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2021.1.13~15 年が明けても明けなかったコロナ禍と分散型社会の必要性 (2021年1月17、18、20、21、22、24日追加あり)

  2021.1.7Reuters       2020.12.16NHK       2021.1.7NHK

(1)都市と新型コロナ
1)伝染病の感染拡大は人口密度との相関関係が大きいこと
 新型コロナの感染拡大に歯止めがかからないとして、*1-1のように、東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県の首都圏1都3県に対し、1月7日に緊急事態宣言の再発令が決定された。

 そして、1月9日には、*1-2のように、大阪府・京都府・兵庫県の関西圏が緊急事態宣言の要請を決定し、*1-3のように、政府は1月13日に、中部の愛知、岐阜2県と福岡、栃木両県を緊急事態宣言に追加するそうだ。

 緊急事態宣言による規制内容は、*1-5に記載されているが、その是非については、これまでも記載してきたので省略する。しかし、新型コロナは全国的に都市部を中心に新規感染者数が増加して医療提供体制が逼迫すると言われているが、都市部には大病院もホテルも多いため、この数カ月、政府や地方自治体は何をしていたのかと思う。

 なお、日本の都道府県別人口・面積・人口密度のランキングは、*1-7のとおりで、最初に緊急事態宣言の再発令が決定された首都圏1都3県の人口密度は、1位:東京都・3位:神奈川県・4位:埼玉県・6位:千葉県だ。次に、緊急事態宣言の要請を決定した関西圏は、2位:大阪府・8位:兵庫県で、その次に中部圏の5位:愛知県が続く。そのほかに感染者が多い県は、7位:福岡県・9位:沖縄県だ。

 そのため、(当然ではあるが)人口密度と感染症は密接な関係のあることがわかり、そうなると都道府県でひとくくりにして緊急事態宣言を行うのもやりすぎで、医療圏(or生活圏)を構成する市町村単位でよさそうだ。例えば、東京都にも小笠原村や伊豆大島があり、北海道にも札幌市(その一部「すすきの」)があるという具合である。

 しかし、人口密度の高い都市部には大病院やホテルも多いため、これまで何の準備もしていなかったのでは不作為と言わざるを得ない。また、都市部には、節水しすぎて流水でまともに手も洗えないような施設が多いが、「流水と石鹸でよく手を洗わず、アルコールを手にこすりつけさえすればよい」などというメッセージを発しているのは異常であり、そのような手で触った食品や食器は不潔なのである。

2)人口の集中しすぎがいけないので、分散型社会へ
 都市部に異常なまでの節水をして流水でしっかり手を洗えないような施設が多いのは、節水をよいことであるかのように思っているふしもあるが、人口増による水不足で水道水の単価が高くなっているせいもある。その一方で、地方には、せっかくある水道事業が成り立たなくなるほど過疎化した地域もあり、もったいない。

 そのため、*1-6のように、「東京一極集中をコロナを機に是正する」というのに、私は賛成だ。人口が集中し過ぎているのが首都圏だけでないことは、関西圏・中部圏の人口密度を見てもわかり、過度な人口集中は是正すべきだ。そして、それは、住民を誘致したい地方自治体が国に働きかけながら、仕事やインフラを準備しつつ行うのが効果的だと考える。

 なお、地方の仕事には、企業や工場の誘致だけでなく、*1-8のように、農業や食品加工業もある。また、*1-4のように、外国人のビジネス関係者もおり、全入国者に出国前72時間以内の陰性証明書を求めて空港での検疫も強化すればかなり安全だが、これまで空港では検査しなかったり、検査で陽性が判明しても行動制限をしなかったりしたのが甘すぎたと思う。

(2)地方と仕事
 *2-1も、「①大都市圏への人口集中を是正し、地方に人が住み続ける分散型社会を構築することは、持続可能な国土づくりに不可欠」「②都市を志向する価値観が変化し、自然豊かな環境や人との繋がりを求めて地方移住を考える人が増加」「③移住促進で必要なのは仕事の確保」「④政府は分散型社会の姿を描き、実効ある施策を講じるべき」としており、このうち①については、全く賛成だ。

 地方には豊かな資源を利用した農林漁業や食品加工業などの重要な産業があるのに、人手不足の危機に瀕している。また、観光・体験・研修等の分野と連携した新しいビジネスの展開もでき、再エネ発電を農林漁業地域で展開すれば、その地域に仕事ができると同時にエネルギー自給率が上がるため、②③も自然な人の流れにできるのである。従って、④のように、国や地方自治体が福祉・教育・交通などのインフラ整備を後押しして、地方分散を進めるべきだ。

 なお、都市から農村への移住は、移住者を受け入れた側がよそ者として排除するのを辞め、都市育ちの人のセンスを活かしながら共生すればよい。そもそも、戦後教育を受けて農村から都市に移住した世代には、ムラ社会の封建性から逃れて自由になり、新しい挑戦をするために都市に出た人が多い。しかし、今では農村でもその世代が“高齢者”と呼ばれているので、都市の若者が農村に移住しても楽しく共生できると思うのである。

 2021年1月9日、日本農業新聞が論説で、*2-2のように、「⑤自立する地域を協同組合が主導しよう」というメッセージを発信している。確かに、「⑥地方への移住者の定着支援」「⑦仕事づくり」「⑧安心して暮らせる地域社会づくり」などで農業協同組合にできることは多く、地元自治体と連携して全国から多くの新規就農者を呼び込んでいるJAもある。これは、多くの地域で参考にしたいことである。

(3)エネルギーも分散型へ
1)エネルギーの変換
 毎日新聞が、*3-1のように、「脱炭素は社会貢献でなくなった」と題して、「①アップル向け製品には、再エネ使用が最低条件」「②恵和は和歌山の製造拠点で使用電力の3分の1を再エネに切り替え、電気代が1割程度上がった」「③アップルは2030年までに、サプライチェーンを含む事業全体でカーボンニュートラルを達成すると宣言した」と記載している。

 私は、③の宣言をしたアップルは偉いが、②のように、アップルから言われて仕方なく使用電力の3分の1を再エネに切り替えた日本企業やいつまでも再エネに切り替えると電気代が上がると言っている日本政府・メディアは情けないと思う。そして、これも、新型コロナと同様、不作為によるものなのだ。

 このように、環境意識の低い日本政府や日本企業に対し、取引先の海外企業から再エネ導入圧力が強まるのは大変よいことで、これまでの誤った政策により、出遅れた日本の再エネによる発電コストは下がっていないのだ。これには、産業だけでなく、国民も迷惑している。

 そのため、取引先企業だけでなく、投資家も再エネ使用を進めている企業に投資するような投資判断をすれば、企業の行動は大きく変わる。そして、これは、日本にとって、エネルギー自給率を上げ、エネルギーコストを下げる成長戦略そのものなのである。

2)移動網について
 ヨーロッパ横断特急が復活し、*3-2のように、2020年12月、欧州4カ国の鉄道事業者が13都市を結ぶ夜行列車ネットワークをつくることで合意して、順次整備を進めるそうだ。その理由は、航空機のCO₂排出量は、鉄道の5倍に達するからだそうだが、ヨーロッパ横断特急も楽しみではあるものの、航空機も水素で動かすべきであり、欧州の航空機大手エアバスは、2035年には温暖化ガス排出ゼロの液化水素を使う航空機を実用化すると既に宣言している。

 日常生活を支える自動車についても、2025年には電動の垂直離着陸機が商用化されるそうだ。また、2030年以降にEVが過半数になればガソリン車より部品が4割減少して参入障壁が下がり、他産業からの参戦も増えて、自動車の価格は現在の5分の1程度になるとのことである。そのため、このリセットの時代に、従来の方法を守り続けるだけの企業に投資していれば、元手を紙くずにすることになるため、機関投資家も投資先をよく選別しなければならない筈である。

3)原発について
 このような中、*3-3のように、原発の再稼働を画策している経産省と大手電力は、未だに「原発はコストが安い」と言っているが、日本の商業原子力発電は日本原発(株)が1966年7月に東海発電所で営業運転を開始し、それから54年半も経過しているのに、まだ1974年に制定された「電源開発促進税法」「電源開発促進対策特別会計法」「発電用施設周辺地域整備法」などの電源三法交付金制度により、立地自治体に電力使用者の負担で補助金を支払っているのだ。

 原発の立地自治体は、原発が危険だということはわかっているから補助金をもらわなければ立地させないのだが、補助金をもらっても見合わないことはフクイチで既に証明済で、そのような状況は早く卒業するにこしたことはないのである。電力の使用者にとっても、余分な負担だ。

 その上、耐用年数が40年とされていた原発を65年に延長したり、新しい原発を建設したりする動きがあるが、「原発はコストが安い」と主張する以上は電源三法交付金を廃止した上で、それでも稼働させる自治体を探すべきであり、そうしなければ再エネと公正な競争にはならない。

 現在稼働している九電の玄海原発と川内原発も、周囲は豊かな農林漁業地帯であり、事故を起こせばそれらの財産をすべて失うリスクを背負っている。にもかかわらず、まだ稼働させるという意思決定をしたいのなら、(最初の商業運転から54年半も経過している原発であるため)すべてを自己責任で行うこととして、その結果によりエネルギーの選択と集中を進めるべきである。

(4)再生医療
1)日本における再生医療研究の経緯
 1995年頃、私は、JETROの会合で、当時、日本では行われていなかったゲノム研究が海外では行われているのを見て、種の進化から考えればヒトの再生医療もできる筈だと思い、経産省(当時は通産省)に再生医療の研究を提案した。そして、日本でも遺伝情報や再生医療の研究が始まり、2005~2009年の私の衆議院議員時代に、文科省、厚労省、経産省などの省庁が協力して再生医療の研究を進めることになったのである。

 そして、この経過の中で、山中伸弥氏が2006年にマウスで、2007年にヒトでiPS細胞の作製に成功され、2012年10月8日に、ノーベル賞受賞が決まった(https://www.cira.kyoto-u.ac.jp/j/pressrelease/other/121008-183500.html 参照)。

 なお、理論上は、ヒトES細胞からクローン人間を作成することもできるが、それを行うためには他のヒト胚の核を抜いて使うため、人の生命の萌芽であるヒト胚を滅失させるという問題があるとされる。しかし、私は、受精後のヒト胚は生命の萌芽と言えるが、未受精卵は体細胞の一種であり生命の萌芽とは言えないため、治療用に使うのはアリだと考える(https://spc.jst.go.jp/hottopics/0812saisei/report05.html 参照)。ただし、本人の同意もなく、同じ遺伝情報を持つ別の人を作るのは、倫理上の問題が大きいので禁止すべきだ。

 一方、家畜の場合は、ES細胞を使って、1997年に英国で世界初の体細胞クローンヒツジ「ドリー」が誕生したのをきっかけに、日本でも体細胞クローン生物の研究が牛を中心に進んでおり、1998年に世界初の体細胞クローン牛が誕生し、現在までに約360頭の体細胞クローン牛が誕生したそうだ(http://ibaraki.lin.gr.jp/chikusan-ibaraki/16-06/04.html 参照)。

2)再生医療から再生・細胞医療・遺伝子治療へ
 私が考えていた再生医療は、「大人になると、再び増殖して回復することはない」とされる臓器を再生することで、例えば、心臓・腎臓・脊髄・永久歯などが典型的だが、研究が進むにつれて応用範囲が広がるのは当たり前であるため、倫理上の問題がなければ、最初の定義以外のことはやってはいけないなどということはない。

 しかし、日本では再生医療の研究開始から20年も経たないうちに、「選択と集中」としてiPS細胞の研究のみに限ったのが、間違いだった。商業運転が開始されてから54年半も経過している原発とは異なり、再生医療の研究は基礎研究が始まったばかりでわかっていないことの方がずっと多いのに、原発には未だに膨大な国費を投入しながら、再生医療には「選択と集中」を適用したのが大きな誤りで、何をやっているのかと思った。

 そして、*4のように、他人のiPS細胞から作った「心筋シート」も使えるかもしれないが、「心筋シート」は本人の足の筋肉やES細胞を使っても作ることができ、こちらの方が遺伝情報が同じで拒絶反応がないため、より安全なのである。

 また、免疫細胞による癌治療も、癌細胞だけを選択的に攻撃するので化学療法や放射線治療より優れた可能性を持ち、大量に作って使えば薬の値段は下がるのに、厚労省は未だに副作用が強すぎる上に生存率の低い化学療法・放射線治療・外科療法を標準治療とし、免疫療法は標準治療では効かなくなった人にのみ適用するなどという本末転倒のことをしている。

 そのため、必要で成功確率の高い研究に国費を投入するのは、国民を幸福にしながら行う成長戦略であるにもかかわらず、役に立つことをしないで起こった不幸な出来事に血税から無駄金をばら撒くことばかりを考えているのは、どうしようもない政府・議員・メディアであり、これは首相を変えれば解決するというような生易しい問題ではない(https://spc.jst.go.jp/hottopics/0812saisei/report05.html 参照)。

・・参考資料・・
<都市と新型コロナ>
*1-1:https://jp.reuters.com/article/japan-state-of-emergency-idJPKBN29B315 (REUTERS 2021年1月7日) 緊急事態宣言、1都3県に再発令へ 東京1日500人が解除基準と西村氏
 新型コロナウイルスの感染拡大に歯止めがかからない中、政府は7日夕に緊急事態宣言の再発令を決定する。対象地域は首都圏の1都3県で、期間は1カ月。飲食店を中心に営業時間の短縮を要請するほか、大規模イベントの開催条件も厳しくする。西村康稔経済再生担当相は、東京なら1日の新規感染者が500人まで低下することが解除の判断基準とした。政府は7日午前、専門家に意見を聞く諮問委員会を開催。西村康稔経済再生相は宣言の対象を東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県にし、期間は1月8日から2月7日とする方針を諮り、諮問委で了承された。午後に衆院議院運営委員会で説明した西村氏は、解除の判断基準について、「東京に当てはめると新規陽性者が1日500人」と述べた。東京都が発表した7日の新規感染者は2447人と、初めて2000人を超えた。政府は夕方に対策本部を開き、菅義偉首相が発令を宣言する。その後に記者会見を開いて理由などを説明する。7都府県で開始した昨春の緊急事態宣言とは異なり、今回は感染者が特に急増している首都圏の1都3県に対象を絞る。菅政権は飲食時の感染リスクが高いとみており、飲食店に対し午後8時までの営業時間短縮を要請する。酒類の提供は7時までとする。国内メディアによると、協力に応じた店舗への補償金を現在の最大4万円から6万円に上積みする一方、政令を改正し、知事の要請に応じない店の名前を公表できるようにする。劇場や遊園地には午後8時の閉園を求め、スポーツやコンサートなど大規模イベントは最大5000人に制限する。昨年4月7日に始まった前回は、途中から全国へ対象を拡大。5月25日の全面解除まで、テレワークの徹底や外出自粛が呼びかけられ、百貨店や映画館などが休業、イベントも中止された。西村担当相は7日午前の諮問委員会で、解除基準について、最も深刻な現状のステージ4から「ステージ3相当になっているかも踏まえ総合的に判断する」と説明したが、政府分科会の尾身茂会長は5日夜の会見で「宣言そのものが感染を下火にする保証はない。1カ月未満でそこ(ステージ3)までいくことは至難の業だと思う」と指摘している。国内の新型コロナ感染者は昨年末から急増。厚生労働省によると、今月5日には4885人、6日には5946人の感染が新たに確認され、連日最多を更新している。

*1-2:https://www.nikkei.com/article/DGXZQOHC080QK0Y1A100C2000000/ (日経新聞 2021/1/8) 大阪・京都・兵庫、緊急事態宣言要請を決定 9日にも伝達
 吉村洋文知事は8日午後の対策本部会議で「この2日間で急拡大している。首都圏と同様の対策を今の時点でとるべきだ」と述べた。京都府の西脇隆俊知事は8日の記者会見で「人口10万人あたりの新規感染者数は京都も高水準にあり、早めの手を打つ必要がある」と話した。年末の忘年会などで若者を中心に感染が広がったことへの危機感を背景に、要請に慎重姿勢を示していた吉村氏は一気に方針転換に傾いた。大阪府内の新規感染者数は8日まで3日連続で過去最多を記録した。12月上旬から年末までは減っていた1週間の累計感染者数は年明けに一変。1月1~7日は前週比1.38倍に急増した。クリスマス会や忘年会など、年末年始のイベントによる感染事例が多かったという。特に感染が広がったのは20代だ。人口10万人あたりの20代の新規感染者数は、大阪市内では約5人(4日時点)から約17人(7日時点)に増えた。行動範囲が広い若者への感染拡大は、さなる感染拡大の「火種」となる。府内ではもともと高齢者の感染者が多く、重症病床の使用率は7割と高止まりしており、府は事態悪化になんとか歯止めをかけたい狙いがあったとみられる。一方で、大阪府内では東京都よりは感染拡大が抑えられているとも言える。政府の分科会が感染状況を判断する6指標では、府は6日時点で陽性率の指標を除いて5指標が最も深刻な「ステージ4」の段階だ。東京都は全てで「ステージ4」を上回っている。療養者数や1週間の感染者数では、大阪府は東京都の6割程度の水準だ。政府はこうした状況も踏まえ、府などと協議を進めるとみられる。

*1-3:https://www.nikkei.com/article/DGXZQODE1234V0S1A110C2000000/?n_cid=BMSR3P001_202101122212 (日経新聞 2021/1/12) 緊急事態、福岡・栃木も 関西・中部5府県と13日発令
 政府は13日、新たに7府県を緊急事態宣言に追加する。関西圏の大阪、兵庫、京都の3府県と中部の愛知、岐阜2県、福岡、栃木両県だ。8日から宣言期間に入った首都圏とあわせて対象は11都府県になる。新型コロナウイルスの感染が広がっているため。対象自治体の知事は午後8時以降の営業や外出の自粛を要請する。全国的に都市部を中心に新規感染者数が増加し、医療提供体制が逼迫する懸念が出ている。政府は宣言への追加を要望した自治体について、13日に専門家の意見を聞いた上で対象に加える。福岡は要請していないが感染拡大の懸念が強いため追加する。期間は7日に宣言を発令した東京、神奈川、埼玉、千葉の1都3県と同じ2月7日までにする。対象地域の知事は新型コロナに対応する新型インフルエンザ対策特別措置法に基づき、法的根拠を持って様々な要請ができる。対象地域では感染リスクが高いとされる飲食店の時短や、不要不急の外出の自粛を徹底する。首都圏と同様に営業時間は午後8時まで、酒類の提供は午前11時から午後7時までとするよう求める。従わない店舗は特措法に基づき、知事が店舗名を公表できる。要請に応じた店舗には1日最大6万円まで協力金を支払う措置を講じる。菅義偉首相は12日、宣言の対象地域では飲食店の時短、午後8時以降の不要不急の外出自粛、イベントの人数制限、テレワークによる出勤7割削減をするよう求めた。「4点セットの対策で感染を抑え込んでもらいたい」と述べた。スポーツやコンサートなどのイベントは参加者数を最大5千人、収容人数では50%を上限に定める。自治体によっては、劇場や映画館、図書館や博物館といった大規模施設にも午後8時までとするよう呼びかける。宣言解除の基準も首都圏と同じにする予定だ。専門家で構成する政府の新型コロナ対策分科会がまとめた4段階の感染状況のうち最も深刻な「ステージ4」から「ステージ3」への脱却が目安となる。新規感染者数や療養者数、病床の逼迫度合いなど6つの指標を総合的に判断する。感染者数は「直近1週間の人口10万人あたり25人以上」を下回る必要がある。首相は12日、首相官邸で1都3県知事と会談し「迅速に情報共有し具体的な要望などに対して調整していく」と表明した。1都3県と事務レベルの連絡会議を設置する。首相は医療提供体制にも言及し、各知事に国の支援策を活用するよう求めた。新型コロナに対応する病床を増やすため「医療機関への働きかけなど先頭に立ってほしい」と訴えた。東京都の小池百合子知事は「1都3県は海外からの流入も多い」と指摘し、水際対策の厳格化を政府に要望した。政府は13日午後に専門家による基本的対処方針等諮問委員会に地域の追加を諮る。諮問委が妥当だと判断すれば、同日中に西村康稔経済財政・再生相が衆参両院の議院運営委員会に報告した後、政府の対策本部で首相が対象地域の追加を決める。再発令から1週間足らずで対象地域が拡大し、期限の2月7日に予定通り解除できるかは見通せない。昨年春に初めて発令した際は4月7日に発令後、同月16日に対象を全国に広げた。5月4日に期限を一度延長したうえで、全面解除は5月25日までかかった。都市部以外での感染が広がれば、対象地域はさらに増える可能性もある。

*1-4:https://digital.asahi.com/articles/ASP187R6HP18UTFK01B.html?iref=comtop_7_04 (朝日新聞 2021年1月8日) 全入国者に陰性証明求める 中韓などは入国継続維持
 菅義偉首相は8日夜、テレビ朝日の番組で中韓を含む11カ国・地域を対象にしたビジネス関係者などの入国継続を表明した。政府はこれにあわせて、日本人を含めた全入国者に出国前72時間以内に陰性を確認した証明書を求める、空港での検査を強化するといった検疫強化策を発表した。これにより全入国者について、それぞれの国・地域の出国前と日本への入国時の2回、陰性を確認することになる。首相の入国継続方針に対しては、与野党に加えSNS上でも批判が殺到していた。このため入国継続は維持する一方、検疫強化に乗り出した格好だ。首相は番組で11カ国・地域からの入国を止める考えはないか問われ、「安全なところとやっている」と強調。そのうえで新型コロナの変異ウイルスの市中感染が確認されるまで、受け入れを続ける方針を示した。空港検査の強化は、入国拒否対象以外からの入国者にも、空港での検査を実施するというもの。政府は約150カ国・地域を入国拒否とし、全入国者に空港で検査している。11カ国・地域のうちマレーシア以外は11月に入国拒否対象から除外され、空港での検査をしていなかった。

*1-5:https://www.agrinews.co.jp/p52857.html (日本農業新聞 2021年1月8日) [新型コロナ] 緊急事態再宣言 1都3県、来月7日まで 飲食店午後8時まで一斉休校は要請せず
 政府は7日、新型コロナウイルス感染症対策本部を首相官邸で開き、東京都と埼玉、千葉、神奈川の3県を対象に、コロナ特別措置法に基づく緊急事態宣言の再発令を決めた。期間は8日から2月7日までで、感染リスクが高いとされる飲食店などへの営業時間の短縮要請が柱。小中高校の一斉休校は求めないが、外食やイベント需要の減少などで農産物の価格に影響が出る可能性がある。宣言発令は昨年4月以来2回目。首都圏の感染拡大が止まらず、医療提供体制が逼迫(ひっぱく)していることを踏まえた。菅義偉首相は対策本部後の記者会見で「何としても感染拡大を食い止め、減少傾向に転じさせるため、緊急事態宣言を決断した」と述べた。コロナ対策の新たな基本的対処方針では、飲食店に対し、営業時間を午後8時までに短縮し、酒類の提供は午前11時から午後7時までとするよう要請。応じない場合は店名を公表する一方、応じた場合の協力金の上限は、現行の1日当たり4万円から6万円に引き上げる。宅配や持ち帰りは対象外とした。大規模イベントの開催は「収容人数の50%」を上限に「最大5000人」とする。午後8時以降の不要不急の外出自粛も求める。出勤者数の7割削減を目指し、テレワークなどの推進を事業者らに働き掛ける。宣言解除は、感染状況が4段階中2番目に深刻な「ステージ3」相当に下がったかなどを踏まえ「総合的に判断」するとした。西村康稔経済再生担当相は同日の衆院議院運営委員会で、東京に関しては、新規感染者数が1日当たり500人を下回ることなどが目安との認識を示した。政府は対策本部に先立ち、専門家による基本的対処方針等諮問委員会を開き、西村氏が宣言の内容などを説明し、了承された。その後、西村氏は衆参両院の議院運営委員会で発令方針を事前報告した。政府は昨年4月7日、東京など7都府県を対象に緊急事態宣言を発令し、16日には全国に拡大した。5月25日に全面解除したが、農畜産物では、飲食店やイベントの需要の激減で、牛肉や果実、花などの価格が下落した。政府は、コロナ対策を強化するため、特措法の改正案を18日召集の通常国会に提出する方針だ。
●業務需要減加速の恐れ
 緊急事態宣言が再発令されることを受け、流通業界や産地では農畜産物取引への影響が懸念されている。飲食店向けや高級商材はさらに苦戦する様相。一方、家庭消費へのシフトが進んでおり、対象地域が限られることから、前回宣言時ほどの打撃にはならないとの声もある。品目、売り先で影響の大きさが異なる展開になりそうだ。米は、春先のようなスーパーでの買いだめは現状、起きていない。しかし、飲食店の営業縮小で業務用販売は厳しさが増す見通しで、JA関係者は「今も前年水準に戻り切れていない。在宅勤務が増え、米を多く使う飲食店の昼食需要までなくなる」と警戒する。青果物は、飲食店の時短営業で仕入れに影響が出てきた。東京都の仲卸業者は「7日から注文のキャンセルが出た。多くの店が休んだ前回の宣言時ほどでなくても、1件当たりの注文量はがくっと減る」と懸念する。果実は、大手百貨店が営業縮小する方針で、メロンなど高級商材を中心に販売が厳しくなるとの見方で出ている。鶏卵は加工・業務需要が全体の5割を占めるため、飲食店の時短営業の拡大による販売環境の悪化が予想される。切り花は、葬儀や婚礼の縮小、飲食店の休業や成人式などイベントの中止で業務需要が冷え込むため、「相場は弱もちあいの展開が避けられない」(花き卸)見通し。長引けばバレンタインデーの商戦に影響するとの懸念もある。一方、牛乳・乳製品は家庭用牛乳類の販売好調が続く。緊急事態宣言再発令で業務需要はさらに減少する恐れがある。だだ、「前回のような全国一斉休校がなければ加工処理量の大幅な増加はない」(業界関係者)との観測も広がる。食肉は各畜種ともに内食需要の好調が継続しそうだ。豚肉、鶏肉は前回の緊急事態宣言以降、価格が前年を上回って推移しており「国産は在庫も少なく、引き続きスーパー向け中心に引き合いが強まりそう」(市場関係者)。和牛は外食から内食へのシフトが進んでおり、「外食向けの上位等級は鈍化するものの、3、4等級は前回のような大きな落ち込みはない」(都内の食肉卸)との見通しだ。

*1-6:https://digital.asahi.com/articles/DA3S14754956.html?iref=comtop_Opinion_04 (朝日新聞社説 2021年1月7日) 東京一極集中 コロナ機に是正に動け
 新型コロナ禍は日本が抱える多くの問題を改めて浮き彫りにした。そのひとつに都市部、とりわけ東京への一極集中が生み出すひずみがある。人が大勢いるところで感染症は猛威をふるう。この災厄を、かねて指摘されてきた過度な人口集中の是正に、社会全体で取り組むきっかけとしたい。変化のきざしはある。総務省によると、東京都から転出した人は昨年7月から5カ月連続で転入者を上回り、計約1万7千人の転出超過となった。全体からみればまだ微々たる数字でしかない。しかしテレワークが普及し、仕事の内容によってはあえて過密の東京に住む必要がないこと、通勤に要する時間を家族や地域の人々との交流、趣味などにあてれば人生が豊かになることを、多くの人が身をもって知った。人口集中がもたらす最大のリスクが災害だ。東京の下町で大規模洪水があれば250万人の避難が必要となる。おととしの台風19号の際、広域避難の呼びかけが検討されたが、これだけの人数を、どこへどうやって移動させるか、改めて課題が浮上した。その後、政府の中央防災会議の作業部会も具体的な答えを示せていない。30年以内に70%の確率で起こるとされる首都直下地震や、南海トラフ地震などへの備えも怠れない。一方で人口の分散は、近隣自治体にとっては住民を呼び込み、まちに活気を取り戻す好機でもある。例えば茨城県日立市は、市内への移住者に最大約150万円の住宅費を助成するなど、テレワークの会社員をターゲットに優遇措置を講じる。県が都内に設けた移住相談窓口の利用は前年比で5割増えたという。昨年8月に合同でテレワークセミナーを開いた山梨、静岡両県は首都圏と名古屋圏双方への近さをアピール。移住者の経験談を織り交ぜながら「心のゆとりや歴史、文化との出会いを」と呼びかけた。脱東京といっても行き先は周辺県にとどまる例が多いが、視線をもっと遠くに置いてもいいのではないか。内閣府が昨年5~6月に行ったネット調査によると、3大都市圏に住む人で地方移住への関心が「高くなった」「やや高くなった」と答えた人は、東京23区の20代で35・4%、大阪・名古屋圏の20代でも15・2%にのぼった。こうした声に合致する施策の展開が求められる。一極集中の是正こそ多様なリスクの低減につながるとの視点に立ち、防災すなわちインフラ整備といった旧態依然の政策のあり方を見直す。そのための議論が国会、自治体、企業などの場で深まることを期待したい。

*1-7:https://uub.jp/rnk/chiba/p_j.html (都道府県の人口・面積・人口密度ランキングより抜粋)
<人口,人>           <面積,km²>        <人口密度, 人/km²>
1 東京都 13,971,109      1 北海道 78,421.39      1 東京都 6,367.78
2 神奈川県 9,214,151      2 岩手県 15,275.01      2 大阪府 4,627.76
3 大阪府 8,817,372       3 福島県 13,784.14      3 神奈川県 3,813.63
4 愛知県 7,541,123       4 長野県 13,561.56      4 埼玉県 1,933.63
5 埼玉県 7,343,453       5 新潟県 12,583.96      5 愛知県 1,457.77
6 千葉県 6,281,394       6 秋田県 11,637.52      6 千葉県 1,217.90
7 兵庫県 5,438,891       7 岐阜県 10,621.29      7 福岡県 1,024.12
8 北海道 5,212,462       8 青森県 9,645.64       8 兵庫県 647.41
9 福岡県 5,106,774       9 山形県 9,323.15       9 沖縄県 639.12
・・
41 佐賀県 808,821       41 鳥取県 3,507.14      41 青森県 127.57
42 山梨県 806,210       42 佐賀県 2,440.69      42 山形県 114.23
43 福井県 762,679       43 神奈川県 2,416.11      43 島根県 99.43
44 徳島県 721,269       44 沖縄県 2,282.59      44 高知県 97.10
45 高知県 689,785       45 東京都 2,194.03      45 秋田県 81.81
46 島根県 666,941       46 大阪府 1,905.32      46 岩手県 79.36
47 鳥取県 551,402       47 香川県 1,876.78      47 北海道 66.47

*1-8:https://www.agrinews.co.jp/p52864.html (日本農業新聞 2021年1月9日) 緊急事態宣言 ガイドライン順守を コロナ感染防止で農水省
 農水省は緊急事態宣言の再発令を受け、農家に新型コロナウイルス感染拡大防止に向けた業種別ガイドラインの順守を呼び掛ける。ガイドラインは大日本農会のホームページに掲載。日々の検温や屋内作業時のマスク着用、距離の確保などの対策をまとめている。感染者が出ても業務を継続できるよう、地域であらかじめ作業の代替要員リストを作ることも求める。ガイドラインは①感染予防対策②感染者が出た場合の対応③業務の継続──などが柱。予防対策では、従業員を含めて日々の検温を実施・記録し、発熱があれば自宅待機を求める。4日以上症状が続く場合は保健所に連絡する。ハウスや事務所など、屋内で作業する場合はマスクを着用し、人と人の間隔は2メートルを目安に空ける。機械換気か、室温が下がらない範囲で窓を開け、常時換気をすることもポイントだ。畑など屋外でも複数で作業する場合は、マスク着用や距離の確保を求める。作業開始の前後や作業場への入退場時には手洗いや手指の消毒を求めている。人が頻繁に触れるドアノブやスイッチ、手すりなどはふき取り清掃をする。多くの従業員が使う休憩スペースや、更衣室は感染リスクが比較的高いことから、一度の入室人数を減らすと共に、対面での会話や食事をしないなどの対応を求める。感染者が出た場合は、保健所に報告し、指導を受けるよう要請。保健所が濃厚接触者と判断した農業関係者には、14日間の自宅待機を求める。保健所の指示に従い、施設などの消毒も行う。感染者が出ても業務を継続できるよう、あらかじめ地域の関係者で連携することも求める。JAの生産部会、農業法人などのグループ単位での実施を想定。①連絡窓口の設置②農作業代替要員のリスト作成③代行する作業の明確化④代替要員が確保できない場合の最低限の維持管理──などの準備を求める。

<地方と仕事>
*2-1:https://www.agrinews.co.jp/p52851.html (日本農業新聞論説 2021年1月8日) 地方分散型社会 持続可能な国土めざせ
 大都市圏への人口集中を是正し、地方に人が住み続ける分散型社会を構築することは、持続可能な国土づくりに不可欠である。地方、特に農村への移住をどう促すか。政府には、新型コロナウイルス禍を踏まえた分散型社会の姿を描き、実効ある施策を講じることが求められる。都市を志向する価値観が変化し、自然豊かな環境や人とのつながりを求め地方移住を考える人が増えている。総務省の地域おこし協力隊の任期終了者で、活動先に定住した人が2019年度時点で2400人を超え、5割に上るのもその兆候だ。移住の促進で必要なのは仕事の確保である。新たな食料・農業・農村基本計画で政府は、農村を維持し、次世代に継承するために地域政策の総合化を打ち出し、柱の一つに「所得と雇用機会の確保」を掲げた。観光や体験、研修など、さまざまな分野と連携した新しいビジネスの展開などを想定している。しかしコロナ禍で人を呼び込むのが難しくなり、外食や農泊、農業体験を含む観光産業など農業との連携が期待される分野は苦境が続く。半面、家庭需要が高まり、直売所の利用など地産地消の動きは活発化。また起業や事業承継、農業と他の仕事を組み合わせた半農半X、複数の業種をなりわいとする多業など、移住者らによる多様な仕事づくりや働き方がみられる。政府は農業・農村所得の倍増目標も掲げてきた。達成のためにも事業の継続を支える一方、新たな動きや、コロナ禍の中での経済・社会の変化を捉え、所得確保と雇用創出の政策を構築すべきだ。また東京一極集中の是正を、地方創生や国土計画の中心課題に据えてきた。しかし一極集中に歯止めがかからず、農村の高齢化・過疎化が進んだ。政策の実効性が問われる。移住者と地域の融和も重要である。地域の一員として溶け込むには移住前から住民と対話・交流し、心を通わせる必要がある。しかしコロナの感染拡大で現地を訪れ、対話する機会を設けるのが難しくなっている。一方、新しい対話の手法として移住者と地域をオンラインでつなぎ、説明会や就農座談会を開く動きが増えている。自治体や先輩移住者が暮らしや仕事などについて説明。ふるさと回帰支援センターが昨年10月、オンラインで開いた全国規模の移住マッチングイベントには1万5000人超の参加があった。移住希望者と地域がオンラインで対話し、信頼関係を育む。その上で感染防止対策を徹底し、現地を訪れるなど新様式が一般化する可能性がある。多くの地域で実践できるようノウハウの共有や費用支援が重要だ。地方への人の流れをつくる方策として政府は、テレワークの推進などを念頭に置く。併せて説明会から移住、定着までを段階を追って、また所得・雇用機会の確保から生活環境整備まで幅広く支援する重層的、総合的な政策体系を構築すべきだ。

*2-2:https://www.agrinews.co.jp/p52861.html (日本農業新聞論説 2021年1月9日) 自立する地域 協同組合が主導しよう
 新型コロナウイルスの感染拡大を契機に、「3密」を回避できるとして地方への関心が高まっている。地方への移住者の定着支援では、仕事づくりや安心して暮らせる地域社会づくりなどで、協同組合にこそ役割発揮が求められる。都市集中型から地方分散型への社会転換を協同組合の力で後押ししたい。
都市での生活は、満員電車での通勤をはじめ、密閉、密集、密接が避けられない環境にある。コロナ禍を契機にテレワークが広まり、一部業種では都市にいなくても働けることが分かった。観光地などで休暇を過ごしながら働くワーケーションを実践する人も増えている。JA全中の中家徹会長は2020年の総括として「3密社会の回避へ東京一極集中から分散型社会への潮流が生まれている」と指摘した。今後、地方に移住し、地域に根付いて働きたいというニーズも高まってくるだろう。協同組合として何ができるか。徳島県JAかいふは地元自治体と連携して、全国から多くの新規就農者を呼び込んでいる。農業と合わせて、豊かな自然でサーフィンや釣りなどが楽しめるとしてアピール。栽培を1年間学べる塾や、環境制御型ハウスの貸し出しなど手厚く支援する。15年度から始め20年度までに24人を受け入れ、20人が就農したという。総合事業を手掛けるJAは新規就農者に農地や住居、営農指導、労働力など多様な支援を用意し、定着を後押しできる。医療や介護といった暮らしや、組合員組織を通じた仲間づくりなどにも貢献できる。生協など他の協同組合と連携すれば支援の幅はさらに広がる。地方に移住してくる人に対して、協同組合が仕事や生活を丸ごと支援する仕組みの構築も考えられる。また今後期待されるのが、組合員が出資・運営し、自ら働く労働者協同組合だ。各地域での設立を後押しする法律が20年に成立。たとえ事業は小さくても地域の課題を解決しつつ、自ら経営する新しい働き方として地方にも広がる可能性がある。コロナ禍の収束は依然見通せない。仮に収束してもグローバル化が進み、今後も感染症が世界を脅かす懸念は強い。都市から地方への単純な人口移動にとどまらず、大都市圏を中心に他の地域と激しく人や物が行き来する社会の在り方が見直される可能性もある。そこでは、経済や生活、文化が地域ごとに一定程度自立する「地域自立型社会」とも呼べる国の在り方が構想できる。そうなれば先に挙げた役割を果たすため、地域に根差す協同組合の役割はより大きなものになるだろう。また、それぞれの協同組合には全国ネットワークがあり、地域間の連携にも取り組みやすいと考えられる。感染症を含め近年増えている災害などの危機の際には、協同組合の基本である助け合いが求められる。協同組合の役割と実践内容を改めて発信したい。

<エネルギーも分散型へ>
*3-1:https://mainichi.jp/articles/20210108/k00/00m/040/237000c?cx_fm=mailasa&cx_ml=article&cx_mdate=20210109 (毎日新聞 2021年1月8日) コロナで変わる世界:脱炭素は「社会貢献」でなくなった 広まる欧州主導の国際ルール、焦る日本企業
 新作が発売されるたびに、世界が注目する米アップルのスマートフォン「iPhone」。その画面に使われる光拡散フィルムが、和歌山県にある日本企業の工場で製造されていることはほとんど知られていない。紀伊半島の先端近くに位置する南紀白浜空港から車で1時間弱の山間地に、高機能フィルムメーカー「恵和」(本社・東京)の生産拠点がある。
●「アップル製品に再エネ導入は最低条件」
 同社は2020年11月、和歌山工場のアップル向け生産ラインで使う電力を太陽光や風力などの再生可能エネルギーに切り替えた。「アップルから『あなたの企業が使うエネルギーは?』と聞かれて化石燃料を出したらその時点で終わり。再エネ導入は最低条件で、その上で技術の勝負になる」。恵和の長村惠弌(おさむらけいいち)社長は強調する。アップルは同年7月、30年までに事業全体で「カーボンニュートラル」を達成すると宣言した。サプライチェーン(部品の調達・供給網)の全てを通じて温室効果ガスの排出量を「実質ゼロ」にする野心的な目標だ。10年以内に再生可能エネルギーの100%使用を迫られた形の取引先企業にとって、脱炭素は社会貢献ではなく、経営の根幹にかかわる必須条件に変わった。恵和は1948年に加工紙メーカーとして創業。アップルとは12年ごろから取引関係にある。再エネを購入し、和歌山の製造拠点での電力使用量の3分の1を切り替えたことで、電気代は1割程度上がったという。長村社長は「コストが増えても、関係が強化されて結果的に収入が増えればいい。アップルの活動への協力は自社の事業にプラスだ」と話す。アップルの発表によると、20年12月時点で半導体大手の台湾積体電路製造(TSMC)を含む95の取引先企業が、100%の再エネ使用を目指す方針を表明した。取引先に温室効果ガスの抑制を求める企業はアップルに限らない。米IT大手マイクロソフトは30年までに排出量よりも多くの二酸化炭素(CO2)を大気中から除去する「カーボンネガティブ」の実現を約束した。自然エネルギー財団の石田雅也シニアマネジャーは今後、中小を含む日本企業に対し、海外の取引先から再エネ導入圧力が強まる可能性があると指摘する。再エネの「主力電源化」に欧米から大きく後れを取る日本の課題は、国際的にも割高な発電コストだ。「1円でも安くしないと競争できない企業もある。国全体で再エネのコストが安くならないと、間違いなく産業競争力に影響するだろう」と石田さんは懸念する。新型コロナウイルス流行後の世界で、脱炭素に向けた動きが急加速している。人類が直面するもう一つの危機である気候変動を抑止し、持続可能な社会を目指す「グリーンリカバリー」(緑の復興)に向けた挑戦が始まった。
●欧州からは「実態を超えたレベルの要求」
 「多量のCO2(二酸化炭素)を排出する石炭火力の比率が高い日本に今後も製造拠点を置くべきなのか、といった議論をせざるを得ない状況にある」。2020年11月中旬。イオンや武田薬品工業など日本を代表する有力企業の幹部が霞が関を訪れ、河野太郎行政改革担当相らに提言書を手渡した。新型コロナウイルス収束後の経済復興策に脱炭素の視点を加え、「30年までに再エネ50%」の目標設定を求めたものだ。文書をまとめたのは、09年に設立された「日本気候リーダーズ・パートナーシップ(JCLP)」。気候変動問題で、世界から取り残される危機感を共有する富士通や積水ハウスなど165社が加盟し、総売上高は125兆円に達する。設立メンバーの複合機大手リコーは17年、事業に使用する電力を100%再エネで調達することを目指す国際イニシアチブ「RE100」に日本企業として初めて参加した。阿部哲嗣・社会環境室長は「要求が高度化する顧客への対応が不可避になっている」と語る。脱炭素への取り組みで国内の先頭を走る同社でさえ、先をいく欧州の取引先から圧力にさらされている。阿部室長によると、欧州の商談では、納入する複合機の価格やサービス体制に加え、CO2削減を含むESG(環境、社会、企業統治)への取り組みが評価基準に盛り込まれる例が増えたという。受注前に気候変動への対応について監査を求められたこともあった。取引先からの「ESG要求」に応じることで成立した商談は19年度、欧州を中心に120億円。同社の欧州での売上高の約3%に過ぎないが、コロナ後は割合が確実に増えていくと見込まれている。一方、投資家などからは同社に部品を供給するサプライヤーにもESGへの取り組みを求める声があり、阿部室長は「実態を超えたレベルの要求が走り出している」と話す。再エネ100%を見据えることができない企業は、グローバル企業の取引先から外されるリスクに直面する。リコーはこの3年で再エネ比率を12・9%まで高めたが、再エネ調達価格が安い欧州事業など全体を底上げしているのが現状だ。国内に限れば、再エネ利用率は1・9%にとどまる。日本で、化石燃料由来でないことを証明する有力な手段の一つは、「非化石証書」付きの電力を購入することだ。だが証書付きの電力コストは欧州の数倍から数十倍とされる。JCLPの事務局を務める環境政策シンクタンク「地球環境戦略研究機関」の松尾雄介ディレクターは「複数の日本企業から『この10年で再エネ価格が相当下がらなければ、海外に拠点をシフトさせるかもしれない』という声が出ている」と明かす。
●「今の投資判断が未来を決める」専門家指摘
 温暖化防止の国際ルール「パリ協定」が採択されて5年。日本は主要7カ国(G7)で唯一、石炭火力の新設計画があり、そのエネルギー政策には国際社会の厳しい視線が注がれてきた。菅政権は20年10月、50年までの温室効果ガスの排出「実質ゼロ」達成を宣言したが、「周回遅れ」の日本にとってはようやくスタートラインに立ったにすぎない。政府が21年中にまとめるエネルギー基本計画の改定に向け、経済産業省は電源構成に占める再エネの割合を、50年までに50~60%に引き上げる目安を示した。だが、JCLPが河野行政改革担当相らに提言した「30年までに50%」からは20年近い乖離(かいり)がある。経済協力開発機構(OECD)の元事務次長で、世界の気候政策に詳しい玉木林太郎・国際金融情報センター理事長は「化石燃料を使わないようにすることは、(産業革命に寄与した)蒸気機関の発明以来の大きな変化だ。この変化は避けられず、早くやった方が勝者になれる。先送りして済む問題ではない」と語る。「50年『脱炭素』は、遠いようで極めて近い目標だ。社会システムを切り替えるにはインフラを中心に息の長い投資計画が必要で、40年に慌てて始めても間に合わない。今の投資判断が未来を決める」と指摘する。
●欧米主導のルールづくりに日本も重い腰上げ
 「ここで方向を変えなければ、我々は今世紀のうちに壊滅的な気温上昇に直面する」。20年12月12日。パリ協定の採択5年を記念する首脳級オンライン会合で、国連のグテレス事務総長は警鐘を鳴らした。各国が「グリーンリカバリー」(緑の復興)を掲げるのは、コロナ禍で悪化した経済の立て直しと脱炭素を両立させるためだ。パンデミック(世界的大流行)による行動制限などの影響で、20年に世界で排出されたCO2は前年と比べて7%近く減った。リーマン・ショック時を上回る記録的な減少幅だ。しかし、世界の平均気温の上昇を1・5度に抑えるパリ協定の目標を実現するには、この先10年間でCO2排出量を毎年7%ずつ減らし続ける必要がある。エネルギーや交通など、社会・経済のシステムを急速かつ大胆に変革しなければ不可能な数字だ。欧州諸国は、若者世代がけん引した「緑の波」と例えられる世論の支持を追い風に野心的な気候政策を推し進め、域内産業の成長と保護の両立をしたたかに追求する。欧州連合(EU)では「国境炭素調整措置」の導入に向けた議論が本格化する。気候変動対策が不十分な国からの輸入品に対し、製造過程などで生じるCO2に高関税をかける発想だ。脱炭素を進める欧州の製造業を不公正な競争から守る目的もあり、「保護主義」との反発もある。だが世界貿易機関(WTO)元事務局長で、EUの欧州委員(通商担当)も務めたパスカル・ラミー氏は「『保護主義』ではなく、『予防措置』だ。貿易相手をたたいて自国の産業を守るためではなく、(世界全体の排出量を減らして)気候変動の損失から人々を守るためと考えるべきだ」と欧州の「大義」を強調する。トランプ米政権はEUが国境炭素調整措置を導入した場合、報復を示唆していた。だが、気候変動を最優先課題の一つに掲げるバイデン次期米大統領はEUと同様の措置導入を目指しており、今後具体化する可能性がある。欧米主導のルール作りが進む中、日本政府も重い腰を上げた。菅政権ではCO2排出に課金して削減を促す仕組み「カーボンプライシング」(CP)の導入に向け、環境省と経済産業省が連携して議論を始める。CPは短期的には産業界や家庭の負担増につながるため、これまで本格的な議論は先送りされてきた。だが、小泉進次郎環境相は「国内で炭素に価格付けしなくても、海外で(国境調整措置などを通じて)徴収される可能性を検討せざるを得ない」と指摘。「国際情勢をみながら後手に回らないように多角的に議論の蓄積をしたい」と話す。
●日本での関心の低さ、根底に「負担意識」
 日本では世論もカギだ。「欧州は草の根の運動が社会を動かした。でも今の日本は政府から『脱炭素』が降りてきたように感じる」。京都の大学1年生、寺島美羽さん(19)はそう語る。寺島さんは高校3年生の春にスウェーデンの環境活動家、グレタ・トゥーンベリさん(18)を知り、気候変動に興味をもった。グレタさんら欧州の若者にならい、10人ほどのグループで、街頭やネット交流サービス(SNS)で大人たちに本気の対策を訴え続けてきた。しかし、周囲の反応は冷笑的で「壁」を感じることも多かったという。気候科学者で国立環境研究所地球環境研究センターの江守正多・副センター長は、関心の低さの根底には「温暖化対策を取ることへの『負担意識』」があるとみる。世界76カ国の一般市民を対象にした討論型の調査(15年)では、「あなたにとって、気候変動対策はどのようなものか」という問いに対し、「生活の質を脅かすもの」と回答した人は、世界平均27%に対して日本は60%と突出していた。「これを変えるには『新しい社会システムにアップデートする』というような前向きなメッセージを出すことが大切だろう」。江守さんは続ける。「日本でも数は多くないが、若い世代が気候変動対策の強化を求めて各地で声を上げている。こうした活動を応援することも、私たちができることのひとつだ」 年の瀬。JR京都駅前の街頭に寺島さんの姿があった。「気候危機の存在に気づいて」と書かれたプラカードを持った同世代の男女6人の前を、高校生や仕事帰りの人々が見向きもせずに過ぎ去っていく。1時間ほどたったころ、「SNSで見て活動に興味をもった」という制服姿の女子高校生2人が輪に加わった。「こんなことは初めて。本当にうれしい」と寺島さんは相好を崩した。草の根からも変化の芽が生まれつつある。

*3-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20210109&ng=DGKKZO68042480Z00C21A1MM8000 (日経新聞 2021.1.9) 一からつくる移動網 テスラ超える戦い
 夕方にベルリンをたち翌朝、目が覚めるとローマに到着。1957~95年に欧州の主要都市を結んだヨーロッパ横断特急が復活する。2020年12月、欧州4カ国の鉄道事業者が13都市を結ぶ夜行列車ネットワークをつくることで合意した。12月開通予定のウィーン~パリ間などを皮切りに順次整備を進める。
●鉄道の5倍排出
 背景には、二酸化炭素(CO2)を大量排出する飛行機に乗らない「飛び恥」という現象がある。世界のCO2排出で「運輸」は「発電・熱供給」に次ぐ2割強を占め、航空機の排出量は乗客1人の移動1キロ換算で鉄道の5倍に達する。国際航空運送協会(IATA)で環境分野を担当するマイケル・ギル氏は「旅客機では電気自動車(EV)のような技術が確立していない」と話す。それではもう、飛行機に乗れないのか。移動の選択肢を確保するため、欧州の航空機大手エアバスが立ち上がった。35年には温暖化ガス排出ゼロの航空機を実用化すると宣言。「ゼロe」と呼ばれるコンセプト機は液化水素をガスタービンで燃やして飛ぶ。実現すれば約70年前に英国でジェット旅客機の幕が開いて以来の大変革となる。日常生活を支えるクルマも変わる。ドイツ南部のミュンヘン郊外に「空のテスラ」と呼ばれる新興企業がある。電動の垂直離着陸機「eVTOL(イーブイトール)」を開発する15年創業のリリウムだ。駆動時に温暖化ガスを全く出さないのが売りで、25年の商用化を視野に入れる。機関投資家も出資し企業評価額が10億ドル(約1030億円)を超えるユニコーンとなった。こうした空飛ぶクルマメーカーが世界で続々と誕生している。脱炭素時代の移動手段は化石燃料時代とは全く違う「不連続の発想」から生まれる。技術革新に遅れると命取りになる。中国の自動車市場で、ある「逆転」が話題になた。米ゼネラル・モーターズ(GM)と上海汽車集団などの合弁で小型車を手がける上汽通用五菱汽車が、20年7月に発売した小型EV「宏光ミニ」。9月に販売台数で米テスラの主力小型車「モデル3」を追い抜いたのだ。航続距離は120キロメートルと近距離移動向けだが、価格は2万8800元(約46万円)からと安い。低価格が話題を呼び、地方都市で爆発的に売れている。
●他産業から参戦
 カーボンゼロの申し子、テスラですら安泰ではない新しい競争の時代。日本電産の永守重信会長兼最高経営責任者(CEO)は「30年以降に過半数がEVになれば、車の価格は現在の5分の1程度になるだろう」と予言する。内燃機関を持たないEVは3万点もの部品が必要なガソリン車に比べ、部品点数は4割ほど減少する。参入障壁が下がり、自動車産業以外からの参戦も増える。トヨタ自動車は街からつくる。21年2月、静岡県裾野市にある約70万平方メートルの工場跡地で、自動運転EVなどゼロエミッション車(ZEV)だけが走る実験都市「ウーブン・シティ」に着工する。豊田章男社長は「3000程度のパートナーが応募している」と力を込める。5年以内の完成を目指し、グループで開発中の空飛ぶクルマが登場する可能性もある。20世紀のはじめ、米フォード・モーターの創業者であるヘンリー・フォード氏が大量生産方式を確立した自動車産業。生産コストを大幅に下げ、人々に移動の自由を提供し、経済成長の原動力にもなってきた。いまや世界で5千万人を超す直接・間接の雇用を生み出している。カーボンゼロで産業地図は大きく塗り替わる。自動車メーカーを先頭に発展してきた日本企業も、新しい青写真を描く時だ。

*3-3:https://mainichi.jp/articles/20210110/k00/00m/040/152000c (毎日新聞 2021年1月10日) 40年超原発」再稼働へ立ちはだかる壁 安全性懸念、行き詰まる中間貯蔵先探し
 運転開始から40年を超える関西電力の美浜原発3号機(福井県美浜町)と高浜原発1、2号機(同県高浜町)の再稼働に向け、地元の同意プロセスが進んでいる。ただ、老朽原発の安全性には懸念の声が根強いほか、県が同意の前提とする使用済み核燃料の「県外」での中間貯蔵先探しも行き詰まったまま。国内初の「40年超原発」の再稼働には、高いハードルが立ちはだかる。
●「原発から抜けられない町」、本心は「ノー」
 関電は経営面から一日も早い再稼働を目指し、美浜3号機を2021年1月、高浜1、2号機を3月以降に再稼働させる工程を示しているが、実現のめどは立っていない。原発の寿命が「40年」とされたきっかけは、11年3月の東日本大震災に伴う東京電力福島第1原発事故だ。「原子炉の圧力容器が中性子の照射を受けて劣化する時期の目安」として、13年7月の改正原子炉等規制法で原発の運転期間が原則40年と定められた。ただ、基準を満たせば1度に限り最大20年の延長が認められ、美浜3号機と高浜1、2号機は原子力規制委員会の審査をクリアした。今後、30年までに全国の原発11基が運転開始から40年を迎えるため、関電3基の再稼働が試金石となる。しかし、安全面で課題も指摘されてきた。関電が09年に高浜1号機で実施した検査では、60年運転時点の脆性(ぜいせい)遷移温度(圧力容器の劣化を示す指標)の予想値が97度となり、廃炉以外の原発で最高を記録。この値が100度程度に高いと圧力容器が破損する恐れがあるとされ、長沢啓行・大阪府立大名誉教授(生産管理システム工学)は「過去の検査に比べ09年の結果を見ると脆化(もろくなる)スピードが速まり、余裕がなくなった。次の検査でさらに予想値が高くなる可能性がある」と指摘。関電は「脆化の程度が大きいのは事実だが、地震や事故に耐えられることは確認している」と反論する。再稼働には県や原発の立地自治体の首長と議会の同意が必要とされる。「再稼働への理解と協力をお願い申し上げる」。経済産業省資源エネルギー庁の保坂伸長官は20年10月16日、福井県庁などを訪れ、40年超原発3基の再稼働への協力を県などに要請した。これを受け、立地自治体である高浜、美浜両町の議会は11~12月に再稼働を求める請願を相次いで採択し、早々に同意。両町長も近く同意の意思を示す見通しだ。安全性の懸念はあるものの、生活のため、地元からは再稼働を容認せざるを得ない「嘆き」が聞こえてくる。再稼働を求める請願に賛成した高浜町議の一人は「財政の大部分を原子力が占める町では、『同意』は賛否を論じるような話ではない。もし否定して再稼働しないなんてなったら大変なことになる」と複雑な思いを吐露し、「半世紀かけて原発から抜けられない町にしてしまった。僕らも本心では『ノー』と言いたい。でも、言えないよ」と語る。一方、関電が老朽原発の再稼働にこだわるのは、発電コストの安い原発で収支を改善し、安全対策で投じた膨大な費用を回収するためだ。東電福島第1原発事故前、関電は原発11基を運転し、10年度の全発電量に占める原発の割合は51%だった。しかし、19年度は27%で、高コストの火力が59%で最多に。老朽原発を再稼働できれば1基当たり月25億円の利益増になる。福島事故後の新ルールに対応した安全対策工事の総費用は、廃炉を除く原発7基で計1兆693億円に達し、一刻も早く老朽原発を動かしたいのが本音だ。
●20年以上続く中間貯蔵施設の「県外」確保問題
 福井の老朽原発再稼働の大きな課題となっているのが、使用済み核燃料の中間貯蔵施設の「県外」確保だ。現在、使用済み核燃料は原発敷地内で保管されているが、5~9年で容量が限界に達する。関電にとって1998年7月に秋山喜久社長(当時)が県外建設の考えを初めて示して以来、20年以上続く経営課題となっている。関電は15年11月に「福井県外で20年ごろに計画地点を確定し、30年ごろに操業を開始」との計画を公表。17年11月には岩根茂樹社長(当時)が「18年には具体的な計画地を示す」と述べ、2年前倒しした。ところが18年1月、東電と日本原子力発電の中間貯蔵施設(青森県むつ市)を関電が共同利用する案が報道で表面化。むつ市は猛反発し、関電は報道を否定したが目標時期を「20年を念頭」に戻した。20年12月、事態が動いた。むつ市の中間貯蔵施設を、関電を含む電力各社で共同利用する案が浮上したのだ。全国の使用済み核燃料の負担が集中することを懸念し、むつ市の宮下宗一郎市長は12月18日、説明に訪れた電気事業連合会の清水成信副会長らに「むつ市は核のゴミ捨て場ではない」と不快感を隠さなかった。今後、電事連や国が地元の「説得」を進める模様だが、見通しは立っていない。同じ日、福井県内では、金属製容器(キャスク)に入れた使用済み燃料を空冷する「乾式貯蔵」を念頭に「県内」での貯蔵を検討する案が出た。美浜町議会の竹仲良広議長は「個人の意見」とした上で「美浜原発サイト内で乾式貯蔵を推進していきたい」と発言。同町議会は04年7月に中間貯蔵施設の誘致を決議した経緯があるが、当時は県の反発で立ち消えになった。また、衝撃的な判決も波紋を広げている。大阪地裁が20年12月4日、関電大飯原発3、4号機の想定する最大の揺れを示す基準地震動について「実際に発生する地震が平均より大きくなる可能性(ばらつき)を考慮していない」とし、国の設置許可を取り消したのだ。この判決の大きな影響を受けるのが、美浜3号機だ。40年超運転に向け、美浜3号機の基準地震動は750ガルから993ガルに大きく引き上げられた。だが、原告共同代表の小山英之・元大阪府立大講師(数理工学)は大飯と同じ評価方法が採用されていることからさらに1330ガルまで跳ね上がるとし、「安全の証明がされていない」と指摘する。福井県の杉本達治知事は判決を受け、再稼働の同意判断には規制委などによる安全性の説明が改めて必要とし、県原子力安全専門委員会でも検証する方向だ。混沌(こんとん)とする中、地元同意で事実上の最終判断を下す立場の杉本知事は慎重な姿勢を崩していない。関電が20年末までに県外候補地を示せなかったことについて、記者団に「(再稼働の)議論の入り口には入れない」とする一方、「最大限努力するということなので、それを待ちたい」とも述べた。協議を拒絶しつつ、「年内」の期限は猶予した政治判断の背景について、県幹部は「関電が『早く報告に来る』というから了とした。貯蔵プールの満杯も迫っているので、今回は期待もしていたが……」と話す。関電はどのようなボールを投げてくるのか。今後の日程が定まらないまま、県は出方をうかがっている。
●運転中は玄海3号機と川内1、2号機のみ
 建設中や廃炉決定などを除き、国内には33基の商業用原発がある。16基が東日本大震災後にできた新規制基準に「合格」したが、9日現在で運転しているのは九州電力玄海原発3号機(佐賀県玄海町)と同川内原発1、2号機(鹿児島県薩摩川内市)の3基のみ。また、合格した16基のうち、運転開始から40年を超える老朽原発は関西電力美浜原発3号機と同高浜原発1、2号機、日本原子力発電東海第2原発(茨城県東海村)の計4基となっている。

<再生医療>
*4:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20210111&ng=DGKKZO68052890Q1A110C2TJM000 (日経新聞 2021.1.11) 科技立国 動かぬ歯車(4)iPS、世界と隔たり、集中投資も存在感乏しく 柔軟な戦略修正に課題
「経過は順調だ」。大阪大学の澤芳樹教授らは2020年12月、iPS細胞から作った「心筋シート」を重い心臓病の患者に移植する世界初の手術を3人に実施したことを報告した。19年末に始めた医師主導臨床試験(治験)は前半を終えた。iPS細胞の臨床応用は広がっている。心臓病のほか加齢黄斑変性など目の病気、パーキンソン病、がんなどの治療を目指す臨床研究や治験が進む。安全性や効果を示せるかが注目されている。京都大学の山中伸弥教授がiPS細胞の作製法をマウスで発見したのは06年。山中教授は12年にノーベル生理学・医学賞を受賞した。政府は13年、iPS細胞を使う再生医療の実現に向け、10年間で1100億円という巨額の投資を決めた。皮膚などの体の細胞から胚性幹細胞(ES細胞)のような万能細胞を作るという山中教授の発想は斬新なものだった。研究計画を審査した岸本忠三・阪大特任教授が可能性に注目するなど、政府が支援したことで発見につながった。科学技術政策の成功例といえる。その後の大型投資は「選択と集中」の象徴だ。iPS細胞関連の研究者は増え、論文も増えた。だが、その課題や弊害も見えてきた。独ロベルト・コッホ研究所などのチームが人のiPS細胞に関する論文を18年に調べると、日本は論文数シェアで世界2位だった。ただ、論文を掲載した科学誌の影響度(インパクトファクター)と論文の被引用数は平均を下回った。国内で初めてES細胞を作った京都大学の中辻憲夫名誉教授は「日本は間違った過剰な選択と集中によって、投資対効果が低い結果になった」と批判する。iPS細胞に集中投資した半面、ES細胞など他の幹細胞研究の支援は手薄になった。両者は関連技術に共通部分が多いのに、日本はバランスを欠いた。世界の動きは速い。米国立衛生研究所(NIH)や米カリフォルニア再生医療機構は10年代半ばに再生医療の研究予算を減らし、遺伝子治療や細胞医療の拡充に転じた。英国も同様の傾向だ。注目するのは、人工的に機能を高めた「デザイナー細胞」の研究だ。代表的なものが、遺伝子操作した免疫細胞で血液がんを攻撃する「CAR-T細胞療法」。17年に実用化し、様々ながんで応用研究が進む。画期的な治療法と期待を集める。科学技術振興機構研究開発戦略センターの辻真博フェローは「iPS細胞中心の再生医療から軌道修正が必要だ」と提案する。集中投資で培った人材や成果を生かし、免疫学など日本が強みを持つ分野と組み合わせれば、デザイナー細胞で世界と競合できるとみる。政府も軌道修正を模索する。日本医療研究開発機構(AMED)は予算の枠組みを20年度からの第2期中期計画で変えた。第1期では「再生医療」としていたプロジェクトを「再生・細胞医療・遺伝子治療」に再編した。有識者会議で30年ごろまでの国や企業の投資対象などを工程表にまとめる検討も始めた。新型コロナウイルスのワクチンを開発した米モデルナの創業者は、iPS細胞の発見から着想を得たという。幹細胞が持つ可能性は再生医療に限られたものではない。神奈川県立保健福祉大学の八代嘉美教授は「多様な研究を支える資金制度が重要だ」と指摘する。世界の潮流に合わせた戦略的な研究と、斬新な発想の研究のバランスを取り、いかに柔軟に軌道修正するか。資金や人材が限られる中、日本のマネジメントが問われる。

<根拠なき規制は、有害無益である>
PS(2021年1月17日追加):*5-1・*5-2のように、厚労省は、「①入院勧告に従わない感染者に罰則導入」「②入院勧告の対象にならない軽症の感染者は、宿泊・自宅療養を法的に位置付け」「③保健所の『積極的疫学調査』に応じなかった感染者に新たな罰則を新設」「④知事らによる医療機関への協力要請の権限強化」などの感染症法改正案の概要を感染症部会に示して了承されたそうだ。
 しかし、②はまあよいが、①は検査も十分に行わず市中に蔓延させ、症状が出ても入院できない状況を作って、それが1年経っても改善されていないのであるため、厚労省の責任そのものである。その上、この強制によって感染が減るという根拠もないのに、国民の私権を制限する前例を作るのはむしろ有害だ。
 また、③の「積極的疫学調査」は、陽性者の数が限られており接触者の跡を追える場合には有効かもしれないが、そうでなければたまたま近くにいた人に迷惑をかけ、誰かにとって都合の悪い集会(例:選挙の対立候補の集会)が開かれた場合に悪用することさえできる。それよりも、これまで1年間も感染経路を網羅的に調査してきたのだから、感染者の年齢・性別・住所・感染経路・予後などが正確にわかっているので、大雑把に都道府県単位で私権制限を行わなくても正確にポイントをついた対応ができる筈だ。保健所は、個人の行動履歴を根ほり葉ほり聞いただけで、そのデータは積んだままにしているということは、まさかないだろう?
 なお、④についても、政治・行政は、「医療費は無駄遣い」とばかりに医療費削減を行い続け、必要な医療システムを作ることを放棄してきたため、もともと志の高い人が多い医療分野にゆとりをなくさせ、疲弊させてきた。さらに、*5-3のように、医療機関のすべてが新型コロナ患者を受け入れればよいわけではなく、基幹病院にあたる大病院が受け入れるのが適切なのだが、診療報酬を下げ続けて基幹病院にも選択と集中を迫り、対応できない状態にしてきたのだ。そのため、「入院や療養の調整中」とは、「アフリカ(失礼!)ではなく日本の話か?!」と思う。
 本来、市中で蔓延している地域で行うべきことは、*5-4で広島県が広島市内で80万人規模のPCR検査を実施しようとしているようなことで、これに加えて空港や港の検疫・陰性証明書・14日間の待機を組み合わせれば、乱暴に外国人の全入国を遮断する必要もなかった。そのため、広島市のやり方を参考にしたり、負荷が小さくて合理的な検疫方法を考えたりすべきなのだ。

*5-1:https://www.tokyo-np.co.jp/article/80153 (東京新聞 2021年1月15日) 「ほとんどの罰則が刑事罰」入院拒否の感染者などに… 感染症法改正案を了承
 厚生労働省は15日、同省感染症部会に新型コロナウイルス対策強化に向けた感染症法改正案の概要を示し、了承された。入院勧告に従わない感染者などへの罰則導入や知事らによる医療機関への協力要請の権限を強めることが柱。出席者からは罰則導入の根拠や効果を問う声が相次いだが、同省は罰則の具体的な内容やデータなどは示さなかった。政府は18日召集の通常国会に改正案を提出し、早期成立を目指す。
◆国や自治体の権限も強化
 部会で示された概要では、入院勧告を拒否した感染者に加え、濃厚接触者が誰かを追跡する保健所の「積極的疫学調査」に応じなかった感染者に新たな罰則を新設。入院勧告の対象にならない軽症の感染者は宿泊・自宅療養を行うことを法的に位置付けた。また、感染者情報の収集や民間病院によるコロナ患者の受け入れが円滑に進んでいないことを背景に、国や地方自治体の権限を強化する対策を盛り込んだ。具体的には、医療関係者らへの協力要請を「勧告」に見直し、正当な理由なく従わない場合は病院名なども公表できるとした。新型コロナウイルス感染症が「指定感染症」としての分類期限が来年1月末に切れることから、その後も濃厚接触者の外出自粛要請などの措置が継続できるよう、同法上の「新型インフルエンザ等感染症」に位置付ける改正も行う。
◆「罰則の根拠は?」疑問の声も
 入院勧告に従わない感染者への罰則について、政府は「1年以下の懲役または100万円以下の罰金」の刑事罰を検討しているが、15日の部会には示さなかった。出席者からは「罰則を導入しないと感染拡大が止まらないことを示す根拠を示してほしい」「保健所の仕事がさらに増える」などの疑問が相次いだ。さらなる議論を求める声もあったが、部会は改正案の概要を了承した。同省の正林督章健康局長は、罰則導入の根拠を示すように求められていることに対し「(根拠を)網羅的に把握するのは難しい」と説明。「感染症法は健康被害という重たいものを扱っている観点で、ほとんどの罰則規定が刑事罰だ」と理解を求めた。

*5-2:https://digital.asahi.com/articles/DA3S14765109.html (朝日新聞社説 2021年1月16日) コロナの法改正 罰則が先行する危うさ
 政治の怠慢や判断の甘さを棚に上げ、国民に責任を転嫁し、ムチで従わせようとしている。そんなふうにしか見えない。新型コロナ対策として、政府が進めている一連の法改正の内容が明らかになりつつある。共通するのは、制裁をちらつかせて行政のいうことを聞かせようという強権的な発想だ。例えば特別措置法をめぐっては、緊急事態宣言の発出前でも「予防的措置」として知事が事業者や施設に対し、営業時間の変更などを要請・命令できるようにする、応じない場合に備えて行政罰である過料の規定を設ける、などが検討されている。要請や命令の実効性を高めたいという狙いはわかる。だが倒産や廃業の危機に直面し、通常どおり仕事をせざるを得ないのが、このコロナ禍における事業者の現実ではないか。まず考えるべきは、休業や時短に伴う減収分を行政が適切に支援し、人々が安心して暮らせるようにすることであり、それを法律に明記して約束することだ。ところが政府案では、そうした措置は国・自治体の努力義務にとどまる見通しだという。本末転倒というほかない。どうしたら事業者の理解と協力を得られるかという視点から、全体像を見直す必要がある。感染症法の改正では、保健所の調査を拒む、うその回答をする、入院勧告に従わないといった行為に、懲役刑や罰金刑を科す案が浮上している。接触者や感染経路を割り出す作業はむろん大切だ。だが、いつどこで誰と会ったかはプライバシーに深くかかわる。刑罰で脅せば、市民との信頼関係のうえに成り立ってきた調査が変質し、かえって協力が得られなくなる事態を招きかねない。何より今は、一部で疫学調査が満足にできないレベルにまで感染者が増え、入院相当と診断されても受け入れ先が見つからない状態だ。いったい何を意図しての罰則の提案なのか。そもそも調査や入院勧告の拒否、無断外出などの件数がどれほどあるか、理由は何で、どんな支障が出ているか、政府は具体的なデータを示していない。罰則を必要とする事情を説明しないまま、ただ感染抑止のためだと言われても、真っ当な議論は期待できないし、社会の認識が深まるはずがない。日本にはハンセン病患者の強制隔離など深刻な人権侵害の歴史がある。医学界はおととい緊急声明を出し、感染症の制御で必要なのは国民の理解と協力であり、強制的な措置はむしろデメリットが大きいとした。ほかならぬコロナ対応の現場を担う当事者の声に、政府は真摯(しんし)に耳を傾けるべきだ。

*5-3:https://digital.asahi.com/articles/ASP1H7HC7P1HULBJ010.html?iref=comtop_7_07 (朝日新聞 2021年1月16日) 揺れる「ベッド大国」日本 医療逼迫は民間病院のせいか
 新型コロナウイルス感染症の感染拡大を受けて、各地で病床の逼迫(ひっぱく)が深刻だ。日本は世界的にみても充実した病床数を誇り、「ベッド大国」と言われるのに、なぜなのか。政府は15日、病床確保のために感染症法を見直すという強い対策を打ち出し、民間病院に新型コロナへの対応を迫った。
●人口あたりのベッド数、日本が「最多」
 新型コロナウイルスの感染拡大を受け、たとえば東京都では14日現在、「入院や療養の調整中」とされている陽性者は6500人に上る。東京だけでなく各地で病床が逼迫し、入院調整に苦しむ実態がある。13日に会合があった厚生労働省の専門家組織は、「感染者が急増する自治体では入院調整が困難となり、高齢者施設などで入院を待機せざるを得ない例も増えてきている」と指摘。通常医療との両立が困難な状況も広がる、とした。こうした状況を受けて、厚労省が病床確保策として打ち出したのが感染症法の改正だった。改正に伴い、たとえば病床の確保が必要な場合、従来だと都道府県知事らが医療関係者に協力を「要請」できたのが、「勧告」というさらに強い措置を取ることができるようになる。勧告に従わなかった場合、医療機関名などを公表できる、という規定も盛り込む案だ。狙いは、民間病院に対応を促すことにある。日本は「ベッド大国」といわれる。経済協力開発機構(OECD)の調査によると、人口千人あたりのベッド数は日本は13で最多。韓国12・4、ドイツ8と続く。米国の2・9、英国の2・5の4~5倍以上だ。さらに新型コロナの感染者は、米国で2300万人を超え英国320万人、フランス、イタリア、スペインは200万人を超す。日本は急増しているとはいえ30万人と欧米に比べると桁違いに少ない。
●民間は17%
 それなのに「入院が必要な患者が入院できない」と病床の逼迫が叫ばれるのはなぜなのか。政府は感染症法の改正で「民間」に対応を促す意向ですが、当事者からは反発の声もあがっています。記事の後半では、そうした声や改正案の背景にある官邸の意向について解説します。現在、コロナ患者が入院している医療機関は、手術や救急を行う急性期病院が多いとされる。厚労省によると、昨年11月末時点で厚労省のシステムに登録している4255の急性期病院のうち、新型コロナ患者の受け入れ実績があるのは1444病院。設立主体別に受け入れている割合を見ると、公立病院は58%の405病院、日本赤十字社や済生会など医療法で位置づけられた公的病院が75%の565病院。一方、民間病院は17%の474病院にとどまる。新型コロナ用に確保した病床は全国で2万7650床(6日時点)あるが、急性期の病床の4%程度だ。加えて、コロナ患者を診る割合が低い民間病院が、国内の医療機関の大半を占めている実態がある。厚労省の医療施設調査によると、医療法人・個人が開設する民間病院は全体の約7割。公立病院が多くを占める欧州とは事情が異なる。
●日本病院会会長「病院のせいにされている」
 民間がコロナ患者の受け入れに消極的なのには理由がある。コロナ患者を受けると、感染防御のために一人の患者のケアに必要な看護師が通常より多くなる。感染が怖い、差別を受けるといった理由で離職するスタッフもいる。ほかの診療ができなくなり減収につながる、と敬遠する施設も少なくない。また、民間は中小規模のところも多く、受け入れが難しい現状もある。医療体制を決める現行の医療法では、個別の医療機関がどのような医療を提供するか、指示や命令をする権限は都道府県知事らにもなく、民間病院に行政が介入できる余地は小さかった。ただ、民間に対策を迫る今回の改正案に実効性が伴うかは疑問も残る。そもそも新型コロナの感染拡大防止のための医療提供体制の整備は、国や地方自治体と医療関係者が連携して取り組んでいるため、法律に基づく従来の協力要請すら行われていないという実態があるという。協力要請を飛び越えて盛り込んだ「勧告」が、病床逼迫の改善に結びつくのか。相沢孝夫・日本病院会会長は今回の改正案について「勧告の前に政府は、病院間の役割分担や情報交換、連携を促し、地域でコロナを受け入れるための青写真を描くべきだ。それを踏まえて都道府県が具体的な体制をとるべきだろう。コロナ患者を受けなくても、かわりに他の病気の患者を引き受けるなど、医療機関が協力して対応する仕方はいくらでもある」と話す。
●改正案、背景に官邸の意向
 医療提供の問題については「政府や自治体が責任のなすりつけあいを続け、病院のせいにされている」とし、患者の受け入れを強く求めるだけでは差が生まれ、「病院間の分断を生んでしまう」と指摘する。厚労省の地域医療計画に関する作業部会のメンバーでもある今村知明・奈良県立医大教授(公衆衛生)は「勧告によって、コロナの受け入れをしやすくなる施設も出てくるのではないか。民間病院の場合、公的病院と異なり、職員のコロナへの抵抗感が強いと受け入れにくい面もある。厚労省や都道府県知事も勧告を出す前には事前に病院の状況を確認するだろうから、やみくもにどこにでも勧告を出すということではないだろう」と話す。今回の改正案には官邸の意向が働いた。病床確保に向け菅義偉首相は14日に日本医師会など医療団体と面会。「必要な方に必要な医療を提供させていただくために、さらなるご協力を賜りたい」と協力を求めた。首相周辺は「病院や診療所の絶対数は多いんだから、民間にもどんどん協力してもらうしかない」と、民間医療機関のさらなる協力に期待を寄せた。日本医師会などの医療団体は週明けにも、病床確保のための対策組織を立ち上げる予定だ。

*5-4:https://www.nikkei.com/article/DGXZQOJB1555G0V10C21A1000000/ (日経新聞 2021/1/15) 「80万人検査」の広島県、検体採取能力アップへ
 広島県は広島市内での最大80万人規模のPCR検査実施に向け、検査体制の拡大を進める方針だ。現在稼働している広島市内のPCRセンターで、検体を採取するラインを増設する案を軸に検討。検体採取キットを薬局などで受け渡し、採取効率を高める案も出ている。15日明らかになった広島県の方針によると、新型コロナウイルスの集中対策の一環で、広島市中心部の4区(中区、東区、南区、西区)の全住民や就業者を対象に無料PCR検査を実施する。県は具体的な実施方法などを現在詰めているが、全国でも珍しい大規模検査になるだけに、いかに体制を強化するかがカギになる。広島県は2020年12月、広島市内でPCRセンターを相次いで2カ所立ち上げた。2カ所のセンターで採取できる検体は1日あたり最大900人程度で、1月5日までに計1万1500人の検体を採った。一方、県が確保した検査能力は1日あたり最大5300人分(県外機関含む)あり、検体の採取体制を拡大して大規模検査に備える。大規模検査は任意のため、検査能力の引き上げが必要かどうかは実際の希望者数などをみて判断する。検査数が今後増えれば、陽性が確認される人数も増加する可能性が高い。県は現在819室分の宿泊療養施設を確保しているが、大規模検査が本格化すれば追加を迫られる公算が大きい。

<エネルギーの変換>
PS(2021年1月18、20日追加):*6-1のように、IMF等によれば、コロナ対策の財政支出や金融支援は世界で13兆ドル(約1340兆円)に達し、英国は、①「グリーン産業革命」として脱炭素に不可欠となる新たなインフラ整備に重点投資し ②再エネの導入を拡大して2030年までに洋上風力で全家庭の電力を賄えるようにし ③道路には自転車レーンを拡充し ④温暖化ガスを排出しないバスを数千台規模で投入して 新産業で雇用を生みながらCO₂排出ゼロに向けた布石を打つそうだ。また、ドイツは、⑤洋上風力の拡大目標を2030年に500万キロワット分引き上げ ⑥自動車向け水素ステーションを増やし、米国も、バイデン次期大統領が、⑦グリーン刺激策に2兆ドル(208兆円)を投じる計画で ⑧50万カ所に充電施設を設け政府の公用車300万台をEVにする方針 だそうだ。さらに、フランスは、⑨既存産業の支援にも脱炭素の視点を入れ ⑩エールフランスKLMの救済では運航時のCO2排出が少ない機体の導入や鉄道と競合する国内路線の廃止を条件として ⑪産業を立て直しながら社会全体で脱炭素を進める姿勢を鮮明にする。日本も、(当然)財政支出を行うならグリーンリカバリーとして環境投資で再エネや水素の導入を行って経済を浮上させるのが賢く、*6-4のとおり、原発依存はもう必要ない。
 このような中、*6-2のように、三菱地所は2022年度にも東京・丸の内に持つ約30棟で、東急不動産は2025年頃に全国の保有施設全てを再エネ仕様にし、全国には3000平方メートル以上のオフィスビルが約1万600棟あって、こうした物件が再エネ対応に変われば効果が大きいそうで期待できる。マンションも、2020年代前半にZEBによる再エネ仕様にすれば、環境によいだけでなく光熱費も下がる。しかし、メディアは必ず「再エネを使うと、火力発電より発電費用がかかるため電気利用のコストが上がる」などと書くが、これは真っ赤な嘘だ。その理由は、再エネは化石燃料を遠くから運賃を払って輸入する必要がなく、運転コストが0であるため、自然エネルギーで発電すれば発電コストが下がり、エネルギー自給率は上がるからである。
 また、自動車もEVが主流になるだろうが、その端緒を作った功績ある日産のゴーン前会長は、*6-3のように、元CEOオフィス担当のハリ・ナダ氏が「ゴーン解任計画」を取りまとめて西村氏にメールで送信していた。テレビ東京は、この極秘文書を入手したのだそうで、その極秘文書には、ゴーン氏の逮捕半年前に作られたゴーン氏解任のためのシナリオが詳細に書かれており、日産社内で周到な準備をした上で、検察・経産省を巻き込んで行われたものだったようである。私は、このブログの2018年12月4日、2019年4月6日、2020年1月11~12日に、事件の背後に見て取れる陰謀について推測して記載し、その殆どが当たっていたが、推測できた理由は、日本にある外資系企業に監査人として監査に行った時は、(外国人も含む)社長と必ず話をしてその行動様式を知っていたこと、EYなどBig4の税務部門で外資系企業の税務コンサルティングをした時は、報酬の支払い方や開示方法について関係各国の事務所の専門家から文書で、日本の金融庁・国税庁からは(文書を出さないので)口頭で必ず確認をとっていたため、日産のゴーン前会長のやり方も違法行為には当たらない筈だと思えたからである。これはプロの技術であり、決して新聞記事等の文章を読んだだけで分析できるわけではないことを付け加えておく。
 なお、*6-5のように、新型コロナ感染拡大で、政府はビジネス関係者に認めていた外国人の新規入国を全部停止したたため、農業の生産現場でも人手不足に拍車がかかった。日本の産業は、既に農業だけでなく製造業・サービス業も外国人労働者を多用しているので、技能実習生のように仕事を覚えたら帰国することを前提とした低賃金で差別的な労働条件ではなく、職務に見合った賃金で雇用し、5年在住したら永住権も認めるようにした方がよい。何故なら、そうした方が雇用する側にとって、搾取して使い捨てにするのではなく、人材に投資して回収を見込めるからだ。これに対し、日本人労働者は「賃金が下がる」として反対するケースが多いが、高コスト構造のまま日本から産業がなくなれば働く場も技術もなくなる上、日本人は母国語・教育などで有利な立場にあるため、職務に見合った賃金で雇用されれば不足はない筈だからである。
 このような中、*6-6のように、日本は難民の認定率が低く、定住や永住の在留資格を与えないことで有名だが、地方で自治体が公営住宅を準備して企業誘致を行えば、難民を労働力として国際競争力ある賃金で産業を日本に回帰させることが可能だ。日本人になって「イスラム教」「アラビア学校」等に固執しない条件でリクルートすれば、双方にメリットがあるだろう。

 
   ZEB    太陽光発電設置道路   太陽光発電屋根の駐車場 EV用ワイヤレス充電器

(図の説明:1番左は、Zero Energy Building(ZEB)で、ビルの壁面で太陽光発電を行う。左から2番目は、太陽光発電装置を埋め込んだ道路で、道路面積は広いので潜在力が大きい。右から2番目は、駐車場の屋根に太陽光発電機を設置したもの。1番右は、自動車のワイヤレス充電器で、これらは中小企業でも作れそうだ。駐車場の屋根に太陽光発電機をつけ、ワイヤレス充電器で充電するシステムで、EVがロボット掃除機のように自動的にワイヤレス充電器の上に止まって、「着きました。外の気温は○度です」と言うと便利な相棒になるのだが・・)


               2021.1.14WBSニュースより

(図の説明:2021年1月14日、テレビ東京のWBSニュースで、元CEOオフィス担当のハリ・ナダ氏が「ゴーン解任計画」として西川氏にメールで送信していた極秘文書が明らかになった。通常は、会長が逮捕されれば会社は弁護するのだが、西川氏が「待ってました」とばかりに会長を解任したため、検察・経産省を使った日産社内の内部紛争の可能性が推測された)

*6-1:https://r.nikkei.com/article/DGXZQOGE282L30Y0A221C2000000?n_cid=NMAIL006_20210117_A&disablepcview=&s=4 (日経新聞 2021年1月17日) 経済再生、脱炭素の試練 グリーン復興で欧州先行
 世界を大きな混乱に陥れた新型コロナウイルス危機には思わぬ副産物もあった。その一つが大幅な温暖化ガスの排出量の減少だ。もっとも経済活動の急収縮に頼った排出削減は経済の回復とともに後戻りしかねない。コロナ後の復興をどう脱炭素につなげていくか。グリーンリカバリーの知恵が問われている。2020年は都市封鎖や工場停止で化石燃料の需要が減った。国際共同研究グローバル・カーボン・プロジェクトによると20年の化石燃料由来の二酸化炭素(CO2)排出量は19年比で7%減少した。減少は15年以来で、単年の減少量は過去最大という。コロナ禍では経済活動停止の影響で大気汚染が改善した。「ヒマラヤ山脈をこんなきれいに見たのは初めて」。世界3位の温暖化ガス排出国のインドではこんな声が出た。しかし排出量は早くも反転の兆しが見える。20年前半に大幅減だった中国では昨秋以降、鉄鋼などの生産が回復し20年通年の排出量は19年比で1.7%減にとどまった。国際通貨基金(IMF)などによると、コロナ対策の財政支出や金融支援は世界で13兆ドル(約1340兆円)に達する。特に雇用や資金繰りの支援に重点を置く。グリーンリカバリーには大きく2つある。第1はコロナ後の経済刺激策で脱炭素に不可欠となる新たなインフラ整備に重点投資すること。第2は既存産業の立て直しで単純にコロナ前に戻すのではなく、温暖化ガスを減らす方向へ事業転換を促すことだ。第1の例には「グリーン産業革命」を唱える英国の戦略がある。再生可能エネルギーの導入を拡大し30年までに洋上風力で全家庭の電力を賄えるようにする。交通では温暖化ガスを排出しないバスを数千台規模で投入し、道路には自転車レーンを拡充する。新産業で雇用を生むと同時に将来の排出ゼロに向けた布石を打つ。ドイツは洋上風力の拡大目標を30年に500万キロワット分引き上げ、自動車向けの水素ステーションも増やす。米国も欧州を追う。環境対策に消極的だったトランプ政権から一転、バイデン次期大統領はグリーン刺激策に2兆ドルを投じる計画を表明した。50万カ所に充電施設を設け政府の公用車300万台を電気自動車などにする方針だ。第2の例では既存産業の支援にも脱炭素の視点を入れるフランスの政策がある。航空大手エールフランスKLMの救済では、運航時のCO2排出が少ない機体の導入や鉄道と競合する国内路線の廃止を条件にした。産業を立て直しながら社会全体で脱炭素を進める姿勢を鮮明にする。デンマークは老朽化が進む公営住宅を対象にする。暖房設備を環境に優しいタイプに変えた場合などに補助金を出し、20年から6年間で集中して更新を進める。日本は電力需要の逼迫への対応で重油で火力を稼働させるなど心もとない状況だ。菅義偉首相は温暖化ガス排出実質ゼロの目標を掲げた。再生エネや水素の導入拡大を加速できるかが試される。「主要25カ国・地域のコロナ対策のうち18カ国の対策は環境負荷が重い」。ロンドンに拠点を置くコンサルティング会社、ビビッド・エコノミクスは昨年12月に報告書をまとめた。財政支出を環境の視点から分類した「グリーン刺激策指数」でプラスは全体の約3割にとどまっている。08年のリーマン・ショック時も各国が環境対策をうたって財政支出を拡大したが、温暖化ガスの排出量は増え続けた。的確な対策で効果を高め、経済を浮上させながら排出量を増やさない状況を作り出せるかが課題になる。
■グリーンリカバリー 環境投資で経済浮上
 新型コロナウイルスの感染拡大による景気後退への対策で、環境を重視した投資などを通して経済を浮上させようとする手法をさす。気候変動への対応や生物多様性の維持といった課題の解決に重点的に資金を投じ、そこから雇用や業績の拡大で成果を引き出す。先進国を中心に各国がグリーンリカバリーを意識した景気刺激策を相次いで打ち出している。世界で異常気象が相次ぎ、気候変動への対応は世界共通の優先課題だ。地球温暖化対策の国際枠組みである「パリ協定」は地球の気温上昇を産業革命前から2度以内に抑えることを掲げている。日米欧のほか中国も温暖化ガス排出実質ゼロを掲げ、水素活用の推進などに巨額の資金を投じる方針だ。気候変動対策に反する活動への批判も高まっている。国が環境負荷の高い産業を支援することは投資家などから批判を浴びる。民間では石炭火力発電所からの投資引き揚げなど、より環境を配慮した行動へのシフトが進む。グリーンリカバリーは今後の経済回復の局面で、コロナ拡大前と同じ生活や企業活動に戻るのではなく、新しい形態に転換しようとする動きを加速するためのカギを握る。

*6-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20210118&ng=DGKKZO68247360Y1A110C2MM8000 (日経新聞 2021.1.18) オフィスビル電力、脱炭素、三菱地所、丸の内30棟 テナント誘致の柱に
 大手不動産会社が保有物件で使う電力を一斉に再生エネルギーに切り替える。三菱地所は2022年度にも東京・丸の内に持つ約30棟で、東急不動産も25年ごろに全国の保有施設全てを再生エネ仕様とする。入居企業が多いオフィスビルの大規模な脱炭素化は波及効果も大きい。都市部に多い金融や飲食などサービス業などの再生エネ活用を後押ししそうだ。三菱地所は「新丸ビル」「丸の内オアゾ」など丸の内地区の約30棟で切り替えを進める。対象ビルの19年度の使用電力は計約4億キロワット時で、家庭なら10万世帯強に相当する。二酸化炭素(CO2)排出量は約20万トンだった。21年4月から18棟で再生エネ由来に順次変更し、22年度にも残りのビルの電力を切り替える。当初は丸の内エリアで年数棟ずつ切り替える計画だったが、政府の方針などを受け前倒しで進める。電力はENEOSが手掛けるバイオマス発電などで調達する。東急不動産でも、21年4月に本社が入る「渋谷ソラスタ」など計15物件の電力を再生エネに変える。25年をメドにスキー場やホテルも含め、全国に保有する全施設の電力を再生エネに変更する。当初の目標達成時期の50年から大幅に早める。開発中を含め風力や太陽光など50を超える再生エネルギー発電事業に参加しており、こうした電源を活用する。再生エネを使うことで電気利用のコストは上がる。水力や風力発電は火力発電より発電費用がかかるからだ。企業が再生エネからの電力を購入する方法の1つの「非化石証書」がついた電力は、通常の電力より約1割高くなるという。両社は増加するコストをテナントに転嫁しない方針だ。政府が温暖化ガスの排出を50年までに実質ゼロにする方針を示し、オフィスの脱炭素化を立地や設備などと並ぶテナント誘致の柱と位置づける。他の不動産会社も脱炭素を急いでいる。三井不動産は「東京ミッドタウン日比谷」で再生エネを導入する。東京・丸の内の「鉄鋼ビル」を運営する鉄鋼ビルディングも1月に導入済みだ。オフィスで使われる電力は企業・事業所が使う電力の約6%を占める。三菱地所によると丸の内地区だけで金融やサービス業など千社以上が活動し、多くの企業の再生エネ利用につながる。日本不動産研究所によると全国には3千平方メートル以上のオフィスビルが約1万600棟あり、今後こうした物件が再エネ対応に変われば効果は大きい。再生エネの発電量に占める割合は19年度速報値で18%だった。経済産業省は50年の発電量に占める再生エネの割合を約5~6割に高める案を示している。安定した電力を確保しながら日本の産業全体で脱炭素を進めるために、再生エネの拡大に加え、電力を効率的に使う蓄電などの技術開発が不可欠になる。

*6-3:https://news.yahoo.co.jp/articles/8852bada16588a58cf7e94380c1ffb8696679e6c (Yahoo 2021/1/14) 日産「ゴーン解任計画」極秘文書を入手
日産自動車の前会長、カルロス・ゴーン被告のレバノンへの逃亡からおよそ1年が経ち、主役不在の裁判がヤマ場を迎えています。ゴーン被告の報酬隠しに関与したとして、金融商品取引法違反の罪に問われた元代表取締役のグレッグ・ケリー被告らの裁判がきょう東京地裁で開かれ、元CEOオフィス担当で、現在専務を務めるハリ・ナダ氏が証人として出廷しました。ハリ・ナダ氏はゴーン被告らのかつての腹心で、検察との司法取引に応じた事件のキーマンともいえる人物です。テレビ東京は今回、このハリ・ナダ氏が取りまとめていたとみられる「ゴーン解任計画」とも呼べる極秘文書を独自に入手しました。ゴーン被告ら逮捕の半年前に作られたこの極秘文書にはゴーン被告を解任するまでのシナリオが細かく記載され、社内で周到な準備の元、解任を入念に検討していたことをうかがわせるものです。

*6-4:https://www.nichibenren.or.jp/document/statement/year/2020/201216.html (日本弁護士連合会会長 荒 中 2020年12月16日) 大飯原発設置変更許可取消訴訟大阪地裁判決に対する会長声明
 大阪地方裁判所は、本年12月4日、国に対し、関西電力大飯原子力発電所(以下「大飯原発」という。)3号機及び4号機の設置変更を許可した原子力規制委員会の処分を取り消す判決(以下「本判決」という。)を言い渡した。福島第一原子力発電所事故後、原子力発電所(以下「原発」という。)の安全確保に問題があるとして民事訴訟ないし仮処分において運転差止めを認めた事例はこれまで5例あるが、行政訴訟としては初めて、原発の設置(変更)許可処分を取り消す判決が言い渡されたものであり、その意義は大きい。当連合会は、2013年に開催された第56回人権擁護大会において、原発の再稼働を認めず、できる限り速やかに廃止すること等を内容とする決議を採択した。また、2014年に福井地方裁判所が大飯原発3号機及び4号機の運転差止めを命じる判決を言い渡した際、これを評価する会長声明を公表し、同年の第57回人権擁護大会においても、行政庁が依拠する特定の専門的技術見解を尊重して判断する方法を改め、今後は、科学的・経験的合理性を持った見解が他に存在する場合には、当該見解を前提としてもなお安全であると認められない限り原発の設置・運転を許さないなど、万が一にも原発による災害が発生しないような判断枠組みが確立されること等を求める宣言を採択した。本判決は、1992年10月29日の伊方発電所原子炉設置許可処分取消請求事件に関する最高裁判決の判断枠組みに従い、原子力規制委員会の判断に不合理な点があるか否かという観点から審理、判断をしている。原子力規制委員会が制定した「基準地震動及び耐震設計方針に係る審査ガイド」(以下「地震動審査ガイド」という。)によれば、地震規模の設定に用いる経験式は平均値としての地震規模を与えるものであり、経験式が有するばらつきも考慮されている必要がある。にもかかわらず、経験式に基づき算出された地震モーメントの値に何らかの上乗せをする必要があるか否か等について何ら検討することなく、本件申請が設置許可基準規則4条3項に適合し、地震動審査ガイドを踏まえているとしたことは、原子力規制委員会の調査審議及び判断の過程に看過し難い過誤、欠落があると判示したもので、福島第一原子力発電所事故後初めて原発の設置(変更)許可処分を取り消した判決として評価に値する。当連合会は、原子力規制委員会に対し、本判決を受けて地震動審査ガイドに適合しない原発の設置許可を自ら取り消すことを求めるとともに、政府に対して、従来の原子力に依存するエネルギー政策を改め、できる限り速やかに原発を廃止し、再生可能エネルギーを飛躍的に普及させること、及びこれまで原発が立地してきた地域が原発に依存することなく自律的発展ができるよう、必要な支援を行うことを強く求めるものである。

*6-5:https://www.agrinews.co.jp/p52932.html (日本農業新聞 2021年1月15日) 実習生ら対象 外国人入国停止 人手不足深刻化も
 新型コロナウイルスの感染拡大を受け、政府は14日、ビジネス関係者らに例外的に認めていた外国人の新規入国を一時停止した。この例外措置の対象には技能実習生も含まれており、昨年11月から今月10日までにベトナム、中国などから実習生約4万人が入国していた。入国制限で生産現場の人手不足に拍車がかかる可能性があり、農水省は影響を注視している。
●農水省 支援活用促す
 政府は、コロナの水際対策の入国制限を昨年10月に緩和し、全世界からのビジネス関係者らの入国を再開。感染再拡大を受けて12月28日には一時停止したが、中国や韓国、ベトナム、ミャンマーなど11カ国・地域のビジネス関係者らの入国は例外的に認めていた。だがこの措置も14日から、宣言解除予定の2月7日まで停止した。この例外措置の対象には技能実習生も含まれる。出入国在留管理庁の統計によると、例外措置で入国したのは、昨年11月から今年1月10日までに10万9262人。うち技能実習生は4万808人で、全体の37%を占める。留学などを上回り、在留資格別で最多だった。国別に見ると、ベトナムが3万6343人、中国が3万5106人で、うち技能実習生はベトナムが2万911人、中国が9322人。農業分野の技能実習生も含まれるとみられる。11カ国・地域に限定後の12月28日~1月10日にも、技能実習生として計9927人が入国している。農水省は、農業にも影響が及ぶ可能性があるとみる。昨年3~9月は2900人の技能実習生らが来日できず、人手不足が問題となった。今年の見通しは不透明だが、「外国人を受け入れている経営は全国的に多い」(就農・女性課)として状況を注視する。一方、同省は技能実習生の代替人材を雇用したり、作業委託したりする際の労賃などを一定の水準で支援する「農業労働力確保緊急支援事業」の対象期間を3月末まで延長。農家らに活用を呼び掛ける方針だ。

