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2019.1.9~12 日本経済における人口構造の変化と労働力・需要構造の変化 (2019年1月13、14《図の説明等》、18日に追加あり)
 2019年(平成31年)の新年、おめでとうございます。

(1)人口減少が経済悪化の原因ではないこと


  日本の経済成長率推移    “高齢者”割合の急速な増加    人口構造の変化

(図の説明:左図の「経済成長率(数学的には、GDPの変化率)」は、戦後から第一次オイルショックまでは9%前後であり、オイルショックからバブル崩壊時までは4%前後だった。そして、バブル崩壊後は、リーマンショック時にマイナスになったものの、だいたい1%前後で推移している。つまり、誰もが購入したいと思う新製品がある時にはGDPが急激に増え(=変化率が高くなり)、それがなければ安定した状態が続くということだ。また、日本の人口は、中央と右図のように、“高齢者”の割合が大きくなっていくが、これは購入したいと思う需要構造が変化することを示している。そのような中、介護は需要が増えるサービスの代表で、雇用吸収力も大きいため、必要な介護サービスを削減するのは経済にマイナスだ。また、生産年齢人口に入れられない“高齢者”の定義は、寿命が延びれば高くなるのが当然で、女性の労働参加や外国人労働者の受け入れも増えるため、働く人や支える人が足りなくなるという主張は正しくないと考える)

1)世界と日本の人口推移
 2100年には、*1-1のように、世界の人口は112億人、日本の人口は8,500万人になり、平均寿命は世界82.6歳、日本93.9歳になるそうだ。しかし、これについては、日本では、機械化・高齢者の雇用・女性の雇用・外国人労働者の受入拡大などのように、既に対応を始めているので問題ないと考える。

 また、世界の人口は増え、日本の人口は減るため、2100年の平均出産数は、世界では1.97人まで減り、日本では1.79人に増えるそうで、これは数世代かけて生物的調整が働くからだ。

 さらに、60歳以上の人口は、2100年には世界全体で現在の3倍以上になるとのことだが、世界でも平均寿命が82.6歳まで延びるのに、高齢者の定義を「60歳(又は65歳)以上」のまま変えないのが、実態に合わないわけである。

2)人口構造の変化と労働力・需要の変化
 政府は、*1-2のように、「国内景気は、緩やかに回復している」としているが、私は金融緩和しなくても景気は回復したと思う。何故なら、東日本大震災等の大災害で多くの都市が壊滅的打撃を受け、リスクの小さい環境のよい街に再生するためには、莫大な公共投資が必要だからだ。そのため、このようにどうせ多額の国費を使わなければならない機会をとらえて、リスクや環境を考慮した進歩した街づくりを行い、無駄遣いの方は徹底してなくして欲しかった。

 なお、大災害からの復興で建設に従事する労働力が不足している時に、同時に東京オリンピックや万博の誘致をしたのには疑問を感じるが、外国人労働者の受入拡大が実現したため、労働力のネックは次第になくなると思われる。

 私は、個人消費が勢いに欠ける理由は、金融緩和と公共投資で景気を持たせているものの、①年金が主な収入源である65歳以上人口が29%を占めるのに、物価上昇やマクロ経済スライドなどで実質年金を減らしこと ②人口の29%を占める高齢者の社会保障も負担増・給付減にしたこと ③賃金上昇が物価上昇に追いつかず、現役世代の実質賃金も増えなかったこと ④消費税上昇分が物価に上乗せされ、明確に国民負担増となったこと などだと考える。

 つまり、可処分所得が減れば、家計が破綻しないためには支出を減らすしかないため、現在は節約することが国民の唯一の選択肢になっており、これが消費者の財布のひもが固い本当の理由なのだ。しかし、景気拡大で、若い男性だけでなく高齢者や女性の雇用も増え、労働参加率が上がったことは重要だった。

3)実質賃金の上昇には、迅速なイノベーションが必要であること


日米の実質賃金推移   膝軟骨の再生医療    介護の市場規模     燃料電池バス 

(図の説明:米国は実質賃金が順調に伸びているのに対し、日本は低迷したままである。これは、金融緩和で金をじゃぶじゃぶにして物価を上げはしたものの、「本物の革新」が速やかにできないからだ。「本物の革新」とは、求められる新技術を積極的に作って実用化し、国民生活を豊かにしていくことだが、新しい技術ができると否定やバックラッシュが多く、日本で最初に実用化するのが難しいという状況がある。また、技術や生産の元になる特許権も粗末にされており、この点で、我が国の意識は開発途上国のままなのである)

i)日本のイノベーションは、バックラッシュが多くて速度が遅い
 日経新聞と一橋大学イノベーション研究センターが、*1-3-1のように、共同で世界の主要企業の「イノベーション力」ランキングをまとめたところ、米国のIT企業が上位を独占し、日本はトヨタ自動車の11位が最高で、楽天とソニーが30位台だったそうだ。

 日本のメディアは、イノベーションの例として、既に常識となっているITやAIのクローズアップをすることが多いが、EV・自然エネルギー・自動運転・再生医療・癌の免疫療法・介護制度なども立派なイノベーションであり、それにあった道づくりや街づくりをして実用化していく必要があるにもかかわらず、EV・自然エネルギー・癌の免疫療法・介護などへの逆風を初め、バックラッシュが多くて産業を育てることができず、我が国が損失を蒙っているケースは多い。

ii)高すぎる洋上風力発電機
 大手電力が、*1-3-2のように、洋上風力発電設備を建設し始めたのはよいことで、漁業関係者の理解は、その施設が同時に漁礁(魚介類のゆりかご)や養殖施設の役割を果すように設計すればすぐに得られると思う。また、海は国有地であるため、騒音・振動・悪景観などの公害を出さなければ、地元の理解は容易に得られるだろう。

 ただ、「東電は、最大100基程度を数千億円かけて建設し、合計出力を原発1基相当の100万キロワットにすることも可能」としているが、風力発電機一基を設置するのに数十億円かかるというのは、1桁高すぎる。このように、ちょっと新しい技術を、いつまでも高価で実用化できないものにしているのも、我が国産業の悪い慣習だ。

iii) 再生医療の遅い進歩
 再生医療が商用化の段階に入り、*1-3-3のように、高齢化に伴う膝関節症などにグンゼ、オリンパス、中外製薬、ジャパン・ティッシュ・エンジニアリング等の日本企業が参入しているそうだ。膝関節症は、日本人の5人に1人が患う病気であるため需要が多いが、その他の病気も再生医療で解決できるものが次第に増えていくと思われる。そして、需要増は、他国でも数年遅れで日本と同じ経過を辿るのである。

 その再生医療は、私が衆議院議員をしていた2005~2009年の間に、厚労省・文科省・経済産業省が協力して力を入れ始めたもので、日本では医療分野での研究が盛んだったため、この分野で日本企業が世界をリードできる可能性はもっと高かった。

 しかし、このような時にネックになるのが公的医療保険でカバーする治療費の範囲であり、理論的には、副作用がなく効果の高い治療法であり、治して介護費用を少なくできるものでもあるため、積極的に多くの症例に使えるようにして治療費を抑え、公的保険でカバーできるようにすることが重要なのである。

iv) オプジーボの発明から見えた日本における特許権の軽視
 がん免疫薬は、*1-3-4のように、本庶氏らが1991年に発見した遺伝子「PD―1」の機能阻害でがんを治療できる可能性を示し、京大に特許出願を要請したが、知的財産に関心が薄かった京大は「特許維持費用を負担できない」として拒否したそうだ。

 そのため、小野薬品と特許を共同出願したが、本庶氏と小野薬品が結んだ契約では、発明の使用を小野薬品に独占的に認める専用実施権と、本庶氏が受け取る対価の料率などを決め、その対価の料率が1桁小さかったのだそうだ。

 しかし、もともと求められていた癌免疫治療薬の売り上げはうなぎ登りで、一人の研究者が思いついたアイデアに端を発した2024年売上額は年4兆円との想定もあり、仮に年4兆円の売り上げで0.5%の特許権料率なら毎年200億円の特許権収入が入ることになる。しかし、日本では、このように知識や技術に対する評価が低く、大切にされないのが問題なのである。

v) 2019年、新時代へのトップの意識
 西日本新聞が、*1-3-5のように、2019年1月9日、JR九州の青柳社長と西鉄の倉富社長に新時代へのインタビューをしている。

 JR九州の青柳社長は、「地域に応じて最適解を」として、①自動運転技術の導入 ②タクシー・バスとの融合 ③柱は鉄道と不動産 ④商業施設だけでなくオフィス・ホテル・大型コンベンション施設なども開発 ⑤志を共にする企業と連携して街づくりに貢献したい とのことである。

 西鉄の倉富社長は、①成長の柱は海外で、ASEANでのマンション・一戸建て住宅、付随する商業施設などを増やしていく ②グループ全体で結束して大型プロジェクトを進める ③福岡空港に『スマートバス停』を導入する ④次世代型開発の一つとして、スーパー、病院、医療・介護サービス付きマンションなど、シニア世代に必要な機能が近距離にまとまっている地域を造る ⑤モニターやセンサーを活用して機械化を進めるなど最適な技術導入や効率化が大事 などとしており、よいと思う。

4)社会保障の負担増・給付減が景気悪化の最大の理由である
 しかし、厚生労働省は、*1-4のように、2019年に公的年金の財政検証を実施し、当面の年金財政は健全だと確認するが、支給の長期的な先細りは避けられないとしている。しかし、私は、①高齢者が長く働いて70歳超からの年金受給開始も選べるようになったり ②女性の労働参加率が増えたり ③外国人労働者が増えたり ④パート社員へも厚生年金が適用されたり ⑤産業を効率化したり、産業の付加価値を高くしたり ⑥エネルギー料金を海外に支出するのを止めたりすれば、一律に支給開始年齢を引き上げなくてもやれるのが当然だと考える。

 そもそも、所得代替率(現役の手取り収入に対する年金額の比率)が50%ならよいというのも根拠はないが、上のような対応をしても年金や社会保障が持続可能でないと言うのなら、厚労省の管理やメディアの報道の仕方に問題があるのだ。つまり、いつまでも負担増・給付減のみを言い続け、それに反対するのをポピュリズムと呼ぶような思考停止は止めるべきである。

(2)改正入管難民法について


 2018.11.10産経新聞     2018.11.14産経新聞    2018.12.25 2018.12.8
                              西日本新聞  毎日新聞    

(図の説明:一番左の図のように、日本国内で働いている外国人労働者は、2017年に約128万人で、既に日本で欠かすことのできない人材となっている。しかし、現在は、外国人を専門的・技術的分野以外は労働者として受け入れておらず、技能実習生として受け入れているため、悪い労働条件を押し付けたり、仕事を覚えた頃に母国に返さなければならなかったりして、雇用者・被用者の双方に不便な状態なのだ。そのため、左から2番目の図のように、分野別に必要とされる人数を労働者として受け入れ、右の2つの図のように、環境整備をすることになったわけだ)


 日本とASEAN諸国の    介護人材の需給推計   外国人受入に関する政府の基本方針
  人口ピラミッド

(図の説明:左図のように、日本の人口ピラミッドはつぼ型になっているが、ASEAN諸国等にはピラミッド型の国も多いため、今なら、その気になれば外国人労働者を受け入れることが可能だ。実際に、介護分野では、中央の図のように、2025年には40万人近くの人材が不足すると言われている。しかし、「入国した外国人も都市に集中するのでは?」「日本人の雇用が奪われるのでは?」と懸念する人もいるので、右図のように、政府の基本方針が出されたわけである)

1)外国人労働者受入拡大について
 政府は、*2-1、*2-2のように、2018年12月25日、来年4月からの外国人労働者受入拡大に向けた新在留資格「特定技能」の枠組みを定めた「基本方針」と業種毎に人数などの詳細を決めた「分野別運用方針」を閣議決定したそうだ。

 介護や建設などの深刻な人手不足14業種で受け入れを決め、来年4月から5年間で最大34万5150人がこの在留資格を得ることを見込んでおり、関係閣僚会議では共生のための環境整備施策をまとめた総合的対応策も決定したとのことである。しかし、私は、この14業種だけでなく、美容師も労働力確保と技術交流を兼ねて外国人美容師の就労を認めてもらう嘆願書を出したと聞いており、これは意義のあることだと考える。
 
 なお、外国人が大都市圏に集中しないように措置を講じるとのことだが、仕事・住居・医療などの福祉・教育で安心できれば、多少の賃金格差は問題にならないと思う。

2)農業分野の外国人労働者受入拡大
 農業分野は、*2-3-1のように、受入人数の見込みは、5年間で最大3万6500人、外国人も栽培管理から集出荷、加工、販売など生産現場の全般の作業に携われるとし、受入農家は雇用労働者を一定期間以上受け入れた経験があることなどを要件とし、受入形態は、農家の直接雇用だけでなく人材派遣業者を通じた受け入れも認めている。

 TPPが発効し、*2-3-2のように、九州の農家が「組織化」で対抗するには、大規模化して必要な労働力を確保することが必要だ。そのためには、機械化とともに外国人労働者の雇用が有力なツールとなり、*2-3-3のように、大分県内に、来年にもアジア出身者らを対象として農林業の担い手を育成する国際専門校が開校して、若者の就業・定住を促進し、国際ビジネスの創造や海外販路の拡大も狙うというのは、迅速で頼もしい。

3)介護分野の外国人労働者受入拡大
 外国人は日本全国の介護現場で活躍しており、*2-4のように、2019年4月施行の外国人労働者の新たな受け入れ制度では、全職種で介護分野が最多の人数となる見込みだ。介護は、2020年には12.2兆円規模、2025年には15.2兆円規模になる実需であり、2025年には253万人の雇用が見込まれている大きな産業なのだが、何故か粗末にされている。

 また、介護現場における外国人の登用は今後も拡大し続けると見込まれ、先進国を中心に介護分野の外国人の受け入れは進んでいるそうだ。そのため、就労のハードルが高い日本を避けて他国に人材が流れる恐れもあるため、外国人が技術をしっかりと習得し、安心して生活を送れる環境を整えなければならないようだ。

 さらに、介護だけでなく家政婦も外国人を登用できれば、女性の仕事と子育ての両立が容易になったり、自宅療養がやりやすくなったりするが、男性が大半の議員では気が付かないようだ。

4)外国人労働者の受入環境整備
 2019年4月に始まる外国人労働者の受入拡大に向け、*2-5のように、受入環境の整備に重点を置いて各省庁が予算措置を行い、例えば、厚労省は①雇用状況視察 ②受入先の改善指導 ③医療機関の多言語化支援 などの予算を確保し、外務省は将来的な人材の獲得合戦を見据えて、海外での日本語教育や現地での日本語教師の育成・教材開発などを行うそうだ。

 そのほか、*2-6のように、外国人と働くには、さまざまな問題が発生し、一律の対応は通用しないそうだが、しばらくやれば問題がパターン化するため、自治体や企業も次第に対応に慣れてくるだろう。

(4)家事労働の軽視と女性差別

 
2018.12.18 ジェンダーギャップ指数順位   2018.9.3    2018.9.5 2018.8.7
西日本新聞                  西日本新聞    中日新聞 産経新聞

(図の説明:一番左の図のように、2018年版男女格差報告によると、日本は男女平等度が世界で110位と低い。また、左から2番目の図のように、2011~2017年の内訳では、政治・経済の分野で特に平等が進んでおらず、教育においても中位以下である。また、医師全体に占める女性の割合は21.1%だが、外科系は8.7%しかおらず、戦力としての女性医師への期待の薄さからか、いくつかの医科大学で入試における女性への不利な扱いがあったのは記憶に新しい)

1)日本の男女平等度
 スイスの「世界経済フォーラム」は、2018年12月18日、*3-1のように、2018年版「男女格差報告」を発表し、日本は149カ国中110位で政治・経済分野で女性の進出が進んでおらず、G20では下位グループに位置しており、中国(103位)、インド(108位)よりも低かったと報告している。G20で日本より低かったのは、韓国(115位)、トルコ(130位)、サウジアラビア(141位)の3カ国しかなく、この3カ国には悪いが、名誉ある地位とは言えない。

 日本の最初の男女雇用機会均等法は、*3-2のように、1985年に国連の「女子差別撤廃条約」という外圧を利用し、経済界の反対を押し切って制定されたが、男女の雇用機会均等を努力義務にまでしかできなかったため、ないよりはよいものの骨抜きの部分が多かった。そして、1997年の改正で、努力義務規定を禁止規定にしたものの、まだ骨抜きの部分があるわけである。

 また、保育所は、「(本来は母親が育てるべきものだが)保育に欠ける者への福祉」として整備されたため、十分にはなく、学童保育は存在しなかった。そのため、出産退職せざるを得なかった女性も多く、出生率は落下の一途を辿った。つまり、保育所や学童保育が十分に整備され仕事を継続できるのでなければ、仕事を辞めるか、出産を諦めるしかなかったのである。

 これに対し、現在では、将来の支え手である子どもを増やすことを目的として(これも失礼な話だが)、①男性の家事・育児参加 ②社会の子育て支援 ③働き方改革 などを主張する人が多い。しかし、両方が力いっぱい働いている夫婦で、①のように、男性が家事・育児に参加し、③の働き方改革で2人とも5時に終業しても、通勤時間を考えれば、②の社会の子育て支援だけでは過労になる。何故なら、家事は、それだけでも仕事になるくらいの労働量だからだ。そのため、*3-3のように、働く女性の数は、働き盛りの25~44歳で伸び悩んでいるわけだ。

 従って、私は、仕事と子育てを無理なく両立するには、保育所や学童保育だけでなく、家政婦の雇用や家事の外注をやりやすくすることが必要だと考えている。

2)管理職や専門職に女性より男性が選ばれる理由は何か
i)医大入試における女性差別の衝撃と社会“常識”
 *3-4-1、*3-4-2、*3-4-3のように、多くの医科大学で不正入試を行い、女子学生や多浪生を不利に扱っていたのは衝撃的だったが、特に、順天堂大学が女子を不利に扱った理由を、①女子は男子より精神的な成熟が早く、受験時はコミュニケーション能力も高いが、入学後はその差が解消されるため補正する必要があった ②女子寮の収容人数が少なかった と、説明したのには呆れた。

 このうちの①については、順天堂大学は医学的検証資料として学術論文を提出し、心理学者が、「そのような内容を主張しているわけではない心理学の論文を安易に引用するような姿勢に対して、強い懸念を表明する」という見解を発表したのが、あざやかだった。また、②ついては、東大は、現在では、日本人学生と留学生の男女が共に豊島国際学生宿舎に入れるようにして相互交流や国際交流の推進を図っているのであり、個室なら寮自体が男女別でなくてもよい上、寮に入ることが大学に行くために不可欠なことでもない筈だ。

 ただ、「女子の方が精神的な成熟は早いが、後で男子に抜かれる」「女子の方がコミュニケーション能力は男子よりも高いが、数学や論理学は男子の方ができる」などというのは、初等・中等教育でも教師がよく言うことであり、要するに、「成人では、男子より女子の方が仕事の能力が低いため、女子を教育するのは無駄だ」という結論にしたがっているわけだ。

 そして、これは、特定大学の医学部だけの問題ではなく、教育段階や企業の採用・研修・配置・昇進段階でよく出てくる女性差別の根拠となっている先入観(社会常識)であるため、女性蔑視をなくすには、この先入観を廃することに正面から向き合わなければならない。

ii)女子だけに保育園の質問するのは何故か?
 医学部専門予備校「メディカルラボ」は、*3-4-5のように、女子の合格率が低い大学は、面接で女子に厳しい質問をする傾向があり、ある大学では女子にだけ「患者がたくさん待っている時、自分の子どもが急病で保育園から呼び出されたらどうしますか」と質問をしていたとしている。

 共働き時代なので、男子にも同じ質問をしてみればよさそうだが、こういう質問の背景には、医大の入試が大学病院の勤務医採用に直結しているからであるとされ、他学部を卒業して企業の採用試験にのぞむときも同じであるのに、こちらはまだ問題にされていない。

 私自身は、「小児科のある病院に病児保育施設を設け、通院圏の保育園や学童保育で病気になった子どもは、まず全員そこに連れて行き、そこで診察した後、保護者が迎えに来るまで預かっておくシステムにすればよい」と考えるが、これは国会議員として地元の保育園を廻って、園長・保育士・親などから意見を聞いて出てきた解であるため、受験生には難しいと思われる。

iii)診療科による男女の医師の偏在と都市部への偏在
 *3-5のように、①女性医師は全員、子育てで現場を離れたり、勤務が制限されたりすることが少なくなく ②診療科で男女に偏在があり ③女性医師だけが都市に集中する というのが、仮に本当で改善できないのであれば、女性医師が戦力にならないと思われても仕方が無い。

 しかし、①は、保育所や学童保育が整備され、家政婦を雇いやすくすれば解決できる。また、②は、女性医師が少ない診療課では、女性医師を差別なく採用して活躍させているかについても検討しなければならない。さらに、③については、多くの症例を見ることができる場所に集中したがるのは、女性医師だけでなく男性医師もであるし、都市の方が都合がよいのは、子の教育や配偶者の仕事との調整もあるからで、これは女性医師特有の問題ではないと思われる。

 ただ、「軽症患者の夜間救急への対応の必要性」と言われても、本人が重症か軽症かを判断できる場合は少ないため、病院に行くことを国民が躊躇しなければならないようなシステムにするのは感心しない。私は、医療に関する問題の本質は、診療報酬を下げ過ぎたため十分な数の医師を確保することができず、働いている医師に過重な負担がかかっていることだと考える。

<人口と経済>
*1-1:http://qbiz.jp/article/112572/1/ (西日本新聞 2017年6月22日) 世界人口 2100年には112億人に 国連予測、日本は29位
 国連経済社会局は21日、世界人口が現在の76億人から2050年に98億人に増え、2100年には112億人に達するとの予測を発表した。24年ごろまでにインドが中国を抜き国別で1位となり、日本は現在の11位(1億2700万人)から次第に順位を下げ、2100年には8500万人で29位になるとした。経済社会局は最貧国での集中的な人口増加が貧困や飢餓の撲滅などを掲げた国連の「持続可能な開発目標(SDGs)」履行に向けた課題になると指摘している。予測によると、2100年のインドの人口は15億1700万人、中国は10億2100万人で、両国だけで世界人口の22・7%を占める。上位10カ国のうち、5カ国をアフリカ諸国が占めた。世界全体の平均寿命は2015〜20年の71・9歳から、95〜2100年には82・6歳まで延びる見通し。日本は84歳から93・9歳になる。女性1人が出産する子どもの平均数については、世界全体で同期間に2・47人から1・97人に減ると予想。一方で日本は1・48人から1・79人に増えると見込んだ。高齢化も進み、60歳以上の人口は世界全体で50年までに現在の2倍以上、2100年までに3倍以上になるとしている。

*1-2:http://qbiz.jp/article/146151/1/ (西日本新聞 2018年12月21日) 景気拡大「戦後最長」 12年12月から73ヵ月間に 12月の月例報告
 政府は20日発表した12月の月例経済報告で、国内景気は「緩やかに回復している」とし従来の判断を維持した。同じ表現は12カ月連続。茂木敏充経済再生担当相は関係閣僚会議で、2012年12月から続く景気拡大期が今月で73カ月(6年1カ月)に達し、00年代の戦後最長期(02年2月〜08年2月)と並んだ可能性が高いと表明した。12年12月の安倍政権発足以来の景気拡大は、来年1月で戦後最長も超えそうな情勢だが、賃金の伸び悩みで肝心の個人消費が勢いに欠け、実感は広がっていない。茂木氏は記者会見で「日本経済の基礎体力を引き上げることで回復の実感を強めたい」と述べ、人手不足の解消や生産性向上につながる政策実行に注力する考えを示した。月例経済報告は、個別項目では公共投資を「このところ弱含んでいる」として1年ぶりに下方修正。その他は一部の表現変更にとどめた。先行きを巡っては「緩やかな回復が続くことが期待される」とした上で、米中貿易摩擦など通商問題の動向や世界経済の不確実性、金融資本市場の変動などに留意する必要があると指摘した。月例経済報告の景気判断は現段階の政府見解。景気の拡大期間は、正式には専門家でつくる景気動向指数研究会がデータを分析し判定する。
   ◇   ◇
●「最長」に減速の影 賃金伸びず乏しい実感
 2012年12月からの景気拡大期が、来年1月で戦後最長を超えそうな情勢だ。ただ、かつての高度成長期とは違って経済成長率は低空飛行。アベノミクスによる円安・株高を追い風に企業業績や雇用は改善したが、賃金の伸び悩みで消費者の財布のひもは固く、好況の実感は乏しい。来年10月に消費税増税を控える中、海外経済は米中貿易摩擦などで減速懸念が強まっており、景気の先行きは予断を許さない。「名目GDP(国内総生産)が過去最大となり、企業収益も過去最高を記録した。雇用・所得環境も大幅に改善し、地域ごとの景況感のばらつきが小さいのも特徴だ」。茂木敏充経済再生担当相は20日の記者会見でこう胸を張った。大胆な金融政策▽機動的な財政出動▽成長戦略−の三本の矢を掲げたアベノミクス。日銀の大規模金融緩和が円安を誘い、堅調な海外経済を背景に輸出が拡大して企業収益が改善。12年12月の安倍政権発足前に1万円台だった日経平均株価は、2万円台まで回復した。しかし賃上げは十分でなく、GDPの半分以上を占める個人消費は力強さに欠ける。内閣府は今回の景気拡大について、名目総雇用者所得の伸びを根拠に「00年代の戦後最長期と比べ、雇用・所得環境が大幅に改善した」と説明した。だが、物価の影響を除く実質ベースの伸び率は年0・9%と、戦後最長期の年1・0%を下回っており「企業が賃上げに踏み込まない限り消費意欲も高まらない」(エコノミスト)との見方は強い。さらに、今回の景気拡大期の実質経済成長率は1・2%と低調。高度成長期のいざなぎ景気の11・5%に遠く及ばず、00年代の戦後最長拡大期の1・6%と比べても見劣りする。少子高齢化に伴う人口減が進む中、人手不足も成長を阻む要因となっており、日本経済の実力を引き上げるような構造改革を進めない限り、企業も賃上げや設備投資を進めにくい。日本が「頼みの綱」とする世界経済にも変調の兆しが出ている。目下の懸案は米中貿易摩擦。今月初旬の首脳会談で中国への追加関税が棚上げされたものの、中国通信機器大手の華為技術(ファーウェイ)副会長が逮捕されたことで再燃。中国経済には減速感も出ており、金融の引き締め局面に入った米国の景気も先行きは楽観できない。世界的な景況悪化で為替が円高に振れるなどすれば「日本にとって新たな不安材料になる」(大和総研の児玉卓氏)との懸念も出ている。
*景気拡大 経済活動が活発な状態を指す。経済は景気が改善する拡大期と悪化する後退期が交互に訪れると考えられているが、景気の流れがどちらに向かっているか判断するには時間がかかる。2012年12月から続く現在の景気拡大は昨年9月で「いざなぎ景気」を抜き、戦後2番目の長さになったが、内閣府が正式に認定したのは今月だった。

