でもそうだけど、住民の様子を見ながら、結局、自分たちの方に責任が来ないようにという動きをしているよね。自分たちが責任をとって率先してやろうとはまずしない。住民への説明会なんかでも、環境省の本体の人間なんて見たことがない。どっかのコンサルタント会社に雇われた地元の人間が出てくる感じ。
●いま変わらなくて、いつ変わる
○木幡さんは、2011年3月11日にまさに福島第一原発にいたわけですが、今日のお話しから、やはり3・11を経て、考え方に大きな転換があったといっていいでしょうか。その点を最後に聞かせて下さい。
木幡:そう、建屋の中にはいなかったけど、構内にね。30年以上、福島原発をメインにやってきたから。3・11以降もしばらく収束作業に入っていたし。長く原発に関わってきただけに、全電源停止で水素爆発を起こすのを見て、痛切に反省をさせられた。自分自身、いかに、現代の科学技術文明にどっぷりと浸りきっていたんだって。津波の凄まじさとか、原発メルトダウンとか、科学技術文明に頼りすぎてきたことへの、自然の側からのしっぺ返しのような気がしたんだ。だから、これまでの日本人のライフスタイルの総点検とか、日本の進路の総点検ということを、一人ひとりが考えなければならないと思うんだ。そういう意味で、日本人のあり方とか、日本の社会のあり方そのものが重なって問題になっていると思うんだよね。そんなことを、高木仁三郎を読んだりして考えたね。
○ところが、政府の方では、原発の再稼働と増設を打ち出した『エネルギー基本計画』を閣議決定しました(4月11日)。また、修正過程では原発事故への「深い反省」が一旦削除されました。
木幡:もう、怒り心頭だよね。国は、これまでの考え方を何も変えていない。何も反省していない。そして事故や被害はもう忘却の彼方にだよね。まあ、この流れはこの間、ずっと見えていたことだから今さら驚かないけど。結局、国がそういう態度なら、国民の側から転換をつくり出していかないとね。どうしたら転換していけるか、そこが問われていると思うよ。そういう問題意識を持っている人がいま結構多くなっていると思うよ。新聞の投稿なんかでも、「明治維新でも変わらなかった。終戦でも変わらなかった。いま変わらなくていつ変わるんだ」って。本当にそういうことだと思うんだ。
<管理区域の設定基準>
 以下の基準を超えるおそれのある場所について管理区域に設定すると電離則などの法律〔※〕で定められている。〔※放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律施行規則、人事院規則一〇一五、電離放射線障害防止規則、経産省告示第百八十七号など〕
①外部放射線に係る線量については、実効線量が3月あたり1.3mSv
②空気中の放射性物質の濃度については、3月についての平均濃度が空気中濃度限度の10分の1
③放射性物質によって汚染される物の表面の放射性物質の密度については、表面汚染密度(α線を放出するもの:4Bq/cm2、α線を放出しないもの:40Bq/cm2)の10分の1
④外部放射線による外部被ばくと空気中の放射性物質の吸入による内部被ばくが複合するおそれのある場合は、線量と放射能濃度のそれぞれの基準値に対する比の和が1

*5-2:http://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-458940.html (琉球新報社説 2017年3月11日) 東日本大震災6年 避難者支援さらに拡充を
 東日本大震災と東京電力福島第1原発事故から6年となった。被災地以外で震災報道が少なくなったと懸念する声を聞く。社会が関心を失う中で、被災者に対する偏見が広がっていることを憂慮する。福島第1原発事故で福島県から横浜市に自主避難した男子生徒へのいじめ問題が一つの例だ。復興に向けて生活再建が進む一方、古里に戻りたくても戻れず苦悩している人々がいることを忘れてはならない。私たちに何ができるかを考え、共に歩みたい。東日本大震災で故郷を離れ、プレハブ仮設住宅や賃貸住宅、親族宅などに身を寄せる避難者は全国で12万3千人に上る。阪神大震災では約5年で仮設住宅がなくなったのに対し、岩手、宮城、福島の被災3県では1月末現在で1万8千戸に入居者がいて、仮設生活の解消も見通せない。沖縄県内への避難者数は598人(1月現在)。県別では福島県が419人と最も多く、宮城県92人、岩手県3人。ピーク時の約半数に減った。県が2016年11~12月に県内避難者を対象に実施したアンケート結果によると、88%が今後の生活について「避難を継続」「県内に定住する」と答え、沖縄で県内の生活を望む避難者が大多数であることが明らかになった。中には経済的な理由で戻れない人もいる。福島原発事故で避難区域外から避難した自主避難者に対する住宅無償提供がことし3月で打ち切られる。支援打ち切りは避難者の生活を直撃する。県内への避難者は子どものいる世帯の割合が高く、二重生活の長期化で経済的不安を抱える世帯も多い。県は新たな補助制度を設けているが、さらに支援を拡充してほしい。避難者は国の原発政策が招いた事故の被害者である。当然ながら国は、被災者の生活安定に責任を持つべきだ。一方、横浜市に自主避難した男子生徒へのいじめ問題が発覚した昨年11月以降、全国各地で同様のケースが存在することが明らかになった。横浜市の男子生徒は名前に「菌」を付けて呼ばれていた。教育現場で被災地や避難者の現状を伝え、放射線について科学的な知識を教える必要がある。同時に社会が関心を持たなければ、偏見はなくならない。大人の責任でもある。

*5-3:http://kenplatz.nikkeibp.co.jp/atcl/cntcolumn/15/00012/00009/?n_cid=nbpncr_twbn (日経BP社 2017年2月20日) 原発事故から4年後の難関、カバー解体、1号機原子炉建屋カバー工事編(第5回)
 時の流れは早い。福島第一原発1号機原子炉建屋の最上階(オペレーティングフロア)に残ったがれきの撤去に手を付けるため、4年間にわたって建屋を覆っていたカバーの解体が始まった。清水建設はカバーの建設に引き続き、工事を担う(以下、敬称略。肩書きや組織名は、特記以外は2016年2月時点)。清水建設生産技術本部の印藤正裕本部長(2011年12月時点)らが知恵を絞って計画した建屋カバーが完成してから、約4年後の15年7月28日。東京電力福島第一原子力発電所では、役割を終えたカバーの解体が始まった。放射性物質が付着した粉じんが作業時に舞い上がるのを防ぐため、建屋カバーの内側に眠るがれきに飛散防止剤を「これでもか」と吹き付けてから、最初のステップである屋根パネルの撤去を始める。建設時と同様に、風が弱まる早朝を狙う。750t吊りクローラークレーンを操って「自動玉掛け装置」を吊り込み、全長40mもの大きさの屋根パネルを取り外す算段だ。クレーンは、カバーの組み立てに使用した機体と同じもの。操作を担当するオペレーターの技能とマシンが一体となり、一つ目のパネルが無事に外れた。「その瞬間、現場には感動が広がった」。解体工事を指揮する清水建設JVの砂山智所長は、その時の現場の様子をこのように振り返る。カバー解体の第一段階である屋根パネル6枚の取り外しはその後も順調に進み、同年10月5日に終了した。

*5-4:http://www.minpo.jp/pub/topics/jishin2011/2016/03/post_13557.html (福島民報 2017年2月22日) 東日本大震災 「福島第一原発事故」アーカイブ2016/3/31分、31日「凍土遮水壁」運用開始 第一原発汚染水対策規制委が認可
 東京電力は31日、福島第一原発の建屋への汚染水流入を抑制する「凍土遮水壁」の運用を開始する。原子力規制委員会が30日の会合で、建屋海側(東側)などの先行凍結を認可した。東電は工程を3つに分けており、規制委が認めたのは工程の第1段階。建屋の周囲約1・5キロを取り囲む凍土壁全体のうち、海側全面(690メートル)と山側(860メートル)の大部分が対象。効果は1~2カ月程度で表れるとみている。東電は山側の残りの部分(7カ所、計45メートル)についても今後、実施計画を申請する。凍土壁全体の凍結が完了するまでには8カ月かかる見込み。31日は昼ごろ、凍結を始める。規制委の田中俊一委員長(福島市出身)は会合で「建屋への流入水を減らすのが本質的な解決ではない。最終的には建屋の水を枯らす必要があり、今後の道筋に向けデータを取ってほしい」と注文した。凍土壁は1~4号機を取り囲むように埋めた配管に冷却材を循環させて地盤を凍らせ、建屋に入り込む地下水を遮って汚染水の増加を抑える。しかし、建屋周囲の地下水位が下がり過ぎると、建屋内の汚染水の水位と逆転し、汚染水が地中に漏れ出す恐れがある。地下水位が下がり過ぎた場合、凍結中止や建屋周辺の井戸への注水で対応する。凍土壁の建設には約350億円の国費が投入され、平成26年6月に着工し、先月設備工事が終わった。
■最後のステップ 経産副大臣
 高木陽介経済産業副大臣は、いわき市で開かれた政府、東電による廃炉・汚染水対策現地調整会議後、「地下水バイパス、サブドレン計画実施、海側遮水壁とさまざまな汚染水対策を行ってきた。(凍土遮水壁は)最後の大きなステップ」と述べた。東電の増田尚宏福島第一廃炉推進カンパニー最高責任者は「決して運用を間違うことがないよう取り組む」と語った。

*5-5:http://www.tokyo-np.co.jp/article/economics/list/201702/CK2017021002000259.html (東京新聞 2017年2月10日) 福島2号機、格納容器内の高線量確実 カメラ2時間で故障
 東京電力が九日、福島第一原発2号機の原子炉格納容器内に堆積物除去ロボットを投入して実施した調査で、空間放射線量が毎時六五〇シーベルトと推定された。一月下旬の前回調査の推計五三〇シーベルトを上回る過去最高値。政府内では前回調査を疑問視する意見が少なくなかった。画像の解析によるもので、線量計で測定しておらず、大きな誤差がある可能性があるためだ。また圧力容器の真下付近の線量が最も高くなるとみられるが、二〇シーベルトとされた。信頼性が揺らいでいるとして、数値の公表に慎重な意見もあった。しかし、今回の調査でも高い線量が推計されたことで、誤差を考慮しても格納容器内が数百シーベルトという高線量であることはほぼ確実となった。堆積物の除去作業は九日午前に始まり、約二時間後、ロボットに搭載したカメラの映像が暗くなる不具合が発生して中断した。東電は「カメラは一〇〇〇シーベルトに耐えられるが二時間で壊れた。五〇〇~六〇〇シーベルトはおおむね正しいと思う」としている。

*5-6:http://www.tokyo-np.co.jp/article/feature/nucerror/condition/list/CK2017021802000147.html (東京新聞 2017年2月18日) 【福島第一原発の現状】自走ロボ調査は失敗
 東京電力は福島第一原発2号機の原子炉格納容器内に、サソリ型の自走ロボットを投入したが、圧力容器下の足場にたどり着けなかった。途中、レール上の堆積物で動けなくなった。回収も断念して内部に放置。調査は失敗に終わった。一月下旬からの予備調査では、溶融した核燃料(デブリ)の熱で溶けたとみられる穴が圧力容器下の鉄製の足場で見つかった。格納容器内で最大毎時六五〇シーベルト(推定)を計測。ロボットが圧力容器下まで行ければ、デブリの状況をもっと詳しく確認できる可能性があった。デブリを取り出すためには、まだまだ情報が不足している。今回のロボット調査が失敗したことで、東電は新たなロボット開発など調査方法の練り直しを迫られる。


PS(2017年3月12日追加):*6のように、九電が玄海町と唐津市鎮西町・肥前町・呼子町を全戸訪問して“丁寧な”コミュニケーションをしたそうだが、いつもの紋切り型の説明にすぎないと思われる。何故なら、「丁寧な」とは、言葉が丁重でお辞儀が深いことを意味するだけで、内容が変わるわけではないからだ。また、「肯定的意見が約7割」というのは、わざわざ訪ねてきた九電職員の前で否定的な意見は言いにくく、もし否定的な意見を言えば、「停電してもいいのか」「ここの家の電気を止めたい」などと脅迫されるからであり、この全戸訪問は再稼働の説明と原発再稼働を推進する与党議員の選挙運動を兼ねたものにすぎないだろう。しかし、鎮西町や肥前町には「近所の娘さんが白血病になった」という話や、呼子には「海藻が少くなった」などの実体験があるのだ。

*6:http://qbiz.jp/article/105387/1/ (西日本新聞 2017年3月12日) 九電が全戸訪問、58%で面会 再稼働へ玄海町や唐津市
 九州電力は10日、佐賀県玄海町の玄海原発再稼働を巡り、同町と一部が原発5キロ圏に入る同県唐津市の鎮西町、肥前町、呼子町の全戸を2月に訪問し、約58%に当たる4347戸で住民に面会して安全対策を説明したと発表した。全戸訪問は玄海町では2013年以来約3年半ぶり。唐津市では初めて。玄海町は1569戸のうち約63%の991戸で面会、唐津市では5905戸のうち約57%の3356戸で面会できたという。住民からは約2300件の意見が寄せられ、再稼働、原発の必要性、安全性に関する意見が約1300件。肯定的意見が約7割、慎重な意見と反対意見が約2割、賛否が判別しにくい意見が約1割だったという。避難に関しては約300件あり、約6割が不安を訴える内容だった。九電は「今後は面会できていない世帯を数カ月で訪問し、丁寧なコミュニケーション活動を続けたい」としている。


PS(2017年3月14日追加):西日本新聞が*7の記事を掲載しているが、佐賀県の第三者委で意見表明した26人のうち女性は6人で23%、男性は20人で77%であり、女性は1/3に満たない。そして、原発再稼働について、女性は反対4人・容認2人、男性は賛成9人・容認5人・反対6人と、食品の安全性や環境汚染に敏感な女性の方が反対が多いのである。
 その食品の生産者である農業者は、4人のうち伊万里農協の岩永組合長が明確に再稼働反対を表明し、唐津農協の堤組合長は反対しているものの最大の心配事は原発事故ではなく風評被害で、佐賀県農協の金原組合長は再稼働に賛成しており、食品製造者として情けない。これなら、原発のないオーストラリア産牛肉の方が、安い上に脂肪が少なく、人工の放射性物質を含まないため、安全でよいと思う。また、漁業者のうち男性である佐賀県有明海漁協の徳永組合長は再稼働容認で、女性である佐賀県漁協女性部の西村連合会長は言いにくそうに再稼働に反対している。また、佐賀県森林組合連合会の福島会長は纏めるのが難しかったとしながら容認しているが、農林漁業は太陽光・風力・バイオマスなどの自然再生可能エネルギーによる発電機器を設置できる場所が多く、自らが発電者になり得るので、流されることなく、自然再生可能エネルギーで発電するための補助を求めた方が有益だと考える。
 なお、佐賀県中小企業団体中央会の内田会長の「安全性が確保されたら再稼働もやむを得ない」「原発以外に石油、天然ガスのほか、風力・太陽光といった再生エネルギーが考えられるが、生産コストが割高で、中小企業の経営の圧迫に繋がる」等というのは、メディアで宣伝されている自然再生可能エネルギー高コスト論そのままだが、すべての専門家が「原発に100%の安全はない」としている上、私がこのブログの「原発」「資源・エネルギー」「環境」の項目で証拠をつけて述べてきたとおり、世界の自然再生可能エネルギーのコストは原発より安くなっている。

*7:http://qbiz.jp/article/105484/1/ (西日本新聞 2017年3月14日) 賛否両論さまざま 玄海原発再稼働 第三者委
 九州電力玄海原発(佐賀県玄海町)の再稼働について有識者らの意見を聞く県の「第三者委員会」(会長・副島良彦副知事)第3回会合では13日、委員から賛否さまざまな意見が出た。県は委員会としての結論は求めず、山口祥義知事が再稼働に同意するかどうかの判断に役立てるとしているが、委員会を今回で終了させることに異論も相次いだ。県は委員会の中に原子力や地震分野の学識者7人による専門部会を設けており、今月中にも最終会合を開いて報告書をまとめる予定。13日の会合の主な意見は次の通り。
①堤武彦・唐津農協組合長 国が示す新しい対策は、それぞれの分野で格段に安全対策が強化され評価している。ただ、最大の心配事である風評被害についての新たな対策強化は聞いていない。このような中では再稼働に賛成とは言い難い。
②岩永康則・伊万里市農協組合長 原則は「第二の福島をつくらない」ということ。東北、近畿、九州でも原発事故が起きたら「日本の農産物は食べられない」と世界で議論される。原発をゼロにして国民が負担を強いられるとしても、納得はできると思う。
③家永美子・JA県女性組織協議会長 佐賀は農業県で、一度事故が起きると1次産業は壊滅的被害を受ける。再稼働についての説明は、資源エネルギー庁だけでなく環境省や国土交通省、農林水産省からもあるべきだった。農業団体としてはもう少し考えてもらいたい。
④徳永重昭・県有明海漁協組合長 ノリ養殖は冷凍網や加工などあらゆる面で電力が必要。原発事故が起きてから化石燃料に頼りすぎ、温暖化が加速する傾向がある。将来的には原発廃止の方向に進むべきだと思うが、再生エネルギーで電力に余裕が出るまでは頼らざるをえない。
⑤西村陽子・県漁協女性部連合会長 福島原発事故の現地視察で見た光景が今も鮮明に浮かぶ。佐賀県の主幹産業はノリ。熊本でも地震があった。佐賀でないとは言えない。再稼働した場合、地震がないか心配だ。専門部会委員との話し合いの場も設けてほしい。
⑥福島光洋・県森林組合連合会長 組合で統一した意見をまとめるのは難しかった。将来は、原発や化石燃料よりも再生エネルギーにシフトしてほしい。原発は安全の上に安全を重ねて、再稼働するよう努力してもらいたい。
⑦内田健・県中小企業団体中央会長 安全性が確保されたら再稼働もやむを得ないと考えている。原発以外に石油、天然ガスのほか、風力・太陽光といった再生エネルギーが考えられるが、生産コストが割高で、中小企業の経営の圧迫につながる。
⑧青柳直・連合佐賀会長 現場を抱える九電労組があり、賛成も反対もある。企業の生産活動には安定したエネルギー供給が欠かせない。単価が上がれば企業に影響を与える。新規制基準をクリアし、地元同意が得られたら再稼働やむなしと判断している。
⑨松永宣子・県老人福祉施設協議会長 会員の中に賛否はあるが、容認が多い。原発5キロ圏内の施設長から話を聞くと、玄海原発は安全性も配慮され、テロなどがない限り事故は起きない、と言っているので信じたいが、入所者の安全を考えて避難計画を立てている。
⑩岩本諭・佐賀消費者フォーラム理事長 県は、原発から30キロ圏という距離にこだわらず、安全確保のために努力する姿勢を示してほしい。化石燃料を使うから電気料金を値上げしたのなら、再稼働したら料金を下げる必要がある。県は九電と向き合う際に把握しておいてほしい。
⑪柳瀬映二・県平和運動センター事務局長 いち早く原発をやめ、子どもが安心でき、豊かな自然を残し続けることを考えなければいけない。再稼働と避難計画は車の両輪だが、避難計画の説明は不十分なままだ。電気は足りている。県は再稼働しない判断をしてほしい。
⑫飯盛康登・県商工会連合会長 新規制基準に適合していると判断したのであれば、玄海原発の再稼働をお願いしたい。小規模事業者は経営が圧迫され、大変であると分かっていただきたい。エネルギー政策は、国が中長期的な政策を示してほしい。
⑬池田秀夫・県医師会長 災害発生時の医療体制を最優先に考えてほしい。住民への安定ヨウ素剤事前配布はもちろん、被災時の情報の正確かつ迅速な開示、入院・在宅患者の搬送、避難患者の受け入れなどの態勢づくりが再稼働の前提条件だ。
⑭寺尾隆治・県歯科医師会長 自分たちは専門家ではないが、専門部会のメンバーが十分に審議したと思う。安全面について最善の注意を払って頂けるならば、原発再稼働に反対するものではない。
⑮佛坂浩・県薬剤師会長 事故時の健康被害防止や避難時の医療充実のため安定ヨウ素剤の事前配布と講習、適切な服用方法の周知徹底をしてほしい。安全確保が担保されれば再稼働に反対しない。ただし、原発依存度を低減させ代替エネルギー施策を講じてほしい。
⑯三根哲子・県看護協会長 看護職は原発事故の時、被ばく者に最初に対応する職業の一つで、必然的に被ばく者になる。国は環境問題改善(温暖化防止対策)のためであっても、原発再稼働を国民に強いてはいけない。県は県民の命と安全な暮らしを守るため再稼働を認めない判断が必要。
⑰北野修・県労働組合総連合議長 原発は100%安全と言えない。使用済み核燃料は安全保管できず、核燃料サイクルも破綻している。住民説明会でも反対意見しかなかったことを踏まえ、山口知事には原発再稼働反対を表明してもらいたい。
⑱藤岡康彦・県介護老人保健施設協会長 原発をコントロールできない現状では再稼働は反対。それでも玄海原発を再稼働するのであれば避難計画を早急に見直し実効性のあるものにしてほしい。これまでの計画は机上の考えで、介護現場の現状を理解していない。
⑲松尾義幸・県障害者社会参加推進協議会長 再稼働について、もう(手続きが)進んでおり、いろいろ申し上げることはない。30キロ圏内の避難計画について再度の配慮をお願いしたい。
⑳山田浩史・県連合青年団事務局長 分かりやすい言葉で県の方向性を示してほしい。国の意向は無視しても構わない。県は委員会を(今後も)やるべきだ。(再稼働を)決めるのは誰か分からないが、決めた人が責任を持つべきだ。
【欠席した9人のうち、次の6人は書面で意見陳述した。3人は後日提出する】
①金原寿秀・県農協組合長 代替エネルギーが確保できないうちに原発を止めれば電気代も上がり産業や生活に大きな影響が出る。廃炉には多額の費用が掛かり、それを捻出するためにも、今ある原発は高い安全性が確認できれば動かしていくべきだ。
②井田出海・県商工会議所連合会長 福島原発事故の反省を踏まえ、厳格な規制基準が設けられ、行政も電力会社も緊張感を持っているので、事故時も適切な対応がなされると思う。日本の経済力を維持し、生活水準を落とさないために原発は必要だ。
③枝吉真喜子・佐賀商工会議所女性会長 住民説明会の参加者が少なかったのは県の姿勢に期待が持てず、形だけのスケジュールを消化していると住民が思っているからではないか。山口知事は再稼働容認方針だが、少なくとも30キロ圏内の住民に丁寧な説明をする責任がある。
④村岡安広・佐賀経済同友会代表幹事 県内産業界のほとんどの人が、早期の再稼働をお願いしたいということであると理解している。私も同じように思っている。
⑤三苫紀美子・県地域婦人連絡協議会長 安全が保証されない限り再稼働には賛成できない。
⑥工藤和彦・原子力安全専門部会長 原発についての個人的な見解としては「100%の安全はない」との意識を常に持って、安全性向上へ不断に取り組んでいくことが必要だと考える。


PS(2017年3月14日追加):*8の関西弁の万博資料は、関西人はこの程度だとして関西人を侮辱しており、「万博はゴチャゴチャを解決する場」というのも論理が通らず、これを書いた人の頭がゴチャゴチャなのだと思われる。また、「主なゴチャゴチャは精神疾患だ」というのは、病気はゴチャゴチャな状態だと言うのと同じで、これを書いた人は、知識も見識もなく差別意識のみがあり、レベルが低いことがわかる。経産省がこれでは、エネルギーに関する簡単な問題も必要以上に複雑にして、解決困難になるわけだ。

*8:http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201703/CK2017031402000247.html (東京新聞 2017年3月14日) 「ゴチャゴチャ解決の場 例えば精神疾患」 万博資料、経産相「不適切」
 世耕弘成(せこうひろしげ)経済産業相は十四日の閣議後会見で、経済産業省が二〇二五年国際博覧会(万博)を大阪に誘致するため十三日に公表した報告書案の関西弁版が「不適切だった」と陳謝し撤回した。関西弁版では万博を「人類共通のゴチャゴチャを解決する方法を提言する場」と表現し、「例えばやな、精神疾患」などと記載していた。世耕氏は「関西弁版(の作成)はまったく報告を受けていなかったし、不適切な表現が入っていた」と話した。担当者は、関西人にも親しみを持ってもらいたかったと作成の理由を話しているというが、世耕氏は「関西人の私が見ても、親しみは持てなかった」と語った。資料は十三日に大阪市内で開かれた有識者会合で配られ、経産省のホームページにも掲載された。正式な報告書案は「いのち輝く未来社会のデザイン」として、二五年五月三日から十一月三日に大阪湾沿岸部の人工島「夢洲(ゆめしま)」で開催する内容。万博を「人類共通の課題の解決に向けたアイデアを発信し、異なる知と知が融合することで新たなアイデアが生まれる場」としている。経産省は報告書案に加え、「試作品」として関西弁版も添付した。万博は「ゴチャゴチャを解決する場」で、「主なゴチャゴチャの例」として正式な報告書案になかった「例えばやな、精神疾患」などを追加。冒頭に「こんな言い方せーへんとか、細かいこと言わんといてな。とにかく大目にみてくれると助かるわ」と書いていた。


PS(2017年3月15日追加):*9のように、1kg当たり5,000~8,000ベクレル以下の膨大な量の除染土を、日本全国の公共工事で再利用するのが既定路線のようだが、数世帯が放射線量の高い地域にある家に帰る意欲を持つために放射性廃棄物を日本全国にばら撒くのではなく、それらの人々に補償して移住を進めるのが筋だ。何故なら、フクイチ事故以前は、100ベクレル以上の放射性廃棄物は、再利用などせずにドラム缶で厳重に保管してきたのであり、放射性廃棄物は閉じ込めるのが原則であって、ばら撒くのは論外だからだ。
 フクイチ事故後は大量の放射性廃棄物が出たが、それを日本全国にばら撒けば厳重に管理できるわけがないため、一か所に集めて厳重に管理する必要がある(★)。その一か所は、5,000~8,000ベクレル以上の土壌になっている帰還困難区域の埋め立てや防潮堤建設、海岸防災林や高速道路工事であり、それでも分量が多いのでコンクリートでしっかりした枠を作って、環境と遮断すべきだ。そうすれば、そのような場所でも、自然再生可能エネルギーによる発電地帯や自然公園にはできる。
 なお、日本では、既に放射性廃棄物を焼却してセメントの材料などにしているが、これでは新しいマンションや新築の家を安心して購入することはできない。

★大量の放射性廃棄物を日本全国にばら撒けば、①全国で心疾患や癌が増えて平均寿命が短くなり、年金財政にはプラスである ②全国で増える心疾患や癌の増加原因をフクイチ事故と特定できなくなり、「日本人の食習慣が変わったから」「人口が高齢化したから」など他の理由をつけることが可能になる 等の効果があるため、放射性廃棄物のばら撒きは、これらが目的の悪魔の政策ではないか?

*9:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/413609 (佐賀新聞 2017年3月14日) 除染土、再利用実証試験へ 福島原発事故で環境省、住民理解、ハードル高く
 東京電力福島第1原発事故に伴う福島県内の除染で生じた土を全国の公共工事で再利用するため、環境省は4月にも除染土で盛り土を作って放射線量を測る実証試験を同県南相馬市で本格的に始める。安全性を確認した上で再利用につなげたい考えだが、再利用先の周辺住民の理解が得られるかどうかは見通せない。環境省は昨年6月、管理責任が明確で、長期間掘り返されることがない道路などの公共工事に限定し、放射性セシウム濃度が基準以下となった除染土を再利用する方針を決定。工事中の作業員や周辺住民の被ばく線量が年間1ミリシーベルト以下となるよう、1キログラム当たり5千~8千ベクレル以下に設定した。さらに土やコンクリートで覆い工事終了後の住民の被ばく線量を年間0・01ミリシーベルト以下に抑える。昨年7月に避難指示が解除された同市小高区の「東部仮置き場」。柵で囲まれた広大な敷地に除染土が詰まった黒い袋が大量に積み重なっていた。その一角にある盛り土の予定地付近には重機が並び、「再生資材化プラント」では放射性物質の飛散を防ぐテントの建設作業が進んでいる。実証試験は、仮置き場に保管された平均値で1キログラム当たり2千ベクレル程度と推計される除染土約千立方メートルを使う。分別して品質調整した除染土を遮蔽(しゃへい)のため別の土で覆って盛り土を作る。放射線量や浸出水の放射性物質濃度を測り、風雨の影響がどの程度あるか調べる。「目の前の仮置き場にいつまでも黒い袋があるから、家に帰る意欲がそがれる。袋が減るなら再利用も仕方ない」。避難先から東部仮置き場近くの自宅に戻っていた男性(68)は悩ましげだ。福島県内の除染廃棄物の量は、最大で東京ドーム18杯分に当たる2200万立方メートルに上ると推計される。中間貯蔵施設(同県双葉町、大熊町)で保管後、県外で最終処分する予定だが、全てを処理するのは難しいため、再利用で量を減らすのが環境省の狙いだ。南相馬市の担当者は「大量の土を中間貯蔵施設へ輸送するだけでは、仮置き場の解消に長い年月がかかる」と説明。市は仮置き場の早期解消のため、比較的濃度の低い除染土について、市内の海岸防災林や高速道路の工事での再利用の可能性を探っている。ただ、再利用先の住民が放射性物質への不安から、受け入れに反発することも予想される。男性も「除染土が流出したり、飛散したりしないかが心配だ。責任を持って管理してもらわないといけない」と懸念する。福島県外では、住民理解のハードルがさらに上がるのは必至。これまでの環境省の有識者検討会では、専門家から「県外での再利用は簡単ではない」「技術開発を進めても、実際の再利用先がなければ意味がない」との意見も上がった。環境省は実証試験前に仮置き場周辺の住民への説明会を開いており、現場の見学会も開く予定。担当者は「実証試験で安全に管理する方法を検証し、住民に理解してもらえるようにしたい」と話している。


PS(2017年3月16日追加):*10-1のように、原発事故の際には玄海町と同じリスクに晒され、避難に協力もしなければならない周辺自治体に原発再稼働に関する同意権がなく、“原発の地元”は玄海町と佐賀県だけというのはフクイチ事故の教訓を考慮していないため、周辺自治体から不満が出るのは当然だ。なお、参加者の「100%安全と言わないのに、なぜ再稼働をするのか。もっと環境に優しいエネルギーがあるはずだ」「事故が起きたときの生活の補償はどうなっているのか」などの質問はもっともだ。そして、この付近には潮流発電や風力発電の適地が多く、*10-2のように、鷹島には海岸の入江を締め切った海中ダムがあり、低層の貯留水を海へ放流しているので、その放流口に発電機をとりつければ、給水だけでなく発電もできそうだ。

   
 玄海原発30km圏内     玄海原発        鷹島での説明会    鷹島の海中ダム     
               2017.3.16西日本新聞

*10-1:http://qbiz.jp/article/105657/1/ (西日本新聞 2017年3月16日) 玄海原発「再稼働ならデモも」 長崎・鷹島、「同意」対象外に不満 県外説明会
 九州電力玄海原発(佐賀県玄海町)の再稼働を巡り、長崎県は15日夜、原発から最短8・3キロの離島、同県松浦市鷹島町で国と九電による住民説明会を開いた。同原発から30キロ圏内の自治体のうち、佐賀県以外で説明会が開かれたのは初めて。安全性への不安を訴える声が相次いだほか、事実上、立地自治体の玄海町と佐賀県に限られる「地元同意」について不満の声が出た。説明会には島民を中心に約80人が参加。国や九電の担当者は審査概要や安全対策などを説明した。質問に立った男性は「立地する町と県の同意があれば再稼働するという話だ。再稼働を前提にした説明会ではないか。玄海町に近い私たちの声は届かないのか」と怒りを込めた。新松浦漁協の志水正司組合長(69)は「再稼働には漁業者の9割が反対している。漁民の声を無視して再稼働するのなら海上デモも辞さない」と声を荒らげた。説明会は予定の2時間を超えた。終了後、友広郁洋市長は記者団に「周辺自治体には説明のみではなく、再稼働の了解を得る制度をつくるよう、国に要請していきたい」と語った。長崎県内では21日まで、30キロ圏内の佐世保市や平戸市、壱岐市でも説明会が開かれる。玄海原発をめぐっては、玄海町の岸本英雄町長が7日に「同意」を表明。焦点は佐賀県の山口祥義知事の判断となっている。
●避難路への不安消えず 陸路は佐賀に向かう橋のみ
 佐賀県玄海町の九州電力玄海原発の再稼働に向け、長崎県松浦市鷹島町で15日に開かれた住民説明会。再稼働の是非を判断する「地元同意」がないことへの批判のほかに、原発事故が起きた場合の避難ルートのぜい弱さを指摘する意見も出た。難解な専門用語が飛び交う説明会に参加者からは戸惑う声もあった。会場となった鷹島スポーツ・文化交流センターには市民約80人が集まった。鷹島は、原発から最も近い場所で約8キロしか離れていない。島全体が30キロ圏内に入り、原発事故時の避難は島外への脱出が必要となる。だが、陸路の避難は原発のある佐賀県側に、いったん入る形の「鷹島肥前大橋」を通過するルートしかない。質疑に立った参加者からは「(避難ルートが1本だけでは)橋が渋滞してしまう。どのような対応をするのか」との意見が出た。国の担当者は「佐賀、長崎両県と話し合っていく」と述べるにとどめた。その後、「風向きによっては鷹島に放射性物質が飛んでくることもあり得る。そうなった場合に、島民が避難できると考えているのか」と国などに訴える参加者もいた。立地自治体の玄海町と佐賀県のみの「地元同意」についても、松浦市にも同意権を与えるように求める声が上がった。だが、九電側からは容認する答弁はなかった。参加者の1人は「100%安全と言わないのに、なぜ再稼働をするのか。もっと環境に優しいエネルギーがあるはずだ」と疑問を呈していた。また、女性の参加者は「事故が起きたときの生活の補償はどうなっているのか」など、事故後の生活を懸念する声もあった。主催する県では、16日以降も県北4会場で説明会を開く。ただ、その後に再度、説明会を開く予定はないという。

*10-2:http://www.wec.or.jp/library/100selection/content/takashimadam.html 鷹島海中ダム、長崎県鷹島町
鷹島は、九州の西北端・玄界灘に面した南北13kmの島です。本地区は、本土に比べて降雨が少なく、河川もわずかで、農民は、安土・桃山時代から「六本幟」と呼ぶ雨乞いを行うなど、常に水不足と闘う生活を強いられてきました。その様な状況を打開すべくダムの建設が、昭和60年に計画され平成6年に完成しました。鷹島海中ダムの特徴は、ダムの建設地に陸で適地がなかったことから海岸の入江を締め切り、ダム湖内の海水塩分を沈殿させ、流入水をためて内水面を海面より高くして高低差と比重差を利用し、堤体下部に設けた除塩暗渠から、塩分の沈殿作用が進んだ低層の貯留水を海へ放流して淡水化を図るという方式で、日本初の海中ダムです。有効貯水量46万トンの水は、島内ほぼ全域の農地に給水されています。また、堤体背面に「六本幟」等が描かれ、島の玄関口・日比港を出入りするフェリーからその個性のある景観を見ることができます。ダム湖周辺は、展望所をはじめ周辺は遊歩道や公園も整備され、春先には芝桜が咲き、公園内のダム湖へ注ぐ「せせらぎ水路」はメダカやアメンボなどの生息地になっています。初夏はホタルが群舞する幻想的な姿を見せるなど、地域住民の憩いの場となっています。鷹島海中ダム湖では毎年1回、住民参加によりダム湖周辺の清掃作業を行い、ダム本来の機能を保つとともに、景観等を保持しています。


PS(2017年3月17日追加):*11のように、福島県など地元自治体が強く要請してきた4基全ての廃炉は、事故から6年経っても「まだ道筋が見えない」などと呆れたことを言わずに速やかに行うべきであり、この判断は、6年経たずとも事故直後に出た筈だ。にもかかわらず、このように重要性の順番が異なり、徹底した原因究明やそれに基づく意思決定がなされない態度が、日本の電力会社の原発運転能力のなさと経産省の政策の不誠実を示唆している。なお、フクイチの廃炉は、核燃料(デブリ)を迅速に取りだすことができないのなら、チェルノブイリのように直ちに石棺にするのが、放射性物質をむやみに散乱させず、最も安価で最短時間の解決をして被害を最小にする方法で、事故直後からわかっていた筈だ。

   
            2017.3.17毎日新聞             牛白血病の増加 周産期死亡率の推移

*11:http://mainichi.jp/articles/20170317/k00/00m/020/140000c (毎日新聞 2017年3月17日) 県民は「全基」を要請 
 東京電力ホールディングス(HD)は福島第2原発(福島県)の1号機について廃炉とする方針を固めたが、福島県など地元自治体が強く要請してきた4基全ての廃炉の道筋はいまだ見えない。一方、東電は福島第1原発事故の処理費用捻出のために柏崎刈羽原発(新潟県)の再稼働は進める方針だが、地元の反対は根強い。「県民の強い思いは県内原発の全基廃炉だ」。福島県の内堀雅雄知事は今年1月、東電の広瀬直己社長との会談で、福島第2原発の廃炉を迫った。一方、広瀬社長はこれまで「福島の思いは理解しているつもりだが、会社としては大変大きな判断になる」と明確な方針を示してこなかった。東電は福島第1原発の廃炉や賠償などの対応に追われており、これらの処理費用を捻出するための経営再建も喫緊の課題だ。福島第2の廃炉に手をつければ、さらに人手や費用が必要になる。東電内には「福島第1原発の対応が最優先で、第2原発の廃炉は待ってほしい」(幹部)との思いが強かった。だが、いつまでも地元の要請を無視し続けるわけにはいかず、福島第1原発の処理費用の工面も一定のめどがついたことから、まずは1号機に限った形で第2原発の廃炉を打ち出すことにした。政府内には「柏崎刈羽原発の再稼働に理解を得るためにも、福島第2の方針を明確にする必要がある」(政府関係者)との思惑もある。残る3基についても東電は廃炉の方向で検討を進めるが、費用面などで課題は残り、廃炉を決めても長い期間がかかることも予想される。また、1基で年間500億円の収益改善効果が見込まれる柏崎刈羽原発の再稼働についても新潟県知事は慎重な姿勢を示しており、東電の原発事業はなお課題が山積する状態だ。


PS(2017年3月20日追加):*12に、「東芝は、①原発が停止し、国内で火力発電用の燃料が必要とされたため、原油と連動しない米国産LNGを2019年から20年間にわたり年220万トン購入し、日本の電力事業者などに発電用として供給することにした ②東芝の思惑に反して原油とLNGの価格が下落し、米国産は割高となって競争力が低下したため、今後20年間で最大計1兆円近くの損失が生じかねない」と書かれている。しかし、エネルギー改革の時代に、20年間の長期でLNG調達契約をするなど、東芝のエネルギー部門は先見の明がなく、その杜撰な経営が他部門の足を引っ張っていることがわかる。

*12:http://qbiz.jp/article/105869/1/ (西日本新聞 2017年3月18日) 東芝、LNG事業で損失1兆円も 割高で販売先なく
 経営再建中の東芝は、米原発のほか液化天然ガス(LNG)事業でも巨額損失の不安を抱える。国際相場を見誤り、米企業から割高なLNGを長期にわたって調達する事態となったためだ。販売先を見つけられない場合、今後20年間で最大計1兆円近くの損失が生じかねない。全体の約半分の量について複数の顧客と基本合意書を締結したとしているが、条件面の調整は終わっておらず実際の販売契約には至っていない。既に2020年3月期決算で100億円規模の損失を見込んでいるようだ。東芝は13年に米フリーポート社(テキサス州)と、米国産天然ガスから加工したLNGを調達する契約を結んだ。東京電力福島第1原発事故で原発が停止し、国内で火力発電用の燃料が必要とされたためだ。当時は原油価格の高騰に連れてLNGも値上がりしていたため、原油と連動しない米国産LNGを19年から20年間にわたって年220万トン購入し、日本の電力事業者などに発電用として供給することにした。ところが東芝の思惑に反して原油とLNGの価格は下落し、米国産は割高となって競争力が低下した。東京電力ホールディングス子会社と中部電力が共同出資するJERA(ジェラ)から販売やマーケティング活動で支援を受けているが、顧客探しは難航している。19年9月に供給を始めるためには、18年中に販売先を決めて準備をする必要がある。LNGの売れ行きにかかわらず、フリーポート社に対し液化にかかる費用は支払わなければならないため、想定より安く売りさばいたり、LNG化を見送ったりすれば損失処理が必要となる。


PS(2017年4月6日追加):*13-1に書かれているように、震災復興の司令塔である今村復興相が記者会見で、「①(自主避難者は)本人の自己責任」「②裁判でも何でもやればよい」としたことのうち、①は、*13-2のように、放射線量が年間20mSV以下なら避難指示を解除するという日本基準が、チェルノブイリ法の強制移住地域5mSV以上と比較してあまりに高いことがそもそもの原因だ。また、②は、*13-3のように、各地で提訴された東電・国に賠償を求める原発被災者訴訟で、2017年3月には前橋地裁が国に賠償を命じたが、裁判をするには時間と労力がかかり、最高裁まで行くと結果が国寄りになるため、苦労が絶えないわけである。さらに、今村復興相は、TV番組で「③ふるさとを捨てるのは簡単だが、戻って頑張っていく気持ちをもって欲しい」などとも述べておられるが、これは、自民党憲法改正草案のように「日本国」を主に考えているか、日本国憲法のように「日本国民」を主に考えているかの違いだ。つまり、日本もチェルノブイリ法と同程度の権利を原発被災者に与えるべきなのである。
 なお、この放射線被害は、(日本政府は認めたくないようだが)風評被害のような実態がないのに評判だけで起こる被害ではなく、また不安や心の傷といった精神的な問題でもなく、心疾患や癌などの命に関わる病気になるという健康被害をもたらすものである。そのため、チェルノブイリ原発事故で強制移住地域となった年間5mSV以上の地域は避難・帰還のどちらを選んでも補償されるべきだ。それには、原発被災者の土地・家屋を買い取って移住させる方法もあり、移住を選択可能にして補償すべきなのである。そのようにしても、旧ふるさととの繋がりは、県人会や「南相馬出身者の集い(もしくは情報交換会)」などを、知事や市長・町長などを招いて頻繁に開くことによって可能だ。

   

(チェルノブイリ法は、年間被曝量1mSV超の可能性のある地域を汚染地域と定義している)
     《http://www.windfarm.co.jp/blog/blog_kaze/post-13030 参照》
 
*13-1:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12878633.html (朝日新聞社説 2017年4月6日) 今村復興相 避難への無理解に驚く
 震災復興の司令塔なのに、原発事故の避難者たちが置かれた複雑な状況を分かっていないのではないか。今村雅弘復興相が記者会見で、「本人の責任でしょう」「裁判でも何でもやればいい」と話した。福島第一原発の事故後、避難指示の対象区域以外から逃げた自主避難者をめぐる発言である。国の支援のあり方を記者から重ねて問われるうちに今村氏は激高し、会見を打ち切った。後で感情的な態度は謝罪したものの、発言については「客観的に言ったつもりだ」と釈明し、撤回しなかった。避難指示を受けた人と自主避難者との違いを指摘したかったようだが、内容には聞き流せない問題がある。自主避難者の多くは、避難指示に関して国が定めた放射線量の基準に不安が拭えず、悩んだ末に地元を離れる決断をした。全国で2万数千人にのぼり、家族がばらばらになった人は多く、生活に困窮する人もいる。東京電力からの損害賠償や行政による住宅提供も、避難指示を受けた人に比べると手薄だ。自身で決めたこととはいえ、自主避難者も事故の被害者だ。それを自己責任で片付けるのは、国策として原発を推進してきた政府の責任への認識に欠けると言わざるをえない。裁判をすればいいという発言に至っては、開き直りにしか聞こえない。東電や国に賠償などを求めて提訴した原発被災者は各地で1万人を超える。3月には前橋地裁が国に賠償を命じたが、裁判には手間ひまがかかる。その負担を避難者に背負えと言うのだろうか。今村氏はこれまでも、被災者との意識のずれを指摘されることがあった。今年1月、福島市での会合では、最近の避難解除でようやく本格化しつつある福島の復興について「マラソンにたとえると30キロ地点」と発言。3月にはテレビ番組で「ふるさとを捨てるというのは簡単だが、戻って頑張っていく気持ちをもってほしい」と述べた。避難者で地元に戻る人はまだ少数派で、生活基盤や放射能への不安などから当面戻らないという人は少なくない。ふるさとから離れていても、つながりは保ちたいという声も根強い。今村氏の発言は、さまざまな事情を抱える避難者の心を傷つけ、切り捨てと受け取られても仕方ない。帰還の促進策ばかりでなく、被災者の多様な声に耳を傾け、必要な手立てをとるという国の役割を自覚すべきだ。

*13-2:http://www.tokyo-np.co.jp/article/feature/tohokujisin/fukushima_report/list/CK2015070702000163.html (東京新聞 2015年7月7日) 【ふくしま便り】20ミリシーベルト基準を許さない 避難指定解除 南相馬住民の決意
 東京電力福島第一原発の事故で放射線量が局所的に高いホットスポットとなった特定避難勧奨地点の指定を解除したのは違法として、福島県南相馬市の住民約五百三十人が、国に解除の取り消しと一人十万円の損害賠償を求めて東京地裁に提訴したのは、今年四月十七日のことだった。原告団の一人で「南相馬・避難勧奨地域の会」事務局長の小沢洋一さん(59)は、訴訟を「二〇ミリシーベルト基準撤回訴訟」とも呼ぶ。「人の命が何より大切とはっきりさせる訴訟だ」とも。小沢さんと現地を歩いた。特定避難勧奨地点に指定された百五十二世帯は南相馬市の西側半分、阿武隈山地に連なる農村部に点在している。福島第一原発から二十五キロ前後。線量の高さを考えれば、避難指示が出ても不思議はなかった。行政区分を基にした単純な線引きで区域外とされたにすぎない。だが、あまりにも線量が高いことがわかり、国は追加措置をとる。地域の中で、年間積算線量が二〇ミリシーベルトを超えるとみられる地点で、小さな子供や妊産婦などがいる世帯を選んで避難を促す対応をとった。「露骨な分断工作だった」と小沢さんは話す。「同じ小学校に通う子供で指定を受けた家の子とそうでない家の子がいる。指定を受ければ、慰謝料が払われた上、医療費、税金、電気代、ガス代、NHKの受信料までただになる。指定外の家の子も避難はしたが、経済的にも大変。誰だって理不尽だと思うでしょう」。福島県には伊達市や川内村の一部にも特定避難勧奨地点があったが、二〇一二年十二月に解除された。そして南相馬市についても、政府は昨年十二月に解除した。除染により線量が年間二〇ミリシーベルトを下回ったのが解除の理由であると説明された。
●畑の端で、毎時17.7マイクロシーベルトと高い値が計測された
 「分断」を乗り越えて住民は反対で団結した。地域の行政区長のひとりで原告団長でもある菅野(かんの)秀一さん(74)は「年間二〇ミリシーベルトを基準にするのもおかしいと思うが、地域の線量が、二〇ミリシーベルトを下回っているとは到底思えない。それでも特定避難勧奨地点がなくなれば、ただの地域になる。何ごともなかったかのように東電は賠償を打ち切るでしょう」と話す。たしかに地域の線量は驚くほど高い。小沢さんと一緒に実際に線量計をもって計測して歩いたところ、田畑の際などで空間線量が毎時一〇マイクロシーベルトを超えるような場所が随所にあった。政府は年間二〇ミリシーベルトの積算線量に達する目安を毎時三・八マイクロシーベルトとしているが、楽に超えてしまう。南相馬・避難勧奨地域の会の末永伊津夫会長は「東京五輪に間に合わせたいのか、政府は避難区域の解除に躍起になっている。その基準とされるのが年間二〇ミリシーベルトですが、無理があるのは明らかです。もしもこれが既成事実となったら、将来、世界のどこで原発事故が起きても二〇ミリシーベルトまでは大丈夫となる。こんなむちゃを黙認するわけにはいかないのですよ」と話す。前出の菅野さんは、こうも話した。「解除しても現実に帰ってきた子持ち世帯はない。病院もスーパーも閉鎖。長寿会も少年野球もPTAも崩壊。地域社会がなくなった場所へ帰って来られるわけがない。年寄りばかりになって将来なんかない。先日、近所のおばあさんが池に身を投げた。皆で引き上げたけど助からなかった。ここで、どれほど悲惨なことがおきているか、政府は知っているのか。私らは伝えなくちゃならない」。農民一揆、という言葉が頭に浮かんだ。 

*13-3:http://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-463362.html (琉球新報社説 2017年3月19日) 原発避難者訴訟 国と東電の責任は明白だ
 国と東京電力の責任を認めた判決は極めて妥当な判断だ。福島第1原発事故で福島県から群馬県などに避難した住民ら137人が国と東電に計約15億円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、前橋地裁は「東電は巨大津波を予見しており、事故を防げた」と判断し、東電と安全規制を怠った国の賠償責任を認めた。原告のうち62人に計3855万円の支払いを命じている。判決は東電が2002年ごろには第1原発が津波に襲われる可能性を知り得たと認定した。予見可能だった時期がいつなのかは訴訟の最大争点だった。原告側は「02年~08年の間」と主張し、東電と国は「巨大津波は想定外だった」と真っ向から対立していた。政府の地震調査研究推進本部が02年に「福島県沖を含む太平洋側の日本海溝沿いでマグニチュード(M)8級の津波地震が30年以内に20%程度の確率で発生する」との長期評価を公表していた。しかし東電も経済産業省の旧原子力安全・保安院も過去400年間に福島県沖で大地震が起きていなかったため、長期評価を考慮せず、津波対策を先送りにしてきた。東電は08年、長期評価に基づく試算をしていた。高さ10メートルの第1原発の敷地を大きく超える津波が襲来し、敷地南側では東日本大震災と同規模の最大15・7メートルが押し寄せるとの結果だ。すでに大津波を予見していたのだ。それなのに東電は試算結果を公表せず、何の対策も取らなかった。旧保安院に結果を報告したのは3年後の11年3月7日だ。その4日後に震災が発生し、大津波が押し寄せた。無為無策というほかない。原発事故はタービン建屋に給気口から津波が入り、非常用配電盤の浸水により核燃料の冷却機能が失われたために起きた。長期評価や試算結果を踏まえて、給気口のかさ上げ、配電盤や発電機を高台に設置するなどの対策が取られていれば事故は起きなかった。判決はこうした対応を安全より経済的合理性を優先させたと指摘し「特に非難に値する事実がある」と批判した。事故によって福島県から県内外に避難している人は現在でも約7万7千人に上る。判決で国と東電の責任が明白になった。原発再稼働に突き進む国と電力会社は判決を真摯に受け止め、脱原発へと政策転換を図るべきだ。二度と同じ過ちを繰り返してはいけない。


PS(2017年4月8日追加):*14の「①ウェスチングハウスを巡る調査で、経営陣が2016年3月期にも巨額損失の可能性を認識していたのではないかとみて、監査法人が詳しく調べるよう求めていた」「②東芝は事前に損失を認識していた証拠はない」というのは、②は現時点で証拠がないからといって事実がなかったとは言えないため、①は監査法人としては当然だろう。しかし、現在行っている決算は第三四半期のものであるため、決算書にその旨を付記するなり、限定意見を出すなりして決算発表し、一年決算の第四四半期有価証券報告書までにすべてをクリアにしたらどうかと考える。なお、私はスペインで報道を見ていたのだが、2017年3月29日のウェスチングハウスの破産申請日は英国のEU離脱通告日と重なったため、欧州での報道は英国のEU離脱が中心で東芝の取り上げられ方は小さく、公表日の選び方は正解だったと思われる。また、スペインの工業製品のメーカーを見たところ、ホテルの空調は東芝、フロントの担当者が使っていたスマホはソニー、テレビはサムソン、エレベーターはOTISで、タクシーは50%くらいがプリウスだった。さらに、スペインではタクシーの運転手の50%くらいは女性で、帰りのバルセロナからロンドンまでのブリティシュ・エアウェイの機長も女性だったことを付け加えておきたい。

*14:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12882131.html (朝日新聞 2017年4月8日) 東芝決算、なお調整難航 監査法人と溝 11日期限
 東芝の昨年4~12月期決算の発表期限が11日に迫るなか、同社とその監査法人との溝が埋まっていない。監査法人側は、経営破綻(はたん)した米原発子会社ウェスチングハウス(WH)を巡る調査で、WH経営陣が2016年3月期の間にも巨額損失の可能性を認識していたのではないかとみて、詳しく調べるよう求めていた。監査法人による決算の承認はまだ得られていない。問題となっているのは、WHの経営幹部が損失を小さく見せるよう部下に「不適切な圧力」をかけた内部統制の不備だ。監査法人側は、調査の対象期間を15年秋よりも前にさかのぼる必要があると指摘。当時からWH経営陣が損失の可能性を認識していたのかどうかが焦点となっている。東芝はこれまでの調査から、「事前に損失を認識していた証拠はない」(幹部)として、調査そのものを終えた。しかし、監査法人側は、疑いを完全には晴らしていない様子だという。損失を事前に認識していた場合、東芝は16年3月期の決算を修正する必要が生じる。17年3月期末だけでなく、16年3月期末も債務超過となる可能性もある。東京証券取引所では、2期連続の債務超過で上場廃止となる規定がある。しかし、このケースではすぐに適用されるわけではない。18年3月期末までに債務超過が解消されれば、免れる。東芝はこれまで決算発表を2度延期。経営不安をいっそう高める異例の3度目は避けたい考えで、ぎりぎりの調整を続けている。


PS(2017年4月12日追加): *15-1に、東芝の決算について、監査法人は「ウェスチングハウス(WH)の経営幹部が『不適切な圧力』を部下にかけた」ということで「意見不表明」とした。しかし、*15-2のように、「意見不表明」とは、監査証拠の入手が困難で財務諸表に対する意見表明ができないというものであり、内部統制報告書に関する監査報告書の意見不表明は、上場廃止基準に抵触しない。そして、東芝で問題となっているのは、「WHの経営幹部が損失を小さく見せかけるよう部下に『不適切な圧力』をかけた」という内部統制の問題で、東芝は、2017年3月29日にWHの破産申請をしており、WHの破産後は内部統制は問題でなくなり、残余財産のみが問題となる。そして、東芝自体の債務超過や「継続企業」の問題は、他の子会社をいくらで売却できるかにかかっているだろう。

*15-1:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12887149.html(朝日新聞 2017年4月12日) 東芝、信頼欠く決算発表 監査法人「意見不表明」
 東芝は、2度にわたって延期していた2016年4~12月期決算を、国が認めた期限の11日に発表した。ただ、通常の決算につくはずの監査法人の「適正意見」は得られず、代わりに「意見不表明」という信頼性を欠いた異例のものとなった。経営破綻(はたん)した米原発子会社ウェスチングハウス(WH)をめぐる調査で監査法人との溝が埋まらなかった。東芝を担当するPwCあらた監査法人は、原発事業の損失を小さくみせようとして、WHの経営幹部が「不適切な圧力」を部下にかけたことを問題視。損失を経営陣が早くから認識していた可能性も調べていた。だが、詳しい調査の必要性を訴えるPwCに対して、東芝の綱川智社長は11日夕方の記者会見で「これ以上調査を続けても意味がない」と突き放した。PwCは報告書のなかで「調査結果を評価できておらず、財務諸表に修正が必要か否か判断できなかった」とした。「意見不表明」は十分な監査の証拠が手に入らない場合に監査法人が出す見解で、大手上場企業ではきわめて異例だ。綱川社長は「適正意見のめどが立たないことから、これ以上、ステークホルダー(利害関係者)に迷惑をかけられない」と話した。ただ、東芝の信用はさらに傷ついた。過去の不正会計問題で、東京証券取引所は東芝株を「特設注意市場銘柄」に指定し、上場を維持するかどうかを検討中。この件でも審査に入る。多くの課題も待ち受けている。異例の発表で、支援する金融機関の態度には変化が出かねない。体力のない地方銀行で融資を引きあげる動きがすでに出ている。まずは17年3月期の通期決算の発表を、予定する5月にできるかが当面の焦点になりそうだ。東芝の3月末時点の自己資本は6200億円のマイナスとなり、債務超過に陥る。18年3月期末も債務超過となれば上場廃止になる。その解消には、半導体子会社「東芝メモリ」を高値で売ることが不可欠だ。東芝が発表した16年4~12月期決算は、米国の原子力事業関連で7166億円の損失を計上し、純損益は5325億円の赤字(前年同期は4794億円の赤字)。企業としての存続に疑義が生じたことを示す「継続企業の前提に関する注記」を初めて記載した。
■決算に対する監査意見の種類
(1)適正意見
 企業会計の基準に従って、決算が正しいと監査法人が判断した場合
(2)限定付き適正意見
 一部に不適切な事項はあるが、決算全体には、それほど重要性がないと判断した場合
(3)意見不表明
 重要な監査手続きができず、決算が正しいかどうか判断できないとみなされた場合
(4)不適正意見
 不適切な事項が見つかり、決算全体に重大な影響を与えると判断した場合
〈通常は(1)。(3)(4)は東京証券取引所の上場廃止の基準に抵触し、廃止のおそれが出てくる。今回は(3)

*15-2:http://www.hp.jicpa.or.jp/ippan/cpainfo/ke_word/2007/09/post_40.html (日本公認会計士協会) 意見不表明
 監査報告書において監査意見を表明しないこと。監査報告書を提出しないということではなく、監査意見を表明しない旨を記載した報告書を提出する。監査人が「意見不表明」の報告書を提出するのは、財務諸表に対する意見表明ができないほど、会計記録が不十分であったり、監査証拠が入手困難である場合に限られている。この監査報告がなされると、「不適正意見」と同様に「その決算書は信用できない」ということになり、上場会社は上場廃止基準に抵触することになる。「内部統制監査報告書」においては、重要な監査手続きが実施できなかったことにより、内部統制報告書に対する意見表明のための合理的な基礎を得ることが出来なかったときは、意見不表明となる。内部統制報告書の監査報告書の意見不表明は、上場廃止基準には抵触しない。

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2017.3.7 ふるさと納税とその返礼品・使途について (2017.3.9に追加あり)
    
  2015年の     2017.2.20佐賀新聞   戦後の出生率・出生数の推移 2010年都道府県別
ふるさと納税額  ふるさと納税の返礼品と使途                      合計特殊出生率

(図の説明:2015年のふるさと納税における勝者は、新鮮で美味しい農水産物を返礼品にした地域が殆どで、返礼品に対する批判も出ている。しかし、返礼品による産業振興効果も大きく、使途も真面目で、税収が多ければ本来は税収でやるべきことも散見される。保育所や子育て支援制度の整備については、出生率で成果が表れるが、出生率は戦後ずっと低下し続け、2005年の1.26を最低に、その後は政策効果もあって少し上がっている。県別出生率は、いつも東京が最低だ)

(1)ふるさと納税は、所得再分配を妨げる制度ではないこと
 *1-1のような「ふるさと納税は、返礼品より使途で競え」という論調が、最近、しばしば見られる。その根拠として「①返礼品ばかりが注目される」「②2千円の負担で欲しい商品やサービスが手に入るため、見返りがないか乏しい民間団体への寄付が不利になる」「③高所得者ほど限度額が膨らみ、多くの返礼品を得られるため、所得再分配を妨げる」「④本来の目的からはずれ、寄付のあり方や税制を歪める」などとして具体的な上限規制を求めているが、それでは国民の主体性を奪う護送船団方式になる。

 実際には、ふるさと納税は、*1-2のように「使い道でチョイス」することもでき、その中身には「自然保護、NPO・各種団体の支援、農林漁業・水産業・商工業、医療・福祉」などの多くの使途が示されており、寄付時に選択することになっているため、①は事実ではない。また、使途を指定できることは納税者にとっては画期的なことであり、自分が住んでいる町に使途を指定してふるさと納税を行うこともできる。

 また、*1-5のように、ふるさと納税の大手仲介サイトが、寄付額に比べて高額すぎる品や地域振興に繋がりにくい商品は掲載せず、寄付額の半分以上を自治体の手元に残すよう要請するそうで、これらは、本来はそれぞれの自治体が考えるべきことだが、変な返礼品競争は改善されることとなった。

 さらに、②は、ふるさと納税で民間NPOなどへの支援が行われることもある上、ふるさと納税しない人は民間団体に寄付するというわけでもないので根拠にならず、(私が最初に提案してできた)ふるさと納税制度に対する誹謗中傷になっている。その上、③④については、ふるさと納税は、人口が集中している都市に集まる税収を、それらの人材を育てた地域に再配分する手段であるため、「所得分布=税収分布」という状況に対して、まさに税収の再分配を行う機能を果たしているのであり、税の仕組みを知らない人が高額所得者を目の敵にしさえすればよいと考えるのは稚拙な批判である。

(2)「東京の産物に勝ち目がない」というのは、単なる努力不足であること
 東京は、*1-3のように、今でも保育園や学童保育の待機児童が多く、それは、戦後に社会進出した女性が出産適齢期にさしかかった50~60年前からずっと言い続けてきたが、20世紀の殆どの期間で「少数の変わった人たち(★)」として無視され続けてきたのである。そのため、東京は、日本全国から元気で優秀な若者を集めながら出生率が日本一低く、これは現内閣の責任というよりは、「子育てや介護は女性にしわ寄せさえすればよい」と考えてきたこれまでの日本の価値感に問題があったのである。
 (★しかし、そもそも先進的なことをする人は最初は少数であり、一世代か二世代後に一般的になる
   ため、先進的な少数の人をピックアップできなければ先見の明ある政策はできない)

 また、東京などの大都市では、メディアが論点を正確に報道せず、サラリーマンが多くて自ら政治に働きかけることが少ないため、首長や議員を選ぶ際に地方よりも意識が低い場合が多く、主権者である有権者が政治や行政を適切にチェックしなかったのも問題なのだ。そして、少数の人がそれらの問題を指摘しても、大多数の有権者の行動に結びつかなかったもので、問題の未解決は政治のせいだけではない。

 そのような状況であるため、東京こそ使途を指定してふるさと納税を募ればよく、東京は特産品も首都であるゆえの有利性が働いている上、小笠原諸島・八丈島などの離島や山間部もあるため、*1-4のように、「東京の産物は勝ち目がない」などとしているのは、実は本気で工夫していないだけである。
 
 なお、行政も加わって地域の産物を発掘し世に出すことは、ふるさと納税のもう一つの有意義な役割となった。そのため、競争は重要で、工夫している地域を納税者が選んで納税(寄付)できるのは、ふるさと納税の長所だ。従って、メディアは、どんな使途や返礼品があるかを正確に報道することの方が重要で、規制で競争を制限して護送船団方式にすれば、これまでと同じ失敗を繰り返すことになる。

(3)ふるさと納税の活用
1)教育・子育てへの活用
 一方、*2-1のように、ふるさと納税で2016年4月以降に集めた金は、「教育」「子育て支援」に充てられる例が多く、納税(寄付)した人に返礼品を贈ることで、地元特産品の販売が増えるなどの産業振興に効果があったとする回答も多数を占めたことが、共同通信の自治体アンケートで分かった。

 ここでも返礼品競争の過熱として問題視されているが、何割を返礼品に充てるかを総務省が規制するよりも、それぞれの自治体が最適な割合を自主的に選択する方が、自治体毎に異なる政策の重点が現れてよいと私は考える。それを監督するのは、総務省ではなく、主権者たる有権者であるべきだ。

 「ふるさと納税の勝ち組」は、*2-2のように、ふるさと納税額を見越して前年度に比べ予算を19.7%増の47億9,800万円にしたそうだ。ただ、工夫を重ねての勝ちと言っても、東京都や国のずさんな契約による誤差の範囲内であることを忘れてはならない。

2)エネルギー供給での活用
 群馬県中之条町は、*2-3のように、ふるさと納税した人への返礼品リストに太陽光発電による家庭用電力を加え、町は、太陽光のほか水力やバイオマス発電にも力を入れており、「再生可能エネルギーによる町づくりにご支援を」とし、温泉旅館で使える感謝券も人気で、今年既に約7億4千万円の申し込みがあったそうだが、そこには時流に合った工夫が感じられる。

 それならば、*2-4の大分県の地熱バイナリー発電所の電力も、ふるさと納税した人への返礼品リストに加えれば、環境意識の高い納税者から支持を得られると考える。

3)福祉への活用
 佐賀市大和町川上校区のNPO法人は、*3-1のように、高齢者の交通事故や運転免許返納後の代替手段が課題となる中で、ガソリン代のみの負担で高齢者が利用できる会員制送迎サービスに取り組み、佐賀県の「ふるさと納税NPO支援枠」に登録して2016年度は640万円の寄付があったそうだが、地道で感心な取り組みだ。しかし、自動車は、近い将来、高齢者・外国人・持病を持つ人などが運転しても安全なものにすべきだ。また、運転の担い手は、適正な報酬を支払えば、プロの運転手だった人を雇用することも可能だろう。

 (1995年頃に私が提案して)最初に介護制度を作った日本で、政府が高齢者の介護保険料負担を引き上げ、介護サービスを削減し続けている中、中国は、*3-2のように、介護サービスの産業としての発展を推進するそうで、私は、こちらの方が先見の明があると考える。

 つまり、中国では、民政部(省)・国家発展改革委員会・公安部(省)・財政部(省)・国土資源部(省)、全国高齢者事業委員会弁公室など13部門が共同で、「介護サービス産業の放管服改革の加速的推進に関する通達」を発表し、行政のスリム化と権限委譲、監督管理能力の強化、サービス水準の向上を通じて、介護サービス産業の発展に関わる社会的パワーを喚起し、起業や業界参入への制度的コストを引き下げ、公平で規範化された発展環境を創出する方針を明らかにしたそうなのだ。