*6-6:https://digital.asahi.com/articles/ASP1H7RTJNDZUHNB00B.html (朝日新聞 2021年1月16日) 迫害受ける同胞、日本から支える ロヒンギャの指導者
 「ふるさとに帰りたいけど、帰れない。殺されるかもしれないから」。群馬県館林市苗木町の会社社長水野保世(ほせ)さん(52)の本名は「アウンティン」。仏教国のミャンマーで迫害されている少数派のイスラム教徒ロヒンギャだ。来日28年。館林には1999年から住んでいる。当時、館林に住むロヒンギャは数人だった。迫害を逃れて偽造パスポートなどで来日する人が続き、「2006年までに70人のロヒンギャが住むようになった」とアウンティンさん。01年にロヒンギャの妻と結婚し、3人の子どもに恵まれた。他にもロヒンギャの女性を呼び寄せて結婚した男性は多い。子どもが増え、270人を数える日本最大のロヒンギャコミュニティーになった。立場はさまざまだ。定住や永住の在留資格を持つ人、不法滞在ながら一時的に拘束を免れている「仮放免」の人……。仮放免状態だと就労や国民健康保険への加入ができない。生活費や医療費を仲間が支える。アウンティンさんは、立ち上げに関わった「在日ビルマロヒンギャ協会」の副会長として、難民認定を日本政府に働きかけている。コミュニティーが大きくなる過程で、地域住民からは「どういう人たちなのか」と不安がる声のほか、ゴミの分別や夜間の騒音に対する指摘もあった。ロヒンギャの中には車の運転に免許が必要だと知らない人もいた。「認めてもらうにはルールを守ることが大事。そうしないと、みんな幸せになれない」。アウンティンさんは、そう仲間に説いて回った。アウンティンさんが故郷を遠く離れたのは、故国の民主化運動がきっかけだった。高校生だった88年に始まった運動に身を投じた。何人もの仲間が軍政下の弾圧で殺され、自身も3回拘束された。命の危険を悟り、90年7月に単身タイへ。マレーシア、バングラデシュ、サウジアラビアを経て、92年11月に知人を頼って来日した。茨城・日立、埼玉・大宮、そして館林。「英語はあまり通じないし、お祈りする場所もない。来てすぐのころは困ってばかりだった」。だからこそ、仲間のために尽くし続けている。工場で必死で働いてためたお金で06年、中古の車や家電を輸出する会社をつくった。07年には市内の中古住宅を購入し、イスラム教の礼拝所であるモスクに改装した。モスクでは子ども向けの「アラビア学校」も開く。平日の午後6~8時、イスラム教の教えや祈りの作法を教える。食事もイスラム教の戒律に従い、口にするのは「ハラル」と呼ばれる料理に限られる。市内にはハラル食を扱うスーパーもできた。館林市学校給食センターによると、地元の小中学校の給食には戒律で禁じられている食材が使われることもあるため、弁当を持参する子どもが多いという。故国でのロヒンギャへの迫害や差別は続く。18年にはクラウドファンディングで集めた資金と私財でバングラデシュのロヒンギャ難民キャンプに学校を建設。生活物資や新型コロナウイルス対策のためのマスクを送る活動も続ける。15年、日本国籍を取得した。「ミャンマーでは自由に活動ができない。日本人になってロヒンギャ支援とミャンマーの民主化のための活動を続けよう」。そう決意したからだ。「日本には自由がある。平和であることは、何より素晴らしいことです」

<農業について>
PS(2021年1月21、22日追加):*7-1のように、1965年に73%だった食料自給率は35年間で38%に半減し、食料安全保障に関わる重大な問題となっている。しかし、新型コロナ感染拡大で外食が減っても食べる量に大差はないので家庭向需要は増えた筈だが、こちらは所得に見合った単価の外国産を購入したり、食べたいものを我慢したりしているのだ。つまり、日本産は、日常使いには価格が高すぎ、会社が交際費か福利厚生費として支出する会食や贈答用が多かったということで、その価格を維持すれば個人消費者の需要は増えない。また、日本の農業の問題点は、生産過剰の米を作りたがって足りない農産品を作りたがらないことで、日本政府の食料自給率軽視政策も誤ってはいるが、米以外の必要なものを作って成り立つ経営改革も必要だ。
 その改革の内容は、①付加価値の増大 ②副産物の生産 ③生産性の向上 ④無駄の排除 などが考えられ、①は、的確な農産品ミックスや加工・冷凍することによる無駄の排除、②は、農地での再エネ生産などで収入を増やすことだ。そのため、*7-3の2021年度内に庁内で使う全電力を再エネにして脱炭素化する目標は、経産省・環境省だけでなく農水省・国交省も立て、農地・山林・離島・洋上などでの再エネ製造と課題解決法を省を挙げて検討すべきだ。
 また、③は、*7-2-1・*7-2-2のように、農業を全自動化することが考えられ、それができるためには全自動化に適した大区画にする必要があり、大区画化の準備は私が衆議院議員時代の2005~2009年に既に始めていた。そして、5GやGPSを使わなくても農地のポイントに電波の発信源を設置しておけば全自動化はできる筈で、大規模な農地内に農機具倉庫を作れば無人トラクターが公道を走る必要もない。なお、コンバインで刈り取り始めてからコメの食味を判定する必要はなく、1台1000万円以上になると収益から支払うことができないほど高価な機械となって使えない。農機具は使う時期が同じであるためシェアリングには向かず、価格が高すぎると農機具も機能を絞った安価なものを外国から買うしかなくなるのだ。なお、*7-2-3のような中山間地は、農地を大区画化しにくいため、それにあった作物やスマート化が必要になる。もちろん、5Gを利用できるに越したことはないが、必要な場所に基地局を建てる方法もあり、これもまた1基数千万円では、日本は何もできずに遅れた国になるしかないのである。
 なお、③の生産性の向上には、国際競争力ある賃金で働く労働者が無駄なく働ける環境づくりも必要で、*7-4のような「派遣労働」は季節によって労働力のニーズが異なる農業分野で有効だ。労働者も技術を習得するまでは多くの経営体を見た方が知識や経験の蓄積ができ、技術を習得したら帰国するのではなく地域に根付いてもらった方が労働力の質が上がる。
 2021年1月21日、日本農業新聞が、*7-5のように、「高知県がベテランの技やJAの出荷データをクラウドに集約して経営の“最適解”を計算する「IoPクラウド」を産官学連携で構築した」と記載している。知識や経験による原理の理解がなければシステムがブラックボックス化してしまうので脱知識・脱経験は無理だと思うが、多種の作物を生産する中山間地で有効なツールであり、他県も参考にできるだろう。

  

(図の説明:左図は、大豆畑のドローンによる消毒風景、中央の図は、全自動コンバインによる米の収穫、右図は、中山間地葡萄畑の自動収穫ロボットだ)

 

(図の説明:左図は、中山間地の放牧と風力発電機のある風景、右図は、カイコの付加価値の高い新しい使い方で、牛乳やカイコに新型コロナウイルスの免疫を含ませる方法もあると思う)

*7-1:https://www.agrinews.co.jp/p52822.html (日本農業新聞論説 2021年1月4日) [コロナ以後を考える] 食料自給率の向上 草の根の行動広げよう
 わずか、38%。1965年に73%だった食料自給率は35年間で半減してしまった。自給率の向上がなぜ必要か。どうすれば高まるか。農家は当事者意識を一層高め、国産回帰の大切さを改めて認識し、行動しよう。新型コロナウイルスの感染拡大で外食や土産物需要が落ち込み、小豆や酒米、乳製品などさまざまな農産物の在庫が膨らんだ。保管が可能な穀類などは過剰在庫を早急に解消しなければ、需給緩和と価格低迷は長期化する。しかし特効薬はない。食料・農業・農村基本計画は、2030年までに自給率を45%に高める目標を掲げる。一方で生産しても需要の減少で過剰在庫を抱え、一部作物では保管する倉庫すら逼迫(ひっぱく)。生産現場からは、自給率目標は「絵空事のように映る」(北海道十勝地方の農家)との声が上がる。自給率目標45%を政府は2000年に初めて設定したが、高まるどころか低下してしまった。自給率向上の糸口を今年こそ見いだしたい。異常気象や災害の世界中での頻発や、人口増加、途上国の経済発展、そしてコロナ禍で見られたような輸出規制などを踏まえれば、いつでも安定的に日本が食料を輸入できるわけではないことは明白だ。国内農業の衰退は国土保全や農村維持など多面的機能の低下も招く。自給率の低迷は、食料安全保障の観点からも国民全体の問題だ。一方、その向上には需要の掘り起こしと、それに見合った生産の増加が不可欠で、農家が一翼を担う。自給率向上のヒントとなるのが北海道の取り組みだ。道内の米消費量に占める道産は、90年台は37%だったが、19年度は86%まで高まった。道目標の85%を8年連続で上回る。生産振興とともに、地道な消費拡大の活動を長年続けてきたことが成果に表れた。小麦も外国産から道産に切り替える運動を展開。道民の小麦需要に対する、道内で製粉した道産割合は5割前後となった。地元産だけを使ったパン店などが人気で、原料供給地帯でも地産地消の流れを育む。コロナ禍でも地元消費の動きが目立つ。例えばJA浜中町女性部。脱脂粉乳の在庫問題を契機に牛乳消費拡大からバター、スキムミルクなど乳製品の需要喚起に活動の軸足を移し、乳製品レシピを町民に配布。地域内での需要拡大を目指す一歩だ。他にも施設などに道産の花を飾ったり、インターネットなどでJA組合長が牛乳や野菜の簡単調理を紹介したりといった取り組みを道の各地が進めた。地産地消を広げようと農家が知恵を絞り、消費の輪を広げる活動だ。JAグループ北海道がけん引役を担い、農家や農業のファンを増やす運動も昨年始めた。自給率向上は政府の責務であり、十分な支援が必要なことは言うまでもない。ただ、農家の草の根の行動が大きな力になる。自分や仲間でできることを実践することが一歩になる。

*7-2-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20210121&ng=DGKKZO68353050Q1A120C2TJ1000 (日経新聞 2021.1.21) クボタ、デジタル農業開拓、「考える」トラクター、作付け分析ドローン エヌビディアとAI磨く
 クボタが無人トラクターを開発し、ビッグデータを駆使したデジタル農業の実現を目指している。米半導体エヌビディアの人工知能(AI)で自動運転技術を磨く。作付けを分析するドローンや農家が経営を管理できるソフトと組み合わせ、農機を売るだけのビジネスモデルからの脱却を目指す。高齢化で働き手が不足する日本の農業も変える。
●5Gも活用
 2020年11月、北海道岩見沢市。一見すると何の変哲もないトラクターが大豆畑の農道を走る。よく見ると運転席の男性はハンドルに触れていない。トラクターは自動で動くように設定され10キロメートル離れた場所からオペレーターが遠隔監視する。クボタの農機を使った自動運転の実験だ。トラクターには高精細カメラを付け、高速通信規格「5G」も駆使する。クボタの北尾裕一社長は「10年後には、さらにレベルの高い無人自動運転を実現させたい」と話す。農機の自動運転技術は、メーカーなどの間でレベルが1から3に区分される。レベル1はハンドル操作の一部を自動化して直進をキープする技術で既に普及している。レベル2は農場で人が監視する形で自動運転する。レベル2は国内でクボタが17年にヤンマーホールディングスなど競合に先駆けて「アグリロボトラクタ」を投入し、作業時間を30%短縮できる。レベル3は人や動物、トラクターの衝突を避けるため、オペレーターが遠隔で無人運転を監視する必要がある。現在は実現しておらず、無人で公道を走行できないなどの規制もあるが、クボタは将来の規制緩和を見据えて実験などを重ねる。5GでNTTグループと連携し、自動運転に欠かせないAIでエヌビディアと組んだ。今後、自動運転に必要となる莫大な走行データを集める。自動車の場合、前方の車や横断歩道、標識など多くの目印がある。農機はぬかるんだ地面を走行し、農地は広く開けた土地のため目印も少ない。あぜ道に入り込む可能性もある。「AIでトラクターが状況を賢く判断する能力が必要だ」(クボタの佐々木真治取締役)
●スパコンで解析
 そこでクボタはエヌビディアの技術を駆使し、まず農地などの映像や画像をAIに覚えさせる。高度なディープラーニング(深層学習)が可能なエヌビディアのスパコンで解析し、トラクターが自ら状況判断できるように「頭脳」を作る。トラクターには、サーバーではなく、農機の本体側で素早く動作を指示する「エッジAI」と呼ぶ技術を搭載する。駆動部分に指示を出して「走る」「止まる」などの操作を判断するイメージだ。遠隔で監視するが、基本は「自ら考えるトラクター」を作る。クボタは無人農機を軸に、データで生産性を上げるデジタル農業を実現させる。日本総合研究所は30年の農業就業人口が123万人と15年比で4割減ると予測。単に農機を売るだけではじり貧になる。日本総研の前田佳栄コンサルタントは「自動運転の農機、ドローン、ロボット、経営管理ソフトによる農家の生産性向上が必要」と話す。クボタのコンバインは収穫したコメの水分などから食味を計測できる。収穫量とあわせクラウドにデータを自動で送信する。農家はどの田んぼからどのような味のコメが収穫されるか、全地球測位システム(GPS)で情報を整理し、ソフトで作業記録と照合して確認できる。農機の自動化が進めば、人件費の削減効果を確認し、農家の経営の見える化が進む。ドローンの活用も急ぐ。昨年、ドローンの撮影画像で作付けの状態を分析し、農家に農薬散布量などを提案するイスラエルのスタートアップに出資した。無人農機との連携が期待できる。将来は天候データの分析を視野に入れる。温暖化でコメのでんぷんの蓄積不足、果樹の着色不良といった被害が出始めている。データで原因を分析し、解決手段を探る。国内農家の平均年齢は70歳近い。コメなどを作る白石農園(北海道新十津川町)の白石学代表は「限られた人数で広い面積を耕す農業が不可欠になる」と話す。デジタル農業の実現に向け、残された時間は多くない。

*7-2-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20210121&ng=DGKKZO68353100Q1A120C2TJ1000 (日経新聞 2021.1.21) 無人農機、主導権争い
 世界では食糧不足を背景に小麦やトウモロコシの生産で大規模農地を効率良く耕す農機の需要が増える。クボタは世界のトラクター市場が27年に190万台(16年で140万台)になるとみる。世界の農機市場は10兆円を超すとの見方もある。農業では明確な自動運転のロードマップやルールがグローバルで共有されていない。無人農機で先手を取れば、主導権を握ることも期待できる。農機で世界首位の米ディア、2位の欧州CNHインダストリアルも研究開発を進め、競争は激しい。米シリコンバレーのスタートアップを中心に農作物を自動で収穫するロボットの開発も進む。課題は価格だ。クボタの自動運転農機、アグリロボトラクタは1台1000万円以上する。AIの活用で農機自体の価格が上昇する可能性もある。普及にはシェアリングの活用なども必要になりそうだ。

*7-2-3:https://www.agrinews.co.jp/p52927.html (日本農業新聞 2021年1月15日) 5G 地方展開いつ? 中山間地こそ「スマート」必要
 中山間地の農家が、スマート農業を使いこなすのに必要な第5世代移動通信システム(5G)を利用できないのではないかと、不安視している。人口が少ない地域は通信会社の実入りが少なく、電波網の整備が後手に回りがちだ。自治体主導で必要な基地局を建てる手もあるが、1基数千万円かかるなど負担が重い。「条件不利地こそ先進技術が必要だ」──農家らはスマート農業推進を叫ぶ国の姿勢をいぶかる。
●技術導入したいが 環境整わず 佐賀県嬉野市
 佐賀県嬉野市の岩屋川内地区。同地区に畑を持つ茶農家の田中将也さん(32)は、スマート農業の技術で収穫の負担が大きく減らせることに期待するが「今のままでは普及は難しい」とみる。畑に出た時に携帯電話がつながらず、連絡が取れない経験を何度もしているからだ。山間部にあるため携帯電話の基地局の電波を受信しにくく、現状でも通信環境が悪い。スマート農業で多用されるドローン(小型無人飛行機)には1~4レベルの設備環境がある。数字が大きいほど通信速度が速く安定しており、補助者がいなくても事前のプログラム通りに自律飛行できる。高解像度の画像を収集でき、利便性が高まる。高レベルの活用には最先端の5Gが必要だが、普及は始まったばかり。正確なカバー率はつかめないが、大手通信会社は5G展開の指針に、人口を基準にした目標に掲げる。そのため、大都市圏を優先した整備になり、地方は置き去りにされやすい。現在の携帯電話さえつながらない「不感地域」は全国に残っており、約1万3000人(総務省調べ、2018年度末)が不便を強いられている。総務省東北総合通信局によると、東北地方が最も不感地域が多いという。
●工事期間、費用基地局開設に壁
 嬉野市は総務省の「携帯電波等エリア整備事業」などを使いながら改善を進めるが「基地局を一つ開設するのに8000万円近くかかる」(市担当者)こともあり、早急な解決は難しい。農水省九州農政局のスマート農業担当者は「効果的に普及させるためにも高速通信は不可欠。山間部などの通信環境を整えることは必要だ」と指摘するが、通信網整備の所管は総務省となるためか、具体的な改善策については口をつぐむ。整備の遅れについて、ある通信大手は「5Gネットワークの全国整備には膨大な数の基地局が必要で、長期工事と多額の投資を伴う」とコメント。別の企業も「山間部では基地局整備に必要な光ファイバーなど伝送路の確保が難しい」とする。だが嬉野市の田中さんは「中山間農業の課題解決のためにもスマート農業は必要。本気で普及を考えるなら、通信環境を早期に改善してほしい」と訴える。
<ことば>5G
 次世代の通信規格。日本では2020年3月からサービスが始まった。大容量・高速通信が可能。最高伝送速度と通信精度は現行(4G)の10倍。一方で、5Gが使う高周波数帯は障害物に弱い。波長が短く通信範囲が狭い特性があり、従来より多くの通信基地が必要になる。

*7-3:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20210121&ng=DGKKZO68351170Q1A120C2EE8000 (日経新聞 2021.1.21) 経産省、使用電力を脱炭素 来年度、「50年ゼロ」へアピール
 経済産業省は2021年度、庁舎内で使う全ての電力を再生可能エネルギーなど温暖化ガスを排出しない「ゼロエミッション電源」に切り替える。政府は50年に温暖化ガスの排出を実質ゼロにする目標を掲げる。実現を主導する立場の経産省が率先して脱炭素化に取り組む。経産省は使用電力の少なくとも30%以上を再生エネ、残りを原子力も含めたゼロエミッション電源でまかなう。対象となる施設は東京都内にある総合庁舎と特許庁庁舎の2カ所で、使用予定の電力量は年間で計2400万キロワット時に及ぶ。一般家庭およそ7千~8千世帯分に相当する。2月下旬にも電力の供給元となる小売事業者を入札で決める。国内外の民間企業では脱炭素社会の実現に積極的な姿勢を示すため、事業に伴う電力消費を再生エネなどに切り替える動きが相次いでいる。政府は21年度から各府省庁の電力調達で再生エネ比率を3割以上に高める方針を示している。経産省は政府方針を上回る脱炭素目標を掲げることになる。オフィスなど業務部門の脱炭素化は工場のような産業部門に比べて遅れ気味だ。1990年度と2019年度の二酸化炭素排出量を比べると、業務部門は1.3億トンから1.9億トンに増えた。産業部門が5億トンから1億トン超減らしたのとは対照的だ。中央省庁では環境省も脱炭素に率先して取り組んでいる。30年までに使用電力を全て再生エネに切り替える方針を19年に示している。本省の庁舎だけでなく、地方事務所や関連施設も対象だ。脱炭素社会に向けて中央省庁が率先して取り組み、企業や家庭など社会全体の再エネ普及を促す。

*7-4:https://www.agrinews.co.jp/p52976.html (日本農業新聞 2021年1月19日) 農業の特定技能「派遣」 広がる 短期雇用も柔軟 手続き負担減
 外国人の新在留資格「特定技能」の農業分野で認められた「派遣」が広がっている。農家は直接雇用に比べ事務手続きなどの負担が少なく、雇用期間を柔軟に調整できる。農繁期が異なる北海道と沖縄など地域間で連携した受け入れも進む。派遣に参入する事業者も増え、専門家は「これまで外国人を入れてこなかった家族経営でも受け入れが広がる」と指摘する。
●外国人材 大きな力
 畑作が盛んな北海道浦幌町の選果施設。次々とコンベヤーで流れてくるジャガイモを段ボール箱に手際よく詰めるのは、カンボジア人のレム・チャントーンさん(26)だ。「将来は帰国してビジネスを立ち上げたい。分からないことも周りに聞くと、よく説明してくれる」と笑顔で話す。チャントーンさんらは特定技能の資格を得た外国人。道内各地で農業生産・販売の他、作業受託をする「北海道グリーンパートナー」が、人材派遣会社の「YUIME(ゆいめ)」から受け入れた。8~10月の農繁期には150人もの人手が必要な北海道グリーンパートナーは、YUIMEからの提案で、技能実習生だった特定技能の派遣を2019年に11人、20年に23人受け入れた。YUIMEの派遣は、夏は北海道、冬は本州や沖縄で働くのが基本だ。ジャガイモの選果など冬場でも仕事がある場合は、道内で通年で働くこともある。直接雇用では通年で仕事を用意しないと外国人の受け入れは難しいが、派遣なら必要な時期を決めて契約を結べる。北海道グリーンパートナー代表の高田清俊さん(59)は「外国人にとっても、さまざまな農家で働くことで、より豊かな経験を積むことができる」と評価する。受け入れ側は面接や入国手続きなど事務負担が少ないのもメリットだ。北海道グリーンパートナーに組合員の農作業を委託するJAうらほろの林常行組合長は「人手不足を解消し、付加価値の高い販売に力を入れたい」と期待する。
●各地で参入の動き
 一定の技能を持ち、即戦力としての労働が認められている特定技能の仕組みは、19年に始まった。農業分野では、農業者が雇用契約を結び直接雇用する方法と、雇用契約を結んだ派遣業者が受け入れ機関となり農家に派遣する方法の、2種類がある。派遣では、繁忙期の違う地域に季節ごとに人材を送り出せる。農業分野の特定技能は、制度発足から1年半の20年9月末時点で1306人。農業分野の受け入れ事業者が加入する「農業特定技能協議会」のうち、10社ほどが派遣事業者だ。YUIMEは、農業分野の技能実習生だった外国人を採用。給料や待遇は日本人と同等の扱いで、現場のリーダーになる人材を育てている。住まいは、受け入れ農家に住宅の敷地内にある持ち家などを用意してもらい、YUIMEが借り入れる。北海道以外でも派遣は進む。アルプス技研は、2019年4月から特定技能の派遣事業に参入。現在は子会社の「アグリ&ケア」が9道県に49人を派遣する。JA北海道中央会も、特定技能のあっせん・派遣をする新組織の立ち上げを目指す。北海道稚内市の酪農家・石垣一郎さん(39)が経営する「アグリリクルート」は、21年から派遣事業に乗り出す。
●家族経営も 活用しやすい 北海学園大学の宮入隆教授の話
 入国手続きや労務管理の一部を派遣事業者に任せられるため、家族経営が外国人を受け入れるハードルが下がった。季節雇用、通年雇用問わず、広がっていくことは間違いない。一方で事業者は、各地に移動する特定技能の外国人の心理的な負担を考慮すべきだ。

*7-5:https://www.agrinews.co.jp/p53011.html (日本農業新聞 2021年1月21日) ベテランの技、JA出荷データ… クラウドへ集約し経営に“最適解” 高知で始動
 高知県は20日、産官学で連携して構築を進めてきた「IoPクラウド(愛称=サワチ)」を始動させたと発表した。農家の栽培ハウスから得られる園芸作物データや環境データの他、JAからの出荷データなどを集約。人工知能(AI)を使って地域に最適な栽培モデルを示し、営農指導に役立てる。収穫量予測もでき、作物の販売にも活用する。
●脱・経験依存、収穫予測も
 IoPは、ナスやピーマン、キュウリなど園芸作物の生理・生育情報をAIで“見える化”するもの。2018年から構築を目指し、JAグループ高知や県内各大学、農研機構、東京大学大学院、九州大学、NTTドコモなどと連携している。県は当面、①データ収集に協力する農家約30戸の作物の花数、実数、肥大日数などの作物データ②約200戸のハウスの温湿度、二酸化炭素濃度などの環境データ③園芸作物主要6品目の全農家約3000戸の過去3年の出荷データ──などを収集し活用する。農家はスマホやパソコンから、クラウドに送られたハウスの環境データだけでなく、異常の監視と警報、ボイラーやかん水など機械類の稼働状況に加え、出荷状況などが確認できる。県やJAの指導員も、戸別の経営診断や産地全体の経営分析などに生かす。22年からの本格運用を目指しており、最終的には、県内の園芸農家約6000戸のデータを連係させる。県は、「経験と勘の農業」からデータを活用した農業への転換を進めるとしている。クラウドは県内の営農者、利活用を希望する企業などが利用できるが、まずはデータの収集に協力している約200戸の農家から利用を始める。3月末から、新規利用の申し込みができる予定だ。農家がクラウドの機能を活用するのは無料。通信分野でシステム構築に協力したNTTドコモは希望者に対し、JAなどに出向いた「IoP教室」を開く。JA高知県の竹吉功常務は「営農、販売でいかに活用できるかがポイント。技術の継承、出荷予測などにも使える。農家に還元できるよう、十分生かしていきたい」と強調する。

<安全保障について>
PS(2021年1月22、24日追加):エネルギーや食糧の自給率向上は安全保障の上で重要だが、経産省・メディアは“保護主義”として自給率向上を目指すことを批判してきた。そして、*8-1-1のように、日経新聞が、①米中対立が脱炭素の足かせになる ②EVや風車は高性能磁石・モーターから材料のレアアース(希土類)に至るまで中国がサプライチェーン(供給網)の要を担っている ③中国に世界のレアアースの生産の6割強、精製工程の7~8割が集中し、EV向けに限れば精製工程をほぼ独占 ④経産省は「米欧の安定調達への対策に日本も相乗りできないか」と米国防総省も絡んだレアアース精製事業への参加を働きかけている ⑤日本は2010年に尖閣諸島を巡る対立で中国がレアアースの輸出を止めて以来、中国が9割を占めた調達先の分散やリサイクルを加速してきた などと記載している。
 しかし、*8-1-2のように、中国は尖閣諸島だけでなく沖ノ鳥島のEEZでも明らかに地下資源の調査をし、いざという時には戦闘する準備も行って、必要な資源を入手する最大の努力をしているのだ。一方、日本の経産省は、「日本は資源がない国」「調達先を分散して輸入した方が安くつく」などとうそぶき続けており、資源の価値もわからず、製造業は既に海外に移転したことも認識していない状態であるため、この結果は日本政府の政策ミスなのである。
 このような中、「日本側が無断で調査を繰り返す中国に抗議した」と主張しているのは、「無断でなければ、この調査に同意することもあり得る(これが世界標準の解釈だ)」ということなのか? さらに、「尖閣諸島に領土問題はない」と言うのなら、「この状態を認めている(世界標準の解釈)」ということだ。それでも日本側が、「米中対立がいけない」などと第三者のようなことを言うのであれば、「日本は米中対立で、むしろ迷惑している(世界標準の意味)」ということだ。しかし、自国の領土を護ることを放棄するのであれば、憲法改正どころか自衛隊もいらないのではないだろうか?
 なお、*8-2のように、中国は、5Gの通信網やEV充電設備などの次世代インフラへの投資を170兆円に大幅に増やすなど、的確な判断をしている。一方、日本は、やみくもに営業時間短縮を強制して莫大なばら撒きを行っているにすぎない。そのため、これらの結果が次にどう出るかは、誰でもわかることである。
 一方、米国務省のプライス報道官が、*8-3のように、「中国の圧力が地域の安定を脅かしている」として、台湾への軍事・外交・経済的圧力を停止するよう中国に求める声明を発表し、台湾との関係強化も表明したそうだ。台湾は独立国であるため当然の対応であり、この点で中国に同調してきた日本政府は長いものに巻かれて民主主義を大切にしないように見える。さらに、日本の政府・メディアが民主主義や基本的人権を大切にしないのは、日本国民に対しても同じであるため、これについてこそ厳しく指摘せざるを得ない。

 
 2020.6.18朝日新聞  2020.7.2.20ペリカンメモ        NNN

(図の説明:左図は尖閣諸島で、中央の図は尖閣諸島に出没して領海侵犯している中国海警局の船及びそれを追尾する日本の海上保安庁の船だ。右図は南鳥島で、海底にレアアースが大量に分布していることを東大が発見した。日本政府は、ぼーっとして現状維持を決め込んでいる間に、すべてを手遅れにしそうである)

*8-1-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20210119&ng=DGKKZO68280440Y1A110C2EA1000 (日経新聞 2021.1.19) 米中対立、脱炭素の足かせ、EVや風車の部品・材料調達に影
 米中対立が各国の脱炭素の動きのアキレスけんになるとの懸念が広がっている。需要急増が見込まれる電気自動車(EV)や風車は主要部品の高性能磁石、モーターから材料のレアアース(希土類)に至るまで中国がサプライチェーン(供給網)の要を担うからだ。米欧は安定調達への対策を強化する。日本も戦略の再構築が急務だ。「何とか相乗りできないか」。経済産業省は日本の化学メーカーなどに、米国防総省も絡んだレアアース精製事業への参加を働きかけている。
●日本も対応急ぐ
 オーストラリア産のレアアース鉱石を米テキサス州の工場で処理し、磁石の性能を高めるジスプロシウムなどを取り出す計画。豪ライナスが米社と組み、中国依存を脱したい米政府が後押しする。ここに日本企業も加われば安定調達に役立つと経産省は期待する。中国には世界のレアアースの生産の6割強、精製工程の7~8割が集中し、EV向けに限れば精製工程をほぼ独占する。脱炭素による需給逼迫と米中対立のダブルパンチで供給が断たれるリスクに各国は対応を急ぐ。菅義偉首相は温暖化ガス排出量を2050年までに実質ゼロにすると表明した。30年代半ばに全ての新車を電動車にする。欧州や中国のほかバイデン政権下の米国もEV化を進める見通しだ。カナダの調査会社アダマス・インテリジェンスは世界のEVの年間販売台数は30年に3450万台と20年の7倍になり、ネオジムやジスプロシウムの需要は代替品が普及しても5倍になると予想する。風力発電などへの需要増もあり供給が慢性的に不足し、市場価格も上昇が続くとみる。危機感を強める欧州連合(EU)は昨年11月、企業と政府による「欧州原材料アライアンス」を始動させた。30の重要資源について域内外の友好国・企業と協力し調達やリサイクルを促す。米トランプ政権も9月にレアアースの自主調達を促す大統領令を発令、カリフォルニア州マウンテンパス鉱山での採掘や精製への支援も決めた。
●川下にも「急所」
 日本も10年に尖閣諸島を巡る対立で中国がレアアースの輸出を止めて以来、中国が9割を占めた調達先の分散やリサイクルを加速してきた。だが調達先のなお6割近くは中国だ。精製もほぼ中国に頼る。米テキサスの精製事業が注目を浴びるのもこのためだが、企業には中国産と比べた採算が問題になる。サプライチェーン全体をみると、レアアースの採掘や精製で中国依存を減らせても、磁石やモーター製造など下流では中国の存在感が増している。「産業のチョークポイント(急所)は川下まで及んでいる」と対中政策を担う関係者は言う。「リスクを理解しているのか」。日本電産が中国の大連市に設けるEV向けモーターの開発拠点に経産省幹部は懸念を示す。拠点は中国の顧客ニーズに迅速に応えるのが狙い。同社は「技術情報流出を防ぐべくセキュリティーを強化している」と言うが、約千人を擁する拠点だけに経産省は「先端技術が中国側に流れかねない」と気をもむ。中国は15日、レアアースの統制を強化すると発表した。昨年12月施行の輸出管理法では、戦略物資やハイテク技術の輸出を許可制にできるようにした。レアアースの禁輸に加えて、日本企業が中国で作った磁石やモーターの技術を開示するよう迫ったり、中国外での利用を禁じたりする危険すらあると専門家はみる。おりしも米中対立が深まるなか加速した脱炭素の動きは中国を起点とするサプライチェーンの脆弱性を高めた。経済への打撃を避けるには政治利用に歯止めをかけるルールづくりが課題となる。日米欧などの効果的な連携も必要だ。むろん企業自身の取り組みもカギで、レアアース不要のモーターや代替素材の開発で日本が先行するのは心強い。市場価格しだいでは近海での資源採掘やサプライチェーンの国内移転も選択肢になると専門家はみる。米中対立が脱炭素経済の足かせにならないよう、官民が柔軟な発想で戦略を練り直すときだ。

*8-1-2:https://news.biglobe.ne.jp/international/0118/sgk_210118_1746910710.html (Biglobe 2021年1月18日) 中国の狙いは尖閣諸島だけではない 太平洋に進出し不審な調査を続ける訳
 世界中でコロナ禍が続く中、中国は今年に入っても平然と海洋覇権行動を続けている。1月13日には沖縄県尖閣諸島周辺で中国公船1隻が日本の領海を侵入。日本漁船に近づく動きをしたことから、政府が中国側に厳重抗議した。だが、「中国の狙いは尖閣諸島だけではない」と指摘するのは、ジャーナリストの宮田敦司氏だ。
    * * *
 菅義偉首相が昨年12月19日、東京都内での講演で、米国のバイデン次期大統領と電話会談した際、沖縄県・尖閣諸島が対日防衛義務を定めた日米安全保障条約第5条の適用対象になると同氏が明言したことを強調した。米安全保障条約第5条とは、日米両国が、「日本国の施政の下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃」に対し、「共通の危険に対処するよう行動する」という内容である。日本のリーダーはよほど不安なのか、菅直人政権では前原誠司外相が2010年にクリントン国務長官と、安倍晋三首相は2014年にオバマ大統領、2017年にトランプ大統領と尖閣諸島が第5条の適用対象であることを確認している。講演で菅首相は、尖閣諸島が話題になった事を強調していたが、それ以外の島嶼(とうしょ)については触れなかったのだろうか? 尖閣諸島以外にも日米の安全保障のために重要な島嶼が東京都にある。日本最南端の領土・沖ノ鳥島(東京都小笠原村)である。
●中国は「島」でなく「岩」と主張
 沖ノ鳥島を中心に設定される半径200海里(約370km)の排他的経済水域(EEZ)の広さは、国土面積の約12倍に相当する(約40万平方キロメートル)。この海底にはメタンハイドレートやレアアース(希土類)が眠っているとされる。しかし、この島は無人島で満潮時に水面上に浮かぶ面積は4畳半程度に過ぎない。この沖ノ鳥島を中国が「島ではなく岩」と主張し始めたのは2004年のことだ。日本側の同意なく調査を繰り返す中国に日本が抗議したところ、中国側が沖ノ鳥島は「島ではなく岩」と主張したのだ。しかも中国は「沖ノ鳥島」の名称も「沖之鳥礁」と呼び変えている。沖ノ鳥島は満潮(高潮)時には2つの小島が海面上にわずかに頭を出すだけだが、国連海洋法条約第121条1項にいう、自然に形成された陸地で高潮時にも水面上にあることを満たしている。しかし、もともと中国は、沖ノ鳥島が日本の領土である事について問題視していなかった。それどころか、中国軍機関紙「解放軍報」は1988年、沖ノ鳥島について好意的に取り上げていた。記事のなかで、日本が沖ノ鳥島が波で削られないよう波消しブロックやコンクリートなどで保護していることを「素晴らしいことである」と評価し、「日本は港、ビル、飛行場などを作ろうとしている」とまで書いていたのだ(引用元/平松茂雄・元杏林大学教授講演、2010年2月15日)。これは、南シナ海に進出した中国が同じような事を行っていたからだった。日本が行っていることを持ち出して、南シナ海での中国の行動を正当化しようとしていたのだ。しかし、中国の好意的な姿勢は、中国海軍が東シナ海から宮古海峡を通って西太平洋に進出するようになると一変した。2010年4月には、10隻の艦隊を沖ノ鳥島周辺まで進出させ、対潜水艦戦訓練などを実施した。このような中国の行動は、沖ノ鳥島が日本の軍事拠点となることを恐れてのことだろう。レーダーや対艦ミサイルを配備されたら、中国海軍が自由に動けなくなるからだ。中国海軍が演習を行った翌年(2011年)、日本政府はEEZの権益を守る拠点として、沖ノ鳥島を「特定離島」に指定し、港湾や道路を整備するなど開発を進めることにした。
●無断で繰り返される中国の海洋調査
 中国が沖ノ鳥島周辺海域以外で海洋調査を行ったのは2001年から2003年にかけてである。この時の調査は詳細にわたり、資源探査だけでなく、海底の地形や潮流、水温、塩分濃度などの科学的データを収集していた。潜水艦を展開させるために必要となるデータだからだ。2004年以降は、沖ノ鳥島周辺で様々な調査を行っている。2020年は7月に10日連続で中国の海洋調査船「大洋号」がワイヤのようなものを海中に下ろし調査活動を行い、海上保安庁の巡視船の警告を無視して調査を続行した。国際法ではEEZ内での調査は沿岸国の同意が必要となるとしている。したがって、沖ノ鳥島周辺で海洋調査を実施するためには日本側の同意が必要となる。中国が日本のEEZ内で海洋調査を始めた2001年当時は、田中真紀子外相が衆院外務委員会で「EEZで資源調査をしてはいけないという国際法はない」と中国側を擁護する答弁を行うなど、政府内で足並みが乱れていた。中国は、こうした日本政府の混乱に乗じて違法な海洋調査を続けた。その結果、中国は西太平洋において自由に潜水艦を航行させることが出来るようになった。
●太平洋へ向かう海洋調査船が増加
 中国の海洋調査船の動向に関して、船が位置や針路などを発信する船舶自動識別システム(AIS)の公開データから、2020年11月4日までの過去1年間にわたる追跡を行った結果、情報が確認できる中国調査船34隻(総排水量307〜2万トン)のうち、4割にあたる13隻が太平洋方面に進出していたという。中国が領有権を主張する南シナ海はすでに軍事拠点化が進んでおり、次の標的として太平洋の海洋権益に狙いを定めているとみられる。それだけでなく、中国漁船も不審な動きを見せている。IHIジェットサービスによると、4月には尖閣諸島周辺に32隻の漁船団が出没した。いずれも遭難時用の識別コードを持っていたが、中には全く別のタンカーなど約150隻の中国船と同じ番号を共有している例もあったという(引用元/「日本経済新聞」2020年11月25日)。違法な中国船の動きを日本は封じ込めなければならない。しかし、このような中国船を含む、外国船や外国人を取り締まるための日本の法律は存在せず、拿捕や逮捕によって強制的に止めることはできない。このため、日本政府は2020年7月、調査船の取り締まりが可能となる法整備の検討に入った。外国船による科学的な海洋調査の場合でも、海上保安庁による拿捕や逮捕が可能となる新法制定や法改正を想定している。
●軍事的に重要な作戦海域となる沖ノ鳥島
 中国は、海軍艦艇による大規模な軍事演習も行っている。防衛省の報道資料などを見ると、東シナ海から宮古海峡を経由して太平洋へ抜けた中国海軍艦艇と爆撃機のうち、沖ノ鳥島西方の海域で訓練を行っていると思われるものがある。沖ノ鳥島周辺で訓練を行う理由は、グアム島と宮古海峡とを結ぶ直線ルートの中央に位置しているからだ。沖ノ鳥島の周囲は、急に深くなっており、水深は4000〜7000mに及ぶ。つまり、沖ノ鳥島周辺では、日本、米国、中国の潜水艦が自由に活動することができるのだ。沖ノ鳥島周辺は、将来、米中海軍力にとって非常に重要な意味をもってくる。中国海軍にとっては台湾有事などの際に出動してくる米空母機動部隊を、潜水艦や機雷で阻止するための重要な作戦海域となるからだ。中国は2040年までに、米軍が太平洋とインド洋を独占的に支配する現状を変えようとしている。そのために米海軍と対等な力を持った海軍をつくり上げるという計画を持っている。計画は時代の変化を受けて度々見直されてきたが、基本的な枠組みは今なお引き継がれている。中国が西太平洋へ進出するにあたり、沖ノ鳥島を中国の影響下に置こうとする試みには、このような中国の戦略がある。中国のやり方は、まず海洋調査船を派遣し、軍事演習を行い、段階的に既成事実を作るという手法である。つまり、沖ノ鳥島周辺での軍事演習は、中国の実効支配に向けての新たな段階に入っていることを意味する。
●南沙諸島の二の舞になるのか
 中国が南シナ海の南沙諸島などを急速に軍事拠点化しているが、これと同じ行動を沖ノ鳥島で起こす可能性は排除できない。中国に「岩」と言われるほど小さな沖ノ鳥島に対しては、尖閣諸島で想定されるような上陸作戦は不要だ。中国は南沙諸島で主権を主張し、人工島を建設して飛行場やレーダーを設置している。フィリピンやベトナム、マレーシアと領有権を争っているなかで、今年(2020年)4月には南シナ海で一方的に行政区まで設定している。防衛省が海上自衛隊の「いずも」型護衛艦を戦闘機が搭載可能な事実上の空母に改修する計画を進めているのは、これまで述べてきたような西太平洋における中国の活動を念頭に置いたものであろう。
●日本の島嶼は日本が守るべき
 人が住んでいる南西諸島の占領は、米国との戦闘に発展に進展する可能性があるが、無人島の場合は米国も簡単には中国との戦闘に踏み切れない。米国は強大な軍事力を持つ中国との戦争を望んでいない。全面戦争となれば核ミサイルの使用も考えられ、双方に甚大な損害が出ることが目に見えているからだ。無人島の争奪戦を端緒とした米中戦争に発展することを防ぐためには、自衛隊が単独で対処するしかないだろう。そもそも、中国が武力攻撃とはいえないレベルで動いた場合は、米軍は動かない。第5条云々よりも、漁民を装った私服の「海上民兵」の上陸など、「侵略」と言い切れないグレーゾーンを突いて中国に占拠された場合の措置を考えておくべきだろう。日本の領土を日本が守るのは当然のことだ。日米安全保障条約第5条は、日本に対する攻撃が自衛隊の対処能力を超えて(あるいは予想されて)、はじめて発動される性質のものではないだろうか。最初から米軍をアテにしている日本のリーダーは、自衛隊の最高指揮官であるのに自衛隊の能力をまったく信頼していないのだろうか?

*8-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20210121&ng=DGKKZO68351280Q1A120C2FF1000 (日経新聞 2021.1.21) 中国、次世代インフラ170兆円 5G通信網やEV充電設備、米との対立長期化に備え 官民投資、5年で大幅増
 中国が高速通信規格「5G」の通信網、データセンターといった次世代のインフラへの投資を大幅に増やす。官民合計の投資額は2025年までの5年間で約170兆円に達する見通しだ。米国とのハイテク摩擦の長期化をにらみ、民間資金も活用しながら産業基盤を整備する狙いだ。だが必要な部品や技術を米国に頼るケースも多く、米バイデン新政権との関係改善を探る動きもある。中国は次世代のインフラを「新型インフラ」と呼び、主に7つの技術領域に分類している。5G通信網やデータセンター、人工知能(AI)などIT(情報技術)分野の基盤に加え、大容量の電力を効率的に送る超高圧送電網や、都市圏内で都市をまたがって運行する高速鉄道や地下鉄なども含まれる。
●地方政府が主導
 中国政府傘下の研究機関、中国信息通信研究院によると、21~25年の新型インフラへの投資額は官民合計で10兆6千億元(約170兆円)となる見通し。中国での社会インフラ投資の約10%を占めるという。米調査会社ガートナーの予測では、世界での通信サービスやデータセンターなどITへの支出は21年に3兆7548億ドル(約390兆円)。単純比較はできないが、中国の投資額が世界で突出しているわけではない。ただ中国銀行は20年の新型インフラへの投資額を1兆2千億元と試算しており、21年以降は毎年、20年の2倍近い資金が投じられることになる見込みだ。新型インフラへの投資を主導するのは地方政府だ。南部の広東省では今後数年間で1兆元を投じる。5Gの基地局や電気自動車(EV)の充電設備の拡充、自動運転の実験用道路の整備、燃料電池車(FCV)向けの水素ステーションの200カ所新設など、関連事業は700件を超える。東北部の吉林省でも、新型インフラ関連の投資額は25年までに1兆元を超える見通し。北京市、上海市などほかの主要都市や各省の政府もそれぞれ個別に3~5年の計画を策定済みだ。いち早く整備が進んでいるのが5G通信網だ。基地局は累計で70万カ所を超え、すでに一国として世界最大規模だが、全土をカバーするには600万カ所超が必要だとされる。現場の担い手は中国移動(チャイナモバイル)など国有通信大手だ。ネット関連の民間企業も新型インフラの建設や運営への関与を深める。騰訊控股(テンセント)は20年5月、5年間で5000億元を新型インフラの整備に投じると表明した。クラウドやAI、5Gなど幅広い領域に投資する。アリババ集団も20年4月、データセンターの建設などに3年間で2000億元を投資すると明かした。
●経済下支え狙う
 中国指導部の狙いは、新型コロナウイルスで打撃を受けた経済の下支えと、ハイテク産業の振興だ。20年5月の全国人民代表大会(全人代、国会に相当)の政府活動報告では、李克強(リー・クォーチャン)首相が消費促進や構造改革のため「新型インフラの整備を加速する」と言明した。共産党が20年11月に公表した21~25年の第14次5カ年計画の草案も、重点項目の1つに新型インフラの整備を明記した。米国のトランプ前政権は5GやAIに関連する中国企業への部品や技術の輸出規制を強めてきた。バイデン新政権も中国のハイテク育成を警戒する見通しで、規制が早期に緩むかどうか不透明だ。中国は官民挙げて次世代産業の基盤を整備し、ハイテク摩擦の長期化に備える。ただ水準の高い米国企業の半導体、ソフトウエアなどを活用する中国のハイテク企業は多い。中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席は「双循環」と呼ぶ新たな発展モデルも示し、海外依存を低めようとしているが、うまくいかなければ新型インフラの整備が遅れる可能性もある。中国の王毅(ワン・イー)国務委員兼外相は2日に報じられた国営新華社のインタビューで、米中関係には「希望の扉が開かれている」と述べ、バイデン政権に秋波を送った。中国国内では過剰投資への懸念も浮上している。共産党の幹部養成機関の機関紙、学習時報は新型インフラの整備について「政府部門は(道路など)従来型のインフラ建設と同様に主導すべきではなく、民間企業に任せるべきだ」という内容の記事を掲載した。「(地方政府が)政治的な成果やメンツのために投資を実施するのは避けるべきだ」と指摘する有識者もいる。

*8-3:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/625561 (佐賀新聞 2021.1.24) 米政権、中国に圧力停止を要求、台湾との関係強化も表明
 米国務省のプライス報道官は23日、台湾に対する中国の軍事的圧力が地域の安定を脅かしているとして、軍事、外交、経済的圧力を停止するよう中国に求める声明を発表した。台湾との関係強化も表明した。対中強硬路線を取ったトランプ前政権に続き、20日発足したバイデン政権も台湾支持を打ち出した形で、中国の反発は必至だ。台湾外交部(外務省)は24日、米国務省の声明について「バイデン政権による台湾支持と台湾防衛重視」の表れだとして謝意を表明した。台湾の専門家は「バイデン政権は前政権の方針を引き継ぎつつ、より緻密に中国対抗策を推進していくだろう」と分析している。バイデン政権の国務長官候補ブリンケン元国務副長官は19日、人事承認に向けた上院公聴会で強硬路線を維持する考えを示し、台湾について「より世界に関与することを望む」と述べていた。米国務省声明は、中国が台湾を含む近隣国・地域を威嚇しようとしていると懸念を表明し、圧力をかける代わりに民主的に選ばれた台湾の代表と対話に臨むよう要求。台湾の自衛能力を維持するため支援を続けると強調した。また、同盟・友好国と協力してインド太平洋地域の安定と繁栄を促す方針を示し、台湾との関係強化もこの動きに沿ったものだと説明した。中国は軍用機や艦船を台湾周辺に派遣するなど圧力を強めている。台湾国防部(国防省)によると、23日にも中国の爆撃機「轟6K」や戦闘機「殲16」、対潜哨戒機「運8」の計13機が台湾南西の防空識別圏に進入した。トランプ前政権は台湾支援のため武器売却を推進。バイデン政権のオースティン国防長官も就任前、台湾の自衛能力維持を後押しする考えを示していた。

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2020.12.20~29 男女不平等が経済に与える悪影響と日本で女性がリーダーに選ばれにくい理由 (2020年12月30日、2021年1月2、3日追加)
  

(図の説明:左図のように、日本のジェンダーギャップ指数は、2018年の110位から2019年は121位と下がった。そして、中央の図のように、経済分野と政治分野の遅れが目立っている。特に、右図のように、政治分野が世界平均より著しく低いことがわかる)

(1)製造業における女性差別と女性蔑視
1)自動車工業会の豊田章男会長(トヨタ自動車社長)の主張について
 自動車工業会の豊田章男会長(トヨタ自動車社長)が、*1-1-1・*1-1-2のように、「①電動化車両は、EVだけでなくPHV・PHEVも含まれるのでミスリードはやめるべき」「②自動車産業はCO₂削減努力を行ってきて、平均燃費は2001年の13.2km/Lから2018年の22.6km/Lと71%向上し、CO₂排出量も2.3億トンから1.8億トンに22%減るという結果を出している」「③今の電力状況のままクルマをすべてEVに置き換えれば電力不足になるため、EVへの急激な移行に反対する」「④日本は火力発電所がメインであるため、EV化がCO₂排出量削減にはならない」「⑤50年『実質ゼロ』目標の実現には研究開発に10年~20年はかかり、個別企業として続けるのは無理なので国の支援を求める」「⑥ガソリン車比率の高い軽自動車は、地方のライフラインなので、脱ガソリンで困るのは国民だ」「⑦2030年代に新車のガソリン車販売をなくすことを検討しているのは、自動車業界のビジネスモデルを崩壊させる」「⑧EVは製造や発電段階でCO2を多く排出するので、日本で車をつくれなくなる」「⑨ガソリン車をなくすことでカーボンニュートラルと思われがちだが、今までの実績が無駄にならないように日本の良さを維持することを応援してほしい」「⑩日本はエネルギー問題の方が大きく、原発新設どころか既存施設の再稼働もできない状況であり、カーボンフリーの電力をどうやって確保するのか」等を述べられた。

 しかし、この発言には、私や小池知事などの女性政治家が作った方針はどうせ大したことはなく、理系に弱くて現状把握もしていないだろうという事実とは異なる女性蔑視を含んでいる。製造業(特に自動車)には女性管理職が少なく、それにはこのような女性蔑視が影響しており、その結果として判断の誤りも生んでいるため、その内容をここに記載する。

 まず、①については、排気ガスによる公害を出し続けてきたガソリン車からEVへの変換時における過渡的状況の下ではPHV・PHEVも認められるが、たとえ②の実績があったとしても、PHV・PHEVは排気ガスを出さず環境を汚さない車とは言えないのがFactであるため、これをEVと強弁することこそニーズを理解していないミスリードである。

 また、⑤については、1995年に私が経産省に提案して1997年にCOP3で京都議定書が採択された時に、EV化・再エネ発電・蓄電池開発の必要性が日本企業に開示されており、その時点から開発が始まっているため、10年~20年どころか25年(四半世紀)も前から始めてこれまで応援し続けてきたのだ。しかし、日産はゴーン社長の下でEVに進んで結果を出したが、トヨタはハイブリッド車と燃料電池車に進んでいつまでも資本を集中投下しなかったため、未だに⑦⑨の問題が残っているのであり、これは経営者の判断ミスに基づく経営の失敗だ。そして、日本は、リーダーに合理的判断力がないため欧米に追随することしかできず、欧米は既に米テスラのみならず、*1-3のように、独ダイムラーも本業のEVへの注力を鮮明にしている。

 なお、③④⑧⑩については、地震が多くて国土の狭い日本に原発という選択肢はなく、既に原発は進歩的な電源でもないため、私は、2011年の東日本大震災直後から再エネへのシフトを10年以上も提唱しており、あらゆる意味でその方が日本にプラスであることもずっと述べている。そして、*1-4のように、東芝の車谷社長は、再エネ関連事業の売上高を2030年度には2019年度の約3.4倍にあたる6,500億円とする目標を掲げ、達成に自信を見せている。

 また、⑥の軽自動車が地方の重要なライフラインであるというのはFactだが、軽自動車のガソリン車比率の高かったり、*1-2のように、EVにすると割安さや車体のコンパクトさが失われかねないというのは嘘だ。何故なら、EVはガソリンエンジンを作って積む必要がなく、軽自動車で往復する距離は短いためこれまでの蓄電池でも十分で、製造コストが安くなるからである。そのため、脱ガソリン・電動化シフトで困るのは、これまでガソリンエンジンだけしか視野に入れてこなかった製造メーカーであり、軽自動車のユーザーである国民ではないというのがFactだ。さらに、軽自動車のユーザーは女性が多いため、環境意識が高く、デザインのよさも求めており、EV版のVWやフィアットがあればそちらでもよいのだ。

 そのため、私は、*1-5の2030年までに都内で販売される新車すべてをEVかHVに切り替えるため、充電器などのインフラ整備向けの補助金を拡充するのはよいと思う。東京都は既にマンションの駐車場に設置する充電器への補助制度を設けているそうだが、これは、スーパー・コンビニ・事業所などの駐車場にも広げ、太陽光発電する駐車場屋根とセットで全国ベースに広げて欲しい。そうすれば、客はそのような設備のあるスーパーやコンビニを選び、自動車は無料か非常に安い燃費で動くことになる。

 なお、エンジンは水素燃料電池にも応用できるので、いつまでもガソリンにこだわる必要はない。日本自動車工業会の豊田章男会長(トヨタ自動車社長)は、2030年代半ばに全ての新車を脱ガソリン車とする目標に懸念を示し、守りの姿勢に入ってかえって守れない状況に陥っているが、これがトヨタグループの創始者で豊田自動織機製作所(現:豊田自動織機)を創業した豊田佐吉だったら、「いつまでも車だけにこだわる必要はない。もっているノウハウと人材を使って、水素燃料電池を飛行機や列車や船舶に応用しろ」と言ったに違いない。

(2)農業における女性差別と女性蔑視
 農業は主に食品産業であるため、共働きが増えても家事における性的役割分担が顕在する日本では、購入の選択をする人は女性が多い。そのため、栄養や料理に強く、女性のニーズに気付きやすい女性が活躍できる素地がもともとあるのである。

 そのような中、*2-1のように、事業の効率化や需要の拡大・新規開拓を目指して、JAグループ高知が高知市に開設する直売所「とさのさと」と同じ敷地に大型スーパーが出店し、互いの強みを活かして客を呼び込むのは良い案だと思う。

 最近は、スーパーもカット野菜・総菜・加工品・調味料を豊富に扱い、共働きの主婦や高齢者が食事の質を落とさずに家事の省力化をできる提案が多くなったが、同じ敷地内にJAの直売所があれば新鮮な地場産野菜や果物を比較的安く購入できてさらによい。ただ、それぞれの売り場で清算しなければならないのは時間がかかるため、まとめて清算できる仕組みにして欲しく、それは店や出品者に番号をつけて区別することで可能だ。

 また、JAわかやまは地域経済の活性化に向けて地元の和食チェーン「信濃路」と連携することで合意したそうだが、コロナ禍では、需要減だけではなく需要増もあり、それは中食や出前であるため、長く続いた規制のために店じまいに追い込まれたレストランとJAが組んで、新鮮な食材で美味しさに妥協しない省力化料理を販売すれば、互いの強みを生かせるだろう。

 このような新規アイデアの実現には、ポイントをついたマーケティングと結果を経営に反映できる経営者(役員)の存在が必要で、*2-2のように、JA全中では、2020年7月現在、JA役員(理事・経営管理委員・監事)に占める女性比率が9.1%と前年比で0.7%増えたそうだ。全中は、今後も目標達成に向けて、JAに働き掛けを強めるそうである。

 全正組合員に占める女性の割合が22.7%しかいないのは、前年比で増えたといっても少ないと思うが、総代は9.8%と前年比0.4%増、役員総数は1,419人で前年より53人の増加だそうだ。女性の割合を高めるために非常勤理事の定数は増やさず、地域選出の女性理事を増やしたり、地域選出の理事定数を削減して全域の女性理事枠を設定したりするなど役員選出方法の見直しを行ったりしており、製造業や政治よりも努力しているとは思う。

 しかし、会議で少数意見として無視されないためには、役員に少なくとも30%の女性が必要なので、次の男女共同参画基本計画では、正組合員に占める女性の割合を40%以上、JA役員に占める女性の割合を30%以上にするのがよいだろう。

(3)政治における男女不平等と生活関連政策の軽視・縦割行政
1)政治分野に女性議員が少ない理由
 日本では、政治だけでなく製造業・農業などの他分野でも、トヨタ自動車社長の豊田章男氏のように、創業者の直系男子が地位を受け継ぐ世襲になっている場合が多い。これは、江戸時代に成熟した封建制と儒教文化によるのだろうが、このような先入観があると、一般国民が無意識でも、民主主義に基づいて投票した筈の女性の当選確率は下がり、この結果は能力に比例するものではない。

 また、県連の推薦に基づいて党本部が公認する場合、県連でも女性蔑視が働き、地方の県連は中央よりもさらに保守的な場合が多いため、女性を公認候補として党本部に推薦することに積極的ではない。そのため、女性は、地方で推薦されるより中央で推薦される方が容易なくらいである。もちろん、男性はそうではない。

 このようなことが重なる結果、*3-1のように、小選挙区の多くに現職候補がいる自民党で特に女性議員の割合が小さく、自民党国会議員393人(衆参両院議長を除く)のうち女性国会議員は39人の約1割で、衆議院議員全体でも女性議員の割合は1割足らずになり、各国の議会と比較した世界ランキングは167位だそうだ。

 それでは、「世襲制は政治によい影響を与えるのか?」と言えば、わかりやすい例を挙げると、(1)のトヨタ自動車社長である豊田章男氏がトヨタグループ創始者で初代の豊田佐吉と比較すると、偉人ではなく普通のぼんぼんであるのと同じことが政治の世界でも起こっている。つまり、世襲の場合、(全部ではないが)選りすぐられていない普通の人が多くなるのである。

 このような中、女性蔑視の先入観というハンディを乗り越え、世襲でないのに衆議院議員になった女性は、同じく世襲でないのに衆議院議員になった男性よりも、ハンディの分だけ狭き門になっており、より選りすぐられていると言える。

 そのため、*3-1のように、①クオータ制には現職らから「議員の質が下がる」といった批判もある ②議員や候補者へのハラスメント防止 ③多様性が必要だが、明確な目標設定がないと進まない と言われているそうだが、①については、現在の現職は、男性や世襲ということで下駄をはかせてもらって当選した人が多いため、クオータ制にして女性割合を30%(50%ではない)にしたからといって、議員の質(そもそも、質の定義が不明)は下がらないと思う。

 また、②は実際に起こるため、特に女性議員や候補者に対するハラスメントは、インターネットによる女性蔑視を利用した誹謗中傷も含めて徹底して禁止すべきだ。そして、③の多様性がなければ、2)に記載するように、政策に関するあらゆる方向からの議論ができないので、明確な目標設定をした女性の政治進出を含め、多様性は維持すべきなのである。

 しかし、私は女性だが、夫婦別姓を認めない民法の規定を合憲とした2015年の最高裁判決は妥当だと思う。その理由は、憲法24条1項は、「婚姻は両性の合意のみに基づいて成立する」と規定しているだけで、夫婦の姓については規定していないからだ。

 そして、民法第750条も、「夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫又は妻の氏を称する」と規定しているので、条文上、男女不平等ではない。そのため、21世紀の現在なら、憲法と民法の理念に従って両性が平等な立場で結婚し、家族が使う「Family Name」を話し合いで決めた上、改姓する人が旧姓を使いたい場合には、戸籍法上の届け出を行えば徹底して旧姓を使えるよう、戸籍法を改正すればよいと考える。

2)女性議員が少ないことの政策への悪影響
i) 2020年度第3次補正予算について

   
2020.12.16東京新聞           2020.12.15産経BZ 

(図の説明:左図のように、新型コロナを名目とした追加経済対策や補正予算を含めて、2020年度は歳出が175.6兆円、国債発行額は112.5兆円と跳ね上がったが、これは、新型コロナへの対応失敗を原因とする人災によるものだ。また、新型コロナを名目とする追加経済対策と第三次補正予算の内訳は右図のとおりだが、普段から計画的・継続的・無駄なく行うべきものが多い)


                2020.12.15NHK

(図の説明:左図のような医療提供体制の充実は普段から行っておくべきもので、新型コロナ対策としてそこだけに焦点をあてて行うのは、お粗末すぎる。また、中央の図のような経済構造改革は、新型コロナとは関係なく、変化に伴って継続的に行っておくべきものだ。さらに、右図の国土強靭化も、計画的で無駄のないよう、普段から行っておくべきものである)

 日本政府(特に厚労省)は、初めから新型コロナウイルスに対し非科学的で誤った対応をしていたため、日本は他の東アジア諸国と比べて極めて悪い成績となり、経済を止めたので「需要不足」にもなり、何がいけなかったのかについて反省することもなく、*3-2-1のように、国民の血税をばら撒いて大きな経済対策を行う第3次補正予算案を出した。そのため、このような馬鹿なことは、今後も続くと思わざるを得ない。

 そして、年換算で34兆円になる“需要不足”を財政支出で穴埋めするそうだが、本物の需要と財政支出で無理に作り出す需要は供給者が異なる上、作り出された需要によって福利を得る者も変わり、慣れない人がもともと求められていなかった仕事をするため、生産性や意欲が低くなる。

 その財政支出による支出先は、①コロナの感染拡大防止 ②ポストコロナに向けた経済構造の転換・好循環の実現 ③防災・減災のための国土強靱化 が柱だそうだ。

 しかし、このうち、①については、無症状でも感染力のあることが最初からわかっていたので、なるべく多くPCR検査をして感染者を隔離すべきだったのに、検査をするのに何段階もの障壁を設けて感染症を市中に蔓延させ、技術力を上げる機会となる治療薬やワクチンの開発も時間のかかることがよいことででもあるかのように吹聴して外国頼みになってしまった。そのため、政府の誤った政策とメディアが発した悪いメッセージが、まず猛省されるべきなのである。

 また、②の時代に合った経済構造への転換は、コロナとは関係なくいつでも行っていなければ無駄の多いヒト・モノ・カネの使い方になるのに、日本では、それが行われない。つまり、日本の終身雇用・年功序列・一度辞めたら戻れないという雇用体系の下では、雇用調整助成金を支払ってでも人の移動をさせないことが必要になり、生産性の著しく低い人や実質的に仕事をしていない人が多くなるため、景気が好循環するわけがないのだ。従って、本当は、企業に雇用調整助成金を支払うより、失業した個人に適時に失業保険を支払う政策にした方がよく、失業しても失業保険給付ももらえないような労働者は、男女にかかわらず作ってはいけないのである。

 さらに、③の防災・減災のための国土強靱化も、景気対策ではなく、よく設計された無駄のない使い方をしなければ、失業者救済のための質の低いばら撒きに終わってしまう。そのため、失政を改めることなく、“需給ギャップ”を理由に国民につけを廻して「真水」と「財政投融資」を緩めるのは、借金を増やすだけの大きな問題である。

 結局、*3-2-2のように、閣議決定された第3次補正予算は19兆1761億円と決定されたが、日本は台湾と同じく島国であるため、科学的理論にのっとり、いい加減でない検疫や防疫措置を行っていれば、感染症を市中に蔓延させることはなく、強制力を持つ営業時間の短縮・休業・ロックダウンやそれに伴う血税の無駄遣いも必要なかった。

 そのため、新型コロナ感染拡大防止目的と称して何兆円もの予算を使い、経済対策としてグリーンニューディールを行い、無駄遣いの多い防災・減災・国土強靭化を推進して、100兆円超の国債を新規に発行し、社会保障を持続可能なものにすると称して、つけを国民負担増と社会保障削減で国民に支払わせることには憤りしか感じない。

 そして、このように、生活を無視した政策を平気で行えるのは、生活感も計画性も科学的センスもない男性が中心となって政策を決めているからであろう。

ii) 106兆円の2021年度予算案について

    
2020.12.21毎日新聞 同、北海道新聞       2020.12.15NHK 

 政府は、*3-2-3のように、12月21日の閣議で106兆6097億円の2021年度予算案を決定し、長引く新型コロナ禍の中、さらなる積極財政をとるそうだ。

 水素や蓄電池などの技術開発が進み、グリーン社会が実現して、エネルギー自給率が100%以上となり、排他的経済水域内の海底資源も掘り出して使えるようになれば、失政続きで積みあがった国債を国民に迷惑をかけずに税外収入で償還することも可能かもしれないが、支出は収入がある程度は確実になってからするもので、全く不確実な段階でするものではない。

 また、デジタル化やスマート化は、省力化に必要な手段かもしれないが、世界では既に当たり前になっているため、これが国の収入増に結び付くか否かはわからない。さらに、自治体のシステムを一つに統一してしまうと、それぞれの工夫によるその後の発展がなくなる上、マイナンバーカードや都市封鎖で国民を管理したがる国を、私はよい国だとは思わない。

 なお、NHKは、*3-2-2で、令和3年度は、①感染拡大防止 ②ポストコロナに向けた経済構造転換 ③財政健全化 という3つの課題に対し、バランスをはかりながら予算を組む必要があるとしているが、①は、感染症対策の基本を守りながら、新しい治療や予防の方法があれば積極的に取り入れることに尽き、これがすべてできなかった厚労省のレベルの低さに驚く。

 そして、“ポストコロナ”“新たな日常”などという言葉を使って、新型コロナ感染症を経済構造改革の起爆剤にしようと言うのでは、わざと新型コロナを蔓延させているのではないかとさえ思われる。しかし、構造改革は、企業や個人がContenuing Improvementを行いながら、常日頃から継続的に行っていかなければ世の中についていけなくなる当然のものなのである。
 
 従って、東アジアにある日本は、新型コロナに対して欧米とは異なる特性を持っているため、感染症対策の基本を徹底して行い、早々に新型コロナを収束させて、経済を止めずに、返す当てもない選挙対策の際限なき財政出動はやめるべきだ。

iii) 「命を守るため」と言いながらの新型コロナ蔓延政策は故意か重過失か

  

(図の説明:左図のように、人口100万人当たりの新型コロナ死者数は、中国・韓国・日本で著しく低い。また、中央の図のように、日本企業が開発したアビガンは、米国・ドイツほか20ヶ国が既に購入を決定し、イスラエルが治験を開始しているものだ。アビガンは、ウイルスの増殖を抑える機序で効くため、既にウイルスが増えてしまった重症の患者より、まだウイルスがそれほど増えていない軽症・中等症の患者に使った方が有効なわけである)

 厚労省の医薬品専門部会は、12月21日、*3-2-4のように、新型コロナ感染症治療薬候補「アビガン」の承認を見送り、その理由を、「開発した富士フイルム富山化学等から得られたデータは、アビガンを投与した患者は偽薬投与の患者よりも症状が軽快し、陰性になるのが約2.8日短くなったが、『偽薬は効かない』との先入観から医師が適切に判断できていない事例があった」としている。

 しかし、新型コロナに感染しているのに偽薬を飲まされる患者はたまったものではない上、アビガンを投与した患者は偽薬投与の患者よりも症状が軽快し、陰性になるのが約2.8日短くなり、海外では既にアビガンを使っていることから、この判断は、医師や患者の負担を顧みず、アビガンを承認しない理由を探しているにすぎない。

 一方、*3-2-5のように、政府は、12月23日、新型コロナ感染症対策分科会に特別措置法の改正に向けた論点を示し、都道府県知事が要請・指示した休業や営業時間短縮に応じない店舗などに罰則の導入を検討していることを明らかにしたそうだが、休業や営業時間短縮などの国民に対する私権制限が新型コロナ感染症拡大を止めるという証拠は示しておらず、私権を制限する特措法を作るため、故意に新型コロナ感染症を長引かせているのではないかとさえ思われる。

 その上、尾身氏が「東京、首都圏が他地域と比べて人流が減っていない」「午後10時よりも早くという意見が多く出た」と話していることから、このような休業や営業時間短縮等の強制によって損害を受けた店舗は、自分の店の時短が新型コロナ感染症拡大を止めるという根拠を、アビガンのレベルで明らかにするよう、集団訴訟して損害賠償請求を行えばよい。何故なら、そのくらいのことをしなければ、政治・行政・メディアの横暴が止まらないからである。

iv) 年収200万円(月収16.7万円)の暮らしと後期高齢者医療費の窓口負担増
 *3-2-6に、「①菅首相と公明党山口代表が、年収200万円以上の後期高齢者医療費窓口負担を1割から2割に引き上げることに合意」「②後期高齢者でも現役並みの所得がある年収383万円以上の人は3割負担」「③2022年に団塊の世代が75歳以上になり始めるのを前に、現役世代の負担を軽減する狙いで2022年10月から実施」「④厚労省は年金収入のみの単身世帯で年収240万円以上に絞る案から155万円以上まで5つの案を示し、年収200万円以上は3つ目」「⑤これにより現役世代の負担が880億円減る」「⑥首相は、将来の若い世代の負担を少しでも減らしていくのは大事だと述べた」と記載されている。
  
 そのため、年収200万円の単身年金受給者はどういう暮らしができるのか計算したところ、年間社会保険料9.41万円(=《200-120-33》X9.64%+4.88)、年間所得税3.25万円(=《200-120-38-9.41》X0.1)円、年間市県民税9.9万円(=《200-120-9.41-33》X0.10+6.2)がかかるため、手取り年収は約177万円(=200-9.41-3.25-9.9)となり、手取り月収が14.8万円となる。これは、最低生活とされる生活保護受給額(物価の低い地域13.1万円、物価の高い地域15.8万円)の中間程度だが、生活保護受給者は医療費の自己負担がない。

 そして、手取り月収が14.8万円の人の生活費を例に上げると、家賃5.3万円、食費3万円、水光熱費 1万円、通信費 1万円、交通費1万円、雑費(日用品・消耗品) 1万円、その他(交際費等々)2.5万円となり、借家の場合は、特に苦しい生活になる。

 そのため、現役世代の負担を880億円減らすために、生活保護受給者程度の所得しかない人から、後期高齢者という病気しがちな年齢になって、医療費の窓口負担を1割から2割に引き上げるのはいかがなものかと思う。何故なら、この人たちが使える1カ月分の食費は、麻生財務大臣の1回分の飲み代にも満たない金額だからだ。しかし、男性の政治家や行政官は、生活費の計算ができないらしいのだ。

 結論として、後期高齢者医療費を現役世代のために880億円節約することを考えるのは、命を大切にしない高齢者いじめに過ぎず、それより、いくらでも働ける現役世代にばら撒く何十兆円もの無駄遣いをやめるべきことは、誰が考えても当然である。

 さらに、「高齢者の方が若者より貯金があるから不公平だ」などと言う馬鹿者が少なくないが、働けなくなり病気がちになった時のために、働けるうちに一生をかけて貯金しているのだから、高齢者の方が若者より貯金があるのは当たり前だ。にもかかわらず、このようなことを言う馬鹿者がいるのは、「どういう育て方をしたのか。教育が悪い」としか言いようがない。

v)最低所得保障は、働けない人に行うべきであること
 菅政権が設けた「成長戦略会議」のメンバーの竹中氏が、*3-2-7のように、生活保護や年金を縮小して全国民を対象に1人当たり月7万円を支給する「ベーシックインカム(BI、最低所得保障)」の将来の導入に備えて議論を進めるべきだとの考えを示されたそうだが、生産年齢人口にあたる働き盛りのハンディキャップもない人に国が金を配る必要はない。

 それより、これを行う原資として生活保護や年金を縮小すれば、①本当に必要とする人への所得保障ができず ②働き盛りの人がやる気を出して頑張るのも阻害する。つまり、列車が力強く進むためには、なるべく多くの機関車を繋ぐ必要があるのに、国民を全員客車にすれば列車は動かなくなる。客車ばかりを多く繋げても、列車は決して動かないことを忘れてはならない。

 そのため、何を考えているのかと思うが、日本では、このようにわけのわからない人が一流と言われる経済学者で、首相の「成長戦略会議」メンバーであり、その発言におかしさを感じない人が多いのに、さらに驚くわけである。

vi) 縦割りとセクショナリズムは、縄張りを作りたがる男性の本能では?
イ)縦割りでは戦えない自衛隊
 菅首相が、*3-3-1のように、航空自衛隊入間基地で開かれた航空観閲式で、①組織の縦割りを排し、陸海空自衛隊の垣根を越えて取り組むことが重要 ②宇宙・サイバー・電磁波など新たな領域への対応が求められている ③個々の組織のみでの対処はより難しくなったので、知見と経験を最大限に活用し、特別チームのように新たな任務に挑戦し、自衛隊をさらに進化させることを強く望む と言われたのには賛成だ。

 太平洋戦争当時は、既に航空機の時代が到来していたにもかかわらず、日本軍は帝国陸軍と帝国海軍しかなく、それぞれが航空隊を持ち、お互いの意思疎通は悪かったと言われている。今後は、②のように、宇宙・サイバー・電磁波などを使って、自分は安全な場所にいながら、省力化した安上がりの戦闘を行うのが主流になると思われるため、①③は重要だ。

 しかし、日本は、憲法9条のおかげで幸い陸海空軍はなく、あるのは自衛隊(以下、自衛軍と呼ぶ)だけだと言える。そのため、自衛軍の組織替えを行えば、必要な場所に必要な人を配置できる。従って、新しいことは効果的なメンバーを集めてまずプロジェクトチームで行い、軌道に乗って増員が必要になれば増員すればよいが、そのメンバーも量より質の時代なのだ。そして、このような時に縦割りとセクショナリズムを振りかざして組織再編に反対すれば、合目的的でない軍隊となり、太平洋戦争と同じ結果になるだろう。

 軍隊の場合は、外国との戦争で結果が如実に出るのでわかりやすいが、日本では、省庁にも縦割り・セクショナリズム・無責任体制があり、ポジションを増やそうとして、既得権益を失わないようにしながら予算の分捕り合戦を行っている。そのため、真に国民のために使われる予算が小さくなり、合理的な配分にもならず、国民のためにならない上に国力を弱めている。

ロ)農水省と経産省を統合したらどうか?
 地方に関係している中央省庁は、通信は総務省、産業は農水省・経産省、労働は法務省・厚労省、交通は国交省だ。そして、これらが漏れなく重複なく、うまく機能しなければ、無駄が多い割に役に立たない。

 一つの例として、農業地帯は、*3-3-2のように、農地が10ha規模の場所も存在する北海道でさえ高齢化や担い手不足で離農が急速に進んで過疎地となっている。そして、農家の自助努力では農地を維持することが難しく、現場からは作業の自動化を求める声が根強いが、通信環境が未整備でスマート農業の導入が進まない現実があり、これでは、日本の食料自給率は、さらに下がるだろう。

 「このような考え方は保護主義で、食料は外国から輸入すればよい」などと考える人がいるが、外国から食料を輸入できるのは製造業が比較優位にあって輸出額が多い場合であり、日本は、既にコスト高になっている上、付加価値の高いものを作る努力もしていないため、製造業も風前の灯なのである。その上、食料自給率が低いと安全保障上の問題も大きい。

 しかし、高齢化の進行によって担い手に農地を集積することで、1戸あたりの平均耕地面積を10ha以上にできる時代は、農業も生産性の高い産業にできるため、やり方によっては、ピンチをチャンスに変えることができる有望な時代である。

 その規模拡大を実現できるためには、農機の自動化・通信基盤の整備・労働者の常用雇用・繁忙期のアルバイト雇用など、大規模経営を可能にするインフラが整っていなければならない。これに関わる省庁は、農水省だけではなく経産省・総務省・法務省・厚労省などで、地域の事情に詳しい地方自治体が必要事項を取り纏めて要求していく必要がある。この時、省庁が縦割りで全体の展望が見えておらず、おかしな判断をすると、すべてが頓挫してしまうのだ。

 なお、*3-3-3のように、「役所にとって負けず劣らず重要なのが組織定員要求」というのは農水省に限ったことではないが、これを放っておくと「税金で養っている公務員の数/生産年齢人口」や「税金で養っている公務員の数/GDP」が上がる。これがまずい理由は、税金で養われる公務員には、効率化・付加価値増大の圧力がなく、格付けを重視して仕事の柔軟性が乏しく、働いているふりをしながら後ろ向きの仕事をしていても倒産しないため、公務員の割合が高くなればなるほど国全体の生産性が下がることである。そのため、橋本内閣が行った2001年の省庁再編は重要だったのだ。

 そのような中、*3-3-3に、「①単独省として存続した農水省は、どの局が削減されるか大議論になった」「②現在、廃止された畜産局が復活するかどうかのヤマ場を迎えている」「③現在の食料産業局は新組織案では大臣官房に新事業・食品産業部が設置されるらしい」「④輸出・国際局や作物原局(農産局、畜産局、林野庁、水産庁)との連携が今以上に図られ、食料産業のますますの発展につながる組織改正となることを期待したい」などと記載されている。

 このうち①②は、元に戻そうとする後ろ向きの仕事のような気がする。しかし、農業を産業として強くしつつ、食料自給率を上げて安全保障に貢献し、余剰能力があれば輸出して外貨を稼ぐことが、現在の農林漁業に課せられたニーズであるため、より効果的にそれができる方法を考えた方がよいと思う。

 そして、より効果的にそれができる方法は、農林漁業・自然・地域に関する知識を多く持つ農水省と産業政策・輸出入・エネルギーを担ってきた経産省を統合し、農林水産品の輸出に既にある経産省の基盤を使いながら、農林漁業地帯で再エネ発電も行い、産業としても強い農業を作ることではないかと、私は思う。何故なら、経産省管轄の第二次産業である製造業は高コスト構造によって既に先細りになっているが、食品生産も製造業の一部で、民間にとってはどの省庁の管轄かよりも、既にある知識やインフラを使って効率的に発展できることが重要だからである。

ハ)エネルギーについて

  
        Goo            Jcca       WWFジャパン

(図の説明:左図のように、1973~2016年は、名目GDPは2.5倍になっているが、エネルギー消費は1.2倍にしかなっていない。その理由は、省エネが進んだこともあろうが、内訳を見ると業務他部門は2.1倍になっているのに対し、産業部門は0.8倍になっているため、第二次産業が海外に出て減り、第三次産業に移行したのではないかと考える。2018年の部門別CO₂排出量割合が中央の図で、産業関係の56.3%《35.0+17.2+4.1》が最も大きく、運輸部門が18.5%、家庭部門は14.6%である。これを右図のように次第に減らし、温暖化ガス排出量を2050年に実質0にする計画だそうだが、本気でやれば15年後の2035年でもできそうな気がする)

 日本にとって有利なエネルギーの変換なのに、仕方なく世界についていくという情けない形で、日本政府は、*3-3-4のように、温暖化ガス排出量を2050年に実質0にするというゆっくりした行動計画を公表した。

 その内容のうち、①新車は2030年代半ばに全て電動化(HVも含む)する ②2050年に電力需要が30~50%膨らむと想定し、再エネ比率を50~60%に高める ③産業・運輸・民生全体で電化を加速し、エネルギー源の電力部門は脱炭素化する ④洋上風力は40年までに最大4500万kw(原発45基分)の導入を目指す ⑤蓄電池は2030年までに車載用の価格を1万円/kwh以下に下げる ⑥住宅・建築物は2030年度までに新築平均で実質0にする などである。

 これらに成績をつけると、①は、2030年代半ばになってもHVを含むので「可」に留まる。また、②は、2050年(今から30年後)なら再エネ比率を100%にすることもできるのに、*3-3-6のように、高コストで激しい公害を出す原発にまだ固執しているため「不可」。③の産業・運輸・民生全体で電化というのは「優」だが、電力部門が激しい公害を出す原発を使うつもりなので「可」に留まる。④は、再エネは洋上風力だけではないため「良」程度だ。⑤は、安いほどよいが、まあ「優」だろう。⑥は、可能かつ重要なので「優」。これらをまとめると、経産省と大手の絡むところが、既得権を護るために改革の足を引っ張っていると言える。

 メディアの説明も、i) 風車は部品数が多く裾野が広い ii) 国内に風車は製造拠点がない iii) 燃焼時にCO2を排出しない水素を火力発電で2050年に2000万t消費する目標 iv) 需要拡大で水素でガス火力以下のコストを実現 v) アンモニアを水素社会への移行期の燃料とする vi) 軽自動車は、電動化するとコスト競争力を失う恐れがある vii) バスやトラックなどは電動化が難しい vii) 船舶は50年までに水素やアンモニアといった代替燃料に転換 となっているが、おかしな部分が多い。

 例えば、i)のように、部品数を多くし裾野を広くすると、ユーザーにとってはコスト高で管理が難しく、サプライヤーにとっては安価で柔軟な生産体制にできないため、効果が同じなら簡単な作りで部品数の少ない製品の方が優れている。

 また、ii)は、風車は紀元前から使われている道具であり、最新の材料や流体力学を駆使したとしても、作るのは容易だ。さらに、iii)は、再エネ由来の電力で水(H₂O)を電気分解すれば水素(H₂)と酸素(O₂)ができるのに、それを燃やして火力発電を行うというのは愚かである。iv) v)については、水素は燃料のいらない再エネ発電で作れるため、化石燃料由来のガス以下のコストになるのは当然で、水素の方が容易に作れるのに移行期と称してアンモニアに投資するのは資本の無駄遣いである。

 なお、vi)の軽自動車は、電動化した方が軽量で安いものができ、環境意識・コスト意識が高く、デザインも気にする女性にもっと売れるだろう。vii) のバス・トラックの電動化は外国では既にできているのに、日本では難しいと言うのか(??)。さらに、vii) の船舶は、2050年までなら水素燃料で十分で、アンモニアを使う必要などない。このように、非科学的で不合理な選択を促しているのは、無駄が多すぎて見るに堪えないのである。

 そのため、国民は、原発を使おうとしている大手電力会社の電力を使わない選択をせざるを得ず、それには、*3-3-5のように、2030年に新築住宅・建築物のCO₂排出量を0にする目標は歓迎だ。ゼロ・エネルギー・ハウスの価格は、一般国民の手の届く範囲でなければならないが、それが標準になれば大量生産でコストが下がるので、価格も下げられるだろう。

 最後に、除雪技術・高性能建材・エネルギーの最適利用システム・ビル壁面設置型太陽電池の実用化などの新しい工夫は、大いに期待できる。

(4)女性がリーダーに選ばれにくい理由と女性差別の関係
1)女性がリーダーに選ばれにくい理由と女性差別の関係の本質
 「『女性にリーダーは向かない』というジェンダー・バイアスをなくそう」として、*4-1に、「①働く女性は有償の仕事と無償のケア労働を担い、ダブルワークになっている」「②有償労働と無償労働は足して考えるべき」「③日本人女性の総労働時間は日本人男性より長く、睡眠時間は短い」「④日本人女性の総労働時間はOECD諸国の中で最長」と書かれている。

 これは、無償労働が女性に偏り、無償であることによって「大した仕事ではない」「働いていない」と誤解されていることによって起こった悲劇だ。実際には、家事は必ず結果を出さなければならない大変な仕事で、子育てを含む家事をすべて外注すれば20~30代の一般サラリーマンの給料より高くなるが、有償で働いているサラリーマンは「働いている」とされ、無償で家事と子育てを受け持つ妻は「働いていない」と言われるのである。

 それでも、女性の立場が弱くて状況を変えることができないとすれば、理由はさまざまだろうが、有償で働いて見せることができない女性が多いからだろう。

 *4-1には、「⑤2019年12月に世界経済フォーラムが発表したジェンダー・ギャップ指数で、日本は153カ国中121位」「⑥特に政治・経済分野の女性リーダーが少ない」「⑦経営陣が均質の集団だと集団浅慮が起きる」とも書かれている。

 ⑤⑥は、日本が女性の登用で非常に遅れている事実を数値で示しており、その結果、⑦のように、意思決定に関わる経営陣が均質化しすぎて多面的に議論できない状態になっているのだ

 また、*4-1は、「⑧アンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)がある」「⑨無意識の偏見により、採用、評価、昇進昇格などで差が出る」「⑩男性として望ましく、リーダーとしても望ましい特性で共通するのは『責任感がある』『行動力がある』『説得力がある』など重なりが多く」「⑪女性として望ましく、リーダーとしても望ましい特性で共通するのは『責任感が強い』『自立している』のみだった」「⑫ここから分かるのは『リーダーは男性向きで、女性には向かない』という偏見があることだ」「⑬力強いリーダーシップを発揮している女性を、『女性らしくない』とマイナス評価してしまう可能性がある」「⑭リーダーは男性向きで、女性には向かない」など、無意識の偏見による女性差別についても記載しており、その点でこれまでの記述よりずっと深く、「女性活躍→子育て支援」ばかりの記述とは雲泥の差がある。

 このうち、⑧⑨は、私の経験から見ても正しく、日本人には、女性に特に謙虚さや楚々とした態度を求め、女性が実績を示してリーダーにふさわしいことを証明することを不可能にしたがる人が多い。それでも、能力やリーダーにふさわしい事実を証明した女性には、⑪⑫⑬のように、それとは両立しない“女性らしさ”の要素を勝手に作り出して持ち出し、どうしても⑭の結果を導こうとするのである。こういう人は、男女にかかわらず多いため、教育に原因があるだろう。

 なお、メディアも、能力や体力が十分な女性には、「意地が悪い」「優しくない」などの負の印象付けをして偏見や差別を助長し固定化させている。それがフジテレビの演出で、それを間に受けて悪乗りし、ネットで中傷し続けた人によって引き起こされた女性プロレスラーの自殺事件が、*4-2だ。これは、損害賠償請求してもよい事件だが、メディアもネットも嘘であっても言いたい放題(「言論の自由」「表現の自由」には値しない)で、投稿した人が誰かもわからないようにして、ずっと残すわけである。私の場合は、名誉棄損で侮辱の週刊文春の嘘記事とそれを引用したネット記事が代表だが、決してそれだけではない。

 こんなことを放置していてよいわけがないのだが、「発信者情報の開示を求める申し立ては、不都合なことを書かれた企業などからも起こされていて、正当な批判や内部告発をためらわせる圧力になっている」などとする意見もある。しかし、正当な批判や内部告発なら、ネットを使って匿名で行うのではなく、しかるべき所に責任を持って行うべきであり、“試行錯誤”などと言っているうちは、人権侵害による損害が多発し続けているのだ。

2)夫婦別姓と通称使用
 夫婦別姓は世界の常識とまで言われるようになったが、中国・台湾・韓国で妻の姓が夫と異なるのは、子はその家の子としてその家の姓を名乗るが、妻は他家の人であり、子の母と認めるか否かは夫が決めるという超女性蔑視の名残だと、いろいろな人から聞いている。

 日本は、第二次世界大戦後、敗戦によって民主化が行われ、(3)1)に記載したとおり、日本国憲法24条1項で「婚姻は両性の合意のみに基づいて成立する」と規定され、民法第750条で「夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫又は妻の氏を称する」と規定されて、条文上は男女平等になった。

 それでも改姓するのは殆ど女性で、女性が改姓の不利益を受けがちなのは、21世紀の現在も、日本人が憲法と民法の理念に基づいて平等な立場で結婚していないからだと言える。その理由には、①女性労働には無償や低賃金が多いため、平等に交渉できない ②儒教文化の弊害 など国民に内在する本質的な問題があるからだが、少数とはいえ、改姓した場合に不利益を受けるのは女性だけではない。

 そのため、私は、家族が使う「Family Name」は平等な立場でどちらかに決め、改姓する人が旧姓を使いたい場合は、戸籍法上の届け出を行えば徹底して旧姓を使えるよう、戸籍法を改正すればよいと考えるのである。

 しかし、*4-4は、「③選択的夫婦別姓制度の導入が後退した」「④働き続ける女性が増える中、改姓で仕事に支障が生じる」「⑤1人っ子が増え、結婚しても実家の姓を残したいという希望も強い」「⑥選択的夫婦別姓はあくまで希望者に新たな選択肢を示すというものだ」「⑦今回の計画は、旧姓の通称使用拡大を強調するが、2つの姓の使い分けには限界がある」「⑧夫婦同姓を法律で義務付けているのは、主要国でも異例だ」「⑨家族の一体感のみなもとは同姓であることだけでもない」「⑩大事なのは、議論を止めず、しっかり続けることだ」としている。

 このうち、④は、徹底して旧姓を使えるようにすればよいので、③のように後退したとは言えない。⑤は、残したい姓を「Family Name」にすればよく、統一した「Family Name」を持つ意味は、子の姓の不安定性をなくし、誰も他人ではない家族の一体感を得ることだ。⑥では、夫婦別姓を選択しなかった場合にやはり改姓の不利益が残り、⑦は戸籍に記載すれば徹底して旧姓を使えるよう戸籍法を改正すれば足りる。さらに、⑧は、むしろ夫婦別姓の方に女性蔑視の歴史があり、⑨は、家族の一体感の源はもちろん同姓であることだけではないが、1要素ではあり、⑩のように、議論を続けるばかりでは改姓の不利益の被害者が増え続けるのである。

 そのため、*4-3のように、外務省が、2021年4月1日の申請分からパスポートの旧姓併記要件を緩和し、戸籍謄本、旧姓を記載した住民票の写し、マイナンバーカードのいずれかを提出すれば旧姓を明示できるようにするとしたのは当然のことだ。

 私は、2020年6月に、戸籍謄本と旧姓を記載した住民票を持って、夫とともにパスポートを更新しに行ったところ、外国での論文の発表や業務による渡航など旧姓使用の実績を証明していないから旧姓を併記させないと難癖をつけられて怒りを覚えた。何故なら、衆議院議員の間は旧姓を使い、現在の名刺も旧姓を記載しているため、実績を証明していないなどと外務省から言われる筋合いはなかったからである。

 そして、この時点で旧姓を併記させなかった省庁は外務省だけであり、総務省のマイナンバーカードも警察庁の運転免許証も地方自治体の住民票も旧姓併記できていたのだ。

・・参考資料・・
<製造業>
*1-1-1:https://news.yahoo.co.jp/articles/7545be8044b2a87b478132aa7bbd6c705869fc8d (Yahoo 2020/12/17) 自工会・豊田章男会長が大手メディアに「電動化車両はEVだけではない!」ミスリードやめてと苦言
●いまの状況でEVが増えると電力不足になる!?
 自動車工業会の豊田章男会長(トヨタ自動車社長)が、2020年12月17日に懇談会規模の記者会見をおこなった。挨拶に代表される無駄な時間を掛けず、冒頭より記者からの質問を受けるという内容です。最初に出たのは、昨今話題にあがる電動化について。記者側から「自工会としてどう考えるのか?」という茫洋とした問いだったのだけれど、熱い回答になりました。長い内容になったため概要を説明すると、まず会長自らトヨタ調べの数字で現状を紹介した。自動車産業はずっと二酸化炭素削減努力をおこなっており、その結果、販売している車両の平均燃費でいえば、2001年の13.2km/Lから2018年の22.6km/Lと71%も向上しており、自動車が排出する二酸化炭素の排出量も2.3億トンから1.8億トンへ22%も減っているという。あまり公表されていない数字だったこともあり、改めて自動車環境技術の進化に驚かされる。続けて電気自動車の話になった。多くのメディアはすべて電気自動車にすべきだというけれど、いまの電力状況のままクルマをすべて置き換えようとすれば電力不足になるうえ、そもそも日本は火力発電所がメインのため二酸化炭素の排出量削減にならないという。この件、裏を返せば、日本という国全体のエネルギー問題のほうが大きいということだと考えます。現時点でカーボンフリーの電力をどうやって確保したらいいかという論議はまったく進んでいない。原子力発電所を新設するどころか、既存の施設の再稼働すら出来ない状況。十分な安全性を担保出来なければこのまま廃炉になっていくと思う。
●「EVだけになるわけではない」大手メディアの誤認識に苦言も
 実際問題として「2050年にカーボンニュートラル」という目標を、どういった方策で実現するかまったくわからない。少なくとも現在の排出量を提示し、大雑把でいいからそれぞれの分野でどのくらいの目標設定をするか、エネルギー事情をどうするのかくらいの目安がなければ、自動車業界の対応策すらイメージ出来ないということなんだろう。どうやら2050年カーボンニュートラルや、東京都知事の電動化車両以外販売停止の件、政治家サイドで突如に決めたことらしい。いうのは簡単ながら、エネルギー政策まで考えてくれなければ対応するのも難しいと思う。そもそも、脱ガソリン車で困るのは国民です。地方で移動手段の主力となっている軽自動車もどう対応したらいいかわからず、このままだとユーザーが困る。返す刀でメディアもバッサリ切った。電動化車両のなかにハイブリッド(HV)や、プラグインハイブリッド(PHV/PHEV)も含まれているのに、報道を見ると電気自動車しか販売出来ないようなミスリードをしているという。これはもう、報道するメディア側に大きな問題があります。大手メディアの記者は勉強不足のため、電動化車両にハイブリッドやプラグインハイブリッドも含まれることを認識していない。結果、少なからずそうした報道を見た人が、東京都は2030年からすべて電気自動車になると理解している。そのほか、豊田会長はメディアの誤認識や意地の悪い報道に対し苦言を呈す。聞いていて「その通りですね!」の連続だ。これだけ率直に自分の意見をいうトップは珍しい。「これだけいうと叩かれると思います」と会長自らオチまで付けた。今後も自動車産業代表として大暴れして欲しい。

*1-1-2:https://news.yahoo.co.jp/articles/677759feaa63e0627321fc86f24f2ef515f8fb1f (Yahoo 2020年12月17日) トヨタ社長「自動車のビジネスモデル崩壊」 政府の「脱ガソリン」に苦言
 菅義偉首相が打ち出した2050年に温室効果ガス排出を「実質ゼロ」にする目標に向け、産業界の「重鎮」が苦言を呈した。日本自動車工業会(自工会)の豊田章男会長(トヨタ自動車社長)は17日、オンラインで取材に応じ、政府が30年代に新車のガソリン車販売をなくすことを検討していることについて「自動車業界のビジネスモデルが崩壊してしまう」と懸念を示した。日本は火力発電の割合が大きいため、自動車の電動化だけでは二酸化炭素(CO2)の排出削減につながらないとの認識を強調し、電気自動車(EV)への急激な移行に反対する意向を示した。原発比率が高く、火力発電が日本と比べて少ないフランスを例に挙げ、「国のエネルギー政策の大変革なしに達成は難しい」「このままでは日本で車をつくれなくなる」などと発言。EVが製造や発電段階でCO2を多く排出することに触れ、「(そのことを)理解した上で、政治家の方はガソリン車なしと言っているのか」と語気を強めた。ガソリン車の比率が高い軽自動車を「地方では完全なライフライン」とし、「ガソリン車をなくすことでカーボンニュートラルに近づくと思われがちだが、今までの実績が無駄にならないように日本の良さを維持することを応援してほしい」と述べ、拙速な「脱ガソリン車」には賛成できない考えを示した。一方、日本鉄鋼連盟の橋本英二会長(日本製鉄社長)は17日の定例記者会見で、50年「実質ゼロ」の目標の実現について、研究開発に「10年、20年はかかり、個別企業として続けるのは無理だ」と述べ、国の支援を求める考えを示した。政府の目標達成には、自動車業界や鉄鋼業界の協力が不可欠。「財界総理」と言われる経団連会長を輩出し、政府に対する発言力も強いトヨタや日鉄のトップから懸念が示されたことで首相の「ゼロエミッション」は曲折も予想される。

