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2019.1.31 EUに遠心力が働いた理由と日本の政府債務削減・自由貿易政策への呼びかけ (2019年2月2、3、4、7、9、10、12、13、16、18、19、21、22、23、24、25、26日、3月2、3《図》日に追加あり)
  
 2018.10.21朝日新聞        2017.9.1毎日新聞      2018.11.9時事

(図の説明:英国がEU離脱の国民投票を行った際、アイルランドでは反対が多く、特に北アイルランドは民族が北欧に近い。そのためか、英国は、離脱後も北アイルランドとEUを検問なしの状態にしたがっている。また、EU離脱の手切れ金は最大5.8兆円とされている)

 
  2018.7.10毎日新聞      2019.1.6毎日新聞    2018.12.21毎日新聞

(図の説明:左図のように、1年間に入国した移住者は、ドイツ・米国が多く、英国・日本・韓国は、その1/3~1/2で同程度だ。また、中央の図のように、日本の財政は悪化の一途を辿り、現在はGDPに対する債務残高が世界一である。さらに、2019年度予算案は、歳入・歳出が右図のようになっているが、地方が稼げれば地方交付税は減らせるし、借り換えすれば国債利子は減らすことができる。また、防衛費は多すぎるだろう)

(1)「保護主義」「ポピュリズム」「ナショナリズム」の定義は何なのか
 「スイスで開かれたダボス会議は、各国でポピュリズムとナショナリズムが台頭して国際協調や自由貿易の理念が揺らぎ、グローバル化の価値に関する議論が熱を帯びた」と、*1-1-1に書かれているが、トランプ米大統領が国境の壁を作ると主張したり、メイ英首相が英国のEU離脱交渉で苦労したりしているのは、反グローバル主義ではなく、国の主権が認められないほど過度な自由化を強制されることに対する国民の異議申し立てを反映したものである。

 そのため、これら多くの国民の異議申し立てを、*1-1-2のように、ポピュリズム(*1-6のうちの大衆迎合主義)として保護主義や国際協調の危機と一刀両断するのは、日本とは違って、既に徹底してグローバル化を行ってきた国の人々が到達した真理を無視する周回遅れの解釈であり、ポピュリズムなどと言っている人の方が、思考停止していると考える。

1)日本の経産省発案のTPPについて
 日本政府は、*1-1-3のように、「自由貿易の旗手として全力を尽くす」としているが、徹底したグローバル主義のEUは、*1-2-1のように、対米貿易交渉で農産品を除外した。何故なら、世界人口が爆発的に増加している中では、長期的には食糧を自給できる政策が必要であり、*1-2-2のように、狭い範囲の現在しか考えていない政策では、経済発展どころか自国民への食料確保もおぼつかなくなるからで、これもりっぱな産業政策なのである。

2)英国のEU離脱について
 メイ首相は、*1-3-1のように、国民投票で決まったEU離脱に向けた国内の合意形成に苦労しているが、その理由は、*1-3-2のように、①350億─390億ユーロ(410億─460億ドル)ものEUへの清算金支払い ②スコットランドの独立問題 ③EUの後押しを受けた北アイルランドのEU離脱反対 などだそうで、気の毒なほどの難題だ。

 そして、*1-3-3のように、2019年1月29日、英下院はEUとの離脱合意案の修正を求める議員提案を賛成多数で可決したが、EUのトゥスク大統領は、「離脱協定は再交渉しない」「英側が要求すれば離脱延期を検討する」としているそうで、私には、EUの要求は高すぎる手切れ金に思える。

 この両方を解決する方法としては、民族がヨーロッパに近くEU離脱反対が多かったことから、北アイルランド(又はアイルランド)を特区としてEUに加盟させ、その面積分の拠出金を支払い続けて、その面積に比例して手切れ金をカットしてもらうのはどうだろうか。その時、北アイルランド(又はアイルランド)と英国の間には税関が復活するのが道理で、そうなると公用語が英語というメリットがあるため、EUを視野に入れる企業は北アイルランド(又はアイルランド)に集積することになるだろう。

3)ギリシャの緊縮策について
 ギリシャは、*1-4のように、金融支援したEUの要求で、年金削減や増税などの緊縮策により財政黒字化を達成し、2017年には3年ぶりにプラス成長に転換したが、国内総生産(GDP)はギリシャ危機前に比べて約4分の3の規模に縮小したそうだ。

 EUは単一通貨ユーロを使うため、財政統合や共通予算の導入などが要求され、金融政策や財政政策の独立性が乏しい。もちろん、①速すぎるリタイアと年金受給 ②高すぎる公務員割合では、どこの国でも持続可能性がないが、国によって積極財政による投資を行うべき時期と財政黒字化に専念すべき時期に差があり、①②を解決するには、民間のよい仕事を増やして失業率を下げなければ国民が生活できなくなる。

 にもかかわらず、EUのように一律に財政規律のみを言っていると、それぞれの国の個性を活かした発展ができず、北部欧州と南部欧州の両方で不満が溜まる。そして、多くの国民が感じているこの真実を、「内向き姿勢のポピュリズム(大衆迎合主義)」として切り捨てていると、問題を深刻化させると同時に、遠心力を働かせることになるわけである。

4)イタリアの予算について
 イタリアも、*1-5のように、2019年予算案についてEUから修正を求められ、その内容は、公的債務の多いイタリアの支出増に対する懸念だそうだが、やはり失業者に対する支出を減らすには積極財政によって必要な投資を行い、失業者を減らす必要がある。そして、イタリアもギリシャも、歴史的建造物は壊れ、街が博物館のようになっているため、やるべき仕事は多い。

 なお、イタリアの公的債務残高は対GDP比131パーセントで、EU加盟国では金融支援を受けたギリシャの債務残高(GDP比179%《2016年》)に次いで2番目に多いとのことだが、これは、*2の日本の政府債務(GDP比239%《2016年》)よりずっと低い。しかし、公的債務や政府債務のみを取り上げて議論するのは間違っており、国有財産を差し引いた純債務について議論すべきであり、国有財産(資源を含む)は活かして使わなければならないのである。

(2)日本政府の債務について
 主に日本の財務省発の意見なのだが、*2は、GDP比で239%(2016年)もの世界一の借金を抱えている日本政府の財政の悪化が真の国難であり、その解決策は、①ハイパーインフレによる国の借金棒引き ②大幅増税 ③社会保障費などの国民に対するサービスの大幅削減 しかなく、①は副作用が強すぎるため、②③の併用を徐々に進める以外には処方箋はないとしている。

 この思考でおかしいのは、歴史のみを参考にし、条件は変わらないと見做して、小中学生でもできるような数字の加減乗除だけで結論を出していることだ。しかし、実際には、これまで利用していなかった資源を利用できるようになったり、生産性が飛躍的に伸びたり、それを支える国民の教育水準が上がったりしているため、それらを無駄にすることなく利用すべきなのだ。

・・参考資料・・
<国境を護ることは、大衆迎合主義か?>
*1-1-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190127&ng=DGKKZO40529660W9A120C1EA1000 (日経新聞 2019年1月27日) ダボス会議を陰らす反グローバル主義
 スイスで開いた世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)は、グローバル化をめぐる世界のきしみを色濃く映し出す会合となった。各国でポピュリズムとナショナリズムが台頭し、国際協調や自由貿易の理念が揺らぐ中で、グローバル化の価値をどう再定義するかという議論が熱を帯びた。政治ショーとして見ると、今年のダボス会議は精彩を欠いた。トランプ米大統領、メイ英首相、マクロン仏大統領らが、国内の混乱のため欠席したためだ。米国の「国境の壁」や英国の欧州連合(EU)離脱をめぐる騒動は、それぞれの国内で高まる反グローバル主義の帰結でもある。自分がグローバル化の犠牲者だと感じる人々が増え、多くの民主主義国で排外的な政治家が支持されている。この世界の現実に目を背けることはできない。グローバル化の旗を振ってきたダボス会議が、グローバル化のあり方を問い直す場に変質したといえる。だが、ダボスを悲観論が覆っていたわけではない。ショーの派手さはないが、企業経営者や学術界の重鎮が、膝を詰めて議論を深めた意義は大きい。単にグローバル化を礼賛するだけの理想論は聞こえず、課題ごとに現実的な打開策を探ろうとする声が目立った。注目を集めた個別の議題には、機能不全に陥った世界貿易機関(WTO)の改革、データ流通の国際ルールづくり、人工知能(AI)開発の指針、プラスチック環境汚染への取り組みなどがある。こうした国家単位では解決できない課題に焦点を当てて、各国の有力者が問題意識を共有すれば、反グローバル主義の抑制にもつながる。会議で浮き彫りになったのは、格差や衝突を生むのではなく多様な価値観を包み込む新しいグローバル化への期待である。米中欧の首脳がいないダボス会議は、安倍晋三首相が存在感を示す好機となった。日本が主導した電子商取引(EC)の国際ルールづくりで、中国を含む76カ国・地域が正式協議の開始で合意したのは、日本外交の成果といえる。とはいえ、6月に大阪で開く20カ国・地域(G20)首脳会議への意欲を語る首相の講演が、大きな反響を呼んだとは言い難い。米欧の指導力が衰えた今、国際秩序の再構築で日本が果たすべき役割は重い。世界に向けて語る言葉が説得力を持つには、経済と外交で着実に実績を積むしかない。

*1-1-2:http://qbiz.jp/article/147291/1/ (西日本新聞 2019年1月17日) 反保護主義へ、日本がG20主導 麻生氏「国際協調が危機」
 新興国を含む20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁代理会議が17日、東京都内で開かれ、日本が議長国を務める2019年のG20が始動した。米中貿易摩擦が深刻化する中での開催となり、麻生太郎財務相は冒頭で「国際経済秩序や国際協調は危機にひんしている」と強調。反保護主義や自由貿易体制の維持に向け、日本が議論を主導していく決意を表明した。日銀の黒田東彦総裁も「国際貿易は経済成長や生産性の向上をもたらす」と述べ、自由貿易の重要性を訴えた。代理会議は18日まで。G20は08年に起きたリーマン・ショックの克服に成果を上げたが、昨年の首脳宣言ではトランプ米政権の意向で反保護主義の文言が削られるなど、最近は協調体制の揺らぎが目立つ。米国が問題視する貿易赤字は旺盛な国内消費などの構造要因によるもので、米中や日米などの2国間交渉では解決困難だとの認識の共有を目指す。また中国を念頭に途上国融資の規模などの透明化を提案。米中に自制を促し、世界経済の安定成長への回帰を狙う。多国籍IT企業のデジタル取引への課税や仮想通貨への規制でも国際的な合意を目指す。高齢化による労働力不足などを乗り越える経済政策も議題とする。議論は、6月の財務相・中央銀行総裁会議(福岡市)や首脳会合(大阪サミット)に向けて行われる。日本はG20議長国として農相会合(新潟市)や労働雇用相会合(松山市)なども主催する。

*1-1-3:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO40223950Z10C19A1000000/ (日経新聞 2019/1/19) TPP閣僚級会合が開幕 首相「自由貿易の旗手へ全力」
 環太平洋経済連携協定(TPP)に参加する11カ国の閣僚級会合「TPP委員会」が19日、都内で開幕した。安倍晋三首相は会合の冒頭で「自由貿易の旗手として全力を尽くす決意だ」と述べた。「保護主義への誘惑が生まれているが、時計の針を決して逆戻りさせてはならない」と強調した。米中が追加関税の応酬を繰り広げるなど保護主義が世界で広がっており、首相は自由貿易圏の拡大の重要性を訴えた。TPPは昨年12月に発効した。閣僚級会合の開催は発効後初めて。茂木敏充経済財政・再生相が議長を務める。新たに加入を希望する国・地域との具体的な交渉手順などを正式に決定する。首相は「私たちの理念に共鳴し、TPPのハイスタンダードを受け入れる用意のある全ての国・地域に対し、ドアはオープンだ。自由で公正な貿易を求める多くの国々の協定への参加を期待している」と述べた。閉幕後に共同声明を発表する。

*1-2-1:http://qbiz.jp/article/147404/1/ (西日本新聞 2019年1月19日) EUが対米貿易交渉指針案を発表 農産物除外、立場に隔たり
 欧州連合(EU)欧州委員会は18日、米国との貿易交渉の指針案を発表した。工業製品の関税や非関税障壁の撤廃で合意を目指すことに集中し、農産品は交渉から「除外する」としている。ただ、米通商代表部(USTR)は11日、対EU交渉で農産品の包括的な市場開放を目指すと議会に通知。米欧の立場の隔たりは大きく、交渉入りが遅れる可能性がある。その場合、業を煮やしたトランプ米大統領が、欧州製自動車などに対する高関税導入を再び訴える恐れもありそうだ。EUの通商担当閣僚に当たるマルムストローム欧州委員は記者会見で、交渉開始時期は「(加盟国の貿易担当)閣僚理事会が決める」と述べるにとどめた。また、広範な自由貿易協定(FTA)を結ぶつもりはないと強調した。米農産品の輸入拡大はEU有力国で農業国のフランスなどが強く反対している。ユンケル欧州委員長とトランプ大統領は昨年7月、「自動車を除く工業製品」の関税撤廃協議の開始で合意。これによってトランプ氏が「本丸」と位置付ける欧州製自動車への高関税の発動をひとまず阻止した。

*1-2-2:https://www.agrinews.co.jp/p46499.html (日本農業新聞 2019年1月22日) 政治経済システムと経済学の欠陥 誤った「合理性」前提  東京大学大学院教授 鈴木宣弘氏
 日本は「保護主義と闘う自由貿易の旗手」のように振る舞っている。規制緩和・自由貿易を推進すれば、「対等な競争条件」で経済利益が増大すると言われると納得してしまいがちであるが、本質は、日米などのグローバル企業が「今だけ、金だけ、自分だけ」(3だけ主義)でもうけられるルールを世界に広げようとするたくらみである。現地の人は安く働かされ、国内の人も低賃金で働くか失業する。だから、保護主義VS自由貿易は、国民の利益VSオトモダチ(グローバル企業)の利益と言い換えると分かりやすい。彼らと政治(by献金)、行政(by天下り)、メディア(byスポンサー料)、研究者(by資金)が一体化するメカニズムは現在の政治経済システムが持っている普遍的欠陥である。環太平洋連携協定(TPP)は本来の自由貿易でないとスティグリッツ教授は言い、「本来の」自由貿易は肯定する。しかし、「本来の」自由貿易なるものは現実には存在しない。規制緩和や自由貿易の利益の前提となる完全雇用や完全競争は「幻想」で、必ず失業と格差、さらなる富の集中につながるからである。市場支配力のある市場での規制緩和(拮抗=きっこう=力の排除)はさらなる富の集中により市場をゆがめるので理論的に間違っている。理論の基礎となる前提が現実には存在しない「理論」は本来の理論ではない。理論は現実を説明するために存在する。「理論」に現実を押し込めようとするのは学問ではない。3だけ主義を利するだけである。本質を見抜いた米国民はTPPを否定したが、日本は「TPPゾンビ」の増殖にまい進している。実は、米国の調査(2018年)では、国際貿易によって国民の雇用が増えるか減るかという質問への回答は、米国が増加36%、減少34%に対し、日本は増加21%、減少31%。日本人の方が相対的に多くが貿易が失業につながる懸念を持っているのに、政治の流れは逆行している。理由の一つは、日本では国民を守るための対抗力としての労働組合や協同組合が力を巧妙にそがれてきたことにある。米国では最大労組(AFL―CIO)がTPP反対のうねりを起こす大きな原動力となったのと日本の最大労組の行動は、対照的である。 「自由貿易に反対するのは人間が合理的に行動していないことを意味する。人間は合理的でないことが社会心理学、行動経済学の最近の成果として示されている」と言う経済学者がいるが、行動経済学は人間の不合理性を示したのでなく、従来の経済学の前提とする合理性を否定したのである。3だけ主義で行動するのが「合理的」人間ではなく、多くの人はもっと幅広い要素を勘案して総合的に行動する。それが合理性である。米国でシカゴ学派の経済学をたたき込まれた「信奉者」たち(無邪気に信じているタイプも意図的に企業利益のために悪用しているタイプも)は、誤った合理性と架空の前提という2大欠陥を直視すべきだ。

*1-3-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190117&ng=DGKKZO40100720X10C19A1MM0000 (日経新聞 2019.1.17) 英議会、僅差で内閣不信任案否決 メイ首相続投、EU離脱 混迷続く
 英議会は16日夜(日本時間17日早朝)、メイ内閣の不信任決議案を採決し、与党・保守党などの反対多数で否決した。メイ首相はひとまず目先の危機を乗り切り、欧州連合(EU)からの離脱に向けた国内の合意形成に注力する。ただ15日に大差で否決された英・EUの離脱案に代わる案をまとめるのは簡単ではなく、英政治の混迷は続きそうだ。不信任決議案は英・EUで合意した離脱案の否決を受けて、野党第1党の労働党が提出した。採決には下院議員650人のうち、議長団などを除いた議員が参加。賛成306票、反対325票だった。閣外協力している北アイルランドの地域政党、民主統一党(DUP)の10人が反対に回り、DUPの支援がなければ不信任決議案が可決しかねない僅差の投票結果だった。続投が決まったメイ首相は「国民との約束であるEU離脱のために働き続ける」と語った。15日の離脱案の採決では保守党など与党内から大量の造反が出たため、政府側が230票差という歴史的な大差で敗れた。だが今回の不信任決議案では与党議員が解散・総選挙で議席を失うことを恐れ、メイ首相の支持に回った。不信任を免れたメイ英首相は今後、21日までに代替案を議会に提示する。英議会によると代替案の採決は30日までに行われる予定だ。メイ首相は英議会で支持を得られる案をつくるため、各党幹部と個別に会談を重ねる方針。そこで国内の意見を固めたうえで、EUとの再協議に臨みたい考えだ。ただ英議会ではEUとの明確な決別を求める意見もあれば、2度目の国民投票によるEU残留を求める声もあるなど議論の収拾がつく見通しは立たない。一方、EU側は離脱案の修正を認めておらず、仮に英側が超党派協議で案をまとめてもそれを受け入れるとは限らない。代替案が1つに絞れない中で経済に混乱を及ぼす「合意なき離脱」を避けるには、離脱時期の延長も視野に入る。欧州委員会の報道官は「英国が正当な理由を示せば、EU首脳は離脱時期の延期を受け入れる可能性がある」と語った。

*1-3-2:https://blogos.com/article/324715/ (ロイター 2018年9月13日) 英EU離脱交渉、合意可能だが決裂なら清算金支払わない=英担当相
 英国のラーブ欧州連合(EU)離脱担当相は12日付の英紙デーリー・テレグラフへの寄稿で、離脱後の関係を巡るEUとの合意は手の届くところにあるとの見方を示した。ただ、交渉が決裂した場合は離脱に伴う「清算金」の支払いを見送ることになると表明した。EU当局者らによる最近の発言を背景に、英国とEUが将来的な通商関係について合意することは可能との期待感が強まっており、ポンドは他通貨に対してここ数週間で上昇している。ただ、来年3月29日の離脱日が刻一刻と近づくなか、交渉はまだ決着しておらず、「合意なきブレグジット(英EU離脱)」のシナリオがなお存在している。ラーブ氏は「EUが英国に匹敵する野心と現実主義を掲げるならば、合意は手の届くところにある」と記した。EUのバルニエ主席交渉官が最近使った表現を踏襲した。ラーブ氏はまた、「合意なき」離脱は短期的な混乱をもたらすことになるが、「それを埋め合わせるだけの機会」が英国側に生じることになると指摘。「その場合は英政府はEUと合意した清算金を支払わない。全体の合意がなければ個別の合意は成立しない」と続けた。英国は既に350億─390億ユーロ(410億─460億ドル)の清算金の支払いに合意している。英国のEU離脱後、数十年間かけて支払うことになっている。

*1-3-3:http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2019013001001028.html (東京新聞 2019年1月30日) 英、離脱再交渉要求 EUは拒否、延期検討も
 英下院は29日夜(日本時間30日朝)、欧州連合(EU)との離脱合意案の修正を求める議員提案を賛成多数で可決した。EUに同案の再交渉を求める方針を示したメイ首相を支持した形だが、EUのトゥスク大統領は声明で、合意案の根幹である離脱協定は「再交渉しない」との姿勢を明確にした。離脱が3月29日に迫る中、経済や社会に大混乱をもたらしかねない「合意なき離脱」が一段と現実味を増した。
メイ氏は近くEUに再交渉を求める方針だが、局面打開の見通しは立っていない。こうした中、トゥスク氏は英側が要求すれば離脱延期を検討する用意があると表明した。

*1-4:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO34355090Q8A820C1EA1000/ (西日本新聞 2018/8/20) ギリシャ、自立へ一歩 EUの金融支援が終了
 欧州債務危機の震源地となったギリシャは20日、8年に及ぶ欧州連合(EU)の金融支援から脱却した。ギリシャは自立に向け国債市場に本格復帰し、安定発行という課題に向き合う。一方、単一通貨ユーロの改革は財政統合や共通予算の導入を巡り停滞、危機の再発防止に不安を残す。「生活が良くなる見通しがない。何も変わらない」。20日朝、アテネ中心部の議会前。5年前の失業を機に清掃の仕事を続けるユージニアさん(49)はこぼした。週5日1日12時間働くが月給は400ユーロ(約5万円)にすぎない。ギリシャは2009年に財政粉飾が発覚し、世界の金融市場を揺さぶった。10年から3次にわたった支援の融資総額は国際通貨基金(IMF)拠出分を加えると約2900億ユーロに達した。年金削減や増税などの緊縮策によって、ギリシャは財政黒字化を達成、17年には3年ぶりにプラス成長に転換した。だが、国内総生産(GDP)は危機前に比べ約4分の3の規模に縮小した。ギリシャは今後、債務の借り換えなど財政運営に必要な資金を国債市場から直接調達する。しかし金利はユーロ圏の低利融資を上回り、19年9月に任期満了が迫るチプラス政権も有権者受けを狙ったばらまき策の誘惑がつきまとう。国債の安定発行は容易ではないのが実情だ。四半期ごとに財政規律の順守を点検・監視するEUやIMFとの衝突懸念も拭えない。それでも「グレグジット」(ギリシャのEU離脱)まで取り沙汰されたギリシャ危機だったが、ユーロはひとまず生き延びた。ユーロ圏は危機時に加盟国を支援する常設基金「欧州安定メカニズム(ESM)」を創設。EU基本条約(リスボン条約)上は禁じていた加盟国への財政援助・金融支援に道を開き、危機時の耐性を強化。圏内でバラバラだった金融機関の監督なども一元化した。しかし、ギリシャ危機を結束して乗り切ったものの、平時から危機を予防するユーロ改革は道半ばだ。最たるものが「通貨はひとつだが、財政はバラバラ」という根本問題への対応。ユーロ圏の共通予算編成などを通じて、ドイツなど豊かな北部欧州から南欧への財政資金を移転する必要性が指摘されながらも、南欧のモラルハザードにつながるとの北部の懸念が強く、実現は遠い。ユーロ圏各国でも広がるポピュリズム(大衆迎合主義)の内向き姿勢もユーロ改革をさらに難しくしている。イタリアではポピュリズム政党「五つ星運動」と極右政党「同盟」の連立政権がギリシャ危機の反省で強化されたEUの財政規律ルールに反発。財政を巡る南北対立が再び深まる懸念が強まり、次の危機に結束した対応が取れるかどうかは不透明だ。19年で退任するユンケル委員長をトップとするEUの欧州委員会は現体制下での抜本的ユーロ改革を実質的に断念した。欧州が懸念するのはギリシャだけではない。米国との対立を端緒に通貨が急落したトルコの動きに神経をとがらせる。ギリシャの公的債務残高は17年末時点でGDP比約179%に達するのに対し、約28%のトルコ政府は財政体質は健全とみられるが、政権の強権化や中銀への圧力が通貨の信認低下を招いている。トルコで懸念されているのは、外貨建て債務負担の増大に苦しむ企業の破綻が相次ぎ、影響が銀行部門に及ぶ事態だ。トルコには欧州の主要行も進出している。ギリシャとは異なる種類の金融危機が欧州を襲う可能性は消えていない。

*1-5:https://www.bbc.com/japanese/45961814 (BBC 2018年10月24日) 欧州委、イタリアに予算案修正を要求 史上初
 欧州連合(EU)の欧州委員会は23日、イタリアの2019年予算案についてイタリア政府に修正を求めた。EU加盟国の国家予算案を欧州委員会が拒否したのは初めて。イタリアはユーロ圏で3番目に大きい経済規模を持つが、ただでさえ公的債務の膨らむイタリアの支出増を欧州委員会は懸念している。政権与党のポピュリスト政党「同盟」と「五つ星運動」は、失業者への最低収入保証など支出増を伴う選挙公約の実現を約束している。欧州委員会はイタリアに求める新たな予算案の提出期限を3週間とした。イタリアの予算原案は、欧州委員会の勧告に順守していない部分があり、それが「特に深刻」だと委員会は懸念を示している。欧州委員会のユーロ問題担当副委員長、バルディス・ドムブロフスキス氏は、委員会の懸念に対するイタリアの回答は、懸念緩和に「不十分」だったと指摘。ユーロの規則は全加盟国に平等だと述べた。イタリアのルイジ・ディ・マイオ副首相はフェイスブックに、「イタリア予算案が初めて、EUに嫌われた。特に驚かない。EUではなく、イタリア政府が作った初のイタリア予算だからだ!」と書いた。もう1人の副首相マッテオ・サルビーニ氏は、EUに予算を拒否されても「だからといって何も変わらない」と付け加えた。サルビーニ副首相は「欧州委員会は政府ではなく、国民を攻撃している。イタリア国民をさらに怒らせるだろう」と述べた。
●イタリアがより多くの支出を望む理由
 今年発足したイタリア新政権は、失業者への最低収入保証などによる「貧困の終結」を約束している。
他の貧困対策には、減税や定年引き上げ撤廃など、3月の選挙で重要公約を実現するための施策が含まれている。EUに反発するジュゼッペ・コンテ首相はすでに、財政赤字が国内総生産(GDP)の2.4%より大きくなることはないと主張していた。ただ、財政赤字目標は前政権が提示した予算案の3倍となっている。イタリアの公的債務残高は対GDP比131パーセントとなっており、EU加盟国では金融支援を受けたギリシャに次ぐ2番目。この債務を無理に返済すれば、10年前の金融危機からいまだ回復できていないイタリア国民を苦しめると政府は主張している。イタリア経済は依然として金融危機前の2008年の水準まで回復していない。同盟と五つ星運動は、支出増が経済成長に弾みをつけるとしている。
●劣悪なイタリアの債務状況
 ユーロ離脱について中立を保つイタリアのジョバンニ・トリア財務相と、海外アナリストは、イタリアの財政赤字が対GDP比2%以下を維持し、場合によっては1.6%の低水準にまで下がってほしいと期待していた。EUはユーロ圏の規則として、財政赤字をGDPの3%以下とするよう求めている。GDPの2.4%というイタリアの財政赤字状況はこの制限値に近づいており、同国の債務状況は警戒が必要な水準になっている。ドムブロフスキス副委員長は、「欧州委員会がユーロ圏内の国に予算案草案の修正を求めざるを得なくなったのは今回が初めてだが、イタリア政府にそう要求する以外の代替案はないと判断した」と述べた。イタリアの納税者が、教育費と同じくらいの額を公的債務返済にあてなくてはならない事態になっていると、ドムブロフスキス氏は指摘した。同氏は「ルール違反は、最初は魅力的に見えるかもしれない。自由になるという幻想を提供してくれるので」と述べた。「借金を借金で返そうとするのは、魅力的かなこともしれない。しかしいずれ、債務負担が限界を超えてしまえば(中略) 最終的には一切の自由を失ってしまう」。イタリアが予算案を9月に発表すると、市場の混乱は数週間続いた。欧州委員会が23日にイタリア予算案を拒否すると発表するまで、欧州市場の株価は過去2年近くで最低水準まで下落した。委員会の発表後、市場におけるイタリアの地位の相対基準として使われるイタリア・ドイツ10年債利回り格差は、過去最大となる314ベーシスポイントまで広がった。
<解説>イタリアは譲らない――ケビン・コノリー、BBC欧州特派員
 イタリアはEUと衝突する道に突進しており、論争はユーロ圏を未知の領域に導いている。
EU当局は予算案を拒否し、修正案を要求する権利を持つ。要求が無視されれば、罰金を科すこともできる。EUがこの段階まで進むのは初めてだ。EUの政治的エネルギーは現在、英国のEU離脱交渉に吸い取られている。その最中だというのに、EUはさらに、最大級の加盟国との対立を長引かせることと、他のユーロ圏各国にルール違反をさせないよう強硬策でにらみを利かせることの是非を、比較検討しなくてはならない。イタリア政府は、自分たちが決めた対策は成長回復に必要なものなので、譲歩するつもりはないと主張している。

*1-6:https://dictionary.goo.ne.jp/jn/205148/meaning/m0u/ (Goo) ポピュリズムの意味
 1 19世紀末に米国に起こった農民を中心とする社会改革運動。人民党を結成し、政治の
   民主化や景気対策を要求した。
 2 一般に、労働者・貧農・都市中間層などの人民諸階級に対する所得再分配、政治的
   権利の拡大を唱える主義。
 3 大衆に迎合しようとする態度。大衆迎合主義。

<日本の財政>
*2:https://blogs.yahoo.co.jp/sansantori/43451236.html?__ysp=5pel5pys44Gu5YWs55qE5YK15YuZ5q6L6auYIOWvvkdEUOavlCDoqJjkuos%3D (Yahoo 2017/10/22) 政府債務が対GDP比200%超の国の末路-(1)
 昨夜から雨。今日は衆院選の投票日。午後からは台風接近で雨に加えて強風が吹きそうなので、午前中に投票所に行く予定。安倍総理によると今回は「国難」選挙だそうだが、真の国難とは、日本政府の財政の悪化だろう。GDP比で239%(2016年)もの世界一の借金を抱えている国の国政選挙だというのに、各党の立候補者も、これについては一言も触れようとしない。このままでは、国民全体が本当に「ゆでガエル」になってしまう。書店に行くと、「国の借金をもっと増やしても日本は大丈夫だ!」と主張する本が未だに山積みされている。ということは、今までの延長線上を走っていれば問題ないと考えている日本人が、まだまだたくさんいるということを示している。この機会に、この問題について明確にしておきたい。まずは、過去の歴史のおさらいから。下に過去約130年間の日本政府債務の推移のグラフを示す。青色で示した純債務は、粗債務から政府の保有する金融資産を引いた残りを示している。小さなものも入れると粗債務のピークは三つある。1905年前後の日露戦争、1944年のピークは太平洋戦争、1990年前後のバブル崩壊であり、前の二つは戦争からの財政回復過程である。現在、急速に進行中の政府債務増加は、いつがピークになるのだろうか?さっぱり先が読めない。日露戦争の後、当時の明治政府の財政規律は厳格であった。プライマリーバランスが厳しく守られ、財政は順調に回復している。一方、先の大戦直後の急激な回復は、いわば国による債務の踏み倒しであり、国による国民財産の強奪によって成し遂げられたものである。ハイパーインフレ(消費者物価が戦前の350倍に急騰)と、新円切り替えの強行によって、銀行や国民が抱えていた発行済の国債は紙くずに化けてしまった。国家財政の破産、デフォルトにほかならない。バブル崩壊後のわずかな回復については、プライマリーバランスの健全化と若干の経済成長によるものであった。この辺は大事なところなので、このグラフの出典元である次の記事をぜひ読んでいただきたい。特に、プライマリーバランス実現の先送りを表明した安倍総理、ならびに消費税8%→10%実施の先送りを唱えている野党幹部は必読すべきだと思う。
●「政府債務の歴史に教えられること」 独立行政法人 経済産業研究所
 さて、現在の日本のように対GDP比で200%を超える政府負債を抱えた国家が、破産に陥ることなく健全に財政を回復できた例はいままでにあったのだろうか?筆者は最近、この点に興味を持って時々調べているが、現在までの調査結果によれば、デフォルトを回避できた例は過去にたった二例しかない。いずれも英国に関するものである。一方、過剰な政府債務が原因で国家破綻した例は、それこそ無数にある。下に、英国の過去300年間にわたる政府債務の推移を示す。米国と日本の推移も合わせて示している。なお、このグラフも、上に挙げた経済産業研の記事からの引用である。第二次大戦後の日本のように国家破綻した場合には、債務が急速にほぼゼロとなる。これに対して、英国・米国のように、経済成長、緊縮財政、ゆるやかなインフレによって安全に財政が改善した場合には、債務は時間をかけて徐々に下降していることがよく判る。英国の政府負債推移の中の1820年前後のピークは、1815年に終結した対仏ナポレオン戦争の戦費によるものである。この巨額負債は、大英帝国の全盛期であった19世紀末のビクトリア女王の時代までかかって返済されている。ご存知のように、19世紀の英国はインドや東南アジアなどの海外に膨大な植民地を領有していた。国内では蒸気機関を応用した鉄道や織物産業などが飛躍的に発展して産業革命が進行中であった。また、インドで栽培したアヘンを中国に売りつけるなど、軍事力を背景として弱小国から強引に利益を強奪する手法も得意技だった。これらの急速な経済発展と利益蓄積によって、対GDP比200%の政府負債を約50%まで削減できたのである。次の英国政府負債のピークは、第二次大戦中の1945年の約250%である。1914年に勃発した第一次世界大戦の戦費返済が進まないうちに、第二次世界大戦が始まってしまったのである。二度の大戦後の英国は海外植民地が次々に独立、世界経済の中心は米国に移って国内経済は疲弊した。戦後すぐの労働党による主要産業の国有化も失敗に終わり、英国の製造業はほぼ壊滅した。閉塞状況下の1950年代にはアラン・シリトーの「長距離走者の孤独」などに描写された「怒れる若者たち」が現れた。この流れを受けて1960年代にはリバプールにビートルズ(戦後の英国における最大の世界貢献?)が誕生した。この時期の英国社会の困窮については、次の記事からも読み取ることができる。
●「GDP比250%の政府債務を二度も返した英国」
 1945年から約40年をかけてぼう大な戦費をほぼ返済したわけだが、この間のインフレ率が高かったことも、国民生活では困窮したものの、負債の軽減には効果があった。英国経済が上向きに転じたのは、今世紀になってから世界経済のグローバル化によってロンドンが金融業の中心地として復活したためとされている。現在の国際社会においては、19世紀の英国のような、海外植民地からの収奪、アヘン戦争勝利などによる相手国からの賠償金獲得などは、到底、実行不可能である。日本政府がいま抱えている巨額の政府負債の解消は、次の三種類の方策のいずれかによるほかはない。
① ハイパーインフレによる国の借金棒引き、要するに国家の破産宣言
② 大幅増税
③ 社会保障費などの国民に対するサービスの大幅削減
①は政府自体が無責任極まりないし、あまりにも副作用が強く、かつ社会の大混乱は必至であり回避するのが当然である。②と③の併用を徐々に進める以外には処方箋はないはずだ。国内のエコノミストや経済誌の記事の大部分もほぼ同じ結論なのだが、一部には、「まだ国の借金を増やしても全然OK」というトンデモ論を吹聴している者がいる。「世の中には、タダのメシなどない」(There ain't no such thing as a free lunch.)。次回は、このトンデモ論の中味について調べて見たい。なお、次の資料には、世界各国で過去に発生した国家破綻・デフォルトの事例が多数挙げられています。
●「財政再建にどう取り組むか」 日本総研
 この資料の中の各先進国債務の比較図を下に示しておきましょう。ベルギーやイタリアはいったん債務が100%を超えたものの、自力での財政再建努力によっていくぶんかは回復しています。数年前には破綻が危惧されたあのギリシャも、2016年時点の債務残高はGDP比で179%と最近は債務の増加が止まっています。一貫して債務が増え続けているのは日本だけです。

<国民の資産を大切に活かそう>
PS(2019年2月2、3日追加):*3-1のように、九州・沖縄で大学発ベンチャーの育成を目指して、産学組織「九州・大学発ベンチャー振興会議」が活動しておりよいことだが、課題は「大学から良いシーズが出るかどうか」だけでなく、「良いシーズを見つける眼力」と「育てる力」もある。
 例えば、*3-2のミノムシ糸の量産は、「新たな繊維強化プラスチックとして実用化でき、飼育は温度管理などを徹底すれば場所を選ばない」とされる。また、*3-3のように、温度管理の費用を抑えるために、暑さに強い蚕の新品種を開発することも可能であり、蚕にいろいろな遺伝子を組み込めば、蚕を工場とすることもできる。そして、これらは、教育水準の低い移民の女性にもでき、付加価値の高い仕事にすることが可能だ。さらに、*3-4のように、他国と同じワインやチーズを作って価格競争に苦しまなくても、日本の自然や技術を活かした良い製品を作れば新市場が開けるだろう。例えば、ワインは葡萄を原料にしなくても、耕作放棄されたみかん畑や梨畑のみかんや梨を使って美味しいものができるし、アイスクリームのような冷凍技術を使えば、船で安価に輸送でき、日本独自の美味しさを輸出することも可能だ。そして、このように、地方にも多くのシーズが眠っているため、*3-5のように、水需要が減少していると考えるのは早計だ。近年は、特に水に関して節水を行いすぎて不潔な状況が散見されるため、まずは水不足にならず、節水しなくても流水で十分に洗える社会を作って欲しい。
 なお、*3-6のように、生産調整して作らないことに奨励金を出すやり方は、補助金を使ってやる気を失わせ、耕作放棄地を増やす結果となるなど、稲作で既に失敗している。仮に「“供給過多”で価格を押し下げている」のであれば、国産の牛乳・米粉・小麦粉などと合わせた加工品(プロも使うケーキスポンジ等)にし、国内外に新しい市場を作ればよいと思われる。
 最後に、*3-7の種子は、長年かけて作られた知的所有権の塊であるにもかかわらず、農水省があっさりと種子法を廃止して、国民の財産を投げ捨てた。それに危機感を感じて、地方自治体で種子法を事実上“復活”させたのはよいが、種子を守り育てるためには予算が必要なので、こういう投資にこそ補助金が必要なのである。

   
2018.12.6ITmedia NEWS 2016.2.25毎日新聞      2019.1.17上毛新聞

(図の説明:左図のように、みのむしから世界最強の糸を取りだすことができ、量産も可能だそうだ。また、中央の図のように、蚕は目的の遺伝子を注入することによって、さまざまな特性を持った絹糸を作ることができる。さらに、右図のように、暑さに強い蚕もできている。生物系は、物理・化学よりも科学としての研究・開発が遅れていたため、現在はシーズの宝庫になっており、やり方によっては○兆円市場が期待できそうだ)

*3-1:http://qbiz.jp/article/148161/1/ (西日本新聞 2019年2月2日) 九州の大学発ベンチャー支援、初年度は5400万円拠出 10大学から20件応募
 九州・沖縄で大学発ベンチャー企業の育成を目指す産学組織「九州・大学発ベンチャー振興会議」は1日、事業化に向けた資金を援助する「ギャップ資金」として、2018年度は20件のシーズ(種)に対し、5400万円を拠出したと発表した。18年度が初の資金提供で、10大学から20件の応募があった。5400万円のうち、会議のメンバー企業などが1700万円、ふくおかフィナンシャルグループ企業育成財団が1千万円、残りを大学が負担した。19年度は最大8千万円の拠出が目標。同会議は「メンバー企業や提供額の上積みに加え、大学から良いシーズが出るかどうかが鍵になる」と話した。ギャップ資金は、大学の研究成果の事業化に向け、試作品開発や市場調査に活用する資金。同会議は昨年3月、メンバーの大学や企業が折半し、18年度から5年間、毎年5千万円程度を拠出する計画に合意していた。

*3-2:http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1812/06/news077.html (ITmedia NEWS 2018年12月6日) 「クモの糸を凌駕する」ミノムシの糸、製品化へ 「世界最強の糸」と期待
 医薬品メーカーの興和(名古屋市)と、農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構・つくば市)は12月5日、ミノムシの糸の製品化を可能にする技術開発に成功したと発表した。ミノムシの糸はクモの糸より弾性や強度が高いことを発見。「これまで自然界で最強と言われていたクモの糸をしのぐ、世界最強」の糸だとアピール。新たなバイオ素材としての応用に期待し、早期に生産体制を構築する。ミノムシの吐く糸は、弾性率(変形しにくさ)、破断強度、タフネスすべてにおいてクモの糸を上回っていることを発見したほか、熱に対しても高い安定性を示したという。ミノムシの糸を樹脂と複合することで、樹脂の強度が大幅に改善されることも分かった。ミノムシから1本の長い糸を取り出す技術を考案し、特許を出願したほか、効率的な採糸方法も確立。ミノムシの人工繁殖や大量飼育法も確立したという。ミノムシの糸は、タンパク質から構成されているシルク繊維であるため、「革新的バイオ素材として、脱石油社会に貢献できる持続可能な製品」と期待を寄せるほか、再生医療用素材としての可能性にも期待している。

*3-3:https://www.jomo-news.co.jp/news/gunma/politics/105581 (上毛新聞 2019/1/17) 暑さに強い蚕の新品種 群馬県が開発 夏場も収量と質 維持へ
 近年の夏の猛暑による蚕の成育不良に対応するため、群馬県蚕糸技術センター(前橋市)は16日、暑さに強い新たな蚕品種を育成したと発表した。猛暑でも通常の品種に比べて高品質を維持し、1割以上多い繭の収量を見込める。昨夏の記録的猛暑で、本年度の県内の繭生産量は前年度比1割減の41.07トンに落ち込むなど、高温による障害が顕著に表れており、経営安定のため農家などから対策を求める声が上がっていた。今年夏に農家で実証飼育試験を行い、実用化されれば、9番目の県オリジナル品種となる。
◎最も過酷な7、8月に実証飼育実験へ
 同センターは2012年度から新品種の育成を始め、暑さに強い日本種原種「榛しん」と中国種原種「明めい」を交配した交雑種を生み出した。昨年夏の試験飼育は新品種と、普及している夏秋蚕用品種の「ぐんま200」「錦秋鐘和きんしゅうしょうわ」を同じ条件で育てて比較した。6月26日に掃き立てを行い、7月20日に上蔟じょうぞく。桑を与える4~5齢の12日間の蚕室の気温を調べたところ、夜間も含めて平均気温は30度前後で、日中は40度に達することもあった。飼育の結果、蚕3万匹当たりの収繭量は新品種が48.42キロに対し、ぐんま200が43.55キロ、錦秋鐘和42.62キロと1割以上の差が生じた。品質の目安であり、繭糸のほぐれやすさを示す「解じょ率」は新品種が77%に対し、他の2品種は50%台。新品種は過酷な環境でも生存でき、健全なさなぎの割合も94.30%と高かった。県蚕糸園芸課によると、本年度の蚕期ごとの繭生産量は春蚕16.10トン(前年度比10%減)、夏蚕5.66トン(同19%減)、初秋蚕2.16トン(同26%減)、晩秋蚕13.83トン(同6%減)、初冬蚕3.33トン(同1%増)と、夏の減少幅が大きい。暑さを考慮し、養蚕農家が夏の生産を控える動きもあったという。飼育量の多い春蚕の5月に気温の高い日が続き、成育不良が発生したことも響いた。同課は「猛暑でも育てられれば、養蚕農家の経営の安定を図れる。これまでより、蚕室内の気温に神経質にならずに済むので、生産者の労力軽減につながる」としている。農家での実証飼育試験は夏蚕(7月)か初秋蚕(8月)の時期に行う。その後、9月中旬のぐんまシルク認定委員会での県オリジナル品種の認定を目指す。

*3-4:https://www.agrinews.co.jp/p46610.html (日本農業新聞 2019年2月2日) [メガFTA] 日欧EPA発効 小売り先行値下げ ワイン、チーズ 国産と競合激化
 欧州連合(EU)との経済連携協定(EPA)が1日に発効したことを受け、スーパーなど小売業界でワインやチーズなどの値下げ競争が早くも始まっている。発効と同時に小売価格を1~3割引き下げることで関税削減効果を先取りし、売り上げ増を狙う。関税は、ワインが即時撤廃、チーズは段階的に下がり16年目には無税(ソフト系は枠内)になる。環太平洋連携協定(TPP)と併せ、今後多様な品目で値下げの動きは強まる。国産との競合が激しくなりそうだ。「日欧EPA発効記念・欧州ワイン一斉値下げしました」。大手スーパー・イオンの系列となるイオンスタイル幕張新都心(千葉市)の酒類売り場に大きな看板が置かれた。イタリアやフランスなどのEU産ワインがずらりと並んだ。イオンは同日、全国約3000店舗で、最大330種類のEU産ワインを平均で1割値下げした。同社で販売する輸入ワインの7割の値が下がった。関税撤廃で、1本(750ミリリットル)換算で最大約93円の関税が0円になる。同社は「関税撤廃分より値下げ幅の大きい商品もある」と明かす。値下げは期間限定ではなく継続する考え。同社は今月のEU産ワインの売り上げを前年比3割増と見込む。店舗では同日、EU産食品の特売フェアも開いた。スペイン産豚バラ薄切り肉(100グラム105円)、イタリア産のパスタやトマトソースなどを2、3割安で販売。3日までの期間限定でPRする。値下げはコンビニ業界へも広がる。セブン―イレブンは1日からEU産ワイン3品を1割値下げ。ファミリーマートは2日から14品を最大17%引きで販売する。チーズでは、ソフトチーズの値下げが早くも表面化した。西日本でスーパーを展開するイズミ(広島市)は1日から最大20品のチーズを値下げした。ドイツ産カマンベールを23%安で扱うなど、13日までの限定セールを展開する。日欧EPAでは農林水産物の82%の関税が撤廃され、大幅な自由化となった。EU産のブランド力が消費者に認知されており、「需要拡大が見込める」と大手コンビニ。多様な品目で値下げ競争が進む恐れがある。

*3-5:https://blogs.yahoo.co.jp/toshi8686/65364408.html?__ysp=5rC06YGTIOe1jOWWtumboyDoqJjkuos%3D (読売新聞 2018/11/13) 市町村の水道事業を統合へ…人口減などで経営難
 政府は、水需要の減少で経営悪化が続く市町村の水道事業について、都道府県を調整役に6580事業者の統合を進める方針を固めた。事業の広域化によって経営効率を高めるのが狙いで、2019年度から着手する。事業統合に応じた市町村に対しては、国が財政支援を手厚くする。総務省の「水道財政のあり方に関する研究会」が、こうした方針を盛り込んだ報告書を近く公表する。報告書案などによると、都道府県は域内の水道事業者である市町村と協議し、将来の人口動態などを踏まえて統合すべき市町村の組み合わせを盛り込んだ「広域化推進プラン」を策定する。国は、プランに基づいて統合を進めた市町村に対し、国庫補助金の拡充や地方交付税の増額で実現を後押しするという流れだ。統合の形態は、水道事業全体の経営統合のほか、〈1〉浄水場など一部施設の共同設置・共同利用〈2〉料金徴収や施設管理など業務ごとの共同化――などを想定している。一部の統合でも、工事の一括発注などで無駄なコストを省け、経費削減につながるという。政府が統合を推し進めるのは、人口減などで水の使用量が減り、全国的に経営難が続いているためだ。

*3-6:https://www.agrinews.co.jp/p46615.html?page=1 (日本農業新聞 2019年2月2日) 生産調整鶏卵で発動 1月補填49・418円 
 鶏卵価格が低迷した際に生産調整する国の成鶏更新・空舎延長事業が1日、発動した。実施主体である日本養鶏協会が発表した。今年度の発動は2回目。同日の標準取引価格が1キロ142円となり、発動基準の安定基準価格(163円)を下回ったことを受けた。供給過多で価格を押し下げているため、需給改善で価格安定を図る。価格下落を補填(ほてん)する事業は同日に1月分を発動した。同事業は、成鶏を出荷後、新たにひなを導入せず、鶏舎を60日以上空舎にした生産者に奨励金を交付する。成鶏が10万羽以上の場合は1羽当たり210円、10万羽未満の場合は同270円を交付する。対象期間は1月2日から、価格が安定基準価格を上回る前日まで。今年度は4月下旬~6月下旬に5年ぶりに発動していた。鶏卵価格差補填事業による1月の補填金は1キロ49・418円となった。同月の標準取引価格が111・72円と、基準価格(185円)を下回ったためだ。今年度は両事業の発動回数が多く、財源が枯渇する恐れがあった。必要な財源を確保した上で、1月分の価格差補填金を交付する。そのため、満額(65・952円)の交付とはならない。JA全農たまごの同日の東京地区のM級は1キロ145円。今年の初取引価格(100円)に比べ大きく上げたが、 前年を15%下回って推移する。

*3-7:https://www.agrinews.co.jp/p46530.html (日本農業新聞 2019年1月25日) 種子法廃止の対応 現場の危機 受け止めよ
 命の根幹である種子をなんとしても守る──。思いがうねりとなり自治体を動かしている。主要農作物種子法(種子法)廃止から1年を待たず10道県が種子法に代わる条例制定へ動く。他の県でも意見書の提出が相次いでいる。なぜ廃止したのか。現場の声に耳を傾けたのか。強引な政権運営のひずみである。日本農業新聞が47都道府県に聞き取った。種子法は廃止されたが、各地で事実上の“復活”を遂げた。既に種子の安定供給を担保する新たな条例を制定したのは山形、埼玉、新潟、富山、兵庫の5県。来年度の施行に向けて準備を進めるのは北海道、岐阜、長野、福井、宮崎の5道県。先代から受け継いできた大切な種子を失っていけないとの危機感の表れである。2017年1月から19年1月22日までに地方議会から国会に出された意見書は、衆参併せて250件を超えた。農家や消費者、識者らでつくる「日本の種子(たね)を守る会」による種子法復活を訴える署名は17万筆に達している。憤りの声は自民党の地方議員からも上がっている。福岡県の市議はこう主張する。「種子を守ることは農家の将来を守ることにつながる。党派を超えて条例の必要性を県に求めていく」。岐阜県の市議も「なぜ法律を廃止したのか、いまだに納得できない。種子の尊さに自民も野党も関係ない」。危機感は党派を超えて共有されている。種子法は、食糧の安定確保に向けて1952年に制定された。都道府県に米、麦、大豆の優良な品種を選定して生産し、普及することを義務付け、60年以上守られてきた。国民の食を支える上で、重要な法律だったためだ。だが農水省は、都道府県が自ら開発した品種を優先的に「奨励品種」に指定して公費で普及しており、種子開発に向けた民間参入を阻害していると判断。17年2月に廃止法案が閣議決定され、2カ月後の4月には、わずか12時間の審議時間であっけなく成立した。現場の農家を含め、反対の声が全く聞き入れられなかった。そもそも種子法に民間参入を阻害する規定などない。だが、民間企業の参入を推し進める政府にとって、種子も例外ではなかったといえる。規制改革推進会議に突き動かされるように、廃止在りきで審議が進んだとしか考えられない。そうした中、地方自治体で進む条例化の動きは、種子の品種開発や安定供給に自治体自らが責任を持つという強い意志の表れだ。種子法廃止に対し、地方から「ノー」を突き付けている。このうねりがさらに広がることを期待したい。政府は自治体の動きを真摯(しんし)に受け止め、現場の声を大切にした政権運営をすべきである。4月には統一地方選が行われる。種子法も争点の一つとなるだろう。改めて廃止の意味を問いたい。

<介護や社会保障に関して、軽すぎる論説が多いこと>
PS(2019年2月4日追加):サ高住は、プライバシーを害することなく介護の不要な人から必要性の高い人まで受け入れることができるため、高齢化社会の有力な解の一つであるとともに、学生・単身者・共働き・出産前後の全世代に便利な住宅である。そのため、*4-2のように、高松で老朽マンションを改修してアシストホームを作ったのは一歩前進であり、新築マンションでも家事サポートや訪問介護などのサービスを付けた方が誰にとっても便利だと、私は考える。
 しかし、日経新聞は、*4-1で、家賃の安い住戸は「要介護3以上」の入居者が5割を占め、自立した高齢者向けとの想定に反して特別養護老人ホーム(特養)が対応すべき低所得で体の不自由な人が流入し、安いサ高住は介護報酬で収入を補おうと過剰に介護を提供しがちで、特養より公費の支出が膨らむ懸念があるから問題だとしている。これは、介護制度の理念が、家族を介護に縛りつけずに自宅療養できるようにすることで、散在する自宅に住むよりはサ高住にまとまって住んでもらった方が介護者の負担が軽くなることを考えれば的外れだ。
 また、特養と老健(https://kaigo.homes.co.jp/manual/facilities_comment/list/hoken/tokuyo/hikaku_rouken/参照)の入居条件は特養が要介護3~5、老健は要介護1~5で、居室タイプはどちらも個室と多床室があって、多床室ではプライバシーが保てず、周囲が重度障害者ばかりでは居住環境が悪くなるため、「高齢者だから死ぬまで置いておけばよいだろう」という発想でなければ、要件を満たした民間賃貸住宅を自治体がサ高住として登録するのはよいことだ。
 さらに、日経新聞は、*4-3のように、医療・介護の知識のない大学教授が「①介護従事者の確保に限界がある」「②現物給付の4~6割程度を現金給付して同居家族に介護させよう」「③女性要介護者は男性より家族に大きな負担をもたらす」などと書いた記事を掲載しているが、①については、我が国は外国人労働者の導入に消極的だったため、それを改善した後の動向を見ることが必要である上、②については、家族のうちの誰かが介護を担当することを想定しており、その人は患者の症状を理解した介護ができるのか、密室で家族による高齢者いじめや不正が起こらないかについて検討していない。さらに、③については、疫学的調査に基づいて語っていないと思われ、大学教授が科学的調査に基づかず科学的根拠も示さずに語るのは言語道断である。
 このような中、*4-4のように、外国人労働者受入拡大を行う改正入管難民法施行(2019年4月1日)に合わせ、介護現場で働く外国人や外国人を受け入れる介護事業者を多方面からサポートする「就労支援センター」(ICEC)が福岡県小郡市に発足したのはよいことだが、他地域では介護現場で働く外国人の増加を予定していないと言うのだろうか。また、*4-5のように、少子化で我が国の教育施設は余剰が多くなっているため、大学・専門学校が留学生の比率を上げるのは当然であり、その中に介護や看護も入れればさらによいと思われる。 

*4-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190203&ng=DGKKZO40813420R00C19A2MM8000 (日経新聞 2019年2月3日) 高齢者向け賃貸、安いほど要介護者流入、公的支出 膨らむ懸念
 見守りなどのサービス付き高齢者向け住宅(サ高住=総合2面きょうのことば)。日本経済新聞が全国の利用実態を調べると、家賃月8万円未満の安い住戸は多くの介助が要る「要介護3以上」の入居者が5割を占めた。自立した高齢者向けとの想定に反し、特別養護老人ホーム(特養)が対応すべき低所得で体が不自由な人が流入している。安いサ高住は介護報酬で収入を補おうと過剰に介護を提供しがちで、特養よりも公費の支出が膨らむ懸念がある。サ高住は国が2011年につくった制度。バリアフリーで、安否確認などの要件を満たした民間賃貸住宅を自治体が登録する。18年末時点で全国に約7200棟、23万8千戸が存在する。法律上「住宅」なので介護は義務ではない。訪問介護などを使いたい入居者は介護事業者と契約するが、実際は介護拠点を併設し、事業者が同じケースは多い。明治大の園田真理子教授は「家賃を安くして入居者を募り、自らの介護サービスを多く使わせる動きが起きやすい」と指摘する。
●特養に入れず
 本来、要介護3以上の低所得者の受け皿は公的な色彩が濃い特養だ。毎月一定額の利用料も相対的に安く、その範囲で食事や介護を提供する。必要以上にサービスを増やして、介護報酬を稼ぐ動きは起きにくい。ただ職員不足で受け入れを抑える特養が目立ち、全国に30万人の待機者がいる。行き場を失った高齢者がサ高住になだれ込む。日経新聞はサービス費を含む家賃と入居者の要介護度のデータが公開されている1862棟を対象に、その相関を分析した。家賃の平均は約10万6千円。全戸数に占める要介護3以上の住民の比率は34%だった。家賃別にみると、8万円未満の同比率は48%に達していた。金額が上がるほど比率は下がり、14万円以上は20%にとどまった。「介護報酬を安定的に得るため、要介護度の高い人を狙い、軽い状態の人は断っている」。関東で数十棟を営む企業の代表は打ち明ける。1月に茨城県ひたちなか市のサ高住を訪ねると、併設デイサービスに約10人が集まっていた。多くが車いすに乗る。住民の4分の3が要介護3以上だ。
●介護報酬狙う
 介護報酬の1~3割は利用者負担。残りは税金と介護保険料で賄う。要介護度が進むと支給上限額は増える。介護保険受給者は平均で上限額の3~6割台しか使っていないが、同社の計画上は住民が85%を使う前提だ。「夜勤の人件費を捻出するのに必要。暴利は貪っていない」と主張する。兵庫県で家賃が安いサ高住の管理人も「上限額の90%を併設サービスで使ってもらっている」と話す。16年の大阪府調査では、府内のサ高住は上限額の86%を利用し、要介護3以上は特養より費用がかさんでいた。安いサ高住に要介護度の高い人が集まる傾向は都市圏で顕著だ。8万円未満の物件に住む要介護3以上の比率は首都圏が64%、関西圏が57%。都市圏は土地代が高く、家賃を下げた分を介護報酬で補うモデルが広がっている懸念がある。「デイサービスを『行って寝ていればいい』と職員に説得されて仕方なく使った」。サ高住の業界団体にこんな苦情も集まる。日本社会事業大の井上由起子教授は「国も学者もこれほど介護施設化すると考えていなかった。一部のサ高住が介護報酬を運営の調整弁に使うと、介護保険制度の持続性が揺らぐ」と警戒。運営費は家賃のみで吸収するのが筋だと訴える。すべてのサ高住が過剰に介護をしているわけではないが、個別の実態を捉えるのは難しい。一般社団法人の高齢者住宅協会は「介護状況の開示や法令順守を事業者に強く促していく」という。民間主導のサ高住は行政も運営・整備計画を把握していない。それがサ高住の乱立につながり、介護報酬で経営を成り立たせようとする動きを招く。介護施設との役割分担を明確にし、立地の最適配分も考えなければ悪循環は断ち切れない。(斉藤雄太、藤原隆人、久保田昌幸)
*調査概要 高齢者住宅協会が運営するサ高住の情報提供システムで2018年12月時点に公開されていた家賃と住民の要介護度のデータを抽出。家賃は共益費と見守りのサービス費を含め、同じ施設で最高と最安が異なる場合は中間値を用いた。食事や入浴の介助が必要で、特養の入所基準である「要介護3」以上の住民の割合を家賃の水準別に分析した。

*4-2:https://www.nikkei.com/paper/related-article/tc/?b=20190203&bu=BFBD・・ (日経新聞 2019年2月3日) 高齢者向け賃貸、安いほど要介護者流入 公的支出 膨らむ懸念サービス付き高齢者向け住宅 老朽マンションを改修 高松のSUN
 介護事業を展開するSUN(高松市)は老朽化したマンションを改修し、一部をサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)として提供する=写真。サ高住と賃貸マンションが同一の建物に混在するのは香川県では初めて。老朽化したマンションの空き部屋対策につながるという。1986年に完成した既存のマンションを改修し、名称を「アシストホーム」とした。一部をサ高住として提供する。部屋の広さは32~36平方メートルと全室30平方メートル以上は全国的にみても珍しく、12戸を用意した。車いすに乗ったまま使える洗面台や手すり付きのトイレなどの設備を備えている。月額の利用料は単身の高齢者が食事の提供を受ける場合、約14万円が目安となる。訪問看護ステーションや居宅介護支援事業所などと連携して、高齢者の生活を支える。

*4-3:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190204&ng=DGKKZO40775630R00C19A2KE8000 (日経新聞 2019年2月4日) 介護危機、乗り越えられるか 現金給付で従事者抑制を、外国人の安定確保厳しく 中村二朗・日本大学教授(1952年生まれ。慶応義塾大修士《商学》。専門は労働経済学、計量経済学)
<ポイント>
○従事者確保で女性や高齢者活用には限界
○現金給付を現物より抑えれば財政上も益
○保険者の広範地域への再編や連携強化を
 急速に高齢社会を迎えた日本では2000年に介護保険制度が導入された。ドイツの制度に倣いながらも、要介護対象者や提供される介護サービスを幅広く設定したことで多くのメリットがあるとされる。しかし財政的には多額の支出を余儀なくされた。団塊世代が後期高齢者になる25年には介護保険の利用者は約900万人、財政規模は20兆円前後に達するといわれる。大きな課題は財政規模の抑制と介護従事者の確保だ。介護は3K(きつい・汚い・危険)的な職場というだけでなく、現保険制度では事業所全体の収入が規定され、その範囲内で介護従事者の処遇条件を決定する必要がある。処遇改善のための加算制度はあるが介護事業者の裁量で賃金を設定することは難しい。一方で介護事業者に裁量を委ねても、事業所支出に占める人件費比率が特養で約6割、通所・訪問で7~9割と高いため、介護費用の増加を通じて介護財政をさらに逼迫させる恐れがある。介護財政の抑制と介護従事者の確保とは両立が極めて難しい課題だ。本稿では、介護財政の抑制という課題を念頭に置きながら、今後の介護従事者不足に対する解決策を検討する。問題を考えるうえで主要な前提・課題を整理しておこう(表参照)。現状の課題は、未婚者や結婚しても子供のいない高齢者(チャイルドレス高齢者)の増加と、女性要介護者の比率が全体の約7割と高いことだ。高齢者の同居比率が低下しており、居宅介護のために同居率を高めようという議論がある。しかし子供のいる高齢者の同居率はそれほど低下していない。こうした状況で介護従事者の必要性を少なくするために家族介護の拡充による居宅介護を重視する政策には無理がある。また福岡市の65歳以上の介護保険データを用いた多相生命表(健康、要介護度別平均余命)による分析では、女性の要介護者は人数が多いだけでなく、介護期間が長期にわたる傾向があり、費用も男性と比べ4割前後高くなる。今後は要介護度の高い高齢者と、都市部での要介護者の増加が予想される。現状でも要介護者の多くは女性だが、その傾向は今後も続くだけでなく都市部でより顕著に表れることが予想される。女性要介護者は男性に比べ家族に大きな負担をもたらすことが確認されている。都市部では住宅事情などにより居宅介護は難しさを増す。財政支出と必要な介護従事者の増加をもたらすだけでなく、居宅介護と施設介護のあり方を大きく変化させる可能性がある。現状および今後の問題点を考慮したうえで、必要な介護従事者をどのように確保すればよいのだろうか。対応の方向性は2点だ。一つは必要な従事者数を確保するための環境を整備することであり、もう一つは必要な従事者数の抑制策を講じることだ。以下では、今後の対応策と実現可能性について検討したい。従事者数の確保については2つの対応策に大別できる。一つは女性や高齢者のさらなる活用だ。女性の活用では介護従事者の資格要件の緩和措置などがとられているが、労働条件が悪いままでは安定的に一定量を確保するのは難しい。高齢者はボランティア的な仕事としては受け入れられる可能性は高いが、安定的に活用できる人材ではない。もう一つは外国人労働者の導入だ。日本が魅力的な国である限りは、外国人労働者は安定的に活用できる人材としてみることもできる。しかし日本人と同等の処遇ならば、介護従事者の賃金が低い現状のままでは必要な人員を確保できるかわからない。既に外国人介護福祉士としては経済連携協定(EPA)により受け入れられており、17年度までに約3500人が来日し、700人以上が介護福祉士の国家試験に合格している。こうした外国人は送り出し国で看護学校などを卒業し「N3」以上の日本語資格を持っている。また日本で介護福祉士の国家試験を受けるために受け入れ事業所などで様々な教育を受けている。事業所は1人あたり200万~300万円程度の費用を負担しているが、合格率は5割程度だ。合格後は在留資格が得られるが、他の事業所への転職も可能で、受け入れ事業所は多くのリスクを抱えている。現状のEPA介護従事者に対しては、事業者や利用者も高く評価しているケースが多い。しかし現在想定される新たな外国人労働者に対して、EPAでの受け入れと同様の手厚い対応ができるのだろうか。受け入れ人数が桁違いに増えるだけでなく、受け入れ要件もEPAに比べ緩和される可能性が高い。受け入れ態勢や教育環境の整備、それらの費用を誰が負担するのかなど慎重な議論が必要だろう。さらに今後も、日本が外国人労働者に魅力的な国であり続ける保証はない。むしろ5~10年先の本当に必要な時期に外国人労働力を確保できなくなるリスクはかなり高い。仮に介護従事者を増やすことに成功しても、財政上の問題は解決されない。両者をともに解決するには、単に必要人員の確保だけでなく必要な従事者数を抑える視点が大切だ。しかし介護現場では新技術の導入などである程度の労働生産性の向上は望めるが、大きな効果は期待できない。では、どうすればよいのか。介護サービスの提供は例外を除いて、保険制度で指定された事業所でしかできない。介護サービスが現物給付で実施されているためだ。この枠組みを外せば、介護事業所以外でも介護サービスを提供することが可能となり、必要な介護従事者数を抑制できる。そのための方策の一つは、ドイツや韓国などで採用されている現金給付もしくはバウチャー(利用券)制度の導入だ。ドイツのように介護をする家族にも保険から手当などを支払えれば、居宅介護が増えて必要な介護従事者数を抑制する効果も期待できる。保険導入時に現金給付との併用案が検討されたが、事業者の反対や不正利用の懸念などを理由に採用されなかった。確かに保険導入前の状況を考えると当時の反対理由もうなずける。しかし介護サービス需要の増加や介護関連事業所の増加により、介護市場が成長し競争メカニズムが働く余地が大きい。さらにこれまでの保険事業で蓄積されたデータを活用・分析することにより、不正利用を見つけやすくなっている。また日本独自のシステムとしてケアマネジャー制が導入されており、利用者や事業所を監視する役割を拡充することにより不正利用や不効率な利用を防止できるだろう。現金給付を選んだ場合には現物給付の4~6割程度の支給にできるならば、財政上のメリットも生じる。今後生じる様々な課題に対応するには、介護保険を運営する保険者に求められる役割はより高度なものとなる。基礎自治体をベースとした一部の保険者は難しい問題を抱えることになる。保険者については、より広範な地域への再編・連携強化や都市部と非都市部との連携などを検討すべきだ。介護施設や人材などの効率的な運用ができるだけでなく、要介護者の地域的偏在や地域間の保険料格差などを改善することができよう。従来の制度を土台としながら、現金給付の導入や保険者の枠組みなどを今後の状況に即した制度に見直すことなどを含め、人材不足の解消と財政の健全化を目指す整合的な方策を考えることが急務だ。

*4-4:http://qbiz.jp/article/148203/1/ (西日本新聞 2019年2月4日) 介護就労の外国人指導 4月 小郡に支援センター 受け入れ施設に助言も
 外国人労働者の受け入れを拡大する改正入管難民法の施行(4月1日)に合わせ、介護現場で働く外国人や、外国人を受け入れる介護事業者を多方面からサポートする「就労支援センター」(ICEC)が福岡県小郡市に発足する。同法に基づく新たな在留資格「特定技能」の労働者や技能実習生などが対象で、介護に必要な日本語教育や生活面の指導、事業者側への助言も行う。こうした包括的な支援組織は九州で珍しいという。ICECを立ち上げるのは、1998年に発足した外国人就労支援事業会社「インターアジア」(小郡市)。経済連携協定(EPA)に基づいて来日した介護福祉士候補生や、日本のフィリピンパブや飲食店などで働いた後、介護業界に新たな働き口を求める在留外国人たちを対象に、介護職員の基礎的な資格「介護職員初任者研修」の講座を行ってきた。卒業生は6カ国の300人以上に上る。017年11月に介護分野が追加された外国人技能実習生は、入国時だけでなく、来日2年目にも日本語能力試験に合格することが求められる。介護の現場では、生活指導も含めた教育をどうするか、不安視する声が上がっていた。ICECは「アルツハイマー病」「安静」「嚥下(えんげ)」など介護に必要な用語を中心に、日本語教育や文化教育、生活面もサポートする。事業者側に対しては経営者だけでなく、外国人と一緒に働く職員全員に助言する。講師は約20人。介護福祉士や看護師の資格を持つ日本人や、介護福祉士の資格を持つ同社の卒業生など、日本の介護現場で働いた経験のあるフィリピン、ベトナム、中国出身の外国人も加わるという。同社の中村政弘代表(78)は「外国人は日本を介護先進国と捉え、期待して来日する。まずは日本人職員に、介護のプロとして『外国人を育てる』という意識を持ってもらえるような助言をしたい」と言う。17年9月、在留期限を更新できる在留資格「介護」が新設され、技能実習生や特定技能の労働者も介護福祉士の資格を取得すれば「介護」に変更申請できる。ICECでは、希望者向けに介護福祉士の資格取得を目指す講座も開設する予定。中村代表は「日本に残り、日本の介護を支え続ける外国人も育てたい」と話す。
*介護と外国人労働者  厚生労働省の推計によると、2025年度に介護人材が約34万人不足する恐れがある。国は改正入管難民法に基づく新在留資格「特定技能1号」(通算で5年が上限)の介護分野で、19年度から5年間で最大6万人の外国人労働者を受け入れる方針。介護職種の外国人技能実習生(最長5年)は“第1号”が昨年7月に来日。施設が実習生を受け入れるには、日本の監督機関「外国人技能実習機構」に実習計画を申請し、認定を受ける必要がある。昨年12月末時点での申請は1516人で、うち946人の計画が認定された。

*4-5:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190202&ng=DGKKZO40806230R00C19A2EA5000 (日経新聞 2019年2月2日) 大学・専門学校の留学生比率 地方、初の5%超え 昨年、サービス人気
 地方にある大学や専門学校など高等教育機関で、2018年に留学生の比率が全学生の5%を初めて超えたことが日本学生支援機構の調査などで分かった。三大都市圏を除く39道県別では群馬や茨城で上昇が目立っており、6県が東京都の比率を上回った。少子化や東京一極集中に悩む地方の教育機関にとって、留学生の獲得は経営の要にもなりつつある。日本学生支援機構の外国人留学生在籍状況調査と文部科学省の学校基本調査を使い、高等教育機関の学生に占める留学生の割合を都道府県別に算出した。39道県で18年の留学生の総数は7万3320人。全学生数に占める割合は5.4%と、前年に比べ0.5ポイント上がった。留学生の比率は11年の東日本大震災後に停滞していたが、13年に底を打って以降は急速に上昇している。39道県のうち、13年比で最も比率が伸びたのは群馬県。13年は3%だったが、18年は15%と大幅に高まった。同県の担当者は「群馬大や上武大、高崎経済大といった以前から留学生が多かった大学ではそれほど増えていない。大幅に増えているのはNIPPONおもてなし専門学校だ」と話す。同校は群馬ロイヤルホテルグループの学校法人が13年に設立した専門学校。ベトナムやネパールを中心に約500人の留学生が日本のホテルや旅館、飲食店などのサービスを実践的に学んでいるという。群馬県内に本部を置く東京福祉大学の留学生が増えていることも比率を押し上げた。同大は留学生が約800人と学生の2割を占める。出身国別にみると、中国が最も多いが「最近はベトナム、ネパールも目立つ」(同大)。39道県で2番目に留学生比率が上昇したのは茨城県で、18年は11%とこの5年で5ポイント伸びた。国内有数の留学生数を誇る筑波大学に加え、東京家政学院大学系列の筑波学院大学などで留学生の増加が目立った。筑波学院大学によると、「留学生に人気の専攻はビジネスや情報系。18年はベトナムが一番多かった」という。留学生の生徒総数では東京都が約6万7000人と突出して多いが、全生徒の比率でみると7%。留学生の比率では大分県が16%と、全国で最も高かった。生徒数のほぼ半数を留学生が占める立命館アジア太平洋大学がある影響が大きい。このほか、山口、福岡、長崎県も東京の比率を上回った。高等教育の国際化に詳しい上智大学の杉村美紀教授は「人口減少が厳しい地方では留学生で人材を確保しようとする動きが強まっている」と指摘する。経済協力開発機構(OECD)の資料によると、欧米諸国のほとんどは高等教育機関の留学生比率が日本より高い。国際競争力を高めるためにも今後、留学生の人材育成は地方にとって重要性を増す。大学の外での交流を促すなど、地域全体で留学生を迎え入れる体制づくりがより求められそうだ。

<呆れて一言では語れないこと>
PS(2019年2月7、9、10日追加): *5-1-1のように、「厚労省の統計不正による過少給付は雇用保険・労災保険・船員保険などを合わせて564億円になり、2019年内に追加給付を開始する」とのことで、(統計は正確でなければならないものの)失った記録の復元は、新聞・TV・HP等で連絡先を示して関係する期間に受給した人に申し出てもらい、日本年金機構(旧社会保険庁)の年金記録と照合・立証して支払えばよい。つまり、雇用保険は、再就職済で困っておらず、申し出ない人まで探し出して渡す必要はないのだ。
 なお、*5-1-2のように、毎月勤労統計は不適切に調査されており、2018年の物価変動の影響を除く実質賃金の伸びが実態よりかさ上げされていたことが発覚し、民間の試算でも2018年の1人当たり実質賃金は大半がマイナスだそうだ。これには非正規の働き手が増えた要因もあり、名目賃上げ率は2%前後で2018年1~11月の実質賃金のうち9カ月分が前年を下回ったそうだが、1カ月単位の短期間かつ1%前後の賃金の増減で消費者心理が変わるわけではなく、子どもが生まれた場合の収入減・負担増・年金までを加味した生涯収支を考慮して貯蓄と消費の割合を決めているため、予算委員会で大量の時間を使うには議論が小さすぎる。そして、「消費者は名目賃金で賃金動向を実感する」というのは誰のことか不明であり、物価上昇率が名目賃金上昇率より高くて実質可処分所得が小さくなっていることにはすぐ気付くため、あまりに一般消費者を馬鹿にした見方だ。なお、今後は、企業がデータで賃金・品目毎の売上・仕入(単価と数量)を提出すれば、全数調査して毎月の平均賃金・卸売物価・消費者物価を出せそうである。
 このような中、*5-2のように、公的年金で運用損を出し、社会保障の負担増・給付減ばかりしていれば、*5-3-1のとおり、静かに少子化が進むのは当然のことで、できることとできないことを理性的に判断して行動しているのは、子どもの少ない(orいない)人の方だろう。また、*5-3-2のように、信濃毎日新聞も「少子化の責任は女性にあると言いたいようであるため、麻生氏は暮らしや人権に関わる問題について正しい理解ができない人である」として、首相の任命責任も問われると記載している。ただ、首相は子どもがおらず、どちらかと言えば被害者に当たるため、麻生氏の発言の責任まで取らせるのは酷ではないか?なお、麻生氏は、2008年、麻生内閣で内閣府特命担当大臣(男女共同参画・少子化対策)として出産したという理由で小渕優子氏を初入閣させており、出産奨励は麻生氏の本音だ。そして、これは、「女性は産む機械」「ママさんたちが『一緒に子どもを産みたい』という形で国家に貢献してくれればいい」という産めよ増やせよ論であり、時代錯誤だ。さらに、*5-3-3のように、京都新聞も「少子化となる環境こそ問題なのに、女性に責任を押し付けている」としているのは正論である。

*5-1-1:https://mainichi.jp/articles/20190204/k00/00m/040/250000c?fm=mnm (毎日新聞 2019年2月4日) 統計不正問題 年内に追加給付開始へ 延べ2000万人超に564億円
 厚労省が公表した追加給付の工程表によると、過少給付は雇用保険や労災保険、船員保険などを合わせて564億円で、対象者は延べ2000万人超。追加給付が始まる時期は、保険の種類や現時点での受給の有無などによって異なる。現行の受給者は比較的早く、雇用保険が4月▽労災保険が6月▽船員保険が4月。既に受給が終わっている人は雇用保険が11月ごろ▽労災保険が9月ごろ▽船員保険が6月――と見込む。システム改修などの都合で例外的に時間がかかる対象者もおり、労災保険の一部では追加給付の開始が12月ごろにずれ込む見通しだ。この問題では、各保険の過去の受給額だけではなく現行の受給額も過少になっている。厚労省は3~6月に、適正な受給額に是正することを既に発表している。

*5-1-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190207&ng=DGKKZO40975120W9A200C1EE8000 (日経新聞 2019年2月7日) 18年実質賃金かさ上げ 不適切統計問題、実態は非正規増え、下落圧力
 毎月勤労統計の不適切調査を受け、足元の賃上げの評価の難しさが一段と鮮明になった。2018年の物価変動の影響を除く実質賃金の伸びが実態よりかさ上げされていたことが発覚。民間の独自試算でも18年の1人当たり実質賃金は大半がマイナスだ。だが非正規の働き手が増えるなど、全体をならした賃金水準には下落圧力がかかっている。雇用者増や賃上げの効果をすべて否定する議論も乱暴だといえる。連合によると、18年労使交渉による賃上げ率は全体で2.07%。中小だけでも1.99%と20年ぶりの高水準だった。それでも野党は国会論戦などで18年1~11月の実質賃金のうち9カ月分で前年を下回ったと主張する。賃上げをしているのに、なぜ1人当たりの実質賃金は下がるのか。厚生労働省がもともと公表していたデータで実質賃金が前年を下回るのは6カ月分だった。野党の試算は同じ事業所を比べる「共通事業所」ベースで、物価上昇率を使って名目値から割り戻したものだ。みずほ総合研究所の独自試算でも18年1~11月のうち8カ月分が前年比マイナスだ。人々は物価の動きと自身の懐事情を勘案しながらモノやサービスを買うかどうか判断するので、実質賃金は消費者心理を分析するうえで重要な指標だ。ここで無視できないのは、1人当たりの実質賃金に低下圧力がかかる構造的な要因だ。総務省の労働力調査によると、18年の女性の就業者数は前年比で3%増え、男性の1%増を上回った。65歳以上の就業者数も18年は前年比7%増えた。女性や高齢者は非正規で働く人も多い。このため賃上げをしても、1人当たりの賃金にならすと、下落方向への圧力が働きやすくなる。その一方で、例えばこれまで夫だけが働いていた世帯で新たに妻も働くようになれば、家計全体としての所得は増えることが多いだろう。安倍晋三首相が「総雇用者所得は名目も実質もプラスだ」と主張するのも、消費を支える家計全体の購買力を意識したものだ。総雇用者所得は1人当たり賃金と雇用者数を掛け合わせた値だ。18年1~11月の総雇用者所得は実質で前年比1.0~3.6%増えた。第一生命経済研究所の星野卓也氏は「実質賃金が下がっても、暮らしが悪くなったとは言い切れない」と指摘する。消費動向を判断するため、所得の総量を重視するという説明には一定の説得力がある。むろん、低収入の働き手ばかりが増えて1人当たり賃金が伸びなければ、消費全体は勢いづかない。実質賃金がマイナスでも賃上げ効果をすべて否定できないのと同じく、総雇用者所得の増加だけで消費の先行きを安心できるわけではない。ニッセイ基礎研究所の斎藤太郎氏は「消費者は見た目の名目賃金でまず賃金動向を実感する。実質に加え、名目も合わせて見るべきだ」と、丁寧な議論の必要性を訴える。民間エコノミストの間では独自に賃金動向を分析する試みもある。三菱UFJモルガン・スタンレー証券の宮崎浩氏は日銀のアンケート調査などを使って分析。18年の賃金は上昇基調とみる。第一生命経済研の星野氏は雇用保険のデータから1人当たり賃金を算出し、17年度の実質値はマイナスだった。18年度分のデータはまだないが「物価上昇率が鈍く、18年度の実質賃金は上がっている可能性がある」という。

*5-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190202&ng=DGKKZO40786420R00C19A2EA4000 (日経新聞 2019年2月2日) 公的年金運用損、最大の14.8兆円 10~12月、株安が打撃
 公的年金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は1日、2018年10~12月期の運用損失が14兆8039億円だったと発表した。市場運用を始めた01年度以降、四半期ベースでは過去最大となった。GPIFは14年の運用改革で相場変動の影響をより受けやすくなった。環境や社会への貢献を重視するESG投資などの取り組みを強めて安定的な運用につなげる。米中貿易戦争や欧州政治の不透明感を背景とした世界的な株安が響いた。ただこれまでの累積の収益額は56兆7千億円に及んでおり、年金財政を維持するために必要な水準は確保している。資産別の運用損益を見ると、国内株で7兆6千億円、外国株で6兆8千億円の損失となった。

*5-3-1:https://www.ehime-np.co.jp/article/news201902070016 (愛媛新聞社説 2019年2月7日) 麻生氏「少子化暴言」 責任の国民への押し付け許すな
 不適切な発言をしては、撤回し開き直る。既視感のある光景がまたも繰り返された。麻生太郎副総理兼財務相が、少子高齢化に関し「子どもを産まない方が問題」と発言した。さまざまな理由で子どもをつくりたくてもつくれない人たちに対して著しく配慮を欠いた暴言だ。「産む・産まない」については、あくまで個人の自由意思に基づくものであることも理解できておらず、人権感覚に大いに疑問符が付く。そもそも少子化の要因は、これまでの国の見通しの甘さと不十分な政策にある。にもかかわらず今回の発言は、その責任を国民に転嫁するものだ。安倍晋三首相は発言について言及していないが、なぜ放置したままなのか理解できない。「子どもを産み、育てやすい日本」をつくるという政権の方針が、出産の「押し付け」を意味するものではないなら、麻生氏の処遇も含め、危機感を持って対処する必要がある。麻生氏の発言があったのは、地元・福岡での国政報告会。自身が生まれた頃より平均寿命が30歳長くなったと指摘し、「年寄りが悪いみたいなことを言う変なやつがいっぱいいるけど、それは間違いだ。子どもを産まなかった方が問題なんだから」と述べた。2014年にも同様の発言をしており、何の反省もしていないことは明らかだ。野党のみならず、与党からも批判を受けた麻生氏は、発言を撤回。「一部女性の方が不快に思われる。それはおわび申し上げる」とも述べたが、不妊に悩む人には男性もいることを認識しておらず、失言の上塗りでしかない。少子化を含む人口減少問題は「静かな有事」とまでいわれる状況にある。政府は、女性1人が生涯に生む子どもの数「合計特殊出生率」を1.8に引き上げる目標を掲げるが、17年で1.43と低水準のままだ。だが「子どもがほしい」「第2子、第3子を持ちたい」、との希望を抱きながらも、経済的な事情や社会的なサポートの不足から、断念する夫婦が少なくないことを忘れてはならない。現状はこうした人たちへの国からの支援が行き届いていない。長く予算を担当してきた麻生氏が少子化を語るなら、まず国の「無策」への反省からだろう。少子化を巡る失言や暴言は麻生氏に限らない。昨年も、子どもを産まないことを「勝手な考え」とした自民党の二階俊博幹事長や、「必ず3人以上の子どもを産み育てていただきたい」と結婚披露宴で呼び掛けていると発言した同党の加藤寛治衆院議員が批判された。偏った家族観への固執は、党の体質ではないかと疑わざるを得ない。子どもがいない人を一方的に断罪しかねない発言は、社会に無用の分断をもたらすものであり、国民の代表である政治家として許されない。持論を自由に発信したいなら、せめて今の立場を自ら退いてからにすべきだ。

*5-3-2:https://www.shinmai.co.jp/news/nagano/20190209/KP190208ETI090004000.php (信濃毎日新聞 2019年2月9日) 麻生氏発言 首相の責任も問われる
 暮らしや人権に関わる問題について正しい理解ができない人を、なぜ政権の中枢に起用し続けるのか。安倍晋三首相の責任も問われる事態だ。副総理兼財務相の麻生太郎氏が、支持者らを集めて開いた地元・福岡での会合で少子高齢化に関連して「子どもを産まない方が問題だ」と述べた。自身が生まれた頃と比べ平均寿命が30歳長くなったと指摘し、「年寄りが悪いみたいなことを言う変なのがいっぱいいるけど、それは間違いだ」とした上での発言だ。少子化の責任は女性にある、と言いたいかのようだ。少子化の背景には保育所不足、雇用の不安定化など産みたくても産めない事情がある。そんな世の中にした一番の責任は、長年政権の座にある自民党にある。そもそも子どもを産むか産まないかは自己決定権の問題である。産まないことを「問題」だと批判するのは人権侵害につながる。発言に弁護の余地はない。麻生氏は5年前にも同じようなことを言っている。選挙の応援演説で、少子高齢化に伴う社会保障費の増加について「高齢者が悪いというようなイメージをつくっている人が多いが、子どもを産まないのが問題だ」と述べた。麻生氏はその時は、保育施設などの不足で産みたくても産めないのが問題との趣旨であり、「誤解を招いた」と釈明した。同じ発言が繰り返されたことから見て、「問題」とするのは本音と受け止めるほかない。麻生氏はこれまで、ほかにも暴言、失言を重ねている。財務省幹部によるセクハラ問題では「はめられて訴えられているんじゃないかとか、いろいろなご意見は世の中いっぱいある」。医療費を巡る政府の会議では「たらたら飲んで、食べて何もしない人(患者)の分の金(医療費)を何で私が払うんだ」。そこには社会的弱者への共感がない。そんな人が第2次安倍内閣の発足以降、副総理兼財務相のポストに居座り続けている。足元で森友学園問題が起きても責任を取らず、留任した。「女性は産む機械」「ママさんたちが『一緒に子どもを産みたい』という形で国家に貢献してくれればいいなと思う」…。政府・自民党幹部が過去に重ねてきた発言の数々を思い出す。一人一人の個性を大切にし、権利を保障するよりも、国のために国民を動員する発想がにじむ。党の体質も問われている。

*5-3-3:https://www.kyoto-np.co.jp/info/syasetsu/20190209_4.html (京都新聞社説 2019年2月9日) 麻生氏の暴言  またか、と看過できぬ
 麻生太郎副総理兼財務相が「子どもを産まないほうが問題だ」と発言し、批判を浴びている。
発言の根底には政策の不備を女性らに責任転嫁する姿勢が見え、言葉足らずでは済まされない。
発言は3日に地元福岡県で開いた支持者向けの会合であった。少子高齢化問題を語る中、「年寄りが悪いみたいなことを言う変なのがいっぱいいるけど、それは間違いだ。子どもを産まなかったほうが問題なんだから」と言及した。麻生氏は翌日、衆院予算委員会で野党から問いただされて発言を撤回し、その後、陳謝した。予算委で批判されても、にやけるばかりの麻生氏の態度を不快に感じた国民は少なくないだろう。麻生氏は「長寿化より、少子化のほうが社会保障や財政の持続可能性の脅威となるということを申し上げた」と釈明した。だが2014年にも同様の発言をして批判を受けており、本音とも取れる。政治家の言葉には、さまざまな立場の人が耳を傾けている。弱者の痛みを共有し、発言がどう受け止められるのかと聴衆の思いをくみ取りながら話せば、暴言を発することはないだろう。安倍晋三政権は女性活躍や働き方改革を掲げている。ところが麻生氏に限らず、出産を巡って政権や与党の中枢にいる政治家の発言が物議を醸してきた。確かに日本が抱える多くの問題は高齢化と併せ、少子化が急激に進んでいることに起因している。働いて、社会を支える世代が減るから社会保障制度が揺らぎ、経済成長が低迷している。とはいえ子どもを産む、産まないは、個人の問題だ。少子化の背景には労働環境など社会的障壁があり、望んでも「産めない」環境こそが問題であるのに、女性らに責任を押し付けていないか。長時間労働の是正や育児休暇の充実、経済的不安の解消によって仕事を続けつつ希望通りに子どもを産み育てられる環境を整える―それこそが政治の責務だ。根本的な対応を怠ってきた帰結が今日の少子化であろう。麻生氏は政権ナンバー2にもかかわらず、耳を疑うような放言、暴言が目立つ。いずれも閣僚としての資質に疑問符が付く。発言の揚げ足を取る考えは毛頭ないが、繰り返される暴言を、またか、批判しても無駄だ、と寛容に受け止めてはなるまい。安倍首相は麻生氏を不問に付してきたが、「1強」のおごりが顔をのぞかせていないか。国民の理解を得られるとは思えない。

<地方創成と教育の充実>
PS(2019年2月12、13日追加):子育て世帯の負担を軽減して少子化対策に繋げるだけでなく、どの子にも3~5歳時に適した教育を与えるという意味で、義務教育で無償の小学校への入学年齢を3歳にすればよいと私は思うが、*6のように、3〜5歳児の全世帯幼保無償化を行うのも一歩前進だ。しかし、0〜2歳児は、夫婦で育休をとれば家庭で育てる選択肢もあるため、無理に預かる必要はないだろう。また、地域住民を増やすには、「教育が充実している」というのが重要な要素であるため、市長は産業振興を支える人材を創るという意味だけでなく、教育そのものの充実にも一歩進んだ取り組みを行い、恵まれた環境になったらそれを宣伝するのがよいと考える。
 また、*6-2のように、資生堂が中国を中心とする海外向け需要の急増に対応することを目的として久留米市に進出することにしたのは、九州は地の利を活かしてアジアへの輸出に熱心に取り組んでいるため的を得ている。また、久留米大学が近くにあるため、化粧品会社がバイオと結び付いて、品質の維持・向上だけでなく新製品の開発を企画できるメリットもあるだろう。また、必要な原料を、近くの農漁業で供給できるメリットもある。
 なお、*6-3のように、インターネット上の漫画・小説・写真・論文等のあらゆるコンテンツをダウンロードすることを、文化庁が著作権侵害として全面的に違法とする方針を決定したそうだが、最近は、学生でもインターネット上に掲載されている世界の論文に直接アクセスして教科書より先端の知識を入手したり、政治家が書いた政策を直接見て切磋琢磨したりしている時代であるため、文化庁のドアホな方針は、日本の論文数をさらに減らし、文化力を下げるだろう。

*6-1:http://qbiz.jp/article/148622/1/ (西日本新聞 2019年2月12日) 幼保無償化法案を閣議決定 3〜5歳児は全世帯、成立急ぐ
 政府は12日、幼児教育・保育の無償化を実施するための子ども・子育て支援法改正案を閣議決定した。今年10月から3〜5歳児は原則全世帯、0〜2歳児は住民税非課税の低所得世帯を対象に、認可保育所や認定こども園、幼稚園の利用料を無料にする。認可外保育施設などは一定の上限額を設けて費用を補助。政府、与党は今国会の重要法案と位置付け、早期成立を目指す。政府は同日、低所得世帯の学生を対象に、大学や短大などの高等教育機関の無償化を図る新たな法案も閣議決定した。授業料や入学金を減免するほか、返済不要の給付型奨学金を支給する。来年4月の施行を目指す。幼保無償化は、子育て世帯の負担を軽減し少子化対策につなげる狙い。安倍政権が掲げる「全世代型社会保障」の一環で、財源には消費税率10%への引き上げに伴う税収増加分を充てる。3〜5歳児の場合、私立幼稚園の一部は月2万5700円、認可外施設やベビーシッター、病児保育などのサービスは月3万7千円を上限とする。0〜2歳児は月4万2千円まで補助する。認可外施設は保育士の配置数などで国が定める指導監督基準を満たすことが条件だが、法施行後5年間は基準を満たさない施設も対象となる。制度の検討過程で、全国市長会が「指導監督基準を満たさない施設まで含めると、子どもの安全に責任が持てない」と強く反発。このため地域事情に応じて、市町村条例で対象施設の基準を厳格化することも認める。朝鮮学校幼稚部やインターナショナルスクールなどは、国の基準を満たさない場合は無償化の対象にならない。

*6-2:http://qbiz.jp/article/148678/1/ (西日本新聞 2019年2月13日) 資生堂の久留米進出、九州の産業に多様化期待 雇用拡大、地元企業と連携も
 九州初となる資生堂の新工場が福岡県久留米市に建設されることが決まった。訪日外国人客の増加を受け、高まる「メード・イン・ジャパン」製品への需要に応えるとともに、アジアへの輸出にも対応する。これまで自動車や半導体製造などを中心に発展してきた九州にとっても、産業の多様化につながり、雇用にとどまらない経済波及も期待されるものの、化粧品産業の裾野拡大などは未知数だ。「(バイオ産業の集積を目指す)『福岡バイオバレープロジェクト』に弾みがつく。新しい雇用も生まれ、地方創生という観点からも非常に感謝している」。福岡県の小川洋知事は12日の立地協定締結式で、資生堂の新工場進出に期待を寄せた。九州は自動車や半導体製造などを基幹産業として発展。技術や人材の移転が進み、部品メーカーなど関連産業も集まって、一大集積地を形成するようになった。ただ、輸出依存の高い九州の製造業は海外の景気悪化や国際競争の激化などのあおりを受けることもあり、より多様な産業が求められている。今回、化粧品の世界的ブランドが進出することで、九州の産業構造の重層化が進む。資生堂の魚谷雅彦社長も「地元のITベンチャーといろいろな取り組みができるのではないか。バイオ分野との連携もできれば新しい価値を生み出していける」と地元との協調にも意欲をみせた。雇用が広がる側面もある。久留米市の大久保勉市長は、大学生の地元定着率が低いことに触れ「有名企業に就職できることはすばらしい」と期待。資生堂は地元での雇用規模は今後固めるとしているが、「かなり地元の人に協力いただくことになると思う」(魚谷社長)という。高い品質の「日本ブランド」製品を維持し、地元の産業として育てるには質の高い人材の養成、確保も課題になる。一方、自動車産業のように、原料の供給などで裾野が広がるかは不透明だ。佐賀県唐津市を中心に化粧品産業の拠点化を目指す動きもあるが、資生堂側は既存取引先の九州工場からの仕入れなどにとどまる可能性もあり、供給網への参入といった進出の波及効果は、現段階では見通せない。
    ◇   ◇
●海外需要の急増に対応 品質維持、向上が鍵
 資生堂が福岡県久留米市に化粧品の工場新設を決めたのは、中国を中心とする海外向け需要の急増に対応するのが最大の狙いだ。少子高齢化、人口減少で国内市場の伸びが期待しづらい中、同社は既に連結売上高の6割近くを海外で稼いでいる。海外市場で高い人気を誇る資生堂の「メード・イン・ジャパン」。その品質とブランド力を維持することこそ、新鋭工場の使命といえる。日本製の化粧品は、2010年ごろから急増した訪日外国人による「爆買い」で人気に火が付いた。爆買いが沈静化した後も人気は持続。帰国後に通信販売で買い求める中国人も少なくない。国の統計によると、化粧品の17年の国内出荷額は約1兆6千億円で過去最高。対中輸出額は18年までの8年間で10倍に増えた。資生堂の海外市場での売れ筋は、高価格帯ブランド「SHISEIDO」「クレ・ド・ポー ボーテ」のほか、中価格帯の「エリクシール」など。「長年の研究開発の成果や最新技術を採用している点など『日本の資生堂』が信頼されている」との同社グローバル広報部の言葉を裏付けるように、数字も伸びている。18年12月期の売上高をみると、中国向けは前期比32・3%、アジア太平洋圏は13・9%それぞれ伸びた。海外からの「神風」を受け、栃木県、大阪府に続く工場新設に踏み切る資生堂。だが化粧品の世界では、欧米勢の攻勢も激しい。また最近では、日本製への信頼を失墜させる品質問題が日本企業で相次いでいる。海外市場の期待を裏切らない品質の維持、向上こそが、資生堂の勝ち残り戦略と言って過言ではない。

*6-3:https://digital.asahi.com/articles/ASM2D6F8NM2DUCVL03V.html (朝日新聞 2019年2月13日) 著作権侵害、スクショもNG 「全面的に違法」方針決定
 著作権を侵害していると知りながら、インターネット上にある漫画や写真、論文などあらゆるコンテンツをダウンロードすることを全面的に違法とする方針が13日、文化審議会著作権分科会で了承された。「スクリーンショット」も対象となり、一般のネット利用に影響が大きいことから反対意見が出ていた。悪質な行為には罰則もつける方向で、文化庁は開会中の通常国会に著作権法の改正案を提出する。早ければ来年から施行となる見込み。これまでは音楽と映像に限って違法だったが、被害の深刻な漫画の海賊版サイト対策を機に、小説や雑誌、写真、論文、コンピュータープログラムなどあらゆるネット上のコンテンツに拡大されることになった。個人のブログやツイッターの画面であっても、一部に権利者の許可なくアニメの絵やイラスト、写真などを載せている場合は、ダウンロードすると違法となる。メモ代わりにパソコンやスマートフォンなどの端末で著作権を侵害した画面を撮影して保存する「スクリーンショット」もダウンロードに含まれる。このため「ネット利用が萎縮する」と批判が起きていた。ただ、刑事罰の対象範囲については、著作権分科会の法制・基本問題小委員会で「国民の日常的な私生活上の幅広い行為が対象になる」ため慎重さを求める声が相次ぎ、「被害実態を踏まえた海賊版対策に必要な範囲で、刑事罰による抑止を行う必要性が高い悪質な行為に限定する」こととした。いわゆる「海賊版サイト」からのダウンロード▽原作をそのまま丸ごと複製する場合▽権利者に実害がある場合▽反復継続して繰り返す行為――などを念頭に、今後文化庁が要件を絞り込む。

