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2017.11.12 政治家に占める女性の割合が小さくなる理由は何か (2017年11月13、15、16、18、20日に追加あり)
  
  政党別当選者像     選挙前からの増減      女性当選者の推移
 2017.10.23西日本新聞               2017.10.23西日本新聞

(1)衆議院議員の選挙結果は男女平等か
1)第48回衆議院議員選挙の結果
 世界経済フォーラム(WEF)は、*1-1、*1-2のように、2017年11月2日、世界各国の男女平等度合いを示した2017年版「ジェンダー・ギャップ指数」を発表し、日本は女性閣僚や女性議員の少なさから政治が123位と20位も順位を下げたそうだ。女性の健康と識字率については世界1だが、高等教育進学率は101位と低く、専門職や技術職には女性が少なく、これらが男女の収入格差の一因となり、女性は同じ専門職や技術職でも採用・配置・研修・評価・昇進で差別されがちであるため、それらの総合的な結果として今回の順位が出ているわけである。

 世界経済フォーラムの「ジェンダー・ギャップ指数」で日本の順位が次第に下がってきた理由は、他国はまじめにジェンダー・ギャップの解消に取り組んでいるが、日本は掛け声倒れに終わっているためで、①一般国民が両親として子にジェンダーを含む価値観を与え、教育の選択を行っている ②公立高校でさえ男女別学にして男女で教育内容を違えている地域がある ③職場での採用・配置・研修・評価・昇進や選挙を通じて女性差別を行っている などが、その背景にある。また、私立学校には、小学校から男女別学のところさえある。

 その結果、「女性の幹部社員や政治家の少なさは『家事との両立困難』『女性自身のチャレンジ精神のなさ』などが原因だ」とするようなメディアの論調も多く、家事を女性の役割と決めつけ、女性は積極的でないとする男性中心社会の女性に対する偏見や責任転嫁があるが、家事は収入が多ければ外部委託でき、残りの家事をどちらが分担するかは家庭内の経済格差によって合理的に決まるため、本当はチャレンジ精神のある女性が全女性に占める割合は、チャレンジ精神のある男性が全男性に占める割合より少なくはないだろう。
(注1:動物行動学では、「人間に近い猿で、海水でイモを洗う新しい行動を始めたのはメス猿で、子猿たちがそれを真似して次世代に伝え、イモ洗い行動はその群れの文化となったが、大人のオス猿は最後まで新しい行動をしなかった」という研究事例がある)

2)今回の当選者と女性について
 このように、女性蔑視やジェンダーによる差別によって作られた形式上のもしくは実際の実力差のため、国民のリーダーとなるべき国会議員に占める女性割合は増えないわけだが、*1-3のように、西日本新聞が衆院選当選者を分析したところ、前職81.0%で、平均年齢54.8歳、出身は首長・地方議員などの地方政界が31.5%と最多で、国・地方を合わせた官僚・議員秘書がともに15.8%で同数だったそうだ。

 また、女性が全当選者に占める割合は10.3%で、「2020年に指導的地位に占める女性の割合を30%にする」という政府目標には遠かった。私は、「家事を担ったことがなく、自分は消費者ではないと考えている男性が多いため、このような馬鹿な政策が行われて惨憺たる結果が出ている」と感じることが多いため、2020年に指導的地位に占める女性割合を30%にするという政府目標は達成すべきだと考える。

 そのためには、「女性蔑視やジェンダーを無くして、堂々と30~50%の女性が議員に当選する状況を作る」というのが正論だが、女性が候補者となることすら難しいジェンダーの多い地域も少なくないため、*1-4のように、「クオータ制を推進する会」代表の赤松良子元文科省らが「政治分野における男女共同参画推進法案」の成立を働き掛け、各政党に対して衆院選の比例代表で女性候補を名簿上位とするよう求めるなどの取り組みを提案していたわけである。これを逆差別だと言う男性は多いが、私は、女性の当選を不利にする強固な障害が背景にあるため、その背景がなくなるまでは、この仕組を逆差別だとは思わない。

(2)女性蔑視を振りまくメディアと周辺の対応
 メディアは、連日、豊田真由子前衆院議員が元秘書の男性に暴言や暴力を行ったと報道していたが、豊田議員の地元固めの努力に比べて、元秘書の“失敗”はひどすぎる上、録音・録画がなされていたことから、豊田議員は陥れられたように思えた。しかし、*2-1のように、埼玉県警は豊田前議員が落選したところを見計らって、「傷害」「暴行」の疑いで書類送検したそうだ。

 ちなみに、私も、2005~2009年の衆議院議員時代、国会のない日は、地元廻りに精を出し、国政報告会を開き、地元の式典に参加したりして、盆も正月もなく草の根の活動をしていたが、「(ミスだらけの)秘書が大変ね」と言う人は多かったものの、私に対する労いや励ましの言葉は夫以外からはあまり聞かなかったので、その状況が推測できるのである。

 しかし、*2-2、*2-3、*2-4のように、当選を重ねて「希望の党」の代表選に出られた大串氏の場合は、「大串氏『保守王国崩す』、草の根の活動結実」と称賛されている。私は、大串氏と同じ地元活動をしていたので、同じ行動に対するこのようなメディアの論評の違いが世間に流布し、一般の人の先入観となって女性に対する強固な天井を作っていると確信する。

 なお、私は、佐賀県の式典でご一緒することが多かったため大串氏をよく知っており、その能力を認めており、大串氏の野党との統一会派を目指す路線にも賛成で、あくまで路線闘争を正面から訴える作戦を貫いて今後の流れに繋げることも重要だと思っているが、同じことを女性がやるとおかしな論評をするメディアをはじめ一般国民の意識が問題だと指摘しているのである。

 そして、ジェンダーについては、*2-5のように、佐賀新聞だけでなく全国紙の朝日新聞もメルケル首相に関して、「首相になって12年。実直で優れた指導力から『鉄の女』とも評される」「地元では、情を尽くして有権者と触れあう素顔を見せた」「政治家が地盤を守るには泥臭さもいる」などと記載している。しかし、女性がリーダーとして当然のことをすれば「鉄」と表現するのはジェンダーそのものであり、女性リーダーをやりにくくする。また、有権者と触れあう機会を多く作って有権者のニーズを知るのは男女にかかわらず政治家として当然のことだ。さらに、有権者のニーズを知って必要な政策をとるのは泥臭いことではなく当然のことだが、解決法を誤ればモリ・カケ問題のようになるため、見識の高さが必要なのである。

(3)私に関する偏向報道の事例
1)女性蔑視で偏向した報道とブログ
 私に対してなされた典型的な女性差別は、*3-1のように、週刊文春に、「83会の奇人変人」という題名で書かれた「東大卒で公認会計士という経歴をもつ広津女史。エキセントリックな点があり、ストレートにモノを言う。党本部や国会内の会合での質問に、いつも場が凍る」というものだ。

 この記事は、東大卒でも専門職でもない男性読者が「わが意を得たり」と感じるように、女性蔑視をふんだんに盛り込んだ真実ではない内容を記載しており、その結果、私の後援会作りを邪魔し、自民党の公認を得るのを妨げ、ひいては衆議院議員という職を失わせたため、「名誉棄損」「侮辱」として東京地裁に提訴して東京高裁で完全勝訴したものだ。しかし、日本の裁判所は、機会費用を認めないところが不完全である(http://hirotsu-motoko.com/weblog/index.php?c=19-22 参照)。

 また、*3-1のブログは、「自民党から小選挙区で公認してもらえなかったから」「自民党の比例区の名簿で優遇してもらえなかったから」という理由で(みんなの党に)来たらしい候補がいますね。・・・とくに広津前議員は、真偽の程はわかりませんが、以下の記事を読む限りでは、かなり“電波”な人では?」として、この女性蔑視の偏見に基づいた週刊文春の虚記事を引用し、2009年の衆議院議員選挙直前から掲載し続けている。さらに、このブログは反論もできない上、削除依頼もできない状態になっているのだ。

 そして、国会議員・公認会計士・税理士は、どれも人から信頼されなければできない仕事で、私はそれを築くために一生をかけて努力してきたため、この政治活動の妨害や営業妨害は、一般の女性のように笑って受け流したり、気分を変えたりすれば済む話ではないのである。

2)底の浅い決めつけ報道
 西日本新聞は、*3-2のように、政治取材に携わって20年余で、劇場政治の危うさとうさんくささは骨身に染みていたと言う記者が、「①『劇場型政治』はもう終わりに」「②郵政解散当時の小泉純一郎劇場のように爆発的人気を集めた劇場はなかった」「③1番人気は安倍劇場だったが、5年近くも同じでは観客に飽きがくる」「④耳目を集めるだけの劇場型政治は終わりにして地に足の着いた政策本位の政治にしてほしい」「⑤芸は未熟なのにスターと思い込み、トラブルを引き起こす「チルドレン」役者が増殖しなかったことだけはよかった」と記載している。

 しかし、②は、まさに政策を問うて解散した選挙であり、その後の解散総選挙はすべて政策を問うているため、④も当たらない。それでも、耳目を集めるだけの劇場型政治と感じたのであれば、それは、20年余りも政治取材に携わってきたという西日本新聞記者の底の浅い理解とそういう理解に基づいた内容のない報道の結果である。また、①の西日本新聞記者が言う“劇場型政治”は、実際には政策を主張して選挙を行い、国民はそれに注目したものであるため、これを終わりにすれば主権在民・民主主義は成立しない。さらに、③の「5年近くも同じでは観客に飽きがくる」というのは、それこそ政策を論評しておらず、自分がプレイヤーの主権者であることを忘れ、観劇する客であるかのように思っているレベルの低い発言だ。

 なお、九州で、⑤の「芸は未熟でトラブルを引き起こす『チルドレン』役者が増殖しなかったことだけはよかった」というのは、上記(3)1)などを前提にした私のことだと思うが、(3)3)に書くように、政治経験が長いから有能で、そうでないから未熟な「チルドレン」だと論評すること自体、年功序列の発想に基づいており、実力や成果を重視しない決めつけだ。そして、私の場合は、私がトラブルを引き起こしたのではなく、問題でないものを問題視したり、トラブルにしたりされたものであるため、原因のありかを間違わないようにしてもらいたい。

3)では、長期間政治に関わったという人は、国のためになることをしたのか
i)国の歳出について
 財務省は、*3-3のように、2017年11月10日、国債(949兆9,986億円)・金融機関からの借入金(52兆6,532億円)・政府短期証券(77兆7,888億円)を合計した国の借金が9月末時点で1,080兆4,405億円となり、過去最大(最悪)を更新したと発表した。

 しかし、この間、必要十分な年金積立金は積まれず、介護保険制度も時間ばかりかかって不十分で、少子化が著しくなるまで保育所の整備もされなかった。さらに、多額の農業補助金を使って耕作放棄地を増やし、食料自給率を先進国の中で最低にし、そのほかにも馬鹿な政策を多々行っているのだから、議員・官僚・議員秘書などとして長期に渡って政治に関わってきた人こそ、必要なことをした実績がなく、政治家として不適格な人が多いわけである。

 そして、今後、どうしても行わなければならないのは国への複式簿記による公会計制度の導入であり、これによって国の収支の全貌が発生主義で網羅性・検証可能性をもって開示されるようになれば、本当に役立っている政策に効果的に予算を付けられ、より小さな歳出でより大きな効果を得られるようになる(http://www.jbaudit.go.jp/koryu/study/mag/pdf/j22d05.pdf#search=%27%E5%9B%BD%E3%81%AE%E5%85%AC%E4%BC%9A%E8%A8%88%E5%88%B6%E5%BA%A6%27 参照)。

 なお、私は、公認会計士・税理士として第二次・第三次産業の多くの企業を見てきた経験から、農業政策については衆議院議員になってすぐ、①農業の規模拡大による生産性向上 ②生産物のブランド化による付加価値向上 などを提唱し、私が発案したふるさと納税とも相まって、次第に実現しつつある。また、介護保険制度や保育については、東大医学部保健学科卒の知識と働く女性としての経験により、私が経産省に提唱してできたが未完成で、年金制度については、公認会計士として企業には退職給付会計を導入したが、公的年金は未導入という具合だ。

 このように、私は、この25年間、重要な改革を提言して実現させてきた実績があるが、これらは、長期間、政治家をしていたからできたのではなく、東大医学部保健学科卒で公認会計士・税理士としてBig4で働いてきたから持っている知識と実務経験があるからできたものである。

ii)環境について
 マクロ経済学は環境や資源の制約、人口構成の変化によるニーズの変化、技術革新などを考慮していないが、地球温暖化等の公害防止と経済成長は、エネルギーの転換や製造方法の変換で両立できるもので、転換期には投資が増えるため、経済成長はむしろ促進される。

 そのため、*3-4のような「パリ協定」や再エネ・省エネなどへのエネルギー転換は、化石燃料の少ない日本にとっては願ってもない福音の筈だが、「太陽光発電のコストは高い」等々のくだらない理由を付けて化石燃料や原発再稼働に固執し、エネルギーの転換に消極的なのが、その殆どを男性が占める我が国の政治家及び経済界のリーダーたちなのである。

 私は、水・食品・空気に関心を持ち、家族の健康に留意している女性の方が環境政策に敏感なのではないかと思うが、メディアはじめ国民は、何故こうなるのかを調査して解決すべきだ。

(4)女性への偏見ができる理由
 関東地方以北には、公立高校でも男女別学の地域が多く、*4-1のように、埼玉県も県立高校が男女別学で、広島市出身の教育長と同様、私もびっくりした。私は、埼玉県在住だが、決してそれをいいとは思っておらず、公立高校が男女別学なのは憲法違反であるとともに、価値観が形成される感受性の高い時期に男女別学にして異なる教育をするのは、男女平等や女性の社会参加を進める上で非常に悪いと考えている。

 しかし、私立高校も男女別学のところが多く、関東地方以北は、男女共学の進学校の選択肢が少ないのである。この教育の悪さは、それをカバーするため親に負担をかけるので、保育所の不備と同様、働き続けることを優先した私が子ども作らなかった原因の一つだ。

 そして、佐賀新聞も化石のように、*4-2の「夫は外で働き、妻は家庭を守るべきか」などという調査をしたそうだが、西日本の佐賀県民も「男性は外で仕事、女性は家庭」という性的役割分担に賛成する人が33.2%いるという結果だそうだ。しかし、賛成が最も多いのは70代以上の男性で、それでも51.2%(約半分)だったのは、時代の価値観を変えた感がある。太陽

<第48回衆議院議員選挙結果と男女平等>
*1-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20171102&ng=DGKKZO22985930R01C17A1CR8000 (日経新聞 2017.11.2) 男女平等指数 日本は114位 過去最低、女性の政治参画遅れ
 世界経済フォーラム(WEF)は2日、世界各国の男女平等の度合いを示した2017年版「ジェンダー・ギャップ指数」を発表した。日本は調査対象144カ国のうち、114位と前年より3つ順位を落とし、過去最低となった。女性の政治参画が遅れているのが主な理由で、1日に発足した第4次安倍内閣の女性活躍の推進が一層問われそうだ。同指数は女性の地位を経済、教育、政治、健康の4分野で分析し、ランキング化している。日本は女性の閣僚や議員の少なさが目立ち、政治は123位と20も順位が下がった。10月の衆院選では定数の約1割にあたる47人の女性が当選したが、海外と比べると政治進出は遅れている。経済は114位と4つ順位を上げたものの、依然低い水準だ。男女の収入格差が大きいのが影響しているうえ、専門職や技術職で女性が少ない。教育は識字率は世界1位だが、高等教育の進学率が101位と低く、同分野全体で74位にとどまっている。健康は出生時の男女のバランスの改善で、40位から一気に1位に浮上した。上位10カ国の顔ぶれは順位に変動はあるものの、前年と同じ。首位は9年連続でアイスランド。女性の政治への参画が際立つほか、男性の育児休業も普及している。

*1-2:http://qbiz.jp/article/121963/1/ (西日本新聞 2017年11月2日) 男女平等、日本は114位 政治進出の遅れが最大の原因
 ダボス会議で知られるスイスの「世界経済フォーラム」は2日、2017年版「男女格差報告」を発表した。日本は調査対象となった144カ国中114位で、前年より順位を三つ下げ、先進7カ国(G7)で最下位だった。女性の政治進出が遅れているのが最大の原因。報告書では日本は政治、経済分野で男性との格差が大きく、特に政治分野(123位)では女性の議員や閣僚が少ないことなどから前年より順位を20下げた。経済分野(114位)も前年より順位を四つ上げたものの、幹部社員の少なさなどの問題が指摘された。首位は9年連続でアイスランド。2位ノルウェー、3位フィンランド、4位ルワンダで、北欧諸国が上位に並んだ。米国は49位、中国は100位、韓国は118位だった。アジアのトップはフィリピンの10位だった。世界経済フォーラムは「2006年に報告書の発表を開始してから初めて世界的に男女格差が広がった。特に政治、経済面で逆戻りし、このままでは格差解消に100年かかる」と警告した。男女格差報告は各国の女性の地位を経済、教育、政治、健康の4分野で分析、数値化している。

*1-3:http://qbiz.jp/article/121142/1/ (西日本新聞 2017年10月23日) 新議員はこんな人たち 前職81%、平均55歳、地方政界出身
 当選者の新旧別、平均年齢、出身から新議員像を探った。(23日午前11時半現在で当選者未判明分を除く。自民党が追加公認した無所属候補3人は無所属として集計した)
【新旧別】前職が370人と81・0%を占め、うち253人が自民党だった。新人は56人(12・3%)で前回衆院選の43人から増えた。元職は31人。政党別の新人は立憲民主党が23人でトップだった。自民党が19人、希望の党が9人だった。
【年代】新議員の平均年齢は54・8歳で前回の53・1歳より高かった。政党別で最も若いのは希望の党の49・5歳。日本維新の会が49・7歳で続いた。自民、公明、共産、立憲民主の各党はいずれも50歳代だった。1人が当選した社民党は72歳。
【出身】首長や地方議員といった地方政界出身が144人(31・5%)と最多。次いで国、地方を合わせた官僚と、議員秘書がともに72人(15・8%)で同数だった。
●女性当選者は47人
 衆院選の女性当選者は47人となり、前回2014年の45人より2人増えた。過去最多だった09年の54人には届かなかった。当選者に占める割合は10.3%。政党別では、自民党が前回(25人)より5人少ない20人。安倍政権は女性の活躍推進を掲げているが、結果は振るわなかった。他は立憲民主党が12人、公明党が4人、共産党が3人、希望の党が2人、日本維新の会が1人、無所属が5人だった。今回立候補した女性は209人。全候補者の17.7%と割合は過去最高とはいえ「男女均等」には遠く及ばない。政府は「20年に指導的地位に占める女性の割合を30%にする」との目標を掲げているが、隔たりはまだ大きい。データは23日午前9時現在で当選者未判明分を除く。自民党が追加公認した無所属候補は無所属として集計した。
●新人議員は56人
 今回の衆院選で当選した新人議員は56人で、小選挙区比例代表並立制が導入された1996年以降、最少となった前回選挙の43人を13人上回った。党派別では今回躍進して野党第1党となった立憲民主党で最多の23人が当選、自民党が19人と続いた。他は希望の党が9人、公明党が2人、日本維新の会が2人、無所属1人。前回は新人14人が当選した共産党はゼロだった。最年少は希望の党の緑川貴士氏(32)(比例東北)、最高齢は立憲民主党の長尾秀樹氏(65)(比例近畿)と自民党の佐藤明男氏(65)(比例北関東)だった。

*1-4:http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201709/CK2017093002000123.html (東京新聞 2017年9月30日) 女性候補者増を「争点に」 「男女半々」求める法案 解散で廃案
 女性議員を増やすため、政党に選挙候補者を男女半々にするよう求める議員提案の「政治分野における男女共同参画推進法案」が、衆院解散により廃案になった。これを受け、二十九日、東京・永田町の衆院第一議員会館で抗議集会が開かれ=写真、成立を働き掛けてきた「クオータ制を推進する会」代表の赤松良子元文部相(88)は「総選挙の争点にしたい」と訴える。法案には与野党とも合意済みで、先の通常国会で成立するとみられたが、「共謀罪」法を巡る駆け引きなどで審議入りしなかった。集会で赤松さんは「延々と積み重ねてきたものが解散でぶっ飛んじゃった。また第一歩から始めないといけない」と嘆く。集会では、各政党に対し衆院選の比例代表で女性候補を名簿上位とするよう求めるなどの取り組みが提案された。終戦時に十五歳だった赤松さんは、参政権のなかった戦前の女性の立場の弱さを知っている。旧労働省婦人局長として一九八五年の男女雇用機会均等法の成立に尽力。九九年には社会のさまざまな場の性差別をなくす「男女共同参画社会基本法」ができたが、政治の世界は取り残された。今回の解散前の衆院の女性比率は9・3%で、世界各国の女性議員の割合などを調べている国際組織「列国議会同盟」のデータでは百九十三カ国中で百六十四位。「選択的夫婦別姓の実現や待機児童問題解消など、女性の望む政策が通りにくい偏った政治になっている」と赤松さん。「女性議員を増やすことへの姿勢も、投票の判断材料にしてほしい」と話している。 

<女性蔑視を振りまくメディア>
*2-1:http://digital.asahi.com/articles/DA3S13201928.html (朝日新聞 2017年10月27日) 豊田前議員、書類送検 元秘書への傷害容疑 埼玉県警
 元秘書の男性を暴行したとして、埼玉県警は27日、22日の衆院選で落選した豊田真由子前衆院議員(43)を傷害と暴行の疑いで書類送検した。捜査関係者が明らかにした。前議員はこれまでの調べで「頭を殴ったわけではなく、肩をたたいた」と話していたという。捜査関係者によると、豊田前議員は5月、埼玉県内を走行していた乗用車内で、当時政策秘書だった50代の男性の頭を殴ったり、背中を蹴ったりしてけがをさせた疑いがある。豊田前議員は2012年の衆院選で自民党から立候補して初当選した。しかし6月に発売された「週刊新潮」が暴行疑惑を報じたため、離党届を提出。衆院選に埼玉4区から無所属で立候補したが落選した。

*2-2:http://www.saga-s.co.jp/articles/-/140745 (佐賀新聞 2017.10.24) 大串氏「保守王国」崩す 佐賀2区、=2017衆院選さが=草の根の活動結実
 地をはうように広い選挙区を駆けずり回った努力が結実した。激戦の衆院選佐賀2区は希望前職の大串博志さん(52)が猛烈な追い上げで大逆転劇を演じ、「保守王国」の牙城を崩す歴史的勝利を収めた。台風の影響で2日間に及んだ開票作業の末、全国で最後の小選挙区当選者となった。武雄市の事務所で支援者約550人の歓喜に包まれながら、「野党をしっかりまとめていくリーダー役を果たす」。高らかに宣言した。選挙区割り変更で事実上の国替えとなった前回は3万2千票差で破れた。堅い保守地盤の現実を突き付けられ、「地域に入って縁を紡ぐ」。草の根の活動を貫く覚悟を決め、後援会づくりに奔走した。地区単位で行事をチェックして国会議員が来たことがない所にも顔を見せ、住民と膝を付き合わせた。衆院解散時に決めた合言葉は「小選挙区で勝つ」。3年間で公民館など千カ所を訪ね、「車の走行距離は地球何周のレベル」(事務所スタッフ)。深まった自信は新党への合流で揺さぶられた。「新党を率い、右過ぎず自分が思う中道をやる」。政治家人生での最大の決断に触れた陣営の幹部たちも腹が据わった。腰が低くていい人から一変して街演や集会で見せる鬼気迫った表情に、支援者たちが突き動かされた。地域に根付かせた後援会がフル稼働して親類や知人にくまなく声掛け。「安倍1強政治」に諦めを抱く有権者の関心も呼び起こし、批判票を取り込んだ。「自民圧勝、希望埋没」の全国情勢もはねのけたが、当選後には「希望は正直逆風だった」と本音を吐露した。事務所で一人一人とあいさつを交わして責任をかみしめつつ、「政策が違うといって排除していると野党議員の責任が果たせない。協力できることは協力し、安倍政権に対抗できる大きな塊をつくることを多くの議員に呼び掛けていく」と決意を新たにした。

*2-3:http://www.saga-s.co.jp/articles/-/146855 (佐賀新聞 2017.11.9) 大串氏、希望代表選 支えた「懐刀」ついに決起、経験重ね、挑戦に自負心
 陰ながら歴代代表を支え続けてきた「懐刀」がついに舞台に上がった。「首相補佐官、政調会長を経験し新しさも兼ね備えながら引っ張っていく立場になるには、ちょうどいい頃かなと思う」。8日、共同代表選への立候補届け出を終えた希望の党の大串博志衆院議員(佐賀2区)は記者会見で、政治家としての新しいステージへの挑戦に際し、自負心をのぞかせた。「大串氏は代表選に出るつもりだ」。衆院選のさなか、陣営の一人が語った。自他共に認める政策通が演説で政策を語らず、打倒安倍政権だけを訴えた。「代表になり、自ら党を引っ張る。あいまいな公約に触れなかったのは決意の現れだったのだろう」。相手は小池百合子代表に近い結党メンバーの支援を受ける玉木雄一郎氏。共同会見でも玉木氏は小池代表の「安倍1強許すまじ」という言葉をなぞったが、大串氏は「私は安倍政権を倒すと言っている。その差は大きい」と語る。党内にも「玉木陣営は与党や日本維新の会と連携を考えているのではないか」との見方があり、大串氏は「積極的に野党との統一会派を目指す」と路線の違いを打ち出し支持を広げたい考えだ。現状、大串陣営は「相手候補がリードしている」とみている。それでも強引に切り崩すことはせず、あくまで路線闘争を正面から訴える作戦を貫く。陣営の一人は「票数で党の温度が分かる。それが代表選後の大きな流れをつくる」と胸の内を明かす。

*2-4:http://www.saga-s.co.jp/articles/-/147320 (佐賀新聞 2017.11.10) 希望の党、共同代表に玉木氏、大串氏を大差で退ける
 希望の党(代表・小池百合子東京都知事)は10日午前、両院議員総会を国会内で開き、玉木雄一郎(48)、大串博志(52)両衆院議員が立候補した共同代表選の投開票を実施した。若手からベテランまで幅広い支持を集めた玉木氏が大串氏を退け、国会議員を率いる共同代表に選出された。得票は玉木氏39票に対し、大串氏14票と大差がついた。任期は小池氏に準じて2020年9月まで。玉木氏は選出後、同僚の議員らに「国民に寄り添い、地に足のついた土のにおいがする本物の国民政党を、皆さんと共につくりあげていきたい」と呼び掛けた。

*2-5:http://digital.asahi.com/articles/DA3S13198534.html (朝日新聞 2017年10月26日) 特派員メモ バルト:「鉄の女」別の顔
 ドイツ北東部のバルト。人口9千人弱の小さな町で、メルケル首相の演説を聴いた。9月の総選挙で、彼女が地元選挙区を訪ねたときだ。小雨の中、切り出した。「この町のトマトは世界一おいしい」。選挙中、別の町で批判的な有権者からトマトを投げつけられたのを逆手に取ったようだ。私も食べたが、世界一は言い過ぎかな。今度は、地元鉄道の延伸を求める垂れ幕を見かけるや、「数カ月で実現するでしょう」。おや、利益誘導めいた発言もするのだな。30分の演説を終えると、「サインや記念撮影もできますよ」。支持者の列が途切れるまでたっぷり20分、「ファンサービス」に応じた。地元選挙区にあるシュトラールズントの市長は「彼女は毎月一度は必ず地元に帰る」という。過去に米国やフランスの大統領を招き、地元の知名度アップにも励んできた。首相になって12年。実直で優れた指導力から「鉄の女」とも評される。だが、地元では、情を尽くして有権者と触れあう素顔を見せた。政治家が地盤を守るには泥臭さもいる。国は違えど、そんな共通点が垣間見えた。

<私の事例>
*3-1:http://www.asyura2.com/09/senkyo69/msg/142.html (ブログ 2009 年 8 月 12 日) 「みんなの党」は、政策はいいと思いますが、メンバーに信用できない人たちがいます。
「自民党から小選挙区で公認してもらえなかったから」「自民党の比例区の名簿で優遇してもらえなかったから」という理由で来たらしい候補がいますね。元・自民党の清水前議員とか、同じく元・自民党の広津前議員とか・・・。およそ、政治信条とか理念などの類を持ち合わせている候補とは思えない。とくに広津前議員は、真偽の程はわかりませんが、以下の記事を読む限りでは、かなり“電波”な人では?
●武部幹事長弁当事件 83会の「奇人変人リスト」
「その瞬間、議員一同、凍りつきました」(山崎派議員)。山崎派の会合でのこと。山崎卓氏が「総裁選(の出馬)も考えてみたい」と言うと、一人の女性議員が手を挙げた。“ミセス空気が読めない女”と呼ばれる小泉チルドレン。誰もがひやりとしたのも遅く……。佐賀三区のがばい刺客、広津素子議員(54)は真顔で山崎氏に進言した。「山崎先生は女性スキャンダルでイメージが悪いので、難しいと思います」。自民党議員が笑いを噛み殺しながら言う。「“今週の広津語録”と言われるくらい、破壊的な発言が永田町を駆け巡っています。有名になったのは、佐賀の日本遺族会の方が東京に挨拶にみえた時。話を聞いた後、広津さんは、『遺族、遺族って、一体、何の遺族ですか』と(笑)。〇五年の郵政選挙の大量当選が生んだ珍現象です」。東大卒で公認会計士という経歴をもつ広津女史。「エキセントリックな点があり、ストレートにモノを言う。党本部や国会内の会合での質問に、いつも場が凍る」(別の自民党議員)。伊吹文明幹事長が党税調小委員長だった時、伊吹氏の説明が終わると、新人・広津氏が挙手をするや……。「伊吹先生の説明ではわかりにくいと思いますので、代わって私が説明します」。絶句したのは伊吹氏だけではない。農政の会合で農家による説明が終わると、広津氏が総括(?)した。「皆さん、農業をやめて転職したらいいと思います」。極めつけが「牛肉弁当事件」。チルドレンの親分、武部勤幹事長(当時)が、「いつでもメシを食いに来なさい」と新人たちに声をかけると、本当に広津氏は幹事長室に行って、置いてあった牛肉弁当を勝手に食べてしまったというのだ。その恨みではないだろうが、武部氏は新人議員のグループ「新しい風」に広津氏を誘っていない。抗議する彼女に、武部氏は「あれは仲良しクラブだから」と逃げたつもりが、逆に「私は仲良しじゃないんですか!」と怒らせてしまった。広津氏は小誌の取材に「全部まったくのウソです」と否定するが、広津語録は議員の間で今も更新中だ。
●派閥のドン山拓に「引退勧告」しちゃった広津素子センセイ  週刊文春07年10月4日号より
“ミセス空気が読めない女”と呼ばれる、小泉チルドレンの広津素子議員(54)。昨年末、彼女は所属する派閥のボス山崎拓氏(71)にこう直談判したと言う。「先生はもう七十歳を超えている。辞めるべきだと思います!」話は次期衆議院選挙、佐賀三区の公認問題を巡って切り出された。広津議員は現在、郵政造反・復党組である保利耕輔議員(73)と激しい公認争い中。保利氏に対して前述のように「七十歳を超えて~」と批判し、「山崎さんから若い人に道を譲るように言って下さい」と続けた。山崎派議員が苦笑しながら語る。「山崎先生は保利先生と同世代。保利先生に年だから辞めろなんて、山崎先生の口から言える訳がありません。広津さんの言葉を聞いて山崎先生は、『それは俺にも辞めろと言っているのか!』と激怒したようです」。ちなみにヤマタクが総裁選への意欲を示したときも、「山崎先生は女性スキャンダルでイメージが悪いので難しいと思います」(小誌〇七年十月四日号既報)と広津氏は直言している。山崎派の重鎮、野田毅議員が新人を集め食事会を開いたときもこんな事件が。野田氏が「地方経済は疲弊している。今こそ地方への配慮が必要だ」などと持論を語り終えたあと、広津氏はこう言い放った。「先生は古いタイプの政治家ですね」。出席していた一年生議員が振り返る。「一瞬、場が凍りつき、われわれも冷や汗をかきました。野田さんは明らかに不機嫌だった。ご馳走になっているのに、普通そういうことを言いますか?(苦笑)」。東大卒で公認会計士という経歴の広津氏は、「自らの考えが正しいと信じて疑わないタイプ」(同前)。「昨年九月の安倍改造内閣が発表される前も、『次は私が女性代表で大臣になる』と公言し周囲を唖然とさせた。福田内閣の人選が進められているときには、官邸に電話して『私を副大臣か政務官に入れるべきだ』と直談判したという伝説もある」(全国紙政治部記者)。地元の評判も芳しくない。「人の名前を覚えないから人望がない。すぐ問題を起こすから会合等に呼ばないようにしているのですが、呼ばないと『女性蔑視だ!』と大騒ぎ。問題は人間性なんですけど・・・・・・」(自民党佐賀県連関係者)。そんな言動が災いしてか、事務所も大混乱の様子。「広津さんは入りたての秘書に、『明日から佐賀に行って後援会を作ってきてちょうだい』とか無茶ブリがすごいようです」(同前)。本人に取材すると、「すべてデタラメです。一体誰が言っているんですか」とご立腹。いや、みんな言ってるんですけど。郵政総選挙でも広津氏と対峙した保利氏は、周囲にこう公言しているという。「彼女が出る以上、私も絶対次の選挙に出る。それが佐賀県のためだ」

*3-2:https://www.nishinippon.co.jp/nnp/editorialist/article/369694/ (西日本新聞 2017年10月29日) 「劇場型政治」はもう終わりに
 政治が劇場化することは間々起きるが、今回の衆院選ほど短期間に、しかも劇場乱立の政局も珍しかった。唐突に衆院を解散した安倍晋三劇場、自民党に代わる政権の受け皿を目指して希望の党を立ち上げた小池百合子劇場、そこへの合流を打ち出した前原誠司劇場-。政治取材に携わって20年余り、劇場政治の危うさとうさんくささは骨身に染みていたはずなのに、政局の急展開に「今度こそ政権選択選挙か」などと、また浮足立ってしまった。ああ、恥ずかしい。終わってみれば、郵政解散当時の小泉純一郎劇場のように爆発的人気を集めた劇場はなかった。前宣伝だけが派手だった小池劇場と前原劇場は不入りの責任を巡る内輪もめで早くも閉幕状態である。各劇場が伸び悩む中、1番人気は同じ出し物を毎回、異なる演目で演じる安倍劇場だった。ただし5年近くも同じでは主役も脇役も慢心する。観客には飽きがくる。心配は全く別の出し物の台本をこっそり用意していることだ。劇場にちなんで芝居に例えてみると、こういうことか。しかし、政治はお芝居とは違う。政治家は国民を惑わせる芝居をしてはいけない。野党で喝采を浴びたのが前原劇場から小池劇場への移籍を「芸風が異なる」として“排除”された立憲民主党だったのも皮肉な光景である。これも枝野幸男劇場と呼べるのかもしれないが、「まっとうな政治を」という原点回帰の訴えが多くの有権者を引きつけたことは政界も真剣に受け止める必要があろう。大見えを切って耳目を集めるだけの劇場型政治は終わりにして地に足の着いた政策本位の政治にしてほしい-脱・劇場型政治への有権者の切実な思いを痛感させられた選挙でもあった。政治家やメディアこそ目覚めが必要だろう。ということで、今回は人気劇場に付きもので、芸は未熟なのにスターと思い込み、トラブルを引き起こす「チルドレン」役者は増殖しなかった。それだけはよかった、ということか。

*3-3:http://qbiz.jp/article/122468/1/ (西日本新聞 2017年11月10日) 9月末、国の借金1080兆円 過去最大更新
 財務省は10日、国債と借入金、政府短期証券を合計した国の借金が9月末時点で1080兆4405億円となり、過去最大を更新したと発表した。これまで最大だった6月末の1078兆9664億円から1兆4741億円増えた。社会保障費を賄うための国債発行が膨らんだためで、財政が一段と圧迫されている。
総務省推計の10月1日時点の総人口(1億2672万人)で割った国民1人当たりの借金は約852万円に達した。内訳は国債が949兆9986億円に達し、6月末から4兆7671億円増えた。金融機関などからの借入金は52兆6532億円で1兆1628億円減少した。一時的な資金不足を補うために発行する政府短期証券も2兆1302億円減って77兆7888億円だった。

*3-4:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO23119390V01C17A1SHA000/?n_cid=NMAIL004 (日経新聞 2017/11/5) 成長しながらCO2抑制 米中で大幅減、日本は停滞、世界、GDPあたり15年で2割減
 経済成長しながら温暖化防止に向け二酸化炭素(CO2)排出量を抑えるデカップリング(切り離し)の動きが広がっている。世界で国内総生産(GDP)1単位あたりの二酸化炭素(CO2)排出量はここ15年で約2割減少。再生可能エネルギー投資に加え、新興国で省エネ投資が拡大している。2020年以降の温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」は4日に発効1年を迎え、各国や企業に一層の取り組みを促す。
10月下旬、英BPや英蘭ロイヤル・ダッチ・シェルなど世界の石油・ガス10社でつくるオイル・ガス気候イニシアチブ(OGCI)は、ガス火力発電所からのCO2回収をはじめとする3事業に投資すると発表した。
国連環境計画(UNEP)のソルヘイム事務局長は「エネルギーの生産や消費の方法を転換させるのが必要」と言う。パリ協定は約170カ国が批准。慎重な石油メジャーも対応を迫られる。国際エネルギー機関(IEA)の10月末の報告書によると、15年時点でGDP1万ドル分を生み出すのに排出されたCO2量は3.1トン。00年より0.7トン減った。別の報告では16年に燃料を燃やして発生したCO2は15年比0.6%減の321億トン。ここ3年、3%成長を実現し排出量はほぼ横ばいだ。IEAは「新しく生まれた傾向」とみる。デカップリングが進む理由は、排出量の少ないエネルギーの利用が増えたことだ。グローバル企業では事業に使うエネルギーを再生エネで賄う動きが広がる。全量再生エネをめざす企業連合「RE100」には、米アップルやマイクロソフト、米ゼネラル・モーターズ(GM)など世界110超の企業が参加する。再生エネの価格は低下傾向にある。調査会社のブルームバーグ・ニュー・エナジー・ファイナンス(BNEF)によると、米国、ドイツ、イタリア、スペイン、オーストラリアでは、太陽光の発電コストが石炭火力と同水準になった。省エネ技術への投資拡大も寄与する。IEAによると、16年の投資額は前年比9%増の2310億ドル(26兆円)。販売されたヒートポンプの数は28%増え、電気自動車は38%増。主要国で開発した省エネ設備が新興国に広がりつつある。最大排出国の中国は、発電部門を石炭から太陽光などに転換。100基単位の石炭火力発電所の閉鎖も検討する。16年の経済は前年比6.7%拡大し、排出量はほぼ同じだ。再生エネや原子力、天然ガスの割合が高まり、石炭消費は減少。14年の発電量は石炭が73%を占めたが、30年51%、40年43%に下がるとみる。世界2位の排出国、米国は主に油価の高いときにシェールガス革命が起き、発電燃料として石炭からの転換が進んだ。トランプ政権はパリ協定離脱を宣言したが、企業の動きは止まらない。日本は16年時点で世界資源研究所(WRI)が選んだデカップリング達成21カ国から漏れた。GDPあたりのCO2排出量は2.6トン。米中より00年からの減少幅は小さい。RE100の参加企業もリコーと積水ハウスだけ。自動車や電機などは「再エネコストが高い日本で全量は無理」との声が大半だ。太陽光発電は固定価格買い取り制度(FIT)の影響で高コスト体質が続く。再エネのコストを下げ、原発は再稼働の進め方に知恵を絞る必要がある。6日に独ボンで開幕する第23回気候変動枠組み条約締約国会議(COP23)ではパリ協定を巡るルールづくりの交渉が本格化する。IEAは年平均3.4%の成長を前提に今の削減努力を続けても、30年のCO2排出量は15年比で20%増の386億トンになるとみる。「2度目標」の達成にはさらに35%ほど減らす必要がある。

<女性への偏見ができる理由>
*4-1:http://digital.asahi.com/articles/ASK7D5Q3CK7DUTNB01V.html?iref=comtop_8_03 (朝日新聞 2017年7月13日) 埼玉県立高の男女別学、広島市出身の教育長「びっくり」
 個人的にはびっくり――。6月に就任した埼玉県の小松弥生県教育長は12日、就任後初の記者会見で、県立高校の男女別学や中高一貫校などについて印象を語った。広島市出身の小松氏は、県立高の男女別学を「個人的には西の方の出身なのでびっくりですが、埼玉県の人たちがいいと思ったら、悪いことでもない」と話した。一方、県立の中高一貫校については、「すごく早くから伊奈学園があって、その後がない。なぜなのか、私が聞きたい」と話し、「最近は小中一貫校もある。子供たちがいろんな学び方を主体的に選べるようにしてあげないといけない」と話し、検討課題であるとの姿勢を示した。今月、新たな教育委員が選ばれて5人中2人が、伝統的な子育てを推奨する「親学推進協会」関係者になったことについては、「うまく議論をして、バランスをとっていけばいい」と話した。

*4-2:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/192453
(佐賀新聞 2015年5月31日) 県民世論調査 男は仕事女は家庭、賛成33%
■共同参画意識高まらず 「出産退職」支持も半数
 「夫は外で働き、妻は家庭を守るべき」との考えに賛成する佐賀県民は33・2%だった。県は2014年度までの4カ年総合計画で性別による役割分担意識を30%未満に抑える目標を掲げていたが達成できなかった。「出産したら仕事をいったん退職したり、働くこと自体を辞めるべき」とする出産・育児中断型の働き方を支持する人も50%を超えた。仕事を続けたいと願う女性を支えようという社会の意識が高まっていない実情が浮き彫りになった。県が昨年10~11月に成人男女3千人を対象に実施した「男女共同参画に関する世論調査」で、859人から有効回答を得た。「男性は外で仕事、女性は家庭」という性別役割分担意識は、04年の調査で反対が66・6%、賛成29・6%となり、初めて反対が賛成を上回った。しかし、前回09年の調査では賛成が増加に転じ、反対も減少する「揺り戻し」が起きた。今回も意識変化は小さく、賛成が33・2%、反対62・9%となっている。賛成は男性が女性を7・5ポイント上回る一方、反対は女性が男性を5・9ポイント上回り、男性の方が性別役割分担に肯定的な結果が出た。年代別でみると、反対の割合が最も多いのは20代女性で92・0%。逆に賛成が最も多いのは70代以上の男性で51・2%だった。女性の就業についても尋ねた。「子どもができたら中断し、手がかからなくなって再び持つ」との回答が最も多く48・2%だった。「出産したり、結婚するまでは職業を持ち、後はやめる」「ずっと職業を持たない方がいい」という回答も合計で4・2%あった。一方、育児休暇などの制度を使って「ずっと職業を持つ方がいい」としたのは37・1%にとどまった。出産・育児中断型の働き方を支持した人に理由を複数回答で尋ねたところ、最も多かったのは「制度があっても、利用できる職場の雰囲気ではない」で37・3%。次が「現在の制度では不十分」の35・0%で、女性が仕事を続ける職場の雰囲気づくりや制度の不十分さがうかがえる。女性が結婚や出産後も働き続けるために必要なことという問い(複数回答)に対し、最も多かった回答は「配偶者の理解や家事・育児への協力」で60・1%に上った。総務省が11年に実施した調査では、男性が家事に参加した時間が佐賀県は1日当たり34分で、全国平均42分に比べて短いという結果も出ており、県の弱みとして女性の家事負担の大きさが挙げられる。県は、今回の意識調査から見えた課題を踏まえ、16年度から5カ年の県男女共同参画計画を策定する。

<農業の収益力をUPさせる政策は?>
PS(2017/11/13、15追加):*5-1については、レンゲソウもきれいでよいが、稲は刈った後に再度芽が出るので、それを伸ばして畜産農家の牛を放牧させると、①牛の飼料代を節約できる ②牛が運動して健康になる ③牛の排泄物が有機肥料になるので化学肥料を使わなくて済む ④イノシシが来ない などのメリットがあると前から思っていた。そのためには、畦や水場の設計変更が必要だが、耕畜連携でお互いが得るものは大きい。
 また、このような中山間地は、小水力発電や風力発電の適地でもあるため、そのための機器の設置に補助してもらうと費用対効果でも成り立つようになり、農業補助金を減らすことができて国の財政負担が小さくなる。なお、*5-2のように、荒尾市は産炭地だったが、石炭に代わる新たなエネルギーを生かしたまちづくりとして自然エネルギーを活用するそうで、多久市も考えてみるのがよいと思う。
 さらに、棚田は田の形がふぞろいで小さく、大型の農機具を入れられないことについては、教育系の補助をもらって市街地も含む小学生に田植えや稲刈りを手伝わせるのがよいと考える。その理由は、子どもも自分が植えた稲の成長には大きな関心を持つため、遊びながら頻繁に山に見に来る結果、植物や自然の様子を観察して必要な知識や感受性を育むことができるからだ。


2017.11.13佐賀新聞

*5-1:http://www.saga-s.co.jp/articles/-/147590 (佐賀新聞2017.11.13)地域活性化の優良事例に選定「ひらの棚田米振興協議会」(多久市)、棚田米のブランド化や活動評価
 平野地区は標高約190メートルの山あいにあり、170枚の棚田で7・7ヘクタールを耕作。同協議会は、冷たい清らかな湧き水を生かし、春のレンゲソウを肥料に使って化学肥料を減らした「夢しずく」を栽培し、ブランド米としてインターネットなどで販売している。大阪の企業の食堂に納入するなどリピーターも多く、ふるさと納税の返礼品にも使われている。県内外のファンを増やそうと、直売所での試食販売や収穫体験も企画。10月1日に開いた稲刈りイベントには122人が参加した。棚田は美しい景観が注目される一方、田んぼの形がふぞろいで大型の農機具を入れられないため、維持管理が難しい。協議会のメンバーも全員が60歳以上と高齢化が進み、小園さん(71)は「畦(あぜ)の草刈りやため池の維持など、手間や労力は平たん部の何十倍もかかる」と話す。それでも、イノシシなどの鳥獣被害が広がらないよう、「荒廃地を作らない」と意識を共有して活動を続ける。小園さんは「棚田の農業は費用対効果を考えると成り立たないかもしれないけれど、もうかる農業に近づけるためにみんなで力を合わせたい」。今後は稲刈りだけでなく、田植えの体験も検討しているという。「ディスカバー農山漁村の宝」の優良事例は全国から31地区が選定された。今月下旬の有識者懇談会でグランプリと特別賞が選定される予定。

*5-2:http://qbiz.jp/article/122790/1/ (西日本新聞 2017年11月15日) 荒尾市 自然エネ地産地消へ 2社と電力連携協定結ぶ
 熊本県荒尾市と三井物産(東京)、特定規模電気事業者のグローバルエンジニアリング(福岡市)は14日、エネルギーの地産地消に向けた連携協定を締結した。両社は、荒尾市の協力を得て市内の電力需給などを調査した上で、事業会社を設立。地元の自然エネルギーで発電した電力を公共施設などに安価で販売していく方針。三井物産は現在、ソフトバンクグループのSBエナジー(東京)と共同で、荒尾市の大規模太陽光発電所(メガソーラー)を運営、グローバル社は県外で発電した電力を同市内の企業などに販売している。事業会社の設立に向け、九州電力に比べ電気料金の単価をどれくらい抑えられるかなどを調査。同市内で木質バイオマス発電に取り組む有明グリーンエネルギーなど、地場企業と幅広く連携していくことも検討する。市役所での調印式で、三井物産国内プロジェクト開発部の山根正司部長は20年前の三井三池炭鉱閉山に触れ「石炭に代わる新たなエネルギーを生かした荒尾のまちづくりに貢献したい」と強調。事業会社の設立時期について「地域の特性に合った電力の供給体制をしっかり検討し、できる限り早く実現したい」と述べた。

<小池百合子氏の事例>
PS(2017年11月15日追加):*6のように、希望の党の小池百合子氏が代表を辞任したことについてメディアの批判が集中しているが、都知事としてうまく機能するためには、小池氏は都政では与党・国政では少なくとも無所属として政府と連携を保ちながら都政を進めて行くことが必要である。そのため、東京都民は、都議選では小池氏を大勝させたが、希望の党の党首であり続けて小池氏が都政を疎かにすることは望んでいなかった。
 また、小池氏が希望の党を作ったのは、最初は都知事選でお世話になった若狭氏を助けるためだったが、知事選と都知事選を見て勘違いしたメディアと民進党公認候補者の合流で流れが変わった。小池氏は初めから衆議院議員選挙には出ないと言っていたが、政権選択選挙なのに首班が不明と騒いでいたのは、その選挙のみしか見ていない浅薄なメディアだったのだ。
 そして、今度は党の運営を国会議員に任せるとして代表を辞任した小池氏を無責任だと批判しているが、都知事としてうまく機能しオリンピック等を成功させる責任を果たすためにはそれが必要で、最初に安保法制や憲法変更等々で「排除の論理」を持ち出したのは、一部のメディアと若狭氏・細野氏だったように私には見えた。そして、その方針で候補者を排除すれば、安保法制や憲法変更に疑問を持っている有権者の支持がなくなるのは、当然のことなのである。

*6:http://digital.asahi.com/articles/DA3S13228062.html (朝日新聞社説 2017年11月15日) 小池代表辞任 一連の騒動は何だった
 旗揚げからわずか約50日。一連の新党騒動は何だったのか。あきれる人も多いだろう。
希望の党の小池百合子代表がきのう辞任した。新執行部の発足を機に、党運営は今後、国会議員に任せ、自身はサポート役に回るという。東京都知事である小池氏が、国政政党の代表を兼ねることには当初から懸念の声もあった。それでも国会議員主導の新党構想を「リセットして私自身が立ち上げる」と乗り出した。一時は吹くかに見えた小池旋風も、自ら持ち出した「排除の論理」で急速にしぼみ、衆院選では「排除された側」の立憲民主党に野党第1党を譲った。党の支持率は低迷が続く。本紙の今月の世論調査では3%にとどまり、立憲民主党の12%に水をあけられている。衆院選を勝ち残った議員は旧民進党出身者ばかり。自民党出身の小池氏が指導力を発揮しにくいとの事情もあろう。党勢回復の方向性を見失い、もはや代表を続ける意義を見いだせなくなったのだろうか。だが、小池氏には忘れてならない責任がある。衆院選で「安倍1強を倒す」と訴え、比例区で967万の票を得たことだ。小池氏の指導力に期待した人も多かっただろう。この票の重みをどう考えるのか。小池氏が政党代表を辞めるのは、この半年弱で2度目だ。夏の都議選前には「改革のスピードを上げる」として、地域政党「都民ファーストの会」の代表に就任。選挙で大勝すると「知事に専念する」とわずか1カ月で辞任した。2カ月半後、衆院選を前に再び「(改革の)スピード感を確保するには国政関与が必要」と希望の党代表に。そしてまた、その立場を放り出す。新党設立、代表辞任の繰り返しが政党や政治への国民の不信をさらに深めることを憂える。小池氏という看板を失った希望の党は立て直しが急務だ。党内では旧民進党と同様に、安全保障法制などをめぐる路線対立が整理されないままだ。希望の党は何をめざす党なのか。まず玉木雄一郎・新代表のもと、衆院選は小池氏主導の急ごしらえで済ませた政策論議をいちから始めるしかない。衆院選で圧勝した自民党は、野党の質問時間の削減を求めるなど、早くも慢心が見える。野党なのか、与党への協力もあり得るのか、選挙戦で小池氏はあいまいにしてきた。これから本格化する国会論戦にどんな立場で臨むのか。玉木執行部の選択が問われる。


<山尾志桜里氏の事例>
PS(2017年11月16日):*7の山尾氏と倉持氏が1泊2日で大阪出張していたとして、不倫を匂わせる報道をしているが、こういう論調は、①別々に会場を離れるなど仕事外では話もできない状態にする(男同士ならノミニケーションして、その後の仕事をやり易くするところ) ②時間差で帰京しなければならない(新幹線の中で仕事の話などをする機会を奪う)等々、活躍している女性を不利にする。
 30年くらい前に外資系監査法人で働いていた時、私が公認会計士として男性の部下と2人で岐阜県の会社に往査に行き、同じ宿(部屋は当然別)に泊まって2人で夕食をとったら、宿の中居さんは私の前におひつやとっくりを持ってきた。私が戸惑っていると、男性部下が「それは、私がやります」と言ってくれたので助かったが、女性の活躍には一般社会の方がついてきていないと感じることが多い。また、何かと引っ張ってくれていた男性上司と同じエレベーターに乗り合わせていると、後からエレベーターに乗って来た人が「どういう関係?」などと言って協力者の男性に困った思いさせ、女性の仕事をやりにくくしたという経験もある具合だ。

*7:http://bunshun.jp/articles/-/4947 (週刊文春 2017年11月23日号) 山尾志桜里衆院議員が倉持弁護士と1泊2日の大阪出張
 山尾志桜里衆院議員(43)、倉持麟太郎弁護士(34)の2人が1泊2日で大阪出張していたことが「週刊文春」の取材によって明らかになった。11月12日、2人は、彼らの後見役を自任する漫画家・小林よしのり氏が主催する言論イベント「関西ゴー宣道場」に参加。イベントでは、倉持氏が「日本で最も有名な弁護士です」と紹介され山尾氏が爆笑するなど、終始、和気藹々とした雰囲気だった。山尾氏は11月7日に倉持氏を政策顧問として起用することを発表。今回の大阪出張は、2人の動向に注目が集まっている矢先のことだった。大阪でのイベントが終了後の午後6時頃、2人は別々に会場を離れた。「週刊文春」取材班は、翌朝の新大阪駅で時間差で帰京する2人の姿を確認している。山尾氏の事務所は、大阪出張について、次のように回答した。「ゴー宣道場に参加したことは事実ですが、終了後、倉持弁護士含め道場師範の方々とは全く別行動を取っており、倉持弁護士と一緒に宿泊したという事実は一切ございません」。11月16日(木)発売の「週刊文春」では、1泊2日の大阪出張の詳細に加え、倉持氏の義母へのインタビューなど、山尾・倉持両氏の新たな関係について詳報している。また、「週刊文春デジタル」(http://ch.nicovideo.jp/shukanbunshun)では、山尾氏への直撃取材の模様などを、同日朝5時より公開する。


<染色・アパレルと女性の変化>
PS(2017.11.18追加):*8-1のダウンは10万円もするが、スタイリッシュさと北極圏の環境にも耐える保温性をもっており、これは「日本製の品質は高い」と言われる場合の“品質”には含まれない。また、日本製の服は、20~30代向けの細身の服しかデザインのバラエティーがなく、試着すると不快になる上、値段相応の質でもないため、私はサイズが多くてデザインのよいヨーロッパ製のブランドスーツの下に、一年毎に使い捨てても惜しくないような値段のユニクロのTシャツを組み合わせて着ており、その方が満足度が高い。そのため、服が売れないのは確かにアパレルメーカーの責任で、女性に対する従来の先入観にとらわれず、市場が求めている人口動態や体格にあった製品構成にすべきなのだ。また、「日本は労働力などのコストが高い」という問題は、安い外国人労働力を使わないのなら、*8-2のような衣類に直接印刷できる装置等の生産性を上げるイノベーションを進めるしかない。そして、この技術には、昔の友禅染の振袖や色留袖を簡単にコピーして複製できる程の、職人も真っ青になるような潜在力がある。

*8-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20171117&ng=DGKKZO23588790W7A111C1TJ2000 (日経新聞 2017.11.17) アパレル不況は本当か 海外製10万円ダウン店繁盛 消費刺激「技術力+α」カギ
 米アップルの新型スマートフォン「iPhoneX(テン)」の発売に世界の人々が沸いた3日。東京都渋谷区神宮前の閑静な通りにも負けず劣らずの長蛇の列ができていた。ダウンジャケットが主力のブランド「カナダグース」のアジア初となる旗艦店の開業だ。午前11時の開店前に並んだのは約150人。一番乗りだった仙台市の大学生、高橋颯さん(22)はアルバイトでためたお金を手に朝6時から並んだ。店内は開店と同時にごった返し、10万円のジャケットがこの日だけで1分半に1着売れた。大手アパレルの相次ぐ大規模リストラが象徴する「アパレル不況」とは無縁の世界が広がっていた。日本での代理店はサザビーリーグ(東京・渋谷)。1995年に米スターバックスを持ち込んでスタイリッシュなカフェを定着させた実績を持つ。こうした手腕にカナダの本社側が目をつけ、2015年に販売代理店契約を結んだ。カナダグースはサザビーとの契約を機に、約680店あった百貨店やセレクトショップなどの取扱店をブランドイメージに合う400店程度に絞り込んでブランドイメージを高めた。冒頭の旗艦店も本国の意向で渋谷区神宮前の人通りの少ない静かな環境を選んだ。北極圏の環境にも耐えるほどの世界屈指の保温性を持ち、希少価値が高い。こうした機能性やストーリー性が消費者の購買意欲をくすぐる。この「カナダグース狂騒曲」に、日本の伝統的なアパレル企業はほぞをかむ。オンワードホールディングス、三陽商会など百貨店を主な販路とするアパレルは、カナダグースと同じ「中高価格帯」の商品を販売してきたが、長引くデフレで販売不振に直面している。バブルに沸いた90年、国内のアパレル市場は約15兆円だった。10年には10兆円に落ち込んでその後横ばいが続き、大手アパレルはここ数年で大規模なリストラを相次ぎ実施した。だが本当に服は売れなくなったのだろうか。消費者はより安い服を求めユニクロを運営するファーストリテイリング、衣料品専門店のしまむらの収益はいずれも過去最高だ。安い服は売れているし、高くても売れることはカナダグースが証明している。人々が百貨店で洋服を買わなくなったことへの対応が遅れただけではないだろうか。品質の高さから、業界では「ものづくりの三陽」といわれてきた。その象徴である子会社サンヨー・インダストリー(福島市)。工場では女性を中心に約130人がミシンに向かい、1着1着を丁寧に縫製する。その技は有名セレクトショップや紳士服チェーンがスーツのOEM(相手先ブランドによる生産)を依頼するほどだ。だが、三陽商会の業績は低迷が続き、高い技術力を生かせていない。ある大手アパレルの幹部は「服が売れなくなったのは我々の責任」と認め、ライフスタイルを意識した次世代の服作りに真剣に取り組む。どんな時代でも人は洋服を着る。アパレル不況と嘆く必要はない。

*8-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20171117&ng=DGKKZO23566720W7A111C1TJ2000 (日経新聞 2017.11.17) 写真、衣類に直接印刷 リコーが小型プリンター
 リコーは16日、衣類に直接印刷できる小型プリンターを発売すると発表した。店舗やイベント会場で、手持ちのスマートフォンに保存した写真をその場でTシャツやバッグに印刷できる。印刷から乾燥まで約10分で完了する。プリンターやインクの販売、保守サービスなどで、2019年度に100億円規模の売り上げを目指す。主に企業向けに20日に日本で発売する。今夏からアジア・中国地域で先行販売を始めていた。オフィス向けプリンターと部品を共通化したことで、プリンター本体とインクを定着させる仕上げ機を合わせて価格を30万円台に抑えた。競合他社と比べて3分の1から4分の1の水準という。インクジェット技術を応用した。150~200度にもなる専用プレス機も無くし、初めての人でも安全に使えるようにした。利用者はTシャツなどをカセットにセットして、プリンターに設置。印刷後は仕上げ機にカセットごと入れてインクを定着させるだけでいい。16日に記者会見した山下良則社長は「インクジェット技術を応用して、プロセスをがらりと変えたい」と語った。


PS(2017.11.20追加):*9-1のように、「3~5歳の教育無償化」と言うと、「①負担できる方には負担をお願いするべき」「②必要経費を積み上げず、はじめから金額が積み上がっている対策は初めて見た」などという意見が出ているが、①については、“高額所得”に分類された(さほど多くもない)一つの所得に対する多重課税である。また、②については、*9-2のように、経済は生き物という論理性がなく説明にもならない根拠の下、「景気対策の事業規模が20兆円超(2兆円の10倍)で調整されている」として多くのメディアがいそいそと報道しているのに対し、教育に対する意識の低さがわかる。しかし、教育を徹底すれば、国から下支えしてもらわなくても稼げる人を多く作ることになるため、どちらがより重要かは異論の余地がない。
 そのため、私は、義務教育である小学校を3歳からにして教育を無償化し、十分な時間を取って教育するのがよいと思うが、国の中枢は私立中高一貫校(その殆どが男女別学)出身の男性が大多数であるため、この改革には後ろ向きで価値観もずれているようだ。そこで、地方自治体の主導で開始するのがよいと思われ、その時には、幼稚園は小学校と合併し、保育所等が0~2歳児と学童保育を引き受けるようにすれば、現在の設備で待機児童を無くすことが可能だと考える。
 また、*9-1で日経新聞は、「社会保障の財源は限られており、高齢者に偏る社会保障を若年層に振り向けることは重要な視点だ」とし、*9-3では診療報酬値下げを提唱しているが、*9-4のように、環境税導入には反対だ。しかし、環境や生命・個人の生活を大切にすることは最も重要であるため、こういう政策を提唱するような人を育ててはならないのである。

*9-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20171120&ng=DGKKZO23669080Z11C17A1MM8000 (日経新聞社説 2017.11.20) 教育無償化を問う(上)議論は尽くしたか 選挙にらみ「2兆円」先行
 安倍晋三首相が打ち出した教育無償化を巡る政府・与党の議論が混迷気味だ。首相は衆院選で2兆円の政策パッケージを策定すると表明。「保育園や幼稚園の費用はタダ」「低所得世帯は大学授業料も免除」など聞こえのいい政策を並べたが、具体策や効果をめぐる議論は生煮えのままだ。限りある財源をどう活用するか――。教育無償化をめぐる現状を追う。
●不満の声相次ぐ
 「負担できる方には負担をお願いするのが今までの政策。完全無償化はいかがなものか」。8日、自民党が開いた人生100年時代戦略本部会合。出席議員は党公約に明記された3~5歳の子育て費用無償化に疑問の声をあげた。同本部は17日、補助への上限設定を政府に提言すると決めた。多くの議員の不満の背景にあるのが政策決定の在り方だ。首相は衆院選の選挙公約として教育無償化などの対策を打ち出したが、橋本岳厚労部会長は「部会長が反対だといったことが公約になった」と公然と反論する。2兆円という「規模ありき」の手法にも不満がくすぶる。首相は衆院解散に向けた記者会見で2兆円の枠組みだけを示し、具体的な使い道や適用範囲は選挙後の検討に先送りした。厚労族の重鎮・尾辻秀久元厚労相は「必要経費を積み上げず、はじめから金額が積み上がっている対策は初めて見た」と首をかしげる。その結果が政策軸の急激な転換だ。子育て費用は家庭の所得にかかわらず無償となり、恩恵は高所得者ほど大きい。厚労族のベテラン議員は「『自助』を基本に『共助』で支え合うといった従来の社会保障の理念が壊れる」と指摘する。
●公明への配慮
 なぜ教育無償化は議論の積み上げに基づく政策でないのか。さかのぼると、人づくりや少子化対策など本来の目的とは異なる源流が見えてくる。「前向きな対応をお願いします」。衆院選前の与党党首会談で、首相は公明党の山口那津男代表から私立高校無償化の要請を受けた。自民党公約に入らなかった同政策が2兆円政策に盛り込まれる背景には、公明党の選挙協力への期待が透ける。大学などの高等教育に重点を置いたことからは、教育無償化を憲法改正の項目とする日本維新の会への配慮がにじむ。さらなる底流には消費増税の影響を回避したい首相の思惑がある。消費増税を2度延期した首相は増税には慎重だ。それでも、少子化対策の名のもとに増税分の一部を回せば「8%に引き上げたときのような景気への悪影響が軽減できる」(首相)との計算が働いた。首相周辺は「教育無償化の発想は社会保障ではない。マクロ経済政策に近い」と解説する。高齢者に偏る社会保障を若年層に振り向けることは重要な視点だ。少子高齢化を克服するためには、子育てしやすい環境づくりは不可欠だ。さらに世界を見渡せば、人工知能(AI)やロボットなど劇的なイノベーションが進んでいる。その波にのり、国際競争力を高めるためにも、高度人材の育成は最優先の課題だ。だが、社会保障の財源は限られている。その使い道として幼児教育や高等教育の無償化が正しい選択なのか。効果や意義について議論が尽くされた形跡はみえない。来る2019年が首相が掲げる「人づくり革命」の元年となるのか、財政破綻の一歩を許した一年として歴史の一ページに刻まれるのか。政権の責任は重い。

*9-2:https://mainichi.jp/articles/20160721/k00/00m/020/185000c (毎日新聞 2016年7月21日) 経済対策 事業規模20兆円超で調整 景気下支え
 政府が新たにまとめる経済対策の事業規模を20兆円超で調整していることが20日、分かった。当初は10兆円超の見込みだったが、倍増させる。追加の財政支出は3兆円超(国・地方の合計)として、残りは財政投融資や民間事業を積み増してかさ上げする。事業規模を膨らませ、景気下支えに本腰を入れる姿勢を示す狙いがあるとみられる。政府は今後、与党と調整を進め、来月上旬にも経済対策を閣議決定して、裏付けとなる2016年度第2次補正予算案を秋の臨時国会に提出する方針。与党内には一層の上積みを求める声もあり、規模がさらに膨らむ可能性もある。事業規模20兆円超の内訳は、国・地方の追加の財政支出が3兆円超▽国が低利で民間事業に長期融資などを行う財政投融資が最大6兆円程度▽国の補助を受けて民間企業が行う事業が6兆円程度▽財政投融資とは別に政府系金融機関が手がける融資が5兆円程度−−となる見込み。複数年度にまたがる民間事業を含めることで見かけ上の規模を大きくする。追加の財政支出の財源は、建設国債(使途を公共事業などに限る国債)を1兆円超発行するほか、低金利に伴う国債の利払い費の減少分などで賄う方針だ。追加の財政支出はインフラ整備が主体となり、訪日客拡大に向けた地方の港湾整備や、農産物の輸出拠点設置などを行う。財政投融資はリニア中央新幹線の大阪延伸前倒しに約3兆円、整備新幹線の建設に約8000億円を充てる。英国の欧州連合(EU)離脱に伴う金融市場の混乱を防ぐため、政府系金融機関を通じた民間企業へのドル資金融資も行う。

*9-3:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20171117&ng=DGKKZO23566960W7A111C1EE8000 (日経新聞 2017.11.17) 診療報酬下げ、都道府県別に、厚労・財務省が指針 医療費を抑制
 厚生労働省と財務省は都道府県ごとに診療報酬を定めるためのルールをつくる。法律上は認められているが実施例がないことから、2017年度中に指針を示して導入を促す。政府は18年度から都道府県単位に医療の提供体制を見直し、医療費抑制を進める。この見直し時期にあわせ、地域の実情を考えて診療報酬を下げるしくみを定着させたい考えだ。診療報酬は病院や薬局などの医療機関が、公的医療保険で手掛ける医療行為や薬の対価として受け取る公定価格だ。国が2年に一度、全体の改定率と様々な医療サービスの単価を決める。両省はこれをもとに、都道府県が地域の医療実態に合わせて、国が決めた単価や算定要件を一部見直す形を想定する。06年の法改正で、医療費適正化のために都道府県が域内の報酬を変更できるようになったが、実施県はない。厚労省は指針で、地域内の診療報酬を設定できる場合の具体例をまとめる方針だ。例えばある県で重症者を受け入れる病床の数が他県に比べて過剰な場合、診療報酬の算定要件を厳しくするなどの例を想定している。財務省は診療報酬の単価を直接下げる案を求める。患者の需要に比べ過剰な病床数を持つ県ほど医療費の伸びが大きい傾向にある。同省は入院にかかる医療費が高い県は入院にかかる基本料の診療報酬の単価を引き下げたり、需要より過剰に薬局や薬剤師が多い県は調剤技術料を下げたりしたい考えだ。政府は都道府県主導の医療提供体制の整備を進めている。18年4月からは国民健康保険の主体が市町村から都道府県にうつる。都道府県は18年度から5カ年計画で「医療費適正化計画」をつくることになる。県内の医療費の水準を踏まえて保険料を設定し、住民への説明責任を負う。診療報酬を都道府県単位で下げるようになれば、需給にあった医療サービスをつくる手段が増える。関心をもつ県が出始めている。奈良県は「県民の保険料負担を抑制するためには検討が必要」とし、医療費抑制に取り組む方針だ。介護報酬の単価は既に地域によって違いがある。政府の指針がでれば、検討する動きが広がる可能性がある。ただ、地域別に診療報酬を設定するのは日本医師会が慎重な姿勢を崩さない。いまは厚労、財務両省と与党、医師会などの関係団体で利害調整し、診療報酬の改定率を決めている。「都道府県ごとに調整の場が分散すると、医師会の力がそがれるとの懸念があるのではないか」(政府関係者)との見方がある。医師会の慎重論に歩調をあわせる都道府県も多いとみられる。指針では義務化や罰則の措置を伴わないことから実効性を疑問視する向きもある。

*9-4:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20171119&ng=DGKKZO23659070Y7A111C1EA1000 (日経新聞社説 2017.11.19) 森林環境税を導入する前に
手入れがされずに放置されている人工林を集約する新たな制度を林野庁がつくる。市町村が仲介役になって意欲のある林業経営者に貸与し、経営規模を拡大する。所有者がわからない森林などは市町村が直接管理するという。森林を適切に管理することは地球温暖化対策として重要なうえ、保水力を高めて土砂災害を防ぐ効果もあるが、問題は財源だ。政府・与党は「森林環境税」の創設を打ち出した。他の予算を見直して財源を捻出するのが先だろう。日本の国土面積の3分の2は森林で、その4割はスギやヒノキなどの人工林が占める。戦後植林した木々が成長して伐採期を迎えているが、零細な所有者が多いこともあって、多くが利用されていないのが現状だ。「森林バンク」と名付けた新制度は所有者が間伐などをできない場合、市町村が管理を受託し、やる気のある事業者に再委託する仕組みだ。一度に伐採や間伐をする森林を集約できれば、作業効率が向上してコストが下がる。近くに作業道がないなど条件が悪い森林は市町村がまず手を入れたうえで再委託する。所有者が不明で放置されている森林についても一定の手続きを経たうえで利用権を設定し、市町村が扱う。現在、国産材の用途拡大が進み始めている。経営規模の拡大を通じて林業を再生する好機だ。財政力が弱い市町村が継続的に事業に取り組むためには安定財源が要ることは理解できる。しかし、森林環境税は個人住民税に上乗せして徴収する方針だ。直接的な恩恵を感じづらい都市住民の理解を得られるだろうか。全国の8割の都道府県や横浜市はすでに、似たような税金を徴収している。都道府県と市町村の役割がどうなるのかについても判然としない。人材が乏しい市町村では、都道府県が作業を代行する手もあるだろう。森林整備は必要とはいえ、新税の前に検討すべき課題が多いと言わざるを得ない。

| 男女平等::2015.5~ | 01:47 PM | comments (x) | trackback (x) |
2017.10.18~25 政党に関する時代錯誤の論評とメディアの報道について
(1)民進党議員の希望の党への参集について
 希望の党の政策協定書と公約                 各党の重要政策比較表
 
                                     2017.10.22 
                                      日経新聞
(図の説明:一番左の希望の党の政策協定書には、「希望の党で公認を受ける議員は、憲法改正を支持し憲法改正論議を幅広く進めること」「公認候補となるにあたり、党に資金提供すること」等の記載がある。しかし、憲法変更は党議拘束すら外して議員個人の良心に基づいて議決するのが妥当なくらい重要なテーマであり、他の政策と抱き合わせにした契約で無理やり賛成させるべきものではない。そのため、国民の代表として一人一人の議員を尊重しているのではなく、議員は党の執行部から降りてきた政策を機械的に採決する駒のように考えているわけだが、それは民主主義の基本に反する。また、希望の党は、新しい政党で党に金がないため、公認候補者に資金提供を要求するのは仕方がないのかも知れないが、一定の金額が決まっておらず、公平・公正感がない。なお、各党の重要政策は右の2つの表の通りだ)

1)メディア等の共産党との野党連合に対する批判
 メディアや他党が、「共産党との選挙協力は野合だ」と非難しているが、共産党の主張には、①脱原発 ②消費税増税中止 ③憲法9条の変更反対 など、資本主義・自由主義経済下でも、政府の無駄遣いを減らして国民生活を豊かにするため、賛成できる提案が多い。また、共産党は歴史が長いため人材が多いようで、情報収集力や分析力があるため、「共産党は社会制度の前提が異なる」として、どのテーマについても「共産党の提言だから」として排除すると、せっかくの提言が有意義な成果を生まない結果となる。

 また、子どもが大人のやり方を見て真似することを考えると、少数派をいじめたり、変なレッテルを貼って排除したりするやり方は、将来世代への影響という点でも問題だ。

2)メディアを通して見ていた人が考えた民進党支持率低迷の理由
 民進党をはじめとする野党連合は、森友・加計問題で安倍首相をしつこく追究して内閣支持率を落とし、今回の解散に追い込んだのだろうが、それによって民進党の支持率が上がったわけではなかった。その理由は、①(いろいろな意味で)過去に失敗したリーダーが、頻繁に顔の見える立場にいたこと ②「安倍政権下での憲法改正には応じない」というような対立軸にならない子供じみた批判をしていたこと ③脱原発の思い切った政策を出せなかったこと ④消費税増税で戦おうとしたこと などだろう。

 そのほか、日本のメディアが、政策の違いやその本質的な理由を真面目に報道できず、誰かの人格否定のようなことばかりを集中して報道するため、それよりも次元が高くなっている多くの国民から、「それだけでは任せられない」と思われたという日本独特のメディアの問題もある。

 そこで、民進党は小池氏の「希望の党」と合流することにしたようだが、希望の党は「国会を一院制にする」というような国会の二重チェック機能を無視した政策提言をしたり、公認希望者に自民党より多様性を認めないような政策協定書に署名させたりしたため、それとは考え方の異なる国民を失望させ、民進党の前議員も立憲民主党を立ち上げたり、無所属になったりして、選挙に突入したわけだ。

3)「リベラル」「保守」「革新」「右翼」「左翼」という言葉使いのおかしさ
 希望の党は、民進党議員を受け入れるにあたり、「リベラル(英語:Liberal)でないことを条件にした」とメディアが報道していたが、「Liberal」とは「自由な」という意味で、現代では、「自由」が民主主義国の大前提であり、日本国憲法にも随所に出てくる。そのため、「Liberalである」ことを理由として排除されなかった候補者が本当に「Liberalでない」とすれば、その人は日本国憲法違反の議員となるが、政党やメディアの中心にいる人が、そんなことにも気づかないとは情けない。ちなみに、「保守」と言われている自由民主党の英語名は、「Liberal Democratic Party of Japan」であり、堂々と「Liberal」が冠せられている。

 また、「保守」とは「現状を維持したい勢力」のことであり、「革新」とは「旧来の制度・方法・習慣を変えたい勢力」のことであるため、現行憲法が施行され定着している現在、憲法を変更したいとする自民党やそれに考え方の近い勢力が「革新」で、護憲を基本とする立憲民主党・公明党・社民党・共産党が「保守」と呼ばれるべきだろう。

 つまり、太平洋戦争終了後、日本国憲法の発布と施行で日本の革命は終わり、その日本国憲法が70年にわたって安定的に運用され、日本は平和主義を前提として戦争で膨大な無駄遣いをせずに経済発展してきたのに、メディアや政党がその事実を無視して戦前の発想で分類しているため、「保守」と「革新」の定義が逆になっておかしくなっているのである。

 なお、革命が終わっても、よりよい方向への継続的な改善はやり続ける必要がある(Continuing improvement)が、リセットばかりしている余裕はない。そして、どの分野でも同じだが、改善とは、欠点を直すためによりよい方向への見直しを普段から続けることであり、理由なき改革のための改革は、無駄な仕事を増やしたり、混乱させたり、改悪になったりするため、しない方がよいのである。

 また、「右翼」とは、国会議事堂で議長(戦前は、たぶん天皇)から見て右側に座っている勢力で、「左翼」とは、左側に座っている勢力であるためそう呼ばれたのだろうが、現在は議員数の多い政党順に右から並んでいるため、「右」か「左」かで思想や政策を分けられるわけではない。ちなみに、先日までの衆議院は、与党である自民党は右側、同じ与党である公明党は比較的左側に着席しており、無所属の人が考え方にかかわらず一番左側にいた。

(2)消費税増税について

    
2017.10.1琉球新報         付加価値税率国際比較   税収・歳出・公債

(図の説明:左の2つが、消費税増税に関する各党のスタンスであり、消費税増税をしないことに対してメディアの批判が多い。しかし、右から2番目のグラフのように、日本は消費税率が低いと言われるが、消費税は日本にしかない税制で、ヨーロッパは付加価値税、米国は国税ではない小売売上税があるだけだ。また、右のグラフのように、日本では1989年《平成元年》に消費税が導入されて以来、消費税率を上げるたびに景気回復と称して生産性の低い歳出を増やすため、消費税ができてから国債残高は増えるばかりなのである)

1)世界で唯一の消費税増税を大合唱する日本のメディアと経済界
 「付加価値税(taxe sur la valeur ajoutée:略語TVA」はフランスで考案され、1954年に世界で初めてフランスで導入され、1960年代末からヨーロッパ共同体(“EC”)の統一税制となり、現在はヨーロッパ連合(“EU”)諸国に導入されている。日本では、英語「value-added tax:略語VAT」で呼ぶのが一般的だが、米国には付加価値税や消費税はなく、州・郡・市毎に率の異なる小売売上税(小売りの売上に一度きり課税するもの)があるだけである。

 そして、太平洋戦争後、日本は、シャウプ勧告(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B7%E3%83%A3%E3%82%A6%E3%83%97%E5%8B%A7%E5%91%8A 参照)を受け、直接税を中心とする米国方式の(長くは書かないが)合理的な税制を作った。その税制は、源泉徴収制度により給与所得者等の所得捕捉率や税の徴収率がよいため、今は捕捉できずにいる所得を捕捉できるように改善し、米国方式で首尾一貫した方が、特定の国民の課税済所得に再課税することにならず、公正・中立である。

 また、米国の小売売上税は売上に課税し、欧州の付加価値税は付加価値に課税するため、どちらも納税義務者は事業者である。一方、日本の消費税は消費に課税するため納税義務者は消費者で、納付を事業者が代行する形になっている。そのため、「消費者に完全に転嫁せよ」などと言われるわけだが、日本で付加価値税ではなく消費税が導入されたのは、事業者から反対の声があがったからにほかならない。

 さらに、欧州の付加価値税や日本の消費税には輸出免税があり、これにより輸出事業者は益税となり、還付されることすらある。また、軽減税率が導入されれば、軽減される業種も益税となる。そして、それが、新聞や経団連などの大企業が、消費税増税を自己目的化している財務省とつるんで、社会保障を人質に、世界で唯一の消費税増税を大合唱している理由だろう。

2)消費税しか財源がないわけではないこと
 メディアは、*1-2、*1-3、*1-4、*1-5のように、「①2019年10月の消費税増税を、自公は予定どおり実施して、借金返済に回す分を減らし、子育てや教育の充実に振り向ける」「②他党は増税に反対している」「③消費税増税を凍結すると借金が減りにくくなり、目標だった20年度の基礎的財政収支の黒字化が不可能になる」「④日本は社会保障に見合う財源が確保されておらず、国債発行という将来世代へのつけ回しに頼っている」「⑤従って、負担増こそ論点だ」「⑥消費税増税は誰が政権についても避けて通ることのできない課題で、異論を言う党はビジョンがない」「⑦各党は教育無償化などの再分配政策に傾斜した内容が目に付き、近く日本が直面する少子高齢化に向けた『痛み』を伴う施策を素通りしている」「⑧消費税増税の選挙争点化は、もうやめよう」「⑨消費税10%への引き上げの3党合意はどこへ行った」など、「消費税増税に賛成しないのは、社会保障についてのビジョンを持たないポピュリズム(衆愚)だ」という財務省の主張を記載している。

 しかし、ここで注意しなければならないのは、財務官僚が優秀でも、イ)財務省は消費税増税を自己目的化している ロ)他省庁管轄の事象に関する影響は考慮できない という事情がある。そのため、政治家が有権者である国民の負託を受けて省庁の壁なく全体を見て考察すべきであり、そうすると、幼児教育・高校授業料無償化、大学授業料減免、大学の給付型奨学金拡充が実現すれば、生産性の高い人材が増え、GDPが上がるため、直接税による税収増を見込める。また、景気刺激策・雇用維持策としてのバラマキを辞められるため、理想的な形で歳出削減を行うことができる。そして、そうなるような教育をしなければならないのだ。

 そのため、上の①については、教育・福祉予算が消費税でなければならない理由はなく、②が正論で、③④は、消費税増税を行う度にその言い訳として景気刺激策を行って生産性の低い歳出を増やし、国の借金が増加していることを忘れてはならない。そして、社会保障サービスは、まさに現代のニーズなのである。さらに、⑤⑥⑦については、痛みがあるから良薬とは限らず、害があるだけの政策もあり、⑧⑨のように、理論は別として「何が何でも消費税増税が必要で、それに反対する国民の意識はポピュリズム(衆愚)だ」などと言うことこそ、経済も税制も知らずに傲慢極まりないのだ。

(3)脱原発について


     各党の公約       使用済核燃料の蓄積  新燃岳の噴火と霧島連山
 2017.10.16   2017.10.7           2017.10.11
 西日本新聞    読売新聞             毎日新聞

(図の説明:左の2つが各党の原発政策の要点だ。中央は、各原発に蓄積されている使用済核燃料のトン数で、処理方法は未定であり、原発が稼働すれば増加する。さらに、薩摩川内市にある川内原発は、現在噴火している新燃岳の近くにあり、その新燃岳は一番右の写真の霧島連山の火山の一つなのである。しかし、原発ゼロを明記するほど憲法は細かいことを規定するものではないため、原発ゼロは環境基本法の実行で十分である)

 *1-2には、「原発の扱いも争点で、太陽光などの再生可能エネルギーで代替する計画だが、発電コストが割高のため、膨らんだ買い取りコストが家庭や企業の電気代に上乗せされる」と書かれているが、書くからには、記者は原価計算を理解した記事を書くべきである。また、普及すればコストダウンできるというのも、マーケティングの常識だ。さらに、再生可能エネルギーは国内にある資源であるため、国富が流出することなく国内で循環して税収増に繋がる。

 そして、このようなことは、他人から言われなくても自ら正確な情報を選択して論理的に考えることができる人材を養成しておく必要があり、そのためには、文系か理系かを問わず、教育を充実して達成しておかなければならない知識や論理的思考力の最低水準があるのだ。

 なお、日経新聞は、経産省の広報版のように、*2-1の「現実直視し責任あるエネルギー政策を」という記事を書いており、現実を直視してエネルギー利用の未来を展望すれば、原発を「ベースロード電源」と位置づけて再稼働するのが正しく、国民は現実を見ずに単なる不安を感じているにすぎないかのように記載している。しかし、実際には原発ゼロの道筋は既に何度も示しており、再エネや省エネの技術もある。にもかかわらず、*2-2も、太陽光や風力は天候などで発電量が変わりやすいなどとしており、思考停止が甚だしいのである。

 また、国民負担であれば、経産省は、*2-3のように、原発立地自治体を対象とした国の補助金を、2017年度から原発30キロ圏内の自治体にも支払う仕組みに変更し、2017年度の予算額を45億円とした。もちろん、原発のリスクと隣り合わせの自治体から見れば、国の補助金はないよりあった方がいいが、原発を開始してから今まで全体でどれだけの補助金が支払われたかを、正確に計算しておくべきである。

 さらに、東京新聞は、*2-4のように、東京電力福島第一原発事故の廃炉作業で、国が直接、税金を投入した額が1000億円を超えたと報道している。事業別では、①凍土遮水壁が設計などを含めて約357億8千万円 ②ロボット開発など1~3号機の原子炉格納容器内の調査費約88億4千万円 ③廃炉作業は約1172億6千万円 ④原発事故処理費用は21兆5千億円(このうち東電負担は8兆円) ⑤除染で出た汚染土を30年間保管する中間貯蔵施設は国の負担で金額は未定 という具合で、歳出額が大きい上、関係者が原発事故にたかっている様子もうかがえる。

 そのため、原発を辞めて再生可能エネルギーで代替すれば、教育無償化や社会保障の充実は容易にでき、現代のニーズにマッチしている上、エネルギーを100%国産にできるため、国富を海外に流出させずに国内で循環させることができると言える。

 そのような中、*2-5のように、日立製作所が英国に建設する原子力発電所に対して日本のメガバンクが融資する建設資金に、日本貿易保険(NEXI)を通じて政府が全額補償するそうだが、これは、日本国民にとって、言われなき国民負担のリスクがあるものである。

 また、フクイチ事故による関東の汚染も、*2-6のように、ひどいものであり、*2-7のドイツ人小児科医による講演内容は、日本メディアの記事よりも本当だ。つまり、公害は、原発の方がCO2よりもずっと著しいのである。

(4)憲法の変更と安全保障について

  
                      憲法9条への対応    北朝鮮への対応
    2017.10.20西日本新聞          2017.10.13、15西日本新聞

 *1-1に、自民・希望・維新は憲法改正に積極姿勢を示していると書かれているが、最も変更したい項目は、*3-2のように、党によって異なる。

 憲法9条の変更には、自民、希望、維新が前向きで、共産・立憲民主が反対だそうだが、①憲法9条を変更するのなら、それによって成し遂げられてきた平和主義を捨てるのか否か ②両立させる方法があるのか ③それは、改悪ではなく改善になるのか について検討すべきである。

 なお、*3-4のように、北朝鮮のミサイル実験で「国難だ、国難だ」と騒ぎながら衆議院を解散しているくらいだから、緊急事態条項が不要なことは明らかであるし、北朝鮮問題は5年もすれば落ち着くと思われるため、北朝鮮のミサイル実験を根拠に日本国憲法を変更する必要はないと考える。

 そのような中、西日本新聞は、2017年10月20日、*3-1のように、「22日投開票の衆院選を巡る世論調査では、自民党が圧勝し、憲法改正に前向きな勢力が国会発議に必要な定数465の3分の2(310議席)を獲得する勢いで、選挙後に9条改正などの論議が加速する可能性が高まる」と記載している。しかし、「立憲民主が野党第1党なら“足踏み”」などと、内容の検討もせずに「改憲が前進」という前提で報道するのは中立性を欠き、国民に先入観を与えるのでよくない。しかし、*3-2のように、公明党が改憲に慎重姿勢を示しているため、与党には少し安心感があるのである。

 また、*3-3のように、希望の党は、公認の条件として提出を求めている「政策協定書」で、①憲法改正への支持 ②安全保障関連法については「適切に運用し、現実的な安全保障政策を支持する」 などとした。一般に、改憲派は、「現実に合わせて理想を変更すべきだ」と主張しているが、憲法はあるべき姿(理想)を述べて、現実を理想に近づけるためのものであるため、発想が逆である。「現実に合わせて理想を変更すべきだ」という論法は、わかりやすく書けば、「泥棒がなくならないから、泥棒してもよいことにしよう」という論法と同じである。

 さらに、「日本国憲法は、古くて時代に合わなくなっている」と言っている人がいるが、それなら、どこが古いのでどう変えたいのかを具体的に指摘する必要があるが、憲法を変えなければならないような場所は、私には見当たらない。環境権についても、足りない部分は強化して環境基本法をしっかり守ればよいため、憲法の変更は不要である。

 最後に、核兵器問題については、日本政府が国連に提出した核兵器廃絶決議案の軍縮等に関する表現が後退していることを、国際NGO「ICAN(核兵器廃絶国際キャンペーン)」が批判している。ICANは、そういう組織だからこそノーベル平和賞受賞が決定したのであり、こういう正論を言う人たちが、最少は少数派でも次第に世界をあるべき方向に進めるのだ( https://headlines.yahoo.co.jp/videonews/ann?a=20171021-00000017-ann-int 参照)。

<各党の政策のうち消費税と財政再建>
*1-1:http://www.yomiuri.co.jp/election/shugiin/2017/news1/20171007-OYT1T50105.html (読売新聞 2017年10月8日)自民と希望、増税・原発で対立…憲法改正は一致
 政権を争う自民、希望の両党は、消費増税や原発政策などをめぐって対立する。一方、両党は憲法改正を目指す点では一致しており、衆院選の結果次第では、改憲論議が活発化する可能性もある。
◆消費増税
 2019年10月の消費税率10%への引き上げの是非を巡っては、与野党の対立構図がそのまま持ち込まれた。自民、公明両党は予定通り引き上げ、飲食料品などへの軽減税率導入を掲げる。両党は増税分の使い道を見直し、子育てや教育などに重点配分する方針も打ち出した。これに対し、希望、日本維新の会の両党は「凍結」との立場だ。共産党も引き上げ中止を掲げ、立憲民主は「直ちに引き上げることはできない」と見送りを主張した。ただ、野党側が消費増税に代わって確保すると主張している財源については曖昧さも残る。希望は、企業利益の蓄積に当たる「内部留保」への課税を盛り込んだが、「法人税との二重課税になる」との指摘があり、実現性を疑問視されている。
◆原発政策
 自民が公約で、原発を「重要なベースロード電源」と位置付けるのに対し、野党側は「脱原発」を掲げた。
希望は公約で再稼働に柔軟姿勢を示すものの、原発は新設せず、「2030年までに原発ゼロ」を目指すとした。共産は「原発再稼働の中止」、立憲民主も「一日も早い原発ゼロ」を掲げ、「原発ゼロ基本法」の策定を目指す。
◆憲法改正
 自民や希望、維新は憲法改正に積極姿勢を示している。
自民は「自衛隊の明記、教育の無償化・充実強化、緊急事態対応、参議院の合区解消」の4項目で改憲を目指すとした。希望も「憲法9条を含め改正論議を進める」と明記した。9条改正については自民、希望、維新が前向きだが、共産や立憲民主は「9条の改悪反対」を掲げ、反対姿勢を強めている。

*1-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20171007&ng=DGKKZO21978770W7A001C1MM8000 (日経新聞 2017.10.7) 財源当てなき公約競争、衆院選、主要各党が公表 目立つ曖昧さ、論戦に課題
 10日公示―22日投開票の衆院選に向けた各党の公約(総合2面きょうのことば)が6日ほぼ出そろった。政権選択を争う自民党と新党「希望の党」は消費増税や原子力発電・エネルギー政策で対立する。経済政策はいずれの政党も再分配を重視して聞こえのいい内容に偏りがちで、政策実現のプロセスや財源確保に曖昧さが残る。党首討論や街頭演説を通じて有権者に明確に説明できるかが問われる。希望が6日に発表し、新党「立憲民主党」は7日に公表する。公表済みの自民や公明党、日本維新の会などとあわせ主要政党の公約がそろう。経済政策が大きな対立点として浮かんだ。2019年10月の税率10%への消費増税は自公が予定どおりの実施を掲げた。雇用や所得などの経済環境が良くなってきたと強調する。他党は「一般国民に好景気の実感はない」(希望)として増税に反対する。自公も増収分の使い道は変える。借金返済に回す分を減らし、子育てや教育の充実などに振り向ける。これまでは5兆円あまりの増収分の大部分を借金返済、残りを医療・介護や子育て支援の充実などに充てる予定だった。安倍晋三首相は比率を「おおむね半々にする」と表明した。借金が減りにくくなり、目標だった20年度の基礎的財政収支の黒字化は不可能になる。自民は16年の参院選まで公約に明記してきた「20年度の黒字化」を削除した。政府内で簡易的にまとめた試算では、社会保障費の自然増を年5000億円に抑えるなどの歳出抑制を続ければ22年度に黒字化できる。歳出抑制のタガが緩めば25年度まで遅れる。あくまでも19年10月に消費税率を上げることが前提だが、その増税自体の実現にも曖昧さが残る。首相は9月26日のテレビ番組で「リーマン・ショック級の緊縮状況が起これば判断しなければならない」と語った。
●黒字化27年度に
 希望は消費増税の凍結を公約の筆頭に掲げた。小池百合子代表は6日の記者会見で「いったん立ち止まるべきだ」と強調。菅義偉官房長官は「財源なく大胆な改革を進めるような無責任な議論にくみすることはできない」と述べた。第一生命経済研究所の試算では凍結なら基礎的財政収支の黒字化は27年度にずれる。希望は消費拡大に向けベーシックインカム(最低生活保障)の導入も打ちだした。同研究所の星野卓也氏によると、月に6万5千円を支給する場合、現役世代の1割弱を占める年収200万円未満の世帯に対象を絞っても年5.9兆円が必要。300万円未満なら11.5兆円、400万円未満なら18.3兆円と必要な財源は増える。希望が財源に挙げたのは大企業の内部留保への課税だ。内部留保をはき出させ「雇用創出や設備投資に回す」と明記した。内部留保課税は賃上げや設備投資を企業に半ば強制する手段として政府・与党内で浮かんだこともある。実現していないのは課題が多いからだ。法人税を納付した後に課税するため二重課税になり、賃上げや投資の機運を逆に冷やしかねない。小池氏は6日に早くも内部留保課税の提案を修正する可能性に言及した。生煮え感は否めない。自民、希望以外も財源や工程に不透明な部分が多い。自民が全ての3~5歳児の幼児教育・保育の無償化を明記したのに対し公明は全ての0~5歳児で無償化を掲げた。公明は所得制限をかけて私立高校の授業料も無償化するという。より多くの財源が要るが確保策は示されていない。立憲民主も増税先送りの立場だが代替財源を確保できるかは分からない。「身を切る改革で教育無償化」をうたう維新は国会議員の定数削減などを明記した。共産党は大企業の法人税率の引き上げなどを掲げた。いずれもどれだけの財源になるか見通せない。
●家庭・企業に重荷
 電気料金や安定供給にかかわる原発の扱いも争点になる。希望など多くの党が原発に依存しない方針を示した。太陽光などの再生可能エネルギーで代替する計画だ。政府は12年度から電力大手に再生エネの電気を買い取らせる制度を始めた。まだ発電コストが割高のため、膨らんだ買い取りコストが家庭や企業の電気代に上乗せされる。今年度の上乗せは月額686円。12年度の10倍以上だ。政府は30年度に再生エネの比率を22~24%に高める目標に向け導入を進めてきた。希望の目標どおり「30%」まで高まれば電気代への上乗せはさらに増える可能性がある。今後も原発を使っていく方針を示した自民と日本のこころも新設を認めるかどうかは明らかにしなかった。原発はどんなに長くても60年間で運転を終える決まり。新設しなければいつかはゼロになる。中長期のエネルギー政策の選択肢を示したとはいえない。

