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2017.2.4 日本における外国人労働者・難民の受入状況、日本人の労働参加率、働き方改革について (2017年2月6、7、9《図の説明》、11日追加)
     
 2017.1.28  外国人労働者と雇用事業所数推移 2016年外国人労働者数 外国人労働者賛否   
  東京新聞                2017.1.28西日本新聞          2016.2.4朝日新聞

(図の説明:日本で働く“外国人労働者”は次第に増え、日本全国では2016年10月末で108万3,769人となったが、総人口(1億2,698万人)に占める割合は0.85%にすぎない。そのうち九州は59,053人で日本全体の5.4%だ。また、“外国人労働者”と呼ばれている人のうち、技能実習生や留学生のアルバイトは本来の労働者ではない上、経済連携協定による受入者も3年で帰国を求められる人が多いため、労働者としてあまりあてにならない。なお、我が国は、専門的・技術的分野の外国人労働者は積極的に受け入れているが数が少なく、永住者・定住者には戦前から日本に住んでいる人も入っている。なお、外国人労働者の受け入れには、全体では過半数の人が賛成だが、40代男性のみ反対の方が多い)

  
      *1-5、2017.2.4佐賀新聞より                        労働力人口推移
                                     女性の就労が進む場合と進まない場合

(図の説明:日本の労働力人口は、女性や高齢者の就労が進んでも減少するが、進まなければ急速に減少する。そのため、外国人労働者の受入は合理的な選択となっており、外国人労働者なしでは考えられない職種や地域もあるため、受入地域は外国人と生活者として共生する準備が必要だ)         

(1)日本における外国人労働者と難民の受け入れについて
1)外国人労働者と難民の受け入れについて
 厚労省の調査で、*1-1のように、日本で働く外国人労働者が2016年10月末時点で108万3,769人になったことが分かり、厚労省は、①政府が単純労働に従事する技能実習生の受け入れを拡大し ②留学生の就職支援を強化し ③高度技術を持つ人材の受け入れが増えたことが要因だとしている。

 しかし、一番上の左図の専門的・技術的職種、永住者・定住者、看護師・介護士など特定の職種の人のみが外国人労働者であり、技能実習生・留学生は正確には技術や知識を学びに日本に来た人で労働が目的で来た人ではないため、世界標準では外国人労働者と認められないだろう。

 また、特定の職種の外国人労働者も、*1-2のように、労働基準法などを順守せず過酷な労働を強い、日本人と比較して給与水準が低く設定されて、合理的理由なき差別のある職場も多いのは問題だ。

 さらに、難民については、*1-3のように、日本政府は今年から5年間でシリア難民の留学生とその家族を計300人を受け入れるそうだが、規模が小さすぎて殆どの人が救われず、シリアで約480万人が難民として周辺国に逃れている中で、欧米諸国の①米国60,964人 ②カナダ48,089人 ③ドイツ43,708人 ④英国20,000人 ⑤フランス16,497人 ⑥ブラジル11,450人 ⑦ノルウェー9,000人 ⑧スイス6,700人 と比較して、受け入れ人数があまりにも少ないと言わざるを得ない。

2)イスラム教徒の受け入れについて
 それでは、大量のイスラム教徒を受け入れた場合についてだが、日本では「信教の自由」を根拠に学校など公共の場での女性のベールを禁止したり、浜辺でのブルキニ着用を禁止したりすることを批判する声が強いが、これは、実状を知らない日本人の甘さだ。

 何故なら、その傍にいるイスラム教徒の男性は、ベールをかぶっていない女性や浜辺で通常の水着を着ている女性や教育を受けて社会で自由に活躍している女性について、それが異教徒であってもひっかかるものがあるため、近くにいる日本女性の行動も制限されることになるからだ。例えば、私は、20年くらい前、ODAでキルギスタンに行った時、「日本人女性がODAで来ていることが知れ渡って、街のイスラム教徒の男性がつけまわしていて護りきれないから、早く仕事を終わって日本に帰って」と、同じチームの男性チーフに言われて、ショックを受けたことがある(ちなみに、同じチームに親切なイスラム教徒の男性もいて、一緒に市場を見に行き、説明を聞いて、よい見聞もできたことを付け加えておく)。

 また、多くのイスラム教徒の移民を受け入れているフランスでは、*1-4のように、沿海のリゾートでブルキニ着用を禁止した自治体の数が約30に上り、サルコジ前大統領を先頭に右派勢力はブルキニ着用を全国で禁止する措置の法制化を強く求めており、一方、ベルナール・カズヌーブ内相は地元紙のインタビューで「ブルキニの着用を法律で禁止するのは憲法違反だ」と指摘しつつ、「イスラム教徒側にも、引き続き私たちと共に男女平等、共和国の不可侵の原則、寛容さに関わっていってもらいたい」と注文していることから、現在の状況が伺える。そのため、私は、イスラム教も、もう中世型を脱して21世紀型に変化すべき時だと考える。

 そこで、日本がイスラム教徒の難民を国内に受け入れるにあたっては、日本国憲法で男女平等や教育の権利・義務、勤労の権利・義務などの必要事項が定められており、民法で重婚の禁止が定められており、男女共同参画基本法や男女雇用機会均等法・女性活躍推進法もあるため、「日本国内では日本の法律に従う」という誓約書への署名を最低の受入要件とし、その意味をしっかり説明しておく必要がある。

3)外国人労働者や難民の受け入れについて
 佐賀県基山町長野地区の住民は、*1-5のように、外国人に自転車や地域で暮らすためのマナーを身につけてもらおうと、英語、ネパール語、中国語、ベトナム語、日本語の5カ国語で解説し、親しみやすいイラストを添えて小冊子を作ったそうだ。これは、日本人も勉強した方がよさそうだが、今後は、外国人労働者を雇う企業が増え、外国人労働者を受け入れた方が地域も活性化するため、重要な一歩だろう。

 また、過疎地や国境離島ではない離島で、既にある学校や空き家などのインフラを使い、まとまった数の外国人労働者や難民を、まずは農林漁業や中小企業の被用者として受け入れることも考えられる。

(2)女性・高齢者の雇用について
1)高齢者の定義と定年制について
 *2-1のように、老年学会が高齢者は「65歳以上」ではなく「75歳以上」としたため、高齢者の定義、定年年齢・年金支給開始年齢の妥当性について議論が始まった。確かに、日本人の平均寿命が延び、2015年は女性87.05歳、男性80.79歳になったため、75歳くらいまで働ける高齢者は多いだろう。

 そのため、定年制を廃止して働きたい人は働く方式にするのが理想だろうと私も考える。しかし、その際には、望む仕事が得られるかどうか、教育は人生の前半だけでなく途中での追加も必要なのではないかということが問題になる。

2)労働参加率上昇の必要性
 九州経済調査協会は、*2-2のように、急速な人口減少で企業の人材確保が難しくなっており、今後はさらに争奪戦が激しくなるため、女性や高齢者など多様な人材の活用に加え、限られた要員で稼ぐ力を高めることが必要だとしており、尤もだ。

 しかし、女性は賃金よりも職種や勤務時間、休日などを重視しているとして、①短時間勤務 ②地域限定正社員 ③再雇用 ④IT技術を活用した「テレワーク」の導入 などを提言しているのは、「正社員での採用」や「男性との同一労働同一賃金」の仕事が自由に選択できた上での話だろう。「女性=短時間勤務、自宅でのテレワーク、再雇用を希望する」と位置づけるのは、家事と仕事の両方を女性が行うことを女性も望んでいるという前提の男性の発想であり、30~50年古いと言わざるを得ない。

(3)日本における明確な女性差別
 私も驚いたが、*3-1のように、埼玉県川越市のゴルフ場が女性の正会員を認めていなかったのだそうだ。これは、女性に、ゴルフをするような仕事上の場面を想定していないということだろうが、私から見ると、「はあ?何を時代錯誤してんの!」と言いたくなる状況だ。ちなみに、関東には、公立高校も男女別学の地域が多く、これは高校から男女で別の教育をしているということで、埼玉県もその一つだ。

 そして、それを批判した小池百合子東京都知事に対し、丸川珠代五輪相は電話で真意を聞いたそうだが、真意を聞くということは、何か他に真意があることを想定していたのだろうか? 小池東京都知事が「言葉通りです。せっかくスカートをはいておられる五輪相もいるのだから、もっと明確に言うべきではないか」と言われたのは、全く同感だ。

 なお、*3-2のように、成人年齢を20歳から18歳に引き下げる民法改正案に、婚姻適齢を男女とも「18歳以上」に統一する規定が盛り込まれていることが分かったと、佐賀新聞が「置き去りだった差別」として記載している。先進国では男女同一が普通であるのに、日本では女性の方が心身の発達が早い(そして発達が速く止まる)などとしているのは非科学的であり、男女平等後進国のなせるわざだ。

<外国人労働者と難民の受入状況>
*1-1:http://qbiz.jp/article/102594/1/
(西日本新聞 2017年1月28日) 外国人労働者100万人突破 全都道府県 前年上回る
 日本で働く外国人労働者が初めて100万人を突破し、2016年10月末時点で前年比19・4%増の108万3769人になったことが27日、厚生労働省の調査で分かった。08年の集計開始以来最大の増加率で、全都道府県で前年を上回った。政府が事実上、単純労働に従事する技能実習生の受け入れを拡大してきたことなどが背景にあり、国民的議論がないまま外国人労働者受け入れが進んでいる。厚労省は留学生の就職支援強化や、高度な技術を持つ人材の受け入れが増えたことが要因としているが、働き先は製造業が31・2%、卸売・小売業が12・9%で、人手不足感の強い業種を中心に、外国人労働者が増えている。全国の労働者の2%程度を占め、雇用する事業所数も最多の17万2798カ所に達した。在留資格別でみると、高度で専門的な知識のある人材が20・1%増の20万994人なのに対し、日本の技術を学ぶ技能実習が25・4%増の21万1108人、留学生が25・0%増の20万9657人となっている。国籍別での最多は中国の34万4658人で、前年比6・9%増。ベトナムが56・4%増の17万2018人、フィリピンが12万7518人で続いた。増加率では、ネパールも35・1%と大幅に伸びた。都道府県別では、東京が最多の33万3141人で、2番目に多い愛知の11万765人と合わせ2都県で全体の4割が集中。九州では福岡が全国で8番目に多い3万1541人で、留学生アルバイトの比率は全国最多の42・7%だった。政府は介護現場での技能実習生受け入れの解禁を既に決め、今国会では国家戦略特区を活用して農業分野で外国人が働けるよう法改正する方針で、今後も受け入れを拡大する。
*外国人の就労 外国人が日本で働くためには在留資格が必要で、大きく分けて(1)永住者や日本人の配偶者ら、日本人と同じように就く仕事に制限がないグループ(2)外交官や医師、外国料理の調理師らそれぞれ定められた範囲、職種で就労が認められるグループ−がある。技能実習生や経済連携協定(EPA)に基づく看護師などは(2)のグループで、昨年の入管難民法改正で新たに介護分野も加わった。

*1-2:http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2017020301001792.html (東京新聞 2017年2月3日) 比女性らと介護施設が和解、大阪 過酷労働を陳謝
 大阪府東大阪市の介護施設「寿寿」に勤めていたフィリピンから来日した男女ら10人が、厳しい条件で勤務を強いられたなどとして、未払いの賃金や慰謝料などを求めた訴訟が3日、大阪地裁(菊井一夫裁判長)で和解した。和解は、施設側が労働基準法などを順守せず、過酷な労働を強いたことを陳謝し、総額計約1千万円の解決金を支払う内容。訴状などによると、10人はいずれもフィリピンから来日した20~50代の男女。日本人の職員に比べ給与水準が低く、差別的な待遇だったとし、それぞれの未払い賃金のほか、残業代など計約4100万円を請求していた。

*1-3:http://digital.asahi.com/articles/ASK225HLZK22UTFK00R.html?iref=comtop_list_int_n03 (朝日新聞 2017年2月3日) シリア難民、300人規模で受け入れへ 政府、定住に道
 日本政府が今年から5年間で、シリア難民の留学生とその家族を計300人規模で受け入れる見通しになった。留学生は配偶者と子供を帯同でき、家族にも生活手当が支給される。留学終了後は必ずしも帰国する必要がなく、事実上家族とともに定住する道を開くことになる。特定国のまとまった難民受け入れ策としては、1970年代後半から2005年までに1万人を超えたインドシナ難民、10年から計123人が来日しているミャンマー難民以来となる。国際協力機構(JICA)の技術協力制度を活用し、年20人の留学生を受け入れる。対象はレバノンとヨルダンに逃れたシリア人難民。JICAはシリアの一般家庭の家族構成を踏まえ、5年の受け入れ数は300人規模になると試算。今年夏、最初の20人と家族が来日する予定だ。日本政府は昨年5月、JICA枠と文部科学省の国費外国人留学制度枠(年10人)を使い、5年間で150人のシリア難民を受け入れると表明。主要7カ国(G7)首脳会議(伊勢志摩サミット)の議長国として難民問題に前向きに取り組む姿勢をアピールする狙いで、留学生の募集や留学先の選定を進めてきた。JICA枠は、留学終了後の帰国を義務づけないうえ、留学中は本人に月約14万円、配偶者に月1万3千円、子供1人当たり月6500円を支給するのが特徴。日本での就職も後押しし、事実上定住を容認する内容だ。JICAは「あくまでも帰国して復興を担う人材の育成が目的だが、(内戦状態の)シリア情勢を考えると卒業後すぐに帰国しなさいとはならない」(担当者)と説明する。日本は欧米各国に比べて難民受け入れに後ろ向きで、15年に難民認定されたのは27人。一方で、混乱が長期化しているシリアでは約480万人が周辺国などに逃れているとみられ、欧米諸国は数年前から、外国に逃れた人を別の国が受け入れる「第三国定住」制度で多くのシリア難民を受け入れてきた。この制度は日本にもあり、これまでミャンマー難民を受け入れてきた。シリア難民については、政府内に「第三国定住制度で受け入れるほど、国内の世論が熟していない」との意見があり、JICAの既存制度を活用することにしたという。移民大国の米国ではトランプ政権が誕生し、難民受け入れの規制に転換。欧州でも反移民を掲げる右派勢力が台頭している。世界の難民政策が曲がり角を迎える中、日本はミャンマー難民の2倍以上のシリア難民を受け入れることになる。国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)のダーク・ヘベカー駐日代表は「日本はまだ、永住を前提としたシリア人の定住を受け入れる準備ができていない。一方で、何かしなければならないことをよく分かっている。留学生としての受け入れは『妥協案』なのだろう」と指摘する。難民問題に詳しい筑波大の明石純一・准教授は「定住も意識しており、中東の難民問題へのアプローチとしては画期的。ただ人数が圧倒的に少ない。保護を必要とする世界の難民全体のうち微々たる数に過ぎない。今回の仕組みをパイロット事業と位置づけ、受け入れ人数を広げていってほしい」と話している。(機動特派員・織田一)
     ◇
■主要国のこれまでのシリア人難民受け入れ
                   ※表明分含む
  国名       人数
①米国      60964
②カナダ     48089
③ドイツ     43706
④英国      20000
⑤フランス    16497
⑥ブラジル    11450
⑦ノルウェー    9000
⑧スイス      6700
-----------------------------------------------------------------
日本        300規模  ※日本はJICA枠での今後の受け入れ見通し。
                    そのほかは、昨年末時点の国連難民高等弁務官事務所調べ。

*1-4:http://www.afpbb.com/articles/-/3098942?utm_source=yahoo&utm_medium=news(朝日新聞2016年8月29日)ブルキニ禁止法は「違憲」 仏内相 、取り返しつかない結果に警鐘
 フランスのベルナール・カズヌーブ(Bernard Cazeneuve)内相は28日に掲載された地元紙のインタビューで、同国でイスラム教徒の女性向けの全身を覆う水着「ブルキニ」の着用を法律で禁止するのは憲法違反だと指摘するとともに、こうした法律を制定すれば取り返しのつかない悪影響を及ぼす恐れがあると警鐘を鳴らした。日刊紙ラクロワ(La Croix)のインタビューに応じたカズヌーブ内相は、国内の一部自治体が導入して物議を醸しているブルキニ規制について、政府としては反対という立場を重ねて示した。この問題は女性の権利やフランスの厳格な世俗主義をめぐって、国内外で大きな論議を招いている。カズヌーブ内相は「政府が(ブルキニ禁止の)法制化を拒否しているのは、こうした法律が違憲かつ無効であり、対立や取り返しのつかない緊張を生む恐れがあるからだ」と説明。その上で「イスラム教徒側にも、引き続き私たちと共に男女平等や、共和国の不可侵の原則、寛容さに関わっていってもらいたい」と注文した。仏沿海のリゾートでブルキニ着用を禁止した自治体の数は約30に上っているが、フランスの行政裁判の最高裁にあたる国務院は26日、うち1つの自治体による禁止措置を凍結する判断を下した。この判断は他の自治体にも影響を及ぼす判例になるとみられている。一方、来年の次期大統領選に出馬を表明した二コラ・サルコジ(Nicolas Sarkozy)前大統領を先頭に、右派勢力はブルキニ着用を全国で禁止する措置の法制化を強く求めている。

*1-5:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10105/402173
(佐賀新聞 2017年2月4日) 基山町長野地区住民ら、外国人向け冊子作成、相互理解へ活用
■暮らしのルール5カ国語で解説
 外国人に自転車や地域で暮らすためのマナーを身につけてもらおうと、基山町長野地区の住民らが小冊子を作った。交通標識などを英語、ネパール語、中国語、ベトナム語、日本語の5カ国語で解説し、親しみやすいイラストも添えた。舟木喜代美区長(67)は「声かけやあいさつと併せて活用し、融和を図っていきたい」と意気込む。長野地区には企業の工場などが多く立地している。近年は外国人労働者を雇う企業が多く、通勤のため地区内を自転車で通行する外国人の数が急増。道路上での並走や2人乗り、ごみのポイ捨て、深夜に大声で騒ぐなどの事例が相次いだため、地区として対策に乗り出した。冊子はA6判12ページのフルカラー。県国際課や県警などの協力を得て200部を作成し、ネーティブスピーカーに表現に間違いがないか確認してもらうなど念入りに準備した。自転車の乗り方では、「車道の左側を走る」「2人で乗らない」「携帯電話は使わない」などの基本マナーを紹介。「くらしのルール」編では、「地域の人に会ったらあいさつしよう」「ごみの投げ捨てはいけません」「住宅地は静かに通りましょう」などと呼び掛けている。1月末に街頭で通勤途中の外国人に冊子を配布したほか、企業3社に計80部を贈った。舟木区長は「異国の地で暮らすための、基本的なマナーを知らないままの人も多い。今後も外国の方は増えていくと思うので、啓発に向けて町全域で継続して取り組んでいきたい」と話す。

<女性・“高齢者”>
*2-1:http://mainichi.jp/articles/20170201/dde/012/040/003000c
(毎日新聞 2017年2月1日) 特集ワイド 「高齢者は75歳から」の是非 年齢の線引き、捨てよう
 高齢者は「65歳以上」ではなく、「75歳以上」に--。こんな提言が今、話題を集めている。確かに最近の中高年は元気で、そう言われれば納得しそう。ただ、多くの人が見直しの動きを警戒しているのも事実だ。そこで経験豊かな有識者に聞いてみた。高齢者の定義変更をどう見ますか?しゃれたレストランを都心などで手掛ける会社の役員が打ち明けた。「困ってるんですよ。60代の優秀な料理人がどんどん定年になっちゃって……。このままでは経営が立ち行かない」。今の60代は現役とまったく変わらない。気力も体力も衰えず、高い技術は若い人に代えられないほどだ。でも会社にはルールがある。働き続けてほしいと願うが、臨時雇いになって給料が激減すれば辞めてしまう。この会社は定年後も待遇を変えず、人材をつなぎ留める方法を真剣に検討し始めた。日本人の平均寿命は延びている。厚生労働省によると、2015年で女性87・05歳、男性80・79歳。戦後間もない1947年は女性54歳、男性50歳だった。「人生50年」は過ぎ去り、今や「80年」の時代。それなのに、現状に合わない“高齢者像”が生き残り、さまざまな場でひずみをもたらしている。そんな中、日本老年学会などがこの1月、65歳以上の体の状態や知的機能は10~20年前と比べ5~10歳ほど若返っているとし、医療や介護などで「65歳以上」とされてきた高齢者の定義を「75歳以上」に見直すべきだと提言した。大きな狙いは65~74歳の積極的な社会参加を促すことだ。社会問題について積極的に発言しているライフネット生命保険の会長、出口治明さん(68)に提言の印象を尋ねると、「高齢者の体力などを考えたら、ごく自然なことでしょう。当たり前の話では」と笑う。そうはいっても、この線引き、なんとなく割り切れない思いを抱く人は少なくない。人気長寿番組「世界ふしぎ発見!」(TBS系)の司会などとして活躍するテレビキャスター、草野仁さん(72)は、まずこう問い掛ける。「『高齢者』とひとくくりにすることに無理があるのではないでしょうか」と。「人は年を取るほど、体力をはじめ、いろんな意味でバラつきが出てきます。一律に『高齢者』と決めつけることは好ましくありません」。生きてきた環境が異なるうえ、大病をしたり、しなかったりなど健康面の違いも生じ、高齢になるほど個人差は大きいとされる。若者と同じように精力的に外で動きたい人もいれば、「引退」してのんびり過ごしたい人などさまざまだ。それを一つにまとめることに違和感を覚える人は多い。今回の提言では、これまで「高齢者」と呼ばれてきた65~74歳を、高齢者の準備段階となる「准高齢者」と位置づけた。これには言葉のプロである草野さんは不満を隠さない。「75歳以上を『後期高齢者』と呼ぶこともありますが、『もうアウト』と言わんばかりの愛情のない表現です。『准高齢者』には、それと同じ冷たさを感じますね。私はそんなふうに呼ばれたくないなあ」。なぜわざわざ「准高齢者」とくくるのか。普通の「大人」でいいではないか。「高過ぎるわね、定義が75歳以上というのは」。はっきりとした口調で話すのは、エッセイストで青森大副学長の見城美枝子さん(71)だ。見城さんは、公的機関の委員や大学の同期会会長を務めるなど活動が幅広い。同世代との付き合いも多い中、体感として、こう感じるという。「女性なら70歳を楽々と越えていきますが、男性は少し違います。一握りの特別な人は別でも、70歳が一つの峠になっていると思うんです」。定義するにはもっときめ細かな配慮が必要だというのだ。見城さんのように、提言に対する慎重な見方は多いが、それは多くの人が直感的に、ある種の不安を感じるからといえよう。現在の社会保障制度の多くは65歳を基準としているからだ。「高齢者は75歳以上」という社会的な合意ができれば、年金の支給開始年齢の引き上げなど社会保障の見直しにつながる可能性もある。見城さんもこの可能性を否定せず、こう主張する。「社会保障制度などを見直すというなら、国はまず、『これまでの制度設計には誤りがありました』と謝罪すべきです。既存の制度は設計ミスで維持できないときちんと説明し、国民の納得を得た上で次に進まないといけません」。まるで暗雲が垂れこめるようにばかり言われる「超高齢社会」。若者が抱える閉塞(へいそく)感を打ち破るためにも、定義変更の提言をチャンスとし、日本が進むべき未来像をはっきり示すべきだと呼び掛ける。
●定年制を廃止せよ
 そもそも、年齢を基準に物事を決めることは必要なのだろうか。草野さんは、日本のテレビ放送はニュースなどで人を紹介する場合、「何歳」と伝えるが、海外ではそういう例はほとんどない、と指摘。「日本人は相手に敬意を払うため、年齢に対し非常に細やかな神経を使います。それが逆に、何かに挑戦する時の阻害要因になってしまう」と述べ、こう強調する。「もう70歳だから遅すぎるとか、年齢を意識して前に進めない人がとても多いが、そんな意識は絶対必要ない。やれる範囲のことに一生懸命打ち込むことこそ、生きる充実感につながると私は思います」。年齢なんか気にしていたら、本当に生きているとは言えないというのだ。草野さん自身、同年代の人たちと競い、100歳以上も参加する「マスターズ陸上」に、75歳になったら挑戦しようと準備している。高齢者の定義変更自体に異論はないという出口さんに、社会保障制度について改めて聞いてみた。出口さんは「今の制度はゆがんでいる」とし、もはや年齢を基準にしてはいけないのだと主張する。「少子高齢化の本質というのは、年齢制限を設けない『年齢フリー』の原則に移らなければ、国はもたないということです。その選択肢以外に生きる道はないんだから」。超高齢社会の中、若者が多くの高齢者を支えるのは限界がきている。一定の年齢になれば全員に公的年金を支給する従来の形ではなく、生活にあえぐシングルマザーなど本当に困っている人に集中して給付するよう仕組みを変えなければいけない。だから、年齢に関係なく、お金がある人は相応の負担をし、幾つになっても働きたい人は働く。そのためには定年制を廃止するしかない--。それが出口さんの主張だ。  実際、出口さんが経営するライフネット生命に定年制はない。「定年は戦後日本の高度経済成長期に作られた慣習でしかない。社会の変化に応じた構造改革をやらないことが大きな問題ですよ」。年齢を重視し、「高齢者」とくくることに何の意味があるのか。高齢者の定義見直しについて考えていくと、根源的な疑問にたどりつく。

*2-2:http://qbiz.jp/article/102952/1/
(西日本新聞 2017年2月3日) 女性、高齢者の活用提言 九州経済白書「柔軟な人事制度を」
 九州経済調査協会(福岡市)は2日、「人材枯渇時代を生き抜く地域戦略」と題する2017年版九州経済白書を発表した。急速な人口減少で企業の人材確保が難しくなっており、今後はさらに争奪戦が激しくなると予想。女性や高齢者など多様な人材の活用に加え、限られた要員で稼ぐ力を高めるためにも、人口増加に支えられてきた「これまでの成功体験から脱却」し、働き方の大転換を図る必要があると提言している。国勢調査によると、九州地域の生産年齢人口(15〜64歳)は2000年に比べ足元で1割以上も減少している。九経調が地場企業・団体を対象に実施したアンケート(有効回答数741)では、55・1%が人員について「不足」「やや不足」と回答。要因として「地域の人口減少」などを挙げる企業が多く、「人口減少や高齢化といった構造的要因で人材不足が顕在化してきた」ことが浮き彫りになった。アンケートで、人材不足解消への取り組みを聞いたところ、「正社員の採用拡大」や「給与の引き上げ」が上位に入った。だが、政府が経済成長を支える「最大の潜在力」と期待する女性は賃金よりも職種や勤務時間、休日などを重視しているとの調査もあり、白書は企業側との認識に「ずれ」があると訴えている。人材確保のためには、賃金の引き上げだけではなく、柔軟な人事制度が重要と指摘。先進事例を紹介しながら、短時間勤務▽地域限定正社員▽再雇用▽IT技術を活用し自宅でも仕事ができる「テレワーク」の導入−などを提言した。また、九州地域で機械化やICT(情報通信技術)の導入を検討している企業は少数であるとして、人材枯渇時代を見据え「ICTやロボット、人工知能(AI)といった新しい技術の導入にも積極的になるべきだ」としている。 

<日本における明確な女性差別>
*3-1:http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2017020301001360.html
(東京新聞 2017年2月3日) 【政治】 丸川五輪相、都知事に真意問う ゴルフ会場巡る批判で
 丸川珠代五輪相は3日の記者会見で、2020年東京五輪のゴルフ会場が女性正会員を認めていない問題を巡り、批判している小池百合子東京都知事に電話で真意を聞いたと明かした。「『言葉通りです』と直球が返ってきた。ありがたく承る」と述べた。小池氏は今月1日「せっかくスカートをはいておられる五輪相もいるのだから、もっと明確に言うべきではないか」と政府の対応に不満を示していた。会見で丸川氏は「(都庁のある)西新宿から永田町のグリーンに『ワンオン』をずばんと打たれた感じだ。私も飛距離を伸ばすよう頑張りたい」と競争心をちらつかせた。

*3-2:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/401877 (佐賀新聞 2017年2月3日) 結婚、女性も「18歳以上」 民法改正案、置き去りだった「差別」
 成人年齢を20歳から18歳に引き下げる民法改正案に、結婚できる年齢(婚姻適齢)を男女とも「18歳以上」に統一する規定が盛り込まれていることが2日、政府関係者への取材で分かった。終戦直後に定められた女性は「16歳以上」とする規定が見直される公算が大きくなった。法務省は「共謀罪」の構成要件を変えた「テロ等準備罪」を新設する組織犯罪処罰法改正案の成立を優先し、民法改正案の今国会提出は見送る方針。現行民法は婚姻適齢を男性18歳以上、女性16歳以上と規定。さらに未成年者の場合は親の同意が必要となる。国際的には男女同一が一般的だが、日本では女性の方が心身の発達が早いなどの理由で低く設定されている。明治時代の民法施行時は男性17歳以上、女性15歳以上だった。しかし女性の高校進学率が飛躍的に伸び、16、17歳での結婚が減少したことなど社会的な背景が変わり、男性と区別する合理的な理由がないとの指摘が出ていた。さらに現行制度のまま成人年齢を18歳に引き下げた場合、女性だけ成人年齢と婚姻適齢が一致せず、親の同意が必要なケースが残ることになる。こうした観点から、今回の民法改正と同時に婚姻適齢を18歳に統一するのが適当と判断した。法案成立後、3年程度の周知期間を設ける方針。厚生労働省の人口動態調査によると、2015年に婚姻届を提出した女性約63万人のうち、16、17歳は1357人だった。婚姻適齢を巡っては、法制審議会(法相の諮問機関)が1996年に「男女とも18歳」とする民法改正案の要綱を答申したが、法改正に至っていない。法制審は、成人年齢の引き下げを議論した際の最終報告書でも同じ意見を表明している。国連の女性差別撤廃委員会は、日本の現行民法の婚姻適齢規定を「差別的」と批判している。


<働き方改革について>
PS(2017年2月6日追加):働き方改革は、*4-1のように、残業時間の上限を「繁忙期100時間」「2カ月平均月80時間」「年間720時間」に抑えるように労働基準法を改正し、違反には罰則を科す方向となり、これに対し野党は反対しているが、私はこの程度でよいと思う。何故なら、民進党の大串さんもよく御存じのように、税理士の例では、個人所得税申告書の提出期限は3月15日に集中しており、繁忙期に合わせて従業員を増やせば閑散期に養いきれずに倒産することになり、このように季節変動のある職種は多いからである。そのため、電通の女性新入社員の自殺という特殊な事件を背景に、低い上限規制を導入して狭い範囲の“ワーク・ライフ・バランス”を国民に押し付けるのは、研究や仕事が趣味という人もおり、そのくらいでないと何かを成し遂げることはできないことも考えれば、事業主だけでなく、働く人をもHappyにしないだろう。なお、勤務の終了から始業までに10~11時間くらいを保障する「勤務間インターバル規制」はよいと思うが、インターバルとして必要な時間や子育てへの利便性は通勤時間によっても異なるため、往復2~4時間もの通勤時間を使わせるような職場と住居の配置は変えるべきである。
 また、*4-2に、「先生の多忙が問題になっており、学校を働き方改革の例外にしてはならない」「日本の先生の勤務時間は参加34カ国、地域の中で最長」「精神疾患で病休をとる先生の数は、年間5千人台で高止まりしている」と書かれている。そして、忙しさの原因は、①書類作りや部活動 ②給食費の集金 ③保護者への対応など切りがない としているが、教育は学校に任せられる必要があるため、先生の仕事を吟味し、他の人が行っても支障がなかったり、よりよくできたりする仕事は他の人に任せ、先生しかできない教育をより充実して行うべきだと考える。例えば、部活動の指導はメダリストなどの専門家が行った方がよい指導ができる上、選手を引退した後の生活も保証される。また、給食費の集金は自動引き落としにすれば正確かつ確実であり、書類は最小限にして新人の先生を副担任として採点や教育に関する雑用をさせるなど、学校が組織として最小費用で最大効果を出すための改善も可能だ。
 その上で、*4-3のようないじめに対しては、「忙しかったから対応しなかった」「担任教諭も名前に『菌』をつけて呼んだ」「担任は親しみを込めたと言っている」など、先生として正しい説明や教育をしていないようなあるまじきケースは、決して起こしてはならないのである。

*4-1:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12776816.html
(朝日新聞 2017年2月2日) 残業上限、線引きどこに 長時間労働是正、政府議論が本格化
 安倍政権が旗を振る働き方改革の最重要テーマ「長時間労働の是正」をめぐる政府の議論が1日、本格的に始まった。事実上、青天井に設定できる残業時間に「月平均60時間」といった上限を設ける方向で議論は進みそうだが、早くも「これでは不十分」との異論が野党などから出ている。
■繁忙期「100時間」原案 野党反発
 政府の働き方改革実現会議(議長・安倍晋三首相)はこの日、残業の上限規制をめぐる議論に着手。メンバーが意見を交わした。「時期的な繁閑の差があるなど、どうしても残業が必要な場合もある」(榊原定征〈さだゆき〉・経団連会長)、「残業の上限が『月100時間』など到底ありえない」(神津里季生〈りきお〉・連合会長)。労使の代表らによる応酬の後、安倍首相は「長時間労働の是正については、罰則つきで限度が何時間かを具体的に定めた法改正が不可欠。次回はより具体的に議論したい」と述べた。規制強化には経済界の反発が予想されたが、女性新入社員が過労自殺した事件で、広告大手の電通が昨年末、労働基準法違反の疑いで書類送検され、社長が引責辞任。これが「追い風」(厚生労働省幹部)になり、上限規制の導入に向けた動きが水面下で加速した。この日の会議では示されなかったが、政府は残業時間の上限の数字を明記した原案を昨年秋にまとめ、労使双方への根回しを進めてきた。原案は、労基法36条に基づいて労使協定(36〈サブロク〉協定)を結ぶことを前提に、上限を「月45時間(年間360時間)」に設定。特に忙しい時期は「月100時間」「2カ月の平均が月80時間」を上限にすることを認める一方、年間を通じて「月平均60時間(年間720時間)」に抑えるよう求め、違反には罰則を科す――という内容だ。経済界は繁忙期などに対応できるように「例外」の設定を強く主張している。政府が落としどころとして持ち出した数字が、厚労省による過労死の労災認定基準として用いられる「月100時間超」「月80時間超」。厚労省が2013年に約1万1千事業所を対象に実施した調査によると、36協定で定める上限時間が「月80時間超」の事業所は4・8%。大企業に限ると14・6%。実際の残業時間より上限を高めに設定するケースも多く、政府関係者は「この上限で困る企業はほとんどない」とみている。しかし、原案の内容が先週末に報じられると、野党側は「規制が不十分だ」と猛反発。1日の衆院予算委員会でも、「過労死ラインと同じようなものを上限としても、ほとんど規制していないに等しい」(民進党の大串博志氏)などと安倍首相らを追及した。

*4-2:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12778736.html
(朝日新聞社説 2017年2月3日) 先生の多忙 学校にも働き方改革を
 働き方を改革するなら、学校を例外扱いしてはならない。先生の多忙が問題になっている。国際調査では、日本の先生の勤務時間は参加34カ国・地域の中で最長だった。精神疾患で病休をとる先生の数は、年間5千人台で高止まりしている。松野文部科学相は、業務改善のモデル地域の指定、有識者ら業務改善アドバイザーの教育委員会への派遣、部活動の休養日などに関するガイドラインづくりという三つの対策を掲げた。忙しさの原因は多様だ。書類作りや部活動、給食費の集金、保護者への対応など切りがない。個々の業務を軽くするよう工夫し、先生が担うべき仕事を吟味することは不可欠だ。ただ、連合のシンクタンク「連合総研」が全国の公立小中学校の教諭に調査し、労働時間と学校の取り組みを分析したところ、行事の精選やノー残業・部活動デーといった試みが必ずしも労働時間の短縮につながっていなかった。「新たに生まれた時間を他の仕事に充てるからでは」と連合総研は見る。時間の余裕があればもっと授業の準備をしたい。子どもの作文にコメントを書きたい。そんな先生たちの気持ちは貴重だ。しかし、疲れを抱えたまま子どもの前に立っても、よい授業や丁寧な言葉かけはできまい。先生の長時間労働を改めるには、校長らが先生の勤務時間を管理することが出発点になる。ところが同じ調査だと、自校の管理職が「出退勤時刻を把握していない」「しているかどうかわからない」と答えた教諭の合計は小中とも半数近くに上る。都道府県の条例で決められた所定勤務時間数を「知らない」と回答した教諭も6割近い。研究者が「学校は労働時間の無法地帯」と言うのも無理はない。学校が時間管理に熱心でないことの背景にあるのが、「公立学校教育職員の給与等に関する特別措置法」(給特法)だ。先生の仕事は複雑で管理が難しいとして残業代を払わず、代わりに基本給の4%を全員に支給する仕組みになっている。1971年に成立した。誰にも一律の額を出すため、管理職は勤務時間を把握する義務があるのに、時間管理の必要に迫られない。文科省の勤務実態調査では、法が成立した頃と比べ、残業時間は5倍に増えている。法の見直しの議論を始めるべき時ではないか。もっと先生の数を増やしてほしいとの現場からの訴えにも耳を傾けるべきだ。先生にも労働者としての権利があることを忘れてはならない。

*4-3:http://mainichi.jp/articles/20161203/k00/00m/040/119000c
(毎日新聞 2016年12月2日) 新潟原発避難いじめ 市教委が謝罪 担任「親しみ込めた」
 新潟市教育委員会は2日、福島県から自主避難してきた同市立小4年の男子児童が、同級生や40代男性の担任教諭から名前に「菌」をつけて呼ばれるなどのいじめを受け、1週間以上学校を休んでいると発表した。男児は先月、担任に相談していたが、直後に担任からも「菌」づけで呼ばれ、強いショックを受けたという。教委の高島徹教育次長は記者会見で「他の児童も同様に『キン』をつけて呼ばれており、原発事故と直接結びついていないが、いじめと捉えている。担任の言動は児童の心を傷付ける不適切なもので、児童と保護者に深くおわびする」と陳謝した。市教委によると、男児は東京電力福島第1原発事故を受けて家族と避難し、新入生として入学した。3年の時から仲間はずれにされたり、からかわれたりし、今年になっても持ち物を捨てられるなどのいじめがあったという。  男児は今年6月、「ばい菌扱いされている」と担任に相談。担任は、いじめた児童らを指導し、落ち着いたとみていたという。横浜市立中学で福島県から避難してきた生徒が「菌」をつけて呼ばれた問題が報道されるようになり、11月17日、児童は再びいじめについて担任に相談した。だが、同22日の昼休み、教室で担任から連絡帳を受け取る際、同級生の前で名前に「菌」をつけて呼ばれた。保護者に「もう学校に行けない。担任と会いたくない」と話したという。保護者の指摘を受け、同校は同29日、児童らに聞き取り調査。複数の児童が担任による「菌」づけ発言があったと話し、担任も認めた。市教委によると、このクラスでは映画などの登場人物にかけて名前の後に「キン」をつけて呼ぶことが流行していたといい、担任は「菌の意味ではなく親しみを込めた発言だった」と釈明。「児童に謝罪したい」と話しているという。2日の授業は別の教諭に担当させた。


PS(2017.2.7追加):東京オリンピックのゴルフ会場になっている「霞ヶ関カンツリー倶楽部」は、*5のように、正会員が男性に限定され、女性は日曜日にはプレーできないことになっているため、大会組織委員会事務総長が「できるだけ早く正会員に女性が入れるような細則にしていただきたい」と要望したが、今日の理事会でも対応が決まらず、霞ヶ関カンツリー倶楽部の木村理事長は「オリンピックは頼まれて受けただけで、こちらから『いらっしゃい』と言ったわけではないので、急にこんな事態になったのは迷惑で困惑している」とNHK・TVで言っていた。しかし、このような差別的な場所で行われるオリンピックは応援したくない人が多いため、会場を変えるか、適切な会場がなければオリンピックでのゴルフを中止するくらいの厳格な対応をした方が今後のためによいと思われる。

*5:http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170207-00010000-teletamav-l11
(Yahoo 2017.2.7) 霞ヶ関カンツリー倶楽部 理事会で対応を協議
 東京オリンピックのゴルフ会場で、川越市にある霞ヶ関カンツリー倶楽部が女性正会員を認めていない問題で倶楽部側は7日、都内で理事会を開き今後の対応を協議しました。霞ヶ関カンツリー倶楽部は現在、およそ1,200人の正会員が男性に限定され、平日は女性もプレーが可能ですが原則として日曜日はプレーできません。この問題を受け、大会組織委員会の武藤敏郎事務総長は2月2日、国際ゴルフ連盟などと連名で規則改正を求める文書をメールで提出したうえで「できるだけ早く正会員に女性が入れるような細則にしていただきたい」と述べ早期の対応を要望しました。要望を受け霞ヶ関カンツリー倶楽部は7日、都内で理事会を開き今後の対応について協議したということです。霞ヶ関カンツリー倶楽部の木村希一理事長は「これからどう対応しようかということを話しました。それだけです」と話しました。また、この問題を受けて上田知事は7日の定例会見で「正々堂々と女子の会員を認める。そうすることで立派なゴルフ場として判断される」と話しました。


PS(2017年2月11日追加):*6で、JA佐賀中央会金原副会長は、「①国内では多くの品目で生産戸数が減少し、それに伴って需要に追いつかない品目が出ている」「②『6次産業化』の販路を広げ、品目の幅を充実させたい」としている。このうち、①については、生産戸数が減少しても規模を拡大し、繁忙期には人を雇うようにすれば収入が増加し、繁忙期は地域や作物によって異なるため、農協や派遣労働会社が(外国人)労働者を雇って繁忙な場所に労働者を派遣するようにすれば、効果的な人の使い方ができる。また、②についても、日本では人件費がネックであるため、機械化や外国人労働者の使い方を工夫すれば、より安価に加工食品を作ることができ、輸出にも貢献できると考える。
 なお、「現在は、自民党を勝たせすぎて、主権者の意図しなかった変更が、よく吟味もせずに次々と行われている」というのには、私も同感だ。また、自由貿易協定(FTA)になればTPPより条件が厳しくなるという交渉力のなさも情けなく、他の先進国同様、食料自給率は重視すべきだ。

*6:http://qbiz.jp/article/101787/1/ (西日本新聞 2017年1月16日) 投資進め生産基盤強化 JA佐賀中央会 金原 寿秀副会長 トップに聞く新年展望
 近年、農業を取り巻く環境は転換期を迎えている。JA全中の組織見直しを柱にした改正農協法が昨年施行し、トランプ次期米大統領の出現で発効は絶望的とされるものの環太平洋連携協定(TPP)も国会で承認された。県内農業はどうなるのか。JA佐賀中央会の金原寿秀副会長に新年の展望を聞いた。
−農家の経営力強化が課題とされている。
 担い手や収益確保に向けて集落営農組織の法人化を進めている。昨年、JAグループ佐賀は法人化や新規就農を支援する「県域担い手サポートセンター」を開設した。生産者が加工から販売まで手掛ける「6次産業化」も販路を広げ、品目の幅を充実させたい。
−新規就農については。
 新年度から市町と協力し、武雄市などではキュウリを、佐賀市富士町ではホウレンソウを栽培する農家を育てる。国内では多くの品目で生産戸数が減少しているが、良質な作物は売れる。収益を見込める作物に特化して就農を促す。
−改正農協法をどう評価している。
 十分な議論がないうちに通ってしまった。改正法は将来的に信用、共済事業を分離することも視野に入れている。農協の営農指導は費用も手間がかかるが、これを賄うのは信用、共済事業の収益だ。専門的な書類作成も営農指導員が担っており、指導員を減らすのは難しい。
−JAグループ佐賀の政治団体、県農政協議会は次期衆院選にどう対応する。
 現在の農協改革は自民党を勝たせすぎたのが原因で対応を考えないといけない。政府の農業政策や通商政策を見据えたい。
−TPPをトランプ次期米国大統領は否定している。どう見通すか。
 日米の2国間交渉で、TPPよりも厳しい条件を突き付けられないか心配だ。韓国は米国との自由貿易協定(FTA)で食料自給率が大幅に低下した。
−新年の展望を。
 作物の安定供給のためには生産基盤の強化が必要だ。生産戸数の減少に伴い、需要に追いつかない品目が出ている。県域全体で投資を進め、基盤を強化する。産地力の向上のため、作付けや収穫などの在り方も見直しながら、需要が高い地域に販売できるようにしたい。

| 経済・雇用::2016.8~ | 10:01 PM | comments (x) | trackback (x) |
2017.1.24 “ポピュリズム(衆愚)”という表現は、生活者として多様な立場から考えている国民に対する上から目線の罵倒であり、日本のメディアが、トランプ米大統領の「米国第一主義」や英国の「EU離脱決定」を“保護主義”“ポピュリズム”と評するのは傲慢である。 (2017年1月25、26、27、29日に追加あり)
      
トランプ大統領就任演説 英国のEU離脱をめぐる経緯  メイ首相の演説    日本の永住資格

(1)トランプ大統領の政策と日本政府・メディアの反応
 米国大統領選は候補者同士のくさしあいとなり、両候補とも魅力に欠ける状態に陥ってしまったが、*1-1のトランプ大統領就任演説全文を見ると、私はトランプ大統領は米国大統領としては当たり前のことを言っている部分が多いと思った。

1)「国民に権力を」について
 トランプ大統領が述べている「①大切なのは、国民が政府を動かしているかどうかだ」「②権力を首都ワシントンからあなた方国民に返還する」「③支配層は保身に走り、市民を擁護しようとしなかったため、支配層の勝利や成功は皆さんの勝利や成功とはならなかった」というのは、米国でもそうだったのかと思われたが、日本では実質的にそうなっていないため、もっと深刻である。そのため、このフレーズは、日本人こそよく考えて聞くべきで、主権者に権力があるのは、日本国憲法に明示されているとおり、民主主義(主権在民)の国なら当たり前のことなのだ。

2)「全てが変わる」について
 「①この米国は皆さんの国だ」「②大切なのは、どの政党が政権を握るかではなく、国民が政府を動かしているかどうかだ」「③国家は国民に仕えるために存在する」「④国民は子どもたちのために素晴らしい学校を望み、家族のため安全な環境を欲し、いい仕事を求めており、それは善良な人々のごく当たり前の要求だ」のうち、①③は日本国憲法にも明示されている理念だ。また②も真実であるし、④はどこの国の人も同じで、どこかの国だけが特別ではないだろう。

3)「殺りくに終止符」について
 しかし、「①都市の市街地で母子が貧困から抜け出せないでいる」というのは、米国では特に、離婚や無計画な出産が多すぎるのではないかと思う。「②さびついた工場群が墓石のように国内の至る所に散らばっている」というのは本当かも知れないが、それを解決するためには昔に戻せばよいのではなく、米国内に高コスト構造に耐える現代産業を育成するしかない。

 「③何十年もの間、われわれは米国の産業を犠牲にして、他国の産業を豊かにしてきた」というのは、NAFTA・中国・日本のことを言っているのだろうが、これらの国は、「遅れているから」として米国に負担ばかりをかけられる時代が過ぎ、相互主義でやるべき時代が来たことを実感すべき時なのだろう。

 なお、「④自国の国境防衛は疎かにしながら、他国の国境を守ってきた」というのは真実なので笑ってしまったが、その相手が日本だとすれば、それは米国がアドバイスしてできた世界でも理想的な日本国憲法の下、日本は弱い自衛軍しか持たないため、日米安全保障条約を結んで米軍に頼っているのだが、本当に頼りになるかどうかは心配だ」というのが本音である。

 また、「⑤国外で何兆ドルも金を費やしている間に、米国のインフラは荒廃し、朽ち果ててしまった」というのは、米国のインフラもIT時代の最新のものに更新すべきで、日本も他山の石とすべきだろう。

4)「米国第一」について
 「①今日からはひたすら『米国第一』で、貿易、税金、移民、外交で常に米国の労働者と家族の利益となる決定を下す」というのは、時代錯誤にあたるような過度の保護主義でなければ、米国大統領として当然のことだ。また、「②この素晴らしい国の全土に新しい道、高速道路、橋、空港、トンネル、鉄道を造る」「③国民を生活保護から抜け出させ、仕事に戻ってもらう」というのも、失業者に生活保護給付をし続けるよりも、その労働力を使ってインフラ整備をした方が建設的であるため同意する。

 「④国益を最優先する権利が全ての国にあるという考えに基づき実行する」というのも、過度の保護主義でなければ当然のことであり、「⑤われわれの流儀を押しつけたりはせず、模範として追随されるように、われわれを輝かせよう」というのも、民主主義には発展段階があり、専制から一足飛びに完成型にはならないため、米国流を押し付けるのではなく、次第に理想形に変えていく必要があり、同意だ。

5)「国民の結束」について
 「①われわれの政治の根底にあるのは、米国への完全な忠誠や国民同士の忠誠心だ」「②心を開いて愛国主義を受け入れれば、偏見が生まれる余地はない」「③神の民が一つになって共に生きることは、なんと幸せで楽しいことか」というのは、戦後の日本人には馴染みの薄い言葉の連続だ。

6)「行動の時」について
 「①大きく考え、大きな夢を見よう」というのは賛成だ。しかし、権限があってできる立場にいるのに「②口ばかりで行動しない政治家、不平ばかり言って自分では何もしない政治家」が米国にはいるのだろうか?この章は、全体として論理の飛躍が多く、一般の人が夢を持てる言葉を並べたものと思われる。

7)「声・希望・夢」について
 「全ての米国民の皆さん。住んでいる町が近くても遠くても、小さくても大きくても、山々や海に囲まれていようとも、あなたたちが無視されることは金輪際ない。あなたたちの声、希望、夢が米国の運命を決めるのだ」というのは、本当に実行されれば、それこそ民主主義のよい国である。そして、現代では、IT技術の発達によって、それも可能になっている。

8)「一つの中国」の見直しについて
 トランプ次期米大統領は、*1-2のように、「中国と台湾を不可分とする『一つの中国』原則を含めて全てが協議される」と述べ、見直しもあり得るとの考えを示した。これには、中国は反発するだろうが、台湾の望みを考えれば、日本政府にはできない勇気ある行動だ。

9)環太平洋連携協定(TPP)からの離脱表明について
 *1-3に、「TPPを成長戦略の柱に据える日本は、経済・外交・安全保障分野で大転換が求められ、新たな対米関係が迫られる中で日本の立ち位置が問い直される」と書かれているが、自国の国益を第一に考えるのは日本も同じであるべきだ(でなければ日本国民が困る)。しかし、だからといって国際協調をしないということではないため、*1-4なども含め、日本のメディアは冷静さを欠く保護主義キャンペーンをし過ぎている。

 また、企業のグローバル化とは、地球規模で生産・販売・研究開発・資金調達・租税政策などを行うことであり、EU、TPP、NAFTAのように経済の囲い込みをすることではないため、「トランプ現象=反グローバル」というのは間違いだ。そして、どの国にとっても産業政策・雇用政策は重要で、日米自由貿易協定(FTA)などの2国間協議でも、日本政府は国益を優先して交渉すべきだ。しかし、これに関して、私はビジネスマン出身のトランプ大統領と比べて、日本の政治家・行政官はもめないことを最重要課題として本当の交渉をしないため、不利な交渉結果を導くことが心配である。

10)オバマケアの撤廃について
 トランプ米大統領は、オバマ前政権が進めた医療保険制度改革の撤廃に向けた大統領令に署名されたそうだが、誰にとっても必要不可欠な国の医療・介護保険制度をきっちり作った方がよいと、私は考える。何故なら、それは必需品であり、雇用吸収力があるとともに、中産階級以下の国民の将来の心配を軽減することによって、現在の需要への支出を増やすことができるからだ。

(2)「欧州覆うか『自国第一』、相乗効果狙い右翼ポピュリズム政党結集」というメディアの論調
 「トランプ米大統領の就任式参加者がオバマ前大統領よりも少なかった」という報道が日本では多い。しかし、トランプ米大統領の就任演説は、就任式に参加した人だけでなく、衛星放送やインターネットで聞いた人も多いため、前評判やトランプ米大統領の政策の世界への影響から、世界ではオバマ大統領よりも多かったかもしれない。日本では、私も就任演説を聞きたいと思ったが、真夜中だったため、翌朝の新聞に英文と日本語訳の全文が掲載されたのを読んだ。つまり、トランプ米大統領の就任演説は、オバマ前大統領に劣らず、世界中で関心が高かったと言える。

 そして、*1-5のように、「重要選挙を迎える欧州連合(EU)各国の右翼ポピュリズム政党が就任式翌日の21日、ドイツに集まって『エリートでなく、民衆による政治が始まった』と気勢を上げ、トランプ大統領と同じ『自国第一』を掲げた」そうだ。

 しかし、私は、「右翼ポピュリズム政党」という表現は正しくないと考える。何故なら、「自国第一」を掲げるのは「右翼ポピュリズム政党」と定義するのであれば、世界中の多くの政党が「右翼ポピュリズム政党」ということになり、日本では全政党が「右翼ポピュリズム政党」ということになって事実に反するからだ。

 日本は、*4-1のように、難民受入国支援のために約2800億円拠出し、シリア人留学生150人の受け入れ表明をしたが、難民の受け入れは極端に少なく、「国境を自由にして難民が自由に出入りできるようにせよ」と主張している政党はないため、相手によって異なる多重基準でモノを言うのは不公平だ。

 また、*4-2のように、外国人労働者の受け入れも、留学生・実習生として日本に入国した外国人を介護専門職に育成して就職に繋げる法律ができたばかりで未施行であり、その留学生も、*4-3のように、例年20人程度だった留学生の入学者数が2016年度は257人になった程度だ。なお、研究者や企業経営者等の高度の専門性を持つ外国人は、*4-4のように、従来は最短5年で永住権取得を認めてきたが、今後は1年で永住権を取得できるようにするそうだ。ただ、その要件は非常に厳しい。

 しかし、私は、*1-5のように、難民受け入れに寛容なドイツのメルケル首相が批判されているのは気の毒だと思う。何故なら、メルケル首相は、東ドイツ出身でありながら統一ドイツの首相になった聡明な人で、難民の受け入れに寛容な精神を持っている理由が理解できるからだ。

(3)英国の欧州連合(EU)離脱決定をポピュリズム(衆愚)と呼ぶのは、民主主義への挑戦である
1)英国国民投票でのEU離脱決定はポピュリズム(衆愚)か
 2016年6月24日の英国国民投票でEU離脱が決定し、*2-1は、「①反EUのポピュリズム(衆愚)が理性に勝った」「②英国のEU離脱決定は欧州統合の機関車役ドイツにも打撃」「③この開票結果は、欧州市民の間でEUへの失望がいかに深く、右派ポピュリズム勢力への支持が強まっているかを示した」「④英国に追随して国民投票によるEU離脱の動きが広がる可能性があり、2016年6月24日は、欧州の歴史の中で暗黒の日として記憶されるだろう」としている。

 私は、①の表現は、国を単位とする民主主義への挑戦であり、誰から見た目かわからないが、国民投票の結果をポピュリズム(衆愚)と呼んでいる点で傲慢だと考える。②は、国境という国の主権にかかわる問題にEUが自由化を強制した点が問題なのであり、③は、ギリシャに強制的に年金削減をさせるなど財政という国家主権に関わる部分にまでEUが口を出しすぎ、国情によっては唯一の解決策ではないのに強制したという不安・不満があったため、きっかけさえあれば、④のように同じ動きが広がるのである。

2)EU離脱で英国経済の競争力は低下するか
 *2-1に「①英国のEU離脱決定は英国経済にとって激震となる」「②英国の輸出額のうち半分以上をEU加盟国向けが占め、対EU輸出は英国のGDP(国内総生産)の約15%を稼ぎ出し、英国の輸入額の約50%もEU諸国からである」「③そのため、英国はEU脱退によって雇用が脅かされるかもしれない」「④EU離脱によって多くの金融機関がロンドンから欧州中央銀行(ECB)があるドイツのフランクフルトに拠点を移すと予測されている」「⑤英国に拠点を持つ日本企業も欧州市場戦略を大きく見直す必要がある」「⑥スコットランドがEU加盟を求めて、英国からの独立運動を再燃させる可能性もある」「⑦英国の唯一の経済的利点は、EU加盟国が支払う会費を納める必要がなくなることだ」と書かれている。

 このうち、①は本当だが、マイルドな方がよいとはいうものの、変革に震動はつきものだ。②③④については、東西冷戦後の東欧諸国からの安い賃金の移民を使った経済モデルが終わり、新しく英国は雇用吸収力のある現代産業を育成する必要があるのであって、私は、それが可能だと考える。⑤は、日本企業の都合であって英国の都合ではないため、英国から見れば、『だから外資に頼らず自国の産業を育てておくべきだ』ということになり、立場を逆にすれば日本政府も同じだ。⑥は、現在、その最中だが、困った時に協力できない分断された国なのかと思う。⑦の利点は、国家主権にかかわることにまで強制が及ぶことも考えれば、英国にとって大きく、新しい経済モデルに踏み出す時と言えるだろう。

3)移民増加と排外主義の高まりか?
 *2-1に、「EU脱退がもたらす経済的打撃にもかかわらず、英国の有権者がEU離脱の道を選んだ理由は、難民危機を追い風として、英国だけでなく欧州全体で右派ポピュリストに対する支持が高まっている事実がある」と書かれている。

 しかし、*2-2に、「EU離脱がポピュリズムというのはこじつけだと、離脱派の旗振り役だったジョンソン英外相が反論した」「英国には、EUを弱体化させたり、EUに対して意地悪をしたりする意図は全くない」などが書かれている。

 私は、英国の有権者がEU離脱を選んだ理由を右派ポピュリストと呼べば、世界中が右派ポピュリストと呼ばれる政党ばかりとなり、その呼称はおかしいと考える。そして、先進国の高い賃金の労働者が賃金の安い移民・難民に労働市場で敗退するのは、どの先進国でもあったことで、EUの重要な原則の一つである域内移動の自由は、国が計画的に移民・難民を受け入れることを不可能にするため、反発があったのだと考える。

(4)英国、メイ首相の方針
 英国のメイ首相は、*3-1のように、EUとの離脱交渉を控えてロンドンで演説し、域内での人、モノ、サービス、資本の移動の自由を原則とする欧州単一市場に「とどまることはできない」としてEUから完全に離脱する意向を示し、EU域外の国々との貿易強化方針も打ち出し、「より強く、よりグローバルな英国をつくる」と主張したそうだ。

 これは、英国へ進出した日本企業にも影響を及ぼすが、日本企業も東欧の安い労働力を使って生産したものを欧州に輸出するという経済モデルは終わりに近づいたことを認識し、英国の方針転換に適応して次のモデルの準備をした方がよいだろう。そして、新しいモデルには適応できない企業は別の場所に移転するしかない。

 なお、*3-2のように、日本のメディアは、「英国とEU『自国優先』に歯止めを」というような論調が大半であり、その価値観は異常だ。何故なら、ある国の政府が自国民のために政治を行うのは、主権在民(民主主義)の政府であれば当然であり、地球のことを考えれば愛国心だけでは足りないというだけである。そのため、「人の移動の自由を受け入れてまで、EUの単一市場に残る選択をしない」という選択も、批判すべきではない。英国なら、それよりダイナミックな、次の時代に向けての展開もあり得る。

<トランプ大統領就任>
*1-1:http://www.tokyo-np.co.jp/article/world/list/201701/CK2017012202000110.html (東京新聞 2017年1月22日) トランプ大統領就任演説全文 「米国はかつてないほど勝利していく」「みんなで米国を再び偉大にしよう」
◆大切なのは、国民が政府を動かしているかどうか
 ロバーツ最高裁長官、カーター元大統領、クリントン元大統領、ブッシュ元大統領(子)、オバマ前大統領、米国民の皆さん、世界の皆さん、ありがとう。
▽国民に権力を
 米国の市民は今、国を挙げた壮大な取り組みに臨もうとしている。国家を再建し、全ての人が希望を取り戻す取り組みだ。われわれは共に、米国や世界が今後何年にもわたって進む針路を決定する。難題や苦難に直面するだろうが、仕事をやり遂げる。四年ごとにわれわれはここに集まり整然と平和裏に権力を移行する。オバマ前大統領とミシェル夫人に感謝する。政権移行を丁重に支援してくれた。彼らは素晴らしかった。ありがとう。ただし、今日の式典には特別な意味がある。単に政権交代が実現し、権力が政党から別の政党へと移っただけではない。権力を首都ワシントンからあなた方国民に返還するのだ。あまりに長きにわたり、政府から恩恵を享受するのは首都にいる一握りの人々にとどまり、国民にはしわ寄せが及んできた。ワシントンは繁栄しても、国民が富を共有することはなかった。政治家が潤う一方で、職は失われ、工場は閉鎖された。支配層は保身に走り、市民を擁護しようとはしなかった。支配層の勝利や成功は、皆さんの勝利や成功とはならなかった。支配層が首都で祝杯を挙げていても、懸命に生きる全米の人々に浮かれる理由はなかった。
▽全てが変わる
 ここから、たった今から、全てが変わる。この瞬間は皆さんのためにある。今日ここに集まった皆さんと、式典を見守る全米の皆さんのためにある。今日は皆さんこそが主役で、これは皆さんの祝典だ。そしてこの米国は皆さんの国なのだ。大切なのは、どの政党が政権を握るかではない。国民が政府を動かしているかどうかが大切なのだ。二〇一七年一月二十日は、国民が再び主権者となった日として記憶されるだろう。忘れられてきた人々も、これからは忘れられることはない。皆さんの声に誰もが耳を傾けている。大勢の皆さんが歴史的なうねりの当事者となるためやって来た。世界がかつて目撃したことがないような社会現象だ。その中心には重大な信念がある。国家は国民に仕えるために存在するという信念だ。国民は子どもたちのために素晴らしい学校を望んでいる。家族のため安全な環境を欲し、いい仕事を求めている。善良な人々のごく当たり前の要求だ。
▽殺りくに終止符
 しかし、あまりに多くの市民にとって、現実は異なっている。都市の市街地で母子が貧困から抜け出せないでいる。さびついた工場群が墓石のように国内の至る所に散らばっている。教育システムに金がつぎ込まれても、若く優れた学生たちは知識を得ることができずにいる。犯罪、悪党、麻薬が多くの命を奪い、可能性の芽を摘んできた。こうした米国の殺りくは今ここで終わる。われわれは同じ米国民だ。彼らの苦悩はわれわれの苦悩だ。彼らの夢はわれわれの夢だ。彼らの成功はわれわれの成功となる。われわれは一つの心、一つの故郷、そして一つの輝かしい運命を共有している。今日の私の大統領就任宣誓は、全ての米国人に対する忠誠の誓いだ。何十年もの間、われわれは米国の産業を犠牲にして、他国の産業を豊かにしてきた。米軍の嘆かわしい劣化を招いた一方で、他国の軍に資金援助してきた。自国の国境防衛はおろそかにしながら、他国の国境を守ってきた。そして国外で何兆ドルも金を費やしている間に、米国のインフラは荒廃し、朽ち果ててしまった。他国を豊かにしている間に、われわれの富や強さ、自信は地平のかなたへ消え去っていった。工場は次々と閉鎖され、残された何百万人もの米国人労働者を顧みることなく、国外へ移転していった。中間層の富が奪われ、世界中にばらまかれた。だがそれは過去のことだ。今、われわれは未来だけを見据えている。
▽米国第一
 今日ここに集まったわれわれは、全ての都市、全ての外国政府、全ての権力機関に向かって、新たな決意を宣言する。今日から、新たな考え方でわが国を治める。今日からはひたすら「米国第一」だ。米国が第一だ。貿易、税金、移民、外交では常に、米国の労働者と家族の利益となるような決定を下す。物作り、企業、雇用を奪う外国から、われわれは国境を守らなければならない。(貿易や雇用の)保護は、大いなる繁栄と強さをもたらす。私は全身全霊で、皆さんのために戦う。そして私は皆さんを決して失望させない。米国は再び勝利し始める。いまだかつてないほど勝利していく。われわれの雇用を取り戻す。国境を取り戻す。富を取り戻す。そして夢を取り戻す。この素晴らしい国の全土に新しい道、高速道路、橋、空港、トンネル、鉄道を造る。国民を生活保護から抜け出させ、仕事に戻ってもらう。そしてわれわれの国を、米国人の手によって、米国人の労働力で再建する。われわれは二つの簡潔な規則を守っていく。米国製品を買い、米国人を雇う。われわれは世界の国々との友好、親善関係を求めていく。ただし、国益を最優先する権利が全ての国にあるという考えに基づき、実行していく。われわれの流儀を(他国に)押しつけたりはしない。むしろ模範として追随されるように、われわれを輝かせよう。古くからの同盟を強化し、新たな同盟関係も築き、文明国を一つに束ねてイスラム過激派によるテロに対抗し、地球上から完全に根絶する。
▽国民の結束
 われわれの政治の根底にあるのは、米国への完全な忠誠だ。そして国への忠誠心を通して、われわれは国民同士の忠誠心も再発見することになるだろう。もし、心を開いて愛国主義を受け入れれば、偏見が生まれる余地はない。聖書にこう書かれている。「神の民が一つになって共に生きることは、なんと幸せで楽しいことか」。自分の考えを包み隠さず語り、相違があれば率直に議論しなければならないが、常に結束を目指さねばならない。米国が団結すれば、誰にも止めることはできない。恐れることはない。われわれは守られており、これからも常に守られる。軍、治安機関がわれわれを守ってくれる。そして、何より重要なことに、われわれは神に守られている。
▽行動の時
 最後に言いたい。大きく考え、より大きな夢を見よう。米国では、努力してこそ国は存続するということをみんな知っている。口ばかりで行動しない政治家、不平ばかり言って自分では何もしない政治家はもう認めない。無駄話の時間は終わりだ。行動する時だ。できないなどと言わせてはならない。米国の熱意、闘志、気概をもってすれば打ち勝てない困難などない。失敗することはない。米国は再び繁栄し、成功するのだ。宇宙の謎を解き、地球上から病の苦しみをなくし、未来のエネルギー、産業、技術を活用する新たな時代が始まったばかりだ。国への新たな誇りがわれわれの魂を揺り動かし、視野を広げ、分断を修復してくれるだろう。わが国の兵士たちが決して忘れない、古くからの格言を今こそ思い出そう。肌が黒くても、白くても、褐色でも、同じ赤い血が流れ、国を愛する気持ちに変わりはないということだ。同じ輝かしい自由を享受し、同じ偉大な米国旗に敬礼するのだ。子どもたちはデトロイトの都市部で生まれようとも、ネブラスカの風吹きすさぶ平野で生まれようとも、同じ夜空を見上げ、同じ夢で心を満たし、同じ全能の創造主により命の息吹を吹き込まれる。
▽声・希望・夢
 全ての米国民の皆さん。住んでいる町が近くても遠くても、小さくても大きくても、山々や海に囲まれていようとも、次の言葉を聞いてほしい。あなたたちが無視されることは金輪際ない。あなたたちの声、希望、夢が米国の運命を決めるのだ。あなたたちの勇気、優しさ、愛がわれわれを永遠に導くのだ。みんなで米国を再び強くしよう。米国を再び豊かにしよう。米国を再び誇り高くしよう。米国を再び安全にしよう。そう、みんなで米国を再び偉大にしよう。ありがとう。皆さんに神のご加護があらんことを。米国に神のご加護があらんことを。ありがとう。米国に神のご加護があらんことを。
(原文略)

*1-2:http://www.saga-s.co.jp/news/national/10201/395328
(佐賀新聞 2017年1月14日) 「一つの中国」見直しも、トランプ氏、中国反発必至
 トランプ次期米大統領は米紙ウォールストリート・ジャーナルとのインタビューで、中国と台湾は不可分とする「一つの中国」原則を含め「全てが協議される」と述べ、同原則の見直しもあり得るとの考えを示した。ロシアに科されている制裁解除の可能性にも触れた。同紙電子版が13日伝えた。「一つの中国」原則の尊重を米中の「政治的基礎」と位置付ける中国の習近平指導部の反発は必至だ。トランプ氏は昨年12月、米歴代政権の慣例を破って台湾の蔡英文総統と電話会談し、「為替操作国」と批判する中国に揺さぶりを掛けた。

*1-3:https://www.agrinews.co.jp/p39970.html (日本農業新聞2017年1月22日) トランプ政権発足 問い直される対米関係
 米国の新大統領にトランプ氏が就任し、新政権は環太平洋連携協定(TPP)からの離脱を正式表明した。就任演説では「米国第一」主義を宣言し、「米国製品を買おう」「米国人を雇おう」と呼び掛けた。TPPを成長戦略の柱に据える日本は、経済・外交・安全保障分野で大転換が求められるのは必至だ。新たな対米関係が迫られる中で日本の主権、立ち位置が問い直されている。異様な雰囲気での新大統領誕生となった。首都ワシントンの就任式には多くの民主党議員がトランプ氏の人種差別的な発言に抗議して欠席、全米各地で就任に反対する市民団体の集会が開かれた。就任時の支持率が4割という歴史的な不人気ぶりだ。歓迎と抗議が交錯する。分断された米社会が浮き彫りとなった。米国第一主義は世界に何をもたらすのか。オバマ前政権の国際協調路線から自国中心主義に傾くのは明らかで、安全保障や貿易ルール、地球温暖化問題に影響を及ぼすのは避けられない。国と国が協力し、譲歩し合い、時間を掛けて構築してきた秩序をそう簡単に放棄すべきではない。米国は国際社会の一員として、世界の平和と安定に貢献し続けるべきである。極端な米国第一主義には、保護主義や差別・排外主義が潜む。こうした考えは、世界に受け入れられるものではない。一方でグローバル資本が利益の最大化を目的とした自由貿易のひずみと矛盾も直視すべきだ。就任演説でトランプ氏は「権力をワシントンからあなた方国民に返還する」と断言した。政府から恩恵を受けたのは一握りのエリート層にとどまり、市民の職は失われ、工場は閉鎖されたとし、これからは国境、製造業、雇用を守ると強調した。「トランプ現象」を生んだ反グローバルの潮流は、格差と貧困が社会問題化する欧米で広がった。そうした民意が新大統領を生んだのも事実だ。このことから目を背けてはならない。トランプ氏がどう民意に応えていくか、注視したい。トランプ政権は、TPPからの離脱、北米自由貿易協定(NAFTA)の再交渉を表明した。米国抜きのTPPは発効が一層難しくなった。一方で、トランプ氏は2国間貿易協定に意欲を示す。2国間交渉となれば、米国からの農産物の市場開放圧力はTPPの合意内容以上に攻め込まれるのは必至だ。米国に追従する安倍政権の経済・外交政策は限界を迎え、抜本見直しを迫られている。新政権の動向を見極め、日米自由貿易協定(FTA)の阻止に備えることこそ肝要である。トランプ氏は各国との関係について、「国益を最優先する権利が全ての国にあるという考えに基づき、実行していく」とも明言した。安倍政権は日米同盟の在り方も含め、日本の国益を損なわない政策実現が急がれる。.