<在留資格の根拠が不明確で恣意的である>
PS(2019年2月16、21日追加):*7-1の「高度人材ポイント制」の加点対象大学が、現在は旧帝大・早大・慶大などの13大学に限られており、地方大学に少なく、その選択に明確な基準がないのには驚いた。外国人在留資格優遇大学の拡大は、単に「高度人材の地方分散」という要請だけでなく、有用な人材を集められるか、公平性はあるかなどの視点も重要であるため、恣意性がが入らないように、各大学の申請により合理的な基準(少なくとも国立大学は入るようでなければならないし、農業・保育・介護など需要の多い科目を教えている大学も入れるべきである)に基づいて行われるべきである。
 また、*7-2のように、熊本県警は入管難民法(資格外活動・不法残留)違反で、菊池市の製造工場で働くベトナム国籍の技能実習生ら12人を逮捕し、その理由は「技能実習の在留資格を持つ人が資格外活動の許可を受けずに同工場で補助作業員として働いて報酬を受け取った」「在留期間を超えた」などだそうだ。しかし、人手が足りず、少子化を問題にしながら、日本で働いている外国人を軽微なことで犯罪者扱いするのは人権侵害も甚だしく、日本のメディアがトランプ大統領を批判するのは何かを間違えている。
 なお、*7-3のように、新しい外国人雇用制度に期待している農業は、積み残された課題をまじめに指摘しているため、一つ一つの課題を解決していくことが望まれる。

*7-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190216&ng=DGKKZO41350440V10C19A2MM8000 (日経新聞 2019年2月16日) 外国人在留資格、優遇大学を拡大 高度人材、地方へ分散促す
 政府は外国人の学歴や年収を点数にして評価する「高度人材ポイント制」の加点対象を地方大の卒業者にも広げる。地方大出身者が在留資格を取りやすくする。4月に新在留資格による外国人労働者の受け入れが始まるのを前に、相対的に賃金が高い都市部への人材の集中を避け、人手不足が深刻な地方への分散を促す。高い技能を持った外国人を地方経済の活性化に生かす狙いだ。高度人材ポイント制は2012年に導入した。学歴や年収、職歴といった項目ごとにポイントを設け、70点に達すると「高度専門職」の在留資格を与える制度。配偶者の就労や親の帯同などで優遇を受けられる。18年6月時点で約1万3千人が認定されており、政府は22年末までに2万人に増やす目標を掲げる。対象は大学教員などの研究職や企業の営業職、経営者といった人材。活動の種類によって異なるものの、例えば博士号取得で20~30点、法相が指定する大学を卒業した場合は10点を加算する。今回はこの対象校を広げる。3月をメドに地方を含む100以上の大学に拡大する。これまでは東大をはじめとする旧帝大や早大、慶大など全国13大学に限られていた。既存の対象校には広島大や九州大なども含まれていたが岡山大や熊本大など、より人口が少ない地域の大学にも広げる。加点対象大学の卒業者でなくても、職歴や年収に応じて加算されるポイントで高度専門職の在留資格を得られる。ただ加点対象の大学を卒業すれば10点を獲得でき、在留資格をより取得しやすくなる。政府は留学の段階から外国人が地方を選びやすくなるとみる。基準となるのは英教育誌タイムズ・ハイヤー・エデュケーションなどが公表する世界大学ランキングに選ばれた大学。国際化の取り組みに文部科学省が補助金を出す「スーパーグローバル大学」の指定校も対象とする。政府は4月からの外国人材の受け入れ拡大を控え、運用に関する基本方針を昨年12月に決定。外国人材が大都市圏に集中するのを防ぐため、必要な措置をとると明記した。事実上の単純労働を対象とする新在留資格「特定技能」を巡っては、先進的な取り組みを進める自治体への財政支援制度をつくる方針を打ち出した。

*7-2:http://qbiz.jp/article/149120/1/ (西日本新聞 2019年2月21日) 技能実習生ら12人逮捕 熊本の同じ工場 入管法違反容疑
 熊本県警は19日、入管難民法違反(資格外活動や不法残留)の疑いで、同県菊池市の製造工場で働くベトナム国籍の技能実習生ら12人を逮捕した。逮捕されたのは、菊池市泗水町永のチン・ヴァン・ズン容疑者(25)らで、11人が技能実習、1人が留学の資格で来日していた。逮捕容疑は、チン容疑者ら技能実習の在留資格を持つ2人が、昨年11月〜今年2月19日、資格外活動の許可を受けずに同工場で補助作業員として働き、報酬を受け取った疑い。8人が在留期間を3カ月〜3年半超えて日本に滞在した不法残留、2人が偽造在留カードを所持した疑い。県警によると、12人は一軒家2棟に6人ずつで暮らしていた。近隣住民から「不審な外国人がいる」と通報があったという。12人は同じ派遣会社から工場に派遣されたと話しており、県警は派遣元の会社からも事情を聴いている。
   ◇   ◇
●熊本で外国人労働者急増 地震後、人手足りず
 日本で働く外国人労働者は昨年10月時点で146万463人に達し、届け出が義務化された2007年以降、最多を更新した。熊本県では1万155人が働き、前年からの増加率は31・2%と全国で最も高かった。少子高齢化や景気回復に伴う労働力不足に加え、熊本県では「震災後の人手不足も要因」(熊本労働局)とみられ、外国人労働者の増加傾向は今後も続くとみられる。国籍別ではベトナムが約4割を占め、中国、フィリピンが続く。同労働局によると、資格別では「技能実習」が6295人で6割超。就労する産業別では「農業、林業」29・2%、「製造業」28・3%、「卸売業、小売業」10・8%、「建設業」8・8%の順に多かった。技能実習生が、より収入が高い職を求めるなどして失踪する事例も相次ぐ。熊本県警によると、昨年1年間の失踪者は247人に上り、15年の2・8倍となっている。

*7-3:https://www.agrinews.co.jp/p46802.html (日本農業新聞 2019年2月21日) 外国人雇用制度 課題積み残し 生活支援誰が? 派遣元のサポート期待 技能実習生受け入れ法人
 昨年の臨時国会で改正出入国管理法が成立し、4月から新たに外国人を雇用する制度がスタートする。短期間の受け入れも可能となり、農・漁業では直接雇用だけでなく派遣形態でも受け入れができるようになるため、生産現場の期待は高い。ただ、外国人労働者が地域社会になじめるような生活支援の枠組みなど不透明な部分が多く、制度開始を前に、不安を訴える声が上がる。働く外国人にとっては、家族の呼び寄せが基本的にできないなど、先送りされた課題も残る。鳥取県大山町の「当別当育苗」では、フィリピンからの技能実習生、アンジェリカ・キントさん(27)がポット苗を運ぶ作業に励む。「ここに来てよかった。親切で学ぶことが多い。ごますりじゃなくて、本音よ」。個室が整備されるなど働く環境に感謝するものの、母国に残した3人の子どもを思うと、切ない気持ちがこみ上げるという。夫と義理の母が子育てをするが「お金をためて仕送りをするの。早く会いたいわ」と話す。年間160万ポット のスイカやトマトなどの苗を専業農家向けに出荷する同社。32年前に商社マンから農家に転職した當別當英治さん(68)が経営し、5年前から技能実習生を年間4人程度受け入れる。「気持ちよく働いてもらった方が経営にプラスになる。コミュニケーション不足は仕事のミスにつながる」と考え、実習とは別に、来日後1年間は毎日、自ら日本語を教え、対話を深める。食事や旅行などイベントも欠かさず、研修生の母国の文化や国民性を勉強して理解し、日常生活をサポートしてきた。国際貢献の名の下に行う研修と、事実上は労働力として受け入れる現場の実態に「無理がある」と感じていたことから、新制度に期待は大きい。作物に応じた派遣を希望し「直接雇用ならサポートもできる限りするが、派遣で生活支援を派遣会社が担うことになれば農家の負担軽減になる」と考える。
●家族呼び寄せ 要望強く
 家族の呼び寄せや生活支援をどこが担うかなど、4月からの制度開始を前に積み残された課題は多い。新制度では、外国人から要望の強い家族の呼び寄せは原則できないが、子どもを母国に残す場合、一時帰国は可能になる。ただ、来日、帰国時と同様に、一時帰国でも飛行機代は外国人が負担することになる見通しだ。人権の観点から家族帯同への要望は強く、経済同友会も1月に必要性を提言している。新制度では、受け入れる農家や派遣会社が支援できない場合、日本語習得や社会で暮らすための教育、住宅確保や手続きのサポートといった生活支援などを国が認定する「登録支援機関」が担う。業界団体や弁護士、社会労務士などが想定される。監理団体が登録支援機関になることもできる。ただ、同機関がどの地域で、どこまできめ細かくサポートできるかは不透明だ。外国人雇用を視野に入れる関東の農家は「実習生のように、受け入れ農家が責任を問われない派遣(形態)に期待している」と本音を明かす。法務省は今月から新たな仕組みについて、47都道府県で説明会を開いている。同省は「雇用計画や支援計画の基準などを記した政省令を公表できていないが、説明できる範囲で理解を求めていく」(入国管理局)とし、細部は「検討中」を繰り返す。4月からの施行を前に、自治体担当者は「国に聞いても不明確な点ばかり。人手不足対策は切実な問題なので、走りながら課題を検証して、運用を改善していくしかない」などと説明する。全国に先駆けて外国人を派遣する「農業サービス事業体」を発足し、5月から外国人を生産現場に派遣する長崎県は「政府の方針を受けて生活支援などを決めていきたい」(農業経営課)としている。
●現行制度 教訓生かせ
 外国人技能実習生や新たな在留資格を研究する早稲田大学の堀口健治名誉教授の話
 新たな制度は4月に始まるが、仕組みが定まっておらず“生煮え”の状況だ。当面、農家やJAは技能実習生で対応を進めることになるだろう。技能実習制度では、訪れる外国人も受け入れる農家側も双方にメリットがあるよう、生活面も含めて多くの農家は配慮してきた。新制度では、技能実習制度に比べると作業に制限がないことがメリットとされるものの、トラブルも想定される。費用負担や手続きなど、どこが責任を負ってフォローするのか、派遣で支援体制が機能するのかなど、課題が残される。技能実習制度の教訓や仕組みを生かした対応が求められる。

<医療の充実も地方創成の手段の一つであること>
PS(2019年2月14、21日追加):*8-1のように、九経連が、医療機関の外国人患者受入態勢整備を進めるため、「九州国際医療機構」を設立して多言語対応やトラブル対策を支援し、「訪日客などにしっかりした医療を提供するとともに、先端医療を国際的に供給するシステムをつくりたい」としているのはよいことだが、多言語に対応するのは容易でないため、AIなど医療分野以外からの機器開発による支援も重要だ。しかし、*8-2のように、「医療ツーリズム」市場も世界で急拡大しており、環境の良い場所で高度な医療を受けて完治したいというニーズは今後も増え、2021年まで年率13%で成長が続くそうで、医療は高付加価値の“観光”の一つになりつつある。
 一方で、*8-3のように、日本にも医師不足地域があり、「年1900~2000時間」までの残業を認めるとする厚労省の原案が出ているが、これは医師を他の人の2倍働かせる内容で、よほど健康で病気になったことがなく病人の気持ちはわからないといった人しか医師を続けられないというパラドックスを作る上、医師が研鑽する時間をとるのも難しくする。厚労省は、*8-4のように、「2036年時点に各都道府県で必要とされる医師数を推計すると、最も医師の確保が進んだ場合でも宮崎など12道県で計5323人の不足が見込まれる」としているが、おおざっぱに全体数を推計するのではなく、診療科による医師の偏在もなくすよう頭を使うべきである。
 しかし、ちょっと気を付ければ無駄に医師を忙しくする必要のないことも多いのに、*8-5の事例のように、私は(いつも風邪をうつされないように自分がマスクをかけて電車に乗るのだが)、先日、マスクを忘れて電車に乗った時、隣に来た男性に咳をされ風邪をうつされてしまった。このように、みんなに迷惑をかけるのに、マスクもせずに大きな口をあけてせき込むのはマナー違反であり、まさか「こういうことを言うのが相手を傷つける」などという教育はしていないだろうが、学校での清潔・マナーに関する教育に疑問が持たれる。

  
  2018.7.28東洋経済  2018.11.15東京新聞    2019.2.18西日本新聞

(図の説明:左図のように、日本における外国人労働者数は毎年20万人ペースで増加しており、中央の図のように、人手不足はさらに増える見込みだ。また、右図のように、医師数も不足している地域があるが、診療科による医師の偏在もあるため、総量調整だけでは解決しない)

*8-1:http://qbiz.jp/article/148407/1/ (西日本新聞 2019年2月7日) 外国人診療態勢強化へ 九経連が医療機関支援組織 多言語化やトラブル対策
 九州経済連合会は6日、医療機関での外国人患者の受け入れ態勢整備を進めるため、「九州国際医療機構」を設立した。在留外国人や訪日客が増加する中、医療従事者向けのセミナーを開催するなどして、多言語対応の充実や医療費未払いといったトラブル対策を支援する。代表理事に就任した九州大病院の赤司浩一病院長は福岡市で記者会見し「訪日客などにしっかりと医療を提供するとともに、先端医療を国際的に供給するシステムをつくりたい」と抱負を述べた。九経連の麻生泰会長は「医療を通じて外国人に安心感を提供することが、観光やビジネスの面で九州の魅力アップにつながる」と強調した。法務省などによると、九州の在留外国人は13万1532人(2018年6月末)。九州の空港や港から入国した外国人は、18年に初めて年間500万人を超えたとみられる。在留外国人や訪日客の受診が増えるのに伴い、医療機関の言語対応が不十分で適切な診療ができなかったり、外国人患者が日本の公的医療保険制度を不適切に利用したりする事例も起きている。機構は九経連に事務局を置き、問診票などの多言語対応支援や医療通訳の勉強会開催、多言語で受診できる医療機関や医療保険制度など外国人向けの情報発信にも取り組む。治療目的の「医療ツーリズム」で来日する患者と受け入れ医療機関のマッチング支援も手掛ける考えだ。

*8-2:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO36751950S8A021C1MM0000/ (日経新聞 2018/10/22) 医療ツーリズム、世界で急拡大 新興国が誘致競う
 国外を医療目的で訪れる「医療ツーリズム」の市場が世界で急拡大している。主要国の高齢化や格安航空会社(LCC)など安い交通手段の発達により、タイなど新興国渡航の人気が高まる。各国で査証(ビザ)要件を緩めるなど需要取り込みの競争も激しい一方で、地元市民の医療が後回しになるとの批判も出ている。米プライスウォーターハウスクーパース(PwC)が2018年に明らかにした調査によると、医療ツーリズムの世界市場は16年時点で681億ドル(約7兆6千億円)だったという。21年まで年率13%で成長が続くと試算している。16年は世界で約1400万人が移動したとみられ、訪問先はタイ、メキシコ、ブラジルなど新興国が人気だ。医療レベルが比較的高いにもかかわらず、物価が安いため。治療費を含めた旅費は1人あたり約3千~1万ドルで、通常の観光より多い傾向にある。市場拡大の背景には高齢化がある。50年に4人に1人が65歳以上となる中国などが需要をけん引する。また国内線で成長したLCCが国際線にも広がり、移動が手軽になっている。誘致合戦も過熱する。タイは「アジアの医療ハブ」構想を打ち出し、官民で取り組んできた。調査会社によると、17年に医療ツーリズムで訪れた人はのべ330万人と世界トップのもようだ。18年には4%増の同342万人の見込みだ。タイ政府は17年、治療目的の観光客向けに査証(ビザ)の滞在許可期間を延長した。中国など周辺5カ国からの観光客はそれまでより最大76日長い90日滞在できるようにした。バンコクが拠点の富裕層向け私立病院はホテル並みと評される豪華な設備を整え、呼び込みに躍起だ。近年台頭するのがインドで、訪問者は17年に約49万5千人と15年の2.1倍に増えた。医療機器や医師が優れている割に費用が安いのが一因で、手術費は先進国の2割で済む例もあるという。医療レベルが不十分な近隣やアフリカ諸国のほか、インドの伝統医学「アーユルベーダ」を目的にした欧米や中東の訪問者も多い。インド政府は医療人材のスキルを高める研修や、外部にアピールするイベントなどに補助金を出している。病院最大手アポロ・ホスピタルズは英語やヒンディー語などが話せない患者のために通訳を置き、母国から付き添う家族のために宿泊先を探すといった手厚い対応をしている。中東からの旅行者が多いのがトルコだ。地元メディアによると医療目的の訪問者は10年間で急増し、17年に約70万人が訪れた。人気の一つが男性向け植毛で、年10万人以上が治療を受ける。予約までの日にちの短縮や通訳の手配などを官民で進めており、18年には外国人の治療費の一部を付加価値税(VAT)の対象外とした。欧州ではハンガリーやルーマニアなど東欧の人気が伸びている。メキシコも、医療費が高くなりがちな米国の旅行者を多く受け入れる。一方で問題点も指摘される。米国の疾病予防管理センターは言葉が分からない国での治療、品質が分からない薬剤に危険が伴うと指摘する。オーストラリアでは17年、マレーシアで脂肪吸引などを受けた男性が帰国後に死亡したと報じられた。たとえばインドでは医師や病床数が足りず、低所得者層や農村部には十分な医療サービスが行き渡っていない。こうした国民が置き去りにされる中、国外の高所得者が恩恵を受ける医療ツーリズムを批判的にみている個人もいる。日本政府も医療ツーリズムを成長分野と位置づけ、巻き返しをねらう。ただ、16年の医療滞在ビザ発行は1307件にとどまっている。海外での認知度が乏しいうえ、新興・途上国と比べてコストが高い点が伸び悩んでいる原因とみられる。

*8-3:https://www.nikkei.com/article/DGKKZO3981696009012019EE8000/ (日経新聞 2019/1/10) 医師不足地域「年1900~2000時間」 残業規制で厚労省原案
 厚生労働省が2024年4月から適用する医師の残業時間の上限規制の原案がわかった。医師不足の地域の病院などでは「年1900~2000時間」まで容認する案だ。連合など関係団体に示して調整を進めているが、一般労働者の上限規制を大幅に上回るため、議論は難航が予想される。4月施行の働き方改革関連法では一般労働者で年720時間以内、単月100時間未満などの残業時間の上限規制を課す。医師も規制対象だが、厚労省は医師向けの独自ルールを今年度中に固め、5年後に適用する。一般の医師の残業時間の上限は休日労働込みで960時間とする方針。その上で地域医療に欠かせない病院などに勤務する医師は特例で上限を緩める。原案では特例は35年度末までの経過措置とする方針。勤務間インターバルなどの健康確保措置も義務付ける。

*8-4:http://qbiz.jp/article/148936/1/ (西日本新聞 2019年2月18日) 医師不足12道県5000人超 36年推計 都市からの配分急務
 厚生労働省が2036年時点で各都道府県で必要とされる医師数を推計すると、最も医師の確保が進んだ場合でも、宮崎など12道県で計5323人の不足が見込まれることが17日、関係者への取材で分かった。医師確保が進まない場合、必要な人数を満たせない34道県の不足分を積み上げると、3万人超となる。東京や大阪、福岡、佐賀、長崎など13都府県では、その場合でも必要人数を上回る医師が確保できると予測されており、大都市圏から不足地域に医師を配分する施策が急務となる。厚労省は36年度までに医師が都市部に集中する偏在問題の解消を目指している。今回の集計結果を18日の有識者検討会に報告し、医師確保策の議論の材料とする。今後、医師が足りない地域に関しては、地元で一定期間勤務することを義務付ける大学医学部の「地域枠」を優先的に配分するなど、対策を強化したい考えだ。検討会では、医師が集中している現状の度合いを示す「医師偏在指標」を、都道府県が複数の市町村などをまとめて設定する「2次医療圏」ごとに提示。都道府県など3次医療圏単位でも示し、医師不足が顕著な岩手、新潟、青森など15県は「医師少数3次医療圏」とする方針。今回の推計は、患者の年齢や性別による受診率や、配置されている医師の性や年齢、将来の人口変化などを考慮し、36年時点で必要とされる医師数を算出。2次医療圏ごとでは、全国335カ所のうち約220カ所で医師が不足する結果となった。都道府県ごとの推計をみると、医師確保が最も進んだ場合でも、新潟で1534人、埼玉1044人、福島804人の不足が生じる。医師確保が進まなかった場合は、埼玉で5040人、福島で3500人、茨城で2376人と不足人員がさらに増えると推計。必要人数を満たせなかった34道県の不足分を、他の都道府県からの流入を考慮せず、単純に積み上げると、3万4911人となる。一方、その場合でも、東京で1万3295人、大阪で4393人、福岡で2684人が必要な医師数を上回ることが見込まれている。

*8-5:http://qbiz.jp/article/149044/1/ (西日本新聞 2019年2月20日) せき込む音が高速バス車内に響く・・・
 せき込む音が高速バス車内に響く。せきの主は反対側の窓側席の男性。マスクはしていないようだ。世の中ではインフルエンザが流行中。バスの中は逃げ場がない。「勘弁してほしい」と思い窓からずっと外を見ていた。近くの客は気が気じゃなかっただろう。そんな体験から10日余り。のどが痛くてせきが止まらない。鼻水が出て顔が熱っぽい。病院で検温すると38度7分。「見るからに怪しい」と医師。ウイルス検査でA型のところに赤い線が出た。ワクチンを打っていたので症状が軽くて済んだ。職場を強制退去させられ、しばらくは自宅軟禁生活だ。編集局内でインフルエンザがじわじわ広がっている。世間ではピークは過ぎたようだが、流行の終わりかけに発症するとは中年男の悲哀。今週初めからのどが痛かったのにマスクをしてなかった自分を猛省。

<地方の発展はみんなの幸福に繋がるのに・・>
PS(2019年2月19日追加):*9のように、金沢産野菜と農産加工品を東京に運ぶ貨客混載の高速バスが運航を開始したそうだ。人口の少ない地方は、バスも貨客混載しなければ走らせることができないくらいだが、それなら貨物積載部分の面積が大きな地方仕様のバスがあってもよいと思われる。このような中、2020年開催の二度目の東京オリンピック・パラリンピックに2兆円以上もかけ、東京の地下鉄工事は1路線1,000億円以上と言われながら、地方が返礼品を工夫し地場産品を開発しながら、ふるさと納税によって少々住民税を集めると東京圏から苦情が出るというのは、それこそ背景や歴史を無視したエゴ以外の何物でもないだろう。

*9:https://www.agrinews.co.jp/p46779.html (日本農業新聞 2019年2月19日) 高速バスで野菜直送 東京便スタート JA金沢市
 金沢産の野菜と農産加工品を東京に運ぶ貨客混載の高速バス「産地直送あいのり便」の初便が18日、西日本JRバス金沢営業所を出発した。バスのトランクスペースを使って生産量が少ない「加賀野菜」などを輸送し、販路拡大や運送費のコスト削減、農家の所得増大につなげる。今後、月に4便程度の運行と都内各所での即売会などを計画する。輸送されたのはサツマイモ「五郎島金時」や「加賀れんこん」「金沢春菊」などの加賀野菜と加工品各9品目の計4ケース。JA金沢市が集荷した。金沢営業所前で積み込み、JAの辰島幹博常務は「小ロットでも可能な新しい輸送事業となる。金沢産野菜の発信の広がりに期待する」とあいさつした。バスは午前9時半に金沢駅発、午後5時22分に新宿駅着の「金沢エクスプレス2号」。野菜マーケティング販売などのアップクオリティ(東京)が運営を担当し、19日、三菱地所(同)の社員に直販する。アップクオリティによると、バス会社と連携した農産物の貨客混載輸送は9県目。担当者は「都内のレストランやスーパーからも注文を取りたい」と話した。西日本JRバスでは農産物の貨客混載輸送は初めて。金沢営業所の丸岡範生所長は「バスは3列シートで定員が28人と少なく、トランク収納に余裕がある。定期便を使って輸送したい」とした。JAの辰島常務は「昨年の試験輸送では鮮度が高く、速く届くと好評だった。生産量の確保が今後の課題だ。これまで以上に、若い人にも加賀野菜を栽培してもらいたい」と期待を寄せる。

<地方創成とふるさと納税>
PS(2019年2月22、23《写真等》、24、25日追加):地方が発展するためには、*10-1のように、所得の高い仕事を増やし、地域の魅力をアピールして移住者を増やすのが最も合理的である。そのためには、今後の成長産業である農林漁業資源を活かして生産者の所得を増やしたり、製造業の事業所・本社機能が地方に移るような施策を行うことが必要だ。しかし、海外も含めて立地の選択肢が多い製造業は、税制よりも販売エリアへのアクセス・労働力の質と単価・関連産業からの調達を考慮して立地を決定するため、間違いのない意思決定と筋の通った普段の誘致努力が必要だ。一方で、*10-2の地方創生目的で文化庁などの政府機関の一部を地方移転するというのは、政府機関の生産性はもともと高くなく、分散すればさらに効率が下がるため、首都機能の一部をまとめて疎開でもさせるのでなければ、国全体としてはマイナスだろう。
 また、*10-3のように、対馬の漁業者でつくる「対馬の漁業者の所得向上を実現する会」が、①対馬市への公設市場開設 ②燃料費の高騰対策 等の要望書を提出したそうだ。しかし、①については、対馬はよい水産物を作っているため、公設市場をいくつも通すより東京・大阪・福岡の公設市場の出張所を対馬につくってもらった方が、手数料を省くことができるのではないか?また、②については、「船の燃料費が高いから補助しろ」と20年以上も言い続けるのはあまりに工夫がなく、船を電動船に変えて島で発電した自然エネルギー由来の電力で動かしたり、クロマグロの漁獲制限で所得が半減したのならクロマグロの完全養殖をしたり、船に魚を効率よく漁獲できる機材を備えたりすればよいと考える。
 *10-4-1、*10-4-2のように、ふるさと納税額は、泉佐野市が2017年に135億円を集め、2018年には360億円に達する勢いで他地域から苦情が出るほどだが、私は商才があると思った。泉佐野市は関西空港を持ち、瀬戸内海・淡路島・四国に面した美しくて歴史的交通の要衝であるため、泉佐野市にアマゾンやガリバーと同じくらい世界に通用するネット通販会社(例えば、大王《おおきみ》という名前)を作って、質の良いものを販売してはどうか? そして、地方自治体が、ふるさと納税により、一村一品のような小さな目標ではなく、自らの長所を活かして堂々と売れる物を開発してきたことは、ふるさと納税制度の大きな成果なのである。
 なお、今日(2019年2月24日)わかったのだが、*10-5のように、半島・離島・奄美群島のうち一定の基準を満たす地域は、「個人又は法人が機械・装置、建物・その附属施設及び構築物の取得等をして事業の用に供すると5年間の割増償却ができる」という税制優遇があるそうだ。

  
移住希望地域               長崎県対馬市の様子

(図の説明:左図のように、移住希望地域は長野県が連続1位で、都市部から地方への移住に抵抗感のない人は多いことがわかる。また、左から2番目の図のように、長崎県対馬市は韓国の釜山と49kmしか離れていない国境離島であり、リアス式海岸が美しい。そして、ここでは獲る漁業だけでなく、右から2番目の写真のようなマグロの養殖・1番右の写真のような真珠の養殖・その他の魚介類の養殖も盛んだ。つまり、対馬は、今後のアジアの台頭で潜在力が高くなる島であり、付加価値の高い仕事をするための資本投下や人材投入が必要な時期なのである。また、真珠も素敵なアクセサリーに加工して販売した方が付加価値が上がるし、ふるさと納税の返礼品にしてもよいと考える)

 
イタリア製   フランス製      スペイン製          日本製

(図の説明:念のため、各国の真珠のブローチを並べて見たところ、ヨーロッパ製は台座のデザインが華やかで、日本製は真珠は多くついているのだが、台座が簡素なため全体としておとなしくなっている。そのため、外国のデザイナーを入れてみるのも一案だろう)

*10-1:https://www.shinmai.co.jp/news/nagano/20190220/KT190219ATI090041000.php (信濃毎日新聞 2019年2月20日) 移住希望地 長野県1位 2年連続
 認定NPO法人ふるさと回帰支援センター(東京)が19日に発表した2018年の移住希望地ランキングによると、1位は2年連続で長野県となった。2位は前年3位の静岡県、3位は前年16位の北海道だった。長野県は年代別でも30〜50代でトップ。20代以下では新潟県、60代では北海道、70代以上では宮崎県が1位だった。長野は20代以下で2位、60代で3位、70代以上で2位。長野県楽園信州・移住推進室は、市町村と連携した情報発信などが要因と分析。阿部守一知事は「来年度は『信州暮らし推進課』を設置し、一層充実した体制の下で移住、交流の促進に取り組む」としている。18年に同法人が運営する情報センターを利用した人や、セミナー参加者に移住したい都道府県を複数回答可で質問。9776件を集計した。

*10-2:https://www.kochinews.co.jp/article/252817/ (高知新聞 2019.2.10) 【一極集中の拡大】地方創生の本気度を問う
 東京一極集中に歯止めがかからず、むしろ加速している実態があらためて明らかになった。総務省が公表した2018年の人口移動報告によると、東京圏(埼玉、千葉、東京、神奈川)は転入者が転出者を14万人近く上回る転入超過となった。前年より1万4千人以上多く、一極集中が拡大した。その半面、39道府県が人口の流出を意味する転出超過で、高知県は2300人余り。全国の市町村の7割以上で転出超過となった。日本人に限った統計でも、東京圏は23年連続で転入が上回った。安倍政権が地方創生本部を新設した14年以降の5年間は、10万人超えが続く。東京圏の吸引力が強まっているのは皮肉といえる。東京一極集中は、戦後の高度経済成長政策のひずみとして問われ続けてきた課題だ。近年は20年の東京五輪に向けた建設ラッシュや、企業の業績改善に伴う慢性的な人手不足という要因もあろう。ただ、安倍政権は地方創生を看板政策に掲げ、選挙のたびに地方の期待を取り込んできた。その本気度が問われる実態であり、危機感を持って政策を見直すべきだ。15年度にスタートした地方創生の総合戦略は、東京圏と地方の転出入を20年に均衡させる目標を掲げている。だが、目に見える成果は上がっていない。達成に向けた目玉政策は、本社機能を東京23区から地方に移す企業への優遇税制だったが、昨年11月現在で認定は25件。企業を大胆に動かす誘導策にはなり得ていない。昨年も東京23区にある大学の定員増を10年間禁止する新法が成立。さらに、人口流出をせき止めるダムとして重点支援する「中枢中核都市」に高知市を含む82市を選んだ。こうした政策の実効性も現時点では見通せない。中枢中核都市については地方から、周辺の人口を吸い上げる「ミニ集中」を懸念する見方が強い。人の流れを変えるインパクトでいえば、政府機関の地方移転も文化庁の京都府移転などごく小規模にとどまっている。一極集中の是正という本来の狙いに照らせば、期待できる効果はあまりに小さい。省庁の強い抵抗が繰り返されてきた課題とはいえ、ここでも安倍政権の本気度に疑問符が付く。首都直下地震など災害リスク対応という観点もある。リーダーシップを持って議論し直す必要がありはしないか。政府は19年度、総合戦略の新5カ年計画を策定する。これまでの政策を真摯(しんし)に検証し、地方の意見を取り入れながら、実効性がある政策に向け大胆に見直すべきだ。高知県も転出入者ではかる「社会増減」を19年度にゼロにする目標を掲げてきた。雇用創出や移住の環境整備など粘り強い努力が欠かせまい。また、現場の実態を踏まえた有効な政策を国に実現させるには、なお積極的に声を上げていく姿勢が必要になる。

*10-3:http://qbiz.jp/article/149041/1/ (西日本新聞 2019年2月20日) 対馬の漁業者、公設市場開設など県に要望
 長崎県対馬市の漁業者でつくる「対馬の漁業者の所得向上を実現する会」(宮崎義則会長)は19日、県庁を訪れ、同市への公設市場開設や燃料費の高騰対策など5項目を県に求める5325人分の署名と要望書を提出した。県側は「施策の参考にしたい」と述べたが、漁業所得の具体的な改善策には言及しなかった。同会は昨年末に発足。署名には漁業者のほか、船の燃料や電気設備を扱う業者も協力した。同会によると対馬には魚市場がなく、売り上げの半額をかけて本土の市場に出荷しているという。また本土と対馬の燃料費の格差を県が補てんするように求めている。要望書では他に、クロマグロの漁獲制限で半減した所得対策や、違法操業への取り締まり強化を訴えている。同会は「市場があれば流通ルートに乗りにくい魚も販売でき、漁業者の利益が増える」としている。

*10-4-1:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO32713260W8A700C1LKA000/ (日経新聞 2018/7/6) ふるさと納税、関西首位は大阪・泉佐野市の135億円 17年度
 総務省は6日、応援したい自治体に寄付できる「ふるさと納税」による2017年度の寄付額を発表した。関西2府4県は1位が大阪府泉佐野市の135億円で前の年度の約4倍。2位は和歌山県湯浅町の49億円で同5倍だった。総務省は17年4月、返礼品の調達額を寄付額の3割以下にするなど「良識ある対応」を求めたが、3割を超えた両自治体の寄付額が急増した。泉佐野市は17年度の返礼率は約4割。返礼品の品ぞろえを1000種類以上と16年度より300種類以上増やした。もっとも選ばれたのが肉。1万円以上の寄付で黒毛和牛切り落とし1.75キログラムの人気が高かった。湯浅町は地域振興を目的に地元の約70商店が取り扱う商品を返礼品としている。肉やウナギなど高額な返礼品が人気を集めた。返礼率も最大4割だった。両市町とも18年度は返礼率を3割以下とするなどの対応をとる。関西2府4県の寄付額の総額は前年度から1.9倍の437億円だった。豪華な返礼品を自粛する動きが出る中でも、制度が徐々に浸透し、全国と同様に伸びた。地域課題を解決する財源に、ふるさと納税を活用する自治体も目立っている。大阪府吹田市は国立循環器病研究センター(同市)に入院する子どもの家族が低料金で宿泊できる施設の移転費の一部にあてる。個人や法人からの寄付を含めて目標の2億円に達した。

*10-4-2:http://qbiz.jp/article/149331/1/ (西日本新聞 2019年2月25日) ふるさと納税3倍、大阪・泉佐野 規制批判し、ギフト券も贈る
 大阪府泉佐野市は25日、ふるさと納税による2018年度の寄付額が、約135億円だった17年度の3倍近い360億円になる見込みだと明らかにした。市はふるさと納税制度で過度な返礼品を規制する総務省方針に反発し、3月末までの予定で返礼品に加えてインターネット通販大手「アマゾン」のギフト券を贈るキャンペーンを始めていた。千代松大耕市長は記者会見で「キャンペーンの効果が出たが、19年度以降は大幅に減額するだろう。総務省の動きはふるさと納税の縮小につながる」と規制方針を改めて批判した。市によると、18年度は当初から17年度を上回るペースの寄付が寄せられた。360億円は2月に始めたキャンペーンの効果も考慮した12月末時点での想定で、最終的にはさらに増える可能性もある。国会で審議中の地方税法改正案は返礼品を「調達費が寄付額の30%以下の地場産品」とし、これを守る自治体のみを制度対象にすると規定している。市は4月以降、寄付の受け付けを一時停止し、改正法に適合させるため約2カ月かけて返礼品の見直しなどをするという。

*10-5:http://www.mlit.go.jp/kokudoseisaku/chisei/hra_zei.html (国土交通省) 半島・離島・奄美群島における割増償却制度
 半島地域・離島地域又は奄美群島のうち、市町村の長が産業の振興に関する計画を策定する(一定の基準を満たすものに限る。)地区として関係大臣が指定する地区において、個人又は法人が、機械・装置、建物・その附属施設及び構築物の取得等をして対象事業(製造業・旅館業・農林水産物等販売業)の用に供した場合は、5年間の割増償却ができます。(以下略)

<地方創成と自治体の連携>
PS(2019年2月24日、3月2日追加):*11-1の「圏域」については、例えば、市町村毎に上下水道を運用するよりも、いくつかの市町村が一つの会社に管理運用を任せて市町村間で水を売買したり、圏域に一つの最新型ゴミ処理施設を作ったりした方が効率がよくなるし、基幹病院や中学・高校も小さな市町村まで1セットづつ持っている必要はなく、いくつかの市町村が圏域として協力した方が質が高くて効率も良くなるだろうが、その「圏域」として最適な範囲はインフラ別に異なるため、協力したい市町村が必要なネットワークを作るのがよいと思われる。つまり、国が財源を使って無理やり連携や合併を強いると、むしろやりにくくしてマイナスになることもあるため、地方自治体が連携したい時にそれを手助けするのがよいと思う。
 なお、*11-2は、「今ごろ次世代エネルギーとして水素の利用拡大に向けた政府工程表が作られているのは10年遅い」というのが私の感想だが、再生可能エネルギーで電力や水素を作れば、地方の住民が必死で稼いだなけなしの金を湯水のように外国に支払ったり、輸送に金がかかりすぎて生産物を運べず産地として成立しなかったりするということがなくなるため、地方自治体や民間が先に立って世論を作り、国に進めさせるのがよいと考える。
 私は、福岡市のJR博多駅と博多港を結ぶ交通なら、*11-3のようなロープウエーではなく、博多港まで高架で電車を走らせるか地下鉄を乗り入れるのがよいと思う。何故なら、乗車することが目的の観光だけでなく生活の中で乗るものであるため、便利が一番だからだ。これは、空港も同様で、途中にモノレールがあったり、乗り換えが多かったり、階段が多かったりして乗り継ぎが不便なのは、大きな荷物を持って乗ることが多い交通機関として現代の生活にマッチしていない。つまり、国交省は、首都圏で国際線と国内線を別の空港にしたことも含めて交通機関の連結を考えず、利用者の利便性を重視しなかったために、使い勝手の悪い交通ネットワークを作ってしまったわけである。


2019.2.22  2019.2.21西日本新聞     2018.9.17朝日新聞  2019.3.2西日本新聞
 東京新聞
(図の説明:左と中央の図のように、日本政府内で水素ステーション設置が本格的に動き出したそうだが、燃料電池車《iMiev》ができてから既に10年以上が経過しており、あまりに遅いと言わざるを得ない。また、右から2番目の図のように、自動車だけでなく電車にも蓄電池電車や燃料電池車ができて脱電線できそうな時代であり、次は船舶や航空機等の輸送手段に応用すべき時である。なお、交通機関は安全で乗換や所要時間が少ない方がよいため、福岡市内のロープウェイはBestな選択でないと思われる)

*11-1:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/341631 (佐賀新聞 2019年2月24日) 「圏域」構想が反対上回る 市町村連携、自治体アンケート
 人口減少が進む地域の住民サービスを維持するため、新たな広域連携として、複数の市町村でつくる「圏域」が行政を運営する構想に全国自治体の計34%が反対し、賛成は計30%にとどまったことが23日、共同通信のアンケートで分かった。市町村の独自性が維持できない懸念のほか、国主導で議論が進むことへの警戒感が強い。一方で市町村の人材不足を補うため、連携強化による行政の効率化を期待する意見もある。この構想は昨年7月、総務省の有識者研究会が2040年ごろの深刻な人口減少を見据えて提言。圏域への法的権限や財源の付与も求めた。政府は第32次地方制度調査会の主要テーマとし、来年夏までに一定の結論をまとめる方針だ。調査では「反対」9%、「どちらかといえば反対」25%、「賛成」4%、「どちらかといえば賛成」26%だった。「その他」34%は、制度の詳細が固まっていないため賛否を判断できないなどの理由が多かった。反対理由は「地方の声を踏まえて慎重に議論すべきだ」の40%が最も多い。研究会が自治体側と十分な対話のないまま提言した経緯もあり、地方からは「小さい町を次々と合併へ追い込もうとしているのではないか」(兵庫県新温泉町)との声が上がる。
●佐賀県内は賛否拮抗
 佐賀県の20市町のうち、新たな広域連携に賛成と答えたのは7市町、反対は6市町で賛否が拮抗(きっこう)した。「詳細が不明」などとして、7市町は賛否を示さなかった。「賛成」は鳥栖市、「どちらかといえば賛成」は唐津、伊万里の2市と吉野ヶ里、基山、みやき、江北の4町。「どちらかといえば反対」は多久、武雄、嬉野、神埼の4市、玄海、白石の2町だった。賛成の市町は「地方創生の取り組みだけでは今後、地域活性化は難しい」(唐津、鳥栖)、「『圏域』で新たなブランド構築など観光や産業面で期待できる」(伊万里)、「『圏域』内で同一水準の住民サービスが提供できるようになる」(吉野ヶ里、みやき)、「法的根拠や財源を持つことで、圏域での取り組みの実効性が高まる」(江北)などを理由に挙げた。反対の市町は「将来の地方自治のあり方については、地方の声を踏まえて慎重に議論すべき」(武雄、白石)、「従来の中枢連携都市圏や定住自立圏など広域連携の枠組みで特に問題がない」(神埼)、「自治体独自の住民サービスがしにくくなるなど、自治が失われる恐れがある」(玄海町)とした。

*11-2:http://www.tokyo-np.co.jp/article/economics/list/201902/CK2019022202000139.html (東京新聞 2019年2月22日) 水素ステーション無人化 20年目標 燃料電池車普及へ 政府工程表案
 次世代エネルギーとして期待される水素の利用拡大に向けた政府の工程表原案が二十一日、明らかになった。燃料電池車(FCV)に補給する「水素ステーション」を二〇二〇年までに無人で運営できるようにする目標を設定。コンビニ併設型のステーション拡大も盛り込んだ。二〇年の東京五輪・パラリンピックや二五年の大阪・関西万博など国際行事に合わせ技術力を世界に発信。二酸化炭素(CO2)を排出しない環境に配慮した燃料と位置付け、官民一丸で活用を促進する。水素ステーションを全国規模で整備するため国の補助対象を現行の大都市中心から全都道府県に拡大することを検討する。トヨタ自動車やパナソニックなど民間企業とつくる協議会で月内にも公表し、三月末までの正式決定を目指す。ステーションを現状の約百カ所から二〇年度までに百六十カ所、二五年度までに三百二十カ所整備する従来目標は据え置いた。無人化による営業時間拡大や人件費削減などの利点を想定。代わりに運営者が遠隔監視する仕組みの構築が必要で、安全性を確保できるかどうかが焦点になる。FCVは二五年にスポーツタイプ多目的車(SUV)やミニバンといった新車種を投入する。二〇年までに四万台、二五年までに二十万台、三〇年までに八十万台を普及させる目標を維持した。現状は約三千台とかけ離れているが新車種投入で巻き返す。東京五輪では福島県で再生可能エネルギーを使って製造した水素を、FCVや選手村のエネルギーとして利用する。大阪・関西万博でも日本の先端技術や水素の魅力を国内外にアピールする。最初の工程表は一四年に策定され、今回は三年ぶり二回目の改訂となる。工程表とは別に作成された一七年の水素基本戦略や、一八年のエネルギー基本計画を今回の原案に反映させた。資源に乏しく原発依存度の低下も図る日本にとって水素は重要なエネルギーになり得るが、生産や管理に費用がかかることが課題だ。採算を良くするため計画を具体化した一方、従来目標の据え置きも目立った。特にFCVの普及は遅れており、今後も工程表通りに進むかどうかは不透明だ。

*11-3:http://qbiz.jp/article/149655/1/ (西日本新聞 2019年3月2日) 福岡ロープウエー「尚早」 自民市議団が検討費削除提案 予算修正案、可決の公算大
 福岡市のJR博多駅と博多港を結ぶロープウエー構想を巡り、市議会(60人)最大会派の自民党市議団(18人)は1日、市の2019年度一般会計当初予算案に計上された実現可能性の検討費5千万円を削除する修正案を提案すると発表した。南原茂会長は「ロープウエー限定の調査は受け入れられない」と述べ、検討費を予備費に移す案を示した。ロープウエーは市議会で反対論が根強く、修正案の可決は確実な情勢。賛成が過半数を突破し3分の2に迫る可能性も出ている。「ロープウエーに絶対反対ではないが、時期尚早で議論ができない」。市議団の打越基安副会長は、与党第1党ながら修正案に踏み切った理由を説明した。ロープウエーは、高島宗一郎市長が昨秋の市長選で公約に掲げ、3選後の今年1月には有識者や市幹部による研究会が「ロープウエーが望ましい」と提言。市議団には「結論ありきで議会軽視だ」との不満が募っていた。一部には「検討だけならいいのでは」との容認論もあったが、市議選(4月7日投開票)が迫る中、「市民にはロープウエー反対の声が多い」との見方も浮上。福岡空港への出資問題などで対立した高島市長とのあつれきも根底にあり、多数決で修正案の提出が決まったという。ほかの会派では、立憲民主や国民民主などでつくる福岡市民クラブ(8人)が、検討費を生活交通の調査に移す独自の修正案を検討中で今後、自民側と調整に入るとみられる。共産党市議団(7人)も独自の案を提出するが、「自民案にも乗ることができる」。福岡維新の会(3人)や緑と市民ネットワークの会(2人)も同調する見通し。一方、与党会派のみらい・無所属の会(5人)は「計上されたのはあくまで検討費」との立場。公明党市議団(11人)は「自民の話を聞いて冷静に対応する」、高島市長に近い自民党新福岡(3人)は「議会の議論を注意深く見守る」と述べるにとどめた。修正案が可決された場合、高島市長は地方自治法に基づく首長の「拒否権」である再議(審議のやり直し)を議会に求め、出席議員の3分の1超が修正案に反対すれば否決することもできる。高島市長はこの日、「市議会の意見をうかがいながら適切に対応する」とのコメントを発表したが、具体的な対応策は示さなかった。

<膨大な無駄遣いと失う資産の事例>
PS(2019年2月25、26日追加): *12-1-1のように、米軍普天間飛行場の辺野古移設に関する県民投票は、投票率52.48%・反対72.2%で、同じ言葉を繰り返すだけの政府“説明”にも関わらず、沖縄県民の正しい意思が示されたと思う。辺野古には、*12-1-2のように、軟弱地盤が存在し「地盤改良」という名のさらなる莫大な費用と環境破壊が必要で、工期も長期化することがわかっていた。一方、国内外の空港のある他の離島を使えば軟弱地盤ではない上、埋め立て費用も時間もかからないため、沖縄県民の判断をポピュリズムと呼べる人はいない。
 また、*12-2-1のように、2011年3月に起きたフクイチ原発事故のデブリ接触調査が、2019年2月13日に初めて行われ、デブリの取り出しに今後30~40年かかり、これが廃炉の最大の難関・廃炉の実現を占う試金石などと書かれているため、全体として必要になる膨大な費用を明らかにすべきだ。さらに、1~4号機の原子炉建屋を取り囲むように、20年度にも海抜11メートルの防潮堤が建つと書かれているが、東日本大震災でフクイチに押し寄せた津波の高さは15mで、海抜11メートルの防潮堤では意味がないため、またまた本気度が疑われる。
 そのような中、*12-2-2に、東日本大震災とフクイチ原発事故からの復興のため2012年2月10日に発足し期限が10年と定めらている復興庁について、「原発事故による福島県の復興は10年ではできず長期にわたるので新しい組織を立ち上げる」と記載されている。しかし、国民は多額の復興税(所得税の2.1%)を支払ってきたため、これまでコストセンターである復興庁が使った予算とそれによって得られた成果を国民の前にガラス張りにすることから始めるべきであり、そんなこともできない既得権益としての新復興庁ならいらない。
 なお、*13に、国は「放射能濃度が基準値(8千ベクレル/kg)以下の汚染土は、最大99%再利用可能として福島県内の公共事業で再利用する計画を進めている」と書かれているが、汚染土が未だ野積みされている地域を避難解除している無神経さに呆れる。前にもこのブログに記載したが、8千ベクレル/kgの土砂1t(総計:8,000ベクレルX1,000 kg=800万ベクレル)を人里から離れた山中に捨てるのと、8千ベクレル/kgの土砂1,400万立方メートル(8,000ベクレルX1,000 kgX14,000,000m3X1.7《土の比重t/m3》=約190兆ベクレル)を人が居住している地域で再利用するのは人体に対する影響が全く異なるため、基準値以下か否かで判断するのはまやかしだ。また、放射性物質の濃度は技術開発すれば低減できるわけではなく、エネルギーを放射線として出しながら別の物質に変わるのを待つ必要があり、その半減期は、ヨウ素131は8日、セシウム137は30年、ストロンチウム90は29年、プルトニウム239は2.4万年、ウラン238は45億年などであるため、それらが人体に与える影響を心配するのは単なる「不安」ではなく「科学的」なのである。そのため、厳格に管理しながら帰還困難区域の堤防やかさ上げに再利用するのは可能かも知れないが、環境省が「再利用は県内、県外を問わない」としているのは、日本中に放射性物質をばら撒くことになり、住環境にも農林漁業にも悪影響があって、日本の環境省の見識が問われるのである。

   
2018.12.30東京新聞    2018.3.10毎日新聞        汚染土の処理

(図の説明:左図のように、大本営発表ではなく市民が計測した放射能汚染地図では、関東地方もしっかり汚染されている。また、中央の図のように、福島県などの被汚染地域では、未だに汚染土を入れたフレコンバッグが民家や田畑の傍におかれている。そして、汚染土の処理も、右図のように、ほこりを立てたり、地下水と交わらせたりなど、不注意極まりないのだ)

*12-1-1:http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2019022401001712.html (東京新聞 2019年2月25日) 辺野古埋め立て反対が72% 沖縄県民投票、52%投じる
 米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古移設を巡る県民投票は24日投開票の結果、辺野古沿岸部の埋め立てに「反対」が72・2%となった。投票率は、住民投票の有効性を測る一つの目安とされる50%を超えて52・48%だった。玉城デニー知事は近く安倍晋三首相とトランプ米大統領に結果を伝達する。県側は民意を踏まえ、改めて移設を断念するよう迫るが、県民投票結果に法的拘束力はなく、政府は推進方針を堅持する見通しだ。「賛成」は19・1%、「どちらでもない」は8・8%。反対票は投票資格者の4分の1に達した。投票条例に基づき、玉城氏には結果を尊重する義務が生じた。

*12-1-2:https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190223-00000023-ryu-oki (琉球新報 2019.2.23) 岩屋防衛相、工事長期化認める 辺野古新基地 軟弱地盤改良へ 「新要素加わった」
 米軍普天間飛行場の移設に伴う名護市辺野古の新基地建設を巡り、岩屋毅防衛相は22日の閣議後会見で、軟弱地盤が存在し工期が長期化するとの指摘について「地盤改良という新たな要素が加わったので、その分は(工期が)延びていくとは思う」と述べた。これまで政府は国会答弁などで、一般的な工法により地盤改良が可能であると強調する一方、工期の延長に関しては明確に説明していなかったが、岩屋氏は工事が一定程度長期化するとの認識を示した。政府が長期化を認めたのは初めて。岩屋氏は会見で、軟弱地盤の対応について「一般的な工法を用いて、相応の期間で確実に地盤改良と埋め立て工事をすることが可能だ」と強調した。「相応の期間」がどの程度なのかについては具体的な明示は避けた。軟弱地盤は辺野古の埋め立て予定海域の大浦湾側にあり、防衛省は砂を締め固めたくい約7万7千本を打ち込み、地盤を強化する工法を検討している。県は20日、埋め立て承認撤回を巡る防衛省の審査請求に関して反論の意見書を国土交通省に提出した。その中で防衛省が軟弱地盤の改良に使うくいに650万立方メートルの砂が必要になり、新基地建設が長期化し普天間飛行場の固定化につながることなどを指摘している。軟弱地盤が水深90メートルの地点まで達していることを含め、岩屋氏は22日の会見で「具体的なことは詳細な設計が決まればしっかり説明したい」と話した。

*12-2-1:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO41168350S9A210C1I00000/?n_cid=NMAIL006 (日経新聞 2019/2/12) 初のデブリ接触調査 福島第1、直前ルポ
 3月で事故から8年となる東京電力福島第1原子力発電所に日本経済新聞の記者が12日、単独取材に入った。13日から始まる炉心溶融(メルトダウン)で溶け落ちた核燃料(デブリ)の本格的な調査に向けた準備作業が進んでいた。デブリの取り出しは今後30~40年かかる廃炉における最大の難関で、廃炉の実現を占う試金石となる。「調査装置がスタンバイしている」。1~4号機の原子炉建屋を眺める高台から、東電の木元崇宏リスクコミュニケーターは2号機の原子炉建屋を指さした。最大15メートルある調査装置は複数のパーツに分かれて、建屋内で出番を待つ。13日早朝から組み立て原子炉格納容器の横の穴から入れてデブリに触れる。建屋の脇には調査に携わる作業員が待機する小さなコンテナが並んでいた。すぐ近くの道から2号機を見上げた。2号機は事故時に水素爆発が起きなかったため淡い水色の原子炉建屋の輪郭がしっかりと残るが、内部の線量は非常に高い。視察時間は5分程度に限られた。2号機の調査は装置の先端にある2本の指でデブリをつまみ、硬さやもろさなどを調べる。政府と東電は2019年度に取り出し方法などを決めて、21年に取り出しを始める計画だ。ただデブリの取り出しは極めて難しい。もし実現できなければ、東電の経営や福島の復興に大きな影響を与えることになる。生々しい姿が残る場所もあった。3、4号機の建屋の間にある中央制御室だ。事故直後に当直の作業員らが対応にあたった最前線に足を踏み入れた。薄暗い部屋をペンライトで照らすと、「格納容器ベント」などと書かれた操作レバーや事故時の走り書きのようなメモが目に付いた。何かを捜していたのか、床に散乱する鍵の束なども大災害の混乱を物語っていた。中央制御室から出て海沿いでは原発構内を津波から守る防潮堤の建設工事が始まろうとしていた。1~4号機の原子炉建屋を取り囲むように、20年度にも海抜11メートルの防潮堤が建つ。17年に政府の地震調査研究推進本部が、千島海溝沿いで巨大地震が近い将来に発生する可能性があると発表したのを受けた対策だ。震災から8年がたち、作業環境を整え、自然災害への備えを万全に、長い廃炉作業に臨む時期だ。すれ違う構内の作業員の「お疲れさまです」との声を耳に福島第1原発を後にした。

*12-2-2:https://blogos.com/article/357375/ (BLOGOS 2019年2月12日) 復興庁 新たな組織立ち上げへ
 復興庁は、東日本大震災と東京電力福島第一原発事故からの復興のために、 2012年2月10日に発足し、10年間と期限を定められています。トップは、 首相で、事務の統括をする補佐として復興相が置かれています。各省庁、 自治体、団体・企業などの出向者など520人が働いています。10年になる2021 年度には、復興庁は廃止されるため、政府は、復興を引き継ぐ新たな組織を立ち 上げる、と報じられています。原発事故による福島県の復興などは、10年では とてもできず長期にわたるためと、南海トラフ地震など将来の巨大災害に対応する 役割も、新しい組織には担わせることも検討する、ということで、今年夏に閣議 決定する方針です。原発事故があった福島県だけなく、津波被災地の復興事業も 土地のかさ上げや震災弱者などの支援事業などが、2021年3月までには終わら ないことが、復興庁の検証で判明しました。総額32兆円の復興予算は、復興庁の 廃止とともに原則として使えなくなることなどもあり、政府・与党は、新たな組織を 立ち上げて、2021年4月以降も、国が復興事業に関与し続ける必要がある いう認識で一致した、とのこと。しかし、大型公共事業を新たに計画するわけでは ないので、金融庁や消費者庁のような内閣の「外局」として、担当大臣を置く方針、 ということです。国が支援し続けることは、当然のことだと思います。しかし、これ までの復興事業、それを担った復興庁の役割と各省庁の関係など、また、将来の 巨大災害をどのように含めるのか等、しっかり検証して、あらたな形を、私たちにも わかりやすく議論して、進めてもらいたいと思います。これまでも、復興庁に、 自らの省庁の権限が奪われるのではないかという警戒感などから、必ずしも スムーズに運用されていないことがありました。自治体との関係も含めて しっかり議論して、新しい組織を、効果的に働けるものにしてほしいと思います。

*13:http://www.asahi.com/shimen/20190226/index_tokyo_list.html (朝日新聞 2019年2月26日) 福島の汚染土、再利用計画 「最大99%可能」国が試算 地元住民の反対受け難航
 東京電力福島第一原発事故後、福島県内の除染で出た汚染土は1400万立方メートル以上になる。国は放射能濃度が基準値以下の汚染土について、最大で99%再利用可能と試算し、県内の公共事業で再利用する計画を進めている。県外で最終処分するためにも総量を減らす狙いがあるとするが、地域住民から「放射線が不安」「事実上の最終処分だ」と反発が出ており、実現は見通せていない。中間貯蔵施設には4年前から汚染土の搬入が始まり、19日時点で235万立方メートルが運びこまれた。2021年度までに東京ドーム11個分に相当する1400万立方メートルが搬入される予定だ。汚染土は45年3月までに県外の最終処分場に搬出されることが決まっている。だが最終処分場を巡る交渉や議論は始まっていない。環境省の山田浩司参事官補佐は「(最終処分を)受け入れていただくのは簡単ではない。現時点では全国的な理解を進める段階だ」と話す。汚染土の再利用はその理解を進める手段の一つという位置づけだ。同省は有識者会議で16年6月、「全量をそのまま最終処分することは処分場確保の観点から実現性が乏しい」として、再利用で最終処分量を減らし、県外での場所探しにつなげる考えを提示。▽「指定廃棄物」(1キロあたり8千ベクレル超)の放射能濃度を下回ったり、下げたりした汚染土を再利用▽管理者が明確な公共事業などで使う▽道路や防潮堤の基礎のように安定した状態が続く使い方――などの条件を示した。また再利用する汚染土の量については18年12月の同じ会議で、濃度低減などの技術開発が最も進んだ場合、1400万立方メートルのほぼすべてが再利用でき、最終処分すべき汚染土は全体の約0・2%、3万立方メートルほどに減らせるという試算を明らかにした。しかし思惑通り進むとは限らない。同省は「再利用の対象は県内、県外を問わない」としているが、実証事業と称して実際に再利用計画を提案したのは県内の3自治体のみ。二本松市など2自治体では住民の反対を受け、難航している。同市で反対署名を集めた鈴木久之さん(62)は「約束を変えて県内で最終処分しようとするもので、再利用はおかしい」と批判する。

<その他の国民負担と生活・産業>
PS(2019年3月2、3《図》日追加):*14-1のように、経済同友会が温暖化ガス抑制のため提言をまとめ、政府が2030年の電源構成で原発の比率を20~22%と定めているのを受けて、政府に原発を使い続けるための原子力政策再構築を促したそうだ。しかし、原発は温排水を排出して地球温暖化対策にもマイナスである上、環境にはさらに深刻な被害を及ぼすため、このように科学的合理性を持たず生産性の低い金の使い方ばかりして昔返りしたがる人が、経産省や経営意思決定の重要な場所に多いことが日本の実質賃金が延びない大きな理由である。
 また、*14-2のように、東海第二から電気を受け取る東電HDが約1900億円と東北電力・中部電力・関西電力・北陸電力3社が1200億円を原電東海第二原発に資金支援する計画だそうだが、そういうことに支援するくらいなら東電はうなぎ上りに上がった電気料金(これも国民負担であり、上昇は生活や産業を妨害している)を下げるべきだ。そのため、周辺自治体は、もう一度、原発事故が起こって故郷や農地はじめ膨大な資産を失うまで原発稼働を容認し続けるのではなく、速やかに脱原発に向かわせるべきであり、それが損失を最小化する方法だ。
 なお、*14-3の東日本大震災は、原発事故がなければ速やかに街づくりや復興ができた筈だが、原発事故によって帰郷や居住が妨げられている。そして、外国人労働者も、こういう場所に住みたくないのは同じである。

  
   2019.3.2東京新聞       2019.2.14西日本新聞   2019.2.21北海道新聞

(図の説明:左2つの図のように、原発事故の影響を強く受けた地域は、当然のことながら水稲の作付を元に戻すことができていない。また、中央の図のように、原発は大災害を想定外として、地震・火山列島である日本全国に広がっている。そして、北海道の泊原発は、右図のように、内浦湾が噴火湾であるため外輪山の上に建設されており、付近は活断層や地震が多い)

*14-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190301&ng=DGKKZO41866540Y9A220C1EE8000 (日経新聞 2019年3月1日) 原発利用継続へ「政策再構築を」 経済同友会が提言
 経済同友会は28日、二酸化炭素(CO2)など温暖化ガスを抑制するための提言をまとめた。当面は原子力発電を使い続ける必要があるとしたうえで、政府に「現実を改めて国民に丁寧に示し、原子力政策を再構築すべきだ」と求めた。政府が2030年の電源構成で原発の比率を20~22%と定めているのを受け、目標達成に向けてあらゆる努力をすべきだと訴えた。経済同友会は長期的には原発を減らしていく「縮原発」を主張する一方、環境問題への対応から当面は原発が必要だとの立場をとる。

*14-2:https://digital.asahi.com/articles/DA3S13916101.html (朝日新聞 2019年3月2日)東電、東海第二支援1900億円 安全対策3000億円に膨張 再稼働見通せぬ中
 原発専業会社の日本原子力発電が再稼働をめざす東海第二原発(茨城県)をめぐり、電力各社による資金支援の計画案が明らかになった。安全対策工事費が従来想定の2倍近い約3千億円に膨らむとし、東海第二から電気を受け取る東京電力ホールディングス(HD)が3分の2に当たる約1900億円を支援する。これに東北電力のほか、中部電力、関西電力、北陸電力の3社も支援することが柱だ。再稼働時期は2023年1月を想定しているが、周辺自治体から再稼働の了解を得るめどは立っていない。自治体の同意を得られずに廃炉になった場合、東電などは巨額の損失を被る可能性がある。福島第一原発事故を起こした東電は、国費投入で実質国有化された。にもかかわらず、再稼働が見通せない他社の原発を支援することに批判が出るのは必至だ。計画案によると、再稼働前の19年4月から22年末までに約1200億円が必要とし、受電割合に沿って東電が8割の約960億円、東北電が2割の約240億円を負担。東電は、東海第二から将来得る電気の料金の「前払い」と位置づけ、銀行からの借り入れで賄う見通し。東北電は前払いか、原電の銀行借り入れへの債務保証の形で支援する。稼働後の23年1月~24年3月に必要な約1800億円は原電が銀行から借り入れる。これに対し、東電が約960億円、東北電が約240億円、中部電など3社が計約600億円を債務保証する。関電と中部電、北陸電は、原電の敦賀原発2号機(福井県、停止中)から受電していたことを根拠に支援に加わる。だが、敦賀2号機は原子炉建屋直下に活断層の存在が指摘されて再稼働は難しく、受電の見通しは立たない。直接電気を受けない東海第二の支援に乗り出すことは、株主らの反発を受ける可能性がある。原電は保有する原発4基のうち2基が廃炉作業中で、再稼働を見込める原発は東海第二しかなく、資金繰りが厳しい。東海第二が廃炉となれば原電の破綻(はたん)が現実味を帯び、原電に出資する電力各社は巨額の損失を被りかねないため、支援を検討していた。

*14-3:https://digital.asahi.com/articles/DA3S13916066.html (朝日新聞 2019年3月2日) (東日本大震災8年)細る介護、異郷の施設へ 被災地から170人、青森で入所
 東日本大震災の被災地で介護施設が見つからないお年寄りを、青森県弘前市の高齢者福祉施設が受け入れ続けている。8年間で延べ170人。古里に帰れぬままの人も多く、35人が異郷で亡くなった。震災のひずみが行き場のないお年寄りを今も生んでいる。雪深い津軽に、社会福祉法人弘前豊徳会が運営する「サンタハウス弘前」はある。介護老人保健施設などの入所者の2割、66人が岩手、宮城、福島3県の被災地からだ。宮城県気仙沼市の千葉ツヤ子さん(87)は仮設住宅で1人で暮らしていた2015年秋、脳梗塞(こうそく)で入院。要介護度は3、退院後の自立生活が難しくなった。市内に住む息子が近くの施設に申し込んだが、どこも待機が100人以上。病院が困った末に相談したのがサンタハウスだった。入所3年を超えた千葉さん。「みな親切にしてくれる。でもやっぱり帰りたいんだよね」。震災では多くの高齢者施設が被災し、避難所暮らしが難しい要介護者が大勢出た。厚生労働省は特例で、遠くの施設が定員を超えて受け入れてもよいとする通知を出した。名乗り出る施設が少ない中、サンタハウスは新規増床中で、たまたま個室や職員に余裕があった。被災地の病院などに呼びかけ、11年は6人を受け入れた。当初、「緊急事態」は1、2年で終わると考えていた。ところが被災地では施設が復旧しても職員が集まらない。要介護者は増え続けた。サンタハウスで窓口となった宮本航大さん(40)の携帯電話には、自治体の地域包括支援センターやケアマネジャーから相談が途切れなかった。12年以降も毎年数人~二十数人が入所した。最近は、認知症が進んだり、家族との縁が薄れていたりといった人も増えている。現在の入所者のうち、16人が生活保護受給者で、その半数程度は身寄りがないという。一方で帰郷はなかなか進まない。サンタハウスは昨年から、3県にある600施設に空き状況を聞くなどの取り組みを進める。ただ多くのお年寄りにとって、弘前が終(つい)のすみかになる可能性は高い。今年1月19日には89歳の男性をみとった。4日後、気仙沼市から一人暮らしの77歳の男性が入所した。災害公営住宅で倒れているのを民生委員が見つけなければ、孤独死が避けられないケースだった。
■要介護者は増、人手は不足
 被災地では、介護に頼らざるを得ないお年寄りが増え、一方で施設の人手は足りていない。「避難所から仮設、災害公営住宅へと移るたび、環境が変わる。閉じこもり、体調を崩す人が年々増えた」。気仙沼市のケアマネジャーはそう話す。震災で配偶者を亡くしたり、子どもが都市部に出たりして独居になる人も多い。宮城県の沿岸部5地区の65歳以上の被災者約3500人を対象にした東北大の追跡調査によると、要介護認定割合は10年から18年にかけて16ポイント上昇。沿岸部の介護職の有効求人倍率(18年12月)は、気仙沼ハローワーク管内で4・88倍、岩手県釜石管内で4・95倍など高水準の所が多い。施設を増やそうにも、介護職員が集まらない現実がある。一気に進む高齢化、地域や家族の支える力の低下、働き手不足。「日本のあちこちで起きる事態を被災地は先取りしてしまった」と気仙沼市の高橋義宏・高齢介護課長。市は移住者で介護の仕事に就く人に補助金を出すなど対策に躍起だ。サンタハウスの宮本さんは「介護現場では今も震災が続いている」と話す。

<防災に名を借りた公共事業の無駄遣いもある>
PS(2019年3月3日追加): *15-1に、東日本大震災後8年の現在、高さ12.5 mの巨大防潮堤の建設が進んだと書かれているが、宮城県による津波痕跡調査の結果では、*15-3のように、気仙沼市の中島海岸付近、南三陸町志津川荒砥海岸付近は21.6m、女川町近辺は18.3mの高さの津波が来襲し、1960年チリ地震津波を想定して決められた10mの堤防・護岸を殆どの場所で越えた。そのため、12.5 mの新しい巨大防潮堤の高さがどういう根拠で決められたのか不明だが、景観や視界を遮るわりには避難のための時間的猶予を与える程度にしかメリットがなく、景気対策だけが目的の理念なき膨大な無駄遣いに見える。
 従って、(前にもこのブログに記載したが)標高25~30 m超にあるゴルフ場や農地の方を住宅地として開発し、標高の低い場所に農地・牧場・発電設備・公園などを作って、人や動物はいつでも高い場所に避難できるようにしておくべきである。そのため、*15-2のように、42市町村の過半数が被災の記録を廃棄したのかも知れないが、東日本大震災の記録は防災だけでなく科学研究にも重要な資料であるため、マイクロフィルムにして国立国会図書館に保管するのがよいと思う。また、この大震災と大津波は、海上保安庁・メディア・個人の動画に多く記録されているため、日本地図上に地震・津波の映像を張り付けて誰でも参考にできるようなHPを作れば、人によって異なる視点の気付きがあると思う。なお、住む場所を決めるのは個人の自由だが、次回の地震・津波は想定外ではないため、被害があったら自己責任(=主に自費)で再建すべきで、そのためには個人で災害保険や生命保険に入っておく必要があるが、災害保険料・生命保険料の掛金も該当地域の安全性を考慮して変えるのが合理的だ。
 それでも、地震・津波だけなら適切な都市計画をすれば復興に邁進できたのだが、*15-4のように、福島県では本格的なコメ作り再開への環境が整いつつあっても、長い避難の間に農業をやめた人も多く、若い世代はなかなか町に戻ってこず、再開の意向のない農家が45%あるそうで、私はこの数字を尤もだと考える。

    
                  東日本大震災の津波

*15-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190303&ng=DGKKZO41979240T00C19A3CC1000 (日経新聞 2019年3月3日) (東日本大震災8年)巨大防潮堤 建設進む
 東日本大震災の発生から11日で8年となるのを前に、被災地を上空から取材した。福島県では東京電力福島第1原子力発電所事故で使えなくなったゴルフ場や農地に大量の太陽光パネルが設置されていた。岩手県の海岸線では壁のような巨大防潮堤の建設が進む。震災と原発事故が地域に残した影響の大きさと、今なお途上の復興を異例の眺めが物語っていた。2017年に帰還困難区域を除き避難指示が解除された福島県富岡町。再開のメドが立たずに閉鎖したゴルフ場「リベラルヒルズゴルフクラブ」のコースは、黒光りする太陽光パネルに覆われていた。18年12月に設置を終えたという。町内には17年完成の大規模太陽光発電所「富岡復興メガソーラー・SAKURA」もあり、原発事故の影響で増えた遊休農地の利用が進む。緑や黒の土のう袋が並ぶ汚染土の仮置き場はさらに広がり、雑草が茂る周辺の荒れ地とともに重苦しい雰囲気を漂わせる。宮城、岩手両県の沿岸部では海と陸を分かつような防潮堤が目を引く一方、多くの漁港付近に養殖用の漁網が浮かび水産業の再生もうかがえた。岩手県陸前高田市ではそびえ立つ壁のような防潮堤の増設が続く。台形型の防潮堤の高さは12.5メートル。土地のかさ上げ工事に伴いクレーン車やトラックが激しく行き交い、茶色い土ぼこりが舞っていた。かさ上げした土地に約2年前にオープンした商業施設「アバッセたかた」の駐車場には多くの車があり、にぎわいが伝わってきた。

*15-2:https://digital.asahi.com/articles/DA3S13917665.html (朝日新聞 2019年3月3日) (東日本大震災8年)被災の記録、残らぬ恐れ 42市町村の過半数、既に廃棄も
 東日本大震災で被災した岩手、宮城、福島各県の42市町村の過半数が、被災時の対応や復興の過程で作成した「震災公文書」の一部を既に廃棄したか、廃棄した可能性がある。朝日新聞の調査で判明した。当時のメモや写真なども10市町村が保存していなかった。保存ルールが統一されていないのが原因で、対策が必要になりそうだ。
■保存、対応分かれる
 公文書管理法は2011年4月施行。内閣府は翌年、震災関連公文書を「国家・社会として記録を共有すべき歴史的に重要な政策事項」として適切な保存を国の機関に通知した。ただ通知の対象に地方自治体は含まれていない。朝日新聞は1~2月、42自治体にアンケートした。市町村は公文書を、▽1、3、5、10、30年ごとに保存期限を決める▽永年保存する――など、同法や内部規程に沿ってそれぞれ管理している。42市町村に保存期限が過ぎて廃棄した震災公文書があるか尋ねたところ、6市町村が「ある」、16市町村が「可能性がある」と回答。国からの通知文書やボランティア名簿などを廃棄していた。「保存期限がきた」(宮城県多賀城市)、「全て保管するスペースがない」(福島県飯舘村)などを理由に挙げた。今後、保存期限が過ぎると廃棄する震災公文書があるかを問うと、「ある」は12市町村、「未定」は17市町村だった。公文書の管理を各部署に任せている市町村も多く、全庁的な判断の有無とその時期が重要になる。例えば宮城県気仙沼市は昨年になって「当分の間は捨てない」と定めたが、それ以前は捨てていた恐れがある。一方、廃棄した文書が「ない」と回答した岩手県釜石市は12年、「11年度以降の震災公文書は全て永久保存」と決めており、早期の判断で対応が分かれた。また、市町村が公文書として取り扱わなくても、職員の手控えメモやホワイトボードの記録、写真なども震災の重要な記録であるほか、当時の対応を検証できる資料だが、10市町村が「保存していない」と答えた。
■国・県・民間も保存後押しを
 神戸大の奥村弘教授(歴史資料学)の話 災害に関わる公文書は、保存期間の長短に関わらず、被災時の様子や被災後に行政や住民がどのように対応したか示している可能性がある。将来の災害対応に向けた資料として、できるだけ保存していく必要がある。ただ、一自治体で保存していくのは保存場所や人手確保といった課題が残る。場所の確保に加え、被災直後から文書保存に向けた応援職員を派遣するなど、国や県レベルでの保存や支援の仕組みが必要だ。また、被災者や復旧・復興に携わった民間団体レベルでも資料を残す動きを起こすことが、災害の記録と記憶を後世に伝える上で重要になる。(以下略)

*15-3:https://www.fukkoushien-nuae.org/2011/07/17/・・ (宮城県調査) 津波、気仙沼・南三陸20メートル超 
 宮城県は東日本大震災の津波で浸水した県沿岸部について、津波痕跡調査結果をまとめた。気仙沼市、南三陸町の2カ所では、基準海面からの高さが20メートルを超える地点で痕跡が確認された。ほとんどの場所で既存の堤防、護岸を越えていた。調査は4月中旬から6月末、陸上約1200地点、河川約1300地点で実施。海岸線から最も近い場所の痕跡を採用し、東京湾平均海面と比べた高さを計測した。調査地点の中で最も高い位置の痕跡は気仙沼市の中島海岸付近、南三陸町志津川の荒砥海岸付近で、ともに21.6メートルだった。両海岸周辺でも20メートル近い痕跡があった。死者・行方不明者が900人を超す女川町近辺では5.5~18.3メートルで痕跡を確認。児童74人が死亡、行方不明になっている石巻市大川小に近い北上川では、12.5メートルの高さに跡が残っていた。七北田川河口から県南にかけての仙台平野沿岸では福島県境付近が最も高く、15メートル前後に達した。津波で滑走路などの施設が浸水した仙台空港付近は13.3メートルだった。松島町など一部を除き、津波は既存の堤防、護岸(高さ3.2~7.2メートル)を大きく越えた。堤防や護岸の高さは、主に1960年に発生したチリ地震津波や高潮を想定して決められていた。国は6月下旬、堤防、護岸の高さや規模について、県が過去の測定値や歴史文献を踏まえ、入り江や湾ごとに決めるとの方針を示した。県は本格復旧時の高さや工法について検討を進めている。

*15-4:http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201903/CK2019030202000189.html (東京新聞 2019年3月2日) <原発のない国へ 事故8年の福島> (3)帰農へ歩み 不安の種も
 収穫されたコメを低温貯蔵するカントリーエレベーターや種苗センターが国道6号沿いに完成するなど、本格的なコメ作り再開への環境が整いつつある福島県楢葉町。農地に置かれていた除染土入りの黒い袋は、めっきり減った。東京電力福島第一原発周辺にある中間貯蔵施設への搬出が進んでいるためだ。町北部の上繁岡地区で、農家の佐藤充男さん(74)はコメ作り再開のため、仲間五人と「水田復興会」を結成した。昨年は八ヘクタールで作付けをし、今年は二倍以上の十八ヘクタールに増やし、近い将来には五十ヘクタールにまで拡大することを目指している。「三年前から徐々に作付けを増やしてきたが、最近では買いたたかれるような風評被害を感じない。譲ってくれと引き合いもかなりあるんだ」と、佐藤さんは語る。「田んぼとして使っていることが大切」と食用米の他、飼料米も大幅に増やす計画で、自宅近くに仲間と共同所有する大型農機の倉庫も建てた。冬の間も準備に余念がない。ただ、長い避難の間に農業をやめた人も多く、若い世代はなかなか町に戻ってこない。「俺は農業が好きだし、仲間とワイワイやるのも好きだからやっている。ただし、この先どうなっていくかは、まだ見通せないな」と話した。町の同じ地区で、塩井淑樹(よしき)さん(68)は風評被害を見越して、コメから観賞用の花「トルコキキョウ」栽培に切り替えた。三年前から七棟のビニールハウスで試行錯誤を続ける。薄い赤紫の花が咲き、出荷を待つハウスもあれば、これから植え付けるハウスもある。「植え付け、出荷を順繰りにしていくから忙しいんだよ。手をかけて形を整えれば、評価も高くなる。自分は見よう見まねでやっているから、まだまだだ。もっとうまくなれば、収入も増えるんだが…」。需要に素早く応える「産地」として市場で認められるには、仲間の農家が多い方が有利。今は三軒にとどまるものの、イチゴの観光農園から転身した三十九歳の男性もいる。幼い子がいて、二十キロ以上離れたいわき市から車で通って栽培する日々。若い担い手は力を込めて言った。「軌道に乗ったとは言えない。話にならないほど収入は減り、これで食べていけるほどではない。原発に依存してきたから、プロの農家は多くはない。でも、生まれ育ったこの地は好きだし、プロとして生き残っていかないと」 
◆農家 再開意向なし45%
 楢葉町など比較的汚染度の低い地域では、農地を深く耕して降った放射能を薄め、他の地域では汚れた表土を5センチほど除去し山砂を加えた。放射性セシウムを吸着する鉱物ゼオライトを土に混ぜたほか、農作物の成長期にカリウムを散布。こうした対策で、農作物へのセシウム移行を防げることも確かめられている。福島相双復興官民合同チームが2018年、被災12市町村の農家1429人に実施した調査では、営農を「再開済み」と「再開意向あり」は合わせて40%、一方で「再開意向なし」は45%に上った。

| 経済・雇用::2018.12~ | 02:28 PM | comments (x) | trackback (x) |
2019.1.9~12 日本経済における人口構造の変化と労働力・需要構造の変化 (2019年1月13、14《図の説明等》、18、19、20、21、25、26、28、30、31日に追加あり)
 2019年(平成31年)の新年、おめでとうございます。

(1)人口減少が経済悪化の原因ではないこと


  日本の経済成長率推移    “高齢者”割合の急速な増加    人口構造の変化

(図の説明:左図の「経済成長率(数学的には、GDPの変化率)」は、戦後から第一次オイルショックまでは9%前後であり、オイルショックからバブル崩壊時までは4%前後だった。そして、バブル崩壊後は、リーマンショック時にマイナスになったものの、だいたい1%前後で推移している。つまり、誰もが購入したいと思う新製品がある時にはGDPが急激に増え(=変化率が高くなり)、それがなければ安定した状態が続くということだ。また、日本の人口は、中央と右図のように、“高齢者”の割合が大きくなっていくが、これは購入したいと思う需要構造が変化することを示している。そのような中、介護は需要が増えるサービスの代表で、雇用吸収力も大きいため、必要な介護サービスを削減するのは経済にマイナスだ。また、生産年齢人口に入れられない“高齢者”の定義は、寿命が延びれば高くなるのが当然で、女性の労働参加や外国人労働者の受け入れも増えるため、働く人や支える人が足りなくなるという主張は正しくないと考える)

1)世界と日本の人口推移
 2100年には、*1-1のように、世界の人口は112億人、日本の人口は8,500万人になり、平均寿命は世界82.6歳、日本93.9歳になるそうだ。しかし、これについては、日本では、機械化・高齢者の雇用・女性の雇用・外国人労働者の受入拡大などのように、既に対応を始めているので問題ないと考える。

 また、世界の人口は増え、日本の人口は減るため、2100年の平均出産数は、世界では1.97人まで減り、日本では1.79人に増えるそうで、これは数世代かけて生物的調整が働くからだ。

 さらに、60歳以上の人口は、2100年には世界全体で現在の3倍以上になるとのことだが、世界でも平均寿命が82.6歳まで延びるのに、高齢者の定義を「60歳(又は65歳)以上」のまま変えないのが、実態に合わないわけである。

2)人口構造の変化と労働力・需要の変化
 政府は、*1-2のように、「国内景気は、緩やかに回復している」としているが、私は金融緩和しなくても景気は回復したと思う。何故なら、東日本大震災等の大災害で多くの都市が壊滅的打撃を受け、リスクの小さい環境のよい街に再生するためには、莫大な公共投資が必要だからだ。そのため、このようにどうせ多額の国費を使わなければならない機会をとらえて、リスクや環境を考慮した進歩した街づくりを行い、無駄遣いの方は徹底してなくして欲しかった。

 なお、大災害からの復興で建設に従事する労働力が不足している時に、同時に東京オリンピックや万博の誘致をしたのには疑問を感じるが、外国人労働者の受入拡大が実現したため、労働力のネックは次第になくなると思われる。

 私は、個人消費が勢いに欠ける理由は、金融緩和と公共投資で景気を持たせているものの、①年金が主な収入源である65歳以上人口が29%を占めるのに、物価上昇やマクロ経済スライドなどで実質年金を減らしこと ②人口の29%を占める高齢者の社会保障も負担増・給付減にしたこと ③賃金上昇が物価上昇に追いつかず、現役世代の実質賃金も増えなかったこと ④消費税上昇分が物価に上乗せされ、明確に国民負担増となったこと などだと考える。

 つまり、可処分所得が減れば、家計が破綻しないためには支出を減らすしかないため、現在は節約することが国民の唯一の選択肢になっており、これが消費者の財布のひもが固い本当の理由なのだ。しかし、景気拡大で、若い男性だけでなく高齢者や女性の雇用も増え、労働参加率が上がったことは重要だった。

3)実質賃金の上昇には、迅速なイノベーションが必要であること


日米の実質賃金推移   膝軟骨の再生医療    介護の市場規模     燃料電池バス 

(図の説明:米国は実質賃金が順調に伸びているのに対し、日本は低迷したままである。これは、金融緩和で金をじゃぶじゃぶにして物価を上げはしたものの、「本物の革新」が速やかにできないからだ。「本物の革新」とは、求められる新技術を積極的に作って実用化し、国民生活を豊かにしていくことだが、新しい技術ができると否定やバックラッシュが多く、日本で最初に実用化するのが難しいという状況がある。また、技術や生産の元になる特許権も粗末にされており、この点で、我が国の意識は開発途上国のままなのである)

i)日本のイノベーションは、バックラッシュが多くて速度が遅い
 日経新聞と一橋大学イノベーション研究センターが、*1-3-1のように、共同で世界の主要企業の「イノベーション力」ランキングをまとめたところ、米国のIT企業が上位を独占し、日本はトヨタ自動車の11位が最高で、楽天とソニーが30位台だったそうだ。

 日本のメディアは、イノベーションの例として、既に常識となっているITやAIのクローズアップをすることが多いが、EV・自然エネルギー・自動運転・再生医療・癌の免疫療法・介護制度なども立派なイノベーションであり、それにあった道づくりや街づくりをして実用化していく必要があるにもかかわらず、EV・自然エネルギー・癌の免疫療法・介護などへの逆風を初め、バックラッシュが多くて産業を育てることができず、我が国が損失を蒙っているケースは多い。

ii)高すぎる洋上風力発電機
 大手電力が、*1-3-2のように、洋上風力発電設備を建設し始めたのはよいことで、漁業関係者の理解は、その施設が同時に漁礁(魚介類のゆりかご)や養殖施設の役割を果すように設計すればすぐに得られると思う。また、海は国有地であるため、騒音・振動・悪景観などの公害を出さなければ、地元の理解は容易に得られるだろう。

 ただ、「東電は、最大100基程度を数千億円かけて建設し、合計出力を原発1基相当の100万キロワットにすることも可能」としているが、風力発電機一基を設置するのに数十億円かかるというのは、1桁高すぎる。このように、ちょっと新しい技術を、いつまでも高価で実用化できないものにしているのも、我が国産業の悪い慣習だ。

iii) 再生医療の遅い進歩
 再生医療が商用化の段階に入り、*1-3-3のように、高齢化に伴う膝関節症などにグンゼ、オリンパス、中外製薬、ジャパン・ティッシュ・エンジニアリング等の日本企業が参入しているそうだ。膝関節症は、日本人の5人に1人が患う病気であるため需要が多いが、その他の病気も再生医療で解決できるものが次第に増えていくと思われる。そして、需要増は、他国でも数年遅れで日本と同じ経過を辿るのである。

 その再生医療は、私が衆議院議員をしていた2005~2009年の間に、厚労省・文科省・経済産業省が協力して力を入れ始めたもので、日本では医療分野での研究が盛んだったため、この分野で日本企業が世界をリードできる可能性はもっと高かった。

 しかし、このような時にネックになるのが公的医療保険でカバーする治療費の範囲であり、理論的には、副作用がなく効果の高い治療法であり、治して介護費用を少なくできるものでもあるため、積極的に多くの症例に使えるようにして治療費を抑え、公的保険でカバーできるようにすることが重要なのである。

iv) オプジーボの発明から見えた日本における特許権の軽視
 がん免疫薬は、*1-3-4のように、本庶氏らが1991年に発見した遺伝子「PD―1」の機能阻害でがんを治療できる可能性を示し、京大に特許出願を要請したが、知的財産に関心が薄かった京大は「特許維持費用を負担できない」として拒否したそうだ。

 そのため、小野薬品と特許を共同出願したが、本庶氏と小野薬品が結んだ契約では、発明の使用を小野薬品に独占的に認める専用実施権と、本庶氏が受け取る対価の料率などを決め、その対価の料率が1桁小さかったのだそうだ。

 しかし、もともと求められていた癌免疫治療薬の売り上げはうなぎ登りで、一人の研究者が思いついたアイデアに端を発した2024年売上額は年4兆円との想定もあり、仮に年4兆円の売り上げで0.5%の特許権料率なら毎年200億円の特許権収入が入ることになる。しかし、日本では、このように知識や技術に対する評価が低く、大切にされないのが問題なのである。

v) 2019年、新時代へのトップの意識
 西日本新聞が、*1-3-5のように、2019年1月9日、JR九州の青柳社長と西鉄の倉富社長に新時代へのインタビューをしている。

 JR九州の青柳社長は、「地域に応じて最適解を」として、①自動運転技術の導入 ②タクシー・バスとの融合 ③柱は鉄道と不動産 ④商業施設だけでなくオフィス・ホテル・大型コンベンション施設なども開発 ⑤志を共にする企業と連携して街づくりに貢献したい とのことである。

 西鉄の倉富社長は、①成長の柱は海外で、ASEANでのマンション・一戸建て住宅、付随する商業施設などを増やしていく ②グループ全体で結束して大型プロジェクトを進める ③福岡空港に『スマートバス停』を導入する ④次世代型開発の一つとして、スーパー、病院、医療・介護サービス付きマンションなど、シニア世代に必要な機能が近距離にまとまっている地域を造る ⑤モニターやセンサーを活用して機械化を進めるなど最適な技術導入や効率化が大事 などとしており、よいと思う。

4)社会保障の負担増・給付減が景気悪化の最大の理由である
 しかし、厚生労働省は、*1-4のように、2019年に公的年金の財政検証を実施し、当面の年金財政は健全だと確認するが、支給の長期的な先細りは避けられないとしている。しかし、私は、①高齢者が長く働いて70歳超からの年金受給開始も選べるようになったり ②女性の労働参加率が増えたり ③外国人労働者が増えたり ④パート社員へも厚生年金が適用されたり ⑤産業を効率化したり、産業の付加価値を高くしたり ⑥エネルギー料金を海外に支出するのを止めたりすれば、一律に支給開始年齢を引き上げなくてもやれるのが当然だと考える。

 そもそも、所得代替率(現役の手取り収入に対する年金額の比率)が50%ならよいというのも根拠はないが、上のような対応をしても年金や社会保障が持続可能でないと言うのなら、厚労省の管理やメディアの報道の仕方に問題があるのだ。つまり、いつまでも負担増・給付減のみを言い続け、それに反対するのをポピュリズムと呼ぶような思考停止は止めるべきである。

(2)改正入管難民法について


 2018.11.10産経新聞     2018.11.14産経新聞    2018.12.25 2018.12.8
                              西日本新聞  毎日新聞    

(図の説明:一番左の図のように、日本国内で働いている外国人労働者は、2017年に約128万人で、既に日本で欠かすことのできない人材となっている。しかし、現在は、外国人を専門的・技術的分野以外は労働者として受け入れておらず、技能実習生として受け入れているため、悪い労働条件を押し付けたり、仕事を覚えた頃に母国に返さなければならなかったりして、雇用者・被用者の双方に不便な状態なのだ。そのため、左から2番目の図のように、分野別に必要とされる人数を労働者として受け入れ、右の2つの図のように、環境整備をすることになったわけだ)


 日本とASEAN諸国の    介護人材の需給推計   外国人受入に関する政府の基本方針
  人口ピラミッド

(図の説明:左図のように、日本の人口ピラミッドはつぼ型になっているが、ASEAN諸国等にはピラミッド型の国も多いため、今なら、その気になれば外国人労働者を受け入れることが可能だ。実際に、介護分野では、中央の図のように、2025年には40万人近くの人材が不足すると言われている。しかし、「入国した外国人も都市に集中するのでは?」「日本人の雇用が奪われるのでは?」と懸念する人もいるので、右図のように、政府の基本方針が出されたわけである)

1)外国人労働者受入拡大について
 政府は、*2-1、*2-2のように、2018年12月25日、来年4月からの外国人労働者受入拡大に向けた新在留資格「特定技能」の枠組みを定めた「基本方針」と業種毎に人数などの詳細を決めた「分野別運用方針」を閣議決定したそうだ。

 介護や建設などの深刻な人手不足14業種で受け入れを決め、来年4月から5年間で最大34万5150人がこの在留資格を得ることを見込んでおり、関係閣僚会議では共生のための環境整備施策をまとめた総合的対応策も決定したとのことである。しかし、私は、この14業種だけでなく、美容師も労働力確保と技術交流を兼ねて外国人美容師の就労を認めてもらう嘆願書を出したと聞いており、これは意義のあることだと考える。
 
 なお、外国人が大都市圏に集中しないように措置を講じるとのことだが、仕事・住居・医療などの福祉・教育で安心できれば、多少の賃金格差は問題にならないと思う。

2)農業分野の外国人労働者受入拡大
 農業分野は、*2-3-1のように、受入人数の見込みは、5年間で最大3万6500人、外国人も栽培管理から集出荷、加工、販売など生産現場の全般の作業に携われるとし、受入農家は雇用労働者を一定期間以上受け入れた経験があることなどを要件とし、受入形態は、農家の直接雇用だけでなく人材派遣業者を通じた受け入れも認めている。

 TPPが発効し、*2-3-2のように、九州の農家が「組織化」で対抗するには、大規模化して必要な労働力を確保することが必要だ。そのためには、機械化とともに外国人労働者の雇用が有力なツールとなり、*2-3-3のように、大分県内に、来年にもアジア出身者らを対象として農林業の担い手を育成する国際専門校が開校して、若者の就業・定住を促進し、国際ビジネスの創造や海外販路の拡大も狙うというのは、迅速で頼もしい。

3)介護分野の外国人労働者受入拡大
 外国人は日本全国の介護現場で活躍しており、*2-4のように、2019年4月施行の外国人労働者の新たな受け入れ制度では、全職種で介護分野が最多の人数となる見込みだ。介護は、2020年には12.2兆円規模、2025年には15.2兆円規模になる実需であり、2025年には253万人の雇用が見込まれている大きな産業なのだが、何故か粗末にされている。

 また、介護現場における外国人の登用は今後も拡大し続けると見込まれ、先進国を中心に介護分野の外国人の受け入れは進んでいるそうだ。そのため、就労のハードルが高い日本を避けて他国に人材が流れる恐れもあるため、外国人が技術をしっかりと習得し、安心して生活を送れる環境を整えなければならないようだ。

 さらに、介護だけでなく家政婦も外国人を登用できれば、女性の仕事と子育ての両立が容易になったり、自宅療養がやりやすくなったりするが、男性が大半の議員では気が付かないようだ。

4)外国人労働者の受入環境整備
 2019年4月に始まる外国人労働者の受入拡大に向け、*2-5のように、受入環境の整備に重点を置いて各省庁が予算措置を行い、例えば、厚労省は①雇用状況視察 ②受入先の改善指導 ③医療機関の多言語化支援 などの予算を確保し、外務省は将来的な人材の獲得合戦を見据えて、海外での日本語教育や現地での日本語教師の育成・教材開発などを行うそうだ。

 そのほか、*2-6のように、外国人と働くには、さまざまな問題が発生し、一律の対応は通用しないそうだが、しばらくやれば問題がパターン化するため、自治体や企業も次第に対応に慣れてくるだろう。

(4)家事労働の軽視と女性差別

 
2018.12.18 ジェンダーギャップ指数順位   2018.9.3    2018.9.5 2018.8.7
西日本新聞                  西日本新聞    中日新聞 産経新聞

(図の説明:一番左の図のように、2018年版男女格差報告によると、日本は男女平等度が世界で110位と低い。また、左から2番目の図のように、2011~2017年の内訳では、政治・経済の分野で特に平等が進んでおらず、教育においても中位以下である。また、医師全体に占める女性の割合は21.1%だが、外科系は8.7%しかおらず、戦力としての女性医師への期待の薄さからか、いくつかの医科大学で入試における女性への不利な扱いがあったのは記憶に新しい)

1)日本の男女平等度
 スイスの「世界経済フォーラム」は、2018年12月18日、*3-1のように、2018年版「男女格差報告」を発表し、日本は149カ国中110位で政治・経済分野で女性の進出が進んでおらず、G20では下位グループに位置しており、中国(103位)、インド(108位)よりも低かったと報告している。G20で日本より低かったのは、韓国(115位)、トルコ(130位)、サウジアラビア(141位)の3カ国しかなく、この3カ国には悪いが、名誉ある地位とは言えない。

 日本の最初の男女雇用機会均等法は、*3-2のように、1985年に国連の「女子差別撤廃条約」という外圧を利用し、経済界の反対を押し切って制定されたが、男女の雇用機会均等を努力義務にまでしかできなかったため、ないよりはよいものの骨抜きの部分が多かった。そして、1997年の改正で、努力義務規定を禁止規定にしたものの、まだ骨抜きの部分があるわけである。

 また、保育所は、「(本来は母親が育てるべきものだが)保育に欠ける者への福祉」として整備されたため、十分にはなく、学童保育は存在しなかった。そのため、出産退職せざるを得なかった女性も多く、出生率は落下の一途を辿った。つまり、保育所や学童保育が十分に整備され仕事を継続できるのでなければ、仕事を辞めるか、出産を諦めるしかなかったのである。

 これに対し、現在では、将来の支え手である子どもを増やすことを目的として(これも失礼な話だが)、①男性の家事・育児参加 ②社会の子育て支援 ③働き方改革 などを主張する人が多い。しかし、両方が力いっぱい働いている夫婦で、①のように、男性が家事・育児に参加し、③の働き方改革で2人とも5時に終業しても、通勤時間を考えれば、②の社会の子育て支援だけでは過労になる。何故なら、家事は、それだけでも仕事になるくらいの労働量だからだ。そのため、*3-3のように、働く女性の数は、働き盛りの25~44歳で伸び悩んでいるわけだ。

 従って、私は、仕事と子育てを無理なく両立するには、保育所や学童保育だけでなく、家政婦の雇用や家事の外注をやりやすくすることが必要だと考えている。

2)管理職や専門職に女性より男性が選ばれる理由は何か
i)医大入試における女性差別の衝撃と社会“常識”
 *3-4-1、*3-4-2、*3-4-3のように、多くの医科大学で不正入試を行い、女子学生や多浪生を不利に扱っていたのは衝撃的だったが、特に、順天堂大学が女子を不利に扱った理由を、①女子は男子より精神的な成熟が早く、受験時はコミュニケーション能力も高いが、入学後はその差が解消されるため補正する必要があった ②女子寮の収容人数が少なかった と、説明したのには呆れた。

 このうちの①については、順天堂大学は医学的検証資料として学術論文を提出し、心理学者が、「そのような内容を主張しているわけではない心理学の論文を安易に引用するような姿勢に対して、強い懸念を表明する」という見解を発表したのが、あざやかだった。また、②ついては、東大は、現在では、日本人学生と留学生の男女が共に豊島国際学生宿舎に入れるようにして相互交流や国際交流の推進を図っているのであり、個室なら寮自体が男女別でなくてもよい上、寮に入ることが大学に行くために不可欠なことでもない筈だ。

 ただ、「女子の方が精神的な成熟は早いが、後で男子に抜かれる」「女子の方がコミュニケーション能力は男子よりも高いが、数学や論理学は男子の方ができる」などというのは、初等・中等教育でも教師がよく言うことであり、要するに、「成人では、男子より女子の方が仕事の能力が低いため、女子を教育するのは無駄だ」という結論にしたがっているわけだ。

 そして、これは、特定大学の医学部だけの問題ではなく、教育段階や企業の採用・研修・配置・昇進段階でよく出てくる女性差別の根拠となっている先入観(社会常識)であるため、女性蔑視をなくすには、この先入観を廃することに正面から向き合わなければならない。

ii)女子だけに保育園の質問するのは何故か?
 医学部専門予備校「メディカルラボ」は、*3-4-5のように、女子の合格率が低い大学は、面接で女子に厳しい質問をする傾向があり、ある大学では女子にだけ「患者がたくさん待っている時、自分の子どもが急病で保育園から呼び出されたらどうしますか」と質問をしていたとしている。

 共働き時代なので、男子にも同じ質問をしてみればよさそうだが、こういう質問の背景には、医大の入試が大学病院の勤務医採用に直結しているからであるとされ、他学部を卒業して企業の採用試験にのぞむときも同じであるのに、こちらはまだ問題にされていない。

 私自身は、「小児科のある病院に病児保育施設を設け、通院圏の保育園や学童保育で病気になった子どもは、まず全員そこに連れて行き、そこで診察した後、保護者が迎えに来るまで預かっておくシステムにすればよい」と考えるが、これは国会議員として地元の保育園を廻って、園長・保育士・親などから意見を聞いて出てきた解であるため、受験生には難しいと思われる。

iii)診療科による男女の医師の偏在と都市部への偏在
 *3-5のように、①女性医師は全員、子育てで現場を離れたり、勤務が制限されたりすることが少なくなく ②診療科で男女に偏在があり ③女性医師だけが都市に集中する というのが、仮に本当で改善できないのであれば、女性医師が戦力にならないと思われても仕方が無い。