*1-3:http://digital.asahi.com/articles/DA3S13159917.html (朝日新聞社説 2017年10月1日) 衆院選 社会保障の将来 甘い言葉で「安心」得られぬ
 「社会保障制度を全世代型へと転換する。急速に少子高齢化が進む中、決意しました」。衆院解散を表明した記者会見で、安倍首相はそう強調した。「全世代型」への柱として「子育て世代への投資の拡充」を唱え、2年後に予定する消費増税分から財源を確保するとした。その是非を国民に問うという。だが、深刻な少子高齢化も、高齢者向けと比べて手薄な現役世代への支援の必要性も、以前から指摘されてきたことだ。8年前には麻生内閣の「安心社会実現会議」が「全世代を通じての切れ目のない安心保障」を打ち出した。政権交代を経てもこの考えは引き継がれ、旧民主党政権は社会保障・税一体改革大綱で「社会保障を全世代対応型へ転換」すると掲げた。安倍内閣のもとでも、「社会保障制度改革国民会議」が4年前に「全世代型の社会保障」を提言している。方向に異を唱える人はいないだろう。政治の怠慢で進まなかったのが実態である。
■繰り返される議論
 首相官邸が主導し、社会保障を議論する有識者会議が設けられるようになったのは、2000年代に入ってからだ。高齢化で年金や医療などの給付が膨らむ一方、少子化で支え手は減っていく。制度を維持していくには、給付を見直しながら、負担についても保険料や自己負担に加えて税制も一体で考え、縦割りを排して政府全体で検討する必要がある。そうした問題意識が背景にある。以来、内閣が代わるたびに「国民」や「安心」「改革」といった言葉をちりばめた会議ができ、提言がまとめられた。その内容は、多くの部分で重なり合う。「女性、高齢者、障害者が働きやすい環境を整え支え手を増やす」「高齢者であっても負担可能な人には負担を分かち合ってもらう」「子育て世代への支援、若者の雇用不安への対策の強化」……。取り組むべき課題は十数年の議論で出尽くしている。必要なのは、具体策をまとめて実行に移す、政治の意思と覚悟だ。とりわけ、給付の充実と表裏であるはずの負担増を正直に語れるかどうかが試金石となる。
■負担増こそが論点
 安倍首相は、消費増税分のうち、国の借金減らしに充てる分の一部を新たな施策に回し、安定した財源にするとしている。だが、この考え方は危うさをはらむ。日本は「中福祉」の社会保障と言われるが、それに見合う財源が確保されておらず、国債の発行という将来世代へのつけ回しに頼っている。消費税率を10%にしても、不足分の解消にはほど遠い。高齢化などに伴う社会保障費の自然増を毎年5千億円に抑えるやりくりでしのいでいるのが近年の状況だ。消費増税の使途を変えるとなると、社会保障費の伸びを今以上に抑えるのか。あるいは、国債発行に頼ってさらにつけ回しを増やすのか。そうした点も一緒に示さなければ、国民は是非を判断しようがない。給付の充実だけを言い、社会保障制度への影響には触れず、財政再建への見取り図も示さない。そうした態度では、単なる人気取り政策と言うしかない。そもそも、給付が負担を大きく上回る構造を抜本的に改めていくことが問われ続けているのだ。今後、高齢者でも所得や資産に余裕のある人には負担を求めることや、医療・介護の給付範囲と負担のあり方なども検討課題としていかざるを得ないだろう。そうした痛みを伴う改革や負担増の具体案と道筋を示し、将来の社会保障の姿を描く。それこそが政治の役割であり、国民に信を問うべきテーマである。
■一体改革をどうする
 消費税収の使途変更を打ち出した与党に対し、「希望の党」代表の小池百合子・東京都知事は消費増税の凍結を語る。与党との対立の構図を作る狙いのようだが、では社会保障についてどのようなビジョンを持っているのか。希望の党への合流を掲げた民進党の前原誠司代表は、消費税を増税した上で教育や社会保障の充実に充てると訴えていた。統一した見解を早急に明らかにするべきだ。国民のニーズの変化に対応して社会保障の仕組みを見直し、少子高齢社会のもとでも安定した制度にしていく――。誰が政権についても避けて通ることのできない課題である。人口減や財政難の深刻さを考えれば、とりうる政策の幅はそれほど大きくはない。5年前、民主(現民進)と自民、公明の与野党3党が決めた社会保障と税の一体改革は、社会保障とそのための負担を政争の具にしないという、政治の知恵だと言える。風前のともしびの一体改革の精神を大切にするか。目先の甘い話を競い合うか。すべての政党が問われている。

*1-4:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20171011&ng=DGKKZO22078940Q7A011C1EA1000 (日経新聞 2017.10.11) 各党「痛み」素通り、公約、再分配に傾く 有権者、狭まる選択肢
 10日に公示した衆院選で各党の選挙公約をみると、教育無償化など再分配政策に傾斜した内容が目に付く。近く日本が直面する少子高齢化に向けた「痛み」を伴う施策は素通りした形で、将来負担を心配する有権者にとって選択肢は乏しい。2012年の社会保障と税の一体改革から5年がたち、各党は再び近視眼的な政策を並べている。
・「幼児教育の無償化を通じ、全世代型の社会保障へ転換」(自民党)
・「幼児教育の無償化、大学の給付型奨学金の大幅拡充」(希望の党)
・「高校授業料無償化、大学授業料の減免」(立憲民主党)
 安倍晋三首相が2019年10月の税率10%への消費増税の使途変更による「全世代型社会保障」の実現を訴えると、各党は公約に教育無償化を明記した。高等教育までを含めた無償化の費用は最大で年5兆円規模に上るが、選挙前に十分議論されたとは言い難い。例えば自民党が打ち出した幼児教育の無償化。公約は「20年度までに3~5歳のすべての子どもたちの費用を無償化する」とうたった。いまの保育料は所得が高い人ほど金額が高くなる制度だが、自民党の公約は所得制限を設けないと読める。高所得者ほど恩恵が手厚くていいのか。本来は大きな争点だが、各党で論戦になっていない。社会保障も同様だ。政府は来年6月に社会保障費の抑制額などを定める財政健全化計画を改定する予定で、負担をどうするかが焦点だ。だが、各党公約は具体像を語らない。「医療・介護費をどのくらい払うのか」「年金はもらえるのか」。有権者に「痛み」を示さず支持を呼び掛けている。消費増税は割れた。希望の党や立憲民主党など野党はそろって増税の延期や凍結を主張し、自公は「リーマン・ショック級の出来事が起きない限り」との条件付きで増税すると約束した。ただ自公も5兆円強の増収分のうち新たに1.7兆円程度の税収を教育などに使う。各党の公約はいずれも財政健全化からは遠く、将来世代にツケを先送りする主張だ。原発政策も争点だ。自民党は1日を通じて安定的に供給できる「ベースロード電源」と位置づけ、再稼働に前向き。希望の党は「30年までの原発ゼロ」を主張した。同党は再生可能エネルギーの割合を「30%」にすると唱えるが、電気代の上昇など経済的な負荷の可能性への言及は乏しい。

*1-5:https://mainichi.jp/senkyo/articles/20171011/ddm/005/070/008000c (毎日新聞 2017年10月11日) 2017衆院選 消費税増税=井出晋平(東京経済部)
●選挙争点化、もうやめよう
 安倍晋三首相は、2019年10月に予定通り消費税率を8%から10%に引き上げることで見込まれる増収分の使途変更を掲げて衆院選に踏み切った。一方、小池百合子東京都知事率いる「希望の党」など野党は、増税凍結・中止を訴え対抗姿勢を鮮明にしている。だが、もう消費税を選挙の争点にするのはやめるべきではないか。政策を巡る議論が深まらないまま、選挙のたびに消費税を「政争の具」にし続ける政治の無責任さを感じずにはいられない。
●唐突な使途変更、解散の「口実」か
 首相は9月25日の記者会見で、10%への消費税増税による5・6兆円の増収分のうち、国の借金返済に充てる予定だった分の一部を幼児教育・保育の無償化などに振り向けると表明。「国民生活に関わる重い決断を行う以上、すみやかに国民の信を問わなければならない」として、衆院を解散した。だが、この首相の説明には首をかしげざるを得なかった。首相が新たな使い道とする教育無償化は、今夏の内閣改造で首相が目玉に据えた「人生100年時代構想会議」で議論を始めたばかりで、会議はまだ1回しか開かれていない。議論が深まらないうちに、首相は▽3~5歳児は完全無償化▽0~2歳については低所得層に限り無償化▽大学生の給付型奨学金の拡充--などと打ち上げた。これでは、構想会議を設置した意味がない。また、首相は全世代型の社会保障制度への転換が「待ったなし」と述べたが、現行制度が高齢者に手厚く偏っているという指摘はかなり前からあった。制度の組み替えの必要性を感じているなら、なぜもっと早く取り組まなかったのか。首相は12年12月の第2次政権発足後、選挙のたびに消費税を争点に据えてきた。14年12月の衆院選では、同年4月の消費税率の8%への引き上げによる消費低迷を理由に、15年10月に予定していた10%への引き上げ延期を表明し、衆院解散に踏み切った。16年7月の参院選では、直前に再び17年4月の増税を延期すると表明した。それまで「リーマン・ショックや大震災のような事態が発生しない限り、予定通り引き上げる」と繰り返していたが、16年5月の主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)で「世界経済が危機に陥るリスクに直面している」と唐突に表明。リーマン・ショック級の危機が迫っているという強引な理屈で増税延期に持ち込んだことは記憶に新しい。今回は、これまでとは逆に予定通りの消費税増税を表明した。2回の延期で「安倍政権で増税は無理」とあきらめていた財務省内では当初、「増税分を教育無償化の財源にする以上、3回目の延期は無いだろう」と期待する声が聞かれた。だが、その後首相がテレビ番組で「リーマン・ショック級の大きな影響、経済的な緊縮状況が起これば(延期を)判断しなければいけない」と発言したことで、「また延期するかもしれない」と戸惑いの声も出ている。希望の党が消費税増税の凍結を訴えたこともあり、首相が解散の大義とした増収分の使途変更は、自民党の政権公約の6本の柱のうち4番目に後退。「大義なき解散」を取り繕うために使途変更を持ち出した感を改めて強くする。
●10%引き上げの3党合意どこへ
 一方、希望の党や立憲民主党など野党の消費税増税の凍結・中止という主張も賛成できない。特に野党再編の中心となっている希望の党は、安倍政権への対抗姿勢を打ち出すための戦略という思惑が透けてみえる。安倍政権の支持率が低下し、自民党内で「ポスト安倍」として岸田文雄政調会長ら財政再建派の名前が取りざたされていた今夏、ある民進党議員は「自民党がポスト安倍で消費増税に傾けば、小池氏は支持を得やすい増税反対で打って出る」と予測した。増税を表明したのは首相自身だったが、対抗して増税反対を訴えれば票が集まるという計算が働いた可能性は高い。もともと消費税率5%から10%への段階的な引き上げと、増収分の使途を医療、介護、年金、少子化対策の社会保障4経費に限ることは、旧民主党政権時代の12年、自民、公明との3党合意で決めたものだ。その背景には、少子高齢化で年金や医療費が増加を続ける一方、担い手が減少し、このままでは社会保障制度が破綻するとの強い危機感があった。また、有権者の受けが悪いとされる消費税を「政争の具」にしないという狙いもあったはずだ。増税はできれば避けたい選択だ。国民に負担を求める前に税金の無駄遣いをやめ、歳出を徹底的に見直す必要がある。しかし社会保障制度を維持するには、一定の負担が避けられないのも確かだ。国と地方の借金は国内総生産(GDP)の2倍近くに達し、先進国で最悪だ。増税凍結、使途変更のどちらの主張も借金を減らすことにはつながらず、将来不安は消えない。公示された衆院選では耳に心地よい政策ばかりが目立つが、将来世代につけを回すことは許されない。どの政党がこの国のかじ取りにふさわしいか--。我々は、惑わされない確かな目を持つことが求められる。

<エネルギー政策>
*2-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20171016&ng=DGKKZO22288450W7A011C1PE8000 (日経新聞社説 2017.10.16) 現実直視し責任あるエネルギー政策を
原子力発電をどう利用するかは衆院選の対立軸のひとつだ。自民党は原発を基幹電源と位置づけ再稼働の必要性を訴えている。一方で、野党は実現時期は違うものの原発ゼロを目標に掲げ、再稼働を認めない党もある。エネルギーは社会を支え、供給が途絶えれば影響は大きい。聞こえのよいスローガンを唱えるだけでは困る。現実を直視してエネルギー利用の未来を展望し、責任ある政策を示してほしい。自民党は原発を「ベースロード電源」と位置づけ、再稼働についても原子力規制委員会による安全性の確認と地元同意を前提に進めるとした。前回の衆院選の公約とほとんど変わらず、原発を争点にしたくない姿勢も見てとれる。だが安倍政権のもとで再稼働した原発は5基にとどまり、2030年に電力の2割強を原発で賄うとした政府の目標を達成できるかも、不透明さを増している。世論調査では再稼働を不安に感じる国民がなお多い。原発問題から逃げずに、再稼働がなぜ必要かを丁寧に説くべきだ。政策を見直すべき点がないかも検証が要る。太陽光や風力など再生可能エネルギーの目標はいまのままでよいのか。30年以降の原発比率や新増設はどうするのか。これらの点について方向性を示す必要がある。「30年までに原発ゼロ」を掲げる希望の党や「一日でも早い脱原発を」と訴える立憲民主党には具体的な道筋を示すよう求めたい。両党は原発の代わりに再生エネルギーの比率を増やし、省エネも最大限強化するとした。だが実現への技術的な裏づけや、国民負担がどの程度膨らむかなどが、はっきりしない。地球温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」で国際社会に約束した温暖化ガス削減と両立できるのかもきちんと説明すべきだ。立憲民主党は原発ゼロを基本法で定め、希望の党も憲法で明記すると約束した。だがエネルギー利用は国際情勢の影響を受けやすく、政策には変化に対応できる柔軟さも要る。理念と政策は分けて考えるべきではないのか。安倍政権になり原子力政策について国民の声を聞く場は減っている。衆院選を機に各党が正面から向き合い、議論を深めてほしい。

*2-2:http://qbiz.jp/article/120623/1/ (西日本新聞 2017年10月16日) 【争点チェック2017衆院選】(4)原発・エネルギー 活用かゼロその先は
 東京電力福島第1原発事故から6年余り。今後も原発を活用する方針の自民党に対し、大半の政党が「原発ゼロ」を掲げた。原発への不信感は今なお根強く、民意をすくい取ろうとする各党の思惑がのぞく。自民党は公約で「原発依存度を可能な限り低減する」としつつも「重要なベースロード(基幹)電源」と原発を位置付けた。原子力規制委員会が新規制基準の適合を認め、立地自治体の理解を得た原発の再稼働を進める方針だ。政府は2030年度の原発依存度20〜22%を目指す。原発30基程度を再稼働する前提だ。31年度以降も原発を使い続けるならば、新増設や建て替えの議論が避けられない。どこまで原発を「低減」するかも問われるが、自民党の公約にはその記載がない。連立与党を組む公明党は再稼働を容認するが、「原発の新設を認めず、原発に依存しない社会・原発ゼロを目指す」と強調。とはいえ「既存の原発はいずれ廃炉になるから、ゼロになる」(山口那津男代表)として、いつゼロにするのかは明らかにしていない。8党の中で唯一、原発ゼロの目標時期を示したのは希望の党。原発を新設せず、運転開始から40年の原発を廃炉にする原則を徹底することで、30年までの原発ゼロを目指す。ただ、再稼働を認める立場をとっており、どうやって12年余りで原発をゼロにするのかの道筋は示していない。民進党出身の前議員が軸となる立憲民主党は、原発ゼロの実現時期について「一日も早く」と表現。「30年代に原発ゼロ」を目指した民進党のように具体的な期限を掲げなかった。野党共闘する共産党、立憲民主党、社民党は再稼働反対で足並みをそろえた。原発に代わる電源について、共産は「30年までに電力の4割を再生可能エネルギーで賄う」方針。社民は「再エネの割合を50年までに100%」とする目標を盛り込んだ。太陽光や風力は天候などで発電量が変わりやすく、どう需給バランスをとるのか不透明だ。「原発ゼロ」の表現を公約に使っていない日本維新の会は「既設原発は市場競争に敗れ、フェードアウトへ」としている。原発を使い続けるにしても、ゼロにするにしても、将来にわたり、どうエネルギーを安定確保していくのか。政治の責任を背負った答えは明確に示されていない。

*2-3:http://qbiz.jp/article/120595/1/ (西日本新聞 2017年10月14日) 原発30キロ圏も国補助金 糸島など計5億円
 経済産業省が、原発が立地する自治体を対象とした国の補助金を、2017年度から、原発の半径30キロ圏内の自治体にも支払う仕組みに変更していたことが13日、分かった。17年度の予算額は16年度と同じ45億円で、対象自治体は150を超え、新たに支給予定の立地外の自治体は16に上る。対象自治体などによると、支給予定の補助金の総額は少なくとも約5億円に上るとみられる。同省は仕組みの変更を報道発表していなかった。原発事故が起きた場合、広範囲の被害への懸念から、30キロ圏内には再稼働に慎重な自治体もある。経産省は「原発の影響が周辺にも及ぶことが分かり仕組みを見直した。再稼働への同意を得る目的ではない」としているが、原発のコストに詳しい龍谷大の大島堅一教授(環境経済学)は「地域再生策として趣旨は理解できるが、補助金を渡すだけという手法には反対だ。再稼働への理解を得たいという意図があるのではと読めてしまう」と指摘した。経産省によると、補助事業は「エネルギー構造高度化・転換理解促進事業」で、16年度に始まった。主に老朽化などで廃炉が決まった原発が立地する自治体に対し、再生可能エネルギーの普及促進など地域振興の取り組みを後押しする。17年度からは公募要領を変更し、「原子力発電施設からおおむね半径30キロの区域を含む市町村、および当該市町村が属する都道府県」に応募資格を広げた。応募があった自治体の中から、今年4月と7月に補助対象を決めた。北海道電力泊原発(北海道泊村)の30キロ圏では、ニセコ町や岩内町など4町が選ばれた。東京電力福島第1原発や第2原発を抱える福島県では、いわき市と浪江町が対象となった。九州は、九州電力玄海原発(佐賀県)に近い唐津市、伊万里市、福岡県糸島市、川内原発(鹿児島県)周辺の阿久根市、いちき串木野市が支給予定だ。経産省は「事業は日々運用を改善しており、逐一、報道発表することはない。ホームページ上で公表し、説明もしている」とした。

*2-4:http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201708/CK2017081402000112.html (東京新聞 2017年8月14日) 【社会】福島第一 廃炉に税金1000億円超 7月まで本紙集計
 東京電力福島第一原発事故の廃炉作業で、国が直接、税金を投入した額が一千億円を超えたことが、本紙の集計で分かった。汚染水対策や調査ロボットの開発費などに使われている。今後も溶け落ちた核燃料の取り出し工法の開発費などが必要になり、金額がさらに大きく膨らむのは必至だ。廃炉費用は東電が負担するのが原則だが、経済産業省資源エネルギー庁によると「技術的に難易度が高い」ことを基準に、税金を投入する事業を選定しているという。担当者は「福島の早い復興のため、国が対策を立てることが必要」と話す。本紙は、エネ庁が公表している廃炉作業に関する入札や補助金などの書類を分析した。廃炉作業への税金投入は二〇一二年度からスタート。今年七月までに支出が確定した業務は百十六件で、金額は発注ベースで計約千百七十二億六千万円に上った。事業別では、建屋周辺の地下を凍らせ、汚染水の増加を防ぐ凍土遮水壁が、設計などを含め約三百五十七億八千万円。全体の三割を占め、大手ゼネコンの鹿島と東電が受注した。ロボット開発など、1~3号機の原子炉格納容器内の調査費は約八十八億四千万円だった。福島第一の原子炉を製造した東芝と日立GEニュークリア・エナジーのほか、三菱重工業と国際廃炉研究開発機構(IRID)が受注した。受注額が最も多いのは、IRIDの約五百十五億九千万円。IRIDは東芝などの原子炉メーカーや電力会社などで構成する。国は、原発事故の処理費用を二十一兆五千億円と試算。このうち、原則東電負担となる廃炉費用は八兆円とされている。除染で出た汚染土を三十年間保管する中間貯蔵施設は国の負担だが、賠償費用は主に東電や電力会社、除染費用も東電の負担が原則だ。

*2-5:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20170902&ng=DGKKASFS01H5T_R00C17A9MM8000 (日経新聞 2017.9.2) 政府、原発融資を全額補償、まず英の2基 貿易保険で邦銀に
 政府は日立製作所が英国に建設する原子力発電所について、日本のメガバンクが融資する建設資金を日本貿易保険(NEXI)を通じて全額補償する。先進国向け案件の貸し倒れリスクを国が全て引き受けるのは異例の措置だ。国内の原発新増設が難しい中、国が全面的な支援に乗り出してメガバンクなどの協力を引き出す狙い。インフラ輸出は中国など新興国勢との競争が激しくなっており、国が他のインフラ案件でも支援拡充に動く公算が大きい。安倍晋三首相は8月31日にメイ英首相と会談し、原発建設の協力推進を確認した。貿易保険(総合2面きょうのことば)の補償対象は日立子会社のホライズン・ニュークリア・パワーが受注した、英中部ウィルファで計画中の原発2基だ。両政府と日立は事務レベルで資金支援の枠組みを詰めて2019年中の着工を目指している。試算によると、事業費は2基で2兆円超だ。英政府と日立、日本政策投資銀行、国際協力銀行(JBIC)が投融資を実施する見込みだが、巨額な資金を調達するには民間融資が不可欠になっている。NEXIは通常、民間融資が焦げ付いた場合に備えた保険を提供し、融資額の90~95%を補償する。今回の英国案件については全額を補償する方向で邦銀と協議に入る。原発事業は東京電力福島第1原発事故以降に安全対策費が膨らみやすく、三菱東京UFJ銀行やみずほ銀行も貸し倒れリスクが大きいと判断しNEXIの全額補償を条件にしていた。過去に途上国向けで全額補償したことはあるが、先進国では例外的な措置だ。数十年程度の長期融資などが補償の条件になる見込みだ。原発事故などが発生した場合、三菱UFJ、みずほ両行は第三者から原発事業への貸し手責任に関して訴訟を起こされるリスクもある。両行は損害賠償に関する日英両政府間の協議などを見極めたうえで最終判断する。国が資金支援で前面に立つのは大きなリスクとも隣り合わせだ。原発建設は徹底した安全対策で工程が長引く傾向にあり事業費が想定を上回るケースも後を絶たない。貸し倒れになったりすればNEXIやJBICのバランスシートを直撃し、税金投入を通じた資本増強が不可避になる。最終的に多額の国民負担が発生する危険を冒しながらインフラ輸出を推進することの是非についても議論が活発になりそうだ。一方で中国は国有企業を中心に国を挙げて大型のインフラ輸出を加速させており、日本も対抗上、相応のリスクを取らなければ激しい受注レースで生き残れない現実もある。英政府は15年、英南東部で中国製の原子炉を先進国では初めて導入することを決めた。安倍政権は今回、全額補償措置などと引き換えに英国側にも官民での資金支援を手厚くするよう要請する。

*2-6:http://useful-info.com/tokyo-is-contaminated-not-safeplace (お役立ち情報の杜 ) 【福島原発事故による内部被ばく】東京は放射性物質まみれであり、安心して暮らせる場所ではない。
 「福島原発事故は収束した」「福島原発事故により放出された放射性物質は健康に影響を与えない」「放射性物質による実被害は無いのに懸念を表明するのは、風評被害につながるのでやめるべきだ」というような「信念」に取り憑かれている人は多いと思います。御用マスコミや芸能人を使った「食べて応援キャンペーン」も功を奏しているようです。「食べて応援キャンペーン」を懐疑的に見ている人もいます。しかしその人たちも、健康被害を心配すべきなのは福島県内だけだと思っている場合が多いのではないでしょうか?世界有数の大都市である東京は福島県から200km以上離れていますが、果たして、安心して暮らせる状態なのでしょうか?「放射能汚染―32カ所が基準超え―東京東部で市民団体調査」というリンク先の情報によると、2014年~2015年にかけて市民団体が調査した結果、国の指定基準を超える高放射能汚染箇所(ホットスポット)が多数発見されました。さらに、ホワイトフードさんは、東京都内公園の放射性物質による土壌汚染状況をまとめてくれています。詳細な数値に関しては、下記リンク先でご確認ください。「この程度の汚染数値だったら大した事ねえよ。気の持ち方次第だよ」なんて言う人もいるかもしれません。放射性物質まみれの環境で暮らすことにより、放射性物質を呼吸や食事などを通して体内に取り込むとどうなるのでしょうか?外部被ばくよりも恐ろしい内部被ばくの危険を避けることはできません。例えば、セシウム137を毎日10ベクレルづつ摂取した場合、500日後には体内の総放射線量は1400ベクレルにも達します(1ベクレルとは、1個の原子が1秒間に崩壊する時の放射線の強さに等しい)。体重70キログラムの大人ならば、1キログラム当たり20ベクレルですが、体重20キログラムの子供の場合、1キログラム当たり70ベクレルになってしまいます。体重1キログラム当たりのベクレル数が多くなるほど心臓に悪影響を与えやすいことが判っています。特に体重1キログラム当たり50ベクレルを超えると、心臓血管系・神経系・内分泌系・免疫系・生殖系・消化器系・排泄系で病的な変化が増加します。セシウム137は、体内の様々な臓器に偏在し濃縮されるのが原因です。人工的な放射性物質には、これ以下なら安全という閾値は存在しません。チェルノブイリ原発事故に伴い、ベラルーシでこの研究を行い発表したバンダジェフスキー博士は逮捕・投獄され、拷問も受けています。日本では特定秘密保護法が成立しており、似たような人権侵害が起こる可能性が高いですね。つまり、内部被ばくによる健康被害は、原発マフィア側にとって都合の悪い事実だということです。2016年6月30日、環境省は、1キログラム当たり8000ベクレル以下ならば一般廃棄物扱いにして全国でリサイクルも可能にするという基本方針を正式決定しましたが、これが犯罪行為だということが理解できたのではないでしょうか?繰り返しますが、人工放射性物質には、これ以下なら安全という閾値は存在しないのです。本来、1キログラム当たり0ベクレルでなければなりません。安倍政権下では、放射性物質による汚染状況調査も健康被害調査もまともに行われていません。福島県内での甲状腺がん発生率が何百倍に増えても、原発事故との因果関係を認めようとしません。福島原発事故により放射性物質は全国に拡散されました。東京の人たちは他人事だと言ってられません。では、何をすべきなのでしょうか?放射性物質に汚染された地域は少なくとも300年は居住することができません。何兆円もかけて無駄な除染作業をするくらいならば、そのお金を移住費用などに充てるべきでしょう。本来、日本政府は下記の施策を即実行すべきです。
  ①放射能レベルの正確な測定を日本全国で行い、結果を全て公表する。
  ②外部被ばくだけでなく内部被ばくの危険についても、最新の知見を国民へ提供する。
  ➂避難・移住地域選定については、最低限、チェルノブイリ基準を適用する。
  ④避難・移住先で不自由がないように、住居、仕事、収入については十二分に援助する。
  ⑤避難対象者の医療費については生涯無料とし、診断結果は本人へ丁寧に説明する。
  ⑥原発は即廃止し、福島原発も含めて廃炉作業は安全第一で進める。
 放射性物質は、目も眩むような閃光を発しません。鼻を突くような異臭がありません。耳をつんざくような爆音もしません。顔をしかめるような激痛もありません。だからこそ、科学的な知識、原発マフィア以外からの情報、健康被害への想像力、冷静な思考力・判断力、雰囲気に流されない自律心などが必要になります。「見て見ぬふり」や「臭い物に蓋」は身を滅ぼします。国民は、自分の身は自分で守るしかないと思います。          以上

*2-7:http://useful-info.com/ippnw-dr-alex-rosen-lecture (お役立ち情報の杜) 福島原発事故について皆がダンマリしている時こそ、確かな情報を! ドイツ人小児科医による講演内容を紹介。
 IPPNW(=International Physicians for the Prevention of Nuclear War 核戦争防止国際医師会議)の理事会メンバーで、小児科医・医学博士でもあるアレックス・ローゼン氏が、福島原発事故による健康被害に関して講演を行いました。噂や扇動ではなく、すべて、科学的な根拠に基づいた話です。しかも、この公演では、日本政府や東京電力が公表したデータを用いています。それだけでも、原発事故の恐ろしさを十分に説明できるからです。公演内容の要点を以下に述べます。
要点始め *********************
1)放射線と、それが健康に及ぼす影響についての基礎知識
・放射線とはどういうものか?
・よく使われる放射線の単位:ベクレル(Bq)、シーベルト(Sv)
・外部被ばくと内部被ばく
・放射線による被ばくは、細胞の損傷と突然変異を引き起こす。
・これ以下なら安全という閾値はない。
・抵抗力のない人や子供は影響を受けやすい。
・放射線核種と病気の関連
  (ヨウ素:甲状腺ガン、セシウム:固形腫瘍、ストロンチウム:白血病、
  プルトニウム:肺ガン・肝臓ガン)
2)福島原発事故に関する事実
・爆発と、大量の放射性物質放出(東電の公開データより)
・福島事故による放射性物質の降下量分布
・放射性物質の約80%が太平洋へ流れた。陸地が2割で済んだのは風向きによる運である。
・放射性物質による土壌汚染調査の結果。
・吸引、経口摂取による内部被ばくの危険。
・チェルノブイリなら避難しているレベル地域に、多くの日本住民が住んでいる。
・学校、幼稚園、保育園の土壌から高い放射線が検出されている。
・子どもは土に触れる機会が多く、しかも放射能に敏感なので、健康への影響が心配だ。
・取り除いた汚染土壌が屋外に放置されている。これは放射性廃棄物なので、ドイツなら
 キャスクに入れて保管しなければならない。
・こんな環境が子どもたちの通学路になっているのはヒドイことだ。
・モニタリングポストの数値は、実際より低い。
・放射性物質で汚染された飲食物(水道水、果物、野菜、魚介類、牛乳、米、お茶)。
・最大の危険は、長期間の、汚染食料による内部被ばくだ。
・日本では、この先100年も200年も放射性セシウムが地中に残留し続ける。
・WHOは過小評価をしている。
3)これから如何なる健康被害が予測されるか、また、既に起こってしまったか。
・WHOには、放射線に関する専門部署が無い。IAEAという原子力推進団体から提供され
 たデータを用いている。例えば、タバコの害についてフィリップモリスから提供された
 報告書を鵜呑みにしているのと同じだ。
・WHOは、放射線とその影響について、IAEAの承認なしには公表できない契約を結んで
 いる。このスキャンダルは、何十年も批判され続けている。
・WHOのレポートには問題点が多い。
  「放出された放射性物質の量が過小評価されており、東電発表数値よりずっと少ない」
  「福島県外の人々への健康影響が無視された」
  「測定用食料品サンプルの量と選択が不適切」
  「原発利権者に健康被害の説明をさせている」
・福島原発事故後に乳児死亡率が上昇した。チェルノブイリのケースと似ている。
・甲状腺異常が増加した。平時なら、小児の甲状腺ガンは、あり得ないと言えるほど発生
 率が低いのだ。
・甲状腺以外のガンも増加リスクがある。しかも、福島県民だけの話ではない。
 (循環器疾患、視力障害、不妊症、遺伝子への影響)
・精神的影響(ガン発症の不安を抱えながら生きねばならない)は重大な問題だ。
4)個人として何ができるだろう?
・情報を集め、現状を知り、理解し、他の人に伝えることが重要だ。
・「汚染は大したことはない。原子力エネルギーは必要だ」という原子力業界のウソにダマ
 されないこと。
・例えば山下俊一が、「笑っている人には放射能はやって来ない」「年100ミリシーベルト
 でも安全」と言っているが、信じてはいけない。
・政治家を含む原発利権者に対して批判的な質問をすること。根拠を説明させるのが大事。
・民衆の反対圧力が高まれば、これ以上逆らえないと政治家は気付く。
・日本は、自然エネルギー大国であり、再生可能エネルギーで100%まかなうことが可能だ。
・「原発が無くなるとエネルギーが不足する」というウソを信じてはいけない。
・福島県の子どもたちが沖縄で保養している実例紹介。
********************* 要点終わり
 日本各地の原発が再稼働に向けて動いているため、福島原発事故などは過去のものであると思っている人も多いと思います。日本の大手マスコミは、福島原発事故による健康被害について、ほとんど報道していません。「問題ない」「問題ない」という、原発マフィアたちのブラックプロパガンダだけを聞かされていると、誤解や・判断ミスをして、失敗の繰り返しにつながります。原発利権集団(政治家、官僚、メーカー、電力会社、御用マスコミ、御用学者、IAEA、WHOなど)の言い分ばかりを鵜呑みにすることは危険です。原発利権組織と距離を置いているIPPNW(核戦争防止国際医師会議)などの情報も意識的に取り入れて頂きたいと思います。以上

<憲法変更と安全保障>
*3-1:http://qbiz.jp/article/120946/1/ (西日本新聞 2017年10月20日) 9条論議 加速か停滞か
 22日投開票の衆院選を巡る報道各社の世論調査では、自民党が圧勝し、憲法改正に前向きな勢力が国会発議に必要な定数465の3分の2(310議席)を獲得する勢いだ。選挙後に9条改正などの論議が加速する可能性が高まるが、各党が掲げる改憲項目には違いがある。自民、公明の与党だけで3分の2を得ることができるのか、野党第1党がどの党になるかで議論の行方が変わりそうだ。
●自公で3分の2なら…自衛隊明記へ 来年発議も
 自公で3分の2を維持すれば、安倍晋三首相(自民党総裁)が主張する9条への自衛隊明記に向けた議論が進む可能性が高い。首相は公示日の10日、仙台市での街頭演説で「東日本大震災で頑張った自衛隊に『君たちは憲法違反だけど命を懸けろ』と、こんなことが通るはずない」と訴えた。首相は自衛隊明記案の2020年施行を目指し、年内に自民党案をまとめ、来年の通常国会で発議する日程を描く。自民は今回、12年の政権復帰後、初めて改憲を公約の重点項目に位置付け、自衛隊明記を含む4項目を掲げた。各社の調査では、自民単独で300議席を獲得するとの見方もある。自民幹部は「圧勝すれば首相の改憲案に『お墨付き』が与えられたということになる」と語る。「国防軍」創設を記した12年の党草案での発議を主張する石破茂元幹事長らの異論は抑えられ、首相の想定通りの改憲シナリオが一気に進む可能性がある。9条改正に慎重な公明党は公約集で「国民は自衛隊は憲法違反の存在とは考えていない」とあえて記し、改正の必要性に疑問を示す。だが、特定秘密保護法も安全保障法制も、連立維持を重視して最後は成立を容認してきた経緯がある。首相官邸はこれまでも、日本維新の会とてんびんにかけることで公明を動かしてきた。希望の党は「9条を含め改正論議を進める」と公約に掲げており、連携を呼び掛ける可能性もある。
●野党が健闘したら…9条以外の項目優先も
 野党が健闘して自公の3分の2を阻止した場合、発議には希望や維新など、野党の改憲勢力を巻き込む必要が出てくる。だが、希望の小池百合子代表は首相の自衛隊明記案には「疑問がある」と否定的だ。民進党出身者らを中心に異論を唱える場面も予想される。維新も「9条改正」を公約に記載。ただ、松井一郎代表は教育無償化や地方自治を優先事項としており、9条については「自民党案が固まってくれば、まじめに正面から議論したい」と態度を保留している。首相官邸が9条改正を先送りし、緊急事態条項の創設など幅広い合意が得られそうな項目を先行させる「お試し改憲」を目指すことも考えられる。
●立民第1党なら足踏み?
 安保法制を前提とする「9条改悪」に反対する立憲民主党、改憲反対の共産、社民両党と野党系無所属議員が衆院3分の1超となる156議席以上を確保すれば、改憲議論は一気に後退する。だが、3党の公示前勢力は計38議席で、そのハードルは極めて高い。ただ、立憲民主が野党第1党になり発言力を高めれば、希望や維新と連携し、改憲阻止勢力が拡大する可能性もある。

*3-2:http://qbiz.jp/article/120468/1/ (西日本新聞 2017年10月13日) 【争点チェック2017衆院選】(1)憲法改正 改憲勢力の思惑交錯
 「党内外の十分な議論を踏まえ、初めての憲法改正を目指します」。自民党は衆院選の公約で、2012年の政権復帰後、初めて憲法改正を重点項目に位置付けた。首相が5月に9条1、2項を維持した上で、自衛隊を明記する案を提起したことを受け、公約には自衛隊の明記▽教育無償化▽緊急事態対応▽参院の「合区」解消の4項目を列挙。「国会で発議し、国民投票を行う」と具体的な手続きに踏み込み、首相の前のめりな姿勢を反映している。首相は政権復帰直後、改憲発議要件を定めた96条緩和を打ち出し、14年には緊急事態条項新設に意欲を示したが、世論の反発などで実現しなかった。変遷の末に9条に目を付けたのは、災害救助で高い評価を受ける自衛隊の明記に限れば、国民は受け入れるとの読みがあるとみられる。与党内の温度差は公約にも表れている。公明党は「(首相提案の)意図は理解できないわけではないが、国民は自衛隊は憲法違反とは考えてない」「安全保障法制の適切な運用を積み重ね、さらに国民の理解を得ることが大事だ」と書き込み、慎重姿勢を強調した。自公と、希望の党、日本維新の会の「改憲勢力」内でも思惑は交錯している。首相が協力を期待する希望は「9条を含め憲法改正論議を進める」と明記した。小池百合子代表(東京都知事)は00年の衆院憲法調査会で「いったん現行の憲法を停止する、その上で新しいものをつくっていくことに基本的に賛同する」とまで述べた改憲論者だが、首相案には「大いに疑問がある」と異論を唱え、選挙後の対応も見通せない。維新は「国民の生命・財産を守るための9条改正」を盛り込んだ。改憲勢力の拡大に「護憲派」は危機感を強める。共産党は「自衛隊が明記されれば9条2項を残しても死文化し、無制限の海外での武力行使が可能になる」と指摘。社民党は「9条の平和主義を守る」と同調する。共産、社民と共闘する立憲民主党は改憲論議は否定しない立場だが、公約で「憲法違反の安保法制を前提とした9条改悪とは徹底的に闘う」と宣言した。改憲論議の進展は選挙結果に大きく左右される。首相は特定秘密保護法や安保法制の制定前の選挙戦と同じく、街頭演説では改憲にあまり触れないが、首相側近はこう言う。「改憲勢力が増えれば増えるほど、議論は進めやすくなる」
   ◇    ◇
 与野党各党は憲法改正、消費税増税、北朝鮮問題などの主要課題とどう向き合うのか。各党の公約や主張を中心に衆院選の争点を5回にわたって点検する。

*3-3:http://mainichi.jp/senkyo/articles/20171003/k00/00m/010/128000c (毎日新聞 2017年10月3日) 希望の党:公認条件、安保関連法「適切に運用」に
●立候補予定者に求めている政策協定書最終案 「容認」改め
 希望の党が立候補予定者に公認の条件として提出を求めている「政策協定書」の最終案が明らかになった。安全保障関連法について「適切に運用し、現実的な安全保障政策を支持する」としている。協定書案では当初、安全保障関連法に対する「容認」を要求していた。しかし、民進党出身者が受け入れやすくするため、「適切に運用」にとどめた。憲法改正への支持、2019年10月の消費税率の10%への引き上げの凍結なども盛り込んだ。外国人に対する地方参政権の付与反対、政党支部で企業団体献金を受け取らないこと、党への資金提供も求めている。さらに、選挙区のすみ分けを行う日本維新の会を念頭に「選挙協力の協定を交わしている政党への批判は一切行わない」とする文言も加えた。
●政策協定書の全文は次の通り。
 私は、希望の党の公認を受けて衆院選に立候補するに当たり、下記事項を順守すること、当選した場合には希望の党の所属する会派に所属して国会活動を行うこと、希望の党党員として政治活動を行うことを誓います。
1 希望の党の綱領を支持し、「寛容な改革保守政党」を目指すこと。
2 現下の厳しい国際情勢に鑑み、現行の安全保障法制については、憲法にのっとり適切に
  運用する。その上で不断の見直しを行い、現実的な安全保障政策を支持する。
3 税金の有効活用(ワイズ・スペンディング)を徹底し、国民が納める税の恩恵が全ての
  国民に行き渡る仕組みを強化すること。
4 憲法改正を支持し、憲法改正論議を幅広く進めること。
5 国民に負担を求める前に国会議員が身を切る改革を断行する必要があること及び
  いわゆる景気弾力条項の趣旨を踏まえて、2019年10月の消費税10%への引き
  上げを凍結すること。
6 外国人に対する地方参政権の付与に反対すること。
7 政党支部において企業団体献金を受け取らないこと。
8 希望の党の公約を順守すること。
9 希望の党の公認候補となるに当たり、党に資金提供をすること。
10 選挙期間が終了するまで、希望の党が選挙協力の協定を交わしている政党への批判は
  一切行わないこと。

*3-4:http://qbiz.jp/article/120617/1/ (西日本新聞 2017年10月15日) 【争点チェック2017衆院選】(3)北朝鮮問題 明確な対立軸見えず
 核実験や弾道ミサイル発射を続ける北朝鮮。安倍晋三首相(自民党総裁)は、「国難」として北朝鮮への対応を衆院選の争点の一つに掲げたが、各党の公約に大きな対立軸は見えない。「北朝鮮の側から『政策を変えるから話し合いましょう』と言ってくる状況をつくり上げなければならない」。首相は全国を遊説し、北朝鮮に対する圧力強化の重要性を訴える。9月に国連安全保障理事会で採択された経済制裁の完全履行を関係国に働き掛けていくと主張。トランプ米大統領の「全ての選択肢がテーブルの上にある」という軍事的措置を含めた方針を支持している。連立与党を組む公明党は、国際社会との連携を深め「制裁決議の実効性を高めるとともに、対話と圧力で懸案の包括的な解決に取り組む」と歩調を合わせる。野党では、日本維新の会が「問題の解決に向けて、日米韓中の連携をさらに強化する」と主張。希望の党と立憲民主党は与党側と同じく、圧力強化を公約に盛り込んだ。希望は「対話を導く手段として、制裁の厳格な実施を働きかける」、立憲民主は「対話のテーブルにつかせるため、圧力を強める」との立場だ。立憲民主の枝野幸男代表は街頭演説で、度重なる挑発行為を「国難」と強調する与党側の姿勢について、「北朝鮮の脅威をあおっている」と批判している。共産党と社民党は、軍事的措置を含めた米国の方針を首相が支持していることから、「偶発や誤算から軍事衝突が起こり、戦争に発展しかねない」などと強調。北朝鮮の挑発を非難しつつも、「経済制裁強化と一体に『対話による平和的解決』に知恵と力を尽くす」(共産)、「米朝会談を実現し、停戦協定を不戦協定へ切り替えていくよう日本が仲介役となる」(社民)というように、外交努力を重視している。自民と日本のこころは、弾道ミサイルへの対処として、地上配備型の迎撃システム「イージス・アショア」の配備をうたう。自民は党内の部会で「敵基地攻撃能力」の保有を求める提言をまとめているが、今回の衆院選の公約には含めなかった。与野党で見解が分かれそうなミサイル防衛能力の強化や防衛予算の増額などの具体的な議論は聞かれない。拉致問題については、いずれの党も解決に向けて尽力することを盛り込んでいる。

<衆議院議員選挙結果と希望の党、立憲主義について>
PS(2017/10/23、25追加):*4-1のように、自民・公明・希望の党・日本維新の会を合わせた「改憲勢力」が、国会発議に必要な3分の2(310議席)を大きく上回って衆院全体の約8割に達したそうだが、これは押し付けられた“賛成”にすぎない。そのため、9条改正を巡って公明党が慎重姿勢を崩していないのが、唯一の希望である。
 希望の党の小池代表はテレビ朝日の番組で、憲法改正について「ようやく国民的議論ができるようになった」と意欲を示されたそうだが、*4-2のように、安全保障に関する政策で候補者を選別した結果、完敗したのだということを忘れてはならない。また、小選挙区は党首の人気に乗って空中戦をすべき場所ではないため、駒のように候補者を当てはめても選挙区の人が受け入れず、余程の有名人でなければ当選しないのは当たり前なのである。そのため、安全保障関連法に反対を表明するなどして希望の党の公約に反し、当選した候補者が離党するのは必然だ。
 なお、希望の党は、「日本のこころ」の中心だった中山成彬氏を九州比例1位にして当選させたが、中山氏は自民党の中でも「右翼」だった。そして、「日本のこころ」の憲法改正草案は、自民党の憲法改正草案よりは文章が整っておりテニヲハまで指摘する必要がないので引用すると、*4-3のように、下の内容の前文を記載し、「日本国のかたち」で「日本国は、天皇を日本国及び日本国民統合の象徴とする立憲君主国家」と明記している。しかし、憲法は、事実ばかりではない自国の歴史や国土を自慢する場所ではない上、天皇を君主とする日本国を維持するため、国民は犠牲になりながらも喧嘩せず従順で温和なのがよいとするのは、聖徳太子の17条の憲法の時代ではあるまいし、官僚以外の主権者である国民にとっては改悪にほかならない。
 ①日本国は、古来、天皇がしろしめす国であり、国民は、一人一人を大切にする和の
  精神をもって、その悠久の歴史を紡いできた。
 ②日本国民は、四囲を海に囲まれ、四季が織りなす美しい風土の中で、時に自然の
  厳しさと向き合いながら、自然との共生を重んじ、相手を思いやる文化を育んできた。
 ③日本国民は、明治維新を経て、衆議を重んじる伝統に加えて、欧米諸国の英知を
  集めて、大日本帝国憲法を制定し、立憲君主国家を誕生させ、近代国家としての
  発展を目指してきた。
 ④先の敗戦の後、占領下において制定された日本国憲法の施行以来、七十年が過ぎ、
  日本をめぐる国際環境は大きく変わり、新たな対応が求められている。日本国民は、
  ここに新たな時代にふさわしい憲法を制定することを決意した。
 ⑤日本国民は、本来日本人が持つ和と公正の精神、人間尊重の原理の上に立って、
  国家の発展を図り、国民の幸福と利益を増進し、家族を大切にする、明るく温かな
  社会を建設することを誓う。
 ⑥日本国民は、法と正義を基調とする世界平和を希求し、各国間の交流に積極的に
  力を尽くすとともに、あらゆる力を注いで、世界平和の実現に寄与することを誓う。
 ⑦これらの崇高な理想を実現し、将来の世代に引き継ぐ決意を込め、われわれの手に
  より、この憲法を制定する。
 このように、立憲主義とは、「憲法を最高位の法として、それに従って下位の具体的な法律を定め、法治主義で政治を行う」という原理にすぎないため、憲法を変えれば立憲君主主義に変えることも何をすることも可能だ。そして、フランス革命時代とは異なり、現代では立憲主義は当たり前で、憲法の内容が重要なのであり、変えにくいように硬性憲法にしてあるわけである。

*4-1:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO22567960T21C17A0PE1000/?dg=1 (日経新聞 2017/10/23) 改憲勢力8割に、国会発議に現実味、9条改正、公明は慎重
 自民、公明両党と憲法改正に前向きな希望の党、日本維新の会を合わせた「改憲勢力」は、国会発議に必要な3分の2(310議席)を大きく上回った。4党の議席は衆院全体の約8割に達しており、発議が現実味を帯びる。ただ9条改正を巡っては公明党が慎重姿勢を崩しておらず、希望の党も一線を画す。今後の改憲議論はなお曲折が予想される。「希望の党も建設的に議論していきたいとの考えを持っている人が多い。希望あるいは維新、他の党派の方々にも賛成してもらえるよう努力したい」。安倍晋三首相(自民党総裁)は22日夜のフジテレビ番組で語った。自民は衆院選で憲法改正を訴えた。首相が特にこだわるのは自衛隊の存在の明記だ。首相は憲法学者に根強い自衛隊の違憲論について「そういう論争がある状況に終止符を打ちたい」と改めて力説した。今後、党憲法改正推進本部での議論を加速させる。ただ、連立を組む公明は9条に手をつけることには慎重だ。山口那津男代表はNHK番組で「国民の理解が伴わないといけない」と強調した。斉藤鉄夫選挙対策委員長は「野党第1党、第2党も含んだ形で、幅広い合意で提案することが国民投票を成功させるうえでも大事だ」と指摘した。改憲勢力は衆院では3分の2を大きく超えるものの、参院ではようやく届く程度。9条改正の実現には、公明党の理解を得るのが不可欠だ。改憲に向けて多数派形成が必要になる状況に変わりはない。自民の二階俊博幹事長は22日夜、党本部で「選挙を終えても、運び方は慎重でなければならない」と述べた。自民は希望や維新との連携を探りつつ、公明の態度軟化を引き出したい考えだ。当初の想定を覆し、野党では立憲民主が議席を大きく伸ばした。「安全保障法制を前提とした憲法9条の改悪に反対」を掲げ、首相と改憲で協力する余地はほとんどない。立憲民主が野党第1党に躍り出ることで「与党プラス野党第1党」による幅広い合意を演出するのは困難となる。希望の小池百合子代表はテレビ朝日番組で、憲法改正について「ようやく国民的議論ができるようになった」と意欲を示した。ただ自衛隊の明記に関しては「種々問題がある」と述べ、慎重な見解を示した。実際の改憲項目や条文づくりは、高いハードルになる見通しだ。首相は改憲論議について自らは前面に出ずに党側に委ねる方針。2020年の新憲法施行を念頭に、18年通常国会で国会発議をめざすかどうかについて「時期ありきではない」と述べた。

*4-2:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO22560610S7A021C1EA1000/?dg=1 (日経新聞 2017/10/23) 小池氏「私自身におごり」 希望代表辞任は否定
 希望の党の小池百合子代表(東京都知事)は22日、「政策本位を考えたが、厳しい結果につながっているのは大きな問題で真摯に受け止めたい。敗因を分析しなければならない」と述べた。その上で「私自身におごりがあった。これまでは空中戦でやってきたが、小選挙区はそれだけではだめだった」と強調した。同時に「私自身、都知事選、都議選と完勝させていただき、2連勝だったが、今回は完敗ということをはっきりと申し上げたい」と述べた。自身の進退に関しては「(新党を)立ち上げた責任はある。今後も党運営を責任を持って進めていきたい」と辞任を否定しつつ「国会議員から(国政の)執行部を形成していくことになる」と説明し、国会議員の代表者も置く方向で検討する考えを強調した。民進党出身者の公認をめぐり、一部を「排除する」と発言したことについては「不快な思いを抱かせてしまったことは申し訳ない」と改めて陳謝。その上で「(野党が)調整できる十分な時間があったとはいえない。今の安倍政権を利したかといえば、結果的にその通り」と敗北を認めた。小池氏は「政党は政策が一致してこそ。根幹部分で一致することは必要だったと今も思っている」との持論も展開。希望の党として首相指名選挙をだれにするかを問われると「(衆院選を)勝ち上がってきた皆さんと話し合って決める。国政の方針や運営は国会議員中心に」と述べるにとどめた。出張先のパリ市内やNHK、民放番組などで記者団らの質問に答えた。小池氏の人気に支えられてきた希望は分裂含みの展開になる可能性もある。民進から希望への合流組からは「小池氏頼みには限界がある」と小池氏や合流を主導した前原氏への不満が漏れ始めている。安全保障関連法への反対を表明するなど、党の公約に反する考えを示す候補者も目立ち、当選した合流組が離党するとの観測がある。

*4-3:https://nippon-kokoro.jp/news/policies/kenpo01.php (日本のこころ 2017.4.27) 「日本のこころ」の日本国憲法草案
目次
 前 文
 序 章 日本国のかたち(第一条―第九条)
 第一章 天皇(第十条―第十六条)
 第二章 平和の維持(第十七条)
 第三章 国民の権利及び義務(第十八条―第四十二条)
 第四章 国会(第四十三条―第六十三条)
 第五章 内閣(第六十四条―第七十三条)
 第六章 裁判所(第七十四条―第八十条)
 第七章 財政(第八十一条―第八十六条)
 第八章 地方自治(第八十七条―第八十九条)
 第九章 最高法規(第九十条―第九十二条)
 第十章 改正(第九十三条)
 日本国は、古来、天皇がしろしめす国であり、国民は、一人一人を大切にする和の精神をもって、その悠久の歴史を紡いできた。
 日本国民は、四囲を海に囲まれ、四季が織りなす美しい風土の中で、時に自然の厳しさと向き合いながら、自然との共生を重んじ、相手を思いやる文化を育んできた。
 日本国民は、明治維新を経て、衆議を重んじる伝統に加えて、欧米諸国の英知を集めて、大日本帝国憲法を制定し、立憲君主国家を誕生させ、近代国家としての発展を目指してきた。
 先の敗戦の後、占領下において制定された日本国憲法の施行以来、七十年が過ぎ、日本をめぐる国際環境は大きく変わり、新たな対応が求められている。日本国民は、ここに新たな時代にふさわしい憲法を制定することを決意した。
 日本国民は、本来日本人が持つ和と公正の精神、人間尊重の原理の上に立って、国家の発展を図り、国民の幸福と利益を増進し、家族を大切にする、明るく温かな社会を建設することを誓う。
 日本国民は、法と正義を基調とする世界平和を希求し、各国間の交流に積極的に力を尽くすとともに、あらゆる力を注いで、世界平和の実現に寄与することを誓う。
 これらの崇高な理想を実現し、将来の世代に引き継ぐ決意を込め、われわれの手により、この憲法を制定する。
序章 日本国のかたち
 (日本国の象徴)
第一条 日本国は、天皇を日本国及び日本国民統合の象徴とする立憲君主国家である。

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続き▽
| 民主主義・選挙・その他::2014.12~ | 09:41 PM | comments (x) | trackback (x) |
2017.10.1 伝統産業のイノベーションとそれを支える人材(2017年10月4、6、8、26、29日、11月1、4、9、10日に追加あり)

      2014.6.9日経新聞             2015.10.6日経新聞

(図の説明:左の2つは、インクジェットで染められた布とその機械、右の二つは、3Dプリンターで作られた有田焼で、伝統工芸も最新技術の導入で進化できることがわかる)

 

(図の説明:写真は博多人形だが、これにロボット技術を加えて、しゃべったり、音楽を奏でたり、一定の動作ができたりするようにすると面白いし、写真を使って亡くなった人とそっくりのしゃべる人形を作ったりすることも可能だろう。上の博多人形は、ロボットでなくても今にも動き出しそうにしているため、リンカーン大統領、マハトマ・ガンジー、サッチャー首相、メルケル首相等のロボットを作って、象徴的な演説や仕草を真似させ、アメリカ・インド・英国・ドイツなどに寄贈すれば、博多人形ロボットを世界で有名にすることができると考える )

(1)伝統産業には、どういうイノベーションが行えるのか
1)織物と染色-秩父銘仙の事例
 銘仙は、*1-1のように、ガシャンガシャンとにぎやかに機織機の音が響く中でほぐし織りにするため両面を使えるそうで、美しくて便利なため世界でヒットさせることもできそうだ。

 しかし、作り方は「父が数時間でできる仕事が、1週間かけてもできない(=生産性が低いため、価格が高くなる)」ということを現代でも繰り返す必要はなく、名人が作った製品と同じものやそれよりも安定したものをコンピューター制御で作れば、飛躍的に生産性を上げながら静かに美しい絹織物を作ることができるだろう。例えば、*2-2の、キヤノンが宮崎工場を自動化して競争力を強化し、製造業の日本回帰事例となっているように、である。
 
 また、染色も、*1-2のようなインクジェットによる染色もできるので、少量多品種生産が容易になった。さらに、現代では、繭を育てる背景の色を変えたり、DNA操作をしたりすれば、繭自体に初めから色や蛍光を持たせることができるため、退色しない美しい絹織物を作ることもできそうだ。

2)陶磁器-有田焼の事例
 有田焼の産地、有田では、現代にマッチした製品を作るため、伝統の中に最新技術を取り入れようとしているが、*1-3のように、佐賀県窯業技術センターが、3Dプリンターで造形した立体モデルを焼成して陶磁器の成形品を得る技術を開発した。

 3Dプリンターでは、インクジェットノズルから吐出したバインダーで粉末材料を固める手法を採用し、有田焼と同じ天草陶石の粉末を使って成形品を造形したが、最初は成形品を取り出す際に崩れてしまい、流動性の確保とバインダーの固着性の向上などを実現して強度を高めていったそうだが、私は、その粉末に冷えると固まり焼くとなくなる接着剤を混ぜておけばよかったのではないかと考える。

 有田焼の場合も、3Dプリンターやインクジェットを使えば、名人はがっかりするかも知れないが、すでに著作権のなくなった過去の名品を高すぎない価格で再現したり、新しい作品を作ったり、書や絵画を有田焼にして残したりすることも可能になり、応用は多岐にわたるだろう。

3)林業の振興-新建材CLTの事例
 直交集成板(CLT)を使えば、*1-4のように、6、7階建ての木造中層ビルも容易に建てられるそうだが、現在は、鉄筋コンクリートよりも総工費が高くなるため使われず、その克服には需要拡大でCLT製造価格が下がる好循環を作るしかないそうだ。そして、欧州に遅れること20年で、日本でもようやく普及段階に入ったものの、普及速度が緩慢なのだそうである。

 日本では、良い方向への変化でも変えるのに20年以上かかり、他国よりもかなり遅れてから追いかけるため、変えようとした人には負担がかかり、最初にその事業にチャレンジしたパイオニア企業は倒産することが多い。これは、我が国で新規事業の利益率が低く、その結果、新規事業の開業意欲が低い一因だろう。そしてすぐ、政府の補助金頼みになるのだが、森林の育成には都道府県の森林環境税を投入しているため、林業は既に「役所が補助している産業」なのである。

(2)労働力としてのロボット
 中国の人民網が、*2-1のように、「超高齢社会の日本を支える『第4の労働力』」として、「日本人の中には、高齢者、女性、外国人という3つの労働力で問題を解決できると考える人もいるが、実際には第4の労働力としてロボットがある」と伝えているのは面白い。

 日本でも、パナソニックが「離床アシストロボット」「自立支援型起立歩行アシストロボット」を開発し、トヨタは歩行不自由な障害者の歩行や起き上がるのが難しい障害者のベッドの上り下り・トイレへの移動を支援するパートナーロボットを作成し、ホンダは利用者の動作に合わせてモーターで歩行を支援する歩行アシストロボットを作っており、今ではロボットが普及向上期に入ったのだそうだ。

 ちょうどEVへの転換で仕事がなくなるとされている自動車部品メーカーは、これまでに培った精密な技術を活かして、航空機やロボット部品などの新技術に転換すればよいだろう。

(3)エネルギーと自動車のイノベーション
1)エネルギーのイノベーション


2017.10.5佐賀新聞   スカイマークの  都道府県別      主要産業の
            民事再生法申請   倒産状況      倒産件数推移 

(図の説明:太陽光発電事業者の倒産は買取制限によって増加し、航空参入したスカイマークも民事再生法を申請した。右の2つは、2015年の都道府県別倒産状況と産業別倒産件数である)

 私が1995年頃に太陽光発電を提案して20年以上が経過し、ドイツは、*3-1のように、フクイチ以後、科学的・論理的に脱原発を行って自然エネルギーを進め、トランプ米大統領のパリ協定離脱表明を受けて離脱に反対する米国の州と連携して引き続き米国を取り込み、温暖化対策で国際協力を進めているのに対し、日本は太陽光発電による電力を制限しつつ原発を再稼働した。そして、これは、新興企業が既得権のある大企業と政府にひねりつぶされた一例となった。

 また、*3-2のように、2017年9月24日投開票のドイツ総選挙では、緑の党の結党以来の主張だった「脱原発」は国の方針として定着し、「ドイツのための選択肢(AfD)」以外はすべての政党が「脱原発」を前提として再生可能エネルギーの拡大を掲げ、緑の党は「2030年までに全電力の需要を再生可能エネルギーで賄う」という公約を打ち出したのだそうだ。私は、「2030年までに全電力の需要を再生可能エネルギーで賄う」という公約も、市場の選択によって前倒しで達成され、それが緑の党の存在意義だと考える。

2)自動車(輸送手段)のイノベーション

 

(図の説明:左は京都市内を走っている中国製のEVバス、真ん中は太陽光発電と組み合わせたEV乗用車、右はロボット掃除機で、どれも日進月歩だ)

 電気自動車も、私が1995年頃に提案して始まったのだが、日本では、何かとEVの邪魔をする世論が多く、ハイブリッド車しか普及しなかった。しかし、*3-3のように、中国ではガソリン車が禁止され、BYDのトップは「中国市場からガソリン車が消える時期は、2030年になる」という見通しを示したそうだ。私は、あらゆる点でEVの方が優れているため、市場の選択によって、変化はそれより早いと考える。

 そのため、トップを走っていた日本は、*3-4のように、仏英両国の2040年までの「脱エンジン」の方針を見て、「ここで競争に負けてはならない」などと言わなければならない羽目に陥っているのだが、「車の動きはもっとゆっくりだろう」と兎さんではなく亀さんの方が寝ている状態であるため、とても競争に勝てそうにはない。つまり、このような油断と誤った方針決定が、技術を遅らせ敗退させるのである。

 なお、*3-5のように、スマホはワイヤレス給電のものがあるため、自動車も駐車場に駐車してスイッチを入れれば充電され、レストランから出てきた時や買い物が終わってスーパーから出てきた時には充電が終わっているということになればなおさら便利だ。そのため、市民は、そういう設備のあるレストランやスーパーを選ぶことになりそうである。

<伝統産業のイノベーション>
*1-1:http://digital.asahi.com/articles/CMTW1709211100003.html (朝日新聞 2017年9月21日) (13)秩父銘仙(秩父市)
◇ハイカラ復活 新たな挑戦
 華やかなデザインと色彩で大正、昭和の女性を魅了した着物「秩父銘仙(めいせん)」=◎。夏目漱石の小説にも登場し、竹久夢二も大正浪漫漂う銘仙姿の女性をたびたび描いた。セメントや材木と並ぶ秩父の近代産業を代表した銘仙の復活へ、若い後継者たちがいま、新たな挑戦を続けている。
◇ほぐし織り 現代に生かす
 秩父市黒谷(くろや)にある織元「逸見(へんみ)織物」。工場を訪ねると、ガシャンガシャンとリズミカルに機(はた)を織る自動織機(しょっき)の音がにぎやかに響いていた。逸見織物は1927(昭和2)年、初代が皆野町の織元から独立して創業した。秩父銘仙協同組合によれば、昭和初期、秩父には約500軒の織元が年に約240万反(1反は約12メートル)を織り、約7割の住民が、養蚕を含む織物関連の仕事に従事していたという。「そこらじゅう機織(はたおり)の音が響いていた」と2代目逸見敏(さとし)さん(84)。銘仙は、絹の経糸(たていと)と緯糸(よこいと)を交互に組み合わせた平織物の総称。大正、昭和に大流行した模様銘仙は「ほぐし織り」という高度な技法で作られる。1908(明治41)年に地元の坂本宗太郎が「ほぐし捺染(なっせん)」の技法で特許を取得。仮織りの糸をほぐしながら本織りするのでほぐし織りという。新技法は画期的で、型紙で捺染するため大胆でハイカラな柄を織れるようになった。ほぐし織りの工程はちょっと複雑だ。まず真っ白な経糸を並べ、本数と長さを整え(整経(せいけい))、整経した糸を仮織り機でざっと織る(仮織)。仮織りした経糸に、模様を彫った型紙を載せ、染料を塗る(捺染)と、経糸に柄が入る。「つなぎ」をかけ、本織りした糸を「蒸し」て色止め。最後に「整理」と「検査」を経て、反物に仕上がる。織物はかつて一貫生産されていたが、工場経営に変わると分業体制が進んだ。しかし今、各工程の職人の高齢化などで分業を維持できるか難しい状況もある。銘仙は戦後、復興や朝鮮戦争の好景気で日常着として人気を集め、物不足の時代に飛ぶように売れた。ガチャンと機が動くと万単位の金が入る「ガチャ万」と称された「糸へん景気」だったが、昭和30年代に洋装が中心になり、和服も銘仙も廃れた。秩父の織元も現在、数軒に減ってしまった。銘仙を織り続ける逸見織物は貴重なその一つだ。作家宇野千代さんの依頼で、ほぐし織りの桜模様の着物を製作。30年前に長女の恭子さん(49)が3代目を継ぎ、夏銘仙の復活など様々な試みを続けている。ほぐし織りの良さを伝えたいとの思いは秩父市中宮地町の「新啓(あらけい)織物」も同じだ。新井啓一さん(83)が1970年に創業。織り手の妻ヤスさん(85)とともに国認定の伝統工芸師だ。新啓織物では12年前、長男の教央(のりお)さん(49)が2代目を継いだ。インドなど世界や日本各地の織物を見て、ほぐし織りの魅力を再発見。デザイナーとして15年勤めた繊維商社を辞め、元同僚の妻園恵さん(51)ら一家で里帰りした。「両親が織る物は魅力的だと思う半面、携わっていない自分への疑問もあった」。しかし家業を継ぐことに啓一さんからは「苦労するから」と反対された。現実はその通りで、父が数時間でできる仕事が、1週間かけてもできない。「でも、昨日できなかったことが今日は少しだけできる。それが励みになった」。まもなく園恵さんも加わり立ち上げたのが、ほぐし織りのブランド「機音(ハタオト)」。新感覚の色柄の銘仙のほか、園恵さんのセンスで淡い色合いの反物を織りだしている。工場に捺染の仕事場も併設し、自社一貫生産も目指す。反物だけでなくストールやバッグ、綿や麻に素材を変えたほぐし織りも制作。銘仙を現代に生かすため、新たな魅力を探る。長瀞町の清流沿いに看板を掲げる「秩父織塾工房横山」も秩父銘仙の一貫生産を試みる。1920(大正9)年創業の工房には、2代目横山敬司さん(83)が関東一円の工場などから収集した織機類がぎっしり。まるで織機の博物館だ。戦後は夜具(やぐ)地や大手寝具メーカーの発注で大手百貨店に置く座布団カバーのほか、サンローランやエマニュエル・ウンガロなどライセンス物を手がけたが、「原点に返ろう」と草木染に力を入れながら銘仙復活を目指している。「日本は絹文化と生きてきた。絹と絹織物の文化の証しを残すのは自分の使命」と敬司さん。今は3代目の大樹(たいじゅ)さん(56)が敬司さんから一貫生産を目指して学ぶ日々だ。「銘仙の全工程を自分でできるようになりたい。それができる機械がそろっているから」。秩父銘仙は2013年、国の伝統的工芸品に指定された。100年以上の歴史があり、主要部分が手作業という条件を満たし、県内では春日部の箪笥(たんす)などに続く指定で、織物では初だ。逸見織物3代目の恭子さんは今、新企画「STYLE*MEISEN(スタイル銘仙)」に取り組む。秩父や栃木県足利市の職人、服飾デザイナーらと組み、銘仙を洋服に発展させようという試み。香港など海外でも展開し販路を広げる。「現代のファッションとして銘仙を復活させる、ジャパン・メイドの誕生です」
◎秩父銘仙
 絹の経糸(たていと)と緯糸(よこいと)を交互に組み合わせた平織物「銘仙」は、秩父・足利・桐生・伊勢崎・八王子が五大産地。秩父銘仙の起源は織物の女神が創案した布「千千布(ちちふ)」に由来し、秩父の地名の語源の一つとされる。経糸を仮織りし、型紙を使って模様を先染めして本織りをする。経糸と緯糸の色の重なりが角度によって変化して見える玉虫効果が特徴。染めた糸に織るため表と裏が同じ柄になり、色あせたら裏返して仕立て直しができる。
《ちちぶ銘仙館》 秩父織物や銘仙の資料を収集・展示し、伝統技術の継承を目的に2002年にオープン。本館や工場棟は昭和初期の面影が漂う旧県秩父工業試験場の建物で、国の登録有形文化財。生糸をたぐる作業から織り上げるまで全工程を見学できる。

*1-2:https://www.nikkei.com/article/DGXNASDZ0408U_U4A600C1000000/ (日経新聞 2014/6/9) ものづくり進化論:インクジェット、広がる用途 衣類や食品、医療にも
 液体をノズルから飛ばすインクジェット技術。これまでは紙に文字などを印刷する場合に使われることが多かったが、アパレルや食品の製造現場を変えようとしている。ノズルを搭載する先端部品(ヘッド)やインクの改良により、衣服に使う生地に直接柄や模様を描いたり、食品にカラーのイラストや写真を描いたりすることができるようになってきたからだ。医療分野での応用も進み始めた。
■製造工程、2カ月から3日に
 繊維製品を染色する捺染(なっせん)加工を営む工場が集積するイタリア北部のコモ地区。工場の中では、大型のインクジェットプリンターが24時間稼働し、高級シャツやネクタイを量産している。コモ地区では工場の2割程度が、染料と溶剤をまぜた糊(のり)や原版を使う伝統的な捺染から、インクジェットプリンターによる量産に移行しているとされる。長野県諏訪市に本社を置くセイコーエプソンがインクジェット技術をコモのメーカーに提供、同社が印刷機を製造した。従来の捺染方式と違い、版を製造したり、洗浄したりする必要がなく、直接模様などを描くことができるため、1.5~2カ月かかっていた製造工程を、3日~2週間程度まで短縮できる。ぎりぎりまでデザインをいじれるため、「工場の方にデザイナーが(インクジェット方式の導入を)要求することが多い」(インダストリアルソリューションズ事業部の有賀義晴課長)という。エプソンの装置が捺染に使えるのは、同社のインクジェット技術が多様なインクに対応できるからだ。インクジェットには加熱で作った気泡で液体を吐出する「サーマル方式」と、電圧をかけると変形するピエゾ素子にスポイトのような働きをさせて液体を吐出する「ピエゾ方式」があり、エプソンは後者を採用している。印刷画質での違いはないとされるが、ピエゾ方式は液体に熱を加えないためインクの自由度が高いのが特徴だ。そのため、技術供与した製品やエプソンが2013年に自社製造・販売を始めた捺染プリンター「シュアプレスFP―30160」は、絹や羊毛に向く酸性インクや、麻や綿に向く反応インクなど粘度が異なる様々な液体を飛ばすことができる。07年には半導体の微細加工技術を取り込んで開発した新型ヘッドを発表。インクを出すノズルの設置密度が従来機種の2倍で、小型になったうえ印刷の速度や精度も上がっている。同ヘッドを搭載したシュアプレスFP―30160は従来機種に比べて製品自体の体積が半分程度、大きさも3分の1程度だ。
■食べられる印刷
 エプソン以外にも長野県の中信地域にはインクジェット装置を独自で開発するメーカーが多い。特殊プリンターを製造・販売するマスターマインド(塩尻市、小沢啓祐社長)は食品に絵や写真を印刷できる「フードプリンター」を扱う食品業界で有名なメーカーだ。創業者である小沢千寿夫氏が地元の農家に「りんごに印刷できる?」と話を持ちかけられたのが開発のきっかけだ。そこで特殊な液で下塗りをして印刷をしたリンゴを持っていったところ「これ食べられないの?」と聞かれたので、「食べられる印刷」ができる装置の開発に乗り出したという。食品に色をつける「色粉」を液体に混ぜるだけだと、プリンターのヘッドに詰まりやすい。同社はインクメーカーと協力し、食物油の量や種類を工夫し、詰まりにくいインクを開発した。食品に模様を付けるには、焼きゴテを使って食品の表面を焦がしたり、可食インクを判子を押すように食品に載せる手法などを使うのが一般的。だが、専用の焼きゴテを作るのに3万~4万円かかったり、圧力で食品が割れてしまったりするのが難点だった。デジタルデータをもとに印刷するインクジェット方式なら、少量多品種にも対応できるほか、食品を変形させる心配もない。核となるプリントヘッドの部分は、大手のプリンターメーカーの製品を使っているが、食品をヘッドの下で搬送するベルトコンベヤーの制御技術は独自のものだ。同社は6月10日に始まる国際食品工業展「FOOMA JAPAN2014」でフードプリンターの新製品を発表する予定だ。食品を搬送するベルトコンベヤーの幅を2倍の60センチメートルにすることで、製造速度を2倍近くに高めた。大手菓子メーカーの工場にも営業をかける。ご当地ゆるキャラの流行でキャラクターをデザインしたお菓子の需要は増している。また「2020年には東京五輪の開催もある。需要は間違いなく伸びる」(営業部の芦田賀浩課長)という。研究所向けのインクジェット装置を開発・販売するマイクロジェット(塩尻市、山口修一社長)はこのほど、液体の吐出の仕方を自動調節できる新製品を開発した。装置に新材料を入れると電圧のかけ方や電流波形を変えて何度か試行的に吐出し、カメラで飛散の仕方などを捉える。装置にはいくつかの材料の飛散に関する基本データを盛り込んだソフトウエアがあらかじめ組み込まれており、このソフトが基本データを参照しながら、カメラが捉えた画像を吟味して吐出の最適条件を自動的に決める仕組みだ。
■研究開発向けでも脚光
 インクジェット装置は、一定量の液体を精密に出すことができるので、ナノ金属インクによる電子回路の作製やDNAやたんぱく質によるバイオチップの製作など、高価な液体を使う研究開発分野でも使われ始めている。吐出条件を自動調整できれば、材料のロスを抑制できる。同社は5月にはドイツの企業と連携し、液体の流路となるパイプを交換できるヘッドも発売した。薬剤を変えるなど実験内容を変えても、パイプを交換しながら使用を続けることができるため、部品全体を交換するのに比べて費用は3分の1以下で済むという。ものづくりのデジタル化は今後ますます進む。注目が集まる3Dプリンターが速度や精度の面でまだ「量産」に使える水準にないのに対し、インクジェット装置の一部はアナログなものづくりに比べて速度も精度も遜色がないレベルに来ている。製造業や研究所への普及が加速しそうだ。

*1-3:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO91640500R10C15A9000000/ (日経新聞 2015/10/6) 3Dプリンターで有田焼 伝統工芸、デジタルで革新
 佐賀県窯業技術センターは、3Dプリンターで造形した立体モデルを焼成して陶磁器の成形品を得る技術「C3DPO(Ceramic 3D-Direct Print-Out)」を開発した(図1)。石膏型に液状の泥である「泥漿(でいしょう)」を流し込んで硬化させるという従来の成形方法に比べて、大幅な工程短縮や低コスト化、複雑なデザインの実現などが期待できる。
■有田焼と同じ材料
 3Dプリンターとしては、インクジェットノズルから吐出したバインダーで粉末材料を固める手法を採用する市販の装置を導入。この装置で、有田焼と同じ天草陶石の粉末を使って成形品を造形した。開発を始めた当初は、成形品をうまく固めることに苦労したという。粉末材料が3Dプリンター用の純正品とは異なるため、成形品を未硬化の粉末から取り出す際に崩れてしまうのだ。粉末粒径を均一化するなど試行錯誤しながら、流動性の確保とバインダーの固着性の向上などを実現して強度を高めていった。その結果、3Dプリンターで成形品を得られるようになったが、それで有田焼の製品が完成するわけではない。成形品を素焼きし、下絵付けと施釉(せゆう:釉薬を施すこと)をした上で本焼成。さらに上絵付、上絵焼成という工程を経て初めて製品となるからだ。最終的に求められるのは、製品としての品質である。実際、3Dプリンターによる成形品を素焼きしたところ、当初は崩れてしまうことが多かったという(図2)。そのため、従来の石膏型による成形品を焼成する場合とは異なる条件を見出す必要があった。具体的な温度は明らかにしていないが、温度や焼成時間などを試行錯誤することで、陶磁器として完成させることに成功した(図3)。このように、陶磁器の成形品を3Dプリンターで造るためには、3Dプリンターに関する造形条件の工夫だけでは済まない。特に、成形品は製品になる前の中間品である。陶磁器の製造プロセスを構成する他の工程においても、従来とは異なった手法を見出し、それと組み合わせることが求められた。
■シート積層法で原型を造形
 実は、佐賀県窯業技術センターにおける3Dプリンターの活用はこれが初めてではない。まず取り組んだのが、石膏型を造るための基となる原型を3Dプリンターで造ることである。紙をカッターで切断し、積層していく方式の3Dプリンターを10年以上前に導入し、実際の製品に適用した(図4)。ただし、造形後に不要部分(原型ではない部分)を削除したり、角度によっては表面を滑らかにしたりする手作業が必要だったことなどがネックになった。さらに、造形後に時間がたつと変形してしまうこともあったため、原型での活用は続かなかったという。その後、しばらく3Dプリンターの適用は考えず、3Dデータを使って石膏型を切削加工することに取り組んだ(図5)。しかし、型を使う以上は抜き勾配という形状の制約はどうしても発生する。原型や石膏型ではなく、成形品を直接3Dプリンターで造れれば、その制約はなくなる。3Dプリンターの機能や性能が向上したことも踏まえ、再度チャレンジしたことで実現したのがC3DPO技術である。
■熟練技能者の減少対策にも
 有田焼は2016年に創業400年を迎える。近年の売り上げ減少や熟練技能者の減少といった課題にさらされる中、3Dプリンターの活用はこれらを解決する手段の1つになるかもしれない。例えば、3Dプリンターによって直接、成形品を得られることは、複雑な形状だけでなく、ごく少量や単品の生産も容易にする。型のコストを大量生産で吸収する必要はないからだ。一般消費者によるオーダーメード・システムなど、新しいビジネスモデルや市場を開拓できる可能性が広がる。現状では「完全に磁器化していないため、強度が不足している」(佐賀県窯業技術センター陶磁器部デザイン担当係長の副島潔氏)ことが課題だという。今後、さらに造形条件や焼成条件などのノウハウを蓄積して、3Dプリンターを活用した陶磁器の製造技術を確立していく考えだ。

*1-4:https://www.agrinews.co.jp/p41984.html (日本農業新聞 2017年9月23日) 新建材CLT普及 林業振興へ加速化急げ
 政府が国産材活用で期待する直交集成板(CLT)だが、普及はまだほとんど進んでいない。コスト高が障害になっている。CLTを使えば6、7階建ての木造中層ビルを容易に建てられるものの、鉄筋コンクリートより総工費が1割ほど高い。その克服には、需要拡大でCLT製造価格が下がる好循環を早くつくるしかない。林業振興に向け、政府は思い切った普及加速支援を急ぐべきだ。CLTは、ひき板を交互に積層接着したパネルで強度がある。壁や床にすれば、柱なしで中層の木造施設を建てられる。鉄筋コンクリートに代わって大量のCLTを使うようになれば、国産材の需要が大きく増えて林業振興に直結する。政府が目指す「林業の成長産業化」の切り札になり得る。CLTの日本農林規格(JAS)が制定され、国内初建築となった2013年が「CLT元年」とされる。昨春に国土交通省が建築基準を整えたことで、CLTは新建材として一般的に使えるようになった。欧州に遅れること20年。日本でもようやく本格的な普及時代に入った。しかし、その普及は緩慢だ。今年3月末までに国の支援を受けて建てられてCLT施設は、全国で51棟にすぎない。ほぼ半数の22府県は皆無だ。国内のCLT8工場の経営は厳しい。稼働率は昨年度がわずか1割で、今年度も3割がやっとの見込みだ。稼働率を高める需要拡大がないと、工場の存続自体が危ぶまれ、製造価格も下がらない。政府は、CLT生産体制を7年後の24年度までに年間50万立方メートルとする目標を掲げている。国内工場における昨年度の製造能力の10倍、製造実績の100倍に匹敵する。この量産体制を実現すれば、CLT製造価格を半減でき、建築工費を鉄筋コンクリート並みにできる算段だ。この目標を必達してこそCLTは独り立ちでき、木造ビル新時代に入る。欧州連合(EU)では来年、CLT生産量が日本の目標の2倍になると推計され、上昇飛行が続く。CLTのオフィスビルやマンション、ホテルなどが次々と建つ。木造は地球環境に優しく、社会的貢献の高いメッセージ性がある。日本は短期間で欧州に追い付かなければいけない。だが、わが国ではCLTは離陸後も低空飛行だ。会社や自治体、個人などの建築発注者が、鉄筋コンクリートに比べたコスト高にひるみ、二の足を踏んでいる。国交省や林野庁などにCLT建築のコスト高を埋める補助金があるが、財源が限定的で普及に弾みがつかない。今はCLT建築の発注増が何より肝要だ。量産によってCLT製造価格が下がれば、それがまた注文を呼ぶ。その経済的循環の早急構築が欠かせない。政府は今年1月に普及の新たなロードマップを示したが、悠長ではいけない。補助金増額をはじめ施策の集中的投入による普及の加速化が求められている。

<労働力としてのロボット>
*2-1:http://qbiz.jp/article/117436/1/ (西日本新聞 2017年8月28日) 中国・人民網おすすめ記事:超高齢社会の日本を支える「第4の労働力」とは
 よく知られているように、日本は深刻な高齢化社会の国だ。人口高齢化にともなう深刻な労働力不足にどう対処したらよいだろうか。日本人の中には、高齢者、女性、外国人という3つの労働力で問題を解決できると考える人もいる。そして実際にはこれ以外に第4の労働力といえるものがある。それはロボットであり、決して冗談を言っているわけではない。「光明日報」が伝えた。日本はこれまでずっと高齢者の生活を支えるロボットの開発を積極的に進め、この分野では世界のトップレベルにある。パナソニック、トヨタ、ホンダといった大企業が相次いで主業務と無関係にみえる介護ロボットの開発に乗り出している。報道によると、パナソニックは車いすと介護ベッドが誘導した新発想の「離床アシストロボット」を開発した。ベッドの高さ、背上げの角度、アームレストの高さを調節でき、ベッドから車いすを分離することが可能だ。車いすは眠ることはもちろん、自動的に血圧や体温をはかる機能も搭載されている。パナソニックが開発した自立支援型起立歩行アシストロボットは高齢者の小さな動きを検知し、この情報に基づいて高齢者の状態を予測し、ベッドからトイレへの移動、ベッドからイスへの移動を支援する。内蔵のモーターが足りない力だけをアシストして、高齢者の自立的動作を支援するため、筋肉の衰えを防ぐことができる。医療者や介護者の負担を軽減し、被介助者にとっても福音といえる。トヨタが打ち出した4種類のパートナーロボットは、下肢麻痺で歩行が不自由な障害者の歩行を支援したり、起き上がるのが難しい障害者のベッドの上り下りやトイレへの移動を支援したりする。そのうちの1つでロボット脚を備えた「ウェルウォークWW‐1000」シリーズは、ロボット脚を膝下部分に装着し、ベルトで太もも、膝、足首、脚にしっかりと固定して、膝の曲げ・伸ばし運動を補助するものだ。ホンダが開発した歩行アシストは、バッテリーを内蔵した腰フレームを腰に巻き、下に伸びた大腿フレームを膝に固定する。利用者の動作に合わせ、モーターで歩行を支援する。利用者の脚の動きを検知して、約1キログラムの力で前後の移動を支える。特定の病気の患者の歩行を支援するだけでなく、高齢者の日常的な動作も支援することができる。日本には脳血管障害の後遺症やパーキンソン病により歩行が不自由な患者が40万人以上いる。こうしたロボットの登場は歩きたいと強く願ってきた人々にとってうれしいニュースだ。
●ロボットの応用は普及段階へ
 介護ロボットは日本のロボット研究の1分野に過ぎない。日本のロボット発展は短い揺籃期を経て、急速に実用期へ突入し、今では普及向上期に入った。日本はロボット産業に極めて大きな期待を寄せており、ロボットを日常生活、公共サービス、工業生産の中で人により近づいたツールにすることを目指している。日本政府は中小企業に対して積極的な経済的補助政策を打ち出し、小規模企業に出資してロボット応用の専門的な知識や技術を身につける指導などを行い、応用ロボットの一層の発展と普及を奨励し、ロボット産業に取り組む企業の積極性を高めている。日本政府の予測では、2020年には日本のロボット産業の規模は2兆6700億円を超え、12年の4倍以上になるという。日本政府が15年に発表した「ロボット新戦略」では「アクションプラン−五カ年計画」が制定され、製造業、サービス業、農林水産業、医療・介護産業、インフラ建設、防災などの主要応用分野をめぐって、ロボットの技術開発、標準化、実証実験、人材育成、ロボット規制改革の実行など具体的な行動が打ち出された。日本は各分野のロボット化推進を通じて、作業の効率と質を大幅に向上させ、製造業やサービス産業などの国際競争力を強化するとともに、「少子高齢化」がもたらす一連の問題の解決をサポートしたい考えだ。注目されているのが、日本のロボット研究の第一人者で「日本の現代型ロボットの父」などと呼ばれる石黒浩氏が、人間そっくりのアンドロイドの研究を続けていることだ。石黒氏によれば、「ロボットは人間を模倣しなければならない」という。なぜなら人の理想的な対話型インターフェースは人であり、人間の脳は人を認識することができ、人間にとって最良の対話方式は人と人との対話にほかならないからだ。そこで人間そっくりのアンドロイドを研究し、人と機械がいかに対話するかを研究している。人間との密な対話が必要な多くの分野では、アンドロイドなら暮らしのニーズにかなり応えられる。特に高齢者や子どもに医療行為や介護を行う場合は、アンドロイドなら利用者の世界に入っていけるという。石黒氏が指導する研究計画では、さまざまなタイプのアンドロイドと高齢者、子どもとの対話が行われている。石黒氏はかつて、「自分のチームが発見したのは、高齢者でも子どもでも、アンドロイドに反感を抱く被験者はいなかったということだ。アンドロイドは認知症や自閉症の患者の介護で、大きな役割を果たすことができると確信する」とも述べている。

*2-2:http://qbiz.jp/article/118392/1/ (西日本新聞 2017年9月9日) 拠点国内回帰進む キヤノン宮崎に新工場 カメラ生産九州に集約 自動化で競争力強化
 キヤノン(東京)が、宮崎県高鍋町にデジタルカメラ製造などを担う新工場を開設するのは、生産拠点の国内回帰の一環だ。同社の国内でのカメラ工場設立は、2008年の長崎キヤノン(長崎県波佐見町)以来。九州に生産拠点を集中し、カメラ組み立ての自動化などを進めた最新鋭の工場を新設することで、競争力を強化する。「カメラはできるだけ日本に残そうと、生産技術を磨いていた。為替が1ドル=100円以上(の円安)であれば採算に合う」。8日に宮崎県庁であった記者会見でキヤノンの御手洗冨士夫会長はこう強調した。同社は現在、カメラ工場を国内に4カ所、海外に3カ所展開。国内は全て九州で、大分県に2カ所、長崎県に1カ所、宮崎県に1カ所ある。キヤノンは国内生産を維持するなどの狙いから、生産の自動化によるコスト削減を進めてきた。16年には、大分キヤノン安岐事業所(大分県国東市)に、自動化に向けた生産技術の研究開発拠点となる「テクノ棟」を設立。九州をカメラ生産の本拠地と位置付けている。今後は、宮崎キヤノンが運営する新工場と、大分キヤノンや長崎キヤノンとの連携を進め、市場動向に伴う需要の変化にも、柔軟に対応できる生産態勢を構築するという。御手洗会長は「今は64〜65%が国内生産。高鍋ができれば70%になると思う」との見通しを示した。一方、新工場の進出先である宮崎県高鍋町の黒木敏之町長は「キヤノンが高鍋町に工場を建てることで、雇用やにぎわいが生まれ、知名度が上がり、町民みんなで歓迎している」と語った。宮崎キヤノン従業員の雇用が維持されることについて、同県の河野俊嗣知事は「全体の雇用が守られるということでありがたい」と話した。 
   ◇   ◇
●製造業回帰広がる
 日本の製造業は2012年ごろから国内回帰の動きが出始め、15年ごろから本格化した。パイオニアは日本市場向けのカーナビ製造の一部をタイから青森県十和田市の工場に移管し、ダイキン工業は中国企業に委託していた家庭用エアコン生産の一部を滋賀県草津市の工場に切り替えた。JVCケンウッドも高級ホームオーディオの生産をマレーシアから山形県鶴岡市の工場に移している。経済産業省の調査によると16年には海外生産を行っている製造業の11・8%が国内に生産を戻した。移管元は中国・香港が66%を占め、人件費の高騰が後押ししているという。

<エネルギーと自動車のイノベーション>
*3-1:http://www.tokyo-np.co.jp/article/world/list/201707/CK2017070602000136.html (東京新聞 2017年7月6日) ドイツ環境相の寄稿全文 「脱原発通じて独は多くを学んだ」
 ドイツのヘンドリクス環境・建設・原子力安全相(65)が本紙に寄稿し、トランプ米大統領が地球温暖化対策の国際的枠組み「パリ協定」から離脱表明したことを受け、離脱に反対する米国の州による「米国気候同盟」と連携して引き続き米国を取り込み、温暖化対策での国際協力を進めていく考えを表明した。パリ協定履行に向け、トランプ政権との対立も辞さない決意を示した形だ。
   ◇
 一年あまり前に福島第一原発と周辺地域を訪れ、原子力の利用はいかに甚大なリスクを伴うのかを目の当たりにしました。二〇一一年三月十一日、海底地震が引き起こした津波は日本沿岸を襲い、広い地域が荒野と化し、二万人近い住民の方々が亡くなったり、行方不明になったりしました。その後の数日間に福島第一で起きた原発事故は大惨事となり、当時のドイツで、政治における考え方を根本的に改める契機となりました。ドイツ政府は、国内の原発の運転期間延長を決定したばかりでしたが、政策転換に踏み切り、原発八基の運転を停止し、残り九基も段階的に稼働停止することを決めました。これにより遅くとも二二年末にはドイツの全ての原発が停止することになります。この決定でドイツでは再生可能エネルギーが大幅に拡大しただけでなく、国内の政治論争が納得いく形で収束し、エネルギー政策、気候変動政策の将来のあり方が示されました。ドイツのエネルギーシフトは、同様の計画を進める他国にとってモデルケースとなるだけではなく、むしろドイツ自身が他の部門や業種で構造改革を行う際に役立つ多くのことを学んでいます。ドイツは五〇年までに温室効果ガスニュートラル(排出量と吸収量を相殺)を広範囲で実現しなければなりません。そのために必要な変革を社会とともに形づくり、新たなチャンスが生まれ、皆が社会的、経済的、そして環境的に持続可能な行動をとるようになることを目指しています。この枠組みを定めるのが、一六年末に、パリ協定履行のため長期戦略として策定された「地球温暖化対策計画2050」です。この計画は、経験から学ぶ過程を打ち立て、定めた道筋が削減目標達成のために適切かどうかを定期的に検証することを盛り込んでいます。また、計画は欧州連合(EU)の気候変動政策にも合致しています。ドイツの三〇年温室効果ガス排出削減目標の「一九九〇年比で少なくとも55%削減」も、EUの二〇三〇年目標のドイツ分担分に相当します。エネルギー需要を再生可能エネルギー源で全て賄うまでは、エネルギー部門で脱炭素化を推進するため、特にエネルギー効率を大幅に高める必要があります。これに関してドイツはこれまで日本から学び、今でも活発な交流を続けています。資源効率性の向上もまた、日本とドイツが協力して国際的に取り組んでいるテーマの一つです。日本との協力関係が、二国間でも、また先進七カ国(G7)、二十カ国・地域(G20)といった多国間の枠組みでも築けていることは非常にうれしいことです。昨年の「脱炭素社会に向けた低炭素技術普及を推進するための二国間協力に関する日独共同声明」は、長期的課題や温暖化対策のさらなる局面において、両国が共に進むべき道を示しています。米国政府がパリ協定からの離脱を決定したにもかかわらず、もしくは離脱決定があったからこそ、新たな協力関係が生まれています。ジェリー・ブラウン米カリフォルニア州知事とはつい最近、共同声明に署名を交わしました。知事は、パリ協定を順守するための州の組織「米国気候同盟」で主導的な役割を担っています。パリ協定は現米国大統領の在任期間を物ともせず存続し続けていくと、確信しています。ドイツは、特にフランスをはじめEU内で、そして日本、中国、インドとも協力し、地球温暖化対策をさらに推進したいと考えています。G7ボローニャ環境相会合の共同声明は、協力関係を国際的にどう展開していくのかを示しています。ドイツが議長国を担うG20でも必ずや野心的な成果が得られることでしょう。今年九月にドイツでは連邦議会選挙が行われます。どの政党が政権を担うことになっても、ドイツの温暖化対策の取り組みは変わることなく、場合によってはより野心的目標を掲げ継続されるのは間違いありません。ドイツの経済産業界も確固たる意志でこの政策を受け入れています。日本とドイツは将来も必ず、両国の温暖化対策技術をさらに進展させていくでしょう。(バルバラ・ヘンドリクス=ドイツ環境・建設・原子力安全相)

*3-2:http://digital.asahi.com/articles/ASK950P7XK94UHBI03T.html (朝日新聞 2017年9月10日) 脱原発「当たり前」、緑の党の支持下落 ドイツ
 24日投開票のドイツ総選挙で、緑の党が「2030年までに全電力の需要を再生可能エネルギーで賄う」との公約を打ち出している。結党以来の主張だった「脱原発」が国の方針として定着。緑の党は支持率が下落傾向にあり、さらに野心的な公約を掲げて党勢回復を狙っている。ドイツでは再生可能エネルギーの発電割合が約3割だが、石炭火力も4割、天然ガスも1割を占める。公約では現在100以上ある石炭火力発電の設備のうち、効率の悪い20設備を即座に停止し、30年までに全て廃止する目標だ。再生可能エネルギーシフトには経済界から、「供給が不安定で、急速な拡大は経済活動に影響する」(ドイツ産業連盟のデニス・レントシュミット博士)との懸念があるが、緑の党のベルベル・ヒューン連邦議会議員は「蓄電池の開発や電力需要のコントロールで、安定化させることは可能だ」と強気だ。ドイツ政府は東京電力福島第一原発の事故をきっかけに、22年までの全原発停止を決めたが、今回の選挙では、議席獲得が予想される政党のうち、新興右翼政党「ドイツのための選択肢(AfD)」を除くすべての政党が「脱原発」を前提として、再生可能エネルギーの拡大を掲げている。世論調査では、他政党も環境や気候保護をテーマにしているので「緑の党はもはや重要ではない」との意見に57%が「ほぼ同意する」と回答。新たな目標の設定は、存在意義をかけた闘いと言えそうだ。

*3-3:https://www.nikkei.com/article/DGXLZO21456050S7A920C1FFE000/ (日経新聞 2017/9/23) ガソリン車禁止でBYDトップ「中国の車、30年に電動化」、自社電池を外部供給
 中国最大手の電気自動車(EV)メーカーである比亜迪(BYD)のトップの王伝福・董事長(51)は日本経済新聞などのインタビューに応じ、中国市場からガソリン車が消える時期が2030年になるという見通しを示した。中国政府は9月上旬、将来ガソリン車を禁止する意向を表明し、時期は検討中としていた。政策立案にも関わる王氏の発言から今後、急拡大が予想される中国EV市場の内情を読み解く。王氏は21日のインタビューで、中国のガソリン車の廃止時期について「車種別に工程表を決めることになるだろう」と語った。具体的には「20年に公共バスが全面的にEVに代わり、25年にトラックなど特殊車両、30年には全ての車が電動化するだろう」と述べた。その上で、中国のガソリンは現在62%を輸入に依存していると指摘し、「国家の安全上、中国はどの国よりも早く(ガソリン車禁止の)期限を公表し、EVの拡大を急ぐ必要がある」と語った。英国とフランスは40年までにガソリン車などの販売を禁じる方針を示しており、王氏の見解通りなら、中国はそれより早く大きな転機を迎える。王氏は、中国EV最大手として「これまでも先頭に立ち、政府に(EVなどの)政策を提案し、政策を推し進めてきた」と強調。王氏の意向は今後のEV関連の新政策にも、強い影響を与えていくとみられる。実際、王氏は「我々の強みは中国の政策に精通していることだ」と語る。エコカー推進役として政府の信頼も絶大だ。すでに手厚い補助金の後押しを受け、EVやプラグインハイブリッド車(PHV)の「新エネルギー車」(新エネ車=NEV)の販売は昨年、前年比7割増の9万6千台へと急激に膨らんだ。中国政府は今後、中国新車市場が25年に16年比で25%増の約3500万台に達すると予測する。そのうち20%以上を新エネ車とし、700万台の販売を目指す計画だ。普及のカギを握るのは政府が18~19年に導入を予定する「NEV規制」だ。中国でガソリン車を販売するメーカーに対し、販売量に応じて一定量の新エネ車販売を義務付けるものだ。これまで中国政府は、多額の補助金をほぼ自国メーカーのみに使い、市場を独占させてきた。一方、支援のない外資は中国で新エネ車の体制整備が遅れた。そのため厳しいNEV規制をクリアするには、市場をリードする中国のEVメーカーからクレジットと呼ばれる権利を購入しなければならないケースもある。NEV規制の建前は、あくまで環境規制の強化だ。だが実際は中国企業をクレジットでもうけさせ支援するものとも指摘され、外資から反発の声が上がるのが裏事情だ。BYDはNEVの導入後の3年間だけで、クレジット販売で少なくとも140億元(約2400億円)の利益を手にするという試算もある。そんな同社の株価は連日上昇し、香港証券取引所では21日終値は71.65香港ドルと、今月に入り53%も上昇する過熱ぶりだ。当の王氏も「NEV導入は政府の補助金支援に代わる新しい我々への(支援)政策と理解している。利益がどれだけかは不明だが、トップメーカーとして恩恵は受けるだろう」と語った。中国政府はNEVの導入で新エネ車市場の拡大と中国メーカーの後押しを一挙にもくろむ。16年の50万台から25年には700万台へ急拡大を見込んでいるが、課題は無いのか。これに対し、王氏は「電池生産には巨額投資が必要で、最大の今の課題は電池の供給能力だ。このままでは20年以降、市場全体で電池が足りなくなる」と指摘した。対応策として「すでに現在、複数社と合弁生産や自社で生産する電池の外部供給、協力体制について交渉中で、大きなプロジェクトになる」と明かした。さらに独ダイムラーとのEVでの提携関係も一段と強化し、「新モデルの投資を今後行う」とも述べた。政府はNEV規制導入の詳細を近く公表する。外資各社はその動向を固唾をのんで見守らざるをえない状況だ。