*1-3-1:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO39102650Y8A211C1000000/ (日経新聞 2018/12/19) イノベーション力、米IT突出 トヨタ11位・楽天33位、日経・一橋大「イノベーション力」ランキング
 日本経済新聞は一橋大学イノベーション研究センターと共同で、世界の主要企業の「イノベーション力」ランキングをまとめた。首位のフェイスブックやアマゾン・ドット・コムなど米IT(情報技術)企業が上位を独占。日本はトヨタ自動車の11位が最高で、次ぐ楽天とソニーが30位台だった。意思決定や収益力などで日本勢は見劣りする。新たなイノベーションの波が次々と押し寄せるなか、経営のスピードが足りない。意思決定の素早さなど革新を生み出す「組織力」、技術開発の力を示す「価値創出力」、イノベーションの種をうまく育てられるかを示す「潜在力」の3つを指標にした。QUICK・ファクトセットの決算データを使い、金融・不動産を除く時価総額の大きい国内168社、海外150社を対象に算出した。フェイスブック、アマゾン、アルファベット(グーグル)、アップルの米国勢が4位までを占めた。4社の頭文字を取った「GAFA」は時価総額や営業利益、研究開発投資、設備投資がいずれも5年前より急伸した。GAFAは人工知能(AI)や自動運転、次世代の超高速コンピューターである量子コンピューターなど産業や社会を大きく変えうる最先端技術に積極投資する。取締役は少数精鋭で、女性の登用にも熱心だ。「意思決定と事業展開のスピードを高めることにつながっている」と一橋大の青島矢一イノベーション研究センター長は説明する。日本企業のトップはトヨタ自動車の11位にとどまる。設備や研究開発への投資意欲が旺盛で、イノベーションの種を育てる努力への評価は高い。しかし、GAFAとの差は歴然としている。例えば、1位のフェイスブックと2位のアマゾンは、価値創出力に寄与する営業利益が5年間でそれぞれ3655%、417%増えた。潜在力に寄与する研究開発投資や設備投資を大幅に増やしている。成長が資金力を高め、それを将来への投資に充てて事業拡大につなげる好循環を生んでいる。20世紀にはなかった企業の成長戦略だ。平成が始まった1989年、日本企業は時価総額ランキングで上位を独占した。トヨタ自動車や現新日鉄住金、パナソニック、日産自動車、日立製作所、東芝などが入った。約30年たち、上位にいるのはトヨタだけだ。日本勢の低迷はバブル後の経済の低成長が原因ではない。高品質の製品を量産する「日本流」の行き詰まりがある。日本企業は中核部品の開発や作り込み、完成品の組み立てまで自前主義と完璧主義にこだわった。イノベーションが既存技術の延長線上にあった時代には大きな武器だった。だが、イノベーションの条件は一変した。GAFAに代表される新興企業はスピード重視だ。必要な技術は他社から調達して素早く事業化、不完全でも投入して市場の反応を待ち改良する。次々に新事業の開始と閉鎖を繰り返し正解を見つける。こうした手法で社会に欠かせない商品やサービスを作り上げた。日本を代表するものづくり企業も手をこまねいているわけではない。「モビリティカンパニーに変わるために、ソフトバンクとの提携は不可欠」。10月4日、東京都内で開いた記者会見で、トヨタの豊田章男社長はこう語り、ソフトバンクグループの孫正義会長兼社長と固く握手した。両社は自動運転など移動サービス事業で手を組んだ。世界では自動車・IT企業が手を組み、自動運転技術の開発にしのぎを削る。実現にはAIや半導体といった技術だけでなく、ライドシェアなどのサービスや地図データも欠かせない。トヨタは電気自動車向けの次世代電池の開発にも取り組んでいるが、次世代の自動車に必要な要素を押さえるには自前主義では時間がかかりすぎる。パナソニックは津賀一宏社長の号令下、あえて未完成品を世に出す計画だ。スピード感を重視するシリコンバレー流の改革に取り組む。完璧な製品を志向すると投入したころには、市場を席巻されている。問題が残っても先に進める手法を取り入れる。日本マイクロソフト会長などを務めた樋口泰行専務役員ら、スピード経営を体感した幹部が主導する。
*調査の概要 イノベーション力は公開されている決算データから、3つの指標についてスコアを測定した。海外企業も含めて公開されている最新の決算データを使い、日本企業は2018年3月期を基本にした。「組織力」は外部取締役や女性取締役の割合が高いほど経営陣の多様性があり、市場変化に機動的に対応できると判断。役員の数が少なくて平均年齢が低いほど組織運営が柔軟で、意思決定が速いと評価した。「価値創出力」は株式の時価総額や営業利益、売上高に占める営業利益の比率、海外売上高比率などで構成。それぞれについて5年前との変化率を加味した。「潜在力」は研究開発投資や設備投資、販売管理費とそれぞれの5年前からの伸びを踏まえて点数をつけた。一橋大学イノベーション研究センターの青島矢一センター長、和泉章教授、江藤学教授、軽部大教授、清水洋教授、延岡健太郎教授(現大阪大学教授)、大山睦准教授、中島賢太郎准教授、カン・ビョンウ専任講師の協力を得た。

*1-3-2:http://qbiz.jp/article/146749/1/ (西日本新聞 2019年1月8日) 大手電力、洋上風力に熱 低コスト・需要見据え積極投資 開発には地元の理解が鍵に
 東京電力ホールディングスや九州電力などの大手電力が、洋上風力発電への積極的な投資に動きだした。洋上は陸上と比べて安定して風が吹き、低い経費で発電が可能だ。「再生可能エネルギーに消極的」という、大手電力のイメージを変える効果にも期待をかける。漁業関係者など地元の理解を得られるかが開発の鍵を握る。東電は昨年11月、千葉県銚子沖で大規模な洋上風力を建設するため、地盤調査を始めた。風力事業推進室の井上慎介室長は「風が安定して吹き、風力発電の支柱を立てるのに適した浅い海が広がっている」と話す。洋上は陸上と違い、一つの区域に集中して風力発電機を設置することができるのも利点だ。将来的には火力発電より発電コストを低減することができるとする見方もある。東電は条件が整えば最大100基程度を数千億円かけて建設し、合計の出力を原発1基相当の100万キロワットにすることも可能だと説明する。銚子沖を含め、今後10年間で200万〜300万キロワットの洋上風力を建設する目標を掲げる。他の大手電力の投資も活発だ。九州電力は西部ガス(福岡市)などと、北九州港で出力約22万キロワット、事業費1750億円の計画を進めており、2022年の着工を予定する。東北電力と関西電力、中部電力の3社は秋田県内の能代港と秋田港の計画に参画している。企業や家庭には環境に配慮し、再生エネでつくった電気を買いたいという需要が増えるとみられる。経済産業省や東電によると、再生エネの固定価格買い取り制度によって営業運転している洋上風力は、長崎県五島市沖の1基(出力1990キロワット)と東電の千葉県銚子沖の1基(同2400キロワット)。一方、計画中の洋上風力の出力を合わせると全国で計500万キロワット程度になるという。国も法制度を整備して後押しする。昨年11月に成立した洋上風力発電普及法は、自治体や漁協が参加する協議会で調整した上で、国が「促進区域」を指定し、最大30年間にわたり発電を許可することが柱だ。大手電力幹部は「新法で漁業などの利害関係者との調整ルールが明確化され、長期にわたり海域が利用できるため、投資計画が立てやすくなる」と話している。洋上風力発電 海上に設置した巨大な風車で電気をつくる再生可能エネルギー。電気は海底ケーブルで陸地に送る。海底に固定した土台の上に風車を設置する「着床式」と海上に風車を浮かべる「浮体式」がある。着床式が世界の主流で、遠浅の海域が広い欧州が先進地域。一つのプロジェクトで総出力100万キロワット規模の大型計画も具体化している。

*1-3-3: https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190107&ng=DGKKZO39689860W9A100C1MM8000 (日経新聞 2019年1月7日) 再生医療、商用段階に、患者2500万人の膝治療で実用化
 再生医療(総合経済面きょうのことば)が商用化の段階に入る。高齢化などに伴う膝関節の病気に企業が相次いで再生医療を応用する。グンゼは軟骨の再生を促す素材を欧州で発売。オリンパスや中外製薬は培養した軟骨を使う方法の実用化を急ぐ。膝関節の病気は日本人の5人に1人が患うため、その治療は再生医療の本丸と目されている。治療法が浸透し関連産業が活性化すれば、再生医療で日本が世界をリードする可能性もある。再生医療は人体の組織や臓器を再生し機能を取り戻す技術だ。実用化で先行したのは皮膚や心臓などの治療。重いやけど患者は年5千人で、うち60件程度が再生医療技術を治療に生かしている。経済産業省は、2012年に2400億円だった世界の再生医療に関連する市場規模が、30年には20倍超の5兆2千億円に拡大するとしている。今回、各社が着目するのは膝関節の病気「変形性膝関節症」。潜在患者数は高齢者を中心に国内だけで2500万人いるとされる。これまでは手術で人工関節を導入するしか根治する方法はなく、症状の重い年8万人が手術を受けていた。患者数が多い病気に再生医療を応用することで、市場が一気に広がりそうだ。グンゼは1月、軟骨再生を促す繊維シートを欧州で発売する。手術で軟骨に傷をつけると、軟骨のもとになる細胞や栄養分がしみ出す。シートがそれらを取り込み軟骨を立体的に再生する。日本では20年にも臨床試験(治験)を始める。オリンパスは1月、患者の軟骨を培養し体内に戻す治験を国内で始める。23年3月までに承認申請する。中外製薬も、スタートアップのツーセル(広島市)と組み、国内で最終段階の治験を進めている。21年にも承認を得たい考えだ。旭化成は18年10月、京都大学などから、けがで傷ついた軟骨の治療にiPS細胞を使う権利を獲得した。欧米ではスタートアップ企業が再生した軟骨を販売しているケースもあるが、日本企業はより多様な治療法の研究を手がけている。膝軟骨以外にも再生医療の研究が進む。既存の治療手段に乏しい神経細胞の分野がその一つで、このほどニプロが開発した治療用の細胞が、脊髄損傷向け再生医療技術として国に承認された。患者数が多い心不全の治療への応用研究も活発で、慶応大学発スタートアップのハートシードなどが治験を目指している。再生医療で臓器や組織を再生できれば、治療にとどまらず、老化して機能が衰えた臓器の置き換えも可能だ。生活の質を向上させ、寿命を延ばすと期待されている。これまで再生医療が普及しなかったのは、細胞を注入する手術が難しかったり、効果が十分に確認できなかったりしたからだ。富士フイルムホールディングス傘下のジャパン・ティッシュ・エンジニアリング(J―TEC)が12年から培養軟骨を販売するが、手術が難しく18年3月期の販売額は約3億円(約150件)にとどまる。ただ、ここにきて各社は手術を大幅に簡略化している。今後は公的な保険でカバーできる範囲に治療費を抑えることなどが課題となりそうだ。

*1-3-4:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190109&ng=DGKKZO39787730Y9A100C1EA1000 (西日本新聞 2019年1月9日) オプジーボの対価「桁違い」、本庶氏と小野薬、食い違い生んだ契約
 がん免疫薬につながる基礎研究でノーベル賞を受賞した本庶佑・京都大学特別教授と「オプジーボ」を実用化した小野薬品工業。産学連携の類いまれな成功事例だが、対価を巡る仲たがいが影を落とす。背景には両者が交わした契約があった。「小野薬は研究自身に全く貢献していない」(本庶氏)。「我々の努力や貢献もあった」(相良暁社長)。2018年10月の授賞決定後、お祝いムードに水を差す両者の応酬に注目が集まった。
●水掛け論の発端
 本庶氏は「論文に小野薬の研究員の名はない。彼らの言う貢献は『金を出した』という意味だ」と主張。一方で小野薬は本庶氏の恩師の早石修京大教授(故人)の紹介で30年以上、研究員を本庶氏の元に派遣し資金提供してきた。今も毎年5000万円を寄付する。水掛け論でいがみ合うきっかけは、02年に共同出願した特許だ。本庶氏らは91年に発見した遺伝子「PD―1」の機能阻害でがんを治療できる可能性を示した。本庶氏は当初、京大に出願を要請したが、知的財産に関心が薄かった京大側は「(特許を維持する)費用を負担できない」として拒否。小野薬と共同出願した。小野薬は05年、米企業と共同開発を始めることになり、本庶氏と小野薬は1つの契約を結ぶ。これが今に至るまでこじれる原因となる。契約では発明の使用を小野薬に独占的に認める専用実施権と、本庶氏が受け取る対価の料率などを決めた。両者とも具体的な内容は明らかにしていない。本庶氏は「後から見ればとんでもない契約で相場に比べて対価の料率が1桁小さかった」と憤る。大学の研究者では交渉力は弱かった。さらに契約に含む特許の範囲で両者の食い違いも判明。本庶氏は再交渉を迫り小野薬も応じかけたという。そんなときに事態が急変する。米メルクが14年にPD―1の仕組みを応用したがん免疫薬「キイトルーダ」を発売、特許侵害が表面化したからだ。小野薬は共同開発した米ブリストル・マイヤーズスクイブとともに特許侵害を提訴。本庶氏もデータ提出や証言などで貢献し、メルクは特許を認める内容で和解した。ぎくしゃくする両者が他社の特許侵害で共闘する格好になった。本庶氏は事前に小野薬に訴訟協力の対価を求めて「新しい提案があった」という。小野薬はメルクから100億円を超える一時金と売り上げの一部を受け取った。ただ新提案の合意に至らず本庶氏は不信感を募らせる。一方で小野薬は当初の契約に基づいて対応しているとの立場だ。リスクを負って世界初の治療薬を生み出した自負もあり後出しで膨らむ要求に応じる前例は作りたくない。契約内容を含めて相良社長は取材に「今は回答したくない」と答えた。
●売上額4兆円も
 こじれる両者の関係をよそに、がん免疫薬の売り上げはうなぎ登りだ。小野薬とブリストル、メルクだけでなく、類似のがん免疫薬が相次いで発売。24年の売上額は年4兆円との試算もある。本庶氏と小野薬の特許が利用されれば、小野薬に巨額の対価が入る。本庶氏は18年12月、若手研究者を支援する「本庶佑有志基金」を京大内に立ち上げた。ノーベル賞の賞金に加えがん免疫薬の対価も充てる考え。「仮に年4兆円の売り上げで0.5%の料率なら5年で1000億円だ」(本庶氏)。小野薬側は若手研究者の支援には賛成しているが、基金へ協力する意思表明はまだない。研究者支援は国の役割で、営利企業は収入を自社の研究開発や株主還元に使うのが本来だ。株主の意向を見極める必要がある。契約した当時と比べて、大学と企業の関係は変わった。政府は大学に対する企業の投資を3倍に増やす目標を掲げ大学に「特許で稼げ」と迫る。ただ大学の交渉力は弱く、企業と対等な契約ができるかは心もとない。京大の産学連携担当者は「本庶先生は大学と企業の今後の関係を対等にするためにも、譲歩せず小野薬と交渉を続けるだろう」と語る。共存共栄のための産学連携の新しい仕組みづくりが急務だ。

*1-3-5:http://qbiz.jp/article/146817/1/ (西日本新聞 2019年1月9日) 2019 新時代へ トップインタビュー(4)
●地域に応じ最適解を JR九州 青柳俊彦社長
−人口減少が進む中、鉄道事業の収益改善が課題となる。
 「鉄道は設備の保守点検が宿命で、維持費用を下げつつ安全性、信頼度を高めることが大事。一方で自動運転技術も無視できない。踏切がない場所であれば導入も難しくない。外部で開発、導入されている技術を引き続き勉強していく」「タクシーや乗り合いバスなどとの融合も検討する。地域や利用者にとって一番いい方法を探る。(一部不通が続く)日田彦山線は鉄道での復旧を目指し、自治体との協議を進める」
−2019年度から新しい中期経営計画がスタートする。
 「今までの成長をさらに高め、伸ばす計画を策定中だ。10年後のJR九州の姿を描く。新たな時代に合わせて情勢は変わるだろうが、われわれの柱はやはり鉄道と不動産だ」
−熊本や宮崎、長崎など九州各地で駅ビル開発が続く。
 「長年『沿線人口を増やす』を合言葉に、九州全体の発展を考えてきた。商業施設だけでなく、オフィスやホテル、大型コンベンション(MICE)施設など、国内外での経験を生かした開発に積極的に取り組む」
−福岡市でも博多駅周辺や博多ふ頭ウオーターフロント地区の再開発計画がある。
 「駅ビルでの集客実績は着実に積み上げている。特に博多駅周辺は街が広がって、にぎわいが増した。(博多駅と博多港地区を結ぶ)ロープウエー構想など、人を運ぶ点にも強みがある。大型の再開発案件を取れなかった昨年の反省を踏まえ、志をともにする企業と連携して、街づくりに貢献したい」
   ◇   ◇
●海外事業成長の柱に 西日本鉄道 倉富純男社長
−昨年は福岡市都心部の大名小跡地や福ビル街区、博多区の青果市場跡地など、大きな再開発計画に次々と着手した。
 「これまで西鉄が積み上げてきた信頼の力が発揮された1年だったと思う。新しい時代も汗をかくことの重要性は変わらない。グループ全体で結束し、大型プロジェクトを進めていく」
−運営会社に参画する福岡空港が4月に完全民営化される。
 「国内線と国際線の連絡バス停留所に、電子表示で外国語にも対応する『スマートバス停』を導入するなど、できることから利便性を改善する。滑走路が2本に増える2025年に向け、商業やホテル機能の計画を前のめりで固めていく」
−今後の重点分野は。
 「成長の柱は海外だ。東南アジア諸国連合(ASEAN)地域でのマンションや一戸建て住宅のほか、付随する商業施設なども増やしていく。国内外での観光需要取り込みも重要で、ホテルも年に1、2棟は着実に開発していきたい」
−天神大牟田線の雑餉隈駅(福岡市博多区)や春日原駅(福岡県春日市)の高架化、駅前開発を進めている。
 「次世代型開発の答えの一つは三国が丘駅(同県小郡市)だ。スーパーや病院、医療・介護サービス付きマンションなど、シニア世代に必要な機能が近距離にまとまっている。その地域での暮らしを快適にすることで、沿線人口を増やしたい」
−進む人手不足への対策は。
 「モニターやセンサーを活用して保線作業の機械化を進めるなど、最適な技術導入や効率化が大事だ」

*1-4:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20181228&ng=DGKKZO39456300X21C18A2EE8000 (日経新聞 2018年12月28日) 年金改革、女性・高齢者に的 来年に財政検証、保険料増へ加入対象拡大
 厚生労働省は2019年、公的年金の財政検証を実施する。当面の年金財政は健全だと確認する見通しだが、支給の長期的な先細りは避けられない。これを受け検討する制度改正では、働く女性と高齢者が焦点だ。パート社員への厚生年金適用や、70歳超からの受給開始も選べるようにし、保険料収入を増やす。一方、支給開始年齢の一律引き上げなど抜本改革は見送られる可能性が高い。財政検証は5年に1度実施する。人口構成や経済情勢の変化に合わせ、将来の年金財政の収支見通しなどを作る。「100年安心」をうたった公的年金の定期健康診断という位置づけだ。検証の結果、5年以内に所得代替率(現役の手取り収入に対する年金額の比率)が50%を下回ると見込まれる場合、給付減額や保険料率の引き上げが避けられなくなる。14年に実施した前回の財政検証では、安定して経済成長する「標準ケース」で43年度に所得代替率が50.6%になるという結果だった。足元の景気は緩やかに回復しており、19年の検証でも5年以内に50%を下回る試算は出ない見込みだ。ただ、年金財政を長期にわたり維持できるかの不安は残る。次の制度改正では、年金支給の財源となる保険料を増やす取り組みに軸足を置く。実施することが確実な具体策の一つは、年金の受給開始年齢について、70歳を超えてからも選べるようにすることだ。今の制度は65歳が基準で、60~70歳の間であればいつから年金をもらうか選択できる。健康寿命が延びて、働く高齢者が増えているのを受けた制度見直しといえる。年金は受け取り始める年齢を遅らせるほど、月当たりの支給額が増えるという仕組みだ。70歳で受け取り開始なら、65歳より4割程度増える。制度改正で高齢者の就労がさらに増えれば、年金の保険料収入が増える。働く女性を念頭に、パート労働者の厚生年金加入も促す。今の制度は(1)従業員501人以上の企業で就労(2)労働時間が週20時間以上(3)賃金が月8.8万円以上――などを満たす人が適用対象だ。この基準を引き下げ、厚生年金に加入する短時間労働者を増やしていく方向で検討が進む見通し。ただ、長い目で公的年金財政の持続性を高めるには(1)支給開始年齢(2)保険料率(3)支給額――の見直しを一体的に実施することが不可欠との見方が少なくない。厚労省は支給開始年齢を一律に引き上げなくても、人口減少などに応じて給付を抑える「マクロ経済スライド」で、将来にわたり年金財政を維持できるとの立場だ。ただ、同スライドを過去に発動したのは1度きり。海外では支給開始年齢を60歳代後半にしている国も多く、有識者の間では一律引き上げを検討すべきだとの意見が根強い。

<改正入管難民法>
*2-1:https://digital.asahi.com/articles/ASLDS3575LDSUTIL003.html?iref=comtop_list_pol_n03 (朝日新聞 2018年12月25日) 外国人労働者、介護など14業種で受け入れへ 閣議決定
 政府は25日、来年4月からの外国人労働者の受け入れ拡大に向けて、新在留資格「特定技能」の枠組みを定めた「基本方針」と、業種ごとに人数などの詳細を決めた「分野別運用方針」を閣議決定した。介護や建設など14業種での受け入れを決め、来年4月からの5年間で最大34万5150人がこの在留資格を得ることを見込む。閣議に先立って開かれた関係閣僚会議では、外国人の受け入れや共生のための「総合的対応策」の最終案を決定。安倍晋三首相は「外国人が日本で働いてみたい、住んでみたいと思えるような制度の運用、社会の実現に全力を尽くして下さい」と指示をした。この日決定された内容で、政府が出入国管理法の国会審議で「成立後に示す」としてきた新制度の全体像を示す「3点セット」が出そろった。ただ、検討中の施策や抽象的な表現にとどまる取り組みも少なくなく、来春からの実効性は不透明だ。政府は年内に基本方針や分野別運用方針の内容などが反映された政省令についてパブリックコメントの募集を始め、来年3月に公示する方針だ。相当程度の技能が必要な「特定技能1号」の資格を得るには、技能試験と日本語試験に合格しなければならない。基本方針には、全ての業種に共通する内容として、外国人労働者が大都市に集中するのを防ぐ▽悪質なブローカーを介在させない▽外国人の給与は日本人と同等額以上にする――などが盛り込まれた。分野別運用方針には、14業種ごとの、来年4月からの5年間の最大受け入れ見込み人数が明記された。最多は介護の6万人、最少は航空の2200人。技能試験と日本語試験を来年4月から実施するのは介護と宿泊、外食の3業種で、他の11業種は来年度中に実施予定。当面は、試験を受けずに在留資格を変更できる技能実習生が担い手の中心となりそうだ。熟練した技能が必要な「特定技能2号」を活用するのは建設と造船・舶用工業の2業種。技能試験に合格するだけでなく、一定期間の実務経験も必要だ。新設される技能試験は2業種とも、21年度に実施される予定という。

*2-2:http://qbiz.jp/article/146287/1/ (西日本新聞 2018年12月25日) 改正入管法 政府方針を決定 5年間で最大34万5150人受け入れ
 政府は25日、改正入管難民法に基づく外国人労働者受け入れ拡大の新制度について、基本方針などを閣議決定し、全容を固めた。深刻な人手不足を理由に、高度専門職に限っていた従来施策を変更。特定技能1号、2号の在留資格を新設して単純労働分野にも広げ、来年4月から5年間で最大34万5150人を受け入れる。外国人が大都市圏に集中しないよう措置を講じるとしたが、地方との賃金格差などを埋める施策を打ち出せるかどうかが課題だ。閣議で受け入れ見込み数などを記載する分野別運用方針、関係閣僚会議で受け入れの環境整備施策をまとめた総合的対応策も決定した。基本方針では、受け入れの必要性を具体的に示すよう関係省庁に要請。対象は14業種で、見込み数は大きな経済情勢の変化がない限り上限として運用する一方、必要に応じて見直し、受け入れ停止を検討することも記した。

*2-3-1:https://www.agrinews.co.jp/p46156.html (西日本新聞 2018年12月18日) 外国人就労で政府案 農作業全般 可能に 雇用側「経験」が要件
 改正出入国管理法(入管法)に基づく外国人労働者の新たな受け入れ制度で、農業分野の制度詳細を盛り込む運用方針、運用要領の政府案が17日、判明した。外国人は栽培管理から集出荷、加工、販売など、生産現場の全般の作業に携われるとした。農家など受け入れ側の要件としては、雇用労働者を一定期間以上受け入れた経験があることなどを盛り込んだ。農業の運用方針などの案は、農水省を中心に関係省庁で策定。19日の自民党農林合同会議で審議した上で、政府は年内に正式決定する。受け入れ人数の見込みは、5年間で最大3万6500人とした。農相は、実際の受け入れがこの人数を超えそうな場合は法相に受け入れ停止を求める。事実上の受け入れ上限の位置付けだ。外国人の業務としては、作物の栽培管理や家畜の飼養管理をはじめ、JAなどの施設での作業を念頭に集出荷、選別作業を位置付ける。運用方針を受けて、さらに細かな内容を盛り込む運用要領の案には、農畜産物の製造・加工、販売、冬場の除雪など外国人と同じ職場で働く日本人が通常従事している作業も、付随的に担えることも定める。外国人の受け入れ形態は、農家など受け入れ側の直接雇用か、人材派遣業者を通じた受け入れとする。直接雇用の場合は一定期間以上、労働者を雇用した経験があることが条件。派遣業者を通じた受け入れの場合、一定期間以上の労働者の雇用経験か、人材派遣に関する講習などの受講者を責任者として配置することが必要とした。新制度による就労では、3年間の技能実習の修了者以外は、一定の技能や日本語能力を問う試験への合格が求められる。技能を問う試験の実施主体は公募で決めるが、全国農業会議所が務めることを想定。日本語の能力試験では、難易度の区分で下から2番目の、基本的な日本語を理解できる「N4」以上の水準を求める。

*2-3-2:http://qbiz.jp/article/146551/1/ (西日本新聞 2018年12月30日) TPP発効 九州農家「組織化」で対抗 輸入増、競争激化に危機感
 環太平洋連携協定(TPP)が30日発効、海外産の安い農産物の輸入が一層拡大することが予想される。農家は競争激化へ危機感を強め、組織化などで対抗する動きを強めている。福岡県産ブランド「博多和牛」の品質向上を図ろうと、県肉用牛生産者の会(肥育農家70戸)と県和牛改良協議会(繁殖農家51戸)などは11月、「福岡県肉用牛振興協議会」(福岡市)を発足させた。福岡県内では、子牛を誕生させて一定期間育てる繁殖農家と、子牛を買い取って出荷まで育てる肥育農家はつながりが希薄だった。協議会は合同研修などを通じ、飼育環境や飼料に関する情報交換や連携を強化。誕生から出荷まで地域で一貫的に行う形を築き、品質向上につなげたい考えだ。農林水産省はTPP11発効に伴い、牛肉の国内生産額が約200億〜約399億円減少すると試算。協議会会長で博多和牛を生産する堀内幸浩さん(45)=福岡県朝倉市=は「海外からの牛肉は赤身で、霜降りが中心の和牛と激しく競合するとは考えていないが、国際的な競争が強まるのは必至。その中で博多和牛が生き抜くためには質向上は欠かせない」と強調する。熊本県宇城市の酪農家川田健一さん(50)は2016年、同市や熊本市の酪農家4人で株式会社「うきうき」(宇城市)を設立した。乳牛の飼料となるトウモロコシの収穫作業を地域の酪農家から請け負うのが主業務だ。飼料収穫機などの大型機械は自己資金に加え国の補助金、JAからの借り入れで確保。18年は6酪農家の計約33ヘクタールを請け負った。設立のきっかけは酪農家の高齢化や人手不足。牛舎での作業以外に、農地での作物栽培などを行うのが難しくなり、牛ふんの堆肥活用ができず処理に苦慮するという悪循環が見られるようになったためだ。農水省試算では、TPPによる牛乳・乳製品の生産額減少は約199億〜約314億円。うきうきの社長を務める川田さんは「今後は廃業する酪農家の乳牛や施設を引き受けることも考えている。組織化によるコスト削減の強みを発揮し地域の酪農を守りたい」と表情を引き締める。