 その通達では、居住地コミュニティの総合的サービス情報プラットフォームの構築を加速し、食事、衛生、外出、入浴、医療などでの訪問介助サービスを提供することを打ち出し、小規模の高齢者施設を設立して自宅近くで介護サービスを受けたい高齢者のニーズに対応することを奨励するそうで、自立してきた一人暮らしの高齢者が自立できなくなる時期を迎える中、これらは日本でも本当に必要なサービスであり、ふるさと納税の使途としても人気を集めると考えられる。

<負け組の泣きごと>
*1-1:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12816236.html (朝日新聞社説 2017年2月27日) ふるさと納税 返礼品より使途で競え
 返礼品ばかりが注目されるようでは、本来の目的からはずれ、寄付のあり方や税制をゆがめるばかりだ。自治体がもっと使い道を競うように改めていくべきではないか。自治体に寄付すると、国への所得税や住まいがある自治体への住民税が軽くなる「ふるさと納税」の勢いが止まらない。寄付総額は2015年度に前年度から4倍の1600億円余に増えた後、16年度はさらに倍増の3千億円程度になりそうだ。安倍政権が地方創生の目玉として制度を拡充したこともあるが、最大の要因は自治体が寄付者に贈る返礼品である。高級牛肉をはじめとする特産品や、立地する工場で作られる家電や情報機器、さらには地元の店や施設で使える商品券まで、ネット上の関連サイトはさながら通販の様相だ。ふるさと納税では、所得に応じて決まる限度額までの寄付なら、寄付額から2千円を引いた金額が手元に戻る。つまり、2千円の負担で欲しい商品やサービスが手に入る。見返りがないか乏しい民間団体への寄付が不利になる。高所得者ほど限度額も膨らみ、多くの返礼品を得られるため、所得再分配を妨げる。そんな批判が強いのに改善が進まないのは、自治体に一定のメリットがあるからだろう。地元の産業が潤って雇用が守られ、知名度も上がる。寄付金を返礼品につぎ込んでもおつりが来る――。過疎化と財政難に苦しむ地域から漏れる本音は、わからなくはない。しかし、NPOや公益法人など民間団体への寄付や、急速に広がるネットを使った資金集めの「クラウドファンディング」を見ても、具体的な事業の目的や内容を示した上でお金を募るのが原則だ。地元の農林漁業や商工業を支えたいのなら、まずは行政としての取り組みを示すのが筋ではないか。ここ数年、過度な返礼の自粛を求めてきた総務省はこの春、改善策をまとめる。あまりに高額な商品や換金しやすい金券類の見直しや、寄付額に対する返礼品額の比率の制限を求めることが考えられるが、具体的な線引きをどうするか。ここは寄付の原則を思い起こすことだ。まずは使い道を示す。いくら集まり、どう使ったかの報告も怠らない。昨年の総務省の調査では、寄付額と活用状況をともに公開する自治体は全体の半数にとどまる。政策や事業への共感でお金が集まる、そんなふるさと納税を目指すべきだ。

*1-2:https://www.furusato-tax.jp/use_category.html ふるさとチョイス
「使い道でチョイス」を抜粋
・自然保護等 ・高齢者 ・子供、青少年 ・伝統を守るなど ・NPO、各種団体支援 ・文化、教育、生涯学習 ・公共設備など ・祭事など ・農林漁業、水産業、商工業 ・医療・福祉 ・観光 ・スポーツ ・音楽 ・環境、景観 ・おまかせ ・国際交流 ・その他 ・震災復興

*1-3:http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2017022702000136.html (東京新聞社説 2017年2月27日) 保育園落ちた いつになれば解消する
 四月の保育所入所をめぐり、今年も「保育園落ちた」の悲痛な声が相次ぐ。首相は新年度末までの「待機児童ゼロ」の目標達成は困難との見方を示した。対症療法でなく抜本的に政策転換すべきだ。積年の待機児童問題はいつになったら解消するのか。子どもが四月から認可保育所に入所できるのか、二月は自治体から可否通知が届く。「妊娠中から保活に走り回ったが入所できなかった」「入所先が見つからず退職」「会社の託児所に一歳児を預かってもらうことになったが、子連れで満員電車に揺られることになる」。国会内で開かれた集会では、認可保育所に入れなかった母親たちの怒りの声があふれた。「保育園落ちた」と窮状を訴える匿名ブログが話題を集めて一年たつが、問題はさらに深刻化している。厚生労働省によると、待機児童数は二〇一六年四月で約二万三千人で前年より増えた。背景には非正規雇用の増加で世帯収入が減り、幼い子を持つ母親の就業率が高まったことなどがある。国や自治体は保育施設を新設するなどして定員を増やすものの、入所希望者がそれを上回る勢いで増えるために追いつかない。国はどう責任を持つのか。一三年に発表した「待機児童解消加速化プラン」は、五年間に保育の受け皿を五十万人分整備し、待機児童をゼロにする計画だった。だが目標達成について安倍晋三首相は「厳しい」と国会で答弁。この間の対策には応急策が目立った。保育士配置や施設面で基準を緩和し、狭いスペースに子どもを詰め込もうとする。二歳児までの小規模保育所を増やしたが、それも三歳になれば行き場を失い、また保活を迫られる。企業主導型保育所も保育士の配置基準が緩く、親たちの心配は尽きない。もっと政策の優先度を上げて予算を投じ、国の基準を満たした保育所を増やす。保育士の給与引き上げも一部でなく全体の処遇改善につながる政策が必要だ。国はいまだに正確な待機児童数を把握していない。自治体によっては認可保育所に入れずに育休を延長したり、認可外施設などに入った場合は待機児童に数えていない。こうした「隠れ待機児童」を含めて九万人規模とも。都会の問題だとみられてきた待機児童は地方にも広がっている。子どもの数は減っても保育の需要はこの先も増える。今こそこうした社会構造の変化に向き合った抜本的な政策転換を図るべきだ。

*1-4:http://mainichi.jp/articles/20170218/dde/001/010/058000c (毎日新聞 2017年2月18日) ふるさと納税 .魅惑の返礼品、過熱 23区、208億円減収 17年度予想 「東京産物、勝ち目ない」
 高級肉などの「返礼品競争」が問題となっている「ふるさと納税」の影響で、東京23区が2017年度、少なくとも208億円の税収減を見込んでいることが各区への取材で分かった。16年度の129億円から1・6倍になる見通し。地方の自治体が特産品を用意して寄付を呼び込み合う中、目を引く産物に乏しい23区は、止まらない税流出に頭を抱えている。税収減の見込みは、多い区で▽世田谷区30億円=16年度比1・8倍▽港区23億4100万円=同1・5倍▽渋谷区14億6000万円=同2倍--など。ほぼ全ての区が、16年度より多くなると予測している。ふるさと納税は、出身地など応援したい自治体に寄付すると、居住地の税が軽減される仕組み。都市部と地方の税収格差を埋める目的で08年度に導入された。手続きの簡略化や軽減の上限額の引き上げによって15年中に利用者が急増、16年度の23区への影響は前年度の5・4倍に跳ね上がった。高市早苗総務相は「競争過熱や、制度の趣旨に沿わない返礼品は問題」として、対策に乗り出す考えを示している。各区は減収拡大に危機感を募らせる。世田谷区の保坂展人区長は2日の記者会見で「学校一つ分の減収だ」と述べ、不快感をあらわにした。30億円の税収減は学校1校の改修費に相当するという。一番人気の伊賀牛。中でもすき焼き用が最も多く選ばれた  杉並区の田中良区長は、仲介サイトで人気上位の返礼品を高級肉が占めていることに「税制度が『肉食欲』にじゅうりんされている。古里を応援しようという思いで税金の一部を納めるはずなのに、モラルハザードだ」と恨み節を述べた。地元で返礼品を探す区担当者は「地方と比べられたら勝ち目がない」とため息を漏らす。中野区は昨年10月から、交流のある青森県や北海道の特産品を返礼品にして寄付を募っている。これまでに約4500万円の寄付を受けたが、来年度の減収見込みは7億円を超え、遠く及ばない。しかも、寄付の半分は返礼品や送料などの経費で消えてしまうという。杉並区も17年度から、仲介サイトを利用して寄付を募る方針だ。ただ、直接的な返礼品は用意せず、被災地支援や福祉の充実に活用する方法を検討している。

*1-5:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/410350 (佐賀新聞 2017年3月1日) 高額返礼品は掲載せず ふるさと納税で大手仲介サイト、基準見直しへ
 ふるさと納税の寄付金集めを巡る自治体間の競争過熱を受けて、インターネットで寄付を仲介する大手ポータルサイト「ふるさとチョイス」の運営会社トラストバンク(東京)が、4月から返礼品の掲載基準を見直すことが28日、分かった。寄付額に比べ高額な品や、地域振興につながりにくい大企業の商品などを掲載しない方針だ。総務省は商品券などお金に換えやすい返礼品を問題視し、春に是正策をまとめる。他のポータル運営会社にも影響する可能性がある。トラストバンクは自治体に対し、返礼品の高額化などで「制度の存続が危うくなるかもしれない」と説明。新基準として、寄付額の半分以上を自治体の手元に残すよう要請し、中小企業を支援するため、資本金5億円以上の企業の商品は掲載しない考えを示した。さらに自転車やゴルフクラブ、貴金属もやめる方向だ。各自治体とは2月から協議しており、合意に至らなければ「契約を解除し、仲介をやめることもあり得る」としている。昨年7月には転売しやすい家電製品の掲載を中止した。一方、ソフトバンクグループの「さとふる」(東京)は「制度の趣旨に沿う返礼品であるか確認して掲載している」と説明。品目などで一律に線引きはしておらず、地元にある工場で製造した大手メーカーのビールや家電製品なども掲載することがある。「わが街ふるさと納税」を運営するサイネックス(大阪市)は、家電や商品券を贈らないよう求めた総務省の方針を説明するが、最終的には自治体側の判断を尊重するとしている。
■ふるさと納税の返礼品競争 ふるさと納税の返礼品競争 ふるさと納税で多くの寄付を集めるため、多くの自治体が返礼品の豪華さを競っている。返礼品の購入費が膨らむ分、自治体が独自の事業に使えるお金が減少、返礼品目当ての寄付は、地域を応援する制度の趣旨にそぐわないとの声もある。総務省は昨年4月、お金に換えやすい商品券や家電を贈らないよう自治体に要請したが、競争の過熱に歯止めがかからないため、新たな是正策を検討している。

<ふるさと納税のエネルギーへの活用>
*2-1:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/407274 (佐賀新聞 2017年2月20日) ふるさと納税の収入 教育、子育てに活用、返礼品、産業振興に効果
 ふるさと納税で2016年4月以降に集めたお金は、小学校の教員配置といった「教育」や、保育料免除などの「子育て支援」に充てる例が多いことが19日、共同通信の自治体アンケートで分かった。寄付した人に返礼品を贈ることで、特産品の販売が増えるなど産業振興に効果があるとする回答も多数を占めた。ただ、多くの寄付金を集めるための返礼品競争が過熱しており、自治体側には一定のルールを望む声が強い。お金に換えやすい商品券などを返礼品にするケースもあり、高市早苗総務相は是正策の検討を急ぐ考えだ。全国の自治体に寄付金の主な使い道を一つ聞いたところ、トップの「教育」が12%(202自治体)、次いで「子育て支援」11%(192)だった。茨城県美浦村は、きめ細かい指導のため小学校に非常勤講師を多く配置。長崎県雲仙市は第2子以降の保育料免除に活用する。「地域・産業振興」「まちづくり・市民活動」はいずれも6%(それぞれ105と102)。北海道池田町は寒冷地用ブドウの研究開発、宮崎県三股町は市民マラソン開催に充てる。このほか北海道栗山町の救急医療態勢の確保といった「健康・医療・福祉」が5%(90)、京都府宇治市のスタンプラリー開催など「観光・交流」は4%(66)だった。多くの自治体は、ふるさと納税をする人がお金の使い道を選べるようにしている。従来の税収、地方交付税や補助金だけではできない新たな施策や事業も実現できるため、地域の取り組みをより身近に感じてもらおうとする狙いがある。一方、返礼品による産業振興は、54%の自治体が「効果があった」と答えた。具体的には「衰退しかけていた伝統の八幡靴が復活の兆し」(滋賀県近江八幡市)などの例があり、地元生産者の販路拡大や新商品開発につながっているという。寄付総額に占める返礼品代は15年度の37%から16年度は43%へ膨らむ見通し。その分、独自政策に充てる額は減る。ただ返礼品自体が地元の活性化に役立つ面もあるため、これが競争過熱の一因となっているようだ。調査は16年11月~17年1月に全国1788自治体(都道府県、市町村、東京23区)を対象に実施し、96・2%の1720自治体が回答した。

*2-2:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/411091
(佐賀新聞 2017年3月4日) 江北町、48億円弱に ふるさと納税見越し19%増
 杵島郡江北町は3日、2017年度の一般会計当初予算案を発表した。昨年9月からオンライン決済を導入し返礼品も充実させて好調なふるさと納税の伸びを見越し、骨格予算だった前年度に比べ19・7%増の47億9800万円となった。7日開会予定の定例町議会に提案する。ふるさと納税推進事業費は3億6573万円。ポータルサイト委託料のほか、受け付けが集中する11~1月に臨時職員を雇う。町社会福祉協議会に開設する小規模保育所の運営委託事業は2000万6千円、小学校の教材用のデスクトップパソコンをタブレット端末に更新するリース料に331万3千円など。歳入は町税が9億4288万円(前年度比5・9%増)、町債は1億7750万円(9・8%減)。前年度1万3千円としていた寄付金は5億1014万円と大幅増を見込む。自主財源比率も41・2%(12・5ポイント増)と伸び、町債依存度は3・7%(9ポイント減)。

*2-3:http://digital.asahi.com/articles/ASK2M3VD1K2MUHNB001.html (朝日新聞 2017年2月20日) ふるさと納税、返礼に太陽光家庭用電力 群馬・中之条町
 群馬県中之条町は3月から、ふるさと納税(寄付)をした人への返礼品リストに家庭用電力を加える。町内にある大規模太陽光発電施設(メガソーラー)で発電し、送配電事業者を介して届ける。昨年4月の電力小売り全面自由化で可能になった。同町は県北西部の山間地にあり、四万(しま)、沢渡(さわたり)などの温泉地で知られる。寄付の返礼に贈っている感謝券が温泉旅館などで使えることから人気で、今年度は約8600件、約7億4千万円(1月末現在)の申し込みがあった。今春から、一口15万円以上の寄付をした人は家庭で使う電力を選択できるようになる。町内には町営と民間の計3カ所のメガソーラーがあり、年間発電量は計約650万キロワット時。町主導で設立した電力小売会社「中之条パワー」が全量を買い取り、市場調達分と合わせて町内の公共施設や一部家庭に供給している。返礼用は余剰分から振り向ける。関東など東京電力管内の家庭が対象で、当面は50戸限定で始める。希望者は、中之条パワーと電気の購入契約を結ぶ必要がある。一口15万円の寄付で、平均的な家庭の約半年分に当たる約2500キロワット時が届けられる。返礼用は使用量管理などを外部委託する分、「東電並み」の通常向け料金より割高になる。基本料金は本人持ちで、受け付けは3月1日から。町は、太陽光のほか水力やバイオマス発電にも力を入れており、「再生可能エネルギーによる町づくりにご支援を」。問い合わせは町企画政策課(0279・75・8802)へ。

*2-4:http://qbiz.jp/article/104722/1/
(西日本新聞 2017年3月2日) 余った熱水を使った全国初の地熱発電所が運転開始
 大分県九重町に出光興産が建設した地熱バイナリー発電所「滝上バイナリー発電所」(出力5050キロワット)が1日、商業運転を始めた。低温の熱水で発電するバイナリー方式として日本最大級。グループ会社や九州電力に売電する。発電所は、子会社の出光大分地熱が運営する滝上事業所の敷地内に建設。同事業所は、九電滝上発電所に地熱発電用の高温の蒸気を供給している。同発電所で使わずに地下に戻していた130度の熱水を利用するため、出光が新たに発電所を建設した。既設の地熱発電所に併設し、未利用の熱水を使う地熱バイナリー発電所の稼働は国内で初めてという。出光大分地熱の竹中照雄社長は記者会見で「エネルギーを効率的に利用でき、地熱発電の拡大にもつながる」と語った。

<ふるさと納税の福祉への活用>
*3-1:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/409473 (佐賀新聞 2017年2月27日) 住民発の高齢者送迎、軌道に 免許返納代替で、大和町川上のNPO
 高齢者による交通事故や運転免許返納後の代替手段が課題となる中、佐賀市大和町川上校区のNPO法人「かわかみ・絆の会」(松崎逸夫理事長)がガソリン代の負担で高齢者が利用できる会員制送迎サービスに取り組み、2015年10月の開始から1年5カ月で利用者が5倍超に増えている。懸案だった資金繰りはふるさと納税を利用するアイデアで解決の糸口を見いだし、地域住民による「生活の足」確保策は軌道に乗り始めた。利用できるのは65歳以上の川上校区住民。入会費2000円と年会費1000円で会員になる。1キロ当たり15円のガソリンチケットを購入し、移動した距離に応じてチケットを支払う。利用できるのは月・水・金・土曜の午前8時半から午後4時まで。利用者が前日までに予約する。病院や買い物など目的地は問わない。
▽利用5倍超 
 サービスに取り組む絆の会は、地区内の民生委員全13人と地元自治会長で運営する。松崎理事長(74)は民生委員で、高齢でマイカーを手放すことと、移動手段を失うことの板挟みに悩むお年寄りと接してきた経験から会を設立した。佐賀市によると、川上校区の住民は5735人(1月末現在)で、65歳以上の高齢者が3割を占める。地区内では10年ほど前にコミュニティバスが試験運行されたが、事前アンケートに反して利用が少なく廃止になった経緯がある。「生活の足」の確保は地区の高齢者にとって切実な問題となっていた。当初15人だった利用者は現在、78~93歳の83人に増えた。体制も普通乗用車1台から、譲り受けた軽乗用車を加えた2台体制に強化した。月140~150件の利用がある。運営には、保険や自動車整備など年間150万円ほどかかる。賛助会員を含めた会費や自治会からの助成を運営費に充てていたが、行政の補助金は受けていない。ただ、賛助会費は設立時ほど集まらなくなり、運営を安定させるため、県のふるさと納税NPO支援枠に登録した。2016年度は640万円の寄付があった。返礼品の経費を差し引きし、「なんとか本年度分の運営費を賄えた」(松崎理事長)。
▽課題は担い手 
 病院や買い物などで月に2、3回利用するという中島ケサエさん(84)は、10年ほど前に車の運転をやめた。「バス停までも行けないので、とても助かっている。パーマをかけるために美容室にも行けるんですよ」と語り、運転しない生活を以前ほど不自由と感じなくなった。NPOを運営するメンバーも64~74歳。松崎理事長は「この地区は公共交通の空白区。必要なサービスを続けるため、ふるさと納税してもらえるのはありがたい」と善意に感謝しながら、「運営側も高齢というのが現実で、自分たちもいずれサービスを利用する側に回ります」と憂える。資金繰りの次は担い手をどうするか。新たな課題も感じている。

*3-2:http://qbiz.jp/article/104854/1/
(西日本新聞 2017年3月3日) 中国は「放管服改革」加速、介護サービス産業発展を推進
 2016年10月8日、中国の伝統的祝休日「重陽節」を翌日に控えて、山東省青島市の介護サービスセンターで、駐屯軍の兵士が高齢者と一緒に餃子を作ったり、京劇を鑑賞したりした。民政部(省)、国家発展改革委員会、公安部(省)、財政部(省)、国土資源部(省)、全国高齢者事業委員会弁公室など13部門がこのほど共同で、「介護サービス産業の放管服改革の加速的推進に関する通達」を発表し、行政のスリム化と権限委譲、監督管理能力の強化、サービス水準の向上を通じて、介護サービス産業の発展に関わる社会的パワーの積極性をさらにかき立て、起業や業界参入にあたっての制度的コストを引き下げ、公平で規範化された発展環境を創出するとの方針を明らかにした。中国はすでに高齢化社会に足を踏み入れており、介護サービスへの需要は非常に大きい。2015年には60歳以上の人が2億2千万人に達し、総人口の16.1%を占めた。介護サービスの質は2億人を超える高齢者に関わる問題であり、特に4千万人を超える障害をもった高齢者の老後の幸福に直結する。だが日々増大する介護サービスのニーズとは裏腹に、中国の介護サービスは供給量も質も大幅に不足している。都市部と農村部で公共施設に大きな開きがあり、高齢者向け商品の製造・供給の遅れという問題も幅広く存在する。介護サービス産業は億単位の人々の福祉に関わる民生事業であり、また巨大な発展の潜在力を秘めた成長産業でもある。国務院が昨年末に下達した「介護サービス市場を全面開放して介護サービスの質を高めることに関する若干の意見」では、介護では居住地のコミュニティのサービスに力を入れ、農村に力を入れ、障害をもった高齢者に力を入れることや、ケア型サービス資源をさらに拡充し、小規模の、チェーン化された、専門的なサービス機関の育成発展に力を入れることが提起された。今ある介護サービスの弱点を見据えて、「意見」は、居住地のコミュニティの介護サービスについては、コミュニティレベルの総合的サービス情報プラットフォームの構築を加速し、食事、衛生、外出、入浴、医療などでの訪問介助サービスを提供することを打ち出す。また小規模のコミュニティレベルの高齢者施設を設立して、自宅近くで介護サービスを受けたいという高齢者のニーズに対応することを奨励する。


PS(2017.3.9追加):自然再生可能エネルギーを使って電力や水素燃料を作れば、*4-1のEVや*4-2の燃料電池列車や*4-3のゼロ・エミッション住宅など、自然再生可能エネルギーだけで生活するするツールが既に人々に与えられている。また、自然は請求書をよこさないため、安価に環境を汚さない生活をすることができ、地域で作った付加価値の多くを燃料費として海外に支払わなくて済む街づくりとビジネスモデルができる。そのため、国や地方自治体は、新築住宅にパッシブハウスであることを義務付けたり、環境規制を強めたり、補助したりして応援するのがよいと考える。
 それにもかかわらず、*5-1のように、九州電力はゴールデンウィークに太陽光発電の稼働を止める出力抑制する可能性があるそうで、その理由を、*5-2のように「①太陽光発電は日中しか動かないため設備利用率が低く、天候で出力が大きく変わる」「②大量に普及すると、日中の大きな出力変動で需給バランスが一気に崩れ、最悪の場合は広域大停電が起こるリスクがある」などと説明している。
 しかし、①②は蓄電池で対応することができ、電力をあまり使わない夜も大量に発電し続ける原発よりは太陽光発電の方がずっと需要と供給が近く、*5-2の「③太陽光発電は初期投資費用が高い」というのも、原発の初期投資や事後処理費用に比べればかわいすぎるくらいの金額である。
 そのため、九州で既に出力682万キロワット(大型原発約7基分)の太陽光発電による電力が接続され原発再稼働の理由がなくなった現在、九電などが太陽光発電の出力抑制を指示する本当の理由は、i)原発を再稼働させたいこと ii)再生可能エネルギー電力の供給に原発・火力などの発電設備を持っている大手電力会社の送電線を利用していること iii)再生可能エネルギー電力をその大手電力会社に買い取らせていること などの政治的なものである。
 従って、地方自治体が「ふるさと納税の資金を使って上下水道の近くに電線を埋設し、自然再生可能エネルギーによる電力を返礼品にする」という案も、環境意識の高い住民に人気が出ると考える。

   
                  2017.3.9西日本新聞(*5-1、*5-2)より

(図の説明:一番左のグラフのように、九州の太陽光発電は既に出力682万キロワット(大型原発約7基分)が接続されている。このような時代に、電力が余った時には、一番右の図のように、バイオマス・太陽光・風力発電を原発より先に止め、原発を「ベースロード電源《長期固定電源》」とするのは時代錯誤だ)

<自然再生可能エネルギー、エコカー、ゼロ・エミッション住宅>
*4-1:http://qbiz.jp/article/103491/1/ (西日本新聞 2017年2月11日) テスラ充電施設 九州で初の設置  福岡・須恵町
 米国の電気自動車(EV)メーカー「テスラ」の日本法人が10日、福岡県須恵町に、テスラ車専用の急速充電施設を開設した。同様の施設は国内14カ所目で、九州では初めて。本州から九州にテスラ車でドライブする人などの利用を想定している。30分の充電で270キロ走行できるという。施設は、九州自動車道のインターチェンジ近くのホームセンター駐車場にあり、充電器6台を置く。24時間利用できる。また、ヒルトン福岡シーホーク(福岡市)の駐車場にも普通充電器4台を設置した。テスラの日本法人は「今後も専用充電施設のネットワークを拡大したい」としている。

*4-2:http://www.tokyo-np.co.jp/article/economics/list/201610/CK2016100902000115.html (東京新聞 2016年10月9日) 【経済】エコな未来へ夢乗せて 世界初の燃料電池列車
 トヨタ自動車が先駆けて市販した燃料電池車の「列車版」が来年末、世界で初めてドイツで営業運行を始める。屋根に積んだタンクに入る水素と、空気中の酸素を反応させて発生させた電気で走り、二酸化炭素(CO2)などの温室効果ガスを出さないエコ列車だ。電気を供給する架線がないローカル区間を走ってきたディーゼル車の代役として期待されており、ドイツ政府も開発と普及を後押ししている。
■来年末から運行
 六十カ国から約三千の鉄道関連会社が出展し、ベルリンで九月に開かれた国際鉄道技術見本市。来場者の話題をさらったのは、フランスの重電大手、アルストムの燃料電池列車「コラディア・アイリント」だった。開幕初日にはドイツのドブリント運輸相も駆けつけ、「ローカル線に架線を設置するのは不経済。燃料電池列車なら排ガスゼロでエネルギー効率が高く、コストパフォーマンスもいい」と絶賛した。燃料電池列車は水素満タン時の連続走行距離が六百~八百キロで、最高速度は時速百四十キロ。乗客定員は最大三百人だ。アルストムのプロダクトマネジャー、シュランク氏(53)は「ディーゼル車に比べ、遜色ない性能」と胸を張った。新列車はまずドイツ北部のニーダーザクセン州内で二台が導入され、二〇年までに十四台が配備される。車両は同州内にある工場で製造。ドイツ政府は開発費の一部の八百万ユーロ(九億円)を支援した。
■水素燃料に発電
 ドイツでは、線路の総延長距離約三万八千キロのうち46%が未電化。燃料電池列車の潜在的な需要は大きいとみられている。オーストリアから見本市に見学に来た鉄道電気設備会社員のツィマーさん(34)は「古い線路に電線を設置するのは技術的に困難で、コストも高い。その点、新列車は見事なアイデアだ」と語った。日本の鉄道車両製造会社の技術者の男性(27)も「車体に設置する水素の配管は自動車より長く、設計が難しい。安全性を確保しながら、二年で開発したのはすごいこと」と評価した。燃料電池車は水素を燃料とし発電時にCO2を排出しないが、普及には水素を供給する水素ステーションの建設が不可欠という課題がある。これに対し燃料電池列車は、列車の車両基地内で水素を貯蔵。車両に注入する設備や水素を配送するシステムは列車とセットで販売するため、燃料供給面の不安はないという。ただ、水素をつくる過程では温室効果ガスが排出され、「環境に負担がかかっている」との指摘もある。これについてアルストムのシュランク氏は「塩素を製造する際の水素を活用しており、列車を走らせるために新たな環境への負荷は発生していない」と説明。将来は、風力発電で得た電気を利用してつくる水素を燃料にすることも検討し「環境負荷ゼロ」に近づける考えも示した。

*4-3:http://www.newsdigest.de/newsde/regions/reporter/hannover/5560-966.html (2015 November 2013 田口理穂) 欧州最大のゼロ・エミッション住宅地
 「パッシブハウス(Passive House)」という言葉をご存知ですか。これは、太陽光発電などを利用し、屋内の暖房や電気の使用量を極力抑えるよう造られた建物のことです。パッシブハウスの基準では、例えば160㎡の一軒家の暖房エネルギーは1年で1㎡当たり15キロワット時以下と定められています。ハノーファーはハイデルベルク、フランクフルトと並んで国内でもパッシブハウスを積極的に取り入れている町として知られ、昨年は国際パッシブハウス会議も開かれました。2006年頃からパッシブハウスの需要が増え、現在では新築住宅の3割はパッシブハウスだそうです。現在、市内南西部のヴェットベルゲン(Wettbergen)地区で、欧州最大のゼロ・エミッション(環境に負荷を掛けるCO2などの排出量をゼロにすること)住宅地「ゼロ・エー・パーク(Zero:E Park)」の建設が進められています。ここに建てられる住宅はパッシブハウスのみ。26万㎡の敷地に計330世帯の住宅が建てられる予定で、土地購入後2年以内に建設、3年以内に入居しなければなりません。すでに第1区画の59軒が完成し、入居が始まっています。先日公募があった第3区画は販売開始後、数時間で完売したそうです。昨年12月、この住宅地に国内初のパッシブハウス・スーパーマーケット「レーヴェ(REWE)」がオープンしました。見た目は普通のスーパーですが、屋内では主にLED電球を使用しているほか、冷蔵庫には3重ガラスを使用。外気がマイナス7度になるまで暖房は不要というエコな造りで、既存のスーパーよりもCO2の排出量を3割抑えられているのだとか。パッシブハウスには、環境に配慮した様々な工夫が施されています。例えば、太陽光を最大限に取り入れるため、全住宅の南側に大きな窓を設置。熱を逃がさないよう壁や天井には断熱材を用いて、窓はあまり開かず、熱交換ができる空気調整器で換気するようになっています。また、家の南側に掛かる影が最小限になるよう、隣の建物との間に十分な距離が取られています。雨水は下水道に流れるのではなく、ため池に集められます。建物と道との距離が近いところでは、道との間にスペースを設けて壁づたいに伸びるつる性の植物を植えるなど、緑化が義務付けられています。さらに、ソーラーパネルや太陽光温水器を屋根に載せている住宅も見られます。近年、エネルギー費用の高騰が著しく、暖房費を大幅に節約できるパッシブハウスの人気は右肩上がり。省エネを実践するパッシブハウスは、エネルギー政策の転換にも大きく寄与しています。

<九電の太陽光出力抑制指示>
*5-1:http://qbiz.jp/article/105151/1/# (西日本新聞 2017年3月9日) 九電が太陽光の「出力抑制」を指示へ GWにも、離島外では全国初
 九州電力が今春、太陽光発電の稼働を止める「出力抑制」を九州本土で指示する可能性があることが分かった。太陽光発電の急増を受け、天候が比較的良く電気の使用量が少ない春と秋に、需給バランスが崩れて広域的停電が起きないようにするのが狙い。ゴールデンウイーク(GW)中の出力抑制を想定し、対象となる発電事業者に対する事前説明の手続きをほぼ終了。出力抑制の順番を定めた国の「優先給電ルール」を運用する準備を整えた。経済産業省資源エネルギー庁などによると、固定価格買い取り制度(FIT)が始まった2012年7月以降、九電は15年5月に初めて、系統が孤立している鹿児島県の離島、種子島で出力抑制を実施した。本土で出力抑制されれば全国で初めてという。FITは11年3月の東京電力福島第1原発事故後、脱原発を打ち出した当時の民主党政権時代に始まった。建設が簡単で買い取り価格が高額な太陽光は、参入業者が予想以上に増加。日照量が多い九電管内では、太陽光接続容量817万キロワットに対し、接続は682万キロワットに達する。この容量は、各発電所に年間30日間の出力抑制を指示できる前提で設定している。西日本新聞の取材に対し、九電電力輸送本部の深川文博副部長は「早ければ年内に九州本土で出力制御しなければならない。特に今年のGWの可能性が高まっている」と述べた。GWは企業が休業することに加え、晴天なら太陽光の出力が増すため、供給が需要を大幅に上回りやすい。火力発電などの出力の調整だけでは需給バランスが保てなくなるため、太陽光の出力抑制を求めるという。出力抑制の対象は、事業者が運営する約3100発電所で、出力が小さい一般家庭は対象外。出力抑制の頻度などを公平にするため、交代制で各発電所に指示する。今年のGW期間中は、各発電所で最大2回の出力抑制を想定している。優先給電ルールに基づいた出力抑制を円滑に進めるため、九電は昨年7月に全国で初めて細かな運用指針を公表した。前日午後5時までに対象事業者に電話やメールなどで連絡。当日に日中の稼働を止めてもらうよう求める。ルールや運用方針への理解と協力を得るため、九電は昨年7月末までに、約2千事業者にダイレクトメールを送信。希望のあった約900事業者を個別に訪問した。3月中に残り30事業者を訪問する。深川副部長は「今まで再生エネルギーを積極的に受け入れてきたが、需要と供給のバランス調整には限界がある」と理解を求めている。

*5-2:http://qbiz.jp/article/105152/1/ (西日本新聞 2017年3月9日) 電力新時代、出力抑制の背景は太陽光の爆発的な普及
 九州電力が今春、九州本土での太陽光発電の出力抑制に向けて準備を進める背景には、2011年3月の東京電力福島第1原発事故後に太陽光が爆発的に普及したことがある。今後も太陽光は増えると見られ、出力抑制が常態化することになりそうだ。電力会社に対し、国が決めた価格で再生可能エネルギーの買い取りを義務づける固定価格買い取り制度は、12年7月に始まった。初期投資費用が高い太陽光も、一般の事業者や家庭に拡大。日照時間が長い九州は、出力682万キロワット分が接続された。単純計算で大型原発約7基分に相当する。ただ太陽光の弱点は、日中しか動かないため設備利用率が低く、天候で出力が大きく変わることにある。大量に普及すると、日中の大きな出力の変動で需給バランスが一気に崩れ、最悪の場合は広域大停電が起こるリスクがある。もともと買い取り制度は、各発電所で30日間の出力抑制を前提としていた。その後、15年1月以降に接続を申し込んだ事業者には、無制限の出力抑制を指示できるようになった。太陽光は、投資目的に増えた側面も大きい。九電が昨年8月以降、出力抑制を説明するために個別に事業者を訪問した際、「制度を知らない」「仲介業者から聞いていない」と戸惑いの声が一部で上がった。九電の接続は、容量の817万キロワットに対し、残り135万キロワットと迫り、現在も月6万〜7万キロワットのペースで増える。接続容量に達したら「年間の90日間はどこかの太陽光発電所が止まっている状態になる」(九電)。承諾済み分を合わせると、いずれ1100万キロワットまでは接続される見込みで、出力抑制の日数は増加し続ける。国と電力会社には、出力抑制による混乱が起きないように、丁寧な説明が求められる。
■優先給電ルール 電力供給が需要を上回る場合、稼働中の発電所を出力抑制する順番や条件を定めた指針。天候で発電出力が左右される太陽光発電をより多く受け入れるため、電力広域的運営推進機関が昨年4月に現在の内容とした。大手電力会社は火力の出力抑制から着手し、余剰電力を使って水力発電用のダムに水をくみ上げる揚水発電の運転、バイオマスの調整などでも供給の余剰が続く場合、太陽光や風力の出力を落とす対応を求められる。

| まちづくりと地域振興::2015.5~ | 10:48 AM | comments (x) | trackback (x) |
2017.2.18 辺野古新基地建設とオスプレイについて (2017年2月19、23、26日に追加あり)
    
    オスプレイ      みさご(鷹の一種)        ワシ           ツバメ

     
  2016.12.16産経新聞      フグ          トビウオ     マンタ(エイ)
 墜落したオスプレイの処理

(図の説明:「オスプレイ」は鷹の一種である「みさご」の名前をとったものだが、墜落の報告が多く、顔・形が鷹よりもフグに似ており、素人目に見ても威嚇効果はあるが流体中での抵抗が大きくて飛びにくそうだ。私は、生物に学ぶのなら、鳥はツバメ、魚はトビウオがスピードが出そうで、機体全体で浮力(揚力)を作りたければマンタではないかと考える)

(1)日米両首脳の合意について
1)日米安全保障条約第5条の尖閣諸島に適用
 安倍首相が、2月10日、*1-1のように、ワシントンのホワイトハウスでトランプ米大統領と初の首脳会談を行い、日米安全保障条約第5条が沖縄県の尖閣諸島に適用されることを確認したのは、日本が望むように進んでよかった。

2)米軍普天間飛行場の辺野古移設
 両首脳が、「米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古への移設が、唯一の解決策」としたのも、日本政府が望む方向に話を進めたようだが、実際には唯一ではなく、他にもっと安価で賢いやり方があるため、「唯一」という根拠は「ガラス細工のような」という感傷的な言葉以外では一度も説明されたことがない。そのため、観光資源にもなる美しい自然を破壊しつつ、そのために多額の税金を無駄遣いしていることについては、沖縄県民以外の国民も納得できない人が多い。

 全国紙の毎日新聞も、*1-2のように、「辺野古移設で沖縄の美しい海がまた埋め立てられていく」「海上工事に政府が着手し、移設反対派に怒りと焦燥感が交錯している」としており、私も同感だ。そして、キャンプ・シュワブゲート前に集結して抗議の声をあげた移設反対派や翁長知事・稲嶺名護市長に感謝するとともに、*1-3のように、沖縄の民意が日本政府の意志で置き去りにされそうなことで、日本の民主主義や三権分立に絶望感を感じる。

3)経済分野
 自由で公正な貿易ルールに基づき日米間や地域の経済関係を強化するそうだが、アジア太平洋地域など一定の地域だけでまとまるのは、本当は公正ではないだろう。また、日米貿易摩擦と言えば必ず自動車を取り上げているが、現在、日本の自動車市場の関税率は0%で完全に開放している上、*4-1のように、トヨタの工場はインディアナ州に立地しており、その問題はかなり前に解決している。

 その上、次世代自動車は、*4-2のように、電気自動車(EV)では「テスラ」の方が進んでおり、自動運転車でも、*4-3のように、「テスラ」の方が進んだため、いつまでも自動車は日本の方が強いと考えるのは、アメリカ政府も日本政府もおかしい。しかし、トランプ大統領は、*4-4のように、環境長官に温暖化懐疑派を据え、「パリ協定」の離脱にも言及しており、アメリカ大統領の政策によって、せっかくアメリカで発展した次世代自動車の普及が遅れる可能性もある。つまり、トランプ大統領の産業政策は、20~30年遅れているのだ。

 なお、トランプ大統領は、日本の金融政策を「円安誘導」としており、確かに日本は金融緩和したため円の価値が下がって円安になってはいるが、私は、この程度が円の実力だと考える。また、円など通貨の為替レートは、「貿易収支+金融収支」が黒字なら上がり、赤字なら下がるものであるため、日本も無理せずに復興用の建築資材や外国人労働力を輸入すれば、もっと円安になった筈である。

(2)「辺野古が唯一」ではない理由
 日米防衛相は、*3-1、*3-2のように、「米軍普天間飛行場の移設に伴う名護市辺野古への新基地建設は『“唯一”の解決策』との認識で一致した」とのことだが、“唯一”である理由を説明されたことは一度もない。そして、既に空港のある人口の少ない離島の使用などの他の代替案と比較検討された結果ではないため、これは、米国の要請ではなく、日本の要請だと、私は考える。

 また、*3-2に書かれているように、在日米軍駐留経費の日本側負担は、2015年度で約1,910億円、負担率86.4%、韓国は負担率4割、ドイツは負担率3割程度で、日本は米軍駐留や防衛に関して、現在では、経済も含めて米国に譲歩ばかりを強いられるほどの負い目は負っていない。

 なお、沖縄県の翁長知事は2014年11月の知事選で辺野古移設反対を公約に掲げて圧勝し、その後、沖縄県内では2014年1月の名護市長選、2014年12月の衆院選全選挙区、2016年7月の参院選のいずれも新基地建設を拒否する候補が当選し、2016年1月の宜野湾市長選は現職が勝利したものの選挙戦で辺野古移設の賛否を明言しておらず、2016年6月の県議選では翁長県政与党が圧勝しているため、沖縄県民の民意は明らかだ。そのため、翁長沖縄県知事があらゆる権限を使って建設を阻止するのは正しい。

 そのため、日本政府は「基地で潤わせている沖縄」というような僭越な先入観は捨て、観光も含む沖縄県の産業政策を真面目に検討すべきだ。そして、これによって、辺野古埋め立ての膨大な予算や基地の補償金を節約できる上、既にスタートしている沖縄のエンジンに火をつけることができる。

(3)オスプレイについて
 政府は、*2-1のように、数回にわたる選挙結果や世論調査で示された辺野古新基地建設反対の圧倒的多数の民意を踏みにじり、大規模な海域を埋め立てる海上工事に着手したそうだが、その地域は、世界でも貴重な自然が息づく海域で、日本国民や沖縄県民の財産だ。そのため、「宝の自然を破壊すること」「沖縄県民の基地負担が増えること」「国民の無駄な歳出が増えること」などの理由で、私も辺野古新基地建設に反対だ。

 また、オスプレイとは、タカ科の鳥「ミサゴ」の英語名だそうだが、欠陥機と言われるオスプレイは、垂直離着陸が可能な飛行機であるという点で画期的ではあるものの、確かに流体の中での抵抗が大きく、飛びにくそうな機体なのである。そのため、空中を飛ぶ鳥に学ぶのならタカよりツバメの方がスピードが出て飛びやすそうであるし、同じ流体である水中を泳ぐ魚に学ぶのならフグに似た体形のオスプレイよりも、スピード重視ではトビウオ、浮力重視ではマンタ(エイ)を参考にした方が機能的にできると思われる。

 その上、オスプレイは、神業のような空中給油をしているのだから事故が起こるのは当然で、空中で給油しなくてもよいように水素燃料を使うなど、安全で長距離飛行が可能な次世代燃料に変更すべきだ。なお、運んでいる荷物の中に放射性物質や毒物が含まれる可能性があるなど、とんでもない話だ。

 さらに、*2-2のように、目的は不明だが、米軍は200フィート(約60メートル)での飛行もあり得るとしており、オスプレイの飛行訓練ルートは東北から九州まで六つあるため、沖縄だけの問題ではない。

*1-1:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12793443.html (朝日新聞 2017年2月12日) 尖閣に安保、共同声明 経済対話、枠組み新設 日米首脳、同盟強化を確認
 安倍晋三首相は10日午後(日本時間11日未明)、ワシントンのホワイトハウスでトランプ米大統領と初の首脳会談を行った。両首脳は日米同盟の強化で一致し、米国の日本防衛義務を定めた日米安全保障条約第5条が沖縄県の尖閣諸島に適用されることを確認した。また、麻生太郎副総理兼財務相とペンス副大統領による日米経済対話の枠組み新設で合意した。日米両政府は、首脳会談の成果をまとめた共同声明を文書で発表した。会談は約40分間行われ、終了後に両首脳が共同で記者会見。その後、経済分野を中心に約1時間のワーキングランチが開かれた。会見で、首相は「日米同盟の絆は揺るぎないものであり、私とトランプ大統領の手でさらなる強化を進めていくという強い決意を共有した」と強調。トランプ氏は「同盟関係にさらなる投資を行い、私たちの防衛力をさらに高めていくことが大切だ」などと語った。トランプ氏は大統領選の期間中、在日米軍の撤退や、駐留経費の負担増を日本政府に求めることを示唆していたが、会見では「私たちの軍を受け入れてくれている日本国民に感謝したい」と表明。日本側の説明によると、首脳会談でも取り上げなかったという。両首脳は、米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の同県名護市辺野古への移設計画について、「普天間飛行場の継続的な使用を回避するための唯一の解決策」と位置づけた。北朝鮮には核・ミサイル開発の放棄を求め、東シナ海や南シナ海で海洋進出を強める中国を念頭に、地域の緊張を高める行動は抑制すべきだとの認識で一致した。また、経済分野では、自由で公正な貿易のルールに基づき、日米二国間の枠組みも排除せず、アジア太平洋地域の経済関係を強化していくことを確認した。新設する経済対話では、(1)財政・金融政策(2)インフラやエネルギーなどの協力プロジェクト(3)二国間の貿易枠組みの3分野を包括的に議論することにした。一方、米国へのインフラ投資や雇用創出などを盛り込んだ日本政府の経済協力案「日米成長雇用イニシアチブ」は首脳会談では示さず、日米間で今後、検討していくことにした。トランプ氏が問題視していた日本の自動車貿易や為替政策も取り上げられなかった。トランプ氏が難民や中東・アフリカ7カ国からの入国を一時禁止した問題についても、会談では議題にならなかったという。終了後の会見で、この問題を問われた首相は「難民政策、移民政策はその国の内政問題であり、コメントは差し控えたい」と述べた。(ワシントン=高橋福子)
■日米両首脳の合意事項(骨子)
▼日米同盟はアジア太平洋地域における平和、繁栄及び自由の礎
▼日米安全保障条約第5条は尖閣諸島に適用
▼米軍普天間飛行場の辺野古移設は唯一の解決策
▼自由で公正な貿易のルールに基づき、日米間や地域の経済関係を強化
▼麻生太郎副総理とペンス副大統領による日米経済対話の新設
▼安倍晋三首相はトランプ大統領の年内訪日を招請、ペンス氏の早期の東京訪問を歓迎し、トランプ氏は招待を受け入れ

*1-2:http://mainichi.jp/articles/20170206/k00/00e/040/212000c (毎日新聞 2017年2月6日) 辺野古移設 沖縄の美しい海、また埋め立てられていく
●海上工事に政府が着手 移設反対派に怒りと焦燥感が交錯
 沖縄の美しい海を埋め立てて巨大な米軍基地を造るための工事がまた一歩、前へと進んだ。米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古への県内移設に向け、政府が6日、初めて海上工事に着手。辺野古の米軍キャンプ・シュワブのゲート前では、移設反対派が作業に向かう車両を阻止し、排除する機動隊と衝突した。埋め立てへのカウントダウンが始まり、反対派には怒りと焦燥感が交錯した。まだ真っ暗な午前6時前、前夜の雨もあり肌寒いキャンプ・シュワブゲート前に続々と移設反対派が集結。「これ以上工事を進めないためには、作業員を中に入れないという抵抗をせざるを得ない」。約150人が「辺野古新基地NO」「辺野古埋立阻止」などと書かれたプラカードを掲げるなどして抗議の声をあげた。同県南風原町の稲福次義さん(63)は「市民の意思をきょう示さなければ、政府の意向を沖縄が黙認したことになる。民意を無視しようとも、県民の意思は揺るがない」と語気を強めた。  午前8時15分、作業員が乗った乗用車が到着。作業現場に向かうためキャンプ内へ進入しようとしたが、反対派は入り口前に座り込んだ。すると沖縄県警の機動隊が隊列を組んで阻みながら、隣接する出口の方から工事車両を通した。反対派からは「きちんと手順を踏め」と怒号が飛んだ。その後も続々と大型トラックやクレーン付き車両などが到着。「帰れ、帰れ」。反対派はゲート前で腕を組んで壁を作り声を張り上げた。一進一退のせめぎ合いの末、午前10時半ごろ、足止めとなっていた車両がキャンプの方へ。機動隊は約80人を次々に排除。腕をつかまれた高齢の男性は「県警は県民とアメリカとどっちが大事なんだ」と叫んだ。ゲート前には、辺野古への移設阻止を訴えるため翁長雄志(おなが・たけし)知事と訪米し帰国したばかりの稲嶺進・名護市長も駆けつけた。「アメリカでも、沖縄の置かれている状況はよく聞いてもらえたと思っている。全く無視し続けるのは日本政府だ。訪米中に防衛大臣が『辺野古が唯一の解決策』との見解を示すなど、恥も外聞もない」と怒りをあらわにしていた。

*1-3:http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2017020702000134.html (東京新聞社説 2017年2月7日) 辺野古海上工事 民意は置き去りなのか
 日本は法治国家だが民主主義国家でもある。安全保障は国の専管事項でも、選挙に表れた沖縄県民の民意を置き去りにしては、日米安全保障条約で課せられた基地提供の義務は円滑には果たせまい。政府がきのう、沖縄県宜野湾市の米軍普天間飛行場の「移設」に向けて、名護市辺野古の海上で代替施設の本体工事に着手した。海水の汚濁拡散を防ぐ防止膜の設置を経て、五月にも埋め立て区域の護岸造成を始める、という。沖縄県や名護市など、地元自治体が強く反対する中での工事の着手である。到底、容認できない。政府が海上での工事に着手したのは、沖縄県と国とが争っていた裁判で昨年十二月、県側の敗訴が最高裁で確定したためでもある。菅義偉官房長官は会見で「わが国は法治国家だ。最高裁判決や和解の趣旨に従い、国と県が協力して誠実に対応し、埋め立て工事を進める」と工事を正当化した。確定判決に従うのは当然だが、日本は民主主義国家でもある。安倍内閣は自由、民主主義、人権、法の支配という基本的価値を重んじると言いながら、翁長雄志県知事や稲嶺進名護市長に託された「県内移設」反対の民意をなぜないがしろにできるのか。訓練に伴う騒音や事故、米兵らによる事件など、米軍基地の存在に伴う地元住民の負担は重い。昨年、米軍北部訓練場が部分返還されたが、それでも沖縄県内には在日米軍専用施設の七割が集中する。日米安保体制を支えるため沖縄県民がより多くの基地負担を強いられる実態は変わらない。北部訓練場返還はヘリパッドの新設が条件だった。普天間返還も代替施設建設が条件だ。県内で基地を「たらい回し」しても県民の負担は抜本的には軽減されない。国外・県外移設こそ負担を抜本的に軽減する解決策ではないのか。安倍内閣はマティス米国防長官と、辺野古移設が唯一の解決策と確認したが、硬直的な発想は問題解決を遠のかせる。政府は工事強行ではなく、いま一度、沖縄県民を代表する翁長氏と話し合いのテーブルに着いたらどうか。稲嶺氏は、海上での工事着手を「異常事態だ。日本政府はわれわれを国民として見ているのか」と批判した。怒りの矛先は、法治国家と言いながら、憲法に定められた基本的人権を沖縄県民には認めようとしない政府に向けられている。本土に住む私たちも、そのことを自覚しなければならない。

<オスプレイ>
*2-1:http://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-440112.html (琉球新報社説 2017年2月7日) 辺野古海上工事強行 海域破壊取り返せない 県は提訴し対抗策尽くせ
 政府は大規模な海域埋め立てに向けた辺野古新基地の海上工事に着手した。幾たびの選挙結果や世論調査で示された建設反対の圧倒的な民意を踏みにじる暴挙に強い怒りを禁じえない。着手を前に県は詳細な説明を求めていたが、政府は一方的に打ち切った。地方自治を無視する政府の横暴に強く抗議する。新基地は危険なオスプレイの配備など在沖基地をさらに強化し、県民の財産であり、世界にとっても貴重な自然が息づく海域を決定的に破壊する。改めて政府に工事の即時中止を要求し、県には工事阻止の手段を尽くすよう求めたい。
●オスプレイ欠陥明らかに
 辺野古新基地建設は「県民の基地負担増」「大規模な自然破壊」の大きな二つの理由で到底、容認できない。辺野古新基地はヘリ基地と船舶の港湾機能を併せ持つ施設である。オスプレイほか最新鋭のF35戦闘機の配備、運用で沖縄の基地負担は確実に増す。その欠陥機オスプレイの配備計画を政府は長く隠蔽(いんぺい)し、県民を欺き続けてきた。オスプレイは昨年末墜落し、県民の不安は的中した。空中給油訓練中の事故が、機体構造と訓練態様の欠陥を浮き彫りにした。琉球新報が報道した米軍資料は「空中給油のホースや装備がオスプレイにぶつかることがあり得る」と機体構造の欠陥を認め、「プロペラにぶつかれば大惨事を起こしかねない」と墜落事故を予想していた。その通りの墜落事故が今回、起きた。「ホースがプロペラにぶつかる」構造欠陥が根本的に改善されない限り、またも「大惨事」が起きるのは必然だ。オスプレイの安全運用を否定する極めて重大な新事実の報道にも米軍、政府は口をつぐんでいる。そして海上工事を強行した。県民の命を犠牲に米軍基地建設を優先しているのである。埋め立てられる海域は、本島周辺に残された最後の優良な自然海域の一つだ。日本自然保護協会が大浦湾で行った調査で、海底のサンゴ被度は40%を超し、「健全な状態」と評価された。228個もの大型ブロック投入はサンゴを傷つけ、固有の自然体系に影響を及ぼそう。国際自然保護連合は何度もジュゴン保護を勧告したが、政府は無視した。浮具設置でジュゴンは姿を消した。埋め立てにより大浦湾の自然は壊滅的なダメージを避けられない。海域の豊かな自然は、大切な観光資源でもある。貴重生物の命と県民の観光資源が、今まさに奪われようとしているのである。
●国際連帯の情報戦略を
 来日した米国防長官は首相、防衛相と会談し、辺野古新基地推進を確認した。県民や県の異議申し立てを一顧だにしない姿勢だ。日米同盟が政府の権力を駆使して沖縄の民意を圧殺しようとしているのである。しかし県民は屈しない。日米の犠牲に甘んずることを県民は決して許容しない。日米両政府の強固な圧力に屈せず、県は法的、行政的なあらゆる対抗措置を講じてもらいたい。政府は矢継ぎ早に既成事実を積み上げ、ブロック投下後に汚濁防止膜を設置し、護岸設置の埋め立て工事に進む計画とされる。3月末に期限が切れる岩礁破砕許可の更新手続きをも一方的に「不要」と主張し、回避する方針だ。海域埋め立てで失われる自然は回復できない。県は一刻の猶予も置かず、前知事による埋め立て承認の撤回や、不当な岩礁破砕に対する提訴に踏み切るべきだ。日米両政府の抑圧を受けながらも県民は孤立してはいない。国内外に建設反対の世論を広げ、両政府に突き付けねばならない。政府の「地元住民は承認している」「オスプレイは安全」などの情報操作に対抗する必要がある。軍事、法律、行政の専門家や環境保護団体を巻き込み、国際連帯を強める情報戦略が重要になる

*2-2:http://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-444661.html (琉球新報社説 2017年2月15日) オスプレイ危険高度 直ちに飛行停止せよ 「欠陥と低空」二重の不安
 米海兵隊の垂直離着陸輸送機MV22オスプレイに関する日本政府の二重基準が明らかになった。オスプレイは米軍普天間飛行場代替施設の辺野古新基地への配備が既定路線でありながら、日本政府の意向で公文書から配備に関する表記が削除された経緯がある。日本政府が国民世論の反発を避けるための方策であり、当初からその配備には疑問符が付いた。今回明らかになった事実も深刻だ。日本政府は安全策として最低安全高度を500フィート(約150メートル)以上と県民に説明したが、米軍の運用上は200フィート(約60メートル)での飛行もあり得るとの内容だ。
●米軍の運用優先
 航空法施行規則によると、最低安全高度とはエンジンが停止した際に地上や水上の人、物に危険を及ぼすことなく着陸できる高度のことだ。人家密集地域で最も高い障害物から300メートル、水上などでは150メートルなどと定めている。2013年には操縦士が共同通信の取材に「低空飛行訓練は200フィートまで下げて飛ぶ」と答えている。オスプレイの飛行訓練ルートは東北から九州まで六つある。県外各地では実際に低空飛行訓練がこれまで実施されてきた。沖縄だけ低空飛行がないと言われても信じ難い。危険は沖縄だけにとどまらないのだ。オスプレイの配備に当たって、日米両政府の合意に「安全性を確保するため、その高度(500フィート)を下回る飛行をせざるを得ない場合もある」とのただし書きがあった。例外を設けることで国民の安全より、米軍の運用を優先したと言われても仕方がない。オスプレイの低空飛行が危険なのは、機体の構造に不備があり、緊急時に対応が困難だからだ。専門家によると、エンジン停止時に気流をプロペラに受けて回転させ、軟着陸する自動回転(オートローテーション)機能がオスプレイには欠けている。防衛省は自動回転機能を有するとしているが、それでも従来のヘリに比べて機体が重く、プロペラが小さいことから1分間に機体が落下する降下率は約5千フィート(1525メートル)とされる。既存のヘリの降下率は1分間に1600フィート(約487メートル)であり、オスプレイの落下速度は3倍にもなる。一方、オスプレイがヘリモードから固定翼モードに転換するには約12秒かかる。固定翼で滑空するにしろ、自動回転機能を使うにしても60メートルでは危険回避の手順を踏む前に機体は地面に激突する。
●拭えぬ疑念
 問題なのは日本政府がこれまで二重基準を容認してきたことだ。配備の事実隠し、最低安全高度の設定など国民への説明を避け、密室で米国と合意を重ねてきた。欠陥機との指摘があるオスプレイを配備する必然性が見当たらない。その上に危険な低空飛行を容認するならば、いつ頭上に落ちてくるか不安でならない。国民・県民を安心させるには運用改善といった小手先の対処では不十分だ。オスプレイの即時飛行停止しか解決策はない。ハワイでは15年に、低高度で空中制止したオスプレイが自らのエンジンで巻き上げた砂やちりによってエンジンが停止し、墜落した。米軍の報告書によれば、10~12米会計年度にアフガニスタンで起きたオスプレイの事故は約90時間に1件で、全航空機の約3746時間に1件と比べ突出している。そもそもオスプレイは軍用機として適当なのか。名護での墜落につながった空中給油をはじめ、荒れ地での離着陸などといった特殊な作戦行動に向かない構造的な欠陥があるとの疑念が拭えない。日本政府が米軍の顔色をうかがい、国民に二枚舌を使うような状況では、対策を取ることなど考えられない。沖縄をはじめ、全国各地の住民が危険な低空飛行、さらにはオスプレイ配備に反対の声を上げるしか道はない。

<“唯一”の根拠>
*3-1:http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201702/CK2017020502000124.html (東京新聞 2017年2月5日) 【政治】「辺野古が唯一」日米防衛相一致 翁長氏、反対へ決意新た
 訪米中の沖縄県の翁長雄志(おながたけし)知事は三日、マティス米国防長官と安倍晋三首相ら日本側が米軍普天間(ふてんま)飛行場(宜野湾(ぎのわん)市)の移設に伴う名護市辺野古(へのこ)への新基地建設を「唯一の解決策」と確認したことについて「私の決意はかえって強くなっている」と反対の思いを新たにした。今後もあらゆる権限を使って建設阻止を目指し、沖縄の民意を世界に発信し続ける方針だ。知事として三度目となる首都ワシントン訪問は、トランプ米大統領の就任直後で、米国のアジア太平洋政策が固まっていない時期を選んだ。米下院議員十二人との面会や講演を通し、国土面積の0・6%にすぎない沖縄県に、在日米軍専用施設の七割が集中する過重負担の軽減や、新基地計画の見直しを訴えた。その最中に、日米両政府が沖縄の民意を顧みず、辺野古新基地の建設推進で一致したことに、翁長氏は「沖縄県民に対して大変失礼なやり方」と反発。「県民の感情的な高まりが米軍全体への抗議に変わり、基地の安定運用に影響しかねない。日米安保体制に大きな禍根を残す」と指摘した。安倍政権は六日に海上での本体工事に着手する方針で、翁長氏はあらゆる権限を使って建設を阻止すると主張。沖縄県が工事主体の防衛省沖縄防衛局に対し三月末で期限切れを迎える県の「岩礁破砕許可」の更新が必要であると通知するなど、本体工事の続行に抵抗する構えを見せる。翁長氏は「沖縄県民の圧倒的多数が反対していることを、トランプ政権の関係者に粘り強く訴えていきたい」と今後も働き掛けを続ける考えだ。

*3-2:http://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-439193.html (琉球新報社説 2017年2月5日) 日米「辺野古唯一」 民意踏みにじる愚論だ
 稲田朋美防衛相とマティス米国防長官が初めて会談した。マティス氏は前日に安倍晋三首相とも会談した。これらの会談では日米同盟の一層の強化に取り組む方針を確認した。さらに米軍普天間飛行場の移設に伴う名護市辺野古への新基地建設について「唯一の解決策」との認識で一致したという。県民世論調査では7~8割が辺野古移設反対を示している。「唯一の解決策」との認識には断じて同意できない。訪米中の翁長雄志知事は「辺野古に固執すると日米安保体制に大きな禍根を残す」と批判した。当然だ。翁長氏は2014年11月の知事選で、辺野古移設反対を公約に掲げて圧勝して当選した。県内では14年1月の名護市長選、12月の衆院選全選挙区、16年7月の参院選のいずれも新基地建設を拒否する候補が当選した。16年1月の宜野湾市長選は現職が勝利したが、選挙戦で辺野古移設の賛否を明言していない。6月の県議選では翁長県政与党が圧勝した。これらの選挙結果を見ても、沖縄の大多数の民意は「新基地建設拒否」であることは明らかだ。それにもかかわらず、日米両政府は辺野古移設で強硬姿勢を取り続けている。沖縄の自己決定権を踏みにじる行為が民主主義社会でまかり通っていいはずがない。トランプ大統領が選挙中に増額要求を示唆した在日米軍の駐留経費負担に関しては、一連の会談で議題にならなかったようだ。15年度の日本側負担は約1910億円で、負担率は86・4%だ。これに対して韓国は4割、ドイツは3割程度だ。マティス氏も会見で「日本は負担の共有モデル」と評価しており、負担増など応じられるはずがない。増額要求がなかったからと喜ぶわけにはいかない。なぜならば、日本は16年度から5年間の経費を削減するよう米側に要求していたからだ。今後は減額要求すら困難な情勢になってしまった。すでにトランプ流の「取引」に引き込まれているではないか。外務省によるとマティス氏は普天間移設について、こう述べたという。「プランは二つしかない。一つは辺野古。二つ目も辺野古だ」。民意無視の愚論だ。沖縄からマティス氏に、言葉を投げ返したい。「プランは二つしかない。一つは県外。二つ目は国外だ」

<次世代の自動車>
*4-1:http://mainichi.jp/articles/20170212/ddm/008/010/109000c (毎日新聞 2017年2月12日) 日米首脳会談 懸念薄れ、市場好感 経済対話、楽観と警戒
 日米首脳会談で、トランプ氏が円安や自動車輸出への批判を控えたことについて、市場関係者の間に「期待した以上の内容」と好感する声が広がった。最近の市場の重しになっていた日米摩擦への懸念が薄れたことで、週明け以降の株価にも好影響を与えるとの見方が出ている。「正直驚いた。日本側の思い描いた形ではないか」(ニッセイ基礎研究所の矢嶋康次チーフエコノミスト)。「日本の外交チームが相当周到に準備した印象」(大和総研の熊谷亮丸チーフエコノミスト)--。首脳会談について「前向きのサプライズ」との声が相次いだ。市場では、トランプ氏が首脳会談で対日貿易赤字を問題視し、是正策を要求するとの見方が強かった。日銀の金融政策を「円安誘導」とけん制することへの懸念もあり、7日の外国為替市場で一時、2カ月ぶりの円高・ドル安水準をつけた。三菱UFJモルガン・スタンレー証券の藤戸則弘投資情報部長は「市場は身構えていたが、杞憂(きゆう)に終わった。最大の懸念が薄れたことで、日経平均株価は1月の高値の1万9600円台を超えてくる」と株価上昇に弾みが付くと予測する。今後の展開で市場関係者が注視するのが、ペンス副大統領と麻生太郎副総理による経済対話の行方だ。ペンス氏がトヨタの工場が立地するインディアナ州知事を務めた穏健派だけに、熊谷氏は「日本ペースで交渉できる可能性がある」と期待する。一方で、矢嶋氏は「トランプ政権の副大統領なので、雇用創出や貿易収支改善が進まなければ(批判の)発言を始める。楽観はできない」と警戒が必要との立場だ。通貨安批判への懸念も依然強い。大規模減税やインフラ投資を掲げるトランプ氏の政策は、海外からの資金流入を招く一方、日本は大規模金融緩和で長期金利を低く抑えており、円安・ドル高が進みやすい。BNPパリバ証券の河野龍太郎チーフエコノミストは「米国の経済環境を考えるとドル高は続く。いずれ日銀の金融政策が円安誘導をしているとの批判が再燃するリスクはある」と指摘している。

*4-2:http://qbiz.jp/article/103491/1/ (西日本新聞 2017年2月11日) テスラ充電施設 九州で初の設置  福岡・須恵町
 米国の電気自動車(EV)メーカー「テスラ」の日本法人が10日、福岡県須恵町に、テスラ車専用の急速充電施設を開設した=写真。同様の施設は国内14カ所目で、九州では初めて。本州から九州にテスラ車でドライブする人などの利用を想定している。30分の充電で270キロ走行できるという。施設は、九州自動車道のインターチェンジ近くのホームセンター駐車場にあり、充電器6台を置く。24時間利用できる。また、ヒルトン福岡シーホーク(福岡市)の駐車場にも普通充電器4台を設置した。テスラの日本法人は「今後も専用充電施設のネットワークを拡大したい」としている。