*1-2:https://www.nikkei.com/article/DGXZQODZ1135N0R11C20A2000000/ (日経新聞 2020/12/17) 電動化、軽・トラック遅れ ダイハツなど価格・車体が壁
 政府が自動車業界に「脱ガソリン車」への対応を迫っている。国内では新車市場の約5割を占める軽自動車やトラックが課題となりそうだ。例えば軽は約7割がガソリン車で、電気自動車(EV)にすると割安さや車体のコンパクトさが失われかねない。軽シェア首位のダイハツ工業やトラック首位の日野自動車などにとって、電動化シフトは険しい道のりとなる。政府は10月に「2050年に温暖化ガスの排出量を実質ゼロにする」との方針を発表。この達成に向け、経済産業省は具体的な工程表を年内にまとめる。30年代半ばに新車販売を全てハイブリッド車(HV)やEVなどの電動車にする目標を盛り込む見通しだ。軽やトラックがこの対象に含まれるかは未定。それでも「特別扱いは難しいのでは」(自動車メーカー幹部)と業界は身構える。日本独自の規格車である軽は、2019年の新車販売台数が148万台と全体の約3割。ただ現在は約7割がガソリンエンジンのみで動くタイプだ。軽以外の乗用車と比べて電動化が進んでいない上に、足元では燃費改善効果が小さい「マイルドハイブリッド」と呼ばれる簡易式HVしかなく、EVや燃料電池車(FCV)はまだない。首位のダイハツや3位のホンダは、現時点で軽の電動車の品ぞろえがゼロだ。電動車比率が6割以上の2位のスズキも簡易式HVしか持たない。小型・軽量化で燃費性能を高めてきた軽は、電動化に本格的に取り組んでこなかった。HVやEVに必要なモーターやバッテリーは価格が高く、軽の最大の強みである安さが失われるためだ。総務省によると19年の軽の平均価格は143万円で、一般的な小型車(217万円)よりも3割強安い。地方を中心とした重要な移動手段でもあるため、ダイハツ幹部は「電動車にすると軽の価格が上がって顧客が離れてしまう。補助金など支援策が必要だ」と困惑する。車内空間を確保するため、電池の搭載スペースが限られることも電動化の足かせとなる。ダイハツは今後は低価格のHV開発を急ぐ。一方、三菱自動車は日産自動車と共同開発する軽のEVを23年度にも投入する計画で、電動化の試金石になりそうだ。さらに厳しいのがトラックだ。国土交通省によると、19年度のトラック(3.5トン以上)販売のうちHVなど電動車は1%に満たず、大半はディーゼル車だ。電池を積んだEVだと搭載できる荷物が減ってしまう上に、充電にも時間がかかってしまうためだ。小型トラックでは三菱ふそうトラック・バスがEVを販売し、いすゞ自動車や日野自はHVを手掛ける。ただ「価格が高いのでニーズは少ない」(関係者)。それでも世界で環境規制が強まるなか、脱炭素への取り組みは不可欠だ。電動化への圧力は、協業や再編を加速させるきっかけにもなりそうだ。

*1-3:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20201219&ng=DGKKZO67507380Z11C20A2NNE000 (日経新聞 2020.12.19) ダイムラー、F1出資半減 「常勝」の自社チーム EVへ注力鮮明
 独ダイムラーは18日、自動車レースの最高峰、フォーミュラ・ワン(F1)の自社チームへの出資比率を現在の60%から33.3%に減らすと発表した。新たな株主に欧州化学大手のイネオスを迎える。ダイムラーの高級車事業会社メルセデス・ベンツは本業で電気自動車(EV)への注力を鮮明にしており、その影響もあるとみられる。メルセデスのF1チーム「メルセデスAMGペトロナス」は2014年から7年連続で総合優勝し、20年も17戦中13戦で勝利するなど圧倒的な強さを誇っている。こうしたなかで21年シーズンからイネオスとダイムラー、チームの代表を務めるトト・ヴォルフ氏の3者がそれぞれ対等な出資比率とする。出資比率変更の方法などについては明らかにしていない。メルセデスは引き続き車体やエンジンの供給を続ける。

*1-4:https://digital.asahi.com/articles/DA3S14736310.html (朝日新聞 2020年12月19日) 東芝、再エネ3.4倍目標に自信 車谷社長に聞く
 東芝の車谷暢昭(のぶあき)社長は17日、朝日新聞の取材に応じ、再生エネルギー関連事業の売上高を2030年度に19年度の約3・4倍にあたる6500億円とする目標について「かなり細かく積み上げた数字」と述べ、達成に自信を見せた。そのうえで「比較にならないような規模に成長する可能性もある」とも語った。東芝は11月、20~22年度の3年間で、過去3年間の約5倍にあたる1600億円を再生エネルギーの分野に投資する計画を示していた。車谷社長は、20年を「新型コロナでデジタルとグリーン(環境)の必要性があぶり出され、次の数十年のスタートの年になった」と振り返った。世界中で進む「脱炭素」の実現に向けて期待される技術のうち、水素エネルギーや、二酸化炭素を回収して有効利用する手法などは「ずっと開発してきたが、これまでは需要がついてこなかった。環境が様変わりし、すごく順風になった」と手応えを語った。一方で、東芝は原発事業による巨額損失で債務超過に陥ったために17年、東京証券取引所1部から2部に降格。今春から審査が続いている1部への復帰については、子会社で新たな不正取引が見つかったことなどが影響し、時間がかかるとみられている。「株主や取引先、従業員のみなさんが再生の象徴として希望しておられるので、実現に最大限努力することにつきる」と述べるにとどめた。9月には約4割を出資する半導体大手キオクシアホールディングスが、米中摩擦などから株式上場を延期した。上場していれば、東芝はキオクシア株の一部を売り、得た利益の半分を株主に還元する予定だった。「(上場が)達成された時に約束通りやっていく」と話した。

*1-5:https://r.nikkei.com/article/DGXZQOFB168O10W0A211C2000000 (日経新聞 2020年12月19日) 小池都知事、EVインフラの補助金拡充の意向 、「30年すべて電動車」へ周辺自治体と連携も模索
 東京都の小池百合子知事は日本経済新聞のインタビューに応じ、2030年までに都内で販売される新車すべてを電気自動車(EV)やハイブリッド車(HV)などの電動車に切り替えるため、充電器などのインフラ整備向け補助金を拡充する意向を示した。「内燃のエンジンは貴重な技術」としつつ、世界的な脱ガソリン車の流れに先んじる政策の必要性を訴えた。都は既にマンション駐車場に設置する充電器への補助制度を設けているが、小池氏は「充電設備の充実は引き続き行う」と述べた。21年度当初予算編成における知事査定で対応策を検討する。都税でEVなどを優遇する制度も「総合的に対応したい」と語った。ただ、都内のEVインフラが充実するだけでは、広域に走る利用者の利便性は確保できない。小池氏は「(1都3県と5つの政令指定都市を含めた)9都県市の共通課題として挙げていく」と話し、周辺自治体との連携を模索する姿勢を示した。脱ガソリン車を巡っては、日本自動車工業会の豊田章男会長(トヨタ自動車社長)が、政府が調整中の30年代半ばに全ての新車を脱ガソリン車とする目標に懸念を示している。小池氏は「内燃のエンジン、ハイブリッドは大変貴重な技術だ」とする一方、次世代車の技術開発競争について「これは覇権争いだ」とも指摘。「産業が大きく変わる中で、日本の居場所を確保しておくことは重要だ」と語った。小池氏は「世界市場を考えると電動二輪はニーズが増える」として、35年までに二輪車も全て電動化する目標も表明した。

<農業と食品>
*2-1:https://www.agrinews.co.jp/p52633.html (日本農業新聞論説 2020年12月10日) JAと企業の連携 地域振興に相乗効果を
 JAと企業との新たな連携が生まれている。地域の人口減少や新型コロナウイルス禍でモノやサービスの需要が減退。地域の実情などに応じて連携することで、事業の効率化や需要の拡大、新規開拓を目指す。農業と地域経済の振興につながるよう相乗効果の発揮を求めたい。JAグループ高知が高知市に開設する直売所「とさのさと」と同じ敷地には、大型スーパーが出店。互いの強みを発揮して客を呼び込む。スーパーはカット野菜や総菜、加工品、調味料を豊富に扱う。一方、直売所は高知県産にこだわり、県内から新鮮な地場産が毎朝届く。野菜の県産率は8割に上る。直売所の関係者は「商品が全く異なり競合しない」と言い切る。むしろ、連携で来店者の6割が両方を利用。直売所は午後と若年層の利用者が増え、スーパーは午前中の売り上げが増え、双方に効果が出ている。LPガスでも連携の動きがある。JA全農みえとLPガス大手の岩谷産業は、伊勢市に同社が新設したLPGセンターの相互利用などに乗り出した。LPガスの充填(じゅうてん)・配送業務を効率化するのが狙い。同じエリアに拠点を置く両者が連携し、経営資源を効果的、効率的に利用してLPガス事業の機能強化を図る。当面は、それぞれの容器を使って配送するが、将来的には容器の統一や配送の一元化を目指す。業務用を中心に、コロナ禍で需要が減少した農産物を、地元の企業と組んで地域内で消費する取り組みも見られる。JAわかやまは、地域経済の活性化に向けて地元の和食チェーン「信濃路」(和歌山市)と連携することで合意した。第1弾として、業務用米を同社が買い入れる。使用する米の全量を同JA産に切り替えるという。毎月6トンの無洗米を22店舗で提供する予定だ。商品開発も見られる。農協観光と日本航空は、岡山、島根、広島県の3空港をチャーター便で結ぶ日帰り観光の企画商品の販売を始めた。コロナ禍で就航本数が減った国際線の飛行機を使う。岡山を起点に島根から広島へのルートを1日で往復し、県内観光をしてもらう。広島では遊覧飛行もする。各空港で旅行客を乗せることで飛行機の稼働率を高め、価格を抑え、近隣地域での観光を促す。隣県を1日で結ぶチャーター便の企画は日本航空では初という。JA同士や協同組合間と並行して、地域やJAの実情に応じた連携の取り組みが始まっている。JA事業を巡っては、高齢化や過疎化で地域の需要が減少する中で、他の事業者との競争が激化、コロナ禍が需要減に拍車を掛けている。また、JAだけでは地域の生活インフラを支えきれない場合もある。こうしたことが背景だ。「地域をより良くしたい」との共通の思いを基盤に協調するところは協調し、互いの強みやブランド力を生かしてほしい。

*2-2:https://www.agrinews.co.jp/p52605.html?page=1 (日本農業新聞 2020年12月6日) JA運営で女性参画着々 役員、正組…軒並み増
 JA全中は2020年7月現在のJAの女性運営参画状況を公表した。役員(理事・経営管理委員・監事)に占める女性の比率が9・1%と前年比で0・7ポイント増えた。数値目標を掲げる①正組合員②総代③理事など──の女性割合が前年を上回った。全中は目標達成に向け、JAに働き掛けを強める考えだ。全正組合員に占める女性の割合は22・7%となり、前年比で0・3ポイント増えた。総代は9・8%で同0・4ポイント増。役員総数は1419人となり同53人増加した。県域JAへの合併などで役員総数が680人減って1万5580人となる中で、女性役員が増えた。JAグループ愛知は、女性役員を1年で44人増やし、県の女性役員比率を47都道府県で最も高い15・3%に伸ばした。「女性役員割合15%以上」の目標達成へ期限を設定。女性の割合を高めるため非常勤理事の定数は増やさずに、地域選出の女性理事を増やしたり、地域選出の理事定数を削減して全域の女性理事枠を設定したりするなど、具体的に役員選出方法を見直した。JAあいち女性組織協議会の会長も務める、JA全国女性組織協議会の加藤和奈会長は「目標設定を明確にし、段階的に進めたことが良かった。男性、女性双方が意見を出し合えればJA運営は良くなる」と指摘する。JAグループは、19年3月の第28回JA全国大会で、女性参画の数値目標を決定。①正組合員30%以上②総代15%以上③理事など15%以上──の目標を掲げている。政府は第4次男女共同参画基本計画で、20年度にJA役員に占める女性の割合を10%にするよう求めていた。20年度に達成できなかったことから現在策定中の第5次計画(21~25年度)で目標を据え置く見込みだ。JA全中青年女性対策課は、女性のJA運営参画のメリットとして理事会・会議の活発化などを挙げ、「JAが変われば地域も変わる。愛知を参考に女性の運営参画をJAに働き掛けていきたい」と強調する。

<政治分野における男女不平等と生活関連政策軽視・縦割行政>
*3-1:https://digital.asahi.com/articles/ASNCC7FXSNCCULFA00Y.html?ref=mor_mail_topix1 (朝日新聞 2020年11月12日) 「女性は野党に出して頂いて」 男女平等、遅れる政界
 日本のジェンダー平等を進めるための、次の男女共同参画基本計画のメニューが出そろった。指導的地位の女性割合を30%に高める目標は未達のまま持ち越され、足もとでは取り組みを強める動きも広がるが、今度こそ達成に向かうのか。新たに緊急避妊薬の市販検討なども盛り込まれたが、議論が続く選択的夫婦別姓と同様に慎重論も根強く、実現は簡単ではない。
●女性議員1割の自民、増えぬ理由は
 日本が特に遅れているのが政治分野だ。衆院議員の女性割合は1割足らずで、各国の議会を比べた世界ランキングは167位。2018年には、議会選挙の候補者を出来る限り男女同数にするよう政党に求める「候補者男女均等法」ができ、翌年の参院選では候補者の女性割合が過去最高の28・1%になったが、男女同数には遠く及んでいない。今年9月には、自民党の下村博文選挙対策委員長(当時)が「30年に党の女性議員が3割」になることを目指して、国政や地方の選挙で候補者の一定数を女性にする「クオータ制」を導入する提言をまとめて二階俊博幹事長に申し入れた。ただ、その後は導入に向けた動きは見えていない。二階氏は今月9日の記者会見で、その後の取り組みについて問われ「バックアップすることはできるが、女性議員をつくることに党が真正面からどうだと言ってみても、国民のみなさんが決めること。そう期待通りにはいかない」と述べた。自民党の国会議員393人(衆参両院議長を除く)のうち、女性国会議員は39人で約1割。選挙で候補者を擁立する際は、男性が多い「現職」が優先されるため、与党が女性候補を増やすのは簡単ではない、というのが党内の見方だ。野田聖子幹事長代行も9日、記者団に「野党にどんどん女性を出して頂いて、効果があれば循環していくのだろう。うち(自民)は残念ながら動かすだけの(空白区などの)キャパがない」と語った。野党第1党の立憲民主党は、国会議員149人(衆参両院の副議長は含めず)のうち、女性国会議員は28人で2割弱。党のジェンダー平等推進本部で、女性候補者を増やすための取り組みを検討している。選挙資金の援助や、女性のスタッフ配置などを想定しているという。だが、衆院議員の任期も残り1年を切り、すでに候補者選考も進んでいる。9月6日、記者団に女性擁立の数値目標について問われた枝野幸男代表は「理想論だけでは進まない。リアリティーある目標を掲げていくのが誠実な対応だ」などと述べるにとどめている。候補者男女均等法をとりまとめた超党派の「政治分野における女性の参画と活躍を推進する議員連盟」(中川正春会長)も、同法改正の検討を始めている。だが、クオータ制には現職らから「議員の質が下がる」といった批判もあるため、超党派での合意を得られやすい、議員や候補者へのハラスメント防止などが主な検討項目になっているという。一方、新たな動きを見せているのが経済界だ。経団連は9日、日本企業の役員に占める女性の割合を「30年までに30%以上」とする数値目標を初めて掲げた。いまは上場企業の役員で6・2%でハードルは高いが、少子高齢化やデジタル化など変化が激しい社会で企業が生き残るには多様性が必要で、そのためには「明確な目標設定がないと、なかなか進まない」(中西宏明会長)と考えたという。グローバル企業には、市場や投資家の視線という「外圧」も高まっている。幹部は「企業の経営のあり方を重視するESG投資が急速に広がっており、女性役員の比率が判断基準の一つになっていく」と話す。答申は今回、最高裁判事を含めた裁判官の女性割合の引き上げにも初めて触れた。夫婦別姓を認めない民法の規定を合憲とした2015年の最高裁判決で、違憲の意見を述べたのは女性3人を含む5人。家族や社会のあり方への司法判断にもジェンダーバランスが求められるからだ。最高裁判事は裁判官や弁護士、検察官、学者などから候補が挙がり、内閣が任命するが、今は15人のうち弁護士出身の宮崎裕子氏と行政官出身の岡村和美氏の2人(13・3%)だけ。最も多かった昨年2月時点でも3人で、裁判官出身で最高裁判事になった女性は、まだいない。ただ、最高裁によると昨年12月時点で裁判官3484人のうち女性は22・6%の787人。弁護士や検察官より3ポイントほど高く、40年前の2・8%(76人)から増え続けており、任官10年未満の判事補に限れば34・5%という。最高裁の担当者は「裁判官にふさわしい女性の任官について努力を継続する」としている。

*3-2-1:https://www.nikkei.com/paper/related-article/?R_FLG=1&b=20201208&be=NDSKDBDGKKZ・・・ (日経新聞 2020/12/4) 34兆円「需要不足」穴埋め 経済対策、支出積み上げへ 量ありき、効果に懸念
 政府が近く決定する追加経済対策の規模拡大に向け、財政支出の積み増しを検討している。7~9月期に年換算で34兆円と試算した「需要不足」を穴埋めできる財政支出とする方向で調整する。低金利で貸し出す財政投融資や2021年度当初予算案の予備費も活用し、長期化する新型コロナウイルスの感染拡大に対応するために規模優先の財政運営を続ける。経済対策は(1)コロナの感染拡大防止(2)ポストコロナに向けた経済構造の転換・好循環の実現(3)防災・減災のための国土強靱(きょうじん)化――が柱になる。20年度第3次補正予算案と21年度当初予算案を一体で編成し「15カ月予算」と位置づける。第3次補正予算案は一般会計から歳出を追加するほか、特別会計から雇用調整助成金の特例措置を延長する財源を捻出する。こうした「真水」と呼ばれる国費とは別に、財政投融資も積み増す。21年度一般会計予算案での予備費も例年の5千億円から大幅に増やし、機動的にコロナ対策に回せるようにする。財政支出の規模として意識するのが34兆円。内閣府は日本経済全体の需要と潜在的な供給力の差を示す「需給ギャップ」が7~9月期にマイナス6.2%で、金額にすると年換算で34兆円だったと発表している。緊急事態宣言が出された4~6月期の57兆円よりは縮む一方、コロナによる経済活動の停滞で需要不足はなお大きい。自民党の下村博文政調会長は11月30日、菅義偉首相に「34兆円の需給ギャップを埋めるような近い額で大型補正を組んでほしい」と要望した。野村総合研究所の木内登英氏は「需給ギャップで経済対策の規模を決めるのはかなり無謀だ」と指摘する。34兆円は7~9月期の年換算の金額であり、21年に執行する追加経済対策に当てはめるのは不適切だとみる。経済協力開発機構(OECD)は12月1日、日本の経済成長率は20年にマイナス5.3%、21年はプラス2.3%となる見通しを公表した。経済対策の予算を支出する時期には、需給ギャップは足元よりも小さくなっている可能性が高い。ポストコロナに向けた経済構造の転換は長い時間をかけて取り組むため、予算が即効性ある需要穴埋めに結びつかない面もある。温暖化ガス実質ゼロに向けた技術革新の支援や大学の研究基盤整備、自治体システムの標準化は基金をつくり、複数年で支出する。どうしても規模ありきの経済対策は中身の精査が甘くなる面がある。財政支出は20年度第1次補正予算が48兆円、第2次補正予算では72兆円に上った。「青少年交流の家」の空調設備などコロナ対策として疑問符がついた費用も計上された。

*3-2-2:https://www3.nhk.or.jp/news/html/20201215/k10012765931000.html (MHK 2020年12月15日) 第3次補正予算案 閣議決定 追加の歳出19兆円余
 政府は、新型コロナウイルスの感染防止やポストコロナに向けた経済構造の転換などを後押しする経済対策を実行するため、追加の歳出を19兆1761億円とする今年度の第3次補正予算案を決定しました。政府は15日の臨時閣議で先週まとめた経済対策を実行するため、追加の歳出として一般会計で19兆1761億円を盛り込んだ今年度の第3次補正予算案を決定しました。
●主な施策
 新型コロナウイルスの感染拡大防止のための予算としては、
▽病床や宿泊療養施設の確保など医療を提供する体制を強化するために「緊急包括支援交付金」を増額する費用として1兆3011億円
▽各都道府県が飲食店に営業時間の短縮や休業を要請する際の協力金などの財源として「地方創生臨時交付金」を拡充する費用として1兆5000億円を盛り込んでいます。
 ポストコロナに向けた経済構造の転換や好循環を実現するための予算としては、
▽中堅・中小企業が事業転換を行うための設備投資などを最大で1億円補助するための費用として1兆1485億円
▽遅れが指摘される行政サービスのデジタル化を進めるため、地方自治体のシステムを統一する費用などに1788億円
▽「脱炭素社会」の実現に向けて基金を創設し、野心的なイノベーションに挑戦する企業を10年間継続して支援する費用として2兆円を計上しています。
●防災・減災や国土強じん化を推進
 防災・減災や国土強じん化を推進する予算として、
▽激甚化する風水害や巨大地震などへの対策、インフラの老朽化対策などの費用として2兆2604億円が盛り込まれました。
●国債の新規発行額は初の100兆円超え
 一方で、新型コロナウイルスの影響による企業業績の悪化や消費の低迷で今年度の国の税収は、当初の見込みから8兆円余り減少して、55兆1250億円となりました。今年度は当初予算が一般会計の総額で102兆円余りでしたが、補正予算を3度にわたって組んだ結果、一般会計の総額は175兆円余りに膨らみました。今回の補正予算に必要な財源を確保するため、政府は追加で赤字国債などを発行する方針で、今年度の国債の新規発行額は、112兆5539億円と、初めて100兆円を超えることになります。今年度の予算全体でみますと、歳入の64%余りを国債に頼る過去最悪の状況になります。政府は、15日、第3次補正予算案を決定したのに続いて、来週には来年度の予算案を決定し、15か月予算の形で切れ目のない対策を実行することにしています。
●新規国債発行額の推移は
 新規の国債発行額は、今から30年前、1990年度は7兆円余りでした。その後、増加が続き、2000年代は30兆円前後で推移していました。この時期には、すでに歳入の3割から4割を国債に頼る状況となり、財政の健全化が課題とされていました。2009年度にはリーマンショックに伴う景気対策などで歳出が一気に膨らみ、国債発行は過去最大の51兆9550億円となりました。その後、景気回復に伴う税収増加で国債の増加ペースはいくぶん抑えられましたがそれでも30兆円台から40兆円台で高止まりする状況が続いていました。そうした中、今年度は新型コロナウイルスへの対策で、3度にわたる補正予算が編成される一方、企業業績の悪化で税収は当初の見込みを8兆円余り下回りました。巨額の歳出を賄うため、大量の国債発行を余儀なくされ、今年度の発行額は112兆5539億円に上ることになりました。過去最大だった2009年度の51兆9550億円を2倍以上も上回る規模で、初めて100兆円を超えることになります。歳入に占める国債の割合は実に64%を超え、過去最悪の状況です。
●次の焦点 来年度予算の課題は
 今年度の第3次補正予算案の編成が終わり、次の焦点は編成作業が大詰めを迎えている来年度・令和3年度予算案に移ります。「感染拡大の防止」「ポストコロナに向けた経済構造の転換」それに「財政健全化」という3つの課題に対し、バランスをはかりながら、予算を組んでいく例年以上に難しい編成作業となります。
●感染拡大の防止
 このところ、新規の感染者や重症患者の数が夏の“第2波”のピークを超え、“第3波”に入ったという指摘もあります。国民の命はもとより、経済を下支えし、雇用や暮らしを守るうえでも、感染拡大の防止は最重要の課題です。医療体制が機能不全に陥ることを食い止める実効性のある対策が求められています。
●ポストコロナに向けた経済構造の転換
 日本経済を安定的な成長軌道に戻すには、新型コロナウイルスで様変わりした人々の意識に適応した形に社会や経済を転換していく必要があります。政府は来年度の予算編成の基本方針で、デジタル改革や、脱炭素に代表されるグリーン社会の実現、それに中小企業などの事業転換を後押しすることで、生産性の向上と継続的な賃金の底上げによる好循環の実現などを打ち出しています。
“新たな日常”への対応で海外に遅れを取らず、国際競争力を高めていけるかが問われます。
●財政の健全化
 感染拡大を防ぎながら、将来の成長への種をまき、財政状況にも目配りしなければならないという難題を抱えての予算編成となります。
●麻生副総理・財務相「民需主導の経済回復を確かに」
 麻生副総理兼財務大臣は、今年度の第3次補正予算案を閣議決定したあとの記者会見で「コロナの危機を乗り越えて未来をつないでいくことが責任だと思っている。経済対策を迅速に実行してコロナの災いを乗り越えて、未来の成長力を強化して民需主導の経済回復を確かなものにしないといけない」と述べました。一方、今年度の予算全体で、歳入の64%余りを国債に頼る過去最悪の財政状況になったことについて、麻生副総理は「足元の財政が悪化しているのは事実だ。信認が損なわれないよう経済再生と財政健全化の両立を進める必要がある。また、難しい時だからこそコロナだけではなく日本が抱える構造的な課題に着実に取り組まないといけない。最も差し迫った問題が少子高齢化で引き続き、社会保障を持続可能なものにしていかなければならない」と述べ、歳出と歳入の両面で改革を進めていく考えを強調しました。

*3-2-3:https://www.nikkei.com/article/DGXZQODF188IF0Y0A211C2000000/ (日経新聞 2020/12/21) 2021年度予算案106兆円、脱炭素で成長 実効性カギ 
 政府は21日の閣議で一般会計総額106兆6097億円の2021年度予算案を決定した。長引く新型コロナウイルス禍で国民の不安が消えないなか、積極的な財政出動で支える姿勢を示した。コロナ禍を抜け出すには成長を促す戦略が必要だ。支出ありきではなく、予算の無駄づかいを防ぎ、実効性を高めることが重要になる。菅義偉首相は「感染拡大の防止に万全の対応をとりつつ、次の成長の原動力となるグリーン社会実現やデジタル化に対応する」と語る。21年度予算案の一般会計総額は過去最大で、20年度第3次補正予算案と合わせた「15カ月予算」の規模は126兆円に達する。特徴はコロナ禍を機に構造転換を促す成長戦略を打ち出した点だ。脱炭素社会に向けた2兆円基金は最大10年間にわたり水素や蓄電池などの技術開発を支援する。21年9月にはデジタル庁を発足させ、自治体のシステム標準化やマイナンバーカードの普及を推進する。19年12月に決定した19年度補正の経済対策分4.3兆円と20年度当初予算102.7兆円の合計は107兆円だった。15カ月予算として比べると、今回は前年よりも19兆円ほど大きい。政府は財政で支える姿勢を鮮明に打ち出し、コロナ禍が拡大すればさらに補正で上積みする可能性もある。欧米各国も一斉に財政出動に動く。国際通貨基金(IMF)によると、財政支出や金融支援を含む日本のコロナ対策は20年度第2次補正予算までの段階で国内総生産(GDP)比35%に達した。ドイツやイタリアも30%台後半の高水準だ。日本はさらにGDPの1割を超す事業費73.6兆円の追加対策を加え、単純計算でGDP比は5割近くに達した。米国では米議会が9000億ドル規模の追加対策で合意し、対策のGDP比は2割を超える見通しだ。コロナ感染の再拡大が収束せず、欧米では都市封鎖も繰り返される。政府の支えが必要との指摘は多い。課題はどう実効性を高めていくかだ。コロナに対応する現場ではまだまだ課題が多い。コロナ患者を治療する病院では重症患者などを受け入れる病床が不足し、医師や看護師の負担も高まる一方だ。コロナ対策予算では執行が遅れているものもある。病床や宿泊療養施設の確保などに使う都道府県向けの交付金は第1次と第2次の補正などで2.7兆円を計上した。しかし実際に医療現場に届いたのは8000億円にとどまる。申請手続きが複雑な点などが指摘されており、目詰まりを防ぐ改善が欠かせない。予算の効率的な執行とともに必要なのは、無駄遣いの監視だ。規模ありきで事業が積み上がると、必ずしも必要ではない事業にお金が回る事態が増えかねない。例えばデジタルや脱炭素を推進する基金は5~10年といった中期で事業に取り組める一方、いったん予算が成立すれば各省や公益法人が国会のチェックなしで支出を続けることが可能だ。最初に使途を決めない予備費は20年度補正予算で11.5兆円を計上した。7兆円近くは使わなかったが、21年度予算案にも5兆円を盛り込んだ。非効率とムダを排除しながら実効性を高め、日本経済を浮上させる効果を得られるかが問われる。

*3-2-4:https://www.tokyo-np.co.jp/article/75795 (東京新聞 2020年12月21日) アビガン承認見送り、厚労省部会 コロナ治療、有効性の判断は困難
 厚生労働省の医薬品に関する専門部会は21日、新型コロナ感染症の治療薬候補「アビガン」の承認を見送り、新たなデータの提出を待ってから再審議することを決めた。開発した富士フイルム富山化学などからこれまでに得られたデータでは、有効性を明確に判断するのが困難なことが理由。富士フイルム富山化学は10月、治験結果を基に承認申請。治験は重篤を除く患者計156人が対象で、アビガンを投与した患者は偽薬投与の患者よりも症状が軽快し、陰性になるのが約2・8日短くなったとした。だが関係者によると「偽薬は効かない」との先入観から、医師が適切に判断できていない事例があったという。

*3-2-5:https://digital.asahi.com/articles/DA3S14742156.html (朝日新聞 2020年12月24日) 時短応じぬ店、罰則検討 政府、特措法で 私権制限など課題
 政府は23日、新型コロナウイルス感染症対策分科会に特別措置法の改正に向けた論点を示し、都道府県知事が要請・指示した休業や営業時間短縮に応じない店舗などに罰則の導入を検討していることを明らかにした。実効性を高める案の一つだが、私権制限のあり方などの課題は多い。政府が23日に示した論点は、(1)特措法が対象とする感染症の中に新型コロナをどう位置づけるか(2)緊急事態宣言後に開設するとしている「臨時の医療施設」を宣言前にもつくれるようにするか(3)罰則や支援措置を設けて知事の時短要請などの実効性を高めるかの三つ。政府は分科会の意見を踏まえ、来年の通常国会に提出をめざす改正案の内容を固める。新型コロナが収束し、一連の対応などを検証してからとしてきた特措法の改正に政府が前向きに転じた背景の一つには、11月以降の感染拡大への対策に「打てる手が見つからない」(政府高官)など手詰まり感が出ていることがある。政府は一時、東京都に午後10時までの営業時間の短縮を1時間繰り上げて強化する案なども水面下で打診。だが、小池百合子知事が「協力してくれる事業者が少なくなる現実も考えなければいけない」と述べるなど両者には距離がある。全国知事会が以前から要請の実効性を高めるよう求めていたこともあり、特措法の改正が浮上した。ただ、焦点の罰則については政府・与党や専門家にも様々な意見がある。自民党の下村博文政調会長は「法的な根拠をもうけることは理にかなっている」と述べる一方で、内閣法制局の関係者は「罰則を設けるには根拠が必要だ」と指摘する。メンバーの日本医師会常任理事の釜萢敏氏は分科会後「冷静に議論するのはまだ難しいという意見もあった」と話した。新設するにしても、どの程度の金額水準とすれば効果があるのかなどの検討が必要だ。また西村氏は、東京など感染拡大が続く地域を対象に、1月11日までイベントの参加者数の上限を5千人までに戻す規制強化を発表した。販売済みチケットのキャンセルは求めず、上限を超える新規販売の自粛を呼びかける。分科会は東京都内を念頭に、午後10時までの営業時間の短縮要請を早めて強化することを改めて求めた。尾身氏は「東京、首都圏が他地域と比べて人流が減っていない」と指摘した上で、「午後10時よりも早くという意見が多く出た」と話した。

*3-2-6:https://www.nikkei.com/article/DGXZQOFS079N00X01C20A2000000/ (日経新聞 2020/12/9) 75歳以上の医療費窓口負担 年収200万円以上は2割に 
 菅義偉首相(自民党総裁)と公明党の山口那津男代表は9日夜、都内で会談した。75歳以上の後期高齢者の医療費窓口負担を1割から2割に引き上げる対象を年収200万円以上にすると合意した。2022年10月から実施する。22年に「団塊の世代」が75歳以上になり始めるのを前に、現役世代の負担を軽減する狙いがある。後期高齢者の医療費窓口負担は現在、原則として1割で、現役並みの所得がある年収383万円以上の人は3割を負担する。新たに2割負担を求める対象の所得基準を巡り、政府・与党が協議を続けてきた。与党は医療費の負担が急増しないよう制度導入時に激変緩和措置も検討する。政府は11日にも全世代型社会保障検討会議を開き、引き上げ方針を盛り込んだ最終報告をまとめる。厚生労働省は11月、年金収入のみの単身世帯で年収240万円以上に絞る案から、より幅広い155万円以上まで5つの案を示した。対象人数は200万人から605万人としていた。政府・与党が合意した年収200万円以上は5つの案のうち、中間の3つ目にあたり、平均的な年金額を目安とする基準だ。2割に負担が増える人の対象は370万人となる。厚労省の試算ではこれにより、現役世代の負担が880億円減る。首相は4日の記者会見で「将来の若い世代の負担を少しでも減らしていくのは大事だ」と述べた。5案のうち年収170万円以上を軸に調整するよう指示していた。公明党は「負担が増える高齢者を減らすべきだ」と主張し、年収240万円以上とするよう求めていた。自公両党の幹部が協議してきたが折り合わず、党首会談で決着した。2割への引き上げ時期は22年10月からとする。政府は19年末の中間報告で「遅くとも22年度初めまでに改革を実施」と明記していたが、同年夏の参院選への影響を考慮した。関連法案を21年1月召集の通常国会に提出する。後期高齢者の医療費改革を巡っては安倍政権が19年12月、一定以上の所得がある人はいまの原則1割から2割に引き上げる方針を決めた。政府の全世代型社会保障検討会議は当初、今年6月に最終報告をまとめる予定だった。新型コロナウイルスの感染拡大に伴う影響で、議論を先延ばしした経緯がある。

*3-2-7:https://www.tokyo-np.co.jp/article/65553?rct=politics (東京新聞 2020年10月31日) 最低所得保障、将来に備え議論を 竹中平蔵氏が見解
 菅義偉政権が新たに設けた「成長戦略会議」のメンバーで、慶応大名誉教授の竹中平蔵氏(69)が31日までに共同通信のインタビューに応じた。最低限の生活を保障するため全国民にお金を配る「ベーシックインカム(BI)」(最低所得保障)について、「将来の導入に備えて議論を進めるべきだ」との考えを示した。竹中氏は9月下旬、BS番組に出演し、BIについて全国民を対象に1人当たり月7万円支給するよう提言。財源は生活保護や年金を縮小して充てるとした。菅政権のブレーンの一人として注目され始めた時期と重なり、波紋が広がっていた。

*3-3-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20201129&ng=DGKKZO66772390Y0A121C2EA3000 (日経新聞 2020.11.29) 首相「陸海空自、縦割り排して」 航空観閲式で訓示
 菅義偉首相は28日、航空自衛隊入間基地(埼玉県狭山市)で開いた航空観閲式で訓示した。「組織の縦割りを排し、陸海空自衛隊の垣根を越えて取り組むのが重要だ」と指示した。首相は「宇宙やサイバー、電磁波などの新たな領域の対応が求められている」と述べ、個々の組織のみでの対処がより難しくなったと指摘した。「知見と経験を最大限に活用し、特別チームのように新たな任務に果敢に挑戦し、自衛隊をさらに進化させるのを強く望む」とも話した。1964年の東京五輪の開会式で上空に五輪を描いた空自の任務に触れた。「固定観念や前例にとらわれることなく、試行錯誤を重ねた結果、新たな道を切り開くことができた」と訴えた。「来年の夏、人類がウイルスに打ち勝った証しとして東京五輪・パラリンピックを開催する決意だ」と強調した。

*3-3-2:https://www.agrinews.co.jp/p52725.html (日本農業新聞 2020年12月21日) [現場ルポ 熱源を歩く] 遠いスマート化 担い手限界寸前 進まぬ通信整備 北海道留萌市
 高齢化や担い手不足で離農が急速に進む北海道の過疎地。都府県と違い一つの農地が10ヘクタール規模の場所も存在するが、人手が足りない。農家の自助努力では農地を維持することが難しく、現場からは作業の自動化を求める声が根強い。ただ通信環境が未整備で、スマート農業の導入が進まない現実がある。中心市街地から車で30分の山奥にある道北部の留萌市藤山町。古くから山間の沢に沿って水田が列を成す地域だ。谷津の奥地は12月、腰の高さまで雪が積もる。一部携帯電話はつながらない。「請け負える農地はもってあと5ヘクタール。それ以上は限界だ」と、同市の水稲農家、中尾淳さん(43)は胸中を吐露する。同市の水稲農家は今年1月時点で35戸。10年前から14戸減った。高齢化も進行。担い手が減る中、耕作放棄地を出すまいと30~50代の担い手数人が離農地を集積している。それに伴い1戸の平均耕地面積も12・5ヘクタールと10年前から2・2ヘクタール増えた。この差は都府県の農家1戸の平均的な経営面積と同じ大きさだ。中尾さんも年々面積が増え、山奥の水田16ヘクタールなどを管理する。豪雪地帯で雪解けが遅く作業期間が限られるため、春先の田植え作業に多大な労力がいる。高齢の両親の手伝いと併せ繁忙期はアルバイトを雇い対応する。既に手が回らず、草刈りの回数は半減させた。道内の1戸当たりの平均経営耕地面積は年々増加し、30・6ヘクタールと都府県の14倍だ。十勝やオホーツク地方など大規模農業地帯では自動操舵(そうだ)が当たり前になってきたが、過疎地への導入は進まない。通信基盤が整っていないためだ。中尾さんは「担い手が減る中、まずは農機運転の自動化ができなければ地域農業は守れない。実現できれば他の作業を手伝える。でも当分無理だろうね」と苦笑いした。JA南るもい幌糠支所の鳥羽桂行支所長は「省力化したくてもできず、諦めている農家が多い。あと1ヘクタール増やすだけでも限界という担い手もいる」と説明。ただ、放棄地を出さないために現場が望む作業の自動化には、インターネット環境の整備が必要となる。北海道大学の野口伸教授は、道の過疎地の通信基盤整備の必要性を強調した上で「受益者負担も生じ、地域によっては費用対効果の話も出る。非常に難しい問題だ」と解決の複雑さを語る。総務省によると、道内全農地における超高速ブロードバンド(光ファイバー)の整備率は51・6%。農地面積が広大かつ点在する北海道では、残りの整備負担の試算額は全体で最大1600億円必要で、整備されていない自治体は山間地が大半を占めている。この莫大(ばくだい)な予算をどう捻出するのか。同省は今年度の補正予算で「高度無線環境整備推進事業」に過去最大の計531億9000万円を計上。地方創生臨時交付金と併せて自治体の整備負担額を減らし、農家世帯や住宅地などへの完備を目指す。ただ、同省が目指すのは世帯への完備で、農地ではない。留萌市は来年度から同省の事業を活用して基盤の整備を進める。一方で市の担当者は「山奥の農地への整備をどうしていくかは世帯整備後の話となる」(農林水産課)と説明する。中尾さんは使命感を語る。「親父から受け継いだこの田んぼに食わせてもらった。子どもたちの古里をなくさないためにも守り続けたい」

*3-3-3:https://www.agrinews.co.jp/p52614.html (日本農業新聞 2020年12月8日) 組織改正と行政力 食料産業発展に期待 元農水省官房長 荒川隆氏
 師走の声を聞き、来年度予算編成も大詰めだ。予算の陰に隠れ目立たないが、役所にとって負けず劣らず重要なのが、組織定員要求だ。組織の形を定め、その格付けごとの定員(級別定数)を決める組織定員要求は、役人にとって自らの処遇や組織の格にも関わる大事だ。橋本内閣が道筋をつけた2001年の省庁再編により、1府22省庁の中央官庁が再編され、現在につながる1府12省庁(当時)体制が導入された。役所の数を減らすだけでなく、各省庁の内部部局も一律に1局削減するとともに、全省庁を通じて局の数に上限が設定された。国土交通省や総務省など統合省にあっては、内局の数も多く問題はなかったろうが、単独省として存続した農水省では、どの局が削減されるか大議論になった。定員の割に局の数が少ない農水省で、5局(当時)を4局(当時)に再編することは難題で、結局、「畜産局」が廃止され耕種部門(農産園芸局)と統合し「生産局」が設置された。今、その「畜産局」が復活するかどうかのヤマ場を迎えている。「生産金額では米を凌駕(りょうが)している」「今後の輸出拡大の目玉だ」など理屈はいろいろあろうが、それはそれで、「昔の名前で出ています」の感がなくもない。5兆円の新たな目標に向かい、今後本格化するだろう輸出攻勢を担う「輸出・国際局」の新設と「合わせ一本」ということだろう。この組織改正の陰で見逃せないのが、飲食料品産業や外食産業などを所掌する部局の位置付けの変更だ。現在はその名の通り「食料産業局」が設置されているが、新組織案では、大臣官房に「新事業・食品産業部」なるものが設置されるらしい。わが国の食料・農林水産業の売り上げは100兆円で、そのうち農業が8兆円、林業・水産業は4兆円、残りは全て広義の食料産業部門だ。その食料産業部門を国の行政組織としてどう扱うかは、農水省の組織改正の歴史上、悩ましい問題だった。とかく1次産業偏重、農業偏重といわれてきたこの役所で、1972年に「企業流通部」が局に格上げされ、現在の「食料産業局」の前身である「食品流通局」が設置された。食料産業関係者の悲願が実現したのだ。あれから50年、今般の組織改正が、よもや食料産業の格下げではないと信じたいが、はたからはそんな懸念も聞こえてくる。多忙な官房長が新たなこの部を直接指揮監督するのは難しかろうから、何らかの総括整理職が設置されるのだろう。それにより、「輸出・国際局」や作物原局(農産局、畜産局、林野庁、水産庁)との連携が今以上に図られ、食料産業のますますの発展につながる組織改正となることを期待したい。凡人の懸念が杞憂(きゆう)で終わりますように。

*3-3-4:https://www.nikkei.com/article/DGXZQODF2492P0U0A221C2000000/?n_cid=BMSR3P001_202012251359 (日経新聞 2020/12/25) 再生エネ比率、50年50~60%に 脱炭素へ政府成長戦略
 政府は25日、温暖化ガス排出量を2050年に実質ゼロにする行動計画を公表した。新車は30年代半ばに全て電動化する。50年に電力需要が30~50%膨らむと想定し、再生可能エネルギーの比率は今の3倍の50~60%に高める目安を示した。脱炭素を成長のてこにする戦略で、50年に年190兆円の経済効果を見込む。実現には政策の総動員と技術革新が欠かせない。50年ゼロという高い目標を掲げ、温暖化対策を成長の制約ではなくチャンスとして位置づける。産業構造の大転換に向けて企業の背中を押す実効的な仕組み作りが重要になる。例えば脱炭素の税制支援で今後10年の間に1.7兆円の民間投資を促す。このほか予算や金融支援などの措置に加え、排出枠取引などの経済的手法も検討課題に挙げた。全体として産業・運輸・民生の各部門は電化を加速し、そのためにエネルギー源となる電力部門は脱炭素を進める構図になる。個別には洋上風力や水素、自動車・蓄電池など14の重点分野を定め、課題と対応策を工程表としてまとめた。国内では現在ほとんど普及していない洋上風力は40年までに最大4500万キロワットの導入を目指す。原子力発電所45基分に相当し、再生エネ先進国であるドイツをしのぐ規模となる。風車は部品数が多く裾野が広い。産業育成へ40年に国内調達量を60%にする目標も打ち出した。現状では国内に風車は製造拠点がない。燃焼時に二酸化炭素(CO2)を排出しない水素は、火力発電での利用を念頭に50年に2000万トン程度の消費量を目標とする。国内の発電設備容量の2割程度をまかなえる規模だ。需要拡大を通じてガス火力以下のコストを実現する。水素社会への移行期の燃料とするアンモニアは30年に天然ガス価格を下回る価格水準での供給をめざす。自動車は30年代半ばまでに新車販売の100%を電動車に切り替える。電動化するとコスト競争力を失う恐れのある軽自動車も例外にはせず、同様の対応を求める。電気自動車(EV)などの普及のカギを握る蓄電池については30年までに車載用の価格を1キロワット時あたり1万円以下に下げる。現状は1万円台半ばから2万円程度とされる。電動化が難しいバスやトラックといった商用車は来年夏ごろをめどに結論を出す。住宅・建築物は30年度までに新築平均で実質ゼロにする。半導体・情報通信産業は40年までにデータセンターで実質ゼロを実現する。船舶は50年までに水素やアンモニアといった代替燃料に転換する。

*3-3-5:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20201226&ng=DGKKZO67722550V21C20A2M11700 (日経新聞 2020.12.26) 住宅 30年に新築の排出ゼロへ
 温暖化ガス排出を減らすには、住宅や建築物のエネルギー消費削減も必要になる。国内の温暖化ガス排出量の15%は家庭から。政府は新戦略で新築住宅の排出量を2030年にゼロとする目標を掲げた。エネルギー収支が実質ゼロの「ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス(ZEH)」をどこまで普及できるかがカギを握る。ZEHは家庭で使う電力を太陽光発電などの再生可能エネルギーで賄い、温暖化ガスの排出量を実質ゼロにする住宅だ。発電した電気をためる蓄電池や断熱材などを生かし、最小限のエネルギーで暮らせる家をめざす。国内メーカーも導入に前向きだ。積水ハウスは19年度に手掛けた一戸建ての87%がZEH。20年度の8割目標を前倒しで達成した。大京や穴吹工務店もZEHマンションの建設を進めている。ただコストは高い。ZEHの初期費用は戸建ての場合、通常よりも200万~300万円ほどかさむという。日本は暖房費や除雪費などエネルギー消費量がかかる寒冷地での普及が進まない面もある。政府はこのほか、高性能建材のコスト低減や木造建築物の普及拡大、窓ガラスなどの性能評価制度の拡充などを新戦略に盛り込んだ。エアコンの制御や充電を効率化するエネルギーの最適利用の仕組みを検討する必要があるとしている。建材・設備の開発を巡っては、ビルの壁面に設置できる次世代型太陽電池の実用化を急ぎ、導入を拡大する。

*3-3-6:https://digital.asahi.com/articles/ASNDV5T89NDCULFA03D.html?iref=comtop_BreakingNews_list (朝日新聞 2020年12月27日) 長官来県に「いよいよ来た」東電と経産省、再稼働へ着々
 肌を刺すような冷たい風に小雪が舞った14日、東京電力の柏崎刈羽原発を東京商工会議所の三村明夫会頭(日本製鉄名誉会長)ら経済界の視察団が訪れていた。敷地内では、7号機の再稼働に向け、原子力規制委員会から求められた安全対策工事が急ピッチで進む。案内役を務めた東電ホールディングスの小早川智明社長は、2011年の東日本大震災で太平洋側の発電所が軒並み止まったことを引き合いに、「日本海側の柏崎刈羽は非常に重要な電源だ」と強調。原発推進派で知られる三村氏も「原子力を相当程度活用せざるを得ない。大事なきっかけとして柏崎刈羽の稼働に強く期待する」と応じた。視察を持ちかけたのは、早期の再稼働を望む地元の柏崎商工会議所だった。電気を使う首都圏の経済界と一緒に原発の必要性を訴えることで、再稼働に向けた弾みにする狙いがあった。福島第一原発の事故から約10年。事故を引き起こした東電は今年9月、規制委から再び原発を動かす「適格性」の「お墨付き」を得て、再稼働への環境づくりを推し進めている。年明けに対策工事が終われば、いよいよ焦点は再稼働への地元同意となる。その地ならしもすでに、半年ほど前から水面下で進んでいる。
●「ここで動かせなければ二度と動かせない」
 コロナ禍による政府の緊急事態宣言が明けて間もない6月ごろ、資源エネルギー庁の高橋泰三長官(当時)は自民党新潟県連を訪れていた。長官がわざわざ乗り込んできたことに、同席した県連幹部は「いよいよ来たか」と身構えた。「お金もかけているし、安全審査も進んでいる。動かさないままにすることはできない」。そう訴える高橋氏に対し、この県連幹部は「再稼働はすぐには難しいですよ」と伝えた。県内では再稼働への反発が強く、同意した場合の知事選への影響が懸念された。東電も経済産業省もそこを意識し、知事の任期が切れる22年6月の1年ほど前、来年6月までに再稼働への同意を取りつけるシナリオを描く。再稼働で収益を改善しなければ、膨らむ福島第一の事故処理費用を賄い切れないからだ。ある経産省幹部は「ここで動かせなければ二度と動かせないかもしれない」と意気込む。高橋氏の後任、保坂伸・エネ庁長官も7月の着任以来、何度も新潟入りする異例の対応を取っている。11月27日、非公開で開かれた自民党県連向けのエネルギー政策の勉強会。自ら講師を務めた保坂氏は、再稼働への理解を直接求めることはなかったが、政府の原発政策などを紹介しつつ、日本海側の電源の重要性を訴えた。議員からは原発周辺の避難道路の整備を求める声などが挙がったという。再稼働を求める地元の経済界の要請を受け、県議会が同調し、最後は知事が同意を決断する。多くの原発再稼働で見られたプロセスが繰り返されるのか。自民、公明両党の支持で当選した国土交通省出身の花角英世・新潟県知事は、県独自の検証委員会の報告を受けて判断するとし、再稼働への態度をまだ明らかにしていない。だが、原発事故から10年を経て、東電と経産省は再稼働への地ならしを着実に進めつつある。

<女性がリーダーに選ばれにくい理由と女性差別の関係>
*4-1:https://synodos.jp/economy/23872#google_vignette (SYNODOS 2020.10.27)  「女性にリーダーは向かない」というジェンダー・バイアスをなくそう
●ポストコロナにこそ女性リーダーが求められる 
 もう元には戻れない――。コロナ禍を受けて、働く側も、企業も、そして自治体や自治体も模索が続く。過去の延長線上に、新たな社会は構築できない。社会を再構築するにあたって求められる重要な視点のひとつが、ジェンダー目線である。政治の世界においては、女性活躍推進といいながらも、働く女性の「ケア労働」に対するフォローが欠けていたことが、今回のコロナ禍で明らかになった。働く女性は職場の仕事に加えて家事育児・介護といったケア労働を担い、ダブルワーク、トリプルワークになっている。日本はOECD諸国のなかで最も、有償労働は男性に偏り、無償労働は女性に偏っている。日本人女性の有償労働、無償労働を足し合わせた総労働時間は日本人男性よりも長く、OECD諸国のなかで最長である。付言するなら、日本人女性の睡眠時間は最も短い。女性が輝く社会というキャッチフレーズの裏には、女性が睡眠時間を削って無償労働を担う姿がある。企業においては、今回のコロナ禍を受けて働き方の見直しが進んでいる。これまで在宅勤務は子育て中の女性社員のためという位置づけの企業もあったが、今回は一気に全社員に対象が広がった。性別、階層問わず広がったテレワークの実験的導入が、今後フレキシブル・ワーク(柔軟な働き方)を広げる契機となるだろう。これは正社員として働く女性にとっては追い風となる。ただし課題は山積だ。時間でなく成果で評価する仕組みをどう作るか、マネジメントの在り方をどう変えるか。在宅での仕事とケアワークとの両立をどう認めるのか。一例を挙げたまでだが、政治の世界も企業も、そして地域社会も家庭も、ジェンダー視点で見つめなおしてみると、新たな社会を築く上での課題とヒントが見えてくる。むろんジェンダー意識の高い男性リーダーもいるが、より多くの女性リーダーを登用することにより、変化が加速していくだろう。
●日本はジェンダー・ギャップ指数121位。政財界に少ない女性リーダー 
 では、日本における女性リーダーの現状はどうか。そのお寒い状況を表すのが、2019年12月、世界経済フォーラムが発表したジェンダー・ギャップ指数が153カ国中121位という結果である。過去最低の順位に沈み込んだが、その大きな要因が政治と経済分野における女性リーダーの少なさだ。衆議院の女性比率は約10%と世界最低水準、全国市区町村議会では女性の議員ゼロが2割を占める。2020年9月に誕生した菅義偉政権の女性の閣僚も、わずか2人。カナダ、スペイン、フィンランドなど閣僚の半数を女性が占める国が出てきているなか、登用が遅れているのは明らかだ。危機感を抱いた超党派の議員連盟などの働きかけにより、2018年5月、男女の候補者の数が均等になるように各政党に努力を求める「政治分野における男女共同参画推進法」が制定された。施行後初めての国政選挙となった2019年4月の参院選では女性候補者は28%と前回の25%をわずかに上回った程度。自民党の女性候補者は15%にとどまった。結果として、当選した女性議員は前回と同数という結果となった。罰則規定のない努力義務では、男女均等の実現には効力がないことが実証されることとなった。経済界でも、女性管理職比率は11.9%にとどまる(厚生労働省、2019年度「雇用均等基本調査」)。政府は2020年に、あらゆる分野で指導的地位に占める女性の割合を30%にしようという目標を掲げ「202030」という掛け言葉をかけてきたが、残念ながら目標未達は必至だ。ちなみになぜ30%かというと、ある集団の中で少数派が30%を超えると意思決定に影響を及ぼすようになるという、米ハーバード大のロザべス・モス・カンター教授の黄金の3割理論によるものだ。女性の役員比率をみると5.2%(2019年7月末現在、東洋経済新報社「役員四季報」)。欧米の2~4割に比べると、その差は明らかである。ただし人数は10年で4倍に増えている。役員増のきっかけは、2013年に安倍晋三政権が成長戦略のひとつとして女性活躍推進を掲げ、上場企業に「最低ひとりは女性役員を置くように」と産業界に要請をしたことだ。さらに2018年改訂のコーポレート・ガバナンス・コード(企業統治指針)で女性取締役を登用することを促し、もし実行できない場合は投資家への説明を求めたことも、女性取締役増の後押しとなった。
●海外では女性リーダー不在への危機感が高い 
 近年ではESG投資の観点からも、女性取締役を求める機関投資家の声が高まっている。女性取締役のいない場合、株主総会で社長の選任などに反対票を投じる海外機関投資家も現れた。そこまで女性取締役を求めるのは、なぜか。一つには、企業統治の強化である。経営陣が均質な集団だとグループシンキング(集団浅慮)が起き、リスクが回避できないという。その典型例が、リーマン・ショックだ。リーマンブラザーズの経営陣が、男性、アングロサクソン、白人と極めて均質な集団であったために、危うい経営判断に歯止めがかけられなかったとされている。もう一つは、女性取締役を迎えることが業績向上につながるという期待だ。実際に女性取締役比率の高い企業ほど業績がいいという分析が様々発表されている。マッキンゼー・アンド・カンパニーの2018年のレポートでは、経営陣に占める女性の割合が多い企業上位25%と下位25%を比較したところ、企業の収益性を示すEBITマージン(金利税引前の利益であるEBITを売上高で割ったもの)が前者のほうが2割も高いことが示されている。ただし、女性役員をひとり登用すれば業績が向上するといった単純な話ではない。性別、年齢問わず優秀な人にチャンスを与え、意思決定層を多様化している企業は業績が伸びる、ということだろう。属性や経験が異なる知と知がぶつかり合うことで新しいものが生まれるのだ。欧米では、女性リーダー不在への危機感が強い。現状のままではあらゆる分野で男女平等を実現するのに99.5年かかると世界経済フォーラムは試算している。男女間格差を是正するため、変化を加速させる必要があるとして各国が導入するのが、ジェンダー・クオータ制(割当制)だ。政治分野でいえば、議席の一定割合を女性に割り当てることを法律で定める「議席割当制」、議員候補者の一定割合を女性または男女に割り当てる「法的候補者クオータ制」、政党による「自発的クオータ制」などがある。現在世界の約6割、100を超える国と地域で導入されている。議会に占める女性割合は世界平均で約24%(2019年1月、列国議会連盟調べ)、この25年間で女性議員数が倍増したのは、クオータ制導入によるものとされている。経済分野では取締役会に占める女性の割合を3割以上、4割以上とする「女性役員クオータ制」の導入が、欧州で進んでいる。欧州連合(EU)は2013年秋、欧州議会で欧州全体の上場企業に「2020年までに社外取締役の40%を女性にすべし」という指令案を圧倒的多数で可決した。その後理事会で通らなかったため、欧州全域でのクオータ制は実現しなかったものの、押し付けを嫌った各国が独自にクオータ制を導入。今や女性役員比率2~4割に達する国が多い。なぜ、クオータ制などという強硬策まで講じて、女性役員を増やそうとしたのか。それは欧州経済危機を受けて「女性の力を生かさないと、この経済危機を乗り切ることはできない」と考えたからだ。これを現在のコロナ危機に当てはめて考えるとどうか。日本はこれまで不況を迎える度に「女性活躍推進などと悠長なことを言っていられない」と後退してきた。果たして今回はどうだろう。「女性の力を生かさないと、このコロナ危機を乗り越えることはできない」と考える企業は再生へのステップを踏み始めるのではないか。 
●リーダーは男性向きというアンコンシャス・バイアスをなくそう 
 政財界でなぜここまで女性リーダーが少ないのか。その一因として「リーダーは男性向きである」という「アンコンシャス・バイアス」があると考えらえる。アンコンシャス・バイアスとは、日本語でいうと「無意識の偏見」。いわば無意識のうちの刷り込みである。これは100%悪いわけではない。これまでの仕事の経験から得た刷り込みで素早く判断して効率性を上げるといった利点もある。問題は差別などマイナスを生む刷り込みだ。先進国のダイバーシティ推進企業がいま問題意識をもつのが、性別、人種や国籍などに関するアンコンシャス・バイアスにより、採用、評価、昇進昇格などで差別をしてしまうことだ。アンコンシャス・バイアスのなかでも、ジェンダー(社会的性差)に関するバイアスを、「ジェンダー・バイアス」という。筆者は2018年に大手企業25社約2500人を対象に、リーダーシップの性差とジェンダー・バイアスに関する調査を行った(桜美林大学講師、川崎昌氏との共同研究)。「野心的である」「愛想がいい」といった特性語38に対して、「女性として望ましい」「男性として望ましい」「組織リーダーとして望ましい」の3分類で望ましさの程度を7件法で回答してもらった。その結果、男性として望ましい、リーダーとして望ましい特性は「責任感がある」「行動力がある」「説得力がある」など重なりが多かったが、女性として望ましい、リーダーとして望ましい特性で共通するのはわずかで「責任感が強い」「自立している」のみだった。回答者の性別、階層別でみても同じ傾向だった。ここから分かるのは「リーダーは男性向きで、女性には向かない」というバイアスがあることだ。こうしたバイアスがある限り、女性自身が無意識のうちに上を目指すことにブレーキをかけることになりかねない。組織内評価でも意図せずとも「女性らしさ」と「リーダーらしさ」の異なる2つの軸で印象をもとに評価してしまう可能性もある。力強いリーダーシップを発揮している女性を、無意識のうちに「女性らしくない」とマイナス評価してしまう可能性もある。登用にあたっては「管理職にふさわしい女性がいない」という言葉がよく聞かれるが、この言葉の裏にもまた「リーダーは女性には向かない」というジェンダー・バイアスが潜んでいるかもしれない。「リーダーは男性向きで、女性には向かない」というバイアスを取り除かない限り、女性リーダーの登用はおぼつかない。
*野村浩子(のむら・ひろこ):ジャーナリスト
 1962年生まれ。84年お茶の水女子大学文教育学部卒業。日経ホーム出版社(現日経BP)発行の「日経WOMAN」編集長、日本初の女性リーダー向け雑誌「日経EW」編集長、日本経済新聞社・編集委員、淑徳大学教授などを経て、2020年4月東京家政学院大学特別招聘教授。財務省・財政制度等審議会委員など政府、自治体の各種委員も務める。著書に「女性リーダーが生まれるとき」(光文社新書)、「未来が変わる働き方」(KADOKAWA)、「定年が見えてきた女性たちへ」(WAVE出版)など。

*4-2:https://digital.asahi.com/articles/DA3S14714790.html?iref=comtop_Opinion_04 (朝日新聞社説 2020年12月1日) ネット中傷対策 試行錯誤を重ねながら
 ネット上の書き込みで被害を受けた人の救済を図るため、法律を改正して新たな仕組みを導入する見通しになった。損害賠償などを求めるには、投稿した相手が誰なのかをまず突き止める必要がある。現在はサイトの運営者と接続業者を相手に、ネット上の住所や本人の氏名の開示を求めて裁判を2回起こさなければならない。これを1回で済ませられる簡易な手続きを設けるよう、総務省の有識者でつくる研究会が提言した。そこで示された裁判所の決定に不服がある時は正式な訴訟で争うことも可能にする。妥当な内容といえる。フジテレビの番組に出演していたプロレスラーの木村花さんが亡くなったこともあって、議論の行方が注目されていた。手続きの煩雑さから泣き寝入りせざるを得なかった人にとっては朗報だ。一方で、発信者情報の開示を求める申し立ては、不都合なことを書かれた企業などからも起こされていて、正当な批判や内部告発をためらわせる圧力になっている。新たな手続きが乱用されれば表現活動が広く萎縮しかねない。法施行後に運用状況を検証し、不具合が見つかればまた手直しをするという前提で、制度の設計に当たってほしい。表現の自由は民主社会の基盤であり、発信行為を禁ずることはできない。それが人権を傷つける内容であった時、どうやって被害回復を図り、再発の防止につなげるか。発展途上にある技術とどうつきあうか。試行錯誤を重ねながらより良い答えを探り続けねばならない。裁判手続きの整備や被害相談に応じる仕組みの強化に力を入れるのはもちろんだが、SNSなどを運営するプラットフォーム事業者の責任も重い。総務省はこの夏、海外勢を含む事業者から不適切な投稿への取り組み状況を聴取した。だが具体的で納得できる説明がされたとは言い難く、外国の本社任せのような回答もあった。社会的責任の大きさを自覚し、早急に態勢を整えるべきだ。米ツイッター社が事実と異なる投稿に警告表示をしたり、大統領選前にリツイート機能を見直したりして関心を集めた。事業者の介入をどこまで是とするか、国内でも議論を深めたい。利用する側も問われる。ネットは公共財と認識し、感情に流されず一呼吸おいてから発信することなどを通じて、ゆがみを正していく努力が必要だ。ネットを見ているだけで、不快な情報に心を乱されることもある。「見ない」という選択も当然あっていい。自分なりのネットとの適切な距離の取り方を改めて考えてみてはどうか。

*4-3:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20201226&ng=DGKKZO67743270V21C20A2EA3000 (日経新聞 2020.12.26) 旅券 旧姓併記しやすく 4月から、実績証明不要に
 外務省は25日、2021年4月1日の申請分から旅券(パスポート)の旧姓を併記する要件を緩和すると発表した。戸籍謄本、旧姓を記載した住民票の写し、マイナンバーカードのいずれかを提出すれば旧姓を明示できるようにする。現状は戸籍謄本の提出に加えて、外国での論文の発表や業務による渡航など旧姓使用の実績を証明する必要がある。パスポートでの表記方法も改める。カッコ内で示す旧姓について英語で「Former surname」との説明を加える。国際結婚をした場合などに使う旧姓以外の「別名」に関しては「Alternative surname」などと記す。これまではカッコ内に旧姓が示されているだけで説明書きはなかった。外務省によると旧姓を併記する国は少なく、入国時に入国管理当局から説明を求められるケースがあるという。茂木敏充外相は記者会見で「今回の変更で円滑な渡航が可能になることを期待する」と述べた。

*4-4:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20201229&ng=DGKKZO67802970Z21C20A2EA1000 (日経新聞社説 2020.12.29) 夫婦別姓の議論を止めるな
実現に向けて動き出したかと思われていたのが、一転して大きく後退した。夫婦が希望すれば結婚前の姓を名乗れる、選択的夫婦別姓制度の導入のことだ。政府が閣議決定した新しい男女共同参画基本計画の書きぶりは以前よりかなり後ろ向きだ。計画は2000年に始まり、今回が第5次だ。第1次から4次までは、選択的夫婦別氏(姓)制度という言葉を明記していた。この文言がなくなり「夫婦の氏に関する具体的な制度」というあいまいな表現になった。政府として「必要な対応を進める」という第5次の当初案も、「さらなる検討を進める」にトーンダウンした。変更の理由は、自民党内からの強い反論だ。党内には賛否それぞれの意見があり、調整は難航した。最終的には保守系に配慮したかたちで「夫婦同氏制度の歴史」などの言葉が追加された。選択的夫婦別姓の導入には、大きな逆風になりかねない。働き続ける女性が増えるなか、改姓で仕事に支障が生じるとの声は多い。一人っ子が増え、結婚しても実家の姓を残したい、という希望も強い。計画策定に先立つパブリックコメントでは、導入を求める多くの声が寄せられた。今回の計画は、こうした声に真摯にこたえたとはいえない。1996年には法制審議会が導入するよう答申した。17年の内閣府の世論調査でも、導入に賛成する人は当事者世代である18~29歳、30代でいずれも5割を超える。選択的夫婦別姓はあくまでも希望者に新たな選択肢を示すというものだ。今回の計画は、旧姓の通称使用拡大を強調するが、2つの姓の使い分けには限界がある。夫婦同姓を法律で義務付けているのは、主要国でも異例だ。家族の一体感のみなもとは「同姓であること」だけでもないだろう。大事なのは、議論を止めず、しっかり続けることだ。菅義偉首相はかつて導入に賛意を示していた。将来に向け、何が必要なのか。議論をリードしてほしい。

<外国人差別もよくないこと>
PS(2020年12月30日追加):フランスを代表するファッションデザイナーのピエール・カルダンが、*5-1のように、パリ郊外の病院で亡くなられたそうで残念だ。このHPの表紙で着ている白のスーツを始め、私のおしゃれ系スーツは殆どピエール・カルダンとクリスチャン・ディオールで、鮮やかで意外な色と洗練されたデザインの組み合わせがよく、さすがにイタリアとフランスだと思う。これに、シャネルのバッグ・フェラガモの靴・ボルボのEVを合わせるとおしゃれは完成するだろうが、日本も先進性やデザインに力を入れたらどうかと思う。
 なお、*5-2のように、棚田保全のために担い手の確保が必要だそうだ。棚田はじめ祖先が苦労して開墾した農地は国民の財産であるため、放牧地にするのはまだよいとしても、林地や緩衝帯にするのはもったいない。むしろ、レモン・オリーブ・アーモンドなどこれまで日本ではあまり作っていなかったものを作ったり、住居を用意して日本人だけでなく難民の中から希望者を募って集団移住させたりなど、人材確保を工夫すればよいと思う。農業も多様性があった方が面白いアイデアが出るのであり、私は東南アジア由来のパクチーを最近よく買っている。


     棚田の春           浜野浦の棚田        棚田の秋

*5-1:https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR294970Z21C20A2000000/?n_cid=BMSR3P001_202012292230 (日経新聞 2020/12/29) ピエール・カルダンさん死去 仏の世界的デザイナー
 フランスを代表するファッションデザイナー、ピエール・カルダン氏が29日、パリ郊外の病院で死去した。98歳だった。死因は明らかにされていない。仏メディアが一斉に報じた。同氏の名前を冠したブランドは世界的に知られる。1922年、イタリア北部で7人兄弟の末っ子として生まれる。当時のイタリアのファシズムから逃れるため家族でフランスに移住した。14歳で仕立ての仕事を学ぶなどして修業を積んだ後、著名ファッションデザイナー、故クリスチャン・ディオールのもとで働く。50年にパリで自身の高級注文服の店を開き、評価を高めた。「多くの人に作品を知ってもらうのが大切だ」としてパリ百貨店プランタンに自分の服を置くプレタポルテ(高級既製服)の道を開いた。当時としては異例の対応で、同業者から批判を受けたこともある。だが一部の人だけのものだった高級ファッションを「民主化」したとの評価もある。斬新な感性を持つデザイナーで、60年代には初めてビニールを服の素材として使って周囲を驚かせた。96年4月には日本経済新聞に「私の履歴書」を連載した。91年勲二等瑞宝章。

*5-2:https://www.agrinews.co.jp/p52776.html (日本農業新聞論説 2020年12月27日) 棚田の保全 担い手確保の政策必要
 棚田地域振興法の指定地域が順調に増え、指定開始から1年で600近くになった。棚田が持つ多面的機能への評価が高まる一方、中山間地域では高齢化や人口減少に歯止めがかからない。同法が掲げる「国民的財産」を守るには、移住者を含め、棚田の多様な担い手を確保・育成する総合的な政策が必要だ。同法は2019年6月に議員立法で成立した。旧市町村単位で都道府県が申請した地域を、国が指定する。指定を受けた地域では農家や自治体、住民らが地域協議会を組織。計画に基づいて、農業生産にとどまらない多様な活動を展開し、それを国が支援する。具体的には、中山間地域等直接支払制度で10アール当たりの基準額に1万円を上乗せする。また、地域振興に関連する事業の優先採択や面積要件の緩和、補助率かさ上げなどのメリットもある。指定地域は、19年12月の第1弾の指定から約1年で合計33道府県583地域に拡大した。最も指定が多いのは大分県で98地域。次いで新潟県・92地域、岡山県・45地域と続く。農水省は、今後も指定地域の増加が見込まれるとして、一層の浸透を図りたい考えだ。現場からは支援の拡充を求める声もある。また棚田支援に関する自民党のプロジェクトチームは、制度の課題を洗い出し、必要に応じて法改正にも乗り出す考えだ。棚田を抱える中山間地域で高齢化、人口減少が進む中、支援策と並行して農水省は、生産基盤として長期的にも棚田を残すかどうかの是非も議論している。食料・農業・農村基本計画の具体化に向けて設けた「長期的な土地利用に関する検討会」で同省は、政策支援しても維持できない場合、放牧地や林地への転換も選択肢に挙げている。また野生鳥獣の被害が増えている現状から、作物を栽培せずに草刈りなどを行い緩衝帯として活用することも提示。農地にいつでも戻せる仕組みも議論の俎上(そじょう)に載せている。農地を維持するために支援を手厚くするか、農地からの転換に踏み切るか。中山間地域対策を巡ってはこうした議論が繰り返されてきた。しかし、最優先すべきは「人材確保」である。地縁の有無や世代を問わず、都市など他の地域から人を呼び込み、移住者や関係人口などとして、棚田の保全に多様な形で携わる人材を確保する政策が必要である。また、定住できるように、所得・就業機会の確保と生活条件の整備が重要である。棚田の価値について国民理解の醸成も一層進めなければならない。自然災害が頻発する昨今、洪水防止や水源涵養(かんよう)などの多面的機能を発揮し日本の原風景も守っていることや、それには農地として人の手で維持しなければならないとの認識を共有する必要がある。食料安全保障の確立に向けて基本計画は国民運動を提起した。生産基盤としても貴重な棚田を守る機運を政府は高めるべきだ。

<病人差別と私権制限好きの存在>
PS(2021年1月2日追加):年末はNHK番組でも、*6-1のように、①新型コロナの感染者数は100年前のスペイン風邪(当時の新型インフルエンザ)と同じとし ②感染症は抑え込まねば流行を繰り返すとして ③欧米の感染者数を出して日本で危機感をあおり ④都市封鎖を奨める報道が目立ったが、100年前とは比較ににならないほど生物学・医学などの科学が進歩し、ウイルスの姿や行動もわかり、衛生設備の普及や衛生教育が進み、治療薬やワクチンもできているため、よほど無知で非科学的な行動をしない限り、歴史を繰り返すことはないのである。
 にもかかわらず、日本の場合は、*6-2のように、空港での検疫や入国後の処遇が何カ月経っても的を得ず、ウイルスの変異は日常的に起こるのにそれを調べもせず、英国が新型コロナに変異種があると発表して初めて国内で確認するという情けなさで、新型コロナ対策分科会の尾身会長が、年末に「医療体制等が逼迫して機能不全に近い状態に近づきつつある。変異種が国内で拡大すれば極めて危機的な状況が起こる」などと述べたが、厚労省がこの程度では情けない。
 さらに、平井デジタル改革相が、*6-3のように、「⑤新型コロナウイルス対策として、海外から入国した人の移動を把握するシステムを開発中だ」「⑥海外と同様、日本でのトレーサビリティーをデジタルでやろうと考えており、使わないと入国させない」「⑦GPSをオンにしてとお願いしないといけない。こういう事態だから許されると思う」と述べておられる。
 しかし、⑤については、日本では、失政続きのせいで新型コロナが市中に蔓延しており、その中から変異種が現れることも当然あるため、海外から入国した人の移動だけを把握しても無意味だ。その上、⑦については、性犯罪者でもないのに新型コロナの可能性があるとして政府から移動を監視される言われはなく、⑥を行っているのは、それこそ中国や韓国などの人権後進国なのに、そこだけ真似しようというのでは民主主義国家とは言えない。
 さらに、*6-4のように、政府が新型コロナ対策の実効性を高めるためとして特別措置法の改正を進めており、焦点は休業や営業時間短縮の要請に応じない事業者に罰則を科すことだそうだが、これは、営業の自由に反する規制である上、このような後ろ向きの規制による個人の営業上の損失を国民の血税で補填する仕組みであるため、どれだけの効果をもたらすのか明確なエビデンスが必要だ。私は、そんなことに使う金の1/10でも治療薬やワクチンの開発、ゆとりある医療システムの整備などに使った方がずっと役に立つと思っている。そして、日本独特の“積極的疫学調査”は新型コロナを市中に蔓延させた失政であり、接触した人を洗い出す方法は警察の捜査ではよく使われるが、病気は検査・治療・隔離と事前予防しかなく、疫学調査はサンプルをランダムに抽出して行うものなのである。

*6-1:https://digital.asahi.com/articles/ASNDC44M4ND3ULZU009.html (朝日新聞 2020年12月11日) ウイルスがまいた第2次大戦の種 歴史生かせぬ宰相ら
●コラム「多事奏論」 駒野剛(編集委員)
 新型コロナウイルスのパンデミックが止まらない。米国では1日当たりの新規感染者数が20万人を超え、欧州もいったん解除した都市封鎖を再発動している。約100年前、今以上の大流行が世界を脅かした。スペイン風邪という新型インフルエンザにより、諸説あるが世界で2500万人から4千万人、日本も植民地を除く本土だけで45万人の命が奪われたという。1918年から20年までの流行で、同時期に戦われた第1次大戦の死者、約1千万人をはるかに上回る大災厄となったのだ。22年、内務省衛生局が刊行した「流行性感冒」は、この感染症の特徴を「本病の一度流行するや老幼、貴賤(きせん)の別なく之(これ)を侵し、土地の遠近を問はず迅速に蔓延(まんえん)して種々の社会的事情を生ずる」と書いている。事実、感染に貴賤の別はなかった。18年10月末、「平民宰相」と呼ばれた原敬(はらたかし)が、初代首相伊藤博文の墓参りの後、インフルエンザを発症した。さらに当時の皇太子、つまり昭和天皇や秩父宮ら皇族、元老山県有朋も感染し、回復した原らが対応に右往左往した記録が残っている。
     ◇
 新型インフルエンザは、短期の混乱にとどまらず、その後の世界史すら変えた、という指摘がある。
18年1月、米国のウィルソン大統領は平和14原則と呼ばれる教書を発表した。外交の公開、軍備縮小、そして諸国家の政治的独立や領土保全の相互保障のための組織、国際連盟の結成を呼びかけた。力の均衡という旧来の安全保障の枠を超えて、相互信頼に基づく公平な運営により、悲惨な戦争を繰り返さない決意がこめられている。ウィルソンは、戦勝国、敗戦国が怨讐(おんしゅう)から離れるべきだと考え、仏英が強く求めた独からの賠償金取り立ても反対だった。19年3月、講和条約を話し合う首脳会談に臨むため、ウィルソンはパリに入った。当時のパリはインフルエンザが流行し、「まるで我々の周りには何百万もののどに悪さするばい菌がうようよしている」と米代表団の一員が書き残すほどだった。1カ月ほどの会談で米仏が鋭く対立した。クレマンソー仏首相は、独が二度と立ち上がれないような措置を求め、ロイド・ジョージ英首相も、「独皇帝を絞首刑に、独から賠償を」といった国民感情を背景に、この会談の場にやってきていた。大詰めの4月3日。ウィルソンに魔の手が襲いかかり39・4度の高熱を発し会談を離脱。結局、賠償金支払いの義務を独に負わせる条項が条約に盛り込まれてしまう。その後決まった賠償額は1320億金マルク。当時の独の国民総所得の約2・5倍という膨大なもので、国民の窮乏を招き、復讐(ふくしゅう)心がナチス台頭のきっかけになった。パンデミックの実相を記した「史上最悪のインフルエンザ」の著者アルフレッド・W・クロスビーは「インフルエンザの被害に遭った人々のうちで最も痛ましい道をたどったのは、『戦争というすべての戦争をなくし、人類を高いモラルを持つ新たなレベルにまで引き上げようとする任務』に自ら着手したこの男であった」と述べ、ウィルソンの悲劇が、その後の第2次大戦の悲劇に連なっていくことを静かに暗示する。
     ◇
 こうした歴史が示す宰相の判断の重さを思うと、前政権も菅義偉首相も危機感が乏しくないか。3カ月前、私は当欄で「流行中に『Go To トラベルキャンペーン』を実施した。感染症抑制に逆効果という人の移動を税金を投じ後押しする」と疑問を呈した。事態はどうなったか。経済と感染症予防の両立と言うが、感染症は抑え込まねば流行を繰り返し、その度に経済は混乱する悪循環に陥るだけだ。菅氏は危機に迅速かつ適切に対処してきたと自負した。しかし歴史の経験に学ばない政治は、所詮(しょせん)、傲慢(ごうまん)を超えて愚行と言うしかない。この冬の終わりは遠そうだ。

*6-2:https://www.nikkei.com/article/DGXZQODG25CK50V21C20A2000000/ (日経新聞 2020/12/25) コロナ変異種、感染者を国内初確認 空港検疫で5人
 厚生労働省は25日、英国から航空機で入国した男女5人から感染力の強い新型コロナウイルス変異種が検出されたと発表した。変異種の確認は国内で初めて。いずれも空港検疫で見つかった。菅義偉首相は田村憲久厚労相に「水際対策もしっかり対応してほしい」と指示した。変異種への感染が確認されたのは18~21日に英国から羽田空港や関西国際空港に到着した10歳未満~60代の男女5人。うち4人は無症状で、60代男性はだるさを訴えていた。5人は陽性判明後に空港から宿泊施設に移され、現在も療養中で、濃厚接触者はいないという。5人の国籍は非公表。変異種は英国以外にイタリアやオランダ、デンマーク、オーストラリアなどでも見つかり、24日にドイツでも初確認されるなど拡大している。従来のウイルスより最大70%ほど感染しやすいが、重症化リスクは変わらないとされる。政府の新型コロナ対策分科会の尾身茂会長は25日、首相の記者会見に同席し、仮に変異種が国内で拡大すれば「いまでも医療体制などが逼迫、機能不全に近い状態に近づきつつある。極めて危機的な状況が起こる」と述べた。日本政府は英国からの航空便について、当面1週間の新規予約の受け付けを原則停止。26日以降、英国や南アフリカからの入国者について検疫所が指定する宿泊施設などで3日間の待機を求め、再検査で陰性を確認する。24日からは英国からの外国人の新規入国を禁止していた。日本人や日本在住の外国人が英国から帰国・再入国する場合もこれまで一定の条件下で認めていた2週間の待機期間の免除を取りやめている。26日からは南アフリカについても同様の措置とする。田村厚労相は25日夜、記者会見し、英国や南アフリカ以外からの入国者についても検疫体制を強化する意向を示した。英国では南アフリカの渡航者と接触した人からさらに別の変異種も見つかっている。英政府はこちらの方がさらに感染力が強いと説明している。

*6-3:https://www.nikkei.com/article/DGXZQOFS271DE0X21C20A2000000/ (日経新聞 2020/12/27) 入国者の追跡システム、義務化意向 平井デジタル相
 平井卓也デジタル改革相は27日のフジテレビ番組で、新型コロナウイルス対策として海外から入国した人の移動を把握するシステムを開発中だと明らかにした。東京五輪・パラリンピック向けを念頭に、入国者に利用を義務付ける意向を示した。平井氏は「使ってもらわないと入国させないというところまでやらないと効果がない」と語った。五輪について「選手のほか観客も来る。海外と同じように日本でのトレーサビリティーをデジタルでやろうと考えて進めている」と述べた。システムの詳細については明言しなかった。平井氏は「GPS(全地球測位システム)をオンにしてとお願いしないといけない。こういう事態だから許されると私は思う」と強調した。政府は東京五輪に向けビザ(査証)と入場チケット、移動情報の記録を連携させるスマホ向けのアプリの導入を検討している。

*6-4:https://www.jiji.com/jc/article?k=2020123000536&g=pol (時事 2020年12月31日) 特措法改正、罰則規定が焦点 「私権制限」に慎重論も―コロナ対策強化へ策定急ぐ
 新型コロナウイルス対策の実効性を高めるため、政府は特別措置法改正案の取りまとめを急ぐ。焦点は休業や営業時間短縮の要請に応じない事業者の罰則の在り方。菅義偉首相は罰則規定に前向きな立場を示しているが、憲法が保障する国民の権利の制限につながりかねず、政府・与党にも慎重論が根強い。改正案の早期成立は見通せておらず、首相の指導力が問われている。「時間短縮をより実効的にするため、特措法改正を視野に入れている」。首相は28日、記者団にこう語り、来年1月18日に召集される通常国会での法改正に改めて意欲を表明。自民、立憲民主両党は国対委員長会談で、2021年度予算案の成立を待たず、改正案を処理することで一致した。時短要請を担保する鍵と見込まれるのが、応じない事業者への罰則規定だ。政府は特措法改正で、緊急事態宣言の発令前でも都道府県知事が団体や個人に必要な協力を要請できると定めた24条を見直し、時短だけでなく休業の「指示」を含めた営業規制と、違反した場合の「罰金」を可能とすることで一定の強制力を持たせる方向だ。背景には、東京都の時短要請が新型コロナの拡大抑制につながらなかった苦い経験がある。都は新規感染者が目に見えて急増してきた11月28日から、飲食店などに午後10時までの時短を要請。政府は、7月から8月にかけての「第2波」の収束には時短が奏功したとみており、都の要請直後、首相周辺は「1週間でピークアウトする」と自信を示していた。だが、実際には12月以降も都の感染者は右肩上がりを続け、感染は首都圏全体に広がった。新型コロナウイルス感染症対策分科会の尾身茂会長は、春先からの各種要請に事業者や国民が「へきえきして」おり、時短への協力が得られにくくなっているとの見方を示す。強制力を持たせるための罰則には「私権制限」の懸念が拭えず、関係省庁と内閣法制局が協議した結果、事業者への「罰金」については憲法との整合性が保たれるとの認識で一致した。政府は併せて、感染症法改正により各保健所による感染ルート追跡のための「積極的疫学調査」を拒否した人への罰則も検討したが、個人に対する措置は「合憲性に疑義がある」との指摘が法制局から出て、今回の改正では見送りとなりそうだ。罰則規定には事業者からの反発も予想されるため、与党内は「議論はまとまっていない」(公明党関係者)とされ、野党の立場もまちまち。与野党が特措法改正案の内容で早期に合意できる見通しは立っていない。首相は24日の講演で、時短要請への罰則について、分科会の慎重論にも触れながら「必要ではないか」と明言した。内閣支持率が急落する背景に、政府の新型コロナ対策に対する不満があることを意識した発言とみられる。ただ、目に見える効果が上げられなければさらなる批判も予想され、まずは実効性が期待できる改正案取りまとめに手腕を求められる。

<年齢差別もよくないこと>
PS(2021年1月3日追加):*7-1の高年齢者雇用安定法が1986年に制定され60歳定年が企業の努力義務になっていたことは知らなかったが、90年に希望者を65歳まで継続雇用することが努力義務となったことは、私も知っていた。つまり、努力義務は方向性を示すだけで大きな変化は得られず、年金財政の逼迫で老齢厚生年金の支給開始年齢が65歳になるのと並行して定年年齢も徐々に引き上げられたわけである。しかし、65歳までの希望者全員が働けるよう義務づけられた現行の高年齢者雇用安定法は2012年に改正されたもので、年齢差別の廃止というよりは経済が理由で、まだ60歳以降は嘱託社員として再雇用する企業が多いのが実情だ。
 そのような中、*7-2のように、嘱託社員として低賃金で再雇用され、やる気をなくしたシニア社員を「腰掛けシニア」と呼ぶそうだが、年齢にかかわらず仕事の内容・成果を給与に反映させるのは当然と言える。また、高齢化社会では、消費者も高齢者が多いので、生産する人の年齢も多様性があった方がニーズに合った製品・サービスを作ることができ、知識・経験・ネットワークを持っているシニアはむしろ宝物だ。
 ここで面白い事例を紹介すると、私が2020年5月に運転免許証の更新のため警察署に行ったら、「コロナで休止になっているが、HPは見ていない?」と担当職員に言われてがっかりした。何故なら、私は、警察署のHPこそ見ていないが、自分のHPを持って毎日のようにブログを更新しており、そもそも1990年代からパソコンを使って意見書や論文を書いたり、インターネットを使って外国の事務所と議論したりしていたのに、60歳以上の人はすべてパソコンを見たこともないかのように言われたからである。そして、「タイピストをしていた女性などは、この若者たちよりずっと早く、正確にKey操作ができるのに・・」と思った次第だ。

   
   10年近く掲げていた「広津もと子HP」の前の表紙

(図の説明:左図は、2011年3月11日に発生した東日本大震災の後、福島第一原発事故が起こってすぐに掲げたこのHPの表紙の文章で、右図は、再生可能エネルギーは農山漁村など地方を潤すツールにすることができることを示す図だ。原発は広汎なリスクを伴うため経過的なエネルギー源とし、できるだけ早く再エネに転換すべきことを、私は2000年くらいから考えていたが、衆議院議員時代《2005~2009年》に農山漁村の多い地方の地元を廻り、再エネに転換するための技術進歩を後押ししながら、確固たる信念にしたものである)

*7-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20210101&ng=DGKKZO67692680V21C20A2M12100 (日経新聞 2021.1.1) 高年齢者雇用安定法
 高年齢者雇用安定法は1986年に制定され、60歳定年が企業の努力義務となった。90年には希望者を対象に65歳まで継続雇用することが努力義務となり、98年には60歳以上の定年が義務化された。老齢厚生年金の支給開始年齢が段階的に65歳になるのと並行し、定年となる年齢も徐々に引き上げられてきた経緯がある。現行の高年齢者雇用安定法は2012年に改正。それまでは65歳まで働く対象を限定することができたが、希望者全員が働けるように義務づけられた。終身雇用や年功序列を前提とした制度が続くなか、60歳以降は嘱託社員などとして再雇用する制度を採用する企業が多い。一方で労働力不足の解消や生産性向上を目的に、正社員の立場を続ける「定年延長」を採用する動きも徐々に出ている。

*7-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20201212&ng=DGKKZO67241090R11C20A2MM8000 (日経新聞 2020.12.12) ニューワーカー 新常態の芽生え(5) 「腰掛けシニア」は限界 現役続行、自ら磨いてこそ  
 「腰掛けシニア」。こんな言葉が企業でささやかれている。定年後にやる気をなくしたまま企業にしがみつく社員のことだ。企業活力研究所(東京・港)の調査によると「意欲を持って働いている」と答えた60代は54%と半数にすぎない。働き手としてもう一度輝いてもらおうと、一律の処遇をやめ、仕事の内容や成果を給与に反映するといった取り組みが広がっている。
●現役並み給与に
 システム開発大手TISは今春、能力や実績のあるシニア人材を対象に現役世代並みの給与を支払う制度を導入した。59歳でバンコクに赴任し、タイ資本との合弁会社で働く菅原徳男さん(65)。当初ゼロだった日系の顧客企業を100社に増やした実績が買われ、新制度が適用された。「自分のキャリアを生かせる仕事を続けられ、成果に応じてきちんと評価もしてもらえる」。60歳で定年を迎えてからは契約社員となり、年収は2~3割下がっていたが、実績を基に賞与も出て、昇給もあり得る。「体力や気力の衰えを感じるまでは、このまま働き続けたい」。処遇に変化をつける企業の方が、シニアの意欲が高い傾向にあるとの調査結果もある。60歳以上が労働人口に占める比率は2019年時点で21%と、10年比で3ポイント上昇した。大量採用したバブル世代が役職定年に差しかかるなか、中高年の生産性向上は企業にとって死活問題となった。中央大学大学院の佐藤博樹教授は「定年後などもマインドを変えられない管理職経験者が増えており、第二の『新人教育』が必要だ」と指摘する。先を見越して動き始めたシニアもいる。10月上旬の週末、プログラミング教室のテックガーデンスクール(東京・千代田)が運営する中高年向けの講座では、講師を務める20代の学生の指示に20人ほどの生徒が耳を傾け、パソコンに向かって手を動かしていた。
●危機感から学ぶ
 例えばホームページの地図上に会社所在地を示したり、作成したウェブページがきちんと表示されるか確認したり。生徒の相田俊之さん(56)は素材メーカーの技術職だが、新型コロナウイルスによる緊急事態宣言が出ていた5月から週末を利用してオンラインで授業に参加する。「あと4年で定年退職だが、今のスキルの延長では稼げない」。そんな危機感からプログラミングの勉強を始めた。終身雇用を前提とした従来型のメンバーシップ制の雇用では、社内で通用するスキルを磨くことが大事だったが、発想を転換する時期に差し掛かっている。NECは自分のキャリアをそれぞれが築く「キャリアオーナーシップ」の意識を養う研修を始めた。対象には20代の若手も含め、社内ではなく、世の中で求められ続ける人材の育成につなげる狙いがある。経験を生かして世の中の役に立つという「生きがい」だけでなく、膨らむ社会保障費を抑える観点からも、長く働き続けることが強く求められるようになった。その一方でコロナ禍で企業業績が低迷し、早期・希望退職者の募集も広がる。楽しく長く働き続けるために自分が何をすべきか。その努力は、人事制度を決める企業だけではなく、働く人すべてが問われている。

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2020.11.10~15 エネルギーの変換と分散化が日本経済を回復させるKeyである (2020年11月18、21、22、23、25、27、28日、12月2、3、5、7、11日追加)
    
2020.6.17日本農業新聞 農山漁村の再エネ       田園地帯の風力発電機 

    
    ハウスや畜舎の太陽光発電機     放牧地帯の風力発電機  日本の地熱発電所 

(図の説明:上の1番左の図のように、基幹的農業従事者の平均年齢が65歳を超えて次第に上がっているのは、次世代の参入が極めて少ないからだ。これは、農業が他産業と比べて魅力のないものとなって選択されていないからだろうが、上の左から2番目の図のように、農業・再エネ・地方は親和性が高く、農地への再エネ発電機の設置に補助することにより、電源のグリーン化を行いながら農業者の所得を増やし、以後の農業補助金をカットすることができる。つまり、電源のグリーン化をうまくやれば、農林漁業や地方の活性化・地方への人口分散・国の歳出削減を同時に行うことができる。その例として、上の右から2番目と1番右の図のような田園に設置した風力発電機、下の1番左の図のようなハウスに設置した太陽光発電機、左から2番目の図のような畜舎に設置した太陽光発電機、右から2番目の図のような放牧地に設置した風力発電機などがあり、1番右の図のように、我が国は地熱を利用できる地域も多いのである)

(1)電源はグリーン&ブルー化すべき
1)エネルギーは燃料を燃やさなければ得られないものではないこと
 日本では、*1-2のように、電力業界が、①CO₂を出さないアンモニアを燃やす発電 ②化石燃料を使ってCO₂を分離・回収・再利用する技術の実用化 ③発電時にCO₂を出さない原発の使用 を狙っており、2030年度の総発電量に占める火力発電の割合は56%もあるそうだが、①②③とも、CO₂だけが公害だと思っている点で失格だ。

 そして、経産省や電力会社が「原発や石炭火力がベースロード電源」などとしているため、個人や一般企業は電力会社を当てにできず、ゼロエネルギー住宅やゼロエネルギービルディングに移行せざるを得なくなったのである。このままでは、日本は電力でも世界に後れを取り、ゼロエネルギー住宅やゼロエネルギービルディングでは(皮肉にも)トップランナーになるだろう。

 なお、米国の大統領選挙では、確かにおかしな点も多かった。しかし、*1-1のように、バイデン氏が当選を色濃くしたことで、米国のエネルギー・環境政策が一変し、太陽光・風力発電が促進されて、2050年までの温暖化ガス排出0をめざし、米国が「パリ協定」に復帰しそうなのは喜ばしい。

 また、米国が環境・インフラに4年で2兆ドル(約210兆円)を投じて再エネへの設備投資を促し、電力部門では2035年までにCO₂排出0をめざし、ガソリン車から電気自動車への移行を後押しするというのも明快である。

 ただ、米国は2010年代に進んだ「シェール革命」で世界一の原油生産国になっているため、燃料での脱石油に伴い、採掘にコストがかかったり、採掘時に公害を出したりする油田から停止して、サウジアラビアと同じように原油を国内で化学製品に加工して使うようシフトするのがよいと思われる。そうすれば、さらに付加価値を創出しながら、雇用を維持できるからだ。

2)原発も廃止するのが当然だ
 政府は、*1-3のように、「エネルギー基本計画」の見直しに向けた議論に着手したそうだが、CO₂を出さない再エネを主力とした電源構成に転換する必要があるのであって、脱炭素化に向けて「ベースロード電源」などとして原発を活用することがあってはならない。

 何故なら、日本の再エネによる発電コストが高いままで、海外のようにコストの低下が進まなかったのは、*1-4のように、大手電力会社や原発を優遇した結果、再エネの普及が拡大しなかったからだ。

 また、「原発はクリーンな電源だ」と主張する人もいるが、*1-5のように、事故を起こした原発の後始末すらうまくできず、放射性物質を含む大量の原発処理水を発生させ、それを海洋放出して国民にさらなる迷惑をかけようというのだから、技術力・公害への感度・食品安全への感度のいずれについても信頼に値しないという結果が既に出ているからである。

(2)IT化とデータや情報の流用
 現在の日本は、自ら総合的・論理的な判断をして改革することができず、他国がやっているのを見て追随することしかできないという意味で、意識が低い。

 例えば、日本は、1979年に国連総会で採択された女子差別撤廃条約(日本を含む130ヶ国が賛成)に1980年に署名し、条約への批准要件である第一次男女雇用機会均等法を作って1985年には日本でも女子差別撤廃条約が発効したのに、それから35年も経ち、世界経済フォーラムの「ジェンダー・ギャップ指数」が2019年に153カ国中121位になってから、ようやく女性のリーダーへの登用を推進しようとしているのである。

 また、1995年には、日本が議長国をしてCOP3で京都議定書が採択されたにもかかわらず、日本政府は、それから25年も遅れてやっと環境・再エネ・EVに本格的に取り組み始めている。そして、他にも、このような事例は多いのだ。

 これらは、世界に後れをとってから初めてキャッチアップする形で追随するため「黒船型改革」と言われるが、実際には、日本人(実は私)が最初に問題提議を行い、外国で認められ稼働してから祖国が追随するという悲劇になっており、こういうことが多すぎるため、そうなる理由を考えるべきなのである。

 なお、*2-1のように、第2期(次期)の日本政府の共通プラットフォームは、10月1日から米国企業Amazonが提供するAWS(Amazon Web Services)のクラウド・コンピューティング・サービスに移るそうで、それは、比較・検証の結果、AWSが『セキュリティ対策』も含め、クラウドサービスのメリットを最大限活用するという点で国内各社のクラウドサービスよりも優れていたからとのことである。

 しかし、私にも、日本政府の共通プラットフォームを作るにあたって、Amazonのシステムが最善とは思えず、それより、ミロクやブギョウをクラウドで仕事ができるように改善してもらい、セキュリティー(情報の流用などは論外)を徹底して導入した方が、誰にでも操作しやすく、出来上がりのよいシステムになると考える。

 私は、ITについても、「2000年頃から政府が旗振りをしていたのに、まだ言っているのか」と思うが、確かに、日本は何でも公共工事にしてしまうため、目的を追求した優れたものができないのだろう。

 また、日本政府と地方自治体は組織が全く独立しているので、連結する必要はなく、地方自治体は自らが最もやりやすいシステムを導入すればよい。そして、地方自治体には外部監査が導入されているため、会計・資産管理・人事管理・内部統制・記録保存・セキュリティー等については外部監査人からアドバイスを受けながら改善していけば、それぞれの組織に最も適したシステムを作り、その過程でシステム作りを担当したIT企業を育てることも可能だ。

 さらに、日本政府のプラットフォームを独立した地方自治体にまで共通化する必要はないため、それぞれの自治体がこれぞと思うシステムを作り、よくできたものをBest Practiceとして参考にすれば、よくないものは改善されて、よいものを作り出していくことができる。

 *2-2には、「デジタル化の敵は、言うこと聞かぬ省庁」と書かれており、確かに、省庁が最もデジタル化に遅れてはいるが、マイナンバーカードを健康保険証として使うような行き過ぎを抑えている面もあるので、デジタル化しさえすれば進歩したと考えるのは間違いであり、重要なのは内容だ。

 そして、一律10万円の給付でオンライン申請をしても時間がかかったのは、慣れた人を使わず慣れない人を使ったことが大きな理由である。また、医療や教育の現場も、オンライン化しさえすれば進歩したと考えるのは誤りで、よりよいものになったか否かが重要なのだ。

 なお、「マイナンバーカードを通じて情報が漏れるのではないか」「政府があらゆる情報を覗くのではないか」という懸念は、政府が情報の流通を促進している無神経さから考えて当然であり、議論を聞けば聞くほど信頼するに足りないのである。さらに、デジタルによるオンラインサービスが最高なわけではないため、不慣れな人や使いこなせない人は、(窓口に来る人の数が減るのだから)窓口に来てもらって親切に手助けすればよいだろう。