*2-3-3:http://qbiz.jp/article/146690/1/ (西日本新聞 2019年1月6日) 農林業担い手育成へ国際専門校 九州定住、海外販路狙う 大分県内に来年にも アジア出身者ら対象
 政府が外国人労働者の受け入れ拡大を図る中、アジア出身の留学生らを人手不足にあえぐ農林業の担い手に育成する専門学校「アジアグローカルビジネスカレッジ」(仮称)の設立計画が大分県内で進んでいることが分かった。2020年にも開校予定。若者の就業・地元定住を促し、国際ビジネスの創造や海外販路の拡大も狙う。こうした農林業の国際専門学校は全国的に珍しい。昨年11月に発足した設立準備委員会は、九州の農林事業者、学校法人、企業、大学教授、中国の貿易業者らで構成。大分県内の空き校舎を活用し、九州の若者のほか、今後提携するアジアなど10カ国の農業高校の卒業生らに呼び掛ける。総定員は180人、半数程度は留学生を想定している。計画では「グローカル学科」に(1)スペシャリストコース(2)マネジメントコース(3)ビジネス創造コース−を設置。(1)ではコメやユズなど休閑地を活用した九州の特産農作物の栽培や無人の農林業ロボットの操作、(2)では農林業法人の経営ノウハウを学ぶ。(3)は農作物を海外に販売できる人材の育成を目指し、中国・上海やシンガポールなどのバイヤーとウェブ上で交渉する実践的な授業をする。留学生はコース選択の前に1年半〜2年、日本語学科で日本語や商用英語などを学ぶ。卒業生の進路は、農林業法人への就職のほか、耕作放棄地や高齢化した農家の田畑を活用した農林業法人の設立、地元農産品を留学生の母国向けにネット通販する貿易業の起業などを想定。韓国・大邱市の永進専門大や中国・四川省の四川農業大との提携が内定、交換留学も行いたいという。農林水産省によると、15年の九州の農業就業人口は32万7624人で、1990年の4割ほどに減少。このうち30歳未満は9747人と、90年の2割以下に落ち込んでいる。一方、厚生労働省によると、農業に従事する外国人技能実習生は2万4039人(17年10月末現在)。改正入管難民法に基づき、政府はさらに農業分野の外国人労働者の受け入れを拡大する方針。専門学校は新設される在留資格にも対応する授業を目指す。設立準備委の関係者は「卒業生の8割に、九州の農林業に定着してもらうのが目標」としている。
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●農林業のプロ育成目指す 九州農業けん引期待
 日本の農業現場が高齢化や人手不足に陥る中、政府は外国人労働力の受け入れに前のめりになっている。大分県内で2020年の開校を計画する国際専門学校「アジアグローカルビジネスカレッジ」(仮称)は、単に人手不足解消という狙いだけでなく、海外販路開拓も含め、「農業王国」九州をリードする人材の育成も目指している。農林水産省によると、九州各県の農業就業人口(2015年)は、福岡5万6950人(1990年比58・8%減)▽佐賀2万6244人(同63・7%減)▽長崎3万4440人(同57・2%減)▽熊本7万1900人(同54・5%減)▽大分3万5208人(同60・6%減)−と、大幅に減っている。後継者確保に悩む農家も多い。外国人受け入れ拡大に向け、政府が昨年12月25日に閣議決定した分野別運用方針は、農業分野では「雇用就農者数が現時点で約7万人不足」し、「基幹的農業従事者の68%が65歳以上」といった課題を明記した。4月に創設される新たな在留資格のうち「特定技能1号」では農業分野で最大3万6500人を受け入れる方針だが、在留期間は通算5年。家族帯同が認められ、在留期限を更新できる「技能2号」は「農業分野では、現時点で導入予定はない」(法務省入国管理局)という。アジアグローカルビジネスカレッジは留学生の卒業後の進路として、九州の耕作放棄地を利用した農林業法人や、農産物の海外販売を手掛ける貿易法人の起業など、より専門性の高い「農林業のプロ」を想定。在留期限を更新できる在留資格「経営・管理」などを取得してもらう。設立準備委員会の関係者は「長期間にわたり九州の農業を引っ張るような高度人材の育成につなげたい。母国に戻り、活躍するグローバルな人材も送り出したい」としている。

*2-4:https://www.agrinews.co.jp/p46244.html?page=1 (日本農業新聞 2018年12月26日) 外国人材 介護現場で活躍 欠かせぬ戦力に 資格取得にも意欲的 JA愛知厚生連足助病院
 全国の介護現場で外国人が活躍している。来年4月施行の外国人労働者の新たな受け入れ制度では、全職種の中で介護分野が最多人数となる見込みだ。経済連携協定(EPA)で3人の外国人を受け入れ、現場の戦力になっているJA愛知厚生連の足助病院(豊田市)の現場から、メリットや課題を探る。介護医療院を運営する同病院では、フィリピン出身の女性3人が勤務している。双子のヘロナ・アケミさん(24)、ユミコさん(24)姉妹は、2016年に着任した。職員から介護技術や日本語の指導を受け、介護福祉士国家試験合格を目指している。2人は、ホールで昼食を取る利用者に「おいしいですか」「ゆっくり食べてくださいね」と日本語で優しく声を掛ける。利用者の女性は「頑張っているから応援したくなる」と話す。2人は着任前の研修で日本語を勉強してきたが、利用者の方言に苦戦している。アケミさんは「『えらい』という言葉が『とても』の意味で使われるのが分からなかった」と苦笑い。分からない言葉は、職員に尋ねて地道に語彙(ごい)を増やしている。2人はフィリピンの大学で介護を勉強した。「フィリピンでは誰でもできる仕事と捉えられがちで、介護施設も少ない。プロフェッショナルとして働ける日本は魅力的だ」と口をそろえる。「利用者に家族のような温かい介護ができるようになりたい」と前を向く。介護医療院の松井孝子課長は「現場では、日本人の新人と同じようにチェックリストを使って教えている。利用者に丁寧に接し、良い印象を持たれている」と評価する。同病院が外国人を受け入れたのは、介護人材の確保が難しくなっているためだ。看護部の大山康子部長は「地元の高校生が就職する場合、市の中心部の企業に就職する傾向が強い。好景気が続く中、介護職に就く人は少ない」と話す。定年退職した職員を再雇用し人材を確保しているが、中堅、若手の層が薄い。14年、同病院に初の外国人人材としてエンピス・ラブジョイ・パルシアさん(25)が着任した。住む場所も同病院が用意し、ベッド、テレビ、自転車などは、職員が持ち寄り提供した。正月は和服を着る体験会を開き、日本文化に親しめるよう心掛けた。現場での実習に加え、過去の試験問題を解く練習を繰り返すよう指導。ラブジョイさんは18年に国家試験に合格。アケミさんとユミコさんは20年の合格を目指す。同病院では、今後も外国人人材の受け入れを続ける予定だ。大山看護部長は「意欲がある若手人材は貴重だ。3人が頑張る姿を見て、受け入れてよかったと言う職員も増えた」と話す。一方で「日本と海外では介護のやり方が異なる。日本の介護のノウハウを習得したいと考える人材でなければ、現場での活躍は難しい」と説明する。
●安心できる環境づくりを
 外国人介護人材を研究する聖徳大学心理・福祉学部社会福祉学科の赤羽克子教授の話
介護現場での外国人登用は拡大し続けるだろう。新たな受け入れ制度が始まれば、さらに加速するはずだ。一方で、来日して介護福祉士の資格を取得しても、孤独を感じて帰国した例がある。外国人同士のコミュニティーづくりの支援が必要だ。先進国を中心に介護分野の外国人の受け入れが進んでいる。就労のハードルが高い日本を避け、他国に人材が流れる恐れもある。外国人が技術をしっかり習得し、安心して生活を送れる環境を整えなければならない。
<メモ>外国人介護人材の受け入れ 
 EPAに基づく受け入れが08年度から始まり、現在はインドネシア、フィリピン、ベトナムの3カ国が対象。17年度までに3529人を受け入れた。介護福祉士候補者として介護施設で就労しながら、資格取得を目指す。他にも、介護福祉士資格を取得した留学生に対する在留資格、技能実習の制度がある。来年4月には、改正出入国管理法(入管法)に基づく新たな受け入れ制度が始まり、国は5年間で5、6万人の人材確保を見込む。

*2-5:http://qbiz.jp/article/146225/1/ (西日本新聞 2018年12月22日) 外国人就労促進へ力 関係省庁予算案 環境整備や技能評価
 来年4月に始まる外国人労働者の受け入れ拡大に向け、関係省庁の2019年度当初予算案が出そろった。相談窓口の設置など、受け入れ環境の整備に重点が置かれたほか、技能や日本語評価のための試験実施に向けた予算措置が目立つ。厚生労働省は、受け入れた外国人の雇用状況を確認するための視察や、受け入れ先の改善指導といった体制整備に8億1千万円を計上した。外国人が安心して医療機関にかかれるよう、病院の多言語化支援に17億円を確保。介護現場で働く人が円滑に利用者や他の従業員となじめるよう、日本語や介護技能を学ぶ研修費用などに11億円を充てる。諸外国でも外国人労働者の活用が進んでいる。外務省は将来的な人材の獲得合戦を見据え、海外での日本語教育事業として10億3千万円を計上。現地での日本語教師の育成や教材の開発を行う。文部科学省は、全国50程度の都道府県や政令市を対象に、日本語教育が必要な外国人を把握するための調査費や、各地域に日本語教室をつくってもらうための補助事業費として4億9700万円を見込む。熟練した技能を持つ人に限定した在留資格「特定技能2号」では家族の帯同が認められている。連れてきた子どもに対する就職相談や地域での居場所づくりに取り組む公立高校への補助事業費に1億円を充てた。国土交通省は、建設分野での受け入れ環境整備に2億2400万円を確保。現在の緊急受け入れで不適切な賃金支払いや過重労働が問題化したため、受け入れ業者の実態調査を強化する。航空業界では、今後整備士の大量退職が見込まれ、外国人の受け入れに期待が高まる。海外での整備士養成の現状を調べる費用として1800万円を計上した。日本を訪れる外国人観光客は今年初めて年間3千万人を超え、東京五輪に向けてさらなる増加が見込まれる。観光庁は、観光を担う人材確保に向けて1億4400万円を計上。宿泊業での雇用環境を整えるため、外国人向けセミナーの開催や教材開発を行う。経済産業省は、業界団体を対象に、外国人の労務管理や生活指導のノウハウを伝えるセミナー開催などのため1億円を充てた。農林水産省は、農業と漁業、飲食料品製造業、外食業の4分野で、知識や技能評価のための現地試験を実施する。試験問題作成や、会場設営を支援するために3億5千万円を確保した。法務省は、全国100カ所に多言語で応じる生活相談窓口を設置するため、自治体に20億円(うち10億円は18年度補正予算案)の交付金を配分する。出入国在留管理庁新設に当たり、18年度補正予算案には13億5200万円も盛り込んだ。

*2-6:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20181228&ng=DGKKZO39485570X21C18A2EA1000 (日経新聞 2018年12月28日) 外国人と働く(4) 一律対応は通用しない
 「滞納していた保険料を分けて払いたい」訪日外国人や忘年会の会社員でにぎわう東京・歌舞伎町の新宿区役所本庁舎。4階の医療保険年金課の窓口には、12月に入ってもこんな問い合わせをする外国人が足を運ぶ。国民健康保険(国保)の手続きを管轄する部署の課長、村山透(56)は「留学生の来日が集中する4月と10月は外国人が殺到する。12月はすいている方だ」と明かす。区内には12月1日現在、約4万3600人の外国人が暮らしている。中国や韓国、欧米、アフリカなど出身国・地域は計140弱。「日本で一番助かるのは病院にかかりやすいこと」(中国人の女子留学生、20)との声がある一方、月額数千円程度の保険料が未払いの外国人も増加傾向だ。区は4月、納付を促す催告書にベトナム語とミャンマー語、ネパール語を加えた。人数が増え、出身地が広がる外国人住民。地域で向き合う自治体の体制はどうか。JR川口駅東口の複合施設「キュポ・ラ」には埼玉県川口市の協働推進課の窓口がある。応対する職員は3人で、英語や中国語が母国語の「国際交流員」が補助する。この人員で3万3000人の外国人の相談にあたる。生活習慣や納税など、文化の違いに根ざしたトラブルは幅広い。係長の川田一(44)は「何度も説明しないと理解してもらえない場合も多い」とこぼす。多様化する外国人住民に、自治体の一律対応は通用しなくなりつつある。各地の自治体でつくる「外国人集住都市会議」は11月28日、外国人受け入れに関する意見書を東京・霞が関の法務省に提出した。名前を連ねたのは浜松市や群馬県太田市など15自治体で、ピーク時からほぼ半減した。日系ブラジル人対応で連携する目的で設立されたが、出身地が広がり、共有できるテーマやノウハウが乏しくなり、一部の自治体が離脱した。北海道紋別市の水産加工会社、光進水産は外国人技能実習生の住宅で無料Wi―Fiが使えるようにしている。暮らしやすい環境を整え、実習生をつなぎ留めるためだ。それでも、社長の斉藤則光(66)は「日本の若者と同じように、都会に出て行ってしまうのではないか」との不安は消えない。働き手として住み続けてもらうには何が必要か。自治体や企業の試行錯誤は続く。

<家事労働の軽視と女性差別>
*3-1:http://qbiz.jp/article/145946/1/ (西日本新聞 2018年12月18日) 男女平等、日本は110位 18年、賃金格差縮小でやや上昇
 ダボス会議で知られるスイスの「世界経済フォーラム」は18日、2018年版「男女格差報告」を発表した。日本は調査対象となった149カ国中110位で、賃金格差の縮小などにより前年より順位を四つ上げた。しかし政治、経済分野で依然女性の進出が進んでいないとされ、20カ国・地域(G20)では下位グループに位置、中国(103位)、インド(108位)より低かった。報告書では、日本は女性の議員や閣僚の少なさから政治分野(125位)が低評価で、経済分野(117位)も幹部社員の少なさなどから前年より順位を三つ下げた。「依然として男女平等が進んでいない国の一つだ」と指摘されている。首位は10年連続でアイスランド。2位ノルウェー、3位スウェーデンと北欧諸国が上位に並んだ。G20では12位のフランスがトップで、次いでドイツの14位。米国は51位だった。日本より低かったのは韓国(115位)、トルコ(130位)、サウジアラビア(141位)の3カ国。世界経済フォーラムは「世界全体として政治分野で男女格差が拡大するなど格差解消の動きは足踏み状態だ。このスピードでは完全解消に108年かかる」と強調した。男女格差報告は各国の女性の地位を経済、教育、政治、健康の4分野で分析、数値化している。

*3-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190110&ng=DGKKZO39807280Z00C19A1KE8000 (日経新聞 2019年1月10日) 平成の終わりに(5)女性活躍誇れる国 目指せ、多様性向上、企業・社会に益 村木厚子・元厚生労働事務次官(1955年生まれ。高知大文理卒、旧労働省へ。津田塾大客員教授)
〈ポイント〉
○第1子出産で離職する女性比率高止まり
○育児への男性の参加と社会の支援が重要
○女性活躍進むが他国に比べスピード遅い
 男女雇用機会均等法は、昭和の終わりに近い1985年に制定された。それから30年余りが経過した今日、「女性活躍」は再び政府の最重要課題の一つとなり、これに加えて「働き方改革」が大きな政策課題となっている。本稿では、これらがそれ自体、社会的に重要であるだけでなく、日本にとって最も深刻な社会課題である少子高齢化への対応や、さらには多くの企業が目指す新たな価値創造にとっても重要な役割を果たすことについて述べたい。均等法は、国連の「女子差別撤廃条約」という外圧を借りながら、経済界の強い反対を押し切って誕生した。女性が性別により差別されることなく、かつ母性を尊重されつつ充実した職業生活を営むことを基本理念に、雇用の場での機会と待遇の均等を確保することを目的とした。しかしその後、女性の多くが育児や介護などの家庭責任を負う状況では、女性の活躍どころか、就業の継続そのものが難しいことが次第に明らかになった。このため「育児休業法」(現在は育児・介護休業法)が91年に制定され、子どもが満1歳になるまでの間、育児休業を男女労働者に付与することなどが義務付けられた。これで「均等」と「(仕事と家庭の)両立」という車の両輪がそろった。その後、均等法も育児・介護休業法も順次強化され、さらには2015年に成立した女性活躍推進法で、「機会」の均等のみならず、女性活躍の「結果」が出ているかどうかを企業などが検証し、対策や目標数値を盛り込んだ計画を策定し実行するいわゆるPDCA(計画、実行、評価、改善)の実施と、その内容の公表が義務付けられた。こうした均等と両立の施策の充実により、女性の就業率や管理職比率の向上、男女間の賃金格差の解消などが、平成の全時代を通じゆっくりとではあるが進んだ。だがなかなか変わらない現実もある。育児・介護休業法により女性の育児休業取得率は、07年以降は常に80%を超えるが、男性の取得率はまだ5%台にとどまる。法律は男女労働者を対象にしていても、育児は女性の仕事という構図はほとんど変わっていない。第1子を出産した女性の出産前後の就業状況をみると、結婚して仕事を辞める女性は均等法施行後徐々に減っている。だが第1子の出産後も就業を継続する女性の割合は、10年ごろまでは20%台で推移していた。こうした中で別の大きな問題が顕在化してくる。出生率の低下だ。出生率は80年代半ばごろから低下が続き、05年に史上最低の1.26を記録した。少子高齢化の急速な進展は将来世代への過大な負担を意味する。加えて社会保障負担の増大による財政の悪化により、次世代への負担の付け回しが既に始まっている。社会の疲弊や財政破綻を避け、平成の次の時代、長寿を喜べる社会にするためには、「支え手」を増やすしかない。今の支え手である働く女性を増やすことと将来の支え手である子どもを増やすことは同時に実現できるのだろうか。答えは他の先進国の状況をみれば明らかだ。経済協力開発機構(OECD)加盟諸国のデータをみると、おおむね女性の労働力率が高い国は出生率も高く、逆に女性の労働力率が低い国は少子化に苦しんでいる。女性が活躍する社会が、同時に希望する子どもを持つことができる社会だ。これを日本で実現する鍵は何か。他国の状況や国内のニーズ調査などから政府がたどり着いた結論は、男性の育児参加と社会の子育て支援の重要性だった。具体的には、男性を含めた働き方の改革と保育の充実だ。保育が、男女が子どもを持ち、ともに働き続けるための必要条件であることは疑いがない。このため「社会保障と税の一体改革」の中で、消費税率引き上げによる増収分の一部を保育に充てることになり、ここ数年、急速に整備が進み始めた。この分野は今後も手を緩めてはならない。次は働き方改革だ。各種調査で、子どもを持つ女性が仕事を続けるための条件として挙げたのは、職場全体の勤務時間や両立を支援する雰囲気、勤務時間の柔軟性などだ。日本の残業時間は国際的にみても長く、男性の家事・育児参加の度合いは低い。就学前の子どもを持つ父親の家事・育児時間は日本は1日平均約1時間強で、欧米の半分以下だ。夫の家事・育児参加時間が長い家庭ほど妻の就業継続率が高く、2人目以降の子どもを持つ確率が高いこともわかってきた。妻だけが育児を担う「ワンオペ育児」が少子化につながることが裏付けられた。そして男性の育児参加には労働時間の短縮が必要だ。18年6月には働き方改革関連法が成立した。残業の上限規制、高度プロフェッショナル制度(脱時間給制度)の導入、同一労働同一賃金の推進などが柱だ。長時間労働の是正、多様で柔軟な働き方の導入、多様な働き方に見合う公正な処遇を受けられるルールづくりを目指すものだ。これらが実現すれば、男女がともに、さらには高齢者、障害者など多様な労働者が自分に合った多様な働き方で力を発揮することができる。働き方改革は労働者の健康だけでなく、男女が仕事で活躍し、家庭生活を充実させ、さらには多様な支え手が社会を支えることを可能にし、社会全体の持続可能性を高めるための重要な政策となった。「女性活躍」からスタートして男女の「働き方改革」へと広がってきた政策の方向性は間違っていない。問題は改革のスピードだ。図が示すように、結婚し第1子を出産した後も働き続ける女性は10年ごろから増え始めたが、それでも4割にも満たない。世界経済フォーラムが公表する男女平等の度合いを示す「ジェンダー・ギャップ指数」で、日本のランキングは149カ国中110位(18年)と極めて低い。しかも中長期でみると、ずるずると順位を下げている。関連の国際機関に、日本の女性活躍は進んでいるのになぜ順位が下がるのか問い合わせたところ、「日本は良くなっているが、ほかの国はもっと速いスピードで良くなっている」との答えが返ってきた。長時間労働の是正も同様の状況だ。スピードを上げるために政府は何をすべきか。女性活躍や働き方改革の進捗状況を点検し、政策効果を分析し、さらなる対策や目標値を明示して、これを広く国民と共有しながら取り組みを進めていく、すなわち女性活躍推進法で企業に義務付けたPDCAの実施だ。特定分野でのクオータ制(割当制)の導入も検討してよい時期だ。女性活躍も働き方改革も日本社会にとっては最重要課題だが、個々の企業にとってはどうだろうか。まだ多くの企業はこれを「コスト」と受け止めているのではないか。だが調査研究によれば、女性の役員が多い企業は比較的業績が良く、ワーク・ライフ・バランスの取り組みやフレックスタイム制を進める企業は、一定の時間はかかるが大幅に付加価値生産性が上がる。平成の次の時代の企業の最大課題は新たな価値の創造だ。女性をはじめ多様な人材が活躍できるダイバーシティー(多様性)の実現はそのための大きな原動力だ。そう認識し、本気で取り組む企業が増えれば、改革のスピードは上がり、企業の成長と社会の成長の好循環が生まれる。

*3-3:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO39490190Y8A221C1EA4000/?n_cid=NMAIL006 (日経新聞 2018/12/28) 働く女性3000万人、超えられぬ壁 働き盛り伸び悩む
 働く女性の数が3000万人の大台を目前に足踏みしている。総務省が28日発表した11月の労働力調査によると、女性の就業者数は2964万人(季節調整値)で前月に比べ7万人減った。順調に増えてきたが、5カ月ぶりに減少に転じた。高齢者や学生ら若者が女性の働き手を増やすけん引役だが、全体の底上げには25~44歳を中心とする働き盛りの世代の動向がカギとなる。11月の就業者数は男女合わせて6713万人。このうち男性は3749万人で全体の56%。30年前は6割だったが、働く女性が増えて男女比率は半々に近づいている。11月の女性の就業者数を年代別に17年末と比べると、伸び率が最も高いのが15~24歳だ。就業者数は284万人で13%増えた。全体の伸び(3%)を大きく上回る。13~17年はおおむね240万~250万人台で推移してきた。少子化で人口が減るなか、18年に急増した要因は「時給上昇と労働条件の緩和だろう」とSMBC日興証券の宮前耕也シニアエコノミストは話す。有効求人倍率は1.6倍を超え、人手不足は深刻だ。アルバイトを募集する際、時給を上げ、就業は週1回でも良いといった条件にするなど、学生にとって働きやすくなった。景気要因の大きい学生の雇用状況に対し、65歳以上の高齢女性で働く人は安定して増えそうだ。11月の就業者数は366万人で、17年末と比べると11%増だ。一方、就業率は17.9%。65歳以上の男性の就業率が33.6%で、高齢女性の伸びしろは大きい。気がかりなのは働き盛りにあたる25~44歳。就業者数は17年末に比べ1%減った。働く意欲は持っていても、子どもを預けることができず就労を諦めている女性もいる。都市部を中心に保育所に預けられない待機児童は全国で約2万人にのぼる。働き続けられる環境整備が欠かせず、政府は対策を急ぐ必要がある。

*3-4-1:https://digital.asahi.com/articles/ASLD92PS3LD9UBQU001.html?iref=pc_extlink (朝日新聞 2018年12月9日) 不適切な入試、岩手医科大・金沢医科大・福岡大でも
 岩手医科大、金沢医科大、福岡大の3私立大が8日、一斉に各大学で会見を開き、医学部入試で「文部科学省から不適切な点があると指摘された」と公表した。募集要項で明記せずに現役生や地元高校の卒業生ら、特定の受験生を優遇していたが、いずれも「問題ないと思っていた」と釈明した。文科省は同省幹部の汚職事件をきっかけに、東京医科大の医学部入試で不適切な得点操作が発覚したことを受け、全国81大学の医学部入試を調べている。10月に「複数の大学で不適切な入試が行われている」と発表し、大学の自主的な公表を求めていた。岩手医科大は、34人が受験して7人が合格した今年の編入試験で、同大歯学部の出身者3人を優遇した。地域医療に貢献する人材育成のために出願時に約束させている、付属病院や関連病院で卒業後6年以上、勤務する条件を守る可能性を重視したという。佐藤洋一・医学部長は「出身者に優位性を持たせるのは、私学の裁量の範囲内と考えていた」と話した。今年度入学の一般入試で不合格となった7、8人より、評価が明らかに低かった1人を追加合格させた点も、不適切と指摘されたという。判断の基準について問われた佐藤医学部長は、「公表を差し控えたい。特定の属性で合格させておらず、不都合な点はないと考えていた」とした。金沢医科大は今年度のAO入試で同窓生の子ども、北陸3県(石川・福井・富山)の高校の卒業生、現役生と1浪生に加点していた。同窓生の子は10点、石川の高校出身者には5点、富山、福井については3点、現役・1浪生には5点を加えていた。編入試験でも北陸3県の高校出身者や年齢に応じて得点を調整。これらの操作によって約10人が不合格になったという。さらに、一般入試の補欠合格者を決める際にも年齢を考慮していた。会見した神田享勉(つぎやす)学長は「大学の機能を保ちながら、北陸の医療を支えていくのは困難。同窓生の子どもや現役・1浪生、北陸3県出身者の方が地域に残るというデータがある」と得点調整の理由を説明した。福岡大では、高校の調査書の評価を点数化する際、現役生を有利にしていた。一般入試の評価では、1浪は現役生の半分で、2浪以上は0点だった。2浪以上は受験できない推薦入試でも、同様に差をつけていたという。「高校時代の学力・成績も評価したかったが、卒業から年数が経つと基礎学力評価の有効性が下がる」として、2010年度入試から始めたという。11月下旬に文科省から不適切との指摘を受けて再検討し、高校側の保存期間を過ぎて調査書を提出できない浪人生もいることなどから「不適切」と結論づけた。月内に第三者を含む調査委員会を設け、追加合格などを検討するという。会見はいずれも午前11時に開始された。この日になった理由を問われ、3大学とも「近く、一般入試の出願が始まるため」と同様の説明をした。会見日時が重なったことについて、福岡大の黒瀬秀樹副学長は「びっくりしている。示し合わせているわけでは全くない」と話した。

*3-4-2:https://digital.asahi.com/articles/ASLDB76NZLDBUBQU00X.html?iref=pc_ss_date?iref=pc_extlink (朝日新聞 2018年12月11日) 順大・北里大で不適切な医学部入試 女子など不利な扱い
 順天堂大と北里大は10日、医学部で女子や浪人回数の多い受験生を不利に扱う不適切な入試を行っていた、と発表した。順大は「女子はコミュニケーション能力が高いため、補正する必要がある」として、面接などを行う2次試験の評価で、男女で異なる合格ラインを用いるなどした。北里大は今年度の一般入試で繰り上げ合格者に連絡する際、男子や浪人回数の少ない受験生を優先させた。順大によると、不適切な入試の結果、2017、18年春の入試で計165人が不当に不合格となった。順大はこのうち2次試験で不合格となった48人(うち女子47人)を追加合格にする方針を示した。順大は女子を不利に扱った理由について①男子よりも精神的な成熟が早く、受験時はコミュニケーション能力も高いが、入学後はその差が解消されるため補正する必要があった②女子寮の収容人数が少なかった――と説明。ただ、この問題で設置した第三者委員会からは、いずれも「合理的な理由はない」と指摘された。新井一学長は「当時は大学の裁量の中で妥当と判断した。不適切とされたので、今後はなくす」と謝罪した。北里大は今後、第三者委を設置して対応を検討する。医学部入試をめぐって不適切な入試を認めたのはこれで8大学になる。