*4-3:http://www.nikkei.com/article/DGXMZO98310220R10C16A3000000/?n_cid=NMAIL002 (日経新聞 2016/4/11) 「渋滞苦」から解放 自動運転、簡易版でまずお試し
 「やっちゃえNISSAN」。歌手の矢沢永吉がハンドルから手を離してニヤリと笑う日産自動車のテレビCMが示すように、「自動運転車」の実用化が近づいている。2020年に市販化が期待されるのは、国内で「レベル3」と定義される自動運転車だ。加減速や制御のすべてをクルマが行い、緊急時のブレーキ操作だけをドライバーが担うものだ。自動運転車では、ドライバーの認知、判断、操作をサポートする要素技術が重要なカギを握るのだが、実は人間の目(認知)や手足(操作)を代替する技術の大半は、かなり熟成されている。「特に操作については、すでにクルマ側は人間の100倍の能力を発揮することが可能」(日産自動車ADAS&AD開発部の飯島徹也部長)というほどだ。例えば、ここ数年で普及した「自動ブレーキ」は、高精細のカメラやミリ波レーダー、超音波センサーを駆使して前方衝突を防ぐ。他にも、走行車線からクルマが出ないようにハンドルを自動制御する「レーンキープ技術」や、後方カメラ、センサーを使って駐車スペースを把握し、ハンドル操作をせずに済む「自動駐車システム」など、AI(人工知能)による複雑な判断を必要としない限られたシーンでは、すでに自動運転の要素技術が生きている。
■簡易版でテスラ先行
 これらを組み合わせて、簡易な自動運転機能を市販車でいち早く搭載したのが、テスラモーターズジャパンだ。同社の電気自動車「モデルS」は、ソフトウエアを2016年1月にアップデート。前方のミリ波レーダーや単眼カメラ、車体の周囲360度を感知する12個の超音波センサーを使って、「オートパイロット」「オートレーンチェンジ」「オートパーク」の3つが機能する。このうちオートパイロットは、前方車両の追従や自動ブレーキに加えて、ハンドルを制御して同じ車線を維持する機能だ。速度標識をカメラで認識しながら、規制速度のプラス10km/hを上限として加減速を行い、信号で完全停止した後も前方のクルマの発進を検知して自動で走り出す。この間、ドライバーはハンドルに手を添えておくだけだ。実際に試乗すると、最初はブレーキペダルをすぐ踏めるよう身構えていたが、モデルSは悠然とカーブを曲がり、前のクルマに対して適度な車間距離を保ちつつ実に滑らかに走る。発進、停止を繰り返す渋滞時のストレスもなくなり、簡易版ながら満足度は高い。
■普及車まで拡大の兆し
 ただ、安全確認までは自動化されていない。例えば、試乗時に前のクルマが赤信号に変わるタイミングで交差点に進入したのだが、モデルSは追従をやめず、一瞬ヒヤリとさせられた。また、白線がかすれている道路でオートパイロットは機能しないため、実際は高速道路が主な利用シーンになる。一方、オートレーンチェンジは、オートパイロット利用時にウインカーを出すと、クルマが自動でハンドルを動かして隣の車線に移動する機能。ウインカー操作からほとんど迷いなく車線変更できるが、モデルSの超音波センサーで検知できるのは約5mの範囲。後方からクルマが迫っていないか、人間がミラーで十分確認する必要はある。こうした簡易な自動運転機能は2016年、高級車から普及車まで一気に広がりそうだ。アウディ ジャパンが2月に発売した新型「アウディA4」は、アクセル、ブレーキに加えてハンドル操作もクルマが行う「トラフィックジャムアシスト」を標準装備。日産も混雑した高速道路の単一車線で自動運転を行う技術「パイロットドライブ1.0」の搭載車を2016年中に発売するとしており、フルモデルチェンジを控える人気のミニバン「セレナ」が対象車として有力視されている。
■限定地域なら“無人タクシー”も
 各社が簡易的な自動運転車を導入する一方で、その先に進むには、まだ課題が多い。日産は2018年に高速道路での車線変更を自動的に行う技術、さらに2020年までに一般道の交差点を通過できる技術を導入する計画だが、「一般道に出ると、自動運転のハードルは格段に上がる」(飯島氏)と話す。というのも、一般道は“道しるべ”となる白線が消えかかっている場合があり、交差点内はそもそも白線すらない。そのため、画像を含む高精度の地図などと照らし合わせて走行ルートを判断する必要がある。また、信号のない交差点で歩行者やバイクなどのイレギュラーな動きを見定めたり、混雑した車線に半ば強引に合流する判断をクルマに任せるには、まだ荷が重い。緊急時以外でも人間の介入が必要なケースが残り、米グーグルが目指すような、ボタン一つでクルマのAIがどこへでも運んでくれる「完全自動運転車(レベル4)」の実用化はかなり先の話だ。ただ、走行エリアやルートを限定した形なら、ドライバーを必要としない完全自動運転車にも光明が見えてくる。国内で目指すのはクルマ開発ベンチャーのZMPと、DeNAがタッグを組んで設立したロボットタクシーだ。同社は2016年2月末から神奈川県藤沢市で実証実験を開始。今回は走行ルートが3kmほどの単純な一本道で、緊急時の安全確保のため乗員が同乗する。今後は走行ルートに右左折を組み込んだり、無人営業を想定した車内サービスを試したりと、実験を繰り返す計画だ。そして2020年までに、あらかじめ設定したルート上の複数のポイントで乗り降りできる“無人タクシー”の営業を、千葉市の幕張周辺や東京・台場エリアで始める構え。「こうした限定エリアを複数つくったうえで、いずれは整備が行き届いた幹線道路や高速道路を使って各エリア間を無人タクシーで結ぶことを目指している」(ロボットタクシーの中島宏社長)と話す。他にも、乗務員の人件費がかからない無人タクシーは、人手不足や不採算で廃止された地方の路線バスなどに代わる移動手段として期待を集めており、自治体の後押しを受けて普及するかもしれない。

*4-4:http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2017021801001024.html (東京新聞 2017年2月18日) 米環境長官に温暖化懐疑派 上院承認、大統領令で規制緩和も
 米上院は17日、トランプ大統領が環境保護局(EPA)長官に指名した地球温暖化懐疑派のスコット・プルイット氏(48)の人事を承認した。民主党の大半が反対したが、多数派の共和党が支持し、賛成52で反対46だった。プルイット氏は同日、宣誓の上、就任した。産業重視のトランプ氏は、新たな温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」離脱に言及するなど環境保護に消極的な姿勢を示しており、プルイット氏就任に合わせ、環境規制を大幅に緩和する大統領令を準備しているもようだ。オバマ前政権が推進した地球温暖化対策が一気に後退する懸念が強まっている。


PS(2017年2月19日追加):与野党を問わず、またメディアも含めて、女性の大臣・国会議員・リーダーが言うと、正しいことを言っていても「わかっていない」「資質がない」など「女性は知識も実社会での経験もない」という女性蔑視の先入観を利用した批判をされることが多い。しかし、*5の稲田防衛相(弁護士)の場合は、「日報は私が出させた」「憲法九条上の問題になる言葉を使うべきでないから、戦闘ではなく武力衝突という言葉を使った」としており、政府が前防衛相時代に派遣した南スーダンでの自衛隊活動について、憲法や安全保障法制を熟知した上で、言葉の定義を使って正当化したものだ。
 そのため、この問題の本質は、稲田防衛相の資質ではなく、①南スーダンで戦闘(もしくは武力衝突)が起こったこと ②反政府勢力が国に準じる組織と評価できる支配系統、支配領域を有していなければ戦闘ではなく憲法九条違反にならないと解釈していいのか(レジスタンス活動もあるだろう) ③戦闘であれ武力衝突であれ、それが起こる場所に日本の自衛隊を派遣してどちらかの側につくのは日本国憲法違反ではないのか ということである。しかし、行ってしまった軍隊が「戦闘が起こったから」と言って引きあげるのは、他国にとっては予想外であり、難しいのではないかと思う。
 
 
                                   2017.2.9中日新聞(*5)より

*5:http://www.chunichi.co.jp/article/front/list/CK2017020902000076.html 中日新聞 2017年2月9日) 防衛相「戦闘」を言い換え 9条抵触避け「衝突」
 稲田朋美防衛相は八日の衆院予算委員会で、南スーダン国連平和維持活動(PKO)に参加している陸上自衛隊部隊の日報に現地での「戦闘」が明記されていた問題を巡り、「法的な意味における戦闘行為ではない。国会答弁する場合、憲法九条上の問題になる言葉を使うべきではないから、一般的な意味で武力衝突という言葉を使っている」と述べた。海外での武力行使を禁じた憲法九条にPKO参加部隊が違反しないよう定めた参加五原則に触れないよう、「戦闘」を「武力衝突」に置き換えたとも取られかねない発言だ。民進党の小山展弘氏が、日報にある戦闘と武力衝突の違いについて質問。稲田氏は「国際的な武力紛争の一環として、人を殺傷する行為が行われていたら、憲法九条上の問題になる。憲法九条に関わるのかという意味において、戦闘行為ではない」と主張。「日報に書かれているのは一般的な戦闘の意味だ」と強調した。稲田氏は、反政府勢力が「国に準じる組織と評価できる支配系統、支配領域を有していなかった」としてPKO参加五原則は維持されていたとの従来の政府見解を繰り返した。防衛省は当初廃棄したと説明していた日報の一部を七日に開示。陸自が活動する首都・ジュバ市内で昨年七月に大統領派と反政府勢力の「戦闘が生起した」と明記していた。
◆歯止め形骸化懸念
 <解説> 憲法九条は「国際紛争を解決する手段」としての武力行使を禁じている。政府は、武力行使の意味を「国際的な武力紛争の一環としての戦闘行為」だと解釈している。自衛隊がこうした戦闘行為に巻き込まれる恐れがある場合は、PKOから部隊を撤退させなければならない。PKO参加五原則が「紛争当事者間の停戦合意」や「自衛隊の中立的立場の厳守」などを条件としているのも、自衛隊の活動が九条の解釈に基づく戦闘行為に該当するのを避けるためだ。
 しかし、防衛省が一部黒塗りで開示した陸上自衛隊の南スーダンPKOの日報は、陸自が活動する首都ジュバで「戦闘が生起した」と明記。戦車や迫撃砲を使った激しい戦闘が発生したことも報告した。稲田朋美防衛相は、日報に書かれた「戦闘」について、現地の反政府勢力が安定した支配地域を持たないことを理由に「国際的な武力紛争の一環として行われたものではない」と説明。戦闘でなく「武力衝突」という言葉を使う理由を「憲法九条上の問題」になるのを避けるためと説明した。こうした説明が許されれば、自衛隊が戦闘に巻き込まれるのを防ぐための九条の歯止めが、言葉の置き換えによって形骸化しかねない。南スーダン情勢を巡っては、国連事務総長特別顧問が七日に「大虐殺が起きる恐れが常に存在する」と指摘し、国内で戦闘が継続していると批判した。政府も南スーダンの厳しい現状を直視し、自衛隊の活動継続の是非を判断すべきだ。


PS(2017年2月23日追加):*6-1のように、夜間・早朝の米軍機飛行差し止めや騒音被害に損害賠償を求める訴訟で那覇地裁沖縄支部は騒音被害の損害賠償だけを認めた。そして、辺野古新基地についても、自然破壊や危険性などの理由で多くの市民が反対しているのに、*6-2のように、米軍運用のための刑事特別法を目的外に使用して刑罰を示すことによって報道の抑制をしようとしており、抵抗する市民が逮捕された。さらに、*6-3のように、基地建設に反対する市民団体が工事車両を止めようと座り込みを決めると、捜査機関が拡大解釈して裁量で組織的威力業務妨害が目的の組織的犯罪集団と判断して仲間への連絡を準備行為と認定して逮捕することもできるようにする法律を、「共謀罪→テロ等準備罪(名称変更)」として制定しようとしているのである。しかし、日本のTVは、ぼやけたような報道番組や金正男氏殺人事件ばかりを長時間報道しており、このような日本の民主主義の岐路になる法律の審議については隠しているかのように報道しない。
 そのため、このように日本人全体に日本国憲法の民主主義や人権尊重の精神が根付いていない中で、*6-4のように、自民党が2017年運動方針案として「改憲原案の発議に向けて具体的な歩みを進める」としているのは、憲法を変更すること自体が自己目的化している上、変更の内容に戦前回帰志向があるため改悪になる危険性が大きく、手をつけない方がよほどよいというのが私の結論である。

*6-1:http://ryukyushimpo.jp/news/entry-449470.html (琉球新報 2017年2月23日) 差し止め認めず、損害賠償のみ命じる 第3次嘉手納爆音訴訟判決
 米軍嘉手納飛行場の周辺住民2万2048人が国を相手に、夜間・早朝の米軍機飛行差し止めや騒音被害に損害賠償を求めた第3次嘉手納爆音訴訟の判決が23日午前、那覇地裁沖縄支部(藤倉徹也裁判長)で言い渡された。藤倉裁判長は差し止めの訴えを退け、過去分の損害賠償の支払いのみを命じた。

*6-2:http://mainichi.jp/articles/20170220/org/00m/070/003000c (毎日新聞 2017年2月20日) <在日米軍再編>辺野古工事、立ち入り禁止文書 「報道への脅し」批判の声
 米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)移設のための名護市辺野古(へのこ)沿岸部埋め立てに向けた作業を前に、防衛省沖縄防衛局は先月、沖縄県政記者クラブ加盟各社に海上の臨時立ち入り制限区域に許可なく入らないよう求める文書を出した。日米地位協定の実施に伴う刑事特別法の条文を示し、入った場合は刑罰に処されると警告する内容で、地元の記者らから「報道への脅しだ」と反発の声が出ている。  文書は「正当な理由なく立ち入った場合には、刑事特別法2条の規定に基づき、1年以下の懲役または2000円以下の罰金もしくは科料に処される」と明記。さらに「先般、報道関係者と思われる方が乗船した船舶が、臨時制限区域に許可なく立ち入り、当局の警備業務受注者の警告にも従わない事案が発生した」と記している。防衛局の児玉達哉報道室長は毎日新聞の取材に「威嚇するつもりはなく、あくまで立ち入りへの警告だ」と説明した。「先般」の出来事の内容を尋ねたが「警備上の観点から具体的な内容は差し控える」と答えなかった。制限区域は防衛省が2014年に辺野古の米軍キャンプ・シュワブ沖約562ヘクタールに拡大して設定し、常時立ち入りを禁止している。地元紙の琉球新報は1月20日朝刊の社説で「刑特法適用をちらつかせた取材妨害であり、報道各社に対する許し難い脅しだ」「危惧することは報道の監視が広大な海域に行き届かなくなることだ」と批判した。防衛省は今月、海上工事を本格化させた。制限区域外から工事現場は数百メートル離れ、ブロックの投下で海底のサンゴにどのような影響が出ているかをチェックできないという。元沖縄弁護士会会長の加藤裕弁護士は「制限区域の設定自体が法の乱用だ。刑事特別法は米軍の運用のためのもので、日本政府の公共工事に適用するのは法の目的外使用にあたる。さらに、工事に実質的な支障がないのに刑罰を示すのは、報道を事前に抑制しようとするものだ」と厳しく指摘した。

*6-3:http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201702/CK2017022202000131.html (東京新聞 2017年2月22日) 「共謀罪」拡大解釈の懸念 準備行為、条文に「その他」
 「共謀罪」と趣旨が同じ「テロ等準備罪」を創設する組織犯罪処罰法改正案を巡り、政府は、犯罪の合意に加えて処罰に必要な要素として検討している「準備行為」について、条文で「資金または物品の手配、関係場所の下見その他」と規定する方針を固めた。「その他」の文言が盛り込まれることで拡大解釈が際限なく広がり、準備行為が歯止めとならないことが懸念される。共謀罪法案は、犯罪に合意しただけで罰するのは内心の処罰につながるといった批判を受け、過去三度も廃案になってきた。安倍晋三首相や金田勝年法相らは今回、新たな共謀罪法案について「準備行為があって初めて処罰の対象とする」と過去の法案よりも適用範囲を限定する方針を説明。一方でハイジャックテロや化学薬品テロでは、現行法の準備罪や予備罪よりも前段階での処罰が可能になるとして、テロ対策での必要性を強調してきた。新たに明らかになった条文では「犯罪を行うことを計画をした者のいずれか」によって「計画に基づき資金または物品の手配、関係場所の下見その他」の準備行為が行われた場合、処罰対象となる。ただ、準備行為はそれ自体が犯罪である必要がない。例えば、基地建設に反対する市民団体が工事車両を止めようと座り込みを決めた場合、捜査機関が裁量で組織的威力業務妨害が目的の組織的犯罪集団だと判断し、仲間への連絡が準備行為と認定される可能性がある。また、政府への抗議活動をしている労組が「社長の譲歩が得られるまで徹夜も辞さない」と決めれば、組織的強要を目的とする組織的犯罪集団と認定され、誰か一人が弁当の買い出しに行けば、それが準備行為とされる可能性がある。米国の共謀罪に詳しい小早川義則・名城大名誉教授(刑事訴訟法)は「米国では、顕示行為(準備行為)は非常に曖昧で、ほんのわずかな行為や状況証拠からの推認で共謀が立証される」と説明。「日本の法体系と全くの異質のものを取り入れる必要性があるのか」と疑問を呈した。また、「その他」は無制限に解釈が広がる恐れがある。新屋(しんや)達之・福岡大教授(刑事法)は「何でも当てはめることができ、限定にはならない。結局、犯罪計画と関係ある準備行為かどうかは、捜査側の判断になる」と述べた。

*6-4:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/408022 (佐賀新聞 2017年2月22日) 「改憲発議へ歩み進める」 自民、審査会の論議促進、2017年運動方針案
 自民党は21日、2017年運動方針案を発表した。安倍晋三首相の憲法改正への強い意欲を踏まえ「改憲原案の発議に向けて具体的な歩みを進める」と明記。衆参両院の憲法審査会での論議を促進するとした上で「改憲に向けた道筋を国民に鮮明に示す」と強調した。小池百合子東京都知事との対立で苦戦が予想される7月の都議選での勝利を目指すとし、次期衆院選にも「常在戦場」で臨むとアピールした。党関係者によると、改憲原案の「発議」との文言は首相の指示で急きょ盛り込まれた。同党は運動方針案を3月5日の党大会で採択する予定。与党が衆参両院で改憲発議に必要な3分の2の議席を確保している状況を受け、国会での改憲論議を進めたい考えだ。運動方針案のタイトルは「日本の未来を切り拓く」。山口泰明・党運動方針案起草委員長は記者会見で「今年は憲法施行から70年であり、新時代を切り開く決意を示した」と説明した。改憲を巡り、民進党など野党の協力を念頭に「憲法審査会で幅広い合意形成を図る」と表明。世論喚起のため「改憲賛同者の拡大運動を推進する」と言及した。地方選挙に関し「県連など地方組織を積極的に支援する」と宣言。都議選については「全国的に注目されている」と位置付けた。次期衆院選を巡り、当選1、2回の約120人の選挙基盤強化が重要だと指摘した。外交面では、世界で保護主義や内向き傾向が強まっているとして、トランプ米政権発足などに触れ「不透明感と変化の兆しが漂う一年となる」と予測。首相による「地球儀俯瞰外交」を支える姿勢を明確にした。


PS(2017年2月26日追加):*7のように、政府の政策や権力に反対する人を弾圧する目的で逮捕して長期に勾留するのは、人権侵害であるとともに民主主義にも反し、日本ならどの時代の話か、現在ならどこの国の話かと思われる。

*7:http://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-450615.html
(琉球新報社説 2017年2月25日) 山城議長保釈棄却 「政治弾圧」批判に背く
 最高裁は長期勾留が続く山城博治沖縄平和運動センター議長の保釈申し立てを退けた。不当な人権侵害を容認する決定であり「人権の砦(とりで)」としての司法の役割を自ら放棄したのに等しい。山城議長はがんの病状悪化が危惧されながら家族の面会も禁止されている。拘置所で「家族に会いたい」と訴える言葉に胸が痛む。当初の逮捕容疑はヘリパッド建設現場で有刺鉄線を切断した器物損壊の微罪であり、逮捕の必要性すら疑わしい。その後、防衛省職員にけがを負わせた傷害容疑、威力業務妨害容疑が加わり、勾留は4カ月を超す長期に及んでいる。いずれも防衛省職員や警察官が目撃しており、客観的な証拠は十分なはずだ。那覇地裁は「証拠隠滅の恐れ」を保釈を認めない理由としているが、説得力はない。山城議長の長期勾留がヘリパッドや辺野古新基地建設反対の運動に与えるダメージは大きい。国内の刑法研究者が「正当な理由のない拘禁」「勾留は表現行為への萎縮効果を持つ」と釈放を求める異例の声明を出し、「政治弾圧」の批判が高まっている。国際人権団体アムネスティー・インターナショナルも釈放を求め、批判は国際社会に広がっている。保釈を認めない最高裁の決定は国際世論に背くものだ。最高裁が長期勾留を容認したことで、基地に反対する市民活動への不当な捜査、逮捕・勾留、政治弾圧が強まることを危惧する。元東京高裁裁判長の木谷明弁護士は「裁判官は、検察官の主張に乗せられてしまいがちだ」と実情を明かし、山城議長の長期勾留を「厳しすぎる。精神的な支援を遮断して自白を迫る『人質司法』の手法」と批判する。最高裁によると2015年の勾留請求却下率はわずか3・36%にとどまる。勾留申請に対する裁判官の審査が形骸化し、検察の求めるままに拘留を認める検察主導が実態ではないか。この間、平和運動センター、ヘリ基地反対協議会など活動拠点が家宅捜索され、パソコンやUSBメモリーが押収された。基地反対運動の事務所に捜索が及ぶのは異例で、関係者や活動の情報を得る狙いがなかったか疑わしい。関係者はなお早期保釈に尽力してほしい。同時に「共謀罪」を先取りするような警察、検察の捜査活動にも注意を払う必要がある。

| 辺野古・普天間基地問題::2015.4~ | 05:39 PM | comments (x) | trackback (x) |
2017.2.4 日本における外国人労働者・難民の受入状況、日本人の労働参加率、働き方改革について (2017年2月6、7、9《図の説明》、11日追加)
     
 2017.1.28  外国人労働者と雇用事業所数推移 2016年外国人労働者数 外国人労働者賛否   
  東京新聞                2017.1.28西日本新聞          2016.2.4朝日新聞

(図の説明:日本で働く“外国人労働者”は次第に増え、日本全国では2016年10月末で108万3,769人となったが、総人口(1億2,698万人)に占める割合は0.85%にすぎない。そのうち九州は59,053人で日本全体の5.4%だ。また、“外国人労働者”と呼ばれている人のうち、技能実習生や留学生のアルバイトは本来の労働者ではない上、経済連携協定による受入者も3年で帰国を求められる人が多いため、労働者としてあまりあてにならない。なお、我が国は、専門的・技術的分野の外国人労働者は積極的に受け入れているが数が少なく、永住者・定住者には戦前から日本に住んでいる人も入っている。なお、外国人労働者の受け入れには、全体では過半数の人が賛成だが、40代男性のみ反対の方が多い)

  
      *1-5、2017.2.4佐賀新聞より                        労働力人口推移
                                     女性の就労が進む場合と進まない場合

(図の説明:日本の労働力人口は、女性や高齢者の就労が進んでも減少するが、進まなければ急速に減少する。そのため、外国人労働者の受入は合理的な選択となっており、外国人労働者なしでは考えられない職種や地域もあるため、受入地域は外国人と生活者として共生する準備が必要だ)         

(1)日本における外国人労働者と難民の受け入れについて
1)外国人労働者と難民の受け入れについて
 厚労省の調査で、*1-1のように、日本で働く外国人労働者が2016年10月末時点で108万3,769人になったことが分かり、厚労省は、①政府が単純労働に従事する技能実習生の受け入れを拡大し ②留学生の就職支援を強化し ③高度技術を持つ人材の受け入れが増えたことが要因だとしている。

 しかし、一番上の左図の専門的・技術的職種、永住者・定住者、看護師・介護士など特定の職種の人のみが外国人労働者であり、技能実習生・留学生は正確には技術や知識を学びに日本に来た人で労働が目的で来た人ではないため、世界標準では外国人労働者と認められないだろう。

 また、特定の職種の外国人労働者も、*1-2のように、労働基準法などを順守せず過酷な労働を強い、日本人と比較して給与水準が低く設定されて、合理的理由なき差別のある職場も多いのは問題だ。

 さらに、難民については、*1-3のように、日本政府は今年から5年間でシリア難民の留学生とその家族を計300人を受け入れるそうだが、規模が小さすぎて殆どの人が救われず、シリアで約480万人が難民として周辺国に逃れている中で、欧米諸国の①米国60,964人 ②カナダ48,089人 ③ドイツ43,708人 ④英国20,000人 ⑤フランス16,497人 ⑥ブラジル11,450人 ⑦ノルウェー9,000人 ⑧スイス6,700人 と比較して、受け入れ人数があまりにも少ないと言わざるを得ない。

2)イスラム教徒の受け入れについて
 それでは、大量のイスラム教徒を受け入れた場合についてだが、日本では「信教の自由」を根拠に学校など公共の場での女性のベールを禁止したり、浜辺でのブルキニ着用を禁止したりすることを批判する声が強いが、これは、実状を知らない日本人の甘さだ。

 何故なら、その傍にいるイスラム教徒の男性は、ベールをかぶっていない女性や浜辺で通常の水着を着ている女性や教育を受けて社会で自由に活躍している女性について、それが異教徒であってもひっかかるものがあるため、近くにいる日本女性の行動も制限されることになるからだ。例えば、私は、20年くらい前、ODAでキルギスタンに行った時、「日本人女性がODAで来ていることが知れ渡って、街のイスラム教徒の男性がつけまわしていて護りきれないから、早く仕事を終わって日本に帰って」と、同じチームの男性チーフに言われて、ショックを受けたことがある(ちなみに、同じチームに親切なイスラム教徒の男性もいて、一緒に市場を見に行き、説明を聞いて、よい見聞もできたことを付け加えておく)。

 また、多くのイスラム教徒の移民を受け入れているフランスでは、*1-4のように、沿海のリゾートでブルキニ着用を禁止した自治体の数が約30に上り、サルコジ前大統領を先頭に右派勢力はブルキニ着用を全国で禁止する措置の法制化を強く求めており、一方、ベルナール・カズヌーブ内相は地元紙のインタビューで「ブルキニの着用を法律で禁止するのは憲法違反だ」と指摘しつつ、「イスラム教徒側にも、引き続き私たちと共に男女平等、共和国の不可侵の原則、寛容さに関わっていってもらいたい」と注文していることから、現在の状況が伺える。そのため、私は、イスラム教も、もう中世型を脱して21世紀型に変化すべき時だと考える。

 そこで、日本がイスラム教徒の難民を国内に受け入れるにあたっては、日本国憲法で男女平等や教育の権利・義務、勤労の権利・義務などの必要事項が定められており、民法で重婚の禁止が定められており、男女共同参画基本法や男女雇用機会均等法・女性活躍推進法もあるため、「日本国内では日本の法律に従う」という誓約書への署名を最低の受入要件とし、その意味をしっかり説明しておく必要がある。

3)外国人労働者や難民の受け入れについて
 佐賀県基山町長野地区の住民は、*1-5のように、外国人に自転車や地域で暮らすためのマナーを身につけてもらおうと、英語、ネパール語、中国語、ベトナム語、日本語の5カ国語で解説し、親しみやすいイラストを添えて小冊子を作ったそうだ。これは、日本人も勉強した方がよさそうだが、今後は、外国人労働者を雇う企業が増え、外国人労働者を受け入れた方が地域も活性化するため、重要な一歩だろう。

 また、過疎地や国境離島ではない離島で、既にある学校や空き家などのインフラを使い、まとまった数の外国人労働者や難民を、まずは農林漁業や中小企業の被用者として受け入れることも考えられる。

(2)女性・高齢者の雇用について
1)高齢者の定義と定年制について
 *2-1のように、老年学会が高齢者は「65歳以上」ではなく「75歳以上」としたため、高齢者の定義、定年年齢・年金支給開始年齢の妥当性について議論が始まった。確かに、日本人の平均寿命が延び、2015年は女性87.05歳、男性80.79歳になったため、75歳くらいまで働ける高齢者は多いだろう。

 そのため、定年制を廃止して働きたい人は働く方式にするのが理想だろうと私も考える。しかし、その際には、望む仕事が得られるかどうか、教育は人生の前半だけでなく途中での追加も必要なのではないかということが問題になる。

2)労働参加率上昇の必要性
 九州経済調査協会は、*2-2のように、急速な人口減少で企業の人材確保が難しくなっており、今後はさらに争奪戦が激しくなるため、女性や高齢者など多様な人材の活用に加え、限られた要員で稼ぐ力を高めることが必要だとしており、尤もだ。

 しかし、女性は賃金よりも職種や勤務時間、休日などを重視しているとして、①短時間勤務 ②地域限定正社員 ③再雇用 ④IT技術を活用した「テレワーク」の導入 などを提言しているのは、「正社員での採用」や「男性との同一労働同一賃金」の仕事が自由に選択できた上での話だろう。「女性=短時間勤務、自宅でのテレワーク、再雇用を希望する」と位置づけるのは、家事と仕事の両方を女性が行うことを女性も望んでいるという前提の男性の発想であり、30~50年古いと言わざるを得ない。

(3)日本における明確な女性差別
 私も驚いたが、*3-1のように、埼玉県川越市のゴルフ場が女性の正会員を認めていなかったのだそうだ。これは、女性に、ゴルフをするような仕事上の場面を想定していないということだろうが、私から見ると、「はあ?何を時代錯誤してんの!」と言いたくなる状況だ。ちなみに、関東には、公立高校も男女別学の地域が多く、これは高校から男女で別の教育をしているということで、埼玉県もその一つだ。

 そして、それを批判した小池百合子東京都知事に対し、丸川珠代五輪相は電話で真意を聞いたそうだが、真意を聞くということは、何か他に真意があることを想定していたのだろうか? 小池東京都知事が「言葉通りです。せっかくスカートをはいておられる五輪相もいるのだから、もっと明確に言うべきではないか」と言われたのは、全く同感だ。

 なお、*3-2のように、成人年齢を20歳から18歳に引き下げる民法改正案に、婚姻適齢を男女とも「18歳以上」に統一する規定が盛り込まれていることが分かったと、佐賀新聞が「置き去りだった差別」として記載している。先進国では男女同一が普通であるのに、日本では女性の方が心身の発達が早い(そして発達が速く止まる)などとしているのは非科学的であり、男女平等後進国のなせるわざだ。

<外国人労働者と難民の受入状況>
*1-1:http://qbiz.jp/article/102594/1/
(西日本新聞 2017年1月28日) 外国人労働者100万人突破 全都道府県 前年上回る
 日本で働く外国人労働者が初めて100万人を突破し、2016年10月末時点で前年比19・4%増の108万3769人になったことが27日、厚生労働省の調査で分かった。08年の集計開始以来最大の増加率で、全都道府県で前年を上回った。政府が事実上、単純労働に従事する技能実習生の受け入れを拡大してきたことなどが背景にあり、国民的議論がないまま外国人労働者受け入れが進んでいる。厚労省は留学生の就職支援強化や、高度な技術を持つ人材の受け入れが増えたことが要因としているが、働き先は製造業が31・2%、卸売・小売業が12・9%で、人手不足感の強い業種を中心に、外国人労働者が増えている。全国の労働者の2%程度を占め、雇用する事業所数も最多の17万2798カ所に達した。在留資格別でみると、高度で専門的な知識のある人材が20・1%増の20万994人なのに対し、日本の技術を学ぶ技能実習が25・4%増の21万1108人、留学生が25・0%増の20万9657人となっている。国籍別での最多は中国の34万4658人で、前年比6・9%増。ベトナムが56・4%増の17万2018人、フィリピンが12万7518人で続いた。増加率では、ネパールも35・1%と大幅に伸びた。都道府県別では、東京が最多の33万3141人で、2番目に多い愛知の11万765人と合わせ2都県で全体の4割が集中。九州では福岡が全国で8番目に多い3万1541人で、留学生アルバイトの比率は全国最多の42・7%だった。政府は介護現場での技能実習生受け入れの解禁を既に決め、今国会では国家戦略特区を活用して農業分野で外国人が働けるよう法改正する方針で、今後も受け入れを拡大する。
*外国人の就労 外国人が日本で働くためには在留資格が必要で、大きく分けて(1)永住者や日本人の配偶者ら、日本人と同じように就く仕事に制限がないグループ(2)外交官や医師、外国料理の調理師らそれぞれ定められた範囲、職種で就労が認められるグループ−がある。技能実習生や経済連携協定(EPA)に基づく看護師などは(2)のグループで、昨年の入管難民法改正で新たに介護分野も加わった。

*1-2:http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2017020301001792.html (東京新聞 2017年2月3日) 比女性らと介護施設が和解、大阪 過酷労働を陳謝
 大阪府東大阪市の介護施設「寿寿」に勤めていたフィリピンから来日した男女ら10人が、厳しい条件で勤務を強いられたなどとして、未払いの賃金や慰謝料などを求めた訴訟が3日、大阪地裁(菊井一夫裁判長)で和解した。和解は、施設側が労働基準法などを順守せず、過酷な労働を強いたことを陳謝し、総額計約1千万円の解決金を支払う内容。訴状などによると、10人はいずれもフィリピンから来日した20~50代の男女。日本人の職員に比べ給与水準が低く、差別的な待遇だったとし、それぞれの未払い賃金のほか、残業代など計約4100万円を請求していた。

*1-3:http://digital.asahi.com/articles/ASK225HLZK22UTFK00R.html?iref=comtop_list_int_n03 (朝日新聞 2017年2月3日) シリア難民、300人規模で受け入れへ 政府、定住に道
 日本政府が今年から5年間で、シリア難民の留学生とその家族を計300人規模で受け入れる見通しになった。留学生は配偶者と子供を帯同でき、家族にも生活手当が支給される。留学終了後は必ずしも帰国する必要がなく、事実上家族とともに定住する道を開くことになる。特定国のまとまった難民受け入れ策としては、1970年代後半から2005年までに1万人を超えたインドシナ難民、10年から計123人が来日しているミャンマー難民以来となる。国際協力機構(JICA)の技術協力制度を活用し、年20人の留学生を受け入れる。対象はレバノンとヨルダンに逃れたシリア人難民。JICAはシリアの一般家庭の家族構成を踏まえ、5年の受け入れ数は300人規模になると試算。今年夏、最初の20人と家族が来日する予定だ。日本政府は昨年5月、JICA枠と文部科学省の国費外国人留学制度枠(年10人)を使い、5年間で150人のシリア難民を受け入れると表明。主要7カ国(G7)首脳会議(伊勢志摩サミット)の議長国として難民問題に前向きに取り組む姿勢をアピールする狙いで、留学生の募集や留学先の選定を進めてきた。JICA枠は、留学終了後の帰国を義務づけないうえ、留学中は本人に月約14万円、配偶者に月1万3千円、子供1人当たり月6500円を支給するのが特徴。日本での就職も後押しし、事実上定住を容認する内容だ。JICAは「あくまでも帰国して復興を担う人材の育成が目的だが、(内戦状態の)シリア情勢を考えると卒業後すぐに帰国しなさいとはならない」(担当者)と説明する。日本は欧米各国に比べて難民受け入れに後ろ向きで、15年に難民認定されたのは27人。一方で、混乱が長期化しているシリアでは約480万人が周辺国などに逃れているとみられ、欧米諸国は数年前から、外国に逃れた人を別の国が受け入れる「第三国定住」制度で多くのシリア難民を受け入れてきた。この制度は日本にもあり、これまでミャンマー難民を受け入れてきた。シリア難民については、政府内に「第三国定住制度で受け入れるほど、国内の世論が熟していない」との意見があり、JICAの既存制度を活用することにしたという。移民大国の米国ではトランプ政権が誕生し、難民受け入れの規制に転換。欧州でも反移民を掲げる右派勢力が台頭している。世界の難民政策が曲がり角を迎える中、日本はミャンマー難民の2倍以上のシリア難民を受け入れることになる。国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)のダーク・ヘベカー駐日代表は「日本はまだ、永住を前提としたシリア人の定住を受け入れる準備ができていない。一方で、何かしなければならないことをよく分かっている。留学生としての受け入れは『妥協案』なのだろう」と指摘する。難民問題に詳しい筑波大の明石純一・准教授は「定住も意識しており、中東の難民問題へのアプローチとしては画期的。ただ人数が圧倒的に少ない。保護を必要とする世界の難民全体のうち微々たる数に過ぎない。今回の仕組みをパイロット事業と位置づけ、受け入れ人数を広げていってほしい」と話している。(機動特派員・織田一)
     ◇
■主要国のこれまでのシリア人難民受け入れ
                   ※表明分含む
  国名       人数
①米国      60964
②カナダ     48089
③ドイツ     43706
④英国      20000
⑤フランス    16497
⑥ブラジル    11450
⑦ノルウェー    9000
⑧スイス      6700
-----------------------------------------------------------------
日本        300規模  ※日本はJICA枠での今後の受け入れ見通し。
                    そのほかは、昨年末時点の国連難民高等弁務官事務所調べ。

*1-4:http://www.afpbb.com/articles/-/3098942?utm_source=yahoo&utm_medium=news(朝日新聞2016年8月29日)ブルキニ禁止法は「違憲」 仏内相 、取り返しつかない結果に警鐘
 フランスのベルナール・カズヌーブ(Bernard Cazeneuve)内相は28日に掲載された地元紙のインタビューで、同国でイスラム教徒の女性向けの全身を覆う水着「ブルキニ」の着用を法律で禁止するのは憲法違反だと指摘するとともに、こうした法律を制定すれば取り返しのつかない悪影響を及ぼす恐れがあると警鐘を鳴らした。日刊紙ラクロワ(La Croix)のインタビューに応じたカズヌーブ内相は、国内の一部自治体が導入して物議を醸しているブルキニ規制について、政府としては反対という立場を重ねて示した。この問題は女性の権利やフランスの厳格な世俗主義をめぐって、国内外で大きな論議を招いている。カズヌーブ内相は「政府が(ブルキニ禁止の)法制化を拒否しているのは、こうした法律が違憲かつ無効であり、対立や取り返しのつかない緊張を生む恐れがあるからだ」と説明。その上で「イスラム教徒側にも、引き続き私たちと共に男女平等や、共和国の不可侵の原則、寛容さに関わっていってもらいたい」と注文した。仏沿海のリゾートでブルキニ着用を禁止した自治体の数は約30に上っているが、フランスの行政裁判の最高裁にあたる国務院は26日、うち1つの自治体による禁止措置を凍結する判断を下した。この判断は他の自治体にも影響を及ぼす判例になるとみられている。一方、来年の次期大統領選に出馬を表明した二コラ・サルコジ(Nicolas Sarkozy)前大統領を先頭に、右派勢力はブルキニ着用を全国で禁止する措置の法制化を強く求めている。

*1-5:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10105/402173
(佐賀新聞 2017年2月4日) 基山町長野地区住民ら、外国人向け冊子作成、相互理解へ活用
■暮らしのルール5カ国語で解説
 外国人に自転車や地域で暮らすためのマナーを身につけてもらおうと、基山町長野地区の住民らが小冊子を作った。交通標識などを英語、ネパール語、中国語、ベトナム語、日本語の5カ国語で解説し、親しみやすいイラストも添えた。舟木喜代美区長(67)は「声かけやあいさつと併せて活用し、融和を図っていきたい」と意気込む。長野地区には企業の工場などが多く立地している。近年は外国人労働者を雇う企業が多く、通勤のため地区内を自転車で通行する外国人の数が急増。道路上での並走や2人乗り、ごみのポイ捨て、深夜に大声で騒ぐなどの事例が相次いだため、地区として対策に乗り出した。冊子はA6判12ページのフルカラー。県国際課や県警などの協力を得て200部を作成し、ネーティブスピーカーに表現に間違いがないか確認してもらうなど念入りに準備した。自転車の乗り方では、「車道の左側を走る」「2人で乗らない」「携帯電話は使わない」などの基本マナーを紹介。「くらしのルール」編では、「地域の人に会ったらあいさつしよう」「ごみの投げ捨てはいけません」「住宅地は静かに通りましょう」などと呼び掛けている。1月末に街頭で通勤途中の外国人に冊子を配布したほか、企業3社に計80部を贈った。舟木区長は「異国の地で暮らすための、基本的なマナーを知らないままの人も多い。今後も外国の方は増えていくと思うので、啓発に向けて町全域で継続して取り組んでいきたい」と話す。

<女性・“高齢者”>
*2-1:http://mainichi.jp/articles/20170201/dde/012/040/003000c
(毎日新聞 2017年2月1日) 特集ワイド 「高齢者は75歳から」の是非 年齢の線引き、捨てよう
 高齢者は「65歳以上」ではなく、「75歳以上」に--。こんな提言が今、話題を集めている。確かに最近の中高年は元気で、そう言われれば納得しそう。ただ、多くの人が見直しの動きを警戒しているのも事実だ。そこで経験豊かな有識者に聞いてみた。高齢者の定義変更をどう見ますか?しゃれたレストランを都心などで手掛ける会社の役員が打ち明けた。「困ってるんですよ。60代の優秀な料理人がどんどん定年になっちゃって……。このままでは経営が立ち行かない」。今の60代は現役とまったく変わらない。気力も体力も衰えず、高い技術は若い人に代えられないほどだ。でも会社にはルールがある。働き続けてほしいと願うが、臨時雇いになって給料が激減すれば辞めてしまう。この会社は定年後も待遇を変えず、人材をつなぎ留める方法を真剣に検討し始めた。日本人の平均寿命は延びている。厚生労働省によると、2015年で女性87・05歳、男性80・79歳。戦後間もない1947年は女性54歳、男性50歳だった。「人生50年」は過ぎ去り、今や「80年」の時代。それなのに、現状に合わない“高齢者像”が生き残り、さまざまな場でひずみをもたらしている。そんな中、日本老年学会などがこの1月、65歳以上の体の状態や知的機能は10~20年前と比べ5~10歳ほど若返っているとし、医療や介護などで「65歳以上」とされてきた高齢者の定義を「75歳以上」に見直すべきだと提言した。大きな狙いは65~74歳の積極的な社会参加を促すことだ。社会問題について積極的に発言しているライフネット生命保険の会長、出口治明さん(68)に提言の印象を尋ねると、「高齢者の体力などを考えたら、ごく自然なことでしょう。当たり前の話では」と笑う。そうはいっても、この線引き、なんとなく割り切れない思いを抱く人は少なくない。人気長寿番組「世界ふしぎ発見!」(TBS系)の司会などとして活躍するテレビキャスター、草野仁さん(72)は、まずこう問い掛ける。「『高齢者』とひとくくりにすることに無理があるのではないでしょうか」と。「人は年を取るほど、体力をはじめ、いろんな意味でバラつきが出てきます。一律に『高齢者』と決めつけることは好ましくありません」。生きてきた環境が異なるうえ、大病をしたり、しなかったりなど健康面の違いも生じ、高齢になるほど個人差は大きいとされる。若者と同じように精力的に外で動きたい人もいれば、「引退」してのんびり過ごしたい人などさまざまだ。それを一つにまとめることに違和感を覚える人は多い。今回の提言では、これまで「高齢者」と呼ばれてきた65~74歳を、高齢者の準備段階となる「准高齢者」と位置づけた。これには言葉のプロである草野さんは不満を隠さない。「75歳以上を『後期高齢者』と呼ぶこともありますが、『もうアウト』と言わんばかりの愛情のない表現です。『准高齢者』には、それと同じ冷たさを感じますね。私はそんなふうに呼ばれたくないなあ」。なぜわざわざ「准高齢者」とくくるのか。普通の「大人」でいいではないか。「高過ぎるわね、定義が75歳以上というのは」。はっきりとした口調で話すのは、エッセイストで青森大副学長の見城美枝子さん(71)だ。見城さんは、公的機関の委員や大学の同期会会長を務めるなど活動が幅広い。同世代との付き合いも多い中、体感として、こう感じるという。「女性なら70歳を楽々と越えていきますが、男性は少し違います。一握りの特別な人は別でも、70歳が一つの峠になっていると思うんです」。定義するにはもっときめ細かな配慮が必要だというのだ。見城さんのように、提言に対する慎重な見方は多いが、それは多くの人が直感的に、ある種の不安を感じるからといえよう。現在の社会保障制度の多くは65歳を基準としているからだ。「高齢者は75歳以上」という社会的な合意ができれば、年金の支給開始年齢の引き上げなど社会保障の見直しにつながる可能性もある。見城さんもこの可能性を否定せず、こう主張する。「社会保障制度などを見直すというなら、国はまず、『これまでの制度設計には誤りがありました』と謝罪すべきです。既存の制度は設計ミスで維持できないときちんと説明し、国民の納得を得た上で次に進まないといけません」。まるで暗雲が垂れこめるようにばかり言われる「超高齢社会」。若者が抱える閉塞(へいそく)感を打ち破るためにも、定義変更の提言をチャンスとし、日本が進むべき未来像をはっきり示すべきだと呼び掛ける。
●定年制を廃止せよ
 そもそも、年齢を基準に物事を決めることは必要なのだろうか。草野さんは、日本のテレビ放送はニュースなどで人を紹介する場合、「何歳」と伝えるが、海外ではそういう例はほとんどない、と指摘。「日本人は相手に敬意を払うため、年齢に対し非常に細やかな神経を使います。それが逆に、何かに挑戦する時の阻害要因になってしまう」と述べ、こう強調する。「もう70歳だから遅すぎるとか、年齢を意識して前に進めない人がとても多いが、そんな意識は絶対必要ない。やれる範囲のことに一生懸命打ち込むことこそ、生きる充実感につながると私は思います」。年齢なんか気にしていたら、本当に生きているとは言えないというのだ。草野さん自身、同年代の人たちと競い、100歳以上も参加する「マスターズ陸上」に、75歳になったら挑戦しようと準備している。高齢者の定義変更自体に異論はないという出口さんに、社会保障制度について改めて聞いてみた。出口さんは「今の制度はゆがんでいる」とし、もはや年齢を基準にしてはいけないのだと主張する。「少子高齢化の本質というのは、年齢制限を設けない『年齢フリー』の原則に移らなければ、国はもたないということです。その選択肢以外に生きる道はないんだから」。超高齢社会の中、若者が多くの高齢者を支えるのは限界がきている。一定の年齢になれば全員に公的年金を支給する従来の形ではなく、生活にあえぐシングルマザーなど本当に困っている人に集中して給付するよう仕組みを変えなければいけない。だから、年齢に関係なく、お金がある人は相応の負担をし、幾つになっても働きたい人は働く。そのためには定年制を廃止するしかない--。それが出口さんの主張だ。  実際、出口さんが経営するライフネット生命に定年制はない。「定年は戦後日本の高度経済成長期に作られた慣習でしかない。社会の変化に応じた構造改革をやらないことが大きな問題ですよ」。年齢を重視し、「高齢者」とくくることに何の意味があるのか。高齢者の定義見直しについて考えていくと、根源的な疑問にたどりつく。

*2-2:http://qbiz.jp/article/102952/1/
(西日本新聞 2017年2月3日) 女性、高齢者の活用提言 九州経済白書「柔軟な人事制度を」
 九州経済調査協会(福岡市)は2日、「人材枯渇時代を生き抜く地域戦略」と題する2017年版九州経済白書を発表した。急速な人口減少で企業の人材確保が難しくなっており、今後はさらに争奪戦が激しくなると予想。女性や高齢者など多様な人材の活用に加え、限られた要員で稼ぐ力を高めるためにも、人口増加に支えられてきた「これまでの成功体験から脱却」し、働き方の大転換を図る必要があると提言している。国勢調査によると、九州地域の生産年齢人口(15〜64歳)は2000年に比べ足元で1割以上も減少している。九経調が地場企業・団体を対象に実施したアンケート(有効回答数741)では、55・1%が人員について「不足」「やや不足」と回答。要因として「地域の人口減少」などを挙げる企業が多く、「人口減少や高齢化といった構造的要因で人材不足が顕在化してきた」ことが浮き彫りになった。アンケートで、人材不足解消への取り組みを聞いたところ、「正社員の採用拡大」や「給与の引き上げ」が上位に入った。だが、政府が経済成長を支える「最大の潜在力」と期待する女性は賃金よりも職種や勤務時間、休日などを重視しているとの調査もあり、白書は企業側との認識に「ずれ」があると訴えている。人材確保のためには、賃金の引き上げだけではなく、柔軟な人事制度が重要と指摘。先進事例を紹介しながら、短時間勤務▽地域限定正社員▽再雇用▽IT技術を活用し自宅でも仕事ができる「テレワーク」の導入−などを提言した。また、九州地域で機械化やICT(情報通信技術)の導入を検討している企業は少数であるとして、人材枯渇時代を見据え「ICTやロボット、人工知能(AI)といった新しい技術の導入にも積極的になるべきだ」としている。 

<日本における明確な女性差別>
*3-1:http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2017020301001360.html
(東京新聞 2017年2月3日) 【政治】 丸川五輪相、都知事に真意問う ゴルフ会場巡る批判で
 丸川珠代五輪相は3日の記者会見で、2020年東京五輪のゴルフ会場が女性正会員を認めていない問題を巡り、批判している小池百合子東京都知事に電話で真意を聞いたと明かした。「『言葉通りです』と直球が返ってきた。ありがたく承る」と述べた。小池氏は今月1日「せっかくスカートをはいておられる五輪相もいるのだから、もっと明確に言うべきではないか」と政府の対応に不満を示していた。会見で丸川氏は「(都庁のある)西新宿から永田町のグリーンに『ワンオン』をずばんと打たれた感じだ。私も飛距離を伸ばすよう頑張りたい」と競争心をちらつかせた。

*3-2:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/401877 (佐賀新聞 2017年2月3日) 結婚、女性も「18歳以上」 民法改正案、置き去りだった「差別」
 成人年齢を20歳から18歳に引き下げる民法改正案に、結婚できる年齢(婚姻適齢)を男女とも「18歳以上」に統一する規定が盛り込まれていることが2日、政府関係者への取材で分かった。終戦直後に定められた女性は「16歳以上」とする規定が見直される公算が大きくなった。法務省は「共謀罪」の構成要件を変えた「テロ等準備罪」を新設する組織犯罪処罰法改正案の成立を優先し、民法改正案の今国会提出は見送る方針。現行民法は婚姻適齢を男性18歳以上、女性16歳以上と規定。さらに未成年者の場合は親の同意が必要となる。国際的には男女同一が一般的だが、日本では女性の方が心身の発達が早いなどの理由で低く設定されている。明治時代の民法施行時は男性17歳以上、女性15歳以上だった。しかし女性の高校進学率が飛躍的に伸び、16、17歳での結婚が減少したことなど社会的な背景が変わり、男性と区別する合理的な理由がないとの指摘が出ていた。さらに現行制度のまま成人年齢を18歳に引き下げた場合、女性だけ成人年齢と婚姻適齢が一致せず、親の同意が必要なケースが残ることになる。こうした観点から、今回の民法改正と同時に婚姻適齢を18歳に統一するのが適当と判断した。法案成立後、3年程度の周知期間を設ける方針。厚生労働省の人口動態調査によると、2015年に婚姻届を提出した女性約63万人のうち、16、17歳は1357人だった。婚姻適齢を巡っては、法制審議会(法相の諮問機関)が1996年に「男女とも18歳」とする民法改正案の要綱を答申したが、法改正に至っていない。法制審は、成人年齢の引き下げを議論した際の最終報告書でも同じ意見を表明している。国連の女性差別撤廃委員会は、日本の現行民法の婚姻適齢規定を「差別的」と批判している。


<働き方改革について>
PS(2017年2月6日追加):働き方改革は、*4-1のように、残業時間の上限を「繁忙期100時間」「2カ月平均月80時間」「年間720時間」に抑えるように労働基準法を改正し、違反には罰則を科す方向となり、これに対し野党は反対しているが、私はこの程度でよいと思う。何故なら、民進党の大串さんもよく御存じのように、税理士の例では、個人所得税申告書の提出期限は3月15日に集中しており、繁忙期に合わせて従業員を増やせば閑散期に養いきれずに倒産することになり、このように季節変動のある職種は多いからである。そのため、電通の女性新入社員の自殺という特殊な事件を背景に、低い上限規制を導入して狭い範囲の“ワーク・ライフ・バランス”を国民に押し付けるのは、研究や仕事が趣味という人もおり、そのくらいでないと何かを成し遂げることはできないことも考えれば、事業主だけでなく、働く人をもHappyにしないだろう。なお、勤務の終了から始業までに10~11時間くらいを保障する「勤務間インターバル規制」はよいと思うが、インターバルとして必要な時間や子育てへの利便性は通勤時間によっても異なるため、往復2~4時間もの通勤時間を使わせるような職場と住居の配置は変えるべきである。
 また、*4-2に、「先生の多忙が問題になっており、学校を働き方改革の例外にしてはならない」「日本の先生の勤務時間は参加34カ国、地域の中で最長」「精神疾患で病休をとる先生の数は、年間5千人台で高止まりしている」と書かれている。そして、忙しさの原因は、①書類作りや部活動 ②給食費の集金 ③保護者への対応など切りがない としているが、教育は学校に任せられる必要があるため、先生の仕事を吟味し、他の人が行っても支障がなかったり、よりよくできたりする仕事は他の人に任せ、先生しかできない教育をより充実して行うべきだと考える。例えば、部活動の指導はメダリストなどの専門家が行った方がよい指導ができる上、選手を引退した後の生活も保証される。また、給食費の集金は自動引き落としにすれば正確かつ確実であり、書類は最小限にして新人の先生を副担任として採点や教育に関する雑用をさせるなど、学校が組織として最小費用で最大効果を出すための改善も可能だ。
 その上で、*4-3のようないじめに対しては、「忙しかったから対応しなかった」「担任教諭も名前に『菌』をつけて呼んだ」「担任は親しみを込めたと言っている」など、先生として正しい説明や教育をしていないようなあるまじきケースは、決して起こしてはならないのである。

*4-1:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12776816.html
(朝日新聞 2017年2月2日) 残業上限、線引きどこに 長時間労働是正、政府議論が本格化
 安倍政権が旗を振る働き方改革の最重要テーマ「長時間労働の是正」をめぐる政府の議論が1日、本格的に始まった。事実上、青天井に設定できる残業時間に「月平均60時間」といった上限を設ける方向で議論は進みそうだが、早くも「これでは不十分」との異論が野党などから出ている。
■繁忙期「100時間」原案 野党反発
 政府の働き方改革実現会議(議長・安倍晋三首相)はこの日、残業の上限規制をめぐる議論に着手。メンバーが意見を交わした。「時期的な繁閑の差があるなど、どうしても残業が必要な場合もある」(榊原定征〈さだゆき〉・経団連会長)、「残業の上限が『月100時間』など到底ありえない」(神津里季生〈りきお〉・連合会長)。労使の代表らによる応酬の後、安倍首相は「長時間労働の是正については、罰則つきで限度が何時間かを具体的に定めた法改正が不可欠。次回はより具体的に議論したい」と述べた。規制強化には経済界の反発が予想されたが、女性新入社員が過労自殺した事件で、広告大手の電通が昨年末、労働基準法違反の疑いで書類送検され、社長が引責辞任。これが「追い風」(厚生労働省幹部)になり、上限規制の導入に向けた動きが水面下で加速した。この日の会議では示されなかったが、政府は残業時間の上限の数字を明記した原案を昨年秋にまとめ、労使双方への根回しを進めてきた。原案は、労基法36条に基づいて労使協定(36〈サブロク〉協定)を結ぶことを前提に、上限を「月45時間(年間360時間)」に設定。特に忙しい時期は「月100時間」「2カ月の平均が月80時間」を上限にすることを認める一方、年間を通じて「月平均60時間(年間720時間)」に抑えるよう求め、違反には罰則を科す――という内容だ。経済界は繁忙期などに対応できるように「例外」の設定を強く主張している。政府が落としどころとして持ち出した数字が、厚労省による過労死の労災認定基準として用いられる「月100時間超」「月80時間超」。厚労省が2013年に約1万1千事業所を対象に実施した調査によると、36協定で定める上限時間が「月80時間超」の事業所は4・8%。大企業に限ると14・6%。実際の残業時間より上限を高めに設定するケースも多く、政府関係者は「この上限で困る企業はほとんどない」とみている。しかし、原案の内容が先週末に報じられると、野党側は「規制が不十分だ」と猛反発。1日の衆院予算委員会でも、「過労死ラインと同じようなものを上限としても、ほとんど規制していないに等しい」(民進党の大串博志氏)などと安倍首相らを追及した。

*4-2:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12778736.html
(朝日新聞社説 2017年2月3日) 先生の多忙 学校にも働き方改革を
 働き方を改革するなら、学校を例外扱いしてはならない。先生の多忙が問題になっている。国際調査では、日本の先生の勤務時間は参加34カ国・地域の中で最長だった。精神疾患で病休をとる先生の数は、年間5千人台で高止まりしている。松野文部科学相は、業務改善のモデル地域の指定、有識者ら業務改善アドバイザーの教育委員会への派遣、部活動の休養日などに関するガイドラインづくりという三つの対策を掲げた。忙しさの原因は多様だ。書類作りや部活動、給食費の集金、保護者への対応など切りがない。個々の業務を軽くするよう工夫し、先生が担うべき仕事を吟味することは不可欠だ。ただ、連合のシンクタンク「連合総研」が全国の公立小中学校の教諭に調査し、労働時間と学校の取り組みを分析したところ、行事の精選やノー残業・部活動デーといった試みが必ずしも労働時間の短縮につながっていなかった。「新たに生まれた時間を他の仕事に充てるからでは」と連合総研は見る。時間の余裕があればもっと授業の準備をしたい。子どもの作文にコメントを書きたい。そんな先生たちの気持ちは貴重だ。しかし、疲れを抱えたまま子どもの前に立っても、よい授業や丁寧な言葉かけはできまい。先生の長時間労働を改めるには、校長らが先生の勤務時間を管理することが出発点になる。ところが同じ調査だと、自校の管理職が「出退勤時刻を把握していない」「しているかどうかわからない」と答えた教諭の合計は小中とも半数近くに上る。都道府県の条例で決められた所定勤務時間数を「知らない」と回答した教諭も6割近い。研究者が「学校は労働時間の無法地帯」と言うのも無理はない。学校が時間管理に熱心でないことの背景にあるのが、「公立学校教育職員の給与等に関する特別措置法」(給特法)だ。先生の仕事は複雑で管理が難しいとして残業代を払わず、代わりに基本給の4%を全員に支給する仕組みになっている。1971年に成立した。誰にも一律の額を出すため、管理職は勤務時間を把握する義務があるのに、時間管理の必要に迫られない。文科省の勤務実態調査では、法が成立した頃と比べ、残業時間は5倍に増えている。法の見直しの議論を始めるべき時ではないか。もっと先生の数を増やしてほしいとの現場からの訴えにも耳を傾けるべきだ。先生にも労働者としての権利があることを忘れてはならない。

*4-3:http://mainichi.jp/articles/20161203/k00/00m/040/119000c
(毎日新聞 2016年12月2日) 新潟原発避難いじめ 市教委が謝罪 担任「親しみ込めた」
 新潟市教育委員会は2日、福島県から自主避難してきた同市立小4年の男子児童が、同級生や40代男性の担任教諭から名前に「菌」をつけて呼ばれるなどのいじめを受け、1週間以上学校を休んでいると発表した。男児は先月、担任に相談していたが、直後に担任からも「菌」づけで呼ばれ、強いショックを受けたという。教委の高島徹教育次長は記者会見で「他の児童も同様に『キン』をつけて呼ばれており、原発事故と直接結びついていないが、いじめと捉えている。担任の言動は児童の心を傷付ける不適切なもので、児童と保護者に深くおわびする」と陳謝した。市教委によると、男児は東京電力福島第1原発事故を受けて家族と避難し、新入生として入学した。3年の時から仲間はずれにされたり、からかわれたりし、今年になっても持ち物を捨てられるなどのいじめがあったという。  男児は今年6月、「ばい菌扱いされている」と担任に相談。担任は、いじめた児童らを指導し、落ち着いたとみていたという。横浜市立中学で福島県から避難してきた生徒が「菌」をつけて呼ばれた問題が報道されるようになり、11月17日、児童は再びいじめについて担任に相談した。だが、同22日の昼休み、教室で担任から連絡帳を受け取る際、同級生の前で名前に「菌」をつけて呼ばれた。保護者に「もう学校に行けない。担任と会いたくない」と話したという。保護者の指摘を受け、同校は同29日、児童らに聞き取り調査。複数の児童が担任による「菌」づけ発言があったと話し、担任も認めた。市教委によると、このクラスでは映画などの登場人物にかけて名前の後に「キン」をつけて呼ぶことが流行していたといい、担任は「菌の意味ではなく親しみを込めた発言だった」と釈明。「児童に謝罪したい」と話しているという。2日の授業は別の教諭に担当させた。


PS(2017.2.7追加):東京オリンピックのゴルフ会場になっている「霞ヶ関カンツリー倶楽部」は、*5のように、正会員が男性に限定され、女性は日曜日にはプレーできないことになっているため、大会組織委員会事務総長が「できるだけ早く正会員に女性が入れるような細則にしていただきたい」と要望したが、今日の理事会でも対応が決まらず、霞ヶ関カンツリー倶楽部の木村理事長は「オリンピックは頼まれて受けただけで、こちらから『いらっしゃい』と言ったわけではないので、急にこんな事態になったのは迷惑で困惑している」とNHK・TVで言っていた。しかし、このような差別的な場所で行われるオリンピックは応援したくない人が多いため、会場を変えるか、適切な会場がなければオリンピックでのゴルフを中止するくらいの厳格な対応をした方が今後のためによいと思われる。

*5:http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170207-00010000-teletamav-l11
(Yahoo 2017.2.7) 霞ヶ関カンツリー倶楽部 理事会で対応を協議
 東京オリンピックのゴルフ会場で、川越市にある霞ヶ関カンツリー倶楽部が女性正会員を認めていない問題で倶楽部側は7日、都内で理事会を開き今後の対応を協議しました。霞ヶ関カンツリー倶楽部は現在、およそ1,200人の正会員が男性に限定され、平日は女性もプレーが可能ですが原則として日曜日はプレーできません。この問題を受け、大会組織委員会の武藤敏郎事務総長は2月2日、国際ゴルフ連盟などと連名で規則改正を求める文書をメールで提出したうえで「できるだけ早く正会員に女性が入れるような細則にしていただきたい」と述べ早期の対応を要望しました。要望を受け霞ヶ関カンツリー倶楽部は7日、都内で理事会を開き今後の対応について協議したということです。霞ヶ関カンツリー倶楽部の木村希一理事長は「これからどう対応しようかということを話しました。それだけです」と話しました。また、この問題を受けて上田知事は7日の定例会見で「正々堂々と女子の会員を認める。そうすることで立派なゴルフ場として判断される」と話しました。


PS(2017年2月11日追加):*6で、JA佐賀中央会金原副会長は、「①国内では多くの品目で生産戸数が減少し、それに伴って需要に追いつかない品目が出ている」「②『6次産業化』の販路を広げ、品目の幅を充実させたい」としている。このうち、①については、生産戸数が減少しても規模を拡大し、繁忙期には人を雇うようにすれば収入が増加し、繁忙期は地域や作物によって異なるため、農協や派遣労働会社が(外国人)労働者を雇って繁忙な場所に労働者を派遣するようにすれば、効果的な人の使い方ができる。また、②についても、日本では人件費がネックであるため、機械化や外国人労働者の使い方を工夫すれば、より安価に加工食品を作ることができ、輸出にも貢献できると考える。
 なお、「現在は、自民党を勝たせすぎて、主権者の意図しなかった変更が、よく吟味もせずに次々と行われている」というのには、私も同感だ。また、自由貿易協定(FTA)になればTPPより条件が厳しくなるという交渉力のなさも情けなく、他の先進国同様、食料自給率は重視すべきだ。

*6:http://qbiz.jp/article/101787/1/ (西日本新聞 2017年1月16日) 投資進め生産基盤強化 JA佐賀中央会 金原 寿秀副会長 トップに聞く新年展望
 近年、農業を取り巻く環境は転換期を迎えている。JA全中の組織見直しを柱にした改正農協法が昨年施行し、トランプ次期米大統領の出現で発効は絶望的とされるものの環太平洋連携協定(TPP)も国会で承認された。県内農業はどうなるのか。JA佐賀中央会の金原寿秀副会長に新年の展望を聞いた。
−農家の経営力強化が課題とされている。
 担い手や収益確保に向けて集落営農組織の法人化を進めている。昨年、JAグループ佐賀は法人化や新規就農を支援する「県域担い手サポートセンター」を開設した。生産者が加工から販売まで手掛ける「6次産業化」も販路を広げ、品目の幅を充実させたい。
−新規就農については。
 新年度から市町と協力し、武雄市などではキュウリを、佐賀市富士町ではホウレンソウを栽培する農家を育てる。国内では多くの品目で生産戸数が減少しているが、良質な作物は売れる。収益を見込める作物に特化して就農を促す。
−改正農協法をどう評価している。
 十分な議論がないうちに通ってしまった。改正法は将来的に信用、共済事業を分離することも視野に入れている。農協の営農指導は費用も手間がかかるが、これを賄うのは信用、共済事業の収益だ。専門的な書類作成も営農指導員が担っており、指導員を減らすのは難しい。
−JAグループ佐賀の政治団体、県農政協議会は次期衆院選にどう対応する。
 現在の農協改革は自民党を勝たせすぎたのが原因で対応を考えないといけない。政府の農業政策や通商政策を見据えたい。
−TPPをトランプ次期米国大統領は否定している。どう見通すか。
 日米の2国間交渉で、TPPよりも厳しい条件を突き付けられないか心配だ。韓国は米国との自由貿易協定(FTA)で食料自給率が大幅に低下した。
−新年の展望を。
 作物の安定供給のためには生産基盤の強化が必要だ。生産戸数の減少に伴い、需要に追いつかない品目が出ている。県域全体で投資を進め、基盤を強化する。産地力の向上のため、作付けや収穫などの在り方も見直しながら、需要が高い地域に販売できるようにしたい。