 しかし、①は、保育所や学童保育が整備され、家政婦を雇いやすくすれば解決できる。また、②は、女性医師が少ない診療課では、女性医師を差別なく採用して活躍させているかについても検討しなければならない。さらに、③については、多くの症例を見ることができる場所に集中したがるのは、女性医師だけでなく男性医師もであるし、都市の方が都合がよいのは、子の教育や配偶者の仕事との調整もあるからで、これは女性医師特有の問題ではないと思われる。

 ただ、「軽症患者の夜間救急への対応の必要性」と言われても、本人が重症か軽症かを判断できる場合は少ないため、病院に行くことを国民が躊躇しなければならないようなシステムにするのは感心しない。私は、医療に関する問題の本質は、診療報酬を下げ過ぎたため十分な数の医師を確保することができず、働いている医師に過重な負担がかかっていることだと考える。

参考資料
<人口と経済>
*1-1:http://qbiz.jp/article/112572/1/ (西日本新聞 2017年6月22日) 世界人口 2100年には112億人に 国連予測、日本は29位
 国連経済社会局は21日、世界人口が現在の76億人から2050年に98億人に増え、2100年には112億人に達するとの予測を発表した。24年ごろまでにインドが中国を抜き国別で1位となり、日本は現在の11位(1億2700万人)から次第に順位を下げ、2100年には8500万人で29位になるとした。経済社会局は最貧国での集中的な人口増加が貧困や飢餓の撲滅などを掲げた国連の「持続可能な開発目標(SDGs)」履行に向けた課題になると指摘している。予測によると、2100年のインドの人口は15億1700万人、中国は10億2100万人で、両国だけで世界人口の22・7%を占める。上位10カ国のうち、5カ国をアフリカ諸国が占めた。世界全体の平均寿命は2015〜20年の71・9歳から、95〜2100年には82・6歳まで延びる見通し。日本は84歳から93・9歳になる。女性1人が出産する子どもの平均数については、世界全体で同期間に2・47人から1・97人に減ると予想。一方で日本は1・48人から1・79人に増えると見込んだ。高齢化も進み、60歳以上の人口は世界全体で50年までに現在の2倍以上、2100年までに3倍以上になるとしている。

*1-2:http://qbiz.jp/article/146151/1/ (西日本新聞 2018年12月21日) 景気拡大「戦後最長」 12年12月から73ヵ月間に 12月の月例報告
 政府は20日発表した12月の月例経済報告で、国内景気は「緩やかに回復している」とし従来の判断を維持した。同じ表現は12カ月連続。茂木敏充経済再生担当相は関係閣僚会議で、2012年12月から続く景気拡大期が今月で73カ月(6年1カ月)に達し、00年代の戦後最長期(02年2月〜08年2月)と並んだ可能性が高いと表明した。12年12月の安倍政権発足以来の景気拡大は、来年1月で戦後最長も超えそうな情勢だが、賃金の伸び悩みで肝心の個人消費が勢いに欠け、実感は広がっていない。茂木氏は記者会見で「日本経済の基礎体力を引き上げることで回復の実感を強めたい」と述べ、人手不足の解消や生産性向上につながる政策実行に注力する考えを示した。月例経済報告は、個別項目では公共投資を「このところ弱含んでいる」として1年ぶりに下方修正。その他は一部の表現変更にとどめた。先行きを巡っては「緩やかな回復が続くことが期待される」とした上で、米中貿易摩擦など通商問題の動向や世界経済の不確実性、金融資本市場の変動などに留意する必要があると指摘した。月例経済報告の景気判断は現段階の政府見解。景気の拡大期間は、正式には専門家でつくる景気動向指数研究会がデータを分析し判定する。
   ◇   ◇
●「最長」に減速の影 賃金伸びず乏しい実感
 2012年12月からの景気拡大期が、来年1月で戦後最長を超えそうな情勢だ。ただ、かつての高度成長期とは違って経済成長率は低空飛行。アベノミクスによる円安・株高を追い風に企業業績や雇用は改善したが、賃金の伸び悩みで消費者の財布のひもは固く、好況の実感は乏しい。来年10月に消費税増税を控える中、海外経済は米中貿易摩擦などで減速懸念が強まっており、景気の先行きは予断を許さない。「名目GDP(国内総生産)が過去最大となり、企業収益も過去最高を記録した。雇用・所得環境も大幅に改善し、地域ごとの景況感のばらつきが小さいのも特徴だ」。茂木敏充経済再生担当相は20日の記者会見でこう胸を張った。大胆な金融政策▽機動的な財政出動▽成長戦略−の三本の矢を掲げたアベノミクス。日銀の大規模金融緩和が円安を誘い、堅調な海外経済を背景に輸出が拡大して企業収益が改善。12年12月の安倍政権発足前に1万円台だった日経平均株価は、2万円台まで回復した。しかし賃上げは十分でなく、GDPの半分以上を占める個人消費は力強さに欠ける。内閣府は今回の景気拡大について、名目総雇用者所得の伸びを根拠に「00年代の戦後最長期と比べ、雇用・所得環境が大幅に改善した」と説明した。だが、物価の影響を除く実質ベースの伸び率は年0・9%と、戦後最長期の年1・0%を下回っており「企業が賃上げに踏み込まない限り消費意欲も高まらない」(エコノミスト)との見方は強い。さらに、今回の景気拡大期の実質経済成長率は1・2%と低調。高度成長期のいざなぎ景気の11・5%に遠く及ばず、00年代の戦後最長拡大期の1・6%と比べても見劣りする。少子高齢化に伴う人口減が進む中、人手不足も成長を阻む要因となっており、日本経済の実力を引き上げるような構造改革を進めない限り、企業も賃上げや設備投資を進めにくい。日本が「頼みの綱」とする世界経済にも変調の兆しが出ている。目下の懸案は米中貿易摩擦。今月初旬の首脳会談で中国への追加関税が棚上げされたものの、中国通信機器大手の華為技術(ファーウェイ)副会長が逮捕されたことで再燃。中国経済には減速感も出ており、金融の引き締め局面に入った米国の景気も先行きは楽観できない。世界的な景況悪化で為替が円高に振れるなどすれば「日本にとって新たな不安材料になる」(大和総研の児玉卓氏)との懸念も出ている。
*景気拡大 経済活動が活発な状態を指す。経済は景気が改善する拡大期と悪化する後退期が交互に訪れると考えられているが、景気の流れがどちらに向かっているか判断するには時間がかかる。2012年12月から続く現在の景気拡大は昨年9月で「いざなぎ景気」を抜き、戦後2番目の長さになったが、内閣府が正式に認定したのは今月だった。

*1-3-1:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO39102650Y8A211C1000000/ (日経新聞 2018/12/19) イノベーション力、米IT突出 トヨタ11位・楽天33位、日経・一橋大「イノベーション力」ランキング
 日本経済新聞は一橋大学イノベーション研究センターと共同で、世界の主要企業の「イノベーション力」ランキングをまとめた。首位のフェイスブックやアマゾン・ドット・コムなど米IT(情報技術)企業が上位を独占。日本はトヨタ自動車の11位が最高で、次ぐ楽天とソニーが30位台だった。意思決定や収益力などで日本勢は見劣りする。新たなイノベーションの波が次々と押し寄せるなか、経営のスピードが足りない。意思決定の素早さなど革新を生み出す「組織力」、技術開発の力を示す「価値創出力」、イノベーションの種をうまく育てられるかを示す「潜在力」の3つを指標にした。QUICK・ファクトセットの決算データを使い、金融・不動産を除く時価総額の大きい国内168社、海外150社を対象に算出した。フェイスブック、アマゾン、アルファベット(グーグル)、アップルの米国勢が4位までを占めた。4社の頭文字を取った「GAFA」は時価総額や営業利益、研究開発投資、設備投資がいずれも5年前より急伸した。GAFAは人工知能(AI)や自動運転、次世代の超高速コンピューターである量子コンピューターなど産業や社会を大きく変えうる最先端技術に積極投資する。取締役は少数精鋭で、女性の登用にも熱心だ。「意思決定と事業展開のスピードを高めることにつながっている」と一橋大の青島矢一イノベーション研究センター長は説明する。日本企業のトップはトヨタ自動車の11位にとどまる。設備や研究開発への投資意欲が旺盛で、イノベーションの種を育てる努力への評価は高い。しかし、GAFAとの差は歴然としている。例えば、1位のフェイスブックと2位のアマゾンは、価値創出力に寄与する営業利益が5年間でそれぞれ3655%、417%増えた。潜在力に寄与する研究開発投資や設備投資を大幅に増やしている。成長が資金力を高め、それを将来への投資に充てて事業拡大につなげる好循環を生んでいる。20世紀にはなかった企業の成長戦略だ。平成が始まった1989年、日本企業は時価総額ランキングで上位を独占した。トヨタ自動車や現新日鉄住金、パナソニック、日産自動車、日立製作所、東芝などが入った。約30年たち、上位にいるのはトヨタだけだ。日本勢の低迷はバブル後の経済の低成長が原因ではない。高品質の製品を量産する「日本流」の行き詰まりがある。日本企業は中核部品の開発や作り込み、完成品の組み立てまで自前主義と完璧主義にこだわった。イノベーションが既存技術の延長線上にあった時代には大きな武器だった。だが、イノベーションの条件は一変した。GAFAに代表される新興企業はスピード重視だ。必要な技術は他社から調達して素早く事業化、不完全でも投入して市場の反応を待ち改良する。次々に新事業の開始と閉鎖を繰り返し正解を見つける。こうした手法で社会に欠かせない商品やサービスを作り上げた。日本を代表するものづくり企業も手をこまねいているわけではない。「モビリティカンパニーに変わるために、ソフトバンクとの提携は不可欠」。10月4日、東京都内で開いた記者会見で、トヨタの豊田章男社長はこう語り、ソフトバンクグループの孫正義会長兼社長と固く握手した。両社は自動運転など移動サービス事業で手を組んだ。世界では自動車・IT企業が手を組み、自動運転技術の開発にしのぎを削る。実現にはAIや半導体といった技術だけでなく、ライドシェアなどのサービスや地図データも欠かせない。トヨタは電気自動車向けの次世代電池の開発にも取り組んでいるが、次世代の自動車に必要な要素を押さえるには自前主義では時間がかかりすぎる。パナソニックは津賀一宏社長の号令下、あえて未完成品を世に出す計画だ。スピード感を重視するシリコンバレー流の改革に取り組む。完璧な製品を志向すると投入したころには、市場を席巻されている。問題が残っても先に進める手法を取り入れる。日本マイクロソフト会長などを務めた樋口泰行専務役員ら、スピード経営を体感した幹部が主導する。
*調査の概要 イノベーション力は公開されている決算データから、3つの指標についてスコアを測定した。海外企業も含めて公開されている最新の決算データを使い、日本企業は2018年3月期を基本にした。「組織力」は外部取締役や女性取締役の割合が高いほど経営陣の多様性があり、市場変化に機動的に対応できると判断。役員の数が少なくて平均年齢が低いほど組織運営が柔軟で、意思決定が速いと評価した。「価値創出力」は株式の時価総額や営業利益、売上高に占める営業利益の比率、海外売上高比率などで構成。それぞれについて5年前との変化率を加味した。「潜在力」は研究開発投資や設備投資、販売管理費とそれぞれの5年前からの伸びを踏まえて点数をつけた。一橋大学イノベーション研究センターの青島矢一センター長、和泉章教授、江藤学教授、軽部大教授、清水洋教授、延岡健太郎教授(現大阪大学教授)、大山睦准教授、中島賢太郎准教授、カン・ビョンウ専任講師の協力を得た。

*1-3-2:http://qbiz.jp/article/146749/1/ (西日本新聞 2019年1月8日) 大手電力、洋上風力に熱 低コスト・需要見据え積極投資 開発には地元の理解が鍵に
 東京電力ホールディングスや九州電力などの大手電力が、洋上風力発電への積極的な投資に動きだした。洋上は陸上と比べて安定して風が吹き、低い経費で発電が可能だ。「再生可能エネルギーに消極的」という、大手電力のイメージを変える効果にも期待をかける。漁業関係者など地元の理解を得られるかが開発の鍵を握る。東電は昨年11月、千葉県銚子沖で大規模な洋上風力を建設するため、地盤調査を始めた。風力事業推進室の井上慎介室長は「風が安定して吹き、風力発電の支柱を立てるのに適した浅い海が広がっている」と話す。洋上は陸上と違い、一つの区域に集中して風力発電機を設置することができるのも利点だ。将来的には火力発電より発電コストを低減することができるとする見方もある。東電は条件が整えば最大100基程度を数千億円かけて建設し、合計の出力を原発1基相当の100万キロワットにすることも可能だと説明する。銚子沖を含め、今後10年間で200万〜300万キロワットの洋上風力を建設する目標を掲げる。他の大手電力の投資も活発だ。九州電力は西部ガス(福岡市)などと、北九州港で出力約22万キロワット、事業費1750億円の計画を進めており、2022年の着工を予定する。東北電力と関西電力、中部電力の3社は秋田県内の能代港と秋田港の計画に参画している。企業や家庭には環境に配慮し、再生エネでつくった電気を買いたいという需要が増えるとみられる。経済産業省や東電によると、再生エネの固定価格買い取り制度によって営業運転している洋上風力は、長崎県五島市沖の1基(出力1990キロワット)と東電の千葉県銚子沖の1基(同2400キロワット)。一方、計画中の洋上風力の出力を合わせると全国で計500万キロワット程度になるという。国も法制度を整備して後押しする。昨年11月に成立した洋上風力発電普及法は、自治体や漁協が参加する協議会で調整した上で、国が「促進区域」を指定し、最大30年間にわたり発電を許可することが柱だ。大手電力幹部は「新法で漁業などの利害関係者との調整ルールが明確化され、長期にわたり海域が利用できるため、投資計画が立てやすくなる」と話している。洋上風力発電 海上に設置した巨大な風車で電気をつくる再生可能エネルギー。電気は海底ケーブルで陸地に送る。海底に固定した土台の上に風車を設置する「着床式」と海上に風車を浮かべる「浮体式」がある。着床式が世界の主流で、遠浅の海域が広い欧州が先進地域。一つのプロジェクトで総出力100万キロワット規模の大型計画も具体化している。

*1-3-3: https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190107&ng=DGKKZO39689860W9A100C1MM8000 (日経新聞 2019年1月7日) 再生医療、商用段階に、患者2500万人の膝治療で実用化
 再生医療(総合経済面きょうのことば)が商用化の段階に入る。高齢化などに伴う膝関節の病気に企業が相次いで再生医療を応用する。グンゼは軟骨の再生を促す素材を欧州で発売。オリンパスや中外製薬は培養した軟骨を使う方法の実用化を急ぐ。膝関節の病気は日本人の5人に1人が患うため、その治療は再生医療の本丸と目されている。治療法が浸透し関連産業が活性化すれば、再生医療で日本が世界をリードする可能性もある。再生医療は人体の組織や臓器を再生し機能を取り戻す技術だ。実用化で先行したのは皮膚や心臓などの治療。重いやけど患者は年5千人で、うち60件程度が再生医療技術を治療に生かしている。経済産業省は、2012年に2400億円だった世界の再生医療に関連する市場規模が、30年には20倍超の5兆2千億円に拡大するとしている。今回、各社が着目するのは膝関節の病気「変形性膝関節症」。潜在患者数は高齢者を中心に国内だけで2500万人いるとされる。これまでは手術で人工関節を導入するしか根治する方法はなく、症状の重い年8万人が手術を受けていた。患者数が多い病気に再生医療を応用することで、市場が一気に広がりそうだ。グンゼは1月、軟骨再生を促す繊維シートを欧州で発売する。手術で軟骨に傷をつけると、軟骨のもとになる細胞や栄養分がしみ出す。シートがそれらを取り込み軟骨を立体的に再生する。日本では20年にも臨床試験(治験)を始める。オリンパスは1月、患者の軟骨を培養し体内に戻す治験を国内で始める。23年3月までに承認申請する。中外製薬も、スタートアップのツーセル(広島市)と組み、国内で最終段階の治験を進めている。21年にも承認を得たい考えだ。旭化成は18年10月、京都大学などから、けがで傷ついた軟骨の治療にiPS細胞を使う権利を獲得した。欧米ではスタートアップ企業が再生した軟骨を販売しているケースもあるが、日本企業はより多様な治療法の研究を手がけている。膝軟骨以外にも再生医療の研究が進む。既存の治療手段に乏しい神経細胞の分野がその一つで、このほどニプロが開発した治療用の細胞が、脊髄損傷向け再生医療技術として国に承認された。患者数が多い心不全の治療への応用研究も活発で、慶応大学発スタートアップのハートシードなどが治験を目指している。再生医療で臓器や組織を再生できれば、治療にとどまらず、老化して機能が衰えた臓器の置き換えも可能だ。生活の質を向上させ、寿命を延ばすと期待されている。これまで再生医療が普及しなかったのは、細胞を注入する手術が難しかったり、効果が十分に確認できなかったりしたからだ。富士フイルムホールディングス傘下のジャパン・ティッシュ・エンジニアリング(J―TEC)が12年から培養軟骨を販売するが、手術が難しく18年3月期の販売額は約3億円(約150件)にとどまる。ただ、ここにきて各社は手術を大幅に簡略化している。今後は公的な保険でカバーできる範囲に治療費を抑えることなどが課題となりそうだ。

*1-3-4:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190109&ng=DGKKZO39787730Y9A100C1EA1000 (西日本新聞 2019年1月9日) オプジーボの対価「桁違い」、本庶氏と小野薬、食い違い生んだ契約
 がん免疫薬につながる基礎研究でノーベル賞を受賞した本庶佑・京都大学特別教授と「オプジーボ」を実用化した小野薬品工業。産学連携の類いまれな成功事例だが、対価を巡る仲たがいが影を落とす。背景には両者が交わした契約があった。「小野薬は研究自身に全く貢献していない」(本庶氏)。「我々の努力や貢献もあった」(相良暁社長)。2018年10月の授賞決定後、お祝いムードに水を差す両者の応酬に注目が集まった。
●水掛け論の発端
 本庶氏は「論文に小野薬の研究員の名はない。彼らの言う貢献は『金を出した』という意味だ」と主張。一方で小野薬は本庶氏の恩師の早石修京大教授(故人)の紹介で30年以上、研究員を本庶氏の元に派遣し資金提供してきた。今も毎年5000万円を寄付する。水掛け論でいがみ合うきっかけは、02年に共同出願した特許だ。本庶氏らは91年に発見した遺伝子「PD―1」の機能阻害でがんを治療できる可能性を示した。本庶氏は当初、京大に出願を要請したが、知的財産に関心が薄かった京大側は「(特許を維持する)費用を負担できない」として拒否。小野薬と共同出願した。小野薬は05年、米企業と共同開発を始めることになり、本庶氏と小野薬は1つの契約を結ぶ。これが今に至るまでこじれる原因となる。契約では発明の使用を小野薬に独占的に認める専用実施権と、本庶氏が受け取る対価の料率などを決めた。両者とも具体的な内容は明らかにしていない。本庶氏は「後から見ればとんでもない契約で相場に比べて対価の料率が1桁小さかった」と憤る。大学の研究者では交渉力は弱かった。さらに契約に含む特許の範囲で両者の食い違いも判明。本庶氏は再交渉を迫り小野薬も応じかけたという。そんなときに事態が急変する。米メルクが14年にPD―1の仕組みを応用したがん免疫薬「キイトルーダ」を発売、特許侵害が表面化したからだ。小野薬は共同開発した米ブリストル・マイヤーズスクイブとともに特許侵害を提訴。本庶氏もデータ提出や証言などで貢献し、メルクは特許を認める内容で和解した。ぎくしゃくする両者が他社の特許侵害で共闘する格好になった。本庶氏は事前に小野薬に訴訟協力の対価を求めて「新しい提案があった」という。小野薬はメルクから100億円を超える一時金と売り上げの一部を受け取った。ただ新提案の合意に至らず本庶氏は不信感を募らせる。一方で小野薬は当初の契約に基づいて対応しているとの立場だ。リスクを負って世界初の治療薬を生み出した自負もあり後出しで膨らむ要求に応じる前例は作りたくない。契約内容を含めて相良社長は取材に「今は回答したくない」と答えた。
●売上額4兆円も
 こじれる両者の関係をよそに、がん免疫薬の売り上げはうなぎ登りだ。小野薬とブリストル、メルクだけでなく、類似のがん免疫薬が相次いで発売。24年の売上額は年4兆円との試算もある。本庶氏と小野薬の特許が利用されれば、小野薬に巨額の対価が入る。本庶氏は18年12月、若手研究者を支援する「本庶佑有志基金」を京大内に立ち上げた。ノーベル賞の賞金に加えがん免疫薬の対価も充てる考え。「仮に年4兆円の売り上げで0.5%の料率なら5年で1000億円だ」(本庶氏)。小野薬側は若手研究者の支援には賛成しているが、基金へ協力する意思表明はまだない。研究者支援は国の役割で、営利企業は収入を自社の研究開発や株主還元に使うのが本来だ。株主の意向を見極める必要がある。契約した当時と比べて、大学と企業の関係は変わった。政府は大学に対する企業の投資を3倍に増やす目標を掲げ大学に「特許で稼げ」と迫る。ただ大学の交渉力は弱く、企業と対等な契約ができるかは心もとない。京大の産学連携担当者は「本庶先生は大学と企業の今後の関係を対等にするためにも、譲歩せず小野薬と交渉を続けるだろう」と語る。共存共栄のための産学連携の新しい仕組みづくりが急務だ。

*1-3-5:http://qbiz.jp/article/146817/1/ (西日本新聞 2019年1月9日) 2019 新時代へ トップインタビュー(4)
●地域に応じ最適解を JR九州 青柳俊彦社長
−人口減少が進む中、鉄道事業の収益改善が課題となる。
 「鉄道は設備の保守点検が宿命で、維持費用を下げつつ安全性、信頼度を高めることが大事。一方で自動運転技術も無視できない。踏切がない場所であれば導入も難しくない。外部で開発、導入されている技術を引き続き勉強していく」「タクシーや乗り合いバスなどとの融合も検討する。地域や利用者にとって一番いい方法を探る。(一部不通が続く)日田彦山線は鉄道での復旧を目指し、自治体との協議を進める」
−2019年度から新しい中期経営計画がスタートする。
 「今までの成長をさらに高め、伸ばす計画を策定中だ。10年後のJR九州の姿を描く。新たな時代に合わせて情勢は変わるだろうが、われわれの柱はやはり鉄道と不動産だ」
−熊本や宮崎、長崎など九州各地で駅ビル開発が続く。
 「長年『沿線人口を増やす』を合言葉に、九州全体の発展を考えてきた。商業施設だけでなく、オフィスやホテル、大型コンベンション(MICE)施設など、国内外での経験を生かした開発に積極的に取り組む」
−福岡市でも博多駅周辺や博多ふ頭ウオーターフロント地区の再開発計画がある。
 「駅ビルでの集客実績は着実に積み上げている。特に博多駅周辺は街が広がって、にぎわいが増した。(博多駅と博多港地区を結ぶ)ロープウエー構想など、人を運ぶ点にも強みがある。大型の再開発案件を取れなかった昨年の反省を踏まえ、志をともにする企業と連携して、街づくりに貢献したい」
   ◇   ◇
●海外事業成長の柱に 西日本鉄道 倉富純男社長
−昨年は福岡市都心部の大名小跡地や福ビル街区、博多区の青果市場跡地など、大きな再開発計画に次々と着手した。
 「これまで西鉄が積み上げてきた信頼の力が発揮された1年だったと思う。新しい時代も汗をかくことの重要性は変わらない。グループ全体で結束し、大型プロジェクトを進めていく」
−運営会社に参画する福岡空港が4月に完全民営化される。
 「国内線と国際線の連絡バス停留所に、電子表示で外国語にも対応する『スマートバス停』を導入するなど、できることから利便性を改善する。滑走路が2本に増える2025年に向け、商業やホテル機能の計画を前のめりで固めていく」
−今後の重点分野は。
 「成長の柱は海外だ。東南アジア諸国連合(ASEAN)地域でのマンションや一戸建て住宅のほか、付随する商業施設なども増やしていく。国内外での観光需要取り込みも重要で、ホテルも年に1、2棟は着実に開発していきたい」
−天神大牟田線の雑餉隈駅(福岡市博多区)や春日原駅(福岡県春日市)の高架化、駅前開発を進めている。
 「次世代型開発の答えの一つは三国が丘駅(同県小郡市)だ。スーパーや病院、医療・介護サービス付きマンションなど、シニア世代に必要な機能が近距離にまとまっている。その地域での暮らしを快適にすることで、沿線人口を増やしたい」
−進む人手不足への対策は。
 「モニターやセンサーを活用して保線作業の機械化を進めるなど、最適な技術導入や効率化が大事だ」

*1-4:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20181228&ng=DGKKZO39456300X21C18A2EE8000 (日経新聞 2018年12月28日) 年金改革、女性・高齢者に的 来年に財政検証、保険料増へ加入対象拡大
 厚生労働省は2019年、公的年金の財政検証を実施する。当面の年金財政は健全だと確認する見通しだが、支給の長期的な先細りは避けられない。これを受け検討する制度改正では、働く女性と高齢者が焦点だ。パート社員への厚生年金適用や、70歳超からの受給開始も選べるようにし、保険料収入を増やす。一方、支給開始年齢の一律引き上げなど抜本改革は見送られる可能性が高い。財政検証は5年に1度実施する。人口構成や経済情勢の変化に合わせ、将来の年金財政の収支見通しなどを作る。「100年安心」をうたった公的年金の定期健康診断という位置づけだ。検証の結果、5年以内に所得代替率(現役の手取り収入に対する年金額の比率)が50%を下回ると見込まれる場合、給付減額や保険料率の引き上げが避けられなくなる。14年に実施した前回の財政検証では、安定して経済成長する「標準ケース」で43年度に所得代替率が50.6%になるという結果だった。足元の景気は緩やかに回復しており、19年の検証でも5年以内に50%を下回る試算は出ない見込みだ。ただ、年金財政を長期にわたり維持できるかの不安は残る。次の制度改正では、年金支給の財源となる保険料を増やす取り組みに軸足を置く。実施することが確実な具体策の一つは、年金の受給開始年齢について、70歳を超えてからも選べるようにすることだ。今の制度は65歳が基準で、60~70歳の間であればいつから年金をもらうか選択できる。健康寿命が延びて、働く高齢者が増えているのを受けた制度見直しといえる。年金は受け取り始める年齢を遅らせるほど、月当たりの支給額が増えるという仕組みだ。70歳で受け取り開始なら、65歳より4割程度増える。制度改正で高齢者の就労がさらに増えれば、年金の保険料収入が増える。働く女性を念頭に、パート労働者の厚生年金加入も促す。今の制度は(1)従業員501人以上の企業で就労(2)労働時間が週20時間以上(3)賃金が月8.8万円以上――などを満たす人が適用対象だ。この基準を引き下げ、厚生年金に加入する短時間労働者を増やしていく方向で検討が進む見通し。ただ、長い目で公的年金財政の持続性を高めるには(1)支給開始年齢(2)保険料率(3)支給額――の見直しを一体的に実施することが不可欠との見方が少なくない。厚労省は支給開始年齢を一律に引き上げなくても、人口減少などに応じて給付を抑える「マクロ経済スライド」で、将来にわたり年金財政を維持できるとの立場だ。ただ、同スライドを過去に発動したのは1度きり。海外では支給開始年齢を60歳代後半にしている国も多く、有識者の間では一律引き上げを検討すべきだとの意見が根強い。

<改正入管難民法>
*2-1:https://digital.asahi.com/articles/ASLDS3575LDSUTIL003.html?iref=comtop_list_pol_n03 (朝日新聞 2018年12月25日) 外国人労働者、介護など14業種で受け入れへ 閣議決定
 政府は25日、来年4月からの外国人労働者の受け入れ拡大に向けて、新在留資格「特定技能」の枠組みを定めた「基本方針」と、業種ごとに人数などの詳細を決めた「分野別運用方針」を閣議決定した。介護や建設など14業種での受け入れを決め、来年4月からの5年間で最大34万5150人がこの在留資格を得ることを見込む。閣議に先立って開かれた関係閣僚会議では、外国人の受け入れや共生のための「総合的対応策」の最終案を決定。安倍晋三首相は「外国人が日本で働いてみたい、住んでみたいと思えるような制度の運用、社会の実現に全力を尽くして下さい」と指示をした。この日決定された内容で、政府が出入国管理法の国会審議で「成立後に示す」としてきた新制度の全体像を示す「3点セット」が出そろった。ただ、検討中の施策や抽象的な表現にとどまる取り組みも少なくなく、来春からの実効性は不透明だ。政府は年内に基本方針や分野別運用方針の内容などが反映された政省令についてパブリックコメントの募集を始め、来年3月に公示する方針だ。相当程度の技能が必要な「特定技能1号」の資格を得るには、技能試験と日本語試験に合格しなければならない。基本方針には、全ての業種に共通する内容として、外国人労働者が大都市に集中するのを防ぐ▽悪質なブローカーを介在させない▽外国人の給与は日本人と同等額以上にする――などが盛り込まれた。分野別運用方針には、14業種ごとの、来年4月からの5年間の最大受け入れ見込み人数が明記された。最多は介護の6万人、最少は航空の2200人。技能試験と日本語試験を来年4月から実施するのは介護と宿泊、外食の3業種で、他の11業種は来年度中に実施予定。当面は、試験を受けずに在留資格を変更できる技能実習生が担い手の中心となりそうだ。熟練した技能が必要な「特定技能2号」を活用するのは建設と造船・舶用工業の2業種。技能試験に合格するだけでなく、一定期間の実務経験も必要だ。新設される技能試験は2業種とも、21年度に実施される予定という。

*2-2:http://qbiz.jp/article/146287/1/ (西日本新聞 2018年12月25日) 改正入管法 政府方針を決定 5年間で最大34万5150人受け入れ
 政府は25日、改正入管難民法に基づく外国人労働者受け入れ拡大の新制度について、基本方針などを閣議決定し、全容を固めた。深刻な人手不足を理由に、高度専門職に限っていた従来施策を変更。特定技能1号、2号の在留資格を新設して単純労働分野にも広げ、来年4月から5年間で最大34万5150人を受け入れる。外国人が大都市圏に集中しないよう措置を講じるとしたが、地方との賃金格差などを埋める施策を打ち出せるかどうかが課題だ。閣議で受け入れ見込み数などを記載する分野別運用方針、関係閣僚会議で受け入れの環境整備施策をまとめた総合的対応策も決定した。基本方針では、受け入れの必要性を具体的に示すよう関係省庁に要請。対象は14業種で、見込み数は大きな経済情勢の変化がない限り上限として運用する一方、必要に応じて見直し、受け入れ停止を検討することも記した。

*2-3-1:https://www.agrinews.co.jp/p46156.html (西日本新聞 2018年12月18日) 外国人就労で政府案 農作業全般 可能に 雇用側「経験」が要件
 改正出入国管理法(入管法)に基づく外国人労働者の新たな受け入れ制度で、農業分野の制度詳細を盛り込む運用方針、運用要領の政府案が17日、判明した。外国人は栽培管理から集出荷、加工、販売など、生産現場の全般の作業に携われるとした。農家など受け入れ側の要件としては、雇用労働者を一定期間以上受け入れた経験があることなどを盛り込んだ。農業の運用方針などの案は、農水省を中心に関係省庁で策定。19日の自民党農林合同会議で審議した上で、政府は年内に正式決定する。受け入れ人数の見込みは、5年間で最大3万6500人とした。農相は、実際の受け入れがこの人数を超えそうな場合は法相に受け入れ停止を求める。事実上の受け入れ上限の位置付けだ。外国人の業務としては、作物の栽培管理や家畜の飼養管理をはじめ、JAなどの施設での作業を念頭に集出荷、選別作業を位置付ける。運用方針を受けて、さらに細かな内容を盛り込む運用要領の案には、農畜産物の製造・加工、販売、冬場の除雪など外国人と同じ職場で働く日本人が通常従事している作業も、付随的に担えることも定める。外国人の受け入れ形態は、農家など受け入れ側の直接雇用か、人材派遣業者を通じた受け入れとする。直接雇用の場合は一定期間以上、労働者を雇用した経験があることが条件。派遣業者を通じた受け入れの場合、一定期間以上の労働者の雇用経験か、人材派遣に関する講習などの受講者を責任者として配置することが必要とした。新制度による就労では、3年間の技能実習の修了者以外は、一定の技能や日本語能力を問う試験への合格が求められる。技能を問う試験の実施主体は公募で決めるが、全国農業会議所が務めることを想定。日本語の能力試験では、難易度の区分で下から2番目の、基本的な日本語を理解できる「N4」以上の水準を求める。

*2-3-2:http://qbiz.jp/article/146551/1/ (西日本新聞 2018年12月30日) TPP発効 九州農家「組織化」で対抗 輸入増、競争激化に危機感
 環太平洋連携協定(TPP)が30日発効、海外産の安い農産物の輸入が一層拡大することが予想される。農家は競争激化へ危機感を強め、組織化などで対抗する動きを強めている。福岡県産ブランド「博多和牛」の品質向上を図ろうと、県肉用牛生産者の会(肥育農家70戸)と県和牛改良協議会(繁殖農家51戸)などは11月、「福岡県肉用牛振興協議会」(福岡市)を発足させた。福岡県内では、子牛を誕生させて一定期間育てる繁殖農家と、子牛を買い取って出荷まで育てる肥育農家はつながりが希薄だった。協議会は合同研修などを通じ、飼育環境や飼料に関する情報交換や連携を強化。誕生から出荷まで地域で一貫的に行う形を築き、品質向上につなげたい考えだ。農林水産省はTPP11発効に伴い、牛肉の国内生産額が約200億〜約399億円減少すると試算。協議会会長で博多和牛を生産する堀内幸浩さん(45)=福岡県朝倉市=は「海外からの牛肉は赤身で、霜降りが中心の和牛と激しく競合するとは考えていないが、国際的な競争が強まるのは必至。その中で博多和牛が生き抜くためには質向上は欠かせない」と強調する。熊本県宇城市の酪農家川田健一さん(50)は2016年、同市や熊本市の酪農家4人で株式会社「うきうき」(宇城市)を設立した。乳牛の飼料となるトウモロコシの収穫作業を地域の酪農家から請け負うのが主業務だ。飼料収穫機などの大型機械は自己資金に加え国の補助金、JAからの借り入れで確保。18年は6酪農家の計約33ヘクタールを請け負った。設立のきっかけは酪農家の高齢化や人手不足。牛舎での作業以外に、農地での作物栽培などを行うのが難しくなり、牛ふんの堆肥活用ができず処理に苦慮するという悪循環が見られるようになったためだ。農水省試算では、TPPによる牛乳・乳製品の生産額減少は約199億〜約314億円。うきうきの社長を務める川田さんは「今後は廃業する酪農家の乳牛や施設を引き受けることも考えている。組織化によるコスト削減の強みを発揮し地域の酪農を守りたい」と表情を引き締める。

*2-3-3:http://qbiz.jp/article/146690/1/ (西日本新聞 2019年1月6日) 農林業担い手育成へ国際専門校 九州定住、海外販路狙う 大分県内に来年にも アジア出身者ら対象
 政府が外国人労働者の受け入れ拡大を図る中、アジア出身の留学生らを人手不足にあえぐ農林業の担い手に育成する専門学校「アジアグローカルビジネスカレッジ」(仮称)の設立計画が大分県内で進んでいることが分かった。2020年にも開校予定。若者の就業・地元定住を促し、国際ビジネスの創造や海外販路の拡大も狙う。こうした農林業の国際専門学校は全国的に珍しい。昨年11月に発足した設立準備委員会は、九州の農林事業者、学校法人、企業、大学教授、中国の貿易業者らで構成。大分県内の空き校舎を活用し、九州の若者のほか、今後提携するアジアなど10カ国の農業高校の卒業生らに呼び掛ける。総定員は180人、半数程度は留学生を想定している。計画では「グローカル学科」に(1)スペシャリストコース(2)マネジメントコース(3)ビジネス創造コース−を設置。(1)ではコメやユズなど休閑地を活用した九州の特産農作物の栽培や無人の農林業ロボットの操作、(2)では農林業法人の経営ノウハウを学ぶ。(3)は農作物を海外に販売できる人材の育成を目指し、中国・上海やシンガポールなどのバイヤーとウェブ上で交渉する実践的な授業をする。留学生はコース選択の前に1年半〜2年、日本語学科で日本語や商用英語などを学ぶ。卒業生の進路は、農林業法人への就職のほか、耕作放棄地や高齢化した農家の田畑を活用した農林業法人の設立、地元農産品を留学生の母国向けにネット通販する貿易業の起業などを想定。韓国・大邱市の永進専門大や中国・四川省の四川農業大との提携が内定、交換留学も行いたいという。農林水産省によると、15年の九州の農業就業人口は32万7624人で、1990年の4割ほどに減少。このうち30歳未満は9747人と、90年の2割以下に落ち込んでいる。一方、厚生労働省によると、農業に従事する外国人技能実習生は2万4039人(17年10月末現在)。改正入管難民法に基づき、政府はさらに農業分野の外国人労働者の受け入れを拡大する方針。専門学校は新設される在留資格にも対応する授業を目指す。設立準備委の関係者は「卒業生の8割に、九州の農林業に定着してもらうのが目標」としている。
   ◇   ◇
●農林業のプロ育成目指す 九州農業けん引期待
 日本の農業現場が高齢化や人手不足に陥る中、政府は外国人労働力の受け入れに前のめりになっている。大分県内で2020年の開校を計画する国際専門学校「アジアグローカルビジネスカレッジ」(仮称)は、単に人手不足解消という狙いだけでなく、海外販路開拓も含め、「農業王国」九州をリードする人材の育成も目指している。農林水産省によると、九州各県の農業就業人口(2015年)は、福岡5万6950人(1990年比58・8%減)▽佐賀2万6244人(同63・7%減)▽長崎3万4440人(同57・2%減)▽熊本7万1900人(同54・5%減)▽大分3万5208人(同60・6%減)−と、大幅に減っている。後継者確保に悩む農家も多い。外国人受け入れ拡大に向け、政府が昨年12月25日に閣議決定した分野別運用方針は、農業分野では「雇用就農者数が現時点で約7万人不足」し、「基幹的農業従事者の68%が65歳以上」といった課題を明記した。4月に創設される新たな在留資格のうち「特定技能1号」では農業分野で最大3万6500人を受け入れる方針だが、在留期間は通算5年。家族帯同が認められ、在留期限を更新できる「技能2号」は「農業分野では、現時点で導入予定はない」(法務省入国管理局)という。アジアグローカルビジネスカレッジは留学生の卒業後の進路として、九州の耕作放棄地を利用した農林業法人や、農産物の海外販売を手掛ける貿易法人の起業など、より専門性の高い「農林業のプロ」を想定。在留期限を更新できる在留資格「経営・管理」などを取得してもらう。設立準備委員会の関係者は「長期間にわたり九州の農業を引っ張るような高度人材の育成につなげたい。母国に戻り、活躍するグローバルな人材も送り出したい」としている。

*2-4:https://www.agrinews.co.jp/p46244.html?page=1 (日本農業新聞 2018年12月26日) 外国人材 介護現場で活躍 欠かせぬ戦力に 資格取得にも意欲的 JA愛知厚生連足助病院
 全国の介護現場で外国人が活躍している。来年4月施行の外国人労働者の新たな受け入れ制度では、全職種の中で介護分野が最多人数となる見込みだ。経済連携協定(EPA)で3人の外国人を受け入れ、現場の戦力になっているJA愛知厚生連の足助病院(豊田市)の現場から、メリットや課題を探る。介護医療院を運営する同病院では、フィリピン出身の女性3人が勤務している。双子のヘロナ・アケミさん(24)、ユミコさん(24)姉妹は、2016年に着任した。職員から介護技術や日本語の指導を受け、介護福祉士国家試験合格を目指している。2人は、ホールで昼食を取る利用者に「おいしいですか」「ゆっくり食べてくださいね」と日本語で優しく声を掛ける。利用者の女性は「頑張っているから応援したくなる」と話す。2人は着任前の研修で日本語を勉強してきたが、利用者の方言に苦戦している。アケミさんは「『えらい』という言葉が『とても』の意味で使われるのが分からなかった」と苦笑い。分からない言葉は、職員に尋ねて地道に語彙(ごい)を増やしている。2人はフィリピンの大学で介護を勉強した。「フィリピンでは誰でもできる仕事と捉えられがちで、介護施設も少ない。プロフェッショナルとして働ける日本は魅力的だ」と口をそろえる。「利用者に家族のような温かい介護ができるようになりたい」と前を向く。介護医療院の松井孝子課長は「現場では、日本人の新人と同じようにチェックリストを使って教えている。利用者に丁寧に接し、良い印象を持たれている」と評価する。同病院が外国人を受け入れたのは、介護人材の確保が難しくなっているためだ。看護部の大山康子部長は「地元の高校生が就職する場合、市の中心部の企業に就職する傾向が強い。好景気が続く中、介護職に就く人は少ない」と話す。定年退職した職員を再雇用し人材を確保しているが、中堅、若手の層が薄い。14年、同病院に初の外国人人材としてエンピス・ラブジョイ・パルシアさん(25)が着任した。住む場所も同病院が用意し、ベッド、テレビ、自転車などは、職員が持ち寄り提供した。正月は和服を着る体験会を開き、日本文化に親しめるよう心掛けた。現場での実習に加え、過去の試験問題を解く練習を繰り返すよう指導。ラブジョイさんは18年に国家試験に合格。アケミさんとユミコさんは20年の合格を目指す。同病院では、今後も外国人人材の受け入れを続ける予定だ。大山看護部長は「意欲がある若手人材は貴重だ。3人が頑張る姿を見て、受け入れてよかったと言う職員も増えた」と話す。一方で「日本と海外では介護のやり方が異なる。日本の介護のノウハウを習得したいと考える人材でなければ、現場での活躍は難しい」と説明する。
●安心できる環境づくりを
 外国人介護人材を研究する聖徳大学心理・福祉学部社会福祉学科の赤羽克子教授の話
介護現場での外国人登用は拡大し続けるだろう。新たな受け入れ制度が始まれば、さらに加速するはずだ。一方で、来日して介護福祉士の資格を取得しても、孤独を感じて帰国した例がある。外国人同士のコミュニティーづくりの支援が必要だ。先進国を中心に介護分野の外国人の受け入れが進んでいる。就労のハードルが高い日本を避け、他国に人材が流れる恐れもある。外国人が技術をしっかり習得し、安心して生活を送れる環境を整えなければならない。
<メモ>外国人介護人材の受け入れ 
 EPAに基づく受け入れが08年度から始まり、現在はインドネシア、フィリピン、ベトナムの3カ国が対象。17年度までに3529人を受け入れた。介護福祉士候補者として介護施設で就労しながら、資格取得を目指す。他にも、介護福祉士資格を取得した留学生に対する在留資格、技能実習の制度がある。来年4月には、改正出入国管理法(入管法)に基づく新たな受け入れ制度が始まり、国は5年間で5、6万人の人材確保を見込む。

*2-5:http://qbiz.jp/article/146225/1/ (西日本新聞 2018年12月22日) 外国人就労促進へ力 関係省庁予算案 環境整備や技能評価
 来年4月に始まる外国人労働者の受け入れ拡大に向け、関係省庁の2019年度当初予算案が出そろった。相談窓口の設置など、受け入れ環境の整備に重点が置かれたほか、技能や日本語評価のための試験実施に向けた予算措置が目立つ。厚生労働省は、受け入れた外国人の雇用状況を確認するための視察や、受け入れ先の改善指導といった体制整備に8億1千万円を計上した。外国人が安心して医療機関にかかれるよう、病院の多言語化支援に17億円を確保。介護現場で働く人が円滑に利用者や他の従業員となじめるよう、日本語や介護技能を学ぶ研修費用などに11億円を充てる。諸外国でも外国人労働者の活用が進んでいる。外務省は将来的な人材の獲得合戦を見据え、海外での日本語教育事業として10億3千万円を計上。現地での日本語教師の育成や教材の開発を行う。文部科学省は、全国50程度の都道府県や政令市を対象に、日本語教育が必要な外国人を把握するための調査費や、各地域に日本語教室をつくってもらうための補助事業費として4億9700万円を見込む。熟練した技能を持つ人に限定した在留資格「特定技能2号」では家族の帯同が認められている。連れてきた子どもに対する就職相談や地域での居場所づくりに取り組む公立高校への補助事業費に1億円を充てた。国土交通省は、建設分野での受け入れ環境整備に2億2400万円を確保。現在の緊急受け入れで不適切な賃金支払いや過重労働が問題化したため、受け入れ業者の実態調査を強化する。航空業界では、今後整備士の大量退職が見込まれ、外国人の受け入れに期待が高まる。海外での整備士養成の現状を調べる費用として1800万円を計上した。日本を訪れる外国人観光客は今年初めて年間3千万人を超え、東京五輪に向けてさらなる増加が見込まれる。観光庁は、観光を担う人材確保に向けて1億4400万円を計上。宿泊業での雇用環境を整えるため、外国人向けセミナーの開催や教材開発を行う。経済産業省は、業界団体を対象に、外国人の労務管理や生活指導のノウハウを伝えるセミナー開催などのため1億円を充てた。農林水産省は、農業と漁業、飲食料品製造業、外食業の4分野で、知識や技能評価のための現地試験を実施する。試験問題作成や、会場設営を支援するために3億5千万円を確保した。法務省は、全国100カ所に多言語で応じる生活相談窓口を設置するため、自治体に20億円(うち10億円は18年度補正予算案)の交付金を配分する。出入国在留管理庁新設に当たり、18年度補正予算案には13億5200万円も盛り込んだ。

*2-6:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20181228&ng=DGKKZO39485570X21C18A2EA1000 (日経新聞 2018年12月28日) 外国人と働く(4) 一律対応は通用しない
 「滞納していた保険料を分けて払いたい」訪日外国人や忘年会の会社員でにぎわう東京・歌舞伎町の新宿区役所本庁舎。4階の医療保険年金課の窓口には、12月に入ってもこんな問い合わせをする外国人が足を運ぶ。国民健康保険(国保)の手続きを管轄する部署の課長、村山透(56)は「留学生の来日が集中する4月と10月は外国人が殺到する。12月はすいている方だ」と明かす。区内には12月1日現在、約4万3600人の外国人が暮らしている。中国や韓国、欧米、アフリカなど出身国・地域は計140弱。「日本で一番助かるのは病院にかかりやすいこと」(中国人の女子留学生、20)との声がある一方、月額数千円程度の保険料が未払いの外国人も増加傾向だ。区は4月、納付を促す催告書にベトナム語とミャンマー語、ネパール語を加えた。人数が増え、出身地が広がる外国人住民。地域で向き合う自治体の体制はどうか。JR川口駅東口の複合施設「キュポ・ラ」には埼玉県川口市の協働推進課の窓口がある。応対する職員は3人で、英語や中国語が母国語の「国際交流員」が補助する。この人員で3万3000人の外国人の相談にあたる。生活習慣や納税など、文化の違いに根ざしたトラブルは幅広い。係長の川田一(44)は「何度も説明しないと理解してもらえない場合も多い」とこぼす。多様化する外国人住民に、自治体の一律対応は通用しなくなりつつある。各地の自治体でつくる「外国人集住都市会議」は11月28日、外国人受け入れに関する意見書を東京・霞が関の法務省に提出した。名前を連ねたのは浜松市や群馬県太田市など15自治体で、ピーク時からほぼ半減した。日系ブラジル人対応で連携する目的で設立されたが、出身地が広がり、共有できるテーマやノウハウが乏しくなり、一部の自治体が離脱した。北海道紋別市の水産加工会社、光進水産は外国人技能実習生の住宅で無料Wi―Fiが使えるようにしている。暮らしやすい環境を整え、実習生をつなぎ留めるためだ。それでも、社長の斉藤則光(66)は「日本の若者と同じように、都会に出て行ってしまうのではないか」との不安は消えない。働き手として住み続けてもらうには何が必要か。自治体や企業の試行錯誤は続く。

<家事労働の軽視と女性差別>
*3-1:http://qbiz.jp/article/145946/1/ (西日本新聞 2018年12月18日) 男女平等、日本は110位 18年、賃金格差縮小でやや上昇
 ダボス会議で知られるスイスの「世界経済フォーラム」は18日、2018年版「男女格差報告」を発表した。日本は調査対象となった149カ国中110位で、賃金格差の縮小などにより前年より順位を四つ上げた。しかし政治、経済分野で依然女性の進出が進んでいないとされ、20カ国・地域(G20)では下位グループに位置、中国(103位)、インド(108位)より低かった。報告書では、日本は女性の議員や閣僚の少なさから政治分野(125位)が低評価で、経済分野(117位)も幹部社員の少なさなどから前年より順位を三つ下げた。「依然として男女平等が進んでいない国の一つだ」と指摘されている。首位は10年連続でアイスランド。2位ノルウェー、3位スウェーデンと北欧諸国が上位に並んだ。G20では12位のフランスがトップで、次いでドイツの14位。米国は51位だった。日本より低かったのは韓国(115位)、トルコ(130位)、サウジアラビア(141位)の3カ国。世界経済フォーラムは「世界全体として政治分野で男女格差が拡大するなど格差解消の動きは足踏み状態だ。このスピードでは完全解消に108年かかる」と強調した。男女格差報告は各国の女性の地位を経済、教育、政治、健康の4分野で分析、数値化している。

*3-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190110&ng=DGKKZO39807280Z00C19A1KE8000 (日経新聞 2019年1月10日) 平成の終わりに(5)女性活躍誇れる国 目指せ、多様性向上、企業・社会に益 村木厚子・元厚生労働事務次官(1955年生まれ。高知大文理卒、旧労働省へ。津田塾大客員教授)
〈ポイント〉
○第1子出産で離職する女性比率高止まり
○育児への男性の参加と社会の支援が重要
○女性活躍進むが他国に比べスピード遅い
 男女雇用機会均等法は、昭和の終わりに近い1985年に制定された。それから30年余りが経過した今日、「女性活躍」は再び政府の最重要課題の一つとなり、これに加えて「働き方改革」が大きな政策課題となっている。本稿では、これらがそれ自体、社会的に重要であるだけでなく、日本にとって最も深刻な社会課題である少子高齢化への対応や、さらには多くの企業が目指す新たな価値創造にとっても重要な役割を果たすことについて述べたい。均等法は、国連の「女子差別撤廃条約」という外圧を借りながら、経済界の強い反対を押し切って誕生した。女性が性別により差別されることなく、かつ母性を尊重されつつ充実した職業生活を営むことを基本理念に、雇用の場での機会と待遇の均等を確保することを目的とした。しかしその後、女性の多くが育児や介護などの家庭責任を負う状況では、女性の活躍どころか、就業の継続そのものが難しいことが次第に明らかになった。このため「育児休業法」(現在は育児・介護休業法)が91年に制定され、子どもが満1歳になるまでの間、育児休業を男女労働者に付与することなどが義務付けられた。これで「均等」と「(仕事と家庭の)両立」という車の両輪がそろった。その後、均等法も育児・介護休業法も順次強化され、さらには2015年に成立した女性活躍推進法で、「機会」の均等のみならず、女性活躍の「結果」が出ているかどうかを企業などが検証し、対策や目標数値を盛り込んだ計画を策定し実行するいわゆるPDCA(計画、実行、評価、改善)の実施と、その内容の公表が義務付けられた。こうした均等と両立の施策の充実により、女性の就業率や管理職比率の向上、男女間の賃金格差の解消などが、平成の全時代を通じゆっくりとではあるが進んだ。だがなかなか変わらない現実もある。育児・介護休業法により女性の育児休業取得率は、07年以降は常に80%を超えるが、男性の取得率はまだ5%台にとどまる。法律は男女労働者を対象にしていても、育児は女性の仕事という構図はほとんど変わっていない。第1子を出産した女性の出産前後の就業状況をみると、結婚して仕事を辞める女性は均等法施行後徐々に減っている。だが第1子の出産後も就業を継続する女性の割合は、10年ごろまでは20%台で推移していた。こうした中で別の大きな問題が顕在化してくる。出生率の低下だ。出生率は80年代半ばごろから低下が続き、05年に史上最低の1.26を記録した。少子高齢化の急速な進展は将来世代への過大な負担を意味する。加えて社会保障負担の増大による財政の悪化により、次世代への負担の付け回しが既に始まっている。社会の疲弊や財政破綻を避け、平成の次の時代、長寿を喜べる社会にするためには、「支え手」を増やすしかない。今の支え手である働く女性を増やすことと将来の支え手である子どもを増やすことは同時に実現できるのだろうか。答えは他の先進国の状況をみれば明らかだ。経済協力開発機構(OECD)加盟諸国のデータをみると、おおむね女性の労働力率が高い国は出生率も高く、逆に女性の労働力率が低い国は少子化に苦しんでいる。女性が活躍する社会が、同時に希望する子どもを持つことができる社会だ。これを日本で実現する鍵は何か。他国の状況や国内のニーズ調査などから政府がたどり着いた結論は、男性の育児参加と社会の子育て支援の重要性だった。具体的には、男性を含めた働き方の改革と保育の充実だ。保育が、男女が子どもを持ち、ともに働き続けるための必要条件であることは疑いがない。このため「社会保障と税の一体改革」の中で、消費税率引き上げによる増収分の一部を保育に充てることになり、ここ数年、急速に整備が進み始めた。この分野は今後も手を緩めてはならない。次は働き方改革だ。各種調査で、子どもを持つ女性が仕事を続けるための条件として挙げたのは、職場全体の勤務時間や両立を支援する雰囲気、勤務時間の柔軟性などだ。日本の残業時間は国際的にみても長く、男性の家事・育児参加の度合いは低い。就学前の子どもを持つ父親の家事・育児時間は日本は1日平均約1時間強で、欧米の半分以下だ。夫の家事・育児参加時間が長い家庭ほど妻の就業継続率が高く、2人目以降の子どもを持つ確率が高いこともわかってきた。妻だけが育児を担う「ワンオペ育児」が少子化につながることが裏付けられた。そして男性の育児参加には労働時間の短縮が必要だ。18年6月には働き方改革関連法が成立した。残業の上限規制、高度プロフェッショナル制度(脱時間給制度)の導入、同一労働同一賃金の推進などが柱だ。長時間労働の是正、多様で柔軟な働き方の導入、多様な働き方に見合う公正な処遇を受けられるルールづくりを目指すものだ。これらが実現すれば、男女がともに、さらには高齢者、障害者など多様な労働者が自分に合った多様な働き方で力を発揮することができる。働き方改革は労働者の健康だけでなく、男女が仕事で活躍し、家庭生活を充実させ、さらには多様な支え手が社会を支えることを可能にし、社会全体の持続可能性を高めるための重要な政策となった。「女性活躍」からスタートして男女の「働き方改革」へと広がってきた政策の方向性は間違っていない。問題は改革のスピードだ。図が示すように、結婚し第1子を出産した後も働き続ける女性は10年ごろから増え始めたが、それでも4割にも満たない。世界経済フォーラムが公表する男女平等の度合いを示す「ジェンダー・ギャップ指数」で、日本のランキングは149カ国中110位(18年)と極めて低い。しかも中長期でみると、ずるずると順位を下げている。関連の国際機関に、日本の女性活躍は進んでいるのになぜ順位が下がるのか問い合わせたところ、「日本は良くなっているが、ほかの国はもっと速いスピードで良くなっている」との答えが返ってきた。長時間労働の是正も同様の状況だ。スピードを上げるために政府は何をすべきか。女性活躍や働き方改革の進捗状況を点検し、政策効果を分析し、さらなる対策や目標値を明示して、これを広く国民と共有しながら取り組みを進めていく、すなわち女性活躍推進法で企業に義務付けたPDCAの実施だ。特定分野でのクオータ制(割当制)の導入も検討してよい時期だ。女性活躍も働き方改革も日本社会にとっては最重要課題だが、個々の企業にとってはどうだろうか。まだ多くの企業はこれを「コスト」と受け止めているのではないか。だが調査研究によれば、女性の役員が多い企業は比較的業績が良く、ワーク・ライフ・バランスの取り組みやフレックスタイム制を進める企業は、一定の時間はかかるが大幅に付加価値生産性が上がる。平成の次の時代の企業の最大課題は新たな価値の創造だ。女性をはじめ多様な人材が活躍できるダイバーシティー(多様性)の実現はそのための大きな原動力だ。そう認識し、本気で取り組む企業が増えれば、改革のスピードは上がり、企業の成長と社会の成長の好循環が生まれる。

*3-3:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO39490190Y8A221C1EA4000/?n_cid=NMAIL006 (日経新聞 2018/12/28) 働く女性3000万人、超えられぬ壁 働き盛り伸び悩む
 働く女性の数が3000万人の大台を目前に足踏みしている。総務省が28日発表した11月の労働力調査によると、女性の就業者数は2964万人(季節調整値)で前月に比べ7万人減った。順調に増えてきたが、5カ月ぶりに減少に転じた。高齢者や学生ら若者が女性の働き手を増やすけん引役だが、全体の底上げには25~44歳を中心とする働き盛りの世代の動向がカギとなる。11月の就業者数は男女合わせて6713万人。このうち男性は3749万人で全体の56%。30年前は6割だったが、働く女性が増えて男女比率は半々に近づいている。11月の女性の就業者数を年代別に17年末と比べると、伸び率が最も高いのが15~24歳だ。就業者数は284万人で13%増えた。全体の伸び(3%)を大きく上回る。13~17年はおおむね240万~250万人台で推移してきた。少子化で人口が減るなか、18年に急増した要因は「時給上昇と労働条件の緩和だろう」とSMBC日興証券の宮前耕也シニアエコノミストは話す。有効求人倍率は1.6倍を超え、人手不足は深刻だ。アルバイトを募集する際、時給を上げ、就業は週1回でも良いといった条件にするなど、学生にとって働きやすくなった。景気要因の大きい学生の雇用状況に対し、65歳以上の高齢女性で働く人は安定して増えそうだ。11月の就業者数は366万人で、17年末と比べると11%増だ。一方、就業率は17.9%。65歳以上の男性の就業率が33.6%で、高齢女性の伸びしろは大きい。気がかりなのは働き盛りにあたる25~44歳。就業者数は17年末に比べ1%減った。働く意欲は持っていても、子どもを預けることができず就労を諦めている女性もいる。都市部を中心に保育所に預けられない待機児童は全国で約2万人にのぼる。働き続けられる環境整備が欠かせず、政府は対策を急ぐ必要がある。

*3-4-1:https://digital.asahi.com/articles/ASLD92PS3LD9UBQU001.html?iref=pc_extlink (朝日新聞 2018年12月9日) 不適切な入試、岩手医科大・金沢医科大・福岡大でも
 岩手医科大、金沢医科大、福岡大の3私立大が8日、一斉に各大学で会見を開き、医学部入試で「文部科学省から不適切な点があると指摘された」と公表した。募集要項で明記せずに現役生や地元高校の卒業生ら、特定の受験生を優遇していたが、いずれも「問題ないと思っていた」と釈明した。文科省は同省幹部の汚職事件をきっかけに、東京医科大の医学部入試で不適切な得点操作が発覚したことを受け、全国81大学の医学部入試を調べている。10月に「複数の大学で不適切な入試が行われている」と発表し、大学の自主的な公表を求めていた。岩手医科大は、34人が受験して7人が合格した今年の編入試験で、同大歯学部の出身者3人を優遇した。地域医療に貢献する人材育成のために出願時に約束させている、付属病院や関連病院で卒業後6年以上、勤務する条件を守る可能性を重視したという。佐藤洋一・医学部長は「出身者に優位性を持たせるのは、私学の裁量の範囲内と考えていた」と話した。今年度入学の一般入試で不合格となった7、8人より、評価が明らかに低かった1人を追加合格させた点も、不適切と指摘されたという。判断の基準について問われた佐藤医学部長は、「公表を差し控えたい。特定の属性で合格させておらず、不都合な点はないと考えていた」とした。金沢医科大は今年度のAO入試で同窓生の子ども、北陸3県(石川・福井・富山)の高校の卒業生、現役生と1浪生に加点していた。同窓生の子は10点、石川の高校出身者には5点、富山、福井については3点、現役・1浪生には5点を加えていた。編入試験でも北陸3県の高校出身者や年齢に応じて得点を調整。これらの操作によって約10人が不合格になったという。さらに、一般入試の補欠合格者を決める際にも年齢を考慮していた。会見した神田享勉(つぎやす)学長は「大学の機能を保ちながら、北陸の医療を支えていくのは困難。同窓生の子どもや現役・1浪生、北陸3県出身者の方が地域に残るというデータがある」と得点調整の理由を説明した。福岡大では、高校の調査書の評価を点数化する際、現役生を有利にしていた。一般入試の評価では、1浪は現役生の半分で、2浪以上は0点だった。2浪以上は受験できない推薦入試でも、同様に差をつけていたという。「高校時代の学力・成績も評価したかったが、卒業から年数が経つと基礎学力評価の有効性が下がる」として、2010年度入試から始めたという。11月下旬に文科省から不適切との指摘を受けて再検討し、高校側の保存期間を過ぎて調査書を提出できない浪人生もいることなどから「不適切」と結論づけた。月内に第三者を含む調査委員会を設け、追加合格などを検討するという。会見はいずれも午前11時に開始された。この日になった理由を問われ、3大学とも「近く、一般入試の出願が始まるため」と同様の説明をした。会見日時が重なったことについて、福岡大の黒瀬秀樹副学長は「びっくりしている。示し合わせているわけでは全くない」と話した。

*3-4-2:https://digital.asahi.com/articles/ASLDB76NZLDBUBQU00X.html?iref=pc_ss_date?iref=pc_extlink (朝日新聞 2018年12月11日) 順大・北里大で不適切な医学部入試 女子など不利な扱い
 順天堂大と北里大は10日、医学部で女子や浪人回数の多い受験生を不利に扱う不適切な入試を行っていた、と発表した。順大は「女子はコミュニケーション能力が高いため、補正する必要がある」として、面接などを行う2次試験の評価で、男女で異なる合格ラインを用いるなどした。北里大は今年度の一般入試で繰り上げ合格者に連絡する際、男子や浪人回数の少ない受験生を優先させた。順大によると、不適切な入試の結果、2017、18年春の入試で計165人が不当に不合格となった。順大はこのうち2次試験で不合格となった48人(うち女子47人)を追加合格にする方針を示した。順大は女子を不利に扱った理由について①男子よりも精神的な成熟が早く、受験時はコミュニケーション能力も高いが、入学後はその差が解消されるため補正する必要があった②女子寮の収容人数が少なかった――と説明。ただ、この問題で設置した第三者委員会からは、いずれも「合理的な理由はない」と指摘された。新井一学長は「当時は大学の裁量の中で妥当と判断した。不適切とされたので、今後はなくす」と謝罪した。北里大は今後、第三者委を設置して対応を検討する。医学部入試をめぐって不適切な入試を認めたのはこれで8大学になる。

*3-4-3:https://digital.asahi.com/articles/ASLDC4389LDCUBQU00H.html?iref=pc_ss_date?iref=pc_extlink (朝日新聞 2018年12月11日) 「女子の方がコミュ力高い」 順大、医学部入試で不利に
 医学部入試での女子差別が再び明らかになった。順天堂大は10日に会見を開き、男女によって異なる合格ラインを設定していたと明らかにしたうえで「女子の方が精神的な成熟が男子より早く、コミュニケーション能力が高い。ある意味で、男子を救うためだった」と説明した。「受験生、保護者、関係者に多大な心配とご迷惑をおかけし、深くおわび申し上げます」。午後4時に始まった会見の冒頭、新井一学長と代田浩之医学部長は、深く頭を下げた。順大が文部科学省から「不適切」との指摘を受けて、10月に設置した第三者委員会の報告書は、女子と浪人回数の多い受験生を構造的に不利に扱っていたと指摘した。出願者の半分近くを占める「一般A方式」の1次試験では、一定順位を下回る受験生については性別、浪人回数、調査書の評価によって異なる合格基準を設定。女子や浪人回数の多い男子は、2次試験に進むことが困難だった。面接などを行う2次試験では地域枠と国際枠を除く全ての入試区分で、男女について異なる合格ラインを設定。順大は1次試験の順位をランクごとに分け、2次試験の成績(満点は5・40~5・65点)を組み合わせて合否判定する。1次試験の評価が男女で同じランクの場合、女子の2次試験の合格ラインが0・5点厳しかった。この仕組みは遅くとも2008年度から行われていたという。報告書によると、順大は男女で異なる取り扱いをした理由を第三者委に「入学後に男性の成熟が進み、男女間のコミュニケーション能力の差が縮小され、解消される」と主張。多数の教職員が「女子受験者に対する面接評価の補正を行う必要があった」と説明し、医学的な検証をした資料として学術誌の論文も提出していた。だが、第三者委は「面接では受験者個人の資質こそが性差よりも重視されるべきだ」と指摘し、「合理性はない」と退けた。順大は医学部の1年生が全員、寮で生活する。順大は「女子寮の収容力に限界があり、合格者を制限する必要があった」とも述べたが、第三者委は「新たな寮ができた後も合格判定基準が変わっていない」として合理性を認めなかった。17年度と18年度の2次試験を再判定した結果、計48人(うち女子47人)を追加合格とし、今後、28日を期限に意向を確認して希望者全員の入学を認める。その分、19年度入試の募集定員を減らす。2年間の1次試験で不合格とされた計117人には入学検定料を返す。2次試験を受けさせない理由について代田医学部長は「過去の入試と来年度の入試の難易度を合わせるのは難しい」とした。16年度以前の受験生については補償を含めて「考えていない」という。会見で新井学長は「当時は私学の裁量の範囲内だと考えていた」と話した。第三者委の指摘を受けて「現時点では不適切だった」と述べ、19年度入試からこうした扱いは全廃するとともに、調査書も評価に入れないと説明した。自身の進退を含めた処分は「不正ではないので考えていない」という。文部科学省の調査によると、順大の過去6年間の平均合格率は男子9・16%、女子5・50%。女子と比べて男子の合格率が1・67倍となり、全国81大学で最も高かった。順大が当初、文科省の調査に不正を否定していた点を問われ、新井学長は「補正という考えであり、差をつけているという認識はしていなかった」と説明した。北里大も10日、18年度の一般入試で繰り上げ合格者に連絡する際に、男子や浪人年数の短い受験生を優先させていたと公表した。記者会見はせず、ホームページに掲載した。北里大によると、入学者に占める女子の割合や、22歳以上の受験生の合格率が、ほかの私立大医学部より高いという。担当者は「合格した男子学生の辞退率が高く、抜けた部分を埋め合わせるためだった」と話した。今後、第三者委を設置して、18年度以前の入試についても調べ、不利に扱った受験生らへの対応を検討する。

*3-4-4:https://digital.asahi.com/articles/ASLDL4DZNLDLUBQU008.html (朝日新聞 2018年12月18日) 順天堂大入試「コミュ力」問題、心理学者が相次ぎ懸念
 順天堂大医学部の入試で、女子のコミュニケーション能力が高いため男子の点数を補正した、と大学側が説明した問題に関連し、「日本パーソナリティ心理学会」(理事長=渡辺芳之・帯広畜産大教授)が16日、大学側が根拠として第三者委員会に米テキサス大教授の1991年の論文を提出したことについて、「そのような内容を主張しているわけではない心理学の論文を安易に引用するような姿勢に対して、強い懸念を表明する」などとする見解を発表した。同会には、パーソナリティー研究に関わる心理学者らが参加している。見解では、「入学試験において、パーソナリティーに関係する心理学の研究知見を特定の人々に対する不利益な扱いの根拠として引用する事例が発生した。研究成果に対して多様な解釈があり得ることはもちろんだが、他の研究分野の知識を、その研究本来の文脈や目的から離れて不適切に引用することは好ましいことではない」としている。これとは別に、三浦麻子・関西学院大教授ら心理学者の有志も16日、声明を発表。「根拠」とされた論文は「児童期から成人期までのパーソナリティー発達と男女差を検討したもので、『女性の方が精神的な成熟が早く、相対的にコミュニケーション能力が男性より高い傾向がある』という知見を提出したものではない」として、根拠として用いたことを「非科学的」と批判。「性別ごとの平均値による比較を個別の人物評価に一律に当てはめるべきではない」とし、「心理学研究の素朴な引用によって差別的言動を正当化する行為全般に、心理学者として断固抗議する」としている。

*3-4-5:https://digital.asahi.com/articles/ASLCH4F21LCHUTIL019.html?iref=comtop_8_06 (朝日新聞 2018年12月15日) 医学部入試、選ぶ側に裁量 女子だけに保育園の質問も
 医学部入試に関する調査を進めてきた文部科学省は14日に最終報告を公表し、改めて公正な入試の必要性を訴えた。「入試が不適切だった」と公表した各大学も、選抜方法を改めるとしている。ただ、「何が公正か」という課題は残る。特に医学部の場合は、ほとんどの大学が面接を含む2次試験を行っており、選ぶ側の裁量が大きい。面接試験は、患者と接するコミュニケーション能力や丁寧に説明する力など、医師に求められる資質や適性をみるために大切とされる。主に医学部に進む東京大理科3類では2018年度入試から11年ぶりに復活し、19年度入試は九州大を除く全ての医学部で行われる。ただ、面接は学力試験と比べ、面接をする人の「主観」に左右されやすい。不正発覚の発端となった東京医科大の小西真人・入試委員長は、2年間で101人を不正に不合格にしていたと発表した11月7日の会見で「完全な客観性は面接には無理。大学側に、ある一定の裁量があることは確か」と語った。各大学の男女の合格率や面接内容を分析してきた医学部専門予備校「メディカルラボ」(本部・名古屋)によると、女子の合格率が低い大学は、面接で女子に厳しい質問をする傾向がある。ある大学では女子にだけ「患者がたくさん待っている時、自分の子どもが急病で保育園から呼び出されたらどうしますか」と質問をしていたという。複数の医師は、こうした質問の背景に、入試が大学病院の勤務医の「採用」につながっているという面があると指摘する。同校本部教務統括の可児良友さんは「男子や現役を多く確保したいという大学側の意識が変わらないと、現状が変わらないかもしれない」と不安だ。2次試験の問題は、面接だけではない。得点配分を公表していない私立大も多く、運用が不透明との批判がある。文科省の調査で「不適切な疑いがある」と指摘を受けた10大学のうち、ただ一つ、「問題はなかった」との立場の聖マリアンナ医科大(川崎市)の場合、1次の学力試験は400点満点。2次試験では100点ずつの小論文と面接に加え、調査書などを点数化して合格者を決めているが、この部分の配点は募集要項に記しておらず、評価基準もなかった。文科省はこの点数化の際、「女性より男性、多浪生より現役生が、顕著に高い」と指摘したが、大学側は「受験生を個々に総合評価している」と反論した。同大の広報担当者は取材に「面接官によって、男子や現役に高くつける人はいるかもしれないが、一律に加点していることはない」と答えた。14日の会見で柴山昌彦文科相は同大との見解の相違について「かなり大きな溝がある」として第三者委員会による調査を求めた。ただ、大学側は実施しない方針という。

*3-5:https://digital.asahi.com/articles/ASLCK2JPSLCKUBQU003.html?iref=pc_ss_date?iref=pc_extlink (朝日新聞 2018年11月17日) 診療科で男女偏在・都市に集中… 入試不正の背景は
 医学部入試で受験者の性別で差をつけてきた背景には、診療科による男女の偏りや都市部への偏在など、医療界が抱える問題がある。専門家は一連の入試不正を社会全体で考える契機にすべきだと指摘する。女性医師は子育てなどで現場を離れたり、勤務が制限されたりすることが少なくない。2016年の厚生労働省の調査によると、外科など長時間や不規則な勤務が強いられる診療科では女性は1割にも満たない。皮膚科(47%)や眼科(38%)などで割合が高く、特定の診療科に偏っている。女性外科医のキャリア支援を続ける日本女性外科医会役員の明石定子・昭和大学准教授(乳腺外科)は「一連の問題が明るみに出て入試改革が進んで現場で女性が増えれば、医療界も変わらざるを得なくなる」と話す。昔と比べて、時短勤務などの制度は広がりつつある。だが、明石さんは「家庭を重視して勤務負担を軽減すればいいわけではない」とも指摘する。「時短の時期が長くなれば医師としてのキャリアを短くしてしまう。育児中であってもキャリアを積める仕組みが必要だ」と話す。医師の労働条件が改善できない理由の一つに、都市に医師が集中し、へき地で深刻な医師不足になっている実態がある。辺見公雄・全国自治体病院協議会名誉会長は「最近は『すめば都』ではなく、『都がすみか』という傾向がより強まっている」という。同協議会が地域医療を支える自治体病院に今春行ったアンケートによると、医師の労働時間短縮について、48%が「実施できない」と答えた。辺見さんは「出身地とは離れた地域でも何年か診療できる若い人材が求められていることを理解して欲しい」と話す。働きやすい病院の認証事業を手がけるNPO法人イージェイネットの瀧野敏子代表理事は医療機関の合理化を進めることも重要だと指摘する。軽症患者の夜間救急への対応の必要性など検討課題は多いという。「合理化できるかもしれない労力の担い手を、事情を抱えてフル稼働できない女性医師らに求めるのではなく、『それは必要なのか』と国民も巻き込んで考えていくべきだ」と話す。

<運輸部門の生産性の低さを何とかしよう>
PS(2019年1月13日追加):日本では、道路が混んで自動車が低速でしか走行できず、運輸部門の生産性が著しく低い時代が何十年も続いているが、中国では、民主主義や一人一人の国民の豊かさに不安はあるものの、6車線道路やリニア・モーターカーができ、EVシフトを進めているという点で、必要なことを着々とやっているように見える。また、日本発のアイデアだった「電動化」「自動運転化」は、日本ではバックラッシュを受けてゆっくりとしか進まないが、世界では、*4-1-1、*4-1-2のように、短期間で市場投入の時代に入った。
 もちろん、電力を化石燃料で作っていては意味がないが、*4-2-1のように、JXTGエネルギーも洋上風力発電の開発を国内外で検討する考えを示しており、私は、再生可能エネルギーで安く電力を作り、給油所を水素充填及び充電拠点に替えて、燃料電池車やEVを相手として安くエネルギーを販売すればよいと考える。そして、安い電力や水素を得るには、このほかに、*4-2-2のような黒潮発電や地熱発電もあり、*4-3のように、経産省が、発電コストの引き下げを促すために風力発電を2021年度から全面入札制にするとのことである。
 さらに、*4-2-3のように、自立した水素エネルギー供給システムも作ることができる。
 
*4-1-1:https://www.nikkei.com/paper/related-article/tc/?b=20190113&bu=BFBD9496・・ (日経新聞 2019年1月13日) 自動運転・電動車で新戦略 フォード・都市と連動/VW・3600億円投資 北米自動車ショー
 開幕した北米国際自動車ショーで、自動車産業の潮流である「自動化」「電動化」の強化へ世界大手が新戦略や大型投資を表明した。米新車販売は2017年に8年ぶりの減少となったが、中国に次ぐ世界2位市場として3位日本の3倍以上の規模。進取の気性にも富む。依然、米市場での浮沈が経営戦略を左右する。米フォード・モーターは14日に発表会を開き、都市インフラを重視した自動運転構想を表明した。ジェームス・ハケット最高経営責任者(CEO)は「駐車場の空き状況と連動したナビゲーションなど、都市インフラとの連動」を提案した。次世代型の都市構想を打ち出すうえで初期段階から車両との連携を進め、燃費節約などにつなげる方針だ。フォードは21年に自動運転車の導入を計画しており、ハケットCEOは「まずは自動運転を使った移動・輸送受託のビジネスモデルを広げることに注力する」と中小企業なども顧客とすることを示唆した。電動化対策としては、フォードは22年までに電気自動車(EV)など電動車40モデルに最大で110億ドル(約1兆2200億円)を投資する。今後の新製品開発はトラックや多目的スポーツ車(SUV)を軸にする方針。20年には主力のピックアップトラックでハイブリッド版を投入するほか、SUV型のEVも発売する。従来の20年までの投資計画規模は45億ドルで、2.4倍だ。新技術をテコに、米国全体で自動車産業を再興しようとの機運が高まっているようだ。米運輸長官のイレーン・チャオ氏は14日、「技術革新を促すよう政策を仕分けし、米国の競争力を高めて雇用を生み出す」と積極的に新技術の利用促進を進める方針を強調した。例に挙げたのが米ゼネラル・モーターズ(GM)が申請したハンドル、ペダルなしの自動運転車の導入だ。GMのメアリー・バーラCEOは「完全自動運転への大きな一歩」と自動運転やEVへの熱意をアピールした。自動運転に関する米国の政策方針として、チャオ運輸長官はトップダウン式に特定の技術を推すことはせず「技術中立的」に官民連携を進めることを強調した。安全性試験の仕組みや安全に関わるデータベースの確立で連携していく。企業の取り組みが依然、カギを握ることになり、GMやフォードが新戦略を打ち出すのもこのためだ。フォードの発表会では創業家のビル・フォード会長が「10年前は死にかけていたがデトロイトは復活した」と宣言していた。確かに都市の中心部は再投資され、きれいな公園が整備され、ニューヨークにあるようなこじゃれたレストランが増えており、復権を印象づけていた。自動運転などを巡っては、米グーグルなどIT(情報技術)大手も交えた異業種との競争にも一歩も引かない構えを見せたといえる。米国重視はビッグスリーだけではない。独フォルクスワーゲン(VW)も3年間で、北米に33億ドル(約3660億円)以上を投資することを表明、積極的な北米展開をアピールした。ショー開催期間中に披露される各社の車種は、米国で人気の大型車が中心になる見通し。一般公開は20日からで、ここ数年は80万人規模が来場する。

*4-1-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190113&ng=DGKKZO39971690S9A110C1EA5000(日経新聞 2019年1月13日)米GM、キャデラックにEV 中国に的
 米自動車大手ゼネラル・モーターズ(GM)は11日、高級車ブランド「キャデラック」で電気自動車(EV)を発売する計画を明らかにした。中国などのEV需要の高まりを受け、高級EVを品ぞろえに加える。「シボレー」「ビュイック」の両ブランドは販売車種を絞り込み、グローバルで設計や部品を共通化して収益性を高める。米ニューヨークで開いた投資家向け説明会で、メアリー・バーラ最高経営責任者(CEO)が明らかにした。同社のEVは「シボレー・ボルト」が主力だが、EVでも最大市場の中国でのシェア拡大に向け、中国の富裕層に人気が高い「キャデラック」ブランドでEVを追加する。GMは発売時期や車種を明らかにしていないが、開発中の新型充電池を搭載し、フル充電で300マイル(約480キロメートル)以上の走行距離をめざしているとみられる。高級EVの市場では米テスラなどがライバルとなる。中国の新車市場は18年に28年ぶりに前年実績を下回ったもようだ。GMの販売も前年割れとなったが、「キャデラック」ブランドの販売は20万台超と17%増加した。バーラCEOは「足元の市況は厳しいが、長期的には中国はまだ成長が見込める」とコメント。19年は新型車とモデル改良を含めて過去最多の20車種以上を中国に投入する。昨年11月に北米で完成車とエンジンの計5工場の生産を休止すると発表した。トランプ米大統領は雇用減につながるとして同社を批判しているが、バーラCEOは「規制や通商の変化など課題は多く、経済環境が堅調なうちに手を打っておく必要がある」と改めてリストラの必要性を強調した。北米の生産再編と合わせて「シボレー」「ビュイック」ブランドの車種を絞り込む。20年前半までに中国やブラジル、メキシコなどの新興国向けに設計と部品を共通化した小型車や多目的スポーツ車など8車種を投入し、地域ごとに異なる既存の車種と置き換える。

*4-2-1:http://qbiz.jp/article/147084/1/ (西日本新聞 2019年1月12日) JXTG、洋上風力発電に意欲 石油最大手が再生可能エネ強化
 石油元売り最大手JXTGホールディングスの事業会社、JXTGエネルギーの大田勝幸社長(60)は12日までに共同通信のインタビューに応じ、洋上風力発電の開発を国内外で検討する考えを示した。「最初は単独でできないので、他社との提携を考えたい」と話した。地球温暖化問題で事業環境の激変が予想されており、再生可能エネルギーを強化する。「投資規模は言える段階ではないが、再生エネはやらなくてはいけない」と語り、ガソリンなどの石油製品に依存しない経営体制をつくることを目指す。一方、今年4月に出光興産と昭和シェル石油が経営統合することが決まり、石油元売りは再編で先行したJXTGとの2強体制になる。「規模で勝るJXTGは統合効果も大きい。出光・昭和シェルの2、3歩先を行く」と話した。JXTGは今年、給油所のブランドを「ENEOS(エネオス)」に統一し、サービス向上に力を入れる。ブランドを統合後も当面併存させる出光・昭和シェルと比べ、強みだと指摘した。米国は対イラン制裁で、原油禁輸に関し日本などを一時的に適用除外としたが、今春に復活する見通しだ。イラン原油について「採算性の魅力がある。条件が整えば輸入を継続したい」と述べた。

*4-2-2:http://qbiz.jp/article/147088/1/ (西日本新聞 2019年1月13日) 「黒潮発電」本格実験へ IHIが離島向け 鹿児島沖で今夏から
 IHIは今年夏から、黒潮の流れを利用した「海流発電」の実用化に向けた本格的な実験を鹿児島県・トカラ列島沖で実施する。出力100キロワットの装置を海中に設置し、2020年まで1年間実験する。実用化の目標は20年代初め。将来的には出力2千キロワット級に大型化し、コスト削減を図る。離島向けなどに新たな再生可能エネルギーとして売り込みたい考えだ。海流発電は、九州から本州の太平洋側を南から北へ向かう黒潮の流れを発電に生かそうという日本独自のアイデア。黒潮の流れは天候や時間帯に左右されないことから、太陽光や風力などと異なり、安定した電力が得られる自然エネルギーとして注目されている。同社が開発した実験用の発電装置は三つの円筒状の構造物を組み合わせたもので、長さと幅は約20メートル。円筒二つの先端に取り付けた直径11メートルの羽根が回って発電する。海底の土台(シンカー)とワイヤでつながれた装置は、たこ揚げのように海中に浮いて発電。装置は水面下約50メートルにあり、上を船舶が通過しても支障はない。羽根は風力発電のようにゆっくり回るため、海洋生物にも影響はないという。同社は17年夏にもトカラ列島沖で7日間、この装置で実験しており、今回は1年間かけて台風などの影響も調べ、実用化に向けた課題を探る。今回の実験が成功すれば、実用化に向け前進。将来的には、装置を複数並べて発電することも可能という。現在の発電コスト目標はディーゼル発電と同程度の1キロワット時当たり40円ほどだが、「大規模太陽光発電に匹敵する20円以下が将来目標」(機械技術開発部海洋技術グループの長屋茂樹部長)。ディーゼル発電を使っている離島などに売り込んでいきたいという。

*4-2-3:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190113&ng=DGKKZO39909860R10C19A1MY1000 (日経新聞 2019年1月13日) 水素を生かす(中)駅でエネルギー供給 災害時も
 JR東日本の武蔵溝ノ口駅(川崎市)は構内で使う電気や温水の一部を、自立した水素エネルギー供給システムでまかなっている。災害時にライフラインが寸断されても、一時的な滞在場所として利用可能だ。上り線のホームには東芝が開発したシステムが3基並んでいる。ホームの屋根に敷いた太陽光パネルで発電し、貯水タンクの水を分解して水素を作る。水素はタンクに貯蔵するほか燃料電池で発電する。照明だけでなく、夏はミストシャワーを動かす電力になる。温水も供給できるため、冬はベンチを温める。腰掛けると、じわりと暖かい。水素の製造、貯蔵、利用を一貫してできるのが特徴だ。2017年にJR東日本の駅で初めて導入した。横幅6メートル、高さと奥行きが2.5メートルのコンテナ型で、船やトラックで運べる。国内では横浜市や宮城県など各地で設置が始まった。海外での利用にも期待を寄せる。東芝エネルギーシステムズの中川隆史担当部長は「水素を身近なエネルギーとして役立てていきたい」と話す。

*4-3:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190113&ng=DGKKZO39975400S9A110C1MM8000 (日経新聞 2019年1月13日) 風力発電で全面入札制 経産省、21年度から 発電コスト下げ促す
 経済産業省は再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度(FIT)で2021年度以降、安い電力だけを買う「入札制」を風力発電に全面的に導入する方針だ。欧州などに比べ発電コストが高止まりしているため、事業者に低コスト化を促し競争力を高める。太陽光でも入札制の範囲を拡大する方針で、再生エネ全体で育成から競争への比重を高める。17日に開く有識者会議で風力発電について「早期の入札制導入を検討する」との方針を示す。国が募集量と買い取り価格の上限を決めた上で売電の希望価格を募る方式。安い電力を示す事業者から順番に買い取り契約をするため、値下げ圧力がかかる。入札による買い取り価格はFITの固定価格買い取り同様、電気代に上乗せされる。19年度の買い取り価格は陸上風力が1キロワット時あたり19円で、洋上風力は同36円。洋上風力には一部案件で入札制を実施する方向になっていた。FIT法の見直しを予定している21年度以降には固定買い取り制度ではなく、入札制への全面切り替えを原則とする。背景にあるのは風力発電コストの高さだ。直近では1キロワット時あたり13.9円と世界平均(8.8円)の約1.6倍になっている。欧州は入札制を広く導入し、発電事業者に競争を促したことで発電コストを抑えた。経産省は30年に発電コストを世界平均並みの8~9円にする目標を掲げるが、現状のままでは達成が厳しいとみられる。高額買い取りが事業者のコスト削減を遅らせていた面もあるとみて、入札制で努力を促す。再生エネでは太陽光でも入札制の対象が拡大されるなど競争路線が加速している。現状の再生エネ比率は16%でこのうち風力は0.6%にとどまる。政府は再生エネを「主力電源」と位置づけ、30年度に再生エネを22~24%まで比率を高める方針。風力を1.7%にする目標を掲げている。

<エネルギーの自給率と長期戦略について>
PS(2019/1/18追加): *5-1に、「①日立が再エネ価格の急落で英国での原発建設計画を凍結する」「②再エネ価格の急落は想定外だった」「③日立は2012年11月、英ホライズン・ニュークリア・パワーを買収して英国事業に乗り出していた」「④原発新設を手がけていないと保守や廃炉などの技術も保てない」「⑤ビッグデータ分析やAIの活用などは膨大な電力を消費するため、再エネだけではカバーできない」「⑥日本は長期を見通す議論が不足している」「⑦原発をエネルギー政策のなかでどう位置づけていくかの将来像が固まらないとビジネスとしての原発は存続できない」と書かれている。しかし、①②③⑥については、簡単な装置で発電でき、燃料を使わず、公害の少ない再エネ価格の急落を想定できず、フクイチ後に英ホライズンを買収したことこそ(英国は、これで十分メリットがあった)、経営者として長期を見通す能力に欠けていたのである。また、④⑤は言い訳に過ぎず、⑦のビジネスとしての原発なら国民負担による政府補助金に頼ることなく、事故時には製造物責任法に基づく損害賠償を行い、最終処分まで含めてビジネスベースに乗せるべきであり、従って原発はビジネスにはならないということだ。
 なお、*5-2のように、九電は、費用対効果が十分でないとの判断から、出力559,000kwの玄海原発2号機を廃炉にする見通しになったそうだ。リスクまで考慮すると、再稼働している玄海3、4号機、川内1、2号機も早く終わり、原発よりずっと簡単な装置で発電でき、燃料を使わず、公害の少ない再エネに移行するのが、長期的にはより安価になるだろう。

*5-1:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO40153500X10C19A1TJ3000/?nf=1 (日経新聞 2019/1/17) 日立が英計画の凍結発表 再生エネ台頭、原発に誤算
 日立製作所が原子力発電事業の存続をかけて取り組んできた英国での原発建設計画を凍結する。再生可能エネルギーによる電力価格の急落など、当時は想定していなかった誤算が重なり苦渋の決断を強いられた。原発事業をリスクとみる投資マネーの動きも圧力になった。東原敏昭社長兼最高経営責任者(CEO)は17日の記者会見で、凍結理由を「経済合理性の観点からすると、諸条件の合意には想定以上の時間を要すると判断した」と説明した。英国政府との協議は今後も続ける。一方的な打ち切りにすると「英国政府に対し巨額の違約金が発生する可能性がある」(交渉関係者)との懸念もあったようだ。日立は2012年11月、英ホライズン・ニュークリア・パワーを買収して英国事業に乗り出した。発表当時、原発担当役員は「原発を建設する場所がどうしても欲しかった」と語った。原発新設を手がけていないと保守や廃炉などの技術も保てない――。11年の東日本大震災時に起きた原発事故で逆風が吹くなか、望みをつなぐ一手だった。英国には原発でつくった電気を市場価格より高く買い取る制度があり、採算を確保しやすいとの判断もあった。だが、事業環境は大きく変わった。太陽光や風力といった再生エネの台頭だ。技術革新や普及に伴う規模の効果により再エネによる発電コストは年々低下。英国で実施された洋上風力発電の入札では、落札価格が17年までの2年で半分になった。原発の電気を高く買い取るための実質的な国民負担は年々重くなり、政府は修正に動いた。英政府が日立のプロジェクトに対し内々に示した買い取り価格は1千キロワット時あたり70ポンド(約9800円)台前半。先行する他の原発に比べ約2割低かったという。この水準では採算が狂う。危機感を募らせた日立の中西宏明会長は18年5月、英メイ首相と会談し、他の部分での支援を求めた。英政府が用意したのが資金調達コストを下げる仕組みだ。総事業費3兆円のうち2兆円超を英国側が融資するというものだ。残りの資金は日立、日本企業、英国政府・企業がそれぞれ3分の1ずつ出資することにした。トップ会談でつかんだ果実。これを第2の誤算が打ち消した。東京電力ホールディングスなど国内電力の出資拒否だ。日本企業からの出資者集めは日本政府の役割だったが、説得は難航した。特に、日立がつくる沸騰水型軽水炉(BWR)の使い手である東電が動かなかった。「事故を起こし再稼働も進まない中では国民の理解が得られない」。他の電力も見送りに傾く。投資家の目も厳しくなった。「原発のように先行きが不透明な事業を持つ企業の株を中長期で持ちたいとは思わない」(国内投資顧問幹部)。日立も意識しており、ある首脳は昨夏「(国内では原発再稼働が進まず)膨大な資産が何の収入も生んでいない。投資家からみたらそれだけでバツだ」とこぼした。11年に原発事業からの撤退を決めたライバル、独シーメンスと比べ、日立の時価総額は3分の1にとどまってきた。国内企業の中では構造改革に先行したにもかかわらず、株価は日経平均にも見劣りする。英国での計画凍結が伝わった今月11日は前日比9%上昇した。原発事業そのものにも資金は集まりにくくなっている。「ホライズンへの出資を希望していた企業やファンドも、再生エネが台頭するにつれ離れていった」(日立幹部)。ただ、ビッグデータ分析や人工知能(AI)の活用など、今後の産業の進化を支える技術の多くは膨大な電力を消費する。東原社長は17日の記者会見で「エネルギーの安定供給を考えると、再生エネだけでカバーはできない」と強調した。原発なしで電力需要をまかない続けられるのかは明確でない。1月7日。経団連会長の立場で、政府への要望を聞かれた中西氏はこう答えた。「日本は本当に大丈夫か、長期を見通す議論が不足している。エネルギー問題はその典型だが、方向付けに対する議論をどの政治家もやらない」。原発をエネルギー政策のなかでどう位置づけていくか。将来像が固まらないと、ビジネスとしての原発は存続しえない。

*5-2:http://qbiz.jp/article/147063/1/ (西日本新聞 2019年1月12日) 玄海原発2号機廃炉へ 稼働38年、安全対策費多額に  九電、年度内にも結論
 九州電力が玄海原発2号機(佐賀県玄海町、出力55万9千キロワット)の再稼働を断念し、廃炉にする見通しになったことが分かった。廃炉となった玄海1号機と同様、安全対策工事などで多額の費用がかかり、投資効果が十分に得られないとの判断に傾いたとみられる。早ければ2018年度内にも最終判断する。玄海2号機は1981年3月に稼働。2011年1月に定期点検に入って以来、運転を停止している。原則40年とされる運転期限は21年3月で、再稼働し、運転期間を延長するには、1年前の20年3月までに国に申請するルールがある。運転延長を目指す場合、申請前に約半年に及ぶ「特別点検」を実施する必要もあり、実際には19年中の存廃決定を迫られている。運転延長には東京電力福島第1原発事故後の新規制基準に適合させるため、テロに備えた特定重大事故等対処施設(特重施設)などの整備が必要。九電は再稼働した玄海3、4号機用に設ける特重施設との共用は距離的に難しいと判断、単独での建設も用地確保が困難とみている。加えてケーブルの難燃化対応なども必要で、安全対策にかかる費用の総額は「廃炉にした1号機とあまり変わらない可能性がある」(幹部)という。九電が再稼働した原発4基に投じた安全対策費は計9千億円超。2号機の安全対策工事の期間も見通せず、20年間の運転延長では経済性が十分に担保できないと判断したもようだ。一方、再稼働済みの玄海3、4号機の出力は各118万キロワット、川内原発1、2号機(鹿児島県薩摩川内市)は各89万キロワットある。さらに石炭火力で100万キロワットの松浦発電所2号機(長崎県松浦市)が今年稼働予定、九州の太陽光発電の総出力は800万キロワットを超えるなど、供給面では、出力が小さい玄海2号機を再稼働する意義は薄れている。廃炉費用364億円が見込まれる玄海1号機と同時期に廃炉を進めることで、効率的に作業ができる利点も考慮したとみられる。全国では福島第1原発事故後に7原発10基(福島第1を含まず)が廃炉を決め、老朽原発を中心に選別の動きが進んでいる。

<思考における基礎知識の重要性>
PS(2019年1月19日追加):*6-1に、厚労省は、「(外国人材の受け入れ拡大による効果については考慮していないが)ゼロ成長で高齢者や女性の就労が進まない場合には、2040年の就業者数は2017年に比べて1285万人減る」という推計を出したそうで、これを解決するには、労働参加率を上げて量を増やすだけでなく、労働力の質を上げることも重要だ。そのため、*6-2のように、①幼児教育・保育の無償化で、子どもが早くから教育を受けられるようにする ②高等教育の負担を軽減する ③保育所や学童保育の整備で女性の就労を容易にする 等が必要だ。
 しかし、私は、質の確保という意味から、認可外保育施設を無償化対象として永続させることには賛成できない。そのかわり、*6-3のように、学童保育や保育所に待機児童が多いため、就学年齢を3歳からとし、0~2歳は保育、3歳以上は小学校と学童保育という分け方をして、教育の質も同時に充実させるのがよいと考える。
 なお、*6-4のように、厚労省は「毎月勤労統計」を2004年~2018年に東京都で1/3しか実施せず、これが法律違反だということで大騒ぎになっているが、無作為抽出すれば全数調査しなくても正確な統計にすることはできるため、2018年に東京都分を3倍にしたのは一概に誤っているとは言えない。また、統計上の平均値を基にして、個人の失業(又は育児・介護休業)給付額を決めるのは論理的でなく、保険料掛金に反映される失業・育児・介護休業直前の個人の給与を基にして決めるべきである。現在はコンピューター時代で、個人を管理することは容易で必要不可欠でもあるため、個人の直前の給与や掛金の払込履歴を基にすべきだ。ちなみに、日本は失業率が低いので失業保険にゆとりがあり、育児・介護休業する場合の給付も包含できるわけだ。

*6-1:http://qbiz.jp/article/147116/1/ (西日本新聞 2019年1月15日) 就業者数が1285万人減 2040年、初の推計
 厚生労働省は15日、雇用政策研究会(座長・樋口美雄労働政策研究・研修機構理事長)を開き、経済成長がない「ゼロ成長」で高齢者や女性の就労が進まない場合、2040年の就業者数は17年に比べて1285万人減るとの推計を示した。研究会は雇用促進策や人工知能(AI)などの技術を活用できる環境の整備を求めている。高齢者数がほぼピークを迎える40年時点の推計を出すのは初めて。4月からの新たな外国人材の受け入れ拡大による効果については「制度が始まっていない」として考慮していない。一方で、日本語教育の充実や生活者としての外国人支援の推進が必要と指摘した。推計では、25年と40年の各時点の就業者数を算出。17年の就業者数が6530万人だったのに対し、25年は448万人減の6082万人になり、40年は5245万人にまで落ち込む見通しだ。17年と40年を比べると、男性711万人減、女性575万人減と、男性の減少幅が大きい。厚労省は「人口減少が原因」としている。産業別では、17年から40年にかけて最も減少するのは、287万人減が見込まれる卸売・小売業だった。221万人減の鉱業・建設業と206万人減の製造業が続く。他が減少する中、医療・福祉分野だけは103万人増加する見通しだ。厚労省は、女性活躍や高齢者雇用政策が一定程度の効果を上げた場合の就業者数も試算。25年は17年比187万人減の6343万人、40年は同比886万人減の5644万人だった。