*3-4-3:https://digital.asahi.com/articles/ASLDC4389LDCUBQU00H.html?iref=pc_ss_date?iref=pc_extlink (朝日新聞 2018年12月11日) 「女子の方がコミュ力高い」 順大、医学部入試で不利に
 医学部入試での女子差別が再び明らかになった。順天堂大は10日に会見を開き、男女によって異なる合格ラインを設定していたと明らかにしたうえで「女子の方が精神的な成熟が男子より早く、コミュニケーション能力が高い。ある意味で、男子を救うためだった」と説明した。「受験生、保護者、関係者に多大な心配とご迷惑をおかけし、深くおわび申し上げます」。午後4時に始まった会見の冒頭、新井一学長と代田浩之医学部長は、深く頭を下げた。順大が文部科学省から「不適切」との指摘を受けて、10月に設置した第三者委員会の報告書は、女子と浪人回数の多い受験生を構造的に不利に扱っていたと指摘した。出願者の半分近くを占める「一般A方式」の1次試験では、一定順位を下回る受験生については性別、浪人回数、調査書の評価によって異なる合格基準を設定。女子や浪人回数の多い男子は、2次試験に進むことが困難だった。面接などを行う2次試験では地域枠と国際枠を除く全ての入試区分で、男女について異なる合格ラインを設定。順大は1次試験の順位をランクごとに分け、2次試験の成績(満点は5・40~5・65点)を組み合わせて合否判定する。1次試験の評価が男女で同じランクの場合、女子の2次試験の合格ラインが0・5点厳しかった。この仕組みは遅くとも2008年度から行われていたという。報告書によると、順大は男女で異なる取り扱いをした理由を第三者委に「入学後に男性の成熟が進み、男女間のコミュニケーション能力の差が縮小され、解消される」と主張。多数の教職員が「女子受験者に対する面接評価の補正を行う必要があった」と説明し、医学的な検証をした資料として学術誌の論文も提出していた。だが、第三者委は「面接では受験者個人の資質こそが性差よりも重視されるべきだ」と指摘し、「合理性はない」と退けた。順大は医学部の1年生が全員、寮で生活する。順大は「女子寮の収容力に限界があり、合格者を制限する必要があった」とも述べたが、第三者委は「新たな寮ができた後も合格判定基準が変わっていない」として合理性を認めなかった。17年度と18年度の2次試験を再判定した結果、計48人(うち女子47人)を追加合格とし、今後、28日を期限に意向を確認して希望者全員の入学を認める。その分、19年度入試の募集定員を減らす。2年間の1次試験で不合格とされた計117人には入学検定料を返す。2次試験を受けさせない理由について代田医学部長は「過去の入試と来年度の入試の難易度を合わせるのは難しい」とした。16年度以前の受験生については補償を含めて「考えていない」という。会見で新井学長は「当時は私学の裁量の範囲内だと考えていた」と話した。第三者委の指摘を受けて「現時点では不適切だった」と述べ、19年度入試からこうした扱いは全廃するとともに、調査書も評価に入れないと説明した。自身の進退を含めた処分は「不正ではないので考えていない」という。文部科学省の調査によると、順大の過去6年間の平均合格率は男子9・16%、女子5・50%。女子と比べて男子の合格率が1・67倍となり、全国81大学で最も高かった。順大が当初、文科省の調査に不正を否定していた点を問われ、新井学長は「補正という考えであり、差をつけているという認識はしていなかった」と説明した。北里大も10日、18年度の一般入試で繰り上げ合格者に連絡する際に、男子や浪人年数の短い受験生を優先させていたと公表した。記者会見はせず、ホームページに掲載した。北里大によると、入学者に占める女子の割合や、22歳以上の受験生の合格率が、ほかの私立大医学部より高いという。担当者は「合格した男子学生の辞退率が高く、抜けた部分を埋め合わせるためだった」と話した。今後、第三者委を設置して、18年度以前の入試についても調べ、不利に扱った受験生らへの対応を検討する。

*3-4-4:https://digital.asahi.com/articles/ASLDL4DZNLDLUBQU008.html (朝日新聞 2018年12月18日) 順天堂大入試「コミュ力」問題、心理学者が相次ぎ懸念
 順天堂大医学部の入試で、女子のコミュニケーション能力が高いため男子の点数を補正した、と大学側が説明した問題に関連し、「日本パーソナリティ心理学会」(理事長=渡辺芳之・帯広畜産大教授)が16日、大学側が根拠として第三者委員会に米テキサス大教授の1991年の論文を提出したことについて、「そのような内容を主張しているわけではない心理学の論文を安易に引用するような姿勢に対して、強い懸念を表明する」などとする見解を発表した。同会には、パーソナリティー研究に関わる心理学者らが参加している。見解では、「入学試験において、パーソナリティーに関係する心理学の研究知見を特定の人々に対する不利益な扱いの根拠として引用する事例が発生した。研究成果に対して多様な解釈があり得ることはもちろんだが、他の研究分野の知識を、その研究本来の文脈や目的から離れて不適切に引用することは好ましいことではない」としている。これとは別に、三浦麻子・関西学院大教授ら心理学者の有志も16日、声明を発表。「根拠」とされた論文は「児童期から成人期までのパーソナリティー発達と男女差を検討したもので、『女性の方が精神的な成熟が早く、相対的にコミュニケーション能力が男性より高い傾向がある』という知見を提出したものではない」として、根拠として用いたことを「非科学的」と批判。「性別ごとの平均値による比較を個別の人物評価に一律に当てはめるべきではない」とし、「心理学研究の素朴な引用によって差別的言動を正当化する行為全般に、心理学者として断固抗議する」としている。

*3-4-5:https://digital.asahi.com/articles/ASLCH4F21LCHUTIL019.html?iref=comtop_8_06 (朝日新聞 2018年12月15日) 医学部入試、選ぶ側に裁量 女子だけに保育園の質問も
 医学部入試に関する調査を進めてきた文部科学省は14日に最終報告を公表し、改めて公正な入試の必要性を訴えた。「入試が不適切だった」と公表した各大学も、選抜方法を改めるとしている。ただ、「何が公正か」という課題は残る。特に医学部の場合は、ほとんどの大学が面接を含む2次試験を行っており、選ぶ側の裁量が大きい。面接試験は、患者と接するコミュニケーション能力や丁寧に説明する力など、医師に求められる資質や適性をみるために大切とされる。主に医学部に進む東京大理科3類では2018年度入試から11年ぶりに復活し、19年度入試は九州大を除く全ての医学部で行われる。ただ、面接は学力試験と比べ、面接をする人の「主観」に左右されやすい。不正発覚の発端となった東京医科大の小西真人・入試委員長は、2年間で101人を不正に不合格にしていたと発表した11月7日の会見で「完全な客観性は面接には無理。大学側に、ある一定の裁量があることは確か」と語った。各大学の男女の合格率や面接内容を分析してきた医学部専門予備校「メディカルラボ」(本部・名古屋)によると、女子の合格率が低い大学は、面接で女子に厳しい質問をする傾向がある。ある大学では女子にだけ「患者がたくさん待っている時、自分の子どもが急病で保育園から呼び出されたらどうしますか」と質問をしていたという。複数の医師は、こうした質問の背景に、入試が大学病院の勤務医の「採用」につながっているという面があると指摘する。同校本部教務統括の可児良友さんは「男子や現役を多く確保したいという大学側の意識が変わらないと、現状が変わらないかもしれない」と不安だ。2次試験の問題は、面接だけではない。得点配分を公表していない私立大も多く、運用が不透明との批判がある。文科省の調査で「不適切な疑いがある」と指摘を受けた10大学のうち、ただ一つ、「問題はなかった」との立場の聖マリアンナ医科大(川崎市)の場合、1次の学力試験は400点満点。2次試験では100点ずつの小論文と面接に加え、調査書などを点数化して合格者を決めているが、この部分の配点は募集要項に記しておらず、評価基準もなかった。文科省はこの点数化の際、「女性より男性、多浪生より現役生が、顕著に高い」と指摘したが、大学側は「受験生を個々に総合評価している」と反論した。同大の広報担当者は取材に「面接官によって、男子や現役に高くつける人はいるかもしれないが、一律に加点していることはない」と答えた。14日の会見で柴山昌彦文科相は同大との見解の相違について「かなり大きな溝がある」として第三者委員会による調査を求めた。ただ、大学側は実施しない方針という。

*3-5:https://digital.asahi.com/articles/ASLCK2JPSLCKUBQU003.html?iref=pc_ss_date?iref=pc_extlink (朝日新聞 2018年11月17日) 診療科で男女偏在・都市に集中… 入試不正の背景は
 医学部入試で受験者の性別で差をつけてきた背景には、診療科による男女の偏りや都市部への偏在など、医療界が抱える問題がある。専門家は一連の入試不正を社会全体で考える契機にすべきだと指摘する。女性医師は子育てなどで現場を離れたり、勤務が制限されたりすることが少なくない。2016年の厚生労働省の調査によると、外科など長時間や不規則な勤務が強いられる診療科では女性は1割にも満たない。皮膚科(47%)や眼科(38%)などで割合が高く、特定の診療科に偏っている。女性外科医のキャリア支援を続ける日本女性外科医会役員の明石定子・昭和大学准教授(乳腺外科)は「一連の問題が明るみに出て入試改革が進んで現場で女性が増えれば、医療界も変わらざるを得なくなる」と話す。昔と比べて、時短勤務などの制度は広がりつつある。だが、明石さんは「家庭を重視して勤務負担を軽減すればいいわけではない」とも指摘する。「時短の時期が長くなれば医師としてのキャリアを短くしてしまう。育児中であってもキャリアを積める仕組みが必要だ」と話す。医師の労働条件が改善できない理由の一つに、都市に医師が集中し、へき地で深刻な医師不足になっている実態がある。辺見公雄・全国自治体病院協議会名誉会長は「最近は『すめば都』ではなく、『都がすみか』という傾向がより強まっている」という。同協議会が地域医療を支える自治体病院に今春行ったアンケートによると、医師の労働時間短縮について、48%が「実施できない」と答えた。辺見さんは「出身地とは離れた地域でも何年か診療できる若い人材が求められていることを理解して欲しい」と話す。働きやすい病院の認証事業を手がけるNPO法人イージェイネットの瀧野敏子代表理事は医療機関の合理化を進めることも重要だと指摘する。軽症患者の夜間救急への対応の必要性など検討課題は多いという。「合理化できるかもしれない労力の担い手を、事情を抱えてフル稼働できない女性医師らに求めるのではなく、『それは必要なのか』と国民も巻き込んで考えていくべきだ」と話す。

<運輸部門の生産性の低さを何とかしよう>
PS(2019年1月13日追加):日本では、道路が混んで自動車が低速でしか走行できず、運輸部門の生産性が著しく低い時代が何十年も続いているが、中国では、民主主義や一人一人の国民の豊かさに不安はあるものの、6車線道路やリニア・モーターカーができ、EVシフトを進めているという点で、必要なことを着々とやっているように見える。また、日本発のアイデアだった「電動化」「自動運転化」は、日本ではバックラッシュを受けてゆっくりとしか進まないが、世界では、*4-1-1、*4-1-2のように、短期間で市場投入の時代に入った。
 もちろん、電力を化石燃料で作っていては意味がないが、*4-2-1のように、JXTGエネルギーも洋上風力発電の開発を国内外で検討する考えを示しており、私は、再生可能エネルギーで安く電力を作り、給油所を水素充填及び充電拠点に替えて、燃料電池車やEVを相手として安くエネルギーを販売すればよいと考える。そして、安い電力や水素を得るには、このほかに、*4-2-2のような黒潮発電や地熱発電もあり、*4-3のように、経産省が、発電コストの引き下げを促すために風力発電を2021年度から全面入札制にするとのことである。
 さらに、*4-2-3のように、自立した水素エネルギー供給システムも作ることができる。
 
*4-1-1:https://www.nikkei.com/paper/related-article/tc/?b=20190113&bu=BFBD9496・・ (日経新聞 2019年1月13日) 自動運転・電動車で新戦略 フォード・都市と連動/VW・3600億円投資 北米自動車ショー
 開幕した北米国際自動車ショーで、自動車産業の潮流である「自動化」「電動化」の強化へ世界大手が新戦略や大型投資を表明した。米新車販売は2017年に8年ぶりの減少となったが、中国に次ぐ世界2位市場として3位日本の3倍以上の規模。進取の気性にも富む。依然、米市場での浮沈が経営戦略を左右する。米フォード・モーターは14日に発表会を開き、都市インフラを重視した自動運転構想を表明した。ジェームス・ハケット最高経営責任者(CEO)は「駐車場の空き状況と連動したナビゲーションなど、都市インフラとの連動」を提案した。次世代型の都市構想を打ち出すうえで初期段階から車両との連携を進め、燃費節約などにつなげる方針だ。フォードは21年に自動運転車の導入を計画しており、ハケットCEOは「まずは自動運転を使った移動・輸送受託のビジネスモデルを広げることに注力する」と中小企業なども顧客とすることを示唆した。電動化対策としては、フォードは22年までに電気自動車(EV)など電動車40モデルに最大で110億ドル(約1兆2200億円)を投資する。今後の新製品開発はトラックや多目的スポーツ車(SUV)を軸にする方針。20年には主力のピックアップトラックでハイブリッド版を投入するほか、SUV型のEVも発売する。従来の20年までの投資計画規模は45億ドルで、2.4倍だ。新技術をテコに、米国全体で自動車産業を再興しようとの機運が高まっているようだ。米運輸長官のイレーン・チャオ氏は14日、「技術革新を促すよう政策を仕分けし、米国の競争力を高めて雇用を生み出す」と積極的に新技術の利用促進を進める方針を強調した。例に挙げたのが米ゼネラル・モーターズ(GM)が申請したハンドル、ペダルなしの自動運転車の導入だ。GMのメアリー・バーラCEOは「完全自動運転への大きな一歩」と自動運転やEVへの熱意をアピールした。自動運転に関する米国の政策方針として、チャオ運輸長官はトップダウン式に特定の技術を推すことはせず「技術中立的」に官民連携を進めることを強調した。安全性試験の仕組みや安全に関わるデータベースの確立で連携していく。企業の取り組みが依然、カギを握ることになり、GMやフォードが新戦略を打ち出すのもこのためだ。フォードの発表会では創業家のビル・フォード会長が「10年前は死にかけていたがデトロイトは復活した」と宣言していた。確かに都市の中心部は再投資され、きれいな公園が整備され、ニューヨークにあるようなこじゃれたレストランが増えており、復権を印象づけていた。自動運転などを巡っては、米グーグルなどIT(情報技術)大手も交えた異業種との競争にも一歩も引かない構えを見せたといえる。米国重視はビッグスリーだけではない。独フォルクスワーゲン(VW)も3年間で、北米に33億ドル(約3660億円)以上を投資することを表明、積極的な北米展開をアピールした。ショー開催期間中に披露される各社の車種は、米国で人気の大型車が中心になる見通し。一般公開は20日からで、ここ数年は80万人規模が来場する。

*4-1-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190113&ng=DGKKZO39971690S9A110C1EA5000(日経新聞 2019年1月13日)米GM、キャデラックにEV 中国に的
 米自動車大手ゼネラル・モーターズ(GM)は11日、高級車ブランド「キャデラック」で電気自動車(EV)を発売する計画を明らかにした。中国などのEV需要の高まりを受け、高級EVを品ぞろえに加える。「シボレー」「ビュイック」の両ブランドは販売車種を絞り込み、グローバルで設計や部品を共通化して収益性を高める。米ニューヨークで開いた投資家向け説明会で、メアリー・バーラ最高経営責任者(CEO)が明らかにした。同社のEVは「シボレー・ボルト」が主力だが、EVでも最大市場の中国でのシェア拡大に向け、中国の富裕層に人気が高い「キャデラック」ブランドでEVを追加する。GMは発売時期や車種を明らかにしていないが、開発中の新型充電池を搭載し、フル充電で300マイル(約480キロメートル)以上の走行距離をめざしているとみられる。高級EVの市場では米テスラなどがライバルとなる。中国の新車市場は18年に28年ぶりに前年実績を下回ったもようだ。GMの販売も前年割れとなったが、「キャデラック」ブランドの販売は20万台超と17%増加した。バーラCEOは「足元の市況は厳しいが、長期的には中国はまだ成長が見込める」とコメント。19年は新型車とモデル改良を含めて過去最多の20車種以上を中国に投入する。昨年11月に北米で完成車とエンジンの計5工場の生産を休止すると発表した。トランプ米大統領は雇用減につながるとして同社を批判しているが、バーラCEOは「規制や通商の変化など課題は多く、経済環境が堅調なうちに手を打っておく必要がある」と改めてリストラの必要性を強調した。北米の生産再編と合わせて「シボレー」「ビュイック」ブランドの車種を絞り込む。20年前半までに中国やブラジル、メキシコなどの新興国向けに設計と部品を共通化した小型車や多目的スポーツ車など8車種を投入し、地域ごとに異なる既存の車種と置き換える。

*4-2-1:http://qbiz.jp/article/147084/1/ (西日本新聞 2019年1月12日) JXTG、洋上風力発電に意欲 石油最大手が再生可能エネ強化
 石油元売り最大手JXTGホールディングスの事業会社、JXTGエネルギーの大田勝幸社長(60)は12日までに共同通信のインタビューに応じ、洋上風力発電の開発を国内外で検討する考えを示した。「最初は単独でできないので、他社との提携を考えたい」と話した。地球温暖化問題で事業環境の激変が予想されており、再生可能エネルギーを強化する。「投資規模は言える段階ではないが、再生エネはやらなくてはいけない」と語り、ガソリンなどの石油製品に依存しない経営体制をつくることを目指す。一方、今年4月に出光興産と昭和シェル石油が経営統合することが決まり、石油元売りは再編で先行したJXTGとの2強体制になる。「規模で勝るJXTGは統合効果も大きい。出光・昭和シェルの2、3歩先を行く」と話した。JXTGは今年、給油所のブランドを「ENEOS(エネオス)」に統一し、サービス向上に力を入れる。ブランドを統合後も当面併存させる出光・昭和シェルと比べ、強みだと指摘した。米国は対イラン制裁で、原油禁輸に関し日本などを一時的に適用除外としたが、今春に復活する見通しだ。イラン原油について「採算性の魅力がある。条件が整えば輸入を継続したい」と述べた。

*4-2-2:http://qbiz.jp/article/147088/1/ (西日本新聞 2019年1月13日) 「黒潮発電」本格実験へ IHIが離島向け 鹿児島沖で今夏から
 IHIは今年夏から、黒潮の流れを利用した「海流発電」の実用化に向けた本格的な実験を鹿児島県・トカラ列島沖で実施する。出力100キロワットの装置を海中に設置し、2020年まで1年間実験する。実用化の目標は20年代初め。将来的には出力2千キロワット級に大型化し、コスト削減を図る。離島向けなどに新たな再生可能エネルギーとして売り込みたい考えだ。海流発電は、九州から本州の太平洋側を南から北へ向かう黒潮の流れを発電に生かそうという日本独自のアイデア。黒潮の流れは天候や時間帯に左右されないことから、太陽光や風力などと異なり、安定した電力が得られる自然エネルギーとして注目されている。同社が開発した実験用の発電装置は三つの円筒状の構造物を組み合わせたもので、長さと幅は約20メートル。円筒二つの先端に取り付けた直径11メートルの羽根が回って発電する。海底の土台(シンカー)とワイヤでつながれた装置は、たこ揚げのように海中に浮いて発電。装置は水面下約50メートルにあり、上を船舶が通過しても支障はない。羽根は風力発電のようにゆっくり回るため、海洋生物にも影響はないという。同社は17年夏にもトカラ列島沖で7日間、この装置で実験しており、今回は1年間かけて台風などの影響も調べ、実用化に向けた課題を探る。今回の実験が成功すれば、実用化に向け前進。将来的には、装置を複数並べて発電することも可能という。現在の発電コスト目標はディーゼル発電と同程度の1キロワット時当たり40円ほどだが、「大規模太陽光発電に匹敵する20円以下が将来目標」(機械技術開発部海洋技術グループの長屋茂樹部長)。ディーゼル発電を使っている離島などに売り込んでいきたいという。

*4-2-3:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190113&ng=DGKKZO39909860R10C19A1MY1000 (日経新聞 2019年1月13日) 水素を生かす(中)駅でエネルギー供給 災害時も
 JR東日本の武蔵溝ノ口駅(川崎市)は構内で使う電気や温水の一部を、自立した水素エネルギー供給システムでまかなっている。災害時にライフラインが寸断されても、一時的な滞在場所として利用可能だ。上り線のホームには東芝が開発したシステムが3基並んでいる。ホームの屋根に敷いた太陽光パネルで発電し、貯水タンクの水を分解して水素を作る。水素はタンクに貯蔵するほか燃料電池で発電する。照明だけでなく、夏はミストシャワーを動かす電力になる。温水も供給できるため、冬はベンチを温める。腰掛けると、じわりと暖かい。水素の製造、貯蔵、利用を一貫してできるのが特徴だ。2017年にJR東日本の駅で初めて導入した。横幅6メートル、高さと奥行きが2.5メートルのコンテナ型で、船やトラックで運べる。国内では横浜市や宮城県など各地で設置が始まった。海外での利用にも期待を寄せる。東芝エネルギーシステムズの中川隆史担当部長は「水素を身近なエネルギーとして役立てていきたい」と話す。

*4-3:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190113&ng=DGKKZO39975400S9A110C1MM8000 (日経新聞 2019年1月13日) 風力発電で全面入札制 経産省、21年度から 発電コスト下げ促す
 経済産業省は再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度(FIT)で2021年度以降、安い電力だけを買う「入札制」を風力発電に全面的に導入する方針だ。欧州などに比べ発電コストが高止まりしているため、事業者に低コスト化を促し競争力を高める。太陽光でも入札制の範囲を拡大する方針で、再生エネ全体で育成から競争への比重を高める。17日に開く有識者会議で風力発電について「早期の入札制導入を検討する」との方針を示す。国が募集量と買い取り価格の上限を決めた上で売電の希望価格を募る方式。安い電力を示す事業者から順番に買い取り契約をするため、値下げ圧力がかかる。入札による買い取り価格はFITの固定価格買い取り同様、電気代に上乗せされる。19年度の買い取り価格は陸上風力が1キロワット時あたり19円で、洋上風力は同36円。洋上風力には一部案件で入札制を実施する方向になっていた。FIT法の見直しを予定している21年度以降には固定買い取り制度ではなく、入札制への全面切り替えを原則とする。背景にあるのは風力発電コストの高さだ。直近では1キロワット時あたり13.9円と世界平均(8.8円)の約1.6倍になっている。欧州は入札制を広く導入し、発電事業者に競争を促したことで発電コストを抑えた。経産省は30年に発電コストを世界平均並みの8~9円にする目標を掲げるが、現状のままでは達成が厳しいとみられる。高額買い取りが事業者のコスト削減を遅らせていた面もあるとみて、入札制で努力を促す。再生エネでは太陽光でも入札制の対象が拡大されるなど競争路線が加速している。現状の再生エネ比率は16%でこのうち風力は0.6%にとどまる。政府は再生エネを「主力電源」と位置づけ、30年度に再生エネを22~24%まで比率を高める方針。風力を1.7%にする目標を掲げている。

<エネルギーの自給率と長期戦略について>
PS(2019/1/18追加): *5-1に、「①日立が再エネ価格の急落で英国での原発建設計画を凍結する」「②再エネ価格の急落は想定外だった」「③日立は2012年11月、英ホライズン・ニュークリア・パワーを買収して英国事業に乗り出していた」「④原発新設を手がけていないと保守や廃炉などの技術も保てない」「⑤ビッグデータ分析やAIの活用などは膨大な電力を消費するため、再エネだけではカバーできない」「⑥日本は長期を見通す議論が不足している」「⑦原発をエネルギー政策のなかでどう位置づけていくかの将来像が固まらないとビジネスとしての原発は存続できない」と書かれている。しかし、①②③⑥については、簡単な装置で発電でき、燃料を使わず、公害の少ない再エネ価格の急落を想定できず、フクイチ後に英ホライズンを買収したことこそ(英国は、これで十分メリットがあった)、経営者として長期を見通す能力に欠けていたのである。また、④⑤は言い訳に過ぎず、⑦のビジネスとしての原発なら国民負担による政府補助金に頼ることなく、事故時には製造物責任法に基づく損害賠償を行い、最終処分まで含めてビジネスベースに乗せるべきであり、従って原発はビジネスにはならないということだ。
 なお、*5-2のように、九電は、費用対効果が十分でないとの判断から、出力559,000kwの玄海原発2号機を廃炉にする見通しになったそうだ。リスクまで考慮すると、再稼働している玄海3、4号機、川内1、2号機も早く終わり、原発よりずっと簡単な装置で発電でき、燃料を使わず、公害の少ない再エネに移行するのが、長期的にはより安価になるだろう。

*5-1:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO40153500X10C19A1TJ3000/?nf=1 (日経新聞 2019/1/17) 日立が英計画の凍結発表 再生エネ台頭、原発に誤算
 日立製作所が原子力発電事業の存続をかけて取り組んできた英国での原発建設計画を凍結する。再生可能エネルギーによる電力価格の急落など、当時は想定していなかった誤算が重なり苦渋の決断を強いられた。原発事業をリスクとみる投資マネーの動きも圧力になった。東原敏昭社長兼最高経営責任者(CEO)は17日の記者会見で、凍結理由を「経済合理性の観点からすると、諸条件の合意には想定以上の時間を要すると判断した」と説明した。英国政府との協議は今後も続ける。一方的な打ち切りにすると「英国政府に対し巨額の違約金が発生する可能性がある」(交渉関係者)との懸念もあったようだ。日立は2012年11月、英ホライズン・ニュークリア・パワーを買収して英国事業に乗り出した。発表当時、原発担当役員は「原発を建設する場所がどうしても欲しかった」と語った。原発新設を手がけていないと保守や廃炉などの技術も保てない――。11年の東日本大震災時に起きた原発事故で逆風が吹くなか、望みをつなぐ一手だった。英国には原発でつくった電気を市場価格より高く買い取る制度があり、採算を確保しやすいとの判断もあった。だが、事業環境は大きく変わった。太陽光や風力といった再生エネの台頭だ。技術革新や普及に伴う規模の効果により再エネによる発電コストは年々低下。英国で実施された洋上風力発電の入札では、落札価格が17年までの2年で半分になった。原発の電気を高く買い取るための実質的な国民負担は年々重くなり、政府は修正に動いた。英政府が日立のプロジェクトに対し内々に示した買い取り価格は1千キロワット時あたり70ポンド(約9800円)台前半。先行する他の原発に比べ約2割低かったという。この水準では採算が狂う。危機感を募らせた日立の中西宏明会長は18年5月、英メイ首相と会談し、他の部分での支援を求めた。英政府が用意したのが資金調達コストを下げる仕組みだ。総事業費3兆円のうち2兆円超を英国側が融資するというものだ。残りの資金は日立、日本企業、英国政府・企業がそれぞれ3分の1ずつ出資することにした。トップ会談でつかんだ果実。これを第2の誤算が打ち消した。東京電力ホールディングスなど国内電力の出資拒否だ。日本企業からの出資者集めは日本政府の役割だったが、説得は難航した。特に、日立がつくる沸騰水型軽水炉(BWR)の使い手である東電が動かなかった。「事故を起こし再稼働も進まない中では国民の理解が得られない」。他の電力も見送りに傾く。投資家の目も厳しくなった。「原発のように先行きが不透明な事業を持つ企業の株を中長期で持ちたいとは思わない」(国内投資顧問幹部)。日立も意識しており、ある首脳は昨夏「(国内では原発再稼働が進まず)膨大な資産が何の収入も生んでいない。投資家からみたらそれだけでバツだ」とこぼした。11年に原発事業からの撤退を決めたライバル、独シーメンスと比べ、日立の時価総額は3分の1にとどまってきた。国内企業の中では構造改革に先行したにもかかわらず、株価は日経平均にも見劣りする。英国での計画凍結が伝わった今月11日は前日比9%上昇した。原発事業そのものにも資金は集まりにくくなっている。「ホライズンへの出資を希望していた企業やファンドも、再生エネが台頭するにつれ離れていった」(日立幹部)。ただ、ビッグデータ分析や人工知能(AI)の活用など、今後の産業の進化を支える技術の多くは膨大な電力を消費する。東原社長は17日の記者会見で「エネルギーの安定供給を考えると、再生エネだけでカバーはできない」と強調した。原発なしで電力需要をまかない続けられるのかは明確でない。1月7日。経団連会長の立場で、政府への要望を聞かれた中西氏はこう答えた。「日本は本当に大丈夫か、長期を見通す議論が不足している。エネルギー問題はその典型だが、方向付けに対する議論をどの政治家もやらない」。原発をエネルギー政策のなかでどう位置づけていくか。将来像が固まらないと、ビジネスとしての原発は存続しえない。

*5-2:http://qbiz.jp/article/147063/1/ (西日本新聞 2019年1月12日) 玄海原発2号機廃炉へ 稼働38年、安全対策費多額に  九電、年度内にも結論
 九州電力が玄海原発2号機(佐賀県玄海町、出力55万9千キロワット)の再稼働を断念し、廃炉にする見通しになったことが分かった。廃炉となった玄海1号機と同様、安全対策工事などで多額の費用がかかり、投資効果が十分に得られないとの判断に傾いたとみられる。早ければ2018年度内にも最終判断する。玄海2号機は1981年3月に稼働。2011年1月に定期点検に入って以来、運転を停止している。原則40年とされる運転期限は21年3月で、再稼働し、運転期間を延長するには、1年前の20年3月までに国に申請するルールがある。運転延長を目指す場合、申請前に約半年に及ぶ「特別点検」を実施する必要もあり、実際には19年中の存廃決定を迫られている。運転延長には東京電力福島第1原発事故後の新規制基準に適合させるため、テロに備えた特定重大事故等対処施設(特重施設)などの整備が必要。九電は再稼働した玄海3、4号機用に設ける特重施設との共用は距離的に難しいと判断、単独での建設も用地確保が困難とみている。加えてケーブルの難燃化対応なども必要で、安全対策にかかる費用の総額は「廃炉にした1号機とあまり変わらない可能性がある」(幹部)という。九電が再稼働した原発4基に投じた安全対策費は計9千億円超。2号機の安全対策工事の期間も見通せず、20年間の運転延長では経済性が十分に担保できないと判断したもようだ。一方、再稼働済みの玄海3、4号機の出力は各118万キロワット、川内原発1、2号機(鹿児島県薩摩川内市)は各89万キロワットある。さらに石炭火力で100万キロワットの松浦発電所2号機(長崎県松浦市)が今年稼働予定、九州の太陽光発電の総出力は800万キロワットを超えるなど、供給面では、出力が小さい玄海2号機を再稼働する意義は薄れている。廃炉費用364億円が見込まれる玄海1号機と同時期に廃炉を進めることで、効率的に作業ができる利点も考慮したとみられる。全国では福島第1原発事故後に7原発10基(福島第1を含まず)が廃炉を決め、老朽原発を中心に選別の動きが進んでいる。