*1-4:http://digital.asahi.com/articles/ASK1M7X8ZK1MUHBI047.html
(朝日新聞 2017年1月21日) TPP発効は絶望的 日本、通商戦略見直し必至
 トランプ政権は就任式直後から、ホワイトハウスのホームページで、「米国第一エネルギー計画」「米国第一外交政策」「雇用と成長を取り戻す」「再び米国軍を強くする」など、外交や貿易に関する6項目の主要政策を発表した。そのなかで、「強固で公平な協定により、貿易は我が国の成長のために活用できる」として、「その戦略はTPPからの離脱によって始まる」と強調。公約通り、就任初日から、TPPから離脱する方針を正式に表明した。さらに、北米自由貿易協定(NAFTA)の再交渉を求める方針も示し、参加国のカナダとメキシコが交渉を拒めば、NAFTAから離脱することも打ち出した。TPPの発効には米国の批准が不可欠で、TPPは発効が不可能となる。TPPを成長戦略の柱としてきた安倍政権は、戦略の見直しを迫られる。雇用創出では、「年4%成長への回帰をめざす」と強調。選挙中に35%から15%への引き下げを訴えた法人税率は、「世界で最高水準の税率を引き下げる」としたが、数字には触れなかった。一方、外交・安全保障政策については、「米国の国益と安全保障を最重視する」ことを基本方針に掲げた。そのために、米軍の軍事力の再構築を進めていく方針を打ち出した。過激派組織「イスラム国」(IS)やイスラム過激主義のテロ組織の壊滅を最優先課題と位置づけ、軍事作戦を強化する。その上で、各国と協調して、テロ組織の資金源の遮断や情報共有を進めていく。また、防衛予算の一律削減を終わらせ、海軍の艦船と空軍の航空機を増強していく。北朝鮮やイランのような国からのミサイル攻撃を防ぐため、最新のミサイル防衛システムを開発することを表明。サイバー分野での防衛・攻撃双方の能力向上も優先的に進めていく。さらにトランプ氏はこの日、オバマ前政権が進めた医療保険制度改革(オバマケア)の撤廃に向けた大統領令にも署名。新たな規制の凍結も各省庁に指示するなど、精力的に動いた。
■トランプ氏方針、覆る見込み薄
 米国のトランプ大統領が環太平洋経済連携協定(TPP)を離脱する方針を明確に打ち出したことで、安倍政権が成長戦略の柱に据えてきたTPPの発効は、絶望的になった。日本政府は、まずは自由貿易の重要性を米側に訴え、TPPへの理解を得たい考えだが、トランプ氏の思い入れが強い貿易政策の方針が覆る見込みは薄い。日本側が通商戦略の練り直しを迫られるのは必至だ。TPPは、太平洋を取り囲む日米など12カ国で域内の関税を撤廃したり投資などのルールを共通化したりする協定で、2015年10月に合意に至った。しかし、経済大国である日米両国が批准しなければ発効できない条件になっている。トランプ氏の離脱表明を受け、日本の内閣官房幹部は「時間はかかるが、TPPが米国にとっても利益になるということを分かってもらうように説得するしかない」。だが、オバマ前政権の貿易政策を転換し、米国の雇用を守るという主張は、トランプ氏の最重要の公約で、簡単に方針を転換するとは考えられない。安倍晋三首相は20日の施政方針演説で、TPPを「今後の経済連携の礎」とし、発効をめざす考えを強調していた。TPPによって、アジア・太平洋地域への輸出を増やしたり、日本企業の進出を促したりすることで、日本経済を押し上げようと考えてきたからだ。また、この地域の経済ルールを日米が主導して決め、台頭する中国に対抗する狙いもあったが、米国の離脱が決定的となり、こうした通商戦略の見直しは避けられない状況だ。

*1-5:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12760754.html (朝日新聞 2017年1月23日) (トランプの時代)欧州覆うか「自国第一」 右翼ポピュリズム政党、相乗効果狙い結集
 トランプ米大統領の就任による大波が、早くも欧州に及んでいる。今年、重要選挙を迎える欧州連合(EU)各国の右翼ポピュリズム政党が就任式翌日の21日、ドイツに集まり、「エリートでなく、民衆による政治が始まった」と気勢を上げた。掲げるのは、トランプ大統領と同じ「自国第一」だ。
■反移民掲げ「次は我々だ」
 21日、ドイツ西部の人口11万の町コブレンツに、欧州各国で「自国第一」を掲げる面々が勢ぞろいした。オランダのウィルダース自由党党首やフランスのルペン国民戦線(FN)党首、新興政党「ドイツのための選択肢」(AfD)のペトリ党首らは、約千人の聴衆を前に「次は欧州の番だ」と言わんばかりだった。「エリートが、我々の自由を危険にさらしている」「我々は、我々の国を再び偉大にする」。ウィルダース氏の発言は明らかにトランプ氏の就任演説を意識していた。ルペン氏は「最初のパンチは英国の民衆が選んだEU離脱。二つ目がトランプ政権。2017年は大陸欧州が目覚める」と宣言した。会合は、EU批判を繰り広げる右翼政党が結成した欧州議会の会派「国家と自由の欧州」の主催。相乗効果で支持拡大を図る狙いがあるのは明らかだ。各党とも移民制限を主張し、中東やアジアからの難民受け入れへの反対で一致している。ペトリ氏は「政治家やメディアは寛容を口にするが、なぜ普通の人々に聞かないのか。彼らは不安だらけだ」と話した。3月に総選挙を迎えるオランダでは、イスラム教への敵意をむき出しにする自由党が、世論調査で支持率トップを走る。フランスでも4月の大統領選第1回投票でルペン氏が首位に躍り出る可能性がある。9月に連邦議会選が予定されるドイツでも、支持率が12~15%のAfDは初の連邦議会入りが確実視される。
■メルケル氏批判
 批判の矛先は、欧州の統合を重んじ、難民受け入れに寛容なドイツのメルケル首相に向かう。会場では、党首らの演説に、聴衆がしばしば「メルケルは去れ」と連呼して応えた。トランプ政権の発足と右翼政党の高揚で、欧州でも分断と緊張が広がる。会場付近では、開催に抗議する約3千人が「開かれた欧州を」と訴えてデモ行進した。ドイツのガブリエル副首相や、ユンケル欧州委員長の出身国ルクセンブルクのアッセルボーン外相ら、いま政治を動かしている側の姿もあった。
■政策はそろわず
 「自国第一」や「愛国心」を唱える各党。EUやエリート層への批判で一致はしているが、具体的な政策で足並みをそろえているわけではない。訴えも日和見主義的だ。例えばAfDは、ギリシャ危機後の13年に共通通貨ユーロへの反対を掲げて誕生した。だが15年にペトリ氏が実権を握ると、難民危機を受けて反難民、反イスラム色を強めた。ルペン氏は「違いを探すことに意味はない」と意に介さなかった。「大義のために集まったのだ。国境を管理して国民を守る。国を愛し、主権を取り返す」。この日の会合には、ドイツの公共放送など、一部メディアの取材登録が認められなかった。その一人、フランクフルター・アルゲマイネ紙のユストゥス・ベンダー記者は「主催者から『うそを書くのをやめろ。フェアな記事を書け』とのメールが来た」と話した。「彼らは批判的な記事を書くジャーナリストを受けつけない。これも米国と同じだ」
■分断の背景、各国で相似
 トランプ氏は、就任演説で「ピープル」という単語を10回繰り返した。「2017年1月20日は、民衆(ピープル)が再び、この国の支配者になった日として記憶される」。19世紀末の米国で、既成政党に属さない農民運動として「ピープルズ・パーティー(人民党)」が台頭。「ポピュリスト党」とも呼ばれたことからポピュリズムという言葉が生まれた。そして今、「ピープル」を強調し、「自国第一」を主張する政治家が、各国で支持を集める。トランプ氏らへの支持が広がる背景や世論の動向も、各国で相似形を描く。きっかけは2008年のリーマン・ショック後の世界不況だと米ジョージタウン大学のマイケル・カジン教授は説く。不況とともに、大量の移民、格差の拡大、ITによる省力化などで、「自分たちは見捨てられた」と考える人が急増した。「政府は経済を統制できず、救済を必要としている国民を助けようともしないと、人々は悟った。既成政治への不安と怒り、叫びこそが、米欧で起きている現象の理由です」。従来の政党が効果的な回答を見いだせない限り、反既成政治の運動は成長する。一方で、怒りや反発だけで国家を治めることはできない。「ポピュリズム運動が政権を取っても、効果的に統治を行うのが難しい」とカジン教授は言う。トランプ氏は、欧州の政治家に先駆けて、現実という試練に向き合うことになる。

<ポピュリズムとは?>
*2-1:http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/219486/062400017/?rt=nocnt (日経ビジネス 2016年6月24日) 反EUのポピュリズムが理性に勝った日、英国のEU離脱決定は、欧州統合の機関車役ドイツにも打撃
 6月24日、英国の国民投票でEU離脱派が勝った。英国の有権者は、キャメロン首相の嘆願を拒絶し、43年ぶりにEUに背を向ける道を選んだ。実際に英国がEUから脱退するまでには、少なくとも2年間はかかると見られているが、この国がEUと袂を分かつことは確実だ。キャメロン首相は辞任を表明した。離脱によって悪影響を受けるのは、英国の経済界だけではない。長期的には、EUそして欧州統合を最も強力に進めてきたドイツにとっても大きな打撃となる。この開票結果は、欧州市民の間でEUへの失望がいかに深く、右派ポピュリズム勢力への支持が強まっているかを示した。英国のEU離脱は、EU政府に相当する欧州委員会に対し、EUの根本的な改革を迫るものだ。英国に追随して他のEU諸国でも、国民投票による離脱の動きが広がる可能性がある。6月24日は、欧州の歴史の中で暗黒の日として記憶されるだろう。
●英国経済の競争力低下へ
 この決定はまず、6月24日のポンド暴落が象徴するように、英国経済にとって激震となる。同国の輸出額のうち、半分以上をEU加盟国向けが占める。対EU輸出は、英国のGDP(国内総生産)の約15%を稼ぎ出している。また英国の輸入額の約50%も、EU諸国からのものだ。英国はEU脱退によって、単一市場の利点(関税廃止、人と物の自由な移動、自由な資本取引)を失う。英国では輸入品の価格が上昇する。対EU貿易での価格競争力も弱くなる。したがって、同国はスイスやノルウェーのようにEUと交渉して、少なくとも関税廃止などの利点を維持しようとするだろう。同国にとって特に大きな懸念は、金融機関の動きだ。英国のGDPの約8%は金融サービスによって生み出されている。ロンドンには、米国の投資銀行、商業銀行など外国の多くの金融機関の欧州本社がある。EU離脱によって、ロンドンはEU域内の自由な資本取引の流れから遮断される。国民投票の直前に金融機関に対して行われたアンケートによると、回答企業の33%が「英国がEUから離脱した場合、同国でのオペレーションの規模を縮小する」と答えていた。EU離脱は、欧州最大の金融センターであるシティーで働く人々の雇用を脅かすことになるかもしれない。欧州では、「EU離脱によって、多くの金融機関はロンドンから、欧州中央銀行(ECB)があるドイツのフランクフルトに拠点を移すだろう」と予測されている。日本の外務省によると、英国には約1000社の日本企業が進出し、約16万人を雇用している。同国に拠点を持つ日本企業にとっても、欧州市場戦略を大きく見直す必要がある。ドイツのバーテルスマン財団の研究報告書によると、EU離脱が英国経済にもたらす損失は、2030年までにGDPの0.6%~3%に達する。外国企業の数が減少し、失業率が上昇することも避けられないだろう。さらにスコットランドがEU加盟を求めて、英国からの独立運動を再燃させる可能性もある。英国にとって唯一の経済的な利点は、EU加盟国が支払う「会費」を納める必要がなくなることだ。英国は現在約86億4000万ユーロの「会費」をEUに払っている。しかしこれは英国のGDPの0.5%にすぎない。価格競争力の低下や外国企業のユーロ圏への流出、雇用の減少などのデメリットを相殺することはできない。EUにとっても英国の離脱は大きな痛手だ。2015年の英国のGDPは約2兆5690億ユーロで、ドイツに次ぐ第2位。EUは同国の脱退によって、GDPが一挙に17.6%減ることになる。ドイツにとっても、英国の喪失はマイナスだ。両国の意見はしばしば対立してきたが、英国は南欧の債務過重国の経済を立て直す上で、財政出動よりも構造改革を重視するという点では、ドイツと考え方が似ていた。財政出動を重んじるギリシャ、イタリア、スペインの意見を抑える上で、プラグマティズムを重視する英国はドイツの「盟友」だった。つまりドイツは、南欧諸国との交渉の中で重要な応援団を失うことになる。
●移民増加と排外主義の高まり
 日本の読者の皆さんは、「EU脱退がもたらす経済的な打撃について再三伝えられていたのに、なぜ英国の有権者はEU離脱の道を選んだのか」と不思議に思われるだろう。この背景には、難民危機を追い風として、英国だけでなく欧州全体で右派ポピュリストに対する支持が高まっている事実がある。英国のEU脱退を最も強く求めていたのが、ナイジェル・ファラージ率いる「イギリス独立党(UKIP)」だ。同党の党員数は2002年には約9000人だったが、2014年には約4倍に増えて約3万6000人となっている。2015年の下院選挙で同党は12.6%の得票率を確保。2014年の欧州議会選挙では得票率が28%に達し、英国社会に強い衝撃を与えた。英国のポピュリストたちがEUを批判する最大の理由は、EUが政治統合・経済統合を進める中で、域内での移動の自由と他国での就職の自由を促進したことだ。この結果、英国ではポーランドなど東欧諸国からの移民が急増し、ロンドン以外の地方都市を中心として、移民制限を求める声が強まった。英国の反EU勢力は、EUの事実上の憲法に匹敵するリスボン条約を改正し、域内での移動の自由を制限することを求めていた。だがEUにとって、域内の移動の自由は欧州連合にとって最も重要な原則の1つだ。ドイツのメルケル首相をはじめとして、他国の首脳は英国のためにリスボン条約を改正することに難色を示していた。英国のポピュリスト勢力は、「我々はEUが自らを根本的に改革し、加盟国の利益を尊重しなければ、脱退すると再三訴えてきた。だがEUは結局、改革を拒絶した。だから我々はEUから出ていく」と主張していた。私の脳裏に去来するのは、ウインストン・チャーチルが1946年9月19日にチューリヒで行った演説である。彼は、この中で第二次世界大戦のような惨劇を二度と起こさないために、欧州大陸の国々が統合し『欧州合衆国』を作るべきだと提唱したのだ。だがチャーチルは、この合衆国に英国は加わるべきではないと断言していた。彼は、大戦中の苦い経験から、英国は欧州大陸とは一線を画するべきだという態度を持っていたのである。英国はユーロ圏に加盟しない道を選んだ時にも、チャーチルのこの思想を実践した。今回の国民投票により、ジョン・ブル(英国人のこと)たちは再びチャーチルの警告に耳を貸したのである。

*2-2:http://digital.asahi.com/articles/ASJD26QWTJD2UHBI02Y.html
(朝日新聞 2016年12月2日) EU離脱はポピュリズム? 英外相が反論「こじつけだ」
 欧州連合(EU)をめぐる国民投票で離脱派の旗振り役だったジョンソン英外相が2日、英王立国際問題研究所(チャタムハウス)で講演し、「離脱の投票結果を世界中に広がるポピュリズム(大衆迎合)と比較しようとする性急な議論がある」と述べ、米国のトランプ現象とEU離脱を結びつける議論を「こじつけ」と反論した。ジョンソン氏は「私を含め、離脱に投票した人の多くは、外国人への嫌悪や恐怖から投じたのではない」「英国には、EUを弱体化させたり、EUに対して意地悪をしたりする意図は全くない」とも述べた。フランスの右翼・国民戦線(FN)のルペン党首や英国独立党(UKIP)のファラージ前党首らEUを敵対視する政治家や、排外主義的なゼノフォビア(外国人嫌悪)と英国政府の立場に一線を画したい意図があるようだ。対アジア政策では、国連安保理常任理事国拡大に賛成だとしてインドの国名に言及した。中国主導のアジアインフラ投資銀行(AIIB)に「英国はいち早く加盟した」と語った。日本については質疑応答で「すでに非常に強固な関係をさらに伸ばす余地がある」と述べるにとどまった。

<メイ首相の方針>
*3-1:http://qbiz.jp/article/101901/1/ (西日本新聞 2017年1月18日) 英、EU単一市場を離脱 移民制限を優先 メイ首相が交渉方針表明
 欧州連合(EU)との離脱交渉を控える英国のメイ首相は17日、ロンドンで演説し、域内での人、モノ、サービス、資本の移動の自由を原則とする欧州単一市場に「とどまることはできない」としてEUから完全に離脱する意向を示した。英国へ進出した日本企業にも影響を及ぼすのは必至。メイ氏が交渉方針を表明したのは初めて。単一市場への参加継続を訴えてきた与野党議員や経済界の反発は避けられず、政局や市場の混乱が予想される。メイ氏はEU域内からの移民流入を制限するなどの優先事項を提示。加盟国間の関税を撤廃し域外との貿易に共通関税を設けるEUの関税同盟から離脱、新たにEUと貿易協定を結びたい意向も表明した。メイ氏は3月末までにEUに離脱の意思を通知し、原則2年の離脱交渉に入る考え。2年の交渉で離脱した後に一定の移行期間を設けることが望ましいとしたほか、EUとの最終的な合意について、上下両院に投票による承認を求めるとも述べた。演説では「EUとは前向きで新しい関係構築」を目指すとし「部分的にEUのメンバーになるような中途半端なことは目指さない」と強調。単一市場の規則に関する判断を示すEU司法裁判所の管轄から外れる考えを表明したほか、EU域外の国々との貿易強化方針も打ち出し「より強く、よりグローバルな英国をつくる」と主張した。英国の離脱派は単一市場へのアクセス維持と移民制限の両方を交渉で勝ち取るとの考えを示していたが、EU側は移動の自由が単一市場参加の条件だとの原則を示し「いいとこ取り」は許さないとの姿勢を堅持。メイ氏がどちらを優先させるのか、その選択に大きな注目が集まっていた。

*3-2:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12754139.html (朝日新聞社説 2017年1月19日) 英国とEU 「自国優先」に歯止めを
 欧州の「一つ屋根」から完全に離別し、孤独な道を歩むのか。それは英国にも世界にも利益になるとは思えない。メイ首相が欧州連合(EU)からの完全離脱を表明した。昨年6月の国民投票の結果をふまえ、方針を鮮明にした。EUの単一市場に残るには、人の移動の自由を受け入れざるをえない。その選択肢を捨てて「完全離脱」するのは、あくまで移民の流入規制を優先させるためだという。英世論は今も割れ、政治も揺れている。首相はその混迷に区切りをつけたかったようだ。しかし、英国はEUを含む国際協調の枠組みの中に常にいた国だ。自由貿易の理念や、移民に門戸を開く寛容な価値観を推進する責任を果たしてきた。国民の反移民感情に配慮する必要があったとしても、英国が欧州の国々と積み上げてきた政治・経済の協調枠組みから早々に決別するのは得策ではない。メイ氏は「よりグローバルな英国を築く」と、楽観的な将来像を描く。EU域外との貿易協定を目指していくという。だが英国の最大の貿易相手はEUであり、輸出のほぼ半分を占める。日本を含む多くの外国企業も「EUへの足がかり」として英国に拠点を置いてきた。離脱は、英国自身の貿易を損ねるだけでなく、保護主義を広げかねない。規制に批判的だった英国を欠いたEUは、障壁を強めるかもしれない。EUが揺らげば、経済・金融危機は他の地域にも波及する。移民が経済的な繁栄を下支えしてきた事実を無視して英国が規制に突き進めば、排斥の機運が各国にも広がりかねない。EU離脱は実現しても、それにかわるEUとの貿易協定交渉がスムーズにまとまる保証はない。むしろ国内にEU懐疑勢力を抱える国々は、英国に厳しい条件を求めるはずだ。英国に住むEU市民や、EU域内の英国人の権利や雇用をどう守るか。同じ「欧州」の人間として長く共生した関係を変えるのは容易ではあるまい。少なくとも離脱の衝撃を和らげる十分な移行期間が欠かせない。EU側もこれを引きがねに、欧州の統合という歴史的な取り組みを頓挫させてはならない。国際協調路線を守り、「自国優先」の拡散を防ぐために、英国もEUも、長期的な秩序安定の道を探ってもらいたい。交渉の過程で孤立主義の弊害が顕在化すれば、民意が変化することもありえるだろう。その時、英国は改めて引き返す賢明さも忘れないでほしい。

<日本の場合>
*4-1:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12572990.html (朝日新聞社説 2016年9月23日) 難民と世界 もっと支援に本腰を
 世界の難民・避難民が6500万人に達し、第2次大戦以降で最大になった。迫害や戦火を逃れる難民だけではない。より良い暮らしを求めて他国へ渡る移民の流れも急速に広がっている。この喫緊の問題にどう取り組むべきか。その国際協調を探るサミットが国連で開かれた。とりわけ内戦の出口が見えないシリア、アフガニスタンなどから逃れる難民の流出は深刻だ。国際社会は停戦への努力を強めるとともに、難民受け入れの負担に苦しむ周辺国に、まず目を向ける必要があろう。100万人超のシリア難民を受け入れたレバノンや、250万人が避難したトルコなどからは「限界だ」との声が漏れる。全会一致で採択された宣言に「責任の公平な分担」が明記されたのは当然だ。地球規模で人が移動する時代であり、難民・移民問題は世界の政治・経済に直結する。紛争地からの距離にとらわれず、国際社会全体で負担を分かち合うべきだ。では、各国がどう分担するのか。具体的な数字や期限が宣言に盛り込まれなかったことは、大きな課題として残った。腰が引ける背景には、テロの恐怖や、「仕事を奪われる」との不安による排斥感情の高まりがある。欧米では近年、そうした主張をする政治家や政党が勢いを増している。しかし、こうした排他的な非難は、貧富の格差など広範な社会問題への国民の怒りを利用した責任転嫁であることも多い。長い目で見れば、難民や移民は受け入れ国に、利益や活力を少なからずもたらしてきた。サミットの会合で、経営者や労働者の団体は「秩序ある移民や難民の受け入れは経済を活性化させる」と述べた。経済協力開発機構(OECD)も、長期的に経済的にプラスになると指摘する。各国政府は、そうした受け入れのメリットについて国民にきちんと説明すべきだ。安倍首相は受け入れ国支援のための約2800億円の拠出や、シリア人留学生150人の受け入れなどを表明した。だが、多くの国と比べて難民の受け入れが極端に少ない現実は変わっておらず、国際的に批判の的となっている。近年は日本でも難民の雇用に取り組む企業や、支援団体に寄付する人が増えている。政府も行動の幅を広げ、もっと世界に門戸を開き、十分な責任を果たす国の姿をめざすべきだ。

*4-2:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20161119&ng=DGKKASFS18H5J_Y6A111C1EA2000 (日経新聞 2016.11.19) 外国人労働者、まず介護から 改正入管法成立 「高度人材」と両にらみ
外国人労働者の受け入れを拡大するための法律が18日、成立した。留学生や実習生として日本に入国した外国人を介護専門職に育成し、就職につなげる。来年中に施行する。国内での外国人材育成を重視する新たな仕組みで受け入れの大幅増を目指す。政府は人手不足分野と高度人材の2本柱で受け入れを検討中で、介護での制度構築は、その第1弾になる。在留資格に「介護」を追加する改正出入国管理・難民認定法と、外国人技能実習制度を拡充する法律が成立した。18日の参院本会議で自民、公明、民進など各党の賛成多数で可決した。改正入管法は日本の介護福祉士の資格を取得した外国人を対象に、介護の在留資格を認める。外国人技能実習適正実施法は、実習期間を最長3年から5年に延ばす。長時間労働などを防ぐため、受け入れ団体・企業を監督する機構を新設。同法の施行と共に、技能実習の対象に介護を加える省令改正をする。2法の成立を受け、政府は外国人が実習中に国家資格を取れば、実習後に介護の在留資格で就職できる制度を設計する。これまでの制度では、介護職は経済連携協定(EPA)の枠組みに限って受け入れをしてきた。インドネシア、フィリピン、ベトナムの3カ国が対象だ。滞在期間を限定しているうえ、現地の資格や日本語能力が条件。ハードルが高く、過去8年間の累計で看護師とあわせ約3800人(9月時点)にとどまる。厚生労働省の推計では、介護職員は2025年に日本国内で約38万人も不足する。この差を少しでも埋めるため、今回の法整備はEPAを締結する3カ国以外の留学生も対象にした。少子高齢化で日本人の生産年齢人口は減少の一途だ。今後の成長のためには外国人労働力は有力な選択肢になる。政府は2本柱で受け入れを進める考え。経営者や技術者ら高度人材では、最短1年の滞在で永住権を認める制度を検討中だ。もう一つ、介護を含めた人手不足産業では、日本は単純労働者の入国を原則認めていない。だが政府内では建設業で2国間協定を使った受け入れ拡大を考えているほか、農業では特区での受け入れ解禁を検討中だ。

*4-3:http://digital.asahi.com/articles/ASJC46QKVJC4PTFC01M.html
(朝日新聞 2016年11月10日) 介護福祉士の学校、留学生急増 入管法改正の見通し
 日本介護福祉士養成施設協会によると、例年20人程度だった留学生の入学者数は、昨年度は94人、今年度は2・7倍の257人に。国籍はベトナムが114人と最も多く、中国53人、ネパール35人、フィリピン28人と続く。入学者全体の3%を占める。なぜ急増しているのか。留学生が介護福祉士の資格を得ても、現状では日本で介護の仕事はできない。これが変わる可能性が出てきたためだ。政府は今国会で、出入国管理及び難民認定法(入管法)改正法案の成立をめざす。外国人の在留資格に新たに「介護」を設ける内容。成立すれば留学生が卒業後に在留資格を「留学」から「介護」に切り替え、日本で仕事に就くことができる。外国人の介護福祉士をめぐっては、2008年度から経済連携協定(EPA)に基づく候補者の受け入れが始まった。しかし資格試験に不合格なら原則帰国など、留学ルートよりハードルが高い。今国会では、この入管法改正法案とは別に、外国人技能実習制度の適正化法案も審議されており、成立、施行されれば実習の対象職種に介護が加わる方向だ。外国人が介護現場で働く流れが一気に拡大することになる。ただ、介護業界の慢性的な人材難の大きな理由は賃金の低さだ。そこが改善されていない状況で外国人を広く受け入れると、現在の低い賃金水準が固定化されるのでは、という懸念はぬぐえない。日本介護福祉士会は「外国人が介護を担うことにより、介護職の処遇や労働環境をよくするための努力が損なわれることになってはならない。その点は国の検討会で確認されており、受け入れの前提と理解している」と話す。介護現場で働く外国人への支援も検討しており、「日本の介護全体の質を上げる努力をしていきたい」という。留学生の処遇も課題だ。外国人介護労働者の問題に詳しい京大大学院の安里(あさと)和晃特定准教授(45)は、授業料が借金となる懸念があるとし、「授業料の軽減や教育内容の充実、就職先を選択する自由を保障すべきだ」と訴える。「多様な人々が尊重され活躍できる場になるよう、学校や施設側は業界を挙げて努力する必要がある」
■ベトナムから視察団
 10月中旬、介護福祉士を養成する関西社会福祉専門学校(大阪市阿倍野区)に、日本への関心が高いベトナムからの視察団が訪れた。現地の医療短大の学長らだ。この専門学校では、今春に新入生の約2割を占める9人の外国人が入学。6人がベトナム人で、新たに日本育ちのベトナム人講師を採用し、10月から専門用語の学習をフォローする授業を始めた。「来年はベトナム人だけで25人程度入学します」。山本容平学校長(35)が説明すると、視察団の学長は大きくうなずいた。視察団をこの学校へ案内したのは、大阪市の医療法人「敬英会」だ。今夏以降、この医療短大から卒業生7人を受け入れた。7人は敬英会が用意した寮に住み、敬英会が運営する介護施設でアルバイトをしながら、日本語学校で学んでいる。来春はこの専門学校に入学し、介護福祉士の勉強をスタートさせる予定だ。その一人、グェン・ティ・ハンさん(22)は、母国で看護の勉強をしながら日本語を学んできた。「今は漢字の勉強が大変だけど、介護の免許をとって、日本で働きたい」と話す。敬英会の光山(みつやま)誠理事長(51)は将来の人材不足に備えてきた。「質が高く信頼される育成の仕組みを作りたい」。この動きを参考に、大阪介護老人保健施設協会も取り組みを進める方向だ。いま、同じような留学生受け入れのルートが国内各地で生まれている。東京国際福祉専門学校(東京都新宿区)では今春、中国、フィリピン、ベトナム、台湾から6人の留学生が介護福祉科に入学した。しかし日本人はゼロ。来春に向けて、人材紹介業者や外国人採用を考える法人とのパイプを増やし、定員の40人に近づけたいという。担当者は「経営を考えると数が多いほどいいが、授業についていけないようでは困る。いかに日本語能力が高い人を見つけるかがカギ。現場のリーダーとなる人材を育てたい」と話す。
■事業者自ら養成する例も
 人材難に苦しむ介護事業者が、自ら介護福祉士の養成校を作り、留学生を受け入れようとする動きもある。兵庫県篠山(ささやま)市。無人駅から徒歩約15分の山や田んぼに囲まれた場所に、3階建ての校舎が建っている。特別養護老人ホームを運営する社会福祉法人「ウエルライフ」(同県西宮市)が来秋の開校をめざす「篠山学園」だ。1学年80人の2年課程。ホーチミンの日本語学校と提携し、入学者の多くをベトナム人留学生にする予定という。介護福祉士の養成校の多くは専門学校。専門学校は、外国人がほとんどを占める状況では認可されない。しかし篠山学園は、あえて外国人の制限がない「各種学校」での養成校をめざし、県に申請中だ。ウエルライフ側の危機感は強い。十分な採用ができずに人材派遣会社に頼らざるをえず、その費用が大きくなっている。開設準備室の安平衛(まもる)事務長(58)は「施設運営に介護福祉士は絶対必要。リスクは大きいが、直接のルートを作る方がいいと判断した」と話す。篠山市も期待をかける。県立高校の分校だった建物を県から約6千万円で購入し、同法人に貸す。校内で高齢者サロンを開く計画もある。「留学生のために、ベトナム料理に欠かせないパクチーを作ろうか」という地元からの提案も。市の担当者は「地域活性化につながるだけでなく、卒業後はできる限り市内で働いてもらえればありがたい」と話す。

*4-4:http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170118-00000014-asahi-pol (朝日新聞 2017/1/18) 外国人の永住権、最短1年で付与へ 高度人材の確保狙う
 研究者や企業経営者など高い専門性を持つ外国人が最短1年で永住権を取得できる「日本版高度外国人材グリーンカード」が3月から始まる。現在は5年間日本で暮らせば永住許可を申請できるが、学歴や年収などを点数化し、条件を満たした場合は取得に必要な在留期間を短縮する。1年での永住権取得は国際的にも最短クラスで、獲得競争が激しくなっている外国人の人材を呼び込む狙いだ。外国人が永住権を取得するには、通常は10年以上の在留期間が必要だが、法務省は2012年に「高度人材ポイント制」を導入した。「学術研究」「専門・技術」「経営・管理」の3分野に分け、研究者の「博士号取得者」に30点、経営者の「年収3千万円以上」に50点などとポイントを積算。70点以上で「高度外国人材」と認めて最短5年で永住権取得を認めてきた。今回は、永住許可の申請に必要な在留期間を5年から3年に短縮。さらに、ポイントが80点以上の対象者は最短1年とする。「大学ランキングの上位校を卒業」(10点)、「国内で経営している事業に1億円の投資」(5点)なども新たにポイントとして加算する。


PS(2017年1月25日追加):*1-4の「米国第一エネルギー計画」「新たな規制の凍結も各省庁に指示」に関連して、トランプ米大統領は、*5-1のように、「①日本との自動車貿易は不公平だ」「②われわれが自動車を売る際、日本が販売を難しくしているが、日本は米国で多くの自動車を販売している」と指摘している。これは、関税だけでなく規制による非関税障壁も含む発言だが、環境規制などは規制緩和しさえすればよいわけではない。日本車は、1)狭い道路を走れる小型車を開発したり 2)高いエネルギー代金に対応する省エネを進めたり 3)厳しい環境規制をクリアしたりすることによって、付加価値の高い自動車を作ったため、米国でも売れているのである。そして、今後は、高齢化社会対応の自動運転車や環境対応の電気自動車・燃料電池車の開発が進むため、*5-2のように、米国がシェール、石油資源などの化石燃料を開発し、*5-3のように、化石燃料の増産や環境規制の緩和を図る方針を打ち出せば、米国の自動車は機能で他国の市場では売れなくなる。つまり、1980年代の日米自動車摩擦が再現するのではなく、需要者がどのような自動車を選択するかが重要であるため、販売は日本車に限らず顧客ファーストで考えたところが勝つのだ。
 これに対して、英国は、*5-4のように、①グローバルな競争力をもつ製造業の集積 ②世界最先端の専門知識の集積と研究開発 ③英国政府の支援 などによるビジネス環境の魅力により、自動車でゲームチェンジ(イノベーション)が起こった時に勝つための準備ができつつあるようだ。

    
  テスラ電気自動車    BMW電気自動車    日産電気自動車   ジャガー電気自動車


  日産電気トラック    トヨタ・ヒノ燃料電池バス   トヨタ燃料電池列車   ホンダ燃料電池車

*5-1:http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2017012590070133.html (東京新聞 2017年1月25日) 【経済】日本の車市場を狙い撃ち 日米貿易摩擦再燃の恐れ
 トランプ米大統領は二十三日、ホワイトハウスで環太平洋連携協定(TPP)から「永久に離脱する」とする大統領令に署名した。一方で「二国間の貿易協定を目指す」と明言、米国の利益を最優先にする米国第一主義に基づき、各国に市場開放を迫る方針を示した。日本については「日本との自動車貿易は不公平だ」と指摘しており、一九八〇年代から九〇年代にかけての日米自動車摩擦時のような厳しい交渉を強いられる可能性もある。「米国の労働者にとって非常に良いことだ」。トランプ氏は大統領令を掲げ、満足そうに語った。通商政策の司令塔となる新設の国家通商会議(NTC)のトップに就くカリフォルニア大のピーター・ナバロ教授らが見守った。政権が本格稼働した同日、ホワイトハウスで最初に署名した大統領令が、TPPからの永久離脱だった。続く労働組合の幹部らとの会合で「交渉参加国と二国間の貿易協定を目指す」と宣言した。署名の前には企業経営者らと会合。「われわれが自動車を売る際、日本が販売を難しくしている。だが、日本は米国で多くの自動車を販売している」と批判し、対日圧力を強める考えを示した。日本は自動車の関税を撤廃しているが、米国メーカーは燃費や安全規制が厳しいと主張してきた。トランプ氏は、大統領選挙戦では「ラストベルト」と呼ばれる中西部各州で、自動車産業などで働く白人労働者階級に「海外に奪われた仕事を取り戻す」とアピールし、彼らの支持を集めることで勝利の原動力とした。日本の自動車市場批判は米国から日本への輸出を増やし、支持層に報いる狙いがあるとみられる。トランプ氏の日本批判について菅義偉官房長官は二十四日のテレビ番組で「日本は関税ゼロで、事実誤認。米国メーカーも右ハンドルにするとか努力をすれば問題ない」と反論した。日本政府は米国との二国間交渉には否定的な立場で米国にTPPに加わるよう翻意を促す方針。日米首脳会談を二月上旬に行う方向で調整しており、安倍晋三首相はその場でもTPPの重要性を訴える考え。だが、逆にトランプ氏から二国間交渉の要求を突きつけられる可能性がある。TPPの事前協議に農林水産省の交渉官として携わった明治大の作山巧(たくみ)准教授は「多国間交渉では、大国でも主張を押し通せない場合があるが、二国間では理屈抜きに主張がぶつかり合うため、大国が優位になる」と指摘。二国間交渉になった場合、農産物や自動車で米国の圧力が強まると予想している。
<日米自動車摩擦> 1973年の第1次石油危機などを背景に米国で小型車の需要が高まり、日本車の輸入が増える一方、対応が遅れた米自動車メーカーは大きな打撃を受けた。米国内で対日感情が悪化し、日本車の輸入規制を求める動きが広がった。日本側は81年以降、対米輸出の自主規制を実施。93年に始まった日米包括経済協議で自動車は優先分野となり、95年に両国政府は日本市場への参入拡大などで合意した。摩擦を受けて日本自動車メーカーの海外進出が進んだ。
<米大統領令> 立法手続きを経ずに米大統領が直接、連邦政府機関や軍に発する命令。議会は大統領令の内容を覆したり修正したりする法律を制定することで対抗することができる。憲法に反する内容の場合は、最高裁が違憲判断を示して無効とすることもある。太平洋戦争開戦から約2カ月後の1942年2月19日にルーズベルト大統領が出した大統領令9066号は、日系人の強制収容につながった。 

*5-2:http://ieei.or.jp/2016/11/special201603013/ (国際環境経済研究所主席研究員、東京大学公共政策大学院 教授 有馬 純 2016/11/15) トランプ政権の下で米国のエネルギー・温暖化政策はどうなるか
 米大統領選でドナルド・トランプ氏が当選したことは世界中を驚かせた。そのマグニチュードは本年6月の英国のEU離脱国民投票の比ではない。選挙キャンペーン中のトランプ氏の過激な言動や公約が、大統領就任後、どの程度実行に移されるのかは未知数である。しかし確実に言えることは米国のエネルギー温暖化政策が大きく様変わりするということである。
1.国内エネルギー生産の拡大、安価なエネルギー価格が中核
 トランプ氏のエネルギー政策の中核は国内エネルギー生産の拡大と米国のエネルギー自給の確立である。彼の「米国第一エネルギー計画(An America First Energy Plan)」注1) は以下の公約を列挙している。
●米国のエネルギー自給の確立、数百万の雇用創出
●50兆ドルにのぼる米国のシェール、石油、ガス、クリーンコール資源の開発
●OPECカルテルや米国の利害に敵対する国々からの輸入を不要に
●連邦所有地(陸域、海域)のエネルギー資源開発への開放
●排出削減、エネルギー価格の低下、経済成長につながる天然ガスその他の国産エネルギー源の使用を促進
●オバマ政権の雇用破壊的な行政措置を全て廃止し、エネルギー生産への障壁を削減・撤廃することにより、年間50万人の雇用創出、300億ドルの賃金引上げ、エネルギー価格の低下を図る
 またトランプ氏はAn American First Energy Plan の中で、オバマ政権の「反石炭的な規制」を引き継ぐクリントン氏を強く批判している。トランプ氏が10月に発表した「米国を偉大にするための100日行動計画(100-day Action Plan to Make America Great Again)」注2) では「米国の労働者を守るための7つの行動」の中で上記のエネルギー資源開発の促進に加え、「キーストーンパイプラインを含むエネルギーインフラプロジェクトに対してオバマ・クリントンが課した制約を撤廃する」としている。こうした彼のエネルギー関連の公約には、シェール開発で巨万の富を得たContinental Resources 社オーナーのハロルド・ハム氏が強い影響力を及ぼしているといわれる。ハロルド・ハム氏は以前から2012年の大統領選ではミット・ロムニー候補のエネルギー問題のアドバイザーを務めており、トランプ政権のエネルギー長官候補としても名前が挙がっている。またトランプ氏の移行チームの中でエネルギー省を担当するのはMWR Strategies社長のマイク・マッケンナ氏である。彼はエネルギー省、運輸省の対外エネルギー関係アドバイザーやバージニア州環境局の政策・対外関係局長の経験があり、MWR Strategies社はダウ・ケミカルやKoch Industries, TECO Energy, GDF Suez 等のためのロビイングを行っている。エネルギー長官候補として彼の名前を挙げる記事もある。

*5-3:http://www.cnn.co.jp/usa/35093713.html (CNN 2016.12.14) トランプ氏、エネルギー長官にペリー氏を指名へ 情報筋
米国のトランプ次期大統領は、新政権のエネルギー長官にリック・ペリー前テキサス州知事を指名する方針を固めたことが14日までに分かった。政権移行チームの複数の情報筋がCNNに語った。
ペリー氏は同州の共和党重鎮として知られ、2012年と今回の大統領選に名乗りを上げたものの撤退していた。12年の共和党指名レースでは3つの省庁を閉鎖するべきだと訴えたが、討論会でそのうち1つを思い出せずに立ち往生した。この省庁がまさにエネルギー省だった。今回の指名レースでは当初、トランプ氏批判の先頭に立ったものの、資金集めに行き詰まって昨年9月に撤退。その後はトランプ氏支持に回っていた。オバマ現政権下のエネルギー省は再生可能エネルギー開発事業への助成や融資などを通し、化石燃料からの方向転換を推進してきた。一方、トランプ氏は現政権のエネルギー政策を覆し、化石燃料の増産や環境規制の緩和を図る方針を打ち出している。規制の多くは環境保護庁の管轄下にあるが、エネルギー省も重要な役割を果たすことになる。連邦所有地での化石燃料掘削には内務省の許可が必要とされる。移行チームから13日に入った情報によると、新政権の内務長官にはエネルギー自給を主張し、環境保護団体から批判を浴びているライアン・ジンキ下院議員が就任する見通しとなった。

*5-4:http://special.nikkeibp.co.jp/as/201501/innovation_is_great/great4.html
 急速なグローバル化が進展する自動車産業の中で、英国の存在感が増している。その背景には3つのファクターが存在する。英国の自動車産業に詳しいリカルド ジャパン株式会社代表取締役社長の山本雄二氏に話を聞くことができた。同社は英国の自動車産業を代表する総合エンジニアリング企業であるリカルド社の日本法人だ。リカルド社は今年で創業100周年を迎える歴史を誇り、英国のみならず日本および世界の自動車メーカーと幅広くビジネスを展開している。
 第一のファクターは、グローバルな競争力をもつ製造業の集積である。「欧州では自動車の開発プロセスにも数多くのサプライヤーが関わります。自動車メーカーにとって、確固たる技術基盤をもったエンジニアリング企業の存在は必要不可欠になっています」と山本氏。同社が提供するエンジニアリング分野は幅広く、自動車分野だけでもパワートレイン開発、ワイヤハーネス設計、軽量化技術など、多岐にわたるソリューションを提供している。「およそ自動車メーカーができることはリカルド社もできると思っていただいて結構です」。さらに同社の大きな特徴に「戦略コンサルティング」が挙げられる。単に技術の提供だけでなく、商品企画段階から市場予測に基づく戦略的コンサルティングを行っているのだ。リカルド社は現在、ジャガー・ランドローバー社と長期的かつ包括的なサポート契約を結び、エンジン・車体開発の一部を担当している。また、マクラーレン・オートモーティブ社が製造する超高性能スポーツカー向けのエンジンを共同開発し、その生産まで請け負うなど、エンジニアリング企業の枠を超えた自動車メーカーとの関係を築いている。リカルド社のような企業の存在こそが、英国の自動車産業のイノバティブな躍進を支える大きな原動力と言えるだろう。
 第二のファクターは、世界最先端の専門知識だ。英国にはホンダ、日産、フォード、BMW、上海汽車、吉利汽車など、世界を代表する自動車メーカーが拠点を構え、研究開発を行う。リカルド社でも「既存のエンジン技術での資源の有効活用、低排出ガス(CO2抑制)などが求められるなかで、高効率ハイブリッドシステムやEV関連などの研究開発も行っています。特にバッテリーやモーターに関するソリューションを提供できるエンジニアリング企業は世界的に見ても少ないのが実情で、当社の強みの一つとなっています」とその先進性を語る。「英国には次世代のイノベーションが期待できる産官学連携のプログラムが数多く用意されています。当社でもいくつかの基礎研究分野において英国の大学との共同研究を行っています」。英国におけるイノバティブな産業育成プログラムといえば、前々回記事で紹介した、政府と産業界が資金を拠出する「カタパルト」が知られている。自動車関連では「高付加価値製造(HVM: High Value Manufacturing)カタパルト」によって多くの研究機関が連携するほか、輸送システムにおける将来のイノベーションの開発と展開を目指す「輸送システム・カタパルト」も積極的に活用されている。
 最後のファクターは、ビジネス環境としての英国の魅力である。英国政府は産業界と連携し、前出のカタパルトを補完しながら、将来の自動車技術を開発する企業を支援している。投資受け入れ先として英国自動車産業の魅力を高めることにも積極的だ。取り組みの一部を紹介する。
 ・先端推進システム技術センター(APC: Advanced Propulsion Centre )
  産官共同の自動車産業戦略の中心となり、今後10年間に10億ポンド(約1940億円)の資金を
  投じ、先端推進技術の開発、商業化の実現を促進。
 ・低排出車両庁(OLEV:Office for Low Emission Vehicles)
  超低公害車の初期市場を支援する政府横断的な組織。9億ポンド(約1740億円)超の資金を
  投入し、超低公害車の開発、製造および利用で世界の先頭に立ち、温室効果ガス排出と
  大気汚染の削減を促進。
 ・国立自動車イノベーションキャンパス(NAIC:National Auto Innovation Campus)
  政府、ジャガー・ランドローバーおよびタタ・モーターズによる9200万ポンド(約178億円)の構想。
  化石燃料依存を削減し、二酸化炭素排出を低減する新技術の開発を目指す。約1000名の研
  究者、科学技術者、エンジニアが働く。
 ・政府、ジャガー・ランドローバーおよびタタ・モーターズによる9200万ポンド(約178億円)の構想。
  化石燃料依存を削減し、二酸化炭素排出を低減する新技術の開発を目指す。約1000名の研
  究者、科学技術者、エンジニアが働く。
 英国に拠点を置く企業に対する税務上のインセンティブも大きい。英国の法人税は現在、G20諸国中で最も低い20%にまで引き下げられている。大幅な研究開発費控除(適格研究開発支出1 ポンドにつき最大27 ペンス控除)を提供しているほか、特許発明などのイノベーションから生じた利益に対して法人税率を軽減(10%)するパテントボックス税制も適用している。また、製造部門の労働費用も西欧諸国としては最も低い水準であり、人件費の面でもメリットがある。「グローバル化とともに、自動車メーカーが全てのリソースを自前で賄うのがむずかしい時代になりつつあります。すでに欧州がそうであるように、日本でも外部のエンジニアリング企業にアウトソースを求める時代が到来しつつあります。そうしたなかで、日本企業が英国および英国企業とパートナーシップを組むことは意義のあることだと思います」。グローバルな視座からマーケットを俯瞰し、ダイナミックに変化し続ける需要にフレキシブルに対応できる英国のビジネス環境。そこには新しいビジネスの可能性が広がっている。すでに新しい日英パートナーシップは走り出している。その象徴が、欧州最大の自動車生産工場である日産サンダーランド工場が製造する電気自動車「リーフ」である。2015年9月8日(火)~9月18日(金)、英国政府による「Innovation is GREAT~英国と創る未来~」のキャンペーンロゴをまとった日産リーフが、東京の英国大使館から全国ツアーに出発する。日本各地の観光名所、英国ゆかりの地を巡りながら、日英パートナーシップをアピールするという。日本F3に参戦する英国人ドライバー、ストゥラン・ムーア選手が運転することが既に決定している。


PS(2017年1月26日):*6のように、佐賀県内の追突事故の1割弱は自動前進機能が原因だそうだが、運転車が意図しないのに自動車が動き出すのはプログラムミスだ。そのため、オートマチック車の運転者に「停止中はニュートラルして、サイドブレーキを使うように」と言うよりは、オートマチック車のプログラムを変更した方がよいと考える。また、確かに警察が集計した交通事故原因を参考にして改良すれば「運転支援システム」や「自動運転機能」の完成に役立つだろうし、事故が起こった際の関係者の怪我を集計すれば、車体の安全性における改良ができるだろう。

*6:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/399034
(佐賀新聞 2017年1月26日) 県内の追突事故、1割弱が「自動前進」原因、県警「サイドブレーキを」
 佐賀県内で昨年1年間に発生した追突事故のうち316件(8.7%)が、ブレーキから足を離すと自動的に進む「クリープ現象」によるものだったことが県警の集計で分かった。オートマチック車の運転者にサイドブレーキの徹底を促している。25日の定例会見で説明した。交通安全企画課によると、信号待ちなどで停止した際、後部座席のチャイルドシートを見ていて踏みが弱くなり追突したケースや、ブレーキペダルを踏む筋力自体の衰えでぶつかった高齢ドライバーもいた。同課は「ゆっくりとした前進でも大きな事故につながる可能性はある」と指摘し、「停止中は車間距離を十分取ってニュートラルの状態にし、サイドブレーキを引くことを徹底してほしい」と呼び掛けている。追突事故を原因別で見ると、脇見などの前方不注意が最も多く2378件(65.1%)。次いで歩行者らへの注視を怠った事例が744件(20.4%)、クリープ現象を含むブレーキ操作に起因するケースが435件(11.9%)だった。


PS(2017年1月27日追加):ゴーン社長率いる日産・ルノー組が世界で最初にEVを開発したが、日本の政府・メディアは航続距離が短いなどの批判ばかりを行ってディーゼル車やガソリン車への回帰を進め、EVの短所解決に協力することはなかった。そのため、*7のように、EVで世界の第一線から外れたのであり、日本の技術は、ハンドルを握っている文系の愚(中等・高等教育や組織構成に問題があると思われる)により、世界から遅れて初めてエンジンをかけられるというお粗末さなのである。なお、PHVは、ガソリンエンジンを併用しているため、部品が多くてコストダウンできず、車内も従来のガソリン車と同様なので、EVのメリットが出ない。

*7:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12767174.html (朝日新聞 2017年1月27日) ホンダ、EV開発に注力 燃料電池車の普及進まず
 ホンダが、出遅れた電気自動車(EV)の開発に本腰を入れ始めた。水素で走る燃料電池車(FCV)を「究極のエコカー」と位置づけてきたが、FCVの普及が進まず、米国で今秋に始まる環境規制への対応も急務となっているためだ。「EVをやめたわけではない」。昨年12月、早稲田大で講演したホンダの八郷隆弘社長は、「なぜEVに力を入れないのか」と質問した学生にこう強調した。社外には公表していないが、昨年10月、開発部門ごとに散らばっていたEVの技術者を集め、専門組織を新設。四輪車開発の責任者の直属とし、米国で今年売り出すEVの仕上げや、次世代のEV開発に当たらせている。ホンダは昨年3月、FCV「クラリティ フューエルセル」のリース販売を始めたが、初年度の国内販売計画は200台。米国も当面はカリフォルニア州の12店舗だけでの販売で、普及にはほど遠い。一方のライバルは、日産自動車がEV「リーフ」を世界で約25万台売った。同じくFCV重視だったトヨタ自動車も昨年11月、2020年をめどにEV量産を目指すことが判明した。米カリフォルニア州で今秋発売の18年モデルから始まる規制強化も、ホンダにEV開発を迫る背景だ。排ガスのない車(ZEV〈ゼブ〉)をより多く売り、一定の「点数」を稼ぐ必要があるが、ホンダなど日本勢が得意のハイブリッド車(HV)はZEVから外れた。三菱UFJモルガン・スタンレー証券によると、18年モデルでホンダが規制を達成するための販売の水準はEV約3千台、FCV約1千台、プラグインハイブリッド車(PHV)約8千台と厳しい。点数を満たせなければ罰金を支払うか、超過達成した他社から点数を買わなければならない。日産のようなEVの量産経験に乏しく、研究開発費がトヨタより3割少ないホンダにとって、EVとFCVとの「二正面作戦」が重荷になる可能性もある。ただ、ホンダが12年からリース販売した小型車「フィット」のEVは、開発にHVやFCVの知見を生かし、一度の充電で走れる距離を当時の世界最高水準にした。広報担当者は「技術で他社より遅れているとは思わない」と話す。
■自動車大手3社はZEV規制への対応を急ぐ
<ホンダ>
●従来の主なエコカー/クラリティ フューエルセル(FCV)
●累計世界販売/年200台以上を予定(16年3月発売)
●米国のZEV規制への対応/16年にクラリティ、17年にクラリティの車台を使ったEVとPHVを投入
<トヨタ自動車>
●従来の主なエコカー/ミライ(FCV)
●累計世界販売/約2300台(14年12月発売)
●米国のZEV規制への対応/ミライに加え、「プリウスPHV」の2代目を投入。20年メドにEV量産
<日産自動車>
●従来の主なエコカー/リーフ(EV)
●累計世界販売/約25万台(10年12月発売)
●米国のZEV規制への対応/リーフで対応。近い将来にリーフは全面改良し、傘下の三菱自動車のPHV技術も導入


PS(2017年1月29日追加):台湾には、17世紀頃に中国福建省の人が移民して来る前から居住していた先住民がおり、第二次世界大戦後に日本に代わって台湾を統治した中華民国政府は、1949年2月7日に蒋介石率いる中国国民党が台湾島に来たことにより実効支配するようになったものである。そのため、*8-1のように、中国から「日本が台湾を侵略したことを忘れたのか」と批判されるのはおかしい上、日本が侵略したとされる他国と異なり、台湾の人々は親日的な人が多いのだ。
 また、*8-2のように、厚労省の発表では、2016年10月末時点の外国人労働者は108万人で、(労働条件は改善すべき点が多いものの)中国からの34万4,658人が最も多く、日本は中国へのODAもかなりやってきたため、「日本が中国を侵略した」ということを、いつまでも外交カードに使ってもらいたくない。さらに、私は個人的に、中国はスケールが大きく将来性もある国だが、民主国家とは言えず、まだ公害が多くて人権が疎かにされているため、安心して住めないような気がしている。 

*8-1:http://mainichi.jp/articles/20170129/k00/00e/030/107000c (毎日新聞 2017年1月29日) 台湾、蔡英文総統が英語と日本語でツイート 内外に波紋
 台湾の蔡英文総統が28日の春節(旧正月)に合わせて英語と日本語で新年のあいさつをツイッターで投稿したところ、中国から「なぜ中国語で書かないのか」と批判の書き込みが相次いだ。これに対し日本や台湾からも反論が投稿され、激論となった。台湾紙、自由時報(電子版)が28日、伝えた。蔡氏は大みそかにあたる27日、英語と同時に日本語で「日本の皆様、今年は実のある素晴らしい一年となりますよう、心よりお祈り致します」と書いた。中国からは「ごますり」「日本が台湾を侵略したことを忘れたのか」などと批判が殺到した。

*8-2:http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201701/CK2017012802000113.html (東京新聞 2017年1月28日) 外国人労働者108万人 昨年10月末 技能実習生、受け入れ拡大
 厚生労働省は二十七日、二〇一六年十月末時点の外国人労働者数が初めて百万人を突破し、百八万三千七百六十九人になったと発表した。前年比で19・4%増加し、企業に届け出を義務付け集計を始めた〇八年以来最多となった。全体の増加率はこれまでで最も大きく、全ての都道府県で前年の人数を上回った。人口減少で人手不足感が強まる中、外国人労働者に頼る流れは続くとみられるが、欧米諸国では外国人居住者の増加が国を二分する論争になっている。日本でも受け入れを巡り国民的な議論が必要となりそうだ。人手不足から高い技能を持つ人材や留学生アルバイトの受け入れが増えたほか、安価な労働力との批判がある技能実習生の大幅増も全体を引き上げた。国籍別で最多は中国の三十四万四千六百五十八人で前年比6・9%増。次いでベトナムが十七万二千十八人で56・4%増加し、留学生によるアルバイトや技能実習生が多くを占めた。フィリピンが十二万七千五百十八人で続いた。ネパールはベトナムに次ぐ増加率(35・1%)だった。都道府県別では、東京が最多で三十三万三千百四十一人、愛知が十一万七百六十五人、神奈川が六万百四十八人だった。

| 経済・雇用::2016.8~ | 02:51 PM | comments (x) | trackback (x) |
2017.1.5 日本が先進国となり、少子高齢化した中で増える需要と雇用吸収力のある産業は何か → 高齢者いじめの年金・医療・介護の負担増・給付減は憲法違反であると同時に、国民経済を悪化させること (2017年1月6、8、10、13、15日に追加あり)
 あけまして、おめでとうございます。書くべきことは多いのですが、今日は2017年度の国家予算と高齢者いじめの年金・医療・介護の負担増・給付減の話です。


 国の借金     国の一般会計    2017年度予算案 社会保障推移  日本の人口構成
           2015.1.28Goo  2016.12.22毎日新聞

(図の説明:国の借金は1989年《平成1年》の消費税導入以降、次第に増えて2015年《平成27年》には1000兆円を超えた。これは、消費税増税を目的として税収増以上の景気対策と称する歳出増を行ってきた結果である。また、消費税は、価格を上げて消費を抑える効果もある。この結果、2017年政府予算案では、国債費が最も大きな支出項目となっているが、このうち国債の利払費は低金利の現在、国債を借り換えすることによってかなり節約できる。社会保障費の割合は大きく金額も増えているが、これは高齢者の数が増加したことが原因で一人当たりの社会保障費が増えたわけではない。特に介護は大きく不足しており、我が国の社会保障は、まだ削減するよりも充実すべき段階にある)

 
労働生産性 労働者一人当たり労働時間推移   労働時間世界比較   医師の労働時間世界比較

(図の説明:我が国の労働生産性はOECD加盟国のうち21位で決して高くないが、全員の労働生産性が低いわけではなく、公的部門や雇用対策・景気対策でなされる事業の生産性が特に低いのだろう。また、我が国の労働者1人当たりの年平均実労働時間は、1980年には2,104時間/年だったが、2012年には1,765時間/年まで減っており、これはアメリカ・イタリアより少ないため、我が国の労働者は働き過ぎだと主張する人は30年古い感覚である。しかし、医師の労働時間数は世界でもとりわけ高く、過労死認定基準を超えており、このように疲れていては治療の安全性さえ危ぶまれるが、他の職種との給与差は世界でも小さい方であり、度重なる診療報酬の引き下げは医療の質を落とす可能性が高い)

(1)国の異次元の借金と歳入・歳出について
 *1-4に、「①国の借金が1062兆5745億円に達して国民1人当たり約837万円の借金になった」「②高齢化で増え続ける社会保障費を賄うため借金が膨らんだ」「③経済対策の財源として建設国債を発行するため、2016年度末の国の借金は1119兆3000億円程度になる」と記載されている。

 このうち①は、国の負債部分しか見ておらず資産を考慮していないため正しくない。そして、その資産は使い方によっては大きな収益を産んで価値が高くなるが、金をどぶに捨てるような使い方をすれば価値がなくなり、現在は後者の使い方が目立つ。

 また、③は事実を書いたのだろうが、②の「借金が膨らんだ理由は社会保障費だ」というのは間違いだ。何故なら、社会保障費はあらかじめ予測できた支出であり、受益者たる国民は働いた期間に保険料を支払ってきたため、基本的に保険料収入から支出すべきもので財政支出すべきものではないからだ。それにもかかわらず、国民が支払った保険料では賄いきれずに財政支出しているのは、これまで監督官庁が単年度の収支しか考えておらず、保険料の徴収や積立金の管理・運用・配分等が著しく杜撰だったからである。

 そのため、その本質的な原因をなくさずに、「官は正しいことをしてきたが、少子高齢化(これも予見できた)が原因だ」などとして積立金不足の責任を特定世代の国民にしわ寄せするのは、正義に反する上、それでは社会保障が信頼をなくし、杜撰な管理・運用が今後とも改善されないのでよくない。

(2)2017年度の政府予算案について
1)予算案はまともに審議されるのか?
 一般会計歳出総額97兆円台半ばの2017年度政府予算案が、*1-1のように閣議決定されたが、これでもし衆議院が1月に解散されれば、国会のしっかりした審議もなく膨大な予算が執行されることになる。そのため、これは主権者である国民を無視した憂慮すべき事態だ。

2)国債残高と利払いについて
 大手新聞社は、*1-1のように、一貫して「社会保障が膨らみ、新規国債の発行額は16年度の34.4兆円をわずかに下回る薄氷の減額で、改革の切れ味が鈍い」という論調だが、正しくは国債増加額と国債の利払いを問題にすべきだ。そうすると、金利の低い現在は、新規国債を発行して金利の高い国債を返済し、今後の利払いを抑えるのが賢明だということがわかる。そして、「歳出の中で割合が大きいから、社会保障費を削るのが改革だ」とするのは、後で理由を書くとおり、間違いである。

3)沖縄振興と政府開発援助について
 沖縄振興は、基地を縮小し、沖縄自身が観光業・その他の産業を起こし、街づくりをして自ら稼ぐことができるようにするのが最も有効な投資であり、基地負担を強いるためにいつまでも補助金をばら撒くのは誰にとってもプラスにならない。

 また、政府開発援助(ODA)も大きいが、日本の外交は、国民に負担させて金をばら撒くばかりで、論理的に交渉する力に欠けているため、無駄遣いが多すぎる。

4)高齢者の負担増について
 高齢化による自然増6400億円の社会保障費を1400億円抑え、中高所得者とも言えない所得の低い高齢者の医療・介護負担を増やして高齢者向け社会保障費を5000億円増に抑えたのは、現在の本物のニーズである高齢者の医療・介護需要を減らさせ、命を支えている医療・介護従事者に不当な負担を強いた上、高齢化社会で必要となる財・サービスの開発・普及を妨げているため、間違った政策である。

 一方で、健康な生産年齢人口に当たる人の“働き方改革”に2100億円も充てているが、これは、脱法行為も含む労働基準法違反や男女雇用機会均等法違反をしっかりと取り締まればよいのであり、補助金を積んで改善していただくべき事項ではない。

 なお、*1-5のように、電通の新入社員である高橋まつりさんが異常な長時間労働の末に自殺した事件について、母の幸美さんが「日本の働く全ての人の意識が変わってほしい」と求める手記を公表し、一つの特殊な事例を働く全ての人に敷衍しようとしているが、これには無理がある。何故なら、(アウト・プットを見ればわかるとおり)電通は広告会社であり、東大は研究者や各界のリーダーを養成する校風であるため、東大文学部を卒業したからといって電通の仕事をする能力に長けているとは限らないからだ。

 また、上司が「目を充血させて会社に来るな」と言ったのも、本人が長くエネルギーを出し続けるためには無茶な残業をするよりも規則正しく仕事をする方がよい上、朝から他の社員に疲れを伝染させるようなことはしない配慮も必要であるため、上司として必要な注意だったかも知れず、パワハラとは決めつけられない。さらに、上司が「君の残業は電通にとって無駄だ」と言ったのも、成果があがらないので少なくとも頑張っているところを見せたいため長時間残業をする人もおり、それは本当に無駄であるため、必要な注意をしたのかもしれないからである。しかし、新入社員に、一人で責任を持つ形で困難な仕事をさせていたのであれば、それは異常であるとともに、社員を育てる意識に欠ける。

 そのため、まつりさんは、①社内の人事部などに相談する ②私もされた経験があるのでわかるのだが、東大卒など上昇志向の女性いじめの可能性も高いため、大学の就職相談室に相談しておく (労働基準監督署は、それ自体に女性差別があり、賃金と残業時間くらいしか対応できないため、このような女性差別の問題は大学の就職相談室が相談を受け付け、会社毎に挙がってくる問題を集計して対処した方がよい) ③労働問題・男女共同参画問題の専門家である弁護士に相談する ④(本当に自殺なら)母一人子一人の母親に喪失感を与えるような自殺はしない ⑤どうしても仕事や社風が合わなければ転職する など、大人としてやるべきことがあった筈なのだ。

 なお、日本社会は、「会社に入ったら辞めるのは落後者だ」という烙印を押すのをやめ、諸外国と同様、転職や中途入社をしても不利にならない雇用システムにすることが重要だ。また、本気で仕事における女性軽視や上昇志向の女性いじめをやめることも必要である。そして、この事件に対する日本社会の変な反応によって、本当に必要な時間外労働をしている人までが批判され、わかりやすい例を挙げれば、医療・介護も夜間・休日は休業しなければならないとか、メディアも生放送や朝刊をなくさざるをえないなどの負の結果が出るのは論外だ。さらに、仕事量が減らないのに午後8時や10時に全館消灯されると、家に仕事を持ち帰らざるを得ない人が増え、電車に忘れたりしてセキュリティー上のリスクが上がるとともに、それこそ仕事とプライベートの堺をなくさせ、ペースを乱させて労働生産性を下げる。なお、生産年齢人口が減る中で労働生産性を下げると、労働の量と質の両方が減ることを忘れてはならない。

 最後に、*1-2に、「1億総活躍社会の実現」として、保育士や介護職員の処遇改善に952億円を充てたと書かれているが、このやり方は保育と教育の連携や医療・介護制度の全体を考慮していないため、資本生産性が低い。

5)防衛費について
 防衛費は過去最高の5.1兆円に増やしたそうだが、東京オリンピックの競技場と同様、政府が購入する物品は国内市場価格の3~4倍であり、中国と比較すれば5倍にものぼる。そのため、多く支出する割には大したことはできておらず、公的部門の資本生産性(支出1円当たりの効果)は著しく低い。

 また、*1-2の海上保安庁の予算(2106億円)も同様だと思われるため、高コスト構造や公的部門の購入コストを何とかしなければ、無駄遣いが非常に大きいのだ。

6)土地改良事業について
 資本生産性が低いのは、4020億円を充てた土地改良事業も同じだ。土地改良費はこの20年の累積で約8兆円(4000億円/年 x 20年)近くにのぼるが、未だに大型機械が入らない区割りになって
いる場所があったり、いつまでも土地改良事業が必要だと言っていたりするのは、これまで何をしてきたのかと思われる。私は、災害で壊れた場所を治す時も、何度も同じ場所を工事する必要がないように、復旧して元に戻すのではなく、時代の要請にあったものを造るべきだと考える。

7)歳入・歳出と消費税増税について
 歳入面では、来年度の税収は今年度当初比1000億円増の57.7兆円に留まり、歳出の伸びと比較して税収の伸びが鈍いため、外国為替資金特別会計の運用益等の税外収入を2016年度の4.7兆円から2017年は5兆円超に伸ばす方針なのだそうだ。しかし、これまでに書いてきたとおり、税収増は、各生産性を上げ、国産自然エネルギーに代替したり、新産業を創出したりすることによって実現でき、税外収入は地熱・天然ガス・地下資源などの国産資源を開発する方が大きな効果が得られる。

 なお、日本の消費税は、1989年(平成1年)に導入されて税率3%でスタートし、1997年(平成9年)に5%に引き上げられ、2014年(平成26年)4月からは8%に引き上げられた。そして、一番上の左から2番目のグラフを見ればわかるとおり、消費税導入翌年の平成2年から国の歳出が歳入を大きく上回り始め、その差は増税毎にますます大きくなって、それにつれて国債発行残高が増えているのだ。これは、消費税増税のための景気対策と称して消費税増税以上の歳出をしているからで、消費税が財政に貢献するというのは消費税増税自体が目的である政府の御都合主義の神話である。なお、「社会保障費は消費税や付加価値税からしか支出してはいけない」などとする国は、日本以外にはない。

8)少子高齢化社会のニーズに合ったサービスである社会保障の削減について
 東京新聞が*1-3に記載しているように、政府が12月22日に閣議決定した2017年度予算案は、上記3)~6)の増加があった半面、高齢者関係の社会保障費の増加を抑え、高齢者に対して予算のしわ寄せを行っている。

 そして、歳出の1/3を占める社会保障費の伸びを抑えるためとして、医療・介護の分野での高齢者の負担増が多く、①一定の所得のある70歳以上を対象とした医療費の自己負担上限引き上げ ②後期高齢者医療制度保険料の自己負担増加 ③高齢中所得者の介護保険サービスの利用者負担上限引き上げ が盛り込まれ、菅官房長官が12月22日の記者会見で「社会保障と財政を持続可能にすることができるようにするということは当然」として、翌年度以降も医療・介護での負担増は避けられないとの考えを早くも強調したそうだ。

 しかし、この政策は、“社会保障”と“財政”を持続可能にするどころか社会保障の機能を失わせ、「高齢者は国民負担になるから、次世代のために早く他界してくれ」と言わんばかりだ。これは、憲法25条の「①すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する  ②国はすべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない」という国民の生存権と国の社会的任務を定める規定に反する。

 また、(3)で書くとおり、もともと少ない高齢者の可処分所得を削り、生産年齢人口にあたる健康な人のために景気対策と称して資本生産性の低い大きな財政出動を行って国全体の労働生産性を落としつつ、今後人口における割合が高くなる領域(一番上の右端のグラフ参照)の消費を抑えてGDPの増加(=経済成長)を阻害している点で、賢くない政策である。

(3)GDP算出方法の基準変更と実質GDPが増えない理由
 異次元の金融緩和や莫大な財政支出による景気対策を行っても、*2-1のように、実質国内総生産(GDP)の成長率は2%に満たず、①個人消費などの内需は弱くて輸出が牽引している構図に変わりない ②企業の設備投資が下方修正された ③民間在庫の減少も下押し要因となった とのことである。私は、①は税と社会保障の一体改革で人口の25%を占める65歳以上の消費を抑制した影響が大きく、その結果、国内消費が冷え込んだため、②③のように国内投資が抑制されたのだと考える。

 また、内閣府はGDP算出方法の国際基準変更に伴って、今回から研究開発費を投資に追加する変更を行い、過去分にさかのぼって数値を修正したところ、設備投資は速報値の前期比0.03%増から0.4%減と悪化し、GDPの6割を占める個人消費は0.1%増から0.3%増に改善したそうで、内閣府が国際基準の変更に伴ってGDPの計算方法を見直した結果、2015年度の名目GDP確報値は532兆2千億円になり、基準変更の影響だけで2015年度の名目GDPは旧基準と比較して31兆6千億円拡大して、安倍政権が目標として掲げる名目GDP600兆円に近づいたそうだ。しかし、これは尺度の変更にすぎない。

 このうち最も大きな変更点は、今まで費用とされてきた研究開発費を付加価値を生む投資としてGDPに加えるようになったことで、これによる名目GDPへの上乗せ効果が研究開発費だけで19兆2千億円あるそうだが、研究開発に失敗はつきもので研究開発費のすべてが付加価値を生む投資になるわけではないため、私はこの認定は甘すぎると考える。国際会計基準(IFRS)では、研究開発投資について合理的な根拠がある場合(新商品に繋がる可能性が高く、その際に特許権・商標権等が生じるなど)に限って資産性を認めて資産計上できることになっている。

 なお、*2-2に書かれているとおり、新基準では統計の基礎となる産業連関表を実勢に近い2011年分に切り替えるそうだが、日本の産業連関表は、第二次産業(製造業)が細かく分析されているのに対し、第一次産業(農林漁業、鉱業)や第三次産業(サービス業)が大雑把にしか扱われていない点で時代についていっていないため、これを改善すべきだと、私は考える。

 何故なら、先進国で高コスト構造の日本は、既に製造業による加工貿易に適した国ではなく、そのような国で雇用吸収力の高い産業は国内向けの財・サービスを生産する産業で、実際にそれらのGDPに占める割合が高くなっているからだ。さらに、人口に占める割合の高い高齢者向けの需要は増え、日本で高齢者向けの洗練された財・サービスを開発すれば、それは後に続く他国へも輸出可能な筈である。

 なお、日本で輸出を伸ばせる産業には、これまで重視してこなかったため伸びしろが大きく、工場のように移転できない農林漁業と関連食品産業、鉱業、現代の技術を取り入れた伝統産業などもある。

 そのため、(2)の予算のように、高齢者から可処分所得を巻き上げ、高齢者がQOLを高くするために自由に選択して消費することを不可能にし、それによって高齢者向けの洗練された財・サービスの開発を妨げて、一方でグローバル化と称して農業を犠牲にして自動車の輸出を計るのは、過去のやり方を繰り返そうとしているだけで現在と将来を見すえていないため愚かである。