*3-4:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20170910&ng=DGKKZO20957690Z00C17A9EA1000 (日経新聞社説 2017.9.10) 電気自動車時代の足音が近づいてきた
 電気自動車(EV)シフトの動きが世界的に高まっている。日産自動車はEV「リーフ」の初のフルモデルチェンジを実施し、西川広人社長は「日産のコアになる車」と表明した。米国ではテスラが50万台という破格の予約を集めた「モデル3」の納車を始めた。メーカーだけでなく各国政府もEVの普及に熱心だ。仏英両国は2040年までにガソリン車などの販売を禁止する「脱エンジン」の方針を打ち出した。中国やインド政府、あるいは米国でもカリフォルニアをはじめとする有力州がEVの普及を後押ししている。以前のEVブームは尻すぼみに終わったが、今回は本物だろう。日本としてもここで競争に負けて、基幹産業の自動車を失うわけにはいかない。EV化の波を「脅威」ではなく、電池の部材や車の新素材、関連する電子部品など幅広い産業を浮揚させる「好機」ととらえ、変化を先取りしたい。ただ、いたずらに慌てる必要はない。携帯端末の世界では、スマートフォンがいわゆる「ガラケー」に取って代わるのに10年もかからなかったが、車の動きはもっとゆっくりだろう。米金融大手のゴールドマン・サックスは2040年時点でも世界の新車販売におけるEVの比率は32%にとどまり、エンジン車の45%を下回ると予測する。電池の性能向上や量産体制の確立、さらにリチウムやコバルトなど電池に使用される金属資源の増産にはかなりの時間が必要になる。使用済み電池のリサイクル技術の確立も未解決の課題だ。とはいえ変化の波は確実に押し寄せる。過去100年続いた「エンジンだけが車の動力源」だった時代が終わる衝撃は予想以上に大きいかもしれない。独自動車工業会などは「エンジンがなくなれば、ドイツ国内で60万人以上の雇用が影響を受ける」と試算した。日本でも「脱エンジン」の加速で、一部の自動車部品メーカーなどが痛みを被る恐れはある。こうした負の側面の一方で、EV化は電子部品や軽量な炭素繊維などの需要を広げるだろう。EVは自動運転技術との相性がよく、機械が人の運転手をサポートすることで、交通事故が大幅に減る可能性もある。そして何より排ガスがゼロになるので、新興国を中心に大気汚染に苦しむ地域には朗報だ。EV時代の足音を、冷静に前向きに受け止めたい。

*3-5:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20170910&ng=DGKKZO20925630Y7A900C1MY1000 (日経新聞 2017.9.10) スマホ・車 どこでも充電、置くだけ 走るだけ 感電なし
 電線を使わずに電気を送るワイヤレス(無線)給電が身近になりつつある。電動自転車などに電気を供給する国内初の実験が始まったほか、人気スマートフォン(スマホ)の最新型にも搭載されるとみられている。宇宙空間でつくった電気を地上へ送る研究もある。いつでもどこでも電気が充電できる「電線のない社会」が実現するかもしれない。京都府南部に位置する精華町役場。今年3月、新しい電動自転車が登場した。見た目は普通の自転車だが、前カゴに板状の受電装置があり、専用の送電装置の前に駐輪すると無線を受けて充電できる。無線は電子レンジにも使うマイクロ波を使う。充電は安全面を考慮し職員がいない夜間だけ。1回の充電で約25キロ走れる。同町は研究所が点在する関西文化学術研究都市(けいはんな学研都市)があり、業務に自転車は欠かせない。森田吉弥健康推進課長は「重いバッテリーを取り外す手間が省けて便利だ」と話す。同町では5月、役場の5階にある企画調整課内の壁に貼り付けた温度計へ無線給電する実験も始めた。配線が難しい壁近くの温度が簡単に分かり、空調を管理しやすい。得られたデータは高齢者施設で入居者の体調などを把握するセンサーの開発に役立てる。これらの装置は京都大学と三菱重工業、パナソニックが共同開発した。いずれも政府の国家戦略特区で電波法の規制緩和を受けた国内初の実証実験だ。篠原真毅京大教授は「無線給電の普及に向けた大きな一歩になる」と強調する。電気自動車(EV)も無線給電の用途として期待されている。三菱電機は2つのコイルの間で磁界の変化を介して電気を伝える「電磁誘導方式」で、高効率の無線給電装置を開発した。「自宅に設置した太陽光発電との間で、電気を簡単に融通できる」(同社)。英国の高速道路では、走行しながら充電できる専用レーンの計画も進む。EVと無線給電の組み合わせにより、燃料補充の心配がない、新しい自動車社会が誕生しそうだ。実用化が先行するのは携帯電話だ。電磁誘導方式を採用する。普及を後押しするため、中国語で「気」の意味を表す「Qi(チー)」という規格が2010年に始動した。世界の携帯機器や自動車のメーカーなど約240社が、同規格を運営するWPCという団体に参加している。欧米を中心に、互換性のある製品が200点近く市場に出ている。今年2月には、米アップルがWPCに加盟した。9月12日に発表するスマホ「iPhone(アイフォーン)」の新型に同規格による機能が搭載されるとみられている。篠原教授は「無線給電の知名度が一気に上がる」と期待する。Qiの送電能力は現在15ワットまで。60ワット、120ワットと能力を上げていく計画だ。能力が高まれば携帯電話から照明やテレビ、パソコン、掃除機まで用途が広がる。家庭から電源コードがなくなるかもしれない。同規格の日本代表を務めるロームの鈴木紀行通信スマートデバイス課長は「新サービスが生まれたり、生活が便利になったりする」と話す。コンセントが要らず、水にぬれても感電の心配がないため、喫茶店のテーブルに置くだけで充電したり、屋外の自動販売機などから電気をもらったりもできる。充電機能を売りにした机や照明機器、カバンなども登場しそうだ。こうした商品が身の回りにあふれれば、「充電」という意識すらなくなるかもしれない。地球規模の研究も進んでいる。京大の石川容平特任教授は宇宙空間で太陽光により発電し、地上に送る「宇宙太陽光発電」技術の実現を目指している。静止軌道に浮かべた太陽光パネルで電気をつくって、海中に設けた装置にマイクロ波で送り、いったん蓄えた後に、陸上へ送電する構想だ。石川特任教授は「世界全体を網羅して安定的に電力を供給する全く新しい送電網が実現できる」と力を込める。大きな期待が集まる無線給電にも課題はある。一つは安全性だ。電磁波の人体影響に詳しい京大の宮越順二特任教授は「長期の評価はまだ十分ではない」と指摘。篠原教授と協力し今年度からマイクロ波による影響研究を始める。もう一つは電波を扱う規格だ。携帯電話使用時に発生する電磁波との干渉が指摘されている。普及には電波法を見直す必要があるが、日本は欧米に比べて出遅れており、国内メーカーは危機感を抱く。無線技術の進歩で生まれた携帯電話はこの数十年で、ビジネスや生活スタイルを大きく変えた。「第2の無線技術」といえる無線給電が普及すれば、新たな経済社会が生み出されるだろう。

<医療のイノベーション>
PS(2017年10月4日追加):医療もイノベーションを繰り返してきた伝統産業と言えるが、私は衆議院議員時代(2005~2009年)に再生医療を進め、日本は世界でリーダーになれるかに見えたが、*4-4のSTAP細胞はじめ、日本ではiPS細胞以外の研究は嘘か邪道であるかのような批判をして排除するようになったため、またまた先端研究が世界に遅れ始めている。
 例えば、*4-1のような体性幹細胞を利用した臨床研究は、皮膚などの体細胞に遺伝子を導入することがないためiPS細胞よりも問題が少なく、外国では進んでいるのだが、日本では手術や抗癌剤治療や放射線治療などで既に造血機能が低下したり免疫機能が損傷したりしている患者にしか適用されないので、効果が低い。
 また、臍帯血にも生命力あふれる元気な幹細胞が含まれているが、*4-3のように、臍帯血を違法に患者に移植していたとして医師ら6人が再生医療安全性確保法違反の疑いで逮捕され捜査されるのだそうだ。しかし、“違法”とはいっても、法律が医学研究より先を行くわけではないため、これでは日本で先進医療やその研究を行うのは医師にとっては危なすぎることになり、頭脳流出の原因になるだろう。また、治療による深刻な副作用であれば、現在の癌の標準治療の方がむしろすさまじいため、これらに関する検証は、抗癌剤を作っている薬剤会社の側に立ちがちな厚労省だけでなく、本当に公正に比較できる学者組織が行うべきである。
 さらに、*4-2のように、厚労省は癌の免疫療法に有効性を認めず実態調査をするそうだが、最も安全で賢い治療方法は、もともと体が持っている免疫機能を利用したり、それを強化したりして治すことであるため、「患者自身のリンパ球を使うものや癌ワクチンなどは科学的な効果が確立されていない」などとして研究や治療を禁止するのではなく、研究者に必要なバックアップを行って安定した結果を出せる治療法を確立すべきである。そして、文系出身の役人も、こういう知識を持って、知識に基づき正しい判断ができる教育をしておくことが必要だ。

*4-1:http://digital.asahi.com/articles/DA3S13104676.html (朝日新聞 2017年8月27日) (科学の扉)体性幹細胞、変える治療 再生医療の研究、iPS・ESに先行
 自分の体の中に存在し、骨や神経など特定の組織を再生する能力を持つ体性幹細胞(組織幹細胞)を利用した臨床研究が、iPS細胞やES細胞に先行している。従来の治療をどのように変えていくのだろうか。幹細胞は、体を構成する様々な細胞に変化する分化能と、自分と同じ細胞に分裂できる自己複製能を併せ持つ。中でも、受精卵の中にある細胞を取り出して作るES細胞や、皮膚など体の細胞に遺伝子を導入して作るiPS細胞は、体の中のどんな細胞でも作り出せ、多能性幹細胞と呼ばれる。一方、幹細胞のうち、体の中に元々存在し、決まった組織や臓器の中で働くのが体性幹細胞だ。傷ついて古くなった細胞を入れ替えたり、病気やけがで失われた細胞を新しく補ったりする役割を担う。体性幹細胞には、赤血球や白血球などの血液をつくる造血幹細胞、神経系をつくる神経幹細胞、骨や軟骨、脂肪などへの分化能がある間葉系幹細胞などがある。幹細胞の機能を使った再生医療では、安全性の評価などに課題があるiPS細胞やES細胞に比べ、体性幹細胞の研究が実用化に近づいている。札幌医大の研究グループは2014年、脊髄(せきずい)を損傷した患者に、自分の骨髄液から分離した間葉系幹細胞を静脈内に投与して神経を再生させる臨床試験(治験)を開始。神経や血管系に分化する能力を持つ間葉系幹細胞は骨髄細胞の中に0・1%程度含まれる。これを1万倍に増やし細胞製剤にして点滴すると、患者の体内で傷ついた神経に細胞が集まり、その働きを取り戻すことが期待されている。国は16年に「高い有効性を示唆する結果が出ている」として、承認審査の期間を短縮する「先駆け審査指定制度」の対象に指定し、治験も終了。同大は、骨髄の間葉系幹細胞を脳梗塞(こうそく)患者に静脈投与し、後遺症の軽減を目指す治験も進めている。
■「親知らず」活用
 ただ、患者自身の幹細胞を使う方法は、摘出する際に体へ負担がかかり、培養に時間やコストがかかる問題もある。そこで、他人の良質な幹細胞を大量に培養し、必要な患者の治療に使う方法も研究されている。東海大の佐藤正人教授(整形外科学)は、ひざの軟骨がすり減る変形性膝(しつ)関節症の8人を対象に、患者自身のひざから取りだした軟骨細胞を培養したシートを患部に貼り付け、軟骨を再生させる効果が全員にあったことを確認した。細胞シートが特殊なたんぱく質などを出して、ひざの骨にある骨髄由来の間葉系幹細胞を活性化し、軟骨が再生すると考えられるという。今年2月からは、先天的に指が6本ある多指症の赤ちゃんから、手術で切除した指の軟骨の提供を受け、細胞シートに培養して患者に移植する臨床研究を始めた。佐藤さんは「軟骨は他人の細胞でも拒絶反応が起こりにくい。乳児の細胞は増殖能力が高く、修復を促す成分も多い」と話す。抜歯後に捨てられていた「親知らず」が歯周病の治療に役立つ可能性も見えてきた。東京女子医大の岩田隆紀准教授(歯周病学)は歯の根と周囲の骨(歯槽骨)の間にある歯根膜に着目した。歯根膜は間葉系幹細胞が豊富に存在し、骨の再生を促す役割があるが、歯周病の患者では部分的に失われている。そこで、抜歯した親知らずから歯根膜を採取して培養した細胞シートを歯の根元に移植し、骨の欠損部に一緒にいれた骨補填(ほてん)材(リン酸カルシウム)が骨に置き換わって周囲の骨を再生させる方法を考えた。重い歯周病10人を対象に患者自身の親知らずを使った臨床研究では、骨が平均で約3ミリ回復した。すでに、20代前半の健康な人の親知らずから細胞シートを作り、患者に移植する研究の準備を進めている。岩田さんは「1本の歯から約1万人分のシートができる。大量生産することでコストの大幅な削減が見込める」と言う。
■商品化、ごく一部
 再生医療の「治療薬」はごく一部で商品化されているが、研究の多くは安全性や有効性の確認を進めている段階だ。ロート製薬と新潟大の寺井崇二教授(消化器内科学)は7月、他人の脂肪組織に含まれる幹細胞を培養し、肝硬変の患者に点滴する治験を開始すると発表した。肝硬変は、肝臓の組織が炎症を繰り返して硬くなる「線維化」を起こす。マウスの実験で、脂肪由来の幹細胞を投与すると線維化が改善したため、治験をすることになった。寺井さんは「脂肪の採取は体への負担が比較的軽く、美容整形などで余っているものが入手しやすい」と話し、20年度の承認を目標としている。沖縄県は今月、再生医療の産業化を進める目的で、「脂肪幹細胞ストック事業」を琉球大などに委託することを決めた。琉球大医学部や再生医療ベンチャーのセルソース(東京都)の加工施設で、医療機関から提供された脂肪組織から幹細胞を抽出し、長期的にストックする技術を構築することを目指す。琉球大の清水雄介特命教授は「脂肪幹細胞の性質は個人ごとに大きな差があり、治療に適したものを選ぶ方法も確立していない。まず多くの細胞をストックして、個人ごとの異なる性質を解析することが不可欠だ」と課題を挙げる。
<治療法確立の分野も> 体性幹細胞による再生医療としてすでに治療法が確立しているのが、白血病などの治療における造血幹細胞移植だ。抗がん剤や放射線治療によって骨髄の造血機能が損傷した患者に、正常な造血幹細胞を移植して回復させる。骨髄液を採取して患者に移植する骨髄移植は1970年代に開発された。造血幹細胞はほかにも、特別な薬を投与すると全身の血液に流れ出す末梢(まっしょう)血幹細胞や、赤ちゃんと母親を結ぶ臍帯(さいたい=へその緒)と胎盤の中に含まれる臍帯血にも含まれており、それぞれ移植に使われている。

*4-2:http://digital.asahi.com/articles/DA3S13164507.html (朝日新聞 2017年10月4日) がん「免疫療法」、調査へ 厚労省、拠点病院など434カ所 効果、不確かなケースも
 厚生労働省はがんの「免疫療法」について、有効性が認められておらず、治療費を患者が全額負担する治療があるとして、初の実態調査をすることを決めた。対象は、地域のがん医療の中心となるがん診療連携拠点病院など434カ所。加藤勝信厚労相は3日の閣議後会見で「どういう形で実施しているのか、速やかに調査したい」と話した。免疫療法は、体内の異物を攻撃して排除する免疫のしくみを利用して、がんを治すことを目指すもの。オプジーボなどの新しいタイプの薬・免疫チェックポイント阻害剤は、一部の進行がんで保険適用されている。一方、患者自身のリンパ球を使うものやがんワクチンなどは科学的な効果が確立されていない。研究目的の臨床試験でなければ、治療費は全額患者負担となる。こうした自由診療は民間クリニックだけでなく、国が指定するがん診療連携拠点病院でも実施し、多額の費用を患者が払うケースもあるという。国立がん研究センターの若尾文彦・がん対策情報センター長は「効果が確認されていないことなどの説明を十分せずに患者側の期待をあおり、多額のお金を使わせるのは問題だ」と指摘する。厚労省は、どれだけの拠点病院が免疫療法を実施しているかや安全管理体制などについて調査する。

*4-3:http://www.saga-s.co.jp/column/ronsetsu/461079 (佐賀新聞 2017年9月6日) 無届け臍帯血移植、患者保護へ規制を見直せ
 他人の臍帯血(さいたいけつ)を違法に患者に移植していたとして、医師ら6人が再生医療安全性確保法違反の疑いで逮捕された。リスクが高い医療行為であるにもかかわらず、厚生労働省が認めた委員会で審査を受け、同省に届け出るという定められた手続きを踏まなかったというのが直接の容疑。安全性に問題がある移植が行われていた疑いも指摘されている。捜査で実態を明らかにするとともに、安全性や有効性に問題がある類似の医療行為から患者を守るため、再生医療に関する現行の規制や患者への情報提供の問題点を洗い出し、早急に対策を進めるべきだ。臍帯血は、赤ちゃんのへその緒や胎盤から採取される血液で、さまざまな血液細胞に成長できる幹細胞を多く含む。臍帯血移植は白血病などの治療法として確立しているが、容疑者らは、別のがんの治療や美容目的など、効果未確認の移植を行っていたとされる。再生医療安全性確保法は2014年施行。自由診療で幹細胞の移植を受けた患者が死亡した問題などをきっかけに検討が進み、今回が初の刑事摘発だ。同法がなければ、医師と患者の合意の下で行われる自由診療に当局のメスが入ることは、深刻な健康被害が明らかになるなどしない限り考えにくかった。法は一定の役割を果たしたと言える。一方で、現行の規制に深刻な不備があることもはっきりした。移植に使われた臍帯血は、09年に経営破綻した民間の臍帯血バンクから流出したものだとされる。国内には、白血病患者らの治療に使うため、産婦から任意で提供を受けた臍帯血を保存する公的バンクが複数ある。これらは法に基づく許可制で、臍帯血の品質確保のための基準もあるが、他人への移植を前提とせずに有償で臍帯血を預かる民間バンクは規制の対象外。破綻時の対応も業者任せで、保管方法に問題があれば、健康被害に結びつく可能性がある。日本で人工多能性幹細胞(iPS細胞)が開発されたこともあり、再生医療の研究は国が積極的に推進し日々のニュースにも登場する。それだけに患者の期待も膨らむが、多くの再生医療はまだ研究段階にあり、長期の効果やマイナス面ははっきりしていない。そうした現状での大きな問題は、再生医療と称し患者に提案される個別の自由診療の安全性や有効性について、患者自身が判断できる材料が非常に乏しいことだ。再生医療安全性確保法は「認定再生医療等委員会」と呼ばれる委員会が治療計画を事前に審査することで一定の安全性などを担保する仕組みだが、委員会の審査の質にはばらつきがあることや、治療後のフォローが十分なのかといった疑問も指摘されている。改善が急務だ。患者が自由診療の具体的な中身を他の医療機関と比較することも難しい。厚労省は、再生医療に携わる医療機関の情報提供を、患者に役立つ形に見直す必要がある。日本再生医療学会は、一般の人から再生医療の相談を受け付ける窓口を開設する方針を決めた。これも実施を急いでほしい。患者が相談したり、疑問を寄せたりしやすい仕組みを常設することは、患者を助けるだけでなく、問題ある医療機関の情報を、学会や当局が把握するにも有益だ。

*4-4:http://gendai.ismedia.jp/articles/-/48272 (「週刊現代」2016年3月26日・4月2日合併号)小保方さんの恩師もついに口を開いた!米高級誌が報じたSTAP騒動の「真実」
 小保方さんは間違っていたのか、それとも正しかったのか—アメリカの権威誌に掲載された記事には日本で報道されていない新たな証言が書かれていた。世界中が彼女に注目し始めている。
●すさまじい駆け引き
 「私は、STAP細胞は正しい、確かに存在すると100%信じたまま墓場にいくつもりだ」。こう語るのは、小保方晴子さん(32歳)の恩師、アメリカ・ハーバード大学のチャールズ・バカンティ教授だ。バカンティ氏は、小保方さんが発表し、後に撤回された「STAP細胞論文」の共著者でもある。小保方さんが、自らの言葉で綴った手記『あの日』が、海の向こうでも話題になっている。アメリカで有数の権威を持つ週刊誌『NEW YORKER』(ニューヨーカー)の電子版に、一連のSTAP騒動を検証する記事が掲載されたのだ。筆者は、アメリカ人のデイナ・グッドイヤー女史(39歳)。'07年まで『ニューヨーカー』の編集者として勤務し、その後、ノンフィクション作家として独立した人物である。冒頭のバカンティ氏の言葉は、グッドイヤー女史のインタビューによって騒動以降、初めて明らかになったものだ。在米の出版社社員が現地の様子について語る。「バカンティ教授が取材を受けたのも『ニューヨーカー』だからこそです。それくらいこの雑誌で記事が組まれることはステータスでもあるんです。この記事を掲載するに当たって編集部は約半年にもわたり、準備をしたそうです。かなり気合が入った記事であることは間違いない。小保方さんが手記を出したことで、世界が再び彼女に注目しています」。『ニューヨーカー』はアメリカ雑誌界の最高峰に君臨。読者層は知的好奇心が高く、「高級で権威がある雑誌」と認識されている。紙の雑誌の発行部数は100万部以上。電子版も好調で、こちらも100万人以上の会員数を誇る。一本一本の記事が丁寧に書かれている総合誌で、非常に読み応えがあるのが特徴だ。小保方さんに関する記事のタイトルは「THE STRESS TEST」。幹細胞研究の世界はまさに陰謀、欺し合いが錯綜している。そこに細胞に対して行う「ストレス・テスト」を引っかけ、ストレスに弱い者は、科学界で生き残れないことをこの記事は示している。グッドイヤー女史は日本中を巻き込んだ「STAP」騒動をどう分析しているのか。まず小保方さんの登場について記事ではこう書かれている。「この仕事(STAP)の背後にいた『革命児』が小保方晴子であった。彼女は男性中心の日本の科学界に女性として一石を投じた。彼女は他の女性に比べて、男たちとの駆け引きの中で生きることに長けていた。そして独創的な考えの持ち主であると賞賛されていた」(『ニューヨーカー』より・以下カッコ内は同)。その小保方さんを引き上げた人物こそ、バカンティ教授だった。「小保方がバカンティ教授の研究室にやってきた時、バカンティはすぐに『彼女にはopen‐minded(心の広さ、進取の気性に富む)と、明敏さがある』ことに気づいた。ただしバカンティは当面、細胞にストレスを与えると幹細胞を作り出す可能性があるという仮説を伏せておいた。彼がもっとも避けたかったのは、留学生が自国に戻って、他の誰かの研究室で彼女のアイディアを展開することにあった。バカンティは私にこう言った。『私の主な懸念は、我々はハルコを信用できるのかだ』と」
●「彼女には才能がある」
 だが、バカンティ氏の懸念は杞憂に終わる。小保方さんは彼の研究室で信頼を高めていった。「小保方の下でリサーチ・アシスタントとして働いたジェイソン・ロスはこう言った。『彼女がいかに才能があるかは、誰もが分かった。ハルコのような才能のある人はそう多くはいない』。それに対して小保方はこう返した。『日本では女性研究者は二流です。たとえ年下の大学生でも、男性が必要としたら、女性は顕微鏡を使うのを諦めないといけません』」。やがてバカンティ教授の元での短期留学を終えた小保方さんは、日本に帰国し、'11年に理化学研究所(CDB)の研究員に。そこで「STAP騒動」のキーパーソンである若山照彦教授のチームに所属する。そして本格的にSTAP細胞の研究に取り組んでいく。「生物学者の山中伸弥がノーベル賞を受賞したとき、CDBの研究者たちの野心は奮い立った。CDBのチームは、自分たちの発見が山中の発見と張り合う、いや山中の研究をobsolete(時代遅れ、廃れた)にしてしまうとまで考えた」。その一方で、当時の小保方さんについては、「小保方はCDBでの昇進は早かったが、うまく適応できてなかった。アメリカ的になっていたので、元同僚たちによると小保方は、日本の研究所の厳格なヒエラルキーにイライラしているように見えた」。と記している。'12年、STAP細胞発見への意欲を見せる小保方さんのもとにもう一人の協力者が現れる。それが騒動中に自殺した笹井芳樹・元CDB副センター長だった。笹井氏のもとで、小保方さんは論文を再構築する。そして'14年、ついに世界的権威を持つ科学雑誌『ネイチャー』にSTAP論文が掲載される。日本のメディアは割烹着姿で顕微鏡をのぞき込む小保方さんを「リケジョの星」、「ノーベル賞級の発見」と煽り持ち上げた。だが、風向きが急速に変わり始める—。「ブランドン・ステルという名の神経科学者が'12年に創設した『PubPeer』というオンライン・フォーラムがあり、そこでは誰もが科学論文を分析して議論することができる。STAP論文は彼らにとってまさに、好奇心をそそる材料であった。2週間も経たないうちに、匿名のユーザーが論文に掲載された画像の2つがほとんど同一のものであることに気づいた」。STAP論文の発表は世界に衝撃を与えると同時に、世界中の研究者からの検証にさらされることにもなった。これこそが「ストレス・テスト」なのだ。このテストにバカンティ氏と小保方さんは耐え抜くことができなかった。「ハーバード大学の科学者でボストン小児病院の幹細胞移植のディレクターであるジョージ・ダレイは私にこう言った。『当時、世界中の私の同僚たちは、お互いにメールをしあって、おーい、何が起きているんだ。うまくできたか? 誰も成功してないのか、と言い合っていた』」
●今も信じている
 グッドイヤー女史によると、ダレイは「STAPは幻想である」ことを立証するための論文を『ネイチャー』に発表する準備を始めたという。さらにダレイは2回にわたって、バカンティ氏に間違いを諭そうとしたが、無駄に終わったという。「ダレイは私に『バカンティは自分が正しいと思い込んでいる』と言った。そして、昨年の9月、『ネイチャー』はダレイのSTAPに関する論文を掲載した。そこには小保方の主張を正当化すべく7つの研究室が再現をしようとしたが、すべて失敗したと書かれていた。この論文の共著者であるルドルフ・イェーニッシュは、遠慮することなく私にこう言った。『小保方が若山にいろいろ混ざった細胞を渡したことは明らかだ。若山は彼女のことを信じてそれを注入した。そして美しいキメラができた』」。バカンティ氏は一度、小保方さんに「データの捏造はしてないのか」と尋ねたが、小保方さんの答えは、「それならこんなに時間をかけて実験はしない」だったという。さらに記事の中には、バカンティ氏は論文撤回後もSTAP細胞作製に向け、いまも研究を続けていると書かれている。断っておくが、『ニューヨーカー』に掲載されたこの記事は、誰が正しいと断定はしていない。あくまでそれぞれの当事者に取材し、主張を丁寧に拾ったものである。騒動以降、口を閉ざしたままだったバカンティ氏が、今も小保方さんを信じ続けていることは、この記事を読めば十分に伝わってくる。筆者のグッドイヤー女史は今回、記事を書くにあたって小保方さんとメールでコンタクトを取ったことを明かしている。「小保方は『私はスケープゴートにされた』と書いてきた。『日本のメディアはすべて、若山先生が犠牲者で、私がまったくのろくでなしと断定した』とも」。小保方さんは今、どんな思いで、何を考え、日々を過ごしているのだろうか。


<エネルギーから考えた街づくりのイノベーション>
PS(2017/10/6追加):*5-1に「①経産省は再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度で、太陽光発電のさらなる価格引き下げを行い、最終的には10円前後を目指して、今後は競争を通じて民間で自律的に市場を拡大していくよう促す」「②小規模な発電にも入札対象を広げることを検討する」「③太陽光発電の導入費用は、日本が1キロワットあたり約30万円と欧州の2倍であるため、事業者には安価で質の高い設備などの一層の技術革新が求められる」と書かれている。この①②③については、最初に太陽光発電を導入した事業者には普及を促す目的で高い買取価格を20年間保障し、普及後は次第に市場に委ねる方法が正しい。にもかかわらず、最初に太陽光発電を発明した日本では、普及が遅れて技術が進まず、欧米の5~10円/kwhに及ばない状況となっているのは、油断と妨害の結果である。なお、電力のコストは「賦課金」ではないため、記者は原価計算を踏まえて正確に議論すべきだ。
 また、*5-2には、「①柏崎刈羽原発6、7号機に原子力規制委員会が安全審査に事実上の『合格』を出し、再稼働にようやく動き出した」「②日本では再生エネでベースロード電源を担うのは難しい」「③原発1基再稼働させれば同規模の火力発電に比べてコストは年350億~630億円、二酸化炭素(CO2)排出では260万~490万トンを減らせる。」「④政府は原子力の総発電量に占める割合を2030年度に20~22%とはじく」などが書かれている。しかし、原発に絶対安全はなく、事故を起こせばCO2どころではない公害を引き起こし、使用済核燃料の最終処理まで考慮すれば発電コストは最も高いため、①②③④こそ、環境後進国日本の思考停止による見解だ。そして、再生可能エネルギーの制約として書かれている内容は、使用済核燃料の処理よりもずっと簡単に解決でき、外国では既に実践されているものである。そのため、分散発電を前提とした良質で安価な機器が増え、それを使った街づくりが進めば、100%再生可能エネルギーによる電力社会は、石炭から石油に転換したよりも早いスピードで来るだろう。

*5-1:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO21969410W7A001C1MM0000/?n_cid=NMAIL004 (日経新聞 2017/10/6) 太陽光買い取り価格、さらに下げ 18年度20円弱に
 経済産業省は再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度(FIT)で、太陽光発電のさらなる価格引き下げに乗り出す。2018年度にも産業用の買い取り価格を現在の1キロワット時21円から同20円弱とする見通しで、最終的には10円前後を目指す。再エネの導入拡大に向け国が手厚く支援してきたが、今後は競争を通じ、民間で自律的に市場を拡大していくよう促す。FITは再エネでつくった電気を大手電力が一定期間、同じ価格で買い取るよう国が定めた制度。参入事業者が収益性を見通しやすくする目的で、12年度に導入した。経産省はこのほどFITに関する有識者会議「調達価格等算定委員会」で18年度以降の見直しに向けて議論を始めた。年度内に結論を出す。12年度に制度を導入した際の産業用の買い取り価格は1キロワット時あたり40円だったが、産業用は17年度は21円となっている。また、同省は17年度からは2千キロワット以上の大規模な太陽光発電に対し、欧州などで普及する入札制を導入し、さらなる価格下げを促している。今秋に予定する初の入札の結果を踏まえた上で、現在21円の入札上限価格についても今後、引き下げるほか、より小規模な発電にも入札対象を広げることを検討する。太陽光の普及が進み、入札制が多い独仏、米国などは1キロワット時あたりの太陽光発電による電力価格は5~10円が相場で、日本の半分から4分の1と低い。経産省が太陽光発電の導入費用を調べたところ、日本は1キロワットあたり約30万円と欧州の2倍に上る。事業者には安価で質の高い設備の導入など、一層の技術革新が求められる。より発電効率の高い太陽光パネルやパワーコンディショナー(電力変換器)を使ったり、効率的な保守管理サービスを利用したりする必要がある。再エネ導入を加速させるためFITで手厚く支援してきて、太陽光の普及は進んだ。しかし事業者側のコスト競争力はまだ低い。経産省幹部は「日本でも大幅なコスト削減を進め、競争力のある電源にしていく」とし、買い取り価格の引き下げや入札制度の導入で、太陽光関連事業者の「自立」を促す。同省は太陽光に限らず、風力、水力、バイオマスなど他の電源でも価格の引き下げを進める方針だ。FITの背後で高まる消費者負担に配慮する面もある。標準家庭が月々の電気代で負担する再エネ促進のための「賦課金」は、17年度で686円と、12年度の57円から跳ね上がった。30年度には1千円を超える見通しで、対応を迫られている。

*5-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20171006&ng=DGKKZO21827100T01C17A0EA1000 (日経新聞 2017.10.6) 環境後進国ニッポン(下)思考停止 もう許されない
温暖化対策と安定的な電力供給を両立する原子力発電は過度な依存を望めない。一定量の電力を低コストで安定供給できるベースロード電源の議論は堂々巡りが続く。
●再稼働弾み期待
 東京電力柏崎刈羽原発6、7号機(新潟県)。原子力規制委員会が安全審査に事実上の「合格」を出し、再稼働にようやく動き出した。事故を起こした福島第1原発と同じ「沸騰水型」で初の合格内定。経済産業省は同型原発の再稼働に弾みがつくと期待する一方で、「東電を適切に指導したい」と気を引き締める。同意が必要な地元の反応はなお厳しい。1年前の選挙に勝って新潟県知事に就いた米山隆一氏。福島原発事故の県独自の検証が済むまで認めない立場に固執し、3年ほどかけるという。東電は理解を得る活動を急ぐ。政府が報道各社の世論調査を分析したところ、福島事故直後から今まで「再稼働賛成1に対し反対2」の構図のままだ。経産省は原発再稼働をベースロード電源と位置づける。1基再稼働させれば同規模の火力発電に比べ、コストは年350億~630億円、二酸化炭素(CO2)排出では日本全体の0.2~0.4%にあたる260万~490万トンを減らせる。政府は原子力の総発電量に占める割合を2030年度に20~22%とはじくが、16年度は2%。経産省によると、目標達成には全国にある42基のうち30基程度の再稼働が要る。12基が安全審査を待つが、達成はなかなか厳しい。老朽化による廃炉かリプレース(建て替え)かの判断を迫られる原発も出てくる。同省幹部は「30年以降、原発の新増設がなければ20~22%は維持できない」と語る。想定する水準を確保できなければどうするのか。今の総発電量に占める再生エネの割合は15%(大規模水力含む)。30年度は原子力より高い22~24%になるとみる。ただ天候や日照時間に左右される太陽光や風力は電力が安定しない。国境をまたいで送電網がつながる欧州では、再生エネの普及するドイツと、原発大国のフランス間で電力の融通が成り立つ。現時点の日本では再生エネでベースロード電源を担うのは難しい。地球環境産業技術研究機構(RITE)の秋元圭吾主席研究員は「再生エネの普及と技術の革新を進めながら、火力と原子力を使うのが現実的」と話す。再生エネの不安定さを液化天然ガス(LNG)火力で調整して、発電量を安定させられる。
●地熱は10年停滞
 ベースロード電源の可能性を秘めた再生エネもある。火山国、日本で資源豊富な地熱発電だ。世界3位の約2300万キロワットの資源量があるとの試算があり、日本の電力の総設備容量の約1割にあたる。だがここ10年間は50万キロワット超で大きく変わらず、ニュージーランドやアイスランド、トルコ、ケニアに抜かれた。停滞の理由は内向きの事情だ。適地の8割が国立・国定公園内にあり、景観との兼ね合いで慎重論との一進一退になりがち。温泉地に重なり関連業者の懸念もある。環境を論じるには温暖化と密接に関わるエネルギー政策が欠かせない。衆院選でも争点となり、希望の党代表の小池百合子東京都知事は30年までの原発ゼロを主張。それなら代替エネルギーを示すべきだ。東日本大震災で原発を軸とする構成が壊れて6年半。思考停止を乗り越え、エネルギーの将来像を議論する時だ。

<農林漁業のイノベーション>
PS(2017年10月8日):*6-1に、「①地方銀行による農林業への融資残高が2017年3月末時点で約5400億円に上り、資金需要は拡大傾向」「②各行は農家への助言強化や農家が生産から流通までを手掛ける『6次産業化』を後押しするサービスを拡充し、需要の取り込みに躍起」「③強い農業には生産技術に加え、生産計画や財務管理といった企業経営で求められるノウハウが必要だ」と書かれている。農林漁業のイノベーションにも資金が必要であるため、①のように銀行が融資先として認識し始めたことはよいことで、②③に述べられている農林漁業の経営管理は非常に重要だが、無理に融資して貸しはがしすることにならないよう、銀行も情報収集力や人材を活かして農林漁業の得意先と一緒に育って欲しい。
 このような中、*6-2のように、「森林環境税(仮称)」を財源に市町村が管理の行き届いていない森林を整備し、担い手への集積・集約化を進める仕組みの構築を目指すとのことだが、CO2を吸収するのは森林に限らず、環境を汚している主体からはそれに見合った金額を徴収したいので、私は「環境税」という名前にした方がよいと考える。なお、木材の価格低迷で森林の所有者が森林を管理する意欲を無くしている点については、*6-3の大川のように、日本各地に家具の街があるため、これも伝統産業のイノベーションを行い、現代の住生活にあったおしゃれな家具を安価に作れるようにした方がよいだろう。何故なら、消費者は、自分の家に合わない家具やないものは欲しくても買えないのであり、この要求を満たせば輸出も可能だからである。


 2017.10.7西日本新聞

(図の説明:地方銀行の農林漁業への貸付残高、農林漁業金融公庫/日本政策金融公庫の農林水産事業への貸付が増え続けている。また、合板用材の国産割合も増加中だ)

*6-1:http://qbiz.jp/article/120196/1/ (西日本新聞 2017年10月7日) 地銀の農業融資5千億円超 大規模化、企業参入背景
 地方銀行による農林業への融資残高が2017年3月末時点で約5400億円に上ったことが7日、分かった。農業の担い手減少が続く一方、農家の大規模化や異業種からの企業参入を背景に資金需要は拡大傾向にあり、融資残高も年々増加している。各行は農家への助言強化や、農家が生産から流通までを手掛ける「6次産業化」を後押しするなどサービス拡充の動きを活発化させ、需要の取り込みに躍起だ。第二地方銀行協会などの集計では、第二地銀を含む地銀の13年3月末以降の農林業の融資残高は年100億円超のペースで増え、16年3月末時点で5千億円を突破した。長野県地盤の八十二銀行の17年3月末の農業融資残高は215億円で、前期から41億円伸ばした。農家との接点を増やそうと6次産業化や経営に関する講座などを開催。強い農業には生産技術に加え、生産計画や財務管理といった企業経営で求められるようなノウハウが必要だと訴えてきた。農業の専任担当者は「高い経営感覚を持った農家が増えれば、資金供給先も増える」と期待。企業から農業参入の相談があれば、経営計画の策定や、その後の販路開拓を後押しする。地域の基幹産業である農業に自ら参入して知見を蓄積しているのは鹿児島銀行(鹿児島市)。運転資金がかかる畜産向け融資も堅調で、17年3月末の残高は528億円と全国の地銀でトップだ。昨年9月に農業法人「春一番」を共同出資で設立し、銀行から出向した4人がタマネギとオクラを生産。「農業経営の理解が深まり、どうすれば稼げるかを考える意識が高まった」(鹿児島銀の担当者)といい、営業力強化へ増員を予定する。6次産業化を推進する西日本シティ銀行(福岡市)は農業融資の残高を17年3月期までの5年間で約16倍に拡大。宮崎銀行や常陽銀行(水戸市)、宮城県地盤の七十七銀行、北陸銀行(富山市)といった有力地銀も残高の伸びが目立った。

*6-2:https://www.agrinews.co.jp/p42095.html (日本農業新聞 2017年10月6日) 森林管理 委託を促進 所有者の責務 法で規定も 規制会議
 政府の規制改革推進会議は5日、農林ワーキング・グループ(WG、座長=飯田泰之明治大学准教授)の会合を開き、林業改革について議論した。「森林環境税(仮称)」を財源に、市町村が管理の行き届いていない森林を整備し、担い手への集積・集約化を進める仕組みの構築を目指す。管理が困難な所有者に市町村への委託を促すため、適正に管理する責務をいかに法的に課すかが焦点となる。年内に結論を取りまとめる方針。同会議では9月の初回会合で、今期の重要課題のひとつに林業の成長産業化を掲げ、年内に結論を出すとしている。具体的には、意欲ある林業経営者に、森林の管理を集積・集約化する仕組みの構築を目指し、こうした仕組みを補完する市町村の役割などを詰める。所有者が管理できない森林について、市町村が受託し、作業道の整備や間伐などをした上で、担い手となる経営体に再委託する仕組みを検討する。一方、こうした市町村の取り組み財源として、与党は2017年度の税制改正大綱で、18年度の税制改正で森林環境税を創設する方針を示している。焦点となるのは、森林所有者にいかに市町村への委託を促すかだ。農水省によると所有者の約8割は経営意欲が低く、さらにそのうちの7割は主伐の意向がない。こうした中で、自ら管理する意向がない所有者に、市町村への委託を促すため、所有者に対して森林を適正に管理する責務を法律で課すことを検討する。来年の通常国会での森林法改正か、新法の制定も視野に入れる。この日の同WGの会合では、総務省が森林環境税の検討状況を報告。財源の使途について、間伐や作業道の整備の他、森林の所有者を特定する調査にも充てるとした一方、地方公共団体からは、森林の状況に応じて柔軟な使い方ができる仕組みを求める声が上がっていると説明した。

*6-3:http://qbiz.jp/article/120204/1/ (西日本新聞 2017年10月8日) 1万点の家具 展示販売 大川木工まつり始まる
 家具のまちの秋恒例イベント「大川木工まつり」が7日、大川市酒見の大川産業会館と大川中央公園をメイン会場に始まった。市内外の家具メーカー約200社が最新の約1万点の商品を展示販売しているほか、木工体験などさまざまなイベントがある。9日まで。会館横の市文化センターでは、東京を拠点に国内外で活躍する男女2人組のアートユニット「ミレイヒロキ」さんが、市内の倉庫に眠っていたタンスやベッドなどに色鮮やかな花を描いて再生させた作品を展示。木工体験では、南米生まれの箱形楽器「カホン」を作るコーナーもあり、親子連れでにぎわっている。8日は午前10時55分から木工まつりパレードがあり、市出身の歌手大川栄策さんや俳優の陣内孝則さん、騎手の的場文男さんが市民約500人とともに練り歩く。酢の醸造蔵や製材所などを巡る工場見学バスツアー「職人めぐり」(無料)も実施する。大川商工会議所=0944(86)2171。


<農業とJRのイノベーション>
PS(2017年10月26、29日追加):農業は起伏のある広い土地を有しているため再生可能エネルギー生産の適地であり、*7-1のように、京大農学研究科とNTTデータ経営研究所が「エネルギー創造・利用型農業」の実用化・普及に向けた組織を立ち上げたそうだ。そして、京大付属農場は、既に透過光型の太陽光発電パネルを園芸温室の天井や妻面に貼って、農産物の生産性を落とさずに発電する実験を始めたそうで、早期の実用化が望まれる。これらの製品は、世界で受け入れられるに違いない。
 なお、発電した電力は消費地に送電しなければならないが、近距離ならNTTの線やガス管・水道管に併設した電線を使うことが可能だ。長距離なら、*7-2のようなJRが送電事業に進出して超電導電線を敷設するのがよいと思われる。つまり、JRが送電子会社を作って事業の多角化を行えば、連続した土地という既にある資産を使って収益を挙げることができ、駅ビル・マンション・大型開発地でも創電すれば、さらに収益拡大が可能だ。そうすると、鉄道利用者が少ない路線も貨物運搬や送電線敷設場所を兼ねて存続することができるだろう。
 さらに、*7-3のように、環境省は国立公園をドローンで空撮し、外国人観光客を増やすため外国に発信するそうだが、外国人だけでなく、(楽しみながら歩いた方が健康に良い)高齢者も対象とすれば利用者数が増える。そのため、高くない入場料をとる形で国立公園や国定公園内に遊歩道や乗り物を組み合わせて配置すればよいだろう。そこで、*7-2の耶馬日田英彦山国定公園内にある日田彦山線は、生活路線としてだけでなく、日本史のKeyである標高1200mの英彦山や日田を通る観光路線としても使い、鉄道沿線に、春は梅・桃・みかん・りんご・アーモンド・桜・菜の花、夏は大豆・蕎麦・ひまわり、秋は楓など、その地域にあった花と収穫を楽しめる植物を農林業や地域の人と協力して植え、絶景を作ればよいと思われる。
 




(図の説明:上の段の左からEVトラック、EV軽トラ、EV電車だ。また、下の一番左はBMWの自動運転車で、中央は自動運転車の仕組に関する説明である。そして、一番右の図は超電導電線の説明で、電動化・自動運転化の技術も既にあるため、JRはじめ多くの産業がこれらの技術を使ってコストダウンし、損益分岐点を下げるのは容易な筈である)

*7-1:https://www.agrinews.co.jp/p42292.html?page=1 (日本農業新聞 2017年10月26日) 「創エネ」組織を発足 農家の収益向上に 京大とNTTデータ経営研
 京都大学農学研究科とNTTデータ経営研究所は25日、農産物とエネルギーの両方を作る「エネルギー創造・利用型農業」の実用化・普及に向けた組織を立ち上げたと発表した。名称は「グリーンエネルギーファーム(GEF)産学共創パートナーシップ」といい、ヤンマーやパナソニック、和郷園、京都府など同日の時点で23団体が参加。京都府木津川市にある同大学付属農場を拠点とし、研究開発や制度設計、政策提言などをしていく。現在のエネルギー消費型の農業を、創出型に転換させる。そのモデルを、大学と産業界が提携して作り出す。農作物を生産するとともに、エネルギーを作る“創エネ”の考え方を農業に導入し、農家の収益性向上につなげる。具体的には、太陽光や風力、小水力、バイオマス(生物由来資源)などを利用した発電事業に農業者が参入しやすいように、大学と企業などで技術開発の共同研究や事業開拓を手掛ける。作物の生育に必要な色の光だけを透過させ、それ以外の光は発電に使うような太陽光発電システムの開発や、農業とエネルギーを一緒に作る「農・エネ併産」型農業の収益性の実証などを進める。「農・エネ併産」に必要な制度や政策の提言もする。企業や大学への研究支援にも取り組む。将来は農場で生産した電力や水素で農場の電力自給や地域へのエネルギー供給ができるような社会へとつなげる構想を描く。京都大学の付属農場では既に透過光型の太陽光発電パネルを園芸温室の天井や妻面に貼り農産物の生産性を落とさず発電する実験を始めている。GEFパートナーシップには、新興の電力会社、電気、通信、ガス関係企業の他、金融機関や農業法人などが参加。大学も、京都大学以外に5大学が入っている。今後も多くの企業や団体の参加を呼び掛けていく。NTTデータ経営研究所によると、欧州では化石エネルギーを大量に消費する今の農業を見直す方向にある。農場で農産物と併せて再生可能エネルギーを作り出し農産物のブランド化を目指す。

*7-2:http://qbiz.jp/article/121273/1/ (西日本新聞 2017年10月25日) JR九州上場1年、多角化で成長をけん引 被災や赤字線…鉄道事業には課題
 JR九州が東京証券取引所第1部に株式上場して、25日で1年。企業の合併・買収(M&A)による多角化や九州域外への進出など、鉄道以外の事業を積極的に展開、成長のけん引力になっている。一方で本業の鉄道事業は実質的に赤字が続き、地震や豪雨で被災、復旧のめどが立たない路線もある。上場企業として、鉄道事業の改革をどう進めるのか。2年目の課題は重い。広い敷地に、黄色い建設機械がずらりと並ぶ。世界最大の建設機械メーカー「キャタピラー」の九州地区での販売を担う「キャタピラー九州」(福岡県筑紫野市)。今月、JR九州が販売・リース事業を買収し、傘下に収めた。JR九州から出向した山根久資(ひさし)社長は「JR九州グループの建設会社への営業や、駅ビル工事などへのアプローチも積極的に進めたい」と、組織力を生かした経営に意欲を見せる。これまでもドラッグイレブンなど運輸関連とは異業種のM&Aを進めており、JR九州の青柳俊彦社長は「九州を元気にする事業、鉄道と相乗効果を生む事業で(M&Aを)考えていきたい」と、さらなる事業拡大を狙う。
    *   *
 困難視されていた上場を果たしたJR九州。原動力となったのは、事業多角化による収益の拡大だ。駅ビルやマンション、流通や外食など幅広い事業を手掛け、2017年3月期の連結売上高3829億円のうち、鉄道以外が約6割を占める。9月には、福岡市中央区の九州大六本松キャンパス跡地に複合施設の商業エリアをオープン。同社にとって初の沿線外での大型開発となった。青柳社長は「六本松で一つの実績ができた。応用する場所はたくさんある」と強調する。九州外での事業展開にも力を入れる。14年の東京に続き、今年6月には那覇市でホテルを開業。今後はアジアへの展開も加速する構え。タイ・バンコクに現地法人を設立し、ホテルなどを視野に不動産開発を本格化させる。
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 鉄道以外の事業が拡大を続ける半面、最大の課題は鉄道事業の収支改善だ。7月には路線ごとの輸送密度(1日1キロ当たりの平均利用者数)を初めて公表。現状を理解してもらい、鉄道網の在り方への意識を高めてもらう狙いだが、利用者の少ない沿線では廃線への懸念が募る。7月の九州豪雨で被災した日田彦山線では、復旧の見通しも示していない。青柳社長は赤字ローカル線に関し「今回のような大きな災害があった場合、ゼロから鉄道を造るようなもの」と指摘。日田彦山線については地元に現状などを説明し、意見を聞いた上で鉄道以外での輸送も検討する可能性を示唆する。沿線の自治体関係者は「JRから見れば利用者は少なくても、生活には重要な路線。早期の全線復旧を望む」と訴える。青柳社長は上場前の15年、国会で「路線の廃止は検討していない」と明言。一方で、不採算路線に対する投資家の厳しい目があるのも事実だ。地元や株主の理解を得ながら、いかにして鉄道の収支改善を図るか、経営手腕が問われる。

*7-3:http://qbiz.jp/article/121580/1/ (西日本新聞 2017年10月29日) 国立公園の魅力 ドローンで空撮 環境省、外国人向けに発信
 環境省は、国立公園を訪れる外国人観光客を増やすため、小型無人機「ドローン」を使って上空から動画を撮影、無料で配信する取り組みを始める。インターネット上での閲覧や海外のテレビ局に無償提供し、番組で紹介してもらうことを想定している。環境省が訪日外国人旅行者の誘致に向けて「国立公園満喫プロジェクト」に指定した8カ所を2017〜18年度に撮影する。17年度は阿寒摩周(北海道)、十和田八幡平(青森、岩手、秋田)など、18年度は阿蘇くじゅう(熊本、大分)、霧島錦江湾(宮崎、鹿児島)などが対象。それぞれ特徴となる美しい自然を収録する。撮影や編集は主にNPO法人「ネイチャーサービス」(埼玉県坂戸市)に依頼。動画は同法人のサイトなどにアップされる。公開時期は調整している。政府は20年までに訪日外国人旅行者を4000万人に増やす方針。関連して国立公園の訪日外国人利用者数を16年の546万人から、20年には1000万人まで増やす目標を掲げている。

<産業と社会のイノベーション>
PS(2017年11月1日追加):日本が先行のチャンスを失ったのは、*8-1の「量子コンピューター」だけでなく、EVもその一例だ。そして、先行する技術にケチをつけ、その技術をビジネスに結びつけて変革するのを妨げたのは、ほかならぬメディアと経産省だった。なお、創造は規則的なサイクルになってはおらず、サイクルだと考えること自体に意味がない。そして、企業は市場のニーズにあった事業を行い、市場によい提案を行い続けなければ、市場からそっぽを向かれ淘汰されて、世界の先頭に立つどころか技術も失うのである。
 そして、まず、*8-2のように、次世代エコカーはEVが中心でFCVが置いてきぼりになった状態を「雌伏」と表現しているが、「雌伏」とは「女性は負けて伏せる」という意味であるため、女性に対して失礼である。しかし、このように、メディアは女性蔑視用語を多く使い、「女性は劣った存在だ」という先入観を社会に広めているのだ。
 また、EVもFCVも、(1995年前後に私が電気自動車を提案して)日本発の技術だったのに外国に追随せざるを得なくなったのは、①EV用電池を改良することを考えずにEVの航続距離にケチをつけることに専念した ②部品点数が少ないEVの価格を高止まりさせた ③FCVの燃料である水素を再生可能エネルギーで水を電気分解して作るのではなく、輸入した化石燃料から作ることを考えた など、関係者があまりにも馬鹿だったからである。ちなみに、水素だけを作って皆で使うと「酸素不足」という公害が起きるため、再生可能エネルギーで水を電気分解して水素を作り、一緒に発生した酸素も車内に放出するなどして使う必要がある。
 なお、EVの航続距離が延びた現在、仕組みが簡単で爆発の危険のないEVの方が、より乗用車に向いていることは明らかになった。しかし、FCVの開発は無駄だったわけではなく、大きな馬力を必要とするトラック・電車・飛行機などではFCVの出番も多いだろう。さらに、電車も新幹線まで含めてFCVにすれば、建設・維持コストを低く抑えることができる。そのような中、EV・FCVへのシフトでガソリン車の部品を作っていた会社が苦境とのことだが、現在の日本は、*8-4のように、(私の提案で)航空機を作ることも可能になったため、公害を出さない燃料電池を使った航空機部品を作れば、付加価値の高い仕事をすることができる。この時、輸入品で作るアルミ部品を使う必要はなく、炭素繊維を使って強く軽くした方が燃費にもよいのだが、日本企業は炭素繊維も含めていつまでも製品価格を高くしておくのが問題なのである。
 さらに、*8-3のように、長府工産が水素給湯器を事業化し、まず家庭用・小規模事業所向け給湯器として商品化するそうで、これも価格を安くして普及させれば規模の利益が得られるが、ここが技術をビジネスに繋げるポイントの一つだ。


  2017.11.1日経新聞       2017.11.1日経新聞      2017.11.1日経新聞

(図の説明:中国・インドなどの人口が多い新興国で論文数や基礎研究の伸びが著しいのは当たり前だが、日本は基礎研究力が減少し、応用開発力の伸びも小さいため、全体として革新力が低い。米国は1位を保っているため、違いが出る理由を明らかにして改善すべきだ)

*8-1: https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20171101&ng=DGKKZO22923560R31C17A0MM8000 (日経新聞 2017.11.1) 活路はどこに(1)瀬戸際の技術立国、新たな創造の循環を
景気回復や株高が続きながら、高揚感に欠ける日本社会。新産業を生み続ける米国や急成長する中国に押され「技術立国」の看板が色あせているためだ。問われるのは技術を生かし社会や産業を変革するイノベーション(革新)の力。世界は進化する人工知能(AI)など新たな産業革命のさなかにある。技術立国をどう再建するか。その挑戦がニッポンの未来のかたちをつくる。神奈川県厚木市のNTT物性科学基礎研究所。大型冷蔵庫よりも大きい箱型の「量子コンピューター」試作機を研究者が整備する。11月27日から公開し、顧客に無償で利用してもらうためだ。小さな粒子で起きる物理現象を利用する量子コンピューターを使えば、3年以上かかるデータ処理を理論上、1秒でできる。あらゆる機器にAIが載る時代の基幹技術で、西森秀稔東京工業大学教授が理論を提唱するなど日本が先行してきた。NTTは試作機の公開で実用化へ一歩進むが、世界はその先を行く。「未来へようこそ」。カナダ・バンクーバー郊外にあるスタートアップ企業、Dウエーブ・システムズの本社は垂れ幕で顧客を迎える。同社は2011年、世界で初めて量子コンピューターを商用化した。「ドクター・ニシモリがもたらした変革に我々は鼓舞されている」。営業部門トップのボウ・エワルド氏は笑みを交えて語る。Dウエーブ製は得意な計算領域が限られる「簡易型」だが、デンソーとの利用契約を決めるなど実績を重ねている。「性能は我々の方がずっと上だが、Dウエーブはマーケティングがうまい。日本はそこが弱い……」。NTTの技術者はこうぼやく。だが、世界が高性能の製品ができるまで待ってくれると考えるのは、楽観的すぎる。時代や市場の変化に即応し、革新を実現する経営力の貧しさがにじむ。日本は明治維新後、欧米の模倣(イミテーション)から出発し、技術を改良(インプルーブメント)して魅力的な商品を創ってきた。最近のノーベル賞ラッシュは日本が発明(インベンション)で力を持ったことの証左だが、それをビジネスに結びつけ、社会を変える革新力では後手に回る。日本の革新力は現在、世界でどんな水準にあるのか。日本経済新聞社は日米独中韓5カ国について、革新力を示す4つの指標を選び、06年と16年を比較した。日本は「稼ぐ力」を示す上場企業の営業利益の合計が11%増えた。しかし、7.3倍の中国などに遠く及ばず、伸び率は最低。産業の「新陳代謝力」を示す株式公開から10年未満の企業の時価総額は約半分に減った。「基礎研究力」を示す科学技術の有力論文数を推計すると、米中独韓は大幅に増えたが日本は2%減少。「応用開発力」を示す国際特許の出願も中国が追い上げ、日本は4指標を総合した「革新力指数」が伸び悩む。瀬戸際の技術立国・日本をどう立て直せばいいのか。同じコンピューター分野にヒントがある。「AIの利用が世界で広がれば、コンピューターを動かす電力が足りなくなる」。ペジーコンピューティング(東京・千代田)の斉藤元章社長はこんな問題意識でスーパーコンピューターの開発に取り組んでいる。世界のスパコン開発は13年以降、中国勢が計算速度で独走する一方、消費電力をどう抑えるかという難題が浮上する。ペジーなどスタートアップ2社は半導体回路を工夫し、機器を液体に直接浸して冷やす独自手法で電力消費を抑える。10月には、日本最速の計算速度と世界トップ級の省エネ性能を両立したスパコンを開発したと発表。技術ありきという発想を転換したことが日本を最前線に呼び戻した。市場のニーズに真摯に耳を傾け、「使われる技術」を生み出す新たな創造のサイクルを築ければ、日本は世界の先頭に立つ力があるはずだ。

*8-2:http://digital.asahi.com/articles/DA3S13207933.html (朝日新聞 2017年11月1日) 燃料電池車、雌伏の時 「究極のエコカー」復権のカギは価格
 次世代エコカーの開発競争が電気自動車(EV)を軸に激しさを増し、水素をエネルギー源とする燃料電池車(FCV)には逆風が吹きつける。インフラ整備が進まず、車両価格も高いためだ。FCVは、二酸化炭素(CO2)を出さない水素で走る「究極のエコカー」。巻き返しのチャンスはあるのか。「FCVへの我々の取り組みが後退したわけではない」。開幕中の東京モーターショーで、トヨタ自動車のディディエ・ルロワ副社長は力をこめた。10月25日、報道陣向けのプレゼンで、「水素社会実現へのトヨタの『変わらぬ意志』の象徴」と語り、FCVのコンセプトカーを披露した。FCVは燃料電池で水素と酸素を反応させ、生み出した電気でモーターを動かして走る。トヨタは、電池の発電効率などを上げて、水素の充填(じゅうてん)1回で航続距離1千キロの実現をめざす。2014年末に世界で初めてFCV「ミライ」を販売したトヨタは、モーターショーでEVの試作車や、EV用次世代電池を開発する計画を打ち出した。ルロワ氏が強調しなければ、FCVに対するトヨタの姿勢に疑問符がついたはずだ。今回のモーターショーは、本格的なEV時代の幕開けを告げた。新たなFCVを出展しているのは、トヨタと独ダイムラーのメルセデス・ベンツぐらいだ。航続距離は日産自動車のEV「リーフ」の400キロに対し、ミライの650キロが上回る。一方、国内のインフラ数は、EVは約7100(急速充電)あるが、FCVは約100。車両価格はFCV700万円台、リーフは最安のグレードで約315万円。いずれも国などの補助金があるものの、EVの方が手が届きやすい。ベンツは、外部電源で充電もできるプラグインFCVを出展。水素による航続距離は437キロだが、備えたバッテリーだけでも49キロ走れる。水素が切れても走れ、インフラ不足をカバーする。来年から生産を始め、ドイツや日本、米カリフォルニア州などで販売する計画だ。FCV開発を担当するダイムラーのゲオルグ・フランク氏は、「長距離走行やバスやトラックにはFCVが向いている。いまもガソリン車とディーゼル車があるようにEVとすみ分けできる」とみている。FCVもEVもエコカーとして注目されるが、地球温暖化対策としては、どちらもまだ不十分だ。水素は、天然ガスなどの化石燃料からつくる方法が主流で、その過程でCO2が発生する。EVも石炭や石油など化石燃料でつくった電気を使えば、CO2の発生量を大きく減らせない。ただ、発電時にCO2を出さない原発の再稼働に慎重な日本にとって、水素は大きな可能性を秘める。風力や太陽光、バイオガスなど自然エネルギーを生かし、CO2を出さずに水素をつくる実験が全国で進む。究極のエコカーを実現できる供給網づくりもFCVの普及に急務となる。FCVの技術は日本勢の一部が優位に立つが、内外の他社も巻き込まないと広がりに欠ける。「クラリティ」を昨春発売したホンダは米ゼネラル・モーターズと組み、新たなFCVを20年ごろに投入する。こうした仲間づくりも課題だ。追い風もある。20年の東京五輪で水素社会の幕開けを世界に示そうと、政府は水素ステーションを160に増やす目標を立てる。九州大の佐々木一成・水素エネルギー国際研究センター長は「EVが注目を集めるいまはFCVにとって雌伏の時。東京五輪までには新型車が出てくる。インフラ整備を進めるためにも、車両価格をどこまで下げられるかが、FCV復権のポイントになる」と話す。

*8-3:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO22893630Q7A031C1LC0000/ (日経新聞 2017/10/31) 長府工産、水素給湯器を事業化 年明けに展示場・実験施設
 住設機器販売の長府工産(山口県下関市)は水素を燃料とする給湯器を開発、事業化に乗り出す。自社の石油給湯器の技術を応用、水素バーナーを製品化する。本社内に水素給湯器のほか燃料電池、蓄電池、モデルルームなどを備えた水素利用の実験施設を年明けをメドに設ける。水素燃料が一般に普及する前に先行して、生産技術を確立する狙いだ。トクヤマ、東芝燃料電池システム(横浜市)、岩谷産業などとのグループで昨年末に山口県周南市の水素型コージェネレーション(熱電併給)システムに納入した実験機の技術をもとにする。この際、水素と空気を混合してガスコンロのように円形に噴出し、点火する手法の水素バーナーを開発。炎の熱を水に伝える部分の構造は石油給湯器の方式を採用した。冷水から80度のお湯にする加温能力を確保した。今後は外装ケースの小型化と家庭用水素バーナーの構造を詰め、まず家庭用・小規模事業所向け給湯器として商品化する。価格は一般の石油・ガス給湯器並みの30万円以下を目指す。当面は災害用の水素ステーションを導入する予定の自治体や近隣の企業向けの販売を進める。水素は単位体積あたりの熱量がガスなどの3分1程度しかなく、燃料費は3倍とあって、現時点でコスト面で化石燃料の代替にはならない。水素給湯器は水素をエネルギー源として活用する「水素社会」を目指す自治体で必要な機器として提案する。将来は太陽光・廃棄物由来や、工場からの副生で得る水素を燃料とする発電・蓄電システムが普及するとみて、参入を決めた。今回、水素給湯器をはじめとする関連技術のショールームとして本社敷地内に実験施設を設けることにした。水素ボンベの収納庫、純水素型燃料電池、水素給湯器、水素由来の電力と湯を利用する設備としてシャワー室や洗面所、パソコンを置いたコンテナ型のモデルルームを設ける。家庭用蓄電池や電気自動車も置き、接続できるようにする予定。現在工事を進めており、年明けにもオープンできる見通しだ。長府工産は1980年に住設機器の商社と部品メーカーが統合して発足した。2017年3月期の売上高200億円のうち、9割超が他社製太陽光システムの販売で、残りが自社開発の給湯器、風呂釜、温水暖房製品になる。昨年から「フューチャー10」という長期計画を掲げ、メーカー機能を強化して売り上げの3割程度を占める構造としたい考えだ。水素関連の機器開発もその一環。
▼水素社会 エネルギー源を水素を中心とすることで二酸化炭素(CO2)排出ゼロとする社会。日本では経済産業省が2014年6月(16年3月改定)に「水素・燃料電池戦略ロードマップ」をまとめた。第1段階は家庭用燃料電池、燃料電池車(FCV)の普及。家庭用燃料電池は30年時点で530万台、FCVは25年にハイブリッド車並みの価格を目指す。

*8-4:http://digital.asahi.com/articles/DA3S13207896.html (朝日新聞 2017年11月1日) MRJ部品調達、神鋼から変更も 三菱重工が検討 
 三菱重工業は31日、開発中のジェット旅客機「MRJ」にデータが改ざんされた神戸製鋼所製のアルミ部品が使われていた問題で、部品の調達先変更を検討する方針を明らかにした。この日、東京都内で開いた2017年9月中間決算の会見で、小口正範常務執行役員が「(調達先を)今のままいくのか、変えるのかは当然検討の俎上(そじょう)にある」と述べた。米国などで試験飛行中のMRJは、垂直尾翼の付け根や胴体の骨組みの一部などに神鋼製の部品を使っている。「安全性に問題はない」(小口氏)という。また、MRJの設計見直しについて、三菱重工は同日、「秋までに完了させる」としていた従来の方針を事実上撤回した。ただ、設計の見直しが終わった部品から順次、製造を始めており、20年半ばに納入を始めるスケジュールは維持する。


<運転支援の標準装備へ>
PS(2017年11月4日追加)*9のように、「高齢ドライバーは症状を自覚していなくても認知症の恐れがある」などと言って免許の返納や取り消しを推奨するのは、人生100年時代に高齢ドライバーの足を奪い、家にひきこもらせ、意気消沈させて命を縮めるため感心しない。また、高齢者でなくても、居眠り運転・疲れ・飲酒運転・病気・よそ見、乱暴な運転などで交通事故を起こす人は多いため、世界に先んじてアクセルやブレーキを備えた車には運転支援機能を標準装備するという規制に変更すべきだ。

*9:http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201711/CK2017110202000244.html (東京新聞 2017年11月2日) 認知症のおそれ 3万人 増える高齢ドライバー
 七十五歳以上の高齢運転者を対象にした認知症対策が強化された改正道交法が施行された今年三月十二日から九月末までの半年間に、検査で認知症の恐れがあると判定されたのが三万人超に上ったことが、警察庁のまとめで分かった。このうち、六百九十七人が医師に認知症と診断され、運転免許が取り消し・停止された。警察庁によると、施行からの半年で、百十一万七千八百七十六人(暫定値)が認知機能検査を受け、認知症の恐れがあると判定されたのは2・7%の三万百七十人。このうち免許の自主返納などを除き、七千六百七十三人が医師の診断を終えた。施行後半年で受診者が千九百三十四人だった昨年一年間の四倍増となった。認知症と診断されて免許が取り消された人が六百七十四人、免許が停止されたのが二十三人だった。ほかに医師の診断待ちなどが約一万人いるため、これらの人数はさらに増える見通し。七十五歳以上で免許を自主返納したのは、今年一~九月で十八万四千八百九十七人(暫定値)で、過去最多だった昨年一年間の十六万二千三百四十一人をすでに上回っている。「認知症の恐れ」と判定された人数を都道府県別で見ると、多いのは愛知の千五百三十六人、茨城、神奈川の千二百五十六人など。東京は八百十六人だった。警察庁は「医師会などとの協力で、改正道交法は円滑に施行されている。高齢ドライバーの増加を見据えて、さらなる対策を検討する」と説明している。
◆生活の足 支えが課題
 改正道交法の施行後半年で、認知症と判明して運転免許が取り消し・停止となった高齢ドライバーは、既に昨年一年間の人数を上回った。七十五歳以上の免許保有者は二〇二一年までに百万人増える見通しだ。事故防止への取り組みが急がれる一方で、高齢者の生活を支える視点も欠かせない。運転できる車種や時間帯などを指定する限定免許の検討など、運転能力に応じたきめ細かな対策が模索されている。昨年十月、横浜市港南区で集団登校中の児童に突っ込んだ軽トラックのドライバーは、認知症であることが事故後に判明した。当時八十七歳の男性は症状を自覚しておらず、小学一年の男児ら八人が死傷したものの「過失責任が問えない」として不起訴になった。警察庁では、昨年末に五百十三万人だった七十五歳以上の免許保有者は、二一年には六百十三万人になると推計。事故をどう防ぎ、日常の移動手段の確保など、高齢者の生活をどう支えていくかが課題になる。同庁は有識者らの検討会議を設置。初期の認知症などを念頭に、認知機能に応じた対策を調査研究するほか、アクセルとブレーキを踏み間違えても加速を抑える「安全運転サポート車」などに限定する運転免許に関して、海外事例などをもとに導入の可否を検討している。
<認知機能検査> 3年ごとの免許更新時に加え、更新前でも認知機能の低下が疑われる信号無視、逆走などがあった場合、受検を義務化。約30分の筆記検査で、指定の時刻を示すように時計の針を文字盤に書いたり、イラストを記憶して何が描かれていたかを答えたりする。点数に応じて「認知症の恐れ」「認知機能が低下している恐れ」「記憶力・判断力に心配がない」の3段階に分類。認知症の恐れがある場合は医師が診断し、認知症ならば運転免許が取り消し・停止になる。

<製品の社内検査に国家資格?>
PS(2017年11月9、10日追加):*10-1のように、EUの欧州委員会は、2017年11月8日、EU域内で販売する自動車のCO2排出量を、2030年に2021年の目標に比べて3割削減する規制を発表し、電気自動車(EV)などの環境対応車普及を後押しするそうだ。燃料の変更は、日本にとって最もメリットのあることで、日本の自動車メーカーは20年以上前から環境対応車を手がけるチャンスはあったため、2020年には、①新車はすべて環境対応車にする ②電力は再生可能エネルギー由来にする などが可能な筈で、いつも外国の後ろからあわてて追いかけることしかできないのは情けない限りだ。
 そのような中、日産自動車は(日本人ではない)ゴーン社長のリード下で、世界最初のEVを実用化したが、日本のメディアはEVの航続距離の短さや静かさなど、何でも悪くしか報じなかったのを、私は忘れていない。そして、EVは既に世界競争が始まっており、競争相手は日本のメーカーだけではないのに、*10-2、*10-3のように、1)日産自動車が無資格の補助検査員らに完成車両の検査をさせていた 2)補助検査員は正規検査員の判子を使って検査結果を記す書類に押印していた 3)国土交通省は、長年にわたり検査現場で組織的な偽装工作が行われていた疑いがあるとみて実態の解明を急いでいる 4)日産自動車検査員テストで解答を見せて受験させた などを問題にしているのである。
 私は、この報道が行われ始めた頃から、企業の工場内で行われる最終検査に国家資格が必要であることの方が異常で、今からEVを売り出そうとしている日産自動車への嫌がらせではないかと感じた。何故なら、①現在の平均的な車を前提としている国家資格を持っている従業員と持っていない従業員の間で、日産車の検査能力に有意な差があるとは思われず ②仮に国家資格を持っていたとしても、企業に従属している企業内資格者が検査すれば独立性はない上 ③企業は製造物責任があることによってユーザーから厳しく評価されている からであり、1)2)3)は、電気製品などの工場内最終検査に国家資格が必要ないのと同様、国土交通省のシステムの方がおかしい。そして、あまり意味のない資格なら、4)のように、日産自動車が検査員テストで解答を見せて受験させたのはよいことではないものの、その国家資格に意味を感じていなかったことが原因とも考えられる。
 このような中、*10-4のように、中国は、「中国資本の出資比率50%以上」という合弁規制を緩和し、自由貿易区で新エネ車等をつくる場合に限り自由化して高度技術を持つ外資を誘致する政策に変更したそうだ。そのため、これまで外資が経営権を握れなかった規制が解除され、外資系メーカー主導の現地生産が可能になるため、日産などは中国の自由貿易区で新エネ車を作って輸出した方がやりやすい上、種々のコストが下がる。ここで、中国の賢さは外資のノウハウを入れつつ遅れていた自国の産業を育成し、自国企業に競争力がついた時点で外資と競争させて産業を高度化しようとするビジョンがある点で、日本の愚かさは優良企業を技術付で追い出そうとしているビジョンのなさである。
 なお、日本のメディアはあまり報じなかったが、*10-5のように、トランプ米大統領が来日された際に、2017〜2018年に米国と協力して石炭火力発電所と原発の建設を世界に広げることに合意したのであれば、日本は温室効果ガス削減にも消極的であるため、「化石賞」に選ばれたのは尤もであり、馬鹿にも程があると言わざるを得ない。


                               2017.11.7東京新聞
(図の説明:1番左の図のように、CO2排出量の総量は中国が世界一だが、一人当たりのCO2排出量は米国・韓国・ロシア・日本と続く。そのため、左から2番目の図のように、意識の高い国はEV化を進めて内燃機関を禁止しつつある。従って、次世代環境車はEVが中心になると思われ、右から2番目のグラフはハイブリッド車やプラグインハイブリッド車の伸びを高く見積もりすぎている。その結果、日本では、一番右の図のように、EVのホープを追い出そうとしているが、これは太陽光発電のシャープが追い出されたのと同じ愚かな構図だ)

*10-1:http://qbiz.jp/article/122338/1/ (西日本新聞 2017年11月9日) EU、車CO2排出量3割削減へ 30年、EV普及促す
 欧州連合(EU)の行政執行機関に当たる欧州委員会は8日、域内で販売する自動車の二酸化炭素(CO2)排出量に関する規制を発表し、2030年に21年の目標値に比べ3割の削減を要求した。ガソリン車やディーゼル車では達成が難しいとみられ、電気自動車(EV)など環境対応車の普及を後押しするのが狙い。日本メーカーも対応が求められる。日本政府による今後の排出量目標にも影響を与えそうだ。地球温暖化対策の新枠組み「パリ協定」の策定で中心的な役割を果たしたEUの環境規制は世界で最も厳しいとされる。欧州委には、これを一段と強化し温暖化対策をリードしたい思惑もある。EUの乗用車のCO2排出量目標は21年が1キロ走行当たり平均95グラム。欧州委は25年にこれを15%、30年に30%それぞれ減らすとしている。日本の環境省によると、日本は20年に122グラムを目標としており、中国が20年に117グラム、米国は25年に97グラムとなっている。フランスは40年までに石油を燃料とするガソリン車やディーゼル車の販売終了を目指す方針を表明している。ただ、規制導入には加盟各国や欧州議会の承認が必要で、協議は曲折も予想される。大手自動車メーカーが本社を構えるドイツなどが反発する可能性がある。欧州自動車工業会は30年のCO2排出削減量は21年比で2割が妥当だとの考えだ。

*10-2:https://mainichi.jp/articles/20171005/k00/00m/020/063000c (毎日新聞 2017年10月4日) 日産 組織的偽装か 検査しない有資格者の印
 日産自動車が無資格の補助検査員らに完成車両の検査をさせていた問題で、正規の検査員が自分の判子をあらかじめ補助検査員に渡していたことが4日、分かった。補助検査員は正規検査員の立ち会いなしでこの判子を使い、検査結果を記す書類に押印していた例があった。国土交通省は、長年にわたり検査現場で組織的な偽装工作が行われていた疑いがあるとみて実態の解明を急ぐ。日産は、神奈川、栃木、京都、福岡にある国内すべての完成車工場で、正規検査員に交じって補助検査員が日常的に出荷前の最終段階の検査を行っていた。最終検査は、1台ごとに8人程度で分担。ブレーキの利き具合などをチェックするもので、検査を通らないと出荷できない。日産によると、全国で正規検査員は305人、補助検査員は19人いる。補助検査員が検査する際、書類への押印も含めて正規検査員が立ち会うが、不在時には補助検査員が自分1人だけで押印した例があった。書類上は複数の項目の検査を1人の検査員が同時に行ったことになり、書類を調べた国交省が不自然さを指摘して発覚した。国交省は3日、京都と栃木両工場に抜き打ちで立ち入り調査を行った。今後、他工場でも実態把握を進める。日産は既に在庫約3万4000台の再点検に着手。週内に計24車種を対象に販売済みの約121万台のリコール(回収・無償修理)を届け出る。原因究明と再発防止策を10月末をめどに報告する。

*10-3:http://www.tokyo-np.co.jp/article/economics/list/201711/CK2017110702000118.html (東京新聞 2017年11月7日) 【経済】日産、検査員テストで不正 解答見せ受験させる きょう生産再開
 日産自動車は六日、新車の無資格検査問題を受け停止していた国内向けの生産と出荷を、七日から順次再開すると発表した。再開が決まったのは完成車を組み立てる全六工場のうち、グループのオートワークス京都(京都府宇治市)を除く五工場。また第三者調査では、正規検査員を認定するテストで解答を見せ受験させるなど教育面の不正が六工場であったことが分かり、国土交通省はこれらの問題是正を再開の条件とした。国交省の検査で不正が発覚してから約一カ月半ぶりに事態が正常化へ向かうが、ずさんな品質管理体制が改めて浮き彫りになった。日産によると、追浜工場(神奈川県横須賀市)など五工場が、部品メーカーからの調達を含む準備が整い次第、生産と出荷を始める。国交省は各工場に立ち入り検査をした結果、生産体制について一定の見直しが進んだと判断した。関係者によると、正規従業員が出荷前の最終検査に携わる運用を確実にするため、当面は以前より生産ペースが大幅に落ちる可能性があるという。新たに判明した不正は、試験で解答を見せたことに加え、本来七十二時間が必要な受講時間を短く済ませた例があった。日産は時期や規模を明らかにしていないが、正規検査員約三百人全員への再教育や再試験を実施し始めたという。また、各工場で検査スペースを独立させ週一回の外部監査を行い、現場で適正に運営されているかどうか確認する。日産の無資格検査は九月十八日の国交省の立ち入り検査で発覚。公表後も不正が続いたことが判明し、十月十九日に国内向け生産、出荷の全面停止を発表した。国交省は今月六日にオートワークス京都を立ち入り検査し、これで不正が発覚した国内全六工場に検査が入った。京都も対策が十分だと認定されれば、生産と出荷を再開する見通し。

*10-4:http://digital.asahi.com/articles/DA3S13221582.html (朝日新聞 2017年11月10日) 中国、車の合弁規制緩和へ 自由貿易区の新エネ車に限定
 中国外務省の鄭沢光次官は9日、中国資本の出資比率が50%を下回らないという自動車メーカーの合弁規制を、自由貿易区で新エネルギー車などをつくる場合は試験的に自由化すると述べた。外資系メーカー主導の現地生産が可能となりそうだ。2018年6月までに実施する。国営新華社通信が報じた。既存の規制は、外資が経営権を握れない点が問題視されていた。中国の習近平(シーチンピン)指導部は19年から自動車メーカーに、電気自動車など一定量の新エネ車の製造・輸入を義務づけるなど、新エネ車大国化を推し進めている。出資比率を緩和することで高度な技術を持つ外資を誘致。現地企業と競争させて中国の自動車産業を高度化しようとしている。新華社通信によると、鄭次官はこの日、米中首脳会談の成果について記者団に説明する席で、出資比率の規制緩和を明らかにした。

*10-5:http://qbiz.jp/article/122452/1/ (西日本新聞 2017年11月10日) 日本、化石賞をダブル受賞 石炭火力広げ、目標消極的
 世界の環境保護団体で組織する「気候行動ネットワーク」は9日、地球温暖化対策の前進を妨げている国を指す「化石賞」に、日本と、「先進国」をそれぞれ選び、ドイツ・ボンの気候変動枠組み条約第23回締約国会議(COP23)会場で発表した。日本は先進国にも含まれるため、不名誉な化石賞のダブル受賞となった。日本が単独で選ばれた理由は、トランプ米大統領が来日した際、2017〜18年に米国と協力して石炭火力発電所と原発の建設を世界に広げることに合意したため。先進国は、歴史的に温室効果ガスを大量に排出してきたにもかかわらず、削減目標の引き上げに消極的なため。

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2017.9.17 精神障害者・ハンセン病患者に対する差別と最近の人権軽視への歩み (2017年9月21、24日、10月10日に追加あり)
  

(図の説明:左のグラフのように、精神病床の平均在院日数は日本が著しく高い。また、真ん中のグラフのように、統合失調症入院患者への向精神病薬投与量も日本が著しく高く、自閉症と診断される人もうなぎ上りに増えている。これは、日本人には特に重度の精神障害者が多いというわけではなく、診断と入院及び薬の投与方針の問題だろう)

  

(図の説明:左のグラフのように、ADHDと診断される子どももどんどん増え、子どもへの使用に関する安全性は疑問であるにもかかわらず、メチルフェニードの子どもへの処方が著しく増えている。これに加えて睡眠薬の処方も日本で著しく高いため、精神科の診断と睡眠薬を含む薬剤使用の妥当性について再検討する必要がある)

(1)精神障害者・知的障害者について
1)精神障害者を殺人犯になり易い人と理解するのは間違っていること
 植松容疑者が措置入院からの退院後に相模原市障害者施設「津久井やまゆり園」の入所者19人を殺害した事件を受けて、*1-1、*1-2のように、厚労省は、責任能力の有無を調べていると報道されている。これは、刑法第39条に、「①心神喪失者の行為は、罰しない」「②心神耗弱者の行為は、その刑を減軽する」という古い規定があり、心神喪失者・心神耗弱者の定義が不明確であるにもかかわらず、精神障害者や精神障害の病歴のある人がこれにあたると非科学的に決めつけているからで、これは大多数の精神障害者に対する人権侵害である。

 しかし、植松容疑者の障害者殺害事件は精神障害が理由ではないため、精神障害者に対する監視強化等は福祉目的ではなく意味のない防犯目的の差別である。私は、①精神障害者が引っ越せば、その自治体に支援計画と呼ぶ監視計画を引き継ぐ(精神障害者と殺人犯を結び付けて監視する人権侵害) ②自治体・警察・病院が参加する協議会を設置して病気の個人情報を共有する(精神障害者と犯罪者とを結び付けて個人情報を開示する人権侵害) ③障害者差別解消法の理念を啓発(共生社会の推進) ④障害者の地域生活を支援(共生社会の推進)のうち、①②は精神障害者への言われなき差別を助長して、③④をやりにくくするものだと考える。

 そして、*1-4のように、東京都港区で厚労省のキャリア官僚女性が弟に包丁で刺されて死亡した事件も、弟は精神疾患での通院歴があり、警視庁が男の責任能力の有無を調べていると報道されているが、これは刑法第39条の規定を根拠としており、このような報道が続けば「精神障害者=殺人犯予備軍」という先入観ができる。

 さらに、*1-5では、埼玉県熊谷市で小学生2人を含む6人が殺害された事件で、強盗殺人などの罪で起訴されたペルー人のナカダ・ルデナ・バイロン・ジョナタン被告について弁護側が請求して実施された精神鑑定では、さいたま地検の鑑定と異なり、「精神疾患がある」という診断結果が出たそうだが、弁護側も罪を軽減するために刑法第39条をよく使い、冤罪の際にも刑法第39条を使ってうやむやにすることがあるのは、「殺人犯=精神疾患」というイメージを一般の人につけるという意味で、精神障害者に対する差別を醸成する人権侵害である。

 そのため、今回の厚労省の精神障害者と殺人犯を関連付けて精神障害者を監視するという再発防止策は、精神障害者に対する差別や人権侵害を無くすために、これまで培われてきた精神科の歴史に逆行する程度の低いものである。

2)知的障害者施設「津久井やまゆり園」について
 神奈川県の「津久井やまゆり園」を再生する案が、*1-3のように持ち上がり、入所者の意思を尊重したものだとも評価されたそうだが、知的障害者である入所者も、自宅から離れた交通の便の悪い場所で滅多に家族にも会えず積極的に集団生活をしたかったわけではないだろう。

 そのため、公聴会で、「入所者の意向を聞くべきだ」「時代錯誤だ」との批判が続出し、大規模施設の建て替え案が撤回されたのはよかった。私は、セキュリティーが悪く、当直の職員が身をもって防衛することもなく、植松被告が殺人するに任せておいた他の職員の意識にも疑問を感じている。

3)「殺人犯=精神障害者」というイメージの社会では、精神障害者の雇用が進まないこと
 *1-6のように、佐賀労働局と佐賀県は、佐賀県の経営者協会など経済4団体に、障害者の積極的な雇用を要請したそうだが、ここで言う障害者に精神障害者は入っているのだろうか?