(3)日本の農業について
 農業は、一昔前までは主たる産業であり、現在も安全な食料を供給するために重要な産業なので、合理的な経営をすれば必ず成立する筈である。にもかかわらず、狭く区切った田畑で、余っている米を皆が生産したがり、付加価値も生産性も低いのが、農業者の所得が増えない理由だ。

 また、国から補助金をもらってやっと成立するようでは、(当然のことながら)職業としての魅力に乏しいため、次世代の農業者をなかなか得られず、耕作放棄地は増え、食料自給率も下がって、農村が過疎化する結果となったのである。

1)ロボット技術やICTを活用したスマート農業
 そのため、農水省が、*3-1のように、「ロボット技術やICTを活用して、省力・高品質生産を実現するのがスマートな農業だ」と広報し始めたのは、少ない人数で多くの農産物を生産でき、職人技がなくても品質の安定を保つことができるためよいと、私は思う。

 また、スマート農業の中にも、無人の農業機械が畑を走り回り、ドローンや衛星から送られる情報に従って耕したり収穫したりするレベル4~5から、農業機械が人のサポートをする程度のレベル1~3まであってよいし、作物の種類・農地の広さ・農業者の資金によって選択すればよい。

 なお、日本人には、「①成長するには競争するしかない」「②競争は他人を蹴落とすもの」「③社会の経済格差が広がるのがいけない」という発想をする人が少なくないが、①については、隣人とは競争するより協力して地域ブランドを作らなければ、他の地域や他国との競争には勝てない。

 また、②は非常に視野の狭い競争でしかなく、いくら他人を蹴落としても見える範囲にいる人にしか勝てないので、そういうことにエネルギーを使うよりは、必要なことをクリアするように集中して努力した方が、気がついた時には全員の上にいられるものだ。

 さらに、③については、国から補助金をもらいながら農家が皆で底辺に居続けては誰にとっても将来性がなく、努力や能力によって差がつくのを受け入れなければ、農業に成功者は出ない。そして、成功者が出なければ、農業の魅力が薄くなって次世代を得ることができず、農村が過疎化するため、農業で成功者を出すことは、農村を復活させるKeyなのである。

2)物流の迅速化と冷凍・冷蔵技術の進歩
 農水産物や食品の新鮮さという付加価値を保ったまま流通できれば、食品ロスが減り、農水産業者・食品業者の所得が増え、食料自給率も上がる。そして、それを実現する方法には、①流通の簡素化 ②配送の迅速化 ③冷蔵・冷凍技術の進歩 ④加工販売などがある。

 このうち、③を極めたのが、*3-2の「細胞を破壊せず、鮮度を保ったまま冷凍する技術」で、「採れたてのおいしさを求める消費者」のニーズに応える形で磨かれたそうで、世界で通用するだろう。

 また、④も、電子レンジが普及して冷凍や冷蔵の加工品を調理するのが容易になったため、プロが作った冷凍・冷蔵の総菜を、中食でも味に妥協せず食べられるようになった。これは便利なことで、今後は、外食・中食の垣根を超えたり、外食産業の形を変えたりすると思われる。

3)需要の多い作物への転作
 滋賀県のJAこうかが、*3-3のように、半永久的に収穫できる薬草ドクダミの産地化に力を入れ、茶の収穫機を転用して、耕作放棄地の農地再生に繋げるそうだ。

 それはよいのだが、JAこうか管内だけで200haを超える遊休農地があり、日本の食料自給率が38%まで落ちているのは、農業を産業としてバックアップせず、その場限りの練られていない政策やバラマキでお茶を濁してきた政治の責任だ。

4)過剰在庫と国産回帰
 新型コロナの流行で、小豆や砂糖原料など需要が減った作物の産地が過剰在庫に苦慮し、*3-4のように、新たな需要創出や輸入品からの国産回帰に向けて総力で取り組んでいるそうだ。

 そのためには、加工・販売業者と組んだり、冷凍・冷蔵技術を駆使したり、輸出したりするのがよいだろう。私自身は、小豆から料理することはなく、冷蔵の小豆餡や冷凍の鯛焼きなど、一手間かければ完成品になる材料を購入して使うので、半加工品のニーズは多いと思う。

 しかし、先日は、ふるさと納税の返礼品として5kgもらったマイヤーレモン(皮ごと)と蜂蜜を使い、甜菜糖を加えてレモンジャム(マーマレード?)を作ったら、美味しい上に美容と健康に良いものができた。にかっ

 また、和菓子やケーキが冷凍になっていると、まとめ買いしてもあわてて食べなくてすむので助かる。さらに、最近は生クリームのケーキばかりしか売っていないので、私は、Amazonを使ってわざわざ北海道や神奈川県から冷凍のバタークリーム・デコレーションケーキを取り寄せて食べるが、常温に1日置くと作りたてのようになって驚くほど美味しいのである。

 なお、日本一のソバの産地である北海道のJAきたそらちが、製粉業者や地元自治体と連携し、輸入品を使っていた大手外食店やコンビニに働きかけて、2,000ha分の販路を新たに確保し、過剰在庫の解消にめどをつけたそうだが、私にとっては、ソバも輸入品だったことがむしろ驚きで、日本には耕作放棄地も多いので、是非、国産を増やして欲しいと思っている。

・・参考資料・・
<電源はグリーン化>
*1-1:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO65975470Y0A101C2FF8000/?n_cid=NMAIL006_20201109_H (日経新聞 2020/11/8) バイデン氏当確 21年1月、パリ協定復帰へ
 米大統領選で民主党候補のバイデン前副大統領が当選を確実にしたことで、米国のエネルギー・環境政策は一変する。太陽光や風力発電の促進で2050年までに温暖化ガスの排出ゼロをめざし、現政権が離脱した温暖化防止の国際枠組み「パリ協定」に21年1月にも復帰する。国際社会の脱炭素の流れが加速し、企業も対応を迫られるだけでなく、バイデン氏の国際協調路線の象徴となる。バイデン氏は「気候変動は深刻な脅威」と断じ、環境・インフラに4年で2兆ドル(約210兆円)を投じる公約を掲げた。太陽光など再生可能エネルギーへの設備投資を促し、電力部門で35年までに二酸化炭素(CO2)排出ゼロをめざす。全米に充電設備を50万カ所設けるなどして、ガソリン車から電気自動車への移行を後押しする。トランプ大統領が進めた化石燃料業界への規制緩和は、再び強化の方向に向かいそうだ。現政権は原油や天然ガスを運ぶパイプラインの建設を認めたり、規制緩和で石炭火力発電所の投資を後押ししたりした。オバマ前政権が定めた自動車の燃費規制を緩めて、環境技術で日欧に劣る米国メーカーの競争力を支えてきた。米国は11月4日にパリ協定から離脱したが、バイデン氏は21年1月20日に就任すればすぐに復帰に動く構えだ。温暖化ガスの排出量削減に動く欧州や中国に加え、日本も50年までの実質ゼロを目指すと表明した。排出量で世界2位の米国も再び合流すれば環境対策には追い風となるが、主導権争いも激しくなる。世界のエネルギー業界の勢力図にも影響を及ぼしそうだ。米国は10年代に進んだ「シェール革命」によって、中東のサウジアラビアを抜いて世界一の原油生産国に躍り出た。輸出も解禁して原油価格を左右してきたが、脱石油の流れが進めば需給も変わりうる。ただ予算や法制化の権限を握る米議会で上下院の多数派が異なる「ねじれ」が予想されるなか、バイデン氏が実効性のある政策を打てるかは未知数だ。同氏も多くの雇用を抱える石油・ガス業界を意識し、シェール開発のフラッキング(水圧破砕法)を禁じるか曖昧な発言を繰り返す。化石燃料に関わる企業や労働者のほか、野心的な環境対策を求める民主党内の左派など様々な勢力との利害調整を求められる。

*1-2:https://digital.asahi.com/articles/DA3S14668247.html (朝日新聞 2020年10月23日) 温室ガス実質ゼロ、問われる本気度 菅首相「2050年目標」表明へ
 政府は、温室効果ガスの排出量を2050年に実質ゼロにする目標を掲げる方針だ。複数の政府関係者が明らかにした。菅義偉首相が、26日召集の臨時国会での所信表明演説で表明する方向で調整している。欧州連合(EU)の目標と足並みをそろえ、地球温暖化対策に取り組む姿勢をアピールする狙いだ。温暖化対策の国際ルール「パリ協定」の目標を実現するには、50年までに世界全体の温室効果ガス排出を森林吸収分などを差し引いた実質ゼロにする必要がある。日本政府は「50年までに80%削減」といった目標は掲げていたが、いつ「実質ゼロ」を実現するのか具体的な年限を示していなかった。
■電源構成見直し・大量排出業界の対応、必須
 「50年実質ゼロ」の実現には飛躍的な技術革新が欠かせない。国内の二酸化炭素(CO2)の4割近くは発電部門から排出される。日本でも太陽光や風力などの再生可能エネルギーが増えてきたが、大量導入には課題が多い。発電設備の高効率化に加え、天候による発電量のぶれを調整する大容量の蓄電池などの普及も重要だ。電力業界などは、CO2を出さない水素やアンモニアを燃やす発電技術や、化石燃料を使う場合でもCO2を分離・回収したり再利用したりする技術の実用化をめざしているが、コスト低減が欠かせない。運輸部門では、電気自動車や燃料電池車を本格的に普及させる必要があるが、インフラ整備には時間がかかる。鉄鋼やセメントなど、大量のCO2を排出する業界が、どこまで対応できるかも課題になる。国のエネルギー政策の方向性を示す「エネルギー基本計画」の大幅な見直しも避けられない。いまの計画の目標では、30年度の総発電量に占める火力発電の割合が56%もある。再生エネ比率の引き上げや石炭火力の削減など、電源構成の見直しは必須だ。その際には、再生エネ同様に発電時にCO2を出さない原発の扱いも焦点となる。
■30年度目標と、大きな隔たり
 「50年実質ゼロ」を掲げる国はイギリス、ドイツなど100カ国を超える。日本も遅ればせながら、それらの国々と、パリ協定の目標達成に向けたスタートラインに立つことになる。環境NGO「気候ネットワーク」の平田仁子理事は「50年と決めたことで、それを達成するための30年度目標がより重要になってくる」と指摘する。日本は30年度に13年度比で温室効果ガスの排出を26%減らす目標を掲げるが、50年実質ゼロと大きな隔たりがある。NGOのネットワーク「Japan Beyond Coal」によると、新設を計画あるいは建設中の石炭火力は国内に17基。発電所の稼働年数は40年程度と見込まれ、近年稼働した発電所も含めれば、50年時点で数十基が動いている見込みだ。石炭火力を容認したままで実質ゼロの実現は疑問が残る。CO2を分離・回収し地中にためる「CCS」を石炭火力につける考えもあるが、日本は地形的に適地が限られる。水素技術などのイノベーションが、CO2の削減にきいてくると考えられるのは30年度以降だ。東京大の高村ゆかり教授は「まずは(再生可能エネルギーやゼロエネルギー住宅など)今ある技術を普及させることが大事」と指摘する。

*1-3:https://373news.com/_column/syasetu.php?storyid=127560 (南日本新聞社説 2020/10/25) エネルギー計画:脱炭素社会へ大転換を
 政府は中長期的なエネルギー政策の指針となる「エネルギー基本計画」の見直しに向けた議論に着手した。地球温暖化を抑えるため「脱炭素」の潮流が国際的に加速する中、火力発電が過半を占める日本は遅れをとっている。二酸化炭素(CO2)を出さない再生可能エネルギーを主力とした電源構成へ大きく転換する必要がある。エネルギー基本計画は将来の電源構成や原発の運営の方向性などを示し、おおむね3年に1度見直してきた。2018年7月に閣議決定した現在の計画は30年度の電源構成を、火力で56%程度、再生エネ22~24%程度、原発20~22%程度に置いたそれまでの目標を維持した。ただ、18年度実績は火力が77.0%、再生エネ16.9%、原発6.2%で目標には程遠い。とりわけ、原発は目標達成に20~30基の稼働が必要だが、東京電力福島第1原発事故後の再稼働は9基にとどまり、実態と大きくかけ離れている。脱炭素化に向けて原発の活用を求める声もある。しかし、事故による安全対策費の増加や原発に対する厳しい世論、安全審査の長期化などを考えれば、行き詰まりは明らかだ。原発を「ベースロード電源」と位置付けた従来の路線を踏襲するのは無責任と言わざるを得ない。一方、太陽光や風力といった再生エネについては「主力電源化を目指す」と現在の計画にも明記している。ただ、発電量全体に占める再生エネの比率が35.3%のイタリア、33.4%のドイツなど欧州各国に比べ、日本の遅れが際立つ。日本では再生エネの発電コストの高さが問題になるが、海外ではコスト低下が進み、普及が拡大している。再生エネ分野の産業競争力を強化するためにも政策的な後押しが欠かせない。経済産業省は7月、非効率な石炭火力の縮小や、再生エネの普及を推進する本格的な仕組みづくりに乗り出すと表明した。特に大規模な洋上風力への期待が大きい。再生エネは天候に左右されるため、蓄電池の普及や送電線の利用ルールの見直しなどが必要だ。普及拡大のインフラ整備が進むことを期待したい。経済同友会は、再生エネの比率を30年に40%まで引き上げるよう求める提言をまとめた。再生エネ普及は経済界の要請でもある。官民協議会などで積極的に推進してもらいたい。菅義偉首相は週明け召集の臨時国会で、50年に国内の温室効果ガス排出を実質ゼロにすると表明するとみられる。国際社会で進む脱炭素化の機運は避けて通れないという判断だろう。目標を実現するには、現行のエネルギー基本計画の大幅な見直しが不可欠だ。将来を見据えた責任ある議論を尽くすことが重要である。

*1-4:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20201024&ng=DGKKZO65423290U0A021C2EA1000 (日経新聞 2020.10.24) 新設の「容量市場」、初入札結果が波紋、電力需給見誤り高騰か
 電力システム改革の一環として政府が創設した新市場「容量市場」が議論を呼んでいる。今夏に初めて実施した新市場の入札で、当初の想定をこえる高い価格がついたからだ。価格は同じ市場を導入する米国や英国の2倍超で「市場設計の失敗」との声もあがる。
●24年度分を確保
 容量市場は、電力の安定供給のため発電事業者に必要な電源を確保させる仕組みだ。電力自由化で卸売電力価格が市場で決まるようになり、太陽光発電など燃料費がかからない電源の普及で電力価格は下がっている。火力や原子力発電は巨額の設備費を回収できず設備の維持や新規投資ができない恐れが生じた。そこで全国の電力需給状況を監視する電力広域的運営推進機関は入札で発電能力(容量)を募り電源維持の対価を払う。原資は電力を購入したい小売事業者から集める。最初の入札は2024年度に必要となる約1億8千万キロワット分について実施した。発電事業者の応札で安い順に落札していったところ、最終的な約定価格は1キロワット当たり1万4137円に達した。これは事前に決められた落札の上限価格とほとんど同額。落札結果が公表されると、関係者からは「想定をこえる価格」と驚きの声が上がった。原資を負担する小売事業者への配慮から、古い電源の受取額を割り引く「経過措置」があり実質的な価格は9534円になる。単純比較はできないが、英国は1キロワット当たり1千~3千円、米国では同3千~7千円にとどまる。このまま調達すると、落札事業者にはおよそ1.6兆円が支払われる。消費者が支払う電気料金への影響について「本来得られるべき電力供給のコストを卸売市場と容量市場に分けて支払うので電力価格には中立的」と電力中央研究所の服部徹・副研究参事。電気事業連合会も「(1.6兆円が)まるごと消費者の負担になるのではない」と説明する。容量市場の収入は卸売市場で未回収のコストを補うので電力料金をあげる要因にはならないとの理屈だ。
●原発は抜け落ち
 ただ電源をもたず払う一方の新電力には打撃で大手との競争で不利だ。経過措置があっても「これでは激変緩和の意味がない」との声も上がる。なぜ想定外の高値になったのか。「需要が過大」か「供給が過小」だったからだろう。需要は広域機関が将来必要とみた発電能力で、供給は発電事業者による応札価格と量から決まる。需要曲線と供給曲線が一致したところが約定価格となる。「需要曲線を人為的に決めるわけで、過大だと余剰電源を抱え込み過小だと電源不足に陥りかねず、さじ加減が難しい」と京都大学の安田陽・特任教授。欧米でも決め方には苦慮する。今回、需要は災害を想定して約12%積み増した。北海道や千葉県での大規模停電の経験が影響した。供給は応札しなかった電源が約2千万キロワットあった。24年度に発電を保証できない原子力発電所などが抜け落ちた。容量市場に詳しいエネルギー戦略研究所の山家公雄所長は「米国の市場では応札可能な電源は必ず応札しなければならないルールがある」と出し惜しみ防止を指摘する。価格の不当な引き上げがなかったかを検証した電力・ガス取引監視等委員会は13日、「算定に問題はなかった」と報告したが、「検証が足りない」と有識者から批判が出た。「(大手電力が)ぬれ手で粟(あわ)の利益を手にしているなどと言われないよう」(松村敏弘・東京大学教授)積極的な情報公開が必要だ。消費者の目線でみれば容量市場は発電設備の維持・更新を促し電力システム全体がより効率的で環境面でも持続可能になってこそ意義がある。既存設備の温存に終わっては困る。需給逼迫時に需要を調整するデマンドレスポンスや蓄電池など次世代に向けた誘導策の存在感が薄いのは課題だ。気候変動対策から石炭火力の休廃止が急ぎの課題だが、容量市場は電源の区別なく維持を保証する。政策の整合性がとれていないのも問題だ。

*1-5:https://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-1212256.html (琉球新報社説 2020年10月23日) 原発処理水海洋放出 地元の不安を押し切るな
 東京電力福島第1原発で増え続ける処理水の問題で、政府は海洋放出の方針を月内に決定する。地元は漁業者を中心に反対の声を上げており、影響を受ける人々と向き合わないまま方針決定に突き進むことになってしまう。処理水には放射性物質トリチウムが含まれる。環境や人体に与える影響を巡る検証は十分ではなく、復興に取り組む地場産業に及ぶ風評被害にも懸念が尽きない。放射性物質の除去技術や安全性が確立するまでの間の新たな保管場所の確保など、海洋放出を回避する方策を探るべきだ。第1原発では溶融核燃料(デブリ)を冷やすための注水などで、現在も1日に170トン程度の汚染水が増え続けている。東電は多核種除去設備(ALPS)を使って汚染水から放射性物質を取り除く処理をしているが、水に似た性質があるトリチウムは除去することができない。東電は処理水を保管する原発敷地内のタンク容量が、2022年夏に限界に達するとしている。政府も処分方法の決定を急ぐ姿勢を強めており、菅義偉首相は21日に「いつまでも先送りできない」と語った。背景には、海洋への放出を始めるには設備工事や原子力規制委員会の審査などで2年程度の準備を要するため、現状が決定のタイムリミットだとする判断がある。だが、時間切れを理由に地元の反対を押し切ることなど許されるはずがない。炉心溶融(メルトダウン)した原発から出る処理水を海に流し続けることによる環境影響は簡単に予見できるものではなく、問題視するのは当然だ。処理水の保管を東電の敷地内に限定せず、政府としても別の保管先の確保を検討する対応などがとれるのではないか。トリチウムの除去技術開発に注力することも、原発事故を起こした東電や国の責任であるはずだ。また、震災の津波でさらわれた漂着物が沖縄で見つかることがあるように、海洋放出の影響は原発沿岸だけにとどまらない。周辺諸国からの非難は避けられないだろう。19年には、韓国による水産物の輸入規制を巡って世界貿易機関(WTO)の紛争処理手続きで日本が敗訴した。国際社会は福島の原発事故を終わったと見なしていないことを自覚する必要がある。処理水の扱いに関する議論は13年に始まった。この間には、17年に東電の川村隆会長(当時)が海洋放出について「判断はもうしている」と発言し、地元の反発を招いた。18年には、国民の意見を聞く公聴会の直前に、本来除去されているべきトリチウム以外の放射性物質が処理水に残留しているのが発覚した。東電、政府の結論ありきの姿勢やデータに対する不信も、処理水の処分方法が長年決まらない要因の一つにとなってきた。地元や国民の不安の払拭を第一とした、誠実で慎重な対応が必要だ。

<IT化とデータや情報の流用>
*2-1:https://webronza.asahi.com/politics/articles/2020092600003.html?page=1 (朝日新聞論座 佐藤章 2020.9.26) アマゾンに日本政府のIT基盤を丸投げする菅政権~NTTデータはなぜ敗北したのか、菅政権「デジタル改革」の罠(2)
今から167年前の1853年、浦賀沖に米国ペリー提督率いる黒船が来航して徳川幕府は上を下への大混乱に陥り、明治維新につながっていった。それ以来、日本人の保守的で慣習に流されがちな側面を揶揄して「黒船が来ないと改革はできない」としばしば表現される。10月1日から、次期政府共通プラットフォームは米国企業のAmazonが提供するAWS(Amazon Web Services)のクラウド・コンピューティング・サービスに移る。この事態をわかりやすく言えば、「みんなで黒船に乗って改革してもらおう」という話だ。「みんなで乗れば怖くない」という意識が安倍政権の方針を引き継いだ菅政権にはあるのかもしれないが、本当に「怖くない」のか。幕末の黒船には吉田松陰が乗り込もうとしたが、その話とはまるで違う。松陰は身を捨てても先進文明を学ぼうとする覚悟を決めていたが、現在の日本政府は黒船Amazonの単なる客だ。しかも、国民や政府の機密情報が大々的に流出するリスクにも目をつぶって乗ろうとしている。
●「AWSは国内各社より優れていました」
 Amazonにみんなで乗ることを決めた安倍内閣の総務相、高市早苗氏は日本会議国会議員懇談会の副会長でもあり、右翼的な言動が目立つ。その高市氏は今年5月20日、自らのホームページ上のコラムでこう綴っている。「私は、『第2期(次期)政府共通プラットフォーム』について、何とか『純国産クラウド』で整備できないかと考えていました。昨年9月の総務大臣就任直後、『設計開発の一般競争入札』は昨年3月に終わっていたものの、諦め切れずに、改めて国内各社のクラウドサービスとの比較・検証を行いました」。愛国の情がそうさせたのか、高市氏はAmazonと国内メーカーとの比較、検証の再調査をしたと記している。だが、その結果についてはこう続けている。「日本人としては残念ですが、十分な比較・検証の結果、AWSは、『セキュリティ対策』も含め、『クラウドサービスのメリットを最大限活用するという点』で、国内各社のクラウドサービスよりも優れていました」。本当にそうなのか。この高市氏の言葉に対して、私が取材した日本有数のセキュリティ設計専門家は問題の深さをこう指摘している。「ふざけるなという話ですよ。それだったら、なぜもっと早く国内メーカーや専門家にそういう問題提起をしなかったのでしょうか。問題は政府基幹システムのアプリケーションもセキュリティも今後はAmazonに従うということです。もっと早く議論すれば専門家や学者がいろんな意見を出したでしょう。安倍さんや菅さんのやり方はまさに独裁でしょう。議論や意見の出しようがない」。しかし、この専門家も高市氏も、Amazonなどの海外勢に比べて日本の国内メーカーが技術力で劣っていることを認めている。なぜ、こんな状態になってしまったのだろうか。
●ITゼネコンの市場寡占が日本のIT産業を衰退させた
 私は日本の国内メーカーがどんどん力を落としていった2007年から09年にかけて、この問題を集中的に取材したことがある。この問題は、メーカー側を取材してもその原因はなかなか見えてこない。むしろ、クライアント側に目を移すことによって問題の所在がはっきりと浮かび上がってくる。当時の取材現場からわかりやすい事例を二つほど挙げてみよう。2000年7月、国税庁システム構築の入札で驚くべきことが起こった。最終的に61憶円の契約となったが、当初NTTデータがわずか1万円で応札してきたのだ。いったんシステム構築の仕事を取れば、以後の随意契約で高値の改修作業を取り続けることができるからだ。NTTデータのこの入札はふざけたやり方だが、このころ日本の大手IT企業はやはりそれぞれの縄張りを確保しようと躍起になっていた。経済産業研究所の報告によると、2001年度の政府調達ではNTTや日立製作所、NEC、富士通の4大グループで6割、これに東芝や日本IBMなどを加えた10大グループで8割を受注していた。これら大手グループのトップ企業は2次下請け、3次下請けなどの多重構造ピラミッドの頂点に君臨しているため、土木建設業界のゼネコン企業にちなんで「ITゼネコン」と呼ばれている。このITゼネコンの市場寡占こそ、日本のIT産業が衰退していく最大の要因となった。2001年4月、日本総合研究所から長崎県にひとりのシステムエンジニアが出向してきた。同県の最高情報責任者(CIO)に就いた島村秀世氏だ。島村氏は当初建設業界のゼネコンで電算業務を担当していたが、日本総研に移って金融機関の電算化を手掛けた。だが、子会社へ出向していた時に、技術力があっても中小IT企業はなかなか受注できず、ブランド力だけで受注していくITゼネコンのやり方に疑問を感じていた。国税庁システムを1万円入札で落としたNTTデータのやり方は極端な事例だが、当時のITゼネコンは縄張りを築くためにかなり貪欲な姿勢を見せていた。このため、自治体からのIT調達改革を目指していた長崎県の呼びかけに「大喜びで飛びついた」(島村氏)。私が長崎県庁に島村氏を訪ねた時、彼の「実績」のひとつが真っ先に目に飛び込んできた。長崎県の観光案内映像などを流すディスプレイのコンピューターは地元業者が県内の電器店で買った部品で作り上げたもので、製作費は70万円。ITゼネコンに発注すれば300万円程度は取られた。島村氏はまず県庁職員自身のIT知識向上を目指した。このため、職員全体の休暇システム作りを育児休暇から復帰したばかりの30代の女性職員に任せた。この職員は当初、パソコンでメールや検索ができる程度で、入門書からスタートしなければならなかった。しかし、地元業者と打ち合わせを重ねて半年後には設計書を完成させるまでにこぎつけた。第一歩から始めて職員全体のIT知識の水準もどんどん上がり、大手業者に依頼すれば数百万円かかりかねない少々のシステム変更などは職員自身がこなせるまでになった。このために長崎県全体のシステム製作費は年を追って低下し、地場企業の受注割合は増加していった。ITゼネコンはいったんシステム構築を受注すると設計仕様などのソースをクローズする。こうしておけばこのシステムには他社は入れず、翌年度以降の改修事業などは黙っていても随意契約で入ってくる。これは、自治体や国税庁などの中央省庁だけではなく、民間企業でも同じ構図だ。このクローズドソース体制に挑戦したのが長崎県であり、島村氏が率いる同県の職員たちだった。
●「韓国モデル」を下敷きにしたオープンソース
 もうひとつの事例を紹介しよう。沖縄県浦添市はITコンサルタント企業と共同して独自の業務システムを開発した。さらにこのシステムの設計図を公開して、他の自治体に共同管理を呼びかけた。このように設計や仕様を公開するやり方をオープンソース体制と呼ぶ。先のクローズドソース体制に対して、システム全体を社会の共有財産にしようという考え方である。こうしておけば、自治体や中央省庁のシステム構築は競争の下に置かれ、予算低廉化とITを中心とした社会全体の進化につながっていく。私が取材した2009年に稼働を始めた、地方税や国民健康保険、年金などの「基幹系」と呼ばれるシステムの発注価格は約8憶円で、ITゼネコンを使っていたころに比べて半分以下で済んだ。これを可能にしたのは2年間かけて実施した市役所の業務見直しだ。余計な手続きが減れば、それだけシステム構築費は安くなる。「なぜ、ここでその作業が必要なんですか」。見直し期間の間、コンサルタント企業の社員が市の職員の後ろにはりつき、一つひとつの作業の意味を洗い出し、作業の効率化を目指した。極端な例は、小中学生の保護者への就学援助だった。それまで申請から通知までに必要だった20もの作業をわずか二つの作業にまで減らせることがわかった。いかに無駄な作業をしていたか。すべての作業を見直した結果、システム費用が安くなっただけでなく、市職員も業務に習熟した。以前はシステム構築や補修をすべて大手ITメーカーに任せきっていたが、職員自身がシステムや市全体の業務を幅広く知るようになった。そして、この先進的な事例を考える上で欠かすことのできない視点は、このオープンソース体制は「韓国モデル」を下敷きにしたという点だ。浦添市のこの新システム構築を裏で支えていたのは、ITコンサルタントの廉宗淳(ヨムジョンスン)イーコーポレーションドットジェーピー社長だ。廉氏はソウルの工業高校を卒業後、韓国空軍で3年間、戦闘機のエンジン整備に携わった。除隊後、夜間大学でITプログラムを勉強し1989年に初来日。当時はIT先進国の位置にあった日本の企業でプログラム作成の仕事をした。1991年にいったん帰国し、97年に再来日するが、そのころから韓国はIT分野で日本を追い抜き始めた。再来日後ITコンサルタント企業を作り、病院関係のコンサルタントから佐賀市や佐賀県、青森市、そして浦添市など自治体のIT改革を手掛けた。「私は現代のIT朝鮮通信使を自任している。日本に韓国の方法を伝えたい」。廉氏は当時、私にこう語っていたが、現在IT分野では韓国は日本のはるか先に行ってしまった。同じ浦添市役所で、決済書類がいまどこの部署にあるか一目瞭然に見えるパソコンのディスプレイを初めて見た時、私は大変な驚きを味わった。便利なこの小システムを開発したのが韓国の若者が立ち上げた小さいベンチャー企業だと聞いて再び驚かざるをえなかった。
●「台湾のオードリー・タンは日本には出てこない」
 IT社会全体がオープンソース体制を取っているために若者のITベンチャー企業がどんどん出てきている。このためにIT社会全体のイノベーションが日々新たになり、韓国はIT五輪の世界で常にメダル争いを演じるまでに成長した。翻って日本は、ITゼネコンだけが、外界から閉じた秘密のソースの中でいつまでも随意契約で楽な儲け口を見出しているクローズドソース体制によって、技術のイノベーションは衰え、IT業界全体が没落の道をたどっている。韓国がメダル争いを演じている一方、日本は10位台から20位台をウロウロしているのが現状だ。「日本人は不思議なんですよ。自分たちは何か科学技術に非常に優れた民族で日本製品は素晴らしいと思っている。確かにそういう時代はあった。だけど、今や全然そうではない」。日本有数のセキュリティ設計専門家はこう言葉を継いだ。「日本製のコンピューターのモニターなんかもう存在しないですから。ぼくはここ20年、一貫してLGのモニターしか買っていませんが、やっぱりLGは素晴らしいですね」。LGエレクトロニクスはサムスン電子に次ぐ韓国電機業界のナンバー2。同社の液晶モニターのシェアは世界トップクラスだ。まだ日本のIT技術が世界トップレベルにあると思われていた2000年のころ、この専門家が韓国で講演したことがある。その時、会場の収容能力2000人のところを5000人が詰めかけ、講演の後半は質問攻め、ホテルに引き上げてからも韓国の自治体関係者が質問のために部屋に押しかけてきた。当時の韓国は日本のIT技術を吸収するためにそのくらい貪欲だった。ところが、今や韓国のIT企業のホームページを開くと、この専門家でも教わりたいくらいの技術が載っているという。「もう韓国には勝てないです。いや勝つ勝てないじゃなくて、もう日本はキャッチアップもできないでしょう」。専門家はこう話し、さらにこう続けた。「日本のITゼネコンには秀才が100人いるんですよ。だけど、秀才100人は一人の天才に勝てないんです。それがコンピューターセキュリティの世界なんです。日本ではみんなで天才の足を引っ張る。『お前は静かにしてろ』というわけです。だから、台湾のオードリー・タンは日本には出てこないんです」
●国内IT産業は消失の危機
 言葉を変えて言えば、クローズされた縄張りの中で随契の儲けを稼いでいくITゼネコンの世界では、「天才」の頭に閃くイノベーションはむしろ邪魔になる。オードリー・タンのいない日本のITゼネコンは、最初の政府共通プラットフォームの構築に失敗した。NTTデータが中心となって構築するはずだったが、2016年9月、会計検査院はあらゆる面で「不十分」と指摘した。さらに2018年には、利用実績がゼロだったために約18憶円かかったこのシステム自体をそのまま捨ててしまう事態にまで追い込まれた。昨年5月、この失敗の後を受けて、次期政府共通プラットフォームの設計・開発などの請負業務一般競争入札があった。落札したのはアクセンチュア。同社はAmazonのAWSの利用を前提に設計を進めていたようだ。この点は発表がないためよくわからないが、専門家によれば、Amazonのクラウド・コンピューティング・サービスによる次期政府共通プラットフォームの試験走行はすでに相当の距離を走っているのではないか、という。菅首相は9月25日、自治体のシステムについて、「全国一斉に迅速な給付を実現するため、25年度末までをめざし作業を加速したい」(9月25日付朝日新聞夕刊)と述べた。また、マイナンバーカードについても、2022年度末にはほとんどの国民が手にするよう、普及策を加速するように指示した。ここまで書けば、菅首相の頭の中はCTスキャンをかけたようにはっきり見えるだろう。つまり、菅首相が考えていることは、国内ベンダーはどこも頼りないから米国のAmazonに日本政府全体のIT基盤構築を全部やってもらおうということだ。そして、新政権最大の目玉のデジタル庁はその露払い役というわけだ。「みんなで黒船に乗って改革してもらおう。みんなで乗れば怖くない」。菅政権の本音の合言葉は恐らくこのようなものだろう。しかし、本当に「怖くない」のか。例えば、これまで政府共通プラットフォーム構築のイニシアティブを執ってきたNTTデータは今後確実に退いていく。同じように、他の中央省庁システムを担当していたITゼネコンの業務も確実に縮小していくだろう。確かに、これまで見てきたように、日本のITゼネコンの業容縮小は自業自得の面も少なくない。しかし、一国の経済政策、産業政策の側面から見れば、自前のIT産業全体の消失にまでつながりかねないこのような政策は、とても歓迎できたものではない。もっとはっきり言えば、21世紀の産業を引っ張るIT技術を自ら捨てるこの政策は、まさに亡国の政策だ。確かに長年続いてきた自民党政権はIT業界の構造的な重大問題に目をつぶり、問題を放置してきた。しかし、専門家や学者らが議論を重ねれば、日本のIT産業をきちんと守りながら業界全体に改革を促し、政府共通プラットフォームの構築についてもソフトランディングさせる方法が出てきたかもしれない。私は菅首相に問いたい。その道を模索する努力も払わず、黒船に乗ることを簡単に決めてしまったのはなぜなのか。

*2-2:https://digital.asahi.com/articles/ASN9Q40ZSN9LULZU00L.html?ref=hiru_mail_topix1 (朝日新聞 2020年9月23日) 第1回デジタル化の敵は「言うこと聞かぬ省庁」 3密も生んだ
 4連休初日の19日午後2時前、東京・虎ノ門の民間オフィスビルに入る内閣官房IT総合戦略室の会議室に、私服の官僚たちが集まってきた。菅義偉首相が目玉政策に掲げるデジタル庁創設に向けた、キックオフ検討会のためだ。具体化を任されたのは、IT業界にくわしく、安倍政権でIT担当相を務めた平井卓也デジタル改革担当相だ。「総理の指示は相当なスケジュール。素早く立ち上げ、小さく産んで大きく育てたい」。紺のポロシャツ姿の平井氏は、檄(げき)を飛ばした。菅氏は政権発足翌日の17日、平井氏に作業を急ぐよう指示した。休日返上となった19日の検討会にはオンラインを含めて20人ほどが参加し、議論は4時間に及んだ。「省庁がポストに人を送りこむのではなく、官民のデジタルを強くしたい人を集めた組織に」「法律で、各省庁への権限をしっかり持たせないと」「エンジニアはリモートワーク前提で」「国民から広く意見を寄せてもらおう」。冒頭以外は非公開で、お菓子をつまみながら、具体化に向けた課題や進め方を次々に出し合った。連休明けの23日には、すべての閣僚が出席する会議が首相官邸であり、菅氏が設置準備室をつくるよう指示を出す。来年は通常国会で法整備を進め、立ち上げまでこぎつけたい考えだ。菅氏がデジタル庁創設を急ぐのは、政権の売りにしたい「縦割り打破」の象徴となるからだ。新たに発足した菅政権はどういう政策をどのように進めていくのか。首相が重視する「菅印」の主な政策について、菅氏のこだわりの背景や課題を検証しつつ、今後の行方を探る。官房長官時代は、その縦割りの典型がマイナンバーカードにあると見ていた。「今年は、マイナンバーをやる」。2019年の1月初旬、菅氏は総務省や厚生労働省など省庁の幹部を急きょ集め、マイナンバーカードの普及策を考えて前進させるよう指示した。発行から3年たっても普及率が12%ほどの状況を、かなり気にしていたという。所管する総務省では、情報通信を担う旧郵政省系は前向きでも、地方自治体をみる旧自治省系は腰が重い。カードを健康保険証として使えるようにする作業も、厚生労働省の動きが鈍く、進んでいなかった。マイナンバーに限らず、省庁のデジタル化の取り組みの大半は、優先順位が低かった。そのつけはコロナ禍で、一気に噴き出す。一律10万円の給付では、窓口となる自治体と国のシステムの連携が悪く、オンライン申請をしても時間がかかった。医療や教育の現場でも、すぐにオンライン化への切り替えが進まない。さまざまな行政手続きで対面での確認やはんこを必要とし、「3密」回避の大きな障害になった。こうした課題に、デジタル庁はどのような体制で、何に取り組むのか。「デジタル敗戦から立ち上がる」「既存の役所とは一線を画す」と強調する平井氏は、最新の知見を持つエンジニアなど、民間の人材も多く登用する考えだ。マイナンバーカードは使える行政サービスを広げる。省庁でばらばらのシステム調達をまとめ、医療や教育などあらゆる分野のデジタル化の予算を集約する。自治体のシステムの共通化を進める。そんな構想を描く。最大の課題は、それぞれの省庁に実行を迫る強い権限と予算、人材を集約できるかどうかだ。「横串を通す」作業は、関連する仕事と予算と定員の削減につながり、省庁や関連業界は強く抵抗する。政府のデジタル化の「司令塔」としてはIT総合戦略室があるが、「いまは予算がほとんどなく、単なるアドバイザー。省庁は言うことを聞かない」(内閣官房幹部)のが実態だ。新組織が二の舞いとなれば、実行力は乏しくなる。「(政権の方針に)反対するのであれば、異動してもらう」。菅氏はこう明言して、これまでも反対を抑え込んできた。ただ、社会全体のデジタル化は、力ずくだけでは進まない。「デジタル化のかぎ」と位置づけるマイナンバーカードには、オンライン上で本人確認ができるICチップがついている。これを活用し、今後さまざまな情報とひもづけて使い道を広げていくと、便利にはなる。一方でカードを通じて情報が漏れるのではないか、政府があらゆる情報をのぞくのではないか、との懸念は強まる。情報漏れを防ぐ対策とともに、国民からの信頼を得る丁寧な説明が欠かせない。デジタル化に不慣れな人や使いこなせない人を、どう手助けするのか。高齢社会で新たな格差をつくらないためのきめ細かな対応も、求められる。

<日本の農業について>
*3-1:https://www.agrinews.co.jp/p52065.html (日本農業新聞 2020年10月6日) スマート化で何をする? 新技術が経済格差に 特別編集委員 山田優
 スマート農業が花盛りだ。本紙には無人の農業機械が畑を走り回り、ドローン(小型無人飛行機)や衛星から送られた情報に従って耕したり収穫したりする事例が、全国各地で登場する。農水省のウェブサイトによると、「ロボット技術やICTを活用して超省力・高品質生産を実現する新たな農業」がスマートな農業だという。高齢化や過疎で農村の人手不足が深刻な中、魅力的に見えるのは確か。省力化と品質向上の一石二鳥になるのであれば、期待されるのは当然だ。厳しさが強調される農業で、数少ない明るい話題といえる。政府のスマート農業関連予算は拡充されている。デジタル化に熱心な菅政権でさらに農業のスマート化が進むことは確実。目指すのは農家がいち早くスマートになって競争力を高めることだ。この場合の競争相手は、国内の他産地や輸出先の競合国などだろう。政府のスマート農業は、安倍前政権から続く攻めの農政とぴったり歩調を合わせている。成長するには競争するしかない。他人を蹴落としてでも強い農業を目指しなさいというわけだ。新しい技術は私たちの暮らしや経営を便利にする一方で、社会のひずみを広げることもある。ここ数十年の間に、世界中でITが浸透した。インターネットやスマートフォンがない生活はもはや想像しにくい。半面で社会の経済格差は大きく広がった。ITをスマートに利用するごく一部の企業や富裕層が巨万の富を独占し、一方で多くの貧困層が生まれた。新自由主義的なさまざまな規制緩和と、ITの発展が結び付き、競争の勝者だけがおいしい思いをできるようになったからだ。農業でスマートな技術がもてはやされ、気が付いたら農村に取り返しのつかない経済格差が生まれることはないだろうか。人影のない田んぼで、無人トラクターとコンバインが走り回る。収穫した米は自動で乾燥調製機に運び込まれる。経営者の命令で全ての作業を指示するのは人工知能(AI)。従うのは地元の補助要員か海外からの研修生。一つ一つの技術を見れば便利で営農に役立つものばかり。だが、こんな風景の中、一握りのスマートな経営者が、戦前の地主のように「旦那さま」として農村を歩き回る姿は見たくない。

*3-2:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO48973690U9A820C1X11000/ (日経新聞 2019/8/26) COOLジャパンが世界を変える 進化する冷凍・冷蔵技術
 ニッポンの冷凍・冷蔵技術に熱視線が注がれている。米国で生まれた急速冷凍の技術が、食材のおいしさにこだわる日本で鍛えられて、その進化が止まらない。鮮度を保ったまま冷凍できる新技術が登場し、農水産物の加工や小売り、外食などで新たなビジネスが広がっていく。冷食市場が広がる新興国ではコールドチェーン(低温輸送網)構築の動きも加速する。世界の食の未来を激変する潜在力を秘める「COOLジャパン」の最前線を追いかけた。「本当に冷凍されたシイタケの香りなのか。ありえない」。中国工商業連合会の幹部は、手に取った冷凍シイタケを鼻に近づけると驚きの声を上げた。数年前に冷凍されたメロンやホウレンソウなども次々と試食すると、興奮気味に呼びかけた。「生と変わらないみずみずしさ。中国でもっと話しを聞かせて欲しい」
■水の分子を振動
 7月20日、同連合会の「日本低温物流視察交流訪問団」の22人が訪れたのは、千葉県流山市にある冷凍技術のアビーの本社。お目当ては大和田哲男社長が発明した冷凍システム「CAS」だ。「セル・アライブ・システム」の略で、凍結時に細胞を生かしたまま素材を冷凍できる。素材本来がもつうまみや香りなどを長期間保てる。これまでの急速凍結装置は、セ氏マイナス40~50度の冷風を素材に直接吹き付けて凍らせる。このとき、水の分子が集まった氷の結晶が表面で膨張し、素材の細胞組織を破壊して、うまみや香りなど素材の質を劣化させていた。肉や魚を解凍し、素材から汁がにじみ出る「ドリップ現象」が起きるのはそのためだ。CASは急速凍結機に組み合わせて使う。独自装置で凍結機のなかに磁界を発生させて、微弱な電流で素材に含まれる水の分子を振動させ、表面の氷の成長を抑える。素材と水の分子の凍結点を同期させ細胞を壊さずに凍らせる。大和田氏は「細胞破壊がないため、素材の新鮮さをいつでも再現できる」と胸を張る。大和田氏は1973年、不二製油と生クリームを使ったケーキの凍結と解凍に世界で初めて成功した職人として知られる。その技術力に目を付けた細胞医学者が細胞や臓器、血液などへの応用研究を大和田氏に働きかけ、CASの開発につなげた。2004年に第1弾のCASフリーザーを発売し、今では世界22カ国で使われている。まだまだ進化中だ。「冷凍食品の父」と言われる米実業家のクラレンス・バーズアイ氏は1920年代に急速冷凍した食品を発案し、食の世界に革命をもたらした。
■安心とおいしさを両立
 それから約1世紀。大和田氏は凍結速度の進化が中心だった「クールテック」に創造性を加えた。画期的なイノベーションとしてCASを特集した米経済誌フォーブスは、大和田氏を「ミスター・フリーズ」と評した。大和田氏は現在、大半の時間を海外食品メーカーの担当者との接客に費やす。6月に米ウエスト・バージニア州のエドワード・ガンチ商務長官が大和田氏を訪ね、米国の農産物の輸出拡大の切り札としてCASを求めた。大和田氏は「世界で勝負できる手応えを感じ始めた」と語る。米国発祥の技術が日本で独自の進化を遂げた。ニッポン発のクールテックが食の世界で新たな風を吹かせている。冷凍船で世界シェア8割以上を誇る産業用冷凍機大手、前川製作所の高橋繁執行役員は「とれたてのおいしさを求める消費者に鍛えられた」と説明する。日本の冷凍・冷蔵技術は、まずマグロなどの水産物加工の保存に用いられ、冷凍食品に広がった。前川製作所も顧客のニーズに合わせて、技術を発展させてきた。おいしさだけが魅力ではない。人手不足やフードロス(食材廃棄)などの課題解決に一役買う。「ヤシノミ洗剤」で知られるサラヤ(大阪市)は、中小の食品加工場の衛生管理を向上するため、急速凍結機に着目した。大きな食品工場が導入する大型機は充実しているが、小型な凍結機は少なかった。中小に急速凍結機が入れば「加工食品を保管しやすくなり、フードロスや人手不足を解消できる」(食品衛生部の脇本邦裕副統括部長)
■液体は速度の20倍
 サラヤは洗浄機や消毒器など食品衛生分野における商材やコンサルティングなどを主力としている。「衛生管理に人を回せない」。そんな声を聞き、独自の急速液体凍結機「ラピッドフリーザー」を開発した。ラピッドフリーザーはエタノールを用いた専用冷凍液で素材を急速凍結する。洗剤で培ったアルコールのノウハウを生かし、不純物が少ない冷凍液の開発につなげた。一般の冷凍機と比べて、冷凍速度は約20倍になる。冷凍速度を速めて、氷の結晶を小さくし、食材の細胞破壊を抑えられる。外装殺菌したパックに加工した素材を詰め、冷凍液をくぐらせるため、より効率良く保存し、配送もしやすくなる。加工業者は一括仕入れ・調理が可能となる。青果仲卸を手掛ける泉州屋(大阪市)は、ラピッドフリーザーを卸売市場に導入し、冷凍商品開発のラボを開設した。味は良くても小売りに卸せない規格外品、完熟直前の廃棄対象といった食材の保存にも活用する。サラヤは泉州屋からそうした果物や野菜を調達し、スムージージュースとしてサラヤの店舗で販売し、フードロスの活動を展開している。20年6月には食品加工業者に国際基準である「危険度分析による衛生管理(HACCP)」に基づく衛生管理が義務化される。サラヤ食品衛生部の中田慧悟係長は「冷凍技術で食の安心安全とおいしさの両立を提案していく」と語る。磁石と電磁波に冷風を組み合わせ、ドリップ現象を防ぐ「プロトン凍結機」を展開する菱豊フリーズシステムズ(奈良市)。食材を長期保存し、長距離輸送できる冷食に強みを持つ。同社は沖縄県うるま市に冷食の製造・販売などを手掛けるアンリッシュ食品工業を15年に設立。冷食のセントラルキッチン(CK)機能を備え、伊勢丹新宿本店などにプロのシェフが手作りした凍結総菜を供給している。菱豊の弓削公正営業統括部長は「冷凍機だけでなく、冷凍素材の最適な調理法も研究している」と話す。「アンリディッシュ」という手作り冷凍総菜ブランドを今年から本格展開する。日本各地の産地と組み、長期保存できる冷食の利点を生かし、全国津々浦々に高品質な食材を届ける。国連は60年にも世界の人口が100億人を超えると予測する。アビーの大和田氏は「食糧難を防ぐため、冷食を世界で広げる」と誇りを感じる。
■「COOLジャパン」戦略が世界を席巻
 クールテックは農水産業、畜産が抱える題を克服する力を持つ。「いつまでも自動車に頼れない。冷凍・冷蔵技術で農水産業を競争力ある産業にしたい」(大和田氏)。日本企業が展開する「COOLジャパン」戦略が世界を席巻する。日本では手抜きのイメージが強かった「レン(ジで)チン」が、ひと味もふた味も違った味を引き出している。クールテックの進化によって、冷食の商品力を格段に上げた。味や食感のレベルを保ちながら、保存料なども使わず食卓で楽しめる。小売店の売り場や外食の現場でも存在感を増しており、人手不足やフードロスなど流通業界が抱える課題を溶かすパワーをみせる。フォーク越しに伝わるふわりとした感覚。口の中に運ぶとしっとりとした柔らかさの後にじんわりと甘さが広がる。「ギャザリング テーブル パントリー」(東京・中央)の「ベイクドチーズケーキ」(税別480円)は、39秒の「レンチン」を経た冷凍食品だ。チーズケーキだけではない。かむと皮のぱりっとした感触と肉汁があふれるチキンをはじめ、すべての商品が火と油を使わない厨房で生み出される。パントリーは「ロイヤルホスト」を運営するロイヤルホールディングス(HD)が17年に出店した実験店だ。パナソニックと共同研究で同社の新型機器を導入。セントラルキッチン(CK)で調理した冷蔵、冷凍食材を高い品質で提供できるようにした。店での仕込み時間はゼロ。清掃の労力も短く済む。ロイヤルHDとコールドチェーンには歴史的に深いつながりがある。実はロイヤルHDが1970年の大阪万博の会場で運営する飲食店で冷凍食品を活用し、外食産業でコールドチェーンの先駆けとなった。創業者の故・江頭匡一氏は米軍基地のコック見習いから身を起こし、米国の流通業界を支えていた冷凍技術に早くから着目した。当時、米国ではロサンゼルスとサンフランシスコ間でコールドチェーンが構築されていた。「ちょうど福岡県のCKから大阪と同じ距離。米国にできて、日本で実現できないわけがない」江頭氏は福岡県のCKから片道8時間の冷食の輸送に踏み切った。万博の会期中は周囲が欠品を起こす中で料理を提供し続け、半年で11億円超の売上高を稼ぎ出した。ロイヤルHDで研究開発を担う野々村彰人常務は「多店舗展開の基礎を実証した転換点になった」と振り返る。
■新たな消費スタイルも
 コールドチェーンは70年以降の外食企業の興隆を下支えした。クールテックの進化は、人手不足などの難題に悩まされる外食産業にとっても次なる飛躍をつかむきっかけとなる。「冷凍技術は調理と消費のタイミングをずらせる。労働集約型の外食産業を変えられる」(野々村氏)。パントリーはその先兵だ。ロイヤルHDが冷食で狙うのが、食卓だ。ロイヤルホストでは17年秋ごろからカレー、シチューといったメニューを冷凍食品として販売。現在75店舗で展開している。野々村氏は「ロイヤルの味を店に来なくても家庭に届けられれば新たな市場ができる」と自信をみせる。クールテックが「外食」と「内食」の垣根も崩しつつある。食卓に食品を届けるのが冷凍食品専門店「ピカール」だ。品ぞろえは約350種。有機野菜を使った「Bio野菜のラタトゥイユ」(735円)のような手軽なおかずから、「サーモンのパイ包み焼き」(3219円)のようにパーティーに出るような本格的な料理まで、レンジやオーブンで温めるだけで楽しめる。仕事を抱える女性を中心に人気が広がる。冷凍食品は品質の高まりに加えて、共働きの増加などライフスタイルの変化もあり、消費量はプラス基調が続く。日本冷凍食品協会(東京・中央)によると、18年の冷凍食品の国内消費量は289万トン。消費量は1人あたり22.9キログラムで08年から18%増えている。消費者アンケートでも週1回以上利用するとの答えが半数を超えた。新たな消費スタイルも生み出しそうだ。冷食売り場の拡大を進めているファミリーマートが今、照準を合わせるのは、「朝食」だ。コンビニの冷食といえば、帰宅時に夜食用に買われていた。商品・物流・品質管理本部で冷食を手がける栗原栄員氏は「朝食に冷食を広げるメニュー開発を進めている」と話す。例えば、冷凍サンドイッチをチンして食べられるようにする。チルドで時間の経過で出るぱさつきなどを抑えながら、翌朝でも食べられるようになる。「瞬間凍結できれば中食のメニューで冷凍商品で販売できないものはない」(栗原氏)。どの家庭も多忙なだけに、冷食朝食というカテゴリーが加われば、消費者も助かるというわけだ。ファミリーマートは冷食を成長領域に定め、約44億円を投じて、冷凍食品を増やした店舗を9月までに4000店にする計画だ。冷凍食品のケースは従来の3枚扉でなく4枚扉と大きくし、収容する商品のアイテム数を51から73に増やす。店舗運営の効率化、フードロス軽減にもつなげる。コールドチェーンの進化は、地場でしか味わえなかった食品流通も変えつつある。ホルモン専門店など約130店舗展開するい志井(東京都調布市)が鹿児島大学と共同で開発したのは、医療用に使われている溶液を活用した新たなホルモンの流通方法だ。鮮度劣化が早いホルモン。これまで解体から2日目までしか提供してこなかったが、11日目まで鮮度を保ち保存できるようになる。保存期間が延び、これまで1割ほどだったホルモンの廃棄率がゼロになった。関東圏の食材しか仕入れられなかったが、畜産県である鹿児島とも取引できるようになった。鹿児島ではホルモンを消費しきれず廃棄されるケースも多かったが、同社の保存技術で都市圏への出荷が可能になった。冷食市場はグローバルでみても成長分野だ。英調査会社ユーロモニターによると世界の冷凍食品の市場規模は18年に1193億ドル。5年で12%増の1339億ドルまで拡大する見通し。フードロス削減や厨房・加工場の省力化、流通コストの圧縮など、日本の食の現場で日々蓄積されているクールテックのノウハウは、これからの成長産業の隠し味となる。

*3-3:https://www.agrinews.co.jp/p52069.html (日本農業新聞 2020年10月6日) [滋賀・JAこうか移動編集局] 「忍者の里」動く ドクダミ産地化 手間かからず“半永久的”
 滋賀県のJAこうかは、薬草として知られるドクダミの産地化に力を入れている。一度植えると半永久的に収穫できて毎年定植する必要がない他、茶の刈り取り機が使えるなど、手間がかからない点に着目。耕作放棄地中心に導入し、農地再生につなげたい考えだ。JA管内は薬の扱いにたけていたとされる甲賀忍者ゆかりの地。かつて得意とした薬草の産地化に“忍者の里”が動きだした。
●放棄地解消へ一手
 ドクダミはハート形の葉が特徴の多年草で、全国に分布する。開花期の葉と茎は薬効の多さから「十薬」と呼ばれ、利尿や消炎の作用の他、便秘にも効果があるとされる。古くから民間療法に使われ、日本三大民間薬の一つに数えられている。現代でもドクダミ茶の原料に使われるなど、健康志向の消費者を中心に人気を集める。JAは2019年に産地化に乗り出した。JA営農経済部の上田典孝次長は「管内の遊休農地が200ヘクタールを超え、何とか活用できる作物はないかと模索していた」と振り返る。
●茶どころ強み収穫機を転用
 決め手となったのは、栽培に手間がかからない点だ。ドクダミは多年草で、苗を一度植えると「半永久的」(上田次長)に収穫できる。さらに、茶の刈り取り機を転用することで収穫を機械化できる。全国有数の茶産地を抱えるJAならではの強みを生かすことができた。他にも、ドクダミは湿地でよく育つため、耕作放棄地のほぼ全てが水田だったことも有利に働いた。JAの栽培モデルでは、1年目の4月ごろに苗を定植、2年目から収穫が可能となる。収穫は夏と秋の2回で、収穫後は追肥をする。鍵を握るのは雑草対策だ。JAによるとドクダミには使える除草剤がなく、手作業で取り除くしかない。昨年から5アールで栽培する大平啓治さん(70)は「定植後に小まめに雑草を取り除き、いかに密に生育させるかが重要となる。ドクダミが定着すれば、雑草は次第に生えにくくなる」と強調する。JA管内の20年の栽培面積は、前年(10アール)の4倍に当たる37アールに広がった。収穫されたドクダミはJAが全量を集荷し、茶などの加工品の原料向けに出荷する。上田次長は「今後は雑草対策や施肥体系を確立し、10アール5トンの収量を目指す。ドクダミ栽培を耕作放棄地対策の柱の一つにしたい」と、意気込みを見せる。
●伸びる 国産需要
 日本特産農産物協会によると、国内のドクダミ栽培面積は、データがある直近の18年産で666アール。16年産まで長らく200アールを切っていたが、17、18年産で急拡大した。県別では、兵庫(253アール)と徳島(250アール)での栽培が盛んで、両県で全体の8割近くを占めている。農水省は「(ドクダミを含む)薬用作物は全般的に国産の需要が伸びている」(生産局)と指摘する。

*3-4:https://www.agrinews.co.jp/p52337.html (日本農業新聞論説 2020年11月7日) 農作物の過剰在庫 国産回帰運動を総力で
 新型コロナウイルスの流行で、小豆や砂糖原料など需要が減った作物の産地が過剰在庫に苦慮している。産地は、新たな需要の創出や輸入品からの需要の奪還に向けて、加工・販売業者や自治体と連携し需要拡大に取り組む必要がある。過剰在庫が滞留し続ければ地域経済にも影響する。国の支援も必要だ。国内の小豆収穫量でシェア9割を占める北海道。ホクレンによると、昨年10月から今年9月の道産の年間消費量は4万560トンと、平成以降で最低だった。コロナ禍で、土産物や手土産用の和菓子の売れ行きが悪化したためだ。3万2466トンが在庫となり、繰り越された。土産物需要の落ち込みで、砂糖も過剰在庫が発生。原料のテンサイやサトウキビは北海道や沖縄には欠かせない地域の基幹作物だ。過剰在庫が続けば、需給を長期に圧迫してしまう。早く手を打たなければならない。需要拡大に産地は懸命だ。テンサイの主産地、JAグループ北海道は、昨年から「天下糖一(とういつ)」プロジェクトと銘打ち、人工甘味料や加糖調製品などに奪われた需要を取り返すため、イベントやインターネットの活用などで多様なPRを展開。コロナ禍の今秋も、札幌市近郊の銭湯で、砂糖を使った入浴剤を入れた「砂糖のなごみ湯」イベントを行った。また、ホクレンは十勝、オホーツク地区のJAや農家にも呼び掛け、小豆をはじめ道産豆類を使用した和菓子の購入や、菓子メーカーなどと連携した商品開発など、需要拡大に積極的に取り組んでいる。しかし、産地だけでの需要拡大策には限界がある。卸や和菓子業界などとの連携を国も後押しし、“国産回帰運動”の裾野を広げなければならない。また、生産者の作付け意欲が減退しないような振興策や、安心して輪作体系に組み込める契約栽培への支援なども必要だ。小豆は台風の被害などで作付面積が減っていたが、国産を望む和菓子業界などの声を受け、北海道の産地の努力で増産してきた背景がある。ここで作付けが減れば、コロナ禍が収束し需要が回復しても、すぐに増産できるわけではない。この機会に、国産の需要を増やすことが重要だ。酒米などさまざまな産地が同じ状況にある。参考となるのがソバだ。販売が激減する中、日本一の産地、北海道・JAきたそらちは、製粉業者や地元自治体と連携し、輸入品を使っていた大手外食店やコンビニに働きかけ、2000ヘクタール分の販路を新たに確保、過剰在庫の解消にめどをつけた。農水省の国産農林水産物等販売促進緊急対策を活用した。製粉業者は「一産地だけでなくソバ業界全体が国産志向になるきっかけとなっている」とみる。同対策の対象は一部品目に限られる。需要奪還と生産安定へ国は多くの農作物の在庫を把握し、中長期的な視点で支援を強化すべきだ。

<あまりにも生物学を理解していない政治・行政・メディア>
PS(2020年11月18日追加):立教大学経済学部特任教授の金子氏が、*4-1のように、①徹底的にPCR検査を行い、隔離・追跡・治療するという基本的対策をなおざりにした ②人口100万人当たりの検査数は、219の国・地域で日本は150位前後 ③徹底的に検査しなければ無症状者を見逃し、そこから感染拡大する ④人口100万人当たり死亡率は15人と、中国・韓国・台湾など東アジア諸国の中で突出して高い と書かれており、同意見だ。特に、④について、欧米人と東アジア人は獲得免疫が異なるのに日本の死亡率が東アジア諸国の中で突出して高いのは、①②③の政策が誤っていたからにほかならない。その政策の誤りの結果、国民は自粛を余儀なくされ、経済が縮小し、政府は財政支出を増やして給付金をばら撒かざるを得なくなり、2020年度の財政支出は3次補正まで合わせると約190兆円にもなる。そして、その財源は日銀の金融緩和で、貨幣価値を下げて物価を上げるため、国民生活をさらに圧迫しているのだ。
 さらに、*4-2の種苗法改正案は、優良品種の海外流出を防ぎ、開発者の権利を保護することが目的とされているが、④登録品種の自家増殖に許諾制を導入する ⑤これは、農家の種や苗を次期作に使う国際的に認められた農家の「種の権利」を害する ⑥現行法でも自家増殖した種苗の海外への持ち出しは違法で、登録品種全般を許諾制にする理由はない というのに、私は賛成だ。その理由は、農家も種や苗を次期作に使いながら品種改良しているため、これを禁止すると農家の権利を奪うだけでなく、作物の改良をも阻害するからだ。また、この改正案は、種苗開発者の権利を少しは守るかもしれないが、優良品種の海外流出を止める根本的解決とはならず、日本の農家の権利を害するだけだからである。
 このように、生物系の事象に関する判断にはあまりに誤りが多いので、私は、政治・行政・メディアの担当者は、MITの全学生が学び全米の学生が絶賛する「大学生物学の教科書(D.サダヴァ著、石崎泰樹・斎藤成也監訳)、1~5巻」を読んでおくのがよいと考える。理系だけでなく文系の人も読むべき理由は、バイオの最先端を理解して政策を誤らず、社会に余計なストレスを与えずに、バイオ関係の研究や創薬を助けたり、正確に伝えたりできるようにするためだ。

   
2020.11.14毎日新聞  ジョンズホプキンズ大学・藻谷氏 コロナウイルスの発祥地など

(図の説明:左図のように、日本では感染者数のみを出して騒いでおり、検査の母集団が変化しているのに、母集団から見た死亡率は出していない。また、中央の図のように、西太平洋諸国の人口100万対累計死亡者数は低いが、誤った政策により日本だけ増加が止まらなかった。そして、西太平洋諸国の人口100万対累計死亡者数が低い理由は、右図のように、普段からコロナウイルスに暴露されており、人体も免疫や遺伝で対応しているからだと思われる)

*4-1:https://www.agrinews.co.jp/p52415.html (日本農業新聞 2020年11月16日) コロナ禍の経済政策 格差生む調達改めよ 立教大学経済学部特任教授 金子勝
 新型コロナウイルスの感染第3波が来た。ウイルスの変異が激しく、周期的に押し寄せてくる。非常に厄介なウイルスだ。ところが、徹底的にPCR検査を行い、隔離し、追跡し、治療するという基本的な対策をずっとなおざりにしてきた。人口100万人当たりの検査数は、219の国と地域の中で日本は150位前後。他方で、100万人当たりの死亡率は15人と、中国、韓国、台湾などの東アジア諸国の中でも突出して高い。
●危うい日銀頼み
 徹底検査をしなければ、無症状者を見逃し、そこから感染が拡大する。自粛をすると感染者数が減り、経済活動を再開すると感染者数が拡大する。政府はジレンマに陥っている。そして、ひたすら財政支出を増やして給付金をばらまくだけになる。実際、2020年度予算は約102・6兆円の大規模予算だったが、2次にわたる補正予算を加えると、約160兆円に達する。さらに、また30兆円規模の第3次補正予算を編成するという。だが政府は、どのように巨額の財政支出の財源を調達しているのか。それは日銀による赤字財政のファイナンスによる。しかし、日銀は8年近くも国債買い入れによる金融緩和策を続けてきたため、年間購入予定とした80兆円の国債を買えなくなっている。実際、17年は約30兆円、18年は約29兆円、19年には約14兆円弱まで購入残高が落ちている。¥一方で、補正予算の際に、政府は銀行、地方銀行、信用金庫に実質無利子・無担保の貸し付けをさせる企業金融支援を決めた。日銀は、それを支えるために、企業や個人の民間債務を担保にして、日銀はこれら金融機関に対してゼロ金利の貸付金を大量に供給し始めた。その金額は約60兆円にも及び、20年11月段階で約107兆円の貸付残高に達している。その結果、日銀は売るに売れない国債、株、社債、CP(コマーシャルペーパー)を大量に抱え、戦時財政・戦時金融と同じく“出口のないねずみ講”のような状況に陥っているのである。
●株価好調の裏で
 しかも、日銀がリスク管理の弱い貸付金という過剰流動性を大量に供給したことで、コロナ禍にもかかわらず、バブルが引き起こされている。株価も2万5000円台に急上昇し、今年5月に8割以上も落ち込んだ首都圏マンションの販売が、6月から急速に回復し、7月には前年水準を上回った。それは、猛烈な格差拡大をもたらす。コロナ禍で多くの倒産、休廃業、そして雇い止めが引き起こされる一方で、富裕層は資産バブルの恩恵を受けるからだ。その上、やがてバブルが崩壊した時に、弱小金融機関だけでなく、民間債務担保を日銀に付け替えているので、日銀信用を大きく傷つけていくだろう。経済政策は根本的に間違っている。徹底検査による抜本的コロナ対策とともにエネルギー転換を突破口とする地域分散型の産業戦略が不可欠になっている。
*かねこ・まさる 1952年東京都生まれ。東京大学大学院博士課程修了。2000年から慶応義塾大学教授、18年4月から現職。著書に『金子勝の食から立て直す旅』など。近著に『平成経済 衰退の本質』(岩波新書)。

*4-2:https://www.agrinews.co.jp/p52414.html (日本農業新聞 2020年11月16日) 種苗法改正案 保護と権利 バランスを
 今国会で審議中の種苗法改正案は、優良品種の海外流出を防ぎ、開発者の権利を保護することが目的である。一方で、登録品種の自家増殖に許諾制を導入することには、疑問や異論もある。知的財産の保護と農家の「種の権利」のバランスをどう取り、農業振興につなげるか、徹底審議を求める。同改正案は先の通常国会に提出されたが、新型コロナウイルス対応などで審議時間が取れず、今国会に持ち越していた。衆院で本格審議が始まったが、改めて論点も見えてきた。改正の背景には、日本が長年にわたって開発してきたブランド品種の海外流出問題がある。現行法では、正規に販売された種苗の海外への持ち出しは禁じられていない。改正案は、品種の開発者が、輸出先や栽培地域を指定できるようにし、違反した場合に育成者権の侵害を認定し刑事罰を問いやすくする。こうした市中流通ルートに加え、農家の自家増殖にも許諾制の規制をかける。現在は登録品種であっても農家は原則自家増殖ができる。種や苗を次期作に使うことは国際的にも認められた「種の権利」である。現行法でも自家増殖した種苗の海外への持ち出しは違法だが、なぜ登録品種全般に許諾制の網をかけるのか。農水省は、品種開発者が増殖の実態を把握することで、流出時に適切な対応ができると説明。違法流出の立証が容易になり、刑事罰や損害賠償請求をしやすくなるとも指摘する。あくまでも流出防止のための規制で「種の権利」に対する侵害ではないとの立場だ。だが、許諾制による管理強化がどれほど流出防止に実効性があるのか、国会審議を通じてさらなる説明が必要だ。欧米では、登録品種であっても主要作物の一部に自家増殖を認めるなど例外規定がある。日本でも柔軟な対応を求めたい。流出防止の核心は、同省も認めているように輸出国での品種登録だ。海外での品種登録はコストや申請手続きなどハードルが高い。同省は登録経費の支援などを行っているが、海外での育成者権の行使に向け包括的な支援の充実こそ急務だろう。農家が不安を抱く自家増殖の許諾料について同省は、営農の支障になる高額な設定にはならないと説明する。民間種苗会社も農研機構や都道府県の許諾料水準を参考にすると指摘。品種の太宗はこれまで通り自家増殖ができる一般品種であり、経営判断で選択できるとして不安を打ち消す。だが企業による種苗の寡占化が進めば、将来負担増にならないと言い切れるのか。許諾料の上昇に対する歯止め規定も検討すべきだ。許諾手続きの事務負担が増えないよう簡素化や団体代行も進めたい。改正案は「食料主権」に関わる内容を含むだけに、幅広い利害関係者の意見もくみ取りながら、将来に禍根を残さない慎重かつ徹底した審議を求める。

<日本における製造業の落日と技術の喪失>
PS(2020年11月21日):*5-1は、「①パナソニックは2021年3月期の連結営業利益率が2%台と低迷」「②パナソニックの不振は、『選択と集中』が進まなかったため」「③EV向け電池は大口顧客テスラの成長スピードについていけなかった」「④大阪本社を移転するようなショック療法も検討しなければいけないのではないか」「⑤電機産業は自動車と並ぶ日本の2本柱だったが、韓国サムスン電子などに水をあけられている」等と記載している。
 しかし、②のように「選択と集中」を進めれば、⑤のサムスンだけでなく、中国や欧米のメーカーにも負け、日本の家電メーカーはなくなる。現在、家電量販店に行って電気製品を探せば、日本の有名ブランドはパナソニックしかない。そして、製造しない国には技術がなくなるため、国民が求める製品を作れず、修理もできなくなる。これは何がいけなかったのかと言えば、国として構造改革を行わず、高コスト構造のまま、①のように、「連結営業利益率が2%以下の事業は止めるべきだ」などという傲慢な評論をしたことだ。これでは、株主の利益率は一時的に上がったとしても、日本には製造業がなくなるのであり、④のようなショック療法を乱発すると、これまであった産業集積や技術も失う。さらに、③は先見性があったが、国内でEVがこき下ろされていたため、経営陣が今一つ本気になれず、誤った経営意思決定をしたのではないかと思う。つまり、政府やメディアが間違った誘導をすると、それを情報源とする人が誤った判断をするので、気を付けるべきなのだ。
 なお、電機産業と自動車は日本の2本柱だったが、*5-2のように、自動車も、中国が世界の輸出拠点になってきている。中国は、早くからEVの普及に向けた規制でバッテリー等の関連部材企業を集積し、サプライチェーンの整備も進んで、販売・生産の両面で世界を主導する「EV強国(=次の自動車強国)」として存在感を増しているのであり、日本は中国等が市場に参入する前はバッシングされていたが、今ではパッシングされる立場になっているのだ。私も、中国製で安価な上に、コンセプトやデザインの優れた欧州車が日本で市場投入されたら欲しいくらいで、こうなると日本は米国と同様、双子の赤字に悩まされることになる。

*5-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20201120&ng=DGKKZO66428700Z11C20A1EA1000 (日経新聞社説 2020.11.20)明暗が分かれたソニーとパナソニック
 パナソニックが9年ぶりとなるトップ交代を決めた。2022年には持ち株会社にも移行して低空飛行が続く業績の回復を目指すとするが、克服すべき課題は多い。ライバルのソニーは好業績が続いており、明暗がはっきり分かれた。パナソニックに求められる経営改革は、多くの事業を抱えたまま停滞する他の大企業に共通するものだ。12年にパナソニックの社長に就任した津賀一宏氏は、プラズマテレビからの撤退といった構造改革を進めて巨額赤字からの脱却を果たした。しかし、その後は収益の柱を絞り込めずに時間を浪費した。14年には「売上高で10兆円を目指す」としたが、わずか2年でこの目標を撤回。21年3月期の連結売上高は6兆5千億円と30年前と同じ水準に沈む見通しで、営業利益率は2%台に低迷するありさまだ。ソニーもテレビ事業などで大規模なリストラを断行したが、スマートフォン向け画像センサーと家庭用ゲーム機に集中的に投資した。18年3月期に20年ぶりに営業最高益を更新し、コロナ禍にもかかわらず足元の業績も堅調だ。パナソニックの不振は、幾度となく指摘されてきた「事業の選択と集中」が進まなかったことに尽きる。低迷するデジタル家電事業を引きずり、力を入れるとした電気自動車(EV)向けの電池でも大口顧客の米テスラの成長スピードについていけずに追加の投資に二の足を踏んだ。21年6月に新社長に昇格する楠見雄規常務執行役員は、歴代トップが繰り返してきた中途半端な改革では抜本的な再建は難しいことを認識する必要がある。競争力のない事業を見切り、成長領域へ果敢に攻め入るべきだ。過去との決別を明確に示すためには、大阪の本社を移転するようなショック療法も検討しなければいけない状況なのではないか。一方のソニーも1990年代に参入したゲーム事業への依存が強まっており、新たな事業の育成では大きな課題を残したままだ。もう一段の成長には、時代を先取りする製品や技術を生み出す努力が欠かせない。電機産業は自動車と並ぶ日本の2本柱だったが、近年では韓国サムスン電子などに水をあけられている。パナソニックとソニーには良きライバルとして、電機産業を再びけん引する役割を望みたい。

*5-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20201121&ng=DGKKZO66521020R21C20A1MM8000 (日経新聞 2020.11.21) 中国産EV、輸出始動、テスラ・BMWまず欧州へ 部材集積生かす
 中国が電気自動車(EV)の世界への輸出拠点になってきた。米テスラや独BMWが2021年初めまでに中国から欧州にEVの輸出を開始。中国メーカーの輸出も弾みがついている。中国はEV普及に向けた新エネルギー車(NEV)規制(総合2面きょうのことば)でバッテリーなど関連の部材企業も集積。販売だけでなく生産面でも世界を主導する「EV強国」として存在感を増している。英LMCオートモーティブによると2020年1~6月の世界のEV生産台数66万台のうち中国が約4割の25万台を占め、米国(23%)や日本(2%)に差をつけた。1~6月の中国の自動車輸出は減少したが、EVを中心とするNEVは前年同期の2.4倍の3万6900台に拡大。輸出額は3.7倍の11億ドル(約1100億円)に伸びた。EVの輸出はさらに増えそうだ。BMWは遼寧省で生産する新型EV「iX3」を欧州に輸出し21年初めにも納車を開始する。米国への輸出も模索する。欧州への乗用車輸出は10%関税がかかり販売価格は約6万5000ユーロ(約800万円)。テスラも10月、上海工場で生産した「モデル3」を欧州へ送り出した。中国で民営自動車大手の浙江吉利控股集団傘下の電動車メーカー、ポールスターは欧州や北米にEV「ポールスター2」の輸出を始めた。ポールスターの生産台数の多くは輸出向けだ。EVが市場の過半を占めるノルウェーで9月新車販売全体の3位に入った。新興勢も海外市場に狙いを定める。愛馳汽車は多目的スポーツ車(SUV)「U5」をフランスのレンタカー会社に500台販売したほか、年内にドイツやスイスでも販売する。小鵬汽車も9月に輸出を開始。ガソリン車では限定的だった先進国での中国ブランドがEVで浸透しつつある。中国はNEVの販売台数で19年まで5年連続で世界1位。工業情報化省によるとNEVで累計2兆元(約31兆円)超が投資され、サプライチェーンの整備も進んでいる。車載電池で中国最大手の寧徳時代新能源科技(CATL)がテスラなどEV大手に供給している。冷却部品の浙江三花智能控制や高圧直流送電リレーのアモイ宏発電声などもEVに欠かせないという。日本の自動車産業は裾野が広い部品や素材企業が支えてきたが、同様の産業構造をEVで中国が世界に先駆けて構築している。日本の自動車メーカーも中国でのEV生産に乗り出す。日産自動車は東風汽車集団と合弁でEVを生産・販売する。来年に稼働する湖北省武漢市の生産拠点で新型EV「アリア」を生産するが、当面は中国で販売する。ホンダは合弁ブランドEVを中国で生産・販売している。中国で生産を計画する自社ブランドのEVについては「(将来的に)他国への展開も視野に入れる」(ホンダ)。中国で拡大するEV生産の恩恵は日本の部品・素材企業にも及ぶ。EV用駆動モーターで世界大手の日本電産は中国での事業展開を強化。リチウムイオン電池の構成部材でシェアの高い旭化成や住友化学なども現地生産で取り込みを狙う。日米欧から中国を軸とした自動車産業の勢力図に変わりつつある。日本にとって基幹産業である自動車の輸出・生産に影響が出る可能性がある。

<政治・行政・メディアによる医療破壊>
PS(2020年11月22、25、27日、12月2、3日追加):*6-1は、「①団塊世代が75歳以上になり始め医療費が急膨張するので、非効率な医療供給体制の改革が必要」「②都道府県別の1人当たり医療費は最大4割近くの差が出ており、1人当たり医療費は病床数の供給が需要を作り出している」「③神奈川県はコロナ患者を症状毎に重点医療機関やホテル療養で対応し、病床数は最少でも県主導で効率的な体制を作った」「④日本の千人当たり病床数は先進国最高水準で米英の約5倍だが、春先の感染爆発時はコロナ患者をたらい回しにした」「⑤医療供給に無駄がある」「⑥自民党財政再建推進本部小委員会は、都道府県の医療体制へのガバナンス強化を求めた」「⑦新型コロナとの戦いで都道府県の体制整備責任に焦点が当たっている」「⑧国は都道府県に『地域医療構想』を作るように求め、過剰な急性期病床の削減を進めて在宅医療への転換を促してきた」「⑨都道府県は民間病院に病床機能の転換を促すことをためらう」等としている。
 このうち②は、都道府県により人口構成が異なるため、都道府県別1人当たり医療費が異なるのは当然で、それだからこそ75歳以上の人口が増えると医療費がかさむのであり、75歳以上の人に増える疾患は、癌・心疾患・脳血管疾患・誤嚥性肺炎・老衰などであって感染症ではないため、この記事は人口構成と疾病の関係もわかっていない人の主張であることがわかる。そして、①⑤のように、医療費がかさむからといって、団塊の世代を標的として受けられる医療の質を落とすのは、これまで保険料を支払ってきた人に対して不誠実だ。さらに、③は、神奈川県はホテルや大規模病院が多いため、効率的と言うより病状に応じた対応を取りやすかったが、地方には大規模病院は公的病院しかなくホテルも少ないため、⑦⑧⑨は言っていることが支離滅裂なのである。また、④は、ざっくり千人当たりの病床数しか見ていないが、疾病毎、治療方法毎、診療科毎に比較すべきだ。また、春先のコロナ感染爆発時に患者がたらい回しになった理由は、検査して感染者か否かを判別する方法が閉ざされ、防護服も足りなかったため、院内感染を恐れたという理由からだったと記憶している。なお、介護施設が足りずに社会的入院を余儀なくされている場合も、国に責任がある。つまり、⑥のように、あるべき医療体制を議論せずに、「医療は無駄」というところから出発している点が、すべての誤りの始まりなのである。
 NHKは、*6-2のように、新型コロナの1日毎の全国の新規感染者数・感染者の年代別割合・入院・療養中の人数・重症者数・死者数を報道しているが、このうち新規感染者数は検査数に比例して変わるので重視できない。確実で他の疾患と比較しやすいのは死者数だが、日本では、癌・心疾患・脳血管疾患による死者数より2桁少なく、インフルエンザによる死者数の2/3だ。メディアは、よく病床が逼迫すると報道しているが、(バチカン市国じゃあるまいし)重傷者が251人いると病床が逼迫するとは、日本の医療も地に落ちたものだ。近年、厚労省は何をやっていたのか。さらに、専門家と呼ばれる人が、いつまでも「(i)3密回避」「(ii)マスク着用」「(iii)消毒」「(iv)換気」などと小学校の補導の先生のようなことを言っているが、(ii)のマスク着用はほぼ100%なされており、(i)の3密は人口の集中しすぎによるもので、(iv)の換気は窓を開けなくても技術でクリアできる。さらに、公共の建物でも水道の水がチョロチョロで3秒毎に止まる設定にして濡らす程度にしか手を洗わせず、(iii)のように消毒液をすり込めばウイルスが全部死滅するかのように教えこむのは、不潔にも程がある。
 朝日新聞が、2020年11月24日、*6-3のように、「⑩厚生労働省に助言する専門家会議が、北海道・首都圏・関西圏・中部圏で感染者数が増加して入院者数が増加し医療が逼迫している」として「⑪『この状況が続けば通常の医療で助けられる命が助けられなくなる』と警鐘を鳴らした」と記載していたが、ダイヤモンドプリンセス号事件から9カ月も経過しているのに、最初の2カ月と同じことを言って国民に迷惑をかけていること自体が、助けられる命を助けようとしていない証拠だ。そのため、厚労省と助言した専門家が不作為の責任も取らずに、平気で国民にさらなる犠牲を強いているのは常識外れであり、もし「⑫自分たちはやるべきことはやってきたので、責任はない」と言いたければ、単に税金を原資とする大金をばら撒いただけでなく、他の先進国の検査・治療・ワクチン開発等の対応に見劣りしない対応をしてきたことを示すべきだ。100年前のスペイン風邪の時代とは異なり、現在はウイルス等のDNAを読んで検査することが可能な時代で、新型コロナウイルスにより検査方法も進歩したのに、日本は各リーダーがそれを理解することすらできず、科学に貢献もしなかったことを反省すべきだと、私は思う。
 なお、*6-4のように、福岡県は、北海道・首都圏・中部圏・関西圏のような騒ぎにはなっていない。その理由は、福岡市が、⑬PCR検査・抗原検査導入による検査の拡充 ⑭早期発見 ⑮軽症・無症状者の宿泊療養施設利用徹底による陽性者の隔離強化 ⑯*6-5のアビガン早期投与による治療という当たり前の医療を行っているからだ。初期に中国が公表した「無症状でも感染力がある」という新型コロナウイルスの特性を考えれば、⑬⑭⑮の必要性は明白だったにもかかわらず、厚労省はそのすべてを非常に不完全に行い、⑯については、米製薬会社開発のレムデシビルは承認したが、日本の製薬会社が開発したアビガンは未だ承認しておらず、まるで新型コロナ感染症を広げたいかのような対応をしている有様なのである。何故だろうか?
 2020年12月1日、*6-6のように、菅首相と小池都知事が緊急会談を行い、⑰重症化リスクの高い65歳以上の高齢者と基礎疾患のある人は東京発着の『GoTo トラベル事業』の利用自粛を呼びかけることで一致し ⑱これに先立って都内飲食店への営業時間短縮の要請も行われている。さらに、*6-7のように、野田聖子幹事長代行は、⑲新型コロナは原因不明で特効薬がないと主張しており、⑳立憲民主党は、緊急事態宣言を出す権限と財政的な裏付けを知事に与えるのが柱の新型コロナ特別措置法改正案を今国会に提出する とのことである。
 しかし、原因は、中国によって新型コロナウイルスだということがその遺伝子型とともに当初から公表されており(今は、そういう時代)、特効薬は軽症なら抗ウイルス薬のアビガン、重症なら治癒した人の抗体を含む血清であることが明らかになっているため、⑲は誤りだ。また、⑱は、都内のどこが感染源になっているのか不明で、都内の飲食店が営業時間を短縮したからといって感染が減るわけではないので、政策に根拠がない。さらに、下図のように、日本の新型コロナ致死率は40~50代から徐々に上がるものの、65歳以上になって急に上がるわけではなく、80歳以上でも17.5%であり、基礎疾患があるといっても疾患の状況によって異なるため、⑰は、政府が新型コロナで高齢者や基礎疾患のある人を差別したにすぎず、見識が低い。⑳についても、ウイルス撃退のために手を尽くさず、緊急事態宣言という形で国民の自由を奪い、経済を停滞させてバラマキしようとしているので、人権に疎くて筋が悪いと言わざるを得ない。
 政府は、*6-8のように、来夏の東京五輪・パラリンピックで、㉑ワクチン接種は入国時の条件にせず ㉒大規模な外国人客を受け入れ、㉓ウイルスの陰性証明書を提出して ㉔専用アプリを利用すれば ㉕入国後2週間の待機は不要で ㉖交通機関の利用にも制限をかけずに行動できるようにする とのことである。日本への入国時に、㉓のウイルス陰性証明書の提出が義務付けられていれば、㉕のように入国後2週間の待機は不要だが、㉑のように、ワクチンを接種していない人がいるので、㉒の大規模な外国人客が、㉖のように自由に行動すれば、国内で感染する可能性が大きい。さらに、人の多い会場を複数訪れ、その中に感染した人がいた場合は大変なことになるため、会場に入る度に手荷物検査とPCR検査を受けて陰性証明書をもらうシステムにしておけばよいと思う。しかし、㉔の専用アプリは、感染した人がいた場合には膨大な数になるであろう接触者を追跡できるだけで、感染予防の効果は全くないことを理解しておくべきだ。

 
      2020.11.17NHK              2020.11.17NHK

 
 2020.6.6東京新聞   2020.6.6朝日新聞      2019.7.13朝日新聞

(図の説明:上の段の左右の図のように、日本の新型コロナ感染症は、11月16日、重傷者251人・死者15人だが、11月22日までの合計は感染者130,179人・死者1,974人だ。これは、下の段の右図の癌約30万人・心疾患約15万人・脳血管疾患約8万人の死者と比較すれば著しく少なく、インフルエンザ約3千人と比較しても少ない。しかし、数は少なくても亡くなる方は気の毒で、さっさと検査と治療を充実させ、ワクチンや治療薬の開発をしつつ普通に活動すれば、下の段の左や中央の図のような新型コロナを名目にした大きな無駄遣いをする必要はなかった筈だ)


 2020.11.12時事       2020.10.31Yahoo        worldpress
 
(図の説明:左図のような新型コロナの感染者数を示して連日大騒ぎしているが、そこには科学的思考がない。そして、死亡率は65歳以上は急上昇するなどと言っているが、実際には、中央の図のように、日本の新型コロナ致死率は全体で1.8%で、致死率の上昇は40~50代から起こりはじめ、70代でも7.2%、80代以上で17.5%となめらかなカーブを描いており、これは寿命の長い国の致死率上昇の自然なカーブだ。さらに、右図のように、新型コロナウイルスは顕微鏡写真があり、致死率は第2波で低下している。政治・行政には、このような情報は入らないのか?)