(4)高齢者に対する給付減・負担増は日本経済にマイナスであること
1)年金について

“改革”の工程   圧縮案   年金“改革”の内容    賃金スライド    “改革”の理由
         2016.11.24   2016.10.13      2016.12.3  
           佐賀新聞      毎日新聞       西日本新聞

(図の説明:一番右の表のように少子化で支え手が減るという理由で、一番左の表のように年金・医療・介護などの高齢者向け社会保障は給付減・負担増ばかりだが、これでは社会保障の機能を果たさない。そのうち年金に関する支給開始年齢の引き上げはよいと思うが、仕事も蓄えもなければ生活保護に頼らざるを得ないため、70歳くらいを年金支給開始年齢(=定年)として、それ以前に健康で仕事がない人には失業保険で対応するのがよいと考える。なお、年金については、受託者が失敗した徴収・管理・運用の責任を国民に押し付け、受給額引き下げや賃金スライドまで取り入れて減額に専念しているが、このままでは今後も同じことが繰り返される。そのため、組織の見直しでお茶を濁すことなく、年金に退職給付会計を採用して要積立額の数理計算を行い、年金受給者のための徴収・管理・運用を徹底すべきだ)

 
 各国の公的年運用        日本は積立金運用方針変更で赤字     厚生年金未加入者

(図の説明:公的年金の積立金運用は、アメリカでは100%債権であり、そうでない国もあるものの、金融技術が進んでいるのはアメリカだ。私も、老後資金であり喪失できない年金積立金の運用は、元本が減らないような割合(80%以上)で債権による運用をすべきだと考えているが、日本では年金積立金をリスク資産に振り向けた結果、大きな赤字を出し、積立金のさらなる減少を招いた。なお、物価上昇や低金利は債権での運用に不利だが、そもそも物価上昇や異常な低金利は国民生活を害する経済政策なのだ。また、利子率は労働生産性や資本生産性などの生産年齢人口の稼ぎ方に依るため、日本は労働生産性や資本生産性を上げるような予算の使い方をしていない点でも政策が間違っている。なお、日本では厚生年金に加入できない人が多く、老後の生活に不安があるが、これらの人も厚生年金に加入させれば、厚生年金財政も少し楽になる)

 日経新聞は、2016年12月8日に経済教室で、*3-1のように、中央大学教授の山田氏の見解を掲載しているが、このように高齢者は金を使わないと言うのが、現在言われている高齢者からは金を巻き上げてよいとする根拠だ。しかし、この感覚は全く変である。

 その内容は、「①欧米と違い、家族の制約から高齢者はお金があっても消費に回さない」「②日本では家計を妻が管理しており、引退後も夫は自由に金を使えない」「③団塊世代の夫婦年齢差は平均4歳で平均寿命も6歳ほど女性が長く、妻は夫が亡くなった後の10年を1人で生活しなければならないため、金を夫に使わせたくない」「④日本では夫婦共通の趣味を持つ高齢者が少なく、共通の趣味を楽しむために2人で金を使う夫婦は少数」「⑤夫婦仲も欧米に比べて良いとは言えず、自分の趣味のために夫婦のお金を使うと相手に嫌がられる」「⑥高齢者は子との関係が悪化することに不安をもっており、資産のない高齢者は子との関係が疎遠になりがちなため、資産がなくなったら子から見捨てられるかもしれないという不安がある」「⑦そのため、金を持っていようという高齢者が増える」「⑧日本では、病気や介護状態が長期化した時、中流生活を維持しようとすれば、ヘルパーなど余分な費用がかかるので、可能性は低くてもそういう状態になった時に困らないように、お金を取っておこうとする」などと書かれている。

 このうち、①は間違いで、⑧の医療・介護需要は必需品の消費だ。そして、高齢者は医療・介護が必要になった時に、あてにできない子に頼らなくてもよいように蓄えを持っておこうとしているというのが正しい。さらに、③のように一人で生きなければならない期間に年金が減らされて貧困に陥るのを避けるため、②のように無駄遣いをしないようにしているのだ。また、④⑤は一般化できず、⑥⑦のように子との関係維持のために資産が必要だというのは、よほど子の教育が悪かった人だろう。

 そのため、私は、意図的に高齢者の消費を抑えなければ、堺屋氏の言うように高齢者が多く消費する時代が来て、洗練された高齢者のニーズが新たな財・サービスの開発に繋がると考える。

 しかし、*3-1のような世論を作った上で、将来の年金水準確保が狙いだとして、*3-2のように、政府は、「物価が下がった場合だけでなく現役世代の賃金が下がった場合にも高齢者への年金支給額を減額する」という新ルールを作って高齢者への年金支給額抑制を強化した。これにより、*3-3のように、国民年金の支給水準が現行より最大0.6%下がり、将来世代の受け取りが最大0.6%上昇する計算だそうだが、このような単純な算術しかできない人が日本経済を考えたり年金の設計をしたりするのが、大きな間違いなのである。

 なお、中小企業の従業員や非正規社員も、本来は厚生年金に加入しなければ老後の生活に困るため、ここを厚生年金に加入させることは、本人のためである同時に、年金財政上も重要である。そして、年金で生活できなければ貯蓄を増やさざるを得ず、貯蓄がなければ生活保護受給者になるのだ。

 また、私は、*3-4の「年金運用巨額赤字 国民に失敗のつけを回すな」という琉球新報の社説に同感で、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)がリスク資産への投資を増やして、2015年度の運用損が5兆円を超える巨額赤字になる見通しだというのは失策だと考える。そして、ここまで大きな責任に対し、誰かが引責辞任したからといって、国民にとっては何の役にもたたない。

 さらに、*3-5のように、厚労省は、75歳以上の後期高齢者医療制度で保険料徴収システムの不備があり、2008年度の制度発足時から全国的に計算ミスで保険料を過大・過小に徴収し、ミス発覚から5年間も放置していたとのことだが、これがこれまでにも多かった厚労省の杜撰さで、民間企業ならとっくに倒産しているところだ。しかし、2年を超えて請求のなかった債権債務は、短期消滅時効にかかるため請求はできない。

 なお、*3-6のように、国民年金・厚生年金を受け取るのに必要な受給資格期間が25年から10年に短縮されたのは、少し進歩だ。しかし、本来は、短い期間でも年金保険料を支払った人は、支払期間と支払金額に応じて年金を受けとれるようにするのが公正で、今まで支払期間が25年に満たないとして年金が支払われなかった分は、国の不当利得になっていたのである。

2)医療・介護について

“改革”の工程   圧縮案    医療の高額療養費    介護負担   65歳以上の介護保険料
          2016.11.24   2016.12.16 
           佐賀新聞      東京新聞

(図の説明:高齢になると病気が増えるので医療・介護費がかさむが、働いている期間は病気もしないのに保険料を支払っているので、これによって保険制度が成立するわけである。そのため、高齢者のみが入る後期高齢者医療制度を作るなどというのは、保険を理解していない人のすることだ。また、高齢になると医療・介護の出費がかさむため、大金持ち以外は75歳以上の窓口負担を1割にしたり、高額医療費の上限を低くしたりするのが当然で、支払上限は医療・介護の双方を足した金額も考慮して決めるべきだ。また、救急で近くの専門医に運んでもらったり、深刻な病気でセカンド・オピニオンをとったりする場合もあるため、かかりつけ医以外を受診すると追加負担させるというのも先進国のすることではない。さらに、入院した際に部屋代以外に高熱水費をとられるのは、ホテル代を支払う時に高熱水費を別に請求されるのと同じくらい違和感がある。そして、こうまでしてたった数百億円を節約するために既に法案提出の準備を終わったというのだから呆れる。さらに、介護については、2000年(平成12年)4月に始まったばかりで、まだ軌道にさえ乗っていないのに、上限引き上げ・利用料引き上げ・保険料引き上げ・サービスカットなど負担増・給付減の話ばかりで、40歳以上からしか介護保険料を徴収せず、利用者の年齢も制限しているという不合理で変則的な制度については改善していない。つまり、他では兆円単位の無駄遣いをしながら、命を支える医療・介護には数百億円単位でケチケチしており、倫理に反する)

 来年度から順次実施される医療保険と介護保険の見直し案が、*4-1のように決まり、それは高齢者に負担増を求める内容で、①医療は70歳以上で現役並みに所得のある人の月毎の負担上限額を現役世代と同水準に引き上げ ②75歳以上の保険料を本来より軽減している特例も段階的に縮小し ③介護では、現役並み所得者の利用者負担を2割から3割に引き上げる ④現役よりも所得の少ない人も、住民税が課税されていれば月毎の負担上限額を医療並みに上げる とのことだ。

 さらに、*4-1には、会社勤めの人の保険料は、大企業の社員は重く、中小企業の社員は軽くなると書かれている。見直しの根底にあるのは、大企業・高額所得者という分類を設けて負担を重くすることだが、「大企業」を分ける意味はなく、「現役並み」とする境界も低すぎる。また、所得の再分配は累進課税で既に行っているため、同一サービスを同一対価で受けられないのはむしろ差別にあたる。その上、高齢者は支えてもらう側というのも、働いている期間に多額の保険料を払って来た人にとっては失礼な話だ。さらに、悪影響を受けるのが高齢者だけならよいとする発想はあくどい。

 つまり、*4-2のように、高齢者の命に関わる支えをはずし、高齢者の生活を脅かす改悪をして公正さを損ないながら、社会保障費でたった1400億円を抑制するよりも、(2)に記載したとおり、抑制すべき桁違いに多額の無駄遣い予算がいくらでもあるのだ。

 さらに、*4-4のように、医療費と介護費の毎月の自己負担額にそれぞれ上限を設ける「高額療養費制度」「高額介護費制度」も上限を上げるそうだが、医療費で高額療養費制度を適用されるような高齢者は、介護も受け続けなければならないケースが多く、高齢者の収入から両方を支払うのは年収370万円(=月収約31万円だが、介護保険料や水光熱費は必ず引かれる)だったとしても容易ではないだろう。そのため、医療費と介護費を合計した上限も設定すべきである。

 また、*4-3のように、厚労省は、2017年度から予定する公的医療保険制度の見直しで、75歳以上の後期高齢者医療制度で、所得が比較的低かったり扶養家族だったりした人も保険料の特例軽減を廃止して段階的に引き上げ、70歳以上の医療費優遇措置も縮小して、国費350億円の抑制を見込むそうだが、小さな効果のために高齢者の生活を脅かすのはいい加減にすべきだ。

 そして、診療報酬削減も繰り返した結果、*4-5のように、地域医療が崩壊の危機に瀕し、居宅・特別養護老人ホーム・有料老人ホーム・介護老人保健施設のニーズの見直しが進んでいるが、高齢化が進んでいる農村で、住民が住み慣れた土地で安心して暮らし続けられるためには、医療・介護の一体化が欠かせず、地域包括ケアを根付かせることができるかどうかが地域医療の試金石となるそうだ。

 なお、日本農業新聞が、*4-6の2016年11月13日に書いているとおり、介護の必要度が比較的軽い「要介護1、2」でも、社会的入院をせず自宅療養するためには在宅支援サービスの生活援助が不可欠であるため、介護保険が縮小されると介護利用者の不安が頂点に達するそうだ。そのため、現在でも足りないくらいの介護費用を数百億円削り、健康な生産年齢人口の人に対して景気対策と称する数兆円規模の無駄遣いをするのは不適切である。また、年中、制度変更と削減を繰り返されると、介護主体も経営が安定せず混乱する。その上、介護や生活支援のように毎日必要とされる重労働に報酬で報いることなく、善意のボランティアで済ませようとするのは、介護や家事労働を馬鹿にしている人の発想だ。

<国の財政支出、借金>
*1-1:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20161218&ng=DGKKZO10806150X11C16A2NN1000 (日経新聞 2016.12.18) 来年度予算 改革の切れ味鈍く、歳出、社会保障膨らむ/歳入、薄氷の国債減額
 政府は2017年度予算案で一般会計の歳出総額を97兆円台半ばとする方針だ。5年連続で過去最高を更新する。国債の想定金利を過去最低の1.1%に据え国債費を抑えたが、高齢化で社会保障費の膨張が続く。歳入面では税収が16年度当初予算並みの水準にとどまると想定し、新規国債の発行額は16年度の34.4兆円をわずかに下回る薄氷の減額となる。麻生太郎財務相らが19日に関係閣僚と折衝し、沖縄振興や政府開発援助(ODA)、教職員定数など残された課題の予算規模や方針を詰める。22日に閣議決定し、来年の通常国会に提出する。歳出総額は前年度の96.7兆円から増やし、97.4兆~97.5兆円とする案を軸に最終調整している。夏の概算要求の段階で高齢化による自然増を6400億円と見積もった社会保障費は、中高所得者の高齢者の医療・介護分野の負担を増やし5000億円増に抑えた。その一方で、子育てや介護、年金などの充実策には新たに3000億円程度を投じ、働き方改革の予算には前年比3割増の2100億円を充てた。ミサイル防衛などを強化する防衛費は過去最高の5.1兆円に増やし、4020億円を充てた土地改良事業を含む公共事業費は5年連続増の6.0兆円とした。今年度第2次補正予算案で追加支出した農林水産関係費は20億円減の2.3兆円に、文教・科学技術振興費も微減の5.4兆円とした。一般歳出以外の経費では、財務・総務両省が地方交付税交付金を前年比3000億円増の15.6兆円前後とする方向で詰めの協議を進めている。国債費は国債の想定金利を過去最低の1.1%に据えた。5000億円程度の抑制効果があり、国債費全体でも16年度当初の23.6兆円を最大1000億円下回る。歳入面では、今年度第3次補正で税収見積もりを1.7兆円下方修正する影響で、来年度税収が今年度当初比1000億円増の57.7兆円にとどまる。歳出の伸びと比べ、税収の伸びが鈍かったため、外国為替資金特会などの運用益などの税外収入を確保し、16年度の4.7兆円から5兆円超に大幅に伸ばす方針だ。この結果、財源不足を穴埋めする新規国債の発行額は16年度の34.4兆円を数百億円程度下回る見通しだ。ただ、国債減は想定利率の大幅な引き下げや税外収入の確保といった特殊要因の寄与度が大きく、減額幅は安倍政権発足後ではもっとも小さくなった。

*1-2:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12719390.html (朝日新聞 2016年12月23日) 膨張予算、歯止め遠く 来年度、過去最大97.5兆円案決定
 政府が22日に閣議決定した2017年度予算案は、5年連続で過去最大になった。高齢化で年金や医療など社会保障費が膨らむ中、防衛費や公共事業費も増える。一方、ここ数年は数兆円伸びていた税収は、16年度当初比で1080億円の微増にとどまる。一般会計の歳出総額は97兆4547億円。歳入穴埋めのための新たな国債(国の借金)発行額は34兆3698億円となった。16年度当初より622億円減らすが、17年度末の国債の残高は2・4%増の865兆円に膨らみそうだ。税収は、政府の17年度の経済成長率見通し(名目2・5%、実質1・5%)が前提。米大統領選後の円安・株高も織り込んでおり、世界経済の動向によっては想定通りの税収が得られない可能性もある。社会保障費も1・6%増の32兆4735億円で、過去最大を更新した。一部の負担増で自然増を圧縮しつつ、「1億総活躍社会の実現」として、保育士や介護職員などの処遇改善には952億円を充てた。防衛力強化に向け、防衛費も過去最大の5兆1251億円とした。海上保安庁の予算は要求を上回る2106億円を認めた。公共事業費も、5年連続で前年度を上回った。政府は、16年度より新たな借金はわずかに減らせたことから、「経済再生」と「財政再建」を両立できたとする。だが、税収は伸び悩み、新たな借金に頼らない財政という20年度の目標は遠のいた。

*1-3:http://www.tokyo-np.co.jp/article/economics/list/201612/CK2016122302000143.html (東京新聞 2016年12月23日) 安倍カラー 暮らしにツケ 17年度予算案 閣議決定
 政府が二十二日に閣議決定した二〇一七年度予算案の一般会計の歳出総額は九十七兆四千五百四十七億円で、五年連続で過去最大になった。防衛費は五年連続で増やし五兆一千二百五十一億円と過去最高を更新。一方で社会保障費は増加を抑えるなど、安倍政権の姿勢を反映した予算のしわ寄せは、国民の暮らしに及んでいる。
◆膨張
 「わが国を取り巻く厳しい安全保障環境の下で、防衛の質と量をしっかり充実させることが必要だ」
 稲田朋美防衛相は二十二日の記者会見で強調した。一七年度予算案では防衛費が過去最高額を更新。予算額は一六年度当初比で1・4%増の五兆一千二百五十一億円に膨れあがった。押し上げ要因として浮かび上がるのは、米国製の高額な武器を積極的に購入していることだ。最新鋭ステルス戦闘機F35六機の取得費計八百八十億円、新型輸送機オスプレイ四機の取得費計三百九十一億円、無人偵察機グローバルホーク一機の組み立て費百六十八億円…。米国から買う武器で一七年度予算案に盛り込まれた総額は三千五百九十六億円に上る。四千億円台だった一五、一六年度よりは減ったが、一四年度の千九百五億円を大幅に上回る高水準だ。F35を巡っては、トランプ次期米大統領が「計画も費用も制御不能だ」と批判し、米国防総省による購入費の削減に取り組む考えを表明。日本政府内にも「高額であることは間違いない」(高官)との意見がある。
◆圧迫
 一方、歳出の三分の一を占める社会保障費の伸びを少しでも抑えるため、医療や介護などの分野で国民の暮らしを圧迫するメニューはめじろ押しだ。一定の所得のある七十歳以上を対象とした医療費の自己負担上限を引き上げることや、後期高齢者医療制度の保険料の自己負担を段階的に増やすこと、さらには、中所得者を対象に介護保険サービスの利用者負担上限を高くすることなどが盛り込まれた。菅義偉官房長官は二十二日の会見で「社会保障と財政を持続可能にすることができるようにするということは当然。不断の取り組みが大事だ」と話して、翌年度以降の予算編成でも医療や介護での負担増が避けられないとの考えを早くも強調した。歳出は拡大していく一方だ。公共事業は老朽インフラの更新などで五兆九千七百六十三億円と微増ながら増加を続け高止まりだ。中でも五年連続で増やした防衛費は五兆円を突破しただけでなく、一六年度第三次補正予算案でも千七百六億円を計上する大盤振る舞いだ。高齢者の医療や介護では自己負担の増加を求める一方で、防衛費や効果が見えない「アベノミクス」の柱である公共事業を優先-。安倍政権の「本音」がより鮮明になった予算の姿を浮かび上がらせている。

*1-4:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/376438 (佐賀新聞 2016年11月14日) 国の借金1062兆円 過去最大、国民1人837万円
 財務省は、国債と借入金、政府短期証券を合計した9月末時点での「国の借金」が1062兆5745億円に達し、過去最大を更新したと発表した。国民1人当たり約837万円の借金を抱えている計算になる。高齢化で増え続ける社会保障費を賄うため、借金が膨らんだ。経済対策の財源として建設国債などを発行するため、2016年度末には1119兆3000億円程度になると財務省は見込んでいる。これまでは15年6月末の1057兆2235億円が最大だった。今年6月末からは9兆1069億円増えた。9月末の借金の内訳は、国債が926兆1383億円に上り、6月末に比べ7兆6619億円増加した。金融機関などからの借入金は9749億円増えて53兆6869億円。一時的な資金不足を穴埋めする政府短期証券は4701億円増の82兆7493億円だった。

*1-5:http://qbiz.jp/article/100680/1/ (西日本新聞 2016年12月25日) 過労死ない社会、母の願い 電通社員自殺1年で手記
 電通の新入社員、高橋まつりさん=当時(24)=が長時間労働の末、自殺してから25日で1年を迎え、母の幸美さん(53)が、電通の役員や幹部に「まつりの死に対して心から反省をして、見せかけではなく本当の改革を行い、二度と犠牲者が出ないよう決意していただきたい」と求める手記を公表した。「仕事のために不幸になったり、命を落としたりすることはあってはならない」とも記述。最後を「日本の働く全ての人の意識が変わってほしい」という一文で締めくくっており、過労死を招く社会の在り方を考え直すことを求める内容となっている。まつりさんが命を絶ったのは、昨年12月のクリスマスの朝。幸美さんは娘を失った喪失感を「あの日から私の時は止まり、未来も希望も失った。息をするのも苦しい毎日。朝、目覚めたら全て夢であってほしいと思い続けている」とつづる。夫と離婚後、静岡県で働きながら育て上げたまつりさんについて「困難な境遇でも絶望せず、10歳の時に中学受験をすると自分で決めた時から夢に向かって努力し続けた」と振り返り、電通に入社後も「期待に応えようと手を抜くことなく仕事を続けたのだと思う」と推察。「あの時、会社を辞めるよう強く言えばよかった。母親なのにどうして助けられなかったのか」と後悔を吐露している。今年9月にまつりさんの自殺が労災認定されると、東京労働局などが電通への強制捜査を実施。折しも政府の働き方改革実現会議の議論も進んでおり、長時間労働を抑制する機運が高まっている。こうした状況について、幸美さんは「まつりの死が、日本の働き方を変えることに影響を与えているとしたら、それは、まつり自身の力かもしれない」とする一方、「まつりは生きて社会に貢献できることを目指していた。そう思うと悔しくてならない」「本当の望みは娘が生きていてくれること」とも書いてあり、抑えきれない悲しみが伝わってくる。
   ◇   ◇
●午後10時全館消灯…改革半ば
 昨年12月に自殺した電通社員、高橋まつりさんの母幸美さんが、悲痛な思いをつづった手記を公表した。まつりさんは昨年春、電通に入社。東大在学中に就職先として広告大手を選んだのは「一流企業に就職し、お母さんを楽にしてあげたい」という思いがあったから。入社後はインターネット広告などを担当した。しかし、昨年10月に本採用になると業務が激増。月100時間以上の残業も強いられた。「死にたいと思いながらこんなストレスフルな毎日を乗り越えた先に何が残るんだろうか」。亡くなる直前まで書き込み続けたツイッターの文面を見ると、今となってはSOSにしか映らない。若者の雇用問題に取り組むNPO法人「POSSE」の今野晴貴代表は「企業の自主的取り組みだけでなく、長時間労働の法規制まで踏み込むべきだ」と、政府に注文を付けた。電通は午後10時以降の全館消灯を始めるなど改善に取り組むが「みんな仕事を持ち帰るようになっただけ」(20代社員)という声もあり、改革は道半ばのようだ。「会社の深夜の仕事が東京の夜景をつくっている」。まつりさんは生前、深夜残業がまん延している異常さを、こんな表現で幸美さんに伝えていたという。「制度をつくっても、人間の心が変わらなければ改革は実行できない」。幸美さんが突き付ける言葉が重く響く。
■電通社員の過労自殺 2015年4月に電通に入社した高橋まつりさんが、同年12月に東京都内の社宅から飛び降り、24歳で亡くなった。三田労働基準監督署は、長時間労働が原因として16年9月に労災と認定。まつりさんは自殺前「本気で死んでしまいたい」「もう体も心もズタズタだ」などの思いを会員制交流サイト(SNS)などに書き込んでいた。

<GDP>
*2-1:http://qbiz.jp/article/99717/1/ (西日本新聞 2016年12月9日) GDP下方修正、年1.3%増 内需低調、輸出頼み続く 7−9月期改定値
 内閣府が8日発表した7〜9月期の国内総生産(GDP、季節調整値)の改定値は、物価変動を除いた実質で前期比0・3%増、このペースが1年間続くと仮定した年率換算は1・3%増で、速報値の年率2・2%増から下方修正した。3四半期連続のプラス成長だが、個人消費など内需が弱い中で輸出がけん引する構図に変わりはなく、景気は力強さを欠いている。速報後に公表された法人企業統計を受けて企業の設備投資が下方修正され、民間在庫の減少も下押し要因となった。内閣府は国際基準の変更に伴い、今回から研究開発費を投資に追加するなどGDPの算出方法を変更。過去分にさかのぼって数値を修正した。改定値の内訳をみると、設備投資は速報値の前期比0・03%増から0・4%減と悪化。不動産業や鉄鋼業などで減り、2期ぶりのマイナスだった。GDPの6割を占める個人消費は0・1%増から0・3%増に改善。内閣府は「テレビや飲料販売、宿泊施設関連の増加がプラスに寄与した」と説明する。一方で、大和総研の長内智氏は「引き続き内需に力強さが欠けている点には留意しておく必要がある」と指摘する。輸出は速報値の2・0%増から1・6%増に下方修正されたものの2期ぶりに増加。実質GDPへの影響を示す外需の寄与度は0・3%と、押し上げ効果をもたらした。トランプ次期米大統領の政策が見通せないことなど、世界経済を巡る「不確実性の高い状況は続く」(黒田東彦日銀総裁)中で、今後も輸出が成長を主導できるかは流動的といえる。景気実感に近いとされる名目GDPは前期比0・1%増、年率換算0・5%増で3期連続の増加だった。
   ◇   ◇
●名目GDP31兆円拡大 15年度、国際基準見直しに伴い
 内閣府は8日、国際基準の変更に伴って国内総生産(GDP)の計算方法を見直した結果、2015年度の名目GDP確報値は532兆2千億円になったと発表した。安倍政権が目標として掲げる名目GDP600兆円にやや近づいた形だ。内閣府は新基準の採用に合わせ、GDPを過去22年分にさかのぼって改定した。16年7〜9月期の実質GDPは速報値に比べ下方修正されたが、内閣府は「基準改定による影響は分からない」と説明している。計算方法の見直しは、統計の精度向上が目的だが、基準変更に伴う影響だけで15年度の名目GDPは旧基準と比べ24兆1千億円拡大した。今回、約5年に1回実施している基準改定や、統計の基礎となる産業連関表の切り替えも行った。これらの影響も含めると、15年度の名目GDP確報値は旧基準の推計値から31兆6千億円増えた。GDPは一定期間に国内でつくり出されたモノやサービスの付加価値の合計額だ。計算方法は国連が定める国際基準を基に各国が決めている。今回の見直しは国際基準が08年に刷新されたことに対応したもので、日本では16年ぶりの大幅改定になる。もっとも大きな変更点は、これまで費用とされてきた研究開発費が付加価値を生む投資と認められ、GDPに加えるようになったことだ。名目GDPへの上乗せ効果は研究開発費だけで19兆2千億円あった。この他に、特許使用料や不動産の仲介手数料、防衛装備品なども加算された。

*2-2:http://www.nikkei.com/article/DGXLASFS08H0R_Y6A201C1MM0000/?dg=1&nf=1 (日経新聞 2016/12/8) 15年度の名目GDP、31兆円かさ上げで532兆円、基準改定、研究開発費など加算
 内閣府が8日発表した2015年度の名目国内総生産(GDP)の確報値は532.2兆円となった。研究開発費の加算など新たな基準に切り替えた影響などで、31.6兆円かさ上げされた。旧基準では500.6兆円に相当する。安倍晋三首相は20年ごろまでに名目GDPを600兆円に増やす目標を掲げており、100兆円の開きが一気に縮まることになる。新基準は統計の基礎となる産業連関表を、実勢に近い11年分に切り替える。これまでは05年分を使っていた。また国連の最新の基準を使い、推計方法も見直し、1994年まで遡って再計算した。GDPの押し上げに大きく影響したのは研究開発費で、それだけで19.2兆円上振れした。これまでは「経費」として扱ったが「投資」とみなしてGDPに加えた。このほか、特許使用料の加算が3.1兆円、不動産仲介手数料の加算が0.9兆円のかさ上げ要因になった。新基準への切り替えで、16年7~9月期の名目GDPは季節調整済みの年率換算で537.3兆円となり、過去最高を更新した。旧基準では日本経済がデフレに陥る直前の1997年10~12月期の524.5兆円(新基準では536.6兆円に相当)がピークだった。

<年金>
*3-1:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20161208&ng=DGKKZO10386900X01C16A2KE8000 (日経新聞 2016.12.8) 経済教室:家族の衰退と消費低迷(7)高齢者のお金は消費に回らず 中央大学教授 山田昌弘
 今回は高齢者の家族状況と消費との関連を示しましょう。10年ほど前、堺屋太一氏と対談したとき、堺屋さんは「これから高齢者消費の黄金時代が来る」と言われました。堺屋さんが名付けた「団塊の世代」が退職する。資産があり、年金もまだ高水準、時間も十分にある高齢者が消費市場に出てくるというのです。しかし、筆者は、欧米と違い、日本では「家族のあり方」が制約になり、次に挙げるいくつかの理由で、お金があってもなかなか消費に回らないのではないかと疑問を呈しました。まず、日本では通常、家計を妻が管理しています。筆者の調査では、現役世帯で4組に3組の夫婦が、夫は収入を全額妻に渡し、小遣いを妻からもらう形態をとっています。引退後も、財布のひもは妻が握るのが多数派です。すると、いくらお金があっても、夫は自由には使えません。団塊世代の夫婦年齢差は平均4歳で、平均寿命も6歳ほど女性が長くなっています。平均すれば、妻は夫が亡くなった後の10年を1人で生活しなければなりません。それを考えると、お金を夫に使わせたくないのです。さらに日本では夫婦共通の趣味を持つ高齢者は少なく、共通の趣味を楽しむために2人でお金を使う夫婦は少数派です。夫婦仲も欧米に比べて良いとは言えないので、自分の趣味のために夫婦のお金を使うと相手に嫌がられます。夫が引退後、田舎で暮らしたいと言っても、妻が反対して実現しないことが多いのです。子どもとの関係も問題になります。高齢者は子どもとの関係が悪化することに不安をもっています。現実に日本では、資産がない高齢者は子どもとの関係が疎遠になりがちです。これはいい悪いの問題ではありません。資産がなくなったら子どもから見捨てられるかもしれないという不安があるので、自分で使わずに持っていようという高齢者が増えるのです。また日本では、いざ病気や介護状態が長期化したとき、中流生活を維持しようとすれば、ヘルパーなど余分な費用がかかります。可能性は低くても、そのような状態になったときに困らないように、お金を取っておこうとするのです。

*3-2:http://qbiz.jp/article/100046/1/ (西日本新聞 2016年12月14日) 年金額の抑制強化へ、改革法成立 現役賃金下がれば減額
 年金制度改革法が14日午後、参院本会議で自民、公明両党や日本維新の会などによる賛成多数で可決、成立した。将来の年金水準を確保することを狙い、支給額の抑制を強化。毎年度の改定ルールを見直し、現役世代の賃金が下がれば高齢者への支給を減額する。中小企業に勤めるパートなどの短時間労働者は、労使が合意すれば厚生年金に加入できるようになる。現行制度では、支給額改定に際して高齢者の暮らしに大きな影響を与える物価の変動を重視している。2021年度以降は保険料の支払いで制度を支える現役世代の賃金を重視し、賃金が下がった場合は年金も必ず減額する。

*3-3:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/390819
(佐賀新聞 2016年12月28日) 年金新ルールで支給0・6%減 厚労省が試算公表
 厚生労働省は27日、先の臨時国会で成立した年金制度改革法に基づく支給額改定の新ルールが適用された場合の試算を公表した。リーマン・ショック時のような経済状況になり現役世代の賃金が下落すると、国民年金(老齢基礎年金)の支給水準は現行ルールよりも最大0・6%下がる。その分、将来受け取る世代は最大0・6%上昇する計算だ。支給額は毎年度、物価や現役世代の賃金を踏まえて改定されている。2021年度からは賃金が下がった場合は、その下落率に合わせて必ず減額するようルールが変更される。試算では、リーマン・ショックの影響を受けた08~09年度の賃金下落率を21~22年度に当てはめ、それ以降の支給水準を現行ルールと新ルールで比較した。賃金の下落は数年後の改定に反映される仕組みで、ルール見直しによる水準の低下は26年度に最も大きくなった。早い時期に支給水準が下がれば、その分、年金財政に余裕が生まれるため、現役世代が将来受け取る水準は上がる。43~44年度にかけての支給水準は新ルールの方が0・6%上昇した。

*3-4:http://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-251749.html (琉球新報社説 2016年4月6日) 年金運用巨額赤字 国民に失敗のつけを回すな
 政権の面目を保つために国民の資産を危険にさらすのは、もうやめにしてもらいたい。年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の2015年度運用損益が、専門家の試算で5兆円を超える巨額の赤字になる見通しが強まっている。安倍政権が金看板とするアベノミクスと連動した投資配分の変更が、いまや全て裏目に出た。GPIFが運用する約140兆円のうち、国内株式投資は25%、約35兆円とみられる。この半分、約17兆円を売りに出すだけでも市場の混乱は必至だ。損失拡大を防ぐ株式売却すらできない。まさに袋小路だ。国民の資産を守り、混乱を最小限に抑えるため、GPIFは緩やかな退却を模索する以外にない。GPIFの資産構成割合は、かつては比較的安全な国債60%、国内外の株式に12%ずつだった。2014年10月に資産構成割合を国債35%、国内外の株式で計50%へ変更したのは、日銀の大規模金融緩和により、国債の利回りが低下したことと株式市場が上昇基調にあったからだ。その後、市場が安定したのは、ほかでもないGPIFの資金が流入したからだ。株価を下支えしたのが国民の資産だった。ところが15年8月には中国を「震源地」とする世界同時株安が進み、日本市場も乱高下した。最終的に日経平均株価は15年度だけで2400円値下がりした。運用比率変更当初から複数のエコノミストが「年金運用の安定性が損なわれる」「年金資産が株価操作に使われる」と懸念したことが現実になった。GPIFの担当者は「長期的な視点で捉えてほしい」と言う。だが客観的に見れば、損失を出した当事者が責任を取らず、次世代に先送りしているとしか見えない。責任を取るべきは、株価上昇を演出するために国民の資産を相場につぎ込んだ安倍政権だ。しかも例年、6月末から7月上旬に発表している年度の運用実績を、ことしは参院選後の7月下旬に公表するという。選挙に影響しないよう公表を先送りする意図が見え、論外だ。政府は少子高齢化時代を見据え、年金給付抑制策を強化する。積立金が目減りすれば、つけは国民に回ってくる。政府は運用比率を見直すなど「長期的な視点から、安全かつ効率的」(国民年金法)な運用にかじを切るべきだ。

*3-5:http://www.saga-s.co.jp/news/national/10201/390597
(佐賀新聞 2016年12月27日) 厚労省、徴収ミス5年放置、後期医療、保険料6億円
 厚生労働省は27日、75歳以上が加入する後期高齢者医療制度で保険料徴収システムの不備があり、2008年度の制度発足時から全国的に計算ミスで保険料を過大、または過小に徴収していたと発表した。ミス発覚から5年放置していた。対象者の抽出などは来年1月以降に行うが、推計では約2万人、総額約6億円に上る可能性があり、取り過ぎた分は返還、不足分は追加徴収する。厚労省によると、11年から同省には制度を運営する都道府県の広域連合から正しい計算方法に関する問い合わせがあったが、個別対応で済ませ放置してきたという。

*3-6:http://mainichi.jp/articles/20161116/dde/007/010/037000c (毎日新聞 2016年11月16日) 無年金救済法.成立 加入期間短縮 新たに64万人受給
 国民年金や厚生年金を受け取るのに必要な加入期間(受給資格期間)を現行の25年から10年に短縮する改正年金機能強化法が16日、参院本会議で全会一致により可決、成立した。来年10月から約64万人が新たに年金を受けられるようになる見通しだ。受給資格期間は保険料を納めた期間や免除された期間を合計する。2015年10月に予定されていた消費税率10%への引き上げと同時に短縮する予定だったが、安倍政権による増税延期で先延ばしされていた。改正法は来年8月に施行。加入期間が10年以上25年未満の人は9月分の年金から受け取れるようになり、実際の支給は10月に始まる予定だ。無年金の人の救済につながる一方で、加入期間が短いと支給額は低く、将来低年金者が増えるとの懸念もある。国民年金の場合、加入期間が10年だと支給額は月約1万6000円、20年だと約3万2000円にとどまる。対象となるのは65歳以上の人と60代の前半から厚生年金の一部を受け取る人を合わせて計約64万人。費用は通年で約650億円。

<医療・介護>
*4-1:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12711673.html (朝日新聞社説 2016年12月18日) 高齢者負担増 将来像示し不安なくせ
 来年度から順次実施される医療保険と介護保険の見直し案が決まった。高齢者を中心に負担増を求める内容だ。医療では、70歳以上で現役並みに所得のある人の月ごとの負担上限額を、現役世代と同水準に引き上げる。75歳以上の保険料を本来より軽減している特例も段階的に縮小する。介護では、現役並み所得者の利用者負担を2割から3割に上げる。それより所得の少ない人も、住民税が課税されていれば月ごとの負担上限額が医療並みに上がる。会社勤めの人の保険料は賞与を含む収入に応じた負担とし、大企業の社員は重く、中小企業の社員は軽くなる。見直しの根底にあるのは「年齢を問わず、負担能力に応じた負担を求めていく」という考え方だ。4年前の社会保障・税一体改革大綱で示された方針だ。少子高齢社会のもと、社会保障費が膨らむ一方で、制度を担う現役世代は減る。高齢者は支えてもらう側、若い人は支える側という従来の考え方では、立ちゆかなくなる。高齢者でも負担ができる人には負担を求めることは必要だろう。ただ、生活の実態に照らして過重な負担にならないか、影響は丁寧にみる必要がある。とりわけ介護は、治療を終えれば負担がなくなる医療と違い、長期化する傾向にある。必要な介護サービスが利用できなくなれば、家族の介護のために仕事をやめる介護離職が増えてしまうかも知れない。影響を受けるのは高齢者だけでないことも、忘れてはならない。介護保険では、昨年夏に一定所得以上の人の利用者負担が1割から2割になったばかりだ。わずか1年あまりでさらなる引き上げを決めたのは、あまりに場当たり的との印象を与えた。負担はどこまで増えるのか。そんな先行きへの不安に応える改革の全体像と将来ビジョンを示すことが不可欠だ。政府は、社会保障費の伸びを抑えるために、さまざまな検討項目を示している。しかし、それらをどこまで、どう実施していく考えなのかが見えない。検討課題の一つだった軽度の人への介護サービスの縮小などは今回、見送りになった。今後、そうした給付の抑制にも踏み込むのか。給付の抑制が限界だというなら、今のサービス水準を維持するために、保険料や税の負担を増やすことも考える必要がある。サービスを担う人材の不足も深刻で、そのための財源も考えねばならない。社会保障制度の根本に立ち返った改革に取り組んでほしい。

*4-2:http://mainichi.jp/articles/20161216/ddm/002/010/128000c (毎日新聞 2016年12月16日) 社会保障費 1400億円抑制 高額療養など自己負担増
 厚生労働省は15日、自民党と公明党の部会で、2017年度予算で高齢化による社会保障費の自然増を約1400億円分抑制する案を提示し、大筋で了承を得た。焦点となっていた70歳以上の一般所得者(住民税が課税される年収370万円未満の人)が外来の窓口で支払う毎月の限度額を、現行の1万2000円から17年8月に1万4000円に引き上げる方針でまとまったほか、介護費の自己負担増、大企業に勤める会社員の介護保険料の引き上げなどによって抑制を図る。  医療費の毎月の自己負担額に上限を設ける「高額療養費制度」を見直し、約220億円を捻出する。70歳以上の一般所得者について、厚労省は当初2万4600円への引き上げを提案したが、引き上げ幅を圧縮し、年間上限額(14万4000円)も設ける。一方、18年8月には1万8000円に引き上げる。年収370万円以上の現役並み所得者は外来限度額を5万7600円とする。40~64歳の介護保険料は、収入に応じた計算方法「総報酬割り」による算出を段階的に導入し、収入の高い大企業のサラリーマンなどの保険料負担を増やす。来年8月の導入で500億円弱を確保する見通し。また、75歳以上を対象とする後期高齢者医療制度の保険料では、負担軽減のための特例を段階的に縮小し、180億円前後を確保する。介護保険で利用者の自己負担に上限を設ける「高額介護サービス費」は、住民税が課税される一般所得者の毎月の負担上限額を3万7200円から4万4400円に引き上げる。厚労省は17年度予算の概算要求で社会保障費の自然増を6400億円と見込んだが、財務省から最終的な増加を5000億円程度に抑えることが求められている。

*4-3:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/381488 (佐賀新聞 2016年11月29日) 75歳以上329万人に保険料軽減を廃止
 厚生労働省が2017年度から予定する公的医療保険制度の見直し案の全容が28日、分かった。75歳以上の後期高齢者医療制度では、所得が比較的低かったり、扶養家族だったりした人ら計329万人を対象に、保険料の特例軽減を廃止し、段階的に引き上げる。医療費の自己負担に月ごとの上限を設ける「高額療養費制度」でも、70歳以上の優遇措置を縮小する。厚労省は、後期高齢者医療と高額療養費の見直しで、17年度にそれぞれ国費350億円の抑制を見込む。30日の社会保障審議会の部会で提案し、来月上旬までに与党と調整して最終決定する。75歳以上が支払う保険料の軽減措置には(1)所得に応じた部分(2)定額部分-の2種類があり、合わせて900万人以上が対象となっている。このうち74歳まで専業主婦ら扶養家族だった人(169万人)の定額部分は、最大9割の軽減を17年度に5割に縮小。18年度には77歳以上で軽減を廃止し、保険料は現在の月380円から約10倍に引き上げる。所得に応じた保険料は現在徴収していないが、77歳以上は18年度から支払うようになる。また年金収入が年153万~211万円の160万人を対象に、所得に応じた保険料を5割軽減している特例も17年度に廃止する。定額部分を9~8・5割軽減する特例(約614万人対象)は、新たに75歳になる人を含め当面存続する。「高額療養費制度」では、70歳以上の上限を見直す。「現役並み所得」の人は、17年8月から外来医療費の月ごとの上限額4万4400円を5万7600円に引き上げる。18年8月からは特例を完全に廃止し、入院などを含めた世帯全体の上限も現役世代に合わせる形で引き上げる方針だ。

*4-4:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/389660 (佐賀新聞 2016年12月24日) 保険料増、介護3割負担 医療・介護制度見直し
■70歳以上の高額費上限額を引き上げ
 今回の見直しは、高齢者らの支払い能力に応じ、負担増を求めているのが特徴だ。医療では、患者の窓口負担が重くなりすぎないようにするため、月ごとの上限額を定めた「高額療養費制度」があるが、70歳以上を対象に上限額を段階的に引き上げる。年収370万円未満で住民税を課税されている人の場合、外来の上限額(月1万2千円)は2017年8月に1万4千円、18年8月には1万8千円になる。ただ持病などで通院している人は出費がかさむため、年間の上限額14万4千円(1万2千円の12カ月分)も新たに設けた。入院を含めた世帯当たりの上限額(月4万4400円)は5万7600円に上がる。年収370万円以上の人は、外来が月5万7600円に引き上げられた後、18年8月に上限がなくなる。入院を含めた世帯の上限額は18年8月以降、月8万100~25万2600円になる。後期高齢者医療制度に加入する75歳以上は、これまで特例で安くなっていた保険料が増える。所得が比較的低かったり、74歳まで夫や子らに扶養されたりしていた人が対象だ。このほか慢性疾患で医療療養病床に長期入院している65歳以上の人は、光熱水費の支払いが増える。18年4月以降は一律で1日370円(難病を除く)。介護では、サービスを主に利用する高齢者と、制度を支える現役世代が負担を分かち合う。現役並みに所得が高い高齢者は、18年8月から介護サービス利用時の自己負担が現在の2割から3割にアップ。さらに医療と同様に、月ごとの上限額(高額介護サービス費)も見直す。住民税が課税されている年収383万円未満の単身世帯などで、17年8月から上限額が7200円増えて月4万4400円に。収入が少ない世帯は3年間に限り、年間の上限額を据え置く。40~64歳が支払う保険料は、収入に応じた「総報酬割」と呼ばれる計算方式に変更。20年度までに段階的に導入し、大企業の社員や公務員の負担が増えることになる。
■高額医療・介護費、合算制度で払い戻しも 
あまり知られていないが、1年間(毎年8月から翌年7月)に支払った医療と介護の自己負担額を合算して、一定額を超えた場合は払い戻しを受けられる仕組みがある。「高額介護合算療養費制度」または「高額医療合算介護サービス費制度」と呼ばれ、市町村に毎年申請しないと利用できないので注意が必要だ。数十万円が戻ってくるケースもある。井戸さんは「手続きに手間がかかるが、分からないときは市町村の窓口で相談してほしい」と話す。

*4-5:https://www.agrinews.co.jp/p39294.html (日本農業新聞 2016年10月27日) 危機の地域医療 厚生連の包括ケア期待
 地域を支える医療が崩壊の危機にさらされている。都会と農村の医療格差は拡大する一方だ。日本農村医学会は未来の地域医療をテーマに27、28の両日、第65回学術総会を三重県志摩市で開く。JA厚生連病院の課題と試みを共有し、農村再生につなぐ。成果を期待したい。玉置久雄学会長(JA三重厚生連松阪中央総合病院名誉院長)は「地域医療について国や行政は対策を講じてきたが、むしろ医療の偏在化、格差は広がっている」と指摘する。総会の主催県・三重は人口当たりの医師数が全国平均より少なく、遠隔地ほど慢性的な医師不足が深刻だ。医師の高齢化は救急医療を制限せざるを得ない事態にまで追い込んでいる。国は増え続ける医療費の削減のため地域医療構想を各地で検討するよう指示している。効率化を求めた病床数の削減などが始まっている。これから厳しい診療報酬改定、消費税増税が待ち構えている。在宅医療については居宅、特別養護老人ホーム、有料老人ホーム、介護老人保健施設などの需要見直しが進む。その結果、地域の統廃合で病床数の削減の影響を最も受けるのは、農山村に立地する厚生連病院である。全国の厚生連病院の多くが地方にあり、変革を迫られるのは必至だ。地域医療の崩壊は、地域社会の崩壊につながる。人口流出を生み、若い世代のU・Iターンといった田園回帰の流れを阻みかねない。高齢化が進む農村では住民が住み慣れた地で安心して暮らし続けるための医療と介護の一体化が欠かせない。この地域包括ケアを根付かせることができるか、農村医療の試金石ともなる。玉置学会長は「将来の人口減を見据えれば立場の異なる地域の病院が限られた医療資源を補完し合うことも必要だ」とし、競争から協調へ、かじを切る時期が迫っていると言う。シンポジウム「地方から発信するこれからの医療」には三重、新潟、広島、愛知の厚生連病院の取り組みが発表される。医師・看護師不足の下、救急医療や在宅医療、地域包括ケアにどう取り組んでいるか、先進的な取り組みに期待したい。一般演題は540とこれまでにない応募数となった。終末期医療、大災害時の医療、看護教育、在宅ケア、病院食の地産地消など今日の課題を網羅する。市民公開講座には関心の高い認知症を取り上げた。家族を支えるための知識、認知症患者の安全対策について報告される。ポスター発表では、韓国農村振興庁が取り組む農業労災を予定している。総会後の29日には、日本農村医学会と韓国の主催で第8回日韓合同農作業安全シンポジウムが開かれる。韓国が国家資格として今年創設した「農作業安全指導士」制度が報告される。日本の参考となろう。地域医療、農作業安全に貢献する学会となることを望む。

*4-6:https://www.agrinews.co.jp/p39431.html (日本農業新聞 2016年11月13日) 介護保険縮小 利用者の不安 直視せよ
 2018年度の介護保険改正に向けた見直し議論が進んでいる。介護の必要度が比較的軽い「要介護1、2」のサービスを中心に削減する考えだ。現場の反発は強く、大幅な改正は見送る方向だが、年末の取りまとめに注視が必要だ。要介護度は軽い順から5段階に分かれる。見直し議論の焦点は軽度者向け在宅支援サービスで、訪問介護の生活援助など。厚生労働省は、ホームヘルパーが自宅を訪れて掃除や調理などを介助する生活援助を保険対象から外し、市町村事業へ移行する改革案を示した。この案に利用者や介護関連団体は猛反発している。「自宅で自立した生活を送るために欠かせないサービス」「サービスの質が変わることで重度化を招き、かえって介護費用が膨らむのではないか」など、制度変更を疑問視する声だ。既に前回の15年度改正で、要介護よりさらに軽度な「要支援」向けサービスの一部を保険から外し、市町村事業に切り替えた。移行期間を経て来年4月には全市町村で事業を開始しなければならない。介護保険にかかる費用を国の全国一律給付から市町村の独自事業とし、NPOやボランティアなど地域住民の活用によってコストを抑える狙いだ。しかし、実際は体制がなかなか整わない。そこに要介護1、2まで市町村に移行するとなると、これまでと同様のサービスを受けるのは難しい。介護の必要性は数値では測りきれない。「要支援」「要介護1、2」は一つの基準にすぎず、高齢者を取り巻く状況は千差万別である。介護の必要度が軽い人でも、独居であったり老夫婦世帯であったり、家族が介護できない状態であるかなどで異なる。例えば、認知症なら重度化を防ぐため介護保険サービスを続ける必要性が高くなる。暮らす環境も違う。住まいが過疎の山間部にあるのか、都会なのか。「要介護度」という物差しで一律に当てはめるのは難しい。利用者の状況に合った適切なサービスが行き渡る手法を模索するべきだ。高齢者は年を取るほど心身の調子が不安定になり、要介護度は変化しやすい。利用者の環境や状況を考慮した上で支え方を見極めなければならない。在宅介護で欠かせない視点である。介護の世界で懸念されるのが“2025年問題”だ。団塊世代が75歳を過ぎ、要介護者が急増し、社会保障財政が行き詰まる事態が予測される。少子高齢化は加速し、介護サービスのコスト削減、効率化は免れないだろう。肝心なのは本当に支援を必要としている人に、適切なサービスが提供できるかだ。既存のサービス縮小を論じるだけでは介護を必要とする人や家族の不安は募る。利用者が尊厳を保ち、安心して暮らせるよう、自立を支える支援の在り方について議論を深めるべきだ。


PS(2017年1月6日追加):日本老年学会は、*5のように、心身の若返りを理由に65歳以上とされている高齢者の定義を75歳以上に見直す提言を発表したそうだ。そのため、年金支給開始年齢と定年年齢を75歳にし、前提が覆る日が来るかもしれない。しかし、人に依って若さや健康状態は全く異なるので、「超高齢者」や「准高齢者」と呼び分ける必要はないだろう。なお、仕事を続けている高齢者の方が矍鑠(かくしゃく)としているのは、よく知られているところだ。


 国の歳入・歳出    社会保障費の抑制     介護費と介護保険料の推移 高齢者の定義
 2016.12.23      2016.12.23                          2017.1.6      
  佐賀新聞         東京新聞                             佐賀新聞

(図の説明:一番左のグラフのように、国家予算に占める社会保障費は大きいが、高齢者が仕事を続けて収入があるのでなければ年金や医療・介護の軽減を受けて支えられる側にならざるを得ない。しかし、一番右の図のように、高齢者の定義を75歳以上として65~75歳の人が働ける環境を整えれば、支える側になれるので、その前提が変わる。そのため、社会保障費を節約するには、70~75歳まで仕事を続けられる環境を整えるのが、誰にも無理がいかない。一方、国債の支払利子も大きいが、これは借り換えで節約できる。地方交付税は、それぞれの地方がエンジンとなる産業を持てば節減できる)

*5:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/392784
(佐賀新聞 2017年1月6日) 「高齢者」は75歳以上 身体若返り、学会見直し
 高齢問題の研究者らでつくる日本老年学会などは5日、現在は65歳以上とされている「高齢者」の定義を75歳以上に見直し、前期高齢者の65~74歳は「准高齢者」として社会の支え手と捉え直すよう求める提言を発表した。医療の進歩や生活環境の改善により、10年前に比べ身体の働きや知的能力が5~10歳は若返っていると判断。活発な社会活動が可能な人が大多数を占める70歳前後の人たちの活躍が、明るく活力ある高齢化社会につながるとしている。高齢者の定義見直しは、65歳以上を「支えられる側」として設計されている社会保障や雇用制度の在り方に関する議論にも影響を与えそうだ。学会は、年金の支給年齢の引き上げなど社会保障制度の見直しに関しては「国民の幅広い議論が必要だ」と強調している。提言をまとめた大内尉義(やすよし)・虎の門病院院長は「高齢者に対する意識を変え、社会参加を促すきっかけになってほしい」と述べた。平均寿命を超える90歳以上は「超高齢者」とした。学会によると、日本は50年以上前から国連機関の文書などに基づき、慣例的に65歳以上を高齢者としている。学会は、脳卒中や骨粗しょう症などの病気や運動のデータを解析。慢性疾患の受診率は低下し、生物学的な年齢が5~10歳若返っているとみている。知能の検査では、最も得点の高い世代が40代から50~60代に変化。残った歯の数も同一年齢で比べると年々増える傾向にあり、死亡率や要介護認定率は減少していた。国の意識調査で、65歳以上を高齢者とすることに否定的な意見が大半であることも考慮した。昨年9月の総務省の推計によると、65歳以上は約3400万人で人口の約27%。高齢者を75歳以上とした場合は約13%に半減する格好だ。准高齢者は、仕事やボランティアなど社会に参加しながら、病気の予防に取り組み、高齢期に備える時期としている。
=解説= 保障や雇用に影響も
 現行の社会保障や雇用・労働の制度は高齢者を65歳以上とすることを前提としているものが多く、今回の提言は制度の見直しにも影響する可能性がある。少子高齢化の中、働き手、社会保障の支え手を増やす議論は加速しそうだ。高齢者の急増で国の財政負担は重くなり、現状のまま制度を存続させるのは難しい。医療保険や介護保険では、高所得者への負担増などが相次いで打ち出されている。会社員らの厚生年金の支給開始年齢は、60歳から段階的に65歳に引き上げられている途中段階だ。高齢になっても働き続ける人が増えた。高齢者の定義を巡る国民の意識も変わりつつある。40歳以上を対象にした昨年の厚生労働省調査で「高齢者と思う年齢」を尋ねたところ「70歳以上」との回答が最も多く、41・1%で、「65歳以上」は20・2%にとどまった。「75歳以上」は16・0%だった。日本老年学会などは「提言は医学的なもの」と強調するが、提言がこうした流れを後押しする可能性もある。ただ、高齢者の負担増については、反発も大きく、見直しは容易ではない。


PS(2017年1月8日追加):*6のように、確かに病院や介護施設の食器も、趣のないプラスチックではなく、軽くて強い磁器があればよいだろう。なお、年末に、一年に一度の人間ドックに行ったところ、壁に素敵な絵がかかっており、有田焼で作った絵もいいのではないか思った。

*6:http://qbiz.jp/article/101294/1/
(西日本新聞 2017年1月8日) 熟練のろくろで「くるまおろし」 有田・深川製磁
 有田町幸平の深川製磁で7日、仕事始めとなる「くるまおろしの儀」があり、ろくろ師たちが熟練の技を披露した。神職による祝詞奏上や玉串奉納の後、この日89歳の誕生日を迎えたろくろ師、深川剛さんが「ようっ」と気合の声を上げながら土の塊からつぼを形作った。隣に座る剛さんの長男、聰(そう)さん(60)は直径65センチの大皿の仕上げにいそしんだ。深川一太社長(68)は年頭あいさつで欧州での発信拠点をミラノからパリに移したことに言及。「継続性ある海外ブランディングを展開したい」と話した。高齢化社会に応じた医療用食器や葬祭用具作りにも意欲を見せた。


PS(2017年1月8日追加):*7のように、輸入チーズは伝統に根ざした美味しさがあるが、日本産チーズも負けてはいない。例えば、カルシウムや鉄分を強化した製品やワサビ・ゆず・からしめんたい・アーモンドなどと混ぜて小さく包装した製品など、日本でしか作らないような逸品もあり、これらは、どこにでも輸出できるだろう。なお、牛乳・卵はアイスクリームにすると保存がきき食べやすいが、私は、まだハーゲンダッツ以上の日本産アイスクリームに出会ったことがない。しかし、アイスクリームも、日本産の果物等を使えば工夫の余地が大きく、輸出可能だと考える。

*7:https://www.agrinews.co.jp/p39853.html (日本農業新聞 2017年1月7日) [TPP徹底報道 需要奪還 5] 乳製品 地元密着で付加価値 成長市場のチーズ
 国内での総消費量がここ10年で2割増と、需要拡大がさらに見込まれるチーズ。国産割合はまだ15%(2015年度)で、伸びしろは大きい。酪農振興の新しい柱と期待されるが、有望市場は他国も狙う。EUは、大詰めを迎えるEPA交渉で大幅な自由化を要求。欧州産のブランド力は脅威で、酪農家らは生き残りに向け、価格だけではない酪農の価値を発信しようと、地域や消費者との結び付きを強めている。150万人が暮らす大都市・神戸市の中心部から車で約20分、閑静な住宅街の一角に牧場へと続く門が現れる。酪農家が手掛ける国産チーズの先駆けとして、1985年から代表商品「フロマージュ・フレ」などを販売する弓削牧場だ。約9ヘクタールの敷地内では、放牧された牛が歩き回り、全国から訪れる年間約3万人の客がログハウス風のレストランでチーズをふんだんに使った料理を楽しむ。弓削牧場では、生乳生産部門の箕谷酪農場から加工部門のレチェール・ユゲが生乳の3割を買い取り、チーズやホエー(乳清)を使った化粧品作りなどを手掛ける。和食と組み合わせた日本人向けの食べ方提案など、欧州のチーズと差別化を図りながらファンを増やしてきた。加工部門は売り上げ全体の7割を占め、今や経営の柱だ。
●価格競争に懸念
 国内のチーズ消費量も増え、裾野は広がっている。その半面、安さを重視する中食・外食の需要で、輸入品が入り込む可能性が高い。輸入量は10年で2割以上増えたが、国産割合は思うように上がらず、むしろこの5年は4ポイント下げている。代表の弓削忠生さん(71)は「ただチーズを作って売るだけなら、輸入も国産も同じ」と言う。生産現場と切り離された商品として扱われれば、外国産との単なる価格競争に陥りかねない。TPPや日欧EPA交渉が、心配を膨らませる。外国産にはない価値をどう発信するか。弓削牧場では生乳生産を基本に置き、命につながる食料を生産する農業の本質を伝える講座や牧場での結婚式の企画などに力を入れる。近隣の森林植物園にカフェを出店するなど、地域との連携も重要視する。バイオガスプラントを設け、資源循環型農業にも乗り出した。弓削牧場と同様、同県明石市の住宅街の一角で酪農を営む伊藤靖昌さん(32)も「都市型酪農を続けていくには地域との結び付きが必要だ」と呼応し、生乳の価値を発信するため加工にも取り組む。
●取り組み発信を
 国産チーズの活路について、酪農情勢に詳しい名古屋大学大学院の生源寺眞一教授は「品質面での差別化だけでなく、発達した情報通信技術(ICT)も活用しながら、背景にある作り手の思いや取り組みを発信していくことが重要だ」と指摘する。


PS(2017年1月10日追加):*8のように、シルバー人材センターが耕作放棄地を農地として整備し、会員高齢者の就労や技能習得の場として利用するのは、アクションが速くてよいと思う。このケースなら、最終的に高齢者が月収15万円くらい稼げるようにすると、生活を支えることができるだろう。

*8:http://qbiz.jp/article/101357/1/ (西日本新聞 2017年1月10日) 耕作放棄地 高齢者に“活” 九州各地 シルバー人材センターが整備
 九州各地のシルバー人材センターが、全国的に増えている耕作放棄地を農地として整備し、会員の高齢者の就労や技能習得の場として利用する例が相次いでいる。高齢者の生きがいづくりと、低迷する農業の活性化につながる「一石二鳥」の取り組み。今後の充実・拡大が期待される。一方で、収穫物の売り上げだけでは必要経費を捻出できないなど、事業の難しさも浮かび上がっている。
●就労、技能習得の場に
 北九州市シルバー人材センターは2014年度から、会員たちに農作業の知識・技術を習得してもらう「シルバー農園」事業を開始。同市小倉南区の約1200平方メートルと若松区の約千平方メートルの耕作放棄地(放棄地になる恐れがある農地を含む)を借り、雑草を除去して事業を進めている。参加する会員は約100人で、大半が農業未経験者。月数回、シルバー農園に通い、元農家の会員らの指導を受けながら大根やジャガイモなどを育てている。収穫物はイベントなどで販売。売り上げは会員に分配せず、借地料や苗代などに充てている。会員たちはシルバー農園で稼ぐことはないが、身に付けた農業技術を生かし、センターが外部から受注した農作業の仕事に出向いている。その受注額は14年度約50万円、15年度約100万円。「シルバー農園によって農作業ができる会員が増えたので、受注に積極的に動いている。会員の就労機会拡大を図り、地域の農業活性化に貢献したい」とセンター企画課の神野譲嗣課長。
   ◆     ◆
 福岡県の築上町シルバー人材センターは、耕作放棄地になる恐れがある農地約2千平方メートルを15年度から借り、会員たちの就労の場として利用。会員15〜20人がイチゴ栽培に取り組んでいる。イチゴの売り上げで、会員の報酬をはじめ、農地の借り賃など必要経費を賄う仕組み。ただし1年目に報酬を時給850円に設定して赤字が出たため、本年度の途中から時給を定めず、売り上げの範囲で報酬を払う「出来高払い」に変更した。センター業務主任の古門敏彦さんは「会員の皆さんが頑張って売り上げを伸ばせば、報酬も増える。出来高払いに納得してもらっている」と話す。熊本県の八代市シルバー人材センターも12年度から放棄地を借り、就労の場にしている。場所は山に囲まれた同市坂本町鶴喰(つるばみ)地区で現在は約6千平方メートル。本年度は会員16人でコメ2460キロを収穫した。やはり出来高払いで、会員1人当たりの報酬は平均で約2万円(時給で800円強)になる見通しだ。 (編集委員・西山忠宏)
   ◇  ◇
●農地再生へ思惑一致 国・自治体センター
 各地のシルバー人材センターが耕作放棄地の活用に乗り出しているのは、放棄地の増加に歯止めがかからないことが背景にある。国も自治体も放棄地の解消・発生抑制に取り組んでいるが、力不足は否めず、センターが対策の加勢をしている形だ。放棄地は農家の高齢化などで増加。農林水産省の「農林業センサス」によると2015年には全国で計42万3千ヘクタールと過去最大を更新、富山県とほぼ同じ面積になっている。問題点として農地減少だけでなく(1)雑草や害虫が増え、周辺農地に影響を与える(2)鳥獣の隠れ家となり農作物への被害が増える(3)廃棄物が不法投棄される恐れが高まる−などが指摘されている。一方、センター側からすれば、農業分野に積極参入することで、主目的の「高齢者への就労の機会提供」を拡大できる利点がある。放棄地の問題を解決して地域に貢献でき、存在感を高める狙いだ。全国シルバー人材センター事業協会(東京)によると、センターは全国に1282団体(昨年3月末現在)。放棄地の活用事業に取り組むセンターの数は把握できていないが、放棄地を安く借りられることもあり、かなり広がっているとみられる。ただ、事業を拡大するには「しっかり稼ぐ手法」の確立が欠かせない。


PS(2017年1月13日追加):森林の手入れや草刈りなどの環境関連の仕事は、最近できたものであるため人手不足だ。そこで、「製造業や事務職は高給取りだが、森林の手入れは環境好きのボランティアの仕事」などと考えるのではなく、働きに応じた報酬を支払えば中高齢者を含めて雇用吸収力がある。

*9:http://qbiz.jp/article/101616/1/
(西日本新聞 2017年1月13日) 福岡県、森林環境税継続へ 保全、再生「理解得られる」
 福岡県は森林の保全や再生を目的に2008年度から導入した森林環境税について、徴収期間が終わる17年度以降も継続する方針を固めた。温室効果のある二酸化炭素を吸収し、地下水を蓄えて土砂流出や崩壊を防ぐ森林の機能は公益性が高く、県民負担への理解は得られると判断した。森林環境税は10年間の時限措置として、個人県民税に一律500円を上乗せして徴収。法人は資本金などに応じて、千円から4万円までの5通りの税額を設定している。新たな課税期間は18年度から5年間を軸に検討し、税額は変更しない。森林環境税の検証や在り方を検討する有識者委員会の報告を受けて、正式決定する。15年度までの8年間で103億円超の税収があり、間伐や植栽をする市町村への助成、森づくりに関わるボランティアの育成などに充てている。有識者委員会が昨年実施した県民アンケートでは「良い取り組みだと思う」と評価する回答が多かった。


PS(2017年1月15日追加):日本では、65歳以上の“高齢者”に対する介護と65歳未満の“障害者”に対する福祉は、サービスの内容が異なる。そのため、障害者が65歳になると、それまで受けていた自立支援サービス等を受けられなくなったりする。しかし、年齢で差別するのは不合理であるため、介護事業者は両方の指定を受けられるようにし、地域包括ケアシステムを整備して、どのサービスを受けるかについては、本人・家族・医師・ソーシャルワーカーなどが相談して決められるようにするのがよいと私も考える。また、その場合は40歳未満の人からも介護(福祉)保険料を徴収し、介護・福祉サービスの内容に年齢を理由とする差をつけないのが妥当だろう。

   
年齢階層別障害者数推移 サービス利用手続  介護サービスの内容      障害者福祉の内容

(図の説明:障害者に占める65歳以上の割合は次第に増え、2011年には2/3を超えている。そこで、介護と福祉サービスを年齢で分けず、必要なサービスは年齢に関わらず受けられるようにすべきだ)

*10:http://mainichi.jp/articles/20170115/k00/00m/040/103000c
(毎日新聞 2017年1月15日) 厚労省、介護・障害を一括サービス 18年度実施へ法案
 厚生労働省は、介護保険と障害福祉両制度に共通のサービス創設の方針を固めた。高齢の障害者が、一つの事業所で一括してサービスを受けられるようにするなど、利用者の利便性を高めるのが狙い。2018年度の実施を目指し、20日開会の通常国会に関連法案を提出する。介護・障害の両制度は、サービスを提供するのに、それぞれ指定を受ける必要がある。このため、65歳以上の高齢の障害者が、障害福祉事業所で介護サービスを受けられないなどの課題が指摘されている。そこで同省は、通所や訪問など、いずれの制度にもあるサービスについて、事業者が両方の指定を受けやすくするよう制度を見直す。同省は、高齢者や障害者、児童といった福祉分野に関し、地域住民とも協力して包括的にサービスを展開する「地域共生社会」を目指している。高齢化がさらに進む中、地域内の限られた施設や人材の有効活用を促す。実施には介護保険法や障害者総合支援法などの改正が必要で、関連法案を一括し、「地域包括ケアシステム構築推進法案」として提出する方針だ。同法案には、介護サービス利用時の自己負担について、特に所得の高い人は、現在の2割から3割に引き上げることも盛り込む。対象は、単身の場合で年収約340万円以上、夫婦世帯は約460万円以上。当初は単身で383万円以上を想定していたが、見直した。負担増になるのは利用者の3%に当たる12万人で、18年8月実施を目指す。一方、40~64歳の介護保険料について、年収の高い会社員らの負担が増える「総報酬割り」の導入も盛り込む。17年8月分からの適用を想定している。

| 経済・雇用::2016.8~ | 11:55 AM | comments (x) | trackback (x) |
2016.10.27 日本の経済学者がノーベル賞を受賞できない理由と日本政府の経済運営について (2016年10月29日、11月1、2日に追加あり)
   
   発展段階別       $と購買力平価による  アジアの購買力平価による   日本の   
一人当たりGDP成長率     GDPの比較       一人当たりGDP推移    平均世帯所得

(グラフの説明:既にGDPが大きくなっている先進国ほど「一人当たりGDP成長率(「一人当たりGDP」ではない)」は低い。また、物価の高い日本では購買力平価によるGDPの順位は$ベースの順位より低くなっており、アジアの中で比較しても日本の購買力平価による一人当たりGDPは高くない。さらに、日本の平均世帯所得は減少しており、特に高齢者世帯で低い)


      
ASEAN諸国の人口ピラミッド     世界の人口推移            日本の人口推移           
                                                           
(グラフの説明:ASEAN諸国をはじめとするアジアの他国では、まだピラミッド型の人口構成をしており、次第に日本に近いつぼ型になるだろう。そして、開発途上国で人口増加が止まるまで世界人口は増え続け、2011年の世界人口は70億人で、2050年には93億人になりそうだ。どの国も産業革命後に急速に人口が増加し始めたのは、物資が豊富になって栄養が行きわたり、衛生状態がよくなるとともに、医療が普及したからだと言われているが、人口がピークになっている現在の日本と同様、人口増加の終息後は各国とも人口減に転じ、次第に高齢化社会になっていくと考えられる)

(1)日本の経済学者がノーベル経済学賞を獲得するには・・
1)私がこの解を書ける理由
 私は人間の遺伝や進化(今で言う生命科学)に関心を持って東大理科Ⅱ類に入り、女性が結婚しつつやりたい研究をして大学で昇進できる可能性の低さに愕然としながら医学部保健学科(今から40年以上前に環境の研究をしていた)に進学し、人類生態学・環境・疫学等を勉強し卒業した後に、公認会計士・税理士に転向して仕事を続けてきたので、本気で生物系と経済学・法律の勉強をした経験がある。そのため、両方のアプローチを比較して、日本人がノーベル経済学賞を受賞できない理由を書けるので書く。

 例えば環境を例にとると、ヒトが生きる環境を悪化させる要因は多く、複数の物質が反応し合って複合汚染を起こす化学物質や単体でも人体に重大な害を与える放射性物質・有機水銀のような物質もあり、特定するのは一苦労だ。そのような中、ヒトに与えている害の原因を求めるには、注目する要因と背景となる要因の相関関係を多変量解析して発生している事実と比較する方法があるが、考慮すべき要因が多いためすっきりした解が得られないことが多い。

 一方、経済学は、人間の意思決定と行動から生じる社会現象を簡単な数式やグラフで説明しており、私はそれを初めて勉強した時には理論の美しさに感動したが、不変と看做して無視する“与件”が多すぎて、実際の社会現象を実証的に説明することはできていない。それが、現在、日本で語られている経済学の欠点で、つまり科学になっていないのだ。

 そのため、「①マクロ経済はミクロの経済行動の総計である」「②公害・環境は無視できない重要な要素となった」「③技術進歩を無視することはできない」「④食料・資源・地球環境は、地球上での人口増加・経済拡大の限界を意味する」などを前提とし、これまでの経済学では無視していたものも考慮し、社会調査に基づいて日本で起こっている現象を実証主義によって数式で説明すれば、課題先進国である日本の経済学者は、世界の課題に大きく貢献し、ノーベル経済学賞候補になれると考える。

2)日本人がノーベル経済学賞を獲得できない理由
 産経新聞は、*1-1で、経済学賞は日本人が獲得したことのない唯一のノーベル賞だが、ノーベル賞受賞者は「①米国の有名大学を拠点に活動している」「②ノーベル賞を受賞するには米国で論文を積極的に発表し、その論文を世界の研究者が頻繁に引用する必要がある」「③功績に追随する人が一派をなしている」「④日本人は米国の主流派に大きな影響力を持つ研究者が少ない」などとしている。しかし、ノーベル経済学賞の選考はスウェーデン王立科学アカデミーが行うため、英語で論文を発表し、それを世界の研究者が読んで頻繁に引用する必要はあるが、米国の主流派か否かは関係ないと思われる。そのため、他分野の日本人ノーベル賞受賞者が日本で活動した人も多いことを考えれば、①②③④は泣きごとにすぎない。