 「殺人犯=精神障害者」というイメージがついた社会では、トライアル雇用など労働条件の悪い雇用でも難しいと思われるが、それが政府とメディアがまき散らした精神障害者差別の大きな問題点なのである。

(2)“発達障害”について
 最近、*2-1のように、“発達障害”として、「落ち着きがない注意欠陥・多動性障害(ADHD)」「読み書きや計算など特定分野が苦手な学習障害(LD)」「対人関係をうまく築けず、限られた対象にこだわる傾向(アスペルガー症候群)」など、何でも異常だと言うことが多いが、言語や知能に遅れがなければ周囲の“常識的”な大人が理解できなくても全く問題ない。

 何故なら、将来、周囲の“常識的”な大人には想像もつかないことを行って“常識”を変える人物かも知れず、別の面でとびぬけた能力を持っている人かも知れないからである。

 にもかかわらず、*2-2のように、いちいち発達障害として病気扱いし、*2-3のように、全国学力テストの結果として文科省に報告さえせず、一人前と見做さないでいると、本当にその子の将来性をつぶしてしまう。そのため、何でも異常だとしてしまう最近の子どもへの扱いは問題であり、人権侵害である。

(3)ハンセン病患者に対する差別
 *3のように、国がハンセン病患者に対する不要な隔離政策を行い、司法が加担して「密室の法廷」で死刑判決を下し、ハンセン病患者の人権が無視された差別助長の歴史に対し、国は、元患者らを差別や偏見の中に置き続けて精神的苦痛を与えたり、人生を台無しにしたりした責任をとって損害賠償すべきだ。

 しかし、現在でも、国は「精神障害者=殺人犯、犯罪者予備軍」というレッテルを張って監視することにより、病気の人に対する人権侵害の過ちを繰り返そうとしているわけである。

<精神障害者と殺人犯の関連付け>
*1-1:http://digital.asahi.com/articles/ASJD924FDJD9UBQU001.html (朝日新聞 2016年12月9日) 措置入院中から 退院後の支援計画
 相模原市の障害者施設「津久井やまゆり園」で入所者19人が殺害された事件を受けて、厚生労働省は8日、再発防止策の報告書を公表した。精神保健福祉法に基づく措置入院中から都道府県や政令指定市が支援計画を作成。植松聖(さとし)容疑者(26)の退院後に事件が発生したことから、自治体や医療機関が連携して退院後も患者を孤立させない仕組みをつくることが柱だ。
■厚労省 相模原事件 再発防止策
 有識者9人による厚労省の検証・再発防止策検討チーム(座長=山本輝之成城大教授)がまとめた。厚労省は報告書を踏まえ、精神保健福祉法改正案を来年の通常国会に提出する方針。報告書では、措置入院を決める都道府県や政令指定市に対し、すべての患者について入院中から退院後の支援計画づくりを求めた。計画に盛り込む支援内容は入院先の病院や居住する自治体の職員による「調整会議」で検討。会議には患者本人や家族の参加も促す。現行法では退院後の支援体制が定まっていないため、退院後もチームで支援を続けられるようにする狙いだ。患者が転居した場合には支援計画を自治体間で引き継ぐことも明記した。
■「監視強化」の懸念も
 相模原市の事件を受けた厚生労働省の再発防止策は、措置入院患者の退院後の継続支援に重点を置いた。ただ、障害者の監視が強まることへの懸念は残った。東京都内の診療所で働く精神保健福祉士の男性(50)は、自治体や医療機関などによるチームで連携することで、継続支援をしやすくなると評価している。治療を拒否する患者は多く、措置入院と通院中断を繰り返し、通院を続けるようになって症状が安定する人もいるためだという。「治療継続の重要性を患者本人が自覚できる働きかけが必要で、ネットワークが大切になる」。一方、自身も精神障害者という「全国『精神病』者集団」運営委員の桐原尚之さんは、現行の措置入院について「『社会防衛的』に運用されることがあり、多くの精神障害者のトラウマになっている」と指摘。事件の再発防止を理由にした退院後の継続支援であることから、「福祉目的ではなく防犯目的であることは自明だ。精神障害者を監視する方向に秩序化されるのではないか」と心配する。こうした懸念に対し、報告書をまとめた厚労省の検証・再発防止策検討チームの山本輝之座長(成城大教授)は記者会見で「あくまでも退院後、孤立せず安心して暮らせる支援体制を築くもので、精神障害者の利益にもなる」と強調した。退院後にいつまで支援は続くのか――。報告書は「国が一定の目安を示す」として方向性を示さなかった。患者の症状によって期間が異なるうえ、長くなれば自治体の負担が増えるため調整がつかなかった。厚労省が別途議論を進め、年度内に結論を出す予定だ。事件における警察の対応については「法令に沿ったもの」と触れるにとどめ、再発防止につながる検証結果などは明らかにされなかった。
■再発防止策のポイント
【入院中の対応】
・国が心理検査や薬物使用に対応するガイドラインを作成し、それに基づいて治療
・都道府県や政令指定市が病院職員らを交えた「調整会議」などの意見を参考に退院後の支援計画を作成
【退院後の対応】
・保健所を持つ自治体が支援計画に基づいて支援
・患者が引っ越せば、その自治体に支援計画を引き継ぐ
・自治体や警察、病院が参加する協議会を設置し、情報を共有
【共生社会の推進】
・障害者差別解消法の理念を啓発
・障害者の地域生活を支援

*1-2:http://digital.asahi.com/articles/ASJCF6286JCFUTFL002.html
(朝日新聞 2016年11月14日) 措置入院の患者情報、自治体間で共有へ 厚労省の原案
 相模原市の障害者施設で入所者19人が刺殺された事件で、厚生労働省は措置入院をした患者の個人情報を共有できるような制度改正を盛り込んだ再発防止策の原案をまとめた。自治体間の連携強化が狙いで、14日の検証・再発防止策検討チーム(座長=山本輝之成城大教授)で提示。11月中にも最終報告書を公表する。植松聖(さとし)容疑者(26)は退院後、「東京都八王子市で家族と同居する」としていたが、相模原市と八王子市は連携できていなかった。個人情報は原則、自治体間で共有できない。そこで措置入院について定めた精神保健福祉法を改正し、特例的に患者の精神症状や住所地などの個人情報を共有できるようにする。原案には、措置入院を決めた都道府県や政令指定市が、患者の入院中から家族らの情報も踏まえて中長期的な支援計画をつくる方針も盛り込んだ。この計画をもとに、患者が居住する自治体が退院後の生活や治療の相談にのる。病院は相談員を選び、患者の地域での生活に目を配る。また、警察や病院、自治体が地域ごとに集まる協議会を設け、措置入院を決める際の仕組みを強化。措置入院や退院を判断する精神保健指定医の研修には、薬物に関する課程を加える。原案に対して検討チームでは「(措置入院患者は)年間7千人ほどいるので、自治体や病院の負担が大きい」などの意見が出た。

*1-3:http://www.tokyo-np.co.jp/article/kanagawa/list/201709/CK2017090602000178.html(東京新聞2017年9月6日)【神奈川】やまゆり園再生案 入所者の意思尊重 評価
 昨年七月に殺傷事件があった知的障害者施設「津久井やまゆり園」(相模原市緑区)の再生基本構想案の説明会が五日、横浜市神奈川区で開かれ、全七回の説明会が終了した。この間、入所者の意思を尊重して居住先を決める仕組みを評価する意見が目立った一方、建て替え後も指定管理者が運営することに懸念を示す声もあった。神奈川区の説明会には、障害者団体の関係者ら約六十人が出席。「時間をかけて入所者の意思確認をする考えが盛り込まれて良かった」などと、構想案を前向きに捉える人が多かった。県が一月、定員百五十人規模での現地建て替えを発表した際の公聴会では、「入所者の意向を聞くべきだ」「時代錯誤だ」と批判が続出。県は大規模施設の建て替え案を撤回するとともに、入所者の意思を二年がかりで確認する仕組みを構想案の柱の一つにした。ただ、家族からは不安も漏2016年12月8日、措置入院患者の退院後の継続支援(支援と呼ぶ監視)という再発防止策を公表した。

*1-4:https://headlines.yahoo.co.jp/videonews/ann?a=20170813-00000013-ann-soci (Yahoo 2017/8/13) 死因は出血性ショック 厚労省女性キャリア官僚刺殺
 東京・港区で厚生労働省のキャリア官僚の女性が弟に包丁で刺されて死亡した事件で、女性の死因が腹を刺されたことによる「出血性ショック」だったことが新たに分かりました。52歳の男は12日午前5時半ごろ、自宅マンションで、姉の厚労省関東信越厚生局長・北島智子さん(56)の腹を包丁で刺し、殺害した疑いで13日朝、送検されました。その後の警視庁への取材で、北島さんは腹を複数回刺されたことによる「出血性ショック」で死亡していたことが新たに分かりました。男は「私がやりました」と容疑を認めています。男には精神疾患での通院歴があり、警視庁は、男の責任能力の有無を含めて当時の状況を調べています。北島さんは男と同居する母親の介助のため、事件前夜から泊まりにきていたということです。

*1-5:http://www.saga-s.co.jp/news/national/10201/462726 (佐賀新聞 2017年9月12日) ペルー人被告「精神疾患」の診断、埼玉・熊谷6人殺害事件で再鑑定
 埼玉県熊谷市で2015年9月14~16日、小学生2人を含む6人が殺害された事件で、強盗殺人などの罪で起訴されたペルー人のナカダ・ルデナ・バイロン・ジョナタン被告(32)について弁護側が請求し実施された精神鑑定で、「精神疾患がある」との診断結果が出たことが12日、関係者への取材で分かった。さいたま地検が起訴前に実施した鑑定では「精神疾患なし」と診断されていた。裁判はさいたま地裁で年度内にも始まる見通し。異なる鑑定結果が出たことで、刑事責任能力が主な争点になる。事件は間もなく発生から2年となる。ナカダ被告は逮捕後の県警の調べに不可解な説明もみられた。

*1-6:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/460108 (佐賀新聞 2017年9月2日) 障害者の積極雇用を 労働局と県が要請
■経済4団体に
 9月の障害者雇用支援月間に合わせて、佐賀労働局と佐賀県は1日、県経営者協会など経済4団体に、障害者の積極的な雇用を要請した。他の要請先は県商工会議所連合会、県中小企業団体中央会、県商工会連合会。松森靖佐賀労働局長は県経営者協会で、前年度の県内のハローワークにおける障害者の就職件数が8年連続で増加した点を踏まえつつ、「精神障害者雇用が全体に占める割合が7・3%にとどまっている。積極的な採用を」と促した。協会側は「トライアル雇用などの多様な手段を使いながら、障害者雇用の機運を高めていきたい」と応じた。県内の障害者雇用率は2・43%で全国5位(昨年6月現在)。法定雇用率達成企業の割合は73・1%で6年連続で全国トップを維持している。

<発達障害>
*2-1:http://www.asahi.com/topics/word/%E7%99%BA%E9%81%94%E9%9A%9C%E5%AE%B3.html
(朝日新聞 2013年2月27日) 発達障害
 生まれながらの脳の機能障害が原因と考えられ、犯罪など反社会的な行動に直接結びつくことはないとされる。落ち着きがない注意欠陥・多動性障害(ADHD)、読み書きや計算など特定分野が苦手な学習障害(LD)などがある。アスペルガー症候群は対人関係をうまく築けず、限られた対象にこだわる傾向がみられるが、言語や知能に遅れがなく、周囲が障害を見過ごすケースも少なくない。文部科学省の調査(2012年12月)は、小中学校の通常学級の子の6.5%に発達障害の可能性があるとしている。

*2-2:http://www.nishinippon.co.jp/nnp/lifestyle/article/302604 (西日本新聞 2017年1月20日) 発達障害、進学先と連携を 総務省が文科、厚労両省に勧告
 総務省行政評価局は20日、自閉症やアスペルガー症候群などの発達障害を抱える児童・生徒に対する個人別の支援計画を、進学時に引き継ぐ仕組みが不十分だとして、文部科学省と厚生労働省に改善を勧告した。全国の計42施設を抽出した調査で、中学は卒業生の15%、高校は6%しか進学先へ計画を引き継いでいなかった。小学校は79%、保育所は35%、幼稚園は47%だった。計画の作成対象が施設ごとに異なる実態も判明。文科省の通知などは「必要に応じて」計画をつくるよう学校側に求めているが、医師の診断書を必要としたり、特別支援学級の児童に絞ったりというケースもあった。

*2-3:https://ryukyushimpo.jp/news/entry-570430.html (琉球新報 2017年8月30日) <“学力向上”の現場>障がいある子、全国学力テストを問う、全国学力・学習状況調査、全国学テ
◆点に入れないで/「手の掛かる子」対象外に
 「標準的な学力が身に付いていないなら、入れなくていい」。沖縄県内南部のある小学校で昨年、発達障がいがある生徒が受けた全国学力テストの結果を、文科省に報告しなくていいと管理職が断言した。担任らは「子どもたちの実力を把握するための調査なのだから出すべきだ」と主張したが、通らなかったという。文部科学省によると全国学テの対象は該当学年の学習内容を履修できている全児童・生徒。知的障がいの診断が付くと対象外にされるが「学習内容を履修できているか」の判断は学校に任される。診断が付いていないグレーゾーンや、発達障がいがある児童・生徒を一律に対象から外したり、点数によって選択したりすることが、少なくない県内学校で行われている。情緒障がいやADHD、学習障害などがある児童・生徒が、通常学級に在籍しながら必要に応じて別教室で指導を受ける「通級指導教室」。県内の設置数は右肩上がりで、2017年には過去最多を記録した。通う子どもたちに知的障がいはないが、一斉授業では力を伸ばしにくく、教科などによって得手不得手が出る場合もある。「通級の子どもは、学テを受けても結果は文科省に出さない」と多くの教員が口をそろえる。県は「数人の調査結果を抜いても学校の平均正答率は大きく上下しない。点数が悪いからと、結果を報告しないことは考えにくい」と否定するが、現場教員は「平均点が取れるなら入れて、取れないなら入れなくていいと言われることもある」と明かす。学テの目的は「義務教育の機会均等と水準の維持向上」だ。だがわずかな点差を競い合う中で、全ての子どもの学習を保障するはずの「学力向上」の現場から、平均から外れる子どもたちが排除されている。「誰かの指示というより慣例」で通級学級の児童の結果を除外すると説明していた若手の小学校教諭は、記者と話をするうち「学力向上の対象に通級の児童が入る認識がなかった。恐ろしいことをしていたのかもしれない」と表情を変えた。

<ハンセン病患者差別>
*3:https://www.nishinippon.co.jp/nnp/syasetu/article/354631/ (西日本新聞 2017年8月30日 ) ハンセン病差別 司法が加担した罪を問う
 「密室の法廷」で下された死刑判決は妥当だったのか、重大な疑義があるのに司法が検証を拒むのは不当-として、国家賠償を求める訴訟が熊本地裁に起こされた。ハンセン病患者の誤った隔離政策に司法が加担し、差別を助長した歴史を踏まえ、国はこの訴えを重く受け止めるべきだ。訴えたのは熊本県でハンセン病患者とされた男性が殺人罪などで死刑判決を受け執行された「菊池事件」を巡り、裁判のやり直しを求めてきた支援者の元患者らだ。隔離施設内に設けられた「特別法廷」で裁かれた男性について、元患者らは差別的な扱いを受けた冤罪(えんざい)の疑いが強いとして、検察自らが刑事訴訟法に基づき「公益の代表者」として再審を請求すべきだと主張してきた。しかし、最高検は「再審の事由がない」とこれを拒み、元患者らは差別や偏見の被害回復を求める権利が侵害され、精神的苦痛を被ったと訴えている。再審の道が開かれない中で、国賠訴訟を通じて事件の真相に迫るのが狙いだ。熊本県の元役場職員を殺害するなどした罪に問われた男性は一貫して無罪を主張しながらも1962年、3度目の再審請求が棄却された翌日に死刑が執行された。最大の問題は、人権尊重や裁判の公開をうたった憲法に反した疑いが強い特別法廷である。最高裁が1948~72年に開廷を認めた事例は全国で95件に上る。最高検は今年3月、隔離法廷に関与したこと自体は認め、最高裁や日弁連に続き謝罪した。菊池事件は特別法廷で下された唯一の死刑事案とされる。元患者らの弁護団は冤罪の新証拠などを示すとともに、特別法廷の違憲性を明らかにしていく方針という。ハンセン病問題は、国の隔離政策を違憲とした2001年の熊本地裁判決(確定)後、元患者の救済策が進む一方、今も差別と偏見に苦しむ家族が国を集団提訴するなど、全面解決にはほど遠い。菊池事件が問うのは人権侵害に対する司法全体としての姿勢だ。真相を闇に葬ってはならない。

<共謀罪と個人情報運用も人権侵害の方向>
PS(2017年9月21日追加):*4-1のように、犯罪を計画段階で逮捕でき、そのためには監視社会になる「共謀罪」法案も国民の反対を無視して可決された。これは、安倍首相が人権侵害を好む人なのでは全くなく、官僚機構やそれに便乗して民主主義(国民主権)の理念を護るためではなく他の目的のために働く国会議員やメディアに原因がある。そのため、誰が首相になっても余程の気概と力がなければ「共謀罪」の廃止はできないと思われる。
 また、*4-2のように、総務省は、①個人が健康状態や購買履歴等の情報を一括で企業に預けて報酬やポイントを得る仕組みを作り ②データを預かる事業者は個人情報を匿名化した上で情報が欲しい企業に提供できるようにする とのことだが、民間企業の利用によって歯止めがなくなる上、個人から同意を取る形で次第に個人の選択の余地もなくなるため、この規制緩和は個人情報の過度な開示や利用による人権侵害に繋がる。
 つまり、近年は、民主主義や人権尊重の歴史に逆行する改革が次々と行われているのだ。

*4-1:http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201709/CK2017091602000145.html (東京新聞 2017年9月16日) 【社会】「共謀罪」廃止へ集結 「監視を恐れず」「改憲つながる恐れ」
 犯罪を計画段階で処罰する「共謀罪」の趣旨を盛り込んだ改正組織犯罪処罰法の廃止を目指す市民団体や法律家団体などでつくる「共謀罪廃止のための連絡会」は十五日、東京都千代田区の日比谷野外音楽堂で「共謀罪は廃止できる!9・15大集会」を開いた。約三千人(主催者発表)が参加し、「共謀罪は絶対廃止」などと声を上げた。連絡会は今月七日、「SEALDs(シールズ)」の元メンバーらがつくった「未来のための公共」や日本消費者連盟など十四団体が結成した。アムネスティ・インターナショナル日本の山口薫さんは「今、市民活動は危機にさらされている。法は施行されたが廃止できる。監視を恐れず、萎縮せず活動したい」と話した。「共謀罪対策弁護団」の三澤麻衣子事務局長は多くの弁護士で、摘発された場合の対策や予防を考えるとした。世田谷区の会社員横山淳さん(46)は「共謀罪の強行採決はひどかった。計画段階で捕まり、監視社会が進む。改憲の流れにもつなげられるのでは」と話した。民進党など野党四党の国会議員らは、二十八日からの臨時国会への廃止法案の提出を明らかにした。

*4-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20170828&ng=DGKKASFS25H54_X20C17A8MM8000 (日経新聞 2017.8.27) 個人情報 運用を一任、総務省、利用増へ事業者認定 データ利用先を自由に
 総務省は個人が健康状態や購買履歴などの情報を一括で企業に預け、ビジネスに役立ててもらって報酬を得る仕組みを作る。2020年をめどに、情報を預かって運用する事業者への認定制度を設ける。個人にとってはデータを預けて、その先の利用を運用者に任せる「簡易型」の仕組みだ。データの運用先まで個人が選ぶ「厳格型」と合わせて、政府は個人データをビジネスに利用する制度を整える。ビジネスに個人データを活用する仕組みは、実際に情報を使う企業まで個人が指定する「情報銀行(総合・経済面きょうのことば)」も政府内で検討が進んでいる。総務省が取り組むのは、運用者が一定のルールのもとで個人のデータを自由に利用できる仕組み。個人情報のビジネス利用は2本柱で設計が進む。総務省は新たな仕組みを「情報信託」と呼んで整理する。データを扱う事業者はIT(情報技術)系の企業やシンクタンクを想定する。個人はあらかじめ病院や銀行、旅行会社などのデータベースを事業者に指定し、病歴や資産情報、渡航履歴などの情報に運用担当者がアクセスできるようにする。データの開示範囲は個人が設定する。データを預かる事業者は個人情報を匿名化したうえで、情報を欲しい企業に提供する。医療や観光、金融といった企業のニーズを見込む。データをもらう企業は対価を払い、一部を特定のサービスに使えるポイントなどの形で個人に還元する。個人情報を適切に管理するため、データを運用する事業者に対し、民間が設立する団体による認定制度を導入する方針だ。提供元の個人との間ではデータを漏洩しない、提供先の企業との間では個人データを不正に使わない、などの約款を交わすことを義務付ける。18年度予算の概算要求に実験費用を盛り込む。政府はIT総合戦略本部を中心に、個人が預ける情報を管理・運用する仕組みとして「情報銀行」を検討している。ただ、「どの企業にどのデータを提供する」といった具合にデータの提供先まで個人が指定する方法が議論されている。銀行方式は最終的にデータを使う企業が分かる。個人に詳細なデータを出してもらうかわりに、大きなポイントを出すといった個別の設計をしやすい。総務省の方式はデータ運用の自由がある一方、個人がデータ提供をためらう可能性はある。政府は個人の使い勝手に応じて2案を設け、流通の仕組み作りを進める。日本は海外と比べて個人データの外部提供への抵抗感が強いとの調査もある。信託方式はデータ管理のルール作りとともに、認定制度の信頼を高めることが課題になる。

<子どもへの人権侵害>
PS(2017年9月24日追加):*5-1のように、1000人あたりの向精神薬の処方件数を算出し、年齢層ごとの処方件数の経年変化を統計解析で比較したところ、2002年~2004年と2008年~2010年の比較で、13歳~18歳のADHD治療薬使用が2.49倍、統合失調症などに使う抗精神病薬が1.43倍、抗うつ薬が1.31倍と増加し、小学生でもADHD治療薬が1.84倍、抗精神病薬が1.58倍となっており、病気も効果も安全性も確立していないのに子どもへの適応外処方や多剤併用が浮上しているのだ。また、*5-2のように、以前はADHDという名前の病気はなく、子どもに元気があるのは当たり前で、そういう人が大人になってもやはり元気に仕事をしているため、「子どもに落ち着きがないから、ADHDが疑われる」などとして、すぐ子どもを異常扱いして薬漬けにするのは疑問が多い。

*5-1:https://yomidr.yomiuri.co.jp/article/20150120-OYTEW54767/ (読売新聞 2015年1月20日) 「子供に向精神薬処方増」のなぜ?
 1月13日の朝刊社会面で、「子供に向精神薬処方増」のニュースを書いた。臨床現場では以前から指摘されていた傾向が、初の全国調査で確かめられたのだ。いささか硬い内容になるが、子どもへの投薬を考える上で重要なデータが多く含まれているので、今回は調査結果を詳しく紹介してみたい。調査を行ったのは、医療経済研究機構研究員の奥村泰之さん、神奈川県立こども医療センター児童思春期精神科医師の藤田純一さん、国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所薬物依存研究部室長の松本俊彦さん。2002年~2010年の外来患者(18歳以下)の診療報酬明細書と調剤報酬明細書の一部、計23万3399件をもとに、1000人あたりの向精神薬の処方件数などを算出し、統計解析で年齢層ごとの処方件数の経年変化などを比較した。2002年~2004年と2008年~2010年を比較すると、13歳~18歳では、注意欠如・多動症に使うADHD治療薬が2・49倍、統合失調症などに使う抗精神病薬が1・43倍、抗うつ薬が1・31倍と増加した。2008年~2010年の同年代の人口1000人あたりの処方件数は、抗不安薬・睡眠薬が4・8件、抗精神病薬が3・9件、抗うつ薬が3件、気分安定薬が3件だった。小学生(6歳~12歳)への向精神薬処方も増え、2002年~2004年と2008年~2010年の比較では、ADHD治療薬が1・84倍、抗精神病薬が1・58倍となった。依存性のあるベンゾジアゼピン系薬剤を中心とする抗不安薬・睡眠薬は、この年代では0・67倍と減少した。同年代の人口1000人あたりの処方件数は、気分安定薬が3・6件、ADHD治療薬が1・5件、抗精神病薬が1・2件、抗うつ薬が1・2件だった。件数は少ないが、0歳から5歳の幼児に対しても、抗精神病薬などの処方が確認された。処方件数増加の背景について、調査報告書は、受診者数の増加(厚生労働省の患者調査では、未成年の精神疾患受診者数は2002年に9万5000人、2008年は14万8000人)や、思春期外来の増加(2001年は523施設、2009年は1746施設)、ADHD治療薬など新薬の承認、などの影響を挙げている。
●適応外処方と多剤併用の問題も浮上
 果たして診断や投薬は適切に行われているのだろうか。過剰診断や誤診、不適切投薬の症例はないのか。診療報酬明細書などを基にした今回の統計調査では、個々の状況が分からず、処方が適正か否かの判断はできない。だが、疑問点はいくつも浮かび上がる。特に、処方件数が増えている向精神薬の多くが、子どもに対しては「適応外」であることは認識しておく必要がある。現在使われているADHD治療薬は、子どもに対する臨床試験を行って適応(6歳以上)を得ているが、抗精神病薬や抗うつ薬、抗不安薬・睡眠薬などは、子どもを対象とした大規模な臨床試験が日本では行われておらず、有効性や安全性の確認が十分ではない。このような向精神薬の添付文書(薬の説明書。インターネットで簡単に読める)には、子ども(小児)への投与について、「安全性は確立していない」「使用経験がない」などの記述があるので、関心のある方は確認していただきたい。子どもへの薬の適応外処方は、向精神薬以外にも行われることが多く、すぐに「悪」と決めつけることはできない。本物の薬か偽の薬を、ランダムにグループ分けした子どもたちに飲ませ、効果を比較する臨床試験への抵抗感が日本では根強く、実施しにくい事情もある。大切な子どもたちを、薬の「実験」に巻き込みたくないのだ。しかし一方で、成長期の脳に作用する向精神薬が、「安全性は確立していない」「使用経験がない」とされながらも、実際には使用が拡大している。子どもたちを守りたいがゆえに、子どもたちを未知のリスクにさらす。そんな矛盾した状況が生じているのだ。子どもに対する臨床試験が行われなければ、副作用の種類や発生頻度は分からず、市販後の副作用調査も徹底されないなど、被害を組織的に防ぐ手立てが乏しくなってしまう。さらに、深刻な問題が起こった時の救済策も、適応外処方の場合は不十分になりかねず、善意で処方した医師が責任を問われる可能性もある。このような状況で、誰が得をするというのだろうか。この調査でもう一つ注目したいのが、一人の子どもに異なる向精神薬を複数処方する例が多いという指摘だ。向精神薬が、他の種類の向精神薬と併用される割合は、気分安定薬で93%、抗うつ薬で77%、抗不安薬・睡眠薬で62%、抗精神病薬で61%に上った。言い方を変えると、例えば抗精神病薬を処方される子どもの61%は、抗不安薬・睡眠薬や抗うつ薬など、他の種類の向精神薬も併用処方されている、ということになる。調査報告書は「この数値は欧米と比べて著しく高い」と指摘し、欧米での未成年への向精神薬併用処方割合について、米国19%、オランダ9%、ドイツ6%という数字を示した。医療提供体制の違いや調査対象の等質性などの点から、この結果だけで「安易に『わが国では、向精神薬の不適切な多剤併用処方の割合が異様に高い』と結論づけるのには慎重であるべき」と注意を求めたが、「今後、わが国の多剤併用処方の割合が欧米よりも高くなる理由について、検討していく必要がある」とした。当然の指摘だろう。日本では以前から、成人患者に対して抗精神病薬を何種類も使う多剤大量処方が続き、国際的にも問題視されてきた。ベンゾジアゼピン系薬剤を漫然と長期間処方され、常用量依存に苦しむ人も多い。カウンセリング技術の未熟さや診療時間の短さ、マンパワーの少なさなど様々な事情から、薬に過度に頼る医師が多いのだ。そして更に、過剰な処方が子どもたちにも及んでいるとすれば、早急に歯止めをかけなければならない。日本の子どもへの多剤併用処方や適応外処方は、どのような根拠で、どのような必要に迫られて行われているのか。処方医や患者、家族を対象とした詳細な実態調査が求められている。

*5-2:http://healthpress.jp/2015/07/adhd-1.html (Health Press 2015.7.8) 覚せい剤に似た性質を持つADHD薬。子どもへの処方は本当に害はないのか?
 近年、ADHD(注意欠陥・多動性障害)など発達障害と診断される子どもが増えている。ADHDの特徴は、集中力や注意力に欠けたり、衝動性や多動性が見られたりすることだ。詳しい原因はわかっていないが、脳の機能障害ではないかといわれている。しかし、以前はADHDという名前の病気はなく、"元気があること"はその子どもの個性だと思われていた。そして、そうした子どもたちも、たいていは成長するにしたがって落ち着いて生活できるようになっていた。今は病気というレッテルを貼られ、薬漬けにされる時代だ。メディアでこの病気が取り上げられるようになると、「この子も落ち着きがないのでADHDではないか」と、親や教師など周囲の大人が心配し、子どもを受診させるケースが多くなった。また、少しでも兆候があるとADHDとみなし、脳の中枢神経に作用する強い向精神薬を処方する医師も増えている。
●向精神薬を服用していた米銃撃事件犯の少年たち
 この向精神薬の代表的な薬のひとつに、リタリン(塩酸メチルフェニデートの一般製剤)がある。すでに、スウェーデンでは1960年代後半に同剤の発売が禁止されており、1970年代にはヘロインと同等の依存性があると指摘されていた。それにもかかわらず、アメリカではADHDの特効薬として患者への投与を継続。また、子どもへの投与だけではなく、大人の間でも「活動的になり仕事や家事がはかどる」という理由で、急激に広まっていった。リタリン生産量は1990~1999年に全世界で700%という高い伸びを示し、その9割がアメリカで使用されていた。だがそうしたなか、少年たちによる銃乱射事件が学校内で多発する。彼らは学習機能障害と診断され、リタリンなどの向精神薬を投薬されていた。コロラド州ではその後、厳密な検査を行わず安易に診断を下されたADHDの子どもに対して、リタリンを強制投与することを禁止した。日本において、ADHDはリタリンの適応外であったものの、うつ病の患者に処方されてきた。だが、2007年、ある男性が複数の病院を受診して安易にリタリンを処方され、同剤の依存に陥り自殺するという事件が起こる。このことからうつ病も適応外となり、ナルコレプシーのみの適応となった。2008年からは登録された専門医にしか処方できなくなっている。現在、日本でADHDと診断された子どもに処方されるのは、コンサータ(メチルフェニデート徐放剤*)という薬だ。しかし、このコンサータには覚せい剤に似た性質があるため、承認にあたって"コンサータ錠適正流通管理委員会"を設置し、処方できる医師や調剤できる薬局を登録制にするという厳しい規制が設けられた。また、薬局はリストにない場合は拒否しなければならないなど、流通・処方状態の管理がしっかり行われている。このように、子どものADHDに処方される薬は、厳重な規制を必要とする危険な薬だ。これを子どもに与え続けて、果たして悪影響がないといいきれるのだろうか。ADHDが疑われるからといって子どもを安易に薬漬けにしてしまう医療には、疑問を持たざるを得ない。何らかの弊害が起こらないよう、親をはじめとする周囲の大人たちが、子どもに投与される薬には、どのようなリスクがあるのかを十分理解するべきである。
○徐放剤:成分の放出を遅くし、服用回数を減らせるように開発された薬。血中濃度を長時間一定にすることで、副作用を回避できる。

<精神障害者差別>
PS(2017年10月10日追加):*6-1のように、「①ラスベガスで銃乱射事件があった」「②容疑者の動機は謎に包まれている」「③米ABCは事件の数カ月前から容疑者の精神状態が悪化していたと報じた」と朝日新聞が報道し、日本の多くのメディアは、「原因は米国が銃社会であることだ」としているが、①は事実であるとしても、②の動機は、容疑者の弟が「最近、金額の大きなカケをしていた」と証言していることから、私は「カケで破産するほどの大損をしてラスベガスに恨みを持った」のが動機ではないかと考える。しかし、この容疑者の弟の証言は相手にされず、③のように「容疑者は精神状態が悪化していた」ということになっており、この「精神状態の悪化」の定義は全く曖昧で、それが銃乱射を行う動機になるとは思えない。にもかかわらず、こういう報道が堂々となされることは、国連の「障害者権利条約」や日本の「障害者基本法」「障害者差別解消法」などに反しており、精神障害者への差別を助長して社会参加をやりにくくするとともに、その尊厳を無視する見識の低いものである。
 そのような中、*6-2のように、「農福連携」して農業を障害者雇用の場とする取り組みが始まっている。私は、衆議院議員時代(2005~2009年)に、伊万里市の障害者福祉施設で精神障害者が有田焼の絵付けをしているのを視察したことがあるが、この仕事は自閉症でも問題なく、集中する分だけ出来は上々で、高級品を作らせればそれにも対応できそうに思われた。

*6-1:http://digital.asahi.com/articles/ASKB55F2ZKB5UHBI018.html (朝日新聞 2017年10月6日) ラスベガス銃乱射容疑者、精神状態悪化か 米報道
 米史上最悪の銃乱射事件を起こしたスティーブン・パドック容疑者(64)の動機は、いぜん謎に包まれている。解明のかぎを握ると思われた交際相手の女性(62)は帰国後、「全く知らない」と困惑した。容疑者の精神状態が悪化していたとの報道も出ているが、なおはっきりしない。「こんな事件を計画していたとは全く考えられなかった」。女性が4日、事件後初めて弁護士を通じて出した声明には、突然捜査対象となった困惑とともに、容疑者への思いがにじんだ。「親切で思いやりのある、静かな人だった。私は彼を愛していて、将来をともにすることを望んでいた」。容疑者は、事件前に女性にフィリピンに帰るための航空券を買い与えていた。女性は9月15日に日本を経由してマニラに到着。その後、容疑者から「フィリピンの家族のために家を買うお金」として10万ドルの入金があった。米メディアによると、女性が容疑者と知り合ったのは、地元のカジノだった。女性は接客担当をしており、度々訪れる容疑者と親しくなり、交際を始めた。ネバダ州の地元紙リノ・ガゼット・ジャーナルによると、女性は容疑者と知り合った当時、別の男性と結婚していたという。2013年、女性は夫と暮らしていた家を出て、パドック容疑者が所有していた同州リノのアパートに引っ越した。それから2年後、女性は夫と離婚した。女性が元夫と暮らしていた当時の隣人は「家でパーティーをしたり、近所の子どもたちを家に泊めてあげたりしていた。近隣の皆に好かれ、とてもすてきな女性だった。家族に会いによくフィリピンへ往復していた」と話し、事件に衝撃を受けていたという。しかし、容疑者と暮らし始めてから、女性の近隣の人は全く違った印象を語る。「2人とも見た覚えがない」。事件直前まで2人が暮らしていた家の隣人はそう話す。他の近隣住民も、つきあいのあった人はほとんどいなかった。オーストラリアに住む女性の姉妹は米NBCの取材に「彼女は何も知らぬままフィリピンに行かされた。(容疑者が)計画を邪魔されたくないと思ったのだろう」と涙ながらに訴えた。一方、米ABCは4日、事件関係者の話として、容疑者は事件の数カ月前から精神状態が悪化していたと報じた。体重が減り、身なりも汚くなり、女性の元夫に対する妄想にとりつかれていたという。確たる動機が見えぬまま、捜査関係者のいらだちは高まっている。ラスベガス警察のロンバルド保安官は4日の会見で「1人で全てやったとは信じがたい」と話し、協力者がいた可能性も視野に入れていることを示唆した。同保安官は、容疑者が9月下旬に高層コンドミニアムの一室を予約していたことも明らかにした。その時期、今回の事件と同じように、ここから見下ろせる場所で別の音楽祭が開かれていた。警察は「理由は不明」としているが、容疑者が当初、この音楽祭を狙おうとした可能性もある。ラスベガス警察は、これまで事件での死者を59人としていたが、自殺した容疑者を除く58人に訂正。けが人も489人とした。

*6-2:http://special.nikkeibp.co.jp/NBO/businessfarm/bizseed/05/ (日経BP 2017.2.28) キーワードは“ノウフク”、浸透し始めた「農福連携」、「働き手」が欲しい農と「働く場」を求める福祉、両者のニーズが合致
 「農福連携」と呼ばれる取り組みが活発化している。農業を福祉の現場に取り入れる試みは従来からあるが、どちらかというと障がい者支援が中心だ。引きこもりやニートなどの生活困窮者への支援は、それほど多くなかった。最近になって、生活困窮者の支援にも手が広がる。また、農作物の生産・加工・販売を広く手掛けたり、農家からのニーズに応じて農作業の委託請負をしたりする法人が少しずつ増えている。一般にはまだそれほど馴染みがないが、「農福連携」という言葉がじわじわと浸透し始めている。農福連携とは、文字通り、農業の現場と福祉の現場が連携することだ。具体的には、障がい者や生活困窮者などの社会的に弱い立場にいる人たちが、農園で畑仕事に従事したり、農産物の加工・販売をしたりして、自分の働く場所と居場所を手に入れる取り組みを指すことが多い。農業の現場では、高齢化などにより担い手の減少が止まらず労働力不足が悩みの種だ。一方の福祉サイドでは、障がい者・生活困窮者の働く場所がなかなか見つからない。農業の「働き手がいない」という問題と、福祉の「働く場がない」という問題を解決し、補完してくれるのが農福連携というわけだ。
●農福連携のシンポジウムやフォーラム、マルシェ
 最近、農福連携を冠したシンポジウムやフォーラム、マルシェなどの催しが頻繁に開かれるようになった。農業・福祉関係者だけでなく、行政や一般の人も巻き込みながら、大きなうねりになろうとしている。この2月14日には、農林水産省の政策研究機関である農林水産研究所主催の「農福連携」シンポジウムが開催された。「農業を通じた障害者就労。生活困窮者等の自立支援と農業・農村の活性化」というテーマが掲げられ、障がい者や引きこもり、ニートなどを実際に引き受けている事業者をはじめとして、農業関係者、行政の担当者、自治体、研究機関など多くの人たちが集結。農福連携の最前線について報告が行われ、活発な議論が交わされた。3月には農福連携の取り組みを全国レベルで推し進める「全国農福連携推進協議会」が設立される。ここに全国の福祉事業所や農家、行政や研究者、企業など、多くの賛同者が参加する。行政の側でも、該当省庁でもある農林水産省と厚生労働省の関心度は高い。協力しながら、積極的に連携を推し進めている。「農福連携マルシェ」などはその一例だろう。2015年6月に初のマルシェを霞が関で開催。2016年5月には官庁街を出て東京・有楽町、その後全国規模で開かれている。予算面でも、両省庁に農福連携を意識したものが少しずつ目立つようになってきた。
●取り組みには2つの方向がある
 一般社団法人JA共済総合研究所主任研究員で、長らく農福連携分野の研究を先導してきた濱田健司氏は、今、農福連携の取り組みとして大きく2つの方向があると分析する。1つは、障がい者や生活困窮者が身を寄せる福祉関係の事業者が取得したり借りたりした農地で農業生産を行う方向だ。生産だけでなく、できた農産物の加工・製造や販売まで手掛けるところも多い。もう1つは、農家や農業生産法人などに対して農作業の請負契約を結ぶというもの。こちらは、障がい者や生活困窮者が農業側の田畑やハウスに出向いて、いわゆる施設外就労として農作業に従事する。直接生産を手掛ける事業者の中には、独自の工夫で、持続可能な事業にしているところもある。代表例は、農福連携のパイオニアとしても知られる農事組合法人「共働学舎新得農場」だ。共働学舎は、北海道十勝地方・新得町に約120ha(120万㎡)の農地を構え、酪農、チーズや有機野菜の生産、工芸品づくりなどを行っている。ここには障がいを持つ人をはじめ、引きこもりやホームレスなど、様々な困難を背負った人たちが集まり共同生活をしながら農業生産・販売を行う。ここで生産されるチーズなどの農産物や工芸品はその品質の高さで知られ、学舎の経営にも寄与する。共働学舎の総売上高は約2億2千万円にのぼり、代表宮嶋望氏によれば「生活に必要な経費は賄えるほど」だという。後者でよく知られている取り組みは、特定非営利活動法人(NPO法人)香川県社会就労センター協議会の例だ。生産者と同協議会が農作業の請負契約を結んで、協議会から障がい者施設に作業の参加を募集・依頼する。農作業の対価として工賃が支払われる。請け負う農作業は、野菜類の苗の植え付けから収穫、除草、出荷調整に至るまで多種多様だ。協議会を中心として、障がい者施設と地域行政、JA、生産者の間で協力し合う仕組みを構築し、上手に連携している例といえる。生活困窮者への支援をする団体も増えている。厚生労働省が2015年4月にスタートさせた「生活困窮者自立支援制度」の中には、生活困窮者に対する就労訓練事業を行う社会福祉法人や生活協同組合で条件を満たすところに対して、支援をする仕組みがある。内容も地域によって違ってくるが、固定資産税や不動産取得税などの一部を非課税にする措置や、事業を立ち上げる時の経費の補助、自治体による商品の優先発注がある。農林水産省でも、いわゆる「福祉農園地域支援事業」という、福祉農園の全国展開を支援する事業を進めている。平成29年度の予算でも、同様の施策が取られていて、「農山漁村振興交付金」といわれるものの中に、福祉農園を支援する枠が設けられた。こちらはNPO法人、民間企業、一般社団法人も申請できる。
●生活困窮者への就労訓練の場としても注目
 こうした制度の充実に伴って、引きこもりやニートなどの生活困窮者に対して就労訓練をする団体が今後増えてきそうだ。ホームレスの就農支援プログラムを手掛けるところも出てきている。JA共済総合研究所の濱田氏は、こうした一連の動きを、「単なる社会貢献や福祉という範疇を超えて、障がい者や生活困窮者はいまや農業にとって必要な人材だと見る動きだ」と語る。担い手不足に悩む農業の現場からのニーズは今後ますます高まってくるだろう。社会的な弱者といわれる人たちが、農業を通じて働く場と収入を得て自立できれば、それだけ社会保障費の削減につながる。同時に、農業の衰退にも一定の歯止めがかかり、生産の拡大に寄与する可能性もある。もちろん解決しなければいけない問題は山ほどある。現在のセーフティネットにアプローチできなかったり、しなかったりする人もまだまだ多い。受け入れる側の意識や体制もまだまだだ。しかし、農福連携には大きな可能性が秘められている。今後の進展に大きな期待がかかっている。

| 日本国憲法::2016.6~ | 04:45 PM | comments (x) | trackback (x) |
2017.9.12 日本に現存する差別とその目的 (2017年9月12、14、17、25、26、28、29、30日追加)
 
    高齢者人口の割合       年金受給年齢の引き上げと継続雇用
                      2017.9.7日経新聞

  
 日本人の平均余命  支えられるべき高齢者 外国人労働者  女性労働のM字カーブ 
                              2017.9.9日経新聞

(1)高齢者に対する差別
 日本老年学会と日本老年医学会は、*1-1-1のように、現在は「65歳以上」とされる高齢者の定義を「75歳以上」に引き上げるべきだと国に提言した。私も、65歳時点の平均余命は男性19歳、女性24歳と長く、75歳時点の平均余命でも男性12歳、女性15歳で、医療の進歩や健康意識の高まりで高齢者が若返った状態で平均寿命が延び続けていることを考えると、高齢者は75歳からとし、65~74歳はできるだけ社会の支え手になってもらうのがよいと考える。

 ただし、その際、高齢者に対して雇用差別を行ってはならず、平均余命や平均寿命に男女差・個人差があることも考慮すれば、職種や個人によって仕事が続けられる上限は異なるため、定年ではなく客観的評価(しかし、日本人はこれが苦手なのが問題なのである)でFairに報酬を決めて、働けるようにするのが良いだろう。

 一方、*1-1-2のように、医療制度や人口統計上の区分で「高齢者=65歳以上」が定着しているのに、公務員の定年を60歳から65歳に引き上げることに反対意見があり、役職定年の導入に取り組むべきだとしているが、これは高齢者差別そのものであるため、役職は仕事の遂行能力で決めるべきである。

 また、*1-1-3のように、60歳定年後も希望者全員を雇用することを企業に義務付ける高年齢者雇用安定法改正案の成立に対し、企業は継続雇用の対象者を能力などで絞り込めなくなるため負担増に備えて対応を急いでいると書かれているが、これも働く以上は年齢で差別すべきではないと考える。そして、第一生命経済研究所の熊野首席エコノミストの「人件費の増加を防ぐため能力の高い高齢者の賃金まで企業が一律に抑制しかねない」という警鐘は現実で、人口が減り働き手が減ると言いながら、高齢者の雇用が若年者の雇用を食うと言うのはおかしい。

 つまり、私は、公務員であれ、民間企業のサラリーマンであれ、仕事をこなせる人は気持ちよく働けるようにすべきであり、年齢や性別による差別に合理性はないのに、若い男性しか働かせない状態にしているのはむしろマイナスであって、日本で自動車、家電・パソコンの説明書、銀行の書類等が高齢者や女性に扱いにくい仕様になっている原因だと考える。

(2)社会保障に関する政治・行政・メディアの主張の不合理
1)“子ども保険”創設の主張について
 幼児教育・保育の無償化を目指し、*1-2-1のように、自民党は「子ども保険」の創設を提言しているそうだが、「子ども保険」はリスクも便益もない人からも保険料を徴収するため保険ではなく、公的保険として創るべきでない。小泉氏は「子どもがいなくても年金、医療、介護の受け手となるが、その持続可能性を担保するのは若い人だ」としているが、社会保障には消費税増税か子ども保険による新たな負担が必要で、その他の膨大な無駄は垂れ流しのままでよいとする広報ばかりを受けて育った日本の若者が、真摯に高齢者に寄り添った政策を作ったり介護したりする人材になるわけがないため、外国人労働者の方がよいということになるだろう。

 そしてまさに、*1-2-2のように、「若者に比べて高齢者を優遇する“シルバー民主主義”が財政を悪化させてきたが、政治家は投票所に足を運んでくれる人の意向を気にするため、選挙制度を変えて、“ドメイン投票”や“余命投票”が真剣に議論されている」と言う人まで出てきており、これは底の浅すぎる解釈で、日本国憲法で定められた普通選挙、基本的人権の尊重、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利などを無視している。さらに、「政治家が高齢者の意向を勝手に忖度しているだけ」「新たな人気取り」などとしているのは、(ここでは長く書かないが)我が国の周回遅れの社会保障と本物の財政改革の遅れに対する合理化にすぎない。

2)介護保険制度について
 *1-2-3に、「我が国の介護保険は膨張しており、介護施設や在宅サービスの給付費は総額約9兆円に上り、2025年度には2倍以上のおよそ20兆円に膨らむ見込みで、週2回、月10回程度の訪問が常識的だ」と書かれている。しかし、自宅療養をする人に月101回(1日3.4回)は不自然ではなく容体によるため、最高利用回数が月30回というのを威張る必要はない。

 そして、ムダを生む理由の一つは「安さだ」とも書かれているが、介護保険制度はすべての人にリスクと便益があるのに、介護保険料は「40歳以上~死亡時」まで支払わなければならない。一方で、医療保険制度は世帯主が支払義務者で40歳以下でも支払っているのであり、私は「子ども保険」を創るよりも介護保険料の支払義務者を医療保険と同じ世帯主とし、保険料の支払者・受益者の年齢制限をなくすのが筋だと考える。そうすれば、病児保育も介護で賄える。

 なお、「生活援助サービスは無駄」とも書かれているが、高齢や病気で家事ができない場合は、生活援助サービスがなければ施設に入らなければならず、QOL(Quality of Life)が低くなると同時に、施設の建設コストもかかる。そのため、「回数を増やすとコスト意識が甘くなる」などと言うのは、家事が知識と体力を要し失敗の許されない労働であって、85歳の高齢者には大変な仕事であることを知らない人の主張である。

 また、*1-2-3では、サービス付き高齢者住宅(以下、サ高住)等での在宅サービスが問題視されているが、自宅を離れてサ高住に住まなければならなくなった高齢者がどういう人であるかの丁寧な考察がない。つまり、サ高住で介護保険の給付が増えるのは当然で、そのため介護サービスの内容は障害の程度に応じて専門家が判定しており、認められているケアを100%受けても足りない程度の設定になっているのである。

 このように、メディアが「高齢者は金持ちで社会保障などする必要のない人」「若者の負担になるだけの存在」などという宣伝を熱心に行った結果、*1-2-4のように、二度と稼げない高齢者から、息子を語って大金を奪うなどという詐取が増えた。私は、「子どもだとしても、甘やかしすぎだ」「見ず知らずの人に、そんな大金をよく渡すものだ」などと驚くことが多いが、詐欺は騙した人が悪いのであって騙された人が悪いわけではないため、警察は、気を付けるように広報するだけではなく、犯人を逮捕して厳罰に処し、犯罪の予防に繋げるべきである。

(3)外国人労働者に対する差別
 佐賀県は、2016年に、*2-1のように外国人数が前年比13%増の5,140人で伸び率では全国の都道府県でトップになり、県が受け入れ態勢づくりに取り組んで、「壁」の突破に努めているそうだ。

 しかし、政府は、トランプ政権の移民政策を批判する割には、*2-2、*2-3のように、技能実習でも最長3年しか働けず労働条件が悪く、国家戦略特区で認めた農業の外国専門人材も日本で働ける期間を通算3年に制限するなど、外国人労働者に対する差別的扱いを行っている。ちなみに、最長3年では、仕事を覚えたところで帰国するため、労働力として頼みにならない。そして、農業だけではなく、加工・販売・輸出入・製品企画などで、日本人労働者と同じ条件で働けることを「差別のない状態」と言うのである。

(4)高度専門職差別と女性差別
1)高度専門職に対する差別
 *3-1のように、労働基準法を改め、「残業代ゼロ」制度を作って“高度プロフェッショナル”と呼ばれる人をそれに当てはめる制度は、他の法案と一括化して出し直すのではなく、①“高度プロフェッショナル”と呼んでいる人は本当に高度プロフェッショナルなのか ②“高度プロフェッショナル”なら、残業代をゼロにするのが適切な理由は何か などについて、立法理由を明確に説明すべきである。

 しかし、私は、労働時間を自己管理できて報酬もそこそこに高い管理職に残業代がつかないことで十分であり、“高度プロフェッショナル”という職種を分けて残業代をゼロにするのは不適切だと考える。何故なら、努力して“高度プロフェッショナル”になると、プラスどころかマイナスになる社会システムにしては、智の時代に対応できないからだ。そして、現在、博士課程を修了してポスドクになっている人も同じである。

2)女性に対する差別
 *3-2のように、日本女性には、谷が緩やかになったとはいえ、まだM字カーブがある。そのM字カーブは欧米にはないが、それは保育施設が整っているだけではなく、ナニーやメイドを雇って子どもを見させることもできるからである(ただし、日本でこういうことをすると批判する人すらいる)。そのため、優秀な日本女性は、欧米に留学している間や欧米に転勤している間に子ども作る人が多く、そうした方がやり易いと言われている。

 そのM字カーブが、近年は米欧とほぼ遜色のない形に近づいたそうだが、女性は労働条件が悪く、昇進も困難であるため、賃金が低い。その理由は、生産年齢人口の男性を中心に据えて、多くの女性を補助的労働力と捉えているからにほかならない。

<高齢者差別>
*1-1-1:https://www.nikkei.com/article/DGKKASDG05H6Y_V00C17A1EA1000/ (日経新聞 2017/1/6) 「高齢者は75歳から」 学会が提言 65~74歳は社会の支え手
 日本老年学会と日本老年医学会は5日、現在は「65歳以上」とされる高齢者の定義を「75歳以上」に引き上げるべきだとする国への提言を発表した。心身が健康な高年齢者が増えたためで、65~74歳は「准高齢者」とし、社会の支え手として捉え直すべきだとしている。社会保障や雇用制度をめぐる議論に影響を与える可能性がある。提言をまとめるに当たり、両学会は高年齢者の様々な健康データを解析。日本老年医学会副理事長の秋下雅弘東京大学教授によると、医療の進歩や健康意識の高まりで現在の高齢者は10~20年前に比べ5~10歳若返った状態にあるという。提言は、前期高齢者とされる現在の65~74歳は「心身の健康が保たれ、活発な社会活動が可能な人が大多数」と分析。健康な間は仕事を続けたり、ボランティアに参加したりするなど、支えられる側から支える側に回る必要があるとした。この世代を過ぎた75~89歳を高齢者と定義し、平均寿命を超えた90歳以上を「超高齢者」と呼ぶのが妥当だとしている。2016年9月の総務省の推計によると、65歳以上は人口の約27%。高齢者を75歳以上とした場合、約13%と半減する。日本では「65歳以上を高齢者とする」と定めた法律はないが、医療制度や人口統計上の区分などで「高齢者=65歳以上」が定着している。高齢者を65歳以上と定義した1956年の国連の報告書が契機とされる。海外でも60歳以上や65歳以上を高齢者とする国が多い。ただ、56年に男性63.59歳、女性67.54歳だった日本の平均寿命は2015年にそれぞれ80.79歳、87.05歳に延びた。内閣府の14年度の意識調査では、高齢者だと考える年齢は男性が「70歳以上」(31.3%)、女性は「75歳以上」(29.9%)が最多。65歳以上が高齢者だと答えたのは男性が7.1%、女性は5.7%にとどまった。

*1-1-2:https://www.nikkei.com/article/DGXKZO20949810Y7A900C1EA1000/ (日経新聞社説 2017/9/9) 公務員の定年延長には十分な議論が要る
 安倍内閣は公務員の定年をいまの60歳から65歳に引き上げる方針だ。国や地方自治体の財政事情が厳しいなか、総人件費が膨らまないか、心配になる。民間で定着している役職定年の導入などに取り組むのが先決であり、拙速に定年延長を進めれば社会の反発は免れないのではないか。国家公務員法は定年を原則60歳と明記しており、地方公務員もこれに準拠する。定年の延長には法改正が必要で、政府は6月に「公務員の定年引き上げに関する検討会」(座長・古谷一之官房副長官補)を発足させた。早ければ来年、法案を国会に提出し、2019年度から段階的に定年を引き上げる構えだ。年金支給開始年齢が65歳になったことで、60歳からの5年間をどうやって生活すればよいのかと不安を訴える公務員が多い。内閣人事局はそう説明する。しかし、そのための措置を政府はすでに講じている。公務員が再任用を希望したら必ずそうする、と閣議決定しているのである。これは民間企業の多くが導入している再雇用制度と大差ない。再任用から定年延長へ、なぜ急いで移行させるのか。十分な説明が求められる。公務員の給与体系は民間に比べて恵まれている。成果主義が導入されたとはいえ、最低の評価を受け続けても給与が増えないだけで減りはしない。役職定年がないので、いちどたどり着いたポストの給与が定年まで続く。検討会は定年延長とセットで役職定年の導入を検討しているらしいが、役職定年は民間ではとうに常識で、周回遅れの感がある。そもそも長年の課題である公務員と民間の年金格差がなお残っている。こうした課題を早く片付けるべきだ。いまのご時世に公務員の総数を増やすことは考えられない。定年を延長すれば新規採用の抑制は不可避だ。それで組織の活力を維持できるかどうかも、疑問点だ。ベテランのノウハウの継承は大事だが、官が人材を抱え続ければ政府が目指す労働力の流動性の増大をさまたげる要因ともなる。再任用では定年前よりも給与水準が下がるのが普通だ。そうしないための定年延長であり、公務員だけがいい思いをしようとしている。そんなふうに有権者に受けとめられたら、政治への不信はますます増大することになる。

*1-1-3:https://www.nikkei.com/article/DGXNASDF2800Y_Y2A820C1EA2000/ (日経新聞 2012/8/28) 65歳まで雇用、企業身構え 義務付け法 29日成立
 60歳の定年後も希望者全員を雇用することを企業に義務付ける高年齢者雇用安定法改正案が29日、成立する。来年4月から厚生年金の受給開始年齢が引き上げられるのに対応し、定年後に年金も給料も受け取れない人が増えるのを防ぐ狙い。2025年度には65歳までの雇用を義務づける。企業は継続雇用の対象者を能力などで絞り込めなくなるため、負担増に備え対応を急いでいる。28日の参院厚生労働委員会で民主、自民、公明などの賛成多数で可決。29日に参院本会議で可決、成立する見通しだ。会社員が加入する厚生年金(報酬比例部分)は現在60歳から受け取れるが、男性は13年度に61歳からとなり、以降3年ごとに1歳上がって25年度には65歳開始となる。現在、企業の82.6%(約10万9千社)は継続雇用制度を持ち、定年後も希望者を雇用している。ただ、その5割強は労使協定の基準を満たす人に対象を絞っている。労働政策研究・研修機構によると、健康状態や出勤率・勤務態度のほか、約5割の企業が業績評価も基準に使っている。改正法は企業が労使協定で対象者を選別することを禁じる。ただ、企業の負担が重くなり過ぎないよう、厚生労働相の諮問機関である労働政策審議会で指針を作り、勤務態度や心身の健康状態が著しく悪い人は対象から外せるようにする。継続雇用する対象者の範囲は年金の受給開始年齢の引き上げに合わせて広げ、受給開始が65歳となる25年度には65歳まで希望者全員の雇用を求める。指導や助言に従わない企業名は公表する。11年6月の厚生労働省の調査では、過去1年に定年を迎えた約43万人のうち10万人以上は継続雇用を希望しなかった。年金の受給年齢が上がると定年後もしばらく年金を受け取れなくなるため、来春以降は希望者は増えると考えられる。みずほ総合研究所の試算では、継続雇用を希望しなかった人と希望しても離職していた人が全員、継続雇用されると賃金総額は来年度に4千億円増える。25年度には1.9兆円増え、総人件費を約1%押し上げる。コスト増以上に、能力の低い従業員も雇用しなくてはならず労働生産性が下がると懸念する声も多い。第一生命経済研究所の熊野英生首席エコノミストは「人件費の増加を防ぐため能力の高い高齢者の賃金まで企業が一律に抑制しかねない」と警鐘を鳴らす。高齢者の雇用が増える結果、企業が若年者の雇用を抑える可能性もある。「高齢者と若者のワークシェアなど柔軟な働き方を進めていく必要がある」と高年齢者雇用コンサルティングの金山驍社会保険労務士は指摘している。

*1-2-1:http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201709/CK2017091202000117.html (東京新聞 2017年9月12日) 子育て「共助で」 「こども保険」提言の小泉氏
 幼児教育・保育の無償化を目指す新制度「こども保険」の創設を提言した自民党の小泉進次郎筆頭副幹事長=写真、小平哲章撮影=は十一日、本紙のインタビューに答え「親の自助だけに子育てを委ねるのは難しい。急速に人口が減っている中で、優先すべきは人生前半の教育だ。共助の仕組みである保険がかなう」と必要性を強調した。こども保険は、厚生年金と国民年金の保険料に一定額を上乗せし、児童手当の増額などに充てる制度。税金でなく「社会保険方式」で財源を確保するのが特徴だ。小泉氏らは約一兆七千億円あれば、実質無償化になると試算する。だが、負担が現役世代に限られることや、子どものいない世帯はサービスを受けられない点が課題と指摘され、自民党内にも反対論が強い。小泉氏は「子どもがいなくても年金、医療、介護の受け手となる。その持続可能性を担保するのは若い人だ」と指摘。二年後に予定される消費税増税の増収分を財源にすべきだとの意見には「政治的な困難、待ったなしの子どもの問題を考えたら現実的なのはこども保険だ」と反論した。こども保険は二〇一六年二月、小泉氏を中心に自民党の若手議員が参加した「二〇二〇年以降の経済財政構想小委員会」が議論に着手。今年三月に導入を促す提言をまとめた。四月に政調会長を委員長とする特命委員会に格上げされた。

*1-2-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20170828&ng=DGKKZO20438380X20C17A8NN1000 (日経新聞 2017.8.28) 忖度しすぎ?シルバー民主主義、高齢者を優遇、財政悪化 負担増、受け入れる素地
 年金は少しでも多く、医療・介護や税の負担は少しでも小さく――。若者に比べて高齢者を優遇する「シルバー民主主義」政策が財政を悪化させてきた。お年寄りがこれからますます増えるなか、目先の痛みを強いる財政再建など、とても支持を得られない。だがこうした常識を覆す研究が出てきた。諦めるのはまだ早い。お年寄りの政治への影響力は大きい。直近3回の衆議院選挙の平均投票率は20代が39%なのに対し、60代は75%だった。2025年には、有権者の6割が50歳以上になる。病院の窓口負担を増やしたり、年金の給付額を減らしたりするのは難しくなるというのが霞が関や永田町の常識だ。
●利害・公共心カギ
 政治家は投票所に足を運んでくれる人の意向を気にする。それなら選挙制度を変えるしかない。そこで親が子どもの分まで投票する「ドメイン投票」や、年齢が若いほど1票の価値を高める「余命投票」などが真剣に議論されてきた。しかし、本当に単純な世代間対立で語れるのかと異議を唱える研究が最近、出てきた。鶴光太郎慶大教授らが全国の6128人に税制と社会保障に関する考え方を聞いたところ「増税をして社会保障を拡大する必要がある」とした人が20代では29%で、60代では40%だった。高齢になるほど高くなる。高齢者はすでに社会保障の恩恵を受けており、実利の面から増税と社会保障充実の組み合わせを選んだ可能性がある。一方、20代で最も支持を集めたのは「増税をせず社会保障を拡大する」というただ乗りで、35%を占めた。高齢者に比べてすぐに社会保障の恩恵を感じにくいため、増税への支持が少ないようだ。調査では政府やまわりの人への信頼が低く、ゴミのポイ捨てや年金の不正受給などに目をつぶる「公共心の低い人」ほどただ乗り政策を選ぶ傾向もあった。財務総合政策研究所の広光俊昭氏は仮想の国の財政政策について、負担を30年後に先送りするか、現世代と将来世代が分かち合うかを10~70代の447人に聞いた。先送りは、30年後に付加価値税(消費税に相当)が10%から25%に、年金給付が月10万円から5万円になる。分かち合いは付加価値税が20%、年金給付は7万円の状態がずっと続く。30代は67%が、60代は54%が分かち合いを支持。「将来世代」役を1人置いて討議をすると、分かち合いを選ぶ割合はさらに高まった。広光氏は「政策選択には個人的な利害と公共的な判断が併存して働く」とみる。
●若者の理解課題
 「政治家が高齢者の意向を勝手に忖度(そんたく)しているだけ。きちんと説明すれば高齢者もある程度の負担増を受け入れる」。「シルバー民主主義」(中公新書)を書いた八代尚宏・昭和女子大学特命教授はいう。
ただ、お年寄りの理解を得ても財政再建のハードルは高い。莫大な国の借金が若者の不安につながっている。鶴氏は「若い人でも目先の利益を重視する傾向がある」と話す。教育年数が短く、時間あたりの所得水準が低い人ほど、小さな負担で大きな受益を求めがちという。世界的に所得格差の不満が高まるなか、新たな人気取りは財政再建をより難しくする。

*1-2-3:https://www.nikkei.com/article/DGXLASDC08H39_Y7A900C1MM8000/?dg=1&nf=1 (日経新聞 2017/9/10) 介護費膨張 3つの温床 25年度に20兆円、ムダの解消急務
 介護保険が膨張している。介護施設や在宅サービスの給付費は総額約9兆円に上り、2025年度には2倍以上のおよそ20兆円に膨らむ見込みだ。給付の伸びは高齢化だけでは説明しがたく、サービスのムダにつながる3つの温床が浮かび上がってきた。「お肉はこのくらいでいいですか」。横浜市金沢区の団地。ヘルパーの藤田博美さん(62)が菅野茂さん(81)に尋ねながら料理する。訪問は週2回。「体の状態が悪いとき、言わなくても分かってくれる」と菅野さん。利用するのは生活援助と呼ぶサービスで、全国の平均的な利用回数は月10回程度。菅野さんのように常識的なケースが多くを占めるが「家政婦代わりに使われて本人の自立につながらない」(神奈川県の中堅介護事業者)との指摘が絶えない。北海道標茶町101回、大阪市98回……。財務省が6月まとめた調査には生活援助のひと月当たりの利用ケースで驚くような数字が並んだ。介護の取り組みが先進的とされる埼玉県和光市では月平均わずか6.7回で最高利用回数も30回だ。
■安い自己負担
 標茶町によると、101回利用したお年寄りは軽い認知症を患うなどして手厚い世話が必須だ。こうしたやむを得ないケースもあるが、全国でみれば要介護度や居住環境が同じでも自治体格差が大きく広がっている。ムダを生む理由の一つは「安さ」だ。例えば生活援助なら1回約2千円。自己負担は原則1割の200円ほど。最低でも1時間925円ほどかかる民間の家事代行サービスより格段に手軽だ。軽い介助が必要な要介護1なら保険給付の月額限度額は17万~19万円程度で、上限内で何度でも利用可能。コスト意識が甘くなり生活の「援助」に使うという本来の目的を逸脱しやすい。財務省幹部は「あまりにずさんな使い方が増えた。来年度改定で厳格に対応する」という。政府内ではサービス利用の上限制導入などが課題に浮上している。介護保険の給付費は国や自治体による公費と40歳以上からの保険料(労使折半)でまかなう仕組みだ。健康保険組合連合会によると13年度から17年度にかけて労使を合わせた保険料は7千円近く増え、年9万円に迫る。15~25年の要介護の認定者数の伸びは3割強を見込むが、保険からの給付費総額は2倍になる。高齢化で重度の認定者が増える面もあるが、財務省などはムダ遣いなどの非効率が広がってきた影響だと分析している。
■規制に抜け道
 保険対象の施設などには国の総量規制があるが、ここにも死角がある。その一つがサービス付き高齢者住宅(サ高住)などによる需要の囲い込みだ。サ高住自体は一種の賃貸住宅で保険の枠外。ところが運営者の企業などがサ高住に住むお年寄り向けに自社系列の事業者を使い、頻繁な在宅サービスを供給するケースも急増した。大阪府が昨年12月公表した調査では、府内のサ高住や有料老人ホームでは給付限度額の9割前後を消化していた。全国平均は約4~6割だ。この6年で府内にサ高住などの施設数が3倍に拡大した結果、その施設と在宅などのサービスが抱き合わせで増えていたのだ。
■監視難しく
 では介護サービスの内容を定めるケアプランを厳しくすればいいかといえば、それも困難だ。ここに3つ目のムダの温床がある。介護保険の運営主体の市町村にはプランを精査して見直しを迫る権限がない。介護事業所の経営者は「ケアマネジャーと事業者が結託すれば過剰サービスは防ぎようがない」と明かす。介護保険には今年度から収入が多い人ほど多く保険料を負担する「総報酬割」が段階導入される。大企業を中心に約1300万人は負担増の見込みで、高所得者を中心に現役へのしわ寄せは拡大の一途だ。焦点は政府と与党が年末にかけてまとめる来年度の介護報酬改定だ。「要介護度が低い人向けサービスを定額制にしたり、事業者が回数を抑えたりする動機付けが必要」。日本総合研究所の西沢和彦氏は指摘する。例えば現行は状況が改善して要介護度が下がると介護報酬も下がり、事業者の経営が苦しくなる。そこで自立を後押しした事業者には努力に報いて報酬を上乗せすれば、ムダ遣いを直す余地が生まれる。近年の介護費用の伸び率は医療や団塊の世代が受給し始めた年金を大きく上回る。介護の効率化を進めながら質の高いサービスの担い手のやる気を引き出せるか。介護保険は改革を先送りできないところまで来ている。

*1-2-4:https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170907-00000022-kyt-l25 (京都新聞 2017/9/7) 息子をかたり490万円詐取 大津の女性被害
 滋賀県警大津署は7日、大津市内の女性(68)が息子をかたる男に490万円をだまし取られたと発表した。
同署によると、5日から6日にかけ、女性宅に息子を名乗る男から「友人と投資をやっていて、友人が会社の金に手を出した。500万円の示談金が必要」と電話があった。女性は大阪府高槻市内で、弁護士の代理を名乗る男に現金を手渡したという。

<外国人労働者差別>
*2-1:http://qbiz.jp/article/117249/1/ (西日本新聞 2017年9月3日) 佐賀県、外国人受け入れへ態勢着々 在住者13%増、伸び率全国トップ
 佐賀県内在住の外国人数が、2016年は前年比13%増の5140人で、伸び率では全国の都道府県でトップになった。県は今後の増加を見据え、日本語教室の開設を後押しするなど受け入れ態勢づくりに取り組んでいる。全国ではごみ分別の理解不足などから住民トラブルに陥ったり、犯罪に巻き込まれたりするケースも後を絶たないが、山口祥義知事は「官民で多文化共生を進めたい」と話す。県によると、県内在住者のうち、技能実習生が1863人で前年より426人増えた。留学生も前年比87人増の744人。この両者で全体の増加(604人)の約85%を占め、伸び率を押し上げた。コンビニや工場などの労働現場は人手不足に陥っており、技能実習生は「引く手あまた」(福岡県内の機械部品メーカー)の状態。県によると、多くが製造現場で働いており、今後も増える見通しという。このため、県は外国人の受け入れの課題や対策などの助言を政策に反映させようと、国際交流の有識者や関係者を招き、2015年4月に国際戦略本部会議をスタート。8月24日に6回目の会議を開き、「外国人住民への生活支援」をテーマに約20人が論議した。この日の会議では、日本で暮らす外国人を支援する東京のNPO法人国際活動市民中心(通称CINGA=シンガ)のコーディネーター新居(にい)みどりさんが、「外国人の在住には法律と言葉、心の『三つの壁』がある」と指摘。具体的には(1)夫の暴力で骨折しながら「逃げたら在留資格を失って子どもに会えなくなる」と逃避できない(2)東日本大震災で「タカダイ(高台)」の言葉の意味が分からず避難が遅れて被災した(3)マンションの隣人から「怖い」と敬遠され孤立した−といった事例を報告した。県によると、県内には日本語での会話に支援が必要な小中高校生が50人いるといい、子ども世代へのサポートも欠かせないという。県は「佐賀モデル」として、市民ボランティアによる日本語教室開設を会場費の助成などで後押ししており、現在、13教室が運営されている。本年度からは専任のコーディネーターも1人配置し、「壁」の突破に努めている。

*2-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20170909&ng=DGKKASFS06H5G_X00C17A9MM8000 (日経新聞 2017/9/9) 外国人就農、通算3年 特区で延長 総労働時間には上限
 政府は国家戦略特区で認めた農業の外国専門人材について、日本で働ける期間を通算で3年とする方針だ。技能実習制度で働く場合は最長3年だが、特区では農繁期だけ働く場合などは初めて来日してから3年を超えても働くことを認める。年間総労働時間の上限も設け過重労働を防ぐ。外国人材の活用で、高齢化などで担い手不足に悩む地方農業の活性化を狙う。農業での外国人受け入れを盛り込んだ改正国家戦略特区法が6月に成立したことを受け、受け入れの詳細をまとめた指針や政令を近く公表する。自治体の間で農業分野の外国人活用に対する関心は高く、すでに特区に指定されている愛知県のほか長崎県や茨城県、群馬県昭和村、秋田県大潟村などが関心を示している。政府は年末をめどに特区を追加指定する方針で、これらの自治体が選ばれれば、農業での外国人活用が広がる。政府・与党内には特区に限らず全国で認めるべきだとの声もある。農業で受け入れる外国人は満18歳以上で、1年以上の実務経験がある人材に限る。農業に従事するうえで必要な日本語が話せることも条件とした。派遣会社が雇用契約を結び、過去5年以内に労働者を雇用した経験がある農業生産法人などに派遣する。生産法人が直接雇用することは認めない。期間は通算で3年だ。例えば春から夏にかけて半年だけ日本で働くケースでは、初来日から6年目まで就労できる。農作業のほか加工や販売にも携わったり、複数の生産法人で働いたりすることもできる。派遣会社には日本人労働者と同等以上の報酬を払うことを義務付ける。指針などとは別に、法令の解釈通知を通じて年間の総労働時間の上限を決める。

*2-3:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/461590 (佐賀新聞 2017年9月8日) 外国人実習生の労働条件改善を 市民団体、県に要請
 労働組合や患者団体などでつくる「はたらくもののいのちと健康を守るネットワークさが」は7日、外国人技能実習生の労働条件の改善などを求める要請書を佐賀県に提出した。実習生の長時間労働や賃金の未払いなどの違法な労働実態の調査や、実習生に対応できる相談窓口を設けることなど4項目を求めた。要請書を手渡した東島浩幸弁護士は「外国人技能実習生の制度は『奴隷労働』と国際的にも批判されている。窓口の設置や、通訳をつけて対応するといった相談体制の充実に取り組んでほしい」と強調した。県産業人材課の担当者は「国が所管しているため、(県では)取り組みを進められない項目もある。対応できる部分は関係課に報告したい」と話した。団体側はアスベストを使用した建物の所在を掲載したハザードマップの作成も求めた。

<高度専門職差別と女性差別>
*3-1:http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201709/CK2017090902000140.html (東京新聞 2017年9月9日) 【政治】働き方法案に「共謀罪」・安保法の手法 「残業代ゼロ」根幹残し一括化
秋の臨時国会に提出される「働き方改革」関連法案のうち、労働基準法を改めて「残業代ゼロ」制度(高度プロフェッショナル制度)を創設する部分は、継続審議となっている法案を取り下げ、他の法案と一括化して出し直す。かつての「共謀罪」法や安全保障関連法と似通う手法だ。「残業代ゼロ」制度は、高収入の一部専門職を労働時間規制から外す。政府はこれを柱とした労基法改正案を二〇一五年の通常国会に提出したが、一度も審議入りしていない。法案要綱では、関連法案のうち「残業代ゼロ」を導入する労基法改正案は、休日確保措置などが新たに盛り込まれたが、従来の法案と根幹部分は変わらない。批判が強い法案の内容を微修正して出し直すやり方は「共謀罪」法と重なる。「共謀罪」法案は〇三、〇四、〇五年に国会提出され、「人権侵害につながる」との懸念が出て廃案に。安倍政権は構成要件を一部変更した上で罪名を「テロ等準備罪」に変え、今年六月に成立させた。また、今回の法案は残業時間の上限規制や正社員と非正社員の待遇差縮小など、性格の異なる法案と一括化して提出する。審議時間を短縮するのが狙いで、「残業代ゼロ」など個別の制度の是非を巡る審議が不十分になる可能性がある。多くの法案と抱き合わせる手法は、一五年九月に成立した安保関連法と似ている。同法も、集団的自衛権行使を可能にする武力攻撃事態法、地球規模で米軍を支援可能にする重要影響事態安全確保法など十本を一本化し、批判を受けた。政府が提出した法案を自ら取り下げるのも異例。二〇〇〇年以降では、衆参の多数派が異なる「ねじれ国会」で成立を断念するなど計八法案だけだ。一橋大大学院法学研究科の只野雅人教授(憲法、議会制度)は「政治的な思惑から法案を一括化することは、審議の充実という観点から問題がある。賛否が分かれる法案は個別に提出し、別々に議論すべきだ」と話す。 

*3-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20170909&ng=DGKKASDF29H17_Y7A900C1MM8000 (日経新聞 2017.9.9) M字カーブ 「谷」緩やかに、30~40代女性の離職に歯止め
女性の就労が増えている。労働力としてみなされる女性の割合を示すグラフをみると、30~40歳代の部分が顕著に落ち込む「M字カーブ」と呼ばれる特徴が薄れ、米国や欧州各国などに似通ってきた。育児休業など企業側の制度整備が進んだことや働く意欲を持つ人が増えたことが大きいが、待機児童の解消はなお道半ばだ。働きやすさと労働の質を高めるさらなる工夫がいる。デイサービス(通所介護)大手のツクイは従業員の75%が女性だ。働き手の確保のため介護施設内に託児所を設け、0~2歳児の子供が5人いる。ある従業員は「休憩時間をつかって子供の様子を見に行けるので安心」と語った。総務省の7月の調査によると15~64歳人口に占める女性の労働力の割合(労働力率)は69.7%で、働く女性は着実に増えてきた。年代別ではM字の谷に相当する35~44歳の労働力率が前年同月比0.7ポイント増の75.3%。10年前の2007年7月と比べると全ての年代で上昇し、全体的に底上げされている。
●米欧に近づく
 15年時点では米国や英国、北欧地域とは大きく異なるカーブを描いていた日本。近年は米欧とほぼ遜色のない形に近づいており、女性の労働市場は歴史的な構造変化を遂げつつある。女性の就労が加速した最大の理由は、企業が離職防止に取り組んできたことだ。女性の育休取得率はやや低下傾向にあるとはいえ8割超で推移している。育休中の生活を支える政府の育児休業給付金の受給件数は、06年度の13万件から16年度の32万7千件へと2倍以上に増えた。高齢化で15~64歳の生産年齢人口はこの10年で700万人以上も減った。その一方で実際に働いている労働力人口をみると同じ時期におよそ50万人増えた。女性だけに限れば約200万人増え、M字の底を押し上げるのに大きく貢献したことがわかる。働き口も高齢化でニーズの強まる医療・福祉業など裾野が大きく広がっている。大和総研の鈴木準政策調査部長は25~44歳女性の就業率について「このままのペースで伸びれば22年には80%に到達する」と話す。国立社会保障・人口問題研究所の試算をもとに計算すると22年に25~44歳女性の就業者数は16年と比べて200万人以上減る見通しだが、就業率が80%に上がることで減少幅は46万人で済む。政策努力などでさらにこの比率を高めることができれば、減少を食い止めることができるかもしれない。もっとも楽観的な見方を戒める声も目立つ。第一生命経済研究所の柵山順子氏は「M字カーブの完全解消には保育所不足などがハードルになるだろう」と分析する。ここ数年で女性の就労が政府の想定以上のテンポで進み、待機児童は減るどころか2万6千人強に膨らんだ。政府は22万人の保育枠を追加整備する方針だが、都市部の整備が遅れるミスマッチを解消するのはやさしくない。
●賃金は伸び鈍く
 生産年齢人口の急激な減少が進む中で女性の就労をさらに後押しするには企業の一段の取り組みも重要だ。オリックスは配偶者の転勤で現在の勤務地で仕事が続けられない場合、勤務エリアを変更できる制度を昨年3月に導入。配偶者の転勤で退職を選ぶ社員も多かったが「キャリアを途中で諦めなくてすむので好評だ」(同社)。ユニ・チャームは全社員を対象に在宅勤務を導入。ネスレ日本は昨年に在宅勤務の制約を緩和し、上司の許可があれば理由に関係なく会社以外で勤務できるようにした。経済成長の土台を確かなものにするにはM字カーブを解消し、労働力を底上げするのは理想的な方向だ。とはいえ夫の収入が低迷するなどしてやむを得ずパートなどで働きに出る女性もまだ多く、賃金の伸びは鈍い。さらに女性の就労を後押しするには育児休業などの整備を加速させるのはもちろん、生産性向上と賃上げなどで働き手に報いる努力が必要だ。離職者向けの再就職支援、学び直しの機会の提供など、様々な手立てを講じることも欠かせない。

<サービス付き住宅>
PS(2017年9月12日追加):*4のように、訪問サービス付き高齢者向け集合住宅に大手不動産などの参入が相次いでいるそうだが、私の叔父が入っている横浜市のサ高住には食堂があり、栄養管理した食事が出されて介護付きであるため、便利だ。中では、書道や軽い体操などのコースもあるが、高齢者が若い頃に流行っていた音楽や映画などもやると心が元気になってよいと思われる。なお、訪問サービスの内容に介護だけでなく、家事サービスを加えて間取りを広くすれば、高齢者だけではなく、独身者、共働き家庭、子育て家庭にも便利な住宅になりそうだ。

*4:http://digital.asahi.com/articles/ASK945D0FK94UTLZ00G.html?iref=comtop_list_biz_f03(朝日新聞 2017年9月9日)「サ高住」銘柄に熱視線 大手不動産など参入相次ぐ
 「足腰が元気なうちに『終の棲家(すみか)』となる新築物件に移り住もう」。郊外の持ち家を処分して都心の超高層マンションに引っ越すシニア層が増えています。一方で、看護・介護の訪問サービス付きの高齢者向け集合住宅、いわゆる「サ高住」が高い関心を集めています。利用者の需要も全国レベルで拡大。事業者向けの税制優遇や融資制度など、国や自治体が促進施策を充実させて、参入企業も増えています。登録物件をオンラインで公開する高齢者住宅推進機構によると、有料老人ホームも含めた「サ高住」は7月末時点で、全国6697棟、21万8851戸。この4年で棟数、戸数とも倍増しました。政府は共同住宅、寮、ホテル、老人ホーム、賃貸住宅など既存施設の改修を呼びかけていますが、補助事業全体に占める改修物件の割合は少なく、大半は民間企業が医療・社会福祉法人と手を組んで開発した新築物件です。「サ高住」事業に参入している民間企業で有名なのは、学研ホールディングス系の学研ココファン。神奈川県を中心に全国で117事業所を展開しています。最近勢いがあるのは、大手損害保険のSOMPOホールディングス。「メッセージ」「ワタミの介護」と介護事業者を相次いで買収し、新築物件を供給しています。大手不動産の参入も目立ちます。賃貸アパート受託など、サブリース事業を手掛ける企業が、入居者への転貸目的で働きかけを強めそう。「サ高住」は株式市場のテーマとしても今後、注目の的になる可能性があります。

<開発力・技術力とそれを支える国民>
PS(2017年9月14日追加):*5-1のように、佐賀新聞は2015年度の国民医療費が42兆円に達し、これは、高齢化に加えてオプジーボなどの超高額薬の保険適用が影響したものだと報道している。高齢化によって有病者が増えるのは自然だが、薬の飲ませすぎもあるのではないかと思われ、オプジーボの価格も、図のように、英国・米国では日本の約1/5と1/2だったので、厚労省の価格決定や過度な使用範囲の制限が問題なのだと思われる。何故なら、原理から考えると、オプジーボは、どの癌にも効き広範に使用できるのが当たり前だからだ。
 また、*5-2-1のように、英国・フランスに続き中国がガソリン車・ディーゼル車の廃止に向けた検討に入り、環境規制を強化するため、自動車大手は電気自動車(EV)の開発を急いでいるそうだ。しかし、日本の「リーフ」は、いつまでも「市街地で短い距離を走るなど、中国では独自の使われ方がある」などと、排気ガスを出さないのだから少しくらい不便でも我慢しろという態度だ。しかし、EVは、①排ガスが出ない ②静か ③操作性がよい ④燃料費がいらない など、ガソリン車と比べて欠点がないから売れるのであって、ドイツのVWは、*5-2-2のように、2030年までにEVに200億ユーロ(約2兆6千億円)を超える投資を行う計画を発表し、2025年までには80車種の新型車両を投入する方針にしたそうだ。なお、開発を始めて20年以上経過している日本は、とっくの昔にそれをクリアしていなければならない時期なのである。そして、こういう意思決定を速やかに行えるためには、文系の人もこの程度の理系の知識は必須であるため、それを高校卒業までに教えておかなければ国力をそぐことになる。
 そのため、*5-3のように、私企業である日立が英国に建設する原発に、同じく私企業である日本の銀行が融資する建設資金を、日本政府が全額補償して膨大な偶発債務を引き受け、昔帰りの技術に固執するなどという馬鹿な税金の使い方を止めさせつつ、幼児教育の無償化もよいが、それに先立って小学校への入学年齢の3歳への引下げを行い、いろいろなことを高校卒業までにマスターしておけるようにすることが必要だと考える。

   
   2017.9.13佐賀新聞      日米英の価格比較    2016.11.2朝日新聞

*5-1:http://www.saga-s.co.jp/news/national/10201/462976 (佐賀新聞 2017年9月13日) 15年度国民医療費42兆円、過去最高、高額薬が影響
 厚生労働省は13日、2015年度に病気やけがの治療で全国の医療機関に支払われた医療費の総額(国民医療費)が、前年度比1兆5573億円増(3・8%増)の42兆3644億円だったと発表した。国民1人当たりでは1万2200円増(3・8%増)の33万3300円。いずれも9年連続で過去最高を更新した。高齢化の進行に加え、がん治療薬「オプジーボ」など超高額薬の保険適用が相次いだことが要因。国民医療費が国民所得に占める割合は10・9%。年代別では、65歳以上の高齢者向けが25兆1276億円で59・3%を占めた。

*5-2-1:http://qbiz.jp/article/118672/1/ (西日本新聞 2017年9月13日) EVシフト急加速 英仏中、ガソリン車廃止検討
 英国やフランスに続き中国がガソリン車とディーゼル車の廃止に向けて検討に入った。環境規制の強化を受け、自動車大手は電気自動車(EV)の開発を急ぐ。割高な生産コストや基幹部品である電池の安定調達がEV転換への課題となる。「フォルクスワーゲン(VW)の歴史に新たな幕が開こうとしている」。フランクフルト自動車ショー開幕を前にした11日、ミュラー会長は環境規制に対応したEVを含む電動化投資戦略を発表。2030年までにグループで200億ユーロ(約2兆6千億円)超を投じる計画をぶち上げた。欧州に続いて、中国政府はEVをはじめとする新エネルギー車の普及を加速させる。EVの主戦場になると予想される中国市場で、日系メーカーは攻勢をかける構えだ。先行する日産自動車は18〜19年に複数のEVを投入する方針で、今月披露した新型「リーフ」の発売も検討する。西川広人社長は「市街地で短い距離を走るなど、中国では独自の使われ方がある」とし、現地で受け入れやすい商品展開を狙う。現地主導で開発するホンダは18年に新型EVを投入する予定。出遅れるトヨタ自動車も19年をめどにEVモデルを既存車種に設定する考えだ。規制強化をいち早く打ち出した欧州では、低燃費を売りにしたディーゼル車からの撤退が進む。ホンダは18年に欧州で売り出すスポーツタイプ多目的車の新型「CR−V」にディーゼル車の設定をなくす方針。SUBARU(スバル)は20年をめどにディーゼル車販売を取りやめる見通しだ。ある日系メーカー首脳は「環境対応車の主役にディーゼル車が今後座ることはない」と断言する。ただ、EVはエンジン車に比べると依然として割高感があり、販売が政府の補助金に頼っている面は否めない。さらに、基幹部品のリチウムイオン電池に使われるレアメタル(希少金属)の生産は中国やアフリカ、ロシアなど少数の国に偏っており「安定調達がネックになってくる」(日産幹部)との懸念もある。国際エネルギー機関(IEA)は、世界の新車販売に占めるEVの割合は35年でも1割程度だと予想。住商アビーム自動車総合研究所の大森真也社長は、EVの普及見通しについて、エンジン車の乗り入れが将来禁止されそうな都市部で存在感を示すなど「すみ分けが鍵となる」と指摘する。

*5-2-2:http://qbiz.jp/article/118559/1/ (西日本新聞 2017年9月12日) VW、電動車両に2・6兆円投資 80車種投入へ
 ドイツ自動車大手フォルクスワーゲン(VW)は11日、グループで2030年までに電気自動車(EV)など車の電動化に200億ユーロ(約2兆6千億円)を超える投資を行う計画を発表した。25年までに80車種の新型車両を投入する方針だ。VWの排ガス規制逃れによる欧州でのディーゼル車離れや、市場シェアが高い中国の大気汚染規制の動きに対応する。欧州最大級の国際自動車ショーが12日にドイツ・フランクフルトで開幕するのを前に、ミュラー会長が公表した。車に搭載する電池性能の向上のほか、工場設備や充電設備を整備する。80車種のうちEVが約50車種、プラグインハイブリッド車(PHV)が約30車種になるという。グループのブランド全300車種に電動化モデルを最低一つそろえる。ミュラー氏は「自動車産業の(電動化への)変換は止められない。VWがそれを主導する」と語った。また、VW傘下の高級車アウディは11日、ハンドルやペダルがない完全自動運転によるEVの試作車を公開した。1回の充電で800キロまで走行できることを想定している。具体的な実用化の時期は未定。

*5-3:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20170902&ng=DGKKASFS01H5T_R00C17A9MM8000 (日経新聞 2017.9.2) 政府、原発融資を全額補償、まず英の2基 貿易保険で邦銀に
 政府は日立製作所が英国に建設する原子力発電所について、日本のメガバンクが融資する建設資金を日本貿易保険(NEXI)を通じて全額補償する。先進国向け案件の貸し倒れリスクを国が全て引き受けるのは異例の措置だ。国内の原発新増設が難しい中、国が全面的な支援に乗り出してメガバンクなどの協力を引き出す狙い。インフラ輸出は中国など新興国勢との競争が激しくなっており、国が他のインフラ案件でも支援拡充に動く公算が大きい。安倍晋三首相は8月31日にメイ英首相と会談し、原発建設の協力推進を確認した。貿易保険(総合2面きょうのことば)の補償対象は日立子会社のホライズン・ニュークリア・パワーが受注した、英中部ウィルファで計画中の原発2基だ。両政府と日立は事務レベルで資金支援の枠組みを詰めて2019年中の着工を目指している。試算によると、事業費は2基で2兆円超だ。英政府と日立、日本政策投資銀行、国際協力銀行(JBIC)が投融資を実施する見込みだが、巨額な資金を調達するには民間融資が不可欠になっている。NEXIは通常、民間融資が焦げ付いた場合に備えた保険を提供し、融資額の90~95%を補償する。今回の英国案件については全額を補償する方向で邦銀と協議に入る。原発事業は東京電力福島第1原発事故以降に安全対策費が膨らみやすく、三菱東京UFJ銀行やみずほ銀行も貸し倒れリスクが大きいと判断しNEXIの全額補償を条件にしていた。過去に途上国向けで全額補償したことはあるが、先進国では例外的な措置だ。数十年程度の長期融資などが補償の条件になる見込みだ。原発事故などが発生した場合、三菱UFJ、みずほ両行は第三者から原発事業への貸し手責任に関して訴訟を起こされるリスクもある。両行は損害賠償に関する日英両政府間の協議などを見極めたうえで最終判断する。国が資金支援で前面に立つのは大きなリスクとも隣り合わせだ。原発建設は徹底した安全対策で工程が長引く傾向にあり事業費が想定を上回るケースも後を絶たない。貸し倒れになったりすればNEXIやJBICのバランスシートを直撃し、税金投入を通じた資本増強が不可避になる。最終的に多額の国民負担が発生する危険を冒しながらインフラ輸出を推進することの是非についても議論が活発になりそうだ。一方で中国は国有企業を中心に国を挙げて大型のインフラ輸出を加速させており、日本も対抗上、相応のリスクを取らなければ激しい受注レースで生き残れない現実もある。英政府は15年、英南東部で中国製の原子炉を先進国では初めて導入することを決めた。安倍政権は今回、全額補償措置などと引き換えに英国側にも官民での資金支援を手厚くするよう要請する。

<福岡市の再開発と自動車>
PS(2017年9月17日追加):日本で5番目に多い人口約153万人を擁する福岡市で、*6-1のように、建物の高さ制限を緩和しているのは新しい街づくりが進み易くなってよいが、次はオフィスや商店を高くなったビルに集めて、広い自動車道・自転車専用道・歩道などを備えた緑多き安全な街づくりをして欲しい。なお、排ガスの出る自動車が通らなければ、ビルの中を通る道路や高速道路を作ることも可能だ。また、福岡市は市内に空港があって便利な街だが、航空法の規制緩和は危ないので、空港を能古島か糸島半島に移転してはどうかと考える。現在は北九州空港もできているため、福岡空港は西に移動してもよいのではないだろうか。
 さらに、*6-2のように、我が国では、現在の一般車を前提として高齢者の免許返納を進め、高齢者の運転を制限しているが、免許返納して外出できなくなってから認知症になる高齢者も多いため、何でも禁止するのではなく、自動運転車や運転支援車など、自動車の方を迅速に改良すべきだ。

*6-1:http://qbiz.jp/article/118957/1/ (西日本新聞 2017年9月17日) ウオーターフロント地区も高さ緩和 福岡市都心部再開発 上限100メートル、国が最終調整
 福岡市都心部の再開発を促進する一連の建物の高さ上限緩和で、国が博多港中央・博多両ふ頭のウオーターフロント(WF)地区について、現行から最大30メートル引き上げて高さ上限を最高点で約100メートルとする方向で最終調整していることが16日、分かった。高さ上限緩和を巡っては、国が「天神明治通り地区」(中央区)で渡辺通りを挟んで西側は一律約115メートル、東側は約99メートルを最高点とするレベルまで大幅に引き上げる方針を既に固めており、月内にもWF地区と合わせて正式に決定する見通し。福岡市は天神、JR博多駅周辺、WFの3地区を「都市成長の軸となるトライアングル(三角形)」と位置付け、民間を中心としたビルの新築・建て替えを誘導するため、国に対し国家戦略特区による航空法の規制緩和を要望している。7月には、天神に隣接する旧大名小跡地(中央区)の高さ上限が地上26階建て相当の約115メートルまで緩和されたばかりで、都心再生に向けた環境整備が急ピッチで進みだした形だ。WF地区は、海外からの大型クルーズ船の発着地点として注目が高まっており、市は民間活力を生かして高級ホテルや大型ホール、商業施設を集積する再整備計画を検討している。WF地区の建物の高さ上限は現在、福岡サンパレス付近で約70メートルなどとなっている。市は、地区内の博多ポートタワー(高さ約100メートル)と同じ高さを最高点とする規制緩和を求めていた。実現すれば、地上22階建て相当のビルの建築が可能となり、WF地区の再整備計画の追い風となりそうだ。また、市はJR博多駅周辺地区についても、現行の高さ上限約50メートルを最高約60メートル(地上13階建て相当)まで引き上げることを要望しており、国との協議が続いている。

*6-2:https://ryukyushimpo.jp/kyodo/entry-572995.html (琉球新報 2017年9月12日)75歳以上の免許返納14万件 改正道交法、事故対策に一定効果
 75歳以上の高齢運転者への認知機能検査を強化した改正道交法は、12日で施行半年となった。高齢者の事故が依然として高水準な一方、1~7月の運転免許証の自主返納は14万件を超え、死亡事故も減少するなど一定の効果があった。警察庁は運転できる車種や地域、時間帯を限定した「限定免許」の導入も検討するなど、さらに事故防止の取り組みを進めていく。警察庁によると、75歳以上の1~7月の免許自主返納は14万3261件(暫定値)で、昨年1年間の16万2341件を上回る勢い。過失の重い「第1当事者」となった死亡事故も1~7月に219件で、過去10年間で最少だった。

<教育は国の礎なのに>
PS(2017年9月25、26日追加):明治時代から「教育は国の礎だ」として小学校から大学まで整備してきたことは、我が国の経済発展に大いに寄与した。今、そのうちの義務教育を3歳から18歳までとして無償化し、現代に必要な基礎的知識や技能を義務教育で身に着けられるようにすることは、無駄遣いでもバラマキでもなく、必要な教育を国民全体に行き渡らせ、生産性を向上させるために必要なことである。にもかかわらず、*7-1のように、「教育無償化」「保育」と言えば、「財源として消費税増税やこども保険が必要だ」とか「バラマキだ」などという批判が出るのは間違っている。バラマキは、景気対策と称して生産年齢人口の成人が働く産業に支払う多額の支出や補助金であり、教育レベルを高めることは、国から補助してもらわなければならない人を減らして税金を多く支払う人を増やすものであるため、消費税以外の税収を財源として優先的に支出しても何ら問題ない。
 また、外国では海底油田から原油を採掘しており、日本の排他的経済水域(EEZ)にも地下資源が埋蔵されていることがわかっていたのに、*7-2のように、海底鉱物採掘は2020年代の半ば頃しか商用化できないそうで、経産省の判断の悪さと生産性の低さが問題である。遅れ馳せでも海底鉱物資源を大量採掘することに成功したのはよいが、海底資源は国有財産であるため、国交省・財務省は国の収入として教育・福祉・国の借金返済に貢献するスキームを作るべきだ。

*7-1:http://qbiz.jp/article/119372/1/ (西日本新聞 2017年9月25日) 財政健全化の目標先送り 人づくり2兆円、ばらまき批判も
 衆院解散・総選挙を決断した安倍晋三首相は25日、「人づくり革命」に2兆円を投じる方針を掲げ、政策パッケージを年内に策定するよう関係閣僚に指示した。2020年度までに3〜5歳児の幼稚園・保育所の家計負担を全て無償とし、0〜2歳も低所得世帯に絞って無償化する。財源には消費税増税分の一部を転用する方針。基礎的財政収支を20年度に黒字にする財政健全化目標の先送りを事実上認めた。19年10月に予定する消費税率8%から10%への引き上げでは、増収分のうち4兆円を「社会保障の安定化」として借金抑制に充てる計画だったが、使途見直しにより財政再建は後回しとなる。無償化で家計は助かる一方、選挙での票獲得を狙った「ばらまき」との批判も強まりそうだ。首相は25日の記者会見で財政目標の20年度達成は「困難」と説明。黒字化自体は引き続き目指すと強調したが、具体的な時期は示さなかった。人づくり革命では、低所得世帯の大学生を対象に17年度から一部導入した給付型奨学金の支給額を大幅に増やすことや、授業料減免の拡充を表明。待機児童の解消に向け、32万人分の保育の受け皿を22年度まで5年間で整備する計画を前倒しし、20年度末までに完了する方針も打ち出した。幼児教育・保育の無償化はこれまで低所得世帯を中心に段階的に進めてきた。年収を問わず全て無償化するには約7300億円の追加費用が必要になる。首相は財源の大半を消費税で賄うとした上で、企業と従業員が負担する「こども保険」の導入是非も引き続き検討すると述べた。企業の設備投資などを促す「生産性革命」についても年内に政策パッケージを策定する。20年度までの3年間を集中投資期間とし「税制、予算、規制改革を総動員」(安倍首相)する方針だ。

*7-2:http://qbiz.jp/article/119459/1/(西日本新聞 2017年9月26日) 海底鉱物、大量採掘に成功 20年半ば、商用化目指す
 経済産業省と石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)は26日、海底にある鉱物資源を船で大量採掘することに世界で初めて成功したと発表した。沖縄県近海では海底から熱水と一緒に噴き出した金属が堆積してできる「海底熱水鉱床」の存在が相次いで確認されており、2020年代半ばごろの商用化を目指す。海底熱水鉱床には亜鉛、鉛のほか、金や銅などの資源が含まれている。今年8月中旬〜9月下旬、沖縄近海に投入した採掘機で海底約1600メートルの鉱床を細かく砕き、ポンプで海水とともに船に吸い上げる方式で試験を実施して成功した。今回採掘した鉱床には日本の年間使用量に相当する亜鉛が存在すると分析しているという。沖縄近海の排他的経済水域(EEZ)内では過去3年間で6カ所の鉱床が見つかっており、今後も新たな鉱床が発見される可能性が高い。日本は鉱物を輸入に頼っており、経産省は「生産性の高い採掘方法を確立し、十分な埋蔵量が確認できれば資源産出国になれる可能性がある」と期待している。18年度に経済性評価を実施する予定だ。

<保育・学童保育の質について>
PS(2017年9月28日追加):*8のように、放課後学童保育は必要で、これは量だけでなく質も重要だ。私は、退職後の教諭が予習・復習を手伝ったり、エンジニア出身者が遊びを兼ねて工作を手伝ったりなどすると、子どものうちから知らず知らずのうちに役に立つ能力が身につき、興味がわいてよいと考える。

*8:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/466972 (佐賀新聞 2017年9月28日) 学童保育、定員501人増 新設や余裕教室活用
 9月定例佐賀県議会は27日、総務、文教厚生、農林水産商工、県土整備・警察の各常任委員会の質疑を行った。共働きやひとり親家庭の小学生を預かる放課後児童クラブ(学童保育)の待機児童が増え続け、5月現在で235人に上っている問題で、県こども未来課は、市町がクラブを新設したり、余裕教室など既存施設を改修したりすることで、本年度中に定員が501人増える見込みを示した。放課後に安心して過ごせる生活の場としての放課後児童クラブを質・量ともに充実することが課題となっている。待機児童問題や、職員の処遇改善などについて、徳光清孝議員(県民ネット)が聞いた。定員増により、待機児童が出ている6市町中、佐賀市を除く5市町は施設面では待機児童を受け入れることができる見通しだが、一方で放課後児童支援員の不足も深刻化しており、「『待機児童が解消される見通し』とまでは言えない」(こども未来課)という。152人と県内で待機児童が最も多い佐賀市の定員増は50にとどまる。支援員の資質向上や処遇改善の質問に、藤本武こども未来課長は「子どもたちが安心して放課後を過ごすため、放課後児童支援員が果たす役割は大きい。市町と連携し、支援員が働きやすい環境づくり、質の向上に努めたい」と答弁した。過熱する部活動や教職員の負担軽減の観点では、武藤明美議員(共産)と古賀陽三議員(自民)が取り組みを尋ねた。牛島徹保健体育課長らは中学校の部活動に関し、「県内統一の休養日を設定する方向で調整している」と述べた。部活動の過熱化にブレーキをかけるとともに、教員の負担軽減を図る。10月初旬にも通知する。6月時点では佐賀市など6市町の教育委員会が休養日を独自に設定している。


<希望の党の小池氏への期待>
PS(2017年9月29日追加):*9-1、*9-2のように、高齢世帯の4分の1が貧困状態にあり、その生活水準は「生活保護以下」である。これは、スーパーでちょっと気を付けて庶民の高齢者の買い物かごを見ていればすぐにわかることで、買いたくても金がないから買えないのだ。にもかかわらず、経済政策は、①物価上昇を目的に金融緩和して貨幣の購買力や資産価値を低下させ ②ゼロ金利にして金融資産からの収入を無くし ③年金を削減し ④介護保険料などの負担は増やし ⑤消費税増税を自己目的化して他の工夫はせず ⑥教育・福祉の財源は消費税しかないかのような論調をはびこらせて高齢者いじめをしており、目に余る。
 そのため、安倍首相の「消費税収の使い道の変更」が衆議院選挙の争点になっているのだが、実際には、*9-3、*9-4の原発は、何十兆円もの予算を使いながら激しい公害を出すシロモノで、速やかに「原発ゼロ」にすれば多額の原発予算を削減して本物の地域再生や教育・福祉にまわすことができるため、希望の党の小池百合子氏には、具体的に、「速やかな原発ゼロと自然エネルギーへの転換」「消費税凍結」「脱世襲政治」を前面に掲げて欲しいと考える。

*9-1:http://qbiz.jp/article/118821/1/ (西日本新聞 2017年9月15日) 高齢世帯の4分の1が貧困状態 「生活保護未満」立命館大教授分析
●独居女性では2人に1人 
 65歳以上の高齢者がいる世帯の貧困率は2016年時点で27・0%−。厚生労働省の国民生活基礎調査を基にした立命館大の唐鎌直義教授(経済学)の独自分析で、こうした結果が明らかになった。1人暮らしの女性は特に深刻で、2人に1人が生活保護の水準を下回る収入で暮らしている。高齢者世帯の貧困率は上昇しており、その背景について唐鎌教授は年金受給額の減少を指摘している。唐鎌教授は、全国約29万世帯を対象に所得や家計支出などを調べた16年の国民生活基礎調査のデータから高齢者世帯の所得状況を分析。平均的な生活保護費(1人世帯で月額約12万円と想定)に租税免除などの影響を加味し、生活保護受給者と同等の生活水準になる世帯年収を1人世帯160万円▽2人世帯226万円▽3人世帯277万円▽4人世帯320万円と設定。この基準に満たない世帯の割合を貧困率として算出した。分析によると、1人世帯の貧困率が特に高く、女性56・2%、男性36・3%。2人世帯でも2割を超え、高齢者と未婚の子の世帯は26・3%、夫婦世帯は21・2%だった。高齢者世帯全体の貧困率は27・0%で、以前まとめた09年調査の分析結果と比較すると2・3ポイント増加。この間、貧困世帯は156万世帯以上増えて約653万世帯に、人数で見れば1・3倍の約833万6千人になった計算だ。背景について唐鎌教授は「公的年金の給付額が低下したため」と指摘。国立社会保障・人口問題研究所の統計から割り出した高齢者1人当たりの年金受給額は「(直近の調査結果である)14年度は年間約161万8千円で、09年度に比べ14万円減っていた」と説明する。国民生活基礎調査は、1986年から毎年実施。全国から無作為に対象世帯を抽出し、回答結果から全体数を推計している。3年ごとの大規模調査の年は、子どもの貧困率も公表しているが、高齢者の貧困率については算出していない。子どもの貧困率は、平均所得の半分に満たない家庭で暮らす子どもの割合で、今回の分析はこの基準と異なるが、唐鎌教授は「子どもだけでなく高齢者の貧困も深刻。生活保護受給者は今後さらに増えるだろう。これ以上の年金引き下げはやめるべきだ」と強調した。

*9-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20170929&ng=DGKKASGF28H0R_Y7A920C1EE8000 (日経新聞 2017.9.29) 市場、財政悪化を警戒、国債の信用リスク高まる、消費増税の扱い懸念
 金融市場で日本の財政悪化への警戒感が高まっている。日本国債の信用力を映すクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)の保証料率が数日で急上昇し、約1年2カ月ぶりの高水準をつけた。長期金利もおよそ2カ月ぶりの水準まで上がった。衆院選を前に、安倍晋三首相をはじめ、どの政党が勝っても財政再建の道は険しいという見方が広がる。安倍首相は選挙の争点に「消費税収の使い道の変更」を掲げる。2019年10月に予定する10%への消費増税の際、もともと借金返済にあてる予定だった税収の一部を、幼児教育の無償化などに回す方針だ。基礎的財政収支(プライマリーバランス)を20年度に黒字化する目標も「達成は困難」としている。市場が意識するのは、首相の発言や動向だけではない。「希望の党」代表の小池百合子東京都知事は景気が回復するまで「増税は凍結する」と唱える。民進党はこの希望の党に事実上合流する。市場関係者は消費増税の行方を注視しつつ「自民・公明両党もそうだが、他党も輪をかけて財政拡張路線ではないか」と警戒している。具体的な市場の動きとしては、情報会社マークイットによると、日本国債の信用力を映すCDSの保証料率がここ数日で急上昇した。市場がよりリスクを意識すると、CDSの需要が高まり保証料率が上がる仕組みだ。料率は衆院解散観測さえなかった今月初めまでは0.3%程度。足元で0.4%前後と16年7月以来の水準まで上がった。長期金利も上がっている。新発10年物国債利回りは28日、国債を売る投資家が増え一時0.075%と約2カ月ぶりの高水準を付けた。この10日で0.03%上昇しており、40年物国債など償還までの期間が長い超長期債で金利上昇が目立つ。欧米の金利上昇が主因だが、メリルリンチ日本証券の大崎秀一氏は「日本の財政悪化懸念もあって投資家の買い意欲が鈍っている」と指摘する。国債の格付けにも不安は連鎖する。欧米の格付け会社は変更しない方針だが、格付投資情報センター(R&I)は28日、首相の財政健全化目標の先送り表明を受けて「政策運営の信頼感を損ね、見通しに対する懸念を高める事態だ」との見解を示した。R&Iは現在、国債の格付けの先行き見通しを「ネガティブ」(弱含み)とする。仮にここからさらなる格下げとなれば、地方自治体が発行する債券や社債などにも影響が広がる可能性もある。政府系金融機関や地方自治体が発行する債券の格付けは、日本国債をもとに決まる。たとえば日本の金融機関などの信用度が下がると、外貨を調達する際の金利が高くなる場合も発生し得る。市場関係者はこぞって「少なくとも選挙が終わるまで不透明感はぬぐえない」と語る。選挙戦で与党も野党も「痛みを伴う改革」よりも、景気刺激に重きを置く政策に傾きやすいとみる。金利動向をはじめ市場にも緊張感が当面残りそうだ。

*9-3:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20170929&ng=DGKKASFS28H67_Y7A920C1EA1001 (日経新聞 2017.9.29) エネ政策 原発再稼働で対立
 原発政策でも溝は深い。自民党は原発について安全性の確保を前提として、季節や天候、昼夜を問わず安定的に発電できる「ベースロード電源」として活用すると主張。原子力規制委員会の基準を条件に原発再稼働を進める方針を示す。一方の小池氏は28日の会見で、新たな原発の新設は難しいと説き「30年までに原発はゼロにもっていくためにどういう工程があるか検討したい」と表明。「原発ゼロ」に慎重な連合を名指しし「膝をつき合わせて真剣に考えたい」と述べた。原発ゼロには代替エネルギーの確保が必要。エネルギーの輸入を増やすならコストがかかる。実体経済にどの程度の影響を与えてゼロを目指すのか、デメリットへの言及は乏しい。小池氏は「原発ゼロ」を唱える小泉純一郎元首相と近く、人気をとりこむ思惑も透ける。

*9-4:http://qbiz.jp/article/119749/1/ (西日本新聞 2017年9月30日) 九州の原発:玄海3号機にMOX燃料16体を装填方針 九電
 九州電力の山元春義取締役は29日、来年1月の再稼働を目指す玄海原発3号機(佐賀県玄海町)について、今年12月に想定する核燃料の装填(そうてん)時に、プルトニウム・ウラン混合酸化物(MOX)燃料16体を使用する方針を示した。MOX燃料数は東京電力福島第1原発事故前と同じになる。29日の佐賀県議会で説明した。九電は2009年、国内で初めてMOX燃料を使ったプルサーマル発電を玄海3号機で始めた。再稼働でもプルサーマル発電を行う計画。山元氏によると、16体は3号機が10年12月の定期検査で運転停止するまで使用していた。停止中に福島原発事故が起き、保管していたが、再稼働に向け「もう1回入れる」という。さらに16体とは別に、新たなMOX燃料を「20体準備している」と説明。装填数を増やすなど今後については「検討している」とするにとどめた。

| 経済・雇用::2016.8~ | 04:56 PM | comments (x) | trackback (x) |
2017.8.10 EPAと農林漁業、農協と農業改革、食料自給率、地域振興など (2017年8月11、12、13、16、18、20、21、22、24、26、28、31日、9月1、2、3、8、9、15日追加)

(図の説明:日本では大型の田植機は増えてきたが、その他の作物での自動化は進んでいない。その理由には、大型機械導入を前提とした田畑の区割りになっていないこと、農機の価格が高すぎることなどがあるが、これは農協の努力を超えており、これまでの国の政策の問題が大きい)