*6-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20201120&ng=DGKKZO66372040Y0A111C2EE8000 (日経新聞 2020.11.20) コロナ禍に迫る2022年の壁(下) 地域医療、浮かぶ非効率 改革の重責、自治体及び腰
 団塊の世代が75歳以上になり始め、医療費が急膨張する2022年の壁を乗り越えるには、非効率な医療供給体制の改革も必要だ。新型コロナウイルス危機は地域の医療体制の権限を持つ都道府県の力量を試した。都道府県別の1人当たりの医療費は最大4割近くの差が出る。千人当たりの病床数で全国最多の高知県は1人当たりの医療費が66万5294円と2位。病床数は最少の神奈川県の3倍だ。大和総研の鈴木準執行役員は「1人当たり医療費は人口当たり病床数と関係が強く、供給が需要を作り出している」と指摘する。病床数が危機時の力を左右するとは限らない。3月、神奈川県はコロナ患者を症状ごとに重点医療機関やホテル療養で柔軟に対応する「神奈川モデル」を導入した。病床数は最少でも県主導で効率的な体制を作り、その手法は全国に広がった。日本の千人当たりの病床数は先進国で最高水準で、米英の約5倍。それでも春先の感染爆発時は小さな医療機関を中心にコロナ患者をたらい回しした。「医療供給体制に無駄があることが浮き彫りになった」(鈴木氏)。「新型コロナとの戦いで都道府県の体制整備の責任に焦点が当たっている」。自民党の財政再建推進本部の小委員会は10月末、都道府県の医療体制へのガバナンス強化を求めた。地域に応じた医療体制の構築と医療費適正化の計画作りに関し、都道府県の責任を法律で明確にする内容だ。国は都道府県に「地域医療構想」を作るよう求め、過剰な急性期病床の削減などを進め在宅医療への転換を促してきた。だが都道府県は民間病院に病床機能の転換を促すことをためらう。独自策を探る動きもある。「収入増には地域別の診療報酬が活用できる」。7月、奈良県の荒井正吾知事は新型コロナによる受診控えで収入減に悩む医療機関を支援するアイデアを示した。診療報酬は全国一律が通例。高齢者医療確保法は都道府県が地域別の報酬を決めることを可能としているが、適用例はない。奈良県は医療機関の動向に影響を与えるには収入である診療報酬を使うのが効果的とみる。今夏に厚生労働省に提言したが、奈良県の医師会や厚労省は反対の方針だ。全国知事会は地域医療の混乱を理由に医療提供体制の議論をコロナ収束後に先送りしたい意向を示す。医療行政は責任を負いたくない地方自治体と、本音は権限を失いたくない厚労省の利害がもつれあう。医療制度に迫る22年の壁は高く厚い。

*6-2:https://www3.nhk.or.jp/news/special/coronavirus/medical/detail/detail_55.html (NHK 2020年11月17日) 【データで見る】“第3波” 第2波との違いは
 新型コロナウイルスは、東京などの大都市部だけでなく、北海道など気温が下がってきた地域などでも感染が広がるなど、11月以降、感染拡大のペースが速くなっていて、感染の“第3波”とも言われるようになっています。新規の感染者数や重症患者数は夏に拡大した感染の第2波のピークを超えました。感染の第2波と比べると、重症化するリスクが高い高齢者の割合が増える傾向が見られているほか、クラスターが多様化し、行政の対応が難しくなってきているとして、専門家は改めて基本的な感染対策を徹底するよう呼びかけています。
●【全国の新規感染者】第2波のピーク上回る
 7月初めから東京を起点に拡大した感染の第2波では、全国の新規の感染者数は8月7日に1605人、当時、1週間平均では1300人を超えピークを迎えました。一方、11月に入っての感染拡大では、10月下旬まで500人余りだった感染者が、およそ半月の間に11月14日には1736人、1週間平均でもおよそ1400人となり第2波のピークをすでに上回っています。
●【年代別割合】60代以上が第2波の2倍以上に
 また、感染者の年代別の割合についても重症化しやすいとされる60代以上の割合が、第2波より高い傾向が見られています。 たとえば、東京都では、第2波で感染者が急増した7月には
  ▽10代以下が4.6%
  ▽20代が43.1%
  ▽30代が24.0%と30代以下が70%以上を占め、
  ▽40代は12.7%
  ▽50代は7.5%
  ▽60代以上は8.2%と、高齢者は比較的少ない状態でした。
一方で、11月は16日までで
  ▽10代以下が7.7%
  ▽20代が25.3%
  ▽30代が19.8%と30代以下は半数ほどに減り、
  ▽40代は16.5%
  ▽50代は13.6%
  ▽60代以上は17.1%と、特に60代以上の占める割合が第2波の2倍以上になっています。
 大阪府でも同様の傾向で、60代以上の割合が7月には9.5%だったのに対し、11月は25.8%と高くなっています。
●【入院・療養している人】11月15日には1万2358人に
 一方で、入院や療養している人の数は、第2波では6月下旬のおよそ700人から急激に増え、8月10日には1万3724人と1か月余りで20倍近くになりました。その後、徐々に減って、10月下旬には5000人ほどになりましたが、十分減りきらない中で感染が拡大し、11月15日には1万2358人となっています。
●【重症者】第2波のピーク超える
 重症患者も同様の傾向で、第2波では、感染者のピークから2週間あまりたった8月24日に259人と最も多くなったあと、10月5日には131人まで減りましたが、十分に減らない中で感染が拡大し、11月17日、272人となり、第2波のピークを超えました。
●【死者】11月に入り10人をやや上回る日多く
 また、死者は、第2波では8月18日に16人、8月28日に20人が報告されたあと10人を下回る日が多くなっていましたが、11月に入っては10日に15人など10人をやや上回る日が多くなっています。
●専門家「クラスターが多様化 基本的な対策の継続を」
 このほか、厚生労働省の専門家会合によりますと、第2波では感染者の集団=クラスターは、大都市圏の接待を伴う飲食店や、職場での会議などが多かったのに対し、11月以降は、会食や職場に加えて、地方の歓楽街や外国人のコミュニティー、それに医療機関や福祉施設などと多様化し、地域への広がりも見られるとしています。日本感染症学会の理事長で東邦大学の舘田一博教授は「第2波の際には、感染の広がりが特定の地域に限定され、ターゲットを絞って対応できたが、第3波ではクラスターが多様化し対応が難しくなってきている。今後、医療機関や高齢者施設などを巻き込んで、さらに大きなクラスターに発展するおそれもある」と指摘しています。そのうえで、「感染が続き、疲れや緩みが出た人もいると思われるが、改めて一人一人が感染リスクを避ける行動を取る必要がある。3密を避け、マスクの着用や消毒、換気といった基本的な対策を続けてほしい」と呼びかけています。

*6-3:https://www.asahi.com/topics/word/%E3%82%B3%E3%83%AD%E3%83%8A%E3%82%A6%E3%82%A4%E3%83%AB%E3%82%B9.html?iref=kijiue_bnr (朝日新聞 2020年11月24日) 「助けられる命助けられなくなる」医療逼迫に専門家警鐘
 厚生労働省に助言する専門家組織は24日、北海道や首都圏、関西圏、中部圏で感染者数が顕著に増加し、入院者数の増加が続いているとして「このままの状況が続けば、通常の医療で助けられる命が助けられなくなる」と警鐘を鳴らした。分析では11月以降、新規感染者が2週間で2倍を超える伸びとなるなど過去最多の水準だとした。感染者1人が何人に感染させるかを表す実効再生産数は、大阪、京都、兵庫では2を超え、北海道、東京、愛知などで1を超える水準が続いている。入院者数や重症者数の増加が続き、予定手術や救急の受け入れ制限や、まったく異なる診療科の医師が新型コロナ患者を診療せざるを得ない事例も出てきたという。その上で、各地で通常の医療との両立が困難になり始めているとした。出席者の1人は医療体制について「2週間後3週間後の見通しが立たない。それまでにかなり悲惨な状況に状態になる」と語った。今後の対応については、政府が示している「Go To」キャンペーンの見直しや営業時間の短縮、移動の自粛要請などを速やかに実行することを求めた。政府が「Go Toトラベル」について、旅行の目的地だけを制限している点について座長の脇田隆字・国立感染症研究所長は、一般論と断った上で「感染の高い所から低い所に広めないという意味では、両方を止めることが有効と考える」と述べた。既に医療提供に困難が生じている地域では、接触機会の削減など強い対策が必要とした。会合の資料によると、23日までの1週間の感染者数は全国で1万4919人で、前週から1・46倍に増えた。北海道、東京、大阪の3道都府で半数を占めたものの、すべての都道府県で感染者が確認されており、全国的な広がりが懸念される。実効再生産数は、全国では5日時点で1・30。北海道は1・24、東北は1・12、首都圏は1・27、中京圏は1・35、関西圏は1・41、九州北部は1・29、沖縄は1・04だった。感染が広がる中、検査の陽性率も上がっている。15日までの1週間でみると、全国では5・5%で前週より1・2ポイント増。北海道では17・4%に上り、兵庫県が9・9%、大阪府が9・7%、愛知県が9・4%で続いた。
●直近の感染状況の評価の要約
<感染状況>
・新規感染者数は2週間で2倍を超える伸びとなり、過去最多の水準。特に北海道や首都圏、関西圏、中部圏を中心に顕著な増加が見られる。地域によってはすでに急速に感染拡大が見られており、このままの状況が続けば医療提供体制と公衆衛生体制に重大な影響を生じるおそれがある。
・感染拡大の原因となるクラスターについては、多様化や地域への広がりがみられる。
・感染拡大の要因は、基本的な感染予防対策がしっかり行われていないことや、人の移動の増加、気温の低下による影響に加えて、人口密度が考えられる。
・予定された手術や救急の受け入れなどの制限、病床を確保するための転院、診療科の全く異なる医師が新型コロナウイルスの診療をせざるを得なくなるような事例も。病床や人員の増加も簡単には見込めない中で、各地で新型コロナの診療と通常の医療との両立が困難になり始めている。このままの状況が続けば、通常の医療で助けられる命が助けられなくなる。
【感染拡大地域の動向】
①北海道
 札幌市近郊を含め、道内全体にも感染が拡大。福祉施設や医療機関で大規模なクラスターが発生。患者の増加や院内感染の発生により、札幌市を中心に病床が窮迫。旭川市でも院内感染が発生し、入院調整が困難をきたす例が発生するなど厳しい状況となりつつある。
②首都圏
 東京都内全域に感染が拡大。感染経路不明割合も半数以上となっている。埼玉、神奈川、千葉でも同様に感染が拡大し、医療機関、福祉施設、接待を伴う飲食店などの様々な施設でクラスターが発生し、医療体制が厳しい状況。感染経路不明割合は4~5割程度と上昇傾向。茨城でも接待を伴う飲食店などでクラスターが発生し、感染者数が増加。
③関西圏
 大阪では大阪市を中心に感染が大きく拡大。医療機関や高齢者施設などでのクラスターが発生。感染経路不明割合は約6割となり、重症者数が増加し、医療体制が厳しい状況。兵庫では高齢者施設や大学などでクラスターが発生。医療体制が厳しい状況。京都でも感染が拡大。
④中部圏
 愛知県内全域に感染が拡大。感染経路不明割合は約4割。名古屋市で歓楽街を中心に感染者が増加し、保健センターの負荷が大きくなっており、医療機関での対応も厳しさが増大。静岡でも接待を伴う飲食店などでクラスターが発生し、感染が拡大。

*6-4:https://www.nishinippon.co.jp/item/n/668001/ (西日本新聞 2020/11/27) 福岡「第3波」大丈夫? 検査拡充で拡大抑制 「いつ来ても」警戒
 大都市を中心に全国で新型コロナウイルス感染の「第3波」が押し寄せる中、福岡県でも感染者がじわりと増え始めている。26日の新規感染者は53人で、約3カ月ぶりに50人を超えた。ただ、連日のように過去最多を更新している東京や大阪などと比べると拡大のペースは抑制気味。県や専門家もその明確な理由は分かっておらず、「いつ次の波が来てもおかしくない」と警戒している。「今後、福岡でも感染が拡大する危険性があり得る」。福岡県がん感染症疾病対策課の佐野正課長は26日の記者会見で、第3波への危機感を口にした。県内では、第2波とされる7~8月に感染者が急増。7月31日には過去最多の169人に上った。その波が落ち着いた9月中旬以降は、10人前後で推移。全国的に感染が再拡大した11月に入って増加傾向が強まっている。ただ、26日に判明した53人も1日の感染者としてはピーク時の3割程度。全国と比較すると秋以降は抑え込めている。小川洋知事は24日の記者会見で理由を問われ、「取り組んだ対策は説明できるが、よく分からない」と首をかしげた。
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 このまま感染者を抑制することができるのか-。小川知事や県内感染者の約6割を占める福岡市の高島宗一郎市長が対策の切り札として期待するのが、検査拡充による早期発見だ。県内では、医療機関で受けられるPCR検査や抗原検査の導入を促進。PCR検査可能件数は1日最大約4200件(11月10日時点)で、8月から2倍近くに増えている。福岡市は、人口10万人当たりの累計検査数(10月20日時点)を独自に調査。政令市では同市が全国最多(4064件)で、2位は北九州市(3945件)。第3波が猛威を振るう大阪市(2365件)や札幌市(2095件)を大きく引き離しているという。福岡市は、検査対象者を国が示す「濃厚接触者」より拡大。職場や施設内で感染が疑われる場合、同じフロアなどにまで広げて検査をしている。市幹部は「無症状者を含めた早期発見が重要だ」と強調する。
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 宿泊療養施設の利用徹底による陽性者の隔離強化も鍵を握りそうだ。県は、入院が必要ない軽症や無症状者に対し、県内4カ所にある宿泊療養施設の積極活用を呼び掛けている。8月中旬には利用の手順を簡素化して陽性確認の翌日には入所できるようにした。県内の累計感染者約5600人のうち、約4割の2千人超が宿泊療養施設を利用。東京都では利用率が3割を下回っており、県幹部は「一定の成果が出ているのではないか」とみる。これまでの抑制傾向について気候や地理的な要因を指摘する声もあるが、明確な理由は不明だ。県幹部は「県民や事業者にはより注意してもらい、できるだけ増加を抑え込めれば」と話す。
●「油断せず予防を」
 九州大の柳雄介教授(ウイルス学)は、福岡県内の感染者数が比較的抑えられていることについて「福岡県民だけが特に予防策の実施を徹底しているというわけでもないと思うので、運が良かったのだろう」と指摘。「福岡に他の地域からやって来る人の中にたまたま感染者が少なかったなど偶然が重なった結果では」と話す。流行の波は全国一律ではなく地域差があるのは当然だとした上で、「福岡もいつ増えてもおかしくない。感染者が多い地域への移動は慎重になるなど、油断することなく感染予防を続けてほしい」と呼び掛けた。

*6-5:https://www.nishinippon.co.jp/item/n/607425/ (西日本新聞 2020/5/11) アビガン投与「福岡県方式」構築 47機関、医師判断で早期対応可能に
 福岡県医師会は11日、新型コロナウイルス感染症への効果が期待される新型インフルエンザ治療薬「アビガン」を、主治医が重症化の恐れがあるなどと判断した場合、軽症でも早期投与できる独自の体制を整えたと発表した。県内47の医療機関が参加を表明しており、県医師会は「『福岡県方式』の構築で新たに投与できる患者はかなり多く、影響は大きい」としている。アビガン投与には、藤田医科大(愛知)などの観察研究への参加が必要。県医師会が一括して必要な手続きを行ったことで、これまで未参加だった27機関が加わり、計47機関で投与できるようになった。今後も増える見通し。主に重症や中等症の患者に投与されていたが、「主治医等が重症化の可能性を憂慮する患者」を対象に明記したことで、主治医が必要と判断すれば軽症でも早期投与が可能としている。投与には入院が必要という。ただ、アビガンは動物実験で胎児に奇形が出る恐れが指摘され、妊婦や妊娠の可能性がある人などには使えない。肝機能障害などの副作用も報告されており、患者への十分な説明と同意が必要となる。新型コロナ感染症の治療薬としては、厚生労働省が7日、米製薬会社が開発した「レムデシビル」を国内で初承認。安倍晋三首相はアビガンについても今月中に承認する意向を示している。

*6-6:https://www.travelvoice.jp/20201201-147643 (トラベルボイス 2020年12月1日) 東京発着のGoToトラベル、65歳以上の高齢者と基礎疾患ある人を対象に自粛呼びかけ、12月17日まで
 菅首相と小池都知事は、2020年12月1日に緊急会談を行い、「GoTo トラベル事業」について、重症化リスクの高い65歳以上の高齢者と基礎疾患のある人を対象に、東京を発着する旅行での利用自粛を呼びかけることで一致しした。小池都知事は「重症化をいかに抑えていくのか。重症化しやすい高齢者の感染をどのように防いでいくのか。ここに今回ポイントを当てていく」と話し、今回の取り組みの目的を説明した。自粛の要請は、キャンセル対応など国の判断によって始め、都内飲食店への営業時間短縮の要請期間に合わせて、12月17日まで継続する予定。また、小池都知事は、キャンセルの手続きや対象となる出発日について、「詳細は国の方から出てくるだろう」としている。

*6-7:https://www.jiji.com/jc/article?k=2020112900191&g=pol (時事 2020年11月29日) 与党、GoTo見直し擁護 立憲は特措法改正案提出へ―新型コロナ
 与野党幹部は29日のNHK番組で、政府の新型コロナウイルス対策について論戦を交わした。与党は需要喚起策「Go To」キャンペーンの運用見直しが続いていることについて、政府による試行錯誤の一環だと擁護。立憲民主党は政策の基本が定まらないのが迷走の原因だとして、新型コロナ対策に関する特別措置法改正案を今国会に提出する方針を明らかにした。自民党の野田聖子幹事長代行は「Go To」に関する政府方針について「ころころ変わるのは事実」と認めながらも、「新型コロナは原因不明で特効薬がない。臨機応変に対応しなければならない」と主張。公明党の石井啓一幹事長も「ある程度の試行錯誤はやむを得ない」と語った。日本維新の会の馬場伸幸幹事長も「致し方ない」と同調した。これに対し、立憲民主党の福山哲郎幹事長は「朝令暮改で混乱が広がっている。原理原則を再構築しないと感染は広がる一方だ」と指摘。12月5日の今国会会期末までに特措法改正案を国会に提出すると説明した。改正案は緊急事態宣言を出す権限と財政的な裏付けを知事に与えるのが柱で、他の野党にも協力を呼び掛ける。共産党の小池晃書記局長は「菅義偉首相は記者会見もせず、国民の不安は深まるばかりだ。菅政権による人災と言われても仕方がない」と政府を批判。国民民主党の榛葉賀津也幹事長は「政府の政策は小出しで後手」と断じた。

*6-8:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20201202&ng=DGKKZO66879970R01C20A2MM8000 (日経新聞 2020.12.2) 五輪、外国人客を大規模に 感染対策 アプリ活用、政府検討 移動の自由を重視
 政府は来夏の東京五輪・パラリンピックで新型コロナウイルス対策をとりながら大規模な外国人客を受け入れる。ワクチン接種は入国時の条件にはせず、交通機関の利用にも制限をかけない。ビザ(査証)と入場チケット、移動情報の記録を連携させるスマートフォン向けのアプリの導入を促す。移動の自由と感染対策の両立を目指す。チケットは国内で約445万枚、海外で100万枚近く販売した。複数会場を訪ねる人が多く、新型コロナ次第でキャンセルもあるため外国客数は見通せない。政府は各国の感染状況を見極めるため、各会場の観客数や受け入れ体制の決定は来春に持ち越す。大原則はコロナ禍でも安全を確保しながら移動の自由を保障する大会運営だ。外国客のワクチン接種は出身国の判断に委ねる。日本側にウイルスの陰性証明書を提出して専用アプリを利用すれば入国後2週間の待機は不要で、制限なく行動できるようにする。外国客には日本政府が運用する接触確認アプリ(総合2面きょうのことば)「COCOA(ココア)」と、感染者でないことの証明やビザなどの情報を管理するアプリを組み合わせて使ってもらうよう求める。一体的に利用することで、感染者との接触の有無を確認しながら、各地で「感染者ではない」との証明もできる。訪問した場所の履歴は本人の意思で各自の端末内に残す。全地球測位システム(GPS)で政府が位置情報を追跡するような手法はとらない。感染者と接触した可能性があれば通知が来る。通知を受ければ滞在中や帰国後に保健所や医療機関に自ら赴く。プライバシー保護と移動の自由を保障しながら感染判明時に本人が迅速に対応するやり方になる。外国客は専用のIDをつくり、ビザやチケット番号、顔写真、陰性証明書のデータをアプリに登録する。ビザや観戦チケットと連動させることで接触確認の機能の利用につなげる。入国審査や検疫、税関手続きで、アプリ内の陰性証明書やチケット情報を確認する。五輪会場でも提示を求める。ホテルや飲食店でQRコードを読み取り、自ら来店記録を保存する方法も検討する。アプリに体調を記録し、発熱時は多言語対応の相談窓口に簡単に連絡できる体制を目指す。東京五輪はコロナ禍で開く初の世界的大イベントになる可能性が高い。人権と安全を両立して大規模な往来を実現すれば国際的なモデルになる。五輪後も外国客向けに活用する案も出ている。

<ロボット・IoT・オンラインでさえあれば“先進的”なわけではないこと>
PS(2020年11月23日追加):*7-1に、「①オンライン診療は、かかりつけ医を対象として安全性と信頼性をベースに初診も含めて恒久的に進める」「②医療機関へのアクセス向上という視点で捉えられがちなオンライン診療が本格的な普及段階に入れば、医師資格のあり方にもかかわってくる」「③医師会はかかりつけ医の普及には熱心だが、患者と対面して五感を研ぎ澄ませて診察する方が見落としのリスクが小さいとする」「④デジタル専門教育を受けた医師なら初診からのオンライン診療を認めるとの考え方も成り立つ」等が書かれている。
 このうち、①については、病気を悪化させずに治せるか否かは、初診とそれに伴う治療方針の正確さによって決まるため、かかりつけ医でも安全性を妄信するのは危険で、深刻な病気であれば、Second Opinion をとる必要がある場合もある。そのため、初診で検査の行き届いた大病院にかかりにくくするのは問題であるとともに、初診でもオンライン診療でよいとするのはやりすぎだ。そのため、私は、③の医師会の意見に賛成で、その理由は、病院に行く時は女性も化粧をせず素顔を見せなければ本当の病状はわからないのに、検査もせず、身体の一部しか映さない画像だけで病名を当てようとすれば、外れるリスクが高くなるからである。これについて、②④のように、「医師がデジタル専門教育を受けておらず、オンラインを使えないからオンライン診療を認めないのだ」などと言うのは、事実を曲げており、失礼も甚だしい。
 さらに、*7-2のように、川崎重工業とシスメックスが共同出資して設立したメディカロイドが、2013年に「hinotori」という手術支援ロボットを開発したそうだが、非常に簡単な手術ならともかく(それなら人がやっても簡単だ)、途中で何が起こるかわからない手術をロボットの方が人より適切に行うことができると考えるのは甘い。何故なら、ロボットが得意とするのは、同じことを繰り返して正確・迅速に行うことで、血管・神経・病変の位置などが異なる人間にメスを入れて、非常時の対応まですることはできないからだ。料理に例えれば、自動でよい焼き加減で魚を焼いたり、てんぷら油の温度を一定に保ったりすることは器械ができるが、それを使って調理師が離れた場所から調理すれば、吹きこぼれて火が消えガスが漏れたり、火事になったりした時に、素早く気付いて迅速に対応することができず大変なことになる。しかし、調理師がそばにいれば視覚だけでなく五感で感じて適切な対応をとることができるため、ロボットは、人の傍で忠実に働き、正確な仕事を素早く行う相棒の位置づけにするのがよいと思う。なお、手術支援ロボットなら、「hinotori」より「Jack」か「Pinoko」という名前の方がよくないか?

 
                手術ロボットhinotori 

*7-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20201121&ng=DGKKZO66521430R21C20A1EA1000 (日経新聞 2020.11.21) 初診「かかりつけ医」に限定、オンライン診療、恒久化の議論迷走 英には似て非なる「家庭医」
 菅義偉首相が指示したオンライン診療解禁の恒久化をめぐり、政府内の議論が迷走気味だ。医療機関へのアクセス向上という視点で捉えられがちなオンライン診療だが、本格的な普及段階に入れば医師資格のあり方にもかかわってくる可能性がある。キーワードは「かかりつけ医」と似て非なる「家庭医」である。かかりつけ医が政策の焦点に浮上した。10月30日の田村憲久厚生労働相の記者会見が契機だ。「オンライン診療は安全性と信頼性をベースに初診も含めて進める。首相から恒久化という言葉ももらっている。普段かかっているかかりつけ医を対象に初診も解禁というか、恒久化すると3者で合意した」。3者は、河野太郎規制改革相、平井卓也デジタル改革相を含めた3閣僚を指す。オンライン診療は安倍政権時の4月、規制改革推進会議(首相の諮問機関)がコロナ禍を受けて特命タスクフォースを新設し、収束までの特例として全面解禁した。感染リスク対策の意味合いが強かったが、首相の恒久化指示で政府の動きが慌ただしくなった。
●対面原則譲らず
 日本医師会を中心に医療界には全面解禁への慎重論が強い。医師会はかねて、かかりつけ医の普及に熱心だ。意を受けた厚労省は、タレントのデーモン閣下が「気軽に相談できるかかりつけ医をもちましょう」と勧める広告動画をつくり、東京メトロの車内モニターなどで流している。問題はかかりつけ医の定義だ。医師会のウェブサイトには「何でも相談でき、最新の医療情報を熟知し、必要なときに専門医や専門医療機関を紹介でき、身近で頼りになる地域医療、保健、福祉を担う総合的能力を有する医師」とある。こんな名医が自宅や勤め先の近くにいて平時から健康管理を任せられれば、誰だって心強い。日本医師会総合政策研究機構(日医総研)が9月にまとめた意識調査によると、かかりつけ医がいる人は55%。年齢別では70代以上の83%に対し、20代は22%だ。普段あまり医者の世話にならない若年層が低いのは当然だが、20代の31%が「いるとよいと思う」と答えた。この割合は前回調査より高い。日医総研はコロナの影響があるのではと推測する。英国にはGP(ジェネラル・プラクティショナー)と呼ばれる資格がある。日本語なら「家庭医」といったニュアンスだ。すべての人が自宅近くの診療所に勤務する家庭医を1人登録し、初期診療はその家庭医に診てもらうのを原則とする。同国の国民医療制度(NHS)の家庭医になるには医学部卒業後に基礎研修を受け、最短3年の専門研修が義務づけられている。指導医から一定の評価が得られれば一人前として登録される。いくつもの診療科の治療をこなし、手に負えない患者は素早く病院の専門医につなぐのが使命だ。日本医師会は「患者と対面して五感を研ぎ澄ませて診察する方が見落としなどのリスクを小さくできる」などを根拠に、とくに初診時の対面原則を崩そうとしない。むろん対面診療の重要性に異論はない。病状や患者が置かれた環境で対面でなければならない場面はある。一方、デジタル技術の飛躍的な革新で対面を上回る効果を発揮するオンライン診療が可能になるケースも出よう。
●医学教育に一石
 医師会関係者は「日本の医学教育はオンライン診療を想定しておらず、医学生は対面診療が基本と教わる。オンライン診療がなし崩しに広がれば医療の質が下がる心配が強い」とも話す。裏を返せば、医学教育にもデジタル化が前提の改革が必要になるのではないか。デジタル専門教育を受けた医師なら初診からのオンライン診療を認めるとの考え方も成り立つ。かかりつけ医の範囲が曖昧なままオンライン初診を認める厚労相の方針は果たして機能するのか。仮に英国のような家庭医資格の創設を俎上(そじょう)に載せるなら、それはそれで意義深い改革になるかもしれない。

*7-2:https://news.yahoo.co.jp/articles/91075fd9f35372b0e126f049ba9423c7acb755d7 (Yahoo 2020/10/27抜粋) 国産手術支援ロボット「hinotori」がIoTプラットフォームと連携、AI解析が可能に
●国産で初めて製造販売承認を得た手術支援ロボット「hinotori」
 hinotoriは、2013年に川崎重工業とシスメックスが共同出資して設立したメディカロイドが開発した手術支援ロボットである。オペレーションユニット、サージョンコックピット、ビジョンユニットの3ユニットで構成される。手術を実施するオペレーションユニットのアームは、ヒトの腕に近いコンパクトな設計で、アーム同士やアームと助手の医師との干渉を低減し、より円滑な手術が可能となることが期待されている。サージョンコックピットは、執刀医の姿勢に合わせることが可能なように人間工学的な手法で設計されており、執刀医の負担を軽減し、ストレスフリーな手術を支援する。ビジョンユニットは、サージョンコックピットに高精細な内視鏡画像を3Dで映し出すとともに、執刀医と助手の医師との円滑なコミュニケーションをサポートする。2015年度から“人とロボットの共存”をコンセプトに開発が進められてきたhinotoriは、2020年8月7日に国産の手術支援ロボットとして初めて製造販売承認を取得しており、同年9月からは保険適用となった。まずは、日本市場で泌尿器科を対象に早期の市場導入を目指しているところだ。

<農業の可能性と将来性>
PS(2020年11月28日、12月5日追加):*8-1のように、2020年2月1日現在の基幹的農業従事者は136万1,000人と5年前の前回調査から39万6,000人(22.5%)減少し、1経営体当たりの平均耕地面積は北海道30.6ha・都府県2.2haと拡大し、北海道は100ha・都府県も10ha以上の経営体が増えたそうだ。また、個人経営体は103万7,000と前回から30万3,000(22.6%)減ったが、団体経営体は3万8,000と1,000(2.6%)増え、特に会社形態の法人の増加が貢献したそうで、これは、農業の高齢化を解決しつつ、大規模化・スマート化して米豪の農産品にも対抗できる農業を作ろうと意図して、(私が衆議院議員時代に)アドバイスした結果だ。
 しかし、農水省のスマート農業実証プロジェクトでは、*8-2のように、「スマート農機の導入で労働時間は短縮されたが、農機導入費で利益が減った」ということもあったそうで、これは、ロボットトラクターを10aというような小規模な水田や分散した水田で使うと費用対効果が合わないが、耕作地を大規模・大区画にすればコスト低減するということだ(規模の利益)。そのため、個人がパートナーシップ(弁護士事務所方式)を組んだり、複数の個人が土地を現物出資して会社を作ったりして、土地を整理し区画を大きくして大型の農機を導入し、農機を減価償却したり、割増償却制度を導入してもらったりすれば、生産性を上げることが可能なのである。
 また、*8-3のように、日本政府も化石燃料への依存度を下げる取り組みを本格化させ始めたので、速やかに農機具を電動化し、太陽光発電・風力発電・小水力発電等で電力を作れば、温室効果ガス削減に貢献しつつ、エネルギー代金を節約したり、副業としてエネルギー代金で稼いだりすることができる。また、園芸施設の加温における省エネにも、ヒートポンプや*8-4の地中熱を使う方法があるが、高すぎない価格で機材の供給が行われることが必要だ。
 なお、数羽の鶏に鳥インフルエンザが発生したという理由で、*8-5のように、「香川県、福岡県、兵庫県、宮崎県の養鶏場でウイルスを封じ込めるため、何万羽、何十万羽もの鶏を殺処分する」というヒステリックなニュースが多くなった。そして、鶏の殺処分や埋却には、県職員325人・JAグループ職員76人が参加して鶏糞の搬出や鶏舎・農場周辺の清掃・消毒などを含めた防疫作業をするそうだが、殺処分による損害や本来は不要だった筈の辛い労働を繰り返すのはもうやめたい。そのためには、野鳥から隔離できるように鶏舎を密閉し、鶏舎内はウイルスを除去できる空調を行い、それぞれの鶏が免疫力を高めたり、ウイルスや細菌を紫外線で殺菌したりできるような鶏舎にした方が結局は安上がりだ。そのためには、空調に地中熱と太陽光由来の電力を利用し、鶏が太陽光を浴びることができるよう必要な場所に光ファイバーで太陽光を導き、使用するエネルギーを極限まで節約しながら、健康な鶏を育てるのがよいと思う。これは、豚熱でも同じで、畜産は装置産業にすることで、かなりの省力化と生産性向上が可能だ。

  
地中熱とヒートポンプを利用した冷暖房        ヒートポンプの仕組み

  

(図の説明:上の段は、地中熱とヒートポンプの仕組みだ。太陽光を室内《鶏舎内》に導く方法が下の段の左図で、「ひまわり」システムで太陽光を集めて光ファイバーケーブルで室内の必要な場所に導き、端末照明器具を通して部屋に照射する。光ファイバーケーブルは、中央の図のように、光を必要な場所に導くことができるので、右図のように、部屋なら照明器具のように使うこともできるが、鶏舎なら個々のケージに太陽光を導いた方がよいだろう。そして、これは、マンションやビルの太陽光が入らない部屋に太陽光を導きたい場合にも使えるのである)

*8-1:https://www.agrinews.co.jp/p52529.html (日本農業新聞 2020年11月28日) 農業従事者40万人減の136万人 減少率、過去最大 20年農林業センサス
 農水省は27日、2020年農林業センサス(2月1日現在)の調査結果を発表した。主な仕事が農業の「基幹的農業従事者」は136万1000人と、5年前の前回調査から39万6000人(22・5%)減った。減少率は、比較可能な05年以降で最大。高齢化が大きく響いた。一方、1経営体当たりの耕地面積は初めて3ヘクタールを超え、経営規模の拡大が進んだ。基幹的農業従事者は一貫して減り続けており、減少ペースも加速している。同省は、この要因の一つに高齢化を挙げる。20年の基幹的農業従事者の平均年齢は67・8歳。65歳以上の割合は4・9ポイント増の69・8%に達した。「70歳を超えると、離農するか、統計対象とならない規模に経営を縮小する傾向にある」(センサス統計室)という。全国の農業経営体数は107万6000で、前回より30万2000(21・9%)減った。前回の5年間の減少率(18%)と比べ、やはり減少のペースが加速している。農業経営体のうち、家族で営む個人経営体の数は103万7000で、前回から30万3000(22・6%)減った。一方、家族以外の「団体経営体」は3万8000と、1000(2・6%)増えた。このうち、任意組織の集落営農などを除いた法人経営体は3万1000で4000(13%)増加。会社形態の法人の増加が貢献した。担い手の減少に伴い、経営規模が拡大する傾向は鮮明となった。全国の1経営体当たりの耕地面積は3・1ヘクタールで、前回の2・5ヘクタールから21・5%増えた。北海道が30・6ヘクタール、都府県が2・2ヘクタールで、それぞれ初めて30ヘクタール、2ヘクタールを超えた。耕地面積が10ヘクタール以上の割合も増えて全国で55・7%となり、初めて過半に達した。耕地面積別に経営体の増減率を見ると、北海道は100ヘクタール以上の経営体が増加。都府県も10ヘクタール以上の経営体が増えた。いずれも、それを下回る面積の経営は減った。同省は「農業経営体の減少が続く中で、法人化や規模拡大が進展している」(同)と分析する。農林業センサスは、全ての農業経営体を対象に5年に1度行う農業版の国勢調査。今回は精査が済んだ統計の概数値を公表した。農地関係などの統計を含めて、確定値は来年3月以降に公表する。

*8-2:https://www.agrinews.co.jp/p52499.html (日本農業新聞論説 2020年11月25日) スマート農業 経営効果見極め導入を
 農水省は、スマート農業実証プロジェクトの水田作の成果について中間報告をした。スマート農機の導入で労働時間は短縮されたが、機械の費用がかさんで利益が減る結果となった。農業現場ではスマート農業への期待が大きいが、万能ではない。地域や経営ごとに導入の効果を見極める必要がある。
プロジェクトは、先端技術を生産現場に導入し、生産期間を通じた効果を明らかにするのが狙いだ。2年間行う。2019年度に全国69地区で始め、現在148地区で実証中だ。中間報告では、水田作での初年度の結果を分析。①平場の大規模②中山間③輸出用の超低コスト──それぞれの代表的な1事例について、労働時間や経営収支を慣行区と比較した。実証区の水田作では、耕耘(こううん)に2台同時作業ができるロボットトラクター、移植に直進キープ田植え機、防除に農薬散布ドローン(小型無人飛行機)を導入する例が多い。自動水管理システムやリモコン式草刈り機、自動運転コンバインなども組み合わせて採用した。その結果、大規模水田作では、慣行区と比べて労働時間は10アール当たり1・9時間減り、人件費を同13%削減できた。一方、スマート農機を追加投資したことで機械・施設費は同261%増加し、利益は同90%(約2万8000円)減った。人件費は減るものの、機械・施設費が増え、利益が減少する傾向は、中山間と輸出でも同じだった。必要なのは効果の見極めだ。ドローンを使った農薬散布は10アール当たりの労働時間を平均81%削減できた。動力噴霧器を使った防除より省力化でき、散布の際にホースを引いて歩く必要がないなど軽労化も期待できる。自動水管理システムも見回りの距離や回数を減らせて、労働時間が平均87%減と効果が高い。一方、効果は地域や経営内容で異なる。2台で耕すロボットトラクターは効率の面で大区画水田での作業に向く。ドローンはバッテリーを使うため作業できる時間が短く、手作業で散布するような小規模な水田に向くとの指摘もある。のり面が広い水田にはリモコン式草刈り機が、水田が分散する経営には水管理システムが力を発揮する。経営面積や課題に応じたスマート農機の採用や組み合わせが重要になる。同省は、経営面での見通しが立つよう適正な面積まで見極めた経営モデルを作成する。経営で負担となる初期投資を抑えるため、農機を共同利用するなどの支援・活用策も検討する。作業の省力化で労働時間が減っても収支が悪化してはスマート農業の普及は望めない。中間報告後も同省は、品質・収量などのデータを含め、経営への効果を分析する。併せて重要なのは、生産現場への情報提供である。経営課題に対しどんな技術・機械を採用したら最も費用対効果が大きいか、判断に役立つ情報を整備してもらいたい。

*8-3:https://www.agrinews.co.jp/p52479.html (日本農業新聞論説 2020年11月23日) 温室効果ガス削減 農業も脱炭素化めざせ
 政府が、化石燃料への依存度を下げる取り組みをようやく本格化させる。温室効果ガスの農業からの排出量は国全体から見れば数パーセント。しかし農業には排出量を減らす潜在能力がある。地球温暖化の影響をまともに受ける産業でもある。農家ら農業関係者も、温室効果ガスの排出削減に正面から向き合うべきだ。地球温暖化対策には世界各国が本腰を入れている。欧州連合(EU)諸国は石炭火力発電を中止にする方針を示した。世界最大の温室効果ガス排出国の中国も、太陽光発電への転換を進めている。排出量2位の米国はトランプ大統領が地球の温暖化自体を否定し、温暖化対策の国際的な枠組みを定めたパリ協定から離脱した。しかし、次期大統領に当選確実となったバイデン氏は、温暖化対策を強化する方針を表明している。日本はどうか。スペインで昨年12月に開かれた気候変動枠組み条約締約国会議(COP25)では、化石燃料からの離脱に消極的だとして環境団体から2度にわたり「化石賞」を贈られた。小泉進次郎環境相らが石炭火力発電からの脱却を明言しなかったことで、日本の姿勢が世界から問われた形だ。それがここに来て、菅義偉首相が初の所信表明演説で「2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする」と述べ、「脱炭素社会」の方向を明確にした。政府は、地球温暖化対策を新たな成長戦略と位置付けた。産業構造を変え、経済と環境の好循環を生み出す考えだ。農業は自然と共存しているイメージを持たれているが、実際は化石燃料を使って農機を動かし、園芸施設を加温する。牛のげっぷや水田からは温室効果ガスが空気中に出ている。温暖化は農業への影響が大きいだけに、温室効果ガスの削減に農業関係者は率先して取り組む必要がある。水田から発生するメタンガスの削減技術や、牛の胃からの発酵ガスを減らすための微生物の研究などは進んでいるが、農業関係者は、農村ならではの資源を利用した温室効果ガス削減策にも注目すべきだ。小水力発電や太陽光発電、バイオ燃料など、化石燃料に頼らなくても、エネルギーを生産できる可能性が農村には潜んでいる。食の地産地消だけでなく、エネルギーの地産地消を目指したい。地域でクリーンなエネルギーを自給しているとなれば、生産される農産物のイメージアップにもつながる。地産地消の発電体制が整っていれば、災害時の停電にも対応できる。自動車では、ハイブリッド、さらには電気自動車、水素電池車へと開発が進んでいる。農業用トラクターの電化にはまだ時間がかかるとしても、刈り払い機などの農機具では電動機種がそろってきた。園芸施設の加温にも、燃油の代わりにヒートポンプを使う方法がある。温室効果ガス削減に向け、農村ならではのエネルギーの生産と消費の方策へと転換していきたい。

*8-4:https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saiene/renewable/underground/index.html (資源エネルギー庁 抜粋) 再生可能エネルギーとは
●地中熱利用
○日本中いたる所で利用可能
 地中熱とは、浅い地盤中に存在する低温の熱エネルギーです。大気の温度に対して、地中の温度は地下10~15mの深さになると、年間を通して温度の変化が見られなくなります。そのため、夏場は外気温度よりも地中温度が低く、冬場は外気温度よりも地中温度が高いことから、この温度差を利用して効率的な冷暖房等を行います。
○特長
 1.空気熱源ヒートポンプ(エアコン)が利用できない外気温-15℃以下の環境でも利用可能
 2.放熱用室外機がなく、稼働時騒音が非常に小さい
 3.地中熱交換器は密閉式なので、環境汚染の心配がない
 4.冷暖房に熱を屋外に放出しないため、ヒートアイランド現象の元になりにくい
○課題
 設備導入(削井費用等)に係る初期コストが高く設備費用の回収期間が長い。
○地中熱利用冷暖房・給湯システム
                          (出典:地中熱利用促進協会HP)

*8-5:https://www.agrinews.co.jp/p52568.html (日本農業新聞 2020年12月2日) 肉用鶏最大産地 宮崎で鳥インフル 新たな感染疑い例も
 肉用鶏(ブロイラー)最大産地の宮崎県の養鶏場で1日、鳥インフルエンザの疑似患畜が確認された。県は日向市にある発生農場で午前4時30分から殺処分などの防疫措置を開始。ウイルスの封じ込めへ全力を挙げる。香川、福岡、兵庫に続く4県目の発生。また、宮崎県では同日、都農町の養鶏場から、香川県でも三豊市の養鶏場から簡易検査陽性の鶏が見つかったことが分かった。
●隣県 警戒強める
 今季11例目となった農場では、30日午後に死んだ鶏が増えたことを確認し、家畜保健衛生所に通報。鳥インフルエンザの簡易検査で陽性を確認した。1日午前3時には、遺伝子検査でH5亜型を確認し疑似患畜となった。発生農場は肉用鶏約4万羽を飼育。農場から3キロ圏内の移動制限区域に養鶏場はなく、3~10キロ圏内の搬出制限区域には16戸、約55万3000羽が飼育されている。宮崎県は1日、対策本部会議や緊急防疫会議で、防疫方針や当面の防疫措置をJAや関係団体・企業に示した。鶏の殺処分や埋却など初動防疫に県職員325人、JAグループ職員76人が参加。2日中に鶏ふんの搬出、発生鶏舎や農場周辺の清掃・消毒などを含めた防疫作業を終える計画だ。日向市内の採卵鶏農家(58)は香川、福岡、兵庫県での発生を踏まえ、「こっちにこないでくれという気持ちが本音だった」とつぶやく。1日早朝から鶏舎を見回り、防鳥ネットに破れがないかなどを入念に確認。今後は石灰散布や消毒なども進める。「飼育羽数も多く、心配だ」と発生農家を気遣う。県養鶏協会も「鳥インフルが落ち着く3、4月まで長く警戒が必要になるだろう」と覚悟する。隣県の鹿児島も警戒を強めた。出水市では11月以降、野鳥のふんなどからウイルスの検出が相次いでいる。JAグループ鹿児島は1日、緊急対策会議を開いた。JA鹿児島県経済連は系統農場に消石灰を配り、早急に散布するよう要請。鹿児島くみあいチキンフーズも防疫態勢レベルを引き上げた。農場や関連工場などへの来訪者の禁止、農場内を2日に1回消毒するなど防疫を強化する。流通業界にも緊張が走った。「香川で発生が広がった例もあり、主産地の宮崎県での発生に危機感は強い」(東日本の鶏肉流通業者)という。新型コロナウイルス禍による内食需要の高まりなどで、鶏肉相場は6月以降、前年を1割ほど上回って推移。在庫も少なく、国産は不足感があるまま12月の最需要期を迎えている。「今は静観しているが、感染が拡大すれば相場にも影響が出る」(同)とみる。

<漁業の衰退>
PS(2020年12月7、11日追加):*9-1のように、日経新聞は社説で、「①養殖を含めた2019年の日本の漁業生産量は416万トンと統計開始以降最低を記録し、1984年ピーク時の3分の1に落ちた」「②低迷の背景には取り過ぎや気候変動等の様々な要因があるが、放置すれば衰退がさらに速まる恐れがあった」「③漁業競争力の向上を目指す改正漁業法が施行された」「④柱の一つは水産資源の科学的調査強化で漁獲可能量(TAC)制度の本格導入」「⑤水産資源の科学的管理を可能にする今回の漁業法改正を、漁業を成長軌道に乗せるきっかけにしてほしい」「⑥これまで地元の漁業協同組合や漁業者に優先的に割り当ててきた漁業権を適切に管理されていない漁場は企業が新規参入できるようにした」「⑦漁業法改正は、競争の促進を通して漁業を活性化するのに必要」「⑧漁業関係者から制度への不安の声も出ており、資源管理強化は一時的に収入の減少を招く」「⑨多くの漁業関係者が撤退して水産業の苦境を深めることのないよう、政府にはきめ細かい対応を求めたい」などと記載している。
 このうち①②については、私が衆議院議員の時に予算委員会分科会で質問したが、政府は「取り過ぎだから資源管理する」以外の解決策は言わなかった。しかし、実際には、「i)海水汚濁で魚の生息環境が悪化した」「ii)海水温上昇で魚の生息適地が変化した」「iii)燃油代が高くて漁業の費用・収益が見合わない」などの原因が当時からあった。それに加え、「iv)*9-4のフクイチ原発事故とその汚染水で好漁場を失った」「v)*9-2の尖閣諸島沖への中国公船の領海侵入で沖縄県の漁船が危険に晒されて好漁場を失ったが、*9-3のように、日本政府は領有権を主張する中国に対し、領海侵犯を許したまま間の抜けたことを言っているのみ」という問題が加わり、i )~v)まで、日本の漁業者の取り過ぎより、日本政府の原因究明と解決能力のなさが原因である。なお、i)については、私の衆議院議員時代に漁村優先の下水道緊急整備が始まり、海水汚濁が改善されて魚影は濃くなった筈だ。
 従って、原因追及して解決したわけではないため、④はしないよりましかもしれないが、これにより③の漁業競争力向上、⑤の漁業の成長が可能だとは思わない。それよりも、⑥は個人漁業者を犠牲にして企業に漁業権を割り当て、⑦は競争を促進して企業を勝たせる政策であるため、沿岸を守ったり沿岸漁業や沖合漁業を活性化したりすることはさらにできなくなる。そのため、⑧⑨の漁業関係者の不安は当然で、漁業者の減少を招いて水産業の生産高が減少し、ますます食料自給率が下がると思われ、きめ細かい(≒恣意的で小さい)対応などは有害無益だ。
 *9-5に、化石燃料を使わない“グリーン水素”の量産プロジェクトがオーストラリアで動き出したと記載されており、まさか日本がこれを輸入することはないだろうが(皮肉)、日本は再エネが豊富であるため、輸入どころか輸出すべきだ。また、言葉の定義もおかしく、①農林業地域の再エネを使って水を電気分解して作る水素を「グリーン水素」と呼ぶのが正しく、②石炭や天然ガスなどの化石燃料から取り出す水素は「グレー」ではなく「レッド」、③化石燃料由来で製造時に出る温暖化ガスを地中に戻したり工業原料などに再利用したりするのが「イエロー」、④海の再エネを使って水を電気分解して作る水素を「ブルー」と呼ぶべきで、海を温める原発由来の水素こそ「グレー」だ。なお、製造コストは、グリーンやブルーの水素が高いわけはなく、低コストなのは燃料も運搬費もいらない①と④に決まっている。

  
    Fukuoka Leapup    2020.5.10沖縄タイムス    2020.8.9Goo

(図の説明:左図のように、日本の漁獲高は《養殖を含み》2018年は442万t、2019年は416万tと漸減して1984年の1/3以下となっており、これで漁業者の取りすぎはないだろう。しかし、日本政府は、原発事故とその汚染水で三陸沖の好漁場を台無しにし(これを風評被害と強弁すれば日本食品の安全に関する信用をなくす)、中央と右図の尖閣諸島の領有権や排他的経済水域の主張はいい加減にしか行わず、漁船の改良や燃料の変換も指揮せず、水環境の改善も行わず、漁獲高の減少原因をすべて漁民の取りすぎのせいにしているので、とうてい許せるものではない)

    

(図の説明:1番左は養殖場に設置された風リング風車の風力発電機、左から2番目は洋上風力発電機で、これら由来の水素は「ブルー水素」だろう。右の2つは、尾根や田園に設置された風力発電機で、これら由来の水素が「グリーン水素」と呼ぶにふさわしい。なお、田畑をつぶし太陽光発電を設置して作った水素は、「ブラック水素」だ)

*9-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20201206&ng=DGKKZO67021930U0A201C2EA1000 (日経新聞社説 2020.12.6) 新漁業法で水産業を成長させよう
 漁業の競争力の向上を目指す改正漁業法が施行された。水産資源の科学的な管理を可能にする今回の改正を、漁業の衰退に歯止めをかけ、成長軌道に乗せるためのきっかけにしてほしい。養殖を含めた2019年の日本の漁業生産量は416万トンと、統計開始以降の最低を記録した。ピークの1984年の3分の1の水準に落ち込んでいる。低迷の背景には取り過ぎや気候変動など様々な要因があるが、放置すれば衰退がさらに速まる恐れがあった。政府が70年ぶりの抜本見直しと位置づける新漁業法は、こうした流れにブレーキをかけるのを目的にしている。柱の一つは魚を増やし、漁獲量を高めるうえで前提となる水産資源の科学的な調査の強化だ。生態系や資源量などを魚種ごとにきめ細かく調べる。その対象を現在の50魚種から200魚種に増やすことで、食卓に上る大半の魚をカバーすることを目指す。これらの調査も踏まえながら、魚を取る量に制限を設ける「漁獲可能量(TAC)制度」を本格導入する。今はサバやマイワシなど国民の生活にとくに重要な8魚種に対象が限られているが、今後はホッケやブリなど15種ほどを追加する。取り過ぎで資源が減るのを防ぐには当然の措置だ。沿岸域で漁業を営む権利の「漁業権」のルールも見直した。これまでは地元の漁業協同組合や漁業者に優先的に割り当ててきた。今後はこれを改め、適切に管理されていない漁場などは企業が新規参入できるようにした。競争の促進を通し、漁業を活性化するには必要な制度改正だろう。漁業関係者からは制度への不安の声も出ている。資源管理の強化は一時的に収入の減少を招く可能性があるからだ。制度の運用が軌道に乗るまでの間に多くの漁業関係者が撤退して水産業の苦境を深めることのないよう、政府にはきめ細かい対応を求めたい。国内では年々深刻になる水揚げ量の減少など厳しい話ばかりが伝えられているが、国際的には水産業は成長産業に位置づけられる。人口の増加や健康志向で魚の消費が増えているからだ。日本の漁業者の多くが資源管理に理解を示す一方、「早く取った者勝ち」の体質から抜けきらない面も残る。改革を機にそうした発想を改め、世界での存在感を高めることを期待したい。

*9-2:https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/628822 (沖縄タイムス 2020年9月8日) 尖閣沖衝突10年、沖縄漁船の苦悩「水揚げ半減」 やまぬ中国船侵入 トラブル避け漁やめる人も
 尖閣諸島沖で中国漁船が第11管区海上保安本部の巡視船に衝突した事件から、7日で10年。この間、尖閣諸島の領有権主張を強める中国公船の領海侵入はやまず、近年は沖縄県内の漁船を追尾する事案も多発。トラブルを懸念して漁をやめる漁業者もおり、尖閣周辺海域を漁場とするマチ類の漁獲量は減少している。一方、日本政府は中台連携をけん制するため日台漁業協定を締結したが、県内漁業者は「日本側に不利な内容となっている」と問題視。粘り強く改定を求めている。
■好漁場消失
 「事実上、漁場の大半が消失した」。マチ類の深海一本釣りをしている、漁師の丸山文博さん(55)=糸満市=はこう訴える。尖閣海域はマチ類やカツオの好漁場だが、領海内にもかかわらず中国公船が航行するため、落ち着いて漁ができていない。十数年前は1日に1トン以上捕れる日もあったが、現在の水揚げは500キロと半分以下になった。昨年まで領海付近にいる中国公船は3隻だったが、今年の4月には4隻に増えたという。漁場に近づきたくても海保から「中国公船が近づいてきているので、近くの島に逃げてください」と連絡が入り、避難せざるを得ないこともある。
■不平等協定
 衝突事件を機に日台が2013年に締結した漁業協定(取り決め)では、日本の排他的経済水域(EEZ)での台湾漁船の操業を容認。はえ縄船同士の距離を長く取って漁をする日本と、距離が短い台湾との漁法の違いからはえ縄が絡まったり、切断したりするトラブルも相次いだ。はえ縄船でマグロ漁をしている那覇地区漁業協同組合の山内得信組合長によると、台湾との間でもトラブルを避けるため操業を自粛せざるを得ない状況が続き、漁獲量も減少傾向にあるという。山内組合長は「尖閣衝突の問題や不平等な協定がなければ、県内の水産業はより発展できたはずだ。行政はもっと県内漁業者の声を尊重してほしい」と訴える。県水産課の担当者は「県内の漁業者が自由な操業ができるような環境を求めていく」と述べるにとどめた。

*9-3:https://www3.nhk.or.jp/news/html/20201126/k10012731281000.html (NHK 2020年11月26日) 菅首相 王毅外相に尖閣諸島問題で対応求める 経済は協力強化
 菅総理大臣は25日、中国の王毅外相と会談し、沖縄県の尖閣諸島をめぐる問題などで中国側の前向きな対応を強く求めました。政府としては懸案の解決に向けた働きかけを続ける一方、経済分野では協力を強化し、関係改善を進めたい考えです。菅総理大臣は25日、日本を訪問していた中国の王毅外相と会談し、沖縄県の尖閣諸島をめぐる問題や日本産食品の輸入規制などについて、中国側の前向きな対応を強く求めたほか、香港情勢について懸念を伝えました。茂木外務大臣や加藤官房長官も王毅外相との会談で同様の姿勢を示し、政府関係者は日中間の懸案や国際社会の懸念事項について、率直な意見を伝えたことは意義があったとしています。政府は、東シナ海や南シナ海の問題など安全保障分野の懸案で中国側が早期に譲歩することは難しいとみていて、両国間の意思疎通を継続し、解決に向けた働きかけを粘り強く続ける考えです。一方、新型コロナウイルスの感染拡大で打撃を受けた経済の回復は両国共通の課題だとして、月内に再開するビジネス関係者らの往来をはじめ、経済分野での協力を強化し、関係改善を進めたい考えです。また、延期されている習近平国家主席の日本訪問については、一連の会談で話題にならなかったということで、政府は、与党内の意見や世論の動向などを踏まえながら対応を検討していく方針です。

*9-4:https://digital.asahi.com/articles/ASNB85QZ0NB7ULBJ017.html?iref=pc_extlink (朝日新聞 2020年10月8日) 東京電力福島第一原発にたまる処理済み汚染水の処分方法について、全国漁業協同組合連合会(全漁連)の岸宏会長は8日、政府が開いた関係者の意見を聴く会に出席し、海洋放出への反対を表明した。聴く会はこれが7回目。政府はすでに地元関係者や経済団体など計27団体、41人から聴取しており、海洋放出反対を訴えてきた全漁連の動向が注目されていた。 岸会長は「我が国全体の喫緊の課題であるとは認識している」としつつ、海洋放出で懸念されている風評被害は「極めて甚大なものとなることが憂慮される」と述べた。その上で「漁業者、国民の理解を得られない海洋放出には、我が国漁業者の総意として絶対反対だ」と強調した。また、福島県だけでなく、全国の漁業者や水産物の消費者、観光客や輸出先の外国にも影響を与えると指摘。「これまで以上に幅広い英知を結集し、政府をあげて議論を深め、慎重に判断していただきたい」と求めた。処分方法をめぐっては、経済産業省の小委員会が今年2月、海洋放出と大気放出の2案を現実的とした上で、海洋放出を「確実に実施できる」と有力視する提言を公表。これに対し、全漁連は6月、風評被害の拡大や水産物の信頼回復への悪影響を懸念し、「断固反対する」との特別決議を採択していた。政府は小委の提言を受けて4月以降、福島県と東京都で聴く会を開催。地元の首長や農林水産団体、住民、隣接県の首長、全国の経済団体や消費者団体などから意見を聴いてきた。全漁連が出席したことで主な関係者の意見表明はほぼ出そろった。座長の江島潔・経産副大臣は、今回で会を終えるかどうか明言を避ける一方、「政府として責任を持って可及的速やかに結論を出し、次の段階にすすんでいかなければならない」と述べた。

*9-5:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20201211&ng=DGKKZO67219570Q0A211C2FFE000 (日経新聞 2020.12.11) 豪、「グリーン水素」輸出へ 官民で石炭依存脱却 、再生エネ使い年産175万トン計画
 化石燃料を使わない「グリーン水素」の量産プロジェクトがオーストラリアで動き出す。豪マッコーリー・グループ系の投資会社など4社で構成する企業連合が、原発6基分の発電所燃料に相当する年175万トンの生産を目指す。石炭や天然ガスに次ぐ輸出資源に育てる狙いから豪州政府も支援する。巨額の事業資金確保などが課題になる。マッコーリーなどが目指す「アジアン・リニューアブル・エナジー・ハブ(AREH)」プロジェクトでは、香港の6倍に当たる6500平方キロメートルの敷地に風力や太陽光による発電機2600万キロワット分の新設を計画する。総事業費は360億米ドル(約3兆7千億円)。既に西オーストラリア州で土地の貸借契約を結んだ。
●原発6基分相当
 地質調査や事業資金の確保などを進め、26年の建設開始を目指す。作った水素は運搬しやすいアンモニアに換え、国内外に燃料として供給する。水素175万トンは、原発6基分に相当する火力発電所を稼働させられる。大規模生産することで、豪政府が掲げる「水素1キログラムの生産コスト2豪ドル(約150円)以下」を達成したい考えだ。ある水素ビジネス関係者は「現在の水素生産コストは日本の場合で1000円前後。150円が達成できれば需要はあるだろう」とみる。参加企業の一つ、香港インターコンチネンタル・エナジーのアレックス・タンコック社長は「豪州は太陽光や風力など再生エネ発電に向いた広大な土地があるほか、資源ビジネスへの恵まれた投資環境があり、水素生産に理想的な地域だ」と話す。豪州の現在の電源構成で再生エネは約2割。まだ開発の余地が大きいとの見方だ。AREH事業の一部は既に州政府の環境認可を得たという。今後は水素の安定的な買い手の確保などに取り組むことになる。豪州政府はこの計画を「豪州の経済成長、雇用促進など国家的に重要な意義を持つ」ことを示す「主要プロジェクト」に認定した。許認可などで支援する。政府のお墨付きは取引先や投資家との商談にも後押しになると関係者は期待する。
●供給先確保急ぐ
 豪州は2019年11月に「国家水素戦略」を発表し、30年をめどに「水素大国」になることを目指すと宣言した。技術開発や実証事業の支援額は予算計上済みのものだけで5億7千万豪ドル(約430億円)。水素関連産業は50年時点で国内総生産(GDP)を年最大で260億豪ドル押し上げるとみている。背景にあるのは産業構造に関する危機感だ。同国は石炭と液化天然ガス(LNG)が輸出額の4分の1を占める。世界的な脱・炭素の流れは深刻な打撃になりかねない。主要輸出先である日本が50年に温暖化ガス排出を実質ゼロにする目標を明らかにした際、調査会社ブルームバーグNEFのコバド・バーブナグリ氏は「(豪州への)『離婚届』だ」と述べた。豪州には再生エネ発電がしやすい以外にも、水素産業に向いた特徴がある。石炭や天然ガスは水素の原材料になる点だ。川崎重工業や電源開発などは豪電力大手AGLと企業連合を組み、豪州で化石燃料から水素を生産、日本に運搬する実証事業を進めている。5億豪ドルの事業費のうち、計1億豪ドルを豪政府とビクトリア州政府が補助する。同州で産出される低品位の石炭「褐炭」から水素を取り出して液化、専用船で21年3月にも日本に運搬する見通しだ。これ以外にも豪州では複数の水素関連プロジェクトが進んでいる。最大の課題は、いかに長期の供給先を確保し、いつどういった規模で生産を始めるかだ。「長期的な供給契約がないと、施設建設に踏み切れない」(資源関係者)からだ。日本をはじめ水素活用を目指す国は多いが実際の本格的なインフラ整備はこれからだ。インターコンチネンタル・エナジーのタンコック氏も具体的な顧客像や需要量はまだ見えないと話す。
▼グリーン水素 再生可能エネルギーを使い、水を電気分解して作る水素。石炭や天然ガスなど化石燃料から取り出す水素は「グレー水素」と呼ぶ。化石燃料由来だが、製造時に出る温暖化ガスを地中に戻したり工業原料などに再利用したりするのが「ブルー水素」だ。現時点での製造コストはグリーン水素が最も高い。

| 教育・研究開発::2020.11~ | 09:25 PM | comments (x) | trackback (x) |
2020.10.12~20 教育・研究・財政・「小さな政府」「新自由主義」への批判など (2020年10月22、24、25、27、29《図》、30《図》日、11月3、4、9日に追加あり)

 2020.10.10     日本学術会議の組織         2020.10.3Yahoo
  東京新聞

(図の説明:左図が日本学術会議の会員選出方法の変遷で、中央がその組織図、右図が今回推薦されながら任命されなかった6人の経緯だ。公認会計士は公認会計士協会を通して、税理士は税理士会を通して国にいろいろな提言をしているが、独立性は高く、主として会費で運営されている。そのため、日本学術会議も独立性の高い組織にして、主として会費で運営し、国の諮問に応える形で提言を行えば、人事に口出しされなくてすむ。また、研究者も継続的専門教育として、年に40単位くらいは他分野の第一線の研究者の講演を聞くことを義務化すれば、視野を広げると同時に、自分の研究にも新しい閃きが生じると思われる)

(1)学術会議新会員の内閣総理大臣の任命権の範囲
1)菅首相の学術会議新会員候補に対する任命拒否
 菅首相は、2020年10月5日、*1-1-1のように、内閣記者会で「①日本学術会議会員は公務員であるため、新会員候補6人の任命拒否は首相の任命権に基づく対応だ」「②会員の人選は、法律に基づき、内閣法制局に確認の上、推薦者の中から首相として任命した」「③拒否理由は個別人事に関することなので控えるが、総合的・俯瞰的活動を確保する観点から判断した」「④6人が特定秘密保護法・安全保障関連法を批判していたことは関係ない」と説明された。

 しかし、*1-4の日本学術会議法により、「④第17条 日本学術会議は、優れた研究・業績のある科学者のうちから会員候補者を選考し、内閣総理大臣に推薦する」「⑤第7条の2 会員は第17条の推薦に基づいて、内閣総理大臣が任命する」、平成16年附則「⑥第6条 新会員は、新法第7条第2項の規定にかかわらず、前条第1項の規定による推薦に基づいて、内閣総理大臣が任命する」と定められており、日本国憲法の学問の自由を持ち出すまでもなく、内閣総理大臣は日本学術会議の推薦に基づいて新会員を任命しなければならないと定められている。

 従って、①②③は、④⑤⑥によって、法律で禁止された行為だ。これは、日本学術会議法が前文で「日本学術会議は、科学が文化国家の基礎であるという確信に立り、科学者の総意の下、わが国の平和的復興、人類社会の福祉に貢献し、世界の学界と提携して学術進歩に寄与することを使命とし、ここに設立される」と記載していることからも明らかだ。

 また、内閣総理大臣が会員候補者を変更してはならない理由は、選挙で勝ち政権をとったからといって急に科学に詳しくなるわけではないため、科学に関する意見を幅広く偏りなく聞いておく必要があるからで、聞いた意見をすべて実現させる必要はないのである。つまり、一般の行政官に政治の人事権が及ばなければ仕事ができないのとは、状況が異なる。

2)政権が述べる任命拒否理由
 前会長が、*1-1-2で述べておられるように、任命拒否するのなら理由を述べるべきだと私も思う。少なくとも推薦者には理由を述べなければ、「①理由もなく拒否した」「②公には言えない理由で拒否した」と解されても仕方がなく、それは許されないことだ。
 
 また、*1-1-3のように、2020年10月11日、朝日新聞が「①菅首相は『6人を除外する前の推薦者名簿を見ていない』とした」「②首相が見ていないとすれば、いつ、だれが6人を除外したのか」「③専門家から手続きの違法性を指摘する声も出ている」と記載しているが、日本学術会議会員全体では「総合的・俯瞰的な活動」になるようにしなければならないかもしれないが、深く極めた専門家に「広い視野」「バランスの取れた行動」「国民に理解される」などを求めるのは無理がある。何故なら、一般には「深い」と「広い」は矛盾する上、国民に最も理解されバランスがとれていると感じられるのはその時代の常識に近い考え方であって、先端はいつも異端とされてきた人類の歴史があるからである。

 なお、国務大臣名で表彰されたり、省庁の会議メンバーに任命されたりすることもあり、その候補者をすべて担当大臣がチェックしているとは思わないが、首相の任命権が法律で明記されており、今後の日本経済に大きな影響を与える科学技術を担う日本学術会議の選考なら、首相は関心を持って見ていてよいだろう。

3)拒否された学者が述べる拒否理由
 任命拒否した人が拒否理由を明確に説明していないので、どう推測されても仕方がないが、*1-2-1のように、日本学術会議の新会員への任命を政府に拒否された6人の学者は、特定秘密保護法・安全保障関連法・共謀罪法の問題点を指摘していたそうだ。

 しかし、特定秘密保護法は、特定秘密の基準が曖昧であるため、政府が対象を広げることも可能だ。また、適性評価制度で、「精神疾患患者は自己を律して行動する能力が十分でなく、特別秘密を漏らしてしまう恐れがある」としており、日本精神神経学会が精神障害者に対する差別・偏見を助長するため反対の見解を出しているものである(https://aichi-hkn.jp/system/140516-162235.html 参照)。

 また、安全保障関連法は、「どこまでが自衛か」の議論が混乱しており、憲法違反の問題をはらむため、反対する学者がいるのは当然だ。

 さらに、*1-2-1・*1-2-2に書かれているとおり、「共謀罪」の趣旨を盛り込んだ改正組織犯罪処罰法の成立を「市民の内心が捜査と処罰の対象となり、自由と安全が危機にさらされる」「共謀罪法は戦後最悪の治安立法」と批判した学者も任命拒否されているが、確かに共謀罪法は、抹殺したい人への警察の武器として使うことができる危険なものである。

4)学術会議の任命拒否に、90超の学会などから広がる抗議 
 このように、理由も説明されずに、法律違反の色彩が濃い任命拒否がなされた結果、*1-3-1のように、「日本学術会議法第7条第2項に反する違法な行為」「優れた研究又は業績のある科学者が、恣意的に会員から除外されることは、研究者を萎縮させる」「このことは、学問の発展を阻害し、ひいては社会の利益に反する結果をもたらしかねない」と指摘しており、10月8日までに90以上の学会や大学、市民団体などが抗議の声明を出している。

 また、*1-3-2のように、日本物理学会・日本数学会・日本地球惑星科学連合などの自然科学系を中心とする93学会も、10月9日、理由を説明しないまま候補を除外した政府に対し、「任命されなかったことに憂慮している」「対話による早期の解決が図られることを希望する」「学術会議と政府だけの問題ではなく、研究者全体にかかわる」と発表している。

 さらに、*1-3-3のように、学者や各界文化人の間で抗議が広がり、「戦前・戦中の言論弾圧を振り返って今回の事態を座視できない」「首相の任命行為は形式的である」「学問の業績と時の政権の意向に沿うか否かは関係がない」「一部の研究者を排除することは、学術会議本来の在り方を損なう」「総合的、俯瞰的判断との主張は説明になっておらず、傲慢で不誠実」「組織の問題点と拒否された6人は全く関係がなく、問題のすり替えだ」等としており、賛成だ。

(2)経済発展の源は教育と研究

  主要国の研究開発費推移       主要国の研究者数推移     各国の論文数推移

(図の説明:主要国の研究開発費・研究者数・論文数の推移を比較すれば、中国は著しく上昇し、日本は殆ど変わっていない。つまり、早くから経済発展した分は、最初の10年で追い抜かれ、次の10年で見事に引き離されたのである。これこそ、責任者を明確にすべきだ)


世界のGDP構成比  米・独・日本の労働生産性比較  進学率(高校・短大・大学・大学院)

(図の説明:右上の中国の論文数上昇とあいまって、左図のように中国のGDPも上昇し、世界におけるGDP構成比も米国を抜く勢いだ。中国の一人当たり労働生産性はまだ高くないが、先進国であった筈の日本の労働生産性も、中央の図のように低迷したままである。一方、右図のように、日本の高校進学率は100%近くになっており、保護者の学費負担は大きい)

1)大学の基礎研究について
 日経新聞が、*2-1のように、「①中国の大学は躍進を遂げ、いくつかの研究分野で米国を抜いた」「②中国の清華大学はアジア勢で最も高い20位に入った」「③日本は東大36位、京大54位で、上位200位以内は2校のみ」「④国立大学法人化後、上位大学に資金や人材が集まりやすい『選択と集中』を進め、上位大学だけでなく中堅大学も失速した」「⑤日本勢の停滞には、『論文の被引用数』など研究力の衰えが見える」「⑥研究投資は、米国・ドイツ1.8倍、英国1.6倍、韓国3.1倍、中国10.2倍に増えたのに対し、日本は1.0倍と全く伸びていない」「⑦政府投資がイノベーションを促し、GDPが伸びれば政府の研究投資も増える」と書いている。

 このうち、①②③④は、日本では勉強することを悪いことのように言い、一般の人にゆとり教育がなされた結果、母集団のレベルが下がったことに大きな原因がある。その間、中国は真面目に勉強させ、欧米に留学させて第1線の人材を作り、優れた人は優遇して帰国させ、研究機会を与えるという正攻法を行っていたため、日本の停滞は歪んだ世論の結果なのである。

 また、④の大学における研究段階の「選択と集中」は的外れであり、その理由は投資効果がプラスであることが確実になったら民間が参入して選択と集中は自然と進むため、大学の基礎研究段階では、投資効果がプラスか否かわからない段階の多様な研究を行って可能性を追及しておくことが必要だからだ。そして、これを怠ったり、選択を誤ったりすれば、⑦のように、日本が技術やイノベーションでリーダーになるどころか他国を追随するしかなく、トップランナーのメリットが受けられない。

 なお、⑤の日本勢の「論文の被引用数」の低下は、早くから研究内容を選択・集中した結果、世界の学者が魅力を感じる論文が減ったということであり、これは、⑥のように、日本の研究費が伸びていないことも大きいかもしれないが、研究費の額だけが問題なのではない。つまり、日本では新しい見方をする論文へのいちゃもんが多すぎてチャレンジ精神を削ぐのである。

 さらに、都会の大規模大学の方が地方の中小規模大学より研究の生産性が高いという明確な根拠がないのは当然である。何故なら、自然や農林漁業に関する研究は、都会のコンクリートの中で育った人よりも現場近くで育った人の方が幼い頃からの気付きの積み重ねが多いからで、実績を基にしない意図的な「選択と集中」は百害あって一利なしだ。その一例が、高知大学の海洋コア総合研究センターや地球・環境科学なのである。

2)母集団の中等教育について
 公立高校は既に無償になっているが、政府は、*2-2のように、私立高校の授業料に対する補助額の上限を2020年度から39万6千円に引き上げ、私立高校も実質無償化するそうだ。ただし、4人家族で年収590万円未満の世帯が対象だそうで、母集団のレベルを上げて人材の質を高める必要性を考えれば、高校無償化に低すぎる親の収入要件はいらないだろう。

(3)厚労省の質を検証する
1)「高齢者は早く死ね」と言わんばかりだった新型コロナ対応
  
    2020.2.16中国新聞         2020.3.28Yahoo  2020.5.24朝日新聞

(図の説明:厚労省の専門家会議は、37.5Cの熱が4日間続いた後、帰国者・接触者相談センターに相談してからPCR検査を受けさせることにしたため、無症状者・軽症者が新型コロナを市中に蔓延させた。また、左図のように、新型コロナの予防として国民全員に在宅勤務を推奨し、旅行・集会禁止を行ったため、これによる被害を受けた企業が多く、それらの企業に雇用調整助成金・持続化給付金を出したのだが、それよりもPCR検査を徹底して感染者を隔離した方が社会にダメージが少なく安上がりであったのは、最初からわかっていた。また、中央の図のように、感染者と認定された人の退院基準が2度のPCR検査で陰性というのはよいが、右図のように、陽性率の把握に民間検査を入れず退院判定の検査を入れたのは、陽性率を把握する目的がわかっておらず、自分たちが検査した回数を示したにすぎない呆れたものである)

 
  2020.4.4毎日新聞       2020.5.4、2020.4.2、2020.6.26朝日新聞

(図の説明:厚労省がPCR検査をケチった理由は、「無症状者・軽症者で病院が満杯になり、重傷者を受け入れられなくなる」というものだったが、そのために、1番左の図のように、無症状者・軽症者を収容するホテルを準備したのである。自宅療養して家族に感染させないことは不可能に近いため、自宅療養を避けてホテル収容を不便のないものにすべきだったのだが、準備したホテルはがら空きだった。そして、日本は、未だに左から2番目の図のような「新しい生活様式」を国民に強制しているが、このような様式が適さない業種も多いため、いい加減にすべきだ。なお、1番右の図のように、SarsやMarsが流行したことがある地域は、既に免疫があって新型コロナによる「死者数/人口百万人」が少ない。しかし、左から2番目の図のように、「死者数/感染確認者」は、日本よりもドイツの方がずっと低く、日本では検査しなかったため確認されなかった感染者が多い実態を示している)

 新型コロナが感染拡大していた2020年5月、*3-1のように、政権が「検査件数を増やす」と繰り返しても、厚労省はPCR検査拡大に否定的な内部資料を作成し、「①PCR検査は誤判定がある」「②検査しすぎれば、陰性なのに入院する人が増える」「③医療崩壊の危険がある」などと政府中枢に説明していたそうだ。

 しかし、①②については、複数回検査すれば、誤判定の確率は指数関数的に減ることを、厚労省の専門家は理解できないのだろうか? もしそうなら、理数系に弱すぎる上、規模の経済を理解しておらず、政策を決定する立場に値しない。

 また、検査すれば入院する軽症者が増えるのはわかっていたからこそ、移動制限で仕事がなくなったホテルに軽症者を収容して他人に感染させないようにしたのであるため、検査の拡大で陽性者が増えても医療崩壊はしなかった筈だ。にもかかわらず、金を払って確保したホテルはガラガラにしたまま、軽症者を自宅療養させて感染拡大に貢献し、その後はGOTOトラベルでホテルを救うべく金を浪費しなければならなくなったのだから、納税者はたまったものではないのだ。

 また、検査ルートをおかしくした結果、患者が感染者か否かを医師が判定できず、院内感染や施設内感染が発生した。また、保健所も変な制限をつけて検査を拒んだため、重篤化しなくてよい人まで重篤化させ、厚労省の非科学的な判断が医療・介護の現場を困難にしたと言っても過言ではない。

2)高齢者及び子どもの医療費負担の不公平
 政府の全世代型社会保障検討会議が中間報告をまとめ、*3-2のように、高齢者医療費の増大を抑えるために75歳以上(後期高齢者)の窓口負担を「一定の所得以上は2割、それ以外は1割」という考え方を示したそうだ。これは、財務省・厚労省主導の政策であり、自民党内にも賛成者は多いが、保険料を所得に応じて負担した上、医療費の負担割合も所得に応じて異なれば、医療費だけで同一の所得に対する二重負担になる。

 そのため、高齢者医療の負担割合を変更する前に、*3-4の「子ども医療費無料化」はやめるべきだ。何故なら、「老人医療費無料化」と同様、無料では過剰診療が起こるので、何割かは自己負担した方が合理的な判断に資するからである。そして、一世帯あたりの医療費が高すぎて医療費倒れしそうな世帯は、老人医療費と同様、月額○万円以上は全額保険適用(自己負担なし)とすればよい。

 また、自己負担分を自治体が肩代わりして負担することまで住民以外の第三者が禁止することはできないが、医療保険は所得に拘らず1~3割負担とし、所得や病態に応じて負担の上限を下げるのがよいと思う。

3)介護保険料負担・介護サービスの不足と不公平
  
                2019.11.16朝日新聞    2020.10.10朝日新聞

(図の説明:左図に介護保険制度の概要と介護保険料の負担割合が記載されているが、人口構成が異なるのに国から一律25%しか支給されないのは不公平だ。また、提供される介護サービスの範囲も65歳以上と40~64歳で異なり、40歳以下はどちらも埒外となっているのもおかしい。そして、中央の図のように、認定者数や介護費用は介護保険制度導入当初と比較して2倍となり、負担も約2倍となっている。そのため、右図のように、低年金の高齢者に過重負担となり、介護保険料を払えない人が差し押さえ処分されて、本末転倒の結果となっている。なお、左図の中の65歳以上の「高齢者」のイラストは、いつの時代のものかと思われ、現在の女性は80代でもそういう髪型はしていない)

 65歳以上になると、*3-3のように、9割の人は介護保険料を年金から天引きされが、年金額が年18万円未満の人は保険料を納付書や口座振替で支払うことになっているため、介護保険料倒れが起こって滞納や差し押さえが発生した。

 しかし、65歳以上なら年金額が18万円未満の人からでも介護保険料を徴収し、40歳未満の人からは年収が何百万円あっても介護保険料を徴収せず、介護サービスも行わないという仕組みには不公平という問題がある。

 なお、介護保険制度は、「①40歳から保険料を支払い、40歳未満は支払わない」「②未収保険料は65歳以上の分だけで約236億円(18年度)」「③65歳以上の介護保険料は、2000年度は全国平均で月額2,911円、2015年度に5,514円、2018年度から5,869円となり、団塊の世代がすべて75歳以上になる2025年度には7,200円程度と見込まれる」「④非正規雇用の割合が高水準で推移し、低年金の高齢者は増えている」「⑤第一号被保険者(65歳以上)と第二号被保険者(40~64歳)で受けられるサービスに違いがある」仕組みになっている。

 このうち、①⑤については、働いて所得のある人は年齢を問わず介護保険料を支払い、多胎児を出産したり、家族が病気にかかって自宅療養していたりする場合にも年齢差別なく介護サービスを受けられるようにすれば、介護保険制度は年齢にかかわらず誰の役にも立つものだ。

 そうなると、②③④の負担も高齢者に特化したお荷物としてではなく、所得に応じて負担することが可能になる。つまり、医療・介護サービスは、それがなければ過重負担になりながら女性が負担してきた実需であるため、自由サービスと保険サービスの両方を受けやすくすれば、高度で頼り甲斐のあるサービス産業になるのだ。しかし、それをお荷物としてしか認識できない点に、厚労省はじめ政治・行政の限界があるわけである。

(4)国の予算と社会保障・エネルギー
    
    2019.12.21毎日新聞        2020.4.8     2020.5.27時事

(図の説明:左図のように、2020年度の本予算は102兆6,580億円で、消費税を増税したのに、9兆2,047億円は債務純増だった。さらに、中央の図のように、新型コロナ対策として第1次補正予算が16兆8,057億円組まれたが、そのうち9兆5,000億円あまりは国民に自粛を求めたため成り立たなくなった企業の救済資金だった。また、右図のように、第2次補正予算が31兆9,114億円組まれ、そのすべてが自粛による倒産危機に備える支出だった。しかし、しっかり検査と隔離をし、新型コロナ関係の機器・治療薬・ワクチンの早急な開発をした方が、ずっと少ない支出でその後の経済効果が大きかったのだ。そして、2020年度のこれまでの支出合計は、151兆3,751億円になっている)

   
 2020.7.21西日本新聞 2020.10.7毎日新聞       2020.5.30Yahoo

(図の説明:左図のように、各省庁の予算は2020年度と同額で、これに新型コロナ対応が上乗せされる。しかし、高齢者の自然増に伴って増加するのが当然の社会保障費を減らす方向であるため、物価上昇の中で高齢者1人あたりの社会保障費が削られるのであり、消費税増税の本来の意味が消失している。一方で、中央の図のように、コロナ対応と称して生産年齢人口へのばら撒きを増やしており、右図のように、財政規律がなくなった状態なのだ)

1)2021年度予算 ← コロナ対策を名目とする無駄遣い
 各省庁が提出した2021年度予算の概算要求額は、*4-1のように、一般会計の総額が105兆4071億円となり、2020年度当初予算(消費増税に伴う措置を除く)と比較して4兆5280億円(4・5%)増になったそうだ。

 2021年度予算の特色は、新型コロナ対応の「緊要な経費」は上限なしで要望を認めたため、文科省は、コロナ禍を踏まえた社会づくりに必要な研究開発に取り組んで「新たな日常」づくりに貢献するとして、宇宙・航空分野の研究開発を2020年度当初予算8割増の2,838億円、学校のトイレ洋式化を含めた施設整備1,295億円を要求したそうだ。しかし、これらは、コロナ禍とは関係なく必要なものだと思われる。

 また、国交省は整備新幹線の建設費の一部を、「ウィズ・コロナにおける持続的経済成長の実現に必要な経費」としたそうだが、高速鉄道なら整備新幹線より新幹線かリニア、ローカル線でも高架・EV化・燃料電池化を標準とし、線路用地には地方から都会に電力を送るための送電線を通すのを原則とすべきだ。そうすれば、このような工事は雇用を生むだけでなく、完成後に長期にわたって大きな経済効果が見込める。

 なお、自動車の進歩に伴って道路の企画は変える必要があり、例えばアフリカや砂漠地帯に新しく道路を通すには、空飛ぶ車を前提として今までの舗装をやめ、事故や不時着した場合に安全に対処できる設備にすることが必要だ。既に道路のある地域も、それを改良する必要があろう。

 そのため、PCR検査や治療をケチって新型コロナを蔓延させ、国民全員に自粛を強制して家賃支援補助金・持続化給付金・雇用調整助成金・緊急雇用安定助成金・経営継続補助金等をばら撒いているのは無駄遣いとしか言いようがなく、このようによりよい代替案を吟味しない無駄遣い政策が続いたことが、日本経済を借金漬けにした上に、停滞させているのである。

2)2020年度予算 ← 消費税増税対策を名目とする無駄遣い
 コロナ対策が不要だった2020年度当初予算も、*4-2のように、2019年度当初予算より約1兆2千億円増え、2年連続100兆円超えの総額102兆6,580億円で過去最高額だった。

 この時は、消費税増税対策と言えば予算がつき、政府は財政健全化のたがを緩めて支出した。もちろん消費税は社会保障財源とされているため、幼児教育・保育の無償化・大学等高等教育の負担減・医療・介護等の社会保障に使われたのならまだ納得できるが、それは一部に過ぎず、下の段の右図のように、平成元年に消費税が導入されてから日本の借金は増え続けているのだ。

 防衛費も6年連続で過去最高の5兆3,133億円に達し、陸上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」は米国から導入予定の2基分について129億円を計上したものの、使い方に困っている状況だ。そもそも、陸上配備型迎撃ミサイルなら、敵国は最初にそれを破壊してから本攻撃を始めるだろうし、「イージス・アショア」を破壊する前に日本海側の原発をいくつか破壊すれば、日本は住めない国となって国力を失うため、政策に深慮がないと思う。

 なお、江戸時代や敗戦後すぐならともかく、既に先進国となった日本が、「五輪や万博で国威発揚する」などと言っているのは遅れているにもほどがあり、技術・論文数・イノベーション力・経済などで日頃から自然と国威発揚しておくべきである。しかし、政策はそれにほど遠く、借金だけ増えて国民の暮らしが改善しないのは尤もだと言わざるを得ない。

 しかし、すべての3~5歳児と住民税非課税世帯の0~2歳児の計約300万人の幼保無償化はよいが、無償で預かるのなら単なる居場所作りではなく3~5歳児も義務教育として教育すれば、親にとっては安心で、子にとっては時間を無駄にせず多様な学びをすることができ、日本経済にとっては支え手の質を上げるための投資になる。同じく、大学などの高等教育にかかる経済的負担を減らすため、授業料減免や給付型奨学金を増やすのもよい。何故なら、生産年齢人口が補助金で支えなければならない人ばかりでは、財政も経済も成立しないからである。

3)予算における社会保障の扱いは変であること
 「①日本は少子高齢化が進み、国の社会保障給付費は2018年度に121兆円、2025年度は140兆円、2040年度は190兆円に増加する見通し」「②国民が安心して暮らすには、負担と給付のバランス・財源とセットで考えなければならない」「③2025年には団塊の世代が全て75歳以上になり、公費支出の急増が見込まれるので、新政権は社会保障の再構築に取り組むべき」「④安倍前政権は全世代型社会保障改革を掲げ、働く女性や高齢者を増やして社会保障の支え手を広げる施策に力点を置いたが、痛みを伴う本格的な改革に踏み込まなかった」「⑤膨らむ社会保障給付費は、利用者の負担増やサービスの縮小だけでは賄いきれない」「⑥財源確保には富裕層に応分の負担を求めるなどの所得の再分配に力点を置いた税制の見直しが欠かせない」等を、*4-3は記載している。

 このうち、①は正しいかも知れないが、②のように社会保障だけに財源とのバランスを求め、③のように団塊の世代に不利益を押し付ければよいとするのは、おかしな発想だ。私は、④のように、支え手を増やすのなら幸福度を増しながら財源を増やせるのでよいが、⑤の高齢者の負担増とサービスの切捨ては、さらに不幸な人を増やすと思う。

 また、経済のパイは変わらないから所得の再分配に力点を置くべきというのも工夫がなさすぎ、これまで述べてきたように、無駄を排して有効な投資をすれば経済成長してパイが大きくなる上、税外収入の確保や本当の無駄遣いの排除など、工夫の余地は大きいのだ。

 そのような中、*4-4のように、精神科病院に約40年間も入院させられていた統合失調症の男性が、「入院は実質的に強制で、憲法が定める幸福追求権や法の下の平等に反する」として、国に慰謝料など3,300万円の賠償を求める訴訟を起こしたそうだ。日本の精神科における入院期間は世界の中でも異常に長く、確かに差別であり、被害者が人生の大半を失わされるという人権侵害にあったのはもちろんだが、国民も医療費を無駄遣いされたのである。

4)予算におけるエネルギーの扱いは野放図で合理性がないこと

  2020.4.6朝日新聞                2020.10.15東京新聞 

(図の説明:左図のように、処理済みでトリチウムしか入っていないとされる処理水のタンクが増えている。この水は、中央の図のように、メルトダウンした核燃料を冷やした汚染水を浄化したものだが、除ききれなかったセシウムやストロンチウムを含んでいる。それを、右図のように、薄めて排出基準以下にし、30年かけて大気や海洋に放出するとしているが、薄めても毒物の総量はかわらないことを無視しており、深刻な事態だ)

  
  2020.1.17朝日新聞

(図の説明:左図は、積み置かれていた除染土のフレコンバックが大雨で流された様子で、これでは除染した意味がない。このようなフレコンバックは、被災地のあちこちに積まれたままになっており、金ばかりかけた原発事故処理の不徹底さと不誠実さを物語っている。中央の図は、海洋風力発電機の設置方法だが、半島・離島・山間部に設置した方がコストが安そうだ。右図が、農地に設置された風力発電機で、農業者が電気を副産物にすれば、農業補助金を節約することが可能だ。しかし、いずれにしても、風力発電機は、低周波を発生させずに、もっと効率よく発電できるよう改良すべきだ)

  

(図の説明:太陽光発電は、左図のように、道路に設置するものができた。また、中央の図のように、透明・薄膜型で変換効率の高いものができたので、ビルの壁面・窓・自動車などにも使えるようになった。なお、右図のように、1,000kwhの太陽光発電を1年間使用すると、CO₂削減量500t、石油消費削減量250klだそうだ)

 梶山経産相が、*4-5のように、「①太陽光や風力などの再エネを、他の電源に比べて上位の主力電源にしていく」と表明されたのはよいが、「②原発はまだまだ必要なエネルギーなので、今後10年間は原発の再稼働に全精力を注ぐ」とされているのはいただけない。

 フクイチ事故以降、原発への地元住民・自治体の信頼回復ができないのは、①さっさと適切な後処理をしなかったこと ②行った後処理に誠意がないこと ③避難計画さえあればよいと考えていること であり、今から原発の新増設などとんでもないのである。

 日本の原子力政策は、「核のごみ」を捨てる最終処分場の選定も国任せで、事故処理費用や最終処分に関わる費用も国が出すのに、原発は安全でコストが安いなどと嘘ばかり言ってきた。そして、公害についても、石炭火力やLNG火力のCO₂しか考えず、住むことすらできなくなる放射性物質による公害を考慮しないのは、異常としか言いようがない。

 また、梶山経産相が言われるとおり、「日本は資源のない国だ」などとずっと言われてきたが、再エネ資源は膨大で、排他的経済水域内に鉱物資源も多いので、経産省・国交省・農水省・環境省は何を考えてきたのかと思う。なお、「産業競争力」は、高止まりする公共料金・生産性以上に高い人件費・輸入制限があるため起こる輸出超過が生み出す円高などによって落とされるのであるため、継続的に一つ一つの問題を改善し続けるしか解決策はない。

 さらに、*4-6のように、政府はフクイチ原発にたまる処理水の海洋放出を月内にも決定する方針で、「トリチウムしか含んでいない」と強弁されている処理水の源はフクイチの1~3号機の炉心溶融を起こした原発汚染水で、実際には除ききれなかったセシウム137やストロンチウム90を含んでいる。事故から約10年経っても、セシウム137の半減期は30年、ストロンチウム90の半減期は29年であるため、まだ半分にもなっておらず、薄めて放出しても総量は変わらない。

 その処理水について「いつまでも方針を決めずに先送りすることはできない」としているのなら、これまでどういう意図で処理水を貯蔵してきたのかを問いたい。もともと海洋放出するつもりだったのに、国民が原発事故を忘れるまで貯蔵していただけだとしたら、あまりに国民を馬鹿にした無駄遣い以上の何物でもない。

 なお、「2年後にも満杯」というのは国民の責任ではないため、責任者が国民に迷惑をかけずに処理すべきだ。そのため、地元漁協も反対しているのであり、「処理水はトリチウムしか含まない」と言うことこそ意図的に作られた風評にすぎないため、メディアはそのような嘘をばら撒いてはいけない。

(4)日本における「小さな政府」と「新自由主義」批判の間違い
1)新自由主義の本当の意味
 感情を挿入せずに新自由主義の正確な意味を書いているのは、*5-2である。つまり、新自由主義(ネオリベラリズム、neoliberalism)とは、①政府の積極的な民間介入に反対し ②同時に自由放任主義は排し ③資本主義下の自由競争の秩序を重んじる 考え方なのである。

 いろいろな要素をその重みに応じて同時に考慮することができない政府(人間)が民間の経済活動に介入し過ぎると、いろいろな要素を包括して動いている市場(民間経済)がめちゃめちゃになり、公平でも公正でもなくなって財政も経済も廻らなくなる。そのため、①は重要なのだ。そして、これは、新型コロナ対策で現象として顕著に表れた。

 しかし、民間に任せきりで自由放任主義にしすぎると、その時点で市場に織り込まれていない要素(独占・寡占による価格付けの弊害、労使の分配、自給率低下、公害、安全保障など)が考慮されず、市場の失敗が起こる。そのため、修正資本主義経済の最低限の規制は、自由主義経済の歴史を経て人類が到達した知恵であり、これを現したのが②なのである。

 さらに、資本主義下で自由競争の秩序を重んじ、競争している者の頑張りや工夫が公平に報われて初めて、人は努力したり工夫したりする動機づけを得られる。そのため、③も重要であり、これは人間の自然な心理を述べているものであるため、善悪の価値づけは不要だ。

2)日本における「小さな政府」と「新自由主義」に対する批判の誤り
 「小さな政府」は私も主張しているが、私が主張する「小さな政府」は、夜警国家となって必要な社会保障を削るような基本的人権を侵害する政府ではない。

 また、存在感を示す目的の規制・監督で自由競争を阻害し、予算をばら撒いて増税を繰り返す政府を必要最少限の規模にしようという主張であり、本当に必要な規制や監督に絞り、ITで生産性を上げて無駄遣いを減らすことによって、国民負担を軽くしようというものだ。国の支出は、国民がどこかで負担しなければならないものであることを考えれば、継続的に効率化・合理化し続けるのは当然のことである。

 なお、*5-1のように、「新自由主義(ネオリベラリズム)」という言葉も批判されることが多いが、私は「自由(Liberalism)」に反対する人がいるのにまず驚いた。自由とは、「外的束縛や強制がなく、意思の自由を保てること」であり、自由を勝ち取ってから現代に至るまで、人類は自由を大切にしてきたからである。「新」がつくのは多少の修正が加わっているからで、民主主義とは自由な意志を持つ個人が主体となる国家の意思家定システムだ。

 金融機関の救済について、私は、一定の救済は行われなければ銀行に金を預けることができなくなるので支持するが、金融機関の再編にまで手を出すのはやりすぎだと思う。その理由は、金融庁が考えるように、大きくしたら倒産しないわけではなく、国民の利便性が高まるわけでもなく、それぞれの銀行が工夫して与信行動を行い、必要に応じて独占禁止法に触れない範囲で組織再編を行うことによってのみ、国民の利便性が高まって金融が発展すると思うからである。そのため、それぞれの工夫をつぶすのが最悪で、工夫しやすいように計らうのがよいと思う。

 しかし、政府が環境政策の一環としてCO₂を排出する燃料に税をかけるのは、「これまでは市場で考慮されず、汚し得になっていた環境問題を金銭に換算する」という意味で大きな意味がある。従って、その条件下で、自由な個人がCO₂を排出する燃料を使うか排出しない燃料を使うかを選択すればよくなるため、マクロン大統領のこの政策は的を得ている。

 また、ブッシュ政権が自由貿易を重視しながらも米国内の鉄鋼業を保護するために鉄鋼輸入に対して関税や数量制限をかけたのは、ある程度の自給率を維持することが産業政策と安全保障のために必要だからで、私は「新自由主義者」のジャンルに入るだろうが、この政策に賛成だ。

 なお、日本には「エリート」が悪いかのように言う人が多いが、この場合の「エリート」の定義は何か? 私は、その定義付けもおかしいと思う。何故なら、かなり努力しなければエリートにはなれず、エリート科学者たちは他の人が思いつかなかった新技術を作り出して経済に貢献しているからである。

 そして、エリート科学者をうまく使って正攻法で経済発展しているのが、共産主義(=マルクス主義)国の中国であることは注目すべき事実であり、これを怠った日本の債務の大きさと経済の停滞は著しいわけである。

・・参考資料・・
<学術会議の任命拒否について>
*1-1-1:https://www.tokyo-np.co.jp/article/59883 (東京新聞 2020年10月5日) 学術会議の任命拒否で菅首相「個別人事のコメント控える」 内閣記者会インタビュー
 菅義偉首相は5日、内閣記者会のインタビューに応じ、日本学術会議の新会員候補6人の任命拒否について、首相の任命権に基づく対応だと強調した。政府は会議に年間約10億円の予算を投じているとして「会員は公務員の立場」と明言した。任命を拒否した具体的な理由は説明しなかった。首相は会員の人選について「法律に基づいて、内閣法制局にも確認の上、推薦者の中から首相として任命している」と語った。従来の選考方法について「現在の会員が自分の後任を指名することも可能。推薦者をそのまま任命してきた前例を踏襲して良いのか」と疑問を投げかけた。任命拒否の理由に関しては「個別人事に関するコメントは控えたい。総合的、俯瞰ふかん的活動を確保する観点から判断した」とし、詳しくは説明しなかった。対象の6人が特定秘密保護法や安全保障関連法などを批判していたこととは「一切関係ない」と語った。憲法が保障する学問の自由への侵害との指摘があることについては「全く関係ない」と強調した。政府が1983年の国会で、学会が推薦した学者を「その通り首相が形式的な発令を行う」と答弁したこととの整合性については、「それぞれの時代の制度の中で、法律に基づいて任命を行っている」とした。今回のインタビューは読売新聞、北海道新聞、日本経済新聞のインタビューに内閣記者会に常勤する19社が同席する形で行われ、3紙以外は質問できなかった。本紙も首相のインタビューを申し込んでいる。

*1-1-2:https://www.tokyo-np.co.jp/article/61123 (東京新聞 2020年10月10日) 学術会議行革を前会長が批判 「まず任命拒否の理由を」
 日本学術会議の山極寿一前会長が10日、東京都内で共同通信の取材に応じ、会議を行政改革の対象として検証する政府方針は、任命拒否問題からの論点ずらしだとの認識を示し「まずは6人を任命拒否した理由を示すべきだ。会議の在り方は別の問題で、分けて考える必要がある」と批判した。山極氏は、会長を務めた2017年10月~今年9月、会員の選考や予算、会議の在り方について、政府から問題点の指摘や妥当性の検証の要求は「なかった」と明言した。一方、会議内部では予算などについて議論していたという。18年に定年を迎えた会員の補充人事を巡る官邸側の対応にも疑問を示した。

*1-1-3:https://digital.asahi.com/articles/DA3S14654624.html (朝日新聞 2020年10月11日) 除外前名簿「見ていない」波紋 学術会議問題で菅首相発言 いつ誰が決めた?野党は批判
 日本学術会議が推薦した会員候補6人が任命されなかった問題で、6人を除外する前の推薦者名簿を「見ていない」とした菅義偉首相の発言が波紋を広げている。首相が見ていないとすれば、いつ、だれが6人を除外したのか、大きな謎が残るためだ。専門家からは手続きの「違法性」を指摘する声も出ている。菅首相の発言に早速、野党が疑問の声を上げた。立憲民主党の蓮舫代表代行は10日、東京都昭島市の街頭に立ち、「名簿を見ないで『総合的な判断』をしないでください。名簿を見ないで『俯瞰(ふかん)的な判断』をしないでください。矛盾だらけじゃないか」と指摘した。菅首相は9日の朝日新聞などのインタビューで、6人を除外した理由について「総合的・俯瞰的な活動、すなわち広い視野に立ってバランスの取れた行動をすること、国民に理解される存在であるべきことなどを念頭に判断している」「推薦された方々がそのまま任命されてきた前例を踏襲していいのか考えてきた」と説明。自らの判断であることを強調した。その一方で、除外された6人を含む105人全員分の推薦者名簿は「見ていない」と発言。9月28日に決裁する直前に、6人が除外された後の99人分の名簿を見ただけだと説明した。学術会議が提出した105人分の推薦者名簿をチェックしないまま、前例踏襲の是非を考え、新たな委員の任命を判断する。そんな首相の説明は矛盾をはらんでいるようにも聞こえる。立憲の小西洋之参院議員は9日、自身のツイッターに「では、誰が105名から99名にしたのか?」と投稿した。いつ、誰が、何の権限で6人の除外を決めたのか。野党は追及を強める構えだ。菅首相のもとに、学術会議が推薦した105人分の名簿は届いていないのかどうかも、政府の説明でははっきりしない。6日に行われた野党ヒアリングで、政府は会員任命に関する文書を公開した。9月24日に内閣府が起案し、28日に菅首相が決裁した会員99人の名簿だ。菅首相の印鑑が押された表紙と、99人の名前が記された名簿3枚からなる。さらに、学術会議が首相宛てに提出した候補者105人が記された「日本学術会議会員候補者推薦書」。今回除外された6人の名前は、野党には黒塗りで示された。まず、文書が公開される前の10月2日に開かれた野党ヒアリングでは、菅首相が105人の推薦者名簿を見た可能性を問われた内閣府の参事官が、決裁文書として、99人と105人の両方の名簿を首相に渡したことを認めている。文書を公開した6日の野党ヒアリングでは、野党議員が、黒塗りのある105人の推薦者名簿について「首相に出したものか」と確認すると、参事官は、黒塗りにした理由を述べただけで、首相に提出したかどうかは明確に回答しなかった。官邸関係者は「全部が全部、首相がやるわけじゃない。事務方に前さばきを任せることもある」と話す。
■専門家「見ずに任命なら違法」
 首相発言の矛盾や政府説明の変遷には、専門家からも批判の声が上がる。任命されなかった6人のうちの1人で早稲田大の岡田正則教授(行政法学)は朝日新聞の取材に、「首相が推薦段階の名簿を見ていないとすれば、学術会議の推薦に基づかずに任命したことになり、日本学術会議法の規定に反する行為だ」と違法性を指摘。また、「首相に推薦リストが到達する前に何者かがリスト上の名前を99人に削除したということであれば、首相の任命権や日本学術会議の選考権に対する重大な侵害だ」などとコメントした。

*1-2-1:https://www.tokyo-np.co.jp/article/59476 (東京新聞 2020年10月4日) 安倍政権で成立の秘密保護法や安保法 任命拒否された学者6人が問題点指摘<日本学術会議問題>
 日本学術会議の新会員への任命を政府に拒否された6人の学者が問題点を指摘していた、特定秘密保護法や安全保障関連法などは、安倍政権が2013~17年、有識者らの根強い反対論を押し切る形で成立させたものだ。国民の権利を侵害したり、憲法違反に当たるとの懸念はぬぐえないままだ。秘密保護法は、米国と共有する軍事機密の漏えい防止を目的に策定。行政機関の長が「安全保障に著しく支障を与える恐れがある」と判断した情報を「特定秘密」に指定し、漏らした公務員らは最高で懲役10年の処罰を受ける。
◆秘密保護法は「民主主義の基盤を危うくしかねい」 宇野・東大教授
 だが、特定秘密の基準は曖昧で、政府が対象を広げることが可能。捜査当局が漏えいをそそのかしたと認めた記者や市民は処罰対象となるが「そそのかし」の基準も不明確で、取材活動の萎縮や「知る権利」の制限につながりかねない。東大の宇野重規教授(政治思想史)は13年12月、他の有識者とともに記者会見し「政治、民主主義の基盤そのものを危うくしかねない」と訴えた。安倍政権はその後、憲法9条の解釈を変更し、歴代の政府が禁じてきた集団的自衛権の行使を容認。米国との防衛協力指針(ガイドライン)の再改定で、自衛隊の行動範囲を全世界に広げた。これを法律上でも可能にしたのが安保法だ。
◆安保法は「憲法上、多くの問題をはらむ」 小沢・慈恵医大教授
 東京慈恵会医科大の小沢隆一教授(憲法学)は15年7月、法案を審議する衆院特別委員会の中央公聴会で、歯止めのない集団的自衛権行使や米軍の武力行使との一体化につながり得るとして「憲法上、多くの問題点をはらむ」と訴えた。法案廃止を求める憲法研究者の署名集めも行った。「共謀罪」の趣旨を盛り込んだ改正組織犯罪処罰法は、テロからの国民保護を名目に、犯罪を計画段階で処罰できるようにした。運用によっては、政府に批判的な団体への圧力になる懸念がある。
◆「共謀罪」法は「戦後最悪の治安立法」 松宮・立命館大教授
 17年6月の参院法務委員会に参考人として出席した立命館大大学院の松宮孝明教授(刑事法)は「市民の内心が捜査と処罰の対象となり、自由と安全が危機にさらされる」と述べ、「共謀罪」法を「戦後最悪の治安立法」と批判した。

*1-2-2:https://this.kiji.is/684402418295211105 (京都新聞 2020/10/1) 学術会議」任命拒否は京大や東大教授ら 「共謀罪」批判の法学者も
 学術の立場から政府に提言する首相所轄の政府機関「日本学術会議」の新会員について、学術会議が推薦した候補105人のうち6人を菅義偉首相が任命しなかったことが1日、分かった。現行の推薦制度になった2004年以来、推薦した候補者が任命されなかったのは初めて。憲法が保障する学問の自由を侵し学術会議の存立に関わるとして批判の声が上がっている。関係者によると、任命されなかったのは立命館大の松宮孝明教授(刑事法学)や京都大の芦名定道教授(キリスト教学)、東京大の加藤陽子教授(歴史学)ら人文・社会科学系の研究者6人。加藤勝信官房長官は同日の会見で候補者の選考過程や理由について「人事に関すること」と言及を避ける一方「専門領域の業績にとらわれず、広い視野に立って総合的、俯瞰的観点から学術会議の活動をしていただきたい。そういう観点から任命した」と述べた。会員は日本学術会議法により同会議の推薦に基づいて首相が任命する。10月1日改選の今回は、7月の臨時総会で全会員の半数に当たる105人が候補者に選ばれ、8月末に首相に推薦書を提出した。9月28日に政府から内示があり、6人だけ外れていたという。同法には職務の独立性を記した条項があり、9月末で退いた山極寿一前会長(京都大前総長)は1日の総会で「(1949年の)創立以来自立的な立場を取っている。説明もなく会員の任用が拒否される事態は会議の存立に大きな影響を与える」と懸念を示した。学問の自由への侵害との指摘について加藤官房長官は「会員の人事等を通じて一定の監督権を行使することは法律上可能だ」と述べ、侵害にはつながらないとした。松宮氏は2017年に「共謀罪」の趣旨を盛り込んだ改正組織犯罪処罰法の成立を批判。松宮氏ら3人の法学者は1日、任命拒否の撤回に総力を挙げるよう連名で梶田隆章新会長に要請した。

*1-3-1:https://digital.asahi.com/articles/ASNB85D20NB8UTIL024.html?iref=comtop_7_03 (朝日新聞 2020年10月8日) 学術会議の任命拒否、広がる抗議 90超の学会など声明
 日本学術会議が推薦した会員候補者6人を菅義偉首相が任命しなかった問題で、8日も、複数の学会などが抗議の声明を出した。臨床法学教育学会理事会は、今回の任命拒否について、「日本学術会議法第7条第2項に反する違法な行為」であり、「会議の推薦する優れた研究又(また)は業績がある科学者が、恣意(しい)的に会員から除外されることは(中略)研究者らが純粋に学問的見地から様々な提言等の活動をすることを萎縮させる。このことは、学問の発展を阻害し、ひいては社会の利益に反する結果をもたらしかねない」と指摘。首相に対し、任命拒否に至った経緯や理由を明らかにし、6人を速やかに任命するよう求めた。大学教育学会も、首相の今回の判断が同会議の独立性を脅かし、学問の自由を危うくするだけではなく、「自由と民主主義に基づく社会の健全で持続可能な発展にとって不可欠である知的活動の自律性と、それによる知的活動の多様性に対する配慮を全く欠き、社会の根幹を揺るがしかねない」と批判。判断理由の説明や6人の任命を求めた。
   ◇
 朝日新聞のまとめでは、8日までに90以上の学会や大学、市民団体などが抗議の声明を出している。