*6-2:https://digital.asahi.com/articles/DA3S13796591.html (朝日新聞 2018年12月4日) 「市町村の負担、1000億円減」 幼保無償化、政府案軸に調整
 来年10月に始まる幼児教育・保育の無償化で新たに必要となる財源について、政府は3日、年間8千億円のうち市町村負担を当初案より約1千億円少ない約3千億円とする案を地方側に示した。地方側も歩み寄る姿勢を示し、この案を軸に調整が進む見通しとなった。ただ、政府は認可外保育施設を無償化対象とする方針を変えておらず、保育の質の確保は課題のままだ。宮腰光寛少子化対策担当相ら関係4閣僚と、全国知事会、全国市長会、全国町村会の各会長が無償化について協議するのは、11月21日に続いて2回目。国は、新たに公費負担が生じる認可外施設などについて、当初案で3分の1としていた国の負担を2分の1に引き上げる譲歩案を示した。地方側は「評価する」と表明したうえで、持ち帰って検討するとした。安倍政権は昨年秋の衆院選の目玉公約として無償化を打ち出したが、負担割合については十分な調整を欠いた。昨年12月の「国と地方の協議の場」で、地方6団体が「国の責任で、地方負担分も含めた安定財源を確保」と主張したことなどから、「地方も負担に理解を示している」(内閣府幹部)と解釈したからだ。政府は今年11月になって、地方も消費税率引き上げによる増収分から無償化の財源を出すのは当然だとして当初案を示したが、地方側は「負担割合に関する説明は一切なかった」「国が全額負担するべきだ」と猛反発、混乱が広がった。保育の質の確保も課題となった。政府は、認可保育園に入れずに認可外施設を利用する家庭への対応として認可外施設も無償化の対象とする方針だが、指導監督基準を満たしていない認可外施設も多い。地方側は「劣悪な施設に対して公費を投入することは耐え難い」と訴えた。根本匠厚生労働相は3日の協議で国と地方の協議の場を新設し、無償化の対象とする認可外施設の範囲などについて議論する方針を説明した。ただ、譲歩案には保育の質の確保に向けた対応策の詳細は盛り込まれていない。
■高等教育の負担軽減、負担割合了承
 低所得者世帯の子どもが大学などへ進学する際の負担軽減策は、国と地方の負担割合がおおむね了承された。授業料や入学金の減免は(1)国立・私立の大学や短大などは国が全額(2)公立の大学・短大などは設置する都道府県・市町村が全額(3)私立専門学校は、国と都道府県が半分ずつの割合とし、給付型奨学金は国が全額を負担する。ただ、知事会からは専門学校が集中する大都市圏への財政的な配慮を求められ、今後関係する省庁が対応を検討する。主な支援対象は住民税非課税世帯(年収270万円未満)で、国公立大の学生は国立大の授業料標準額(約54万円)を全額免除し、私立大生は約71万円を減額する。給付型奨学金は教科書代や自宅外生の家賃なども対象になる。

*6-3:http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2018122801001178.html (東京新聞 2018年12月28日) 学童保育、1万7千人入れず 小学校高学年で増加、厚労省公表
 厚生労働省は28日、共働きやひとり親家庭の小学生を預かる放課後児童クラブ(学童保育)について、利用を希望しても定員超過などで入れない待機児童は、今年5月時点で1万7279人だったと公表した。1~3年生の低学年で減少する一方、4~6年生の高学年は増加。全体では前年より109人増えた。子育てをしながら働く女性が増えているため利用希望者も年々拡大。政府は2018年度中に待機児童を解消する計画だったが、需要の高まりを受けて達成時期を21年度末へ先送りした。9月に公表した新たな計画では計152万人分の利用枠を確保することを目標に掲げている。

*6-4:https://digital.asahi.com/articles/DA3S13853478.html (朝日新聞 2019年1月18日) 過少給付、延べ2015万人に 統計不正、厚労次官ら処分へ
 厚生労働省の「毎月勤労統計」をめぐる問題で、同統計をもとに給付水準が決まる雇用保険や労災保険、船員保険で本来より少なく給付されていた人が、延べ約2015万人になることが分かった。当初公表の人数から約42万人増える。厚労省は11日の発表で計約1973万人としていたが、精査した結果、失業手当や育児休業給付などを含む雇用保険の対象者が約42万人上積みされたという。過少給付は雇用調整助成金などの助成金30万件でもあった。追加給付に関する費用は、事務費やシステム改修費などの約200億円を含めて約800億円に上る。政府は、問題が発覚する前の昨年12月21日に閣議決定した2019年度予算案を見直し、この問題の対応に必要な予算を反映させた予算案を18日に閣議決定し直す予定。こうした対応は極めて異例だ。一方、根本匠厚労相は同省の鈴木俊彦事務次官らを処分する方向で検討に入った。同省関係者によると、省内に設置された特別監察委員会の検証結果を踏まえて、具体的な処分内容を決めるという。この問題では、04年からの不正な抽出調査の無断実施や、本来の全数調査に近づけるために昨年1月に始まったデータ補正が組織的に行われ、隠蔽(いんぺい)された疑いが出ている。
■閉会中審査、24日に開催
 衆院厚労委員会は17日、24日に閉会中審査を行うことを決めた。審議時間は、与野党の同委員会の筆頭理事の協議で4時間で合意した。

PS(2019年1月20、26、30日追加): *7-1のように、改正入管難民法成立を受けた外国人労働者受入拡大制度で、①大都市圏に外国人が集中しない措置を講じる ②2019年4月からの5年間累計で最大34万5150人を受け入れる ③農漁業は派遣の雇用形態も認める ④外国人への支援に関する総合的対応策に各種行政サービスの多言語化を推進する ⑤報酬は日本人と同等以上にする 等が定められ、これを受けて、ジャガイモやビワの生産で屈指の長崎県が、深刻な人手不足から外国人労働者を雇う「派遣会社」を設立して県内の農家や農業生産法人に強力な“助っ人”の派遣を始める計画だそうだ。しかし、このようなニーズのある地域は、九州・沖縄だけでなく、中国・四国・中部・北陸・東北・北海道にも多いと思われる。
 一方で、*7-3のように、ホンジュラスなど母国での暴力やギャング犯罪を逃れ、より良い生活を送る機会を得ようとして、2018年10月半ばから、幼い子供のいる家族連れで数千人が中米を北上しメキシコ経由で米国に入ろうとしているそうだ。いくら移民に寛容なアメリカでも、そう次々と移民の入国を認めると失業者が増えて困るだろうが、ホンジュラス(元スペイン領)は、*7-4のように、農業・牧畜・林業が盛んで、メロン・コーヒー・高原野菜・果樹・トウモロコシ・バナナ・柑橘類・サトウキビ・アブラヤシなどを生産している国であるため、日本で農業をやりたい人を募集すると、日本の農業における人手不足が解消するとともに、これらの農業生産に慣れた人を雇うこともできるのではないだろうか。なお、*7-5のように、国土交通省が2018年4月から「全国版空き家・空き地バンク」の本格運用を始めており、就農希望者向けには「農地付き空き家」も検索できるそうだ。これには、各地域の防災・生活支援情報・小学校区も表示できるとのことで、移住の準備はかなり整っていると言える。
 また、耕作放棄された荒廃農地が2017年に28万3000ヘクタールに上り、*7-6のように、再生には受け手の確保が課題というもったいない状況だが、世界には、住む場所を追われて難民となっている人も多いため、これを結び付けるのはよいと思われる。また、日本は稲作・畑作を前提としてモノを考えるため、抜根や区画整理を必要不可欠とするが、放牧・木の実・その他の栽培を選択肢に加えれば、必要な整備は変わる。そのため、最も風土を活かした経済性に富む栽培について、輸出や外国人労働力を含めた広い視野で考え直し、地域が産学連携して賢い基本計画を作った上で、国に支援を求めるのがよいと思われる。
 2019年1月30日、*7-7のように、日本農業新聞に「地方創生の地方版総合戦略の77%が都会のコンサルティング会社などに外部委託して策定されていたことが専門機関の調査で明らかになった」と書かれている。私も、監査法人在籍中にそういう調査をしたことがあるのでわかるのだが、東京のコンサルティング会社は、日本や海外の類似市町村の例を速やかに調査し、自治体や地域の人から情報を集めて文章に纏めるのはうまいが、その地域の長所を使った今後の発展戦略を本当に企画できるわけではない。そのため、地方自治体が、通常業務(ITによる効率化が容易)にかまけて長期基本計画の策定を重い負担だと考えるのは職務放棄だ。しかし、過去にコンサルティング会社が作った長期基本計画があれば、それをたたき台にして新しく必要な調査を加え、新計画を策定することが容易であるため、それは無駄ではなかったと考える。なお、「自発性を促す仕組みを・・」という意見もあるようだが、子どもではないので、地方自治体が中心となって地域の住民や産業界の意見を聞きながら基本計画を作るのは当然だろう。


                 2018.10.26BBC

*7-1:http://qbiz.jp/article/145771/1/ (西日本新聞 2018年12月14日) 大都市圏集中防止を明記 農業、漁業は派遣認める 外国人就労拡大の全容判明
 改正入管難民法などの成立を受けた外国人労働者受け入れ拡大の新制度の全容が13日、政府関係者への取材で分かった。制度の方向性を定める基本方針には、大都市圏に外国人が集中しないような措置を講じると明記。分野別運用方針では、国会答弁と同じく来年4月から5年間の累計で最大34万5150人を受け入れ、農業と漁業は派遣の雇用形態も認めるとした。外国人への支援内容を盛り込む総合的対応策には各種行政サービスの多言語化推進を記載した。政府は25日にも基本方針を閣議決定し、分野別運用方針なども年内に定める。基本方針によると、外国人が大都市圏などに過度に集中しないよう「必要な措置を講ずるよう努め」、失踪者が出ないよう関係機関が連携する。人手不足で受け入れが必要なことを客観的かつ具体的に示すよう関係省庁に求め、分野別運用方針に書き込む受け入れ見込み数を、大きな経済情勢の変化がない限り、上限として運用する。報酬額は日本人と同等以上を求め、新在留資格「特定技能1号」の外国人への支援内容として、出入国時の送迎や住宅確保、生活オリエンテーション実施、日本語習得支援、行政手続きの情報提供などを挙げた。分野別運用方針では、雇用形態はフルタイムで原則直接雇用だが、季節で仕事量が変わる農業と漁業は派遣も可能とした。業種ごとに主な業務内容も示し、介護は訪問系サービスを対象外とした。同一業種内や業務内容が似ていれば転職も認める。総合的対応策では、行政や生活の相談に多言語で応じる一元的窓口の創設を支援すると規定。多言語化推進の項目としては医療、災害情報を国から自治体へ伝える全国瞬時警報システム(Jアラート)、110番、運転免許試験などを示した。新制度に関する省令の骨子案も判明。受け入れる外国人は18歳以上とし、一時帰国を希望した際は休暇を与え、本人が帰国旅費を捻出できない場合は負担することを受け入れ先に義務付ける。
●「左官」「接客」など業務記載 運用方針  
 外国人労働者の受け入れ対象業種や見込み数を記載する分野別運用方針は、新制度の根幹部分を担う。概要案は11月14日に政府が提示したものと同じ、14業種を対象に5年で最大34万5150人という内容で、「精査中」と注釈を付けた。業種ごとに、新在留資格「特定技能1号」取得に必要な試験内容や雇用形態、建設業なら「型枠」「左官」といった主な業務も記載した。資格取得に必要な技能試験は、業種を所管する各省庁が新設する。いずれの業種も日本語能力判定テスト(仮称)か現行の日本語能力試験の通過が求められる。政府は当面、ベトナムなどアジア8カ国で判定テストの受験ができるようにし、利用状況を踏まえて受験地拡大を検討。介護業はさらに専門的な介護日本語評価試験(仮称)も受ける必要がある。従事する主な業務も示し、造船・舶用工業では「溶接」「塗装」、宿泊業では「フロント」「接客」などを挙げた。介護業は入浴や食事を助ける「身体介護」などで、「訪問系サービスは対象外」と注記された。原則直接雇用だが、農業と漁業は、季節で仕事量が大きく変わるため、派遣も可能。「風俗営業関連の事業所に該当しない」(外食業)など、受け入れ先に特に課す条件も明記した。
*外国人の就労拡大 少子高齢化などを背景とした人手不足に対処するため、入管難民法を改正し、在留資格「特定技能1号」「同2号」を新設した。一定技能が必要な業務に就く1号は、在留期限が通算5年で家族帯同を認めない。熟練技能が必要な業務に就く2号は期限が更新でき、配偶者と子どもの帯同も可能。資格は生活に支障がない程度の日本語能力が条件で、各業種を所管する省庁の試験を経て取得するほか、技能実習生からの移行も多く見込んでいる。

*7-2:http://qbiz.jp/article/147376/1/ (西日本新聞 2019年1月19日) 長崎県、農業に外国人材活用 派遣会社設立へ 元技能実習生の確保目指す
 ジャガイモやビワの生産で屈指の長崎県が深刻な人手不足に悩まされている。高齢化も著しく、重労働の現場は「技能実習生」抜きには成り立たないのが実情。県は近く外国人労働者を雇う「派遣会社」を設立、農繁期を迎える5月をめどに、県内の農家や農業生産法人に強力な“助っ人”の派遣を始める計画だ。県によると、派遣会社は県の出資団体や民間企業が共同で出資。外国人は派遣会社と契約する仕組みで、賃金や待遇は、その派遣会社に所属する日本人労働者と同一にする。重労働現場での外国人材活用を認める改正入管難民法(4月施行)は、技能実習を3年間経験した外国人に対し、農漁業や介護など14業種での就労を認める方針。期間は5年間。派遣会社は同法に該当する「元技能実習生」を労働力として確保、契約を目指す。県が2017年11月に県内の全7農協と複数の法人に「不足する労働力」を確かめたところ、年間を通じて約300人が不足する、との回答が寄せられた。そのため派遣会社の雇用数は発足当初50人を目標とし、受け入れ態勢を整えながら3年で300人にする。県は外国人材の住居について、受け入れる法人の社員寮や農家での住み込みを想定。外国人が地域社会にうまくなじむには住民の理解が不可欠で、県農林部は「地域に連絡協議会を設置してもらい交流会を開き、外国人が安心して暮らせるようにする」としている。
●現行制度では課題多く 
 県が設立する派遣会社で雇用予定の「技能実習生」は、低賃金や長時間労働が問題になってきた。派遣会社ではこうした問題が起きぬよう県は指導を強める。1993年に始まった現行の技能実習制度では、実習生は国内の「監理団体」が受け入れ、工場や農家に派遣。実習生は派遣先と雇用契約を結ぶ仕組みで、その報酬は同じ場所で働く日本人労働者と「同等以上」(技能実習法)との定めがある。団体は、派遣先を指導する責任を負う。しかし、外国人労働の受け入れを巡る国会審議では、最低賃金以下や長時間の労働を強いられ、失踪する問題が顕在化。出入国管理白書によると、2017年に失踪した実習生は全国で7089人に上り、13年(3566人)に比べてほぼ倍増した。県が県内の監理団体に行った調査では、17年12月から18年11月の1年間に15人が失踪したという。問題の根底には、実習生を「安価な労働力」とみなす一部受け入れ現場の意識の低さがある。白書では、17年に実習生を受け入れた全国213機関で発覚した不正行為は計299件。賃金不払いが139件で最も多く、本人の同意がない契約書を作るなどが73件、労働関係法令違反が24件と続く。一方、技能実習生がより良い賃金や待遇を求めて都会に出て行くケースもあり、失踪の一因にもなっている。政府は法務省入国管理局を「出入国在留管理庁」に格上げし、受け入れ先の監督、外国人労働者の指導や支援を強化。県設立の派遣会社も、同庁の指導を受けながらの運営となる見通しだ。

*7-3:https://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-45987807 (BBC 2018年10月26日) 中米の「移民キャラバン」 数千人が米国目指し川のように北上中
 10月半ばから数千人が中米を北上し、メキシコ経由で米国に入ろうと集団で移動している。その多くが幼い子供のいる家族連れで、ホンジュラスなど母国での暴力やギャング犯罪を逃れ、より良い生活を送る機会を得ようとしている。国連推計にいると、この「移民キャラバン」の人数は約1000人から7000人以上に膨れ上がった。「人の川」のようだと言う人もいる。報道写真家エンカルニ・ピンダード氏が、グアテマラから国境を越えてメキシコに入る人たちの様子を記録した。「移民キャラバン」は10月13日、犯罪の多発するホンジュラスのサンペドロスーラを出発した。そこからヌエベ・オコテペケまで歩き、グアテマラに入った。しかし、移民に対する強硬姿勢を掲げて当選したドナルド・トランプ米大統領は、11月6日の中間選挙を目前に、移民キャラバンの米国入国は認めないと宣言。メキシコとの国境に米陸軍を出動させ、メキシコとの国境を閉鎖する方針という。「キャラバンを見るたびに、あるいはこの国に違法に来る、あるいは違法に来ようとしている人たちを見るたびに、民主党のせいだと思い出すように。この国のどうしようもない移民法を変えるための票を、民主党がくれないんだ!」とトランプ氏はツイートした。別のツイートでは、移民の集団の中には「犯罪者や、正体不明の中東の人間が混ざっている」と、具体的な証拠を提示しないまま主張した。ピンダード氏撮影の写真では、移民が掲げたプラカードに「移民は犯罪じゃない。国境なしで自由を」と書かれている。集団はグアテマラを通過して19日から20日にかけて、メキシコ国境にたどり着き、両国を隔てるスチアテ川にかかる橋を目指した。そのほとんどはホンジュラス人で、バックパックにホンジュラスの旗をくくりつけていた人もいた。橋の反対側ではメキシコの連邦警察や軍の数百人が待ち受けていた。メキシコ当局はこれに先立ち、適切な旅券や査証を持たない人は入国を認めない方針を示していた。入国審査官は押しよせる移民の書類を1人ずつ確認したため、19日夜までに入国が認められたのはわずか300人で、5000人が橋で待たされ続けた。6日にわたり歩き続けた移民の中には、暑さと疲労のため、国境の橋で気絶する人もいた。橋のグアテマラ側で待つ人たちのいら立ちがつのり、投石する人も出た。警察は催涙ガスでこれに応えた。続いた混乱のなか、数人が負傷し、数人の子供が親とはぐれてしまった。この父親と息子は催涙ガスを浴びながら、それでもお互いを離さなかった。国境で36時間待ち続けた挙句、検問所で正式にメキシコ入りできたのはわずか600人だった。待ちくたびれて、メキシコ当局に強制送還されるのではないかと恐れる人の中には、橋からロープをつたってスチアテ川に入ったり、飛び込む人もいた。その場しのぎのいかだに乗った移民もいれば、川を泳いで渡った人もいた。無事にメキシコに入った人たちは、国境沿いの街、シウダード・イダルゴの中央広場に集まり、喜びを分かち合った。地元の人たちの演奏に合わせて踊る人たちもいた。メキシコ側の地元の人たちは、移民を支援している。寝泊りする広場に衣類や食料を届けたり、特に体力のない人たちを自家用車に乗せたりしている。しかし、定員オーバーのトラックやSUVに乗るのは、場合によっては危険だ。グアテマラで1人、メキシコで1人、乗った車両から落ちてホンジュラス人が命を落としているという。それでも旅を続ける人たちは、色々な場所で可能な限りの休憩をとりながら、北へ北へと移動している。米国国境まではまだ数週間かかる見通しだ。

*7-4:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9B%E3%83%B3%E3%82%B8%E3%83%A5%E3%83%A9%E3%82%B9 (ウィキペディアより抜粋) ホンジュラス
1.中東部(エル・パライソ、フランシス・モラサン、オランチョ県) … 国土中央部の山地と山間部の盆地と首都を含む行政の中心区域。植民地時代に鉱山と牧畜開発進められる。今日も農牧林業が盛んである。
2.南部(チョルテカ、パジェ県) … 中央山地南麓に広がる平野部。植民地時代には鉱山と牧畜開発が行われ、アグロインダストリーと輸出用メロンの生産を行っている。また、パン・アメリカン・ハイウェーが通り、太平洋岸の輸出港サン・ロレンソンを有する。
3.中西部(コマヤグア、インティプカ、ラ・パス県) … コマヤグア平野と山岳地帯。平野部でセメント工業、食品工業が発達し、山岳地域でコーヒー豆、高原野菜・果樹を生産している。
4.西部(コパン、レンビラ、オコテペケ県) … 全体に山地。トウモロコシ、コーヒー豆、タバコの生産と谷底平野では牧畜が営まれ、アグロインダストリーが行われている。
5.北西部(コルテス、サンタ・バルバラ、ヨロ[ジョロ]県) … 山地と河川の働きによって形成された堆積平野とがカリブ海まで広がる。バナナ、柑橘類、サトウキビ、牧畜など多様な農業が展開している。このほか金属、科学、セメント工業なども発達している。サン・ペドロ・スラは空港、幹線道路、鉄道の交差点であり、外港プエルト・コルテスは大西洋の主要港となっている。
6.北東部(アトランティダ、コロン、グラシアス・ア・ディオス、イスラス・デ・バイーア県) … カリブ海岸に卓越する堆積平野と島嶼部。人口密度が低く、バナナ、アブラヤシなどのプランテーション農業が盛ん、観光開発が進行。

*7-5:https://www.agrinews.co.jp/p43782.html (日本農業新聞 2018年4月12日) 空き家・空き地バンク 全国情報を一元化 国交省
 インターネット上で全国の空き家情報を一元化し、空き家を持つ自治体と空き家に住みたい人をマッチングする国土交通省の「全国版空き家・空き地バンク」の本格運用が4月から始まった。同省の空き家対策事業の一環で、空き家情報を全国規模で集約したのは初めて。就農希望者向けに「農地付き空き家」も検索できる。同省は「農ある暮らしへの潜在的な移住希望者を掘り起こせる」(不動産業課)と強調する。
●農村への移住促す
 これまで自治体が個別に発信していた空き家情報を集約し、物件の設備や概要などの情報を統一。利用者が希望の条件を基に地域を問わずに検索できるようにした。空き家の利活用を進め、地方への移住を後押しする。農地付き空き家だけでなく、「店舗付き空き家」の検索項目も作り、就農希望者や、農村で起業したい人らの移住を促し、地域活性化につなげる。全国版空き家バンクを運営するのは2社。4月1日時点で「LIFULL」には2411件、「アットホーム」には1004件の登録がある。ネット上で全国版空き家バンクと検索し、いずれかのホームページ(HP)に進む。それぞれのHPに農地付き、店舗付きの特集ページが設けられており、値段順、面積順で比べて選ぶことができる。空き家バンクに取り組む約700の自治体のうち、半数以上の492自治体が参加。試行運用した昨年10月から半年で、売買101件、賃貸41件が成約しており、本格運用でさらに増える見通しだ。
●農地付き物件も
 農地付き空き家は204戸が登録。物件情報の他に、各地域の防災、生活支援情報も掲載する。地震での揺れやすさや浸水の可能性、買い物施設や小学校区などを、物件の周辺の地図に重ねて表示できるようにした。今後さらに参加する自治体が増えるとみられる。人口減が進む中で、空き家の利活用は社会問題になっており、同省は「自治体や所有者が、空き家を活用するきっかけにしたい」と期待する。

*7-6:https://www.agrinews.co.jp/p46539.html (日本農業新聞 2019年1月26日) 荒廃農地 再び増加 「再生困難」は19万ヘクタール 17年
 耕作が放棄され作物が栽培できなくなった荒廃農地が、2017年は前年を2000ヘクタール上回る28万3000ヘクタールとなり、増加傾向に転じたことが農水省の調査で分かった。森林化が進むなどして再生が困難な農地は、調査開始以来の最大の19万ヘクタールとなった。食料・農業・農村基本計画で掲げる耕地面積の目標440万ヘクタールを達成するには、荒廃農地をいかに減らすかが欠かせず、受け手の確保などが課題となる。全国の荒廃農地は、16年に28万1000ヘクタール(前年比3000ヘクタール減)となり、それまでの増加傾向が減少に転じていた。再生利用された農地が前年比6000ヘクタール増の1万7000ヘクタールに上ったことなどが追い風となったが、17年になって再び増加傾向に戻った格好だ。17年に再生利用された農地は1万1000ヘクタールにとどまった。荒廃農地のうち、再生利用が困難と見込まれる面積は、17年になって19万ヘクタールとなった。08年に調査を始めて以来最大となった前年をさらに7000ヘクタール上回った。一方、抜根や区画整理などで栽培が可能になる面積は前年度から6000ヘクタール減少し、9万2000ヘクタールとなった。基本計画では、25年時点で耕地面積440万ヘクタールを維持する目標を立てる。「中山間地域直接支払交付金や基盤整備事業などで、現在の年間再生ペースは1万ヘクタールを超えている」(同省地域振興課)が、目標達成には荒廃農地の発生を21万ヘクタールに留めつつ、 14万ヘクタールの発生抑制なども必要になる。都道府県別に見ると、再生利用された面積が前年よりも増えたのは6県だけだった。再生利用の面積が483ヘクタール減り、前年の4割の334ヘクタールにとどまった福島県は「年によって増減が変動するが、農地が再生しても、利用する受け手を確保するのが難しい状況は続いている」(農村振興課)と話す。

*7-7:https://www.agrinews.co.jp/p46575.html (日本農業新聞 2019年1月30日) 地方創生「総合戦略」―77%が委託 “現場発”どこに? 外注先は東京集中
 安倍政権の「地方創生」政策が来年度で一区切りを迎え、次期計画策定に向けて政府や自治体が動きだす。ただ、地方創生の基盤となった地方独自の計画「地方版総合戦略」の8割が、都会のコンサルティング企業などに外部委託して策定されていたことが専門機関の調査で明らかになった。農家ら住民の声を生かす“現場発の地方創生”に向けた仕組みを求める声が上がる。
●第2期へ自治体に負担感
 地方創生政策は、人口減少や地域経済の縮小に対し、「まち」「ひと」「しごと」を柱に数値目標を掲げて2015年度から始まった。自治体は今後5年の政策目標や施策の基本方向を盛り込んだ地方版総合戦略を策定。国は、戦略策定などに1市区町村当たり1000万円超を交付した。地域の将来設計を描く総合戦略だが、地方自治総合研究所が18年に公表した調査結果では、回答した1342市町村のうち77%がコンサルタントなど外部に策定を委託したことが判明。「事務量軽減」「専門知識を補う」が主な理由で、外注先は東京都内に本社を置く企業に集中していた。把握できた598市町村の外部委託料は40億円を超した。同研究所は「形式的に作った自治体が多い」と問題提起する。20年度は新たな「地方創生」政策に入ることから、内閣官房は1月28日、第1期の総合戦略に関する検証会を発足させ、第2期に向けた目標設定の在り方などを議論した。来年度は、国も自治体も5年間の検証と戦略の見直しをする年になる。ただ、地方自治体にとって新たな策定は重い負担だ。「住民の声を反映させた戦略が理想だが、通常業務もありコンサルに任せざるを得ない」(関東の自治体)、「前回は国からの指示でJAや銀行に会議に入ってもらい議論して作ったが、次はできるだけ簡素化させたい」(関東甲信の自治体)などの声が上がる。
●福岡県赤村 議論重ね“おらが政策”に
 人口3000人の福岡県赤村。15年に国に提出した地方版総合戦略は、農家や子育て中の女性ら住民によるワークショップを重ね、村の強みや弱みを議論した上で作り出した。農業や観光など各部門の課題を洗い出したことから、ワークショップに参加した農家の男性は「村の農業政策に当事者意識が持てるようになった」と感じる。認定農業者の増加や子育て支援の充実など、他の自治体も設ける目標から、大学との連携による新規ビジネス立ち上げなど独自の目標も多く設けた。戦略をきっかけに、地域おこし協力隊も導入。現在は村の農作物を販売する特産物センターの売り上げ向上やトロッコ列車など、観光分野の新規事業に着手している。担当した同村政策推進室の松本優一郎係長は「認定農業者数など目標達成が非常に厳しい分野もあるが、目標は村で積み上げた数字で、作成までのプロセスに意味があったと思う」と話す。来年度の策定と検証を控える同村。およそ50人の役場の正職員での見直しや検証の事務負担はあるが、同村は「住民の声をまた何らかの形で反映させたい」(政策推進室)考えだ。米粉の商品化などを進める協力隊の長瀬加菜さん(39)は「再び戦略を作るなら、私も関わってみんなと話し合いたい」と意欲的だ。ただ、同村のように住民を交えたワークショップで作り上げた地方版総合戦略を策定した自治体はわずか。もともと各自治体は同戦略とは別に総合計画を立てている。外部委託せずに市職員が戦略を作った西日本の自治体は「次期はコンサルに任せないと負担が重い。総合計画があるのに、戦略を作る意味もよく分からない」と本音を明かす。
●自発性促す仕組みを
 地方自治総合研究所の今井照主任研究員の話
地方のための税金が、結果として東京の企業の利益になってしまった。地方版総合戦略の策定は、国が時間を区切り市町村を上から評価し、市町村の自発性が生かされなかった。国が自治体を審査するような現状の地方創生の仕組みは改めるべきだ。計画を作るのなら、例えば小学校区など地域の単位で住民が議論して積み上げるような仕組みが必要だ。農家も声を上げてほしい。

<“高齢者”雇用期間延長が年金に与える効果について>
PS(2019年1月21日追加): *8-1に、日経新聞の郵送世論調査で、70歳を過ぎても働く意欲を持っている人が3割以上を占めるが、その理由は老後の不安(社会保障負担増・給付減)に備えた収入確保だそうだ。しかし、働くことは、社会の支え手である喜び・これまで培ってきた人的ネットワークの維持、それらによる健康の維持など多様な福利があり、公的年金の支給開始年齢が原則65歳になった現在では、65歳までの収入確保は必要不可欠となった。そして、この解決法を「中福祉・中負担」か「高福祉・低負担」かの二者択一で求めるのは、他の要因を不変と見做している点で誤っている。
 また、*8-3のように、すべての民間企業が定年を65歳に延長しているわけではないからといって、公務員の65歳への定年延長に反対するのは不毛な足の引っ張り合いにすぎず、公務員から完全70歳定年制を施行してもらってもよいわけだ。そうすれば、①少子化の中、新しく公務員にする優秀な若者(税金で養われており、自らは稼いでいない)の数を減らせるし ②公務員に“高齢者”もいた方が高齢者のニーズを汲み易い上、③(働かない人に支払う)年金を減らすことができ ④結果として年金資産の要積立額が減る。さらに、⑤天下りさせるコストが不要になり ⑥働いている方が病気になりにくいため、医療費も抑えられるだろう。
 そのため、私は完全な70歳以上定年制を民間企業に広げてもよいと考える。退職給付会計を使っている民間企業なら、「退職時~退職時の平均余命」に退職年金を支給することを前提として退職給付引当金を引き当てるので、退職年齢を60歳から70歳に引き上げた場合には退職給付引当金の要引当額が約10年分減少し、それを繰り戻して新規投資に利用することができる。これは、新規就業者の給与と退職者への年金を二重に支払うより、安上がりでもあるだろう。
 なお、*8-3には、「政治家が人事権を握ったので、政治家の顔色を見る幹部官僚が増え、忖度を生む土壌になった」という誤った記載がもう1つある。日本国憲法に定められた国民主権の下、選挙で有権者の負託を受けたのは政治家であって官僚ではないため、政治主導が民主主義の具現であり、それによって変な運用になっていたのであれば、民主主義制度を変えるのではなく、正しく原因分析してその部分を変える必要があるのだ。
 また、*8-2のように、年金支給額は物価上昇も加味すれば下がる一方で、社会保障負担は高齢者で特に上昇している。それで100年先まで制度が持続しても、制度の本来の役割は果たせないため、上記のようにいろいろな方法を考えるべきであり、「給付を抑制して高齢者から将来世代に財源を回し、制度を持続させさえすればよい」という発想は思考停止だ。つまり、厚生年金の加入対象を拡大させ、高齢者も働ける環境整備を行い、年金資金の徴収・運用・支払いなどを目的にかなった公平・公正で正確なものにすべきなのである。
 そして、*8-4の「消えた年金」問題は、旧社会保険庁(現在の日本年金機構)の年金管理のいい加減さによるものだが、2007年からは改善し始めたのであり、漏れや不適切な管理・運用は1961年に国民皆年金制度が発足して以来行われていたことだ。また、「年金特別便」を送って本人に職歴や加入期間を確認する方法で正確な年金記録を作ることを提案したのは、当時衆議院議員だった私で、確認して外部証拠を入手するのは監査の手法であるため、改善に着手した第1次安倍政権を叩いて退陣させたのは、全く的外れだった。現在では、年金定期便(https://kotobank.jp/word/%E5%9B%BD%E6%B0%91%E7%9A%86%E5%B9%B4%E9%87%91-182588 参照)が本人に定期的に送られているため、その内容をチェックし、間違いがあったら日本年金機構に速やかに連絡するのが、本人の正当な注意の範囲となっている。

    
  年金特別便           年金定期便         2018.6.19西日本新聞

(図の説明:一番左が、社会保険庁の記録内容を本人に確認するために送った年金特別便で、中央の2つは、現在、定期的に本人に送られている年金定期便だ。内容の年金支給金額を見て、不愉快になったり不安になったりすることもあるかもしれないが、気を付けてチェックしておく必要がある。それによって、老後の資金計画が立てやすくもなる。なお、一番右のグラフの“高齢者”が働く理由は、収入の確保が大きいものの、決してそれだけではないことを示している)

*8-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190121&ng=DGKKZO40135950X10C19A1MM8000 (日経新聞 2019年1月21日) 「70歳以上まで働く」3割、郵送世論調査 老後に不安も
 日本経済新聞社が初めて実施した郵送世論調査で、70歳を過ぎても働く意欲を持っている人が3割を占めた。働いている人に限定すると37%に上る。2017年の70歳以上就業率(15%)を上回り、高齢者就労を促進する政府の取り組みにあわせて労働参加が進みそうだ。一方で8割近くが老後に不安を感じている。社会保障の負担増や給付減に備え、長く働いて収入を確保しようとする様子がうかがえる。何歳まで働くつもりかを聞くと平均66.6歳だった。高年齢者雇用安定法では希望者全員を65歳まで雇うよう義務づけているが、これを上回った。60歳代に限ると平均は69.2歳に上がり、70歳以上まで働く意欲のある人が45%を占めた。就労と密接な関係にある公的年金の支給開始年齢は現在、原則として65歳だ。基礎年金(国民年金)は20~59歳が保険料の支払期間で、60~64歳は支払わないが原則支給もない。一定のセーフティーネットを維持しつつ、働く意欲のある高齢者には働いてもらえるような社会保障改革の議論が急務になっている。雇用形態別で見るとパート・派遣社員らで70歳以上まで働くと答えた人は34%だった。年収別では低いほど70歳以上まで働く意欲のある人が多い傾向があった。300万円以上500万円未満の人は32%、300万円未満は36%に上った。収入に不安があるほど長く働く必要性を感じるとみられる。老後に不安を感じている人は77%を占めた。30~50歳代で8割を超えており、この世代では不安を感じる理由(複数回答)で最も多いのはいずれも「生活資金など経済面」だった。全体では健康への不安が71%で最も多く、生活資金など経済面が69%で続いた。老後に向けて準備していること(複数回答)を聞くと「生活費など資金計画」が46%で最多。続いて「健康づくりなど予防活動」が41%で、「具体的な貯蓄・資産運用」をあげる人も33%いた。将来の生活に必要なお金を得るための取り組み(複数回答)として、最も多かったのは「預貯金」で59%。「長く働くための技能向上」も13%に上っており、生涯現役を見据えスキルアップに意欲を示す傾向が強まりそうだ。一方、社会保障制度のあり方を巡っては意見が割れた。「中福祉・中負担」と、財政状況から現実味の乏しい「高福祉・低負担」がそれぞれ3割で拮抗した。年収別でみると、高所得者は「中福祉・中負担」を支持する一方、所得が低くなるほど「高福祉・低負担」の支持が高い傾向にあった。安倍政権が実施した社会保障改革は介護保険料の引き上げなど高収入の会社員らの負担が増える施策が目立つ。社会保障制度の持続性を高めるには、対象の多い低所得者層の負担や給付の見直しが欠かせないが、改革の難しさがうかがえる。いま幸福かどうかを10点満点で聞いたところ、平均は6.4点。既婚者で子どもが小さい世帯ほど点数が高かった。10年後の点数について「現在と同程度」を5点として尋ねると、平均5.5点と現状よりやや高い結果だった。調査は日経リサーチが18年10~11月に、全国の18歳以上の男女を無作為に抽出して郵送で実施。1673件の回答を得た。回収率は55.8%。

*8-2:http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2019012102000141.html (東京新聞社説 2019年1月21日) 年金額の改定 安心の傘を広げたい
 公的年金の二〇一九年度の支給額が決まった。物価・賃金が上がったためわずかな増額となる。だが、将来の給付額は目減りしてしまう時代だ。さらなる制度改正を通じて安心の傘を広げたい。年金額は物価や賃金の増減に合わせて変わる。一九年度は基準とする過去の物価、賃金とも上昇した。年金額もそれに合わせて増えるが、新年度はその上昇分より少し低く伸びを抑えられる。物価・賃金の伸びより上昇率を抑える仕組みが働くからだ。だから実質的には額の目減りになる。なぜこんな仕組みがあるのか。年金の財政を将来も維持するためだ。この仕組みを使って百年先まで財源を保つことを狙っている。 この仕組みは〇四年の制度改正で導入されたが、物価・賃金が下がるデフレ下では使わないルールだ。長くデフレが続いたため過去には一五年度に初めて動いただけで、新年度が二度目になる。支給開始年齢を六十五歳から引き上げるとの声もあるが、この仕組みが動く限りそうしなくても財源は確保できる想定だ。それに支給開始年齢の引き上げは今受給している高齢者には適用されない。若い世代が対象となる。一方、給付抑制の仕組みは今の高齢者から将来世代に財源を回す制度だ。大人世代は子や孫に持続できる制度を渡す責任があるが、そうならこの仕組みの理解が進むよう政府は粘り強く説明をし続ける責務がある。今年は五年に一度の年金財政の“健康診断”である財政検証が公表される。年金制度の今後百年の見通しを冷静に注意深く見たい。そうはいっても年金額が目減りしていくことは変わらない。課題は低年金になりやすい低所得労働者の支援だ。職場の厚生年金に加入できないパートなど非正規の人は自ら国民年金に入るしかないが、年金額は不十分だ。厚生年金に加入できれば保険料負担は減り年金額は増える。加入条件は一六年秋に緩和され既に約四十万人が加入したが、まだ雇用者の一部だ。非正規で働く高齢者が増えている現状では、もっと対象を拡大させるべきだ。既に受給している低年金高齢者の支援も必要である。消費税率が10%になるとそれを財源に最大月五千円を給付する制度が始まる。だが、これも額は十分とはいえない。高齢者も働ける環境整備や、安価な住宅の供給など複眼で高齢期の生活を支える策を考えたい。

*8-3:https://business.nikkei.com/atcl/report/16/021900010/032900064/ (日経ビジネス 2018年3月30日) 「定年延長」固まり、霞が関改革が急務に、現状のまま「65歳」なら組織停滞は必至
●数百万人の公務員が定年延長の対象に
 森友学園問題で官僚のあり方が問われている中で、官僚の定年を現在の60歳から65歳に引き上げる動きが着々と進んでいる。政府は2月に関係閣僚会議を開いて定年延長を決定。2019年の通常国会に国家公務員法などの改正案を提出する見通し。2021年度から3年ごとに1歳ずつ段階的に引き上げ、2033年度に65歳とする。この手の官僚の待遇改善の常ではあるが、国家公務員全体を対象にし、地方公務員も巻き込んで制度改革を打ち出している。65歳定年になる対象の公務員は数百万人。決して高い給与とは言えず天下りなど無縁の、現場の公務員を巻き込んで制度変更することで、国民の反対論を封じ込めるが、このままでは最も恩恵を受けるのが霞が関の幹部官僚になる。長い時間をかけて段階的に変えていくというのも官僚の常套手段で、一度決めてしまえば、経済情勢や国や地方自治体の財政状態がどう変わろうと、着々と定年年齢が延びていく。一方で、「2033年度の話」と聞くと遠い将来の話のように感じるため、国民の関心は薄れる。なぜ、公務員の定年引き上げが必要なのか。「無年金」時代を無くすというのが理屈だ。公務員年金の支給開始年齢は段階的に引き上げられているが、2025年度には65歳になる。定年が60歳のままだと定年後すぐに年金が受けとれず、無収入になってしまう、それを防ぐためだというわけだ。一見正論だが、それなら民間企業に勤める人も事情は同じだ。だが、民間企業が定年を65歳に延長しているかといえば、そうではない。現在、企業は、高齢者雇用安定法という法律で60歳以上の人の雇用促進を義務付けられている。定年を延長するか、定年自体を廃止するか、再雇用するかの3つのうちいずれかを選択するよう求められているのだ。ご存知のように多くの企業は「再雇用」を選択している。これまでの給与に関係なく、その人の働きに見合うと思う金額を提示、働く側はその金額に納得した場合、嘱託社員などとして働く。納得できずに別の会社に転職していく人も少なくない。
●60歳までの「身分保証」は今後も継続
 だが、単純に「定年延長」となるとそうはいかない。それまでの給与体系に準じた金額を支払うことになる。もちろん「役職定年」を導入するなど、人件費総額が膨らまない工夫をしている会社がほとんどだ。政府は公務員の定年引き上げについて2017年6月に「公務員の定年の引上げに関する検討会」を設置し、制度設計などについて検討してきた。座長は古谷一之官房副長官補。財務省出身の官僚である。さすがに財政赤字が続き、国の借金が1000兆円を超えている中で、総人件費が大きく膨らむ案を出すことはできない。「(1)60歳以上の給与水準を一定程度引き下げる」「(2)原則60歳以降は管理職から外す『役職定年制』を導入する」――という「方向性」も定年延長と同時に政府は決めている。きちんと民間並みに改革しようとしているではないか、と見るのは早計だ。裏読みすれば、給与水準を下げるのは60歳以上だけ、しかも「一定程度」。役職定年制も導入するが、「60歳以降」に限り、しかも「原則」である。何しろ、役所は企業と違い、完璧な年功序列システムである。しかも基本的に「降格」はできない仕組みになっている。そうした60歳までの「身分保証」は今後も継続、というわけだ。現状でも役所トップの事務次官の定年は法律で62歳となっており、一般の定年60歳よりも2歳上の「例外」になっている。定年が65歳になるとともに、次官の定年も引き上げられる可能性が高い。具体的な制度設計は今後、人事院が行うが、ここも官僚たちの組織である。「民間並み」という官僚の給与の引き上げを「勧告」するあの人事院だ。もちろん、あまり高いとは言えない給料で一生懸命に働き、大した退職金ももらえない現場の公務員の定年引き上げが不要だというつもりはない。人手不足の中で、働ける人にはいくつになっても働いてもらうことが重要であることも当然だ。そもそも「定年」などという仕組みはなくても良いのかもしれない。だが、そのためには人事制度が柔軟であることが前提になる。きちんと能力に見合った仕事に就き、能力相応の給与をもらう。仕事ができるかどうかに関係なく、同期入省が一律に昇進していく霞が関の仕組みを変えることが前提になる。今、森友学園への国有地売却に伴う決裁文書の改ざん問題で、「内閣人事局」への批判の声が上がっている。首相や官房長官など「政治家」が人事権を握ったことで、政治家の顔色を見る幹部官僚が増えたというのだ。それが「忖度」を生む土壌になっているというのである。公務員は一部の政治家の部下ではなく、国民全体への奉仕者だ、という建前をかざされると、なるほど、利権にまみれた政治家が人事権を握るのは問題だ、と思ってしまいがちだ。だが、そうした官僚のレトリックは本当なのだろうか。内閣人事局ができる前は、各省庁の事務次官が実質的な人事権を握っていた。建前上は各省の大臣が権限を持つが、大臣が幹部人事に口出しをするとたいがい大騒ぎになった。新聞も政治家の人事介入だ、と批判したものだ。
●「降格」すらできない硬直化した制度
 だが、その結果、「省益あって国益なし」と言われる各省の利益最優先の行政がまかり通った。この四半世紀続いてきた公務員制度改革は、そうした各省の利益優先をぶち壊して、「官邸主導」「政治主導」の体制を作ることに主眼が置かれてきた。その、仕上げの1つが「内閣人事局」だったわけだ。霞が関の幹部官僚600人余りについて、内閣人事局が一元的に人事を行う。企業でいえば、子会社にしか人事部がなく、それぞれバラバラにやっていた人事を、統合的に人事を行う「本社人事部」を遅まきながら新設したというわけだ。内閣人事局が国全体の政策執行を前提に人事を行うことが極めて重要だと言える。それでも、政治家が人事を握るのは問題だ、というキャンペーンにうなずいてしまう人もいるに違いない。政治家はダーティーで、官僚はクリーン。政治家は一部の利権の代弁者で、官僚は国民全体の利益を考えている。そんなイメージが知らず知らずのうちに国民に刷り込まれている。では、本当にそうなのか。政治家は選挙制度にいろいろ問題はあるとしても「国民の代表」であることは間違いない。では、官僚は「国民の代表」なのか。私たちは、政治家は選ぶことができる。官僚たちに忖度を強いるような利権誘導型の政治家や政党には、次の選挙で逆風が吹き荒れることになる。国民のためにならない歪んだ人事を行い、歪んだ政策を実行した党は、政権与党から引きずり下ろせば良いのである。だが、私たち国民は官僚をクビにすることはできない。実は政治家も官僚をクビにできない仕組みになっている。公務員には身分保証があるのだ。内閣人事局で人事権を政治家が握ったといっても、官僚ひとり降格することは難しい。逆にいえば、降格できないからポストが空かず、抜擢人事もできない。民間企業では全く考えられない人事システムなのだ。それを維持したまま定年を延長するのは危険だ。組織が一段と高齢化し、若い官僚の権限は今以上に薄れていく。官僚組織が停滞することになりかねない。では、どうするか。定年延長に合わせて、内閣人事局の権限をさらに強めるべきだ。幹部官僚については降格や抜擢、復活ができるようにし、内閣の方針に従って適材適所の配置を行う。身分保証をなくす一方で、幹部官僚については定年を廃止する。年齢に関係なく抜擢し、適所がなくなれば退職していただく。会社の取締役を考えれば分かりやすい。社長に気に入られて若くして取締役になっても、1期でお払い箱になることもある「民間並み」の仕組みだ。幹部官僚は民間からも出入り自由にすれば良い。米国の「政治任用」のような仕組みだ。定年延長という大きな制度改革を前に、霞が関の幹部人事のあり方を変える公務員制度改革をまず行うべきだろう。

*8-4:https://www.nikkei.com/article/DGKKZO29090100W8A400C1TM1000/ (日経新聞 2018/4/7) 消えた年金
 厚生労働省外局の社会保険庁を舞台にした年金スキャンダル。2007年に発覚、管理する年金記録のうち約5000万件が名義不明だった。保険料の納付記録が残っていない事態も判明。前者を宙に浮いた記録問題、後者は消えた記録問題と呼ぶ。名寄せに追われ、延べ1億人の受給者・加入者に加入歴を示す「ねんきん特別便」を送った。社保庁は組織や人事の規律が甘く、その体質を厚労省幹部が見ぬふりをしていたことが不祥事を増幅させた。後始末に翻弄された第1次安倍政権の退陣を早める一因になった。同庁は民間色を強めた日本年金機構に衣替えしたが、年金記録にまつわる不祥事は今も続いている。

<価値がないかのように粗末にされた国民の財産>
PS(2019年1月25、28日):*9-1のように、種子法が廃止されたが、優良な種子は農業生産の基礎で、多額の公費を使って開発された国民の財産だ。そのため、農水省が2017年の通常国会で種子法を廃止したのは、農業や知的所有権に対する認識の低さの表れである。それに対して市町村議会が県議会に種子法に関する意見書を提出し、県が独自の条例を制定しつつあるのは少し安心だが、市町村や県だけでは種子の改良費・開発費を賄いきれないため、開発された種子に知的所有権の対価を少し上乗せするなど、改良費や開発費を賄う仕組みを考えるべきである。
 また、*9-2のように、林野庁は、規模拡大を目指す林業者が国有林を利用し経営基盤を拡充することができるようにする目的で、意欲ある林業者が国有林を伐採して木材として販売できる制度を新設し担い手育成に繋げるそうだが、国有林もまた国民の税金で育成され、守られてきた国民の財産であるため、管理・伐採権は有償にすべきだ。国の借金が多いから社会保障は負担増・給付減にし、消費税も増税しながら、全国民の財産を特定の国民にプレゼントするのは、あまりにも無節操である。なお、近年の伊万里港は、*9-4のような歴史で、*9-3のように、2018年のコンテナ貨物取扱量が過去最多を更新したそうだ。近くには豊富な林産資源があり、中国木材も進出していることから、原木だけでなく、建材や家具などを徹底して機械加工し、デザインや品質の良い木材製品を生産して輸出もできるようにすると、国産資源を活かした利益率の高い経営ができるだろう。


 2018.3.28朝日新聞   2017.6.21朝日新聞         林野庁

(図の説明:一番左と中央の図のように、それぞれの地域は気候に合わせたブランド農産品を作っているが、それは種子の改良によるところが大きい。また、その種子の供給を民間のみに任せると、食料安全保障(種子も含む)・国民の安全・環境・地域振興よりも営利第一になることは自明だ。そのため、民間企業が種子を供給することを妨げる必要はないが、公的資産である種子を公的に維持・改良していくことも重要だ。また、一番右の図のように、全国民の財産である国有林の利用権を無償で特定の国民に付与するのも、国民の財産を侵害する行為だ)

*9-1:https://www.agrinews.co.jp/p46536.html (日本農業新聞 2019年1月25日)種子法廃止に危機感 条例化・準備 10道県 市町村議会 制定へ意見書続々 本紙調べ
 主要農作物種子法(種子法)の廃止を受け、日本農業新聞が47都道府県に聞き取り調査した結果、同法に代わる独自の条例を既に制定したのは5県、さらに来年度施行に向けて準備を進めるのは5道県に上ることが分かった。その他、市町村の地方議会から種子法に関する意見書を受け取っている県議会は10県。米や麦、大豆の種子の安定供給への危機感は強く、条例化を求める動きが自治体で広がっている。条例を既に制定したのは山形、埼玉、新潟、富山、兵庫。全国筆頭の種子産地である富山県は、1月に県主要農作物種子生産条例を施行した。種子生産者に安心して栽培を続けてもらう考えだ。来年度の施行に向けて準備をするのは北海道、福井、長野、岐阜、宮崎の5道県。福井県は種子の品種開発や生産に関する独自の条例の骨子案を示して2月4日までパブリックコメントを募集する。4月施行を目指す。政府は、米、麦、大豆の種子の生産と普及を都道府県に義務付けていた種子法を2018年4月1日で廃止した。公的機関中心の種子開発から民間参入を促す狙いだったが、行政の取り組みの後退や将来的な種子の高騰、外資系企業の独占などを懸念する声が続出。農業県などが先行して条例化に踏み切っている。条例に向けて具体的な動きを示していないものの、地方議会から意見書が提出された県は10県に上った。要領・要綱などで種子法廃止後も栽培体制を維持するものの、農家らから品質確保などで不安の声が広がっているためだ。滋賀県は県内19市町のうち大津市、東近江市など14市町の議会から県条例を求める意見書が出ている。同県は「他県の状況や生産現場の声を踏まえて研究していく」(農業経営課)と強調。福岡県も、18年12月時点で県内全市町村の2割に当たる12市町議会から県への意見書が出ている。18年12月には栃木県上三川町議会、千葉県匝瑳市議会などが県に条例制定などを求めた。上三川町は「農家である議員の発案で国と県に要望書を出すことにした」(議会事務局)と説明。年明けも、種子法に関する意見書を市町村議会が出す動きが相次ぐ。福岡県小竹町議会は1月16日、宮城県栗原市議会は18日に県に意見書を出した。条例を既に制定した県は「他県から参考に教えてほしいという問い合わせが相次いでいる」と明かす。条例を制定しておらず、地方議会から意見書を受け取っていない県の担当者も「廃止後も従来通りの対応を要領で進めているので問題ない。ただ、農業に力を入れる中で他県での条例化の動きは無視できない」などと話す。JAグループや農業、消費者団体などから陳情や要望されている県も複数あり、今後も条例化の動きは広がる見通しだ。
<ことば> 主要農作物種子法
 1952年に制定、2018年4月に廃止された。都道府県に米、麦、大豆の優良な品種を選定して生産、普及することを義務付けていた。農水省は、都道府県が自ら開発した品種を優先的に「奨励品種」に指定して公費で普及させており、種子開発への民間参入を阻害しているなどとして、17年の通常国会に同法の廃止法案を提出。自民党などの賛成多数で可決、成立した。

*9-2:https://www.agrinews.co.jp/p45927.html (日本農業新聞 2018年11月27日) 国有林伐採権を付与 新たな制度林野庁検討 林業 担い手育成
 林野庁は、規模拡大を目指す林業者が国有林を利用し、経営基盤を拡充することができるよう新たな仕組みを構築する。国有林の一定区域を10年単位で伐採できる権利を与え、販売収入を確保し、長期的な経営計画が立てられるようにする。新たな森林管理システムで森林を集積・集約する受け手の確保を狙う。来年の通常国会に法案を提出する。同庁は、規模拡大を目指す林業者に森林を集積・集約する新たな森林管理システムを構築。2019年4月に関連法を施行して制度として動きだす。関連法では所有者が管理できない私有林のうち、採算ベースに乗りそうな私有林について、市町村が意欲があると判断した林業者らに管理を委託できる。一方、同システムは、森林の管理を担う受け手をどう確保するかが課題となっている。このため同庁は、規模拡大に意欲のある林業者が国有林を伐採して、木材として販売できる制度を新設し、「林業者の経営基盤を拡充し、森林の受け手育成につなげたい」(経営企画課)考えだ。具体的には、同システムに位置付けられた林業者らに対し、10年間を基本に上限を50年として数百ヘクタール、年間数千立方メートルの伐採ができる権利を与える。国有林の立木販売では現在、販売先が決まっている場合、最長3年間の契約ができるルールがある。さらに長い期間、伐採できるようにして、長期的な林業経営の見通しを立てられるようにする。国有林の伐採量が増えることで木材価格に影響が出ないよう、権利の取得には条件を設ける。住宅以外の建築物での木材利用や、輸出などに取り組む事業者らとの連携が必要となる。投資だけを目的とする場合には、権利付与の対象にはしない。伐採後の国有林の再生に向けて、権利を得た林業者に対し、主伐と再造林に一貫して取り組むことを求める。造林経費は国が支出する。林業者は具体的な施業計画を作り、実践する。

*9-3:http://qbiz.jp/article/147795/1/ (西日本新聞 2019年1月28日) 伊万里港3年連続最多更新 18年コンテナ貨物取扱量 増便や大型クレーン導入 作業効率向上要因
 伊万里港(佐賀県伊万里市)の2018年のコンテナ貨物取扱量が3万7346個(20フィートコンテナ換算)となり、3年連続で過去最多を更新した。同港は九州有数のコンテナ貨物取扱量があり、世界的な拠点港の韓国・釜山港に近く、航路増便やターミナル拡張、大型クレーン導入による作業効率の向上で需要が伸びているという。18年の取扱量の内訳は、輸出9912個、輸入2万7434個でいずれも前年を上回った。輸出はパルプ製品・古紙が最多の70・4%を占め、輸入は家具類34・4%、日用品雑貨15・1%−だった。航路別では釜山の1万4856個が最も多く、前年から3360個増えた。伊万里港は1967年に開港、97年に国際コンテナターミナルが開設した。2013年には大型コンテナ船が寄港可能な水深13メートルの岸壁が完成。博多港などで導入済みだった大型クレーン「ガントリークレーン」を取り入れ、コンテナ荷役のスピードは従来の約2倍になった。福岡、佐賀、長崎県にまたがる西九州道の延伸工事が進み、港周辺の交通アクセスが改善。運搬用の大型車が渋滞に巻き込まれるケースが少なく、港の利便性が向上したという。97年の航路は釜山のみだったが、現在は釜山のほか中国の大連、青島、上海などを結ぶ航路と、神戸港を経由する国際フィーダー航路を合わせ、5航路、週7便が就航している。佐賀県港湾課は「アジアに近い利点を生かし、国際物流の拠点としてさらなる航路開拓や増便を目指したい」としている。

*9-4:http://www.city.imari.saga.jp/13211.htm (伊万里市 2017年9月1日更新) 伊万里港の変遷(下)
 今回は、平成9年の伊万里港国際コンテナターミナル供用開始から、現在までの歴史です。
●発展を続ける伊万里港
 伊万里港は、平成9年2月に国際コンテナターミナルが供用を開始し、同年4月から韓国・釜山港との間に国際定期航路が開設されました。ここからコンテナ貨物の国際貿易拠点としての歴史が始まりました。また、平成14年から平成20年までにかけては、久原地区の伊万里団地に中国木材株式会社が進出したことに始まり、木材・水産加工・半導体企業などが次々と進出しました。さらに平成15年3月には、伊万里湾により東西に分かれていた港湾機能を結ぶ『伊万里湾大橋』が完成。待望されていた伊万里港の港湾機能の一体化と、地域のシンボルとしての役割を担っています。 平成25年4月には、伊万里港コンテナターミナルに大型化する船舶に対応するための水深13メートルの岸壁とガントリークレーンの整備が完了し、荷役作業の効率が飛躍的に向上しています。現在では、釜山航路に加え、華南・韓国航路、大連・青島航路、上海航路の4航路、神戸港との国際フィーダー航路が1航路の5航路・週7便が運航しています。航路の増加や施設の整備により、コンテナ貨物の取扱量も順調に増加しています。輸入では、家具・家具装備品、日用品、動物性飼料原料(魚粉) などが主な取扱貨物となっており、約410社が伊万里港を利用して輸入をしています。輸出では、ロール紙、古紙、原木・木材製品などが主な取扱貨物となっており、約160社が伊万里港を利用して輸出をしています。平成28年は、過去最高の取扱量(実入り)を記録し、九州では、博多港、北九州港、志布志港(鹿児島県)に次ぐ第4位となっています。これまで時代の流れとともに様々な役割を果たしてきた伊万里港。次の50年に向け、さらなる発展が期待されます。
●お問合わせ先
伊万里港開港50周年記念事業推進室
 所在地/〒848-8501 佐賀県伊万里市立花町1355番地1
 電話番号/0955-23-2466 FAX/0955-22-7213
 E-mail/ imariwan-kokudou@city.imari.lg.jp

PS(2019年1月30日追加): 私も、*10-1のように、公共部門の民間開放として水道事業民営化への道を開いて民間に運営権を長期間売り渡すと、料金高騰や水質悪化に繋がるのではないかと思ったので、先日、唐津ガスの社長にお会いした時にどう思うか尋ねたところ、「必要な縛りを入れておけばいいんじゃないですか」と言われて、「確かに」と納得した。確かに、電気・ガスは、(料金は上下水道よりずっと高いが)民営化されており、品質の問題は起こっていない。ただ、電気・ガス・水道が別々に道路をほじくり返すと、道路に工事中が増え、生産性が低くなり、多くの人に迷惑をかけるのが問題なだけである。
 そのような中、*10-2のように、西部ガスの道永次期社長が、事業の多角化をするという抱負を述べておられるが、高齢化が進む中、消費者にはガスより電気の方が安全という選択も働くため、従来のガス需要はさほど伸びないと思われる。そのため、人が入って作業できる大きさの共同溝を作って電線・ガス管・水道管を道路の地下に埋設し、ITを駆使して管理する事業を、国や地方自治体の補助を受けてやったらどうかと思う。何故なら、ガス管は既に地下に埋設されており、今後は、上下水道管の老朽化や電線の地中化に対する需要が増えるからだ。
 
*10-1:https://digital.asahi.com/articles/ASLCQ5FM9LCQULBJ00L.html?iref=pc_extlink (朝日新聞  2018年11月25日) 水道事業、民営化に道 海外では料金高騰・水質悪化例も
 公共部門の民間開放を政府が進めるなか、水道事業にも民営化への道が開かれる。事業の最終責任を自治体が負ったまま、民間に運営権を長期間売り渡せるようになる。水道法改正案に盛り込まれ、開会中の臨時国会で成立する見通しだ。海外では、料金高騰や水質悪化で公営に戻す動きもあり、導入への懸念は強い。7月に衆院を通過した改正案が22日、参院厚生労働委員会で審議入りした。民営化の手法は「コンセッション方式」と呼ばれ、企業が運営権を買い取り、全面的に運営を担う。契約期間は通常20年以上だ。自治体が利用料金の上限を条例で決め、事業者の業務や経理を監視する。安倍政権は公共部門の民間開放を成長戦略として推進。2013年に閣議決定した日本再興戦略で「企業に大きな市場と国際競争力強化のチャンスをもたらす」と位置づけた。空港や道路、水道、下水道をコンセッション方式の重点分野とし、空港や下水道では導入例が出てきたが、水道はゼロだった。今の制度では、最終責任を負う水道事業の認可を、自治体は民営化する際に返上する必要があり、大きな障壁だった。改正案では、認可を手放さずにできるようにして、導入を促す。
●300億円超削減、試算
 改正を見据えた動きもある。県内25市町村に飲み水を「卸売り」する宮城県は工業用水、下水道と一括にしたコンセッション方式を検討している。人口減少などで、飲み水を扱う水道事業の年間収益は今後20年で10億円減る一方、水道管などの更新費用はこの間、1960億円を見込む。「経営改善にはこの方法が一番」と、県企業局の田代浩次・水道経営改革専門監は話す。県内では、浄水場でのモニター監視や保守点検など多くの業務を民間が担う。県の構想では、これらの運転業務に加え、一部の設備の管理・更新を20年間、民間に任せる。資産の7割を占める水道管はこれまで通り県が担う。バラバラだった業務委託契約を一括にでき、コスト削減効果は計335億~546億円と試算する。浜松市も水道で検討している。管路や設備の更新の必要性が高まる一方で、人口減や節水機器の普及で収益減は確実だ。水道事業の経営は堅調だが、「経営が健全なうちに先手を打つ必要がある」と担当者はいう。同市は今年4月、下水道事業に全国初のコンセッション方式を導入。「水メジャー」と呼ばれる水道サービス大手仏ヴェオリア社の日本法人などが20年間の運営権を25億円で手に入れた。開始から半年たちトラブルはないという。市上下水道部の内山幸久参与は「実施計画や要求水準を定めて、行政が最終責任者として関与することで公共性は担保できる」と話す。
●安定供給に懸念も
 だが、営利企業に委ねる負の面もある。先行する海外では水道料金の高騰や水質悪化などのトラブルが相次ぐ。失敗例は監視機能などに問題がみられ、改正案では、水道は国や都道府県が事業計画を審査する許可制とし、自治体の監視体制や料金設定も国などがチェックする仕組みにする。政府は「海外での課題を分析し、それらに対処しうる枠組みだ」と説明するが、「災害や経営破綻(はたん)時に給水体制が守れるか」「海外では監視が機能しなかった」など、不信の声は絶えない。先んじて導入の条例を検討した大阪市は「経営監視の仕組みに限界がある」「効果が市民に見えにくい」などの意見から17年に廃案になった。新潟県議会は今年10月、「安全、低廉で安定的に水を使う権利を破壊しかねない」として、改正案の廃案を求める意見書を賛成多数で可決した。自民党議員も賛成した。拓殖大の関良基(せきよしき)教授(環境政策学)は「水道は地域独占。役員報酬や株主配当、法人税も生じ、適正な料金になるのか疑問だ」とし、「問題が起きたときにツケを払うのは住民だ」と改正案に反対する。東洋大の石井晴夫教授(公益企業論)は「コスト削減や雇用創出といった民間が持つ良い点を採り入れられる」と利点を挙げる一方、「災害時対応への備えは不可欠。料金も『こんなはずではなかった』とならないよう、正確な需要予測や収支見通しを示した上で住民の合意を得るべきだ」と話す。
●30年で料金5倍…パリは再公営化
 フランスでは、世界で民営水道事業を手がける「ヴェオリアウォーター」など「水メジャー」と呼ばれる巨大多国籍企業がある。仏メディアによると、3分の2の自治体が民営を導入している。だが近年は、「水道料金が高い」として公営に転じる動きもある。パリは1984年、二つの水メジャーに水道事業を委託した。だが2010年に再び公営化した。水道料金の高騰が主な理由で、パリ市によると、10年までの30年間で、水道料金は5倍近くに上がったが、10年以降は伸びが止まっているという。現在、4人家庭が毎月支払う平均的な水道料金は30ユーロ(3900円)ほどだ。パリの水道事業を担う公営企業「オ・ドゥ・パリ」のバンジャマン・ジェスタン専務取締役は「水道事業は、水源管理や配水管のメンテナンスなど、100年単位での戦略が必要だ。短期的な利益が求められる民間企業は、設備更新などの投資は、後回しになりがちだ」と話す。「民間企業は株主に利益を還元しなければいけないが、我々にはそれがない。何十年も運営を任せっぱなしにしていると、行政の制御がきかなくなりがちで、不透明やムダな運営も生まれやすい」。南仏ニームでは、半世紀の間、水メジャーに委託し、設備の老朽化が放置されたために、漏水率が30%に至っている様子が報じられた。南東部ニースは、価格を安くすることを理由に13年に公営に方針転換。パリ近郊のエソンヌと周辺自治体も、パブリックコメントを経て、17年から公営事業に転換した。一方、南西部ボルドーのように「上下水道事業すべてを自治体が担うのは負担が大きすぎる」として、公営に戻すのを見送ったところもある。
     ◇
〈コンセッション方式〉 国や自治体が公共施設の所有権を持ったまま、運営権を民間に渡せる制度。2011年のPFI法改正で制度が整備された。契約期間は通常20年以上で、企業は運営権の対価を支払う一方、料金収入や民間融資で施設の建設や運営、維持管理にあたる。自治体は利用料金の上限を条例で決め、事業者の業務や経理を監視する。水道法改正案では、水道は国や都道府県が事業計画を審査する許可制とし、自治体の監視体制や料金設定も国などがチェックするとしている。

*10-2:http://qbiz.jp/article/147926/1/ (西日本新聞 2019年1月30日) ガス以外の事業加速 西部ガス・道永次期社長が抱負
 西部ガス(福岡市)は29日、道永幸典取締役常務執行役員(61)が4月1日付で社長に昇格し、酒見俊夫社長(65)が代表権のある会長に就くトップ人事を正式発表した。道永氏は「事業の多角化と液化天然ガス(LNG)ビジネスの展開という2本のレールに列車を走らせることが役割で、スピードアップや軌道修正も行う。(社員や株主、地域社会に)役に立つことを肝に銘じて励む」と決意を述べた。道永氏を起用した理由について、酒見氏は「自由化が進む中、新しい発想、柔軟な発想でリーダーシップを取れることが新社長のポイント。道永氏は行動力やスピード感があり、発想が非常にユニークだと常々感じていた」と説明。熊本地震の対応や、マンション開発・販売会社エストラスト(山口県下関市)の買収でも力を発揮したと評価した。道永氏は事業の多角化に向け、新分野に精通したキャリア採用を積極的に進め、企業の合併・買収(M&A)に取り組む方針も明らかにした。「冒険ではなく、精査してチャレンジする。途中で撤退する勇気は一番大事な勇気だと思っている」と述べた。都市ガスの小売り自由化に伴う競争激化など経営環境は厳しい。西部ガスから九州電力へのガス契約の切り替えは1月20日現在で約7万8千件に上り「厳しい状況が続いている」(酒見氏)。西部ガスは約7万9千件の電気契約を獲得しているが、九電が昨年7月に公表した熱中症予防プランでは先行され後手に回った。道永氏は「もうちょっと競争したいとは思っている」と意欲をみせた。西部ガスは2026年度にガス供給・販売事業以外の売上高をグループで現状の3割程度から5割程度に引き上げるのが目標。ホテルや温浴施設事業への参入、LNG輸出事業に向けたロシア企業との覚書(MOU)締結などを進めている。
*道永 幸典氏(みちなが・ゆきのり)九大経済学部卒。81年西部ガス。執行役員情報通信部長、常務執行役員総務広報部長などを経て、16年6月から取締役常務執行役員。61歳。福岡県筑紫野市出身。
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●スピード感、柔軟思考が強み 道永次期社長 
 ガス事業の「中枢」を歩んでいないと自他共に認める新しいタイプのトップ。入社以来延べ約30年間、IT化の推進や料金算定などシステム関連業務に携わってきた。自由化や人口減少でガス事業の競争環境が厳しさを増す中、従来の手法にとらわれない柔軟な思考で成長を進めることを期待されての抜てきだ。社長就任を打診されたのは1月中旬。「大変だな」と感じた一方「やってやろうというワクワク感、高揚感がある」。持ち前のポジティブな姿勢で前を向く。現在の中期経営計画は2019年度まで。けん引することになる次期計画では、ガス事業の拡大を目指しつつ、現体制が着々と進めていた事業の多角化を加速させる必要がある。鍵となる「スピード感」をこれまでも大切にしてきた。熊本地震ではいち早く現地に飛んで指示を出した。料金システム改定の際は不眠不休で対応した。今後の事業多角化についても、「スモールスタートでできそうな事業で胸に秘めているものがある」と早くも意欲を示す。グループ5千人の従業員を率いるリーダーの在り方として「率先難事」と自ら行動する大切さを挙げる。トップ営業にも積極的に取り組む意向だ。「唯一無二の趣味」と語るゴルフはベストスコア71。「ネットワークづくりには最適のスポーツ」と積極的にラウンドを重ねている。

| 経済・雇用::2018.12~ | 10:31 PM | comments (x) | trackback (x) |
2018.12.4 合併・買収・組織再編にまつわる経営意思決定と会計制度 (2018年12月5、6、7、8、9、10、13、14、15、16、17、18、19、20、21、23、27、28日、2019年1月5日追加)
           2018.11.22朝日新聞

(図の説明:左図のように、平均的役員報酬の額は日米欧で全く異なり、日本は著しく低い。また、中央のように、自動車大手の経営トップを比べてもゴーン氏の報酬が特別高いわけではなく、トヨタの場合は外国人副社長の報酬の方が日本人社長よりも高い。さらに、右図のように、日本企業にも役員報酬の高い上場企業があり、ゴーン氏の報酬が特に高いわけではない)

 書かなければならないことは多いのだが、私は、監査だけでなく税務やコンサルティングの経験もあり、組織再編税制・連結納税制度・退職給付会計・暖簾の会計処理・税効果会計等々の変更を提案してきた人であるため、今日は、ゴーン氏の「有価証券報告書への虚偽記載」によるとされる逮捕劇と合併・買収について記載する。

(1)ルノー・日産の事例から
1)経営統合を阻止するためのゴーンさんの逮捕
 *1-1、*1-2のように、日産は、ルノーとの経営統合を阻止すべく、ゴーン氏の不正行為について少人数の極秘チームで内部調査を進め、財務担当役員交代後に、秘書室幹部に司法取引させてゴーン氏を逮捕に追い込み、これを理由に会長を解任したというのがStoryの全貌だろう。メディアは、最初から「ゴーン容疑者」「不適切な支出」「有価証券報告書への虚偽記載」「個人に依存した体制」などという文言を使っていたが、日産自動車は個人企業ではないため、ゴーン氏の報酬についても優秀な財務部や法務部が関与して不法行為にならないよう気を付けたのは想像に難くない。また、ゴーン氏自身が日本や世界の法律・税務に詳しいわけではないため、ケリー氏を通じて社内外で検討させたのも当然のことと思われる。
 
 そして、*1-3のように、フランスのマクロン大統領は、仏ルノー・日産自動車・三菱自動車の3社連合について、ルノーの筆頭株主である仏政府は日産元会長のゴーン氏逮捕後の混乱収拾に乗り出す姿勢を示すことで、3社の「対等な関係」を目指す日産をけん制するそうだが、交渉役のゴーン元会長が不在になり、影響力拡大を狙う仏政府の思惑が崩れ始めていると日本のメディアは伝えている。

 しかし、EVかガソリン車かを選択する時代は既に終わったので、持ち株会社の下には「ルノー、日産、三菱自動車」をぶらさげるのではなく、①EV・燃料電池車 ②ES・燃料電池船 ③EA・燃料電池航空機 ④ゼロエミッション住宅 ⑤研究開発 ⑥マーケティング(新市場開拓や政策立案を含む)等々、製品や機能別に会社をぶら下げるべき時代になったようだ。こうなると、従来のエンジニアも新技術・新市場で活躍するしかないが、活躍の場は少なくないだろう。

 ゴーン氏の速やかな判断のおかげで、現在、ニッサンはEVや自動運転技術が他社より少し進んでいるが、ゴーン氏のようなリーダーを失い、調整とカイゼンしかできなくなった日産が全体を率いるよりは、(フランスはじめヨーロッパは、既にEVを普及させる政策には入っているのだから)フランス政府肝入りのルノーが全体を率い、3社を統合して組織再編を行い、それぞれの分野でトップに立つ機会を狙った方がよいように思う。そのためにも、コスモポリタンでヨーロッパ人ではないゴーン氏を失ったのは、日本勢にとって痛かったのではないか?

2)司法取引の問題点 ― 経営権争いに司法取引を用い、軽微な“罪”を言い立てて、
  実力者を追い出すことが可能になったこと
 司法取引が導入された時から、私は冤罪や人権侵害の温床になると考えていたが、やはり、*1-4のように、「①報酬合意文書は秘書室で秘匿され、取締役会に諮られていなかった」「②将来の支払いを確定させた文書だ」と、東京地検特捜部が文書作成に直接関与したとする秘書室幹部は、司法取引を行って証言したそうだ。

 しかし、取締役会は株主総会で認められた役員報酬(30億円)のうち、支払われなかった部分についてゴーン氏に一任することを承諾していたのだから、ゴーン氏は取締役会に諮っていたことになり、①は虚偽である。また、*1-6のように、報酬文書には日産の別の幹部のサインもあり、ケリー氏が「会社としても退任後の報酬支払いを把握していた証拠だ」としているのは本当だろう。

 なお、東京地検特捜部は、「退任後に支払う報酬は確定していたので、有価証券報告書に記載義務がある」として受領額の確定性を論点にしている。しかし、従業員の退職給付債務も、退職金規程等(企業と従業員の契約)に基づくに制度と解されており、誰でも自己都合退職時の支給額は確定しており、会社都合の場合はそれより大きくなる。そして、企業は、当該会計期間までに発生した退職給付債務を現在価値に割引いて退職給付支払いのためだけに使用する年金基金などに外部拠出し、年金基金は企業からの拠出金を元本として株式や債券等で運用して、従業員が退職した際に退職金を支払う。そのため、日産の従業員だった取締役は、この退職給付を必ず受け取るが、有価証券報告書にはそれを記載しておらず、弁護士のケリー前代表取締役が合法な方法だと言ったのは本当で、②の将来支払確定性は従業員の退職給付債務にもあるのである。

 従って、*1-5のように、退職後の報酬不記載を違法性の焦点にした時点で、日本の特捜や検察は敗北した。にもかかわらず、自白させるために拘留期間を伸ばす目的で逮捕容疑を2015年3月期までとそれ以後に分けたのは悪どい。さらに、どの取締役も書いていない退職後の報酬を書かなかったことを金商法違反(有価証券報告書の虚偽記載)だとして、ゴーン氏を逮捕するのは法の下の平等に反する。

 そのため、*1-7のように、ゴーン氏が「嘘の自白は耐えられない」として、一貫して容疑を否認しているのは当然だ。また、ゴーン氏は、フランスの工学系グランゼコールの一つパリ国立高等鉱業学校を卒業した人で、法律や会計の専門家ではないため自らの正当性を理論的に説明することはできないかも知れないが、社内外の専門家に相談して行動したと思われるので、嘘の自白を強要するのはやめるべきである。

3)役員報酬の相場と透明性
 経産省は、2015年3月に、「日本と海外の役員報酬の実態及び制度等に関する調査報告(http://www.meti.go.jp/meti_lib/report/2015fy/000134.pdf#search=%27IFRS+%E5%BD%B9%E5%93%A1%E5%A0%B1%E9%85%AC+%E9%96%8B%E7%A4%BA%E8%A6%8F%E5%AE%9A%27)」をトーマツグループに委託し、トーマツグループがしっかりした報告書を提出しているので、役員報酬に関心のある方は参照されたい。

 その中に、「日本国内における役員報酬の決定方法は、取締役が代表取締役に一任する会社が58%を占め、報酬委員会で協議して取締役会で決議する会社は15%に留まる」と書かれている。また、*1-8にも書かれているように、ゴーン氏問題を受けて高額批判が出ている役員報酬は、主要企業のトップの報酬を比較すると、日本は米国の1割程度で国際的には低い水準にあり、日本は経営者も含めた人材獲得のグローバル競争で後れを取る恐れがある。これは、高度専門職や研究者も同じだ。

 しかし、*1-9のように、日産は、ゴーン容疑者の裁量で報酬額を決めてきた現行の仕組みが不正の温床だと判断し、役員報酬の決定過程を透明化するために、報酬委員会を新設することを検討するそうだ。こうすると、確かに特定の人が槍玉に挙げられることはなくなり、決定過程も透明にはなるが、必要な人をヘッドハントして業績や相場に応じた報酬を支払うことはできにくくなる。また、50%以上の人が賛成することは、現在の常識であって先端ではないのである。

 なお、ゴーン氏は日産から7億3500万円の役員報酬を得ていたそうだが、ルノーから得ていた報酬は、ルノーは日産の被連結子会社でないため、日産の連結財務諸表に掲載されない。つまり、会社の資本関係やそれに伴う連結範囲を吟味せずに、こういう問題を語ることはできないのである。

(2)不適切な合併・買収に関する論評
 このように、破綻寸前だった日産をよみがえらせたゴーン氏のやり方が非難され、*2-1のように、世界的な企業規模の大型化についていけていないため日本企業の「小粒化」が進んでいると書かれた記事がある。しかし、合併して瞬間的に大規模になればよいわけではなく、合併後にシナジー効果を発揮して大きな成果の得られることが合併の本当の意義である。

 また、長寿だから新陳代謝が鈍くて成長力がないわけではなく、時代にあった的確な戦略を作ってそれを実行できるか否かが問題であるため、歴史があり優秀な人材の揃っている企業が強いことは多い。さらに、他と比べたから成長率が上がるわけではなく、成長率が上がること自体が企業の目的でもない。

 それどころか、国民生活を犠牲にした金融緩和でじゃぶじゃぶにした金で無理にM&Aをして大損した例は、枚挙に暇がない。例えば、*2-2の東芝の例のように、自らは技術がないため高すぎる買収額で技術があると思われる会社を買収したケースは、相手が納得していないので、金をむしり取られただけでうまくいかなかった。

 なお、買収額と本当の企業価値のギャップは、現在は全て暖簾に計上しているが、本来の暖簾部分と高値買いした部分とに分け、後者は直ちに償却するか買収を行った経営者がいる数年のうちに償却するのがFairである。しかし、本来の暖簾部分は、時間の経過とともに価値が上がることも多いため、価値がなくなった時に減損処理する現在の会計処理が妥当だと考える。

 また、*2-3のように、銀行・生保・商社は、大きくさえあればよいと、日本型の「メガ合併」や「救済合併」をよく行ったが、それによりコスト・システム運営費などを削減できればよいものの、人事でやりにくさが増したり、企業の数が減ったため製品やサービスに個性がなくなり、消費者が求めるサービスが減ったりしたという現象もあった。

 そのような中、*2-4のように、ゴーン氏は聖域なき改革を行い、工場閉鎖・人員削減・系列破壊を行って非効率にメスを入れ、破綻寸前だった日産はV字回復を果たしたのだが、ゴーン氏は恨まれているようである。工場労働者と経営者との報酬格差が日本ではよく批判されるが、日産が破綻していれば全員が職を失っていたのであり、時代に先んじた正しい意思決定をすることは、小田原評定の議論をしているよりずっと重要なことである。

(3)暖簾の会計処理
 暖簾の会計処理について、*3のように、国際会計基準(IFRS)を策定する国際会計基準審議会(IASB)が、企業買収を巡る会計処理の見直しを始めたと書かれているが、(2)で述べたとおり、暖簾は買収先企業の収益還元価値と純資産の差額がブランド力等と解され、買い手企業が資産計上でき、その価値がなくなった時に減損損失を計上するのが正しいと、私は考える。

 しかし、日本の合併・買収は、高値買いした価格と純資産の差額をすべて暖簾に計上するため、問題が起こる。つまり、高値買いした価格と収益還元価値の差額は、直ちに償却するか買収した経営者のいる数年のうちに償却し、収益還元価値と純資産の差額は、暖簾として計上し続けるのが適切であろう。

<ルノー・日産の事例>
*1-1:http://qbiz.jp/article/144694/1/ (西日本新聞 2018年11月24日) 日産、今春から極秘チーム結成 ゴーン前会長の不正調査
 日産自動車が、逮捕された前代表取締役会長カルロス・ゴーン容疑者の不正行為について、今年春ごろから役員を含む少人数の極秘チームを結成し、社内調査を進めていたことが24日、関係者への取材で分かった。財務担当の役員交代を機に、不適切な支出が確認された。フランス自動車大手ルノー主導による経営統合をゴーン容疑者が進めることを警戒し、会長解任を急いだことも判明した。統合を阻止するために調査を始めたわけではないが、経営戦略を巡る日産内部の対立が事件発覚の引き金となったことが裏付けられた。関係者によると、ゴーン容疑者が会社の資金を不当に使っている疑いは以前から浮上していた。だが、絶対的な権力を持つゴーン容疑者から不利な扱いを受けるのを恐れ、社内には声を上げられない雰囲気が広がっていたという。転機となったのは今年5月。最高財務責任者(CFO)がそれまでの外国人から日本人の軽部博氏に交代した。財務部門のメンバーが代わり、不適切な支出が次々と明るみに出た。ゴーン容疑者による証拠隠滅や妨害を警戒し、社内調査は秘密保持を徹底した。司法取引した外国人の専務執行役員らも調査に協力した。6月ごろから大手弁護士事務所も加わり、証拠を積み上げていった。日産は公表時期を慎重に検討。ゴーン容疑者は今年3月以降、日産とルノーの資本関係を見直す発言を繰り返すようになり、日本人役員を中心に日産内で経営の自立性を失うことへの警戒が広がった。ゴーン容疑者が年内にも協議開始の提案をするとの情報があり、今回、来日したタイミングで公表する手はずを整えたという。関係者は「協議が始まった後に不正を発表し、クーデターという見方が強まるのを避けた」と話す。

*1-2:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO38263090X21C18A1EA2000/?n_cid=NMAIL006 (日経新聞 2018/11/28) 日産「日仏対等」探る 出資「4割ルール」焦点に、3社連合トップ、29日初会合
 日産自動車と仏ルノー、三菱自動車の3社連合のトップが29日、オランダで会合を開く。カルロス・ゴーン容疑者(64)が逮捕されて以降、初めてのトップ協議になる。出資比率や提携内容の見直しを通じ「対等な関係」を模索する日産と、支配的な地位を維持したいルノー――。日仏連合は「ゴーン後」の新しい枠組みを構築する作業に着手するが、日産とルノーの溝は深く妥協点を見いだすのは容易ではない。29日のトップ協議は、新車開発や部品調達など重要事項を決める統括会社「ルノー日産B・V」(アムステルダム)が舞台になる。日産の西川広人社長と三菱自の益子修会長は、現地に行かずテレビ会議で参加。ルノーからは暫定トップのティエリー・ボロレ最高執行責任者(COO)が加わる見通しだ。3社連合の実権をゴーン元会長に委ねてきた西川氏とボロレ氏にとっては事実上の「外交デビュー」となる。29日は「込み入った話には踏み込まない」(日産幹部)見通しで、3社連合の枠組みを維持する方針の確認にとどまるとみられる。「個人に依存した体制を見直すいい機会になる」。ゴーン元会長の逮捕を受けた19日の記者会見。3社連合への影響を聞かれた西川社長は危機ではなく好機だと強調した。日産は29日の初協議を経て、ルノーとの対等な関係の構築に動き出すとみられる。日産が求める「対等」とは何か。その柱はルノーとの資本構造と事業面での不均衡の是正だ。「4割ルール」――。日産とルノーの資本関係にはフランスの会社法が重みを持つ。ルノーは日産株を43.4%持ち議決権もある一方、日産が15%持つルノー株には議決権がない。仏会社法の定めでは、40%以上の出資を受ける企業は、出資元の企業の株式を保有しても議決権を持てない。ルノーは資本面で優位に立つ。日産は08~18年に出願した特許が約6万8千件とルノーの2倍を超えるなど、先端技術や販売台数、収益力などでルノーに勝る。しかし北米で売る主力車を経営不振だった韓国のルノー子会社で生産するなど、ルノーを支えることを主眼とした判断も迫られた。日産にとっては、こうした事業面のゆがみを解消するには資本による支配構造の見直しが必要だ。考えられる選択肢はいくつかある。仏会社法ではルノーの日産への出資比率が4割を割れば、原則として日産もルノーの議決権を得るとみられる。逆に日産がルノー株を25%まで買い増せば、日本の会社法に基づきルノーが持つ日産の議決権が消える。持ち株会社を設立し、日産とルノーが事業会社としてぶら下がる案もある。両社の間には「改定アライアンス基本合意書(RAMA)」と呼ばれる協定がある。ルノーは日産の合意なしに日産株を買い増せないが、日産は仏政府などから経営干渉を受けたと判断した場合、ルノーの合意なしにルノー株を買い増せる。日産はこの協定をカードにルノーと見直し協議を進める可能性がある。ただ、ルノーは仏政府にとって数少ない虎の子の企業だ。仏国内では有力企業が次々と外資の手に渡っている。支持率低迷にあえぎ国内投資や雇用を重視するマクロン政権が、現在のルノーの支配的地位を譲る事態は想定しにくい。日産は12月17日に取締役会を開きゴーン元会長の後任人事を協議する。ルノーは後任会長を送る意向を示したのに対し、西川社長を軸に検討する日産は拒否したとされ、水面下で両社の綱引きはすでに始まっている。泥沼の主導権争いを避け、妥協点を見いだせるか。日仏連合は岐路に立つ。

*1-3:
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20181202&ng=DGKKZO38440120R01C18A2EA2000 (日経新聞 2018年12月2日) 3社連合、崩れる仏の思惑、マクロン氏「維持・安定を」
 フランスのマクロン大統領が日本時間1日未明、日産自動車と仏ルノー、三菱自動車の3社連合について安倍晋三首相と議論した。ルノーの筆頭株主である仏政府が日産元会長のカルロス・ゴーン容疑者の逮捕後の混乱収拾に乗り出す姿勢を示すことで、3社の「対等な関係」を目指す日産をけん制する。交渉役のゴーン元会長が不在になり、影響力拡大を狙う仏政府の思惑が崩れ始めている。
20カ国・地域(G20)首脳会議に合わせた会談は15分という短時間だった。マクロン氏は「3社連合を維持し、安定させるのが重要だ」と語り、仏政府が支援する姿勢を明確にした。逮捕されたゴーン元会長については「司法的な手続きは進めなければいけない」と日本の司法制度を尊重する姿勢もみせた。会談は当初予定されていなかったが、マクロン氏の呼びかけで開かれた。直前の11月29日に日産・ルノー・三菱自の3社トップが会合を開き、今後の方針は3社による合議制で決めると合意していた。仏政府にしてみれば、「ルノー優位の連合」という構図にヒビが入った瞬間だった。日仏首脳会談を開く重要な狙いは、ルノー優位の連合の関係見直しを求める日産へのけん制だ。かつて国営の「ルノー公団」だったルノーは仏国内で4万8000人の雇用を抱える、いわば「国策企業」だ。日産車の生産移管などで仏国内での雇用を創出している。マクロン氏の支持率は17年の就任以来最低の2割台に急落している。自ら連合の維持を訴えることで、ルノーを巡る経営や雇用への不安を打ち消そうとする狙いがある。経済産業デジタル相だった2015年、マクロン氏はルノー株を買い増して影響力の拡大を図った。さらに日産・ルノーの経営統合を目指したとされ、日産から激しい反発を生んだ。ゴーン元会長の逮捕後に遠心力を強める日産に対し、マクロン氏が首脳会談で自らの指導力を見せつける必要があった。G20の直前、仏経済紙レゼコーは政府幹部の「我々には『重火器』がある。つまり、ルノーに日産株を買い増しさせる」との声を伝えた。信頼関係の崩壊につながる極めて荒っぽい提案だが、仏政府内に強硬派がいることを日産に知らしめた。自動車行政を所管するルメール経済・財務相は、はっきりと仏政府が介入する姿勢をみせている。11月下旬の仏メディアの取材に「ルノーと日産が互いの出資比率を変えることを望まない」と語った。

*1-4:https://digital.asahi.com/articles/DA3S13789560.html (朝日新聞 2018年11月29日) 報酬合意文、秘書室で秘匿 取締役会に諮られず ゴーン前会長 関与の幹部、司法取引
 日産自動車の会長だったカルロス・ゴーン容疑者(64)が約50億円の役員報酬を有価証券報告書に記載しなかったとして逮捕された事件で、この約50億円を退任後に受け取ることで日産と合意した文書は、秘書室で極秘に保管されていたことが関係者への取材でわかった。東京地検特捜部は、文書作成に直接関与した秘書室幹部と司法取引し、将来の支払いを確定させた文書だという証言を得た模様だ。関係者によると、この文書は役員報酬を管理する秘書室で管理され、経理部門や監査法人には伏せられていた。退任後に支払うという仕組みは取締役会にも諮られなかったという。ゴーン前会長と前代表取締役のグレッグ・ケリー容疑者(62)は、2014年度までの5年間の前会長の報酬が実際は約100億円だったのに、有価証券報告書に約50億円と虚偽記載したという金融商品取引法違反の疑いで逮捕された。関係者によると、ゴーン前会長は高額報酬への批判を避けるため、各年度に受け取る額は約10億円にとどめたうえで、さらに約10億円を退任後に受領するという文書を毎年、日産と交わしていたという。特捜部は、外国人執行役員と共に、ゴーン前会長に長年仕えた秘書室の日本人幹部と司法取引。捜査に協力する見返りに刑事処分を減免することにした。秘書室幹部は合意文書を特捜部に提供。さらに文書の解釈について、退任後に支払う約10億円は約20億円の年間報酬の一部で、将来の支払いが確定しているなどと証言したとみられる。特捜部は、司法取引しなければ入手困難な文書を得たうえ、解釈に関する当事者の証言を得られたことを重視し、隠蔽(いんぺい)工作と判断した模様だ。
■「従業員のやる気考慮」 ゴーン前会長、容疑否認
 ゴーン前会長が、約20億円の報酬のうち毎年開示するのは約10億円にとどめ、差額の約10億円を退任後に受け取ることにしたとされる点について、「(公表したら)従業員のモチベーションが落ちると思った」と話していることが、関係者への取材でわかった。関係者によると、2008年秋のリーマン・ショックで日産の業績が下がったため、ゴーン前会長の報酬も減った。その後、日産の業績は回復。ゴーン前会長は報酬を元に戻そうと考えたが、開示すれば従業員のやる気を失わせてしまうと考えたという。退任後の報酬の支払いについては「確定したものではなく、記載義務はない」と容疑を否認。弁護士でもあるケリー前代表取締役に相談して「『合法な方法です』と言われた」とも主張しているという。

*1-5:https://www.nikkei.com/paper/related-article/tc/?b=20181201&bu=BFBD9496EABAB5E (日経新聞 2018年12月1日) 報酬不記載の違法性焦点 ゴーン元会長逮捕1週間、先送り80億円、開示対象? 受領額確定か否か
 日産自動車元会長のカルロス・ゴーン容疑者(64)の逮捕から26日で1週間を迎えた。役員報酬約80億円の過少記載方法の違法性を巡り、検察側とゴーン元会長側が争う構図が鮮明になってきた。業績をV字回復させたカリスマ経営者は、逮捕容疑以外にも会社を「私物化」していた不正行為が発覚。事件を機に、日産・ルノーの資本関係の見直し協議が本格化するなど「ゴーン元会長退場」の余波は広がる。関係者によると、有価証券報告書に記載されていないゴーン元会長の役員報酬は▽受け取りを先送りした金銭報酬=8年間で計約80億円▽株価上昇と連動した額の金銭を受け取れる「ストック・アプリシエーション権」(SAR)=4年間で計約40億円分――の2種類があるとされる。関係者によると、2種類のうち受領を先送りした報酬は毎年約10億円、2018年3月期までの8年間で計約80億円に上る。東京地検特捜部が金融商品取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)にあたるとしてゴーン元会長らを逮捕した容疑は、このうち15年3月期まで5年間の約50億円を対象としたもようだ。日産では近年、役員報酬の総額上限を29億9千万円と設定。ゴーン元会長は上限内で各役員への報酬の配分を決める権限を持ち、自身は年20億円前後としていた。だが、10年に報酬1億円以上の役員について報酬額の開示が義務化されると、高額報酬への批判を避けるため、約10億円の受領を退任後などに先送りし、有価証券報告書に記載しないことにしたという。金融庁によると、内閣府令では開示対象の報酬を「職務執行の対価として会社から受ける財産上の利益」と定義。ストックオプションや退職慰労金なども含まれ、開示義務は受け取る見込み額が明らかになった時点で生じるという。青山学院大の八田進二名誉教授(会計学)も「支払いの時期にかかわらず、額が決まった時点で記載の義務が生じる」と説明する。東京地検特捜部は報酬先送りについて記載した文書を入手するなどしており、ゴーン元会長が受け取る報酬額は固まっていたので受け取り前でも記載の義務はあったと判断しているもようだ。ただ、先送り分の引当金などは計上されていなかったとみられ、ゴーン元会長らは「確実に支払われると決まっていなかった」などと容疑を否認しているという。2種類の報酬のうちSARについても、他の役員は付与された分を記載していたのに、ゴーン元会長は18年3月期までの4年間に得た計約40億円分を記載していなかったとされる。SARの場合、受け取れる金額は権利を行使した時点の株価で決まる。会計実務に詳しい専門家によると、開示義務が生じるのはSARを付与された時点とする考え方がある一方、権利行使が可能になった時点だとする考え方もあり、運用は各企業に委ねられているのが実情という。金商法に詳しいある弁護士は「開示ルールが必ずしも明確ではなく、SARの不記載を立件するハードルは高いだろう」と話している。投資家の判断の元となる有価証券報告書の虚偽記載は証券市場の公正さに対する信頼を損なう犯罪とされ、検察当局は厳しい姿勢で臨んでいる。06年には法定刑も「5年以下の懲役もしくは500万円以下の罰金」から「10年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金」に引き上げられた。一般的には、投資の判断材料として、役員報酬の重要度は財務諸表などより低い。しかし、企業統治の健全さなどを評価する指標として開示が義務化された経緯もあり、特捜部は巨額の報酬を株主や投資家の目から隠した悪質性は高いと判断しているもようだ。

*1-6:http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2018120201001679.html (東京新聞 2018年12月2日) 報酬文書、日産の別幹部もサイン ゴーン前会長側近が作成
 日産自動車の前会長カルロス・ゴーン容疑者(64)=金融商品取引法違反の疑いで逮捕=が有価証券報告書に記載せず、退任後に受け取ることにした報酬の支払い名目を記した文書に、作成者の前代表取締役グレゴリー・ケリー容疑者(62)=同=のほか、当時のより上位の役員クラスの日産幹部がサインしていたことが2日、関係者への取材で分かった。文書はケリー容疑者が常務執行役員だった2010年ごろから数年間、毎年作成されていた。ケリー容疑者は、自分やゴーン容疑者らだけでなく、会社としても退任後の報酬支払いを把握していた根拠だと主張するとみられる。

*1-7:http://qbiz.jp/article/145135/1/ (西日本新聞 2018年12月3日) 「うその自白耐えられない」 ゴーン容疑者、一貫し容疑否認か
 金融商品取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)の疑いで逮捕された日産自動車の前会長カルロス・ゴーン容疑者(64)が周囲に「うその自白をすると自分の評判が落ちるので耐えられない」と話していることが3日、関係者への取材で分かった。一貫して容疑を否認しているとみられる。ゴーン容疑者は、2011年3月期〜15年3月期の5年間に、自分の報酬を約50億円少なく記載した有価証券報告書を提出した疑いで逮捕された。毎年の報酬額を約20億円と設定し、このうち退任後に受け取ることにした半分程度を記載しなかった点が容疑となった。関係者によると、ゴーン容疑者は退任後の報酬について、東京地検特捜部の調べに「あくまでも希望額だった」などと供述。記載していない事実は認めた上で、支払いは確定しておらず、報告書への記載義務はなかったと主張している。さらに、側近の前代表取締役グレゴリー・ケリー容疑者(62)=金融商品取引法違反の疑いで逮捕=に事前に確認し、記載しなくても合法との回答を得ていたとも説明しているという。不記載の総額は18年3月期までの8年間で総額80億円を超えるとみられ、特捜部は直近3年分の立件も検討している。