 また、日経新聞も、*1-2で「英語力の壁」「インパクト不足」を上げているが、世界の研究者がその論文の存在を知って引用するためには英語で記載されていることが必要条件ではあるが、内容が先進的で新しい解を導いており魅力的でなければ、世界の研究者が引用する理由がなくインパクトも小さい。しかし、日本の経済学者には、それがないのである。なお、アメリカの文化・歴史・社会背景を理解していない日本人がアメリカで研究した経済学は、それらを理解しているアメリカ人がアメリカで研究した経済学よりも背景に詳しくない分だけ考察が浅く、インパクトのある内容にはなりにくいと思われる。

 そこで、私は、「経済学の新分野を開拓した、あるいは既存の分野に新しい視点を取り入れて経済学を革新したと多くの経済学者が認識する理論を造る」には、課題先進国日本で、社会調査に基づいた実証主義により問題を解明して経済学の理論を造れば、地球に貢献する大きな流れができ、評価力のある人から評価され得ると考える。

 なお、東京大学経済学研究科でゲーム理論の人気が高いそうだが、観念的で単純化しすぎた理論だけでは実際の経済事象を説明することができないため、その功績は限られるだろう。

(2)GDPの算出方法による歪んだ実態把握
1)GDP(国内総生産)について
 GDPは、国内で新しく生産された財・サービスの合計で、経済活動の規模や動向を総合的に示す指標として用いられる。また、GDPには名目と実質があり、実質GDP(名目GDP/《1+物価上昇率》)は、名目GDPから物価変動の影響を除いたものだ。

 また、GDP等の経済実態を把握する方法は経済統計だが、*2のように、GDP統計の把握の仕方が古く、実際に生産しているものがGDPに入っていなかったりして、GDP統計に基づいた政策決定を誤らせるという問題点が指摘されている。そのため、総務相の高市早苗氏が個人消費の新指標を開発する研究会を立ち上げられたのはよいことだ。

 私自身は、日本のGDPは製造業中心で、医療・介護・保育・教育・ハウスキーピングなどの20~21世紀型サービスが十分に算定・評価されておらず、このことが政策におけるこれらのサービスの軽視に繋がっていると考える。しかし、2014年の統計では、日本のGDPの構造は、第三次産業(サービス業)が74%と最も大きく、次に第二次産業(製造業)24.9%、最後に第一次産業(農林水産業)1.2%となっており、日本はモノを作って輸出するのに適した国ではなくなっているのだ。

2)GDP成長率(いわゆる経済成長率)について
 GDP成長率とは、GDPの変化率(g=GDP、t=時間として、dg/dt)のことで、変化率であるため、本来、プラスの場合もマイナスの場合もありうる。しかし、経済を語る文系の人は、微分・積分を知らない人が多く、GDP成長率と名付けたこともあって、GDPの成長に子の成長のような特殊な積極的意味を付加している。しかし、感情の入らない科学用語としては、「GDP変化率」が適切だ。

 また、「GDP変化率」と表現すると、人口が減少してGDPの総計が減っても、一人当たりGDPが増え、一人一人がより豊かな生活を送れるようになっていれば問題ないことがわかる。

(3)伊勢志摩サミットで世界に向けて語られた日本の政策の誤り
1)財政出動
 日米欧の主要7カ国(G7)が4月26、27日に、*3-1のように、首脳会議(伊勢志摩サミット)を三重県で開き、その最大のテーマを「マクロ経済政策の協調」とし、「①原油価格の下落」「②中国をはじめとした新興国の経済低迷」を理由に、財政出動での内需拡大を求めたそうだ。

 しかし、原油価格下落は日本にとってはマイナスではなく、中国のGDP成長率の鈍化はリーマンショック後に金融緩和して世界経済を支えた中国の出口戦略によるものであるため、外国のせいにして新たな財政出動を合理化するのは正しくない。

 むしろ、日本は東日本大震災、熊本地震、鳥取地震等からの復興や東京オリンピックの準備などで既に莫大な財政出動を余儀なくされているため、景気対策のためにこれ以上の財政出動をしなければならない理由はなく、*3-2のように、無駄な財政支出をやめ財政出動に慎重なメルケル独首相の見解の方が正しいと、私は考える。
 
2)金融緩和
 日本は結論ありきの消費税率10%への引き上げのため、*2のように、デフレ脱却と称する金融緩和のインフレ政策を行い、貨幣価値を下げることによって国の借金を実質で目減りさせ、株価や土地の価格を上げ、グローバル企業の利益を増やしたが、これによって国民は実質賃金や実質債権価値が下落し、実質賃金下落の効果として雇用は増えたものの生産年齢人口でも生活の苦しくなった人が多い。まして年金生活者は、年金給付の実質目減りと介護保険料の負担増で生活できない人も出ている。

 これは、日本の政治が経済学のマネタリズムを御都合主義で利用して過度の金融緩和というインフレ政策を行い、声の小さな国民にしわ寄せした結果であるため、私は、これを日本国憲法(第11条基本的人権、第25条生存権、第29条財産権)違反だと考える。

 また、*3-3のように、先進国の金融緩和政策の長期化に伴う低金利の副作用への警戒感が急浮上しているが、いくら金融緩和したり低金利にしたりしても、最終需要者の国民から消費財の購入資金を奪っているため、それを供給する企業の健全な投資も起こらないのが当然だ。ただし、低金利を利用して本当に必要なインフラに投資すれば、その後の生産性向上に資するし、ゼロ金利を利用して政府が国債を借り換えすれば、年間20兆円に及ぶ国債の利払いを抑えることが可能だ。

3)生産性の上昇
 麻生財務相は、*3-4のように、「生産性上昇で低成長克服を」と述べておられるが、確かに生産性を高める技術進歩と構造改革は重要だが、電力自由化後も原発への国費の無駄遣いが続いたり、新電力に原発の廃炉費用を負担させようとするなど、国内での自由競争を阻害する政策が多すぎる。そのため、「経済成長(GDPの変化率をプラスにすること)が善である」と述べているが、どういう状態をゴールとして、いかなる方法で、何のためにGDPを拡大させたいのかという最も重要な展望を考え直すべきだ。

 私自身は、日本国憲法に書かれていることが、まさに日本が目指すべきゴールであり、これは条文を読めばわかることで、日本国憲法が外国から強制されたか否かは問わないと考える。

(4)年金削減と介護サービスの削減は伸ばすべき消費を抑えたのだということ
1)年金について
 年金は高齢者の生活の糧であり、これを不当に侵害しなければ、高齢者が必要とするものを購入することによって、人口における高齢者の割合が著しく増加する課題先進国日本で、新たに起こる需要に対応する供給が確立してきた筈のものである。

 そのため、*4-1のように、年金を受け取るのに必要な加入期間(受給資格期間)を25年から10年に短縮し、無年金となっていた64万人を新たに年金を受け取れるようにしたことは、公正な方向への変更であり歓迎だが、本当は、年金保険料を支払ったことのある人なら加入期間にかかわらず誰にでも受給資格を与え、年金加入期間と保険料支払い額に応じて支給額を調整するのが公正だと私は考える。

 なお、*4-2のように、厚労省は年金の試算において、会社員の夫と専業主婦のモデルケースで2013年度の厚生年金の所得代替率を62.6%と過大に試算していたが、賃金と年金をいずれも手取りで計算し直すと所得代替率は53.9%に低下し、税・社会保険料を含めて計算すると所得代替率は50.9%にまで下がるとのことだ。しかし、まだ夫と専業主婦の2人世帯のモデルケースしか試算しておらず、どちらか1人になれば年金額はさらに減少する上、高齢者は生産年齢人口の50%程度の収入があれば生活できるとしているのも不可解であり、今後、高齢者が生活できない状況は頻繁に起こりそうだ。

2)介護制度について
 介護制度も、高齢化・核家族化が進んだ現在、生存権を護るために必要なもので、高齢者や障害者にとっては生きるために必要不可欠なものであるため、介護制度を改悪すれば介護制度の存在意義が怪しくなる。もう一方の見方をすれば、高齢化・少子化した日本では、介護サービスは真に必要とされるサービスであり、これを抑制することは、本物の需要を抑えて真に必要なサービスの供給を発展させるのを妨げたものだ。

 そのため、*4-3のように、介護と言えばサービスを縮小して現役世代の負担を減らすことばかりを主張するのではなく、現役世代は介護を自分でしなくてよくなった分だけ確実に負担軽減されていることを考慮し、まだ十分に供給されたこともない介護サービスの削減ばかりを唱えずに、必要な需要は供給できるよう、働く生産年齢人口は全員、医療保険と同様に介護保険料を負担するようにすべきである。

<日本人がノーベル経済学賞を獲得できない理由>
*1-1:http://www.sankei.com/politics/news/161011/plt1610110054-n1.html (産経新聞 2016.10.11) 日本人はなぜノーベル経済学賞を獲得できないのか…米主流派、英語が壁?  
 2016年のノーベル経済学賞は米国の経済学者2人が受賞し、日本人で最有力視された米プリンストン大の清滝信宏教授(61)は今年も受賞を逃した。経済学賞は日本人が獲得したことのない唯一のノーベル賞。米国の学界が「主流派」として幅をきかす中、英語力のハンディもあり、日本人は受賞の“地歩”を築けていないのが実情だ。ノーベル経済学賞は、市場の役割を重視する米国主流派の系譜を引く学者が相次ぎ受賞している。2010~16年の受賞者14人中12人が米国の大学教授や名誉教授だ。背景には現代経済学の主流派の多くが、米国の有名大学を拠点に活動していることがある。このため、ノーベル賞を受賞するには、米国で論文を積極的に発表している▽その論文を世界の研究者が頻繁に引用している▽功績に追随する人が一派をなしている-などの条件が必要とされる。日本人に関しては「米国の主流派に大きな影響力を持つ研究者は少ない」(内閣府経済社会総合研究所の堀雅博上席主任研究官)。語学力の壁もあって説得力ある論文の執筆や人脈作りが難しく、受賞の条件を満たせないとの見方がある。この点、毎年候補に名前の挙がる清滝氏は米国に足場を持つまれな存在だ。また14年に死去した宇沢弘文・元東大名誉教授も数理経済学の業績で受賞に近いとされた。ただ、米国から日本に帰国後の1970年代、社会運動にのめりこみ、主流派に批判的となったことが受賞を最終的に不可能にしたといわれる。日本人の受賞を目指すのであれば、若手研究者が米国で腰を据えて研究できる環境整備や、米国から優秀な指導者を招き、日本の学界を底上げする取り組みが求められそうだ。

*1-2:http://www.nikkei.com/article/DGXLASGH05H0Y_V01C16A0000000/?dg=1&nf=1 (日経新聞 2016/10/10) ノーベル経済学賞、日本人が受賞する条件
 今年のノーベル経済学賞は、米ハーバード大学のオリバー・ハート教授、米マサチューセッツ工科大学(MIT)のベント・ホルムストロム教授の受賞が決まった。ノーベル賞の歴史の中で、日本人が受賞していないのは経済学賞だけで、今年も受賞を逃した。日本人の経済学者が世界で評価され、ノーベル賞を受賞するためには何が必要なのか。
■「英語力の壁」やインパクト不足
 昨年夏に死去した青木昌彦氏(米スタンフォード大名誉教授)の生前の活躍ぶりを示す著書が9月、書店に並んだ。タイトルは「比較制度分析のフロンティア」(青木昌彦・岡崎哲二・神取道宏監修)。世界各国の経済学会の連合体である国際経済学会連合(IEA)の会長を2008年から11年まで務めた青木氏が企画し、11年に北京で開いた世界大会での発表の中から、青木氏が厳選した論文を邦訳した。IEAの初代会長はジョセフ・シュンペーター。以来、ポール・サムエルソン、ケネス・アロー、アマルティア・セン、ロバート・ソローら世界を代表する経済学者が会長を務めてきた。ちなみに青木氏の後任はジョセフ・スティグリッツ米コロンビア大教授(11~14年)である。青木氏は、人々の行動を左右する慣習などを「制度」と定義し、ゲーム理論の手法を使って各国の経済構造の違いを解明した。歴史や文化の中ではぐくまれる「制度」と、経済学の中でもとりわけ「純粋理論」の色彩が濃い「ゲーム理論」。対極にあるようにもみえる両者を結びつけて独自の理論を展開する、斬新な着想が世界の経済学界で高く評価された。人脈づくりにも熱心で、青木氏を中心に世界の研究者の強力なネットワークができあがっていた。「ノーベル経済学賞を受賞する資格があり、本人も狙っていた」(今井賢一・スタンフォード大名誉シニアフェロー)と評される青木氏のような存在は、残念ながら現在の日本には見当たらない。「比較制度分析のフロンティア」には、清滝信宏・米プリンストン大教授の「金融制約へのメカニズムデザイン・アプローチ」と題する論文も収録されている。引用された論文数を基準にノーベル賞候補を毎年発表している米トムソン・ロイターは10年、清滝氏を経済学賞の候補に選んだ。日本人が初受賞するなら清滝氏と関係者は口をそろえる。清滝氏の名前がよく挙がるのは、世界で認められている日本人がごく限られているためでもある。世界で評価される条件は何か。日本人の経済学者たちに尋ねると、ほぼ同じ回答が返ってくる。
(1)アメリカン・エコノミック・レビュー、エコノメトリカ、ジャーナル・オブ・ポリティカル・エコノミーなど「トップジャーナル」と呼ばれる論文誌に投稿し、多くの論文が掲載される。
(2)論文が世界の経済学者の間で注目され、他の論文に引用される。
(3)論文に関連するテーマに取り組む研究者が増え、経済学界に大きな流れができる。
(4)経済学の新分野を開拓した、あるいは既存の分野に新しい視点を取り入れて経済学を革新したと、多くの経済学者が認識する。何をすればよいのかは十分わかっていても、実行できないのはなぜか。依田高典・京大教授は「英語力の壁」を挙げる。数理経済学が全盛だった頃は、数学が得意な日本人学者が活躍する余地が大きく、ノーベル経済学賞の有力候補と呼ばれた宇沢弘文氏(東大名誉教授)らのスターが生まれた。応用経済学が主流となった現在、トップジャーナルのレフェリーを納得させる論理を展開するのは難しいとみる日本人学者は多い。岡崎哲二・東大教授が日本人学者に欠けているとみるのは「新しい問題を発見し、大きな流れをつくっていく力」。トップジャーナルへの掲載を目指してこつこつと努力し、成果を上げている学者は増えてきたものの、経済学界に大きなインパクトを与えるほどの勢いはない。
■海外との人材交流も乏しく
 この点でよく指摘される問題が、特定の分野への研究者の集中だ。例えば東京大学の場合、経済学研究科の大学院生の間で最も人気が高いのはゲーム理論。ゲーム理論が専門でトップジャーナルへの論文掲載の実績がある教授陣が在籍しているため、世界で活躍したいと考える若手研究者がゲーム理論に殺到している。論文を量産しないと大学に職を得にくいという就職事情も影響しているようだ。ゲーム理論は確かに最先端分野の一つではあるが、今後も「成長分野」であり続けるのかどうか。「ゲーム理論の論文を積み上げても、経済学の革新に貢献したと評価されるのは難しいのではないか」と懸念する声もある。

<政府統計>
*2:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20160920&ng=DGKKASFS16H0X_W6A910C1PE8000 (日経新聞 2016.9.20) 統計大論争(1)GDP信用できない
 ふたりの“教授”が霞が関を震撼させている。やり玉にあげるのは政府統計。追及の手が緩む気配はない。ふたりの教授は毎週金曜日、午後3時からみっちり2時間、官僚とゼミを開く。物価変動の影響をみるデフレーターの算出方法をただし、生産性の分析の仕方を問う。専門用語が飛び交う。「自分が呼び出されるのはいつだ」。統計を扱う官僚は戦々恐々とする。ゼミの教授は大阪学院大教授の三輪芳朗(68)。もうひとりの「教授」は所属する自民党岸田派でついた異名、行政改革相の山本幸三(68)だ。ふたりは東大教授だった経済学者、小宮隆太郎(87)の門下生。1年先輩の三輪が後輩である山本の大臣補佐官を引き受けた。勉強会で統計の不備をただすのは主に三輪の役回りだ。三輪が書いた「よりよい政策と研究を実現するための経済統計の改善に向けて」は官僚必読の論文。ふたりの教授は正確な統計を生かし、誤りのない政策決定に導くという思いを共有する。勉強会には若手国会議員も顔を出す。教授を中心にした統計論議は騒がしさを増している。
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 山本は旧大蔵省出身で、宮沢喜一の蔵相秘書官も務めた。政界入り後は日銀にデフレ脱却を迫ってきた。筋金入りのリフレ派だ。やや異端視される存在だったが、旧民主党政権時、今の首相、安倍晋三(61)に金融緩和の必要性を説いた。安倍は首相復帰後、アベノミクスの第1の矢に「大胆な金融政策」を据えた。山本がアベノミクスの「生みの親」と主張するゆえんだ。そんな山本が閣僚に就くや、真っ先に矛先を向けたのが政府統計だった。就任2日目の8月4日。「ぜひやりたいのは、政府の経済統計の整理統合」「日本のGDP(国内総生産)統計はどこまで信用していいかわからない」。消費統計の不備などから経済の実情がつかめないと持論をぶった。「景気がいまひとつなのを統計のせいにするのか」。内閣府は真意をいぶかった。だが、この夏、異論を唱えたのは山本だけでなかった。日銀職員2人が7月、GDPの算出方法に疑問を投げかける論文を公表したのだ。2014年度の名目GDPが内閣府の公表額(490兆円)より約30兆円多い519兆円だったと指摘。実質成長率は内閣府のマイナス0.9%でなく、2.4%と主張した。内閣府内には反論文書を出すべきだとの意見も出たが、最後は「論評に値しない」と切って捨てた。一部の研究者やエコノミストが援軍に回った。「消費増税があったのに、14年度のプラス成長はにわかに信じがたい」。内閣府を勇気づけた。内閣府も統計の機能不全を否定しない。実質GDPは15年7~9月期に速報値のマイナスから改定値でプラスに転じるなど、数字のぶれが信頼性を下げている。消費統計もネット販売を加味せず、若年層の購買行動を捕捉できていない。それでも「今ある統計を作るのに精いっぱい。改善の人手も予算も足りない」(内閣府)。
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 統計への厳しい視線を感じ、重い腰をあげたのは総務省だ。9月15日夕、総務相の高市早苗(55)は大学教授やエコノミストら約15人を集め、個人消費の新指標を開発する研究会を立ち上げた。高市は「政府統計が新たな地平をひらくための挑戦の場」と意気込んだ。1時間半の会議終了後にはみずから参加者を見送る熱の入れようだった。これまでも消費統計の刷新を探る動きはあったが、めぼしい成果はない。研究会では有識者から総務省の本気度を問う声もあがった。「(すべてのものがインターネットでつながる)IoT時代に沿った、新たな政府統計を作りたいと思います」。総務省消費統計課長の阿向泰二郎(46)は退路を断った。日本最初の政党内閣を組織した大隈重信。総務省は統計の礎を築いたとたたえる。大隈は1916年、全省庁に発した内閣訓令第1号で統計の重要性を訴えた。「其の調査は、迅速精確にして実用に適するものたるを要す」。正確なデータが国の政策づくりに不可欠と喝破した。今、100年前の大隈の訓示をかみしめる時が来ている。
   ◇
 経済の実態をつかむのは難しい。統計という物差しが古び、精度が低ければ、なおさらだ。愚直に数字を積み上げるだけで日本の今はとらえられない。(敬称略)

<世界経済と伊勢志摩サミット>
*3-1:http://www.nikkei.com/article/DGXLZO00288580Q6A430C1970M00/?dg=1&nf=1 (日経新聞 2016/5/3) 世界経済占う「伊勢志摩」 サミットの焦点と歴史
 日米欧の主要7カ国(G7)は26、27両日、各国首脳が一堂に会する主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)を三重県で開く。日本で開くサミットは8年ぶり6回目。首脳同士が同時通訳を介して直接、さまざまな世界の難題を話し合う首脳外交のひのき舞台だ。議長として安倍晋三首相の力量も問われる。
■最大のテーマは マクロ経済政策の協調探る
 サミットは主要国の首脳が世界の重要課題を話し合うため年1回開く国際会議だ。初会合は1975年11月。石油ショックへの対応を話し合うため、先進6カ国首脳がフランス・パリ郊外のランブイエ城に集まった。メンバーは日本、米国、英国、フランス、西ドイツ、イタリア。76年にカナダが加わり「G7」(Group of Seven)と呼ばれるようになった。98年にロシアを加えて「G8」になったが、2014年にクリミア半島の併合を強行したロシアを外し、この年からG7の枠組みに戻った。毎年の議題は大きく政治と経済に分かれる。今年は世界経済の先行きに不透明感が増すなか、G7が一致してマクロ経済政策で協調姿勢を打ち出せるかが最大の焦点だ。原油価格の下落を引き金に、昨年来、これまで世界経済をけん引していた中国をはじめとした新興国の経済が低迷。収縮しつつある世界経済を下支えするには、G7や新興国に財政出動での内需拡大が求められている。ただ財政規律を重視するドイツは財政出動に慎重だ。サミットでの世界経済の議論が、17年4月に迫った消費税率10%への引き上げを延期するかどうかの安倍晋三首相の判断に影響するとの声も多い。内需拡大で一致するなら、消費増税は消費や投資拡大の足かせになるとの見方だ。富裕層や有力政治家らのタックスヘイブン(租税回避地)での節税の実態を明らかにした「パナマ文書」を巡る問題を受け、課税逃れ対策の取り組み強化も話し合う。政治分野では、過激派組織「イスラム国」(IS)による相次ぐテロや、シリア内戦による欧州への難民流出問題が大きなテーマになる。G7がどこまで具体的な処方箋を示せるかが注目点だ。4月に広島で開いたG7外相会合では、サミットで「具体的な施策を含むテロ対策行動計画を作成する」とした。テロリストやテロ組織の資金の流れに関する情報や、航空機の乗客情報を共有する仕組みづくりなどが課題だ。日本政府としては「アジアで8年ぶりに開くサミット」(安倍首相)で、アジア地域の問題も重点的に取り上げる。特に核実験や弾道ミサイル発射を強行した北朝鮮への対応や、人工島造成など南シナ海での海洋進出を強める中国への対応が焦点だ。G7外相会合では中国の活動を念頭に「挑発的な一方的行動に強い反対を表明する」と明記した声明をまとめた。首脳宣言でけん制のトーンをどう強めるかが注目だ。議長国の日本としてはサミットを通じ、安倍政権が国際協力の柱に据えるアジアでの「質の高いインフラ投資」の促進や、目玉政策である「女性活躍の推進」も国際社会にアピールしたい。エボラ出血熱や中南米でジカ熱が流行していることを踏まえ、感染症対策など保健衛生分野での貢献策も打ち出す。サミットに先立ち、財務相・中央銀行総裁など計8つの閣僚会合を開き、各分野でグローバルな課題を話し合う。サミット閉幕後に発表する「首脳宣言」に反映する。
■なぜ「G7」で開催 民主主義など価値観共有
 サミットの主要議題は、その時々の国際情勢を映す。1975年の初会合は経済問題が議題で、当初は経済政策が中心だった。ソ連のアフガニスタン侵攻を受けた80年のベネチア・サミットから「西側の結束」を確認する政治討議に比重が移った。地域紛争や環境問題など議題は広がり、2000年代以降は地球温暖化やテロ対策といったグローバルな課題が目立つ。ロシアは冷戦終結後に加わったが、2014年からG7がロシアの参加を停止。再び自由や民主主義などの価値観を共有する国だけの集まりとなり「話し合いは格段にスムーズになった」(外務省幹部)。その分、G7の結束力が高まったと言える。共通の価値観を土台にすることで、中国の挑発行為も話しやすくなった。南シナ海や東シナ海への海洋進出で「法の支配」に反するような動きは、どの国も賛意を示せない。かつては中国をサミットに加える構想も浮かんだが、いまは消えている。世界でみると裕福なG7のテーマは、新興・途上国が今後直面する課題にもなる。高齢化や医療、女性活躍など課題を先取りして世界の議論をリードする役割もある。サミットは国際社会の中で常に存在意義を問われてきた。最近では08年のリーマン・ショックの後。世界経済を揺るがす事態の発信源が米国だったことに加え、日本や欧州各国の経済も大きく傷み、国際社会への影響力を一時は失った。代わりに存在感を高めたのが20カ国・地域(G20)。G7にブラジル、中国、インド、ロシア、韓国、インドネシアなどを加えた枠組みだ。首脳会議はリーマン・ショック後にブッシュ前米大統領の呼びかけで始まった。金融規制や監督など危機の再発防止策をまとめ、ギリシャ危機を受けた10年には財政健全化策を議論した。ただ先進国と新興国の利害が対立することも多く、協調はなかなか難しい。現在は新興国経済が軒並み伸び悩む。G20だと発言する人数が多すぎて突っ込んだ議論ができない問題も明確になり、再びG7に注目が集まっている。
■国際社会への影響力は 閉幕の「首脳宣言」カギ
 サミットがどこまで国際社会に影響力を与えられるかは、閉幕時に打ち出す首脳宣言がカギを握る。そろって具体的なメッセージを打ち出せば、その後の国際社会の流れに道筋が付く。逆にいかにG7とはいえ、打ち出すメッセージがバラバラでは影響力は維持できない。例えば1979年の東京サミットは第2次石油ショックへの対応で、石油消費・輸入上限目標を国別に具体的数値で示すことで合意した。83年のウィリアムズバーグ・サミットは、米国による西欧へのミサイル配備の是非が議題になり、激論の末に中曽根康弘首相が必要性を主張。ソ連への対抗姿勢を示した。2008年の北海道・洞爺湖サミットでは、50年までに世界全体の温暖化ガスを半減する長期目標に合意。目標設定に慎重だった米国を巻き込み、環境問題を前進させた。今回のサミットでは、欧州で社会不安の原因となっている中東からの難民問題で、欧州の緊迫感を日米が共有できずにいるとの見方は多い。ロシアや中国との距離感でも温度差を抱える。G7の結束を打ち出せるかどうかは議長である安倍晋三首相の力量次第だ。かつて1年ごとに首相が交代し、「日本の首相は毎回サミット初参加」という時代と異なり、安倍氏は今回でサミット参加が5回目と経験も豊富だ。G7が再び結束を強められるか。安倍氏の役割は大きい。

*3-2:http://www.nikkei.com/article/DGXMZO01960380V00C16A5I00000/?dg=1&nf=1 (日経新聞 2016/5/5)メルケル独首相、財政出動にゼロ回答、日本との対立避け、温和な表現
 ドイツが日本の期待に応えて財政出動に踏み切るかが焦点となっていた4日の日独首脳会談。安倍晋三首相との話し合いを終えて共同記者会見に臨んだメルケル独首相は成長戦略について「詳細は日本で議論する」と語った。文字通りに受け止めれば、ドイツが新たな景気刺激策を講じることに理解を示したかに見える。だが発言を丹念に追えばゼロ回答なのは明かだ。わざわざベルリンを訪れた安倍首相のメンツをつぶさないように温和な表現に終始し、日本との対立を避けるという配慮を見せた。会見で安倍首相は「機動的な財政出動が求められている」と語った。これをメルケル首相は否定しなかったどころか「投資、構造改革、適切な金融政策の3つが必要だ」と呼応した。だが新たな補正予算を組んで、景気刺激に乗り出すつもりはない。ドイツ政府が4日夜に公表したプレスリリースを読めば真意が分かる。「主要7カ国(G7)首脳会議の準備=メルケル首相、訪独の安倍首相と会談」と題された報道資料で、財政政策には一言も触れなかった。具体的に書き込まれたのは日本と欧州連合(EU)の自由貿易協定(FTA)やテロ対策。肝心の財政は素通りしたのである。共同会見の発言からもゼロ回答がにじみ出た。「大勢の難民がドイツに流入したことで内需が刺激された。さらにFTAで成長を高め、世界経済に貢献する」。行間から読み取れるのは、難民対策やFTAというのがドイツの成長戦略で、新たな景気対策は検討しないというメッセージである。なぜメルケル首相は頭ごなしに財政出動を拒否しなかったのか。理由はいくつかある。ひとつはドイツの政治情勢だ。ドイツは財政黒字だが、難民対策で歳出は膨らんでいる。しかも来秋に連邦議会(下院)選挙を控え、教育など重点政策には予算を厚めに配分せざるを得ない。外から見れば緊縮派でも、実際にはドイツなりに財政拡大しているのである。このタイミングで財政政策を「不要」とは言えない。ふたつ目は日本への配慮。わざわざ訪独し、構造改革にも言及した安倍首相を追い返すようならドイツの度量が疑われる。「大人の対応」で亀裂を目立たなくしたということだろう。メルケル首相は2013年にアベノミクスを公然と批判し、昨年3月は日中韓で争う歴史認識問題に注文をつけた。今回は対立する政策があっても事を荒立てず、無難にやり過ごした。裏返すと真正面から議論し、G7を舞台に財政・経済政策で協調するという発想はない。対日政策の優先順位も低い。英国のEU離脱や難民危機、それに極右の台頭をどう抑え込むかという域内の問題でメルケル首相は手いっぱい。日独首脳会談について地元メディアは小さく報じただけだった。

*3-3:http://qbiz.jp/article/95611/1/
(西日本新聞 2016年10月8日) 低金利の副作用警戒が浮上 IMFC開幕
 国際通貨基金(IMF)の運営方針を決める国際通貨金融委員会(IMFC)が米首都ワシントンで7日午後(日本時間8日午前)に開幕し、世界経済が直面する課題を議論した。6日の20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議に続く一連の国際会議で、先進国の金融緩和政策の長期化に伴う低金利の副作用への警戒感が急浮上している。資金の運用で利益を十分に上げるのが難しくなり、銀行の経営不安や年金の収益悪化を招く恐れがあるためだ。各国の金融政策頼みは岐路を迎えている。会議に出席した日銀の黒田東彦総裁は7日の記者会見で「金融政策だけではバランスの取れた成長につなげるのは難しい」と述べた。IMFのラガルド専務理事は6日の記者会見で「銀行や保険会社、年金ファンドのビジネスモデルを見ると、ゼロ金利近辺での運用で苦しい事態に陥っている」と述べ、金融政策への過度な依存に警鐘を鳴らした。日米欧は長らく緩和策を継続してきたが、成長率は低迷する。「経済の体温」である物価は上がらず、緩和の限界と低金利の弊害が指摘され始め、6日のG20でも、低金利が銀行や年金基金に及ぼす悪影響の度合いを巡って議論が交わされた。銀行は顧客から集めたお金をより高い金利で運用することで利益を得ており、低金利で利ざやが縮小する弊害を無視できなくなってきた。日本では、年金に収入を依存する高齢者の暮らしを脅かしかねない。IMFCでも、低金利の長期化が世界経済や銀行に与えるリスクを議論。オーストラリアはIMFCに提出した声明で「低金利で金融は脆弱さを増す。過度に金融政策に頼るのは避ける必要がある」と強調した。一方、アルゼンチンは低金利で調達した資金をインフラ投資などに充てれば経済が底上げできると主張。G20やIMFCを契機に、低金利の評価を巡る議論が国際社会で活発になりそうだ。

*3-4:http://qbiz.jp/article/95613/1/
(西日本新聞 2016年10月8日) 生産性上昇で低成長克服を 世界経済で麻生財務相
 麻生太郎財務相は7日夜(日本時間8日午前)、米首都ワシントンで記者会見し、「世界経済には不確実性が存在するが、過度な悲観論に陥ることなく適切に対処することが重要だ」と述べ、低成長克服へ生産性を高める構造改革に取り組む重要性を強調した。ルー米財務長官との会談では「世界経済や為替市場など幅広いテーマについて意見交換した」と説明。財務省同行筋によると、環太平洋連携協定(TPP)の重要性を強調し、臨時国会で成立させると伝えたという。米財務省によると、ルー財務長官も米議会でのTPPの速やかな承認と発効に向けて努力すると強調。麻生氏に対して、輸出増を狙って通貨価値を意図的に引き下げる通貨安競争を回避するとした20カ国・地域(G20)の合意を守ることが重要だと伝えたという。麻生氏は会見で世界貿易の減速に関して「要因をしっかり把握し対処することが大事だ」と指摘した。保護主義の台頭を念頭に「自由貿易の障害を除去する行動が求められる」と語った。米大統領選が世界経済に与える影響については「うかつに言えない」と言及を避けた。同席した黒田東彦日銀総裁は日銀が金融政策の枠組みを変更したことに対する他国の反応を問われ「日銀の政策は以前から十分な理解が得られており、新たな政策枠組みについて特段の意見は聞かれなかった」と述べた。

<年金・介護>
*4-1:http://www.saga-s.co.jp/news/national/10201/368667
(佐賀新聞 2016年10月21日) 無年金64万人を救済、法案、今国会成立へ
 無年金の人を救済するため、年金を受け取るのに必要な加入期間(受給資格期間)を25年から10年に短縮する年金機能強化法改正案は21日、今国会で成立する見通しとなった。同日に衆院厚生労働委員会で審議入りした。野党も賛成の意向のため、早ければ来週にも衆院を通過する。成立すれば、来年10月にも約64万人が新たに年金を受け取れるようになる。一方、支給額の抑制を強化する年金制度改革法案には、民進党が反発を強めており、審議入りのめどが立たない状況が続いている。

*4-2:http://digital.asahi.com/articles/ASJBP73Z4JBPUTFK01S.html?iref=comtop_favorite_03(朝日新聞 2016年10月21日)年金試算、不適切な計算式を使用 塩崎厚労相が認める
 厚生労働省が年金の試算で不適切な計算方式を使い、現役世代の平均的な収入に対する年金額の割合(所得代替率)が高く算出されるようになっていた。塩崎恭久厚労相が21日の衆院厚労委員会で明らかにした。政府は厚生年金の所得代替率について「50%以上を維持」と公約しているが、将来的に割り込む可能性が高くなった。年金の試算は5年に1度、時々の経済情勢に応じて年金制度を見直す財政検証で行う。厚労省は所得代替率を計算する際に、分母となる現役世代の収入は税や社会保険料を除いた手取りとし、分子の高齢者の年金は税や社会保険料を含めた収入としていた。21日の衆院厚労委では、民進党の長妻昭氏の質問に対し、塩崎氏は年金の試算について「役割を果たしていないこともありうる」と述べ、不十分だと認めた。その上で「次期財政検証に向けて議論する」として、2019年度の財政検証の際に新しい計算方式を検討する考えを示した。会社員の夫と専業主婦の2人のモデルケースでは、13年度の厚生年金の所得代替率は62・6%とされている。厚労省によれば、仮にいずれも手取りで計算すれば53・9%に低下。いずれも税や社会保険料を含めると50・9%になるという。実質賃金が上がり続け、経済成長率が実質0・4%のプラスが続くという前提では、43年度の所得代替率は50・6%と試算されている。厚労省は計算方式を変えた場合の試算を明らかにしていないが、13年度の再計算後の下げ幅から見ると50%を割り込みそうだ。所得代替率は欧米では税や社会保険料を両方含めるか、両方除外して算出するのが一般的だという。安倍晋三首相は1月の衆院本会議で「新たに年金を受給される方の所得代替率は50%が確保されることを確認している」と強調している。
     ◇
〈所得代替率〉 現役世代の平均的な収入に対する年金額の割合。最新の財政検証では、厚生年金に入る会社員と専業主婦の「モデル夫婦」が14年度に65歳になった場合、年金を受け取り始めるときは月21万8千円と試算。現役世代の平均的な収入の62・7%とした。43年度に65歳となる夫婦は50・6%になると見込んでいる。

*4-3:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20161022&ng=DGKKZO08673770S6A021C1EA1000 (日経新聞社説 2016.10.22) 将来を見据えた介護保険の改革いそげ
 介護保険制度の改革議論が難航している。介護が必要な度合いの低い軽度者向けサービスの縮小が焦点だったが、厚生労働省は大きな改革を見送る方向だ。大きな改革は利用者にいたみをもたらす。改革案を議論している厚労省の審議会でも、選挙が近いのではと浮足立つ与党内でも、反対意見が強い。厚労省はそうした声に配慮したようだ。ただ、介護が必要な高齢者は増え続ける。2025年には団塊の世代が、要介護状態になりやすいとされる75歳以上の後期高齢者になる。このままでは莫大な介護費用が必要になりかねない。コストを抑えて持続可能な仕組みを整えるのに残された時間は、実は少ない。その場しのぎではない改革の議論を急ぐべきだ。在宅の要介護者向け訪問介護サービスには、身体介護と生活援助の2種類がある。身体介護は食事や排せつの世話などだ。生活援助は調理や掃除、洗濯などを指す。軽度者はこのうち生活援助を多く利用する傾向がある。生活援助サービスがないと困る人はいるだろう。その一方で「がんばれば自分でできることまでヘルパーにやってもらうので、かえって状態が悪くなっている」といった指摘も絶えない。14年の前回改革では、要介護状態になる手前の要支援者に対するサービスの一部について、介護保険による全国一律の給付から市町村独自のものに切りかえることが決まった。生活援助的なサービスは各自治体の判断でボランティアやNPOなどを活用し、効率化しようとの考えだった。今回の議論でも、軽度者の生活援助サービスについては市町村の独自事業に切りかえる案が出された。しかし「自治体の態勢が整わない」ことなどを理由に見送る方向が、早々と固まりつつある。代わって、生活援助サービスを提供する事業者に支払う報酬を引き下げる案などが浮上している。だが、報酬引き下げだけで増え続ける軽度要介護者に対応していけるのか、疑問だ。自治体へのサービス移管も視野に、さらなる効率化は避けられないのではないか。保険を使わず自費で生活援助サービスを購入しやすい環境も、整えたい。社会保障制度のなかで最も急激に費用が膨らむと予想されているのは介護だ。改革の手をこまねいてはならない。


<中高年人口の増加と需要構造の変化>
PS(2016年10月29日追加):第三次産業(サービス業)が74%と最も大きい日本の需要構造(=供給構造)はどう変わったのかと言えば、*5-2のように、65歳以上の高齢者が住民の半数以上を占める集落が、2015年4月には1万5568に上っている。また、*5-3のように、女性の3割超が65歳以上となり、ネットの活用が60代に広がっており、ネットショッピングを利用した65歳以上の世帯は13.6%となって過去最高を更新し、購入した商品・サービスはパック旅行、食料品、健康食品・サプリメント・贈答品等で、本当かどうかはわからないが64歳以下の世帯より多く支出しているそうだ。これは、現在の65歳以上は高卒以上が多く、職場で普通にパソコンを駆使していた購買意欲の高い層だからだろう。
 一方で、*5-1のように、井筒屋の社長(男性)が、「流行のボタンを押せていないから、消費が振るわない」と述べておられるが、実際は、中高年人口の割合が高い時代に消費の対象を若い女性のみに据え、人口の多い中高年世代を無視しているのが販売が振るわない原因だと考えられる。購買経験を積んだ中高年女性は、流行や面白いだけのものは買わず、質のよいものを選ぶため、本来は百貨店に販売機会が多い筈だが、私の経験でも百貨店の品揃えは細身・小型の若年女性中心で中高年女性の魅力を引き出す衣料品が少なく、あっても野暮ったかったり、少し良いと非常に高い価格設定になっていたりする。そのため、顧客の大半が女性で女性従業員が多い小売やデパートは、女性を馬鹿にせず女性管理職や女性社長を増やして、本物のニーズを発掘するのが良いと思う。なお、中高年者のニーズを察して満たせるためには、接客する従業員にも同世代の経験豊富な人がいた方がよい。

*5-1:http://qbiz.jp/article/96279/1/ (西日本新聞 2016年10月21日) 「流行のボタンを押せていない」 井筒屋・影山英雄社長(10月11日)
 消費が振るわない。しかし、それは、小売り側が需要を喚起できていない表れではないか。そんな流通の「心構え」を示すような一言を、全国の政令市で最も高齢化率(1月1日現在で28・6%)が高い北九州市に本拠を置くデパート、井筒屋のトップが発した。中間期としては8年連続の減収となった井筒屋。主力の衣料品が振るわず、関連商品も含めて前年に比べ8億円の減少と足を引っ張った。高齢化や人口減に歯止めがかからず、地域経済の先行きが見通せない。さらに、ライバルの福岡都市圏は商業集積が進むばかり。そこに、天候不順も重なった。不振の理由を挙げれば、枚挙にいとまがない。そんな厳しい環境下でのことだった。4月下旬〜5月上旬にかけ、小倉井筒屋(北九州市小倉北区)であるイベントを開いたところ、商品が飛ぶように売れ、完売も相次いだという。その商品とは、マスキングテープ。スマートフォンのケースに独自のデザインをあしらうなど、若い女性に人気のアイテムだ。売れ筋の単価は1個200〜300円と安いながらも、1カ月にも満たない期間中の売り上げは2千万円に上った。10月11日。2016年8月中間決算の記者会見に臨んだ影山英雄社長は、こう語った。「面白いものには人が来てくれる。(われわれは)まだ流行のボタンを押せていないということ」。期待か、自省か。潜在需要を感じさせつつ、それを引き出せていない地場デパートトップの重みのある一言だった。井筒屋が今後、どんな流行のボタンを押すのか。「百貨店といえば衣料品」という従来の枠から脱した発想が必要かもしれない。

*5-2:http://www.saga-s.co.jp/news/national/10201/358375
(佐賀新聞 2016年9月21日) 高齢者半数の集落1万5千、15年、5年で1・5倍
 65歳以上の高齢者が住民の半数以上を占める過疎地域の集落は、2015年4月時点で1万5568に上ることが21日、国土交通、総務両省の調査で分かった。10年度の前回調査から約5千の増加。調査対象の集落全体に占める割合も15・5%から20・6%に上昇した。過疎地域の高齢化が進行し、共同体の維持が困難な「限界集落」とも呼ばれる集落が増えている実態が浮き彫りになった。調査は、過疎法の指定地域などがある1028市町村にアンケートを実施。調査対象の集落は7万5662で、今回から離島なども加わったため前回(6万4954)から大幅に増えた。

*5-3:http://qbiz.jp/article/94318/1/
(西日本新聞 2016年9月19日) 女性の3割、65歳以上に 敬老の日、総務省推計
 敬老の日を前に総務省が18日発表した人口推計によると、女性の総人口に占める65歳以上の高齢者の割合が9月15日時点で30・1%となり、初めて3割を超えた。男性は24・3%。男女を合わせると前年から0・6ポイント増の27・3%だった。65歳以上人口は73万人増の3461万人で、割合、人数とも過去最高を更新した。女性の総人口に占める65歳以上の割合は2001年に20%を上回り、09年に25%を超えた。今年の65歳以上人口は、女性が前年より38万人増えて1962万人、男性は35万人増の1499万人だった。後期高齢者医療制度の対象となる75歳以上は1697万人で総人口の13・4%。女性が1037万人、男性は660万人だった。推計は、15年国勢調査の人口速報集計を基に、その後の出生・死亡者数から算出した。日本の高齢者の割合は欧米主要6カ国との比較でも最も高く、22・7%のイタリア、21・4%のドイツを上回った。1995年以降の伸び幅も日本は12・7ポイントに達した。イタリアの6・2ポイント、ドイツの6・0ポイントを大きく引き離しており、日本の高齢化が急速に進んでいることを改めて示した。また労働力調査によると、15年に職に就いていた高齢者は730万人と12年連続で増え、過去最多を更新した。約半数の360万人が企業などに雇用されていて、このうち74・2%に当たる267万人がアルバイトやパートといった非正規雇用だった。就業率は21・7%で、米国18・2%、カナダ12・8%を上回るなど、欧米6カ国より高かった。男女別では男性が30・3%、女性が15・0%だった。
   ◇   ◇
●ネットの活用 60代に広がり
 総務省の家計調査によると、世帯主が60〜69歳の2人以上世帯が、2015年にインターネット接続料として使った金額は年間で約2万5千円だった。5年前より約5千円多く、29歳以下の世帯と肩を並べた。ネット普及の世代格差が縮小していることがうかがえる。またネットを旅行予約や食品購入などに活用していることも分かった。家計消費状況調査では、ネットショッピングを利用した65歳以上の世帯(単身を除く)も15年に13・6%となって過去最高を更新。05年の3・8%から大きく伸びている。ネットで購入した商品・サービスのうち、パック旅行などに使った金額の割合が最も高く、全体の22・5%。次いで食料品の16・4%だった。健康食品やサプリメント、贈答品も、64歳以下の世帯より支出した金額の割合が高かった。総務省の担当者は「レンタカーやホテルの予約など、レジャーの手配にネットを活用している実態がうかがえる」と説明している。


PS(2016年10月29日追加):*6のように、ドイツのメルケル首相がフクシマの惨状を目にして脱原発に転換したのも、安価でクリーンなエネルギーを開発・普及するための英断だと私は考えるが、それに対して日本人が、「なぜそんなに福島の事故を恐れるの?」と問うのは、無知で恥ずかしすぎる。何故、それに気がつかないのだろう?

*6:http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2016102902000192.html (東京新聞 2016年10月29日) 【社説】ドイツの大転換 民意こそエンジンだ
 ドイツでは電力消費量の三割をすでに、再生可能エネルギーで賄っている。シュタインマイヤー外相の手記は訴えてくるようだ。「エネルギー大転換」のクリーンなエンジンは「民意」であると。3・11の年。ちょうどハロウィーンのころにドイツを取材した。「原発はいらない」と書かれた黄色い旗が、カボチャの飾りとともに目についた。フライブルクやミュンヘンの街頭で手当たり次第に聞いてみた。「なぜこんなに、福島の事故を恐れるの?」。異口同音に問い返された。「福島は日本じゃないの?」。ドイツの反核、反原発の歴史は深い。東西冷戦の最前線で核ミサイルを目の前に突きつけられた恐怖は、国民的トラウマ(心的外傷)と言っていい。そして一九八六年のチェルノブイリ原発事故。千二百キロ離れたドイツにも放射能が降り注ぎ、食卓から牛乳やキノコが消えた。「母親が沈み込んでいた。あんなの、もうたくさんだ」とミュンヘンの青年が吐き捨てるように言った。ドイツは原発事故の当事者にはなっていない。だが、ドイツ市民には原発事故の当事者という自覚が強い。二〇〇〇年にはすでに、時のシュレーダー政権が脱原発の方針を打ち出していた。3・11の前年、メルケル首相は運転寿命延長による原発の再浮上を図ったが、フクシマの惨状を目にして急転換。原子力の専門家以外で構成する倫理委員会の意見を優先させて、二二年までに全原発の段階的廃止を決めた。メルケル首相が恐れたのは、チェルノブイリやフクシマの再来を正しく恐れる民意である。一方、欧州では、日本とは段違いに温暖化への危機感が強い。昨年末のパリ協定は、石油、石炭など化石燃料の時代の終わりを予言した。とはいえ原発はそれ以上に恐ろしい。生命が大切ならば、再生可能エネなのである。環境や倫理だけではない。福島や温暖化への危機感をバネにした再生可能エネへの大転換には、やがてそれが巨大な世界市場を形成するとの読みもある。だから大手電力を含む経済界も、連邦政府の方針を受け入れざるを得ないのだ。「国民の八割以上が再生可能エネルギーの拡大に賛同しています」。シュタインマイヤー外相の手記の行間、浮かんできたのはやはり、あの言葉。「福島は日本じゃないの?」


PS2016年10月31日追加):*7-1のように、高島と池島で若者がハッサクやヤギを利用しているそうだ。離島は、海・田畑・山が近くにあり、海も本土とは比べ物にならないくらい美しいため、シチリア島のようにハッサクをレモン・オリーブ・アーモンド・ブドウに変えたり、山羊を羊・牛に変えたり、カレイだけでなくウニ・アワビも養殖したりすれば、稼げる事業を行うことができる。現在は、*5-2のように、日本全体では高齢者が半数以上を占める集落が1万5千もあり、若者が住み着いて何かを始めるのに協力する人も多い。また、デザイン・染色・絵画・音楽なども、美しい日本の風景を写し取った方が、都会のコンクリートの中で醜いアニメに興じているよりも世界の人々に訴えられる作品を作り出すことができ、自己実現する方が仮装して初めて自己表現できる状況にいるよりもずっと面白いだろう。
 そこで、*7-2のハロウィンだが、発祥地の外国ではかわいい子どもの祭りであるにもかかわらず、日本では成人が醜いおばけ姿の仮装大会に興じている(同じことはディズ二ーランドでも起こっている)。これは、普段、一人の大人として発言することのできない人が、仮装して初めて何かに反抗して自分を出したつもりになっている幼稚さとこれまで触れてきたものの貧しさによる美意識の退化に見える。

 
  佐賀県馬渡島    春の北アルプス         渋谷でのハロウィン仮装姿

*7-1:http://qbiz.jp/article/97053/1/ (西日本新聞 2016年10月31日) 閉山の島再生、若者が一歩 長崎 懸命の荒れ地対策
 世界文化遺産の高島炭坑がある高島(長崎市)と九州最後の炭鉱があった池島(同)で、急速な人口減少のため荒れ地が増えている状況を打開しようと、魚や動物を活用した取り組みが始まった。雑草刈りや間伐の人手が不足する中、知恵を絞り出したのは30歳前後の若手たち。「何とか島の荒廃に歯止めをかけたい」と力を込める。
●高島…未利用のハッサク餌に
 1986年に閉山した高島は、68年のピーク時に約1万8千人が暮らしていたが、現在は384人(今年9月末)。閉山後、当時の高島町が地域振興策として「島民や観光客が収穫できる果樹を植えよう」と炭鉱住宅跡など広範囲にハッサクを植えた。だが、過疎化がさらに進んで通路などに草木が生い茂り、多くのハッサクが収穫も管理もされていなかった。市と漁協が出資する長崎高島水産センターに昨春入社した永田晋作さん(27)は高島出身。幼少期に親がハッサクを取って食べていたことを思い出し、昨秋から伐採を兼ねて収穫した。果汁を飼料に混ぜて養殖ヒラメに与え続けると、臭みが消え、ハッサクの香りが付いたため、今月17日から一般に売り出した。「収穫するためには間伐が必要で、結果的に荒れ地対策になる。『はっさくヒラメ』がヒットし、島民や観光客に草刈りをしようという機運も高まってほしい」と生まれ育った島への思いを強くする。
●池島…ヤギ飼い除草に一役
 池島炭鉱は2001年11月に閉山した。1970年に約7700人だった島の人口は、今年9月で159人に。こちらも除草作業が追いつかず、荒れ地の拡大やイノシシの繁殖が懸念された。そこで有志が同7月、ヤギ2匹を飼い始めた。発案したのは、池島を含めた長崎市外海地区の地域おこしに関わる嶋田純人さん(37)。島民が小屋などを準備し、生い茂る雑草を食べさせたところ、少しずつ減っているという。嶋田さんは東京都出身。都の職員だった昨年夏に旅行で訪れ、人の良い土地柄を気に入った半面、地方の厳しい現実を知った。「地方に支えられて都市がある。行政サービスに携わってきた者として助けたい」と昨年秋に移住してきた。島では道路や建物の老朽化など課題も多い。それでも「ヤギは餌代がかからないし、島民や観光客の癒やしの存在にもなっている」と前を向く。2匹の名前は「けん」と「めい」。島民らの「懸命」な思いを込めた。

*7-2:http://digital.asahi.com/articles/ASJBV72XMJBVUTIL049.html
(朝日新聞 2016年10月28日) ハロウィーン、渋谷厳戒 初のホコ天・更衣室設置…
 ハロウィーンの「本番」10月31日が近づいてきた。今年はイベントが開かれる期間が4日間と長く、この間のイベントは、最も盛り上がる東京・渋谷だけで100件近くある。一方で、ゴミやトイレ、騒乱など年々、規模とともに問題も増えており、地元や警視庁は厳戒態勢。今年初めて渋谷駅近くを歩行者天国にし、混乱を防ぐ。
■4日で催し100件
 31日は月曜日にあたるため、ハロウィーン関連のイベントは前の週の金曜日から予定されている。
 渋谷区の担当者は「人がいつ集まるか読めない」と嘆く。区は28日から11月1日まで、仮装のための更衣室や仮設トイレを渋谷駅周辺に設け、案内などのため、駅周辺に職員やボランティアを計120人置く。特に、トイレは深刻だ。昨年の10月31日前後、区には「トイレに入れない」「街中で尿のにおいがする」といった苦情が相次いだ。百貨店などのトイレで若者が仮装するために着替えたり、メイクしたりしたため、買い物客がトイレを使えなくなったからだ。外で用を足す人もおり、繁華街一帯では異臭が漂ったという。区は今年、渋谷駅周辺の3カ所に仮設トイレを置き、ゴミ集積所も増やす。さらに人だかりを分散させようと、区観光協会は駅から少し離れた代々木公園で31日、イベントを開く。参加者が放置するゴミも難題だ。区と地元商店街などは11月1日の朝に、約500人で繁華街のゴミ拾いをする。区によると、昨年のハロウィーンに関連する一般ゴミの収集量は2・3トンにのぼった。
■DJポリス出動
 多くの人出を見込む警視庁は28~31日の4日間、混雑に応じて渋谷駅近くの車道を開放し、歩行者天国にする。ハロウィーンの警備で車の通行を制限するのは初めてだ。大勢の若者が歩道からあふれ、事故につながることを防ぐためで、仮装した人が集まり始める午後7時以降を想定している。歩行者天国は、駅前のスクランブル交差点の先からファッションビル「SHIBUYA109」をはさんだ文化村通りの約300メートルと、道玄坂の約250メートル。交差点と地下鉄の出入り口は規制しない。駅周辺の3カ所で検問も行う。不審な車の侵入や暴走行為を阻止するためだ。渋谷署員に加え、機動隊の爆発物処理班や銃器対策部隊も出てテロを警戒。現場の警察官は頭に小型カメラをつけ、映像を警視庁本部に送る。英語、中国語、韓国語に自動翻訳できる拡声機を使い、集まった人が転ばないように誘導する。車上からマイクで呼びかける「DJポリス」も出動する。昨年の10月31日は土曜日で、夜に数千人が渋谷駅周辺に殺到し、警視庁は交差点周辺を数百人態勢で警備した。痴漢のほか、機動隊員に殴りかかったり、商店街のガラスを割ったりした容疑で計3人が現行犯逮捕された。警視庁は今年も最大で数百人規模を動員し、土曜、日曜にあたる29、30日の夕方以降を中心に警戒を強める。鎌谷陽之警備1課長は「集まる人数が予測しにくく、チャレンジングな警備になる」と話す。(池田良、小林太一)
     ◇
〈日本でのハロウィーン〉 ハロウィーンは古代ヨーロッパのケルト民族の収穫祭が起源。米国では10月31日、仮装した子どもたちが「トリック・オア・トリート」と菓子をもらいにまわる習慣が文化となった。日本では2010年ごろから、仮装して「非日常」を楽しむ意味合いで人気が高まった。「日本記念日協会」によると、今年のハロウィーンの推計市場規模は前年比約10%増の約1345億円。バレンタインの約1340億円を初めて上回るとみられる。マーケティング会社「マクロミル」が首都圏の10~40代の1千人を対象に調査したところ、「仮装する」は28%。「仮装してお出かけする街」では渋谷が40%、2位の六本木は17%だった。


PS(2016年11月1日追加):主権者が政治を理解せず幼稚でいるのは、自分の利益のために政治を利用しようとする人にとっては願ってもないことで、例えば介護される立場になりながら現役並みに所得の高い高齢者はいないにもかかわらず、*8-1のようなヒューマニズムと根拠に欠けた政策を提案する人もいる。なお、介護される人が配偶者であったとしても、介護されるようになれば家事負担が困難になるため世帯が困窮するのは同じだ。そのような中、*8-2のように、「コストが安くて安全だ」と主張してきた原発が起こした事故の損害賠償や除染費用の超過分を国費で負担するよう、電気事業連合会の元気な人たちが政府に要望しているのは、税金の使い方の優先順位に関する認識が間違っているだろう。これまで、大手電力会社は総括原価方式で優遇されて莫大な資産を形成してきているので、電力自由化に向け送電会社を作って株式を上場するなど、独自の資金調達方法やビジネスがいくらでもあり、そんなことも自分で考えつかないようでは社会貢献できる企業にはなれない。

*8-1:http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2016103101002294.html
(東京新聞 2016年11月1日) 介護保険、3割負担案が浮上 高所得の高齢者対象に
 介護保険制度の見直しで、現役並みに所得の高い高齢者を対象に、サービス利用時の自己負担を3割に引き上げる案が政府内で浮上していることが31日、分かった。増え続ける介護給付費の抑制が目的。実施する場合、来年の通常国会に提出予定の介護保険法改正案に盛り込むことになる。ただ、介護保険の自己負担は制度スタートから一律1割で、昨年8月から一定以上の所得(単身で年金収入だけの場合年収280万円以上)がある人を対象に2割にしたばかり。浮上しているのは、2割負担の人の一部をさらに引き上げる内容。高齢者からの反発は必至で、調整は難航しそうだ。

*8-2:http://mainichi.jp/articles/20161004/k00/00e/020/174000c (毎日新聞 2016年10月4日) 福島原発、8兆円負担増 電事連、国費求める
 電力業界団体の電気事業連合会(電事連)が、東京電力福島第1原発事故の損害賠償・除染費用について、東電を含む大手電力各社の負担額が当初計画を約8兆円上回るとの試算をまとめ、超過分を国費で負担するよう政府に非公式に要望していることが4日明らかになった。政府はこれまで「賠償・除染費用は原則的に原発事業者の負担」との立場を取ってきており、慎重に検討するとみられる。福島第1原発事故の賠償・除染費用は、(1)国がいつでも現金に換えられる「交付国債」を原子力損害賠償・廃炉等支援機構(国の認可法人)に渡す(2)東電は機構から必要な資金の交付を受け、賠償・除染に充てる(3)機構は後に東電を含む大手電力から負担金を受け取り、国に返済する−−という仕組み。賠償分は東電と他の大手電力が分担▽除染費用は機構が持つ東電株の売却益を充当▽中間貯蔵施設の費用は電源開発促進税で賄うことになっている。政府は2013年、賠償費用5.4兆円▽除染費用2.5兆円▽中間貯蔵施設の建設費などを1.1兆円と見込み、機構への資金交付の上限を9兆円とした。だが、関係者によると、電事連は、賠償費用が見通しより2.6兆円増の8兆円、除染費用が4.5兆円増の7兆円になると試算。また、東電株売却益も株価下落で1兆円減少し、合計で8.1兆円の資金が不足すると見積もっている。大手電力各社は「除染費用は東電株の売却益で賄えず、最終的に電力各社が負担を迫られる」とみている。一方、原発再稼働の停滞や、電力小売り自由化による競争激化などから大手電力の経営環境が悪化したとして、賠償・除染費用の超過分の政府負担を求めた。福島第1原発の廃炉費用を巡っては、東電が2兆円を工面しているが、数兆円規模の財源不足も予想される。東電ホールディングスは7月、廃炉費用などの負担支援を政府に求めている。今回の電事連の要望に廃炉費用は含まれていない。政府は福島第1原発の賠償や廃炉費用の負担について、5日から始める「東京電力改革・1F問題委員会」などで議論することにしており、電事連の要望も今後協議される可能性がある。
●解説 事故つけ回し「無責任」
 電気事業連合会が東電福島第1原発事故の賠償・除染費用の超過分を国に負担するよう要望した。だが、大手電力各社はこれまで「原発のコストは安い」と説明してきた。事故のつけを国に求める姿勢は、「無責任」との批判が免れない。電力各社には「原発は『国策民営』で推進されてきたのに、事故が起きたときは事業者が責任を取らされる」との不満がある。東電以外の大手には「東電の事故の責任を負わされるのは理不尽」との思いもある。だが、大手電力は原発稼働で巨額の利益を上げてきた。原発の「安全神話」に寄りかかり、事故対策を怠ってきた面は否定できない。福島第1原発事故に伴う賠償・除染費用が膨大な額に達する見通しになったからといって、国に負担を押しつけるのは筋が通らない。国が負担を引き受ければ、最終的に税金が投入され、国民負担につながる。福島第1原発事故の処理費用は、国が原子力損害賠償・廃炉等支援機構を通じていったん立て替えるが、最終的に電力各社が負担する仕組みだ。この制度の趣旨にも大きく反する。


PS(2016.11.2追加):*9-1に書かれているように、日銀は金融政策決定会合で、物価上昇率2%の目標達成時期の見通しを「2018年度頃」に先送りし、黒田総裁は、2013年4月に始めた大規模な金融緩和で2%の物価上昇目標(生鮮食品を除く)を達成することを目指したが断念し、達成できなかった原因を「①消費増税後の景気低迷」「②原油安」「③新興国経済の減速」といった環境変化によるものとした。しかし、②は原油高でコストプッシュインフレーションが起き、国民資産が海外に多く流出して国民生活が困窮しても物価さえ上昇すればよいという逆の発想であるし、①は消費税率に影響されない(結果として売り手が消費税を負担する)生鮮食品を除けば、消費増税後に物価が上がり、それに伴って需要が減るのは当然のことだ。また、③は景気を下支えしていた中国の金融緩和が出口に向かったため支えが弱くなったということで、文句を言いながらの中国頼みだったのだ。
 一方、物価上昇・年金削減・介護負担増などで消費者の可処分所得を減らし、原発再稼働のために電力自由化という大改革を骨抜きにして自然エネルギーが普及するのを妨げたことは、エネルギー改革や民間投資による技術進歩と生産性向上を阻害した。そのかわりに、投資1円当たりの生産性向上が低い公共投資を増やしたため、全体の生産性は上がらなかったのである。つまり、国民には、気分でモノを買えるような人が少なくなっているので、需要増による物価上昇がなかったのは当然だったのである。
 なお、*9-2の日銀法第二条に定められているように、本来、日本銀行は物価の安定を通じて国民経済を健全に発展させることを理念としている。しかし、その日銀が物価上昇(インフレ)目標を持って金融緩和を続けたことにより、実質資産や実質収入が減り、国民は将来にも不安を感じたので、消費を増やすどころか節約してできるだけ貯蓄せざるを得なかったのだ。そして、これは経済学の原則どおりであるため、やってみなくてもわかることだった。


実質家計収入と消費支出 2015.6.12日経新聞 2016.11.2日経新聞 2016.10.20東京新聞  

*9-1:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12638027.html
(朝日新聞 2016年11月2日) 物価2%目標、任期中断念 黒田日銀「18年度ごろ」
 日本銀行は1日の金融政策決定会合で、物価上昇率2%の目標達成時期の見通しを「2017年度中」から「18年度ごろ」に先送りした。黒田東彦総裁は13年4月に始めた大規模な金融緩和で、2%の2年程度での達成を目指したが、18年4月までとなる任期中の達成を事実上断念することになった。物価目標の達成時期の先送りは今年3度目で、大規模緩和開始からは5度目となる。日銀は会合で、3カ月に1度まとめる「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」の物価上昇率(生鮮食品を除く)の見通しを下方修正した。16年度平均は7月時点の見通しのプラス0・1%からマイナス0・1%に、17年度は1・7%から1・5%に、18年度は1・9%から1・7%にそれぞれ引き下げた。黒田総裁は記者会見で、目標を達成できなかったことは「残念ではある」とし、任期中に達成できない責任は「物価がどうなるかということと私自身の任期に特別な関係はない」と言及を避けた。日銀は13年に政府と2%の早期達成を約束したとして、「早期実現に適切な政策を決定し実行することに尽きる」とし、任期中に達成できなくても、日銀として目標実現を目指す必要性を強調した。日銀は9月の会合で、物価目標が達成できなかった原因は、消費増税後の景気低迷や原油安、新興国経済の減速だったと検証し、政策の重点を、市場に流すお金の量の拡大から長期金利の操作に切り替えた。黒田総裁は会見で、目標が達成できなかった理由は「検証に詳しく書いている」と繰り返し、「世界共通の事象が影響している。欧米の中央銀行の予測も後ずれしている」と主張した。また、追加の金融緩和は見送った。黒田総裁は「企業や家計の両部門で、所得から支出への前向きなメカニズムは維持されている」と説明した。
<解説>異次元緩和の「敗北宣言」
 日本銀行が「2%インフレ目標」を黒田総裁の5年間の任期中には達成できない、と初めて認めた。事実上、異次元緩和の「敗北宣言」に等しい。2年間で2%の目標を達成し、デフレから脱却する――。黒田総裁は3年半前、そう高らかに宣言して登場し、アベノミクスの第1の矢を担った。「今後は物価が上がる」というインフレ期待を生めば、早めに投資や消費をしようとする動きが広がって経済が活性化し、賃金も上がるというシナリオを描いた。しかし現実はそうはならなかった。最近は物価上昇率はマイナスが続き、経済成長率も低水準にとどまる。相変わらず消費はさえず、賃上げも期待通りには広がっていない。日銀は物価が上がらない原因を、(1)原油価格の下落(2)新興国経済の不調(3)消費増税の影響といった環境変化によるものとしてきた。とはいえ、5年間でも無理だとしたら、もはや環境を理由にはできないのではないか。政策手法に問題があるか、目標自体が間違っていると考えるべきだ。黒田総裁は記者会見で、今の政策を続ければ今後物価は上がると主張した。緩和策を支持する安倍晋三首相に配慮せざるをえない事情もあるのだろう。日銀の金融緩和の規模はケタ外れだ。市場への資金投入量は国内総生産(GDP)比で8割に達し、2割ほどにとどめている米欧をはるかに上回る。将来、緩和を縮小する「出口」では、金利の急上昇などの副作用が予想され、日銀はそうしたショックにも備えなければならない。黒田総裁は目標を任期中に達成できず、政策の正常化は「ポスト黒田」も視野に入れた、日本経済の長期的な課題となっている。

*9-2:http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H09/H09HO089.html 日本銀行法
(平成九年六月十八日法律第八十九号、最終改正:平成二三年六月二四日法律第七四号)
第一章 総則
(目的)
第一条  日本銀行は、我が国の中央銀行として、銀行券を発行するとともに、通貨及び金融の調節を行うことを目的とする。
2  日本銀行は、前項に規定するもののほか、銀行その他の金融機関の間で行われる資金決済の円滑の確保を図り、もって信用秩序の維持に資することを目的とする。
(通貨及び金融の調節の理念)
第二条  日本銀行は、通貨及び金融の調節を行うに当たっては、物価の安定を図ることを通じて国民経済の健全な発展に資することをもって、その理念とする。
(日本銀行の自主性の尊重及び透明性の確保)
第三条  日本銀行の通貨及び金融の調節における自主性は、尊重されなければならない。
2  日本銀行は、通貨及び金融の調節に関する意思決定の内容及び過程を国民に明らかにするよう努めなければならない。
(政府との関係)
第四条  日本銀行は、その行う通貨及び金融の調節が経済政策の一環をなすものであることを踏まえ、それが政府の経済政策の基本方針と整合的なものとなるよう、常に政府と連絡を密にし、十分な意思疎通を図らなければならない。
(業務の公共性及びその運営の自主性)
第五条  日本銀行は、その業務及び財産の公共性にかんがみ、適正かつ効率的に業務を運営するよう努めなければならない。
2  この法律の運用に当たっては、日本銀行の業務運営における自主性は、十分配慮されなければならない。  (以下略)

| 経済・雇用::2016.8~ | 10:00 PM | comments (x) | trackback (x) |
2016.8.2 政府の経済政策と日本の産業の低付加価値の問題(2016年8月5、6、7、8、9日追加)
     
  2016.7.5佐賀新聞     2016.6.15西日本新聞        2016.7.29佐賀新聞               

(1)金融緩和・物価上昇と国民生活について
 与野党が参院選の経済論争で挙げたデータでは、*1-1のように、自民党は「2013~2015年の国内総生産(GDP)の名目成長率を年平均1.6%に押し上げた」とし、民進党は「同期間の実質成長率は0.6%に留まる」としていた。

 では、名目と実質のどちらが生活者にとって意味のある数字かと言えば、物価変動による貨幣価値の変化を修正した実質の方である。また、貨幣価値(購買力)が下がったのは、大規模な金融緩和で通貨をジャブジャブにしたからで、これによって雇用環境が改善した理由は、2010年を100とすれば、2015年は94.6というように実質賃金が下がったからだ。つまり、日本では、付加価値の低い仕事をして低い実質賃金を受け取ることにより雇用を増やしているため、働いている人も消費を増やせないのだ。

 なお、*1-2、*1-4のように、「デフレ脱却の目安となる2%のインフレ目標の達成が重要だ」とする論調は多いが、それは、インフレにすれば、①国・企業の債務を目減りさせることができる(逆に債権を持っている人は実質債権額が目減りする) ②額面(名目)の賃金カットをせずに実質賃金を下げることができる という理不尽な目的によるものであるため、生活者は騙されてはいけない。

 さらに、*1-3のように、G20は「構造改革の重要な役割を強調しつつ、財政政策が同様に重要である」とし、財務省同行筋は「まさに日本のやろうとしていることと軌を一にしている」と自信を示したそうだが、G20は構造改革の方を重視しているのに対し、日本は構造改革をせずに選挙協力の報償のような生産性を上げない財政支出をしたがるため、国民が付加価値の高い仕事をできるようにはならず、国の借金だけが積み増されるという悪循環に陥っていることも忘れてはならない。

(2)経済対策としての財政出動について
 安倍首相は、*2-1、*2-2のように、「①財政措置の規模で13兆円、事業規模で28兆円を上回る総合的かつ大胆な経済対策を来週に取りまとめたい」「②しっかりと内需を下支えし、景気の回復軌道を一層確かなものにしなければならない」と表明しておられる。

 しかし、①については、1年間の消費税5.2%分の金額を、何のために、どう使い、それによってどういう効果があるのか についての根拠を明らかにしなければ、従来同様、ここにひそかに潜り込ませた不要な支出を否定できず、②からは、本物の投資や需要ではない景気対策のように思われる。

(3)グローバル化と一体化は異なること
 主権を放棄したいかのようにTPPを進めている日本は、*3のように、「英国の欧州連合(EU)からの離脱は世界経済混乱の原因になる」と主張しているが、英国を批判しているその日本は難民を殆ど受け入れていない上、開発途上国からの正規の労働移動にも消極的だ。しかし、私は、難民の受け入れや労働移動は、国によって状況が異なるため、人権を護りながらも、その国独自の判断をしたい場合は当然あると考える。

 では、英国が欧州連合から離脱すればグローバル化に逆行するのかと言えば、グローバル化は、一体化しなくても独立国の政策決定で決められるため、先進国なら他国と一体化しない方が、より進んだ政策を採ることも可能だ。そして、英国は、日本が鎖国していた17世紀から、東インド会社を通じてグローバルに商取引を行っていた国なのである。

(4)年金について

    
 上場企業の年金債務・資産・未積立額     株価の推移(名目)     非正規社員数の推移
       2016.7.26日経新聞       2015.4.10西日本新聞 

 上場企業の年金債務は、*4-1のように、2015年度末で91兆円と過去最大に膨らみ、マイナス金利で積立不足が26兆円になったそうだ。その理由は、年金債務要積立額は支払い時までプラス金利で運用する前提で現在価値に割り引いてきたが、利率が低いほど要積立額が多くなり、マイナス金利では将来支払う金額よりも大きな金額を現在積み立てておかなければならないからである。

 そのわけは、金利が高くて運用環境がよければ年金積立額は年金支払い時までに運用益でかなり増えるが、金利が低かったりマイナス金利になったりすれば、あまり増えないので企業は割引率を下げてより多く積み立てなければならないからだ。同じことは、公的年金、保険、個人資産などでも起こっているため、付加価値の低い生産しかできず、金融緩和で経済を持たせるのは、多方面に迷惑をかけている。