  日本の耕作放棄地      オーストラリアの放牧と機械化された搾乳風景

(図の説明:国は、主食米に多額の補助金をつけ耕作面積を制限しながら、他の作物への転作を促さなかったため耕作放棄地が増えた。一方で、豪州の畜産は、右の写真のように大規模な放牧で行われており、日本も飼料用米に多額の補助金をつけるよりも賢い土地の使い方がある筈だ)

(1)JAの改革
1)JAさがの持株会社発足
 JAさがは、自己改革の目玉として全国の地域農協で初めて、2017年7月21日に、*1-1のように、農産物加工や購買生活関連といったグループ会社9社を傘下に置く持株会社2社を設立し、当面は中期の企画・戦略策定、総務管理部門の集約に注力して、業務の効率化・商品開発等に力を入れるそうだ。私は、農業者の共同体である農協を株式会社化するのではなく、農協の下に持株会社をつけるのがあるべき姿だと考えている。

 ちなみに、持株会社制度と連結納税制度は、私がフランスの事例の経験から1995年前後に経産省に提案し、持株会社制度が1997年に解禁され、連結納税制度は2002年度の『税制改正大綱』で100%子会社、孫会社などに限って実施されることになったものだ。

 そして、持株会社の下に、①企画部門 ②総務管理会社 ③食品会社 ④人材派遣会社 などをつければ、①は全体を見渡して企画立案でき、②はそのことに熟練した人が関係会社の総務・経理をまとめて面倒見ることによって効率的で質の高い仕事ができるとともに、受託料をもらって農業者の会計・管理を受託することもでき、③は加工・販売を行う食品会社と合弁企業を作れば、お互いのノウハウをつぎ込んで経営する最先端の組織を作って生産性を上げることができ、④は繁忙期に人材派遣を行えば、農業者の所得増大・農業生産の拡大・地域の活性化に繋げることができる。

 そのため、JAさがの大島組合長が全国から注目を集める取り組みであることを強調して「絶対に成功させなければならない」と強い決意を語られたのは心強いし、頑張って欲しい。

2)JA全中次期副会長にJA佐賀中央会の金原会長内定
 このように、佐賀県のJAは先進的な試みを率先して取り入れたため、*1-2のように、全中副会長にJA佐賀中央会会長金原氏が内定した。次は、持株会社での実績を携えて、JA全中次期会長になれれば嬉しいと考える。

3)JA全農の新執行部
 JA全農の新執行部が始動し、*1-3のように、長澤会長は「『全ては組合員のために』の姿勢を貫き、全農の自己改革を完遂する」と強調されたそうだ。私も、産地再生、生産基盤作り、新技術駆使、業務提携などを含む生産力・販売力の強化、生産資材の引き下げなど、農業者の所得向上と地域再生を目的として自己改革すればよいと考える。なお、農家所得増大のためとして特殊な資材の引き下げのみに固執するのは、政府がやるようなことではない。

 また、農業は、同じ地域に存在し土地所有者が同じであるという意味で林業と関係が深く、同じ食品であるという意味で水産業とも関係が深い。そのため、漁協や森林組合も持株会社形式で会社を作り、食品会社など協働した方がよいケースでは合弁会社にした方が販売力がより強化できるので、地元の公認会計士・税理士とケースに応じた相談をした上で、具体的な対応を決めるのがよいと考える。

(2)JA全厚連とJAバンクについて
1)JA全厚連について
 農家は共働きが一般的で妻の働きも所得に直結するため、JAは、*1-4のように、医療・介護を行う全厚連をもっている。そして、今回、その会長にJA長野厚生連会長の雨宮氏、副会長にJA愛知厚生連会長の前田氏、理事長に中央コンピュータシステム社長の中村純誠氏が選任されたそうだ。

 私は、医療・介護を一体としたコンピュータシステムによる管理は、効率化や生産性の向上に役立つと思うが、これまで連続して行われてきた医療費・介護費の削減によって赤字になった病院や介護施設が多いと思われるため、その対応も重要だと考える。

2)JAバンクについて
 2008年のリーマンショック時には、みずほ銀行等の一般銀行と並んで農林中央金庫がアメリカのサブプライム住宅ローン(所定基準を満たさない顧客への貸付に対しては、より高い利率をとるローン)に融資し、借り手が破たんして大損していたので、私は本当にショックを受けた。

 何故なら、サブプライム層が破たんしても、家は資産としてアメリカに残るが、日本の金融機関は単に損をしただけで、リスクが高い割に還元が少ない外国への融資に農村から集めた資金を出して大損していたからである。ちなみに、この時、地方では、投資すべき案件は多いのに投資が行われないため、生産性が上がらないという悪循環の状況だった。

 しかし、JAバンクの貯金額は、*1-5のように、100兆円を超えたため、是非、豊富な資金力を生かして農業への融資拡大や地域重視で必要な投資をしてもらいたい。何故なら、そうすることが、今後の生産性の向上・販売力の強化・地域振興に繋がり、農村の魅力を増して人口回帰に資するからである。

(3)政府が進める農業改革について
 中野吉実JA全農前会長が、*2-1に述べられているとおり、政府・与党が主導する農協改革は、「農協=悪い岩盤=農家とは利益相反関係にある」という誤った前提で叫ばれた。そして、提示された改革理由は、農機・化学肥料・農薬などの高価格への対応だったが、それらの高価格は農協よりも生産者の独占や寡占によるところが大きく、安価な有機肥料の利用・減農薬・農協と競争関係にある他の店舗からの購入などで解決できるものが多い。そのため、政府が既定路線にしている全農の株式会社化とは結びつかないものだ。

 にもかかわらず、*2-2のように、農水省は8月中旬から農協改革の進捗状況調査に乗り出し、改革の重点を、①農産物の高値販売や生産資材の安値調達に向けた取り組み ②組合員の経営支援 ③改革を進めるための組織体制整備 とし、それが具体的にどの程度進んでいるかを確認して改善を働き掛けるそうだ。農水省は「JAと同じ目線で対話して課題の解決策などを探り、自己改革の実践を後押したい」と言っているそうだが、都会育ちの農水省職員なら、同じ目線どころか現場に同行して教えていただく形で調査すべきで、経営の専門家ではない官の口出しは経営を悪化させる懸念さえある。

 その点は、現場をよく知っている知事会も懸念しており、*2-3のように、全国知事会は2017年7月27日に盛岡市で会議を開き、農業振興を柱とした「地域経済の好循環の拡大に向けた提言」を採択した。そして、農業振興を地域社会の基盤と位置付け、政府が定めた「農業競争力強化プログラム」を進めるに当たっては、農業・農村の実情を十分踏まえるよう求めたそうで、これには私も賛成だ。

 しかし、安倍改造内閣の斎藤農相(経産省出身)は、*2-4のように、2017年8月7日に、JA全中を訪問し、引き続き安倍政権が進める農業・農協改革への協力を呼び掛けたそうだ。しかし、出向いてちょっと話したくらいで現場の問題点を正しく把握してよい改革案を提示できるわけがないため、結果ありきの話し合いにならないようにしてもらいたい。そして、斎藤農相が本気で農業改革に取り組みたければ、状況が全く異なる北海道・東北・北陸・中部・都市近郊・中国・四国・九州・沖縄・離島などの農業現場を回り、その地域でどういう農業が行われ、何に困っているのかを調査した上で、外国にも負けない生産性や販売力を持ち、土地を有効に利用して農家所得を増大させ、農業の魅力を作って積極的な担い手を増やす方法を考えるべきである。

 なお、経産省は、自動農機具やコンピューター制御の温室など優秀な農機を安価に生産して提供するよう知恵を絞って欲しい。そうすれば、その農機はどの国でも重宝され、輸出可能でもある。なお、私は、報酬をもらって仕事でやっているわけではないので、*2-5の農業強化法は見ていないが、議論を聞く限り、良い方向に改革されているようには見えない。

(4)EPAについて
1)EPAとその交渉内容
 私は、安全規制等の国家主権を放棄することになるTPPには反対だったが、EPAには賛成だった。何故なら、TPPの参加国は広大な農地を持つ国が多くて太刀打ちできそうもないが、EPAの参加国は広大な農地を持っているわけではないのに知恵と工夫で生産しているので、主権を放棄しない自由貿易が前提なら、日本の農業が学ぶところは大きいと考えたからである。

 そのため、*3-2のように、交渉中に情報開示を行うことはその分野の専門家が見て意見を述べるために必要で、日本が相手国並みにも情報開示を行わないのは、交渉官が国民に見せられるような交渉をしておらず、国民には背信行為の結果ありきの交渉をしている証拠だろう。

2)自由度を高めさえすればよいのではないこと
 日経新聞の論調は、*3-1のように、いつも経済の一体化を主張し、農業の将来を考えるためにも自由度を高めるべきだとする。しかし、そのEPA交渉では、自動車と酪農製品(特にチーズ)のバーター的な関税削減を巡って、交渉が最後まで難航したのだそうだ。

 そのうち自動車については、EUとEPAを結んでいる韓国車が無税で輸出できるのに、日本車は10%の関税が課されてハンディであるため、自動車の関税撤廃は日欧EPAの大きな目的の一つだったそうだが、日本は人件費が高く、全体として高コスト構造になっているため、日本のグローバル企業は、人件費が安くて労働の質の良い東欧で生産することが多い。また、現在では、自動車もEVで遅れ始めているため、環境規制や本体価格の問題を抜きにして、関税だけで売れ行きがよくなるとは思えない。

 一方、農業については、TPPを超える乳製品(特にチーズ)の関税削減が問題となり、出荷先にかかわらず加工用生乳はすべて補給金の対象となるそうだが、今まで指定団体に出荷しなければ加工用生乳に対する補給金が支給されなかったというのは、食料不足時代の食糧管理のやり方のようで、TPPやEPAとは関係なく、変えていなければならなかった問題だろう。

 私は、欧州産のチーズは美味しく、種類も豊富で、よく工夫されていると思うが、日本産の食品も冷凍ピザのような中食にまで加工したり、健康志向を加えたりすれば、欧州では見られない商品ができると考える。そのため、欧州の人の口に合わせながらも、手間が省けて美味しく、健康に良い新しい食品に進化させれば、日本産チーズは関税0でもやれるのではないだろうか。

 また、*3-1には、最先端にいるフロンティア農業者の自由度を高め、フロンティアを広げる政策が必要として、米の減反政策廃止が提言されている。しかし、そもそも主食用米ばかり作っても、その需要は日本国内が殆どであるため、だぶついて価格が低下し、生産したこと自体が無駄になりそうだ。これは、経済学における典型的な市場の失敗の例で、昔から世界中で起こっていることのようである。かといって、多額の補助金を使って飼料米生産に誘導するのも、甚だしい無駄遣いだ。

 そのため、私は、足りない産品を作るように転作すればよいと思うのだが、「日本の農家は、どうして米ばかり作りたがり、足りない産品に転作しないのか?」と問うと、「米を作れば機械化でき、何かと楽で兼業農家でもできるから」という答えが、(特に東北の農家から)返ってくる。私は、ここが問題の本質で、他の産品に転作しても損をせず、機械化でき、保険や作業システムを整えて、兼業しなくても生活できる所得を得られるようにすべきだと考える。そうすれば、余剰な米ばかりを作りたがり、耕作放棄地を増やしながら、食料自給率は低いという日本の変なシステムを変えられると思うが、これは決して農協だけの責任ではない。

 なお、EPAやTPPについては、*3-3のように、「経済規模が大きく自由化度が高いのが優れているとの論調は経済学的に間違いだ」とする注目すべき意見もある。

3)食料自給率と安全保障

  
世界の人口増加 食糧不足の発生リスク拡大 主要先進国の食料自給率 日本の食料自給率

(図の説明:一番左と左から2番目の図のように、世界人口は2050年には95億人になることが予想されており、気候変動による生産減も起こる。そのため、右から2番目のグラフのように、どの先進国も農業を疎かにはしておらず食料自給率が高いが、日本だけ著しく低い。その日本の食料自給率は、一番右の図のように、1975~1990年の間はほぼ横ばいだったが、1990年以降は下降の一途を辿っており、政府が「国民の命と健康を守る」と言うのは白々しく聞こえる)

 *3-1は、「日本農業が活路を見いだすには、市場を世界に求めなければならず、そのためには関税なき貿易が必要で、それを前提に日本の農業の構築を考えなければ、農業の産業としての独り立ちは見えてこない」としている。

 しかし、*3-4、*3-5のように、食料自給率は減り、食料の安定供給を果たす「食料安全保障」はさらにおぼつかなくなった。それについての拙い言い訳は不要であり、食料はカロリーだけでは不十分であるとともに、価格だけでは話にならないことは、中等教育以上で栄養学を学んだ人(殆ど女性)なら常識だ。

 なお、*3-4の「低自給率を強調するよりも、消費者に選ばれる農産物をつくり、輸入に対抗できる競争力を磨いていけば、おのずと国内農業の供給力が高まるのではないか」という部分は、世界人口の予測と世界の食糧事情を無視し、農業生産を行うには生産基盤や日進月歩する機械・技術・種子が必要であることを無視した、驚くべき楽観論である。

<JAさがの持株会社発足>
*1-1:http://www.saga-s.co.jp/column/economy/22901/448475 (佐賀新聞 2017年7月22日) JAさが持ち株会社発足 効率化進め商品開発強化、地域農協初自己改革の目玉
 JAさが(大島信之組合長)は21日、農産物加工や購買生活関連といったグループ会社9社を傘下に置く持ち株会社2社を設立した。業務の効率化を進めて商品開発などに力を入れる。8月1日から業務を始め、当面は中期的な企画・戦略の策定と、総務管理部門の集約に注力する。持ち株会社化は、「農協の一員としての自覚とガバナンス(企業統治)の強化」「事業統合によるコストダウン」「会社の枠を越えた商品開発」の3点を主眼に置く。政府・与党が農協改革に力を入れる中、農業者の所得増大、生産の拡大、地域の活性化につなげようと、JAさがが自己改革の目玉として、全国の地域農協で初めて打ち出した。設立したのは、「JAさが食品ホールディングス(HD)」と「JAさがアグリ・ライフホールディングス(HD)」。JAさがグループ15社のうち9社がぶら下がる。食品HDは、JAフーズさがとジェイエイビバレッジ佐賀、JAさが富士町加工食品の3社を傘下に置く。社長には大島組合長が就き、大手からのOEM(相手先ブランドによる生産)のほか、独自ブランドを開発し、地域の農畜産物を全国に発信する。宅配や通販事業などにも取り組む。アグリ・ライフHDの傘下には、JA建設クリエイトさがやJAオート佐賀など6社が入る。タマネギやミカンの収穫など農家の人手が足りない繁忙期に人的支援をしたり、農業経営に参画して農地を活用したりして、担い手育成に努める予定。JAさがの中村直己副組合長が社長を務める。2016年度のグループ15社の総売上高は約680億円。持ち株会社の傘下に入っていない残り6社については引き続き、HD編入に向けた準備、検討を進める。佐賀市の県JA会館で行われた設立総会で、JA佐賀中央会の金原壽秀会長は「それぞれがさらにもう一段パワーアップして、農家、組合員、地域の評価をいただけるように飛躍を遂げてほしい」とあいさつ。大島組合長は、全国から注目を集める取り組みであることを強調し、「絶対に成功させなければならない」と強い決意を語った。

*1-2:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/450623 (佐賀新聞 2017年7月30日) 金原氏、全中副会長に JA佐賀中央会会長、県出身者で初 来月正式決定
 全国農業協同組合中央会(JA全中)の次期副会長に、JA佐賀中央会の金原壽秀会長(67)=杵島郡江北町=が内定したことが29日、分かった。JAグループの独立的な総合指導機関であるJA全中の副会長に県出身者が就任するのは初めて。8月10日の全中臨時総会で正式に決定する。
金原氏はJAさがの理事や常務理事を経て、2014年から組合長を1期務めた。6月30日の通常総会でJA佐賀中央会の会長に就任した。中央会の前会長である中野吉實氏(69)は11年から今年7月25日まで2期6年、全国農業協同組合連合会(JA全農)の会長を務めた。佐賀の中央会トップが2代続けてJA全国組織の要職を務めることになる。JA全中の次期会長にはJA和歌山中央会の中家徹会長が内定。もう一人の副会長には、中家氏と会長選で競ったJA東京中央会の須藤正敏会長が就く見込み。

*1-3:https://www.agrinews.co.jp/p41464.html (日本農業新聞論説 2017年7月27日) 全農新体制と改革 結集こそ組織の「底力」
 JA全農の新執行部が始動した。陣容は「改革加速内閣」とも言えよう。営農経済事業を担う全農は、系統組織のいわば“心臓部”だ。役割発揮はJA自己改革の成否に直結する。事業改革の年次計画に沿った着実な実践と、内外への「見える化」が欠かせない。組織の結集力と求心力こそが大きな鍵を握る。新執行部の使命は、会見で長澤豊会長が強調した「『全ては組合員のために』の姿勢を貫き、全農の自己改革を完遂する」ことに尽きる。最終ゴールは、農業者の所得向上を通じた元気な地域の復活だ。全農はこれまでも多様な事業改革を実施してきた。いま力を入れるべきことは、改革加速化と併せ、農業者の営農と経営にどう結び付くのかの「見える化」である。組織内外への広報強化は、経済事業への組合員の理解と納得にもつながる。理不尽な全農批判の防波堤ともなる。「全ては組合員のために」は、何のための組織なのかを改めて自らに問う原点回帰宣言でもあろう。産地再生、生産基盤づくり、新技術の駆使、新たな業務提携も含む販売力強化、生産資材の引き下げ。農業者の所得向上と地域再生にはトータルコストの引き下げが重要だ。資材下げなど一分野だけをあげつらうのは見当違いだ。その意味では、全農が全国55JAと取り組むモデル事業は、今後の総合的なコスト下げに向けて全国展開の礎となり得る。「ゴーゴー作戦」として、地域農業再生への旗振り役を果たしてもらいたい。意欲的な数値目標を掲げた全農の事業改革年次計画だが、滑り出しはほぼ予定通り。だが、本番はこれからと言っていい。年次計画は年を追うごとに大きな目標値となっているだけに、この1、2年が正念場となる。自己改革完遂へ残された時間は少ない。政府・与党の改革フォローアップや2019年5月とされる改革集中期間の最終期限も2年を切った。代表理事体制も一新した。新理事長の神出元一氏はこれまで専務として全農改革に関わり、政府・与党との調整の陣頭指揮を担ってきた。専務となった岩城晴哉氏は外食大手・スシローと業務提携するなど、米・園芸の販売事業強化を進めた。もう一人の山崎周二氏は改革の本丸となった生産資材引き下げなど、購買事業見直しの具体案を取りまとめた。改革加速化に期待したい。一方で、農政改革では政府の責任こそが問われなければならない。民間組織の全農ばかりに改革努力を迫るのは間違いだ。通常国会冒頭での安倍晋三首相の施政方針演説に大きな違和感を覚える。「農政新時代」の項目で「農家のための全農改革」を挙げた。首相自ら民間組織の具体名を挙げることは極めて異例だ。政権による「全農先行」改革の意図が透けて見える。政府は全農自己改革を後押しする姿勢に徹するべきだ。

*1-4:https://www.agrinews.co.jp/p41476.html (日本農業新聞 2017年7月28日) 全厚連 会長に雨宮氏(長野)
 JA全厚連は27日、東京都内で通常総会後に経営管理委員会を開き、会長に雨宮勇氏(JA長野厚生連会長)を選任した。空席になっていた副会長には前田隆氏(JA愛知厚生連会長)を選任した。加倉井豊邦会長は同日付で退任した。理事長に、中村純誠氏(中央コンピュータシステム社長)を選任。総会では、経営管理委員16人を選任し、そのうち9人が新任した。任期は2020年度の通常総会終了まで。

*1-5:https://www.agrinews.co.jp/p41520.html (日本農業新聞論説 2017年8月2日) 農協貯金100兆突破 協同組合こそ明日開く
 JAバンクの貯金額が100兆円の大台を超えた。計画目標よりも1年前倒しの達成は、組織結集力の結果である。大台達成を契機に、いま一度、地域や農業の足元を見直し、協同組合金融の特色を確認したい。根底には、組合員目線に立ち地域重視で利用者第一の考え方がある。JAの総合力の発揮こそが持続可能な社会づくりの「明日」を開くはずだ。金融の根幹は「信用」である。信用事業と言われる理由だ。貯金額が100兆円を突破したのは、JAバンクへの組合員・利用者の「信用」の表れである。健全経営の徹底や万が一の事態へのセーフティーネット(安全網)の整備など、金融機関として安全・安心が評価されてきた結果とも言えよう。農林中央金庫のリテール事業本部長を務める大竹和彦専務は、日本農業新聞のインタビューで「JAの総合事業、地域での人と人とのつながりこそが他金融機関にない強さ」と強調。協同組合金融の特色発揮が、揺るぎない「信用」につながっている。運動体でもあるJAグループは、目標を掲げた組織展開に強みを持つ。100兆円達成も運動の成果の一つだ。歴史をさかのぼれば、協同組合は信用事業の確立と重なる。組合運営の原則を制定した英国のロッチデール公正先駆者組合設立は1844年。日本はその1年前の43年、江戸時代に二宮尊徳が基金をつくり困窮した農民に無利子で貸し出す報徳社をつくった。協同組合の原点の一つである。尊徳は600もの村落で協同の精神で地域復興を果たす。JAバンクを束ねる農林中金は、6年後に創業100周年を迎える。前身の産業組合中央金庫は関東大震災の直後、1923年末から営業を開始した。協同組合金融は地域の復興・再生の歴史と共に歩み発展してきた。こうした歴史的な経過をしっかり踏まえたい。今後の課題は「ポスト100兆円」の戦略だ。少子高齢化、日銀のマイナス金利の影響などで、金融業界は大きな岐路に立つ。地域金融機関を中心に合従連衡の動きが活発化してきた。系統信用事業も、地域単位では次の目標を検討するだろうが、数値で全国一本の“旗”を掲げる時代とは明らかに異なる。時代の変化を踏まえ農林中金は、JA全農や関連企業との連携を強め、食農ビジネスを本格化させている。豊富な資金力を生かした農業融資の拡大、担い手育成は喫緊の課題だ。「食と農、地域の振興のためにできることは何でもやる」と食農法人営業本部長を務める宮園雅敬副理事長。新たな一手として、組合員の資産形成のため投資信託などを推進する「JAバンク資産形成推進部」を新設した。「ポスト100兆円」をどうするのか。模索は続くが、基本路線は営農経済事業をはじめ地域に根付くJAの総合力、相互扶助を歴史的な原点とした協同組合金融の強さのはずだ。

<政府が進める農業改革>
*2-1:https://mainichi.jp/articles/20170730/ddm/008/020/116000c (毎日新聞 2017年7月30日) 中野吉実・JA全農前会長:農協への圧力、再燃を懸念
 全国農業協同組合連合会(JA全農)会長を今月退任した中野吉実氏(69)が29日までに共同通信のインタビューに応じ、政府、与党が主導した農協改革を「(日本農業が低迷する現状を踏まえ)誰かを悪者にしないと駄目だったのだろう」と振り返り、改革が再燃し農協への圧力が強まりかねないとの懸念を示した。JA全農の株式会社への移行は「絶対すべきでない」と強く否定した。2011年7月から2期6年にわたる在任中、政府の規制改革推進会議などから組織縮小やコメ全量買い取りなどを求められたほか、自民党の小泉進次郎農林部会長から組合員に提供する農機や肥料などが高すぎるとして改革を迫られた。中野氏は、農家の所得向上を目指すとの方向性は政府と一致しているとした上で、「農協が力を付け、組合員に還元できるようにしていく」ことが重要だと指摘した。在任中の成果として17年3月に自己改革をまとめたことや、コメの安定的な出荷先確保のため回転ずしチェーン大手「あきんどスシロー」の持ち株会社に出資したことを挙げた。その上で「農協と農家が一緒に努力し生産性を高めていくことが所得向上につながる」との認識を示した。政府、与党で議論されたJA全農の株式会社化に関しては「海外では農協が株式会社化した後、穀物メジャーに買収された例がある。農家を守る立場の組織がなくなったら元も子もない」と改めて反対を表明した。政府は18年産米から生産調整(減反)を廃止するが、「米価が下がらないようJAグループが各地の収穫量を配分する。それができることが前提だ」とし、コメ農家に大きな影響は出ないとした。
■ことば:全国農業協同組合連合会(JA全農)
 JAグループで商社機能を担う全国組織。肥料や農薬といった生産資材を農家に供給するほか、農産物を集めて販売する。事業収益は大手商社に匹敵。政府、与党が改革の方針を昨年11月にまとめたことを受け、今年3月に資材価格引き下げなどに向けた自己改革案を策定した。

*2-2:https://www.agrinews.co.jp/p41525.html (日本農業新聞 2017年8月3日) 農協改革 中旬から進捗調査 月内にも進捗調査 各県1JAを行脚 農水省
 農水省は全国のJAを対象に、農協改革の進捗状況の調査に乗り出すことが分かった。各地のJAに担当者を派遣。改革の重点となる農産物の高値販売や生産資材の安値調達などが具体的にどの程度進んでいるかを確認し、改善を働き掛ける。今年度は試行的に各都道府県の1JAを対象に調査を実施する方針で、8月中にも始める。2014年6月の農協改革に関する与党取りまとめでは、5年間を「農協改革集中推進期間」として、JAに自己改革の実行を強く求めている。既に同期間の中間年を迎える中、改革の実践を加速させる必要があるとみて、今回の調査に乗り出す。特に重点的に調査するのは、(1)農産物の高値販売や生産資材の安値調達に向けた取り組み(2)組合員の経営支援(3)改革を進めるための組織の体制整備――の3項目。都道府県の担当者と共にJAに出向き、JAが事業計画などに盛り込んだ目標数値など具体的な指標に照らし合わせて、取り組みが進んでいるかどうかを聞き取る。思うように成果が上がっていない取り組みについて、何が課題かをJAとの間で共有、同省から先進事例を紹介するなどで改善策を探る。都道府県は意見聴取後も、特定した課題について、JAの解決に向けた取り組みの進捗を確認し、改革の着実な進展を促す。こうした一連の流れを今年度、試行的に実施、検証し、来年度以降の対応を検討する。同省は「JAと同じ目線で対話して課題の解決策などを探り、自己改革の実践を後押したい」という。16年4月に施行された改正農協法では、農協の事業目的に、農業者の所得増大に最大限配慮することを掲げ、JAに営農経済事業の強化を求めている。こうした中、JAグループは16年度からの3年間を自己改革の集中期間として自己改革の実践を進めている。同省が各都道府県の1JAを試行的に調査することに対し、JA全中は「自己改革に取り組んでいるJAの実態を見て、理解してもらうには良い機会だ」と話している。

*2-3:https://www.agrinews.co.jp/p41471.html (日本農業新聞 2017年7月28日) 現場踏まえ対応を 農業競争力プログラム 全国知事会
 全国知事会は27日、盛岡市で全国知事会議を開き、農業振興を柱とした「地域経済の好循環の拡大に向けた提言」を採択した。農業振興を地域社会の基盤と位置付け、提言5項目のうち2項目を農業関連とした。政府が昨年決めた「農業競争力強化プログラム」を進めるに当たって、農業・農村の実情を十分踏まえるよう求めた。改革を急進的に進める政府に対し、くぎを刺した格好だ。日欧経済連携協定(EPA)をはじめ、国内農業への影響に懸念を示し、丁寧な情報提供を求めるとした。会議には「地方から日本を変える」をテーマに、全国都道府県の首長が参加した。政府が2016年11月に決めた同プログラムでは、生産資材の引き下げや全農改革、卸売市場法の見直しを提起。政府はこれに沿って農業改革を進めている。提言では、地域間格差の是正や、多様性に満ちあふれた地域の創出に取り組むべきとした。その上で、プログラムに関する制度設計について、地域の農業・農村の実情を十分踏まえるよう求めた。地域の農業者が意欲と希望を持って営農に取り組めるようにすべきとした。国際貿易交渉を巡っては、日欧EPAをはじめ国内農林水産業への影響が懸念されると指摘。全ての貿易交渉で、重要品目に対する必要な国境措置を確保することが必要と提起した。交渉の進捗(しんちょく)や国内の影響についての情報提供を丁寧にするよう求めた。米、大豆など主要農作物種子法(種子法)の廃止に際して、今後も生産者に良質で安価な種子の供給と普及ができるよう、財政措置の確保を要望した。国産種子の海外流出の防止などの措置も求めた。この他、農業分野では担い手らの人材育成、農地集積、ICT(情報通信技術)をはじめとするスマート農業、鳥獣害防止対策について国の支援の充実を提起。資材の価格低減、所得向上への支援策、輸出促進策の強化も必要とした。会議では、国と地方を挙げて「防災庁」の創設に取り組むことや、東京一極集中の是正などについて議論、提言した。災害に強い国土づくりを進める「岩手宣言」も採択した。

*2-4:http://qbiz.jp/article/115975/1/ (西日本新聞 2017年8月7日) 農相、改革継続に協力要請 就任直後異例のJA訪問
 斎藤健農相は7日、全国農業協同組合中央会(JA全中)を訪問し、奥野長衛会長や中家徹次期会長らに対して引き続き安倍政権が進める農業・農協改革への協力を呼び掛けた。就任直後の農相がJA首脳を訪ねるのは異例。自民党の農林部会長や農林水産副大臣を歴任して農協改革を主導し、3日に農相に就任した。10日にJA全中の次期会長に選出される中家氏は政権の改革に距離を置く慎重派とみられており、自ら出向くことで話し合いを重ねていく姿勢を示した。面会では、JA全中に加え、全国農業協同組合連合会(JA全農)、農林中央金庫などJAグループ幹部が顔をそろえた。奥野氏は「本来ならこちらが伺うのが筋」と謝意を表明し、斎藤氏は「日本の農業が厳しいという状況認識を共有できれば、農家の皆さんが前向きに取り組める環境づくりに向け、いい関係で前進ができる」と述べた。面会後、報道陣に対して奥野氏は「大臣としての農業に対する強い思いから、自らこちらに足を運ばれた。官僚の経験を生かし、いろいろ課題を提起していただくことになる」と語った。中家氏も「問題があったときには話し合いをして互いに理解し合うのが大事」との認識を示した。

*2-5:https://www.agrinews.co.jp/p41511.html (日本農業新聞 2017年8月1日) 農業強化法が施行 改革推進丁寧に
 農業生産資材価格の引き下げや農産物流通の合理化に向けた構造改革を進める農業競争力強化支援法が1日施行される。農水省は、卸売市場法の抜本改革など規制・規格の見直しや資材の開発促進、直販の促進といった改革を実行に移す。同省が、生産性の低さや機能不全を問題視する米卸や飼料メーカーには業界再編をてこ入れする。同時に、JA全農の改革の実行を促す方針だ。いずれも生産現場に密接に関わる課題だけに、具体化には、多様な農家の声を踏まえた丁寧な議論が欠かせない。同法は、5月に成立。資材価格下げや農産物流通の合理化に向けて①国が講じるべき施策②業界再編や事業参入に向けた支援措置――を定めたのが柱。同省は今後の政策展開は一義的に行政の仕事として「与党の了承を取る必要はなく、農水省の権限で粛々と進めればよい」(同省幹部)としている。だが、法律上は国の政策の方向性を示す抽象的な文言にとどまる。施行を受け、同省は、法律が定める国内外の農業資材供給や農産物流通の実態調査に着手。この結果を踏まえて2019年8月までに施策見直しを検討する。同省は昨年、日本の肥料などが韓国に比べて割高とする調査結果をまとめ、全農に改革を迫った経緯がある。だが、殊更に価格差だけを取り上げれば、品質の劣化を招く恐れがある。農業全体の構造や品質格差を踏まえた冷静な分析が必要だ。参院農林水産委員会は、協同組合の本来機能である共同購入や共同販売の機能の強化、民間事業者の自発的な取り組みの尊重を求める付帯決議を採択した。今後の法律運用では、政府による過剰な民間干渉につながらないか国会による監視が求められる。

<EPAについて>
*3-1:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20170801&ng=DGKKZO19451050R30C17A7KE8000 (日経新聞 2017.8.1) 日欧EPAの課題(下)農業の将来 考える好機に、最先端分野、自由度高めよ 本間正義・西南学院大学教授(1951年生まれ。アイオワ州立大博士。専門は農業経済学。東大名誉教授)
ポイント
○チーズの低関税輸入枠設定の影響小さい
○日本農業は関税なき貿易で世界に活路を
○コメの減反政策廃止や農地政策改革急げ
 日本と欧州連合(EU)の経済連携協定(EPA)交渉が大枠合意した。米国が環太平洋経済連携協定(TPP)から離脱し、自由貿易の推進に暗雲がたち込めていただけに、この合意の意義は大きい。また貿易だけでなく、グローバル化時代の包括的な経済活動のルールづくりを目指すTPPと目的を一にする。世界の国内総生産(GDP)の28%、世界貿易の37%を占める両地域のEPA実現に向けた大きな一歩を歓迎したい。日欧EPAの交渉でも、またぞろ農産物が焦点の一つとされた。だがTPPでの合意が基礎となっていることや、欧州の関心の低いコメが除外されていること、日本からも日本酒などの食品輸出の拡大が見込めることなどもあり、国内の反応は関係者を除けば比較的冷静だったといえる。とはいえ、自動車と酪農製品、特にチーズの関税削減を巡っては最後まで交渉が難航した。日本にとって自動車の関税撤廃は日欧EPAの大きな目的の一つだった。EUとEPAを結んでいる韓国の自動車が無税で域内に輸出できるのに対し、日本の自動車には10%の関税が課され、大きなハンディとなっていた。一方、EUが求めてきたのはTPPを超える乳製品、特にチーズの関税削減だった。金額でみると、日本からEUへの自動車輸出額は1兆2494億円(2016年)に対し、EUからのチーズ輸入額は378億円(同)にすぎない。従ってこの両者をバーター(交換取引)にしたとみるのは適当ではない。日EUともに包括的なEPA締結に十分大きなメリットを見いだした結果と解釈すべきだろう。EUが今回の交渉でチーズにこだわる理由はあった。EUは15年3月末、30年以上継続してきた生乳クオータ(割り当て)制度を廃止した。加盟各国に生乳供給の上限を課す制度だが、これを自由化し市場志向性を高め、乳製品の需要増大が見込める国際市場で活路を見いだそうとした。しかしEUが輸出増を期待したロシアは、欧米がウクライナ問題で科した経済制裁に対抗し、欧米からの農畜産物の輸入禁止措置を継続している。このためEUは別の市場を求め輸出戦略を練り直しており、途上国への輸出拡大とともにEPAを通じた日本市場の開放が重要課題だった。表は、合意したEUからの主な農産物の関税削減の内容を示したものだ。焦点だったチーズは、TPPでは関税を維持したカマンベールやモッツァレラなどソフト系チーズを一括して新たに低関税輸入枠を設けた。この枠内関税率は徐々に削減し、16年目に撤廃するとしている。輸入枠は初年度2万トンから、16年目に3万1千トンに拡大する。EUからのソフト系チーズ輸入量は2万トン(16年)程度であり、輸入枠は現状に比べ16年で1.5倍に拡大するだけなので、大きな影響はあるまい。またチーズは差別化できる製品であり、国内でも様々な取り組みが展開されている。輸入品に対抗できる日本ブランドのチーズが多く生み出されることを期待したい。さらに生乳の流通制度改革も進行中だ。これまで全国を10地域に分けて、各地域の指定団体に出荷しなければ加工用の生乳に対する補給金は支給されなかったが、出荷先にかかわらず、加工用の生乳はすべて補給金の対象となる。また補給金受給のためには指定団体に原則全量委託することを義務付けていたが、これも部分委託が可能となる。従って個々の農家や農家グループの創意工夫を乳製品の生産に生かせる道が広がる。日欧EPAの合意は、英国のEU離脱決定や米トランプ政権の誕生で挫折しかかった自由貿易の方向を、決して後戻りさせてはならないという両地域の強い政治的意志でもある。今後、他のEPAや新たな交渉を通じ貿易の拡大と経済活動に関するルールの共通化が進展していくと予想される。その際、交渉結果に一喜一憂するのでなく、日本農業も国境措置に依存しない体制を築くことが重要だ。先ごろ日本経済調査協議会は、元農水事務次官の高木勇樹氏を委員長とする食料産業調査研究委員会がまとめた提言「日本農業の20年後を問う」を公表した。筆者はこの委員会で主査を務めた。これから20年後の日本農業をどう考えるか。少子高齢化・人口減少で日本の国内市場は確実に縮小する。一方、浮き沈みはあるにせよ、グローバル化の波は今後も間違いなく押し寄せてくる。これらの条件の下で日本農業が活路を見いだすには、市場を世界に求めなければならない。それには関税なき貿易が必要だ。この関税なき世界を前提に日本農業の構築を考えなければ、農業の産業としての独り立ちは見えてこない。日本の農家数は経営体でみて過去20年間で毎年平均して6万戸減少している。このままいけば20年後には10万戸を切ることになる。それでも各農家(経営体)が年間1億円規模の生産を担えば、日本農業は10兆円の生産額を維持できる。そうした方向に向かうにはどのような政策が望ましいのか。真っ先に必要な政策は最先端にいるフロンティア農業者の自由度を高め、フロンティアを広げる政策である。第1にコメの減反政策の廃止だ。政府は生産割り当てをやめると言うが、多額の補助金で飼料米生産に誘導し、主食米生産を制限し高価格を維持する政策を継続する。小規模兼業農家が維持され、大規模農家の生産拡大が阻害される。第2に農地政策の改革だ。現行農地法は農地を生産資源として活用するというより、農地所有者の権利を守ることを目的としている。農業内での権利移動を前提とするために、リースは認められても、農外の株式会社が農地を保有することは禁じられている。第3に耕作地が何カ所、何十カ所にも分散している非効率な経営の解消だ。農地のリースや所有を自由化しても耕作地が細切れでは生産効率は上がらない。地域で連坦(れんたん)化してひと続きの耕作面積を確保するために、孤島的に別経営をしている農地を周囲と一体化し、耕作を統合する仕組みが必要となる。農地の流動化のためには、農地の利用に応じた税制の整備などが有効だと考えられる。フロンティアは海外での販売戦略でも広げる必要がある。概して日本の農業関係者は海外でのマーティングが不得手だ。農産物の品質の高さのアピールが足りない。それは日本の農業者がいまだにプロダクトアウト(作り手優先)の姿勢から抜けきらず、消費者ニーズを取り込むマーケットインの姿勢に切り替えられずにいることに通じる。和食がユネスコ無形文化遺産になっている今日、世界に日本の農と食を広範にアピールするチャンスだ。今回の日欧EPAで日本酒の関税が撤廃され、欧州への輸出拡大が期待される。日本酒をフランスワイン並みのブランドに育て、それに合う和食とその魅力を伝える好機でもある。一方で、農業はその生産プロセスそのものが付加価値を生む。農作業はそれ自体が面白い。また工夫により様々なアクティビティーに展開可能でもある。農業の魅力を都市住民に伝え、農業体験をより手軽にできるような体制づくりは、これからの農業のあり方の一つとしても重要だ。農業が20年後に自立した産業となるには、国内海外を問わず今何をすべきか、国民全体での活発な議論を期待したい。

*3-2:https://www.agrinews.co.jp/p41351.html (日本農業新聞 2017年7月12日) EPA 情報開示に差 EUは協定文案一部公開
 欧州連合(EU)との経済連携協定(EPA)の大枠合意を受け、欧州委員会が日本政府が開示していない協定文案の一部を公開していることが分かった。一方、日本政府は文案が固まっていないとして公表しない方針で、日欧の情報開示の差が露呈した。民進党など野党は、情報開示に後ろ向きな日本政府の姿勢を問題視し、欧州と同水準の開示を求める方針だ。欧州委員会は日欧首脳が大枠合意を発表した6日付けで、ホームページに投資やサービス、電子商取引、紛争解決などに関する協定文案の一部や欧州側の提案を掲載。最終案ではないと断りながら「交渉への公衆の関心の高まりを考慮」して開示したと説明している。一方、日本の外務省は同日開かれた民進党の会合で「テキストが固まっておらず、最終調整する必要があるので、今の時点で公表に至っていない」と開示しない理由を説明した。民進党の会合では、出席議員から「情報公開には(日欧で)互いに同じ対応するのではないのか」(玉木雄一郎氏)など、情報開示に後ろ向きな政府の姿勢を質す意見が相次いだ。協定案を巡り、交渉の経過を含めて国民に積極的に開示しようとする欧州側と、内容が固まるまでは国民に知らせるべきではないとする日本政府の対応の違いが浮き彫りになった。交渉における情報開示の少なさは、農業関係者からも不満の声が相次いで挙がっており、今後の政府の説明に注目が集まっている。

*3-3:https://www.agrinews.co.jp/p41449.html (日本農業新聞 2017年7月25日) EPAの経済学分析 貿易ゆがみ損失も大 東京大学大学院教授 鈴木宣弘氏
 日欧経済連携協定(EPA)は国内総生産(GDP)で世界の約3割を占め、全体で95%超の関税撤廃率で、日本の農林水産物の関税撤廃率も82%で環太平洋連携協定(TPP)並みに高いとして、「経済規模が大きく自由化度が高い」のが優れているとの論調は経済学的には間違いである。そもそも自由貿易協定(FTA)は「悪い仲間づくり」のようなもので、A君は好きだから関税なくしてあげるがB君は嫌いだから関税をかけるというものである。仲間だけに差別的な優遇措置を取るのがFTAだから、「経済規模が大きく自由化度が高い」方が貿易が大きくゆがめられ、「仲間外れ」になる域外国の損失は大きくなる。われわれの試算では、日欧EPAによって締め出される域外国の損失は23億1600万ドルで、日欧のメリットの17億6200万ドルより大きい。しかも、自由化度が高いほど、締め出される域外国の損失は大きくなるから、農産物のような高関税品目は除外した方が域外国の損失は緩和できる。われわれの試算では、域外国の損失は23億1600万ドルから16億2300万ドルに減少する。さらに、日本にとっても、農産物を自由化しない方が、日本全体の経済的利益は、11億2600万ドルから21億3200万ドルに増加する。高関税の農産物を欧州連合(EU)だけに関税撤廃すると、例えば、最も安く輸入できる中国からの輸入が差別的な関税撤廃によってEUに取って代わる「貿易転換効果」によって、消費者の利益はあまり増えず、生産者の損失と失う関税収入の合計の方が大きくなってしまうからである。このように、FTAは、仲間外れになった国は損失を被るし、域内国も貿易が歪曲されて損失が生じることなどから、日本では、長年、政府も国際経済学者も世界貿易機関(WTO)を優先し、FTAを否定してきた。ところが、2000年ごろから、日本政府がFTA推進にかじを切り出すと、みるみるうちに、同じ学者がFTAやTPPを礼賛し始めた。しかも、「農産物を例外にしてはいけない」と主張したい人たちにとっては、日本にとっても、域外国にとっても、農産物を除外する方がベターだ、という試算結果は不都合なので、そういう数値は表に出ないように極力隠されてきた。経済学者の良識、経済学の真理とは何なのかが問われている。

*3-4:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20170621&ng=DGKKZO17910830Q7A620C1EE8000 (日経新聞 2017.6.21) 経済:骨太診断(6)消えた「食料安全保障」 農家、保護より自立促す
 経済財政運営の基本方針(骨太の方針)の「攻めの農林水産業の展開」を見ると、2016年の骨太の方針にあった「食料安全保障の確立」の文言が消えている。農林水産省関係者によると、食糧安保を象徴するものは「食料自給率」。食料の安定供給を果たす責務を国が放棄するわけではないが、食料自給率を重要な指標として位置づけるのを見直しつつある状況の表れだ。食料自給率は、国内で消費する食品がどれだけ国産の材料で賄われているかを表す。供給熱量で換算するカロリーベースで2015年度は39%。主要先進国の中で最低水準にあることが「手厚い農業予算が必要」(農業団体幹部)との主張を支えてきた。ただ、カロリーベースの食料自給率は野菜をつくっても上向きにくいなどの問題が指摘される。生産額ベースになれば66%まで引き上がるのも、「(カロリーベースが)むやみに危機を高める指標になっている」(農水省OB)との見方を強めている。生産額ベースも下落傾向にあり、食料の安定供給を懸念する主張に根拠がないわけではない。ただ、ことさら低自給率を強調するより、消費者に選ばれる農産物をつくり、輸入に対抗できる競争力を磨いていけば、おのずと国内農業の供給力が高まるのではないか。安倍政権が自民党の小泉進次郎農林部会長らの主導で農協改革に乗り出したのも、保護農政から脱却する狙いが強いからだ。日本の農村を守る適度な予算の配分は必要だが、自立できる強い農家を各地にどれだけつくり出せるかという視点が欠かせない。

*3-5:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20170810&ng=DGKKASFS09H3O_Z00C17A8EE8000 (日経新聞 2017.8.10) 食料自給率、38%に低下 昨年度、23年ぶり水準 小麦の生産減
農林水産省は9日、2016年度の食料自給率(カロリーベース)が38%だったと発表した。コメが不作だった1993年度の37%に次ぐ低水準。北海道を襲った台風などの影響で、小麦やテンサイの生産量が落ち込んだ。政府は2025年度までに自給率を45%に高めるという目標を掲げている。しかし09年度を最後に40%台には届いておらず、目標達成の道筋は見えない。カロリーベースの自給率は、コメや小麦といった穀物の供給量に左右されやすい。政府は輸入品が多い畜産飼料を国産に置き換えようと、飼料用米の増産に力を注ぐ。しかし草を食べる牛の飼料にコメを配合してもその割合には限界があり、自給率の押し上げ効果は乏しい。単価の高い野菜や畜産物などの動向が影響する生産額ベースの自給率は15年度に比べて2ポイント増の68%だった。野菜や果実で輸入が減り、国内生産が増えた。生産額ベースは2年連続で上昇した。

<農林漁業とエネルギー>
PS(2017.8.11、16追加):私も、*4-1の「太陽光などの再生可能エネルギーで作った電気でEVを動かすシステム」が、CO2はじめ排気ガスを0にできるため、最もよいと考える。なお、日経新聞は「フランスは原子力発電の比率が高いので、CO2を出さない」としているが、フランスは、2015年7月22日に制定した「エネルギー転換法」で、①原子力発電所の大幅削減 ②化石燃料消費の廃止 ③再生可能エネルギーへのシフト ④石油由来廃棄物の大幅削減 などを決め、マクロン新大統領も、*4-2のように、エネルギー・環境政策をさらに推し進めるとして、国民議会(下院、定数577)選挙で大勝した。そして、その中には、農業分野の環境改善や輸送分野のエネルギー効率改善なども入っている。
 日本でも、*4-3-1、*4-3-2、*4-3-3のように、平成26年5月1日に、農山漁村で自然再生可能エネルギー(太陽光、風力、小水力、地熱、バイオマス等)を積極的に活用する「農山漁村再生可能エネルギー法(http://www.maff.go.jp/j/shokusan/renewable/energy/pdf/re_ene1.pdf)」が施行され、地域の所得向上・農山漁村の活性化・農林漁業の振興などを進め、再生可能エネルギーの地産地消により、地域内での経済循環を構築する方向性が示された。そのため、農林漁業は、機器を電動化して自然エネルギーで自家発電するのが近未来の姿になる。従って、全農は、持ち株会社の下に自然エネルギーによる発電子会社(仮名:全農自然エナジー)をつければよいだろう。
 やはり、*4-4のように、日経新聞は経済教室で、慶大卒・東大院博士課程満期退学・災害情報論専門の関谷氏に、「偽ニュースを考える」として「①市場に流通している福島県産の農作物・海産物は徹底した検査をして、99.99%がND(検査機器が設定した検出限界より大きい値の放射性物質が検出されなかったこと)で安全確認されている」「②NDとは生産者・流通業者・消費者の間で流通上の許容量のデファクトスタンダード(事実上の基準)として結果的に合意した値」「③現在、このNDの状態でも風評被害により経済被害が起きている」「④流通業者・農業関係者の中に、まだ福島県産の農産物に多くの消費者が不安を抱いていると思い込んでいる人も多い」「⑤福島県の農林水産物についての情報発信は、検査結果に関する広報が十分ではなく、おいしさをアピールするブランド戦略や広告が中心となっている」と書かせている。
 しかし、①②にも書かれているとおり、ND(検査機器が設定した検出限界より大きい値の放射性物質が検出されなかったこと)は、生産者・流通業者・消費者の間で流通上の許容量の事実上の基準として人為的に合意した値にすぎず、長期間食しても健康を害さないことが証明された値ではない。そのため、NDだから安全確認されたとは言えず、④のように、流通業者・農業関係者・消費者に疑念を抱いている人がいる方が尤もであり、③のように、これを風評被害と断じることこそ無知である。また、放射能で汚染されても味は変わらないため、「おいしさをアピールすればよい」と考えている人には、もともとこの問題を論じる資格がない。そして、⑤のように、この検査でNDであったことをアピールしても「だから長期間食しても健康を害さないのか」は依然としてわからず、薬剤と同様、安全性が不明なら摂取しないのが常道だ。さらに、“災害情報論の専門家”というのが何を勉強してきた人かは不明だが、東大の教官でもこのようなことを断じる知識があるとは限らないことをわきまえるべきである。
 なお、*4-5のように、東京電力は、市民の反対と福島の不安に応えず、2016年9月にフクイチの1号機建屋カバーを外した。チェルノブイリでは、原発からの放射性物質の飛散を防ぐために、旧ソ連が国家の威信をかけて石棺を突貫工事で完成させ、30年を経て石棺の老朽化により再び飛散の危険があるため、2千億円をかけてさらに石棺を覆うシェルターを完成させたにもかかわらず、フクイチは、青天井で放射性物質が飛散し放題の状態になったのである。そして、これらは、「差別」や「感情論」などという否定のための誹謗中傷にもめげず、「女性自身」はじめ環境意識のある女性によって多く主張されていることを忘れてはならない。

   
都道府県別食料自給率     フクイチ事故の状況と“除染”後のフレコンバッグ

(図の説明:一番左の都道府県別食料自給率で福島県は85%と高い方だったが、原発事故後の福島県の農産物や海産物は0ではない放射性物質を含み、安全でなくなった《まさか、これをフェイク・ニュースとは言わないでしょうね》。その上、他の原発も食料自給率の高い地域(農林漁業地帯)に建設されているため、エネルギーに原発を使うのはコストが高い上、食料自給率にも影響し、亡国へのパスポートである)

*4-1:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20170811&ng=DGKKZO19918370R10C17A8MM8000 (日経新聞 2017.8.11) EV大転換(下)これが持続可能な未来だ さらば石油、世界も揺れる
 7月上旬に横浜で開かれた太陽光発電の見本市。目玉は米テスラだった。「太陽光で作った電気を蓄電池でためて電気自動車(EV)で使う。これが持続可能な未来だ」。テスラのカート・ケルティ・シニアディレクターはこう語った。
●一気通貫めざす
 テスラは2月に社名から「モーターズ」を外した。16年に太陽光発電の米ベンチャーを買収。EV用電池に加え据え置き型蓄電池にも事業を広げる。創業者、イーロン・マスク氏の狙いは発電からEVまで一気通貫のエネルギーインフラを作ることにある。なぜそこまでするのか。「発電時の二酸化炭素(CO2)排出量まで考えれば、エンジン車はEVとの差がなくなる」。ある国内自動車メーカー幹部はこう主張する。背景にあるのは「ウェル・トゥー・ホイール」(油井から車輪)という考え方。燃料を作る段階からトータルの環境負荷を見る発想だ。国立環境研究所の調査では、ガソリン車に対するEVのCO2削減率はフランスで90%。一方、中国では15%減にとどまる。フランスは原子力発電の比率が高いのに対し、中国は7割以上をCO2を多く排出する石炭火力発電に依存するためだ。いくらEVを増やしても、エネルギー源から変えなければ根本的な地球温暖化対策につながらない。EVシフトの先には太陽光発電など再生可能エネルギーの拡大が待ち受ける。多くの企業がそのことに気がつき動き始めている。北欧では米IBMや独シーメンスなどが連携し、風力発電による電力をEVに供給するシステムの整備が進む。日本でも一部自治体で同じような実証実験が進むが、「欧州では既に商用段階に入っている」(日本IBMの川井秀之スマートエネルギーソリューション部長)。石油メジャーも「変身」に動く。仏トタルは低炭素の液化天然ガス(LNG)などガスの生産量が発熱量ベースで原油を超えた。仏電池メーカーを買収し再生エネ事業の拡大にも走る。自動車に素材、そしてエネルギーまで産業構造を大きく変えようとしているEVへの大転換。それは世界の秩序にも影響を与える。
●試される産油国
  「40年には1日に800万バレルの石油需要が減る」。米調査会社ブルームバーグ・ニュー・エナジー・ファイナンスはEVシフトの影響をこう予測する。800万バレルは石油輸出国機構(OPEC)の1日の生産量の4分の1に相当する。世界の石油消費量の65%は自動車など輸送用が占める。発電用途は全体の4%程度。自動車用の落ち込みを補うのは難しい。各国が協調して需給調整するOPECの戦略が成り立たなくなるかもしれない」。日本エネルギー経済研究所の田中浩一郎中東研究センター長は指摘する。需要減により協調が崩れれば、次世代産業にカジを切れるかどうかで産油国間の格差が広がる。不安定な中東に新たな不協和音を生みかねない。EVへの大転換は地政学に大きな影響を与える可能性もある。

*4-2:https://sustainablejapan.jp/2017/05/12/macrons-energy-policy/26778 (Sustainable Japan 2017/5/12) 【環境】フランスのエマニュエル・マクロン新大統領のエネルギー・環境政策の骨子
 5月7日のフランス大統領選挙で勝利を収めたエマニュエル・マクロン元経済・産業・デジタル大臣。5月14日に第25代フランス大統領に就任します。フランスでは、社会党を与党とする現オランド大統領政権時代に、環境・エネルギー政策の大転換がありました。その最たる例が2015年7月22日に制定された「エネルギー転換法」。この法律では、フランスの電力の代名詞であった原子力発電所の大幅削減、化石燃料消費の廃止、再生可能エネルギーへのシフト、石油由来廃棄物の大幅削減、企業及び金融機関に対する気候変動関連情報開示制度など、世界初の政策を大規模に盛り込みました。同時に政府の公的年金でもESG投資が大規模に推進されました。これまで欧州の環境先進国と言えば、ドイツやイギリス、または北欧という印象が強かった近年。フランスは後塵を拝していましたが、このオランド政権時代に、欧州、そして世界の「トップクラス」へと躍進しました。その中、関心が集まるのが、マクロン新大統領のエネルギー・環境政策です。マクロン新大統領は今回、無党派として立候補し、極右と言われる国民戦線のマリーヌ・ル・ペン候補だけでなく、フランス二大政党である社会党のブノワ・アモン候補、共和党のフランソワ・フィヨン候補とも選挙戦を競いました。選挙戦中には、現政権与党の社会党幹部が、自党の候補ではなく、マクロン新大統領を支持するという事態も発生しました。なぜマクロン氏には社会党の支持が集まっているのか。その背景には、マクロン新大統領の経歴が関係しています。マクロン新大統領は、2004年にフランスの名門大学、国立行政学院(ENA)を卒業後、フランス財務省に就職。国家官僚として勤務する一方、政治家を志し、社会党へ入党します。その後、2008年に財務省から、英国老舗資本家であるロスチャイルド家の中核投資銀行であるロチルド&Cie銀行に転職。投資銀行家としてのキャリアを積み、2010年には社会党を離党し、無党派として政治家を目指す姿勢に転向します。マクロン氏が、最初に政権入りするのが、2012年。当時就任したばかりのオランド大統領に招聘され、大統領府副事務総長としてオランド大統領に側近の地位を得ます。そして2014年、オランド政権の経済・産業・デジタル大臣に任命された後、今回の大統領選挙出馬を視野に2016年8月に大臣を辞任。そして、39歳の若さで大統領選挙に勝利。このように、マクロン新大統領は、無党派ながらも現オランド政権を支えてきました。マクロン氏は、2010年に社会党を離党した背景について、「私は社会主義者ではない」とし、右派・左派を超越した政治を目指したい考えを訴えています。さて、このマクロン新大統領の環境・エネルギー政策はどう展開されていくでしょうか。マクロン新大統領は、選挙期間中に、すでに自身の「環境・エネルギー政策」の骨子を表明しています。大きな柱は、現オランド政権のエネルギー・環境政策を「さらに推し進める」というものになっています。
<電力>
•2025年までに原子力発電比率を2025年までに現在の67%から50%に削減
•国営電力会社EDFが業績が大幅に低下している原子力発電会社アレヴァを救済合併
•2022年までに石炭火力発電を2022年までに全て廃止
•フランス領内での石油・ガス採掘を全て禁止
•2030年までにエネルギー消費に占める再生可能エネルギー割合を現在の約15%から32%に引き上げ
•2030年までに発電量に占める再生可能エネルギー割合を現在の約18%から40%に引き上げ
•再生可能エネルギーと環境保全分野に150億ユーロ(約1.8兆円)を投資
•再生可能エネルギー発電の設備容量を26GW分を新たに追加
<交通燃料>
•ガソリンとともにディーゼル燃料に対する増税を実施し、石油燃料の消費を抑制
•2040年までに化石燃料自動車を廃止する将来構想を提示
•電気自動車向けの充電スタンド設置に対する政府支援
<エネルギー効率>
•不動産分野のエネルギー効率改善のため、低所得家庭に対し40億ユーロ、政府施設に対し40億ユーロを助成
•農業分野の環境改善と地域農業協働促進のため50億ユーロを助成
•輸送分野のエネルギー効率改善のため、50億ユーロを助成
•EUの排出権取引制度に対し、フランス国内では下限価格を設定する意向を表明(2020年までに1t当たり56ユーロ、2023年までに100ユーロ)
 再生可能エネルギー推進では、すでにEUからの助成が決定しています。大統領選挙の前の5月10日、EUの行政府である欧州委員会が、再生可能エネルギー発電所建設プロジェクト合計17GW分に対する約13億ユーロ(約1,600億円)の助成金給付を承認しました。そのうち、15GW分は陸上小型風力発電所(最大3MWで6基以内)。残りは、小型太陽光発電所(100kW以内)が2.1GWと、下水発生ガスを用いた廃ガス火力発電所が1ヶ所です。マクロン新大統領はこれらの野心的な政策を実現できるのか。それは今後の国会運営にかかっています。無党派で出馬したマクロン新大統領は、現在国会内に1議席も有していません。マクロン氏は当選後、支持団体をもとに新政党「レピュブリック・アン・マルシェ(共和国前進)」を設立。6月11日から18日に行われる国民議会(下院、定数577)選挙に向け、428人の公認候補を発表しました。社会党の下院議員24人もマクロン新党公認候補として出馬します。一方、半数以上の候補が新人候補であり、選挙戦は容易ではありません。マクロン新大統領は、従来の政党には依存しない政権運営を目指すため既存の政治との訣別を掲げ、有権者に支持を訴えています。マクロン新大統領が打ち上げたエネルギー・環境政策が花開くか。次の下院選挙が帰趨を決します。

*4-3-1:http://www.maff.go.jp/j/shokusan/renewable/energy/ (農林水産省) 再生可能エネルギーの導入促進
 私たちの身のまわりには、土地や水、風、熱、生物資源等が豊富に存在しています。有限でいずれは枯渇する化石燃料などと違い、これらは、自然の活動などによって絶えず再生・供給されており、環境にやさしく、地球温暖化防止にも役立つものとして注目を集めています。農山漁村において、これらのエネルギー(太陽光、風力、小水力、地熱、バイオマスなど)を積極的に有効活用することで、地域の所得の向上等を通じ、農山漁村の活性化につなげることが可能となります。農林水産省は、再生可能エネルギーの導入を通じて、農山漁村の活性化と農林漁業の振興を一体的に進めていきます。

*4-3-2:http://www.maff.go.jp/j/shokusan/renewable/energy/sinkou.html (農林水産省) 農山漁村の再生可能エネルギー振興策について
 農山漁村における再生可能エネルギー振興策について、固定価格買取制度の活用等による発電の取組と併せて、再生可能エネルギー熱の利用や、電力小売全面自由化を捉えた再生可能エネルギーの地産地消の取組による地域内経済循環の構築等、今後推進すべき方向性の一例を紹介します。

*4-3-3:http://www.maff.go.jp/j/shokusan/renewable/energy/houritu.html (農林水産省) 農山漁村再生可能エネルギー法
 平成25年11月15日に農林漁業の健全な発展と調和のとれた再生可能エネルギー電気の発電の促進に関する法律(農山漁村再生可能エネルギー法)が成立し、11月22日に公布され、平成26年5月1日に施行されました。この法律は、農山漁村における再生可能エネルギー発電設備の整備について、農林漁業上の土地利用等との調整を適正に行うとともに、地域の農林漁業の健全な発展に資する取組を併せて行うこととすることにより、農林漁業の健全な発展と調和のとれた再生可能エネルギー発電を促進し、農山漁村の活性化を図るものです。この法律の条文や概要等につきましては、以下のリンク(http://www.maff.go.jp/j/shokusan/renewable/energy/pdf/re_ene1.pdf 等)を御参照下さい。

*4-4:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20170816&ng=DGKKZO20000960V10C17A8KE8000 (日経新聞 2017.8.16) 経済教室:経済教室偽ニュースを考える(下)周知不足が風評被害拡大、流通や行政にも課題多く 関谷直也・東京大学特任准教授(1975年生まれ。慶大卒、東大院博士課程満期退学。専門は災害情報論)
ポイント
○安全確認されても経済的被害が止まらず
○消費者の不安和らぐも供給側に思い込み
○ブランド戦略優先し検査体制のPR不足
 風評被害とはもともと原子力分野において、放射性物質による汚染がない状況で食品や土地が忌避されることとして問題となってきた。過去の事例をまとめると、風評被害とは、ある社会問題(事件、事故、環境汚染、災害、不況など)が報道されることによって、本来「安全」とされるもの(食品、商品、土地、企業など)を人々が危険視し、消費、観光、取引をやめることなどによって引き起こされる経済的被害を指す。環境汚染や食中毒などの危険性のあるものや、安全でないものが売れないのは当然である。それとは別に「安全であるにもかかわらず売れない」からこそ問題となる現象が風評被害である。2011年の東京電力福島第1原子力発電所の事故と、その後の福島県産の食品に関する消費者の購買行動を例に、風評被害のメカニズムと解消に向けた対応策を論じたい。原発事故の直後の段階では、公的には政府が定めた放射線量の基準値以下ならば安全であるとして、この基準値以下で人々が商品を買わないことや、福島県を訪れないことで生じる経済被害が「風評被害」とされた。事故直後は出荷制限された農産物も多く存在し、実際に放射性物質が検出されることもあったため、風評被害か実害かは議論が分かれるところであった。だが、放射性物質のセシウム134はすでに半減期(約2年)が過ぎ、空間線量や農作物の放射性物質の含有量は大幅に低下してきている。汚染の状況も把握され、空間線量も明らかにされてきた。カリウムを含んだ肥料をまくなどの吸収抑制策の成果もあり、農作物に含まれる放射性物質の値は下がり、昨年度の放射性物質モニタリング検査結果では野菜2870点、果実923点、肉類3791点、野生・栽培キノコ796点はすべて基準値以下である。しかも市場に流通している福島県産の農作物は徹底した検査がされている。米は毎年、約1000万袋全量が調査されているが、15年と16年は放射性物質が基準値を超えたものはなく、99.99%が不検出を意味する「ND」であった。海産物についても昨年度は8766件が調査され、全て基準値以下だった。現在、10魚種の出荷制限が続いているが、魚種や海域を絞った試験操業は拡大している。NDとは正確には、検査機器の設定した検出限界より大きい値の放射性物質が検出されなかったという意味で、生産者や流通業者、消費者の間で、流通上の許容量のデファクトスタンダード(事実上の基準)として結果的に合意した値である。現在の風評被害は、このNDの状態であっても生じる経済被害のことだといえる。さらに、社会状況や消費者の心理状況も大きく変化している。福島第1原発は廃炉の見通しが立っていないものの、避難指示区域は縮小してきている。筆者らが実施したアンケート調査の結果を比べると、福島県産の購入を拒否する人の割合は減ってきており、とくに福島県内で消費者の意識の変化が大きく、拒否する人の割合は12%にまで減った(図参照)。放射性物質に関して不安が薄らいだ理由としては、「基準値を超えた品目は出荷制限がなされている」「放射性物質が検出されなくなってきている」など、検査体制の充実による信頼感が生まれてきたことが大きいと考えられる。筆者らのこれまでのアンケート調査でも繰り返しこれらの結果が得られている。福島の風評被害の焦点は現在、人々の不安や心理の問題から、流通の問題へと変化している。流通業者や農業関係者の中に、いまだ「福島県産の農産物に多くの消費者が不安を抱いている」と思い込んでいる人も多い。社会心理学で言う、周囲の意見を正確に認識できない「意見分布の無知」という現象である。人々への影響力の大きいソーシャルメディアでも、ユーザーが見たい情報を選択的にみる「フィルターバブル」と称される現象が起きている。一般の関心は低下しているものの、ネット上では強い関心を持つ人が多くの意見を書き込むため、「放射能の問題の有無について、いまだに論争が続いている」という印象を持つ人も少なくない。さらに福島県産の農産物の安全性は確認されてきているにもかかわらず、(1)流通が長期間滞ったことで他産地の商品に置き換わり、販路が途絶えた(2)安全なことが分かっているうえ、安価でおいしいので業務用とされることが多い(3)震災後の混乱を経験した仲卸や小売店が福島県産の回復に消極的――といった問題がある。これらが総じて現在の風評被害の最も大きな課題であるといえよう。福島の風評被害の問題はすでに次のステージに入っている。放射能などに関する「科学」的な理解の問題や、リスクに関する情報を社会で共有する「リスクコミュニケーション」の問題でもなければ、行政に対する不信感の問題でもない。「事実」がきちんと周知されていないというPRの問題である。筆者らの統計的な分析でも、購買行動に大きく影響を与えるのは「検査結果」や「検査体制」である。「福島県内では米に関して全量全袋検査が行われている」ことの周知率は、福島県内では79.0%に達しているのに対し、県外は40.8%にすぎない。「食品への含有放射性物質の検査でもほとんどがNDである」ことの周知率は県内では50.3%にもなるが、県外では17.3%しかない。図で紹介したように、福島県産の食品の購入状況が県内と県外で異なっているのは、全量全袋検査やスクリーニングなどの検査体制や、ほとんどがNDという検査結果について、事実の周知に差があるためと考えられる。福島県外では汚染対策などへの関心の低下により周知度が低く、食品に対する不安感の低減が遅れているとみられる。検査体制や結果について事実が周知されなければ、これ以上の消費の回復は望めない。現在の福島県の農林水産物についての情報発信は、検査結果に関する広報が十分ではない段階にもかかわらず、「おいしさ」をアピールするブランド戦略や広告が中心となっている。だが産地間競争が増すなかで、他地域も栽培技術の開発やマーケティングに熱心に取り組んでおり、おいしさのアピールだけでは風評被害の払拭は望めない。そしりを恐れずにいえば、現代社会では消費の選択の自由がある。福島県産を心情的に拒否する人がいても、それはやむを得ない。だが、少なくとも今の福島県の検査体制や検査結果の事実を知った上で、福島県産を拒否する合理的な根拠はすでにないことは理解される必要がある。福島第1原発事故の事例に限らず、「風評被害」という社会問題は単に消費者の不安感だけが原因なのではない。メディアの報道姿勢、人々の安全認識、安全基準の設定、市場流通、産地間競争、復興時の情報発信などが複雑に絡み合った問題である。多義的であり、時間の経過と共に変化するといえる。それゆえに風評被害は単なるリスクコミュニケーションや広告だけで解決できるものではない。課題から目を背けず、社会問題としての風評被害の事実を正確に把握し、事実をきちんと知ることが解決策につながるのである。

*4-5:http://blog.goo.ne.jp/kimito39/e/24433de21832131caeb66f361abde4fa 木村結、東電株主代表訴訟事務局長
「女性自身 2017年4月4日号」(光文社)引用記事
 昨年9月、市民の反対と福島の不安に応えず、東京電力(以下、東電)は福島第一原子力発電所1号機の建屋カバーを外した。東電は放射性物質には飛散防止剤を使うので心配はないと説明していた。しかし、「女性自身」編集部が原子力規制庁のデータを検証したところ、福島県双葉郡では2017年1月の放射性セシウム134が770ベクレル/立方メートル、137が4700で合算5470ベクレル/立方メートル。カバーを外す前の2016年9月と比べると約65倍に急増していた。東京都新宿区では約4.5倍、神奈川県茅ヶ崎市では約9倍、群馬県前橋市では約13倍、千葉県市川市で約5倍となった。これは東電の怠慢であると同時に国民の安全を守らなければならない国の怠慢であり、全国各地で定点観測している規制庁は数値を知りながら警告せず放置していたことになる。1986年に福島原発と同じくレベル7の事故を起こしたチェルノブイリ原発は30年経って石棺にヒビが入り放射能漏れを起こしたため、ドーム型の覆いを施したが、これは100年持つという。チェルノブイリではデブリ(=原子炉から解け落ちて鉄や金属とともに固まった核燃料。非常に高い放射線量を持つ)を取り出すことはまだ不可能と考えているということ。ところが日本は再稼働をしたいばかりに事故を起こした原発から無理にデブリを取り出し、何が何でも廃炉が可能と言いたいようだ。それは取りも直さず作業員に多大なる被ばくを強い、無理やり帰還させた福島の住民をも被ばくさせるだけでなく、全国民も知らないうちに被ばくさせられているということ。このような原発推進ありきの政治を一刻も早く終わりにしないと日本は世界の核のゴミ捨て場になってしまう。 
-----(引用ここまで)--------
 政府・原子力ムラはこの記事の否定に躍起ですが、1号機に限らずガレキ撤去のたびに周辺の線量が跳ね上がることは以前から観測されており、何の不思議もありません。しかも溶融燃料が格納容器の底を突き抜けて地下に沈下しており、地下水と接触して大量の放射性蒸気も噴き上げています。今さら騒ぐこともない当たり前の事実です。口汚く「女性自身」を罵っている連中は、何一つ科学的なデータや根拠を示すことはしません。チェルノブイリ原発からの放射性物質の飛散を防ぐために、旧ソ連は国家の威信をかけて石棺を突貫工事で完成させました。30年を経て石棺の老朽化により再び飛散の危険があるため、さらに2千億円もかけてこのたびそれを覆うシェルターを完成させたのです。石棺も何もない青天井の福島第一原発(1F)からは放射性物質は飛散し放題です。風が吹けば大量の放射性微粒子が舞うのです。こんな当たり前のことをデマだと騒いで否定する連中は頭がおかしいとしか言いようがありません。今月1Fを見学したNYタイムズの記者たちが防護服・マスクをしていたのも、きちんとした理由があるのです。被ばくをしたくなければ、1Fから放射性物質が飛んでこない地域に避難移住するしかありません。「女性自身」には、誹謗中傷にめげず今後もぜひ真実を伝え続けてほしいと思います。読んで応援しましょう。

<人材派遣会社>
PS(2017年8月12日追加):全農の人材派遣子会社が、*5のように、リレー方式で農繁期の地域を渡り歩いたり、加工に携わったりする人を雇用して派遣すれば、働く人にとっては、①正規社員になれば生活が安定する ②多様な農業を体験できる ③定年後の高齢者・外国人などの雇用の受け皿が増える などのメリットがあり、派遣を受ける農家や加工会社にとっては、④繁忙期のみ人を増やすことができる というメリットがある。
 そして、①は被用者にとってプラスであり、②は農業に従事し始めたばかりの人や外国人にとってよい経験となり、③は雇用が増える効果がある。また、私は、この時の賃金の支払い方は、時間給だけでなく成果給を入れるのが効率を上げるポイントだと考える。何故なら、1時間あたりのみで賃金を決めるのではなく、収穫一箱あたりでも賃金を決めると、能率の良い人ほど短時間で多く稼ぐことができるため能率を上げる動機付けができ、賃金の決め方によっては双方にとってプラスになるからである。

*5:https://www.agrinews.co.jp/p40280.html (日本農業新聞 2017年3月3日)北海道-愛媛-沖縄で農作業 3JAがリレー方式 アルバイト周年確保 即戦力、人材情報を共有
 愛媛県のJAにしうわと沖縄県のJAおきなわ、北海道のJAふらのは、農繁期の労働力確保へ、アルバイトをリレー方式でつなぐ事業に乗り出した。農繁期がずれる3JAを、アルバイトが1年間渡り歩くイメージで、一定の農作業経験を積んだ即戦力として期待できる。2016年度は各JAが連携先のJAで人材募集をかけた。17年度からは他JAの加入も検討する。産地維持にアルバイトは必須なだけに、人材情報を共有するなど連携を強化し、人材確保につなげる。各JAがアルバイトに聞き取り調査などをしたところ、提携するJAでも農作業をしている事例が多く、リレー方式による連携を決めた。アルバイトの1年間の流れはこうだ。11月10日から12月20日ごろまでJAにしうわでミカンの収穫や選果場での選別作業をする。その後、JAおきなわで12月中旬から翌年3月までサトウキビの収穫や製糖作業に従事。JAふらので4~10月までメロンの品質管理やミニトマト、スイカの定植と管理、収穫を担う。各JAでは年々、アルバイト不足が深刻化している。JAおきなわは15年度、必要な約250人が集まらず一般の派遣会社を利用した。派遣会社を通じた場合は紹介料などもあり、直接募集するアルバイトより2割以上高いという。同JAは「1人でも多くリピーターを増やしたい」と連携による人材確保に期待する。JAふらのは年々、必要な採用人数に達する時期が遅くなっている。これまで4月末までに120人を確保できたが、近年は5月下旬にずれ込む。同JAの子会社で農作業支援サービスを展開するアグリプランによると、今年は2月末までで15、16人の採用しか決まっていない。「前年は同時期に約20人が決まり、状況は悪化している」と嘆く。JAにしうわ管内のアルバイトの採用人数は年々増えている。16年度は前年を2割近く上回る212人を農家が雇用した。「将来的に労働力の確保の要望は高まる」とみる。連携により、農作業経験がある優良なアルバイトの確保につなげる。新規の場合は作業効率が悪いことや働く姿勢に個人差があるため、事前にJA間で情報を共有し、有望な人材を確保する。アグリプランは「農業は他のバイトに比べ、雇用主と向かい合ってやりとりをする機会が多い。事前に参加者の個性を知ることは重要」と強調する。今後は連携JAの拡大も検討する。JAにしうわは「アルバイトにとっても選択肢が増えれば、さまざまな働き方ができるようになる」と強調する。

<脱原発・脱化石燃料と農林漁業の貢献>
PS(2017年8月13日追加):地球温暖化対策の推進に関する法律(http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H10/H10HO117.html)の第21条1項には「都道府県・市町村は、温室効果ガスの排出量削減や吸収作用の保全・強化のため措置計画を策定する」と定められており、3項には「その区域の自然的社会的条件に応じて温室効果ガスの排出の抑制等を行うための施策(太陽光、風力その他の再生可能エネルギーの利用、都市機能集約、公共交通機関利用者の利便増進など)を行う」等々が定められている。また、農山漁村の活性化と再生可能エネルギーによる発電推進を目的として、「農山漁村再生可能エネルギー法(http://www.maff.go.jp/j/shokusan/renewable/energy/pdf/re_ene1.pdf)」も制定されているため、農山漁村で発電して市町村の上下水道に併設した送電線で電力を集め、鉄道の敷地に(超電導)電線を敷設して大量消費地に送るシステムにすると、*6の脱原発・脱化石燃料と電線の地中化が比較的安価に実現できる。
 これにより、外国に支払う燃料費が不要になるとともに、農林漁業に再生可能エネルギー発電機器を補助して所得を下支えすることにより、農林水産物への永遠の補助金を削減することが可能になり、送電した組織には送電料収入が入る。こうなると、2014年の日本の原油輸入額13.9兆円(GDP比2.9%)のうちの燃料の割合が92%の12.9兆円であるため、この外国への支払いが次第になくなって国内で廻るようになり、こういう構造改革をしていくと消費税増税や子ども保険の徴収を行わなくても必要な社会保障ができるようになる。そして、これまでこういう改革ができなかったのは縦割りの別省庁の管轄だったからで、これこそ政治主導でやるべきなのだ。
 なお、日本もEV化を進めるために、東京オリンピックを期限として東京都が東京23区内へのEVや燃料電池車以外の乗り入れを禁止すれば、瞬く間にあらゆる車種の環境車への変換が進み、空港や道路で排気ガスに燻されることがなくなり、世界に驚きを与えるだろう。また、東京だけでなく、奈良・京都・大阪・札幌・福岡やその他の観光地もそうすればよいと考える。

*6:http://digital.asahi.com/articles/DA3S13084985.html (朝日新聞社説 2017年8月13日) エネルギー基本計画 「脱原発」土台に再構築を
 電気や熱などのエネルギーをどう使い、まかなっていくか。その大枠を示す国のエネルギー基本計画について、経済産業省が見直し論議を始めた。世耕弘成経産相は「基本的に骨格は変えない」と語った。しかし、小幅な手直しで済む状況ではない。今の計画は、国民の多くが再稼働に反対する原発を基幹電源とするなど、疑問が多い。世界に目を向けると、先進国を中心とした原子力離れに加え、地球温暖化対策のパリ協定発効に伴う脱石炭火力の動き、風力・太陽光など再生可能エネルギーの急速な普及といった変化の大きな波が起きている。日本でも将来像を描き直す必要がある。まず土台に据えるべきは脱原発だ。温暖化防止との両立はたやすくはないが、省エネ・再エネの進化でハードルは下がってきた。経済性や安定供給にも目配りしながら、道筋を探らなくてはならない。
■偽りの「原発低減」
 14年に閣議決定された今の計画にはまやかしがある。福島第一原発の事故を受けて、「原発依存度を可能な限り低減する」との表現を盛り込んだが、一方で原発を「重要なベースロード電源」と位置づけた。新規制基準に沿って再稼働を進める方針も明記し、実際に各地で再稼働が進んでいる。計画をもとに経産省が15年にまとめたエネルギー需給見通しは、原発回帰の姿勢がさらに鮮明だ。30年度に発電量の2割を原発でまかなうと想定する。30基ほどが動く計算で、再稼働だけでなく古い原発の運転延長か建て替えも多く必要になる。だが、原発政策に中立的な専門家からも「現実からかけ離れている」と批判が出ている。事故後、原発に懐疑的な世論や安全対策のコスト増など、内外で逆風が強まっているからだ。原発から出る「核のごみ」の処分も依然、日本を含め大半の国で解決のめどが立たない。先進国を中心に原発の全廃や大幅削減をめざす動きが広がっている。次の基本計画では、原発を基幹電源とするのをやめるべきだ。「依存度低減」を空証文にせず、優先課題に据える。そして、どんな取り組みが必要かを検討し、行程を具体的に示さねばならない。
■温暖化防止と両立を
 脱原発と温暖化対策を同時に進めるには、省エネを徹底し、再エネを大幅に増やすことが解になる。コストの高さなどが課題とされてきたが、最近は可能性が開けつつある。省エネでは、経済成長を追求しつつエネルギー消費を抑えるのが先進国の主流だ。ITを使った機器の効率的な制御や電力の需要調整など、技術革新が起きている。かつて石油危機を克服した時のように、政策支援と規制で民間の対応を強く促す必要がある。再エネについては、現計画も「導入を最大限加速」とうたう。ここ数年で太陽光は急増したが、風力は伸び悩む。発電量に占める再エネの割合は1割台半ばで、欧州諸国に水をあけられている。本格的な普及には障害の解消が急務だ。たとえば、送電線の容量に余裕がない地域でも、再エネで作った電気をもっと流せるように、設備の運用改善や、必要な増強投資を促す費用負担ルールが求められる。世界では風力や太陽光は発電コストが大きく下がり、火力や原子力と対等に競争できる地域が広がっている。日本はまだ割高で、設置から運用まで効率化に知恵を絞らねばならない。再エネは発電費用を電気料金に上乗せする制度によって普及してきたが、今後は国民負担を抑える仕組みづくりも大切になる。一方、福島の事故後に止まった原発の代役として急増した火力発電は、再エネ拡大に合わせて着実に減らしていくべきだ。現計画は、低コストの石炭火力を原発と並ぶ基幹電源と位置づけ、民間の新設計画も目白押しだ。しかし、二酸化炭素の排出が特に多いため、海外では依存度を下げる動きが急だ。火力では環境性に優れる天然ガスを優先する必要がある。
■世界の潮流見誤るな
 今回の計画見直しでは、議論の進め方にも問題がある。経産省は審議会に加え、長期戦略を話し合う有識者会議を設ける。二つの会議の顔ぶれは、今の政策を支持する識者や企業幹部らが並び、脱原発や再エネの徹底を唱える人は一握りだ。これで実のある議論になるだろうか。海外の動向や技術、経済性に詳しい専門家を交え、幅広い観点での検討が欠かせない。資源に乏しい日本では、エネルギーの安定供給を重視してきた。その視点は必要だが、原発を軸に政策を組み立てる硬直的な姿勢につながった面がある。世界の電力投資先は、すでに火力や原子力から再エネに主役が交代した。国際的な潮流に背を向けず、エネルギー政策の転換を急がなくてはならない。

<国政の方針と教育財源>
PS(2017年8月18、20日追加):*7-1のように、福島第一原発の廃炉のため国は既に1000億円超の税金を投入し、電力ばかり食って効果の上がらない汚染水対策や調査ロボットの開発費に使ったそうで、経産省が原発事故処理にまでたかって予算を獲得していることがわかる。さらに、東芝の失敗を見てもなお、*7-2のように、日立の英国子会社はスペインのテクナトム社と提携して原発新設に携わる作業員の育成や原発の運営・保守に繋げるそうで、*7-3のように、米政府代表でさえ「パリ協定」の完全履行を求める内容を含む閣僚宣言を採択したにもかかわらず、日本の経産省幹部は、①石炭火力発電所の新増設 ②国外での削減貢献分の算入 ③目標を引き下げるか原発を新設するかの選択 などを主張しているのだ。
 しかし、私は、②については、環境省の「国内の努力だけで達成すべき」というのが正しく、①③ではなく、環境に配慮した製品への代替こそが経済成長のKeyになると考える。そのため、韓国でも、*7-4のように、現代自動車が、1回の水素充填で580キロメートル走る新型FCVを2018年に韓国と欧米市場に投入し、1回のフル充電で390キロメートル走るEVも発売する予定とのことであり、この調子では、太陽光発電は中国製か台湾製、EVやFCVは中国製か韓国製が優れたブランドになり、日本は国が大きな補助をして実質マイナス価格で原発か石炭火力発電機器を売るしかなくなりそうだ。
 さらに、上のような莫大な無駄遣いを放置しつつ、*7-5のように、高等教育の無償化や福祉については、必ず財源問題が主張される。そして、政府は有力な2案(①全国民を対象に在学中は授業料を取らず、卒業後に所得に応じて拠出金の形で納付する案 ②一定の所得制限をした上で給付型奨学金を拡張する案)に絞って検討を進める方針だそうだが、教育・福祉の財源は、国内にある自然再生エネルギーで発電すれば容易に出てくるため、国立・公立大学の授業料は(無料である必要はない)せいぜい月額1万円を上限とし、奨学金は親の所得とは関係なく必要とする学生には支払うべきである。また、そうすることによって、補助金にぶら下がった仕事をするのではなく、報酬以上の付加価値を自らつけられる教育をすべきだ。
 なお、*7-6のように、日経新聞は社説で「①全員入学に近づいて大半の大学が学力による学生の選抜機能を失っている」「②このまま門戸を広げれば大学の質が低下する」「③必要なのは量的拡大より国際競争力の強化と規模の適正化だ」「④そのため外部評価に応じた資金配分が必要だ」としている。私は、大学まで無償化する必要はないと思うが、大学を卒業することにより社会貢献が多くなる学生に少ない費用で教育したり、奨学金を出したりするのは理にかなっていると考える。その際、大学の立場から見れば、①②は、選抜して間口を狭くしさえすれば質が上がるわけではなく、教育のゆとり化やスポーツ重視で高校までに得ている知識が少なく思考力が弱くなっている生徒をいくら選抜しても限界があり、少なくとも高校までの内容を身に着けていなければ大学の授業についていけない。そのため、大学はじめ試験者は、選抜者の顔色や空気を読んで相手が気に入る答えをする能力だけが鍛えられる推薦を廃止し、知識や思考力を測る試験に変えるべきだと考える。また、③の国際化が必要なのは、実は国際競争をしている第一線の人材だけで、職業によっては国際競争は少ないが専門教育を受けることが必要なものもある。そのため、望む人が大学に行けるようになったのはよいことで、今後は、知識を更新したい社会人の再教育や医療・看護・介護、工学、農学などの外国人への門戸拡大が必要だ。そして、日本の大学が勉学に困難を極める開発途上国の若者を受け入れるようになれば、結果は日本にも戻ってくる。④については、外部評価の公正性を担保した上でなら評価に応じた資金配分に異存はないが、日本人は(教育のせいか)将来を見据えた公正な評価ができないのが問題なのである。


  2017.8.18日経新聞     2011.11.13東京新聞      凍土遮水壁
      
*7-1:http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201708/CK2017081402000112.html (東京新聞 2017年8月14日) 【社会】福島第一 廃炉に税金1000億円超 7月まで本紙集計
 東京電力福島第一原発事故の廃炉作業で、国が直接、税金を投入した額が一千億円を超えたことが、本紙の集計で分かった。汚染水対策や調査ロボットの開発費などに使われている。今後も溶け落ちた核燃料の取り出し工法の開発費などが必要になり、金額がさらに大きく膨らむのは必至だ。廃炉費用は東電が負担するのが原則だが、経済産業省資源エネルギー庁によると「技術的に難易度が高い」ことを基準に、税金を投入する事業を選定しているという。担当者は「福島の早い復興のため、国が対策を立てることが必要」と話す。本紙は、エネ庁が公表している廃炉作業に関する入札や補助金などの書類を分析した。廃炉作業への税金投入は二〇一二年度からスタート。今年七月までに支出が確定した業務は百十六件で、金額は発注ベースで計約千百七十二億六千万円に上った。事業別では、建屋周辺の地下を凍らせ、汚染水の増加を防ぐ凍土遮水壁が、設計などを含め約三百五十七億八千万円。全体の三割を占め、大手ゼネコンの鹿島と東電が受注した。ロボット開発など、1~3号機の原子炉格納容器内の調査費は約八十八億四千万円だった。福島第一の原子炉を製造した東芝と日立GEニュークリア・エナジーのほか、三菱重工業と国際廃炉研究開発機構(IRID)が受注した。受注額が最も多いのは、IRIDの約五百十五億九千万円。IRIDは東芝などの原子炉メーカーや電力会社などで構成する。国は、原発事故の処理費用を二十一兆五千億円と試算。このうち、原則東電負担となる廃炉費用は八兆円とされている。除染で出た汚染土を三十年間保管する中間貯蔵施設は国の負担だが、賠償費用は主に東電や電力会社、除染費用も東電の負担が原則だ。

*7-2:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20170720&ng=DGKKASDZ19IOJ_Q7A720C1EAF000 (日経新聞 2017.7.20) 日立の英子会社が提携 スペイン原発関連と
 日立製作所は英国の原子力発電事業開発子会社ホライズン・ニュークリア・パワーがスペインの原発関連エンジニアリング会社であるテクナトム社と提携したと発表した。英国中部のアングルシー島で進める原発新設に携わる作業員を育成し、確実な原発の運営・保守につなげる。

*7-3:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20170818&ng=DGKKZO20106770X10C17A8EE8000  (日経新聞 2017.8.18) 経済:エネルギー再考 論点を探る(下)50年目標、具体化か素通りか 温暖化対策、省庁間で溝
 7月半ば、ニューヨークでの「持続可能な開発目標(SDGs)」閣僚級会合。地球温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」の完全履行を求める内容を含む閣僚宣言を採択した直後、米政府代表は言い放った。「米国は協定に関する部分とはかかわりを持たない」
●米抜きでも歩み
 ほぼすべての国が参加するパリ協定。温暖化ガスの2割弱を排出する米国の離脱表明が衝撃だったのは確かだが、欧州連合(EU)や中国など主要国が歩みを止める兆しはない。7月、独ハンブルクでの20カ国・地域(G20)首脳会議で、米を除く各国は「パリ協定は撤回できない」と宣言。仏英は2040年からガソリン・ディーゼル車の販売を禁止し電気自動車などを優遇すると発表した。再生可能エネルギーの普及を急ぐドイツやカナダを含め、各国の念頭には「産業革命前からの気温上昇を2度未満にする」との協定に盛られた目標がある。カギになるのが50年をメドとする長期の削減戦略。仏独などは基本対策とともに国連に提出済みだ。各国は対応が経済成長につながるとみる。経済協力開発機構(OECD)によると、G20が温暖化防止に取り組めば50年時点で成長を約5%押し上げる。30年までに年平均6兆9000億ドルの投資が必要になる。
●石炭火力やり玉
 一方の日本。50年に80%減という長期計画を閣議決定したが、国連に出せていない。政府内調整が難しいためで、特に温暖化対策を推進する経済産業、環境両省の足並みがそろわない。「どんどん設置されれば二酸化炭素(CO2)の削減はできない」。中川雅治環境相は約40ある石炭火力発電所の新増設計画をやり玉にあげる。中部電力の計画に待ったをかけるなど影響が出ているが、経済産業省は「電力安定供給に石炭火力は必要」との立場だ。80%減を巡り、環境省は国内の努力だけで達成すべきだと訴えるが、経産省は国外での削減貢献分も算入するよう主張。対策を示す報告書も別々にまとめた。地球環境産業技術研究機構(RITE)の分析によると、国内だけで80%減を実現するには電源構成の4割以上が原子力になる。1割強はガス発電だが、排出されるCO2を回収する装置をつける。残りは再生可能エネルギーだ。このシナリオではCO2を1トン減らすのに60万円以上かかり、原発の新設も必要になる。経産省は30日、50年を見据えた有識者会議の初会合を開く。経産省幹部は「目標を引き下げるか原発を新設するかの選択になるかもしれない」と言う。将来像を詰めて具体化するか素通りするか。温暖化対策への本気度も問われる。

*7-4:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20170818&ng=DGKKASDX17H0I_X10C17A8FFE000 (日経新聞 2017.8.18) 現代自が新型燃料電池車 航続距離39%増 欧米でも来年投入
 韓国の現代自動車は17日、新型の燃料電池車(FCV)を公開した。2018年の第1四半期(1~3月)に韓国で発売するのを皮切りに、欧米市場などにも投入する。現行モデルと同じ多目的スポーツ車(SUV)型で、航続距離は現行比39%延びるという。18年に航続距離を2倍にした電気自動車(EV)を発売することも公表した。現代自にとって2代目になるFCVは、水素と酸素を化学反応させて電気をつくる燃料電池スタックや水素供給装置などの中核部品を全面的に見直した。化学反応から推力を得るシステムの効率を60%と現行比約5ポイント上げ、1回の水素充填で走る距離を580キロメートルに延ばす。モーターの出力は163馬力でトヨタ自動車のFCV「ミライ」(154馬力)を若干上回る。欧米とオーストラリアで「18年後半の発売を見込み、中国販売も検討する」(現代自幹部)とする。FCV市場で先行するトヨタなどを追撃する。ハイブリッド車(HV)などを含む環境対応車を20年までに現在の14車種から31車種に増やす方針も明らかにした。EVは1回のフル充電で390キロメートル走るSUV型を来年前半に出す。また、現代自は航続距離が500キロメートルのEV開発に着手したことも明かした。

*7-5:http://digital.asahi.com/articles/DA3S13091724.html?_requesturl=articles/DA3S13091724.html&rm=150 (朝日新聞 2017年8月18日) 高等教育無償化2案 卒業後に拠出金納付・給付型奨学金を拡張
 安倍政権が掲げる大学などの無償化について、政府は、有力な2案に絞って検討を進める方針を固めた。全国民を対象に在学中は授業料を取らず、卒業後に所得に応じて拠出金の形で納付する案と、一定の所得制限をした上で給付型奨学金を拡張する案の二つ。ただいずれの案でも、数兆円規模で必要ともされる財源の確保策には現時点では踏み込んでおらず、検討が難航する可能性も残る。意欲があれば大学や専修学校に進学できるようにし、高等教育への機会均等の確保を図るのがねらい。政権の目玉政策「人づくり革命」を具体化するため、9月に初会合を予定する「人生100年時代構想会議」で大学改革と合わせて議論を開始。関係法案をまとめ、2020年4月からの新制度の施行を目指す。第1案は、オーストラリアの高等教育拠出金制度「HECS(ヘックス)」を参考にする。在学中の授業料などを全額、公費で負担する代わりに、卒業してから所得に応じて拠出金を納めてもらう。「高等教育費は保護者が負担する」という原則を「社会が共同で支える」考え方に転換するものだ。拠出金は、卒業者がその時点の所得に応じて社会に貢献してもらうという位置づけだが、拠出金のあり方や額などによっては、奨学金の貸与を受けて返済するのと変わらなくなる可能性もあり、慎重な制度設計が不可欠になる。第2案の「給付型奨学金の拡張」は今年度、先行実施された給付型奨学金制度がもとになる。この制度では最終的に、年6万人程度が返済不要の奨学金を受ける見込み。日本学生支援機構が貸与し、返済義務がある奨学生(15年度で約132万人)に比べてまだまだ少ないため、拡張を検討する。しかし、所得制限をかけることで、高等教育をすべての国民に等しく開かれたものにするという考え方からは離れることになる。財源をどうするかも課題だ。新たな借金(国債)で賄うことになれば、将来世代に負担を先送りすることになりかねず、構想会議や政府部内でも激しい議論を招きそうだ。
■高等教育無償化の二つの案
◇日本版HECS(高等教育拠出金制度)
 【対象】 全国民
 【在学中】授業料は無償
 【卒業後】所得に応じて拠出金を納付
◇給付型奨学金の拡張
 【対象】 一部(所得制限あり)
 【在学中】現行制度では、授業料は減免制度で対応
 【卒業後】返還の必要なし

*7-6:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20170820&ng=DGKKZO20171740Z10C17A8EA1000 (日経新聞社説 2017.8.20) 
 政府は高等教育の無償化の検討を始めた。だが、私立大学の約40%が定員割れし、大半の大学が学力による学生の選抜機能を失っている。現状のまま無償化で門戸を広げれば、大学の一層の質の低下は避けられない。必要なのは、量的拡大よりも国際競争力の強化だ。人材育成や研究の中核を担う「公共財」としての価値をいかに高めるのか。長期的な視野に立ち、抜本的な大学改革に乗り出す時だ。
●規模適正化が課題に
 まず、検討すべきは大学の規模の適正化だ。バブル経済崩壊後の低成長、少子化時代に、大学はその数、入学定員を増やし続けた。その結果、志願者の90%超が進学する「全入」に近づいた。水ぶくれした大学が限られた予算を奪い合い、国全体としての教育・研究の投資効率を低下させてはいないか。18歳人口のピークは1992年度の205万人。直近は120万人で、2040年には88万人と予測される。現在の大学数は780。92年に比べ18歳人口は約40%減ったが、大学数は約50%、入学定員も約25%それぞれ増加した。今の大学進学率、入学定員が維持されると仮定すると、20年後には十数万人規模の供給過剰になる。入学定員1000人の大学が100校以上不要となる計算だ。1980年代に18歳人口が減少した米国では、大学が入学者数を抑制し、選抜機能を維持した。新入生の減少で大学は授業料を引き上げたが、連邦政府は貸与奨学金と寄付制度の拡充という支援策を講じた。少子化が進む韓国では現在、大学を5段階にランク分けし、評価下位大学に定員削減を求める荒療治を始めた。日本でもようやく規模適正化の議論が始まった。少子化による教員採用減が確実な国立大の教員養成大学・学部に対し、文部科学省の有識者会議は定員削減や他大学との機能集約・統合を求める報告書案を示した。妥当な判断だ。20年後には日本の労働人口の約49%が人工知能やロボットなどにより代替可能という民間調査がある。産業別就業者の推計なども参考に今後は、国公私立の設置形態の別を問わず、入学定員の総枠の削減を視野に、時代に適合した学部の重点化を図るべきだ。政府は東京23区内の私立大の定員増を今後認めない方針を決めた。若者の東京一極集中を是正する目的だが「木を見て森を見ず」の感が否めない。問題はむしろ学生の選抜機能を失い教育の質の低下が懸念される地方の小規模大学だ。大学間の単位互換や校地の共有化など、地域教育の中核となるような統合・再編が望まれる。大学の数や入学定員が急増したのは、「事前規制から事後チェックへ」という政府の規制緩和策が大学設置基準にも及び、一定の要件を満たせば新規開設が認められるようになったからだ。規制緩和の本質は、新規参入を促す一方、質の低いサービスは市場から淘汰される仕組みにある。しかし、大学の経営や教育水準をチェックするため2004年度に文科省が導入した「認証評価制度」がうまく機能していない。
●評価に応じ傾斜配分を
 大学基準協会などの機関が評価結果を公表しているが、社会的にほとんど認知されていない。財務省の財政制度等審議会は、主に規模や定員の充足率に応じ交付する私立大の補助金を評価結果に連動させ傾斜配分すべきだと提言。学術論文の数や学生の就職実績なども勘案すべきだと指摘する。どんな評価指標が妥当かは議論の余地があるが、公費の使途や効果の「見える化」は国民的な要請だ。評価機能の拡充も課題だ。その点、気になる動きがある。評価機関によって経営や教育が「不適格」とされた地方の私立大が公立大に衣替えするなど、定員割れの私大を地方交付税で救済する事例が相次いでいる。納税者の観点からは、違和感がある。日本の大学の国際的評価が総じて低調なのは、密度の低い教育を量的に拡大してきたからだ。高等教育無償化の前提は、各大学が入学金や授業料が公費で充当されるにふさわしい公的価値を持つことを、社会に証明することにある。国はまず、定員を戦略的に削減し教育の質を高める大学を支援するなど規模適正化と、外部評価に応じた資金配分に着手すべきだ。