*1-8:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20181201&ng=DGKKZO38423100R01C18A2MM8000 (日経新聞 2018年12月1日) 役員報酬 きしむ日本流、「ゴーン問題」で注目 水準・透明性に課題
 日産自動車元会長カルロス・ゴーン容疑者の問題を受け、高額批判も出ている役員報酬。ただ、主要企業のトップの報酬を比較すると日本は米国の1割程度にとどまり、国際的には低い水準にある。経営者も含めた人材獲得のグローバル競争で後れを取る恐れがある。役員報酬を適切な水準へと見直していくべきだとの指摘があり、同時に決定過程を透明にするといった対応も課題となる。開示されているベースでゴーン元会長の2017年度の報酬は仏ルノーや三菱自動車の分も含めて約19億円にのぼる。日産からは7億3500万円で、役員報酬全体(18億5700万円)の約4割を得ていた。ゴーン元会長の報酬は過少に記載されていた疑いがあり、全体に占める比率はもっと高かった可能性もある。投資資金や会社経費を巡る「私物化」疑惑もある。海外子会社を通じてブラジルやレバノンに自宅用の住宅を購入させたり、姉と実態のないコンサルタント契約を結んで報酬を払ったりしていたとされる。様々な問題が指摘されてはいるが、ゴーン元会長の報酬額が国際的に突出しているわけではない。半導体大手ブロードコム約117億円、放送大手CBS約79億円、旅行サイトのトリップアドバイザー約54億円――。米労働総同盟・産別会議によると米国では17年も多くの最高経営責任者(CEO)が高額な報酬を得た。自動車大手のCEOだと米ゼネラル・モーターズが約25億円、米フォード・モーターは約19億円だ。社会主義的な風潮から高額報酬に批判的なフランスでも、医薬大手サノフィや化粧品大手ロレアルのCEOは約12億円を得ている。日本の役員報酬の平均水準は海外を大きく下回る。米コンサルティング会社、ウイリス・タワーズワトソンがまとめた17年度の日米欧主要企業のCEO報酬によると、米国の14億円に対して日本はわずか1.5億円。ドイツや英国、フランスと比べても2~3割の水準にとどまる。「総中流」時代のなごりで格差への抵抗感が強く、高額な報酬を避ける経営者が多いためだ。報酬が1億円以上だと個別名の開示が必要になるため、「9990万円」程度に抑えるケースも珍しくない。業績や株価に連動する「インセンティブ報酬」の比率が国際的に低いという違いもある。
●低成長でも高報酬
 この結果、日本の役員報酬には「上方硬直性」が生じている。国内上場企業の17年度の役員報酬合計は約8800億円と10年度比で31%増加。だが、業績ほどには伸びていないため、純利益に占める役員報酬の比率は同期間に4%から1.95%へと半減した。個別企業でみても報酬と業績の関係はあやふやだ。東京商工リサーチのデータで国内主要100社の取締役ひとりあたりの報酬を算出し、業績動向を反映しやすい時価総額との関係を調べたところ、17年度中に「時価総額が大きく伸びたのに報酬は低位」の会社が2割にのぼった。反対に「時価総額の伸びが鈍いのに報酬は高位」も2割弱あった。日産は時価総額が約3%増と低成長なのに、報酬額は約2億700万円と全体の平均値を上回る。ゴーン元会長の報酬が過少に記載されていたなら、「低成長・高報酬」の度合いはもっと強かった計算になる。
●委員会26%どまり
 日本の役員報酬には「決め方が不明確」という問題もある。報酬総額は株主総会の承認が必要だが、どう配分するかは「社長一任」としている企業が多い。歴史的に低い水準の報酬が続き、突っ込んだ議論が求められてこなかったためだ。一方、米上場企業は「報酬委員会(総合2面きょうのことば)」の設置が義務付けられている。報酬委は外部の有識者などを交え、客観性をもたせながら取締役など個人別の報酬を決めるための仕組みだ。日本で報酬委(任意導入含む)を設置しているのは日立製作所やブリヂストンなどの932社。全上場企業の約26%にすぎない。日産も報酬委はなく、ゴーン元会長は自身の報酬を「お手盛り」で決めていたとされる。「透明性と緊張感のある報酬制度は競争力の源泉」と一橋大学の伊藤邦雄特任教授は指摘する。外国人も含めて優秀な経営者を引きつけるには、日本の役員報酬は欧米に見劣りしない水準へと切り替わっていく必要がある。報酬委などの活用で透明性を高め、利害関係者の納得を得やすくするといった制度上の工夫がその第一歩になる。

*1-9:http://www.tokyo-np.co.jp/article/economics/list/201811/CK2018112202000162.html (東京新聞 2018年11月22日) 日産、報酬制度変更へ ゴーン容疑者 ルノーと統合模索
 日産自動車が、代表取締役会長カルロス・ゴーン容疑者(64)が役員報酬を過少に申告したとして逮捕されたことを受け、役員報酬制度を変更する検討に入ったことが二十一日分かった。事実上、ゴーン容疑者の裁量で報酬額を決めてきた現行の仕組みが不正の温床と判断した。フランス大手ルノーとの企業連合の在り方も見直す。二十二日に臨時取締役会を開き、ゴーン容疑者の会長職を解く。ゴーン容疑者が今年九月の取締役会でルノーとの資本関係の見直しを提案していたことも判明した。役員報酬は決定過程を透明化するため、報酬委員会を新設し「委員会設置会社」に移行することなども検討する。甘い内部監査の是正は急務で、関係者は「報酬委員会などの設置は避けられない」と話す。現在の社内規定で各役員の報酬は、取締役会議長でもあるゴーン容疑者が、共に逮捕された代表取締役のグレゴリー・ケリー容疑者、西川広人社長と相談して決まる。企業連合の見直しは、ルノーから日産への出資比率の引き下げや新たな役員構成が焦点。英紙は二十日、ゴーン容疑者がルノーと日産の経営統合を考えていたと報じた。日産経営陣はかねて統合論に反発しており、ゴーン容疑者の失脚が関係再構築の呼び水となる。ただ日産がルノー株の15%を持つのに対し、ルノーは日産株の43・4%を保有し発言権が強いため、調整は難航が予想される。一方、ルノーは二十日に臨時取締役会を開き、ナンバー2のティエリー・ボロレ最高執行責任者が最高経営責任者(CEO)代理に就任する人事を決めた。ゴーン容疑者の会長兼CEO職の解任は先送りした。日産経営陣で代表権を持つ取締役はゴーン、ケリー両容疑者が欠け西川氏だけになり、補充が必要だ。他の取締役は六人で、うち二人がルノー出身。両容疑者を早期に取締役からも外すため臨時株主総会を開くことも議論になりそうだ。

<不適切な合併・買収に関する論評>
*2-1:https://www.nikkei.com/paper/morning/?b=20181118&d=0 (日経新聞 2018年11月18日) 小粒になった日本企業、「寿命」突出の89年 成長鈍く
 日本企業の「小粒化」が進んでいる。世界的な企業規模の大型化についていけていないためで、米国では企業の1社あたり時価総額が2000年末の2.6倍になった一方、日本は1.7倍にとどまる。企業再編などによる「新陳代謝」が鈍く、成長力の差を生んでいるとの指摘が多い。企業の競争環境の見直しなどが今後の課題となる。
●中国に逆転許す
 00年末に9.9億ドル(約1120億円)だった日本の1社あたり時価総額は17年末に17億ドルまで増えた。だが、米国は27.5億ドルから72.3億ドルと大きく伸ばし、「日米格差」は2.8倍から4.3倍に広がった。5億ドルだった中国は5.4倍の27億ドルと日本を逆転。「日中格差」は0.5倍から1.6倍に拡大した。米国ではアマゾン・ドット・コムやグーグル親会社のアルファベット、中国ではアリババ集団や騰訊控股(テンセント)など若いネット企業が急成長したためだ。日本でもソフトバンクグループやファーストリテイリングなどが健闘しているが、そうした新たな成長企業の数・時価総額の増え方などで見劣りする。ネットビジネスでの出遅れ、土台である日本経済の低迷、規制緩和の鈍さ、経営者マインドの保守性、語学力も含めたグローバル人材の不足――。背景には様々な要因がある。なかでも特に深刻だと多くの専門家が指摘するのが「企業の新陳代謝が国際的にみて鈍い」(帝京大学の宿輪純一教授)という問題だ。確認のために上場企業の「平均寿命」を試算してみた。期中の新規上場を含めて上場社数の年間平均が100社だったとする。上場廃止が10社なら、1年で10分の1の企業が消えたことになる。全企業が入れ替わるには10年かかるペースなので、「平均寿命(上場維持年数の平均値)」は10年だと見なせる。この計算だと17年時点で米ニューヨーク証券取引所の上場企業は「15年」、英ロンドン証取は「9年」。これに対して日本取引所の上場企業は「89年」と極端に長寿だと分かった。NY証取では約130社が新規に上場し、これを上回る150社強が消えた。この結果、上場社数(期中平均)は約2300と前年より約60社減少。上場社数は16年から減少が続いている。米証券取引委員会への提出資料で上場廃止の理由(上場投資信託など除く)を調べると、約8割がM&A(合併・買収)によるものだった。競争力の一段の強化を狙った大型再編や独自の強みをもつ小型企業の買収が多発しているからだ。17年にはダウ・ケミカルとデュポンが統合し、世界最大の化学会社ダウ・デュポンが誕生している。
●「長寿」があだに
 一方、日本取引所は100社強増えた一方で、上場廃止は40社どまり。上場社数は増え続けており、3600社弱と世界的にも多い。再編などの動きが鈍いためで、「日本には成長ではなく、企業存続を目的とする経営者が多い」(みずほ証券の菊地正俊氏)との指摘がある。景気低迷が長期にわたって続いたうえ、日本では銀行の力が強いため、M&Aなどを駆使して積極的に成長を狙うよりも、借金返済が確実になる安定型の経営が選ばれやすいようだ。これが突出した「長寿」につながっている。このため倒産も国際的にみて少ない。帝国データバンクによると17年までの10年間に倒産した日本の上場企業は79社。同期間に米国では総資産1億ドル以上に限っても331社が連邦破産法11条を申請している。日本と違って米国では経営上の選択肢と割り切って早めに倒産を申請するので再生も容易になる。倒産には時代遅れの企業から資本や人材を解き放ち、新たな成長企業を育ちやすくする効用もある。成長志向の弱さという問題は以前より悪化している可能性がある。日銀が年6兆円規模で上場投資信託(ETF)を購入し、東証1部に上場してさえいれば一定の買いが入る。業績低迷を放置していても株安による市場からの圧力を受けにくくなった。成長ではなく上場維持だけを目的にする経営マインドの土壌になっている。起業を促しつつ、事業や会社そのものの売却、破綻処理などのハードルを下げ、経営者には成長へのインセンティブを明確にする――。企業の新陳代謝を活発にするトータルな施策が、成熟期に入った日本経済には一段と重要になっている。

*2-2:https://medium.com/@newsgimon/東芝-westinghouse失敗の本質-1-9bbf2894469e (ニュースノギモンNov 19, 2017 抜粋)東芝:Westinghouse失敗の本質(1)
 日本のマスコミは、よく日本のモノづくりを礼賛していますが、ときに行き過ぎているのではないかと思うことがあります。確かに日本の電動自転車やシャワートイレに感動する外国人は多いでしょう。ただ、そういった画期的な製品というのは、ここ数年出ていないように見受けられます。日本のモノづくりの現場を同業の外国人が視察して感動する、そういう番組があるのも「もう一度自信を取り戻したい」という願望の裏返しに思えてなりません。日本のモノづくり神話、本当は疑っているんですよね? 率直にいうと、日本の製造業は大手になればなるほどモノづくりカルチャーというより、モノ(単一の)カルチャーに支配されていているのではないかと思っています。一つの企業文化の中に押し込められているので、悪い方向に流れ始めても軌道修正ができない。悪い方向に進んだ結果、失敗が起きても敗因分析はされない。なぜなら、モノカルチャーでは自己と他者が同一視されるので、誰かに責任をとらせるようなことをすると自分に返ってくるようで怖いのです。大手製造業では、多くの人は新卒で入社し、なんなら寮や社宅で同じコミュニティに属し、上意下達が根付いていて、「それ違うんじゃないの?」という気力が抜け落ちて行きます。名門といわれる企業ほど、外国人・中途採用にとって狭き門であり「異論」を持つ人間が主流派になりづらい現状があるのではないでしょうか。「それ違うんじゃないの」という人不在で突き進んで行った代表例、それが東芝だと思っています。僭越ながら東芝社内にかわり私めが失敗分析をさせていただきますね。東芝は、子会社であるWestinghouseの原子力事業により、巨額の損失を抱えることになりました。このことについて日本のマスコミの多くは、良心的にも「東芝がダマされた」「東芝は見抜けなかった」という論調で掲載しています。その根底にあるのは「日本の生真面目な製造業は、マネジメントが下手であるため欧米企業の暴走をコントロールできない」という思想ではないでしょうか。マネジメントが下手なのは事実かもしれませんが、果たして問題はWestinghouseの暴走にあったのでしょうか。
(あらすじ)
 この2年間、東芝は話題につきなかったので、Westinghouseにフォーカスしてことの経緯をざっくり振り返ります。
i)東芝が買ったWestinghouse(WEC)がShawの子会社のStone& Webster(S&W)という会社と原子力発電所の建設を受注した
ii)工期が遅れた
iii)プロジェクトの責任一本化のためにS&Wを買った
iv)S&Wの工期遅れによる損失がものすごいとわかった
といった感じです。
●買収における失敗
①高すぎた買収額
 そもそも東芝がWestinghouseを買収しようとした際、市場の想定価格は18億ドル程でしたが、東芝はライバル達に競り勝つために54億ドルで交渉権を得ました。当時の記事に、「3年単位で25億ドルのキャッシュフローを稼げるから大丈夫」という東芝幹部の発言が残っています。東芝の当時の主力事業は、半導体やハードディスクなど投資の規模・スピードともにもとめられる事業でした。その需要サイクルから考えると、キャッシュフローが一定に維持できるか疑問が残ります。一方で、東芝にしてみるとだからこそ、安定した収益の柱としてエネルギーにかけたのでしょう。結論からいうと、数年後のリーマンショックによる景気後退と、高すぎた買収額と企業価値とのギャップ(のれん)により、東芝のガバナンスは歪められていきます。
②買収がゴールだった時代
 2006年は、日本板硝子が英ピルキントンを6,160億円、ソフトバンクが英ヴォーダフォンを1兆7500億円、JTが英ガラハーを2兆2000億円で買収するなど、大型買収が目白押しでした。この年、日本企業による外国企業の買収が、始めて外国企業による日本企業買収を上回り、まさに外国企業買収のれい明期といえます。成功例として語られるM&Aもある一方で、この東芝の件については「どのように統合し、ガバナンスを利かせていくか」が考えられていなかったように思えます。もちろん、統合後の事業シナジーは描かれていました。問題は買収される側の心理をよく理解していなかったということです。日本企業の生え抜き文化では、経営陣の指示のもと組織は粛々と機能していくため、従業員への配慮を忘れてしまったのかも知れません。
③一方通行のシナジー戦略
 東芝の描いた絵というのは、次のようなものでした。原子力ルネッサンスが花開く(原子力市場が再興する)といわれるアメリカや、日本企業にハンディキャップのある中国や欧州市場でWestinghouse(WEC)にマーケティグを頑張ってもらい、その上がりをいただこう。WECがとってきたプロジェクトに東芝のタービンや周辺機器も入れてもらおう。原子力発電所の設計技術は、大きくBWR(※1)とPWR(※2)の2つに分けられています。東芝はBWRの会社だったので、世界の3/4を占めるPWR市場にリーチできることに当時の報道ではフォーカスされています。一方、当の東芝は、WECの販売力への期待もかなり大きかったようです。スピード感が重視される海外案件は、日本企業にとって依然言葉の壁、規制の壁が大きく立ちはだかります。東芝のプレスリリースに記載された以下のコメントにも、WECの裁量に任せる感が出ていますね。その方がスピーディに売り上げが上がっていくとの想定でしょう。
※1:沸騰水型軽水炉、※2:加圧水型軽水炉、加圧水型の方が安全性が高いといわれている
(ウェスチングハウス社については、これまでの経営体制と方針を尊重し、引き続き 独立性を保持した事業運営が行われます。また、当社およびパートナー企業とのシナ ジーが最大限にはかられるよう体制を強化し、さらなる事業の拡大を目指します。 出典:2006年10月東芝プレスリリース)
④自由裁量≠ロイヤリティ
 買われた側のWECの人たちはどう思うでしょうか。「このM&AでWECはどう成長させる気なの?」となりませんか。相互に刺激し成長していくビジョンがなければ、モチベーションは下がります。独立性が保たれるのは結構ですが、リーダーシップや共有の成長ビジョンが示されないと、「金持ちがバックについた」くらいの感覚になっても致し方ないように思えます。買収時に発表された運営体制の図には、常勤の取締役2人、CFO(最高財務責任者)・CCO(最高調整責任者、東芝の造語)、コーディネーションスタッフの派遣を行うと書かれています。コーディネーションオフィスは、人員が記載されていませんが、WEC内に1つ東芝内に1つ作られていたようで、恐らく本社との情報共有くらいの役割しか担っていなかったのでは、と思う次第です。経験上ですが(※)、直轄の現地法人であっても本社に自動的に情報が入るとはを限りません。必ず、どの情報をどの様に誰に伝えるか選択されます。世界のPWR特許の4割を抑えている名門WECが、買収されたからといって、真っ正直にタイムリーに報告しようとするでしょうか。コーディネーションオフィスをおいたぐらいでは、恙無い情報共有とは至らないはずです。ましてガバナンスを利かせるという点においては、いうに及ばずです。
※:東芝での勤務経験はございません。悪しからず。
⑤ふりかえり
 買収時における失敗要因は、以下に集約されるのではないでしょうか。
  1.買収額が高すぎた
  2.買収後のビジョン共有ができていなかった
  3.Westinghouseの信頼獲得に失敗した

*2-3:https://gendai.ismedia.jp/articles/-/50896 (週刊現代 2017.2.7 抜粋)銀行・生保・商社・自動車…これから始まる一流企業「大合併」、人口減少社会で生き残るために
 「勝者総取り」の時代だ。ごく一部の企業だけが突出して成長して輝く一方で、大多数は無残に死んでいく。勝ち残るためにはライバルとも手を組む。経営者たちはもう動き出している。
●「メガ合併」の衝撃
 みずほフィナンシャルグループ(FG)と三井住友トラスト・ホールディングス(HD)が、傘下の資産管理銀行を統合すると報じられてから約2週間。いまだ銀行業界では、この統合劇による衝撃の余波が収まらない。今回の統合は、コストやシステム運営費を減らしたいという思惑が一致したライバル同士が手を組んだもの――。新聞やテレビではそんな経済解説がなされているが、銀行業界のインナーたちはまったく違った視点からこの統合劇を眺め、戦々恐々としている。「現在、日本の銀行業界は青息吐息の経営を強いられています。ただでさえ人口減少で経済のパイが縮小して利ザヤを稼ぎづらくなっている中、日本銀行がマイナス金利政策を導入したことでトンネルの先がまったく見通せない状況に追い込まれている。そうした中で、今回の統合話が急浮上してきたことの意味は何かと言えば、メガバンクですら生き残るためには手段を選んでいられず、系列を超えた金融再編が一気に幕を開ける可能性が出てきたということです。すでに日本の銀行界では、'90年代後半から'00年代前半にかけて、不良債権問題から経営破綻、経営危機が勃発し、現在の3メガに集約された経緯があります。あれから10年以上が経ち、この体制すら維持するのが厳しくなってきた。ここからは、生き残りをかけた大合併劇が起こり得る」(元日本興業銀行金融法人部長で経済評論家の山元博孝氏)。そんな金融再編の「目玉」として銀行界で噂になっているのが、みずほと三井住友FGの「メガ合併」という驚愕のシナリオである。順を追って説明すると、まず今回はみずほが出資する資産管理サービス信託銀行と、三井住友トラストが出資する日本トラスティ・サービス信託銀行の統合だが、その先にはみずほFGと三井住友トラストHD同士が一緒になる可能性がある。みずほ幹部が、「確かにそれは検討されている」として内情を明かす。「現在のみずほFGの佐藤康博社長は、信託銀行部門を強化したいという想いが強い。信託銀行は普通の銀行と違い不動産業ができるため、低金利時代にあって高い仲介手数料を稼げる絶好のビジネスになるからです。佐藤社長は、みずほ銀行とみずほ信託銀行を統合させて、全国の支店で不動産業を展開させる壮大な構想まで考えていた。みずほ信託銀行が三井住友トラストHD傘下の三井住友信託銀行と一緒になれれば、まさにその強力な一手となり得る」。三井住友トラストも、「みずほと近づくメリットは大きい」と、三井住友グループ幹部は言う。「三井住友FGが同じ金融グループ内で自分たちを格下として見るのが気に入らないし、仮に統合となれば経営の主導権を握られるのは目に見えている。そのため、三井住友銀行の國部毅頭取と三井住友信託銀行の常陰均社長は表向き良好な関係だが、水面下での駆け引きは激しくなっている。その点、みずほ相手であれば、交渉次第では『対等合併』という形に持ち込める」。次に、両社がそうして蜜月を深めるほど、三井住友FGとしては黙ってはいられなくなる。三井住友は昨年度にみずほの後塵を拝して業界3位に転落しており、みずほと三井住友トラストが統合すれば、その差は広がるばかりだからである。「そこでいま業界内で語られているのが、三井住友と大和証券グループ本社の『復縁話』です」と、銀行業界を長く取材する金融専門記者は言う。

*2-4: https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20181123&ng=DGKKZO38122570S8A121C1EA2000 (日経新聞 2018.11.23) 「経営者ゴーン」の功罪
 カルロス・ゴーン元会長の「犯罪」に注目が集まっているが、ここでは事件からあえて距離を置き、企業のトップリーダーとしてのゴーン元会長の功罪を分析してみる。ゴーン元会長の日本での歩みの中で最大の衝撃をもたらしたのは、日産に赴任直後の1999年10月に発表した「日産リバイバルプラン(NRP)」だ。当時の日産は業績が長期にわたって低迷し、売れ筋の車にも乏しく、自動車業界でも「終わった会社」と突き放す見方が多かった。その危機を救ったのが仏ルノーから送り込まれたゴーン元会長の聖域なき改革であり、その基本設計であるNRPだ。ほぼ手つかずだった工場閉鎖や人員削減、「系列破壊」とまでいわれた調達改革を断行し、長年の非効率にメスを入れた。影響は自動車だけでなく、隣接産業にも波及した。川崎製鉄とNKKの統合など鉄鋼再編が加速したのは、ゴーン改革による調達先の絞り込みが直接の引き金だった。こうした改革の結果、日産はV字回復を果たした。「業績が悪くなったのはしがらみを断ち切れなかった経営のせいで、開発や生産などの車づくりの実力まで落ちていたわけではなかった。ゴーンさんは私たちにそれを気づかせてくれた」と日産社員は振り返る。自信回復の波は他の日本企業にも広がった。2000年ごろのいわゆるITバブルの崩壊で業績が悪化したのを機に、松下電器産業(現パナソニック)やコマツは事業や関連会社を思い切って整理し、業績を立て直した。一時的な痛みは覚悟のうえでウミを出し、心機一転、再出発する――。基本的な発想はゴーン改革と同じであり、そこから学ぶことも多かったのだろう。コマツの再生を主導した坂根正弘元社長は「ゴーンさんは常に意識する存在だった」と述べたことがある。今から振り返れば、ゴーン元会長が日産の経営に専念していた05年までが最も輝いていた時期かもしれない。ルノーと日産の両社のトップを兼ねるようになって以降はやや精彩を欠いた。中国への積極投資や三菱自動車への出資などで日産・ルノー連合の規模はトヨタ自動車と肩を並べるまでに巨大化したが、収益性やエコカーの技術力などもろもろひっくるめた会社の総合力ではまだまだ差が大きいのではないか。「コミットメント(必達目標)」はゴーン経営の代名詞にもなったが、実は最近の中期経営計画はほとんど未達に終わっている。17年3月期までの6年間の計画「日産パワー88」は期間中に電気自動車を150万台売るという目標を掲げたが、実績は30万台前後にとどまった。目標と結果がここまで乖離(かいり)するのは、そもそも計画を策定する側が市場の実態をきちんと把握できていないか、販売や開発の前線の士気がよほど低下しているのか。いずれにしても、会社が重大な問題を抱えているというシグナルに違いないが、そこに日産経営陣が機敏に手を打つ気配は感じられなかった。過去19年でカリスマ経営者は何を残したか、その歴史的評価が定まるのはゴーン元会長が去ったこれからかもしれない。

<暖簾の会計処理>
*3:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO35330630T10C18A9MM8000/ (日経新聞 2018/9/13) M&A「のれん」費用計上の義務化検討 国際会計基準、見直し、21年にも結論
 国際会計基準(IFRS)を策定する国際会計基準審議会(IASB)が、企業買収を巡る会計処理の見直しに着手したことが明らかになった。買収代金のうち相手企業の純資産を超えて支払った「のれん」と呼ぶ部分について、費用計上義務付けの議論を始め、2021年にも結論を出す。大型のM&A(合併・買収)が相次ぎ、企業財務への影響が強まっていることを考慮した。欧州中心に広がるIFRS採用企業には業績の下押し要因となる。IASBのハンス・フーガーホースト議長が日本経済新聞の取材で明らかにした。のれんは買収先企業のブランド力などの対価と解釈され、買い手企業が資産計上する。日本の会計基準では最長20年で償却し、費用として処理していく。IFRSではのれんの償却は不要な一方、買収先企業の財務が悪化した際などにのれんの価値を一気に引き下げる減損損失の計上を求める。巨額の減損損失を突然公表するケースもあり、投資家から分かりにくさを指摘されてきた。フーガーホースト議長は減損損失を巡る企業の判断が「楽観的になりやすい」うえ、計上のタイミングも「遅すぎる」と指摘した。IASB内でも以前からのれんの会計処理を巡る問題が意識されてきたものの、これまでは現状維持派が優勢で議論を始めてこなかった。しかし、議長の意向などを踏まえ、議論を始めると7月に正式に決定。今後、規制当局など利害関係者から意見を集めたうえで、のれんの償却を義務付けるかどうか判断する。企業業績への影響は大きい。IFRSは欧州を中心にアジアなど120以上の国・地域に広がる。日本では武田薬品工業、三菱重工業、ソフトバンクグループなどが導入している。IFRS採用企業には大型M&Aを実施するケースも目立つ。17年度時点で国内IFRS導入企業(約160社)は約14兆円、欧州の主要600社は240兆円ののれんを抱える。仮に20年間の定期償却が導入されると、日欧合計で年間13兆円の減益要因が生じる計算になる。中国では主要100社で約10兆円ののれんがある。中国の会計基準はIFRSとの互換性を重視しており、今後、対応を迫られる可能性がある。大型M&Aが活発な米国ではのれんは主要500社で340兆円にのぼる。米国会計基準ではのれんの償却は不要。ただ、世界の主流になりつつあるIFRSが変更されれば、米国でも見直し議論が出そうだ。のれんの償却は企業財務の予見性を高め、投資家のメリットとなる。その半面、M&Aのコストを増やし、企業活動を阻害するとの反対論も根強い。IFRSの見直し議論も今後、曲折が予想される。

<ゴーン氏逮捕事件と日本の刑事司法手続き>
PS(2018年12月5、7日追加):ゴーン氏が役員報酬を過少記載したとして逮捕された事件に関して、側近だったケリー氏は、*4-1のように、「退任後の支払いのうち隠したとされる分は、前会長の秘書室が開示義務はないと外部に確認した」と供述しておられるそうだが、有価証券報告書の記載事項について疑問がある時は、外部監査人や金融庁に確認をとり、根回しをしておくのが普通であるため、こちらが事実だと考える。
 もし退職金でなく、コンサルタント料であったとすれば、コンサルタントとしての役務提供を行うか否かによって契約が実行されるかどうかは変化するが、60代で退任するゴーン氏なら、退任後にコンサルタントとして有益な役務提供ができると考えても決しておかしくない(日本には、顧問として残っている元役員も多い)。
 なお、*4-2のように、ゴーン氏逮捕事件は、日本の刑事司法に世界の目を向けさせ、長く是正されてこなかった問題点をあらためて浮き彫りにしているが、これこそ人権を重視する時代に合わせて改革すべきである。そうでないと、危なくてやっていられないからだ。
 また、2018年12月7日、日経新聞は社説で、*4-3のように、「①ゴーン氏事件で、海外から日本の捜査手法や刑事手続きに対する批判が相次いでいるので、見直すべき点は検討課題とすべき」としながらも、「②司法制度や司法文化の違いを無視した単純比較や、誤解、思い込みも目立つ」「③一方的な批判を放置すれば、刑事司法に対する国民の信頼を損ない、国際的な日本のイメージが傷つく」「④証拠のあれこれではなく、明示されたルール、裁判所の関与、人権への一定の配慮の仕組みを伝えればいい」「⑤フランスでは警察による勾留は原則24時間にとどまるが、予審の段階で最長4年に及ぶ勾留が認められる」「⑥欧米では捜査側に幅広い通信傍受や司法取引、おとり捜査といった強い権限が与えられるので、容疑者に弁護士の立ち会いを認めている」「⑦日本では捜査手法は限定しており、取り調べに比重を置いて弁護士立ち会いを認めずに供述を引き出すやり方を採用してきた」などと記載している。
 しかし、④のような高飛車な言い方をするのなら、①は枕詞にすぎないだろう。そして、③を防止するため、法務省・最高裁は制度の違いを丁寧に説明して正しく反論する姿勢が求められるとしているが、②のように、文化や制度が違うから問題なのではなく、有罪と決まってもいない人を生活環境の悪い拘置所に長期間拘留し、弁護士もつけずに自白に導く手法が拷問に近く、これは日本人に対してでも人権侵害なのである。さらに、④の「罪状や証拠は関係ない」「明示されたルール・裁判所の関与・人権への一定の配慮の仕組みを伝えればいい」などとするのは、その制度そのものを問題にしている時に、思考停止だ。私は、⑤のフランスの仕組がどうかは知らないが、ゴーン氏のような司法取引で最初から事実が確認されている“罪”なら24時間の勾留で終わる筈だし、容疑者に弁護士の立ち会いを認めるのは、⑥⑦のような捜査手法とは全く関係なく、司法に詳しくない一般人の人権を守るためだということを忘れていると思う。

*4-1:https://digital.asahi.com/articles/DA3S13798329.html (朝日新聞 2018年12月5日) 「開示義務ない、秘書室が確認」 ゴーン前会長側近
 日産自動車の会長だったカルロス・ゴーン容疑者(64)が巨額の役員報酬を過少記載したとして逮捕された事件で、側近の前代表取締役グレッグ・ケリー容疑者(62)が、退任後の支払いにして隠したとされる分について「前会長の秘書室が開示義務はないと外部に確認した」と供述していることがわかった。相談した外部の弁護士や会計士の事務所名も具体的に挙げているという。違法性の認識をめぐる、東京地検特捜部との対立が鮮明になった。特捜部は2人を金融商品取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)の疑いで逮捕。2010~17年度の8年間の年間報酬は各約20億円だったが、各約10億円は退任後の支払いにして計約90億円を隠蔽(いんぺい)し、退任後はコンサルタント料などの別名目に紛れ込ませて支出する計画だったとみている。一方、関係者によると、ケリー前代表取締役は、前会長の退任後の処遇をめぐる計画は、役員報酬とは無関係だと主張。前会長の秘書室に指示して会計事務所などに法的な問題点を問い合わせたとし、「取締役として各年度に行った職務への報酬ではなく、開示義務はないと確認した」「日産として確認したということだ」と強調しているという。特捜部が有力な証拠とみる関連書類についても、「前会長に見せる時は『退任後の支払いを確約するものではない』と何度も言っていた」と説明しているという。

*4-2:https://www.shinmai.co.jp/news/nagano/20181203/KT181130ETI090020000.php (信濃毎日新聞 2018年12月3日) 刑事手続き 不備を見直す機会に
 日産自動車の前会長カルロス・ゴーン容疑者が逮捕された事件は日本の刑事司法手続きにも世界の目を向けさせた。長く是正されてこなかった問題点があらためて浮き彫りになっている。一つは、捜査当局が被疑者を取り調べる際の弁護士の立ち会いだ。日本の刑事訴訟法は、立ち会わせる権利を明記していない。一方、欧米をはじめ各国が立ち会いを認めている。米国では、1966年の連邦最高裁の判決に基づき、被疑者が権利を放棄しない限り、立ち会わせるルールが確立された。欧州連合(EU)は、権利として保障することを加盟国に義務づけている。取調官が密室で被疑者に自白を迫る捜査手法は、冤罪(えんざい)を生む温床となってきた。弁護士の立ち会いは、取り調べの可視化(録音・録画)と並んで、その弊害を防ぎ、人権を守る手だてである。一昨年の刑訴法改正で、可視化は実現したが、裁判員裁判の対象となる事件などごく一部に限定された上、幅広い例外規定が設けられた。弁護士の立ち会いは、法制審議会の議論の過程で抜け落ち、制度化は見送られた。供述が得にくくなり、真実の解明を妨げる、といった捜査側の主張が背景にある。密室での不当な取り調べを防ぐには、可視化の範囲を広げて事後の検証を可能にするとともに、弁護士の立ち会いを認めることが欠かせない。もう一つの問題点は、否認している容疑者の身柄拘束を長引かせる「人質司法」だ。精神的、肉体的に追いつめて自白を迫るために使われてきた実態がある。裁判所が勾留を認めれば、逮捕してから最長で20日余の拘束が可能だ。ゴーン容疑者も12月10日まで勾留が延長された。検察の勾留請求を裁判所が退ける例が以前より増えたとはいうものの、全体の5%に満たない。起訴されると、拘束はさらに続く。2009年の郵便不正事件で、厚生労働省の局長だった村木厚子さんの勾留は160日余に及んだ。後に無罪が確定している。長く拘束されれば、社会的にも大きな不利益を被る。仕事を失う場合もある。虚偽の自白を強いて冤罪を招けば、取り返しがつかない。否認しているからと不公正な扱いをすることは許されない。憲法は、適正な刑事手続きの保障を重んじ、詳細な定めを置いている。刑事司法制度の現状はそれを踏まえたものになっているか。あらためて見つめ直し、社会に議論を広げる機会にしたい。

*4-3:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20181207&ng=DGKKZO38655270X01C18A2EA1000 (日経新聞社説 2018年12月7日) 海外からの捜査批判に説明を
 有価証券報告書に虚偽の記載をした疑いで日産自動車のカルロス・ゴーン元会長が逮捕された事件で、海外から日本の捜査手法や刑事手続きに対する批判が相次いでいる。こうした指摘に真摯に耳を傾け、見直すべき点があれば検討課題としていくことは当然だ。ただ、日本と欧米とでは刑事司法全体の仕組みが大きく異なる。一連の批判の中には、司法制度や司法文化の違いを無視した単純な比較や、誤解、思い込みによる主張も目立つ。一方的な批判を放置すれば、刑事司法に対する国民の信頼を損なうとともに、国際的な日本のイメージが傷つくことになりかねない。法務省や最高裁には制度の違いなどをていねいに説明し、正しく反論する姿勢が求められる。必要なのは事件の証拠のあれこれではない。明示されたルール、裁判所の関与、人権への一定の配慮。こうした仕組みを堂々と伝えればいい。「公判で明らかにする」「捜査のことは答えない」だけで済む時代は終わっている。海外からの代表的な批判に、容疑者の勾留期間の長さがある。東京地検特捜部による捜査では、地検が48時間、その後は裁判所の判断で通常20日間、身柄が拘束される。一方、フランスでは警察による勾留は原則24時間にとどまる。だがその後、日本にはない制度である「予審」の段階で最長4年に及ぶ勾留が認められている。欧米では捜査側に幅広い通信傍受や司法取引、おとり捜査といった強い権限が与えられている。これに対抗する形で取り調べの際、容疑者に認めているのが弁護士の立ち会いだ。日本では捜査手法は限定して取り調べに比重を置き、弁護士立ち会いを認めずに供述を引き出すやり方を採用してきた。そうした手法が、容疑を認めなければ保釈されない「人質司法」へつながるなど負の側面も持っていることは否定できない。ゴーン事件で相次いだ批判を、日本に適したよりよい刑事司法制度を考えるためのきっかけにしたい。

<日本のガラパゴス世論は世界で拒否されること>
PS(2018年12月6日追加): 「パナマ文書」を挙げ、*5のように、タックスヘイブンを利用して各国首脳や富裕層が節税していることを、すべて脱税や資金洗浄などの犯罪に当たるかのように、日本の全メディアが批判し報道した時期があった。しかし、タックスヘイブンとは、法人税・源泉税などが低い国・地域で、それぞれの国が理由があって決定している法定税率である上、日本も租税条約に調印しているので、タックスヘイブンを利用すること自体を批判するのは的外れである。もし、脱税や犯罪組織の資金洗浄等に使われていれば、それを罪として起訴するのは妥当だが、全てのタックスヘイブン利用事例が脱税や犯罪組織の資金洗浄に結びついているかのような批判をするのは、タックスヘイブンを持っている国やタックスヘイブンを利用している人・法人の全てに対して失礼であり、誹謗中傷・侮辱による実害を与えているケースもある。特に、各国首脳に対して無知で的外れた批判をしていると、日本の外交上の不利益となる上、行き過ぎれば日本をまた孤立に追い込むことになるので注意すべきだ。

*5:https://digital.asahi.com/articles/DA3S13799967.html (朝日新聞 2018年12月6日) 「パナマ文書」、米で初の起訴 弁護士・顧客ら、脱税・資金洗浄の罪
 タックスヘイブン(租税回避地)を利用した各国首脳や富裕層の実態を暴いた「パナマ文書」に関連し、米司法省は4日、文書が流出したパナマの法律事務所「モサック・フォンセカ」の弁護士や顧客ら4人を、脱税や資金洗浄の罪で起訴したと発表した。文書を巡る米国での訴追は初めて。起訴されたのは、同事務所の弁護士でパナマ国籍のラムセス・オーウェンズ被告(50)、顧客でドイツ国籍のハラルド・フォン・デア・ゴルツ被告(81)ら。発表によると、オーウェンズ被告らは2000~17年ごろ、パナマや香港で設立したペーパーカンパニーや架空の基金を使って、複数の顧客について米国での脱税や資金洗浄を行ったとされる。また、フォン・デア・ゴルツ被告は米国在住で納税義務があったにもかかわらず、自身などが設立したペーパーカンパニーを国外の母名義と偽り、脱税に使ったとされる。オーウェンズ被告は逃亡中という。米司法省は今回の起訴について、「国境を越えて行われる金融犯罪や脱税を立件するという、我々の決意を示している」との声明を発表した。パナマ文書の実態は、16年4月に「国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)」が報道し、アイスランドとパキスタンの首相が辞任した。パナマ当局は17年2月、同事務所の創業者2人を資金洗浄の容疑で逮捕。同事務所は今年3月末に閉鎖した。

<入管難民法改正と外国人労働者の受入拡大>
PS(2018年12月7、10日追加):*6-1、*6-2のように、入管難民法が国会を通過し、トランプ大統領の移民政策を批判しながら日本では認めていなかった外国人労働者の“単純労働分野”への就労を認めることになったのは、一歩前進だ。もちろん、受入規模など確定していないことは多いが、市場経済の下で事前に確定するのは無理である。
 また、技能実習生の問題は、外国人労働者に新しい選択肢を用意して技能実習生から移行できるようにしたため、何もしないよりはずっとよいだろう。さらに、首相が「移民政策でない」と言っておられたのは、外国人労働者受入拡大に強く反対する自民党内などの慎重派対策であり、野党が主張するやり方では、技能実習生問題も解決しなかったと思われる。
 今後は、言語・住宅・教育・社会保障等の問題解決が必要だが、全市町村が多言語に対応するのは費用対効果が悪すぎるため、同言語の人に集って住んでもらう方向で住宅を整備し、教育・社会保障は不公正・不公平のないようにすべきと考える。また、人手不足で外国人労働者の受け入れを積極的に行いたい市町村はそれを実行して共生するようにし、従来の住民だけでやりたい市町村はそうすればよい。しかし、市町村に選択の余地ができたので、まずは市町村が総合計画を作って、それに基づいて外国人労働者を受け入れ、必要な支援を国に要請すれば、あまり混乱なく結果が出ると思う。
 入管難民法が国会を通過したことについて、日本農業新聞は、*6-3のように、「①特定技能1号の創設が柱で、これは家族の呼び寄せを認めない」「②1号より高度な技能試験に合格すれば特定技能2号になれ、在留期間に上限がなく家族を呼び寄せられる」「③政府は農業では2号の人材を求める要望はないとして当面1号の受け入れに限り、人材派遣業者が雇用契約を結んで複数農家に派遣する形態も認める」としている。①②は、状況を見ながら判断していくことになるだろうが、③は農業では必要であり、この仕組みは外国人に限らず日本人にも有効だ。また、遺伝資源の海外流出は、技能実習生に技術移転すれば当然のこととなり、技術移転をやめ知的財産権の保護意識を高めれば解決する。
 また、西日本新聞は、*6-4のように、「九州・沖縄と山口の9県計293市町村のうち4割超の128自治体で、①高齢化 ②人口減少に伴う他産業の雇用減により、介護サービスなど医療・福祉業が雇用の最大の受け皿になった」としている。①は、今後、日本全国で次第に起こることだが、②の人口が減少したから他産業で雇用が減少するというのは、モノやサービスの需要内容が変化するだけで、輸出も可能であるため、短絡的過ぎると思う。
 なお、内閣府の高齢社会白書によると、2017年の高齢化率は、沖縄・福岡以外の7県で29.2〜33.4%と全国(27.7%)を上回り、2045年には9県とも6.3〜10.4ポイント上昇する見通しだそうで、医療・福祉分野は人手不足で、入管難民法改正による外国人労働者の受け入れ拡大では介護業も対象になったが、外国人労働者を含めた人材確保に加え、機械化による生産性向上や高齢者が暮らしやすくなる仕組み作り などが不可欠であることは間違いない。

  
  2018.11.29新潟日報  2018.12.8東京新聞 2018.12.1西日本新聞(*6-4より)

*6-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20181208&ng=DGKKZO38698860X01C18A2EA2000 (日経新聞 2018年12月8日) 「選ばれる国」へ制度設計、外国人受け入れ5年最大34万人 生活支援や待遇、政省令に先送り
 外国人労働者の受け入れを拡大する出入国管理法改正案は日本社会のあり方を変える。政府は28日に具体的な対策をまとめ、2019年4月の制度開始へ準備を加速する。「選ばれる国」へ外国人労働者への生活支援、待遇の改善を急ぐ。「選ばれる国」へ日本の賃金水準がアジアの外国人労働者にとって魅力的に映るのか。新制度の対象となるのは比較的低賃金の職種が多い。中国やタイでも少子高齢化や労働力不足が進み、アジアのなかでも人材獲得競争は激しくなる。日本の賃金水準はライバルとなるアジア諸国に比べ突出して高いとは言えない。日本貿易振興機構(JETRO)の17年度の調査によると、一般工の賃金は東京で月額2406ドル。香港は1992ドル、シンガポールは1630ドルと日本に迫る。政府は外国人労働者の賃金水準について「日本人と同等以上」を支払うように求める。外国人労働者が増えることで日本人の賃金水準も下がるのではないかとの懸念は根強い。人手不足が深刻な地方ではなく、賃金水準が高い首都圏など都市部に外国人が集まるとの予測がある。制度は法律ではなく、政省令で決めるものが多い。今後5年間の受け入れ見込み数を分野別の運用方針で示す。どのくらいの外国人を受け入れるかが分からなければ、企業は対応しづらい。法務省は11月、新たに外国人労働者を受け入れる14業種を所管する省庁が推計した受け入れ見込み数を国会に提示した。現時点で5年後に14業種合計で145万5千人の人手が不足すると仮定し、19年4月から5年間で最大34万5150人を受け入れる見通しだ。山下貴司法相は「この数字を上回ることはない」と説明した。上限は外国人労働者が急増した場合、受け入れ停止を判断する基準になる。各業界を所管する閣僚が受け入れ上限に近づいた際に法相に停止の判断を求める仕組みだ。上限は各業界が外国人を採用する目安になる。日本で暮らす外国人が増えれば、様々な問題が生じる。住居の契約に伴う手続きやゴミ出しのルールなど日本の習慣に外国人は戸惑う。ドイツのように欧州では外国人の急増が国内政治を揺るがした例もある。外国人にとって特に高いのが日本語の壁だ。行政手続きに多言語対応は欠かせない。銀行口座の開設や転居に伴う手続きにも多言語が必要だ。日本語教育や行政窓口の設置など地方自治体が実務の大部分を担う。熟練した技能が必要で在留資格の更新と家族帯同が可能な「特定技能2号」を巡っては試験の制度設計も課題だ。資格を得るのに十分な能力があるか判断する試験は細部を詰め切れていない。日本で働く外国人は日本人と同様に公的年金の保険料などが給与から天引きされる。保険料の払い損になる恐れがある。厚生労働省は健康保険に外国人労働者の扶養家族に居住要件を求める法改正を検討中だ。新設する「特定技能」を取得する外国人労働者の大半は現行の技能実習生から移る。技能実習制度を巡って最低賃金を下回る低賃金や違法な長時間労働、パワハラの問題も明らかになっている。参院法務委員会で立憲民主党の有田芳生氏は15~17年の3年間で技能実習生69人が自殺や実習中の事故に巻き込まれて亡くなったと追及した。日本に来る前に母国で多額の保証金を払わせる悪質ブローカー(仲介業者)も存在する。法務省は悪質業者を排除するため、多額の保証金を払っていないか事前に確認すると省令に記す。法務省は実態調査の結果を来年3月末に公表する。大島理森衆院議長は改正法が施行する前に運用方針や政省令の内容を国会に報告するよう要求。安倍晋三首相は施行前に制度の全容を国会に示すと明言した。

*6-2:https://www.kyoto-np.co.jp/info/syasetsu/20181208_4.html (京都新聞社説 2018年12月8日) 改正入管難民法  議論は尽くせていない
 入管難民法などの改正案を巡る国会審議が大詰めを迎えた。これまで原則認めてこなかった外国人労働者の単純労働分野への就労を認めるものだ。高度な専門人材に限っていた政策の転換であり、社会を変える可能性がある。だが議論は全く深まりを欠いた。採決を押し切ろうとした政府与党の国会軽視の姿勢は容認できない。受け入れの規模や対象業種をどうするのか。必要な技能や運用の詳細は不明確だ。次々と明るみになった技能実習生の実態も含め、外国人労働者問題の論点を掘り下げたとは言い難い。大島理森衆院議長は与野党へ異例の裁定を行い、来年4月の改正法施行前に政省令を含めた法制度の全体像を国会に報告させるとした。政府与党のまずい国会運営に対し、立法府の長が注文をつけた形だ。だが、本来は制度の全体像こそ国会で審議すべきではなかったか。外国人労働者を受け入れた後の議論は全くできていない。権利をどう保障するかや日本人と地域で共生する仕組みなど、幅広い分野での検討が早急に求められる。その「司令塔」となるのは法務省に新設される出入国在留管理庁とされる。新在留資格の創設に伴い増加する外国人の管理や、雇用する企業などへの監視を行うほか、共生に向けた受け入れ環境整備も担うという。だが、日本語教育や住宅確保など担当する領域は広い。同庁だけで対応できるのか疑問だ。関係省庁との連携と情報共有が欠かせない。健康保険や年金など社会保障制度の準備も遅れている。教育や医療、福祉など身近なサービスを提供する自治体の役割が一層重要となる。言葉の壁や生活習慣の違いもあり、現在はボランティアや市民団体の活動に頼っているのが現実だ。マンパワーも不足しており、負担も重くなるため国の支援が不可欠である。総務省によると、今年4月時点で外国人住民向けの指針や計画を策定している自治体は46%にとどまる。住民に占める外国人の割合は地域差が大きく、地域の実情にあった支援態勢が欠かせない。官民挙げて整えていくべきだ。政府は年内に受け入れ環境の整備に関する総合対策を取りまとめる方針だが、改正法施行まで残された時間は少ない。働く外国人の生活と人権を守る視点で制度を改善していく必要がある。来月召集予定の通常国会でも引き続き議論を深めていかねばならない。

*6-3:https://www.agrinews.co.jp/p46078.html (日本農業新聞 2018年12月9日) 改正入管法が成立 4月施行 外国人就労 農業も
 外国人労働者の受け入れ拡大に向けた改正出入国管理法が8日、参院本会議で可決、成立した。3年間の技能実習の修了者ら一定の技能を持つ外国人が、通算5年を上限に日本で働ける在留資格「特定技能1号」の創設が柱。農業など14業種を受け入れ対象にし、来年4月に施行する。労働現場への就労を本格的に外国人に開放し、受け入れ施策の大転換となる。今後、業種ごとの具体的な制度設計が焦点となる。国会審議では「失踪や死亡などが相次ぐ技能実習制度の課題解決が先決だ」と一部野党が訴え、法改正に反対。与党側が押し切る形になった。改正法では、1号よりも高度な技能を問う試験に合格した外国人に対象とした特定技能「2号」も創設。在留期間に上限はなく、家族も呼び寄せられる。1号は基本的に家族の呼び寄せは認めない。政府は農業では2号の人材を求める具体的な要望はないとして、当面1号の受け入れに限る。外国人は受け入れ経営体が直接雇用契約を結ぶのが原則だが、政府は、農業では人材派遣業者が雇用契約を結び、複数農家に派遣する形態も認める方針。農業は繁忙期と農閑期の差が激しく、個別では周年雇用が難しい面があることに考慮する。業種ごと具体的な制度設計は、所管省庁を中心に今後定める業種別受け入れ方針で明確化する。政府は、同方針を含む制度の全容を法施行前に示す方針。来年の通常国会で議論になる見通しだ。農業では同一外国人を複数産地で連携して受け入れられるか、和牛精液など遺伝資源の海外流出の懸念がある肉牛経営での受け入れはどうするのかなど、不明確な点も多い。政府が制度設計で、これらの課題にどう対応するのかが焦点になる。

*6-4:http://qbiz.jp/article/145088/1/ (西日本新聞 2018年12月1日) 老いる九州、雇用「医療・福祉」最多 九経調分析 自治体4割でトップ、変わる受け皿
 九州・沖縄と山口の9県計293市町村のうち4割超の128自治体(2016年)で、医療・福祉業の従業者数が業種別で最多となっていることが、九州経済調査協会の分析で分かった。09年時点では44市町村だったが約3倍に増加。高齢化によるニーズの拡大に加え、人口減少に伴う他産業の雇用減で、介護サービスなど医療・福祉業が雇用の最大の受け皿になっている。九経調が国の経済センサス調査の民間事業所従業者数から算出した。医療・福祉業の従業者が最多を占める県別の自治体数は、福岡28▽佐賀6▽長崎10▽熊本22▽大分8▽宮崎9▽鹿児島21▽沖縄16▽山口8。北九州市や佐賀市、長崎市、熊本市、宮崎市、鹿児島市といった大都市や県庁所在地に加え、人口に占める65歳以上の高齢者の割合(高齢化率)が20%以下と低い福岡県春日市なども含まれる。09年は従業者数トップが製造業の自治体が104、小売業が101だった。16年は製造業が101で微減となる一方、小売業は32に激減。人口減やネットショッピングの普及など流通構造の変化が背景にある。9県全体の医療・福祉従業者は09年比26・7%増の113万4千人となり、伸び率は全産業中で最大。全雇用者数に占める割合も17・3%と09年から3・9ポイント上昇し、小売業を抜いてトップになった。内閣府の高齢社会白書によると17年の高齢化率は、沖縄(21・0%)、福岡(27・1%)以外の7県で29・2〜33・4%と全国(27・7%)を上回っている。45年には9県とも6・3〜10・4ポイント上昇する見通しだ。医療・福祉業は人手不足が特に深刻化しており、政府が今国会の成立を目指す入管難民法改正による外国人労働者の受け入れ拡大では、介護業も対象になる見通し。調査を担当した九経調の渡辺隼矢研究員は「外国人労働者を含めた人材確保に加え、介護用ロボット導入や、医療介護が必要な人を地域全体で支える仕組みづくりが不可欠」と指摘している。

<有価証券報告書における役員報酬の重要性>
PS(2018年12月9、13日追加): 有価証券報告書は、株主や投資家の投資判断に資するために作成するもので、*7-1の「有価証券報告書への役員報酬の“虚偽記載”」は、それが認定されたとしても重要性が低い(仮に重要性が高ければ、監査証明をした監査法人も責任を免れず、監査証明を得ておくことは経営者を守る効果もあるのだ)。また、*7-2で、機関投資家団体のワリング事務局長が述べておられるように、投資家にとっての重要事項は、「利益と配当」「企業価値向上と株価上昇」であるため、役員は、報酬額だけでなく、報酬に見合った能力を有しているかどうかが重要になる。
 しかし、日産は、*7-3のように、4度目の検査不正が明らかになったそうで、これは企業価値を落とすが、日産車が事故を起こしたという話は聞かないため、私には、検収や検査に資格がいるのか、その検査は有用なのかという疑問が残る。また、その理由をリストラによる人員不足だとしている点は、どうも日本的発想すぎておかしい。しかし、このような報道があると、日産の企業価値が落ちるのは確実だ。
 なお、2018年12月13日、*7-4のように、朝日新聞が「政治資金監査制度」で少なくとも23人の国会議員関係政治団体が監査を担当した税理士など監査人から寄付を受けており、「監査人として独立性がない」と問題視している。2007年に導入したこの監査制度も、最初に私が提唱してできたので説明すると、私が考えていたよりもずっと狭くて不十分な形の監査になったため、これは本物の監査とは言えないのだ。本物の監査と言えないポイントは、①「国会議員関係の政治団体のすべての支出をチェックする」と定められているので、収入はチェックしなくてもよい ②独立性の要件に関する規定や指針がない ③監査担当者に監査論を勉強して監査の実務経験を積んだ公認会計士以外(税理士、弁護士)の人を認めている ④公認会計士が本物の監査を行って責任を持てるには、政治資金会計も複式簿記による網羅的で検証可能な通常の会計にする必要があるが、現在は単式簿記による収支のみの記載で不都合な収支は記載しないことも可能であるため、監査をしてもそれを見つけられず、監査人も責任を持ちかねる(これは、政治家も会計担当者の不正をチェックできないということ) などである。政党と政治家の関係は、会社と従業員ではなく任意組合と組合員に近いため、政党が政治家を管理するのは妥当でないと思うが、不十分な監査では主権者に政治資金のありようが正しく開示されず、政治家もいちゃもんから守ってもらえないため、政治資金会計も複式簿記による網羅的で検証可能な通常の会計(市販の会計ソフトを使えるので簡単で安上がりな上、税務事務所に計算を委託することも可能)に変更して正規の監査を行うべきである。これは、国会議員に限らず地方議員も同じだ。

   
   日産リーフ     日産リーフ軽    日産リーフセダン 資源エネルギー庁より

(図の説明:一番右の図のように、太陽光発電とEVを組み合わせれば、脱燃料費・脱排気ガスの究極のエコカーができる。女性は、ガソリン車で走るのが目的ではなく、実用目的で自動車に乗っており、環境には敏感であるため、本来はEVの格好の顧客になる。しかし、安全性に疑問符がつくのはご法度で、さらに日産車のデザインは怖い面構えで角ばっており、スタイルもかっこよくないため、女性を遠ざけている。日産の役員構成を見ると、取締役は全員男性で執行役員47名のうち女性は2名だが、もっと女性の声を反映させ、デザインにはフランスのデザイナーのアドバイスなどを入れて、スマートでかわいいスタイルするとさらに売れると思う。例えば、服はピエールカルダン、靴はフェラガモ、車はニッサンの○○と言われるようにだ)

*7-1:http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201812/CK2018120902000132.html (東京新聞 2018年12月9日) 「役員報酬虚偽記載」初の事件化 悪質性、分かれる見解 ゴーン容疑者あす起訴
 日産自動車の前会長カルロス・ゴーン容疑者(64)が逮捕された事件で、ゴーン容疑者が問われている有価証券報告書への「役員報酬の虚偽記載」は、これまで刑事事件として立件されたケースがない。役員報酬が投資家の判断にどれだけ影響するかは、市場関係者らの間でも見解が分かれている。東京地検特捜部は勾留期限の十日、金融商品取引法違反の罪で起訴する見通しで、今後の司法判断が注目される。「役員報酬は企業の姿勢が顕著に表れる重要事項。額を偽ることは投資家を欺く行為で、許されない」。検察幹部はうその報酬を記載する悪質性を強調する。経営方針や財務状況などさまざまな企業情報が盛り込まれ、有価証券報告書は「年度ごとの成績表」とも評される。ただ、うそを書けばすべて罪に問われるわけではなく、金商法は「重要事項への虚偽記載」を罰すると定めている。何が重要事項に該当するのか、明確な定義はない。ある市場関係者は「投資家の判断を左右する事項すべて」と解説する。これまで罪に問われてきたのは、ライブドア元社長や旧カネボウ経営陣の粉飾決算事件、オリンパス元会長らの損失隠し事件などで、利益や資産などが重要事項とみなされた。役員報酬が刑罰の対象になったケースは、金融庁の担当者も「聞いたことがない」といい、「案件ごとに判断するしかない」とする。実際、役員報酬が重要事項に当たるのか、定まった見解はない。ある投資家は「役員報酬は一応チェックする程度。投資する上で、主な参考情報とすることはない」と言い切る。証券市場に詳しい弁護士も「役員報酬が投資判断に大きな影響を与えるかどうかは疑問だ」と、重要事項との見方に否定的だ。一方で、大和総研の横山淳主任研究員は「正当な理由なくトップが高額な報酬を得ている会社は信頼されない。部下たちが仕事へのやる気を保てているか否かの判断材料にもなる」と重視する。ある市場関係者も「今の時代、投資家はコーポレートガバナンス(企業統治)を注視している。特に経営者の資質、報酬体系には厳しい目が注がれている」と指摘。「今回の事件はリーディングケース。何が重要事項かは、社会のニーズによって変わるのではないか」と語った。

*7-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20181207&ng=DGKKZO38654510W8A201C1TJ3000 (日経新聞 2018年12月7日) 日本、統治改革の再加速を 日産巡り機関投資家団体提言 ワリング事務局長
 欧米の主要機関投資家で構成する国際コーポレート・ガバナンス・ネットワーク(ICGN)のケリー・ワリング事務局長が、日産自動車のカルロス・ゴーン元会長逮捕を受け、日本経済新聞に対し「事件をきっかけに日本は企業統治改革を加速させるべきだ」と強調した。具体的には「社外取締役の質の向上」や「独立性の高い指名・報酬委員会の設置」を挙げた。日本のガバナンス改革に影響を与えそうだ。
主な発言は以下の通り。
【日産ショックの教訓】
 日産ほどの大企業が報酬委員会も設けず、報酬の配分が実質的にトップ1人に委ねられていた事実は、世界中の投資家にショックを与えている。日本は安倍晋三政権のもと、2014年から本格的なガバナンス改革が始まった。進捗は順調だったと言えるだろう。しかし、足元では「自分たちはよくやっている」という自己充足感も広がってはいなかっただろうか。その意味で、日産ショックは日本の市場関係者にガバナンス改革の再加速を促す目覚まし音(ウエイクアップ・コール)となったのではないか。
【社外取締役】
 ゴーン元会長逮捕を受け、金融庁にガバナンス改革を提言した。まず、社外取締役だ。人数を増やすだけでなく、経営や金融・財務に通じた人材を多く採用し、取締役会の質を上げる必要がある。経営の専門家が求められる。性別や国籍、年齢で制限しなければ、日本にも社外取締役の候補者はたくさんいる。取締役の教育制度も拡充すべきだ。
【報酬問題】
 監査役会設置会社であっても、上場企業ならば任意で指名・報酬委員会を設置し、トップの選任や役員報酬算定の方法を決めるようにしてほしい。役員報酬の金額の多さだけに目を向けるべきではない。大切なのは企業価値を向上させるために、どんなトップをいかに処遇するかという、透明性の高いルールづくりだ。
【日本への働きかけ】
 日産ショックをきっかけに外国人投資家は日本企業のガバナンスに改めて目を向けるだろう。ICGNは金融庁のほか経団連や東京証券取引所などと意見交換の場を持ち、市場の立場から建設的な提案をしていきたい。2019年7月には東京で年次総会を開く。日本の企業人もお招きしガバナンス改革を話し合いたい。
*ICGN:米カリフォルニア州職員退職年金基金(カルパース)など米欧の年金基金が1995年に設立。運用総額は34兆ドル(約3800兆円)に達し、世界の株式市場に強い影響力を持つ。ワリング事務局長は日本の金融庁に度々招かれ、企業統治に関する指針づくりを助言している。

*7-3:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20181207&ng=DGKKZO38634640W8A201C1EA1000 (日経新聞 2018.12.7) 日産、深まる統治不全 新たな検査不正、ブレーキなど
 日産自動車が新車を出荷する前の完成検査で新たな不正をしていたことが6日、分かった。不正発覚は2017年9月から4回目だ。企業統治(コーポレートガバナンス)の不全やコンプライアンス(法令順守)意識の低さに改善の兆しが見えない。元会長のカルロス・ゴーン容疑者(64)の逮捕に新たな不正発覚が追い打ちとなり、西川広人社長兼最高経営責任者(CEO)ら経営陣への批判がさらに強まりそうだ。今回の不正は、国土交通省が日産の主力工場に立ち入り検査した10月以降、社内調査で見付かった。ブレーキなど複数の項目が対象とみられる。日産は国交省とリコール対応などを協議しており、月内にも詳細を公表する見通しだ。
●防止策を再検証
 日産では完成車の品質検査不正が後を絶たない。17年9月に資格を持たない従業員が完成車の検査をしていたことが発覚した。18年7月には一部の完成車を対象にする抜き取り検査で、燃費・排ガスデータの書き換えや不適切な条件での試験が見つかった。18年9月末には全ての新車を対象にした検査で、決められた試験を省いたことなどが明らかになった。一連の不正はゴーン元会長が仏ルノーから派遣された翌年の00年代以降、常態化していた。不正の背景には「効率性やコスト削減に力点を置くあまり、検査員を十分に配置せず技術員も減らした」(外部の弁護士事務所が9月にまとめた調査報告書)ことがある。国交省は無資格検査を受けて日産に対し、17年9月と18年3月に2度の業務改善指示を出している。再発防止策の進捗を四半期ごとに報告させるほか、重点監視の対象として抜き打ち検査を増やしてきた。日産は9月に再発防止策を盛り込んだ最終報告書を公表し、一連の問題に区切りをつけたはずだった。再発防止策とともに今後6年間で測定装置などに1800億円を投じ、検査部門に670人を採用する計画を打ち出していた。西川社長は9月時点で「できる限り将来の再発防止に努めることが私の仕事だ」と述べた。しかし新たな不正発覚で、再発防止策そのものの再検証は避けられない。
●発覚は4度目
 ゴーン元会長逮捕を受け、日産はガバナンス不全が指摘されている。01年に日産のCEOに就いたゴーン元会長は人事と報酬の両方の決定権を持っていたとされ、絶対的な存在として長期間君臨。独立した社外取締役を主要メンバーにした報酬委員会などの仕組みもなかった。報酬過少記載事件ではゴーン元会長らに加え、法人としての日産の刑事責任も問われる見通しだ。西川社長ら同社の取締役らも虚偽記載という不正を見逃したとして、民事上の責任を追及され、損害賠償を求められかねない。ゴーン元会長逮捕に加えて4度目の検査不正が明らかになったことで、西川社長を含む現経営陣の経営責任を問う声が強まる可能性がある。日産同様に完成検査を巡る不正が相次ぐSUBARU(スバル)では、6月には当時の吉永泰之社長兼CEOが責任を取り、CEO職を返上。代表権のない会長に退くなど経営責任に波及している。「ポスト・ゴーン体制」を担う西川社長には、経営トップとしての説明責任が求められる。

*7-4:https://digital.asahi.com/articles/DA3S13809380.html (朝日新聞 2018年12月13日) 23議員の政治団体、監査人から寄付 公正さ、疑問の声 17年収支報告書
 国会議員の政治資金の支出を第三者がチェックする「政治資金監査制度」で、少なくとも23人の国会議員の関係政治団体が、監査を担当した税理士などの監査人から寄付を受けていたことがわかった。外部性の確保が求められる監査を支援者にまかせていた形になり、専門家からは「公正ではない」と疑問視する声もある。11月30日までに全国で公表された2017年の政治資金収支報告書を分析したところ、23の国会議員関係政治団体に対し、それぞれを監査する監査人が1万~40万円を寄付していた。総額は約340万円だった。総務省によると、監査制度は、不適正な支出が疑われた閣僚の事務所費問題などをきっかけに、07年の政治資金規正法の改正で導入された。公認会計士や税理士など「外部性を有する第三者」が、国会議員関係政治団体のすべての支出をチェックすると定められた。監査人は「監査の対象となる国会議員関係政治団体との間に密接な身分関係を有してはならない」とされ、対象の政治団体の役職員や議員の配偶者が務めることはできない。ただし、監査人が団体側に寄付することは禁止されていない。政治資金規正法に詳しい富崎隆・駒沢大教授(政治学)は「監査は利害関係のない人が行うのが前提で、政治家を支援している寄付者がするのはおかしい」と指摘する。「公正な収支報告書を有権者が見られるようにすることが重要で、各団体が監査人の選定や費用負担などに難しい面があるなら政党が責任を持つべきだ」と話す。

<退職金・退職年金の認識時期>
PS(2018年12月14、19日追加):*8-1のように、今回のゴーンさん逮捕事件はルノーと日産の組織再編に端を発したものだが、市場経済の中での経済闘争に微“罪”で刑事を介入させるのは、人権侵害である上、公正ではない。そのため、「権力闘争になれば、われわれは大砲を持ち出し、ルノーに対して日産への出資比率を上げるよう要請する用意がある」という仏政府幹部の言葉は理解できる。また、*8-2のように、米ウォールストリート・ジャーナルは、ゴーン氏は米国での販売不振や度重なる検査不正をめぐり、西川社長の解任と経営陣の刷新の考えを一部の役員に伝えていたとも報じている(西川社長は否定)。
 なお、ゴーンさん逮捕の根拠について、東京地検特捜部は確定債務だったか否かを論点とし、*8-3のように「日産の取締役会で決定され、文書化されているから確定債務だ」とか、*8-4のように「文書に報酬額が1円単位で書かれていたから確定債務だ」などとして、有価証券報告書への役員報酬の過少記載による金商法違反と結論づけている。しかし、*9-1の企業年金も、給付額は個人毎に債務が確定しており、企業は掛金の拠出時に費用計上するが、受取人の所得となるのは退職後にその年金をもらった時であり、認識時期にずれがある。また、企業は、現在価値に割り引いて掛け金を拠出するため、1円単位になるのが普通だ。
 さらに、*8-3には、役員報酬の決定をゴーン氏に一任することは取締役会で2年ごとに諮られ、決定事項として文書に残されていたと書かれているため、役員報酬の決定は、ゴーン氏の独断ではなく取締役会の承認済である。「実は異論は言えなかった」と弁解する取締役がいれば、その人は取締役としての任務を怠っていたので、報酬を払う価値がなかったということになる。さらに、違法行為があれば、監査役は是正しなければならず、言えなかったという弁解は通用しない。つまり、「確定債務だから、その期の報酬だ」という結論が誤りなのである。
 そのような中、*8-5のように、12月10日午後、東京地検特捜部はゴーン氏、ケリー氏及び日産を金商法違反(有価証券報告書の虚偽記載)の罪で起訴したが、本来は裁判所が即時棄却しなければならない。しかし、法学系の人は会計に疎く、殆ど全員が退職給付の会計と税務を理解しておらず、「自分が黒と言えば白でも黒になる」「特捜が起訴した以上は、(人権よりも)司法のメンツと信用が大切」などと思っているため、結論が危ぶまれるわけだ。そして、*8-6のように、罪状が確定していない人を長期間拘留して自白を促すのは人権侵害だ。
 なお、*8-7のように、日産は、不記載報酬を一括処理して今期決算で計上するそうだが、私は日産退職後に支払う報酬であるため、退職慰労金として一括処理するのが正しいと考える。また、日産はゴーン氏と同社が有価証券報告書に虚偽記載したため「内部統制報告書」の訂正も検討するそうだが、有価証券報告書と内部統制をチェックしていた監査法人は、どういう見解を持っているのだろうか。重要な虚偽記載なら、「見つけられなかった」では済まないからだ。
 2018年12月19日、朝日新聞が、*9-2のように、「ゴーン氏は2009年度分の報酬として十数億円をいったん受け取ったが2010年3月施行の改正内閣府令で1億円以上の報酬を得た上場企業の役員の名前と金額の個別開示が義務づけられたため、一部返却して退任後に受け取ることにし、翌年度分からは報酬の約半分は退任後に受け取る仕組みを最初から採用した」と記載しており、当時の日本国内での高額報酬批判から、そのような対応をしたことが理解できる。ここで問題なのは、①日本では、高額報酬として世界常識から外れた批判をしたこと ②国会を通さず、内閣府令で個人情報の過度な開示規定を定めたこと ③個人の報酬認識時期は受領時であるのに、企業の債務確定時と解釈していること(受領時に認識しなければ、受領者は確定申告・納税ができない) などである。これは、逆の立場に立って考えればすぐわかることなのに、意図的な解釈を行うことによって筋の通らない制度にした事例だ。

*8-1:http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201812/CK2018121202000132.html (東京新聞 2018年12月12日) <ゴーン事件の底流>(2)自動車戦争 日仏ぶつかる国益
 「出資比率と統治は現状通りが望ましい。世耕氏と、統治のルールは変わらないことで一致した」十一月二十五日の仏報道番組。仏ルノーと日産自動車、三菱自動車の三社連合について、仏経済・財務相ブルーノ・ルメールは、三日前の経済産業相の世耕弘成(せこうひろしげ)との会談内容をこう説明した。会談は三社の会長だったカルロス・ゴーンの逮捕後、仏側の要請を受け、訪問先のパリで急きょ行われた。世耕はこの発言に強く反発。二十七日の閣議後会見で「日産のガバナンス(統治)に関して、何か他国と約束するようなことは全くない」と否定した。ルノーは日産株の43・4%を保有する筆頭株主で、仏政府はルノー株15%を保有する物言う株主だ。フランスでは、今回の事件をルノーとの関係を対等にしようとする日産側のクーデターとの見方が根強い。仏大統領エマニュエル・マクロンと首相の安倍晋三の首脳会談が行われた十一月末のG20直前、仏経済紙レゼコーは「権力闘争になれば、われわれは大砲を持ち出し、ルノーに対して日産への出資比率を上げるよう要請する用意がある」という仏政府幹部の言葉を紹介した。「大砲」はルノーの大株主としての強力な議決権行使を意味する。マクロンは経済相だった二〇一五年、ルノー株を買い増した上で、二年以上株式を保有する長期株主に一株当たり二票の議決権を認めるフロランジュ法を利用し、日産とルノーの経営統合に動いたこともある。ゴーン逮捕で、再び日仏の国益がぶつかり合うことになる。
◆特捜と連携、官邸は「サポート」
 カルロス・ゴーン逮捕翌日の十一月二十日、日産自動車専務執行役員の川口均が首相官邸を訪れ、官房長官の菅義偉に事件の経緯を説明し謝罪した。川口は「日産とルノーとのアライアンス(提携)の関係でサポートしていただけるとお聞きした」と記者団に語った。一昨年五月の三菱自動車との提携発表前にも官邸で、菅に事前報告していた。仏マクロン政権はルノーと日産の経営を一体化し、日産車の仏国内での生産に意欲的とされる。日産には、独自性が失われ、ルノーにのみこまれていく恐怖感が募る。日産側の動きにも日本政府の影がちらつく。日産のある執行役員はゴーン逮捕後、政府と連絡を取り合っているのかという報道陣の質問に「(政府には)心配いただいている。今回の件だけでなく、フロランジュ法のときも日本政府としての考え方を仏政府に伝えてもらった。国をまたがることなので、いろいろとお話をさせてもらっている」と明かした。検察との司法取引に協力した日産側の弁護士は元東京地検特捜部検事の熊田彰英。安倍政権や自民党の「守護神」とも呼ばれるやり手だ。日産は特捜部とも密に連携。米在住のグレゴリー・ケリーとゴーンが同時に来日するのは珍しく、日産側はゴーンの帰国スケジュールを特捜部に伝えていた。日産の川口は渉外担当が長く、大手企業幹部は「議員会館や霞が関でよく見かける。菅長官は地元が日産本社のある横浜で、事前に相談を受けていても不思議ではない」と推測する。自動車業界に詳しい大手監査法人関係者は、米司法省がカルテル容疑で摘発した日系自動車部品メーカー四十六社と役員三十二人が有罪(五月現在)となったことなどを例に分析する。「国対国の自動車戦争は日米、米独で起きており、それが日仏でも起きたのでは」 

*8-2:http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201812/CK2018121002000047.html (東京新聞 2018年12月10日) ゴーン容疑者、西川社長の解任計画か 販売不振など不満
 米紙ウォールストリート・ジャーナル(電子版)は九日、金融商品取引法違反の疑いで逮捕された日産自動車の前会長カルロス・ゴーン容疑者(64)が、逮捕前に西川(さいかわ)広人社長の解任を計画していたと報じた。ゴーン容疑者は二〇一七年に日産の社長を退き、西川氏を後継者に指名した。だが、同紙によると、ゴーン容疑者はここ数カ月間、米国での販売不振や度重なる検査不正をめぐり、西川氏の経営手腕に対して不満を募らせていたという。このためゴーン容疑者は一部の役員に経営陣を刷新したいとの考えを伝えており、十一月二十二日の取締役会で西川氏の解任を提案する意向だったという。だが、ゴーン容疑者は同十九日、役員報酬を過少に記載したとして、金融商品取引法違反の疑い(有価証券報告書の虚偽記載)で東京地検特捜部に逮捕され、二十二日の取締役会では自らが会長職を解任された。一方、西川氏はここ数カ月間、内部通報を受けゴーン容疑者の不正について社内調査を行い、検察に情報提供したことを明らかにしており、ゴーン容疑者による西川氏の解任計画とほぼ同じ時期にゴーン容疑者の不正に対する社内調査が進められていたことになる。同紙はゴーン容疑者による西川氏の解任計画を、西川氏自身が知っていたかや、それが逮捕のタイミングに影響したかどうかは分からないとしている。

*8-3:https://digital.asahi.com/articles/DA3S13810942.html (朝日新聞 2018年12月14日) 報酬「ゴーン前会長に一任」 日産取締役会で決定、文書化
 日産自動車の前会長カルロス・ゴーン容疑者(64)が役員報酬を過少記載したとして逮捕された事件で、ゴーン前会長に役員報酬の決定を一任することが取締役会で2年ごとに諮られ、決定事項として文書に残されていたことが関係者への取材でわかった。東京地検特捜部は文書を入手し、報酬額の確定に関する重要な証拠とみている模様だ。ゴーン前会長側は、退任後の支払いにして隠したとされる報酬について、「希望額」で、社内の手続きを経ていないため「確定していない」と反論。これに対して特捜部は、取締役会での一任によって、ゴーン前会長が正式な権限に基づいて支払いを確定していたと立証できるとみている模様だ。関係者によると、取締役の任期(2年)に合わせる形で2年に1回、役員の報酬額はゴーン前会長に一任すると取締役会で決定していた。前会長が社長兼最高経営責任者(CEO)だった時期は「CEOに一任」とし、17年に会長に退くと「会長に一任」と変更された。異論はなく、取締役会の内容は決定事項として文書に残されているという。日産は役員報酬について「取締役会議長」が「代表取締役と協議の上、決定する」と定める。この議長はゴーン前会長で、一任を決めた取締役会には他の代表取締役も出席しているため、特捜部は「協議」を経ていると判断した模様だ。立件対象となった8年間では、西川広人社長兼CEOと志賀俊之取締役が代表取締役の時期もあったが、特捜部は前代表取締役のグレッグ・ケリー容疑者(62)以外は、報酬の後払いを把握していなかったとみている。一方、ゴーン前会長側は、ケリー前代表取締役以外と協議せずに決めたのであれば、社内規定に違反しており、「確定しているとはいえない」と主張している。

*8-4:http://qbiz.jp/article/145494/1/ (西日本新聞 2018年12月10日) ゴーン氏報酬文書、金額1円単位 特捜部、支払い確定の根拠に
 金融商品取引法違反の疑いで逮捕された日産自動車の前会長カルロス・ゴーン容疑者(64)が報酬の一部を有価証券報告書に記載せず、受け取りを退任後に先送りする計画を記した文書に、報酬額が1円単位で書かれていたことが10日、関係者への取材で分かった。東京地検特捜部は退任後の受領額が確定していた根拠の一つとみている。証券取引等監視委員会は10日、同法違反の疑いでゴーン容疑者と前代表取締役グレゴリー・ケリー容疑者(62)、法人としての日産を告発した。特捜部が同日起訴する。また、新たに約40億円の報酬を記載しなかった金融商品取引法違反の疑いで、同日中にも2人を再逮捕する。2人は、ゴーン容疑者の報酬が2015年3月期までの5年間で計約100億円だったのに、このうち退任後の報酬を記載せず、約50億円とした有価証券報告書を提出したとして逮捕された。18年3月期までの3年間にも同様の疑いがあり、虚偽記載の立件総額は約90億円になる。関係者によると、先送り計画が記された「報酬契約書」には、報酬総額、実際に支払われた額、未払い額の3種類の金額が1円単位で書かれていた。ゴーン容疑者や、秘書室に所属していた日本人の元幹部のサインがあった。この元幹部と外国人執行役員が特捜部との間で司法取引に合意し、不正を裏付ける保管資料を提出したとされる。

*8-5:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20181210&ng=DGKKZO38733440Q8A211C1MM0000 (日経新聞 2018年12月10日) ゴーン元会長、午後起訴 虚偽記載で東京地検 監視委が告発
 日産自動車元会長のカルロス・ゴーン容疑者(64)の報酬過少記載事件で、東京地検特捜部は10日午後、ゴーン元会長と元代表取締役のグレッグ・ケリー容疑者(62)、法人としての日産を金融商品取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)の罪で起訴する。特捜部は同日、2018年3月期まで3年間の有価証券報告書でゴーン元会長の報酬を計約40億円過少に記載したとして、同法違反容疑で2人を再逮捕する方針だ。証券取引等監視委員会は10日、15年3月期まで5年間の報酬過少記載について、ゴーン元会長とケリー役員、法人としての日産を同法違反容疑で東京地検に告発した。監視委としても、ゴーン元会長らの刑事責任を問う必要があると判断したもようだ。ゴーン元会長らは容疑を否認しており、起訴されれば公判で無罪を主張して争うとみられる。再逮捕容疑の捜査によってさらに20日間の勾留の可能性があり、身体拘束の長期化に対して海外の批判が強まることも予想される。関係者によると、ゴーン元会長は役員報酬の個別開示が義務化された10年3月期から、自身の報酬の一部について受領を先送りし、有価証券報告書に記載しないようにしていたとされる。先送り分を含めた報酬の総額は、10年3月期~12年3月期には年20億円を下回る水準だったが、毎年のように引き上げられ、17年3月期と18年3月期にはそれぞれ約24億円とされていたという。18年3月期の記載額は7億3500万円だったのに対し、記載のない先送り分は約16億円に上っていたとみられる。

*8-6:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20181211&ng=DGKKZO38770160R11C18A2MM8000 (日経新聞 2018年12月11日) ゴーン元会長ら再逮捕 直近3年の報酬、虚偽疑い
 日産自動車元会長のカルロス・ゴーン容疑者(64)の報酬過少記載事件で、東京地検特捜部は10日、ゴーン元会長と元代表取締役のグレッグ・ケリー容疑者(62)、法人としての日産を金融商品取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)の罪で起訴した。さらに直近3年間でも過少記載があったとして、ゴーン元会長らを同法違反容疑で再逮捕した。立件額は8年間で計91億円余となった。ゴーン元会長らは起訴内容・再逮捕容疑を否認しているとみられ、公判では無罪を主張して争う見通しだ。役員報酬に関する虚偽記載の起訴は初めて。企業統治(コーポレートガバナンス)に対する関心の高まりなどを背景に、特捜部は役員報酬も投資家の判断に影響を与え、虚偽記載をすれば刑罰の対象となる「重要な事項」に当たると判断した。有価証券報告書の虚偽記載には個人だけでなく法人の刑事責任を問う両罰規定があり、長期間にわたって経営トップの虚偽記載を止められなかった法人としての日産の責任も重いと判断した。日産では新車の完成検査で新たな不正が発覚。企業統治の面から、西川広人社長兼最高経営責任者(CEO)ら現経営陣の経営責任についても批判が強まりそうだ。日産の起訴を受け、東京証券取引所は同社株について上場廃止のおそれがあることを示す「特設注意市場(特注)銘柄」に指定するかどうかの検討に入る。特注銘柄は、有価証券報告書に重大な虚偽記載があり、会社の内部管理体制にも問題がある際に東証が指定する。指定期間中も通常どおり売買できるが、東証が内部管理体制の改善度合いを監視する。改善が認められれば指定解除する。西川社長は10日、社内に向け「法人として日産が起訴されるにいたったことは厳粛に受け止めている。ゴーン、ケリー(両容疑者)による私的な動機・目的で行われたことが原因だ」とコメントを出した。関係者によると、ゴーン元会長は自ら決めた各期の自身の報酬の一部について受領を先送りし、有価証券報告書に記載していなかったとされる。特捜部の起訴に先立ち、証券取引等監視委員会は10日、ゴーン元会長ら2人と日産を金商法違反容疑で東京地検に告発した。

*8-7:https://www.nikkei.com/paper/related-article/?b=20181211&c=DM1&d=0&nbm=DGKKZO38770160R11C18A2MM8000&ng=DGKKZO38743870Q8A211C1MM8000&ue=DMM8000 (日経新聞 2018年12月11日) 日産、不記載報酬を一括処理 今期決算で計上へ
 日産自動車はカルロス・ゴーン元会長と同社が役員報酬について有価証券報告書に虚偽の記載をした罪で起訴されたことを受け、記載されていなかった役員報酬に絡む費用を2019年3月期決算で一括処理する方針だ。正しい決算を作成するための社内管理体制が整っていると上場企業が投資家に向けて宣言する文書、「内部統制報告書」の訂正も検討する。ゴーン元会長が記載していなかった役員報酬は総額90億円前後とされるものの詳細が明らかになっていない部分もあり、日産は費用計上すべき額の把握を急いでいる。日産が今期、5000億円と見込む純利益は目減りする見通しだ。19年2月初旬とみられる18年4~12月期決算発表と合わせて開示する。日産内部では費用の一括処理案が有力。「虚偽記載の額が利益に対して小さい」(関係者)ためだ。ただ、取引所などとの今後のやりとり次第では過去にさかのぼって分割処理する案が検討される可能性もある。日産は10日、過年度の有価証券報告書を訂正する予定だと発表した。役員報酬の総額と1億円以上を受け取った役員の個別の報酬額などが対象になるとみられる。虚偽記載の疑いがある11年3月期以降の有価証券報告書が対象となる見込みだ。日産はゴーン元会長による費用の付け替えなどがなかったかも調査をしている。結果が確定し次第、必要であれば過去の有価証券報告書の損益計算書や貸借対照表など財務諸表を修正する見通しだ。

*9-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20181129&ng=DGKKZO38305510Y8A121C1MM8000 (日経新聞 2018年11月29日) 企業年金、積み立て手厚く、確定給付、制度改正で100社超 手元資金で危機に備え
 株価下落など将来の損失リスクに備え、企業年金の積立金を手厚く積む企業が増えている。2017年の制度改正で予防的な掛け金拠出が解禁されたのを受けた動きで、18年11月時点の導入企業はサッポロビールなど100を超えた。業績改善で手元資金が厚くなった企業が従業員の老後資金に還元している。配当などの株主還元や設備投資に続く手元資金の第3の活用策として同様の動きが広がりそうだ。企業の抱える現預金は17年度末時点で221兆円と5年前に比べ3割以上増えた。年金の掛け金は税務上の損金となることもあり、現預金を抱えるよりも効率的と判断した企業が拠出に動いている。企業は掛け金を基金など企業年金の運営主体に出し、その分を費用として計上する。厚生労働省は17年、従業員の年金額を保証する確定給付型企業年金を対象に「リスク対応掛け金」と呼ぶ仕組みを解禁した。金融危機など20年に1度程度の頻度で生じるような損失に備え、年金会計上の必要額を超えて掛け金を積み立てることを認める仕組みだ。この仕組みを活用した企業年金はサッポロビールやコーセーなど18年11月1日時点で104社・グループに上った。「より安定した年金制度を維持できる」(サッポロビール)という。企業年金の運用管理を受託するみずほ信託銀行によると「福利厚生の充実のために検討する企業が増えている」という。確定給付年金は運用不振で積み立て不足が生じると、企業は年金水準を維持するために掛け金を追加拠出して穴埋めする必要がある。90年代のバブル崩壊や08年のリーマン危機では株価の低迷などで巨額の積み立て不足が発生し、多くの企業で穴埋めを余儀なくされた。危機後には年金制度が企業経営を圧迫する事態の再発を防ごうと年金制度そのものを見直し、給付水準を下げる改革に踏み切る動きも相次いだ。今の企業の動きにはこうした悪循環を断ち切る狙いがある。リスク対応掛け金は株価急落などがあっても年金水準を維持できるように、企業業績に余力があるときに掛け金を本来必要な水準よりも多めに拠出しておくものだ。これにより企業年金の財政に「のりしろ」をつくり、将来、運用不振に直面しても積み立て不足に陥りにくくする。企業は突然、巨額の穴埋め負担を迫られるリスクが減り、経営の安定につながる。従業員にとっても年金財政が悪化して給付減額などを求められるリスクが減り、老後への備えが安定する利点がある。企業年金は確定給付型が主流だったが、リーマン危機後は従業員が運用先を決め、損失リスクも負う確定拠出年金に移行する企業が増えた。運用が好調だと将来の年金も増えるが、今は元本保証型などリスクを抑えた運用を選ぶ人が多い。掛け金にも上限があり、年金資産がなかなか積み上がらない課題がある。予防的拠出で確定給付型年金の安定性が高まれば、従業員の老後を支える福利厚生として存続・維持させる企業も増えそうだ。

*9-2:https://digital.asahi.com/articles/DA3S13817684.html (朝日新聞 2018年12月19日) 09年度報酬、一部返却 「退任後払い」の発端か ゴーン前会長
 日産自動車の会長だったカルロス・ゴーン容疑者(64)が役員報酬を過少記載したとして逮捕された事件で、ゴーン前会長が、役員ごとの報酬の開示制度が導入された2009年度分について、いったん満額で受け取った後、一部を返却したとみられることが、関係者への取材でわかった。差額を退任後の支払いにして隠蔽(いんぺい)する仕組みのきっかけになった可能性があり、東京地検特捜部は詳しい経緯を調べている。特捜部は、10~17年度の8年間の報酬を立件対象にし、計約91億円を各年度の有価証券報告書(有報)に記載しなかったという金融商品取引法違反の罪で、ゴーン前会長と前代表取締役グレッグ・ケリー容疑者(62)を起訴、再逮捕した。09年度の返却分も退任後に受け取ることにしたとみられるが、特捜部は仕組みが明確に確立したのは10年度分からとみて、09年度は除外した模様だ。関係者によると、ゴーン前会長は09年度分として十数億円をいったん受け取った。しかし、09年度末となる10年3月施行の改正内閣府令で、1億円以上の報酬を得た上場企業の役員は、名前と金額の個別開示が義務づけられた。日産は09年度決算から対象となった。このため、ゴーン前会長は「高額報酬」批判を懸念して一部を返却。10年6月末に提出した有報には返却後の約8億9千万円と記載したとみられる。ケリー前代表取締役らに「返した場合、有報への記載は実際の受け取り分だけでいいのか」と確認し、「返却分の記載は不要」という回答を得て返したという。関係者によると、ゴーン前会長はこうした経緯を踏まえ、翌10年度分からは、報酬の約半分は退任後に受け取る仕組みを最初から採用した。「総報酬」「支払った報酬」「延期報酬」といった趣旨の3項目を記した11年作成の文書には、09、10年度の2年分がまとめて記載され、前会長が署名していたという。一方、ゴーン前会長は、「総報酬」について、米国の自動車大手3社の最高経営責任者の報酬の平均値であり、「希望額として了解したという意味で署名した」と供述。「延期報酬」分は「将来の受領が確定していない」と述べ、記載義務を否定しているという。

<女性の能力に対する過小評価について>
PS(2018年12月15日追加):有報への虚偽記載もあやしくなってきたせいか、2018年12月14日、日産は、*10-1のように、「理由なき利益」を日産から得ていたとしてゴーン氏の姉をブラジル・リオデジャネイロ州の裁判所に提訴する方針を固めたそうだ。ゴーン氏の姉は、リオでコンサルタント会社を経営していた2002年に日産とアドバイザー業務契約を結び、日産から年約10万ドル(約1130万円)の支出を受けたが、日産は「業務実態はなかった」として会社経費の不正支出にあたるとする。しかし、*10-2のように、ゴーン氏の姉は、ブラジル生まれのレバノン育ちで、フランスのリヨン大学を卒業し、パリ・デカルト大学(パリV)などの大学院で民族学研究をした後、1995年に「Netune Ltda」の責任者に就任し、2013年3月~2017年3月には、フランスとブラジルの商工会議所の会長を務めた人であり、アラビア語、フランス語、英語、ポルトガル語の4か国語を話すことができるため、強力な営業マンだったと考えることもできる。そのため、「業務実態がなく、理由なき支払いだった」というのが本当かどうかは慎重な吟味を要する。日本の社会通念では、「60代の女性が大した仕事をしていたわけがないため、業務実態のない不正支出だろう」と思うのかも知れないが、私も佐賀地裁唐津支部で佐川急便に提訴された時、「この人はパートくらいでしか働いたことがなく、何も知らないのだろう」と推測され、呆れたとともに不利益を蒙ったのでわかるわけである。

*10-1:https://digital.asahi.com/articles/DA3S13812578.html (朝日新聞 2018年12月15日) 日産、ゴーン前会長の姉を提訴へ 
 日産自動車は14日、「理由のない利益」を日産から得ていたとして、前会長カルロス・ゴーン容疑者の姉をブラジル・リオデジャネイロ州の裁判所に提訴する方針を固めた。手続きに向けた準備を始めているという。日産によると、リオでコンサルタント会社を経営するゴーン前会長の姉は2002年に日産とアドバイザー業務契約を結び、日産から年約10万ドル(約1130万円)の支出を受けていたという。社内調査によると、姉に業務の実態はなかったといい、日産は会社経費の不正支出にあたるとみている。

*10-2:https://shiawase-no-tobira.com/carlos-ghosn-claudine-keireki-kaogazo-titioya-hahaoya-sister/ (わしろぐ) カルロスゴーン姉(Claudine)の経歴や顔画像は?父親と母親と妹についても
 カルロスゴーン姉(Claudine Bichara)の経歴や名前や顔画像があるのか調査していきます。カルロスゴーンは3人兄弟で、姉、ゴーン、妹の兄弟構成です。また、父親と母親と妹についても情報があるのかチェックしていきます。
●カルロスゴーン姉の経歴や顔画像は?
 名前は「クロディーヌ(Claudine Bichara)」というのが判明しています。ブラジル生まれ、その後、レバノンで育ちます。弟になるカルロスゴーンの誕生日が1954年3月9日ですので、年齢は64歳より上になりそうです(2018年11月23日現在)。カルロスゴーンが16歳でフランスに移住しますが、姉のクロディーヌは既にフランスに渡っています。クロディーヌはフランスのリヨン大学を卒業し、パリ・デカルト大学(パリV)などの大学院で民族学研究をしています。1995年に「Netune Ltda」というインターネット決済や電子取引の戦略などに関するコンサルティングサービスを提供する会社の立ち上げに協力し、責任者に就任します。2013年3月から2017年3月まで、フランスとブラジルの商工会議所の会長を務めます。現在、ブラジルのリオデジャネイロに住んでおり、日産リオのオフィスの昼食会に参加できる人物のようです。アラビア語、フランス語、英語、ポルトガル語の4か国語も話せます。
●カルロスゴーン姉も不正に関与?
 カルロスゴーンが姉に対して、業務実績がないのにコンサル料を支払っていたという報道がありました。姉はブラジルのリオに住んでいて、子会社に購入させたという住宅がブラジルにありますし、他にもありそうですね。(以下略)

<日本の資源と生産性について>
PS(2018/12/16追加): *11-1のように、COP24が、2018年12月15日、地球温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」を運用する実施指針を採択したそうだ。内容は、地球温暖化防止のため化石燃料をやめることで、これについては、*11-2のように、(私の提案で)日本がリードして、1997年に「気候変動に関する国際連合枠組条約の京都議定書」が採択されている。
 しかし、日本では「ハイブリッド車」止まりで、ゴーン氏率いる日産がEVを開発しても逆風を吹かせて足を引っ張り、三菱自動車が燃料電池車を開発しても黙殺してきた。このように、合理的な先端技術の実用化に時間をかけるのが我が国の生産性が低い原因であり、その後の世界競争を不利にしている。また、再エネで電力を作ればエネルギー資源はあるのに、「資源がない」と馬鹿の一つ覚えのように言っている“経済専門家”こそが、成長を阻害し国民を豊かにしない原因であり、これらは知識不足に由来するため、教育の充実が必要である。

*11-1:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO39011660W8A211C1MM8000/ (日経新聞 2018/12/16) パリ協定20年適用開始 COP24、実施指針を採択、温暖化防止へ一歩
 ポーランドで開かれている第24回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP24)は15日、地球温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」を運用する実施指針について合意し、採択した。焦点だった資金支援や削減目標を巡って先進国と途上国が折り合い、パリ協定が2020年から適用される。世界各国は温暖化防止に向けて一歩を踏み出す。議長を務めたポーランドのクリティカ環境副大臣は「次の世代に持続可能な社会をつくるため、パリ協定を稼働させる時がきた」と語った。パリ協定は15年にパリで開いたCOP21で合意して16年11月に発効した。産業革命以前より気温上昇を2度未満に抑える目標を掲げて約180カ国が批准した。ただ削減に向けた詳細なルールが決まっておらず、20年からの適用に向けてCOP24で交渉していた。COP24は会期を1日延長して15日夜まで協議を続けた。資金支援については先進国が歩み寄り、フランスやドイツなどが途上国向けの基金を一定額増やすと表明した。また先進国が2年ごとに将来の支援額を新たに示すことにした。資金支援についてはパリ協定を採択した15年、先進国が20年までに年間1千億ドルを途上国へ拠出すると約束していた。ところが米トランプ政権が17年に協定から離脱を表明し、オバマ政権時代に約束した資金拠出を取りやめた。今後は米国分を先進国がどれだけ穴埋めできるか課題となる。焦点の一つだった削減目標や削減した総量の検証を巡っては、先進国と途上国で差をつけず客観的なデータの提出など共通のルールを導入することでも合意。途上国にも先進国と同じ情報公開を求めた。一方、海外での削減分を目標達成に利用する「市場メカニズム」と、温暖化ガスを削減する目標期間を5年か10年のどちらにするかは結論を19年以降に先送りした。各国が現行の削減目標の深掘りを進めることでも一致した。パリ協定は各国が温暖化ガスの削減目標を公表して2度未満の達成を目指していたが、10月に気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が2度未満に抑えても海面上昇による国土の消失や洪水のリスクが高まるとする「1.5度報告書」を公表。削減目標の上積みが議論されていた。COP24の合意で参加国は20年までに削減目標を現行より増やせるか検証したうえで再提出しなければならない。日本もこれまで30年度に13年度比で26%削減する目標を公表しているが、さらなる上積みを求められそうだ。

*11-2:https://kotobank.jp/word/%E4%BA%AC%E9%83%BD%E8%AD%B0%E5%AE%9A%E6%9B%B8-2793 (京都議定書)
「気候変動枠組条約」に基づき1997年に京都で開かれた「地球温暖化防止京都会議」で議決した議定書。正式名称は「気候変動に関する国際連合枠組条約の京都議定書」。地球温暖化の原因となる、「温室効果ガス」の一種である二酸化炭素、メタン、亜酸化窒素、HFCs、PFCs、六フッ化硫黄について、先進国における削減率を90年を基準に各国別に定め、共同で約束期間内に目標を達成することを定めている。2008年~12年の間に、日本はマイナス6%、アメリカはマイナス7%、EUはマイナス8%と各地域で削減率を設定。日本ではこれをもとに二酸化炭素排出削減運動が展開されており、「ハイブリッド車」や「クールビズ」などが大きく注目されるきっかけとなった。(以下略)

<パリ協定ルールの採択は、環境を重視する企業に追い風であること>
PS(2018年12月17、18日追加):地球温暖化だけでなく他の排気ガスも深刻な公害だが、*12-1のように、COP24でパリ協定の実施ルールが採択され、先進国・発展途上国とも厳しいルールの下で温室効果ガスの排出削減を進めることになったのは、結果として全ての排気ガスを削減できるのでよかったと、私は思っている。しかし、先進国と発展途上国の定義は曖昧であり、時間の経過とともに変わるものでもあるため、一人当たり排出量及び国全体の排出量で、きちんと定義しなおした方がよいと思われる。また、環境を壊して工場を立て公害を出しつつ操業した方が、自然を維持するよりもGDPが上がるというパラドックスは補正しなければならないため、地球ベースで環境税を徴収して自然や緑を維持する国にその面積に応じて配分するのがよいと考える。このような中、COP24の結果、再エネ・EV・ゼロエミッション住宅などの技術を持っている企業は、世界進出のチャンスだということは間違いない。
 なお、*12-2のように、英自動車最大手ジャガー・ランドローバーは数千人規模の人員削減を検討しているそうだが、アフリカやインドに進出したい企業は、まずイギリスに進出してイギリスと手を組むのも一案だろう。
 また、日立が、*12-3のように、スイスのABBから送配電・電力システム部門を買収することで最終合意したが、そのアクションは速かった。ただ、①ABBがまず対象事業を分社して日立が出資し ②1~2年かけて出資比率を高めて完全子会社化する というやり方では、肝心な集団はそれまでに配置転換してしまい、日立には残りしか移転して来ない可能性があるので要注意だ。なお、日立の蓄電池や燃料電池を組み合わせれば、再エネも容易に使いこなせるだろう。
 12月17日、*12-4のように、EUが2030年の自動車のCO2排出量を21年比で37.5%減らす規制案をまとめ、これはガソリン車やハイブリッド車の燃費改善では達成困難で、EVシフトがカギを握るとのことだ。そのような中、現在の日本には捨てている再エネ電力も多いのに、「EVシフトが急加速すれば電力需給が逼迫する」「電力需要増に対応する多額の投資コストをどう負担するか」などと言っているのは愚かだ。駐車している時間が長い自動車自身にも、スマートな太陽光発電を取り付ければよいのではないか?