 さらに、*4-2のように、国民年金の納付率は90~100%ではなく、たった63.4%である。この割合では、日本年金機構の管理に甘さがあると言わざるを得ない。また、非正規労働者の増加も、年金保険料を支払えない人を増やしている。さらに、男女の性的役割分担に固執して女性が働きにくい社会を作った結果、専業主婦として三号被保険者となり、保険料の納付を免除されている人も多い。

 その上、*4-3のように、年金資産の運用を行っている年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の2015年度の運用損失は約5兆3千億円で、GPIFは2014年10月に株式(リスク資産)での運用割合を50%に増やし、昨夏や年明けからの株価下落で赤字を出したそうだ。これについて、政府とGPIFは、「累積では約45兆円の運用益を確保しているので問題ない」としているが、年金資産は短期の売り買いが不要であるため、株式などのリスク資産による運用は50%ではなく20%以下にして80%以上は債権で元本を保証しながら、株式などのリスク資産は高くなって利益が出る時に売却し、安くなった時に購入するという方法で、元本割れさせずに利益を出し続けることも可能なのである。

 従って、年金資産の50%という高い割合で、どういう銘柄の株式を買い、本当に年金資産にプラスになる運用をしたのかどうかも検証が必要だ。

 このようにして、年金生活者にも大きな実質収入減があるため、(泥棒でもしない限り)消費を控えざるをえず、いつまでも本物の需要で市場が満たされないわけである。

<金融緩和・物価上昇と国民生活>
*1-1:http://www.saga-s.co.jp/column/economy/22901/330380 (佐賀新聞 2016年7月5日) 成長率、雇用など経済論争 際立つデータの違い、参院選で与野党、共に実績を強調
 与野党が参院選の経済論争で挙げるデータの違いが際立っている。自民党は安倍政権3年半の成果として、2013~15年の国内総生産(GDP)の名目成長率を年平均1・6に%押し上げたと強調する。民進党は、同期間の実質成長率は同0・6%にとどまり、民主党政権3年3カ月より低いと反論。両者は共に実績を強調し、アベノミクスの評価は正面からぶつかる。2種類の成長率は、物価変動要素を含めた名目値と、除外した実質値の違いだ。名目値は、給料や物・サービスの値段など見掛けの状態を表すため国民の実感に近く、実質値は真の実力を示すとされる。与党が重視するのは名目値だ。民主党政権時の10~12年の名目成長率は年平均0・3%で、安倍政権になり上がったと胸を張る。名目値が高いのは、物価が上がったため。アベノミクス「三本の矢」による大規模な金融緩和を進めた結果と言えそうだ。民進党は実質値に寄った立場だ。10~12年は東日本大震災の発生もあった上で実質成長率が年平均2・0%あったが、13~15年は半分以下に落ち込んだと指摘。アベノミクスが失敗した証拠だと突き付ける。雇用統計でも与野党は対立する。自民党は参院選公約に(1)就業者数が12年から15年に106万人増加(2)有効求人倍率が24年ぶり高水準で47都道府県全て1を超えた-などと明記。雇用環境が改善したと訴える。野党が問題視するのは、雇用形態だ。こちらも公約に、非正規雇用は03年の34・6%から14年に40・5%へ増加したと明示。12年と15年の比較でも、非正規が167万人増え「雇用が不安定になる一方だ」と指摘する。賃金を巡っても、両者の主張は食い違う。与党は、3年連続2%水準で引き上げを実現したと成果を誇る。企業収益が過去最高の70兆8千億円(15年)に達し「政権から経済団体へ賃上げを働き掛けた。労組のお株を奪う実績だ」と自負する。野党は、物価要素を除いた実質賃金で見れば、安倍政権で連続して減少したと切り捨てる。10年を100とすれば15年は94・6と低迷しているのが実態だと示し「格差が広がり、消費も伸びない」と疑問視した。

*1-2:http://www.kyoto-np.co.jp/info/syasetsu/20160430_3.html
(京都新聞社説 2016年4月30日) 物価目標先送り  戦略立て直しが必要だ
 強弁を重ねても手詰まり感は誰の目にも明らかだろう。日銀は、デフレ脱却の目安となる2%の物価上昇目標の達成時期をさらに先送りする一方、金融政策は現状維持を決めた。追加金融緩和を予想していた金融市場では失望売りが広がり、日経平均株価が600円以上急落し、大幅に円高も進んだ。黒田東彦総裁は、追加緩和見送りの理由を2月導入のマイナス金利政策の「効果を見極めるため」としつつ、「2%目標は十分達成できる」と繰り返した。だが足元では景気や物価の低迷が浮き彫りで、家庭や企業、市場とも認識のずれは広がる一方ではないか。目標達成時期の先送りは1年間で実に4回目だ。1月に見直した「2017年度前半」を早くも「17年度中」へ最大で半年延ばした。黒田総裁は「2年で達成」を確約して13年4月に大規模緩和を始めた。任期5年内の達成の瀬戸際に追い込まれた形だが、実現は極めて困難との見方が大勢だ。それでも日銀は追加緩和に動けなかった。「奥の手」のマイナス金利導入でも企業、個人向け融資拡大の効果がいまだ見えず、収益悪化を懸念する金融機関や国民からも反発が根強いからだ。さらに短期間での追加緩和は通貨安誘導だと国際的批判を受けかねない。5月下旬の主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)を前に、経済政策での国際協調に水を差すとの政治的配慮もあっただろう。黒田総裁はなお、経済の「前向きな循環は持続している」とするが、説得力を欠く。3月の消費者物価は前年同月比0・3%減と約3年ぶりの下げ幅、家計の実質消費支出も同5・3%の大幅減だ。これまで原油安が目標後退の要因としてきたが、「成長率や賃金改定が下振れした」と景気停滞を認めざるを得なくなっている。必要と判断すれば追加緩和すると強調するが、金融政策だけで景気や物価を上げるのに限界があるのは明白だ。日銀には柔軟に戦略を立て直すことが求められよう。実体経済に即して市場との「対話」がより重要だ。予想外の「サプライズ」で政策効果の最大化を図ってきた手法に陰りが出ている。表向きは強気一辺倒で手の内を明かさぬ姿勢が不信を招き、動揺を広げている面は否めない。政策の狙いと効果を系統的かつ丁寧に説明していく必要がある。政府も金融政策頼みから脱し、景気の鍵を握る内需の底上げや新産業の育成を強めねばならない。

*1-3:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20160725&ng=DGKKZO05206710V20C16A7NN1000 (日経新聞 2016.7.25) 財政・金融 相乗効果探る、政府、経済対策決定へ 日銀にじわり圧力
 20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議を終え、政府・日銀は来月初めにかけて政策決定の大詰めを迎える。安倍政権の経済政策アベノミクスの再点火へ、財政出動と金融緩和の相乗効果をどう高めるかが焦点だ。G20会議が打ち出した政策総動員を早速試されることになり、国際社会の注目を集める。「構造改革の重要な役割を強調しつつ、財政政策が同様に重要である」。24日採択した共同声明はそう強調した。麻生太郎財務相は財政出動について「政府内で検討しているところ」と発言。財務省同行筋は「まさに日本のやろうとしていることと軌を一にしている」と自信を示した。7月10日の参院選勝利を受けて安倍晋三首相は経済対策の策定を指示。政府は来月初めの決定へ調整を進めている。財務省幹部は首相が休暇中の先週も首相官邸や与党に頻繁に足を運んだ。「最大限にふかす」という首相の意向をふまえて、事業規模は総額20兆~30兆円に膨らむとの見方が足元で強まっている。日銀は政府の経済対策と相前後する7月28~29日に金融政策決定会合を開く。黒田東彦総裁は成都で「経済は緩やかな回復過程にある」「賃金・物価が緩やかに上昇していくメカニズムは続いている」と指摘。その上で「必要ならば追加的な金融緩和措置を講じる」と選択の余地を残した。最近の金融市場は政府・日銀の政策の先行きに敏感な展開。先週も黒田総裁の発言で円高が進む場面があった。第2次安倍政権は発足当初に財政出動を膨らませ、黒田日銀による異次元金融緩和を引き出した。「その当時の手法や雰囲気を連想させる」(ある財務省OB)との認識が市場の期待を高めている。財務省や日銀にとって4月の金融政策決定会合が苦い記憶になっている。直前の観測報道で追加緩和の期待が盛り上がったぶん、政策現状維持で市場の失望を誘い円高が加速した。麻生氏の円高をけん制する“口先介入”が米国の反感を買い、日米通貨当局の応酬につながった。4月との大きな違いは財務省の日銀への視線にある。最近は「日銀は今回は何かやるだろう」と観測めかして日銀の追加緩和を促す財務省幹部が複数いる。日銀は市場と財務省からの期待や圧力を背負って決定会合に臨むことになる。

*1-4:http://qbiz.jp/article/91536/1/
(西日本新聞 2016年7月29日) 日銀、追加金融緩和 脱デフレへ政府と協調
 日銀は29日、金融政策決定会合を開き、追加金融緩和を賛成多数で決めた。上場投資信託(ETF)の購入額を現行の年3・3兆円から6兆円に増やす。円高や消費低迷で物価の上昇基調が揺らぎ、デフレ脱却には政策強化が必要と判断した。黒田東彦総裁は、次回の金融政策決定会合で経済・物価動向や政策効果について、総括的な検証を行う準備をするよう日銀執行部に指示した。日銀は会合後、政府の経済対策と「相乗的な効果を発揮する」との認識も示した。決定を受けて金融市場では緩和が小規模だとして失望感が広がり、円相場は一時1ドル=102円台に上昇、日経平均株価も乱高下した。「2年程度で2%の物価上昇目標を達成」を宣言した黒田総裁の就任から3年余りで3回目の追加緩和となる。緩和策の効果を疑問視する見方が広がっており、実際に景気を押し上げて脱デフレを達成する効果があるかは未知数だ。ETF買い入れ増額には、9人の政策委員のうち7人が賛成、2人が反対した。英国の欧州連合(EU)離脱問題などで、金融市場で不安が高まっていることからドル資金供給を120億ドルから240億ドルに拡大することを決めた。民間銀行が日銀に預ける資金の一部に手数料を課すマイナス金利政策は、金融機関の収益悪化につながるとして反発が依然として根強い。このためマイナス金利の一段の引き下げは見送り、年0・1%で据え置いた。この日発表された6月の消費者物価指数(生鮮食品を除く)は前年同月比0・5%下落と4カ月連続のマイナスで、目標から大きくかけ離れている。英離脱問題で、消費者や企業の心理が慎重になることへの危機感も日銀内で強まった。国内景気の現状判断は「基調としては緩やかな回復を続けている」と据え置いた。2016年度の物価見通しは引き下げた。

<財政出動>
*2-1:http://qbiz.jp/article/91413/1/ (西日本新聞 2016年7月28日) 経済対策 事業規模28兆円超 首相表明、財政措置は13兆円
 安倍晋三首相は27日、福岡市で講演し、近く策定する経済対策について「財政措置の規模で13兆円、事業規模で28兆円を上回る、総合的かつ大胆な経済対策を来週取りまとめたい」と表明した。8月2日にも閣議決定する。一部はその後に編成する本年度第2次補正予算案に盛り込み、秋の臨時国会で成立を目指す。首相はこの日、同市で始まった「一億総活躍・地方創生 全国大会in九州」に出席した。経済対策に関しては「しっかりと内需を下支えし、景気の回復軌道を一層確かなものにするものでなければならない」と指摘。外国クルーズ船が着岸する港湾の整備や農水産物の輸出促進、子育てや介護と仕事の両立などを列挙し、「経済対策のキーワードは未来への投資。力強いスタートを切る」と意欲を語った。熊本地震の復興をめぐっては、参院選の公示日に熊本城前で第一声を上げたことに触れた上で「熊本城が威風堂々たる姿を取り戻す日まで復興に全力を尽くす。その決意を新たにした」と強調。「今後、住まいの復興、なりわいの復興を一層加速させる必要がある」との考えを示した。

*2-2:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/338816 (佐賀新聞 2016年7月29日) 低所得者に1万5000円 対象2200万人、国債増発で公共事業 政府経済対策
 政府、与党は28日、経済対策を大筋で取りまとめ、低所得者に1万5千円を給付する方針を固めた。対象は2200万人。対策全体の追加歳出は地方自治体分を含めて7兆円程度とし、うち2016年度第2次補正予算案への計上額は2兆円台後半で調整する。財源が不足するため借金(建設国債)を積み増して公共事業を行い「アベノミクス」を加速する。金融政策決定会合を29日まで2日間開く日銀と一体で経済の底上げを目指す。年度途中での国債増発は4年ぶり。民間支出や融資をかき集めて事業費を28兆円超に膨らませる苦肉の策となる。財政、金融政策とも限界論が指摘される中、効果に見合わない財政リスクが蓄積されるとの懸念が現実味を増してきた。政府は28日、自民、公明両党に対策案を示し、大筋で了承を得た。この日の提示には事業の規模や予算額を含んでいない。細部を詰めた上で8月2日に閣議決定し、9月召集の臨時国会に補正予算案を提出する。低所得者への現金給付は最低賃金引き上げなどと合わせて家計を支え、消費を底上げするのが狙い。消費税増税の負担軽減策として16年度末までの予定で年6千円を給付した「簡素な給付措置」を引き継ぐ。消費税率10%への増税を2年半延期するのに伴い、2年半分に当たる1万5千円を一括給付する形に改めて消費を喚起する。現行制度と同様、住民税非課税の人を対象とする方針だ。政府は給付額を1万円に抑えることも検討したが、現行水準を下回ることに公明党が反発、1万5千円で決着した。対策案では1億総活躍社会の実現を目指し、保育士や介護人材の処遇を改善。労使が負担する雇用保険料も軽減する。無年金者救済策として、年金受給資格を得られる加入期間を現行の25年から10年へと短縮する。防災対策などの公共事業を行うほか、財政投融資を活用してリニア中央新幹線の大阪延伸を最大8年前倒しし、整備新幹線の建設を加速する。日銀は金融政策決定会合で追加金融緩和の是非を検討し、29日に決定内容を公表する。政府、与党内には経済対策との相乗効果を求め、追加緩和を期待する声がある。

<グローバル化と一体化は異なる>
*3:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20160725&ng=DGKKASDF24H0T_U6A720C1MM8000 (日経新聞 2016.7.25) EU離脱の混乱回避へ連携 G20財務相会議 政策総動員を確認
 日米欧に新興国を加えた20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議は24日、英国の欧州連合(EU)からの離脱で世界経済が混乱しないように連携していく方針を打ち出した。世界経済の不確実性が高まっており、各国は政策を総動員すると再確認した。為替問題では「通貨の競争的な切り下げを回避する」と改めて指摘した。G20財務相会議は、英国が6月23日の国民投票でEUからの離脱を決めてから初めて。同問題で金融市場も不安定な動きをしており、今回の会議で最大の議題となった。24日公表した共同声明では世界経済について「回復は続いているが、期待していたほどではない。下振れリスクが残る」と分析。その原因として英国のEU離脱のほか、テロ・難民・紛争といった地政学上の問題を挙げた。英国のEU離脱については「G20は積極的に対処する態勢を整えている」と連携を強調。当事者の英国とEUには「緊密なパートナーである姿を望んでいる」と注文を付けた。共同声明の作成には英国も積極的に関わった。会議の主役となった新任のハモンド英財務相は日本、ドイツ、EUなどとの2者会談を重ね、経済の下振れを最小限にとどめたいと説明した。さらに英メディアを通じて秋にも財政政策を景気配慮型に「見直す」と対外発信した。今年2月、同じ中国の上海で開いたG20財務相会議でも景気の不透明感が指摘され、各国が政策を総動員すると表明。今回も持続的な成長に向けて「金融、財政、構造政策を総動員する」と確認したが、世界経済の状況は様変わりした。当時は中国の景気減速に対する懸念が強かったが、いまは政治・地政学リスクに焦点があたっている。財務相らは「テロ資金供与のすべての資金源、技術と戦っていく」と強調。難民問題では米国のルー財務長官が「あらゆるところで難民問題が大きなインパクトを与えている」と懸念を示した。米欧諸国は議長国の中国に対し、鉄鋼の過剰生産能力問題に対応するように迫り、共同声明には「世界的課題」と盛り込まれた。

<年金>
*4-1:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20160726&ng=DGKKASGD25H4W_V20C16A7MM8000 (日経新聞 2016.7.26) 金債務最大 上場3600社で91兆円、昨年度末、マイナス金利で膨張 積み立て不足26兆円、重荷に
 上場企業の年金債務(総合2面きょうのことば)が2015年度末で91兆円と過去最大に膨らんだ。年金債務は企業が年金・退職金を支払うために現時点でどれだけ蓄えておくべきかを示す。日銀のマイナス金利政策の影響で金利水準が全般に下がって運用環境が悪化し、年金債務を厳しく見積もらないといけなくなった。この結果、企業年金の未積立額は26兆円に拡大し、業績の重荷になるのが避けられない情勢だ。このほど出そろった有価証券報告書をもとに、3642社(金融含む)を集計した。年金債務は前の年度末比で5.1%増え、91兆2151億円に達した。年金債務を算出する際は金利水準に応じて調整を加える。運用環境の変化を織り込む会計処理だ。金利が高ければ運用で資産を増やしやすいので、将来の年金などの支払額に比べて現時点で用意すべき額は小さく見積もる。反対に金利低下が進むと多めに準備しておく必要があると見なし、年金債務は増加する。年金債務を調整するための利率を「割引率」と呼ぶ。上場企業の割引率は15年度に平均で0.863%と過去最低になった。マイナス金利政策を受けて10年物国債の利回りがマイナス圏まで落ち込み、企業は割引率を下げざるを得なかった。トヨタ自動車は国内年金で割引率を0.5%に下げ、年金債務は1兆9121億円と1909億円増えた。東武ストアなど31社はマイナスまで引き下げた。割引率がマイナスだと年金債務は将来の年金などの支払額よりも大きくなる。年金の運用資産は株安・円高が響いて65兆2380億円と7年ぶりに減った。この結果、年金債務と運用資産との差額である未積立額は25兆9770億円と4年ぶりに増加。日本では未積立額のうち割引率低下や運用悪化による部分は一定期間内に年金費用として計上する必要がある。年金債務の増加は会計上の処理だが、企業業績には実際に悪影響が及ぶ。ヤマトホールディングスは割引率引き下げに伴って30億円費用が増え、17年3月期の営業利益は7%減となる想定だ。東京ガスも割引率を下げたことで240億円の費用を今期に計上する。未積み立て分は負債としても計上する必要があるため、自己資本比率の低い企業などでは年金債務の負担で財務悪化が加速する恐れもある。野村証券の西山賢吾氏は「マイナス金利の長期化で、未積立額は16年度以降も拡大する可能性がある」と分析している。

*4-2:http://mainichi.jp/articles/20160701/k00/00m/040/069000c
(毎日新聞 2016年6月30日) 国民年金、.納付63.4%…15年度 情報流出で伸び鈍化
 厚生労働省は30日、2015年度の国民年金保険料納付率が63.4%となり、前年度より0.3ポイント改善したと発表した。納付率の上昇は4年連続だが、昨年6月に日本年金機構の加入者情報の流出問題が起き、滞納者対策が遅れたため、改善の幅は前年度(2.2ポイント)に比べて鈍化した。年金機構は保険料の収納業務を担い、納付率向上を目指して特別催告状の送付や戸別訪問などによって納付を促している。しかし、情報流出後はこれらの督促業務が一時中断していた。20〜59歳の年代別納付率をみると、20〜24歳は前年度比0.33ポイント減の58.94%、50〜54歳は同0.1ポイント減の67.27%だった。その他の年代は同0.3〜0.9ポイント改善した。また、保険料を滞納した場合、過去2年分の追納ができ、追納分を含めた13年度の最終納付率が70.1%になった。70%台を回復するのは7年ぶり。13年度末時点からは9.2ポイント上昇し、最終納付率の統計を取り始めた02年度以降、過去最高の伸び幅だった。

*4-3:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/338942
(佐賀新聞 2016年7月29日) 年金運用損失5.3兆円 2015年度
 公的年金の積立金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の2015年度の運用損失が約5兆3千億円だったことが28日、分かった。GPIFは14年10月に株式の運用割合を増やしており、昨夏や年明けからの株価下落が響き、5年ぶりの赤字となった。損失額はリーマン・ショックを受けた08年度より後では最大。GPIFが29日に発表する。政府とGPIFは、市場運用を始めた01年度から累積では約45兆円の運用益を確保していることを強調。「年金積立金は長期的な視点で運用しており、短期的な変動にとらわれるべきではない」としている。GPIFは14年10月、積立金を株価浮揚に活用したい政府の意向も踏まえて運用資産の構成割合を変更した。国内外の株式の目安を計50%に引き上げたため、15年度は株安の影響を大きく受けて損失が膨らんだ。株式市場は本年度に入ってからも、株価が乱高下するなど不安定な状況。国内債券でも利益を得ることが難しくなっており運用環境は厳しい。今回の運用実績の発表は例年より3週間ほど遅く、野党は「参院選前に損失を明らかにしたくなかった政権の情報隠しだ」と批判している。
■年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF) 国民年金や厚生年金の保険料収入の余剰分を積立金として管理し、市場に投資して運用する。厚生労働省の所管で2006年に設立された。前身は年金資金運用基金。債券や株式などにどうお金を振り分けるかという資産構成割合は、外部の専門家らで組織する運用委員会で協議して理事長が決める。政府は理事長に権限が集中する体制を改め、重要事項は合議制で決めることなどを盛り込んだ年金関連法案を先の通常国会に提出したが、継続審議となっている。


PS(2016年8月5日追加):これは、低金利と金融緩和が国民資産に悪影響を与えている事例だが、現在、退職給付会計を使って比較的正確に退職給付債務を計算しているのは上場企業だけで、その他の企業や公的年金は不足額の把握すらできていないため、全年金の積立不足額が25兆円超だと考えたら甘い。そのため、まず、その他の企業や公的年金についても退職給付会計を使って退職給付債務を正確に把握すべきだ。

*5:http://www.saga-s.co.jp/news/national/10201/341503
(佐賀新聞 2016年8月5日) 年金積み立て不足、25兆円超、マイナス金利響き、15年度末
 年金や退職金を支払うために用意しておくべき「退職給付債務」の上場企業の積み立て不足額が15年度末時点で約25兆6千億円に上り、不足額が前年度末から約7兆7千億円増えたことが、野村証券の集計で5日分かった。日銀が導入したマイナス金利政策の影響で長期金利が下がったり、株価が下落したりして期待できる運用利回りが低くなったことが響いた。積み立て不足が深刻化すれば、企業収益を圧迫し財務体質の悪化につながる。企業が給付水準を保障する確定給付型の年金制度の維持が難しくなり、確定拠出年金など、従業員がより運用リスクを負う方向に企業年金の制度見直しが進む可能性もある。


PS(2016年8月6日追加):佐賀県のJAは、*6のようにアクションが速いのはよいが、年金は、老後確実にもらえるのが最もよいサービスであるため、これを実現するには、(例えば「九州農業者年金」のように)合併などで年金の規模を大きくして上場企業と同じ会計処理や管理を行うのがお薦めだ。それには、農協を担当している監査法人もやり方を熟知しているため相談すればよい。また、「農業に従事すれば、年金も含めて一生困らない」という環境を作れば、質の良い後継者候補が増えることは間違いない。

*6:http://www.saga-s.co.jp/column/economy/22901/341702
(佐賀新聞 2016年8月6日) JA年金友の会 会員3%増目標、佐賀市で県大会
 年金をJAバンク口座で受給する利用者でつくる「JA年金友の会」の県大会が、佐賀市文化会館であった。2015年度末の会員数は前年同期比1183人増の6万6294人、振込額は同17億4500万円増の639億3千万円で、本年度中に会員を3%増やす目標や会員同士の親睦事業の活発化を確認した。年金受給者が増える中、JAバンク佐賀は地方銀行やゆうちょ銀行などとの競争激化を念頭に、会員増強運動を展開している。大会で中野吉實会長は「会員同士の交流を図るカラオケ大会など、会員になってよかったと言ってもらえるように顧客サービスを充実したい」とあいさつした。会員増加率が高かった支部の表彰もあり、最優秀賞に輝いたJA佐賀市中央・神野支部の会員代表らが表彰状と副賞を受け取った。


PS(2016年8月7日追加):*7に、「①年金を受け取るのに必要な受給資格期間が、現在の25年から10年に短縮される」「②無年金者の救済策として、政権が来年度中に実施する方針を示した」「③年に約650億円が必要になるが、安定した財源が確保できているとは言えない」「④受給資格期間の短縮は社会保障の充実策」「⑤10%への消費増税に合わせて実施予定だったが、増税先送りで実現が不透明」等と記載されている。
 しかし、①については、25年も保険料を支払わなければ受給資格をもらえないのがおかしなルールなのであり、このルールによって被害を受けたのは子育てで退職せざるをえなかった女性や転職を余儀なくされて他の年金制度に移り、一つの年金制度への加入期間が25年や10年に満たない人である。つまり、25年から10年に受給資格取得期間を縮めるだけで、③のように、年に約650億円も必要になるというのは、日本の年金制度が今まで弱者からこれだけの金額を搾取してきたということだ。しかし、本当は、年金保険料を1年しか支払わなくても、それに見合った年金は受け取れるようにするのが公平であるため、この前提で計算すれば国の不当利得は年間1000億円にも達するだろう。
 また、②については、働いている時には少なからぬ年金保険料を納めているため、受給時に「救済」などと言われるのは不本意であり、支払った年金保険料に見合う年金を受け取るのは当然の権利であって、②の救済や④の社会保障と言う言葉を、(生活保護ではなく)年金に使うのは無理がある。
 そして、⑤のように、いつもの消費増税先送りで実現が不透明などと消費税財源論が書かれているが、税金は消費税だけではない上、景気対策と称するヘリコプターマネーの無駄遣いが多く、年金は国民が税金とは別に年金保険料を支払って加入しているものであるため、国民が支払った年金資産を杜撰にではなく的確に管理・運用して増やし、本来の目的である公平・公正な年金を支払うのが年金保険機構(前は社会保険庁)と厚労省の責任なのである。

*7:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12500401.html
(朝日新聞社説 2016年8月7日) 無年金救済 多様な取り組みで
 年金を受け取るのに必要な受給資格期間が、今の25年から10年に短縮されそうだ。無年金者の救済策として、政権が来年度中に実施する方針を示した。今は保険料を納めた期間が25年に満たないと年金を受け取れないが、そうした人のうち約64万人が新たに年金をもらえるようになると見込まれている。高齢になっても働き続ける必要に迫られるなど、厳しい生活を送る無年金の人には朗報だ。ただ、年に約650億円が必要になる。安定した財源が確保できているとは言いがたい。受給資格期間の短縮は税・社会保障一体改革に盛り込まれた社会保障の充実策で、10%への消費増税に合わせてもともとは昨年10月に実施予定だった。増税先送りで実現が不透明になるなか、先の参院選で自民、公明両党が早期の実施を約束していた。いわば見切り発車である。政権は、消費税率を10%にするまでの当面の財源をやりくりすれば乗り切れると考えているようだが、19年10月に消費増税が必ず実施されると本当に言えるのか。増税から逃げ腰のまま財源が続かなくなり、他の社会保障予算を削って捻出するようなことになれば本末転倒だ。関連法案の審議が予定される秋の臨時国会でしっかり議論してほしい。忘れてならないのは、受給資格期間の短縮は、すべての問題を解決してくれる「特効薬」ではないということだ。例えば年金額の問題がある。国民年金は20歳から60歳まで保険料を納めると毎月6万5千円程度の年金がもらえるが、納付期間が10年にとどまれば年金額もその4分の1になる。「10年間保険料を納めれば年金がもらえる」ことばかりが強調され、10年で保険料納付をやめてしまう人が相次ぐようでは、低年金で生活保護に頼らざるを得なくなる人がむしろ増えかねない。受給資格期間が短くなっても、老後に十分な年金をもらうには長期的に保険料を納める必要があることを周知する。未納者には納付をはたらきかける。そんな取り組みも重要だ。生活が苦しく保険料を納められない人には保険料を免除・猶予する制度の利用を促したい。免除や猶予の期間は受給資格期間に数えられる。一定の条件はあるが、経済的に余裕ができてから免除・猶予期間の保険料を納めて年金額を増やすこともできる。さまざまな制度をフルに活用し、重層的な取り組みを通じて老後の安心を守りたい。


PS(2016年8月8日追加):*8のように、日本では資源は高値で輸入しなければならず、外国への資源投資が不可欠だと考えるのは、経産省の暗愚な思考停止だ。何故なら、①日本にはLNGが多く存在し ②LNGは化学工業にも使え ③輸送コストが小さく ④資源を産出する企業も日本に税金を納め ⑤環境にもよく ⑥乗り物も電動か水素燃料に変えれば化石燃料を輸入する必要がないからである。

*8:http://www.saga-s.co.jp/column/economy/22901/312897
(佐賀新聞 2016年5月18日) 原油安、将来の供給に懸念 エネ白書
 政府は17日、2015年度版のエネルギー白書を閣議決定した。原油価格の低迷で資源開発への投資が減り、将来の安定供給に懸念が強まっていると指摘し、投資促進の必要性を強調した。液化天然ガス(LNG)の市場改革や、省エネにつながるインフラ輸出や制度作りで国際協力を進め、原油依存からの脱却を世界規模で実現するとした。15年の世界の石油や天然ガス開発投資は約65兆円で、14年と比べて約15兆円減少した。16年も落ち込みが続く見通しだ。生産量を維持するためには年約70兆円の投資が必要だが、資源開発を手掛ける企業の財務基盤は弱っている。企業が必要な資源開発に取り組めるよう、政府が投資資金を安定して供給する必要があると分析した。LNGを巡っては、東京電力福島第1原発事故後に原発が停止し、火力発電の燃料に使うため輸入が急増した。一方、余ったLNGを他国に転売できないなどの商慣行があり、調達費の引き下げを難しくしている。日本はLNGの最大の輸入国という立場を生かし、柔軟で透明な取引市場を構築すべきだとした。


PS(2016年8月10日追加):既に国民は、原発は高リスク・高コストで金食い虫であることを認識しており、現に100%安全どころか公害を出し放題であるのに、*9のように、「再稼働はゴールでなく、スタートだ」などとしているのは、当事者の利益中心で周囲の迷惑を考えない利己的な判断だ。なお、日本の電気料金は、原発が自由に稼働していた頃から世界の中で高い方であった上、電力会社が負担する原発のコストは全体のごく一部であることを忘れてはならない。
 
   
         電気料金国際比較(産業用・家庭用)            太陽光発電のコスト

*9:http://digital.asahi.com/articles/ASJ852S5NJ85TIPE003.html
(朝日新聞 2016年8月9日) 川内原発再稼働、11日で1年 九電の対応が焦点に
 九州電力川内原発(鹿児島県)が再稼働してから11日で1年になる。九電の経営への貢献は大きく、業績は黒字に転換、余った電力の販売攻勢に乗り出した。ただ、原発停止を求める三反園訓・鹿児島県知事の就任で風向きは変化しつつあり、九電の対応が焦点になっている。川内原発は昨年8月、東日本大震災後の新しい規制基準のもとで、全国に先駆けて再稼働した。「再稼働はゴールでなく、スタートだ。今後も安全管理の向上に努めていく」。瓜生道明社長は7月29日の会見で淡々と語った。再稼働は九電の経営改善のスタートにもなった。九電によると、火力発電の燃料代が減り、収益改善効果は毎月100億~130億円。純損益は2015年3月期の1146億円の赤字から、16年3月期は734億円の黒字になった。ボーナスや株主への配当を復活し、役員報酬も増やした。一方で、「本格的な収益力回復は途上」(瓜生社長)として電気料金の値下げは見送っている。九電がホームページで公表する「でんき予報」。当日や1週間の電力需給の見通しを示す。最高気温が35度を超える猛暑日もあるなかで電力需給は連日、「安定」のマークが並ぶ。家庭や企業で節電が定着し、他社からの融通などもあるため再稼働前でも供給に大きな支障はなかった。再稼働後の九電の供給力は全国でも高水準の余力を抱え、余るほどの電気をどう売るかが課題だ。東日本大震災後に節電を呼びかけるなかで自粛した「オール電化」の営業を7月に再開した。4月に電力小売りが自由化されたが、原発がつくる電気の比重が高まる夜間に割安で使えるプランは、新電力に対抗する強力な武器になっている。
■新知事誕生、変わる風向き
 一方、今年4月には熊本地震が起き、7月には鹿児島県知事に三反園氏が就いた。熊本地震後には、川内原発の停止を求めるメールや電話が九電に殺到。安全性への不安の高まりは三反園知事への支持と無縁ではない。「誰も予想していなかった事態だ」と九電首脳は言う。昨年の再稼働に同意した伊藤祐一郎前知事には、九電首脳も「恩義を感じている」という。一転して三反園知事は8月下旬から9月上旬をめどに、九電に一時停止を申し入れる考えだ。今後は九電がどう動くかが焦点。「知事としっかり話をしながら適切に対応したい」(世耕弘成経済産業相)とする政府とともに稼働に理解を求める方針で、「知事の考えが知りたい」と水面下で情報収集を進める。川内原発は、もともと1、2号機とも年内に定期検査で止まる予定だが、知事の同意が得られないと再稼働も長くずれこむ可能性がある。川内に続いては玄海原発(佐賀県)を再稼働させ、「原発効果」をさらに高めることが九電の思惑だ。幹部は警戒する。「川内原発が知事の意向で稼働できない事態になれば、全国のほかの原発にも影響が及びかねない」
■川内原発の再稼働後の主な動き
●2015年
・8月 川内原発1号機が再稼働
・10月 2号機が再稼働
・12月 重大事故時の拠点施設を「免震構造」にする方針を撤回
●2016年
・3月 重大事故時の拠点施設を「耐震構造」にする方針を表明。安全は確保と主張
・4月 熊本地震から1週間で停止を求める電話などが約5千件に
・7月 三反園訓氏が鹿児島県知事に就任
・8月下旬~9月上旬? 三反園知事が九電に停止申し入れ
・10月 1号機が定期検査入りの予定
・12月 2号機が定期検査入りの予定

| 経済・雇用::2015.11~2016.8 | 11:14 PM | comments (x) | trackback (x) |
2016.6.9 日本における移民・難民の受け入れについて (2016年6月10日《写真等》、16日、2016年11月6日に追加あり)
       
  日本の出生率推移    難民認定率 G20農相会合宣言 佐賀の小麦   宮崎県産木材   
                  2015.9.11   2016.6.4    2016.5.21   2016.6.4 
                   毎日新聞    農業新聞      佐賀新聞    西日本新聞
(1)国内の人手不足
 厚労省が5月31日に発表した4月の有効求人倍率は、*1-1のように、東京で2倍を超し、全都道府県で1倍以上と1991年11月以来の高水準だったそうだが、1991年11月はバブルがはじける前年で、現在も金融緩和でバブル状態になっており、復興事業も多いため、当たり前のことではある。

 そして、正社員の有効求人倍率(季節調整値)は0.85倍であり、完全失業者数(原数値)が減ったとしても、勤労者が悪い条件をのんで就職した結果だ。

(2)日本企業の外国人採用
 しかし、人手不足・海外展開・訪日外国人客向けサービスの拡充などに対応するため、*2-1のように、国内の大企業も外国人を正社員として採用する動きが広がっており、ローソンは新卒採用の1~3割、富士通・日立は2017年度新卒採用予定の約1割を外国人が占めているそうだ。

 なお、海外事業を拡大するにあたっては、社内で対象国出身の人を増やす多国籍化が不可欠だが、採用するのは日本への留学生が多く、優秀な人材を求めて海外の説明会に参加したり、アジアの理系大学生に現地でアプローチしたりなどもされている。

(3)林業と外国人労働者
 また、「中国木材」が、*2-2-1のように、建築材をあらかじめ加工し、建築現場の負担軽減・工期短縮・加工精度向上・廃材削減などを可能にするプレカット工場を伊万里事業所内に新設して生産態勢を強化するそうだが、集成材にすることにより、これまで低質材とされてきた木材も利用可能になり、強度が増すため、堀川社長が「地元雇用と県産材の利用に貢献したい」としておられるのは期待できる。

 また、*2-2-2のように、宮崎県では、製材業界の国産材回帰や輸出増加等が勢いを見せている。現在は、戦後植林された人工林が伐採期を迎え、政府が国産材供給量を2025年までに2014年の約1.7倍にする目標を掲げていることもあって業界関係者が注目しているが、日本は森林面積が国土の約3分の2に当たるにもかかわらず、木材自給率は2014年に26年ぶりの30%台を回復したにすぎない。

 しかし、現在の林業は人手不足で、森林の管理・育成のための間伐、手入れ、伐採が「林道がないからできない」と言われることも多いため、これまで盛んに林業を行っていたが今ではすたれつつある地域から、日本の森の育成のために、*2-2-3のようなゾウ使いをゾウ付で林業従事者として募集し、外国人労働者として受け入れてはどうかと思う。日本人より贅沢を言わず、生産性が上がるだろう。
 
(4)移民・難民の受け入れについて

                             難民
 *3-1のように、アメリカの有望ベンチャーのうち約半数は移民が創業したという調査結果が発表され、「移民は急成長する新興企業の源泉」と結論付けられた。これは、異文化が接触して融合されることにより新しいビジネスが生まれることを考えれば必然性があるため、日本でも、女性活躍と同時に移民・難民の受け入れも始めた方がよいと考える。

 そのうち、シリアについては、*3-2のように、政府は内戦が続くシリアの難民を留学生として来年からの5年間で最大150人を受け入れると発表したそうだが、「日本に憧れるすべてのシリア人の若者に平等にチャンスを与えてほしい」「募集人数を増やしてほしい」という声は、日本の少子高齢化の実情から見ても反映させた方が良く、5年間なら少なくとも15,000人の男女の国費留学生を地方の大学も含めて増やしてはどうかと思う。その理由は、人生に希望が持てればテロリストにはならず、日本のアラビア語圏との貿易(特に農産物の輸出)や、戦争終了後のシリア復興に不可欠な人材となるからだ。

 そのため、留学生に配偶者や子どもがいる場合も、空室が多くなった団地を改修して学生寮にしたり、日本人も入れる国際的な学生寮を建てたりなど、大学が所在する地方自治体の知恵と協力を得ながらやれば良いだろう。

(5)地方自治体の移住者募集
 地方の農業振興に繋げるため、地方自治体の大半が移住促進政策に力を入れており、*4-1のように、鳥取市は、国、県、市、町内会、NPOなどが連携して移住者を呼び込んでいる。そのため、移住者は、日本人の若者だけでなく移民や難民が含まれてもよいと思われ、日本人と外国人が気持ちよく共存できるためのノウハウが必要だ。ただ、信教の自由があり男女平等の日本国内では、郷に入っては郷に従い、女性にどこででもスカーフやブルカのような異様な服を身につけさせるのはやめるという誓約書にサインすることを入国条件にすべきで、そうした方がアラブ女性の今後の地位向上にも役立つと考える。

 また、*4-2のように、長野県と長野県JAグループは、協定を結んで農業者の所得増大を目指した農業振興をはじめ、農村地域の暮らしの維持や人口定着など幅広い範囲で連携して、インフラ維持や移住促進を行い、多様な農業の担い手を支援するとのことである。

 阿部長野県知事は、「農村の活性化は県の活性化と密接不可分」とし、JA長野中央会の大槻会長も「JAの総合事業と地方創生が目指す方向は同じ。当たり前のことをやっていく」と言っておられるため、移住してくる人の国籍が異なっても対応して、農業生産法人やJAが難民の中から農業に従事する人を募集してきてもよいと思われる。

       
                           アジサイ(紫陽花)
<人手不足>
*1:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20160531&ng=DGKKASGC31H05_R30C16A5MM0000 (日経新聞 2016.5.31) 4月の求人倍率、東京で2倍超す、74年以来、全国1.34倍に上昇 就業地別は全都道府県で1倍超
 厚生労働省が31日発表した4月の有効求人倍率(季節調整値)は前月と比べて0.04ポイント上昇の1.34倍だった。1991年11月以来、24年5カ月ぶりの高水準だった。上昇は2カ月連続。幅広い業種で深刻な人手不足が続いており、求人数が押し上げられている。都道府県別の有効求人倍率は東京都が2.02倍となり、1974年6月以来の高い水準となった。有効求人倍率は全国のハローワークで仕事を探す人1人あたり何件の求人があるかを示す。雇用の先行指標とされる新規求人数(原数値)は前年同月より3.9%増の89万4530人だった。訪日外国人客の増加を背景に、宿泊・飲食サービス業や卸売・小売業などで高い伸びとなった。厚労省では「雇用情勢は着実な改善が進んでいる」としている。正社員の有効求人倍率(季節調整値)も0.85倍と、04年11月の調査開始後で最高となった。これまでは非正規社員を中心とした求人数の増加が求人倍率を押し上げてきたが、正社員の雇用環境も一定の改善が進んできた格好だ。また、求人票の就業地別で算出した都道府県ごとの有効求人倍率(同)は05年2月に集計を開始して以来、初めてすべての都道府県で1倍を上回った。求人票を受け付けたハローワークの場所別に見た有効求人倍率は、鹿児島と沖縄で0.9倍台と依然として1倍を下回っている。総務省が同日発表した4月の完全失業率(同)は3.2%で、前月から横ばいだった。4月の完全失業者数(原数値)は前年同月比10万人減の224万人だった。減少は71カ月連続。内訳は勤め先や事業の都合による離職が前年同月比で2万人減った。自己都合の離職は1万人の増加だった。

<日本企業の外国人採用>
*2-1:http://qbiz.jp/article/86126/1/ (西日本新聞 2016年5月3日) 外国人採用、大企業で拡大 ローソン3割、富士通1割…海外展開にらむ
 国内の大企業で外国人を正社員として採用する動きが広がってきた。ローソンはここ数年、新卒採用の1〜3割程度が外国人で、富士通や日立製作所は2017年度新卒採用予定の約1割を占めている。従来は人手不足の中小企業が採用の中心だったが、大企業も海外展開や訪日外国人客向けのサービス拡充に対応するため、社内の多国籍化を迫られている。ただ、あいまいな点が多い日本の雇用慣行に戸惑う外国人は多く、企業が採用を本格化するには、福利厚生や研修の強化、人事・賃金制度の見直しも課題となっている。海外事業拡大をにらむローソンでは、15年春に28人、16年春に16人の外国人が入社し、17年度も増やす。富士通は500人の新卒採用のうち50人程度、JXエネルギーは大卒などの110人の約1割が外国人になる見通し。資生堂は16年度に過去最多の8人を採用し、さらに増やしていく。共同通信が主要企業に実施した採用アンケートでも「将来的に外国人社員を増やす方針か」との問いに対し、回答した28社の半数近い13社が前向きな姿勢を示した。三菱化学や旭化成などのメーカーから高島屋や三井住友海上火災保険、オリックスまで幅広い。採用するのは日本への留学生が多く、ローソンは「日本人と採用プロセスは同じ」とするが、日立のように優秀な人材を求めて海外の説明会に参加する企業も増えている。富士通はアジアの理系の大学生に現地でアプローチし、日本で外国人向けのインターンシップを実施している。今後の課題では、「キャリアに関する(会社側と本人の)考え方のすりあわせ」(川崎重工業)といった人事・処遇面に加え、「在留資格の認定手続きに時間がかかる」(富士通)といった問題を指摘する声が出ている。外国人社員の定着に向けて「職場表記や朝会の英語化」(第一生命保険)といった工夫を凝らす企業もある。

*2-2-1:http://qbiz.jp/article/85577/1/ (西日本新聞 2016年5月10日) 中国木材 佐賀・伊万里に新工場 市と協定、17年2月操業 プレカット増産
 製材大手「中国木材」(広島県呉市)は、佐賀県伊万里市山代町の伊万里事業所内にプレカット工場を新設して生産態勢を強化する。市と4月18日、立地協定を結んだ。2017年2月の操業開始を目指し、21年10月までに計40人を新規雇用する。同社によると、新工場では建築材をあらかじめ加工し、建築現場の負担軽減や工期短縮、加工精度の向上、廃材削減を図る。全国的な建築職人の不足を受けた対応で需要は高いという。新工場は既存のプレカット工場を移転拡大する形で隣接地に建設する。延べ床面積1万6200平方メートルで、投資額は設備機械も含めて18億6400万円。完成後の生産能力は現在の月間150棟分から250棟分以上に増える。17年度は22億円、5年後は37億円の売り上げを見込む。伊万里事業所は2003年に開設。北部九州の原木を使うプレカットや集成材の工場、バイオマス発電施設などがあり、従業員数約220人。伊万里港からの中国、韓国などへの輸出にも力を入れる。堀川智子社長は「事業所を発展させ、地元雇用と県産材の安定利用に貢献したい」と話している。

*2-2-2:http://qbiz.jp/article/88177/1/
(西日本新聞 2016年6月4日) 宮崎のスギ生産、過去最高 国産材に需要、発電用も増
 スギの丸太生産量が25年連続日本一を誇る宮崎県の林業が活気づいている。昨年の生産量は過去最高の約164万立方メートルを記録した。国産材は長らく安い外国産材に押され低迷してきたが、同県では製材業界の国産材回帰や木質バイオマス発電所への燃料供給、輸出増加といった動きが従来にない勢いを見せる。戦後に植林された国内の人工林は伐採期を迎えており、政府は国産材の供給量を2025年までに14年の約1・7倍にする目標を掲げる。国内有数のスギ産地の動きが全国に波及するか、業界関係者も注目している。
●産地へ進出
 同県日向市の臨海部。約34ヘクタールの敷地にスギ丸太を積み上げた小山がびっしり並ぶ。製材の国内最大手「中国木材」(広島県呉市)が15年6月に本格稼働した新工場だ。初年度は約30万立方メートルの丸太を加工し、本年度は約45万立方メートルを予定する。これまで同社は主に北米産のベイマツを輸入・加工してきたが、北米材は近年、中国の需要増で価格変動が大きいため、豊富な国産材に注目。約300億円を投じ、スギ産地の宮崎に国内最大の国産材工場を建設した。石橋正浩九州事業本部長は「国産材は安定供給できれば、国内外が商圏になる。世界の木材会社とも勝負できる」と力を込める。
●低質材活用
 低質材や製材時に出る端材の活用も進み、追い風になっている。
 12年に国の再生可能エネルギー固定価格買い取り制度が始まり、宮崎県内では昨年、バイオマス発電所4カ所が売電を開始。曲がっているなどの理由で山に捨てられていた低質材が燃料として1トン7千円程度で売れるようになった。その結果、高質材の価格が値崩れしにくくなったという。同県西都市の伐採会社「松岡林産」の松岡明彦社長は「立木の値段が上がり、山主は売りやすい状況になりつつある」とみる。海外への輸出も伸びている。同県串間市の南那珂森林組合は12年から、近隣の組合と共同で韓国への輸出を本格化。中国へも販路を拡大し、年間売上高は当初の約9千万円から14年度は約3億3千万円にまで増えた。低質材に加え、太く成長しすぎて加工しにくい丸太も、海外で土木工事の足場材や棺おけに利用される。同組合の清水賢次木材流通促進室長は「国内の住宅着工戸数が減っており、今後は内装材など製材品の輸出が重要になる」と指摘する。
●自給率拡大
 ただ、国産材の復権は緒に就いたばかり。林野庁によると、1970年代に1立方メートル当たり3万円台だった国産スギの丸太価格は、長期的な下落傾向から脱しつつあるが、それでも15年は平均約1万2700円。木材自給率も14年に26年ぶりに30%台を回復したにすぎない。日本の林業政策に詳しい東京大の安藤直人名誉教授(木質構造学)は「伐採期のまとまった量の木材資源を加工して供給する動きが、宮崎県からようやく出てきた。今後は、全国でそうした流れが出てくるはずだ。林業は、きちんと再造林されて持続可能な産業になれば、復活を迎えるのではないか」と話している。
■国内の森林資源 2015年度森林・林業白書によると、国内の森林面積は国土の約3分の2に当たる約2500万ヘクタール。このうち約4割の1千万ヘクタールがスギやヒノキなどの人工林で、多くは戦後の高度成長期に植林され、本格的な利用期を迎えている。立木の体積は年々増加し、半世紀前の約5・4倍の約30億立方メートルに達した。林野庁は「木材産業にとって安定的な経営基盤になり、今後は伐採や製材など供給体制を効率化することが重要になる」としている。

*2-2-3:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12384665.html (朝日新聞 2016年5月31日) (世界発2016)ゾウは家族、絶滅から守れ ベトナム、森林開発進み140頭に
 ベトナム中部の高原で少数民族と家族のように暮らすゾウが、絶滅の危機にさらされている。ベトナム戦争中の枯れ葉剤に加え、ドイモイ(刷新)政策後の開発で多くの森林が失われたためだ。「ゾウを守ろう」と地元の人々とともに奮闘する日本人女性もいる。褐色の肌に赤い布を羽織ったゾウ使いが、勇ましく雄たけびをあげる。ムチを振り下ろすと、横一線に並んだ6頭のゾウが砂ぼこりをあげ、一斉に駆け出した。3月中旬、ベトナム中部ダクラク省で行われたゾウ祭りの人気イベント、「競ゾウ」だ。祭りはゾウと暮らしてきた少数民族の伝統を伝えるため、2年に1度開かれている。ゾウは川渡りやボールを蹴り合うサッカーも披露し、国内外からの観光客を大いに沸かせた。「でも今後5、6年で、飼育ゾウは絶滅してしまうかもしれません」と地元ヨックドン国立公園のド・クアン・チュン園長は言う。
■戦争で枯れ葉剤
 国営紙によると、ベトナムには1985年、504頭のゾウが飼育・管理され、野生ゾウと合わせて千頭以上いたとされる。ベトナム戦争中に米軍が枯れ葉剤をまいて多くの森林が被害を受ける前は、さらに多かったとみられる。現在、飼育ゾウは約60頭まで激減、野生ゾウと合わせても140頭ほどしかいない。なぜ減ったのか。中国などで高値で取引される象牙目当ての密猟と、「経済発展に伴う開発の影響が大きい」と園長は指摘する。75年のベトナム戦争終結後、政府は86年からドイモイ政策で市場経済に力を入れてきた。中部の高原地帯はコーヒーやコショウ、ゴムなどの農園として開墾することが奨励され、多くの入植者がやってきた。75年に約34万人だったダクラク省の人口は現在、約170万人にまで増えた。その結果、土地の約6割を占めた森林面積が4割以下に減少。ゾウは「1日200キロ必要」とされる食糧を求め、人里近くに現れるようになった。サトウキビやトウモロコシの畑を荒らし、農民らに殺される悪循環も生まれた。
■「繁殖止まった」
 ベトナムではインドやタイなどと比べて群れの規模が小さく、繁殖が滞る。「ゾウの繁殖が止まってしまった」。少数民族ムノン族のゾウ使いのイ・ク・エバンさん(47)は憂える。3歳からゾウに乗り、材木や米など農作物の運搬をゾウと担った。「戦争中は武器も運んだ」。ムノン族や同じく少数民族のエデ族の人々は古くからゾウを調教して飼い、労働力としてきた。人は高床式の家で暮らし、ゾウはその下や近くの木につながれて寝る。エバンさんが飼っているのは31歳のオス象タヌオン。狩猟は禁止されているため、2002年に約15万円で知人から買った。高価だが、観光客を1日乗せれば約7500円の収入になることもある。貴重な生活の糧だ。だが最近、観光客が増え、村のゾウは働く時間が長くなって疲弊気味。オスとメスが森で出合う時間も減った。このため、ダクラク省では80年以降、飼育ゾウの繁殖はほとんど確認されていない。「ゾウは家族。一緒に暮らす伝統を守りたいが、いい解決方法がない」。政府はゾウの環境を守ろうと92年に国立公園を整備し、違法な森林伐採や密猟の取り締まりを強化した。11年には「ゾウ保護センター」を設立し、わなにはまって傷ついたゾウの保護にも乗り出した。だが、センターのスタッフは18人だけ。ゾウの世話のほか、11万5千ヘクタールもある国立公園内のパトロール、野生ゾウの生態調査もしたいが、手が回らない。チュン園長は「ベトナムには動物保護のノウハウが乏しく、遠隔操作できる監視カメラもない」と訴える。
■東京の76歳元教諭、保護団体を立ち上げ
 「人間のせいで動物が絶滅するなんて、見過ごせないでしょ」。東京都国分寺市の元中学校教諭・新村洋子さん(76)は14年間で約40回もベトナムに渡り、森の保護を訴えてきた。定年退職後に趣味で始めた写真撮影のため、02年にベトナムの農村を訪れた。少女を撮っていると、後ろをゾウが横切り、夢中でシャッターを押したが、見失った。近くにいた少数民族の女性が「森に帰ったのよ」と教えてくれた。ゆったりとして優しげな姿に魅了された。ゾウに会いたい一心で、たびたびダクラク省の森を訪れるようになった。写真を撮りため、06年に写真絵本「象と生きる」(ポプラ社)を出した。撮影を通じ、ゾウが減っている実情を知った。09年に「ヨックドンの森の会」という象の保護団体を日本で立ち上げた。支援金を集め、国立公園にゾウの生息状況を監視できるカメラを寄贈したり、「象と生きる」のベトナム語版を作ってベトナムの子どもたちに配ったりしてきた。最近は国立公園のスタッフをタイの大学の研修に参加させるなど、専門家の育成にも力を入れる。今年は、野生ゾウの生態調査や密猟・違法伐採の監視態勢強化のため、他の団体などと協力し、計700万円を集めて国立公園に寄付するつもりだ。国立公園の職員や少数民族のゾウ使いは「ヨーコ」と呼んで慕う。長野県飯田市生まれ。「森に囲まれて育ったので、自然への思い入れが強いのかもしれません。小さな取り組みですが、一歩ずつ広げていきたい」
◆キーワード
<アジアゾウの減少> 世界自然保護基金(WWF)によると、アジアゾウは20世紀初頭に10万頭以上生息していたが、現在は5万頭前後に減っている。国際自然保護連合による国別の推計の頭数(2000年)では、インドが2万~3万、ミャンマー4600~5千、タイ1300~2千、ラオス950~1300、ベトナム109~144。

<移民・難民>
*3-1:http://www.saga-s.co.jp/news/national/10201/312987
(佐賀新聞 2016年5月18日) 米有望企業、約半数は移民が創業、排斥すれば活力低下も
 米株式市場で上場が見込まれるような有望なベンチャー87社のうち、約半数の44社は移民が創業したとの調査結果を、18日までに米シンクタンクが発表した。移民は「急成長する新興企業の源泉だ」と結論付け、査証(ビザ)の発給要件の緩和を促している。米大統領選でトランプ氏は移民排斥発言を繰り返しているが、移民流入を抑制する政策が採用されれば企業の活力をそぐ恐れがありそうだ。企業価値10億ドル以上で株式上場の可能性がある企業を87社選び、米シンクタンク「ナショナル・ファンデーション・フォー・アメリカンポリシー」が創業者の出身地などを調査した。

*3-2:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12374632.html (朝日新聞 2016年5月25日) (難民 世界と私たち)日本留学、シリアにともす灯 「150人受け入れ」現地の若者は
 主要7カ国(G7)首脳会議(伊勢志摩サミット)を前に、政府は内戦が続くシリアの難民らを留学生として、来年からの5年間で最大150人を受け入れると発表した。日本が中東の難民を政策的に受け入れるのは初めて。期待に胸を膨らませる現地の若者らの思いを聞き、課題を探った。「日本留学のチャンスが増えるのは、とてもうれしい。留学生に選ばれれば必ず日本に行きます」。アレッポ大3年のアフマド・アスレさん(24)は19日、電話取材に声を弾ませて日本語で答えた。「シリア内戦の最激戦地」と呼ばれる北部アレッポの中心部に住む。政権軍と反体制派の戦闘地域は自宅からわずか数キロ先だ。この日、日本政府によるシリア人留学生受け入れ拡充をフェイスブックで知った。日本に留学中のシリア人の学生が新聞記事をアラビア語に訳してくれた。生活は過酷だ。4月下旬にはアレッポ大の卒業生で、一緒に日本語を学んだ友人女性が迫撃砲弾の直撃を受けて死亡した。アスレさんの自宅はスナイパーの狙撃を避けるため、全ての窓に灰色のシートを張っている。砲撃がひどい時は地下室に避難する。電気を使えるのは1日数時間。食品やガソリンは値上がりする一方だ。でもいつかは内戦が終わると信じ、家族とともに耐えてきた。「世界遺産も市場も住宅地も破壊された。戦争が終わった後、街を元通りにするには高度な技術を持つ日本の助けが必要。私は懸け橋になりたい」。シリア最大の国立総合大学のダマスカス大学には2002年、シリア初の日本語専攻学科ができた。だが、内戦で日本人教師が国外に退避。教員不足で、14年秋から募集を停止した。宮崎駿監督に憧れる2年生のガザル・バラカートさん(20)は日本語学科に入れず、考古学科で学ぶ。今年2月の「停戦」発効で状況が落ち着くまで、迫撃砲弾の着弾におびえながら通学した。初歩的な日本語を話せる先輩から日本語を学び、日本留学の機会を探る。発表は朗報だが、どこに問い合わせればいいか分からない。日本政府は12年3月、在シリア日本大使館を閉鎖した。「日本に憧れるすべてのシリア人の若者に平等にチャンスを与えてほしい」。トルコ・イスタンブールのシリア難民向けの小学校教師イヤード・ダムラヒさん(32)はアレッポ出身。内戦前の10年4月から日本で日本語学校に通い、大学進学を目指した。ところが翌年3月、東日本大震災が発生。両親に戻るよう説得され、アレッポに戻ったが、内戦で国外に逃れた。日本の大学で日本の教育を学びたい。「礼節や、皆で掃除をしたり、給食の配膳をしたりする相互協力は、とてもユニーク。深く学びたいと思った。募集人数を増やしてほしい」
■支援者「新たな一歩」
 留学生受け入れを埼玉県に住むシリア難民のジャマールさん(24)は「素晴らしいニュースだ」と喜ぶ。空爆で家が壊され、ダマスカス大の学生だった13年に母国を脱出。親類を頼って母、妹と来日し、昨年3月に日本が初めて難民と認めたシリア人の一人になった。日本語を学び、東京の大学進学を目指す。「最も大切なのは最初の半年間に日本語をきちんと教えること。日本社会になじみ、働くチャンスもできる」。日本はこれまで紛争から逃れた人を難民とは認めていない。11~15年に難民申請をしたシリア人65人で認められたのは6人。留学生受け入れを政府に提言した学生グループ「P782」メンバーで東工大4年の富重博之さん(24)は「難民が孤立しないよう社会のサポートも重要」と話す。NPO難民支援協会(東京)は「難民を『難民』として受け入れる方針が示されなかったのは残念だが、人道危機に対する責任の分担への新たな一歩を踏み出そうとしていることを歓迎する」とした。
■受け入れ態勢や選考、課題
 日本政府は留学生受け入れの態勢作りを始めた。政府関係者によると、留学生に配偶者や子がいる場合、同伴できるよう検討中だ。課題も多い。留学生の選考はレバノンやヨルダンで難民登録に携わる国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)の協力を想定するが、シリア難民の最大受け入れ国のトルコは政府が独自に難民登録しており、UNHCRが選考できるか不透明だ。対象はシリアにとどまっている国内避難民も含むが、選考方法は未定。同伴家族の滞在資格をどうするかも詰める。今回の取り組みは、本格的な難民受け入れにつながるのか。外務省幹部は「今後は未定だが、これで終わりだと考えているわけではない」。欧州では、無制限な流入を抑えようとする動きが進む。UNHCRは難民の受け皿として、難民認定による保護に加え、大学に通う間の奨学金とビザの支給、病気やけがをした難民に医療を提供する間の滞在許可、条約上の難民と認められない人などに一時滞在を認める「人道ビザ」の発行などを呼びかける。人道ビザはブラジルが8450人、スイスが4700人のシリア人にそれぞれ発行した。周辺国に逃れた難民を第三国が受け入れる「第三国定住」の拡充も訴える。4月までに各国が計約16万人分の受け入れを表明。カナダや米国のように数万人規模を受け入れる国もある。
■シリア難民受け入れの枠組み
◇国際協力機構(JICA)の技術協力制度
20人/年→政府の途上国援助(ODA)を活用
◇国費外国人留学生制度
10人/年→文部科学省が実施
(2017年から5年間で最大150人を受け入れ予定。留学生として日本各地の大学で学ぶ)

<移住者募集>
*4-1:http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=37444 (日本農業新聞 2016/5/11) 移住者呼び込め 地方創生 連携が鍵 鳥取市の事例調査 農中総研リポート
 農林中金総合研究所は、地方創生をテーマに研究成果をまとめた。地方の農業振興につながる可能性があるとして、官民が連携して移住者を呼び込む鳥取市の事例から移住促進策の可能性と課題を探った。移住者を呼び込む鍵として、国や自治体、民間非営利団体(NPO)などの連携体制を挙げた。地方創生に関する取り組み内容や数値目標などを定めた都道府県版総合戦略が2015年度末までに策定されたことなどを受け、テーマを設定。農中総研は「農業が基幹産業の地域は多い。地方経済が活性化すれば農業にも波及することから、地方創生は重要な動きだ」(編集情報室)とする。このうち、自治体の大半が力を入れているとされる移住促進政策に着目。若者を中心に市外から転入する移住者・世帯数が06年以降増え続けている鳥取市の取り組みを調査した。成功要因について、国や県、市、町内会、NPOなどの連携体制を敷いた点を指摘。関東、関西での開催も含めた相談会の実施に加え、移住前に暮らしを体験してもらう「お試し移住」の機会を設けたり、就業支援・不動産の情報を提供したりするなど切れ目のない支援をしているという。一方、地方創生の動きが加速する中、自治体間での移住者獲得の競争が激化するといった懸念も指摘した。この他、地方財政改革と地方創生の実現に向けた課題の研究や、農業・農山村振興をテーマに1月に行われたシンポジウムでの講演の内容を盛り込んだ。農林中央金庫の『農林金融』5月号に掲載している。『農林金融』は農中総研のホームページでも閲覧できる。

*4-2:http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=36291
(日本農業新聞 2016/2/13) 地方創生へ役割発揮 全国初、県と連携協定 JA長野県グループ
 県とJA県グループは協定により、農業者の所得増大を目指した農業の振興をはじめ、農村地域の暮らしの維持や人口の定着など幅広い範囲で連携する。地方創生の県総合戦略には「JA長野県グループと連携・協働する」と明記した。
●インフラ維持、移住促進も
 具体的には、中山間地域でJAの空き店舗を活用した地域住民のふれあいの場づくりや移動購買、移動診療の充実などを想定。また、地域に密着した医療・介護福祉サービスやガソリンスタンドの運営、金融・共済事業の提供など、JAは総合事業を通じて地域のライフラインとしての役割を発揮する。人口減少対策でもJAへの期待が高い。独自の基金を活用した新規就農者への支援の他、「田舎暮らし」や「農ある暮らし」を目指す多様な農業の担い手を支援。定年帰農者やU・Iターン者への直売所への出荷の呼び掛けや、必要な農業研修などをJAに積極的に担ってもらう考えだ。JA県グループも、長野中央会や厚生連などでつくる「JA長野県くらしのセンター」を4月に開設。自己改革として協同活動の推進や高齢者福祉事業への支援を加速するとともに、同協定による地方創生に関わる窓口を設ける。長野市の県庁で12日行った調印式で、阿部守一知事は「農村の活性化は県の活性化と密接不可分。農村の暮らし全般に深く関わっているJAとの連携は大変心強い」とあいさつ。JA長野中央会の大槻憲雄会長は「JAの総合事業と地方創生が目指す方向は同じ。当たり前のことをやっていく」と決意を述べた。全中によると、県とJA県グループが地方創生に関して、農業や暮らしなど広範囲にわたって連携するのは全国でも初めて。「全国大会決議で掲げた地方創生への積極的な参画のモデルとなる事例」(組合員・くらしの対策推進部)と評価する。


PS(2016年6月11日追加):*5のように、佐賀県でも3,200人超の外国人労働者が働いているそうだが、「技能実習生」という名目で労働法規の例外となるような雇用をすると、結局は恨みを買って国益にならない。また、本当に技術移転をし続ければ、日本の技術を無料で新興国に移転することになって技術で差別化できなくなり、日本の競争力が弱まる。そのため、勤務時間短縮や残業代不払いのような馬鹿の一つ覚えの小さなことばかりではなく、時代に合わせて、雇用における女性差別や外国人差別を是正するのが、労働基準監督署の重要な役割であろう。

*5:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/321658
(佐賀新聞 2016年6月11日) 県内企業、外国人労働者3200人超、人手不足で拡大
■法令違反も潜在 雇用環境の改善急務
 人手不足を背景に、佐賀県内でも外国人労働者を受け入れる企業が広がり、1年前より350人増えて3200人を超えている。一方、佐賀労働基準監督署が立ち入り調査した技能実習先企業の7割(2014年)で賃金不払いや上限を超えた長時間労働などの不法行為が見つかっている。外国人労働を巡る問題は表面化しにくく、雇用環境の改善が急務となっている。「他業種よりも賃金など条件面で見劣りするため、社員が集まらない。短期間でも外国人に頼らないと仕事が回らない」。数年前から中国人実習生を雇う県内の縫製会社は打ち明ける。県内の外国人労働者は昨年10月末、留学生を含め3264人。製造業を中心に卸売や小売、飲食業など525社が受け入れている。中国人が千人と最も多く、ネパール人700人、ベトナム人640人と続く。うち外国人技能実習制度で来日した実習生が4割を占める。技能実習制度は本来、新興国への技術移転が目的。ただ、3年前からフィリピン人実習生6人を雇い入れている金属加工業者は「それは建前にすぎない」と言い切る。「うちの実習生も残業をしたがる。日本でお金を稼ぎたい外国人と、低賃金で労働力が確保できる企業の利害で成り立っている側面もある」と制度のほころびを認める。政府は経済界の要請も受け、実習生の受け入れ期間延長や介護にも対象を広げる方針だが、雇用環境の整備は遅れ気味だ。佐賀労基署が14年に立ち入り調査した実習先企業46社のうち、32社で法令違反が見つかった。12社が労使で定めた残業時間の上限を超えて働かせていたほか、残業代を支払っていなかった企業も6社あった。外国人を雇用している企業の半数は30人未満の小規模事業所で、労基署は「人員体制面で管理が行き届いていないことが要因」とみる。労基署への相談は年数件だが、管内に外国語に対応した相談窓口はなく、「表面化していない問題がないとは言えない」という。「休みを取ったら上司に蹴られた」「安全靴を履かずに建設現場で働き、けがをした」-。佐賀市で日本語教室を開く越田舞子さんは実習生からこんな相談を受けることがある。「日本語が十分に話せなかったり、渡航費を親類から借りて来日したりして、誰にも相談できずに我慢して働き続けている人もいる」。問題の根深さを指摘する。
■12日、アバンセで技能実習制度学習会
 技能実習制度の在り方を考える学習会が12日午前10時から、佐賀市のアバンセで開かれる。県内の労働組合でつくる「はたらくものの命と健康を守るネットワークさが」が企画し、越田さんと、外国人労組「首都圏移住労働者ユニオン」書記長の本多ミヨ子さんが課題を語る。参加無料。問い合わせは県労連、電話0952(25)5021へ。


PS(2016年6月16日追加):*6の「①大量の農薬を使って土地が痩せる悪循環が起きた」「②農薬を使いすぎて魚が減った」「③有機栽培で安全な野菜を作っても評価されず、収益向上に役立たなかった」等々は、日本では40年くらい前から指摘され始め、次第に解決されてきたものだ。そのため、佐賀県などノウハウを持つ自治体が有機農法を伝授したり、家畜の糞や下水の現代的な利用法を教えたりするのは良いことで、これらは、JICAが予算を付けて地道なODAとして行うことも可能だ。また、もともと緑だったが砂漠になってしまった地域を元に戻せば、そこに移住できるので多くの紛争が鎮まると考える。
 
*6:http://qbiz.jp/article/88845/1/
(西日本新聞 2016年6月15日) ミャンマー 佐賀の有機農法を伝授(上) 農薬の代わりに木酢液
 戦前は世界最大のコメ輸出量を誇った農業国ミャンマー。国民の7割が農村に住み、潜在性が大きいと期待されるが、近代化の遅れや知識の不足で生産性が上がらない上、海外から流入する農薬で安全も確保できていない。地球市民の会(TPA、佐賀市)はそんな状況を改善しようと、農業が盛んな北東部シャン州南部で長年、有機農法を指導。裾野が広がり始めた。観光地としても有名なインレー湖に近いシャン州南部の主要都市タウンジー郊外に、TPAが運営する「ナウンカ村落開発センター」がある。5月下旬、周辺の村から集まった若者を前に、ベテラン教師ミョー・ミン氏が教壇に立っていた。「インレー湖の水は湖岸や湖上の農業で農薬を使いすぎて飲めなくなり、魚も減った。木酢液で虫を近寄らせなければ、殺す必要はない」。木酢液とは、ここで教える「循環型農業」で要の一つとなる忌避剤のこと。座学の後、ミョー・ミン氏と若者らは外の畑に出て、精米後の籾(もみ)殻から酢液をつくる実技に移った。センターは2005年に完成、2エーカー(約8千平方メートル)ほどの土地に教室や宿泊所のある母屋、畑や養鶏場、精米所などを備える。ここで月1回、農家20人ほどを集めた7日間研修が行われるほか、年に1度は若手10人ほどを対象とする3カ月の長期研修も実施。近隣の村を中心に州内外から集まる研修生はセンターに泊まり込み、寝食を共にしながら学ぶ。研修は延べ80回を数え、受講者は1,000人を超えた。近隣の村への出張研修も行っており、裾野は広がりつつある。TPAのミャンマー国代表、柴田京子氏は「土地が痩せて困って研修を受けにくる農家が多い」と話す。国境を接するタイや中国から安価な化学肥料が大量に流れ込み、農家はビルマ語の使用書もないまま、業者の言いなりに大量の農薬を使い、土地が痩せる悪循環が起きているという。センターで教える農法の柱は、農薬や化学肥料の代わりに、土地に生息する菌を増やして堆肥にする「土着菌堆肥」、鶏糞や油かすを使う「ぼかし肥」、炭焼きなどで出る液を忌避剤にする「木酢液」の3つだ。5月下旬の7日間研修に近隣の村から参加していたウィン・チョンさん(30)は、「ハトマメを植えたら初年はできたが、2年目は減り、3年目は全く実らなくなった。ミカンも昔は何年でも実ったが、いまは実らない。収量があがらないので参加した。肥料を昔の牛糞(ふん)から化学肥料に切り替えたせいかもしれない」。研修で学ぶ循環型農業は「環境にも自分にも良いので、実践しようと決めた」と話した。過去に3カ月研修を受けたというトゥン・ナインさん(29)も、「化学肥料を使うようになって土が硬くなった」として参加した。研修で習った堆肥の作り方やコメの植え方を実践している。ただ化学肥料や農機が普及する一方で牛は減り、堆肥に使う糞なども買わなければならなくなった。
■成果示し悪循環絶つ
 ミョー・ミン氏は自身も農家で、TPAが引き継ぐ以前に別の団体がタウンジーで循環型農業を教えていた1999年から教師を務める。「農家は30年前から化学肥料を多く使っていたが、近年は特に広がった」と危機感を強めている。タイから輸入されるハイブリッド種は化学肥料の使用を前提とした種。在来種・固定種であれば種取りができ、何年でも実るが、ハイブリッド種は毎年、種も買わなければならない。生産コストが上がり続ける一方、収入はなかなか伸びない。一方、ミョー・ミン氏が指導したインレー湖畔のテレーウー村では、土着菌を生かす農法で1エーカー(約4千平方メートル)当たりのコメ収穫量が国内で一、二を争うまでに高まるという成果を挙げた。実績を示すことが農薬や化学肥料に頼る悪循環を絶ち、他の地域への循環型農業の普及を後押しすると期待する。TPAでは、約10の農家からなる農業組合も組織して、有機栽培の振興に取り組む。センターのスタッフの案内で周辺の村を回ると、研修所で学んだ農家が、「隣の農家も循環型農業を実践している」と教えてくれた。研修を受けた人が周囲に広げたり、近隣の村への出張研修に参加した人が実践したり。タウンジー駐在のTPAプロジェクトアドミニストレーター、鈴木亜香里氏も「この広がりには驚いた」と言う。当初は研修に参加しても自分の畑に持ち帰って実践する人ばかりではなかった。有機栽培で安全な野菜を作っても、卸先のブローカーが評価してくれず、収入向上に役立たなかったからだ。ブローカーは見た目重視で、農薬の有無は意に介さない。農家が実践するには、販路が必要だった。