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2017.1.31 東芝の7,000億円規模の原発関連損失と原子力及び再生可能エネルギーの今後について (2017年2月1日、2、13、15、17日に追加あり)

  米国原子力発電のコスト  世界のエネルギー フランスのソーラーロード    エチオピアの 
   2017.1.20東京新聞     コスト推移   Newsweek2017.1.17   ソーラーキオスク     

  
  南アフリカのソーラー空港    アフリカのソーラー航空機     スイス船籍のソーラー船

(図の説明:原子力発電のコストは上がり、太陽光発電のコストは規模の拡大により下がって、2016年には風力発電よりも低くなった。今後は、太陽光発電の原材料変化によるコストダウンも見込まれる中、フランスでは太陽光発電を埋め込んだ道路ができ、道路で発電できるようになった。また、アフリカでは、電線の引かれている地域が限られているため、太陽光発電等に依る分散発電には大きな意味がある。さらに、ソーラー空港・ソーラー航空機・ソーラー船は、太陽光発電の将来性の大きさを感じさせる)

(1)東芝の経営意思決定における失敗と損失 ← 原発への固執は、会社を破綻させること
 東芝は、*1-1、*1-3のように、4,800億円と見込まれていた損失額が7,000億円になりそうなため、債務超過を回避する目的で、世界シェアの高い半導体事業を分社化してつくる新会社の株式を一部売却するのだそうだ。そして、綱川社長は、*1-4のように、2017年1月27日に原発事業の海外建設工事から撤退する等の方針を表明し、「原発事業はエネルギー事業のなかで最注力としていたが変える」と強調したそうだ。

 東芝の家電や太陽光発電機器は優れているため、私は東芝の失敗とその後の「選択と集中」に関する経営意思決定を残念だと思っていたが、東芝の原発事業からの撤退が、フクイチの後にすぐ決定されていれば、損失はずっと少なかったと思う。また、東芝の主導権は50%超の株式を保有していれば確実に維持できるため、株式は金もうけ目的で会社を買って転売する投資ファンドではなく、協業することによってシナジー効果を得られる他業種の製造会社に売却すれば、前向きの効果が得られると考える。

 なお、東芝が、S&W社を275億円で買収して数千億円もの損失を出した理由について、*1-2は、東芝の子会社である米ウェスチングハウスが1年前に原発建設会社S&W社を買収し、米規制当局の安全規制強化等で建設コストが膨らんだので生じたとしている。しかし、私には、フクイチの後、世界が原発から手を引こうとしている時に、純資産額を約105億円も超える価格で原発関連会社を買収し、買収後に純資産額がマイナス数千億円に達したのは、リーダーが世界の潮流を見誤って甘い意思決定をしたからとしか思われない。さらに、ウェスチングハウスとS&W社は、今回の損失を予見した上で、原発から撤退するに当たって、日本企業の東芝に損失を負わせた可能性すらある。

 また、*1-3に、「7,000億円」という数字は、世界の4大監査法人の一つで老舗監査法人のプライスウォーターハウスクーパース(PwC)の米国事務所がウェスチングハウスに対して示した数字だと書かれているが、これが監査であり、顧問先企業の損失を冷静に把握して監査に反映させなければ、後で株主・投資家・債権者などに対して、監査法人は会社と連帯責任を負うことになるのである。

 それらの総合的な結果として、米格付け会社のスタンダード・アンド・プアーズは、東芝の格付けを「シングルBマイナス」から「トリプルCプラス」に引き下げたそうだ。

(2)フクイチとその後の状況
 フクイチでは、*2-1のように、昨年の透視調査で核燃料の大部分が原子炉圧力容器内に残っていると推定されていた2号機に、事故から約6年経ってカメラを入れて見たところ、溶けた核燃料のような塊が飛び散っている様子が見え、核燃料取り出しや廃炉の困難さがわかったのだそうだ。そして、1号機と3号機は、核燃料の大部分が原子炉圧力容器内に残ってもいないようだ。

 溶けた核燃料が原子炉の外に出た事故は、これまで旧ソ連のチェルノブイリ原発事故だけで、事故から30年経過した今でも取り出しに着手していない。東電などは、2018年度に溶けた核燃料の取り出し方法を決め、2021年にも着手するとしているが、事故から約6年経って核燃料かもしれない姿の一部を見ただけで、広がりも、量も、状態も公表していないのである。

 1~3号機を合わせて、放射性物質が大気中に放出された量については、*2-2のように、ノルウェーの研究チームが、日本政府が2011年6月に発表した推定放出量よりもずっと多いと報告している。これは、世界各地で観測された放射能データを組み合わせて、大気中の放射性物質の量と流れを推定した結果だそうだ。

 さらに、日本政府の主張とは異なり、4号機の使用済み核燃料プールからも大量のセシウム137が放出されていたと報告しており、もっと迅速に対応していれば、これほど大量の放射性物質が放出されずにすんだかもしれないと述べており、私もそのとおりだと思う。そして、原子炉から何が放出されたのかがより重要で、それには原子炉内で何が起きたのかを厳密に知らなければならないが、それがまだ明らかにされていないのである。

 なお、*2-2に、「3月14日の午後、風向きが変わって陸に向かって吹き始め、セシウム137が東北南部から中部地方にまで広がり、15日夜から16日未明にかけて雨が降った栃木県と群馬県の山間部では土壌から比較的高濃度の放射性物質が検出された」と書かれているが、埼玉県では15日夕方からぽつぽつと雨が降り、その時外出していた私の傘は、後に放射線量が非常に高いことがわかった。これは、あらかじめ予報されていれば、外出を控えたり、傘を洗ったりなどの対応ができた筈のものである。

 原発事故による放射能汚染廃棄物は、焼却しても放射性物質が空中に飛び散るためさらに問題なのだが、*2-3には、汚染牧草をすき込んで牧草の堆肥化をすると書かれている。なお、国の指定基準(1キロ当たり8000ベクレル)以下の廃棄物なら何をしてもよいのかと言えば、放射性物質は総量が重要であるため、「400ベクレル以下の牧草はすき込み、400ベクレルを超えるものも堆肥に混ぜ込むことで、ほとんど焼却しないで済む」などというのは、「放射性物質は閉じ込める」という原則的対応からかけ離れた判断なのだ。

 政府は、*2-4のように、福島の復興指針を改定し、除染費用は東電が負担するとの原則を転換して「帰還困難区域」の除染に国費を投入することを閣議決定し、同区域に5年後をめどに避難指示の解除を目指す「特定復興拠点」を設け、除染費用として2017年度予算に約300億円計上するそうだ。これは、フクイチの放射性物質への対応すら決まっていないのに、放射性物質をあまりにも甘く見た決定だ。

 さらに、*2-5のとおり、原発の廃炉費用の一部は、原発を所有しない新電力にも負担させるなどの費用負担をさせ、送電網の使用料として徴収することにしたそうだが、既存の電力会社が積立不足にした過去費用を関係のない新電力に負担させると、電力市場を歪めて市場の自由化に逆行する。それではどういう解決策があるかについては、総括原価方式で消費者の負担によって作ってきた大手電力会社の送電網を別会社化し、シナジー効果の出る会社に出資してもらい、それで得た資金を廃炉費用に充てるのがまっとうな方法だろう。

 その上、*2-6のとおり、1兆円超の資金を投じても稼働のメドが立たなかった高速炉開発を進める方針にしたそうだが、原発事故のリスクは0ではなく、一度起これば取り返しのつかない事態になることが明らかで、再生可能エネルギーの進歩も著しいため、核燃料サイクルは凍結や断念も視野に根本的に再考すべきであり、被爆国としての責任は原爆廃止へのリーダーシップを発揮することだと考える。

 なお、*2-7のように、原発の発電費用を研究してきた立命館大学の大島教授が、原発で一キロワット時の電力をつくるために必要な費用を、実際原価で13.1円と試算し、水力発電11.0円、石炭火力12.3円、LNG火力13.7円など他の発電方法よりも高いとしている。しかし、大島教授も原発と水力・火力の比較しかできていない。これは、「再生可能エネルギーは高い」という神話を信奉し続け、再生可能エネルギーの研究に水を差し続けた日本の政府・メディアの一つ一つの行動の総合的結末である。

(3)世界の再生可能エネルギーの進歩と日本の遅れ
 「太陽光発電の発電コストが石炭火力発電以下になり、長年"コスト高"というデメリットを抱えてきた太陽光発電が、近年、技術の進化と規模の経済性で、コスト競争力のある発電方式となりつつあることが明らかになった」と、*3-1に書かれている。

 太陽光発電は化石燃料を必要とせず、発電時に温室効果ガスや騒音・振動を発生させない、環境負荷の低い発電方式だが、日本では、発電設備のコストが高いと批判ばかりされ、あまり推進されなかった。

 しかし、世界経済フォーラムの報告書によると、オーストラリア、ブラジル、チリ、メキシコなどの世界30カ国以上で、太陽光発電のコストは既に石炭火力以下になったそうだ。日本では太陽光発電のデメリットばかりが強調されて普及が進まなかった結果、発電効率の改善や発電設備の廉価化が進まず、日本のシャープが世界で最初に商品化したにもかかわらず、シャープは破綻しそうになり、台湾企業に買収されて日本企業ではなくなった。これが、日本の政治やメディアの悪い点なのである。

 よい例は、2016年12月、世界で初めてフランスで完成したソーラーパネルを敷設した道路だ。道路は広い面積を持っているため発電量が多く、電気自動車の充電にも適している。また、2015年12月の国連気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)に続き、2016年4月には、インド、オーストラリア、フランス、エチオピア、ブラジルを含む25カ国が、太陽光発電に関する研究開発や普及のために1兆ドル(約114兆円)投資することで合意したとのことだ。

 世界の自然エネルギー導入量は、*3-2のように、過去数年で急速に拡大し、風力発電は5億kW、太陽光発電は3億kW近くに達したそうだ。また、導入量以上に画期的なのは、コストが劇的な低下を続け、風力発電は1kWhあたり3.0セント、太陽光発電も1kWhあたり2.42セントという水準に至り、条件に恵まれた地域の太陽光発電は、火力発電だけでなく、風力発電よりも安くなっていることである。

 「パリ協定」は、今世紀後半には世界の温室効果ガス排出量を実質的にゼロにすることを決め、そのためには、化石燃料から自然エネルギーへの全面的な転換が必要で、現在では、世界のトップ企業が、自らの企業の使う電力を率先して100%自然エネルギーに転換する「RE100」に取組んでいるそうだ。

 「RE100」には、欧米だけでなくインド・中国の企業も参加しているが、日本企業は参加しておらず、日本での自然エネルギー導入が遅れている中で、「RE100」の目標を掲げることに二の足を踏んでいる状況なのだそうだ。パリ協定が発効し脱炭素への転換が求められる中、世界規模でビジネスを展開する企業には、温室効果ガスの排出を大幅に削減すること、その取組として自然エネルギー100%をめざすことが、マーケットでのその企業の評価を左右するようなり、世界の多くのトップ企業が「RE100」に参加しているのは、この動向を熟知しているからだそうである。

 日本のエネルギー政策は、自然エネルギーの導入に消極的であるのみならず、石炭火力の大量の新増設を可能にするなど、「パリ協定」後の世界の流れに逆行している上、送電網を管理する電力会社が自然エネルギーの接続や有効利用に制限を加えるなど、自然エネルギーのコスト低下を阻む多くの障害を作っている。

 また、「ベースロード電源市場の創設」という名目で、原子力や石炭火力の利用を進める政策を経産省が導入するなど、「工業国に公害はつきものだ」「100%完全なことはあり得ない」などの誤った信念を持つリーダーの環境意識の低さと、「空気は汚してもよいが、現在の空気(それも身の廻りのみ)を読むのが最も重要」と考える人々の意識の低さが、日本の環境技術開発の妨げになってきたことは明らかだ。

<東芝の失敗と損失>
*1-1:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12767261.html (朝日新聞 2017年1月27日) 東芝、入札2月上旬にも 損失7000億円見込み 半導体分社
 米国の原発事業で巨額損失を計上する見通しとなった東芝は、半導体事業を分社化してつくる新会社の株式の一部売却に向け、売却先を決める入札を来月上旬にも実施する方針だ。今月27日に開く取締役会で分社化を正式に決め、3月末の臨時株主総会で必要な決議を得る予定だ。現時点で損失額は7千億円前後に拡大する見通しになっている。関係者によると、東芝は当初、損失額を4800億円と見込んでいたが、米国で損失額の確定作業を進める担当部署から、2千億円程度増えるとの見通しが伝えられているという。半導体の分社化では、新会社の株式の2割弱を手放す方向で調整しており、少なくとも2千億円程度の売却益を見込む。2割弱にとどめるのは、新会社が他社の持ち分法適用会社になるのを避け、東芝の主導権を維持するためとみられる。また、東芝のNAND(ナンド)型フラッシュメモリー事業は世界シェアが2割を超える。米ウエスタンデジタル(WD)のような同業大手の場合、出資比率が高くなると独占禁止法上の審査が必要になり、売却に時間がかかる恐れがある。確定作業を進めている米原発事業の損失額次第では、売却する株式の割合を増やす可能性も残る。損失額は、来月14日の昨年4~12月期決算発表と同時に公表する方針。東芝の自己資本は昨年9月末時点で約3600億円しかなく、販売が好調なフラッシュメモリーを軸とした半導体事業の分社化・株式売却が、債務超過の回避策の柱となる見込み。2017年3月期の債務超過を避けるには3月末までに売却益を得る必要があり、入札手続きを急ぐ。入札には、米WDに加え、キヤノンなどの取引先、英ペルミラ、米ベインキャピタルといった投資ファンドなど10社程度が関心を示している。27日の取締役会では、事業や資産の売却、投資の抑制などの対策も議論する見通し。上場グループ会社の株式売却を検討するほか、16年度下半期に約600億円を使う予定だったリストラを先送りするなどして支出を抑える方針。本業での利益の上ぶれなども含め、3千億円規模の損失対策を計画している。

*1-2:http://mainichi.jp/premier/business/articles/20170106/biz/00m/010/001000c
(毎日新聞 2017年1月10日) 「275億円の買収で東芝損失数千億円?」の大疑問
●「数千億円損失?」への疑問(1)
 自社の事業でいきなり「数千億円の損失の可能性」が出てきたら、どんな経営者も平静ではいられないだろう。東芝が昨年12月末に発表した子会社の米原子力大手ウェスチングハウスをめぐる問題は、綱川智・東芝社長ら経営陣にとって降って湧いたような衝撃の出来事だったに違いない。なぜ、こんな事態になったのか。問題は、1年前にウェスチングハウスが原発建設会社、S&W社を買収したことで生じた。ウェスチングハウスは、S&W社とともに、米国で電力会社2社から発注を受けて原発4基の建設を進めてきた。総額2兆円にのぼるプロジェクトで、ウェスチングハウスが原発の設計や主要機器を供給し、S&W社が実際の建設作業にあたる分担だった。4基は当初、2016年に2基、17年に1基、19年に1基というスケジュールで運転開始する予定だった。ところが米規制当局の安全規制強化などの対応で完成が遅れ、運転開始予定は19年に2基、20年に2基になった。規制強化と完成遅れで建設コストは膨らみ、ウェスチングハウスと電力会社が負担をめぐり互いに訴え合う事態になっていた。また、ウェスチングハウスとS&W社も同様にコスト負担をめぐって争っていた。
●買収先は売上高2000億円の企業
 そうしたなか、ウェスチングハウスは15年12月、S&W社を買収した。買収額は2億2900万ドル(当時の為替レートで約275億円)。S&W社の年間売上高は約2000億円。ウェスチングハウスはこの規模の企業を、少額で買収したことになる。ウェスチングハウスは、買収でS&W社との争いについて双方が取り下げ、同時に電力会社との訴訟や争いについても取り下げることで和解に達したと説明した。買収時のS&W社の純資産の査定額は公表されていないが、1億4200万ドル(約170億円)だったと推定される。東芝とウェスチングハウスは、買収額から純資産額を引いた8700万ドル(約105億円)を「のれん」として資産に計上することになった。のれんの資産計上は、S&W社が将来、利益を上げることを前提にしている。ところがそこに大きな落とし穴があった。純資産額が170億円どころか、マイナス数千億円にのぼる可能性が出てきたというのだ。これは次の事情による。
●新たな下請け会社の見積もり
 ウェスチングハウスは買収後、新たに別の米大手エンジニアリング会社を原発建設の下請け会社として現地で工事にあたらせることにした。S&W社の建設作業者は、この下請け会社に移管されることになった。下請け会社は改めて完成までの建設コストの見積もりを行った。そして10月にウェスチングハウスに見積もりの結果を提出した。ウェスチングハウスが精査したところ、それまで想定していた建設コストを大幅に上回ったというのだ。膨らんだ建設コストを前提にすると、S&W社の収支はこの先、大幅に悪化する。この結果、純資産額が、数千億円のマイナスになる可能性が出てきたというのだ。米国での原発事業で数千億円規模の損失が出る可能性があるとして、膨らんだ建設コストのリスクをなぜ、ウェスチングハウスがすべて背負うことになったのか。買収時にS&W社や電力会社との争いを取り下げたことに問題はなかったのか。買収契約に危険を回避する項目を盛り込むことは考えなかったのか。さまざまな疑問が湧いてくる。その疑問の先に生じてくるのは、ウェスチングハウスは本当に今回のリスクを予見できなかったのかという問いだ。そして「数千億円の損失リスク」は、S&W社固有の問題ではなく、原発新設プロジェクトでウェスチングハウス自身が抱えてきたリスクではないのか、という根本の疑問である。

*1-3:http://mainichi.jp/premier/business/articles/20170125/biz/00m/010/017000c (毎日新聞 2017年1月27日) 「東芝7000億円損失」で銀行・取引先に広がる疑心
●半導体事業の入札(1)
 東芝問題が激しく動いている。大手各紙は1月中旬、東芝の子会社である米ウェスチングハウスの原発事業で生じる損失の規模について「最大7000億円」という記事を一斉に報道した。さらに、毎日新聞は1月26日、損失額が「6800億円程度」と詳細な数字を報じた。一方、東芝の主力事業である半導体部門を分社化し、株式の2割弱を売却する方向で入札の手続きが始まったことも各紙で報じられた。いったい東芝に何が起きているのか。損失の規模について「最大7000億円」とされた点について、まず解説しよう。東芝は昨年12月末に、ウェスチングハウスが進めている米国の原子力発電所建設で追加コストが発生し、数千億円の損失が生じる可能性があると発表した。1月に入って、「損失額は4000億~5000億円」という情報が流れた。さらに1月19日に「最大7000億円」という記事が出たのだ。
●「7000億円」は米会計事務所が示した数字!?
 4000億円から7000億円まで大きな開きがあるが、これはどういう数字なのか。「7000億円」は、米国の会計事務所プライスウォーターハウスクーパース(PwC)がウェスチングハウスに対して示している数字だと関係者は説明する。これに対し、ウェスチングハウス側は4000億円から5000億円程度を主張しており、両者の間で協議が続いている、というのだ。PwCは世界4大会計事務所の一つ。4大事務所のなかでも筆頭格だ。日本ではPwCあらた監査法人と提携している。不正会計の発覚で、それまで東芝の監査を担当していた新日本監査法人は16年3月期限りで監査を降りた。その後釜は、PwCあらた監査法人になった。それと同時に、ウェスチングハウスの会計監査は、新日本監査法人と提携していたアーンスト・アンド・ヤング(EY)から、PwCに交代した。ウェスチングハウスは米原子力事業の損失について、そのPwCの監査を受けているのだ。
●東芝は2月14日に確定値を公表
 東芝の不正会計問題をめぐっては、「監査法人はなぜ見過ごしたのか」と批判の声が上がった。注目度の高い案件であり、PwCは厳しい監査に臨んでいると言われる。その結果が「7000億円」という主張になっている可能性がある。ただ、この数値も流動的だと言われている。東芝の正式な発表が遅れているなかで、額が少しずつ膨らんできた。銀行や取引先に疑心暗鬼が広がらないわけがない。東芝は1月24日、プレスリリースを出し、損失額の確定や、第3四半期決算数値について2月14日に公表することを明らかにした。その際、合わせて損失発生の原因と再発防止策についても報告するという。公表日を示すことで沈静化を図ったとみられる。
●格付け会社が再び格下げ
 そのプレスリリースが出た同じ1月24日、米格付け会社のスタンダード・アンド・プアーズが、東芝の長期会社格付けを「シングルBマイナス」から「トリプルCプラス」に1段階引き下げた。シングルBもトリプルCも「投機的」な位置づけだ。今後も格下げ方向であることは変わらないという。2017年1月25日付の毎日新聞東京朝刊  スタンダード・アンド・プアーズは格下げの理由として、「株主資本の大幅な毀損(きそん)が不可避と推定されることから、債務履行を長期的に継続することに対する不透明感が従来より強まった」と説明している。そして、こうした動きの一方で、東芝の主力事業である半導体部門を分社化し、一部株式を入札で外部に売却する手続きが始まった。売却先候補として、投資ファンドや事業会社の名前がキヤノンなど10社以上上がっているのである。

*1-4:http://digital.asahi.com/articles/ASK1W5FT8K1WULFA025.html?iref=comtop_list_biz_n04(朝日新聞 2017年1月27日)東芝、海外の原発建設から撤退へ 社長「あり方見直す」
 東芝は27日、米国で巨額損失を計上する見通しとなった原発事業について、海外の建設工事から撤退するなど、大幅に見直す方針を表明した。同事業で損失が急拡大する事態の再発を避ける狙い。半導体事業の分社化も27日の取締役会で正式決定。2017年3月期の債務超過回避を目指し、入札手続きを急ぐ。この日記者会見した綱川智社長は、原発事業について「エネルギー(事業)のなかで最注力としたが、変えていく」「海外事業は今後のあり方を見直していく」と強調した。巨額の損失をなかなか把握できなかった反省から、社長直属の事業に変更して管理を強化。今後の受注では、設計や原子炉の製造・納入などに専念し、コストが見通しにくい建設工事から手を引いて「リスク遮断する」(綱川社長)。30年度までに海外で原発45基以上の受注を見込む従来計画も、基数を含めて見直す方針を示した。半導体事業では、スマートフォンなどに使われる主力のNAND(ナンド)型フラッシュメモリー事業(従業員約9千人)を分社化。3月下旬の臨時株主総会で株主の承認を得て同月末に実施する予定。新会社の株式の一部売却は「20%未満が基本」(綱川社長)としている。米原発事業での損失額は、現時点での精査では7千億円前後に拡大する見通し。東芝は昨年4~12月期決算を発表する来月14日に、確定した損失額を公表する。半導体事業の分社化で2千億円超の利益を見込むが、債務超過が回避できるかどうかについて、綱川社長は「それ(回避)に向けて資本増強をあらゆる手段でとりたい」などと述べるにとどめ、資本増強策や原発事業見直しの詳細は、来月14日に説明する考えを繰り返し強調した。

(フクイチとその後の状況)
*2-1:http://digital.asahi.com/articles/ASK1Z5Q0KK1ZULBJ00F.html?iref=comtop_8_07 (朝日新聞 2017年1月31日) 核燃料?飛散、取り出し困難 チェルノブイリ以来の事態
 東電は宇宙線を利用した昨年の透視調査で、2号機の核燃料は大部分が原子炉圧力容器の中に残っていると推定していた。圧力容器直下にカメラを入れても、溶け落ちた核燃料が見える可能性は低いとみていた。だが、カメラの視野には、溶けた核燃料のような塊がそこかしこに飛び散っている様子が浮かび上がった。そこから分かることは、これからの核燃料取り出しや廃炉の困難さだ。溶けた核燃料が原子炉の外に出た事故は、これまで旧ソ連のチェルノブイリ原発事故以外にない。チェルノブイリ原発では、事故後30年が経過した今も、取り出しに着手していない。東電などは、2018年度に溶けた核燃料の取り出し方法を決め、21年にも着手するとしている。だが、事故から約6年で、核燃料かもしれない姿の一部が見えただけだ。広がりも、量も、状態もわからない。核燃料や、核燃料がこびりついた金属をどう切り出すのか。作業員の被曝(ひばく)をどう抑えるのか。取り出した燃料をどこに保管し、いつ処分するのか。3基がメルトダウンした世界でも例のない廃炉作業は、まだ、何一つ決まっていない。

*2-2:http://www.natureasia.com/ja-jp/nature/specials/contents/earthquake/id/nature-news-102711#fig1 (Nature 2011年10月27日号 Geoff Brumfiel) 放射性物質はどのくらい放出された?
 ノルウェーの研究チームにより、新たに福島第一原発事故で大気中に放出された放射性物質の総量が計算され、政府が6月に発表した推定放出量よりもずっと多いという報告があった。世界各地で観測された放射能データを組み合わせて大気中の放射性物質の量とその流れを推定した結果、福島第一原子力発電所の事故では、政府の推定よりもはるかに大量の放射性物質が放出されていたという研究が、Atmospheric Chemistry and Physics に発表された1。さらに、日本政府の主張とは裏腹に、4号機の使用済み核燃料プールから大量のセシウム137(半減期が長く、長期にわたって環境を汚染する物質)が放出されていたとも報告しており、もっと迅速に対応していれば、これほど大量の放射性物質が放出されずにすんだかもしれないと述べている。論文はオンライン掲載され、現在、公開査読を受けている。研究チームを率いたのは、ノルウェー大気研究所(シェラー)の大気科学者 Andreas Stohl だ。Stohl は、自分たちの分析は、これまで行われてきた福島第一原発から放出された放射性物質の量についての調査研究の中で、最も包括的なものであると自負している。スウェーデン防衛研究所(ストックホルム)の大気モデル作成の専門家 Lars-Erik De Geer は、今回の研究には関与していないが、「非常に価値のある成果です」と評価している。オンライン特集 原発事故による放射性物質の放出過程の再現は、日本国内をはじめ世界各地にある数十か所の放射性核種モニタリングステーションで観測されたデータに基づいて行われた。その多くは、包括的核実験禁止条約機構(オーストリア:ウィーン)が核実験の監視のために運用している世界規模での観測ネットワークに属する。このデータに、カナダ、日本、ヨーロッパの独立観測ステーションのデータも付け加え、これらをヨーロッパと米国が保管している広域気象データと組み合わせた。ただし、Stohl は、自分たちが作成したモデルは完全にはほど遠いものだとして注意を促している。原発事故発生直後の測定データが非常に少ないうえ、一部のモニタリングポストは放射能汚染がひどく、信頼できるデータが得られなかったからである。より重要なのは、原子炉から何が放出されたのかを知るためには、原子炉内で何が起きたのかを厳密に知らなければならないのだが、いまだ明らかになっておらず、永久に謎のままかもしれないという事実である。「チェルノブイリ事故から25年後もたった今でも、その推定値は不確かな部分が非常に多いのです」と Stohl は言う。それでも、今回の研究は、福島第一原発事故を全般的に調査したものであり、De Geer は、「Stohl らは真に地球規模の視点から、現在入手できるかぎりのデータを利用して推定しています」と話す。
●政府の発表
 3月11日の地震後に原発で起こった出来事については、すでに日本の研究者たちが詳細な経緯を推定している。福島第一原発電の6機の原子炉が激しい揺れに見舞われた50分後、巨大津波が襲来し、緊急時に原子炉を冷却するための非常用ディーゼル発電機が破壊された。それから数日の間に、地震発生時に稼働していた3機の原子炉が過熱して水素ガスを発生し、次々に水素爆発を起こした。定期点検のために停止していた4号機では、核燃料は使用済み核燃料プールに貯蔵されていたが、3月14日にこのプールが過熱し、おそらく数日にわたり建屋内で火災が発生した。一方で、原発から放出された放射性物質の量の解明は、事故の経過の再現に比べてはるかに難しい。政府が6月に発表した『原子力安全に関するIAEA閣僚会議に対する日本国政府の報告書 ―東京電力福島原子力発電所の事故について―』では、今回の事故により放出されたセシウム137は1.5×1016ベクレル(Bq)、キセノン133は1.1×1019Bqと推定している2。セシウム137は半減期30年の放射性核種で、原発事故による長期的汚染のほとんどの原因となっている。一方、キセノン133はウラン235の崩壊によって放出される半減期約5日の放射性核種であり、原発事故や核実験の際、初期に観測される。ところが、Stohl らが原発事故の再現結果に基づいて推定した放出キセノン133の量は1.7×1019Bq、セシウム137の量は3.5×1016 Bqで、政府の見積もりよりキセノンが約1.5倍、セシウムが約2倍となった。キセノン133の放出量は、チェルノブイリの総放出量1.4×1019Bqよりも多いことになる。だが、De Geer によれば、チェルノブイリでは爆発した原子炉が1機であったのに対して、福島の事故では3機も水素爆発したことで説明できるという。また、キセノン133は生体や環境に吸収されないため、健康に深刻な影響を及ぼすおそれはない。 問題なのは、数十年にわたり環境に残存するセシウム137だ。Stohl らのモデルの値は、チェルノブイリ事故での放出量の約1/2に相当する。De Geer は、このような高い値が出たことを懸念している。今後、セシウム137が人々の健康に及ぼす影響を明らかにするためには、現在行われている地表での測定を進めていくしかない。Stohl は、自分たちの推定値が政府の発表と食い違いっているのは、今回の調査ではより多くのデータを使用したことが原因の1つであるという。政府の推定の基礎となったデータは、主として日本国内のモニタリングポストによるものであり3、風に乗って太平洋を越え、北米やヨーロッパに到達した膨大な量の放射性物質は考慮されていないのだ。神戸大学の放射線物理学者で、福島周辺の土壌汚染を測定している山内知也(やまうちともや)は、「事故の本当の規模と特徴を明らかにするためには、太平洋上に出ていった放射性物質も検討する必要があります」と言う。Stohl は、政府の依頼を受けて公式な推定値を出した研究チームを非難しているのではない。むしろ、「できるだけ早く結果を出す必要があったのでしょう」と慮っている。群馬大学の火山学者で、自らも原発事故のモデルを作成した早川由紀夫(はやかわゆきお)は、「確かにこの数値だけを見れば、両者は大きく違うでしょう。けれども、どちらのモデルにもまだまだ不確実な要素があり、実際には2つの推定は非常に近いのかもしれませんね」と言う。さらに、Stohl らは、4号機の使用済み核燃料プールに貯蔵されていた核燃料が、莫大な量のセシウム137を放出していた可能性を指摘している。政府はこれまで、プールからは放射性物質はほとんど漏れ出していないと主張してきた。しかし、研究チームのモデルでは、プールへの放水をきっかけに原発からのセシウム137の放出が激減したことが、はっきり示されている(図「原発事故の経過」参照)。つまり、もっと早い段階から4号機プールへの放水を行っていれば、放射性物質の放出をもっと抑制できたかもしれないのだ。しかし、政府は、使用済み核燃料プール自体に大きな損傷はなく、使用済み核燃料が重大な汚染源になったとは考えられないと主張している。政府による公式推定値の算出にかかわった日本原子力研究開発機構(茨城県東海村)の茅野政道(ちのまさみち)は、「4号機から放出された放射性物質は多くはなかったと思います」と言う。だが De Geer は、核燃料プールの関与を含めた今回の新しい分析は、「説得力があるように見えます」と語る。さらに今回の分析は、もう1つ新たなデータを提示している。地震の直後、津波が福島第一原発に襲いかかる前から、キセノン133が漏れ始めていたというのだ。つまり、原発は、津波が襲来する前から、地震によって損傷していたことになる。政府の報告書でも、福島第一原発電を襲った揺れの大きさが、原発設計時に想定されていた揺れを上回っていたことを認めている。反原発の活動家は、以前から、政府が原発を認可する際に地質学的な危険を十分に考慮していないと主張しており(Nature 448, 392-393; 2007)、今回のキセノンの大量放出は、原発の安全性についての評価方法の再考を促すことになるかもしれないと、山内は言う。この事故で、首都圏はどうだったのか。実は、原発事故により甚大な被害を受けるおそれがあった。事故直後の数日間は、風は海に向かって吹いていたが、3月14日の午後、風向きが変わって陸に向かって吹き始め、セシウム137が東北南部から中部地方にまで広がっていった(図「放射性物質の拡散」参照)。実際、15日夜から16日未明にかけて雨が降った栃木県と群馬県の山間部では、のちに土壌から比較的高濃度の放射性物質が検出された。一方、首都圏では、そうした高濃度の放射性物質が上空を通過したときに、たまたま雨が降らなかったことが幸いした。「この時期に雨が降っていたら、東京も今よりずっと深刻な事態になっていたかもしれません」と Stohl は言う。(編集部註:ただし、(独)国立環境研究所の空間線量測定とシミュレーションによれば、21日から22日にかけても放射性物質が南関東に流れ込んだことが示されている。このときは、雨が降っていたため、南関東でも一部の地域で比較的高い線量が観測されていると思われる。)

*2-3:http://mainichi.jp/articles/20161229/ddl/k04/040/044000c (毎日新聞 2016年12月29日) 東日本大震災 .福島第1原発事故 放射能汚染廃棄物 焼却以外の「出口」模索 反対2市、すき込みや堆肥化/宮城
 東京電力福島第1原発事故による放射能汚染廃棄物の試験焼却を協議した27日の市町村長会議は「半年以内に再協議する」と結論を先送りした。この席で県が求める「年明けからの実施」に異を唱えた登米市の布施孝尚市長は28日の取材に、近く汚染牧草のすき込み実証実験を始める意向を明らかにした。会議で焼却反対を明言した栗原市も牧草の堆肥(たいひ)化を続ける方針で、汚染廃棄物の処理問題に独自の「出口」を描いたことが県方針に反する自治体の主張に結びついたといえる。布施市長は会議で、すき込みの検証作業を進める考えを示し「いましばらく時間をいただきたい」と発言した。登米市にある国の指定基準(1キロ当たり8000ベクレル)以下の廃棄物約4700トンのうち約3500トンは、堆肥化やすき込みが許容される同400ベクレル以下。布施市長によると、市役所内部で検討したところ、「400ベクレル以下の牧草はすき込み、400ベクレルを超えるものも堆肥に混ぜ込むことで、ほとんどを焼却しないで済む」との見通しがたったという。市関係の草地でさまざまな条件を設定しながら、牧草をすき込む準備もほぼ終了した。検証がまとまる時期に関連して「『半年以内』は知事のお考えであり、牧草の最初の収穫が間に合うかわからない。(次回市町村長会議までに)十分検証ができなければ、期間の延長を求めることもある」と述べた。一方、栗原市は12月議会で汚染牧草の堆肥化を本格的に進めるための予算案を認められなかったが、年度内に一部を修正し改めて提案する構えだ。販売を含め、堆肥の利用方法も検討に入るという。県議の一人は「一斉焼却に固執するのではなく、地域ごとに実情にあった出口を模索することが必要。県もそのために必要な支援策を国に働きかけるべきだ」と話す。

*2-4:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/388663 (佐賀新聞 2016年12月21日) 福島除染に国費300億円 復興指針閣議決定、2017年度帰還困難区域で
 政府は20日、東京電力福島第1原発事故で多大な被害を受けた福島の復興指針を改定し、閣議決定した。除染費用は東電が負担するとの原則を転換し「帰還困難区域」の除染に国費を投入。同区域に5年後をめどに避難指示の解除を目指す「特定復興拠点」を設け、除染費用として2017年度予算に約300億円を計上する。同区域で本格的な除染はされておらず、方針決定は初めて。関連法改正案を来年の通常国会に提出する。安倍晋三首相は官邸で開かれた原子力災害対策本部会議で「一日も早い福島の復興、再生に向け、道筋を具体化していただきたい」と述べた。改定指針は政府内での有識者を交えた検討会や国会での議論を経ていない。国民負担による東電救済との見方が多く、批判も予想される。同拠点の除染費用は5年間で3千億円規模の見通しだが整備が遅れればさらに増額する可能性がある。国費投入の背景には、費用が当初の政府試算の2兆5千億円から4兆円に拡大したことがある。試算には、放射線量が高い帰還困難区域の除染費用は含まれていない。除染関連の特別措置法は「費用は東電負担」と定めており、国費投入はできない仕組み。このため政府は、復興拠点に居住できるようにするインフラ整備に、周辺の表土のはぎ取りや樹木の伐採などの作業を組み込み、事実上の除染を「公共事業」と位置付ける。この枠組みが東電救済との批判をかわすため、福島復興再生特別措置法を改正して必要な措置ができるようにする。改定指針では、復興拠点以外の帰還困難区域も将来的な住民帰還を目指すとしている。国費での除染が増えれば、国民負担は数兆円規模に上る恐れもある。国費負担の理由については、帰還困難区域には長期間戻れないとの前提で東電が住民に賠償してきたとして、改定指針に「東電に求償せず国が負担する」と明記した。

*2-5:http://megalodon.jp/2016-1211-2210-32/ibarakinews.jp/hp/hpdetail.php?elem=ronsetu (茨城新聞論説 2016年12月11日) 原発廃炉の費用負担 電力市場をゆがめるな
 経済産業省の委員会は、原発事故の賠償金や電力会社が原発早期廃炉を決めた場合に生じる費用の一部を、原発を所有しない新電力にも負担させるなどの提言案をまとめた。経産省はこれを基に2017年度から順次、政策化することを目指す。費用は、既存の電力会社が所有する送電網の使用料(託送料)の形で徴収する方針で、最終的には電気料金に上乗せされて消費者負担となる。これは原発を所有する電力会社や事故を起こした東京電力への露骨な支援策だ。始まったばかりの電力市場の全面自由化の流れに逆行し、市場をゆがめる政策は受け入れがたい。経産省が公表した試算では、東京電力福島第1原発事故の損害賠償の費用は当初の見込みの5兆4千億円から7兆9千億円に拡大する。これまで、費用は東京電力や原発を所有する既存電力会社が負担してきたのだが、経産省は増加分2兆5千億円のうち2400億円を新電力に負担させる方針だ。経産省はまた、事故を起こしていない原発を、電力会社が当初の予定より早く廃炉にした場合に生じる費用の一部負担も新電力に求める。「過去にすべての需要家が安い原発の電力を利用してきたから」というのが広範囲の負担を求める理由だが、これらの費用は、原発運転で利益を得てきた電力会社が負担すべきものである。その原則をないがしろにし、消費者負担を求めることは、競争の中で不利になりつつある原発を所有する既存電力会社への保護策にほかならない。原発の利益はすべて享受し、経営上の判断の誤りによって生じたコストは消費者に転嫁するということが、市民の支持を得られるとは思えない。ただでも不透明な託送料への安易な上乗せを認めれば、今後に予想される賠償費用のさらなる増大などによって、電気料金が際限なく上昇するリスクも生まれる。経産省は、原発や石炭火力などからの電気を供出させ、新電力に優先的に供給する「ベースロード電源市場」を創設する方針だ。原発関連の費用負担に反対する新電力への懐柔策だろうが、これも、生まれたばかりの自由な電力市場をゆがめる政策だ。「原発と無縁な電気を使いたい」との消費者の希望に応え、原発の電力に手を出さない新電力は何のメリットも享受できずに、託送料を通じた負担だけを背負わされることになる。電力システム改革は、既存電力会社が送電網も所有する現在の仕組みを改めて、送電網を独立した企業の所有とし、すべての発電事業者が公平なルールの下でそこに電力を供給するという透明性の高い競争環境を確保することが筋だ。政府や電力会社は「原発の発電コストは安い」と主張するのだから、他の発電手法と公平な形で競争をしても何の問題もないはずだ。そもそも今回の議論の在り方自体に大きな問題がある。経産省が原発に好意的な識者や関連業界の代表を勝手に選んだ委員会で議論が進められ、一部は非公開で行われた。消費者を含めた広い議論への参加はおろか、国会の関与すらまったくないまま、国の将来を左右するエネルギー政策上の重要な改変を決めることは許されない。

*2-6:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12771846.html
(朝日新聞社説 2017年1月30日) 核燃料サイクル 再処理工場を動かすな
 高速増殖原型炉「もんじゅ」の廃炉が昨年末に決まった。計画から半世紀、1兆円超の資金を投じてもフル稼働のメドが立たなかっただけに、当然の帰結である。しかし政府は成算もないまま、再び高速炉開発を進める方針を決めた。原子力工学者らからなる国の原子力委員会は今月、新たな高速炉開発ではコスト面の課題を重視するべきで、急ぐ必要はないという趣旨の見解をまとめた。もんじゅの二の舞いを恐れての警告である。この高速炉ももんじゅ同様、核燃料サイクルの中核に位置づけられる。通常の原発の使用済み核燃料を再処理してプルトニウムを取り出し、それを高速炉などで燃やすという構想だ。プルトニウムは原爆の原料になる。高速炉の実用化が見通せない以上、危険なプルトニウムを増やすべきではない。青森県六ケ所村では使用済み燃料の再処理工場が建設中で、2018年度上期に稼働する予定だが、操業を中止すべきだ。その上で、核燃料サイクル全体について、凍結や断念も視野に、根本的に再考することを政府に求める。将来世代を含む国民への責任が問われている。
■経済性に疑問符
 天然のウランを加工して作った燃料を原発で燃やし、使用済み燃料はすべて再処理する。取り出したプルトニウムをウランと混ぜたMOX燃料にする。政府は長年、そうした全量再処理路線を掲げてきた。最大の誤算は、ウランが枯渇する心配は当分ないとわかり、価格も安定していることだ。六ケ所再処理工場の建設費は93年の着工以来、2兆2千億円に達する。完工時期は20回以上、延期されてきた。トラブル続きで稼働の先延ばしを重ねたもんじゅと同じ構図だ。大手電力など原子力事業者の共同子会社である日本原燃が建設主体で、費用は電気料金でまかなわれてきた。建設費を含む総事業費は約12兆6千億円と見積もられている。再処理の手間がいるMOX燃料が高くつくのは明白だ。経済性を重くみた米英独などは高速炉から撤退し、プルトニウムはもっぱら廃棄物扱いしている。プルトニウムには核兵器拡散問題がつきまとう。高速炉開発を続けているのが、ロシアや中国、フランス、インドと核保有国ばかりなのは偶然ではない。日本は国内の研究施設や英仏への委託で見切り発車的に再処理を進めてきた。計算上、原爆6千発分に当たる約48トンものプルトニウムを持っている。
■被爆国としての責任
 余剰なプルトニウムは持たないという核不拡散の国際規範に照らし、とりわけ唯一の戦争被爆国として、早急に保有量を減らすことが求められている。MOX燃料を原発で燃やすプルサーマル発電もあるが、四国電力の伊方原発3号機で実施されているだけで、プルトニウムは年に0・1トンほどしか減らない。原発の再稼働がどんどん進み、プルサーマルが広がるという見込みも立っていない。日本のプルトニウム現有量は六ケ所村の工場が約8年フル稼働した時の生産量にあたる。消費が進まないまま工場を動かせば、日本の核不拡散や核廃絶への姿勢まで疑われかねない。安全面の懸念も残る。六ケ所工場には使用済み燃料が3千トン近くある。大規模な火災や核分裂の連鎖反応が起きれば、放射性物質の放出リスクは原発以上とも言われる。昨年12月以降、原燃社内での安全上の虚偽報告や非常用発電機の故障、雨水の流入、核燃料物質の不適切保管が次々に発覚した。
■しがらみ超え再考を
 もんじゅ廃炉を待つまでもなく、サイクル構想には大きな無理があった。福島第一原発の事故後、長く原子力政策の司令塔役を務めてきた原子力委員会はサイクルの費用を試算し、再処理工場を稼働しないことも含めて政策の選択肢を検討する議論に踏み込もうとした。だが、原子力委の権限縮小や政権交代があり、実を結ばなかった。民主党政権下で「責任を持って議論する」(革新的エネルギー・環境戦略)とされたサイクル政策は、安倍政権下では「再処理やプルサーマル等を推進する」(エネルギー基本計画)と先祖返りしている。原子力委は今月の見解の中で、サイクル政策に「戦略的柔軟性の確保」を求め、使用済み核燃料を再処理せず長期保管する中間貯蔵の強化を推した。再処理・サイクル路線への慎重姿勢が強くにじむ。核燃料サイクルの抜本見直しは簡単ではない。国のエネルギー政策に直結し、関連施設がある各地の地域づくりにも影響する。青森県は再処理を条件に使用済み燃料を受け入れてきた。それでも今、立ち止まらなければ、国民全体が大きなつけを背負うことになりかねない。もんじゅ廃炉という、部分的な手直しですませてはならない。

*2-7:http://www.tokyo-np.co.jp/article/economics/list/201612/CK2016121102000125.html?ref=hourly (東京新聞 2016年12月11日) 経済:事故処理費増え「原発は高い」 立命館大教授・大島堅一氏に聞く
 原発の発電費用を研究してきた立命館大学国際関係学部の大島堅一教授が、原発で一キロワット時(エアコン一時間分)の電力量をつくるために必要な費用を、実際にかかってきた費用を基に「一三・一円」と試算した。政府が九日にまとめた福島第一原発の処理費用二一・五兆円を反映した。本紙のインタビューで、政府の「最大でも一〇・四円で、さまざまな発電方法の中で最も安い」とする試算を「架空の前提に基づくため実態を反映していない」と否定した。大島氏は「原発は高い」と説明する。現実に東京電力は必要な費用を払えない状態のため、「資本主義のルールに従って破綻処理したうえ、株主にも責任をとらせて財産を処分、それでもお金が足りない場合は国が責任を持って税金などを充てるべきだ」と提言。ほかの大手電力会社の原発への支援策もやめるべきだと指摘した。立命館大国際関係学部の大島堅一教授が試算した方法は明快だ。原発の建設費や投じられてきた税金、福島第一原発の賠償に充てられたお金など、実際にかかった費用を積み上げ、原発が過去につくった発電量で割った。すると、一キロワット時当たりの発電費用は一二・三円だった。さらに、経済産業省が九日、原発の事故処理費が二一・五兆円へと倍増する試算を示したため、これを反映させると一三・一円になったという。一方、経産省はこの二一・五兆円を考慮しても、原発の発電費用は一〇・二~一〇・四円にとどまると計算した。二〇一五年に試算した一〇・一円とほぼ変わらず、水力発電(一一・〇円)などほかの発電方法を下回って最も安いとの説明を続ける。経産省と財界人らでつくる「東京電力改革・1F(福島第一原発)問題委員会」の伊藤邦雄委員長(一橋大大学院特任教授)も「原発は最も効率的な発電方法だ」と語る。委員会の議論では「事故があっても安いということをもっと広報するべきだ」という意見があったという。この食い違いについて、大島氏は「政府の試算は『モデルプラント方式』といって、建設費の安い原発が事故もなく順調に稼働し続けるという理想的なシナリオを描いた計算。だから実際にかかった費用をそのまま反映するのではなく、仮定を置いて数字を変えるので安く見せるよう操作できる」と指摘する。例えば、日本の原発は稼働年数が平均三十年の時点で三基の炉心が溶融する「過酷事故」が起きた。十年に一基で事故が起きる確率だ。しかし政府試算は事故はほとんど起きない前提。このため福島第一原発にかかる費用がいくら膨らんでも、政府の試算にはほぼ影響しない。国民負担が増えているのに、政府が「原発は安い」と主張し続けるからくりはここにある。また、震災後は原発に厳しい安全対策が求められるようになり、建設費は世界的に高騰している。しかし、政府試算の前提は従来の建設費と同じ。大島氏は「政府試算の建設費の前提を、英国で新設されるヒンクリーポイント原発の建設費に置き換えただけでも、発電費用は一七・四円に跳ね上がる」と分析する。石炭火力(一二・三円)はもちろん、液化天然ガス(LNG)火力(一三・七円)より高くなる。ほかにも、政府が着手しようとしている次世代の原子炉「高速炉」の開発に投じられる税金は規模すらつかめない状態で、政府試算に反映されている金額を大幅に超えることは確実だ。大島氏は「原発は高い」と断言。「原発を続けるという選択肢があってもいいが、そのためには『原発は安い』という架空のシナリオではなく、客観的なデータを国民に示して判断を仰ぐべきだ」と語った。
<おおしま・けんいち> 一橋大大学院経済学研究科博士後期課程単位取得退学、高崎経済大経済学部助教授などを経て現職。専門は環境経済学。著書に「原発のコスト」(岩波書店)など。

<世界の再生可能エネルギーと日本>
*3-1:http://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2017/01/post-6741.php (Newsweek 2017.1.17)太陽光発電の発電コストが石炭火力発電以下に。ソーラーが「お得」な時代へ
<長年"コスト高"という大きなデメリットを抱えてきた太陽光発電が、近年、技術の進化と規模の経済性で、コスト競争力のある発電方式となりつつあることが明らかになった>
 太陽光発電は、化石燃料を必要とせず、発電時に温室効果ガスや騒音、振動などが発生しない、環境負荷の低い再生可能エネルギーの発電方式だが、発電設備のコストが比較的高いため、発電量あたりのコストが従来の火力発電に比べて高くなりがちであった。このように長年"コスト高"という大きなデメリットを抱えてきた太陽光発電だが、近年、技術の進化などに伴って、コスト競争力のある発電方式となりつつあることが明らかになっている。
●世界30カ国以上で、太陽光発電コストは石炭火力発電以下に
 世界経済フォーラムの報告書では、オーストラリア、ブラジル、チリ、メキシコなど、世界30カ国以上で、太陽光発電の発電コストが、石炭火力発電以下に低下しており、2020年頃までに、同様の現象が世界の約3分の2の国々に広がると予測している。発電所の設計、建設から運用、廃止までのコストを総発電量で割った「均等化発電原価(LCOE)」で比較すると、石炭火力発電では、メガワット時のコストが100ドル前後で推移してきた一方、太陽光発電は、10年前の600ドルから100ドル以下へと6分の1にまで縮小した。太陽光発電の発電コストが低下した要因として、発電効率の改善と発電設備の廉価化が挙げられる。米国の国立再生可能エネルギー研究所(NREL)によると、ソーラーパネルの変換効率は、20年前の15%から、現在、46%にまで上昇。また、生産プロセスの改善や規模の経済性により、発電設備の製造コストが大幅に削減され、太陽光発電の発電コストを押し下げている。太陽光発電の発電コスト低下は、新興国でも顕著に認められる。ブルームバーグ・ニュー・エナジー・ファイナンス(BNEF)によると、中国、インド、ブラジルなど、非OECD加盟国58カ国では、2016年時点で、太陽光発電導入コストが165万ドル/MWとなり、風力エネルギーをわずかに下回った。また南米チリでは、太陽光発電業者が29.1ドル/MWhの条件で政府と売電契約を設定した事例が話題となっている。
●フランスで世界で初めて、ソーラーパネルを敷設した道路が完成
 規模を問わず、発電効率が一定な太陽光発電は、大規模な発電所からスマートフォン向けの充電器まで、様々に導入できるのも特徴だ。たとえば、フランスでは、2016年12月、世界で初めて、ソーラーパネルを敷設した道路が完成。英国では、2017年1月から、電車の側面にソーラーパネルを装着し、太陽光エネルギーを電力として利用する調査プロジェクトが始動している。いわずもがな、地球温暖化防止の観点からも、太陽光発電は有力な発電方式だ。2015年12月の国連気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)に続き、2016年4月には、インド、オーストラリア、フランス、エチオピア、ブラジルを含む25カ国が、太陽光発電に関する研究開発や普及のために1兆ドル(約114兆円)を投資することで合意した。太陽光発電のコスト競争力が高まるにつれて、先進国、新興国を問わず、日射量の多い国・地域を中心に、太陽光発電への投資が多様に増え、太陽光エネルギーの活用は、ますます広がっていきそうだ。

*3-2:http://www.renewable-ei.org/column/column_20170105.php (自然エネルギー財団常務理事 大野輝之 2017年1月5日) 自然エネルギーが脱炭素社会への扉を開く―2017年、自然エネルギー100%への転換を日本からも
●自然エネルギー発展の画期となった2016年
 世界の自然エネルギー導入量は過去数年、急速に拡大してきました。2016年末の導入量はまだ明らかになっていませんが、風力発電は5億kW、太陽光発電は3億kW近くに達したのではないかと見込まれます。5年前の2011年末と比較すると、風力は2倍以上、太陽光は4倍以上という高い水準です。昨年の自然エネルギーの発展に関して、導入量の大きさ以上に画期的だったのは、そのコストが劇的な低下を続けたことです。風力発電は、既に昨年1月にモロッコで行われた入札で1kWhあたり3.0セントというレベルまで低下していましたが、太陽光発電も昨年中に世界各地で行われた入札で、次々に最安値を更新し、9月にアブダビで行われた入札では、2.42セントという水準に至りました。今や日照時間など条件に恵まれた地域では、太陽光発電は従来からの火力発電だけでなく、風力発電よりも安い電源になっているのです。自然エネルギーの発電コストの低下は今後も続くと予測されています。国際再生エネルギー機関(IRENA)が昨年6月に公表した報告書(“THE POWER TO CHANGE”)では、2015年から2025年までに、大規模太陽光発電の導入コストは、世界平均で57%下落するとしています。
●世界のトップ企業は自然エネルギー100%をめざす
 昨年11月に発効した「パリ協定」は、今世紀後半には世界の温室効果ガスの排出量を実質的にゼロにすることを決めています。排出ゼロを達成するためには、エネルギー利用の効率化とともに、使用するエネルギーを化石燃料から自然エネルギーに全面的に転換する必要があります。今、世界のトップ企業の中で広がっているのは、自らの企業の使う電力を、率先して100%自然エネルギーに転換する「RE100」という取組みです。「RE100」には、アップル、グーグル、フェイスブックなどのIT企業やゴールドマンサックスやバンクオブアメリカなどの金融機関、更にはGM、コカコーラ、ヒューレットパッカードなどの名だたる世界のトップ企業が80社以上も参加しています。グーグルが今年中には100%の達成を見込むなど、これらの企業は積極的な自然エネルギー開発や調達を進めています。
●2017年:日本の未来を開くエネルギー政策への転換を
 「RE100」には、欧米だけでなくインドや中国の企業も参加していますが、残念ながら現在までのところ、日本企業は参加していません。日本企業の中にも、自然エネルギー100%を目指そうとしている会社はあるのですが、日本での自然エネルギー導入が立ち遅れている中で、「RE100」の目標を掲げることに二の足を踏んでいる状況です。パリ協定が発効し脱炭素への転換が求められる中で、世界規模でビジネスを展開する企業には、温室効果ガスの排出を大幅に削減すること、その代表的な取組として自然エネルギー100%をめざすことが、マーケットでのその企業の評価を左右するようなってきています。世界の多くのトップ企業が「RE100」に参加しているのは、こうした動向を熟知しているからに他なりません。また冒頭に見たように、欧米などでは自然エネルギーコストが安くなってきているため、自然エネルギー100%への転換が経済的にも大きな負担を伴うものではなくなってきているのです。日本のエネルギー政策は自然エネルギーの導入に消極的であるだけでなく、石炭火力発電の大量の新増設を可能にするなど、「パリ協定」後の世界の流れに逆行しています。送電網を管理する電力会社が、自然エネルギーの接続や有効利用に制限を加えるなど、日本には自然エネルギーのコスト低下を阻む様々な障害が残っています。一方、「ベースロード電源市場の創設」という名目で、石炭火力の利用を進める政策も導入されようとしています。エネルギー政策を転換し、日本の企業が石炭火力からの電力を利用しないで済むようにすること、自然エネルギー100%への転換を容易にできるようにすることは、脱炭素経済への転換が進む世界で日本企業が活躍するためにも必要になってきています。毎年恒例の自然エネルギー財団の国際シンポジウム"REvision"は、今年は3月8日に「自然エネルギーが切り拓く未来」をテーマに開催いたします。世界各地でビジネスが自然エネルギーの導入を先導している状況をお伝えしようと思っています。"REvision 2017"などのシンポジウムの開催、様々な調査研究の実施、アジアスーパーグリッドの実現をめざす共同の取組など、自然エネルギー財団は、本年も、日本と世界のエネルギー転換を進める活動に取り組んでいきます。


<強引な原発再稼働への動き>
PS(2017年2月1日追加):日本農業新聞が、*4-1に、「世界はパリ協定の下、既に地球温暖化防止へ動きだしている」「日本も再生可能エネルギーに軸足を移さなければ世界の潮流から取り残される」「日本が昨年決めた2030年度の電源構成は、天然ガス27%(13年度43%)、石炭26%(同30%)、再エネ22~24%(同11%)、原子力20~22%(同1%)、石油3%(同15%)であり、石炭火力と原発依存が鮮明で、時代を見誤っている」と記載しているのは、全くそのとおりだ。
 また、*4-2のように、「運転中や運転可能な全国の商用原発42基のうち40基で、重要設備である中央制御室の空調換気配管の詳細な点検が行われていなかったことが、電力9社と日本原子力発電への取材で分かった」とのことで、これは原発事故や放射性物資の危険性を無視したあまりにも杜撰な行動だ。しかし、*4-3のように、玄海原発3、4号機は新基準で「適合」とされ、これは全国で6例目だそうだ。国会議員選挙では、「経済」「補助金」「ばらまき予算」を前面に出して闘うため、脱原発を主にして選択する人は多くないが、原発再稼働の賛否のみを問えば反対する人の方が多い。
 そのため、*4-4のように、「玄海原発プルサーマルと全基をみんなで止める裁判の会」は、司法を使って再稼働を止めようとしている。今後、玄海原発の再稼働は「地元同意」の手続に入るが、*4-5のように、唐津市長選で初当選した元県議の峰達郎氏が「地元同意」の範囲について、「佐賀県伊万里市や福岡県糸島市など周辺自治体と連携して、国に避難や屋内退避が必要となる半径30キロ圏への拡大を要請する」という意向を明らかにされたのは尤もで、事故時に被害を受ける範囲を考えればまだ狭いくらいである。

*4-1:https://www.agrinews.co.jp/p39774.html
(日本農業新聞論説 2016年12月27日) 地球温暖化防止 再エネ立国へ転換急げ
 世界は先月発効したパリ協定の下で、地球温暖化防止へ動きだしている。目標は「脱炭素」社会で、今世紀後半に二酸化炭素(CO2)など温室効果ガス排出を実質ゼロにする。ドイツ、北米各国は既に脱炭素への長期計画を国連に提出した。だが、日本はその検討を始めたばかりだ。安全で脱炭素の切り札の再生可能エネルギーに早く軸足を移さないと、世界の潮流から置き去りにされてしまう。世界と日本の平均気温は今年も観測史上最高となった。温暖化によって、熱波、干ばつ、洪水など異常気象による災禍は地球上で枚挙にいとまがない。パリ協定は、今世紀末の気温上昇を産業革命以前と比べ2度未満に抑える目標を設定した。正確には「2度を十分下回る」という表現で、追求目標1.5度未満が真意といえる。実現手段が脱炭素化だ。CO2排出を森林などの吸収と同等にまで減らし、差し引きゼロにする。同協定は2020年以降の枠組みだが、事前に温室ガス削減の30年目標の上積みと長期計画を各国に求めている。米国は50年までの長期計画を先月提出。電源構成の再エネ比率を55%に高め、温室ガス80%削減を目指す。トランプ次期大統領は自国経済優先で協定離脱を示唆したが、選挙後は軟化している。ドイツは80~95%削減を明示。原発全廃と再エネ推進を先導する環境先進国の気概がある。カナダも80%削減を表明した。それに比べ、日本の消極性が際立つ。50年目標80%削減という民主党政権下での閣議決定があるが、自民党政権下ではたなざらし状態だ。パリ協定での日本の30年目標は26%削減にとどまる。政府に上積み修正する気配はなく、まして80%削減達成への道筋は見えない。日本が硬直的なのは、昨年決めた30年度の電源構成に固執するからだ。構成は天然ガス27%(13年度43%)、石炭26%(同30%)、再エネ22~24%(同11%)、原子力20~22%(同1%)、石油3%(同15%)と石炭火力と原発依存が鮮明だ。これをベースにする限り、温室ガス削減目標も変えようがない。CO2を多く出す石炭火力依存の日本は先月、国際環境団体から批判の化石賞を受け面目をつぶした。原発依存も潮流に逆行している。世界では安全・経済性両面での懸念から原発離れが目立つ。わが国で進む石炭火力発電の新増設も、原発関連の高速増殖原型炉「もんじゅ」廃炉後の次世代実証炉開発も時代性を見誤っている。クリーンで安全、新ビジネスとしても有望な再エネにこそ投資すべきだ。脱炭素への長期計画の検討を経済産業省と環境省が今夏から進めている。政府の全体検討は来年度以降と遅いが、再エネ加速による温室ガス大幅削減を打ち出す決断を求めたい。再エネ立国を目指せば、地方創生を含めた持続可能な経済・社会づくりと、地球温暖化を防ぐ国際貢献の両方ができる。

*4-2:http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170115-00000014-jij-soci (時事通信 2017/1/15) 原発40基、詳細点検せず=配管腐食、再稼働の川内・伊方も―電力各社
 運転中や運転可能な全国の商用原発42基のうち40基で、重要設備である中央制御室の空調換気配管の詳細な点検が行われていなかったことが14日、原発を保有する電力9社と日本原子力発電への取材で分かった。中国電力島根原発2号機(松江市)の換気配管では腐食による穴が多数見つかっており、事故が起きた場合に機能を維持できない恐れがある。中国電は昨年12月、運転開始後初めて島根2号機で配管に巻かれた保温材を外し、腐食や穴を発見。必要な機能を満たしていないと判断し、原子力規制委員会に報告した。再稼働した九州電力川内原発1、2号機(鹿児島県)や関西電力高浜原発3、4号機(福井県)、四国電力伊方原発3号機(愛媛県)の点検でも保温材を外していない。点検方法は各社の判断に委ねられており、規制委は全国の原発の実態を確認する。中央制御室は原発を運転・監視する中枢施設で、運転員が24時間常駐する。通常は配管を通じて外気を取り入れ換気するが、事故発生時には外気を遮断し、機密性を保つ機能が求められる。原発を保有する各社によると、島根2号機と北陸電力志賀原発1号機(石川県)を除く40基で、保温材を外さないまま配管の外観点検が行われていた。40基には東京電力福島第2原発の4基も含まれる。外気取り入れ口付近の目視点検や異音検査などが実施された例はあったが、配管の保温材を全て外した上での目視確認は行っていなかった。一方、北陸電は2003年に志賀1号機の配管でさびを発見。保温材を外して点検し、08年に取り換えた。規制委は島根2号機で見つかった腐食について「規制基準に抵触する可能性がある」とみている。中国電は「海に近いため塩分を含んだ空気が配管に流れ込み、腐食が進んだ可能性がある」と説明している。日本の原発は発電用タービンを回した蒸気を海水で冷却し循環させるため、海辺に立地している。40基の内訳は北海道電力泊原発1~3号機、東北電力東通原発1号機、同女川原発1~3号機、東京電力福島第2原発1~4号機、同柏崎刈羽原発1~7号機、中部電力浜岡原発3~5号機、北陸電力志賀原発2号機、関西電力美浜原発3号機、同大飯原発1~4号機、同高浜原発1~4号機、四国電力伊方原発2、3号機、九州電力玄海原発2~4号機、同川内原発1、2号機、日本原子力発電東海第2原発、同敦賀原発2号機。

*4-3:http://qbiz.jp/article/101937/1/ (西日本新聞 2017年1月18日) 玄海3、4号機が新基準で「適合」決定 全国6例目
●再稼働は早くても夏以降
 原子力規制委員会は18日午前の定例会合で、九州電力が再稼働を目指す玄海原発3、4号機(佐賀県玄海町)の安全対策について、原発の新規制基準を満たすとする「審査書」を全会一致で正式決定した。残る審査手続きや地元同意手続きが必要なため、再稼働は早くても今夏以降となる見通しだ。審査書の正式決定は、既に再稼働した九電の川内原発1、2号機(鹿児島県薩摩川内市)などに続いて全国6例目、九電の原発では2例目となった。審査書は、規制委が昨年11月に審査書案を作成した後、一般公募した意見を踏まえて取りまとめた。内容は審査書案と大筋で変わらず、想定される最大の地震の揺れ「基準地震動」は620ガル、津波の高さは約4メートルとした上で、重大事故対策や基本的な設計方針が東京電力福島第1原発事故後の新基準に「適合している」と結論付けた。規制委は今後、施設の詳細設計をまとめた「工事計画」、運転管理体制を定めた「保安規定」の認可の可否を審査する。再稼働に対する地元同意の範囲を巡っては、国が基準を示しておらず、九電は立地自治体の佐賀県と玄海町の同意で再稼働したい考え。山口祥義知事は住民理解などを条件に容認する意向を示唆し、岸本英雄町長は一貫して賛成している。ただ同県内では複数の自治体の首長が再稼働に反対しており、同意を得るべき自治体の拡大を求める声も上がっている。玄海3号機は1994年3月、4号機は97年7月に運転開始。ともに出力は118万キロワット。3号機はプルトニウム・ウラン混合酸化物(MOX)燃料を使うプルサーマル発電を行う。2基の審査は、九電が新基準の施行直後の2013年7月に申請していた。