<思考における基礎教育の重要性>
PS(2019年1月18日追加):*6-1に、厚労省は、「(外国人材の受け入れ拡大による効果については考慮していないが)ゼロ成長で高齢者や女性の就労が進まない場合には、2040年の就業者数は2017年に比べて1285万人減る」という推計を出したそうで、これを解決するには、労働参加率を上げて量を増やすだけでなく、労働力の質を上げることも重要だ。そのため、*6-2のように、①幼児教育・保育の無償化で、子どもが早くから教育を受けられるようにする ②高等教育の負担を軽減する ③保育所や学童保育の整備で女性の就労を容易にする 等が必要だ。
 しかし、私は、質の確保という意味から、認可外保育施設を無償化対象として永続させることには賛成できない。そのかわり、*6-3のように、学童保育や保育所に待機児童が多いため、就学年齢を3歳からとし、0~2歳は保育、3歳以上は小学校と学童保育という分け方をして、教育の質も同時に充実させるのがよいと考える。
 なお、*6-4のように、厚労省は「毎月勤労統計」を2004年~2018年に東京都で1/3しか実施せず、これが法律違反だということで大騒ぎになっているが、無差別抽出をすれば全数調査しなくても正確な統計をとることはできるため、2018年に東京都分を3倍にしたのは一概に誤っているとは言えない。また、統計による平均値を基にして個人の雇用保険の給付水準を決めるのは理論的ではなく、払込保険料に反映される失業(もしくは育児休業)直前の個人の給与を基にして決めるべきだろう。現在はコンピューター時代で、これを行うことは容易であるため、個人の払込履歴を基に支払うようにすべきだ。

*6-1:http://qbiz.jp/article/147116/1/ (西日本新聞 2019年1月15日) 就業者数が1285万人減 2040年、初の推計
 厚生労働省は15日、雇用政策研究会(座長・樋口美雄労働政策研究・研修機構理事長)を開き、経済成長がない「ゼロ成長」で高齢者や女性の就労が進まない場合、2040年の就業者数は17年に比べて1285万人減るとの推計を示した。研究会は雇用促進策や人工知能(AI)などの技術を活用できる環境の整備を求めている。高齢者数がほぼピークを迎える40年時点の推計を出すのは初めて。4月からの新たな外国人材の受け入れ拡大による効果については「制度が始まっていない」として考慮していない。一方で、日本語教育の充実や生活者としての外国人支援の推進が必要と指摘した。推計では、25年と40年の各時点の就業者数を算出。17年の就業者数が6530万人だったのに対し、25年は448万人減の6082万人になり、40年は5245万人にまで落ち込む見通しだ。17年と40年を比べると、男性711万人減、女性575万人減と、男性の減少幅が大きい。厚労省は「人口減少が原因」としている。産業別では、17年から40年にかけて最も減少するのは、287万人減が見込まれる卸売・小売業だった。221万人減の鉱業・建設業と206万人減の製造業が続く。他が減少する中、医療・福祉分野だけは103万人増加する見通しだ。厚労省は、女性活躍や高齢者雇用政策が一定程度の効果を上げた場合の就業者数も試算。25年は17年比187万人減の6343万人、40年は同比886万人減の5644万人だった。

*6-2:https://digital.asahi.com/articles/DA3S13796591.html (朝日新聞 2018年12月4日) 「市町村の負担、1000億円減」 幼保無償化、政府案軸に調整
 来年10月に始まる幼児教育・保育の無償化で新たに必要となる財源について、政府は3日、年間8千億円のうち市町村負担を当初案より約1千億円少ない約3千億円とする案を地方側に示した。地方側も歩み寄る姿勢を示し、この案を軸に調整が進む見通しとなった。ただ、政府は認可外保育施設を無償化対象とする方針を変えておらず、保育の質の確保は課題のままだ。宮腰光寛少子化対策担当相ら関係4閣僚と、全国知事会、全国市長会、全国町村会の各会長が無償化について協議するのは、11月21日に続いて2回目。国は、新たに公費負担が生じる認可外施設などについて、当初案で3分の1としていた国の負担を2分の1に引き上げる譲歩案を示した。地方側は「評価する」と表明したうえで、持ち帰って検討するとした。安倍政権は昨年秋の衆院選の目玉公約として無償化を打ち出したが、負担割合については十分な調整を欠いた。昨年12月の「国と地方の協議の場」で、地方6団体が「国の責任で、地方負担分も含めた安定財源を確保」と主張したことなどから、「地方も負担に理解を示している」(内閣府幹部)と解釈したからだ。政府は今年11月になって、地方も消費税率引き上げによる増収分から無償化の財源を出すのは当然だとして当初案を示したが、地方側は「負担割合に関する説明は一切なかった」「国が全額負担するべきだ」と猛反発、混乱が広がった。保育の質の確保も課題となった。政府は、認可保育園に入れずに認可外施設を利用する家庭への対応として認可外施設も無償化の対象とする方針だが、指導監督基準を満たしていない認可外施設も多い。地方側は「劣悪な施設に対して公費を投入することは耐え難い」と訴えた。根本匠厚生労働相は3日の協議で国と地方の協議の場を新設し、無償化の対象とする認可外施設の範囲などについて議論する方針を説明した。ただ、譲歩案には保育の質の確保に向けた対応策の詳細は盛り込まれていない。
■高等教育の負担軽減、負担割合了承
 低所得者世帯の子どもが大学などへ進学する際の負担軽減策は、国と地方の負担割合がおおむね了承された。授業料や入学金の減免は(1)国立・私立の大学や短大などは国が全額(2)公立の大学・短大などは設置する都道府県・市町村が全額(3)私立専門学校は、国と都道府県が半分ずつの割合とし、給付型奨学金は国が全額を負担する。ただ、知事会からは専門学校が集中する大都市圏への財政的な配慮を求められ、今後関係する省庁が対応を検討する。主な支援対象は住民税非課税世帯(年収270万円未満)で、国公立大の学生は国立大の授業料標準額(約54万円)を全額免除し、私立大生は約71万円を減額する。給付型奨学金は教科書代や自宅外生の家賃なども対象になる。

*6-3:http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2018122801001178.html (東京新聞 2018年12月28日) 学童保育、1万7千人入れず 小学校高学年で増加、厚労省公表
 厚生労働省は28日、共働きやひとり親家庭の小学生を預かる放課後児童クラブ(学童保育)について、利用を希望しても定員超過などで入れない待機児童は、今年5月時点で1万7279人だったと公表した。1~3年生の低学年で減少する一方、4~6年生の高学年は増加。全体では前年より109人増えた。子育てをしながら働く女性が増えているため利用希望者も年々拡大。政府は2018年度中に待機児童を解消する計画だったが、需要の高まりを受けて達成時期を21年度末へ先送りした。9月に公表した新たな計画では計152万人分の利用枠を確保することを目標に掲げている。

*6-4:https://digital.asahi.com/articles/DA3S13853478.html (朝日新聞 2019年1月18日) 過少給付、延べ2015万人に 統計不正、厚労次官ら処分へ
 厚生労働省の「毎月勤労統計」をめぐる問題で、同統計をもとに給付水準が決まる雇用保険や労災保険、船員保険で本来より少なく給付されていた人が、延べ約2015万人になることが分かった。当初公表の人数から約42万人増える。厚労省は11日の発表で計約1973万人としていたが、精査した結果、失業手当や育児休業給付などを含む雇用保険の対象者が約42万人上積みされたという。過少給付は雇用調整助成金などの助成金30万件でもあった。追加給付に関する費用は、事務費やシステム改修費などの約200億円を含めて約800億円に上る。政府は、問題が発覚する前の昨年12月21日に閣議決定した2019年度予算案を見直し、この問題の対応に必要な予算を反映させた予算案を18日に閣議決定し直す予定。こうした対応は極めて異例だ。一方、根本匠厚労相は同省の鈴木俊彦事務次官らを処分する方向で検討に入った。同省関係者によると、省内に設置された特別監察委員会の検証結果を踏まえて、具体的な処分内容を決めるという。この問題では、04年からの不正な抽出調査の無断実施や、本来の全数調査に近づけるために昨年1月に始まったデータ補正が組織的に行われ、隠蔽(いんぺい)された疑いが出ている。
■閉会中審査、24日に開催
 衆院厚労委員会は17日、24日に閉会中審査を行うことを決めた。審議時間は、与野党の同委員会の筆頭理事の協議で4時間で合意した。

| 経済・雇用::2018.12~ | 10:31 PM | comments (x) | trackback (x) |
2018.12.4 合併・買収・組織再編にまつわる経営意思決定と会計制度 (2018年12月5、6、7、8、9、10、13、14、15、16、17、18、19、20、21、23、27、28日、2019年1月5日追加)
           2018.11.22朝日新聞

(図の説明:左図のように、平均的役員報酬の額は日米欧で全く異なり、日本は著しく低い。また、中央のように、自動車大手の経営トップを比べてもゴーン氏の報酬が特別高いわけではなく、トヨタの場合は外国人副社長の報酬の方が日本人社長よりも高い。さらに、右図のように、日本企業にも役員報酬の高い上場企業があり、ゴーン氏の報酬が特に高いわけではない)

 書かなければならないことは多いのだが、私は、監査だけでなく税務やコンサルティングの経験もあり、組織再編税制・連結納税制度・退職給付会計・暖簾の会計処理・税効果会計等々の変更を提案してきた人であるため、今日は、ゴーン氏の「有価証券報告書への虚偽記載」によるとされる逮捕劇と合併・買収について記載する。

(1)ルノー・日産の事例から
1)経営統合を阻止するためのゴーンさんの逮捕
 *1-1、*1-2のように、日産は、ルノーとの経営統合を阻止すべく、ゴーン氏の不正行為について少人数の極秘チームで内部調査を進め、財務担当役員交代後に、秘書室幹部に司法取引させてゴーン氏を逮捕に追い込み、これを理由に会長を解任したというのがStoryの全貌だろう。メディアは、最初から「ゴーン容疑者」「不適切な支出」「有価証券報告書への虚偽記載」「個人に依存した体制」などという文言を使っていたが、日産自動車は個人企業ではないため、ゴーン氏の報酬についても優秀な財務部や法務部が関与して不法行為にならないよう気を付けたのは想像に難くない。また、ゴーン氏自身が日本や世界の法律・税務に詳しいわけではないため、ケリー氏を通じて社内外で検討させたのも当然のことと思われる。
 
 そして、*1-3のように、フランスのマクロン大統領は、仏ルノー・日産自動車・三菱自動車の3社連合について、ルノーの筆頭株主である仏政府は日産元会長のゴーン氏逮捕後の混乱収拾に乗り出す姿勢を示すことで、3社の「対等な関係」を目指す日産をけん制するそうだが、交渉役のゴーン元会長が不在になり、影響力拡大を狙う仏政府の思惑が崩れ始めていると日本のメディアは伝えている。

 しかし、EVかガソリン車かを選択する時代は既に終わったので、持ち株会社の下には「ルノー、日産、三菱自動車」をぶらさげるのではなく、①EV・燃料電池車 ②ES・燃料電池船 ③EA・燃料電池航空機 ④ゼロエミッション住宅 ⑤研究開発 ⑥マーケティング(新市場開拓や政策立案を含む)等々、製品や機能別に会社をぶら下げるべき時代になったようだ。こうなると、従来のエンジニアも新技術・新市場で活躍するしかないが、活躍の場は少なくないだろう。

 ゴーン氏の速やかな判断のおかげで、現在、ニッサンはEVや自動運転技術が他社より少し進んでいるが、ゴーン氏のようなリーダーを失い、調整とカイゼンしかできなくなった日産が全体を率いるよりは、(フランスはじめヨーロッパは、既にEVを普及させる政策には入っているのだから)フランス政府肝入りのルノーが全体を率い、3社を統合して組織再編を行い、それぞれの分野でトップに立つ機会を狙った方がよいように思う。そのためにも、コスモポリタンでヨーロッパ人ではないゴーン氏を失ったのは、日本勢にとって痛かったのではないか?

2)司法取引の問題点 ― 経営権争いに司法取引を用い、軽微な“罪”を言い立てて、
  実力者を追い出すことが可能になったこと
 司法取引が導入された時から、私は冤罪や人権侵害の温床になると考えていたが、やはり、*1-4のように、「①報酬合意文書は秘書室で秘匿され、取締役会に諮られていなかった」「②将来の支払いを確定させた文書だ」と、東京地検特捜部が文書作成に直接関与したとする秘書室幹部は、司法取引を行って証言したそうだ。

 しかし、取締役会は株主総会で認められた役員報酬(30億円)のうち、支払われなかった部分についてゴーン氏に一任することを承諾していたのだから、ゴーン氏は取締役会に諮っていたことになり、①は虚偽である。また、*1-6のように、報酬文書には日産の別の幹部のサインもあり、ケリー氏が「会社としても退任後の報酬支払いを把握していた証拠だ」としているのは本当だろう。

 なお、東京地検特捜部は、「退任後に支払う報酬は確定していたので、有価証券報告書に記載義務がある」として受領額の確定性を論点にしている。しかし、従業員の退職給付債務も、退職金規程等(企業と従業員の契約)に基づくに制度と解されており、誰でも自己都合退職時の支給額は確定しており、会社都合の場合はそれより大きくなる。そして、企業は、当該会計期間までに発生した退職給付債務を現在価値に割引いて退職給付支払いのためだけに使用する年金基金などに外部拠出し、年金基金は企業からの拠出金を元本として株式や債券等で運用して、従業員が退職した際に退職金を支払う。そのため、日産の従業員だった取締役は、この退職給付を必ず受け取るが、有価証券報告書にはそれを記載しておらず、弁護士のケリー前代表取締役が合法な方法だと言ったのは本当で、②の将来支払確定性は従業員の退職給付債務にもあるのである。

 従って、*1-5のように、退職後の報酬不記載を違法性の焦点にした時点で、日本の特捜や検察は敗北した。にもかかわらず、自白させるために拘留期間を伸ばす目的で逮捕容疑を2015年3月期までとそれ以後に分けたのは悪どい。さらに、どの取締役も書いていない退職後の報酬を書かなかったことを金商法違反(有価証券報告書の虚偽記載)だとして、ゴーン氏を逮捕するのは法の下の平等に反する。

 そのため、*1-7のように、ゴーン氏が「嘘の自白は耐えられない」として、一貫して容疑を否認しているのは当然だ。また、ゴーン氏は、フランスの工学系グランゼコールの一つパリ国立高等鉱業学校を卒業した人で、法律や会計の専門家ではないため自らの正当性を理論的に説明することはできないかも知れないが、社内外の専門家に相談して行動したと思われるので、嘘の自白を強要するのはやめるべきである。

3)役員報酬の相場と透明性
 経産省は、2015年3月に、「日本と海外の役員報酬の実態及び制度等に関する調査報告(http://www.meti.go.jp/meti_lib/report/2015fy/000134.pdf#search=%27IFRS+%E5%BD%B9%E5%93%A1%E5%A0%B1%E9%85%AC+%E9%96%8B%E7%A4%BA%E8%A6%8F%E5%AE%9A%27)」をトーマツグループに委託し、トーマツグループがしっかりした報告書を提出しているので、役員報酬に関心のある方は参照されたい。

 その中に、「日本国内における役員報酬の決定方法は、取締役が代表取締役に一任する会社が58%を占め、報酬委員会で協議して取締役会で決議する会社は15%に留まる」と書かれている。また、*1-8にも書かれているように、ゴーン氏問題を受けて高額批判が出ている役員報酬は、主要企業のトップの報酬を比較すると、日本は米国の1割程度で国際的には低い水準にあり、日本は経営者も含めた人材獲得のグローバル競争で後れを取る恐れがある。これは、高度専門職や研究者も同じだ。

 しかし、*1-9のように、日産は、ゴーン容疑者の裁量で報酬額を決めてきた現行の仕組みが不正の温床だと判断し、役員報酬の決定過程を透明化するために、報酬委員会を新設することを検討するそうだ。こうすると、確かに特定の人が槍玉に挙げられることはなくなり、決定過程も透明にはなるが、必要な人をヘッドハントして業績や相場に応じた報酬を支払うことはできにくくなる。また、50%以上の人が賛成することは、現在の常識であって先端ではないのである。

 なお、ゴーン氏は日産から7億3500万円の役員報酬を得ていたそうだが、ルノーから得ていた報酬は、ルノーは日産の被連結子会社でないため、日産の連結財務諸表に掲載されない。つまり、会社の資本関係やそれに伴う連結範囲を吟味せずに、こういう問題を語ることはできないのである。

(2)不適切な合併・買収に関する論評
 このように、破綻寸前だった日産をよみがえらせたゴーン氏のやり方が非難され、*2-1のように、世界的な企業規模の大型化についていけていないため日本企業の「小粒化」が進んでいると書かれた記事がある。しかし、合併して瞬間的に大規模になればよいわけではなく、合併後にシナジー効果を発揮して大きな成果の得られることが合併の本当の意義である。

 また、長寿だから新陳代謝が鈍くて成長力がないわけではなく、時代にあった的確な戦略を作ってそれを実行できるか否かが問題であるため、歴史があり優秀な人材の揃っている企業が強いことは多い。さらに、他と比べたから成長率が上がるわけではなく、成長率が上がること自体が企業の目的でもない。

 それどころか、国民生活を犠牲にした金融緩和でじゃぶじゃぶにした金で無理にM&Aをして大損した例は、枚挙に暇がない。例えば、*2-2の東芝の例のように、自らは技術がないため高すぎる買収額で技術があると思われる会社を買収したケースは、相手が納得していないので、金をむしり取られただけでうまくいかなかった。

 なお、買収額と本当の企業価値のギャップは、現在は全て暖簾に計上しているが、本来の暖簾部分と高値買いした部分とに分け、後者は直ちに償却するか買収を行った経営者がいる数年のうちに償却するのがFairである。しかし、本来の暖簾部分は、時間の経過とともに価値が上がることも多いため、価値がなくなった時に減損処理する現在の会計処理が妥当だと考える。

 また、*2-3のように、銀行・生保・商社は、大きくさえあればよいと、日本型の「メガ合併」や「救済合併」をよく行ったが、それによりコスト・システム運営費などを削減できればよいものの、人事でやりにくさが増したり、企業の数が減ったため製品やサービスに個性がなくなり、消費者が求めるサービスが減ったりしたという現象もあった。

 そのような中、*2-4のように、ゴーン氏は聖域なき改革を行い、工場閉鎖・人員削減・系列破壊を行って非効率にメスを入れ、破綻寸前だった日産はV字回復を果たしたのだが、ゴーン氏は恨まれているようである。工場労働者と経営者との報酬格差が日本ではよく批判されるが、日産が破綻していれば全員が職を失っていたのであり、時代に先んじた正しい意思決定をすることは、小田原評定の議論をしているよりずっと重要なことである。

(3)暖簾の会計処理
 暖簾の会計処理について、*3のように、国際会計基準(IFRS)を策定する国際会計基準審議会(IASB)が、企業買収を巡る会計処理の見直しを始めたと書かれているが、(2)で述べたとおり、暖簾は買収先企業の収益還元価値と純資産の差額がブランド力等と解され、買い手企業が資産計上でき、その価値がなくなった時に減損損失を計上するのが正しいと、私は考える。

 しかし、日本の合併・買収は、高値買いした価格と純資産の差額をすべて暖簾に計上するため、問題が起こる。つまり、高値買いした価格と収益還元価値の差額は、直ちに償却するか買収した経営者のいる数年のうちに償却し、収益還元価値と純資産の差額は、暖簾として計上し続けるのが適切であろう。

<ルノー・日産の事例>
*1-1:http://qbiz.jp/article/144694/1/ (西日本新聞 2018年11月24日) 日産、今春から極秘チーム結成 ゴーン前会長の不正調査
 日産自動車が、逮捕された前代表取締役会長カルロス・ゴーン容疑者の不正行為について、今年春ごろから役員を含む少人数の極秘チームを結成し、社内調査を進めていたことが24日、関係者への取材で分かった。財務担当の役員交代を機に、不適切な支出が確認された。フランス自動車大手ルノー主導による経営統合をゴーン容疑者が進めることを警戒し、会長解任を急いだことも判明した。統合を阻止するために調査を始めたわけではないが、経営戦略を巡る日産内部の対立が事件発覚の引き金となったことが裏付けられた。関係者によると、ゴーン容疑者が会社の資金を不当に使っている疑いは以前から浮上していた。だが、絶対的な権力を持つゴーン容疑者から不利な扱いを受けるのを恐れ、社内には声を上げられない雰囲気が広がっていたという。転機となったのは今年5月。最高財務責任者(CFO)がそれまでの外国人から日本人の軽部博氏に交代した。財務部門のメンバーが代わり、不適切な支出が次々と明るみに出た。ゴーン容疑者による証拠隠滅や妨害を警戒し、社内調査は秘密保持を徹底した。司法取引した外国人の専務執行役員らも調査に協力した。6月ごろから大手弁護士事務所も加わり、証拠を積み上げていった。日産は公表時期を慎重に検討。ゴーン容疑者は今年3月以降、日産とルノーの資本関係を見直す発言を繰り返すようになり、日本人役員を中心に日産内で経営の自立性を失うことへの警戒が広がった。ゴーン容疑者が年内にも協議開始の提案をするとの情報があり、今回、来日したタイミングで公表する手はずを整えたという。関係者は「協議が始まった後に不正を発表し、クーデターという見方が強まるのを避けた」と話す。

*1-2:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO38263090X21C18A1EA2000/?n_cid=NMAIL006 (日経新聞 2018/11/28) 日産「日仏対等」探る 出資「4割ルール」焦点に、3社連合トップ、29日初会合
 日産自動車と仏ルノー、三菱自動車の3社連合のトップが29日、オランダで会合を開く。カルロス・ゴーン容疑者(64)が逮捕されて以降、初めてのトップ協議になる。出資比率や提携内容の見直しを通じ「対等な関係」を模索する日産と、支配的な地位を維持したいルノー――。日仏連合は「ゴーン後」の新しい枠組みを構築する作業に着手するが、日産とルノーの溝は深く妥協点を見いだすのは容易ではない。29日のトップ協議は、新車開発や部品調達など重要事項を決める統括会社「ルノー日産B・V」(アムステルダム)が舞台になる。日産の西川広人社長と三菱自の益子修会長は、現地に行かずテレビ会議で参加。ルノーからは暫定トップのティエリー・ボロレ最高執行責任者(COO)が加わる見通しだ。3社連合の実権をゴーン元会長に委ねてきた西川氏とボロレ氏にとっては事実上の「外交デビュー」となる。29日は「込み入った話には踏み込まない」(日産幹部)見通しで、3社連合の枠組みを維持する方針の確認にとどまるとみられる。「個人に依存した体制を見直すいい機会になる」。ゴーン元会長の逮捕を受けた19日の記者会見。3社連合への影響を聞かれた西川社長は危機ではなく好機だと強調した。日産は29日の初協議を経て、ルノーとの対等な関係の構築に動き出すとみられる。日産が求める「対等」とは何か。その柱はルノーとの資本構造と事業面での不均衡の是正だ。「4割ルール」――。日産とルノーの資本関係にはフランスの会社法が重みを持つ。ルノーは日産株を43.4%持ち議決権もある一方、日産が15%持つルノー株には議決権がない。仏会社法の定めでは、40%以上の出資を受ける企業は、出資元の企業の株式を保有しても議決権を持てない。ルノーは資本面で優位に立つ。日産は08~18年に出願した特許が約6万8千件とルノーの2倍を超えるなど、先端技術や販売台数、収益力などでルノーに勝る。しかし北米で売る主力車を経営不振だった韓国のルノー子会社で生産するなど、ルノーを支えることを主眼とした判断も迫られた。日産にとっては、こうした事業面のゆがみを解消するには資本による支配構造の見直しが必要だ。考えられる選択肢はいくつかある。仏会社法ではルノーの日産への出資比率が4割を割れば、原則として日産もルノーの議決権を得るとみられる。逆に日産がルノー株を25%まで買い増せば、日本の会社法に基づきルノーが持つ日産の議決権が消える。持ち株会社を設立し、日産とルノーが事業会社としてぶら下がる案もある。両社の間には「改定アライアンス基本合意書(RAMA)」と呼ばれる協定がある。ルノーは日産の合意なしに日産株を買い増せないが、日産は仏政府などから経営干渉を受けたと判断した場合、ルノーの合意なしにルノー株を買い増せる。日産はこの協定をカードにルノーと見直し協議を進める可能性がある。ただ、ルノーは仏政府にとって数少ない虎の子の企業だ。仏国内では有力企業が次々と外資の手に渡っている。支持率低迷にあえぎ国内投資や雇用を重視するマクロン政権が、現在のルノーの支配的地位を譲る事態は想定しにくい。日産は12月17日に取締役会を開きゴーン元会長の後任人事を協議する。ルノーは後任会長を送る意向を示したのに対し、西川社長を軸に検討する日産は拒否したとされ、水面下で両社の綱引きはすでに始まっている。泥沼の主導権争いを避け、妥協点を見いだせるか。日仏連合は岐路に立つ。

*1-3:
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20181202&ng=DGKKZO38440120R01C18A2EA2000 (日経新聞 2018年12月2日) 3社連合、崩れる仏の思惑、マクロン氏「維持・安定を」
 フランスのマクロン大統領が日本時間1日未明、日産自動車と仏ルノー、三菱自動車の3社連合について安倍晋三首相と議論した。ルノーの筆頭株主である仏政府が日産元会長のカルロス・ゴーン容疑者の逮捕後の混乱収拾に乗り出す姿勢を示すことで、3社の「対等な関係」を目指す日産をけん制する。交渉役のゴーン元会長が不在になり、影響力拡大を狙う仏政府の思惑が崩れ始めている。
20カ国・地域(G20)首脳会議に合わせた会談は15分という短時間だった。マクロン氏は「3社連合を維持し、安定させるのが重要だ」と語り、仏政府が支援する姿勢を明確にした。逮捕されたゴーン元会長については「司法的な手続きは進めなければいけない」と日本の司法制度を尊重する姿勢もみせた。会談は当初予定されていなかったが、マクロン氏の呼びかけで開かれた。直前の11月29日に日産・ルノー・三菱自の3社トップが会合を開き、今後の方針は3社による合議制で決めると合意していた。仏政府にしてみれば、「ルノー優位の連合」という構図にヒビが入った瞬間だった。日仏首脳会談を開く重要な狙いは、ルノー優位の連合の関係見直しを求める日産へのけん制だ。かつて国営の「ルノー公団」だったルノーは仏国内で4万8000人の雇用を抱える、いわば「国策企業」だ。日産車の生産移管などで仏国内での雇用を創出している。マクロン氏の支持率は17年の就任以来最低の2割台に急落している。自ら連合の維持を訴えることで、ルノーを巡る経営や雇用への不安を打ち消そうとする狙いがある。経済産業デジタル相だった2015年、マクロン氏はルノー株を買い増して影響力の拡大を図った。さらに日産・ルノーの経営統合を目指したとされ、日産から激しい反発を生んだ。ゴーン元会長の逮捕後に遠心力を強める日産に対し、マクロン氏が首脳会談で自らの指導力を見せつける必要があった。G20の直前、仏経済紙レゼコーは政府幹部の「我々には『重火器』がある。つまり、ルノーに日産株を買い増しさせる」との声を伝えた。信頼関係の崩壊につながる極めて荒っぽい提案だが、仏政府内に強硬派がいることを日産に知らしめた。自動車行政を所管するルメール経済・財務相は、はっきりと仏政府が介入する姿勢をみせている。11月下旬の仏メディアの取材に「ルノーと日産が互いの出資比率を変えることを望まない」と語った。