PS(2016年11月6日追加):必要な労働力を確保するのに移民・難民を受け入れると、*7-1のように、海外出身の児童の教育体制を整えなければならないが、移民・難民の大人にも夜の小中学校の校舎などを使って日本における基本的なことを学んで理解する機会を準備した方がよいだろう。しかし、溶け込む(日本人と同じになって目立たなくなる)ことを強制しすぎるのは、日本人とは異なることによって持っている長所を消失させてしまう場合もあるためよくない。むしろ地域の人は、(内容にもよるが)ありのままの相手を受け入れることによって、心のグローバル化が進むと考える。なお、1970年代から増えている日本人帰国子女は、両国語が流暢で両国の文化に通じていることを活かして活躍している人が多く、この場合は、日本人学校に入れられることの多い男の子よりも、現地の学校に放り込まれることの多い女の子の方が、徹底したバイリンガルとして活躍していると言われている。
 また、*7-2のように、2016年の耕地面積(田畑計、7月15日現在)は447万1000ヘクタールで、1961年の608万6000ヘクタールをピークに減り続け、その理由は、耕作放棄や宅地への転用だそうだ。そして、前年と比較しても2016年は田が1万4000ヘクタール、畑が1万1000ヘクタール減少し、我が国は大きな資産を失った。それなら農業人材となる移民を募集し、最初は農業生産法人やJAが雇用して耕作すれば、生産物(小麦・オリーブ・葡萄等)の国内販売や母国への輸出が可能であるため、農地を失いながら農地をつぶして作った住宅も空き家にしているより、ずっとよいと思われる。

    
     2016.11.6、2015.11.30   食料自給率国際比較   2015.6.18朝日新聞 
         日本農業新聞
(図の説明:日本は、他の先進国と比較して食料自給率を著しく減らしながら、農業の就業人口と耕作地の両方を減らし続けてきたため、これは、減反農政の失敗だ。それを回復するに当たっては、大規模化・技術革新・生産性の向上が重要だが、農業従事者としての移民・難民の受け入れも選択肢になる)

*7-1:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/373899
(佐賀新聞 2016年11月6日) 現場を行く 海外出身児童や帰国子女 「授業」「溶け込み」に課題
 日本語が苦手な海外出身の児童や帰国子女が佐賀県内で増えていることを受けて本年度、日本語指導教員が佐賀市の小学校2校に1人ずつ配置されている。適切な指導方法を探りながら、周りの児童に異なる文化や習慣を受け入れる素地をどう育むか。模索する現場を歩いた。
■佐賀市の日本語指導教員、模索 
 ネパールから来日して2年になる小学4年の女の子が母国を紹介する文章を考えていた。9月下旬の本庄小学校。隣に座る日本語指導教員の西村常裕さん(53)が「てにをは」の誤りを消しゴムで消してあげて、適切な表現を考えさせる。授業を受ける普段のクラスとは別の教室。女の子は数字を漢字で書いているとき「はあ、きつい」と漏らしたが、正しく書き上げて「素晴らしい」と褒められると、笑みを浮かべた。
■周囲の理解促進識者「学校も努力を」
 県教育委員会によると、県内で日本語の指導が必要な小中学生は5月1日現在、37人いる。外国籍が24人、日本国籍が13人で増加傾向にあるという。母国語や得意な言語は中国語、英語、韓国語が多い。指導教員は小学校教諭の免許を持ち、学級担任を補助する。県内の定住外国人の3割が暮らす佐賀市では例年、海外出身者が転入する。指導教員は、児童が比較的に多い本庄小と神野小に県教委が4月に配置した。児童は日常会話ができても学習用語は苦手だ。「辺が平行とか直角に交わる線とか、単語の意味を理解し学習に結びつけるまでは時間がかかる」。神野小の指導教員、伊井喜也さん(43)は話す。来日前に成績が優秀でも、つまずくと自信を失いかねない。教科書に読み仮名を振ったり、絵を使った副教材を活用したりして理解を助けている。1対1の個別授業は、周りの目を気にせず、児童の学習進度に応じて学習できるという利点がある。一方で、在籍するクラスへの帰属意識が薄れないように配慮も必要になる。本庄小では、全校集会で指導教員が児童の母国語のあいさつを教え、教室では外国語でのあいさつも飛び交う。落ち着いた学校生活を送るためには、家庭との意思疎通も欠かせない。担任や指導教員は児童の転入前、保護者と面談し、宗教の儀礼や口にできない食材を確認している。普段の連絡事項は、保護者が日本語が得意ではない場合、来校してもらい、国際交流協会から派遣された通訳やALT(外国語指導助手)を介してやりとりをする。児童に通訳してもらうときもある。「児童が『受け入れられている』と実感できる雰囲気づくりが大切」。海外にルーツを持つ児童生徒に集いの場を提供している松下一世佐賀大学教授(60)=人権教育=は、指導教員の役割をこう強調する。その上で「学校は集会や教室づくりを通して、周りの児童が異なる国や文化に興味を持つように促していく必要もある」と指摘し、共生社会の実現につながるきっかけづくりを求めている。県教委は本年度末に成果をまとめ、日本語指導を必要とする別の学校と情報を共有する考えだ。

*7-2:https://www.agrinews.co.jp/p39379.html (日本農業新聞 2016年11月6日) 耕地0.6%減 447万ヘクタール 山間部中心に荒廃増 前年割れ55年連続
 2016年の耕地面積(田畑計、7月15日現在)は447万1000ヘクタールと、前年より2万5000ヘクタール(0.6%)減ったことが農水省の調べで分かった。前年割れは55年連続。山間部などの条件不利地を中心に、荒廃農地が増えたのが最大の要因となった。九州では熊本地震などの自然災害が響いた。耕地面積は1961年の608万6000ヘクタールをピークに減り続いている。高齢化による耕作放棄や宅地への転用などで、これまでに約3割の農地が失われた。16年も田が243万2000ヘクタールで前年比1万4000ヘクタール減、畑が203万9000ヘクタールで1万1000ヘクタール減と、いずれも前年を割り込んでいる。耕地面積の前年より減少した分(2万5000ヘクタール)の6割を占めるのが荒廃農地だ。16年は1万6200ヘクタールと前年より2700ヘクタール増え、過去10年間で最大を更新した。このうち畑は9170ヘクタールと、田を3割上回った。特に畑に含まれる樹園地の減少が目立っており、高齢化による労働力不足で管理が行き届かなくなっている実態を示した。一方、田の増えた面積は1690ヘクタールで前年の8割にとどまった。畑は4700ヘクタールで3割増。特に熊本県で、熊本地震により水稲の作付けが困難になったことへの対策として、田の畑地化が進んだ。地域別に見ると、田畑の面積が前年より最も落ち込んだのは関東・東山と九州で、ともに5300ヘクタール減った。関東・東山は宅地化の増加、九州は熊本地震などの自然災害が響いた。次いで東北が5200ヘクタール減で、高齢者が多い山間部を中心に田畑が減った。

| 経済・雇用::2015.11~2016.8 | 03:31 PM | comments (x) | trackback (x) |
2016.5.30 財務省とメディアの消費税増税自体が目的の政策を中止して国に公会計制度を導入するのが、ギリシャのようにならないために必要な日本の経済・財政政策である (2016年5月31日、6月1、3、4、5日に追加あり)
   
                    2016.5.27日経新聞      2016.5.28    2016.5.25 
                                       日本農業新聞     佐賀新聞

   
    2016.5.27日経新聞   債務残高のGDP比  日本のGDP推移    日本の賃金推移

(1)消費税増税は、国益ではなく財務省の願望だ
 私はギリシャに向かって直進する消費税増税は不要だと思うが、首相が消費税増税延期を選択すると、*1-1のように、日本のメディアは「①消費税増税で得た財源は社会保障の安定や拡充に充てる計画だったので、延期のしわ寄せは社会保障の対象となる高齢者や子育て世帯に真っ先に及ぶ」「②既に深刻な状況にある我が国の財政再建は遠のく」「③大衆迎合や選挙を意識した安易な先送りは許されず、首相は説明責任を厳しく問われる」などと騒ぎ立てる。

 しかし、①②③のような論調こそが、猿芝居の始まりなのだ。首相より前に、財務省とメディアは、①他国にはそのような決まりはないが、日本では社会保障の安定・拡充に充てる財源は消費税でなければならないとする理由 ②実際には消費増税前後の景気対策と称して国民から巻き上げた税金を政府が付加価値の低い投資にばら撒いて経済成長を妨げているのに、消費税増税をすれば財政再建できると唱えている理由 ③算術しかできない消費税増税論者が日本経済を考えており、反対論者は大衆迎合だという誤った自信を持っている理由 などについて、世界が呆れない根拠をもって説明すべきだ。

 なお、首相や多くの国会議員はもともと消費税増税に積極的ではなかったのに、どの党が政権をとっても消費税増税をしなければメディアを使って論理にならない批判をさせ、ついに増税に追い込ませたのは、消費税増税が願望の財務省だ。そして、メディアは財務省の尻馬に乗って騒いでいるにすぎず、「表現の自由」を標榜しなければならないほど芯のある報道をしているわけではない。

 また、東日本大震災や九州大地震の復興で多くの工事が必要になったため、失業率が下がって景気も良くなるのは当たり前であり、実際、上のグラフのように国内需要は東日本大震災の後、急速に伸びている。そのため、金融緩和による物価上昇・消費税増税・社会保障削減などぎりぎりで暮らしている家計にマイナスの影響を与える経済政策の邪魔がなければ、本物の景気回復ができた筈なのである。

(2)景気対策と称する生産性を高めないばら撒き
 日銀が「2%の物価上昇目標を実現するためなら何でもやる」と言っているように、0金利に近い金融緩和でインフレを起こしてデフレを脱却すればよいという発想は、経済学的に誤りである。何故なら、そのような中央銀行の下では、人々は自分の資産と将来の安全を護るために貯蓄を行って家計を護る方向となり、結果として利子率が少なくとも2%程度になるまで物価が下がるからだ。これを、経済学では「ジョンブルも2%の利子率には我慢できない」と表現する。ジョンブルとは、イギリス人の男性に多い名前で、贅沢をせず、文句も言わずに、こつこつと働く人を意味し、そのジョンブルでさえ我慢できないという意味だ。

 そこで、*1-2のように、安倍首相は28日夜、麻生財務相、谷垣自民党幹事長と会談して、来年4月に予定する消費税率10%への引き上げを2019年10月まで延期する方針を伝え、会談で反対する意見も出たため、引き続き政府・与党内で調整することになったそうだ。また、首相は、消費税率10%への増税延期と財政出動を行うために、G7首脳会議で「世界経済は危機に陥る大きなリスクに直面している」「各国の財政出動が必要だ」という合意を取り付けようとしていた。

 しかし、*1-8のように、例えば、道路をより良くするのではなく掘っては埋めるだけのような生産性を上げない工事や合理性のない公共工事によって実際に行われている「ヘリコプターマネー」による財政出動は、役に立つ仕事をせずに給料をもらう人を作って全体の生産性を下げ、円の価値を薄めて所在を変えるだけであるため、我が国の借金を増やして成長に結びつかず、正義でもないのである。
 
 ただし、政府が、当初の契約通りに年金を支払えば必要となる年金資産額を退職給付会計を使って計算し、50年以上の償還期限の0金利長期国債を発行して積み立てたり、教育・医療・社会保障を充実したりするのはヘリコプターマネーではないため、行うべきである。

(3)やはりG7の他国は、日本政府の変な説明には同調しなかった
 *1-3のように、首相はG7で「リーマンショック前に似ている」として消費増税延期への地ならしをしたが、これは日本の特殊事情であるため、G7で話すのは不適切のように思えた。そのため、危機認識が首脳間で差があったのは当然で、既に国に公会計制度を導入しているG7各国の首脳が、「危機、クライシスとまで言うのはいかがなものか」とし、「G7各国は、『それぞれの必要性に応じて経済政策をとるべきだ』というドイツのメルケル首相の意見を支持した」というのは、当たり前のことだった。

 また、*1-4のように、「世界経済に下振れリスク」ともよく言われるが、経済は常に景気循環しながら発展していくため、下振れも上振れも普通に起こる。そのため、一つ一つの投資効果を吟味して生産性を上げる投資をするのではなく、消費税を上げながら「○○兆円規模の景気対策」というヘリコプターマネーを撒く方がよほどまずく、これが通用する理由は、事実を分析し本質や真実を突きとめて報道することができない日本メディアの質の低さと、それを許している主権者の怠慢である。

 つまり、*1-5のように、G7首脳会議(伊勢志摩サミット)で議長を務めた安倍首相は、世界経済のリスクを強調し、G7による危機対応を強く求めたが、G7の他国首脳は日本政府の変な説明に騙されず、首脳宣言は「世界経済の回復は継続しているが、成長は緩やかでばらつきがある」という議長国日本に配慮したあまり意味のない基本認識を示した。しかし今、日本で感じるべき最も大きなリスクは、地震と原発のリスクなのである。

 そのほか、*1-6のように、「アベノミクスが成果を上げていない」とも書かれているが、その最も大きな原因は、金融緩和によるインフレ、消費税増税、医療・福祉の削減によって国民から金を巻き上げ、それを生産性の低い事業にばら撒き、その中には生産性がマイナスの事業すらあることだ。そして、このことはずっとこのブログに書いてきたのでここで長くは書かないが、これまでの一つ一つの政策の総合が日本のマクロ経済に結果として現れているのであり、その責任はアベノミクスのみにあるわけではない。

 なお、*1-7に、「首相は個人消費の低迷を踏まえ、購入額以上の買い物ができるプレミアム商品券の発行といった家計支援策も柱となる2次補正を検討する」と書かれているが、物価上昇、消費税増税・福祉の切り捨てなどで大きくぶんどられた国民に、そこから少額のプレミアム商品券を発行して地元商店街で買い物をするように“支援する”などというのは、あまりにも人を馬鹿にした愚策である。 

(4)G7(伊勢志摩サミット)で議論されたこと
 *2-1のように、G7では世界経済の安定に向け、「G7が世界経済のイニシアチブをとる」と首脳宣言に盛り込み、財政出動、構造改革、金融政策などを総動員して成長を底上げし、そのほか①テロ対策 ②タックスヘイブンを使った課税逃れ対策 ③サイバー対策 ④質の高いインフラ投資 ⑤感染症対策などの国際保健 ⑥女性の活躍推進 などの重点6分野で付属文書をまとめる予定だったそうだ。

 このうち、「財政出動、構造改革、金融政策などを総動員して成長を底上げする」というのは、具体的な意味のないばら撒きを行うという宣言だが、やはりG7の財務相・中央銀行総裁会議は、紳士的に世界経済を下支えするためにあらゆる政策手段を総合的に用いることは確認したものの、各国一斉の財政出動に関しては合意に至らず、健全だった。特に、*2-3のように、独財務相が「目先の効果にこだわり、借金を積み上げるだけになってしまう事態は避けたいと(G7の)みんなが思っている」との認識を示したのはもっともであり、日本もそうすべきである。

 そのような中、*2-4のように、佐賀新聞は「G7、財政出動は各国判断、経済下支えへ政策総動員」という表現をしているが、日本のように「景気対策、景気対策」と言って、具体的な方針のない政府支出(=ばら撒き)を経済下支えと称して行う国はないことを認識しておくべきだ。

 また、*2-5のように、タックスヘイブンをテロ資金と結びつけて禁止しようとする国も日本くらいであり、これが重要な問題として取り扱われなかったのは、世界の正常性と日本の異常性を物語っている。

 なお、①③④⑤はさほど意見の違いの出ない項目だが、⑥の女性の活躍推進は、意見の違いは出ないものの、今頃そういうことを言っている国はG7では日本くらいであるため、G7でそれを言うと、みんな(イギリス、ドイツは既に女性首相を出しており、アメリカも女性大統領が出そうだ)呆れたと思われる。

<財務省とメディアのおかしな思考>
*1-1:http://qbiz.jp/article/87630/1/
(西日本新聞 2016年5月27日) 【解説】増税延期 首相、問われる説明責任
 議論を重ねた末に与野党が合意し法律に定めた消費税率10%への引き上げを、安倍晋三首相が再び延期する道を選んだ。国内外の景気が停滞していることは確かだが、首相が伊勢志摩サミットで訴えた「リーマン・ショック前に似た状況」とは程遠いとの見方が専門家の間では強い。大衆迎合や選挙を意識した安易な先送りなら許されず、首相は説明責任を厳しく問われている。消費税の扱いは、景気への影響にとどまらず、社会保障や国の財政、将来世代も含めた国民負担の在り方といった幅広い観点から論じられるべきテーマだ。増税で得た財源は社会保障の安定や拡充に充てる計画だった。延期のしわ寄せは社会保障の対象となる高齢者や子育て世帯に真っ先に及ぶ可能性がある。既に深刻な状況にある国の財政の再建はさらに遠のくことになる。前回延期時に「再び延期することはない」と約束した首相が前言を翻したことで増税への本気度を疑われ日本国債の格下げを含め市場の信認低下を招く事態も予想される。熊本地震の被災地はなお厳しい状況に置かれており、消費低迷が続く家計にとって増税先送りの恩恵は大きい。ただ、増税を予定通りに実施できる経済環境を整えられなかった安倍政権の責任は重い。「アベノミクス」の限界を露呈したとも言え、政権への批判や経済政策の見直しを求める声が強まるのは必至だ。

*1-2:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12382288.html (朝日新聞社説 2016年5月29日) 首相、増税再延期伝える 「19年10月」麻生氏らに 2次補正を検討
 安倍晋三首相は28日夜、首相公邸で麻生太郎財務相、谷垣禎一自民党幹事長と会談し、来年4月に予定する消費税率10%への引き上げを延期する方針を伝えた。延期期間は2019年10月までの2年半とする考えも示した。だが、会談では反対する意見も出たため、引き続き政府・与党内で調整することになった。複数の政府関係者が明らかにした。会談には菅義偉官房長官も同席した。首相は熊本地震の発生に加え、今後は世界経済の収縮も懸念されることから、来年4月に予定通り消費増税を実施すれば政権が掲げるデフレ脱却がさらに遠のきかねないと判断し、増税時期を先送りする考えだ。首相は、主要7カ国(G7)首脳会議(伊勢志摩サミット)が閉幕した27日の記者会見で「世界経済が危機に陥る大きなリスクに直面している。G7はその認識を共有した」と強調。「アベノミクスのエンジンをもう一度、最大限ふかしていく決意だ。消費税率引き上げの是非も含めて検討する」と述べ、増税を延期する考えを示唆していた。28日夜の会談で、首相は伊勢志摩サミットの議論などをもとに、予定通りの増税を求める麻生氏らに増税延期の方針を伝えた。ただ、麻生氏は延期に反対し、仮に延期する場合は「衆院を解散すべきだ」と主張したという。このため、29日以降も調整を続けることにした。首相は今後、山口那津男公明党代表らとも会談し、増税延期に理解を求める。政府・与党内で合意が得られれば、参院選前に正式に表明する考えだ。首相は14年11月にも15年10月の消費増税を1年半延期しており、今回延期を正式に決めれば2回目となる。一方、首相は公共事業など新たな経済対策を盛り込んだ16年度第2次補正予算案を編成する方向で検討に入った。首相官邸の幹部は「消費増税を先送りし、大規模補正を打つという考え方もある」と主張。規模は与党内で5兆~10兆円との見方が出ており、参院選後の臨時国会に補正予算案を提出する方向だ。

*1-3:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20160527&ng=DGKKZO02843290X20C16A5EA2000 (日経新聞 2016.5.27) 首相「リーマン前に似る」 消費増税延期へ地ならし、危機認識、首脳に差も 伊勢志摩サミット 
 安倍晋三首相は26日の主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)で、世界経済について「危機に陥るリスクがある」と訴えた。政策対応を誤ればリーマン・ショック級の経済危機が発生しかねないとして各国に財政出動を促したが、認識は必ずしも一致しなかった。首相の強い訴えには、2017年4月に予定する消費税増税を再延期する地ならしの思惑が透ける。「リーマン・ショック直前の洞爺湖サミットは危機を防ぐことができなかった。そのてつを踏みたくない」。首相は世界経済に関する討議で、日本が前回議長国を務めた08年の洞爺湖サミットに言及し「将来の危機」への対処を求めた。首相の「危機」へのこだわりには並々ならぬものがある。討議では商品価格や新興国経済に関する指標を並べた4ページの資料も配布。いずれのページにも「リーマン・ショック」という単語を盛り込み、「リーマン前と状況が似ている」と指摘した。前のめりの姿勢の背景にあるのは消費税だ。首相は14年に増税先送りを理由に衆院を解散した際、17年4月の増税を「再び延期することはない」と断言。その後はリーマン・ショックや大震災のような事態が起こらない限り、増税方針は変えないと説明してきた。政権が目指すデフレ脱却や景気の腰折れの可能性を考えると、予定通りの増税は政権運営へのマイナス面がある。だが「いまはリーマン・ショックのような事態とはとてもいえない」(首相周辺)状況。7月の参院選を控え、説得力のある材料をそろえなければ有権者から理解は得られない。首相はすでに増税延期の方針を固め、来週に表明する見通し。国会会期末の6月1日に記者会見を開く案が有力だ。政権内で浮上しているのが経済状況の悪化懸念と、熊本地震の2つの「合わせ技一本」という案。いまはリーマン・ショック級ではないが、将来の下振れリスクはある。G7でそう合意し、財政出動の必要性でもお墨付きを得れば「負の財政出動」ともいえる増税延期の理由になる。だが各国の反応は首相の期待とは微妙に異なる。日本政府関係者は「危機、クライシスとまで言うのはいかがなものか、という意見もあった」と語る。英国政府の説明によると「G7各国は、それぞれの必要性に応じて経済政策をとるべきだというドイツのメルケル首相の意見を支持した」という。首相が各国首脳に提示した討議資料にも、身内である自民党執行部内から「世界からどんな反応が出るか心配だ」との声が漏れた。討議終了後、記者団の質問に答えた首相は「世界経済は大きなリスクに直面しているとの認識については一致できた」と語った。それは「我々は大きな危機に……」と語り始めたのを言い直した表現だった。

*1-4:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20160527&ng=DGKKASFS26H4M_W6A520C1MM8000 (日経新聞 2016.5.27) G7「世界経済に下振れリスク」で一致、サミットで首相「政策対応を」 消費増税延期にらむ
 26日に開幕した主要国首脳会議は初日の討議で、世界経済に下振れのリスクがあるとの懸念を共有した。安倍晋三首相は2008年のリーマン・ショック並みの危機が再発してもおかしくないほど世界経済が脆弱になっているとの認識を表明し、各国に財政出動を含む強力な政策の実施を促した。首相は26日の討議後、記者団に「世界経済が大きなリスクに直面しているとの認識で一致できた。これに基づく(金融・財政・構造政策の)3本の矢を主要7カ国(G7)で展開していくことになった」と語った。首相は26日の討議に「参考データ」を提出し、いまの世界経済がリーマン危機前に似ていると指摘した。「参考データ」によると、最近のエネルギーや食料など商品価格がリーマン危機前後と同じ55%下落。新興国の投資や経済成長はリーマン危機以来の落ち込みを示し、新興国からの資金流出が再び起きた。主要国の成長率見通しの下方修正が繰り返されるのも当時と同じだと主張する。日本政府関係者によると、会議ではある首脳から「『危機』とまで言うのはどうか」と表現ぶりに異論が出たものの「新興国が厳しい」という基本認識では全員一致した。首相は金融産業を抱える米英両首脳と25日に相次いで個別に会い、認識を擦り合わせていた。首相は「G7が金融・財政・構造政策を総動員し、世界経済をけん引する。特に機動的な財政戦略および構造改革を果断に進める重要性を訴えたい」と呼びかけた。インフラや環境・エネルギー、科学技術分野への投資を財政出動の具体例に挙げ「日本が先陣を切っていきたい」と強調した。日本政府関係者によると、複数の首脳が「中間層に対する投資が重要だ」との考えを示した。世界で格差問題が深刻になり、中間層の不満が拡大している。その結果として、各地でポピュリズムが横行しているという共通の危機感がある。日本は「財政出動の重要性で各国が一致した」とし、強固な政策をうたう共同宣言を調整している。金融・財政・構造政策を幅広く活用する政策総動員の議論は、金融市場が不安定だった2月の20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議で浮上した。仙台市で21日閉幕したG7財務相会議でもテーマになったが、財政出動は各国がそれぞれ判断する位置づけにとどめていた。サミットの場で一歩踏み込んだ。安倍首相が「リーマン並み危機」の可能性に言及したことは、来年4月に予定する消費増税の先送りをにらんだものと受け止められている。首相は消費増税について「リーマン・ショックや大震災級の影響のある事態が起こらない限り予定通り行っていく。適時適切に判断していきたい」と対外説明してきたからだ。26日のサミットの討議で日本の消費増税は「話題にならなかった」(日本政府関係者)という。

*1-5:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12382162.html
(朝日新聞社説 2016年5月29日) 首相と消費税 世界経済は危機前夜か
 主要7カ国(G7)首脳会議(伊勢志摩サミット)で議長を務めた安倍晋三首相はそのリスクを強調し、G7による「危機対応」を強く求めた。だがその認識は誤りと言うしかない。サミットでの経済議論を大きくゆがめてしまったのではないか。首相は、来年4月に予定される10%への消費増税の再延期を決断したいようだ。ただ単に表明するのでは野党から「アベノミクスの失敗」と攻撃される。そこで世界経済は危機前夜であり、海外要因でやむなく延期するのだという理由付けがしたかったのだろう。首相がサミットで首脳らに配った資料はその道具だった。たとえば最近の原油や穀物などの商品価格がリーマン危機時と同じ55%下落したことを強調するグラフがある。世界の需要が一気に消失したリーマン時と、米シェール革命など原油の劇的な供給増加が背景にある最近の動きは、構造が決定的に違う。足もとでは原油価格は上昇に転じている。リーマン危機の震源となった米国経済はいまは堅調で、米当局は金融引き締めを進めている。危機前夜と言うのはまったく説得力に欠ける。だから会議でメルケル独首相から「危機とまで言うのはいかがなものか」と反論があったのは当然だ。他の首脳からも危機を強調する意見はなかった。にもかかわらず、安倍首相はサミット後の会見で「リーマン・ショック以来の落ち込み」との説明を連発した。そして「世界経済が通常の景気循環を超えて危機に陥る大きなリスクに直面している」ことでG7が認識を共有したと述べた。これは、「世界経済の回復は継続しているが、成長は緩やかでばらつきがある」との基本認識を示した首脳宣言を逸脱している。首相は会見で消費増税について「是非も含めて検討」とし、近く再延期を表明することを示唆した。サミットをそれに利用したと受け止めざるを得ない。財政出動や消費増税先送りは一時的に景気を支える効果はある。ただ先進国が直面する「長期停滞」はそれだけで解決できる問題ではない。地道に経済の体力を蓄えることが必要で、むしろ低成長下でも社会保障を維持できる財政の安定が重要だ。消費増税の再延期は経済政策の方向を誤ることになりかねない。しかも、それにサミットを利用したことで、日本がG7内での信認を失うことを恐れる。

*1-6:http://qbiz.jp/article/87673/1/
(西日本新聞 2016年5月28日) 首相が語らない、消費増税再延期を決断する本当の理由
 安倍晋三首相が消費税増税再延期の方針を固めた背景には、自身の政策アベノミクスが思うような成果を上げていない現状がある。首相は先送りの理由として、主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)で合意した経済危機回避のため、率先して政策を総動員する必要性を強調するとみられる。だが実際は、政策効果が不十分で消費や設備投資は伸び悩み、構造改革も道半ばのままで、増税できる環境が整わなかったことが最大の要因だ。「アベノミクスのエンジンをもう一度、力強く吹かしていかなければならない」。首相は27日、議長を務めたサミットを締めくくる記者会見で強調、「政策総動員」の一環として、消費税率引き上げ見送りの検討を明言した。増税再延期はアベノミクスの破綻を意味するのではないかとの質問には「決してそんなことはない」と強く否定。雇用状況の改善などの成果を示した上で、先送りはあく、世界経済の危機回避を目指すサミットでの合意に基づく判断との考えを示した。しかし、元財務官の篠原尚之氏(東京大政策ビジョン研究センター教授)が「日本経済に悪影響があるからなのに、世界経済にリスクがあるようにすり替えている」と指摘するように、増税先送りは、足踏みが続く日本経済の危機回避策に他ならない。日本の成長率は現在、先進7カ国(G7)の中で最低。国際通貨基金(IMF)の予測では、消費税率を引き上げると2017年にはマイナス成長に陥るとみられている。景気低迷の一因には社会保障制度の将来不安に伴う消費不振がある。増税を先送りし社会保障の充実が遅れれば、国民の不安はますます強まり、さらなる消費抑制につながりかねない。政府は一方で経済成長と財政健全化の両立を目指すが、20年度黒字化目標を掲げる国と地方の基礎的財政収支(プライマリーバランス)は、現時点でも6兆5千億円の赤字見通し。増税を先送りすれば、目標達成は絶望的になる。サミットの首脳宣言でうたわれた構造改革の重要性に関しても、日本は欧米諸国から「改革が足りない」と批判されているにもかかわらず、取り組みは進んでいない。首相は会見で、アベノミクスを「世界に展開する」とも語ったが、まず行うべきことは、これまでの政策点検と見直しだ。

*1-7:http://qbiz.jp/article/87713/1/
(西日本新聞 2016年5月29日) 首相、2次補正を検討 サミット受け、参院選後に家計支援策
 安倍晋三首相は、世界経済の危機回避のため機動的な財政戦略の実施で合意した先進7カ国(G7)による主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)の議論を踏まえ、新たな経済対策を盛り込んだ2016年度第2次補正予算案の編成に向け検討に入った。自民党の茂木敏充選対委員長が28日、宮崎市の党会合で「参院選後に新たな経済対策に取り組む。補正予算を臨時国会に提出することになる」と見通しを示した。補正予算案の規模は5兆〜10兆円程度との見方が多い。近く閣議決定する「1億総活躍プラン」から先行実施する政策を選ぶ。個人消費の低迷を踏まえ、購入額以上の買い物ができるプレミアム商品券の発行といった家計支援策も柱となる。当初予算の執行前倒しに取り組んでいる公共事業の上積みも検討する。熊本地震の復旧費用は今月成立した1次補正予算で賄えると見ているが、一段の支援が必要になれば対策費を盛り込む。民進党の岡田克也代表は金沢市内で記者団に「アベノミクスは失敗しているから財政出動をせざるを得ない。それが正直な気持ちだろう。従来の古い自民党に戻っただけだ」と指摘した。共産党の小池晃書記局長は「選挙目当ての質の悪いばらまきで、あきれる」と反発を強めた。

*1-8:http://www.saga-s.co.jp/column/economy/22901/315467 (佐賀新聞 2016年5月25日) デフレ脱却へ「ヘリコプターマネー」、「現金ばらまき」 究極の緩和議論盛ん
 既存の金融緩和策への限界論が高まる中、空から現金をばらまくという意味の「ヘリコプターマネー」に関する議論が世界的に盛り上がっている。国民にお金を直接配る「究極の金融緩和」によって消費を刺激し、デフレ脱却を狙うものだ。財源は政府と中央銀行が協力して生み出すため、国の財政への信認が揺らげば国債価格が暴落するなどのリスクも。実現へのハードルは高いが、将来導入される可能性はゼロではない。ヘリコプターマネーは、バーナンキ前米連邦準備制度理事会(FRB)議長がかつて、たとえ話として示して有名になった考え方だ。実際には、お金をばらまくのではなく、政府が償還期限のない永久国債を発行して日銀が購入しお金を供給。その資金を財源に減税や公共投資といった財政拡張に取り組む手法などが専門家の間では取りざたされている。SMBC日興証券の丸山義正チーフマーケットエコノミストは「物価を押し上げる効果は大きい」と指摘する。ヘリコプターマネーに関し、欧州中央銀行(ECB)のドラギ総裁は記者会見で「とても興味深い考えだ」と発言。一方、日銀の黒田東彦総裁は4月28日の会見で金融政策と政府の財政政策を一体とすることは「現行の法制度の下ではできない」と慎重な見方を示した。デフレ脱却という目的のために厳格に運用されなければ、国の財政赤字を中央銀行が穴埋めしているとみなされ、国債や通貨の信認が損なわれる危険も大きい。ただ日銀は2%の物価上昇目標を実現するためなら何でもやると言っており、市場では「主要中央銀行の中では日銀が導入する可能性が最も高い」(外資系証券)との見方もある。

<伊勢志摩サミット開催前>
*2-1:http://mainichi.jp/articles/20160525/ddm/001/010/179000c
(毎日新聞 2016年5月25日) 伊勢志摩サミット、あす開幕 G7、世界経済安定へ決意
 主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)は26日、三重県志摩市の志摩観光ホテルを主会場に2日間の日程で開幕する。世界経済の安定に向けた主要7カ国(G7)の決意を示す「世界経済イニシアチブ」を首脳宣言に盛り込み、財政出動と構造改革の推進を打ち出す。また、テロ対策や租税回避地(タックスヘイブン)を使った課税逃れ対策など重点6分野で付属文書をまとめる予定で、世界が直面する課題の解決に向けたG7のリーダーシップが問われる。世界経済では、中国など新興国の成長鈍化や原油安で強まる停滞感を克服するため、実効性のある対策を打ち出せるかどうかが課題だ。イニシアチブはG7各国の事情に配慮しつつ、財政出動▽構造改革▽金融政策−−を総動員して成長を底上げする姿勢を確認する見通しだ。ただ、財政出動には参加国で温度差があり、どこまで強いメッセージを出すかは首脳間の議論にゆだねられた。日本政府は「世界経済が抱えるリスクに対し、財政出動など喫緊の対応が必要との認識で一致したい」(安倍晋三首相周辺)としており、サミットで認識共有を図る考えだ。首相は財政と構造改革、金融政策を「アベノミクス」と共通する「G7版三本の矢」と位置づけている。サミットでこうした戦略をG7が共有することで政策の正当性を裏付け、夏の参院選に向けた政権浮揚につなげる思惑もある。このほかサミットではテロ対策の行動計画▽「パナマ文書」で焦点が当たる課税逃れなど腐敗防止対策▽サイバー対策▽質の高いインフラ投資▽感染症対策などの国際保健▽女性の活躍推進−−の6分野で付属文書をまとめる。8年ぶりのアジア開催にあわせ、中国の岩礁埋め立てや軍事拠点化で緊迫する南シナ海問題に関し、「一方的な現状変更への強い反対」を盛り込む。また、北朝鮮の核・ミサイル問題を巡っても、核拡散防止条約(NPT)体制を堅持し、容認しない姿勢を明記する。サミットは1975年にフランスで第1回会合が開かれ、今回で42回目。国内開催は79年の東京サミット以降6回目となる。協議には日本、米国、英国、フランス、ドイツ、イタリア、カナダの7カ国の首脳に、欧州連合(EU)の欧州理事会常任議長(大統領)らを加えた9人が参加する。

*2-2:http://qbiz.jp/article/87246/1/
(西日本新聞 2016年5月22日) G7の景気認識にずれ 財務相会議閉幕 欧州は財政出動「不要」
 仙台市で開かれた先進7カ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議は、世界経済を下支えするため、あらゆる政策手段を総合的に用いることを確認したが、焦点だった各国一斉の財政出動に関しては合意に至らなかった。為替政策を巡っても日米間の溝は埋まらず、景気の着実な回復に向けた政策協調を目指す主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)での議論に課題を残した格好だ。「揺るぎない連帯、相互理解、協調の精神をあらためて確認した。(サミットでは)さらに積極的な話ができると思う」。麻生太郎財務相は21日、閉幕後の記者会見で、サミット本番への期待を示した。だが景気に対する各国の認識や危機感は異なり、低成長打開へ向け、具体的な政策を打ち出すのは困難な状況だ。日本では中国経済減速などの影響で円高が進行、日経平均株価は一時、1万5000円の大台を割るなど株価は低迷が続く。企業業績も先行き不透明感が強まり、市場からは「アベノミクスは行き詰まりつつある」と懸念の声も上がっている。一方、ユーロ圏は2013年4〜6月期以降丸3年にわたり、プラス成長が続く。大和総研の山崎加津子氏は「ドイツ政府には、緊急的な経済対策が必要との認識はない」と分析。フランスのサパン財務相も21日の記者会見で「フランスは成長が戻っており(財政出動は)必要ない」と、財政政策に対する、日本との立場の違いを強調した。
   ▼    ▼
 年明け以降の急速な円高は落ち着きつつあるとはいえ、金融市場は不安定なまま。日本は為替相場について「投機的な動きがある」と懸念を示したが、ルー米財務長官は「(円ドル相場は)秩序的」と反論するなど、為替を巡る日米間の溝は埋まらなかった。米国が強硬姿勢を崩さないのは、11月に大統領選挙を控えているためだ。米国は円安により日本の景気が回復、世界経済を支えると期待していたが、ドル高が続いたことで米国の輸出企業業績は低迷。選挙戦を有利に進めるには景気の下支えが不可欠で、環太平洋連携協定(TPP)に対する議会の反発を抑えるためにも「米政府は円安誘導をけん制する必要がある」(エコノミスト)という。ルー米財務長官と会談した麻生氏は「(日米ともに)選挙があり、TPPを抱えている。互いに意見を交換し、感情的な話からもつれることのないよう配慮しないといけない」と表明した。ニッセイ基礎研究所の上野剛志氏は「G7の結束をアピールするため(為替政策について)強く出ることは避けたのだろう」と分析。今後については「再び円高が進んでも、日本が円売り介入をするのは難しいのではないか」と話した。サミット議長を務める安倍晋三首相は、世界経済の持続的成長へ向け「明確で力強いメッセージを出したい」と意気込む。ただ財務相会議で浮き彫りになったように各国の思惑が絡み合う中、合意取りまとめへのハードルは高い。

*2-3:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20160516&ng=DGKKASGM15H3Q_V10C16A5MM8000 (日経新聞 2016.5.16) 独財務相「財政出動の要請ない」 G7で慎重姿勢表明か
 ドイツのショイブレ財務相は15日、日本経済新聞の書面インタビューに答え、日本政府による追加財政出動の具体的な要請は「ない」と明言した。主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)は財政政策の協調を探るが、ショイブレ氏は慎重な姿勢も示した。26~27日のサミットに先立ち、G7は20~21日に仙台で財務相・中央銀行総裁会議を開く。この会議で財政や景気について合意し、首脳がサミットで確認する段取りを描く。ショイブレ氏は仙台の会議に出席する。ショイブレ氏は「目先の効果にこだわり、借金を積み上げるだけになってしまう事態は避けたいと(G7の)みんなが思っている」との認識も示し、仮に要請があっても追加の財政出動は難しいとの考えをにじませた。G7会議でこうした見解を表明するもようだ。日本政府は、安倍晋三首相が5月のメルケル独首相との会談で「機動的な財政出動が求められており、G7で一段と強いメッセージを発出したい」と語り、政策協調に理解を求めたとしていた。為替政策では米国と日本の温度差も目立つ。

*2-4:http://www.saga-s.co.jp/news/national/10201/314200
(佐賀新聞 2016年5月21日) G7、財政出動は各国判断、経済下支えへ政策総動員
 仙台市で開かれた先進7カ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議は21日、減速する世界経済を下支えするため、各国が必要に応じ財政出動することを確認し閉幕した。国ごとの事情を踏まえ金融政策、構造改革を組み合わせて政策を総動員する。課税逃れやテロ資金対策をG7が主導することで一致。為替を巡っては円高を警戒する日本の為替介入を米国がけん制した。焦点の財政出動は構造改革を重視するドイツなどの慎重論を踏まえ各国判断とし、日本が目指した一斉出動は見送られた。

*2-5:http://www.saga-s.co.jp/news/national/10201/314144
(佐賀新聞 2016年5月21日) G7、税逃れとテロの温床解明、財務相会議閉幕
 仙台市で開かれた先進7カ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議は21日、国際的な課税逃れやテロ資金の拡散を阻止するため、不正の温床となりがちなタックスヘイブン(租税回避地)を使った資金取引の解明に連携して取り組むことを確認し、閉幕した。麻生太郎財務相とルー米財務長官は討議に先立ち2国間で会談し、為替政策を巡り協議した。ルー氏は通貨の切り下げ競争を回避することが重要との認識を強調した。20日の討議で金融・財政政策と構造改革を各国の事情に応じて総動員することで一致したことと併せ、26、27両日開かれる主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)に成果として引き継ぐ。

<男性社会の欠陥>
PS(2016年5月31日、6月5日《図表》追加):麻生氏のように生活費の上限など考える必要もなく、自分が保育や介護の担当をすることも想像したことがなく、セメントの売れる方が有難いと思う人が財務大臣になった時点で、我が国の財政への取り組みがどうなるかは推測できた。しかし、男性も家計や家事に主体的に参加し、消費者とは自分や家族のことであることを体感し、消費者の行動はどういうものかという感覚を身につけなければ適切な政策を考えることはできないため、世のお母さん方は男の子にもそのような素養を身につけさせる教育をすべきだ。何故なら、現在の男性中心社会は、そういうことを理解した上で働いている人が少なく、いてもマイノリティーで発言権が小さいのが欠陥だからである。

     
  2014.9.17   2015.4.2    延長時の   社会保障負担増        九州の   
  朝日新聞     西日本新聞  年金支給額                  介護保険料負担増
  年金制度   年金支給額減額

*3:http://qbiz.jp/article/87837/1/
(西日本新聞 2016年5月31日) 麻生氏 増税再延期を容認も、『首相との違い』にじませる
 麻生太郎財務相は31日の閣議後の記者会見で、安倍晋三首相が消費税増税の再延期方針を固めたことに関し「首相の最終的な判断に従う」と容認姿勢を表明した。2020年度に基礎的財政収支を黒字化する健全化目標の達成に向け「最大限努力していく姿勢は変わらない」と強調した。麻生氏は予定通りの増税を求めていた。再延期なら夏の参院選に合わせた衆参同日選をしないと「筋が通らない」とも発言していたが「解散は首相の専権事項だ」と、首相の意向を尊重する考えを示した。30日夜の首相との会談内容に対する言及は避けた。一方、増税分を財源に見込んでいた社会保障の充実策については「給付と負担のバランスを考えていくのは当然だ。そういったものは増収額に応じて措置すべきだ」とし、先行実施は困難との姿勢を示唆した。麻生氏は原油安などで「新興国経済が深刻な事態になっている」と指摘しながらも、増税再延期の背景として「一番の問題は(国内の)個人消費が伸びていない点。世界経済は従の原因だ」と述べ、主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)で世界経済の「危機回避」を強調した首相の見解との違いをにじませた。

<高齢者の貧困と社会保障>
PS(2016年6月1日追加):「高齢者は金持ちである」という事実に基づかない情報を基に、社会保障改革と言えば高齢者からぶんどり、高齢者への社会保障を削減することを続けてきた結果、*4のように、生活保護受給世帯の50.8%が65歳以上の高齢者となった。このように、事実を調査することなく、事実に基づいた深い考察もせずに、厚労省の怠慢を隠すべく若者と高齢者を対立軸として観念的に行われてきた高齢者いじめは、底が浅く、それこそ人格を批判されるべきことである。しかし、完全失業率が低下傾向にあるため、65歳以上の高齢者も働きやすくして支える側にまわってもらえば、年金支給開始年齢を上げ、医療・介護費を減らすことは可能だろう。

    
 2016.6.1、2016.2.16西日本新聞      賃金の推移        失業率の推移

*4:http://qbiz.jp/article/87933/1/
(西日本新聞 2016年6月1日) 生活保護50%超高齢者 82万世帯 過去最多
●9割単身、貧困深刻
 生活保護を受給する世帯のうち、65歳以上の高齢者を中心とする世帯が3月時点で過去最多の82万6656世帯となり、初めて受給世帯の半数を超え50・8%となったことが1日、厚生労働省の調査で分かった。うち単身世帯が9割に上った。厚労省の国民生活基礎調査では、高齢者世帯は約1221万世帯(2014年6月時点)で、受給世帯は約6%に当たる。高齢化が進行する中、低年金や無年金で老後を迎え、身寄りもなく生活保護に頼る高齢者の貧困の深刻化が鮮明になった。厚労省の担当者は「高齢者が就労できず、就労しても十分な収入を得られていない」と分析。景気回復による雇用改善で現役世代の受給が減る一方、高齢者の伸びが全体の受給者数を押し上げており、この傾向は今後も続くとみている。厚労省によると、全体の受給世帯数は前月より2447世帯増加して163万5393世帯で、過去最多を3カ月ぶりに更新。受給者数は216万4154人で2847人増え、人口100人当たりの受給者数である保護率は1・71%だった。

<税外収入の可能性>
PS(2016年6月3日追加):消費税増税を延期(本当は永久凍結か国税としての消費税は廃止したいが)すると、*5-1のように、「①増税先送り、次の世代より次の選挙」「②ポピュリズムに陥らず増税も唱えてきた税のプロの姿はそこにはない」「③増税から逃げたら社会保障を含め予算を切るしかない」などと批判するメディアが多い。しかし、①は単純な算術しかできていない上、目先しか見えない愚鈍な発想であり、②は“ポピュリズム”“プロ”の定義を(わざと?)取り違えている。また、日本だけ「社会保障の財源は消費税」としているのは、③の論法で消費税増税を国民に受け入れさせるための悪知恵だ。
 しかし、国民に負担をかけずに国富を増やして社会保障財源を捻出するのが本当の知恵であり、日本の排他的経済水域からは、下のようにメタンハイドレート、レアメタル、*5-2の金鉱石なども発見されている。そして、海底は国有財産であるため、国は公会計制度を導入して正確な財務管理を行うと同時に、これらの鉱業を早急に事業化して税外収入を得るべきであり、20年以上も「消費増税を先送りすれば次の世代の負担が大きくなる」などという馬鹿の一つ覚えの虚偽記事をメディアが書いていることこそ、次世代に悪影響を与えているのだ。

    
    日本の    メタンハイドレート  鹿児島湾の海底で     青ケ島沖で金鉱石発見
 排他的経済水域    の分布       レアメタル発見          *5-2より               

*5-1:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20160603&ng=DGKKZO03157310T00C16A6EA1000 (日経新聞 2016.6.3) 決断増税先送り(2)次の世代より次の選挙
 増税先送りを首相の安倍晋三(61)が表明した1日夜。首相公邸に幹事長の谷垣禎一(71)ら自民党役員が顔をそろえた。「批判も含め、参院選で審判を受けたい」。安倍がカリフォルニアワインを振る舞いながら上機嫌であいさつすると、出席者の一人は「こういう説明もあるのかな」とつぶやいた。谷垣らが増税延期を正式に聞いたのはこの数日前。党幹部は「すでに決定事項で議論の余地はなかった」と話す。しかし安倍が早くから増税延期に含みを持たせる中、党側に議論する時間がなかったわけではない。
   □   □
 2月、安倍から消費増税の先送りを考えていると打ち明けられた首相補佐官の衛藤晟一(68)は、同じ安倍側近の政調会長の稲田朋美(57)に「安倍さんの思いは増税延期ですよ」と伝えた。稲田が主宰する党財政再建特命委員会。2月の会合で園田博之(74)は「増税から逃げたら社会保障を含め予算を切るしかない。この場で増税の是非を議論すべきだ」と稲田に迫った。だが同調する声は出ず、特命委が増税延期を議論することは最後までなかった。自民党税制調査会も5月31日、幹部会合を開いたが増税延期は議論しないまま終わった。幹部の一人は「官邸が決めた以上、何もできない」。ポピュリズムに陥らず増税も唱えてきた税のプロの姿はそこにはない。同じ31日の政調全体会議も、政策決定のあり方には異論が出たものの、増税延期自体には目立った反対はなかった。理由は単純だ。参院選を控え、増税を訴える選挙は勝てないと肌で感じているからだ。政党交付金と選挙の公認を握る安倍には刃向かえない。だが不満はくすぶる。「増税を先送りするような安倍政権だ。我々がもっと頑張らなければいけない」。6月1日夜、都内で開いた額賀派会合。消費税を導入した元首相、竹下登を兄に持つ前復興相の竹下亘(69)はこう訴えた。同じ頃、近くで開いていた岸田派会合では、名誉会長の古賀誠(75)が「首相は芯がない。何をしたいのかわからない」と日本酒を口にしながらぶちまけた。ポスト安倍候補の外相、岸田文雄(58)は受け流したが、出席者から「安倍政権の終わりの始まりだ」「官僚は官邸しか見ていない」と不満が漏れた。こうした声が公の会議で出ず、遠ぼえにしか聞こえないのが今の自民党だ。自民党会派を離脱した前参院幹事長の脇雅史(71)は「権力に弱く、言論空間としての国会が死んでいる」と話す。
   □   □
 2月17日の自公党首会談。安倍が「増税はもちろんやります。ただ経済情勢も注視しますが……」と話すと、公明党代表の山口那津男(63)は「経済は生き物ですからね」と応じた。安倍は「山口さんも経済次第で延期はやむを得ないと考えている」と受け取った。山口は谷垣とともに2012年、社会保障と税の一体改革で消費増税を決めた民主、自民、公明3党合意の当事者。だが前回14年の増税先送りに続き、今回も延期を認めざるを得なかった。痛みを分かち合う時代の政治の知恵とされた3党合意はかすむ。3党合意のもう一人の当事者が民進党の前首相、野田佳彦(59)だ。野田は2日、参院副議長の輿石東(80)に電話で安倍批判を展開した。「19年まで延期なんて誰も信じません。世界経済のリスクなどと言ったら絶対にできない」。その野田も苦しい立場にある。「安倍さんは必ず延期すると言いますよ。その前にこちらが表明しないと機会を逸します」。民進党の発足間もない4月上旬、代表代行の江田憲司(60)は代表の岡田克也(62)に促した。先手を打って延期を表明すれば、安倍が増税する場合、争点にできる。安倍が延期を表明すれば「アベノミクスの失敗」と訴えられる。こう踏んだ岡田は5月18日の党首討論に照準を定めた。党首討論の前週、野田は岡田から「2年延期を打ち出したい」と相談を受けた。岡田は野田の下で一体改革に取り組んだ間柄だ。野田は不満を抱きつつ「代表の足を引っ張ることはしない」と岡田を立てた。野田も安倍と同様、衆院解散時の消費税発言を問われる立場にある。解散した12年の記者会見で「民主党は次の選挙より次の世代を考えた候補者がそろう」と話したからだ。自民党の重鎮の一人は嘆く。「今の政治は与党も野党も、次の世代より次の選挙しか考えていない」

*5-2:http://qbiz.jp/article/88036/1/ (西日本新聞 2016年6月2日) 高濃度の金 海底に 東大発見 鉱石1トン中最大275グラム 伊豆諸島・青ヶ島沖
 伊豆諸島・青ケ島(東京都)沖の海底熱水鉱床で高濃度の金を含む鉱石を発見したと、東京大のチームが2日、発表した。最高で1トン当たり275グラムの高濃度の金を含むものもあり、陸地や他の海域の金鉱石と比較しても高い値だったという。東大の浅田昭教授は「金の採掘を事業化するには同様の鉱床を多く見つける必要がある。この海域の調査を進め、今回のような場所をさらに見つけたい」としている。チームは、海中ロボットから音波を出すことで、海底の地形を高い精度で調べられる装置を開発。昨年6〜9月、青ケ島の東方約12キロにある東青ケ島カルデラを調査し、海底から噴出する熱水に含まれる金属成分が沈殿した海底熱水鉱床を複数発見した。そのうち、カルデラ南部の水深750メートルの小さな丘のような場所で採取した鉱石を分析すると、金や銀を多く含んでいた。分析した15個の鉱石のうち、金の最高の濃度は1トン当たり275グラムで、平均値は同102グラムだった。また0・003〜0・09ミリの大きさの金粒子も確認できた。世界の主要金鉱山の金含有量は1トン当たり3〜5グラムとされ、今回見つかった鉱床の金の割合は高い。飯笹幸吉・東大特任教授は「資源としては期待の持てるエリア」と話した。
■海底熱水鉱床…地中から熱水が噴き出す海底の周りで、熱水に含まれる金属成分が沈殿してできた鉱床。煙突のような噴出口や、小高い丘などの地形が特徴で、含有される金属には銅や鉛、亜鉛などのほか、貴金属の金や銀がある。貴重な資源とされるガリウムやゲルマニウムなどのレアメタルも多く含むものもある。日本近海では伊豆や小笠原の周辺や沖縄海域などでの存在が知られ、政府は商業化に向けた探査や技術開発を推進している。鉱床にすむ生物が特殊な生態系を構成していることでも注目されている。

<本当の責任者>
PS(2016年6月4日追加):安倍首相がTPPテキスト分析チームを表明すると、多くのメディアが「社会保障財源が云々」と騒いでいるが、社会保障財源はもともと社会保険料を徴収して賄っているものであるため、まず徴収漏れや積立金の運用方法を批判すべきである。そして、消費税を増税したからといって、それ以上の景気対策を行えば、社会保障が充実するとも財政状態が改善するとも言えないため、消費税増税延期について自民党と野党連合を舌戦させても意味がなく、「敵は厚労省・財務省にあり」なのだ。
 なお、安倍首相が電力自由化を進められたことは誰にでもはできない大きな実績であり、消費税増税問題で票が減ったからといって責任をとる必要はない。何故なら、誰がやっても、消費税増税も増税延期も票が減る論調にされるからだ。しかし、自民党の憲法改正草案はひどすぎるため、これをおかしく思わない集団が憲法改正国会発議に必要な3分の2以上を占める事態は阻止すべきである。

*6:http://www.saga-s.co.jp/news/national/10201/319269
(佐賀新聞 2016年6月4日) 参院選へ舌戦、初の週末、アベノミクス推進、3分の2阻止
 7月の参院選が事実上スタートして初の週末を迎えた4日、各党幹部らが各地で舌戦を繰り広げた。安倍晋三首相(自民党総裁)は経済政策アベノミクス推進へ意欲を表明。目標とした与党による改選過半数(61議席)獲得に届かなかった場合に退陣する可能性について明言を避けた。一方、民進党の岡田克也代表は、自民党など改憲勢力が憲法改正の国会発議に必要な定数の3分の2以上を占める事態を阻止する決意を示した。

| 経済・雇用::2015.11~2016.8 | 04:01 PM | comments (x) | trackback (x) |
2016.5.17 九州大地震の支援と今後の方針について (2016.5.18、19、20、21追加あり)
    
  仮設住宅建設費用     仮設住宅間取り  東日本大震災仮設住宅 九州大震災仮設住宅

     
     九州の断層帯と原発                    益城町(役場を含む)の損壊

    
 復興予算        新しい街づくりへ           現在の熊本市    現在のピョンヤン
2016.5.18朝日新聞

(1)復旧・復興へ総額7,780億円の補正予算
 *1-1、*1-2のように、復旧・復興のため総額7,780億円の補正予算が可決し、地元負担が(費用全体の)0.5%から1%になるそうでよかった。

 しかし、熊本市は、地方分権のための道州制が行われる場合には、九州の州都となる第一候補であるため、復旧・復興のための総額7,780億円の補正予算も、単なる無駄遣いではなく、都市計画のある現代の街づくりを始めることに使ってもらいたい。

 単なる無駄遣いとは、①地震直後に送った支援物資が滞留して使用されなかったことや②短期間で壊すことが明白な仮設住宅の建設に使う災害救助費573億円などだ。上図のように、東日本大震災では仮設住宅に一個当たり500~700万円を支出しているが、その作りは粗末で金額に見合わず、家がないよりはよいという程度で住んでいる人も惨めだった。そして、今回の木造のものでも粗末で金額に見合わず、木材がもったいない。しかし、東日本大震災の場合は津波で広範囲の建物が流され、今後の津波に備えて高台移転やかさ上げを行う必要があったため、仮設住宅の建設もまだ合理的だったのだ。

 一方、九州大地震の場合は、津波はなく断層に近い場所で建物が倒壊しただけであるため、どこを住宅地・公園・農業地帯にするかについての都市計画をたて直し、リスクが高くて住宅地に向かない場所に住んでいる人は、他の安全な場所に引っ越さなければならない。そのためには、罹災した人を中心に考えれば、現在住んでいる土地・家屋を固定資産税評価額で国か県か市町村に引き取ってもらい、家を新築する費用900万円(=見舞金300万円+仮設住宅建設費600万円)を補助してもらって、低金利・利息補助・太陽光発電などを利用して次のステップに進んだ方がよいだろう。そのため、見舞金300万円だけもらって仮設住宅に入るか、900万円もらって終わるかを、本人が選択できるようにすればよい。そして、材木は新しい住宅・学校・福祉施設などの建設に、デザインよく使えばよいと考える。

 そこで、「安全に住めない」と認められる一帯の人には、*1-3の罹災証明書を速やかに発行して立ち退かせるべきであり、市町村職員である素人が住宅被害を調査して危険な家を「半壊」などとケチケチした判定をすべきではない。なお、この罹災証明書の発行は、益城町、西原村、南阿蘇村などで大変遅れていたそうだが、必要なことをするにも財政基盤や人的基盤が小さすぎるのを解決するには、*2のように、合併して市町村再編をすべきだ。

(2)民の支援
 *1-4のように、今回は震災に慣れていて手際がよかったにもかかわらず、熊本県内の拠点が物資で埋まり、自治体職員の仕分けが追いつかない状態だったのは、原発事故で近づけなかったわけではないため、初めから輸送の専門家である日通、ヤマト運輸、佐川急便などの運送会社を使って仕分けし、輸送すればよかったと思われる。また、食品も、普段から弁当作りに慣れている業者を使って調達し、道路が開通するまでヘリコプターで運べば問題はなかった筈だ。

(3)仮設住宅について
 *3に、仮設用地の確保が進まないと書かれているが、(1)で書いたように、最終の住居を建設した方が無駄遣いが少ないため、近くの街まで含めて観光客が減ったホテルの空室、空き家、民間賃貸住宅などを手当てし、必要な新しい住宅団地や福祉施設を早急に建設した方がよいと考える。30分~1時間くらいの通勤は、関東では近い方に入る。そして、こうした方が、人口減時代のコンパクトシティー化と熊本県の将来の両方に資すると思う。

(4)農業の再編と規模拡大
 危険であるため住宅地に向かないと判断された土地でも、自然公園、牧場、*4-1のような規模拡大した農業には利用できる。そのため、農水大臣・環境大臣・国交大臣・観光庁長官は、早急に具体的かつ積極的な支援を県や市町村と協力しながら進めてもらいたい。

 また、大規模化して新しい作物を作る場合には、*4-2のように、イオンやイトーヨーカドーなどの小売店と連携して輸出も視野に生産することが可能であり、そうすると、こういう会社から農業生産法人への出資や人材供給も期待できる。

(5)学校の再編
 壊れた学校も多かったが、地方自治体の合併と合わせ、*5の小中一貫校や中高一貫校への移行を行えば、耐震性の高い校舎を新築するにあたり費用が少なく、税金と空き地を有効に使うことができる。

(6)川内原発は断層の上にある
 鹿児島県知事は、*6-1のように、無責任にも「川内原発周辺で熊本地震のような地震は起きない」と述べているが、川内川は断層(地殻の割れ目)そのものであり、それは川の形からわかる。

 そのため、南日本新聞も、*6-2のように、「原発も鹿児島県知事選の重要な争点では」と書いているが、地震で運転中の高圧配管に損傷が生じて圧力が一気に下がった場合には、水の沸点が一気に下がり、圧力容器内でも水が爆発的に蒸発して衝撃波様の衝撃を発し、更に他の機能や構造も損ねる危険性があるため、私も川内原発稼働の再検討に賛成だ。

*1-1:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20160516&ng=DGKKASFS16H0J_W6A510C1MM0000 (日経新聞 2016.5.16) 熊本復旧、首相「必要な財政支援」 補正、今夕に衆院通過
 衆院予算委員会は16日午前、安倍晋三首相らが出席して熊本地震の復旧・復興費用を盛り込んだ2016年度補正予算案の基本的質疑を実施した。首相は「必要な財政支援をしっかり行う。各自治体は安心して復旧事業に取り組んでもらいたい」と表明。補正予算案は16日夕に予算委で全会一致で可決、続いて衆院本会議でも可決し、17日の参院本会議で成立する見通しだ。首相は補正予算案について「被災地に必要な支援をするうえで、十二分の備えを整えるものだ。できることは全てやる決意で取り組む」と強調。麻生太郎財務相は被災自治体に起債を認め、起債額のうち95%は地方交付税で補填すると説明し「地元負担は(費用全体の)0.5%から1%になる」と語った。首相は欧州訪問時の首脳会談に関して「世界経済の認識は一致している。ただ処方箋については議論があった」と指摘。26日からの主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)で「どういうメッセージを出していくか話し合うのが大切だ」と語った。衆参同日選に関しては「今まで一度も申し上げたことはない。衆院解散の『か』の字も考えていない」と述べた。

*1-2:http://mainichi.jp/articles/20160516/k00/00e/010/151000c
(毎日新聞 2016年5月16日) 総額7780億円の補正予算、午後に衆院通過へ
 衆院予算委員会は16日午前、安倍晋三首相らが出席して熊本地震の被害に対応する総額7780億円の2016年度補正予算案に関する基本的質疑を行った。地震直後に被災地への食料や水などの供給が滞ったことについて、首相は「送ったものが(熊本県庁などに)滞留していたのも事実。どういう課題があったかしっかり精査したい」と答弁した。民進党の岡田克也代表が「より良い制度を考えるべきだ」と指摘したのに答えた。補正審議では野党も早期成立に協力する方針。同日夕に可決され、その後の衆院本会議も通過し、17日に参院での審議を経て同日中に成立する見通しだ。安倍首相は補正について「余震が続き被害状況が拡大する可能性にも配慮しつつ、必要な支援を行ううえで十二分の備えを整えるものだ」と意義を強調。そのうえで「国庫補助の拡充強化や地方負担に対する財政措置の充実も含め、どのような対応が必要になるか検討し、必要な財政支援を行う」と述べ、財政基盤の弱い被災自治体を今後も手厚く支援する考えを示した。自民党の坂本哲志氏への答弁。補正予算案は、事前に具体的な使い道を定めず必要に応じて道路や橋のインフラ復旧などに充てることができる「熊本地震復旧等予備費」に7000億円を計上。仮設住宅建設などに使う災害救助費573億円なども盛り込んだ。

*1-3:http://www.nikkei.com/article/DGXLASDG13HBV_U6A510C1MM8000/
(日経新聞 2016/5/14) 熊本地震、罹災証明発行に遅れ 申請の3割どまり
 熊本地震の被災地で、住宅など建物の被害を証明する「罹災(りさい)証明書」の申請が熊本県内で計9万7741件に上る一方、発行は2万8266件(28.9%)にとどまっていることが14日分かった。証明書は被災者が国などから支援を受ける際に必要となる。国は5月中の発行を求めているが、発行する市町村の人手不足で6月にずれ込む可能性がある。14日で地震発生から1カ月。証明書の発行の遅れは被災者の生活再建の足かせとなっている。罹災証明書は被災者からの申請を受けて市町村が住宅被害を調査し、「全壊」や「半壊」などと判定した上で発行する。熊本県によると、12日までに被災者から県内の30市町村に発行の申請があった。熊本市が5万7244件で最も多く、震度7を2度観測した益城町が9837件。西原村は1793件、南阿蘇村は1548件だった。発行できたのは熊本市が1万8785件(32.8%)などで、益城町、西原村、南阿蘇村など9市町村は発行できていない。益城町は申請の9割の調査を終えたが「電話回線など町役場の設備が整っていない」という。県の災害対策本部は「他県から派遣された応援職員を市町村に割り振って対応しているが、5月中に終了できるか分からない」としている。

*1-4:http://qbiz.jp/article/86900/1/
(西日本新聞 2016年5月17日) 【連続震度7の衝撃・5】「民」の支援、課題あり
 本震発生直後の4月16日午前4時すぎ。九州電力の担当者が電話したとき、相手の四国電力は人員や機材、輸送フェリーなどの手配を、もう済ませていた。
   ◆    ◆
 14日の前震による最大1万6千戸の停電復旧は、自前で15日深夜に完了。数時間後の本震は復旧したばかりの送電網を切り裂き、停電は最大47万戸を超えた。九電は“ミニ発電所”と言える電源車59台を持つが、とても足りない。次々と各社に応援要請を出した。東日本大震災時、東西で周波数が違うため実現しなかったオールジャパン態勢だが、各社はその後、異なる周波数の電源車を配備。「初めて大手10社が集結したミッション」(九電幹部)が実現した。だが、現場は当初混乱した。電源車が向かう避難所の場所が分からない。電源車用燃料を運んだが既に足りていた。優先配備すべき場所をどう判断するか−。それでも20日夜に復旧が完了。九電電力輸送本部計画部の豊馬誠部長(57)は「最大限のスピードだったと思う」と語る。国の電力需給検証小委員会は、22日にまとめた報告書案で「熊本地震の教訓」の項目を急きょ加えた。「電源車の応援は被災地の電力会社の要請を待つことなく関係事業者が先手先手を打って対応すべきだ」。この一文に、九電関係者は複雑な思いでいる。危機の際は、他社や行政機関との連携と統制が原則。非常時とはいえ、そこまで民間が踏み込むべきなのか。物資を載せて出発したトラックが、物資を載せたまま戻ってきた。日本通運久留米支店の福元雅浩業務課長(43)は驚く。同支店が管轄する佐賀県鳥栖市の物流センター。国の要請に基づき、16日夕方から国の物資を自治体ごとに仕分け、配送を始めた。九州では、大規模災害時の物資輸送に関する産官学の協議会で民間の物流施設の活用を想定し、日通の施設もその一つだった。約7万2千平方メートルの敷地、全天候型、24時間稼働で常時数十人の作業員がいる。「作業自体は難しくないので通常業務と並行して続けられた」と現場で指揮した福元氏は語る。ではなぜ「トラックは戻ってきた」のか。熊本県内の拠点は既に物資で埋まり、荷を置いていけず、自治体職員も不足して仕分けが追いつかない状態だったのだ。国は日通に、自治体ごとに必要な物資を割り振っていたが、状況は刻々と変わる。18日、福元氏らは国に「私たちも自治体に情報確認したい」と提案し、認められた。国も19日、物流業者の活用を広げ、熊本県外にあるヤマト運輸や日通の別の施設で仕分けしてから輸送するようにした。物資の滞りは改善されていった。福元氏は「国が現場の裁量に任せてくれたのは大きかった」と話す。熊本市の依頼で物資の仕分けを指揮した熊本県トラック協会の吉住潔専務(61)は「判断の権限は市職員にあるが、物流の知識はこちらの方が豊富。もっと提案型のやりとりをしてもよかった」と振り返る。国は空港や道路などの民営化を進め、公的インフラを担う企業が増えている。東日本大震災を経験し、今年7月に空港民営化第1号となる仙台空港。滑走路などの地震対策も運営企業の責任で行う。契約上、被害が甚大な場合は国が運営を継承する決まりになっているが、この運営企業幹部は「国が引き継ぐ契約だからといって民間がすぐに手を引くわけにはいかない。熊本での大地震連続発生や空港の被災を、民間ができる役割を考える新たな教訓にしたい」と語る。「公」の機能がまひする今回のような大災害時に、ノウハウにたけた「民」がどう主体的に動くか。行政はどこまで任せるのか。仕組みと意識、双方を変えるときがきている。

<地方自治体の再編>
*2:http://www.murc.jp/thinktank/rc/column/search_now/sn090302_01
(三菱UFJリサーチ&コンサルティング 2009/3/2) 自治体再編:市町村合併一巡で次の焦点は道州制、公共経営・地域政策部 主任研究員 大塚敬
 わが国における都道府県制度の見直しとその具体的な方策としての道州制にかかる議論の歴史は古く、昭和32年には第4次地方制度調査会において、都道府県制度を廃止し国と市町村の中間団体として国と地方自治体の両方の性格を併せ持つ「地方」という団体を新設すべきであるとの提案が既になされていた。その後、道州制はさまざまな議論が重ねられつつも実現せずに今日に至っているが近年改めて注目され、平成18年2月の第28次地方制度調査会答申において、広域自治体改革の具体策として道州制の導入が適当であるとの見解が明確に示されたことにより、導入の機運が急速に高まっている。こうした背景には、地方分権の受け皿として地方自治体の抜本的な改革が不可避となったことがある。少子高齢化と人口減少、経済の低成長への移行などにより、すべての地方自治体を現状のまま維持するのは困難であることが明確になった。これに対し、国はまず地域において包括的な役割を担う市町村を、最低限の行財政基盤を確保可能な規模に再編すべく、市町村合併を強力に推進した。この結果、平成10年度末と比較して平成20年12月時点で市町村数は3,232から1,781に減少した。現在、市町村合併は平成の大合併と言われた平成16~17年度から一段落しており、次の焦点は都道府県の再編に移ったと考えられる。合併により市町村の大規模化が進み、政令指定都市数は12から17、中核市数は21から39に急増している。また、各都道府県の市町村数も、平成11年4月1日時点では市町村数30以下の都道府県はなかったが、平成21年1月1日時点では30以下の団体が19に上り、うち9団体は市町村数が20以下となっており、市町村と都道府県のバランスは大きく変わった。また、道州制導入の機運が高まっている背景には、都道府県間の格差の拡大と小規模県の行財政基盤の弱体化もある。平成17年国勢調査の時点で、東京都の約1,260万人を筆頭に、500万人を超える都道府県が9を数える一方で、人口が100万人を下回る県が7県に上る。最も少ない鳥取県の人口は60.7万人で東京都の約20分の1であり、政令指定都市で最も人口が少ない静岡市の71万人をも下回っている。また、人口規模の小さい県ほど人口減少が進展する傾向にあり、国立社会保障人口問題研究所の推計によれば、2035年には人口が100万人を下回る県の数は15に増加し、鳥取県の人口は約49万5千人と政令指定都市の基本要件をも下回ると見込まれている。一方、こうした状況の中、約360万人の人口規模をもつ横浜市は、その人口規模と都市機能の高度な集積に見合った権限を求めて、新たな大都市圏制度を自ら提言している。これは、横浜市や大阪市、名古屋市など特に人口規模の大きな都市に対し、政令指定都市の枠組みを越えて、都道府県や将来の道州の下に組み込まれることなく、広域自治体に委ねていた権限をすべて掌握する自治体としての位置づけを求めるものである。このように地方分権が進展し、その受け皿となる市町村の行財政基盤が強化される一方で、小規模県の人口減少が避け難い状況から見て、自治体再編という大きな流れの中で、市町村合併の次のステップとして都道府県の再編と役割の見直しは必至であり、その具体的方策として、長い間議論されてきた道州制が近い将来ついに実行に移される可能性が非常に高い。平成19年1月に政府が設置した道州制ビジョン懇談会は、平成20年3月に中間報告を公表、道州制の実現に向けた道州制基本法の原案を平成22年内に作成し、平成23年の通常国会に提出、最終的には平成30年までには道州制に完全移行すべきであると明記している。懇談会は、当初想定していた本年1月の基本法骨子案の策定は見送ったものの、予定通り平成23年通常国会への法案提出に向けて審議を続けている。今後は、具体的な制度の枠組みの調整と、受け皿となる広域自治体側の体制整備の両面から、具体化に向けて慎重に、しかし迅速に準備を進める必要がある。前者において課題となるのは区割り調整と国から道州への権限委譲の内容であり、懇談会での議論においてもこれらが大きな焦点になっている。特に区割りについては、有利不利の議論だけでなく、地域の歴史的文化的な背景も含め、都道府県それぞれの思惑もあって今後調整が難航することが予想される。また権限についても、懇談会中間報告では国の役割は国境管理や国家戦略の策定、国家的基盤の維持・整備、全国的な統一基準の制定に限定すると明記されているが、具体的な内容を検討する段階では、これまでも地方分権や規制改革に際して繰り返されてきたように、国と地方の綱引きによる調整難航は必至であろう。さらに課題となるのは道州政府の体制整備であり、中でも特に重要な点は財政運営の中核を担う人材の確保である。現在検討されている案をベースに予想すると、欧州の中規模国に匹敵する人口規模の道州が複数誕生する可能性が高く、その権限も従来の都道府県と比べて大幅に拡大強化される。道州の政府には、従来よりも飛躍的に拡大した財源と権限を駆使して、これまでの都道府県の枠を超えた、まったく新しい視点に立った政策を企画立案し実行する能力が求められる。その中核的な役割を担う幹部となる人材は、従来の都道府県職員の育成や、地方支分部局の廃止など権限縮小によって余剰となる国の職員の活用だけでは十分に確保することは困難である。これを地方行政の人材登用システム改革の好機ととらえて、新卒中心の採用システムや任期付任用など課題が多く指摘されている従来の民間人材登用に係る制度を抜本的に見直し、外部の有能な人材を機動的に登用する仕組みを再構築することが、道州制の成否の重要なポイントとなると考えられる。