*1-3-2:https://digital.asahi.com/articles/ASNB96QWZNB9ULBJ003.html?iref=comtop_7_04 (朝日新聞 2020年10月9日) 6人任命拒否を「憂慮」 自然科学系93学会が緊急声明
 日本学術会議が推薦した会員候補6人が任命されなかった問題で、日本物理学会や日本数学会、日本地球惑星科学連合など自然科学系を中心とする93学会が9日、理由を説明しないまま候補を除外した政府に対し、「任命されなかったことに憂慮している。対話による早期の解決が図られることを希望する」とする緊急声明を発表した。オンライン会見した自然史学会連合の大路樹生代表は「今回の任命拒否は学問の自由を脅かす。学術会議は多様性があり、独立しているからこそ必要な提言を出せる。政府に再考を願いたい」と述べた。地球惑星科学連合の田近英一会長は「学術会議と政府だけの問題ではなく、研究者全体にかかわる。(6人は人文・社会科学系だが)理工系からも声を上げたいと思って参加した」と話した。問題をめぐっては、これまでも複数の学会や大学などが抗議の声明を出している。今回、会員数約1万6千人の物理学会や約1万1千人の地球惑星科学連合なども声明に加わった。

*1-3-3:https://www.jiji.com/jc/article?k=2020101000143&g=soc (時事 2020年10月10日) 学術会議任命拒否に抗議広がる 学者・文化人ら、続々と声明―ネット署名14万件
 日本学術会議が推薦した会員候補6人を菅義偉首相が任命しなかったことに、学者や各界の文化人らの間で抗議の動きが広がっている。「傲慢(ごうまん)で不誠実だ」「表現の自由にも関わる」。インターネットでは政府の姿勢を批判する投稿が相次ぎ、抗議の署名も日々増えている。戦前・戦中の言論弾圧を振り返り、「今回の事態を座視できない」と、歴史学者らが提唱した抗議のネット署名は約14万人が賛同した。呼び掛け文は「首相の任命行為は形式的」とし、会議の独立性尊重を繰り返してきた過去の政府見解との矛盾を批判。学問業績とその内容が時の政権の意向に沿うかは関係がないとして、「一部の研究者を排除することは、学術会議本来の在り方を著しく損なう」と糾弾する。発起人の古川隆久日本大教授(日本近現代史)は「誤りを繰り返すべきではない。学問に忖度(そんたく)を強いる政治介入で、一度許せば次回もそうなる」と警告。問題発覚後に「首相に会議の推薦に従う義務はない」という2018年の文書を開示した政府の説明姿勢にも「後出しじゃんけんだ」と非難した。批判は文化人からも上がる。ツイッターでは「#日本学術会議への人事介入に抗議する」というハッシュタグ(検索用の目印)を付けた投稿が、問題が明らかになった今月1日から数日で25万件を超えた。タレントのラサール石井さんや作家のいとうせいこうさんらもこの中で批判を表明。作家の村山由佳さんが「任命権は人事権ではないはず」「火を消し止めるなら今だ」などと呼び掛けた一連の投稿は8000回以上リツイートされた。映画関係者らによる抗議声明をまとめた脚本家井上淳一さんは「学問だけでなく、表現や言論の自由の侵害にも続く問題だ」と訴える。井上さんは、菅首相らが繰り返す「総合的、俯瞰(ふかん)的判断」との主張を「説明になっておらず、傲慢で不誠実だ」と批判。前例踏襲の見直しなど、会議の改革を打ち出す姿勢にも「組織の問題点と拒否された6人は全く関係がない。問題のすり替えでめちゃくちゃだ」と憤った。この問題をめぐっては、美術や演劇、医師などの団体からも抗議声明が相次いでいる。

*1-4:http://www.scj.go.jp/ja/scj/kisoku/01.pdf 日本学術会議法
昭和二十三年七月十日、法律第百二十一号
                改正 昭和二四年 五月三一日法律第一三三号
                同 二四年一二月一二日同 第二五二号
                同 二五年 三月 七日同 第 四号
                同 三一年 三月二三日同 第 二一号
                同 三一年 三月二四日同 第 二七号
                同 三六年 六月一七日同 第一四五号
                同 三九年 六月一九日同 第一一〇号
                同 五八年一一月二八日同 第 六五号
                平成一一年 七月一六日同 第一〇二号
                同 一六年 四月一四日同 第 二九号
 日本学術会議は、科学が文化国家の基礎であるという確信に立つて、科学者の総意の下に、わが国の平和的復興、人類社会の福祉に貢献し、世界の学界と提携して学術の進歩に寄与することを使命とし、ここに設立される。
第一章 設立及び目的
第一条 この法律により日本学術会議を設立し、この法律を日本学術会議法と称する。
2 日本学術会議は、内閣総理大臣の所轄とする。
3 日本学術会議に関する経費は、国庫の負担とする。
(平一一法一〇二・平一六法二九・一部改正)
第二条 日本学術会議は、わが国の科学者の内外に対する代表機関として、科学の向上発達を図り、行政、産業及び国民生活に科学を反映浸透させることを目的とする。
第二章 職務及び権限
第三条 日本学術会議は、独立して左の職務を行う。
一 科学に関する重要事項を審議し、その実現を図ること。
二 科学に関する研究の連絡を図り、その能率を向上させること。
第四条 政府は、左の事項について、日本学術会議に諮問することができる。
一 科学に関する研究、試験等の助成、その他科学の振興を図るために政府の支出する交付金、補助金等の予算及びその配分
二 政府所管の研究所、試験所及び委託研究費等に関する予算編成の方針
三 特に専門科学者の検討を要する重要施策
四 その他日本学術会議に諮問することを適当と認める事項
第五条 日本学術会議は、左の事項について、政府に勧告することができる。
一 科学の振興及び技術の発達に関する方策
二 科学に関する研究成果の活用に関する方策
三 科学研究者の養成に関する方策
四 科学を行政に反映させる方策
五 科学を産業及び国民生活に浸透させる方策
六 その他日本学術会議の目的の遂行に適当な事項
第六条 政府は、日本学術会議の求に応じて、資料の提出、意見の開陳又は説明をすることができる。
第六条の二 日本学術会議は、第三条第二号の職務を達成するため、学術に関する国際団体に加入することができる。
2 前項の規定により学術に関する国際団体に加入する場合において、政府が新たに義務を負担することとなるときは、あらかじめ内閣総理大臣の承認を経るものとする。
(昭三一法二一・追加、平一一法一〇二・平一六法二九・一部改正)
第三章 組織
第七条 日本学術会議は、二百十人の日本学術会議会員(以下「会員」という。)をもつて、これを組織する。
2 会員は、第十七条の規定による推薦に基づいて、内閣総理大臣が任命する。
3 会員の任期は、六年とし、三年ごとに、その半数を任命する。
4 補欠の会員の任期は、前任者の残任期間とする。
5 会員は、再任されることができない。ただし、補欠の会員は、一回に限り再任されることができる。
6 会員は、年齢七十年に達した時に退職する。
7 会員には、別に定める手当を支給する。
8 会員は、国会議員を兼ねることを妨げない。
(昭二四法二五二・昭二五法四・昭五八法六五・平一六法二九・一部改正)
第八条 日本学術会議に、会長一人及び副会長三人を置く。
2 会長は、会員の互選によつて、これを定める。
3 副会長は、会員のうちから、総会の同意を得て、会長が指名する。
4 会長の任期は、三年とする。ただし、再選されることができる。
5 副会長の任期は、三年とする。ただし、再任されることができる。
6 補欠の会長又は副会長の任期は、前任者の残任期間とする。
(平一六法二九・一部改正)
第九条 会長は、会務を総理し、日本学術会議を代表する。
2 副会長は、会長を補佐し、会長に事故があるときは、会長の指名により、いずれかの一人が、その職務を代理する。
第十条 日本学術会議に、次の三部を置く。
第一部
第二部
第三部
(平一六法二九・全改)
第十一条 第一部は、人文科学を中心とする科学の分野において優れた研究又は業績がある会員をもつて組織し、前章の規定による日本学術会議の職務及び権限のうち当該分野に関する事項をつかさどる。
2 第二部は、生命科学を中心とする科学の分野において優れた研究又は業績がある会員をもつて組織し、前章の規定による日本学術会議の職務及び権限のうち当該分野に関する事項をつかさどる。
3 第三部は、理学及び工学を中心とする科学の分野において優れた研究又は業績がある会員をもつて組織し、前章の規定による日本学術会議の職務及び権限のうち当該分野に関する事項をつかさどる。
4 会員は、前条に掲げる部のいずれかに属するものとする。
(昭五八法六五・平一六法二九・一部改正)
第十二条 各部に、部長一人、副部長一人及び幹事二人を置く。
2 部長は、その部に属する会員の互選によつて定める。
3 副部長及び幹事は、その部に属する会員のうちから、部会の同意を得て、部長が指名する。
4 第八条第四項及び第六項の規定は部長について、同条第五項及び第六項の規定は副部長及び幹事について、それぞれ準用する。
(平一六法二九・全改)
第十三条 部長は、部務を掌理する。
2 副部長は、部長を補佐し、部長に事故があるときは、その職務を代理する。
3 幹事は、部長の命を受け、部務に従事する。
第十四条 日本学術会議に、その運営に関する事項を審議させるため、幹事会を置く。
2 幹事会は、会長、副会長、部長、副部長及び幹事をもつて組織する。
3 日本学術会議は、第二十八条の規定による規則(以下この章及び次章において「規則」という。)で定めるところにより、前章の規定による日本学術会議の職務及び権限の一部を幹事会に委任することができる。
(昭五八法六五・平一六法二九・一部改正)
第十五条 日本学術会議に、会員と連携し、規則で定めるところにより第三条に規定する職務の一部を行わせるため、日本学術会議連携会員(以下「連携会員」という。)を置く。
2 連携会員は、優れた研究又は業績がある科学者のうちから会長が任命する。
3 連携会員は、非常勤とする。
4 前三項に定めるもののほか、連携会員に関し必要な事項は、政令で定める。
(平一六法二九・全改)
第十五条の二 日本学術会議に、規則で定めるところにより、会員又は連携会員をもつて組織される常置又は臨時の委員会を置くことができる。
(昭五八法六五・追加、平一六法二九・一部改正)
第十六条 日本学術会議に、事務局を置き、日本学術会議に関する事務を処理させる。
2 事務局に、局長その他所要の職員を置く。
3 前項の職員の任免は、会長の申出を考慮して内閣総理大臣が行う。
(昭二四法一三三・昭三一法二一・平一一法一〇二・平一六法二九・一部改正)
第四章 会員の推薦 (昭五八法六五・全改)
第十七条 日本学術会議は、規則で定めるところにより、優れた研究又は業績がある科学者のうちから会員の候補者を選考し、内閣府令で定めるところにより、内閣総理大臣に推薦するものとする。
(平一六法二九・全改)
第十八条から第二十二条まで 削除
(平一六法二九)
第五章 会議
第二十三条 日本学術会議の会議は、総会、部会及び連合部会とする。
2 総会は、日本学術会議の最高議決機関とし、年二回会長がこれを招集する。但し、必要があるときは、臨時にこれを招集することができる。
3 部会は、各部に関する事項を審議し、部長がこれを招集する。
4 連合部会は、二以上の部門に関連する事項を審議し、関係する部の部長が、共同してこれ
を招集する。
(昭五八法六五・旧第二十二条繰下)
第二十四条 総会は、会員の二分の一以上の出席がなければ、これを開くことができない。
2 総会の議決は、出席会員の多数決による。
3 部会及び連合部会の会議については、前二項の規定を準用する。
(昭五八法六五・旧第二十三条繰下)
第六章 雑則 (昭五八法六五・旧第七章繰上)
第二十五条 内閣総理大臣は、会員から病気その他やむを得ない事由による辞職の申出があつたときは、日本学術会議の同意を得て、その辞職を承認することができる。
(昭五八法六五・全改)
第二十六条 内閣総理大臣は、会員に会員として不適当な行為があるときは、日本学術会議の申出に基づき、当該会員を退職させることができる。
(昭五八法六五・全改、平一六法二九・一部改正)
第二十七条 削除
(昭五八法六五)
第二十八条 会長は、総会の議決を経て、この法律に定める事項その他日本学術会議の運営に関する事項につき、規則を定めることができる。
(昭五八法六五・一部改正)
附 則 抄
第二十九条 この法律のうち、第三十四条及び第三十五条の規定は、この法律の公布の日から、これを施行し、その他の規定は、昭和二十四年一月二十日から、これを施行する。
第三十条 日本学士院規程(明治三十九年勅令第百四十九号)、学術研究会議官制(大正九年勅令第二百九十七号)及び日本学士院会員の待遇に関する件(大正三年勅令第二百五十八号)は、これを廃止する。
・・途中の附則は省略・・
附 則 (平成一六年四月一四日法律第二九号) 抄
(施行期日)
第一条 この法律は、平成十七年十月一日から施行する。ただし、次の各号に掲げる規定は、当該各号に定める日から施行する。
一 第十八条から第二十二条までの改正規定、第二十二条の二及び第二十二条の三を削る改正規定並びに附則第二条から第四条まで、第五条第一項(内閣総理大臣に推薦することに係る部分を除く。)及び第二項並びに第八条の規定 公布の日
二 第一条第二項、第六条の二第二項及び第十六条第三項の改正規定並びに附則第五条第一項(内閣総理大臣に推薦することに係る部分に限る。)、第七条及び第九条から第十一条までの規定 平成十七年四月一日
(経過措置)
第二条 前条第一号に掲げる規定の施行の日(以下「一部施行日」という。)からこの法律の施行の日(以下「施行日」という。)までの間における日本学術会議法第七条第二項及び第
十五条第二項の規定の適用については、これらの規定中「第二十二条」とあるのは、「日本学術会議法の一部を改正する法律(平成十六年法律第二十九号)による改正前の第二十二条」とする。
第三条 施行日の前日において日本学術会議会員(以下「会員」という。)又は研究連絡委員会の委員である者の任期は、改正前の日本学術会議法(以下「旧法」という。)第七条第三項(旧法第十五条第三項において準用する場合を含む。)の規定にかかわらず、その日に満了する。
第四条 一部施行日から施行日の前日までの間、日本学術会議に、施行日以後最初に任命される会員(以下「新会員」という。)の候補者の選考及び推薦を行わせるため、日本学術会議会員候補者選考委員会(以下「委員会」という。)を置く。
2 委員会は、政令で定める数を超えない範囲内の数の委員をもって組織する。
3 委員は、学識経験のある者のうちから、次に掲げる者と協議の上、日本学術会議の会長が任命する。
一 内閣府設置法(平成十一年法律第八十九号)第二十九条第一項第六号に掲げる総合科学技術会議の議員のうちから総合科学技術会議の議長が指名するもの
二 日本学士院の院長
4 委員会に、専門の事項を調査させるため、専門委員を置くことができる。
5 専門委員は、学識経験のある者のうちから日本学術会議の会長が任命する。
6 委員及び専門委員は、非常勤とする。
7 前各項に定めるもののほか、委員会に関し必要な事項は、政令で定める。
第五条 委員会は、その定めるところにより、優れた研究又は業績がある科学者のうちから新会員の候補者を選考し、内閣府令で定めるところにより、内閣総理大臣に推薦するものとする。
2 委員会は、前項の規定により新会員の候補者の選考を行う場合には、次条第二項の規定によりその任期が三年である新会員の候補者と改正後の日本学術会議法(以下「新法」という。)第七条第三項の規定によりその任期が六年である新会員の候補者との別ごとに行うものとする。
第六条 新会員は、新法第七条第二項の規定にかかわらず、前条第一項の規定による推薦に基づいて、内閣総理大臣が任命する。
2 新会員の半数の者の任期は、新法第七条第三項の規定にかかわらず、三年とする。
3 新法第七条第五項の規定は、新会員(前項の規定によりその任期が三年であるものを除く。)から適用する。
第七条 附則第一条第二号に掲げる規定の施行の際、総務省本省に国家行政組織法(昭和二十三年法律第百二十号)第八条の三の特別の機関として置かれている日本学術会議及びその会長、会員その他の職員は、内閣府本府に内閣府設置法第四十条の特別の機関として置かれる日本学術会議及びその相当の職員となり、同一性をもって存続するものとする。
第八条 附則第二条から前条までに定めるもののほか、この法律の施行に関し必要な経過措置
は、政令で定める。

<経済発展の源は教育・研究>
*2-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20201005&ng=DGKKZO64534980S0A001C2TJM000 (日経新聞 2020.10.5) 〈科学立国 落日の四半世紀〉(2)大学「選択と集中」奏功せず 、世界ランク日本勢停滞 研究費に格差効果みられず
「中国の大学は歴史的な躍進を遂げ、いくつかの研究分野では米国を追い抜いた」。英教育専門誌タイムズ・ハイヤー・エデュケーション(THE)が9月に発表した最新の世界大学ランキングは、中国の清華大学(昨年23位)がアジア勢で最も高い20位に入るなど中国勢の躍進を改めて印象づけた。日本勢は東京大学が36位、京都大学が54位だったが、上位200位以内に入ったのは両校だけ。2004年の国立大学の法人化後、東大など上位大学に資金や人材が集まりやすい「選択と集中」の政策を進めたが、功を奏していない。上位大学が伸び悩むだけでなく、中堅大学も失速した。安倍政権は13年の日本再興戦略で「今後10年間で世界大学ランキングトップ100に10校以上入れる」ことを目標に掲げたが達成は困難だ。ランキングは多面的な役割を持つ大学を評価する一つの指標で政策目標にするには批判もあるが、日本勢の停滞には研究力の衰えがみえる。
●注目論文数で差
 ランキングで差がついたのが、研究成果の影響力を示す「論文の被引用数」だ。東大や京大は教育や研究の「評判」の点数はそれなりに高いが、被引用数では米欧中の上位大学に劣る。「国立大の法人化後、日本の研究力が海外に比べて相対的に低下したと断定できる」。豊田長康・鈴鹿医療科学大学学長はこう指摘する。三重大学学長も務めた豊田氏は日本の研究力低下を強く危惧し、論文数や大学ランキングなどのデータ分析に取り組んできた。国際比較から「最大の原因は大学の研究への政府投資が人口規模に比べて少ないからだ」と訴える。文部科学省科学技術・学術政策研究所がまとめた「科学技術指標」によると、日本全体の研究開発費のうち大学部門は18年に00年比1.0倍と全く伸びていない。米国やドイツが1.8倍、英国が1.6倍、韓国が3.1倍、中国が10.2倍などと増えたのに対し、日本の停滞は明らかだ。各国の論文数や政府の研究開発投資と、国内総生産(GDP)には密接な関係があるとされる。好例は政府投資がイノベーションを促し、GDPが伸びれば政府投資も増えるという好循環だ。だが、日本は厳しい財政事情で政府投資が停滞した。イノベーションが生まれずに低成長に陥り、投資が増えないという悪循環は「貧すれば鈍する」の結果を生んだ。限られた予算規模の中で「選択と集中」による効率的な投資を狙ったが、もともと企業経営の概念だった「選択と集中」が大学や科学技術の政策でも有効とは限らない。法人化後、国立大の基盤的な研究費となる運営費交付金は年々削減された。公募で獲得する競争的資金の拡大や、再生医療やナノテクノロジーなど重点分野への大型プロジェクト、運営費交付金の一部を傾斜配分する制度などを通じ、東大や京大のような上位大学へ「選択と集中」を進めた。
●地方大は厳しく
 ただ大規模な大学のほうが地方大学などの中小規模大学より研究の生産性が高いという明確な根拠はない。豊田学長によると公的な研究投資(人件費と研究費)当たりの注目論文数は同程度だ。日本の大学は既に米欧に比べて研究資金の格差が大きく、格差をさらに拡大させる政策の効果は不透明だ。欧州など海外にも大学予算の傾斜配分を導入した事例はあるが、「国の研究力が上がるという根拠になる事例はない」(豊田学長)。検証が不十分なまま「選択と集中」の政策は続く。安定的な研究予算が縮小するなか、規模に劣る地方大などの研究環境は厳しさを増している。高知大学の海洋コア総合研究センターは深海底の堆積物「コア試料」を保管・分析し、日米が主導する国際プロジェクトの中核機関だ。地球・環境科学の分野で注目論文を多く発表してきた。それでも実情は、基盤的経費と競争的資金を組み合わせて「どうにか食いつないでいる状況だ」(徳山英一センター長)。こうした状況に見直しの声はある。21~25年度の「科学技術・イノベーション基本計画」の策定を巡る議論では、慶応義塾大学教授の安宅和人ヤフーCSO(最高戦略責任者)らから政府投資、特に交付金の増額を求める意見も出た。ただ、次期計画の方向性に明確に盛り込まれていない。国立大法人化の法律は「法人化前の公費投入額を十分に確保」などの付帯決議とともに成立したが、ほとんど尊重されなかった。20年の科学技術基本法改正でも「科学技術関係予算の拡充に努める」といった付帯決議がなされた。今度こそ着実な実施が求められる。文部科学省と内閣府は運用益で大学の研究開発を支援するファンドの設立を21年度予算の概算要求に盛り込んだ。厳しい財政事情が続く中、単年度予算だけに頼らない資金確保も重要になる。

*2-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20191220&ng=DGKKZO53574900Z11C19A2EE8000 (日経新聞 2019.12.20) 私立高 実質無償に 補助一律39.6万円に増額 来年度から
 政府は私立高校の授業料に対する補助額の上限を2020年度から39万6千円に引き上げる。全国平均の授業料相当額となり、実質的な無償化になる。年収590万円未満の世帯(4人家族での目安)が対象。現在の支援制度と比べて、補助額は世帯によって最大2.2倍に膨らむ。すでに無償になっている公立高と併せ、教育費の負担を軽減する。17年に閣議決定した「新しい経済政策パッケージ」で私立高の実質無償化も盛り込んでおり、具体的な額が固まった。全国の高校生のうち3割の100万人強が私立に通っている。20年4月から私立の高等専門学校生も含め、条件を満たす約50万人が新制度の対象となる見通しだ。新入生だけでなく、在校生もあてはまる。現在は年収590万円未満の世帯を3段階に分け、収入が低いほど補助額を加算してきた。一方、公立高校はすでに年収910万円未満であれば、授業料が無償となっている。通いやすい場所に公立がない、習いたい科目があるといった理由で、私立を選ぶ生徒も少なくない。公立と比べて授業料は年間数十万円増える例もある。約40万円の平均授業料までを支援の上限にするよう公明党が求めていた。一定の収入未満であれば、国が一律で39万6千円を補助することで折り合った。

<厚労省の質>
*3-1:https://www.tokyo-np.co.jp/article/61139 (東京新聞 2020年10月11日) 「PCRが受けられない」訴えの裏で… 厚労省は抑制に奔走していた
 「PCR検査は誤判定がある。検査しすぎれば陰性なのに入院する人が増え、医療崩壊の危険がある」―。新型コロナウイルスの感染が拡大していた5月、厚生労働省はPCR検査拡大に否定的な内部資料を作成し、政府中枢に説明していたことが、民間団体の調査で判明した。国民が検査拡大を求め、政権が「件数を増やす」と繰り返していた時期、当の厚労省は検査抑制に奔走していた。厚労省の資料は「不安解消のために、希望者に広く検査を受けられるようにすべきとの主張について」と題した3ページの文書。コロナ対策で政府関係者への聞き取りをしたシンクタンク「アジア・パシフィック・イニシアティブ」(船橋洋一理事長)が8日公表の報告書に載せた。
◆厚労省「PCRは誤判定が出やすい」
 文書では「PCR検査で正確に判定できるのは陽性者が70%、陰性者は99%で、誤判定が出やすい」と説明。仮に人口100万人の都市で1000人の感染者がいるとして、全員に検査した場合、感染者1000人のうち300人は「陰性」と誤判定され、そのまま日常生活を送ることになる。一方、実際は陰性の99万9000人のうち1%の9990人は「陽性」と誤判定され、医療機関に殺到するため「医療崩壊の危険がある」とする。これに対し、医師や保健所が本人の症状などで「検査が必要」と判断した1万人だけに絞ると、「陽性」と誤判定されるのは100分の1に減る。ただ、この厚労省の理屈は、無症状者が感染を広げる事態に対応できない。4月には既に経路不明の院内感染や施設内感染が各地で発生。また、厚労省は4月、陽性でも軽症や無症状ならホテルや自宅で療養できるとしていた。検査拡大で陽性者が増えても、医療崩壊に直結したかは疑問だ。PCR検査を巡っては、「発熱が続いても検査が受けられない」という訴えが全国で相次いでいたが、厚労省は官邸や有力国会議員に内部文書を示し、検査を抑え込もうとしていた。
◆担当局長は「抑制の意図なかった」と説明
 厚労省健康局の正林 督章局長は取材に、内部文書を説明に使ったと認めつつ、「感染の可能性やリスクが高い人に絞って検査しないと、誤判定の人数ばかり増えるという趣旨。必要な人にまで検査を抑制する意図はなかった」と説明する。8日公表の報告書は厚労省の対応を批判しつつ、「厚労省は保健所や医療機関に直接、指揮権限があるわけではない」とも指摘。検査が増えなかったのは厚労省だけの責任でなく、構造的問題だったとしている。厚労省は新型コロナで公費を活用する検査を当初、37・5度以上の発熱が4日間以上続く人や症状がある濃厚接触者らに限定。重症化リスクの高い人や地域の感染状況に応じて幅広く行えると明示したのは8月下旬だった。

*3-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20191220&ng=DGKKZO53568770Z11C19A2EA1000 (日経新聞社説 2019.12.20) 75歳以上の医療は窓口2割負担を原則に
 政府の全世代型社会保障検討会議(議長・安倍晋三首相)が中間報告をまとめた。高齢者医療費の増大を抑える策として焦点になっていた75歳以上(後期高齢者)の窓口負担は「一定の所得以上は2割、それ以外は1割」という考え方を示した。会議関係者によると、1割に据えおかれる人が多くなる見通しだ。現役世代の保険料負担が過重になり国民皆保険制がゆらぐのをくい止めるために、私たちは低年金者などに配慮しつつ原則2割への引き上げを唱えてきた。来夏の最終報告にその必要性を盛り込むべく、首相が先頭に立つべきだ。新たな2割負担の対象はこれから75歳になる人だけでなく、すべての後期高齢者を含める。これはあるべき姿だが、網を広げたことが改革を後退させた面はないか。70~74歳の窓口負担は原則2割だ。今後75歳になる人から2割負担にすれば、対象者の負担感は変わらずスムーズに導入できる。団塊世代の後期高齢化が始まる2022年が迫っている。前後の世代に比べて人口が突出するこの世代の罹患(りかん)リスクは、格段に高まる。その医療サービス消費を規律あるものにするためにも、2割負担が有効だろう。厚生労働、財務両省は2割への引き上げを前提に全世代型会議に臨んだ。当初は慎重だった日本医師会も容認の方向に傾いた。ところが12月に入り、与党がそれに待ったをかけた。中間報告の前文には「最終報告に向け、与党の意見をさらにしっかり聞く」とある。きわめて残念である。最初から与党の意向を取りいれた報告を出すなら、鳴り物入りで官邸に会議を設けた意義が問われよう。現役会社員が月々払う健康保険料は右肩上がりだ。厚生年金と介護保険を合わせた労使の保険料率は、30%の大台に乗ろうとしている。これは負担の限界である。皆保険制の維持には、医療給付費の伸びを経済成長の範囲に収めるのが大切になる。低成長が続くなかで真に必要とする患者に質の高い医療を提供するためにも、給付費抑制は避けてとおれない。与党議員らは皆保険を世界に冠たる制度だと言う。であれば、その維持にどんな改革が必要かをよく考えるべきである。全世代型会議には経済同友会代表幹事や経団連会長らが名を連ねる。最終報告に向け、経済界有識者としての見識をみせてほしい。

*3-3:https://digital.asahi.com/articles/DA3S14654699.html (朝日新聞 2020年10月11日) 介護保険料滞納、差し押さえ最多 18年度、65歳以上の高齢者1.9万人
 介護保険料を滞納して、預貯金や不動産といった資産の差し押さえ処分を受けた65歳以上の高齢者が増えている。2018年度は過去最多の1万9221人にのぼったことが、厚生労働省の調査でわかった。65歳以上の保険料が介護保険制度が始まった00年度から約2倍に上昇していることも影響したとみられる。調査は全国1741市区町村が対象。差し押さえ処分を受けた人は14年度に初めて1万人を超え、前年の17年度は1万5998人だった。介護保険に加入している65歳以上の人は、18年度末で3525万人いる。このうち9割は年金から介護保険料を天引きされているが、残り1割は年金額が年18万円未満で、保険料を納付書や口座振替で支払っている。生活保護を受ける人は、生活保護費に介護保険料が加算されて支給される。差し押さえを受ける人は、生活保護は受けていないが、受け取る年金がわずかで保険料を払えなくなった人が多いとみられる。保険料は40歳から支払うが、未収の保険料は65歳以上の分だけで約236億円(18年度)にのぼる。65歳以上の介護保険料は3年に1度見直されるが、高齢化で介護保険の利用者が増えるのに伴って保険料の上昇が続く。00年度は全国平均で月額2911円だったのが、15年度には5514円、18年度からは5869円になった。団塊の世代がすべて75歳以上になる25年度には7200円程度になると見込まれている。介護保険料を滞納するとまず督促状が届く。それでも支払われない場合、自治体は資産を差し押さえ、滞納分の支払いにあてることができる。介護サービスを利用している人が滞納した場合、差し押さえではなく、通常1割の利用者負担を3割に引き上げるなどのペナルティーを科すケースもある。差し押さえをするかどうかは自治体の判断にゆだねられる。保険料を滞納しても、介護サービスは利用できる。ただ、滞納期間によって利用者負担を引き上げられたり、サービス費用を全額負担して後から払い戻しを受けたりする。自治体によっては、保険料の分納や低所得者向けの減免に応じる場合もある。
■低年金、増加の証拠
 結城康博・淑徳大教授(社会保障論)の話 生活保護を受ける水準には達しないものの、貯蓄もない低年金の高齢者が増えている証拠だ。介護保険料の上昇が見込まれる一方、非正規雇用の割合は高水準で推移している。新型コロナウイルスで先行きは見通せず、差し押さえやペナルティーを受ける人は今後も増えるだろう。社会保険でなければ生活保護というのが社会保障なのに、その間が取りこぼされているのは問題で、何らかの福祉的支援も必要だ。

*3-4:https://digital.asahi.com/articles/ASL2P3QVKL2PUBQU006.html (朝日新聞 2018年2月21日) 子ども医療費の無料化拡大、是か非か?
 子ども医療費の無料化が広がっている。かつては富裕自治体のサービスが目立ったが、無料化は今や全自治体に広がっている。いま、通院費では「中学生まで」と「高校生まで」助成するケースが8割に達する。子育て世帯のつなぎとめ策だが、過剰医療の懸念もある。
・子育て支援策として有効か
・子どもの健康にプラスばかりか
・医療費の膨張は許容できるか
 自治体が居住する子どもの医療費の自己負担分を助成するサービス。通常、医療費では、就学前で2割、小学生以上で3割を患者が自己負担するが、自治体が肩代わりしていることが多い。自治体によって、親の所得制限や一部負担金を設けているところもある。
●矢嶋茂裕さん(小児科医)「低いコスト意識 過剰医療も」
 子どもの医療費の無料化対象を自治体が競って広げているような現状は、行き過ぎだと思います。無料であるがゆえに、一部の患者は過度に受診し、過剰な検査・投薬をしている医療者もいる。それが、公費負担の増大を招いているからです。無料だからと、軽症でも夜間・休日を問わずに受診する「コンビニ受診」を生んでいます。地方では少子化が進んだため減りましたが、全国的にはまだ安易な受診も指摘されています。自宅でも対応できる鼻づまりの対処や、薬局で買えるハンドクリームのような薬を処方してもらうために、子どもを漫然と医者に通わせ続ける方もいます。自己負担はゼロでも、費用は保険料と税金で支払われます。受診回数の問題以上に気になるのは、自己負担がないからと、健康のためには必ずしも必要とは思えない医療が野放図に行われる面があることです。たとえば、「念のため」のCT検査は1回でも放射線被曝(ひばく)の影響は無視できませんし、超音波検査も安易に行われている可能性があります。思春期に少し背が伸び始めるのが遅いだけで「低身長」と診断し、月30万円ほどかかる成長ホルモン投与をした例も。費用と効果、リスクのバランスがとれていないのです。本当に子どもの健康を考えるなら、むしろ予防に費用をかけるべきです。新生児が精密な健診を受けられるようにすれば、病気の予防や早期発見につながる。子どものためになり、医療費も減らせると思います。子育て支援策としての優先度も考える必要があります。例えば、給食無料化なら、無料でも食べる量が大幅に増えることはなく財政負担額は見通せます。ところが、医療費が無料になると、利用が増え、予算額はどんどん膨張しがちです。にもかかわらず、子どもの医療費無料化が拡大されてきた背景に、自治体間の宣伝合戦があった面は否めません。そして、一度広げた無料化を見直すのは政治的に難しい。だからこそ、私は、医療者が声を上げる必要があると思います。もちろん、就学前の幼児の医療費無料化で、貧困家庭の受診控えを防いだり、診察を通じて育児を指導したりすることはあっていい。自治体の差をなくすために、国が全国一律に就学前まで無料としてもいいのかもしれません。ただ、それ以上の年齢の子どもへの助成は見直すべきです。コスト意識を高めることも重要です。無料は維持しても、いったん自己負担してもらったあとで還付するのが効果的です。英国は医療費は無料でも受診までに時間がかかり、米国は受診はできても医療費が高い。それに比べ、日本は受診しやすい上に、医療費負担も軽い。悪いことではありませんが、たとえば医者の再診料は720円でも、薬局で2種類の軟膏(なんこう)を混ぜる費用が800円かかる場合があるといったことを、どれだけの人が知っているか。一度は自己負担するようになれば、各自がもっと医療費について考えるのではないでしょうか。子どもの医療は決して「ただ」ではありません。公費が使われ、多くは借金で賄われています。そして将来、その借金を利子をつけて返していくことになるのは子どもたち自身なのです。そのことをもっと自覚し、本当に必要な時期・対象以外の方には、きちんとコストを負担していただく必要があると思います。
<やじま・しげひろ> 1958年生まれ。日本外来小児科学会理事。高山赤十字病院小児科部長を経て矢嶋小児科小児循環器クリニック(岐阜市)院長。
●森山一正さん(大阪府摂津市長)「子育て世帯争奪 支援は必須」
 大阪府北東部にある摂津市の面積は14・87平方キロメートルしかなく、多くのマンションが建てられる環境ではありません。限られたスペースで市がどう生き残るかを常に考えています。人口は約8万5千人。工業都市として発展した経緯もあり、工場労働者や共稼ぎの世帯が多い。子育て支援に力を入れるのは、人口減社会のなかで、都市の活力を失わないためです。市の子ども医療費無料化は1973年に始まりました。0歳児から段階的に年齢を引き上げたり、所得制限をなくしたりしてきました。最近の課題は子どもが成長するにつれて、近隣の吹田市や大阪市に転出するケースが目立っていることです。そこで、今年4月からは18歳までの通院・入院にかかる費用を無料にします。2回までは500円の自己負担金はあるものの、所得制限はありません。さらに、1人親世帯で大学や専門学校に在学する人については、22歳まで医療費無料の対象にすることも決めました。国の補助金や借金である市債に頼っている市財政で、無料化を拡大するのはモラルハザードにならないか、ですか? 市長就任後、私がまず優先したのは財政再建です。2002年度に経常収支比率が全国の市でワースト2位となるほど財政が悪化していました。市職員や公共工事の削減などの行政改革で財源を捻出した後、段階的に医療費無料の対象を拡充しました。市の18年度の一般会計当初予算案総額338億円のうち、医療費無料分は3億3千万円余りで、それほど大きな額ではありません。最近は20代~30代の子育て世帯に、保育所の整備率の高さなど市の幅広い子育て支援策が受け入れられている。人口1千人あたりの出生率は9・8人で、府内でトップです。無料化の拡充は安易な受診を招くとの批判も聞きます。ただ、いまは子どもがどんどん減り、自治体が子育て世帯を奪い合っている状態です。すでに府内では摂津市以外に4市3町が18歳までの無料化に踏み切っています。間髪入れず施策をうたなければ、後れをとります。市の国民健康保険ベースに限ってみれば、子どものレセプト件数は無料化の後でも急増しておらず、安易な受診が増えているとは言い切れません。子どもはちょっとした変化で受診することで早期発見につながることもあります。長期的に見れば医療費は減ることになります。かつて「高齢者向け」を無料化して医療費が膨張した歴史はわかりますが、「子ども向け」を同列視するのは筋違いです。医療費増は悪、と決めつけるのは、厚生労働省の発想です。18歳までの子どもの医療費と学費は本来、国が負担するべきものです。市町村は国に代わって医療費を助成してきたといえます。にもかかわらず、国は市町村が国以上の水準のサービスをすると、国民健康保険の補助金を削減するというペナルティーを科してきた。医療費助成が全国に広がったことを踏まえ、今年4月からは未就学児までの助成に対するペナルティーは廃止になりましたが、全ペナルティーを廃止すべきです。医療費無料化などの子育て支援で大切なのは、市民に定住してもらい、将来はお返ししたいと思ってもらうことです。助けられた人が、今度は税金を納めて別の人を助けてくれれば、投じられたお金も生きることになります。
<もりやま・かずまさ> 1944年生まれ。住宅メーカーに勤めたあと、25歳で摂津市議に。大阪府議、府議会議長を経て、2004年より現職。現在4期目。

<国の予算と社会保障・エネルギー>
*4-1:https://mainichi.jp/articles/20201007/k00/00m/020/264000c (毎日新聞 2020年10月7日) 宇宙開発、新幹線整備が「新たな日常」? 新型コロナで概算要求、過去最高に
 財務省は7日、各省庁が提出した2021年度予算の概算要求額を発表した。一般会計の総額は20年度当初予算(消費増税に伴う措置を除く)比4兆5280億円(4・5%)増の105兆4071億円と、3年連続で過去最高を更新。金額を示さない「事項要求」も多く、実際の要求はさらに大きい。新型コロナウイルス対応などの「緊要な経費」は上限なしで要望を認めた結果、宇宙開発や新幹線整備など直接の関わりが薄いように見える項目も目立つ。メリハリの利いた「賢い支出」の実現へ、財務省の査定力が問われる。「コロナ禍を踏まえた社会づくりのため必要な研究開発に取り組み『新たな日常』づくりに貢献する」。文部科学省が資料にこう明記したのは、宇宙・航空分野の研究開発だ。20年度当初予算の8割増となる2838億円を要求した。さらに「ポストコロナの『新しい生活様式』も踏まえた環境の整備」として、衛生環境を確保するための学校のトイレ洋式化を含めた施設整備には1295億円を計上。いずれも内訳は非公表ながら、一部は「緊要な経費」に分類されている。国土交通省は「ウィズ・コロナにおける持続的な経済成長の実現」を掲げ、整備新幹線の建設費の一部を「緊要な経費」とした。政府全体としてはテレワークや東京一極集中の是正を推進しており、人の移動も将来的には減っていくはずだが、「工事で生まれる雇用などに加え、完成後も中長期にわたって経済効果が見込める」と説明。都市部の幹線道路や鉄道の整備なども同様の理由で、20年度当初予算額から「プラスアルファ」の上積みを図っている。コロナ禍との関係が判然としない事業や、政府方針とも一見そぐわない事業の中には、金額を示さない「事項要求」の形で盛り込まれているものが少なくない。感染状況や経済の先行きが見通せず、現時点で必要額を見積もりにくいというのが理由だ。今後のプロセスは財務省と各省庁との非公開の交渉に移るが、「金額どころか中身も十分に固まっていない要求も目に付く」(財務省幹部)。伊藤渉副財務相は7日の記者会見で「(金額を示さない)事項のみの要望が多い。各省庁と議論を重ね、質の高い予算を作りたい」と述べたが、予算の算定根拠など財務省と各省庁には例年にも増して説明責任が求められる。
●概算要求
 翌年度の予算編成に先駆け、各省庁が実施したい政策に必要な経費や人件費を見積もって財務省に提出し、予算確保を要求すること。例年は財務省が7月ごろ、予算の重点分野や経費削減に関する基本的な考え方を示した「概算要求基準」を策定。各省庁はこれに従って8月末をめどに具体的な要求を提出する。財務省は各省庁と折衝しながら要求内容を精査し、絞り込んだものだけを年末に政府予算案として取りまとめる。ただ、今年は各省庁の新型コロナウイルス対応を優先するため、要求の締め切りを9月末まで延期したうえ、手続きも大幅に簡素化した。要求額に関しても「2020年度当初予算と同額」を基本とする一方で、コロナ対応などの「緊要な経費」は上限なしで要望できるルールとしたため、各省庁から希望が殺到。概算要求の規模は過去最大に膨らんでいる。

*4-2:https://digital.asahi.com/articles/ASMDM61Y3MDMULFA02Y.html (朝日新聞 2019年12月20日) 過去最大102兆円の予算案決定 社会保障と防衛費膨張
 政府が20日に閣議決定した2020年度の一般会計当初予算案は、総額が102兆6580億円と過去最高額になった。100兆円の大台を超えるのは2年連続で、19年度当初より約1兆2千億円増えた。財政健全化をめざすためだったはずの10月の消費増税を終えたあと、政府の財政はむしろたがが緩んだようにずるずると膨らんでいる。20年度予算案には総額だけでなく、「過去最高額」がずらりとならんだ。まず、税収だ。税率を10%に引き上げた消費税が通年分の収入として加わり、63兆5130億円を見込む。ただ、国内総生産(GDP)の伸びが、「民間予想より甘い」とされる実質1・4%を前提とした増収も織り込んでいる。増えた税収を吸い込んだのが、歳出全体の3分の1を占める社会保障費だ。総額は35兆8608億円で、19年度から一気に5・1%も伸びて過去最高を塗りかえた。幼児教育・保育の無償化や大学など高等教育の負担減への出費が主な要因。安倍晋三首相が17年に消費増税分の使い道を変えて導入した肝いりの政策だ。予定していた部分もある社会保障費の増加に対し、ほかの予算で切り込んで「メリハリ」を利かせた様子は乏しい。防衛費も6年連続で過去最高となり、5兆3133億円に達した。そもそも、今月5日には総事業費26兆円と第2次安倍政権下で有数の規模の経済対策を決めたばかり。当初予算案がまとまる1週間前には、4兆4722億円を追加で支出する19年度の補正予算案も閣議決定した。経済対策は当初予算案にも「臨時・特別の措置」として1兆7788億円が盛り込まれたが、補正予算に回して当初予算の出費を小さく見せかけた部分もある。今月決まった政府の歳出は実は102兆円にはとどまらない。20日公表された政府の月例経済報告では、景気について「緩やかに回復している」との言い方を維持した。それにもかかわらずここまでの出費に打って出る背景には、来年の景気の落ち込みへの危機感があるからだ。首相官邸関係者は「中国の経済が減速し、欧州が低迷したまま。国内は五輪後の落ちこみも懸念される」と解説する。17年10月の衆院総選挙から2年以上が過ぎ、政権が「次」を意識するタイミングでもある。財政再建を重視する立場の財務省も、ようやく実現した消費増税が、8%に引き上げた14年に続いて景気悪化の「主犯」とされるのは避けたかった。幹部は「消費増税後の経済の影響は、今後の消費税のあり方の論点になると思っている」。消費税への反感を高めたくないという事情が、予算が膨らむことへの切り込みを弱めた面がある。予算案の決定を受け、政府は国・地方を合わせた長期債務残高が20年度末に、前年から8兆円増えて1125兆円(対GDP比で197%)に達すると見込んだ。やはり過去最高額だ。2020年度予算案に盛り込まれた主な事業は…
【暮らし・教育】
・低所得者世帯への大学などの高等教育の負担軽減        4882億円
・保育の受け皿整備                      1144億円
・児童虐待の防止対策                     1754億円
・就職氷河期世代の支援策                    199億円
・「診療報酬」を0.55%引き上げ              約600億円
【五輪・パラリンピックや観光】
・空港での顔認証による搭乗手続き体制の整備           約15億円
・五輪・パラリンピック選手支援の事業費             101億円
【農林水産】
・農林水産品の輸出を増やすための体制の整備            94億円
【環境】
・海洋プラスチックごみ対策                   131億円
【外交・防衛】
・米国製ステルス戦闘機F35Bを6機購入する費用        793億円
【経済対策】
・マイナンバーカードを持つ人へのポイント還元策など      2478億円
●「バイ・アメリカン」に応えて
 防衛費は19年度当初から1・1%増の5兆3133億円となり、安倍政権下の6年連続で過去最大を更新した。弾道ミサイル発射を繰り返す北朝鮮や、中国の急速な軍備拡大に備え、米国からの高額な装備品の購入が続いている。海上自衛隊の護衛艦「いずも」の事実上の空母化となる改修費に31億円を計上。同艦で運用する米国製のステルス戦闘機F35Bを6機購入するために793億円をかける。中国などを念頭に太平洋の防空強化がねらいだが、トランプ米大統領の「バイ・アメリカン(米国製品を買おう)」に応えるものでもある。また、陸上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」は米国から導入予定の2基分について、ミサイル発射装置などに129億円を計上する。航空自衛隊のF2戦闘機の後継機では、初めて設計開発費111億円が充てられた。高額な装備品の購入費は複数年にわたって分割払いする。「後年度負担」と呼ばれ、将来の予算を圧迫し、防衛費が膨らむ要因となっている。20年度の契約に基づいて21年度以降に支払う新規の後年度負担は2兆5633億円にのぼる。
●幼保無償化に3410億円
 今年10月からスタートした幼児教育・保育の無償化には3410億円をあてる。すべての3~5歳児と、住民税非課税世帯の0~2歳児の計約300万人が対象。地方の負担分と合わせると、計8858億円を投入する。無償化によって潜在的な保育ニーズが掘り起こされた影響もあり、政府試算よりも1千億円あまり膨らむ。政府は20年度末の「待機児童ゼロ」を掲げており、保育の受け皿整備などに1144億円をあてる。保育士のなり手を増やすため、学費の貸し付けなども行い、認可外保育施設の質の確保・向上にも使われる。来春施行される改正児童福祉法などに基づいた児童虐待の防止策として、児童相談所の体制強化などに1754億円を計上。虐待を早く見つけたり、子どもの一時保護を拒む保護者に対応したりするため、児童相談所に医師や弁護士、警察OBらの配置を進める。改正法では、親らが「しつけ」として体罰を行うことを禁じており、体罰によらない子育ての広報・啓発や、虐待をした保護者への再発防止プログラム実施なども推進する。
●大学授業料減免など4882億円
 大学などの高等教育にかかる経済的な負担を減らす新制度が来春始まるのに合わせ、4882億円を計上した。「両親と本人、中学生」の一家4人世帯の場合、年収380万円未満が支援対象となるなど、51万人が授業料減免や給付型奨学金を受けられる。一方、いま減免措置を受ける国立大生の一部が新制度の対象外になることで、1万人が支援を打ち切られ、9千人が支援額を減らされるおそれがあったが、別に53億円を充てることで従来通りの支援が受けられるようになる。大学入試センター試験に代わって20年度から実施する大学入学共通テストの関連経費は14億円。英語民間試験の活用と、国語と数学の記述式問題の導入がともに見送られたことで、概算要求時の50億円から大幅ダウンした。私立高校の授業料の実質無償化をめざし、4248億円(19年度比539億円増)を盛り込んだ。生徒50万人が対象となる。小中学校教員の長時間労働の解消に向け、部活動指導や補習支援などをサポートする外部人材の派遣事業に62億円(同7億円増)を計上。小学校で来春から英語が教科になるのに合わせ、英語の専門教員を1千人増やす。
●国の予算編成
 政府が1年間の収入(歳入)の見通しに応じ、使い道(歳出)をあらかじめ決めるためにつくる。各省庁が次の年度の事業にいくら必要かを算出して要求し、財務省が査定する。例年、年末までに政府予算案を閣議決定し、翌年1月からの通常国会で審議・議決される。予算の使い方を変えたり、災害対応などで新たに使ったりする必要が出てきた場合は補正予算案をつくり、同様に国会の議決を受ける。予算案を出せるのは憲法の規定で内閣に限られる。

*4-3:https://www.hokkaido-np.co.jp/article/462214 (北海道新聞 2020/9/20) 多難な社会保障 未来像に向け議論急げ
安倍晋三前政権は年金、医療、介護などの社会保障で、多くの課題を積み残した。日本は世界に例のない速さで少子高齢化が進み、今後さらに社会保障費は膨らむ。国民が安心して暮らすためには、負担と給付のバランスをどうするのか。財源とセットで考えなければならない。新政権は社会保障の再構築に積極的に取り組むべきだ。2025年には団塊の世代が全て75歳以上になり、公費支出の急増が見込まれる。国の社会保障給付費は18年度に121兆円だったのが、25年度は140兆円、40年度は190兆円まで増加する見通しだ。少子化も歯止めがかからない。昨年の推計出生数は予想より2年早く90万人を割り込んだ。給付と負担に関する現在の想定はあまりに甘い。現状認識を厳格にし、あるべき社会保障の姿に向け議論を急がなければならない。安倍前政権は全世代型社会保障改革を掲げ、「内閣最大のチャレンジ」と位置づけた。働く女性や高齢者を増やし、社会保障の支え手を広げる施策に力点を置いた。だが痛みを伴う本格的な改革に踏み込まず、議論を先送りした。一方、菅義偉首相は自民党の総裁選で、将来的に消費税の引き上げが必要と言及したが、すぐに「今後10年上げる必要はない」と修正した。膨らむ社会保障給付費は、利用者の負担増やサービスの縮小だけでは賄いきれない。財源確保のためには、富裕層に応分の負担を求めるなど、所得の再分配に力点を置いた税制の見直しが欠かせない。大企業優遇も是正する必要があろう。菅首相は目指す社会像として「自助・共助・公助」を掲げ、その中でも自助を第一に据える。首相の姿勢は「公助から自助へ」の流れを加速させないか。安倍前政権のもとでは最後のセーフティーネットである生活保護の基準引き下げが続いた。労働者の4割を占める非正規の賃金は正社員の3分の2だ。雇用や収入が不安定で結婚や子どもを諦める人も少なくない。貧困に苦しむ若年層も多い。抜け出すための支援が必要だ。このままでは最終的に生活保護費が膨らみ、社会保障費は増大する。追求すべきは自助、公助、共助が相互にバランスよく働く持続可能な制度だ。国の責任を後退させてはならない。

*4-4:https://www.tokyo-np.co.jp/article/58833 (東京新聞 2020年9月30日) 精神科長期入院は「強制で違憲」 統合失調症の男性、国提訴
 精神科病院に約40年間入院していた統合失調症の男性が「入院は実質的に強制で、憲法が定める幸福追求権や法の下の平等に反する」として、国に慰謝料など3300万円の賠償を求める訴訟を30日、東京地裁に起こした。弁護団によると、精神科病院の長期入院について国の責任を問う訴訟は初めて。男性は群馬県太田市の無職伊藤時男さん(69)。東京都内で記者会見し「入院中も養鶏場や工場で働いたが、病院は退院させてくれず、人生の大半を失った。同じ目に遭う人が出ないようにという思いだ」と話した。原告側は各国が隔離から地域医療への転換を図る中「日本は長期入院者を放置」と言及した。

*4-5:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20201014&ng=DGKKZO64929230T11C20A0MM8000 (日経新聞 2020.10.14) 再生エネ「主力電源に」 梶山経
 梶山弘志経済産業相は13日、日本経済新聞のインタビューで、太陽光や風力などの再生可能エネルギーを「他の電源に比べ上位の主力電源(総合2面きょうのことば)にしていく」と表明した。普及の基盤となる高性能な蓄電池や洋上風力の整備などに予算を厚く配分する。原子力発電所については「今後10年間は再稼働に全精力を注ぐ」として新増設に慎重な姿勢を示した。梶山氏は再生エネについて「(電源構成上で)上限を設けずに比率を引き上げていく」と述べた。再生エネは2018年にまとめた現行のエネルギー基本計画で「主力電源化を目指す」として、発電量に占める割合を30年に22~24%に高める目標を掲げた。18年度時点では17%にとどまる。梶山氏はエネルギー政策について「民間企業の予見可能性を高めることが重要だ」と指摘し、政府が投資環境を整備することで民間参入を促す方針を明らかにした。具体策として、これまで国内でほぼ普及していない洋上風力を全国に整備する。30年までに原発10基分にあたる1000万キロワットの容量を確保する計画だ。再生エネは海外に比べて高い価格と不安定な出力が普及の課題となっている。高性能な蓄電池や新型太陽光パネルなどの技術開発を予算措置も含め後押しする。原発は「まだまだ必要なエネルギー」と位置づけた。一方で福島第1原子力発電所の事故以降、地元住民や自治体の信頼回復ができていないと問題視する。当面、最大の焦点となる東京電力柏崎刈羽原発については「避難計画の策定などできる限りの支援をしていきたい」と、再稼働を後押ししていく意向を強調した。原発の新増設は「再稼働もできていない状態でその話はできない」と言及を避けた。「信頼回復の指標が再稼働の基数につながる」とみており、既存の原発の再稼働に全力を尽くす。原子力政策を巡っては使用済み核燃料からウランなどを取り出した後に出る「核のごみ」の扱いも焦点になっている。このほど北海道内の2町村が最終処分場選定の前提となる「文献調査」に名乗りを上げた。梶山氏は「保管スペースは8割近く埋まっている。国全体の課題という意識で進め、私たちの世代で方向性をしっかりつけたい」と話した。日本のエネルギー政策に対しては、石炭火力の比率が高いことなどを理由に海外からの批判も出ている。東日本大震災後に停止した原発の分を補うため、電力各社が石炭や液化天然ガス(LNG)火力の比率を高めているためだ。梶山氏は「日本は資源がなく産業競争力も落とせないが、『特殊な国だ』と立ち止まっているとガラパゴス化してしまう」と危機感をのぞかせた。

*4-6:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20201017&ng=DGKKZO65122140W0A011C2EA2000 (日経新聞 2020.10.17) 福島第1廃炉へ迫る期限、処理水の海洋放出、月内決定へ 政府「先送りできず」
 政府が東京電力福島第1原子力発電所にたまる処理水の海洋放出を月内にも決定する方針を固めた。廃炉の大きな支障になっているためだ。事故から約10年たつが、廃炉工程はたびたび遅れてきた。政府・東電が2041~51年完了を目指す廃炉作業は綱渡りが続く。処理水について加藤勝信官房長官は16日の記者会見で「いつまでも方針を決めずに先送りすることはできない」と強調した。「検討を深めたうえで適切なタイミングで政府として責任をもって結論を出したい」と述べた。海洋放出という長年の懸案が動き出した背景には菅義偉政権の基本姿勢がある。安倍晋三政権では原発関連のエネルギー政策は不人気政策と警戒し、積極的に進めてこなかった。多くの課題を積み残した。首相は自身の内閣を「国民のために働く内閣」と称しており、懸案の早期処理を目指す。首相が信頼する梶山弘志氏を経済産業相に据えたのは、処理水などの積み残し案件が経産省の所管だったためだ。処理水処分を決め、福島第1の廃炉と福島の復興を進める。11年の東日本大震災に伴う津波の影響で福島第1原発は原子炉を冷やす電源を失い1~3号機で核燃料が高熱で溶け落ちる炉心溶融を起こした。事故で壊れた建屋に雨水や地下水が入り込み高濃度の放射性物質に汚染した水が発生してきた。
●2年後にも満杯
 15年度に1日平均490トンだった汚染水の発生量は地下水をくみ上げ、流入を阻止する壁を地下に作るなどした効果で減っているが、今も1日180トン(19年度)に上る。東電は汚染水から主要な放射性物質を取り除いた処理水を敷地内のタンクに保管している。タンク約1000基に123万トン(9月17日時点)がたまる。20年中に東電は計137万トン分のタンクを確保するが22年10月にも満杯になる見通しだ。タンクの増設余地は少なく、放出設備の設計や規制手続きにかかる準備期間2年を考慮すれば、ギリギリのタイミングでの決定と言える。東電関係者は「処理水の処分方法の選定が遅れると、廃炉作業など福島県の復興に向けた道筋にも影響が出る。この時期の決定はありがたい」と漏らす。処理水には除去が難しい放射性物質トリチウム(三重水素、きょうのことば)が含まれる。仮に福島第1の処理水に含まれるトリチウムを1年で海に流しても、周辺住民の年間被曝(ひばく)線量は自然界から受ける線量の1000分の1未満にとどまるという。国際原子力機関(IAEA)も海洋放出について「技術的に実行可能で国際的慣例にも沿っている」との見解を示す。
●地元漁協「反対」
 ただ事故原発の水を流すという印象が強く、風評被害の発生が懸念される。福島県の漁業関係者は現在も風評被害に苦しんでおり、19年の沿岸漁業の水揚げは事故前の約14%にとどまる。県内の漁協幹部は16日、「反対の意向は伝えてきた。納得しろと言われても無理だ」と話した。16日に野上浩太郎農相と会談した全国漁業協同組合連合会の岸宏会長は「放出になれば風評被害が出るのは必至だ」と訴えた。福島県の内堀雅雄知事は国が決定した段階で「県としての考えを明確にする」と述べるにとどめている。政府は海洋放出決定に合わせて風評対策を強化・拡充する方針だ。出前講座やマスメディア、SNS(交流サイト)を通じ、内外への情報発信を強化する。福島県産品の販路を開拓するための販促イベント開催や専門販売員の配置、オンラインストアの活用も検討する。放出開始後に風評被害が出た場合の補償も今後詰める。

<小さな政府の本当の意味とそれに対する批判の妥当性>
*5-1:https://bizgate.nikkei.co.jp/article/DGXMZO4170568025022019000000/ (日経BizGate 2019/3/6) 「新自由主義」という謎の言葉~「小さな政府」という意味ではないの?~
 「新自由主義(ネオリベラリズム)」という言葉がニュースや論説によく登場します。最近では、フランスで反政府運動「黄色いベスト」の抗議デモにさらされるマクロン政権の政策路線が新自由主義的だと言われます。けれどもこの新自由主義という言葉、なんとも正体不明です。いちおうの定義はあるものの、実際には、どう考えても定義と正反対の意味で使われることが少なくありません。たとえるなら、赤は「血のような色」と説明された後で、青空を指差して「ほら、赤いでしょう」と言われるようなものです。これでは頭が混乱します。たとえだけではわからないでしょうから、新自由主義がどのように正体不明で、人を混乱させるのか、具体的に見ていきましょう。まず、新自由主義の定義を確認しましょう。辞典では「政府などによる規制の最小化と、自由競争を重んじる考え方」(デジタル大辞泉)、「20世紀の小さな政府論」(知恵蔵)などと説明されています。これらの定義は明確です。言い換えれば、経済に対する政府の介入を否定する考えです。ところが実際には、この定義に当てはまらない政策や考えを新自由主義と呼び、批判するケースをしばしば目にします。
●「小さな政府」をめざしているのに増税や金融機関救済
 たとえば、冒頭で触れたマクロン仏政権です。マクロン大統領は、企業活動の活性化のため雇用・解雇をしやすくしたり、財政赤字の削減のため公務員を減らしたりする策を打ち出しています。なるほど、これらの政策は「小さな政府」をめざすという新自由主義の説明に素直に当てはまります。しかし、マクロン政権に抗議する「黄色いベスト」運動が広がったきっかけは、これらの新自由主義的な政策ではありません。政府が環境政策の一環として今年1月から実施する予定(抗議を受け今年は見送り)だった、ガソリンと軽油の増税です。増税は、政府が経済への介入を控え、小さな政府をめざす新自由主義の定義には当てはまりません。予算規模の拡大につながりますから、むしろ正反対の「大きな政府」の政策です。最近では燃料増税だけでなく、雇用・解雇の規制緩和や公務員削減といった新自由主義的な政策に対しても抗議が広がっているのは事実です。けれども、そもそも増税という大きな政府路線への反対からデモが始まったのに、それが小さな政府をめざす新自由主義に対する抗議だと報じられてしまうと、読者や視聴者は混乱しますし、事実の本質をゆがめかねません。似た例は、米国でもあります。2008年にリーマン・ショックと呼ばれる金融危機が起こったときのことです。当時はブッシュ(子)政権で、英国のブレア政権や日本の小泉政権と並び、新自由主義の権化のように言われていました。しかしリーマン・ショックで米国経済への不安が広がると、ブッシュ大統領は総額7000億ドル(約70兆円)の総額不良資産救済プログラム(TARP)法案に署名し、金融機関の救済に乗り出します。もちろん、政府が経済への介入を控える新自由主義の定義とは正反対です。税金を投入したこの救済策に対しては、米国内で強い批判が巻き起こりました。けれどもなぜか、今でもブッシュ政権は新自由主義だと言われます。オンライン百科事典のウィキペディアでは、ブッシュ大統領の政策について、新自由主義、小さな政府の方針と重なるところが多いと記しています。同じ政権の政策に、新自由主義的なものとそうでないものが混在することはあるでしょう。けれどもリーマン・ショックのような重大な出来事に対し、明らかに新自由主義の定義に反する対応をしたにもかかわらず、その政権の性格を新自由主義という言葉で表現するのは、適切とは言えません。青空を「赤い」と言うようなものです。ブッシュ政権は自由貿易を信奉すると言いながら、国内の鉄鋼業を保護するため、鉄鋼輸入に対し関税や数量制限をかけたりしました。この点からも新自由主義というレッテルは疑問です。
●都合が悪くなると放棄されるか、ねじ曲がる程度の「原理」に基づく?
 マクロン、ブッシュ両政権の例から気づく点があります。国民の多数が実際に怒り、抗議しているのは増税や金融機関救済という大きな政府路線であるにもかかわらず、一部のメディアや知識人はそれを新自由主義のせいにしたがることです。そうした解説は現実と食い違うので、無理が目立ちます。たとえば、新自由主義批判の代表的な論客であるデヴィッド・ハーヴェイ氏は著書『新自由主義』(作品社)で、新自由主義は市場への国家の介入を最低限に保つ理論だと述べる一方で、現実には「新自由主義的原理がエリート権力の回復・維持という要求と衝突する場合には、それらの原理は放棄されるか、見分けがつかないほどねじ曲げられる」と言います。苦しい説明です。都合が悪くなると放棄されたり、ねじ曲げられたりする程度の「原理」は、そもそも原理と呼ぶに値しません。「建前」とでも呼ぶのが適切です。経済への介入を控えるというのはあくまで建前にすぎず、本音では増税や企業救済、輸入制限といった大きな政府路線をためらわない。こう説明するほうが、はるかにすっきりします。そう言われても、新自由主義を批判する知識人は、すんなり従うわけにはいかないでしょう。ハーヴェイ氏を含め、彼らの多くはマルクス主義を信奉する左翼やそれに賛同する人々で、大きな政府を支持するからです。政治的な敵として攻撃する相手は、たとえ現実と食い違っても、小さな政府をめざす新自由主義者でなければ都合が悪いのです。明治学院大教授(社会学)の稲葉振一郎氏は、新自由主義といわれる経済学の諸学派には、ひとくくりにできるような一貫性のある立場は見出せないと述べます。そのうえで、あたかも実体のある新自由主義というイメージの「でっち上げの主犯」は、批判すべきわかりやすい対象を見出したい、マルクス主義者たちなのではないかと厳しく問います(『「新自由主義」の妖怪』、亜紀書房)。以上の説明で、新自由主義とは表面上の定義と実際の意味が食い違う、謎の言葉である理由がわかったのではないでしょうか。物事を正しく理解し、議論するには、明確な言葉を使うことが欠かせません。新自由主義という、定義と正反対の使用がまかり通るような言葉を使っていては、経済問題の本質について考えることはおぼつかないでしょう。

*5-2:https://kotobank.jp/word/・・ (新自由主義 大辞林の解説) 新自由主義(読み)しんじゆうしゅぎ.
 政府の積極的な民間介入に反対するとともに、古典的なレッセ━フェール(自由放任主義)をも排し、資本主義下の自由競争秩序を重んじる立場および考え方。ネオ━リベラリズム。

(領海とEEZ、農業と漁業について)
PS(2020年10月22日追加):*6-1のように、JA福井県は県と連携し、大規模園芸ハウスの整備を加速させ、冬に日照時間が短くなっても通年出荷できる環境制御型ハウスを新規就農者らに貸し出し、担い手を呼び込んで園芸の生産拡大を急ぐそうだ。台風で壊れない強さのハウスは、驚くほど高価であるため、施設整備に国、県、市町が7、8割を補助して生産者がJAにリース料を払いながら利用するシステムはよいし、これならリース会社も参入でき、銀行も資金提供できるだろう。また、ハウス内の温度を自動制御するシステムを備えるのなら、薄膜型太陽光発電や地中熱も利用すれば、光熱費がいらないだけでなく電力が余ることさえある。
 しかし、*6-2のように、日本の経済的主権が及ぶ排他的経済水域(EEZ)内にある日本海の好漁場・大和堆周辺で中国船の違法操業が急増しているにもかかわらず、水産庁が日本漁船に入域を自粛するよう要請したのは、国内の漁業者が言う通り、まさに本末転倒だ。日本海に接していない中国の漁船が大和堆で操業するのは、北朝鮮が中国に漁業権を売ったからではないかと思うが、どちらにしても、日本のEEZであるため海保も水産庁も情けない。つまり、日本漁船の安全確保のため、外務省は毅然として理屈の通った公式の抗議をすべきである。
 また、*6-3のように、沖縄県石垣市の尖閣諸島沖の領海に中国の公船2隻が侵入して、57時間39分留まり、日本漁船に無線で領有権を主張して海域から退去するように求めたそうだ。海保の巡視船が間に入って退去を命じたが、中国公船は無視して執拗に漁船を追いかけ回し、漁を終えた中国漁船が領海を出たのに合わせて退去したとのことである。これは、連続滞在時間の長短の問題ではなく領海侵犯の問題であるため、外務省は「①領土問題はない」「②武力による一方的な現状変更に反対する」などという間の抜けた抗議をするのではなく、中国に直接抗議すると同時に国際司法裁判所や国連で問題にすべきだ。
 なお、*6-4のように、防衛白書が中国による宣伝工作を指摘しているが、中国は新型コロナウイルスワクチンやマスクの提供で支持国を増やしつつ、尖閣諸島沖へは侵入を繰り返しており、これに対して、日本政府は「①領土問題はない」「②武力による一方的な現状変更に反対する」などというぼやけたメッセージしか出していない。しかし、①は、被害国が「領土問題はない」などと言っている間に既成事実が積み重ねられ、それが他国にアピールされているのであり、②は、「武力でなければ現状変更してよい」「一方的でなければ現状変更してよい」と言っているにすぎないため、中国が味方を増やして孫子の兵法どおりの「戦わずして勝つ」を実践できているということだ。つまり日本は、棚上げと先送りを繰り返すことによって、中国が戦わずして勝つための時間を十分に与えており、どちらが賢いかは言うまでもない。

★孫子の兵法:紀元前500年頃に中国の孫武が書いた兵法書で、「百戦百勝は善の善なる者に非ざるなり。戦わずして人の兵を屈するが善の善なる者なり(https://sonshi-heihou.com/%E5%AD%AB%E5%AD%90%E3%81%AE%E5%90%8D%E8%A8%80/、https://sonshi-heihou.com/%e7%99%be%e6%88%a6%e7%99%be%e5%8b%9d%e3%81%af%e5%96%84%e3%81%ae%e5%96%84%e3%81%aa%e3%82%8b%e8%80%85%e3%81%ab%e9%9d%9e%e3%81%9a/)」 という言葉を残しており、日本でも有名だ。

*6-1:https://www.agrinews.co.jp/p51105.html (日本農業新聞 2020年10月21日) [福井・JA福井県移動編集局] 大規模ハウス整備加速 リース制で省コスト 園芸拡大急ぐ
 JA福井県は県と連携し、大規模園芸ハウスの整備を加速させる。冬場の日照時間が短くても、安定的に通年出荷ができる環境制御型ハウスを新規就農者らに貸し出す。2015年度からこれまで5カ所整備したが、20年度から3年間で新たに6カ所以上設ける。主力の米の需要が低迷する中、担い手を呼び込んで園芸の生産拡大を急ぐ。雪が多い福井県は日射量が少なく、冬場の出荷量や出荷品目数の落ち込みが課題だ。園芸で安定的な収入を得るには、温湿度などを制御する環境制御設備やまとまった規模が必要だが、高価で新たに取り組むにはハードルが高い。JAは園芸振興の一環として大規模で通年出荷に取り組む生産者を育てようと、県と連携し貸し出しを始めた。JAがハウスを設置して、担い手に貸し出す仕組みを取る。生産者がJAにリース料を支払いながら利用することで、初期投資を抑えられる。契約期間が終われば、生産者が買い取ることもできる。施設整備には国、県、市町が7、8割を補助。周年栽培に取り組み、年間販売額3000万円以上などを目指す経営体が対象となる。設置するハウスは、ほとんどが50アール以上と規模が大きい。ハウス内の温度などを自動制御するシステムを備え、安定的な通年出荷や収入確保につなげる。大玉トマトやイチゴなど、品目は地域に合わせて選ぶ。JAでは20年度から3カ年の事業計画で、年度ごと2経営体以上に大型園芸ハウスを貸し出す目標を掲げる。JA本店園芸販売課の高橋佳弘課長は「冬場に出せる品目が極端に少なく、安定は必須の課題だ。JAがリスクを取ることで担い手を育て、園芸振興につなげたい」と意気込む。ハウスを借り受けた坂井市の池田天瑠さん(25)は、兵庫県から移住して新規就農した。3棟28アールのハウスと育苗用ハウス4棟10アールで、20年2月からイチゴを栽培。池田さんは「県外や農家以外の出身者は土地を見つけづらい。事業でハウスを用意してもらえるのはありがたい」と話す。今年は10アール当たり収量5トンが目標。今後、イチゴ狩り体験の提供や規模拡大などにも取り組みたい考えだ。

*6-2:https://digital.asahi.com/articles/ASNBN648PNB9UTIL03P.html?ref=gnp_digest (朝日新聞 2020年10月20日) 日本海の好漁場に中国船急増 EEZなのに水産庁は…
 日本の経済的主権が及ぶ排他的経済水域(EEZ)内にある日本海の好漁場・大和堆(やまとたい)周辺で中国船の違法操業が急増している。取り締まる水産庁は安全が確保できないとして、9月末から一部海域への日本漁船の入域を自粛するよう要請。日本海で操業する国内の漁業者からは「主権が及ぶ海域で日本漁船の方を締め出すのは本末転倒だ」と不満の声が上がっている。大和堆は日本海中央部に位置する海底山脈。周辺海域はスルメイカやカニなどの資源の宝庫で、EEZに進入し操業する外国漁船が後を絶たない。昨年10月には北朝鮮漁船が水産庁の取締船と衝突し、沈没した。水産庁によると、北朝鮮漁船への退去警告は昨年は延べ4千隻だったが、今年は1隻のみ。代わりに目立ち始めたのが中国漁船だ。退去警告は9月末時点で延べ2586隻で、昨年同期の3・6倍に上る。海上保安庁の巡視船による退去警告も同様の傾向で、毎年1千隻以上の北朝鮮漁船への退去警告は今年はゼロ。一昨年、昨年と延べ89~12隻だった中国漁船への警告が今年は延べ102隻(16日時点)と最多を更新した。なぜ北朝鮮漁船は姿を消したのか。聖学院大の宮本悟教授(北朝鮮政治・外交)は新型コロナウイルスの影響とみる。「現地報道を見ると海洋の漂流物を拾うのも感染リスクがあると考えられており、漁業も制限されているのではないか。競合する北朝鮮漁船がいなくなり、漁獲への期待が高まった中国漁船が増えたのだろう」と分析する。
●中国船の漁は北朝鮮船以上にダメージ
 しわ寄せを受けているのが日本のイカ釣り漁船だ。石川県漁業協同組合の担当者は「昨年は記録的な不漁で今年こそはと期待していた。日本海に接してもいない中国の漁船がなぜ日本のEEZで操業するのか」と憤る。中国漁船は資源管理上も脅威だという。「北朝鮮漁船は多くは小型の木造船だが、中国漁船は大型の鋼船で、釣りではなく、底引き網で漁獲する。資源へのダメージは大きい」。こうした中、水産庁は9月30日から大和堆西部の特定の海域に入るのを当面、自粛するようイカ釣り漁船側に要請。理由は「諸般の事情」とだけ説明された。石川県漁協によると、イカ釣り漁船の船団は一時的な自粛要請と受け止め、10日ほど近くで待機したが解除されず入域を断念。別の漁場に移ったという。漁労長らからは「自宅の庭先に泥棒に入られたのに、近づくなと言うのか」といった不満が噴出した。大和堆の周辺海域での自粛要請は昨年もあった。昨年8月、海保の巡視船が北朝鮮海軍の旗を掲げた小型船から小銃を向けられた。水産庁はその後、周辺海域に入らないよう要請した。石川県漁協の担当者は「今回も水産庁だけでは対応できない事情が起きたのかもしれない。せめてどんな危険があるのか説明してもらえれば、いらだちも収まるのだが……」と嘆く。水産庁幹部は「日本漁船の安全確保のためということだけ」と言葉少なだ。全国漁業協同組合連合会(全漁連)は16日、首相官邸や関係省庁に早急に操業できるよう要請。岸宏会長は「自粛を指導すること自体がおかしい。日本の船が操業できるよう国は毅然(きぜん)と対応してほしい」と訴えた。加藤勝信官房長官は20日の会見で、「(自粛要請は)日本漁船の安全を確保するためにやむをえないものと聞いているが、関係省庁が連携して漁業関係者の方にまずは丁寧な説明を行う必要がある」と述べた。東海大の山田吉彦教授(海洋政策)は「(自粛要請は)場当たり的な対応だ。水産庁の対応能力を超える問題が起きているのなら、外交を含めて政府を挙げて一元的に対応する必要がある」と指摘する。

*6-3:https://www.yomiuri.co.jp/politics/20201014-OYT1T50310/ (読売新聞 2020/10/15) 中国公船、尖閣の領海侵入57時間超…漁船追いかけ回す
 沖縄県石垣市の尖閣諸島沖の領海に中国公船2隻が侵入し、11~13日の57時間39分にわたってとどまった。2012年の同島国有化以降、最長だ。菅内閣が発足した先月の領海侵入はなかった。政府は、中国が再び挑発行為を活発化させることを警戒している。第11管区海上保安本部(那覇市)によると、接続水域にいた中国公船3隻のうち、「海警1302」と「海警2302」が11日午前10時47~48分にかけ、1隻の日本漁船を追うように大正島の領海に入った。中国公船は漁船に対して無線で領有権を主張し、海域から退去するよう一方的に求めてきた。海保の巡視船が間に割って入って退去を命じたが、中国公船は無視し、執拗しつように漁船を追いかけ回した。漁を終えた漁船が領海を出たのに合わせるかのように、中国公船は13日午後8時26分に退去した。連続滞在時間はこれまでの最長だった今年7月の39時間23分を超えた。外務省は11日から13日にかけ、計3回、中国大使館を通じ、中国側に抗議した。

*6-4:https://news.yahoo.co.jp/byline/takahashikosuke/20200714-00188104/ (Yahoo 2020/7/14) 防衛白書が指摘した、中国による宣伝工作の「偽情報の流布」とはいったい何か
 日本政府が7月14日、2020年版の防衛白書を公表した。今年の白書で最も目新しいのが、世界各国が新型コロナウイルスの感染対応に追われるなか、中国がその間隙を縫うようにして、国際的な影響力の拡大を図っていることに警鐘が鳴らされたことだ。防衛白書第1部第3章第5節の「新型コロナウイルス感染症をめぐる動向」では、次のように書かれている。「(中国は)国際社会においても、感染が拡大している国々に対する医療専門家の派遣や医療物資の提供などを積極的に行い、新型コロナウイルス感染症対策において主導的な役割を担おうとする姿勢が窺(うかが)われる」。「中国は、こうした国際貢献を通じ自国を取り巻く国際環境の安定化に注力することに加え、同感染症対策にかかる支援を梃子(てこ)に、戦略的に自らに有利な国際秩序・地域秩序の形成や影響力の拡大を図りつつ、自国の政治・経済上の利益の増進を図っているとの見方もある」。そして、世界が新型コロナ禍に見舞われる中、中国は火事場泥棒的に東シナ海や南シナ海をはじめ、海洋進出を活発化させている事態を防衛白書は指摘している。「新型コロナウイルスの世界的な感染拡大により国際的な協調・連携が必要な中、東シナ海においては、力を背景とした一方的な現状変更の試みを継続しており、海軍艦艇の恒常的な活動のもと、中国公船が、わが国の抗議にもかかわらず尖閣諸島周辺のわが国領海への侵入を繰り返しており、2020(令和2)年5月には、尖閣諸島周辺の領海内で中国公船が日本漁船に接近・追尾する事案が生じた」
●戦わずして勝つ
 各国が新型コロナ対策の対応に追われているすきに、じわじわと既成事実を積み重ねる「サラミ戦術」を活かしながら一気に現状変更を行う――。これは中国の「孫子の兵法」で最善の策とされている「戦わずにして勝つ」ことだ。中国は4月19日に一方的に南シナ海の西沙諸島と南沙諸島に行政区を確立したが、それはその最たる例となった。防衛白書はこう記述している。「このように中国は、軍事にとどまらない手段を用いて、南シナ海をめぐる現状の一方的な現状変更及びその既成事実化を推し進めている。こうした中国の動向は、各国が新型コロナウイルス感染症への対応に注力するなか、周辺国などからの反発を招いている」
●偽情報の流布とは
 防衛白書には、次のように中国の宣伝工作活動を直接的に指摘している部分がある。「中国などは、感染が拡大している国々に対する医療専門家の派遣や医療物資の提供を積極的に行うとともに、感染拡大に伴う社会不安や混乱を契機とした偽情報の流布を含む様々な宣伝工作なども行っていると指摘される」。ここでいう偽情報とは何を示すのか。SNS上でも疑問の声が上がっている。偽情報とは何か。防衛省担当者が白書公表前日の13日に行った、外国メディア対象のプレスブリーフィングでも、そのような質問が外国記者から出た。これに対し、防衛省担当者は具体的に、中国による2つの偽情報の流布を指摘した。1つ目は、中国外務省の趙立堅(ジャオリージエン)副報道局長が3月12日、自らのツイッターで、新型コロナウイルスは「米軍が武漢に持ち込んだ可能性がある」と主張したことだ。また、もう1つの偽情報として、防衛省担当者は、中国国営の新華社通信や共産党機関紙人民日報が1月末に、漢方薬には新型コロナウイルスへの治療効果があるとの嘘の情報を流したことを指摘した。具体的には、中国国営メディアはこの時、中国で広く普及している漢方薬の一つ「双黄連口服液」に新型コロナウイルスを抑制する作用があることを発見したと伝えていた。しかし、この薬を買い求める客がドラッグストアに殺到するなどの騒ぎを受け、結局、こうした国営メディアは「現在、新型ウイルスを予防、治療できる薬はまだない」と釈明し、火消しに回った。英国の学術雑誌ネイチャーは5月6日、新型コロナウイルスへの漢方薬の治療効果がいまだ証明されていないのに、中国がその宣伝活動を推し進めているとの記事を掲載した。欧州連合(EU)の行政執行機関である欧州委員会も6月10日、中国とロシアが新型コロナウイルスについての虚偽情報を広めるキャンペーンを展開していると報告書で指摘し、両国を名指しで非難した。流言飛語はそもそも、中国では三国志でも伝えられる古くからの計略の1つだ。現代では、それはフェイクニュースに当たり、SNSの普及でより遠方の地球の裏側まで瞬時に届かせることができるようになった。防衛白書は、中国への名指しを避けたものの、警戒感を高めるよう次のように訴えている。「新型ウイルス感染症の拡大は、自らに有利な国際秩序・地域秩序の形成や影響力の拡大を目指した国家間の戦略的競争をより顕在化させ得ることから、安全保障上の課題として重大な関心をもって注視していく必要がある」。新型コロナウイルスの感染は今も内外で広がっており、各国の軍事活動への影響を含め、より一層の警戒が必要だろう。

<学術会議会員の首相任命権についての結論>
PS(2020年10月24、25日追加):京都弁護士会会長が、2020年10月12日、*7-1のように、「菅総理大臣が、日本学術会議が推薦した会員候補者105名のうち6名を任命せず99名のみを任命した行為は違法・違憲であるため、任命拒否を撤回し推薦どおり任命するよう求める」という声明を出しておられた。その理由は、①日本学術会議が憲法上の学問の自由(憲法23条)を多面的に実践する会議体であることは法文上明らかで ②学問の生命は真理の解明をめざす批判的精神にあり ③学問研究の成果は社会生活を支える既成の価値観への批判とその破壊・革新を招いて政府や社会からの敵対的対応を招きがちであり ④それだからこそ、政府からの高い独立性が保障される必要があり ⑤会員は同会議の推薦に基づいて総理大臣が任命する(法7条2項)と規定されており ⑥任命権と表裏一体である辞職の承認権及び解職・解任権も法律上著しく大きな制限が課されている 等で、「総合的、俯瞰的活動を確保する観点から任命拒否した」という大雑把な説明よりもずっと納得でき、これが結論と言えるだろう。
 また、科学者の立場からは、東京大学の五神総長が、2020年10月9日、*7-2のように、⑦日本学術会議は「人類社会の福祉に貢献し、世界の学界と提携して学術の進歩に寄与する」日本の科学者の代表機関として日本学術会議法にもとづいて設立され ⑧科学の向上発達を図り、行政・産業及び国民生活に学知を反映浸透させることを目的に、政府からの科学振興施策の諮問を受け、活用・育成の諸方策を勧告するなどの活動を行う独立性の高い機関で ⑨日本学術会議の置かれた状況が早く正常化して求められている役割を果たすことができるよう真摯な対応を政府に望む と述べておられた。科学者を変な批判に晒したり、もてあそんで足を引っ張ったりするのは、経済や国民生活を通して、結局は国民の為にならないことを忘れてはならない。
 なお、日本政治学会理事会も、*7-3に書かれている理由で、「(日本学術)会議が推薦した通りに会員が任命されることを希望する」との声明を発表している。

*7-1:https://www.kyotoben.or.jp/pages_kobetu.cfm?id=10000118&s=seimei (京都弁護士会会長 日下部和弘 2020年10月12日) 「日本学術会議の会員任命拒否を撤回し、同会議の推薦どおりに任命するよう求める会長声明」
 2020年(令和2年)10月1日、菅義偉内閣総理大臣は、日本学術会議が推薦した会員候補者105名のうち、6名を任命しないで、残りの99名のみを任命した。このような行為は、以下に述べるとおり、違法・違憲である。日本学術会議は、「わが国の科学者の内外に対する代表機関として、科学の向上発達を図り、行政、産業及び国民生活に科学を反映浸透させることを目的とする」(日本学術会議法(以下「法」という。)2条)。そのために、「独立して」、(1) 科学に関する重要事項を審議し、その実現を図ること、(2) 科学に関する研究の連絡を図り、その能率を向上させること、をその職務とし(法3条)、科学に関する様々な事項について政府の諮問を受け(法4条)、政府に勧告をすることができる(法5条)。このように、同会議は、科学的知識の「連絡」や「能率向上」、科学の「審議」及び「実現」を図ることや政府の諮問を受けて勧告するために存在しているものであり、まさに憲法上の学問の自由(憲法23条)を多面的に実践する会議体であることは、上記法文上明らかである。そもそも、学問の生命は、真理の解明をめざす批判的な精神にある。そして、学問研究の成果は、しばしば社会生活を支える既成の価値観への批判とその破壊・革新を招き、そのため政府や社会の側からの敵対的対応を招きがちである。だからこそ、科学者の内外に対する代表機関として科学の向上発達を図り、国民生活に科学を反映浸透させることを担う同会議は、とりわけ政府からの高い独立性が保障される必要がある。そのような趣旨から、日本学術会議の高い独立性は、法においても明確に規定されている。内閣総理大臣は、同会議を管理及び監督するものではなく、ただ「所轄」するに過ぎない(法1条2項)。また、同会議の会員は、同会議の推薦に「基づいて」内閣総理大臣が任命する(法7条2項)と規定されている。その推薦の基準とされるのは、「優れた研究又は業績」(法17条)であるが、その基準を満たしているかどうかを適切に判断しうるのは同会議であるから、内閣総理大臣の自由な任命拒否は予定されていないと言わざるを得ない。さらに、内閣総理大臣は、日本学術会議の会員自身から病気その他やむを得ない事由により自発的な辞職の申出を受けたときでさえも、辞職を承認するには日本学術会議の承認を要するとされており(法25条)、また、会員として「不適当な行為」がある場合ですら、同会議の「申し出に基づ」かなければ退職をさせることはできないとされているのであって(法26条)、任命権と表裏一体である辞職の承認権及び解職・解任権についてさえも法律上著しく大きな制限が課されているのである。そして、法にはこれ以外に内閣総理大臣の会員に対する具体的な監督権限は何ら定められていない。以上のように、日本学術会議には法律上高度の独立性が要請されているという法文上自明の理解を前提として、政府は、会員の選考及び推薦に関する法17条について、従前の公選制を廃止し推薦制度を導入した1983年(昭和58年)の第98回国会において、内閣総理大臣による任命は形式的任命に過ぎず、会員を選別するものではない旨を何度も繰り返し答弁している。あわせて、政府は、形式的であれ任命を必要とする理由については、選挙を経ずに公務員に就任するために形式上やむを得ないものにすぎない旨答弁した。このような日本学術会議の趣旨、目的や、憲法上及び法律上要求される高度の独立性、それに基づき法7条2項の「任命」をあくまで形式的任命と明言していた政府の国会答弁に照らせば、同会議の人事に関する自律性は強く保障されるべきである。上記の諸点からすれば、内閣総理大臣による個別の会員候補者の任命拒否は、当該候補者に「病気その他やむを得ない事由(法25条)」や犯罪行為又は不正行為等の「不適当な行為」(法26条)があるときなど明白かつ外形的な理由が存するときに限られる(それらの事由があるときですら、同法により、最終的には日本学術会議の承認や申し出を必要とされているのであるから、それら以外の理由により、しかも日本学術会議の推薦に反して任命を拒否するなど、同法は全く予定していない)。したがって、当該候補者の思想信条や学術研究などの内容を理由として拒否することが許されないことは当然であることに加え、現内閣の言うような「総合的、俯瞰的活動を確保する観点」からの任命拒否なども、同会議の独立性・自律性を著しく侵害するものであって、法律上絶対に認められていない(「総合的、俯瞰的活動を確保する観点」は、同会議が「推薦」する際の観点であって、内閣総理大臣が「任命」をする際にそのような観点によることは法律上断じて認められていないのは上記のとおりである)。しかるに、菅義偉内閣総理大臣は、本件の任命拒否について、「総合的、俯瞰的活動を確保する観点」からであるなどと説明しており、その点においてすでに法の解釈運用を誤り、法違反を犯したものである。そして、それに加え、菅義偉内閣総理大臣は、本件の任命拒否の具体的な理由については全く説明していないが、具体的な理由の説明がないまま人文社会科学系の会員候補者のみの任命を拒否したという事実関係からは、菅義偉内閣総理大臣が、今回の任命に際して、不正行為があったかどうかというような外形的な事情ではなく、その会員候補者の研究内容や思想内容にまで立ち入って検討し、その内容ゆえに、任命を拒否したものと強く疑われるものである。そして、実際に、菅義偉内閣総理大臣が、「総合的、俯瞰的活動を確保する観点」から会員候補者の研究内容や思想内容を理由として任命を拒否したとすれば、それはまさに、当該候補者に対する学問や表現の「内容に中立な規制」ではなく「内容規制」そのものである。こうしたことがまかり通れば、個々の科学者が有形無形の外部圧力に屈し、ひいては時の政府の意向に反する研究や言動に躊躇を覚えるなど、個々の科学者の研究や表現活動に対する萎縮的効果をもたらす。菅義偉内閣総理大臣の任命拒否行為は、個々の科学者の学問の自由(憲法23条)及び表現の自由(憲法21条)をも侵害するものとして違憲であると言わざるを得ない。また、菅義偉内閣総理大臣は、具体的な理由を明らかにしないで会員候補者の任命を拒否したものであることは上記のとおりであるが、これにより、研究内容や思想内容を理由として任命を拒否されるかもしれないとの認識を個々の研究者に与えてしまう状況を作出しており、そのような懸念を生じさせること自体が、個々の研究者の研究及び表現に萎縮効果を与えるばかりか、高い独立性が保障されるべき日本学術会議における学問の自由の実践やその基礎となる会員の選考・推薦行為にも萎縮効果を及ぼすものというほかない。したがって、そのような具体的な理由を示さない任命の拒否自体が、日本学術会議における会員の学問の自由を含む個々の研究者の学問の自由及び表現の自由を侵害するものとして違憲と言わざるを得ない。以上のとおり、菅義偉内閣総理大臣の行為は違法であるとともに違憲であり、速やかに日本学術会議の会員任命拒否を撤回し、同会議の推薦どおりに任命するよう強く求める。

*7-2:https://www.u-tokyo.ac.jp/focus/ja/articles/z1304_00151.html (東京大学総長 五神真 2020年10月9日) 日本学術会議の会員任命について
 日本学術会議が内閣総理大臣に推薦した会員候補者のうち、6名の任命が見送られ、その候補者をいかなる理由によって任命しなかったのかが、同会議に対し明確に説明されない事態となっています。これに端を発した混迷は、学術が持つべき本来の力を大きく削ぐものであり、さまざまな局面で学術の発展を担ってきた東京大学を代表する者として憂慮するとともに、新たな責務を感じています。日本学術会議は、「人類社会の福祉に貢献し、世界の学界と提携して学術の進歩に寄与する」日本の科学者の代表機関として、日本学術会議法にもとづいて設立されました。科学の向上発達を図り、行政・産業及び国民生活にその学知を反映浸透させることを目的に、政府からの科学振興施策の諮問を受け、活用・育成の諸方策を勧告するなどの活動を行う、独立性の高い機関です。私自身も、学術情報の電子化出版や光科学推進に関わり、行政・産業界を含めた幅広いセクターの方々との連携協力の議論が、問題解決に向けての新たな展開と研究力の向上に大きく貢献したことを体験しています。今、世界の政治経済情勢が急激に変化し、ときに科学の力が軽視されるなかで、学術諸分野の対話・協働と多様な学術と社会をつなぐ機関の役割は、グローバルにもますます重要になっています。喫緊の新型コロナウイルス感染症対策にしても、生命科学や理学・工学だけでなく、人文学・社会科学を含めた諸学の科学的な知見を結集し、人類の安全や幸福のために多様な学知の価値を最大限に活かしていくことが期待されています。多様性と包摂性の共存を図る努力を重ねる中から、対立や分裂の危機を乗り越える智慧と、それまでにない発見や協創を生みだす基盤が形づくられます。そうした異なる価値観に開かれた態度こそが、人類の未来に向けた新たな社会づくりへの推進力です。いま日本社会が突きつけられているグローバルな諸課題と正面から向かいあい、分断や排除や孤立が引き起こす不幸を超克するためには、まず異なる立場の存在を認める寛容を出発点にして、誠実なことばによる相互理解と信頼の構築がなによりも重要だと考えます。冷静な論議をじっくり深めていくことが必要です。学術コミュニティとしても、それぞれが今なすべきことについて議論を深め、社会から学術に寄せられている期待と信頼に応えるために努力していかねばなりません。同時に、日本学術会議の置かれた状況が早く正常化し、求められている役割を果たすことができるよう、同会議からの要請に対する真摯な対応を、政府には望みます。そして学術のもつ価値が少しでも多くの国民のみなさんから共感され、反映浸透することを切に願っています。それが可能となるような環境の創造に、東京大学もまた、総合力を活かして取り組む所存です。

*7-3:https://digital.asahi.com/articles/ASNBT51HSNBTUTFK004.html (朝日新聞 2020年10月25日) 日本政治学会「推薦通り任命を」 学術会議問題で声明
 日本政治学会の理事会は25日、日本学術会議が推薦した会員候補6人を菅義偉首相が任命しなかった問題で、「(学術)会議が推薦した通りに会員が任命されることを希望する」との声明を発表した。任命されなかった6人のうち宇野重規・東京大教授は現在、日本政治学会の理事を務めている。声明は「宇野氏は私たちの尊敬する同僚であり、日本学術会議法第17条が定める『優れた研究又は業績がある科学者』として推薦されるにふさわしい」とした。声明はさらに「異なる見解が共存・競争することこそが、何よりも研究の発展を促し、有益な知見を生み出す」「その多様性の基盤となる学問の自律性は、最大限に尊重されなければなりません」とも訴えている。日本政治学会のホームページによると、同学会は戦後、「従来政治学研究の自由を制約していた政治体制がのぞかれ」たことなどを背景に、「ひろく政治学の研究者の全国的組織を確立しようとする機運」によって1948年に設立された。会員数は約1800人。

<遅すぎる控えめな号砲>
PS(2020年10月27、29《図》、30《図》日、11月3、4日追加):*8-1のように、菅首相が10月26日の所信表明演説で、「温暖化ガス排出量を2050年までに実質0にする」と表明され、成長に向けて技術革新の号砲が鳴ったとされ、それには官民で年10兆円超の投資が必要との試算があると書かれているが、*8-2、*8-3のように、世界では多くの国が2035年のガソリン車全廃(欧州はHVもガソリン車に入れる)を既に目標としており、再エネやEVは1995年前後に日本が世界のトップランナーとして研究開発を始めたので、今から投資しなければならないというのはおかしい。また、日本では、「環境重視は経済の足を引っ張る」と考える人が多いので、首相が「温暖化対策は大きな成長に繋がるという発想の転換が必要だ」「次世代型太陽電池などで革新的なイノベーションをめざす」という考えを強調されたのには賛成だ。しかし、未だに「①日本はエネルギー資源のない国」「②原発がなければCO₂削減はできない」「③ロードマップがない」などと、できない理由を並べる愚鈍な人が多いのは問題だ。
 このうち、①②は、*8-4のように、地方に多い再エネで電力を作って地域活性化の起爆剤にしながらエネルギー改革をすればよいし、③は、トップランナーの技術革新にロードマップは作れないので、高い目標を設定して全力で問題解決していくしかない。そのため、私は、日本も2035年までのできるだけ早い時期に、ガソリン車(HVも含む)・ディーゼル車の新車販売を0にする目標を掲げて、「温暖化ガス0」の有力なツールにするのがよいと思う。
 2016年11月4日、*8-5のように、第21回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP21)で採択された「パリ協定」が発効し、国際社会は温暖化ガス排出0を目指して1歩を踏み出した。この協定には、中国・EU・インド・ブラジル・メキシコ・USA(国内の石炭・石油産業への影響から、今回の大統領選次第で脱退するかもしれないが)・日本等が批准している。
 そして、日本は、*8-6のように、菅首相がやっと「2050年までに温室効果ガスの排出を実質0にする」という方針を示されたが、「CO₂を排出しない原発を積極的に活用する」という声が早くも出ている。しかし、環境を考えても、リスクを考えても、コストを考えても、日本での原発回帰はあり得ず、それより一刻も早くエネルギー等の高コスト構造から脱却しなければ、製造業が海外に出ていくのは止まらず、日本が空洞化するのは時間の問題なのである。
 日本政府の判断が後ろ向きであるため、先進技術を持つ日本企業が国内では販売を伸ばせず、先に海外で販売・生産を始めて日本が空洞化している実例の1つが、*8-7だ。このように、日本はトップランナーの開発努力が報われない政治になっていることが、付加価値の高い一連の産業を国内では軌道に乗せられず、外国に先んじられることになった理由だ。

   
 菅首相所信表明演説   世界の電源別発電コスト推移      臨時国会の議題

(図の説明:左図が、10月26日の菅首相の所信表明演説のポイントだが、このうち「温暖化ガス2050年ゼロ」は、再エネ発電と電動化が柱となる。そして、中央の図のように、世界の電源別発電コストは、当然、規模拡大によるコスト低減があり、燃料がいらず設置費用の安い陸上風力と太陽光が最低で、原発が最高だが、日本ではそうならない理由は、税金を無駄遣いして原発を守る仕組みがあるからだ。そのため、この市場の失敗は、政治・行政の不適切な介入によってもたらされたと言える。従って、右図の臨時国会では、①これからも危険を侵して原子力発電を続けるか ②再エネで化石燃料を代替するか ③そのロードマップ について議論すべきだ)


2020.10.26朝日新聞

(図の説明:2050年の日本の電源構成はどうなるかについては、左図のように、現在は6.6%の原子力割合を20~22%まで増やすのが経産省の電源構成ミックスだが、商業電源は既に選択と集中で構造改革すべき時であり、人為的な電源構成ミックスを作って原発を保護するのは市場淘汰を妨げるのでよくない。世界では、中央の図のように、自然エネルギーとLNGが等比級数的に伸びて他は停滞しており、環境を重視すればこれは当然である。また、日本にとっては、どちらも国産可能なエネルギーであるため、エネルギー自給率向上に資する。さらに、右図のように、世界の太陽光発電も等比級数的に伸びているのだ)

  

(図の説明:左図が地熱発電の仕組みで、地球の熱をボイラーとして使うため、燃料がいらない。そして、中央の図のように、地熱発電の適地は太平洋プレートやフィリピン海プレートが沈み込む環太平洋火山帯付近の火山地帯に多い。また、右図のように、日本にも地熱発電の適地が多く、地熱発電用タービンのシェアは日本勢が世界の2/3を占めて日本が世界1であるにもかかわらず、国内ではあまり行われていないのである。そのため、地域で地熱発電を所有し、冷却時にできた温水も農業等に給水しながら、低コストで電力を供給するのがよいと思う。このような中、水素を褐炭から作ったり、輸入したりすることを考える人がいるのは、馬鹿にも程がある)