   
2018.12.3東京新聞     AFP        JCCCA    2017.11.17毎日新聞 

(図の説明:左図のように、エネルギー由来のCO2排出は、総量では中国が1番・米国が2番だ。しかし、一人あたり排出量は、中2つの図のように、米国が最大でカナダ・ロシア・ドイツ・イギリス・日本と続く。また、右図のように、米国がパリ協定から離脱しようとしているが、これは先進国・途上国という人為的で不公平な分類を使わず、CO2排出量に応じてGlobalに環境税を課し、吸収量に応じてその国・地域に配分するルールにすれば阻止できると思う)

   
       ameblo          2018.12.17東京新聞   2018.12.6毎日新聞

(図の説明:パリ協定の構造は、左図のように、“先進国”“能力のある国”が“後進国”“開発途上国”に資金支援という施しをする形になっているが、この区別は曖昧で、時代とともに変化するものだ。そのため、世界環境機関を作って、CO2排出源(主に化石燃料)からGlobalに環境税を徴収し、CO2吸収源(自然や緑)の量に応じて配分して環境保全に努めるのが、論理的で不公平がないと考える。そうすると、化石燃料の使用を控えて自然や緑を守る行動が促される。なお、一番右の図で、日本は「検討中」と書かれているが、2030年以降は交通系に化石燃料を使わず、省エネを徹底し、発電方法も再エネに切り替えるのが、あらゆる意味でよいと思う) 

*12-1:http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201812/CK2018121702000139.html (東京新聞 2018年12月17日) パリ協定のルール採択 COP24 全ての国に共通基準
 ポーランド・カトウィツェで開かれた国連気候変動枠組み条約第二十四回締約国会議(COP24)は十五日(日本時間十六日)、地球温暖化対策を進めるためのパリ協定の実施ルールを採択した。先進国と発展途上国が共通の厳しいルールの下で温室効果ガスの排出削減を進めることとなり、二〇二〇年の運用開始へ準備が整った。温暖化対策は国際的な仕組み作りに力を注ぐ段階を終えた。今後、深刻な被害を避けるために各国が脱炭素化への取り組みをどう強化するのか、具体的な行動が問われることになるが、米国が離脱を表明するなど先行きに不透明さも残る。議長を務めたポーランドのクリティカ環境副大臣は採択時の全体会合で「合意により、パリ協定の開始を確保できる。人類のために一歩を踏み出すことができた」と意義を強調した。交渉は三年にわたり、先進国と途上国で内容に差をつけるかどうかが焦点だった。採択されたルールは、二五年までに各国が出すことになる新しい削減目標や、削減の進み具合を検証する手法は、共通の厳しい基準を適用すると規定。詳しいデータの提出などが必要で、取り組みが透明化されて対策強化を促しやすくなると期待される。途上国への資金支援については、可能であれば先進国は二〇年から二年ごとに将来の拠出額を提示するよう求めた。削減目標を出さない国には順守委員会が対応するが、懲罰や制裁は科さないとした。パリ協定は一五年に採択され今月二日からのCOP24がルール作りに向けて設定された最後の場だった。会期後半は各国の環境相らが協議に加わって膠着(こうちゃく)状態の打開を図り、二日延長して十六日未明に閉幕した。

*12-2:http://qbiz.jp/article/145877/1/ (西日本新聞 2018年12月17日) 英ジャガー、数千人削減か EU離脱備えでコスト増
 英自動車最大手ジャガー・ランドローバーが数千人規模の人員削減を検討していることが16日分かった。英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)電子版などが報じた。英国の欧州連合(EU)離脱に備えるためのコスト増加に加え、ディーゼル車の不振や中国での販売落ち込みが業績に響いていることが理由。報道によると、5千人規模の削減になるとの予測もある。来年1月にも正式に発表するという。EU離脱が英経済の軸である自動車産業に与える影響が広がりつつある。ジャガーは英国内で約4万人を雇用し、これまでも国内工場で人員削減や操業時間の短縮を実施してきた。FTによると、ジャガーは10月、1年半以内に10億ポンド(約1400億円)のコスト削減を実施することを明らかにしていた。

*12-3:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO39021920X11C18A2MM0000/ (日経新聞 2018年12月17日) 日立、ABBの電力システム事業買収で合意 午後発表
 日立製作所は17日、電気を発電所から企業や家庭に届ける送配電など電力システム事業で、世界最大手のスイスABBから同部門を買収することで最終合意した。買収総額は6千億~8千億円程度になるようだ。日立が手掛けるM&A(合併・買収)では過去最大。再生可能エネルギーの普及や新興国の電力網整備で成長が見込まれる同分野の海外展開を急ぐ。日立とABBが17日午後に記者会見を開いて発表する。ABBがまず対象事業を分社して日立が出資。1~2年かけて出資比率を高めることで完全子会社にする方針だ。段階的な買収とすることで事業環境が大きく変わるリスクなどを軽減する。日立は送配電で世界首位となり、企業全体の規模では重電分野2位の独シーメンスと肩を並べる。ABBは産業用電機の世界最大手で、電力部門では制御システムを含めた送配電設備の製造や運営を世界中で手掛ける。2017年の部門売上高は約103億ドル(約1兆1700億円)、営業利益率は約8%を確保している。設備納入だけでなく送配電システム全体の運用も手がけ、売上高の4割以上をサービスで稼ぐ。日立の電力・エネルギー事業の売上高は18年3月期で4509億円。営業利益率は6%弱にとどまる。発電設備のほか、送配電・変電設備、再生エネなどを幅広く手がけるが、国内事業が9割以上を占める。原発関連など主力の国内電力事業が不振のため、海外市場の開拓が課題になっていた。22年3月期の連結売上高営業利益率を10%と3年で2ポイント高める目標を掲げる。電力システム事業は電力会社などから発注を受けて変電所を建てたり、電線を敷設したりする。設備運営を受託し、停電を防ぐために電力網全体の需要と供給を調整する役割を担う。太陽光発電や風力といった再生エネは天候により発電量が大きく変わるため、IT(情報技術)を使った高度な制御システムの需要が高まっている。

*12-4:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO39095650Y8A211C1EA2000/?nf=1 (日経新聞 2018/12/18) EUが迫る電気自動車シフト 乗用車CO2 37.5%削減
 欧州連合(EU)は17日、2030年の自動車の二酸化炭素(CO2)の排出量を21年比で37.5%減らす規制案をまとめた。今後自動車メーカーごとに具体的な削減幅を決める方針だが、ガソリン車やハイブリッド車の燃費改善では達成は困難とみられる。各メーカーは新車の3分の1程度を電気自動車(EV)などに代替する必要があるとの見方もある。EUではこれまで執行機関である欧州委員会と、加盟国政府の意見を代表する閣僚理事会、欧州議会がそれぞれ別のCO2の排出規制案を打ち出して議論していた。欧州委員会(30%)や閣僚理事会(35%)の提案よりも厳しく、最も厳しかった欧州議会(40%)の提案に近い形での決着となった。今後、欧州議会と閣僚理事会の承認を経て正式決定する。EUは21年に乗用車1台の1キロメートル走行あたりのCO2排出量を全企業平均で95グラム以下とする目標を掲げ、欧州市場で自動車を販売する各社が取り組んでいる。非営利団体「クリーン交通の協議会(ICCT)」によると、この目標でも17年は119グラム。消費者のディーゼル車離れで16年より増えており、これを大きく上回る目標の実現は容易ではない。今回決めた37.5%の規制値はEU全体の削減幅であり、すべての乗用車に一律に適用するのではない。販売台数や車種構成にあわせてメーカーごとに異なる削減幅が割り当てられることになる。それでも燃費の良いディーゼル車とハイブリッド車の比率を高める既存の戦略の延長線上で対応できる目標とみる向きは少ない。カギを握るのがEVへのシフトだが、17年のEUの新車販売に占めるEVの比率はプラグインハイブリッド車(PHV)を含めても1.4%にすぎない。今回の規制は各メーカーにEVシフトの急加速を迫る内容といえる。EUが重視するのは温暖化ガスの域内排出量を30年までに90年比で40%削減するとした「パリ協定」だ。さらに11月には欧州委員会が50年までに「実質ゼロ」を目指す新目標を提案。温暖化ガス削減で世界を主導する姿勢をアピールしてきた。自動車へのCO2排出削減でも高めの規制を打ち出すのもその一環といえる。EU域内では17年以降、フランスや英国、オランダなどが相次いで30~40年にガソリン車やディーゼル車の販売を禁止する計画を公表。11月にはスペインも追随した。CO2排出規制の強化はこうした「脱ガソリン・ディーゼル」の動きと表裏一体だ。削減規制は自動車が対象だが、EVへのシフトで需要の高まる電力部門については、再生可能エネルギーの拡大などで温暖化ガス削減を急ぐ。ただ、自動運転や人工知能(AI)の普及による電力需要が増える中で、EVシフトが急加速すれば電力の需給が逼迫する可能性もある。電力需要増に対応する多額の投資コストをどう負担するかも課題となる。

<EV化を誘導する中国の政策>
PS(2018年12月20日追加): *13のように、中国政府は厳しい規制で自動車産業の高度化と環境対応を進める狙いで、2019年1月10日からガソリンなどを燃料とするエンジン車をつくる工場の新増設を規制するそうで、よいと思う。PHEVも、エンジン付のため、車体が重くて居住空間が狭く、部品が多くてコスト高(=価格高)にもなるため、これまでの雇用は守られても消費者にとってメリットが少ない。従って、日本のメーカーもEVかFCVに変更する時だろう。

*13:https://digital.asahi.com/articles/DA3S13819401.html (朝日新聞 2018年12月20日) 「脱エンジン」中国加速 工場の新増設規制、生産を抑制 来月から
 中国政府は2019年1月10日から、ガソリンなど油を燃料にするエンジン車をつくる工場の新増設を規制する。完成車メーカーの新設による新工場建設を禁じるほか、既存メーカーの生産能力増強も制限する。日本メーカーの販売計画に影響する可能性もある。中国政府は現在、将来的なエンジン車の販売禁止に向けた計画の策定を進めており、まずは生産の抑制に乗り出す。厳しい規制を通じ、自動車産業の高度化と環境対応を進める狙いだ。国家発展改革委員会が10日付で出した「自動車産業投資管理規定」によると、中国国外で販売する場合を除き、エンジン車の生産メーカーの新設が禁止される。既存メーカーが生産能力を増やす場合も、過去2年の設備利用率が業界平均より高い場合などに限る。これまで新エネルギー車として優遇されてきたプラグインハイブリッド車(PHEV)も、エンジン車として規制対象になる。規定では、電気自動車(EV)を生産するメーカーの新設についても制限。建設規模は、乗用車が年産10万台、商用車は5千台を下回ってはならないことといった制限が加えられる。EVなどを普及させるための補助金目当ての「にわかEVメーカー」が乱立。こうした問題に対応する。日本メーカーでは、トヨタ自動車や日産自動車が、世界最大の市場である中国での販売増をねらい、工場の生産能力増強を計画している。規制にひっかかる場合は、今後の投資計画が狂う可能性もある。

<検察の姿勢と人権侵害>
PS(2018年12月22日):*14-1のように、ゴーン氏逮捕の争点となった「退任後の報酬」は、ゴーン氏はじめ司法取引に合意した日産の元秘書室長と外国人執行役員、東京地検特捜部、メディアがその仕組みを理解しているかどうかは怪しいが、確定拠出年金と同様、確実に受け取れる金額ではなく利子率の変化によって変わるものだと思われる。また、2018年3月期までの8年間に有価証券報告書に記載しなかった約91億円は、退職後に受領するものなので、受領時に認識して納税すべき退職慰労金と考えるのが普通だ。そのため、地検のステレオタイプで古い見立てに合う証言をするまで勾留したり、罪人呼ばわりしたり、粗末な場所に閉じ込めたりするのは、ゴーン氏だけでなく誰であっても人権侵害なのだ。従って、*14-2のように、東京地裁が2018年12月20日にゴーン氏とケリー氏の勾留延長を却下したのは英断だった。
 しかし、*14-3のように、東京地検特捜部は、2018年12月21日、新たな会社法違反(特別背任)を持ち出してゴーン氏を再逮捕して勾留を続けているので呆れる。容疑は*14-3・*14-4のように、①新生銀行との間で結んでいたスワップ契約による約18億円の損失を日産に付け替えた ②日産がオランダに設立した子会社「ジーア」とタックスヘイブン(租税回避地) にあるその子会社を通じて、レバノン・ブラジル・オランダ・フランスなどの高級住宅が購入され、ゴーン氏に無償提供された ③日産とゴーン氏の姉が実態のない「アドバイザリー契約」を結び、姉に年10万ドルが供与された ④日産が所有するジェット機を、日産の主要拠点がないレバノンへの往来に使用した ⑤娘の通う大学への寄付金や、家族旅行の費用にも会社資金が充てられていた などとされている。
 そのうち、①については、普通はドルか受取手が望む通貨で報酬を支払うため、日産が円でしか支払わないのは融通が利かなすぎる感があった。②については、所有権はまだ日産にあり、退職後に退職慰労金でジーアを購入すべく投資していたのであれば、ゴーン氏が言っていたことは首尾一貫する。さらに、③については、本当に実態がないかどうかわからず、④⑤については、現在は日産の主要拠点がなくても、日産の会長として中東に足掛かりを作る役に立っていたかも知れないため、既にある枠組みの中でルーチンワークしかしていない人には、トップの働きは理解できないのかも知れないと思えたわけである。

*14-1:http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201812/CK2018121902000118.html (東京新聞 2018年12月19日) 報酬文書にゴーン容疑者ら反論 きょう逮捕1カ月 「動かぬ証拠」検察に戸惑いも
 日産自動車前会長カルロス・ゴーン容疑者(64)の衝撃の逮捕から、十九日で一カ月になる。事件の争点となっているゴーン容疑者の「退任後の報酬」は、確実に受け取れるものだったと言えるのか-。文書という物的証拠を握っているとして強気な検察当局と、文書の解釈を巡り真っ向から反論するゴーン容疑者側。想定以上のせめぎ合いに、検察当局の戸惑いも透ける。「まるで言葉遊びのようだ。こういう展開になるとは予想外だった」。ある検察幹部が肩をすくめる。ゴーン容疑者と前代表取締役グレゴリー・ケリー容疑者(62)が問われている金融商品取引法違反事件は、二〇一八年三月期までの八年間、ゴーン容疑者の実際の役員報酬は計約百七十億円だったにもかかわらず、計約九十一億円を有価証券報告書に記載しなかったというものだ。東京地検特捜部は逮捕の約五カ月前、日産の元秘書室長と外国人執行役員と司法取引(協議・合意制度)に合意し、複数の文書を入手していた。最も重視したのは、報酬額が一円単位で記された一連の書面。年によって書式は異なるが、本来の報酬は「固定報酬」、実際に受け取って有価証券報告書にも記載した報酬は「支払った報酬」、その差額は「延期された報酬」などと英語で書かれ、ゴーン容疑者と秘書室長がサインしていた。ある検察幹部は逮捕前から「単なる希望額だったら、おおよその金額を書くはず。一円単位で記載していたのは、受け取りが確定していた動かぬ証拠」とみていた。別の幹部も「たとえ黙秘でも立証できる」とにらんでいた。ところが、ゴーン容疑者は逮捕されると「後任の最高経営責任者(CEO)が支払ってくれるかは未知数」と反論。最近では、役員報酬は複数の代表取締役と協議して決めるのが日産のルールなのに、自分一人で決めていたとして、「手続きに誤りがあったので確定はしていない」と主張している。検事は当初の取り調べでは、書面を突きつけず、存在をちらつかせながら追及していたとされる。だが、最近はゴーン容疑者に「書面があるから大丈夫なんだ」「いくら争ってもダメだ」と追及することも。一連の書面作成を巡り、司法取引した二人と直接関わったとされるケリー容疑者には、「(二人が)あなたたちに不利な証言をしている。何を言っても無駄だ」と詰め寄ることもあるという。東京拘置所にいる両容疑者の元には、領事館関係者らが頻繁に接見に訪れるため、一日の取り調べは五時間程度。通訳を交えており、実質的な調べはより短時間になる。ケリー容疑者は接見した関係者に「検事は怒るけど、通訳を介すから迫力ないね」と余裕を見せることもあるという。一方、捜査の過程では、退任後にどのような名目で支払うか検討した文書に、日産の西川(さいかわ)広人社長のサインがあったことも明らかに。ともに文書にサインしていたケリー容疑者は「今年九月、西川社長と『(支払いは)まだ確定したものではないよね』とやりとりした」と供述。特捜部は慎重に経緯を調べている。

*14-2:http://qbiz.jp/article/146118/1/ (西日本新聞 2018年12月20日) ゴーン前会長らの勾留認めず 東京地裁 近く保釈の可能性
 東京地裁は20日、金融商品取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)の疑いで再逮捕された日産自動車の前会長カルロス・ゴーン容疑者(64)と、前代表取締役グレゴリー・ケリー容疑者(62)の勾留延長を認めない決定をした。20日が勾留期限だった。東京地裁が東京地検特捜部の勾留延長を認めないのは異例だ。検察側が準抗告を検討する。最初の逮捕から約1カ月。近く保釈される可能性がある。欧米を中心に長期勾留への批判が出ていた。2人は共謀し、ゴーン容疑者の2016年3月期〜18年3月期の役員報酬が実際は計約71億7400万円だったのに、計29億400万円と過少に記載した有価証券報告書を関東財務局に提出したとして、10日に再逮捕された。11年3月期〜15年3月期には計約48億6800万円少なく記載したとして起訴されている。受領を退任後に先送りした分を記載していなかったとされる。関係者によると、2人は「退任後の報酬は確定しておらず、報告書への記載義務はない」と否認している。

*14-3:http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2018122190140234.html (東京新聞 2018年12月21日) ゴーン前会長、再逮捕 保釈見通し一転、特別背任疑い
 日産自動車の前会長カルロス・ゴーン被告(64)=金融商品取引法違反罪で起訴=が、私的な投資で生じた約十八億五千万円の損失を日産に転嫁するなどして会社に損害を与えたとして、東京地検特捜部は二十一日、会社法違反(特別背任)の疑いでゴーン被告を再逮捕した。東京地裁は二十日、地検が求めていたゴーン容疑者の勾留の延長を却下しており、保釈請求が認められれば二十一日にも保釈される可能性が浮上していた。ともに起訴された前代表取締役グレゴリー・ケリー被告(62)の弁護人は同日午前、地裁に保釈を請求。ゴーン容疑者は今回の再逮捕によって、さらに勾留が続く可能性が高まった。再逮捕容疑などでは、ゴーン容疑者は二〇〇八年十月、自身の資産管理会社と新生銀行との間で、通貨デリバティブ(金融派生商品)のスワップ取引を行っていたところ、評価額約十八億五千万円の損失が発生。この損失を含むすべての権利を日産に移し、損害を与えたとされる。また、この損失の付け替えに尽力した関係者が営む会社の口座に、〇九年六月から一二年三月までの間、四回にわたり、日産の子会社名義の口座から千四百万ドル(約十六億三千百万円)を振り込み、日産に損害を与えたとされる。関係者によると、ゴーン容疑者はかねて私的な投資をしていたが、〇八年秋のリーマン・ショックによる円高で多額の損失が発生。「飛ばし」の手法で約十八億五千万円の損失を日産に肩代わりさせたという。ゴーン容疑者はこの疑惑が報じられた先月下旬、弁護人に「当局から違法との指摘があり、付け替えは実行しなかった。日産に損失を与えていない」と説明したという。ゴーン容疑者は損失を含む権利を日産に移した後、再び資産管理会社に権利を戻したとされる。特捜部は権利を移した時点で特別背任は成立するとみている。特別背任の公訴時効は七年だが、海外に滞在している期間は除外されるため、立件が可能となった。
<特別背任>会社法で規定。取締役など特定の地位にある者が自分や第三者の利益のために任務に背く行為をし、会社に損害を与えた場合、10年以下の懲役か1000万円以下の罰金が科される。会社の経営に携わる立場での背任行為は大きな責任が問われるため、刑法の背任罪より法定刑が重い。

*14-4:https://mainichi.jp/articles/20181221/k00/00m/040/069000c?fm=mnm (毎日新聞 2018年12月21日) ゴーン前会長再逮捕 地検の経費不正疑惑の解明に注目
 会社法違反(特別背任)容疑で21日に再逮捕された日産自動車前会長のカルロス・ゴーン容疑者(64)を巡っては、会社資金の流用や、経費の不正使用とみられる疑惑が次々に浮上していた。東京地検特捜部の捜査で、数々の疑惑がどこまで解明されるか注目が集まっている。ゴーン前会長については、銀行との間で結んでいたスワップ契約による私的投資で受けた約18億円の損失を、2008年に日産に付け替えた不正経理疑惑が判明していた。この疑惑が今回の再逮捕容疑となったが、証券取引等監視委員会が当時、取引に関わった銀行に実施した検査で明らかになったとされていた。私的流用とみられる疑惑は他にもある。日産がオランダに設立した子会社「ジーア」とタックスヘイブン(租税回避地)の会社などを通じて流れた資金で、レバノンやブラジル、オランダ、フランスなどの高級住宅が購入され、前会長に無償提供されていた疑惑が浮上した。前会長はこの疑惑を否定しているとされる。また、日産と前会長の姉が実態のない「アドバイザリー業務契約」を結び、姉に年10万ドルが供与されたことも明らかになった。前会長は「正当な理由がある」と説明しているという。他にも、日産が所有するジェット機1機を、会社の主要拠点がないレバノンへの往来に使用した問題も指摘されていた。さらに、娘の通う大学への寄付金や、家族旅行の費用にも会社資金が充てられていた疑惑が浮上している。送金に関わっていたとされる社員らは特捜部に任意で事情聴取され、送金の詳細を説明している模様だ。「前会長は外出してのどが渇いて、部下に水を買わせる時も会社持ちだった。何から何まで会社のお金を使っていた」。日産関係者はそう声をひそめた。ゴーン前会長の私的流用は、ともに逮捕された前代表取締役のグレッグ・ケリー被告(62)=金融商品取引法違反で起訴=が、外国人執行役員らに具体的に指示していたとみられる。特捜部は送金記録を入手し、裏付け捜査を進めているとみられる。

<とにかくゴーン氏を陥れようとするのは、公正でないこと>
PS(2018年12月23日追加):*15-1・*15-2に、「①ゴーン氏再逮捕の理由は、自身の資産管理会社で生じた損失を日産に付け替え、さらに日産の資金約16億円を第三者に流出させた特別背任容疑」「②日産は逮捕容疑を踏まえ、ゴーン氏に損害賠償請求を検討する」「③ゴーン氏の資産管理会社(どこか?)が新生銀行と締結していた通貨取引に関するスワップ契約で損失を抱え、損失を含むこのスワップ契約を日産に移転し、約18億5000万円の評価損を負担する義務を日産に負わせた」「④この契約移転が証券取引等監視委と監査法人から相次いで問題視されたので、資産管理会社にスワップ契約を再移転した」「⑤ゴーン氏のサウジアラビアの知人が信用保証に協力し、この知人が経営する会社に日産子会社の口座から1470万ドル(現在のレートで約16億円)を振り込ませた疑いもある」と、ゴーン氏が業務上横領・特別背任の重罪を犯したかのように記載されている。
 しかし、③④については、ゴーン氏は監査法人から指摘されて契約を再移転し、その後、監査法人は適性意見を出しているので、日産に損失はなく、②は当たらない。そして、監査法人が、事前にこのような指導的機能を発揮して適性意見に導くことはよくある。さらに、新生銀行には全く瑕疵がなく、証券取引等監視委から問題視される理由がないため、証券取引等監視委は特捜に頼まれて嘘の証言をしているのではないかと思われる。
 また、①⑤のサウジアラビア人の知人が信用保証に協力し、日産子会社の口座から1470万ドル(約16億円)を振り込ませた疑いというのは、*15-3のように、ゴーン氏の直轄費から出したのであれば、企業には役員に認められた(ある程度の)使途不明金や交際費はよくあるため問題ない。さらに、*15-4には、「ゴーン氏が私的な損失を日産に付け替えたなどとして逮捕された特別背任事件で、ゴーン氏は取締役会で、全ての外国人取締役の役員報酬を外貨に換える投資を行う際の権限を、側近の秘書室幹部に与えるという決議をさせていた」と書かれているが、海外赴任した従業員の給料・報酬などは、通常は人事部で本人が必要とする通貨で支払うように決定し、通貨スワップ等は財務部が行う。しかし、日産の外国人役員は円でしか報酬をもらえなかったため、ゴーン氏が全ての外国人取締役を対象として自らの秘書室でそれを行うこととし、それに対して取締役会決議を得たのなら、むしろ気の毒なくらいで問題ない。つまり、何でもゴーン氏が悪いかのように言うのは、不公正でよくない。
 なお、*16のような冤罪事件は多く、不当に拘束された人は人生を台無しにされるため、死刑制度さえ廃止すればよいというものではない。つまり、「司法がメンツや信用を保つためなら、個人の人権を侵害してもかまわない」と考えていること自体を変えるべきであり、メディアは、日本でも無罪の推定が働くのだから、裁判で罪が確定するまでは、自らがさも偉いかのような言い方で人を罪人と呼ぶ浅はかな報道は止めるべきだ。

*15-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20181222&ng=DGKKZO39285720R21C18A2MM8000 (日経新聞 2018年12月22日) ゴーン元会長、再逮捕 日産から16億円流出か、損害賠償請求へ
 東京地検特捜部は21日、日産自動車元会長のカルロス・ゴーン容疑者(64)を会社法違反(特別背任)容疑で再逮捕した。自身の資産管理会社で生じた損失を日産に付け替え、さらに同社の資金約16億円を第三者に流出させた疑いが判明。日産は今回の逮捕容疑を踏まえて会社が受けた損害額を精査し、ゴーン元会長に対する賠償請求を検討する。今回の逮捕容疑はゴーン元会長による「会社の私物化」の疑いを強める構図。保釈の可能性が高まるなかで特捜部は3回目の逮捕に踏み切り、勾留はさらに長期化する見通しとなった。関係者によると、再逮捕容疑の発端は2008年のリーマン・ショックに伴う急激な円高。ゴーン元会長の資産管理会社は、新生銀行と締結していた通貨取引に関するスワップ契約で巨額の損失を抱え、銀行から担保不足を指摘された。新たな逮捕容疑の一つは、08年10月、このスワップ契約を損失を含めて日産に移転し、約18億5000万円の評価損を負担する義務を日産に負わせたというものだ。ところがこの契約移転が一部で問題視され、資産管理会社にスワップ契約を再移転することになった。この際、ゴーン元会長のサウジアラビアの知人が信用保証に協力したという。09~12年、自分と知人の利益を図り、知人が経営する会社に対し日産子会社から計1470万米ドル(現在のレートで約16億円)を振り込んだというのが2つ目の容疑だ。関係者によると、ゴーン元会長は調べに対し容疑を否認している。損失付け替えでは結果的に契約を再移転しており「日産の損失はない」と主張。知人には「日産のための仕事をしてもらっていた」とし、振り込みは業務の対価だと説明しているという。今後の捜査では、特別背任罪の構成要件である「自己または第三者の利益を図る目的」と日産の「財産上の損害」を立証できるかが焦点となる。今回の逮捕容疑は日産の内部調査では突き止められず、特捜部の捜査によって判明。司法取引で合意した日本人の幹部社員の証言や提出資料が重要な役割を果たしたという。幹部社員は秘書室長としてゴーン元会長を長年支えた側近だった。逮捕容疑の一部は約10年前の行為だが、ゴーン元会長は海外滞在が長く、特捜部は特別背任罪の公訴時効(7年)は成立していないと判断した。特捜部は10日、金融商品取引法違反の罪でゴーン元会長らを起訴し、同法違反容疑で再逮捕した。20日に東京地裁に勾留延長を請求したが却下され、保釈の可能性が出てきたため、予定を早めて新たな容疑で逮捕したとみられる。3回目の逮捕容疑について22日にも地裁に勾留請求する見通しだ。

*15-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20181222&ng=DGKKZO39298300S8A221C1MM0000 (日経新聞 2018年12月22日) ゴーン元会長の損失移転問題 監視委・監査法人が指摘
 日産自動車元会長のカルロス・ゴーン容疑者(64)の特別背任事件で、ゴーン元会長が私的な金融取引の損失を日産に付け替えた後、証券取引等監視委員会と監査法人から相次いで問題視されていたことが22日、関係者の話で分かった。外部の指摘を受け、ゴーン元会長は損失を自身の資産管理会社に再移転したという。損失付け替えは再移転で解消された形だが、特捜部は、いったん付け替えを実行した時点で日産に損害が生じており、会社法違反の特別背任罪が成立すると判断しているもようだ。ゴーン元会長は2008年10月、自身の資産管理会社が運用していたデリバティブ取引の契約を日産に移転し、評価損約18億5000万円を負担する義務を日産に負わせた疑いが持たれている。関係者によると、ゴーン元会長の資産管理会社が契約していた新生銀行の関連会社に監視委の検査が入った際に損失付け替えが発覚。日産の取締役会の議決を経ていないなど、コンプライアンス上の問題があると指摘された。同じころ、日産を担当する監査法人も会計監査の過程で付け替えを把握。「会社が負担すべき損失ではなく、背任に当たる可能性もある」との指摘が日産側にあったという。外部からの相次ぐ指摘を受け、ゴーン元会長はデリバティブ取引の契約を自身の資産管理会社に再移転することにした。この際、巨額の評価損に対応する追加担保が必要になり、サウジアラビアの知人の協力により信用保証を得ることができたという。ゴーン元会長はこの知人が経営する会社の預金口座に日産子会社の口座から1470万ドル(現在のレートで約16億円)を振り込ませた疑いも持たれている。関係者によると、ゴーン元会長は特別背任の容疑を否認。損失付け替えについては、結果的に契約を再移転していることなどから「日産の損失はなく、背任には当たらない」と主張している。知人への支払いは日産のための業務の対価だったと説明し、日産には損害を与えていないとしているという。

*15-3:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20181223&ng=DGKKZO39312900S8A221C1MM8000 (日経新聞 2018年12月23日) ゴーン元会長、CEO直轄費から捻出か 流出の16億円
 日産自動車元会長のカルロス・ゴーン容疑者(64)の特別背任事件で、日産からゴーン元会長の知人側に流出したとされる約16億円は「CEO reserve」と呼ばれる最高経営責任者(CEO)直轄の費用枠から捻出された疑いがあることが22日、関係者の話で分かった。東京地検特捜部は21日、約16億円の支払いにより日産に損害を与えたなどとする特別背任容疑でゴーン元会長を再逮捕した。一方、ゴーン元会長の弁護人によると、ゴーン元会長は「知人が日産のために行ったサウジアラビアでのトラブルの解決などへの対価だった」と容疑を否認している。ゴーン元会長は2008年10月、自身の資産管理会社が締結していたデリバティブ取引の契約を日産に移転し、約18億5千万円の評価損を同社に付け替えた疑いがある。その契約を自身の資産管理会社に戻した際に協力した知人の会社に対し、日産子会社から計1470万米ドル(現在のレートで約16億円)を振り込み入金させた疑いも持たれている。関係者によると、知人はサウジアラビアで会社を営む実業家で、日産から契約を再移転する際の信用保証を手助けした。当時CEOだったゴーン元会長は、必要に応じて使途を決められる「CEO reserve」と呼ばれる費用枠を持っており、知人側への資金もこの枠から日産子会社を経由して支出された可能性があるという。

*15-4:https://digital.asahi.com/articles/DA3S13824319.html (朝日新聞 2018年12月23日) 秘書室幹部に特別な権限 損失付け替え可能に ゴーン前会長
 日産自動車の会長だったカルロス・ゴーン容疑者(64)が私的な損失を日産に付け替えたなどとして逮捕された特別背任事件で、前会長が取締役会で、全ての外国人取締役の役員報酬を外貨に換える投資を行う際の権限を、側近の秘書室幹部に与えるという特別な決議をさせていたことが、関係者への取材でわかった。一般的なルールを装ったこの決議で、自らの報酬の投資で生じた損失を、他の取締役には隠したまま付け替えたとみられる。東京地検特捜部などによると、ゴーン前会長は2006年以降、自身の資産管理会社と新生銀行の間で、金融派生商品であるスワップ取引を契約。前会長が「日本円で受け取った報酬をドル建てにするため」と説明するこの契約で、08年秋のリーマン・ショック前後に、円高による多額の評価損が発生した。ゴーン前会長は同年10月、契約の権利を資産管理会社から日産に移し、約18億5千万円の評価損の負担義務を日産に負わせた疑いがある。関係者によると、銀行側は、日産の取締役会で権利移転の承認を得るよう求めた。だがゴーン前会長は「円建てで報酬を得ている全ての外国人取締役の利便を図るため」として、外貨に換える投資を行う際の権限を、秘書室幹部に与える議案を取締役会に諮った。そのまま議決されたという。ゴーン前会長は、この権利を再び自分に戻した際の信用保証に協力したサウジアラビアの実業家に、アラブ首長国連邦(UAE)の子会社「中東日産」を介して1470万ドル(現在のレートで約16億3千万円)を入金した特別背任容疑でも逮捕された。関係者によると、前会長は「サウジの日産販売店で起きたトラブルの処理や、中東から投資を集めてもらった報酬」として、最高経営責任者(CEO)の裁量で使える資金から支払ったと供述。容疑を否認しているという。

*16:https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130612-00010004-wordleaf-soci (Yahoo 2013/6/12) 東京電力女性社員殺害事件から考える冤罪の背景
 1997年の東京電力女性社員殺害事件で再審無罪となったネパール人のゴビンダ・プラサド・マイナリ氏を支援し続け目的を果たして解散していた「ゴビンダさんを支える会」が、この事件での教訓を生かし、2013年6月8日「なくせ冤罪! 市民評議会」として新たな活動をスタートしました。冤罪事件の背景には検察による「供述調書」の作成における問題点があると言います。
■事件の経緯
 「捜査・公判活動に特段の問題はなかったと考えているが、結果として、無罪と認められるゴビンダ・プラサド・マイナリ氏を、犯人として長期間身柄拘束したことについては、誠に申し訳なく思っている。」2012年10月29日の東京電力女性社員殺害事件再審初公判後、青沼隆之東京高検次席検事のコメントです。11月7日の再審判決当日、ゴビンダさんは「どうして私が15年間も苦しまなければならなかったのか、日本の警察、検察、裁判所はよく考えて、悪いところを直してください。」とコメントしました。1997年3月19日、東京都渋谷区円山町のアパートで、東京電力に務める39歳の女性が絞殺死体で発見され、同年5月20日、現場の隣のビルに住んでいたインド料理店店員のネパール人、ゴビンダさんが逮捕されました。決め手とされたのは、現場の鍵を持って居たことと、目撃証言でした。2000年4月14日に一度無罪判決を言い渡されましたが、同年12月22日、現場に残されたDNAなどを理由に逆転有罪、無期懲役判決を言い渡されました。ゴビンダさんは、獄中から再審を請求、様々な支援を得て、2011年に東京高検がDNA鑑定を実施し、遺体に付着していたDNAとゴビンダさんのDNAが一致しないことが判明しました。それでも、検察はゴビンダさんが犯人である可能性を主張し続けていました。
■報道の過熱による人権侵害
 この事件は、冤罪事件だったという警察・検察・裁判所の在り方だけではなく、マスコミをはじめとしたメディアの報道の在り方も議論の的になりました。捜査が進む中で、被害者女性が、大企業の管理職であり経済的な問題はなかったにも関わらず、対照的ともいえる私生活での事実が発覚し、マスコミの報道は過熱、事件とは直接関係のないプライベートまで暴露報道するようになり、被害者の家族が警察に抗議するに至りました。東京法務局は、行き過ぎた内容は人権侵害に当たるとして再発防止の勧告をし、スキャンダラスな報道は沈静化しましたが、たくさんの問題点があらわになりました。
■黙秘によって意に反する供述調書の作成を阻止
 警視庁はかなり早い段階からゴビンダさんを犯人だと決めつけていた、といいます。ゴビンダさんは不法滞在だったうえ、被害者とプライベートでの関係があったため、検察が調書を作りやすかったのでは、という議論もありました。この事件に関してお話を伺ったリンク総合法律事務所の梅津竜太弁護士によれば、冤罪事件の場合、意外に見落とされるのは「供述調書」の問題だと言います。「供述調書は検察官が作ります。被告人は、検察官が書いた供述調書の内容を確認して、押印するわけですが、細かいところをちゃんとチェックせずに、概ね合っていれば押さされてしまうことも多いんです。外国人などコミュニケーション能力が低い場合、もちろん通訳などはつくのですが、しっかりとチェックするのは難しいでしょう。」つまり「自白」とされている「供述調書」は自白自体ではなくて、自白を聞いて検察官が作成したものだということです。弁護人は、捜査段階の初めから、完全黙秘を貫く方針を取りました。これに対して「弁護人が捜査妨害をしてきた」などと言っている捜査関係者もあるといいます。しかし、上記のような背景事情がある以上、完全黙秘という方針を取らない限り、ゴビンダさんの意に反する供述調書が作られていた可能性は否定できません。仮にそうした調書が作成されていれば、今回の無罪判決はなかったのではないかと思います。「検事の作文」が真実として報道され、世論を形成してしまっている可能性があるわけです。日本の刑事事件の有罪率は99.9%という世界でも極めて高い水準を保っています。つまり起訴された時点で有罪はほぼ確定してしまいます。その理由として、検察官は情状を考慮して起訴しないことができる「起訴便宜主義(刑事訴訟法248条)」が機能していることが挙げられますが、あくまでも一要因に過ぎません。刑事裁判は、「疑わしきは罰せず」という原則があります。また「十人の真犯人を逃すとも一人の無辜(無罪の人)を罰すなかれ」という格言もあります。とはいえ、日々、冤罪事件が明るみに出ています。そしてその事実は、晴れることのない無数の冤罪の存在を証明していると言えます。警察の持つ捜査権限の強大さ、検察官が独占する起訴の選別、そして捜査書類中心の公判について、多くの人が知り、自分事と捉えて意見を持つことが必要ではないでしょうか。

<ゴーン氏に特別背任はあったか>
PS(2018/12/27、28追加): *17-3のように、ケリー氏が保釈されたが、取締役であるのに、取締役会や株主総会への出席に裁判所の許可が必要というのは解せない。また、首の手術をするとのことだが、それができる医師は日本でも少ないため、住居制限や海外渡航禁止があるのなら、しばらく様子を見た方が安全だと思われる。
 ゴーン氏については、*17-1、*17-2のように、東京地検特捜部は、2009~12年、ゴーン氏が日産子会社からサウジアラビアの知人に「販促費」「販売委託料」等として約1470万ドルを支出させたのは、実際には販促活動ではなく日産に損害を与えたので特別背任だとしている。そして、この支出は、2008年のリーマン・ショックに伴う急激な円高で、ゴーン氏の私的な資産管理会社(ジーア社?)が通貨スワップで評価損を抱えたため、契約相手の銀行側から担保不足を指摘され、①契約当事者を資産管理会社から日産に移転して約18億5000万円の評価損負担義務を付け替えた ②4カ月後に契約を資産管理会社に戻して担保不足にサウジアラビアの銀行から信用保証を得るため、サウジアラビアの知人に協力してもらった ③ゴーン氏は「業務の正当な報酬だった」としている ④約1470万ドルは、ゴーン氏が必要に応じて使途を決められる「CEOreserve」から「販売促進費」等の名目で「中東日産会社」を通じて支払われた という内容で、現在は「損害の有無」と「支出の趣旨」が主な対立点となっているそうだ。
 しかし、①については、日産は4か月間信用保証したが実損はなく、②のように、ゴーン氏は指摘を受けて契約を資産管理会社(誰の所有?)に戻し、数千万円の信用保証料や手数料はゴーン氏が負担したそうだ。さらに、本来なら日産が行うべき外為リスクの回避策が行われていないため、ゴーン氏自身が行ったものだろう。そのため、特捜部がこの一時的な損失付け替えをもって特別背任とするのは行き過ぎだと考える。さらに、サウジアラビアの知人が日産のためにサウジで政府や王族に対するロビー活動やトラブル解決などに尽力していたというのは、新しい市場を開くにあたって、国によってはロビー活動や*18のような袖の下が必要になることもある(25年前だが、私が中国深圳市に進出した日本企業の監査に行った時、その企業の社長が「袖の下を渡すことを知らず、いつまでも通関してもらえなかった」とこぼしていたことがある)。そのため、世界中が日本と同じ状況だと勘違いして行き過ぎた批判をしていると、日本企業の世界進出をやりにくくする。さらに、トラブル解決費は、日産がブレーキ性能の検査等で騒がれているのに世界でクレームが少ないのは、ゴーン氏のこういう支出のおかげではないのか?
 なお、サウジアラビアが女性に運転免許を解禁したため、これから中東は女性好みのEVを販売するよい市場となって顧客をつかむチャンスであり、技術は売れて初めて磨かれるにもかかわらず、このようにサウジアラビアの王族や販促に協力している人から反感を買うような営業感覚の鈍さがあるのは、世界市場への展開を危ぶませる。
 2018年12月28日には、日経新聞はじめ各メディアが、*17-4のように、ゴーン氏の信用保証に協力したのはサウジアラビアの財閥創業家出身で、同国中央銀行理事も務めるハリド・ジュファリ氏で、同氏は、日産が中東の販売業務支援のために設立した合弁会社の会長も務めていたと報じている。そのため、1470万ドルは「日産の業務の正当な対価」で、信用保証料はゴーン氏が自ら負担した数千万円に含まれると考えるのが妥当であり、東京地検特捜部のどうしても不正にこじつけたがる捜査は次元が低すぎると思う。

*17-1:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO39319590T21C18A2CC1000/ (日経新聞 2018/12/23) 知人への16億円、「販売促進費」名目で ゴーン元会長
 日産自動車元会長のカルロス・ゴーン容疑者(64)の特別背任事件で、日産からゴーン元会長のサウジアラビアの知人側に流出したとされる約16億円が「販売促進費」などの名目で支出されていたことが23日、関係者の話で分かった。東京地検特捜部は販促活動などの実態はなかったとみている。ゴーン元会長は「業務の正当な報酬だった」と反論しているという。逮捕容疑では、ゴーン元会長は2009~12年、日産子会社から知人が経営する会社に対し計約1470万ドル(現在のレートで約16億円)を支払わせ、日産に損害を与えたとされている。関係者によると、知人側への約16億円は、当時最高経営責任者(CEO)だったゴーン元会長が必要に応じて使途を決められる「CEO reserve」(CEO予備費)から捻出。「販売促進費」などの名目で、中東での販促などを担当しているアラブ首長国連邦の子会社「中東日産会社」を通じて支払われたという。この知人は09年初めごろ、ゴーン元会長の私的な金融取引の損失を巡って銀行に対する信用保証に協力。約16億円は、知人が経営している会社の預金口座に対し09年6月から12年3月にかけて4回に分けて振り込まれていた。特捜部は、知人が経営する会社は日産の販促に関わる業務を手掛けておらず、巨額の支払いに見合う活動実態はなかったと判断。信用保証に協力した見返りなどの趣旨だった疑いがあるとみているもようだ。一方、弁護人によると、ゴーン元会長は知人についてサウジアラビアのビジネス界の重要人物であると説明。日産のために同国の政府や王族へのロビー活動を担っていたほか、日産と現地販売店の間で深刻なトラブルが生じた際に解決に尽力するなどし、約16億円はこうした業務への正当な報酬だったと主張しているという。ゴーン元会長の私的な資産管理会社は08年のリーマン・ショックに伴ってデリバティブ取引の契約で巨額の評価損を抱え、契約相手の銀行から担保不足を指摘された。ゴーン元会長は担保の追加に応じず、08年10月に評価損ごと契約を日産に移転。しかし、証券取引等監視委員会などから契約移転を問題視され、09年2月ごろに契約を資産管理会社に戻したとされる。この際に改めて担保の不足が問題になり、サウジアラビアの知人が銀行に対する信用保証に協力したという。

*17-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?ng=DGKKZO39422390W8A221C1M10800 (日経新聞 2018年12月27日) 「会社に損害」か「正当な支出」か
 カルロス・ゴーン元会長の3度目の逮捕は会社法違反の特別背任容疑。私的な金融取引で生じた巨額損失を日産自動車に一時付け替え、さらに会社の資金約16億円を知人に流出させた疑いがあるとして、東京地検特捜部は「会社私物化」の疑惑に正面から切り込んだ。2008年のリーマン・ショックに伴う急激な円高によって、ゴーン元会長の私的な資産管理会社は通貨取引のスワップ契約で巨額の評価損を抱え、契約相手の銀行側から担保不足を指摘された。ゴーン元会長は担保の追加を拒み、08年10月、契約当事者の立場を資産管理会社から日産に移転。約18億5000万円の評価損を負担する義務を付け替えたという。約4カ月後の09年2月ごろには契約を再移転して資産管理会社に戻したが、その際に評価損の担保不足を巡ってサウジアラビアの知人が約30億円の信用保証で協力した。ゴーン元会長は09~12年、この知人が経営する会社に対し、日産子会社から計約1470万ドル(現在のレートで約16億円)を支出させたとされる。こうした事実関係についてはゴーン元会長側もほぼ認めており、「損害の有無」と「支出の趣旨」が主な対立点となっている。損失付け替えについて特捜部は、たとえ一時的だったとしても「評価損を負担する義務」を負わせたことは会社に損害を与える行為であると判断している。対するゴーン元会長は、契約移転中に定期的な精算で生じた数千万円の支払いも自ら負担しており、「日産に実損はない」と反論している。知人側に支出された約16億円を巡っては、「販売促進費」などの支出名目に実態はなく、信用保証への謝礼などの趣旨だったというのが特捜部の見方。一方、知人は日産のためにサウジで政府や王族に対するロビー活動、トラブル解決などに尽力しており「正当な報酬だった」とゴーン元会長は主張している。特捜部は、当時秘書室長の立場で損失付け替えなどの実務を担った元幹部社員と司法取引で合意し、捜査の支えとなる証言や証拠を得ているとみられる。さらに捜査を進め、証拠によってゴーン元会長の反論を突き崩せるかどうかが問われる。

*17-3:https://www.nikkei.com/paper/related-article/?b=20181226&c=DM1&d=0&nbm=DGKKZO39377820V21C18A2EA1000&ng=DGKKZO39341130V21C18A2EA1000&ue=DEA1000 (日経新聞 2018年12月26日) ケリー役員 保釈 取締役会出席、許可必要に
 日産自動車元会長のカルロス・ゴーン容疑者(64)の報酬過少記載事件で、東京地裁は25日、元代表取締役、グレッグ・ケリー被告(62)の保釈を認める決定をした。保釈保証金は7000万円で即日納付。東京地検の準抗告も棄却し、ケリー役員は同日夜、最初の逮捕から約1カ月ぶりに東京・小菅の東京拘置所を出た。関係者によると、保釈には住居の国内制限、海外渡航の禁止のほか、西川広人社長兼最高経営責任者(CEO)ら事件関係者との接触禁止などの条件が付いた。取締役会や株主総会に参加する場合、事前に裁判所の許可が必要となる。

*17-4:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20181228&ng=DGKKZO39458140X21C18A2CC1000 (日経新聞 2018年12月28日) ゴーン元会長「知人」はサウジ財閥創業家出身 ハリド・ジュファリ氏、30億円保証 日産と合弁の会長も
 日産自動車元会長のカルロス・ゴーン容疑者(64)の特別背任事件で、ゴーン元会長の私的損失を巡って信用保証に協力したのはサウジアラビアの財閥創業家出身で、同国の中央銀行理事も務めるハリド・ジュファリ氏だったことが27日、関係者の話で分かった。日産が中東の販売業務支援のために設立した合弁会社の会長も務めていたという。ジュファリ氏経営の会社には2009~12年、日産側から1470万ドル(現在のレートで約16億円)が入金されており、東京地検特捜部は信用保証の謝礼などの趣旨だったとみて調べている。弁護人によるとゴーン元会長は「日産のための業務の正当な対価であり、謝礼の趣旨はない」と主張しているという。関係者によると、ジュファリ氏はサウジアラビアの財閥「ジュファリ・グループ」の創業家出身。同国有数の複合企業「E・Aジュファリ・アンド・ブラザーズ」の副会長のほか、同国の中央銀行理事も務める。ジュファリ氏が経営する会社は08年10月、アラブ首長国連邦(UAE)に日産との合弁会社「日産ガルフ」を設立。同氏が会長に就任した。当時の発表では、同社は日産の中東市場の販売・マーケティング業務をサポートするとしていた。弁護人によると、ゴーン元会長とジュファリ氏は長年の友人。ゴーン元会長は「ロビー活動や現地のトラブル解決への対価として約16億円を支払った」と説明しているという。ゴーン元会長は通貨取引のスワップ契約で巨額損失を抱えた際、ジュファリ氏から約30億円の信用保証の協力を得た。これにより新生銀行から求められた追加担保を免れたとされる。日本経済新聞はジュファリ氏側に電子メールでコメントを求めたが、回答はなかった。

*18:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20181225&ng=DGKKZO39325660U8A221C1CR8000 (日経新聞 2018.12.25) 初の司法取引 きょう初公判 元幹部ら、タイ贈賄事件
 捜査協力の見返りに刑事責任を減免する日本版「司法取引」が初適用されたタイの発電所建設を巡る贈賄事件の公判が25日から東京地裁で始まる。不正競争防止法違反(外国公務員への贈賄)罪で起訴された元会社幹部3人のうち1人は無罪を主張する見通し。司法取引を巡っては虚偽供述などの恐れも指摘され、公判の行方は今後の制度運用にも影響しそうだ。起訴されたのは三菱日立パワーシステムズ(MHPS)の元取締役、内田聡被告(64)と元執行役員、錦田冬彦被告(63)、元部長、辻美樹被告(57)。起訴状によると、3人は2015年2月、タイの発電所建設に使う建設資材を港で荷揚げする際、荷揚げの許可条件違反を見逃してもらう見返りに、港湾当局の現地公務員に約3900万円相当の現地通貨バーツを支払ったとされる。25日に錦田被告と辻被告の初公判があり、19年1月11日に内田被告の初公判が開かれる。内田被告は無罪を主張する方針とみられる。事件では、法人としてのMHPSが東京地検特捜部と司法取引で合意。関係者によると、同社は合意内容に基づいて80点超の資料を提出し、役員らの事情聴取に協力。必要に応じて役員らが証人として出廷することも合意内容に含まれているという。こうした捜査協力の見返りに特捜部は同社の起訴を見送った。法取引を巡っては、自らの罪を逃れるために虚偽の供述をするリスクが指摘されてきた。今回は個人が罪に問われる一方で企業が起訴を免れたことに「トカゲのしっぽ切り」との批判もあった。公判などを通じて制度の課題や運用のあり方を検証していくことが求められている。

<ゴーン氏を有罪にするための嘘の記述が多いこと>
PS(2019/1/5追加): *19-1の「ゴーン氏が私的投資の損失付け替えを伏せて日産の取締役会承認を得た」と書かれている件は、日産の取締役を馬鹿にし過ぎている。何故なら、取締役は、部長まで勤めあげた人が多く、日産の仕組みや部下の監督に精通しているため、外国人取締役の役員報酬を外貨に替える権限をゴーン氏の秘書室幹部に与える案をゴーン氏が出せば、その目的や日産に損失が出るかどうかなどの必要事項を質問し、承認するかどうか判断できる筈だからだ。そして、私は、一時的に日産の信用を借りただけで、日産に実損は出ていないと思う。
 また、*19-2の「関係者によると、日産社内ではCEO予備費は自然災害に伴う見舞金など予算外の大きな支出に使うことを想定」としているが、この関係者は特捜部(国の機関)だろう。何故なら、国の予備費は自然災害など予定外の大きな支出に使うが、企業のCEO直轄費は多くの企業にあり、目的を明示しないで使うもので、災害の見舞金には損金算入できる費用や寄付金・ふるさと納税などを、目的を明示して使うのが合理的だからである。

*19-1:https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20181225-00000058-mai-soci (毎日新聞 2018/12/25) 投資損失付け替え伏せ、日産取締役会に ゴーン容疑者
 私的な投資の損失を日産自動車に付け替えたなどとして前会長、カルロス・ゴーン容疑者(64)=金融商品取引法違反で起訴=が会社法違反(特別背任)容疑で逮捕された事件で、損失付け替えが分からないよう偽装する取締役会決議が行われたとみられることが関係者への取材で明らかになった。東京地検特捜部は、前会長らが不正の隠蔽(いんぺい)を図る意図があったとみて捜査を進めている模様だ。ゴーン前会長は、新生銀行と契約した金融派生商品取引で多額の損失が生じたため、2008年10月に約18億5000万円の評価損を含む契約を日産に付け替えるなどしたとして21日に逮捕された。関係者によると、付け替えにあたって、新生銀行は前会長に取締役会の承認を得るよう要請。前会長は、自身の名前や損失の付け替えを明示することなく、外国人取締役の役員報酬を外貨に替える権限を秘書室幹部に与える案を諮り、承認されたという。元々、前会長の取引は役員報酬を円からドルに替える内容であったため、この承認で事実上、前会長の損失の付け替えが可能になったという。前会長は取締役会の承認を得たとして、新生銀行側に伝達したとされる。前会長は「(付け替えに関連する)取締役会の承認を得ている。会社に実害も与えていないので特別背任罪は成立しない」と供述している模様だ。これに対し、特捜部は、前会長が他の取締役らに分からないような形で「承認」を得て、側近だった秘書室幹部と共に付け替えを実行したとみている模様だ。この秘書室幹部は、既に特捜部と司法取引で合意しており、付け替えの経緯などについて特捜部に資料提出するなどしているとみられる。

*19-2:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO39665340U9A100C1CR8000/?nf=1 (日経新聞 2019/1/4) ゴーン元会長「直轄費」が焦点 知人側に支出70億円
 日産自動車元会長のカルロス・ゴーン容疑者(64)の特別背任事件で、ゴーン元会長が直轄で管理し、自ら使途を決めることができた「CEO予備費」に疑いの目が向けられている。この経費枠を使ってゴーン元会長の知人側に支出された資金は総額70億円近い。その実態は会社資金の私的流用だったのか、個人的な人脈を使ったトップビジネスだったのか――。関係者によると、CEO予備費は2008年12月ごろ、当時最高経営責任者(CEO)だったゴーン元会長の指示によって創設され、アラブ首長国連邦(UAE)の子会社「中東日産会社」内で管理されていた。中東日産は09~12年、CEO予備費から「販売促進費」などの名目で、ゴーン元会長の知人であるサウジアラビアの実業家、ハリド・ジュファリ氏が経営する会社に約1470万ドル(現在のレートで約16億円)を支出。ほぼ同時期、ゴーン元会長の中東の知人2人が経営するオマーンとレバノンの会社にも、約3200万ドル(同約35億円)、約1600万ドル(同約18億円)を支出していた。関係者によると、日産社内では、CEO予備費は自然災害に伴う見舞金など予算外の大きな支出に使うことを想定。ある日産幹部は「止められなかった責任は我々にもあるが、会社の資金が巧妙に私物化されていた」と問題視する。CEO予備費が創設されたのは、ゴーン元会長の資産管理会社が通貨取引のスワップ契約で約18億5000万円に上る評価損を抱え、銀行側から担保不足を指摘されていた時期と重なる。ゴーン元会長は08年10月、スワップ契約を評価損ごと日産に移転。その後、ジュファリ氏から約30億円の信用保証で協力を得て、09年2月に契約を自身の資産管理会社に再移転した。特捜部は、ジュファリ氏側への約16億円は信用保証の謝礼などの趣旨で、会社法違反の特別背任の疑いがあるとしている。別の2社への支出も私的な目的だった可能性があるとみている。他方、日産は08年10月、ジュファリ氏の会社と共に中東市場の販売・マーケティングを支援する合弁会社「日産ガルフ」をUAEに設立。会長にはジュファリ氏が就任した。オマーンとレバノンの会社も日産の販売代理店を務めるなど、日産とつながりが深い。この時期、日産が中東での販促を強化しようとしていたようにも見える。ゴーン元会長はジュファリ氏側への支出について「サウジの政府や王族に対するロビー活動、現地販売店とのトラブルの解決など、日産のために尽力してもらったことへの正当な対価だった」と説明。信用保証の謝礼など、個人的な目的を否定している。

<ゴーン氏の陳述について>
PS(2019年1月8日追加):有価証券報告書への虚偽記載については、後に報酬を受け取る契約をしていたとしても未受領で、退任後に受領する契約であるため役員退職慰労金となり、「開示されていない報酬は受け取っていない」というのは本当だ。さらに、日産が組んでもおかしくない通貨スワップを一時的に移転しただけで実損は与えておらず、取締役会の承認も得ているため、“特別背任”にはならないだろう。もともとは、メディアが「ゴーン氏の報酬が多すぎる」などという国際標準と異なる批判をしすぎたのが悪いのであり、これでは優秀な外国人は日本に来たがらなくなる。

*20:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190108&ng=DGKKZO39746100Y9A100C1MM0000 (日経新聞 2019年1月8日) ゴーン元会長「私は無実」 特別背任事件で陳述、50日ぶり公の場 勾留理由開示
 日産自動車元会長のカルロス・ゴーン容疑者(64)の特別背任事件で、裁判官が容疑者に勾留理由を説明する勾留理由開示の手続きが8日、東京地裁であった。出廷したゴーン元会長は自ら意見陳述し、「I am innocent(私は無実です)」と会社法違反(特別背任)容疑について潔白を主張した。ゴーン元会長が公開の場に姿を見せるのは2018年11月19日の最初の逮捕以来、50日ぶり。勾留理由開示にはゴーン元会長と弁護人3人、検察官2人が出廷。英語の法廷通訳人も参加した。冒頭、担当する多田裕一裁判官が氏名を尋ねると、ゴーン元会長は「カルロス・ゴーン・ビシャラ」と答えた。多田裁判官が特別背任の逮捕容疑の概要を述べ、勾留には正当な理由があると説明した後、ゴーン元会長は英語で用意した紙を読み上げる形で意見陳述した。ゴーン元会長は「私に対する容疑がいわれのないものであることを明らかにしたい」「私は会社の代表として公明正大かつ合法的に振る舞ってきた」とし、「私にかけられた容疑は無実です。根拠無く、不当に勾留されている」と強調した。特別背任容疑の一つは、08年10月、銀行から担保の追加を求められた通貨取引のスワップ契約を自身の資産管理会社から日産に移転し、評価損約18億5000万円を負担する義務を日産に負わせた疑い。これについて、ゴーン元会長は「日産に損失を負わせない限りにおいて契約を付け替えた」とし、日産に損害は与えていないと主張した。もう一つの容疑は、09年2月ごろにスワップ契約を資産管理会社に戻した際に信用保証で協力したサウジアラビアの実業家側に対し、09~12年、日産子会社から計1470万ドル(現在のレートで約16億円)を支出させた疑い。これについても「(知人の実業家は)日産の支援者で、現地の販売代理店との紛争解決にも尽力した。関係部署の承認に基づいて対価を支払った」とし、正当な支出だったと主張した。さらに、有価証券報告書に自身の報酬を過少に記載したとされる金融商品取引法違反にも言及。「開示されていない報酬は受け取っていない。後に報酬を受け取るという契約もしていない」として虚偽記載を否定した。弁護人は開示手続きの終了後、8日中にも勾留取り消しを東京地裁に請求する方針。取り消しが認められるケースは少ないが、今後の保釈請求も見据え、裁判所に直接ゴーン元会長の主張を訴える機会として開示手続きを利用したとみられる。東京地検特捜部が現在捜査している特別背任事件で、地裁が認めた勾留期限は11日。特捜部は同日までに起訴するかどうかを判断する。

| 経済・雇用::2018.12~ | 01:35 PM | comments (x) | trackback (x) |
2018年10月22、23、24日 外国人労働者と水産業 (2018年10月25、26、28、29日、11月1、2、3、7、14、16、18、20、21、22、23、24、25、27日追加)
  
   2018.10.4 Businessinsider        Goo       東洋経済
(図の説明:左図のように、日本の生産年齢人口は減少しているが、就業者数は増加している。これは、女性・高齢者だけでなく外国人労働者の増加にもよる。また、中央の図のように、日本で就労する外国人の数は、2017年10月末現在で約128万人いるが、このうち本来は労働者でない人が約58万人おり、その建前と本音の違いに限界が生じている。そこで、右図のように、新たに「特定技能」という資格で50万人超を受け入れる検討がなされているが、それでも最長10年の滞在期間・最初5年間の家族同伴不可により、まだ人材開国には程遠いと言わざるを得ない)

(1)外国人労働者の受け入れ拡大
1)外国人労働者の受け入れの必要性
 外国人労働者の受け入れ拡大が議論されているが、その理由には、*1-1・*1-2のように、水産業・農業・食品製造業・造船業・建設業・介護・飲食業・宿泊・サービス業・コンビニ店員など、外国人抜きでは仕事が回らない産業が増えている状況がある。

 外国人技能実習制度は、「日本が、先進国として技能・技術・知識を開発途上国に移転し、開発途上国の経済発展を担う『人づくり』に協力することを目的とする」という建前で作られているため、①3~5年で帰国しなければならず、熟練労働者になれなかったり ②労働内容に細かい制限を課して、労働者としての使い勝手を悪くしたり などの欠点があった。

 しかし、他国との価格競争上、日本人より人件費の安い外国人の労働力は欠かせず、それがなければ価格競争で負けた日本の産業は、繊維・家電・農業・水産業等々のように海外に流出することになる。にもかかわらず、現在は、外国人労働者の受け入れを制限しすぎて、本来は「労働者」ではない技能実習生と留学生を働かせている点が問題なのである。

2)高コスト構造による日本経済の敗北
 *1-2のように、最低賃金の差によって田舎は捨てられるという声もあるが、どこでも外国人労働者は最低賃金で働かなければならないという規則はない。そして、技能実習生は勤め先を変わる自由がないことこそ、外国人労働者に対する人権侵害である。そのため、離島でも付加価値の高い仕事を作りだす必要があり、日本人男性だけでなく、多様な人がアイデアを出せば、その可能性は高まると考える。

 例えば、*1-3のように、主婦の視点で女性農業者が開発したマルニの「ゆで野菜」は、①豊作時に市場価格が暴落する露地野菜を一定価格で買い取るため農家にも利点があり ②新鮮なうちに調理するので採れたての美味しさがあり ③家庭での調理の手間を省き ④家庭で出る生ごみを減らし ⑤都会なら生ごみになる部分を産地なら飼料や肥料にできるため、確かによいと思う。私は、「キャリアウーマン応援野菜」という命名もよいと思うが(女性)、この作業は機械化できると同時に、機械化後の作業を外国人労働者にやってもらうことも可能で、この状況は水産業も同じだ。なお、ゆでるよりも、しっかり洗って蒸した方が栄養素の流出が少ないだろう。

 一方で、*1-2は、安価な労働力に頼るのは危うく、新たな在留資格を設けると最低賃金近くで働く外国人を優先して派遣社員を切る企業が多くなり、仕事を奪われる日本人がいるとも記載している。しかし、企業はよりよい労働力をより安く求めており、国内でそれができなければ産業自体が国外に移転して技術もなくなってしまうのが、グローバル化した世界大競争時代における自由貿易の結果であり、日本人も、頑張らなければ生活できない労働者になる。

3)外国人労働者を受け入れるための環境整備
 政府は、*1-4のように、外国人労働者の受け入れ拡大に向け、来春の新資格創設をめざして、臨時国会に提出する入国管理法改正案などの骨子を示し、新たな在留資格で単純労働にも門戸を開くそうで、本格的な外国人材受け入れへカジを切ったのはよいと思う。

 しかし、「特定技能1号」の在留期間が最長5年、熟練者を想定して高い能力を条件とした「特定技能2号」は定期的な審査を経て長期滞在が可能になるのだそうで、在留資格の付与が小出しであるとともに、外国人労働者に対して極めて不利な条件を課している点で、不十分だ。

 また、外国人が生活するための環境整備は、教育・医療・介護・雇用・年金などがあり、外国人も保険料を支払い、また安心して生活できるように、地方自治体が具体的事例に基づく要望を行って、国はその環境整備に必要な予算をつけなければならないと考える。

(2)水産業の事例 ← 獲り過ぎだけが問題ではないこと

 
     2018.4.26朝日新聞       日本の漁業・養殖業生産量の推移


  世界の水産物生産量と     クロマグロ・二ホンウナギ・サンマの漁獲量推移
 1人当たり消費量の推移

(図の説明:日本の漁獲高は、1984年に1282万トンと最大を示し、2017年には400万トンを切って、1/3以下となった。そのうち養殖業はまあ横這いで、沿岸漁業は少し減少、沖合・遠洋漁業は大きく減少している。また、マイワシの生産量は著しく減少して0に近くなった。一方、水産物の生産量・消費量は世界で増加しており、日本の一人当たり水産物消費量は飛びぬけて多い。さらに、マグロ・鰻の漁獲高は大きく減り、サンマは世界ではさほど減っていないが日本で減った。そのため、漁獲高の減少理由は魚種によって異なると思われる)

 日本は、領海(海岸線から12海里)面積が約38万km2で世界第60位、排他的経済水域(EEZ、海岸線から200海里)面積が世界第6位で、内水を含む領海とEEZを合わせると約447万km2で世界第9位という豊富な海洋資源を持つ国である。

 しかし、*2のように、勝川東京海洋大准教授は、①日本の漁獲量は何十年も直線的に減少しており ②このまま減り続ければ2050年に漁獲がゼロになるペースで ③水産研究・教育機構の調査では、日本沿岸の水産資源の多くは低水準であり ④漁獲しようにも日本近海には魚がいないので、水産資源を守るために乱獲をやめ、水産物の漁獲規制と価値向上を急ぐ必要がある ⑤1989年に38万人いた漁業者は、2017年には15万人まで減少し、その多くは後継者のいない高齢漁業者だ と記載しておられる。

 私は、衆議院議員をしていた2005~2009年の間、佐賀県北部の全漁協・漁村を廻り、離島も含む漁業関係者の話を聞き、農水省に質問もしているため、考えをまとめると以下のとおりだ。

 まず、①については、確かに漁獲高は直線的に減少しているが、その原因の多くは、遠洋漁業・沖合漁業の減少であり、遠洋漁業は日本の若者が次第に労働環境のよくない漁船漁業を嫌い始めたため、漁船の乗組員に外国人の割合が増え、それとともに漁船の船籍や水産会社の国籍が日本から外国に移ったものが多い。そのため、日本人1人当たり水産物消費量はそれほど減っておらず、生産量の減少は外国からの輸入で賄っている。なお、獲れなくなったら捕食者の方が先に減るため、生物の数は、②のように直線的には減らない。

 また、沖合漁業・沿岸漁業の生産量減少は燃油高騰も大きな理由で、漁の損益分岐点が上がって、i)漁に出られない ii)自ら漁師を辞める iii)子に漁師を継がせない などの現象が起こり、その結果が⑤となって現れているのだ。そのため、漁船のエネルギーを燃油から自然エネルギー由来の地元産電力や水素に変更することは、損益分岐点を下げて水産業にも資することになる。

 このように、現在の漁業生産量は1980年代の1/3以下に減少しているため、③④で述べられている日本沿岸や瀬戸内海の水産資源が低水準である理由は、乱獲よりも水環境の悪化と海水の温暖化の方が大きな原因ではないかと考える。

 例えば、工業排水・生活排水などの汚水によって魚が住める環境をなくしたり、農業用除草剤で藻場を枯れさせたり、農薬で川を汚染したりなど、漁業のために水環境を守るという発想が乏しすぎたのだ。そして、近年は、漁村の下水道整備や農薬の制限によって汚水に関しては改善されつつあるものの、川に農業用の堰を作るのは川と海を行き来する魚類の数を減らす原因になっており、海砂を取るのもそこに産み付けられた魚の卵を殺している。さらに、原発を冷やすために海水を使っているのは、幼生を大量の海水とともに取り込んで煮殺して排出している。

 そのため、私は日本のEEZから安定的な水揚げを得る漁業を作りだす必要があることには賛成だが、そのためには、魚が住む環境を守るとともに、次世代を産む親魚を十分に確保できるようにしなくてはならないし、冷凍技術の進歩や6次産業化によって水産物の付加価値を高める必要もあると考える。

 また、近大マグロのような完全養殖魚は、餌を工夫してイワシのような水産資源をできるだけ使わないようにすれば、希望が持てる。

(3)イスラム教を信仰する外国人労働者への対応

  
 外国人を雇用する事業所数     産業別・国籍別雇用者数      *3-1より 

(図の説明:左図のように、我が国では外国人を雇用する事業所が2016年でも17万以上に増加し、中央の図のように、出身国は中国・ブラジル《日系人中心》・フィリピン・ベトナム・韓国など、容貌が日本人とあまり変わらず、仏教国・キリスト教国が多い。一方、右図のように、イスラム教国からの外国人労働者は、著しい女性差別や活動制限の多すぎる文化を持ち込むため、それをどこまで容認するかが問題となる)

 上図のように、地方や中小企業で外国人労働者はなくてはならない存在になっている。しかし、*3-1のように、イスラム女性のドレスコードは一つしかなく、公共の場で全身を覆うブルカを着用しなければ見せしめに罰せられたり、処刑されたりする。そして、これは、イスラム文化の中に住む女性の側からは疑問に思っても変えることのできない女性差別であり、日本に来てもこれをやられると、日本国内でもやっと実現しそうになっている男女平等を後戻りさせる。

 そのため、私は、*3-2のように、女性に、スカーフ・ブルカ・ニカブなどの服装を強制したり、教育や活動で差別したりすることを、「文化の多様性」などと言って認めようとする国連や日本国内の風潮は、テロ対策以前に、女性差別や人権に対して鈍感だと思う。

 また、*3-2・*3-3のように、「①ブルキニがだめならダイビングスーツもだめになる」「②尼僧はどうなんだ」「③ブルキニは女性を解放する」という声もあるそうだが、①のダイビングスーツは潜水する人に合理的必要性があって着るもので、②の尼僧は全員が強制されてなるものではないため、性格が異なる。

 それよりイスラム教国で未だに公の場では女性が肌や髪を出せず、③のようなブルキニで“女性が解放される”などと言っていることこそ、日本なら女性にだけ着物と帯の着用を強制するのと同様、女性の自由な活動を奪っているため、女性に対する人権侵害だ。これは、決してイスラム差別の口実ではなく、イスラム女性の解放は海外経験者から始めるしかないのである。

 そのため、イスラム教系の外国人労働者や家族は、フランスと同様、公の場での黒いベール・ブルカ・ニカブを禁止し、学校はモダンな制服を定めて洋服に慣れさせるのがよいと考える。これは、日本で着物から洋服に変えた時代と同じ方法だ。

<外国人労働者の受け入れ拡大>
*1-1:https://digital.asahi.com/articles/DA3S13734419.html (朝日新聞 2018年10月22日) (多民社会)外国人抜き、仕事回らない 実習生・留学生、造船もコンビニも
 「造船の島」として知られる広島県尾道市の因島(いんのしま)。「彼らぬきで、ものづくりはもう考えられない」。島の南部で、船の床板などをつくる村上造船所の村上善彦社長(59)は話す。工場では、日本人従業員と一緒にタイ人の技能実習生7人が白い火花を散らし、溶接作業に汗を流す。高齢で引退した熟練工に代わり、頼ったのが「日本で技能を学んで母国で生かす」名目で来日した実習生だった。実習生の給与は1年目が最低賃金と同額。2年目から上乗せする。月給は残業代を合わせ15万円ほど。中韓との価格競争を考えれば日本人より人件費が安い実習生は欠かせない。指導する側の日本人従業員の大半は50歳を超えた。きつい作業をいつまで続けられるか分からない。村上社長は「外国人労働者だけで生産できるようにしたい」と本気で考えている。「いらっしゃいませー」。人通りの消えた深夜3時。東京都心のコンビニに入ると、店の奥から声がかかった。バイトをしていたのはウズベキスタン出身のベクさん(22)。都内の日本語学校に通う留学生だ。週3回、夜10時から休憩1時間をはさんで朝8時まで。学費や家賃は月約13万円のバイト代でまかなう。「東京は時給が高い。だから来た。親にはお金を出してもらえないから」。日本語学校や専門学校で学ぶ留学生の多くは、法定の週28時間以内でバイトをしながら学校に通う。都市部では「コンビニ、居酒屋、弁当工場、清掃」が4大職種といわれる。いまコンビニ大手3社だけで、外国人店員は約5万2千人。各社の全従業員の5~8%にあたる。「東京都心に限ると3割を超える」(ローソン)という。
     ◇
 働く現場で「外国人頼み」が強まる。2017年に働き手のうち外国人が占める割合は09年の約2倍になった。「メイド・イン・ジャパン」も例外ではない。都会も地方も、本来「労働者」ではない実習生と留学生が支える。そこにいびつな構図も生まれる。

*1-2:https://digital.asahi.com/articles/DA3S13734428.html (朝日新聞 2018年10月22日) (多民社会)「最後の砦」、法令違反後絶たず
 全国一のホタテ産地である北海道。10月中旬、オホーツク海沿岸の興部(おこっぺ)町・沙留(さるる)漁協では、水揚げが終盤を迎えていた。漁協の加工場で働く45人のうち18人がベトナム人の技能実習生。「地元の人は高齢化で減る一方だ。もう実習生なしでは回らない」と鈴木精一参事は話す。オホーツク一帯では、実習生200人以上が働く自治体もある。ホタテの殻をむき、冷凍やボイルにしている加工場もある。「その取材はダメだ」。実習生頼みの実態を聞こうと地元業者の組合を訪ねると、即座に断られた。ちょうどこの地域に、実習生を受け入れた企業を監督する「外国人技能実習機構」が立ち入り検査に入っていた。相次ぐ抜き打ち検査に、地元の人たちは神経をとがらせる。水産加工で国が認める実習の職種は「加熱加工」などに限定されている。冷凍やボイルが「実習の対象になるかは灰色」(関係者)だ。「実習生頼み」が強まるなか、法令違反の一線を越える例も後を絶たない。北海道に次ぐホタテ出荷量を誇る青森県。県内のある水産会社では、作業員約120人のうち約30人が中国人実習生だ。同社は今年2月、実習生に最大100時間以上の残業をさせたとして労働基準監督署から書類送検された。この問題で、法令を守る態勢の再チェックを受けるため、別の実習生10人を今春受け入れる計画は4カ月延ばされた。この会社の幹部は「地元で募集をかけても日本人は高齢者しかきてくれない」。人手不足に直面する産業にとって、実習生は「最後の砦(とりで)」だ。
■賃金差「田舎は捨てられる」
 鹿児島・沖永良部島。9月中旬、サトウキビ畑の隣ではソリダゴが小さな黄色い花をつけていた。ベトナム人実習生数人がお彼岸用に仕分けをしていた。約1万4千人の島に、100人以上のベトナム人実習生がいるという。取材に応じてくれた農家の男性がつぶやいた。「実習生たちとも、こうしておしゃべりしているけど、いつも『明日は逃げるかもしれない』と思っている」。昨日まで仕事していた実習生が突然、飛行機や船で出ていく。この農家では、15年間で受け入れた実習生約100人のうち、10人以上が失踪した。多くはSNSなどで都市部にいる友人の情報に接し、逃げようと決めるようだ。どこでも実習生は最低賃金ぎりぎりで働いている。鹿児島と東京の最低賃金には200円以上の開きがある。実習生の受け入れには、往復の飛行機代や研修費などで数十万円かかる。失踪されれば、年間の作業計画も立ちいかなくなる。ただ実習生に逃げられた農家の男性は、外国から来た若者たちへの同情も示す。「そりゃ、あの子たちもお金のいいところに行きたいだろう」。実習生には原則、勤め先を変わる自由がない。だからこそ離島にいてくれるのだとも思う。「移動が自由にできるようになったら、誰も島に残らないよね。田舎は見捨てられる」
■建設業、依存高める
 働き手のうち、外国人が占める割合(依存度)は2017年に「51人に1人」に達し、リーマン・ショック後の09年と比べて2・2倍になった。三菱UFJリサーチ&コンサルティングの加藤真研究員が、政府統計を元に外国人への依存度を分析した。依存度が高いのは、宿泊・飲食サービス業で25人に1人、製造業でも27人に1人が外国人だ。なかでも食料品製造業では13人に1人を外国人が占めている。ここ数年で依存度が伸びているのは、東京五輪に向けて特需に沸く建設業だ。90人に1人を外国人が占め、依存度は09年の5倍に増えた。農林業(74人に1人)も3・6倍に増えた。依存度の増加率を都道府県別にみると、沖縄が3・84倍で最大。次いで福岡、鹿児島、北海道と続く。
■<解説>安価な「労働力」に頼る危うさ
 農業も漁業も町工場もコンビニも、日本人だけでは支えられなくなった。政府は新たな在留資格を設ける方針だ。だが外国人労働者の受け入れで一時的に人手不足が解消されても、日本が抱える問題を先送りするだけに過ぎない。最低賃金すれすれで働く外国人を優先し、派遣社員を切る企業も多くなるだろう。仕事を奪われる日本人の側と対立が起きても不思議ではない。神戸大の斉藤善久准教授(労働法)は「低賃金の労働力に頼る日本の産業構造は強まり、生活できない労働者が増える悪循環に陥る」と指摘する。超高齢化が進むなか、外国人が現場を支えたとしても、いずれは母国に帰る。永住権を認めなければ、やがて行き詰まるだろう。では社会保障や日本語教育にかかるコストを、誰がどう負担するのか。国が共生策を示さない現状では、移民に向き合う本質的な議論は封印されたままだ。安価な「労働力」の輸入が生む富は、雇う側に集まるとされる。地方で起きる技能実習生の失踪は、この国の地域格差が背景にある。社会の亀裂を防ぎ、低賃金に甘える産業構造を変えるためにも最低賃金自体の底上げを急ぐべきだ。持続可能性のある「多民社会」の未来をみすえなければ、先には進めない。

*1-3:https://www.agrinews.co.jp/p45553.html (日本農業新聞 2018年10月22日) うま味凝縮 手間要らず 真空パックで温野菜 働く女性支えたい 長崎県雲仙市の会社
 長崎県雲仙市で農産物の生産と加工を手掛ける(株)マルニは、温野菜を真空パックした「ゆで野菜」を時短食材として女性向けに売り込んでいる。主婦の視点で同社の女性農業者が開発した。国産のジャガイモ、ニンジンなどを皮ごとゆでてうま味を凝縮。パックを開ければそのまま使え、調理の下準備が要らない。同社は単身者や働く女性をターゲットに「キャリアウーマン応援野菜」と名付け、販路拡大を進める。使う野菜は、地元雲仙産がメイン。自分の畑以外にも地域の農家5、6戸と連携し、常に安全で安心できる野菜を調達する。豊作時には市場価格が暴落する露地野菜を一定価格で買い取るため、農家側の利点もある。味付けをしていないので、カレーやサラダなど普段の食事の他、そのままつぶせば離乳食にも使える。野菜の味や香り、栄養を残すため、あえて皮付きで加工した。商品は1、2人前の真空パックと使い切りサイズ。未開封なら冷蔵庫で60日間保存できる。ダイコンやジャガイモなど6種類の野菜とスイーツ付きのセットは3800円(税別)。同社のホームページから購入できる。開発した西田真由美さん(56)は農家であり主婦なだけに、女性の忙しさを痛感する。「調理で短縮した時間で本を読んだり子どもと遊んだり、自分の好きなことに使ってほしい」と強調する。

*1-4:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20181018&ng=DGKKZO36619070Y8A011C1EA1000 (日経新聞 2018年10月18日)外国人受け入れ拡大の制度設計を急げ
 政府は外国人労働者の受け入れ拡大に向け、臨時国会に提出する入国管理法改正案などの骨子を示した。新たな在留資格を設け、原則として認めてこなかった単純労働にも門戸を開く。外国人受け入れ政策の転換となる。心配なのは新制度を円滑にスタートできるかどうかだ。新しい在留資格を取得するための能力基準は、まだはっきりしていない。政府は来春の新資格創設をめざしており、時間的余裕は少ない。制度の中身の詰めを急ぐべきだ。一定の日本語力や技能を身につけていれば得られる「特定技能1号」と、より高い能力を条件とした「特定技能2号」の2つの在留資格が新設される。在留期間は1号が最長5年で、熟練者を想定した2号は定期的な審査を経て長期の滞在が可能になる。介護、農業、建設など、多様な分野で人手不足が深刻になっている。日本の成長力の底上げには、その緩和が不可欠だ。本格的な外国人材受け入れへと政府がカジを切ったことは妥当だ。求められるのは在留資格を付与するか否か判定する際、外国人の納得を得られるようにすることだ。透明性の高い制度が、働く場として外国人材に日本を選んでもらうため欠かせない。そのためには新しい在留資格を取得するための日本語能力と技能の試験を整え、合格基準を明確にしなくてはならない。日本語能力の試験は国際交流基金などによるテストが普及しているが、読む力と聞く力の確認に偏っていると指摘される。会話力などをみる民間のテストも取り入れて日本語試験を整備すべきだ。仕事の内容に応じて合格基準を弾力的に定めてもいいだろう。聞く力と話す力が一定程度あれば、就業にあまり支障がない場合も考えられる。技能のレベルをみる試験はもちろん、業種や職種別にきめ細かくつくる必要がある。子弟の就学や医療面の支援など、外国人が生活するための環境整備も急がなければならない。今回、賃金不払いなどの問題が多い技能実習制度は温存され、その見直しは課題として残る。外国人を雇用する企業への監督を強める仕組みが要るだろう。生産年齢人口が減る国は日本だけではなく、外国人材の確保に動く国は多い。外国人が安心して働け、暮らせる環境をつくれるか、日本の本気度が問われる。

<水産業の事例>
*2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20181017&ng=DGKKZO36544400W8A011C1KE8000 (日経新聞 2018年10月17日) 水産資源どう守る(上)乱獲・乱売の発想脱却を、漁獲規制と価値向上急げ 勝川俊雄・東京海洋大学准教授(1972年生まれ。東京大博士(農学)。専門は水産資源学)
<ポイント>
○主要漁業国で日本だけ生産大幅減の予測
○食糧難時代の漁業の仕組みが今なお残る
○消費者に価値伝えるマーケティング必須
 クロマグロやウナギ、サンマなど、我々の食に欠かすことができない水産物が不漁というニュースを頻繁に耳にするようになった。「不漁」という言葉からは、たまたまとれなかったという印象を受けるが、そうではない。日本の漁獲量は何十年も直線的に減少しており、今のまま減り続ければ2050年に漁獲がゼロになるペースである。水産研究・教育機構の調査では、日本沿岸の水産資源の多くは低水準である。漁獲しようにも日本近海には魚がいないのである。1989年に38万人いた漁業者は、17年には15万人まで減少し、その多くは後継者のいない高齢漁業者が占めている。日本だけを見ていると、漁業という産業に未来はないようだが、世界では漁業は成長産業である。国連食糧農業機関(FAO)が主要漁業国の生産量の将来予測をしたところ、先進国・途上国を含めて、養殖を中心に生産が増加するとの予測が得られている。大幅に減らしているのは日本のみである(図参照)。日本の漁獲量の減少要因として、地球温暖化や外国船の影響が引き合いに出されることが多い。世界的には生産は増えているのだから、地球温暖化で日本だけ魚が減るというのは非論理的である。また、沿岸域や瀬戸内海でも水産資源が減少していることから、外国船が問題の本質ではないことがわかる。80年代まで世界一の水揚げを誇った日本の水産業が、なぜ衰退しているのか。歴史を振り返りながら、構造的な問題について論じてみよう。日本の現在の漁業の仕組みができたのは戦後の食糧難の時代である。当時は国家の主権が及ぶのは陸から5キロメートルほどの領海に限られ、その外では好きなだけ魚をとれた。日本は不足する動物性タンパク質を供給するために、官民が協力して積極的に海外漁場を開発した。近場の魚が減れば、船を大きくしてより遠くの漁場へと向かった。流通・販売の事情も全く異なっていた。肉や乳製品は高級品で、日常の動物性タンパク質は水産物しかなかった。高度成長期を通じて人口は増え、水産物は飛ぶように売れた。コールドチェーン(低温輸送網)が未整備で、常温輸送が当然だった。水産物をとにかく消費地まで早く届けることが求められた。戦後の日本漁業が場当たり的に魚をとれるだけとって、市場に並べておくスタイルでスタートしたのは、それが合理的だったからである。そして順調に漁場を拡大し、漁獲量は世界一になり、高い利益を上げた。日本の漁業が輝いていた時代である。その後、漁業を取り巻く状況は大きく変化した。80年前後に各国が200カイリの排他的経済水域(EEZ)を設定し、日本漁船は海外の漁場から次々に追い出された。また途上国の漁船にコストで太刀打ちできなくなり、公海漁場でも勢力を縮小させた。消費構造にも変化があった。経済的に豊かになり、肉や乳製品などが庶民の手の届くようになった。バブル期前後は日本の魚価が世界一高く、海外から水産物が押し寄せた。日本人の水産物の消費量は増加し、01年に1日当たり110グラムに達した。その後は日本経済の停滞と世界的な魚価の高騰で、輸入は減少に転じた。国産魚も輸入魚も減少したために、消費量は16年に67グラムまで減った。国産魚の減少を放置すれば、食卓から水産物が減っていくだろう。漁業の衰退を食い止めるために何をしたらよいだろうか。今後、他国のEEZや公海で漁獲を増やす余地はない。自国のEEZから安定的な水揚げを得る漁業に切り替える必要がある。そのためには次世代を産む親魚を十分に確保できるように、漁獲量を制限しなくてはならない。その上で利益を伸ばすには、水産物の価値を高める必要がある。鮮度処理や加工による付加価値づけや、消費者に価値を伝えるためのマーケティングが求められている。EEZ時代の漁業のあるべき姿は、十分な親魚を残し、とった魚を高く売ることである。そのためにやるべきことは、資源管理と付加価値づけの2点である。日本以外の先進国では、ほぼ全ての商業漁獲対象の魚種に漁獲枠が導入されている。例えば米国は約500魚種、ニュージーランドは約100魚種に漁獲枠を設定している。ノルウェーのように国を挙げて海外市場の開拓やマーケティングに努めている国もある。80年代には、どこの国の漁業も現在の日本と大差のない状態であった。40年かけて資源管理と付加価値づけに取り組んで、漁業を成長産業に転換したのである。日本で国が漁獲枠を設定しているのは8魚種にすぎない。ホッケ、ブリ、カツオ、ヒラメなどの主要魚種もとりたい放題だ。その上、水産資源の持続性を無視して、過剰な漁獲枠が設定されているケースも多い。例えば資源の減少が懸念されるサンマの場合、昨年の漁獲量は7万6千トン、一昨年の11万トンに対して、漁獲枠は年26万4千トンであった。漁獲量の2倍以上の漁獲枠が設定されているのだから、漁獲規制として機能していないことは明白である。日本でも漁獲を規制すれば、短期的に水産資源が回復する可能性が高い。福島県では11年以降、原発事故の影響により、試験操業以外の漁獲が停止した。福島が主漁場だったヒラメの年間の漁獲率(漁獲量を資源量で割った値)は、震災前の6割から、震災後は1割へと減少した。その結果、ヒラメの資源量は震災前の8倍に増えている。漁獲率を下げたことで、魚が増えて、震災前よりも多くとれるようになった。底引き網を引く時間も少なくなり、燃油のコストが軽減された。そのうえ単価の高い大型のヒラメが安定して漁獲できるようになり、収益性は劇的に改善された。しかし、福島県海域で漁獲が全面再開されて、震災前のように全力で魚をとれば、数年で震災前の水準に戻るだろう。漁業が継続的に利益を生む状態を維持するには、漁獲規制が不可欠なのだ。漁獲規制に加えて、水産流通のあり方も見直す必要がある。安心安全を担保するためにトレーサビリティー(生産流通履歴)を確立し、バリューチェーン(価値の連鎖)を構築して、水産物の価値を消費者に伝えられるようにしなくてはならない。日本のEEZの広さは世界第6位で、その中に世界屈指の好漁場がある。資源管理さえすれば、安定して高い漁獲を上げることができる。また、世界に誇る魚食文化や加工技術があるので、魚の付加価値づけもできるはずである。日本の漁業は高い潜在力を持っているのだが、それが全く発揮できない漁業の現状がある。これを改めない限り、日本漁業に未来はない。日本でも、政治主導で漁業を改革する動きが活発化しつつある。今年1月の安倍晋三首相の施政方針演説では、漁獲量による資源管理を導入し、漁業の生産性を向上するという方針が示された。その後の規制改革推進会議では、漁獲規制による資源回復、水産物流通におけるトレーサビリティーの確保、水産物の付加価値を高める取り組みなどが、具体的に議論されている。他国の成功から謙虚に学び、日本にあったやり方で資源管理と付加価値づけに取り組んでいけば、日本の水産業が長いトンネルを抜ける日はそう遠くないだろう。

<イスラム文化と外国人労働者>
*3-1:https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2016/09/isis-80.php (ニューズウィーク日本版ウェブ 2016年9月8日) イスラム女性に襲われISISがブルカを禁止する皮肉
 ISIS(自称「イスラム国」、別名ISIL)の支配地域に暮らすイスラム教徒の女性にとって、ドレスコードは一つしかない。全身を覆うブルカだ。公共の場でブルカを着用しなければ見せしめに罰せられ、最悪の場合、処刑される。だが今後は、逆にブルカや顔を隠すベールを禁止せざるを得なくなるかもしれない。イラン国営の衛星放送「アルアラム」が伝えた。最近はフランスで、イスラム教徒の女性が着る肌の露出を控えた水着「ブルキニ」着用の是非をめぐる論争が過熱しているが、今度はISISが、イスラム女性が顔を隠すベールの着用を禁止しようとしているという。きっかけは、ブルカがISISに対するテロ攻撃に一役買う事件が起きたことだ。イラクの英語ネットメディア「イラキ・ニュース」の報道によると、事件は9月5日にイラク北部モスルの南方にあるシャルカットの検問所で発生した。ベールで顔全体を覆った一人の女が、隠し持っていたピストルでISISの戦闘員2人を撃ち殺したのだ。ブルカの着用は、厳格なイスラム国家の樹立を目指すISISにとっては絶対のはず。それが治安上の理由で例外を認めなければならないとは実に皮肉だ。今後も町の中ではブルカの着用が強制されるが、モスルにある治安施設や軍の検問所では着用が禁止される。モスルは2014年6月にISISが制圧したが、イラク軍や米軍主導の有志連合による空爆で劣勢に立たされている。
●ヨーロッパのテロ対策
 治安維持の問題としてブルカなどの着用を禁止する議論は、もともとヨーロッパの国々が始めたことだ。ヨーロッパで増え続けるイスラム教徒や、ISISに感化されたローンウルフ(一匹狼)によるテロが相次いだことに、各国政府が警戒を強めているからだ。国として顔の全体を隠すベールの着用を禁止したのはフランスとベルギーだけだが、イタリアやスイスでも各自治体の判断で禁止できる。移民に寛容な政策をとってきたドイツでも、相次ぐテロを背景に、ブルカ着用の禁止を支持する世論が高まりつつある。最近ではやはりフランスで、肌を露出できないイスラム女性のための水着ブルキニを禁止する動きが広がって、人種差別と批判された。ISISの支配下で女性がブルカ着用の義務から完全にブルカ着用を全面的に免除するよう方針転換するとは思えない。だが8月上旬にISISから解放されたばかりのシリア北部マンビジュの様子を伝えた映像や写真から、ISIS撤退後のモスルの光景は想像がつく。女性たちは堂々と顔を出して解放を喜んでいた。

*3-2:https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2016/08/post-5721.php (ニューズウィーク日本版ウェブ 2016年8月26日) フランス警官、イスラム女性にブルキニを「脱げ」
 フランス・ニースの海岸で警官がイスラム女性を取り囲み、服を脱がせる写真が話題になっている。今フランスでは、顔と手足以外の全身を覆うイスラム風の水着ブルキニの着用を禁止する自治体が相次ぎ、20カ所以上にのぼっている。ニースもそうした海岸の一つだ。だが、何も悪いことをしていない女性が武装した警官に命じられて服を脱ぐ光景は、まさにブルキニ禁止の理不尽さを象徴する光景。ロンドンのフランス大使館前ではブルキニ禁止に抗議するデモも行われた。そもそもなぜブルキニがだめなのか? フランスが既に禁じているイスラム女性のスカーフ、ブルカやニカブと違い、ブルキニは顔を覆わない。ブルキニがだめならダイビングスーツもだめになる。尼僧はどうなんだ、という声もある。ブルキニは、公の場で肌や髪を出せないイスラム女性のために考え出された水着に過ぎない。「フランスの価値観に反する」(バルス首相)、「公共の秩序を乱す」(ニース市長)などと理屈をいくら言われても、イスラム差別の口実ではないか、と思う。警官の写真で、それが確信に変わった人も多かったのではないか。

*3-3:http://digital.asahi.com/articles/ASJ913W06J91UHBI00K.html?iref=com_alist_8_02(朝日新聞2016年9月2日)「ブルキニは女性を解放」 デザイナーが込めた思いとは
 フランスの自治体が禁止して議論を呼んだイスラム教徒の女性向け水着「ブルキニ」。その「生みの親」であるオーストラリア人女性のアヒーダ・ザネッティさん(49)が朝日新聞の取材に応じ、「宗教を誇示するものではなく、女性を解放するものだ」と訴えた。ザネッティさんは、シドニー郊外でイスラム女性向けブティックを営む。レバノン生まれで2歳で豪州へ移住したイスラム教徒だ。きっかけは約13年前のバスケットボールに似たネットボールの試合だった。小学生のめいが長ズボンにハイネックのシャツ、頭にスカーフの姿で、暑さに真っ赤な顔でプレーしていたのを見て「信仰と豪州のライフスタイルが両立する服をつくろう」と決心した。フード付きのシャツにするなどして髪や体の線を見せずに機能的なユニホームをつくり、次に取り組んだのが水着だった。イスラム女性は「普段と同じ服で海へ入ってぬれるか、浜辺で足をひたすくらいしかできない」状況だったからだ。イスラム女性服のブルカと水着のビキニから「ブルキニ」と名付け、商標登録。9千~1万5千円程度で2004年からオンライン販売を始め、08年からこれまでに世界中で約70万枚を売り上げたという。フランスの複数の自治体が「宗教を誇示し、治安を乱す」などの理由で禁止したことには「悲しく困惑している」と話す。購入者の半分以上は非イスラム教徒で、皮膚がんや日焼けが心配な人や体の線を出したくない女性にも需要が高く、「イスラム女性を解放したいと工夫し、非イスラム教徒にも支持されている」と訴えた。豪カトリック大・宗教・政治・社会研究所のジョシュア・ルース所長は「1970年代に白豪主義に終止符を打ち、政教分離や世俗的な意識が強い豪州らしい発明品だ。豪州は、政府の戦略的な移民受け入れや強い社会福祉ネットで多文化主義に成功してきたが、直近の選挙では極右政党が躍進するなど懸念材料もある。仏のようにならないためには政治に意志と指導力が必要だ」と話す。

<就業者数が増えているのに少子化が問題?>
PS(2018年10月25日追加):*4に「①医療・介護などの歳出膨張をどう抑え、2019年10月の消費税率10%に引き上げ後の財政健全化の具体策を明らかにしてもらいたい」「②政府は外国人労働者の受入拡大に向けた入国管理法改正案を今国会に提出する」等が記載されている。
 しかし、①の医療・介護などの歳出膨張を抑える方法は、i)高齢者を就業させれば健康を維持できる期間が延び、医療・介護の支え手にもなること ii)再生医療や免疫療法等で病気を治せば、医療費・介護費を減らせること iii)医療保険で他国より高い値段で薬品購入するのをやめさせること iv)女性や外国人労働者の就業が増えれば、医療保険・介護保険の支え手が増えること v)役所もぼーとしていないで税外収入を得ればよいこと などがあり、現状維持を前提として「財政健全化=消費税増税」などと国民負担の増加のみを考えている点が浅い。
 つまり、財政健全化には、増税以外にまず無駄な歳出を徹底してなくすことが必要で、国に国際基準に基づいた公会計制度を導入するのがその第一歩になる。なお、保育所の充実や教育・保育の無償化は、少子化対策よりも質の高い人材の割合を増やすために必要だと考える。

*4:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20181025&ng=DGKKZO36895030V21C18A0EA1000 (日経新聞 2018年10月25日) 少子高齢化を克服する具体策が聞きたい
 自民党総裁選で勝利した安倍晋三首相は、あと3年の任期でいったい何を成し遂げるのか――。24日に召集された臨時国会の最大の焦点はそこにある。首相は衆参両院本会議の所信表明演説で「激動する世界を、そのど真ん中でリードする日本を創り上げる。次の3年間、私はその先頭に立つ決意だ」と強調した。重点政策に掲げたのは、国土強靱(きょうじん)化、地方創生、外交・安全保障の3つの柱だ。今国会で政府は西日本豪雨や北海道地震に対応する2018年度補正予算案の早期成立をめざす。迅速な復旧作業は当然だが、公共事業費のバラマキを避けるには災害に強い都市の将来像とセットで議論していく必要がある。地方創生では「全世代型社会保障」「生涯現役の雇用制度」「即戦力となる外国人材の受け入れ」に言及した。首相は「少子高齢化という我が国最大のピンチもまた、チャンスに変えることができるはずだ」と訴えた。安倍政権がめざす社会保障改革の中身はまだ不明確だ。医療や介護などの歳出膨張をどう抑え、19年10月に消費税率を10%に引き上げた後に財政健全化にいかに道筋をつけるか。具体策を早く明らかにしてもらいたい。政府は外国人労働者の受け入れ拡大に向けた入国管理法改正案を今国会に提出する。野党は就労を目的とした新たな在留資格について「事実上の移民政策だ」と指摘し、対決姿勢を強めている。介護、農業、建設分野などの人手不足を緩和し、成長力を底上げしていく方向性は正しい。同時に来日した外国人の生活を安定させて治安の悪化を避ける環境整備などについて、与野党で議論をもっと深める必要がある。首相は憲法改正に関して「政党が具体的な改正案を示すことで、国民の理解を深める努力を重ねていく」と強調した。自民党は憲法審査会に9条への自衛隊明記を含む改憲4項目の考え方を示す方針だ。幅広い合意形成には、他党の意見に耳を傾ける謙虚な姿勢が大事だろう。2日に発足した第4次安倍改造内閣では、新閣僚らの「政治とカネ」をめぐる疑惑が相次いで報じられた。野党は森友、加計両学園問題も引き続き追及していく構えだ。政府・与党は政治不信を招かないように、事実関係を国会で丁寧に説明していく責任がある。