*4-4:http://qbiz.jp/article/101796/1/ (西日本新聞 2017年1月17日) 玄海原発差し止め 仮処分審尋が結審  年度内に決定か
 九州電力玄海原発(佐賀県玄海町)3、4号機が耐震性などの基準を満たしていないとして、住民団体が運転再開差し止めを求めた仮処分の第24回審尋が16日、佐賀地裁であり、結審した。地裁は双方の当事者に対し、決定の2週間前に期日を通知する。原告は、佐賀市の「玄海原発プルサーマルと全基をみんなで止める裁判の会」(石丸初美代表)の236人。2011年7月に3号機の差し止め仮処分を申し立て、昨年10月には4号機についても追加申請して非公開の審尋を続けてきた。立川毅裁判長は「主張と立証の関係は本日で終了する」として審尋を終結。裁判の会は、年度内に決定が出るとみている。3、4号機を巡っては、安全対策が新規制基準を満たしているとして、18日に原子力規制委員会が審査書を正式決定する予定。地元同意などを経て運転再開の手続きに入る。

*4-5:http://qbiz.jp/article/102680/1/ (西日本新聞 2017年1月31日) 「地元同意」拡大要求へ 玄海原発再稼働 糸島、伊万里と連携 唐津市長選当選の峰氏
 佐賀県唐津市長選で初当選した元県議の峰達郎氏(56)は30日、隣接する玄海町の九州電力玄海原発の再稼働に向けた「地元同意」の範囲について、同県伊万里市や福岡県糸島市など周辺自治体と連携し、国に拡大を要請する意向を明らかにした。地元同意の範囲は法令の定めがなく、再稼働を先行した鹿児島などの3県はいずれも立地自治体と県に限定。玄海原発も玄海町と佐賀県だけとなる可能性が高い。玄海3、4号機については原子力規制委員会が18日、新規制基準に適合するとした審査書を決定し、国は玄海町と県に再稼働の方針を伝達。地元同意に焦点が移っている。峰氏は、唐津市の一部が玄海原発の5キロ圏にあることを念頭に「立地町、県と同じ立場にないことがどうしても納得できない」と強調した。また、国が福島原発事故後、緊急時に避難や屋内退避が必要となる範囲を半径30キロ圏の緊急防護措置区域(UPZ)に拡大したことを踏まえ、「UPZで考えれば唐津も伊万里も糸島(福岡県)も一緒。国がつくったなら、それなりに対応してほしい」と述べ、30キロ圏にある3県8市町で連携して国に要請する考えを示した。一方、九電との安全協定については「事前了解権は欲しいが、今後の検討課題としたい」と述べるにとどめた。
●市長給与減提案へ
 唐津市長選から一夜明けた30日、初当選した元県議の峰達郎氏(56)は、公約に掲げた市長給与の2割削減を新年度当初予算案に盛り込む意向を明らかにした。同市町田の事務所で記者団の取材に答えた。峰氏は給与削減のほか、就任初年度に取り組む施策として機構改革を挙げ「全国から特別顧問のような方を3〜5人招いて市長室をつくり、市政に外からの空気を入れていきたい」との構想を語った。官製談合事件、現職市長の政治献金問題で傷ついた市政の信頼回復を図るため「これまでの既得権益と決別する」と訴えてきた峰氏は「年間100億円前後の公共工事費が使われているが、有効に使われているか見えていない。就任後はしっかり見極めたい」とし、市庁舎建て替えについても再検証する考えを示した。公約としていた支所機能の強化に関しては「機能の検証、職員配置の再構築が必要。市民センターの統廃合という形になるかもしれない。センター長には決裁権を持たせる」と述べた。当選から一夜明けた感想を問われると「いよいよ変わると信じていると激励を受けた。公約の具現化を期待されている。3万を超える方から支持をいただき、涙が出ないほど身の引き締まる思いだ」と語り、激戦を振り返って「唐津市は一つにならないと発展できない。選挙後はノーサイドでやっていかなければならない」と融和を呼び掛けた。

<技術進歩を正確に伝えない世論操作>
PS(2017年2月2日追加):日本では、*5のように、電力の需要と供給が一致しなければならないとして太陽光発電の出力を制御しているが、余った電力は、蓄電したり、水素社会に向けて水から水素を作るのに使ったりする方が賢い。何故なら、①太陽光発電システムを十分に稼働させて発電コストを下げ ②水素社会に向けて水から水素と同時に酸素を作って販売することで、空気中の酸素が薄くなるという「公害」を防ぐことができるからだ。そのためには、電力会社は定款を変更して電力以外のものも売れるようにするか、水素や酸素などのガス製造部門を切り出して子会社化しなければならないが・・。

*5:http://qbiz.jp/article/102856/1/ (西日本新聞 2017年2月2日) 太陽光出力を正確に予測 九電、システム実用化目指す 無駄な制御回避へ
 九州電力が、太陽光発電の出力を2、3時間前に予測するシステムの実証実験を進めている。毎日の電力の需要と供給などの運用計画を策定するため、現在は前日に出力を予測している。システムが実用化すれば、当日の天候によって出力が大きく変動する太陽光の発電量予測の精度が高まる。太陽光発電が増加する中、無駄な出力制御を回避し、より多くの電力を受け入れられるようになる。システムは、九電と気象会社、大手電機メーカーが共同で開発。昨年9月に試験的な運用を始めた。今後1、2年の試験運用を経て、実用化を目指す。九電は現在、前日午前10時の気象予測の画像と日照量に基づき、翌日の太陽光発電の出力を予測し、電力の需給計画を決定。その後、当日午前4時の気象予測で修正し、管内の需給が一致するようにしている。しかし、現在のシステムでは、太陽光発電量の予測と実績に差が生まれる。例えば2015年秋には、予想外の晴天となり、電力消費のピーク時に実績が予測を2倍以上も上回る日があった。火力発電所の出力を落とすなどして需給を調整したという。一方、秋雨前線の予測が外れて太陽光発電が大幅に不足し、火力発電所の出力を増やして対応することもあった。新たなシステムでは、当日の2、3時間先の気象予測データを解析し、日中に出力予測を細かく修正し続けることが可能。実績と予測の誤差を縮めることで、時間に余裕を持って火力発電の出力を調整できる。九電管内の太陽光発電の接続量は、単純計算で大型原発約6基分に相当する668万キロワット(16年11月末時点)。太陽光パネルの設置が増え続ければ出力の実績と予測の差はさらに広がるが、新システムで出力予測の精度が上がれば、無駄な出力制御を要請する事態も回避することが可能になるという。九電電力輸送本部の深川文博給電計画グループ長は「雲が急に発生した場合など予測が当たらないこともまだある。さらに工夫し、精度を上げたい」と意気込んでいる。

<脱原発へ>
PS(2017年2月13日追加):*6-1のように、世界が原発の危険を認識した中、フクイチ事故を起こした日本の経産省が米と原発の売り込みを提案することを検討しているとのことだが、日本政府のこのような誤った方針が東芝などの損失を膨らませた一因だ。これは、第二次世界大戦が航空戦の時代になっていたにもかかわらず、巨艦を建造して「不沈艦(実際にはあり得ない)」などと言っていたのと変わりない。また、経産省は「2030年までに新興国を中心に世界で30~330基の原発が新設される」などとしているが、それでは世界の原発事故発生リスクは非常に高いものになる。そのため、*6-2の台湾政府は脱原発法を成立させ、*6-3のベトナム・リトアニア政府も原発計画を撤回し、インド・トルコでも反対運動が起こっているのだ。なお、*6-4のように、民進党が「原発ゼロ基本法案(仮称)」に「2030年ゼロ」を明記するそうだが、省エネ・再エネ技術が進んだ現在、「2025年までのなるべく早い時期に脱原発」とするのが八方によいと考える。大手電力会社の社員にとっても、この方が次の東電や東芝にならずにすみ、経営資源を新エネルギーに集中させることができるため、メリットがあるだろう。

*6-1:http://www.tokyo-np.co.jp/article/economics/list/201702/CK2017020802000131.html (東京新聞 2017年2月8日) 【経済】米と原発売り込みを提案へ 世界が危険認識、損失膨らむ中
 世耕弘成経済産業相は七日の記者会見で、日米首脳会談に合わせて訪米する考えを示した。政府は世耕経産相も会談に同席する方向で調整しており、米国に対して、新興国への原発の共同売り込みなどを提案することを検討している。しかし福島第一原発の事故を受けて原発の市場は世界的に縮小し、原発産業では損失が相次いでいる。専門家は「原発を売り込んで資金を稼ぐシナリオは現実的ではない」と疑問視している。原発の共同売り込みは、日本が首脳会談で提示を目指す経済協力のための政策集「日米成長雇用イニシアチブ」の原案に載っており、「十年間で五百億ドル(五兆円超)の市場を開拓」するとされている。国内の原発メーカーのうち東芝と日立製作所は米国の企業と組んでおり、日米双方に利益があることをアピールする。しかし福島第一原発の事故により米国や欧州で安全のための規制が強まり、建設費は世界的に高騰。建設が止まったり、白紙撤回になる例が相次いでいる。さらに米国のシェール革命により、原油など火力発電の燃料価格が長期にわたって安定するめどが立ち、原発の市場は縮小しつつある。このため東芝は米国の原発関連事業で七千億円規模の損失を見込み、原発の建設から撤退することも検討中。日立も米国での研究開発をやめ、七百億円の損失を計上する。それでも世耕経産相は三日の記者会見で「世界各国で、原発を新設しようという動きはたくさんある」と述べ、原発輸出を進める考え。経産省は国際原子力機関(IAEA)の見通しなどから「二〇三〇年までに新興国を中心に世界で三十~三百三十基の原発が新設される」などとみている。しかし、ベトナム政府が住民の反対や財政難から原発計画を撤回するなど、新興国でも新設は難しくなっている。九州国際大の中野洋一教授(国際経済学)は「福島第一原発の事故で世界に危険性が知られ、価格面でも再生可能エネルギーや火力に見劣りするようになった。米国の威を借りて原発を売り込んでも、受注は難しいだろう」と指摘した。

*6-2:http://mainichi.jp/articles/20170112/k00/00m/030/068000c
(毎日新聞 2017年1月11日) 台湾、「脱原発法」成立 「25年までに全て停止」
 台湾の蔡英文政権が2025年までに脱原発を実現するため提案した電気事業法改正案が11日夜、立法院(国会)の本会議で、可決・成立した。改正法には「25年までに原発の運転を全て停止する」との条文が盛り込まれた。改正法は、原発分の電力を代替する再生可能エネルギーの普及など電力改革を行う内容。脱原発が実現すればアジアでは初となる。東京電力福島第1原発事故後、台湾では反原発の機運が高まっていた。蔡総統は総統選前から「25年までに非核家園(原発のない郷土)」の実現を掲げてきた。台湾では、完成した原発3カ所の原子炉6基(2基は停止、1基は点検中)が18年から25年までに順次40年の運転期間が終わる。日本企業が原子炉などを輸出し「日の丸原発」とも呼ばれた第4原発は14年に建設が凍結されている。蔡政権は運転延長や新規稼働を認めず、脱原発を達成する狙いだ。代替として再エネの普及拡大を目指し、電源構成で再エネ比率を現在4%から25年に20%まで大幅に引き上げ、再エネ事業への民間参加を促す。蘭嶼島にある低レベル放射性廃棄物貯蔵施設の移転計画も進める。しかし産業界を中心に電力供給の不安定化や電力価格の高騰を招きかねないと懸念の声も相次ぐ。

*6-3:http://blogos.com/article/205962/ (THE BIG ISSUE JAPAN 302号 2017年1月1日発売) ベトナム、原発計画中止 リトアニア、計画凍結 日本の脱原発への政策転換必至
●90年代からオールジャパン体制でこぎ着けた受注がご破算
ベトナム国会が原発立地計画を中止する政府提案を11月22日に可決した。ベトナム政府は電力需要に応える切り札として、2009年に4基の原発を建設する計画を承認し14年に着工する予定だった。しかし、当初案は資金難や人材不足で延期が繰り返されてきていた。また、11年の福島原発事故の教訓を生かし、津波対策として予定地をやや内陸へ移動する計画変更も行っていた。予定地は、風光明媚で漁業や果樹生産の盛んな南部ニントゥアン省ニンハイ県タイアン村だった。直前の計画では、第一原発2基は28年に、第2原発2基は29年に稼働、第一原発はロシア、第2原発は日本が受注、各100万キロワットで、計400万キロワットの設備となる予定だった。中止の理由は、福島原発事故を受けて建設コストが2倍に高騰したことに加えて、同国の財政悪化が重なったからだ。また、住民の反対の強まりや、コストをさらに大きく引き上げる要因にもなる原発の使用済燃料の処理・処分の未解決問題も指摘された。原発に代えて、今後は再生可能エネルギーやガス火力などを導入するという。マスコミのインタビューに応じたレ・ホン・ティン科学技術環境委員会副主任は「勇気ある撤退」と評価している。日本はこれまでベトナムの原発建設計画を受注すべく、90年代から原子力産業協会を中心に働きかけを繰り返してきた。2010年には「国際原子力開発(株)」を設立し、オールジャパン体制を作って臨んだ。同社は電力9社と原子力メーカー3社に、09年に政府出資で設立された「(株)産業革新機構」が株主となり設立された会社である。ロシア、韓国、中国、フランスなどの企業と受注を競う中で、ようやく合意にこぎ着け、11年9月に第2原発建設の協力覚え書きを取り交わした。同社の活動はベトナムに限定されており、同国向けに設立された会社だと言える。そんな万全の態勢で臨んだが、計画は中止となった。
●リトアニア、6割の国民が反対、日本の原子力産業界は大打撃
 また、リトアニアでも原発計画が凍結された。同国はEUに加盟する時点で、旧ソ連製の古いイグナリナ原発を廃止。09年、その敷地に隣接して新たなヴィサギナス原発建設が計画された。この建設を受注したのが日立製作所だ。12年6月21日に議会が承認、正式契約は周辺国の合意を得てからではあるが、政府による契約がほぼ固まった。事業規模は約4千億円、合計出力は最大340万キロワット、建設は2基になりそうだった。ところが、福島原発事故を受けて原発建設への反対が強まる中、野党が原発計画の是非を問う国民投票議案を提出、国民投票が12年10月に実施された。結果は建設反対が6割を超えたが、この国民投票は法的拘束力を持たず、政府は計画を中止しなかった。しかし、同時に行われた議会選挙で社会民主党が勝利し、次期首相候補は建設計画の見直しを明言。ここにきて正式に計画が凍結されることとなった。原発が市場で競争力を持つようになるか、電力供給の上で必要になるまでの間は凍結される。市場競争力は望めず、事実上の計画撤回と見てよい。国内での原発建設計画が停滞する中、輸出に活路を見いだそうと日本の原子力産業界は海外での活動を活発化させてきた。両国の撤退が原子力産業界にとって大打撃となるのは必至だ。9月に原子力関係閣僚会議が「もんじゅ」廃止の方向を決めた。再稼働は住民の反対や裁判所の決定で電力会社の期待に反してさほど進んでいない。さらに電力自由化の中で競争力を失う原発に対して、政府はさまざまな保護政策を講じ、福島原発事故の賠償や廃炉の費用を国民に転嫁しようとしている。それでも原発が以前のように復活することはないだろう。 17年にはエネルギー基本計画の改訂議論がスタートするが、今回の撤退を受けて、原子力政策の抜本的な見直しを検討するべきだ。

*6-4:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12778780.html?ref=pcviewpage (朝日新聞 2017年2月3日) 30年に「原発ゼロ」、民進法案に明記へ 「30年代」から前倒し
 民進党のエネルギー・環境調査会(会長・玄葉光一郎元外相)は2日、検討中の「原発ゼロ基本法案」(仮称)に「2030年ゼロ」を明記する考えを示した。従来の「30年代ゼロ」を実質9年前倒しする。蓮舫代表が3月の党大会で打ち出せるよう調整に入る。この日、同調査会役員会で玄葉氏が原案として示した。役員十数人で議論し、「賛成の方が多かった」(玄葉氏)。今後、党所属国会議員が参加する総会を開き、今月内に正式決定する。従来方針の「30年代ゼロ」は民主党政権時の12年に決定。党内の原発容認派に配慮し幅を持たせた。今回「30年ゼロ」へ早める背景には、13年9月から約2年続いた全原発停止の状況でも電力不足は起こらなかった事実がある。玄葉氏は記者団に、「電力をめぐる状況は変わった。省エネ技術や再生エネルギーも進んでいる」と話し、これらの推進も明記する方向。原発を利用し続ける方針の安倍政権との対立軸にする。また、原子力規制委員会の安全確認を得た原発の再稼働を条件付きで容認するとした従来方針も、要件をさらに厳しくする案が浮上している。


<メディアの質>
PS(2017年2月15日追加):*7-1に、「①新聞の発行部数は減少に歯止めがかかっていない」「②ネットを使うことにより、マスメディアを通さず個人も情報発信できるようになった」「③ソーシャルメディアにより、メディアは多数の中の一つでしかなくなった」「④ローカルは市場が小さく、広告モデルでの収益に限界がある。発行エリア以外からの収益を模索しているが、どう考えるか」と書かれている。
 私は、①の理由は、新聞が真実を追求せず、行政の広報機関と化して記事の内容に責任を持たないことにあり、②のように、本人やわかっている個人がリスクを侵して真実の情報を発信した場合には、それに内容で負けるのだと考える。ネットがなかった時代は、人々はマスメディアからしか情報を得ることができなかったが、現在は、②③のように、個人も情報を発信でき、人々は多方面から情報を入手できるようになったからだ。そして、人々が真実を求めて検索する時代になり、日本では、特に原発事故以来、行政の広報機関をして人々の側に立たなかったメディアへの信頼がなくなった。そのような中、私は、全国紙だけでなく、原発は東京新聞・河北新報・福島民友・西日本新聞・佐賀新聞、辺野古は琉球新報・沖縄タイムス、農業は日本農業新聞の記事を多く参考にした。そのため、④については、地方紙もデジタルで全国に読者を作ればよく、その方がいろいろな立場の人の考え方を知り易くなり、デジタル版に動画をつければテレビ報道も容易であるため、報道は大競争の時代に入ったのだと考える。
 なお、日本のメディアが経産省の広報機関をして国民を馬鹿にした情報を出している間に、*7-2のように、世界では自然エネルギーによる電力の普及が進んだ。そして、オランダ鉄道は、*7-3のように年明けから風力発電で全列車を運行しており、コストダウンが進んだことは間違いない。

*7-1:http://qbiz.jp/article/103658/1/
(西日新聞 2017年2月15日) 地方紙は生き残れるか ジャービス米教授、発想の転換促す
●IT先進国、米にも事例なし、ジャーナリズムを「サービス」に
 従来のビジネスモデルや伝え方に固執するメディアは淘汰される―。ジャーナリズムの将来に関する論考が世界的に注目を集める米ニューヨーク市立大のジェフ・ジャービス教授は、こう断言した。そして、特に地方紙について、その生き残りに向けた処方箋は「コミュニティーに耳を傾け、役立つサービスを提供すること」だという。部数減が続き、苦闘する地方紙の一記者として、その言葉の意味を考えた。ジャービス氏は米ローカルメディアの経験が豊富で、日本でも昨年発刊された「デジタル・ジャーナリズムは稼げるか」(東洋経済新報社刊)の著者として注目された人物。1月27日、東京都で開かれた「Media×Tech 2017」(Yahoo!ニュース・日経電子版主催)にネット中継で基調講演し、「ローカルメディアはどう生き残るか」と題したセッションにも参加した。イベントはメディアの今を受け止め、その将来を模索することを目的に初開催。地方紙や雑誌、ネットメディアなど幅広い分野の責任者が議論を深めた。
■「マス」のビジネスモデル殺した
 「ネットが殺したのは、マスメディアのビジネスモデルだ。マス、という考え方そのものもなくした」。ジャービス氏は基調講演の冒頭で、こう指摘した。今はツイッターを使うことで一個人でも影響力を行使できる。そうした手法で、マスメディアを通さずに情報発信でき、そこで関心がある人同士を見つけて、ともに行動することもできるようになった。マスメディアが出す情報はかつては手間がかかり、高価だったが、その希少性が失われている、という指摘だ。ジャービス氏は「マスメディアは、もっと人と人との関係性によって立つ存在にならなければならない」として、ジャーナリズムを「サービス」と考える発想への転換を促す。読者を「マス(集合体)」としてではなく、「個人」として捉え直すことから始めるべきだという。若い母親や商店主、それぞれのコミュニティーに耳を傾け、役立つサービスを提供することが重要だと説明した。
■単なるコンテンツ販売には限界
 「一つの製品を垂れ流しにするのではなく、たくさんの製品をつくっておく。まず自分たちのアイデアを見せるのではなく、ニーズを把握するところから始める。その上で何ができるのかを考える。それは新しいやり方で難しいが、大きな企業が小さく考えることのきっかけになると思う。それが新しいニュース組織の始まりだ」。ジャービス氏は収益について「単に(購読料として)コンテンツを販売するだけなら限界がある。メンバーから収益を取ることが重要で、そのほかに広告もあるし、イベントも活用できる」と指摘する。そして最後に、トランプ新政権についてこう言及した。「フェイクニュースには失望している。残念ながらトランプ氏が大統領になってしまった。しかし一方でフェイクニュースがあれだけ広まったということは、彼らがわれわれより、よりよい形で人々にリーチできたということでもある。シェアするのはその内容に共感するからであって、マスメディアはそこから学ばないといけない」。「コミュニティーのニーズをもっと聞くことはできる。ソーシャルメディアの存在によって、私たち(メディア)は希少な存在ではなく、多くあるうちの一つでしかなくなった。ジャーナリストになるのは、昔より大変になっていると言えるだろう」。来場者からは「ニュース記事はコンテンツではなくサービスだ、という指摘は理解できた。そこにはどのような技術が必要なのか」という質問があった。ジャービス氏は「やり方はいろいろある。フェイスブックなどの既存ツールを使うこともできる。(従来の)外向きジャーナリズムは世界で起きていることを伝えて世界を変えようとしている。そうではなく、コミュニティーの細かなニーズを満たすのが、内向きのジャーナリズム。それはネットの力でなせると思う」と答えた。
■加速する部数減への対応策は
 新聞の発行部数は減少に歯止めがかかっていない。日本新聞協会の調べでは、2000年10月に約5370万部あった新聞発行部数(朝夕刊セットを1部として計算)は2016年10月時点で約4327万部。16年間で1000万部以上減少したことになる。さらに減少率も2000年代前半は1%未満だったが、2010年以降は1~3%程度と高まっており、部数減が加速していることもうかがえる。こうした状況の中で、地方メディアはどのような取り組みが求められるのか。イベントでは、西日本新聞メディアラボの吉村康祐社長(福岡市)、十勝毎日新聞社(北海道)の林浩史社長が登壇し、その取り組みを紹介した。西日本新聞メディアラボは、西日本新聞社のデジタル部門的な存在。昨年は紙面企画と連動して「子ども貧困」対策に力を注ぎ、ヤフー・ニュースなどを経由して全国に伝えた。その結果、「子ども食堂」の支援に約1,100万円が集まった。そのほか、地元地銀の福岡銀行と業務提携してフィンテック事業(ITを活用した新たな金融サービス)や、情報コンテンツのウェブサイト「mymo」を展開。さらに九州のブロガーなど45の情報発信者を集めて、「九州を理解できる」キュレーションサイト「piQ」を運営している。一方、十勝毎日新聞社ではフェイスブックなどのSNSを活用して情報を集め、災害の紙面づくりに役立てようとしている。将来像について林氏は、こう説明した。「さらにハイパーローカルな存在を目指す。十勝は狭いので、『友達の友達は友達』という状況。権利の問題はあるが、人々の生活や一生を記録していく新聞をつくりたい。今は出生時も結婚時もお悔やみでも記事にしている。デジタルではさらに踏み込んで、人の一生を記録できるメディアにしたいと考えている」。両社の取り組みは、ジャービス氏の言う「コミュニティー」に着目しており、方向性としては間違っていないようだ。ローカルメディアの取り組みについて、吉村氏はジャービス氏に「ローカルは市場が小さく、広告モデルでの収益には限界がある。発行エリア以外からの収益を模索しているが、どう考えるか」と質問。ジャービス氏はこのように答えた。「市場以上に届けたいのなら、特別な商品が必要だ。特定のスポーツチームとか、エリアとか。オーディエンス(読者)と広告が結びついていないといけない。地方(地元)向けにやることと全国でやることを分けてほしい」
■苦しくても自らやるしかない
 印象的だったのは、米国の地方紙の事例を尋ねられたジャービス氏の反応。「2人に比べれば遅れているので、話すことはない」というものだった。地方紙は、よって立つ地域の人々と生きていくほかに方法はない。これまでも日本の各地方紙は「紙」を使ってさまざまな手法を駆使してきた。本紙以外にもフリーペーパーを発行したり、イベントを実施したりしながら、読者の囲い込みに力を注いできた。その意味では「コミュニティー」に目を向けてきたことは間違いない。ただ、それはあくまで「紙」の販売を主眼とするものだった。日本の新聞社がホームページの運営を始めてすでに20年以上が過ぎた。デジタルというツールを使い、コミュニティーとどのように接していけば、ビジネスモデルとして成り立つのか。ジャービス氏が言うように、米国より日本の地方紙の方が先進的であるとするなら、苦しくても自分たちで具体策を練るしかない、ということなのだ。

*7-2:http://www.renewable-ei.org/column/column_20160614.php (自然エネルギー財団理事長 トーマス・コーベリエル、自然エネルギー財団研究員 ロマン・ジスラー 2016年6月14日) 連載コラム 自然エネルギー・アップデート、世界の素晴らしい進歩から目をそらすな
 日本のエネルギー業界は、発電のためにウランと石炭のどちらを輸入するべきか議論しているようだが、世界の国々は、別の素晴らしい解決策をとっている。ここ数カ月間に発表されたデータを見れば、このことは明らかだ。2015年の米国の発電データが発表され、2010年比で目覚ましい進展があったことが明らかになった。化石燃料による電力は150TWh(1,500億kWh)以上減少し、原子力も10TWh(100億kWh)減少した。成長したのは自然エネルギーによる電力で、2015年には2010年比で約135TWh(1,350億kWh)増加した。今年第1四半期における化石燃料の新規導入量は18MW(1.8万kW)であった。一方、自然エネルギーの新規導入量は1,291MW(129.1万kW)で、化石燃料の70倍以上増加した。英国では、今年第1四半期に、風力による電力供給量が石炭火力を上回った。風力の電力供給量が2.3TWh(23億kWh)だったのに対し、石炭火力は1.8TWh(18億kWh)にすぎなかった。5月9日には、1882年以来初めて、石炭火力による電力が英国の電力系統に全く供給されない瞬間が訪れたと報じられた。さらに、太陽光の電力供給量が石炭火力を上回る日が1週間続いた*。ポルトガルは早くから風力発電を利用しており、風力の新規導入はポルトガルで最もコストの低い発電オプションとなっている。2015年には自然エネルギーが同国の電力消費量のほぼ半分を賄った。そして今年5月初め、ポルトガルは4日間連続で自然エネルギー100%を達成したことを報告している。このように、世界のさまざまな国で自然エネルギーが主流になってきた事例がたくさんある。ここまで発展できたのは、自然エネルギー開発に多額の支出が必要だったときに、多くの資金を産業界に投じる先駆的な国々があったおかげである。米国では開発の多くが軍の研究プログラムとして実施された。中国では、自然エネルギー支出が経済をさらに成長させるための一手段と考えられてきた。そしてドイツでは、多くの費用が必要となる原子炉事故のリスクを軽減するための手段の一つであった。このような大胆な取り組みの結果、自然エネルギーは今や世界中のほとんどの国で、競争力のある価格で利用できるようになった。2年前から、風力は世界の多くの地域で最もコストの低い新電源となっている。また昨年はいくつかの国で、太陽光が新たな電力供給のための競争に勝利を収めた。最近の最も素晴らしい成果は、ドバイで800MW(80万kW)の太陽光発電の応札価格が1kWhあたり3円となったことである。太陽光発電の価格がわずか18カ月で半分になったことになる。日本の太陽エネルギー量はドバイの半分にすぎないため、日本でのコストがドバイと同程度まで低下することはないだろうが、2倍以上である必要もない。世界の自然エネルギーは発展し続けており、日本が石炭やウランの輸入に代わって国産エネルギー源である自然エネルギーを導入する機会は、ますます拡大している。
* 更新情報:2016年5月、英国における太陽光発電推定量は1,336GWh(13.36億kWh)にのぼり、石炭火力の893 GWh(8.93億kWh)を50%も上回った。http://www.carbonbrief.org/analysis-solar-beats-coal-over-a-whole-month-in-uk-for-first-time

*7-3:http://www.saga-s.co.jp/news/national/10201/395693
(佐賀新聞 2017年1月16日) 風力発電で全列車を運行、オランダ鉄道、年明けから世界初
 オランダ最大の旅客列車運行会社、オランダ鉄道(NS)は年明けから、風力発電の電気のみで全列車を運行し始めた。同国全土で毎日約60万人が「風力電車」で移動しているといい、NSなどは世界初の快挙だと強調。「風車の国」の面目躍如と言えそうだ。NSは2015年、同国電力会社エネコと共同で、風力発電だけで列車を走らせるプロジェクトを開始。16年には既に全列車の75%が風力の電気で動いていた。NSは年間、人口約80万人の首都アムステルダムの全世帯合計とほぼ同じ電力量を消費。欧州メディアによると、NSは毎日約5500本の列車を走らせている。

<自然エネルギーの実力>
PS(2017年2月17日追加):*8のように、日本が「100%自然エネルギー」を実現すれば、投入する設備費用を差し引いても、燃料代節約などで84兆円の「得」になるそうだが、それは技術の普及・進歩によって前倒しが可能だ。そして、その効果は、①地球環境への好影響 ②環境技術の進歩 ③外国に支払っていた燃料コスト削減による企業利益率や税収の増加 ④設備導入時の前向きな投資増による資本生産性向上と景気上昇 ⑤国民生活の豊かさ実現 等で、100%の解である。そのため、「100%の解はあり得ない」「実現は遠い未来のことだ」などと決めつけるのは、自分で自分の首を絞める行為だ。

*8:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12799670.html (朝日新聞 2017年2月16日) 自然エネ100%、日本で実現すると「84兆円お得」 WWFジャパン試算
 世界自然保護基金(WWF)ジャパンは16日、日本が2050年までに石炭や石油などの化石燃料に頼らない「100%自然エネルギー」を実現すれば、必要な設備費用を投入しても、燃料代節約などで84兆円の「得」になるとの試算を発表する。地球温暖化対策の国際ルール「パリ協定」がめざす脱炭素社会は実現可能だとしている。試算によれば、10~50年の約40年間で、設備費用は産業部門や家庭での省エネに191兆円、太陽光などの自然エネルギーの導入に174兆円の計365兆円が必要な一方、化石燃料の消費が減って449兆円の節約になるという。温室効果ガスの排出量は10年に比べて95%削減できるとした。現在ある技術が広く普及すれば、エネルギー需要は10年比で47%減らせると試算。すべて自然エネルギーで賄えるとし、国内の気象データから太陽光と風力の発電量は2対1の割合が望ましいとした。30年ごろから自然エネルギー発電で余った電力から水素をつくって活用すると想定している。昨年発効したパリ協定では、各国が温暖化対策の長期戦略を国連に提出するよう求められている。日本は環境省と経済産業省がそれぞれに素案をまとめている。WWFジャパンは、政府に長期戦略の早期策定を求めている。

| 資源・エネルギー::2017.1~ | 02:24 PM | comments (x) | trackback (x) |
2017.1.24 “ポピュリズム(衆愚)”という表現は、生活者として多様な立場から考えている国民に対する上から目線の罵倒であり、日本のメディアが、トランプ米大統領の「米国第一主義」や英国の「EU離脱決定」を“保護主義”“ポピュリズム”と評するのは傲慢である。 (2017年1月25、26、27、29日に追加あり)
      
トランプ大統領就任演説 英国のEU離脱をめぐる経緯  メイ首相の演説    日本の永住資格

(1)トランプ大統領の政策と日本政府・メディアの反応
 米国大統領選は候補者同士のくさしあいとなり、両候補とも魅力に欠ける状態に陥ってしまったが、*1-1のトランプ大統領就任演説全文を見ると、私はトランプ大統領は米国大統領としては当たり前のことを言っている部分が多いと思った。

1)「国民に権力を」について
 トランプ大統領が述べている「①大切なのは、国民が政府を動かしているかどうかだ」「②権力を首都ワシントンからあなた方国民に返還する」「③支配層は保身に走り、市民を擁護しようとしなかったため、支配層の勝利や成功は皆さんの勝利や成功とはならなかった」というのは、米国でもそうだったのかと思われたが、日本では実質的にそうなっていないため、もっと深刻である。そのため、このフレーズは、日本人こそよく考えて聞くべきで、主権者に権力があるのは、日本国憲法に明示されているとおり、民主主義(主権在民)の国なら当たり前のことなのだ。

2)「全てが変わる」について
 「①この米国は皆さんの国だ」「②大切なのは、どの政党が政権を握るかではなく、国民が政府を動かしているかどうかだ」「③国家は国民に仕えるために存在する」「④国民は子どもたちのために素晴らしい学校を望み、家族のため安全な環境を欲し、いい仕事を求めており、それは善良な人々のごく当たり前の要求だ」のうち、①③は日本国憲法にも明示されている理念だ。また②も真実であるし、④はどこの国の人も同じで、どこかの国だけが特別ではないだろう。

3)「殺りくに終止符」について
 しかし、「①都市の市街地で母子が貧困から抜け出せないでいる」というのは、米国では特に、離婚や無計画な出産が多すぎるのではないかと思う。「②さびついた工場群が墓石のように国内の至る所に散らばっている」というのは本当かも知れないが、それを解決するためには昔に戻せばよいのではなく、米国内に高コスト構造に耐える現代産業を育成するしかない。

 「③何十年もの間、われわれは米国の産業を犠牲にして、他国の産業を豊かにしてきた」というのは、NAFTA・中国・日本のことを言っているのだろうが、これらの国は、「遅れているから」として米国に負担ばかりをかけられる時代が過ぎ、相互主義でやるべき時代が来たことを実感すべき時なのだろう。

 なお、「④自国の国境防衛は疎かにしながら、他国の国境を守ってきた」というのは真実なので笑ってしまったが、その相手が日本だとすれば、それは米国がアドバイスしてできた世界でも理想的な日本国憲法の下、日本は弱い自衛軍しか持たないため、日米安全保障条約を結んで米軍に頼っているのだが、本当に頼りになるかどうかは心配だ」というのが本音である。

 また、「⑤国外で何兆ドルも金を費やしている間に、米国のインフラは荒廃し、朽ち果ててしまった」というのは、米国のインフラもIT時代の最新のものに更新すべきで、日本も他山の石とすべきだろう。

4)「米国第一」について
 「①今日からはひたすら『米国第一』で、貿易、税金、移民、外交で常に米国の労働者と家族の利益となる決定を下す」というのは、時代錯誤にあたるような過度の保護主義でなければ、米国大統領として当然のことだ。また、「②この素晴らしい国の全土に新しい道、高速道路、橋、空港、トンネル、鉄道を造る」「③国民を生活保護から抜け出させ、仕事に戻ってもらう」というのも、失業者に生活保護給付をし続けるよりも、その労働力を使ってインフラ整備をした方が建設的であるため同意する。

 「④国益を最優先する権利が全ての国にあるという考えに基づき実行する」というのも、過度の保護主義でなければ当然のことであり、「⑤われわれの流儀を押しつけたりはせず、模範として追随されるように、われわれを輝かせよう」というのも、民主主義には発展段階があり、専制から一足飛びに完成型にはならないため、米国流を押し付けるのではなく、次第に理想形に変えていく必要があり、同意だ。

5)「国民の結束」について
 「①われわれの政治の根底にあるのは、米国への完全な忠誠や国民同士の忠誠心だ」「②心を開いて愛国主義を受け入れれば、偏見が生まれる余地はない」「③神の民が一つになって共に生きることは、なんと幸せで楽しいことか」というのは、戦後の日本人には馴染みの薄い言葉の連続だ。

6)「行動の時」について
 「①大きく考え、大きな夢を見よう」というのは賛成だ。しかし、権限があってできる立場にいるのに「②口ばかりで行動しない政治家、不平ばかり言って自分では何もしない政治家」が米国にはいるのだろうか?この章は、全体として論理の飛躍が多く、一般の人が夢を持てる言葉を並べたものと思われる。

7)「声・希望・夢」について
 「全ての米国民の皆さん。住んでいる町が近くても遠くても、小さくても大きくても、山々や海に囲まれていようとも、あなたたちが無視されることは金輪際ない。あなたたちの声、希望、夢が米国の運命を決めるのだ」というのは、本当に実行されれば、それこそ民主主義のよい国である。そして、現代では、IT技術の発達によって、それも可能になっている。

8)「一つの中国」の見直しについて
 トランプ次期米大統領は、*1-2のように、「中国と台湾を不可分とする『一つの中国』原則を含めて全てが協議される」と述べ、見直しもあり得るとの考えを示した。これには、中国は反発するだろうが、台湾の望みを考えれば、日本政府にはできない勇気ある行動だ。

9)環太平洋連携協定(TPP)からの離脱表明について
 *1-3に、「TPPを成長戦略の柱に据える日本は、経済・外交・安全保障分野で大転換が求められ、新たな対米関係が迫られる中で日本の立ち位置が問い直される」と書かれているが、自国の国益を第一に考えるのは日本も同じであるべきだ(でなければ日本国民が困る)。しかし、だからといって国際協調をしないということではないため、*1-4なども含め、日本のメディアは冷静さを欠く保護主義キャンペーンをし過ぎている。

 また、企業のグローバル化とは、地球規模で生産・販売・研究開発・資金調達・租税政策などを行うことであり、EU、TPP、NAFTAのように経済の囲い込みをすることではないため、「トランプ現象=反グローバル」というのは間違いだ。そして、どの国にとっても産業政策・雇用政策は重要で、日米自由貿易協定(FTA)などの2国間協議でも、日本政府は国益を優先して交渉すべきだ。しかし、これに関して、私はビジネスマン出身のトランプ大統領と比べて、日本の政治家・行政官はもめないことを最重要課題として本当の交渉をしないため、不利な交渉結果を導くことが心配である。

10)オバマケアの撤廃について
 トランプ米大統領は、オバマ前政権が進めた医療保険制度改革の撤廃に向けた大統領令に署名されたそうだが、誰にとっても必要不可欠な国の医療・介護保険制度をきっちり作った方がよいと、私は考える。何故なら、それは必需品であり、雇用吸収力があるとともに、中産階級以下の国民の将来の心配を軽減することによって、現在の需要への支出を増やすことができるからだ。

(2)「欧州覆うか『自国第一』、相乗効果狙い右翼ポピュリズム政党結集」というメディアの論調
 「トランプ米大統領の就任式参加者がオバマ前大統領よりも少なかった」という報道が日本では多い。しかし、トランプ米大統領の就任演説は、就任式に参加した人だけでなく、衛星放送やインターネットで聞いた人も多いため、前評判やトランプ米大統領の政策の世界への影響から、世界ではオバマ大統領よりも多かったかもしれない。日本では、私も就任演説を聞きたいと思ったが、真夜中だったため、翌朝の新聞に英文と日本語訳の全文が掲載されたのを読んだ。つまり、トランプ米大統領の就任演説は、オバマ前大統領に劣らず、世界中で関心が高かったと言える。

 そして、*1-5のように、「重要選挙を迎える欧州連合(EU)各国の右翼ポピュリズム政党が就任式翌日の21日、ドイツに集まって『エリートでなく、民衆による政治が始まった』と気勢を上げ、トランプ大統領と同じ『自国第一』を掲げた」そうだ。

 しかし、私は、「右翼ポピュリズム政党」という表現は正しくないと考える。何故なら、「自国第一」を掲げるのは「右翼ポピュリズム政党」と定義するのであれば、世界中の多くの政党が「右翼ポピュリズム政党」ということになり、日本では全政党が「右翼ポピュリズム政党」ということになって事実に反するからだ。

 日本は、*4-1のように、難民受入国支援のために約2800億円拠出し、シリア人留学生150人の受け入れ表明をしたが、難民の受け入れは極端に少なく、「国境を自由にして難民が自由に出入りできるようにせよ」と主張している政党はないため、相手によって異なる多重基準でモノを言うのは不公平だ。

 また、*4-2のように、外国人労働者の受け入れも、留学生・実習生として日本に入国した外国人を介護専門職に育成して就職に繋げる法律ができたばかりで未施行であり、その留学生も、*4-3のように、例年20人程度だった留学生の入学者数が2016年度は257人になった程度だ。なお、研究者や企業経営者等の高度の専門性を持つ外国人は、*4-4のように、従来は最短5年で永住権取得を認めてきたが、今後は1年で永住権を取得できるようにするそうだ。ただ、その要件は非常に厳しい。

 しかし、私は、*1-5のように、難民受け入れに寛容なドイツのメルケル首相が批判されているのは気の毒だと思う。何故なら、メルケル首相は、東ドイツ出身でありながら統一ドイツの首相になった聡明な人で、難民の受け入れに寛容な精神を持っている理由が理解できるからだ。

(3)英国の欧州連合(EU)離脱決定をポピュリズム(衆愚)と呼ぶのは、民主主義への挑戦である
1)英国国民投票でのEU離脱決定はポピュリズム(衆愚)か
 2016年6月24日の英国国民投票でEU離脱が決定し、*2-1は、「①反EUのポピュリズム(衆愚)が理性に勝った」「②英国のEU離脱決定は欧州統合の機関車役ドイツにも打撃」「③この開票結果は、欧州市民の間でEUへの失望がいかに深く、右派ポピュリズム勢力への支持が強まっているかを示した」「④英国に追随して国民投票によるEU離脱の動きが広がる可能性があり、2016年6月24日は、欧州の歴史の中で暗黒の日として記憶されるだろう」としている。

 私は、①の表現は、国を単位とする民主主義への挑戦であり、誰から見た目かわからないが、国民投票の結果をポピュリズム(衆愚)と呼んでいる点で傲慢だと考える。②は、国境という国の主権にかかわる問題にEUが自由化を強制した点が問題なのであり、③は、ギリシャに強制的に年金削減をさせるなど財政という国家主権に関わる部分にまでEUが口を出しすぎ、国情によっては唯一の解決策ではないのに強制したという不安・不満があったため、きっかけさえあれば、④のように同じ動きが広がるのである。

2)EU離脱で英国経済の競争力は低下するか
 *2-1に「①英国のEU離脱決定は英国経済にとって激震となる」「②英国の輸出額のうち半分以上をEU加盟国向けが占め、対EU輸出は英国のGDP(国内総生産)の約15%を稼ぎ出し、英国の輸入額の約50%もEU諸国からである」「③そのため、英国はEU脱退によって雇用が脅かされるかもしれない」「④EU離脱によって多くの金融機関がロンドンから欧州中央銀行(ECB)があるドイツのフランクフルトに拠点を移すと予測されている」「⑤英国に拠点を持つ日本企業も欧州市場戦略を大きく見直す必要がある」「⑥スコットランドがEU加盟を求めて、英国からの独立運動を再燃させる可能性もある」「⑦英国の唯一の経済的利点は、EU加盟国が支払う会費を納める必要がなくなることだ」と書かれている。

 このうち、①は本当だが、マイルドな方がよいとはいうものの、変革に震動はつきものだ。②③④については、東西冷戦後の東欧諸国からの安い賃金の移民を使った経済モデルが終わり、新しく英国は雇用吸収力のある現代産業を育成する必要があるのであって、私は、それが可能だと考える。⑤は、日本企業の都合であって英国の都合ではないため、英国から見れば、『だから外資に頼らず自国の産業を育てておくべきだ』ということになり、立場を逆にすれば日本政府も同じだ。⑥は、現在、その最中だが、困った時に協力できない分断された国なのかと思う。⑦の利点は、国家主権にかかわることにまで強制が及ぶことも考えれば、英国にとって大きく、新しい経済モデルに踏み出す時と言えるだろう。

3)移民増加と排外主義の高まりか?
 *2-1に、「EU脱退がもたらす経済的打撃にもかかわらず、英国の有権者がEU離脱の道を選んだ理由は、難民危機を追い風として、英国だけでなく欧州全体で右派ポピュリストに対する支持が高まっている事実がある」と書かれている。

 しかし、*2-2に、「EU離脱がポピュリズムというのはこじつけだと、離脱派の旗振り役だったジョンソン英外相が反論した」「英国には、EUを弱体化させたり、EUに対して意地悪をしたりする意図は全くない」などが書かれている。

 私は、英国の有権者がEU離脱を選んだ理由を右派ポピュリストと呼べば、世界中が右派ポピュリストと呼ばれる政党ばかりとなり、その呼称はおかしいと考える。そして、先進国の高い賃金の労働者が賃金の安い移民・難民に労働市場で敗退するのは、どの先進国でもあったことで、EUの重要な原則の一つである域内移動の自由は、国が計画的に移民・難民を受け入れることを不可能にするため、反発があったのだと考える。

(4)英国、メイ首相の方針
 英国のメイ首相は、*3-1のように、EUとの離脱交渉を控えてロンドンで演説し、域内での人、モノ、サービス、資本の移動の自由を原則とする欧州単一市場に「とどまることはできない」としてEUから完全に離脱する意向を示し、EU域外の国々との貿易強化方針も打ち出し、「より強く、よりグローバルな英国をつくる」と主張したそうだ。

 これは、英国へ進出した日本企業にも影響を及ぼすが、日本企業も東欧の安い労働力を使って生産したものを欧州に輸出するという経済モデルは終わりに近づいたことを認識し、英国の方針転換に適応して次のモデルの準備をした方がよいだろう。そして、新しいモデルには適応できない企業は別の場所に移転するしかない。

 なお、*3-2のように、日本のメディアは、「英国とEU『自国優先』に歯止めを」というような論調が大半であり、その価値観は異常だ。何故なら、ある国の政府が自国民のために政治を行うのは、主権在民(民主主義)の政府であれば当然であり、地球のことを考えれば愛国心だけでは足りないというだけである。そのため、「人の移動の自由を受け入れてまで、EUの単一市場に残る選択をしない」という選択も、批判すべきではない。英国なら、それよりダイナミックな、次の時代に向けての展開もあり得る。

<トランプ大統領就任>
*1-1:http://www.tokyo-np.co.jp/article/world/list/201701/CK2017012202000110.html (東京新聞 2017年1月22日) トランプ大統領就任演説全文 「米国はかつてないほど勝利していく」「みんなで米国を再び偉大にしよう」
◆大切なのは、国民が政府を動かしているかどうか
 ロバーツ最高裁長官、カーター元大統領、クリントン元大統領、ブッシュ元大統領(子)、オバマ前大統領、米国民の皆さん、世界の皆さん、ありがとう。
▽国民に権力を
 米国の市民は今、国を挙げた壮大な取り組みに臨もうとしている。国家を再建し、全ての人が希望を取り戻す取り組みだ。われわれは共に、米国や世界が今後何年にもわたって進む針路を決定する。難題や苦難に直面するだろうが、仕事をやり遂げる。四年ごとにわれわれはここに集まり整然と平和裏に権力を移行する。オバマ前大統領とミシェル夫人に感謝する。政権移行を丁重に支援してくれた。彼らは素晴らしかった。ありがとう。ただし、今日の式典には特別な意味がある。単に政権交代が実現し、権力が政党から別の政党へと移っただけではない。権力を首都ワシントンからあなた方国民に返還するのだ。あまりに長きにわたり、政府から恩恵を享受するのは首都にいる一握りの人々にとどまり、国民にはしわ寄せが及んできた。ワシントンは繁栄しても、国民が富を共有することはなかった。政治家が潤う一方で、職は失われ、工場は閉鎖された。支配層は保身に走り、市民を擁護しようとはしなかった。支配層の勝利や成功は、皆さんの勝利や成功とはならなかった。支配層が首都で祝杯を挙げていても、懸命に生きる全米の人々に浮かれる理由はなかった。
▽全てが変わる
 ここから、たった今から、全てが変わる。この瞬間は皆さんのためにある。今日ここに集まった皆さんと、式典を見守る全米の皆さんのためにある。今日は皆さんこそが主役で、これは皆さんの祝典だ。そしてこの米国は皆さんの国なのだ。大切なのは、どの政党が政権を握るかではない。国民が政府を動かしているかどうかが大切なのだ。二〇一七年一月二十日は、国民が再び主権者となった日として記憶されるだろう。忘れられてきた人々も、これからは忘れられることはない。皆さんの声に誰もが耳を傾けている。大勢の皆さんが歴史的なうねりの当事者となるためやって来た。世界がかつて目撃したことがないような社会現象だ。その中心には重大な信念がある。国家は国民に仕えるために存在するという信念だ。国民は子どもたちのために素晴らしい学校を望んでいる。家族のため安全な環境を欲し、いい仕事を求めている。善良な人々のごく当たり前の要求だ。
▽殺りくに終止符
 しかし、あまりに多くの市民にとって、現実は異なっている。都市の市街地で母子が貧困から抜け出せないでいる。さびついた工場群が墓石のように国内の至る所に散らばっている。教育システムに金がつぎ込まれても、若く優れた学生たちは知識を得ることができずにいる。犯罪、悪党、麻薬が多くの命を奪い、可能性の芽を摘んできた。こうした米国の殺りくは今ここで終わる。われわれは同じ米国民だ。彼らの苦悩はわれわれの苦悩だ。彼らの夢はわれわれの夢だ。彼らの成功はわれわれの成功となる。われわれは一つの心、一つの故郷、そして一つの輝かしい運命を共有している。今日の私の大統領就任宣誓は、全ての米国人に対する忠誠の誓いだ。何十年もの間、われわれは米国の産業を犠牲にして、他国の産業を豊かにしてきた。米軍の嘆かわしい劣化を招いた一方で、他国の軍に資金援助してきた。自国の国境防衛はおろそかにしながら、他国の国境を守ってきた。そして国外で何兆ドルも金を費やしている間に、米国のインフラは荒廃し、朽ち果ててしまった。他国を豊かにしている間に、われわれの富や強さ、自信は地平のかなたへ消え去っていった。工場は次々と閉鎖され、残された何百万人もの米国人労働者を顧みることなく、国外へ移転していった。中間層の富が奪われ、世界中にばらまかれた。だがそれは過去のことだ。今、われわれは未来だけを見据えている。
▽米国第一
 今日ここに集まったわれわれは、全ての都市、全ての外国政府、全ての権力機関に向かって、新たな決意を宣言する。今日から、新たな考え方でわが国を治める。今日からはひたすら「米国第一」だ。米国が第一だ。貿易、税金、移民、外交では常に、米国の労働者と家族の利益となるような決定を下す。物作り、企業、雇用を奪う外国から、われわれは国境を守らなければならない。(貿易や雇用の)保護は、大いなる繁栄と強さをもたらす。私は全身全霊で、皆さんのために戦う。そして私は皆さんを決して失望させない。米国は再び勝利し始める。いまだかつてないほど勝利していく。われわれの雇用を取り戻す。国境を取り戻す。富を取り戻す。そして夢を取り戻す。この素晴らしい国の全土に新しい道、高速道路、橋、空港、トンネル、鉄道を造る。国民を生活保護から抜け出させ、仕事に戻ってもらう。そしてわれわれの国を、米国人の手によって、米国人の労働力で再建する。われわれは二つの簡潔な規則を守っていく。米国製品を買い、米国人を雇う。われわれは世界の国々との友好、親善関係を求めていく。ただし、国益を最優先する権利が全ての国にあるという考えに基づき、実行していく。われわれの流儀を(他国に)押しつけたりはしない。むしろ模範として追随されるように、われわれを輝かせよう。古くからの同盟を強化し、新たな同盟関係も築き、文明国を一つに束ねてイスラム過激派によるテロに対抗し、地球上から完全に根絶する。
▽国民の結束
 われわれの政治の根底にあるのは、米国への完全な忠誠だ。そして国への忠誠心を通して、われわれは国民同士の忠誠心も再発見することになるだろう。もし、心を開いて愛国主義を受け入れれば、偏見が生まれる余地はない。聖書にこう書かれている。「神の民が一つになって共に生きることは、なんと幸せで楽しいことか」。自分の考えを包み隠さず語り、相違があれば率直に議論しなければならないが、常に結束を目指さねばならない。米国が団結すれば、誰にも止めることはできない。恐れることはない。われわれは守られており、これからも常に守られる。軍、治安機関がわれわれを守ってくれる。そして、何より重要なことに、われわれは神に守られている。
▽行動の時
 最後に言いたい。大きく考え、より大きな夢を見よう。米国では、努力してこそ国は存続するということをみんな知っている。口ばかりで行動しない政治家、不平ばかり言って自分では何もしない政治家はもう認めない。無駄話の時間は終わりだ。行動する時だ。できないなどと言わせてはならない。米国の熱意、闘志、気概をもってすれば打ち勝てない困難などない。失敗することはない。米国は再び繁栄し、成功するのだ。宇宙の謎を解き、地球上から病の苦しみをなくし、未来のエネルギー、産業、技術を活用する新たな時代が始まったばかりだ。国への新たな誇りがわれわれの魂を揺り動かし、視野を広げ、分断を修復してくれるだろう。わが国の兵士たちが決して忘れない、古くからの格言を今こそ思い出そう。肌が黒くても、白くても、褐色でも、同じ赤い血が流れ、国を愛する気持ちに変わりはないということだ。同じ輝かしい自由を享受し、同じ偉大な米国旗に敬礼するのだ。子どもたちはデトロイトの都市部で生まれようとも、ネブラスカの風吹きすさぶ平野で生まれようとも、同じ夜空を見上げ、同じ夢で心を満たし、同じ全能の創造主により命の息吹を吹き込まれる。
▽声・希望・夢
 全ての米国民の皆さん。住んでいる町が近くても遠くても、小さくても大きくても、山々や海に囲まれていようとも、次の言葉を聞いてほしい。あなたたちが無視されることは金輪際ない。あなたたちの声、希望、夢が米国の運命を決めるのだ。あなたたちの勇気、優しさ、愛がわれわれを永遠に導くのだ。みんなで米国を再び強くしよう。米国を再び豊かにしよう。米国を再び誇り高くしよう。米国を再び安全にしよう。そう、みんなで米国を再び偉大にしよう。ありがとう。皆さんに神のご加護があらんことを。米国に神のご加護があらんことを。ありがとう。米国に神のご加護があらんことを。
(原文略)

*1-2:http://www.saga-s.co.jp/news/national/10201/395328
(佐賀新聞 2017年1月14日) 「一つの中国」見直しも、トランプ氏、中国反発必至
 トランプ次期米大統領は米紙ウォールストリート・ジャーナルとのインタビューで、中国と台湾は不可分とする「一つの中国」原則を含め「全てが協議される」と述べ、同原則の見直しもあり得るとの考えを示した。ロシアに科されている制裁解除の可能性にも触れた。同紙電子版が13日伝えた。「一つの中国」原則の尊重を米中の「政治的基礎」と位置付ける中国の習近平指導部の反発は必至だ。トランプ氏は昨年12月、米歴代政権の慣例を破って台湾の蔡英文総統と電話会談し、「為替操作国」と批判する中国に揺さぶりを掛けた。

*1-3:https://www.agrinews.co.jp/p39970.html (日本農業新聞2017年1月22日) トランプ政権発足 問い直される対米関係
 米国の新大統領にトランプ氏が就任し、新政権は環太平洋連携協定(TPP)からの離脱を正式表明した。就任演説では「米国第一」主義を宣言し、「米国製品を買おう」「米国人を雇おう」と呼び掛けた。TPPを成長戦略の柱に据える日本は、経済・外交・安全保障分野で大転換が求められるのは必至だ。新たな対米関係が迫られる中で日本の主権、立ち位置が問い直されている。異様な雰囲気での新大統領誕生となった。首都ワシントンの就任式には多くの民主党議員がトランプ氏の人種差別的な発言に抗議して欠席、全米各地で就任に反対する市民団体の集会が開かれた。就任時の支持率が4割という歴史的な不人気ぶりだ。歓迎と抗議が交錯する。分断された米社会が浮き彫りとなった。米国第一主義は世界に何をもたらすのか。オバマ前政権の国際協調路線から自国中心主義に傾くのは明らかで、安全保障や貿易ルール、地球温暖化問題に影響を及ぼすのは避けられない。国と国が協力し、譲歩し合い、時間を掛けて構築してきた秩序をそう簡単に放棄すべきではない。米国は国際社会の一員として、世界の平和と安定に貢献し続けるべきである。極端な米国第一主義には、保護主義や差別・排外主義が潜む。こうした考えは、世界に受け入れられるものではない。一方でグローバル資本が利益の最大化を目的とした自由貿易のひずみと矛盾も直視すべきだ。就任演説でトランプ氏は「権力をワシントンからあなた方国民に返還する」と断言した。政府から恩恵を受けたのは一握りのエリート層にとどまり、市民の職は失われ、工場は閉鎖されたとし、これからは国境、製造業、雇用を守ると強調した。「トランプ現象」を生んだ反グローバルの潮流は、格差と貧困が社会問題化する欧米で広がった。そうした民意が新大統領を生んだのも事実だ。このことから目を背けてはならない。トランプ氏がどう民意に応えていくか、注視したい。トランプ政権は、TPPからの離脱、北米自由貿易協定(NAFTA)の再交渉を表明した。米国抜きのTPPは発効が一層難しくなった。一方で、トランプ氏は2国間貿易協定に意欲を示す。2国間交渉となれば、米国からの農産物の市場開放圧力はTPPの合意内容以上に攻め込まれるのは必至だ。米国に追従する安倍政権の経済・外交政策は限界を迎え、抜本見直しを迫られている。新政権の動向を見極め、日米自由貿易協定(FTA)の阻止に備えることこそ肝要である。トランプ氏は各国との関係について、「国益を最優先する権利が全ての国にあるという考えに基づき、実行していく」とも明言した。安倍政権は日米同盟の在り方も含め、日本の国益を損なわない政策実現が急がれる。.