<仮設住宅の建設>
*3:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12359246.html?_requesturl=articles%2FDA3S12359246.html (朝日新聞 2016年5月16日) 仮設用地、確保進まず 熊本10市町村、地震前「未選定」
 熊本県などでの一連の地震で、応急仮設住宅を必要とする県内15市町村のうち、10市町村が仮設住宅の建設用地を事前に決めていなかった。各市町村への取材でわかった。東日本大震災後、国は用地の事前選定を求めている。今回、用地の確保が遅れている自治体が出た要因の一つとなったとみられ、避難所生活の長期化にもつながる可能性がある。仮設建設に着手したり、建設を検討したりしている15市町村に、用地を事前に選んでいたかどうかを尋ねた。「選定済み」は嘉島(かしま)町や南阿蘇村など5市町村。「未選定」は熊本市や益城(ましき)町、西原村など10市町村だった。このうち、8市町村は地域防災計画で地震の被害想定をしていなかった。 東日本大震災を受け、国土交通省は2012年5月、建設用地の確保を各都道府県に要請。国交省と内閣府は15年3月には「平常時から建設用地の確保に取り組むこと」との通知を出している。熊本県は15年度の地域防災計画で、市町村は「予定地の確保を行っておくもの」としている。選定していない理由では6市町村が「災害後の住民要望に柔軟に対応するため」とし、7市町村が「未選定」は仮設の着工時期に影響していない、とした。だが、選定をせず、必要な用地の確保が見通せない自治体もある。益城町は、地盤が沈下して町有地の適地がなかなか見つからなかった。必要戸数は2千戸だが、着工できているのは約160戸。町の担当者は「着工が予定より2週間遅れている。必要戸数を建てるには公有地だけでは足りない」と話す。総務省が全国168市町を抽出した調査(14年公表)では「選定済み」が118市町で7割を占めた。今回の地震を受け、内閣府は全国の選定状況を調べる方針だ。

<農業の再編と規模拡大>
*4-1:http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=37514
(日本農業新聞 2016/5/16) 熊本の農業被害視察 大豆転換、JAが要望書 農相
 森山裕農相は15日、熊本県を訪れ、熊本地震による農業被害を視察した。益城町や南阿蘇村に震災後初めて入り、農家や行政関係者らと意見交換。菊池市では、水稲から大豆への品目転換に必要な環境整備を求める要望書をJA菊池から受け取った。森山農相の熊本地震の視察は3回目。断水が続く南阿蘇村の河陽地区を訪れ、(有)阿蘇健康農園を視察した。地割れと農業施設の破損に加え、断水が続き営農再開はほど遠い状況を確認。生産者や村から支援の拡充を求める声が上った。JA菊池の子会社アグリパートナーきくちでは、JAが森山農相に要望書を提出。三角修組合長は「水稲から大豆への作付け転換により大豆の面積が増大し、播種(はしゅ)や栽培管理、収穫などの支援が必要になる」と指摘し、播種機など農機の調達や人件費の補填(ほてん)に支援を訴えた。阿蘇市の土地改良区や益城町の畜産農家の被害状況も確認した。森山農相は「17日には地震に関する補正予算が成立し、18日から具体的に動きたい」と述べ、積極的な支援を県や市町村と協力しながら進めるとの考えを示した。 

*4-2:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20160516&ng=DGKKZO02348020V10C16A5TJC000 (日経新聞 2016.5.16) イオン、有機農家を育成 欧州企業と共同出資会社 専門店展開
 イオンは有機農産物の生産農家を育成する。欧州の専門企業と共同出資会社を設立。生産者から農産物を直接買い取り、新たに展開する国内の専門店で販売する。2020年をめどに首都圏を中心に50店以上にすることを目指す。環太平洋経済連携協定(TPP)の発効による貿易自由化を見据え、農家が付加価値の高い農産物に取り組める環境を整える。フランスで有機専門スーパー約90店を運営するビオセボンと組む。同社の親会社のベルギー企業と6月にも折半出資で新会社を設立。年内に1号店開店をめざす。それまでに専用の農地を約40ヘクタール確保し、当初はニンジンやホウレンソウなど約30品目を扱う。今後5年をめどに農地を25倍の1千ヘクタールに広げ、品目数も3倍程度に増やす。店舗では有機産品の食品のほかに化粧品、日用品も加え、4千品目程度の商品をそろえる。出店はグループの他のスーパーなどから独立した形が中心となる。ビオセボンは農家に有機栽培への転換を促し、契約分を全量買い取る仕組みで事業を拡大している。「有機」の表示をするには化学合成農薬を3年以上使わないなどの規定がある。イオンはグループの販路やビオセボンのノウハウを生かし、転換する農家の経営を支える。世界の有機産品市場は年率1割以上伸びているとされる。日本は12年に約1400億円で世界7位だった。市場規模が30倍の米国や4倍のフランスに比べると、日本の市場はまだ小さい。有機野菜は通常の栽培よりコストが5割程度多くかかるとされる一方、店頭での販売価格は高値で安定している。環境や健康への関心の高まりを受け、日本でも今後の需要の伸びは大きいとみて、イオンは事業を本格化させる。イオングループでは直営農場を持つイオンアグリ創造(千葉市)が有機栽培を広げ、農家との契約も進めている。プライベートブランド(PB=自主企画)の「トップバリュ」でも有機産品を増やしており、一連の事業間の連携も進める。将来は有機農産物の専用物流網も構築する。

<教育の再編>
*5:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20160516&ng=DGKKZO02343760V10C16A5CK8000 (日経新聞 2016.5.16) 義務教育学会の設立を 小中一貫改革広める (前東京都品川区教育長・学校教育研究所理事長 若月秀夫)
 小中一貫教育を行う「義務教育学校」が制度化されたのを受けて、東京都品川区で小中一貫教育を導入した若月秀夫前教育長が「日本義務教育学会(仮称)」の立ち上げを準備している。今年4月、学校教育制度の多様化と弾力化を進めるために、現行の小学校・中学校に加えて、義務教育9年間を一貫して行う「義務教育学校」を新たな学校の種類として規定した改正学校教育法が施行された。文部科学省によると、法改正を受けて4月から全国15市区町村が22校の義務教育学校を設置、2017年度以降に114校の設置が予定されている。東京都品川区が小中一貫教育を導入してから満10年という節目の年に義務教育学校が制度化されたことは、当時の教育長として極めて感慨深い。品川区が小中一貫教育を導入した背景には、戦後続いてきた6―3制が現在の子供達に本当に適しているのかという疑問があった。加えて、教員の意識改革が求められる中で、一向に変わらない小中学校間の“縄張り意識”“ムラ意識”を払拭したいからでもあった。義務教育における学校種間の連携・接続については、中央教育審議会が1971年の答申で、各学校段階の教育を効果的に行うために小中学校の区切り方の変更に言及したが、その後、国レベルの検討は進まなかった。ところが15年ほど前から、一部の自治体が構造改革特区制度などを活用し、小学校と中学校の教育を別々に考えるのではなく、小中を貫く「9年制義務教育の場」という概念で捉え直す学校づくりに取り組み始めた。改革は国の検証作業でも学力の定着・向上や生徒指導上の課題克服に一定の効果があると認められ、05年に中教審は「新しい時代の義務教育を創造する」答申で、義務教育学校設置の可能性やカリキュラム区分の弾力化、学校種間の連携・接続の改善を検討する必要性を指摘した。その後も全国で、施設一体型や施設分離型の小中一貫教育に取り組む自治体が相次いだ。06年には「小中一貫教育全国連絡協議会」が発足し、小中一貫教育法制化に向けた機運が高まった。中教審も、小中間の連携強化や小中一貫教育の制度化に向けた検討を進め、教育再生実行会議は14年の第5次提言に小中一貫教育学校(仮称)の制度化を盛り込んだ。こうして地方が国を引っ張る形で、改正学校教育法施行に至ったのである。
□ □ □
 現在、全国各地で様々な形態で小中一貫教育が展開されている。義務教育学校や施設一体型小中一貫教育学校では、1年生から9年生までの児童生徒が一つの学校に通うという特徴を生かして、9年間の教育課程を「4―3―2」や「4―5」など児童生徒の実態に合わせた柔軟な学年段階の区切りを設定している。さらに教育課程の特例を活用して独自の教科を設けたり、従来は中学校段階で実施していた教科担任制や定期考査、生徒会活動などを小学校高学年段階から導入したりする取り組みも見られる。その一方で、小中一貫教育を標榜しながらも、実際には単なる教員の交換授業や小中学校合同の学校行事など、一過性で表面的な活動に終始奔走している学校も少なくない。職員室や校内の会議が小中学校で別々な学校や、交換授業や合同行事が他の教育活動と関連付けられていないなど、ちぐはぐな実態も散見される。まさに“仏造って魂入れず”である。こうした学校は、小中一貫教育の目的を中1ギャップの解消や不登校対策、学力向上などに矮小(わいしょう)化して語る傾向が強い。確かにどれも重要な問題だが、小中一貫教育本来の目的がそこだけにあるわけではない。なぜなら、それは現行の小中学校でも解決可能だからである。小中一貫教育で大切なことは、「小中一貫した教育」という新しい価値や概念が、教員の学校観や教員観、児童生徒観や指導観などに変化を及ぼし、義務教育に対する教員の認識や意識を新たにすること、そしてそれに基づく教育活動を通して義務教育の質そのものを変えていくことにある。中1ギャップの解消といった個別具体的課題の解決は、教員の意識改革の成果の1つにすぎない。
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 一口に小中一貫教育の展開といっても、それぞれの地域や学校によって大きな温度差が見受けられる。それには理由がある。要は、情報不足、連携不足なのである。多くの自治体や学校にとって小中一貫教育は未知なる分野なのに、国が示す標準型や身近な先行事例が存在しない。今のように他地域との情報の交換・共有化が図られず、相互啓発作用も望めない状況下では、孤立無援で不安な試行錯誤を余儀なくされる。大きな混乱や失態を避けようと、当たり障りのない安全運転に陥りかねない。これでは改革は進まない。今、必要なのは、小中一貫教育が目指すべき方向性を示す縦軸と、同じ「志」を共有する自治体や学校の取組状況を示す横軸、という座標軸の設定なのだ。小中一貫教育を巡って各自治体や学校が情報を交換し、共有できる「場」が必要不可欠であり、それを教育現場は望んでいる。そこで、品川区で共に小中一貫教育を推進してきた大学研究者や学校現場の管理職、文部科学省担当者など多くの関係者の理解と賛同を得て、今秋に「日本義務教育学会(仮称)」を立ち上げる準備を進めている。小中一貫教育を巡ってはカリキュラム開発をはじめ、教員養成、教員免許、人事制度など検討すべき課題が山積する。こうした課題に学校現場や大学、行政の関係者が一体となって取り組み、小中一貫教育を真摯に推進する自治体や学校を支え、その広がりをより確かなものにしたい。

<川内原発は断層の上>
*6-1:http://qbiz.jp/article/86800/1/
(西日本新聞 2016年5月14日) 鹿児島知事「川内原発周辺で熊本地震のような地震は起きない」
 熊本地震を受け、全国で唯一稼働する九州電力川内原発(鹿児島県薩摩川内市)の安全性に不安の声が上がっていることについて、同県の伊藤祐一郎知事は13日の定例記者会見で「川内原発周辺で熊本地震のような地震は起きない。文献上、地震が頻発する断層がなく、緊急性は感じなくていい」と述べ、運転停止や事故に備えた避難計画見直しは不要との見解を示した。伊藤知事は、運転継続を認める理由に「原子力規制委員会が『停止する必要はない』と明確に言っている」ことも挙げ、「何かあれば自動停止するので、福島第1原発みたいな事故が発生する可能性はほとんどない」とした。

*6-2:http://373news.com/_column/syasetu.php?ym=201605&storyid=75431
(南日本新聞 2016年 5月 15日) [鹿県知事選] 原発も重要な争点では
 鹿児島県の伊藤祐一郎知事はおとといの定例会見で、熊本地震を巡って運転停止を求める声が出ている九州電力川内原発(薩摩川内市)について、今夏に予定されている知事選の争点にならないとの考えを表明した。知事は「調査・点検はすでに終わり、原子力規制委員会も(停止する必要がないと)太鼓判を押している」と述べた。知事としては、最大震度7が2回発生した熊本地震で、川内原発の揺れは最大8.6ガルで、原発が自動停止する設定値(最大加速度160ガル)を大きく下回ったことなどを踏まえた発言だろう。確かに、一連の地震で川内原発が被害を受けたとは聞かない。仮に大きな揺れがあたったとしても、異常があれば自動停止するシステムになっている。だが、不安の声がやまないのは、熊本を中心に甚大な被害をもたらした活断層の動きが専門家の予測を超えていることがある。余震の多さと震源域が広範囲に及び、発生から1カ月たっても地震は終息していない。川内原発周辺にも活断層はある。仮にそれらが動けば、大きな被害につながるのではないかと不安視するのは自然な感情だろう。知事も「多くの人が心配しているのは確か」と語っている。そうした中で、原発の安全性や今後の在り方などを巡り知事選で論争するのは重要なことだ。知事選には現職の伊藤氏のほか、新人の元テレビ朝日コメンテーター三反園訓氏、ストップ川内原発!3.11鹿児島実行委員会実行委員の平良行雄氏の3氏が立候補するものとみられている。三反園氏は地震後、「原発は一時停止し、点検するべきだ」と主張する。平良氏は「廃炉に向けた川内原発の即時停止」を政策の柱とする方針だ。3氏の原発に対する姿勢は異なる。だからこそ知事選では、原発を含む今後のエネルギー政策についてさまざまな選択肢で論争することが欠かせない。避難計画に疑問や不安があることにも、知事は川内原発周辺では今回のような地震は起きないとした。「緊急性は感じなくていい」と述べ、計画を見直す必要はないとの見解を示した。住民の不安に応えているだろうか。知事は「どういう態勢を取れば安心してもらえるかの作業は必要」とも語っている。今後の具体的な対応が求められる。県政の課題は多岐にわたる。原発問題だけが争点ではない。しかし、原発の論議は避けては通れない。正面から論じるべきだ。


PS(2016.5.18追加):熊本県は全国によい農産物を供給している県であるため、*7-2はよかったと思うが、畜舎や農業用ハウスの再建に対する補助率が5割超でいいかどうかは疑問だ。私は、ここでしっかりした畜舎や農業用ハウスを作った方がよいため、余剰している米ではなく、今後伸ばしたい作物を作っている場合の自己負担率は1割以下にした方がよいと思う。
 なお、*7-1のように、政府が地方創生のための地域特性に応じた政策を支援する方針を出したことは、地方が主体となって考える新しい街づくりに役立つため、よいことだ。しかし、私は、現在の省庁に欠けているのは総合的判断力であるため、文化庁や消費者庁など一部の政府機関を分散した場所に移転して、セクショナリズムの度合いを増すのには反対だ。首都直下型地震も予測され首都機能不全に陥っては困るため首都機能を移転するのなら、まとめて被害が及ばない場所に移転した方がよいと考える。
 しかし、*7-3のように、「米価安定のために2016年産米で34都道府県が減反を達成した」などとしているのは、転作せずに土地を遊ばせている誤った政策で、耕作放棄地予備軍を作っている。

*7-1:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20160518&ng=DGKKASFS17H44_X10C16A5PP8000 (日経新聞 2016.5.18) 地域特性に応じ政策 地方創生、政府が支援方針
 政府がまとめる新たな地方創生の基本方針の素案が17日、明らかになった。人口減少や東京一極集中に伴う地方間の経済格差の是正のため、地域の特性に応じた政策を推進する必要性を明記。自治体独自の戦略にあわせ、国が情報・人材・財政からなる「地方創生版3本の矢」の支援を加速する方針を打ち出した。20日に首相官邸で開くまち・ひと・しごと創生会議で素案を示し、31日に閣議決定する見通しだ。文化庁など政府機関の地方移転の実現や、元気な高齢者が地方に移住する「生涯活躍のまち(日本版CCRC)」構想の推進も盛り込んだ。2040年までに全体の4割超にあたる705市町村が全国平均の2倍以上のスピードで人口減少に直面すると分析。中核市や中山間地域など地域特性ごとの共通課題を示し、解決のための政策メニューをまとめる必要があるとした。地方就職を支援する奨学金制度の普及や、公共施設の集約などを具体策に挙げた。

*7-2:http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=37549
(日本農業新聞 2016/5/18) 農業支援第2弾きょう公表 補助率上げなど柱 熊本地震
 熊本地震に対応する2016年度補正予算の成立に伴い、森山裕農相は第2弾となる被災農業者への支援策を18日に公表する方針を表明した。経営体育成支援事業の補助率引き上げや、作付け困難な水稲に代わる作物の種子代助成が柱。迅速な事業の執行を通じ、農業復興を強く後押しする考えだ。 森山農相が17日の閣議後会見で明らかにした。農水省は既存の事業を活用した第1弾の農業支援策を9日に公表し、営農再開の支援に乗り出している。さらに必要な支援は、補正予算を活用して第2弾を打ち出す方針を示していた。森山農相は補正予算の成立をにらみ「(18日に)具体的なものを現場にお知らせする」との意向を示した。畜舎や農業用ハウスの再建に充てる被災農業者向け経営体育成支援事業について森山農相は、熊本県が補助率を現行の3割から5割超に引き上げるよう要望していたことを踏まえ、「どれくらいかさ上げになるか(示す)」と説明した。この他、被災施設の撤去や共同利用施設と卸売市場の再建、被災した畜産農家の地域ぐるみでの営農再開などにも取り組む方針。森山農相は「農家の皆さんの再生産への意欲を失わせることのないよう、しっかりした取り組みをしたい」と強調した。併せて、被害が大きい熊本市や益城町、南阿蘇村など9市町村に技術職員を二人ずつ派遣したと報告。被害の査定や書類作成に当たらせるとした。

*7-3:http://www.saga-s.co.jp/column/economy/22901/312985
(佐賀新聞 2016年5月18日) 佐賀など34都道府県、減反達成へ、16年産米 4月末、農水省調査
 農林水産省は17日、2016年産主食用米の生産調整(減反)目標への対応状況を調査した結果、4月末の計画段階で、佐賀など34都道府県が目標を達成する見込みとなったと発表した。前年同時期より3県増え、目標への取り組みが進んでいることから、過剰生産を回避し、米価の安定につながる可能性があるとみている。熊本県は地震の影響で調査の対象外。長年コメ余りが問題となり、農水省や農業団体は飼料用米や麦、大豆への転作を進めている。作付け計画は6月末まで変更が可能なため、今回の調査を受け、さらに転作を促す狙いがある。農水省は昨年秋、16年産主食用米の全国の生産数量目標を前年比8万トン減の743万トンとし、都道府県別に配分した。この目標を北海道や山形、宮城、富山、兵庫、岡山など34都道府県が達成する見込みだ。このうち在庫量などを踏まえ、目標をより厳しくした「自主的取組参考値」に対しては佐賀、福岡、大分など21都府県が達成する見通し。前年同時期より5府県増えた。調査は県やJAなどから農家の計画を聞き取ってまとめた。農水省は実際の作付面積や生産量の推計は公表していない。15年産は目標が751万トンに対し、生産量は744万トンだった。現在と同じ基準で目標設定を始めた04年産以来、初めて目標を達成した。農家やJAなど出荷側と卸売業者間の取引価格は、全国平均で60キロ当たり約1万3千円で推移し、供給過剰で低迷した14年産から千円ほど上がった。


PS(2016年5月19日追加):*8-1のように、将来の農業の担い手は、「佐賀の地から、世界に向けた農業の発信源となるような担い手やリーダーを目指して頑張りたい」「世界に打って出られる農業をしたい」などの頼もしい抱負を持っているので、学校等(農業高校、農業塾、大学の農学部)で、先進農業国の状況を学ばせたり、視察させたりすると、日本でも応用できる沢山のヒントが得られると考える。なお、「父を超える味のイチゴを作る」というのもあるが、品種や栽培方法などの農業技術が進み、農業生産の環境も変わるため、お父さんは当たり前に超えられ、それだけが目標では小さすぎるだろう。
 また、*8-2のように、熊本地震を受けた農業支援策で、いろいろな農産物に対して復興のための助成金がつくことになったため、これを機会に、熊本の自然条件にあった作物に転作したり(米もあっているとは思うが)、農地の集約を行ったりするのがよいと思う。関東でも、熊本、宮崎、沖縄、鹿児島、長崎、佐賀、福岡(何故か、大分はあまり見ない)などの農産物はおなじみだ。

       
*8-2 イチゴの被害  “重機隊”の応援(*9-1)     その他の応援と感謝
  2016.5.19、4               2016.5.19、15、14西日本新聞
  日本農業新聞

*8-1:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10105/312899 (佐賀新聞 2016年5月18日) 13日、「未来さが農業塾」入塾式、高校生14人 地域農業のリーダーに
 将来、家業を継いで就農を希望する高校生を対象とする「未来さが農業塾」(塾長・荒木清史高志館高校長)の入塾式が13日、佐賀市川副町の県農業試験研究センターで開かれた。県内の農業系5校の生徒14人を新たに迎え、県内の先進農家での研修や海外の農業事情の視察などを通じて高度な農業経営術を身に付ける。同塾は、農業系高校でつくる県高校教育研究会農業部会が主催。県の農林水産部や研究機関、JAなどの団体が支援に当たる。本年度は12月までに県内の農家に泊まり込んでの研修やオーストラリアへの海外研修などを行い、高度な農業技術や経営ノウハウの取得に努め、3年次には営農計画を策定する。式には1~3年生の塾生45人が出席した。荒木塾長は「これからの農業は若い柔軟な発想が大事になる。立派な地域農業のリーダーとして育ってほしい」と式辞を述べた。入塾生を代表して佐賀農高1年の吉原颯人さん(15)=白石町福富=は「佐賀の地から、世界に向けた農業の発信源となるような担い手やリーダーを目指して頑張りたい」と宣誓した。他の塾生も「父を超える味のイチゴを作る」「世界に打って出られる農業をしたい」と入塾の動機などを語った。

*8-2:http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=37570 (日本農業新聞 2016/5/19) 熊本地震で支援策第2弾 種子・苗代を半額助成 農水省
 農水省は18日、熊本地震を受けた第2弾の農業支援策を公表した。2016年度補正予算を活用し、被災した農業者の営農再開に向け、水稲から大豆など作物転換にかかる種子代や作業料金を助成する。畜産クラスター事業を通じた畜産経営の再建などにも乗り出す。第2弾の支援策は、17日の補正予算成立を受けて公表した。森山裕農相は「速やかに営農再開いただけるようにサポートする」と述べ、事業の執行を急ぐ考えを示した。営農再開に向けた支援では、地割れや水利施設の損傷で16年産の稲作が困難になった農業者に対し、代わりに作付ける大豆や野菜などの種子・種苗代を半額以内で助成する。農作業委託や、代替作物の栽培に必要な農業機械のレンタルにかかる経費も支援する。中でも、大豆など経営安定対策の対象作物には交付金合わせて10アール当たり5万5000円が支払われるため、所得の一定確保へ一連の対策で作付けを後押しする考え。畜舎の倒壊や家畜の死亡といった甚大な被害が出ている畜産経営の再建は、畜産クラスター事業で対応。地域ぐるみで収益力向上に取り組む畜産クラスター計画の中心的経営体に、施設整備と家畜導入をセットで支援する。被災地の建設費高騰に備え、施設整備を支援する際の上限単価引き上げなど柔軟に対応する。この他、被災を機に野菜や果樹などに作物転換したり、規模を拡大したりする農業者も支援する。農業機械や施設園芸用機器のリース導入、パイプハウスや果樹棚の設置に必要な資材の共同購入にかかる経費を半額以内で助成する。今回の補正予算は、省庁ごとに予算を積み上げる従来の編成と違い、あらかじめ使い道を定めない予備費を財源とした。同省は現場の要望を聞き取り、事業費を決める方針。農業者が支援を受けるには、JAや市町村などを通じ、同省に意向を伝える必要がある。


PS(2016年5月20日追加):*9-1のように、全国の建設業者のボランティアである“重機隊”が活動を始めて力強い。また、*9-2のように、民間の支援を調整して動くことにより大きな力を出し、それぞれの得意分野を生かして現地のニーズに応えるため、支援組織「佐賀から元気を送ろうキャンペーン」を発足させたそうだが、全国規模や九州規模でニーズに応えれば解決が速やかだろう。

*9-1:http://qbiz.jp/article/87095/1/ (西日本新聞 2016年5月19日) “重機隊”思い出の品救う 建設業者が全国から応援 被災家屋で無償捜索
 熊本地震の被災地では倒壊家屋に埋もれた「思い出の品」を見つけ出そうと、全国の建設業者が重機を使ったボランティア活動を始めている。関係者の思いに応えるため、受け入れ側も万全の環境を整えている。呼び掛けたのは、岐阜県高山市の災害ボランティア団体「Vネットぎふ」代表川上哲也さん(52)。今回の地震後、「本格的な解体作業が始まると、全て撤去されてしまうことが多い」と懸念。「思い出」を持ち主に返してあげたいと、東日本大震災や関東・東北豪雨などで復旧作業した建設業者に協力を募った。活動場所は熊本県西原村。全国から仲間が集まり、ボランティアセンターを開設する村社会福祉協議会に目的を話した。社協側は危険を伴う機器を扱う作業はボランティア活動保険の対象とならないこともあり、一時は難色を示した。しかし「自分の技術を役立てたい」「保険が出なくても構わない」との熱い思いに打たれ、川上さんらの活動を認めた。1階部分がつぶれた川元博美さん(58)宅。社協のビブスを着た作業員らが手慣れた様子でショベルカーやチェーンソーを操ると、小さな貯金箱が見つかった。娘が幼い頃から大切にしていた品。「やっと見つけた。今日で捜し物は終わりだな」。川元さんは目に涙を浮かべながらつぶやく。日記やアルバム、結婚記念のネックレス…。これまで200人以上が携わり、いくつもの「思い出」を見つけた。川上さんは「家族の歴史は一度失うと取り戻せない。それだけは守ってあげたい」と支援を続ける決意を語った。

*9-2:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/313601
(佐賀新聞 2016年5月20日) 民間25団体が連携 被災地を支援、ニーズ、得意分野で調整
 熊本地震の被災地を連携して支援しようと、佐賀県内外のNPO法人や一般社団法人など25団体が支援組織「佐賀から元気を送ろうキャンペーン」を発足させた。民間の支援を一本化し、調整して動くことでより大きな力につなげる狙い。被災地で活動する他の団体とも連携し、それぞれの得意分野を生かして現地の細かなニーズに応える。支援組織は、東日本大震災発生時にできたネットワークを基に構成。佐賀未来創造基金や地球市民の会などが入っており、佐賀から必要な人材や物資を送る仕組みをつくる。具体的には、被災地で復興支援を行うNPO法人アジアパシフィックアライアンスや日本レスキュー協会などが被災者のニーズを調べ、その情報に沿って活動に適した団体が支援する。主に熊本県益城町と西原村で活動し、期間は約1年を予定。岩永清邦委員長は「行政には対応が難しい細かなニーズに、民間のフットワークの軽さで応えていきたい」と話す。被災地の現状と支援のあり方を考える講演会を21日午後3時半から佐賀市白山の佐賀商工ビルで開く。西原村で災害復旧に当たった県職員の鶴田さゆりさんらが話す。参加無料。申し込みは地球市民の会、電話0952(24)3334。


PS(2016年5月22日追加):大豆に転作すると飼料用米(牧草やとうもろこし等の代替品がある)に転作するよりも補助金が少ないのは前からおかしいと思っていたが、水稲農家の転作に際しては、このような問題が生じているのだ。しかし、本当は足りないものを作る人の方が儲かる仕組みでなければならない。熊本は水がよいため、スイカは適地であるし、そのほか桃・アーモンド・オリーブ・デコポン(ハチミツが副産物)などの水を多く吸い上げる作物にも向いていると思うので、熊本大学・九州東海大学の農学部や九州農政局も協力して、水稲にこだわらず、周囲を彩りながら、土地の長所を活かして儲かる農業を考えたらどうだろうか。

    
   デコポン       オリーブ       桃と菜の花            アーモンド

*10:http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=37596
(日本農業新聞 2016/5/21) 熊本地震 大豆作「湿田は無理」 水稲並み所得難しく 阿蘇市
 熊本地震の影響で水路を断たれた熊本県阿蘇市の水稲農家が、国が勧める大豆への作付け転換では所得を確保するのは難しいと、不安を抱えている。十分な収量が見込めない湿田地帯で、“大豆不適地”のためだ。国の交付金を含めても主食用米と同等の所得は見込めそうにない。大豆に向かない地域特性を踏まえた支援を求める声も上がっている。「前を向いてやるしかないが、大豆では食っていけないのが現実だ」。同市で稲作を営む内田智也さん(31)は、荒れた水田を前に腕を組む。今期は45ヘクタールで田植えを予定していたが、水路が壊れるなどして3分の1は断念した。大豆への転換も模索するが、「米ほどの所得は確保できない」と言い切る。同市は湿田地帯で雨も多く、大豆には不向きとされる。九州農政局によると、10アール当たり収量は100キロに満たず、全国平均、県平均の半分程度だ。近年は乾田化も進むが、地震で排水施設が破損しているとみられ、収量は減る恐れが強い。阿蘇地域振興局は、管内の大豆の販売代金を60キロ1万円と見込む。10アール収量を100キロとしても、販売代金は1万6000円。畑作物の直接支払交付金(ゲタ対策、10アール2万円)と水田活用の直接支払交付金(同3万5000円)を合わせても収入は10アール当たり7万1000円にとどまる。担い手加算(同2万3000円)などの交付金もあるが、受けられない農家も少なくない。一方、主食用米の販売代金は60キロ当たり1万3000円で、10アール収量は480キロ。米の直接支払交付金(7500円)を合わせて収入は10アール当たり11万1500円となり、大豆を大きく上回る。九州農政局は「基本的に大豆でも米と同等の所得が確保できる」としつつも、「阿蘇などの地域では所得が米を下回る可能性もある」と認める。阿蘇市などによると、市内で田植えができない水田は約300ヘクタール。農家らによる応急復旧が進んでいるため今後、作付けできる水田が増える可能性もあるが、多くの農家が収入減少の影響を受けるとみられる。阿蘇土地改良区は「生活が厳しくなる農家が出る。前例にとらわれず、所得を補償するなどの支援が必要だ」と訴える。農水省は、地震で営農が困難な農業者の所得確保策として、他の農業法人で働くことも想定する。受け入れ法人に年間最大で120万円を助成する支援策を用意した。

| 経済・雇用::2015.11~2016.8 | 03:15 PM | comments (x) | trackback (x) |
2016.5.12 トップランナーをつぶして付加価値を上げさせない日本の護送船団行政とメディア (2016年5月12、13、14、15、16、27日、6月7、13日に追加あり)

        三菱自動車の燃費不正の概要         これまでの不正  三菱自動車のiMiev


   一人当たり        主な自動車メーカーの提携関係         インド、タタ自動車のEV  
GDP成長率の推移                               (*タタのEVの方が、かわいい)

(1)燃料電池車のトップランナーはどうなったか
1)エコカー減税の愚かなルールのせいで、燃料電池車のトップランナーが苦戦した 
 三菱自動車は、*1-1のように、環境性能が良い車の税金を優遇する「エコカー減税」を獲得するために、メーカーが測定して自己申告する仕組みを悪用して、軽自動車4車種の走行抵抗値を意図的に小さく偽装し、燃費を実際より5~10%良くして申告していた。

 このようなことを他の自動車会社も行っていたことは記憶に新しいが、自己申告で監査も行わず、信頼をベースにしたシステムにしていたことが、不正を許した温床である。

 さらに根本的な問題は、「環境性能が良い車(エコカー)」を「燃費がよい車」と定義づけて、自動車取得税や自動車重量税を減免するルールを作ったことである。実際には、エコカーとして減税すべき車は排気ガスで環境汚染をしない車であって燃費がよい車ではない。何故なら、①燃費がよい車は減税などしなくても消費者に選択されるため減税制度は不要であり ②燃費のみを問題にすればゼロ戦のような軽い車を作ればよく、それでは安全性を保てない上 ③環境には排気ガスという公害を出し続けるからだ。

 しかし、このルールのせいで、*1-2のように、(適度な緊張感としてプレシャーは必要なもので、プレシャーがあるから不正をしてよいということはないが)開発のプレッシャーがかかり、ガソリン1リットルあたり29.2キロまで燃費目標を引き上げたのだそうだ。しかし、私は、世界初の燃料電池車を作った三菱自動車が、このようなくだらない燃費競争の枠組みの中で、1リットルあたり数キロを小さく競ったのが間違いだったと考える。それよりも、軽自動車は女性に愛されるデザインのよいEVにし、環境汚染してならないのは船や飛行機も同じであるため、大きな馬力の必要な船やMRJなどの飛行機を燃料電池に換えればよかったのだ。

 なお、蛇足だが、ブレーキはよく効き走行抵抗値の小さな車を作りたければ、タイヤの摩擦は大きくし車体やホイールの形を工夫して、高速走行時には少し浮力が出るようにすればよいと思う。

 また、*1-3のように、三菱自動車は過去にも何度も不祥事を起こしており、1996年に米国子会社内で起きたセクハラ事件は私も眉をひそめながら見ていたので記憶しているが、その頃、日本にはセクハラという言葉すらなく多くの会社で同じことが行われていたが、三菱自動車は、米国でそれをやったため訴訟されて多額の和解金を支払ったもので、これが日本でセクハラ意識が出てくるきっかけになったと記憶している。

2)三菱自動車が生き残るには、長所を活かして組織再編すべき
 米IT大手グーグルは、*1-5のように、欧州自動車大手のフィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)と自動運転車を共同開発すると発表しているが、燃料はまだハイブリッド車のようだ。そのため、太陽と水があれば走れる燃料電池車や太陽があれば走れる電気自動車は、今後、アジア・アフリカはじめ世界各地で主役になると考える。

 そのような中、*1-3のように、アジア市場を強化したり、「選択と集中」を行って世界市場をめざしたりするとすれば、自社の技術に飛びぬけた価値があるうちに、インドのタタグループや韓国の現代自動車やフィアット・クライスラー組などと提携して、その地域に合うデザインのよいEVや燃料電池車を作り上げる方法がある。

 しかし、*1-4のように、日産自動車が約2千億円を投じて三菱自動車の3割強の株式を取得する方向となり、EVで競合する日産・ルノーと組むのが三菱自動車にとってプラスかどうか私にはわからないが、日産・ルノー組は中国やアジアでのEV販売で数歩進んでおり、ゴーン社長のコメントどおり、日産・ルノー組と三菱自動車が生産・販売で連携すれば技術開発や販売力などでのシナジー効果が高まりそうだ。そして、上図のように、GDP成長率の高い国には、近年、アフリカも入ってきており楽しみである。

 こういう世界戦略をたてて、①販売する場所 ②生産する場所 ③研究開発する場所 ④持ち株会社や本社の所在地 などを決める場合は、①は需要の多い場所 ②は労働力の安価な場所 ③は①と近接した場所に置いて販売地域のニーズに詳しいその地域出身のエンジニアを多く採用し ④は税率の低いタックスヘイブンに置く のがグローバル企業の基本だ。そのため、インド・シンガポール・東南アジア・中東・今後のアフリカなどは、有力な選択肢という結論になる。

 そして、これまでガソリン車の部品を作っていた系列会社も、もう新しいスキームに合った部品を作り、必要な場所には出て行く覚悟もしなければ、世界市場に置いて行かれると考える。

(2)太陽光発電のトップランナーはどうなったか
 *2-1のように、過去と目の前しか見えない経産省が、①原子力・石炭火力 ②水力 ③地熱をベースロード電源とし、太陽光発電は高くて不安定などとする風評被害を流したため、*2-3のように、世界のトップランナーだったシャープは行き詰まり、台湾の企業に買収されて、現在は2000人もの優秀な人材の削減を検討している。しかし、そもそも電源を、ベースロード電源とそれ以外に分けること自体が、過去と現在しか見ていない愚かなことなのだ。

 また、*2-2に、北九州市の響灘で、NEDOを主体とした洋上風力発電設備の実証研究が進んでいると書かれているが、この対象は風レンズ風車でもない普通の風車であり、鳥を巻き込んだり低周波を出したりして環境に悪影響を与える危険性も高いため、私は、特に研究しなければならないほどの高い技術だとは思わない。つまり、何でも適当に混ぜておくのが、バランスがよいわけではないのである。

<燃料電池車のトップランナーはどうなったか>
*1-1:http://digital.asahi.com/articles/ASJ4Q5WP4J4QUTIL04N.html
(朝日新聞 2016年4月22日) エコカー減税分、購入者の負担回避 政府、三菱の不正で
 三菱自動車の燃費偽装問題で、国土交通省は22日、燃費算出の元となるデータをメーカー任せにしていた検査方法を見直すと明らかにした。実際の燃費が悪かった場合、エコカー減税の額にも影響が出るが、政府は購入者に負担させない方針を打ち出した。自動車メーカーが新しい車を発売する前には、国交省の「型式認証制度」に基づき、国交省の外郭団体「自動車技術総合機構」が安全性や環境性能を審査する。燃費性能も試験し、カタログに記される値が確定する。燃費試験では、回転するローラー台の上で車を走らせる。実際の路上を走らせると、タイヤと路面の摩擦や空気の抵抗による「走行抵抗」がかかるため、ローラーにはその分の抵抗を加えて燃費を算出する。この走行抵抗の値はメーカーが測定し、機構に自己申告する仕組みだ。三菱自はこの仕組みを悪用し、軽自動車4車種の走行抵抗値を意図的に小さく偽装して申告した。カタログ上の燃費は、実際よりも5~10%良くなっていた可能性がある。三菱自が出したデータを審査する側がチェックする仕組みがなく、石井啓一国交相は22日の記者会見で「不正が二度と行われないよう検査方法の見直しを検討していく」と表明した。具体的には、メーカーが走行抵抗値を測る試験に国の検査員が抜き打ちで立ち会ったり、測定試験の細かなデータを提出させたりする案が浮上している。型式認証制度に基づき、国交省は2年に1度ほどメーカーを監査している。ただ工場での品質調査が中心で、今回不正のあった設計開発部門までは通常は調べない。また、国が直接、走行抵抗値を測るには手間が掛かりすぎて現実的ではないという。担当者は「検査を迅速に行いつつ、データの信頼性を確保することが必要」と話す。(中田絢子)
■三菱自「税金、差額お返しする」
 三菱自動車がデータを偽装した軽自動車4車種では、環境性能が良い車の税金を優遇する「エコカー減税」が過剰に適用された可能性がある。国や自治体にとっては、税金を「取り損ねた」ことになるが、政府は、減税の恩恵を受けた消費者には負担を求めず、三菱側に負担させる方向で検討に入った。購入時などにかかる自動車取得税(地方税)や自動車重量税(国税)には燃費など環境性能に応じて税を減免する制度がある。三菱の偽装がなければ、税の減免幅が小さくなっていた可能性がある。本来なら購入者に差額の納税義務が生じるが、地方税を所管する高市早苗総務相は22日の会見で「購入者はエコカーだと信じて買ったので、さかのぼって税を負担する必要はない」と述べた。総務省や国税庁など関係省庁は、税収不足が明らかになった場合、本来の納税者に代わって第三者が税金を納める「第三者納付制度」を使うなどして、三菱側に直接支払わせることができないか検討を始めた。たとえば、直前まで販売していた「eKワゴン」の主力車種は、取得税と重量税はいずれも免税になっていた。仮に免税も減税もなければ計約3万円の税負担が発生する。三菱自動車は、税金の額が変わった場合、「関係機関と調整し、当然差額をお返しする」(幹部)としている。

*1-2:http://www.j-cast.com/2016/04/26265363.html
(Jcastニュース 2016/4/26) 副社長「プレッシャーがかかったんだと思う」
三菱自動車は4月26日、国土交通省に社内調査の報告書を提出。併せて、公式サイトでも報告書の概略を発表した。それによると、不正が発覚した『eKワゴン』『デイズ』だけに特定せず、国内向け車両について、1991年から法令に定められた方法とは異なる「高速惰行法」で計測していた。01年1月には、「惰行法」と「高速惰行法」の比較試験を実施し、結果に最大2.3%の差が生じることを確認。07年2月には、試験マニュアルで、「DOM(国内)はTRIAS(惰行法)」と改定したが、実際には、それ以降も「高速惰行法」を継続して使用していたと報告した。また、燃費性能データを高く見せる偽装が発覚した『eKワゴン』『デイズ』については、当初(2011年2月)の燃費目標はガソリン1リットルあたり26.4キロだったが、その後の社内会議で繰り返し上方修正され、最終的には同29.2キロまで引き上げられた。同日行われた記者会見で、中尾龍吾副社長は、「コンセプト会議や役員が出席する商品会議で5回の改定があった。(ダイハツ工業の)ムーヴの値をもとに最終的な数値を設定した」などと説明。競合他社との競争が目標燃費の設定に影響を与えたことを明かした。また、開発現場には、「(目標燃費について)プレッシャーがかかったんだと思う」とも話した。報告書の提出とともに、外部の専門家で構成される調査委員会を設置することも発表。「事実関係の調査」「類似した不正の存否及び事実関係の調査」「原因分析、及び再発防止策の提言」の3点について、3か月を目処に調査を実施する予定とした。

*1-3:http://mainichi.jp/articles/20160427/ddm/008/020/165000c (毎日新聞 2016年4月27日) 三菱自動車燃費不正/上 自浄作用働かず グループ内、突き放す声
 「消費者に対してはおわびしかない。会社存続に関わる問題と認識している」。26日、燃費データ不正に関する国土交通省への報告後、東京都内で記者会見した三菱自動車の相川哲郎社長の言葉には、今回の問題の深刻さがにじんだ。「どうしようもない会社だ。私が知ってる範囲でも5度目ぐらいではないか」。三菱グループのある企業幹部が憤るのは、三菱自動車が過去に繰り返し不祥事を起こしてきたからだ。1996年には米国子会社で起きたセクハラ問題で多額の和解金を支払ったほか、97年の総会屋利益供与事件では社長の辞任につながった。そして、2000年に発覚したのが安全面の根幹を揺るがすリコール(回収・無償修理)隠しだ。車両の欠陥を組織的に隠していたことが発覚し、厳しい批判を浴びた。 さらに04年には同社から分社した三菱ふそうトラック・バス製の大型トラックのタイヤが外れ、母子3人が死傷した事故を巡り、欠陥を隠してリコールを逃れていたことが判明。ふそうの元会長らが逮捕された。2度にわたるリコール隠しで三菱自の信用は失墜し、深刻な経営危機に陥った。そこに手をさしのべたのが三菱グループだ。御三家と呼ばれる三菱商事、三菱重工業、三菱東京UFJ銀行を中心に増資や借り入れなどで5400億円の金融支援を実施。三菱自の元幹部は「グループ支援がなければ破綻していた」と振り返る。三菱3社は三菱商事出身の益子修氏を社長に送り込むなど、人材面でも三菱自を支えた。三菱自は国内は軽自動車とスポーツタイプ多目的車(SUV)などに特化、海外ではアジア市場を強化するなど「選択と集中」により業績を回復。14年6月には生え抜きの相川氏が社長に昇格した。三菱重工の元会長を父に持つ相川氏は「早くから将来の社長候補と目されていたプリンス」(三菱自幹部)とされる人材で、業界内では「危機モードからの脱却」と受けとめられた。しかし、ようやく成長への道のりを歩み始めようとした矢先に再び会社を揺るがす燃費不正問題が勃発した。三菱自に出向経験のある三菱グループ企業幹部は「グループの支えで業績回復していた。だが、企業体質までは変えることはできなかった」と悔やむ。「自浄作用が働かなかった」。相川社長が反省の弁を述べるように、今回の問題発覚は提携先の日産自動車からの指摘がきっかけだった。関係者によると、三菱自は当初、約3カ月間の調査委員会による調査が終わるまで発表を先送りすることを検討していたが、日産などの反対を受けて発表に踏みきった。隠蔽(いんぺい)体質は今なお染みついていると受け止められてもおかしくない。今回の問題に伴う補償金の支払いや、消費者不信による販売への打撃などで、三菱自は再び深刻な経営危機に陥ることも予想される。しかし、三菱グループ内には「これ以上支えるのは無理だ」と突きはなす声も出ており、存続の危機に直面している。
    ◇
 三菱自動車はなぜ不正の再発を防げなかったのか。過去の経緯や今回の問題の背景を追う。

*1-4:http://www.nikkei.com/article/DGXLASDZ11IQK_R10C16A5MM8000/?dg=1
(日経新聞 2016/5/12) 三菱自、日産傘下で再建 3割強2000億円出資受け入れ
 日産自動車は約2千億円を投じて三菱自動車の3割強の株式を取得する方向で最終調整に入った。日産が三菱自の第三者割当増資を引き受け実質傘下に入れる案が有力だ。燃費データの改ざんが発覚した三菱自の経営立て直しに協力する。中国やアジアなどでの生産・販売でも連携する。三菱自の不祥事をきっかけに、自動車メーカーの大型再編につながる可能性が出てきた。両社は12日に取締役会を開いて資本提携を決める。日産は三菱自の約20%の株式を所有する三菱重工業を上回る筆頭株主となる。三菱自と日産は2011年に折半出資で軽自動車の共同企画会社を設立している。三菱自の水島製作所(岡山県倉敷市)で生産し、日産に供給している。軽4車種の燃費データの改ざんについて、三菱自は「日産の関与はなかった」としている。三菱自の軽自動車の販売台数は国内全体の6割を占める。同社は16年3月末で自己資本比率が48%あり、現預金も約4500億円ある。当面は財務的な余力があるが、00年以降のリコール(回収・無償修理)隠しなど度重なる不祥事で消費者の不信が深刻になっている。軽以外の車種の販売への影響も必至だ。一方、海外では三菱自は一定のブランド力を保っている。タイやインドネシアでは「パジェロ」などの三菱自の多目的スポーツ車(SUV)の人気は高く、アジアで連結営業利益の5割超を稼ぐ。不正発覚後も海外では目立った販売減は起こっていない。トヨタ自動車やホンダに比べてアジアのシェアが低い日産にとって、三菱のブランド力は魅力だと判断した。両社は電気自動車(EV)の開発でも協力する。ハイブリッド車(HV)に加え、燃料電池車(FCV)を次世代エコカーの柱と位置づけるトヨタやホンダに対し、EV技術でも連携して競争力を高める狙いだ。EVの軽自動車の共同開発も視野に入れる。国内自動車市場で軽の存在感が増すなかで、11年に日産は三菱自との提携を選んだ経緯がある。同社からOEM供給を受ける軽の販売台数は国内の3割近くに達しており、三菱自の経営再建は日産の日本での事業戦略を左右する。今回の不正発覚後も、軽の生産拠点を持たない日産は「できれば三菱自との提携を続けたい」(幹部)との意向を示していた。

*1-5:http://qbiz.jp/article/86165/1/
(西日本新聞 2016年5月4日) 米グーグルが自動車大手と提携 自動運転車を共同開発
 米IT大手グーグルは3日、欧州自動車大手のフィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)と自動運転車を共同開発すると発表した。グーグルが自動車大手と直接提携して開発するのは初めて。グーグルは、自社設計の試作車やトヨタ自動車の高級車ブランド「レクサス」を独自に改造した車両で試験走行を重ねてきた。各社との開発競争が強まり、FCAの技術を取り込んで早期の実用化を目指す。FCAのハイブリッド車のミニバン「パシフィカ」に、自動運転に必要なコンピューターやセンサー類を組み込む。年末までに導入して公道試験を開始し、100台を製造する。自動運転車を巡っては、米自動車大手フォード・モーターや配車大手ウーバー・テクノロジーズなどが4月、米政府に統一基準づくりを促すための連合を設立するなど、実用化に向けた動きが加速している。

<太陽光発電のトップランナーはどうなったか>
*2-1:http://www.nikkei.com/article/DGKKASGG07H4G_X00C15A8TJM000/
(日経新聞 2015/8/10) ベースロード電源
 季節や天候、昼夜を問わず安定して発電し、電力を供給できる電源のこと。燃料費が安くて運転コストが低いことも重要な条件になる。「ベース電源」と呼ぶこともあるが、国際的にはベースロード電源が定着している。日本では、原子力や石炭火力、水力、地熱の4つの方式がベースロード電源として挙げられている。液化天然ガス(LNG)や石油を燃やす火力発電所は電力需要の増減に合わせて運転するため「ミドル電源」や「ピーク電源」と呼ばれる。ベースロード以外の電源にはこのほか太陽光や風力などがある。政府は昨年4月に閣議決定した「エネルギー基本計画」で原発を「重要なベースロード電源」と位置づけた。

*2-2:http://qbiz.jp/article/85802/1/
(西日本新聞 2016年5月1日) 【エネ相会合の舞台・中】主力産業に洋上風力 北九州・響灘
 青い空と海に高さ約120メートルの白い風車が映える。北九州市若松区沖1・4キロの響灘。新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)を主体にした洋上風力発電設備の実証研究が進む。15日、ここを船で訪ねる見学会が開かれた。年間を通して安定した風が吹き、同市が洋上風力発電の誘致を進める海域だ。「風力産業は約2万点の部品が必要で自動車産業のように裾野が広い。新たな主力産業にしたいと考えています」。案内役の市エネルギー産業拠点化推進課の伊藤嘉隆主任は約60人の市民や企業関係者に語り掛けた。現在、響灘の洋上風力発電設備はこの1基だけだが、市は周辺海域約2700ヘクタールを「洋上ウインドファーム」とする構想を描く。出力3〜5メガワットの風車が数十基立地できると試算。8月以降に事業者を公募し、2021年度からの建設開始を目指す。
   ■    ■
 石油に替わる再生可能エネルギーの一つとして世界的に注目されている風力発電。北九州市は10年度から響灘周辺に風力発電産業を集積し、アジアをマーケットににらんだ生産拠点化を図る「グリーンエネルギーポートひびき事業」をスタートさせた。11年、ドイツの港湾都市・ブレーマーハーフェン市を訪れた市港湾空港局の光武裕次部長は港の光景に目を見張った。荷積み前の自動車などが並ぶターミナルに隣接して洋上風車の部品ターミナルがあり、発電機部分を収納する「ナセル」や、長さ数十メートルの羽根などが所狭しと並んでいた。港は風力発電所が林立する北海に近い。基幹産業の造船業が衰退した同市は06年以降、洋上風力発電設備の積み出し港化と部品工場などの関連企業誘致で復活を果たした。「北九州市とよく似ている。われわれも同じことができるはず」。光武部長は意を強くした。5月1、2の両日、主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)の関係閣僚会議の一つとして、同市で開かれるエネルギー相会合。再生可能エネルギーを含む「持続可能なエネルギー」もテーマとなる見通しだ。「地球に優しい風力発電は環境未来都市・北九州市にふさわしい。積極的に発信していきたい」と光武部長。市は会合の歓迎レセプションで各国閣僚に、洋上風力発電と「G7」、響灘のデザインを背にあしらった法被を着てもらい、国内外にアピールする方針だ。
■北九州市と風力発電…北九州市内には陸上12基、洋上1基の大規模風力発電設備が立地。年間で約1万1500世帯分の電気を賄うことができる。若松区には太陽光やバイオマスなども含めたエネルギー産業の集積が進んでおり、昨年7月、同区の響灘地区を電力産業の拠点にしようと、産学官でつくる「響灘エネルギー産業拠点化推進期成会」が発足した。

*2-3:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12337173.html
(朝日新聞 2016年5月1日) シャープ、2000人削減検討 国内社員の1割規模 太陽電池など
 シャープは台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業に買収されることが決まっているが、中国の景気減速もあって足もとの業績は悪化。2016年3月期は、最終的なもうけを示す純損益が2千億円を大きく超える赤字になりそうだ。12年と15年の希望退職で計約6千人が辞めるなど、人員を減らしてきたが、一層の削減に取り組む。社内には事業活動に影響が出るとして、慎重論もある。複数のシャープ関係者によると太陽電池の販売が落ち込んで、堺市の工場の生産が低迷。鴻海は太陽電池事業の抜本的な見直しを求めており、大幅に縮小するとみられる。本社の土地と建物は3月に売却し、いまは借りて使っている。移転先として、太陽電池の堺工場を活用する。あわせて管理部門の人員は減らし、本社の機能は効率化する。堺工場は、鴻海と共同で運営する液晶工場「堺ディスプレイプロダクト」に隣接しており、鴻海側も移転を求めていた。鴻海はシャープへの出資の契約に際し、既存の従業員の雇用は原則維持することで合意していた。シャープは想定以上の業績悪化で、鴻海から出資を受ける前に、合理化に取り組む。一方、鴻海が重視する液晶部門の技術者らには、業績に応じて高い報酬が得られる仕組みもつくる。
■合理化の主な検討内容
◆社員を2千人規模で削減
◆太陽電池事業を縮小
◆本社を大阪市阿倍野区から堺市の工場に移転
◆本社管理部門を効率化


PS(2016年5月12日追加):このような中、*3のように、目の前の(棚からぼたもちの)金に目がくらんで核のゴミ捨て場になるような後ろ向きで情けないことはしないで欲しい。何故なら、①玄海灘や農林漁業・観光業の盛んな周辺環境を汚す可能性があり ②それらにマイナスのブランドイメージを与える上 ③高レベル放射性廃棄物の最終処分方法はもっと安価で安全な方法がある からである。

*3:http://www.saga-s.co.jp/news/national/10208/310952
(佐賀新聞 2016年5月12日) 経産省、佐賀で核ごみ処分説明会、候補地、今年中に提示方針
 経済産業省は12日、原発から出る高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の最終処分方針に関する自治体向け説明会を佐賀市で開いた。処分の候補地に選定された場合、国との協議に応じる姿勢を示す佐賀県玄海町など県内14市町の担当者が参加。経産省側は「国が前面に立って丁寧な対話を重ねていく」とし、処分への理解を求めた。説明会では処分の候補地として適性が高い地域を今年中に提示する方針が改めて示された。終了後、玄海町の担当者は「周辺自治体のこともあるので、選定された場合のことはコメントできない」と話した。


PS(2016.5.13追加):自動車会社のテリトリーは下の地図のようになっており、日産自動車と三菱自動車が提携して販売・生産・研究開発を行えばシナジー効果が大きいと考える。しかし、ゴーン社長が言っておられるとおり、売上高で上位になることを目的とした合併では意味がなく、それでは瞬間的な売上高拡大に終わる。しかし、今後、燃料電池や蓄電池は、自動車だけでなく住宅にも使用していくものであるため、住宅団地の多くの家が、①太陽光発電 ②燃料電池や蓄電池 ③オール電化システム などを標準装備すれば、光熱費を0にした上、街を発電所にすることができる。そのため、ヤマダ電気や住宅会社と連携して、九州大地震や東日本大震災の復興、住宅団地の新規建設に入っていけばよいだろう。

     
   世界への自動車会社進出地図  日産・三菱の生産拠点  世界販売台数  世界の 
                              2016.5.13日経新聞     実質経済成長率


スマートハウスのモデル  スマートシティー            個別のスマートハウス

*4:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20160513&ng=DGKKASDZ12I5Z_S6A510C1MM8000 (日経新聞 2016.5.13) 日産、三菱自に会長派遣 2370億円出資
 日産自動車は12日、2016年内をメドに2370億円を投じて、三菱自動車の株式の34%を取得すると正式発表した。会長を派遣し燃費データの不正問題に揺れる三菱自の再建を支援するほか、車の次世代技術の開発(総合2面きょうのことば)や両社の生産拠点を一体運用するなど連携を強化する。研究開発費の増大などで中堅以下の自動車メーカーの経営環境が厳しさを増すなか、日産は三菱自の不祥事を契機に大型再編に踏み切り規模拡大を狙う。日産と資本業務提携する仏ルノーに、三菱自を加えた15年の世界販売台数は959万台。1千万台前後で競り合うトヨタ自動車や独フォルクスワーゲン(VW)、米ゼネラル・モーターズ(GM)の3強に迫る第4極が誕生する。日産と三菱自は規制当局の承認を経て16年5月末をメドに正式契約を結び、16年末までに全ての手続きを終える計画だ。第三者割当増資後の三菱重工業をはじめとする三菱グループの出資比率は現在の約3分の1から4分の1前後まで下がる見通し。12日に共同記者会見した日産のカルロス・ゴーン社長兼最高経営責任者(CEO)は「燃費不正にかかる消費者からの信頼回復に力を注ぐ」と強調した。ルノーとの資本業務提携を通じて構造改革を果たした日産の経験やノウハウを生かし、新たなパートナーとなる三菱自の再建を手助けする考えだ。三菱自の益子修会長は再建に踏み切った背景について「日産との提携は、信頼回復と経営の安定を目指す上で重要な道筋だ」と説明した。日産から技術者を受け入れることで、燃費不正の温床となった「開発部門を大きく変えるきっかけをつくれる点を期待している」と述べた。日産は三菱自に34%出資して株主総会における特別決議の拒否権を持つ。日産の出資後も三菱ブランドや経営の独立性は維持する。東南アジアなど新興国市場の開拓や購買部門の連携によるコスト削減を進めるほか、自動運転技術など幅広い分野で連携する。両社の国内外の生産拠点の相互活用も進める。操業度の低い工場に両社の車両を柔軟に振り向けられる体制にすることで、両社が世界に持つ各工場の稼働率を平準化する。日産は会長を含め3分の1の取締役を派遣する。会長を送り込むことで不祥事が相次ぐ三菱自の企業統治を強化するほか技術系役員も派遣し、長引く業績低迷で脆弱な開発力を底上げする。三菱自は11年に軽自動車で日産と提携後、5年かけて提携関係を深める中で「将来の資本提携を含めた提携拡大をゴーン社長と話し合ってきた」(益子会長)。今回の出資については燃費不正の発覚後、「ごく自然な流れで出てきた」(同)という。日産のゴーン社長も「燃費不正問題が今回の資本提携交渉を加速した面はあるが、継続的な検討の延長線上にあるものだ」と話した。環境規制の強化や自動運転車など次世代車の開発負担の増大から中堅の自動車メーカーは「単独での生き残りは難しくなっている」(益子会長)。日本では昨年にマツダがトヨタと包括提携したほか、海外では自動運転車の共同開発でフィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)が米グーグルの持ち株会社のアルファベットと提携するなど異業種間での提携も相次いでいる。


PS(2016.5.13追加):*5のように、再生可能エネルギーの導入拡大に向けて、マイクロソフト、フェイスブックなどの米主要企業60社超が、環境問題に取り組むNGOとともに新組織を設立したそうだ。発電ネットワークをうまく作るためには、ソフト企業の参加も不可欠であるため心強く、この傾向は米国だけでは終わらないだろう。

*5:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20160513&ng=DGKKASGM13H1U_T10C16A5MM0000 (日経新聞 2016.5.13) 再生エネ普及へタッグ マイクロソフト・フェイスブックなど米主要60社超が新組織
 風力や太陽光など再生可能エネルギーの導入拡大に向け、マイクロソフトやフェイスブックなど米主要企業60社超が12日、環境問題に取り組む非政府組織(NGO)と新組織を設立した。米国における再生エネの安定調達や、環境問題に積極的なイメージの向上を目指す。新設した「再生可能エネルギー購買者連合(REBA)」には両社のほか、グーグル持ち株会社のアルファベット、アマゾン・ドット・コム、ウォルマート・ストアーズ、ゼネラル・モーターズ(GM)などが参加。環境NGOのBSRや世界自然保護基金(WWF)など4団体も加わった。加盟社はREBAを通じた電力の共同調達や、再生エネを調達しやすくする新技術の開発などに取り組む。米国内の再生エネの発電能力を2025年までに60ギガ(ギガは10億)ワット増やすことを目指す。米国では電力に関する規制が州ごとに異なり、企業の再生エネ調達拡大を妨げているとの指摘がある。REBAは大口需要家の連合として、関連規制の見直しなどを当局に働きかける。マイクロソフトのエネルギー調達戦略の責任者を務めるブライアン・ジャヌス氏は「自社の調達を増やすだけなく、他社と協力して企業が利用可能な再生エネルギーの総量を増やすことを目指す」と述べた。


PS(2016.5.14追加):*6-1、*6-2のような地方自治体の努力にもかかわらず、EVの普及には未だに充電設備の不足が挙げられるが、①自動車の蓄電池の性能を上げ ②駅・高速道路のサービスエリア・スーパー・マンションなどの駐車場におしゃれに太陽光発電の屋根を付け ③駐車場を使う人に低価格で充電させれば、EVの普及は加速されると考える。しかし、太陽光発電の設置に一定の角度をつけなければならないという規制や太陽光発電機器のデザインの悪さはネックになると思う。

   
        充電スタンド                      駐車場の太陽光発電屋根

*6-1:https://www.pref.saga.lg.jp/web/shigoto/_32796/_80473/_68646/_68663.html (佐賀県:EVとは)
 EVとは、“Electric Vehicle”の略で、文字どおり“電気の力で走る車”のことをいいます。従来のガソリン車が、ガソリンをエンジンで燃焼させ、車を駆動させるのに対して、電気自動車は電動モーターで車を駆動させます。
●EVってこんなところがすごい
○「地球」にやさしい
 走行中に二酸化炭素などの温室効果ガスをほとんど排出しないため、地球温暖化防止に役立ちます。
○「家計」にやさしい
 電気自動車は100%電気で走ります。電気代はガソリン代の1/3~1/9!また、減速時にエネルギーを回収できるため、エネルギー効率はガソリン自動車よりも飛躍的に上がります。
○「ひと」にもやさしい
 ガソリンを燃焼させないため、走行中の振動や騒音が少なく静かです。また、加速はガソリン自動車よりもパワフルです。(以下略)

*6-2:http://www.meti.go.jp/policy/automobile/evphv/town/state/saitama.html
(埼玉県HP:http://www.pref.saitama.lg.jp/life/3/14/48/)
 EV・PHVの本格普及は、将来の低炭素モビリティ社会の実現に欠くことのできないものである。今回のEV・PHVタウンの提案は、EV・PHVの県全域への普及と地球温暖化対策としての自動車からのCO2の削減はもちろん、県全体における生活レベルの向上に資するものである。このため、従前から行っているEV等の行政による率先導入や民間への導入支援などに加え、本県の地域特性に根ざした先導性、モデル性のある事業として、さいたま市(大都市)と熊谷市(中都市)を中心とした広域実施地域で、主に次の事業に積極的に取り組む。
  (1) パーク&ライド通勤(駅まで自動車を利用し公共交通機関で通勤)に対応したEV・PHVの
      検証 (熊谷市)
  (2) 晴天率が日本一で夏場の気温が非常に高い地域での太陽光利用の充電設備設置の
      検証(熊谷市)
  (3) カーナビゲーションシステムを活用した充電アクセスビリティの検証
      (さいたま市・熊谷市)
  (4) 産官民連携による駅前EVシェアリングの検証(さいたま市)
  (5) 小型EVや電動バイクによる小口配送の検証(さいたま市)
  (6) EV利用課金システムによるマンション等へのEV促進方策の検証 (県南地域)
  (7) 中山間地域でのEV利用の検証(レール&ライド、高齢者向けEV) (県北地域)
 これらは、県内外へ波及するものであり、既存の低燃費車の普及を目的とした「エコカー・エコドライブ連絡協議会」を発展的改組し、EV・PHVの普及を目的とする「(仮称)次世代自動車普及推進協議会」を設置して、自動車メーカーや県内市町村などと連携して行い、その効果を検証し、EV・PHVの普及につなげる。(以下略)


PS(2016年5月15日追加):*7-2のように、①対人関係をうまく築けず(言っても理解しない人とは話をしない選択もあるだろう) ②限られた対象にこだわる傾向があり(成功する人がそれに集中しているのは当たり前である) ③言語や知能に遅れがない(何の問題もない) 人を、アスペルガー症候群などという精神障害者に仕立て上げ、周囲の普通の人が支援や進路指導を行えば、例えば、最初に大陸移動説を唱えたドイツ人気象学者のウェグナーなどは精神障害者扱いされて重要な発見をすることができなかっただろう。何故なら、武田信玄が「動かざること山の如し」と言っているように、つい最近まで、「大地は動かない」というのが確固たる一般常識だったからである。
 つまり、与えられた過去の知識・ルール・その時点の普通であることに固執する人ばかりでは、(日本の産業界のように)根本の大枠を見直すことなく小さなカイゼン(改善)しかできない国民性になるのだ。そのため、*7-1は、支援と呼ぶ人権侵害で国力を弱める教育となりそうであり、注意すべきだ。

*7-1:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12357874.html?ref=pcviewpage
(朝日新聞 2016年5月15日) 障害ある子、学校が「カルテ」 小中高通じ支援へ 20年度以降
 個別カルテには子どもの障害や健康の状況、保護者と本人の希望や目標などを書き込む。卒業後は進学先に渡し、これまでの子どもの状況を把握してもらう。いまの学習指導要領では、子どもの目標や支援内容についての「個別の教育支援計画」や、教科ごとの指導状況などを記す「個別の指導計画」を作るよう勧めているが、義務化はしていない。文科省の15年度の調査では、特に支援計画は該当者のいる公立小中の1割、公立高校の4割が作成していなかった。さらにこうした計画を中学や高校に引き継ぐかどうかは各校が独自に判断している。このため新しい学校が障害に応じた最適な指導方針を把握しきれていない恐れがあり、特に高校では適切な進路指導がしにくい状況にあると文科省はみている。個別カルテは、いまの支援計画と指導計画をもとに、小学校から高校まで引き継ぐことを前提とした書式を目指す。文科省は20~22年度に順次始まる小中高校の新学習指導要領での義務化を検討する。義務化は公立小中の特別支援学級の子ども(15年5月で約20万人)と、比較的軽い障害や発達障害で通常学級に在籍しながら一部の授業を別に受ける「通級指導」の子ども(同約9万人)を中心に考えている。高校については18年度から始まる通級指導の生徒らを対象とする見込み。私立校に広げるかは今後検討する。今月中にも政府の教育再生実行会議が提言する見通し。文科省はカルテの詳しい中身や、個人情報が漏れない仕組みを詰める。(高浜行人)

*7-2:http://www.asahi.com/topics/word/発達障害.html (朝日新聞 2013年2月27日)
〈発達障害〉生まれながらの脳の機能障害が原因と考えられ、犯罪など反社会的な行動に直接結びつくことはないとされる。落ち着きがない注意欠陥・多動性障害(ADHD)、読み書きや計算など特定分野が苦手な学習障害(LD)などがある。アスペルガー症候群は対人関係をうまく築けず、限られた対象にこだわる傾向がみられるが、言語や知能に遅れがなく、周囲が障害を見過ごすケースも少なくない。文部科学省の調査(2012年12月)は、小中学校の通常学級の子の6.5%に発達障害の可能性があるとしている。


PS(2016年5月16日追加):*8のように、トヨタはFCV普及のため「主戦場」と位置づける米国市場で700台超のFCVを用意し1台5万7500ドル(約620万円)で販売したそうだが、トヨタのFCVの世界販売目標は「2020年ごろ以降に年3万台以上」で、テスラは2016年3月末に3万5千ドル(約380万円)と安くした新型EVを発表して1週間で30万台を超える販売をし、競争の主導権を握りつつあるそうだ。この値付けと販売目標の違いが、日本及び日本企業の環境車に対する意気込みのなさを表している。