<外国人労働者の差別はよくないこと>
PS(2018年10月26日追加):*5-1のように、自民党は、法務部会で治安悪化や環境整備の遅れに対する懸念の声が相次いで、「①期限なく家族の帯同を認めるのは話が違う」「②まず日本人の賃金を上げるべき」「③長期的な問題をしっかり制度設計すべき」「④外国人の権利について議論を深めることが大事」「⑤外国人を一元的な番号で管理すべき」などの反対意見により、外国人労働者受入拡大の新たな在留資格創設の部会了承を29日以降に見送るそうだ。
 しかし、②の気持ちはわかるものの、日本は人材鎖国をして産業を海外に追い出してきたし、①の「家族の帯同を認めない」は、*5-3のようなトランプ大統領批判をしながら言う人は自己矛盾だ。また、野党の移民・難民受け入れ反対も、*5-2の日本国憲法前文の中の「いずれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならない」に反する。さらに、技能実習生の労働形態には、18条の「何人も、いかなる奴隷的拘束も受けない。又、その意に反する苦役に服させられない」に反する部分がある。そのため、③④は尤もだが、素早く手を打つ必要があるため、具体的な問題は走りながら考えた方が効果的だと思う。また、⑤については、メディアの報道と異なり、外国人の犯罪率が日本人よりも高いという統計はないため、差別はよくない。
 そして、イスラム教の問題も、入国時に日本国憲法をしっかり教えておけば、20条に「何人も信教は自由だが、宗教上の行為、祝典、儀式又は行事に参加することを強制されない」ということが明記されているので、解決できるのではないかと考える。従って、私は、日本国憲法の内容は先進的で素晴らしいと思う。

*5-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20181026&ng=DGKKZO36923210V21C18A0PP8000 (日経新聞 2018年10月26日) 外国人の受け入れ拡大 自民、法案了承先送り 法務部会
 自民党は外国人労働者の受け入れ拡大に向けた新たな在留資格を創設する出入国管理法改正案の部会了承を29日以降に見送る。当初は26日の了承を目指していたが、法案を審議する法務部会で治安悪化や環境整備の遅れに対する懸念の声が相次いだため慎重に議論することとした。岸田文雄政調会長や長谷川岳法務部会長が25日、党本部で協議して先送りを決めた。部会での了承を急げば自民党を支持する保守層から反発が出かねないと判断した。来年夏の参院選をにらんで丁寧な審議を強調する。協議には小泉進次郎厚生労働部会長も出席し、厚労部会でも同法案を議論することを確認した。法務部会が24、25両日に開いた関係団体へのヒアリングでは、出席議員から在留資格の新設への賛否が交錯した。反対意見では「期限がなく家族の帯同を認めるというのは話が違う」「まずは日本人の賃金を上げるべきだ」などの意見が出た。「長期的な問題をしっかり制度設計するべきだ」「外国人の権利について議論を深めることが大事だ」「外国人を一元的な番号で管理すべきだ」などの声もあがった。入管法改正案は国内の人手不足を解消するため(1)滞在期間が最長5年で家族の帯同を認めない(2)熟練した技能を証明すれば滞在期間の更新と家族の帯同を認める――との2種類の在留資格を新設する内容だ。臨時国会で同法案を成立させ、来年4月から新制度の運用を始める方針だ。公明党も25日の会合で、入管法改正案に関して議論した。法案の了承は来週以降になる。野党は同法案を「移民法案」と批判しており、今国会で最大の対決法案になる見込みだ。

*5-2:http://www.houko.com/00/01/S21/000.HTM (日本国憲法 抜粋) 
前文
 日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し、われらとわれらの子孫のために、諸国民との協和による成果と、わが国全土にわたつて自由のもたらす恵沢を確保し、政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意し、ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する。そもそも国政は、国民の厳粛な信託によるものてあつて、その権威は国民に由来し、その権力は国民の代表者がこれを行使し、その福利は国民がこれを享受する。これは人類普遍の原理であり、この憲法は、かかる原理に基くものである。われらは、これに反する一切の憲法、法令及び詔勅を排除する。日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであつて、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めてゐる国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ。われらは、全世界の国民が、等しく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する。われらは、いづれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならないのであつて、政治道徳の法則は、普遍的なものであり、この法則に従ふことは、自国の主権を維持し、他国と対等関係に立たうとする各国の責務であると信ずる。日本国民は、国家の名誉にかけ、全力をあげてこの崇高な理想と目的を達成することを誓ふ。
第18条 何人も、いかなる奴隷的拘束も受けない。又、犯罪に因る処罰の場合を除いては、
      その意に反する苦役に服させられない。
第20条 信教の自由は、何人に対してもこれを保障する。いかなる宗教団体も、国から
      特権を受け、又は政治上の権力を行使してはならない。
    2 何人も、宗教上の行為、祝典、儀式又は行事に参加することを強制されない。
    3 国及びその機関は、宗教教育その他いかなる宗教的活動もしてはならない。

*5-3:https://www.jiji.com/jc/article?k=2018062001291&g=int (時事 2018/06/20) 英首相、米移民政策を批判=トランプ氏に問題提起へ
 メイ英首相は20日、議会で、不法移民の親子を引き離して収容するトランプ米政権の政策に関し、「子供がおりのような場所に入れられている画像に深く心をかき乱される。これは間違っており、同意しない。英国の(移民に対する)アプローチではない」と批判した。トランプ大統領は来月訪英する予定。メイ首相は「米国に不同意である時はそう伝える」と述べ、首脳会談でこの問題を取り上げる考えを示した。トランプ氏の訪問を拒否すべきだという声も上がっているが、首相は「大統領と議論するのは正しいことだ」と一蹴した。

<原発に経済合理性はないこと>
PS(2018年10月28日追加): *6-1のように、伊方3号機が再稼働したが、原発は温排水で水産業に悪影響を与えているだけでなく、*6-2のように、原発事故後、放射性物質の検査項目について合意していないため日本産食品に厳しい輸入規制を課したり、福島・宮城・茨城など10都県産の食品全部を輸入停止にしたりしている国は多い。日本国民も放射性物資の検査基準・検査項目・検査方法に合意はしていないが、これらの食品は国内では販売されており、原発は多額の被害を出して国民に迷惑をかけながら、保障もしていないのが実情なのである。
 一方、*6-3のように、北海道地震に伴う全道停電の間も、太陽光パネルを設置している家庭の多くは運転モードを切り替えることで電気を使えたため、災害時非常用電源としても太陽光発電の有効性が注目された。しかし、*6-4のように、九電は、再度、再エネ事業者に出力制御実施を要請し、その理由を、相変わらず「電力の需給バランスを整えることで大規模停電を防ぐため」と説明している。
 ただ、*6-5のように、太陽光など再エネ発電による電力価格は現在は高すぎるため、自家消費した残りの電力を販売するように導くため、*6-6の中国電力の単価を参考にすれば、再エネ電力の販売単価を高圧TOUAの最安値である9円68銭/kWh以下(例えば5~9円/kWh)に設定すれば、経済合理性から再エネを利用する企業が増える。そうすると、*6-7のような日本一の養殖ノリ生産地でも、遠浅の海を利用して支柱に風力発電機をとりつけてノリ養殖を行い、ハイブリッドで稼ぐことが可能になりそうだ。

  
2018.10.27東京新聞    有明海の海苔養殖(種付け時、成長後、製品完成)

(図の説明:有明海は日本一のノリの生産地で、ブランド化された右の写真の「有明海一番」は特に厳選された製品だが、ブランド品でなくても香りが良くて美味しいことは間違いなく、養殖の成功例だ。しかし、水産業者の所得向上には、風力発電を設置して水産業とハイブリッドで稼ぎ、燃料は輸入重油から再エネ由来・自家発電の電力や水素に変更するのがよいと思う)

*6-1:http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2018102701001684.html (東京新聞 2018年10月27日) 伊方3号機再稼働、臨界へ 愛媛、30日に発送電開始
 四国電力は27日未明、伊方原発3号機(愛媛県伊方町、出力89万キロワット)を再稼働させ、原子炉内で核分裂反応が安定的に持続する「臨界」に向け作業を進めた。順調に進めば臨界に達するのは27日夜。30日に発電と送電を始め、11月28日に営業運転に移る見通し。稼働中の原発は関西電力高浜4号機、九州電力川内1、2号機など全国で計8基となった。27日午前0時半、燃料の核分裂を抑えていた制御棒を引き抜き、原子炉を起動させた。臨界に達した後は、蒸気でタービンを回して発送電を開始する。出力を徐々に上げて調整運転を続け、原子力規制委員会の最終検査を経て営業運転に移る。

*6-2:https://www.agrinews.co.jp/p45615.html (日本農業新聞 2018年10月27日) 原発事故で規制の日本食品 輸入緩和を検討 中国
 安倍晋三首相は26日、北京で開かれた日中首脳会談で、中国側が日本産食品に対する輸入規制の緩和を検討する考えを示したことを明らかにした。中国は、東京電力福島第1原子力発電所事故に伴い、10都県産の全ての食品の輸入を停止している。今後両政府間で調整し、規制緩和の対象となる品目など具体的な内容を詰めるため、どこまで緩和されるかは、不透明な状況だ。安倍首相は同日、李克強首相との会談後、「東日本大震災以来続いてきた日本産食品に対する輸入規制について、中国側から、科学的な評価に基づき緩和することを積極的に考える旨、表明があった」と述べた。今後の規制緩和を見据え「中国の皆さんに日本が誇るおいしい農産物をもっと堪能していただきたい。活発な貿易は日中両国民の絆をさらに深める」とも強調した。同国は2011年の原発事故後、日本産食品に厳しい輸入規制を設定。福島、宮城、茨城など10都県産の食品全てを輸入停止の対象にしている。10都県以外も野菜や果実、牛乳、茶葉などは放射性物資の検査項目については両国間で合意していないため、日本からの輸出はできていない。

*6-3:http://qbiz.jp/article/141836/1/ (西日本新聞 2018年10月4日) 住宅太陽光を非常電源に 北海道地震、全域停電で威力 国「自家消費の手順確認を」
 北海道地震に伴う全域停電(ブラックアウト)の間でも、太陽光パネルを設置している家庭の多くでは、運転モードを切り替えることで電気を使えていたことが分かり、災害時非常用電源として太陽光の有効性が注目されている。経済産業省資源エネルギー庁は「平時から各家庭で操作方法を確認し、非常時に使えるように備えてほしい」と呼びかけている。一般社団法人太陽光発電協会(東京)が地震後、道内の家庭用太陽光パネル設置者を対象に非常時の活用についてアンケートを実施。2日までに367世帯から回答があった。その結果、発電した電気を自家消費する「自立運転に切り替えた」としたのは、82%の302世帯。一方、活用しなかった世帯は「そもそも自立運転機能を知らなかった」などと答えたという。電力会社の配電線を介さずに太陽光の電気をそのまま使えるようにする自立運転にすると、日照時間帯に限って非常用コンセントで最大1500ワットが使用可能となる。冷蔵庫や携帯電話の充電にはまず支障がない発電量だ。アンケートには「テレビで情報を得たり、友人の携帯電話の充電もできたりした」といった声が寄せられたという。固定価格買い取り制度の効果もあり、家庭用太陽光パネルの設置は全国で増加。経産省によると、九州での導入件数は2017年末現在で約34万5千件に上っている。自立運転への切り替えは基本的に(1)ブレーカーを落とす(2)自立運転のスイッチを入れる−という手順だが、詳細はメーカーによって異なる。このため識者からは「非常用電源としての活用を広げていくためには、国が手順の統一化を検討するべきだ」との指摘が出ている。

*6-4:http://qbiz.jp/article/143132/1/ (西日本新聞 2018年10月27日) 九電28日に出力制御実施も
 九州電力は26日、太陽光発電など再生可能エネルギー事業者に一時的な稼働停止を求める「出力制御」を、28日に九州本土で実施する可能性があると発表した。天気予報などを基に27日夕までに有無を判断する。27日は実施を見送る。28日は好天で太陽光発電量の増加が見込まれる一方、過ごしやすい気温で冷暖房の使用が控えられ、休日で事業向け電力需要が減少すると見ている。出力制御は、電力の需要と供給のバランスを整えることで大規模停電を防ぐための措置。九州本土ではこれまで13日以降、週末に計4回実施している。

*6-5:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20181027&ng=DGKKZO36980350W8A021C1EA4000 (日経新聞 2018年10月27日) 太陽光買い取り、新価格の公表を 経産省、固定制度終了迫り
 太陽光発電を決まった価格で買い取る制度が2019年から順次終わるのを受け、経済産業省は大手電力に次の買い取りメニューを公表するよう求めた。買い取りが無償になるとの誤った情報で、自家発電用の蓄電池を売るといった悪質な商法が広がる恐れがあるためだ。混乱が広がるのを防ぐため、消費者庁と連携して対策を急ぐ。住宅の屋根などに置く太陽光パネルによる発電を長期間、固定した価格で買い取る制度は09年11月に始まった。使い切れず余った電気を電力会社に売る仕組みだ。10年目となる19年に初めて期限を迎える。対象は19年の11月と12月だけで53万件に達し、23年までに165万件となる見通しだ。制度が終わると、電力を自宅で使うか、新たに電力会社が示す価格で売ることになる。風力などとあわせて固定価格買い取り制度(FIT)となった12年度の価格は1キロワット時あたり42円だった。制度終了後の価格はほとんど公表されていない。経産省は電力会社に対し、期限が迫る家庭に早急に通知することと、大手は遅くとも19年6月末までに新たな価格を示すことを要請した。

*6-6:http://www.energia.co.jp/elec/b_menu/h_volt3/pricelist_sangyou.html (中国電力の事例 抜粋)
■高圧電力A:電力量料金は,昼夜間の時間帯を区分しない標準的なメニュー。
①基本料金     1,220円40銭 /kWh
②電力量料金
   ・夏季      14円62銭 /kWh
   ・その他季    13円37銭 /kWh
■高圧TOUA:•高圧電力Aに比べ,昼間は割高,夜間や休日等(※注)は割安な電力量料金を設定したメニューで、夜間・休日等に使用量の多いお客さまにおすすめ。
①基本料金     1,220円40銭 /kWh
②電力量料金
  ピーク時間     20円61銭 /kWh
  昼間時間
   ・夏季      17円13銭 /kWh
   ・その他季    15円97銭 /kWh
   ・夜間時間     9円68銭 /kWh

*6-7:http://qbiz.jp/article/143014/1/ (西日本新聞 2018年10月25日) 有明海で養殖ノリの種付け解禁 佐賀県、16年連続首位狙う
 有明海の秋の風物詩となっている養殖ノリの種付け作業が25日、福岡、佐賀、熊本の3県で解禁となり、穏やかな海面を鮮やかなノリ網が彩った。ノリの初摘みは11月下旬ごろを予定。佐賀県有明海漁協は今シーズンの売上高231億円、生産量18億5千万枚を目標に掲げ、いずれも16年連続となる日本一を目指す。佐賀市の広江漁港では25日未明から、漁船が長さ約18メートル、幅約1・5メートルの網を載せ、次々と出航。沖合に到着した漁師らは、ノリの種付きのカキ殻がぶらさがった網を、海中にささる支柱に取り付けて丁寧に広げ、作業を終えると、お神酒を手にノリの成長を祈った。同漁協の徳永重昭組合長は「今年は、台風で支柱が倒れるなどの影響もあったが間に合った。連続して日本一が取れるよう、頑張っていきたい」と話した。

<プラスチック革命>
PS(2018年10月29日追加):*7-2のように、マイクロプラスチックが世界の塩の9割で検出されたり、海洋生物に被害を与えたりして海洋汚染が深刻化しているという問題について、*7-1のように、プラスチック製のペットボトル・弁当容器・惣菜容器・ストロー・レジ袋などのプラスチック製品の有料化や使用禁止を言い立てているメディアは多い。しかし、これは「環境保護には不便に耐えることが必要」と主張しすぎて、環境保護を煙たい存在にしている。
 実際には、レジ袋やストロー等の使用量が多くても、使用後にゴミ箱に捨てて燃やしていれば何ら問題はなく、「ゴミ箱(透明な袋を設置する形式のものもある)を置かない」「ゴミ箱があってもそこに捨てない」など、(津波で流されたもの以外は)人のマナーの悪さが問題なのである。環境省の政策担当者や記者は、布製のマイバッグに、肉・魚・冷たいものなどを直接入れると水分が生じた際に濡れるので、買い物の度に洗濯しなければならないことをご存知か?
 それよりも、プラスチック製品は原油から作るため、化石燃料を使わなくなれば原料も減り、日本なら竹や木材から強い紙やプラスチックを作って代替することが必要になるが、紙であっても使い終わったらゴミ箱に捨てるのが当然のマナーだ。
 そして、ペットボトルその他のプラスチックは再利用できる資源だが、住民に不便がないようにしながら(ここが重要)、きちんと分別して再利用できるようにしている自治体は殆どなく、ゴミを中国やタイなどに輸出していたとは論外だ。そして、今度は、生活を不便にしたり、家事担当者の負担を重くしたりすることしか考えつかないのは、いくら何でも愚かすぎる。
 なお、プラスチックをリサイクルするには、回収して洗浄し原料の形にしなければならないが、向島などの国境離島ではない過疎の離島にリサイクル工場と住居を作り、技術を持たない難民を、*7-3の外国人労働者として受け入れる方法もある。そうすると、外国で発生したプラスチックごみの再処理までできるかも知れないが、受入人数の総量を規制するには必要人数を事前に把握しなければならないので、次世代の人口割合も変わらないようにするためには、「日本に来てから産める子どもの数は○人以下」とするなどの制限をつけた方がよいだろう。その理由は、日本人の出生率が1.5のところに出生率6の民族が入ると、次世代ではその民族の割合が日本人の4倍になるからで、これが米国が経験していることなのである。

*7-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20181029&ng=DGKKZO37050570Z21C18A0PE8000 (日経新聞社説 2018年10月29日) プラスチックごみ削減へルール明確化を
 環境省はスーパーやコンビニエンスストアのレジ袋の有料化を義務付ける方針だ。廃棄されて海を汚染し、魚介類を通して人体に悪影響を及ぼす懸念もあるためだ。ペットボトルなどを含め、プラスチックごみ全体の削減につながる実効性のある制度が必要だ。レジ袋の使用量は国内で年間450億枚と推定される。スーパーの多くは既に自主的に有料にし、レジ袋を辞退する買い物客が半数を超えるという報告もある。一方、コンビニでは有料化が進んでいない。少量の飲食物を買うのに適した、小さく折り畳めて持ち歩きやすいマイバッグの普及など、工夫の余地はある。消費者の意識改革も促したい。もっとも、レジ袋は国内で廃棄される使い捨てプラスチック製品の一部を占めるにすぎない。ペットボトルや弁当容器など多様な製品を減らすにはメーカーの協力が欠かせない。たとえば、使い勝手の良さから種類が増えているペットボトル飲料の削減は企業の商品戦略に直結する。使用済みペットボトルの回収・再利用も課題を抱える。市町村やメーカーが回収するが、3割程度は中国などに輸出されている。再利用の処理の過程で一部が海に流出し、汚染源となっている。中国は最近、廃プラスチックの輸入を禁じた。タイなども規制に動き、使用済みペットボトルは行き場がなくなりつつある。環境省は2030年までに、使い捨てプラスチック容器や包装、レジ袋などの排出量を25%減らす目標を掲げた。しかし、どの時点と比べるかなどは曖昧で、ルールの明確化が欠かせない。アジア諸国の削減も支援するというが、それには、ペットボトルなどの処分を国内で完結させるしくみが必要だ。再利用しきれないプラスチックを高温で焼却処分し、熱を回収して発電に使う最新設備などの普及を急ぎたい。植物原料のプラスチックなど代替品の活用も重要だ。過去に多数の技術開発計画を実施しながら国内で事業化が進んでいないのはなぜか。課題を洗い出し、利用を増やす方法を探るべきだ。1人当たりの使い捨てプラスチック使用量が世界最多の米国と2位の日本は、6月の主要7カ国(G7)首脳会議で削減目標を盛り込んだ「海洋プラスチック憲章」に署名しなかった。国際社会の厳しい視線も忘れてはならない。

*7-2:http://www.tokyo-np.co.jp/article/economics/list/201810/CK2018102802000126.html (東京新聞 2018年10月28日) 世界の塩9割で微小プラを検出 39種調査
 海洋汚染が深刻化している微小なマイクロプラスチックが世界各地の塩から見つかったと、韓国・仁川大と環境保護団体グリーンピースのチームが発表した。二十一の国・地域から集めた三十九種のうち九割から検出され、アジアの国で含有量が多い傾向にあった。日本の塩は調査対象外。これまで各地の水道水や魚介類などからの検出も報告されており、世界で食卓の微小プラスチック汚染が進んでいる恐れがある。チームは「健康と環境のため、企業は率先して使い捨てプラスチック製品の製造や使用を減らす努力をするべきだ」と強調した。大きさ五ミリ以下のマイクロプラスチックは海などに大量に存在し、表面に有害な化学物質を吸着する性質がある。人の健康への影響は詳しく分かっていないが、日本や欧州など八カ国の人の便からも見つかっている。チームは米国や中国、オーストラリア、ブラジルなど二十一の国・地域の海塩や岩塩、塩湖の塩計三十九種を調べ、三十六種からマイクロプラスチックを検出した。塩一キロ当たりに含まれる数はインドネシアの海塩が突出して多く、約一万三千六百個だった。台湾の海塩の約千七百個、中国の海塩の約七百個と続き、上位十種のうち九種をアジアが占めた。一方、台湾の海塩は複数調べており、種類によってはマイクロプラスチックがなかった。フランスの海塩と中国の岩塩も検出されなかった。

*7-3:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO3697876026102018EA3000/ (日経新聞 2018/10/27) 入管法改正案、異論相次ぐ 自民部会 29日に再協議
 自民党法務部会(長谷川岳部会長)は26日、外国人労働者受け入れ拡大に向け、新たな在留資格を創設する入国管理法の改正案をめぐって議論した。出席者からは移民政策や治安の懸念、受け入れ人数の規模の明示や総量規制の必要などを問う意見が出たため、法案の了承を29日以降に見送った。26日の部会では業種別の運用方針を党の関係部会で議論し、地域や現場の声を政府が反映することなどを求める決議案を示した。この日の議論では、更新や家族の帯同が可能な特定技能2号の資格をめぐり「事実上の移民政策ではないのか」「抜本的な改正を考えているなら通常国会でやるべきだ」といった指摘や、人手不足の解消という経済的な観点だけでなく「治安の悪化時には受け入れを停止できるよう法案に盛り込むべきだ」との慎重論も出た。法務省は外国人の受け入れ規模は「業種別の方針策定と合わせ、見込み数を含めて将来の展望を示す」と説明するにとどめた。出席者からは「人手不足を理由に法律を作る場合、人手不足を証明しなければいけない」との意見も出たほか「事業者は外国人を雇う際にきちんと社会保険に入る仕組みにしてほしい」「外国人の親族の医療費や年金受給などの問題も検討すべきだ」との指摘もあった。政府は11月2日にも改正案を閣議決定し、臨時国会に提出することをめざす。

<女性の視点を無視するとビジネスチャンスを失うこと>
PS(2018年11月1日追加):外国人旅行者が多くの化粧品を買っていくことを悪く言うメディアが多く、他国に対してどうも生意気だと思っていたが、対中輸出するため日用品大手が国内で増産投資を始めたのはよいことだ。何故なら、日本産の化粧品・ヘアカラー等々は、人種の近いアジア人に適しており、現在はインターネット販売もできるため販売可能性が高いからだ。
 そのような中、*8-2のように、吸い口を付けるだけで飲ませることができる乳児用液体ミルクは、女性からは「常温で飲める」「衛生的」という理由で国内製造を求める声が続出しているにもかかわらず、①開発費用が高い ②牛乳の消費拡大に繋がりそうにない などの理由で二の足を踏まれているそうだ。しかし、乳児用液体ミルクは、育児の省力化だけでなく、水道水のよくない地域では粉ミルクより衛生的で健康によい上、アジアも視野に入れれば、この要望はもっと高くなって牛乳の消費拡大に繋がると思われる。そして、この際は吸い口も消毒済みで使い捨てのものを付けておく必要があるのは言うまでもない。

*8-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20181101&ng=DGKKZO37207230R31C18A0MM8000 (日経新聞 2018年11月1日) 日用品、国産を対中輸出、資生堂など 高品質強みに増産投資
 日用品大手が相次ぎ国内で増産投資に踏み切る。資生堂は2022年までに約1400億円を投じる。コーセーやユニ・チャームも新工場を稼働させる。訪日観光人気や越境EC(電子商取引)=総合2面きょうのことば=の広がりを受け、日本で製品を増産し中国などアジアに輸出するためだ。海外で高まる「日本製」への需要を満たすため、内需型産業の代表格だった日用品が輸出の新たな柱に育ちつつある。資生堂は20年までに国内能力増強に約950億円を投じる計画だったが、22年までに約450億円を積み増す。口紅やアイシャドーの主力拠点である掛川工場(静岡県掛川市)で21年までに新生産棟を建設し、増産に備える。化粧水などが主力の大阪工場(大阪市)も閉鎖方針を撤回する。同社は訪日客需要などがけん引し、18年12月期に売上高、営業利益とも過去最高を更新する見通し。19年に栃木県大田原市、20年に大阪府茨木市に国内で36年ぶりに新工場を建設するが、供給不足が続くとみて投資を増やす。同社の世界生産能力は8割増になる。コーセーも傘下の高級化粧品メーカー、アルビオン(東京・中央)が20年までに約100億円を投じ、埼玉県熊谷市の工場に新生産棟を建てる。アルビオンはスキンケア商品が訪日中国人に人気で、18年3月期の売上高約680億円の2割は訪日客の消費とみられる。ユニ・チャームは19年春、福岡県で国内で26年ぶりの新工場を稼働させる。中国で人気が高い高級紙おむつを生産し、中国への輸出拠点とする。従来、日用品メーカーが海外進出する場合、現地に生産拠点や販売網を築く必要があった。ネット通販の普及で、アリババ集団などの越境ECの仕組みを使い、自ら資産を持たずに海外展開することが容易になった。17年の訪日客数は16年比19%増の約2869万人と5年連続で過去最高を更新。17年の訪日客による買い物の総額約1兆6400億円のうち、化粧品や日用品は人気が高く、約4割を占める。訪日客は帰国後もネット通販を通じて継続購入する傾向がある。「日本製」へのニーズが高まり、海外での消費が国内の投資や雇用を生む好循環をつくっている。これまで日本の輸出をけん引してきたのは自動車(約12兆円)や半導体・電子部品(約4兆円)だった。日用品などは内需中心だったが、17年の化粧品輸出額は約3715億円と5年連続で過去最高を更新。おむつや文具なども含めると輸出総額は8千億円を超えた。機能や使いやすさなど人気を背景に、外需を取り込む動きが進めば輸出の新たな柱になる。日用品以外でも国内拠点の増産投資が相次ぐ。カルビーは今夏、約70億円を投じて京都工場(京都府綾部市)でフルーツ入りシリアル「フルグラ」の新ラインを稼働した。明治も20年秋、埼玉工場(埼玉県春日部市)に、粉ミルクなどを生産する新棟を稼働する。いずれもアジア輸出拡大を目指しており、縮む国内事業を補う新たな柱とする。

*8-2:https://www.agrinews.co.jp/p45659.html (日本農業新聞 2018年11月1日) 乳児用 液体ミルク 吸い口付けるだけ 災害時も活躍 国産があれば 国内製造・販売解禁も動きなし  原価高 メーカー慎重
 国内での製造、販売が8月に解禁された乳児用液体ミルクだが、国産品の流通には時間がかかりそうだ。開発費用が高いことなどから国内の乳業メーカーは製造に二の足を踏む。災害時に出回ったのはフィンランドなど海外産だ。産地からも「牛乳の消費拡大にはつながりそうにない」(酪農関係者)との声が上がる。一方で、子育て中の女性たちからは「常温で飲める」、「衛生的」といった理由から液体ミルクの国内製造を求める声が続出し、署名が約4万3000人にも上っている。署名を集める一般社団法人乳児用液体ミルク研究会代表の末永恵理さん(39)は、液体ミルクを手に、その重要性を強調する。2014年に娘の凛ちゃん(4)を出産した末永さん。「国内で製造・販売をするようになれば、輸送費がかからない分、購入しやすい価格になる。粉ミルクと同様、安心できる国産を求める全国のお母さんは多い」と切望する。末永さんは、夜中の頻繁な授乳時や外出時、体調不良の時に液体ミルクがあれば育児の助けになると感じ、同年11月から国内製造を求める署名運動を始めた。国産の粉ミルクは200ミリリットル分で60~80円だが、液体ミルクは米国産が約230円、フィンランド産が約150円と割高だ。外出時や災害時に役立つとして、解禁を望む署名運動は4万人以上に広がり、厚生労働省は製造と販売を認める改正省令を施行した。末永さんは「署名する人からは、災害時にお湯や火がない所でも子どもに衛生的な授乳ができる、と期待する声が大きい」と説明する。
●牛乳消費増に 貢献難しく
 液体ミルクは世界では流通するが、日本では食品衛生法の規格基準が整備されていなかったため長年製造できず、消費者の認知度が低かった。政府が検討の末、8月に製造・販売を解禁したものの、液体ミルクの解禁が即座に牛乳の消費拡大のチャンスにはつながらないようだ。日本乳業協会は「製造原価が高過ぎるのでメーカーは慎重姿勢」と指摘する。製造には、安全性承認に向けた申請作業や工場の整備も必要で、森永乳業や雪印メグミルクなどの大手メーカーも「現時点で製造の具体的な話は出ていない」と明かす。価格が割高で、利用は災害や外出時などに限定されるため、牛乳消費の需要増には現時点では貢献しないとの見立てだ。産地でも、原料が国産になる見通しが立っていないことから「農業振興には結び付かないのでは」(北海道の酪農家)との見方がある。
●普及に向けて 使用法発信を
 9月に発生した北海道地震では、東京都がフィンランド産の液体ミルクを被災地に送ったが、日本では日常的に使っていないことを理由に被災自治体が使用をちゅうちょしたケースもある。一方で、16年4月の熊本地震では支援物資として重宝された。液体ミルクは広く流通しているわけではないため、米国、フランス、フィンランドなどから個人的にインターネットなどで調達するしかない。順天堂大学大学院医学研究科の清水俊明教授は「災害の多い日本では液体ミルクの重要性が極めて高い。普及のためにはまず、安全性や使用法の発信が必要だ」と指摘する。
<ことば> 乳児用液体ミルク
 乳児用の粉ミルクと同じ、牛乳や生乳から取り出した成分でできている。液体なので湯で溶かす必要がなく、そのまま飲める。災害時の母乳代替品や育児負担の軽減につながるものとして期待される。ペットボトルや紙パックの容器に哺乳瓶の吸い口を取り付けるだけでいい。無菌で容器に充填(じゅうてん)されるので衛生的だ。

<外国人労働者と社会保険>
PS(2018年11月2、3日追加):*9-1及び下図のように、農林漁業だけでなく製造業等の中小企業も直面している人手不足の解消のため新たな在留資格を創設する外国人受入拡大案が閣議決定され、臨時国会成立、来年4月1日施行の段取りとなったのは一歩前進で、平成の次に向けての新しい出発だ。その対象分野は、建設業・農業ほか14業種から検討して法案成立後に法務省令で定められるそうだが、2号になるまで家族の帯同が認められないのは気の毒で、さらに、*9-4のように、農水省は農業を「特定技能2号」の対象外にする意向だそうだが、これは、①主任として働けるようになった頃に帰る ②「特定技能2号」にもなれる他の業種よりも農業が不利になり、農業を希望する外国人労働者が減る などの理由でよくない。
 また、外国人労働者も社会保障の支え手になるのだが、年金保険料等の支払いは、*9-3のように、帰国する人にとって日本で掛けた年金保険料が掛け捨てにならないために、日本での加入期間を祖国の年金制度に加入していた期間とみなして取り扱い、その国の年金を受給できるようにする必要がある(https://www.nenkin.go.jp/service/kaigaikyoju/shaho-kyotei/kyotei-gaiyou/20141125.html 参照)。しかし、現在は、そのための社会保障協定を結んでいる国が18カ国しかなく、この状況は海外勤務する日本人にとっても同様に不便であるため、できるだけ多くの国と社会保障協定を結んでいくことが求められる。そして、医療や介護保険制度についても、なるべく日本人と同等に相互主義で対応すべきだが、まだ制度が整っていない国には、制度を作るアドバイスをするのがよいだろう。
 なお、*9-2のように、受入人数に上限は設けず見込数を精査中とのことだが、労働力という要素が変われば他の要素も変わるため、事前に見込数を確定するのは難しそうだ。

   
2018.7.25     2018.10.14       2018.11.2      2018.11.2
西日本新聞      産経新聞        毎日新聞        日経新聞

*9-1:http://qbiz.jp/article/143503/1/ (西日本新聞 2018年11月2日) 外国人受け入れ拡大案、閣議決定 人手不足解消に新資格
 政府は2日、外国人労働者受け入れ拡大のため、新たな在留資格を創設する入管難民法などの改正案を閣議決定した。深刻さを増す人手不足を解消するため、これまで認めていなかった単純労働分野への就労を可能とする。政府は臨時国会で成立させ、来年4月1日に施行したい考え。受け入れ対象分野は建設業や農業など14業種から検討しており、成立後に法務省令で定める。高度な専門人材に限っていた受け入れ政策の転換で、多くの外国人が働き手として来日することが見込まれ、日本社会が大きく変容する可能性がある。一方、制度の詳細が固まっていないことに与党からも懸念があり、野党は攻勢を強める構え。政府は否定するが「事実上の移民政策だ」との指摘も出ており、国会審議は曲折が予想される。安倍晋三首相は衆院予算委員会で「人手不足は成長を阻害する大きな要因になり始めている。しっかりと制度を作る」と強調。山下貴司法相は閣議後の記者会見で「法改正は重要かつ急務だ」と話した。改正案によると、一定技能が必要な業務に就く特定技能1号と、熟練技能が必要な業務に就く2号の在留資格を新設。1号は在留期限が通算5年で家族帯同を認めないが、2号は期限の更新ができ、配偶者と子どもの帯同も可能。条件を満たせば永住にも道が開ける。外国人技能実習生から新資格への移行もできる。人手不足が解消された場合、法相がその分野の受け入れを停止する。与党の意見を受け、付則には施行から3年後、必要に応じて制度を見直す条項を盛り込んだ。外国人の報酬は同一業務に従事する日本人と同等以上とし、就労が認められた分野の中での転職も認める。特に1号の外国人の受け入れ先には、住居の確保や日本語教育などの計画を作成し、安定的な生活を支援することを義務付けた。法務省入国管理局を「出入国在留管理庁」に格上げ。受け入れ先は同庁長官の登録を受けた登録支援機関に、受け入れた外国人の支援を委託することも可能とした。成立後、政府は年内にも、制度の意義などを定めた基本方針を閣議決定する予定。方針の骨子案によると、1号の外国人が円滑に活動できるよう生活の支援を受け入れ先に求めることや、原則として直接雇用とすることなどを盛り込む。基本方針を基に、法相が関係閣僚と共同で、各分野の人材不足の状況などを記載した分野別運用方針を策定するとしている。

*9-2:https://www.agrinews.co.jp/p45677.html (日本農業新聞 2018年11月2日) 外国人材 上限設けず 見込み数を精査 衆院予算委で法相
 衆院予算委員会が1日始まり、国会論戦が本格化した。山下貴司法務相は外国人労働者の受け入れ拡大を巡り、受け入れ人数に上限は設けない方針を示し、農業を含む14業種で見込み数を精査しているとした。日米間の貿易協定交渉を進めることについて茂木敏充TPP担当相は、米国の環太平洋連携協定(TPP)復帰に有効との見方を示した。ただ、TPPと同等以上の譲歩すれば国内農業への打撃は広がり、米国のTPP復帰もかえって遠のく恐れがある。山下法相は立憲民主党の長妻昭代表代行への答弁。外国人労働者の受け入れ拡大へ「数値として上限を設けることは考えていない」と述べた。受け入れの規模は「農業、建設、宿泊、介護、造船など14業種から受け入れの見込み数を精査している」と述べた。ただ、人数規模を示す時期は「法案審議に資するよう作業を詰めたい」と明言を避けた。これに対し、長妻氏は「人数の規模も分からないとは、生煮えだ」と批判した。茂木担当相は公明党の石田祝稔政調会長への答弁。 米国のTPP復帰を目指す方針を維持しつつ日米2国間交渉を同時に進める通商戦略の整合性をただしたのに答えた。日本政府は、米国を除く11カ国によるTPPの新協定(TPP11)の発効を急ぐことで米国の焦りを引き出し、米国のTPP復帰を促す戦略を描いていた。だが、9月の日米首脳会談で貿易協定交渉の開始で合意した。茂木氏は「(日米)物品貿易協定交渉をしていくことが米国のTPP復帰に、プラスにはなってもマイナスになることはない」と述べ、今後の交渉に意欲を示した。一方で「現在の米国がすぐにTPPに復帰をするのは難しい面もある」との認識も示した。

*9-3:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20181103&ng=DGKKZO37328510S8A101C1MM8000 (日経新聞 2018年11月3日) 外国人の就労、環境整備急ぐ 4月から新在留資格 企業に支援や管理求める
 政府は2日、外国人労働者の受け入れ拡大に向けた出入国管理法改正案を閣議決定し、国会提出した。技能実習生らに限ってきた単純労働で初めて外国人の就労を認める内容。移民政策と一線を画しつつ、深刻な人手不足に対応する。来年4月の運用開始に向け、受け入れ体制の整備を急ぐ。改正案は新在留資格「特定技能」を設け、建設や介護など14業種に限定して受け入れる。一定の日本語力や技能があれば得られる「特定技能1号」は通算5年滞在できる。より高い能力を条件とした「特定技能2号」は定期的な審査を受ければ事実上の永住が可能で、家族の帯同も認める。14業種でどれだけ外国人労働者が増えるのか、政府試算は出ていない。改正案の国会成立後にまとめる分野別運用方針で、業種別の想定人数を示すとしている。三菱UFJリサーチ&コンサルティングの協力を得て政府統計をもとに分析した外国人労働者の割合は食料品製造で8%、繊維工業で6.7%、車や船などの輸送用機器で6%。製造業が上位を占めた。宿泊・飲食サービスは4%だった。政府は外国人が働きやすい環境づくりを急ぐ。年金や医療などの社会保障制度は国籍に関係なく適用される。その点では現在の外国人技能実習制度で来日した実習生も、新在留資格をとる外国人も、変わりはない。法改正によって就労目的の新在留資格で外国人を労働者として明確に位置づけ、受け入れる企業や団体が支援し、管理できる体制を整える。受け入れ企業は直接雇用が原則となる。2017年には7千人の技能実習生が失踪した。厚生労働省が17年に調査した事業所の7割にあたる4226事業所で、違法残業や賃金未払いなどの法令違反があった。実習生に月95時間の残業をさせ、残業代を時給400円しか払わない悪質な事例もみられた。放置できない状況だ。受け入れ企業は過去に技能実習生などの行方不明者を出していないことや、悪質な紹介業者が介在していないことが要件となる。法務省の入国管理局を格上げする「出入国在留管理庁」は受け入れ企業を指導し、立ち入り検査もする。
●保険料払い損も
 社会保障制度の課題もある。日本で働く外国人は日本人と同様に公的年金の保険料などが給与から天引きされる。年金を将来受け取るには10年以上の加入が必要で、払い損になるおそれがある。払い戻しは3年が上限。3年を超えて働き、支払った保険料は戻ってこない。米国など社会保障協定を結んだ国から来日した外国人は、母国企業から日本の支店勤務になった場合、二重払いをしなくて済む。ただし日本と社会保障協定を結んだ国は18カ国だ。医療については個人の月額負担に上限があり、実際は100万円を超す医療費がかかっても、個人負担は所得によっては数万円で済む。日本の医療を安価で受けられる。日本で医療保険に加入する外国人の親族が短期で来日し、高額な治療を受けて帰国する例がある。新資格で受け入れが進めば、海外に親族を抱える外国人労働者の急増も予想される。政府・自民党は健康保険の利用・加入要件を厳しくする方針だ。海外に住む親族の加入を制限する。19年にも健保法改正案を国会提出する。

*9-4:https://www.agrinews.co.jp/p45685.html (日本農業新聞 2018年11月3日) 外国人材拡大 閣議決定 農業は上限5年
 政府は2日、外国人労働者の受け入れ拡大に向けて、新たな在留資格を創設する出入国管理法などの改正案を閣議決定した。労働現場での就業を本格的に外国人に開放し、受け入れ施策の大転換となる。臨時国会で成立させ、農業など人手不足が深刻な業種を対象に、来年4月の受け入れ開始を目指す。一方で農水省は、事実上永住も可能となる在留資格「特定技能2号」について、農業は対象外にする方針を明らかにした。改正法案では、外国人向けの在留資格として「特定技能」の「1号」と「2号」を創設。1号は3年以上の技能実習の修了者らが対象で、受け入れ期間は通算5年が上限だが、家族の同伴は基本的に不可。「2号」はより高度な技能を問う試験への合格者が対象で、在留期間に上限はなく、家族も呼び寄せられる。政府は、受け入れ業種として農業や介護、建設など14業種を検討する。人手不足の深刻度合いなどを精査し、法案成立後に対象業種を正式に決定する。受け入れ人数に上限は設けない方向。業種別の制度の詳細は所管省庁が検討する。同日の閣議後会見で、吉川貴盛農相は「農業も水産も、現場から(外国人材の確保への)期待もある」と述べた。生産現場の人手不足の状況把握などを進め、農業が受け入れ対象になるよう、政府内で積極的に主張していく考えを示した。農水省によると、農業では特定技能2号について、農業法人の経営層に就く人材などが想定されるが「2号の人材を求める具体的な要望は上がっていない」(就農・女性課)。2号での受け入れは当面検討しない方針だ。改正案は与党内にも慎重論が強い。特に特定技能2号を巡り「実質的な移民受け入れではないか」との声が目立ち、自民党は2号を外国人に適用する際の条件の厳格化などを求める決議をした上で法案を了承。法案には、与党が求めていた施行3年後の見直し規定も盛り込まれた。一方、野党は、臨時国会での成立は拙速だとの構えを強めている。国会論戦では、対象業種や受け入れ人数の規模が不明確なため、「法案は生煮えだ」といった批判が既に相次いでおり、今後の審議は難航が予想される。

PS(2018年11月7日追加):厚労省は、*10のように、「①健保が加入者本人に扶養される三親等内の親族にも適用され、訪日経験のない海外の親族らが母国や日本で医療を受けて健保を利用する事例が生じているため、国内居住要件を追加する」「②日本の社会保障制度は国籍要件を設けていないため、改正後は日本人の扶養親族も同様に居住要件を満たす必要があるが、留学など一時的に日本を離れている場合は例外的に適用対象とする」「③自営業者らが入る国民健康保険も他者によるなりすましを防ぐため、受診時に在留カードを提示するよう求める」「④海外で出産した場合も四十二万円が支払われる出産育児一時金の審査も厳しくする見通し」そうだ。
 しかし、①②は、所得税の扶養要件と異なるので新たな矛盾を生む上、日本人と異なる扱いをすれば国籍による差別に当たる(憲法違反)。また、③の「なりすまし」チェックは、外務省が相手国と交渉して在留カードに扶養親族の明細と顔写真を添付し、その情報を大使館や領事館で更新できるようにしておけばすむことだ。そして、これらは所得税の申告や源泉徴収にも必要な情報で、外国人労働者も税金や保険料を負担しているため、給付時に日本人と差別することは許されない。また、④については、42万円もの出産育児一時金を渡すのは日本人に対してでもバラマキであり、出産にも健康保険を適用すればよいだろう。つまり、厚労省は、変な給付の削り方をするのではなく、社会保険の徴収漏れや無駄遣いがないようにすべきだ。

*10:http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201811/CK2018110702000148.html(東京新聞 2018年11月7日)健保、国内居住者に限定へ 外国人の不適切利用防止
 政府は六日、外国人による公的医療保険の不適切利用を防ぐため健康保険法を改正し、適用条件を厳格化する方針を固めた。加入者の被扶養親族が適用を受けるためには、日本国内に居住していることを要件とする方向で検討している。来年の通常国会への改正案提出を目指す。政府は外国人労働者の受け入れ拡大に向け、今国会で入管難民法改正案成立を期す考えだ。近年外国人による公的医療保険の不適切利用が問題化していることから対応を急ぐが、来年四月の労働者受け入れ拡大実施には間に合わない公算だ。会社員が対象の健康保険(大企業は健康保険組合、中小企業は協会けんぽ)は、加入者本人に扶養される三親等内の親族にも適用されるが、国内に住んでいる必要がない。このため訪日経験のない海外の親族らが母国や日本で医療を受けて健保を利用する事例が生じ、問題視されている。海外での医療費や扶養関係の確認が難しいといった課題もある。自民党内に対応を求める声が高まっていることから、厚生労働省は健保法を改正し、扶養親族への適用に国内居住要件を追加する方針。日本の社会保障制度は国籍要件を設けていないため、改正後は日本人の扶養親族も同様に居住要件を満たす必要がある。ただ、留学など一時的に日本を離れている場合は例外的に適用対象とする。このほか、自営業者らが入る国民健康保険でも他者によるなりすましを防ぐため、受診時に在留カードを提示するよう求めることも検討。海外で出産した場合も四十二万円が支払われる出産育児一時金の審査も厳しくする見通しだ。

<入管法の審議について>
PS(2018年11月14日追加): *11-1、*11-2のように、入管法の審議で、①受入規模 ②受入業種 ③社会保障制度のあり方が、主な論点になっているそうだ。①の受入規模については、大きな事情の変更がない限り、5年で34万人を上限とすることになったが、②の受入業種と分野別受入規模は、政府が「えいやっ」と上から決めるより、農業・漁業・製造業・サービス業などの外国人労働力を必要とする産業で次年度に必要な人数を毎年算出し、それに日本人の潜在労働力や機械化・効率化を加味して決めた方がよいと私は考える。また、③の外国人の社会保障制度については、日本は国籍・職業・所得で差別してはならない国であり、これは高額療養費制度の適用についても同じであって、医療費を圧迫するという理由で危険な作業に従事することの多い外国人労働者を差別することは許されない。
 一方で、外国人労働力の導入に反対する議員も多いとのことだが、それは人材を無駄遣いしている都会の大企業や役所の状態を前提としているのではないだろうか? 実際には、地方・中小企業・特定産業は、本当に労働力が足りないため今すぐにでも外国人労働者が必要な状態で、時間は、技能実習制度を導入した時からかけているのだ。
 そのため、技能実習生や留学生から特定技能1号に変更するのは希望があれば自由とし、要件を満たせば特定技能2号への変更も可能とするのが合理的だ。さらに、これまでも多くの外国人労働者が日本で働いてきたため、それらの人たちやそのケアをしていた人たちに意見を聞けば、環境整備に必要な論点は網羅される筈だ。私は、金融・報道関係者等で日本に住んでいる外国人の所得税確定申告を行っていたこともあるので知っているのだが、家族のケアや言語・教育における環境整備の必要性も見逃せない。


     2018.10.14、2018.11.3、2018.11.7東京新聞     2018.11.14西日本新聞 

*11-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20181114&ng=DGKKZO37706310T11C18A1MM8000 (日経新聞 2018年11月14日) 入管法案、衆院審議入り 外国人労働者、5年で最大34万人
 外国人労働者の受け入れ拡大に向けた出入国管理法改正案をめぐり、政府が法施行を予定する2019年度からの5年間で26万~34万人の受け入れを想定していることがわかった。政府関係者が明らかにした。安倍晋三首相は13日の衆院本会議で、政府が想定する外国人労働者の受け入れ規模を「受け入れ数の上限として運用することになる」と表明した。入管法改正案は13日の衆院本会議で審議入りした。首相は政府が想定する外国人労働者の受け入れ規模について「各省庁で現在精査中だ。法案審議に資するよう近日中に業種別の受け入れ見込み数を示す」と語った。そのうえで「大きな事情変更がない限り、この数字を超えた受け入れはしない」と指摘した。自民党の田所嘉徳氏への答弁。山下貴司法相は1日の衆院予算委員会で、外国人労働者の受け入れ規模に関し「数値として上限を設けることは考えていない」と答弁していた。与野党から「受け入れ数の上限を設けるべきだ」との声が出たことから方針転換したとみられる。政府は初年度の19年度に3万3千~4万7千人の外国人労働者の受け入れを見込むと試算。受け入れを増やす背景に、19年度で60万人以上、19年度からの5年間で130万~135万人の労働者が不足すると見込んだ。対象は、入管法改正案で新設する在留資格「特定技能」で想定する介護や農業など、国内の労働者だけでは労働力が不足する14の業種だ。

*11-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20181114&ng=DGKKZO37716480T11C18A1EA1000 (日経新聞 2018年11月14日) 規模・業種・社会保障、外国人受け入れで論戦
 政府・与党が今国会の最重要法案と位置づける出入国管理法改正案が13日の衆院本会議で審議入りした。選ばれる国に向けた制度設計で外国人の受け入れ規模や、その業種、社会保障制度のあり方の3つが主な論点になる。まず野党が追及したのが外国人の受け入れ規模だ。政府は深刻な人手不足を根拠に外国人受け入れが必要だと説明してきた。外国人が流入する分野の規模が分からなければ、受け入れを必要とする分野で働く日本人への影響は見通せない。政府には2019年度から5年間で外国人労働者を26万~34万人受け入れるとの試算がある。労働者が同じ期間に130万~135万人不足すると見込んで算出した。審議入りに間に合わなかったため、法務省は14日にも国会に受け入れ規模を提示する。2つ目は業種だ。新しい在留資格「特定技能」を設けるのは人手不足が深刻な農業や建設、宿泊など14業種のみ。高度な試験に合格し、熟練した技能を持つ人に「特定技能2号」を与える。2号の「ハードルはかなり高い」(山下貴司法相)ものの、家族の帯同が可能で将来の永住にも事実上、道が開ける。2号をどの程度付与するかが帯同家族への生活支援といった受け入れ体制の整備を左右する。最後は外国人の増加が社会保障制度に与える影響だ。日本は国籍や職業、所得にかかわらず、日本に住む人は公的な医療保険と年金制度に加入し、平等に医療や一定の年金を受け取れる。手術や入院などで高額な医療費がかかった場合に個人負担を軽くするための高額療養費制度は医療費を圧迫するとの懸念が与野党にある。野党は法務委員会だけでなく厚生労働委などとの連合審査も求めている。

<外国人労働者と難民>
PS(2018年11月14日追加): *12-1のように、水産業の競争力向上策として、①企業参入容易化が目的の漁業法改正 ②資源管理の徹底 などが処方箋に挙げられているが、これは原因を追及した上で解決策を決めたのではなく、農業と同じく「えいやっ」と出した結論だろう。何故なら、科学的競争力のある水産業を作るには、①の企業参入や②の資源管理だけでなく、漁船や装備のリニューアルが必要だが、日本の漁船や装備は漁業収入ではリニューアルできないほど高額であり、高コスト構造を変えない限り、日本での水産業は採算が合わないからである。
 なお、*12-2のように、日本で働く外国人が地方で住みやすいように地方自治体が環境整備を行い、それに関する補助を政府が行うのがよいと考える。その理由は、人手不足が深刻な地方は住宅・保育・教育などの余剰設備が多く生活費も安いので、言語・教育・確定申告・源泉徴収・社会保険などに関するサポート体制ができれば住み易くなるからである。
 また、*12-3の「ロヒンギャ帰還計画」は、あれだけの迫害を受け、やっとのことでバングラデシュに避難した難民をミャンマーに帰そうとするスキーム自体に無理があると思う。国連も、帰還したロヒンギャが再び迫害に遭う恐れがあると警告しており、私は、日本で引き受けてはどうかと考える。例えば、熊本県の上島、鹿児島県の長島のように、本土と繋がってはいるが独自性も保てるような離島に生活基盤を置き、男女とも農林漁業やそれらの加工に従事するなど、まずは日本語がわからなくても教育がなくてもできる仕事から始めればよいだろう。

   
 2018.1.27  外国人労働者産業別内訳   2018.6.16毎日新聞   2018.10.12Yahoo
  日経新聞

(図の説明:1番左のグラフのように、国内の外国人労働者は5年間で9割増えたが、左から2番目の円グラフのように、産業別では製造業が最も多く、水産業にはあまり入っていない。右の2つは、これまでの外国人労働者の在留資格別推移とこれから導入しようとする制度の概要だ)

*12-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20181114&ng=DGKKZO37726990T11C18A1EA1000 (日経新聞 2018年11月14日) 水産業の競争力増す改革を
 政府は企業が新規参入しやすいように漁業権制度などを見直す改革法案を閣議決定し、国会に提出した。旧態依然とした漁業法の抜本改正は70年ぶりだ。これを機に科学的な資源管理を徹底し、経営を合理化して競争力のある水産業に変わってほしい。日本の漁業生産額はピークだった1982年に比べ半減した。海外の漁業先進国に比べ、生産性も低いままだ。農林水産省が直近の統計をもとにまとめた国際比較では、漁船1隻あたりの漁獲量はノルウェーの20分の1、漁業者1人あたりの生産量も8分の1ほどしかない。小規模な漁業者が多く、資源管理も甘いから過剰漁獲に陥りやすい。その結果、所得は増えず、新しい漁船もつくれない。若い漁業者が思うように集まらないから外国人労働者への依存度が増してしまう。この悪循環を抜本改革で断ち切る必要がある。今回の改革は地域の漁業協同組合などに優先して与えられる漁業権の制度を見直し、漁協が適切に管理していない漁場や、利用されていない漁場には企業などが新規参入できるようにする。既得権益の多い漁業権制度に初めてメスを入れたことは評価できる。ただ、規模拡大の障害となり、漁協による漁業権行使料の徴収などが不透明な漁業権制度はなくし、公平な許可制度などに変えるのが理想だ。さらなる改革が求められる。政府が法律に基づき資源を管理する漁獲可能量(TAC)制度の対象も現行の8魚種から早急に増やすべきだ。乱獲を防ぎ、高く売れる時期まで待って取ることを促すため漁獲枠は漁船ごとに割り当てなければならない。規制緩和に加え、企業の参入などを排除しようとする漁業の閉鎖性も改めてもらいたい。農業が変わり始めたのは企業の新規参入を受け入れ、その技術力などを利用しようと考える農家が増えてきたからだ。いま変わらなければ日本の水産業の持続は危うい。

*12-2:https://digital.asahi.com/articles/DA3S13770765.html (朝日新聞 2018年11月16日) 地方に外国人材、政府で方策検討 新在留資格
 山下貴司法相は15日の参院法務委員会で「人手不足がより深刻な地域に外国人を受け入れやすくする方策を政府全体で検討したい」と述べ、新たな在留資格で受け入れる外国人が地方で働きやすくする仕組みを導入する考えを明らかにした。出入国管理法改正案では、新在留資格を持った外国人労働者の転職を認めており、人手不足が深刻な地方から賃金水準の高い都市部に流出する可能性が指摘されている。法務省の和田雅樹入国管理局長も「外国人材が地方で稼働するインセンティブを設けたい」と答弁した。

*12-3:https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20181116-00010000-afpbbnewsv-int (AFPBB News 2018/11/16) ロヒンギャ帰還計画、初日は志願者ゼロ 迫害恐れ帰国拒否
 ミャンマーのイスラム系少数民族ロヒンギャ(Rohingya)が隣国バングラデシュに大量流出して難民化した問題で、難民らをミャンマーに帰還させる計画が15日、開始日を迎えたものの、当局によると国境を渡り帰国した難民はいなかった。ミャンマー政府は、ロヒンギャ帰還の取り組みでバングラデシュ政府に不手際があったと非難した。ミャンマーでは昨年8月以降、軍の強硬な取り締まりから逃れるため、推定72万人のロヒンギャがバングラデシュに避難。国連(UN)は帰還したロヒンギャが再び迫害に遭う恐れがあると警告しており、帰還計画は議論を引き起こしている。難民の第1陣がミャンマーに帰還する予定だった15日、バングラデシュ当局者らは国境の検問所で難民らの到着を待ったが、検問所を訪れた人は一人もいなかった。一方、難民らは抗議デモを実施。ロヒンギャの男女や子ども約1000人が「私たちは行かない」など叫び声を上げた。帰還計画には国連や国際支援団体も反対しており、ロヒンギャの首長らによると、バングラデシュが作成した帰還者名簿に入っ260人の多くが身を隠している。対象となっている男性(85)は「やつらは息子2人を殺した。私は別の息子2人と一緒にバングラデシュに逃れた。どうか私たちを送り返さないでほしい。残りの家族も殺される」と訴えた。ミャンマーのミン・トゥ(Myint Thu)外務次官は記者らに対し、バングラデシュ政府の対応は「段取り面で不十分だ」と非難するとともに、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)がロヒンギャ帰還を妨害していると批判した。

<日本語教育など>
PS(2018年11月18日追加): *13に、「入管難民法改正案を巡って外国人への日本語教育の在り方が課題になっているが、対応できるか」と書かれているが、私は、日本語教師の統一資格がなかったとしても、教師の資格と経験のある人なら、①教科書や指導要領があり ②一定の研修を受ければ 教えられると考える。また、60代で定年になった教師の多くは、きちんと報酬を払えば優秀な潜在的人材と言える。さらに、日本語教育は、児童生徒だけでなく配偶者など他の家族にも必要で、日本語だけでなく他の科目にも勉強したいものは多々あると思われる。何故なら、話したり生活したりできるためには、語学だけではなく、その国の最低限の常識やバックグラウンドの理解が必要だからだ。

*13:http://qbiz.jp/article/144371/1/ (西日本新聞 2018年11月18日) 日本語教育 遅い対応 入管難民法改正 国、資格検討は来年度 関係者「外国人増加対応できるか」
 外国人労働者の受け入れを拡大する入管難民法改正案を巡り、外国人に向けた日本語教育の在り方が課題になっている。政府は教育の質向上のため日本語教師の能力を証明する新たな資格を導入する方針。日本語教師はなり手不足などでボランティアに頼る現状が問題視されてきたが、来年4月施行に向けて急ぐ中で、政府の対応の遅さを指摘する声も出ている。「外国人から選ばれるのに必要なのは雇用環境、社会保障、子どもの教育だ」(国民民主党の吉良州司氏)。今後、外国人労働者の増加が見込まれる中、14日の衆院文部科学委員会では、日本語教育の充実を求める声が相次いだ。日本語教師は統一した資格がないため、教育機関や教師の能力によって教育内容に差があることが問題視されている。技能実習生にも入国後に約1カ月間の日本語講習が課されるが、九州のある受け入れ団体は「素人が独自のやり方で教えている。日本の生活になじめるよう親身になる団体もあれば、規定の時間をこなせばいいと考える団体もある」と現状を打ち明ける。文科省は教師の能力を測る資格の創設を検討している。柴山昌彦文科相は委員会で「外国人が日本で円滑に生活できる環境を整備することで、共生社会の実現を図ることが重要だ」と強調した。ただ、日本語教師は、低賃金と不安定な雇用形態などからなり手不足が指摘されており、外国人が多い地域では資格の導入に期待と不安が入り交じる。東京都新宿区の担当者は「公立学校への支援もボランティアに頼っている部分があり、資格がハードルになれば教える人が集まらないかもしれない」。浜松市の浜松国際交流協会は「資格をつくるだけでは意味がなく、安定した雇用を担保するなど日本語教師の処遇改善が必要だ」と訴える。だが、文科省が資格の詳細を検討するのは、来年度の文化審議会だ。「法案提出と併せて整備しておくべきだ」。15日の参院文教科学委員会では、松沢成文氏(希望の党)が対応の遅さを批判した。学校現場も深刻だ。文科省によると、日本語指導が必要な児童生徒は2016年度の調査で約4万4千人(日本国籍を含む)で、この10年間で1・7倍に増加。政府が検討する新在留資格では、特定技能2号の外国人は家族の帯同が認められ、日本語指導が必要な児童生徒はさらに増えると見込まれている。在留外国人は希望すれば日本の公立小中学校などに無償で通うことができるが、進学率の低さが課題だ。17年度の調査では、日本語指導が必要な高校生の進学率は42・2%で、高校生全体の70・8%と大きな差がある。高校への進学率のデータはないが、文科省は「高校段階で就学者は3分の1程度に減っている」と見ている。文科省は日本語指導に必要な教員定数の増加などの対策を始めているが、外国人も教える福岡県の教員からは「現状でも厳しいのに、さらなる外国人増加に対応できるのか」と不安の声も漏れる。ある野党議員は、政府の取り組みの本気度に疑問を投げ掛ける。「多文化共生社会をつくり得る環境までいっていない。やったふりをしているだけだ」

<外国人の報酬問題に端を発したゴーンさん逮捕事件>
PS(2018年11月20、21、22、23、24日追加): *14-1のように、日産自動車会長のカルロス・ゴーン氏が逮捕されたが、日産自動車の平成30年3月期の有価証券報告書(http://cdn.ullet.com/edinet/pdf/S100DHAZ.pdf)を見ると、売上高は約12兆円、経常利益は7,500億円、包括利益は7,400億円、役員総報酬17.7億円、代表取締役会長ゴーン氏の報酬は7.4億円、外部監査人は新日本有限責任監査法人で適性意見が出ている。新日本有限責任監査法人はBig4であるE&Yと提携しているため、ゴーン氏の確定申告はE&Yが行っていると思われ、節税はしても法律違反となるような脱税はなかっただろう。また、同じ平成30年3月期のトヨタ自動車の有価証券報告書(http://cdn.ullet.com/edinet/pdf/S100DA2Y.pdf)を見ると、売上高は約12兆円、経常利益は2.2兆円、当期純利益は1.9兆円、役員総報酬は21億円、最高額の報酬を受けているのは平取締役Didier Leroy氏で報酬は10億円、外部監査人はPWCあらた有限責任監査法人で適性意見が出ている。そのため、Didier Leroy氏の確定申告はPWCが行っているだろう。
 それでは、何がいけなくてゴーン氏が容疑者にされているのかと言えば、「有価証券報告書への報酬の虚偽記載だ」と日本のメディアは盛んに言っているが、外部監査人は適性意見を出しているので、有価証券報告書に虚偽記載はないか、あったとしても投資家がミスリードされるほど大きなものではないと判断したわけだ。また、ゴーン氏が利用していたとされる不動産を管理しているオランダ子会社は特定目的会社だと思うが、特定目的会社は連結対象にならないため有価証券報告書に記載されていなくても合法的である上、日産からゴーン氏に不動産の所有権が移転されたわけではないので、家賃補助の一部が所得と見做される場合を除いてゴーン氏の報酬にはならない。さらに、トヨタ自動車の平取締役Didier Leroy氏と比較するとゴーン氏の報酬は外国人経営者の相場より低いため、何らかの形で差額を補填する契約になっていたのかもしれない(そうでなければ、優秀な外国人経営者は雇えないから)。さらに、*14-2のように、ゴーン氏はオランダ子会社からも報酬を得ていたのに有価証券報告書に記載していなかった疑いがあることも有価証券報告書の虚偽記載にあたり金融商品取引法違反だと書かれているが、オランダ子会社は上場していないので開示義務はなく、開示されるのは日産の連結財務諸表であるため連結対象外の子会社から受け取った役員報酬も記載しなければならないかどうかは疑問だ。なお、内部監査人は、経営者の下にいるため経営者の不正は指摘できないのが普通で、株主や投資家保護のためには監査役・外部監査人が任命されているわけである。
 そして、ゴーン氏逮捕の報道後に日産・ルノーグループの株価が下がった理由は、むしろ今後の日産・ルノーグループの業績を悲観してのことではないか? 私は、スペインのバルセロナで、ゴーン氏が「Technology is exciting!」と大きなテレビ画面で自動運転の宣伝をしていたのを見て、ゴーン氏なら世界のニッサンのトップにふさわしいが、西川氏は日本の日産の社長にしかなりえず、ゴーン氏の経営判断は素晴らしかったと考える。そのため、権力闘争のために不法行為を使って相手の名誉を失わせる国をFairだとは思わない。しかも、今後は、ルノーは日産と縁を切ってもEVで組む相手が今では中国・ドイツ・アメリカ・日本等に多々いるので問題ないが、日産は最初にEVを市販したもののラインナップが少なく、フランスのルノーと一緒にやらなければ中東やアフリカなどの市場を開拓する能力はないため、次第に遅れていくと思われる。
 そうなると、何が有価証券報告書虚偽記載に当たるのか不明なのだが、日経新聞は、*14-3のように、ゴーン氏は有価証券報告書虚偽記載の疑いで逮捕されたので、「カリスマが変質して独善になったゴーン氏退場」と記載している。そして、①日産とルノーのトップを兼務し始めたころから独裁者に変貌し始めた ②後継者を見つけることはトップの責務だ ③数年前に乗り換えた最高級機種のプライベートジェットはゴーン会長専用機だった ④日本に来る回数は減った ⑤世界中の政官財の要人や親族らと豪華なディナーを囲むことが増えて現場からだんだん離れていった などとしている。しかし、①は凡庸なことを繰り返して言うことしかできない人と話す時間はもったいなく相談しても意味がないことを無視しているし、②は日本でよく言われるトップさえ辞めさせればよいという変な批判だし、③④⑤は今後のニッサンの世界戦略を考える立場なら日本で会長席を温めているよりも重要なことである。なお、プライベートジェットは時間と体力を惜しんで世界を駆けまわる経営者の必需品で世界では常識であり、世界中の政官財の要人と親しくなることも誤らない世界戦略を作ったりEV優遇策を入れてもらったりするために必要なことだ。つまり、日本メディアの批判は、その人の職務も考えずに「自分よりいい思いをしている人がいるのは平等でない」という感情的な悪口を繰り返している点が幼稚なのである。
 なお、*14-4には、日産は資本金約60億円を全額出資してオランダに子会社「ジーア」を設立し、ゴーン氏の自宅用物件の購入などにあてていたことが分かったと記載されているが、この金額はゴーン氏がこれまでに受けとった報酬と外国人経営者の報酬相場との差額であるため、退職時にゴーン氏がジーアの株式を受け取る契約があったと考えると全体の筋が通る。タックスヘイブンに会社を作ることは違法ではなく、こうすると所得税を節税しながら不動産投資をすることができるわけだ。しかし、このような複雑なことをしなければならなかった根本的問題点は、日本人が自分と比較してゴーン氏の報酬が高すぎるという嫉妬に基づく批判をしすぎたことであり、ゴーン氏が拘留されているのは人権侵害だと思う。
 日経新聞は、2018年11月23日、*14-5のように、ゴーン氏は2018年3月期までの8年間で計約80億円の報酬を記載していなかったと書いているが、これがニッサン・ルノーの会長・社長としてゴーン氏の本来の報酬との差額に当たり、その報酬を記載しなかったのは、心ない批判でトップとしての権威が失われるのを避けたかったからだろう。そのため、「ストック・アプリシエーション権」は放棄して、その分も「ジーア」に投資していたのではないかと思う。監査法人が適性意見を付けているのだから、この役員報酬の記載漏れが投資家をミスリードするほど重大な金商法違反に当たらないのは明らかで、それでもゴーン氏を“容疑者”と呼んで拘留し続けるのは人権侵害であり、今の弁護士は変えた方がよい。なお、日本の司法は、経済・会計・国際税務に弱く、超domesticで発想が古い上、人権侵害にも疎いため、ゴーン氏は日本での取り調べの状況をメモして出版し、これをきっかけに日本の司法改革を進めるのも一つの貢献ではある。
 今回のゴーンさん逮捕事件をよく考えると、これで得したのは権力闘争の相手と市場の競争相手だが、確かに日産の利益率はトヨタよりかなり低かった。理由はいろいろあると思うが、EVへの逆風が強くインフラ整備が追い付いていなかったことも大きな原因だろう。しかし、*14-6のように、オーストリア政府はEVだけ制限速度を緩める優遇策でEVの普及を促すそうだし、このほかにヨーロッパではスイス・イタリアにもEV優遇策がある。私は、自動運転や安全支援システム搭載車にも、自動車保険の保険料を安くするなどのメリットがあってよいと考える。

   

(図の説明:左図のように、平均的役員報酬の額は日米欧で全く異なり、日本は著しく低い。また、右図のように、日本の中にも役員報酬の高い上場企業はあり、ゴーン氏の報酬が特別高いわけではないと思われる)

*14-1:http://qbiz.jp/article/144496/1/ (西日本新聞 2018年11月20日) 仏政府、ルノー取締役会に要請 「暫定経営陣を」、会長逮捕で
 フランスのルメール経済・財務相は20日、日産自動車会長のカルロス・ゴーン容疑者が逮捕されたことを受け、ゴーン容疑者がトップを務めるフランス自動車大手ルノーに対し、暫定的な経営陣を直ちに据えるよう求める考えを示した。公共ラジオのインタビューに答えた。ロイター通信によると、ルノーは20日中に取締役会を開くと表明。フランス政府の要求に基づき対応を協議するとみられる。フランス政府はルノーの筆頭株主で議決権の約15%を占める。ルメール氏は、ゴーン容疑者は逮捕により「(ルノーなどの)企業連合を率いることのできる状況ではない」と指摘する一方、解任を求めるには「私たちに(根拠となる)証拠がない」と説明。日本側に、日産が検察に提供した情報の共有を求める意向を示した。事件発覚後、フランスでのゴーン容疑者の報酬申告などに問題がないかどうか調べたが「注意すべき点は何もなかった」と明らかにした。またゴーン容疑者の逮捕により、ルノーと日産、三菱自動車の連合は「不安定化している」との認識を示し、連合の維持が「フランスと日本双方の利益だ」と日本側に訴えると語った。

*14-2:http://qbiz.jp/article/144551/1/ (西日本新聞 2018年11月21日) ゴーン会長、海外報酬も不記載か オランダ子会社、住宅購入も
 金融商品取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)の疑いで逮捕された日産自動車の代表取締役会長カルロス・ゴーン容疑者(64)が、日産本社以外にもオランダにある子会社から報酬を得ていたのに、有価証券報告書に記載していなかった疑いがあることが21日、関係者への取材で分かった。子会社からの報酬は毎年、億単位に上っていたという。この子会社などが、ゴーン容疑者が無償で利用したとされるフランス、オランダ、レバノン、ブラジルの住宅を購入していたことも判明した。東京地検特捜部は、オランダの子会社が不正の中核的な役割を担っていたとみて、設立の経緯や、ゴーン容疑者側近の代表取締役グレゴリー・ケリー容疑者(62)の関与を捜査。虚偽記載が長期にわたっていたことなどから、「両罰規定」を適用し、法人としての日産の立件も視野に捜査を進める。ゴーン容疑者は海外の複数の住宅を利用していたが、正当な理由がないのに賃料などを支払っていなかったとされる。住宅の購入には、ケリー容疑者の部下に当たる法務担当の外国人執行役員が関与。特捜部は執行役員との間で司法取引に合意している。ゴーン容疑者は、日産の有価証券報告書に自分の報酬を約50億円少なく記載したとして、ケリー容疑者とともに19日に逮捕された。関係者によると、株価に連動した報酬を受け取る権利数十億円分も付与されていたが、これも住宅の賃料などとともに有価証券報告書に記載していなかった。特捜部は、付与された権利分と賃料分を、いずれも報酬として有価証券報告書に記載する義務があったとみているもようだ。

*14-3:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20181122&ng=DGKKZO38026130R21C18A1MM8000 (日経新聞 2018年11月22日 抜粋) ゴーン退場 20年目の危機(下) カリスマ変質 独善に
 「こんなことが許されていいのか」。日産自動車会長のカルロス・ゴーン容疑者の詳細な情報を知る立場にいた日産の幹部は、不正につながる情報に目を疑った。同幹部をきっかけに半年ほど前から数人が極秘調査を開始。金融商品取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)の疑いでのゴーン会長逮捕につながった。
●ぎりぎりの時期
 同じ時期の今年4月、ゴーン会長は日産の親会社、仏ルノーとの資本関係見直しを突然表明した。かねて経営統合をにらんでいたゴーン会長。統合実現の際には日仏連合を統括する役職に就くことも関係者にほのめかしていた。ある日産幹部は「来年春までに統合を正式決定するつもりだったのでは」と話す。19日の逮捕はゴーン会長の野望を阻むぎりぎりのタイミングだった。1999年、経営危機に直面した日産を救済する形で資本提携を結んだルノーが日産に送りこんだのがゴーン会長(当時は最高執行責任者=COO)だった。「セブンイレブン」の異名がつけられるほど朝から晩まで働き、2000年に日産の社長に就いた後も大規模なコスト削減などで業績をV字回復させ、カリスマ経営者と呼ばれるようになった。05年、ルノーの最高経営責任者(CEO)にも就いたゴーン会長。日産とルノーのトップを兼務し始めたころから独裁者に変貌し始めた。ゴーン会長を日産に送り込んだ元ルノー会長のルイ・シュバイツァー氏が09年に退くと、日産とルノーの経営を掌握。自らを「アライアンスのファウンダー(創業者)」と呼ぶようになり、いつしか暴君と恐れられる存在に。あらがえない幹部や社員は日産を去った。
●見限った幹部ら
 「誰かのように権力にしがみつくことはしたくない。後継者を見つけることはトップの責務だ」。ゴーン会長の「右腕」とされた元日産副社長のアンディ・パーマー氏は今月7日の来日時にこう話していた。今の肩書は英高級自動車、アストンマーティン社長。「ゴーンさんがいたら、いつまでもトップになれない」。4年前、日産を去る際にこう漏らした。パーマー氏が移籍した同時期には、ルノーで「ポスト・ゴーン」が確実視されていたカルロス・タバレスCOOが仏グループPSAのトップに移籍。「日産の先行きを心配している」と話すパーマー氏の言葉は、2週間後に現実になった。今年5月には日産の最高財務責任者(CFO)だったジョセフ・ピーター氏が退職。「アライアンス経営に苦言を呈していた」と、ある日産幹部はゴーン会長との確執が退社の原因と見る。身柄を拘束された日に日本に降り立ったプライベートジェットは数年前に乗り換えた最高級機種で、販売価格は60億円以上とされる。機体番号は「NISSAN」を連想する「N155AN」で、実質的なゴーン会長専用機だった。日本に来る回数は減り、世界中の政官財の要人や親族らと豪華なディナーを囲むことが増え「現場からだんだん離れていった」(日産の西川広人社長)。様々な対立感情もうずまく国際提携を20年にわたり維持できたのは、ゴーン会長の独裁ともいえる力があったからだ。その体制が崩れた今、模範といわれた国際提携も最大の試練を迎える。

*14-4:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO38052960R21C18A1MM0000/?n_cid=NMAIL006 (日経新聞 2018/11/22) 租税回避地へ資金移動 ゴーン会長「自宅」購入で
 日産自動車会長のカルロス・ゴーン容疑者(64)の報酬過少記載事件で、日産の子会社がタックスヘイブン(租税回避地)などの会社に投資資金を移し、ゴーン会長の自宅用物件の購入などにあてていたことが22日、関係者の話で分かった。東京地検特捜部も同様の事実を把握し、取引の実態を隠す狙いがあったとみて調べているもようだ。関係者によると、日産は2010年ごろ、資本金約60億円を全額出資してオランダに子会社「ジーア」を設立。社内会議では、ベンチャービジネスへの投資が目的と説明された。その後、ジーアは、租税回避地として知られる英領バージン諸島に設立した孫会社に資金の一部を移動。孫会社は11年、ブラジル・リオデジャネイロのリゾート地、コパカバーナにある高級マンションを5億円超で購入した。改装などの費用も孫会社が負担し、マンションはゴーン会長の自宅として無償提供されていた。一方、ジーアがバージン諸島につくった別の孫会社は、ジーアからの資金でレバノンの会社を買収。このレバノンの会社がベイルートにある高級住宅を約10億円で購入していた。この物件もゴーン会長の自宅として無償で提供されていた。リオとベイルートの2つの物件の購入や改装などにかかった費用は総額で20億円を超えるとされる。2物件はゴーン会長自らが選定し、一連の資金移動や取引は日産の代表取締役、グレッグ・ケリー容疑者(62)が指揮。ゴーン会長の側近の一人とされる外国人の専務執行役員(54)がジーアを管理し、物件の契約手続きなどを担当した。ゴーン会長を巡って、日産は社内調査の結果として▽報酬の過少記載▽投資資金の流用▽経費の不正支出――の3点の不正行為が確認されたと説明。リオとベイルートの物件の購入は投資資金の流用にあたるとみられる。 会社の役員などが自己または第三者の利益を図る目的で任務に背く行為をし、会社に損害を与えた場合、会社法の特別背任罪が適用される可能性がある。ただ、今回のケースでは複数の海外子会社が関わり、国境をまたいで資金が移動するなどしており、証拠収集のハードルは高いとみられる。

*14-5:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20181123&ng=DGKKZO38122880T21C18A1MM8000 (日経新聞 2018年11月23日) ゴーン元会長、未記載8年で80億円か 日産、役員総報酬修正も
 日産自動車のカルロス・ゴーン元会長の報酬過少記載事件で、ゴーン元会長が有価証券報告書に記載せずに受け取った金銭報酬が2018年3月期までの8年間で計約80億円に上る疑いがあることが22日、関係者の話で分かった。同期間で計約132億円と記載された役員の金銭報酬総額も修正が必要となる可能性がある。東京地検特捜部は会計上の処理などを詳しく調べているもようだ。役員報酬を巡っては10年3月期から、報酬が年1億円以上の役員について氏名と報酬額を有価証券報告書に記載することが義務化された。関係者によると、ゴーン元会長は仏ルノーの大株主である仏政府からの高額報酬批判を懸念していたといい、義務化を機に大幅に報酬を減額。ただ、実際は減額分を補填する形で、有価証券報告書に記載しない金銭報酬を毎年約10億円受け取っていた疑いがある。日産は08年6月の株主総会で役員の金銭報酬の総額について年29億9千万円を上限とした。有価証券報告書の記載では、09年3月期の役員報酬の総額は約25億円だったが、個別開示が義務化された10年3月期の金銭報酬の総額は約16億円に急減。その後も14億~18億円程度で推移している。10年3月期以降のゴーン元会長の金銭報酬は7億~11億円程度で、18年3月期までの8年間は計78億9100万円と記載されていた。東京地検特捜部は、未記載の金銭報酬約80億円のうち15年3月期までの5年間の約50億円について、金融商品取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)の疑いでゴーン元会長らを逮捕した。一方、80億円の金銭報酬の未記載とは別に、「ストック・アプリシエーション権」(SAR)と呼ばれる株価連動型インセンティブ受領権についても、ゴーン元会長は18年3月期までの4年間に約40億円分を付与されながら有価証券報告書に記載しなかったとされる。日産側はSARの不記載についても特捜部に情報提供。特捜部は金商法違反に当たるかどうか慎重に調べを進めている。

*14-6:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO3813967024112018MM0000/ (日経新聞 2018/11/24) オーストリア、EVだけ制限速度引き上げ 普及促す
 オーストリア政府は電気自動車(EV)だけ速度制限を緩める優遇策を2019年から始める。ガソリン車などが最高時速100キロメートルに制限されている道路でも、時速130キロメートルで走れるようにする。消費者がEVを購入したくなる環境をつくり普及を促す。制限速度を引き上げるEV優遇策は珍しい。オーストリアの高速道路の法定制限速度は時速130キロメートルだが、約2割にあたる440キロメートルの区間は大気汚染防止法で時速100キロメートルまでに抑えられている。EVは走行中に窒素酸化物などの有害物質を排出しないため、法改正で速度制限の例外とする。ハイブリッド車は優遇対象に含まない。現地メディアによるとEVを判別するために緑色のナンバーを発行し、取り締まり機が時速100キロメートル超えを検知しても、所有者を罰金などの対象から除く。オーストリアの新車販売に占めるEVの比率は18年1~9月に1.6%だった。ドイツや英国を上回り、欧州では比較的高いが、二酸化炭素(CO2)排出量の削減目標を達成するためには、EVの普及を急ぐ必要があると判断した。各国はEVを買う際の補助金や税金の免除などさまざまな普及促進策を採用している。オーストリアはノルウェーなどが実施しているバス専用レーンを走行できるようにしたり、公共の駐車場を無料にしたりするなどの優遇策も広げる。


PS(2018年11月24日追加):昨日、「日本の司法は、経済・会計・国際税務に弱い」と書いたが、司法は少なくとも法律には詳しくなければ困る。にもかかわらず、*15-1は、「ゴーン氏が退任後に報酬を受け取る契約書を日産と交わし、5年度分で約50億円が積み立てられていたことがわかり、将来支払いが確定した報酬として開示義務があるため、東京地検特捜部は事実上の隠蔽工作と判断して契約書を押収した」としている。しかし、日本の民法には、契約自由の原則がある上、退職金や退職年金にあたる退職後に受け取る報酬(日産から見れば過去勤務債務)は現在の報酬とは考えない。これは、どの取締役も退職金や退職年金の金額までは開示していないのと同じであり、会長や社長だからといって金融商品取引法の開示義務を拡大解釈するのは法的公平性に反しており法治国家とは言えない。なお、*15-2に、弁護士のケリー氏が「役員報酬は全て適切に処理した」として容疑を否認しているそうだが、通常、東京地検特捜部が想定しているような法律違反にあたる馬鹿なミスはしないため、そのとおりだろう。

*15-1:https://digital.asahi.com/articles/DA3S13783009.html (朝日新聞 2018年11月24日) 退任後の報酬、50億円隠蔽か ゴーン前会長と日産、契約 特捜部、過少記載と判断
 日産自動車の会長だったカルロス・ゴーン容疑者(64)が役員報酬約50億円を有価証券報告書に記載しなかったとして逮捕された事件で、ゴーン前会長が退任後に報酬を受け取る契約書を日産と交わし、毎年約10億円、5年度分で約50億円が積み立てられていたことがわかった。東京地検特捜部はこの契約書を押収。将来の支払いが確定した報酬として開示義務があり、事実上の隠蔽(いんぺい)工作と判断した模様だ。ゴーン前会長は、側近で前代表取締役のグレッグ・ケリー容疑者(62)と共謀し、2010~14年度の5年分の役員報酬について、実際は計約99億9800万円だったのに、有価証券報告書には約50億円少ない計約49億8700万円と記載したとする金融商品取引法違反の容疑で逮捕された。日産は08年、取締役の金銭報酬の総額について、上限を29億9千万円と決定。有価証券報告書に記載された08年度の報酬総額は約25億円だった。一方、上場会社の役員報酬は09年度の決算から、年1億円以上を受け取る役員の名前と金額の開示が義務づけられた。日産の09年度分の取締役報酬の総額は約16億円に減り、その後も15億円前後になった。このうち、ゴーン前会長分は10億円前後だった。関係者によると、ゴーン前会長は自分が受け取るべき報酬は約20億円と考えていたが、報酬の個別開示の義務化を受け、「高額だ」と批判されることを懸念。役員報酬は約10億円にとどめ、別の名目でさらに約10億円を受け取る仕組み作りが必要だと考えたという。このため、自分が退任した時に顧問などになる契約を日産と締結。契約料として約10億円を毎年積み立て、退任後に支払われることにした。この約10億円は、取締役の報酬上限である29億9千万円のうち、使わなかった十数億円から支出したという。特捜部はこれを事実上の隠蔽工作だと判断。契約料を受け取るのは退任後だとしても、契約書は毎年交わされており、その都度、役員報酬として報告書に記載し、開示する義務があるとみている模様だ。ゴーン前会長は、直近の15~17年度分の報酬についても、同様の手口で約30億円を過少記載した疑いがあり、特捜部は立件する方針を固めている。虚偽記載の総額は8年度分で約80億円にのぼる見通しだ。

*15-2:https://digital.asahi.com/articles/ASLCS4QZJLCSUTIL009.html?iref=comtop_8_01 (朝日新聞 2018年11月24日) ケリー容疑者「役員報酬、全て適切に処理」 容疑を否認
 日産自動車の代表取締役会長だったカルロス・ゴーン容疑者(64)が役員報酬約50億円を隠したとして金融商品取引法違反(虚偽記載)の疑いで逮捕された事件で、共謀したとされる前代表取締役グレッグ・ケリー容疑者(62)が逮捕後、「役員報酬などは全て適切に処理していた」と容疑を否認していることが、関係者への取材でわかった。ケリー前代表取締役の逮捕容疑に対する認否が明らかになるのは初めて。2人は、2010~14年度のゴーン前会長の役員報酬について、実際は計約99億9800万円だったのに、有価証券報告書には約50億円少ない計約49億8700万円と記載したとして、19日に東京地検特捜部に逮捕された。ケリー前代表取締役は、米国の大学を卒業後、法律事務所の弁護士を経て1988年に北米日産に入社した。一貫して人事畑を歩み、08年に日産本社の執行役員に就任。常務執行役員を経て、12年に代表取締役に就いた。ゴーン会長の「側近中の側近」として大きな影響を持っていたとされるが、日本の日産本社にはほとんど姿を見せなかったという。


PS(2018年11月25、27日追加): *16-1に、「①ケリー容疑者が隠蔽主導か」「②経理は見抜けなかった」「③ゴーン氏と日産が毎年交わしていた契約書には報酬総額を約20億円と明記され、その年に受け取る約10億円と退任後に受け取る約10億円が分けて記載されており、前会長の直筆のサインもあった」「④社内の経理部門や外部監査人が見抜けないよう隠蔽したとみられる」「⑤ケリー氏は逮捕後、『社内に相談し、社外の意見ももらって問題ないと判断したたので適法だと思う』と説明している」と書かれている。
 しかし、何が法律違反かもわからないのに“容疑者”と呼んで大々的に広報するのは人権侵害だ。また、①⑤は、ケリー氏自身が日本や関係国の法律に詳しいわけではないため、社内・社外の意見を聞いて判断したと考える方が自然で、これは*16-2のケリー氏の「役員報酬記載や物件購入などについて、社内の担当者と相談し、外部の法律事務所や金融庁にも問い合わせて処理した」という説明とも合致しており、普通のプロセスである。なお、人事情報は誰にでも見せるべきものではないが、経理のトップと担当者は知っていなければ会計処理できず、有価証券報告書も作れず、外部監査人に説明することもできないので、②④は経理と外部監査人の両方を馬鹿にした説明だ。さらに、③の内容については、報酬総額約20億円をどういう形で契約書に明記したかは私は見ていないので知らないが、外部監査人は見た筈で、退職後にもらう報酬を退職金として扱うのは通常のことであって、この退職後にもらう筈の報酬を特別目的会社を使って海外不動産の購入等で運用していたとすれば、債務が確定していたとしても従業員の退職給付や確定拠出年金に近いものであり、犯罪ではないと思う。
 なお、2018年11月27日付で朝日新聞が、*16-3のように、「ゴーン前会長、17億円の私的損失、日産に転嫁か」という記事を書いているが、このように「か」を付けなければならないような不確定な記事を掲載すると、事実と異なった場合には名誉棄損・侮辱となり、これらの悪口報道によって失った機会利益もゴーン氏の損失とカウントされる。なお、何故か会社の名称を伏せているが、このゴーン氏の資産管理会社がジーアではないのか?また、「ゴーン氏が担保を追加しない代わりに、損失を含む全ての権利を日産に移した」というのは、約17億円の損失を日産に肩代わりさせたのではなく日産の保証を得たということで、その後にゴーン氏がこの会社に自分の将来の退職金をつぎ込んで将来の自宅等を購入したのなら日産に損失は与えていない。また、三菱自動車も会長職を解任したのは、このような理由で権威を失った人は会長として機能しないからであり、その原因が虚偽であった場合は、ゴーン氏は虚偽を報道したメディアや日産に名誉棄損・侮辱による慰謝料と機会損失に関する請求をすることができる。そして、特捜部が把握したから正しいかのような記事を書くことは、普段からメディアが主張している「権力を批判する言論の自由」などではなく、つての少ない外国人をターゲットにして権力と会社側についており、実際には権力を持っておらず自分たちに無害と思われる政治家やマイノリティーを集団で叩いて、権力と闘っているかのように見せているだけだ。

*16-1:https://digital.asahi.com/articles/DA3S13784124.html (朝日新聞 2018年11月25日) ケリー容疑者、隠蔽主導か 経理、見抜けず ゴーン容疑者報酬
 日産自動車の会長だったカルロス・ゴーン容疑者(64)が役員報酬約50億円を有価証券報告書に記載しなかったとして逮捕された事件で、ともに逮捕された前代表取締役のグレッグ・ケリー容疑者(62)が、前会長が退任後にこの50億円を受け取るという仕組み作りを主導していた疑いがあることがわかった。関係者によると、経理部門も見抜けない形で報酬を隠蔽(いんぺい)していたという。
■「適切に処理」周囲に説明
 退任後の報酬のためにゴーン前会長と日産が毎年交わしていた契約書には、報酬総額を約20億円と明記したうえで、開示してその年に受け取る約10億円と退任後に受け取る約10億円を分けて記載していたことも判明。前会長の直筆のサインもあった。東京地検特捜部はこの契約書を入手し、重要な物証として詳しい経緯を調べている。ゴーン前会長は側近のケリー前代表取締役と共謀し、2014年度までの5年度分の役員報酬について、実際は約100億円だったのに有価証券報告書には約50億円と虚偽の記載をしたとする金融商品取引法違反の容疑で逮捕された。1億円以上の報酬を得た役員は、09年度の決算から名前と金額の個別開示が義務づけられた。関係者によると、このルールの導入前は、ゴーン前会長の報酬は約20億円だったが、ゴーン前会長は開示によって「高額だ」と批判を浴びるのを懸念。表向きの報酬は約10億円になるよう、ケリー前代表取締役に対策を指示したという。ケリー前代表取締役は、残りの約10億円は別の名目で毎年、蓄積して退任後に受け取れる様々な仕組みを構築。ゴーン前会長の退任後に、コンサルティング契約や、競合する会社を設立しないという契約を結ぶことなどを考えたという。こうした仕組みを把握していたのはケリー前代表取締役らごく少数で、社内の経理部門や外部の監査法人が見抜けないように隠蔽したとみられるという。一方、ケリー前代表取締役が逮捕後、役員報酬などについて「全て適切に処理していた。適法だと思う」と周囲に説明していることが24日、関係者への取材でわかった。「社内に相談し、社外の意見ももらって問題ないと判断した」と語っているという。

*16-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20181125&ng=DGKKZO38151530U8A121C1MM8000 (日経新聞 2018年11月25日) ゴーン元会長の報酬「適切に処理」 逮捕の日産役員説明
 日産自動車元会長のカルロス・ゴーン容疑者(64)の報酬過少記載事件で、元代表取締役のグレッグ・ケリー容疑者(62)が報酬の記載などについて「担当者らと相談し、適切に処理した」と説明していることが24日、関係者の話で分かった。東京地検特捜部にも同様の趣旨の供述をするとみられる。ケリー役員は日産の投資資金を流用した海外物件購入などの不正行為も主導したとされる。関係者によると、ケリー役員は報酬過少記載や物件購入などについて「(社内の)担当者と相談し、外部の法律事務所や金融庁にも問い合わせて処理した」と説明。不正行為との認識はないと主張しているという。ゴーン元会長とケリー役員は15年3月期までの5年間の有価証券報告書に元会長の金銭報酬を約50億円過少に記載したとして金融商品取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)の疑いで特捜部に逮捕された。

*16-3:https://digital.asahi.com/articles/DA3S13786345.html (朝日新聞 2018年11月27日) 私的損失、日産に転嫁か ゴーン前会長、17億円 特捜部把握
 役員報酬を有価証券報告書に約50億円分少なく記載した疑いで逮捕された日産自動車の前会長カルロス・ゴーン容疑者(64)が2008年、私的な投資で生じた約17億円の損失を日産に付け替えていた疑いがあることがわかった。証券取引等監視委員会もこの取引を把握し、会社法違反(特別背任)などにあたる可能性があると、関係した銀行に指摘していたという。東京地検特捜部も同様の情報を把握している模様だ。複数の関係者によると、ゴーン前会長は日産社長だった06年ごろ、自分の資産管理会社と銀行の間で、通貨のデリバティブ(金融派生商品)取引を契約した。ところが08年秋のリーマン・ショックによる急激な円高で多額の損失が発生。担保として銀行に入れていた債券の時価も下落し、担保不足となったという。銀行側はゴーン前会長に担保を追加するよう求めたが、ゴーン前会長は担保を追加しない代わりに、損失を含む全ての権利を日産に移すことを提案。銀行側が了承し、約17億円の損失を事実上、日産に肩代わりさせたという。一連のやりとりの中で、銀行側は、権利を日産に移す条件として、日産の取締役会で承認を取るよう求めたが、ゴーン前会長側はこの要請を拒否。銀行側は日産が大手企業であることなどを考慮し、ゴーン前会長の意向を最終的に受け入れた。銀行側との交渉にはゴーン前会長に近い幹部が関わっていたという。関係者によると、監視委は同年に実施した銀行への定期検査でこの取引を把握。ゴーン前会長の行為が、自分の利益を図るために会社に損害を与えた特別背任などにあたる可能性があり、銀行も加担した状況になる恐れがあると、銀行に指摘したという。特捜部は、ゴーン前会長による会社の「私物化」を示す悪質な行為とみている模様だ。ゴーン前会長は、10~14年度の5年分の役員報酬を約50億円少なく有価証券報告書に記載した金融商品取引法違反の容疑で逮捕された。直近の15~17年度分の約30億円も過少に記載した疑いがある。このほか、海外の高級住宅を会社側に購入させて家族で利用したり、業務実態がない姉のために年10万ドル(約1100万円)前後を支出させたりした疑惑が浮上している。日産の広報は「捜査が入っているので、何も答えられない」とコメントした。
■三菱自も会長職を解任
 三菱自動車は26日夕、臨時取締役会を開き、ゴーン容疑者の会長職を解任し、代表権を外すことを全会一致で決めた。会長は次の株主総会までの間、暫定的に益子修・最高経営責任者(CEO)が兼務する。ゴーン容疑者は日産自動車、仏ルノー、三菱自の会長を兼務し、3社連合の経営を率いてきたが、日産も22日の臨時取締役会で会長職を解き、代表権を外すことを全会一致で決めていた。一方、ルノーは20日の取締役会でゴーン会長兼CEOの解任を見送り、CEOの暫定代行にティエリー・ボロレ最高執行責任者(COO)を充てる人事を決めた。日産・三菱自とルノーの間で対応は分かれている。

| 経済・雇用::2018.1~2018.11 | 02:29 PM | comments (x) | trackback (x) |
2018.10.9 新技術によるイノベーション投資が、本物の経済成長とより豊かな社会を作り出すこと (2018年10月10、11、12、13、15、16、19、20、21日に追加あり)
  
                               2017.11.6朝日新聞

(図の説明:癌細胞は、日頃から細胞分裂の失敗などで一定割合できるが、左図のように、免疫力が強くて健康ないうちは免疫細胞の方が勝ち、免疫力が弱くなると増殖し始める。癌細胞は、もともとは自分の細胞であるため免疫が効きにくく、中央の図のように、これまで放射線療法・外科的療法・化学療法が標準治療だったが、これに堂々と免疫細胞が加わったわけだ。今回のノーベル賞受賞は、右図のように、「CTLA―4」という蛋白質が働かないようにして効果を出す免疫療法だ。私は、本人の免疫細胞を使えば、化学療法のように無差別に健康な細胞まで攻撃して副作用を起こすことがなくなるため、最も効果的な治療になる筈だと考える)

(1)今年のノーベル賞
 今年のノーベル賞は、免疫を使った癌治療、生物・物理の研究者が使うレーザー応用技術、進化をまねた薬品の開発、気候変動や技術革新と経済成長を結び付けた理論など、私が指摘していた医学・生物・生態系分野の受賞が多くて嬉しいものだった。しかし、日本人のノーベル賞受賞者には、これまで女性が一人もおらず、これは、日本における女性研究者の軽視によるだろう。

1)ノーベル医学・生理学賞
 ノーベル医学・生理学賞は、*1-1、*1-2のように、京大の本庶佑特別教授と米テキサス大学のジェームズ・アリソン教授が受賞された。本庶氏らは免疫を使って癌を治療する方法を開発し、小野薬品とブリストル・マイヤーズスクイブが治療薬「オプジーボ」「ヤーボイ」を共同開発して、現在は皮膚癌・肺癌・胃癌などの癌に効くとされ、60カ国以上で承認されている。

 癌は、自分の細胞のDNAが変化したものであるため自身の免疫が効きにくいのだが、免疫が癌をたたく作用を抑制する「CTLA―4」という蛋白質が働かないようにすることで、効果を出したのだそうだ。そして、「オプジーボ」や「ヤーボイ」は、*3-3のように進行癌にすら効くのだから、それ以前のステージの癌で免疫を弱くする治療をしていない人なら、さらによく効く筈である。