*1-4:https://digital.asahi.com/articles/DA3S13789560.html (朝日新聞 2018年11月29日) 報酬合意文、秘書室で秘匿 取締役会に諮られず ゴーン前会長 関与の幹部、司法取引
 日産自動車の会長だったカルロス・ゴーン容疑者(64)が約50億円の役員報酬を有価証券報告書に記載しなかったとして逮捕された事件で、この約50億円を退任後に受け取ることで日産と合意した文書は、秘書室で極秘に保管されていたことが関係者への取材でわかった。東京地検特捜部は、文書作成に直接関与した秘書室幹部と司法取引し、将来の支払いを確定させた文書だという証言を得た模様だ。関係者によると、この文書は役員報酬を管理する秘書室で管理され、経理部門や監査法人には伏せられていた。退任後に支払うという仕組みは取締役会にも諮られなかったという。ゴーン前会長と前代表取締役のグレッグ・ケリー容疑者(62)は、2014年度までの5年間の前会長の報酬が実際は約100億円だったのに、有価証券報告書に約50億円と虚偽記載したという金融商品取引法違反の疑いで逮捕された。関係者によると、ゴーン前会長は高額報酬への批判を避けるため、各年度に受け取る額は約10億円にとどめたうえで、さらに約10億円を退任後に受領するという文書を毎年、日産と交わしていたという。特捜部は、外国人執行役員と共に、ゴーン前会長に長年仕えた秘書室の日本人幹部と司法取引。捜査に協力する見返りに刑事処分を減免することにした。秘書室幹部は合意文書を特捜部に提供。さらに文書の解釈について、退任後に支払う約10億円は約20億円の年間報酬の一部で、将来の支払いが確定しているなどと証言したとみられる。特捜部は、司法取引しなければ入手困難な文書を得たうえ、解釈に関する当事者の証言を得られたことを重視し、隠蔽(いんぺい)工作と判断した模様だ。
■「従業員のやる気考慮」 ゴーン前会長、容疑否認
 ゴーン前会長が、約20億円の報酬のうち毎年開示するのは約10億円にとどめ、差額の約10億円を退任後に受け取ることにしたとされる点について、「(公表したら)従業員のモチベーションが落ちると思った」と話していることが、関係者への取材でわかった。関係者によると、2008年秋のリーマン・ショックで日産の業績が下がったため、ゴーン前会長の報酬も減った。その後、日産の業績は回復。ゴーン前会長は報酬を元に戻そうと考えたが、開示すれば従業員のやる気を失わせてしまうと考えたという。退任後の報酬の支払いについては「確定したものではなく、記載義務はない」と容疑を否認。弁護士でもあるケリー前代表取締役に相談して「『合法な方法です』と言われた」とも主張しているという。

*1-5:https://www.nikkei.com/paper/related-article/tc/?b=20181201&bu=BFBD9496EABAB5E (日経新聞 2018年12月1日) 報酬不記載の違法性焦点 ゴーン元会長逮捕1週間、先送り80億円、開示対象? 受領額確定か否か
 日産自動車元会長のカルロス・ゴーン容疑者(64)の逮捕から26日で1週間を迎えた。役員報酬約80億円の過少記載方法の違法性を巡り、検察側とゴーン元会長側が争う構図が鮮明になってきた。業績をV字回復させたカリスマ経営者は、逮捕容疑以外にも会社を「私物化」していた不正行為が発覚。事件を機に、日産・ルノーの資本関係の見直し協議が本格化するなど「ゴーン元会長退場」の余波は広がる。関係者によると、有価証券報告書に記載されていないゴーン元会長の役員報酬は▽受け取りを先送りした金銭報酬=8年間で計約80億円▽株価上昇と連動した額の金銭を受け取れる「ストック・アプリシエーション権」(SAR)=4年間で計約40億円分――の2種類があるとされる。関係者によると、2種類のうち受領を先送りした報酬は毎年約10億円、2018年3月期までの8年間で計約80億円に上る。東京地検特捜部が金融商品取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)にあたるとしてゴーン元会長らを逮捕した容疑は、このうち15年3月期まで5年間の約50億円を対象としたもようだ。日産では近年、役員報酬の総額上限を29億9千万円と設定。ゴーン元会長は上限内で各役員への報酬の配分を決める権限を持ち、自身は年20億円前後としていた。だが、10年に報酬1億円以上の役員について報酬額の開示が義務化されると、高額報酬への批判を避けるため、約10億円の受領を退任後などに先送りし、有価証券報告書に記載しないことにしたという。金融庁によると、内閣府令では開示対象の報酬を「職務執行の対価として会社から受ける財産上の利益」と定義。ストックオプションや退職慰労金なども含まれ、開示義務は受け取る見込み額が明らかになった時点で生じるという。青山学院大の八田進二名誉教授(会計学)も「支払いの時期にかかわらず、額が決まった時点で記載の義務が生じる」と説明する。東京地検特捜部は報酬先送りについて記載した文書を入手するなどしており、ゴーン元会長が受け取る報酬額は固まっていたので受け取り前でも記載の義務はあったと判断しているもようだ。ただ、先送り分の引当金などは計上されていなかったとみられ、ゴーン元会長らは「確実に支払われると決まっていなかった」などと容疑を否認しているという。2種類の報酬のうちSARについても、他の役員は付与された分を記載していたのに、ゴーン元会長は18年3月期までの4年間に得た計約40億円分を記載していなかったとされる。SARの場合、受け取れる金額は権利を行使した時点の株価で決まる。会計実務に詳しい専門家によると、開示義務が生じるのはSARを付与された時点とする考え方がある一方、権利行使が可能になった時点だとする考え方もあり、運用は各企業に委ねられているのが実情という。金商法に詳しいある弁護士は「開示ルールが必ずしも明確ではなく、SARの不記載を立件するハードルは高いだろう」と話している。投資家の判断の元となる有価証券報告書の虚偽記載は証券市場の公正さに対する信頼を損なう犯罪とされ、検察当局は厳しい姿勢で臨んでいる。06年には法定刑も「5年以下の懲役もしくは500万円以下の罰金」から「10年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金」に引き上げられた。一般的には、投資の判断材料として、役員報酬の重要度は財務諸表などより低い。しかし、企業統治の健全さなどを評価する指標として開示が義務化された経緯もあり、特捜部は巨額の報酬を株主や投資家の目から隠した悪質性は高いと判断しているもようだ。

*1-6:http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2018120201001679.html (東京新聞 2018年12月2日) 報酬文書、日産の別幹部もサイン ゴーン前会長側近が作成
 日産自動車の前会長カルロス・ゴーン容疑者(64)=金融商品取引法違反の疑いで逮捕=が有価証券報告書に記載せず、退任後に受け取ることにした報酬の支払い名目を記した文書に、作成者の前代表取締役グレゴリー・ケリー容疑者(62)=同=のほか、当時のより上位の役員クラスの日産幹部がサインしていたことが2日、関係者への取材で分かった。文書はケリー容疑者が常務執行役員だった2010年ごろから数年間、毎年作成されていた。ケリー容疑者は、自分やゴーン容疑者らだけでなく、会社としても退任後の報酬支払いを把握していた根拠だと主張するとみられる。

*1-7:http://qbiz.jp/article/145135/1/ (西日本新聞 2018年12月3日) 「うその自白耐えられない」 ゴーン容疑者、一貫し容疑否認か
 金融商品取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)の疑いで逮捕された日産自動車の前会長カルロス・ゴーン容疑者(64)が周囲に「うその自白をすると自分の評判が落ちるので耐えられない」と話していることが3日、関係者への取材で分かった。一貫して容疑を否認しているとみられる。ゴーン容疑者は、2011年3月期〜15年3月期の5年間に、自分の報酬を約50億円少なく記載した有価証券報告書を提出した疑いで逮捕された。毎年の報酬額を約20億円と設定し、このうち退任後に受け取ることにした半分程度を記載しなかった点が容疑となった。関係者によると、ゴーン容疑者は退任後の報酬について、東京地検特捜部の調べに「あくまでも希望額だった」などと供述。記載していない事実は認めた上で、支払いは確定しておらず、報告書への記載義務はなかったと主張している。さらに、側近の前代表取締役グレゴリー・ケリー容疑者(62)=金融商品取引法違反の疑いで逮捕=に事前に確認し、記載しなくても合法との回答を得ていたとも説明しているという。不記載の総額は18年3月期までの8年間で総額80億円を超えるとみられ、特捜部は直近3年分の立件も検討している。

*1-8:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20181201&ng=DGKKZO38423100R01C18A2MM8000 (日経新聞 2018年12月1日) 役員報酬 きしむ日本流、「ゴーン問題」で注目 水準・透明性に課題
 日産自動車元会長カルロス・ゴーン容疑者の問題を受け、高額批判も出ている役員報酬。ただ、主要企業のトップの報酬を比較すると日本は米国の1割程度にとどまり、国際的には低い水準にある。経営者も含めた人材獲得のグローバル競争で後れを取る恐れがある。役員報酬を適切な水準へと見直していくべきだとの指摘があり、同時に決定過程を透明にするといった対応も課題となる。開示されているベースでゴーン元会長の2017年度の報酬は仏ルノーや三菱自動車の分も含めて約19億円にのぼる。日産からは7億3500万円で、役員報酬全体(18億5700万円)の約4割を得ていた。ゴーン元会長の報酬は過少に記載されていた疑いがあり、全体に占める比率はもっと高かった可能性もある。投資資金や会社経費を巡る「私物化」疑惑もある。海外子会社を通じてブラジルやレバノンに自宅用の住宅を購入させたり、姉と実態のないコンサルタント契約を結んで報酬を払ったりしていたとされる。様々な問題が指摘されてはいるが、ゴーン元会長の報酬額が国際的に突出しているわけではない。半導体大手ブロードコム約117億円、放送大手CBS約79億円、旅行サイトのトリップアドバイザー約54億円――。米労働総同盟・産別会議によると米国では17年も多くの最高経営責任者(CEO)が高額な報酬を得た。自動車大手のCEOだと米ゼネラル・モーターズが約25億円、米フォード・モーターは約19億円だ。社会主義的な風潮から高額報酬に批判的なフランスでも、医薬大手サノフィや化粧品大手ロレアルのCEOは約12億円を得ている。日本の役員報酬の平均水準は海外を大きく下回る。米コンサルティング会社、ウイリス・タワーズワトソンがまとめた17年度の日米欧主要企業のCEO報酬によると、米国の14億円に対して日本はわずか1.5億円。ドイツや英国、フランスと比べても2~3割の水準にとどまる。「総中流」時代のなごりで格差への抵抗感が強く、高額な報酬を避ける経営者が多いためだ。報酬が1億円以上だと個別名の開示が必要になるため、「9990万円」程度に抑えるケースも珍しくない。業績や株価に連動する「インセンティブ報酬」の比率が国際的に低いという違いもある。
●低成長でも高報酬
 この結果、日本の役員報酬には「上方硬直性」が生じている。国内上場企業の17年度の役員報酬合計は約8800億円と10年度比で31%増加。だが、業績ほどには伸びていないため、純利益に占める役員報酬の比率は同期間に4%から1.95%へと半減した。個別企業でみても報酬と業績の関係はあやふやだ。東京商工リサーチのデータで国内主要100社の取締役ひとりあたりの報酬を算出し、業績動向を反映しやすい時価総額との関係を調べたところ、17年度中に「時価総額が大きく伸びたのに報酬は低位」の会社が2割にのぼった。反対に「時価総額の伸びが鈍いのに報酬は高位」も2割弱あった。日産は時価総額が約3%増と低成長なのに、報酬額は約2億700万円と全体の平均値を上回る。ゴーン元会長の報酬が過少に記載されていたなら、「低成長・高報酬」の度合いはもっと強かった計算になる。
●委員会26%どまり
 日本の役員報酬には「決め方が不明確」という問題もある。報酬総額は株主総会の承認が必要だが、どう配分するかは「社長一任」としている企業が多い。歴史的に低い水準の報酬が続き、突っ込んだ議論が求められてこなかったためだ。一方、米上場企業は「報酬委員会(総合2面きょうのことば)」の設置が義務付けられている。報酬委は外部の有識者などを交え、客観性をもたせながら取締役など個人別の報酬を決めるための仕組みだ。日本で報酬委(任意導入含む)を設置しているのは日立製作所やブリヂストンなどの932社。全上場企業の約26%にすぎない。日産も報酬委はなく、ゴーン元会長は自身の報酬を「お手盛り」で決めていたとされる。「透明性と緊張感のある報酬制度は競争力の源泉」と一橋大学の伊藤邦雄特任教授は指摘する。外国人も含めて優秀な経営者を引きつけるには、日本の役員報酬は欧米に見劣りしない水準へと切り替わっていく必要がある。報酬委などの活用で透明性を高め、利害関係者の納得を得やすくするといった制度上の工夫がその第一歩になる。

*1-9:http://www.tokyo-np.co.jp/article/economics/list/201811/CK2018112202000162.html (東京新聞 2018年11月22日) 日産、報酬制度変更へ ゴーン容疑者 ルノーと統合模索
 日産自動車が、代表取締役会長カルロス・ゴーン容疑者(64)が役員報酬を過少に申告したとして逮捕されたことを受け、役員報酬制度を変更する検討に入ったことが二十一日分かった。事実上、ゴーン容疑者の裁量で報酬額を決めてきた現行の仕組みが不正の温床と判断した。フランス大手ルノーとの企業連合の在り方も見直す。二十二日に臨時取締役会を開き、ゴーン容疑者の会長職を解く。ゴーン容疑者が今年九月の取締役会でルノーとの資本関係の見直しを提案していたことも判明した。役員報酬は決定過程を透明化するため、報酬委員会を新設し「委員会設置会社」に移行することなども検討する。甘い内部監査の是正は急務で、関係者は「報酬委員会などの設置は避けられない」と話す。現在の社内規定で各役員の報酬は、取締役会議長でもあるゴーン容疑者が、共に逮捕された代表取締役のグレゴリー・ケリー容疑者、西川広人社長と相談して決まる。企業連合の見直しは、ルノーから日産への出資比率の引き下げや新たな役員構成が焦点。英紙は二十日、ゴーン容疑者がルノーと日産の経営統合を考えていたと報じた。日産経営陣はかねて統合論に反発しており、ゴーン容疑者の失脚が関係再構築の呼び水となる。ただ日産がルノー株の15%を持つのに対し、ルノーは日産株の43・4%を保有し発言権が強いため、調整は難航が予想される。一方、ルノーは二十日に臨時取締役会を開き、ナンバー2のティエリー・ボロレ最高執行責任者が最高経営責任者(CEO)代理に就任する人事を決めた。ゴーン容疑者の会長兼CEO職の解任は先送りした。日産経営陣で代表権を持つ取締役はゴーン、ケリー両容疑者が欠け西川氏だけになり、補充が必要だ。他の取締役は六人で、うち二人がルノー出身。両容疑者を早期に取締役からも外すため臨時株主総会を開くことも議論になりそうだ。

<不適切な合併・買収に関する論評>
*2-1:https://www.nikkei.com/paper/morning/?b=20181118&d=0 (日経新聞 2018年11月18日) 小粒になった日本企業、「寿命」突出の89年 成長鈍く
 日本企業の「小粒化」が進んでいる。世界的な企業規模の大型化についていけていないためで、米国では企業の1社あたり時価総額が2000年末の2.6倍になった一方、日本は1.7倍にとどまる。企業再編などによる「新陳代謝」が鈍く、成長力の差を生んでいるとの指摘が多い。企業の競争環境の見直しなどが今後の課題となる。
●中国に逆転許す
 00年末に9.9億ドル(約1120億円)だった日本の1社あたり時価総額は17年末に17億ドルまで増えた。だが、米国は27.5億ドルから72.3億ドルと大きく伸ばし、「日米格差」は2.8倍から4.3倍に広がった。5億ドルだった中国は5.4倍の27億ドルと日本を逆転。「日中格差」は0.5倍から1.6倍に拡大した。米国ではアマゾン・ドット・コムやグーグル親会社のアルファベット、中国ではアリババ集団や騰訊控股(テンセント)など若いネット企業が急成長したためだ。日本でもソフトバンクグループやファーストリテイリングなどが健闘しているが、そうした新たな成長企業の数・時価総額の増え方などで見劣りする。ネットビジネスでの出遅れ、土台である日本経済の低迷、規制緩和の鈍さ、経営者マインドの保守性、語学力も含めたグローバル人材の不足――。背景には様々な要因がある。なかでも特に深刻だと多くの専門家が指摘するのが「企業の新陳代謝が国際的にみて鈍い」(帝京大学の宿輪純一教授)という問題だ。確認のために上場企業の「平均寿命」を試算してみた。期中の新規上場を含めて上場社数の年間平均が100社だったとする。上場廃止が10社なら、1年で10分の1の企業が消えたことになる。全企業が入れ替わるには10年かかるペースなので、「平均寿命(上場維持年数の平均値)」は10年だと見なせる。この計算だと17年時点で米ニューヨーク証券取引所の上場企業は「15年」、英ロンドン証取は「9年」。これに対して日本取引所の上場企業は「89年」と極端に長寿だと分かった。NY証取では約130社が新規に上場し、これを上回る150社強が消えた。この結果、上場社数(期中平均)は約2300と前年より約60社減少。上場社数は16年から減少が続いている。米証券取引委員会への提出資料で上場廃止の理由(上場投資信託など除く)を調べると、約8割がM&A(合併・買収)によるものだった。競争力の一段の強化を狙った大型再編や独自の強みをもつ小型企業の買収が多発しているからだ。17年にはダウ・ケミカルとデュポンが統合し、世界最大の化学会社ダウ・デュポンが誕生している。
●「長寿」があだに
 一方、日本取引所は100社強増えた一方で、上場廃止は40社どまり。上場社数は増え続けており、3600社弱と世界的にも多い。再編などの動きが鈍いためで、「日本には成長ではなく、企業存続を目的とする経営者が多い」(みずほ証券の菊地正俊氏)との指摘がある。景気低迷が長期にわたって続いたうえ、日本では銀行の力が強いため、M&Aなどを駆使して積極的に成長を狙うよりも、借金返済が確実になる安定型の経営が選ばれやすいようだ。これが突出した「長寿」につながっている。このため倒産も国際的にみて少ない。帝国データバンクによると17年までの10年間に倒産した日本の上場企業は79社。同期間に米国では総資産1億ドル以上に限っても331社が連邦破産法11条を申請している。日本と違って米国では経営上の選択肢と割り切って早めに倒産を申請するので再生も容易になる。倒産には時代遅れの企業から資本や人材を解き放ち、新たな成長企業を育ちやすくする効用もある。成長志向の弱さという問題は以前より悪化している可能性がある。日銀が年6兆円規模で上場投資信託(ETF)を購入し、東証1部に上場してさえいれば一定の買いが入る。業績低迷を放置していても株安による市場からの圧力を受けにくくなった。成長ではなく上場維持だけを目的にする経営マインドの土壌になっている。起業を促しつつ、事業や会社そのものの売却、破綻処理などのハードルを下げ、経営者には成長へのインセンティブを明確にする――。企業の新陳代謝を活発にするトータルな施策が、成熟期に入った日本経済には一段と重要になっている。

*2-2:https://medium.com/@newsgimon/東芝-westinghouse失敗の本質-1-9bbf2894469e (ニュースノギモンNov 19, 2017 抜粋)東芝:Westinghouse失敗の本質(1)
 日本のマスコミは、よく日本のモノづくりを礼賛していますが、ときに行き過ぎているのではないかと思うことがあります。確かに日本の電動自転車やシャワートイレに感動する外国人は多いでしょう。ただ、そういった画期的な製品というのは、ここ数年出ていないように見受けられます。日本のモノづくりの現場を同業の外国人が視察して感動する、そういう番組があるのも「もう一度自信を取り戻したい」という願望の裏返しに思えてなりません。日本のモノづくり神話、本当は疑っているんですよね? 率直にいうと、日本の製造業は大手になればなるほどモノづくりカルチャーというより、モノ(単一の)カルチャーに支配されていているのではないかと思っています。一つの企業文化の中に押し込められているので、悪い方向に流れ始めても軌道修正ができない。悪い方向に進んだ結果、失敗が起きても敗因分析はされない。なぜなら、モノカルチャーでは自己と他者が同一視されるので、誰かに責任をとらせるようなことをすると自分に返ってくるようで怖いのです。大手製造業では、多くの人は新卒で入社し、なんなら寮や社宅で同じコミュニティに属し、上意下達が根付いていて、「それ違うんじゃないの?」という気力が抜け落ちて行きます。名門といわれる企業ほど、外国人・中途採用にとって狭き門であり「異論」を持つ人間が主流派になりづらい現状があるのではないでしょうか。「それ違うんじゃないの」という人不在で突き進んで行った代表例、それが東芝だと思っています。僭越ながら東芝社内にかわり私めが失敗分析をさせていただきますね。東芝は、子会社であるWestinghouseの原子力事業により、巨額の損失を抱えることになりました。このことについて日本のマスコミの多くは、良心的にも「東芝がダマされた」「東芝は見抜けなかった」という論調で掲載しています。その根底にあるのは「日本の生真面目な製造業は、マネジメントが下手であるため欧米企業の暴走をコントロールできない」という思想ではないでしょうか。マネジメントが下手なのは事実かもしれませんが、果たして問題はWestinghouseの暴走にあったのでしょうか。
(あらすじ)
 この2年間、東芝は話題につきなかったので、Westinghouseにフォーカスしてことの経緯をざっくり振り返ります。
i)東芝が買ったWestinghouse(WEC)がShawの子会社のStone& Webster(S&W)という会社と原子力発電所の建設を受注した
ii)工期が遅れた
iii)プロジェクトの責任一本化のためにS&Wを買った
iv)S&Wの工期遅れによる損失がものすごいとわかった
といった感じです。
●買収における失敗
①高すぎた買収額
 そもそも東芝がWestinghouseを買収しようとした際、市場の想定価格は18億ドル程でしたが、東芝はライバル達に競り勝つために54億ドルで交渉権を得ました。当時の記事に、「3年単位で25億ドルのキャッシュフローを稼げるから大丈夫」という東芝幹部の発言が残っています。東芝の当時の主力事業は、半導体やハードディスクなど投資の規模・スピードともにもとめられる事業でした。その需要サイクルから考えると、キャッシュフローが一定に維持できるか疑問が残ります。一方で、東芝にしてみるとだからこそ、安定した収益の柱としてエネルギーにかけたのでしょう。結論からいうと、数年後のリーマンショックによる景気後退と、高すぎた買収額と企業価値とのギャップ(のれん)により、東芝のガバナンスは歪められていきます。
②買収がゴールだった時代
 2006年は、日本板硝子が英ピルキントンを6,160億円、ソフトバンクが英ヴォーダフォンを1兆7500億円、JTが英ガラハーを2兆2000億円で買収するなど、大型買収が目白押しでした。この年、日本企業による外国企業の買収が、始めて外国企業による日本企業買収を上回り、まさに外国企業買収のれい明期といえます。成功例として語られるM&Aもある一方で、この東芝の件については「どのように統合し、ガバナンスを利かせていくか」が考えられていなかったように思えます。もちろん、統合後の事業シナジーは描かれていました。問題は買収される側の心理をよく理解していなかったということです。日本企業の生え抜き文化では、経営陣の指示のもと組織は粛々と機能していくため、従業員への配慮を忘れてしまったのかも知れません。
③一方通行のシナジー戦略
 東芝の描いた絵というのは、次のようなものでした。原子力ルネッサンスが花開く(原子力市場が再興する)といわれるアメリカや、日本企業にハンディキャップのある中国や欧州市場でWestinghouse(WEC)にマーケティグを頑張ってもらい、その上がりをいただこう。WECがとってきたプロジェクトに東芝のタービンや周辺機器も入れてもらおう。原子力発電所の設計技術は、大きくBWR(※1)とPWR(※2)の2つに分けられています。東芝はBWRの会社だったので、世界の3/4を占めるPWR市場にリーチできることに当時の報道ではフォーカスされています。一方、当の東芝は、WECの販売力への期待もかなり大きかったようです。スピード感が重視される海外案件は、日本企業にとって依然言葉の壁、規制の壁が大きく立ちはだかります。東芝のプレスリリースに記載された以下のコメントにも、WECの裁量に任せる感が出ていますね。その方がスピーディに売り上げが上がっていくとの想定でしょう。
※1:沸騰水型軽水炉、※2:加圧水型軽水炉、加圧水型の方が安全性が高いといわれている
(ウェスチングハウス社については、これまでの経営体制と方針を尊重し、引き続き 独立性を保持した事業運営が行われます。また、当社およびパートナー企業とのシナ ジーが最大限にはかられるよう体制を強化し、さらなる事業の拡大を目指します。 出典:2006年10月東芝プレスリリース)
④自由裁量≠ロイヤリティ
 買われた側のWECの人たちはどう思うでしょうか。「このM&AでWECはどう成長させる気なの?」となりませんか。相互に刺激し成長していくビジョンがなければ、モチベーションは下がります。独立性が保たれるのは結構ですが、リーダーシップや共有の成長ビジョンが示されないと、「金持ちがバックについた」くらいの感覚になっても致し方ないように思えます。買収時に発表された運営体制の図には、常勤の取締役2人、CFO(最高財務責任者)・CCO(最高調整責任者、東芝の造語)、コーディネーションスタッフの派遣を行うと書かれています。コーディネーションオフィスは、人員が記載されていませんが、WEC内に1つ東芝内に1つ作られていたようで、恐らく本社との情報共有くらいの役割しか担っていなかったのでは、と思う次第です。経験上ですが(※)、直轄の現地法人であっても本社に自動的に情報が入るとはを限りません。必ず、どの情報をどの様に誰に伝えるか選択されます。世界のPWR特許の4割を抑えている名門WECが、買収されたからといって、真っ正直にタイムリーに報告しようとするでしょうか。コーディネーションオフィスをおいたぐらいでは、恙無い情報共有とは至らないはずです。ましてガバナンスを利かせるという点においては、いうに及ばずです。
※:東芝での勤務経験はございません。悪しからず。
⑤ふりかえり
 買収時における失敗要因は、以下に集約されるのではないでしょうか。
  1.買収額が高すぎた
  2.買収後のビジョン共有ができていなかった
  3.Westinghouseの信頼獲得に失敗した

*2-3:https://gendai.ismedia.jp/articles/-/50896 (週刊現代 2017.2.7 抜粋)銀行・生保・商社・自動車…これから始まる一流企業「大合併」、人口減少社会で生き残るために
 「勝者総取り」の時代だ。ごく一部の企業だけが突出して成長して輝く一方で、大多数は無残に死んでいく。勝ち残るためにはライバルとも手を組む。経営者たちはもう動き出している。
●「メガ合併」の衝撃
 みずほフィナンシャルグループ(FG)と三井住友トラスト・ホールディングス(HD)が、傘下の資産管理銀行を統合すると報じられてから約2週間。いまだ銀行業界では、この統合劇による衝撃の余波が収まらない。今回の統合は、コストやシステム運営費を減らしたいという思惑が一致したライバル同士が手を組んだもの――。新聞やテレビではそんな経済解説がなされているが、銀行業界のインナーたちはまったく違った視点からこの統合劇を眺め、戦々恐々としている。「現在、日本の銀行業界は青息吐息の経営を強いられています。ただでさえ人口減少で経済のパイが縮小して利ザヤを稼ぎづらくなっている中、日本銀行がマイナス金利政策を導入したことでトンネルの先がまったく見通せない状況に追い込まれている。そうした中で、今回の統合話が急浮上してきたことの意味は何かと言えば、メガバンクですら生き残るためには手段を選んでいられず、系列を超えた金融再編が一気に幕を開ける可能性が出てきたということです。すでに日本の銀行界では、'90年代後半から'00年代前半にかけて、不良債権問題から経営破綻、経営危機が勃発し、現在の3メガに集約された経緯があります。あれから10年以上が経ち、この体制すら維持するのが厳しくなってきた。ここからは、生き残りをかけた大合併劇が起こり得る」(元日本興業銀行金融法人部長で経済評論家の山元博孝氏)。そんな金融再編の「目玉」として銀行界で噂になっているのが、みずほと三井住友FGの「メガ合併」という驚愕のシナリオである。順を追って説明すると、まず今回はみずほが出資する資産管理サービス信託銀行と、三井住友トラストが出資する日本トラスティ・サービス信託銀行の統合だが、その先にはみずほFGと三井住友トラストHD同士が一緒になる可能性がある。みずほ幹部が、「確かにそれは検討されている」として内情を明かす。「現在のみずほFGの佐藤康博社長は、信託銀行部門を強化したいという想いが強い。信託銀行は普通の銀行と違い不動産業ができるため、低金利時代にあって高い仲介手数料を稼げる絶好のビジネスになるからです。佐藤社長は、みずほ銀行とみずほ信託銀行を統合させて、全国の支店で不動産業を展開させる壮大な構想まで考えていた。みずほ信託銀行が三井住友トラストHD傘下の三井住友信託銀行と一緒になれれば、まさにその強力な一手となり得る」。三井住友トラストも、「みずほと近づくメリットは大きい」と、三井住友グループ幹部は言う。「三井住友FGが同じ金融グループ内で自分たちを格下として見るのが気に入らないし、仮に統合となれば経営の主導権を握られるのは目に見えている。そのため、三井住友銀行の國部毅頭取と三井住友信託銀行の常陰均社長は表向き良好な関係だが、水面下での駆け引きは激しくなっている。その点、みずほ相手であれば、交渉次第では『対等合併』という形に持ち込める」。次に、両社がそうして蜜月を深めるほど、三井住友FGとしては黙ってはいられなくなる。三井住友は昨年度にみずほの後塵を拝して業界3位に転落しており、みずほと三井住友トラストが統合すれば、その差は広がるばかりだからである。「そこでいま業界内で語られているのが、三井住友と大和証券グループ本社の『復縁話』です」と、銀行業界を長く取材する金融専門記者は言う。