*8-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20201027&ng=DGKKZO65480550W0A021C2MM8000 (日経新聞 2020.10.27) 成長へ技術革新 号砲 エネルギー政策抜本見直し 、首相「温暖化ガス2050年ゼロ」表明
 日本の成長力を左右する競争の号砲が鳴った。菅義偉首相は26日、温暖化ガスの排出量を2050年までに実質ゼロにする目標を表明した。実現には官民で年10兆円超の投資が必要との試算もあり、壁は高い。カギを握る再生可能エネルギーの市場は中国など海外勢にシェアを奪われている。温暖化対策の方針転換を経済成長につなげるためにも日本発の技術革新が不可欠だ。首相は26日の所信表明演説で温暖化対策について「大きな成長につながるという発想の転換が必要だ」として、次世代型太陽電池などで「革新的なイノベーション」をめざす考えを強調した。「再生エネを最大限導入する」とも明言。来夏にまとめる次期エネルギー基本計画(総合2面きょうのことば)も再生エネの比率を大幅に高めるなど抜本的な見直しを進める見通しだ。温暖化ガスを実質ゼロにする目標設定は欧州などが先行し、日本は後発組になる。世界で進む環境技術の覇権争いに乗り遅れて対策コストだけがかさむ事態になれば、経済の重荷になる。京都大の藤森真一郎准教授らは50年の経済損失が国内総生産(GDP)の1%近くの年7.3兆円になるとの試算をまとめた。世界では既に中国が主導権を握る。太陽電池のシェアは首位から3位までを中国勢が独占。洋上などで拡大が見込まれる風力の発電機は、トップ5に欧米勢と中国企業が並ぶ。出力が不安定な再生エネの普及のカギとなる蓄電池の次世代技術も各国が争い、中国大手の寧徳時代新能源科技(CATL)が急速に存在感を増す。欧州では独ボッシュや仏ルノーなど400社・機関が「バッテリー連合」を設立した。世界のマネーは既に脱炭素が主流で、石炭火力関連分野から投融資を引き揚げる動きが広がる。日本の3メガバンクや生損保も石炭火力向けの新規業務を原則停止する方針を打ち出している。日本は環境マネーを呼び込む戦略的な投資が必要になる。東北大の明日香壽川教授らの試算では脱炭素の実現には官民で50年までに約340兆円が必要になる。1年あたり約11兆円の計算だ。18年度に日本の発電部門の二酸化炭素(CO2)排出量は約4.6億トンで、6割を石炭火力が占める。電源構成比でみれば石油なども含めた火力全体は77%に達する。原子力政策が停滞する日本は再生エネをどれだけ増やせるかが勝負になる。自然エネルギー財団は50年の排出ゼロから逆算した当面の目標として、30年時点で電源構成に占める再生エネの比率を40~50%に上げる必要があるとみる。実績は18年度で17%にとどまる。梶山弘志経済産業相は26日の記者会見で水素、蓄電池、カーボンリサイクル、洋上風力を例に挙げ「(政策を)総動員して対応する」と述べた。大容量蓄電池の量産支援などを念頭に実行計画を年末めどにまとめる。

*8-2:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO65519190X21C20A0MM8000/?n_cid=BMSR3P001_202010271930 (日経新聞 2020/10/27) 中国、2035年全て環境車に 通常のガソリン車は全廃
 中国政府は2035年をめどに新車販売のすべてを環境対応車にする方向で検討する。50%を電気自動車(EV)を柱とする新エネルギー車とし、残りの50%を占めるガソリン車はすべてハイブリッド車(HV)にする。世界最大の中国市場の方針転換は、世界の自動車大手にも対応を迫る。中国の自動車専門家組織「中国自動車エンジニア学会」が「省エネルギー・新エネルギー車技術ロードマップ2.0」を27日発表した。工業情報化省の指導を受けて作成しており、中国の自動車政策はこのロードマップに基づいて実施される見通しだ。EVを中心とする新エネ車の比率を高める。19年の新車販売に占める比率は5%だったが、ロードマップでは25年に20%前後、30年に40%前後、35年に50%超まで高める。新エネ車の95%以上はEVとする。残りのガソリン車などは、すべて省エネ車のHVに切り替える。HVの比率を25年にガソリン車などの50%、30年に75%、35年に100%に高め、HVではない従来型のガソリン車などは製造・販売を停止する方針だ。習近平(シー・ジンピン)国家主席は9月、60年までに二酸化炭素(CO2)排出量を実質ゼロにする目標を表明した。排出量世界1位の中国が脱炭素社会に移行するにはEVなどの爆発的普及が不可欠とみて、通常のガソリン車を全廃する大胆な方針転換を図る。自動車の「脱ガソリン」は欧州が先行する。英国がガソリン車などの新規販売を35年に禁止すると表明し、フランスも40年までに同様の規制を設ける方針。9月には米カリフォルニア州が35年までにガソリン車の販売禁止の方針を表明した。日本でHVやEVなどが販売台数に占める割合は19年に39.2%。政府は30年に50~70%にする目標だが、中国や欧州などに比べ見劣りする。新車販売台数で世界最大の中国市場が、世界の自動車大手の戦略に影響を与えるのは確実だ。トヨタ自動車は9月の北京国際自動車ショーで、中国のHV累計販売台数が100万台を超えたと発表した。ホンダを含めHVに強い日系メーカーに有利との見方は多い。中国国有の重慶長安汽車と北京汽車集団は25年までのガソリン車などの製造・販売停止を発表した。米中対立の先鋭化や国際物流の停滞にも備える。35年には部品などを海外に依存しない中国独自のサプライチェーンを構築する。販売だけでなく技術でも世界をリードする「自動車強国」への転換をめざす。自動運転分野の開発を進める方針も示した。30年に自動運転技術を高速道路や限定地域で実現。35年に物流などを組み合わせた高度な自動運転技術を各地で実用化する。燃料電池車(FCV)に力を入れる方針も盛り込んだ。25年に保有台数10万台、35年には100万台にする。当面はバスなどでの利用拡大をめざす。

*8-3:http://www.asahi.com/business/reuters/CRBKBN1ZY05H.html (朝日新聞 2020年2月5日) 英、ガソリン車やHVを2035年に販売禁止 EV前倒し推進強調
 英政府は4日、ガソリン車やディーゼル車の販売禁止時期を、従来より5年前倒しし、2035年から実施すると表明した。ガソリンと電気を使うハイブリッド車(HV)も含まれる。英国は今年、11月にグラスゴーで開かれる国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)の議長国を務めることになっており、電気自動車(EV)の推進姿勢をアピールする狙いがある。ジョンソン首相はロンドンで開かれた関連イベントで「二酸化炭素(CO2)排出(規制)の問題に取り組む必要がある。国として、社会として、地球として、人類として、われわれは今こそ行動すべきだ」と訴えた。これに先立ち首相は声明で「COP26の開催は英国と世界各国にとって気候変動対策強化の重要な機会になる」と指摘。「2050年排出実質ゼロの目標に向けた今年の英国の計画を明らかにするとともに、諸外国に排出実質ゼロを英国とともに公約するよう求めるつもりだ」と表明した。ジョンソン氏は、排出実質ゼロの早期達成に向け、クリーンな技術への投資や自然生息地の保全、気候変動の影響への耐性を高めるための方策を含めた国際的な取り組みを呼び掛けた。ガソリン車とディーゼル車の販売禁止については、2035年か、可能であればさらに早い時期に前倒しで実施する計画。実施前に意見公募を行う。英国以外にも、フランスは2040年以降、ガソリン車とディーゼル車の販売を禁止する方針で、ノルウェーの議会は、25年までに国内の全ての車を排出ゼロにする法的拘束力のない目標を採択した。ただ、英国ではディーゼル車とガソリン車が国内販売の9割を依然占めており、充電施設の数が少なく、エコカーのモデルも限定的で割高との声が聞かれる。

*8-4:https://www.agrinews.co.jp/p52221.html (日本農業新聞 2020年10月24日) 再生エネルギー 地域活性化の起爆剤に
 異常気象の要因にもなっている地球温暖化を食い止めようと、風力や太陽光、小水力、バイオマス(生物由来資源)などさまざまな再生可能エネルギーの生産が、日本の各地で進んでいる。この動きを、二酸化炭素(CO2)の排出削減だけではなく、地域活性化の起爆剤にしていきたい。北海道などの海沿いを車で走ると、巨大な風力発電の施設を目にする。いくつもの羽根が回る姿は圧巻だ。また、広大な敷地には太陽光発電のパネルが並ぶ。こうした光景に、再生可能エネルギーの普及を実感する。経済産業省がまとめた2018年度の国内エネルギー需要実績によると、エネルギー消費量に占める再生可能エネルギーの割合は約17%。エネルギー基本計画で政府は、再生可能エネルギーの割合を30年度に22~24%にするとの目標を掲げてきたが、新たに、CO2など温暖化ガスを50年に実質ゼロにする方針を固めた。菅義偉首相が26日召集の臨時国会での所信表明演説で示す考えだ。注目したいのは、自治体などによる「地域電力」の開発。再生可能エネルギーの地産地消が狙いだ。その目的の一つが地域活性化である。再生可能エネルギーの生産は地方が適している。安定して風が吹く場所や、太陽光パネルを設置できる広い土地は地方の方が確保しやすい。バイオマス発電の原料となる家畜ふん尿や森林も豊富だ。北海道のJA士幌町は7月の国際協同組合デー記念中央集会で、再生可能エネルギーの地産地消の取り組みを報告した。家畜ふん尿をバイオガスプラントで処理して発電。酪農・畜産の規模拡大で増大したふん尿処理の労働負担と、においなど環境問題の解決を目指す。電力はJA施設で使う他、太陽光発電施設も設置し一般家庭への供給も始めた。町と連携し、再生可能エネルギーで農業や福祉など地域の電力を賄う構想を検討しているという。また標茶町は、家畜ふん尿をメタン発酵させバイオガスとして活用する考えだ。ドイツやスペイン、イタリアなどでは、総発電量に占める再生可能エネルギーの割合が30%を超えており、日本は大きく水をあけられている。頻発する集中豪雨や大型台風、40度を超える猛暑など相次ぐ異常気象に多くの人が不安を募らせ、環境問題への関心も高まっている。再生可能エネルギーを普及させる環境が、日本でも整ってきているといえる。新型コロナウイルスの流行で、東京一極集中の是正の重要性が改めて認識され、都市住民の地方移住への関心も高まっている。エネルギーの地産地消は新たな産業を創出し、雇用を生み出し、地域の収入を増やし、「田園回帰」のけん引役にもなり得るだろう。地域電力の利用などを通じた新産業と農林水産業などとの産業間連携はもとより、人的交流も活発化させ、新たな地域づくりにつなげたい。

*8-5:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20201102&ng=DGKKZO65740590S0A101C2EAC000 (日経新聞 2020.11.2) 2016年11月4日 パリ協定発効、温暖化ガスゼロへ一歩
 2016年11月4日、20年以降の地球温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」が発効した。国際社会は温暖化ガス排出ゼロに向けた一歩を踏み出した。世界最大の排出国である中国のほか、米国や欧州連合(EU)、インド、ブラジル、メキシコなど90カ国以上が同日までに批准手続きを終えた。世界の総排出量に占める比率は6割以上にのぼる。同協定は15年12月にパリで開いた第21回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP21)で採択した。世界の平均気温の上昇を産業革命以前に比べて2度未満に抑えることなどを目標に掲げた。16年9月に温暖化ガスの二大排出国である米国と中国が批准したことで、発効へ大きく前進した。だが翌年6月、自国の石炭・石油産業への影響に配慮したトランプ大統領の下、米国が同協定からの離脱を表明。19年11月に離脱を国連に通告した。

*8-6:https://digital.asahi.com/articles/DA3S14681469.html?iref=comtop_Opinion_04 (朝日新聞社説 2020年11月3日) 温室ガス削減 原発に頼らず進めねば
 菅首相が「2050年までに温室効果ガスの排出を実質ゼロにする」との方針を示した。政府は地球温暖化対策の強化を急ぐことにしている。焦点は原発の取り扱いだ。原発は発電時に二酸化炭素を排出しないため、積極的な活用を求める声が早くも出始めた。だが、排出削減を口実に、さまざまな問題を抱える原発に依存し続けることは許されない。「徹底した省エネ、再エネの最大限の導入に取り組み、原発依存度を可能な限り低減するのが政府の方針だ」。排出削減の進め方について、首相は衆院本会議で、そう答弁した。気がかりなのは、同時に「原子力を含めてあらゆる選択肢を追求していく」とも述べたことである。「50年に実質ゼロ」のハードルは高いため、原発を活用していく必要があるとの考え方を示したといえよう。今後、既存の原発が寿命を迎えて引退していくのを懸念してか、自民党内では新設を求める声もあがっている。今のところ菅政権は「原発の新増設や建て替えは想定していない」(加藤官房長官)と慎重だが、今後もその姿勢に変わりはないのか。この際、中長期的な原子力政策を明確に示してもらいたい。福島の事故を受け、朝日新聞は将来的には原発に依存しない社会をめざすべきだと主張してきた。古くなった原発から順次止めて徐々に減らし、事故リスクをなくすという考え方だ。脱原発は経済性の面でも理にかなっている。朝日新聞の調査では、事故後の安全対策費が電力11社の合計で5・2兆円を超え、今後さらに膨らむ見通しだ。1基あたりの費用は、再稼働した5原発9基では1400億~2300億円にものぼる。対照的に再エネの発電コストは下がっており、原発を減らしながら太陽光や風力を広げていくというのが合理的だ。開発が進む小型モジュール炉(SMR)は、安全性やコストで現在の原発の欠点を補うともいわれる。だが、「50年に実質ゼロ」は、今後10年間で温室効果ガスを大幅に削減できるかが鍵を握る。普及の時期が定かでない新技術に期待し、時間を浪費するわけにはいかない。忘れてならないのは、どんな原発にも最終的には、「核のごみ」の処分という問題がつきまとう点だ。高レベル放射性廃棄物の最終処分地をめぐって北海道の2町村で文献調査が実施される見込みだが、問題の解決には長い年月がかかる。脱炭素と脱原発を両立しながら気候危機対策を進めていく。それこそ進むべき道であることを、菅政権は認識するべきだ。

*8-7:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO65728780R01C20A1MM8000/ (日経新聞 2020/11/1) 日本電産、欧州にEVモーター新工場 2000億円投資、環境規制に商機 部材メーカーも集積
 日本電産は約2千億円を投じて欧州のセルビアに電気自動車(EV)用駆動モーターの工場を設ける。2023年をメドに年20万~30万台を生産し、同社にとって欧州は中国に次ぐEV用モーターの拠点となる。欧州連合(EU)は日本に先駆け、50年までに温暖化ガス排出を実質ゼロとする目標を設定した。脱ガソリン車政策も進み、EV需要が増えている。完成車から電池素材のメーカーまで、環境規制が関連投資を呼びこんでいる。研究開発拠点とあわせて新設する方向で現地当局などと最終的な調整をしているもようだ。フランスとポーランドでも22年以降、同モーターの生産を始める計画で、セルビアは欧州で最大級の生産拠点となる。日本電産はこれまでEV産業の育成を急ぐ中国での事業拡大に力を入れてきた。19年には浙江省でEV用駆動モーターにインバーターやギアなどを組み合わせたシステム製品の量産を開始。広州汽車集団系や吉利汽車系など大手自動車会社からの受注を増やしている。今回投資を決めた欧州も、いまやEVやプラグインハイブリッド車(PHV)の販売では中国と並ぶ最大市場だ。欧州自動車工業会(ACEA)によると、EUに英国などを含めた欧州の20年1~6月のEV・PHV販売台数は前年同期比62%増の39万9千台だった。背景には急激に進む環境規制の強化がある。EUは20年、21年と段階的に新しい二酸化炭素(CO2)排出規制を導入する。乗用車の新車が出す走行1キロメートルあたりのCO2を平均95グラム以下に抑えることを義務付けており、自動車各社は巨額の罰金を避けるため電動車比率の引き上げを急いでいる。25年と30年には規制が一段と強化されることが決まっている。欧州委員会は30年の規制をさらに強化することも検討しており、独フォルクスワーゲン(VW)や同ダイムラーはEV車種を増やしている。米テスラも21年をメドにドイツで欧州初のEV工場を新設する計画だ。EV需要の拡大をにらみ、海外の車載電池メーカーの欧州進出も相次ぐ。これまでにLG化学やサムスンSDIなど韓国勢が東欧に工場を設けており、中国勢も続く。寧徳時代新能源科技(CATL)はドイツ中部チューリンゲン州に新工場を建設中だ。22年までに年間14ギガワット時の電池セルを生産する。独BMWやVWと大量の供給契約を結んだ。素材メーカーでは東レも22年までにハンガリーでリチウムイオン電池の基幹部材であるセパレーター(絶縁材)の新工場を稼働させる。セパレーターは電池内で正極と負極の間を隔てて発火を防ぐ中核部材。新工場が稼働すると東レ全体のセパレーターの生産能力は2割増える見込みだ。リチウムイオン電池の負極材用の接着剤をつくる日本ゼオンも欧州生産を検討している。電池メーカーが材料を現地調達する流れが強まっているためで、実現すれば同社が初めて海外で電池材料を生産することになる。欧州や中国のほか米国でも一部の州がガソリン車への規制強化を打ち出している。民主党のバイデン大統領候補は当選した場合、現地生産するEVに補助金を出す方針を示している。規制に対応しなければビジネスの継続が難しくなるため、EVの振興政策がある国や地域に新たな部品供給網ができる可能性がある。日本はガソリン車メーカーが多く、主要な自動車市場国と比べ電動化への政策対応が進んでいない。企業はグローバルな潮流を踏まえて戦略を決めている。日本が環境政策の見直しで遅れればエコカーを巡る投資も進まない恐れがある。

<新型コロナと生命科学・検査・医療・治療機器>
PS(2020年11月4、9日追加):*9-1のように、成田空港ターミナル内で、出国者らを対象にした日本医大運営のPCRセンターが営業を始め、少し高いが3万9,800円(予約なし・時間外:4万6,500円)で検査と陰性証明書の発行を行い、検査機器が整う12月以降は最短2時間で結果が出るようになるそうだ。外国は陰性証明書の提出を求める国もあるそうだが、私は、日本も陰性証明書を提出させた上で、往来を正常に戻すのがよいと考える。
 また、*9-2のように、中国は、日本から中国に渡航する全員に新型コロナPCR検査と抗体検査の両方で陰性であることを義務づけると発表したそうだが、抗体検査が陽性でも既に治癒した人は健康なので感染しない。そのため、抗体検査陰性の要件はいらないと思われ、抗原検査陰性の間違いではないのか?
 新型コロナの特徴は、*9-3で本庶先生が言っておられるとおり、無症状感染者の割合が多いため、広範なPCR検査が必要で、検査せずに放っておくと大火事になるが、検査体制が浸透すればボヤの段階でブロックでき、通常通りに過ごせるため、日本経済が回復する。従って、神戸のシスメックスと川崎重工業が自動PCR検査ロボットを開発中で、短時間で多くの人を検査するようにしてコストを下げ、安価にするのはよいことだ。
 さらに、課題(ニーズ≒シーズ)がある毎に、このようなことを積み重ねていくのが、付加価値の高い産業を起こして経済を牽引し、雇用を創出するこつである。そのため、生命科学・医療・治療機器等の産業集積地は、近くに九州大学・佐賀大学・長崎大学・久留米大学・福岡大学・産業医科大学・熊本大学など医学部・工学部・農学部が多く、原材料も入手しやすくて製品を出荷しやすい九州の伊万里港付近にも作ればよいと思う。
 なお、2020年11月3日、朝日新聞が*9-4のように、「優れた日本人研究者、なぜ中国へ 皮肉にも待遇ではない」と題して、「①2016~18年の中国の論文数は米国を抜いて首位となり、注目度の高い論文の数も長くトップを走る米国に迫っている」「②世界大学ランキング上位100に入る数も、中国が日本より多い」「③中国は2008年から千人計画始め、外国で活躍する研究者を、国籍を問わず10年で約8千人集めて、研究費や住宅の購入などを支援した」「④ここで言っておきたいのは、どこで誰が研究するにせよ、知的財産権や税金などをめぐる違法行為や情報の虚偽は断じて許されない」「⑤年給は40万元(約630万円)で、日本の教授より少ないが設備やスタッフなどの環境が良い」「⑥中堅・若手が中国へ向かう大前提として、中国の研究水準が上がっていることが大きい」「⑦日本で大学教員のポストが限られるなか、中国では採用が増えた」「⑧日本人研究者は、日本や欧米を含む複数の国に申請し、条件を見比べて決めている人も多い」等と記載している。
 このうち、①②⑥は、③⑤⑦⑧によって、実力ある研究者が中国に集ったからにほかならない。この間、日本で研究者に与えられた環境は、ポスドクという劣悪な立場・研究費の少なさ・教授ポストの少なさは当然のことながら、(朝日新聞を筆頭に)スタップ細胞の新発見をした女性研究者を再生医療の素人が「そんなことはあり得ないから嘘だ」とバッシングして研究継続を不可能にさせたり、④のように、「研究者は知的財産権や税金などの違法行為や情報の虚偽を起こすものだ」などと研究者に変な批判をして生活環境を悪化させたり、NHKの「科学は誘惑する」という番組のように、「(普通の人である)自分は悪いことはしないが、科学者は悪いことをするものだ」などという失礼なメッセージを発信したりして、科学者や研究者の立場・環境を悪化させていることも大きいのである。そして、このような風潮とその総合的な結果が、ドル建てでの日本の経済規模微減と中国の経済規模3倍化であり、マネーを印刷して金融緩和した(=国内での価値の尺度である円の価値を下げた)だけでは、外貨建てで客観的に計測した実質経済の成長はないことを忘れてはならない。

*9-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20201103&ng=DGKKZO65758660S0A101C2CC1000 (日経新聞 2020.11.3)出国前検査 便利に 成田のPCRセンター始動
 成田空港からの出国者らを対象に、ターミナル内で新型コロナウイルス感染の有無を調べる日本医科大運営のPCRセンターが2日、営業を始めた。今月中は受け付けから証明書発行まで6時間ほどかかるが、検査機器が整う12月以降は最短2時間に短縮され、出国者の利便性が向上する。
センターは24時間営業で、午前9時~午後5時以外の検査受け付けは時間外となる。検査・証明書発行の料金は3万9800円、予約なしや時間外の場合は4万6500円。外部の医療機関で受けた検査の証明書発行も受け付ける。出入国制限の緩和拡大により出国者の増加が見込まれる一方、陰性証明書の提出を求める国もあり、検査態勢の拡充が求められていた。成田への入国・帰国者を対象にした検査は引き続き厚生労働省の検疫所が担う。センターは第1、第2両ターミナルに設置。営業開始に先立ち報道陣に公開された第2ターミナル側は、約750平方メートルの一室に問診や検体採取用のスペースがパーティションで区切られていた。日本医科大付属病院の汲田伸一郎院長は「出国前に少し早く来てもらえれば、検査できるようにしたい」と話した。

*9-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20201104&ng=DGKKZO65791350T01C20A1NN1000 (日経新聞 2020.11.4) 中国、日本からの渡航者「陰性」義務 PCRと抗体検査で
 東京にある中国大使館は3日までに、日本から中国へ渡航する全員に新型コロナウイルスのPCR検査と抗体検査の両方で陰性であることを義務づけると発表した。中国への直行便に乗る2日以内に指定された検査機関で両検査を受け、ともに陰性であることを証明して搭乗する必要がある。11月8日から国籍を問わず陰性証明を義務づける。中国大使館・総領事館が指定する様式の陰性証明を取得し、搭乗手続きの際に原本とコピーを航空会社に提示しなければならない。日本からの渡航者には9月から72時間以内のPCR検査を求めていたが、入国時検査をさらに強化する。検査結果の偽造などが発見された場合「法律に基づいて関係者の法的責任を厳しく追及する」としている。中国では新疆ウイグル自治区で10月末に100人以上の集団感染が発覚した。中国国内での新型コロナ再拡大への警戒が強まっている。

*9-3:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO65778900S0A101C2M12500/ (日経新聞 2020/11/4) コロナの課題解決、医療革新 神戸が存在感 、神戸経済特集(上)
 新型コロナウイルスの感染拡大に揺れる世界で、神戸が存在感を発揮しようとしている。人工島に整備された神戸医療産業都市では、約370の企業・団体が先端的な医療・バイオの研究に取り組む。働き方や生活様式が大きく変わる中、スタートアップなどから幅広く課題解決の知見を取り込む。幕末の開港や25年前の阪神大震災など幾度も激動を経験した神戸が、しなやかな街の力を再び発揮する。
■スパコン富岳、創薬支える
 神戸市南部の人工島、ポートアイランドにある「神戸医療産業都市」の存在感が高まっている。今年6月に計算速度を競うスーパーコンピューターの世界ランキングで4冠に輝いた「富岳」。新型コロナウイルスの研究でも先頭を走る。「(京と比べて)3倍の電力効率、100倍の性能向上を果たし、何週間もかかった成果が数時間で分かるようになった」。富岳を運用する理化学研究所・計算科学研究センター(神戸市)の松岡聡センター長はこう説明する。地元・神戸大学の坪倉誠教授らが飲食時の飛沫拡散のシミュレーション(模擬実験)を実施。感染対策の参考となる結果を示した。富岳はコロナ治療薬の候補となる物質も見つけた。富岳の「入門機」となる富士通製スパコンを8月に本格導入したのは、隣接する計算科学振興財団(神戸市)だ。地元の産官が設立した団体で、企業がお試しで安く使える環境を整備した。産業利用を支援し、創薬などの研究開発を促す。コロナ感染の有無を調べるPCR検査の自動化に挑む企業も出てきた。川崎重工業と検査機器大手のシスメックスが出資するメディカロイド(神戸市)だ。ウイルスの毒性をなくす「不活化」など従来は人手が必要だった6つの作業を担うロボットを売り出す。検査ロボはシスメックスの施設「シスメックスBMAラボラトリー」(神戸市)で実証が進む。市は地域の検査態勢拡充にも有用とみて開発に5000万円の補助を決めた。久元喜造市長は「20年余り取り組んできた神戸医療産業都市の蓄積がコロナとの闘いにも生かされた」と強調する。検査ロボはトレーラーで運べるコンテナに複数台配置して、2021年にも空港などに向けた検査サービスとして活用する予定だ。「患者との接触による感染リスクが減り、医療従事者の負担が軽減する」(川重の橋本康彦社長)。シスメックスはコロナ患者の重症化を予測する検査サービスの開発も進める。7月から研究用で受託測定を始めた。同都市の中核病院である市立医療センター中央市民病院と連携。富井啓介副院長は「症状が悪化する人と、そうでない人を振り分けられる」と期待する。感染の有無を判定する同社の抗原検査薬も近く薬事承認される見込みだ。医療スタートアップもコロナ禍で動き出した。神戸大発のスタートアップで検査機器を手掛けるインテグラル・ジオメトリー・サイエンス(神戸市)は、通信にも使う電磁波「マイクロ波」を活用。空気中の新型コロナを分解する技術の開発を進めている。同都市に拠点を持つ医療スタートアップのイーベック(札幌市)も新型コロナの抗原検査キットや治療薬候補を研究中だ。土井尚人社長は「神戸には医療の集積があり研究の支援体制が整っている」と語る。医療産業都市は1995年に発生した阪神大震災の震災復興事業として始まった。震災25年の節目を迎えた今年、コロナという逆境下にありながら、集積の成果を発揮しつつある。
■治療機器産業 新拠点で育成
 医療産業都市では産官学の連携も盛んだ。今夏、メディカロイドの手術支援ロボットが薬事承認を取得した。これを受け、NTTドコモや神戸大、神戸市などが加わり「神戸未来医療構想」が始動。一方で医療のスタートアップ拠点も10月に開所した。成長の種への投資を欠かさない。8月、国産初の手術支援ロボ「ヒノトリ サージカルロボットシステム」の発表に注目が集まった。手術器具などを持たせる4本のアームを遠隔で操作する。医師は高精度3D画像を見ながら手術可能だ。この分野では米インテュイティブサージカルの「ダヴィンチ」の独占市場だった。神戸大は国際がん医療・研究センターに「リサーチホスピタル」を設置した。国産治療機器の国際競争力を高めるため、産官学が連携した実証拠点とする。高速通信規格「5G」に対応する手術ロボを目指す。ヒトの血液や組織を保管するバイオバンクの運営でも産官学が協力する。医学研究を促すため「バイオリソース・イノベーション・ハブ・イン・神戸」(神戸市)が19年に設立された。製薬会社などの研究開発を後押しする。医療のユニコーン企業を生み出す拠点整備も進む。初期の研究を支援する「クリエイティブラボ神戸」が10月に完成した。本庶佑京都大学特別教授が監修した動物実験施設などを備えた「次世代医療開発センター」も来春入居する。神戸空港まで神戸新交通で4分の立地だ。施設内の「スタートアップ・クリエイティブラボ(SCL)」では、10種以上の高額な実験設備を24時間使える。スタートアップ支援で市と協力するリバネス(東京・新宿)の丸幸弘最高経営責任者(CEO)は「神戸を足場に大きく成長する企業を育てていく」と話す。
■本庶佑・神戸医療産業都市推進機構理事長に聞く
 神戸が医療研究でコロナ禍に挑む。2018年にノーベル生理学・医学賞を受賞し、神戸医療産業都市推進機構で産学官の連携などを担う本庶佑理事長(京都大学特別教授)に、神戸が今後果たす役割を聞いた。
――神戸医療産業都市は約370社・団体が集まる集積地に成長しました。
 「数は力だ。大きな企業が1つ、2つでは意味がない。生命科学の多くはベンチャーからスタートする。様々な試みで医療産業都市から一発当てる企業がでてくればよい。スタートアップが成長すると大手が買収することが多い。それはよいこと。資本のあるところがさらに企業を育てる。(そうした循環が)今後10年間で発展するだろう」「本来は民間のベンチャーキャピタルが企業支援に動くべきだ。ただ医療分野は成長に時間がかかり『こける』率も高い。(コロナでは)多様な研究をやってみないといけない。推進機構として医療関係の産業や大学に助成金を出し、コロナ研究を支援している。企業間や産学の連携を促進する上では意味がある」
――神戸のシスメックスと川崎重工業が自動PCR検査ロボットを開発中です。
 「新型コロナの特徴は無症状感染者の割合が多いこと。かなり広範なPCR検査が必要になる。検査せず放っておいたら大火事になる。監視体制が浸透すればボヤの段階でブロックできる。安心して出かけられ、観光にもっと気軽に行けるようになり、日本経済が回復してくる。良い製品ができることはうれしく思う」「実装は行政を動かさないとできない。たとえば関西国際空港や神戸空港に置く。トレーラーに積んで運べる機械で、入国者を短時間で検査する。神戸の三宮駅前に並べて多くの人を検査することも意義がある」「PCR検査はコストが高いというのは間違い。私たちの試算では1億回やっても数千億円。政府がマスクを何回か配るのと同じくらいだ。試薬の国産化で量を増やせばコストは下がる。こういうことに神戸が日本で先鞭(せんべん)をつけると。将来的には東南アジアに輸出して、社会実装する突破口にもなる」
――来春には本庶理事長が監修した研究施設が神戸に完成します。
 「分散的だった研究機関の大部分が集約できるのがメリットだ。医学的な研究に不可欠な高度な動物実験施設が整備され、地域の企業も施設を使える。近くには医療産業都市の中でも中核的なスパコン『富岳』があり、象徴的な場所としても意味がある」「顔と顔を合わせる機会が減ったが、コロナ禍は永遠ではない。施設には企業との連携場所をつくる。交流はサイエンスでも最も重要なことで欠かせない」
――コロナ禍で医療に注目が集まりました。
 「医療というのは福祉で税金の無駄遣いといわれてきた。だがパンデミックになったら国家防衛の中心。かつ、ノウハウを生かして世界の標準にしていくのは外交の中心でもある。(神戸も含め)トップレベルの技術を集約してやっていかないといけない」

*9-4:https://digital.asahi.com/articles/ASNC24GK3NBVULZU00V.html?iref=comtop_7_02 (朝日新聞 2020年11月3日) 優れた日本人研究者、なぜ中国へ 皮肉にも待遇ではない
●コラム「多事奏論」
 遠い昔のことのようだ。「経済規模は人口が多い国に抜かれてもいい。科学技術力は、アジアで圧倒的な1番を続け、中国やインドなどアジアの本当に優秀な研究者が、日本に学びに来るような状況になるのが望ましい」。京都大学iPS細胞研究所長の山中伸弥氏の発言である。中国が経済規模で日本を抜く前年、2009年末に「ジャパン・アズ・No.3」の企画で取材した時のことだ。山中氏は、米国より見劣りする研究者の待遇の改善を繰り返し訴えてもいた。あれから約10年。日本の経済規模(ドル建て)は微減したが、中国は3倍近くに膨らんだ。その財力を背景に、研究開発費が伸び悩む日本に対して、中国は約3倍に増えた。「科学技術指標2020」(文部科学省)によれば、16~18年の論文数は米国を抜いて初めて首位となり、注目度の高い論文の数も長くトップを走る米国に迫る。英国の組織による世界大学ランキングで上位100に入る数も中国が日本より多い。日本学術会議の問題に絡んで、中国が08年から始めた「千人計画」が改めて注目されている。外国で活躍する研究者を国籍を問わず集める国家プロジェクトだ。約10年で中国系を中心に約8千人が対象となった。数千万円規模とされる研究費や住宅の購入などを支援する。ここで、まず言っておきたいのは、どこで誰が研究するにせよ、知的財産権や税金などをめぐる違法行為や情報の虚偽は断じて許されない。「軍民融合」の研究が軍拡を支える中国を念頭に、安全保障にかかわるルール作りも急ぐべきだ。そのうえで、中国側の狙いを探ると同時に、別の角度から直視すべき問題がある。なぜ、優れた日本人研究者が中国へ行くのか――。
●参加の理由は待遇ではなく…
 中国の有名大学で数年前から教授を務める日本人の中堅研究者に、オンラインで話をきいた。基礎科学の一角が専門で、千人計画の一人である。中国での研究に対して「軍事研究への協力など誤った情報に基づく誹謗(ひぼう)中傷や嫌がらせが広がっている」として、日本で暮らす家族を含む安全のため、匿名を条件に取材に応じてくれた。「私の年給は40万元(約630万円)。日本の教授より少ないが、設備やスタッフなど環境は良い。ただ、一部の有名教授を除けば破格の待遇というわけではない」。「中堅・若手が中国へ向かう大前提として、中国の研究水準が上がっていることが大きい。私の分野も昔は日本が圧倒的に強かったが、今は論文ランキングでみると大差をつけられている」。かつては、日本で学んだ中国人留学生が帰国して、定年後の恩師を呼び寄せる事例が代表的だったが、若手に世代が広がりつつあるという。
●バッシングしても解決できない
 日本で大学教員のポストが限られるなか、中国では採用が増えている。彼によれば近年、基礎科学の分野で毎年10人弱の若手・中堅が中国の大学へ渡っている。日本や欧米を含む複数の国に申請し、条件を見比べて決めている人も多い。「軍事や産業に遠い基礎科学の研究者に対してまで、中国での研究=軍事転用と一律にバッシングしても、日本の基礎科学の基盤の危機は解決できないと思う」。中国政府は人材確保のため、さまざまな支援策を練ってきた。ハイテク都市深圳市がトップ人材を誘致する「クジャク計画」など各地も競う。一党独裁の強権中国共産党ですら、科学者の国家に対する忠誠に頼む「愛国搾取」的な待遇のままでは人材を呼び戻せなかったからだ。日本が研究者を育て引き留め、世界から招きたければ、職場の確保と研究環境の改善が必須だ。日本人が誇りとする、ノーベル賞受賞者を含む多くの科学者らが長く鳴らしてきた警鐘を、皮肉ながら中国が拡声している。

| 教育・研究開発::2016.12~2020.10 | 03:52 PM | comments (x) | trackback (x) |
2020.9.18~20 菅首相と政策、衆議院解散など (2020年9月21、22、23、24、25、26、29、30日、10月1、3、8日に追加あり)
  
   日本の人口推移       産業別就業者数(2018年)  基幹的農業従事者の年齢

(図の説明:左図の合計特殊出生率は、1970~2005年の35年間は下がり続け、2005年《私が衆議院議員になった年》に本格的に保育所等の整備を始め、児童手当も払うようにして少し上がったが、この間に高齢化率は30%近くになっていた。就労者数は、2019年には平均6,724万人おり、中央の図のように、第一次産業3.5%、製造業15.9%、建設業7.5%以外の73.1%はサービス業に従事している。また、サービス業のうち医療・福祉は12.5%と、それだけで製造業に迫るニーズの高い産業だ。なお、右図のように、基幹的農業従事者の平均年齢は65歳を超えて70歳に迫っており、これで日本のモノ作りが続けられると考えるのは甘いだろう)

  
 日本の名目賃金と実質賃金  OECD加盟国 名目GDPと購買力平価によるGDPの順位    
               の労働生産性

(図の説明:左図のように、金融緩和と財政支出により、名目賃金は少し上がったが、実質賃金は大きく下がった。しかし、中央の図のように、2014年のOECD加盟国における労働生産性の順位も、日本は21位でかなり低いので、仕方ないのかもしれない。右図は、2011年時点の名目GDPと購買力平価に基づくGDP《本当の豊かさを示す》の順位で、購買力平価に基づくGDPは、日本はインドより低い4位だ。ただし、1人当たりではなく、国全体のGDPである。現在は、どうなっているだろうか?)

(1)菅政権の政策について
 菅政権になるとどうなるのかと思っていたが、仕事師の多い本気度の高い内閣ができた。しかし、最も重要なのは、その内閣で、何をどういう方向で改革するかだ。しかし、メディアには、「派閥の力が弱いから、議員の教育ができない」「派閥があるから、密室だ」などの事実ではない矛盾する批判をよく見かけ、派閥ばかりに焦点を当てることこそが前時代的である。

1)規制改革
 菅首相が、*1-1のように、規制改革を「政権のど真ん中に」と初の記者会見で述べられたのに私は賛成だが、①どの規制をどういう方向で改革するか ②それは国民のためになるのか が、最も重要である。

i)規制改革と既得権益について
 縦割行政は、他省庁に端を発した変な政策を阻止するというメリットはあるが、省庁間に落として誰もやらず、誰も責任をとらないというディメリットも大きいため、既得権益改革と規制改革をど真ん中に据えて合理化するのはよいことだと思う。

 実際に、省庁は既得権益を守るために既に古くなった規制を残存させていたり、各省庁が同じ名目の重複した予算をとって無駄遣いしたりもしているため、菅首相が行政改革・規制改革相に河野氏を起用されたのは本気度が見えて期待できる。

 しかし、国民に対する管理強化ではなく、国民の幸福を増すための合理的な改革を進められるか否かは、今後の注目点になる。

ii)衆院解散
 メディアは、新内閣が発足した途端に「解散」「解散」と騒ぎ始め、解散すると選挙費用がばら撒かれたり、視聴率が上がったりするのが目的なのかと思うくらいだが、メディアが深くて正確な情報を伝えない限り、何度解散しても国民の選択による民主主義が正しく機能するわけはない。そして、メディアのレベルの低さが、日本の民主主義の弱点になっているのだ。

 さらに、まだ新型コロナが収束したわけではなく、治療薬やワクチンが承認されたわけでもないため、国民は安心できず、国民が一番望んでいるのは、感染拡大防止と経済の両立だ。

iii)デジタル庁の新設とデジタル化の推進
 平井大臣はデジタルに詳しい人であるものの、民間企業はデジタル化を1990年代から進めており、2000年代に入って以降は遅れていた政治・行政も旗振り役をしてきたというのが事実であるため、既に20~30年も経過して言い古された課題を今さら推進でもないだろう。

 さらに、少子化で支え手が不足する時代に、「デジタル庁」等の名目で次々と恒久的な省庁をつくり、税金で養われる生産性の低い役人を増やすのはよくない。そのため、私は、内閣府の中に担当大臣とデジタル化推進のための組織を置くことで足りると思った。

 また、オンライン診療は、長所だけでなく短所もあるため、「オンライン診療をしないのは遅れた医師である」という誤解の下、政治・行政が無理にオンライン診療を進めるのはよくない。そのかわり、専門家である医療提供側が必要に応じて設備投資し、オンライン診療を採用することができるよう、高すぎない機材を準備すべきだ。何故なら、オンライン診療は、「長所-短所=純メリット>価格」の場合のみ、採用に値するからである。

 さらに、マイナンバーカードが普及しない理由は、ビッグデータとして個人データの使用を推進するようなプライバシー・セキュリティー・人権に疎い政府が多くの情報を連結したマイナンバーカードを普及させれば、国民にとってはメリットよりディメリットの方が大きくなることを、国民が見抜いているからである。そのため、マイナンバーカードを普及させるためにデジタル庁を新設して歳出を増やし、複数の省庁に分かれている税と社会保障を一体改革して増税した上、社会保障を減らすことになれば、国民にとってはトリプル・ディメリットになる。

 結局、経済再生は、マネーサプライを増やすだけの金融緩和と生産性の低い場所に金をばら撒く財政投資ではできなかったが、これは当然のことである。何故なら、経済成長は、国内で産業が成立するように高コスト構造を改革し、生産性を上げるための投資を行い、教育・研修によって人材を磨くことによってしか達成されないからだ。従って、経営感覚がないため、経済成長率も実質賃金も振るわないのに日本を世界一の赤字国家にした政治・行政主導の“改革”を、「ポストコロナ」として民間に押し付けるのは、マイナスであるためやめるべきである。

 なお、デジタル化については、*1-2にも「コロナで行政の目詰まりが露呈した」等が述べられているが、①緊急時に ②にわか組織を作り ③業務委託を重ねて慣れない人に仕事をさせた のが間違いで、慣れた人(金銭の配布:財務省・厚労省・地方自治体、医療:保健所ではなく医療機関)に仕事をさせればよかったのである。

 また、「新型コロナ禍にファクスで情報をやりとりした行政機関があったことに驚きが広がった」ともよく言われるが、デジタル化してメールを使ったから正確で迅速になるとは限らず、ファクスであれメールであれ、目的を正確に理解し、やる気を持ってやれば、迅速かつ正確にできるものだ。

 さらに、長期間にわたってこのような失政を重ねた政府が、運転免許証・健康保険証・年金番号・納税者番号などをデジタル化し一体化したマイナンバーカードを、プライバシー・セキュリティー・人権などを考慮して管理できるわけがないため、国民は、それぞれを別番号にして、リスク分散しておくべきということになる。

iv)最優先は新型コロナ
 「最優先課題は新型コロナ対策」と言うのは正しいが、日本等の東アジア諸国は、交差免疫があるせいか、欧米諸国のような爆発的な感染拡大はしないようだ。しかし、未だに、治療薬もワクチンも承認されておらず、「医療崩壊させないため、病院に行くな(これ自体が医療崩壊)」とか「高齢者にうつすな」と言ってきたため、医療はあてにできず、自分も決して感染することができない。そのため、のびのびと旅行、観光、飲食等に行ける状況ではないのである。

 従って、検査を充実し、治療や予防もできるようにして初めて、経済のダメージが回復に向かうのであり、原因を取り除かずにカンフル剤ばかり投与しても、金を使う割に効果が薄いのだ。

v)待機児童問題「終止符打つ」
 待機児童問題に終止符を打つことには、もちろん私も賛成だ。しかし、「保育園が質・量ともに不満足だ」というのは、50年以上も前から言われており、戦後世代が出産適齢期になった1970年代には既に少子化が始まっていた。それでも、未だに希望しても保育所等に入れない待機児童がいるというのが、生産性の低いこれまでの政府(特に厚労省)のやり方なのであり、長く政治・行政に携わった人ほどこの責任は重い。ここに、反省すべき点はないのだろうか?

 また、少子高齢化の原因を保育サービス不足と分析せず、不妊が原因だとするのは、生物的に一定割合で存在する不妊の夫婦に不要なプレッシャーをかけるため、方向が違う。出産を希望する世帯のハードルを下げるためなら、不妊治療への保険適用までとし、政府による子づくり奨励はやめるべきである。

vi)機能する日米同盟
 「①我が国を取り巻く環境はいっそう厳しくなる」「②機能する日米同盟を基軸とした政策を展開する」「③自由で開かれたインド太平洋を戦略的に推進する」「④中国・ロシアを含む近隣諸国と安定的な関係を築く」「⑤北朝鮮による日本人拉致問題の解決に全力を傾ける」というのはよいと思うが、④にかかわらず、日本の領土に関する争いには妥協しないで欲しい。日本政府は、内弁慶で困るのである。

vii)「桜を見る会」来年以降中止
 モリ・カケ・サクラについては、法令違反ではない重箱の隅をつつくような事象を、安倍前首相を追及する手段として野党が延々と使ったことに、「政治家は法令違反でなくても、何を言われるかわからない」という意味で嫌な気がした。そのため、「桜を見る会」を来年以降に中止するのはよいと思う。

 日本のメディアは、「政治とカネ」の話題にはフィーバーして飛びつくが、昔のように、億単位のカネが政治家個人に献金されたり、有力政治家の地元に駅が造られたりしていた時代とは異なり、今は、そういうことはできない。そのため、首相になっても支援者を「桜を見る会」に招待し、誰とでも写真撮影し、愛想をよくして票を集めているくらいなので、批判している方が古い感覚のままだと思う。そして、そこに、違法行為はなかった筈だ。

(2)憲法への緊急事態条項の新設は危険であること
 安倍前首相は、*2-1のように、新型コロナウイルス感染拡大を受け、「憲法を改正して、『緊急事態条項』の創設が必要だ」と訴えられたそうだが、私は、今でも先進的と言える日本国憲法の理念に、それとは矛盾する条項を加えてつぎはぎだらけにされた日本国憲法を美しいとは思わない。しかし、自民党内には、憲法改正が立党以来の党是だとする人も多いのは事実だ。

 そのため、自民党改憲案に書かれているような内容に、①すべての与党議員が賛成なのか否か ②その意見の理由 ③他党の議員はどうか などについて、メディアは大学の憲法学教室などと組んで正確な意識調査を行い、総選挙までに公表すべきだ。何故なら、次に与党が2/3を超えて大勝すれば改憲圧力が増すことは間違いなく、採決時には与党議員の賛成が推測されるからだ。しかし、私は、「他の政策に賛成で与党議員になっている人に、党議拘束をかけて無理に憲法変更に賛成させるのは本当の民主主義ではない」とも考えている。

 なお、自民党が憲法改正条文案に緊急事態条項の創設を盛り込み、内閣の権限を一時的に強化する案と、選挙が実施できない場合に国会議員の任期を延長する案を併記しながら、新型コロナが終息していない現在、衆議院を解散するというのは矛盾が大きすぎる。

 そのため、*2-2のように、「新型コロナ感染拡大を受けて、憲法に緊急事態条項を設けるべきだ」という意見が自民党内にあることについて、毎日新聞の全国世論調査で全体の45%もの人が「賛成」と答えたのは(自民党支持層:賛成63%、無党派層:わからない40%・賛成38%、反対:17%)、緊急事態条項を用いて行われる他の権利制限の可能性について考慮していないからだと考える。

 首都大学東京の憲法学教授である木村草太氏は、*2-3のように、「緊急事態条項の創設によって、内閣総理大臣は「緊急事態宣言」を発することができるようになり、その時、内閣は法律と同一の効力を有する政令を制定したり、財政上必要な支出・その他の処分・地方自治体の長に対する指示を行ったりすることができるが、発動要件が曖昧で国会承認は事後でも良いとされているため、恣意的な緊急事態宣言を出すこともでき、内閣独裁権条項になり得る」と書いておられる。私も、そのとおりだと思う。

(3)新型コロナ対策における私権制限の妥当性について
 新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づく緊急事態宣言の下、*3-1のように、政府・都道府県知事などが、新型コロナウイルス感染防止のためとして不要不急の外出自粛や休業を要請したため、市民や企業は移動制限・集会中止・営業停止等の自粛をせざるを得なくなった。

 しかし、このような事態が長期間続いた理由は、PCR検査をして感染者と非感染者を分け、感染者を隔離・治療しなかったため、全ての人を感染者と見做して、全ての人に外出自粛や休業を要請せざるを得なくなったからである。そして、日本中の活動を止めるという誤った政策選択により、自由や権利の制限が生活苦に結び付いた人は多く、補償金額は日本全体としては莫大だったが、損害を受けた人にとっては「焼け石に水」にすぎなかった。

 このような中、「緊急事態宣言を出すにあたり、憲法に緊急事態条項を新設する必要がある」という意見はあるが、「緊急事態」は、その時の政府によってどうにでも定義でき、変な使い方をすれば国民の自由や権利を不当に侵害するため、憲法に緊急事態条項を新設してはならないと、私は考える。

 ただし、憲法への緊急事態条項新設に対する反論として、「立憲主義」「立憲主義に逆行」というフレーズを使うのは、憲法変更阻止の盾として機能しない。何故なら、「立憲主義」は、既に誰もが当然のこととして受け入れており、立憲主義に反対している人はおらず、それだからこそ憲法への緊急事態条項新設を画策しているからである。

 なお、*3-2のように、長野県の阿部知事が新型コロナ感染症対策で、県民への協力要請の根拠となる条例制定を検討していく考えを示されたそうだが、その条例には、県民や事業者が今後取り組むべき内容を盛り込むため、一定の行動規範として私権の制限にも繋がりかねず、感染症対策を大義名分に行政権限の強化することになりそうだとのことである。

 このように、「緊急事態」とは、感染症対策や災害を大義名分にすることもできれば、高齢化による年金制度崩壊を大義名分にすることもできるものだ。つまり、政府・行政が、自分たちの責任を棚に上げ、国民の私権制限を行って都合よく解決する手段に使うこともできるものであるため、憲法への緊急事態条項の新設は決して行ってはならないのである。

・・・参考資料・・・
<菅政権の政策>
*1-1:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO63932370W0A910C2000000/?n_cid=DSREA001 (日経新聞 2020/9/16) 規制改革「政権のど真ん中に」 菅首相が初の記者会見
 菅義偉首相は16日夜、首相官邸で首相就任後初めての記者会見に臨んだ。「政治の空白は決して許されない。全国民が安心して生活を取り戻すため、安倍政権の進めてきた取り組みを継承していく。そのことが私に課せられた使命だ」と述べた。
■規制改革「政権のど真ん中」
 規制改革について「官房長官を7年8カ月務めるなかで、なかなか進まない政策課題は省庁の縦割りが壁になった」と指摘した。ふるさと納税の創設など省庁が抵抗した例を挙げて「こうした例は探せばいくらでもある。縦割りと既得権益、悪しき前例を打破して規制改革を進める」と強調した。首相は行政改革・規制改革相に河野太郎氏を起用した。「自民党でも行革をやっていたので任命した」と説明した。河野氏に「『縦割り110番』のような、国民から現実に起きているものを参考にしたらどうか、と指示した」と明らかにした。「私自身が規制改革をこの政権のど真ん中に置いている」と唱えた。
■衆院解散「時間の制約視野に考える」
 衆院解散・総選挙の時期に関して「(任期)1年以内に解散・総選挙はある。時間制約も視野に入れ考える」と語った。「新しい内閣に国民が求めているのは新型コロナウイルス収束を何とか早くやってほしい、同時に経済をしっかり立て直してほしい(ということ)」と話した。「感染拡大防止と経済の両立を国民は一番望んでいる」と述べ、新型コロナの収束に全力を挙げる考えを示した。
■デジタル庁新設明言
 オンライン診療は「今後も続ける必要がある」と語った。マイナンバーカードの普及推進などを念頭にデジタル庁の新設を明言した。普及が遅れるマイナンバーカードの推進に向け「複数の省庁に分かれている関連政策をとりまとめて強力に進める体制としてデジタル庁を新設する」と表明した。「経済再生は引き続き政権の最重要課題だ」と強調した。「金融緩和、財政投資、成長戦略の3本を柱とする『アベノミクス』を継承し一層の改革を進める」と述べた。「この危機を乗り越えた上で『ポストコロナ』の社会構築に向けて集中的に改革し、必要な投資をして、再び強い経済を取り戻す」と力説した。サプライチェーン(供給網)の見直しなどを進めると説いた。
■最優先は新型コロナ
 最優先課題は新型コロナウイルス対策と言明した。「欧米諸国のような爆発的な感染拡大は絶対に阻止し、国民の命と健康を守り抜く」と強調した。「そのうえで社会経済活動との両立を目指す」と言及した。来年前半までに国民に行き渡るように「ワクチンの確保を目指す」と述べた。持続化給付金や雇用調整助成金、無利子・無担保融資など一連の経済対策を挙げて「必要な方々に届ける」と説明した。国内旅行の需要喚起策「Go To トラベル」などのキャンペーンを通じて「観光、飲食、イベント、商店街などダメージを受けた方々を支援する。今後も躊躇(ちゅうちょ)なく対策を講じる」と力説した。
■待機児童問題「終止符打つ」
 少子化対策に関して「長年の課題だ。若い人たちが将来も安心できる全世代型社会保障制度を構築していく」と語った。希望しても保育所などに入れない待機児童問題について「今後、保育サービスを拡充し、終止符を打っていく」と解決に意欲を示した。「出産を希望する世帯を支援する」と話し「ハードルを少しでも下げるために不妊治療への保険適用を実現する」と訴えた。
■外交「機能する日米同盟を」
 外交・安全保障では「我が国を取り巻く環境がいっそう厳しくなるなか、機能する日米同盟を基軸とした政策を展開していく」と述べた。「自由で開かれたインド太平洋を戦略的に推進すると共に、中国・ロシアを含む近隣諸国と安定的な関係を築いていきたい」と語った。北朝鮮による日本人拉致問題について「解決に全力を傾ける。米国をはじめとする関係国と緊密に連携し、全ての拉致被害者の1日も早い帰国を実現すべく引き続き全力で取り組む」と話した。
■「桜を見る会」来年以降中止
 首相主催の「桜を見る会」を巡り「首相に就任したこの機に来年以降、中止したい」と明言した。「安倍政権発足以来、政権が長くなる中で招待客が多くなったのも事実だ」と説明した。学校法人「森友学園」や「加計学園」を巡る問題などへの見解を問われ「安倍政権に様々な指摘をいただいた。客観的にみて、おかしいことは直していく」と語った。「今後、ご指摘のような問題がずっと起こることがないよう、みなさんの声に謙虚に耳を傾けながらしっかりと取り組みたい」と話した。

*1-2:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO63944950X10C20A9EA2000/?n_cid=NMAIL006_20200917_A (日経新聞 2020/9/17) デジタル化、全閣僚で推進 菅内閣が発足、コロナで露呈した行政目詰まり打開狙う
 16日夜に発足した菅義偉内閣は新型コロナウイルスの感染拡大で露呈した行政や社会の古い規制、デジタル化の遅れに対処するのが喫緊の課題になる。行政改革・規制改革相、デジタル改革相、厚生労働相の3閣僚がカギを握る。首相はデジタル化を全閣僚で推進するよう指示した。スピードと実行力が問われる。「行政の縦割り、既得権益、あしき前例主義、こうしたものを打ち破って規制改革を全力で進める」。首相は16日夜の記者会見で明言した。「規制改革を政権のど真ん中に置いている」と述べた。新型コロナの感染拡大を受け、今年春以降、PCR検査がなかなか増えなかった。安倍晋三前首相が具体的な検査能力の数値目標を掲げても達成まで時間がかかる。実行が遅れる「目詰まり」の理由も判然としない。国と地方自治体、保健所、医療機関の連携がうまくとれない「縦割り」の弊害がうかがえた。首相の指示ですら簡単には変わらない実態も浮き彫りになった。1人あたり10万円の現金給付は事務手続きが煩雑なうえ、米欧に比べると迅速に受け取れない。新型コロナ禍で在宅勤務を進めようにも、行政手続きや企業の決裁はいまだにハンコ文化、紙文化が残る。休校に見舞われた学生にオンライン授業をすべきだと意見が出ても十分に環境が整っていない――。首相は安倍政権の官房長官として様々な問題に直面した。「行政の縦割り打破」「規制改革の徹底」。就任前の自民党総裁選ではこう訴えた。一連の問題には幅広い分野で行政改革と規制改革をしなければならないとの判断だ。「1カ月で何ができるかまとめさせたい」。菅氏は周囲にこう漏らしている。対応が遅れれば、新型コロナの収束だけでなく経済にもさらに悪影響が出る。短期決戦だ。成果を出すには担当閣僚の突破力が必要になる。自身とタッグを組み、専門分野で経験を持つ人材を要所に配置した。目玉が行革・規制改革相の河野太郎氏だ。「行政改革と規制改革をしっかりやってくれ」。首相は組閣前日の15日夜、河野氏に伝えた。河野氏はいずれもかつて閣僚として担当した経験がある。次期首相候補の一人として人気を集め、直前までは外相、防衛相を務めていた河野氏には軽量級の閣僚にも見える。新内閣の閣僚をみると再任が8人、閣内横滑りが3人、再入閣が4人と刷新感は乏しい。学習院大の野中尚人教授は「目新しさよりも手堅さで選んでいる」と話す。河野氏のような経験者が多く入閣したからだ。首相は2009年の総裁選で立候補した河野氏を支持した。選挙区は同じ神奈川で1996年衆院選に初当選した当選同期組だ。安倍政権で外相や防衛相に起用されたのも「官房長官の菅氏の後押しがあった」ともいわれ、関係は近い。突破力はどうか。河野氏は党内では「異端児」「破壊者」「改革原理主義者」と呼ばれてきた。強固な規制を打ち破るには適任との声もある。首相は16日夜の記者会見で「規制改革は河野氏と首相でしっかりやっていきたい」と強調した。とはいえ、規制改革も行政改革も足場となる強固な官僚組織があるわけではない。全閣僚・全行政組織を相手にする「改革の司令塔」の位置づけだが、乏しい戦力で巨大な行政組織に切り込めるのかが問われる。行政の縦割り打破には古い政官業の関係にメスを入れなければならない。デジタル化はその契機にもなる。デジタル改革相になった平井卓也氏は党内ではデジタル・IT政策の第一人者と呼ばれる。今回兼務するIT相も経験済みで河野氏と同様「首相が信頼を置く経験者」だ。新型コロナ禍では危機下でもファクスで情報をやりとりする行政機関があったことに驚きが広がった。感染状況の把握や分析、迅速な対応が難しくなる理由の一つだった。給付金の支給ではマイナンバーカードを使う手続きに十分に対応できない自治体が多く、支援が遅れる問題もあった。いずれもデジタル化の遅れが原因だ。社会保障や税の手続きを効率化するため導入したマイナンバーカードの状況は象徴的だといえる。首相は官房長官時代に機能や利用範囲の拡充に取り組み始めたが、いまだに普及率は2割弱にとどまる。首相は16日夜の記者会見で「行政デジタル化のカギはマイナンバーカードだ。役所に行かなくてもあらゆる手続きができる社会を実現するには不可欠だ」と訴えた。運転免許証や健康保険証などをデジタル化して一体化する案がある。新型コロナ禍で在宅勤務を広げるための書面、押印、対面作業の削減も課題になる。企業の契約や行政手続きに残る法規制を改める必要がある。デジタル化を進めるため、首相は「デジタル庁」の創設を掲げる。関係省庁のデジタル政策を一元化する構想だ。菅氏は「法改正に向け早速準備したい」と唱えており、平井氏が総務省、経済産業省を筆頭に全省庁と話をつける必要がある。短期で実績を出せるかが問われてくる。切り込まれる側になる厚労相には調整力に定評がある田村憲久氏を充てた。田村氏も厚労相経験者だ。やはり菅氏の初当選同期で菅氏が総務相の時に総務副大臣で一緒に仕事をした仲だった。厚労相は今冬にインフルエンザと新型コロナが同時流行になった場合の備えが急務になる。両者は症状だけで判別しにくく、見分ける検査体制が不可欠だ。足りないといわれていた検査をさらに増強しなければならない。改革と危機対応に並行して臨む難しさがある。コロナ禍では初診からのオンライン診療が解禁された。とはいえ日本医師会などが反対姿勢をとり、コロナ収束までの時限的な措置にとどまった。首相は16日夜「ようやく解禁されたオンライン診療は今後も続けていく」と説いた。政官業の関係も課題だ。

<憲法への緊急事態条項の新設は危険であること>
*2-1:https://www.sankei.com/politics/news/200502/plt2005020009-n1.html (産経新聞 2020.5.2) 「緊急事態条項」の必要性に言及 安倍首相の「改憲メッセージ」判明
 安倍晋三首相(自民党総裁)が、ジャーナリストの櫻井よしこ氏らが主催する3日の憲法フォーラムに寄せたビデオメッセージで、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、憲法を改正して「緊急事態条項」を創設する必要性を訴えていることが2日、わかった。フォーラムは、櫻井氏が共同代表を務める「美しい日本の憲法をつくる国民の会」などが開催する。首相はビデオメッセージで、憲法改正が立党以来の党是だと強調。「時代にそぐわない部分と不足している部分は改正していくべきではないか」と訴える。新型コロナ対応をめぐって、「現行憲法では緊急時に対応する規定は『参議院の緊急集会』しか存在していない」と指摘。その上で、「緊急事態において国民の命や安全を守るため、国家や国民がどのような役割を果たし、憲法にどう位置付けるかは極めて重く、大切な課題だ」と述べる。首相は自民党がまとめた改憲案4項目で緊急事態対応を掲げていることも触れ、「まずは国会の憲法審査会の場で議論を進めていくべきだ」と呼びかける。一方、首相は新型コロナの感染者の救護などで自衛隊が尽力していることを紹介。「自衛隊の存在を憲法上、明確に位置付けることが必要だ」とも述べ、憲法に自衛隊を明記する9条改正に改めて意欲を示す。また、平成29年のメッセージで「2020年を新しい憲法が施行される年にしたい」と述べたことに関し、「残念ながら、実現に至っていない」とする。

*2-2:https://mainichi.jp/articles/20200502/k00/00m/010/188000c (毎日新聞 2020年5月2日) 憲法に「緊急事態条項」創設に「賛成」45%、機運高まらず 全国世論調査
 日本国憲法は3日、1947年の施行から73年を迎えた。新型コロナウイルスの感染拡大を受け、憲法に緊急事態条項を設けるべきだとの意見が自民党内にあることについて、毎日新聞が4月18、19日に実施した全国世論調査では45%が「賛成」と答えた。「反対」は14%、「わからない」が34%だった。自民党は大地震などの大災害に対応するためとして、2018年にまとめた4項目の憲法改正条文案に緊急事態条項の創設を盛り込んだ。そこには、内閣の権限を一時的に強化する案と、選挙が実施できない場合に国会議員の任期を延長する案を併記している。新型コロナの問題で政府の緊急事態対応に注目が集まる中、自民党内には改憲機運を盛り上げたい思惑もあるようだが、議論が活発化しているとは言い難い。自民党の政党支持率は29%で、支持層の63%が「賛成」。一方で全体の43%を占める無党派層では「わからない」の40%と「賛成」の38%がほぼ並び、「反対」は17%だった。野党の多くは「国民の権利制限に歯止めが掛からない懸念がある」と慎重で、その支持層では「反対」が多いか賛否が拮抗(きっこう)している。安倍晋三首相の在任中に憲法改正を行うことには「反対」が46%で、「賛成」の36%を上回った。昨年4月の調査でも同様の質問に「反対」48%、「賛成」31%だった。自民党の改憲条文案のうち、自衛隊の存在を明記する案には「賛成」34%、「反対」24%、「わからない」33%だった。質問の仕方が異なるため単純に比較はできないが、昨年の調査でも「賛成」27%、「反対」28%、「わからない」32%と回答が割れていた。

*2-3:https://webronza.asahi.com/politics/articles/2016030100008.html (論座 2016年3月14日) 緊急事態条項の実態は「内閣独裁権条項」である、自民党草案の問題点を考える、木村草太 首都大学東京教授(憲法学)
1 自民党草案の緊急事態条項とは
 今年に入り、安倍首相や一部の自民党議員は、憲法改正に強い意欲を示しており、参院選の争点にしようとする動きもある。特に注目を集めているのが、緊急事態条項だ。
自民党は2012年に発表した憲法改正草案で、戦争・内乱・大災害などの場合に、国会の関与なしに内閣が法律と同じ効力を持つ政令を出す仕組みを提案している。具体的な条文は次の通りである。
○第98条(緊急事態の宣言)
 1 内閣総理大臣は、我が国に対する外部からの武力攻撃、内乱等による社会秩序の混乱、地震等による大規模な自然災害その他の法律で定める緊急事態において、特に必要があると認めるときは、法律の定めるところにより、閣議にかけて、緊急事態の宣言を発することができる。
 2 緊急事態の宣言は、法律の定めるところにより、事前又は事後に国会の承認を得なければならない。
 3 内閣総理大臣は、前項の場合において不承認の議決があったとき、国会が緊急事態の宣言を解除すべき旨を議決したとき、又は事態の推移により当該宣言を継続する必要がないと認めるときは、法律の定めるところにより、閣議にかけて、当該宣言を速やかに解除しなければならない。また、百日を超えて緊急事態の宣言を継続しようとするときは、百日を超えるごとに、事前に国会の承認を得なければならない。
 4 第二項及び前項後段の国会の承認については、第六十条第二項の規定を準用する。この場合において、同項中「三十日以内」とあるのは、「五日以内」と読み替えるものとする。
○第99条(緊急事態の宣言の効果)
 1 緊急事態の宣言が発せられたときは、法律の定めるところにより、内閣は法律と同一の効力を有する政令を制定することができるほか、内閣総理大臣は財政上必要な支出その他の処分を行い、地方自治体の長に対して必要な指示をすることができる。
 2 前項の政令の制定及び処分については、法律の定めるところにより、事後に国会の承認を得なければならない。
 3 緊急事態の宣言が発せられた場合には、何人も、法律の定めるところにより、当該宣言に係る事態において国民の生命、身体及び財産を守るために行われる措置に関して発せられる国その他公の機関の指示に従わなければならない。この場合においても、第十四条、第十八条、第十九条、第二十一条その他の基本的人権に関する規定は、最大限に尊重されなければならない。
 4 緊急事態の宣言が発せられた場合においては、法律の定めるところにより、その宣言が効力を有する期間、衆議院は解散されないものとし、両議院の議員の任期及びその選挙期日の特例を設けることができる。
●発動要件は曖昧で、歯止めは緩い
 98条は、緊急事態宣言を出すための要件と手続きを定めている。具体的には、法律で定める緊急事態」になったら、閣議決定で「緊急事態の宣言」を出せる(98条1項)。また、緊急事態宣言には、事前又は事後の国会の承認が要求される(98条2項)。何げなく読むと、大した提案でないように見えるかもしれないが、この条文はかなり危険だ。まず、緊急事態の定義が法律に委ねられているため、緊急事態宣言の発動要件は極めて曖昧になってしまっている。その上、国会承認は事後でも良いとされていて、手続き的な歯止めはかなり緩い。これでは、内閣が緊急事態宣言が必要だと考えさえすれば、かなり恣意的に緊急事態宣言を出せることになってしまう。
●効果は絶大な緊急事態宣言
 では、緊急事態宣言はどのような効果を持つのか。要件・手続きがこれだけ曖昧で緩いのだから、通常ならば、それによってできることは厳しく限定されていなければならないはずだ。しかし、草案99条で規定された緊急事態宣言の効果は強大である。四つのポイントを確認しておこう。
第一に、緊急事態宣言中、内閣は、「法律と同一の効力を有する政令を制定」できる。つまり、国民の代表である国会の十分な議論を経ずに、国民の権利を制限したり、義務を設定したりすること、あるいは、統治に関わる法律内容を変更することが、内閣の権限でできてしまうということだ。例えば、刑事訴訟法の逮捕の要件を内閣限りの判断で変えてしまったり、裁判所法を変える政令を使って、裁判所の権限を奪ったりすることもできるだろう。
第二に、予算の裏付けなしに、「財政上必要な支出その他の処分」を行うことができる。通常ならば、予算の審議を通じて国会が行政権が適性に行使されるようチェックしている。この規定の下では、国会の監視が及ばない中で不公平に復興予算をばらまくといった事態も生じ得るだろう。
第三に、「地方自治体の長に対して必要な指示をすることができる」。つまり、地方自治を内閣の意思で制限できるということだが、これも濫用の危険が大きい。例えば、どさくさに紛れて、首相の意に沿わない自治体の長に「辞任の指示」を出すような事態も考えられる。実際、ワイマール憲法下のドイツでは、右翼的な中央政府が、緊急事態条項を使って社会党系のプロイセン政府の指導者を罷免したりした。今の日本に例えると、安倍内閣が、辺野古基地問題で対立する翁長沖縄県知事を罷免するようなものだろうか。第四に、緊急事態中は、基本的人権の「保障」は解除され、「尊重」に止まることになる。つまり、内閣は「人権侵害をしてはいけない」という義務から解かれ、内閣が「どうしても必要だ」と判断しさえすれば、人権侵害が許されることになる。これはかなり深刻な問題だ。政府が尊重する範囲でしか報道の自由が確保されず、土地収用などの財産権侵害にも歯止めがかからなくなるかもしれない。
以上をまとめるとこうなる。まず、内閣は、曖昧かつ緩やかな条件・手続きの下で、緊急事態を宣言できる。そして、緊急事態宣言中、三権分立・地方自治・基本的人権の保障は制限され、というより、ほぼ停止され、内閣独裁という体制が出来上がる。これは、緊急事態条項というより、内閣独裁権条項と呼んだ方が正しい。
2 多数の国が採用?
 このように見てくると、憲法に強い関心を持っていない人でも、この条文は相当危険だと言うことが分かるだろう。しかし、安倍首相は、こうした緊急事態条項は、「国際的に多数の国が採用している憲法の条文」であり、導入の必要が高く、また濫用の心配はないと言う(1月19日参議院予算委員会)。これは本当だろうか。外国の緊急事態条項と比較してみよう。一般論として、戦争や自然災害が「いつ起こるか」は予測困難だが、「起きた時に何をすべきか」は想定可能だ。そうした予測を基に、誰が、どんな手続きで何をできるのかを事前に定めることは、安全対策としてとても重要だろう。そして、警報・避難指示・物資運搬等の規則を細かく定めるのは、国家の基本原理を定める憲法ではなく、個別の法律の役割だ。したがって、外国でも、戦争や大災害などの緊急事態には、事前に準備された法令に基づき対応するのが普通だ。例えば、アメリカでは、災害救助法(1950年)や国家緊急事態法(1976年)などが、緊急時に国家が取りうる措置を定めている。また、1979年に、カーター政権の大統領令により、連邦緊急事態管理庁(FEMA)という専門の行政組織が設置された。FEMAが災害対応に関係するいろいろな機関を適切に調整したことで、地震やハリケーンなどの大災害に見事に対処できたと言われている。フランスでは、1955年に緊急事態法が制定されており、政府が特定地域の立ち入り禁止措置や集会禁止の措置をとることができる。後述するように、フランスには憲法上の緊急事態条項も存在するが、昨年末のテロの際には、憲法上の緊急事態条項ではなく、こちらの法律を適用して対処した。
●慎重な議会手続きを要求
 では、憲法上の緊急事態条項は、どのような場合に使われるのか。まず前提として、多くの国の憲法は、適正な法律を作るために、国会の独立性を確保したり、十分な議論が国会でなされたりするなど、立法に慎重な議会手続を要求していることを理解せねばならない。逆にいえば、通常の立法手続きは面倒くさいということだが、政府の意のままに国会が立法したのでは、権力分立の意義が失われ、国民の権利が侵害される危険が高まる。もしも柔軟な立法を可能にするために議会手続きを緩和しようとするなら、憲法の規定が必要になる。例えば、アメリカ憲法では、大統領は、原則として議会招集権限を持たないが、緊急時には議会を招集できる(合衆国憲法2条3節)。また、ドイツでは、外国からの侵略があった場合に、州議会から連邦議会に権限を集中させたり、上下両院の議員からなる合同委員会が一時的に立法権を行使したりできる(ドイツ連邦共和国基本法10a章)。これらの憲法は、政府に立法権を直接に与えているわけではない。大統領に議会召集権を与えることで国会の独立性を緩和させたり、立法に関わる議員の数を減らすことで迅速さを優先させたりしているに過ぎない。また、フランスや韓国には、確かに、大統領が一時的に立法に当たる権限を含む措置をとれるとする規定がある。しかしその権限を行使できるのは、「国の独立が直接に脅かされる」(フランス第五共和制憲法16条)とか、「国会の招集が不可能になった場合」(大韓民国憲法76条)に限定される。あまりに権限が強いので、その権限を行使できる場面をかなり厳格に限定しているのだ。フランスは昨年末のテロの際に緊急事態宣言を出しているが、それが憲法上の緊急事態宣言ではなかったのは、こうした背景による。つまり、アメリカ憲法は、大統領に議会招集権限を与えているだけだし、ドイツ憲法も、議会の権限・手続きの原則を修正するだけであって、政府に独立の立法権限を与えるものではない。また、フランスや韓国の憲法規定は、確かに一時的な立法権限を大統領に与えているものの、その発動要件はかなり厳格で、そう使えるものではない。これに対し、先ほど述べたように、自民党草案の提案する緊急事態条項は、発動要件が曖昧な上に、政府の権限を不用意に拡大している。他の先進国の憲法と比較して見えてくるのは、自民党草案の提案する緊急事態条項は、緊急時に独裁権を与えるに等しい内容だということだ。こうした緊急時独裁条項を「多数の国が採用している」というのは、明らかに誇張だろう。確かに、憲法上の緊急事態条項は多数の国が採用しているが、自民党草案のような内閣独裁条項は、比較法的に見ても異常だといわざるを得ない。
3 日本国憲法には緊急事態条項がない?
 また、日本国憲法には、緊急事態条項がなく、満足な対応ができない可能性がある、と指摘されることもある。もしそれが本当なら、自民党草案のような条項になるかどうかはともかくとして、緊急事態条項の導入を検討しても良いようにも思われる。しかし、憲法とは、国民の権利を守り、権力濫用を防ぐために、国家権力を規制する法だ。権力者から、憲法を変えたいと提案されたときは、警戒して内容を吟味した方が良い。まず、そもそも、現行憲法に緊急事態条項がない、というのが誤りである。戦争や災害の場合に、国内の安全を守り、国民の生命・自由・幸福追求の権利を保護する権限は、内閣の行政権に含まれる(憲法13条、65条)。したがって、必要な法律がきちんと定められていれば、内閣は十分に緊急事態に対応できる。また、緊急事態対応に新たな法律が必要なら、内閣は、国会を召集し(憲法53条)、法案を提出して(憲法72条)、国会の議決を取ればよい。衆議院が解散中でも、参議院の緊急集会が国会の権限を代行できる(憲法54条2項)。参議院は半数改選制度を採っているので、国会議員が不在になることは、制度上ありえない。誰もが必要だと思う法案なら、国民の代表である国会が邪魔をすることもないだろう。実際、東日本大震災の時には、当時の野党だった自民党や公明党も、激しく対立していた菅民主党政権に相当の協力をした。アメリカの憲法が緊急事態時に大統領に例外的に認めている議会召集権は、すでに、日本国憲法に規定されていると評価できるのだ。また、緊急事態については、既に詳細な法律規定が整備されている。侵略を受けた場合には武力攻撃事態法、内乱には警察官職務執行法や自衛隊の治安出動条項、災害には災害救助法や災害対策基本法がある。災害対策基本法109条には、状況に応じて、供給不足の「生活必需物資の配給又は譲渡若しくは引渡しの制限若しくは禁止」や「災害応急対策若しくは災害復旧又は国民生活の安定のため必要な物の価格又は役務その他の給付の対価の最高額の決定」、「金銭債務の支払」延期などに関する政令制定権限までもが定められている。これらの規定は、かなり強力な内容だ。過剰だという評価はあっても、これで不足だという評価は聞かれない。さらに、これらの法律ですら足りないなら、不備を具体的に指摘して、まずは法改正を提案すべきだ。その上で、必要な法案が現憲法に違反するということになって初めて、憲法改正を争点とすべきだろう。具体的な法令の精査なしに、漠然と「今のままではダメなのだ」という危機感をあおる改憲提案に説得力はない。
4 おわりに
 もちろん、以上の議論は、日本国の非常事態への備えが十分だということを意味しない。いくら法律があっても、政府や自治体、国民が上手に使いこなせなければ、絵に描いた餅だ。また、ミサイルだろうが、大地震だろうが、それに対応するには、食糧の備蓄や緊急用の非常電源が欠かせない。こうした非常事態への備えの中で、特に、考えてほしいのが居住の問題である。早川和男教授は、阪神大震災について、次のように述べている。1995年1月17日、阪神・淡路を大震災が襲った。この震災は多くの問題をあらわにしたが、とりわけ人間が生きていくうえでの住居の大切さを極端なかたちで示した。……この地震は強度からいえば中規模であったといわれる。それがなぜこのような大災害につながったのか。死亡原因は、家屋による圧死・窒息死88%、焼死10%、落下物2%。家が倒れなければなかった犠牲である。出火も少なかったはずである。どこからか火が押し寄せてきても逃げることができたであろう。道路が広くても家が倒れたならば助からない。(早川和男『居住福祉』岩波新書18頁)。阪神大震災の一年前に戻れるなら、自民党草案のような憲法条項を作るよりも、個々の住居を災害に強いものにする方が、はるかに多くの命を救えるだろう。となると、非常事態に強い国を本気で作りたいなら、今取り組むべきは改憲論議ではない。法律を使いこなすための避難訓練の実施、食糧備蓄・発電設備の充実、各自治体への災害対策用の予算・設備の援助、居住福祉の確保だろう。緊急事態を本気で憂うるなら、緊急時に漠然とした強権に身を委ねるのは得策ではない。強権に頼って思考停止することなく、緊急事態対応に必要な予算・設備をどんどん提案すべきだ。首相が本気なら、積極的に提案を取り入れるだろう。そうでないなら、「憲法の文言を変えた」という実績がほしいだけ、と評価されるだろう。ただし、内閣独裁権条項の提案は、提案としては問題外だが、緊急事態への備えを議論する良いきっかけになると思う。この提案に反対する市民は、内閣独裁権条項の危険性を指摘するのと同時に、「本当に必要な緊急事態対策」をどんどん提案し、「対案」をぶつけて行くべきだ。緊急事態条項を提案する人たちは、自分たちで緊急事態対応が必要だと言い出した手前、「対案」を出されたら真剣に検討せざるを得ないだろう。そして、その「対案」が一つ一つ実現して行けば、将来の犠牲者を確実に減らすことができるだろう。

<新型コロナ対策による私権制限の妥当性>
*3-1:https://www.nichibenren.or.jp/document/statement/year/2020/200503.html (日本弁護士連合会会長 荒 中 2020年5月3日) 憲法記念日を迎えるに当たっての会長談話
 本日は、日本国憲法が施行されてから73年目の憲法記念日です。本年は、新型コロナウイルスの感染が拡大し、新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づく緊急事態宣言の下でこの日を迎えることになりました。政府及び都道府県知事は、新型コロナウイルスの感染防止のため、不要不急の外出自粛や休業などを要請し、市民や企業などの多くも、移動を制限し、集会などを中止し、営業を停止するなど、自粛を行うことによってその要請に対応している状況にあります。しかし、そのような感染防止策を講ずる場合であっても、個人の権利は最大限尊重される必要があり、権利制限により生活が脅かされるときには、その補償も課題となります。報道によると、首相は衆議院の議院運営委員会において、緊急事態宣言を踏まえ、憲法に緊急事態条項を新設する改正議論への波及に期待感を表明したとのことです。しかしながら、感染防止は市民の協力を得ての法律上の対応で十分可能です。感染防止の必要性を過度に強調して憲法に緊急事態条項を新設することは、個人の権利規制が必要以上に強化される危険があります。このような危険を防ぐためには、政府に情報を開示させて説明責任を果たさせ、政府の施策を民主的に監視することが重要です。また、政府の適切な説明と十分な経済的支援があってこそ、市民の理解に基づく効果的な感染防止が期待できます。当連合会は、立憲主義を堅持し、国民主権に基づく政治を実現することにより個人の人権を守る立場から、効果的な感染防止のためには、政府による適切な説明と十分な経済的支援により市民の理解と協力を得ることの重要性を訴えるとともに、立憲主義に逆行する動きに対する警戒を怠ることなく、人権擁護のための活動を続けてまいります。

*3-2:https://www.shinmai.co.jp/news/nagano/20200521/KT200520ETI090010000.php (信濃毎日新聞 2020年5月21日) コロナ対策条例 なぜ必要か分からない
 阿部守一県知事が新型コロナウイルスの感染症対策で、県民への協力要請の根拠となる条例の制定を検討していく考えを示した。県内の新規感染者数は落ち着いてきたものの、緊急事態宣言の解除で国内の感染が再び広がる恐れもある。県はコロナ対策が長期に及ぶことを前提に、6月定例会以降の県会に条例を提案する方向だ。条文には、県民や事業者が今後取り組むべき内容が盛り込まれるとみられる。一定の行動規範として私権の制限にもつながりかねない恒久的な条例にすることが今、なぜ必要なのか。条例は行政権限の強化に結び付く。感染症対策を大義名分に推し進めれば、県民の権利とのバランスを崩しかねない。行動の制約が伴うと、解釈によっては住民の相互監視を強めてしまう恐れもある。これまで休業要請に応じない店舗や、事情があって外出せざるを得ない人に対する批判や嫌がらせ、差別的行為なども起きている。不安や混乱を招かないために、県会とも慎重に議論を進めていく必要がある。県内の新規感染者は今月10日以降の10日間で1人。外出の自粛、「3密」回避の行動など県民による予防策の徹底もあり、感染拡大は抑えられてきたと言える。今後は地域経済の再生を図ると同時に、移動の活発化による再度の感染拡大に注視していかなくてはいけない。いったん沈静化しながら都市部で再び広がった韓国のような例もある。知事が説明する通り、まだ気を許せる状況になく「第2波、第3波への備え」が必要なことは理解できる。それでも、政府方針に沿って進めてきたこれまでの対応だけでは、どういった点が課題や不備なのかがはっきりしない。県は感染リスクを避けるため、外出自粛要請を解除した上で基本的に身近な場所にとどまり、東京など特定警戒都道府県との往来を避けるよう県民に求めている。休業要請を全面解除する一方、観光・宿泊施設には特定警戒区域から人を呼び込まない運営を検討するよう依頼する。条例は新型コロナ特措法に基づかない、こうした県独自の対策の根拠としたいのだろう。だとすれば今後どのようなことを想定しているのか明らかにすべきだ。対策を進めていくには県民の協力が欠かせない。条例を作る理由について明確な説明がなければ、県民の理解も得られない。

<やるべきことは、産業と人材の地方分散である>
PS(2020年9月21、22、23、26日追加):*4-1・*4-2のように、菅首相が総務大臣時代の2008年に「ふるさと納税制度」が創設されたが、それを最初に提案したのは私で、形にしてまとめられたのは自民党税調会長だった大蔵省出身・青森県選出の津島元衆議院議員だった。提案理由は、首都圏への勤労者の集中により、地方は企業や被雇用者が少なく、教育費・医療費・介護費はかかるのに税収が限られていることだった。その後、地方の産品を返礼品とすることにより、地方には美味しい食があることを皆に気付かせ、地方の生産者が質の良い新製品を作ることも促して、一村一品どころか多数の地場産品が生まれた。地方が、弱者として国からの交付金を待つだけではこうはいかないのである。また、無駄な歳出の多い都市部から、良い政策を掲げる地方に税を納める選択肢ができたのも、国民にとっては大変良かったと思う。
 しかし、現在、都市への人口集中は進みすぎ、①都市は子育てもできないほど不動産価格が高く、1人当たりの占有面積が狭い ②都市は通勤に時間をとられて生活時間が短い ③都市は自然から遠い ④都市は感染症が流行しやすい ⑤首都圏には大地震が来そうだが、その時は被害が大きすぎて、日本が持続可能でなくなる可能性もある などの問題が起こっている。一方、地方は、税を払う産業や年齢層が少ないため、産業の再生を中心とした計画的な「地方創生」によって、人口を集めることが必要になっている。そして、デジタル化・スマート化・地方移住への関心の高まりは、そのチャンスだろう。
 また、菅首相が首相就任会見で、総務相時代にできた「ふるさと納税」と合わせ、地方活性化策を推進する方針を示されたが、農業は伸びしろが多いので成長産業になりうると、私は思っている。農家の高齢化で農家数は減少するものの、そのために農業生産法人の導入・大規模化・自動化などの手が既に打ってあるため、今後は、大規模スマート農業をしたり、労働者を雇ったりしながら、生産性の高い農業を目指すとよい。農業も、いつまでも政府の交付金を待つ“弱者”では困るが、地方の産業を壊したり、食料自給率を下げたりする“改革”も困るのである。
 では、農業は、「どうすれば補助金を当てにせず、国際競争力のある価格で農業生産を継続できるか?」については、*4-3の再生可能エネルギーによる電力生産とのハイブリッド経営も解の一つだ。何故なら、NTTが送電を行うとしても、再生可能エネルギーによる発電主体がなければ電力は作れず、それには、農地・離島・海上にたつ風力発電・農業用ダムを利用した水力発電・畜舎の屋根に設置した太陽光発電などが有力だからである。
 なお、2020年9月23日、日本農業新聞に、*4-4のように、「中山間地域は高齢化と人手不足で畦畔管理の困難さが増しているので、事業として請け負う人材や組織・会社の育成・支援など、踏み込んだ施策を求めたい」と書かれているが、中山間地域農業の不利と環境保全の必要性については、平成17年度(2005年度)に私が衆議院議員になってすぐに伝え、平成19年度(2007年度)から「農地・水・環境保全向上対策交付金」が施行された。また、平成26年度(2024年度)に、新たに「多面的機能支払」が創設されたそうなので(https://www.maff.go.jp/j/nousin/kankyo/nouti_mizu/index.html 参照)、その交付金をどう使ったかについての検証が欲しい。さらに、水田でなければ環境保全ができないわけでもないため、費用対効果を考えた方針策定が望まれる。例えば、下図のように、里山に豚・山羊・羊・牛などを放牧すれば、草採り不要で価値の高い生産物も作れるため、まず専門家としての工夫が欲しいわけだ。
 農水省は、2020年9月24日、*4-5のように、①農産物輸出拡大のための施策や規制緩和交渉を担う「輸出・国際局」 ②米・麦・大豆と園芸作物を一体的に担当する「農産局」 ③畜産の生産基盤強化に向けた「畜産局」 の3局を新設し、④新たに食品産業振興を専門とする「新事業・食品産業部」も設けるそうだ。農業の成長産業化・基盤整備・食品加工との連携はよいが、局を分けると本当にこれができるのかについては、それぞれの局の視野が狭くなるためそうはならないし、むやみに食品安全に関する規制緩和を要求すると、日本産全体の安全性に関する信頼が損なわれると、私は思う。
 分けるとよくない理由は、②③は、常に①④を視野に入れて行う必要があり、別れて存在するものではないからだ。また、*4-6のように、②③は連携することによって省力化しながら高品質のものを安価に作れるが、局を分ければそれぞれの局が突っ走って予算をとり、無駄遣いが増えるばかりで工夫がなくなるからである。つまり、役所が「課」でできることに新組織を作って定員増を図るのは、本当に付加価値の高い安全・安心なものを安価に作って国際競争力をつけることが目的ではないように思える。具体的には、米・麦・大豆や園芸作物は、効率的な農地の使い方を通して、二毛作や複数同時作がこれまでも行われてきたのであり、そもそも分ける必要がない。また、畜産も、餌や肥料を通じて「耕種農業」と密接に繋がっており、狭い場所に閉じ込められて輸入穀物で太らされた日本の畜産物は、脂肪が多くて蛋白質が少なく健康食ではないと言わざるを得ないのだ。


  無人トラクター   佐賀マイヤーレモン    豚の放牧      りんごの花


  蜜柑の蜂蜜   小豆島オリーブ    放牧地の風力発電   牛舎の太陽光発電  

*4-1:https://www.chugoku-np.co.jp/column/article/article.php?comment_id=682498&comment_sub_id=0&category_id=142 (中国新聞 2020/9/20) ≪菅政権の課題≫地方創生 持続可能な社会支えよ
 「秋田の農家の長男」と言う菅義偉首相なら、地方の実情を分かってくれるはず―。そんな期待感も、世論調査の高い支持率につながったに違いない。首相は就任後初の記者会見で「地方を大切にしたい、日本の全ての地方を元気にしたい、こうした気持ちが脈々と流れております」と述べた。一方で、「安倍政権の継承」を打ち出している。看板政策だった「地方創生」も、そのまま受け継ぐつもりだろうか。2014年に掲げられた地方創生の総合戦略は「20年に東京圏への転入と転出を均衡化」するとし、東京一極集中の是正を目指してきた。しかし、集中の度合いはむしろ加速し、中央省庁の移転も文化庁の京都移転などにとどまる。結果は、竜頭蛇尾と言わざるを得ない。北村誠吾・前地方創生担当相の発言も、安倍政権のなおざりだった姿勢を映している。後任の坂本哲志氏に引き継ぐ際、全都道府県を視察に回ったことに触れ、「相当、ほら吹いてきましたから。後の始末をよろしく」と述べた。視察の応対に振り回された現場の苦労をどう思っているのだろう。それだけに新政権での仕切り直しが望まれる。これまでは「人口急減・超高齢化」を直面する課題とし、「各地域がそれぞれの特徴を活(い)かした自律的で持続的な社会を創生することを目指す」とうたってきた。しかし、実際には国が市町村を選別して補助金の交付を増やし、中央集権的な支配は強まった。地方交付税が削減されたまま、税財源の移譲は進んでいない。まずは、これまでの地方創生を検証してもらいたい。人口減少時代に大事なのは、地方への人材還流だろう。希望はある。新型コロナウイルスの感染拡大で密を避ける新しい生活様式が求められ、地方移住への関心は高まる。テレワークが進み、都心部にいなくても仕事ができるようになった。定年後のシニアばかりでなく、仕事のため東京にいた若い世代が拠点を移す例も増えている。例えば、人材派遣大手パソナグループは東京の本社機能を担う社員のうち、3分の2に当たる1200人程度を兵庫県の淡路島へ移す計画を持つ。こうした動きをさらに広げ、一極集中の流れをどう変えられるかが問われよう。新設のデジタル庁にも、そんな発想を求めたい。地方自治体のIT活用やテレワーク推進など、後押しできることは多いはずである。首相は自身の実績の一つに「ふるさと納税」を挙げ、官僚の反対を押し切って導入したと胸を張る。確かに多くの国民が利用し、産品を通して各地の魅力に気付く契機になっている。半面、古里を応援する本来の趣旨を忘れ、「官製通販」と批判される現実もある。過熱する返礼品競争に、国が規制強化などの対応に追われた。地方が競い合い、活性化を図るという制度の意義は理解できる。ただ、パイの奪い合いに熱を上げ、負けたら切り捨てられるシステムを、もしも「自助」と呼ぶなら違うだろう。新型コロナの影響で疲弊した地方の立て直しは急務である。実情を最もよく知る自治体や地域が、自ら持続可能な社会をつくっていく。それを支える政策こそが求められている。 

*4-2:https://www.agrinews.co.jp/p51930.html (日本農業新聞 2020年9月19日) [菅農政 見直しか継承か](上) 「地方重視」どう反映 規制改革 見えぬ矛先
 「秋田の農家の長男に生まれた。日本の全ての地方を元気にしたい」。菅義偉首相は就任会見でこう語り、圧勝した自民党総裁選の期間中から示していた地方重視の姿勢を改めて印象付けた。安倍政権で官房長官として、インバウンド(訪日外国人)や農林水産物・食品輸出の拡大に力を入れた。首相就任会見では、総務相時代に創設した「ふるさと納税」と合わせ、内閣の地方活性化策の「3本柱」として推進する方針を示した。だが、菅政権が直面する農政課題は、これらとはやや別のところにある。例えば、2020年産米の需給緩和。長期的な需要の減少に新型コロナウイルスの影響が加わり、平年作でも供給過剰となる可能性がある。和牛枝肉の価格低迷など、米以外にもコロナの影響は長期化する。農水省は飲食店の需要喚起策「GoToイート」を近く始めるが、感染防止策との両立が課題だ。菅首相は安倍政権の「継承」を旗印とするが、その安倍政権では農業の成長産業化を目指した。しかし、農家数や農地面積が減るなど生産基盤の弱体化は止められなかった。首相は農相に、安倍政権で官房副長官として自身を3年間補佐した野上浩太郎氏を起用した。53歳での初入閣で「省持ち」の閣僚は「首相の期待の高さ」(政府筋)も見えるが、国政で農林関係の要職の経験はない。実力派として政界で定評はあるものの、農政の手腕は未知数。地方重視の首相の期待に応えて、直面する課題に対応できるか。野上農相は就任早々、正念場を迎える。内外に課題が山積する中、首相が「政権のど真ん中」に置くのが規制改革だ。発信力の高い河野太郎氏を担当相に再登板させ、司令塔に据えた。安倍政権で農協改革や生乳流通改革など、農業分野の規制改革に深く関与してきた“ツートップ”に、農業関係者は警戒感を隠せない。規制改革推進会議では生産現場の意向を反映しない議論も相次ぎ、「地に足が着いているのか。現場をもっと見てほしい」(中国地方の集落営農組織代表)といった声が噴出した。一方で、規制改革の矛先はまだ見えない。野上農相によると、首相から農業で具体的な指示はなかった。現時点で首相が強い意欲を示すのは、行政の「縦割り」や前例主義の打破で、どちらかといえば「行政改革」の分野だ。「農業改革はかなりの数をこなした。残る分野は少ない」(自民党農林幹部)との見方があるものの、来春には農協法改正5年後の見直しや、JA准組合員の事業利用規制の在り方の検討が始まる。一般企業の農地所有など、長年指摘されてきたテーマもある。河野氏は就任会見で、対象分野を示さなかったものの「全方位でやる」と語った。「悠長なことをやるつもりはない、さっさとできるものをやる」と鼻息を荒げる。
 ◇
 地方重視と規制改革──。相反するような両面を持つ菅内閣が発足した。7年8カ月続いた安倍農政をどう改め、どう引き継ぐのか。内外の農政課題を探る。

*4-3:https://www.newsweekjapan.jp/kaya/2020/07/ntt.php (NewsWeek 2020年7月28日号掲載) NTTの「殴り込み」で、日本の電力業界に起きること
<NTTによる再生可能エネルギー事業への参入は、電力業界と消費者にどう影響するのか>
 NTTが再生可能エネルギー事業に本格参入する。同社はかつて官営の通信事業者だったこともあり、各地に旧電話局をはじめとする大型施設を数多く保有している。アナログ時代に電話局に収容されていたクロスバー交換機は巨大な装置だが、通信網がIP(インターネットで使われる通信規格)化されたことで機器の小型化が進み、施設には多くの空きスペースが存在する。このスペースをフル活用し、施設内に大量の蓄電池を設置。地域における電力ステーションとして官庁や事業者などに電力を供給する方針だ。発電については三菱商事と提携し、風力発電や太陽光発電の事業開発を行い、再生可能エネルギーを使った大型発電施設から電力供給を受けることになる。日本では巨大な発電所で集中的に電力を生み出す集中電力システムが主流となっており、各地に太陽光パネルや蓄電池を設置してネットワークで結ぶという分散型電力システムについては懐疑論が多かった。今でも電力は集中型でなければ安定供給できないと思っている人も多いかもしれないが、それは昭和時代までの古い常識である。再生可能エネルギーや蓄電、電力管理に関するイノベーションは想像を絶するスピードで進化しており、分散型電力システムの構築は既に現実的な局面に入っている。NTTはお役所仕事の象徴とされ、良くも悪くも新しい技術の導入には常に慎重なスタンスで知られてきた企業だが、そのNTTが分散型電力システムに本格参入するという現実こそが、全てを物語っている。
●災害時の停電リスクを軽減
 近年、地球温暖化の影響で日本の気候が激変し、従来では考えられなかったレベルの災害が多発している。災害時に携帯電話が不通となる原因の7割は停電で、電力系統が複数存在すればリスクを大幅に軽減できるだろう。同社では保有する約1万台の社用車を電気自動車(EV)化する計画も進めており、大規模停電時には移動式非常用電源としての活用も期待できる。ほぼ同じタイミングで経済産業省は、非効率な石炭火力発電所の削減を進める方針を打ち出しており、NTTの再生可能エネルギー電力網はその有力な代替手段となる。だが、NTTが電力事業に参入する最大の意義は、硬直化した日本の電力事業に風穴を開けることである。もともと日本の電力供給は民間が担う形でスタートしており、市場メカニズムによって電力システムの運営が行われてきた。戦争遂行に伴う国家総動員体制で電力会社は国有化され、戦後は発送電一体となった地域電力会社が独占的に電力を供給するという特殊な形態となった。これはあくまで戦争がもたらした結果で、決して普遍的なものではない。政府は電力の自由化政策を進めているが、巨大な設備を持つ地域独占企業が存在している以上、完全な競争環境を構築するのは難しい。全く新しい電力網を新規に構築する大規模事業者が出てくる意味は大きいだろう。かつてNTTは独占企業として通信業界において圧倒的な影響力を持っていた。だが、東西への分割や、新規参入の促進政策によって完全とはいえないまでも市場メカニズムが機能するようになった。今回のNTTによる新規参入は、かつて通信事業者が経験した変化を、最後の独占事業者となった電力会社に対して強く促す結果となるだろう。