*1-4:http://digital.asahi.com/articles/ASK1M7X8ZK1MUHBI047.html
(朝日新聞 2017年1月21日) TPP発効は絶望的 日本、通商戦略見直し必至
 トランプ政権は就任式直後から、ホワイトハウスのホームページで、「米国第一エネルギー計画」「米国第一外交政策」「雇用と成長を取り戻す」「再び米国軍を強くする」など、外交や貿易に関する6項目の主要政策を発表した。そのなかで、「強固で公平な協定により、貿易は我が国の成長のために活用できる」として、「その戦略はTPPからの離脱によって始まる」と強調。公約通り、就任初日から、TPPから離脱する方針を正式に表明した。さらに、北米自由貿易協定(NAFTA)の再交渉を求める方針も示し、参加国のカナダとメキシコが交渉を拒めば、NAFTAから離脱することも打ち出した。TPPの発効には米国の批准が不可欠で、TPPは発効が不可能となる。TPPを成長戦略の柱としてきた安倍政権は、戦略の見直しを迫られる。雇用創出では、「年4%成長への回帰をめざす」と強調。選挙中に35%から15%への引き下げを訴えた法人税率は、「世界で最高水準の税率を引き下げる」としたが、数字には触れなかった。一方、外交・安全保障政策については、「米国の国益と安全保障を最重視する」ことを基本方針に掲げた。そのために、米軍の軍事力の再構築を進めていく方針を打ち出した。過激派組織「イスラム国」(IS)やイスラム過激主義のテロ組織の壊滅を最優先課題と位置づけ、軍事作戦を強化する。その上で、各国と協調して、テロ組織の資金源の遮断や情報共有を進めていく。また、防衛予算の一律削減を終わらせ、海軍の艦船と空軍の航空機を増強していく。北朝鮮やイランのような国からのミサイル攻撃を防ぐため、最新のミサイル防衛システムを開発することを表明。サイバー分野での防衛・攻撃双方の能力向上も優先的に進めていく。さらにトランプ氏はこの日、オバマ前政権が進めた医療保険制度改革(オバマケア)の撤廃に向けた大統領令にも署名。新たな規制の凍結も各省庁に指示するなど、精力的に動いた。
■トランプ氏方針、覆る見込み薄
 米国のトランプ大統領が環太平洋経済連携協定(TPP)を離脱する方針を明確に打ち出したことで、安倍政権が成長戦略の柱に据えてきたTPPの発効は、絶望的になった。日本政府は、まずは自由貿易の重要性を米側に訴え、TPPへの理解を得たい考えだが、トランプ氏の思い入れが強い貿易政策の方針が覆る見込みは薄い。日本側が通商戦略の練り直しを迫られるのは必至だ。TPPは、太平洋を取り囲む日米など12カ国で域内の関税を撤廃したり投資などのルールを共通化したりする協定で、2015年10月に合意に至った。しかし、経済大国である日米両国が批准しなければ発効できない条件になっている。トランプ氏の離脱表明を受け、日本の内閣官房幹部は「時間はかかるが、TPPが米国にとっても利益になるということを分かってもらうように説得するしかない」。だが、オバマ前政権の貿易政策を転換し、米国の雇用を守るという主張は、トランプ氏の最重要の公約で、簡単に方針を転換するとは考えられない。安倍晋三首相は20日の施政方針演説で、TPPを「今後の経済連携の礎」とし、発効をめざす考えを強調していた。TPPによって、アジア・太平洋地域への輸出を増やしたり、日本企業の進出を促したりすることで、日本経済を押し上げようと考えてきたからだ。また、この地域の経済ルールを日米が主導して決め、台頭する中国に対抗する狙いもあったが、米国の離脱が決定的となり、こうした通商戦略の見直しは避けられない状況だ。

*1-5:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12760754.html (朝日新聞 2017年1月23日) (トランプの時代)欧州覆うか「自国第一」 右翼ポピュリズム政党、相乗効果狙い結集
 トランプ米大統領の就任による大波が、早くも欧州に及んでいる。今年、重要選挙を迎える欧州連合(EU)各国の右翼ポピュリズム政党が就任式翌日の21日、ドイツに集まり、「エリートでなく、民衆による政治が始まった」と気勢を上げた。掲げるのは、トランプ大統領と同じ「自国第一」だ。
■反移民掲げ「次は我々だ」
 21日、ドイツ西部の人口11万の町コブレンツに、欧州各国で「自国第一」を掲げる面々が勢ぞろいした。オランダのウィルダース自由党党首やフランスのルペン国民戦線(FN)党首、新興政党「ドイツのための選択肢」(AfD)のペトリ党首らは、約千人の聴衆を前に「次は欧州の番だ」と言わんばかりだった。「エリートが、我々の自由を危険にさらしている」「我々は、我々の国を再び偉大にする」。ウィルダース氏の発言は明らかにトランプ氏の就任演説を意識していた。ルペン氏は「最初のパンチは英国の民衆が選んだEU離脱。二つ目がトランプ政権。2017年は大陸欧州が目覚める」と宣言した。会合は、EU批判を繰り広げる右翼政党が結成した欧州議会の会派「国家と自由の欧州」の主催。相乗効果で支持拡大を図る狙いがあるのは明らかだ。各党とも移民制限を主張し、中東やアジアからの難民受け入れへの反対で一致している。ペトリ氏は「政治家やメディアは寛容を口にするが、なぜ普通の人々に聞かないのか。彼らは不安だらけだ」と話した。3月に総選挙を迎えるオランダでは、イスラム教への敵意をむき出しにする自由党が、世論調査で支持率トップを走る。フランスでも4月の大統領選第1回投票でルペン氏が首位に躍り出る可能性がある。9月に連邦議会選が予定されるドイツでも、支持率が12~15%のAfDは初の連邦議会入りが確実視される。
■メルケル氏批判
 批判の矛先は、欧州の統合を重んじ、難民受け入れに寛容なドイツのメルケル首相に向かう。会場では、党首らの演説に、聴衆がしばしば「メルケルは去れ」と連呼して応えた。トランプ政権の発足と右翼政党の高揚で、欧州でも分断と緊張が広がる。会場付近では、開催に抗議する約3千人が「開かれた欧州を」と訴えてデモ行進した。ドイツのガブリエル副首相や、ユンケル欧州委員長の出身国ルクセンブルクのアッセルボーン外相ら、いま政治を動かしている側の姿もあった。
■政策はそろわず
 「自国第一」や「愛国心」を唱える各党。EUやエリート層への批判で一致はしているが、具体的な政策で足並みをそろえているわけではない。訴えも日和見主義的だ。例えばAfDは、ギリシャ危機後の13年に共通通貨ユーロへの反対を掲げて誕生した。だが15年にペトリ氏が実権を握ると、難民危機を受けて反難民、反イスラム色を強めた。ルペン氏は「違いを探すことに意味はない」と意に介さなかった。「大義のために集まったのだ。国境を管理して国民を守る。国を愛し、主権を取り返す」。この日の会合には、ドイツの公共放送など、一部メディアの取材登録が認められなかった。その一人、フランクフルター・アルゲマイネ紙のユストゥス・ベンダー記者は「主催者から『うそを書くのをやめろ。フェアな記事を書け』とのメールが来た」と話した。「彼らは批判的な記事を書くジャーナリストを受けつけない。これも米国と同じだ」
■分断の背景、各国で相似
 トランプ氏は、就任演説で「ピープル」という単語を10回繰り返した。「2017年1月20日は、民衆(ピープル)が再び、この国の支配者になった日として記憶される」。19世紀末の米国で、既成政党に属さない農民運動として「ピープルズ・パーティー(人民党)」が台頭。「ポピュリスト党」とも呼ばれたことからポピュリズムという言葉が生まれた。そして今、「ピープル」を強調し、「自国第一」を主張する政治家が、各国で支持を集める。トランプ氏らへの支持が広がる背景や世論の動向も、各国で相似形を描く。きっかけは2008年のリーマン・ショック後の世界不況だと米ジョージタウン大学のマイケル・カジン教授は説く。不況とともに、大量の移民、格差の拡大、ITによる省力化などで、「自分たちは見捨てられた」と考える人が急増した。「政府は経済を統制できず、救済を必要としている国民を助けようともしないと、人々は悟った。既成政治への不安と怒り、叫びこそが、米欧で起きている現象の理由です」。従来の政党が効果的な回答を見いだせない限り、反既成政治の運動は成長する。一方で、怒りや反発だけで国家を治めることはできない。「ポピュリズム運動が政権を取っても、効果的に統治を行うのが難しい」とカジン教授は言う。トランプ氏は、欧州の政治家に先駆けて、現実という試練に向き合うことになる。

<ポピュリズムとは?>
*2-1:http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/219486/062400017/?rt=nocnt (日経ビジネス 2016年6月24日) 反EUのポピュリズムが理性に勝った日、英国のEU離脱決定は、欧州統合の機関車役ドイツにも打撃
 6月24日、英国の国民投票でEU離脱派が勝った。英国の有権者は、キャメロン首相の嘆願を拒絶し、43年ぶりにEUに背を向ける道を選んだ。実際に英国がEUから脱退するまでには、少なくとも2年間はかかると見られているが、この国がEUと袂を分かつことは確実だ。キャメロン首相は辞任を表明した。離脱によって悪影響を受けるのは、英国の経済界だけではない。長期的には、EUそして欧州統合を最も強力に進めてきたドイツにとっても大きな打撃となる。この開票結果は、欧州市民の間でEUへの失望がいかに深く、右派ポピュリズム勢力への支持が強まっているかを示した。英国のEU離脱は、EU政府に相当する欧州委員会に対し、EUの根本的な改革を迫るものだ。英国に追随して他のEU諸国でも、国民投票による離脱の動きが広がる可能性がある。6月24日は、欧州の歴史の中で暗黒の日として記憶されるだろう。
●英国経済の競争力低下へ
 この決定はまず、6月24日のポンド暴落が象徴するように、英国経済にとって激震となる。同国の輸出額のうち、半分以上をEU加盟国向けが占める。対EU輸出は、英国のGDP(国内総生産)の約15%を稼ぎ出している。また英国の輸入額の約50%も、EU諸国からのものだ。英国はEU脱退によって、単一市場の利点(関税廃止、人と物の自由な移動、自由な資本取引)を失う。英国では輸入品の価格が上昇する。対EU貿易での価格競争力も弱くなる。したがって、同国はスイスやノルウェーのようにEUと交渉して、少なくとも関税廃止などの利点を維持しようとするだろう。同国にとって特に大きな懸念は、金融機関の動きだ。英国のGDPの約8%は金融サービスによって生み出されている。ロンドンには、米国の投資銀行、商業銀行など外国の多くの金融機関の欧州本社がある。EU離脱によって、ロンドンはEU域内の自由な資本取引の流れから遮断される。国民投票の直前に金融機関に対して行われたアンケートによると、回答企業の33%が「英国がEUから離脱した場合、同国でのオペレーションの規模を縮小する」と答えていた。EU離脱は、欧州最大の金融センターであるシティーで働く人々の雇用を脅かすことになるかもしれない。欧州では、「EU離脱によって、多くの金融機関はロンドンから、欧州中央銀行(ECB)があるドイツのフランクフルトに拠点を移すだろう」と予測されている。日本の外務省によると、英国には約1000社の日本企業が進出し、約16万人を雇用している。同国に拠点を持つ日本企業にとっても、欧州市場戦略を大きく見直す必要がある。ドイツのバーテルスマン財団の研究報告書によると、EU離脱が英国経済にもたらす損失は、2030年までにGDPの0.6%~3%に達する。外国企業の数が減少し、失業率が上昇することも避けられないだろう。さらにスコットランドがEU加盟を求めて、英国からの独立運動を再燃させる可能性もある。英国にとって唯一の経済的な利点は、EU加盟国が支払う「会費」を納める必要がなくなることだ。英国は現在約86億4000万ユーロの「会費」をEUに払っている。しかしこれは英国のGDPの0.5%にすぎない。価格競争力の低下や外国企業のユーロ圏への流出、雇用の減少などのデメリットを相殺することはできない。EUにとっても英国の離脱は大きな痛手だ。2015年の英国のGDPは約2兆5690億ユーロで、ドイツに次ぐ第2位。EUは同国の脱退によって、GDPが一挙に17.6%減ることになる。ドイツにとっても、英国の喪失はマイナスだ。両国の意見はしばしば対立してきたが、英国は南欧の債務過重国の経済を立て直す上で、財政出動よりも構造改革を重視するという点では、ドイツと考え方が似ていた。財政出動を重んじるギリシャ、イタリア、スペインの意見を抑える上で、プラグマティズムを重視する英国はドイツの「盟友」だった。つまりドイツは、南欧諸国との交渉の中で重要な応援団を失うことになる。
●移民増加と排外主義の高まり
 日本の読者の皆さんは、「EU脱退がもたらす経済的な打撃について再三伝えられていたのに、なぜ英国の有権者はEU離脱の道を選んだのか」と不思議に思われるだろう。この背景には、難民危機を追い風として、英国だけでなく欧州全体で右派ポピュリストに対する支持が高まっている事実がある。英国のEU脱退を最も強く求めていたのが、ナイジェル・ファラージ率いる「イギリス独立党(UKIP)」だ。同党の党員数は2002年には約9000人だったが、2014年には約4倍に増えて約3万6000人となっている。2015年の下院選挙で同党は12.6%の得票率を確保。2014年の欧州議会選挙では得票率が28%に達し、英国社会に強い衝撃を与えた。英国のポピュリストたちがEUを批判する最大の理由は、EUが政治統合・経済統合を進める中で、域内での移動の自由と他国での就職の自由を促進したことだ。この結果、英国ではポーランドなど東欧諸国からの移民が急増し、ロンドン以外の地方都市を中心として、移民制限を求める声が強まった。英国の反EU勢力は、EUの事実上の憲法に匹敵するリスボン条約を改正し、域内での移動の自由を制限することを求めていた。だがEUにとって、域内の移動の自由は欧州連合にとって最も重要な原則の1つだ。ドイツのメルケル首相をはじめとして、他国の首脳は英国のためにリスボン条約を改正することに難色を示していた。英国のポピュリスト勢力は、「我々はEUが自らを根本的に改革し、加盟国の利益を尊重しなければ、脱退すると再三訴えてきた。だがEUは結局、改革を拒絶した。だから我々はEUから出ていく」と主張していた。私の脳裏に去来するのは、ウインストン・チャーチルが1946年9月19日にチューリヒで行った演説である。彼は、この中で第二次世界大戦のような惨劇を二度と起こさないために、欧州大陸の国々が統合し『欧州合衆国』を作るべきだと提唱したのだ。だがチャーチルは、この合衆国に英国は加わるべきではないと断言していた。彼は、大戦中の苦い経験から、英国は欧州大陸とは一線を画するべきだという態度を持っていたのである。英国はユーロ圏に加盟しない道を選んだ時にも、チャーチルのこの思想を実践した。今回の国民投票により、ジョン・ブル(英国人のこと)たちは再びチャーチルの警告に耳を貸したのである。

*2-2:http://digital.asahi.com/articles/ASJD26QWTJD2UHBI02Y.html
(朝日新聞 2016年12月2日) EU離脱はポピュリズム? 英外相が反論「こじつけだ」
 欧州連合(EU)をめぐる国民投票で離脱派の旗振り役だったジョンソン英外相が2日、英王立国際問題研究所(チャタムハウス)で講演し、「離脱の投票結果を世界中に広がるポピュリズム(大衆迎合)と比較しようとする性急な議論がある」と述べ、米国のトランプ現象とEU離脱を結びつける議論を「こじつけ」と反論した。ジョンソン氏は「私を含め、離脱に投票した人の多くは、外国人への嫌悪や恐怖から投じたのではない」「英国には、EUを弱体化させたり、EUに対して意地悪をしたりする意図は全くない」とも述べた。フランスの右翼・国民戦線(FN)のルペン党首や英国独立党(UKIP)のファラージ前党首らEUを敵対視する政治家や、排外主義的なゼノフォビア(外国人嫌悪)と英国政府の立場に一線を画したい意図があるようだ。対アジア政策では、国連安保理常任理事国拡大に賛成だとしてインドの国名に言及した。中国主導のアジアインフラ投資銀行(AIIB)に「英国はいち早く加盟した」と語った。日本については質疑応答で「すでに非常に強固な関係をさらに伸ばす余地がある」と述べるにとどまった。

<メイ首相の方針>
*3-1:http://qbiz.jp/article/101901/1/ (西日本新聞 2017年1月18日) 英、EU単一市場を離脱 移民制限を優先 メイ首相が交渉方針表明
 欧州連合(EU)との離脱交渉を控える英国のメイ首相は17日、ロンドンで演説し、域内での人、モノ、サービス、資本の移動の自由を原則とする欧州単一市場に「とどまることはできない」としてEUから完全に離脱する意向を示した。英国へ進出した日本企業にも影響を及ぼすのは必至。メイ氏が交渉方針を表明したのは初めて。単一市場への参加継続を訴えてきた与野党議員や経済界の反発は避けられず、政局や市場の混乱が予想される。メイ氏はEU域内からの移民流入を制限するなどの優先事項を提示。加盟国間の関税を撤廃し域外との貿易に共通関税を設けるEUの関税同盟から離脱、新たにEUと貿易協定を結びたい意向も表明した。メイ氏は3月末までにEUに離脱の意思を通知し、原則2年の離脱交渉に入る考え。2年の交渉で離脱した後に一定の移行期間を設けることが望ましいとしたほか、EUとの最終的な合意について、上下両院に投票による承認を求めるとも述べた。演説では「EUとは前向きで新しい関係構築」を目指すとし「部分的にEUのメンバーになるような中途半端なことは目指さない」と強調。単一市場の規則に関する判断を示すEU司法裁判所の管轄から外れる考えを表明したほか、EU域外の国々との貿易強化方針も打ち出し「より強く、よりグローバルな英国をつくる」と主張した。英国の離脱派は単一市場へのアクセス維持と移民制限の両方を交渉で勝ち取るとの考えを示していたが、EU側は移動の自由が単一市場参加の条件だとの原則を示し「いいとこ取り」は許さないとの姿勢を堅持。メイ氏がどちらを優先させるのか、その選択に大きな注目が集まっていた。

*3-2:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12754139.html (朝日新聞社説 2017年1月19日) 英国とEU 「自国優先」に歯止めを
 欧州の「一つ屋根」から完全に離別し、孤独な道を歩むのか。それは英国にも世界にも利益になるとは思えない。メイ首相が欧州連合(EU)からの完全離脱を表明した。昨年6月の国民投票の結果をふまえ、方針を鮮明にした。EUの単一市場に残るには、人の移動の自由を受け入れざるをえない。その選択肢を捨てて「完全離脱」するのは、あくまで移民の流入規制を優先させるためだという。英世論は今も割れ、政治も揺れている。首相はその混迷に区切りをつけたかったようだ。しかし、英国はEUを含む国際協調の枠組みの中に常にいた国だ。自由貿易の理念や、移民に門戸を開く寛容な価値観を推進する責任を果たしてきた。国民の反移民感情に配慮する必要があったとしても、英国が欧州の国々と積み上げてきた政治・経済の協調枠組みから早々に決別するのは得策ではない。メイ氏は「よりグローバルな英国を築く」と、楽観的な将来像を描く。EU域外との貿易協定を目指していくという。だが英国の最大の貿易相手はEUであり、輸出のほぼ半分を占める。日本を含む多くの外国企業も「EUへの足がかり」として英国に拠点を置いてきた。離脱は、英国自身の貿易を損ねるだけでなく、保護主義を広げかねない。規制に批判的だった英国を欠いたEUは、障壁を強めるかもしれない。EUが揺らげば、経済・金融危機は他の地域にも波及する。移民が経済的な繁栄を下支えしてきた事実を無視して英国が規制に突き進めば、排斥の機運が各国にも広がりかねない。EU離脱は実現しても、それにかわるEUとの貿易協定交渉がスムーズにまとまる保証はない。むしろ国内にEU懐疑勢力を抱える国々は、英国に厳しい条件を求めるはずだ。英国に住むEU市民や、EU域内の英国人の権利や雇用をどう守るか。同じ「欧州」の人間として長く共生した関係を変えるのは容易ではあるまい。少なくとも離脱の衝撃を和らげる十分な移行期間が欠かせない。EU側もこれを引きがねに、欧州の統合という歴史的な取り組みを頓挫させてはならない。国際協調路線を守り、「自国優先」の拡散を防ぐために、英国もEUも、長期的な秩序安定の道を探ってもらいたい。交渉の過程で孤立主義の弊害が顕在化すれば、民意が変化することもありえるだろう。その時、英国は改めて引き返す賢明さも忘れないでほしい。

<日本の場合>
*4-1:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12572990.html (朝日新聞社説 2016年9月23日) 難民と世界 もっと支援に本腰を
 世界の難民・避難民が6500万人に達し、第2次大戦以降で最大になった。迫害や戦火を逃れる難民だけではない。より良い暮らしを求めて他国へ渡る移民の流れも急速に広がっている。この喫緊の問題にどう取り組むべきか。その国際協調を探るサミットが国連で開かれた。とりわけ内戦の出口が見えないシリア、アフガニスタンなどから逃れる難民の流出は深刻だ。国際社会は停戦への努力を強めるとともに、難民受け入れの負担に苦しむ周辺国に、まず目を向ける必要があろう。100万人超のシリア難民を受け入れたレバノンや、250万人が避難したトルコなどからは「限界だ」との声が漏れる。全会一致で採択された宣言に「責任の公平な分担」が明記されたのは当然だ。地球規模で人が移動する時代であり、難民・移民問題は世界の政治・経済に直結する。紛争地からの距離にとらわれず、国際社会全体で負担を分かち合うべきだ。では、各国がどう分担するのか。具体的な数字や期限が宣言に盛り込まれなかったことは、大きな課題として残った。腰が引ける背景には、テロの恐怖や、「仕事を奪われる」との不安による排斥感情の高まりがある。欧米では近年、そうした主張をする政治家や政党が勢いを増している。しかし、こうした排他的な非難は、貧富の格差など広範な社会問題への国民の怒りを利用した責任転嫁であることも多い。長い目で見れば、難民や移民は受け入れ国に、利益や活力を少なからずもたらしてきた。サミットの会合で、経営者や労働者の団体は「秩序ある移民や難民の受け入れは経済を活性化させる」と述べた。経済協力開発機構(OECD)も、長期的に経済的にプラスになると指摘する。各国政府は、そうした受け入れのメリットについて国民にきちんと説明すべきだ。安倍首相は受け入れ国支援のための約2800億円の拠出や、シリア人留学生150人の受け入れなどを表明した。だが、多くの国と比べて難民の受け入れが極端に少ない現実は変わっておらず、国際的に批判の的となっている。近年は日本でも難民の雇用に取り組む企業や、支援団体に寄付する人が増えている。政府も行動の幅を広げ、もっと世界に門戸を開き、十分な責任を果たす国の姿をめざすべきだ。

*4-2:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20161119&ng=DGKKASFS18H5J_Y6A111C1EA2000 (日経新聞 2016.11.19) 外国人労働者、まず介護から 改正入管法成立 「高度人材」と両にらみ
外国人労働者の受け入れを拡大するための法律が18日、成立した。留学生や実習生として日本に入国した外国人を介護専門職に育成し、就職につなげる。来年中に施行する。国内での外国人材育成を重視する新たな仕組みで受け入れの大幅増を目指す。政府は人手不足分野と高度人材の2本柱で受け入れを検討中で、介護での制度構築は、その第1弾になる。在留資格に「介護」を追加する改正出入国管理・難民認定法と、外国人技能実習制度を拡充する法律が成立した。18日の参院本会議で自民、公明、民進など各党の賛成多数で可決した。改正入管法は日本の介護福祉士の資格を取得した外国人を対象に、介護の在留資格を認める。外国人技能実習適正実施法は、実習期間を最長3年から5年に延ばす。長時間労働などを防ぐため、受け入れ団体・企業を監督する機構を新設。同法の施行と共に、技能実習の対象に介護を加える省令改正をする。2法の成立を受け、政府は外国人が実習中に国家資格を取れば、実習後に介護の在留資格で就職できる制度を設計する。これまでの制度では、介護職は経済連携協定(EPA)の枠組みに限って受け入れをしてきた。インドネシア、フィリピン、ベトナムの3カ国が対象だ。滞在期間を限定しているうえ、現地の資格や日本語能力が条件。ハードルが高く、過去8年間の累計で看護師とあわせ約3800人(9月時点)にとどまる。厚生労働省の推計では、介護職員は2025年に日本国内で約38万人も不足する。この差を少しでも埋めるため、今回の法整備はEPAを締結する3カ国以外の留学生も対象にした。少子高齢化で日本人の生産年齢人口は減少の一途だ。今後の成長のためには外国人労働力は有力な選択肢になる。政府は2本柱で受け入れを進める考え。経営者や技術者ら高度人材では、最短1年の滞在で永住権を認める制度を検討中だ。もう一つ、介護を含めた人手不足産業では、日本は単純労働者の入国を原則認めていない。だが政府内では建設業で2国間協定を使った受け入れ拡大を考えているほか、農業では特区での受け入れ解禁を検討中だ。

*4-3:http://digital.asahi.com/articles/ASJC46QKVJC4PTFC01M.html
(朝日新聞 2016年11月10日) 介護福祉士の学校、留学生急増 入管法改正の見通し
 日本介護福祉士養成施設協会によると、例年20人程度だった留学生の入学者数は、昨年度は94人、今年度は2・7倍の257人に。国籍はベトナムが114人と最も多く、中国53人、ネパール35人、フィリピン28人と続く。入学者全体の3%を占める。なぜ急増しているのか。留学生が介護福祉士の資格を得ても、現状では日本で介護の仕事はできない。これが変わる可能性が出てきたためだ。政府は今国会で、出入国管理及び難民認定法(入管法)改正法案の成立をめざす。外国人の在留資格に新たに「介護」を設ける内容。成立すれば留学生が卒業後に在留資格を「留学」から「介護」に切り替え、日本で仕事に就くことができる。外国人の介護福祉士をめぐっては、2008年度から経済連携協定(EPA)に基づく候補者の受け入れが始まった。しかし資格試験に不合格なら原則帰国など、留学ルートよりハードルが高い。今国会では、この入管法改正法案とは別に、外国人技能実習制度の適正化法案も審議されており、成立、施行されれば実習の対象職種に介護が加わる方向だ。外国人が介護現場で働く流れが一気に拡大することになる。ただ、介護業界の慢性的な人材難の大きな理由は賃金の低さだ。そこが改善されていない状況で外国人を広く受け入れると、現在の低い賃金水準が固定化されるのでは、という懸念はぬぐえない。日本介護福祉士会は「外国人が介護を担うことにより、介護職の処遇や労働環境をよくするための努力が損なわれることになってはならない。その点は国の検討会で確認されており、受け入れの前提と理解している」と話す。介護現場で働く外国人への支援も検討しており、「日本の介護全体の質を上げる努力をしていきたい」という。留学生の処遇も課題だ。外国人介護労働者の問題に詳しい京大大学院の安里(あさと)和晃特定准教授(45)は、授業料が借金となる懸念があるとし、「授業料の軽減や教育内容の充実、就職先を選択する自由を保障すべきだ」と訴える。「多様な人々が尊重され活躍できる場になるよう、学校や施設側は業界を挙げて努力する必要がある」
■ベトナムから視察団
 10月中旬、介護福祉士を養成する関西社会福祉専門学校(大阪市阿倍野区)に、日本への関心が高いベトナムからの視察団が訪れた。現地の医療短大の学長らだ。この専門学校では、今春に新入生の約2割を占める9人の外国人が入学。6人がベトナム人で、新たに日本育ちのベトナム人講師を採用し、10月から専門用語の学習をフォローする授業を始めた。「来年はベトナム人だけで25人程度入学します」。山本容平学校長(35)が説明すると、視察団の学長は大きくうなずいた。視察団をこの学校へ案内したのは、大阪市の医療法人「敬英会」だ。今夏以降、この医療短大から卒業生7人を受け入れた。7人は敬英会が用意した寮に住み、敬英会が運営する介護施設でアルバイトをしながら、日本語学校で学んでいる。来春はこの専門学校に入学し、介護福祉士の勉強をスタートさせる予定だ。その一人、グェン・ティ・ハンさん(22)は、母国で看護の勉強をしながら日本語を学んできた。「今は漢字の勉強が大変だけど、介護の免許をとって、日本で働きたい」と話す。敬英会の光山(みつやま)誠理事長(51)は将来の人材不足に備えてきた。「質が高く信頼される育成の仕組みを作りたい」。この動きを参考に、大阪介護老人保健施設協会も取り組みを進める方向だ。いま、同じような留学生受け入れのルートが国内各地で生まれている。東京国際福祉専門学校(東京都新宿区)では今春、中国、フィリピン、ベトナム、台湾から6人の留学生が介護福祉科に入学した。しかし日本人はゼロ。来春に向けて、人材紹介業者や外国人採用を考える法人とのパイプを増やし、定員の40人に近づけたいという。担当者は「経営を考えると数が多いほどいいが、授業についていけないようでは困る。いかに日本語能力が高い人を見つけるかがカギ。現場のリーダーとなる人材を育てたい」と話す。
■事業者自ら養成する例も
 人材難に苦しむ介護事業者が、自ら介護福祉士の養成校を作り、留学生を受け入れようとする動きもある。兵庫県篠山(ささやま)市。無人駅から徒歩約15分の山や田んぼに囲まれた場所に、3階建ての校舎が建っている。特別養護老人ホームを運営する社会福祉法人「ウエルライフ」(同県西宮市)が来秋の開校をめざす「篠山学園」だ。1学年80人の2年課程。ホーチミンの日本語学校と提携し、入学者の多くをベトナム人留学生にする予定という。介護福祉士の養成校の多くは専門学校。専門学校は、外国人がほとんどを占める状況では認可されない。しかし篠山学園は、あえて外国人の制限がない「各種学校」での養成校をめざし、県に申請中だ。ウエルライフ側の危機感は強い。十分な採用ができずに人材派遣会社に頼らざるをえず、その費用が大きくなっている。開設準備室の安平衛(まもる)事務長(58)は「施設運営に介護福祉士は絶対必要。リスクは大きいが、直接のルートを作る方がいいと判断した」と話す。篠山市も期待をかける。県立高校の分校だった建物を県から約6千万円で購入し、同法人に貸す。校内で高齢者サロンを開く計画もある。「留学生のために、ベトナム料理に欠かせないパクチーを作ろうか」という地元からの提案も。市の担当者は「地域活性化につながるだけでなく、卒業後はできる限り市内で働いてもらえればありがたい」と話す。

*4-4:http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170118-00000014-asahi-pol (朝日新聞 2017/1/18) 外国人の永住権、最短1年で付与へ 高度人材の確保狙う
 研究者や企業経営者など高い専門性を持つ外国人が最短1年で永住権を取得できる「日本版高度外国人材グリーンカード」が3月から始まる。現在は5年間日本で暮らせば永住許可を申請できるが、学歴や年収などを点数化し、条件を満たした場合は取得に必要な在留期間を短縮する。1年での永住権取得は国際的にも最短クラスで、獲得競争が激しくなっている外国人の人材を呼び込む狙いだ。外国人が永住権を取得するには、通常は10年以上の在留期間が必要だが、法務省は2012年に「高度人材ポイント制」を導入した。「学術研究」「専門・技術」「経営・管理」の3分野に分け、研究者の「博士号取得者」に30点、経営者の「年収3千万円以上」に50点などとポイントを積算。70点以上で「高度外国人材」と認めて最短5年で永住権取得を認めてきた。今回は、永住許可の申請に必要な在留期間を5年から3年に短縮。さらに、ポイントが80点以上の対象者は最短1年とする。「大学ランキングの上位校を卒業」(10点)、「国内で経営している事業に1億円の投資」(5点)なども新たにポイントとして加算する。


PS(2017年1月25日追加):*1-4の「米国第一エネルギー計画」「新たな規制の凍結も各省庁に指示」に関連して、トランプ米大統領は、*5-1のように、「①日本との自動車貿易は不公平だ」「②われわれが自動車を売る際、日本が販売を難しくしているが、日本は米国で多くの自動車を販売している」と指摘している。これは、関税だけでなく規制による非関税障壁も含む発言だが、環境規制などは規制緩和しさえすればよいわけではない。日本車は、1)狭い道路を走れる小型車を開発したり 2)高いエネルギー代金に対応する省エネを進めたり 3)厳しい環境規制をクリアしたりすることによって、付加価値の高い自動車を作ったため、米国でも売れているのである。そして、今後は、高齢化社会対応の自動運転車や環境対応の電気自動車・燃料電池車の開発が進むため、*5-2のように、米国がシェール、石油資源などの化石燃料を開発し、*5-3のように、化石燃料の増産や環境規制の緩和を図る方針を打ち出せば、米国の自動車は機能で他国の市場では売れなくなる。つまり、1980年代の日米自動車摩擦が再現するのではなく、需要者がどのような自動車を選択するかが重要であるため、販売は日本車に限らず顧客ファーストで考えたところが勝つのだ。
 これに対して、英国は、*5-4のように、①グローバルな競争力をもつ製造業の集積 ②世界最先端の専門知識の集積と研究開発 ③英国政府の支援 などによるビジネス環境の魅力により、自動車でゲームチェンジ(イノベーション)が起こった時に勝つための準備ができつつあるようだ。

    
  テスラ電気自動車    BMW電気自動車    日産電気自動車   ジャガー電気自動車


  日産電気トラック    トヨタ・ヒノ燃料電池バス   トヨタ燃料電池列車   ホンダ燃料電池車

*5-1:http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2017012590070133.html (東京新聞 2017年1月25日) 【経済】日本の車市場を狙い撃ち 日米貿易摩擦再燃の恐れ
 トランプ米大統領は二十三日、ホワイトハウスで環太平洋連携協定(TPP)から「永久に離脱する」とする大統領令に署名した。一方で「二国間の貿易協定を目指す」と明言、米国の利益を最優先にする米国第一主義に基づき、各国に市場開放を迫る方針を示した。日本については「日本との自動車貿易は不公平だ」と指摘しており、一九八〇年代から九〇年代にかけての日米自動車摩擦時のような厳しい交渉を強いられる可能性もある。「米国の労働者にとって非常に良いことだ」。トランプ氏は大統領令を掲げ、満足そうに語った。通商政策の司令塔となる新設の国家通商会議(NTC)のトップに就くカリフォルニア大のピーター・ナバロ教授らが見守った。政権が本格稼働した同日、ホワイトハウスで最初に署名した大統領令が、TPPからの永久離脱だった。続く労働組合の幹部らとの会合で「交渉参加国と二国間の貿易協定を目指す」と宣言した。署名の前には企業経営者らと会合。「われわれが自動車を売る際、日本が販売を難しくしている。だが、日本は米国で多くの自動車を販売している」と批判し、対日圧力を強める考えを示した。日本は自動車の関税を撤廃しているが、米国メーカーは燃費や安全規制が厳しいと主張してきた。トランプ氏は、大統領選挙戦では「ラストベルト」と呼ばれる中西部各州で、自動車産業などで働く白人労働者階級に「海外に奪われた仕事を取り戻す」とアピールし、彼らの支持を集めることで勝利の原動力とした。日本の自動車市場批判は米国から日本への輸出を増やし、支持層に報いる狙いがあるとみられる。トランプ氏の日本批判について菅義偉官房長官は二十四日のテレビ番組で「日本は関税ゼロで、事実誤認。米国メーカーも右ハンドルにするとか努力をすれば問題ない」と反論した。日本政府は米国との二国間交渉には否定的な立場で米国にTPPに加わるよう翻意を促す方針。日米首脳会談を二月上旬に行う方向で調整しており、安倍晋三首相はその場でもTPPの重要性を訴える考え。だが、逆にトランプ氏から二国間交渉の要求を突きつけられる可能性がある。TPPの事前協議に農林水産省の交渉官として携わった明治大の作山巧(たくみ)准教授は「多国間交渉では、大国でも主張を押し通せない場合があるが、二国間では理屈抜きに主張がぶつかり合うため、大国が優位になる」と指摘。二国間交渉になった場合、農産物や自動車で米国の圧力が強まると予想している。
<日米自動車摩擦> 1973年の第1次石油危機などを背景に米国で小型車の需要が高まり、日本車の輸入が増える一方、対応が遅れた米自動車メーカーは大きな打撃を受けた。米国内で対日感情が悪化し、日本車の輸入規制を求める動きが広がった。日本側は81年以降、対米輸出の自主規制を実施。93年に始まった日米包括経済協議で自動車は優先分野となり、95年に両国政府は日本市場への参入拡大などで合意した。摩擦を受けて日本自動車メーカーの海外進出が進んだ。
<米大統領令> 立法手続きを経ずに米大統領が直接、連邦政府機関や軍に発する命令。議会は大統領令の内容を覆したり修正したりする法律を制定することで対抗することができる。憲法に反する内容の場合は、最高裁が違憲判断を示して無効とすることもある。太平洋戦争開戦から約2カ月後の1942年2月19日にルーズベルト大統領が出した大統領令9066号は、日系人の強制収容につながった。 

*5-2:http://ieei.or.jp/2016/11/special201603013/ (国際環境経済研究所主席研究員、東京大学公共政策大学院 教授 有馬 純 2016/11/15) トランプ政権の下で米国のエネルギー・温暖化政策はどうなるか
 米大統領選でドナルド・トランプ氏が当選したことは世界中を驚かせた。そのマグニチュードは本年6月の英国のEU離脱国民投票の比ではない。選挙キャンペーン中のトランプ氏の過激な言動や公約が、大統領就任後、どの程度実行に移されるのかは未知数である。しかし確実に言えることは米国のエネルギー温暖化政策が大きく様変わりするということである。
1.国内エネルギー生産の拡大、安価なエネルギー価格が中核
 トランプ氏のエネルギー政策の中核は国内エネルギー生産の拡大と米国のエネルギー自給の確立である。彼の「米国第一エネルギー計画(An America First Energy Plan)」注1) は以下の公約を列挙している。
●米国のエネルギー自給の確立、数百万の雇用創出
●50兆ドルにのぼる米国のシェール、石油、ガス、クリーンコール資源の開発
●OPECカルテルや米国の利害に敵対する国々からの輸入を不要に
●連邦所有地(陸域、海域)のエネルギー資源開発への開放
●排出削減、エネルギー価格の低下、経済成長につながる天然ガスその他の国産エネルギー源の使用を促進
●オバマ政権の雇用破壊的な行政措置を全て廃止し、エネルギー生産への障壁を削減・撤廃することにより、年間50万人の雇用創出、300億ドルの賃金引上げ、エネルギー価格の低下を図る
 またトランプ氏はAn American First Energy Plan の中で、オバマ政権の「反石炭的な規制」を引き継ぐクリントン氏を強く批判している。トランプ氏が10月に発表した「米国を偉大にするための100日行動計画(100-day Action Plan to Make America Great Again)」注2) では「米国の労働者を守るための7つの行動」の中で上記のエネルギー資源開発の促進に加え、「キーストーンパイプラインを含むエネルギーインフラプロジェクトに対してオバマ・クリントンが課した制約を撤廃する」としている。こうした彼のエネルギー関連の公約には、シェール開発で巨万の富を得たContinental Resources 社オーナーのハロルド・ハム氏が強い影響力を及ぼしているといわれる。ハロルド・ハム氏は以前から2012年の大統領選ではミット・ロムニー候補のエネルギー問題のアドバイザーを務めており、トランプ政権のエネルギー長官候補としても名前が挙がっている。またトランプ氏の移行チームの中でエネルギー省を担当するのはMWR Strategies社長のマイク・マッケンナ氏である。彼はエネルギー省、運輸省の対外エネルギー関係アドバイザーやバージニア州環境局の政策・対外関係局長の経験があり、MWR Strategies社はダウ・ケミカルやKoch Industries, TECO Energy, GDF Suez 等のためのロビイングを行っている。エネルギー長官候補として彼の名前を挙げる記事もある。

*5-3:http://www.cnn.co.jp/usa/35093713.html (CNN 2016.12.14) トランプ氏、エネルギー長官にペリー氏を指名へ 情報筋
米国のトランプ次期大統領は、新政権のエネルギー長官にリック・ペリー前テキサス州知事を指名する方針を固めたことが14日までに分かった。政権移行チームの複数の情報筋がCNNに語った。
ペリー氏は同州の共和党重鎮として知られ、2012年と今回の大統領選に名乗りを上げたものの撤退していた。12年の共和党指名レースでは3つの省庁を閉鎖するべきだと訴えたが、討論会でそのうち1つを思い出せずに立ち往生した。この省庁がまさにエネルギー省だった。今回の指名レースでは当初、トランプ氏批判の先頭に立ったものの、資金集めに行き詰まって昨年9月に撤退。その後はトランプ氏支持に回っていた。オバマ現政権下のエネルギー省は再生可能エネルギー開発事業への助成や融資などを通し、化石燃料からの方向転換を推進してきた。一方、トランプ氏は現政権のエネルギー政策を覆し、化石燃料の増産や環境規制の緩和を図る方針を打ち出している。規制の多くは環境保護庁の管轄下にあるが、エネルギー省も重要な役割を果たすことになる。連邦所有地での化石燃料掘削には内務省の許可が必要とされる。移行チームから13日に入った情報によると、新政権の内務長官にはエネルギー自給を主張し、環境保護団体から批判を浴びているライアン・ジンキ下院議員が就任する見通しとなった。

*5-4:http://special.nikkeibp.co.jp/as/201501/innovation_is_great/great4.html
 急速なグローバル化が進展する自動車産業の中で、英国の存在感が増している。その背景には3つのファクターが存在する。英国の自動車産業に詳しいリカルド ジャパン株式会社代表取締役社長の山本雄二氏に話を聞くことができた。同社は英国の自動車産業を代表する総合エンジニアリング企業であるリカルド社の日本法人だ。リカルド社は今年で創業100周年を迎える歴史を誇り、英国のみならず日本および世界の自動車メーカーと幅広くビジネスを展開している。
 第一のファクターは、グローバルな競争力をもつ製造業の集積である。「欧州では自動車の開発プロセスにも数多くのサプライヤーが関わります。自動車メーカーにとって、確固たる技術基盤をもったエンジニアリング企業の存在は必要不可欠になっています」と山本氏。同社が提供するエンジニアリング分野は幅広く、自動車分野だけでもパワートレイン開発、ワイヤハーネス設計、軽量化技術など、多岐にわたるソリューションを提供している。「およそ自動車メーカーができることはリカルド社もできると思っていただいて結構です」。さらに同社の大きな特徴に「戦略コンサルティング」が挙げられる。単に技術の提供だけでなく、商品企画段階から市場予測に基づく戦略的コンサルティングを行っているのだ。リカルド社は現在、ジャガー・ランドローバー社と長期的かつ包括的なサポート契約を結び、エンジン・車体開発の一部を担当している。また、マクラーレン・オートモーティブ社が製造する超高性能スポーツカー向けのエンジンを共同開発し、その生産まで請け負うなど、エンジニアリング企業の枠を超えた自動車メーカーとの関係を築いている。リカルド社のような企業の存在こそが、英国の自動車産業のイノバティブな躍進を支える大きな原動力と言えるだろう。
 第二のファクターは、世界最先端の専門知識だ。英国にはホンダ、日産、フォード、BMW、上海汽車、吉利汽車など、世界を代表する自動車メーカーが拠点を構え、研究開発を行う。リカルド社でも「既存のエンジン技術での資源の有効活用、低排出ガス(CO2抑制)などが求められるなかで、高効率ハイブリッドシステムやEV関連などの研究開発も行っています。特にバッテリーやモーターに関するソリューションを提供できるエンジニアリング企業は世界的に見ても少ないのが実情で、当社の強みの一つとなっています」とその先進性を語る。「英国には次世代のイノベーションが期待できる産官学連携のプログラムが数多く用意されています。当社でもいくつかの基礎研究分野において英国の大学との共同研究を行っています」。英国におけるイノバティブな産業育成プログラムといえば、前々回記事で紹介した、政府と産業界が資金を拠出する「カタパルト」が知られている。自動車関連では「高付加価値製造(HVM: High Value Manufacturing)カタパルト」によって多くの研究機関が連携するほか、輸送システムにおける将来のイノベーションの開発と展開を目指す「輸送システム・カタパルト」も積極的に活用されている。
 最後のファクターは、ビジネス環境としての英国の魅力である。英国政府は産業界と連携し、前出のカタパルトを補完しながら、将来の自動車技術を開発する企業を支援している。投資受け入れ先として英国自動車産業の魅力を高めることにも積極的だ。取り組みの一部を紹介する。
 ・先端推進システム技術センター(APC: Advanced Propulsion Centre )
  産官共同の自動車産業戦略の中心となり、今後10年間に10億ポンド(約1940億円)の資金を
  投じ、先端推進技術の開発、商業化の実現を促進。
 ・低排出車両庁(OLEV:Office for Low Emission Vehicles)
  超低公害車の初期市場を支援する政府横断的な組織。9億ポンド(約1740億円)超の資金を
  投入し、超低公害車の開発、製造および利用で世界の先頭に立ち、温室効果ガス排出と
  大気汚染の削減を促進。
 ・国立自動車イノベーションキャンパス(NAIC:National Auto Innovation Campus)
  政府、ジャガー・ランドローバーおよびタタ・モーターズによる9200万ポンド(約178億円)の構想。
  化石燃料依存を削減し、二酸化炭素排出を低減する新技術の開発を目指す。約1000名の研
  究者、科学技術者、エンジニアが働く。
 ・政府、ジャガー・ランドローバーおよびタタ・モーターズによる9200万ポンド(約178億円)の構想。
  化石燃料依存を削減し、二酸化炭素排出を低減する新技術の開発を目指す。約1000名の研
  究者、科学技術者、エンジニアが働く。
 英国に拠点を置く企業に対する税務上のインセンティブも大きい。英国の法人税は現在、G20諸国中で最も低い20%にまで引き下げられている。大幅な研究開発費控除(適格研究開発支出1 ポンドにつき最大27 ペンス控除)を提供しているほか、特許発明などのイノベーションから生じた利益に対して法人税率を軽減(10%)するパテントボックス税制も適用している。また、製造部門の労働費用も西欧諸国としては最も低い水準であり、人件費の面でもメリットがある。「グローバル化とともに、自動車メーカーが全てのリソースを自前で賄うのがむずかしい時代になりつつあります。すでに欧州がそうであるように、日本でも外部のエンジニアリング企業にアウトソースを求める時代が到来しつつあります。そうしたなかで、日本企業が英国および英国企業とパートナーシップを組むことは意義のあることだと思います」。グローバルな視座からマーケットを俯瞰し、ダイナミックに変化し続ける需要にフレキシブルに対応できる英国のビジネス環境。そこには新しいビジネスの可能性が広がっている。すでに新しい日英パートナーシップは走り出している。その象徴が、欧州最大の自動車生産工場である日産サンダーランド工場が製造する電気自動車「リーフ」である。2015年9月8日(火)~9月18日(金)、英国政府による「Innovation is GREAT~英国と創る未来~」のキャンペーンロゴをまとった日産リーフが、東京の英国大使館から全国ツアーに出発する。日本各地の観光名所、英国ゆかりの地を巡りながら、日英パートナーシップをアピールするという。日本F3に参戦する英国人ドライバー、ストゥラン・ムーア選手が運転することが既に決定している。


PS(2017年1月26日):*6のように、佐賀県内の追突事故の1割弱は自動前進機能が原因だそうだが、運転車が意図しないのに自動車が動き出すのはプログラムミスだ。そのため、オートマチック車の運転者に「停止中はニュートラルして、サイドブレーキを使うように」と言うよりは、オートマチック車のプログラムを変更した方がよいと考える。また、確かに警察が集計した交通事故原因を参考にして改良すれば「運転支援システム」や「自動運転機能」の完成に役立つだろうし、事故が起こった際の関係者の怪我を集計すれば、車体の安全性における改良ができるだろう。

*6:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/399034
(佐賀新聞 2017年1月26日) 県内の追突事故、1割弱が「自動前進」原因、県警「サイドブレーキを」
 佐賀県内で昨年1年間に発生した追突事故のうち316件(8.7%)が、ブレーキから足を離すと自動的に進む「クリープ現象」によるものだったことが県警の集計で分かった。オートマチック車の運転者にサイドブレーキの徹底を促している。25日の定例会見で説明した。交通安全企画課によると、信号待ちなどで停止した際、後部座席のチャイルドシートを見ていて踏みが弱くなり追突したケースや、ブレーキペダルを踏む筋力自体の衰えでぶつかった高齢ドライバーもいた。同課は「ゆっくりとした前進でも大きな事故につながる可能性はある」と指摘し、「停止中は車間距離を十分取ってニュートラルの状態にし、サイドブレーキを引くことを徹底してほしい」と呼び掛けている。追突事故を原因別で見ると、脇見などの前方不注意が最も多く2378件(65.1%)。次いで歩行者らへの注視を怠った事例が744件(20.4%)、クリープ現象を含むブレーキ操作に起因するケースが435件(11.9%)だった。


PS(2017年1月27日追加):ゴーン社長率いる日産・ルノー組が世界で最初にEVを開発したが、日本の政府・メディアは航続距離が短いなどの批判ばかりを行ってディーゼル車やガソリン車への回帰を進め、EVの短所解決に協力することはなかった。そのため、*7のように、EVで世界の第一線から外れたのであり、日本の技術は、ハンドルを握っている文系の愚(中等・高等教育や組織構成に問題があると思われる)により、世界から遅れて初めてエンジンをかけられるというお粗末さなのである。なお、PHVは、ガソリンエンジンを併用しているため、部品が多くてコストダウンできず、車内も従来のガソリン車と同様なので、EVのメリットが出ない。

*7:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12767174.html (朝日新聞 2017年1月27日) ホンダ、EV開発に注力 燃料電池車の普及進まず
 ホンダが、出遅れた電気自動車(EV)の開発に本腰を入れ始めた。水素で走る燃料電池車(FCV)を「究極のエコカー」と位置づけてきたが、FCVの普及が進まず、米国で今秋に始まる環境規制への対応も急務となっているためだ。「EVをやめたわけではない」。昨年12月、早稲田大で講演したホンダの八郷隆弘社長は、「なぜEVに力を入れないのか」と質問した学生にこう強調した。社外には公表していないが、昨年10月、開発部門ごとに散らばっていたEVの技術者を集め、専門組織を新設。四輪車開発の責任者の直属とし、米国で今年売り出すEVの仕上げや、次世代のEV開発に当たらせている。ホンダは昨年3月、FCV「クラリティ フューエルセル」のリース販売を始めたが、初年度の国内販売計画は200台。米国も当面はカリフォルニア州の12店舗だけでの販売で、普及にはほど遠い。一方のライバルは、日産自動車がEV「リーフ」を世界で約25万台売った。同じくFCV重視だったトヨタ自動車も昨年11月、2020年をめどにEV量産を目指すことが判明した。米カリフォルニア州で今秋発売の18年モデルから始まる規制強化も、ホンダにEV開発を迫る背景だ。排ガスのない車(ZEV〈ゼブ〉)をより多く売り、一定の「点数」を稼ぐ必要があるが、ホンダなど日本勢が得意のハイブリッド車(HV)はZEVから外れた。三菱UFJモルガン・スタンレー証券によると、18年モデルでホンダが規制を達成するための販売の水準はEV約3千台、FCV約1千台、プラグインハイブリッド車(PHV)約8千台と厳しい。点数を満たせなければ罰金を支払うか、超過達成した他社から点数を買わなければならない。日産のようなEVの量産経験に乏しく、研究開発費がトヨタより3割少ないホンダにとって、EVとFCVとの「二正面作戦」が重荷になる可能性もある。ただ、ホンダが12年からリース販売した小型車「フィット」のEVは、開発にHVやFCVの知見を生かし、一度の充電で走れる距離を当時の世界最高水準にした。広報担当者は「技術で他社より遅れているとは思わない」と話す。
■自動車大手3社はZEV規制への対応を急ぐ
<ホンダ>
●従来の主なエコカー/クラリティ フューエルセル(FCV)
●累計世界販売/年200台以上を予定(16年3月発売)
●米国のZEV規制への対応/16年にクラリティ、17年にクラリティの車台を使ったEVとPHVを投入
<トヨタ自動車>
●従来の主なエコカー/ミライ(FCV)
●累計世界販売/約2300台(14年12月発売)
●米国のZEV規制への対応/ミライに加え、「プリウスPHV」の2代目を投入。20年メドにEV量産
<日産自動車>
●従来の主なエコカー/リーフ(EV)
●累計世界販売/約25万台(10年12月発売)
●米国のZEV規制への対応/リーフで対応。近い将来にリーフは全面改良し、傘下の三菱自動車のPHV技術も導入


PS(2017年1月29日追加):台湾には、17世紀頃に中国福建省の人が移民して来る前から居住していた先住民がおり、第二次世界大戦後に日本に代わって台湾を統治した中華民国政府は、1949年2月7日に蒋介石率いる中国国民党が台湾島に来たことにより実効支配するようになったものである。そのため、*8-1のように、中国から「日本が台湾を侵略したことを忘れたのか」と批判されるのはおかしい上、日本が侵略したとされる他国と異なり、台湾の人々は親日的な人が多いのだ。
 また、*8-2のように、厚労省の発表では、2016年10月末時点の外国人労働者は108万人で、(労働条件は改善すべき点が多いものの)中国からの34万4,658人が最も多く、日本は中国へのODAもかなりやってきたため、「日本が中国を侵略した」ということを、いつまでも外交カードに使ってもらいたくない。さらに、私は個人的に、中国はスケールが大きく将来性もある国だが、民主国家とは言えず、まだ公害が多くて人権が疎かにされているため、安心して住めないような気がしている。 

*8-1:http://mainichi.jp/articles/20170129/k00/00e/030/107000c (毎日新聞 2017年1月29日) 台湾、蔡英文総統が英語と日本語でツイート 内外に波紋
 台湾の蔡英文総統が28日の春節(旧正月)に合わせて英語と日本語で新年のあいさつをツイッターで投稿したところ、中国から「なぜ中国語で書かないのか」と批判の書き込みが相次いだ。これに対し日本や台湾からも反論が投稿され、激論となった。台湾紙、自由時報(電子版)が28日、伝えた。蔡氏は大みそかにあたる27日、英語と同時に日本語で「日本の皆様、今年は実のある素晴らしい一年となりますよう、心よりお祈り致します」と書いた。中国からは「ごますり」「日本が台湾を侵略したことを忘れたのか」などと批判が殺到した。

*8-2:http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201701/CK2017012802000113.html (東京新聞 2017年1月28日) 外国人労働者108万人 昨年10月末 技能実習生、受け入れ拡大
 厚生労働省は二十七日、二〇一六年十月末時点の外国人労働者数が初めて百万人を突破し、百八万三千七百六十九人になったと発表した。前年比で19・4%増加し、企業に届け出を義務付け集計を始めた〇八年以来最多となった。全体の増加率はこれまでで最も大きく、全ての都道府県で前年の人数を上回った。人口減少で人手不足感が強まる中、外国人労働者に頼る流れは続くとみられるが、欧米諸国では外国人居住者の増加が国を二分する論争になっている。日本でも受け入れを巡り国民的な議論が必要となりそうだ。人手不足から高い技能を持つ人材や留学生アルバイトの受け入れが増えたほか、安価な労働力との批判がある技能実習生の大幅増も全体を引き上げた。国籍別で最多は中国の三十四万四千六百五十八人で前年比6・9%増。次いでベトナムが十七万二千十八人で56・4%増加し、留学生によるアルバイトや技能実習生が多くを占めた。フィリピンが十二万七千五百十八人で続いた。ネパールはベトナムに次ぐ増加率(35・1%)だった。都道府県別では、東京が最多で三十三万三千百四十一人、愛知が十一万七百六十五人、神奈川が六万百四十八人だった。

| 経済・雇用::2016.8~ | 02:51 PM | comments (x) | trackback (x) |
2017.1.13 武器の高度化に合わせて強化されるわけではない人類に本能として組み込まれた抑制機能の限界と安全保障 (2017年1月14、17、20、23日、2月2、3、6日に追加あり)
     
安保法制で広がる 今回の共謀罪法案        共謀罪導入の効果          共謀罪の
 自衛隊の活動  2016.8.25朝日新聞                           これまでの経緯

(図の説明:「自衛のための戦争」という理屈はどうにでもつくだろうが、行き過ぎた集団的自衛権の行使や他国軍の後方支援は、実際には自衛の範囲ではなく憲法9条違反だ。また、“テロリスト”と呼ばれている人たちの中にも、自分の領域を護るための闘いをしている人もいるため、双方の事情を公正に見ることなく外国で戦争をすれば、恨みを買って日本国内も危なくなる。そして、“テロリスト”を未然に逮捕するためとして何度も国会に提出されている“共謀罪”は、刑法や日本国憲法の理念に反しており、人権侵害を引き起こす可能性が高い)

(1)人間(動物の一種)に備わっている攻撃本能と抑制本能について
 動物(特にオス)には、縄張りを護ったり、自分のDNAを遺すためにメスを獲得したりするため、攻撃の本能を持つものが多い(「攻撃」:コンラート・ローレンツ《動物行動学者》著 参照)。そのうち、ライオンのように強い動物のオスは、種を滅亡させないための淘汰圧も働くので、負けた相手が逃げれば追わない抑制本能も兼ね備えている。

 一方、人間は、進化の上では、こぶしや石斧・剣程度の武器にしか攻撃抑制本能が対応していないのに、*3-3のように、強力な武器を使うようになったため、進化で獲得された攻撃本能や抑制本能が武器についていっていない。そのため、空爆のように、攻撃している相手が見えなくなれば攻撃しやすく、近代戦争ほど悲惨さの度合いが大きくなった。

 そして、核兵器はボタンを押すだけで相手の苦しみを見ずに多くの人を殺せるため、その極致なのだが、地球を汚染して自分をも苦境に陥らせる。しかし、攻撃している最中はそれに気づかず、気がついた時には自分も人類も終わっていることになりかねない。また、核兵器が抑止力になるというのも、私には信用できないため、そのような危険すぎる武器は、唯一の被爆国である日本が率先して廃絶に持って行って欲しいと願っている。

(2)世界と日本の核政策
 そして、2016年8月、*1-1のように、国連核軍縮作業部会が、核兵器禁止条約の交渉を来年中に開始するよう国連総会に勧告する報告書を採択し、*1-2のように、米国のオバマ大統領が「核なき世界」訴えたが、被爆国としてリーダーシップを取るべき日本は、*1-3のように、後ろ向きだった。

 しかし、国連総会第1委員会(軍縮)は、2016年10月27日、核兵器禁止条約に向けた交渉を2017年に開始するよう求める決議案を賛成多数で採択し、123カ国が賛成したが、日本や核兵器保有国の米英仏露など38カ国が反対し、中国を含む16カ国が棄権したそうだ。その決議案は、オーストリアやメキシコなどの57カ国が共同提案し、総会本会議で採択される見通しだそうで、これらの国々は立派だ。

 日本は北朝鮮の核・ミサイル開発を理由として反対したそうだが、北朝鮮の敵は本来は日本ではない筈で、核兵器廃絶にリーダーシップを取るべき日本が北朝鮮を理由に反対するのはどうかと思う。

(3)他の国は・・
 北朝鮮は、*2-1のように、使用済核燃料を再処理して核兵器の原料となるプルトニウムを新たに生産したことを明らかにし、弾頭の「小型化、軽量化、多種化」を達成して水爆保有に至ったと主張し、「米国が核兵器でわれわれを恒常的に脅かしている条件下では核実験を中断しない」としており、言っていることはわかるが、何度も日本海に落下させられると日本海が汚染されるので困る。また、電力不足を解決するため軽水炉原発の建設も進めるとしているが、北朝鮮が発電に原発を使う必要はないだろう。

 そして、日本海は狭くて湖のような海である上、食料となる魚介類の宝庫でもあるため、環日本海諸国で「日本海汚染防止条約」を結ぶのがよいと考える。

 なお、*2-2のように、パキスタンは、「包括的核実験禁止条約の署名や批准が求められれば、インドとともに検討せざるを得ない」と述べ、パキスタンとインドが包括的核実験禁止条約の署名に応じれば、核兵器なき世界へと大きく前進するそうだ。

(4)シリア等の空爆
 *3-1のように、シリアの空爆で顔中が血とほこりにまみれた5歳の少年が、茫然と前を見つめている姿に動揺と非難が沸き起こったそうだが、助けられずに建物の下敷きになっている人は無数にいる筈だ。そして、空爆している国は、*3-2のように、ロシアだけではなく、米国や有志連合もだ。

(5)日本の武器輸出
 経団連は、*4-1のように、安全保障関連法の成立で自衛隊の役割が拡大し、「防衛産業の役割は一層高まるので武器輸出推進を」と提言したそうだ。しかし、「Made in Japan」の武器が世界に出回れば、日本の平和ブランドがなくなり、その武器で攻撃された国から恨みを買うという大きなつけを支払わされる。そのため、*4-2のような武器輸出は控えるべきで、儲かるからやってよいというものではない。

(6)安保法と共謀罪
 日米両政府は、*5-1のように、2015年4月27日に防衛協力のための指針(ガイドライン)を改定し、自衛隊の活動を制限してきた日米協力は転機を迎えて、沖縄県の尖閣諸島も日米安全保障条約5条の適用範囲にあるとしたそうだが、これは大統領が変わっても確かだろうか。

 また、*5-2のように、集団的自衛権を行使できるようにする安全保障関連法を2015年3月29日に施行し、日本が専守防衛を転換して世界のどこへでも行けるようにしたのは日本国憲法違反だ。

 さらに、どちらにも理があるのに、どちらかについて外国で戦争をすると、恨みを買うことになる。そうすると、日本でもテロが起きる可能性が増して、*5-3のように、「共謀罪」などを整備せざるを得ないことになる。そのため、安全保障法制の強化は抑止力を増したのではなく、リスクを上げたのである。

 そして、日本政府は、テロ対策を口実に、「共謀罪」又は「テロ等準備罪」をしつこく提出しているが、「共謀罪」関連法案は過去3回にわたって提出され、捜査当局の拡大解釈で「一般の市民団体や労働組合も対象になる」「内心や思想を理由に処罰される」との批判を浴びて廃案になったものだ。

 今回は676の罪(テロ関連は167件)に対象を絞り込んだそうだが、「その他」というジャンルもあり、捜査当局が拡大解釈して共謀罪の範囲だと強弁することは容易であるため、実際に犯行が行われていないのに罪とするのは、刑法の理念にも日本国憲法の内容にも反する。また、*5-4のように、「共謀罪」を東京五輪対策とするのは、幼稚な口実だ。

<世界と日本の核政策>
*1-1:http://mainichi.jp/articles/20160820/k00/00e/040/245000c (毎日新聞 2016年8月20日) 核禁止条約:.広島の被爆者「核廃絶への一歩」 報告書採択
 国連核軍縮作業部会が、核兵器禁止条約の交渉を来年中に開始するよう国連総会に勧告する報告書を採択したことについて、広島の市民団体や被爆者らは「核廃絶への一歩」と歓迎。今後の議論が前進するよう後押しする構えだ。市民団体「核兵器廃絶をめざすヒロシマの会」共同代表の森滝春子さん(77)は「核拡散防止条約(NPT)の枠組みでは核兵器廃絶は前進しないと分かってきた中で、報告書の採択は今後に展望が持てる」と歓迎し、「秋の国連総会でどう取り入れるかが重要。志のある国、市民、NGOが連携してここまできた。さらに連携を強めたい」と話した。一方、広島県被団協(坪井直理事長)の箕牧智之副理事長(74)は「一歩前進だが、安心はできない」と複雑な表情。米ニューヨークで昨年あったNPT再検討会議で最終文書案が採択できなかった経緯があり、核保有国と非保有国との溝は深いと感じているからだ。「本来、被爆国としてリーダーシップを取るべき日本政府が後ろ向きな態度なのが、被爆者としてとてもはがゆい。『核の傘』への依存からチェンジする勇気を持ってほしい」と求めた。 もう一つの県被団協の佐久間邦彦理事長(71)は「核保有国と非保有国の溝を埋めるため、私たち市民も世論という形でこの動きを後押ししたい」と話した。

*1-2:http://mainichi.jp/articles/20160921/k00/00m/030/141000c (毎日新聞 2016年9月21日) オバマ大統領、「核なき世界」訴え 最後の国連演説
 国連総会の一般討論演説が20日午前(日本時間同日夜)、ニューヨークの国連本部で始まり、オバマ米大統領が任期中最後の演説に臨んだ。オバマ氏は「分断された世界に後退するのか、より協調的な世界に進むのか岐路にある」と述べた。地球温暖化や、難民問題など、地球規模で取り組む課題が増えており、解決するためには国際協調がさらに重要になると訴えた。オバマ氏は2009年1月の就任から7年半に及ぶ外交を総括し、「核兵器のない世界を追求しなければならない」と改めて主張。米国をはじめとする核保有国は「核兵器を削減する必要があり、核実験を二度としないという国際的な約束を確認しなければならない」と主張した。今月9日に5回目の核実験を強行した北朝鮮については「報いを受ける必要がある」と圧力強化の必要性を強調した。ただ、今年5月に被爆地・広島を訪問した以外は「核なき世界」に向けた具体的な実績がなく、道半ばでの最後の演説となった。また、原理主義的な考えや人種差別を拒否し、人権にもとづいた国際協力を進めることが重要と指摘。南シナ海の権益をめぐる問題については、平和的に解決する必要があると訴えた。経済分野では、国際化の進展で貧困率が下がる効果があったことを紹介し、経済のグローバル化を否定する動きをけん制した。環境規制の強化や環太平洋パートナーシップ協定(TPP)の実現、経済的格差の縮小が必要と訴えた。

*1-3:http://mainichi.jp/articles/20161028/k00/00e/030/166000c (毎日新聞 2016年10月28日) 国連:核兵器禁止交渉決議を採択 日本は反対
 国連総会第1委員会(軍縮)は27日(日本時間28日)、核兵器禁止条約に向けた交渉を2017年に開始するよう求める決議案を賛成多数で採択した。123カ国が賛成し、日本や核兵器保有国の米英仏露など38カ国が反対した。中国を含む16カ国は棄権した。同案を推進してきた非核保有国は保有国の反発を押し切り、核兵器を禁止する国際的な法的枠組み作りを目指して一歩を踏み出した。決議案はオーストリアやメキシコなど少なくとも57カ国が共同提案した。今年中にも総会本会議で採択される見通し。核兵器の非人道性を強調し法的に禁止する国際条約を作って、核兵器廃絶への動きの推進を図る。交渉は、来年3月27~31日と6月15日~7月7日に、ニューヨークの国連本部で実施。核兵器の開発や実験、製造、保有や使用など、具体的に何を禁じるかも討議する。国際機関や非政府組織(NGO)も参加できる。日本の岸田文雄外相は28日午前の記者会見で、反対理由について、北朝鮮の核・ミサイル開発の深刻化に言及しつつ、「核兵器国と非核兵器国の対立を一層助長する」と説明。ただ、交渉には積極的に参加する意向も示した。今回の決議が採択された背景には、米国やロシアなど核兵器保有国による核軍縮の停滞がある。この10年、核軍縮交渉の後押しを目指す一部の非核保有国は、核兵器の非人道性を強調して使用に法的な歯止めをかける「人道的アプローチ」を推進し、世界的な潮流の形成を図ってきた。こうした中、15年の核拡散防止条約(NPT)再検討会議で最終文書を採択できなかったことから、現状の核軍縮への取り組みに対する不満がさらに強まっていた。核兵器の法的禁止を目指す非核保有国の動きに対し、保有国は激しく反発。米国は、米国の「核の傘」が持つ抑止力に悪影響を及ぼすと主張。同盟国である北大西洋条約機構(NATO)諸国やアジア諸国に、採決での反対投票と交渉不参加を呼びかけた。一方、日本が提出した核兵器廃絶決議案も27日、賛成多数で採択された。

<他の国は・・>
*2-1:http://www.chunichi.co.jp/article/front/list/CK2016081802000055.html
(中日新聞 2016.8.18) 北朝鮮、核再処理認める 核兵器増産可能に
 北朝鮮の原子力研究院は十七日、共同通信に対し「黒鉛減速炉(原子炉)から取り出した使用済み核燃料を再処理した」と表明、寧辺(ニョンビョン)の核施設で核兵器の原料となるプルトニウムを新たに生産したことを明らかにした。北朝鮮が六カ国協議合意に基づき停止していた原子炉の再稼働を二〇一三年に表明して以降、再処理実施を公式に認めたのは初めて。核兵器増産が可能になったことを意味する。核実験は中断しないとし、濃縮ウランの核兵器利用も明言した。共同通信の取材に書面で回答した。核開発を担当する原子力研究院が外国メディアの取材に応じたのは初めて。国際社会の制裁下でも、核兵器開発を加速させる姿勢をアピールする狙いがあるとみられる。北朝鮮は六カ国協議合意に基づき〇七年七月に原子炉や再処理施設の稼働を停止。その後、主要部品を取り外すなどの「無能力化措置」に応じたが、今回の再処理再開で合意は完全に白紙に戻ったことになる。原子力研究院は、核弾頭の「小型化、軽量化、多種化」を達成、水爆保有に至ったとも主張。プルトニウムや濃縮ウランの生産量については明らかにしなかった。「米国が核兵器でわれわれを恒常的に脅かしている条件下で、核実験を中断しない」と強調し、五回目の核実験をいずれは行う立場を表明。ウラン濃縮については「核武力建設と原子力発電に必要な濃縮ウランを計画通りに生産している」と述べ、核兵器に使われる高濃縮ウランを生産していることも認めた。また、電力不足を解決するため軽水炉原発の建設を進めるとし、出力十万キロワットの実験用軽水炉の建設を推進していると明らかにした。クラッパー米国家情報長官は今年二月、衛星写真の分析などに基づき、北朝鮮が数週間から数カ月内にプルトニウム生産が可能な段階にあるとの分析を明らかにしており、これが裏付けられた。米専門家らは一年間で核兵器一~三個分に相当するプルトニウム約六キロ前後を追加生産することが可能とみている。
◆原子力研究院の回答骨子
▼プルトニウム生産のため使用済み核燃料を再処理した
▼米国が核兵器でわれわれを脅かしているため、核実験を中断しない
▼核武力建設と原子力発電に必要な濃縮ウランを生産している
▼核弾頭は既に小型化、軽量化、多種化されており、水爆まで保有
▼電力問題の解決のため出力10万キロワットの実験用軽水炉の建設を推進
<原子力研究院> 北朝鮮で原子力関連の研究や実験などを行う国家機関。核開発と経済建設を並行して推進する「並進」路線が国家方針とされたのを受け、2013年4月の政令で内閣に設けられた原子力工業省に所属する。核燃料棒工場や、プルトニウム生産に使われる黒鉛減速炉などの施設を管轄する。

*2-2:http://www.saga-s.co.jp/news/national/10201/355958
(佐賀新聞 2016年9月15日) パキスタン、核実験禁止署名検討、NSG加入で「インドとともに」
 核拡散防止条約(NPT)未加盟国パキスタンのアハタル外務省軍縮局長は14日、核技術などの輸出を管理する「原子力供給国グループ」(NSG)の加入条件として、包括的核実験禁止条約(CTBT)の署名や批准が求められれば「インドとともに検討せざるを得ない」と述べた。共同通信とのインタビューで語った。オバマ米政権は、あらゆる国に爆発を伴う核実験の自制を求める国連安全保障理事会決議の草案を全理事国に配布。北朝鮮の核実験が脅威となる中、NSG加入を目指すNPT未加盟国パキスタンとインドがCTBTの署名などに応じれば「核兵器なき世界」へ大きく前進する。

<空爆>
*3-1:http://jp.reuters.com/article/syria-boy-video-idJPKCN10U091
(ロイター 2016.8.18) シリア空爆で流血の5歳男児映像、SNSで動揺と非難広がる
 顔中が血とぼこりにまみれた小さな少年が、静かに腰かけ、ただぼう然とまっすぐに前を見つめている。シリアの都市アレッポで、空爆とみられる攻撃が起きた後のことだ。救急車の中にたった1人で座っているこの少年は、医師らが確認したところによると、オムラン・ダクニシュちゃん(5)で、頭から流れる血をぬぐおうとしている。受けたけがには気づいていない。空爆に直撃された建物のがれきから救出された子どもたちの動画がソーシャルメディアで拡散し、5年にわたるシリア内戦の悲惨な現実に動揺と非難が沸き起こっている。アレッポは反体制派と政府が支配する地域に分かれており、激戦地となっている。2週間前に奪われたアレッポ南西の地域を奪還すべく、政府軍は連日のように反体制派が支配する地域を激しく空爆している。動画は17日、市内の反体制派が支配する地域で撮影された。動画には、救急隊員が建物から少年を救出し、救急車の座席に座らせる様子が映し出されている。2人の子どもがさらに救急車に乗ってくるまで、少年は放心した様子で1人座っている。その後、救急車には顔中血だらけの男性も乗ってくる。昨年は、溺死したシリア難民のアイラン・クルディちゃん(当時3歳)の写真がソーシャルメディアを駆け巡り、シリア内戦の犠牲者に対する同情が世界的に高まった。