*2-4: https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20181123&ng=DGKKZO38122570S8A121C1EA2000 (日経新聞 2018.11.23) 「経営者ゴーン」の功罪
 カルロス・ゴーン元会長の「犯罪」に注目が集まっているが、ここでは事件からあえて距離を置き、企業のトップリーダーとしてのゴーン元会長の功罪を分析してみる。ゴーン元会長の日本での歩みの中で最大の衝撃をもたらしたのは、日産に赴任直後の1999年10月に発表した「日産リバイバルプラン(NRP)」だ。当時の日産は業績が長期にわたって低迷し、売れ筋の車にも乏しく、自動車業界でも「終わった会社」と突き放す見方が多かった。その危機を救ったのが仏ルノーから送り込まれたゴーン元会長の聖域なき改革であり、その基本設計であるNRPだ。ほぼ手つかずだった工場閉鎖や人員削減、「系列破壊」とまでいわれた調達改革を断行し、長年の非効率にメスを入れた。影響は自動車だけでなく、隣接産業にも波及した。川崎製鉄とNKKの統合など鉄鋼再編が加速したのは、ゴーン改革による調達先の絞り込みが直接の引き金だった。こうした改革の結果、日産はV字回復を果たした。「業績が悪くなったのはしがらみを断ち切れなかった経営のせいで、開発や生産などの車づくりの実力まで落ちていたわけではなかった。ゴーンさんは私たちにそれを気づかせてくれた」と日産社員は振り返る。自信回復の波は他の日本企業にも広がった。2000年ごろのいわゆるITバブルの崩壊で業績が悪化したのを機に、松下電器産業(現パナソニック)やコマツは事業や関連会社を思い切って整理し、業績を立て直した。一時的な痛みは覚悟のうえでウミを出し、心機一転、再出発する――。基本的な発想はゴーン改革と同じであり、そこから学ぶことも多かったのだろう。コマツの再生を主導した坂根正弘元社長は「ゴーンさんは常に意識する存在だった」と述べたことがある。今から振り返れば、ゴーン元会長が日産の経営に専念していた05年までが最も輝いていた時期かもしれない。ルノーと日産の両社のトップを兼ねるようになって以降はやや精彩を欠いた。中国への積極投資や三菱自動車への出資などで日産・ルノー連合の規模はトヨタ自動車と肩を並べるまでに巨大化したが、収益性やエコカーの技術力などもろもろひっくるめた会社の総合力ではまだまだ差が大きいのではないか。「コミットメント(必達目標)」はゴーン経営の代名詞にもなったが、実は最近の中期経営計画はほとんど未達に終わっている。17年3月期までの6年間の計画「日産パワー88」は期間中に電気自動車を150万台売るという目標を掲げたが、実績は30万台前後にとどまった。目標と結果がここまで乖離(かいり)するのは、そもそも計画を策定する側が市場の実態をきちんと把握できていないか、販売や開発の前線の士気がよほど低下しているのか。いずれにしても、会社が重大な問題を抱えているというシグナルに違いないが、そこに日産経営陣が機敏に手を打つ気配は感じられなかった。過去19年でカリスマ経営者は何を残したか、その歴史的評価が定まるのはゴーン元会長が去ったこれからかもしれない。

<暖簾の会計処理>
*3:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO35330630T10C18A9MM8000/ (日経新聞 2018/9/13) M&A「のれん」費用計上の義務化検討 国際会計基準、見直し、21年にも結論
 国際会計基準(IFRS)を策定する国際会計基準審議会(IASB)が、企業買収を巡る会計処理の見直しに着手したことが明らかになった。買収代金のうち相手企業の純資産を超えて支払った「のれん」と呼ぶ部分について、費用計上義務付けの議論を始め、2021年にも結論を出す。大型のM&A(合併・買収)が相次ぎ、企業財務への影響が強まっていることを考慮した。欧州中心に広がるIFRS採用企業には業績の下押し要因となる。IASBのハンス・フーガーホースト議長が日本経済新聞の取材で明らかにした。のれんは買収先企業のブランド力などの対価と解釈され、買い手企業が資産計上する。日本の会計基準では最長20年で償却し、費用として処理していく。IFRSではのれんの償却は不要な一方、買収先企業の財務が悪化した際などにのれんの価値を一気に引き下げる減損損失の計上を求める。巨額の減損損失を突然公表するケースもあり、投資家から分かりにくさを指摘されてきた。フーガーホースト議長は減損損失を巡る企業の判断が「楽観的になりやすい」うえ、計上のタイミングも「遅すぎる」と指摘した。IASB内でも以前からのれんの会計処理を巡る問題が意識されてきたものの、これまでは現状維持派が優勢で議論を始めてこなかった。しかし、議長の意向などを踏まえ、議論を始めると7月に正式に決定。今後、規制当局など利害関係者から意見を集めたうえで、のれんの償却を義務付けるかどうか判断する。企業業績への影響は大きい。IFRSは欧州を中心にアジアなど120以上の国・地域に広がる。日本では武田薬品工業、三菱重工業、ソフトバンクグループなどが導入している。IFRS採用企業には大型M&Aを実施するケースも目立つ。17年度時点で国内IFRS導入企業(約160社)は約14兆円、欧州の主要600社は240兆円ののれんを抱える。仮に20年間の定期償却が導入されると、日欧合計で年間13兆円の減益要因が生じる計算になる。中国では主要100社で約10兆円ののれんがある。中国の会計基準はIFRSとの互換性を重視しており、今後、対応を迫られる可能性がある。大型M&Aが活発な米国ではのれんは主要500社で340兆円にのぼる。米国会計基準ではのれんの償却は不要。ただ、世界の主流になりつつあるIFRSが変更されれば、米国でも見直し議論が出そうだ。のれんの償却は企業財務の予見性を高め、投資家のメリットとなる。その半面、M&Aのコストを増やし、企業活動を阻害するとの反対論も根強い。IFRSの見直し議論も今後、曲折が予想される。

<ゴーン氏逮捕事件と日本の刑事司法手続き>
PS(2018年12月5、7日追加):ゴーン氏が役員報酬を過少記載したとして逮捕された事件に関して、側近だったケリー氏は、*4-1のように、「退任後の支払いのうち隠したとされる分は、前会長の秘書室が開示義務はないと外部に確認した」と供述しておられるそうだが、有価証券報告書の記載事項について疑問がある時は、外部監査人や金融庁に確認をとり、根回しをしておくのが普通であるため、こちらが事実だと考える。
 もし退職金でなく、コンサルタント料であったとすれば、コンサルタントとしての役務提供を行うか否かによって契約が実行されるかどうかは変化するが、60代で退任するゴーン氏なら、退任後にコンサルタントとして有益な役務提供ができると考えても決しておかしくない(日本には、顧問として残っている元役員も多い)。
 なお、*4-2のように、ゴーン氏逮捕事件は、日本の刑事司法に世界の目を向けさせ、長く是正されてこなかった問題点をあらためて浮き彫りにしているが、これこそ人権を重視する時代に合わせて改革すべきである。そうでないと、危なくてやっていられないからだ。
 また、2018年12月7日、日経新聞は社説で、*4-3のように、「①ゴーン氏事件で、海外から日本の捜査手法や刑事手続きに対する批判が相次いでいるので、見直すべき点は検討課題とすべき」としながらも、「②司法制度や司法文化の違いを無視した単純比較や、誤解、思い込みも目立つ」「③一方的な批判を放置すれば、刑事司法に対する国民の信頼を損ない、国際的な日本のイメージが傷つく」「④証拠のあれこれではなく、明示されたルール、裁判所の関与、人権への一定の配慮の仕組みを伝えればいい」「⑤フランスでは警察による勾留は原則24時間にとどまるが、予審の段階で最長4年に及ぶ勾留が認められる」「⑥欧米では捜査側に幅広い通信傍受や司法取引、おとり捜査といった強い権限が与えられるので、容疑者に弁護士の立ち会いを認めている」「⑦日本では捜査手法は限定しており、取り調べに比重を置いて弁護士立ち会いを認めずに供述を引き出すやり方を採用してきた」などと記載している。
 しかし、④のような高飛車な言い方をするのなら、①は枕詞にすぎないだろう。そして、③を防止するため、法務省・最高裁は制度の違いを丁寧に説明して正しく反論する姿勢が求められるとしているが、②のように、文化や制度が違うから問題なのではなく、有罪と決まってもいない人を生活環境の悪い拘置所に長期間拘留し、弁護士もつけずに自白に導く手法が拷問に近く、これは日本人に対してでも人権侵害なのである。さらに、④の「罪状や証拠は関係ない」「明示されたルール・裁判所の関与・人権への一定の配慮の仕組みを伝えればいい」などとするのは、その制度そのものを問題にしている時に、思考停止だ。私は、⑤のフランスの仕組がどうかは知らないが、ゴーン氏のような司法取引で最初から事実が確認されている“罪”なら24時間の勾留で終わる筈だし、容疑者に弁護士の立ち会いを認めるのは、⑥⑦のような捜査手法とは全く関係なく、司法に詳しくない一般人の人権を守るためだということを忘れていると思う。

*4-1:https://digital.asahi.com/articles/DA3S13798329.html (朝日新聞 2018年12月5日) 「開示義務ない、秘書室が確認」 ゴーン前会長側近
 日産自動車の会長だったカルロス・ゴーン容疑者(64)が巨額の役員報酬を過少記載したとして逮捕された事件で、側近の前代表取締役グレッグ・ケリー容疑者(62)が、退任後の支払いにして隠したとされる分について「前会長の秘書室が開示義務はないと外部に確認した」と供述していることがわかった。相談した外部の弁護士や会計士の事務所名も具体的に挙げているという。違法性の認識をめぐる、東京地検特捜部との対立が鮮明になった。特捜部は2人を金融商品取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)の疑いで逮捕。2010~17年度の8年間の年間報酬は各約20億円だったが、各約10億円は退任後の支払いにして計約90億円を隠蔽(いんぺい)し、退任後はコンサルタント料などの別名目に紛れ込ませて支出する計画だったとみている。一方、関係者によると、ケリー前代表取締役は、前会長の退任後の処遇をめぐる計画は、役員報酬とは無関係だと主張。前会長の秘書室に指示して会計事務所などに法的な問題点を問い合わせたとし、「取締役として各年度に行った職務への報酬ではなく、開示義務はないと確認した」「日産として確認したということだ」と強調しているという。特捜部が有力な証拠とみる関連書類についても、「前会長に見せる時は『退任後の支払いを確約するものではない』と何度も言っていた」と説明しているという。

*4-2:https://www.shinmai.co.jp/news/nagano/20181203/KT181130ETI090020000.php (信濃毎日新聞 2018年12月3日) 刑事手続き 不備を見直す機会に
 日産自動車の前会長カルロス・ゴーン容疑者が逮捕された事件は日本の刑事司法手続きにも世界の目を向けさせた。長く是正されてこなかった問題点があらためて浮き彫りになっている。一つは、捜査当局が被疑者を取り調べる際の弁護士の立ち会いだ。日本の刑事訴訟法は、立ち会わせる権利を明記していない。一方、欧米をはじめ各国が立ち会いを認めている。米国では、1966年の連邦最高裁の判決に基づき、被疑者が権利を放棄しない限り、立ち会わせるルールが確立された。欧州連合(EU)は、権利として保障することを加盟国に義務づけている。取調官が密室で被疑者に自白を迫る捜査手法は、冤罪(えんざい)を生む温床となってきた。弁護士の立ち会いは、取り調べの可視化(録音・録画)と並んで、その弊害を防ぎ、人権を守る手だてである。一昨年の刑訴法改正で、可視化は実現したが、裁判員裁判の対象となる事件などごく一部に限定された上、幅広い例外規定が設けられた。弁護士の立ち会いは、法制審議会の議論の過程で抜け落ち、制度化は見送られた。供述が得にくくなり、真実の解明を妨げる、といった捜査側の主張が背景にある。密室での不当な取り調べを防ぐには、可視化の範囲を広げて事後の検証を可能にするとともに、弁護士の立ち会いを認めることが欠かせない。もう一つの問題点は、否認している容疑者の身柄拘束を長引かせる「人質司法」だ。精神的、肉体的に追いつめて自白を迫るために使われてきた実態がある。裁判所が勾留を認めれば、逮捕してから最長で20日余の拘束が可能だ。ゴーン容疑者も12月10日まで勾留が延長された。検察の勾留請求を裁判所が退ける例が以前より増えたとはいうものの、全体の5%に満たない。起訴されると、拘束はさらに続く。2009年の郵便不正事件で、厚生労働省の局長だった村木厚子さんの勾留は160日余に及んだ。後に無罪が確定している。長く拘束されれば、社会的にも大きな不利益を被る。仕事を失う場合もある。虚偽の自白を強いて冤罪を招けば、取り返しがつかない。否認しているからと不公正な扱いをすることは許されない。憲法は、適正な刑事手続きの保障を重んじ、詳細な定めを置いている。刑事司法制度の現状はそれを踏まえたものになっているか。あらためて見つめ直し、社会に議論を広げる機会にしたい。

*4-3:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20181207&ng=DGKKZO38655270X01C18A2EA1000 (日経新聞社説 2018年12月7日) 海外からの捜査批判に説明を
 有価証券報告書に虚偽の記載をした疑いで日産自動車のカルロス・ゴーン元会長が逮捕された事件で、海外から日本の捜査手法や刑事手続きに対する批判が相次いでいる。こうした指摘に真摯に耳を傾け、見直すべき点があれば検討課題としていくことは当然だ。ただ、日本と欧米とでは刑事司法全体の仕組みが大きく異なる。一連の批判の中には、司法制度や司法文化の違いを無視した単純な比較や、誤解、思い込みによる主張も目立つ。一方的な批判を放置すれば、刑事司法に対する国民の信頼を損なうとともに、国際的な日本のイメージが傷つくことになりかねない。法務省や最高裁には制度の違いなどをていねいに説明し、正しく反論する姿勢が求められる。必要なのは事件の証拠のあれこれではない。明示されたルール、裁判所の関与、人権への一定の配慮。こうした仕組みを堂々と伝えればいい。「公判で明らかにする」「捜査のことは答えない」だけで済む時代は終わっている。海外からの代表的な批判に、容疑者の勾留期間の長さがある。東京地検特捜部による捜査では、地検が48時間、その後は裁判所の判断で通常20日間、身柄が拘束される。一方、フランスでは警察による勾留は原則24時間にとどまる。だがその後、日本にはない制度である「予審」の段階で最長4年に及ぶ勾留が認められている。欧米では捜査側に幅広い通信傍受や司法取引、おとり捜査といった強い権限が与えられている。これに対抗する形で取り調べの際、容疑者に認めているのが弁護士の立ち会いだ。日本では捜査手法は限定して取り調べに比重を置き、弁護士立ち会いを認めずに供述を引き出すやり方を採用してきた。そうした手法が、容疑を認めなければ保釈されない「人質司法」へつながるなど負の側面も持っていることは否定できない。ゴーン事件で相次いだ批判を、日本に適したよりよい刑事司法制度を考えるためのきっかけにしたい。

<日本のガラパゴス世論は世界で拒否されること>
PS(2018年12月6日追加): 「パナマ文書」を挙げ、*5のように、タックスヘイブンを利用して各国首脳や富裕層が節税していることを、すべて脱税や資金洗浄などの犯罪に当たるかのように、日本の全メディアが批判し報道した時期があった。しかし、タックスヘイブンとは、法人税・源泉税などが低い国・地域で、それぞれの国が理由があって決定している法定税率である上、日本も租税条約に調印しているので、タックスヘイブンを利用すること自体を批判するのは的外れである。もし、脱税や犯罪組織の資金洗浄等に使われていれば、それを罪として起訴するのは妥当だが、全てのタックスヘイブン利用事例が脱税や犯罪組織の資金洗浄に結びついているかのような批判をするのは、タックスヘイブンを持っている国やタックスヘイブンを利用している人・法人の全てに対して失礼であり、誹謗中傷・侮辱による実害を与えているケースもある。特に、各国首脳に対して無知で的外れた批判をしていると、日本の外交上の不利益となる上、行き過ぎれば日本をまた孤立に追い込むことになるので注意すべきだ。

*5:https://digital.asahi.com/articles/DA3S13799967.html (朝日新聞 2018年12月6日) 「パナマ文書」、米で初の起訴 弁護士・顧客ら、脱税・資金洗浄の罪
 タックスヘイブン(租税回避地)を利用した各国首脳や富裕層の実態を暴いた「パナマ文書」に関連し、米司法省は4日、文書が流出したパナマの法律事務所「モサック・フォンセカ」の弁護士や顧客ら4人を、脱税や資金洗浄の罪で起訴したと発表した。文書を巡る米国での訴追は初めて。起訴されたのは、同事務所の弁護士でパナマ国籍のラムセス・オーウェンズ被告(50)、顧客でドイツ国籍のハラルド・フォン・デア・ゴルツ被告(81)ら。発表によると、オーウェンズ被告らは2000~17年ごろ、パナマや香港で設立したペーパーカンパニーや架空の基金を使って、複数の顧客について米国での脱税や資金洗浄を行ったとされる。また、フォン・デア・ゴルツ被告は米国在住で納税義務があったにもかかわらず、自身などが設立したペーパーカンパニーを国外の母名義と偽り、脱税に使ったとされる。オーウェンズ被告は逃亡中という。米司法省は今回の起訴について、「国境を越えて行われる金融犯罪や脱税を立件するという、我々の決意を示している」との声明を発表した。パナマ文書の実態は、16年4月に「国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)」が報道し、アイスランドとパキスタンの首相が辞任した。パナマ当局は17年2月、同事務所の創業者2人を資金洗浄の容疑で逮捕。同事務所は今年3月末に閉鎖した。

<入管難民法改正と外国人労働者の受入拡大>
PS(2018年12月7、10日追加):*6-1、*6-2のように、入管難民法が国会を通過し、トランプ大統領の移民政策を批判しながら日本では認めていなかった外国人労働者の“単純労働分野”への就労を認めることになったのは、一歩前進だ。もちろん、受入規模など確定していないことは多いが、市場経済の下で事前に確定するのは無理である。
 また、技能実習生の問題は、外国人労働者に新しい選択肢を用意して技能実習生から移行できるようにしたため、何もしないよりはずっとよいだろう。さらに、首相が「移民政策でない」と言っておられたのは、外国人労働者受入拡大に強く反対する自民党内などの慎重派対策であり、野党が主張するやり方では、技能実習生問題も解決しなかったと思われる。
 今後は、言語・住宅・教育・社会保障等の問題解決が必要だが、全市町村が多言語に対応するのは費用対効果が悪すぎるため、同言語の人に集って住んでもらう方向で住宅を整備し、教育・社会保障は不公正・不公平のないようにすべきと考える。また、人手不足で外国人労働者の受け入れを積極的に行いたい市町村はそれを実行して共生するようにし、従来の住民だけでやりたい市町村はそうすればよい。しかし、市町村に選択の余地ができたので、まずは市町村が総合計画を作って、それに基づいて外国人労働者を受け入れ、必要な支援を国に要請すれば、あまり混乱なく結果が出ると思う。
 入管難民法が国会を通過したことについて、日本農業新聞は、*6-3のように、「①特定技能1号の創設が柱で、これは家族の呼び寄せを認めない」「②1号より高度な技能試験に合格すれば特定技能2号になれ、在留期間に上限がなく家族を呼び寄せられる」「③政府は農業では2号の人材を求める要望はないとして当面1号の受け入れに限り、人材派遣業者が雇用契約を結んで複数農家に派遣する形態も認める」としている。①②は、状況を見ながら判断していくことになるだろうが、③は農業では必要であり、この仕組みは外国人に限らず日本人にも有効だ。また、遺伝資源の海外流出は、技能実習生に技術移転すれば当然のこととなり、技術移転をやめ知的財産権の保護意識を高めれば解決する。
 また、西日本新聞は、*6-4のように、「九州・沖縄と山口の9県計293市町村のうち4割超の128自治体で、①高齢化 ②人口減少に伴う他産業の雇用減により、介護サービスなど医療・福祉業が雇用の最大の受け皿になった」としている。①は、今後、日本全国で次第に起こることだが、②の人口が減少したから他産業で雇用が減少するというのは、モノやサービスの需要内容が変化するだけで、輸出も可能であるため、短絡的過ぎると思う。
 なお、内閣府の高齢社会白書によると、2017年の高齢化率は、沖縄・福岡以外の7県で29.2〜33.4%と全国(27.7%)を上回り、2045年には9県とも6.3〜10.4ポイント上昇する見通しだそうで、医療・福祉分野は人手不足で、入管難民法改正による外国人労働者の受け入れ拡大では介護業も対象になったが、外国人労働者を含めた人材確保に加え、機械化による生産性向上や高齢者が暮らしやすくなる仕組み作り などが不可欠であることは間違いない。

  
  2018.11.29新潟日報  2018.12.8東京新聞 2018.12.1西日本新聞(*6-4より)

*6-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20181208&ng=DGKKZO38698860X01C18A2EA2000 (日経新聞 2018年12月8日) 「選ばれる国」へ制度設計、外国人受け入れ5年最大34万人 生活支援や待遇、政省令に先送り
 外国人労働者の受け入れを拡大する出入国管理法改正案は日本社会のあり方を変える。政府は28日に具体的な対策をまとめ、2019年4月の制度開始へ準備を加速する。「選ばれる国」へ外国人労働者への生活支援、待遇の改善を急ぐ。「選ばれる国」へ日本の賃金水準がアジアの外国人労働者にとって魅力的に映るのか。新制度の対象となるのは比較的低賃金の職種が多い。中国やタイでも少子高齢化や労働力不足が進み、アジアのなかでも人材獲得競争は激しくなる。日本の賃金水準はライバルとなるアジア諸国に比べ突出して高いとは言えない。日本貿易振興機構(JETRO)の17年度の調査によると、一般工の賃金は東京で月額2406ドル。香港は1992ドル、シンガポールは1630ドルと日本に迫る。政府は外国人労働者の賃金水準について「日本人と同等以上」を支払うように求める。外国人労働者が増えることで日本人の賃金水準も下がるのではないかとの懸念は根強い。人手不足が深刻な地方ではなく、賃金水準が高い首都圏など都市部に外国人が集まるとの予測がある。制度は法律ではなく、政省令で決めるものが多い。今後5年間の受け入れ見込み数を分野別の運用方針で示す。どのくらいの外国人を受け入れるかが分からなければ、企業は対応しづらい。法務省は11月、新たに外国人労働者を受け入れる14業種を所管する省庁が推計した受け入れ見込み数を国会に提示した。現時点で5年後に14業種合計で145万5千人の人手が不足すると仮定し、19年4月から5年間で最大34万5150人を受け入れる見通しだ。山下貴司法相は「この数字を上回ることはない」と説明した。上限は外国人労働者が急増した場合、受け入れ停止を判断する基準になる。各業界を所管する閣僚が受け入れ上限に近づいた際に法相に停止の判断を求める仕組みだ。上限は各業界が外国人を採用する目安になる。日本で暮らす外国人が増えれば、様々な問題が生じる。住居の契約に伴う手続きやゴミ出しのルールなど日本の習慣に外国人は戸惑う。ドイツのように欧州では外国人の急増が国内政治を揺るがした例もある。外国人にとって特に高いのが日本語の壁だ。行政手続きに多言語対応は欠かせない。銀行口座の開設や転居に伴う手続きにも多言語が必要だ。日本語教育や行政窓口の設置など地方自治体が実務の大部分を担う。熟練した技能が必要で在留資格の更新と家族帯同が可能な「特定技能2号」を巡っては試験の制度設計も課題だ。資格を得るのに十分な能力があるか判断する試験は細部を詰め切れていない。日本で働く外国人は日本人と同様に公的年金の保険料などが給与から天引きされる。保険料の払い損になる恐れがある。厚生労働省は健康保険に外国人労働者の扶養家族に居住要件を求める法改正を検討中だ。新設する「特定技能」を取得する外国人労働者の大半は現行の技能実習生から移る。技能実習制度を巡って最低賃金を下回る低賃金や違法な長時間労働、パワハラの問題も明らかになっている。参院法務委員会で立憲民主党の有田芳生氏は15~17年の3年間で技能実習生69人が自殺や実習中の事故に巻き込まれて亡くなったと追及した。日本に来る前に母国で多額の保証金を払わせる悪質ブローカー(仲介業者)も存在する。法務省は悪質業者を排除するため、多額の保証金を払っていないか事前に確認すると省令に記す。法務省は実態調査の結果を来年3月末に公表する。大島理森衆院議長は改正法が施行する前に運用方針や政省令の内容を国会に報告するよう要求。安倍晋三首相は施行前に制度の全容を国会に示すと明言した。

*6-2:https://www.kyoto-np.co.jp/info/syasetsu/20181208_4.html (京都新聞社説 2018年12月8日) 改正入管難民法  議論は尽くせていない
 入管難民法などの改正案を巡る国会審議が大詰めを迎えた。これまで原則認めてこなかった外国人労働者の単純労働分野への就労を認めるものだ。高度な専門人材に限っていた政策の転換であり、社会を変える可能性がある。だが議論は全く深まりを欠いた。採決を押し切ろうとした政府与党の国会軽視の姿勢は容認できない。受け入れの規模や対象業種をどうするのか。必要な技能や運用の詳細は不明確だ。次々と明るみになった技能実習生の実態も含め、外国人労働者問題の論点を掘り下げたとは言い難い。大島理森衆院議長は与野党へ異例の裁定を行い、来年4月の改正法施行前に政省令を含めた法制度の全体像を国会に報告させるとした。政府与党のまずい国会運営に対し、立法府の長が注文をつけた形だ。だが、本来は制度の全体像こそ国会で審議すべきではなかったか。外国人労働者を受け入れた後の議論は全くできていない。権利をどう保障するかや日本人と地域で共生する仕組みなど、幅広い分野での検討が早急に求められる。その「司令塔」となるのは法務省に新設される出入国在留管理庁とされる。新在留資格の創設に伴い増加する外国人の管理や、雇用する企業などへの監視を行うほか、共生に向けた受け入れ環境整備も担うという。だが、日本語教育や住宅確保など担当する領域は広い。同庁だけで対応できるのか疑問だ。関係省庁との連携と情報共有が欠かせない。健康保険や年金など社会保障制度の準備も遅れている。教育や医療、福祉など身近なサービスを提供する自治体の役割が一層重要となる。言葉の壁や生活習慣の違いもあり、現在はボランティアや市民団体の活動に頼っているのが現実だ。マンパワーも不足しており、負担も重くなるため国の支援が不可欠である。総務省によると、今年4月時点で外国人住民向けの指針や計画を策定している自治体は46%にとどまる。住民に占める外国人の割合は地域差が大きく、地域の実情にあった支援態勢が欠かせない。官民挙げて整えていくべきだ。政府は年内に受け入れ環境の整備に関する総合対策を取りまとめる方針だが、改正法施行まで残された時間は少ない。働く外国人の生活と人権を守る視点で制度を改善していく必要がある。来月召集予定の通常国会でも引き続き議論を深めていかねばならない。