<21世紀の農林漁業へ>
PS(2017年8月21、22、24、26日追加):現在の森林環境税は、都道府県が森林整備の目的で徴収する法定外目的税だ。しかし、この仕組では森林面積が広くて人口の少ない地域が二酸化炭素吸収源で水源である森林を整備することになるため、*8-1のように、国が森林環境税を新設しようとしているのは実現すべきだ。問題はどう配分するかで、私は、森林・田園・緑地帯・藻場などの面積に比例して都道府県・市町村の役割に応じて両方に交付すればよく、そのためには都道府県・市町村の役割分担を明確にする必要があると考える。そうすれば、森林・田園・緑地帯・藻場などを護ることが、直接的な地域の収入にもなる。
 なお、農業は、*8-2のように、熊本県山鹿市が民間企業と協力して最適な温度と湿度を保った無菌室で蚕を飼育し、桑の葉を人工飼料に加工することによって年24回の繭の生産を可能にして養蚕業の再興に乗り出し、「山鹿シルク」のブランドを確立させて世界のシルク産業の拠点にするそうだ。そのシルクの使用目的は、製糸、医療・医薬品、化粧品開発などだが、日本の技術の粋を尽くしたシルクのブランドイメージを作るためには、「山鹿シルク」よりも「日本シルク」「九州シルク」のようなもっと大きなブランド名の方がよいと考える。
 また、*8-3のように、鹿児島県十島村では、輸入品の多い神棚のサカキを栽培する新しい組合が生まれたり、島の特性や気候を活かして野生のヤギを出荷したり、バナナの栽培が始まったりしている。さらに、*8-4のように、佐賀県伊万里市南波多町にブドウや梨の収穫体験ができる観光農園が開園したそうだが、現代の最大の贅沢は自分で選んだ採れたての野菜や果実でジャムを作ったり料理を作ったりすることで、それが贅沢である理由は、大都会ではそれができにくいからだ。
 菓子とガムを生産していた「九州グリコ」が、*8-5のように解散し、従業員のうち非正規社員211人が雇用契約を更新されず、跡地の活用も未定だそうだ。跡地(佐賀市鍋島町大字蛎久、3万1520平方メートル)は神野公園の前にあるため、工場よりも付加価値の高い使い方ができるが、私は残った人で土地価格の安い場所に引っ越し、残った機械や技術を活用して、ケーキと洋菓子のメーカーをすればよいと考える。何故なら、この頃、馬鹿の一つ覚えのように生クリームのケーキしかなく、私はアマゾンを通して広島のケーキ屋さんからバタークリームのケーキを購入しているくらいで、ケーキも冷凍して運べば遠くからでも運ぶことができ、解凍すればできたてのようになるからだ。その際、戦後の「菓子でさえあればよい」という発想は捨て、フランスの一流パティシエを招いて作るのがよいだろう。そのケーキ・洋菓子の材料は、小麦粉・米粉・牛乳・果物・野菜など佐賀県に豊富にあり、6次産業化しての輸出も可能である。
 なお、最近は、*8-6のように、惣菜が売れている。その理由は、1~2人暮らしの家族では、いろいろな材料を買って手作りするよりも、できあがった中食を買う方が安くつき手間も省けるからだが、「九州グリコ」の元従業員のように、衛生的に食品を作ることに慣れている人は、そちらへの転用も可能だろう。しかし、この際も、惣菜だから味・栄養価・品質が一段落ちたり高くついたりしてもよいというわけではなく、手作り以上の味・栄養価・品質を出して合理的な価格で売るのが、継続的にヒットするコツである。
 また、*8-7のように、西日本新聞が「パスタ・菓子 本場の味に対抗できるか」という記事を書いているが、私は「ゆで時間が短い」「束になっている」などの理由で、国産スパゲティを買うことが多いため、国産も十分に太刀打ちできると考える。さらに、カルシウム・鉄・ビタミンなどを配合して付加価値を増し、調理を簡単にするための美味しいトマトピューレや冷凍海産物があると、売り上げがさらに上がると思われる。


 これからの課題 福岡県の森林環境税に関する説明   熊本県山鹿市のシルク  
                           2017.8.16佐賀新聞

(図の説明:2050年の世界人口は95億人となり、今のまま構造改革をしなければ、食料・水・エネルギー・資源が不足する事態となる。そのため、我が国も持続可能な社会を意識して、食料・エネルギーの自給率を上げておくことが必要だ。さらに、持続可能にするためには、国内の自然を壊さず、公害を出さずに、国内資源を十分に活用できるようにしておく必要があるため、環境税の徴収による環境維持は重要である。さらに、農林漁業に生物学・生態学の最先端の知識を導入して、担い手が誇りを持ち、豊かな生活ができる産業にしなければならない)

*8-1:http://qbiz.jp/article/116766/1/ (西日本新聞 2017年8月20日) 森林環境税、都道府県にも税収を 知事会「整備に関与不可欠」主張
 市町村の森林整備費を賄うため政府、与党が新設を検討している「森林環境税」について、全国知事会が「森林整備は都道府県の関与が不可欠」として、税収の一部を配分するよう働き掛けを強めている。ただ都道府県に配れば、取り分が減る市町村からは反発も予想される。年末の税制改正大綱の取りまとめに向け、議論が過熱しそうだ。森林環境税は、所有者が分からない森林の増加や林業の担い手不足が問題になる中、地域の実情に最も詳しい市町村が私有林の間伐を代行する財源を確保するために検討が始まった。個人住民税に上乗せして徴収し、国が森林面積などに応じて市町村に配分する仕組みが想定されている。これに対し、7月に盛岡市で開かれた全国知事会議では「都道府県が関わらないと森林整備はできない」(佐竹敬久秋田県知事)、「林業の専門職員が少ない市町村だけでは厳しい」(尾崎正直高知県知事)といった声が噴出した。会議では、都道府県が市町村への間伐事業の指導や林業技術者を派遣することなどを念頭に「税収は役割分担に応じて配分すべきだ」との提言を採択した。

*8-2:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/455475 (佐賀新聞 2017年8月16日) シルク産業 世界拠点へ 熊本・山鹿市に巨大養蚕工場
■耕作放棄地桑畑に転換 製糸、化粧品開発も視野
 かつて養蚕が盛んだった熊本県山鹿市は、民間企業と協力して養蚕業の再興に乗り出した。市内の廃校跡には世界最大級の養蚕工場が建設され、耕作放棄地約25ヘクタールは桑畑に生まれ変わった。「山鹿シルク」のブランドを確立させ、世界のシルク産業拠点となることで地域経済の活性化を狙う。今年4月、熊本県北部の山あいの地に延べ床面積約4170平方メートルの養蚕工場が完成し、5月に稼働を始めた。総工費は約23億円。最適な温度と湿度を保った無菌室で蚕を飼育し、病気から守る。桑の葉を人工飼料に加工する設備もあり、通常は葉の収穫に合わせて年3回程度の繭生産が、通年で24回可能となった。取り組みのきっかけは、工場を運営する市内の農業生産法人「あつまる山鹿シルク」側の提案だった。市は2014年12月、同社と新養蚕産業構想に関する協定を締結。同社による養蚕工場建設や桑畑造成の計画が具体化した。土地の有効活用や雇用創出につながると、市は用地選定や桑畑へのアクセス道路の沿道整備といった面から支えた。3年以内に国内最大産地の群馬県に匹敵する年約50トンの繭生産を目指す。現時点で、地元を中心に約20人の雇用が生まれている。あつまる山鹿シルクの島田裕太専務(37)は「徐々に生産量を増やしたい」と意気込む。一方、取り組みはまだスタート地点。市は、製糸工場建設や、繭のタンパク質を活用した医療・医薬品、化粧品開発も展望する。大手商社などと連携し、情報発信や販路開拓を強化。構想名をIT産業の聖地、米カリフォルニア州シリコンバレーになぞらえた「SILK on VALLEY(シルク・オン・バレー)」とし、関連産業の集積を図りたい考えだ。市によると、県内には昭和初期、約7万軒の養蚕農家があった。しかし、安価な輸入品の増加や、高齢化に伴う廃業により衰退し、14年には市内の2軒を含め県内で5軒にまで減った。養蚕業再興の成否はこれからだ。山鹿市は熊本の近代養蚕業の開祖とされる長野濬平(しゅんぺい)の出身地。中嶋憲正市長(67)は「広がりの大きい産業が山鹿の地から生まれれば、市民の誇りや希望につながる」と話している。

*8-3:https://www.agrinews.co.jp/p41655.html (日本農業新聞 2017年8月19日) [にぎわいの地] 島で生きる 鹿児島県十島村(下) なりわい育む“家族” 移住者の夢村民が応援
●サカキ特産化組合つくる 
 シャツに記された文字は「悪」。フェリーが港に着岸すると、高齢者から若者までそろいの服を着て港で積荷の作業に励む。命綱である生活物資を島に運び入れる作業だ。収入を得るための出荷物も皆で送り出す。家族のような一体感。それが、悪石島(鹿児島県十島村)の特徴だ。36世帯78人が暮らす。昨年、神棚に備えるサカキを栽培する新しい出荷組合が生まれた。名古屋市出身の西澤慶彦さん(20)、東京都出身の太田有哉さん(21)ら都会育ちの“ヨソモノ”と地元農家12人が団結。手間が掛からず台風に強いサカキ。組合長で自治会長の有川和則さん(65)は「ヨソモノじゃなくて家族と思っている。サカキは将来の収入の種。若者を島に残すため金をつくる仕組みを皆でつくる」と知恵を絞る。
●野生のヤギで新ビジネスを
 ここ数年、島には夢を抱いて新しい農業に挑戦する若者が移住する。必ずしも全員が夢を持ってやってきたわけでない。中には都会で傷ついた若者たちも。島で生きるため、移住後、夢を見付ける。大人たちが団結し、若者の夢を育み、支える。野生のヤギの生体出荷を始めた太田さん。「牛の草をヤギが食べて島民を困らせている。土砂崩れの原因にもなる。一石二鳥のビジネスでしょ」。少し自慢そうに構想を明かす。ここまで何かに本気になって挑戦したことは、初めてだ。太田さんは農林漁業のイベントで有川さんと知り合い、西澤さんを誘って3年前に移住した。家事が苦手で、売店もない島の生活は苦労の連続。遅刻などでたびたび島民に怒られる。「けんかするのも怒るのも家族だから。本気で僕を育ててくれている」。心の中で島民に、感謝している。病気になってもライフラインが壊れても、助け合って応急処置するしかない離島。西澤さんは「誰かが勝ち残るのではなく皆で生きていく感覚を島で初めて知った」と語る。ゲーム漬けで孤独だった高校生活。皆で支え合う家族的な島の雰囲気に、生きる居場所を見つけた。村で成人式を挙げた西澤さん。将来も島で生きていく術(すべ)を懸命に模索する。サカキ、スナップエンドウ、バナナなど新たな特産品で生計を立てようと必死だ。早朝から夕刻まで、畑へ。
●団結と温かさ一体感が支え
 高知県から移住し、漁業とバナナを栽培する鎌倉秀成さん(38)は「夢を持って生きることができる島。家族のように受け入れてくれる温かさが、生きる励み」と感謝する。若者の夢は、島民の夢でもある。畜産農家の有川俊江さん(59)は「島を選んでくれて心からうれしい。絶対、島に残ってほしい」と願う。手伝えることがないか、いつも考えているという。悪石島の名の由来は諸説ある。農家の有川安美さん(84)は隠し財宝を悪人から守るために先祖が命名したと聞いて育った。終戦も長く知らず島で生きてきた有川さん。「島に来てくれて夢に向かって頑張る若い人は、悪石島の財宝のよう。自分たちが財宝を守っていきたい」と決意する。誰もがわが事として、移住してきた若者の挑戦を応援している。本当に定住できるかは、これからにかかっているからだ。発想力を生かし挑戦する若者たちの移住。人口は増え、悪石島には保育園も近くでき、島は確実に変わった。その変化の道のりは、時に摩擦も生じる。十島村の住民は、新しい風を受け止めながら、島を残す歴史をつむいでいく。
キャンペーン「若者力」への感想、ご意見をお寄せ下さい。ファクス03(3257)7221。メールアドレスはwakamonoryoku@agrinews.co.jp。フェイスブック「日本農業新聞若者力」も開設中。

*8-4:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10105/456578 (佐賀新聞 2017年8月21日) 伊万里に観光フルーツ園 9月30日まで
■ブドウやナシ収穫体験
 「フルーツの里」の伊万里市南波多町で20日、特産のブドウや梨の収穫体験ができる観光農園が開園した。今年はブドウ、ナシともに品質が上々で、家族連れの観光客がもぎたてをかごに入れながら笑みを浮かべていた。9月30日まで。地元農家でつくる観光農業推進協議会(池田徳和会長)が毎年町内5カ所の園地を開放しており、今年で41回目。初日は高瀬ぶどう園で開園式があり、池田会長は「猛暑の影響が危ぶまれたが、ここ数日の涼しさで着色も酸切れもよく、抜群の食味」と太鼓判を押した。ナシも好天で玉太りが良好となり、「近年では一番の出来栄え」という。入園無料で、持ち帰り料金は巨峰1キロ1000円、シャインマスカットは2000円。ナシ(豊水・新高)は1キロ500円。開園時間は午前9時から午後5時。問い合わせは「道の駅伊万里ふるさと村」、電話0955(24)2252へ。

*8-5:http://qbiz.jp/article/116868/1/ (佐賀新聞 2017年8月22日) 九州グリコが解散へ 2018年12月に菓子生産停止
●江崎グリコ創業の地「特別な思い」
 江崎グリコ(大阪市)は21日、菓子とガムの生産子会社「九州グリコ」(佐賀市)の生産を来年12月に停止し、会社を2019年1月に解散すると発表した。工場の老朽化と販売不振が理由。乳製品などの生産子会社「広島グリコ乳業」(広島市)も来年10月に解散し、それぞれ生産は国内17工場に集約する。九州では、グループ工場が乳製品などを製造する「佐賀グリコ乳業」(佐賀市)のみとなり、菓子製造から撤退する。江崎グリコによると、九州グリコの従業員は262人。うち正社員51人は他工場に転籍させるが、パートなど非正規社員211人は雇用契約を更新しない。跡地(3万1520平方メートル)の活用は未定。九州グリコは1953年に九州工場として操業を開始し、01年に現地法人化した。菓子の「チーザ」とガム類を生産し、17年3月期の売上高は11億6900万円とピークの09年3月期から半減したという。佐賀県は江崎グリコの創業者江崎利一の出身地。有明海のカキの煮汁をヒントにキャラメルのグリコを製品化したといい、九州グリコの干貝(ひがい)博彦社長は「(佐賀県には)特別な思いがある」とコメントを出した。

*8-6:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/457446 (佐賀新聞 2017年8月24日) 総菜ポテトサラダ出荷元O157不検出 埼玉
 埼玉県熊谷市のスーパーに入る「でりしゃす籠原店」などで7、8日にポテトサラダを買って食べた14人が腹痛などを訴え、県は23日までに10人の検体からO157が検出されたと発表した。群馬県高崎市は23日、出荷元の同市の食品加工工場にあったサンプルを調べた結果、菌は検出されなかったと発表した。立ち入り調査で感染者が食べたのと同じ製造日のものを持ち帰り検査していた。高崎市によると、埼玉県からの依頼で21日と23日に調査し、製造工程を確認。感染者の食べたサラダは5~7日に製造され、6、7日に群馬、埼玉、栃木の34店舗に計約590キロ出荷されていた。5日と7日の製造分は菌が検出されなかったが、調理器具などの検査結果が24日以降に出る見込み。市は「原材料の衛生状態などに問題はなく、管理上明らかに不適切な点は確認できなかった」としている。工場は19日から操業自粛中という。埼玉県によると、総菜店を運営する群馬県太田市の「フレッシュコーポレーション」は、同工場から袋詰めのポテトサラダを仕入れ、ハムやリンゴをまぜて販売していた。

*8-7:http://qbiz.jp/article/115782/1/ (西日本新聞 2017年8月26日) 【よく分かる日欧EPA】その5:パスタ・菓子 本場の味に対抗できるか
 「今でも国産は太刀打ちできないのに、先は厳しい」。経済連携協定(EPA)で欧州連合(EU)産スパゲティやマカロニの関税が11年目になくなると決まり、国内メーカーでつくる日本パスタ協会(東京)の担当者は肩を落とす。協会によると、消費者の国産志向は強いが「パスタに限ってはイタリア、ギリシャ産が好まれる」。形や食感の種類が豊富な輸入品には国産と価格が大差ないものもあり、2016年は輸入量が国内生産量を上回った。1キロ当たり30円の関税がゼロになれば、本場のブランドがさらに浸透する。パスタ協会は原料の小麦輸入時に事実上の関税がかかり、高値で調達せざるを得ない仕組みの見直しを求めている。加工食品では、菓子の関税も軒並み撤廃される。チョコレート菓子の関税は現在10%。詰め合わせだと数千円はするベルギーのチョコ「ゴディバ」といった高級品ほど恩恵は大きくなる。国内メーカーには、EU産と日ごろ食べる国産菓子とはすみ分け可能との見方が多い。ただ、乳酸菌入りのチョコを手掛ける不二家は「今後も付加価値のある製品開発に力を注ぐ必要がある」と輸入増加に気を引き締めており、新商品の投入競争が活発になりそうだ。
   ◇   ◇
日欧EPAで貿易や投資のルールがどう変わるのか。暮らしや産業への影響を中心に解説する。

<漁業について>
PS(2017年8月24、26、28日追加):一般の人に海は水面しか見えていないため変わっていないように感じるだろうが、実際には水中のいたるところに生物が生息し生態系があって、人間はそれを利用しているわけである。わかりやすい例では、*9-1のように、ウニは食べ物の海藻が少なければ身が入らず商品にならない。また、海藻が減って砂漠のようになった海を「磯焼け」と呼び、「磯焼け」の主な原因は海水温の上昇で生物が増えて海藻が食べ尽くされることと書かれているが、海水温上昇の原因は地球温暖化だけではなく原発の温排水や海底火山の噴火もあり、海藻の生育にも適切な海水温があるため、「磯焼け」する原因は多い。その結果、食べる身のないウニが増えるため海藻は重要なのである。ただし、ウニの場合は身のないウニを捕獲して陸上の植物や藻類のユーグレナなどで安い飼料を作って養殖することが可能だと私は考える。
 そのような中、*9-5のように、原子力規制委員会は、2017年8月25日に九電が再稼働を目指している玄海原発3号機(佐賀県玄海町)の「工事計画」を認可したそうだ。原発が稼働すると、温排水により海が暖められて正常な生態系が壊れるとともに、原発を冷やすために大量の海水とともに海の生物の幼生を吸い込んで煮殺して排出する。これも藻場の衰退や漁獲高減少の原因であるにもかかわらず、原発を再稼働させるなど何を考えているのかと言いたい。
 しかし、*9-2は、「①三陸沖での漁獲量が減っているのは、中国が公海で大量に獲っているのもあるが、資源の枯渇も原因だ」「②日本の水産業が抱える問題の縮図が、東日本大震災が起きた三陸にある」「③震災により廃業した漁業者が増え、高齢化と後継者不足が顕著に表れている」「④より厳しく確実に水産資源を管理し、地球環境だけでなく漁業者の生活にとっても持続可能な漁業を実現すべき」などとしている。しかし、①の中国が公海で大量に獲って資源が枯渇しそうなのは事実だが、②③の東日本大震災で原発事故が起きた三陸沖はいろいろな意味で漁業に適さない海になっているという特殊事情があるため、他の要因と混同させるのはよくない。また、④については、日本の漁船は既に網目を大きくして幼魚は逃げられるようにし、漁業者の数も減っているため、日本の水産資源管理を厳しくするよりは他国にも同様の規制を促すとともに、海の環境を守ることの方が重要だ。そして、その結果は食料自給率に影響する。
 さらに、*9-3のように、「第6あおい丸」が優良な漁場である長崎県壱岐沖で海砂を採取した後、平戸沖を経由して諫早市久山港に向かう途中の平戸沖で沈没した。対馬や壱岐沖ではイカ釣りなどの漁業が盛んだが、海砂を取ると砂の中に産み付けられた魚介類の卵を一緒に吸い込むため、不漁の一因になっていると言われている。そのため、一石二鳥になるよう、海砂ではなく、埋まってしまったダムの底や天井川の川底の砂をとるべきで、日本はこのように漁業を持続可能にするための国を挙げての努力が行われていないのだ。
 その上、*9-4のように、ロシアは北方領土を経済特区に指定し、「先行発展地域」に指定するそうで、日本政府の言う「特別な制度」にどういう意味があるのかは不明だが、日本政府は現在最もやるべきことを考えていなかったため、北方領土を返還してもらうこともできず、“共同経済活動”だけを行って北方領土を諦めることになったらしいのは、悲しくも阿保らしい。
 そのため、このような漁業上の理由からも、*9-6の高知新聞による「エネルギー計画は、脱原発を明確にすべきだ」という意見及び*9-7の山陽新聞による「エネルギー計画、現実踏まえ抜本見直しを」という意見に全く賛成だ。

  
                  *9-1より
(図の説明:ウニの漁獲高は、左のグラフのように年々減少している。その原因は、①中央の写真のように、えさとなる海藻がなくなる磯焼けをしていること ②それにより、右の写真のように、餌不足のウニに食用部分の身が入らないこと などである)

*9-1:https://abematimes.com/posts/2467906 (Abema Times 2017.6.2) 寿司屋からウニが消える?漁獲量を減少させる「磯焼け」とは
玄界灘に面した新三重漁港をはじめ、長崎県は全国4番目の漁獲量を誇るウニの好漁場だ。しかし近年、ウニの漁獲量は年々減少しているという。中には身の入っていないウニもあった。原因は「磯焼け」だ。海岸に生えているコンブやワカメなどの海藻が減少、不毛の状態となってしまう現象だ。磯焼けの海で獲れるウニは、身入りが悪く、売り物にはならない。長崎県のウニの漁獲量は1970年代後半には4000トン以上を記録していたが、現在はその10分の1程度にまで落ち込んでいる。福岡市中央区にある「うにと海老の専門店 魚魚魚」の島津料理長によると、価格も高騰、1キロ5000円~1万円の幅で変動しているという。30年以上全国各地の海に潜り「磯焼け」を研究、水産庁の「磯焼け対策ガイドライン」策定にも携わった東京海洋大学の藤田大介准教授は、「磯焼け」の主な原因は温暖化による水温上昇が引き金となって生物の活動が活発化し、海藻が食べ尽くされてしまったことだと話す。さらに、気候変動で大型の台風や時化の発生が増え、海藻が引き剥がされ枯れてしまうのだ。 また、ウニそのものも「磯焼け」の原因になってしまっている。飢餓に強く、食料がない場合は生殖せずに生きていこうとするのだという。「磯焼け」の海で取れた、身の入っていないウニは、精巣・卵巣の部分の成長を抑えているウニということだ。「実は東日本大震災の直後、養殖施設が流れてしまったことで潮通しが非常に良くり、海藻にとってプラスに働いた。その後に生まれたウニたちが食べ盛りになっていて、今、大いに暴れている。そこで水温が高くなると、ますます海藻を食べてしまう」(藤田准教授)。長崎の漁師たちも手をこまねいていたわけではない。漁協では、ウニの移植で磯焼けの解消を図っている。ウニを普通の藻場に移し、磯焼けが進行した場所には海藻を移植、繁殖を促している。また、藤田准教授は「北海道では冬のエサがない時期にイタドリの葉っぱを与えるという試みもあった。エサに困るところはそういう努力もしている」と、不要になった野菜を使った養殖の可能性も示唆した。将来、私たちが美味しいウニを食べられなくなる日が来てしまうのだろうか。藤田氏は「磯焼け対策の中でも、一般市民ができることはまだまだあると。ダイバーの方は写真を撮って記録していただくとか、陸上で手伝えることもあると思う。参加していただければと思う」とした。

*9-2:http://www.nikkei.com/article/DGXMZO19950560U7A810C1I00000/?n_cid=MELMG002 (日経新聞 2017/8/16) 市場で買う魚がない 減り続ける水産資源、三陸沖の不都合な真実(上)
 ノルウェー近海、北米東海岸と並び世界三大漁場のひとつといわれる三陸沖。親潮と黒潮がぶつかる潮目でとれる豊富な種類の魚介類は、長らく日本人の食生活を支えてきた。しかし今、三陸沖での漁獲量が減っている。宮城県北部の気仙沼湾。最も奥まったところにある鹿折地区に、18社の水産加工会社が名を連ねる気仙沼鹿折加工協同組合(気仙沼市)がある。地元の加工業者が事業コストを減らすために設けた7000トンの大型冷蔵庫が低い音を響かせる。
■細る漁獲量
 しかし組合は冷蔵庫の稼働率を高めるのに苦労している。2016年末の時点で稼働率は6割ほど。本来は魚で冷蔵庫の棚を埋めたいところだが、やむなく組合企業から海藻類を集め、やっとのことでフル稼働に近づけた。「サンマやカツオなど、気仙沼で揚がる主要な魚種がとれなくなっている」。当初の計画通りに漁獲量が上がらず、組合の細谷薫事務局長は頭を悩ませる。組合企業で缶詰などを製造するミヤカン(気仙沼市)で原料・直販を担当する三浦謙一氏は、最近魚市場に買い出しに行っても何も買わずに帰ってくることが増えた。「水揚げそのものがない場合が多く、揚がっていても高くて入札で落とせない」。サンマの缶詰は同社の主力商品の一つだ。だが16年の日本のサンマ漁獲量は約11.4万トンと、水産庁が統計を取り始めた1977年以降の最低を記録した。気仙沼魚市場には16年10月時点では5700トンのサンマが揚がり、1キログラムあたり188円の値が付いた。03年10月と比べると量は約半分に、価格はほぼ4倍に跳ね上がっている。ミヤカンの寺田正志社長は「台湾や中国などが公海でたくさんとっているのもあるが、資源そのものの枯渇も原因だ。ここ2年ほどは小さいものしか揚がらない」と嘆く。
■漁業大国は過去のモノに
 「6本目ェ!」「はい7本目ェ!」。午前3時、宮城県東部の石巻湾。東松島市の漁師、大友康弘氏が海からはえ縄を手際よく船上にたぐり寄せる。縄の先の針をくわえた旬のスズキは甲板の上でバタバタと力強い音を立て抵抗する。大友氏は釣ったスズキの水揚げ量を記録し、岩手大学の石村学志准教授に報告する取り組みを2年前から始めた。水産資源学が専門の石村准教授のもとでスズキの資源量を科学的に調べ、どのくらいの漁獲量なら資源の回復と漁業が両立し得るか、その水準をはじき出すのが狙いだ。石巻湾のスズキは長く漸減傾向にあった。ところが11年の東日本大震災から4年間、湾内ではスズキ漁が取りやめになり、資源量が大きく回復したという。「スズキが増えた今がチャンスだ。この資源水準を保てる漁のやり方を探したい」。大友氏は過去に記録していた水揚げ量の資料も含め計7年分のデータを石村准教授に渡している。「日本は漁業大国」。世界各国の水揚げ高と比べれば、そんな言葉が過去のものだということは一目瞭然だ。国連食糧農業機関(FAO)によると、日本はかつて他国を大きく引き離していたが、1984年の1159万トンをピークに右肩下がり。中国、ペルー、米国、インド、インドネシアに抜かれ、現時点では6位まで下がった。特に三陸地方の主要漁港である八戸、宮古、釜石、大船渡、気仙沼、女川、石巻、塩釜の8港の水揚げ高は、03年に55万トンだったのが15年には42万トンにまで減少。東日本大震災が起きる前から減少傾向は続いている。水産庁によると、日本周辺の主要な48魚種79系群(系群は一つの魚種の中で産卵場、産卵期、回遊経路などが同じ集団を指す)のうち、16年9月時点で実に半数の資源量が低位にあり、3割超は資源量が中位にあるという。資源量が低位にある魚種にはマサバやスケトウダラ、ズワイガニやトラフグなどが挙げられている。スズキ以外のこうした日本の食卓になじみ深い魚種についても、大友氏は警鐘を鳴らす。「今の発達した漁業技術をもってすれば、この石巻湾内のあらゆる魚を取り尽くすのはいとも簡単なことだ」
■漁業者は利益上げにくく
 漁獲量の減少により、漁業者や水産加工会社は利益を上げにくくなっている。特に日本の漁業生産額の約6割を占める沿岸漁業では個人経営が多く、原油の高騰なども所得に大きく響いている。15年時点の沿岸漁船漁師の平均漁労所得は年261万円と漁業だけで生活するには困難な水準だ。収入が低いため若い漁業者も集まりにくく、後継者不足と高齢化が深刻化している。
日本の水産業が抱える問題の縮図が、東日本大震災が起きた三陸にある。震災により廃業した漁業者が増え、高齢化と後継者不足がより顕著に表れている。全国の漁業経営体の数は13年に9万4507件と03年から28%減少したが、宮城・岩手の両県では計5676件と、同じ10年間で41%も減っている。
――より厳しく確実に水産資源を管理し、地球環境だけでなく漁業者の生活にとっても持続可能な漁業を実現する――。国や漁業関係者のあいだで、漁業大国の名を名実ともに取り戻すための挑戦が始まろうとしている。

*9-3:http://qbiz.jp/article/116928/1/ (西日本新聞 2017年8月22日) 長崎・平戸沖で砂運搬船が沈没 2人不明1人心肺停止
●停泊中、3人は漁船に救助される
 22日午前3時40分ごろ、長崎県平戸市沖で長崎市平野町の「葵新建設」所属の台船を押す押し船「第6あおい丸」(98トン)が遭難信号を出した後、沈没した。佐世保海上保安部によると、乗船していた男性6人のうち4人が救助されたが、航海士大浦作美さん(59)=福岡市南区大橋3丁目=の死亡が確認された。2人が行方不明となっている。救助された他の3人はいずれも意識があるという。行方不明になっているのは、船長の竹谷和浩さん(48)=長崎県新上五島町七目郷、航海士丸山勝広さん(46)=同県平戸市生月町山田免。第7管区海上保安本部(北九州)が捜索している。海保などによると、第6あおい丸は台船の「第8あをい丸」と連結して運航。長崎県・壱岐沖で砂を採取した後、平戸沖を経由し、同県諫早市の久山港に向かう途中で、現場付近でいかりを下ろして停泊していたという。台船もともに沈み、救助された4人は台船に乗っていたという。海保によると、現場は平戸島北東約4キロの海上で、当時は晴れており海は穏やかだったという。乗組員の一人は「船が浸水して急に傾き、6人が海に投げ出された」などと説明している。他に救助されたのは、機関長森律雄さん(66)=平戸市、航海士森元徳さん(55)=同、機関士笹山安彦さん(48)=長崎市。笹山さんは近くの漁船に救助され、2人の森さんは海保が救助したという。
●過去にも転覆・沈没
 長崎県沖では、これまでにも船の転覆・沈没事故がたびたび起きている。
五島列島沖では1993年2月、巻き網漁船「第7蛭子(えびす)丸」(80トン)が転覆して沈没、乗組員19人が行方不明になった。同年7月には、佐世保市沖で巻き網漁船「第21金光丸」(14トン)と砂利運搬船「龍玉丸」(683トン)が衝突、金光丸が沈没して9人が死亡した。2009年4月には平戸市沖で、巻き網漁船「第11大栄丸」(135トン)が沈没して船長ら12人が犠牲になった。その10日後には、五島市沖で巻き網漁船「有漁丸」(19トン)が座礁・沈没。10年1月にも同市沖で底引き網漁船「第2山田丸」(113トン)が沈没、10人が死亡した。15年9月には、対馬市沖でイカ釣り漁船「第5住吉丸」(10トン)など5隻が転覆し、5人が死亡している。大きな事故が起こるたび、漁業者や行政は事故防止策の見直しを進めてきた。ただ、後継者不足や魚価低迷で老朽化した船の新造が難しいなど、事故の背景には漁業が直面する厳しい現状を指摘する声もある。

*9-4:http://www.tokyo-np.co.jp/article/world/list/201708/CK2017082402000123.html (東京新聞 2017年8月24日) 【国際】ロシア、北方領土を特区指定 共同経済活動影響か
 タス通信によれば、ロシアのメドベージェフ首相は二十三日、訪問先の極東サハリン州で、南クリール諸島(北方領土)を、外国企業の誘致などを目的としたロシアの経済特区「先行発展地域」に指定する決定に署名した。日本政府は、北方領土で双方の法的立場を害さない「特別な制度」での共同経済活動実現を目指してロシア政府と協議中。一方的ともいえる特区指定は、共同経済活動の実現に否定的な影響を及ぼす可能性がある。日ロは現在、観光や養殖など共同経済活動の事業案絞り込みを進めるが、ロシア側は「特別な制度」をめぐる協議には消極的とされる。九月上旬に極東ウラジオストクで予定される日ロ首脳会談を前に、特区指定で日本をけん制する狙いもあるとみられる。先行発展地域には税制優遇措置などがあり極東地域では十八番目。メドベージェフ氏は「漁業やインフラ整備に役立ち、地域の発展を後押しする」と強調した。共同経済活動を巡って、ロシアの経済関係者からは「日本が特区に参加する形で進めるべきだ」との意見がある。一方、ロシアが指定した特区での経済活動は、北方領土でのロシアの主権を認めることになる。日本側が創設を求める「特別な制度」とは矛盾し、日本側としては受け入れ困難。

*9-5:http://qbiz.jp/article/117302/1/ (西日本新聞 2017年8月26日) 九州の原発:玄海原発3号機の工事計画認可 再稼働は越年も
 原子力規制委員会は25日、九州電力が再稼働を目指す玄海原発3号機(佐賀県玄海町)について、設備の詳細設計をまとめた「工事計画」を認可した。九電は、設備性能を現地で確認する「使用前検査」を28日にも申請する。工事計画の審査が長引いたため、今秋を想定していた再稼働は12月以降にずれ込む見通しで、越年の可能性が出ている。再稼働には使用前検査に加え、運転管理体制を定めた「保安規定」の認可も必要。一連の手続きに4、5カ月程度を要するとみられる。九電は25日、「引き続き国の審査に真(しん)摯(し)かつ丁寧に対応する」とコメントした。玄海原発3、4号機は1月に新規制基準の適合性審査に合格した。九電は3号機を先行して再稼働する方針。4号機は工事計画の審査が続いており、九電の補正書提出を受け、3号機に続いて認可される見通し。

*9-6:http://www.kochinews.co.jp/article/121389/ (高知新聞 2017.8.28) 【エネルギー計画】脱原発を明確にすべきだ
 国の中長期的なエネルギー政策の指針となる「エネルギー基本計画」の改定に向け、経済産業省が作業に入った。有識者の意見を聞きながら年度内にもまとめる方針だ。最大の焦点はやはり原発の方向性になる。国民が納得のいく、しっかりとした論議を求めたい。現計画は2014年4月に策定された。東京電力福島第1原発事故後初の改定で、事故の反省と教訓を前面に打ち出したが、矛盾が目立つ内容というしかない。序文で「震災前に描いていたエネルギー戦略は白紙から見直し、原発依存度を可能な限り低減する」と強調する一方で、その原発を石炭火力や水力とともに安定供給を図る「ベースロード電源」に位置付けた。事故後に停止した全国の原発の再稼働を進める方針も掲げている。旧民主党政権は事故後、脱原発の声の高まりを受け、「30年代の原発ゼロ」を打ち出していた。政権交代で後を継いだ安倍政権がそれを転換し、「原発回帰」を掲げたといっていいだろう。国民の声を無視し、アベノミクスの実現を優先したとの批判もある。15年には30年度の電源構成比率を決め、原発を「20~22%」とした。世界各国が積極的に導入している再生可能エネルギーの位置付けは「22~24%」にとどまっている。政府の原発依存の姿勢は明らかだ。しかも、原発の電源構成比率2割以上を実現するには、いま停止中の原発の再稼働を進め、老朽化した原発の運転期間延長や建て替えが前提になる。福島第1原発事故後に改正された原子炉等規制法は、原発の運転期間を原則40年としているが、原子力規制委員会が認めれば、特例で1回に限り20年の延長ができる。に2基が延長審査に合格しており、原発事故を教訓に設けられた運転期間制限の形骸化が早くも懸念されている。建て替えとなれば脱原発はさらに遠のく。世耕経産相は、計画改定について「(計画の)骨格を変える段階にない」と述べている。電源構成目標の達成方法を論議したいという。ひとたび原発の過酷事故が起これば、復興がいかに難しいかは被災地が示している。福島第1原発はいまもって廃炉の具体的な見通しが立たず、事故対策費は約22兆円に上るとの試算もある。原発は極めてリスクが高く、他の発電方法と比べコスト競争力に勝るとも言えなくなっている。何より多くの国民が脱原発を望んでいる。一足飛びにはいかないにしても、政府は中長期の戦略である新計画で脱原発を明確に打ち出し、その道筋を探るべきだ。地球温暖化防止も含め、再生可能エネルギーの導入にもっと汗をかく必要がある。福島の事故責任の一端は、「安全神話」に陥り、過酷事故への備えが不十分だった政府にもあると、現計画も記している。まやかしのような計画や政策を続けてはならない。

*9-7:http://www.sanyonews.jp/article/587277/1/ (山陽新聞 2017年8月28日) エネルギー計画 現実踏まえ抜本見直しを
 国の中長期的なエネルギー政策の指針となる「エネルギー基本計画」の見直し議論が経済産業省の有識者会議でスタートした。2014年の現行計画の決定以降、エネルギーや環境を巡る状況は変化している。抜本的な見直しに踏み出すべき点は少なくないはずだ。ところが、世耕弘成経産相は大幅見直しに慎重な姿勢を示している。原発について現計画は「依存度を可能な限り低減する」としつつ、「重要なベースロード電源」とも位置付けている。30年度の「電源構成」目標では、原発が20~22%を担うとした。東京電力福島第1原発の事故を受けて、脱原発を望む多数の国民の思いを反映しておらず、逆に原発回帰路線を鮮明に打ち出したものとなった。原発で約2割をまかなうためには既存の42基の多くで再稼働が必要となる。「例外」とされたはずの運転期間の40年制限を超えた延長もしなければ達成できず、実現性には疑問符が付こう。老朽原発の運転データはまだ少なく、トラブル増加を招く恐れも指摘されている。計画が示された14年以降、再稼働した原発は5基にとどまっている。新潟県の柏崎刈羽原発を巡る地元同意の難航など、再稼働が容易でないことも示されている。目標が現実に即したものになるよう、丁寧な議論が必要だ。もう一つの焦点が再生可能エネルギーである。現行計画は「導入を最大限加速する」とうたい、目標を22~24%(水力含む)としている。再生エネは原発事故後、日本でも育ちつつあるとはいえ、水力を除いた太陽光、風力などは6%にとどまる。26%を占めるスペイン、25%のドイツなどの欧州各国と比べれば立ち遅れは明らかだ。日本が再生エネの課題に挙げる発電コストの高さについて欧州では、市場拡大による設備価格の低下などにより火力、原子力と同等か割安の水準を実現している。昨年秋には、地球温暖化防止のための新たな枠組み・パリ協定が発効した。日本は温室効果ガス排出量を50年に13年比で80%削減する目標を掲げ、先進各国も思い切った目標を設定した。多くの国で再生エネ拡大を目標達成手段の柱に据え、技術革新やインフラへの投資が相次いで、ビジネスチャンスともなっている。経済面からも乗り遅れないようにしたい。現行計画で推進を掲げている核燃料サイクル政策の根本的な見直しも急務だ。政府は昨年末、トラブル続きの高速増殖原型炉もんじゅの廃炉を決めた。政府は後継となる高速炉の開発を進めるというが、サイクル政策の延命にも限界があろう。日本のエネルギー政策が時代に取り残されることのないよう、政府は現実を直視し、計画を練り直していくことが求められる。

<では、次に進もう>
PS(2017.8.28追加):10-1のように、準天頂衛星「みちびき」を使えば、既存のGPSと併用して最小6cmの誤差で位置を測ることができ、正確な測位で農機の自動走行ができるようになるというのはすごいが、確かに道路を移動中も安全に自動運転して欲しい。
 また、*10-2-1のように、水田の給排水を自動化して水管理時間を8割減少させ、遠隔操作できるのようにしたというのも素晴らしい。このような中、*10-2-2のように、地震や豪雨で多くの溜池が決壊したそうだが、この際、どうしても必要な溜池と地下水や下水浄化水で代替できる溜池を選別したらどうだろうか。このうち下水浄化水は、現在では飲めるほどまで浄化できるそうだが、窒素・リン酸・カリウムを少し残して肥料の節約をすることも可能だ。
 さらに、*10-3のように、「農家・漁師をスターにする」として、早稲田・慶應など首都圏8大学の学生編集部が生産者の生の声を月間約2万の読者に届けているのは面白いが、販売はマーケティングで、自動農機はロボットであるため、いろいろな学部の学生が農林漁業の現場を体験して、スマートに問題解決する方法を考えれば有意義だと思われる。

*10-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20170828&ng=DGKKZO20441280Y7A820C1PE8000 (日経新聞社説 2017.8.28) 衛星生かし精密農業の推進を
 衛星画像やIT(情報技術)を利用し、農業生産の効率向上をめざす「精密農業」が米国で広がっている。日本でも担い手が不足する農業の改革は待ったなしで、準天頂衛星「みちびき」を使う日本版GPS(全地球測位システム)を最大限活用すべきだ。米国では東京ドーム400~500個分もの農地を数人で経営する場合もあり、精密農業による効率化のニーズが高い。GPS受信機、収量計測装置などを搭載し、自動運転も可能なトラクターやコンバインが増えている。日本の農地は規模が小さいが生産性向上などの課題は米国と共通しており、学ぶべき点は多い。米モンサントはGPSの位置情報を使い農地の区画ごとの雨量、収量などをスマートフォン(スマホ)画面の地図上にわかりやすくカラー表示するサービスを始めた。気象情報会社を買収し観測やデータ解析のノウハウを得た。近年は局地的豪雨が増え、隣接地でも雨量が異なる場合がある。同じように育てた同一品種でも、収量が少ないこともある。スマホなどで常に実態を把握できれば、区画ごとに収穫時期をずらしたり品種を替えたりするのに役立つ。日本はみちびき1~3号機の打ち上げに成功し、今年度中に4基目が上がる予定だ。既存のGPS信号と併用して最小6センチメートル程度の誤差で位置を測れるようになる。精密農業の普及につながる新サービスを展開する好機だ。正確な測位で農機の自動走行の安全性は高まる。農林水産省は今年3月、人間が近くで監視しながら、農地でトラクターなどを無人で自動走行させる際の安全指針を出した。今後は遠隔操作での無人走行や、農地に隣接した一般道の走行も検討すべきだろう。測位情報は他の衛星の画像、気象、地形、地質などの多様なデータと組み合わせてこそ使い道が広がる。斬新なアイデアをもつ企業がこれらを素早く入手して事業に生かせるよう、関係省庁が連携して仕組みづくりを進めてほしい。

*10-2-1:https://www.agrinews.co.jp/p41733.html (日本農業新聞 2017年8月28日) 水田給排水を自動化 管理時間8割減 遠隔操作装置+アプリ 農研機構
 農研機構農村工学研究部門は、スマートフォン(スマホ)などで水田の給排水を自動設定し、水管理の時間を8割減らすシステムを開発した。給水バルブと排水口に遠隔操作装置を取り付け、圃場(ほじょう)に行かなくても水深が制御できる。給排水の両方を自動化したのは日本初で、今年度中に市販化の予定。水稲の労働時間の3割を占める水管理を軽減し、農地を集積する担い手を支援する。研究は内閣府の戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)の一環。遠隔操作装置はソーラーパネルやアンテナ、モーターなどを組み合わせて作り、給水バルブと排水口の両方に使える。電波で開閉し、各社のバルブに後付けできる。この他、水深を感知するセンサー、電波の基地局などを設置する。制御の仕組みは、センサーが水深の変化を感知すると自動で給排水を調節し、元の水位に戻す。水位の設定は専用のアプリを使いスマホやタブレット、パソコンでできる。アプリでは水位や気温の確認もできる。省力の他、豪雨で急に増水したときも有効だ。20アール区画で実証試験をしたところ、水管理の年間の労働時間は3時間と、慣行水田の15時間に比べて8割減った。無駄なかけ流しが減るため、使う用水量を50%に節約する効果もあった。システムは年度内に国内メーカーから発売される予定だ。価格は基地局が1台20万~30万円、バルブを動かす装置(給水、排水共通)が同10万円。サーバーの利用料が1カ月当たり2000~4000円ほどを見込む。同部門は「農地の集積で分散した水田が増える中、担い手の省力効果は大きい」と説明する。品種などから水管理が自動で分かり、収量や品質が向上できる仕組みも開発中だ。

*10-2-2:https://www.agrinews.co.jp/p41729.html (日本農業新聞論説 2017年8月27日) ため池 総点検 防災強化へ再整備急げ
 地震や豪雨で決壊するため池が続発している。釣りなど娯楽中の死亡事故も続く。政府は農業用水の確保に欠かせぬため池の再整備を急ぎ、防災機能と安全性を高める必要がある。ため池は、西日本を中心に全国に約20万カ所ある。主に雨の降水量が少ない地域で農業用水を確保するために人工的に造られた。洪水調節や土砂流出を防止する効果に加え、生物の生息・生育の場所の保全、地域の憩いの場の提供など、多面的な機能もある。2ヘクタール以上の農地をカバーするため池は約6万カ所あり、このうち7割が江戸時代以前に造られた。取水施設などでの老朽化が進んでいる。多くは地元の水利組合や土地改良区、農家などが管理する。農家の減少や高齢化から管理が行き届かず、堤の崩れや排水部の詰まりなどが起きている。農水省の調査によると、下流に住宅や公共施設のあり、決壊すると大きな被害が予想される「防災重点ため池」は、1万カ所を上回った。近年は都市化や混住化が進み、事故の危険性が増している。安全性が確認できない3391カ所に対する詳しい調査を地方公共団体が行うが、整備を急ぐ必要がある。最近10年のため池被災は、7割が豪雨、3割が地震で決壊や流失している。7月の九州北部豪雨災害で大きな被害を受けた福岡県朝倉市では、市内のため池108カ所の1割に当たる11カ所が流出・決壊した。こうしたため池の復旧を急ぐとともに、耐震性を高め、洪水防止策を強めるなど、安全性の強化を急ぐことが肝要だ。ため池を抱える地域では、農家が減る中で受益農家にかかる工事費用の負担が重く、改修工事の合意形成も容易ではない。政府がしっかり支援すべきだ。農水省は農村地域防災減災事業(508億円)に含まれているとするが、心もとない。現場のニーズに応えられるように予算を確保し、改修工事などをしやすくしたい。また、補助率を高めるなど農家負担を減らす方法も改修を後押しするはずだ。ため池での死亡事故は増加傾向にある。2016年度は26件で32人が亡くなった。60歳以上の高齢者が多く、例年水利用が多くなる5月から9月にかけて多発している。ため池を管理する土地改良区や個人は、安全管理に対する意識を高めるとともに、監視を強める必要がある。死亡事故には、釣りなどの娯楽中の事故も多い。夏休み期間の子どもたちが危険な箇所に立ち入らないように注意喚起したり、安全柵を設置したりする対策も進めるべきだ。また、管理作業中の事故も多い。高齢者の作業は特に注意する必要がある。農山村は人口減少と高齢化が進んでいる。ほったらかしにしたままのため池はないか。地域のみんなで点検し、必要な整備を急ぐことが大事だ。政府は、こうした取り組みを全力で支援すべきである。

*10-3:https://www.agrinews.co.jp/p41724.html (日本農業新聞 2017年8月27日) 若者力:[食農応援隊 大学生リポート](9) 長期密着し“スター”育成 首都圏8大学の学生が編集 農家の生の声を発信するWEBサイト 日本食べるタイムス
 「タケノコ王」って知っていますか? 目印はピンク色のタンクトップ。全国放送のテレビ番組で準レギュラーとしても活躍するタケノコ農家、風岡直宏さんです。2年前、無名だった風岡さんの情報発信を「日本食べるタイムス」(以下食べタイ)が引き受け、彼が“農家スター”になるまで伴走しました。今では彼の下にファンがサインを求めて訪れ、タケノコの産直販売は大盛況です。食べタイは、農家の生の声を発信するWEBサイトです。コンセプトは「農家・漁師をスターにする」。早稲田、慶應など首都圏8大学の学生編集部20人が、全国約200人の生産者の生の声を、月間約2万の読者に届けています。大量の情報の中に埋もれてしまった農家のブログやSNS(インターネット交流サイト)投稿を掘り起こしたり、学生が現地で取材したりして記事を発信しています。何度も現場に通い、一緒に農作業をすることもあります。このような長期密着・仕事体験型の取材は、学生だからこそできる発信方法です。登録生産者からは「過去最高の売り上げになった」「ここで働かせてほしい、と若者に志願された」などと反響をいただいています。われこそは、という農家、推したい農家さんがいる農業関係者の皆さん、ぜひ食べタイにご連絡ください。登録は無料です。(代表・森山健太=早稲田大学)
*キャンペーン「若者力」への感想、ご意見をお寄せ下さい。ファクス03(3257)7221。メールアドレスはwakamonoryoku@agrinews.co.jp。フェイスブック「日本農業新聞若者力」も開設中。

<お粗末な日本の食料政策>
PS(2017年8月31日、9月1日追加):*11-1の「①食料自給率が38%にダウンしたから、1ポイント上げるために、ご飯をもう一口食べろ」「②日々の食卓に、ちょっと工夫しろ」という指示を出すような意識の低い人が人がリーダーでは困るのである。何故なら、①は、現在は、*11-2、*11-3のように、健康上の理由で栄養バランスを考えて糖質・炭水化物を控えている時代だからであり、供給者が需要に合わせて生産を調整するのではなく、できたものを食べるように需要者に注文を付けるというのは市場主義にも反するからである。また、斎藤健農相の「消費者が意識を持ってもらうことが重要」「子や孫のことを考えて食料自給率向上に目を向けてほしい」というのも呆れたもので、消費者は十分に意識が高いからこそ栄養バランスを考えて糖質を抑え、放射性物質が混入している可能性のある食品を控えているのであり、政府の方がよほど意識が低いのだ。そんなことも、言われなければわからないのですか?
 なお、*11-4のように、全ての加工食品に原材料の原産地表示を義務付ける改正食品表示基準が9月1日に施行されるが、5年も猶予期間があり、完全施行は2022年4月からだそうだ。これは、政府はしぶしぶこの法律を施行するという意味で、実質的には2022年3月までは施行されないということだ。それも、国名だけの表示なら、安全基準の緩い日本産は買わないことになるが、まさか国名だけの表示ではないでしょうね。
 さらに、*11-5のように、TPP署名11カ国は2017年8月30日にシドニーで首席交渉官会合を行い、日本は議論を主導する立場なので関税分野の見直しを提案しにくく、最終的には米国のTPP復帰を促して12カ国での発効を目指すのだそうだ。しかし、オーストラリアは優秀な農業国で原発はなく、赤身で脂肪の少ない牛肉や乳製品が安いため日本の消費者は嬉しいが、日本の農業には不利である。それでも日本政府は、まともな交渉もせずに議論を「主導」し、このTPP条約が締結されれば食料自給率がさらに下がるが、それでもTPP条約の締結は麻生副総理の言われる「結果を出した」ことになるのですか?

*11-1:https://www.agrinews.co.jp/p41748.html (日本農業新聞 2017年8月29日) 食料自給率 38%にダウン +1ポイント作戦始動 ご飯もう一口、国産豆腐は月に2丁… 日々の食卓 ちょっと 工夫を
 ご飯を1日もう一口、国産豆腐を月に2丁――。食料自給率を1ポイント上げるため に必要な国民の食事量の一例だ。2016年度の食料自給率(カロリーベース)は38%と、先進国の中で最低水準にまで落ち込んだ。半世紀前の73%から半減し、もはや国民の食と命を自国で守れない危機的な状況にある。自給率向上へ国民一人一人がどんなことをすればよいのか? 誰でも簡単にできる「1ポイント上げる」ためのちょっとした工夫を紹介する。農水省が提示する食料自給率を1ポイント向上させる方策によると、全国民が、ご飯を1日にもう一口(17グラム)食べるだけで1ポイント自給率が向上する。「国産米粉パンを月に6枚(400グラム)食べる」「国産大豆100%の豆腐を月に2丁食べる」「国産小麦100%のうどんを月に2玉食べる」などでも向上する。これら全て実現できれば、4ポイント向上する計算だ。日常の食事を増やすわけでなく、国産の農産物を選ぶことで自給率が上がる。国産の比率が高いのが米を使ったメニューだ。おにぎり1個98%、にぎりずし75%、親子丼70%など、米料理の自給率は高い。ただ、和食を多く食べれば自給率の向上に直結するかというと、そう単純ではない。原料の輸入割合が高いそばやうどんでは自給率は下がり、「エビの天ぷらそば」は24%まで低下する。本みりん(98%)、かつおだし(69%)などだしの自給率は高いが、しょうゆ(23%)、エビ(5%)などの低さが自給率を下げる要因だ。しかし、国産のそば粉や小麦粉を使うと自給率は向上する。ソバの自給率22%の中で、国産そば粉を使ったそばを提供する東京・上野の「はなみずき」店主、弘田千秋さん(43)は「国産のそば粉は、海外産と味が違う」と国産にこだわる理由を明かす。そば粉を100%国産にすれば、天ぷらそばの自給率は71%まで上昇する。最近ではラーメン用やちゃんぽん用、パスタ用など小麦の品種開発が進んでおり、こうした品種が広がれば自給率向上に貢献しそうだ。農水省は自給率への意識を高めてもらおうと、インターネット上で、料理の自給率を計算するソフトを公開。ハンバーグ(14%)、ねぎとろ丼(82%)といったメニューや、家庭で作る料理の食材を選んで入力すれば、食料自給率を算出できる。
●国民が危機感を共有
 食料自給率は、国民の平均カロリー摂取量のうち、国産食材で得られるカロリーの割合を示す。16年度は国民1人が1日当たり2429キロカロリーを摂取しており、このうち国産食材からの摂取は913キロカロリーにとどまる。国民の摂取カロリーの割合で最も多いのは米(自給率98%)、次いで畜産物(同16%)、油脂類(同3%)。この3品目だけで摂取カロリーの全体の半分を超える。4番目に多いのは小麦(12%)だ。同省によると、自給率の高い米の消費が減る一方で、飼料を海外に依存している肉類や油脂類、小麦製品の消費量が増え、自給率を下げる要因となっている。食の洋風化や油脂類・小麦の輸入増などが、自給率低下をもたらしている。少子高齢化で国内の食市場そのものが縮小している状況を踏まえ、斎藤健農相は「消費者が意識を持ってもらうことが重要。子や孫のことを考えて食料自給率向上に目を向けてほしい」と危機感を示す。

*11-2:https://mainichi.jp/articles/20170719/ddl/k37/040/330000c (毎日新聞 2017年7月19日) 糖尿病:治療「中断」17.1% 県、491機関の患者を調査 /香川
●「仕事」理由、重症化の傾向
 仕事の忙しさや症状がなかったことなどから糖尿病の治療を中断した経験を持つ人が患者の17・1%いることが、県の調査で分かった。若い患者ほど中断経験があり、40歳以下では24・8%と4人に1人近くに上った。中断経験者は重症化しやすい傾向もあり、県は治療継続のために地域や職場、医療が連携する必要性を指摘している。昨年の人口動態調査(概数)によると、人口10万人あたりの糖尿病死亡率は14・1人で、全国平均(10・8人)を上回り、全都道府県でワースト9位となっている。調査は2008年度に続いて2回目。生活習慣から発症が多いとされる「2型糖尿病」患者を治療する491の内科や専門医療機関を対象に、60歳以下の患者について昨年12月に実施。226機関が1367人(男882人、女482人、性別不明3人)分を回答した。受診のきっかけは、46・1%が健康診断で、35・7%は妊娠や交通事故などの診察や治療だった。糖尿病の症状が出て受診した患者も15・2%いた。だが、すぐに受診したのは78・5%。受診しなかった理由(複数回答)では、▽「特に症状もなく必要はないと思った」59・8%▽「仕事や用事で時間が取れなかった」42・4%▽「生活習慣を変え自分で改善できると思った」30・8%--などだった。17・1%の患者で治療の中断経験があった。男性は18・5%で、女性の14・7%を上回った。中断理由(複数回答)では、男性の47・7%が「仕事が忙しいので通院できなかった」を挙げたが、女性は22・4%だった。女性は「症状がなかった」が29・9%で最多だった。治療継続のために必要なことは、男性は「職場の理解」が31・4%、女性は「家庭の理解」が36・9%だった。治療を中断後に再開した患者は、網膜症や腎症、神経障害といった糖尿病合併症の併発率が中断しなかった患者と比べて3・2~2・6倍に達した。また、40歳以下の患者の86・8%が肥満だったが、41歳以上50歳以下は74・4%、51歳以上は64・4%にとどまった。食事、運動療法を続け、年配者ほど効果が出ているためとみられるという。他の医療機関との連携状況では、歯科医との連携が24・6%と低かった。県健康福祉総務課の担当者は「歯周病と糖尿病には高い相関関係のあることが分かっているが、歯科医との連携が低かった。症状がなくても治療の必要があるといった知識の普及を進めたい」と話している。

*11-3:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/459618 (佐賀新聞 2017年8月31日) くら寿司が糖質制限メニュー
■シャリは大根酢漬け
 回転ずしチェーン「くら寿司」を運営するくらコーポレーションは29日、すしの酢飯の代わりに大根の酢漬けを使った「シャリ野菜」など、業界で初めて糖質制限に対応したメニューを発表した。31日から全国の店舗で販売する。ご飯など炭水化物に多い糖質の摂取量を減らす「糖質制限」の人気に着目し、若い女性などの集客増を目指す。一方、「かっぱ寿司」を運営するカッパ・クリエイトが期間、時間帯限定の食べ放題サービスを28日から対象店舗を拡大して実施するなど、回転ずし業界各社は激化する競争での勝ち残りへ知恵を絞っている。シャリ野菜は酢飯を使った通常のすしと比べて糖質を最大88%カットした。すしネタはエビやビントロなど4種類。酢飯の量を半分にした商品も用意し、価格は108円。担当者は「糖質を気にせずに野菜と一緒においしく食べてもらいたい」とアピールする。かっぱ寿司の食べ放題は今後も実施店舗を変えて継続する方針で、担当者は「大学生や家族連れなど幅広い層に利用してもらいたい」と話す。「スシロー」を展開するあきんどスシローは、国内の天然魚の活用や、海外産食材の調達多様化を進めている。

*11-4:http://qbiz.jp/article/117878/1/ (西日本新聞 2017年9月1日) 全加工食品に原産地表示 きょうから義務化
 全ての加工食品に原材料の原産地表示を義務付ける改正食品表示基準が1日、施行された。メーカーや販売店が表示を変更する準備ができるよう猶予期間が設けられ、2022年4月から完全施行される。内閣府・消費者委員会が8月、改正案を首相に答申していた。輸入食品の増加が見込まれる中、消費者が購入の際に参考にできるようになるほか、国産品のブランド力向上などの効果を狙う。
22年4月以降、虚偽の原産地表示をした食品を販売した個人に、2年以下の懲役または200万円以下の罰金、法人には行為者への罰のほか、1億円以下の罰金が科せられる。

*11-5:https://www.agrinews.co.jp/p41765.html (日本農業新聞 2017年8月31日) 日本 見直し提案せず TPP11首席会合終了
 環太平洋連携協定(TPP)署名11カ国は30日、オーストラリア・シドニーで3日間の首席交渉官会合の日程を終えた。知的財産分野の見直しでは一致したが、その他の分野で各国から修正要望が続出。日本は農業関係者が要望する農産品関税の見直しを提案しなかったもようだ。次回は9月後半に再び日本で首席交渉官会合を開く。
●米国要求項目 棚上げ
 12カ国で合意した内容のどの部分を見直すか具体的に議論した。米国が要求した項目について、いったん凍結し棚上げすることで米国のTPP復帰を促し、最終的に12カ国での発効を目指す。しかし、米国に復帰の兆しは見えず、先行きは依然不透明だ。交渉関係者によると、焦点の関税分野の見直しについては、各国から要望が出なかった。日本の農業関係者は、乳製品の輸入枠など米国の参加を前提にした合意内容の見直しを求めているが、日本は今回見直し提案をしなかったもようだ。日本は議論を主導する立場のため、「各国が慎重な関税分野の見直しを率先して提案しにくい」(交渉筋)。政府は米国の焦りを引き出すため11カ国での発効を急ぎたい考えだが、米国の2国間交渉で追加の農産品の市場開放を求められるとの警戒感は農業関係者に根強く、日本国内の意見調整も難航しそうだ。今回の会合で、実質8年の医薬品のデータ保護期間については凍結する方向でおおむね一致した。議論を主導する日本とオーストラリア、ニュージーランドはTPPの自由化水準を下げないよう協定の内容の見直しを極力少なくしたい考え。ただ、投資などルール分野の修正要望が続出。国内調整が引き続き必要な国もあり、見直し項目を絞り込みきれなかった。11月のアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議までの合意を目指し、来月の首席交渉官会合で検討を継続する。


PS(2017年9月2、3日追加):*12-1のように、JA全中が「らくらくWeb簿記システム」を本格始動し、経理・税務申告書類や源泉徴収票の作成・経営コンサルなどに役立てるのは、不得意な作業から農業者を解放し、質の高い生産・販売に専念できる基盤になるため、大きな進歩だ。また、*12-2のような直売所での販売、*12-3のような林業、不動産、その他所得を経理や税務申告に正確に反映させ、日報や月報を出して経営管理することも容易になって農家の意欲増大に繋がる。この時、一つだけ懸念があるのは、農協に全サービスを依存する結果、農協が農家を支配することが可能になることだが、この問題は、政府が行っているような農協の弱体化で解決すべきではなく、その他の主体が同様以上のサービスを行って農協と切磋琢磨し、農業者がよりよいサービスを選択できるようにすることが重要なのだ。
 なお、*13について、JAグループが、2019年4月に自己改革の評価を把握するために、全国1000万人超の正・准組合員全てを対象にアンケート調査を実施するのは大変よいと思うが、客観的で役立つ情報を得るためには、JAの役職員が訪問するよりも郵送・匿名で、期待・クレーム・要望などを言いやすい状態にして年に一度くらい調査し、継続的に改善していくことが重要だと考える。さらに、調査する際には、国際的なコンサルティング・ファームを利用して海外と比較すれば、これまで考え付かなかったような解決策が提案される可能性が高い。
 また、*14のように、事務作業も自動化が進んでいるため、農協自体も人材を組合員に役立つ営農支援や販売、顧客対応などの業務により手厚く配置して生産性を上げることが可能になった。もちろん、RPAをブラックボックス化するのではなく、その仕組を理解している人が業務を把握しておく必要はあるが、組織全体として生産性を上げることができるわけである。

*12-1:https://www.agrinews.co.jp/p41769.html (日本農業新聞 2017年9月1日) 「Web簿記」本格始動 申告支援 経営指導も 全中
 JA全中は、担い手への経営コンサル機能を強化するため、税務申告書類を効率的に作成できる「らくらくWeb簿記システム」を本格始動した。中央会・JA向けシステムで、農業者の事務負担を軽減するとともに、税務申告で集約する販売、購買事業データや信用事業の資金情報を活用し、担い手への経営戦略のアドバイスに役立てる。8月にはJA群馬中央会が導入した。今後は、各県の判断を踏まえ、活用を進める方針だ。同システムは、静岡県農協電算センターが開発。2017年度、全中が保守管理を引き受けて全国の情報を管理するシステムを構築した。具体的には、システムで農業所得や不動産所得の情報を管理できる。貯金の入出金や販売精算などの情報を入力すれば自動的に青色申告や白色申告で使う決算書や、収支計算書などの書類の作成も可能。農業法人などの従業員向け源泉徴収票も作れる。それらの情報を、経営分析に活用する。JA管内の農業者の経営状況との比較を踏まえてアドバイスできる他、経済事業で取引の際に使うシステムと連動させ、日頃の実績を帳票などに反映できる。生産や販売、購買、資金対応、労務管理など各分野での個別提案を目指す。将来的には、集約した経営情報を全国規模で分析し、地域、品目別の提案も視野に入れる。全中は「JAの各事業での連携を重視したシステムであり、事業間連携にもつながる」(JA情報システム対策部)と強調する。JA自己改革では、大規模化する担い手経営体との信頼関係の構築の強化を目指しており、システムの活用で、その取り組みを加速する。JAの総合事業の強みを発揮し、担い手経営体を支援する。

*12-2:https://www.agrinews.co.jp/p41753.html (日本農業新聞論説 2017年8月30日) 広がるJA直売所 課題克服し魅力磨こう
 JA直売所が着実に増えている。地元産の安心感や新鮮さで消費者に受け入れられ、生産者の所得増にもつながった。日本農業新聞の調査によると、2016年度は売上高10億円を超える大規模店が15年前と比べ10倍になった。ただ、直売所の乱立で競争は激しく、出荷者の高齢化で品ぞろえも厳しさを増す。品ぞろえはもちろん魅力ある直売所づくりに向け、JAグループの結集力が求められている。消費者にとって直売所の魅力は、地元産の安心感、収穫後すぐに店頭に並ぶ鮮度の良さ、それに流通ルートの短さによる低価格の三拍子がそろっていること。JA直売所が急増したのは直売所設置が決議された1997年の21回JA全国大会以降だ。この動きは、日本農業新聞の調査でも明らかになった。調査は、本紙掲載記事などを参考に、売上高5億円以上と推定される133店を対象に実施し、110店から回答があった。それによると9割の直売所が、20年前のJA全国大会以降に開設した。特に、7割の店は、21世紀に入ってからの10年間にオープンした。当時、JA合併が急激に進み、広域JAが管内各地に次々に設置したことや、先行JAのノウハウが近隣JAに伝授されたことも急増に拍車を掛けた。その結果、15年前の01年度にわずか4店だった年間売上高10億円を超える直売所は、今回の調査で39店と10倍に増えた。福岡県JA糸島の「伊都菜彩」(41億円)、和歌山県JA紀の里の「めっけもん広場」(28億円)、愛媛県JAおちいまばりの「さいさいきて屋」(22億円)など20億円を超える店が6店もあった。地域別でも5億円以上の店舗は、関東や東海だけでなく、東北から九州まで全国各地に広がっている。直売所によって「生産者の所得向上」に9割、「消費者に好評」に7割が効果あったと回答。農家だけでなく地域住民にも人気だった。同時に、出荷者の高齢化や品ぞろえの確保が課題として浮かび上がった。農水省の調査(15年度)によると、全国2万3600カ所の直売所のうちJA直売所は2000店。ライバル店の増加で、開店から7、8年で売上高は横ばいとなり、各店とも売り上げ維持に懸命となる。最大の課題は、野菜を中心とする地場産品の確保だ。1直売所で500人ほどいる出荷会員は、年々、高齢化が進む。さらにスーパーのインショップなどの増加で、農家の出荷先はJA直売所以外にも広がる。これに対しJAは、直売所出荷者を育てる農業塾、営農指導部署と連携した新作物講習会、遠距離地区向けの集荷便などさまざまな取り組みを進めており、評価したい。地域に密着し豊富な品ぞろえで魅力あるJA直売所を育てるため、出荷者である組合員も含めて、JAグループ一丸となった積極的な取り組みを期待する。

*12-3:https://www.agrinews.co.jp/p41719.html (日本農業新聞論説 2017年8月26日) 稼げる林業経営 担い手への集約対策を
 わが国の林業政策が2018年度から新段階に進みそうだ。政府が掲げる「林業の成長産業化」の具体策として、林野庁が新たな林業経営の在り方の検討に入っている。年内に結論をまとめ、来年度の政府予算と制度改正で新対策を打ち出す。山持ち林家が林業経営を担い手に任せる代わりに、木材収入の一部をいわば借地料としてもらう。その仕組みをうまく作ることが重要になろう。「林業の成長産業化」は安倍政権が3年前に掲げたが、推進の具体策に欠けていた。政府は本腰を入れ、新対策の方向を6月に公表した未来投資戦略でこう記した。「森林の管理経営を、意欲ある持続的な林業経営者に集積・集約化する」。林業経営を集約型にして、稼げる林業を目指す方向に異論はない。一方で、条件不利地の林業に向かない森林の管理は「市町村等が行う新たな仕組みを検討」として、公的管理を強める。併せて、昨年末に与党が今年度税制改正大綱で示した森林環境税について、将来導入した際に市町村主体の森林整備の財源に充てる手法を検討していく。政府の新対策はつまり二段構えだ。稼げる林業を目指すとともに、それが困難な森林の管理は市町村に責任を持ってもらう。地元の森林を林業向けと保全管理向けに区分けするのは、市町村の役目になろう。市町村は現在、今年4月施行の改正森林法で義務付けられた林地台帳作成へ、森林の所有者・境界の特定を進めている。条件不利地の森林管理だけでなく、林業向けの森林をまとめ、担い手に集積推進する自覚と責任が求められる。林業経営の担い手には、自立林家の他、森林組合と林業事業者がなるのが現実的だろう。だが現在、両者とも再造林から伐採までの施業請負が大半で、経営責任を伴わない。ここから大きく踏み出し、いわば借地の林業経営を積極的にやれる制度作りが、政策的に必要となる。借地型の林業経営では、収益確保の努力を迫られる。施業効率化に向け、高性能機械導入や、主伐とコンテナ苗を使った植林の一貫作業化などが進むはずだ。伐採木の販売努力を含めた生産性向上こそが、稼げる林業実現の道となる。林業での借地料は定期的な支払いが難しく、伐採木収入の一部の充当が妥当だろう。林家と担い手の双方が納得できる仕組みが肝要となる。林家は「林業はもうからない」と嘆き、赤字経営も実際多い。それだけに、森林の所有と経営を分離し、必ず収入が得られる借地型は安心感を持てるのではないか。わが国の人工林の半分が主伐期を迎えており、伐採して活用する推進政策が急がれる。日本と欧州連合(EU)との経済連携協定(EPA)大枠合意による林産物の輸入関税の段階的撤廃の打撃を乗り越え、林業の成長産業化を達成するには、稼げる林業を全力で築くしかない。

*13:https://www.agrinews.co.jp/p41775.html (日本農業新聞 2017年9月2日) JAグループ 19年に全組合員調査 自己改革評価把握 実践加速、全JAも
 JAグループは、現在進めている自己改革への評価を把握するため、全国1000万人超の正・准組合員全てを対象にしたアンケートを2019年4月に実施する。全組合員調査はJAグループ初の試み。併せて、全JA調査も行い、自己改革の取り組み実績をまとめる。節目を設定し、高評価の獲得を目標にして改革を加速させる。各JAは、評価や実績を基に一層の改革案などを検討し、次期中期計画を策定する。全組合員調査は、全JAの役職員が正・准組合員の全戸を訪問。農産物の販売事業や生産資材の購買事業、営農指導への期待度や満足度などをアンケート形式で調べる。全国のJAの組合員数は正・准合わせて1037万人(15年度)。JA全中によると、全国の組合員全てを対象に調査を行うのは初めてだ。一方、全JA調査はこれまでも毎年実施しているが、調査項目を見直す。例えば、ある事業について「何割のJAが取り組んだか」から「何人の組合員が利用したか」などに変更。組合員目線で、自己改革がどこまで進んだかを定量的に把握できるようにする。全組合員調査に合わせ、19年4月1日を基準日に19年度の調査を実施する。JAグループは15年の第27回JA全国大会の決議を受け、農業者の所得増大などに向けた「創造的自己改革」を進めている。同大会決議の実践期間は18年度までで、各JAがつくる自己改革の工程表も18年度を区切りとする。このため19年4月を自己改革の一定の節目とし、全組合員・全JA調査で評価や実績を把握することにした。政府の規制改革推進会議が、19年5月末を「農協改革集中推進期間」の期限としていることも考慮した。調査で把握した改革の実績や評価を踏まえ、全国のJAは19年度からの一層の取り組みを検討し、次期中期計画を策定する。中期計画には、総合事業を継続するか信用事業の代理店化を選択するかの判断なども盛り込む。信連や農林中央金庫による手数料水準の提示を受け、JAは信用事業の運営体制の在り方を検討し、19年5月までに結論を出すことにしているためだ。ただ全中は、総合事業を展開した方が農業者の所得増大や農業生産の拡大に有利とみて、多くのJAが総合事業の継続を選ぶと見込む。自己改革の実績や評価、それを踏まえた今後の計画は対外的にも発信する。全中は、こうした一連の取り組み方針を理事会で決めた。全中の比嘉政浩専務は「自己改革に終わりはないが、明確な節目をつくることで改革を加速化する」と強調。「全組合員調査で高い評価を得ることを一つの目標にして、JAグループを挙げて取り組む必要がある」と話す。

*14:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20170903&ng=DGKKZO20699380S7A900C1EA5000 (日経新聞 2017.9.3) 事務作業も自動化進む、第一生命やオリックス、「ロボ」ソフトで労働時間削減
 オフィスの作業を自動化するソフトウエアが日本で浸透し始めた。データ入力など人手に頼っていた単純作業を自動的に処理することからロボットと呼ばれ、第一生命保険は最大で150人相当の業務を代替する。人手不足の深刻化や働き方改革で労働時間の削減を急ぐ大手企業が次々に導入している。生産性を引き上げて、貴重な人材を顧客対応や企画部門に厚く配置する動きにつながりそうだ。パソコンを使った定型的な繰り返し作業を担うのが「RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)」と呼ばれるソフト。米オートメーションエニウェアや英ユーアイパスなど欧米企業が先行し、2年ほど前から日本企業で利用が広がり始めた。紙ベースのデータを光学式文字読み取り装置(OCR)で読み取ってデジタル情報として基幹システムに入力したり、ウェブの画面から数値をコピーしてエクセルにペーストしたりするような作業を担う。あらかじめ操作を設定しておけば、検索やデータの取得、入力、確認などの作業を人間と同じ手順で処理する。オリックスグループは10月末からRPAで担う仕事を増やす。これまでレンタカーの予約情報を基幹システムに登録する業務で使用してきた。外部の旅行サイトなどから受け付けると目視で確認して入力し直す必要があり煩雑な作業が伴った。RPAでは時間当たりの処理件数が人手に比べ8倍になり、ミスもなくなったという。この結果を受け、生命保険や不動産などグループ各社が導入を予定する。これまでの子会社1社から全社にRPAの利用を広げる。第一生命は試験的に使っていたRPAを10月から本格稼働する。社内で自動化に切り替える作業を募り2千以上、年間30万時間分の業務が候補に挙がった。従業員150人分に相当する。可能な業務から順次、RPAのソフトで代替していく。例えば保険金請求の処理業務を担当する社員を決める割り振りに使う。疾病や事故の内容によってスキルの程度を含めて対応する社員をあらかじめ分類し、自動的に仕事を振り分ける。人手で年間1000時間かかる作業を代替する見込み。日本RPA協会の調査ではRPA利用企業の97%で適用した業務の処理時間が半分以下になった。KPMGコンサルティングは単純作業に従事する労働力を4~7割減らせるとみている。電通も年末までに300の業務でRPAを導入する。自動化により月間で5万8千時間分の労働時間の削減を目指す。既に各種メディアの視聴率のデータを取得、入力する業務に使用済み。長時間労働問題を受けて進める働き方改革の一環として活用範囲を広げる。日本の時間あたり労働生産性は経済協力開発機構(OECD)加盟35カ国中20位で、かねて単純作業の見直しが必要と指摘されてきた。RPAソフトの機能が上がるのと並行して働き方改革の機運も高まり、関心を示す企業が増えた。単純作業を減らせば生産性は上がり、働く意欲の向上も見込める。第一生命は営業や海外事業などの部門に再配置したい考えだ。米調査会社トラクティカによると、ソフト利用や関連コンサルなど世界のRPA市場は2025年に51億ドル(約5600億円)と16年の30倍以上に増える。仕事が効率よく進み、企業のコストが下がるとの期待が高まる一方、25年までに世界で1億人の知的労働者の仕事がRPAに置き換わるとの試算もある。RPAは作業内容を社内で誰かが把握していないと、データの取得先のフォーマットが変わるなど環境が変化した場合も従来と同じやり方で作業を続け、業務が混乱する恐れがある。ソフトバンクはRPAソフトに操作を設定する人員や使用している業務を一元的に把握して、RPAに仕事を任せきりにしないよう管理している。


PS(2017年9月8日追加):*15-1のように、全農が、農家所得の増大や農業生産の拡大に向け、実需者への直接販売拡大のために営業開発部を設置するそうでよいと思うが、国内外の需要の変化に応じて持続的に新製品を出したり製品の改善を続けたりするのは、他産業ではこれまでもやってきたことなので遅すぎたくらいだ。なお、最近は、インターネット通販の利用で望む産地から直接買う消費者が増えたため、努力する生産者には利益獲得のチャンスが増えた。今後は、例えばデパ地下の惣菜などの業務用食材も相手の仕様に合わせて産地で下ごしらえして販売すれば、①ゴミまで都会に輸送しないため輸送コストを下げ ②人件費の安い産地で新鮮で安価な製品を作ることができ ③需要者の要求が手に取るようにわかるため今後の生産計画に役立ち ④地方で付加価値をつけるので地方の所得を増加させることもでき ⑤ゴミになる部分は地方で養殖魚の餌や肥料に再利用できるので、よりよくなると考える。
 なお、日本は農畜産物の輸出額が非常に小さいが、*15-2のように、JA全農は、香港で日本産農畜産物に特化した特設サイトを開設して、ネット通販をはじめとするEC事業を展開するそうだ。私は、合理的な価格で販売すれば売上が増えると思うが、品揃えの充実と量の確保は欠かせないだろう。そのような中、熊本県のJA菊池は、*15-3のように、牛の繁殖拠点を整備して年間500頭の増産を目指し、安く供給することで農家の手取りを増やす考えだそうだ。
 ところで近年、日本では野生鳥獣の数が増えたので、*15-4のように、鹿・イノシシなどの野生鳥獣を捕獲した狩猟者に支払う「鳥獣被害防止総合対策交付金」ができた。しかし、捕獲した野生鳥獣は、尻尾を切って写真を添えれば助成金をもらえるため捨てられることが多く、これでは、人間はあまりにも不遜で命を無駄にしていると言わざるを得ない。しかし、野生鳥獣の肉は、脂肪が少なく蛋白質が豊富で健康的であるため、適切に料理すれば家畜より価値の高いごちそうにもなる。そのため、*15-5のように、何とかしてジビエとして活用すべきだ。
 さらに、*15-6のように、九州から欧米へ続々と米粉が輸出され始めたのは希望多きことだが、米粉は、*15-7のように、菓子、パン、麺などの様々な用途に使うことができ、米粉のパンは固くならないなどの長所がある上、フォー(ベトナムの麺:爽やかで美味しい)は米粉でしかできない麺であるため、農水省が「戦略作物」として生産拡大を支援したり用途別に支援したりするのはバラマキであるとともに、市場を歪める大きなお世話になるだろう。

<全農の経済事業>
*15-1:https://www.agrinews.co.jp/p41785.html (日本農業新聞論説 2017年9月3日) 全農が営業新部署 直販拡大へフル活動を
 実践2年目となるJAグループの自己改革が9月で半年を迎える。経済事業を担うJA全農は、農家所得の増大や農業生産の拡大の実現に向け1日、営業開発部を設置、販売力強化の取り組みを加速する。実需者への直接販売拡大を狙う実働部隊に位置付ける。消費や販売形態の変化など市場動向に即応した機能アップが成否の鍵を握る。営業開発部は政府の「農林水産業・地域の活力創造プラン」への対応を実践するため、司令塔としての役割も担う。精米や青果など従来、縦割りに進めてきた営業活動を品目の垣根を取り払って横断的に実施する。新たな取引先の開拓や取扱品目の拡大が使命だ。併せて、実需者ニーズを産地に伝え、生産から加工・流通、販売までをつなぐ全農としてのバリューチェーン構築を目指す。その際に意識しなければならないのは、消費構造や販売形態の変化だ。最近の動向を見ると、生活の多様化に合わせ、市場では業務用需要が伸び、並行してインターネット通販の利用が増えている。さらに、作り手の論理を優先させる「プロダクトアウト」から、消費者ニーズを重要とする「マーケットイン」を意識した事業展開が強まっている。単にモノを売るだけにとどまらず、実需者ニーズを捉えた付加価値のある商品の企画・開発が求められている。こうした時代の流れをくみ、全農は従来の取引先であるスーパーや生協に加え、コンビニエンスストアや外食・中食業者、インターネット通販、ドラッグストアなど幅広い分野の実需者をターゲットにリスト化。取引先ごとに横断的なチームをつくり、新たな品目の売り込みと新規顧客の開拓を進める。直販事業を拡大するには、消費構造の変化への対応が重要だ。その一つが電子商取引(EC)だ。野村総合研究所が昨春公表したインターネット利用者を対象にした調査によると、3000円以下のちょっとした買い物でもネットを使う実態が浮き彫りになった。利用層も若者だけでなく中高年層に広がり、生活に定着している。農産物の販路の拡大・新規開拓には、既存の事業モデルの見直しと併せて、EC戦略を磨き上げることが欠かせない。全農は3月に決めた事業改革の年次計画で、2024年度の直接販売の割合を米で9割、園芸品目で取扱額の過半の5500億円という意欲的な目標を据えた。7月下旬の通常総代会の時点での実行状況はほぼ計画通りとしている。米の買い取りは2017年度計画の30万トンを超えたという。実績の積み上げへ新部署の果たす役割は大きい。有効に機能すれば、産地を巻き込んだ栽培や商品開発という好循環を作り出すことにもつながる。目に見える成果が問われる改革の必達。

<農畜産物の輸出>
*15-2:https://www.agrinews.co.jp/41743?page=2 (日本農業新聞 2017年8月29日) 全農、香港で通販事業 最大級サイトと連携 農畜産物輸出拡大
 JA全農は、日本の農林水産物・食品の最大の輸出先である香港で、ネット通販をはじめとする電子商取引(EC)事業を展開する。香港最大級の通販サイト「HKTVmall(HKTV)」などと連携し、日本産農畜産物に特化した特設サイトを開設したと、28日に発表した。百貨店など実店舗に加え、ネット通販を積極的に活用することで、消費者に直接売り込める期待がある。ネット通販は利便性が強みで、日本産農畜産物の新たな顧客層を獲得し、輸出拡大を狙う。輸出事業の拡大へ全農は4月、輸出対策部を新設。実務を子会社のJA全農インターナショナルに集約するなどの体制を整備し、産地づくりやCA(大気調整)コンテナなどを活用した試験輸送、国・地域別の輸出戦略の策定などに動く。9月1日に「営業開発部」を設置して取り組みを強化し、新たな販売網としてネット通販戦略の構築を進める。今回の仕組みは、HKTVに加え、国内外で料理教室などを展開する「ABCクッキングスタジオ(ABC)」とも連携する。国内から米や肉、果実など農畜産物を調達する全農と、食材を生かす調理方法などを紹介するABC、販売を担うHKTVがそれぞれの強みを生かし、香港の家庭などに日本産農畜産物を届ける。物流は、全農が既に構築している現地の青果や食肉などの卸をはじめ、取引先との仕組みを生かす。香港は他国に比べて輸入規制が少ないため、日本にとって幅広い品目を輸出しやすい。輸出戦略でも最重点地域で、現地では日系の総合スーパーや高級スーパーなどを中心に日本産農畜産物や加工品の取り扱いが広がり、消費者の購入機会が増えている。ネット通販で利便性が高まり、新たな顧客層の獲得に期待が大きい。取扱品目は、現時点で米、青果、牛肉、豚肉など。今後、販売状況を見ながら、品ぞろえの充実を検討する考えだ。全農は「香港の消費者ニーズを捉え、商品を広げていきたい」(輸出対策部)としている。

*15-3:https://www.agrinews.co.jp/p41799.html (日本農業新聞 2017年9月5日) 繁殖拠点を整備 管内で和子牛安く提供 熊本・JA菊池が新方式
 熊本県のJA菊池は、和牛子牛を増やすためキャトルブリーディングステーション(CBS)を整備した。生まれた子牛は市場に出荷せず、管内の生産者に安く譲る全国初の方式を導入する。子牛高騰に苦しむ肥育農家の経営改善につなげる狙いだ。西日本最大の酪農地帯である利点を生かし、管内の酪農家から乳用牛を預かって受精卵移植(ET)で和牛子牛を生ませる。JAが所有する繁殖和牛にも子牛を生ませ、3年後をめどに合計で年間500頭の増産を目指す。4日に菊池市に完成したCBSで竣工式を開いた。和牛と乳用牛を合わせて常時850頭を飼養。効率化のため哺乳ロボットや発情発見器などを完備する。国の畜産クラスター事業を利用し、総額約9億5000万円を投じて整備した。JAが所有する最大200頭の和牛に人工授精(AI)で子牛を年間180頭生ませる他、預かった酪農家の乳用牛最大240頭にETを施し、同140頭生産する。加えて、管内の酪農家組織の乳用牛300頭にもETで同180頭生ませる。受精卵はJAが用意し、代金も負担する。黒毛和種だけでなく褐毛和種(あか牛)も生産する他、生乳の生産基盤を守るため乳用後継牛の確保にも活用する。酪農家から預かる乳用牛は1日700円程度で管理を請け負う。生まれた和牛子牛は生後1週間程度で酪農家から全て買い取る。受精卵や引き取った後の管理にかかるJAの費用を勘案し、価格はスモール牛(3、4カ月齢)の市場相場の半額程度を想定する。生まれた子牛はCBSである程度育成した後、全頭を管内の肥育農家に供給する。市場出荷せず確実に管内にとどまるようにする。価格は県内市場の相場より1頭5万円ほど安くする方針。繁殖農家への影響も考慮して決めるが、一定程度安くし、採算ぎりぎりの状態にある肥育経営の改善につなげる。JAによると生産した子牛を市場出荷せずに安く供給する施設は「全国でも例がない」(畜産企画課)という。JAの正職員3人と嘱託職員3人が主に作業に当たる。獣医師1人と、哺育や育成などを担当するパート16~18人を確保するめどもついた。CBSは宿泊可能で、新規就農者らの研修施設としての役割も果たす。酪農と肉用牛肥育・繁殖の全てに対応する。JAの三角修組合長は「和牛子牛の不足と相場高騰は農家個人では解決できない問題だ。JAが子牛を生産して安く供給することで、農家の手取りを増やす。乳用牛を預かることで、酪農家の負担軽減にもつなげる」と強調する。

*15-4:https://www.agrinews.co.jp/p41783.html (日本農業新聞 2017年9月3日) 鳥獣対策交付金 捕獲確認を厳格化 不正防止へ 来年4月 尻尾と写真 必ず
 イノシシなどの野生鳥獣を捕獲した狩猟者に支払う国の「鳥獣被害防止総合対策交付金」について、農水省は交付ルールを厳しくする。実際に野生鳥獣を捕獲したかどうか地方自治体が書類で確認する場合、写真に加え、証拠として尻尾の提出を義務付ける。交付金の不正受給防止が狙いで、10月をめどに交付金の実施要領を改正。周知期間を設けた上で、2018年4月から施行する。同交付金は、市町村の認定を受けた狩猟者を対象に、鹿やイノシシなどの捕獲に最大1頭8000円を助成する仕組み。実際に捕獲したかどうかの確認は、市町村職員や都道府県職員が実際に捕獲現場に出向く「現地確認」、狩猟者が市町村や都道府県に証拠を提出する「書類確認」がある。書類確認の証拠は写真だけでもよいルールになっている。だが、3月に兵庫県と鹿児島県で証拠写真で不正が発覚。撮影地点を変えるなどして1頭の個体を使い回し、実績よりも多く捕獲したように見せかけ、交付金を多く受け取っていた。新しい交付ルールでは確認作業について、「現地確認」か、処理加工施設への持ち込み時の「搬入確認」を基本とする。これらが難しいケースだけ書類確認を認める。書類確認の内容も厳しくする。証拠として写真に加え、尻尾の提出も義務付ける。証拠を尻尾に統一することで、耳や牙など複数の証拠部位を使って1頭の個体で複数回申請されることを防ぐ。証拠写真は個体の向きを「右向き」に統一し、向きを変えて複数個体に見せかける不正を防ぐ。現地確認でも、尻尾を回収したりスプレーで着色したりすることを義務付け、個体の使い回しを防ぐ。野生鳥獣による農産物被害(15年度)は176億円。高水準にあり、捕獲は欠かせない。同省は今回の見直しで不正受給の再発を防ぎ、交付金を着実に執行していきたい考えだ。

*15-5:http://qbiz.jp/article/118256/1/ (西日本新聞 2017年9月7日) 夢の「ジビエカー」初導入 捨てる有害獣の肉、活用可能に

   

 捕獲したイノシシやシカなどの有害鳥獣を有効に活用しようと、高知県檮原(ゆすはら)町が、移動式のジビエ(野生鳥獣肉)解体処理車「ジビエカー」を全国で初めて導入した。処理場まで遠く、これまで廃棄せざるを得なかった捕獲獣をその場で解体、冷蔵運搬することが可能。業界内で「夢のような車」との声が上がっている。檮原町では昨年度、ハンターらが農作物に被害を与えるイノシシやシカを約1500頭捕獲。その数は2008年度の約10倍に膨れ上がっており、自家消費されるもの以外の大半が山中に捨てられているという。ジビエカーは箱型の荷台を備えた2トントラック(全長約6・5メートル)で、1台2175万円。日本ジビエ振興協会(長野県)
 機械化された日本の田植え  中国の小麦刈り取り      米国の消毒
と長野トヨタ自動車が共同開発し、これまで宮崎県などで実証実験が行われてきた。本格導入は檮原町が初めてだ。最大でイノシシやシカ5頭分の枝肉を冷蔵・冷凍保管できる冷蔵室や、皮や内臓を取り除いて殺菌できる解体室を完備。捕獲現場に出向いてすぐに1次処理できるため鮮度が保たれ、臭みの少ない良質な肉が得られる。解体で出た臓器や汚水を現場に残さないなど、環境にも配慮した。今後は高知県が中山間地域の拠点として設置する同町の集落活動センターが、地元猟友会と協力して運用する。来年3月には町内にジビエ専用の食肉処理施設も完成予定。ジビエカーと連動すれば年間400〜500頭を食肉用に加工、出荷できる見込みだ。同町の矢野富夫町長は「山に捨てていたものが収入に変わり、雇用も生まれる」と期待する。

<米粉>
*15-6:http://qbiz.jp/article/118122/1/ (西日本新聞 2017年9月6日) 米粉輸出、九州から欧米へ続々 グルテンフリー人気受け 農業振興へ国も支援
 国産のコメを原料にした米粉を欧米に輸出する業者が、九州で相次いで登場している。欧米では小麦粉に含まれるタンパク質「グルテン」が症状を引き起こす「セリアック病」への警戒から、米粉などグルテンフリー(グルテンを含まない)食品人気が広がる。輸出の拡大は国内農業の振興につながることから、農林水産省も注目している。熊本製粉(熊本市)は2015年2月、米国への米粉輸出を始めた。まずは家庭用から手掛け、16年11月には業務用に拡大。米国のグルテンフリー認証機関の認証を15年1月に取得した上での取り組みだ。同社などによると、米国はセリアック病の患者が多い上、グルテンフリー食品を健康にいいと評価する消費者が増加。浦郷弘昭取締役は「米国のグルテンフリー食品市場の規模は約6千億円と大きく、現地の市場調査で自社の米粉が高く評価されたため、参入できると判断した」と話す。輸出する米粉は大半で熊本産のコメを使い、独自の製粉技術で生産。浦郷氏は「当社の米粉で作ったパンは、米国の既存のものよりふっくらと仕上がる」と胸を張る。「輸出は始めたばかりだが手応えは感じている。知名度を上げ、より浸透していきたい」という。和菓子の材料として米粉を長年製造している小城製粉(鹿児島県薩摩川内市)は、14年11月からドイツに輸出。現地の商社を通じ、顧客はフランスにも広がっているという。「これまでに約25トン輸出したがもっと伸ばしたい」と能勢勝哉社長。9月にドイツ・ハンブルクに販売拠点を設け、米粉素材のパンや菓子も製造、販売する計画だ。「製品をパン用やパイ用などに分け、欧州でも『おいしい』と評価を頂いている。課題は価格の高さだが、価値を一層PRし欧州各地に販路を広げたい」という。農林水産省は輸出を後押しするため、NPO法人国内産米粉促進ネットワーク(東京)が今秋に欧州で計画する米粉のPR活動を支援する。

*15-7:https://www.agrinews.co.jp/p41797.html (日本農業新聞 2017年9月5日) 米粉 用途別に支援 農水省18年度 品種実証や設備
 農水省は2018年度、今春に示した米粉の用途別基準や米粉の特性を踏まえた生産をする産地とそれを活用する実需の支援に乗り出す。菓子、パン、麺と三つの用途区分はアミロース含有率で決まる。新事業では、それぞれに合った品種の栽培実証や栽培マニュアル作りなどを促す。用途などを意識して販売する製造業者も支援する。多様な商品化を後押しし、米粉用米の需要拡大につなげる。農水省が18年度予算概算要求に盛り込んだ「戦略作物生産拡大支援事業」(1億3000万円)の中で支援する。同省は3月、「米粉の用途別基準」を発表した。米粉のアミロース含量は、菓子・料理用で20%未満、パン用で15%以上・25%未満、麺用で20%以上と三つに分けた。こうしたアミロース含量は品種や栽培管理で変わるため、実需に応じた生産には統一した技術を確立する必要がある。しかし産地にそうしたノウハウはないのが現状だ。そこであまり普及していない高アミロース品種の導入や、栽培のマニュアル化といった産地の取り組みを支援。例えば高アミロース品種には「モミロマン」「越のかおり」などがある。産地と連携する業者に対しても、小麦アレルギー患者から需要の高いノングルテン米粉を製造する設備や小麦粉製品の混入防止対策などを支援する。同省は「高アミロースを必要とする米粉の麺はまだ利用が少なく、事業で需要を広げたい。ノングルテン米粉は小麦アレルギーの多い欧米などへ輸出も見込める」(穀物課)と期待する。同省は米粉用米について、25年度に13年度比で約5倍となる10万トンの生産努力目標を掲げるが、国内需要量は約2万3000トンでここ数年はほぼ横ばい。農水省は米粉用米を戦略作物と位置付け、水田活用の直接支払交付金で飼料用米と並ぶ水準で助成している。

<本当の改革の進め方>
PS(2017年9月10日追加):*16-1の農水省の元事務次官で農林中金総合研究所理事長の皆川氏の話の内容は良いと思うが、①日本は人口減少という大きな課題に直面している ②貿易立国として世界のものづくりを担うのは難しい ③農業は2次、3次産業までの付加価値を足すと、GDP(国内総生産)の1割を稼いでいる ④地域社会を支え続ける意味でも、農業やその関連産業には大きな可能性がある ⑤家業としての農業経営の持続可能性がなくなっていることは否定できない とされていることに関して、①②は、一人当たりの国土や財産が増えるのでよい点も多く、女性・高齢者・障害者など、これまで生産年齢人口の健常男性に道をあけるために雇用から外されていた人に雇用の機会を与えるので悪いことばかりではない。さらに、③④については、食料自給率や環境維持を考慮すれば、GDPには載らない農林漁業の重要性もある。また、⑤については、家業としての経営は農業だけでなく製造業にもあり(トヨタ、ホンダ、有田焼、唐津焼など)、オーナー会社やベンチャー企業は、経営者によっては将来性ある意思決定を迅速に行えるので強みになることも多い。
 また、生産物の種類を増やせば、これまで輸入品しかなかった産物を国内産に回帰させたり、生産革命で消費者が高すぎて買わなかった産品を買えるようにしたりできるため、日本の市場規模は小さくなるとは限らない。しかし、輸出で他流試合をするのは、外貨を稼ぐだけではなく、日本産の価値を客観的に知って改善を続けるために重要である。
 なお、競争に勝つための連携目的で準組合員や非農家理事を作ったり、全農の持株会社が他産業とジョイントベンチャー子会社を作ったりする必要も出てくるため、*16-2に書かれているとおり、実態を知らない人が「上から改革」で准組合員を規制するのはもってのほかだ。そして、農林中金の役割は、農村から集めた資金を、改革・改善のために資金を必要とする地方の農林業に提供できる卓越した視野と金融技術を持つことなのである。