*4-4:https://www.agrinews.co.jp/p51959.html (日本農業新聞 2020年9月23日) 中山間農業の支援 畦畔管理に焦点当てよ
 高齢化と人手不足で、中山間地域では畦畔(けいはん)管理の困難さが増している。ロボット農機など技術革新は進む。しかし、小規模で未整備の水田をはじめ同地域の農業の課題は、科学の力だけでは解決できない。洪水防止を含む農業の多面的機能を正しく評価し、受委託の体制づくりなど畦畔管理に焦点を当てた施策が必要だ。農水省によると、耕地面積に占める畦畔率は2019年が全国平均で4%。大規模化が進む茨城県は1・4%、北海道は1・6%と低い一方、中山間地域が多い中国地方は5県平均が8・9%で、岡山、広島、山口の3県は9%を超える。畦畔率が高いほど作物を育てる面積は減る。10ヘクタール規模の経営なら農地に占める畦畔は北海道では16アールだが、広島県は94アールだ。規模は同じでも耕作面積に大きな差が出る。畦畔率が高いほど1区画当たりの圃場(ほじょう)も小さい。管理する圃場が多ければ、農機の出し入れなど作業の連続性が妨げられる。除草など管理にも多くの労力が必要だ。中山間地域の畦畔は急傾斜が多く、農作業事故のリスクも高い。非効率で労力、時間、コストがかかる畦畔。企業なら一番に切り捨てられる不採算部門だが、自分の経営だけでなく地域社会にも影響し、管理は手抜きができない。雑草繁茂は病害虫の発生源になるばかりか、鹿やイノシシの隠れ場所として鳥獣害を助長する。畦畔がもろくなり、保水力の低下や土砂災害などの危険性も生じる。中山間地域等直接支払いをはじめ日本型直接支払いの加算措置の拡充や、棚田地域振興法の制定など、中山間地農業の支援政策は進んできた。しかし畦畔管理にかける労力が不足している。特に地権者に管理を頼っていた集落営農組織では深刻だ。日本版衛星利用測位システム(GPS)の整備などにより、農機が自動で高精度な作業を行うスマート農業が国の主導で実用化され、日本の農業は大変革期を迎えた。農業者が高齢化、減少する中、正しい選択の一つと言える。ただ、農業の課題の全てを解決するのは難しい。また、利益追求型の企業的農業を志す農業者もいれば、伝統や文化、先祖から受け継いできた土地を守り、家族と過ごすことを大切したいと考える農業者もいる。求められるのは、どこでも農業が続けられる環境だ。農地は、食料生産の他、国土の保全、水源の涵養(かんよう)、環境保全、良好な景観の形成、文化の伝承など多面的機能を持つ。局地的な豪雨や台風の大型化など自然災害が常態化している中、貯水をはじめ水田の機能は、水害の緩和など防災の観点からも注目されている。中山間地域の畦畔管理は、もうかる農業の追求だけでは難しく、地域住民の努力だけでは限界がある。災害が多い今こそ、事業として請け負う人材や組織・会社の育成・支援など、踏み込んだ施策を求めたい。

*4-5:https://www.agrinews.co.jp/p51980.html (日本農業新聞 2020年9月25日) 輸出、畜産の局新設 農水省が組織再編案
 農水省は24日、三つの局を新設する組織再編案を明らかにした。①農産物輸出拡大のための施策や規制緩和の交渉を担う「輸出・国際局」②米・麦・大豆と園芸作物を一体的に担当する「農産局」③畜産の生産基盤強化に向けた「畜産局」──の3局。輸出拡大による成長産業化や、それを支える生産基盤の強化が狙いだ。食品産業振興を専門とする「新事業・食品産業部」も新たに設ける。2021年度の組織・定員要求に盛り込み、同日の自民党農林合同会議に示した。組織名はいずれも仮称。政府内の調整を経て年末までに決定し、同年度からの実施を目指す。同省には現在、大臣官房と、局級の組織が六つある。実現すれば、局級の組織再編は15年度に政策統括官を新設して以来となる。輸出・国際局は、輸出を担当している食料産業局と、貿易交渉や国際協力などを担当する大臣官房の国際部を統合する。農産物輸出の拡大は菅義偉首相が地方活性化策の柱と位置付け、政府は30年に輸出額5兆円の目標を掲げる。実現に向け、同省の輸出関連施策を一元的に担い、貿易交渉とともに輸出入規制に関する各国との交渉も担当する組織とする。農産局は、水田・畑作政策を担当している局級ポストの政策統括官と、生産局の園芸作物部門などを再編する。米・麦・大豆と園芸作物を「耕種農業」として一体的に政策を展開し、収益性を高める狙いがある。畜産局は、生産局の中にある畜産部を格上げする。同省は和牛など畜産物を輸出拡大の柱とみており、体制を強化する。新事業・食品産業部は大臣官房に置く。現在は食料産業局にある食品産業部門を切り離す格好だ。国産農産物の利用拡大に向け、大きな需要先である食品産業の振興を専門的に担当する。組織再編は江藤拓前農相の肝いりで、退任直前の15日の記者会見で提起していた。組織・定員要求には、農村振興局に「農福連携推進室」を設置することも盛り込んだ。

*4-6:https://www.agrinews.co.jp/p51984.html (日本農業新聞 2020年9月26日) 特産ミカンで 離島元気に 協力隊員がけん引 広島県の佐木島
 瀬戸内海に浮かぶ広島県三原市の佐木島で、特産のミカンを軸にした地域おこし「鷺島みかんじまプロジェクト」の活動が活発だ。活動を引っ張るのは20代の地域おこし協力隊員。摘果ミカンを鶏に与えてブランド卵を作ったり、ミカン園の“草刈り隊”に羊を導入したりと、島に人を呼ぶアイデアを次々に取り入れている。島外の住民も巻き込み、離島を盛り上げようと奮闘する。
●摘果品餌に ブランド卵
 周囲18キロという小さな島では高齢化が進み、人口も660人と減少傾向にある。何とか活性化しようと、2016年に三原観光協会がプロジェクトを開始。19年4月に任意団体を設立し、地域おこし協力隊員の松岡さくらさん(26)が団体の代表に就いた。縮小しつつあるミカン園の復活や空き家活用、観光イベントに取り組む他、ミカンの他に目立った特産品がなかったことから商品開発に力を入れる。かつて養鶏農家だった堀本隆文さん(68)と共に1年かけて作り上げ、19年10月に販売を始めたのが「瀬戸内柑太郎(かんたろう)島たまご」だ。プロジェクトが管理するミカン園で摘果した青ミカンと海藻、カキ殻などを配合して採卵鶏に給餌する。餌作りには、これまでも島の活動を応援してきた精肉店など島外の関係者も助言。島由来の素材にこだわった餌とストレスの少ない平飼いで、一般の鶏卵に比べてビタミンAが1・3倍という高い栄養価に仕上げた。市内の道の駅などで1パック (6玉)361円(税別)で販売し、観光客にミカンを生かした新たな特産品としてアピールしている。
●「草刈り隊」羊2頭出動
 5月から、省力化を兼ねて羊を飼い始めた。東広島市の牧場から2頭をリースし、耕作放棄地に放す。木の芽を食べてしまう恐れがあったが、「おとなしい性格で、ミカンの葉も食べない」(松岡さん)という。10月からはミカン園30アールでも試験的に放牧を始め「草刈り要員として活躍してもらい、農作業の負担を減らしたい」。島内の生産者に羊を貸し出す「出張放牧」にも取り組む予定だ。松岡さんは「島を訪れた観光客を楽しませる存在になってほしい」と期待する。

<無駄遣いの主役は、社会保障ではないこと>
PS(2020/9/24追加):*5-1のように、メディアは「①安倍政権の社会保障政策は、担い手の増加に力点を置き高齢者や女性の働く場を拡大した」「②5年後には75歳以上が人口の2割近くを占め、担い手増だけでは到底追いつかないため、給付と負担のバランス見直しは避けて通れない」「③20年後の社会保障給付費は現行より60兆円以上膨らむので、所得税・資産課税・社会保険料も含めた制度を全面的に見直す必要がある」というように、負担増・給付減の必要性ばかりを述べている。しかし、①の担い手を増やすことは正解であるものの、働いている人は健康寿命が長くなるため、②は根拠がない。さらに、③は、社会保障サービスは、現在では日本で最も大規模な産業になっており、社会保障を単なるお荷物と認識していること自体が誤りだ。
 それでは、どうすればよいかと言えば、社会保障以外の無駄遣いを徹底的になくし、「社会保障は消費税からしか支出してはならない」という根拠なき説明をやめるのが、最大の財源になる。さらに、厚労省は、医療費・介護費に含まれる薬剤や機材を言い値で購入して国際標準よりも高価格になっているものが多いため、国際標準まで落とせば社会保障における無駄はなくなる。しかし、必要な人にサービスを行うのは決して無駄ではなく、給付減を行えば命にもかかわる。なお、医療・介護は、自由診療・自由介護と併用できるようにすれば便利で、自由診療・自由介護のものでも、誰もが必要とすることがわかれば、その価格で保険適用にすればよい。さらに、政府は、国民負担ばかりに頼るのではなく、資産からの税外収入を増やすべきだ。
 なお、*5-2のように、厚労省は、2019年12月25日、「④厚生年金の加入義務がある企業規模の要件を2022年10月に従業員101人以上、2024年10月に51人以上まで引き下げる」「⑤公的年金を受給開始年齢の選択肢を60~75歳の間に増やす」などを決めた。しかし、④は、企業中心の発想で、本来は企業規模と関係なく従業員全員が対象になるべきで、その方が従業員のためになる。そして、それによる人件費の上昇は、生産性の向上で賄うべきだ。また、⑤は、年金より高給の仕事があれば問題ないが、一定以上の収入のある高齢者の厚生年金を減らすと就業意欲が下がるのは、「月収28万円超」でも「月収47万円超」でも同じだろう。

  
    財務省        2019.12.21毎日新聞      2018.4.19日経新聞  

(図の説明:左図のように、日本の財政状態はイタリア以上に悪いが、これは、1989年《平成元年》に消費税が導入された後に起こったことだ。また、中央の図のように、社会保障関連支出が34.9%あるために、社会保障が無駄遣いであるかのように言われることが多いが、もともと社会保険料を支払って賄っていたのに立ち行かなくなって税金投入しているのは、制度設計と管理の悪さが原因だ。しかし、無駄遣いをやめ、税外収入を増やし、エネルギー自給率を上げれば、今なら何とかなるだろう。さらに、右図のように、介護保険料を高齢者のみに負担させて導入当初の2倍に上げ、介護サービスは抑制するというのは問題であると同時に、介護保険制度を人口構成の異なる地域別にしているのも不公平・不公正である)

*5-1:https://www.kobe-np.co.jp/column/shasetsu/202009/0013723562.shtml (神戸新聞 2020/9/24) 新政権と社会保障/60兆円増にどう備えるか
 幼稚園や保育所に無償化制度が導入され、低所得世帯では大学の授業料も減免される-。安倍晋三前首相は「全世代型社会保障」と銘打ち、高齢者医療や年金が主体だった社会保障を子育てや教育支援に拡大した。7年8カ月に及んだ長期政権の実績とも指摘される。だがその財源は、降って湧いたわけではない。消費税率を8%から10%に引き上げるに際して、高齢者向けが主体だった社会保障費の一部を振り替えた結果である。2017年の解散総選挙では消費税の使途変更を大義名分に掲げ大勝を収めた。しかし社会保障のメニュー拡大を力説する一方で、財源や負担のあり方には大胆に踏み込まないまま、政権の幕は閉じた。少子高齢化の加速や、国の債務が膨らみ続ける状況は容易に変わらない。その中で国民が安心して老後を過ごせる社会の姿を示すのが、菅義偉首相の責務である。安倍政権の社会保障政策は、担い手の増加に力点を置き高齢者や女性の働く場を拡大した。経済政策アベノミクスが成長をもたらせば、賃金や雇用の増加で社会保障の充実強化に結びつくとも唱えた。ただ5年後には75歳以上が人口の2割近くを占め、社会保障費の増加に拍車がかかる。担い手増だけでは到底追いつかず、給付と負担のバランス見直しは避けて通れない。昨年末、政府の全世代型社会保障検討会議は75歳以上の医療費負担割合について、一定以上の所得のある人は22年度までに1割から2割に引き上げると明記した。今年6月に最終報告をまとめる予定だったが、新型コロナウイルスの感染拡大のあおりを受け、議論は中断している。懸念するのは、負担増から目を背け給付拡大を唱えた安倍政権の姿勢を、菅首相も継承しようとしている点だ。総裁選で将来的な消費税率引き上げに言及したものの、批判を浴びると火消しを図った。政府予測では、20年後の社会保障給付費は現行より60兆円以上膨らむ。だが衆院議員の任期を来年10月に控え、総選挙が近づく中、国民に耳の痛い議論は棚上げされる可能性が否めない。高齢社会に必要なサービスはしっかり確保する。同時に公平な負担の実現に向け、所得税や資産課税、社会保険料も含めた制度を全面的に見直し、国民の理解と納得を得る。そのための作業を早急に始めねばならない。菅氏は目指す社会像として「自助、共助、公助」を掲げる。これは社会保障で自助努力の拡大を意味するのか、発言の真意もきちんと説明する必要がある。

*5-2:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/470360 (佐賀新聞 2019年12月25日) 厚生年金、中小企業に義務拡大、受給開始60~75歳で選択
 厚生労働省は25日、年金制度改革案の全容を社会保障審議会(厚労相の諮問機関)の部会に示した。将来の低年金を防いだり高齢者の就業を促したりする内容。厚生年金の加入義務がある企業規模要件を2022年10月に従業員101人以上、24年10月に51人以上まで引き下げ、中小企業に広げる。公的年金を受け取り始める年齢の選択肢を60~75歳の間に増やす。厚労省はこの日、公的年金に上乗せする私的年金に関し、自力での資産形成を後押しする見直し案を別の会合に提示。併せて来年の通常国会に関連法案を提出する。改革案を実施すると、現役世代の平均手取り収入に対する年金給付水準は約30年後の時点で0・2%上昇するという。政府は部会で年金改革の具体案を議論してきた。今月19日にまとめた全世代型社会保障検討会議の中間報告にも主要論点を明記した。厚生年金の対象拡大は、パートなど非正規で働く人たちの加入を進めて年金を手厚くするほか、保険料を払う支え手も増やすのが目的。企業でフルタイムとして働く人は規模にかかわらず厚生年金の加入義務があるが非正規の場合は現在、501人以上の企業で週20時間以上働くことなどが要件となっている。厚生年金の保険料は労使折半。51人以上に引き下げた場合は新たに65万人が加入する見通しで、企業負担は年間1590億円増える。公的年金の受給開始年齢は65歳が基本だが、現状は60~70歳の間で自由に選べる。働く高齢者が増えていることを踏まえ75歳にまで選択肢を広げる。65歳から繰り上げると月当たり0・4%減額、遅らせると0・7%増額とする。75歳から受け取り始めると65歳と比べ毎月の年金額は84%増える。働いて一定以上の収入がある高齢者の厚生年金を減らす在職老齢年金制度は、60代前半の減額基準を現行の「月収28万円超」から、65歳以上と同じ「月収47万円超」に引き上げる。就業意欲を損なっているとの指摘があるためだ。また「在職定時改定」と呼ばれる仕組みを導入し、60代後半で働く人の年金を毎年増額する。

<乗り物や機械のエネルギー変換>
PS(2020年9月25日、10月3、8日追加):*6-1のように、欧州エアバスが航空機のパラダイムシフトに乗り出し、世界初の水素燃料によるZE航空機を2035年までに商業化する方針を発表した。欧州連合(EU)は脱炭素技術として水素に本腰を入れており、エアバスのCEOは「航空業界の最も重要な転換点だ」としている。このうち、主翼が機体と一体になった全翼型は、これまで多くの航空機が鳥を真似た形をして翼のみで揚力を出していたのに対し、マンタを真似た形をして機体全体で揚力を出すものだ。これは、空間利用に無駄がないのが長所で、欠点は窓側座席の割合が少ないことだが、それは貨物機なら問題にならず、乗客でも眼下の景色の高精度画像が各座席に配信されれば足りるだろう。そのため、この技術革新の時代、ボーイングも技術革新しなければ中国の競争相手でさえなくなるだろうし、日本の航空機業界も同じである。
 また、*6-2のように、2020年9月25日、米カリフォルニア州のニューサム知事が「2035年までに州内で販売される全ての新車を、ゼロエミッション(ZE)車にするよう義務付ける」と発表したため、「脱ガソリンで日本勢に逆風か」という記事が日経新聞に掲載された。これに対し、トヨタ・スバルが対応を急いでいるそうだが、EVは日本が1995年前後から開発を始め、日産が世界のトップランナーだったのに叩いて駄目にし、日産までがHVにシフトするアホぶりで、情けないにもほどがあった。さらに、未だに車両価格・充電施設・水素インフラ整備などの課題を並べているが、私は、PHVはガソリンエンジンを使う上、ガソリンエンジンを搭載する分だけ価格が高くなるので、新エネ車に入れる必要はないと考える。
 このようにして世界が電動車にシフトしていく中、*6-3のように、日本のホンダがF1を撤退してEVに資源を集中するそうで、それ自体はよいことだと思うが、そもそもガソリン・エンジンの使命は終わりつつあるので、F1をFCV・EVの「自動運転」「サポカー」の度合いで競争したらどうかと思う。また、「カーボンニュートラル」は、(長くは書かないが)CO₂の排出を合理化して削減に繋がりにくいので、排出量は0を目標にすべきだ。
 日経新聞が、*6-4に、「①独や米でEV移行に伴う人員削減が広がっている」「②EV生産は必要人員が少なく、独のダイムラーやエンジン部品大手が数千人規模の人員削減に着手し、米GMもEV向けの工場で雇用を減らす」「③EVの主要部品である電池セルやモーターは、独より賃金が安いアジアや東欧で生産されている」「④ディーゼルエンジンの燃料噴射装置生産には10人、電気モーター生産には1人必要で、国内で生産しても人手がかからない」「⑤雇用調整なきEVシフトは困難」「⑥エンジンを軸に産業ピラミッドを構築してきた日本も対岸の火事ではなく、EVシフトで出遅れた日本勢も対応を迫られている」「⑦EVと雇用の両立が各社の喫緊の課題」等と書いている。このうち、①②④は、EVへの転換によるコストダウンの大きさが示されているのであり、これだけのコストダウンが実現すれば、今まで自動車を所有していなかった人々にも購買層を広げることが可能だ。また、③は、中国はじめ新興国でEV投資が熱心に行われたことによるもので、その理由は、先進国が⑤を恐れてEVへの変換を遅らせたからである。まして、⑥は日本がEVのトップランナーだったのに、⑦を恐れてガソリンエンジンにしがみつき、EVを遅らせたというとんでもない話なのだ。しかし、自動車は始まりにすぎず、これから電動化や自動運転化は、航空機・船舶・列車・農機具などの多くの機械に応用されていくもので、今までエンジンを作っていた人が燃料電池・蓄電池・モーター等を生産するのは基礎のない人が生産するよりずっと容易なことであるため、⑤⑦は、他の機械の製造会社と合弁会社を作って電動化や自動運転化を進めれば解決できる筈なのだ。

  
                       2020.9.22朝日新聞
(図の説明:左の2つが、エアバスの全翼型航空機で、右が通常型航空機だが、いずれも水素燃料を動力とする)

*6-1:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO64156040T20C20A9X13000/ (日経新聞 2020/9/24) エアバスが35年に水素旅客機 欧州水素戦略、陸も空も
 欧州エアバスが航空機のパラダイムシフトに乗り出した。21日、世界初となる水素を燃料とし、二酸化炭素(CO2)を排出しないゼロエミッション(ZE)航空機を2035年までに事業化する方針を発表した。3種類のコンセプト機のデザインも披露した。欧州連合(EU)は脱・炭素の技術として水素戦略に本腰を入れている。コロナ禍で足元は厳しいが、技術革新の種をまき、未来の航空機市場で覇権を狙う。
■エアバスCEO、「最も重要な転換点」
 「航空業界はこれまで様々な変化を経験してきたがその中でも最も重要な転換点になる取り組みの旗振り役を担う」。エアバスのギョム・フォーリ最高経営責任者(CEO)は、次代の航空機産業を先導する意志を宣言した。国境を越えた移動が制限され、航空機産業は厳しい環境に置かれている。米ボーイングが次世代の中型機の開発を見直すなど、新造機開発がコロナ禍で滞るなか、エアバスはあえて技術革新を前面に出した。ZE航空機はジェット燃料の代わりに水素を燃料とし、改良したガスタービンエンジンで燃焼して動力を得る仕組み。エアバスは今回、3種類のコンセプトを披露した。一つは主翼が機体と一体となった「全翼型」と呼ぶ軍用機でよくみられるデザインを採用した。最大100席が乗員可能で、航続距離は約3700キロメートル以上とした。胴体が非常に幅広く、水素の貯蔵や供給方法で多様な手法を選べるうえ、客室も柔軟にレイアウトできるという。さらに現在の航空機でも使われる「ターボファン型」と「ターボプロップ(プロペラ)型」のコンセプトも出した。ターボファン型は約3700キロメートル以上の航続距離で、大陸間も飛行できる。座席数は120~200席を想定する。後部圧力隔壁の後ろに設置されたタンクを使用し、液体水素を貯蔵・供給する。プロペラ型は近距離飛行を想定し、航続距離は約1852キロメートルで座席数は最大100席とした。エアバスは航空機の脱・炭素に力を入れてきた。独シーメンスや英ロールスロイスとは、ハイブリッド電気推進システムを採用した実証試験機「E-FanX」を共同開発してきた。E-FanXは20年4月に開発プログラムを終えたが、CO2排出量を劇的に下げる手法を3社で引き続き探求するとしている。ZE航空機の開発でも再び協力する可能性がある。
■航空機ABC時代、将来の覇権争いに先手
 コロナ禍でエアバスが打ち出した野心的なZE航空機の構想は、今後の航空機業界の競争に波紋を広げそうだ。航空機メーカーはあまたの再編を経て、エアバスとボーイングの2強体制となったが、足元では中国が台頭してきた。着々と国産化を進め、機内の通路が1本の単通路型(ナローボディー)の機体を開発し、試験飛行に入った。中国は将来、世界最大の航空機市場になる見通し。米中摩擦の影響は懸念されるが、巨大市場を背景に中国が航空機産業でも存在感を高め、2強を脅かす可能性が高い。「ABC(エアバス、ボーイング、中国)」の3強時代を見据え、エアバスは技術革新で競争の土俵を変えようとしているとも言える。エアバスの水素燃料を使ったZE航空機の動きは、欧州の水素戦略の一翼を担う側面である点も見逃せない。欧州委員会は7月、水素戦略を発表し、生産過程でCO2を排出しない再生可能な水素の推進などを示した。さらにエネルギー効率性向上に向けた政策もまとめ、再生可能な水素燃料をEUにおけるエネルギーシステム統合戦略の核となる技術と位置付けた。エアバスも政府支援を働きかける。フォーリ氏は「水素の輸送や供給のための大規模なインフラが必要だ」と指摘し、「さらに研究開発、持続可能な燃料の利用に配慮した航空機への入れ替えを支える仕組み作りで政府支援が重要だ」と訴える。
■欧州、脱・炭素へ 水素戦略に本腰
 水素は生産、貯蔵、輸送、使用などのバリューチェーンで様々な産業への波及効果が大きい。使用の面においては独ダイムラーが燃料電池分野でスウェーデンのボルボと提携し、燃料電池トラック推進に向けた欧州連合を形成した。空でもエアバスが主体となって水素戦略を加速する。欧州の産業政策の中心となるドイツは、6月にまとめた国家水素戦略で多数の施策を打ち出した。そのうち、交通分野の施策で「モビリティー分野における水素・燃料電池システムの国際標準化」を明確にしている。日本の航空機産業では宇宙航空研究開発機構(JAXA)が中心となって、航空機の脱・炭素戦略を進めている。18年には民間企業も募って、コンソーシアムを立ち上げた。ただ、技術ロードマップでは30年代に小型旅客機に電動化技術の適用範囲を広げ、50年代に「電動化の理想形に到達」とした。35年にZE航空機の事業化を目指すエアバスとの差は歴然だ。産学官の連携で新たな技術を標準化し、市場を作り上げていくのは欧州のお家芸だ。コロナ禍で厳しい環境下だが、エアバスが動いた以上、日本の航空機産業も脱・炭素戦略を悠長に構えてはいられない。

*6-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200925&ng=DGKKZO64215050U0A920C2EA2000 (日経新聞 2020/9/25) 脱ガソリンで日本勢に逆風 米加州が全新車に義務付けへ トヨタ・スバル、対応急ぐ
 自動車業界に「脱ガソリン」を求める動きが米国でも本格化してきた。米カリフォルニア州のニューサム知事がガソリン車の販売を禁止する方針を明らかにした。厳格な環境規制は欧州などが先行してきたが、米国は日本メーカーのシェアも大きい。規制強化で各社の戦略見直しが一気に進みそうだ。ニューサム知事は23日、2035年までに州内で販売される全ての新車を、排ガスを出さない「ゼロエミッション車」にするよう義務付けると発表した。州知事権限に基づく命令を通じ、州の大気資源局(CARB)に具体的な規制づくりを指示した。米国内でガソリン車の販売禁止時期を示したのは加州が初めて。排ガス規制は欧州が進んでおり、欧州連合(EU)は21年に大幅な二酸化炭素(CO2)排出削減を求める新規制を本格導入する。英国がガソリン車やディーゼル車の新規販売を35年に禁止すると表明したほか、フランスも40年までに同様の規制を設ける方針だ。この流れに加州が加わることで、脱ガソリンを掲げる市場の範囲が大きく広がる。同州は全米最大の自動車市場で、19年の販売台数は189万台を超える。19年実績ではトヨタ自動車やホンダなど日本勢のシェアが47%と高く、米国メーカー(30%)よりも多かった。加州だけで日本勢はEU市場で売る半分程度の台数を扱っておりグローバルでも重要市場だ。米国内の規制は原則として連邦政府が策定するが、環境関連は加州に独自のルールづくりが許されている。他州が加州の規制にならうことも認められている。ニューサム知事は23日の記者会見で「これはほかの州や国が従うべき政策」と述べた。
●車業界は反発
 突然の規制強化案に、業界は反発している。ゼネラル・モーターズ(GM)など米大手3社と日欧の主要メーカーが加盟する米国自動車イノベーション協会(AAI)は同日、「規制による市場構築は成功しない」との声明を出した。ただ、連邦レベルでの環境規制にも影響力を持つ加州の方針厳格化は重みを持つ。特に電気自動車(EV)を持たないメーカーへの影響は大きい。SUBARU(スバル)にとって米国は約7割を占める最大市場だが、消費者に「水平対向エンジン」が支持されてきた経緯もありEVを展開していない。まずは20年代前半にトヨタと共同開発したEVの発売を進める構え。スバル幹部は「環境規制で顧客の嗜好が変わることもある。大きな問題で動きを注視している」と懸念を強めている。マツダも現時点で米国でEVを販売していない。今秋から順次自社で開発したEV「MX-30」を欧州や日本で発売するが、米国展開についてはまだ決定しておらず出遅れている。ハイブリッド車(HV)を軸に北米でエコカーを販売してきたトヨタも戦略転換を迫られる可能性がある。加州の規制はHVをゼロエミッション車と見なさないとされる。19年にトヨタが米国で販売した新車のうち電動車は11.5%だが、EVはなくほとんどがHVだ。同社が中長期的なエコカーの本命と位置づける燃料電池車(FCV)も「販売台数はわずか」(トヨタ幹部)。車両価格や水素インフラ整備などで普及に課題は多い。同社は加州で現在シェア1位だが、EVを含めたゼロエミッション車の販売拡大が急務となる。
●欧州勢が先行
 投資家も今回の規制方針を逆風と見ており、スバルとマツダの終値は前日比でそれぞれ2.95%、3.65%下げた。欧州メーカーは対応で先行している。独ダイムラーは39年にすべての新車をゼロエミッション車とする方針を決めた。独フォルクスワーゲン(VW)も時期は明確にしていないが「40年前後が最後の内燃機関車を販売する時期になる」(幹部)としてEVへの移行を急いでいる。部品メーカーでは、独コンチネンタルが19年、30年までに内燃エンジン関連部品の開発を打ち切ることを明らかにした。 米国メーカーで最も恩恵を受けるのはテスラだ。米国の新車市場約1700万台のうちEVのシェアは1%強の24万台にすぎないが、テスラ車が8割のシェアを握っている。そのほかフォード・モーターがVWと提携しEVの共同開発に取り組む。GMも全車の電動化を目指しており、このほどホンダと北米での協業を決めた。自動車の環境規制の強化は中国でも進む。同国では19年、EVやプラグインハイブリッド車(PHV)などの新エネルギー車(NEV)の普及を促す「NEV規制」を導入した。

*6-3:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20201003&ng=DGKKZO64581150T01C20A0EA1000 (日経新聞 2020.10.3) ホンダ、F1撤退へ 来季限り、EVに資源集中
 ホンダは2日、自動車レースの最高峰、フォーミュラ・ワン(F1)から2021年シーズンを最後に撤退すると発表した。電気自動車(EV)など電動車へのシフトが加速する中、研究開発などの資源をエンジンから同分野に集中させる。ホンダは1964年にF1に初参戦した。撤退と再参戦を繰り返し、15年からエンジンなどのパワーユニットを提供するかたちで4度目の参戦を果たした。19年のレースではホンダ勢として13年ぶりの優勝を果たすなど復活を印象づけた。20年はレッドブル・レーシングとアルファタウリの2チームに提供している。ホンダは2日、F1撤退の理由として、今後は環境対応のため燃料電池車(FCV)やEVなどの研究開発に経営資源を重点的に投入する必要があると説明。八郷隆弘社長はオンラインの記者会見で、「社内では参戦を継続すべきだという意見もたくさんあったが、技術者のリソースを環境に傾けるべきだと判断した」と語った。ホンダはこれまでF1を「走る実験室」と位置づけてきた。レース用の車両開発で得られた知識と経験が市販車にも生かせるとして、毎年、数百億円程度とされる開発費を投入してきた。ただ、世界的な環境規制の強化で既存のガソリン車には逆風が吹く。欧州では英国が35年、フランスが40年までにガソリン車やディーゼル車の新規販売を禁止する方針。米カリフォルニア州のニューサム知事も9月、35年までに同州で販売される全ての新車を、排ガスを出さない「ゼロエミッション車」にするよう義務付ける方針を示した。ホンダは環境対応に向けて、30年をめどに世界販売の3分の2をハイブリッド車(HV)などの電動車にする目標を掲げる。2日にはF1撤退と併せて、50年に二酸化炭素(CO2)の排出を実質ゼロにする「カーボンニュートラル」を実現する目標を新たに示した。ホンダはEV対応については、海外大手と比べて後れを取る。9月に発表した米ゼネラル・モーターズ(GM)との戦略提携などを通じてEV分野で巻き返したい考えだが、F1撤退で生まれた経営の余力を真に活用できるかが課題となる。

*6-4:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20201008&ng=DGKKZO64748120X01C20A0TJ1000 (日経新聞 2020.10.8) EVシフト、車の雇用細る 、ダイムラーやGM、エンジン関連で数千人規模削減
 ドイツや米国で電気自動車(EV)への移行に伴う人員削減が広がってきた。独ではダイムラーやエンジン部品大手などが数千人規模の削減に着手。米ゼネラル・モーターズ(GM)もEV向けに切り替えた工場で雇用を減らす。EV生産は必要人員が少なく、次世代車と雇用の両立が各社の喫緊の課題だ。EVシフトで出遅れた日本勢も対応を迫られている。ダイムラーの高級車事業会社、メルセデス・ベンツは6日、内燃エンジンへの投資は2019年をピークに今後は大幅に減っていくことを明らかにした。EVへの投資が主流となり、内燃エンジンの種類は30年までに7割減らす。オラ・ケレニウス社長は事業戦略説明会で「EV移行にあたり、雇用が減るのは疑いの余地がない。社会的に責任のある形で変化に対応するため労働者側と協議している」と述べた。長くエンジン生産の中核だった独南部シュツットガルトのウンタートゥルクハイム工場などで電池や電気モーターへの生産転換を進め、大幅に人員を削減する。現地メディアは労働組合の話として約2割にあたる4千人を25年までに減らすと報じた。ベルリンのエンジン工場でも2500人から半減するもようだ。
●独では半減試算
 背景にあるのはEVシフトがもたらす雇用環境の変化だ。内製が一般的なエンジンに比べ、EVの主要部品である電池セルやモーターはドイツよりも賃金が安いアジアや東欧で生産されている。国内で生産する場合も人手がかからない。自動車部品世界最大手、独ボッシュのフォルクマル・デナー社長は「ディーゼルエンジンの燃料噴射装置を生産するのに10人必要だった。電気モーターは1人だ」と話す。独フォルクスワーゲン(VW)も18年11月、EVシフトに伴い国内の工場で23年までに7千~8千人を削減する計画を発表した。VWではガソリン車と同じ車台を作る場合、EVは1~3割の人員が余剰になるとされる。雇用への影響を緩和すべく他社へのEV車台の供給も拡大する。ただし新型コロナウイルス感染拡大の需要への影響もあり、従来事業を当座の受け皿にしながらの「雇用調整なきEVシフト」は困難な情勢だ。米GMと全米自動車労組(UAW)は閉鎖対象だったミシガン州デトロイトの小型車工場をEV専用に切り替えて残すことでも合意したが、従業員は最大で2200人と2割以上減る。21年秋に完成予定の韓国LG化学とのバッテリー合弁工場も、従業員は1000人程度と規模は小さい。自動車業界は地域雇用の担い手だ。ドイツでは約80万人を雇用する。政府が出資する研究機関「未来のモビリティのための国民プラットフォーム(NPM)」が1月に公表した試算では「最も悲観的なシナリオ」としてEV化で30年までに41万人の関連雇用が失われる可能性があるとした。米国では自動車産業の雇用が19年7月に11カ月ぶりに100万人を下回った。コロナ禍の生産休止から再開した足元では90万人にとどまる。UAWはEVシフトの影響を労使で定期的に協議する「先進技術委員会」を立ち上げ打開策を探る。独では米テスラや中国の電池大手、寧徳時代新能源科技(CATL)が国内のEV関連工場を新設して雇用を生む予定で、新興組に雇用の受け皿を期待する声もある。
●日本も変化の波
 エンジンを軸に産業ピラミッドを構築してきた日本にとっても対岸の火事ではない。日本車メーカーはEVをガソリン車やハイブリッド車(HV)と並行して進めてきたが、EVシフトが本格化しつつある。日産自動車は23年度までにEVなど電動車を世界で100万台以上販売する目標を掲げる。大手メーカー7社の研究開発費の総額は19年度に3兆円を超えた。既存事業にメスも入れる。ホンダは自動車レースのフォーミュラ・ワン(F1)からの撤退を2日に発表した。八郷隆弘社長は記者会見で、新型コロナの影響を受けた撤退との見方を否定し、「電動化を加速するために経営・技術者のリソースを傾ける」と述べた。自動車は約3万点の部品で構成するが、EVは約半分程度に減るとされる。アーサー・ディ・リトル・ジャパンの祖父江謙介パートナーは「エンジンなどEV化で消えるものほど基幹部品として日本で生産されてきた。EVシフトは部品点数の減少率以上に雇用へのインパクトがある」と指摘する。日本勢はEVシフトで欧米の背中を追いながら、産業の根幹を揺るがす構造変化の波を乗り越えねばならない。

<農業と行政におけるスマート化>
PS(2020年9月29、30日、10月1日追加):*7-1に、「①政府は2025年までに、担い手のほぼ全てがデータを活用した農業を実践することを成長戦略に掲げる」「②農水省はデジタル技術を活用した生産現場の課題解決に乗り出し、農家の高齢化や人手不足を補う導入の判断材料として費用対効果の分析データを農家に提供して普及を推進する」「③かかった費用・伸びた所得・削減できた労働時間等をデータで示して農家に提供する」「④行政手続きも、スマートフォンやインターネットで補助金申請ができるようにする」などが記載されている。
 このうち、①②については、徹底して自動化した方がよいのは大規模少品種生産の農家で、小規模多品種生産の農家は小回りのきく機械にした方がよさそうに思う。しかし、機械化すれば従業員を減らせる場合は、人件費より機械の方が安い。また、③については、法人化して青色申告すれば、機械の減価償却費を計上して税負担を減らすことができるのでそれだけ費用対効果が高くなり、特別償却できるとなおさらだ。また、④については、行政手続きが簡素化されると迅速になるが、早い分だけ考える時間が短いのでミスも起こり易いと思う。
 しかし、*7-2に「⑤行政手続きでの印鑑廃止」「⑥ペーパーレス化」「⑦オンラインで情報を集めることができれば利便性が高まる」と書かれていることについては、「ハンコを押すためだけに会社に行く人がいた」というのは、本当はおかしい。何故なら、稟議書にハンコを押すことの意味は、上司が、①妥当性を判断し ②承認して責任を持つこと であり、部下の側からは「保証」と「根回し」になるからで、物理的にハンコを押すだけの管理職なら不要だからだ。ただ、⑦のように、インターネットで必要な人に同時に情報を送ることができれば、稟議書を廻す必要がなく、組織もフラットにできる。しかし、⑥のペーパーレス化が進みすぎると、保証人等になる場合に責任を持てるのか疑問であるなど、行為の重要性によっては書面を見ながら相手の説明をじっくり聞き、考えて印鑑を押すことが必要な場合もある。
 なお、2020年9月30日、*7-3のように、10~30haで経営する担い手の利用を想定し、施設内作業もしやすく無給油で8時間稼働できる中型トラクターを共同購入して低価格にする仕様を全農が発表したのはよいが、農機具も電動化し、再エネで自家発電した電力を使った方が環境に良い上に費用対効果も上がるので、メーカーに働きかけて、電動トラクターと農業施設の発電システムを作ってもらった方がよいと思う。
 フクイチ原発事故を巡り、*7-4のように、福島県内の住民や避難者ら約3700人が国と東電に損害賠償等を求めた訴訟の判決が9月30日に仙台高裁であり、「①国と東電の責任を認めて約10億1千万円の賠償を命じた」「②2002年に国の地震調査研究推進本部が公表した『長期評価』は重要な見解で、相当程度に客観的かつ合理的根拠を有する科学的知見だとした」「③経産相がすぐに津波高の試算を東電に命じれば津波の到来を予見できた」「④経産省は規制当局の役割を果たさず、国の責任は東電と同程度」「⑤賠償地域は福島県会津地方や宮城県・栃木県の一部にも拡大され、対象人数も約2,900人から約3,550人に増え、賠償額は1審の約5億円から倍増した」とのことである。①②③④はよいが、⑤は1人あたり賠償額が28万円強(10億円/3,550人)に留まり、大部分の損失は被害者負担になったことを意味する。賠償の名目は慰謝料だろうが、本当は逸失利益(フクイチ原発事故がなければ稼げた筈の金額)も賠償するのが当たり前で、日本の裁判所は逸失利益を認めないため賠償額が損害に見合わなくなるのだ。いずれにしても、原発を使わず、エネルギー自給率を上げながら、排気ガスを無くすために、再エネは重要であり、地方は再エネの宝庫なのである。

  

(図の説明:農業地帯は自然再生可能エネルギーが豊富なので、農家は、エネルギーを消費だけするより、生産しながら消費した方が、あらゆる意味でよいと思う)

*7-1:https://www.agrinews.co.jp/p52013.html (日本農業新聞 2020年9月29日) デジタル活用 農家手助け 「スマート」=コスパ提示 補助金=ネット申請加速 農水省が方針
 政府がデジタル庁の創設を検討する中、農水省はデジタル技術を活用した生産現場の課題解決に乗り出す。農家の高齢化や人手不足を補うスマート農業では、導入の判断材料として費用対効果の分析データを農家に提供し、普及を推進。補助金の申請手続きは、2022年度までに全てオンラインでできるよう、取り組みを加速させる。政府は25年までに「担い手のほぼ全てがデータを活用した農業を実践」することを成長戦略に掲げる。3月に閣議決定した食料・農業・農村基本計画でも、デジタル技術を活用した新たな農業への変革を提示。具体的に取り組む分野として、スマート農業、行政手続きの簡素化を挙げる。スマート農業は農作業の負担軽減の効果がある一方、導入コストに対するメリットが分かりづらい課題がある。同省と農研機構は今後、19年度から始めた実証プロジェクトの費用対効果の分析に入る。かかった費用、伸びた所得、削減できた労働時間などをデータで示し、農家に提供。導入する際の判断基準にできるようにする。農水省は21年度予算概算要求に、20年度当初予算比で40億円増の55億円を計上する「スマート農業総合推進対策事業」などを盛り込む。同事業では高価なスマート農機のシェアリング(共有)など、新たなサービスの実証も進める。行政手続きは、スマートフォンやインターネット上で補助金申請ができる同省の「共通申請サービス」の運用を進める。20年度は、認定農業者制度や経営所得安定対策の一部で運用を開始。22年度までに全ての申請で使えるようにする。21年度の概算要求にも、同86億円増の93億円を計上する。同省は、申請作業の簡素化によって「農家は経営に、JAは営農指導に集中できるようになる」(大臣官房デジタル戦略グループ)との考えだ。使い勝手を良くするため、簡潔で分かりやすい画面などを工夫するという。取り組みは、デジタル庁とも連携していく。同庁創設に向けて準備を進める内閣官房は農業分野について「これまで農水省が進めてきたスマート農業、行政手続きの簡素化を継続して進めていくことになる」(官房副長官補室)と話す。

*7-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200928&ng=DGKKZO64303030X20C20A9PE8000 (日経新聞 2020.9.28) 行革相、ペーパーレス化に意欲 印鑑廃止に続き
 河野太郎行政改革・規制改革相は27日、行政手続きでの印鑑廃止に続き、ファクスの使用もやめてペーパーレス化に取り組む意向を明らかにした。北海道根室市で記者団に「電子メールやオンラインで情報を集めることができれば、より民間企業や各自治体の利便性も高まる」と強調した。

*7-3:https://www.agrinews.co.jp/p52021.html (日本農業新聞 2020年9月30日) 新・低価格トラクター 「中型」用途幅広く 全農
●施設内作業しやすく、無給油で8時間
 JA全農は29日、注文を取りまとめて低価格にする「共同購入トラクター」の第2弾、中型トラクターの仕様を発表した。標準的な同クラスに比べ2割安く、ハウス内作業がしやすいノークラッチ変速や、無給油で8時間の作業ができる燃料タンクを搭載した。用途が幅広く、担い手の収益を高める多角経営にも貢献する。全農の農家所得増大に向けた事業改革の一環。10月からJA経由で注文を受け12月に出荷を始め、3年間で2000台の取り扱いを計画する。機能を絞るのに加え、まとめて注文する共同購入でメーカーの製造・流通を効率化し、価格の引き下げにつなげる。今回の製造元はクボタで、型式は「SL33LFMAEP」(33馬力)。メーカー希望小売価格は285万円(税別)だ。生産者の要望を基にして機能を厳選し、2019年6月にメーカー4社に開発を要請した。実機やデータを基にクボタ製を選んだ。全農によると、今回は第1弾の大型ほど機能をそぎ落としていないが、購入数が見込めることで値下げにつながった。要望の強いノークラッチ変速と大きな燃料タンクの他、自動水平制御、自動耕深制御、倍速ターン、オートブレーキなどを備える。キャビンやハイスピード、半クローラーのオプションもある。水田農業だけでなく園芸にも向く。低価格のため、ハウス内作業や野菜栽培など特定の作業用に、追加で導入するのにも向く。10~30ヘクタールで経営する担い手の利用を想定している。全農耕種資材部は「あらゆる作業ができ、水田と園芸など多角経営に役立つ。前回の大型は関東、東北、九州で人気だったが、今回は西日本を含む全国で需要が見込める」と強調する。共同購入トラクターの第1弾は、18年に取り扱いを始めた60馬力の大型トラクター(ヤンマーアグリ製)。これまで1845台(8月末時点)と、目標の2倍近い取扱数となっている。

*7-4:https://digital.asahi.com/articles/DA3S14641872.html (朝日新聞 2020年10月1日) 原発事故、高裁「国に責任」 東電と同程度、認定 集団訴訟・仙台判
 東京電力福島第一原発事故を巡り、福島県内の住民や避難者ら約3700人が国と東電に損害賠償などを求めた訴訟の判決が30日、仙台高裁であった。上田哲裁判長は一審に続き国と東電の責任を認め、約10億1千万円の賠償を命じた。国が被告となった原発事故の集団訴訟での二審判決は初で、今後の各地の裁判に影響を与える可能性もある。福島地裁での一審に続き、2002年に国の地震調査研究推進本部が公表した「長期評価」の信頼性が争われた。福島県沖で津波地震が起きる可能性を指摘したものだ。今回の判決では「個々の学者や民間団体の一見解とは格段に異なる重要な見解で、相当程度に客観的かつ合理的根拠を有する科学的知見」と重視。公表当時、経済産業相がすぐに津波高の試算を東電に命じれば、津波の到来を予見できたとし、「規制当局に期待される役割を果たさなかった」と国の姿勢を批判。「規制権限の不行使は国家賠償法の適用上違法」と指摘した。また、国と東電が「喫緊の対策措置を講じることになった場合の影響を恐れ、試算自体を避けようとした」とし、一審では国の責任を「(東電を)監督する第二次的なものにとどまる」としていたが、東電と同程度だとした。賠償の地域は福島県会津地方や宮城県、栃木県の一部にも拡大され、対象人数も約2900人から約3550人に増えて、賠償額は一審の約5億円から倍増した。

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2020年8月31日~9月8日 安倍首相の辞任・モーリシャス沖での日本の貨物船座礁・環境とエネルギー・本当の無駄遣いと財政法など (2020年9月12、13、15日追加)
 
   日本の経済成長率推移   日本の電源別発電コスト  世界の電源別発電コスト

(図の説明:左図のように、日本の経済成長率は第1期《発展途上期:1956~1972年》に平均9.1%あったが、これは現在の発展途上国と同じく「低賃金」で「低価格」の製品を作って先進国に輸出した経済モデルによっており、今後はこのモデルを採用することはできない。また、第2期《バブル期:1974~1990年》は、平均4%の経済成長率があるが、これはオイルショックで原油価格が上がって不況に陥りそうだったため、カンフル剤として著しい金融緩和を行ったからだ。また、第3期《成熟期:1991年~現在》に平均1%の経済成長率しかないのは、日本は大競争が始まった世界の変化についていかず、過去を継続しようとする圧力が強かったためである。その一例として、中央の図のように、日本の電源別発電コストは、2014年のモデルプラントでも原発が最も安価な電源とされ、原発に税金を投入してもそれをコストに加えていない。一方、合理的な選択をした世界の電源別発電コストは、右図のように、原発が最も高く太陽光発電は等比級数的にコストが下がって、2018年には地上風力とともに最も安い電源となっている)

(1)安倍首相の辞任について
1)安倍首相の辞任とその理由
 安倍首相が、2020年8月28日、*1-1のように、首相官邸で辞任する意向を表明する記者会見をされたのは、私にとっては予想外で残念だったが、首相の在任期間が最長記録を更新し、国会を開いても全体から見れば重箱の隅をつつくようなモリ・カケ・サクラの追及ばかりで本来の予算審議ができないのなら、今が新体制に移行するBestのタイミングだったのかもしれない。

 辞任理由は、①持病の潰瘍性大腸炎の再発 ②7月中ごろから体調に異変が生じ、体力をかなり消耗する状況だった ③体力が万全でない中、政治判断を誤ってはならないから辞任する ④潰瘍性大腸炎の再発が確認されて投薬を始め、継続的な処方が必要で予断を許さない と説明されており、多くのメディアが「待ってました!」とばかりに、首相の退陣報道をしたのは、国益を無視しており、眉を顰めさせられた。

 新型コロナウイルス感染症は、2020年2月1日に指定感染症に指定され、1類感染症(エボラ出血熱、痘そう、ペストなど)、2類感染症(ポリオ、結核など)より厳しい制限をかけられた。しかし、日本における実際の致死率は、3類感染症(コレラ、赤痢)や4類感染症(E型肝炎、A型肝炎、マラリア、日本脳炎)より低く、5類感染症(インフルエンザ、麻しん)に近かった。

 我が国は、中国(武漢)の状況に驚いて新型コロナウイルス感染症を重すぎるランクに位置づけ、それにより対応の不合理を招いたのであるため、「検査」・「陽性者の隔離」・「治療」・「予防」を行いながら、指定感染症のレベルを3類か4類あたりに下げるのがよいと思われる。

 なお、安倍首相が担当しておられた「北朝鮮による日本人拉致問題」は、選挙前になるとクローズアップされるが、普段は北朝鮮を見下した批判ばかりしているため、拉致問題を第一に考えているようには見えなかった。しかし、「北方領土問題を含むロシアとの平和条約締結」は、エリツィン大統領の時代がチャンスだったにもかかわらず先送りして機を逸してしまったので、誰が首相でもうまくいかなかったと思われ、安倍首相はよくやった方だと思う。

 また、「憲法改正」については、改正の必要性が国民に納得されるものでなければならず、「これまで改正しなかったから」というのは、改正理由にはならない。さらに、「環境権を明記するため」というのも、憲法第13条の「幸福追求権」に既に書かれており、環境基本法もあるため、既に実践の段階になっているのである。

 私も、安倍政権で行われた政策には賛成の部分も反対の部分もあるが、江戸の敵を長崎で打つかのように、安倍首相などの政治家をモリ・カケ・サクラのような(不法行為にもならない)矮小化した論点で追い詰めたのは、国民のためにも、民主主義のためにも、また底の浅さを感じさせたメディアのためにもならなかったと思う。

2)病人を差別する国、日本
 人が何らかの理由で誰かを差別するのは、それによって自分が優位に立つためと考えられるが、それによって、差別する人の底の浅さや見識の低さが感じられることは多い。そして、日本は、女性・高齢者・外国人だけでなく、病人も差別する人権後進国なのである。

i) 潰瘍性大腸炎について
 安倍首相が「潰瘍性大腸炎の再発で、政治判断を誤ってはならないから退陣する」とされた後、「治療に専念したらどうか」という報道も多く、下の③の同じ潰瘍性大腸炎を持病に持つ人はいたたまれなかっただろう。つまり、病気を理由として発表し、メディアが悪のりして拡大解釈すると、同じ病気の人が困ったことになるのだが、メディア自身には人権に関する配慮がない場合が多いのである。

 このような中、*1-2-1は、「①潰瘍性大腸炎は、大腸に炎症が起こり、大腸粘膜が傷ついて、ただれたり、はがれたりする難病」「②原因不明」「③約22万人の患者がいる」「④ストレスは再発に繋がりやすい」「⑤薬物療法では炎症を抑える薬を使う」「⑥血球成分除去療法という治療法もある」と記載している。しかし、①②については、胃潰瘍に原因があったように潰瘍性大腸炎にも原因があってよいと思われるのに、いつまでも⑤⑥のような対症療法ばかりをやっているようでは、医学の進歩はおぼつかない。また、④も、大いに考えられるが、疫学調査による裏付けが欲しいところだ。

ii) 新型コロナの感染者に対する差別的言動
 新型コロナの感染者に対する差別的言動が後を絶たず、*1-2-2のように、運動部で起きた集団感染を公表した高校・大学が理不尽な非難を浴び、島根県の私立高は関係のない生徒の写真もネットに掲載された。また、奈良県の私大の学生は、教育実習の受け入れ先やアルバイト先から、参加や出勤の見合わせを求められたそうで、検査をさせないため誰が陽性かの判別もつかなかったのが、この問題の本質である。

 しかし、これには、症状のある人がいても、(無症状の)濃厚接触者や帰国者に積極的疫学調査と称してPCR検査を行い、夜の街が感染の温床と触れ回るなど、感染者に対する差別を生む社会的土壌もあった。これなら事実を隠す方向に流れるのは当然で、それだからこそ、一般に病名はプライバシーなのである。

 新型コロナ感染症の場合は、2類相当とされながら1類以上の厳しい制限がなされ、感染情報が公開され、濃厚接触者がすべて明るみに出されて検査されて、差別やプライバシーの侵害に繋がった。しかし、感染する可能性は誰にでもあることを、決して忘れてはならない。

iii)精神障害者差別
 福岡市の商業施設で女性が殺害された事件では、*1-2-3のように、逮捕された自称15歳の少年は女性を刺したあと、6歳の女の子も襲っていたそうだ。この事件が最初に報道された時、「意味不明の奇怪な行動をするのは、また精神障害者の仕業か」と思った人は少なくない。

 しかし、この事件は、未成年者という責任能力のない者の犯行だった。にもかかわらず、一般の人が「意味不明の奇怪な行動をするのは精神障害者か」と思う理由は、刑法39条が「心神喪失者・心神耗弱者(≒精神障害者?)は責任能力がない」として、違法行為を行っても犯罪の責任を免除しており、罪を軽減する手段としてこの条文はよく使われ、メディアも人権に配慮することなく、大々的にそれを報道しているからである。

 そして、「責任を免除すべき心神喪失者・心神耗弱者の定義は何か」「本当に責任能力がないのか」については議論も説明もなく、「意味不明の奇怪な行動をするのは精神障害者だ」という“常識”を一般の人に植え付けているのは、憲法違反の法律に基づく精神障害者差別であり、精神障害者はたまったものではないだろう。また、「女性を刺し殺せるほど力の強い15才でも、責任能力がないと言えるのか」についても、私は疑問に感じる。

3)批判の妥当性
1)モリ・カケ・サクラ
 安倍首相は記者会見で7年8カ月の実績を強調されたが、*1-3-1・*1-3-2のように、「森友・加計学園問題や『桜を見る会』問題(以下“モリ・カケ・サクラ”)で、「政権の私物化」との批判がつきまとった」と記載する記事は多い。しかし、前に何度も書いたとおり、これらは重箱の隅をほじるような言いがかりを、国会期間中の長時間にわたって延々と続けたもので、聞いている私も「どこが法令違反なのか」とうんざりしたものである。

2)その他の政策
 保育や介護の重要性については、新型コロナによって明らかになったのではなく、30~50年も前から言ってきたにもかかわらず整備されていなかったのを、安倍首相が(私の提案で)女性活躍という視点から、さらに進めてくださったというのが事実だ。そのため、これらの政策は、首相がかわっても言い続けなければ進まないのが、男性中心の政治なのである。

 集団的自衛権については、私もやりすぎだと思ったが、その割には尖閣諸島問題は「力による現状変更を認めない(永遠に現状維持するつもりか)」としか言っておらず、領土を守る意識が薄く感じられた。これでは、いくら日米同盟が強化されても、米国が守ってくれるわけはないだろう。その上、拉致問題は、それを話し合っている最中に、仮想敵国として北朝鮮を批判していたのだから、解決するわけがない。

 カジノを含む統合型リゾート施設は、せっかくそういうものがない日本に、わざわざ外国のカジノ会社を誘致する必要は全くないと私は思うが、これは、自民党か維新の会の政策であって、*1-3-3で安倍首相が言っておられるように、安倍首相が政権を私物化した結果ではない。

 また、批判することが目的で批判しているメディアは、出演しても重要な発言がカットされて歪んだ像しか報道されないため、出るメディアを選ぶのは正当な注意であり、事前に質問を提出した社に当てて正確な回答をするのも当然だ。そのため、「知らなかったのなら・・」などと推測するのは失礼だと思う。

(2)モーリシャス沖の貨物船重油流出事故による公害

 
               2020.8.14BBCより
1)船の船籍と運行
 インド洋のモーリシャス沖で、*2-1のように、①岡山県の長鋪汽船が所有し ②商船三井が運航する貨物船が座礁し、燃料が大量に流出して、③モーリシャスのジャグナット首相が環境緊急事態宣言を出す という事態になったが、④この船の船籍はパナマで、⑤船長はインド人、副船長はスリランカ人だった。

 そして、④⑤のように、日本の多くの船舶が所有・置籍に課される税金を低く抑え、乗員の国籍要件を緩やかにするため、パナマ・バハマ・リベリアなどに置籍を置いており、この船舶事故に関しても、日本は国としては関係ない。海難事故が発生した場合は、①②の会社が、加入した損害保険から支払うのが原則だ。

 船内に残った燃料の大半は既に回収され、これ以上の燃料流出はないそうだが、付近のサンゴ礁やマングローブが広く汚染され、モーリシャス政府が環境緊急事態宣言を出すほどの環境汚染があるため、損害保険でカバーできない範囲については、日本が道義的に資金提供したり、技術協力したりすることはあり得る。

 しかし、注意すべきは、商船三井は2013年にもインド洋沖でコンテナ船の船体が真っ二つに折れて沈没する大事故を起こしており、日本は船籍から船員まで外国に頼っているため、既に造船技術の進歩・船員の技術向上・船舶の管理などが容易でない状況に陥っているということだ。

2)燃料による環境汚染を防ぐための燃料転換
 モーリシャスの重油流出事故では、*2-2のように、海岸沿いのマングローブ林が大きな被害を受け、複雑に重なる根の部分についた重油の除去が難しいとされたが、私は、「高圧洗浄機で温水を吹きかけてマングローブの根を洗い、汚れた水をポンプで吸い取ればマングローブは助かるだろうに、本気で回復しようとしているのか?」と思った。

 なお、近隣のレユニオン島を領有するフランス政府は、船内の有害物質が海に漏れ出す恐れがあるとして難色を示したが、8月24日、モーリシャス政府は、*2-4のように、真っ二つになって沖合に曳航した船体の前方部を海に沈めて処分する作業が完了したと発表したそうだ。
 
 しかし、巨大な船舶を運航するには数十トン/日の燃料を消費するため安いC重油が使われ、C重油を燃焼する際に排出される硫黄酸化物(SOx)などは海水汚染の原因になっているため、船舶も自然エネルギー由来の燃料電池で動かす時代を早急に到来させるべきである。

3)船舶の装備
 モーリシャス沖で座礁して重油が流出した貨物船の船長が、*2-3のように、島に近づいた理由を「家族と通話したくて、WiFiに接続するためだった」と話しているそうだ。もちろん、「安全な航行を怠った」疑いもあるだろうが、「インマルサット(衛星)」、「WIDESTARII(衛星)」、「モバイル(LTE)無線LANルータ」などを使って、海上でも安全に通信する手段があるため、日本所有の船舶の装備は遅れているのではないか?

 SOMPOホールディングス(HD)は、*2-5のように、自動運転システム開発のティアフォー(名古屋市)に98億円を出資して自動運転分野に進出し、自動車保険の販売から事故防止という安全対策までビジネスの領域を広げるそうだ。

 保険で得た事故データをフル活用して自動運転を進化させるのはよい考えだと思うが、船舶でもこれを進めるのが、安全とコスト削減の両立にプラスだと思う。

(3)原発による公害と使用済核燃料の保管
                ← これ以上、国民に負担をかけずに環境を護るべき
1)電気事業法の改正について
 安倍首相の大きな実績で言われないのが、(私の提案で)2013年に行われた電力システム改革(①広域系統運用の拡大、②小売及び発電の全面自由化、③法的分離の方式による送配電部門の中立性の一層の確保)のための電気事業法改正(https://www.enecho.meti.go.jp/category/electricity_and_gas/electric/system_reform.html 参照)だ。

 このうち①は、フクイチ事故後、地域間の電力融通が非常に限られていることが明らかになったことから必要となり、②は、大手電力会社(以下“大手電力”)の地域独占を基盤として行われてきた総括原価方式が電力会社同士の競争やコスト削減努力を阻んでいるため、発電と小売りを自由化して電力市場に競争を持ち込もうとしたものだ。そのため、これらをしっかりやれば、原発はコスト高で自然淘汰される電源の筈だったが、途中で経産省等の干渉が入ったため、どちらも不完全に終わっている。

 また、③は、新しい電力会社(以下“新電力”)が大手電力の送電システムを利用する際に、大手電力に都合の悪い新電力が排除される可能性があったことから、大手電力の送配電部門を分離し、2020年4月からは法的分離することにしたものだ。しかし、法的分離をしても、大手電力の送電子会社と配電子会社はグループ会社であるため、新電力の不利は変わらない。そのため、送電子会社を上場して独立させるか、別系統の独立的な送電会社を作るかすることが必要だ。

2)原発事故の賠償費用に対する積立不足額の処理について
 政府(経産省)は、*3-1のように、原発事故の賠償費用に対する積立不足(見積額:約2.4兆円)を回収する新制度を固めて、過去の積立不足額を2020年度以降に全国の電気料金に上乗せして回収する方針とした。これは、「原発事故は想定外」としてきた長年にわたる失政のつけで、本来なら原子力事業者が全額負担すべき費用を2020年度以降の電力料金として国民に転嫁することとしたものだ。そして、会計の大原則である費用収益対応の原則を無視していると同時に、過去費用が判明した場合には速やかに償却するという保守主義の原則にも反している。何故、大手電力だけ問題にしないのか?

3)高レベル放射性廃棄物の最終処分場について
 高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の最終処分場も未だ定まっておらず、*3-2のように、北海道寿都町のような自治体財政の弱い町が手を上げようとするのは、交付金目当てである。つまり、国は、高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の最終処分場となる地域に、その危険に見合った交付金を出すのであり、これは国民負担になるのである。本来は、ここまで原発のコストに加えるのが当然で、その結果、どの電源が高いか安いかを比較しなければならない。

 また、高レベル放射性廃棄物の最終処分場について、国は地下300mより深くに数万年埋めておく計画を立てているが、地下でなくても人間が近づかない場所ならよいため、高温のガラスと融かし合わせてステンレス製容器で固めたガラス固化体を厳重に外部と遮断される形にして、①使わなくなったのトンネル ②無人の離島 などに置いて厳重に管理するか、③数千メートルの深い海の底に捨てる という方法が考えられる。そして、日本の地形や状況なら、①②③の方が安全で安価かも知れないが、何よりもまず、脱原発を解決の起点にすべきである。

4)まとめ
 以上により、2)3)の費用は、本来は発生主義で認識して原発のコストに入れるべきものだったため、未だに、i)原子力はコストが安く ii)安定的な電源であるため iii)ベースロード電源にする としているのは、嘘も甚だしい。

(4)日本に存在する資源 

   
    国際通貨基金    2020.2.18東京新聞 2020.5.18毎日新聞   財務省

(図の説明:日本は時代の要請に基づく技術進歩や構造改革に力を入れず、長期間にわたりカンフル剤と称して税金を無駄遣いしてきたため、1番左の図のように、1990年には購買力平価で世界第3位だったGDPが、約30年後の2019年には世界第7位になった《この間、他国はまじめにやっていた》。さらに、左から2番目の図のように、「福祉財源=消費税」と主張して消費税増税を行ってきたため、国民の可処分所得の減少により国内需要と国内投資が減少し、実質GDP成長率が落ちた。これは、右から2番目の図のように、消費税増税後、「内需寄与度」が大きくマイナスになったことで証明される。しかし、財務省は、1番右の図のように、日本は歳出が歳入より大きく借金が世界1であるというグラフを示し、メディアを総動員して「消費税増税反対は、ポピュリズムだ」と主張してきた。そのため、「本当にそうか?」について、下に述べる)

1)教育を受けた人材
 日本は、1872年に最初の学校制度を定めた『学制』の公布により義務教育が推進され、戦後は小学校6年・中学校3年の合計9年間を義務教育とし、現在では高校3年間の中等教育を受ける人も多数を占めるため、識字率が100%に近く、基礎的知識のある良質な勤労者を得やすい。そのため、情報やマニュアルを徹底させやすく、これは、先人が残した遺産と言える。

 しかし、時代の要請に気付いて速やかに技術進歩を進められる人材を育てるには、①高等教育 ②仕事を通じた教育・訓練 ③メディアから得る良質な情報 ④新技術を受け入れる社会の土壌 等が必要であるのに、①の進学先は、法学部・経済学部・文学部等の文系が多く、新技術を作ったり使ったりする理系が少ないため、社会全体が理系音痴になっているのが問題なのだ。

 また、②③④については、社会全体として、「周囲の空気を読んで目立たず、現状維持して新しいことにチャレンジしない」ことを推奨する人や組織が多くなったらしく、これでは狭い範囲で勝手に決めた予定調和に基づいた行動しかしないため、新しい要請に気付いてそれを進める人材は育ちにくいだろう。これは、質の低いメディアを含む日本社会全体の問題である。

 つまり、教育に投資してよい人材を育成することは、本人だけでなく日本経済にとっても大きなプラスなのである。そのため、近年、教育が疎かにされているのはよくない。

2)自然エネルギー
 日本は、自然エネルギーが豊富な国なので、2015年に「国連気候変動枠組条約締約国会議(通称COP)」で合意されたパリ協定は、日本にとっては、環境技術をテコに世界をリードできるまたとない機会だった(https://www.enecho.meti.go.jp/about/special/tokushu/ondankashoene/pariskyotei.html 参照)。しかし、日本政府がとった行動は、原発と化石燃料にしがみつき、自然エネルギーを軽視して、これまでどおりエネルギーを大きく海外依存することであり、このビッグチャンスを逃した。

 このように、日本が時代に合わない意思決定をして技術進歩とエネルギー構造改革の両方に失敗した理由は、自然エネルギーを軽視する理系音痴の発想が優先され、既得権益者への“バランスのよい”配慮が重視されて、国民の利益を犠牲にすることについては顧みられなかったからである。そして、これは、与野党を問わない。

 このようにして、日本は、長期間にわたってカンフル剤と称する税金の大きな無駄遣いを許しながら、自然エネルギーを使うためのインフラ整備などの価値ある投資を行わず、高いエネルギー代金を支払わせて国民をさらに貧しくさせ、日本の製造業をも海外に追い出した。このような不合理な意思決定の連続が、1990年には購買力平価で世界第3位だった日本のGDPを、それから約30年後の2019年に世界第7位まで落とした原因なのである。

3)先進国の消費者
 日本は、先進国の期間が長いため、消費者の選択が洗練されてきている。このため、この消費者によって磨かれた製品の多くが海外でも通用するが、日本は構造改革の遅延による高コスト構造の継続により、農林漁業だけでなく製造業の多くも失った。これは、政府が補助金で助ければ何とかなるというものではなく、消費者が本当によいものを選択し、よくない点についてはクレームを言うことによって、磨かれていく技術なのだ。

 つまり、消費者とは、生産者に感謝さえすればよい存在ではなく、洗練された消費者がその購買力を使って賢い選択を続けることが、技術進歩の源になるのである。しかし、政府(特に財務省)は、「福祉財源=消費税」と主張して消費税増税を行ってきたため、消費者は可処分所得の減少により購買力が減少した。

 また、財務省は、「①福祉財源=消費税」「②消費税増税反対は、ポピュリズム」等々を、メディアや御用学者を総動員して広報してきたが、①を言う国は日本のみであり、福祉はどの税収から支出してもかまわないのである。また、いくらでもある大きな無駄遣いをやめて必要な福祉に支出すれば、財源はあるのである。

 さらに、②は、財務省内だけで考えれば、「歳出と歳入を一致させるためには、増税しかない」という算術になるが、歳出を投資効果の高いものに替えて次の歳入源を増やすようにしたり、エネルギーの転換・自給で外国に支払う莫大なエネルギー代金を節約して歳入を増やしたりなど、方法はいくらでもある。

4)日本の排他的経済水域内にある資源 (海洋基本法 https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=419AC1000000033 参照)

 
    排他的経済水域内のレアメタル     排他的経済水域内のメタンハイドレート

 「日本は資源のない国」という決まり文句は何度も聞かされたが、*4-1のように、日本の排他的経済水域(EEZ)内の南鳥島海底に、リチウムイオン電池の原料となるコバルトを多く含むマンガンノジュールの塊があり、その分布面積は四国と九州を合わせた広さで、埋蔵量は日本のコバルト需要の約300年分に相当するそうだ。

 また、*4-3のように、次世代資源として海に埋蔵するメタンハイドレートの商業化に向け、高知県・高知大学・地元経済団体が高知沖の資源量を評価してもらうために国の探査候補地に応募し、2020年に産官学で新会社を設立して、2027年度以降の事業化を目指すそうだ。メタンハイドレートは、「メタンガス」が水分子と結びついてできた氷状の物質であるため、エネルギーとしてだけではなく化学製品の原料としても使える。

 そして、これらEEZに存在する資源は国の所有物であるため、大切に税外収入に結び付けて国民を豊かにし、間違っても二束三文で払い下げることのないようにすべきだ。

 さらに、太陽光も重要なエネルギーで、*4-2のように、東京都小笠原諸島の母島では、島内の電力を太陽光発電だけで賄う実証実験を始めるとのことである。小笠原諸島は、東洋のガラパゴスと呼ばれるほど多様な固有生物が生息しており、この世界自然遺産の島が自然エネルギーに切り替えると、世界に影響を与えられそうだ。

(5)歳出を随時見直して無駄を排除することができない日本


2019.12.21毎日新聞   低インフレ批判   複式簿記・発生主義会計導入国(緑部分)  

(図の説明:左図のように、新型コロナの補正予算計上前の2020年度予算は102兆6,580億円で、そのうち社会保障が35兆8,608億円《34.9%》あるため、高齢者に対する社会保障が無駄遣いだと主張する人は少なくない。しかし、年金、医療・介護は、厚労省の管理の仕方に問題があるため、丁寧な検証が必要なのだ。また、中央の図のように、実質年金や実質賃金を下げる目的でインフレ政策を主張する人も多いが、実質収入が減れば消費を減らさざるを得ないため、インフレにはならず、国民を貧しくするだけである。そのため、右図のように、多くの国と同様、複式簿記・発生主義に基づいた公会計を導入して、予算委員会・決算委員会では歳出の費用対効果を見ながら検討できるようにすべきなのだ)

1)日本の本当の無駄遣いは何か
 財政法は、1947年(昭和22年)3月31日に公布され、同年4月1日に施行されたため、*5-1のように、公債や借入金を制限することによって、戦争放棄を保証する意図があったのだそうだ。それはよいのだが、財政法が建設国債だけを例外として認め、今年度新たに発行される国債が90兆円あっても、「高齢者への社会保障は無駄遣いだ」として、年金支払債務を正確に認識して国債を発行するのを赤字国債として禁止しているのは、人権侵害である同時に、高齢者の購買力を損なって、高齢化社会で必要とされる財・サービスを磨くのを妨げている。

 一方、普天間飛行場の危険除去は、辺野古に新基地を建設しなくても他に合理的な方法がいくらでも考えられるため、大きな無駄遣いの1例が、*5-2の辺野古新基地建設だ。例えば、米軍の1部を台湾やフィリピン(海外)に移動させたり、日本国内の空港のある過疎の離島に自衛隊基地を作って米軍と共用したりすることもできる。

 そのため、沖縄県内の選挙や県民投票で辺野古新基地建設反対の民意が出ているのに、それを無視して「辺野古新基地建設を、粛々と進める」と言うのは融通が利かなすぎ、特殊な人以外は誰も喜ばず、費用対効果も悪い硬直した支出で、大きな無駄遣いなのである。

2)仏政府の随時歳出見直し
 フランス政府は、*5-3のように、新型コロナウイルスの追加経済策として、2年でGDPの4%に当たる1千億ユーロ(約12兆5500億円)を投じると発表し、その3分の1の300億ユーロを温暖化ガス排出の少ない交通手段整備などの環境配慮型経済に切り替えるためにあてるそうで、これは、近未来に向けての投資効果がある賢い選択だ。

 また、フランスの借金は2020年にGDP比121%に悪化する見通しだが、仏政府は増税を否定し、随時歳出を見直して対策による財政悪化を2025年までに吸収するとしており、これは、どこの組織でも当たり前のやり方だ。

 しかし、日本の借金は、2020年には先進国最大のGDP比237.6%になるが、日本政府は、予算の獲得(=歳出)が各省庁の既得権益となっているため、首相であっても、随時歳出を見直すことはできず、ばら撒くことしかできない(https://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/condition/a02.htm 参照)。また、野党やメディアも歳出圧力と増税圧力しかかけない。では、どうすれば、これを治すことができるかについて、3)に記載する。

3)日本の財政法の問題点と改善策
 予算委員会で、全体から見れば重箱の隅をつつくような政治家のスキャンダルばかりが取り上げられるのは、政権闘争にすぎない国民不在の議論だ。しかし、日本の財政法は、歳出のうちの①どれが無益で無駄遣いなのか ②資本生産性が低いのか ③よりよい代替案はないのか などを、予算委員会で議論するための基礎資料を迅速に提供していない。

 そのため、(元衆議院議員・公認会計士・税理士の)私が2日で書ける範囲で、以下に「日本の財政法の問題点と改善策」について記載するので、会計の専門家は、グループで議論して民主主義に資する世界に恥じない現代版の財政法を作って欲しい。

イ)利用できる直近の財務諸表と財務省の処理スピード(https://www.mof.go.jp/budget/report/public_finance_fact_sheet/index.htm 参照)
 2020年9月7日現在、国の直近の財務諸表は、平成30年度(2018年4月1日~2019年3月31日)分だが、これでは、2020年1月~3月に行われる予算委員会で、前年度(2019年4月1日~2020年3月31日)の決算書を見ながら議論することはできない。

 しかし、地方議会が、2020年4月以降の予算を議論する時には、国の予算を前提にしなければならないため、国の本予算決定のための予算委員会は、遅くとも1月~3月に終了しなければならないわけである。

 そのため、①国の会計年度を1月1日~12月31日として迅速に決算を行い、翌年の1月下旬~3月に行われる予算委員会に提示できるようにする ②国の会計年度は4月1日~2020年3月31日のままにしておき、1月~3月には前年12月31日までの決算から暫定予算を決め、5月末頃に3月31日までの決算書を見ながら本予算を確定する などの方法が考えられる。

 どちらにしても、財務省は今より迅速に決算を行わなければならないが、民間企業は多国籍企業でも2カ月以内に決算を終わらせ、納税もしているため、財務省が「できない」とは言えない筈だ。実際、複式簿記・発生主義会計を使っても、取引はクラウドで現場から逐次入力しておき、暇な時に国有財産等の棚卸をしておけば、正確な決算書を時間内に作ることは可能だ。

ロ)現金主義から発生主義、単年度主義から複数年度主義へ
i)日本の財政法は現金主義であること
 日本の財政法の財政総則(第1条~第10条)は、*5-4のように、第一章会計総則の第2条に、「①収入とは国の需要を充たすための支払財源となるべき現金の収納をいい、支出とは国の需要を充たすための現金の支払をいう」「②現金の収納には債務の負担に因り生ずるものをも含み、現金の支払には債務の減少を生ずるものをも含む」と規定しており、現金主義を明記している。このため、国の正式の財務書類は、キャッシュフロー計算書のみであり、その他は調書の位置づけとなっている。

 また、第2条に「③歳入とは、一会計年度における一切の収入をいい、歳出とは、一会計年度における一切の支出をいう」と単年度主義を明記し、第6条は「④各会計年度の歳入歳出の剰余のうち1/2以上を、翌翌年度までに公債又は借入金の償還財源に充てなければならない」としている。さらに、第41条に、「毎会計年度において、歳入歳出の決算上剰余を生じたときは、これをその翌年度の歳入に繰り入れるものとする」という規定もあるため、同じ事業でも節約して剰余金を残すよりは、無駄遣いしてでも使いきるのが得だという動機づけになっている。

 なお、第4条で「⑤国の歳出は、公共事業費・出資金・貸付金以外は、公債又は借入金以外の歳入を財源としなければならない」としているため、公債を発行して過去勤務債務の年金支払に当てることはできなくなっている。しかし、年金・医療・介護など国民から保険料を徴収して支払っている国の債務のうち、発生主義で費用計上していなかったために引当金不足が生じたものは、本来は支払うべきものであるため、基金を作ってそこに国から出資することはできそうだ。

 第9条の「⑥国の財産は、法律に基く場合を除く外、これを交換しその他支払手段として使用し、又は適正な対価なくしてこれを譲渡し若しくは貸し付けてはならない」「⑦国の財産は、常に良好の状態においてこれを管理し、その所有の目的に応じて、最も効率的に、これを運用しなければならない」というのは適切であり、EEZでの採掘権を譲渡又は貸し付けする場合には、適正な対価を得て福祉財源の補充に充ててもらいたい。また、⑦は、国の財産を棚卸して金額で表示することによって、重要性や残存耐用年数が明確になり、適切な維持管理に結び付くものだ。

ii) 日本の財政法は単年度主義であること
 日本の財政法の会計区分のうち第11条・12条は、*5-4のように、「⑧国の会計年度は、毎年4月1日に始まり、翌年3月31日に終わるものとする」としているが、これはイ)に記載したとおり、予算委員会で利用できる直近の財務諸表を前年度のものにするために工夫を要する。

 また、「⑨各会計年度における経費は、その年度の歳入を以て、これを支弁しなければならない」というのは単年度の現金主義に基づくものであり、かなり前に発生した実際の費用を把握することができないため、発生主義に変更する必要がある。

ハ)日本の財政法による予算
 *5-4の第14条~36条に予算に関する規定があり、「①歳入歳出は、すべて予算に編入する」「②工事・製造・その他の事業で、完成に数年かかるものは国会の議決を経て原則5年の年限を延長することができる」「③国が債務負担するには、予め国会の議決を経なければならない」「④災害復旧その他緊急の必要がある場合は、国は毎会計年度、国会の議決を経た金額の範囲内で債務を負担する行為を行うことができ、次の国会に報告しなければならない」と規定されており、国の歳入歳出はすべて予算として国会決議を通らなければならない。そして、この議論をするのが、衆議院・参議院の予算委員会である。

 そのため、金額の大きな重要課題について、国民が支払った税金が資本生産性よく支出されているのか否かについて検討するのが、国民の代表である国会議員で構成される予算委員会の役割だが、効果的に議論するためには、前年度の反省を踏まえつつ検討できるための正確でわかりやすい財務情報がなければならないのだ。

 また、「⑥各省大臣は、毎会計年度、管轄省庁の歳入・歳出等の見積に関する書類を作製して、財務大臣に送付する」「⑦財務大臣は、歳入・歳出等の概算を作成して閣議決定を経る」「⑧予見し難い予算不足に充てるため、内閣は予備費を計上することができる」等とされており、予算は各省庁で積算して見積もられたものが、大臣を通して内閣から国会に提出される。そして、この過程で、既得権益の死守や予算の分捕り合戦が起こるわけである。

ニ)日本の財政法による決算
 *5-4の第37条~40条には、国の決算に関する記述があり、「①各省庁の長は、毎会計年度、関係する歳入・歳出の決算報告書と国の債務に関する計算書を作製して、財務大臣に送付しなければならない」「②財務大臣は、この歳入歳出の決算報告書に基いて、歳入歳出の決算を作成しなければならない」等が書かれている。そのため、各省庁の決算報告書(事業部の決算報告書に相当)に基づいて、財務大臣が総括決算書(会社全体の決算報告書に相当)を作成する流れになっているが、日常の取引は同時に記録してよいので、処理を迅速化することは可能だ。

 また、「③内閣は、会計検査院の検査を経た歳入歳出決算を、翌年度開会の常会において国会に提出するのを常例とする」とも定められているが、民間企業の場合は多国籍企業の有価証券報告書でも3月末決算のものを5月末に監査済で株主総会に提出しており、それは期中から計画的に監査を行っていればできるため、予算委員会や決算委員会には、会計検査院の検査報告をつけた正確な財務諸表を出すべきである。

・・参考資料・・
*1-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200829&ng=DGKKZO63201200Y0A820C2MM8000 (日経新聞 2020年8月29日) 安倍首相が辞任 持病再発で職務困難、「政治判断誤れない」 来月中旬までに総裁選
 安倍晋三首相(自民党総裁)は28日夕、首相官邸で記者会見し、辞任する意向を表明した。持病の潰瘍性大腸炎が8月上旬に再発し「体力が万全でない中、政治判断を誤ることがあってはならない」と説明した。新総裁が決まり次第、内閣総辞職する。自民党総裁選(総合2面きょうのことば)は9月中旬までに実施する。首相は自身の体調に関し「7月中ごろから体調に異変が生じ、体力をかなり消耗する状況となった」と話した。8月上旬に潰瘍性大腸炎の再発が確認され、投薬を始めたと明らかにした上で「継続的な処方が必要で予断は許さない」と語った。首相は8月17、24両日に都内の病院を訪れ、24日の診断を受けて辞任の意向を固めたと述べた。「新型コロナウイルスの感染が減少傾向に転じ、実施すべき対応策をまとめたことから、新体制に移行するならこのタイミングしかないと判断した」との認識を示した。首相は第1次政権で、2007年に持病の悪化を理由に突如退陣した。「政権の投げ出し」などの批判を受けた。今回も任期途中での辞任に関し「他の様々な政策が途上にある中、職を辞すことに国民に心よりおわび申し上げる」と陳謝した。「国民の負託に自信を持って応えられる状態でなくなった以上、総理大臣の地位にあり続けるべきではないと判断した」とも表明した。北朝鮮による日本人拉致問題やロシアとの平和条約締結、憲法改正などの政治課題を挙げ「志半ばで職を去るのは断腸の思いだ」と訴えた。首相は近くトランプ米大統領と電話協議し、辞任する経緯を説明する見通しだ。自民党は次期総裁選びの手続きに着手した。28日の緊急役員会合で党総裁選の時期、形式について二階俊博幹事長に一任した。9月1日の党総務会で正式に決める。党幹部は28日夜、「遅くとも9月15日までに新総裁を決める」と明言した。新型コロナの対応が欠かせないため、党大会に代わる両院議員総会で後任を選ぶ方式を視野に入れて調整する。衆参両院の国会議員と都道府県連代表による投票となる。選出後に衆参両院で首相指名選挙を実施し、新内閣を発足させる。新総裁の任期は安倍首相の残りを引き継ぐため21年9月末までとなる。石破茂元幹事長、岸田文雄政調会長の出馬が有力視される。菅義偉官房長官を推す動きがでる可能性がある。河野太郎防衛相も取り沙汰される。石破氏は28日、総裁選出馬について国会内で記者団に「そう遅くない時期に判断したい。逃げることはあってはならない」と意欲を示した。岸田氏も都内で「次を担うべくしっかり努力をしていく気持ちは変わっていない」と強調した。首相は記者会見で、石破、岸田、菅各氏らについて「それぞれ有望な方々だ」とした。総裁選には「影響力を行使しようとは全く考えていない。そうすべきではない」との考えを示した。首相は12年12月に旧民主党から政権を取り戻して第2次政権を発足させた。官邸主導の体制を確立し第1次政権を含めた通算在任日数は桂太郎氏を超えて最長を記録した。連続在任日数でも24日に2799日に達し、歴代トップとなった。日本の首相が健康問題で退陣するのは在任中に死去した大平正芳氏を含めて戦後6例目となる。

*1-2-1:https://digital.asahi.com/articles/DA3S14602509.html (朝日新聞 2020年8月29日) 「潰瘍性大腸炎」とは―― 難病指定、患者22万人
 潰瘍(かいよう)性大腸炎は大腸に炎症が起こることで大腸の粘膜が傷つき、ただれたり、はがれたりする病気だ。下痢や血便、腹痛などの症状が出る。原因ははっきりせず、厚生労働省から難病に指定されている。厚労省の研究班によると国内では現在、約22万人の患者がいるとみられている。完治は難しいが、薬物療法が進み、日常生活が送れる「寛解」状態まで回復する人は多い。ただし、個人差はある。久留米大病院炎症性腸疾患センターの桑木光太郎医師は「ストレスは再燃(再発)につながりやすい。寛解時にも投薬治療を続ける必要があり、一生つきあっていくことになる病気だ」と話す。薬物療法では、様々な種類の炎症を抑える薬を使う。ステロイド薬は長期間使うと副作用がある。中等症以上では、点滴や注射などで投与する生物学的製剤と呼ばれる薬もある。官邸関係者によると、安倍晋三首相はこのタイプの一つ「レミケード」を使い始めたという。血球成分除去療法という治療法もある。人工透析のようにいったん血液を体外に出し、炎症の要因となる活性化した白血球を取り除いてから体内に戻す。週1回約1~2時間の治療を10回ほど続ける必要がある。炎症が続くことで大腸がんを発症したり、大腸に穴があいたりすることもある。この場合は大腸の全摘手術をすることが多い。ただし、小腸を肛門(こうもん)につなげることで、人工肛門になる人はほとんどいないという。手術後は、排便の回数は増えるものの、仕事などを続けることは可能という。

*1-2-2:https://digital.asahi.com/articles/DA3S14603708.html (朝日新聞社説 2020年8月31日) コロナと中傷 差別許さぬ姿勢を共に
 コロナ感染者に対する差別的な言動が後を絶たない。人権を傷つける見過ごせない行いであるだけでなく、感染拡大を防ぎ社会経済活動を維持していくうえでも大きな障害になる。最近では、運動部などで起きた集団感染を公表した高校と大学が理不尽な非難を浴びた。島根県の私立高では、関係ない生徒の写真もネットに掲載され、奈良県の私大の学生たちは、教育実習の受け入れ先やアルバイト先から参加や出勤の見合わせを求められたという。この2校に限らず、施設や企業などが感染者が出たことを明らかにするのは、接点があった人々に注意を促し、拡大を抑えるためだ。だが公表すると激しい攻撃にさらされるとなれば、事実を隠す方向に流れ、感染経路の追跡もできなくなる。オンライン講義を続ける大学からは「こんなふうに袋だたきにされては、感染リスクを引き受けて対面授業を再開することなど、とてもできない」との声も聞かれる。学校の正常化を妨げ、若者の日々の生活、そして将来にも暗い影を落とす。奈良の大学の地元首長は「世間さまに謝れという圧力が、私たちの心をむしばんでいく」と述べ、萩生田光一文部科学相は感染者や学校を責めないよう求めるメッセージを出した。危険と隣り合わせで患者の治療にあたる医療従事者を、周囲から排除する動きや風評被害も続く。感染者の多い地域からふるさとに帰った人が、帰省した事情などお構いなしに批判される事例も見られた。大切なのは、差別や中傷を許さない姿勢を社会全体で示し、必要な手当てを講じることだ。岩手県では、感染した個人を特定したり非難したりするSNS上の投稿を見つけると、その画像を人権侵害の「証拠」として保存している。長崎県は相談窓口を設け、必要に応じて弁護士を紹介して費用を支援するほか、悪質な書き込みがないかを調べるネットパトロールを始める。差別を禁じる条例を制定する動きも各地に広がる。コロナ対策にあたる政府の分科会もワーキンググループを作り、この問題にどう対処していくか議論することを決めた。自治体の取り組みとの連携も求められよう。感染情報の公開が差別・偏見やプライバシー侵害につながっているとの指摘もあるが、だからといって過剰な縛りをかければ、別の不安や行政への不信を引き起こしかねない。慎重な検討が必要だ。感染する可能性は誰にでもあり、感染者を責めたところで何の安心も安全も得られない。コロナの時代にどう向き合うか、一人ひとりが問われている。

*1-2-3:https://www.fnn.jp/articles/-/79432 (テレビ西日本 2020年8月31日)逮捕の少年 6歳女児も刃物で襲う 福岡 女性殺害事件
 福岡市の商業施設で女性が殺害された事件で、逮捕された自称15歳の少年が、女性を刺したあと、6歳の女の子を襲っていたことが新たにわかった。この事件では、吉松弥里さん(21)が刃物で襲われた現場近くで、銃刀法違反の現行犯で逮捕された自称15歳の少年が、吉松さんを包丁で刺したことを認める供述をしている。捜査関係者によると、少年は、その後、6歳の女の子に馬乗りになって、刃物で襲いかかっていたことが新たにわかった。女の子にけがはなかったが、少年は、人質を取ってでも捕まりたくなかったという趣旨の供述をしているという。一方、吉松さんの通夜には、多くの友人らが訪れ、別れを告げた。吉松さんの友人は「わたしたちが想像できないくらい痛かっただろうし、怖かっただろうし...」、「本当に何も関係ない人から、何で、そんなことをされなきゃいけないのかわからない」などと話した。

*1-3-1:https://www.tokyo-np.co.jp/article/51818 (東京新聞 2020年8月29日) コロナ対策・モリカケ・桜…疑惑や難題積み残し 安倍首相辞任表明に関係者ら困惑
 「国民の負託に自信を持って応えられなくなった」。新型コロナウイルスの収束がいまだ見通せない中、第1次政権に続き健康問題で辞任を表明した安倍晋三首相。記者会見では7年8カ月の実績を強調したが、森友・加計学園問題や「桜を見る会」問題では「政権の私物化」との批判がつきまとった。コロナ禍での突然の退場に「こんな中で国の責任者が退くのは残念」などと困惑や冷ややかな声が上がった。
◆「現場の声聞く姿勢が希薄」―コロナ対策
 東京都内で認可保育所を運営する社会福祉法人の臼坂弘子理事長(73)は「現場では『3密』になりやすい状況の中、保育士たちが工夫しながら必死に頑張っている。こんな中で国の責任者が退くのは残念」と話した。新型コロナによって、子どもの育ちを守る保育の必要性が明らかになったといい、「保育行政を見直してほしかった」。江戸川区の介護施設で働く40代女性職員は「正直、首相が代わっても現場は変わらない」と冷めた見方を示す。施設では、消毒や新型コロナによる面会制限で入居者のケアなど職員の業務が増え、マンパワーが足りていないといい、次の首相には「もっと介護現場に目を向けてほしい」と求めた。夏休み明けの小学校で、児童の学習や新型コロナの感染対策に追われる都内の公立小学校教員宮沢弘道さん(43)は「さまざまな問題が総括されないまま、体調を理由に辞任することになり、残念。モヤモヤした気持ちが残る」。安倍首相が2月にトップダウンで打ち出した「一斉休校」要請などで「教育の独立性が軽んじられていると感じることが多かった」と明かす。「教員は疲弊し、子どもたちはストレスを抱えている。首相は現場の声を吸い上げようとする姿勢が希薄ではなかったか」と指摘した。首相と付き合いがあった元日本医師会常任理事の伯井俊明さん(76)は「医療者の立場からすると、もう少し社会保障政策に目を向けてほしかった」と語る。新型コロナへの対応ではPCR検査の不足など不十分な面があったとしつつ、「総理大臣として、経済・社会活動と感染拡大防止の両立に努めた」と評価した。
◆「真実明らかにする努力を」―モリカケ・桜
 国会で足かけ2年にわたり追及された学校法人「森友学園」の国有地売却問題。疑惑の端緒をつかんだ大阪府豊中市議の木村真さん(55)は「首相への忖度そんたくが働き、国有地のたたき売りや公文書改ざんが起きた。この責任は免れない」と批判した。一連の問題では、決裁文書の改ざんを強制された財務省近畿財務局職員の赤木俊夫さん=当時(54)=が命を絶った。国会で安倍首相の責任を追及した宮本岳志前衆院議員(60)は「赤木さんの妻が真実を知りたいと声を上げている」と強調。「首相は自ら再調査を指示したり、昭恵氏を国会で証人に立たせたりするなど、真実を明らかにする努力をしてほしい」と訴えた。税金の私物化との批判を浴びた「桜を見る会」を巡り今年1月、首相に対する告発状を提出した沢藤統一郎弁護士は「本来は選挙で『ノー』の民意を示し、退陣させる形が望ましかった」と複雑な思いをのぞかせる。桜を見る会の問題などについては「ずさんな公文書管理や説明責任を果たさない姿勢など、負の遺産を積み残されたままだ」と疑惑解明が道半ばだとした。
◆「責任は曖昧なまま」―集団的自衛権
 他国を武力で守るなど戦争参加への道を開いた集団的自衛権についての憲法解釈を変更し安全保障関連法を整備した安倍首相。法案に反対した学生グループSEALDs(シールズ)の元メンバー、元山仁士郎さん(28)は「デモなどで声を上げ続け、自分が対峙たいじしていた安倍さんがついに辞めるのは、にわかには信じ難い感覚。あくまで体調不良ということなので、責任は曖昧なままだ」と話す。一方、日米同盟の強化が進んだ防衛省幹部は北朝鮮の弾道ミサイル開発などを例に挙げ「新たな安全保障環境に対応する基盤ができた」と評価する。ある幹部自衛官は「安倍政権になって自衛隊と官邸の距離は縮まった」と振り返るが、一方で「それが良いのか悪いのかは分からない」とも。自衛隊を憲法に明記する改憲も掲げていたが実現しなかった。幹部自衛官は「今、それが必要だとは思わなかった」とも話した。
◆「成果なく評価しようもない」―拉致問題
安倍首相が最重要課題としていた北朝鮮による日本人拉致問題は在任中、解決の糸口をつかめなかった。拉致被害者の兄で家族会元事務局長の蓮池透さん(65)は「成果は何もなく、評価のしようもない。任期中に解決する雰囲気を演出して『やってる感』を見せただけで、金正恩キムジョンウン朝鮮労働党委員長との会談も実現せず、米国のトランプ政権に丸投げしていたのが実態だった」と指摘した。安倍政権が推進してきたカジノを含む統合型リゾート施設(IR)。横浜市への誘致に反対してきた広越由美子さん(40)は「首相一人が辞めてもIR問題の解決にならない」と冷静に受け止めた。市内のJR東戸塚駅近くで街頭活動中、ニュースで辞任を知ったといい、「次の首相が推進派だと横浜への影響も大きい。警戒している」と話した。

*1-3-2:https://news.yahoo.co.jp/articles/a9a174f0e468be56f5bdc322b38815f9ac3721eb (Yahoo、J-CASTニュース 2020/8/28) 「政権私物化の批判どう思うか」→「私物化したというつもりは...」 安倍首相会見で問答
 辞任を表明した安倍晋三首相に対し、森友学園問題など政権の私物化批判をどう考えているかと記者が質問したことをめぐり、ネット上で様々な意見が出ている。安倍首相は、国会などでの説明ぶりに反省すべき点はあるとしながらも、「私物化したことはない」と全否定した。
■「森友学園問題や加計学園問題、桜を見る会の問題など...」
 この質問は、2020年8月28日夕に安倍首相が行った1時間の会見のうち、最後から2番目に出た。質問したのは、西日本新聞の女性記者だ。「歴代最長の政権の中で、多くの成果を残された一方で、森友学園問題や加計学園問題、桜を見る会の問題など国民から厳しい批判に晒されたこともあったと思います。コロナ対策でも、政権に対する批判が厳しいと感じられることも多かったと思うんですが」。こう続けたうえで、記者は、次のような問いを投げかけた。「こうしたことに共通するのは、政権の私物化という批判ではないかと思います。こうした指摘は、国民側の誤解なんでしょうか? それについて、総理がどう考えられるのか、これまでご自身が振り返って、もし反省すべき点があったとしたら、それを教えて下さい」。安倍首相は、会見終盤の疲れもあってか、渋い顔で質問を聞いていたが、批判についてはこう反論した。「政権の私物化はですね、あってはならないことでありますし、私は、政権を私物化したというつもりはまったくありませんし、私物化もしておりません。まさに、国家・国民のために全力を尽くしてきたつもりでございます」。そのうえで、自らの反省点についても述べた。「その中で、様々なご批判もいただきました。ご説明もさせていただきました。その説明ぶりについてはですね、反省するべき点もあるかもしれないし、そういう誤解を受けたのであれば、そのことについても反省しないといけないと思いますが、私物化したことはないということは、申し上げたいと思います」。私物化は誤解だとするだけに、最後はややムッとした表情になっていた。このやり取りは、ツイッター上などで話題になり、特に安倍首相に批判的な人が相次いで紹介した一方、これに反発する声も出ていた。

*1-3-3:https://mainichi.jp/articles/20200828/k00/00m/010/248000c?cx_fm=mailhiru&cx_ml=article&cx_mdate=20200829 (毎日新聞 2020年8月28日) 政権を私物化したつもりは全くないし私物化もしていない 安倍首相の辞任表明会見(8)
 安倍晋三首相は28日午後5時から首相官邸で記者会見し、健康状態を理由に辞任する意向を表明した。一問一答の詳報は以下の通り。
―ちょっと立ち入ったことになりますが、安倍政権は、これまでの政権に比べて、非常に徹底したメディア対策というものがなされた政権だというふうに思っております。例えば個別のメディアに出演されて、今まで輪番で出てきたものを個別のメディアに一本釣りのような形で出演されるとか、あるいは質問を事前に取りまとめて、それを出した社にしか記者会見で質問を当てないとかですね。かなり徹底したメディア対策というのをされた。それ自体が悪いと言ってるわけではないんですが、それは総理ご自身の指示によるものだったのでしょうか。それともワーキングレベルで行われたものが、総理は知らずにやってたものなのか、あるいは総理が仮に知らなかったとしたら、総理は