*3-2:http://www.cnn.co.jp/special/interactive/35074449.html
(CNN 2015年11月) ISISを空爆している国はどこか
 パリ同時多発テロの発生後、米国と有志連合は過激派組織「イラク・シリア・イスラム国(ISIS)」の掃討作戦の強化に向けた動きを見せている。米国と有志連合は2014年8月以来、ISISへの攻撃を続けている。ロシアなど有志連合に参加していない国も空爆を行っている。トルコやヨルダン、サウジアラビアといったアラブ諸国も規模は小さいが空爆を実施している。
●米国と有志連合
 米国防総省のカーター長官は下院の委員会で、イラクでの攻撃を増やすため特殊遠征部隊を派遣する方針を示している。米当局者によれば、この決断は、イラクでISISと戦うために展開している米特殊部隊が増強されることを意味している。オバマ米大統領は10月、シリアでの対ISIS作戦の支援に向けて、「50人未満」の特殊部隊を派遣することを承認していた。米国防総省によれば、11月19日までに、米国と有志連合はISISを標的に、イラクで5432回、シリアで2857回、計8289回の空爆を行っている。両国に対する空爆の多くは米国が単独で行った。その数は6471回に上る。米国以外がイラクとシリアで1818回の空爆を行った。有志連合には、英仏のほかにもオーストラリアやベルギー、カナダ、デンマーク、オランダ、バーレーン、アラブ首長国連邦(UAE)も参加している。有志連合による空爆の大部分(約66%)はイラクの目標に向けて行われた。イラクとシリアで現在行われている有志連合による空爆について知っていることの多くは、米軍からの情報提供による。空爆は米中央軍(CENTCOM)によって実施されている。米国以外の各国がISIS掃討のための空爆をどれだけ行っているのか正確に知ることは難しい。各国がそれぞれに報告を行い、そのタイムテーブルもばらばらなためだ。有志連合を率いる米国は、情報公開について各国の裁量に任せている。例えば、カナダは、シリアで実施した全ての空爆について報告を行っている。空爆の情報を集めている非営利組織「エアウォーズ」によれば、オーストラリアは毎月報告を行っているが、イラクの正確な目標については情報提供していない。エアウォーズによれば、2014年の晩夏に空爆が始まった当初、フランスの空爆に関する透明性はかなりの水準を目指していたという。仏国防省は24時間以内に空爆について報告を行い、使われた戦闘機や武器、目標などの詳細を明らかにしていた。フランスは現在、週ごとの報告となり、標的の場所もほとんど明らかにされなくなったという。
●ロシアがISISを標的に
 ロシアは今秋、シリアで空爆を開始した。しかし、トルコがロシア機を撃墜した後は複雑な状況となっている。トルコのエルドアン大統領はロシア機は領空を侵犯したと主張。一方、ロシアのプーチン大統領は、ロシア機撃墜について、ISISとの石油密輸を守るためだったとトルコを非難している。プーチン氏によれば、撃墜されたロシア機はシリアでISISへの攻撃を実行しようとしていた。ロシアは9月下旬から10月上旬にかけて、戦闘機や戦車、戦闘ヘリなどをシリアに移送した。ロシア海軍はまた、10月上旬にシリアの目標に対する攻撃を開始した。ロシアはISISを標的に攻撃を行っているとしているが、米国などは、空爆の多くは、ロシアの友好国であるシリアの政府軍と戦う反体制派を攻撃したものだとみている。10月31日、ロシアの旅客機がエジプトで墜落し乗客乗員224人が死亡した。ISISが旅客機を爆破したと犯行声明を出した。パリ同時多発テロの5日後、ロシアはラッカを爆撃した。

*3-3:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12550433.html (朝日新聞 2016年9月9日) (インタビュー)戦場に立つということ 戦場の心理学の専門家、デーブ・グロスマンさん
 戦場に立たされたとき、人の心はどうなってしまうのか。国家の命令とはいえ、人を殺すことに人は耐えられるものか。軍事心理学の専門家で、長く人間の攻撃心について研究してきた元米陸軍士官学校心理学教授、デーブ・グロスマンさんに聞いた。戦争という圧倒的な暴力が、人間にもたらすものとは。
――戦場で戦うとき、人はどんな感覚に陥るものですか。
 「自分はどこかおかしくなったのか、と思うようなことが起きるのが戦場です。生きるか死ぬかの局面では、異常なまでのストレスから知覚がゆがむことすらある。耳元の大きな銃撃音が聞こえなくなり、動きがスローモーションに見え、視野がトンネルのように狭まる。記憶がすっぽり抜け落ちる人もいます。実戦の経験がないと、わからないでしょうが」
――殺される恐怖が、激しいストレスになるのですね。
 「殺される恐怖より、むしろ殺すことへの抵抗感です。殺せば、その重い体験を引きずって生きていかねばならない。でも殺さなければ、そいつが戦友を殺し、部隊を滅ぼすかもしれない。殺しても殺さなくても大変なことになる。これを私は『兵士のジレンマ』と呼んでいます」「この抵抗感をデータで裏付けたのが米陸軍のマーシャル准将でした。第2次大戦中、日本やドイツで接近戦を体験した米兵に『いつ』『何を』撃ったのかと聞いて回った。驚いたことに、わざと当て損なったり、敵のいない方角に撃ったりした兵士が大勢いて、姿の見える敵に発砲していた小銃手は、わずか15~20%でした。いざという瞬間、事実上の良心的兵役拒否者が続出していたのです」
――なぜでしょう。
 「同種殺しへの抵抗感からです。それが人間の本能なのです。多くは至近距離で人を殺せるようには生まれついていない。それに文明社会では幼いころから、命を奪うことは恐ろしいことだと教わって育ちますから」「発砲率の低さは軍にとって衝撃的で、訓練を見直す転機となりました。まず射撃で狙う標的を、従来の丸型から人型のリアルなものに換えた。それが目の前に飛び出し、弾が当たれば倒れる。成績がいいと休暇が3日もらえたりする。条件付けです。刺激―反応、刺激―反応と何百回も射撃を繰り返すうちに、意識的な思考を伴わずに撃てるようになる。発砲率は朝鮮戦争で50~55%、ベトナム戦争で95%前後に上がりました」
    ■     ■
――訓練のやり方次第で、人は変えられるということですか。
 「その通り。戦場の革命です。心身を追い込む訓練でストレス耐性をつけ、心理的課題もあらかじめ解決しておく。現代の訓練をもってすれば、我々は戦場において驚くほどの優越性を得ることができます。敵を100人倒し、かつ我々の犠牲はゼロというような圧倒的な戦いもできるのです」「ただし、無差別殺人者を養成しているわけではない。上官の命令に従い、一定のルールのもとで殺人の任務を遂行するのですから。この違いは重要です。実際、イラクやアフガニスタン戦争の帰還兵たちが平時に殺人を犯す比率は、戦争に参加しなかった同世代の若者に比べてはるかに低い」
――技術進歩で戦争の形が変わり、殺人への抵抗感が薄れている面もあるのでは?
 「ドローンを飛ばし、遠隔操作で攻撃するテレビゲーム型の戦闘が戦争の性格を変えたのは確かです。人は敵との間に距離があり、機械が介在するとき、殺人への抵抗感が著しく低下しますから」「しかし接近戦は、私の感覚ではむしろ増えています。いま最大の敵であるテロリストたちは、正面から火砲で攻撃なんかしてこない。我々の技術を乗り越え、こっそり近づき、即席爆弾を爆破させます。最前線の対テロ戦争は、とても近い戦いなのです」
――本能に反する行為だから、心が傷つくのではありませんか。
 「敵を殺した直後には、任務を果たして生き残ったという陶酔感を感じるものです。次に罪悪感や嘔吐(おうと)感がやってくる。最後に、人を殺したことを合理化し、受け入れる段階が訪れる。ここで失敗するとPTSD(心的外傷後ストレス障害)を発症しやすい」「国家は無垢(むく)で未経験の若者を訓練し、心理的に操作して戦場に送り出してきました。しかし、ベトナム戦争で大失敗をした。徴兵制によって戦場に送り込んだのは、まったく準備のできていない若者たちでした。彼らは帰国後、つばを吐かれ、人殺しとまで呼ばれた。未熟な青年が何の脅威でもない人を殺すよう強いられ、その任務で非難されたら、心に傷を負うのは当たり前です」「PTSDにつながる要素は三つ。(1)幼児期に健康に育ったか(2)戦闘体験の衝撃度の度合い(3)帰国後に十分なサポートを受けたか、です。たとえば幼児期の虐待で、すでにトラウマを抱えていた兵士が戦場で罪のない民を虐殺すれば、リスクは高まる。3要素のかけ算になるのです」
――防衛のために戦う場合と、他国に出て戦う場合とでは、兵士の心理も違うと思うのですが。
 「その通り。第2次大戦中、カナダは国内には徴兵した兵士を展開し、海外には志願兵を送りました。成熟した志願兵なら、たとえ戦場体験が衝撃的なものであったとしても、帰還後に社会から称賛されたりすれば、さほど心の負担にはならない。もし日本が自衛隊を海外に送るなら、望んだもののみを送るべきだし、望まないものは名誉をもって抜ける選択肢が与えられるべきです」「ただ、21世紀はテロリストとの非対称的な戦争の時代です。国と国が戦った20世紀とは違う。もしも彼らが核を入手したら、すぐに使うでしょう。いま国を守るとは、自国に要塞(ようさい)を築き、攻撃を受けて初めて反撃することではない。こちらから敵の拠点をたたき、打ち負かす必要がある。これが世界の現実です」
――でも日本は米国のような軍事大国と違って、戦後ずっと専守防衛でやってきた平和国家です。
 「我々もベトナム戦争で学んだことがあります。世論が支持しない戦争には兵士を送らないという原則です。国防長官の名から、ワインバーガー・ドクトリンと呼ばれている。国家が国民に戦えと命じるとき、その戦争について世論が大きく分裂していないこと。もしも兵を送るなら彼らを全力で支援すること。これが最低限の条件だといえるでしょう」
     ■     ■
――気になっているのですが、腰につけたふくらんだポーチには何が入っているのですか。
 「短銃です。私はいつも武装しています。いつでも立ち上がる用意のある市民がいる間は、政府は国民が望まないことを強制することはできない。武器を持つ、憲法にも認められたこの権利こそが、専制への最大の防御なのです」
――でも銃があふれているから銃撃事件が頻発しているのでは?
 「日本の障害者施設で最近起きた大量殺人ではナイフが使われたそうですね。我々は市民からナイフを取り上げるべきでしょうか」
――現代の戦争とは。
 「戦闘は進化しています。火砲の攻撃力は以前とは比較にならないほど強く、精密度も上がり、兵士はかつてなかったほど躊躇(ちゅうちょ)なく殺人を行える。志願兵が十分に訓練され、絆を深めた部隊単位で戦っている限り、PTSDの発症率も5~8%に抑えられます」「一方で、いまは誰もがカメラを持っていて、いつでも撮影し、ネットに流すことができる時代です。ベトナム戦争さなかの1968年、ソンミ村の村民500人を米軍が虐殺した事件の映像がもしも夜のニュースで流れていたら、米国民は怒り、大騒ぎになっていたでしょう。現代の戦争は、社会に計り知れないダメージを与えるリスクも抱えているのです」
     *
 Dave Grossman 1956年生まれ。米陸軍退役中佐。陸軍士官学校・心理学教授、アーカンソー州立大学・軍事学教授をへて、98年から殺人学研究所所長。著書に「戦争における『人殺し』の心理学」など。
■戦闘がもたらすトラウマ深刻 一橋大学特任講師・中村江里さん
 米国では、戦場の現実をリアルな視点からとらえる軍事心理学や軍事精神医学の研究が盛んで、グロスマンさんもこの観点から兵士の心理を考えています。根底にあるのは、いかに兵士を効率的に戦わせるかという意識です。兵士が心身ともに健康で、きちんと軍務を果たしてくれることが、軍と国家には重要なわけです。しかし、軍事医学が関心を注ぐ主な対象は、戦闘を遂行している兵士の「いま」の健康です。その後の長い人生に及ぼす影響まで、考慮しているとは思えません。私自身、イラク帰還米兵の証言やアートを紹介するプロジェクトに関わって知ったのですが、イラクで戦争の大義に疑問を抱き、帰還後に良心の呵責(かしゃく)に苦しんでいる若者は大勢います。自殺した帰還兵のほうが、戦闘で死んだ米兵より多いというデータもある。戦場では地元民も多く巻き添えになり苦しんでいるのに、そのトラウマもまったく考慮されない。軍事医学には国境があるのです。一方で、日本には戦争の現実を直視しない傾向がありました。戦後、米軍の研究に接した日本の元軍医は、兵士が恐怖心を表に出すのを米軍が重視していたことに驚いていた。旧日本軍は「恥」として否定していましたから。口に出せず、抑え込まれた感情は結局、手足の震えや、声が出ないといった形で表れ、「戦争神経症」の症状を示す兵士は日中戦争以降、問題化していました。その存在が極力隠されたのは、心の病は国民精神の堕落の象徴と位置づけられたためです。こうした病は「皇軍」には存在しない、とまで報じられた。精神主義が影を落としていたわけです。戦争による心の傷は、戦後も長らく「見えない問題」のままでした。トラウマやPTSDという言葉が人々の関心を集め始めたのは1995年の阪神・淡路大震災がきっかけです。激戦だった沖縄戦や被爆地について、心の傷という観点から研究が広がったのもそれ以降。戦争への忌避感がそれほど強かったからでしょう。昨年の安保関連法制定により、自衛隊はますます「戦える」組織へと変貌(へんぼう)しつつあります。「敵」と殺し殺される関係に陥ったとき、人の心や社会にはどんな影響がもたらされるのか。私たちも知っておくべきでしょう。暴力が存在するところでは、トラウマは決してなくならないのですから。
     *
なかむらえり 1982年生まれ。専門は日本近現代史。旧日本軍の戦争神経症を題材にした新著を執筆中。
■取材を終えて
 戦場に立つということは、これほどまでに凄(すさ)まじいことなのだと思った。ただ、米国民がこぞって支持したイラク戦争では結局、大量破壊兵器は見つからず、「イスラム国」誕生につながったことも指摘しておきたい。日本が今後、集団的自衛権を行使し、米国と一心同体となっていけば、まさに泥沼の「テロとの戦い」に引き込まれ、手足として使われる恐れを強く感じる。やはり、どこかに太い一線を引いておくべきではないだろうか。一生残る心の傷を、若者たちに負わせないためにも。

<日本の武器輸出>
*4-1:http://digital.asahi.com/articles/DA3S11958784.html
(朝日新聞 2015年9月11日) 経団連「武器輸出推進を」
 提言では、審議中の安全保障関連法案が成立すれば、自衛隊の国際的な役割が拡大するとし、「防衛産業の役割は一層高まり、その基盤の維持・強化には中長期的な展望が必要」と指摘。防衛装備庁に対し、「適正な予算確保」や人員充実のほか、装備品の調達や生産、輸出の促進を求めた。

*4-2:http://digital.asahi.com/articles/DA3S11994297.html
(朝日新聞社説 2015年10月2日) 防衛装備庁 なし崩し許さぬ監視を
 防衛省の外局となる防衛装備庁がきのう発足した。これまで陸海空の自衛隊などがバラバラに扱っていた武器の研究開発から購入、民間企業による武器輸出の窓口役まで一元的に担うことになる。とりわけ気がかりなのが、武器輸出の行方だ。安倍政権は昨春、「武器輸出三原則」を撤廃し、「防衛装備移転三原則」を決定した。一定の基準を満たせば、武器輸出や国際的な共同開発・生産を解禁するもので、装備庁はその中心となる。安保法制の成立で自衛隊の活動範囲を地球規模に拡大したことと合わせ、戦後日本の平和主義を転換させる安倍政権の安保政策の一環といえる。問題は武器購入や輸出という特殊な分野で、いかに監視を機能させるかだ。技術の専門性が高いうえに機密の壁もあり、外部からの監視が届きにくい。輸出した武器がどう扱われるか、海外での監視は難しい。新原則では「平和貢献や日本の安全保障に資する場合などに限定し、厳格に審査する」としているが、実効性は保てるのか。米国製兵器の購入をめぐる費用対効果も問われる。今年の概算要求でも、新型輸送機オスプレイや滞空型無人機グローバルホークなど高額兵器の購入が目白押しだ。米国への配慮から採算を度外視することはないか。かねて自衛隊と防衛産業は、天下りを通じた「防衛ムラ」と呼ばれる癒着構造が指摘され、コスト高にもつながってきた。そこに手をつけないまま、2兆円の予算を握る巨大官庁が誕生した。高額の武器取引が腐敗の温床とならないように、透明性をどう確保していくか。装備庁には「監察監査・評価官」を長とする20人規模の組織ができたが、いずれも防衛省の職員である。身内のチェックでは足りないのは明らかだ。武器の購入や輸出は装備庁だけでなく、政府全体の判断となる。ビジネスの好機とみた経団連は先月、「防衛装備品の海外移転は国家戦略として推進すべきだ」との提言をまとめ、政府に働きかけている。しかし、戦後の歴代内閣が曲がりなりにもとってきた抑制的な安保政策は、多くの国民の理解にもとづくものだ。経済の論理を優先させ、日本の安保政策の節度をなし崩しに失う結果になってはならない。何よりも国会による監視が、これまで以上に重要になる。

<安保法と共謀罪>
*5-1:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20150428&ng=DGKKASFS27H6F_X20C15A4MM8000 (日経新聞 2015.4.28) 日米、世界で安保協力 指針18年ぶり改定、新法制も与党実質合意
 日米両政府は27日午前(日本時間28日未明)、防衛協力のための指針(ガイドライン)を改定した。中国による海洋進出など安全保障環境の変化を受け、日米がアジア太平洋を越えた地域で連携し、平時から有事まで切れ目なく対処する。与党はこれを裏付ける新たな安保法制で実質合意。自衛隊の活動を制限してきた日米協力は転機を迎えた。日米両政府がニューヨーク市内で開いた外務・防衛担当閣僚協議(2プラス2)で合意した。日本側から岸田文雄外相と中谷元・防衛相、米側はケリー国務長官、カーター国防長官が出席。指針改定は18年ぶり。関連の共同文書も発表した。指針改定は「アジア太平洋地域およびこれを越えた地域が安定し平和で繁栄したものになる」ことを目的とし、日米の安保協力を拡大。自衛隊による米軍支援をさらに大幅に広げる。ケリー氏は協議後の共同記者会見で、指針改定を「歴史的な転換点」と指摘。沖縄県・尖閣諸島が日米安全保障条約5条の適用範囲にあると強調した。岸田文雄外相は「内外に日米の強い同盟関係を示すことができた」と述べた。日米同盟は1951年締結の安保条約で始まり、60年の改定で米国の日本防衛義務を明記。日米指針は冷戦下に旧ソ連への対処、97年改定で北朝鮮の脅威などに対応するものに変わってきた。ただ、活動地域や協力内容を厳しく制約した。今回の指針改定は安保法制をめぐる与党協議が先行。与党合意を反映した協力項目を列挙し、制約を大幅に緩和した。たとえば「日本周辺」としていた後方支援の範囲を日本の平和や安全に重要な影響を及ぼすようなケースと再定義。日本周辺以外で他国軍への給油などの後方支援ができる。米軍による日本防衛に重点を置いた協力から地理的制約を設けずに共同対処や国際貢献を可能にする協力体制を築く。日本が直接攻撃を受けていなくても米国などへの攻撃に対処できるようにする集団的自衛権の行使にあたる協力も、安保法制の与党合意に沿って盛り込んだ。直接の武力攻撃を受けた際に最小限度の武力行使を認めていた戦後の安保政策の転換を一段と進めた。集団的自衛権行使の具体例では、中東・ホルムズ海峡や南シナ海など海上交通路での機雷掃海、強制的な船舶検査を明示。武力攻撃事態対処では尖閣諸島などを念頭に、日米共同で島しょ防衛にあたるとした。与党は27日、武力攻撃事態法改正案など法改正案10本と新法案1本を実質合意。政府は5月半ばに関連法案を国会提出し、早期成立を目指す。

*5-2:http://digital.asahi.com/articles/ASJ3X5VM0J3XUTFK00P.html
(朝日新聞 2016年3月29日) 安保法が施行 集団的自衛権容認、専守防衛を大きく転換
 集団的自衛権を行使できるようにする安全保障関連法が29日、施行された。自衛隊の海外での武力行使や、米軍など他国軍への後方支援を世界中で可能とし、戦後日本が維持してきた「専守防衛」の政策を大きく転換した。民進、共産など野党は集団的自衛権の行使容認を憲法違反と批判。安保法廃止で一致し、夏の参院選の争点に据える。安保法は、昨年9月の通常国会で、自民、公明両党が採決を強行し、成立した。集団的自衛権行使を認める改正武力攻撃事態法など10法を束ねた一括法「平和安全法制整備法」と、自衛隊をいつでも海外に派遣できる恒久法「国際平和支援法」の2本からなる。戦後の歴代政権は、集団的自衛権行使を認めてこなかった。しかし安保法により、政府が日本の存立が脅かされる明白な危険がある「存立危機事態」と認定すれば、日本が直接武力攻撃されなくても、自衛隊の武力行使が可能になった。自衛隊が戦争中の他国軍を後方支援できる範囲も格段に広がった。安倍晋三首相は日本の安全保障環境の悪化を挙げて法成立を急いだ。しかし、国連平和維持活動(PKO)での「駆けつけ警護」や平時から米艦船などを守る「武器等防護」をはじめ、同法に基づく自衛隊への新たな任務の付与は、夏以降に先送りする。念頭にあるのは、今夏の参院選だ。世論の反対がなお強いなかで、安保法を具体的に適用すれば、注目を集めて参院選に影響する。そうした事態を避ける狙いがある。その一方で、安保法を踏まえた日米防衛協力のための指針(ガイドライン)に基づき「同盟調整メカニズム」が始動。自衛隊と米軍の連絡調整は一層緊密化した。今年1月以降の北朝鮮の核実験やミサイル発射を受け、首相は「日米は従来よりも増して緊密に連携して対応できた」と安保法の効果を強調した。ただ、日米の現場で交わされる情報の多くは軍事機密に当たり、特定秘密保護法で厳重に隠されている。中谷元・防衛相は28日、防衛省幹部に「隊員の安全確保のため、引き続き慎重を期して準備作業、教育訓練を進めてほしい」と訓示した。自衛隊は今後、部隊行動基準や武器使用規範を改定し、それに従った訓練を行う。民進党に合流する前の民主、維新両党は2月、安保法の対案として「領域警備法案」などを国会に提出。共産党など他の野党とは「集団的自衛権の行使容認は違憲」との点で一致し、安保法廃止法案も提出している。首相は野党連携に対し、「安全保障に無責任な勢力」と批判を強める。安保法をどう見るかは、今夏の参院選で大きな争点となる。
■安全保障関連法の主な法律
・集団的自衛権の行使を認める改正武力攻撃事態法
・地球規模で米軍などを後方支援できる重要影響事態法
・平時でも米艦防護を可能とする改正自衛隊法
・武器使用基準を緩め、「駆けつけ警護」や「治安維持任務」を可能とする改正PKO協力法
・他国軍の後方支援のために自衛隊をいつでも派遣可能にする国際平和支援法(新法)

*5-3:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12740997.html (朝日新聞 2017年1月11日) 「共謀罪」絞り込み、焦点 676の罪対象、テロ関連は167件 通常国会で議論へ
 菅義偉官房長官は10日、衆参両院の議院運営委員会理事会で、通常国会を20日に召集する方針を伝えた。犯罪の計画段階で処罰する「共謀罪」の構成要件を変えた「テロ等準備罪」を新設する法案が大きな焦点で、政府の原案で676に上る対象犯罪の数が与党協議や国会審議の論点となりそうだ。自民党の二階俊博幹事長は10日の記者会見で、法案成立への意欲を見せた。「テロに対する対策をしっかり講じておかないといけない。提案する以上は、できれば今国会で(成立)ということになる」。「共謀罪」関連法案は過去3回にわたり提出されたが、捜査当局の拡大解釈によって「一般の市民団体や労働組合も対象になる」「内心や思想を理由に処罰される」との批判を浴び、廃案になっていた。政府は当初、昨年の臨時国会に提出する方針だった。結局は環太平洋経済連携協定(TPP)の国会承認に万全を期すとして見送ったが、長年の懸案である国際組織犯罪防止条約を締結する上で、国内法の整備が必要だとして法案の成立にこだわる。条約を結べば、テロの計画段階で処罰する法律を持つ締結国と同じレベルで、日本でも準備行為での取り締まりを行うことや、国際的な組織犯罪に対する捜査協力が可能になる。法務省幹部は「今のままでは国際的な信頼を欠く」と話す。今回の法案では、過去の法案で適用対象とした「団体」から、テロ組織や暴力団、振り込め詐欺グループなどを想定した「組織的犯罪集団」に限定。さらに、犯罪を実行するための「準備行為」をすることを、法を適用する要件に追加した。具体的には、凶器を買う資金の調達や犯行現場の下見などが当たるという。適用の条件を厳しくしたといえるが、対象犯罪は「懲役・禁錮4年以上の刑が定められた重大な犯罪」としたため、犯罪の数は676になった。政府内部では「テロに関する罪」や「組織的犯罪集団の資金源に関する罪」などに分類されているが、「テロに関する罪」と位置付けられたのは167で、全体の4分の1にすぎない。法案に反対する日本弁護士連合会は昨年に発表した会長声明で「条約の締結のために新たに共謀罪を導入する必要はなく、条約は経済的な組織犯罪を対象とするもので、テロ対策とは無関係だ」と指摘している。
■提出時期も難題
 国会審議は夏の東京都議選の直前の時期に重なる。公明党はテロ対策としての法整備の必要性は認めているが、「対象はまだかなり広い。テロに限定するなら600超も必要はない」(党幹部)との立場。法案提出前の与党協議で対象を絞り込みたい考えだ。だが、外務省幹部は対象犯罪を限定すれば、条約締結自体ができなくなる恐れがあるとみて、「世界基準に日本だけ合わせなくてもいいのか」と絞り込みに難色を示している。一方、民進党の蓮舫代表は8日のNHK番組で「3回も廃案になった法案がほとんど中身を変えずに出てくるのは立法府の軽視だ」と指摘したが、党内の論議はこれからだ。民主党時代は「5年を超える懲役・禁錮」で国際的な犯罪に限定するよう修正提案をした経緯があり、党内に一定の賛成派を抱える。党の意見集約とともに、与党との修正協議に応じるかが課題となる。共産党の小池晃書記局長は10日の記者会見で「治安維持法の現代版とも言える大悪法」と批判、反対を鮮明にしている。国会の会期は国会法に定める150日間で、6月18日まで。直後に都議選を抱えるため大幅延長は難しい。天皇陛下の退位をめぐる法整備を抱える国会でもあるため、政府与党にとっては衣替えした「共謀罪」法案の提出時期や審議の進め方の見極めも難しそうだ。
■テロ等準備罪の対象となる676の「重大な犯罪」
◇組織的犯罪集団の資金源に関する罪(339)
 強盗、詐欺、犯罪収益等隠匿など
◇テロに関する罪(167)
 殺人、放火、化学兵器使用による毒性物質等の発散、テロ資金の提供など
◇薬物に関する罪(49)
 覚醒剤の製造・密輸など
◇人身に関する罪(43)
 人身売買、営利目的等略取・誘拐など
◇司法の妨害に関する罪(27)
 偽証、組織的な犯罪における犯人蔵匿など
◇その他(10)
〈政府資料などによる。このほか、「組織的犯罪集団」による犯罪の計画にはあたらないものの、「懲役・禁錮4年以上の刑」にあたるために対象に数える罪(過失犯など)が41ある〉

*5-4:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/392819 (佐賀新聞 2017年1月6日) 「共謀罪」通常国会提出 首相、東京五輪対策へ、捜査機関の乱用で人権侵害も不安視
 安倍晋三首相は5日、テロ対策強化に向けて「共謀罪」を新設する組織犯罪処罰法改正案を、今月20日召集の通常国会に提出する方針を固めた。2020年の東京五輪・パラリンピックを見据え、国際的なテロに備えるためにも法整備が必要だと判断した。官邸は自民党幹部に提出方針を伝達。共謀罪を巡っては、捜査機関の職権乱用による人権侵害を不安視する声があり、日弁連などが反対している。共謀罪は国会で過去に3度、廃案になった経緯がある。当初は重大犯罪の謀議に加わると罪に問われる内容だった。政府は昨年秋の臨時国会提出を見送り、罪の名称や構成要件の見直しを進めていた。罪名は「テロ等組織犯罪準備罪」に変更した上で、対象を「組織的犯罪集団」に限定し、単なる共謀だけでなく「準備行為」も要件に加える案で調整している。菅義偉官房長官は5日の記者会見で、東京五輪が3年後となることに触れ、国際組織犯罪防止条約に基づいて各国と連携するため、法整備が不可欠と訴えた。「テロを含む組織犯罪を未然に防ぐため、万全の体制を整えることが必要だ」と述べた。民進党や共産党は反対するとみられ、国会審議で議論となりそうだ。首相は政府与党連絡会議で、通常国会での重要法案成立に向けて万全を期すよう与党側に要請した。自民党の二階俊博幹事長は会見で改正案について「政府は名称も変更し、極端な誤解を生まないよう配慮している」と指摘し、成立へ努力する考えを示した。
=ズーム 国際組織犯罪防止条約=
 国際組織犯罪防止条約 複数の国にまたがる組織犯罪を防ぐため、各国が協調して法の網を国際的に広げるための条約。重大犯罪の共謀や、犯罪で得た資金の洗浄(マネーロンダリング)の取り締まりを義務付けている。国連総会で2000年11月に採択。12月にイタリア・パレルモで条約署名会議が開かれ、日本も署名した。政府は「共謀罪」の法整備が条約締結の要件だとして組織犯罪処罰法改正を目指すが、成立に至っていない。世界180以上の締結国全てが法整備したわけではないとの指摘もある。


PS(2017年1月14日追加):*6の琉球新報社説記事に、論点が網羅されていた。私も、国民のプライバシーに土足で政府が侵入し、戦前の治安維持法のような監視社会になることを危惧している。

*6:http://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-423394.html
(琉球新報社説 2017年1月7日) 共謀罪提出へ 監視招く悪法は必要ない
 罪名を言い換える印象操作をしても悪法は悪法だ。思想・信条の自由を侵す危うさは消えない。安倍晋三首相はテロ対策強化を名目に「共謀罪」の新設を柱とする組織犯罪処罰法改正案を今月20日召集の通常国会に提出する方針を固めた。2020年の東京五輪・パラリンピックを見据え、国際的なテロに備えるために法整備が必要だと説明する。しかし、現行刑法でも予備罪や陰謀罪など処罰する仕組みはあり「共謀罪」の新設は必要ない。治安維持法の下で言論や思想が弾圧された戦前、戦中の反省を踏まえ、日本の刑法は犯罪が実行された「既遂」を罰する原則がある。しかし共謀罪とは、実行行為がなくても犯罪を行う合意が成立するだけで処罰する。日本の刑法体系に反するものである。通常は共謀が密室で誰も知らないところで行われることを考えると、合意の成立を認定することは難しい。いかなる場合に合意が成立したのかが曖昧になり、捜査機関の恣意(しい)的な運用を招く恐れがある。捜査機関の拡大解釈で市民運動や労働組合が摘発対象になる可能性もある。共謀罪を摘発するための捜査手法として尾行のほか、おとり捜査や潜入捜査が考えられる。それだけでなく2016年5月に通信傍受法を改正して、組織犯罪だけでなく一般犯罪まで傍受対象範囲を広げている。15年6月には裁判官の令状があれば、捜査機関が本人が知らないうちにGPS機能を利用した位置情報を取得できるようになった。法制審議会では室内に盗聴器を仕掛ける室内盗聴の導入についても議論している。法務省は「共謀段階での摘発が可能となり、重大犯罪から国民を守ることができる」と必要性を訴えるが、むしろ国民のプライバシーが根こそぎ政府に把握される恐れがある。政府は今回、罪名を「共謀罪」から「テロ等組織犯罪準備罪」に言い換え、対象を「組織的犯罪集団」に限定したと説明する。しかし、合意の成立だけで犯罪が成立するという点は変わらない。組織犯罪処罰法案が成立すれば、既に成立している特定秘密保護法などと組み合わせて、戦前の治安維持法のように運用される恐れがある。戦前のような監視社会に逆戻りさせてはならない。


PS(2017年1月17日追加):*7-1のように、「共謀罪の構成要件を変えた“テロ等準備罪”を新設する法案について、政府が対象犯罪の数を300程度に絞り込む方向で検討している」とのことだが、*7-2のように、日弁連共謀罪法案対策本部は「どのような修正を加えても、共謀罪を新設すれば刑事法体系を変えてしまう」としており、私もそのとおりだと考える。また、*7-1で、菅官房長官は「共謀罪で一般の方々が対象になることはない」としているが、*7-2のように、実行されていない共謀罪を取り締まるためには、司法取引による刑事免責、おとり捜査(潜入捜査)、通信傍受等を行うため、一般の人が捜査に巻き込まれることが普通になる。また、「政府に反対表明している人は、“一般の人”には入らない」という運用もありうる。そのため、*7-2に書かれているとおり、国連越境組織犯罪防止条約締結のために刑法の理念や日本国憲法を無視する「共謀罪」を設置してはならないと考える。

*7-1:http://digital.asahi.com/articles/ASK1J7X5JK1JUTIL047.html?iref=comtop_list_pol_n02 (朝日新聞 2017年1月17日) 「共謀罪」対象、約300に 政府検討、原案の半数以下
 犯罪の計画段階で処罰する「共謀罪」の構成要件を変えた「テロ等準備罪」を新設する法案について、政府が対象犯罪の数を原案の676から半数以下の300程度に絞り込む方向で検討していることが16日、分かった。与党内の協議で今後さらに調整した上で、政府は20日召集の通常国会に法案を提出する方針。
●共謀罪「一般の方々が対象、あり得ない」 菅官房長官
 政府は、日本が「国際組織犯罪防止条約」を締結するために必要な国内法整備として、法案の成立を目指している。条約は「懲役・禁錮4年以上の刑が定められた重大な犯罪」を対象とするよう求めており、対象犯罪数は676に上った。これに対し、与党・公明党からも対象犯罪数の絞り込みを求める声が上がり、政府は「組織的犯罪集団」によって行われることが想定される犯罪を中心に、対象犯罪を絞り込む方向で調整を始めた。

*7-2:http://www.nichibenren.or.jp/activity/criminal/complicity.html (日弁連共謀罪法案対策本部) 日弁連は共謀罪に反対します
 「共謀罪」が、国連越境組織犯罪防止条約を理由に制定されようとしており、法案は、2003年の第156回通常国会で最初に審議されました。その後二度の廃案を経て、2005年の第163回特別国会に再度上程され、継続審議の扱いとなり、第165回臨時国会においても、幾度とない審議入り即日強行採決の危機を乗り越えて継続審議となり、第170回臨時国会においても継続審議となりました。そして、2009年7月21日の衆議院解散で第171回通常国会閉幕により審議未了廃案となりました。今後も予断を許さない状況が続くことが予想されます。日弁連は、共謀罪の立法に強く反対し、引き続き運動を展開していきます。詳細はこちらのページをご覧ください。
・パンフレット「合意したら犯罪?合意だけで処罰?―日弁連は共謀罪に反対します!!―」
●共謀罪なしで国連越境組織犯罪防止条約は批准できます
 日弁連は、2006年9月14日の理事会にて、「共謀罪新設に関する意見書」を採択し、2012年4月13日の理事会にて、新たに「共謀罪の創設に反対する意見書」を採択いたしました。
・共謀罪の創設に反対する意見書(2012年)
・共謀罪新設に関する意見書(2006年)
●共謀罪の基本問題
 政府は、共謀罪新設の提案は、専ら、国連越境組織犯罪防止条約を批准するためと説明し、この立法をしないと条約の批准は不可能で、国際的にも批判を浴びるとしてきました。法務省は、条約審議の場で、共謀罪の制定が我が国の国内法の原則と両立しないことを明言していました。刑法では、法益侵害に対する危険性がある行為を処罰するのが原則で、未遂や予備の処罰でさえ例外とされています。ところが、予備よりもはるかに以前の段階の行為を共謀罪として処罰しようとしています。どのような修正を加えても、刑法犯を含めて600を超える犯罪について共謀罪を新設することは、刑事法体系を変えてしまいます。現在の共謀共同正犯においては、「黙示の共謀」が認められています。共謀罪ができれば、「黙示の共謀」で共謀罪成立とされてしまい、処罰範囲が著しく拡大するおそれがあります。共謀罪を実効的に取り締まるためには、刑事免責、おとり捜査(潜入捜査)、通信傍受法の改正による対象犯罪等の拡大や手続の緩和が必然となります。この間の国会における審議とマスコミの報道などを通じて、共謀罪新設の是非が多くの国民の関心と議論の対象となり、共謀罪の新設を提案する法案を取り巻く環境は、根本的に変わっています。
●国連越境組織犯罪防止条約は締約国に何を求めているのでしょうか
 国連越境組織犯罪防止条約第34条第1項は、国内法の基本原則に基づく国内法化を行えばよいことを定めています。国連の立法ガイドによれば、国連越境組織犯罪防止条約の文言通りの共謀罪立法をすることは求められておらず、国連越境組織犯罪防止条約第5条は締約国に組織犯罪対策のために未遂以前の段階での対応を可能とする立法措置を求められているものと理解されます。
●条約の批准について
 国連が条約の批准の適否を審査するわけではありません。条約の批准とは、条約締結国となる旨の主権国家の一方的な意思の表明であって、条約の批准にあたって国連による審査という手続は存在しません。国連越境組織犯罪防止条約の実施のために、同条約第32条に基づいて設置された締約国会議の目的は、国際協力、情報交換、地域機関・非政府組織との協力、実施状況 の定期的検討、条約実施の改善のための勧告に限定されていて(同条第3項)、批准の適否の審査などの権能は当然もっていません。
●国連越境組織犯罪防止条約を批准した各国は、どのように対応しているのでしょうか
 第164回通常国会では、世界各国の国内法の整備状況について、国会で質問がなされましたが、政府は、「わからない」としてほとんど説明がなされませんでした。この点について、日弁連の国際室の調査によって次のような事実が明らかになりました。新たな共謀罪立法を行ったことが確認された国は、ノルウェーなどごくわずかです。アメリカ合衆国は、州法では極めて限定された共謀罪しか定めていない場合があるとして国連越境組織犯罪防止条約について州での立法の必要がないようにするため、留保を行っています。セントクリストファー・ネーヴィスは、越境性を要件とした共謀罪を制定して、留保なしで国連越境組織犯罪防止条約を批准しています。
●新たな共謀罪立法なしで国連越境組織犯罪防止条約を批准することはできます
 我が国においては、組織犯罪集団の関与する犯罪行為については、未遂前の段階で取り締まることができる各種予備・共謀罪が合計で58あり、凶器準備集合罪など独立罪として重大犯罪の予備的段階を処罰しているものを含めれば重大犯罪についての、未遂以前の処罰がかなり行われています。刑法の共犯規定が存在し、また、その当否はともかくとして、共謀共同正犯を認める判例もあるので、犯罪行為に参加する行為については、実際には相当な範囲の共犯処罰が可能となっています。テロ防止のための国連条約のほとんどが批准され、国内法化されています。銃砲刀剣の厳重な所持制限など、アメリカよりも規制が強化されている領域もあります。以上のことから、新たな立法を要することなく、国連の立法ガイドが求めている組織犯罪を有効に抑止できる法制度はすでに確立されているといえます。政府が提案している法案や与党の修正試案で提案されている共謀罪の新設をすることなく、国連越境組織犯罪防止条約の批准をすることが可能であり、共謀罪の新設はすべきではありません。
●法務省ホームページに掲載されている文書について
 法務省ホームページ上に「『組織的な犯罪の共謀罪』に対する御懸念について」と題するコーナーがあります。同コーナーの文書で挙げられている点に絞って、疑問点を指摘します。
「共謀罪」に関する法務省ホームページの記載について(2006年5月8日)(PDFファイル;129KB)
日弁連が意見書などで指摘している点について、法務省が2006年10月16日付けで以下文書をホームページに掲載しています。
・「組織的な犯罪の共謀罪」の創設が条約上の義務であることについて
・現行法のままでも条約を締結できるのではないかとの指摘について
・条約の交渉過程での共謀罪に関する政府の発言について
・条約の交渉過程における参加罪に関する日本の提案について
・参加罪を選択しなかった理由
これらの文書で挙げられている点に絞って、疑問点を指摘します。
●外務省ホームページに掲載されている文書について
 日弁連などの調査により、アメリカ合衆国は、州法では極めて限定された共謀罪しか定めていない場合があるとして国連越境組織犯罪防止条約について州での立法の必要がないようにするため、留保を行っているということがわかりました。この点について、外務省が2006年10月11日付けで「米国の留保についての政府の考え方」と題する文書を掲載しています。この文書で挙げられている点に絞って、疑問点を指摘します。10月11日に外務省ホームページに掲載された米国が国連越境組織犯罪防止条約に関して行った留保に関する文書(「米国の留保についての政府の考え方」)について(PDFファイル;26KB)
●意見書、会長声明等
・いわゆる共謀罪法案の国会への提出に反対する会長声明(2016年8月31日)
・共謀罪の創設に反対する意見書(2012年4月13日)
・「犯罪に強い社会の実現のための行動計画2008」に関する意見書(2009年1月16日)
・共謀罪新設に関する意見書(2006年9月14日)
・「共謀罪」に関する与党再修正案に対するコメント(2006年5月15日)
・共謀罪与党修正案についての会長声明(2006年4月21日)
・共謀罪が継続審議とされたことについての会長談話(2005年11月1日)
・国連「越境組織犯罪防止条約」締結にともなう国内法整備に関する意見書(2003年1月20日)
 (以下略)


PS(2017年1月20日追加):政府は「国際組織犯罪防止条約の締結のため、国内法の整備が必要だ」としてきたが、*8のように、外務省は「既に条約を結んでいる国・地域のうち、条約締結のため新たに『共謀罪』を設けたことを把握しているのはノルウェーとブルガリアだけで、自信を持って説明できる国は限られる」としている。消費税増税や年金・医療などの社会保障削減も含め、政府は根拠なきことを理由にやりたい政策を推進しようとし、メディアもその片棒を担いでいるが、その基にあるのは、「何を言ってもわからないだろう」という国民を馬鹿にした態度だ。しかし、実際には、現在の日本国民は、政治家や行政官の経験しかないジェネラリストよりも専門性や経験を持ち、それぞれの分野で深く分析できる人が多くなっているため、それらの意見を“ポピュリズム(衆愚)”として無視することこそが問題なのだ。

*8:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12755902.html (朝日新聞 2017年1月20日) 「共謀罪」新設、2国だけ 外務省説明、条約締結に必要なはずが
 犯罪の計画段階で処罰する「共謀罪」の構成要件を変えた「テロ等準備罪」を新設する法案をめぐり、外務省は19日、他国の法整備の状況を明らかにした。政府は「国際組織犯罪防止条約の締結のため、国内法の整備が必要だ」としているが、すでに条約を結ぶ187の国・地域のうち、締結に際して新たに「共謀罪」を設けたことを外務省が把握しているのは、ノルウェーとブルガリアだけだという。民進党内の会議で外務省が説明した。英国と米国はもともと国内にあった法律の「共謀罪」で対応。フランス、ドイツ、イタリア、ロシア、中国、韓国は「参加罪」で対応した。カナダはすでに「共謀罪」があったが、条約の締結に向けて新たに「参加罪」も設けたという。民進党は187カ国・地域の一覧表を出すよう求めていたが、外務省の担当者は会議で「政府としては納得のいく精査をしたものしか出せない。自信を持って説明できる国は限られている」と述べた。政府はこれまで、条約締結のためには「共謀罪」か、組織的な犯罪集団の活動への「参加罪」が必要だと説明してきた。20日召集の通常国会に法案を提出する方針だ。


PS(2017年1月23日追加):パレスチナは、紀元前12世紀前後から闘いの続いてきた古い地域で(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8F%A4%E4%BB%A3%E3%82%A4%E3%82%B9%E3%83%A9%E3%82%A8%E3%83%AB 参照)、どちらも強く権利を主張するため、*9-1の“和平”は大変だろう。しかし、現代だからこそできる解決法もあり、それは砂漠を豊かな土地に変え、実質的に領土と認められる地域を増やすことだ。それには、*9-2のサウジアラビアのやり方が参考になるが、イスラエルは面積の小さいことがネックであるため、日本やアメリカがエジプトかサウジアラビアの砂漠地帯の農業開発を援助することにより、面積の広いエジプトかサウジアラビアからイスラエルへの土地の一部割譲を取りつけたらどうかと考える。それにより、世界の食糧安全保障と中東紛争の解決ができればよいのではないだろうか。


   中東の地図           *9-2サウジアラビア大使館より      サウジアラビアの畜産

*9-1:http://digital.asahi.com/articles/ASK1R25N5K1RUHBI004.html?iref=comtop_8_03 (朝日新聞 2017年1月23日) トランプ氏、イスラエルの安全保障に「空前の取り組み」
 イスラエル首相府によると、両首脳はトランプ氏が「破棄する」と主張したイランとの核合意や、パレスチナとの和平などについて協議した。ホワイトハウスによると、トランプ氏はイスラエルの安全保障に対して「空前の取り組み」を明言した。パレスチナとの和平についてはイスラエルとパレスチナが直接交渉することでのみなされると強調。米国はイスラエルと緊密に協働していくとした。トランプ氏が選挙戦で表明した米大使館のエルサレム移転について協議されたかは明らかになっていない。AP通信によると、ホワイトハウスは会談前、国内での議論がまだ初期段階だとの認識を示した。これに先立ち、エルサレム市当局は22日、イスラエルが占領する東エルサレムの入植地で約560軒の住宅を建設することを承認した。入植活動を批判するオバマ前政権の圧力で延期していたが、イスラエル寄りの姿勢を示すトランプ氏の就任を待って判断した。一方、パレスチナ自治政府のアッバス議長は22日、ヨルダンの首都アンマンでアブドラ国王と会談した。AP通信によると、米大使館がエルサレムに移転した場合の対抗策などを話し合ったという。

*9-2:http://www.saudiembassy.or.jp/Jp/SA/7.htm (サウジアラビア大使館)
 サウジアラビア王国は、食糧の安全保障確保と国内で生産される農産物及び牛乳、鶏卵、食肉など畜産物の食料の自給自足実現を目的とした農業政策を採用してきました。王国政府は、初期の段階から、政策の優先事項の筆頭にこの目的を置き、その実現に最大限の努力を傾けてきました。アブドルアジーズ国王が王国建国時に実施した最初のステップは、国民の農地開発投資の活性化支援と、その活動に完全な自由を与え、必要な機械器具を購入する場合、それを無税扱いにすることでした。また、王国政府は、政府の経費で農業機械器具を輸入し、それを購入した農民には無利子月賦で政府に返済する制度を確立しました。アブドルアジーズ国王は、1948年、農政局の設置を命じ、これを財務省とリンクさせることによって、同局が灌漑設備の改善、水ポンプの設置、ダムや運河の建設、泉や井戸などの水資源の開発、農民宛資金貸付けなどの事業が実施できるようにしました。農政局は活動の幅を広げたことによって、必然的に重い職責を担うようになり、その結果、1953年、同局は「農業・水資源省」に格上げされ、スルターン・ビン・アブドルアジーズ殿下が初代の大臣に就任しました。同省は創設以来、水資源の開発とともに、農産・畜産部門の振興に貢献する研究と計画立案をおこなってきました。王国の地勢については、国土の大半が砂漠気候であり、厳しい環境であることはよく知られています。さらに、水資源に乏しく、降雨量もきわめて限られています。しかし、王国はアッラーのご加護と王国の固い決意の下に近代農業の技法と技術を駆使することによって、こうした環境的な問題を克服してきました。サウジアラビア王国は、短期間において食糧輸入国から農業生産国へ、さらに、輸出国になったのです。農産物の生産高も増大し、農業部門は、生産経済部門の一部門として重要な役割を果たすようになりました。
●奨励政策
 政府は、農業振興のため農業部門の奨励政策を実施してきました。その中でも特に重要な政策は、農民と農業会社に未開墾地を無償で分配してきたことであり、この政策は現在も継続しておこなわれています。また、政府は1962年に設立した、農業銀行を通じ、長期ローンの貸付けと補助金を農民に提供しています。政府は、農業機械と灌漑用ポンプの購入費用の50%を負担し、農業器具と用品、国内産と輸入肥料購入費用の45%を負担しています。種や苗などは、きわめて低い価格で配布されています。さらに、王国各地に設置されている農業局、農業試験場、農業事務所を通じて農業指導、獣医の派遣、農業災害対策などのサービスが提供されています。国は農業生産物を買い上げており、とりわけ、小麦、大麦は、1972年に設立されたサイロ・製粉公団を通して奨励価格で買い上げています。
●農業道路
 国家は、農業道路に多大な関心を払ってきました。これは、農民の足を確保することによって市場中央センターへの農業生産物の運送を容易にすることを目的としています。交通省は、主要な道路建設プログラムとの調整をおこないながらバランスの取れた農業道路建設プログラムを実行してきました。農業道路の全長は、1970年の時点では3,600キロメートルだったものが、1998年末には10万キロメートルに達しました。
●農地の拡大
 政府は、農業部門に対する継続的な支援をおこなってきました。その結果、王国では、国民による農業部門の投資が促進され、大手農業企業が数社設立されました。1980年の時点では60万ヘクタールだった農地面積は、1992年には160万ヘクタールにまで拡大しました。また、政府は、約250万ヘクタールの未開墾地を国民に分配しました。農業銀行が農民と農畜産部門の投資会社に提供した資金貸付額は、1998年末で304億リヤール強に達しました。これらの貸付けは、3,000以上もの野菜、果物、酪農、畜産の農業プロジェクトに使われました。農業銀行はまた、生産に必要な農業機械、器具、道具購入の資金を貸し付けています。1973年から始まったこうした貸付け金は、1998年(イスラム暦1418年から1419年)末で111億リヤールに達しています。サイロ・製粉公団は、王国内に穀物貯蔵と製粉、飼料生産のため10の工業団地を建設しました。同公団の貯蔵能力は、238万トンに達し、製粉の生産能力は、年間161万トンに達しています。
●小麦生産
 サウジアラビア王国は、小麦の生産分野において輝かしい成果を収めました。1985年、小麦の生産量は、国内需要を満たし、自給自足が実現しました。そして1986年以降は、余剰分を国際市場に輸出できるようになりました。1992年(イスラム暦1412年)、王国の小麦生産高は、420万トンにまで増加し、最高レベルに達しました。しかしながら、水資源利用の指導と地下水の保全という観点から、生産削減が段階的に実施されました。この措置は、1993年(イスラム暦1413年)の農作期から始まり、1997年(イスラム暦1417年)まで継続され、小麦の生産量は180万トンに減少しました。これは、国内の自給自足に必要な量であり、輸出はおこなわれなくなりました。小麦が最後に輸出されたのは、1995年5月(イスラム暦1415年ズール・ヒッジャ月20日)でした。大麦の生産においても同じような生産削減措置がとられ、1994年(イスラム暦1414年)に182万2,950トンだった大麦の生産高は、1996年(イスラム暦1416年)には46万4,000トンまで減少しました。
●野菜と果物
 王国の野菜の生産高は、1998年には約270万トンに達し、種類によっては近隣諸国に輸出できるほどの生産量を記録しました。果物の生産は約120万トンに達しました。そのうち、ブドウの収穫量は14万トン、かんきつ類は8万7,000トンに達しました。王国は年間約64万9,000トンのナツメヤシの実(王国内のナツメヤシの木は1,300万本)を生産しています。王国内におけるナツメヤシの実の瓶詰め・包装工場は24を数え、王国の内外に製品を送り出してします。世界の食糧生産プログラムにておいて王国がナツメヤシの実の生産で大きな貢献をしていることは広く知られています。
●畜産
 王国の家畜数は、1997年には、牛28万頭、羊100万頭、山羊62万6,400頭、ラクダ75万頭、家禽3億9,520万羽にまで増加しました。王国の畜産生産物は、年を追うごとに増加しており、その増加率は急カーブを描いて上昇しています。同年の生産高では、牛乳88万3,000トン、食用鶏卵25億個、食用鶏肉45万1,000トン、赤肉15万7,000トンに達し、魚肉の生産高も5万5,000トンに達しました。この結果、王国は、農業生産部門の穀物生産と畜産において自給自足を達成し、余剰生産物を国外に輸出できるようになりました。こうした実績に基づき、国際食料農業機関(FAO)は、ファハド国王の農業部門の指導的役割を称えるとともに、発展途上国の貧困と餓えの一掃に貢献したことを評価し、1997年、国王にFAO賞を授与しました。
●高い成長率
 王国がたどった農業政策は実を結び、農業部門は高い成長率を実現しました。1969年から1996年の期間における同部門の年間平均成長率は8.4%を記録しました。農業部門は国内総生産に大きく貢献しており、総額は340億リヤールに達しています。
●水資源開発
 農業・水資源省は、水資源開発のため王国全土の水資源調査を実施しました。また、王国内の市町村への十分な飲料水の供給に努力を傾注しました。同省は、飲料用・監視用・探査用の水井戸を5,500本以上採掘しました。民間によって管理されている井戸の数は10万3,118に達していますが、その多くは農業に使用されています。同省が実施した市町村への飲料水供給プロジェクト数は1,290を数えており、国営企業・公的機関がその運営と保守を担当しています。同省は、雨水と河川の水を有効利用するため1998年末までに189のダムを王国の各地に建設しました。その貯水能力は、総計約7億8,000万立方メートルに達しています。王国は、戦略的な見地から飲料用の水資源を恒常的に確保するため海水淡水化計画を採用し、その実現のため海水淡水化公団を設立しました。淡水化プロジェクトは短期間のうちに多大の実績を達成し、王国は西部・東部海岸沿いには27の海水淡水化プラントが建設されており、これらのプラントで生産された飲料水は、40を越える市町村に供給されています。これらのプラントの一日あたりの生産量は、淡水は、250万立方メートル(6億6,700万ガロン)、電力は、3,600メガワットに達しています。現在建設中のプラントが完成すると、同公団の一日当たりの生産能力は、淡水は、300万立方メートル(8億ガロン)、電力は5,000メガワットに達する予定です。現在、海水淡水化プラントで生産されている飲料水は、王国の主要都市の総需要量の70%を満たし、電力は、消費電力の30%を満たしてします。


PS(2017年2月2日追加):*10-1のように、「テロ等準備罪」の「等」は、範囲を無限に広げることができ、むしろ「等」の方が中心ではないかと思われる法律もあるくらいなので反対だ。また、*10-2のように、「テロ」の範囲も限定列挙しなければ、市民団体・労組・政治団体などの正当な活動も政府に不都合な場合には適用される可能性があり、安心できない。その上、「共謀罪」や最近言っている「合意罪」が成立するか否かは、*10-3のように、一般市民を監視・盗聴して立証する必要があるため、容疑者だけでなく一般市民も、通信の秘密が犯されたり、人権侵害されたりする。そして、*10-4の通信傍受法も、小さく産んで大きく育てる方法が使われているのだ。

*10-1:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12776820.html
(朝日新聞 2017年2月2日) 「共謀罪」対案、維新が策定へ
 日本維新の会の松井一郎代表(大阪府知事)は1日、政府が検討する「共謀罪」の構成要件を変えた「テロ等準備罪」を新設する法案への対案として、「テロ防止法案」を策定すると表明した。記者団に「テロ『等』は駄目だ。広すぎる。テロ等準備罪ということであれば、我々としては『はいそうですか』と言うわけにいかない」と語った。

*10-2:http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201701/CK2017012602000125.html (東京新聞 2017年1月26日) 「共謀罪」法案 テロ「等」範囲拡大の恐れ 市民団体、労組、会社にも
 安倍晋三首相の施政方針演説などに対する参院の各党代表質問が二十五日行われた。首相は「共謀罪」の趣旨を盛り込んだ組織犯罪処罰法改正案について、共謀罪を言い換えた「テロ等準備罪」の「等」が示す犯罪の範囲を問われ「テロ組織をはじめとする組織犯罪集団に限定し、一般の方々が対象となることはあり得ないことがより明確になるよう検討している」と述べた。これに対し、渕野貴生・立命館大教授は「一般市民も対象になり得る」と懸念した。自由党の山本太郎共同代表は「『等』とはどういう意味か。テロ以外にも適用される余地を残す理由を教えてほしい」と尋ねた。首相は、テロと関連が薄い犯罪も対象に含める意図があるかどうかは、明確にしなかった。首相は国連の国際組織犯罪防止条約の締結のために必要だと強調し、テロ対策を前面に押し出す。今後、対象犯罪を絞り込む方針だが、条約が共謀罪の対象に求める死刑や四年以上の禁錮・懲役に当たる犯罪は六百七十六。このうち政府が「テロに関する罪」と分類するのは百六十七(24・7%)にとどまり、大多数が「テロ以外」という矛盾をはらむ。組織的犯罪集団に限定しても、警察の恣意(しい)的な捜査で市民団体や労組、会社も対象になりかねない。政府は二〇一三年に成立した特定秘密保護法で「特定秘密の範囲を限定した」と説明したが、条文に三十六の「その他」を盛り込み、大幅な拡大解釈の余地を残した前例もある。刑事法が専門の渕野教授は「テロと無関係の犯罪も多く、名称と実体が一致していない。一般市民の犯罪も対象になり得るのに、あたかもテロだけを対象とするかのように説明するのは、国民を誤解させる表現だ」と指摘。「組織的な犯罪集団に限定しても、捜査機関による恣意的な解釈や適用を適切に規制できない」と危ぶむ。

*10-3:http://www.tokyo-np.co.jp/article/entertainment/news/CK2017012602000184.html (東京新聞 2017年1月26日) 監視社会の脅威 映画「スノーデン」あす公開
 ベトナム戦争や歴代の米大統領を題材にした骨太の作品で知られるオリバー・ストーン監督(70)の最新作「スノーデン」が二十七日公開される。あらゆる個人さえも対象とする米政府の監視プログラムを暴露した情報機関職員エドワード・スノーデン氏の内部告発は、誰もがプライバシーの危機にさらされている事実を明るみに出した。トランプ大統領誕生の過程でも、さまざまな真偽不明の情報に世界は踊らされている。いまスノーデン事件から何が見えるのか。「スノーデンとは亡命先のモスクワで、この二年間に九回会って話を聞いた。彼の視点から語られる物語を映画にしようと思った」。二〇一三年六月、英ガーディアン紙などが報じたスノーデン氏の告発に監督は拍手喝采を贈ったという。「その半年ほど前、私はドキュメンタリー作品でオバマ政権で強化されてきた監視社会を取り上げた。まさに、その通りのことが起きていたわけです」。本作では、米国防総省の情報機関である国家安全保障局(NSA)に勤務するスノーデン(ジョセフ・ゴードン=レビット)が、赴任先のジュネーブや東京で世界中のメールやSNS、通話を監視し、膨大な情報を収集している実態を目の当たりにする。同盟国である日本も例外ではなく、インフラ産業のコンピューターにはマルウェア(悪意のあるソフト)が既に埋め込まれており、もし日本が米国に敵対したら、インフラがダウンするようになっていることが明かされる。「私個人の考えは作品に一切入れていない。すべてスノーデンが私に語った内容です。NSAからも話を聞こうとしたが、答えてもらえなかった。私の経験からいって彼の言っていることは真実だと思う」。スノーデン事件に関しては、香港のホテルでスノーデン氏が告発する場面に密着し、アカデミー賞を受賞したドキュメンタリー映画「シチズンフォー スノーデンの暴露」がある。ストーン監督は本作で、スノーデン氏の内面を描こうと思ったと打ち明ける。「若い愛国者である彼がなぜNSAの任務に疑念を抱くようになったのか。それは対テロの戦いではなかったわけです。世界中の情報を監視することで政治、経済を含むあらゆる力関係で米国が優位に立てる。スノーデンはその危険に気づいた。そして彼が人間性を保てたのは恋人の存在が大きかったと思います」。米政府に不都合な本作は米国企業の支援が受けられず、フランスやドイツ企業の出資で製作されたと監督は付言する。「米国では自己規制や当局に対する恐怖があるのかもしれない。米政府や主要メディアが伝えることが真実だと思わないでほしい」と話す。
◆主要メディアに一石 トランプ氏を評価
 過激な発言で物議を醸すトランプ米大統領だが、ストーン監督は米情報機関と主要メディアへの不信感から、トランプ氏に「奇妙な形で新鮮な空気を持ち込んだ」と期待をにじませる。「トランプに対するヒステリックな報道は、冷戦時代の赤狩り(共産主義者への弾圧)のようだ。ロシアとつながりがあるかのような報道も、彼を大統領にしたくない力が働いたのだと思う。米メディアも新保守主義の権力側にある。トランプは主要メディアに対し新しい見方をしているのは確かだ」と断言する。その上で「米国は今、帝国化している。日本は米国をそこまで信頼していいのか。米国はそれほど日本を大切に思っていないかもしれない。日本をどうするかはみなさんが考えることだ」とアドバイスする。
◆オリバー・ストーン監督
 米ニューヨーク生まれ。ベトナム戦争に従軍後、ニューヨーク大学で映画製作を学ぶ。1978年「ミッドナイト・エクスプレス」でアカデミー賞脚本賞。86年「プラトーン」で同作品賞や監督賞など4部門を制し、89年「7月4日に生まれて」で2度目の同監督賞に輝いた。ほかに「JFK」「ニクソン」など。

*10-4:http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201702/CK2017020202000247.html (東京新聞 2017年2月2日) 【政治】「共謀罪」捜査に通信傍受も 法相「今後検討すべき」
 衆院予算委員会は二日午前、安倍晋三首相と全閣僚が出席して、二〇一七年度予算案に関する基本的質疑を続けた。金田勝年法相は、犯罪に合意することを処罰対象にする「共謀罪」と趣旨が同じ「テロ等準備罪」の捜査を進めるため、電話の盗聴などができる通信傍受法を用いる可能性を認めた。通信傍受法は、憲法が保障する通信の秘密を侵す危険が指摘され、捜査機関が利用できる対象犯罪が限定されている。金田氏は、テロ等準備罪を対象犯罪に加えるかどうかについて現時点では「予定していない」としつつ、「今後、捜査の実情を踏まえて検討すべき課題」と将来的には否定しなかった。これに対し、質問した民進党の階猛氏は「一億総監視社会がもたらされる危険もある」と懸念を示した。政府はテロ等準備罪について、犯罪の合意だけでなく、準備行為がなければ逮捕・勾留しないと説明しているが、準備行為については捜査機関が判断するため、拡大解釈の恐れが指摘されている。通信傍受法は、犯罪捜査のために裁判所が出す令状に基づき、電話や電子メールの傍受を認める法律。一九九九年の成立時には、通信の秘密を侵害する懸念を受け、薬物・銃器犯罪、集団密航、組織的殺人の四類型に限定されていた。しかし昨年十二月、殺人や放火、詐欺、窃盗、傷害、児童買春など対象犯罪が大幅に増えた改正法が施行された。さらに幅広い犯罪の合意を処罰するテロ等準備罪が対象犯罪に加われば、通信傍受の件数が大幅に増えることが予想される。テロ等準備罪の捜査では捜査当局が犯罪の話し合いや合意、準備行為を把握し、ある特定の団体の構成員を日常的に監視する必要がある。テロ等準備罪の捜査で通信傍受を活用することになれば、捜査当局が監視できる市民生活の範囲が大幅に広がる恐れがある。
<通信傍受法> 通話開始から一定時間聴き、犯罪関連の通話と判断した場合に限って継続して傍受できる。令状の容疑でなくても対象犯罪などに関する通信は傍受できる。2000年の法施行から15年までに傍受した10万2342件のうち82%が犯罪に関係のない通話。傍受したことや、記録の閲覧や不服申し立てができることを本人に通知するが、犯罪に関係のない通話相手には通知されない。


PS(2017年2月3日追加):*11のGPS捜査や移動追跡装置は、本当に犯罪の疑いや危険性が高い場合だけに使われているのではなく、他の意図や興味本位でも使われていると、私は考えている。そして、GPSは携帯電話にもついているため、一般の人もプライバシーの侵害には要注意だ。

*11:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/401561
(佐賀新聞 2017年2月2日) GPS捜査の秘匿指示 警察庁06年、都道府県警に
 捜査対象者の車などに衛星利用測位システム(GPS)端末を取り付けて尾行する捜査を巡り、警察庁が2006年6月に都道府県警に出した通達で、端末使用について取り調べの中で容疑者らに明らかにしないなど秘密の保持を指示していたことが1日、警察当局への取材で分かった。捜査書類の作成に当たっても、記載しないよう徹底を求めていた。警察庁はGPS捜査を「任意捜査」と位置付けているが、各地の裁判所で「プライバシーを侵害する」として、令状のない捜査の違法性が争われている。判断は割れており、最高裁大法廷が春にも統一判断を示すとみられる。日弁連は1日、GPS捜査の要件や手続きを定めた新たな法律をつくり、裁判所の出す令状に基づき行うべきだとする意見書を警察庁に提出した。警察当局によると、通達はGPS捜査のマニュアルである「移動追跡装置運用要領」の運用について説明。「保秘の徹底」として、取り調べで明らかにしないほか、捜査書類の作成においても「移動追跡装置の存在を推知させるような記載をしない」と求めた。都道府県警が報道機関に容疑者逮捕を発表する際も「移動追跡装置を使用した捜査を実施したことを公にしない」と明記していた。警察庁は、こうした通達を出した理由を「具体的な捜査手段を推測されると、対抗手段を講じられかねないため」と説明している。警察庁の運用要領は、裁判所の令状が必要ないGPS端末の設置について、犯罪の疑いや危険性が高いため速やかな摘発が求められ、ほかの手段で追跡が困難な場合の任意捜査において可能と規定している。日弁連は、GPS捜査は「強制捜査」に当たり「令状なしの捜査は憲法に反する」として、即時中止を求めている。