*16-1:http://www.saga-s.co.jp/column/economy/22901/461886 (佐賀新聞 2017年9月9日) 農業の複合化避けられず 多様な連携で地域貢献を、農林中金総合研究所 皆川理事長講演
 佐賀県内のJAグループ役員を対象にしたセミナーが佐賀市で開かれた。農水省の元事務次官で農林中金総合研究所理事長の皆川芳嗣氏が、人口減少が進む今後の日本における農業の可能性、JAが果たすべき役割について語った。要旨を紹介する。日本は人口減少という大きな課題に直面し、かつてのように貿易立国として世界のものづくりを担うのは難しい。金融、技術も国を引っ張るだけの産業にはなり得ない。では農業はどうか。数年前にTPP(環太平洋連携協定)の議論で、「農業は日本のGDP(国内総生産)のたかだか1・5%しかない」と言った政治家がいた。だが、フランスやアメリカでもGDPに占める1次産業の割合は1~2%。あんなに農村を抱えている中国でも10%しかない。1・5%はあくまで原料の世界。2次、3次産業まで付加価値を足すと、生産額ベースで国の1割を農業から派生した分野が稼いでいる。地方に行くと、そのウエイトはさらに高い。地域社会を支え続ける意味でも、農業やその関連産業には大きな可能性がある。ただ、家業としての農業経営の持続可能性がなくなっていることは否定できない。後継者が成り立つ事業にするには、規模拡大や複合化はある程度避けて通れない。労働のピークを経営の中でどう分散させられるか、マネジメントをJAも一緒になって取り組まなければならない。農地基盤の条件整備、農地の権利問題といったことも今後、JAがやる必要があるだろう。日本の市場規模は必ず小さくなる。地域にこだわりつつ、“他流試合”に挑むのも大事だ。福岡と東京のJAさが系統の店(季楽)は、他の地域の需要を食って佐賀の農産物が売れている。外に打って出る取り組みを加速させる必要がある。東アジアは必ず成長し、消費社会になる。インバウンドを生かさない手はない。地域全体を良くするためには、いろんな人たちと連携し、包み込むという考えが重要だ。JR九州の「ななつ星in九州」は、九州の風土と皆さんが丹精込めて作った食材がなければ成功しなかった。旅をする理由はその場所でいろんなものを食べたり、体験したりできるから。連携相手としてもっと深くつながれるのではないか。農業と福祉の連携もある。農業分野の一部でも、JAから福祉サイドに手を差し伸べるのは大きな社会的意義がある。障害者雇用は日本の企業の責務だが、企業本体の業務で雇用の場を提供することが難しい場合もある。企業が特例子会社をつくり、その子会社の事業として農業や園芸に取り組めば、法定雇用の人数に組み込める制度がある。農業のノウハウや販路を生かし、地域のためにより積極的に役割を果たすJAにしていただければありがたい。

*16-2:https://www.agrinews.co.jp/p41762.html (日本農業新聞論説 2017年8月31日) JA組織基盤強化 組合員と共に未来開く
 JA自己改革の要諦は、組合員との結び付きを強め、その成果を「見える化」することに尽きる。多様化する組合員の「姿」をつかみ、理念や課題を共有し、共に農と地域の未来を開いていこう。政府主導の一連の農協改革は、総合事業を弱め、地域のライフライン機能を損ねる方向で進んでいる。対してJAグループが進める創造的自己改革は、「食と農を基軸として地域に根差した協同組合」を目指す。課題克服の「解」は常に現場にある。「上から改革」ではなく、「現場からの改革」でなければ真の自己改革はできない。JAグループの目標は、農業者の所得増大、豊かで暮らしやすい地域社会の実現だ。それには、共に歩む正組合員・准組合員とのつながりが欠かせない。JAを支える土台が揺らいでは改革などなし得ない。組織基盤を強め、JAが組合員、地域住民にとって、なくてはならない存在になることが改革集中期間に問われている。JA全中、JC総研が東西2カ所で開いた「JA組織基盤強化フォーラム」は、そうした問題意識に貫かれ、先進事例報告や識者提言など示唆に富む内容だった。フォーラムで問われたのは、多様な組合員の営農・生活実態、JA組織・事業・経営への関与の度合いを把握できているかだ。徹底した意向調査でJAの「強み」「弱み」を知り、きめ細かく組合員の要望に応えることが求められている。組合員と言っても、JA事業や地域農業を支えた親世代の正組合員、高齢化で販売の一線を退いた正組合員、後継者世代のJAに対する意識も一様ではない。既に数の上では正組合員を上回る准組合員にしても、単なる事業利用者から就農意欲のある人、JA運営参画を目指す自覚的な人までさまざまだ。組織基盤強化とは、多様化する組合員と直接向き合い、信頼を深めることにほかならない。正組合員には、営農・経済改革の果実をスピード感を持って届けることだ。経営者は明確なビジョンを掲げ、全ての職員は渉外であり、広報担当だという自覚と当事者意識を持とう。あらゆる場面で職員は、具体的な目標、手段を自らの言葉で語れるよう「人材力」を磨こう。准組合員への対応も総合事業の将来を左右する。政府が准組合員の事業利用規制問題を調査・検討する2021年3月末までに、「利用者」から「パートナー」「応援団」へと結び付きを強めることだ。准組合員は、総会への議決権などJA経営に直接参加する「共益権」はないが、さまざまな機会を捉え、参加・参画を促そう。支店の協同活動、総合ポイント制の活用、農業祭、食農教育、家庭菜園指導、健康講座など日頃の交流が理解と関係を深める。自己改革の進捗を政府から問われたときに、全ての組合員が「わがJA」と胸を張れるようにしたい。

<合理的な農業交付金>
PS(2017年9月15日追加):*17に、①主食用米以外の米作りを進めて水田の生産機能を維持するのは、食料自給率向上と食料安全保障に寄与する ②農水省は2018年度農林水産予算で飼料米助成や産地交付金など水田活用の直接支払交付金として3,304億円を要求した ③財務省や一部マスコミなどからは「財政負担が大きい」と疑問視する意見が出ている ④水田活用交付金は自給率向上の“要石”だ 等が書かれている。
 しかし、このうち①④は、転作するのに水田と米以外の選択肢を持たず、本来なら他の付加価値の高い作物を作ることができる場所で水田を維持するために、②のように膨大な予算を要求していることが問題なのである。つまり、別の不足している付加価値の高い作物を作って合理的な経営をすれば、国からの補助金はいらず、他産業はそうやって利益を出しているのだ。そのため、③のように、財務省が財政支出の負担が大きいというのは当たり前で、国民負担を増やさずに教育や福祉を充実させるには、一人前の生産年齢人口の大人には原則としてだらだらと補助金を出さずに自立してもらうしかない。ただ、農林漁業の場合は、環境や食糧安全保障にも寄与しているため、環境税その他から貢献度に見合った補助金を出すのは合理的である。

*17:https://www.agrinews.co.jp/p41901.html (日本農業新聞論説 2017年9月14日) 水田活用交付金 自給率向上の“要石”だ
 米価を上げるのに税金を投入するのは問題だという意見をしばしば聞く。それは皮相的な見方だ。主食用米以外への作物転換で需要に見合った米作りを進め、併せて水田の生産機能を維持するのは、食料自給率向上と食料安全保障に寄与する。農水省は2018年度農林水産予算で飼料米助成や産地交付金など水田活用の直接支払交付金として3304億円を要求した。この点に関し財務省や一部マスコミなどから「財政負担が大きい」と疑問視する意見が出ている。米価にようやく上向き傾向が見られるだけに、転作予算を“影の米価維持対策”に見立てて、批判を強める気配が感じられる。年末までの予算編成過程では、総額や助成単価の水準を巡り、財務省と農水省の厳しい綱引きが想定される。水田面積243万ヘクタールは全耕地面積447万ヘクタールの5割強に相当する。農地面積が減少する中、この貴重な生産機能を将来にわたって維持することは、脆弱(ぜいじゃく)化するわが国の食料安全保障上極めて重要である。毎年8万トンに及ぶ米の需要減が今後も見込まれる中、〈生産調整の強化↓需給緩和・米価下落↓耕作放棄地の拡大↓食料供給力の低下〉の悪循環を食い止めなければならない。最終的には国民・消費者の食を脅かす事態となる。15年度からの新しい食料・農業・農村基本計画を決定したのは安倍内閣であり、食料自給率の引き上げ目標を民主党政権が設定した50%(カロリーベース)から45%に下げた。現実的な目標に修正し、向上を目指すというのが理由だった。しかし、自給率は16年に1ポイント下落し38%にまで落ち込んだ。この目標設定に関わった食料・農業・農村政策審議会の中嶋康博会長は本紙のインタビューで「自給率が上がる姿が見えてこない。ほぼ全ての農産物が自給率を下げる要因になっている」と厳しい認識を示した。政府・与党はこの事実を重く受け止めなければならない。産地交付金や飼料米助成は、主食用米以外に作付け転換することで、需要に応じた米作りによる安定供給と水田機能の維持という二つの目標を実現する政策である。財政負担が小さくないのは事実だが、現状ではこれに代わる政策展開は見いだせない。斎藤健農相の肝いりで動きだす米の輸出拡大プロジェクトは、19年で米加工品を含めて10万トンという量である。これさえ実現は簡単なことではない。納税者の理解を得ながら、農家が主食用米以外を選択できる環境を整えるしかない。水田という持続可能性の高い生産装置を守ることは、食料自給率の向上と併せ、国土の保全や災害時の洪水防止といった多面的機能の発揮にもつながる。食料自給率低下を機に、審議会はわが国の食料安全保障の在り方を見詰め直し、危うい現状を発信し、広く国民理解を得る取り組みをしてはどうか。

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2017.8.3 地域振興・歴史と観光・鉄道 (2017年8月4、5、9、10、18日、9月9日追加)
(1)長崎新幹線のフル規格化とJR九州赤字路線の扱い

 
          2017.7.26西日本新聞        2017.8.1西日本新聞

(図の説明:リニアを通す時は、唐津線・久大線の土地を使って通せば、殆ど用地買収がいらず安価にできそうだ。また、リニアも地下を走ると景色が見えないため、高架を作って走らせるのがよいと私は考える。なお、筑肥線は「福岡空港(福岡市営地下鉄空港線)⇔博多(福岡市営地下鉄空港線)⇔筑前前原(JR筑肥線)⇔唐津(JR筑肥線)⇔呼子⇔玄海町(脱原発とセット)⇔伊万里⇔松浦⇔平戸口⇔佐世保⇔長崎」を連続させると、日本海のリアス式海岸の絶景を眺めながら、新鮮な天然の魚介類や真珠・鮪・ふぐ・鯛の養殖など各産地を通るので、利便性だけでなく観光にも有益だろう)

1)長崎新幹線のフル規格化
 九州新幹線長崎ルートで当初予定されていたフリーゲージトレイン(FGT)は、*1-1、*1-2のように、武雄市、嬉野市の両市長が「全線フル規格化を実現するよう国に働きかけてほしい」と要望したにもかかわらず、佐賀県知事と副知事は「負担を考えると議論する環境にない」と答えたとのことである。一方、長崎県の中村知事は「一番効果が期待できるフル規格を実現してほしい」と要請している。

 現在、在来線が走っている「新鳥栖⇔武雄温泉間」のフル規格化には5千億円規模の財源が必要で、佐賀県の負担は800億円超に上るとされるが、長崎県までの運転になるため、今さらミニ新幹線を作るのではなく、全線フル規格と定めて建設費の削減(外国製の車両使用や建設への外国人労働者の使用等)や建設費の捻出(ふるさと納税もある)に頭を絞った方が、今後のためになると私は考える。

 このような中、*1-3のように、JR九州はバンコク事務所を開設し、青柳社長が「東南アジアでマンション、ホテルなどの不動産開発事業を1年以内に始めたい」などとしているが、国内で稼いだ金を海外で散財するようなら、地域の人は応援しなくなる。そのため、国内で速やかに新幹線を整備し、駅周辺で新しい街づくりを行った方が、確実に収益が得られる上、地域の協力も得やすいと考える。

2)JR九州赤字路線の扱い
 JR九州は、*1-4のように、6割の12路線で乗客が減少し、存廃を巡る議論につながる可能性もあるそうだ。しかし、鉄道は、繋がれば便利になって利用者が増えるものであるため、「赤字路線→廃止」だけではなく、「赤字路線→黒字路線との連続→周囲を一体として再整備」という選択肢もあるだろう。

 特に九州は、原発事故発生地域から遠く、成長途上のアジアに近い上、これまで投資が遅れていたので、将来性が大きい。そのため、今はむしろ投資すべき時だと考える。

(2)神武天皇東征のルートに沿って進むリニア
 
      宗像大社           宗像大社の所蔵品   2017.7.31日経新聞
                                百舌鳥・古市古墳群
(図の説明:左2つの写真は宗像大社で、左から3番目、4番目の写真は宗像大社の所蔵品である。志賀島で発見された「漢の倭の奴国王印」は金印であるため、卑弥呼に贈られた鏡なら、大量に出てくる三角縁神獣鏡よりも金の装飾のついた4番目の写真のようなものの方がふさわしそうだ。一番右の写真は、仁徳天皇陵などだ)

1)神功皇后(台与)と応神(=神武?)天皇の進路
 ユネスコの世界遺産委員会は、2017年7月8日、*2-1のように、古代東アジアの交流にまつわる沖ノ島など「『神宿る島』宗像・沖ノ島と関連遺産群」を構成する8つの史跡を世界文化遺産に登録する決定を行った。宗像大社(福岡市)は、新原・奴山古墳群などの8つの国指定史跡で構成され、天照大神の三柱の御子神(田心姫神、湍津姫神、 市杵島姫神)を祭っている。そして、沖ノ島は、九州と朝鮮半島の間に位置して航海の安全や交流の成就を祈る祭祀が行われ、入島制限で守られてきたため、遺跡がほぼ手つかずで残っている。

 そして、宗像大社の近くに住吉神社(福岡市)があり、その祭神は、主祭神底筒男命、中筒男命、表筒男命の「住吉三神」と、天照皇大神、神功皇后である。『日本書紀』等によれば、神功皇后は神功元年から神功69年まで政事を行ない、夫の仲哀天皇が香椎宮(福岡市)にて急死した後、熊襲を討伐した。それから住吉大神の神託により、お腹に子供(のちの応神天皇)を妊娠したまま佐賀県唐津市の港から玄界灘を渡って朝鮮半島に出兵し、新羅の国を攻めると新羅は戦わずに降服して朝貢を誓い、高句麗・百済も朝貢を約して、これが三韓征伐と言われている。

 神功皇后は、渡海の際、月延石や鎮懐石と呼ばれる石を腹に当ててさらしを巻き、冷やして出産を遅らせ、筑紫の宇美(福岡県宇美町)で応神天皇を出産したと伝えられている。そして、神功皇后が三韓征伐の後で畿内に戻る時、自分の皇子(応神天皇)の異母兄にあたる香坂皇子、忍熊皇子が畿内で反乱を起こして戦いを挑んだが、神功皇后軍は武内宿禰(蘇我氏などの祖とされる)や武振熊命の働きでこれを平定したのだそうだ。

 現在、神功皇后は、住吉三神とともに住吉大神の祭神とされ、応神天皇とともに八幡三神の祭神としても信仰されており、佐賀県唐津市の鏡神社、大分県宇佐市の宇佐神宮、大阪府大阪市の住吉大社、福岡県福津市の宮地嶽神社、福岡県大川市の風浪宮、京都市伏見区の御香宮神社などの祭神でもある。

2)百舌鳥・古市古墳群
 文化審議会は、2017年7月31日、*2-2のように、2019年の世界文化遺産に登録をめざす国内候補として「百舌鳥・古市古墳群(大阪府)」を選び、政府がユネスコに推薦書を出して、2019年夏の世界遺産委員会で審査されるそうだ。この古墳群は国内最大古墳の仁徳天皇陵古墳(百舌鳥古墳群、486メートル・堺市)と、2番目の応神天皇陵古墳(古市古墳群、425メートル・羽曳野市)など、4世紀後半~5世紀後半に造られた49基で構成され、「応神天皇=神武天皇」とも言われている(そろそろ、正確な特定が必要な時だろう)。

 そして、*2-3のように、「百舌鳥・古市古墳群」が世界文化遺産に登録されれば、観光客らが前年比で約561万4千人増えると仮定し、その経済効果は、大阪府全体で1年間に約1000億円、堺市では、約338億円と試算している。さすがに大阪は計算が速く、佐賀県も見習うべきである。

3)飛鳥・斑鳩時代
 聖徳太子(厩戸皇子:574年~622年)が眠っているのは大阪府南河内郡太子町にある叡福寺で、そこには、父の用明天皇や推古天皇陵もあり、母の穴穂部間人皇后や妻の菩岐々美郎女も一緒に埋葬されており、叡福寺の境内を北に見ると聖徳太子廟があるとのことである。また、近くに、隋の皇帝煬帝が激怒したことで有名な 「日出處天子致書日沒處天子無恙」という文言がある国書を隋に持参した小野妹子も眠っているそうだ。

 そして、この太子町には、飛鳥時代に飛鳥京と南波を結んだ日本で一番古い「竹内街道」と呼ばれる官道があり、シルクロードの終点として大陸文化を伝えてきたところだ。

 なお、日本書紀には、厩戸皇子は推古天皇の摂政として蘇我馬子と協調して政治を行い、国際的緊張のなかで遣隋使を派遣するなど、当時進んでいた中国の文化・制度を学び、冠位十二階や十七条の憲法を定めるなど、天皇を中心とした中央集権国家体制確立を図り、仏教を取り入れて神道とともに信仰し興隆に努めたと書かれている。

4)リニア中央新幹線名古屋―大阪の早期開業について
 奈良県の荒井知事は、2017年7月26日、*2-4のように、リニア中央新幹線名古屋―大阪の早期開業を求める会議を、三重県や大阪府と合同で設立すると発表したそうだ。リニア中央新幹線は、釜山・九州・四国を通ってシルクロードの終点である堺市、奈良市に至るまでは、中国の言う一帯一路の終点にあたり、奈良より東に関しては奈良県の荒井知事が三重県や大阪府ととともに早期開業を求めているわけだ。私は、京都はこの道筋からは外れ、東海道新幹線が通っているので、重ねてリニアまで通す必要はないと考える。

 しかし、「釜山→対馬→壱岐→唐津→鳥栖(吉野ヶ里、大宰府、久留米の近く)→日田→宇佐→四国→堺→奈良」という経路のリニア新幹線又は新幹線を作ると、現在は赤字路線となっている鉄道過疎地に高速鉄道ができ、その高速鉄道は古代史の跡をなぞるという面白いことになる。

5)魏志倭人伝の卑弥呼・台与(トヨ)と日本書紀の天照大神・神功皇后
 「魏志倭人伝(http://www.eonet.ne.jp/~yamataikoku/6000.html 参照)」によると、*2-5のように、邪馬台国は「対馬国(長崎県)→壱岐国(長崎県)→末盧國(佐賀県)→伊都国(福岡県)」まで行った後、「南水行二十日(南に船で20日)南水行十日陸行一月(南に船で10日 陸路1月)」で邪馬台国に着くと記されており、この通りだ考えれば邪馬台国は九州の遥か南の海中になってしまうが、沖縄県与那国島付近の海底に立派な遺跡があるため、素直に読んでそこだと結論付けることもできる。

 この場合、248年9月5日に地殻変動が起こって沖縄の大部分が沈み、それによって卑弥呼が亡くなったが、「魏志倭人伝」の著者である陳寿は、そう記載しても誰も信じないだろうと考え、「卑弥呼以て死す」としか書かなかったのだという説もあるので、中国と沖縄にそのような大地震や地殻変動の記録があるか否かを確かめる必要がある。

 そうでなければ、「伊都国」までは北部九州にある現在の地名で辿れるため、「狗奴国」は球磨国、投馬国は投与国の書き違いと考えられる。そして、肥前と肥後の間に肥国(=日国:佐賀県吉野ヶ里町付近)、豊前と豊後の間に投与国(=豊国:大分県宇佐市付近)があったと推測できる。それにしても、魏志倭人伝(中国の歴史書『三国志』中の「魏書」第30巻烏丸鮮卑東夷伝倭人条)は、日本に関する漢字に卑しい当て字を使ったものだ。 怒

<長崎新幹線のフル規格化>
*1-1:http://qbiz.jp/article/114694/1/ (西日本新聞 2017年7月22日) 武雄、嬉野両市長「全線フル規格に」 九州新幹線長崎ルート
 九州新幹線西九州(長崎)ルートでフリーゲージトレイン(軌間可変電車、FGT)導入の見通しが立たなくなっていることを巡り、沿線の武雄市の小松政市長と嬉野市の谷口太一郎市長は21日に県庁を訪れ、副島良彦副知事と会談した。両市長は「地元の財政負担スキーム(枠組み)を見直した上で、全線フル規格化を実現するよう国に働きかけてほしい」と要望した。長崎ルートは、武雄温泉駅で新幹線と在来線を乗り継ぐ「リレー方式」での2022年度暫定開業が決まっている。ただ、導入予定のFGTは車軸の改良や検証だけで「年単位の時間が必要」とされ、開発のめどが立っていない。小松市長は「新幹線の特性である安全性、高速性、定時性と、関西方面への乗り入れを確保するには現段階ではフル規格による整備が必要」と主張。全線フル規格化では県負担が約800億円に膨らむことから、谷口市長は「財政面のスキーム見直しを国に強く伝えてほしい」と求めた。副島副知事は「地元負担は法律で決まっている。フル規格効果はFGT以上と認識しているが、負担を考えると議論する環境にはない」と答えるにとどめた。会談後、谷口市長は記者団に対し、長崎県の沿線自治体とも連携して国に全線フル規格化を求めていく考えを示した。

*1-2:http://qbiz.jp/article/115269/1/ (佐賀新聞 2017年7月29日) 長崎新幹線、長崎県は全線フル規格を要請 佐賀県は難色
 九州新幹線西九州(長崎)ルートに関する与党の検討委員会は28日、フリーゲージトレイン(軌間可変電車、FGT)の導入を断念する方向となったことを受け、長崎、佐賀両県から意見を聞いた。長崎県の中村法道知事は「一番効果が期待できるフル規格を実現してほしい」と要請。一方、佐賀県の山口祥義知事は「フルは地元負担の課題があって非常に厳しい」と強調、在来線に新幹線幅のレールを設ける「ミニ新幹線」については「提案があればしっかり検討する」と前向きな姿勢を示した。同ルートは、在来線と新幹線を乗り継ぐ「リレー方式」で2022年度に暫定開業を予定。中村氏はリレー方式は「交流人口の拡大に万全ではない」と指摘し、長崎県知事として初めて、全線を新幹線区間とするフル規格化を提案した。ただ、在来線区間の新鳥栖−武雄温泉のフル規格化には5千億円規模の財源が必要。佐賀県の負担は800億円超に上るとされ、山口氏はフル規格化には難色を示しながらも、整備費が抑えられ、既存の新幹線とも直通運転ができるミニ新幹線に関しては「真摯(しんし)に考えていきたい」と述べた。与党検討委は8月下旬、新しい整備方法の検討に着手。全線フル規格とミニ新幹線を軸に、総事業費や工期、費用対効果などを検証しながら整備方法を絞り込む考え。新たな整備方法が決まるまでには、少なくとも数カ月はかかる見通しという。

*1-3:http://qbiz.jp/article/115421/1/ (西日本新聞 2017年8月1日) JR九州、6割12路線で乗客減少 地方路線の低迷目立つ
 JR九州は31日、路線ごとの利用状況を示す2016年度の平均通過人員(輸送密度)を初めて発表した。JR九州が発足した1987年度と比較ができる20路線のうち、6割に当たる12路線で利用者が減少。鹿児島線など幹線の多くで利用は増えた一方、地方路線で落ち込みが目立った。JR九州は当面、現在の路線網を維持する方針だが、利用低迷が続けば、存廃を巡る議論につながる可能性がある。輸送密度は、1キロ当たりの1日の平均通過人員を示す鉄道の経営指標。JR九州は路線別の収支は公表していないが、昨年秋の株式上場に伴い、大半の在来線が赤字とされる鉄道事業の現状を「より細かく伝える」ために指標を公開した。幹線のうち比較可能な7路線では、利用者が2倍になった篠栗線をはじめ5路線で乗客が増加。一方、利用が一定数以下の「地方交通線」は、乗客がほぼ3分の1になった吉都線など13路線中10路線で利用者が減った。より細かな区間ごとでみると、比較可能な55区間のうち6割超に当たる35区間で利用者が減少。都市部で乗客は増えたが、山間部などでは利用減が進んだ。輸送密度を巡っては、JR発足前の国鉄分割・民営化の際、4千人未満の場合は廃止の検討対象となった。JR北海道は昨年冬、輸送密度が200人未満の路線をバス輸送などに転換し、200〜2千人未満の区間についても、運賃値上げや駅の廃止などを地元と協議するとの方針を打ち出している。31日に記者会見したJR九州の青柳俊彦社長は「(現状の)交通ネットワークを維持するよう努力する」と強調しながら、輸送密度の公表で「いろんなことを検討していただければ出した意味がある」と述べた。

*1-4:http://qbiz.jp/article/115258/1/ (西日本新聞 2017年7月29日) JR九州バンコク事務所開設を記念し式典 東南アジアで不動産開発へ
 JR九州は27日夜、タイの首都バンコクのホテルで、5月に構えたバンコク事務所の開設記念式典を開いた。青柳俊彦社長は東南アジアでのマンション、ホテルなどの不動産開発について「1年以内に事業を始めたい」と報道陣に語った。式典にはタイに進出している日系企業などが参加。青柳社長はあいさつで「4千億円弱の売り上げの約60%を鉄道以外の事業で稼いでいる。九州などで培った(不動産開発)事業を海外でも展開するため、バンコクの地にやってきた。新参者だが精いっぱい汗をかきたい」と意欲を示した。バンコク事務所は日本人2人、現地スタッフ2人の4人体制。タイやベトナムなど東南アジア地域の土地情報や売却物件情報を収集している。海外では中国・上海で外食事業の実績があるが、不動産開発は初めての取り組みとなる。

<日本史に沿って進むリニア>
*2-1:http://www.sankei.com/life/news/170709/lif1707090039-n1.html (産経新聞 2017.7.9) 宗像・沖ノ島、世界遺産に逆転一括登録
 ポーランドのクラクフで開催中の国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界遺産委員会は8日、古代東アジアの交流にまつわる沖ノ島など、「『神宿る島』宗像・沖ノ島と関連遺産群」(福岡県)を構成する8つの史跡全てを世界文化遺産に登録することを決めた。事前審査をしたユネスコ諮問機関のイコモスが5月、沖ノ島と周辺の岩礁を登録し、本土側の宗像大社など4つを除外するよう求めた勧告を覆す一括登録となった。日本国内の世界遺産は昨年の「国立西洋美術館」(東京都)に続き21件目。文化遺産が17件、自然遺産が4件となる。宗像・沖ノ島は、沖ノ島と3つの岩礁(福岡県宗像市)、九州本土の宗像大社(同)、新原(しんばる)・奴山(ぬやま)古墳群(福津市)など8つの国指定史跡で構成する。沖ノ島は、九州と朝鮮半島の間に位置し、4~9世紀に航海安全や交流成就を祈る国家的祭祀(さいし)が行われた。入島制限の禁忌が守られ、自然崇拝に基づいた古代祭祀の変遷を示す遺跡がほぼ手つかずで残る。奉献品約8万点が出土し、“海の正倉院”とも呼ばれる。

*2-2:http://www.nikkei.com/article/DGXLASDG31H3E_R30C17A7000000/ (日経新聞 2017/7/31) 世界文化遺産に「百舌鳥・古市古墳群」推薦、19年審査
 文化審議会は31日、2019年の世界文化遺産登録をめざす国内候補として「百舌鳥(もず)・古市古墳群」(大阪府)を選んだ。政府は国連教育科学文化機関(ユネスコ)に推薦書を提出。諮問機関による現地調査などを経て、19年夏の世界遺産委員会で審査される見通し。百舌鳥・古市古墳群は堺市と羽曳野、藤井寺両市に広がる古墳群の総称。文化庁に提出した推薦書案では、国内最大規模の大山古墳(仁徳天皇陵)など、4世紀後半~5世紀後半に造られた49基で構成する。文化審議会の国内推薦は、今回が4度目の挑戦だった。世界文化遺産の推薦は各国年1件に限られており、17年の世界遺産委では「『神宿る島』宗像・沖ノ島と関連遺産群」(福岡県)の登録が決まった。政府は18年の審査に「長崎の教会群とキリスト教関連遺産」(長崎、熊本両県)を推薦している。

*2-3:http://www.shinmai.co.jp/news/world/article.php?date=20170802&id=2017080201001687 (信濃毎日新聞 2017.8.2) 古墳群の経済効果1千億円と試算 世界遺産登録で大阪
堺市の公益財団法人堺都市政策研究所は2日、2019年の世界文化遺産登録を目指す大阪府の「百舌鳥・古市古墳群」に関し、登録されれば府全体で1年間に約1005億8400万円の経済効果があるとの試算を発表した。研究所は、19年に登録された場合、古墳群がある堺市や同府藤井寺市などを訪れる観光客らが前年比で約561万4千人増えると仮定。観光客らが使う宿泊費や飲食費などを足し合わせて経済効果を計算した。このうち、国内最大の前方後円墳・大山古墳(仁徳天皇陵)がある堺市では、約338億3900万円の経済効果があるとした。

*2-4:http://www.saga-s.co.jp/news/national/10204/449523 (佐賀新聞 2017年7月26日) リニア早期開業訴え会議開催へ、予定ルートの奈良など3府県
 奈良県の荒井正吾知事は26日、県庁で記者会見し、リニア中央新幹線名古屋―大阪の早期開業を求める会議を、三重県や大阪府と合同で設立すると発表した。9月に初会合を開く。三重県の鈴木英敬知事も同日、会見する。荒井知事は「引き続き、ルート、駅の位置の早期確定をお願いしていきたい。大阪府が入ることで促進することを期待する」と話した。リニアは、品川―名古屋が2027年に開業する予定。名古屋以西のルートは、11年に決定した国の整備計画で奈良市付近を通るとしているが、京都府などが「京都を通過するルートの方が、経済効果が高い」などとして、京都経由を求めている。

*2-5:https://blogs.yahoo.co.jp/tsn_take/1257315.html
■ 「魏志倭人伝」
 邪馬台国の存在の根拠とされる史書は、中国の「魏志倭人伝」の僅か二千文字のみ。その地理的位置を示す記述は曖昧で、正確な位置については専門家でも意見が割れていた。倭人伝には邪馬台国への行き方が、対馬~壱岐を経て現在の福岡市付近まで行った後、「南水行二十日(南に船で20日)南水行十日陸行一月(南に船で10日 陸路1月)」で邪馬台国に着くと記されている。しかし、この通りだと邪馬台国は九州の遥か南の海の中になってしまう。弥生時代の1~3世紀、約30の国(クニ)からなる「倭国」の中心のクニ「邪馬台国」が在った。「魏志倭人伝」では「邪馬壹国」とあるが「後漢書」には「邪馬臺国」とある。"臺"の字を"台"を以って代用したと見られる。元々は男王が治めていたが、1~2世紀、倭国全体で長期に亘る戦乱「倭国大乱」が起きた。魏志倭人伝には、他に「伊都国」と「狗奴国」が登場するが、伊都国は邪馬台国の支配下。邪馬台国と言う国名に卑しい漢字を用いられていないことから中国にとって重要な国であったのではないか? 一方、「狗奴国」[男の国王・「卑弥弓呼」(ひみここ)]は邪馬台国の南にある敵国。この国は邪馬台国に屈することはなかった。邪馬台国は戦乱による疲弊を逃れえず、「卑弥呼」(ひみこ)という女王を立てることによって、ようやく混乱が収まった。弟が彼女を補佐し国を治めていた。女王は魏に使節を派遣し親魏倭王の封号を得たが、248年頃、卑弥呼は狗奴国との戦いの最中に死去している。両国の争いは、どちらが勝ったか負けたかは定かでない。最後の記述は、男王が後継に立てられたが混乱を抑えることができず、「壹與」または「臺與」(台与)が女王になることで収まり、魏国に貢物を贈ったところで終わっている。卑弥呼の死とともに、中国の歴史書から消えるのである。その後の100~150年間、日本では何があったのか?少なくとも、親・中国政権は誕生しなかったのだろう。空白の時代。ポスト邪馬台国の「ヤマト王権」への歴史の連続性が未だはっきりしない。
■ 明治期に二つの学説が対立する。
 が、両説とも、江戸期の新井白石や本居宣長の説のように、自分の思想や仮説に都合のよい唯我独尊が見え隠れしていた。
□ 東大教授・白鳥庫吉氏
 倭人伝の「陸行一月」は「陸行一日」の間違いであろう。そう考えると、邪馬台国は九州島の中、熊本辺りに在った筈である ⇒ 九州説。
□ 京大教授・内藤湖南氏
 倭人伝の間違いは距離ではなく方角であって「南水行」は「東水行」の間違いであろう。そう考えると、九州ではなく近畿に在った筈である。⇒ 畿内説。 (以下略)

<新しい時代の街づくりへ>
PS(2017年8月4日追加):*3-1のように、九州北部豪雨で被害が出た朝倉市と日田市では、病院・介護施設・障害者施設・小中学校・保育所など災害弱者が利用する154施設のうち、4割弱の57施設が浸水や土砂災害の恐れのある区域に立地していることが分かったそうだ。しかし、こういう安全を無視した土地利用は日本全国で同じであり、都市計画や土地利用計画が有効に機能していないということである。そのため、高齢化と人口減を踏まえ、安全性・利便性・好環境を備えた都市計画・土地利用計画が必要であり、それには地方の鉄道再編と駅周辺における福祉を考慮したコンパクトシティーへの再開発が有効だろう。
 このような中、*3-2のように、フランス・英国・中国・インド等の環境規制強化と自動運転技術の進展により、EV自動運転車への変換を前提に日本の自動車会社も再編を始めている。そのため、私は、列車こそ(高架にして)EV自動運転車に変えれば運行コストの削減が可能だと考える。また、*3-3のように、分散型電源が普及し始めて再生可能エネルギーのコストも下がっているため、JR九州なら①自家発電システムを作れば燃料費を0にできる ②地方自治体と協力し、分散型電源で作った電力を集めて他地域に送電するシステムを構築して送電料を収入とすることができる など、持っている資産を活用して収益を増加させることも可能だ。

     
     2017.8.4佐賀新聞   2016.9.1毎日新聞 2016.8.31Yahoo  2017.8.4 
                  岩手県の台風による河川の氾濫     東京新聞

(図の説明:川の中に作られたと言っても過言ではない住宅や高齢者施設が多く、これは避難の問題というよりも、土地利用の問題だ)

*3-1:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/452232 (佐賀新聞 2017年8月4日) 九州豪雨 避難時利用施設、警戒区域に4割弱
 九州北部の豪雨で大きな被害が出た福岡県朝倉市と大分県日田市で、高齢者や子どもら災害避難で配慮が必要な人が利用する計154施設のうち、4割弱の57施設が浸水や土砂災害の恐れのある区域に立地していることが3日、分かった。豪雨発生から5日で1カ月。6月以降、避難計画の策定が義務化されており、国は全国の同様の施設に対応を求めている。これらの施設は介護施設や障害者施設、小中学校・保育所、病院など。昨夏の台風10号で岩手県岩泉町の高齢者グループホームの入所者9人が犠牲になったことなどを受け、浸水想定区域や土砂災害警戒区域にある場合、避難計画の策定や訓練、自治体への報告を義務付ける改正水防法などが6月に施行された。朝倉市では123施設のうち、浸水想定区域にあるのは24施設、土砂災害警戒区域が17施設。日田市では少なくとも31施設のうち浸水想定区域は9施設、土砂災害警戒区域は7施設だった。いずれも今回の豪雨で直接犠牲となった人は確認されていない。国土交通省によると、昨年3月末時点で約3万の対象施設のうち計画策定済みは約2%にとどまり、朝倉、日田両市はゼロだった。朝倉市の担当者は「(義務化を受けて)施設から報告を受ける窓口などに関し内部で協議を始めたばかりだった」と明かす。国交省は2021年度までの全施設の計画策定を目標にしており「高齢者や子どもの逃げ遅れがないよう策定を進めてほしい」と訴える。静岡大防災総合センターの牛山素行教授(災害情報学)も「避難発令を待たずとも、それぞれの施設で危険を感じたら安全確保の対応をするのが重要だ」と指摘する。

*3-2:http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2017080490135907.html (東京新聞 2017年8月4日) 【経済】トヨタ、マツダが資本提携 EV技術を共同開発
 トヨタ自動車とマツダが資本業務提携する方針を固めた。トヨタがマツダに5%程度を出資し、マツダもトヨタ株を取得する。トヨタが自動車メーカーとの間で株式を持ち合うのは異例。電気自動車(EV)技術の開発を共同で進めるほか、米国で新たな車両組立工場を共同建設するなど、包括的な提携を進める。四日午後に両社が東京都内で共同記者会見して発表する。両社は二〇一五年五月、環境や安全技術分野で提携することで基本合意。その後、具体的な内容を協議してきた。一五年の記者会見では「資本提携は考えていない」(マツダの小飼雅道社長)としていた。しかし世界的な環境規制の強化で欧米メーカーがEV開発を急加速させている状況を踏まえ、競争に勝ち抜くには資本提携を通じた関係強化が必要と判断した。トヨタは一九年をめどに中国で、小型SUV(スポーツタイプ多目的車)「C-HR」を改良した初の量産型EVを生産・販売する計画。マツダも同時期にEVの市場投入を目指しており、互いの技術を持ち寄って基幹技術を共同開発する。トヨタは、自社技術をマツダに提供することで技術基盤を共有する仲間を増やせるメリットがある。マツダは遅れ気味なEV技術でトヨタの支援を受けられる。米国の生産でも提携し、SUVなどを組み立てる新工場を共同で建設することを検討。設備投資の負担軽減を図る。世界では、従来型のエンジン車から走行時に二酸化炭素(CO2)を出さないEVへの移行を促す動きが相次いでいる。フランスと英国は四〇年までにガソリン車とディーゼル車の販売を禁止する方針を表明、中国やインドなどもEV優遇策を鮮明にしている。
◆環境規制競争に対応
 トヨタ自動車がマツダと異例の資本提携に踏み込むのは、自動運転技術の進展や、環境規制の強化など自動車を取り巻く環境が激変し、一社だけでは対応が困難になっているためだ。株式を持ち合い、関係を強固にすることで、競争に勝ち抜く体制を構築する。トヨタは自社で開発したハイブリッド車(HV)などの環境技術や自動運転技術を世界標準にするため、マツダやスズキなどと提携を積極的に進めてきた。最初から資本を入れてグループ化させる欧米勢とは異なり、トヨタは技術面の協力などを軸に、国内メーカーだけで年間販売が千六百万台に上る緩やかな連合を形成している。当初、マツダとは資本関係にまで踏み込む予定ではなかったとみられる。しかし、最近になってフランスや英国、中国などが従来のエンジン車への規制を強化した。急速に変化する市場環境に対応するには迅速な電気自動車(EV)開発が不可欠となり、資本関係を結ぶことを決断したとみられる。豊田章男社長は今年六月の株主総会で「明日を生き抜く力として、今後はM&A(企業の合併・買収)を含め、あらゆる選択肢を考える」と強調しており、今後も資本提携先を広げる可能性がある。 
<トヨタ自動車> 愛知県豊田市に本社を置く世界最大規模の自動車メーカー。ダイハツ工業や日野自動車をグループに抱える。ハイブリッド車(HV)などの技術に定評があり、2017年3月期連結決算の売上高は27兆5971億円、純利益は1兆8311億円。グループの世界販売台数は12年から4年連続で首位だったが、16年は2位に後退し、17年上半期は3位だった。連結従業員数は約36万人。
<マツダ> 広島県府中町に本社を置く自動車メーカー。ガソリン車やディーゼル車の省エネ技術に強みを持つものの、ハイブリッド車(HV)や電気自動車(EV)の開発は出遅れている。2017年3月期連結決算の売上高は3兆2143億円、純利益は937億円だった。世界販売台数は過去最高の155万9000台を記録し、うち3割弱を主力の北米市場で売った。連結従業員数は約5万人。

*3-3:http://techon.nikkeibp.co.jp/atcl/column/15/264994/062400064/ (日経BP 2016/6/28) 【エネルギー】分散型電源の導入は、もう止まらない
 太陽光発電に風力発電――。再生可能エネルギーの導入は、止まることはなさそうだ。5月23日~6月23日の「エネルギー」サイトで最も読まれた記事は、調査会社のブルームバーグ・ニュー・エナジー・ファイナンス(BNEF)が発表した、エネルギー長期予測の記事だった。BNEFは2040年までに世界で新たに導入される発電設備への新規投資のうち、約3分の2を再エネが占めると予想している。加えて、太陽光と風力のコストは今後、急速に低下すると分析。環境志向だけではなく、「安い電気」として再エネが活用される日が来ると予測する。既に世界では、再エネ電力の調達に動く企業も出てきた。ここ最近では、米国ネバダ州の自治体や企業の動向が相次いで報じられている。第5位にランクインした「米ラスベガス市、2017年に電力需要を「再エネ100%」に」や、第17位の「米大手電力、世界最大のデータセンター向けに「100%再エネ」プラン」に詳しい。ネバダ州最大の電力会社、NVエナジー社は、自治体や企業の要請を受け、「100%再生可能エネルギー」電力プランの提供を開始した。ただ、米国の大手電力が最初から再エネ電力の供給に前向きだったかというと、そういうわけでもなさそうだ。
●事業変革を求められる世界の大手電力
 ネバダ州は1月、「ネットメータリング」と呼ばれる制度を変更し、太陽光発電の「第三者保有モデル」が成立しにくい環境へと変わった。これは、ネバダ州の公益事業委員会が、火力発電を中心とした垂直統合型の電力会社であるNVエナジーに配慮したためと言われる。第三者保有モデルの増加は、太陽光の自家消費量の増加を意味する。NVエナジーにとって、販売電力量を減少させるビジネス形態だからだ。一見、NVエナジーなど大手電力は、増殖を続ける再エネ電源に既存事業を脅かされるリスクを軽減したかに見える。だが、BNFFの調査が示すように、分散型電源の導入は今後も止まりそうにない。今はまだ環境志向から再エネ電力の調達を進めている企業も、遠からず「安い電気」としての再エネ電力を求めるようになるだろう。再エネ電力をどのようにビジネスに取り込んでいくかは、急務となっている。独最大手のエーオン、第2位のRWE、仏エンジー(旧GDFスエズ)など、欧州の大手エネルギー会社が相次いで事業再編に踏み切ったのも、こうした事業環境の変化を捉えるためだ。実際、RWEのテリウムCEOは、事業再編を経て「プロシューマー・モデルの推進役になる」と明言している。プロシューマーとは、分散型電源の保有し、自家消費する需要家のことだ。再エネというと、固定価格買取制度(FIT)や補助金などに頼った官製市場というイメージが依然、強いかもしれない。だが、大量普及とそれに伴うコスト低減は、再エネの位置づけを変えていくだろう。もちろん、日本も例外ではない。

<パリ協定と燃料電池車>
PS(2017/8/5追加):燃料電池の方が馬力がありそうなので、トラック・電車・貨物船・航空機などに向いていると思ったが、①水素ステーションをいつまでも増やさなかった ②水素燃料価格をガソリンと同程度に高止まりさせていた ③燃料電池車の価格が高すぎた などが理由で、*4-1のように、乗用車ではEVに負けそうだ。これは、プラズマTVが、画面はきれいだったが電気代が高い上、本体価格も高く設定しすぎたため普及せず、後から開発された液晶テレビに打ち負かされたのと似ている。つまり、日本政府はアクションを間違い、日本企業はちょっと付加価値の高いものを作ると法外な価格設定をし続けることが、問題だったのである。
 また、米政府は、*4-2のように、「パリ協定」の離脱方針を国連気候変動枠組条約事務局に正式に通知したそうだが、「パリ協定」を守らなければ、米国はますます世界で売れる車を作れなくなるため、米国の自動車産業・関連労働者・国民にとって好ましくないのは明らかだ。何故なら、現在は、地球規模で産業革命が起こっている時代であるため、環境維持は決して無視できないからである。

*4-1:http://www.nikkei.com/article/DGXLASFL04HN6_U7A800C1000000/ (日経新聞 2017/8/4) <東証>大陽日酸が2%下落 水素ステーション関連が安い
 13時10分、コード4091)反落している。一時前日比29円(2.2%)安の1279円まで下落した。「トヨタ(7203)がマツダ(7261)に出資し、電気自動車(EV)の共同開発などを検討する」(4日付日本経済新聞朝刊)と伝わり、これまでトヨタがけん引してきた燃料電池車(FCV)の開発が停滞し、普及が遅れるとの懸念から売りが出た。水素ステーション向けの機器を製造する。水素の供給や設備を手がける岩谷産(8088)も安い。一方で、リチウムイオン電池の部材を手がけるWSCOPE(6619)や安永(7271)はEV普及が加速するとの思惑で買われている。

*4-2:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20170805&ng=DGKKASGT05H0K_V00C17A8NNE000 (日経新聞2017.8.5)米、パリ協定離脱通知 条件次第で再加盟に含み
 米政府は4日、地球温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」の離脱方針を国連気候変動枠組み条約事務局に正式に通知した。トランプ大統領が6月に表明したパリ協定から離脱する意向に沿ったものだが、米国務省は声明で「米産業や労働者、国民、納税者にとって好ましいとみなせば、トランプ氏はパリ協定に再加盟する意思がある」と含みを持たせた。トランプ氏は6月の離脱表明時にも、米国にとって「公正な協定」を再交渉したいと述べていた。国務省は「あらゆる政策の選択肢を残す」として、11月にドイツ・ボンで開かれる第23回気候変動枠組み条約締約国会議(COP23)などの国際会議への参加を続けることを明らかにした。声明では、温暖化ガスの排出削減と経済成長やエネルギー安全保障のバランスをとる方針を強調。化石燃料の効率利用や再生可能エネルギーの活用を進め、温暖化ガスの排出削減の取り組みを続けるとしている。パリ協定の規定によると、離脱が可能になるのは発効日から4年後の2020年11月4日。前日の3日に次期米大統領選があるため、実際にパリ協定から離脱するかどうかは次期大統領が決めることになる。トランプ氏は再選に向けパリ協定離脱の是非を選挙の争点にする狙いとみられる。

<地図は一番乗りの開拓者が作るもの>
PS(2017.8.9追加):日経新聞は、*5-1のように、「①EVへの大転換は海図なき戦いだ」「②欧州発ドミノ、トヨタ走らす」「③中国やインドは環境規制を盾に自動車産業での下克上を狙う」と表現している。しかし、①のように海図がなければ方針を決められない企業は、1番手ではなく2番手以下にしかなれない。また、海図やマニュアルに従ってしか働けない人も、ロボットに置き換えられるだろう。しかし、環境を汚さず、需要者に求められる品質を持ち、より安価な製品が売れるという単純な原則は必ず成立する。さらに、②のように、先発は必ず欧州でなければならないわけではなく、また、競争相手が無数にいる社会では、③のように特定の敵をターゲットにして競争する発想では勝てない。しかし、求められるものをよりよく作れば必ず売れ、日本はその技術を持っているため、それをやればよいのだ。
 そのような中、*5-2のように、九電が欧州や北米で発電事業に進出し、5年で550億円投資して新たな収益源に育てるというのは面白い。米国・カナダでは天然ガス火力発電所建設、欧州では洋上風力等の再生可能エネルギー事業へ参画を検討しており、ベトナム・インドネシア・メキシコなどの新興国7カ国・地域では既に8カ所の発電所に出資し、アジア・アフリカの19カ国でコンサルティング事業を手掛けて発電所の建設可能性調査や省エネ推進など、新興国のエネルギー事情の向上を支援しているそうだ。ただし、新興国でも、初めから環境適合性を重視するのが、無駄な投資をしないコツだろう。

  

(図の説明:世界のGDP成長率は新興国で高いため、自動車や電力需要の伸びも新興国の方が大きいが、九電の場合は、欧州や北米で発電事業を行うことによって、他流試合して先端競争を学ぶことが可能だ。なお、日本の成長率が欧米よりも低いのは、需要の大きな部分《年金・医療・介護などの社会保障サービス》を減らし、インフレ政策・消費税増税で国民から所得を分捕り、環境機器への変換投資を遅らせ、外国人労働者を受け入れないことなどが原因だろう)

*5-1:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20170809&ng=DGKKZO19810670Z00C17A8MM8000 (日経新聞 2017.8.9) EV大転換(上)海図なき戦いだ 欧州発ドミノ トヨタ走らす
 100年超続いたエンジンの時代の終わりが見えてきた。英仏政府は2040年までにガソリン車やディーゼル車の販売を禁止し、中国やインドは環境規制を盾に自動車産業での下克上を狙う。トヨタ自動車とマツダは電気自動車(EV)の共同開発に向け資本提携を決めた。うねりを増すEVシフトはあらゆる産業に大転換を迫る。「EV試作1号車」。今春、トヨタはEVの投入に向けた試作車を完成させた。昨年12月に「EV事業企画室」を立ち上げ、従来の開発期間の半分となるわずか3カ月で仕上げた。デンソーなどトヨタグループからの出向者ら企画室の4人が社内調整を省き迅速に仕様を決定。普及を見すえ銀行や愛知県豊田市の関係者なども加えた約30人を集め開発期間を縮めた。「海図なき戦いだ」。マツダとの資本提携を発表した記者会見でトヨタの豊田章男社長はこう述べた。世界の2大市場、米国と中国で環境規制が強化され、英仏政府が40年までにエンジン車の販売を禁止するなど大気汚染対策の動きも世界中に広がる。「EVシフトは想定よりも早い」(トヨタ役員)。異例の開発体制は危機感の裏返しだ。トヨタは走行距離の長い燃料電池車(FCV)を次世代環境車の本命とする。走行時に水しか出さず「究極のエコカー」とされるFCVだが、量産が難しく水素の充填インフラも未整備。開発が容易なEVが先に普及すればトヨタのシナリオに狂いが生じる。トヨタを突き動かしたEVドミノ。車の技術革新をけん引してきた欧州と世界最大の中国市場の「共振」が発端だ。独フォルクスワーゲン(VW)から広がった排ガス不正問題でディーゼル車の信頼が失墜。パリやマドリードは25年からの乗り入れを禁じ、ほかの大都市も追随する構えを見せる。一方でドイツ車の「ドル箱」である中国はEV普及を国策に掲げる。ドイツ勢の変わり身は早く、VWにダイムラー、BMWの独3社は25年に販売台数の最大25%をEVなど電動車にする計画を打ち出した。「未来は間違いなくEV」。VWのマティアス・ミュラー社長は言い切る。
●下克上狙う中印
 中国やインドが狙うのは参入障壁が低いEVシフトによる自国メーカーの競争力底上げだ。中国は既にEVの世界シェア3割を占め、比亜迪(BYD)など地元メーカーが市場を席巻。中国資本傘下のスウェーデンのボルボ・カーは19年から販売する全モデルの電動化を宣言した。従来のエンジン車の部品点数は約3万個。EVでは部品の約4割が不要になるとの試算もある。それだけに従来の「勝ち組」には痛みを伴う。トヨタは今春、EVなどの生産拡大による部品メーカーへの影響を調べ始めた。トヨタ幹部は「変革のスピードアップと影響を抑える施策の両立を考えなければ」と悩む。富士経済によると16年のEVの世界販売は47万台で、うち日本車は14%。まだ世界販売全体の1%にも満たないEVが、エンジン車の誕生から100年以上続いてきた自動車産業を根本から揺るがす。

*5-2:http://qbiz.jp/article/116117/1/ (西日本新聞 2017年8月9日) 九電、欧米で発電事業に進出 5年で550億円投資へ
 九州電力は、欧州や北米での発電事業に進出する方針を明らかにした。2017年度から5年間で、直近5年間の11倍の550億円を海外での発電事業に集中投資し、新たな収益源に育てる。電力自由化や人口減少で九州の電力需要が縮小する中、既に発電所を保有しているアジアやメキシコの新興国に加え、先進国を含む海外事業を成長戦略の柱と位置づける。九電の掛林誠常務執行役員(国際担当)が西日本新聞の取材に応じ、「欧米や先進国もチャンスがあればやっていきたい」と述べた。既に社員を現地の展示会などに派遣し、メーカーや開発事業者などから情報収集を進めている。欧米市場は成熟し、競合企業も多いが、確実な投資リターンや世界最先端の市場情報を得られると判断した。電力需要の伸びが見込める米国やカナダでの天然ガス火力発電所建設や、欧州で洋上風力などの再生可能エネルギー事業への参画を検討。新興国と合わせ10件以上の建設や買収を計画している。九電は01年、海外で発電所を保有し電力を卸売りする海外発電事業を開始。ベトナムやインドネシア、メキシコなど新興国7カ国・地域で8カ所の発電所に出資し、日本の商社や大手電力会社、外国企業と共同で事業を運営している。天然ガス火力を中心に風力、地熱発電も手掛け、市場の成長性が高い新興国に技術移転してきた。九電は6月に公表した財務目標に、海外発電事業の強化を盛り込んだ。17年度153万キロワットの出力を、21年度240万キロワット、30年度に500万キロワットに増加。同事業の経常利益も年20億円から21年度70億円、30年度には100億円を目指す。
■九州電力の海外事業 発電所を自ら保有し電力を卸売りする発電事業を、新興国7カ国・地域の8カ所で展開。収益性が高く、海外事業の軸に据えている。アジアやアフリカを中心とした19カ国ではコンサルティング事業を手掛け、石炭火力や水力発電所などの建設可能性調査や省エネの推進など、新興国のエネルギー事情向上を支援している。

<エネルギーミックスに見る政府の愚かさ>
PS(2017.8.10追加):2030年時点のエネルギーミックスを人為的に決めようとすること自体、環境志向や技術進歩による価格低減によって変化する市場を考慮しておらず、経済学の原則に反する。さらに、日経新聞は、*6の社説で「重要なのは30年時点の目標の先をにらみ、エネルギーを安定的に使い続ける長期の視点だ」などとして原発の新増設を結論付けているが、これには呆れるほかない。何故なら、その根拠として「再生可能エネルギーのコストは電気料金に上乗せされて電力需要者の負担になっている」としているが、再生可能エネルギーのコストは上乗せされているだけで電力製造の原価計算には入っておらず、原価計算には膨大な原発コストが入っており、原発には税金からも膨大な支出が行われているからだ。その上、原発には、見積もりすらできていない膨大な後処理費用が存在する。そのため、“エネルギーミックス”を決めたり、このような記事を書いたりする人は、おかしな屁理屈を言わないために原価計算くらい頭に入れておくべきだ。なお、地球温暖化対策の道筋を定めたパリ協定は、電力を作るのに、原発ではなく再生可能エネルギーを予定している。従って、50年も経たなくても、旧式の日本車以外はEVになり、その動力は再生可能エネルギーで賄われているだろう。

*6:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20170810&ng=DGKKZO19849720Z00C17A8EA1000 (日経新聞社説 2017.8.10) エネルギー政策の見直しは長期の視点で
経済産業省がエネルギー政策の指針となる「エネルギー基本計画」の見直しに着手した。2つの有識者会議で議論し、来年3月末をめどに見直し案をまとめる。2030年時点でどのようなエネルギーを、どんな組み合わせで使っていくのかについて、14年につくった計画を足元の変化をふまえて再検討する。国際情勢の変化や技術の進展に応じてエネルギー政策を見直すことは大切だ。ただし、重要なのは30年時点の目標を達成するだけではない。その先をにらみ、エネルギーを安定的に使い続ける長期の視点を欠いてはならない。東日本大震災後初となった現行の基本計画では、原子力発電所への依存は「可能な限り低減させる」と明記する一方、原発を「重要なベースロード電源」と位置付け、安全性の確保を条件に再稼働を進める方針を確認した。太陽光や風力などの再生可能エネルギーは「重要な低炭素の国産エネルギー」と位置付け、「13年から3年程度、導入を最大限加速」するとした。国はこれをもとに30年に原子力を20~22%、再生エネルギーを22~24%などとする電源構成の組み合わせ、いわゆる「エネルギーミックス」を定めた。これまでに11社の26原発が再稼働に必要となる安全審査を申請し、5基が再稼働した。ただ、今後も再稼働が順調に進むかどうかは不透明だ。また、30年時点の発電量は確保できても、国が定める最長60年の運転期間が過ぎれば廃炉となり、いずれゼロになる。基幹電源として使い続けるならどこかで新増設を考えなければならない。30年以降を意識した議論を今から始めるべきではないか。割高な再生エネルギーの費用を電気料金に上乗せして普及を促す「固定価格買い取り制度」が12年に始まり、再生エネルギーの導入量は制度開始前に比べ2.7倍に増えた。発電量に占める比率は約15%まで高まった。だが、買い取り費用は17年度で2兆円を超す見通しだ。導入拡大に伴って国民負担はさらに増える。いつまでも青天井は許されない。持続可能な形で普及を促す仕組みに変えていかねばならない。地球温暖化対策の道筋を定めたパリ協定が発効し、電気自動車(EV)へのシフトも加速している。エネルギー利用の変化は社会を変える。50年後、100年後を見据えた備えを始めるときだ。

<赤字路線の商機>
PS(2017年8月12日追加):四国でも将来の利用者減が見込まれる鉄道路線網の維持に向けて対策を話し合うため、*7-1のように、JR四国と4県知事らが懇談会を開いたそうだが、やはり地域ぐるみで他産業を巻き込みながらやるのが効果的だろう。
 観光では、*7-2のように、JR西日本が山陰地方の日本海沿岸を巡る観光列車「あめつち」を、鳥取駅と出雲市駅間150キロを約3時間半かけて走らせるそうだ。天井の一部まで透明な窓の広い列車で、歴史の真実に関する新発見のあるストーリーとともに走ると面白い。
 また、貨物との混合輸送では、*7-3-1のように、岐阜県等が出資する第三セクター「長良川鉄道」がヤマト運輸と提携し、宅配荷物の一部を旅客用の車両に載せて運ぶ「貨客混載輸送」の実証実験を9月に行うそうだ。私は、旅客用の車両に載せるよりも、旅客用の車両は乗客数に合わせて小さくし、スイスのように必要な大きさの貨物車両を連結した方が、つぎはぎのようなデザインにならないためよいと考える。また、ヤマト運輸の荷物を運ぶ貨車なら、小さく猫のトレードマークを付ければヤマト運輸の宣伝にもなりそうだ。
 さらに、豊田市は、*7-3-2のように、公営バスの一部路線で、ヤマト運輸から預かった荷物を運ぶ実証試験に取り組んでいるそうだ。そのため、新幹線に新幹線用貨物車両を繋ぐのもありではないだろうか。

*7-1:http://qbiz.jp/article/116714/1/ (西日本新聞 2017年8月18日) 四国の鉄道維持に向け初会合 JR四国と4県知事らが懇談会
 四国4県とJR四国は18日、人口減少で将来の利用者減が見込まれる鉄道路線網の維持に向け、対策を話し合う懇談会の初会合を高松市で開いた。懇談会は、神戸大大学院の正司健一教授が座長を務め、4県の知事やJR四国の半井真司社長らで構成。来夏ごろにまとめる中間報告を基に、県ごとに分科会を開いて具体的な対策を検討する。半井社長は会合の冒頭で「10年、20年先を見据えた場合、自助努力のみでは今の路線の維持が困難になることが想定される。抜本的な対策について地域を挙げて議論していただきたい」とあいさつした。

*7-2:http://qbiz.jp/article/116696/1/ (西日本新聞 2017年8月18日) 新観光列車「あめつち」導入へ 鳥取と出雲を3時間半で結ぶ
 JR西日本米子支社は17日、山陰地方の日本海沿岸を中心に巡る新観光列車「あめつち」を来年7月に導入すると発表した。約3時間半かけ、鳥取駅(鳥取市)と出雲市駅(島根県出雲市)を結ぶ約150キロを走る。列車の名称は古事記の書き出し「天地の―」に由来し、コンセプトは「ネーティブ・ジャパニーズ」。山陰地方は神社や歌舞伎、相撲などの文化の発祥の地とされ、多くの神話が生まれたことにちなんだ。車体の外観は海や空をイメージした青を基調に、山陰のたたら製鉄と日本刀から連想した銀色の装飾を施す。定員59人の2両編成で、土・日・祝日に両駅を1往復する。

*7-3-1:http://digital.asahi.com/articles/ASK8B4GQ3K8BOHGB009.html?iref=comtop_8_01 (朝日新聞 2017年8月12日) 宅配荷物、ローカル線の救世主に? ヤマトなど実証実験
 岐阜県などが出資する第三セクター「長良川鉄道」(本社・関市)は、宅配最大手のヤマト運輸と提携し、宅配荷物の一部を旅客用の車両に載せて運ぶ「貨客混載輸送」の実証実験を9月に行う。過重労働が問題になっている宅配ドライバーの負担軽減と、経営が厳しいローカル鉄道の増収が期待されている。実証実験では、関駅(関市)から美並苅安(みなみかりやす)駅(郡上市)までの約20キロを1日1回、列車に荷物を積んで運ぶ。荷物は専用の輸送ボックス(高さ170センチ、横107センチ、奥行き78センチ)に入れ、車内の乗降口付近のスペースに置く。美並苅安駅で荷物を車に積み替え、ヤマト運輸のドライバーが郡上市南部の美並地区に配達する。美並地区は面積が広く、担当ドライバーは郡上市中心部の支店まで、日に何度か往復約1時間かけて荷物を取りに戻る必要があった。鉄道輸送で労働時間の短縮や利用者へのサービス向上が期待できるという。長良川鉄道は1986年の開業以来、赤字続きで、沿線自治体が多額の補助をしている。特に昼間の列車は乗客が数人以下と少なく、荷物輸送を新たな収入源と見込む。実証実験は平日に約20日間行い、来年度から本格運用をめざすという。国土交通省中部運輸局によると、鉄道と宅配業者の提携は新潟県の北越急行と佐川急便などの例があるが、東海地方では初めてだという。

*7-3-2:http://digital.asahi.com/articles/ASK8B4334K8BOBJB001.html?iref=pc_rellink (朝日新聞 2017年8月11日) (愛知)路線バスに人も貨物も 豊田で試験開始
 豊田市は、公営バスの一部路線で、宅配大手ヤマト運輸(東京)から預かった荷物を運ぶ実証試験に取り組んでいる。市側にとっては運賃収入のアップに、ヤマト側にとっては運転手の負担軽減につながる。利用路線の拡大も検討している。試験をしているのは岐阜・長野県境にある稲武地区と足助地区を結ぶ基幹バス「稲武・足助線」(路線距離29キロ)。市から運行を委託された豊栄交通(本社・豊田市)が、両地区を1日11往復している。このうち午後2時55分に足助病院を出発し、午後3時43分に稲武のどんぐりの湯前に到着する便を利用する。バスは一部の椅子を外して高さ60センチ、幅80センチ、奥行き60センチの荷物用の箱を積んでいる。ヤマト運輸の足助センター(営業所)の運転手は、バスが足助病院へ行く前にこの中に荷物を入れ、稲武にいるヤマトの運転手が荷物を受け取る。バスは通常通り客も乗せる。これまでは、ヤマトの足助センターの運転手が朝、荷物を稲武まで運んで配り、午後はいったん足助まで戻って追加の荷物を受け取り、再び稲武へ行き、配っていた。この試験によって、計1時間20~30分の時間の節約ができ、運転の負担が軽減できるという。一方、市はヤマトから輸送した分の運賃を受け取る。運輸業界では運転手不足が深刻となっており、ヤマト運輸中部支社(名古屋市)は、配送効率の悪い過疎地での、回送距離を減らすため豊田市に提案し、実現したという。ヤマトは同様の試みを、北海道や兵庫、熊本県など5道県で民間業者のバスを使って実施しているが、自治体のバスを使っているのは全国で初めてという。利用している基幹バス「稲武・足助線」は乗車率が1便あたり4・7人と12路線あるうちの下から3番目に低い。公営バス全体では昨年度、「赤字」で7億4400万円の負担を強いられている市にとって、利用収入を増やすことは課題の一つだった。試験は9日から始め、毎週火~土曜、来年1月末までの半年間の予定。市の試算によると、1年続けた場合、30万~40万円の収入になるという。市交通政策課の担当者は「双方に長所があることなので、できれば他の路線にも広げていきたい」と話している。

<日出ずる国の発電方法>
PS(2017年9月9日追加):九州では、*8のように、太陽光発電容量が817万キロワット(原発8基分)に達し、稼働を控える施設も419万キロワット(原発4基分)あって、九電は受け入れきれないと言っているため、JR九州が発電子会社を作って受け入れたらどうかと考える。そうすれば、自社用電力をなるべく自給した後、余剰分は他社に販売することが可能で、太陽光発電は「日出ずる国」の発電方法としてBestだからだ。

*8:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/461927 (佐賀新聞 2017年9月9日) 九電、太陽光電気供給増で 今秋一時停止要請も、15日から訓練
 九州電力は8日、太陽光発電事業者の電気供給量が増加し需給バランスが崩れて、今秋、事業者に対し発電の一時停止要請に踏み切る恐れがあると発表した。混乱を招かないよう、発電停止を要請する「出力制御」訓練を15、20、21日の3日間実施して備える。九電によると、電気の安定供給に影響しない範囲での太陽光の発電容量817万キロワットに対し、受け入れ量は7月末時点で741万キロワットに達したという。これ以外にも、九電と受け入れ契約を結び稼働を控える施設がすでに419万キロワット分ある。出力制御は、揚水・火力発電での調整、他電力との融通などができなくなった場合に実施する。訓練は九州の太陽光・風力発電の専門事業者約2千社を対象に行う。電話とメールによる模擬指令だけで、実際の制御作業はしない。佐賀県内では百数十社が対象という。15日は、全国の電力会社同士が電力を融通し合う際の連絡訓練にも取り組む。九電の担当者は「秋はエアコンなどの電力需要が大幅に減り、需給のミスマッチが大きくなれば制御する可能性が出てくる。訓練結果を参考に準備したい」と語った。

| 経済・雇用::2016.8~ | 06:29 PM | comments (x) | trackback (x) |
2017.7.23 自民党・民進党都議選敗退、共産党都議選躍進の理由と加計学園問題・政策に関するメディアの報道について (2017年7月24、25、31日に追加あり)
   
   2017.7.17日経新聞    2017.5.18朝日新聞  2017.5.26  2017.5.31 
世界の政党が問われているのは何故か?          毎日新聞   朝日新聞 

(図の説明:アメリカ・イギリスでは過度の地域一体化が嫌われて、イギリス国民は国民投票でEU離脱を決め、アメリカ国民はトランプ氏を大統領に選出した。また、フランスでは、既成政党に属さないマクロン氏が大統領になった。この背景には、既成政党が主張してきた国民に不利益を強いるだけの日本発の“改革もどき”がある)

(1)加計学園獣医学部新設問題に関する事実と本質
1)獣医師は、不足ではなく偏在だということ
 加計学園について、日本農業新聞は、*1-1のように、「①加計学園誘致の“口実”になった獣医師は地域偏在であり、偏在の解消に向けた施策が必要なのである」「②獣医師が少ない地域、足りない職種を賄うことが喫緊の課題である」「③獣医師は全体で見れば、診療対象の動物が減る中で、毎年1000人近くが免許を取るため、農水省は獣医師不足ではないと判断していた」「④そこで文科省は、これまで獣医学部の新設を認めなかった」としており、これが事実であり、問題の本質だろう。

 このうち、①②は、獣医師が大都市に比べて地方で少なく、小動物に比べて産業動物に少ないため、その偏在を無くすには、③のように全体数を増やすのではなく、地方で産業動物を担当する獣医師になることの魅力(畜産の将来性、遣り甲斐、報酬、社会的評価、社会的地位など)を発信して産業動物を担当する獣医師希望者を増やすことが必要なのであって、学部のない地域に獣医師の専門職大学を新設すれば獣医師の偏在が解消できるわけではない。

 また、新設の大学を作っても、獣医学だけでなく、その基礎となる生物・化学・物理など他学科のよい教授も揃え、資質を持った学生を集めなければライフサイエンスを含む高度な新領域を創出できる優れた獣医師を育てることはできないため、新設の単科大学でそれを行うのは不可能に近い。にもかかわらず、一連の議論は、この最も言いにくい点を避けて通っているため、本質的な議論になっておらず、私自身は、どうしても愛媛県に獣医学部を作りたいのならば、既に医学部、理学部、工学部を持つ愛媛大学農学部に獣医学科を作るのがよいと考える。

2)初めから加計学園ありきだったか
 野党側の参考人として出席した文科省の前川前事務次官は、*1-3のように、「初めから加計学園と決まっていた」と述べ、確かに、*1-2のように、政府が2016年11月、「広域的に獣医学部のない地域」を新設条件としたため、近隣の大阪府に獣医学部のある京都産業大は新設を断念した。

 また、*1-6のように、愛媛県今治市への獣医学部誘致をスタートさせた加戸前愛媛県知事は、「①私は、加計ありきではありません。獣医師の養成が進まない中、たまたま今治選出の議員と加計学園の事務局長がお友達だったから、この話が繋がって飛びついた」「②鳥インフルエンザやBSE(牛海綿状脳症)といった感染症対策の充実を大きな目的に獣医学部の誘致に取り組んだが、強烈な岩盤規制のために、10年間我慢させられた」「③岩盤にドリルで国家戦略特区が穴を開けてくれたというのが正しい」としており、愛媛県今治市に獣医学部を誘致したいため、それに関心を示した加計学園に絞ったというのが正しそうだ。

 しかし、私は、(1)1)に書いた理由で、どうしても愛媛県に獣医学部を作りたいのなら、愛媛県松山市にある愛媛大学に農学部獣医学科を作り、今治市に実習農場を作るのが効果的な予算の使い方だと考える。又は、手狭になった愛媛大学の教養学部と文系学部を松山市に残して、理系学部は広い土地を使える今治市に移転し、最新の設備を整える方法もある。そのため、*1-5のように、前川氏が「既存の大学の定員を増やすという他の方法もあった」と言っておられるのは、むしろそうした方がよいだろう。

3)民主主義は、政策を議論して競うべきであること
 加計学園問題は、*1-4のように、安倍政権の支持率を下げるのが目的で報道されており、官邸が動いたか否かが焦点となって、官邸をかばった山本地方創生相の発言が真実だったか否かも問題視され、*1-7のように、メディアでは安倍政権打倒を目的とする論陣が張られている。しかし、これは、政策を議論して競うべき民主主義社会では三流の議論だ。

 私自身は、既に合理性のなくなった岩盤規制に穴をあけるのは良いと思うが、合理性のある規制まで壊し、他によい方法があるにもかかわらず、「岩盤規制」に穴をあけること自体を目的にして不合理な選択をし、国民の血税をつぎ込むのはやめて欲しいと考える。何故なら、日本は、予算と人材が余って困っているような国ではないからだ。

(2)既成政党への失望理由は何か
 東京都議選では、*2-1に書かれているように、安倍首相率いる自民党が歴史的惨敗を喫し、東京都議会は57議席から23議席に減った。しかし、*2-3のように、民進党も、今回の都議選で15議席から5議席に大幅に減らした。一方で、自民党の政策に一貫して反対してきた共産党は、*2-2のように、17議席から19議席に増やしたのだが、民進党の都議選総括会議では「共産との共闘路線を見直すべきだ」との声が相次いだそうだ。民進党は、自民党やメディアの論調に惑わされ、正確な原因分析ができていないのではないか?政党間で連合する場合にそれぞれの党の政策が完全に一致する必要はなく、自民党と公明党もかなり異なる。

 また、私は、自民党の惨敗を「一強のおごり、高ぶりが原因」と評するのは嫉妬に裏打ちされたような感情論で、主権者である国民を馬鹿にした議論だと考える。何故なら、自民党惨敗の本当の理由は、①公約違反のTPP推進 ②インフレ政策 ③消費税増税 ④社会保障の改悪 ⑤原発再稼働の推進 ⑥戦争に進みそうな安全保障法制定 ⑦人権侵害の特定秘密保護法制定 ⑧冤罪社会、監視社会、盗聴・盗撮社会に導く共謀罪の制定 ⑨国民主権をないがしろにする憲法改悪案など、国民の利益を無視した官製の政策強行に対する批判であり、国民はそれを正確に見ていると思うからだ。

 そして、官製政策の部分は、政権を担ったことのある民進党も賛成したものが多く、これを政権の責任とばかり言い立てるのは権限の範囲と責任を無視している。そして、(ここには書かないが)問題は、もっと深刻なものなのだ。

<加計学園問題>
*1-1:https://www.agrinews.co.jp/p41128.html (日本農業新聞論説 2017年6月15日) 獣医師の偏在 解消に向けた施策必要
 国家戦略特区で愛媛県今治市に獣医学部を新設する計画を巡ってさまざまな疑惑が浮上し、国会論議の焦点になっている。まず、誘致の“口実”になった獣医師の偏在の問題を整理する必要がある。偏在とは地域ごとの偏りであり、職域別による就業者数の差でもある。獣医学部がない地域に学部を新設する計画だが、学部の偏在と獣医師の偏在は問題が違う。獣医師が少ない地域、足りない職種を賄うことこそが喫緊の課題だ。獣医師は総体で見れば足りないとは言えない。高齢化社会の進展でペットの飼育頭数は犬を中心に減少に転じ、家畜の飼養頭数、飼養戸数も減っている。診療対象の動物が減る中、毎年1000人近くが新たに獣医師の免許を取る。獣医師不足の状況ではないとの農水省などの判断を踏まえ、文部科学省はこれまで獣医学部の新設を認めず、定員管理を厳格にしてきた。今回の論議で見えてきたのは、同じ政府内の農水省や文科省が決めたことであっても、特区を所管する内閣府には岩盤規制と映ったことだ。獣医師の偏在が解消できていなかった点に、獣医事行政に付け込まれる隙があったのではないか。獣医師は大都市に比べて地方に少なく、しかも小動物に比べ産業動物に就業する人は少ない。今回の計画は、学部のない地域に新設すれば、獣医師を地域に供給して偏在を解消できるという理屈が前面に押し出された。山本有二農相は6月上旬の参院農林水産委員会で、獣医師の需給について「農水省の所管ではない」と明言した。しかし、同省は獣医師の需給の調整に責任を果たしてきたはずだ。獣医療法では、農相は獣医療提供の体制整備のための基本方針を策定し、獣医師の確保に関する目標設定をすると定めている。さらに都道府県は国の基本方針に沿って獣医療を提供する体制の整備を図るための計画書をまとめることになっており、これまで国・都道府県を挙げて獣医師の需給を調整してきた。かつて獣医大学卒業生の半分はペット関係に進んだが、最近は産業動物分野も伸びている。同省は産業動物分野の獣医療提供体制を整備しようと、高校生や獣医学生に修学資金を貸与する制度を設け、産休などで現場を離れた女性獣医師の職場復帰を支援する取り組みなども進めている。ただ、まだ道半ばで結果が十分ではない。そこを内閣府に岩盤規制と見なされ、付け込まれたように見える。今回は獣医学部の設置権限を持つ文科省の施策に穴を開けたもので、直接、農水省の獣医事行政に向かってはいない。しかし、新設には優れた獣医師育成の視点が欠かせない。160人という国内最大定員の新獣医学部構想の妥当性、ライフサイエンスなど新領域の需要創出と人材育成、などの検証が必要だ。獣医学と獣医療の発展にどうつながるのか。獣医師偏在の問題と併せて論議するべきだ。

*1-2:http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201707/CK2017070502000134.html (東京新聞201.7.7) 【政治】加計学園獣医学部新設 京都案と比較の記録なし
 安倍晋三首相の友人が理事長を務める「加計(かけ)学園」(岡山市)による獣医学部構想を持つ愛媛県今治市での新設に政府が絞り込んだ際、競合する京都府の提案と比較した議事録などの記録を残していないことが四日分かった。東京都議選での自民党大敗を受け、首相は「国民の信頼を回復していきたい」と発言したが、政権は加計問題について依然として明確な説明ができていない。政府は昨年十一月、「広域的に」獣医学部のない地域を新設条件とする方針を決定。新設を提案しながら、近隣の大阪府に獣医学部がある京都府と京都産業大が断念した。「加計ありき」の条件だったのではないかとの批判を政府は否定し、「十一月以降に今治市と京都府の提案を比較し決定した」と説明。山本幸三地方創生担当相は四日の記者会見で、専任教員の確保、鳥インフルエンザなどの水際対策、自治体との連携の「三つの審査基準」で検討し、今治市に決めたと主張した。だが、山本氏は選定過程について「内部の打ち合わせだから記録は取っていない」と説明。「三つの審査基準」を誰が、どのような議論で決めたのか明らかにせず、基準の根拠も示さなかった。三日の民進党会合では、内閣府の担当者が同様の説明を繰り返し、議事録や資料などの記録も示さなかった。民進党議員は「本当に議論したのなら議事録や比較表があるはずだ」「正当性のあるルールが決まっていなければ、恣意(しい)的な選定だ」と追及。内閣府側は「事務方と大臣が相談して決めた」などと答えるにとどまった。

*1-3:http://qbiz.jp/article/113903/1/ (西日本新聞 2017年7月10日) 前川氏「初めから加計学園」 官邸関与を強調
 政府の国家戦略特区制度を活用した学校法人「加計(かけ)学園」の獣医学部新設計画を巡り、衆院文部科学、内閣両委員会の連合による閉会中審査が10日、開かれた。野党側の参考人として出席した文部科学省の前川喜平前事務次官は「特区担当は内閣府だが、背景に官邸の動きがあった。和泉洋人首相補佐官がさまざまな動きをしていた」と述べ、首相官邸の関与があったと強調した。獣医学部新設にも「(選定の)プロセスが不透明で不公正だと思っている。初めから加計学園と決まっていた」と主張した。前川氏は文科省の調査で確認されなかった文書「10/7萩生田副長官ご発言概要」が存在したと明かし、「担当課から説明を受けた際に受け取った文書に間違いない」と話した。文書には「四国には獣医学部がないので、その点では必要性に説明がつくのか」などと、加計学園の予定地・愛媛県今治市を前提としたような表現もある。萩生田光一官房副長官は昨年10月7日に文科省幹部と面会したのを認めたが、「発言した記憶はない」と答えた。新設計画についても「この件で能動的に関わった事実はない」と説明した。前川氏は獣医学部新設の4条件を示した2015年の「日本再興戦略」と、加計学園の計画の整合性についても批判。「(条件に)合致するか十分な議論がされていない。不公平で、国民から見えないところで決定された」と述べた。一方、山本幸三地方創生担当相は「(条件を満たすと)最終的に私が確認した」と強調した。与党側の参考人として招致された国家戦略特区ワーキンググループの委員原英史氏は、特区による獣医学部の新設が「加計ありき」で進められたとの批判について「全くの虚構」と話した。閉会中審査は、国会会期終了後に委員会を開催できる仕組み。午後も参院で実施するが、安倍晋三首相は欧州歴訪中のため出席しない。

*1-4:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20170711&ng=DGKKZO18701470R10C17A7EA2000 (日経新聞 2017.7.11) 加計問題、食い違い 衆参両院で閉会中審査、前川氏「官邸は動いた」/地方創生相「指示あり得ぬ」 首相の関与は
 衆参両院は10日、学校法人「加計学園」の愛媛県今治市への獣医学部新設などを巡る閉会中審査を開いた。国家戦略特区の枠組みで加計学園のみ新設が認められた経緯に関し、参考人として初めて出席した前川喜平前文部科学次官と政府側の説明は大きく食い違った。官邸関与の有無や、獣医学部新設の妥当性に関し、真相は浮かび上がらなかった。加計学園の問題を巡っては、国家戦略特区の枠組みで1校に限り獣医学部の新設が認められた妥当性が問われている。野党は学園理事長の長年の友人である安倍晋三首相らの意向が影響した可能性を指摘している。前川氏は10日の閉会中審査で、規制改革の是非と事業者選定の2つの問題があると指摘。「穴を開けるかより、穴の開け方に不公平で不透明な部分がある」と語った。「初めから加計学園に決まるようプロセスを進めてきたようにみえる」とも語り「背景に官邸の動きがあったと思う」と結論付けた。一方で山本幸三地方創生相は「個別にどこでやるか首相が指示することはあり得ない」と、官邸の関与を否定した。与党の求めで参考人となった政府の国家戦略特区ワーキンググループの原英史委員は「従来の行政のゆがみを正した」と判断の正当性を強調。最初から加計学園ありきだったとの指摘は「全くの虚構」と否定した。

*1-5:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20170711&ng=DGKKZO18701570R10C17A7EA2000 (日経新聞 2017.7.11) 地方創生相「岩盤規制の突破」/前川氏「他の方法あった」 新設は妥当か
 50年以上認めてこなかった獣医学部の新設を認めた妥当性も問われた。四国には獣医学部がなく、参院で参考人として出席した加戸守行前愛媛県知事は獣医学部の新設は地元の悲願だったと説明。「岩盤規制で我慢させられてきた。ゆがめられた行政が正されたというのが正しい」と訴えた。山本地方創生相は「岩盤規制の突破にはまず地域を限定してやるしかない」と述べ、規制改革の意義を強調した。一方で前川氏は「獣医師の定員を増やすなら、既存の大学の定員を増やすというやり方もある」と指摘。昨年9、10月に和泉洋人首相補佐官に呼ばれ、獣医学部の新設について「対応を早く進めるように」と督促されたと証言。「総理は自分の口からは言えないから言う」などと伝えられたとも語った。新設について、萩生田氏が「総理は『平成30(2018)年4月開学』とおしりを切っていた」などと発言したとする昨年10月21日付の文書は「在職中に見たことはないが、内容の信ぴょう性は高い」と述べた。萩生田氏は計画について、和泉氏から詳しい説明を受けたことはないとし、文書の内容も否定した。

*1-6:https://www.j-cast.com/2017/07/11302992.html?p=all (Jcast 2017/7/11) 加計問題、なぜか報道されない「当事者」前愛媛県知事の発言全容
 2017年7月10日に行われた学校法人「加計学園」をめぐる閉会中審査で、インターネット上の注目を集めたのは、一連の疑惑を告発した前川喜平・前文科次官の発言ではなく、愛媛県今治市への獣医学部誘致を進めた加戸守行・前愛媛県知事の約20分間にわたる訴えだった。 前川氏の「行政がゆがめられた」発言に対し、加戸氏は「岩盤規制に国家戦略特区が穴を開け、『ゆがめられた行政が正された』というのが正しい」と反論。さらには、今回の加計問題を報じるメディアへの批判も展開するなど、踏み込んだ発言の内容が賛否を広げている。
●「獣医師が確保できない」
 加戸氏は旧文部省OBで、愛媛県知事を1999年から2010年まで3期12年務めた。今治市への獣医学部誘致をスタートさせた「当事者」で、今回の閉会中審査では与党側の求めに応じて参院での審議に参考人として出席した。自民党の青山繁晴議員の質問で答弁に立った加戸氏はまず、“「10年前に愛媛県知事として今治市に獣医学部の誘致を申請した当時のことを思い出して、はなもひっかけて貰えなかった問題が、こんなに多くの関心を持って頂いていること、不思議な感じがいたします」と皮肉の効いた一言。続けて、鳥インフルエンザやBSE(牛海綿状脳症)といった感染症対策の充実を大きな目的に獣医学部の誘致に取り組んだが、文科省への申請は一向に通らなかったとして、“「(前川氏の)『行政がゆがめられた』という発言は、私に言わせますと、少なくとも獣医学部の問題で強烈な岩盤規制のために10年間、我慢させられてきた岩盤にドリルで国家戦略特区が穴を開けて頂いたということで、『ゆがめられた行政が正された』というのが正しい発言ではないのかなと思います」と述べた。さらに加戸氏は、四国では「獣医師が確保できない」現状もあったとして、国や専門団体が獣医学部誘致に反対することは「あまりにも酷い」と感じていたと説明。その上で、“「私の知事の任期の終わりの方に、民主党(当時)政権が誕生して『自民党じゃできない、自分たちがやる』と頑張ってくれた。(中略)ところが、自民党政権に返り咲いても何も動いていない。何もしないで、ただ今治だけにブレーキをかける。それが、既得権益の擁護団体なのかと、悔しい思いを抱えてきた」
と声を震わせて訴えた。
●YouTubeが「すべてを語り尽くしている」
 このように獣医学部新設をめぐる経過を説明した上で、加戸氏は、自身が訴えてきた獣医師の養成が進まない中で、現在「今治は駄目、今治は駄目、加計ありき」と言われることについて「何でかなと思ってしまう」との不満を漏らした。そして、“「私は、加計ありきではありません。たまたま、今治選出の議員と加計学園の事務局長がお友達だったからこの話が繋がってきて、飛びついた。これもダメなんでしょうか。お友達であれば、全てがダメなのか」と主張。続く質問の答弁では、「本質の議論がされないまま、こんな形で獣医学部がおもちゃになっていることを甚だ残念に思う」とも述べた。さらに加戸氏は、加計学園問題をめぐるメディア報道にも不満を漏らした。これまでに受けた取材について、「都合のいいことはカットされて、私の申し上げたいことを取り上げて頂いたメディアは極めて少なかったことは残念」だと指摘。その上で、国家戦略特区諮問会議の民間議員が6月13日に開いた記者会見で、加計学園の獣医学部新設のプロセスについて「正当」と結論付けたことを、加戸氏はYouTubeの動画で見たとして、“「これが国民に知ってもらうべき重要なことなんだなと思いました。(中略)あのYouTubeが全てを語り尽くしているのではないかな、と思います」とも話していた。
●三原じゅん子氏「加戸氏も大事な事話してるのに、、、」
 こうした加戸氏の答弁は、主にインターネット上で大きな注目を集めており、その踏み込んだ訴えの内容に賛否の大きく分かれた意見が出ている。加戸氏の答弁を支持するユーザーからは、“「加戸さんの話は響くものがあった。地方は何か打って出なくてはいけないのに、野党も前川さんも規制で閉めだすことばかり」。「加戸元知事の切実な訴え聞くとこの問題の本質って既得権益を持つ獣医学会との戦いなんだな・・・・て思う」。といった意見が出る一方、今回の発言内容について、“「県議と加計の事務局長がお友達で話が進んだと公平でないことを自分で言ってんだ」。「今治市に獣医学部の大学を誘致したいという彼の熱い思いと今回の政策プロセスの不透明性の間には何の関係もない」。と否定的にみる意見もみられた。そのほか、前川氏をはじめとした計3人の参考人の答弁のうち、加戸氏の発言がメディアの報道で取り上げられるケースが少ないという指摘も目立った。実際、自民党の三原じゅん子参院議員は7月11日14時過ぎに更新したツイッターで、“「昨日の閉会中審査の模様が報じられていますが、どの番組も平井卓也議員と青山繁晴議員の質疑はスルー。加戸元愛媛県知事も大事な事話してるのに、、、」。との不満を漏らしている。
●「安倍総理が好きか嫌いかだけで...」
 また、閉会中審査が行われた10日夜に放送された情報番組「ユアタイム」(フジテレビ系)で、番組MCを務めるタレントの市川紗椰さん(30)は、加戸氏の答弁について、“「私が印象的だったのは、加戸前愛媛県知事です。なんか、それがすべてだったのかなって気もした。経緯を丁寧に説明していて、辻褄が合うんですよね、議事録とかを見ると。なんか、いいのかなって、納得しちゃいました」。と好意的に捉えていた。また、同番組では、国際ジャーナリストのモーリー・ロバートソン氏が、加計学園をめぐる問題を報じるメディアへの「苦言」を漏らす場面も。モーリー氏は「(加計学園問題は)そもそも様々な観点があるし、メディアは、それを能動的に一番初めに取材できたと思う」とした上で、“「ただどうしても、野党による内閣への追及ということで、ショーアップに加担して尻馬に乗ってしまったように思います。だから下手をすると、今回信頼を失うのは自民党というよりも、メディアが敗者になる可能性があります」と指摘。続けて、「(メディアは)本来の機能を果たしてこなかったんじゃないか、エンターテインメントと報道を混同してまったのではないか。そう自戒を込めて思います」とも話した。こうした発言を受け、市川さんは「この問題について話す人は、目の前にある材料というよりも、安倍総理が好きか嫌いかだけでポジションを取っているような...」との感想を漏らしていた。

*1-7:http://www.nikkei.com/article/DGXLZO19079410Q7A720C1EA1000/?dg=1 (日経新聞 2017/7/21) 安倍政権に疑惑次々 日報・加計…支持率低下に拍車
 内閣支持率の急落にあえぐ安倍政権に、2閣僚の疑惑が追い打ちをかけている。南スーダン国連平和維持活動(PKO)の日報を巡る問題は、稲田朋美防衛相が非公表の方針を「了承」したかどうかが焦点に浮上。学校法人「加計学園」の獣医学部新設に関しては、国家戦略特区担当の山本幸三地方創生相が認定2カ月前に新設方針に言及した記録が明らかになった。
■日報問題、稲田氏の了承が焦点
 南スーダンPKO部隊が作成した日報を陸上自衛隊が「廃棄した」と説明しながらデータを保管していた問題を巡り、特別防衛監察は、これまで調査の対象となっていなかった稲田朋美防衛相を含め、疑惑解明に向けた調査を急ぐ。焦点は稲田氏がどの時点で陸自データの保管を把握していたかだ。関係者によると、稲田氏は2月15日に黒江哲郎防衛次官、岡部俊哉陸上幕僚長との会議でデータ残存の報告を受けていた。稲田氏は2月15日に岡部氏と会ったことは認めたものの、そうした報告はなかったと否定している。今後は特別監察による稲田氏への聴取が行われる見通し。稲田氏がその場でデータ残存の報告を受け、了承していたと認定すれば、組織的な隠蔽工作をトップが了承していたことになる。稲田氏は3月に国会で「(陸自から)報告は受けていない」と答弁している。防衛省幹部が稲田氏にデータ残存を報告せず、稲田氏が非公表の了承もしていないと特別監察が結論づければ、この問題の疑念がさらに深まる可能性もある。2月15日には稲田氏を交えた会議とは別に、黒江氏、岡部氏、統合幕僚監部の辰己昌良総括官による別の会議で非公表の方針が決まっている。最高幹部が集まり、非公表を決めたのにもかかわらず稲田氏に報告しなかったのか、という不自然さは否めない。民進党の蓮舫代表は20日の記者会見で「日報の非公表、隠蔽に加担したなら政府の信頼が根底から覆される」と厳しく批判した。特別監察については同党内から「稲田氏だけが責任逃れをして、防衛省や自衛隊の幹部に責任を負わせることがあってはならない」(山井和則国会対策委員長)と調査の徹底を求める声も上がった。
■加計問題、山本氏巡る文書が波紋
 昨年11月に日本獣医師会の役員と会った山本幸三地方創生相が「(獣医学部の新設は)四国に決まった」と伝えたとされる記録文書が獣医師会側に残っていた。山本氏は「四国に決まったという発言はしていない」と発言を否定したものの、野党側は「加計ありきの証拠」として徹底追及する構えだ。この発言に関し、内閣府に議事録が存在しないため、山本氏は自らの反論を裏付ける「物証」を示せていない。真相は不明だが、安倍政権による「加計ありき」の疑念は拭えない。獣医師会によると、学校法人「加計学園」(岡山市)が愛媛県今治市の国家戦略特区に獣医学部を新設する計画を巡り、山本氏は同学園が事業者に決まる2カ月前の昨年11月に獣医師会の役員と協議した。獣医師会側は、山本氏は加計学園の名前を挙げ、新設に伴う愛媛県や同県今治市と学園の費用負担割合を説明したとしている。これに対し、山本氏は20日、内閣府で記者団に、加計学園の名前を挙げたことは一切ないと強調。その上で「私から京都(での新設)もあり得るという旨を述べたところ、獣医師会側からは、進めるのなら愛媛県今治市のみと明記してほしいとの発言もあった」と述べた。獣医師会側は「(京都の話などは)議事録にはない」と反論しており、双方の主張は真っ向から食い違っている。加計学園と同様、獣医学部新設を目指していた京都産業大は教員確保のめどが立たないとして14日に計画断念を発表した。安倍晋三首相は24、25両日の衆参予算委員会の閉会中審査で自ら選定プロセスを説明し、理解を得たい考えだ。獣医師会の記録が明らかになり、これまでの説明との整合性が改めて問われることになりそうだ。

<既成政党への失望理由>
*2-1:http://www.the-miyanichi.co.jp/shasetsu/_26751.html (宮崎日日新聞 2017年7月5日) 都議選で自民惨敗
◆政権の過ち厳しく総括せよ◆
 安倍晋三首相が、自民党が歴史的惨敗を喫した東京都議選の結果を受けて記者団に、「自民党に対する厳しい叱咤(しった)と深刻に受け止め深く反省しなければならない」と述べた。現有57議席から23議席に減らし、過去最低だった38議席を大きく下回った結果は、安倍政治への「不信任」に等しい。首相自身、「政権が発足して5年近くが経過する。その中で、政権に緩みがあるのではないかという厳しい批判があったと思う」とも述べている。
●1強のおごり高ぶり
 従来のように反省ポーズで終わらせ、先に進むことは許されない。まず官邸への「忖度(そんたく)」や首相の「ご意向」で便宜が図られたと指摘されている森友・加計学園問題への対応、委員会採決を飛ばす奇策を使った「共謀罪」の趣旨を盛り込んだ改正組織犯罪処罰法の成立過程など、この事態を招いた政権の誤り、過ちを自ら厳しく総括することが必要だ。森友・加計学園などの問題で、東京都民はじめ国民の目に映し出されたのは、首相が言うような政権の「緩み」ではない。首相を頂点とする「1強」が常態化したことによる「おごり高ぶり」だ。公開を求められた公文書や公的資料の提出を拒む、あるいは存在しないことにする。出す時は読ませたくない部分を黒塗りにする。加計学園問題では官僚が作成した文書を官房長官が「怪文書」と切り捨てる。内部調査が始まると文部科学省の副大臣が国家公務員法の守秘義務違反を持ち出して官僚を威嚇、存在が確認されると今度は名指しされた官房副長官らが記載内容を全面否定する。さらには、それを国会内外で追及する野党やメディアを「印象操作」と非難する。極めつきは稲田朋美防衛相による都議選での自衛隊の政治利用発言だ。
●抑制のない強権志向
 一連の言動の背景にうかがえるのは、都合の悪いことにはふたをしろ、逆らう官僚はけなしたり脅したりして黙らせればいい、彼らは自分たちに従うのが当然なのだという傲慢(ごうまん)さと抑制のない強権志向である。
加えて「魔の2回生」とやゆされる当選2回の衆院議員による数々の不祥事だ。失言、暴言のみならず不倫や交際トラブルなど女性問題、秘書への暴行疑惑。そして、もろもろの問題の当事者が首相の夫人や側近、安倍チルドレンと呼ばれる若手議員である。都議選最終日、街頭演説に立った首相はやじを浴びた。極めて異例の出来事ではあったが、首相はその原因に目を向けるべきだ。首相は今後、内閣改造や自民党幹部人事で態勢の立て直しを図るつもりだろう。しかし、常々、安倍首相が言うように政治は「結果」責任である。それは、評価される実績を残せばいいということではない。政権を巡るさまざまな問題を最高責任者として引き受けることでもある。