*8:http://digital.asahi.com/articles/ASJ4C65GJJ4COIPE01P.html?iref=recob
(朝日新聞 2016年4月12日) トヨタ「ミライ」、米で完売 燃料電池車の主戦場
 燃料電池車(FCV)の普及に向け、トヨタ自動車が「主戦場」と位置づける米国市場。世界初の市販車「ミライ」は昨年秋の発売直後に用意した台数が完売し、滑り出しは好調だ。ただ日本と同様、燃料の水素を補給できる拠点は少ない。将来のエコカーの主役をめざす競争は、ライバルの電気自動車(EV)の後を追う構図で進みそうだ。米カリフォルニア州北部・ローズビルにあるトヨタの販売店。目立つ場所に深いブルーのミライが展示されていた。昨年10月の発売以降、4台が売れた。「エコで乗り心地も静か。これからのスタンダードになるはず」。同店のジュディ・カニンガムさんは話す。トヨタが米国でミライを売り出したのは日本の1年後。発売日は、1989年公開のSF映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー2」の中で、車型タイムマシンが訪れた日に合わせ、イベントで「未来が現実になった」とアピールした。米国では今年5月までの分として用意した700台超が、わずか1週間で売り切れた。「新しいもの好き」の富裕層らが買い求め、今も数カ月の納車待ちだ。トヨタ米国法人は17年までに3千台以上の販売を計画。広報担当者は「幅広い人に興味を持ってもらえるよう、米国への割り当てを増やしてほしい」と話す。
■長い走行距離が強み
 トヨタはFCVを「将来のエコカーの本命」と位置づけ、米国を中心に普及させる戦略を描く。最大市場のカリフォルニア州は、売られる車の一定割合を走行中に二酸化炭素を出さない車とする規制を18年モデルから強化し、メーカーも対応を迫られるためだ。トヨタはミライの購入者向けに手厚い支援策を打ち出した。3年間で1万5千ドル(約160万円)を上限に燃料代を肩代わりし、定期点検も無料にした。米国は国土が広く、FCVは一回の水素補給でガソリン車とほぼ同じ距離を走れるのが強み。水素ステーションの建設費は、安全規制が緩いこともあり、日本の半分ほどの200万~300万ドル(2億~3億円余り)で済む。同州エネルギー委員会のジム・マッキニー氏は「利用が増えれば採算性が高まる」と話す。
■EV、値下げで攻勢
 ただ、順調に普及が進むかは見通せない。FCVを米国で販売(リース含む)しているのは、トヨタと韓国・現代自動車のみだ。ほかに具体的な投入計画を示しているのは、「年内」とするホンダに限られる。次世代エコカーでは米テスラ・モーターズや日産自動車などが推進するEVがライバル。充電スタンドはカリフォルニア州に1千カ所以上あるが、一般向けの水素ステーションは昨年末時点で5カ所ほど。テスラのイーロン・マスク最高経営責任者は「FCVは馬鹿げている」などと批判を繰り返す。ミライは1台5万7500ドル(約620万円)で、購入時に行政の補助も1万3千ドル(約140万円)つく。一方、テスラは3月末、3万5千ドル(約380万円)と大幅に安くした新型EVを発表。予約は1週間で30万台を超え、競争の主導権を握りつつある。これに対し、トヨタのFCVの世界販売は「20年ごろ以降に年3万台以上」が目標。米調査会社IHSオートモーティブは、メーカーの少なさなどから、FCVの浸透に10~20年かかると予想する。水素ステーションの整備と、「値ごろ感」のある新型車の投入を早められるかが、競争を左右しそうだ。

<バイオマスについて>
PS(2016年5月27日追加):*9-2の「輸入ヤシ殻を燃料にしたバイオマス発電を稼働させるのが固定資産税など年間約8千万円の税収増に繋がる」としているのは、理由を説明するのもアホらしいほど先見性のない判断で、これまで給料や報酬をもらって1年中唐津市の仕事をしてきた人たちは何を考えてきたのかと思う。 一方、*9-1の佐賀市ごみ焼却施設や下水浄化施設の処理過程で排出される有機物・二酸化炭素を有効利用するバイオマス(生物資源)事業については、佐賀新聞が「未知の領域なので費用対効果に疑問がある」と記載しているが、既知の領域なら先進性はなく、その先進性ゆえに国の補助がついており、石垣島では既に成功している確実性の高い事業であるため愚かな批判だ。ユーグレナという完全栄養の藻類は、家畜や養殖魚の安価で良質な餌にも使えるため、北部の佐賀県西部広域ごみ処理施設や下水道処理施設でも同様にCO2やユーグレナを生産すればよく、これは、ゴミや下水道が資源に変わる環境・生物の最先端事業であるため大切に育てて軌道に乗せるべきだと、私は考える。ただし、利益を出して市民のために使うべきで、無駄遣いか否かは将来にわたっての収益性で決まるため、投資金額を最小に抑えながら結果を出すのが投資の常識だ。そして、このような状況なら、唐津市の人がふるさと納税すると、返礼品で選べば玄海町、使途で選べば佐賀市になるだろう(笑)。

*9-1:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/316073
(佐賀新聞 2016年5月27日) 佐賀市の巨額バイオマス事業、未知の領域、費用対効果は?
 佐賀市は、ごみ焼却施設や下水浄化施設の処理過程で排出される有機物や二酸化炭素(CO2)を有効利用するバイオマス(生物資源)事業を次々と打ち出している。自治体として全国初のCO2販売や藻類産業の集積など先進的な取り組みが注目される一方、昨年度は関連事業費に約15億円を投じた。下水施設では今後、約48億円の大型事業が控える。先進分野の半面、「未知の領域」でもあり、巨額投資に費用対効果を問うなど慎重意見も出ている。佐賀市は2014年、国の「バイオマス産業都市」に認定された。市北部のごみ焼却施設などがある清掃工場(高木瀬町)と南部の下水浄化センター(西与賀町)で「省エネ・創エネ」の推進を掲げる。生産可能な資源として注目される藻類培養の研究・実用化に向け企業とも連携している。
▽国の補助前提 
 清掃工場では、今夏から藻類培養などを手掛ける「アルビータ」にCO2を販売する。焼却時の排ガスからCO2を回収し、パイプラインで数百メートル離れた同社の培養施設に直接供給する。「液化CO2の市場相場1キログラム当たり60円の半値近い36円で供給できる」(市担当者)という。市は今後、32年度までの18年間でCO2タンク増設工事などに16億円、維持管理費に7億4000万円の支出を見込む。一方、CO2販売収入は、工場北側の21ヘクタールに藻類企業が進出することを前提に約17億円と算出した。さらに国庫補助約6億円を見込んで収支ゼロになる。市は「既に5億円の補助を受けている。赤字にならないようCO2の価格を設定した」と安定収支に自信を見せる。ただ、この収支には21ヘクタールの用地買収と造成の費用(未定)は含まれていない。清掃工場の耐用年数は32年度までで、その後も同じ場所で稼働できるか、企業側が培養を継続するかなど先行きが不透明な要素もある。市上下水道局の下水浄化センターでも同様の事業が進む。藻類関連の「ユーグレナ」が培養実験を進めている。国土交通省事業と連動し、発酵バイオマスを活用した藻類培養とメタンガス発電の実現を目指す。本年度は設計費約9000万円を計上、今後の総事業費は約48億円に上る。費用は国が約半分負担する。
▽環境負荷低減 
 巨額投資なだけに、市議からは事業の説明不足が指摘されている。収入には置き換えられない環境負荷低減も投資効果として掲げており、予算案を審議した市議会では「費用対効果が分からない」「やる必要があるのか」など批判的な意見が相次いだ。市環境部の喜多浩人部長は「産業集積による雇用や税収、低炭素社会の実現など、単純な販売収入以外のメリットもある」と強調する。市上下水道局下水プロジェクト推進部の橋本翼部長は「市のプラスになる事業だということを丁寧に説明していきたい」と理解を求める。

*9-2:http://qbiz.jp/article/87500/1/ (西日本新聞 2016年5月26日) 取得8億円 3億円で売却 唐津市 宅地造成計画破綻 塩漬け36年 バイオマス発電用地に、議案提出へ
 佐賀県唐津市は25日、宅地造成計画が破綻して36年間塩漬けになった土地を、バイオマス発電用地として民間企業に3億円で売却する議案を発表した。市土地開発公社などから約8億円で取得した土地で差し引き5億円の損失。市は「企業進出で税収を得られ、長期的には利益になる」と説明するが、市民からは疑問の声も上がる。6月1日開会の市議会定例会に提案する。市によると、土地は同市佐志の山林や原野など約7万5千平方メートル。もともと民有地で、公社が宅地分譲を目的に1980年以降に地権者から買い取った土地が大部分を占める。市は当時、近くの国道204号バイパス造成などを背景に約100棟の住宅建設を計画。ところが宅地ニーズが変化して計画は破綻し、ほかの用途も見つからないまま塩漬け状態になり、金融機関への利息が膨らんだ。市は今春までに、公社などから土地を9億5500万円で取得し活用策を検討。このうち約8億円分の土地について、バイオマス発電事業用地として参入企業を公募し、宮崎県の業者の関連会社への売却を決めた。同社は3年後を目標に、輸入ヤシ殻を燃料にした発電所を稼働させるという。今回、土地の売買で発生する損失は約5億円。市財務部は、発電所稼働で固定資産税など年間約8千万円の税収増につながるとし、「差額は5〜6年で回収でき、その後も税収を得られる。塩漬けの土地を有効に活用する投資で、問題はない」と強調する。これに対し、住民団体「唐津をよくする会」の木村真一郎代表は「塩漬けの土地を処分する事情は分かるがしっくりこない。バブル前のこととはいえ、市や市議会はまず、使い勝手の悪い土地を購入した反省を示すべきではないか」と話している。

<EVへの転換>
PS(2016.6.7追加):*10のように、重慶長安汽車は、エコカーの普及拡大を狙う中国政府の国策に沿って、今後10年でEV・PHVなどの新型環境車の開発に総額180億元(約3千億円)を投入し、経営資源を集中して勝ち残りにつなげるそうだ。これが正解であり、これまで化石燃料車を作ってこなかった自動車後発地域ほどEVへの転換はやりやすく、アフリカに普及するのもEVだろう。そのため、日本勢がしがらみに束縛されてEVへの転換を遅らせれば遅らせるほど、新興国に引き離されると考える。

*10:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20160607&ng=DGKKZO03293920W6A600C1FFE000 (日経新聞2016.6.7)長安汽車、エコカー開発に3000億円 10年で34車種投入
 中国自動車大手、重慶長安汽車は6日、2025年までに総額180億元(約3千億円)を新型環境車の開発に投じる方針を明らかにした。今後10年間で34車種の電気自動車(EV)とプラグインハイブリッド車(PHV)を投入し、累計200万台の販売を目指す。エコカーの普及拡大を狙う中国政府の国策に沿った動きで、経営資源を集中して勝ち残りにつなげる。重慶市で開催中の「国際自動車フォーラム」で朱華栄総裁が明らかにした。自主ブランド「長安」でセダンや多目的スポーツ車(SUV)、商用車タイプの新型環境車を投入する。全体の8割はEVとなる見通しだ。朱氏は「自動運転など最新技術の実用化も進めていく」との方針を示した。電池や制御システムなどの基幹技術については合弁を組む米フォード・モーターなどから協力を得るほか、自主開発にも力を入れる。すでに英国や日本、米国にも拠点を設けて「世界規模で環境車の研究開発を加速している」(朱氏)という。日本勢も含めた有力部品メーカーに幅広く協力を呼びかけていく考えだ。長安汽車は低価格の自主ブランド車でシェアを急速に高めている。環境車の拡充をテコに25年には現在の2倍強となる340万台の「長安」車を販売し、世界10強入りを目指す。


<官主主義では成功しない理由>
PS(2016.6.13追加):*11-1のように、税金345億円を無駄にすることを何とも思わず、国民生活に直結する社会保障については、「税と社会保障の一体改革」で「消費税を増税し、社会保障をカットする」としているのが官主主義とそれに便乗している政治家・メディアである。その官主主義は、欧米に見本があり、国を挙げて欧米を模倣して追いつかなければならなかった明治初期には効率的に機能したが、新しい財・サービスを創造していかなければならない現代では、上のように、付加価値を上げるのをむしろ邪魔しているのだ。さらに、せっかく厚生省と労働省を合併して小さな政府を目指していたのに、*11-2のように、分割提言してさらに縦割り行政にするというのもどうかと思うが、結果が出ず効率の悪い仕事をしながら何かと言えば「人が足りない」と言うのも、税金で運営されている官の性癖である。

*11-1:http://www.sankei.com/premium/news/160612/prm1606120009-n1.html (産経新聞 2016.6.12) 凍らない凍土壁に原子力規制委がイライラを爆発「壁じゃなくて『すだれ』じゃないか!」 税金345億円は何のために
 「本当に壁になるのか?壁じゃなくて、“すだれ”のようなもの」。「壁になっているというのをどうやって示すのか? あるはずの効果はどこにあるのか?」。東京電力福島第1原発で汚染水を増やさないための「凍土遮水壁」が運用開始から2カ月たっても、想定通りの効果を示さない。廃炉作業を監視する原子力規制委員会は、6月2日に開かれた会合でイライラを爆発させた。凍らない部分の周辺にセメント系の材料を入れるという東電の提案に対しても、規制委側は「さっさとやるしかない」とあきれ果てた様子。約345億円の税金を投じた凍土壁の行方はどうなってしまうのか。会合は、冒頭からピリピリと緊迫した空気が漂っていた。東電の担当者は2分間程度の動画を用意していた。凍土壁が凍っている証拠を視覚的にアピールするため、地中の温度の変化を動画でまとめていたのだ。ところが、規制委の更田豊志委員長代理は「温度を見せられても意味がない。凍らせてるんだから、温度が下がるのは当たり前。動画とか、やめてください」とバッサリ。東電の担当者は遮られたことに驚いた様子で、「あ、はい、分かりました。はい。それでは…」と次に進むしかなかった。
●セメント注入、それでも「凍土壁」か?
 規制委側から質問が集中したのは、最初に凍結を始めた海側(東側)の凍土壁の効果だ。地中の温度は9割以上で氷点下まで下がったが、4カ所で7・5度以上のままだった。さらに、壁ができていれば減るはずの海側の地盤からの地下水のくみ上げ量が、凍結の前後で変わっていないことも判明した。更田氏は「『壁』と呼んでいるけれども、これは最終的に壁になるのか。壁じゃなくて『すだれ』のようなもので、ちょろちょろと水が通るような状態」と指摘した。地下水のくみ上げ量も減っていないことについて、「あんまりいじわるなことは聞きたくないが、これは当てが外れたのか、予想通りだったのか」と東電の担当者を問いただした。セメント系の材料を注入し、水を流れにくくする追加工事が東電から提案があったものの、これではもはや「凍土壁」ではなくなってしまい、仮に水が止まっても凍土壁の効果かどうかは分からなくなる。検討会はこの日、追加工事に加えて、凍土壁の凍結範囲を拡大し、海側に加えて山側も95%まで凍結する計画も了承した。だがそれは、凍土壁の効果や有用性を認めたというわけではない。「安全上の大きな問題はなさそう」だから、どうせ温度を下げるなら、早いほうがいいという合理的な判断だ。
●遠い「完全凍結」 根強い不要説
 最も注目すべきなのは、更田氏がこの日、山側もすべて凍らせる「完全凍結」について、「今のままでは、いつまでたっても最終的なゴーサインが出せない」と大きな懸念を示したことだ。規制委は当初から、凍土壁にはあまり期待していなかった。むしろその費用対効果などをめぐり「不要説」が出るなど、懐疑的な立場をとっていた。それでも計画を了承したのは、最も大きなハードルだった「安全性」を東電が担保すると約束したからだ。凍土壁のリスクは、完全凍結の状態で発生する。予想を上回る遮水効果が発現し、建屋周辺の地下水が急激に低下した場合、建屋内の汚染水と水位が逆転して汚染水が環境中に漏れ出す危険がある。このため、東電は地下水の流れで下流側にあたる海側の凍土壁から段階的に凍結させ、水位の低下を防ぐ計画だったが、仮に海側の壁が「すだれ」の状態のまま上流の山側を完全凍結すれば、水位がどんどん下がっていく可能性がある。東電は計画で、山側を完全凍結して遮水効果が80%以上になった場合、水位逆転の危険を回避するためいったん凍結をやめるとしているが、この「80%」を正確に判断するすべがないというのが現状だ。「凍土壁の遮水性を示せない限り、このまま膠着状態になる可能性がある」。更田氏は、はっきりとそう指摘している。安全上のリスクを抱え、膨大な国費をかけながら、なぜ凍土壁を推進しなくてはならなかったのか。仮に失敗した場合、どこが責任を取るのか。今後も目が離せない状況に変わりない。(原子力取材班)
《用語解説》凍土遮水壁 凍土壁は、1~4号機の建屋周辺の土壌を取り囲むように長さ約30メートルの凍結管を埋め込み、マイナス30度の冷媒を循環させて地下に総延長約1500メートルの氷の壁をつくる工法。この巨大な「壁」で建屋に流れ込む地下水をせき止め、汚染水の発生そのものを抑えるのが狙い。

*11-2:http://mainichi.jp/articles/20160514/k00/00m/010/037000c
(毎日新聞 2016年5月13日) 分割提言に「あまりにも人が足りない」
 塩崎恭久厚生労働相は13日の閣議後記者会見で、自民党の若手議員がまとめた厚労省を分割する提言について、「議論は歓迎したいが、膨大な業務量を踏まえると根本的に人員を増やさない限り、処理しきれない」と注文を付けた。提言は、厚労省を▽年金・医療・介護を担う「社会保障」▽少子化対策などを担う「子ども子育て」▽雇用や女性支援を担う「国民生活」−−の3省に分割する案などの検討を求めた。昨年7月1日時点で同省の職員数は3473人だが、農林水産省は3568人、国土交通省は4568人いる。塩崎氏は「あまりにも人が足りていない」と述べた。

| 経済・雇用::2015.11~2016.8 | 03:53 PM | comments (x) | trackback (x) |
2016.5.9 タックスヘイブン税制に関するパナマ文書と民主主義国の犯罪認定について (2016年5月10、11、17日に追加あり)
   
       2016.4.30西日本新聞               標的にされた人       2016.4.7 
                                                       朝日新聞
(1)租税法律主義とタックス・ヘイブン税制の意味
1)租税法律主義について
 租税法の基本原則は、*3-1に書かれているとおり、租税法律主義と租税公平主義であり、租税法律主義は、憲法84条の「租税を課し、又は現行の租税を変更するには法律又は法律の定める条件によることを必要とする」と規定していることから導かれる。そのため、法律に基づかずに租税を賦課・徴収することは、日本国憲法違反であり不可能だ。

 また、相手によって課税要件や課税手続を変えたり、税務署の判断で新たに税金を創設したりすれば経済活動に混乱が生じるため、租税法律主義の内容には、①課税要件法定主義 ②課税要件明確主義 ③遡及立法の禁止(新しい法律を過去に遡って適用しないこと) などが含まれる。

2)タックス・ヘイブンの本当の意味
 現在、全世界には、*3-2のように、 60以上のタックス・ヘイブン「Tax Haven」の地域・国が存在し、正確に翻訳すると「税金天国」である。また、この制度が創設された趣旨は、小さな島国や開発途上の地域など経済発展に不利な要素を持つ地域に対し、経済活性化を目的として、国や地域政府が徴税優遇制度を実施しているものだ。

 そして、この税制を利用すると、金融資産を低税率で運用できるため、例えば英国領のケイマン諸島には世界の一流とされる金融グループを含めて600あまりの金融機関が拠点を置き、預かり資産残高は、東京、ロンドン、ニューヨーク、香港に次ぐ世界第五位の規模になっているわけである。さらに、欧州、シンガポール、香港、中国はじめ多くの国々に、法人税率を減税して海外投資を受け入れ、自国経済の振興に役立てようと優遇税制を導入している地域もあるので、例えば復帰後の国後島と択捉島はタックス・ヘイブンにするなど、日本でも応用できる場所はある。

3)日本における現在の論調
 しかし、*3-2のように、日本が主導して、2000年にOECD(経済協力開発機構)によるマネーロンダリング対策や公正な課税制度確立に向けた制裁により、英領ケイマン諸島、バミューダ、キプルス、マルタ、モーリシャス、サン・マリノの6カ国・地域はブラックリストから免れ、アンドラ、ジブラルタル、モナコ、リヒテンシュタイン、シンガポール、スイス、ベルギー、ルクセンブルク、オーストリアが国際的な徴税制度に非協力的な地域が名ざしされ、フィリピン、マレーシア、コスタリカ、ウルグアイは要注意国とされた。そのため、これらの国々は、気持ちのよい筈がない。

 また、近年、テロ資金規正(アングラ・マネーへの締め付け)が援用され、富裕層の隠し資産、裏金の解明へと拡大適用されつつある。しかし、上の理由から、合法的に設立されたタックス・ヘイブンに所在する会社に資金を預ける人を、根拠もなく違法行為をしているかのように書くのは、日本国憲法違反である。

(2)法治主義の民主主義国家とは言えない日本メディアの論調
 西日本新聞は、*1-1のように、「①日米欧と新興国のG20が脱税や不当な課税逃れを阻止するため、国際的な監視体制を強化する方向で検討に入った」「②パナマはじめ開発途上国に銀行口座など税務情報を共有する枠組みへの参加を促し、隠し資産に対する包囲網を構築する」「③OECDも13日に税務担当者を集めた緊急会合をパリで開き、具体策を協議する方針だ」「④タックスヘイブンを使った政治指導者らの不透明な資金取引を暴いたパナマ文書問題は、一部の富裕層と大多数の国民の間の格差拡大が深刻化する中、各地で波紋を広げている」と記載している。

 もちろん、①のような脱税や違法な課税逃れはいけないので、②③のように税務情報を共有する枠組みは必要かも知れないが、④のように、その標的がどこかの国にとって不都合な政治指導者で、タックスヘイブンに所在する会社に預金を預けていただけで悪いことをしたかのように書くのは、権力を失えば投獄されるなどのいろいろな政治情勢の国がある現在、適切ではない。

 パナマ文書は南ドイツ新聞が入手して共同通信も参加する国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)が分析し、英国のキャメロン首相の父親(故人)が租税回避地のパナマにファンドを開設していたとして非難している。しかし、罪刑法定主義・責任主義が近代国家の基本原則であるため、父親が合法的に開設して遡及効もないファンドの責任を、子であるキャメロン首相が負うことはあり得ず、このような論調は、近代国家の基本原則を無視している。

 また、フランスの大手銀行ソシエテ・ジェネラルやスイスの欧州サッカー連盟(UEFA)などに捜査が拡大しているそうだが、合法的であれば訴訟で罪にはならないだろう。

 そのため、*1-2のように、不法な課税逃れを阻止するための国際的連携はあってもよいが、違法でないことを如何にも悪いことをしたかのように書くと、それこそ名誉棄損・侮辱による人格権の侵害という不法行為になる。

(3)燃え上がったメディアのネットワークが追及した内容の非民主性
 TPPの膨大な文書を、ジャーナリストの国際的なネットワークが翻訳し解明したという話は聞かないが、*1-3のように、共同通信も参加する国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)の記者は、タックス・ヘイブンに設立された法人の所有者を示す株主名簿を足掛かりに記者の勘も使って書類を絞り込み、最後は直接取材で裏付けを取りながら報道を続け、「こちらではすごい反応だ」「やったぞ」と成果を喜んでいるそうだ。しかし、タックス・ヘイブンに法人を作ることは違法ではなく、出資した人も違法ではないため、違法行為をしていない人の名簿を提供したモサック・フォンセカ事務所の方がプライバシーの侵害にあたる。

 なお、*1-4のように、南ドイツ新聞の記者がタックス・ヘイブンを利用した不透明な金融取引を暴いたそうだが、その文書には、「①プーチン露大統領の友人」「②中国の習近平国家主席の親族」「③麻薬カルテルなど犯罪組織の関係者も登場した」があったとのことである。100歩譲って①②が違法行為だったとしても、①のような友人の行為の責任を問われることは皆無であるし、②のような親族の行為の責任を問われることも近代法に反しているため、①②を③と並べて記載し、如何にも黒い事象であるかのような示唆を与えるのは名誉棄損であり、政治活動の妨害にあたるだろう。

 なお、モサック社が作ったペーパーカンパニー数千社の代表を務める女性が貧民街に住んでおり、わずかな報酬で名義を貸して「何の会社か、誰に売られたか知らない」などというのは、仮に本当であれば、モサック社とその女性の方に詐欺罪が発生すると考える。

(4)標的は誰で、目的は何なのか
1)標的は政治家と有名人
 朝日新聞・日経新聞は、*2-1、*2-3のように、パナマ文書の影響で英国のキャメロン首相が苦境に立っており、中国の習近平国家主席・ロシアのプーチン大統領・ウクライナのポロシェンコ大統領の親族・知人・本人の名前もあり、10カ国の現旧指導者12人とその親族60人余も浮かび上がり、「納税者の多くが税金の負担に苦しんでいるのに、税金を課す側の統治者やその周辺は特権を使って蓄財に励み、税逃れの手立てを着々と打っているので、納税者の怒りは大きい」と、妬みを煽る報道をしている。

 しかし、違法行為ではないのに、パナマ文書に親族、知人、本人などの名前があるだけで、納税者の不公平に対する怒りや不信感に結びつけて妬みを煽るのは、日本独特の感情論であり、論理的ではない。

 そのため、不法な税逃れという事実もないのに悪役に仕立て上げられた首脳や国々は、G7サミット(伊勢志摩サミット)の議長国を務める日本に、金のためにリップサービスをすることはあるかも知れないが、日本を民主主義の同じ価値観を持つ国と認めることはないだろう。

 なお、*2-2では、クレディ・スイス、ソシエテ・ジェネラル、UBS、HSBCなど欧州・アジアの主要行が挙げられているが、具体的にどういう法律違反をしたのか不明であり、多分、法律違反はしていないと思われるため、名誉棄損かつ営業妨害に当たる。

 また、*2-4のように、パナマ文書には、日本関係者は名誉教授や大手企業役員名もあったとしているが、タックス・ヘイブンを使って合法的に節税するのは、違法行為ではないため罪にならず、これは法人に限らず個人も同様である。それにもかかわらず、*2-5も、思わせぶりな書き方で、佐賀の住所にも3人のパナマ文書関係者がいたと記載しているが、何が違法行為にあたるのかを記載できなければ単なる名誉棄損記事にすぎず、メディアの記者たちの法律知識と見識のなさを露呈している。

2)目的は権力闘争
 佐賀新聞の2016年5月6日、*2-6のように、「クリントン前米国務長官(弁護士)が、在任中に公務で私用メールを使った問題で、CNNテレビは5日、連邦捜査局(FBI)が数週間以内にクリントン氏本人の事情聴取を行う見通しだ」としている。

 しかし、私は、クリントン氏のメール問題は「違法で悪い」とのみ書かれているが、FBIに正面からは言えないとしても、そうした方がむしろ守秘義務が果たせた場合もあっただろうと考える。私は1996~8年頃、アメリカ系のビッグ4でM&Aや組織再編に関する仕事をしていたが、事務所のメールにすべてを添付すると、誰かに見られているらしく情報が漏れるため、わざわざFaxや郵便にも分割して資料を送り、そのすべてを見なければ内容がわからないようにしていた。つまり、よいこととは思わないが、アメリカのIT環境は、20年前からそのくらいシビアなレベルだったのである。

<法治主義の民主主義国家と言えない日本の論調>
*1-1:http://qbiz.jp/article/84693/1/
(西日本新聞 2016年4月13日) G20、税逃れ監視強化 パナマ文書 財務相会議で協議へ
 日米欧と新興国の20カ国・地域(G20)が脱税や不当な課税逃れを阻止するため、国際的な監視体制を強化する方向で検討に入ったことが12日分かった。パナマをはじめ途上国に銀行口座など税務情報を共有する枠組みへの参加を促し、隠し資産に対する包囲網を構築する。経済協力開発機構(OECD)も13日に税務担当者を集めた緊急会合をパリで開き、具体策を協議する方針だ。タックスヘイブン(租税回避地)を使った政治指導者らの不透明な資金取引を暴いた「パナマ文書」問題は、一部の富裕層と大多数の国民の間の格差拡大が深刻化する中、各地で波紋を広げている。仲介した大手金融機関に対する捜査も欧州で相次ぎ、追及の動きはさらに強まりそうだ。G20は14日から米ワシントンで開く財務相・中央銀行総裁会議でこの問題を協議し、15日に採択する共同声明で対処方針を打ち出す。麻生太郎財務相は12日の記者会見で「G20で租税回避や脱税の防止が議論される」との見通しを示した。税務情報を共有する枠組みづくりはOECDが主導して進め、2017年にも各国間の情報交換がスタートする。日本を含め100程度の国・地域が参加予定で、G20として、現時点で未参加のパナマやナウル、バーレーン、バヌアツにも参加を呼び掛ける方向だ。これまで慎重だったパナマが参加の意向をOECDに先週伝えるなど前向きな動きが出始めており、体制強化を急ぐ。G20では、最近の円高進行で日本が関心を寄せる為替問題も協議。「相場の過度な変動は経済に悪影響を与える」との認識を共有する一方、通貨の競争的な切り下げを回避することも確認する。減速気味の世界経済を下支えするため、金融緩和だけに頼らず、財政政策や構造改革を活用した政策総動員の必要性でも一致する見通しだ。パナマ文書は南ドイツ新聞が入手し、共同通信も参加する国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)が分析した。
   ◇   ◇
■巨大余波、捜査 首脳やスポーツ界も 
 タックスヘイブン(租税回避地)を経由する金融取引の一端をあぶり出した「パナマ文書」の余波が、さらに広がっている。英国のキャメロン首相は過去に投資で利益を上げたことを認め、批判の矢面に立たされた。大手金融機関やスポーツ界にも捜査のメスが入り、課税逃れへの国際的な非難は高まる一方だ。文書が暴いた巨額投資疑惑で、グンロイグソン首相が辞任に追い込まれたアイスランドに続き、激震に見舞われているのが英国。ロンドンの首相官邸前では9日、キャメロン氏に抗議する千人以上の市民が「キャメロンは退陣しろ」と糾弾するデモで気勢を上げた。2013年の主要国首脳会議(ロックアーン・サミット)は、多国籍企業の課税逃れを防ぐ国際ルール策定が首脳宣言に盛り込まれた。取りまとめに奔走したのが議長を務めたキャメロン氏だ。ところがパナマ文書は、キャメロン氏の父親(故人)が租税回避地のパナマにファンドを開設していたことを明らかにした。当初のらりくらりと追及をかわしたキャメロン氏だが、ファンドに投資して利益を得ていたことを結局認めた。違法性はないと主張しているが、野党や国民から「偽善者」と非難され、納税記録の公表に追い込まれるなど防戦一方。「もっとうまく対処すべきだった」と悔やんでいるというキャメロン氏は、5月の伊勢志摩サミットにも招待されている。南米アルゼンチンでは昨年12月に就任したマクリ大統領が、父親がバハマに設立した会社との関係を問われ、検察が裁判所に捜査許可を求める事態に発展した。
   ■    ■
 神経をとがらせているのは、各国指導者にとどまらない。租税回避地で約千社の法人設立を仲介したフランスの大手銀行ソシエテ・ジェネラルの本社は、当局の家宅捜索を受けた。スイスでは欧州サッカー連盟(UEFA)の本部が捜索を受けるなど、捜査は拡大している。パナマ文書は約1150万通に上り、共同通信などが参加する国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)が分析している。出元となった法律事務所モサック・フォンセカがある“震源”パナマでは、バレラ大統領が独立調査委員会の設置を発表、金融制度の信頼回復へ重い腰を上げた。こうした動きは、各国が不透明な金融取引を是正する上で一定の効果をもたらしそうだ。一方、習近平国家主席らの親族や、プーチン大統領周辺の人物の疑惑が浮上した中国やロシアは影響を食い止めようと必死。中国では報道が規制されている。ロイター通信は「非民主的な体制下では、パナマ文書の影響は限定されるだろう」と指摘した。
▼タックスヘイブン 税金を免除したり非常に低く設定したりしている国や地域。タックスは税金、ヘイブンは避難所を表す英語で、日本語では租税回避地と呼ばれる。タックスヘイブンに法人などを設立して海外から金融資産を移せば、本国での課税を大きく免れることができる。産業に乏しい国などが、雇用や外資獲得のために設定している事例が多い。

*1-2:http://www.saga-s.co.jp/news/national/10201/301041
(佐賀新聞 2016年4月16日) G20、課税逃れ阻止へ制裁検討、非協力国を特定、政策総動員
 米ワシントンで開かれた20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議は15日閉幕し、国際的な課税逃れを阻止するため連携を強化する声明を発表した。資金の流れの監視を強め、新たな基準で非協力国を特定し制裁も検討する。景気を下支えする政策総動員で合意し、機動的な財政出動の活用を強調した。タックスヘイブン(租税回避地)を使った不透明な取引を明るみに出した「パナマ文書」問題を受け、課税逃れ対策に焦点が当たる異例の会合となった。不正な資産隠しに対し実効性のある国際包囲網を築けるかどうかが今後の課題となる。

*1-3:http://qbiz.jp/article/86029/1/
(西日本新聞 2016年4月30日) 『パナマ文書』、取材活動の舞台裏
 タックスヘイブン(租税回避地)の実態を明らかにした「パナマ文書」は、1日に千通の書類をチェックしても30年以上を要するほどの膨大な量だ。共同通信も参加する国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)の記者は、回避地に設立された法人の隠れた所有者を示す株主名簿を足掛かりに、記者の勘も使って書類を絞り込み、最後は直接取材で裏付けを取りながら報道を続けている。「レジスター・オブ・メンバーズ」と題された紙に、個人の実名、住所、そして株数、日付。通常は公開されることのない、回避地法人の株主名簿だ。そこに「イイダ・マコト」の名があったことが、日本の警備大手セコム創業者に関連した法人を発見するきっかけとなった。パナマ文書は回避地法人設立を支援する法律事務所「モサック・フォンセカ」の内部書類で、ICIJが南ドイツ新聞を通じ入手した。書類は約1150万通に及ぶ。ICIJは全資料を電子的に検索できるようデジタル処理し、国名や主要都市名をキーワードとして絞り込んだり、気になる人名や企業名を含む文書を抽出したりする環境を整えた。
▼「記者の勘」駆使
 だが資料にあるのはアルファベットの氏名と住所だけという場合も多い。「あの著名人では」と推測しても空振りとなることが大半だ。回避地に法人をつくること自体は違法ではなく、本人の説明で新たに分かる事情もある。本人や所属組織への直接取材は不可欠で、最後はペンとメモ帳を手にした伝統的取材となった。株主とは別に役員名簿もあるが、その氏名は当てにならない場合も多い。表面的な代表者となり公文書で明らかになる場面があるため、回避地各地にある名義貸し会社を通じて形式上の役員を登録しているケースが多いからだ。一方、モサック事務所と関係者のメールやファクスも多数ある。時には法人設立の本当の動機や、生々しいやりとりも記録されている。日付が直接書かれていない書類でも、メールに添付されたものなら、メールの日付で時期が特定できる場合があった。
▼厳重に秘密管理
 ICIJはパナマ文書を電子的に管理し、不正アクセスできないよう厳重に守られた特別なウェブサイトを通じて参加報道機関の担当記者だけが閲覧できるようにしている。同時に、担当記者限定の電子会議室を用意し、国境や時差を超えて議論も重ねた。その中で各国記者は、分析の手法や政治家らへの質問状のひな型、取材の進め方を固めていった。日本時間4月4日午前3時に報道が開始されると、影響は予想を超えて各国に広がった。「こちらではすごい反応だ」「やったぞ」。参加した記者の書き込みが飛び交った。

*1-4:http://mainichi.jp/articles/20160507/k00/00m/030/066000c?fm=mnm
(毎日新聞 2016年5月6日) 情報流出警戒、ネット遮断 入手の独紙記者
 中米パナマの法律事務所「モサック・フォンセカ」から流出した内部文書「パナマ文書」を入手した独大手紙、南ドイツ新聞のバスティアン・オーバーマイヤー(38)と同僚のフレデリック・オーバーマイヤー(32)両記者が初めて日本メディアの取材に応じ、租税回避地(タックスヘイブン)を利用した不透明な金融取引を暴いたスクープの裏側を語った。「データに興味はないか。提供する用意がある」。タックスヘイブンを利用した汚職事件などを長年報じてきたバスティアン記者に暗号通信で連絡が届いたのは1年以上前のことだ。「この文書が報じられることで犯罪行為を明らかにしたい」と提供者は訴えた。バスティアン記者は「連絡が電子メールだったのか、何語で会話したのかは言えない」と情報源の秘匿に努める。独企業の汚職事件にも登場するモサック社を追っていたバスティアン記者は「それまでモサックの実態は全く分からなかった」と話す。フレデリック記者は「とてつもなくセンセーショナルな文書だとすぐに分かった」。文書には、プーチン露大統領の友人や中国の習近平国家主席の親族、麻薬カルテルなど犯罪組織の関係者も登場した。情報が多くの国にまたがり、裏付け取材には人手が必要だった。そして「記者を殺すことなど何とも思わない人物」が含まれるという安全上の問題から、同紙は国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)による共同取材の方針を決めた。ICIJは同紙にデータ取材の専門家を派遣。種類の異なるデータをまとめて検索できるプログラムを導入し、参加する約80カ国、約400人の記者が情報を閲覧できる環境を整えた。同紙に次々と送られてくるデータは最終的に2.6テラバイト(テラはギガの1000倍)に達した。膨大な情報量に対応するため、同紙は約1万7500ユーロ(約230万円)の大型コンピューターを購入。情報流出を防ぐため、コンピューターはインターネットから遮断され、設置場所は極秘にされた。これまでドイツで行われた汚職事件の裁判記録などと提供資料を照合し、信ぴょう性を検証した。裁判記録にあるモサック社が設立した会社の資料と完全に一致する提供資料も多数見つかったという。フレデリック記者はパナマに飛び、モサック社が作ったペーパーカンパニー数千社の代表を務める女性を訪ねた。女性は貧民街に住んでいた。わずかな報酬で名義を貸したとみられる女性は「何の会社か、誰に売られたかは知らない」と語ったという。フレデリック記者は「彼女は国外に出れば逮捕される恐れもある。モサック社のビジネスは貧しい人の搾取そのものだ」と語気を強めた。

<標的は誰か>
*2-1:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12302057.html
(朝日新聞社説 2016年4月9日) パナマ文書 納税者の怒りは大きい
 英国のキャメロン首相や中国の習近平国家主席、ロシア・プーチン、ウクライナ・ポロシェンコ両大統領の親族や知人、本人の名前もある。中米パナマの法律事務所から流出した「パナマ文書」が波紋を広げている。タックスヘイブン(租税回避地)に設立された法人の情報など、膨大な文書や電子メールを非営利組織「国際調査報道ジャーナリスト連合」が分析したところ、10カ国の現旧指導者12人とその親族60人余らが浮かび上がった。納税者の多くが税金の負担に苦しんでいるのに、税金を課す側の統治者やその周辺は特権を使って蓄財に励み、税逃れの手立てを着々と打っている――。そんな不公平に対する怒りと不信は各国共通だろう。08年のリーマン・ショックに端を発した経済危機と財政難を機に、富裕層や大企業への怒りと格差・不平等への危機感が世界中に広がった。米ウォール街の占拠運動が象徴的だ。それを受けて、主要7カ国(G7)は、国境を超えた多国籍企業の税逃れへの対策を強めてきた。その旗振り役でもあるキャメロン英首相の亡父が、パナマに投資ファンドを設立していたと文書で指摘された。取引自体は違法とは言えないかもしれない。だとしても、政治家ら公職者には道義的責任がある。文書に名前がある指導者は説明責任を果たし、疑わしい取引から手を引くべきだ。各国の政府は、まず違法な取引の有無を調べる必要がある。そのうえで過度な節税など「灰色」の経済活動に対し、納税者が納得できる制度を国際的にどう整えていくかが問われる。土台はすでにある。先進国が中心の経済協力開発機構(OECD)の加盟国は昨年、中印両国など新興国の協力も得て、企業の国際的な税逃れを防ぐために15の行動計画をまとめた。計画は多国籍企業を念頭に置くが、資金の流れを解明し、情報を共有しようとする姿勢は税逃れ問題に不可欠だ。租税回避地への監視をはじめ、行動計画の補完と強化が課題になる。日本はOECDの行動計画づくりの際、関係委員会の議長を財務省幹部が務めた。そうした経験を生かし、国際協調に向けた役割を果たしてほしい。5月にはG7サミット(伊勢志摩サミット)の議長国を務める。当面の世界景気の問題だけでなく、国際的な税逃れに切り込む機会にしたい。

*2-2:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20160409&ng=DGKKASGM08H9X_Y6A400C1EA2000 (日経新聞 2016.4.9) 節税網、欧州勢が主導 パナマ文書を読む、主要銀、名を連ねる ペーパー会社設立関与か
 パナマの法律事務所から流出し、世界に波紋を広げる「パナマ文書」。国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)がホームページ上で公開した資料を読み解くと、欧州を中心に、パナマなどタックスヘイブン(租税回避地)の小国を組み込んだ見えない「節税」ネットワークが構築され、そこに世界の富裕層が顧客に名を連ねる構図が浮かび上がった。ICIJによると、パナマの法律事務所「モサック・フォンセカ」は1977年から2015年にかけて、21カ国・地域に21万のペーパーカンパニーを設立した。ICIJはモサックを「世界で五指に入るペーパーカンパニーの卸売問屋」と皮肉る。21万社のうち、半数以上の約11万3千社は英領バージン諸島にあり、4万8千社がパナマ、1万6千社がバハマ、1万5千社がセーシェルにあった。出資者は200カ国・地域の法人と個人で、政治家や官僚もわかっているだけで140人いる。ペーパーカンパニーの設立をモサックに依頼したのは金融機関や他の法律事務所、コンサルティング会社などだ。金融機関はクレディ・スイスやUBS、HSBC、ソシエテ・ジェネラルなど欧州主要行の系列会社が名を連ねる。500に上る金融機関が1万5600のペーパーカンパニー設立に関わったとみられる。モサックに関わった金融機関の多くはルクセンブルクやスイス、英国に本拠を置き、欧州が節税ネットワークの中心にあったことがうかがえる。モサックもチューリヒに支社を持っていた。これまでのところ、米国や日本の企業や投資家は目立たない。資料によると、モサックが管理する企業数は15年時点で約6万6000社。09年の約8万2000社をピークに、廃業数が新規設立数を上回りだした。09年にUBSによる脱税ほう助問題が米国で浮上。同年の20カ国・地域(G20)首脳会合で租税回避が主要議題になるなど、「徐々に国際的な規制が厳しくなってきたことが背景として考えられる」(国際税務に詳しい弁護士)という。ICIJは5月上旬、パナマ文書に登場する企業や関連人物の全リストをホームページ上に記載する。世界の首脳や著名人の租税回避が新たに明らかになれば、トップ辞任など、波紋がさらに広がる可能性も出てくる。

*2-3:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20160412&ng=DGKKZO99531610R10C16A4DTA000 (日経新聞 2016.4.12)「パナマ文書」に市場が揺れる 編集委員小平龍四郎
 英国のキャメロン首相が苦境に立っている。亡父が設立したオフショアファンドに自身も投資し、利益を得ていたことを認めたからだ。租税回避の実態を示す「パナマ文書」の流出から数日たっての釈明だ。本人が言うとおり違法性はないのかもしれないが、説明責任を果たす姿勢として、誠実さに欠けるとの批判が高まっている。
  □  ■  □
 英首相の指導力を揺るがしかねない「パナマ文書」の騒動に、日本の投資家はもっと目を向けたほうがよいかもしれない。あと3日もすれば、欧州連合(EU)にとどまるかどうかを問う国民投票のキャンペーンが英国で正式に始まる。メディアの調査などによれば、残留派と離脱派は拮抗している。残留を訴えるキャメロン首相が国民の信任を失えば、6月23日の投票日に向けて離脱派がにわかに勢いを増す可能性がある。問題が起きる前から、キャメロン首相への逆風は強まり始めていた。国民に高い人気を誇るロンドン市長のボリス・ジョンソン氏は、次期首相を狙う思惑もあり、離脱への支持を打ち出している。3月下旬には、やはり離脱を支持する元保守党党首、イアン・ダンカンスミス雇用・年金相が、社会保障費の削減方針を巡る意見の食い違いを理由に辞任した。こうした保守党の権力闘争が「内乱」(civil war)といわれるほど激しくなっていたときだけに、後手に回った感の強い「パナマ文書」を巡る説明は、首相にとってはなおさらの痛手となる。投資家が英国のEU離脱を意識すべき理由もここにある。EU離脱が選択された場合、何が起きるか。米ゴールドマン・サックスが3月初旬のリポートで示した筋書きはこうだ。英政府はEUと貿易などに関する取り決めを新たに結ぶ必要がある。2年程度とされる交渉期間は不透明感がきわめて強くなる。産業界の投資は延期され、英国の経済活動に重大な悪影響を及ぼす――。米ブラックロックで投資戦略の対外発信を担当するユーイン・キャメロンワット氏は「影響は英国だけにとどまらない」と訴える。今のところポンド相場を除き、市場は総じて英国のEU離脱の可能性に反応していないように見える。だからこそ「パナマ文書」のような不測の事態が再びもちあがり離脱が決まった場合の驚きは大きく、「世界的なリスクオフは避けられない」。逃避通貨としての円が買われ株安が加速する事態もありうる。
  □  ■  □
 経済の面から判断すれば、EU残留は自明の理に思える。けれど、英国にとってはEUから離れ自国の議会だけで物事を決められるようになるという、主権回復の視点も重要なのだ。目先の不利益は主権の回復に必要なコストであり長期ではEU離脱が国益にかなう。ひそかにそう確信する人が英経済界に少なからずいる。市場からは見えにくい英国の断面である。

*2-4:http://qbiz.jp/article/86239/1/
(西日本新聞 2016年5月6日) パナマ文書に名誉教授らの名 日本関係者、大手企業役員も
 国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)に参加する共同通信のパナマ文書の分析で、大学の名誉教授や大手企業の役員らがタックスヘイブン(租税回避地)につくられた法人に関与していたことが6日、分かった。会社経営者の海外取引を目的とした設立や悪質業者の利用も目立った。パナマ文書には、日本在住者や日本企業の名前が重複を含めて約400あるが、重複を除くと32都道府県の日本人約230人、外国人約80人、企業などが約20となった。租税回避地は税負担を軽くするのに好都合な場所とされるが、法人設立自体に問題はなく、事業が目的の場合もある。

*2-5:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/309374 (佐賀新聞 2016年5月8日) 佐賀の住所にも3人 パナマ文書の日本関係者、唐津市松南町、伊万里市立花町、太良町多良
 国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)に参加する共同通信のパナマ文書の分析で、大学の名誉教授や大手企業の役員らがタックスヘイブン(租税回避地)につくられた法人に関与していたことが6日、分かった。会社経営者の海外取引を目的とした設立や悪質業者の利用も目立った。パナマ文書には、日本在住者や日本企業の名前が重複を含めて約400あるが、重複を除くと32都道府県の日本人約230人、外国人約80人、企業などが約20となった。租税回避地は税負担を軽くするのに好都合な場所とされるが、法人設立自体に問題はなく、事業が目的の場合もある。石川県の医系大学の名誉教授は2012年、英領バージン諸島に法人を設立した。中国人投資家に新薬開発を持ち掛けられ、開発に必要な3億円規模の資金の受け皿としてだったという。その後、日中関係悪化の影響からか、連絡がなくなった。名誉教授は「投資家が新薬の収益への税を逃れるつもりだったのだろう」と話した。セーシェルの法人の関係書類には札幌市の大手企業役員の名前があった。役員は企業を通し一部の書類のサインが自らのものと似ているとしたが「記憶がない」と回答した。
■内閣参与の会社名も記載
 パナマ文書の分析で、回避地法人の株主連絡先として、都市経済評論家で内閣官房参与の加藤康子氏が代表取締役を務める会社名が記載されていることが6日分かった。加藤氏は共同通信の取材に「全く心当たりがなく大変驚いている。当時の会社代表者は別の人で、連絡先として名前を使うことを認めた人がいなかったか調査する」と述べた。
■佐賀の住所に3人
 パナマ文書に記載があったタックスヘイブン(租税回避地)利用者で、佐賀県が住所となっていたのは3人だった。ただ該当する住所がなかったり、転居先が不明だったりし、6日までに該当者は見つからなかった。記載があったのは唐津市松南町、伊万里市立花町、太良町多良の3人。

*2-6:http://www.saga-s.co.jp/news/national/10201/308654
(佐賀新聞 2016年5月6) FBI、クリントン氏近く聴取か、メール問題で米報道
 クリントン前米国務長官が在任中に公務で私用メールを使った問題で、CNNテレビは5日、連邦捜査局(FBI)が数週間以内にクリントン氏本人の事情聴取を行う見通しだと報じた。FBIは最近になってクリントン氏の側近らを事情聴取したという。複数の当局者の話としている。クリントン氏は大統領選の民主党候補に指名されることが濃厚となっているが、メール問題が再燃すれば、共和党候補となることが確実なトランプ氏が攻勢を強めそうだ。ただ、CNNによると、複数の当局者はクリントン氏らが意図的に違法行為をした証拠は現時点で見つかっていないと明らかにした。

<租税法律主義とタックスヘイブン>
*3-1:http://www.ichirotax.com/gyoumu/2013/03/post_1093.html (加藤一郎税理士事務所)
●租税法の基本原則(租税法律主義)
 租税法の基本原則とは、憲法に規定する原則であり、大きく分けて租税法律主義と租税公平主義の2つの原則があります。今回は租税法律主義について解説します。憲法84条は「あらたに租税を課し、又は現行の租税を変更するには、法律又は法律の定める条件によることを必要とする。」と規定しています。この条文から「法律の根拠に基づかずに、租税を賦課、徴収することはできない」という基本原則である租税法律主義が導かれます。場当たり的に課税要件が変更されたり、税務署の判断で新たに税金を創設されたりすると、国民が経済活動をするにあたり混乱が生じます。そこで、国会があらかじめ制定する法律により課税することで法的安定性と予測可能性を国民に与えることができるようになります。
 租税法律主義は解釈上その内容として、
(1)課税要件法定主義
(2)課税要件明確主義
(3)合法性の原則
(4)手続的保証原則
(5)遡及立法禁止の原則
などを含みます。以下、各原則について見てみます。
(1)課税要件法定主義
 課税要件法定主義とは、納税義務が成立するためには、法律でそのための課税要件(納税義務者、課税物件、課税物件の帰属、課税標準、税率)を規定していなければならず、また、租税の賦課及び徴収の手続は法律によって直接的に規定されていなければならないとする原則をいいます。問題になるのは、例えば「財務省令で定める方法により」などと法律が下位規範である政令や省令に定めを委任する場合です。委任それ自体は租税法律主義に反しませんが、委任する場合には一般的・白紙的委任は許されず、具体的・個別的委任でなければなりません。また、委任の目的、内容及び程度が委任する法律の中で明確にされていなければならないと解されています。
(2)課税要件明確主義
 課税要件明確主義とは、課税要件を法律で規定する場合でも、その内容が一義的でなければならないとする原則をいいます。これは課税庁による自由裁量を排除するために求められる原則です。
(3)合法性の原則
 合法性の原則とは、課税要件が充足されている限り、課税庁は租税を減免し、又は租税徴収を免除することは許されず、法律に定めるところにより税額を賦課徴収しなければならないとする原則をいいます。これは課税庁による恣意的な徴税を排除するために求められる原則です。
(4)手続的保証原則
 手続的保証原則とは、租税の賦課・徴収は公権力の行使であるから、それは適正な手続で行われなければならず、またそれに対する争訟は公正な手続で解決しなければならないとする原則をいいます。更正処分の理由附記の制度(国税通則法74条の14第1項)などはこの原則に由来します。
(5)遡及立法禁止の原則
 遡及立法禁止の原則とは、新法(改正法)を公布日よりも前に施行し、または適用することにより納税者に不利益を与えることを認めないとする原則をいいます。問題になるのは、所得税や法人税のように期間計算が必要な期間税についての遡及立法です。年度の途中で納税者に不利益な改正がなされ、年度の始めに遡って適用されることが許されるかどうかは、そのような改正がなされることが年度開始前に一般的かつ十分に予測できたかどうかにより判断すべきと解されています。問題になるのは、所得税や法人税のように期間計算が必要な期間税についての遡及立法です。年度の途中で納税者に不利益な改正がなされ、年度の始めに遡って適用されることが許されるかどうかは、そのような改正がなされることが年度開始前に一般的かつ十分に予測できたかどうかにより判断すべきと解されています。
(以下略)

*3-2:http://www.g (タックス・ヘブン制度 をめぐる世界の動き)
 現在、全世界には 60以上のタックス・ヘブン地域・国が存在しています。しかし、2000年、OECD(経済協力開発機構)によるマネーロンダリング犯罪対策、公正な課税制度確立に向けた制裁を受け、このうちの 34ヶ国、地域がブラックリスト化されました(下表参照)。英領ケイマン諸島、バミューダ、キプルス、マルタ、モーリシャス、サン・マリノの6カ国・地域は、OECDとの合意により、このブラックリスト掲載を免れています。しかし、合意内容の発効により、これらの国・地域は「透明性高い国際的課税水準の確立」、「預り資産内容等の情報共有」、「公正な課税率の設定」を義務付けられることになりました。こうしたタックスヘブン、マネーロンダリングをめぐる国際間の締め付けはますます強化され、2005年より、スイス金融機関の絶対的匿秘主義にもメスが入れられました(非居住者による書面での口座開設申請不可、犯罪に関わる口座情報の開示義務の制定、など)。特に、欧州諸国の圧力により、顧客情報を提供しない代わりに、居住地国の政府に代わって、その居住者が保有する預金口座から利子税を徴収し、関係各国に代理で納付する、という合意が妥結されました。
   アンドラ グレナダ ガーンジー(英)
   マン島(英) パナマ リヒテンシュタイン
   モナコ バハレーン モルディブ
   マーシャル諸島 ナウル アンギラ(英)
   サモア トンガ バヌアツ
   ニウエ(ニュージーランド) セント・ルシア ヴァージン諸島(英)
   セント・クリストファー・ネイヴィース アンティグア・バーブーダ セント・ビンセント
                                      及びグレナディーン諸島
   ジャージー(英) アルバ(蘭) ドミニカ国
   タークス諸島・カイコス諸島(英) ヴァージン諸島(米) クック諸島(ニュージーランド)
   ジブラルタル(英) モンセラット(英) アンティル(蘭)
   バハマ バルバドス ベリーズ
   セイシェル リベリア ー
              外務省資料 参照
 ここ数年の金融恐慌は、世界各国の財政事情を大きく圧迫しました。税収減と、巨額の財政出動により、各国ともに、徴税制度をますます強化するとともに、さらなる増税も不可避な状況となっております。こうした中で、市民への増税政策の実施前に、その協力を得る目的で、富裕層のキャピタルフライトを狙い撃ちにする方向性が強められています。2009年4月26日のロンドンでの、G20首脳国会合。ここで、タックヘブン諸国・地域に対する対応が協議され、その第一弾として、国際的な徴税制度に非協力的な地域が名ざしされることになりました。
   アンドラ ジブラルタル モナコ
   リヒテンシュタイン シンガポール スイス
   ベルギー ルクセンブルク オーストリア
   要注意国 >> フィリピン マレーシア
   要注意国 >> コスタリカ ウルグアイ
 2009年9月のG20首脳国会合ではさらに、国際景気の動向が議論の大部分を占めたため、特別、突っ込んだ議論は進められなかった模様。しかし、今後の G20での主要テーマの一つになることは確実な情勢です。2008年2月のドイツ税務当局によるリヒテンシュタインのプライベートバンク絡みの脱税者リストの買収、 2009年2月の米国による世界最大プライベートバンクUBS銀行への脱税幇助の指弾と巨額罰金、情報リスト開示命令、そして、同年3月のスイス金融行政による顧客守秘義務規定の変更実施など、近年の先進国政府によるキャピタルフライトに対する締め付けは、加速度的に厳格化しております。2001年米国同時多発テロに端を発するテロ資金規正、すなわち、アングラ・マネーへの締め付けは、さらに援用され、富裕層の隠し資産、裏金の解明へと拡大適用されつつあります。そこへ、金融恐慌が拍車をかけ、財政赤字に苦しむ政府を後押しする格好となっています。そのうち、1998年に改正された日本の外為法も、大幅に見直しが進められ、海外への資金移動が大幅に制限される日が来るかもしれません。 roup-bts.com/OffshoreTax.htm
●タックス・ヘブン制度の概要
 タックス・ヘブン「Tax Haven」とは、日本語に直訳すると「税金避難所」を意味し、一般的には「租税回避地」と訳されます。ちなみに、フランス語では、Paradis fiscaux といい、「会計上の天国」といいます。元来は、中継貿易地として経済を活性化させる目的で、各国・地域政府が徴税優遇制度を実施していましたが、70年代より、海外籍の個人や法人を問わず、その所得に対して、すべての課税を免除(もしくは大幅減額)するようになりました。このようにして同制度は、域内の雇用促進、グローバル経済社会での小国・自治区なりの「生き残り」策として確立されていきます。その発展に伴い、同地域への法人設立や移住手続も簡素化されるようになり、多くの企業や個人、そのマネーを惹きつけることになりました。特に、移動の容易な「マネー」を操る金融ビジネスがここに目を向けるようになりました。こうした背景から、タックスヘブン国や地域はオフショア金融センター(Offshore Financial Center)と呼ばれるようになり、名だたる多国籍企業、金融グループ、投資事業組合、大資本家や政治家らを中心に、多くの資金を集める結果となっています。直接、現地にて居住せずとも、経済活動が許されている、もしくは資産を保管できるという意味で、オフショア=「沖合い」のみでの呼称でも認知されるようになり、これに合わせて、数々の資産保全スキームも考案されていきました。世銀統計によれば、沖縄県 西表島 程度の面積しかない英領ケイマン諸島(270km2、人口4万)は、世界の預かり資産残高において、東京、ロンドン、ニューヨーク、香港に次ぐ世界第五位の規模とされています(約 90兆円)。ここに、世界の一流と目される金融グループを含め、約600あまりの金融機関が拠点を置いています。タックスヘブンとまでは行かずとも、欧州、シンガポール、香港、中国はじめ、多くの国々で今や、法人税率の減税が進んでいます。各国・地域とも、海外投資を受け入れ、自国経済の振興に役立てようと、優遇税制を導入しているわけです。日本も消費税増税と法人税減税の同時実施の必要性が叫ばれていますが、21世紀中盤の国際競争時代に向け、出遅れをとらないように注意すべきでしょう。
●タックスヘブン制度をめぐる近況
 タックスヘブン制度を採用する国・地域では、原則、個人の所得税、利子・配当税、相続税、株式等の譲渡益税、法人の事業税などが免除、もしくは低位に抑えられています。こうした恩恵をねらい、世界中の富裕層、ビジネス・マネーが流入しています。特に、物理的な商品移動等のない、保険、投資業務などの金融ビジネス、さらに各種リース業や、特許・著作権等の知財サービス業には最適な環境といえます。所謂、ペーパーカンパニーという形で法人を設立し、実際のビジネスの運営は別の場所で操作するパターンが圧倒的です。世界の大企業はほぼすべてこうしたペーパーカンパニーを何らかの形で有しています。こうしたタックスヘブン制度を利用し、多くの不正脱税、マネーロンダリン犯罪が行われてきたのは容易に想像できます。諸外国はこのタックスシェルターへの対抗策として、スキーム情報申告・登録制度、資料保存義務規定、移転価格対策、納税者番号制度などを実施し、さらに先進国クラブOECDとして団結し、情報公開に非協力な国々への圧力を強めるなど、あらゆる手段を講じています。日本では、このタックスシェルター制度への対抗策として、移転価格税制、タックスヘブン対策税制という、後追い型の追及手段が主たるものであり、他の先進国に遅れを取っていることは否めません。実際、国内の大手金融グループ、メーカー、サービス事業会社の多くは、ケイマン諸島籍のSPI(特別目的会社)を有しており、株式の増資にともなう第三者割当相手先や、自社の持ち株会社などの形でオフショア・カンパニーを多用しています。これらは、目下の法制度では何ら問題ではございません。こうした日本の外為規制、海外課税体制に関し、G8はじめ先進諸国は批判を強めつつあります。ただし、先進諸国は、実際のところ、自国外のタックスヘブン諸国への富裕層のキャピタル・フライト(資金流出)が大々的に起こっていることを懸念しており、自国内への海外マネーの流入は「歓迎」というのが本音です。その典型的な政策が、「国内非居住者の預金利子や株式等の譲渡益・配当に対する非課税政策」といえます。米国、英国、日本、豪州など、先進諸国はこぞって導入しています。自国のマネーは流出させず、かつまた、海外マネーを積極的に流入させて、国内金融、不動産、その他の市場を活性化させていきたい、という国際競争の激化が、直接的には「タックスヘブン諸国への締め付け」という、近年の国際協調を演出している感があります。(以下略)


PS(2016年5月10日追加):*4に、「日本の政治家は政権交代があっても財産や命を奪われる危険はないので、パナマに資金を隠す必要はないだろう」と書かれているが、現在の日本では、政治家として活動したことによって破産する人はいても、パナマに資金を隠さなければならないほど巨額の資金を溜めた人はいないため(理由:収入より支出の方が多いから)、これは一昔前の古い政治家批判のシナリオにすぎない。また、本当に違法な政治資金、犯罪、暴力団・テロリズム関連団体の資金であれば、タックス・ヘイブンではなく、その違法行為自体を犯罪として摘発すべきだ。
 なお、パナマ文書に関わった記者の一人が、「①タックス・ヘイブンの売りは秘密性なので、秘密を白日の下に晒す私たちの報道はそれに大きなダメージを与えている」「②今回のパナマ文書報道で公職者に焦点を当てた理由は、ジャーナリストとして義務を負っているから公益だ」「③私たちの役割は暴露すべきものを単純に暴露することで、次の段階には関与せず介入しない」と述べているが、①は、銀行預金や非公開会社の株主名簿を公表するのと同様にプライバシーの侵害であり、②は、本当の敵は政治家ではなく官なのに、自分は安全な権力側につき手先として働きながら政治家批判をして権力を批判しているかのようなポーズをしているだけで偽善であり、③は、パパラッチレベルの無責任な見識しか感じられない。そのため、こういう記者は、カレル・ヴァン・ウォルフレンのようなジャーナリストからはほど遠い。
 結論として、何ら違法行為をしていないのに、これらの記事やブログで被害を受けた人は、名誉棄損や政治活動の妨害・営業妨害などで提訴し、民主主義の前提となる公正な報道がなされるよう、一つ一つ正していくしかないだろう。

*4:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12348064.html (朝日新聞 2016年5月10日) (耕論)パナマ文書が晒すもの 鳥羽衛さん、黒木亮さん、ジェラード・ライルさん
 タックスヘイブン(租税回避地)の実態を暴露したパナマ文書が世界に衝撃を広げている。税や金融の専門家、文書を暴露した「国際調査報道ジャーナリスト連合」(ICIJ)幹部に聞く。
■高度な金融専門家育成を 鳥羽衛さん(弁護士・元東京国税局長)
 税金は主権国家が課税徴収しますが、経済はグローバル化し、国境を超えます。各国で制度が違うため、主権の壁にぶつかり、調査や徴税ができない現実があります。例えば日本企業がその事業で利益を上げれば、法人税や事業税が課税されます。しかし仮に、その企業が、海外のペーパーカンパニーに利益を留保していたり、源泉課税がなされない形で送金していたら、直ちには課税できません。こうしたペーパーカンパニーが大量につくられているのが、タックスヘイブン(租税回避地)です。税金が無税だったり、大幅に軽減されたりするので、税負担を減らせます。この仕組みを利用する動きは古くからありましたし、そこからの情報流出は以前からありました。しかし、パナマ文書は情報量が格段に多く、著名人の名前が報じられていることが衝撃を広げています。特に今回は、いくつかの国の最高指導者がタックスヘイブンを利用していたと報じられています。政権を奪われた時には国外に逃亡しなければ身の危険があるような国の政治家は、国外に財産を隠す動機があるでしょう。本人たちにとっては、ある意味で合理的なのかも知れません。蛇足ですが、日本の政治家は政権交代があっても、財産や命を奪われるといった危険はありません。ですから、パナマに資金を隠す必要がないのではないでしょうか。税金以外で問題なのは、違法な政治資金や犯罪、暴力団やテロリズム関連団体といった資金の受け皿になっているのではないかという点です。税制においては、米国では半世紀以上前から、日本でも1978年から対策が導入されています。国際的には、ここ20年ほど、経済協力開発機構(OECD)が「有害な租税競争」の除去に向けて規制強化に取り組んで来ました。現在は、国際課税全般について、多国籍企業が税制の抜け穴を利用して過度の節税をしている状況を是正するため、「BEPS」(税源浸食と利益移転)というプロジェクトが進行しています。不透明な資金の流れを捕捉するために、各国の当局間の情報交換を密にする方向で世界は動いていると言えます。制度は整いつつありますが、課題は実際の執行面です。特に重要なのは、国際課税に精通した人材の育成と、要所にそうした人材を配置した効果的な体制づくりです。税逃れの仕組みは年々複雑化しており、当局に高度な金融知識を持つ人材を常に育成することが欠かせません。税金は民主主義社会の根本です。財政状況は厳しいですが、税負担の公平さを維持するため、人材育成と体制の整備は避けては通れないと思います。
     *
 とばまもる 52年生まれ。75年旧大蔵省入り。国税庁調査査察部長を経て、2008年から長島・大野・常松法律事務所に勤務。
(中略)
■政治家に焦点を当てた ジェラード・ライルさん(ICIJ事務局長)
 オーストラリアで新聞記者をしていたとき、百億円規模の巨額詐欺事件を取材しました。その犯人がタックスヘイブンを使っていました。それが、私がタックスヘイブン問題に関心を持ったきっかけです。9年前のことです。その詐欺事件について本を書いたところ、匿名の人物が事件の情報を含むタックスヘイブンの秘密の電子ファイルを送ってきてくれました。2011年初めのことです。私はオーストラリアでの仕事を辞め、ICIJに来ました。私には野心がありました。ICIJはグローバルな調査報道チームであり、タックスヘイブンのようなグローバルな問題に取り組める、と。タックスヘイブンは日本、ブラジル、ヨーロッパなど世界中のさまざまな場所とつながりがあります。この種の問題はグローバルに取材しなければならないのです。提供された秘密ファイルに基づき、私たちはタックスヘイブンに関する大きな記事を2013年に出しました。メディアが忘れがちなことですが、最良の情報源は読者や視聴者です。政府の関係者や広報担当者ではなく、周辺にいる普通の人が、記者が知っている以上のことを知っています。記者がやるべきことは、自分が何に関心があるかを人々に知らせることです。それができれば、記事を出すたび、興味深い新たな何かを、その記者に提供してくれる誰かを、見つけられる可能性が高まります。そして、それこそが私たちがいま行っていることです。人々が、私たちを見つけてくれ(情報を提供してくれ)ています。タックスヘイブンの売りは秘密性です。だからこそ、その秘密を白日の下に晒(さら)す私たちの報道は、それに大きなダメージを与えています。今回のパナマ文書報道で、私たちはなぜ公職者に焦点を当てたのか。それは私たちが義務を負っているからです。ジャーナリストとして、こうした文書を入手することは、公益上の特別な義務を負うことになります。公益に資するために最も簡単で最も良い方法は、公職者に焦点を当てることです。だからこそ私たちは、一連のパナマ文書報道で、政治家やその家族、関係者に重点を置きました。ジャーナリストの仕事は記事を出すことです。私たちはおそらく今後も2カ月ほどはパナマ文書の取材・報道を続けるでしょう。社会には役割分担があります。私たちの役割は、暴露すべきものを、単純に暴露することです。そして私たちは一歩下がり、その次の段階には関与せず、介入しないようにする必要があります。これから前面に出て、問題にどう対応するかを決める責任は、政府当局や一般の人々にあるのです。
     *
 Gerard Ryle 65年生まれ。アイルランドと豪州で26年にわたって新聞記者や編集者。2011年にICIJの事務局長に就任。


PS(2016年5月11日追加):フィリピンの次期大統領であるロドリゴ・ドゥテルテ氏は、中国の南シナ海に関する領有権の主張について、大統領選で勝利した後は「経済振興となら引き換えにしてもよい」という発言をしているそうだ。日本政府が、北方領土や尖閣諸島の領有権問題に正面から取り組んでいる時、南シナ海で同じ問題を抱えて協力しているフィリピンを“タックス・ヘイブンの要注意国”と呼び、中国の習近平国家主席やロシアのプーチン大統領の遠縁の名をパナマ文書に見つけたなどと熱狂して騒いでいるようでは、外交努力が水泡に帰すだろう。日本の問題点は、各省庁が勝手に異なるベクトルの方向に動き、収拾がつかなくなることだと聞いたことがある。

*5:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12349886.html
(朝日新聞社説 2016年5月11日)フィリピン 堅実な新政権運営を
 今週の大統領選で勝利したロドリゴ・ドゥテルテ氏(71)が国民を引き寄せた持ち味は、その剛腕ぶりだろう。ミンダナオ島のダバオ市長を長く務め、治安を改善した功績が知られる。犯罪者を暗殺する組織を操った疑いも取りざたされるが、荒療治でも結果を出す手法が支持を得た。この国では今も海外出稼ぎが経済を支え、貧富の格差が激しい。ドゥテルテ氏が「犯罪者はマニラ湾の魚のえさにする」などと暴言を繰り返しても、むしろ有権者は留飲を下げつつ実行力への期待を高めた。アキノ現大統領が後継指名したエリート政治家の支持は伸び悩み、ドゥテルテ氏は中央政権での経験がないことが逆に有利になった。世界的に広がる既成政治への不満が、フィリピンでも表れたといえる。アキノ政権は決して無策だったわけではなく、むしろ評価に値する。汚職摘発や財政立て直し、規制緩和を進めた。経済成長率は6%前後を維持し、かつての「アジアの病人」の汚名を返上したとも言われる。1人当たり国内総生産が3千ドル水準になった今こそ正念場だ。ドゥテルテ氏は、成長の流れに水を差すことなく、国民への豊かさの分配を実現するためのかじ取りが求められる。人口は1億を突破し、若年層が厚い。全国に目配りしたインフラ整備に注力し、雇用を増やすことが急務だ。日本からの開発援助や民間の投資も、大いに役立つだろう。各国が注目する懸案の一つは南シナ海問題である。スプラトリー(南沙)諸島で中国が埋め立てを進め、フィリピンの漁船は中国公船との緊張に悩まされてきた。これに対しアキノ政権は対米関係を強めるとともに、中国の領有権主張は不当として、オランダ・ハーグの常設仲裁裁判所に提訴した。国際法に沿って冷静な解決を探る限り、フィリピンの対応は国際社会から理解される。力まかせの海洋進出がめだつ中国と向き合うのは難題だが、細心の外交努力を続けてもらいたい。目指すべきは平和で自由な南シナ海である。ドゥテルテ氏は選挙運動中、「水上バイクで中国の人工島に旗を立てる」と発言したが、今後は不用意な言動を慎み、堅実な政治指導者として国家運営に臨んでほしい。


PS(2016.5.17追加):*6のように、南シナ海等で共働しているオーストラリアのターンブル首相を、不法行為でもないのに「英領バージン諸島の子会社取締役となっていた」として挙げ、総選挙に影響させようとしているが、これらを日本政府がリードしてやっているのではどの国からも眉をひそめられるだろう。何故なら、「成功者はずるい」などという価値観が通用する市場経済の国は、他にはないからである。

*6:http://www.sankei.com/world/news/160512/wor1605120031-n1.html 
(産経新聞 2016.5.12) 豪首相、租税回避地の法人取締役に名前 「問題はない」と表明も7月2日の総選挙に影響か
 オーストラリアン・フィナンシャル・レビュー紙は12日、パナマの法律事務所「モサック・フォンセカ」がタックスヘイブン(租税回避地)の英領バージン諸島に設立した法人の取締役に、オーストラリアのターンブル首相が就任前に名を連ねていたと報じた。租税回避地に関する「パナマ文書」で明らかになった。法人はロシア極東・シベリアで金鉱山を開発。ターンブル氏は12日、同法人の役員になっていたことについて問題はないとの認識を示した。同紙も「不適切な行いはなかった」としているが、7月2日の総選挙に影響が出る恐れもある。同紙によると、ターンブル氏は1993年、オーストラリアの鉱業企業取締役になった後、英領バージン諸島の子会社取締役となり95年に両社の取締役を辞任した。ニューサウスウェールズ州のラン元州首相も共に取締役となった。

| 経済・雇用::2015.11~2016.8 | 05:41 PM | comments (x) | trackback (x) |

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