PS(2017年2月6日追加):*12-1のように、一橋大の葛野教授や京都大の高山教授が呼び掛け人となり、刑事法学者ら約140人が、「①日本の法制度は『予備罪』『準備罪』を広く処罰してきており、国際組織犯罪防止条約の締結に新たな立法は必要ない」「②日本は世界で最も治安のいい国の一つで、具体的な必要性もないのに条約締結を口実として犯罪類型を一気に増やすべきではない」として「共謀罪」の構成要件を変えた「テロ等準備罪」を新設する法案に反対する声明を出したそうだ。私は、「テロ等準備罪」の本当の目的は条約締結ではなく、*12-2のような盗聴・通信傍受やGPSを使った捜査の正当化だと思うので、法学者等の専門家の参戦に賛成だ。

*12-1:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/402452
(佐賀新聞 2017年2月5日) 法学者ら140人、「共謀罪」反対声明、現制度でテロ対策可
 刑事法学者ら約140人が4日までに、組織犯罪を計画段階で処罰できる「共謀罪」の構成要件を変えた「テロ等準備罪」を新設する法案に反対する声明を出した。呼び掛け人は葛野尋之一橋大教授、高山佳奈子京都大教授ら。声明では、日本は「テロ資金供与防止条約」などテロ対策に関する13の条約を締結し、国内の立法も終えていると指摘。日本の法制度は「予備罪」や「準備罪」を広く処罰してきた点に特徴があるとし、国際組織犯罪防止条約の締結に新たな立法は必要ないと強調している。さらに「日本は世界で最も治安のいい国の一つで、具体的な必要性もないのに条約締結を口実として犯罪類型を一気に増やすべきではない」としている。呼び掛け人と賛同者は3日現在で計146人。

*12-2:http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201702/CK2017020302000125.html (東京新聞 2017年2月3日)「共謀罪」捜査に通信傍受も 無関係な「盗聴」拡大の恐れ
 犯罪に合意することを処罰対象とする「共謀罪」と趣旨が同じ「テロ等準備罪」を設ける組織犯罪処罰法改正案について、金田勝年法相は二日の衆院予算委員会で、捜査で電話やメールなどを盗聴できる通信傍受法を使う可能性を認めた。実行行為より前の「罪を犯しそうだ」という段階から傍受が行われ、犯罪と無関係の通信の盗聴が拡大する恐れがある。テロ等準備罪を通信傍受の対象犯罪に加えるかどうかについて、金田氏は現時点では「予定していない」としながらも、「今後、捜査の実情を踏まえて検討すべき課題」と将来的には否定しなかった。質問した民進党の階(しな)猛氏は「一億総監視社会がもたらされる危険もある」と懸念を示した。通信傍受法は、憲法が保障する通信の秘密を侵す危険が指摘され、捜査機関が利用できる対象犯罪が限定されている。テロ等準備罪の捜査は、犯罪組織による話し合いや合意、準備行為を実際の犯罪が行われる前に把握する必要があり、通信傍受が有効とされる。関西学院大法科大学院の川崎英明教授(刑事訴訟法)は「盗聴は共謀罪捜査に最も効率的な手法。将来的には対象拡大を想定しているはずだ」とみる。川崎教授は「テロ等準備罪に通信傍受が認められれば、例えば窃盗グループが窃盗をやりそうだという段階から傍受できる。犯罪と無関係の通信の盗聴がもっと広く行われるようになる」と指摘。傍受したことは本人に通知されるが、犯罪に関係ない通話相手には通知されないため、「捜査機関による盗聴が増え、知らないうちにプライバシー侵害が広がる」と危ぶむ。沖縄の新基地建設反対運動に対する警察の捜査に詳しい金高望弁護士は「警察は運動のリーダーを逮捕した事件などで関係者のスマホを押収し、事件と関係ない無料通信アプリLINE(ライン)や、メールのやりとりも証拠として取っている。将来的には、通信傍受で得られる膨大な情報を基に共謀罪の適用を図ることも考えられる。テロ対策の名目で、あらゆる情報や自由が奪われる恐れがある」と話す。
<通信傍受法>犯罪捜査のために裁判所が出す令状に基づき、電話や電子メールの傍受を認める法律。2000年の施行時には薬物、銃器、集団密航、組織的殺人の4類型に限定されていたが、昨年12月、殺人や放火、詐欺、窃盗、児童買春など対象犯罪を9類型に増やす改正法が施行された。00年から15年までに傍受した10万2342件のうち、82%が犯罪に関係のない通話だった。

| 外交・防衛::2014.9~ | 10:24 AM | comments (x) | trackback (x) |
2017.1.5 日本が先進国となり、少子高齢化した中で増える需要と雇用吸収力のある産業は何か → 高齢者いじめの年金・医療・介護の負担増・給付減は憲法違反であると同時に、国民経済を悪化させること (2017年1月6、8、10、13、15日に追加あり)
 あけまして、おめでとうございます。書くべきことは多いのですが、今日は2017年度の国家予算と高齢者いじめの年金・医療・介護の負担増・給付減の話です。


 国の借金     国の一般会計    2017年度予算案 社会保障推移  日本の人口構成
           2015.1.28Goo  2016.12.22毎日新聞

(図の説明:国の借金は1989年《平成1年》の消費税導入以降、次第に増えて2015年《平成27年》には1000兆円を超えた。これは、消費税増税を目的として税収増以上の景気対策と称する歳出増を行ってきた結果である。また、消費税は、価格を上げて消費を抑える効果もある。この結果、2017年政府予算案では、国債費が最も大きな支出項目となっているが、このうち国債の利払費は低金利の現在、国債を借り換えすることによってかなり節約できる。社会保障費の割合は大きく金額も増えているが、これは高齢者の数が増加したことが原因で一人当たりの社会保障費が増えたわけではない。特に介護は大きく不足しており、我が国の社会保障は、まだ削減するよりも充実すべき段階にある)

 
労働生産性 労働者一人当たり労働時間推移   労働時間世界比較   医師の労働時間世界比較

(図の説明:我が国の労働生産性はOECD加盟国のうち21位で決して高くないが、全員の労働生産性が低いわけではなく、公的部門や雇用対策・景気対策でなされる事業の生産性が特に低いのだろう。また、我が国の労働者1人当たりの年平均実労働時間は、1980年には2,104時間/年だったが、2012年には1,765時間/年まで減っており、これはアメリカ・イタリアより少ないため、我が国の労働者は働き過ぎだと主張する人は30年古い感覚である。しかし、医師の労働時間数は世界でもとりわけ高く、過労死認定基準を超えており、このように疲れていては治療の安全性さえ危ぶまれるが、他の職種との給与差は世界でも小さい方であり、度重なる診療報酬の引き下げは医療の質を落とす可能性が高い)

(1)国の異次元の借金と歳入・歳出について
 *1-4に、「①国の借金が1062兆5745億円に達して国民1人当たり約837万円の借金になった」「②高齢化で増え続ける社会保障費を賄うため借金が膨らんだ」「③経済対策の財源として建設国債を発行するため、2016年度末の国の借金は1119兆3000億円程度になる」と記載されている。

 このうち①は、国の負債部分しか見ておらず資産を考慮していないため正しくない。そして、その資産は使い方によっては大きな収益を産んで価値が高くなるが、金をどぶに捨てるような使い方をすれば価値がなくなり、現在は後者の使い方が目立つ。

 また、③は事実を書いたのだろうが、②の「借金が膨らんだ理由は社会保障費だ」というのは間違いだ。何故なら、社会保障費はあらかじめ予測できた支出であり、受益者たる国民は働いた期間に保険料を支払ってきたため、基本的に保険料収入から支出すべきもので財政支出すべきものではないからだ。それにもかかわらず、国民が支払った保険料では賄いきれずに財政支出しているのは、これまで監督官庁が単年度の収支しか考えておらず、保険料の徴収や積立金の管理・運用・配分等が著しく杜撰だったからである。

 そのため、その本質的な原因をなくさずに、「官は正しいことをしてきたが、少子高齢化(これも予見できた)が原因だ」などとして積立金不足の責任を特定世代の国民にしわ寄せするのは、正義に反する上、それでは社会保障が信頼をなくし、杜撰な管理・運用が今後とも改善されないのでよくない。

(2)2017年度の政府予算案について
1)予算案はまともに審議されるのか?
 一般会計歳出総額97兆円台半ばの2017年度政府予算案が、*1-1のように閣議決定されたが、これでもし衆議院が1月に解散されれば、国会のしっかりした審議もなく膨大な予算が執行されることになる。そのため、これは主権者である国民を無視した憂慮すべき事態だ。

2)国債残高と利払いについて
 大手新聞社は、*1-1のように、一貫して「社会保障が膨らみ、新規国債の発行額は16年度の34.4兆円をわずかに下回る薄氷の減額で、改革の切れ味が鈍い」という論調だが、正しくは国債増加額と国債の利払いを問題にすべきだ。そうすると、金利の低い現在は、新規国債を発行して金利の高い国債を返済し、今後の利払いを抑えるのが賢明だということがわかる。そして、「歳出の中で割合が大きいから、社会保障費を削るのが改革だ」とするのは、後で理由を書くとおり、間違いである。

3)沖縄振興と政府開発援助について
 沖縄振興は、基地を縮小し、沖縄自身が観光業・その他の産業を起こし、街づくりをして自ら稼ぐことができるようにするのが最も有効な投資であり、基地負担を強いるためにいつまでも補助金をばら撒くのは誰にとってもプラスにならない。

 また、政府開発援助(ODA)も大きいが、日本の外交は、国民に負担させて金をばら撒くばかりで、論理的に交渉する力に欠けているため、無駄遣いが多すぎる。

4)高齢者の負担増について
 高齢化による自然増6400億円の社会保障費を1400億円抑え、中高所得者とも言えない所得の低い高齢者の医療・介護負担を増やして高齢者向け社会保障費を5000億円増に抑えたのは、現在の本物のニーズである高齢者の医療・介護需要を減らさせ、命を支えている医療・介護従事者に不当な負担を強いた上、高齢化社会で必要となる財・サービスの開発・普及を妨げているため、間違った政策である。

 一方で、健康な生産年齢人口に当たる人の“働き方改革”に2100億円も充てているが、これは、脱法行為も含む労働基準法違反や男女雇用機会均等法違反をしっかりと取り締まればよいのであり、補助金を積んで改善していただくべき事項ではない。

 なお、*1-5のように、電通の新入社員である高橋まつりさんが異常な長時間労働の末に自殺した事件について、母の幸美さんが「日本の働く全ての人の意識が変わってほしい」と求める手記を公表し、一つの特殊な事例を働く全ての人に敷衍しようとしているが、これには無理がある。何故なら、(アウト・プットを見ればわかるとおり)電通は広告会社であり、東大は研究者や各界のリーダーを養成する校風であるため、東大文学部を卒業したからといって電通の仕事をする能力に長けているとは限らないからだ。

 また、上司が「目を充血させて会社に来るな」と言ったのも、本人が長くエネルギーを出し続けるためには無茶な残業をするよりも規則正しく仕事をする方がよい上、朝から他の社員に疲れを伝染させるようなことはしない配慮も必要であるため、上司として必要な注意だったかも知れず、パワハラとは決めつけられない。さらに、上司が「君の残業は電通にとって無駄だ」と言ったのも、成果があがらないので少なくとも頑張っているところを見せたいため長時間残業をする人もおり、それは本当に無駄であるため、必要な注意をしたのかもしれないからである。しかし、新入社員に、一人で責任を持つ形で困難な仕事をさせていたのであれば、それは異常であるとともに、社員を育てる意識に欠ける。

 そのため、まつりさんは、①社内の人事部などに相談する ②私もされた経験があるのでわかるのだが、東大卒など上昇志向の女性いじめの可能性も高いため、大学の就職相談室に相談しておく (労働基準監督署は、それ自体に女性差別があり、賃金と残業時間くらいしか対応できないため、このような女性差別の問題は大学の就職相談室が相談を受け付け、会社毎に挙がってくる問題を集計して対処した方がよい) ③労働問題・男女共同参画問題の専門家である弁護士に相談する ④(本当に自殺なら)母一人子一人の母親に喪失感を与えるような自殺はしない ⑤どうしても仕事や社風が合わなければ転職する など、大人としてやるべきことがあった筈なのだ。

 なお、日本社会は、「会社に入ったら辞めるのは落後者だ」という烙印を押すのをやめ、諸外国と同様、転職や中途入社をしても不利にならない雇用システムにすることが重要だ。また、本気で仕事における女性軽視や上昇志向の女性いじめをやめることも必要である。そして、この事件に対する日本社会の変な反応によって、本当に必要な時間外労働をしている人までが批判され、わかりやすい例を挙げれば、医療・介護も夜間・休日は休業しなければならないとか、メディアも生放送や朝刊をなくさざるをえないなどの負の結果が出るのは論外だ。さらに、仕事量が減らないのに午後8時や10時に全館消灯されると、家に仕事を持ち帰らざるを得ない人が増え、電車に忘れたりしてセキュリティー上のリスクが上がるとともに、それこそ仕事とプライベートの堺をなくさせ、ペースを乱させて労働生産性を下げる。なお、生産年齢人口が減る中で労働生産性を下げると、労働の量と質の両方が減ることを忘れてはならない。

 最後に、*1-2に、「1億総活躍社会の実現」として、保育士や介護職員の処遇改善に952億円を充てたと書かれているが、このやり方は保育と教育の連携や医療・介護制度の全体を考慮していないため、資本生産性が低い。

5)防衛費について
 防衛費は過去最高の5.1兆円に増やしたそうだが、東京オリンピックの競技場と同様、政府が購入する物品は国内市場価格の3~4倍であり、中国と比較すれば5倍にものぼる。そのため、多く支出する割には大したことはできておらず、公的部門の資本生産性(支出1円当たりの効果)は著しく低い。

 また、*1-2の海上保安庁の予算(2106億円)も同様だと思われるため、高コスト構造や公的部門の購入コストを何とかしなければ、無駄遣いが非常に大きいのだ。

6)土地改良事業について
 資本生産性が低いのは、4020億円を充てた土地改良事業も同じだ。土地改良費はこの20年の累積で約8兆円(4000億円/年 x 20年)近くにのぼるが、未だに大型機械が入らない区割りになって
いる場所があったり、いつまでも土地改良事業が必要だと言っていたりするのは、これまで何をしてきたのかと思われる。私は、災害で壊れた場所を治す時も、何度も同じ場所を工事する必要がないように、復旧して元に戻すのではなく、時代の要請にあったものを造るべきだと考える。

7)歳入・歳出と消費税増税について
 歳入面では、来年度の税収は今年度当初比1000億円増の57.7兆円に留まり、歳出の伸びと比較して税収の伸びが鈍いため、外国為替資金特別会計の運用益等の税外収入を2016年度の4.7兆円から2017年は5兆円超に伸ばす方針なのだそうだ。しかし、これまでに書いてきたとおり、税収増は、各生産性を上げ、国産自然エネルギーに代替したり、新産業を創出したりすることによって実現でき、税外収入は地熱・天然ガス・地下資源などの国産資源を開発する方が大きな効果が得られる。

 なお、日本の消費税は、1989年(平成1年)に導入されて税率3%でスタートし、1997年(平成9年)に5%に引き上げられ、2014年(平成26年)4月からは8%に引き上げられた。そして、一番上の左から2番目のグラフを見ればわかるとおり、消費税導入翌年の平成2年から国の歳出が歳入を大きく上回り始め、その差は増税毎にますます大きくなって、それにつれて国債発行残高が増えているのだ。これは、消費税増税のための景気対策と称して消費税増税以上の歳出をしているからで、消費税が財政に貢献するというのは消費税増税自体が目的である政府の御都合主義の神話である。なお、「社会保障費は消費税や付加価値税からしか支出してはいけない」などとする国は、日本以外にはない。

8)少子高齢化社会のニーズに合ったサービスである社会保障の削減について
 東京新聞が*1-3に記載しているように、政府が12月22日に閣議決定した2017年度予算案は、上記3)~6)の増加があった半面、高齢者関係の社会保障費の増加を抑え、高齢者に対して予算のしわ寄せを行っている。

 そして、歳出の1/3を占める社会保障費の伸びを抑えるためとして、医療・介護の分野での高齢者の負担増が多く、①一定の所得のある70歳以上を対象とした医療費の自己負担上限引き上げ ②後期高齢者医療制度保険料の自己負担増加 ③高齢中所得者の介護保険サービスの利用者負担上限引き上げ が盛り込まれ、菅官房長官が12月22日の記者会見で「社会保障と財政を持続可能にすることができるようにするということは当然」として、翌年度以降も医療・介護での負担増は避けられないとの考えを早くも強調したそうだ。

 しかし、この政策は、“社会保障”と“財政”を持続可能にするどころか社会保障の機能を失わせ、「高齢者は国民負担になるから、次世代のために早く他界してくれ」と言わんばかりだ。これは、憲法25条の「①すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する  ②国はすべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない」という国民の生存権と国の社会的任務を定める規定に反する。

 また、(3)で書くとおり、もともと少ない高齢者の可処分所得を削り、生産年齢人口にあたる健康な人のために景気対策と称して資本生産性の低い大きな財政出動を行って国全体の労働生産性を落としつつ、今後人口における割合が高くなる領域(一番上の右端のグラフ参照)の消費を抑えてGDPの増加(=経済成長)を阻害している点で、賢くない政策である。

(3)GDP算出方法の基準変更と実質GDPが増えない理由
 異次元の金融緩和や莫大な財政支出による景気対策を行っても、*2-1のように、実質国内総生産(GDP)の成長率は2%に満たず、①個人消費などの内需は弱くて輸出が牽引している構図に変わりない ②企業の設備投資が下方修正された ③民間在庫の減少も下押し要因となった とのことである。私は、①は税と社会保障の一体改革で人口の25%を占める65歳以上の消費を抑制した影響が大きく、その結果、国内消費が冷え込んだため、②③のように国内投資が抑制されたのだと考える。

 また、内閣府はGDP算出方法の国際基準変更に伴って、今回から研究開発費を投資に追加する変更を行い、過去分にさかのぼって数値を修正したところ、設備投資は速報値の前期比0.03%増から0.4%減と悪化し、GDPの6割を占める個人消費は0.1%増から0.3%増に改善したそうで、内閣府が国際基準の変更に伴ってGDPの計算方法を見直した結果、2015年度の名目GDP確報値は532兆2千億円になり、基準変更の影響だけで2015年度の名目GDPは旧基準と比較して31兆6千億円拡大して、安倍政権が目標として掲げる名目GDP600兆円に近づいたそうだ。しかし、これは尺度の変更にすぎない。

 このうち最も大きな変更点は、今まで費用とされてきた研究開発費を付加価値を生む投資としてGDPに加えるようになったことで、これによる名目GDPへの上乗せ効果が研究開発費だけで19兆2千億円あるそうだが、研究開発に失敗はつきもので研究開発費のすべてが付加価値を生む投資になるわけではないため、私はこの認定は甘すぎると考える。国際会計基準(IFRS)では、研究開発投資について合理的な根拠がある場合(新商品に繋がる可能性が高く、その際に特許権・商標権等が生じるなど)に限って資産性を認めて資産計上できることになっている。

 なお、*2-2に書かれているとおり、新基準では統計の基礎となる産業連関表を実勢に近い2011年分に切り替えるそうだが、日本の産業連関表は、第二次産業(製造業)が細かく分析されているのに対し、第一次産業(農林漁業、鉱業)や第三次産業(サービス業)が大雑把にしか扱われていない点で時代についていっていないため、これを改善すべきだと、私は考える。

 何故なら、先進国で高コスト構造の日本は、既に製造業による加工貿易に適した国ではなく、そのような国で雇用吸収力の高い産業は国内向けの財・サービスを生産する産業で、実際にそれらのGDPに占める割合が高くなっているからだ。さらに、人口に占める割合の高い高齢者向けの需要は増え、日本で高齢者向けの洗練された財・サービスを開発すれば、それは後に続く他国へも輸出可能な筈である。

 なお、日本で輸出を伸ばせる産業には、これまで重視してこなかったため伸びしろが大きく、工場のように移転できない農林漁業と関連食品産業、鉱業、現代の技術を取り入れた伝統産業などもある。

 そのため、(2)の予算のように、高齢者から可処分所得を巻き上げ、高齢者がQOLを高くするために自由に選択して消費することを不可能にし、それによって高齢者向けの洗練された財・サービスの開発を妨げて、一方でグローバル化と称して農業を犠牲にして自動車の輸出を計るのは、過去のやり方を繰り返そうとしているだけで現在と将来を見すえていないため愚かである。

(4)高齢者に対する給付減・負担増は日本経済にマイナスであること
1)年金について

“改革”の工程   圧縮案   年金“改革”の内容    賃金スライド    “改革”の理由
         2016.11.24   2016.10.13      2016.12.3  
           佐賀新聞      毎日新聞       西日本新聞

(図の説明:一番右の表のように少子化で支え手が減るという理由で、一番左の表のように年金・医療・介護などの高齢者向け社会保障は給付減・負担増ばかりだが、これでは社会保障の機能を果たさない。そのうち年金に関する支給開始年齢の引き上げはよいと思うが、仕事も蓄えもなければ生活保護に頼らざるを得ないため、70歳くらいを年金支給開始年齢(=定年)として、それ以前に健康で仕事がない人には失業保険で対応するのがよいと考える。なお、年金については、受託者が失敗した徴収・管理・運用の責任を国民に押し付け、受給額引き下げや賃金スライドまで取り入れて減額に専念しているが、このままでは今後も同じことが繰り返される。そのため、組織の見直しでお茶を濁すことなく、年金に退職給付会計を採用して要積立額の数理計算を行い、年金受給者のための徴収・管理・運用を徹底すべきだ)

 
 各国の公的年運用        日本は積立金運用方針変更で赤字     厚生年金未加入者

(図の説明:公的年金の積立金運用は、アメリカでは100%債権であり、そうでない国もあるものの、金融技術が進んでいるのはアメリカだ。私も、老後資金であり喪失できない年金積立金の運用は、元本が減らないような割合(80%以上)で債権による運用をすべきだと考えているが、日本では年金積立金をリスク資産に振り向けた結果、大きな赤字を出し、積立金のさらなる減少を招いた。なお、物価上昇や低金利は債権での運用に不利だが、そもそも物価上昇や異常な低金利は国民生活を害する経済政策なのだ。また、利子率は労働生産性や資本生産性などの生産年齢人口の稼ぎ方に依るため、日本は労働生産性や資本生産性を上げるような予算の使い方をしていない点でも政策が間違っている。なお、日本では厚生年金に加入できない人が多く、老後の生活に不安があるが、これらの人も厚生年金に加入させれば、厚生年金財政も少し楽になる)

 日経新聞は、2016年12月8日に経済教室で、*3-1のように、中央大学教授の山田氏の見解を掲載しているが、このように高齢者は金を使わないと言うのが、現在言われている高齢者からは金を巻き上げてよいとする根拠だ。しかし、この感覚は全く変である。

 その内容は、「①欧米と違い、家族の制約から高齢者はお金があっても消費に回さない」「②日本では家計を妻が管理しており、引退後も夫は自由に金を使えない」「③団塊世代の夫婦年齢差は平均4歳で平均寿命も6歳ほど女性が長く、妻は夫が亡くなった後の10年を1人で生活しなければならないため、金を夫に使わせたくない」「④日本では夫婦共通の趣味を持つ高齢者が少なく、共通の趣味を楽しむために2人で金を使う夫婦は少数」「⑤夫婦仲も欧米に比べて良いとは言えず、自分の趣味のために夫婦のお金を使うと相手に嫌がられる」「⑥高齢者は子との関係が悪化することに不安をもっており、資産のない高齢者は子との関係が疎遠になりがちなため、資産がなくなったら子から見捨てられるかもしれないという不安がある」「⑦そのため、金を持っていようという高齢者が増える」「⑧日本では、病気や介護状態が長期化した時、中流生活を維持しようとすれば、ヘルパーなど余分な費用がかかるので、可能性は低くてもそういう状態になった時に困らないように、お金を取っておこうとする」などと書かれている。

 このうち、①は間違いで、⑧の医療・介護需要は必需品の消費だ。そして、高齢者は医療・介護が必要になった時に、あてにできない子に頼らなくてもよいように蓄えを持っておこうとしているというのが正しい。さらに、③のように一人で生きなければならない期間に年金が減らされて貧困に陥るのを避けるため、②のように無駄遣いをしないようにしているのだ。また、④⑤は一般化できず、⑥⑦のように子との関係維持のために資産が必要だというのは、よほど子の教育が悪かった人だろう。

 そのため、私は、意図的に高齢者の消費を抑えなければ、堺屋氏の言うように高齢者が多く消費する時代が来て、洗練された高齢者のニーズが新たな財・サービスの開発に繋がると考える。

 しかし、*3-1のような世論を作った上で、将来の年金水準確保が狙いだとして、*3-2のように、政府は、「物価が下がった場合だけでなく現役世代の賃金が下がった場合にも高齢者への年金支給額を減額する」という新ルールを作って高齢者への年金支給額抑制を強化した。これにより、*3-3のように、国民年金の支給水準が現行より最大0.6%下がり、将来世代の受け取りが最大0.6%上昇する計算だそうだが、このような単純な算術しかできない人が日本経済を考えたり年金の設計をしたりするのが、大きな間違いなのである。

 なお、中小企業の従業員や非正規社員も、本来は厚生年金に加入しなければ老後の生活に困るため、ここを厚生年金に加入させることは、本人のためである同時に、年金財政上も重要である。そして、年金で生活できなければ貯蓄を増やさざるを得ず、貯蓄がなければ生活保護受給者になるのだ。

 また、私は、*3-4の「年金運用巨額赤字 国民に失敗のつけを回すな」という琉球新報の社説に同感で、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)がリスク資産への投資を増やして、2015年度の運用損が5兆円を超える巨額赤字になる見通しだというのは失策だと考える。そして、ここまで大きな責任に対し、誰かが引責辞任したからといって、国民にとっては何の役にもたたない。

 さらに、*3-5のように、厚労省は、75歳以上の後期高齢者医療制度で保険料徴収システムの不備があり、2008年度の制度発足時から全国的に計算ミスで保険料を過大・過小に徴収し、ミス発覚から5年間も放置していたとのことだが、これがこれまでにも多かった厚労省の杜撰さで、民間企業ならとっくに倒産しているところだ。しかし、2年を超えて請求のなかった債権債務は、短期消滅時効にかかるため請求はできない。

 なお、*3-6のように、国民年金・厚生年金を受け取るのに必要な受給資格期間が25年から10年に短縮されたのは、少し進歩だ。しかし、本来は、短い期間でも年金保険料を支払った人は、支払期間と支払金額に応じて年金を受けとれるようにするのが公正で、今まで支払期間が25年に満たないとして年金が支払われなかった分は、国の不当利得になっていたのである。

2)医療・介護について

“改革”の工程   圧縮案    医療の高額療養費    介護負担   65歳以上の介護保険料
          2016.11.24   2016.12.16 
           佐賀新聞      東京新聞

(図の説明:高齢になると病気が増えるので医療・介護費がかさむが、働いている期間は病気もしないのに保険料を支払っているので、これによって保険制度が成立するわけである。そのため、高齢者のみが入る後期高齢者医療制度を作るなどというのは、保険を理解していない人のすることだ。また、高齢になると医療・介護の出費がかさむため、大金持ち以外は75歳以上の窓口負担を1割にしたり、高額医療費の上限を低くしたりするのが当然で、支払上限は医療・介護の双方を足した金額も考慮して決めるべきだ。また、救急で近くの専門医に運んでもらったり、深刻な病気でセカンド・オピニオンをとったりする場合もあるため、かかりつけ医以外を受診すると追加負担させるというのも先進国のすることではない。さらに、入院した際に部屋代以外に高熱水費をとられるのは、ホテル代を支払う時に高熱水費を別に請求されるのと同じくらい違和感がある。そして、こうまでしてたった数百億円を節約するために既に法案提出の準備を終わったというのだから呆れる。さらに、介護については、2000年(平成12年)4月に始まったばかりで、まだ軌道にさえ乗っていないのに、上限引き上げ・利用料引き上げ・保険料引き上げ・サービスカットなど負担増・給付減の話ばかりで、40歳以上からしか介護保険料を徴収せず、利用者の年齢も制限しているという不合理で変則的な制度については改善していない。つまり、他では兆円単位の無駄遣いをしながら、命を支える医療・介護には数百億円単位でケチケチしており、倫理に反する)

 来年度から順次実施される医療保険と介護保険の見直し案が、*4-1のように決まり、それは高齢者に負担増を求める内容で、①医療は70歳以上で現役並みに所得のある人の月毎の負担上限額を現役世代と同水準に引き上げ ②75歳以上の保険料を本来より軽減している特例も段階的に縮小し ③介護では、現役並み所得者の利用者負担を2割から3割に引き上げる ④現役よりも所得の少ない人も、住民税が課税されていれば月毎の負担上限額を医療並みに上げる とのことだ。

 さらに、*4-1には、会社勤めの人の保険料は、大企業の社員は重く、中小企業の社員は軽くなると書かれている。見直しの根底にあるのは、大企業・高額所得者という分類を設けて負担を重くすることだが、「大企業」を分ける意味はなく、「現役並み」とする境界も低すぎる。また、所得の再分配は累進課税で既に行っているため、同一サービスを同一対価で受けられないのはむしろ差別にあたる。その上、高齢者は支えてもらう側というのも、働いている期間に多額の保険料を払って来た人にとっては失礼な話だ。さらに、悪影響を受けるのが高齢者だけならよいとする発想はあくどい。

 つまり、*4-2のように、高齢者の命に関わる支えをはずし、高齢者の生活を脅かす改悪をして公正さを損ないながら、社会保障費でたった1400億円を抑制するよりも、(2)に記載したとおり、抑制すべき桁違いに多額の無駄遣い予算がいくらでもあるのだ。

 さらに、*4-4のように、医療費と介護費の毎月の自己負担額にそれぞれ上限を設ける「高額療養費制度」「高額介護費制度」も上限を上げるそうだが、医療費で高額療養費制度を適用されるような高齢者は、介護も受け続けなければならないケースが多く、高齢者の収入から両方を支払うのは年収370万円(=月収約31万円だが、介護保険料や水光熱費は必ず引かれる)だったとしても容易ではないだろう。そのため、医療費と介護費を合計した上限も設定すべきである。

 また、*4-3のように、厚労省は、2017年度から予定する公的医療保険制度の見直しで、75歳以上の後期高齢者医療制度で、所得が比較的低かったり扶養家族だったりした人も保険料の特例軽減を廃止して段階的に引き上げ、70歳以上の医療費優遇措置も縮小して、国費350億円の抑制を見込むそうだが、小さな効果のために高齢者の生活を脅かすのはいい加減にすべきだ。

 そして、診療報酬削減も繰り返した結果、*4-5のように、地域医療が崩壊の危機に瀕し、居宅・特別養護老人ホーム・有料老人ホーム・介護老人保健施設のニーズの見直しが進んでいるが、高齢化が進んでいる農村で、住民が住み慣れた土地で安心して暮らし続けられるためには、医療・介護の一体化が欠かせず、地域包括ケアを根付かせることができるかどうかが地域医療の試金石となるそうだ。

 なお、日本農業新聞が、*4-6の2016年11月13日に書いているとおり、介護の必要度が比較的軽い「要介護1、2」でも、社会的入院をせず自宅療養するためには在宅支援サービスの生活援助が不可欠であるため、介護保険が縮小されると介護利用者の不安が頂点に達するそうだ。そのため、現在でも足りないくらいの介護費用を数百億円削り、健康な生産年齢人口の人に対して景気対策と称する数兆円規模の無駄遣いをするのは不適切である。また、年中、制度変更と削減を繰り返されると、介護主体も経営が安定せず混乱する。その上、介護や生活支援のように毎日必要とされる重労働に報酬で報いることなく、善意のボランティアで済ませようとするのは、介護や家事労働を馬鹿にしている人の発想だ。

<国の財政支出、借金>
*1-1:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20161218&ng=DGKKZO10806150X11C16A2NN1000 (日経新聞 2016.12.18) 来年度予算 改革の切れ味鈍く、歳出、社会保障膨らむ/歳入、薄氷の国債減額
 政府は2017年度予算案で一般会計の歳出総額を97兆円台半ばとする方針だ。5年連続で過去最高を更新する。国債の想定金利を過去最低の1.1%に据え国債費を抑えたが、高齢化で社会保障費の膨張が続く。歳入面では税収が16年度当初予算並みの水準にとどまると想定し、新規国債の発行額は16年度の34.4兆円をわずかに下回る薄氷の減額となる。麻生太郎財務相らが19日に関係閣僚と折衝し、沖縄振興や政府開発援助(ODA)、教職員定数など残された課題の予算規模や方針を詰める。22日に閣議決定し、来年の通常国会に提出する。歳出総額は前年度の96.7兆円から増やし、97.4兆~97.5兆円とする案を軸に最終調整している。夏の概算要求の段階で高齢化による自然増を6400億円と見積もった社会保障費は、中高所得者の高齢者の医療・介護分野の負担を増やし5000億円増に抑えた。その一方で、子育てや介護、年金などの充実策には新たに3000億円程度を投じ、働き方改革の予算には前年比3割増の2100億円を充てた。ミサイル防衛などを強化する防衛費は過去最高の5.1兆円に増やし、4020億円を充てた土地改良事業を含む公共事業費は5年連続増の6.0兆円とした。今年度第2次補正予算案で追加支出した農林水産関係費は20億円減の2.3兆円に、文教・科学技術振興費も微減の5.4兆円とした。一般歳出以外の経費では、財務・総務両省が地方交付税交付金を前年比3000億円増の15.6兆円前後とする方向で詰めの協議を進めている。国債費は国債の想定金利を過去最低の1.1%に据えた。5000億円程度の抑制効果があり、国債費全体でも16年度当初の23.6兆円を最大1000億円下回る。歳入面では、今年度第3次補正で税収見積もりを1.7兆円下方修正する影響で、来年度税収が今年度当初比1000億円増の57.7兆円にとどまる。歳出の伸びと比べ、税収の伸びが鈍かったため、外国為替資金特会などの運用益などの税外収入を確保し、16年度の4.7兆円から5兆円超に大幅に伸ばす方針だ。この結果、財源不足を穴埋めする新規国債の発行額は16年度の34.4兆円を数百億円程度下回る見通しだ。ただ、国債減は想定利率の大幅な引き下げや税外収入の確保といった特殊要因の寄与度が大きく、減額幅は安倍政権発足後ではもっとも小さくなった。

*1-2:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12719390.html (朝日新聞 2016年12月23日) 膨張予算、歯止め遠く 来年度、過去最大97.5兆円案決定
 政府が22日に閣議決定した2017年度予算案は、5年連続で過去最大になった。高齢化で年金や医療など社会保障費が膨らむ中、防衛費や公共事業費も増える。一方、ここ数年は数兆円伸びていた税収は、16年度当初比で1080億円の微増にとどまる。一般会計の歳出総額は97兆4547億円。歳入穴埋めのための新たな国債(国の借金)発行額は34兆3698億円となった。16年度当初より622億円減らすが、17年度末の国債の残高は2・4%増の865兆円に膨らみそうだ。税収は、政府の17年度の経済成長率見通し(名目2・5%、実質1・5%)が前提。米大統領選後の円安・株高も織り込んでおり、世界経済の動向によっては想定通りの税収が得られない可能性もある。社会保障費も1・6%増の32兆4735億円で、過去最大を更新した。一部の負担増で自然増を圧縮しつつ、「1億総活躍社会の実現」として、保育士や介護職員などの処遇改善には952億円を充てた。防衛力強化に向け、防衛費も過去最大の5兆1251億円とした。海上保安庁の予算は要求を上回る2106億円を認めた。公共事業費も、5年連続で前年度を上回った。政府は、16年度より新たな借金はわずかに減らせたことから、「経済再生」と「財政再建」を両立できたとする。だが、税収は伸び悩み、新たな借金に頼らない財政という20年度の目標は遠のいた。

*1-3:http://www.tokyo-np.co.jp/article/economics/list/201612/CK2016122302000143.html (東京新聞 2016年12月23日) 安倍カラー 暮らしにツケ 17年度予算案 閣議決定
 政府が二十二日に閣議決定した二〇一七年度予算案の一般会計の歳出総額は九十七兆四千五百四十七億円で、五年連続で過去最大になった。防衛費は五年連続で増やし五兆一千二百五十一億円と過去最高を更新。一方で社会保障費は増加を抑えるなど、安倍政権の姿勢を反映した予算のしわ寄せは、国民の暮らしに及んでいる。
◆膨張
 「わが国を取り巻く厳しい安全保障環境の下で、防衛の質と量をしっかり充実させることが必要だ」
 稲田朋美防衛相は二十二日の記者会見で強調した。一七年度予算案では防衛費が過去最高額を更新。予算額は一六年度当初比で1・4%増の五兆一千二百五十一億円に膨れあがった。押し上げ要因として浮かび上がるのは、米国製の高額な武器を積極的に購入していることだ。最新鋭ステルス戦闘機F35六機の取得費計八百八十億円、新型輸送機オスプレイ四機の取得費計三百九十一億円、無人偵察機グローバルホーク一機の組み立て費百六十八億円…。米国から買う武器で一七年度予算案に盛り込まれた総額は三千五百九十六億円に上る。四千億円台だった一五、一六年度よりは減ったが、一四年度の千九百五億円を大幅に上回る高水準だ。F35を巡っては、トランプ次期米大統領が「計画も費用も制御不能だ」と批判し、米国防総省による購入費の削減に取り組む考えを表明。日本政府内にも「高額であることは間違いない」(高官)との意見がある。
◆圧迫
 一方、歳出の三分の一を占める社会保障費の伸びを少しでも抑えるため、医療や介護などの分野で国民の暮らしを圧迫するメニューはめじろ押しだ。一定の所得のある七十歳以上を対象とした医療費の自己負担上限を引き上げることや、後期高齢者医療制度の保険料の自己負担を段階的に増やすこと、さらには、中所得者を対象に介護保険サービスの利用者負担上限を高くすることなどが盛り込まれた。菅義偉官房長官は二十二日の会見で「社会保障と財政を持続可能にすることができるようにするということは当然。不断の取り組みが大事だ」と話して、翌年度以降の予算編成でも医療や介護での負担増が避けられないとの考えを早くも強調した。歳出は拡大していく一方だ。公共事業は老朽インフラの更新などで五兆九千七百六十三億円と微増ながら増加を続け高止まりだ。中でも五年連続で増やした防衛費は五兆円を突破しただけでなく、一六年度第三次補正予算案でも千七百六億円を計上する大盤振る舞いだ。高齢者の医療や介護では自己負担の増加を求める一方で、防衛費や効果が見えない「アベノミクス」の柱である公共事業を優先-。安倍政権の「本音」がより鮮明になった予算の姿を浮かび上がらせている。

*1-4:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/376438 (佐賀新聞 2016年11月14日) 国の借金1062兆円 過去最大、国民1人837万円
 財務省は、国債と借入金、政府短期証券を合計した9月末時点での「国の借金」が1062兆5745億円に達し、過去最大を更新したと発表した。国民1人当たり約837万円の借金を抱えている計算になる。高齢化で増え続ける社会保障費を賄うため、借金が膨らんだ。経済対策の財源として建設国債などを発行するため、2016年度末には1119兆3000億円程度になると財務省は見込んでいる。これまでは15年6月末の1057兆2235億円が最大だった。今年6月末からは9兆1069億円増えた。9月末の借金の内訳は、国債が926兆1383億円に上り、6月末に比べ7兆6619億円増加した。金融機関などからの借入金は9749億円増えて53兆6869億円。一時的な資金不足を穴埋めする政府短期証券は4701億円増の82兆7493億円だった。

*1-5:http://qbiz.jp/article/100680/1/ (西日本新聞 2016年12月25日) 過労死ない社会、母の願い 電通社員自殺1年で手記
 電通の新入社員、高橋まつりさん=当時(24)=が長時間労働の末、自殺してから25日で1年を迎え、母の幸美さん(53)が、電通の役員や幹部に「まつりの死に対して心から反省をして、見せかけではなく本当の改革を行い、二度と犠牲者が出ないよう決意していただきたい」と求める手記を公表した。「仕事のために不幸になったり、命を落としたりすることはあってはならない」とも記述。最後を「日本の働く全ての人の意識が変わってほしい」という一文で締めくくっており、過労死を招く社会の在り方を考え直すことを求める内容となっている。まつりさんが命を絶ったのは、昨年12月のクリスマスの朝。幸美さんは娘を失った喪失感を「あの日から私の時は止まり、未来も希望も失った。息をするのも苦しい毎日。朝、目覚めたら全て夢であってほしいと思い続けている」とつづる。夫と離婚後、静岡県で働きながら育て上げたまつりさんについて「困難な境遇でも絶望せず、10歳の時に中学受験をすると自分で決めた時から夢に向かって努力し続けた」と振り返り、電通に入社後も「期待に応えようと手を抜くことなく仕事を続けたのだと思う」と推察。「あの時、会社を辞めるよう強く言えばよかった。母親なのにどうして助けられなかったのか」と後悔を吐露している。今年9月にまつりさんの自殺が労災認定されると、東京労働局などが電通への強制捜査を実施。折しも政府の働き方改革実現会議の議論も進んでおり、長時間労働を抑制する機運が高まっている。こうした状況について、幸美さんは「まつりの死が、日本の働き方を変えることに影響を与えているとしたら、それは、まつり自身の力かもしれない」とする一方、「まつりは生きて社会に貢献できることを目指していた。そう思うと悔しくてならない」「本当の望みは娘が生きていてくれること」とも書いてあり、抑えきれない悲しみが伝わってくる。
   ◇   ◇
●午後10時全館消灯…改革半ば
 昨年12月に自殺した電通社員、高橋まつりさんの母幸美さんが、悲痛な思いをつづった手記を公表した。まつりさんは昨年春、電通に入社。東大在学中に就職先として広告大手を選んだのは「一流企業に就職し、お母さんを楽にしてあげたい」という思いがあったから。入社後はインターネット広告などを担当した。しかし、昨年10月に本採用になると業務が激増。月100時間以上の残業も強いられた。「死にたいと思いながらこんなストレスフルな毎日を乗り越えた先に何が残るんだろうか」。亡くなる直前まで書き込み続けたツイッターの文面を見ると、今となってはSOSにしか映らない。若者の雇用問題に取り組むNPO法人「POSSE」の今野晴貴代表は「企業の自主的取り組みだけでなく、長時間労働の法規制まで踏み込むべきだ」と、政府に注文を付けた。電通は午後10時以降の全館消灯を始めるなど改善に取り組むが「みんな仕事を持ち帰るようになっただけ」(20代社員)という声もあり、改革は道半ばのようだ。「会社の深夜の仕事が東京の夜景をつくっている」。まつりさんは生前、深夜残業がまん延している異常さを、こんな表現で幸美さんに伝えていたという。「制度をつくっても、人間の心が変わらなければ改革は実行できない」。幸美さんが突き付ける言葉が重く響く。
■電通社員の過労自殺 2015年4月に電通に入社した高橋まつりさんが、同年12月に東京都内の社宅から飛び降り、24歳で亡くなった。三田労働基準監督署は、長時間労働が原因として16年9月に労災と認定。まつりさんは自殺前「本気で死んでしまいたい」「もう体も心もズタズタだ」などの思いを会員制交流サイト(SNS)などに書き込んでいた。

<GDP>
*2-1:http://qbiz.jp/article/99717/1/ (西日本新聞 2016年12月9日) GDP下方修正、年1.3%増 内需低調、輸出頼み続く 7−9月期改定値
 内閣府が8日発表した7〜9月期の国内総生産(GDP、季節調整値)の改定値は、物価変動を除いた実質で前期比0・3%増、このペースが1年間続くと仮定した年率換算は1・3%増で、速報値の年率2・2%増から下方修正した。3四半期連続のプラス成長だが、個人消費など内需が弱い中で輸出がけん引する構図に変わりはなく、景気は力強さを欠いている。速報後に公表された法人企業統計を受けて企業の設備投資が下方修正され、民間在庫の減少も下押し要因となった。内閣府は国際基準の変更に伴い、今回から研究開発費を投資に追加するなどGDPの算出方法を変更。過去分にさかのぼって数値を修正した。改定値の内訳をみると、設備投資は速報値の前期比0・03%増から0・4%減と悪化。不動産業や鉄鋼業などで減り、2期ぶりのマイナスだった。GDPの6割を占める個人消費は0・1%増から0・3%増に改善。内閣府は「テレビや飲料販売、宿泊施設関連の増加がプラスに寄与した」と説明する。一方で、大和総研の長内智氏は「引き続き内需に力強さが欠けている点には留意しておく必要がある」と指摘する。輸出は速報値の2・0%増から1・6%増に下方修正されたものの2期ぶりに増加。実質GDPへの影響を示す外需の寄与度は0・3%と、押し上げ効果をもたらした。トランプ次期米大統領の政策が見通せないことなど、世界経済を巡る「不確実性の高い状況は続く」(黒田東彦日銀総裁)中で、今後も輸出が成長を主導できるかは流動的といえる。景気実感に近いとされる名目GDPは前期比0・1%増、年率換算0・5%増で3期連続の増加だった。
   ◇   ◇
●名目GDP31兆円拡大 15年度、国際基準見直しに伴い
 内閣府は8日、国際基準の変更に伴って国内総生産(GDP)の計算方法を見直した結果、2015年度の名目GDP確報値は532兆2千億円になったと発表した。安倍政権が目標として掲げる名目GDP600兆円にやや近づいた形だ。内閣府は新基準の採用に合わせ、GDPを過去22年分にさかのぼって改定した。16年7〜9月期の実質GDPは速報値に比べ下方修正されたが、内閣府は「基準改定による影響は分からない」と説明している。計算方法の見直しは、統計の精度向上が目的だが、基準変更に伴う影響だけで15年度の名目GDPは旧基準と比べ24兆1千億円拡大した。今回、約5年に1回実施している基準改定や、統計の基礎となる産業連関表の切り替えも行った。これらの影響も含めると、15年度の名目GDP確報値は旧基準の推計値から31兆6千億円増えた。GDPは一定期間に国内でつくり出されたモノやサービスの付加価値の合計額だ。計算方法は国連が定める国際基準を基に各国が決めている。今回の見直しは国際基準が08年に刷新されたことに対応したもので、日本では16年ぶりの大幅改定になる。もっとも大きな変更点は、これまで費用とされてきた研究開発費が付加価値を生む投資と認められ、GDPに加えるようになったことだ。名目GDPへの上乗せ効果は研究開発費だけで19兆2千億円あった。この他に、特許使用料や不動産の仲介手数料、防衛装備品なども加算された。

*2-2:http://www.nikkei.com/article/DGXLASFS08H0R_Y6A201C1MM0000/?dg=1&nf=1 (日経新聞 2016/12/8) 15年度の名目GDP、31兆円かさ上げで532兆円、基準改定、研究開発費など加算
 内閣府が8日発表した2015年度の名目国内総生産(GDP)の確報値は532.2兆円となった。研究開発費の加算など新たな基準に切り替えた影響などで、31.6兆円かさ上げされた。旧基準では500.6兆円に相当する。安倍晋三首相は20年ごろまでに名目GDPを600兆円に増やす目標を掲げており、100兆円の開きが一気に縮まることになる。新基準は統計の基礎となる産業連関表を、実勢に近い11年分に切り替える。これまでは05年分を使っていた。また国連の最新の基準を使い、推計方法も見直し、1994年まで遡って再計算した。GDPの押し上げに大きく影響したのは研究開発費で、それだけで19.2兆円上振れした。これまでは「経費」として扱ったが「投資」とみなしてGDPに加えた。このほか、特許使用料の加算が3.1兆円、不動産仲介手数料の加算が0.9兆円のかさ上げ要因になった。新基準への切り替えで、16年7~9月期の名目GDPは季節調整済みの年率換算で537.3兆円となり、過去最高を更新した。旧基準では日本経済がデフレに陥る直前の1997年10~12月期の524.5兆円(新基準では536.6兆円に相当)がピークだった。

<年金>
*3-1:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20161208&ng=DGKKZO10386900X01C16A2KE8000 (日経新聞 2016.12.8) 経済教室:家族の衰退と消費低迷(7)高齢者のお金は消費に回らず 中央大学教授 山田昌弘
 今回は高齢者の家族状況と消費との関連を示しましょう。10年ほど前、堺屋太一氏と対談したとき、堺屋さんは「これから高齢者消費の黄金時代が来る」と言われました。堺屋さんが名付けた「団塊の世代」が退職する。資産があり、年金もまだ高水準、時間も十分にある高齢者が消費市場に出てくるというのです。しかし、筆者は、欧米と違い、日本では「家族のあり方」が制約になり、次に挙げるいくつかの理由で、お金があってもなかなか消費に回らないのではないかと疑問を呈しました。まず、日本では通常、家計を妻が管理しています。筆者の調査では、現役世帯で4組に3組の夫婦が、夫は収入を全額妻に渡し、小遣いを妻からもらう形態をとっています。引退後も、財布のひもは妻が握るのが多数派です。すると、いくらお金があっても、夫は自由には使えません。団塊世代の夫婦年齢差は平均4歳で、平均寿命も6歳ほど女性が長くなっています。平均すれば、妻は夫が亡くなった後の10年を1人で生活しなければなりません。それを考えると、お金を夫に使わせたくないのです。さらに日本では夫婦共通の趣味を持つ高齢者は少なく、共通の趣味を楽しむために2人でお金を使う夫婦は少数派です。夫婦仲も欧米に比べて良いとは言えないので、自分の趣味のために夫婦のお金を使うと相手に嫌がられます。夫が引退後、田舎で暮らしたいと言っても、妻が反対して実現しないことが多いのです。子どもとの関係も問題になります。高齢者は子どもとの関係が悪化することに不安をもっています。現実に日本では、資産がない高齢者は子どもとの関係が疎遠になりがちです。これはいい悪いの問題ではありません。資産がなくなったら子どもから見捨てられるかもしれないという不安があるので、自分で使わずに持っていようという高齢者が増えるのです。また日本では、いざ病気や介護状態が長期化したとき、中流生活を維持しようとすれば、ヘルパーなど余分な費用がかかります。可能性は低くても、そのような状態になったときに困らないように、お金を取っておこうとするのです。

*3-2:http://qbiz.jp/article/100046/1/ (西日本新聞 2016年12月14日) 年金額の抑制強化へ、改革法成立 現役賃金下がれば減額
 年金制度改革法が14日午後、参院本会議で自民、公明両党や日本維新の会などによる賛成多数で可決、成立した。将来の年金水準を確保することを狙い、支給額の抑制を強化。毎年度の改定ルールを見直し、現役世代の賃金が下がれば高齢者への支給を減額する。中小企業に勤めるパートなどの短時間労働者は、労使が合意すれば厚生年金に加入できるようになる。現行制度では、支給額改定に際して高齢者の暮らしに大きな影響を与える物価の変動を重視している。2021年度以降は保険料の支払いで制度を支える現役世代の賃金を重視し、賃金が下がった場合は年金も必ず減額する。

*3-3:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/390819
(佐賀新聞 2016年12月28日) 年金新ルールで支給0・6%減 厚労省が試算公表
 厚生労働省は27日、先の臨時国会で成立した年金制度改革法に基づく支給額改定の新ルールが適用された場合の試算を公表した。リーマン・ショック時のような経済状況になり現役世代の賃金が下落すると、国民年金(老齢基礎年金)の支給水準は現行ルールよりも最大0・6%下がる。その分、将来受け取る世代は最大0・6%上昇する計算だ。支給額は毎年度、物価や現役世代の賃金を踏まえて改定されている。2021年度からは賃金が下がった場合は、その下落率に合わせて必ず減額するようルールが変更される。試算では、リーマン・ショックの影響を受けた08~09年度の賃金下落率を21~22年度に当てはめ、それ以降の支給水準を現行ルールと新ルールで比較した。賃金の下落は数年後の改定に反映される仕組みで、ルール見直しによる水準の低下は26年度に最も大きくなった。早い時期に支給水準が下がれば、その分、年金財政に余裕が生まれるため、現役世代が将来受け取る水準は上がる。43~44年度にかけての支給水準は新ルールの方が0・6%上昇した。

*3-4:http://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-251749.html (琉球新報社説 2016年4月6日) 年金運用巨額赤字 国民に失敗のつけを回すな
 政権の面目を保つために国民の資産を危険にさらすのは、もうやめにしてもらいたい。年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の2015年度運用損益が、専門家の試算で5兆円を超える巨額の赤字になる見通しが強まっている。安倍政権が金看板とするアベノミクスと連動した投資配分の変更が、いまや全て裏目に出た。GPIFが運用する約140兆円のうち、国内株式投資は25%、約35兆円とみられる。この半分、約17兆円を売りに出すだけでも市場の混乱は必至だ。損失拡大を防ぐ株式売却すらできない。まさに袋小路だ。国民の資産を守り、混乱を最小限に抑えるため、GPIFは緩やかな退却を模索する以外にない。GPIFの資産構成割合は、かつては比較的安全な国債60%、国内外の株式に12%ずつだった。2014年10月に資産構成割合を国債35%、国内外の株式で計50%へ変更したのは、日銀の大規模金融緩和により、国債の利回りが低下したことと株式市場が上昇基調にあったからだ。その後、市場が安定したのは、ほかでもないGPIFの資金が流入したからだ。株価を下支えしたのが国民の資産だった。ところが15年8月には中国を「震源地」とする世界同時株安が進み、日本市場も乱高下した。最終的に日経平均株価は15年度だけで2400円値下がりした。運用比率変更当初から複数のエコノミストが「年金運用の安定性が損なわれる」「年金資産が株価操作に使われる」と懸念したことが現実になった。GPIFの担当者は「長期的な視点で捉えてほしい」と言う。だが客観的に見れば、損失を出した当事者が責任を取らず、次世代に先送りしているとしか見えない。責任を取るべきは、株価上昇を演出するために国民の資産を相場につぎ込んだ安倍政権だ。しかも例年、6月末から7月上旬に発表している年度の運用実績を、ことしは参院選後の7月下旬に公表するという。選挙に影響しないよう公表を先送りする意図が見え、論外だ。政府は少子高齢化時代を見据え、年金給付抑制策を強化する。積立金が目減りすれば、つけは国民に回ってくる。政府は運用比率を見直すなど「長期的な視点から、安全かつ効率的」(国民年金法)な運用にかじを切るべきだ。

*3-5:http://www.saga-s.co.jp/news/national/10201/390597
(佐賀新聞 2016年12月27日) 厚労省、徴収ミス5年放置、後期医療、保険料6億円
 厚生労働省は27日、75歳以上が加入する後期高齢者医療制度で保険料徴収システムの不備があり、2008年度の制度発足時から全国的に計算ミスで保険料を過大、または過小に徴収していたと発表した。ミス発覚から5年放置していた。対象者の抽出などは来年1月以降に行うが、推計では約2万人、総額約6億円に上る可能性があり、取り過ぎた分は返還、不足分は追加徴収する。厚労省によると、11年から同省には制度を運営する都道府県の広域連合から正しい計算方法に関する問い合わせがあったが、個別対応で済ませ放置してきたという。

*3-6:http://mainichi.jp/articles/20161116/dde/007/010/037000c (毎日新聞 2016年11月16日) 無年金救済法.成立 加入期間短縮 新たに64万人受給
 国民年金や厚生年金を受け取るのに必要な加入期間(受給資格期間)を現行の25年から10年に短縮する改正年金機能強化法が16日、参院本会議で全会一致により可決、成立した。来年10月から約64万人が新たに年金を受けられるようになる見通しだ。受給資格期間は保険料を納めた期間や免除された期間を合計する。2015年10月に予定されていた消費税率10%への引き上げと同時に短縮する予定だったが、安倍政権による増税延期で先延ばしされていた。改正法は来年8月に施行。加入期間が10年以上25年未満の人は9月分の年金から受け取れるようになり、実際の支給は10月に始まる予定だ。無年金の人の救済につながる一方で、加入期間が短いと支給額は低く、将来低年金者が増えるとの懸念もある。国民年金の場合、加入期間が10年だと支給額は月約1万6000円、20年だと約3万2000円にとどまる。対象となるのは65歳以上の人と60代の前半から厚生年金の一部を受け取る人を合わせて計約64万人。費用は通年で約650億円。

<医療・介護>
*4-1:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12711673.html (朝日新聞社説 2016年12月18日) 高齢者負担増 将来像示し不安なくせ
 来年度から順次実施される医療保険と介護保険の見直し案が決まった。高齢者を中心に負担増を求める内容だ。医療では、70歳以上で現役並みに所得のある人の月ごとの負担上限額を、現役世代と同水準に引き上げる。75歳以上の保険料を本来より軽減している特例も段階的に縮小する。介護では、現役並み所得者の利用者負担を2割から3割に上げる。それより所得の少ない人も、住民税が課税されていれば月ごとの負担上限額が医療並みに上がる。会社勤めの人の保険料は賞与を含む収入に応じた負担とし、大企業の社員は重く、中小企業の社員は軽くなる。見直しの根底にあるのは「年齢を問わず、負担能力に応じた負担を求めていく」という考え方だ。4年前の社会保障・税一体改革大綱で示された方針だ。少子高齢社会のもと、社会保障費が膨らむ一方で、制度を担う現役世代は減る。高齢者は支えてもらう側、若い人は支える側という従来の考え方では、立ちゆかなくなる。高齢者でも負担ができる人には負担を求めることは必要だろう。ただ、生活の実態に照らして過重な負担にならないか、影響は丁寧にみる必要がある。とりわけ介護は、治療を終えれば負担がなくなる医療と違い、長期化する傾向にある。必要な介護サービスが利用できなくなれば、家族の介護のために仕事をやめる介護離職が増えてしまうかも知れない。影響を受けるのは高齢者だけでないことも、忘れてはならない。介護保険では、昨年夏に一定所得以上の人の利用者負担が1割から2割になったばかりだ。わずか1年あまりでさらなる引き上げを決めたのは、あまりに場当たり的との印象を与えた。負担はどこまで増えるのか。そんな先行きへの不安に応える改革の全体像と将来ビジョンを示すことが不可欠だ。政府は、社会保障費の伸びを抑えるために、さまざまな検討項目を示している。しかし、それらをどこまで、どう実施していく考えなのかが見えない。検討課題の一つだった軽度の人への介護サービスの縮小などは今回、見送りになった。今後、そうした給付の抑制にも踏み込むのか。給付の抑制が限界だというなら、今のサービス水準を維持するために、保険料や税の負担を増やすことも考える必要がある。サービスを担う人材の不足も深刻で、そのための財源も考えねばならない。社会保障制度の根本に立ち返った改革に取り組んでほしい。

*4-2:http://mainichi.jp/articles/20161216/ddm/002/010/128000c (毎日新聞 2016年12月16日) 社会保障費 1400億円抑制 高額療養など自己負担増
 厚生労働省は15日、自民党と公明党の部会で、2017年度予算で高齢化による社会保障費の自然増を約1400億円分抑制する案を提示し、大筋で了承を得た。焦点となっていた70歳以上の一般所得者(住民税が課税される年収370万円未満の人)が外来の窓口で支払う毎月の限度額を、現行の1万2000円から17年8月に1万4000円に引き上げる方針でまとまったほか、介護費の自己負担増、大企業に勤める会社員の介護保険料の引き上げなどによって抑制を図る。  医療費の毎月の自己負担額に上限を設ける「高額療養費制度」を見直し、約220億円を捻出する。70歳以上の一般所得者について、厚労省は当初2万4600円への引き上げを提案したが、引き上げ幅を圧縮し、年間上限額(14万4000円)も設ける。一方、18年8月には1万8000円に引き上げる。年収370万円以上の現役並み所得者は外来限度額を5万7600円とする。40~64歳の介護保険料は、収入に応じた計算方法「総報酬割り」による算出を段階的に導入し、収入の高い大企業のサラリーマンなどの保険料負担を増やす。来年8月の導入で500億円弱を確保する見通し。また、75歳以上を対象とする後期高齢者医療制度の保険料では、負担軽減のための特例を段階的に縮小し、180億円前後を確保する。介護保険で利用者の自己負担に上限を設ける「高額介護サービス費」は、住民税が課税される一般所得者の毎月の負担上限額を3万7200円から4万4400円に引き上げる。厚労省は17年度予算の概算要求で社会保障費の自然増を6400億円と見込んだが、財務省から最終的な増加を5000億円程度に抑えることが求められている。

*4-3:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/381488 (佐賀新聞 2016年11月29日) 75歳以上329万人に保険料軽減を廃止
 厚生労働省が2017年度から予定する公的医療保険制度の見直し案の全容が28日、分かった。75歳以上の後期高齢者医療制度では、所得が比較的低かったり、扶養家族だったりした人ら計329万人を対象に、保険料の特例軽減を廃止し、段階的に引き上げる。医療費の自己負担に月ごとの上限を設ける「高額療養費制度」でも、70歳以上の優遇措置を縮小する。厚労省は、後期高齢者医療と高額療養費の見直しで、17年度にそれぞれ国費350億円の抑制を見込む。30日の社会保障審議会の部会で提案し、来月上旬までに与党と調整して最終決定する。75歳以上が支払う保険料の軽減措置には(1)所得に応じた部分(2)定額部分-の2種類があり、合わせて900万人以上が対象となっている。このうち74歳まで専業主婦ら扶養家族だった人(169万人)の定額部分は、最大9割の軽減を17年度に5割に縮小。18年度には77歳以上で軽減を廃止し、保険料は現在の月380円から約10倍に引き上げる。所得に応じた保険料は現在徴収していないが、77歳以上は18年度から支払うようになる。また年金収入が年153万~211万円の160万人を対象に、所得に応じた保険料を5割軽減している特例も17年度に廃止する。定額部分を9~8・5割軽減する特例(約614万人対象)は、新たに75歳になる人を含め当面存続する。「高額療養費制度」では、70歳以上の上限を見直す。「現役並み所得」の人は、17年8月から外来医療費の月ごとの上限額4万4400円を5万7600円に引き上げる。18年8月からは特例を完全に廃止し、入院などを含めた世帯全体の上限も現役世代に合わせる形で引き上げる方針だ。

*4-4:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/389660 (佐賀新聞 2016年12月24日) 保険料増、介護3割負担 医療・介護制度見直し
■70歳以上の高額費上限額を引き上げ
 今回の見直しは、高齢者らの支払い能力に応じ、負担増を求めているのが特徴だ。医療では、患者の窓口負担が重くなりすぎないようにするため、月ごとの上限額を定めた「高額療養費制度」があるが、70歳以上を対象に上限額を段階的に引き上げる。年収370万円未満で住民税を課税されている人の場合、外来の上限額(月1万2千円)は2017年8月に1万4千円、18年8月には1万8千円になる。ただ持病などで通院している人は出費がかさむため、年間の上限額14万4千円(1万2千円の12カ月分)も新たに設けた。入院を含めた世帯当たりの上限額(月4万4400円)は5万7600円に上がる。年収370万円以上の人は、外来が月5万7600円に引き上げられた後、18年8月に上限がなくなる。入院を含めた世帯の上限額は18年8月以降、月8万100~25万2600円になる。後期高齢者医療制度に加入する75歳以上は、これまで特例で安くなっていた保険料が増える。所得が比較的低かったり、74歳まで夫や子らに扶養されたりしていた人が対象だ。このほか慢性疾患で医療療養病床に長期入院している65歳以上の人は、光熱水費の支払いが増える。18年4月以降は一律で1日370円(難病を除く)。介護では、サービスを主に利用する高齢者と、制度を支える現役世代が負担を分かち合う。現役並みに所得が高い高齢者は、18年8月から介護サービス利用時の自己負担が現在の2割から3割にアップ。さらに医療と同様に、月ごとの上限額(高額介護サービス費)も見直す。住民税が課税されている年収383万円未満の単身世帯などで、17年8月から上限額が7200円増えて月4万4400円に。収入が少ない世帯は3年間に限り、年間の上限額を据え置く。40~64歳が支払う保険料は、収入に応じた「総報酬割」と呼ばれる計算方式に変更。20年度までに段階的に導入し、大企業の社員や公務員の負担が増えることになる。
■高額医療・介護費、合算制度で払い戻しも 
あまり知られていないが、1年間(毎年8月から翌年7月)に支払った医療と介護の自己負担額を合算して、一定額を超えた場合は払い戻しを受けられる仕組みがある。「高額介護合算療養費制度」または「高額医療合算介護サービス費制度」と呼ばれ、市町村に毎年申請しないと利用できないので注意が必要だ。数十万円が戻ってくるケースもある。井戸さんは「手続きに手間がかかるが、分からないときは市町村の