 なお、現在は高額な薬価が問題になっているが、対象となる患者が増えて大量に生産されるようになれば、他の製品と同様、安くなる。さらに、現在、副作用とされているものの中には、大量の癌細胞を死滅させるため、一時的にショック状態を起こすものもあるようだ。

2)ノーベル物理学賞
 物理学賞は、*1-2のように、米国のアーサー・アシュキン(96)、フランスのジェラール・ムル(74)、カナダのドナ・ストリックランド(59)の3氏で、レーザーの応用技術で医学・工学などで研究を支えているものだそうだ。

 アシュキン氏が開発したのは「光ピンセット」と呼ばれる技術で、生物物理学の研究者の多くが使っているもので、ムル氏とストリックランド氏が開発したのは「チャープ・パルス増幅法(CPA)」という高強度の超短パルスレーザー技術で、近視矯正手術(レーシック手術)で使われているのだそうだ。

3)ノーベル化学賞
 化学賞は米国のフランシス・アーノルド(62)とジョージ・スミス(77)、英国のグレゴリー・ウィンター(67)の3氏で、生物の進化をまねることで作る医薬品開発に有用な蛋白質をつくる手法を開発されたのだそうだ。

 ただ、「①常に厳しく『なぜ』を問いつめる」「②若い人とも同じ目線で議論する」と書かれているうち、①は、科学者なら当然で、②も、よい発想をする(ここが重要)若い研究者なら研究を前進させるために当然なので、特に書くのがおかしいくらいであり、それをやっていない人がいるとすれば、その方が変である。

4)ノーベル経済学賞
 ノーベル経済学賞は、*1-3のように、気候変動や技術革新が持つ要素と経済成長を結び付けた業績を評価して、ウィリアム・ノードハウス米エール大教授(77)とポール・ローマー米ニューヨーク大教授(62)に授与されることになったそうだ。
 
 これまでの経済学は、環境や技術革新を無視していたが、ノードハウス氏は気候変動と経済成長の関係を定量モデルで説明して炭素税のような政策介入がもたらす効果を説明され、ローマー氏は技術革新が経済成長を促す「内生的成長理論」を確立されたそうで、これらは、確かに世界に役立つ研究だ。

 なお、メディアの中には、ノーベル経済学賞を受賞したのが日本人でないことを残念がるところもあったが、日本は、*1-4のように、大規模な金融緩和を行い、物価を上げ、そうすれば個人消費が増えるなどと言っている国だ。実際には、それによって、円の価値が下がり、モノの価値が上がって、円建の債権や預金を目減りさせているだけであり、日本の経済学者の多くが思考停止している。そのため、これで「ノーベル経済学賞・・」と言うのはおこがましすぎる。

(2)新技術が生む新しい市場とその技術の普及を阻む厚労省
 ノーベル生理学・医学賞を受賞した本庶佑氏が、免疫細胞による攻撃から癌細胞が逃れる仕組みを解明し、*2-1のように、小野薬品とブリストル・マイヤーズスクイブが癌免疫薬を開発して5兆円市場を生み出し、世界中の製薬会社がこの仕組みを応用した新薬の開発にしのぎを削っているそうだ。

 にもかかわらず、*2-2のように、厚労省が再生医療などの細胞を用いる治療の監視体制を強めるという馬鹿な方針を決め、「がん免疫療法」も効果がはっきりしないとして制限するそうだが、これは、癌治療のイノベーションを邪魔している。治療効果は、それを使って治療しなければいつまでも検証できないが、*3-3のように、進行癌でさえ治るという効果は他の治療法より優れているため、駄目な理由を挙げるのではなく、使えるように力を貸すべきだ。

(3)「オプジーボ」や「ヤーボイ」などの癌治療薬
 小野薬品の「オプジーボ」やBMSの「ヤーボイ」などの癌免疫薬は、*3-1のように、免疫細胞のオン・オフを制御する分子に作用するため「免疫チェックポイント阻害剤」と呼ばれ、癌細胞が免疫細胞にかけたブレーキを解除し、攻撃開始のスイッチを入れるのだそうだ。

 しかし、免疫による攻撃力が弱っていれば、いくらブレーキを解除しても癌細胞を攻撃して死に至らしめることはできない。そのため、進行癌よりも初期の癌、化学療法・放射線療法・リンパ節切除などで免疫力の弱くなった身体よりもその前の身体の方が効きがよいだろうし、*3-2のように、免疫細胞の攻撃力を高めるのも有効だろう。

(4)人材育成
 「百里の道も一歩から」と言われるように、ノーベル賞を受賞する科学者をトップとすれば、その下には、ピラミッド型に多くの人材がいる。その「初めの一歩」は小中高校での教育だが、これについて、*4のように、「教科の数値評価をなくす」という議論がされているそうだ。

 しかし、教科毎に行う数値評価をなくした上で、各教科で「知識・技能」「思考力・判断力・表現力等」などを項目ごとに「ABC」といった形で評価する「観点別評価」だけにするというのは、たいした知識もない小中高生に思考力や判断力を求めることになり、評価する先生の価値観やレベルにもばらつきがあるため、評価の客観性を無くし、勉強する目標や動機付けを失わせることになって、とりかえしがつかない。

 私は、児童生徒や保護者が数値評価のみに注目するのも問題だが、それを無くして知識獲得の目標や動機を失わせる方がよほど問題だと考える。日本人全員が手を繋いで仲良くサボっても、世界は待っていてはくれないのだから。

*1-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20181002&ng=DGKKZO35987710R01C18A0MM8000 (日経新聞 2018年10月2日) ノーベル生理学・医学賞に本庶氏、がん免疫療法開発
 スウェーデンのカロリンスカ研究所は1日、2018年のノーベル生理学・医学賞を京都大学の本庶佑特別教授(76)と米テキサス大学のジェームズ・アリソン教授(70)に授与すると発表した。本庶氏らは人の体を守る免疫の仕組みを利用してがんをたたく新たな治療法開発に道を開いた。研究成果を応用して、肺や腎臓など様々ながんに効く新しいがん治療薬が続々と登場している。日本のノーベル賞(総合2面きょうのことば)受賞者は16年の東京工業大学の大隅良典栄誉教授に続き26人目(米国籍を含む)。生理学・医学賞は計5人となった。授賞理由は「免疫抑制の阻害によるがん治療法の発見」。がんは先進国、新興国を問わず死因の上位に位置しており、カロリンスカ研は「世界で年間で数百万人もの命を奪うがんとの闘いで、本庶氏の発見に基づく治療法は極めて高い効果を示した」と評価した。同日、京大で記者会見した本庶氏は受賞の喜びを述べた上で、「私は基礎研究をしているが、医学で何らかの治療につながらないかと常に考えている」と語った。本庶氏は「PD―1」と呼ぶたんぱく質を免疫細胞の表面で発見し、92年に発表した。後にこのたんぱく質が、がんをたたく免疫の機能を抑えるよう働いていることを突き止めた。本庶氏の成果を生かし、小野薬品工業と米製薬大手ブリストル・マイヤーズスクイブ(BMS)が治療薬「オプジーボ」(一般名ニボルマブ)を共同開発。14年に世界に先駆けて日本で皮膚がんの薬として発売された。その後、肺や胃などのがんに対象が広がり、60カ国以上で承認されている。アリソン氏は90年代半ば、免疫ががんをたたく作用を抑制する「CTLA―4」という別のたんぱく質を働かないようにすることで、マウスのがんを治療することに成功し、論文を発表した。従来は体内で病気と闘う免疫の機能はがんにはうまく働かないことが大きな課題だったが、両氏の成果は新たな発想の治療法の道筋をつけた。免疫を利用してがんをたたくがん免疫薬は世界の製薬会社が開発に力を入れる。市場規模は17年で1兆円ともいわれる。一部の患者では薬が効いて長期間の生存を可能にする一方、高額な薬価が議論を呼んだ。本庶氏は同日、日本経済新聞のインタビューに「よい(研究の)タネなら必ず成功する。よいタネを生み出し育てることが最も重要だ」と強調した。授賞式は12月10日にストックホルムで開く。賞金は900万スウェーデンクローナ(約1億1500万円)。2氏で分け合う。
*本庶佑氏(ほんじょ・たすく) 1942年京都市生まれ。66年京都大学医学部卒業。京大大学院医学研究科博士課程修了後、米国立衛生研究所(NIH)や東京大学、大阪大学での研究を経て84年京大医学部教授。免疫細胞の表面にあるたんぱく質「PD―1」を発見し92年に論文発表。新たながん治療薬開発に道を開いた。13年文化勲章、16年京都賞。17年から現職。76歳。

*1-2:https://digital.asahi.com/articles/DA3S13707921.html (朝日新聞 2018年10月4日)ノーベル賞、3賞決まる 医学生理学賞に本庶さん、物理学賞に3氏、化学賞に3氏
 今年のノーベル賞は1~3日、自然科学系3賞が発表され、医学生理学賞に京都大の本庶佑(ほんじょたすく)特別教授らが選ばれた。物理学賞はレーザー技術を発展させた欧米の3氏に、化学賞は薬やバイオ燃料などの新たな作成法に道を開いた米英の3氏に贈られる。授賞式は12月10日にある。
■がん免疫治療法、切り開く チェックポイント阻害剤につながる発見 医学生理学賞に本庶佑さん
 医学生理学賞に決まったのは、京都大の本庶佑(ほんじょたすく)特別教授(76)と、米テキサス大MDアンダーソンがんセンターのジェームズ・アリソン教授(70)。それぞれの研究がきっかけとなり生まれた「免疫チェックポイント阻害剤」は、進行したがんは治らないとされるこれまでの常識を変えつつある。治療への活用はさらに広がろうとしている。こうした免疫治療薬は、免疫療法の一部。免疫療法は手術や抗がん剤、放射線に続く「第四の治療法」と期待されてきたが、これまでの大半は効果が確認されていない。本庶さんらは1991年、「PD―1」を見つけた。大学院生として本庶さんの研究室に所属し、発見に関わった滋賀医科大の縣保年(あがたやすとし)教授(53)によると、当初は細胞が自ら死ぬ現象にかかわる分子とみられていたが、その機能はなかなかはっきりと分からなかった。PD―1が相手役のたんぱく質とくっつくと免疫細胞の作用にブレーキがかかるらしいことが分かったのは、99年のことだった。やはり研究室の大学院生だった岩井佳子・日本医科大教授は2002年、抗体という物質でPD―1と相手役がくっつくのを邪魔すれば、抑えつけられた免疫のブレーキを外してがん細胞への攻撃力を高められることを報告。この物質が免疫チェックポイント阻害剤「オプジーボ」につながった。縣さんは「まさに点と点がつながるように、一つひとつの研究が積み重なって大きな成果につながった。本庶先生の指導力がそれだけ大きかった」と語る。オプジーボの効果は驚くほどだった。九州大病院の中西洋一・呼吸器科教授らは3年前、抗がん剤が効かずに状態が落ちていた肺がん患者に、オプジーボを初めて使った。数日のうちにがんが縮小し、患者は元気を取り戻した。この薬は、効く人には効果が長く続きやすいという特徴がある。千葉大腫瘍(しゅよう)内科の滝口裕一教授は「がんが転移しもう治らないと考えられた状態の人が、がんが増大しないまま数年間生き続けているケースも少なくない」と話す。アリソン教授も同じころ、免疫のブレーキにかかわる別の分子「CTLA―4」の研究を進め、この作用を利用したがん治療薬「ヤーボイ」の開発に道を開いた。本庶研で06~15年にPD―1の研究をした慶応大学の竹馬俊介講師によると、オプジーボはヤーボイよりも幅広い種類のがんの治療に使われ、臨床での評価はより高いという。東京都立駒込病院の吉野公二・皮膚腫瘍科部長は「オプジーボとヤーボイなど2種類を使うとさらに効果が高まることがあり、こうした手法が広がりそうだ」と話す。
■「オプジーボ」課題も
 課題もある。これらの薬には重症筋無力症や劇症1型糖尿病といった、従来の抗がん剤にあまり見られない副作用がある。また、免疫チェックポイント阻害剤は高価で、よく効くのは2~3割の人にとどまる。効くかどうかを事前に予測するのは難しい。最近、がん細胞の中の遺伝子変異が多い人では効きやすいらしいことがわかってきた。細胞中の数百の遺伝子を同時に調べて遺伝子変異の量をみる「パネル検査」という手法が開発され、来年にも国内で保険適用される可能性がある。
■レーザー応用技術、研究に寄与 物理学賞に米・仏・加の3氏
 物理学賞に決まったのは、米国のアーサー・アシュキン(96)、フランスのジェラール・ムル(74)、カナダのドナ・ストリックランド(59)の3氏。レーザーの応用技術を大きく発展させ、医学や工学など幅広い分野でいま、研究を支えている。アシュキン氏が開発したのは「光ピンセット」と呼ばれる技術だ。レーザーによって、細胞やウイルスといった微小な物体を自由自在に動かすことができる。大阪市立大の東海林竜也講師(分析化学)によると、光には物をとらえる力があることはわかっていたものの、だれも実証できなかった。アシュキン氏は1970~80年代にかけて、レーザーの光をレンズで集めることで、水溶液中の粒子を自由に動かせることを実証した。アシュキン氏の発見が、たんぱく質や分子を壊すことなく、自由に操る技術につながった。筋肉中の分子を操作する研究に使っている大阪大の柳田敏雄特任教授(生物物理学)は「分子やたんぱく質をつかまえることを通して、体の中のことがより分かる。生物物理学の研究者の多くが、いまは光ピンセットを使っている」とその業績をたたえる。ムル氏とストリックランド氏が開発したのは「チャープ・パルス増幅法(CPA)」という高強度の超短パルスレーザーの技術だ。レーザーのパルスの幅をいったん広げるなどしてから強度を高める独創的な手法を編み出した。東京大物性研究所の板谷治郎准教授は「それまで高強度のパルスを得るには、巨大な施設が必要だった。CPAの登場によって、実験室規模の装置ですむようになった」と話す。応用も幅広い。よく知られるのは近視矯正手術(レーシック手術)。京都大先端ビームナノ科学センターの橋田昌樹准教授によると、超短パルスレーザーは切れ味がよく、熱も出にくいので角膜を切るのに適している。また、装置の小型化を見込んで、がんの重粒子線治療の加速器などへの応用も検討されている。
■抗体医薬の開発加速 化学賞に米・英の3氏
 化学賞は米国のフランシス・アーノルド(62)とジョージ・スミス(77)、英国のグレゴリー・ウィンター(67)の3氏に決まった。生物の進化をまねることでバイオ燃料や医薬品の開発に有用なたんぱく質をつくる手法を開発した。アーノルド氏は、「指向性進化法」と呼ばれる自然界で起こる「選択」に似た方法で、さまざまな酵素を改良する手法を確立した。東京大学大学院総合文化研究科の新井宗仁教授は「洗剤に入っている酵素など、たんぱく質が壊れやすい環境でも働くように安定した酵素を作り出した。私たちも微生物から軽油をつくる研究を進めている」と話す。かつてアーノルド氏の研究室に在籍し共著の論文もある産業技術総合研究所の宮崎健太郎研究グループ長は「常に厳しく『なぜ』を問いつめる人で、若い人とも同じ目線で議論する人だった。そんな姿勢が今回の受賞につながったと思う」。スミス氏の開発した「ファージディスプレー」という技術は、抗体医薬などの開発につながった。ねらった標的に最もよくくっつく抗体を取り出す手法。ウィンター氏はリウマチなど自己免疫の病気に使われる「ヒュミラ」の開発につなげた。抗体医薬は乳がんなどの治療にも適用されている。東京大の菅裕明教授は、「彼らの技術は、抗体医薬の開発を加速させた」と高く評価。本庶佑氏が開発にかかわった免疫チェックポイント阻害剤「オプジーボ」の開発にも役立てられたという。

*1-3:http://qbiz.jp/article/142019/1/ (西日本新聞 2018年10月8日) ノーベル経済学賞に米の2教授 気候変動、技術革新巡り  
 スウェーデンの王立科学アカデミーは8日、2018年のノーベル経済学賞を、ウィリアム・ノードハウス米エール大教授(77)とポール・ローマー米ニューヨーク大教授(62)に授与すると発表した。気候変動や技術革新が持つ要素と、経済成長を結び付けた業績を評価した。アカデミーは両氏の業績に関して「どのように持続可能な経済成長を実現できるかという問いへの答えに、私たちをかなり近づけてくれる」と説明した。ノードハウス氏は気候変動と経済成長の関係を定量モデルで説明した。炭素税のような政策介入がもたらす効果を説明するのに用いられるという。「気候カジノ」や「地球温暖化の経済学」といった著書がある。ローマー氏は技術革新が経済成長を促すことを示す「内生的成長理論」を確立。新たなアイデアを促す規制や政策に関する研究を数多く生み出した。16〜18年には世界銀行のチーフエコノミストも務めた。授賞式は12月10日にストックホルムで開かれ、賞金900万クローナ(約1億1200万円)を両氏で分ける。

*1-4:http://qbiz.jp/article/135781/1/ (西日本新聞 2018年6月15日) 日銀、大規模緩和を維持 金融政策、米欧と違い鮮明
 日銀は15日、2日目の金融政策決定会合を開き、現行の大規模金融緩和策の維持を決めた。2%の物価上昇目標の達成が見通せない中、短期金利をマイナス0・1%、長期金利を0%程度に抑え、景気を下支えする。景気の現状判断は「緩やかに拡大している」で据え置いた。米連邦準備制度理事会(FRB)は13日、約3カ月ぶりの利上げを決定。欧州中央銀行(ECB)も14日、量的金融緩和政策を年内に終了することを決めた。米欧の中央銀行と日銀の間で金融政策の方向性の違いが鮮明になった。日銀は、個人消費の判断を「緩やかに増加している」、輸出は「増加基調にある」とし、それぞれ判断を据え置いた。4月の消費者物価指数は前年同月比0・7%上昇にとどまり、伸び率が2カ月連続で鈍化した。会合では、景気が堅調にもかかわらず、物価が伸び悩んでいる要因も議論したとみられる。年80兆円をめどとする長期国債の買い増し額や、年約6兆円の上場投資信託(ETF)の購入も維持した。片岡剛士審議委員は現行政策の据え置きに反対した。黒田東彦総裁は15日午後に記者会見を開き、金融政策の運営や景気、物価情勢について見解を示す。

<新技術が生む新市場とその普及を阻む厚労省>
*2-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20181002&ng=DGKKZO35988110R01C18A0TJ2000 (日経新聞 2018.10.2) がん免疫薬 5兆円市場生む、ノーベル賞に本庶氏 国内外で開発競争
 ノーベル生理学・医学賞を受賞した本庶佑氏が解明したのは、免疫細胞による攻撃からがん細胞が逃れる仕組みだ。これを応用したのが小野薬品工業の「オプジーボ」に代表されるがん免疫薬で、市場規模は2017年で1兆円とされる。25年にはこれが5兆円まで広がるともいわれ、世界中の製薬会社がこの仕組みを応用した新薬の開発にしのぎを削っている。オプジーボは小野薬品と米製薬大手ブリストル・マイヤーズスクイブ(BMS)が共同開発した。小野薬品の19年3月期の連結業績見通しは売上高が2770億円。このうち、900億円をオプジーボの直接的な販売で稼ぐ見通しだ。ほかに提携先などから得られるオプジーボのライセンス収入などは400億円程度あるとみられる。小野薬品の時価総額は15年ごろ1兆5千億円程度だった。これが、オプジーボ発売後の16年には、ピークとなる約3兆円を記録。長期にわたって効果を発揮する特徴があるほか、がんが消失するケースがあることなどから、株式市場でも高評価を得たためだ。オプジーボは発売時、100ミリグラム73万円。仮に1年使用した場合は3000万円以上かかるという試算が出たため、「あまりにも高すぎる」「財政を破綻させる」との批判が噴出した。少子高齢化が進む中、高騰する医療費と薬剤費が社会問題として取り上げられるようになった。その結果、本来2年に1度の薬価改定をまたず、17年2月に突然、オプジーボの薬価は半額に引き下げられた。医療費の抑制だけでなく、薬価制度そのものや社会保障の見直しに向けた議論を活発化させるきっかけにもなった。本庶氏が発見したのは「PD―1経路」と呼ぶ免疫の仕組み。がん細胞がこの仕組みを使って、免疫から逃れていたことを解明した。現在、この成果を生かした研究の方向性は大きく2つ。新しいがん免疫薬そのものを探すことと、すでに存在するがん免疫薬と他の抗がん剤などを一緒に使うことで効果を高める「併用療法」の確立だ。PD―1経路を遮断してがんを弱らせる仕組みを利用するがん免疫薬を扱うのは5陣営あり、このうちトップを走るのが小野薬などのオプジーボだ。このほか、米メルクの「キイトルーダ」、英アストラゼネカの「イミフィンジ」、スイスのロシュの「テセントリク」、独メルクの「バベンチオ」がある。ノバルティス(スイス)なども開発を進めている。国内勢は併用療法が主だ。第一三共は抗体に化合物を結びつけた抗体薬物複合体(ADC)の技術に強みを持つ。開発中の抗がん剤「DS8201」とオプジーボの併用療法の臨床試験(治験)を始める方針。エーザイや協和発酵キリンも自社開発の抗がん剤とオプジーボの併用療法を探る。このほか、創薬ベンチャー企業も名のりをあげており、古い医薬品を含め併用療法について研究している。日本勢では、ブライトパス・バイオ、キャンバス、オンコリスバイオファーマなどが担い手だ。併用療法の狙いは、一部の患者にしか効かないというがん免疫薬の欠点を補うことだ。ベンチャー各社の業績はまだ赤字基調だが、併用療法が実を結べば、恩恵を受ける患者数は格段に増える。その結果、巨額の収益をもたらす可能性がある。一方、がん免疫薬を含む「バイオ医薬品」では日本勢が出遅れているとの指摘がある。17年、世界で最も売れた医薬品である米アッヴィの関節リウマチ治療薬「ヒュミラ」(年間売上高は約2兆円)を含め、売上高の大きい製品ベスト5のうち、4品目がバイオ医薬品だとするデータもある。国内企業では、中外製薬が関節リウマチ治療剤「アクテムラ」、協和発酵キリンが抗がん剤「ポテリジオ」などを独自技術で開発したが、1兆円を超える薬には育っていない。京都大学の山中伸弥教授の功績であるiPS細胞をはじめとする再生医療でも、応用研究では欧米勢が先を行くとの指摘もある。日本発で革新の種が出たとしても、それをいかに育み収益に結びつけていくのか。企業の姿勢も問われそうだ。

*2-2:https://digital.asahi.com/articles/DA3S13713145.html (朝日新聞 2018年10月7日) 再生医療の監視強化へ 効果不明、多くの「がん免疫療法」も 厚労省方針
 厚生労働省は、再生医療など細胞を用いる治療の監視体制を強める方針を決めた。効果がはっきりしない多くの「がん免疫療法」も対象となる。医療機関が事前審査の内容と大きく異なる治療をした場合、国が把握できる仕組みにして、審査の議事録などをウェブ上に公開させて透明性を高める。がん免疫療法をめぐっては、ノーベル医学生理学賞の受賞が決まった、京都大の本庶佑(ほんじょたすく)特別教授の研究をもとに開発された「オプジーボ」などの免疫チェックポイント阻害剤が近年、登場。一部のがんに公的医療保険が適用されている。再生医療安全性確保法=キーワード=が規制する治療法とは別の手法だが、「免疫療法」と、ひとくくりで混同されることもある。細胞を用いる治療は、2014年施行の同法で規制された。iPS細胞の登場を契機に、患者の安全を確保しながら再生医療を発展させる目的に加え、患者自身の細胞を使う根拠が不明瞭な免疫療法や美容医療に網をかける狙いもあった。同法のもと、医療機関は治療の計画をつくり、病院や民間団体が設ける第三者の審査委員会に審査させる。ただ、審査の狙いは安全性の確保で、効果は保証していない。iPS細胞などを用いる「第1種」と比べ、患者の細胞を集めて使うがん免疫療法などの「第3種」は、審査委員会の要件が緩く、国のチェックを受けずに実施できる。東海大の佐藤正人教授(整形外科)の調査によると、第3種のがん免疫療法の届け出は、今年3月までに民間クリニックなどで1279件に上ることがわかった。高額な治療費を請求する施設もあり、問題視されている。同法の省令改正案では、計画に反する事態が起きたときの対応手順を新たに設け、治療に携わる医師に、医療機関の管理者への報告を義務づける。重大なケースは速やかに審査委員会の意見を聞き、委員会で出た意見を厚労省に報告させる。また、審査委員会の要件を厳しくし、第3種では、計画審査を頼んだ医療機関と利害関係のない委員の出席数を現在の2人以上から過半数とする方針だ。
厚労省は早ければ省令を今月中にも改正、公布する。
◆キーワード
<再生医療安全性確保法> 再生医療などの安全性の確保が主な目的で、細胞を用いた治療を広く規制する。計画の事前審査や国への届け出を義務づける。免疫の働きでがん細胞を倒そうとする「がん免疫療法」のうち、免疫細胞を使う手法も対象となる。

<癌治療薬>
*3-1:https://www.nikkei.com/paper/related-article/?b=20181007&c=DM1&d=0&nbm=DGKKZO36173760V01C18A0MY1000&ng=DGKKZO36173840V01C18A0MY1000&ue=DMY1000 (日経新聞 2018年10月7日) がん免疫薬 ブレーキ解除は逆の発想
 免疫の力を利用する抗がん剤を指す。小野薬品工業の「オプジーボ」や米BMSの「ヤーボイ」など最新のがん免疫薬は、免疫細胞のオン・オフを制御する分子に作用するため「免疫チェックポイント阻害剤」と呼ばれる。がん細胞が免疫細胞にかけたブレーキを解除し、攻撃開始のスイッチを入れる。従来のがん免疫薬が攻撃力を高めることを目指していたのに対し、逆の発想で開発された。対象患者を増やすため複数の免疫チェックポイント阻害剤や他の抗がん剤を併用する試みが盛んだ。BMSは大腸がん治療でオプジーボとヤーボイの併用療法の承認を取得した。患者ごとにがんの遺伝子変異を調べ、最適な治療薬を探す研究も活発になっている。

*3-2:https://www.nikkei.com/paper/related-article/tc/?b=20181002&bu (日経新聞 2018年10月2日) がんVS免疫療法 攻防100年、高コストや副作用が課題
 ウイルスや細菌などの病原体から身を守る免疫の仕組みを利用する「がん免疫療法」が注目されている。免疫をがん治療に生かす研究は100年を超す歴史があるが、科学的に治療効果を認められたものはほとんどなく、これまでは異端視されていた。状況を変えたのは2つの新しい技術の登場で、手術、放射線、抗がん剤などの薬物治療に次ぐ「第4の治療法」として定着しつつある。19世紀末、米ニューヨークの病院で、がん患者が溶血性連鎖球菌(溶連菌)に感染し高熱を出した。熱が下がって一命をとりとめると、不思議なことが起きていた。がんが縮小していたのだ。外科医ウィリアム・コーリーは急性症状を伴う感染症にかかったがん患者で似た症例があると気づき、殺した細菌を感染させてみたところ、がんが消える患者もいた。毒性の強い細菌に感染することで免疫が刺激され、がん細胞も攻撃したとみられる。コーリーの手法はがん免疫療法の先がけといわれる。だが副作用で命を落とす患者も多く、定着しなかった。免疫が再び注目されるのは1950年代後半だ。ノーベル生理学・医学賞を受賞したフランク・バーネット氏が「免疫が日々発生するがん細胞を殺し、がんを未然に防いでいる」という説を提唱。60年代以降、結核予防ワクチンのBCGを使う治療法や丸山ワクチンが登場した。その後、免疫細胞にがんを攻撃するよう伝えて活性化するサイトカインという物質や免疫の司令塔となる樹状細胞を利用する方法、ペプチドと呼ぶたんぱく質断片を使うワクチンなども試みられた。効果があると科学的に認められるには、いずれも数多くの患者を対象にした臨床試験(治験)が必要だ。しかも、抗がん剤など従来の治療を受けた患者らと比べて、治療成績がよくなることを示さなければならない。免疫療法でそうした効果を証明できたものはほとんどなかった。「がん細胞は免疫を巧妙にかいくぐっているからだ」と長崎大学の池田裕明教授は説明する。「免疫を活性化する手法ばかり研究していた」ことが失敗の原因とみる。20世紀末、がんが免疫の攻撃を逃れる仕組みの研究が進んだ。その中で見つかったのが「免疫チェックポイント分子」と呼ぶたんぱく質だ。免疫は暴走すると自身の正常な細胞も攻撃してしまうため、普段はアクセルとブレーキで制御されている。がん細胞はこの仕組みを悪用し、免疫にブレーキをかけて攻撃を中止させる。チェックポイント分子の「CTLA―4」や「PD―1」の働きが解明され、2010年代前半にその働きを阻害する薬が開発された。免疫細胞は攻撃力を取り戻してがん細胞を殺す。皮膚のがんの一種の悪性黒色腫で高い治療成績を上げ、肺がんや腎臓がんなどでも国内承認された。CTLA―4を発見した米テキサス州立大学のジェームズ・アリソン教授、PD―1を突き止めた京都大学の本庶佑特別教授はノーベル賞の有力候補といわれる。注目を集める新しい治療法はもうひとつある。「遺伝子改変T細胞療法」だ。患者から免疫細胞のT細胞を取り出し、がん細胞を見つけると活性化して増殖する機能を遺伝子操作で組み込む。増やしたうえで患者の体内に戻すと、免疫細胞はがんが消えるまで増殖する。大阪大学の保仙直毅准教授は「免疫のアクセルを踏みっぱなしにする治療法だ」と説明する。がんを見つけるセンサーに「キメラ抗原受容体(CAR)」を使うタイプはT細胞と組み合わせて「CAR―T細胞療法」とも呼ばれる。新潟大学の今井千速准教授らが米国留学中の04年に論文発表し、スイスの製薬大手ノバルティスが実用化。17年8月、一部の白血病を対象に米国で承認された。治療効果は抜群で、1回の点滴で7~9割の患者でがん細胞が消え、専門家らを驚かせた。日本でも近く実用化される見通しだ。2つのがん免疫療法にも課題はある。免疫チェックポイント阻害剤が効くのは承認されたがんのうちの2~3割の患者で、数百万円という高い投薬費も問題になった。CAR―T療法は塊を作る「固形がん」には効果が薄いとされる。過剰な免疫反応による発熱や呼吸不全などの副作用もある。遺伝子操作や細胞の培養にコストがかかり、治療費は5000万円を超す。課題の克服を目指す研究も国内外で進んでいる。がん免疫療法はこれからが本番だ。

*3-3:https://www.nikkei.com/paper/related-article/?b=20181002&c (日経新聞 2018年10月2日) がん免疫療法 末期の患者にも効果
 体に備わる免疫の仕組みを利用し、がんを攻撃する治療法。体内でがんを攻撃する免疫細胞を利用する。京都大学の本庶佑特別教授が見つけた「PD―1」たんぱく質はこの治療法に応用され、抗がん剤、手術、放射線治療に続く第4の治療法として広まった。人間の体では1日に数千個ものがん細胞ができるが、免疫細胞が排除している。本庶氏の発見に基づく免疫療法は、がん細胞がPD―1にブレーキをかけるのを阻止して免疫細胞が働けるようにし、がん細胞をたたく。新薬は従来の抗がん剤などでは治せない末期がんでも高い効果を示している。

<人材>
*4:https://digital.asahi.com/articles/DA3S13688456.html (朝日新聞 2018年9月21日) 教科の数値評価、なくなる? 中教審が議論、通知表に影響か
 学習指導要領の改訂にあわせて、学校現場での評価のあり方を話し合う中央教育審議会のワーキンググループ(WG)が20日にあり、教科ごとに数値評価する「評定」をなくすべきかどうかが議論された。参加した多くの有識者はなくしたうえで、各教科で「知識及び技能」「思考力・判断力・表現力等」など項目ごとに「ABC」といった形で評価する「観点別評価」だけにすべきだ、との立場を取った。評定は各教科を総括する位置づけで、児童生徒に渡される通知表や、受験で使われる内申書の元となる。文部科学省は通知で、小学校の中高学年では3段階、中学と高校では5段階でつけるよう求めている。かつては相対評価だったが、2002年度からは絶対評価となった。通知表の形式は学校の判断に委ねられるが、評定が廃止されれば現場への影響は大きい。新指導要領は20年度から小学校などで完全実施される予定。WGは年内に結論を出し、文科省はそれを受けて年度内にも教委などに通知する方針だ。20日の会議では、文科省が評価のあり方について論点整理した資料を提示。評定をなくすべき理由として▽学校ごとに重みづけが異なり、学習状況が適切に反映されていない場合がある▽児童生徒や保護者が数値評価のみに注目し、学習の改善につなげられていない▽きめ細かく一人ひとりを評価するためには、観点別評価の方が有効――とした。一方、維持すべき理由としては▽児童生徒や保護者は学習状況を全体的に把握できると考えている▽高校や大学の入試、奨学金の成績基準などで使われている――などを挙げた。これに対し、有識者からは「評定は数値のため客観的だという誤解がある」「一人ひとり寄り添って見ていくには観点別評価にすべきだ」といった意見が相次いだ。

<継続できる人は何割?>
PS(2018年10月10日追加):ノーベル賞受賞をきっかけに、メディアが「①継続が大切」「②失敗で諦めない」などと、あまりにも的外れた解説を訳知り顔でやっているのには眉をひそめた。何故なら、①については、*5のように、研究者が大学や研究機関に残ったとしても、他産業より低い報酬で短期の雇用契約を結ばされたり、継続的な雇用を得られず他産業に転出を余儀なくされたりするケースが多いからだ。また、②については、「実験したら仮説通りにいかなかった」というのは通常の研究過程であって「失敗」や「諦める」というような言葉は当たらず、これは試行錯誤でもないからだ。

*5:https://webronza.asahi.com/politics/articles/2012042000006.html (鈴木崇弘 城西国際大学客員教授《政治学》 2012年4月20日) ポスドク問題を社会変革のテコに――ある若者の試み
 「ポスドク問題」(注1)が語られて久しい。ポスドク問題とは、次のとおりだ。科学技術振興政策で、博士が多数つくりだされた。しかし、ドクターを取得するころには、年齢がある程度いっているため、企業の採用が難しく、大学などの研究職数も限られて就職先がないため、オーバードクターが問題となった。その問題の対応として、「ポスドク」(「ポストドクター」の略語)に職が用意された(これで、オーバードクター問題は一時緩和された)。しかし、それは大学や研究機関などと短期かつ不安定な形で契約を結ぶもので、正規雇用への保証がなく、低収入で不安定であり、問題の引き延ばしを図っただけのものであった。このように「ポスドク問題」とは、正規の仕事に就職できずに、長期間、非正規雇用を強いられる人材が増えている状況を指す。ポスドクは「高学歴ワーキングプア」ともいわれ、高齢化も進んでいるという。要は、供給者側の論理から科学技術の発展の必要が叫ばれ、それを進める専門的な人材の育成として博士などを多く生み出したものの、需要者側のニーズに合っていなかったのだ。博士号取得は実務とは別のことであり就職とは関係ないという議論もあるが、博士を目指す者の多くは、専門性をもち、社会や時代に貢献したいという気持ちからだと思う。ここでは、科学技術の発展という理想(それ自体は重要だが)だけ声高に訴えても、問題の解決にはならない。では、どうすればいいのか。(以下略)

<地方への海外企業誘致>
PS(2018年10月11日追加):私は外資系企業の監査や税務に従事することも多かったので、*6-2のブリストル·マイヤーズ(当時)には、1980年代後半、外部監査を担当していたプライス・ウォーターハウス(当時)から、ブリストル·マイヤーズ本社から来た内部監査担当者を手伝うために行ったことがあり、堅実な会社だと思っている。
 そのため、*6-1のように、政府が海外企業の国内投資拡大のために努力し、地方に雇用を作って地方を活性化するのはよいことであるとともに、欧米系の会社は女性差別が(ないとは言わないが)少ないため、地方にも女性が差別されずに自由に働ける場所が増えるだろう。
 そこで、唐津市の企業誘致だが、化粧品産業のみに特化すると医薬品と比較して付加価値が低いため、*6-2のような外資系企業を誘致し、九大と組んで世界的な製薬会社を育ててはどうか。労働力は、*6-3のように、外国人の就労も進み始めて、次第に整っていくのだから。

*6-1:http://qbiz.jp/article/141796/1/ (西日本新聞 2018年10月3日) 政府、海外企業誘致で地方支援へ 計画策定で全国24カ所
 政府は3日、海外企業の国内投資を拡大させるため、日本貿易振興機構(ジェトロ)と連携して全国24カ所の自治体による企業誘致計画の策定を支援する方針を固めた。日本への投資は東京を中心とする大都市に集中しており、地方への波及を進める狙いだ。計画は地域色のある農林水産品や観光資源、産業集積などの強みを生かした内容とする予定で、2018年度中の策定を目指している。ジェトロを通じ、海外企業とのマッチングや海外での投資セミナー開催なども支援する。日本は来年以降、国内初開催の20カ国・地域(G20)の首脳会合や、ラグビーの19年ワールドカップ(W杯)日本大会、20年東京五輪・パラリンピックなど、多数の国際イベントを抱えている。政府は全国に経済効果が及ぶ機会と捉えており、地方創生の取り組みを加速させたい考えだ。支援対象に選ぶ北海道旭川地域は豊富な農林資源を生かした家具製造が強み。アジアのデザイン関連企業などと組み、現地での販路拡大を目指している。医療機器関連メーカーが集まる福島県は海外企業を取り込んでさらなる集積拡大を図る。長野県小諸市はリゾート地の同県軽井沢町に近く、IT企業のサテライトオフィス(出先拠点)を呼び込む。佐賀県唐津市は化粧品産業の誘致を目指す。

*6-2:https://www.bms.com/jp/about-us.html (ブリストル·マイヤーズ スクイブ 会社情報)
 ブリストル·マイヤーズ スクイブは、深刻な病気を抱える患者さんを助けるための革新的な医薬品を開発し、提供することを使命とするグローバルなバイオファーマ製薬企業です。ブリストル·マイヤーズ スクイブは、大手製薬企業の事業基盤と、バイオテクノロジー企業の起業家精神と敏捷性を兼ね備えた、スペシャリティ·バイオファーマ企業です。独自のバイオファーマ戦略を推進し、命にかかわる深刻な病気を抱える患者さんに革新的な医薬品を提供するため、日々努力を重ねています。世界中で働く当社の従業員は、ブリストル·マイヤーズ スクイブの全ての活動の原動力であり、患者さんのため、今日も一丸となって取り組んでいます。世界中で何百万人という患者さんを助けるために、当社が注力するのは「がん」「心血管疾患」「免疫系疾患」「線維症」の重点疾患領域です。研究開発を通して、有望な化合物から成る持続可能なパイプラインを構築し、外部のイノベーションによる事業の拡大と加速に向け、積極的にパートナーシップを結んでいます。地球市民として、私たちは責任をもって持続可能な業務の遂行に取り組み、地域社会に還元するよう努めています。また、ブリストル·マイヤーズ スクイブ財団の活動を通じて、医療環境に恵まれない地域に暮らす人々のため、医療における格差をなくすこと、患者さんの転帰を改善することに全力を挙げています。これらの活動は、世界で最も深刻な状況におかれた人々に、新たな希望をもたらしています。

*6-3:https://www.agrinews.co.jp/p45316.html (日本農業新聞 2018年9月26日) 外国人の就労 人権と労働環境改善を
 農業現場で働く外国人の受け入れ制度が変わる。外国人技能実習生に加え、10月から愛知県で国家戦略特区を活用した外国人労働者の受け入れが始まり、来年4月には5年間を上限に就労できる新たな在留資格が創設の見通しだ。追い付かないのが人権の確保と労働条件の整備。働き手の目線で改善すべきだ。JA全中や日本農業法人協会などでつくる農業労働力支援協議会は、農業の雇用労働力は7万人不足していると推計する。これを補うのが特区と新たな在留資格の創設というわけだ。農業の労働問題に詳しい特定社会保険労務士の入来院重宏氏は、労働力を補う「蛇口が増えた」とみる。これまで技能実習生という一つの蛇口だけだったが、特区と新たな在留資格という二つの蛇口が加わったことで労働力の供給は一段と増える。懸念されるのは、受け止める器に“穴”が二つ開いていることだ。労働環境が他産業並みに整っていない。一つ目の穴は、1975年から続く労災保険の「暫定任意適用事業」。個人経営の農家の場合、従業員が4人以下であれば労災保険は任意加入となる。保険に入っていなければ、事故に遭った際は経営者が全額補償しなければならない。他産業並みの強制加入にすべきである。二つ目は、農業現場で働く労働者は労働時間、休憩、休日、割増賃金などについて労働基準法の適用除外となっていることだ。技能実習生は「他産業並みの労働環境を目指す必要がある」(農水省)として他産業と同じ労働条件。ところが労働者となった途端、労働時間などが適用除外となり労働条件に差が生じ、混乱を招きかねない。入来院氏は「この穴を早急に埋めないと、外国人も含めて農業に人が来なくなる」と指摘する。法務省によると中長期の在留外国人の数は約256万人(2017年末現在)。前年末に比べ約17万人増え、過去最高を更新した。最多は中国で73万人、韓国(45万人)、ベトナム(26・2万人)、フィリピン(26万人)、ブラジル(19万人)、ネパール(8万人)、インドネシア(5万人)と続く。特にベトナムは3割増、ネパールとインドネシアも2割増えた。だが、この流れも20年までのようだ。日本で働く外国人の実情を紹介した『コンビニ外国人』(芹澤健介氏、新潮新書)で、東京大学大学院で経済を学ぶベトナム人留学生は「いま日本には外国人が増えて困るという人もいますが、東京オリンピックが終わったらどんどん減っていく」と明かす。外国人の受け入れ制度が整っていないためで、多くの外国人が「人手不足で残業が多くなる」と考え、東京五輪後は日本以外の国に切り替えるという。求められるのは、働く者の人権確保と労働環境の整備だ。労働力不足時代を見据え、本丸の担い手育成と省力技術の開発・普及も急ぐべきだ。

<経産省主導のイノベーション妨害>
PS(2018年10月12、15、16日追加):*7-1のように、九電は太陽光などの再エネ発電事業者に「出力抑制」を実施する可能性があると公表した。現在、九州では、太陽光発電の接続量が800万kw程度(原発8基分)あり、さらに拡大しているが、九電は原発4基(約400万kw)を再稼働させた。これは、経産省が、*7-2のように、「2030年のエネルギーミックスを再エネ比率22~24%、原子力比率22~20%」とし、全体としてコストの高い原発による発電を優先して安価な再エネの普及を妨害したことによる。なお、「再エネは不安定」という弁解も、あまりに長期に渡るので聞き飽きたが、広域送電線や*7-3・*7-4のような水素を媒介にする再エネ貯蔵や蓄電池という方法もあるため、技術進歩によるイノベーションを経産省主導の不合理な“ルール”で遅れさせるのは、早急に止めるべきだ。
 なお、*7-5のように、北海道地震で北電の苫東厚真石炭火力発電所が停止したら全道が停電し、酪農家は自家発電装置で搾乳・冷蔵を続けることができたものの、自家発電装置を持たない乳業工場が相次ぎ操業を停止したため、行き場を失った生乳が廃棄を余儀なくされたそうだ。そのため、災害に備えた危機管理体制は必要不可欠で、「集中型電力システム」より「分散型電力システム」の方がリスクが小さいため、それを支える送電線が必要なのである。現在、北海道では、太陽光・風力だけでも160万kw(原発1.6基分)の発電量があり、集中型から地産地消の分散型に転換すれば危機管理と地域経済の両方を改善できるため、全農に電力会社(仮名:全農グリーン電力)を作り、農林漁業で発電した電力を集めて販売したらどうかと考える。
 また、*7-6のように、世界トップレベルのスマート農業の実現に向け、北海道でロボットトラクターやドローンの実証研究が始まり、大学・民間企業・行政などが連携するそうで、これはよいことだと思う。そして、これらの動力も再エネ由来の電力や水素燃料を使えば、これまでのように燃料費の高騰に悩んだり、それに国から補助を出したりする必要がなくなるため、再エネへの転換は素早く進めるべきだと考える。
 確かに、農業の生産性向上には、*7-7のような肥育期間の短縮もあるが、消費者の健康・生産性・付加価値を両立させるには、「ヘルシー佐賀牛」の分類を作って、脂肪割合が小さく蛋白質割合の大きな牛肉を、稲わら・ハーブ・みかんの皮・牧草などの割合を増やして育てたり、放牧したりする方法があるのではないだろうか?

*7-1:https://digital.asahi.com/articles/DA3S13719393.html (朝日新聞 2018年10月12日) 太陽光発電抑制、九電が検討 この土日、需給バランス保つため
 九州電力は11日、太陽光など再生可能エネルギーの発電事業者に一時的な発電停止を求める「出力抑制」を、この土日の13、14日に実施する可能性があるとホームページ(HP)で公表した。実施すれば、離島を除いて国内で初めて。4基の原発が再稼働した九州で、再生エネの一部が行き場を失う事態になりそうだ。土日は好天が予想され、出力調整の難しい太陽光の発電量が伸びるとみられる。一方、休日で工場などの稼働が減るうえ、秋の過ごしやすい気温で冷房などの電力の使用量も落ち込みそうだ。需要と供給のバランスが崩れると、電気の周波数が乱れ、発電所が故障を防ぐために停止し大規模停電につながる恐れがある。九電は火力の抑制などをしても需給バランスの維持が難しいと判断し、国のルールに基づき行う。天候次第で停止を見送る可能性もある。抑制の前日に最終判断をし、太陽光で約2万4千件、風力で約60件の契約から、発電を止める事業者を九電が選ぶ。出力の小さな一般家庭は対象外。選んだ事業者には電話やメールで知らせる。日照条件に恵まれた九州では、2012年に始まった再生エネの固定価格買い取り制度(FIT)を受けて太陽光発電の接続量が急増した。九州の需要のピークは1600万キロワット弱。太陽光は800万キロワット程度が接続されており、まだ拡大傾向にある。さらに九電は11年の東京電力福島第一原発事故後、この夏までに原発4基(計約400万キロワット)を再稼働させた。国のルールでは原発の発電を優先することになっており、再生エネの入る余地が狭まっている。今月下旬にも原発が稼働する四国電力でも、出力抑制の可能性がある。専門家からは、大手電力間を結ぶ送電線で余った電気をより多く送ったり、原発を優先するルールを見直したりするべきだとの意見も出ている。

*7-2:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO28676230Y8A320C1000000/ (日経BP速報 2018/3/28) 「再エネ比率22~24%」目標変えず 経産省が事務局案
 経済産業省は、総合資源エネルギー調査会 基本政策分科会を開催し、事務局案を2018年3月26日に公開した。同案は「エネルギー基本計画」の見直しに関するこれまでの議論を受けたもの。同案では、15年度に定めたエネルギーミックスを前提として、その達成に向けた課題を整理した構成になっている。「再生可能エネルギーの比率22~24%」などの従来の電源構成の目標値を変えない方針を明らかにした。「エネルギー基本計画」は3年ごとに見直すことになっており、前回は14年に改訂した。それを受け、15年に長期エネルギー需給見通し小委員会の場で、「2030年のエネルギーミックス(電源構成)」を議論し、「再エネの比率22~24%」「原子力の比率22~20%」などの目標値を決めた経緯がある。

*7-3:https://www.nikkei.com/paper/related-article/tc/?b=20181012&bu=BFBD9496・・(日経新聞 2018年10月12日) 水素プラント、川崎で起工 千代田化工など4社、太陽光の水素ステーション 実証施設、来年中にも
 北陸では初めてとなる水素ステーションの建設に向けた動きも富山県内で着々と進行する。富山水素エネルギー促進協議会は、太陽光発電の電気を使って水素を製造する水素ステーション実証施設の2019年中の設置を目指している。富山市、北酸など官民が連携して、富山市環境センターに施設を建設。太陽光という再生可能エネルギーを使って水の電気分解で水素を発生させ、燃料電池バスや燃料電池車のカーシェアなどへの利用を検討する。18年度の環境省の二酸化炭素排出抑制対策事業費等補助金を申請中。水素製造量は1日当たり燃料電池車2台分と規模は小さいが、同協議会は「導入当初としては十分」とし、20年までに県内に本格的な水素供給拠点を設けるという目標への足がかりとしたい考えだ。

*7-4:https://www.nikkei.com/paper/related-article/tc/?b=20181012&bu=BFBD9496・・(日経新聞 2017年12月11日) 水素発電実験、神戸で開始へ 世界初、市街に供給
 神戸市で水素を燃料に発電した電気を市街地の複数施設に供給する世界初の実証実験が2018年2月上旬に始まる。市民病院など4カ所に電気と熱を送る計画だ。川崎重工業と大林組が建設した発電所が人工島のポートアイランドに完成した。水素は温暖化ガス削減に向けた次世代エネルギーと有望視されており、地域での有効利用をめざす。神戸市が施設への電気供給などで協力した。

*7-5:https://www.agrinews.co.jp/p45411.html (日本農業新聞 2018年10月6日) 北海道地震1カ月 もろい電源 分散型急げ
 北海道地震に伴う生乳廃棄は人災と言っても過言ではない。北海道の酪農家の率直で切実な訴えである。9月6日未明、北海道胆振地方中東部を震源とした最大震度7を記録した北海道地震から1カ月。厚真町を中心に41人が犠牲になった。日本の食料基地を襲った地震は、全国の生乳生産の半数以上を占める酪農に大きな影を落とした。北海道電力苫東厚真石炭火力発電所の停止による全域停電(ブラックアウト)による搾乳の混乱だ。電源を失った酪農家は、持っていた自家発電装置で搾乳・冷蔵を続けることができたが、装置を持たない乳業工場は相次ぎ操業を停止、行き場を失った生乳は廃棄を余儀なくされた。道によると、6日から10日までの5日間の被害額は、全道で21億円に上った。これが冒頭の「人災」につながるわけだが、犯人捜しをしたいのではない。問題は、災害時の危機管理として、大規模停電を予測できなかったのかということである。災害を機に迅速な対応を取った地域もある。愛媛県のJAにしうわは、2004年9月の台風18号による停電で主力の温州ミカンのかん水に欠かせないスプリンクラーが停止。農家が手作業で水をまいたため、樹体に付いた塩分を落とし切れず、ミカンが大きな被害を受けた。このためJAは、非常時の補助電源として発電機70台を導入した経緯がある。地震発生時、道内の酪農家は自衛手段として自家発電装置を整備し、搾乳・冷蔵ができた。十勝地域のJA大樹町では7割、JAひろおでは8割の酪農家が発電機を導入していたという。一方で、道内の乳業工場39カ所のうち、自家発電設備を持っていたのは2工場だけ。酪農と乳業は「車の両輪」に例えられる。一方のタイヤが正常でももう一方がパンクをしていれば走ることはできない。災害に備えた自衛策は待ったなしである。さらに求めたいのは、停電の原因となった「集中型電力システム」の改善だ。ブラックアウトは、電気の需給バランスが乱れて発生した。地震後も稼働していた再エネ発電所があったにもかかわらず、厚真発電所の一つの停止により、その電力は活用できなかった。現行のシステムのもろさが露呈した格好だ。道内では太陽光、風力、水力、地熱、家畜や森林由来のバイオマス(生物由来資源)による再生エネルギーが盛んに導入されている。太陽光と風力だけを見ても160万キロワットの発電容量がある。これは地震前日の最大需要の4割に相当する。これをもっと活用すべきである。国は、再エネを主力電源と位置付けている。再エネの特徴である地域分散型を生かし、集中型から地産地消型の可能性を追求すべきだ。災害が常態化している今こそ、北海道地震の教訓を生かさねばならない。

*7-6:https://www.agrinews.co.jp/p45485.html (日本農業新聞2018年10月15日)一大拠点へ実証 ロボトラクターやドローン自動飛行 産官学が連携 北海道でスマート農業
 世界トップレベルのスマート農業の実現に向け、ロボットトラクターやドローン(小型無人飛行機)の実証研究が北海道で始まる。大学、民間企業、行政などが連携して、遠隔監視によるロボットトラクターや、ドローンの自動飛行による農薬散布などを試験。最先端のスマート農業技術が集まる一大拠点にする考えだ。14日に更別村で説明会を開き、取り組みが動きだした。内閣府の近未来技術等社会実装事業の一環。同事業は、人工知能(AI)や自動運転、ドローンなどの技術による地方創生を支援するのが狙い。道と同村、岩見沢市の3者が共同提案し、採択された。東京大学や北海道大学、ホクレンなどが参画する。実証する農機の無人走行システムは、北海道大学などと協力し、トラクターに取り付けたカメラの映像を通して、遠隔監視しながら走行させる。農地間の移動も公道を想定して自動運転で走らせる。水田地帯の同市と、畑作地帯の同村で分けて実証を進める。同村では、ドローンの自動飛行による農薬散布も実証する。夜間の自動散布や複数台による編隊散布なども検討しており、農業現場で利用しやすいシステムを検討する。ドローンで測定した生育データは蓄積して、スマートフォンのアプリケーションで活用。AIで生育状態を把握できるようにする。今後、11月中にも関係組織で事業に関する協議会を設立。具体的な実証内容やスケジュールを詰めていく。同村では14日、学や民間企業、JAなどの関係者を集め説明会を開催。JAさらべつの若園則明組合長は「1戸当たりの耕作面積が増える一方、人手不足は深刻。成功してほしい」と期待を込めた。西山猛村長は「未来の農業を開く一歩を踏み出せた。村だけでなく日本の農業を守ることにつなげたい」と意気込みを述べた。

*7-7:http://qbiz.jp/article/142397/1/ (西日本新聞 2018年10月16日) 佐賀牛肥育3カ月短縮 27カ月齢への技術確立 佐賀県畜産試験場
 佐賀牛など佐賀県産和牛の出荷月齢を通常の30カ月から27カ月に早期化しつつ、肉の質と量は良好に維持する技術を、県畜産試験場が確立した。近年、子牛価格と飼料代が高騰しており、出荷の回転率を上げて肥育農家の収益改善につなげる。同様の試みは九州でも広がっており、試験場は本年度中にマニュアルをまとめ、生産者への普及を図る。県によると、和牛の生産は、母牛から子牛を産ませる繁殖農家と、子牛を購入して育てて出荷する肥育農家の分業が一般的。県内では2月現在、繁殖農家468戸が約9200頭、肥育農家202戸が約3万5200頭を飼育する。ただ、県内の子牛価格は平均70万〜80万円と、10年ほど前の約2倍に値上がりした上、飼料代も高騰。試験場によると、肥育農家は収益を上げるのが難しくなっているといい、農家数は5年前より約2割減った。このため、出荷までのサイクルを早めて生産コストを抑えようと、2014年度から研究を始めた。
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 通常、肉用牛の出荷は30カ月ほどかかり、繁殖農家が子牛を育てる9カ月間の「育成期間」と、肥育農家による以後21カ月間の「肥育期間」に分かれる。育成期間は稲わらなど繊維質で低カロリーの餌を与え、肥育期間は肉に霜降りを入れるためにトウモロコシなど高カロリーの穀物を食べさせる。試験場は(1)育成は9カ月間のままで肥育を18カ月間に縮める「肥育期間短縮」(2)繁殖から育成まで一貫経営する農家用に、育成を6カ月間に縮めて肥育開始を早める「早期肥育開始」−の二つの方法の試験に取り組んだ。前者は肥育期間中、月ごとに飼料を増やしていくペースを従来より上げた。後者は生後6カ月から肥育用の飼料に少しずつ切り替え、8〜9カ月から完全に肥育用にした上、増量ペースも上げた。試験の結果、脂肪交雑(霜降りの度合い)を示す数値はいずれの方法も県平均7・2を上回った。肉量は県平均486キロと比べて、前者は483キロと若干少なかったが、後者は508キロと上回った。
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 ただ、新しい技術が生産者に浸透するには時間がかかりそうだ。JAさが畜産部によると、ブランド牛の買い手が品質を判断する上で重視するのは出荷月齢。内田武巳部長は「県内の肥育農家は月齢をかけて牛を大きく育て、肉量を確保して収益を得る傾向にある」と指摘する。牛を大きく育てつつ、脂肪交雑を維持するのはこれまでも課題で、試験場は今回、牛の体調を見ながら飼料を与えるタイミングや期間、量を調整。「肉質は十分維持できている」と太鼓判を押す。一方では、産地間競争も激化している。九州の他県も同様の試みに力を入れており、鹿児島県農業開発総合センター畜産試験場は7月、佐賀より3カ月少ない24カ月齢での出荷技術を確立したと発表した。鹿児島の担当者は「肉の質、量とも従来と遜色ない」としており、佐賀県畜産試験場も24カ月齢出荷の試験を進めている。
*佐賀牛:JAグループ佐賀の生産者が出荷した黒毛和牛の中で、肉質が最上級の5等級か、4等級のうち脂肪交雑(霜降りの度合い)が7以上を指す。佐賀牛を提供するJA直営のレストラン「季楽(きら)」が佐賀、福岡両市、東京・銀座にある。昨年11月に東京であった日米首脳会談に際しての夕食会でも振る舞われた。近年は香港や米国、シンガポールに輸出している。

PS(2018年10月13、19、21日追加): *8-1、*8-2のように、九電は九州7県の太陽光・風力発電事業者計約2万4千件(計475万キロワット→原発4~5基分)を対象に稼働停止を求める出力制御を13日に実施すると発表し、「電力の安定供給のため」と説明しているが、ここが思考停止によるイノベーション妨害なのである。蓄電池・水素生成・地域間送電線を使った電力の広域的運営など、方法はいくらでもあった筈だが、最も高コストでハイリスクの原発再稼働を選択したのが、またもや経産省の失敗である。
 なお、*8-3のように、北海道新聞も、九電が太陽光発電の一部事業者に「出力制御」を実施したことについて、「原発優遇の出力制御が度重なると、再エネの使い勝手が悪くなって普及に水を差すため、政府は現行の原発優先ルール見直すとともに、送電網を増強し、大型蓄電池や地産地消型の分散型電源など、再生エネを無駄にしない仕組み造りをすべきだ」等々と記載しており、全く賛成だ。
 さらに、*8-4のように、九電は、118万キロワットの再エネ出力を20、21日に停止させるそうだが、もったいないことだ。全体の電力料金を下げてエネルギーを(高齢者にとって、より安全な)電力にシフトさせたり、休日の電力料金を下げ労働力をローテーションして休日も工場を稼働させ、電力消費量を平準化する方法もあると思う。

   
      2018.10.13西日本新聞             2018.10.7佐賀新聞

(図の説明:左のグラフのように、九州では太陽光・風力で域内の電力需要をほぼ賄える状況になったが、さらに原発4基を再稼働したため電力が余った。今後は、1番右の図のように、漁業と親和性の高い洋上風力発電設備も据え付けていくため、原発なしでも他地域に送電できる状態になり、蓄電池・水素生成・他地域への送電線・九州域内での製造業のテコ入れなどが望まれる。そして、これは九州だけに特化した現象ではないだろう)

*8-1:http://qbiz.jp/article/142329/1/ (西日本新聞 2018年10月13日) 九電13日に出力制御 九州6県の太陽光9759件停止要請へ
 九州電力は12日、太陽光発電など再生可能エネルギー事業者に稼働停止を求める出力制御を13日に実施すると発表した。原発4基の稼働や再生エネ発電設備の増加などで九電管内の供給力は高まっており、需要と供給のバランスが崩れて大規模停電が起きるのを防ぐのが目的。離島以外では全国初となる。九州7県の出力制御対象は太陽光・風力発電事業者計約2万4千件(計475万キロワット)で、13日は熊本県を除く6県の太陽光発電9759件、計43万キロワット分を想定。九州各地で晴れて太陽光発電が増加する一方、気温低下により冷房などの電力需要が減ると判断した。実施は午前9時〜午後4時の7時間を想え定している。九電によると、余剰電力が最大になる時間帯は正午〜午後0時半ごろで、再生エネや火力、原子力発電などの供給力が1293万キロワットあるのに対し、需要は828万キロワットの見込み。国のルールに沿って、ダムに水をくみ上げる揚水運転や火力発電の出力抑制、他電力会社への送電などを行っても、43万キロワット分の余剰電力が生まれ、再生エネの出力制御が必要になるという。13日早朝の気象予報などで、最終的な出力制御量と対象事業者を確定する。九電の和仁寛系統運用部長は12日の記者会見で「電力の安定供給のために必要な対応であり、ご理解とご協力をお願いしたい」と語った。14日も出力制御を行う可能性があり、13日に実施の可否を判断する。(以下略)

*8-2:http://qbiz.jp/article/142300/1/ (西日本新聞 2018年10月13日) 再生エネ急増でも活用半ば 蓄電、送電は負担重く後手 九電出力制御
 九州電力が13日、太陽光発電の出力制御に踏み切ることになった。再生可能エネルギーの拡大を目的に国が固定価格買い取り制度(FIT)を導入した2012年以降、日照条件が良い九州では全国を上回る勢いで太陽光発電が急増している。政府は7月に閣議決定したエネルギー基本計画で再生エネの「主力電源化」を目指すとしているが、そのために必要となる蓄電池の普及などの対策は進んでいない。東京電力福島第1原発事故を受け「脱原発」の気運が高まる中で導入されたFIT。再生エネの高値買い取りが誘発剤となり、太陽光は爆発的に普及が進んだ。九電によると、FIT導入後の6年間で、管内の太陽光発電能力は7倍に増加している。核廃棄物も二酸化炭素(CO2)も排出しない再生エネだが、弱点もある。太陽光は日照がないと発電できないため、出力変動に備えて火力発電所など他の電源も同時に運用しておくことが不可欠。九電が今秋までに原発計4基を稼働させたことで電力の供給力が底上げされたことに加え、原発は出力調整が難しいこともあり、電力需要が落ち込む時期に再生エネの出力を絞る可能性が高まっていた。こうした状況で再生エネをどうやって拡大させるのか。その一つの方策が、日中の余剰電力をためて夜間などに使えるようにする「蓄電池」だ。国の補助を受けて九電は16年、福岡県豊前市に約200億円を投じて出力5万キロワットの大容量蓄電システムを整備した。しかし、これだけでは「焼け石に水」。九電管内の太陽光は毎月5万キロワット増え続けており、蓄電池だけで増加分に対応していくと仮定すれば、毎月200億円が必要な計算になる。九州で余った電気を、地域間送電線「関門連系線」を使って本州側に流す方法もある。だが、送電可能な再生エネの容量は、九州の太陽光発電能力の8分の1ほど。経済産業省の認可法人「電力広域的運営推進機関」が17年度に連系線そのものの容量倍増を検討したが、費用試算が1570億円に上ることから見送られた。経産省は19年度予算概算要求に蓄電技術の開発支援を盛り込んだほか、IoT(モノのインターネット)を使った需給バランス管理の高度化などを議論する研究会も今月設置する予定。しかし、再生エネ拡大に向けたコストを誰がどう負担するのかといった肝心の制度設計はこれから。経産省幹部は「当面は出力制御で対応することになる」と話す。急成長した再生エネに、制度が追いついていないのが現状だ。
   ◇   ◇
●「原発再稼働も一因」 九電が会見
 九州電力は12日、出力制御の実施決定を受けた記者会見で、増え続ける太陽光発電に設備面などで対応しきれていない現状を説明、今後も実施は不可避との認識を示した。「設備の増強が追いついていない」。九電の和仁寛系統運用部長は会見で説明した。九州には全国の約2割の太陽光発電所が集まっており、今後も導入が進むのは確実。「(ピーク時の)出力制御にご協力いただくことで再生可能エネルギーの受け入れ量は増える」と述べ、実施に理解を求めた。制御の対象になる事業者については「不公平感が出ないことが最も重要」と強調した。今夏、原発が4基運転体制になり、供給力の調整幅が狭くなったことも影響する。和仁氏は出力制御はさまざまな需給要因を踏まえた「総合的な判断」としながらも、「原子力発電所の再稼働が一因にはなっているかもしれない」と話した。

*8-3:https://www.hokkaido-np.co.jp/article/239370 (北海道新聞社説 2018年10月19日) 太陽光出力制御 原発優先ルール再考を
 九州電力が太陽光発電の一部事業者に一時的な発電停止を指示する「出力制御」を実施した。太陽光の発電量が増える日中に、電力の供給量が需要を上回り、大規模停電が起きるのを回避するためだという。胆振東部地震に伴う全域停電のような事態は避けねばならないが、問題はそのやり方だ。国のルールでは、原発より先に太陽光や風力の出力を制限すると定めている。だが原発優遇の出力制御が度重なると、再生可能エネルギーの使い勝手が悪くなり、普及に水を差さないか。再生エネを将来の主力電源とする国の方針に逆行する。政府は現行ルール見直しの道を探るとともに、需給バランスを保って出力制御を避ける仕組みづくりを急ぐべきだ。九州は日照条件の良さから太陽光発電の普及が進み、導入容量は原発8基分に相当する。今回は好天で発電量が多くなる一方、週末で工場稼働などが減り電力需要の低下が見込まれた。九電は火力発電を抑え、余剰電力を揚水発電の水のくみ上げや他の電力会社への送電に回したが、調整しきれず制御に踏み切った。見過ごせないのは、九電の原発4基が今夏までに再稼働し、供給力が底上げされていたことだ。そのため、冷房使用が減る今秋の出力制御の可能性が早くから取り沙汰されていた。供給過多が見込まれる中で再稼働が必要だったのか、検証が求められよう。原発は出力を一度下げると、戻すのに時間がかかり、経済産業省は出力調整が難しいと説明する。しかし、ドイツやフランスでは需要に応じて原発の出力を調整しており、不可能ではない。再生エネ事業者は一部を除き、出力制御に無補償で応じなくてはならず、日数の制限もない。発電を止めれば売電収入を失う。制御が頻発すれば収益が圧迫される。欧州でも再生エネの出力制御を行っているが、発電を停止した業者に補償金を支払う国が多い。国は固定価格買い取り制度などで再生エネ導入を促すが、拡大に環境整備が追いついていない。九州と本州を結ぶ送電線「関門連系線」の運用容量は、北海道と本州を結ぶ北本連系線を大きく上回るが、それでも足りなかった。送電網の増強に加え、大型蓄電池開発や地産地消型の分散型電源など、再生エネを無駄にしない仕組みが欠かせない。費用負担のあり方も含め国全体で考える時だ。

*8-4:http://qbiz.jp/article/142753/1/ (西日本新聞 2018年10月20日) 九電、再エネ出力21日も制御 初の100万キロワット超対象
 九州電力は20日、太陽光発電の一部事業者に対し、発電の一時停止を指示する再生可能エネルギーの出力制御を21日も実施すると発表した。先週末と20日に続く措置。制御対象は118万キロワットの計画で、これまでで最大。九州全体で気温が上昇せずに冷房需要が一段と減少する見通しの一方、好天で日中の太陽光の出力増加が見込まれるため。九電によると、20日に実施した再エネの出力制御は当初の計画では70万キロワット程度だったが、事前の想定より再エネの発電量が増えなかったとして、実際は最大で52万キロワット程度になった。制御の対象は13日が43万キロワット、14日が54万キロワットだった。

<ノーベル平和賞:人類発祥に関するゲノム研究が進めば・・>
PS(2018年10月15日追加):今年のノーベル平和賞は、*9-1のように、ISの性暴力を告発したイラクの宗教的少数派ヤジディー教徒のナディア・ムラドさんと、コンゴ民主共和国で性暴力被害者のケアを続けてきたデニ・ムクウェゲ医師に決まったが、2人の命がけの活動に敬意を表する。一方、中東では、レイプも「婚前・婚外交渉」として被害女性を殺害する「名誉殺人」が横行し、中東・アフリカには、レイプの加害者が被害者と結婚すれば罪を免れるという法律も残っているそうだ。このように、今の日本では想像すらできないことが起こる文化圏で、女性の地位向上を訴えるのは、誰であっても命がけであり、圧力が必要になることもあろう。従って、*9-3のように、サウジアラビア皇太子が、女性の運転免許を解禁したり、脱石油依存に舵をきったりしたことなども、多方面から批判されたことが想像に難くなく、このような中で「メディアなら何でも言いたい放題言ってよく、それは妨害されるべきでない」というのは、自らは改革を進めたことがない人の甘い考え方だと思う。
 なお、*9-2のように、『ゲノムが語る人類全史、アダム ラザフォード著』が出版され、現生人類が持っているゲノム分析から、地球上に人類が出現して拡散していった状況が解析されようとしていることがわかる。これは、「我々は、どうやって今ここにいるのか」を追求する究極の科学であり、ネアンデルタール人とホモ・サピエンスも交雑しており、まだ骨や歯も発見されていない「第四の人類」も存在するそうだ。さらに、文化とDNAの変化による進化(退化)の関係では、人類が農業を始めてからでんぷんを消化するアミラーゼを作る遺伝子が増えたり、乳を飲み続けるようになってからラクターゼを持続的に作り続けるよう遺伝子が変化したりなど、人類は今でも文化的要因に影響を受けながら進化(退化)を続けているわけである。つまり、現生人類の祖先はごく少数の人から始まり、環境に適応しつつ周りと交配したり闘ったりしながら現在に至っていることがわかれば、まずは人種差別がなくなりそうである。

*9-1:https://mainichi.jp/articles/20181006/k00/00e/030/233000c (毎日新聞 2018年10月6日) ノーベル平和賞、性暴力「泣き寝入り」「名誉殺人」に警鐘
 過激派組織「イスラム国」(IS)の性暴力を告発したイラクの宗教的少数派ヤジディー教徒、ナディア・ムラドさん(25)と、コンゴ民主共和国で性暴力被害者のケアを続けてきたデニ・ムクウェゲ医師(63)へのノーベル平和賞授与が決まった。実態が伝わりにくい中東・アフリカの紛争地域で性暴力に立ち向かった勇気が称賛される一方、性暴力に「泣き寝入り」する被害者が後を絶たない現状に国際社会が警鐘を鳴らした格好だ。ムラドさんの兄で、イラク北部クルド自治区の難民キャンプで暮らすホスニさん(37)は5日、毎日新聞の電話取材に「きょうだい6人が殺害され、私とナディアは生き残った。物静かで小さな妹が、大きな勇気を見せた成果。誇りに思う」と話した。ISは2014年8月にムラドさんの故郷コチョ村などに侵攻し、多くの女性をレイプした。戦時下での性暴力は住民に恐怖心を植え付け、支配する手段として使われる。ISはこの手法で暴虐の限りを尽くした。医師のムクウェゲさんは「レイプがコストの安い『戦争の武器』として使われている」と危機を訴え続けた。コンゴでは豊富な鉱物資源を争う中で、住民の恐怖をあおる手段としてレイプが頻発する。一方、女性の純潔が重視される中東諸国では、レイプも「婚前・婚外交渉」として被害者に厳しい視線が向けられるケースが多い。被害女性を「家族の名誉を傷付けた」として殺害する「名誉殺人」が横行する。ムラドさんの親戚のヤジディー教徒タメル・ハムドンさんは「過酷な体験をしながら、どれほど勇気を出したことだろう」と受賞決定の報に声を詰まらせた。被害者の「泣き寝入り」が珍しくない中東・アフリカには、レイプの加害者が被害者と結婚すれば罪を免れるという法律が各地に残る。だが近年、こうした法律も徐々に撤廃されている。モロッコでは12年、両親や裁判官の勧めで加害者と結婚した16歳の少女が自殺。これを機に法律廃止を求める声が高まり、14年に撤廃された。同様の法律はヨルダンやチュニジアでも廃止となった。国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウォッチは17年、この法律を維持するシリアやリビアなどに撤廃を求めた。

*9-2:http://honz.jp/articles/-/44595 (HONZ 仲野徹 2018年1月27日) 我らが ”サピエンス観” 崩壊! 『ゲノムが語る人類全史、作者:アダム ラザフォード、翻訳:垂水 雄二』
 ここまでわかったのか。あらためてゲノム科学のインパクトを感じる一冊だ。ゲノムとは、ある生物の全遺伝情報を指す。地球上の全生物の遺伝情報はDNAに蓄えられている。うんと簡略化して言うと、ゲノム情報とはACGTという四つの文字が延々と書き連ねられた書物のようなものである。そのサイズは生物によって異なるが、人間の場合は30億文字だ。その配列を決定する方法は猛烈なスピードで進歩してきた。2000年に最初のヒトゲノムが報告された時、13年の年月と三千億円の費用がかかった。それが今や10万円以下、数時間もあればできてしまう。信じられない技術革新だ。従来の酵素を使う方法とは全く異なったナノポアシークエンシングが開発されているが、これに使われる機械の大きさを知ったら、誰もが目を疑うはずだ。なにしろスマホを少し大きくしたくらいなのである。いうまでもなく、ゲノム解析の進歩は、医学に大きな進歩をもたらした。たとえば、数多くの遺伝性疾患の原因が明らかになったし、どのような遺伝子変異が、がんの発症に重要であるかもほぼ解明された。ひと昔前まで、人類進化の研究といえば、基本的に比較形態学、すなわち骨や歯の形の比較であった。しかし、ゲノム解析技術がそのあり方を大きく変えた。第一章のタイトルにもなっている『ネアンデルタール人との交配』が最も有名な例だろう。スヴァンテ・ペーボらが、1856年に発見されたネアンデルタール一号からDNAを抽出し、ゲノム解析を開始したのは1997年のことだ。その研究からわかった最も驚くべきことは、我々、現生人類であるホモ・サピエンスのゲノムに、絶滅したネアンデルタール人の遺伝子が3%近くも含まれていたことだ。なんと、現生人類は、かつてネアンデルタール人と交雑していたのである。ネアンデルタール人は言葉を使えたか、という問題にも大きな進歩があった。喉の構造は、現生人類とネアンデルタール人に大きな違いはない。しかし、それは必ずしも言葉を使えたことを意味しない。チンパンジーと現生人類ではFOXP2タンパクのアミノ酸配列が異なっている、など、いろいろな研究から、言語の能力にはFOXP2という遺伝子が重要であることがわかっている。さて、ネアンデルタール人のFOXP2はというと、現生人類と同じであった。このことは、ネアンデルタール人が言葉を使っていた可能性が非常に高いことを示している。もうひとつ、2006年、シベリア奥地のデニソワ洞窟で発見された、約4万年前に生きていたデニソワ人の話を聞けば、いかにゲノム解析がインパクトある方法であるかが一目瞭然だ。そこで発掘されたのは、歯が一本と小指の先っぽの骨だけだった。当然ながら、それだけでは多くのことはわからない。しかし、骨から抽出されたDNAを用いておこなわれた解析は、驚くべき事実をもたらした。なんと、この女性-女性であることもゲノム解析からわかった-は、現生人類ともネアンデルタール人とも違う「第三の人類」だった。さらに、デニソワ人のDNAの詳細な解析からいくと、どうやら、いまだその骨や歯が発見されていない「第四の人類」も存在していたようなのだ。これからも、ゲノム解析によって人類進化のスキームはどんどん書き換えられていくだろう。当分の間、目が離せない。そんな何十万年も前のことなんか興味がないという人もおられるかもしれないが、この本、章が進むにつれて時代が下ってくるので、心配はご無用。第二章『農業革命と突然変異』では、デンプンを分解する酵素であるアミラーゼの遺伝子が増えたことや、ミルクに含まれる糖分を分解する酵素であるラクターゼの持続的発現といった進化が、一万年前に始まった農業革命によってもたらされた、という話が紹介されている。このことは、人類は、今も進化を続けている。それも、文化的要因に大きな影響を受けながら進化している、ということを示している。逆に、遺伝子が文化的要因に影響を与えることも間違いない。サイエンスはロマンだ。(以下略)

*9-3:https://www.cnn.co.jp/world/35126663.html (CNN 2018.10.7 ) 政府批判のサウジ人記者、行方不明に 在トルコ領事館で殺害か
 イスタンブール(CNN) サウジアラビア政府への批判で知られる同国のジャーナリストが、トルコの最大都市イスタンブールで行方不明になった。米紙によると、同市のサウジ総領事館の中で殺害されたとの情報もある。行方が分からなくなっているのは、サウジ国籍のジャマル・カショギ氏。同氏の婚約者を含む3人の関係者によると、2日にイスタンブールのサウジ総領事館に入ったきり、出てきた形跡がないという。婚約者の女性は総領事館前まで一緒に行ったが、外で待っていたと話している。殺害の情報は、米紙ワシントン・ポストとロイター通信が6日、匿名のトルコ当局者らの話として伝えた。当局者らは今のところ、証拠や詳細を示していない。サウジ側は関与を否定している。ある当局者は、同氏が領事館を訪れた後、まもなく立ち去ったと述べた。ただし、これを裏付ける防犯カメラの映像などは公開されていない。トルコの国営アナトリア通信は、政府が同氏の行方を捜していると伝えた。サウジでは最近、ムハンマド皇太子の主導で、反体制的な聖職者やジャーナリスト、学者、活動化らが次々と拘束されている。ムハンマド皇太子は3日、米ブルームバーグとのインタビューで「隠すことは何もない」と語り、トルコ側による総領事館内の捜索も認めるとの姿勢を示した。カショギ氏は2017年にサウジから米国へ渡り、ムハンマド皇太子の政策を批判する記事などをワシントン・ポストに寄稿していた。

<経産省発の“改革”には人権侵害が多いこと>
PS(2018年10月19、20日追加):*10-1のように、消費税率引き上げに伴う影響緩和策として、経産省の発案で検討されている「キャッシュレス決済」の利用者へのポイント還元案のディメリットは、①クレジットカード保有者やスマホ利用者に限定され、公平性の問題があるだけでなく ②ビッグデータやIT技術を生かすと称して個人の購買活動を勝手に記録し、国民をしつこい広告・勧誘や政府の監視下におく ③従って、第4次産業革命を加速させるより、人権侵害になりやすい ④クレジットカードやスマホ決済は、目の前で金銭が出ていかないため支出額を感じにくくなり、支出のコントロールを失いやすい ⑤スマホ決済はリスク分散ができていないので、スマホを失くしたり盗まれたりすれば一巻の終わり などの欠点がある。
 また、*10-2のように、日本の経産省が米国やEUと国境を越えるデータの流通でルールづくりを目指しているそうだが、それならEUの情報保護規制をそのまま利用した方がよほどマシな規制である。さらに、個人データの利用は、国境を越えた場合のみならず国内でも厳格に本人の了解を求めるのが当たり前であり、それも了解する以外に選択肢がなかったり、了解しなければ不利益を受けるようではいけない。つまり、サイバーセキュリティー対策が不十分な国には、米国や日本も堂々と入っていることを忘れてはならないのだ。
 なお、*10-3のように、日本国憲法は、戦前の経験から、21条で「①集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する」「②検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない」と明確に定めており、無断のデータ利用や検閲は憲法違反だ。また、言論の自由・表現の自由は、メディアに限らず、すべての国民に保障されているが、人権より優先するものではない。さらに、学問の自由も、23条で保障されている。

*10-1:http://qbiz.jp/article/142660/1/ (西日本新聞 2018年10月19日) 消費増税「還元」高齢者ら置き去り キャッシュレス不慣れ、恩恵不透明 経産省発案、与党も不興
 2019年10月の消費税率引き上げに伴う影響緩和策として政府が検討している「ポイント還元」制度に、早くも疑問の声が相次いでいる。クレジットカードや電子マネーを使った「キャッシュレス決済」の利用者しか恩恵を受けられず、こうした支払いに不慣れな高齢者らが置き去りにされかねないためだ。発案したのは経済産業省。この機に「キャッシュレス決済」拡大を図ろうというあからさまな思惑が、閣僚や与党からも不興を買っている。この制度は、増税後に直前の駆け込み需要から一気に消費が落ち込む「反動減」を緩和する狙い。中小小売店での「キャッシュレス決済」の利用者を対象に、増税幅の2%分のポイントを付与。買い物などに使えるよう還元する仕組みが検討されている。経産省によると、国内のキャッシュレス決済の利用率(15年時点)は18・4%で、韓国の89%や中国の60%を大きく下回る。政府は購買データの活用や、訪日外国人観光客の消費拡大のため、25年までに国内の利用率を40%まで高めることを目指す。ポイント還元は普及の好機だ。7月に産学官で設立した協議会は、スマートフォンを使ったキャッシュレス決済「2次元コード決済」について、18年度内の規格標準化を目指すと打ち出した。経産省幹部は「消費税対策を奇貨として普及させたい」と話す。だが経産省の発想は経済基盤の整備に偏り、消費者側からの視点が抜け落ちた格好。スマホに不慣れな高齢者や、カード審査に通らない人はポイント還元の恩恵を受けられず、不公平な制度設計を疑問視する声が上がる。麻生太郎財務相は16日の記者会見で「田舎の魚屋で、大体クレジットカードなんかでやってる人はいない。現金でばっとやっていくという中で、どれだけうまくいくか」と首をひねった。公明党の石田祝稔政調会長は「システムを導入できなかった事業者、カードを持てなかった人にどういう対策ができるか」と提起した。世耕弘成経産相は16日の会見で「多くのキャッシュレス対応の選択肢を準備することも重要」と強調。対象をキャッシュレス決済に限定する考えを崩していないが、与党内ではプレミアム付き商品券や現金を配布する案も浮上し、臨時国会で議論を呼びそうだ。
   ◇   ◇
●公平性の問題生じうる 
 小黒一正法政大教授(公共経済学)の話 ポイント還元案は(ビッグデータやIT技術を生かす)第4次産業革命を加速させるきっかけにはなる。一方で、キャッシュレス決済ができるのは比較的所得の高いクレジットカード保有者やスマホ利用者に限定され、公平性の問題が生じうる。軽減税率に加え、還元も導入すれば税収増がさらに圧縮されるという財政面のデメリットも抱えている。

*10-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20181019&ng=DGKKZO36672510Z11C18A0MM8000 (日経新聞 2018年10月19日) 日米欧で「データ貿易圏」、情報流通へルール作り 台頭する中国を意識
 日本政府が米国や欧州連合(EU)と国境を越えるデータの流通でルールづくりを目指すことが分かった。個人や企業の情報を保護しながら人工知能(AI)などに安全に利用する仕組みをつくる。今年はEUの情報保護規制やフェイスブックの情報流出で米IT(情報技術)大手の戦略にほころびが生じた。台頭する中国とのデータの「貿易圏」争いを意識し、日米欧で連携を狙う。日本政府の目標は個人情報の保護やサイバーセキュリティー対策が不十分な国・地域、企業へのデータ移転を禁じる合意だ。国境を越えた移転には厳格に本人の了解を求め、透明性も高める。世耕弘成経済産業相、ライトハイザー米通商代表らが出席する日米欧貿易相会合で協議する。日本が議長国を務める2019年6月の20カ国・地域(G20)首脳会議までに合意して公表したい考えだ。日本の個人情報保護委員会、米連邦取引委員会(FTC)、欧州委員会司法総局で具体的な内容をまとめ、各国が法整備する。日本では個人情報保護法を改正する。これまでデータの世界はGAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン・ドット・コム)と呼ばれる米巨大企業が圧倒してきた。だがEUが5月、個人情報の保護を強化する一般データ保護規則(GDPR)を施行し、EU域外への個人データの移転を原則禁じたため、GAFAも対応を迫られている。今年はデータ流出事件が相次ぎ、米国内でもGAFAへの規制論があがりはじめた。GDPRとデータ流出でGAFAの覇権が揺らいだわずかな隙に、日本は欧米の橋渡しをしてルールづくりにつなげる構えだ。日本政府関係者は「米政府が欧州のGDPRに準拠した規制に関心を示し始めている」と話す。米国が欧州の基準に歩み寄るかが焦点になる。中国の管理社会型のデータ流通への警戒もある。中国はBAT(バイドゥ、アリババ、テンセント)と呼ばれる企業を前面に立てて国家が情報を吸い上げ、個人が特定された大量のデータが集まる。質も量も高水準なデータを使えばAIの競争力は飛躍的に高まる。既に東南アジアや中東、アフリカに売り込みを始めており、中国モデルのデータの貿易圏が広がりかねない。日米欧は中国に比べると人権に配慮し、ある程度匿名化したデータを使う。そのためにAIの能力で負ける可能性もある。国家主導・管理社会型の貿易圏が次の覇権を握る前に、透明性が高く人権に配慮した貿易圏をつくれば、域内で大量のデータを共有して競争力を高めることができる。あらゆるモノがネットにつながる「IoT」では、製造業に強みを持つ日本にもチャンスがある。欧米とは産業データも安全に流通させるルールをつくり、成長につなげる考えだ。

*10-3:http://www.houko.com/00/01/S21/000.HTM (日本国憲法 抜粋) 
第21条 集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。
   2 検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない。
第23条 学問の自由は、これを保障する。

| 経済・雇用::2018.1~2018.11 | 07:41 PM | comments (x) | trackback (x) |
2018.9.23 ふるさと納税・返礼品・税収の使途について (2018年9月24、25、26、29、30日、10月4、8日追加)

                                 218.9.20西日本新聞

(図の説明:左の図のように、ふるさと納税寄付額は、2008年の制度導入以降、大きく増加した。また、中央の図の佐賀県みやき町の返礼品に電気製品があったのは、都会では考えられないかも知れないが、地元の電気屋さんを残すためだったそうで、佐賀県上峰町の場合は、返礼割合は普通だが気合の入った質のよい返礼品が送られて来る。なお、佐賀県唐津市は唐津市出身の人が社長であるDHCに原料として唐津産のオリーブを使ってもらったり、宣伝してもらったりしているようだ。他はよく知らないが、それぞれ苦心の後が見えるのはよいと思う。さらに、右の図の部活動については、専門家が指導しなければ時間を使う割には根性論に陥って上達しないため、どうせやるのなら、給料を払ってオリンピックメダリストやオリンピックを目指したような選手をコーチとして雇い、時間の無駄なくうまくなれるようにした方がよいと思う)

(1)ふるさと納税に対するクレームについて
1)クレームの内容と反論
 私が提唱してでき、多くの方のアイデアと協力で大きく育った「ふるさと納税」が、*1-1のように、「①返礼品の抑制が広がる中でも増えた」「②ガソリン税に匹敵する規模で自治体の主要な収入源になった」「③幅広いアイデアが寄付を押し上げた」というのは嬉しいことだ。

 これに対し、*1-2のように、645億円の流出超過となった東京都などが、「待機児童対策に響く」等と指摘しているが、東京など企業の本社・工場が多い地域で多く徴収される仕組みになっている法人住民税や生産年齢人口の割合が高い都会で多く徴収される個人住民税などによる税収格差を是正するために、私は「ふるさと納税」を作ったので、都市から地方の自治体に税収が流れるのは最初から意図したことだった。

 なお、私は大学時代から30代後半まで東京都内に住んでいたのでよく知っているが、東京都の待機児童対策がふるさと納税制度制定前に進んでいたかと言えば全くそうではなく、莫大な無駄遣いが多いことは誰もが知っている事実だ。そのため、東京都が「待機児童対策に響く」などと指摘しているのは、持ち出しにクレームを言うための耳ざわりのいい口実にすぎない。

 さらに、「ふるさと納税」を集めるチャンスはどの自治体も平等に持っており、魅力的な製品やサービスを発掘(もしくは開発)して返礼品にした自治体が多くのふるさと納税を集めるられるのは、単なる税金の分捕合戦ではなく、地方自治体が自らの地域の長所を見つけて魅力ある産物を増やす工夫をすることに繋がっている。つまり、「うちには、何もない」と思っていた地方の人たちが、自らの産物に対する消費者の人気を肌で感じ、ネット通販やクラウドファンディングのノウハウを習得する機会になったのである。

 にもかかわらず、*1-3のように、日経新聞は、「ふるさと納税は原点に戻れ」と題して、「①寄付額の3割を超える高額な返礼品が増えた」「②地元の特産物以外の商品を送る市町村も多い」「③総務省の要請には法的な拘束力はないが、ルールに従う地域からみれば不公平」「④ふるさと納税は、富裕層に有利」「⑤ふるさと納税が日本の寄付文化を育んでいる面もあるが、自然災害の被災地には返礼品がなくても多額の寄付が集まっている」「⑥ふるさと納税は、故郷や気になる地域を個人の自由意思で応援する制度だ」「⑦見直しで高額な返礼品がなくなり、寄付額が減ったとしても仕方ない」などの批判をしている。

 しかし、私がふるさと納税制度の創設を提唱したのは、純粋な寄付文化を育むためではなく、育った地方に税源を与えつつ、地方を刺激するためであるため、⑤⑥⑦は、あまり努力しなかった自治体のクレームにすぎない。また、①③は、特に条文がないので、日本国憲法から導きだされる租税法律主義から考えて自由であり、それよりも、法律に根拠のないルールを勝手に作って「ルールだから守れ」と言う方が問題である。

 ただ、②のように、地元の特産物以外の商品を多額の返礼品にすれば、地元の産業を育てるチャンスを失い、税収も増えないため、総務省より地元住民がクレームを言うべきだろう。

2)控除限度額の計算
 上の④の「ふるさと納税は、富裕層に有利」というのは、税法の知識のない人が“富裕層(範囲も不明)”さえ叩けば批判になると勘違いしているお粗末な例で、このようなワンパターンの批判は止めるべきである。

 ふるさと納税の控除限度額は、*1-4のように、所得税からの控除限度額が「a)+b)」で、住民税からの控除限度額が「c)」であるため、「a)+b)+c)」の金額である。そして、返礼品がなければ2000円分はどこからも戻ってこず、寄付をしない人より多く税を納めることになるので、この2000円の方が問題だ。
  a)所得税からの控除額=(寄付金-2000円)×所得税率
  b)復興特別所得税から控除額=所得税からの控除額×復興特別所得税率2.1%
  c)住民税からの控除(基本分)=(寄付金-2000円)×住民税率10%

 つまり、所得が大きい人の控除限度額が大きくなるのは当然で、所得が大きい人は累進課税により多額の所得税・住民税を支払っているということなのだ。そして、ふるさと納税に対する批判の多くが、この所得税・住民税の仕組みを理解しておらず、もっともらしく感情論に終始しているのは問題である(「論理的→男性、感情的→女性」というジェンダーは成立しない)。

3)返礼品の発祥と規制の非妥当性
 そのため、この2000円をカバーしようとして考えだされたのが、ふるさと納税を受けた地域からのお礼の品であり、香典を持って行って香典返しをもらうことに例えられる。また、地元の産品であればもちろん産業振興になり、地元産には原料が地元産の場合もあるし、地元の電気屋さんがなくなったら困るため、そこの商品だったりする場合もある。従って、よく事情を聞かなければ妥当性は不明だ。

 ただ、「香川県直島町の担当者が、特産品が少なく簡単にはいかない」と言っているのは、役所の人が返礼品を考えるからで、地元の農協・漁協・商工会などと相談して魅力的な産品(米・レモン・オリーブ油・魚でもよい)を作って返礼品にすれば、それこそ地域振興に繋がる。

 従って、私は、総務省が、返礼品を寄付額の3割以下にすることや地元の農産品に限ることを強制する根拠は法律にはないし、地方自治体は工夫して、「廃止されそうな鉄道の維持」や「送電線の敷設・地中化」に使うというような使用目的を出してもよいと考える。

(2)総務省の対応と自治体
 総務省は、*2-1のように、ふるさと納税の返礼品は地場産品だけにするように通知を出し、*2-2のように、特産品の少ない自治体はこれに困惑しているそうだが、地域の人が「何もない」と思っている地域に優れた農林水産物があったりするため、それこそ地域振興のために知恵を絞るべきだ。

 また、*2-3の埼玉県毛呂山町は、農家の高齢化が進んで収穫されないユズ畑が増えているそうだが、ゆずジュースにしたり、レモンやオレンジに転作したりと、畑や作物の利用余地は大きい。また、*2-5のように、イノシシの皮で起業する人もおり、このような時に、ふるさと納税を「ガバメントクラウドファンディング」として使うのもよいと考える。

 なお、*2-4のように、総務省は、2017年4月に、寄付金に対する「返礼率」を3割以下にし、家電・金券類を扱わないよう求める通知を出し、2018年4月に、返礼品は地場産品に限るよう新たに求め、2018年7月に、ルールを守っていない寄付額の規模が大きな自治体を公表し改善を求めたそうだが、その“ルール”は法律で決まっているものではないため、租税法定主義から強制はできない。

 ただ、無茶なことをしてふるさと納税を集めても地域のためにならないため、それについては地域の人が苦情を言ったり、よりよいアイデアを出したりすべきだろう。

 なお、*2-6のように、JA全中は、准組合員のJAへの意思反映や運営参画促進に向けた具体策を提起するそうだが、6次産業化を進めるには、加工やサービスを行って貢献してくれる人を准組合員にしたり、理事にしたりすると、アイデアが集ってよいと考える。そのため、農業従事者以外を農協から排除する方が営業センスがない。

(3)問題の本質
 問題の本質について、*3のように、西日本新聞が「①返礼品の過当競争といわれても、ふるさと納税の寄付金に頼らざるを得ない地方財政の窮状がある」「②30%という線引きの基準は妥当か」「③税収格差が広がる中で、自治体同士が寄付という名の税金を奪い合う構図に陥っている」「④地方分権改革による国から地方への税源移譲こそが問題解決の本筋だ」「⑤原材料から製造・流通まで複雑に絡む『地元産品』を具体的にどう定義するのか」と記載している。

 私は、①④には賛成で、地方分権と言っても財源がなければ何もできないため、例えば企業の偏在とは関係のない消費税を全額地方税にするなどの税源移譲があってよいと考える。しかし、高所得者になる人を教育して都会に出した地方に見返りがあるのは自然であるため、ふるさとへの貢献をするふるさと納税があるのはよいことだと思う。

 また、②の30%基準は、まあそのくらいだろうという意味しかない。さらに、③については、単に自治体同士が税金を奪い合っているのではなく、それぞれの自治体の役所が、頭を絞って魅力的な産物を作ろうとしていることにも意味があり、新しい産物を軌道に乗せるため「ガバメントクラウドファンディング」を行って応援するのも名案だ。

 ⑤についても、確かに地元とはいろいろな関わり方があり、地元の産業振興に貢献してくれる企業は多いため、定義は困難だろう。

(4)ふるさと納税の使途
 ふるさと納税は、返礼品目的だとして批判されることが多いが、どの自治体も使途を選択できるようになっている。つまり、納税者が使途を指定することができるのが、他の税金とは異なるよい点で、自分が住んでいる地域に使途を指定してふるさと納税することもできる。
 
 例えば、*4-1のような産業スマート化センターの開設・IT導入を応援したり、*4-2のような剣道・体操・ヨット・バレーボール・化学などの部活指導を専門家に任せる資金を作ったり、*4-3のような障害者・高齢者のケアを充実する費用に充てたり、市長にお任せしたりと、地域も魅力的な使途を工夫するようになる点で意義深い。その時、単なる景気対策のバラマキような無駄遣いの使途に、ふるさと納税をする人はいないだろう。

<ふるさと納税に対するクレーム>
*1-1:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO30385930R10C18A5EA3000/?n_cid=SPTMG002 (日経新聞 2018年9月11日) ふるさと納税、3000億円視野 返礼品抑制でも伸び
 ふるさと納税が返礼品の抑制が広がるなかでも増えている。日本経済新聞が全国814市区を調査したところ、6割が2017年度の寄付額が増えると見込む。市区分だけでも2014億円と前年度より10%伸びており、都道府県や町村分を含めると3000億円の大台を突破する勢い。自治体の歳入としてはガソリン税に匹敵する規模で、主要な収入源になってきた。17年度の自治体別の増額幅をみると、最も多かったのは1億円未満で全体の45%を占める。5億円以上は3%にとどまっており、1億~5億円未満が11%だった。ふるさと納税が特定の自治体に集中するのではなく、利用の裾野が広がり多くの自治体で厚みを増している構図が浮かび上がる。総務省によると16年度の実績は2844億円。市区の合計額はふるさと納税全体の64%を占めていた。都道府県は1%で町村は35%だった。市区と町村の伸び率はこれまでほぼ同じ水準で推移しており、17年度は全国の総額で3000億円の大台を超える見通しだ。総務省は17年4月に資産性の高い返礼品などを自粛し、返礼割合も3割以下に抑えるよう各自治体に通知。18年4月には返礼品の見直しの徹底を改めて求める追加の通知を出している。通知後も高い返礼割合の自治体は残るが、集め方や使い道の工夫が広がっている。北海道夕張市はあらかじめ使途を明示した。インターネットで不特定多数の人から少額の寄付を募るクラウドファンディングの手法を採用。少子化に悩んでいた地元の高校を救うプロジェクトなどが共感を呼び、寄付額が3000万円増えた。青森県弘前市は重要文化財である弘前城の石垣修理や弘前公園の桜の管理といった街づくりに参加できる仕組みが人気を集め、前年度より1億6000万円上積みした。「高額」の返礼品だけでなく、幅広いアイデアが寄付を押し上げている。一方で16年度にトップ30だった市区のうち、6割が17年度は減少すると見込む。家電を返礼品から外した長野県伊那市(16年度2位)は66億円減少。パソコンの返礼品をやめた山形県米沢市(同5位)も17億円減った。ただ、全体では17年度も16年度より10%伸びる見通し。上位の減少分を幅広い自治体の増加分でカバーしている形だ。自治体の最大の歳入は約4割を占める地方税。16年度は約39兆円だったが、人口減時代を迎え今後の大幅な増収は見込みにくい。3000億円規模の歳入は自治体にとって、ガソリン税や自動車重量税の地方分と並ぶ規模になる。ふるさと納税が地方税の収入を上回る例も出ており、自治体の「財源」としての存在感は高まっている。16年度首位の宮