*2-2:http://digital.asahi.com/articles/DA3S13045133.html (朝日新聞 2017年7月20日) 共産、都議選結果に自信 結党95周年、不破氏講演
 共産党が今月、創立95周年を迎えた。野党第1党の民進党が低迷にあえぐ中、大型選挙での勝利をテコに第2党として存在感を示している。次期衆院選に向け、野党共闘路線に否定的な議員を抱える民進との連携をどう図るかが課題だ。1922年7月結党の同党は19日、95周年の記念講演会を東京都内で開催。不破哲三・前議長(87)は「安倍政治の暴走は、自民党政治が没落の段階に入ったことを示す末期現象。都議選での自民の敗北が実証した」と指摘した。同党は、2009年に旧民主党が政権奪取するまでは2大政党のはざまに埋没しがちだった。しかし民主が下野して以降は、13年参院選で改選前から5議席増やし、14年衆院選で13増と躍進。2日の都議選でも、民進が2減の5議席と退潮する一方、2増の19議席を獲得した。次期衆院選に向けては、志位和夫委員長が「憲法を平気で壊す、傲慢(ごうまん)な政治を続けさせない」として、民進など野党の選挙協力の必要性を訴えた。ただ民進との競合区は依然200を超える。民進の都議選総括の会議では「共産との共闘路線を見直すべきだ」との声が相次いでおり、険しい道のりが予想される。

*2-3:http://digital.asahi.com/articles/DA3S13033443.html (朝日新聞社説 2017年7月13日) 民進党 勘違いしていませんか
 民進党は大きな勘違いをしているのではないか。東京都議選の敗因分析に向けた党内議論を見ていると、そんな疑問を抱かざるをえない。国会議員の会合では「解党的出直し」を求める声に加え、蓮舫代表の「二重国籍問題」に矛先が向いた。蓮舫氏は「いつでも戸籍開示の用意がある」と、戸籍謄本を公開する意向を示したという。民進党の議員たちに問う。蓮舫氏が戸籍を公開すれば、党勢は上向く。そう本気で思っているのか。旧民主党政権の挫折から4年半。民進党が民意を受け止められない大きな原因は、そうした的外れな議員たちの言動にこそあると思えてならない。今回の都議選で民進党は、前回の15議席から5議席に獲得議席を大幅に減らした。国政での野党第1党の存在意義が問われる危機的な敗北である。さらに安倍内閣の支持率が急落する中、民進党の支持率は本紙の世論調査では5%にとどまっている。「共謀罪」法や加計、森友学園の問題などで、民進党が安倍政権を問いただす役割を担ってきたのは確かだ。なのになぜ、野党第1党の民進党が、政権の受け皿として認知されないのか。都議選では小池百合子知事率いる都民ファーストの会の躍進があった。しかしそれだけではない。政党にとって何よりも大事な政策の軸が、定まらないことが大きい。象徴的なのは原発政策だ。なし崩しの原発回帰を進める安倍政権に対し、民進党が脱原発依存の旗を高く掲げれば、鮮明な対立軸を示せるはずだ。そのことが分かっていながら、電力会社労組などへの配慮を優先し、政策をあいまいにする。大きな民意を見失っていることが、党勢低迷の根本的な要因である。「二重国籍」問題で、蓮舫氏の説明が二転三転したことは、公党のリーダーとして不適切だった。だが、主な敗因とは思えない「二重国籍」問題に議員たちがこだわるようなら、国民はどう受け止めるだろう。もう一つ懸念されるのは、蓮舫氏が戸籍謄本を公開することが社会に及ぼす影響だ。本人の政治判断とはいえ、プライバシーである戸籍を迫られて公開すれば、例えば外国籍の親を持つ人々らにとって、あしき前例にならないか。民進党と蓮舫氏はいま一度、慎重に考えるべきだ。


<反論すべき政策>
PS(2017年7月24、25日追加):*3-1のように、政府(経産省)は、40年超の原発に合計27億円加算した電源立地地域対策交付金を支払っており、廃炉を促すべき時に逆行している。しかし、経産省の資源エネルギー庁は「なぜ、このような制度になったか把握していない」として責任をとらない態度であり、後ろ向きでマイナスの政策に多額の国民の血税が支払われるのは明らかだ。また、*3-2のように、代替案はいくらでもあるのに、「これしかない」として“粛々と”辺野古の埋め立てを行っているのも、宝の自然を壊すために無駄な工事費を国民の血税から支払っている馬鹿な行為であるため、これこそ正面から追究すべきである。
 そこで、*3-3のように、国が知事の岩礁破砕許可を得ずに工事を進めるのは違法だとして、2017年7月24日、沖縄県は岩礁破砕差し止め訴訟を那覇地裁に提起したのはよいのだが、理由が「①政府の進め方の拙速さ」「②漁業権の一部放棄が変更に該当するので知事免許が必要」というだけでは手続き上の瑕疵しか言っておらず理念がない。そのため、*3-4の環境基本法や海洋基本法(http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H19/H19HO033.html)の理念を参考にされたい。これらは、私が衆議院議員だった時、環境保護のために強化したり、海洋資源利用のために新設したりしたもので、罰則はないが基本理念を述べているからだ。なお、基本理念にも足らざるところがあると思われるので、それぞれの自治体で、これを基にして自然や景観を含む多様な資源を保護するための条例を作ればよいだろう。 

   
  2017.7.25琉球新報               辺野古の工事開始

  (図の説明;穏やかで美しいサンゴ礁の海に、醜いテトラポットを積むところも馬鹿だ)

*3-1:https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170724-00000004-jij-soci (Yahoo、時事通信 2017.7.24) 40年超原発、計27億円加算=老朽8基の5市町に―交付金、原則に「逆行」
 運転開始から40年超の老朽原発を抱える福井県美浜町など5市町に、電源立地地域対策交付金の加算分として2016年度までに計27億円が交付されたことが23日、立地自治体などへの取材で分かった。交付金は40年を超えた原発の立地市町村に年1億円上乗せされるが、老朽原発の存続を事実上後押しする仕組みに専門家からは、「廃炉を促すべきなのに逆行している」と批判が出ている。原子炉等規制法は、原発の運転期間を原則40年に制限している。これまでに国内で40年を超えたのは東京電力福島第1原発1号機(福島県大熊町)、日本原子力発電敦賀原発1号機(福井県敦賀市)、関西電力美浜原発1~3号機(同県美浜町)、同高浜原発1、2号機(同県高浜町)、中国電力島根原発1号機(松江市)の計8基。このうち美浜3号機と高浜1、2号機を除いた5基は廃炉となった。5基は40年を超えてから廃炉となるまで、交付金が年1億円加算された。福島第1原発1号機が立地する大熊町は計2億円▽敦賀1号機がある敦賀市は計6億円▽美浜原発がある美浜町は廃炉の1、2号機と存続する3号機で計11億円▽高浜1、2号機がある高浜町には計5億円▽島根1号機がある松江市は計3億円―が上乗せされた。美浜3号機と高浜1、2号機は、原子力規制委員会の審査で20年間の運転延長が認められている。3基が期限まで存続すれば加算額は累計で60億円となる。40年超の原発について交付金が加算される仕組みは10年度から始まった。経済産業省資源エネルギー庁は「なぜ、このような制度になったか把握はしていない」としている。原発と自治体の関係に詳しい朴勝俊・関西学院大教授は「原発は古くなるほど危険なのに、交付金を加算するのはいやらしい。廃炉が地元のメリットになる制度に変えるべきだ」と話している。 

*3-2:http://www.saga-s.co.jp/news/national/10201/449061 (佐賀新聞 2017年7月24日) 辺野古、沖縄県が再提訴、政府と改めて法廷闘争
 沖縄県は24日、米軍普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古への移設工事差し止めを求め、那覇地裁に提訴した。政府が県規則に定められた翁長雄志知事の許可を得ずに「岩礁破砕」を行うのは違法と主張。判決まで工事を中断させる仮処分も併せて申し立てた。政府は判例から県の訴えは不適法で、許可も不要として全面的に争う方針だ。辺野古移設を巡っては、2015年10月に現場海域の埋め立て承認を取り消した翁長氏の処分に関し政府と沖縄県が訴訟で争った結果、昨年12月に県側敗訴判決が確定した。双方の対立は再び法廷闘争に発展した。

*3-3:https://ryukyushimpo.jp/movie/entry-541319.html (琉球新報 2017年7月25日) 政治:辺野古差し止めを提訴 県「国の工事は違法」 漁業権存否が争点に 「新基地は理不尽」と知事
 沖縄県名護市辺野古の新基地建設で県は、国が岩礁破砕許可を得ずに工事を進めるのは違法だとして24日午後、国を相手にした岩礁破砕の差し止め訴訟を那覇地裁に提起した。差し止め訴訟と併せて判決が出るまで工事を止めるよう求める仮処分も申し立てた。新基地建設を巡り、国と県は5度目の法廷闘争に入る。翁長雄志知事は午後5時から県庁で記者会見し「国は辺野古案件のために漁業権運用の見解を恣意(しい)的に変えた。法治国家の在り方からは程遠い」と国の姿勢を批判した。その上で「(今回の裁判は)新基地建設の是非そのものを問うものではないが、県民の思いを置き去りにしたまま基地建設に突き進む国の姿勢が問われている」と述べ、裁判を通して国の強権的な姿勢を浮かび上がらせることができると、訴訟の意義を強調した。記者の質問に答える形で、「漁業権の問題などを県民や国民に知らせながら、辺野古新基地を造ることの理不尽さと、政府の進め方の拙速さを訴えていく」と語った。今回の訴訟で県は、工事海域には漁業権が存在し、工事を実施するには県による岩礁破砕許可が必要だと主張する。一方国はこれまで、名護漁業協同組合の決議により漁業権はすでに消滅しており、県から岩礁破砕許可を得る必要はないと主張している。県は訴状で、漁業法第11条や22条を根拠に、名護漁協が総会で決議した漁業権の「一部放棄」は、漁場の「縮小」を意味し、「漁場の縮小が『変更』に該当するということは明治漁業法以来、当然のこととされ、現行法下の水産行政も一貫してこの立場をとってきた」と主張。漁業権を変更するには知事免許が必要だとした。さらに、県が国に岩礁破砕許可申請を請求することができる理由として県は「水産資源を保護培養する公益保護の主体者」であるとし、岩礁破砕許可申請という「義務」の履行請求権を有すると主張している。

*3-4:http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H05/H05HO091.html 環境基本法(要点)
第一章 総則
(目的)
第一条  この法律は、環境の保全について、基本理念を定め、並びに国、地方公共団体、事業者及び国民の責務を明らかにするとともに、環境の保全に関する施策の基本となる事項を定めることにより、環境の保全に関する施策を総合的かつ計画的に推進し、もって現在及び将来の国民の健康で文化的な生活の確保に寄与するとともに人類の福祉に貢献することを目的とする。
第三条  環境の保全は、環境を健全で恵み豊かなものとして維持することが人間の健康で文化的な生活に欠くことのできないものであること及び生態系が微妙な均衡を保つことによって成り立っており人類の存続の基盤である限りある環境が、人間の活動による環境への負荷によって損なわれるおそれが生じてきていることにかんがみ、現在及び将来の世代の人間が健全で恵み豊かな環境の恵沢を享受するとともに人類の存続の基盤である環境が将来にわたって維持されるように適切に行われなければならない。
(国の責務)
第六条  国は、前三条に定める環境の保全についての基本理念にのっとり、環境の保全に関する基本的かつ総合的な施策を策定し、及び実施する責務を有する。
(地方公共団体の責務)
第七条  地方公共団体は、基本理念にのっとり、環境の保全に関し、国の施策に準じた施策及びその他のその地方公共団体の区域の自然的社会的条件に応じた施策を策定し、及び実施する責務を有する。

<メディアの質>
PS(2017年7月31日追加):日本のメディアは、上記のように、頻繁に首相交代・解散・政権交代等のイニシアティブをとるが、その理由としては、男性政治家なら①政治と金 ②女性関係のゴシップ を使うことが多く、女性なら③仕事の経験及び実力の不足 ④不倫 などだ。しかし、①は、昔と違って政治資金規正法による開示を厳しくし、国会議員の政治資金団体には監査を義務づけているため、個人の政治家が大きな癒着を犯せる余地はなく時代遅れだ。また、③は、「女性は仕事の能力・経験が乏しい」「真剣に仕事をしない」「統率力がない」など、女性は仕事に未熟で不熱心であるという先入観を利用しており、女性蔑視そのものである。さらに、②④は、ないに越したことはないが、政策や仕事とは一線を画すべきプライバシーである。
 メディアがこういう批判の仕方をする理由は、1)「政治家のゴシップの方が国民が理解しやすく、視聴率が上がる」という国民を馬鹿にした態度があること 2)政策内容を正しく分析し、説明できる人材がメディアの中にいないこと 3)それでも権力を批判しているというポーズをとっていること などが考えられる。そして、この状態は、今までいくら言っても変わらず、放送は国民の文化を作るため大きな問題なのだが、*5のように、テレビ番組をインターネット放送する時代になれば状況が変わるだろう。
 何故なら、インターネット放送は、電波の制限がないため総務省の規制を受けず、いろいろなメディアが放送することが可能になり、内容がくだらなかったりぼやけたりしている番組は淘汰されるからだ。また、インターネット放送なら他国の放送も完全に受信できるため、放送の比較が可能であり、放送を通じて言語を習得することもできる。私は、スペインに行った時、日本のように馬鹿な内容の放送ばかりしている国はなかったが、中でもロシア国営放送(英語版)が、最も内容のあるポイントをついた放送をしていたのには、正直言って驚いた。
 なお、広告料金に頼ると、メディアにとっては報道したい内容を報道できず、視聴者にとっては情報価値が下がる上、番組の途中で頻繁にコマーシャルが入るのは不快であるため、受信料を望む局はNHKに限らず、その番組の単位時間あたり受信料を表示した上で、受信時間に比例して通信会社を通じて受信料を徴収すればよいと思われる。

*5:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20170731&ng=DGKKZO19440840R30C17A7PE8000 (日経新聞社説 2017.7.31) 受信料より先に議論すべきことがある
 テレビ番組を放送と同時にインターネットで流す際の料金について話し合ってきたNHKの検討委員会が答申をまとめた。スマートフォン(スマホ)などのネット接続機器のみで番組を見る世帯からも、テレビと同じ水準の受信料を徴収する方向性を示した。若年層を中心にテレビ離れが進んでおり、「常時同時配信」で新たな視聴者を獲得したいという考え方は理解できる。だが、料金の議論だけが先行する現状に違和感も覚える。同時配信の背景にあるのは、放送と通信の間の垣根が低くなっているという事情だ。スマホを通じた動画の視聴が普及し、速度が大幅に向上した次世代の無線通信で拍車がかかるのは確実だ。海外に目を向けると、英国や韓国などで公共放送が同時配信を始めている。日本では「同時配信のニーズは乏しい」との見方もあるが、海外の事例をみればそうとは言い切れない。優良なコンテンツの制作を続け、激しさを増す海外での販売競争に勝つためにも、時代の変化に合わせて収益を確保する努力は必要だ。だが、健全な競争環境を維持するという観点では課題がある。NHKの2016年度の受信料収入は6769億円に達し、既に民放の最大手である日本テレビホールディングスの放送関連収入の2倍近い。「ネット受信料」を新設すると年間200億~300億円の増収になるとの見方もあり、地方の民放の売上高を上回る。受信料制度に支えられたNHKがネット事業に本格的に参入すると、この分野の既存企業にも脅威となる。多様なコンテンツやサービスを利用者に提供するため、民間企業が投資を続けられる環境を整えることが重要だ。ネットは生活に深く入り込み、NHKの報道が力を発揮する災害時も、交流サイトのフェイスブックやツイッターなどが情報を伝える事例が増えている。NHKの上田良一会長は現在の公共放送から、ネットも含めた「公共メディア」を目指す意向を示している。まず必要なことは、ネット時代の公共メディアに必要な役割を定義し、適正な業務の範囲について議論を深めることだ。本質的な議論を避けて同時配信を手っ取り早い収入拡大の手段とするようなことがあれば、理解を得るのは難しいだろう。

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2017.7.14 ふるさと納税と返礼品・使途・地域振興・街づくりなど (2017年7月15、17、18、19、20、29、30日、8月3日追加)
 
      2017.7.4西日本新聞     2017.4.24日経新聞  2017.7.9
                                西日本新聞 

(図の説明:ふるさと納税でいつも上位にくる地方自治体には、その努力に敬意を表する。それに対し、努力もせずに無駄遣いばかりしている負け組の地域が、勝ち組の返礼品等に文句をつけているのは、正々堂々と競争しておらず見苦しい。また、使途による寄付は、東日本大震災や熊本地震などの大災害で著しく増加したが、そのようにわかりやすい使途だけが重要なのではないため、主体である地方自治体に自由に決めさせるべきである。そのため、総務省は、地方自治体の箸の上げ下げにまで指示するのは控えるべきだ)

(1)災害支援とふるさと納税
 九州北部の激しい豪雨で、福岡・大分両県の被災地では、*1-1のように、自衛隊や警察などによる捜索や救助が続き、有明海に5遺体が流れ着くなど、その被害の大きさを物語っている。また、熊本地震と重ね合わせてみると、どのようにして日本の山・川・扇状地・平野・干潟ができたのかが、映像で記録された体験として理解できる。

 福岡県朝倉市、大分県日田市付近は、大宰府・吉野ヶ里遺跡・神崎・耶馬渓・高千穂に近く、まさに日本の古代史の現場である。そして、そこから中継されてくる映像を見ると、近年、もともと川だった場所に道を作ったり、堤防を過信して川の近くや三角州に住宅を建てたりしており、これならちょっと激しい雨が降れば危険になるのは当然だと思われる。また、その山に作ったコンクリートのちゃちな砂防ダムで、山崩れが防げるわけがない。

 そのため、少子高齢化で人口減少時代の現在であれば、復旧ではなく、住居は安全性と高齢者等のケアを考えて街づくりを行い、危険になりやすい地域は農業や林業を行う形で復興するのがよいと思われる。たくさん流れてきた木材も、製材すれば使えそうな立派なものが多いようだ。

 そのような中、政府が激甚災害の指定を行い、災害復興のために要する地元負担が小さくなったのは助かるとともに、*1-2のように、福岡県朝倉市と大分県日田市への「ふるさと納税」が急増しており、感謝されている。ただ、今回は、熊本地震の時とは異なり、他の自治体がふるさと納税事務の代替をしているわけではなく、災害の対応と両方を行っている役場の人手は足りているのだろうか? また、被害を受けた地域は、福岡県朝倉市と大分県日田市だけではないので、正確に報道すべきだ。

(2)ふるさと納税の実績
 ふるさと納税制度は、2005~2009年の間に衆議院議員をした私の提案で、2008年4月30日に公布された「地方税法等の一部を改正する法律」により開始され、手続きの簡易化や上限の引き上げにより、2016年度の寄付総額は、*2-1のように、約2844億円に上った。そして、その制度の導入が決まった時の自民党税調会長は、青森県選出の津島雄二衆議院議員だった。

 これに対し、*2-2、*2-3のように、全自治体を合計した返礼品の調達費約1091億円に送料、広報、事務費などを加えた総経費が1485億1千万円に達して寄付総額の半分を超えた等々の批判があったため、総務省は2017年4月の通知で寄付の30%を超える品物や換金性の高い商品券や家電などを贈る自治体に見直しを求めた。

 しかし、私は、今回被害を受けた久留米市の久留米絣や大川市の家具、その他中小企業の工場がある地域など、応援したい産業のある地域もあり、国が一律に地方の箸の上げ下ろしにまで口を出して護送船団方式にするのはよくないと考える。つまり、良識の範囲のことをしていればよいのであり、仮にふるさと納税の大部分を返礼品に使ってしまえば、その地方自治体はふるさと納税の事務費はかかるが、ふるさと納税収入で事業を行うことができなくなり、これはその自治体自身の経営の問題だからである。

(3)地域振興と街づくり、教育と福祉
 地域振興・街づくり・教育・福祉などは、地方自治体が賢い基本計画を作って実現していくべきもので、その成否がその後の地域の発展や住みやすさに繋がる。その原資には、地方交付税交付金、地方税、地方消費税、ふるさと納税などがあり、産業を振興し、居心地のよい安全な街を作り、教育・福祉を充実させることが、その後のその地域の振興に繋がる。

1)地域振興と街づくりに関する地方自治体の総合基本計画
 野村総合研究所(東京)がまとめた国内100都市対象の「成長可能性都市ランキング」では、*3-1のように、九州は福岡市が2位、鹿児島市が5位に、福岡県久留米市が9位、長崎県佐世保市が10位と、上位10都市中、九州が4市を占めたそうだ。しかし、調査は九州の10市を含む人口10万人以上の主な都市を対象にしたものだそうで、人口10万人以上の主な都市しか対象にしなかった点で、調査者は自らは気付いていない先入観を持っている。それは、*3-2の沖縄の例をはじめとして、地方都市は、その命運をかけて地域の基本計画を作りつつある所が多く、住みやすい街は人口10万人以上の主な都市とは限らないことである。

 そして、*3-2のように、沖縄総合事務局と沖縄観光コンベンションビューロー(OCVB)が観光客を迎える視点で道路の景観を考える「沖縄における観光の推進と道路緑化シンポジウム」を那覇市のテンブスホールで開いたところ、東京都市大学環境学部の涌井特別教授が「玄関口である道路で、沖縄らしさをどう表現するかを練らないといけない」と基調講演で強調され、沖縄総合事務局南部国道事務所の小幡所長は「都市や海岸、山あいなど地域の特性に応じて植樹すべきだ」と述べられたそうで、その地域らしい美しさや魅力を演出するのが最も効果的なのは、北海道から沖縄まで同じだろう。

2)教育と福祉
 東京の大学は、*3-3のように、画一化を脱するため、地方出身者用の奨学金や学生寮の充実を行い、多様な学生を全国から集めようとしている。そして、これをやらなければ、東大、東工大などは、東京近郊にある受験高出身の男子学生が大半を占め、その人たちが大挙してエンジニアになったり官庁に就職したりする結果、自然を知らない人、教育・福祉・環境を軽んじる人ばかりがリーダーとなって、視野が一面的で狭くなる。

 私も、地方出身者や理系女子学生数が少ないことで、多くの分野で考え方が悪い意味で画一化されているため、母集団の多様性こそが幅広い思考の原点になるという大学の思いに賛成だ。

 さらに、*3-4のように、東大は女子学生に限定して家賃補助を行い、それが逆差別との批判もあるが、もともと男子学生寮は充実している上、家族やそれを取り巻く社会は東大志望の女子生徒には「無理しなくても」と言い、男子生徒には「何が何でも頑張れ」と言う傾向にあることから、女性の高学歴に反対する社会や親へのよいメッセージになると考える。

 確かに、佐賀県も東京の県人寮に入居できるのは男子学生だけであり、女子には高学歴は不要だと言わんばかりのように見える(それどころか、はっきりそう言う人もいる)。しかし、管理職やリーダーの母集団になる女性は、男性と同等以上の実力・能力を要求されるため、東大方式はジェンダー(社会的性差)の公平を狙った策であり、不平等にはあたらないだろう。

 そして、地方では、ふるさと納税収入から、これらの教育・福祉にかかる経費を支払ったり、卒業後にふるさとで就職した学生に奨学金返済を肩代わりしたりすることも可能だ。

<災害とふるさと納税>
*1-1:http://qbiz.jp/article/113836/1/ (西日本新聞 2017年7月9日) 豪雨死者18人に 被災者か、有明海に5遺体 福岡・大分
 九州豪雨による福岡、大分両県の被災地では8日も自衛隊や警察などによる捜索や救助が続いた。福岡県朝倉市では新たに女性の3遺体が見つかり、犠牲者は両県で計18人になった。福岡、佐賀両県沖の有明海では豪雨で流されたとみられる男女5人の遺体が見つかった。生存率が急速に下がるとされる発生から「72時間」が経過する中、大分県日田市では安否不明者全員の無事が確認されたが、福岡県では依然として27人と連絡が取れていない。犠牲者の内訳は、朝倉市13人、同県東峰村2人、日田市3人。朝倉市黒川で見つかった3遺体は、渕上麗子さん(63)と娘の江藤由香理さん(26)、江藤さんの長男友哉ちゃん(1)▽同市杷木林田の遺体は岩下ひとみさん(36)=杷木池田▽東峰村宝珠山の2遺体は熊谷国茂さん(81)と妻千鶴代さん(81)と判明した。また、日田市の田代川近くで発見された遺体は矢野知子さん(70)=鶴河内=と確認された。福岡県などによると8日午前、朝倉市杷木を捜索していた消防隊が川の上流で女性の遺体を発見。その後も杷木の竹やぶなどから女性の2遺体が見つかった。被災地の川から数十キロ下流にある有明海やその沿岸でも女性3人、男性2人の遺体が相次いで見つかった。福岡、佐賀両県警によると、周辺に大量の流木があったことなどから豪雨で流された可能性があるという。安否不明の26人がいる朝倉市では、果樹園の様子を見に行ったまま行方不明となっている男性などの捜索が続いた。1人の行方が分かっていない東峰村宝珠山でも捜索が行われたが、二次災害の危険があることから日没で打ち切られた。同日夕現在、孤立しているのは朝倉市で1人、東峰村で28人、日田市で545人。避難所には朝倉市1142人、東峰村429人、大分県378人が避難している。朝倉市と東峰村では計2170戸が断水し、計1200戸が停電。日田市では410戸が断水している。交通では、大雨の影響で不通となっていたJR佐世保線の肥前山口−早岐で運転が再開されたほか、東九州自動車道や九州道も8日までに通行止めが全線で解除された。九州北部は8日も、朝倉市や福岡県嘉麻市で局地的に非常に激しい雨が降った。今後も大気の不安定な状態が続くといい、気象庁は土砂災害などへの厳重な警戒を呼び掛けている。9日午後6時までの24時間予想雨量は多いところで熊本200ミリ、福岡150ミリ、佐賀、長崎、大分120ミリ。

*1-2:http://qbiz.jp/article/114256/1/ (西日本新聞 2017年7月14日) 2017九州豪雨:被災地のふるさと納税急増 朝倉、日田両市
 九州豪雨で被災した福岡県朝倉市と大分県日田市への「ふるさと納税」が急増していることが13日、分かった。朝倉市によると5〜12日の8日間だけで計4888万370円(2485件)。「応援しています」など、被災者へのメッセージも添えられているという。朝倉市へのふるさと納税は、昨年7月の1カ月間では計2051万9000円(1388件)だった。同市は6日から返礼品をストップしているが、勢いは止まっていない。日田市でも今月5〜12日、少なくとも1605件、計2802万3600円(1605件)が集まった。直前の6月27日〜7月4日は計409万円(305件、いずれも暫定値)で、約6.9倍に増えた計算だ。同市は「『一日も早く復興に向かうよう祈っています』などコメントを付けて納税してくれる方が多く、本当にありがたい」と感謝しきりだ。

<ふるさと納税の実績>
*2-1:http://qbiz.jp/article/113473/1/ (西日本新聞 2017年7月4日) ふるさと納税が過去最高の2844億円 首位は2年連続で宮崎・都城市
 総務省は4日、ふるさと納税による2016年度の寄付総額が過去最高の2844億887万5千円に上ったと発表した。15年度より1200億円近く増え、伸びは1・7倍。返礼品の充実に加え、インターネットでの簡易な手続きが定着したことも追い風になったが、住民税や所得税の減税が受けられる寄付額上限が約2倍に引き上げられた15年度の伸び(4・3倍)には及ばなかった。件数は1・8倍の1271万件だった。寄付額は宮崎県都城市が73億3300万円で2年連続のトップ。昨年4月に大規模な地震があった熊本市は復興支援の寄付が急増して36億8600万円で6位に入った。寄付額の上位には、高額な商品や多彩な特産物を返礼品とする自治体が並んだ。2位以下は長野県伊那市の72億500万円、静岡県焼津市の51億2100万円、宮崎県都農町の50億900万円、佐賀県上峰町の45億7300万円と続いた。都道府県別の寄付額は、北海道271億2400万円、山形225億3300万円、宮崎206億200万円の順だった。総務省は4月以降、返礼品競争の過熱を抑えるため、寄付の3割を超える金額の品物や、換金性の高い商品券や家電などを贈る自治体に見直しを要請した。その結果、寄付額上位の約200自治体のうち9割程度が見直す意向を示したという。15年度の寄付総額は1652億9102万円。17年度に入ってからは総務省が高額な返礼品の自粛を全国の自治体に求めており、伸びが落ち込む可能性もありそうだ。

*2-2:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/443653 (佐賀新聞 2017年7月5日) ふるさと納税2844億円 16年度過去最高、返礼品が追い風
 総務省は4日、ふるさと納税による2016年度の自治体への寄付総額が過去最高の2844億887万5千円になったと発表した。15年度の1・7倍で、返礼品の充実やインターネットでの簡易な手続きが定着したことが追い風になった。ただ住民税や所得税の減税が受けられる寄付額の上限が約2倍に引き上げられた15年度の伸び(4・3倍)には及ばなかった。件数は1・8倍の1271万件だった。寄付額は宮崎県都城市が73億3300万円で2年連続のトップ。長野県伊那市の72億500万円、静岡県焼津市の51億2100万円と続き、上位には高額な商品や多彩な特産物を返礼品とする自治体が並んだ。昨年4月に大規模な地震があった熊本市は復興支援の寄付が急増し、36億8600万円で6位だった。都道府県別の合計は、北海道271億2400万円、山形225億3300万円、宮崎206億200万円の順だった。寄付額に占める返礼品調達費の割合は全国平均で38%。15年度から横ばいだった。全自治体を合計した調達費1090億8千万円に、返礼品の送料や広報、事務費などを加えた総経費は1485億1千万円に達し、寄付総額の半分を超えた。高額な返礼品で寄付を集める自治体間の競争が過熱したことから、総務省は4月の通知で寄付の30%を超える金額の品物や、換金性の高い商品券や家電などを贈る自治体に見直しを求めた。ただ寄付額の上位約200自治体のうち10%ほどは受け入れておらず、今後も働きかけを続ける。15年度の寄付総額は1652億9102万円だった。17年度に入ってからは総務省の要請に応じた返礼品の見直しが広がっており、寄付の伸びが鈍化する可能性もありそうだ。

*2-3:https://www.agrinews.co.jp/p41343.html (日本農業新聞 2017年7月11日) 再考 ふるさと納税 返礼品競争に終止符を
 2016年度のふるさと納税の寄付総額が過去最高を更新した。地方支援の広がりは歓迎するが、豪華な品物で寄付を集める「返礼品競争」が過熱し、本来の趣旨を逸脱する面もみられる。行き過ぎた競争は早期に是正する必要がある。ふるさと納税は、出身地や応援したい自治体に寄付をすると税金が軽減される制度。08年度に始まった。寄付金額から2000円を引いた額が所得税や住民税から控除される。寄付した自治体からは、特産品などの返礼品が届く。15年度からは、減税される寄付額の上限が2倍に引き上げられ、寄付先が5自治体までなら確定申告のいらない「ワンストップ特例」が導入された。この結果、全国の自治体が受け入れた寄付額は1653億円と前年度の4.3倍にも増えた。16年度は前年度比1.7倍の2844億円で過去最高となった。一方で、返礼品調達費は16年度で1091億円にも上り、寄付額に占める割合が全国平均で38.4%にも達した。負担になり始めている。総務省は4月に、寄付額の3割以下に抑えるように自治体に通知し、6月からは100団体に改善を求めているが、対応が遅れている。自治体の中には、寄付金で財政が潤い、特産品の消費拡大にもつながるとして、見直しには消極的なところもある。見直し根拠が曖昧なことへの戸惑いも見える。しかしこのまま高額の返礼品が続けば、対価を求めない寄付文化をゆがめたり、特産品の廉売につながったりする。総務省は説得に努めるべきだ。とりわけ農畜産物は、農業関係者の間に「将来的に安売りや投げ売りにつながり、自らの首を絞めることになりかねない」との懸念が強まっている。返礼品に「上限」を設けたり、品目を制限したりする明確なルールを考えるべきだ。寄付の集まらない自治体の不公平感や、住民が他市町村の特産品を目当てに寄付し「税金が逃げる」という弊害、多額の寄付ができる富裕層ほど税の控除が多くなる問題も指摘されている。政府はこうした問題の是正も急ぐ必要がある。寄付する側の意識改革も必要だ。商品を探すように、ネットでの返礼品人気ランキングを見ながら寄付先を選ぶような行為は制度本来の姿ではない。返礼品を得ることが目的ではないはずだ。制度の趣旨を理解した上での冷静な行動が求められる。制度創設時から過剰な返礼品を規制すべきだとの議論はあった。その対策を怠って混乱させた政府の責任は重い。このまま過熱し続けると、制度の存亡に関わる。全国市長会など地方6団体が中心になって返礼品の是正に取り組むことも重要だ。都市と地方との関わりの契機となり、寄付した人が実際に産地を訪れたりする。そうした真のふるさと創生につながる制度となるよう抜本改革も含め再設計する必要がある。

<地域振興と街づくり>
*3-1:http://qbiz.jp/article/113834/1/ (西日本新聞 2017年7月9日) 福岡市が「成長可能性都市」2位 鹿児島など九州4市もトップ10入り
 野村総合研究所(東京)がまとめた国内100都市対象の「成長可能性都市ランキング」で、福岡市が2位、鹿児島市が5位になった。他に福岡県久留米市が9位、長崎県佐世保市が10位と、上位10都市中、九州が4市を占めた。1位は東京23区だった。野村総研は「九州の地方都市は、大都市に頼らない『ローカルハブ』(地方拠点)になる可能性を秘めている。自らの強みを生かし、地域経済をけん引してほしい」としている。調査は九州の10市を含む人口10万人以上の主な都市が対象。人口、事業所数、地価、財政力、地方交付税への依存度、創業支援策、産学連携など計131の指標に加え、各自治体100〜300人の住民アンケートを点数化し、合計のスコアから順位を算出した。その結果、2位の福岡市は空港、新幹線駅へのアクセスや起業支援策が充実し、市民の幸福度も高いことなどから「“支店経済”の街を脱し新たなビジネスを創出するなど、三大都市圏に次ぐ第4の都市として成長している」。鹿児島市は「外部人材の受け入れに寛容でビジネス集積の伸びしろが大きい」とした。一方、久留米市や佐世保市については「一見、産業創出力が乏しいイメージだが、多様性があり、企業、人材の誘致につながる潜在力は高い」としている。分析した小林庸至上級研究員は「多様なローカルハブを育てていくことは、地方創生だけでなく、首都直下型地震の危機に備えた、災害に強い国づくりにもつながる」と述べた。

*3-2:https://ryukyushimpo.jp/news/entry-531155.html (琉球新報 2017年7月9日) 経済:「道路に沖縄らしさを」 戦略的緑化を議論
 沖縄総合事務局と沖縄観光コンベンションビューロー(OCVB)は4日、観光客を迎え入れる視点で県内道路の景観を考える「沖縄における観光の推進と道路緑化シンポジウム」を那覇市のテンブスホールで開いた。観光、道路緑化などに携わる関係者による討論では、維持管理費の公共予算が減額される中、緑化保全にも優先順位を付ける必要性が確認された。沖縄海洋博覧会の基本計画やハウステンボス、全日空などのリゾート計画に関わった東京都市大学環境学部の涌井史郎特別教授が基調講演し「玄関口である道路で、沖縄らしさをどう表現するか。そのことを戦略的に練らないといけない」と強調した。討論では、OCVBの前田光幸専務理事がシンガポールやハワイなど観光と道路緑化を戦略的に実践している国々の事例を紹介した。沖縄総合事務局南部国道事務所の小幡宏所長は「観光客の訪問頻度や、都市や海岸、山あいなど地域の特性に応じて植樹するべきだ」と述べた。和歌山大学システム工学部の山田和司非常勤講師は、亜熱帯気候のため他県より3倍の早さで成長する沖縄の植物管理頻度の高さを指摘した。沖縄国際大学の宮城邦治名誉教授は「観光客が抱く『日本の中の異国感』という印象を植樹でも想起させるべきだ」と提案した。

*3-3:http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201702/CK2017020202000130.html (東京新聞 2017年2月2日) 【社会】来れ地方の学生よ 東京の大学、脱「画一化」に挑戦
 入学試験に「地域の課題」、地方出身者用の奨学金、学生寮の充実-。多様な学生を全国から集めようと、東京の大学が試行錯誤している。親の世帯の収入の減少などで地方出身者が減少し、理系を目指す女子学生数も伸び悩む。放っておけば画一化が進みかねない中で、多様性こそが、幅広い思考の原点になるという大学側の思いが込められている。早稲田大は二〇一七年度、「地域に貢献する人材育成」をうたう「新思考入学試験(地域連携型)」という入試を文学部や商学部など五学部で始める。リポートなどで、自分の暮らす地域の課題と解決のために大学で学びたいことなどを示してもらうという。入学センターの担当者は「広く日本各地の受験生に挑戦してもらいたい」と期待する。全国から学生が集まることを特色の一つとしてきた早大でも、地方出身者は年々減少し、現在は全学部生のうち首都圏出身者が約七割を占める。仕送りの負担から、東京への進学をあきらめている地方の若者を後押しするため、〇九年度に首都圏以外の受験生を対象にした「めざせ!都の西北奨学金」も導入。年間約四十万円を給付してきたが、一七年度からは半期分の授業料(約五十万~七十万円)を免除する制度に拡大する。他の私立大でも地方出身者対象の奨学金導入は広がっている。一二年度から「学問のすゝめ奨学金」を設けた慶応義塾大は、首都圏以外の道府県をブロックに分け、給付人数を振り分けて地域が偏らないようにしているという。同大でも一九九五年の入試では43・8%を占めていた首都圏以外の合格者の割合が二〇一五年には28・9%に減少している。女子学生を増やすため、住まいの確保を重視する大学もある。東京工業大は二年前に老朽化で閉鎖した女子寮を建て替え、設備を充実させた上で今年四月にオープンする。キャンパスまで徒歩十五分と便利だ。東京工業大の女子の学部生は12%にとどまり、このうち九割近くは首都圏から通学している。留学生は女子の割合が増えてきており、担当者は、「留学生も含め、安心できる環境を整備して女子学生を増やしたい」と話す。同じく女子学部生の割合が19%と低い東京大は今春、地方出身の女子学生に月三万円の家賃を補助する制度を導入する。安全性を重視した住居百室を用意し、最長で二年間支給する。制度を公表すると、「男子学生との不平等になる」との意見も出たが、同大は「学生の多様性を拡大するため」と説明している。

*3-4:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12723358.html (朝日新聞 2016年12月26日) 東大の家賃補助、女子限定のワケ 家族、志望に「無理しなくても」 安全重視、高め物件
 東京大が来年度から設ける女子学生向けの家賃補助制度にさまざまな声があがっている。女子学生を増やす狙いだが、「なぜ女子だけ?」といった批判の一方、女子の高学歴への偏見や自宅外通学を理由に受験を反対された人たちの間では歓迎の声が上がる。年明けからは本格的な受験シーズン。東大だけでなく各地の大学も、女子学生増へ手探りの試みを続ける。歓迎の声の一つは、家賃補助制度が、東大をはじめ、女子の志望先に反対する親へのメッセージになることへの期待だ。「女の子が無理して頑張らなくてもいいのに」「なぜ東京に行くの?」……。東海地方出身の東大4年の女子学生(23)は、家族の言葉が忘れられない。当時、東大に毎年10人以上が進学する県立高に通っていた。先生の勧めで高校2年の1月、志望校に決めた。だが、80代の祖母と50代の母が反対した。祖母の兄弟姉妹で大学に行けたのは男の子だけだったといい、母も短大卒。今では「それが影響したのかも」と思う。現役で受験に失敗すると、「女の子が浪人なんて」と言われた。結局は父が賛成で、東大に挑戦できたという。東大の女子学生の割合は2割未満。この女子学生は「東大が地方の女子学生を増やす手段を採ったことには好感がもてる。送り出す親の意識も変わるだろう」と期待する。家賃補助を歓迎する側のもう一つの理由は、女子が安全に暮らせる住居へのニーズが切実なことだ。東大によると、大学の説明会などで、女子の安全な住まいの確保を心配する保護者の声があったという。「遠くの大学は危ないからダメだ」。神奈川県の30代の女性会社員は湘南地方の高校に通っていた時、父からこう反対されたのをよく覚えている。「一橋大か京都大を目指す」と家族に宣言。模擬試験の成績では十分にめざせる判定だったが、受験を認めてもらえず、自宅から約1時間の私立大に進学した。東大は今回の家賃補助の対象を「自宅から90分以上かかる女子学生」とし、安全や耐震性にも配慮することも強調している。女性は「東大は女子学生がなぜ来ないのか、その理由を調べたのだろう。こうした制度があれば、一人暮らしに反対する親を説得する材料になる」と期待する。東海地方の女子学生も合格後、住居で苦労した。「東京の県人寮に入居しているのは男子学生だけ。女子学生には、安くて安全な住居の選択肢が少ない」。東京で民間の女子専用学生会館に住んだが、干していた下着を盗まれたこともある。3年で一人暮らしを始めたが、安全面から家賃を高めにするしかなかった。一方、東大によると、この制度に約80件の意見が寄せられ、「(男性への)差別だ」という声が多かった。ネット上では「女性限定ではなく、(男女関係なく)貧困の学生に補助すべきだ」という声のほか、まず女子に高学歴は必要ないなどとする一部の風潮に対処すべきだとして「家賃は根本的な問題ではない」などの意見もあった。
■男女平等とは、他大学も模索
 女子教育に詳しいNPO法人サルタック理事の畠山勝太さん(31)は「安全性が高い住まいという女子のニーズへの対応は、ジェンダー(社会的性差)の公平を狙った策で不平等にはあたらない」とみる。「日本の女子の学力は国際的にもトップレベルで、大学進学率の低さは能力の問題ではない」と指摘。東大の家賃補助制度を「国際的には当然のことだ」と話す。男子学生だけでなく、優秀な女子学生を増やすことで研究の多様性を向上させようと大学も様々な試みを続けるが、手探りの段階だ。金沢工業大(石川県野々市市)はバイオ・化学部を新設した2008年度から2年間、女子の特別選抜制度を設けたが、志願者は12~13人と少なく中止した。「特別選抜が敬遠され、AO入試など別の試験が受験しやすかったようだ」(同大)という。大阪電気通信大(大阪府寝屋川市)は十数年前から、公募推薦入試の優遇制度の一つに「女子への点の加算」を設けるが、「女子の志願者は増えていない」という。九州大(福岡市)は12年度の理学部数学科の入試で「将来の女性研究者を増やすため」として、女性枠を設けようとした。だが、「『法の下の平等』の点から問題があるのではないかとの意見があり、社会的影響や入学した学生の精神的負担などを総合的に判断して取りやめた」(同大)という。辻村みよ子・明治大教授(憲法)は「東大の家賃補助は女子寮に代わる学生支援の特別措置ならば、男女共同参画社会基本法上のポジティブ・アクション(積極的改善措置)と認めることができ、法の下の平等を定めた憲法にも違反しない」と指摘。そのうえで「入試では(特例で入学したという)女子学生への烙印(らくいん)にならないよう、男女ともに合格最低点を設けるなどの方が有効だ。こうしたポジティブ・アクションは社会的合意が大切で、大学が丁寧に説明する必要もある」と話す。
◆キーワード
 <女子学生への家賃補助> 東大が2017年度から、駒場キャンパス(東京都目黒区)周辺に安全性や耐震性の高い部屋を100室ほど確保し、入居した女子学生に月3万円の家賃を補助する。自宅から90分以上かかる女子学生が対象で最長2年間支給。保護者の所得制限はつけない。


<地方の選択に中央政府の指示は不要である>
PS(2017.7.15追加):日経新聞は、*4-1のように、都市寄り・省庁寄りの見解が多いが、これまでに多くの投資がなされて資源や人材の多い都市部自治体の税収減は努力と工夫不足の結果にすぎないため、言い訳無用で自助努力させるべきである。そして、三重県の鳥羽、志摩両市が真珠の返礼品を認めるよう総務省に要望したのは同感で、(高いものから安いものまである)真珠が返礼品になるのは面白く、「返礼品は農産品に限る」などとするのは、論理とは関係なく反対したいだけの狭い発想である。
 なお、*4-2のように、西日本地区の18の経済同友会が、観光推進で地域活性化するため西日本全体が広域で連携すべきだとし、四国新幹線を含む交通網に言及したのには賛成だが、広域の方がよいのは西日本だけではないだろう。ただ、カジノを中心とした統合型リゾート施設(IR)を起点にするという発想は情けなく、九州を起点として四国を通り、伊勢志摩から奈良・京都に至った方が余程面白い。さらに、2025年に万博を大阪に誘致するというのは、日本が開発途上国で威信を示さなければならない時代ではないため古くさい戦略で、既に有名な陶磁器・織物・染色・真珠養殖・漆器・機械などの生産現場を案内した方がよほど面白くて買ってもらえるだろう。つまり、誰にとっても、ゲームより本物の方が見ごたえがあるということだ。

*4-1:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20170705&ng=DGKKASFS04H64_U7A700C1EA2000 (日経新聞 2017.7.5) ふるさと納税、自粛・継続で割れる自治体
 ふるさと納税の人気上昇とともに制度のひずみが鮮明になっている。2016年度の寄付額は2844億円。4年連続で過去最高を更新した。特色ある返礼品で納税者の関心を引き付け、地元農産品の活用や被災地支援など地方振興で成果をあげている。その一方で高額の返礼品や都市自治体の税収減といった問題も浮上。自治体には適正な競争が求められている。ふるさと納税は自治体への寄付額から2千円を引いた額が国の所得税、地方の住民税から一定額控除される仕組み。自治体は寄付を増やそうと返礼品を充実させている。16年度に最も多くの寄付を得たのは宮崎県都城市。2年連続の首位で、返礼品の宮崎牛や焼酎の人気が高く73億円を集めた。2位の長野県伊那市は家電の返礼をあてにした寄付を集めた。ふるさと納税を通じ、被災地を支援する動きも目立つ。6位の熊本市は昨年の震災を機に寄付額が増え、前の年度の86倍に膨らんだ。使途として熊本城の修復を指定したものが多かった。
■総務省の要請に難色
 ただ寄付獲得へ向けた自治体間の競争は過熱気味だ。寄付の趣旨から外れ「2千円で返礼品がもらえる」とあおる自治体もある。総務省は4月、寄付額に対する返礼品の割合を3割以下に下げるよう全国の自治体に要請した。都城市は6月に約6割あった割合を下げると表明。佐賀県上峰町も約5割だった返礼割合の引き下げを目指す。一方、難色を示す自治体もある。ふるさと納税を特産品などのPRに使う自治体には不満がくすぶる。総務省によると、寄付額の上位200自治体のうち、20弱が指摘を受けた返礼品を見直さない意向を示した。三重県の鳥羽、志摩両市は真珠の返礼品を認めるよう総務省に逆に要望した。
■都市は税収減を懸念
 都市と地方のあつれきも表面化している。都市部は地方の自治体に税収を奪われると反発。ふるさと納税による減収額は東京23区で16年度129億円、17年度207億円の見込み。17年度の減収額を30億円とする世田谷区は「30億円といえば学校1校の改築費にあたる規模。税収減が累積すると行政サービスに影響が出る」(財政課)と危機感を強める。地方に対抗しようと、中野区は16年10月から返礼品を設けた。区内レストランの食事券や交流のある他県の日本酒など特産品もそろえる。品川区も競馬場の指定席を返礼品に加えるなどした。
■使途の明確化が必要
 ふるさと納税の運用を巡っては、専門家からも異論が出始めている。とりわけ問題視するのは、集めた寄付の使い方。関西大の橋本恭之教授は「4割の自治体が寄付金の使途を明らかにしていない。公表しない場合は特例控除の適用外にすべきだ」と指摘、使途の明確化を求める。一橋大の佐藤主光教授は「財源を必要とする地域に寄付金が渡っていない。返礼品は農産品などに限り、調達の情報公開を進めるべきだ。過剰競争で利用者も返礼品以外に無関心になっている」と警鐘を鳴らしている。

*4-2:http://qbiz.jp/article/114338/1/ (西日本新聞 2017年7月15日) 九州など18同友会が声明 観光推進へ広域連携を
 関西や中部、九州など西日本地区の18の経済同友会は14日、大阪市内で開いた会議後に、観光推進による地域活性化を実現するため、カジノを中心とした統合型リゾート施設(IR)などの観光資源を起点にし、西日本全体が広域で連携するべきだとする声明を発表した。声明では、増加を続ける訪日観光客の受け入れ態勢を整える必要があると強調。国に対し、空港・港湾の整備や、四国新幹線などの整備計画を早急に検討するよう要望した。北陸新幹線の大阪までの早期延伸も求めた。会議後に記者会見した関西経済同友会の黒田章裕代表幹事(コクヨ会長)は、2025年の大阪誘致を目指す国際博覧会(万博)やIRを西日本全体の観光推進につなげるため、「大阪からそれぞれの観光地にお連れするには、交通網をどうすれば良いのかなどの検討が必要だ」と述べた。

<災害支援法と街づくりのあり方について>
PS(2017年7月17、18日追加):*5-1については、①災害額を確定するためには被災状況の調査や被害額の算定は必要だが、それに時間がかかることが問題であり、②災害補償は復旧を後押しするだけなので、より災害に強い街へ都市計画を変更できないという欠点がある。
 そのため、①については、必要な書類と被災状況を証明する写真を標準化しておき、それに従って提出された書類をコンピューター処理すれば固定資産税評価額等と照合して概略の被災額・補償額を直ちに計算して支払い、後で確認して調整する仕組みにすればよいだろう。また、②については、川の三角州やもともと川だった場所を埋め立てて洪水リスクの高い場所に住宅を作っているようなので、人口減少社会で何度も同じ被害が起こらないよう、安全で便利な街づくりに変更するために、復旧だけではなく積極的な復興も対象にすべきである。
 なお、溶岩の上に火山灰や有機物が積もってできた九州の地形では、*5-2のような表層崩壊が起こるのは想定内になるため、それに耐える土地利用や街づくりをすべきだ。
 

              2017年7月九州北部豪雨被害

 
                    2017.7.16西日本新聞

*5-1:http://www.shinmai.co.jp/news/world/article.php?date=20170716&id=2017071601001513 (信濃毎日新聞 2017.7.16) 二階氏、激甚災害法の改正検討 豪雨被害受け、手続き迅速化
 自民党の二階俊博幹事長は16日、福岡、大分両県で大きな被害が出た九州北部の豪雨を受け、激甚災害指定の手続きを迅速化するため、激甚災害法の改正を進める考えを表明した。視察先の福岡県朝倉市で「災害発生後、(政府が)直ちに指定の準備に当たれるよう、法改正を検討したい」と記者団に述べた。秋に想定される臨時国会での成立を目指す考えも明らかにした。激甚災害法は、地震や豪雨など大規模災害で被災した自治体の財政負担を軽くすることで、復旧を後押しする。ただ被災状況の調査や被害額の算定に時間がかかり、1~2カ月後になるのが一般的だ。

*5-2:http://qbiz.jp/article/114370/1/ (西日本新聞 2017年7月16日) 土砂崩れ300ヵ所超 雨で進行の懸念も 農水省調査
 九州豪雨により発生した土砂崩れが、福岡県朝倉市と東峰村、大分県日田市で少なくとも300カ所に上ることが農林水産省九州森林管理局の調査で明らかになった。ほとんどは、深い岩盤までは崩れず、表土層と樹木が滑り落ちる「表層崩壊」とみられるという。識者は、斜面に残った土砂や樹木が今後の強い雨や台風で流れ落ちる恐れがあるとして、警戒を呼び掛けている。九州森林管理局は8、10日に上空から被災地を調査した。土砂崩れは朝倉市と東峰村に集中し、その多くは長さ数メートルから数十メートルと比較的小規模だった。調査に加わった森林総合研究所九州支所の黒川潮・山地防災研究グループ長は、山の谷筋に雨水が集中して斜面が削られ、同時多発的に土砂崩れが起きたとみている。熊本大学の北園芳人名誉教授(地盤工学)によると、上空から見た限り、朝倉市や東峰村の土砂崩れでは深い岩盤は崩れておらず、多くが浅い表土層が崩れた「表層崩壊」だった。猛烈な雨が斜面の表面を勢いよくそぎ落とし、深く根を張らないスギなどの針葉樹も流れたとみられるという。表層崩壊は、雨水が深くまで染み込み、岩盤部分から崩れ落ちる「深層崩壊」と比べると、流出する土砂は少ないが、今回は表層崩壊が多発したことで、流れ出た土砂や樹木が膨大になったとみられる。日田市の土砂崩れは数十カ所と比較的少なかった。ただ、朝倉市などの土砂崩れと異なり、川の流れをせき止める“土砂ダム”ができた日田市小野地区の土砂崩れについて、北園名誉教授は、深層崩壊に近いとみている。豪雨翌日の6日朝に発生したことから、雨が時間をかけて斜面深くに染み込み、地下水位が上がって土が浮き上がり、崩れたと考えられるという。福岡大の村上哲教授(地盤工学)の調査では、小野地区の一部斜面では岩盤が露出。山はなお大量の水を含んでいる可能性もある。朝倉市や東峰村も含め、さらに土砂崩れが進む恐れがあると指摘している。

<木材の利用法>
PS(2017年7月19日):国交省は、*6-1のように、九州豪雨で土砂・流木が堆積している福岡県朝倉市の県管理河川について、国が権限代行して緊急に大量の土砂・流木の撤去を始めたそうで、福岡県も少しほっとしただろうが、*6-2のように、①20万トン超の流木があり ②寺内ダムは水面を覆うように大量の大木が漂い ③具体的な処理方法は決まっておらず ④1次仮置き場に収集運搬した後で2次仮置き場に移し、 ⑤▽木材として利活用▽破砕して焼却▽バイオマス燃料のチップや建築資材として売却するなどの方法を検討しているそうだ。
 しかし、①②③から、所有者がいるのならその人に引き取ってもらえばよいし、所有者がわからず廃棄物となっている木材なら、焼却して無駄にした上、余分なCO2を出すよりも、利活用できる人に無償で渡した方がよいと考える。また、⑤については、写真から、1)建材・家具材として使える大木 2)バイオマス燃料のチップにはできそうな枝・古材 3)焼却して発電できる木材 などがあるため、引き取り手が受け取りやすいように、④の2次置き場は分類して置くのがよいだろう。なお、木材は、一昔前は、水に浮かせて貯蔵したり運んだりしていたため、泥が付いたから価値が低いということはない。 

 
                     (2017.7.17、19西日本新聞)

*6-1:http://qbiz.jp/article/114430/1/ (西日本新聞 2017年7月18日) 2017九州豪雨:国が土砂や流木の除去代行 朝倉市の3河川、新制度で全国初
 国土交通省は18日、九州豪雨で大量の土砂や流木が堆積している福岡県朝倉市の赤谷川など県管理3河川について、国が権限代行で緊急的に土砂や流木を除去すると発表した。国による代行は今年6月に施行した改正河川法に基づく新制度で、全国初の適用となる。対象となる河川は、いずれも朝倉市を流れる筑後川水系の赤谷川、大山川、乙石川の計15・5キロ。上流の山腹で多数の土砂崩れが発生したため、大量の土砂や流木が河道をふさいで氾濫の要因になっていた。権限代行は14日に福岡県が要請。二次災害の恐れが高いほか、撤去には高度な技術を要することもあり、国が18日から緊急的に撤去を始めることになった。作業の終了する時期は未定で、国交省は「軟弱になった地質の状況なども勘案する必要があるが、なるべく早く終えたい」としている。

*6-2:http://qbiz.jp/article/114459/1/ (西日本新聞 2017年7月19日) 2017九州豪雨:流木20万トン処理に苦慮 仮置き場足りず 材木転用にも難題
 九州豪雨により、被災地の福岡県朝倉市などで発生し、有明海まで広がった流木の処理に行政側が頭を悩ませている。福岡県の推計によると、流木は少なくとも20万トン超。5年前の九州北部豪雨時に比べて3倍を超える。現段階では、回収して一時的に保管する仮置き場の確保もままならず、復旧は見通せない。山あいになみなみと水をたたえる同市の寺内ダム。水面を覆うように漂う大量の大木を見つめ、管理する独立行政法人水資源機構の担当者は声を落とした。「具体的な処理方法は決まっていない」。船や重機を使って回収する方針だが、本格的な作業は手付かずだ。豪雨で山腹が崩壊し、大量の木々や土砂が河川や道路、海にまで散らばった。県の推計は市内を流れる二つの川の航空写真から目視で算出したもので、有明海の流木は含んでいない。流木や土砂の処理は筑後川や有明海などは国、ダムは水資源機構、県管理の河川や道路などは県、農地や民有地などは市町村が担う。いったん1次仮置き場に収集運搬した後、より広い2次仮置き場に移す。1次仮置き場は現在、朝倉市と東峰村の駐車場や広場など計7カ所。福岡県は近隣自治体を含め、民有地など約20カ所を候補地として、1次、2次仮置き場の確保を目指す。だが「廃棄物」だけに地域の反発も予想され、「地権者や周辺住民に対し、丁寧に説明している」(廃棄物対策課)段階という。保管した流木はその後、木材として利活用▽破砕して焼却▽バイオマス燃料のチップや建築資材として売却−する方法を検討しているものの、「売却は交渉次第であり、泥が付いた流木は買ってくれない」と県の担当者。二次利用も容易ではなさそうだ。家屋やがれきなども含む災害廃棄物は九州北部豪雨では約6万5千トン。被災自治体だけでなく、福岡市や北九州市で広域処理した。今回も既に両市のほか久留米市が受け入れを始めたが、その総量も不透明だ。

<無電柱化と街づくり>
PS(2017年7月20日):東京都は、*7-1のように、小池知事が公約を実現して無電柱化条例を成立させたが、無電柱化は防災・景観の両方の視点から重要なことである。また、無電柱化はコストが高くつくという主張もあるが、やる気があれば、市町村・事業者との連携やコスト削減技術の開発で可能で、既に先進国だけでなくアジア諸国も高い割合で無電柱化しており、日本の無電柱化率が異常なくらい低いのである。
 しかし、日本の地方自治体も、*7-2のように、福岡県田川市は電力自由化を受けて民間5社と新電力を設立し、電気料金削減とその収益の地域への還元で地域活性化を図るそうだ。また、佐賀県伊万里市は、*7-3のように、佐賀県西部4市5町の広域ごみ処理施設「さが西部クリーンセンター」を完成し、溶融処理で発生する熱を利用した発電や溶融物の再資源化を図っており、これは循環型社会のKeyになりながら収益を挙げる点で先進的な例だ。
 さらに、*7-4のように、地方交付税が不要な不交付団体は76自治体で、2017年度は5年ぶりに減少したそうだが、地域電力供給や電線地中化で水道管に電線を併設し、電気料金や配電料金を税外収入として収益源にすればよいと思われる。


 世界の無電柱化率 日本の無電柱化率   災害時の電柱   景観への電柱と電線の影響

*7-1:http://www.sankei.com/politics/news/170608/plt1706080018-n1.html(産経新聞 2017.6.8 11)東京都が全国初の無電柱化条例成立 小池知事の公約実現、9月施行
 都道上への電柱新設を原則禁止することを柱とした「無電柱化推進条例」が7日、東京都議会本会議で全会一致により可決、成立した。都によると、都道府県での条例化は全国で初めて。9月1日から施行する。無電柱化は、災害時に電柱が倒壊して道路をふさぐことなどを防止する防災面の機能強化と、景観の確保が狙い。小池百合子知事が昨夏の知事選で公約に掲げていた。都は条例に基づき、無電柱化を推進する計画を策定。区市町村や事業者と連携を図るほか、無電柱化を進めるために必要なコスト削減方法の調査や技術開発に取り組む。国会では昨年末、国や自治体、事業者に無電柱化を促す法律が議員立法で成立している。

*7-2:http://qbiz.jp/article/111921/1/ (西日本新聞 2017年6月14日) 電力新時代:田川市が民間5社と新電力を設立 料金削減と収益還元で地域浮揚狙う
 福岡県田川市は13日、民間企業5社と共同出資する筑豊地区で初の地域新電力会社「Cocoテラスたがわ株式会社」を設立した。同社は九州電力などの発電事業者から卸値で電力を調達して安価で供給。電気料金削減と収益の還元で地域活性化を図る。12月からまず市の公共施設へ電力供給を開始。2020年度以降は民間企業や一般家庭にも広げる予定だ。「Cocoテラスたがわ」によると、同社からの電力供給により、市公共施設の電気料金は年間約470万円削減されると試算。同社は18、19年度に約600万円、民間への供給を始める20年度以降は年間1千万円前後の収益を見込んでいる。収益はまちづくりなどの地域振興事業などに活用する。資本金は870万円。市と小売・卸売電気事業「パシフィックパワー」(東京)、「NECキャピタルソリューション」(同)が各250万円、福岡銀行、西日本シティ銀行、田川信用金庫の3金融機関が各40万円を出資する。設立記者会見で、二場公人市長は「電力小売自由化を背景に新たなビジネスに挑戦する。公共施設の電気料金削減とともに、新会社を核に収益を地域に還元する地域活性化の新たな手法と確信している」と語った。

*7-3:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/263515 (佐賀新聞 2015年12月26日) 「さが西部クリーンセンター」が完成、循環型社会のモデルに
■溶融熱で発電、再資源化
 伊万里市松浦町に建設していた県西部4市5町の広域ごみ処理施設「さが西部クリーンセンター」が完成し25日、竣工(しゅんこう)式があった。溶融処理で発生する熱を利用した発電や溶融物の再資源化も図り、運営する県西部広域環境組合(管理者・塚部芳和伊万里市長)は「循環型社会形成の拠点」と位置付ける。1月4日から正式稼働する。県ごみ処理広域化計画に基づき、老朽化の進む伊万里市環境センター、杵藤クリーンセンター(武雄市)、有田町クリーンセンターの3施設を統合した。伊万里、武雄、鹿島、嬉野の4市と有田、大町、江北、白石、太良の5町の計24万人のごみを処理する。総事業費は約174億円で施設建設工事は約143億円。総事業費のうち国の交付金や地方債を除く約25億円が市町の負担となる。高温でごみを溶かすガス化溶融炉は計2炉で1日最大205トンを処理できる。溶融物のスラグとメタルを分離回収し、それぞれ道路舗装用材や建設機械のおもりに再利用する。溶融処理の熱で発電する蒸気タービン(3900キロワット)で施設内の電力を賄い、余剰分は売電する。不燃ごみや粗大ごみを処理する「マテリアルリサイクル推進施設」では、鉄やアルミを再資源化する。竣工式で塚部市長は「一部事務組合の設立から8年余りで竣工を迎えられたのは、地元の理解と協力のおかげ。4市5町が団結し、施設運営に取り組みたい」と述べた。

*7-4:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/447960 (佐賀新聞 2017年7月20日) 交付税不要は76自治体 17年度、5年ぶり減、税収伸び悩みが要因
 独自の税収が豊かで国から地方交付税(普通交付税)を受け取らなくても財政運営できる2017年度の自治体は、宮城県女川町など76団体の見通しであることが分かった。全体の4%に当たる。前年度より1団体少なく、減少は5年ぶり。地方税収の伸び悩みに加え、社会保障費の支出が膨らんでいることが要因。総務省が近く閣議で報告する。不交付団体の数は、景気回復により12年度の48から増え続け、16年度は77だった。17年度はこのうち栃木県上三川町、東京都羽村市、静岡県富士市、佐賀県玄海町の4市町が交付税を受け取るようになる一方、新たに宮城県女川町、埼玉県八潮市、大阪府摂津市の3市町が不交付となる。不交付の都道府県、政令指定都市は16年度に引き続き東京都、川崎市だけとなる。総務省は毎年度、自治体ごとに地方税などの収入と、事業や住民サービスにかかる支出の見込み額を比較。収入が支出を上回っている場合は不交付団体として普通交付税を配分しない。同省は、交付税を必要としない自立した自治体の拡大を目指している。しかし大企業などが立地する一部の地域を除き、大幅な増加は難しい状況だ。17年度の交付税は総額16兆3300億円。災害対応などに充てる特別交付税を除く15兆3500億円が普通交付税として配られる。

<木材のプレカット工場>
PS(2017年7月29、30日追加):唐津市佐志浜町の埋立地が空き地になっていたので、*8-1のように、「木材プレカット」事業の最大手「ポラスグループ」が新工場を完成させたのは喜ばしいことだ。伊万里市にも中国木材(http://www.chugokumokuzai.co.jp/home.html 参照)があり、2005年に国産のスギとベイマツを組み合わせた異樹種集成材「ハイブリッド・ビーム」の生産を開始し、原木集荷などに広いネットワークを持つ伊万里木材市場株式会社と、原木集荷・製材・乾燥・集成・プレカット・流通を一貫して行える木材コンビナートを形成している。そして、今回の北部九州豪雨を見ればわかるとおり、九州には良質の木材資源が多く、これを高度な技術で自動的にプレカットして付加価値をつければ、復興に使用できるだけでなく、アジアの木材の少ない地域へ輸出も可能だろう。
 また、*8-2のように、市内産材を利用して雪や風に負けない木造ハウスができたそうだ。木造といっても全体を木造にする必要はなく、上部は軽い素材の方が丈夫になるのではないかと私は思うが、専門家がしっかりと設計して標準化し、プレカットして組み立てて、安価で災害に強く、生産性の上がるハウスを作るのがよいと考える。



(図の説明:一番左のような骨組みにビニールをかぶせた農業用ハウスが作られ始めているが、災害の度に壊れるのではなく丈夫で作業が快適なハウス作りをした方がよいため、専門家の設計を標準化して自動プレカットし、左から二番目、三番目のような温室を安価に作る方法を考えた方がよいだろう。また、一番右の図のように、リビングの先を温室にすると、共働き家庭が、テラスやベランダよりも安心して洗濯物・布団を干したり、植物を育てたりできる)

*8-1:http://qbiz.jp/article/115253/1/ (西日本新聞 2017年7月29日) 唐津市に新工場完成 住宅建材加工のポラスグループ
 住宅建材加工「木材プレカット」事業の国内最大手「ポラスグループ」(埼玉県越谷市)は、佐賀県唐津市佐志浜町の埋め立て地「虹の松原ファクトリーパーク」に、新工場「レインボーフィールド(佐賀工場)」を完成させ、21日に見学会を開いた。県有地約3・8ヘクタールを購入し、鉄骨平屋の工場(床面積約1・5ヘクタール)と事務所棟を建設。コンピューター制御で建材の継ぎ手を成形するなどの機械を導入し、木造在来工法を中心とした住宅の月約300棟の生産能力を備えた。初期投資額は約20億円。社員数は33人で、うち22人を地元雇用した。九州一円の工務店や住宅建築会社に販路を求め、2018年5月までにフル稼働を目指す。さらに3〜4年内に隣接地で第2工場を建設し、生産能力を月約500棟に増強する計画。新工場は国内5カ所目で、九州では初めて。同グループは、耐震性向上に向けた構造計算サービスが強み。16年4月の熊本地震を受け、復興需要に応えようと、誘致を受けた唐津市への進出を決めた。21日は市内のホテルで完成披露パーティーも開かれ、中内晃次郎社長が「住宅事業は地域密着に徹する必要がある。地域の発展に役立つ工場になるよう考えていく」とあいさつした。

*8-2:https://www.agrinews.co.jp/p41470.html (日本農業新聞 2017年7月28日) 雪や風に負けない 木造ハウス実証 広島県廿日市市
 広島県廿日市市に木造構造のビニールハウスが登場した。市内産材を活用して大雪、台風などの影響を受けずに農業生産ができるかを実証しようと、市の事業で3月に設置。地元のJA佐伯中央が実証試験に協力し、効果を確かめる。同市が2016年度の「市産材活用モデル事業」として取り組んだ。幅6メートル、長さ25メートルで、主に市内産の杉を使う。施工費や材料費などで520万円かかった。同市飯山のJA研修農場に設置。50センチほど雪が積もる場所で、パイプハウスでは雪の重みに耐えられないこともある。JA職員が管理し、7月上旬に小ネギの種をまいた。使い勝手は通常のパイプハウスと変わらないという。費用対効果が課題だが、市は「農業の振興とともに木材の新たな需要を作っていきたい」(産業振興課)としている。

<循環型社会に捨てるものはないこと>
PS(2017年8月3日追加):大分県と同県日田市が、九州豪雨で大量に発生した流木を木材チップにして、木質バイオマス発電の燃料として活用することを決めたのはよかった。しかし、「流木の表面に付いた泥や中に含まれる水分は、細かいチップに加工する作業の支障になる可能性があるため、水分が抜きにくい根や泥は、流木を回収して搬送する過程で取り除く」というのは、都会のコンクリートの中で育って掃除すらしたことのない人の発言ではないかと思われる。何故なら、泥は水で洗い流せば落ち、水分は屋外に放置しておけば乾くからだ。しかし、チップとして燃やすには少し泥が残っていても機械に不具合を生じさせるというのなら、細かく粉砕して有機肥料にする方法もある。

*9:http://qbiz.jp/article/115641/1/ (西日本新聞 2017年8月3日) 2017九州豪雨:流木を発電燃料に 大分県と日田市 福岡からも受け入れ検討
 大分県と同県日田市は2日、九州豪雨で大量に発生した流木を木質バイオマス発電の燃料として活用することを決めた。流木は河川の復旧工事や農業の足かせになっており、順調に進めば、福岡県内の流木も受け入れる方針だ。国土交通省の推計によると、大分県内の流木は日田市の大肥川や花月川の流域で約2万立方メートル。県や日田市は県建設業協会などの協力を得て流木を回収し、木質バイオマス発電の燃料となる木材チップを加工する「日本フォレスト」(日田市)に処理を委託する。同社は1年間に大分県の流木量以上の処理が可能で、木材チップは県内や九州一円の発電事業者に販売する。流木の表面に付いた泥や中に含まれる水分は、細かいチップに加工する作業の支障になる可能性がある。このため水分が抜きにくい根や泥は、流木を回収し、搬送する過程で取り除く。福岡県内の流木は朝倉市を中心に約19万立方メートルと推計(国交省)され、県などが処分後の活用策を検討している。大分県循環社会推進課の担当者は「日田市で発生した流木の処理を優先するが、隣県としてできるだけの協力をしたい」と話した。

| 経済・雇用::2016.8~ | 02:45 PM | comments (x) | trackback (x) |
2017.6.30 日本は、まだ男女平等の国になっていないこと (2017年7月1、2、7、28日、9月9、25日追加)
   

(図の説明:一番右の図のように、女性は第一子出産前後に離職し、その後は非正規労働者になるケースが多い。また、女性正規労働者の賃金水準も男性正規労働者より低い。さらに、一番左の図のように、女性は正規労働者の割合が低い上、真ん中の図のように、女性非正規労働者の賃金も男性非正規労働者より低くなっており、自発的に非正規労働者を選んでいる人は少ない)

   

(図の説明:一番左の図のように、日本の国会議員に占める女性割合は、2014年10月時点で、世界で134位と著しく低い。そして、地方議会議員に占める女性割合は、左から2番目の図のように、ばらつきがあるものの国会議員より低い地域も少なくない。さらに、右から2番目の図のように、民間企業の部長に占める女性割合はもっと低い。これは、女性に対する偏見・差別によるところが大きいため、一番右の図のように、ポジティブアクションが認められた。なお、非正規労働者は、私が中心となって進めていた1997年男女雇用機会均等法改正に合わせて増やされ始め、そこには、男女雇用機会均等法で護られない労働者を作り、雇用形態の違いを理由に差別を合理化する狙いがある)

(1)豊田真由子衆議院議員への批判に含まれるジェンダー(社会的女性差別)について
1)女性議員を標的にした一斉報道の異常性
 NHKが、*1-1のように、週刊新潮の報道内容をそのまま伝えたのには異常性を感じた。何故なら、週刊誌は、販売部数の拡大や政治的意図により、憲法やその下位法に違反する記事をしばしば書いているからで、NHKがその記事の事実関係や法律違反を吟味せずに報道したからである。その後、他のテレビ局も、原因を不問にしたまま、豊田議員の発言や行動のみを取り上げて暴言・暴力などと批判し、私はそれに違和感を感じた。

 何故なら、*1-4のように、豊田議員の元秘書は、故意か過失か支持者に送る多数のバースデーカードの宛名を違えて発送し、豊田議員が謝罪行脚をする羽目になった途中の高速道路で出入り口を違えてアポイントメントの時間に遅れさせているからで、これにより豊田議員は「これ以上、私の評判を下げるな」と大声で怒鳴っているようだからである。そして、ここまでひどいのなら、故意でなければ使い物にならない間抜けな秘書である。一般企業に例えれば、請求書を間違った得意先に送った上、忙しい社長に得意先に謝罪に行かせ、その約束の時間を遅刻させるのと同じで、着いた時には得意先は烈火のように怒っており、得意先を失うということだ。

 さらに、この元政策秘書は、*1-2のように、「(自分で録音しているのだから)運転中でもあるので」と懇願するように言い、その後、録音した音声を週刊新潮に持ち込み、埼玉県警にも暴行被害に関する相談をしている。これは、秘書側に何らかの怨念が溜まっていたとしても、豊田議員を次回の選挙で落選させるための悪意の業務妨害だ。なお、デジタルデータの音声は、録音した後で編集することも可能であるため、豊田議員が一度に言った言葉であるとも限らない。そして、注意しなければならないのは、自民党が共謀罪を成立させたおかげで、今後は、内部の人が裏切らなくても、聞きたい人物の音声を警察が自由に盗聴して編集し、使うことができるようになったということだ。

 もちろん、相手が著しいミスをしたからといって、そのミスをただすのではなく、*1-1、*1-5に書かれているように「はげ」「死ねば?」「生きている価値ないだろ」などと、人格を否定するような暴言を浴びせるのは批判の仕方が悪すぎる。しかし、日本では、メディアも、政策や業務の不適切性を指摘して批判するのではなく、人格攻撃にすり替えることが多いため、残念ながら豊田議員が特殊なわけではない。

 なお、*1-1で述べられているように、週刊新潮は、豊田議員は「政策秘書を務めていた年上の55歳の男性が運転する車の中で、事務所でのミスを理由に後部座席から繰り返し殴るなどの暴行を加え、顔や背中などにけがをさせた」と書いているそうだが、仕事での上下関係に年齢や男女の区別はないため、この表現は年齢差別であり女性差別だ。また、車の運転中に後部座席の女性に素手で殴られて顔を怪我する人はいないため、表現が誇大である。そして、*1-5の「元秘書が暴行について埼玉県警に被害相談した」というのも、自分の二重ミスか故意の嫌がらせを棚に上げての逆切れだ。

2)「部下が次々に辞める」というのは、「部下を使えない」として女性リーダーを批判する場合の定石である ← 部下が辞めたからといって使い方が悪いとは限らない
 豊田議員の事務所関係者がNHKの取材に対し、*1-1のように、事実関係を認めた上で、「豊田議員は、ちょっとしたことで、すぐ怒鳴ったり、人格否定発言をする。普通の人が我慢できるレベルではないので、秘書が次々に辞めていく」と話しているそうだが、秘書は税金から給料を支払われて重要な仕事もする筈であるのに、複数のレターの住所・氏名を間違って送付したことを「ちょっとしたこと」と考え、怒った上司を非難するというのは責任感が欠如しており、それだからこそ、怒鳴られているのである。

 にもかかわらず、「部下が次々に辞めるのは、上司が厳しすぎるためで、上司の方が悪い」という論理がまかり通るようであれば、国会議員事務所の仕事は、いい加減で信頼できないものばかりになるだろうが、国民はそれでも秘書や国会議員に税金を払い続けたいだろうか。

3)園遊会に母親を入場させようとしたのは間違いか
 *1-3に、「豊田議員は、赤坂御苑で開かれた園遊会でも、本来招待されている配偶者ではなく、母親を入場させようとしてトラブルを起こした」と書かれている。

 しかし、私は、園遊会の招待者が配偶者に限られており、母親等の他の家族の同伴を認めないのは、夫の仕事を支えている専業主婦の労をねぎらうことを前提としており、現代には合わなくなっていると考える。何故なら、豊田議員のように、夫婦で活躍している人は、夫は独自に園遊会に出席する機会もあり、公務員である夫が妻の選挙を手伝うことはできず、母親が豊田議員の子育て・家事・選挙などを支えていると思われるからで、園遊会に母親を同伴したいと思うのは自然で親孝行でもあるからだ。

 そのため、私は、豊田議員が母親を園遊会に連れて行き、母親の入場を拒まれて抗議した気持ちはよくわかるし、園遊会の規定こそ「同伴者は、その仕事に協力した人」というふうに変えるべきだと考える。

4)政策秘書の仕事について
 毎日新聞は、*1-4のように、「政策秘書」という被害者がさせられていた仕事が、①支持者にバースデーカードを贈る宛名書きだったこと ②間違った相手への発送が分かり、議員が謝罪に行くために秘書が同行させられて運転手をしていたこと もショックだったと書いている。

 しかし、①メディアが議員の人格しか取り上げないため、国会議員が政策で勝負できず、支援者を引きつける手段としてバースデーカードを贈らなければならないこと ②秘書が間違った相手に発送して国会議員が貴重な時間を謝罪行脚に使っていること については、どう思うのだろうか。つまり、批判の仕方が片手落ちであるとともに、バースデーカードすらまともに贈れない秘書がよい仕事をできるわけがないと、私は言いたい。

 私の経験では、省庁が派遣する首相や大臣付の秘書官とは異なり、議員の政策作りを任せられるほどの政策秘書の人材は見たことがなかったし、現在もそうだろう。つまり、制度ができたからといって、労働条件の不安定な職種に難しいことを任せられるほどの人材はなかなかおらず、3人程度の公設秘書なら、電話番、運転手、選挙の準備、その他の雑用もしなければ事務所が廻らないということなのだ。

5)「あれ女性です」に含まれる“女性”に対する差別的イメージ
 麻生副総理兼財務相は、*1-6のように、自民党麻生派議員の会合で、豊田議員について「①学歴だけ見たら一点の非もつけようのないほど立派だったけど。あれ女性ですよ女性」「②(厚労省の関係者の話として)どこかで引き取ってくれないかと思ったら永田町で引き取ってもらったんですよと(言われた)」「③全国に数多くおります。(2012年衆院選で)119人もの新人が通りましたから、こりゃいろいろいるんです」と述べられたそうだ。

 しかし、①については、「女性ですよ、女性」とは、女性にどういう言動を期待しているのかを追究すべきだ。もし、年上の男性には部下でも目上のような物の言い方をし、ひどいことをされても笑顔でやさしく接し、困ったらよよと泣くことしかできない女性を期待しているであれば、それは古い型の男性の夢想にすぎないとはっきり言っておく。そして、そういう女性こそ仕事ができず、リーダーは勤まらない上、そもそも立派な学歴や職歴は得ていない。また、職場の上司は、男性が部下の父親でないのと同様に、女性も部下の母親ではないのである。

 ②については、官庁には、一見非の打ちどころのない学歴を持った人材が多く、中の人は一人でもライバルが少ない方がよいと考えているため、そういう言い方をする人も少なくはないが、それはライバルの一方的な見方にすぎないだろう。

 さらに、③については、119人もの新人が通ったからいろいろな人がいると言うのなら、多く当選すれば選挙には弱いが政策に強いなどの多様な人が当選しているため、どういう意味でレベルが低いと言っているのか不明だ。そして、未曾有(みぞう)という漢字も読めず、他にも教養が感じられない場面が多く感じられる麻生氏のレベルが高いとは言えず、これなら世襲や金持ちでなければ当選していないが、世襲や金持ちは、年金・社会保障よりも自分と関係の深い株価・贈与税に関心があり、多選されたからといって国会議員として適格性があるわけではない。

 なお、女性にどのようなイメージを持っているのかについては、多分、*1-7のように「(男性に背中を押されなければ)一歩踏み出せない女性」「挑戦しない女性」「女性だけが仕事と家庭の両立に悩まなければならないことを疑問に思わない女性」「やさしいだけで、リーダーの資質のない女性」なのだろうが、こんなことを言われたら、私だって「ふざけるな」と感じる。そして、いくら努力しても、馬鹿な男に女性蔑視を含んだ評価しかされないことが阿保らしいので、優秀な女性から辞めていくのである。

(2)女性への直接差別 → 女性・女系天皇の否定
 天皇陛下の退位を実現するための法案が、*2-2-1のように、2017年6月2日、「女性宮家」創設の検討等を盛り込んだ付帯決議を付けて衆院本会議で可決された。特例法は、皇室典範と一体との位置付けであるが、わざわざおまけのような特例法をつけずに、皇室典範自体を改正した方が、よほどスマートで手間は同じだった。

 そして、*2-2-2のように、退位特例法案は6月9日に参議院でも可決されたが、天皇は男系男子でなければならないとしたのは、今の時代に中途半端な変更だった。何故なら、遺伝子は男女平等に遺伝し、細胞質やミトコンドリアは母親から遺伝するため、女性から遺伝する形質の方が多く、男系男子でなければならないとする理由は全くないからだ。その上、伝統的には皇室の祖神である天照大神は女性で、*2-1のように、明治になってから「日本は男尊女卑の国柄で、女性天皇の夫がその上に位置してしまう」などとして男系男子と定めたもので、これは現在では合理性のない女性への直接差別だからである(「女性」というだけの理由で、機会を奪ったり、昇進を妨げたりすることを、「女性の直接差別」と言う)。

 また、国民は、女性・女系天皇に賛成する人が68%(そのうち男性は賛成72%・反対12%、女性は賛成65%・反対12%)を占めるそうだ。小泉政権下で差別なき女性・女系天皇に賛成の論拠を強く述べていたのは私だが、2005年に政府の有識者会議が女性・女系天皇を容認する報告書を提出し、当時は、女性・女系天皇に賛成する国民が85%を占めていた。

 にもかかわらず、*2-3のように、自民党右派や*2-4の保守系議員は、「男系男子が日本の伝統だ」として女性・女系天皇に反対しているのである。天皇家が男系男子を固辞して理由なき女性への直接差別を行い続ければ、国民が誇りをもって天皇を象徴と考えなくなる日が遠くないにもかかわらず、である。

(3)女性への間接差別
 北海道奥尻町で、*3-1のように、新村町長が前副町長の田中氏を再任するため、同町職員である田中氏の妻に退職を迫ったそうだが、これは、「女性だから」という理由で退職を迫ったわけではなく、「妻が退職しなければ夫を副町長として再任しない」と言って退職させたものであるため、間接差別だ。そして、この種の間接差別は実は多く、退職させられた妻に対する間接差別であると同時に、「妻が働き続ければ副町長にしない」と言われた夫に対しても間接差別しているのである。

 所得が比較的高い町職員の共働きに対して町議が批判したというのも、原因が何であれ、今の時代にあるまじきことで、「(若者に働く機会を譲るため)共働き夫婦のうち夫が昇進した際に妻が辞めなければならない」というのは、男性と変わらず、もしくはそれ以上に頑張って仕事を続けてきた女性に対し、勤労の権利(憲法27条)を侵害している。また、このようにして辞めさせるから、女性管理職や女性リーダーが少なくなるのであり、町役場は介護や保育などの生活に関係する仕事も多いことを考慮すると、この選別の仕方は政策上も問題である。

 また、総務省の調査によれば、*3-2のように、日本の研究者に占める女性割合は2016年3月末時点で15.3%と過去最高だったが、これはロシア40.3%(15年時点)・英国37.4%(14年)・米国34.3%(13年)などの半分以下であり、韓国18.9%(15年)よりも低い。

 日本で理数系の研究者を目指す女性が少ない理由は、日本女性が世界の中でも特に理数系に弱いDNAを持つのでなければ、①理数系はまだ男社会であること ②教育過程でも女性には理数系を勧めない社会の雰囲気があること ③理数系に進んでも、仕事で採用・配置・教育・退職などで女性差別されて自己実現しにくいこと ③そのため、努力とそれによって得られる能力の割に見返りが少ないと女性が判断すること などであろう。

 なお、研究者の方が一般労働者よりも拘束時間に弾力性があるため、出産・育児と研究の両立が難しいことが第一の壁ではない。

<豊田真由子衆院議員への批判に含まれるジェンダー>
*1-1:http://www3.nhk.or.jp/news/html/20170622/k10011026871000.html (NHK 2017年6月22日) 自民 豊田真由子衆院議員が秘書に暴行か
 自民党の豊田真由子衆議院議員がみずからの元秘書に暴行したなどと週刊誌で報じられたことについて、豊田議員の事務所の関係者は「本人は事実関係を認め、元秘書にそれなりに謝罪はしている」などと説明しました。自民党の豊田真由子衆議院議員は、22日発売の週刊誌で、先月、みずからの政策秘書を務めていた男性に対し、殴ったり、暴言を浴びせたりしたなどと報じられました。これについて、豊田議員の事務所から対応を一任されている、事務所の元事務局長の男性が、22日昼前、東京都内で記者団の取材に応じました。男性によりますと、先月末に豊田議員、元政策秘書と3人で、今回の問題について話し合ったということで、「豊田議員本人は事実関係を認めている。元秘書からは3日間で7回暴力を受けたと聞いていて、腕にあざが残っていた」と説明しました。そのうえで、「豊田議員は元秘書にそれなりに謝罪はしていて、今後もおわびするだけだ。豊田議員とは3日ほど会っていないが、本人はしょうすいしきって困り果てている」と述べました。豊田議員は衆議院埼玉4区選出の当選2回で42歳。厚生労働省の元官僚で、これまでに文部科学政務官などを務めています。
●週刊新潮の報道内容
 22日発売の「週刊新潮」は、自民党の豊田真由子衆議院議員が、今月18日まで政策秘書を務めていた男性に対し、繰り返し殴ったり暴言を浴びせたりしたと報じています。記事は、豊田議員はことし5月下旬、政策秘書を務めていた年上の55歳の男性が運転する車の中で、事務所でのミスを理由に後部座席から繰り返し殴るなどの暴行を加え、顔や背中などにけがをさせたとしています。さらに、男性に対して「死ねば?生きている価値ないだろ」などと人格を否定するような暴言を浴びせたほか、男性の娘を通り魔事件の犠牲者に例えるような発言をしたとしています。一方、記事の中で、男性は警察に被害届を出すことを検討しているとしています。
●事務所関係者「秘書が次々に辞めていく」
 豊田議員の事務所関係者はNHKの取材に対し、事実関係を認めたうえで、「豊田議員はちょっとしたことですぐにどなったり人格否定の発言をする。普通の人が我慢できるレベルではないので、秘書が次々に辞めていく」と話しています。
●豊田議員の暴言・暴力の音声データ
 週刊新潮がツイッターで公開した音声データには、豊田議員が激しい口調で政策秘書だった男性を罵倒しながら暴力を加えていることがうかがえる生々しいやり取りが記録されています。この音声は、先月下旬、男性が運転する車の中での豊田議員とのやり取りを録音したものとされています。音声では、豊田議員が「このハゲー、ちがうだろ、ちーがーうーだろー」と絶叫しています。そして、鈍い音がしたあと、男性の「運転中でもあるので。すみません。たたくのは」という声が続き、運転中の男性に対して豊田議員が暴力を振るったことがうかがえます。これに対し、豊田議員は「お前はどれだけ私の心を叩いてる」「これ以上、私の評判を下げるな」などと大声で怒鳴り返しています。

*1-2:https://mainichi.jp/articles/20170623/k00/00m/020/089000c (毎日新聞 2017年6月22日) ネット音声公開:男性に罵声「違うだろ」 豊田議員か
●40秒のデータには、おびえたような男性の声に、女性の罵声
 豊田真由子衆院議員と当時の男性政策秘書とのやりとりとされる音声が22日、インターネット上で公開された。「このはげ」「違うだろ」。およそ40秒のデータには、おびえたような男性に、女性が罵声を浴びせ続ける様子が記録され、合間には何かをたたくような鈍い音も入っていた。「このはげー!」。週刊新潮が公開した音声は、豊田議員とみられる女性の絶叫から始まる。「すいません」。謝罪する男性に、女性が「ちーがーうーだーろー、違うだろー!」と大声で連呼する。車内でのやりとりなのか、男性は「運転中でもあるので」と懇願するように話すが、女性の叱責は止まる気配がない。

*1-3:http://www.saga-s.co.jp/news/national/10202/440122 (佐賀新聞 2017年6月22日) 豊田議員、園遊会でもトラブル、母親入場させようと
 秘書への暴力行為などを週刊誌に報じられ、自民党本部に離党届を提出した豊田真由子衆院議員(42)が2014年4月、東京・元赤坂の赤坂御苑で開かれた園遊会に出席した際、宮内庁職員らとトラブルを起こしていたことが22日、宮内庁への取材で分かった。本来招待されている配偶者ではなく、母親を入場させようとしたという。宮内庁によると、園遊会では現職の国会議員と配偶者が招待され、母親ら他の家族らの同伴は認められていない。当日、受付の職員が豊田氏に「招待者でない方は入場できない」と説明すると、豊田氏は大声を上げて抗議し、皇宮警察が出動する騒ぎになったという。

*1-4:https://mainichi.jp/articles/20170627/dde/012/070/004000c (毎日新聞 2017年6月27日) 政策秘書のお仕事=福本容子
 「堂々としたハゲはカッコイイ運動」を細々と展開してきた筆者にとって、とりわけショッキングだった。豊田真由子衆院議員が50代の男性秘書に浴びせた「このハゲーー!」。ショッキングなことは暴言、暴行以外にもある。「政策秘書」という被害者がさせられていた仕事だ。週刊新潮の記事によると、豊田議員は、多くの支持者にバースデーカードを贈っていて、その宛名書きなどを部下にさせていた。間違った相手への発送が分かり、議員が謝りに赴く。政策秘書はミスを責められ、同行させられ、運転手をしていた。政策秘書が。彼らはその名の通り、政策の面で議員を支える専門職。昔はいなかった。誕生の背景はというと--。「事務補助員」という名で始まった日本の議員秘書はもともと地位が低いうえ、給料が税金で賄われる公設秘書は議員1人当たり1~2人とさみし過ぎた。これじゃ、いつまでも官僚に政策を握られっぱなし。アメリカの上院議員なんか、1人に平均30人以上のスタッフがいて、法案作りのプロから広報、雑用係のインターンまで、仕事が細分化されている。日本はあんまりだ、となって、1993年の法改正で、政策に専念する政策秘書の設置が決まった。年齢や勤続年数にもよるけれど、年収は1000万円にもなる。議員が直接の上司だけど、給料は税金だから、あなたや私に雇われている。その国会議員の政策能力アップに欠かせない人材が、運転手やバースデーカードのお手伝いをさせられていた。さて、豊田さんのとこだけ?政治アナリストの伊藤惇夫さんに聞いてみたら、「国会議員の政策秘書の多くが、電話番や運転手、その他雑用係をさせられている。実際の仕事と本来の仕事には、大幅なズレがあります」って。ズレは採用面でも。本来は難しい試験に合格した専門家のはずが、抜け道があり、実際は政策のプロでも何でもない人がいっぱいらしい。政策重視の議員が増えるのが先か、政策通の秘書が先か。答えは、どっちも。議員の数を減らしてでも本来の政策秘書を10倍くらいにする。彼らを立派に使いこなせない人は当選させない。絶叫を非難して終わり、じゃ変わらない。

*1-5:http://www.saga-s.co.jp/news/national/10201/441635 (佐賀新聞 2017年6月28日) 豊田氏元秘書が暴行被害相談
 秘書への暴行問題で自民党に離党届を提出した豊田真由子衆院議員(42)=埼玉4区=の秘書を務めていた50代男性が27日、豊田氏から暴行を受けたとする被害について埼玉県警に相談した。捜査関係者への取材で分かった。県警は暴行や傷害事件の可能性もあるとみて慎重に捜査する。先週発売の「週刊新潮」によると、豊田氏は5月、当時政策秘書だった男性が車を運転中に後部座席から罵声を浴びせ、頭や顔を数回殴ってけがを負わせた。「はげ」「死ねば」といった暴言も吐いたという。事務所関係者は、男性が高速道路の出入り口を間違ったことなどから豊田氏が激高したと説明。5月19~21日に計7回、男性の顔などを殴ったという。豊田氏は男性に直接謝罪したとしている。

*1-6:https://mainichi.jp/articles/20170625/k00/00m/010/119000c (毎日新聞 2017年6月25日) 麻生財務相:離党届の豊田氏「あれ女性です」 派閥会合で
 麻生太郎副総理兼財務相は24日、新潟県新発田市で開かれた自民党麻生派議員の会合で講演し、秘書への暴行問題で離党届を提出した豊田真由子衆院議員について「学歴だけ見たら一点の非もつけようのないほど立派だったけど。あれ女性ですよ女性」と述べた。豊田氏が議員になる前に勤めていた厚生労働省の関係者の話として「どこかで引き取ってくれないかと思ったら永田町で引き取ってもらったんですよと(言われた)」と語った。豊田氏を含め、不祥事が続出する自民党の衆院当選2回生に関し「全国に数多くおります。(2012年衆院選で)119人もの新人が通りましたから、こりゃいろいろいるんです」と指摘した。

*1-7:http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201703/CK2017030602000206.html (東京新聞 2017年3月6日) 女性活躍テーマにシンポ 経営者ら交流 一歩踏み出せば、新しい景色見えてくる
 女性活躍をテーマにしたシンポジウム「みんなで一歩踏み出そう!」が五日、東京都内で開かれた。男女平等推進団体「LEAN IN TOKYO」(鈴木伶奈代表)の主催。学生や社会人ら約三百五十人が参加し、経営者や管理職の女性らと交流した。「LEAN IN」は「一歩踏み出す、挑戦する」との意味で、米フェイスブックのサンドバーグ最高執行責任者(COO)の著書に由来。女性が挑戦してキャリアを積むことをテーマにした本で、彼女の考えに共鳴した鈴木さんらが昨年三月に同団体を設立した。冒頭、独自動車部品大手ボッシュ日本法人副社長の森川典子さんが、商社勤務を経て米国へ留学し、国内外の企業で働いた経験を振り返り、「自分の可能性にふたをしない。ふたをしているのは他人や周りではなく、自分自身。覚悟を決めて一歩踏み出せば、新しい景色が見えてくる」と訴えた。続くパネルディスカッションでは、管理職の女性らから「女性に働きやすい会社は男性も働きやすい。人口減少の中、(男性だけという)人口の半分で勝負したいですかと言いたい」「男女にかかわらず、国籍や能力など多様な方が成長できる」などの意見が出た。会場の参加者らは「仕事と家庭の両立に向けて準備すべきことは何か」「優秀な女性から辞めていく。どうしたらいいか」などと質問していた。

<直接差別の事例:女性・女系天皇の否定>
*2-1:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20170628&ng=DGKKZO18191360X20C17A6CR8000 (日経新聞 2017.6.28) 危うき皇位継承(2)「男系男子」は明治から
 近世まで皇位継承には成文化されたルールはなかった。古代から継承の危機は何度もあったが、厳格な枠がないゆえに柔軟に対応できたともいえる。明治期、近代国家の成立と共に歴史上初めて皇位継承の「枠組み」づくりが行われた。1876年(明治9年)に元老院が作成した第1次の「国憲」草案は継承の順序について「男は女に先ち」と男性を優先しながらも女性にも皇位継承を認めていた。79年の第3次草案も「もし止(や)むことを得ざるときは、女統入て嗣(つ)ぐことを得」としている。85~86年ごろに宮内省が立案した「皇室制規」は「皇族中男系絶ゆるときは、皇族中女系を以(もっ)て継承す」としていた。このころまで男系継承は絶対の原則という共通認識はなかったといえる。これに猛然と異を唱えたのが法務官僚の井上毅だった。井上は総理大臣兼宮内卿だった伊藤博文に提出した「謹具意見」で「女性に参政権がないのに最高権力を持つ天皇が女性であることは矛盾」「女性天皇の子は夫の姓を継ぐため、皇統が他に移る」などと女系容認を批判した。井上が論拠としたのが自由民権結社「嚶鳴(おうめい)社」が82年に主催した「女帝を立てるの可否」という討論だった。女性天皇の賛否はほぼ同数であったが、「日本は男尊女卑の国柄で、女性天皇の夫がその上に位置してしまう」という懸念は一致していた。歴史や伝統よりも、当時の社会状況が影響していた。89年(明治22年)2月11日、井上の意見を入れて第1条を「大日本国皇位は祖宗の皇統にして男系の男子、之(これ)を継承す」とした皇室典範が、明治憲法発布と同時に非公式に発表された。皇室制度に詳しい小田部雄次静岡福祉大教授は「皇位が男系でつながってきたのは確かだが、明治になって『男系男子』という枠を初めてつくって、天皇は男にしか務まらないようにした。当時は女性の社会的地位が低く、女性中心の社会に抵抗があった」と言う。皇室史をよく知る宮内庁関係者は「皇室の歴史はまず事実があって、それが慣習として続けられてきた面がある。古来、男系の原則があったなら、明治期に女系容認案がつくられなかったはずだ」と話す。そして「天皇家が他姓になるというのは理解しがたい。皇室はもともと姓がないのだから、婿入りしてきた人も姓がなくなる」と明治期の女帝否定論に疑義を示す。近代以降の皇室制度は皇位継承に窮屈な服を着せてきたともいえる。小田部教授は「飛車を守って王を捨ててしまう発想はおかしい。世襲が王、男系が飛車だ。男系に固執すると世襲制そのものがダメになってしまう」と警鐘を鳴らしている。
▼男系と女系 男系継承は男性のみで相続が続いていく