*6-3:https://www.agrinews.co.jp/p46078.html (日本農業新聞 2018年12月9日) 改正入管法が成立 4月施行 外国人就労 農業も
 外国人労働者の受け入れ拡大に向けた改正出入国管理法が8日、参院本会議で可決、成立した。3年間の技能実習の修了者ら一定の技能を持つ外国人が、通算5年を上限に日本で働ける在留資格「特定技能1号」の創設が柱。農業など14業種を受け入れ対象にし、来年4月に施行する。労働現場への就労を本格的に外国人に開放し、受け入れ施策の大転換となる。今後、業種ごとの具体的な制度設計が焦点となる。国会審議では「失踪や死亡などが相次ぐ技能実習制度の課題解決が先決だ」と一部野党が訴え、法改正に反対。与党側が押し切る形になった。改正法では、1号よりも高度な技能を問う試験に合格した外国人に対象とした特定技能「2号」も創設。在留期間に上限はなく、家族も呼び寄せられる。1号は基本的に家族の呼び寄せは認めない。政府は農業では2号の人材を求める具体的な要望はないとして、当面1号の受け入れに限る。外国人は受け入れ経営体が直接雇用契約を結ぶのが原則だが、政府は、農業では人材派遣業者が雇用契約を結び、複数農家に派遣する形態も認める方針。農業は繁忙期と農閑期の差が激しく、個別では周年雇用が難しい面があることに考慮する。業種ごと具体的な制度設計は、所管省庁を中心に今後定める業種別受け入れ方針で明確化する。政府は、同方針を含む制度の全容を法施行前に示す方針。来年の通常国会で議論になる見通しだ。農業では同一外国人を複数産地で連携して受け入れられるか、和牛精液など遺伝資源の海外流出の懸念がある肉牛経営での受け入れはどうするのかなど、不明確な点も多い。政府が制度設計で、これらの課題にどう対応するのかが焦点になる。

*6-4:http://qbiz.jp/article/145088/1/ (西日本新聞 2018年12月1日) 老いる九州、雇用「医療・福祉」最多 九経調分析 自治体4割でトップ、変わる受け皿
 九州・沖縄と山口の9県計293市町村のうち4割超の128自治体(2016年)で、医療・福祉業の従業者数が業種別で最多となっていることが、九州経済調査協会の分析で分かった。09年時点では44市町村だったが約3倍に増加。高齢化によるニーズの拡大に加え、人口減少に伴う他産業の雇用減で、介護サービスなど医療・福祉業が雇用の最大の受け皿になっている。九経調が国の経済センサス調査の民間事業所従業者数から算出した。医療・福祉業の従業者が最多を占める県別の自治体数は、福岡28▽佐賀6▽長崎10▽熊本22▽大分8▽宮崎9▽鹿児島21▽沖縄16▽山口8。北九州市や佐賀市、長崎市、熊本市、宮崎市、鹿児島市といった大都市や県庁所在地に加え、人口に占める65歳以上の高齢者の割合(高齢化率)が20%以下と低い福岡県春日市なども含まれる。09年は従業者数トップが製造業の自治体が104、小売業が101だった。16年は製造業が101で微減となる一方、小売業は32に激減。人口減やネットショッピングの普及など流通構造の変化が背景にある。9県全体の医療・福祉従業者は09年比26・7%増の113万4千人となり、伸び率は全産業中で最大。全雇用者数に占める割合も17・3%と09年から3・9ポイント上昇し、小売業を抜いてトップになった。内閣府の高齢社会白書によると17年の高齢化率は、沖縄(21・0%)、福岡(27・1%)以外の7県で29・2〜33・4%と全国(27・7%)を上回っている。45年には9県とも6・3〜10・4ポイント上昇する見通しだ。医療・福祉業は人手不足が特に深刻化しており、政府が今国会の成立を目指す入管難民法改正による外国人労働者の受け入れ拡大では、介護業も対象になる見通し。調査を担当した九経調の渡辺隼矢研究員は「外国人労働者を含めた人材確保に加え、介護用ロボット導入や、医療介護が必要な人を地域全体で支える仕組みづくりが不可欠」と指摘している。

<有価証券報告書における役員報酬の重要性>
PS(2018年12月9、13日追加): 有価証券報告書は、株主や投資家の投資判断に資するために作成するもので、*7-1の「有価証券報告書への役員報酬の“虚偽記載”」は、それが認定されたとしても重要性が低い(仮に重要性が高ければ、監査証明をした監査法人も責任を免れず、監査証明を得ておくことは経営者を守る効果もあるのだ)。また、*7-2で、機関投資家団体のワリング事務局長が述べておられるように、投資家にとっての重要事項は、「利益と配当」「企業価値向上と株価上昇」であるため、役員は、報酬額だけでなく、報酬に見合った能力を有しているかどうかが重要になる。
 しかし、日産は、*7-3のように、4度目の検査不正が明らかになったそうで、これは企業価値を落とすが、日産車が事故を起こしたという話は聞かないため、私には、検収や検査に資格がいるのか、その検査は有用なのかという疑問が残る。また、その理由をリストラによる人員不足だとしている点は、どうも日本的発想すぎておかしい。しかし、このような報道があると、日産の企業価値が落ちるのは確実だ。
 なお、2018年12月13日、*7-4のように、朝日新聞が「政治資金監査制度」で少なくとも23人の国会議員関係政治団体が監査を担当した税理士など監査人から寄付を受けており、「監査人として独立性がない」と問題視している。2007年に導入したこの監査制度も、最初に私が提唱してできたので説明すると、私が考えていたよりもずっと狭くて不十分な形の監査になったため、これは本物の監査とは言えないのだ。本物の監査と言えないポイントは、①「国会議員関係の政治団体のすべての支出をチェックする」と定められているので、収入はチェックしなくてもよい ②独立性の要件に関する規定や指針がない ③監査担当者に監査論を勉強して監査の実務経験を積んだ公認会計士以外(税理士、弁護士)の人を認めている ④公認会計士が本物の監査を行って責任を持てるには、政治資金会計も複式簿記による網羅的で検証可能な通常の会計にする必要があるが、現在は単式簿記による収支のみの記載で不都合な収支は記載しないことも可能であるため、監査をしてもそれを見つけられず、監査人も責任を持ちかねる(これは、政治家も会計担当者の不正をチェックできないということ) などである。政党と政治家の関係は、会社と従業員ではなく任意組合と組合員に近いため、政党が政治家を管理するのは妥当でないと思うが、不十分な監査では主権者に政治資金のありようが正しく開示されず、政治家もいちゃもんから守ってもらえないため、政治資金会計も複式簿記による網羅的で検証可能な通常の会計(市販の会計ソフトを使えるので簡単で安上がりな上、税務事務所に計算を委託することも可能)に変更して正規の監査を行うべきである。これは、国会議員に限らず地方議員も同じだ。

   
   日産リーフ     日産リーフ軽    日産リーフセダン 資源エネルギー庁より

(図の説明:一番右の図のように、太陽光発電とEVを組み合わせれば、脱燃料費・脱排気ガスの究極のエコカーができる。女性は、ガソリン車で走るのが目的ではなく、実用目的で自動車に乗っており、環境には敏感であるため、本来はEVの格好の顧客になる。しかし、安全性に疑問符がつくのはご法度で、さらに日産車のデザインは怖い面構えで角ばっており、スタイルもかっこよくないため、女性を遠ざけている。日産の役員構成を見ると、取締役は全員男性で執行役員47名のうち女性は2名だが、もっと女性の声を反映させ、デザインにはフランスのデザイナーのアドバイスなどを入れて、スマートでかわいいスタイルするとさらに売れると思う。例えば、服はピエールカルダン、靴はフェラガモ、車はニッサンの○○と言われるようにだ)

*7-1:http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201812/CK2018120902000132.html (東京新聞 2018年12月9日) 「役員報酬虚偽記載」初の事件化 悪質性、分かれる見解 ゴーン容疑者あす起訴
 日産自動車の前会長カルロス・ゴーン容疑者(64)が逮捕された事件で、ゴーン容疑者が問われている有価証券報告書への「役員報酬の虚偽記載」は、これまで刑事事件として立件されたケースがない。役員報酬が投資家の判断にどれだけ影響するかは、市場関係者らの間でも見解が分かれている。東京地検特捜部は勾留期限の十日、金融商品取引法違反の罪で起訴する見通しで、今後の司法判断が注目される。「役員報酬は企業の姿勢が顕著に表れる重要事項。額を偽ることは投資家を欺く行為で、許されない」。検察幹部はうその報酬を記載する悪質性を強調する。経営方針や財務状況などさまざまな企業情報が盛り込まれ、有価証券報告書は「年度ごとの成績表」とも評される。ただ、うそを書けばすべて罪に問われるわけではなく、金商法は「重要事項への虚偽記載」を罰すると定めている。何が重要事項に該当するのか、明確な定義はない。ある市場関係者は「投資家の判断を左右する事項すべて」と解説する。これまで罪に問われてきたのは、ライブドア元社長や旧カネボウ経営陣の粉飾決算事件、オリンパス元会長らの損失隠し事件などで、利益や資産などが重要事項とみなされた。役員報酬が刑罰の対象になったケースは、金融庁の担当者も「聞いたことがない」といい、「案件ごとに判断するしかない」とする。実際、役員報酬が重要事項に当たるのか、定まった見解はない。ある投資家は「役員報酬は一応チェックする程度。投資する上で、主な参考情報とすることはない」と言い切る。証券市場に詳しい弁護士も「役員報酬が投資判断に大きな影響を与えるかどうかは疑問だ」と、重要事項との見方に否定的だ。一方で、大和総研の横山淳主任研究員は「正当な理由なくトップが高額な報酬を得ている会社は信頼されない。部下たちが仕事へのやる気を保てているか否かの判断材料にもなる」と重視する。ある市場関係者も「今の時代、投資家はコーポレートガバナンス(企業統治)を注視している。特に経営者の資質、報酬体系には厳しい目が注がれている」と指摘。「今回の事件はリーディングケース。何が重要事項かは、社会のニーズによって変わるのではないか」と語った。

*7-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20181207&ng=DGKKZO38654510W8A201C1TJ3000 (日経新聞 2018年12月7日) 日本、統治改革の再加速を 日産巡り機関投資家団体提言 ワリング事務局長
 欧米の主要機関投資家で構成する国際コーポレート・ガバナンス・ネットワーク(ICGN)のケリー・ワリング事務局長が、日産自動車のカルロス・ゴーン元会長逮捕を受け、日本経済新聞に対し「事件をきっかけに日本は企業統治改革を加速させるべきだ」と強調した。具体的には「社外取締役の質の向上」や「独立性の高い指名・報酬委員会の設置」を挙げた。日本のガバナンス改革に影響を与えそうだ。
主な発言は以下の通り。
【日産ショックの教訓】
 日産ほどの大企業が報酬委員会も設けず、報酬の配分が実質的にトップ1人に委ねられていた事実は、世界中の投資家にショックを与えている。日本は安倍晋三政権のもと、2014年から本格的なガバナンス改革が始まった。進捗は順調だったと言えるだろう。しかし、足元では「自分たちはよくやっている」という自己充足感も広がってはいなかっただろうか。その意味で、日産ショックは日本の市場関係者にガバナンス改革の再加速を促す目覚まし音(ウエイクアップ・コール)となったのではないか。
【社外取締役】
 ゴーン元会長逮捕を受け、金融庁にガバナンス改革を提言した。まず、社外取締役だ。人数を増やすだけでなく、経営や金融・財務に通じた人材を多く採用し、取締役会の質を上げる必要がある。経営の専門家が求められる。性別や国籍、年齢で制限しなければ、日本にも社外取締役の候補者はたくさんいる。取締役の教育制度も拡充すべきだ。
【報酬問題】
 監査役会設置会社であっても、上場企業ならば任意で指名・報酬委員会を設置し、トップの選任や役員報酬算定の方法を決めるようにしてほしい。役員報酬の金額の多さだけに目を向けるべきではない。大切なのは企業価値を向上させるために、どんなトップをいかに処遇するかという、透明性の高いルールづくりだ。
【日本への働きかけ】
 日産ショックをきっかけに外国人投資家は日本企業のガバナンスに改めて目を向けるだろう。ICGNは金融庁のほか経団連や東京証券取引所などと意見交換の場を持ち、市場の立場から建設的な提案をしていきたい。2019年7月には東京で年次総会を開く。日本の企業人もお招きしガバナンス改革を話し合いたい。
*ICGN:米カリフォルニア州職員退職年金基金(カルパース)など米欧の年金基金が1995年に設立。運用総額は34兆ドル(約3800兆円)に達し、世界の株式市場に強い影響力を持つ。ワリング事務局長は日本の金融庁に度々招かれ、企業統治に関する指針づくりを助言している。

*7-3:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20181207&ng=DGKKZO38634640W8A201C1EA1000 (日経新聞 2018.12.7) 日産、深まる統治不全 新たな検査不正、ブレーキなど
 日産自動車が新車を出荷する前の完成検査で新たな不正をしていたことが6日、分かった。不正発覚は2017年9月から4回目だ。企業統治(コーポレートガバナンス)の不全やコンプライアンス(法令順守)意識の低さに改善の兆しが見えない。元会長のカルロス・ゴーン容疑者(64)の逮捕に新たな不正発覚が追い打ちとなり、西川広人社長兼最高経営責任者(CEO)ら経営陣への批判がさらに強まりそうだ。今回の不正は、国土交通省が日産の主力工場に立ち入り検査した10月以降、社内調査で見付かった。ブレーキなど複数の項目が対象とみられる。日産は国交省とリコール対応などを協議しており、月内にも詳細を公表する見通しだ。
●防止策を再検証
 日産では完成車の品質検査不正が後を絶たない。17年9月に資格を持たない従業員が完成車の検査をしていたことが発覚した。18年7月には一部の完成車を対象にする抜き取り検査で、燃費・排ガスデータの書き換えや不適切な条件での試験が見つかった。18年9月末には全ての新車を対象にした検査で、決められた試験を省いたことなどが明らかになった。一連の不正はゴーン元会長が仏ルノーから派遣された翌年の00年代以降、常態化していた。不正の背景には「効率性やコスト削減に力点を置くあまり、検査員を十分に配置せず技術員も減らした」(外部の弁護士事務所が9月にまとめた調査報告書)ことがある。国交省は無資格検査を受けて日産に対し、17年9月と18年3月に2度の業務改善指示を出している。再発防止策の進捗を四半期ごとに報告させるほか、重点監視の対象として抜き打ち検査を増やしてきた。日産は9月に再発防止策を盛り込んだ最終報告書を公表し、一連の問題に区切りをつけたはずだった。再発防止策とともに今後6年間で測定装置などに1800億円を投じ、検査部門に670人を採用する計画を打ち出していた。西川社長は9月時点で「できる限り将来の再発防止に努めることが私の仕事だ」と述べた。しかし新たな不正発覚で、再発防止策そのものの再検証は避けられない。
●発覚は4度目
 ゴーン元会長逮捕を受け、日産はガバナンス不全が指摘されている。01年に日産のCEOに就いたゴーン元会長は人事と報酬の両方の決定権を持っていたとされ、絶対的な存在として長期間君臨。独立した社外取締役を主要メンバーにした報酬委員会などの仕組みもなかった。報酬過少記載事件ではゴーン元会長らに加え、法人としての日産の刑事責任も問われる見通しだ。西川社長ら同社の取締役らも虚偽記載という不正を見逃したとして、民事上の責任を追及され、損害賠償を求められかねない。ゴーン元会長逮捕に加えて4度目の検査不正が明らかになったことで、西川社長を含む現経営陣の経営責任を問う声が強まる可能性がある。日産同様に完成検査を巡る不正が相次ぐSUBARU(スバル)では、6月には当時の吉永泰之社長兼CEOが責任を取り、CEO職を返上。代表権のない会長に退くなど経営責任に波及している。「ポスト・ゴーン体制」を担う西川社長には、経営トップとしての説明責任が求められる。

*7-4:https://digital.asahi.com/articles/DA3S13809380.html (朝日新聞 2018年12月13日) 23議員の政治団体、監査人から寄付 公正さ、疑問の声 17年収支報告書
 国会議員の政治資金の支出を第三者がチェックする「政治資金監査制度」で、少なくとも23人の国会議員の関係政治団体が、監査を担当した税理士などの監査人から寄付を受けていたことがわかった。外部性の確保が求められる監査を支援者にまかせていた形になり、専門家からは「公正ではない」と疑問視する声もある。11月30日までに全国で公表された2017年の政治資金収支報告書を分析したところ、23の国会議員関係政治団体に対し、それぞれを監査する監査人が1万~40万円を寄付していた。総額は約340万円だった。総務省によると、監査制度は、不適正な支出が疑われた閣僚の事務所費問題などをきっかけに、07年の政治資金規正法の改正で導入された。公認会計士や税理士など「外部性を有する第三者」が、国会議員関係政治団体のすべての支出をチェックすると定められた。監査人は「監査の対象となる国会議員関係政治団体との間に密接な身分関係を有してはならない」とされ、対象の政治団体の役職員や議員の配偶者が務めることはできない。ただし、監査人が団体側に寄付することは禁止されていない。政治資金規正法に詳しい富崎隆・駒沢大教授(政治学)は「監査は利害関係のない人が行うのが前提で、政治家を支援している寄付者がするのはおかしい」と指摘する。「公正な収支報告書を有権者が見られるようにすることが重要で、各団体が監査人の選定や費用負担などに難しい面があるなら政党が責任を持つべきだ」と話す。

<退職金・退職年金の認識時期>
PS(2018年12月14、19日追加):*8-1のように、今回のゴーンさん逮捕事件はルノーと日産の組織再編に端を発したものだが、市場経済の中での経済闘争に微“罪”で刑事を介入させるのは、人権侵害である上、公正ではない。そのため、「権力闘争になれば、われわれは大砲を持ち出し、ルノーに対して日産への出資比率を上げるよう要請する用意がある」という仏政府幹部の言葉は理解できる。また、*8-2のように、米ウォールストリート・ジャーナルは、ゴーン氏は米国での販売不振や度重なる検査不正をめぐり、西川社長の解任と経営陣の刷新の考えを一部の役員に伝えていたとも報じている(西川社長は否定)。
 なお、ゴーンさん逮捕の根拠について、東京地検特捜部は確定債務だったか否かを論点とし、*8-3のように「日産の取締役会で決定され、文書化されているから確定債務だ」とか、*8-4のように「文書に報酬額が1円単位で書かれていたから確定債務だ」などとして、有価証券報告書への役員報酬の過少記載による金商法違反と結論づけている。しかし、*9-1の企業年金も、給付額は個人毎に債務が確定しており、企業は掛金の拠出時に費用計上するが、受取人の所得となるのは退職後にその年金をもらった時であり、認識時期にずれがある。また、企業は、現在価値に割り引いて掛け金を拠出するため、1円単位になるのが普通だ。
 さらに、*8-3には、役員報酬の決定をゴーン氏に一任することは取締役会で2年ごとに諮られ、決定事項として文書に残されていたと書かれているため、役員報酬の決定は、ゴーン氏の独断ではなく取締役会の承認済である。「実は異論は言えなかった」と弁解する取締役がいれば、その人は取締役としての任務を怠っていたので、報酬を払う価値がなかったということになる。さらに、違法行為があれば、監査役は是正しなければならず、言えなかったという弁解は通用しない。つまり、「確定債務だから、その期の報酬だ」という結論が誤りなのである。
 そのような中、*8-5のように、12月10日午後、東京地検特捜部はゴーン氏、ケリー氏及び日産を金商法違反(有価証券報告書の虚偽記載)の罪で起訴したが、本来は裁判所が即時棄却しなければならない。しかし、法学系の人は会計に疎く、殆ど全員が退職給付の会計と税務を理解しておらず、「自分が黒と言えば白でも黒になる」「特捜が起訴した以上は、(人権よりも)司法のメンツと信用が大切」などと思っているため、結論が危ぶまれるわけだ。そして、*8-6のように、罪状が確定していない人を長期間拘留して自白を促すのは人権侵害だ。
 なお、*8-7のように、日産は、不記載報酬を一括処理して今期決算で計上するそうだが、私は日産退職後に支払う報酬であるため、退職慰労金として一括処理するのが正しいと考える。また、日産はゴーン氏と同社が有価証券報告書に虚偽記載したため「内部統制報告書」の訂正も検討するそうだが、有価証券報告書と内部統制をチェックしていた監査法人は、どういう見解を持っているのだろうか。重要な虚偽記載なら、「見つけられなかった」では済まないからだ。
 2018年12月19日、朝日新聞が、*9-2のように、「ゴーン氏は2009年度分の報酬として十数億円をいったん受け取ったが2010年3月施行の改正内閣府令で1億円以上の報酬を得た上場企業の役員の名前と金額の個別開示が義務づけられたため、一部返却して退任後に受け取ることにし、翌年度分からは報酬の約半分は退任後に受け取る仕組みを最初から採用した」と記載しており、当時の日本国内での高額報酬批判から、そのような対応をしたことが理解できる。ここで問題なのは、①日本では、高額報酬として世界常識から外れた批判をしたこと ②国会を通さず、内閣府令で個人情報の過度な開示規定を定めたこと ③個人の報酬認識時期は受領時であるのに、企業の債務確定時と解釈していること(受領時に認識しなければ、受領者は確定申告・納税ができない) などである。これは、逆の立場に立って考えればすぐわかることなのに、意図的な解釈を行うことによって筋の通らない制度にした事例だ。

*8-1:http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201812/CK2018121202000132.html (東京新聞 2018年12月12日) <ゴーン事件の底流>(2)自動車戦争 日仏ぶつかる国益
 「出資比率と統治は現状通りが望ましい。世耕氏と、統治のルールは変わらないことで一致した」十一月二十五日の仏報道番組。仏ルノーと日産自動車、三菱自動車の三社連合について、仏経済・財務相ブルーノ・ルメールは、三日前の経済産業相の世耕弘成(せこうひろしげ)との会談内容をこう説明した。会談は三社の会長だったカルロス・ゴーンの逮捕後、仏側の要請を受け、訪問先のパリで急きょ行われた。世耕はこの発言に強く反発。二十七日の閣議後会見で「日産のガバナンス(統治)に関して、何か他国と約束するようなことは全くない」と否定した。ルノーは日産株の43・4%を保有する筆頭株主で、仏政府はルノー株15%を保有する物言う株主だ。フランスでは、今回の事件をルノーとの関係を対等にしようとする日産側のクーデターとの見方が根強い。仏大統領エマニュエル・マクロンと首相の安倍晋三の首脳会談が行われた十一月末のG20直前、仏経済紙レゼコーは「権力闘争になれば、われわれは大砲を持ち出し、ルノーに対して日産への出資比率を上げるよう要請する用意がある」という仏政府幹部の言葉を紹介した。「大砲」はルノーの大株主としての強力な議決権行使を意味する。マクロンは経済相だった二〇一五年、ルノー株を買い増した上で、二年以上株式を保有する長期株主に一株当たり二票の議決権を認めるフロランジュ法を利用し、日産とルノーの経営統合に動いたこともある。ゴーン逮捕で、再び日仏の国益がぶつかり合うことになる。
◆特捜と連携、官邸は「サポート」
 カルロス・ゴーン逮捕翌日の十一月二十日、日産自動車専務執行役員の川口均が首相官邸を訪れ、官房長官の菅義偉に事件の経緯を説明し謝罪した。川口は「日産とルノーとのアライアンス(提携)の関係でサポートしていただけるとお聞きした」と記者団に語った。一昨年五月の三菱自動車との提携発表前にも官邸で、菅に事前報告していた。仏マクロン政権はルノーと日産の経営を一体化し、日産車の仏国内での生産に意欲的とされる。日産には、独自性が失われ、ルノーにのみこまれていく恐怖感が募る。日産側の動きにも日本政府の影がちらつく。日産のある執行役員はゴーン逮捕後、政府と連絡を取り合っているのかという報道陣の質問に「(政府には)心配いただいている。今回の件だけでなく、フロランジュ法のときも日本政府としての考え方を仏政府に伝えてもらった。国をまたがることなので、いろいろとお話をさせてもらっている」と明かした。検察との司法取引に協力した日産側の弁護士は元東京地検特捜部検事の熊田彰英。安倍政権や自民党の「守護神」とも呼ばれるやり手だ。日産は特捜部とも密に連携。米在住のグレゴリー・ケリーとゴーンが同時に来日するのは珍しく、日産側はゴーンの帰国スケジュールを特捜部に伝えていた。日産の川口は渉外担当が長く、大手企業幹部は「議員会館や霞が関でよく見かける。菅長官は地元が日産本社のある横浜で、事前に相談を受けていても不思議ではない」と推測する。自動車業界に詳しい大手監査法人関係者は、米司法省がカルテル容疑で摘発した日系自動車部品メーカー四十六社と役員三十二人が有罪(五月現在)となったことなどを例に分析する。「国対国の自動車戦争は日米、米独で起きており、それが日仏でも起きたのでは」 

*8-2:http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201812/CK2018121002000047.html (東京新聞 2018年12月10日) ゴーン容疑者、西川社長の解任計画か 販売不振など不満
 米紙ウォールストリート・ジャーナル(電子版)は九日、金融商品取引法違反の疑いで逮捕された日産自動車の前会長カルロス・ゴーン容疑者(64)が、逮捕前に西川(さいかわ)広人社長の解任を計画していたと報じた。ゴーン容疑者は二〇一七年に日産の社長を退き、西川氏を後継者に指名した。だが、同紙によると、ゴーン容疑者はここ数カ月間、米国での販売不振や度重なる検査不正をめぐり、西川氏の経営手腕に対して不満を募らせていたという。このためゴーン容疑者は一部の役員に経営陣を刷新したいとの考えを伝えており、十一月二十二日の取締役会で西川氏の解任を提案する意向だったという。だが、ゴーン容疑者は同十九日、役員報酬を過少に記載したとして、金融商品取引法違反の疑い(有価証券報告書の虚偽記載)で東京地検特捜部に逮捕され、二十二日の取締役会では自らが会長職を解任された。一方、西川氏はここ数カ月間、内部通報を受けゴーン容疑者の不正について社内調査を行い、検察に情報提供したことを明らかにしており、ゴーン容疑者による西川氏の解任計画とほぼ同じ時期にゴーン容疑者の不正に対する社内調査が進められていたことになる。同紙はゴーン容疑者による西川氏の解任計画を、西川氏自身が知っていたかや、それが逮捕のタイミングに影響したかどうかは分からないとしている。

*8-3:https://digital.asahi.com/articles/DA3S13810942.html (朝日新聞 2018年12月14日) 報酬「ゴーン前会長に一任」 日産取締役会で決定、文書化
 日産自動車の前会長カルロス・ゴーン容疑者(64)が役員報酬を過少記載したとして逮捕された事件で、ゴーン前会長に役員報酬の決定を一任することが取締役会で2年ごとに諮られ、決定事項として文書に残されていたことが関係者への取材でわかった。東京地検特捜部は文書を入手し、報酬額の確定に関する重要な証拠とみている模様だ。ゴーン前会長側は、退任後の支払いにして隠したとされる報酬について、「希望額」で、社内の手続きを経ていないため「確定していない」と反論。これに対して特捜部は、取締役会での一任によって、ゴーン前会長が正式な権限に基づいて支払いを確定していたと立証できるとみている模様だ。関係者によると、取締役の任期(2年)に合わせる形で2年に1回、役員の報酬額はゴーン前会長に一任すると取締役会で決定していた。前会長が社長兼最高経営責任者(CEO)だった時期は「CEOに一任」とし、17年に会長に退くと「会長に一任」と変更された。異論はなく、取締役会の内容は決定事項として文書に残されているという。日産は役員報酬について「取締役会議長」が「代表取締役と協議の上、決定する」と定める。この議長はゴーン前会長で、一任を決めた取締役会には他の代表取締役も出席しているため、特捜部は「協議」を経ていると判断した模様だ。立件対象となった8年間では、西川広人社長兼CEOと志賀俊之取締役が代表取締役の時期もあったが、特捜部は前代表取締役のグレッグ・ケリー容疑者(62)以外は、報酬の後払いを把握していなかったとみている。一方、ゴーン前会長側は、ケリー前代表取締役以外と協議せずに決めたのであれば、社内規定に違反しており、「確定しているとはいえない」と主張している。

*8-4:http://qbiz.jp/article/145494/1/ (西日本新聞 2018年12月10日) ゴーン氏報酬文書、金額1円単位 特捜部、支払い確定の根拠に
 金融商品取引法違反の疑いで逮捕された日産自動車の前会長カルロス・ゴーン容疑者(64)が報酬の一部を有価証券報告書に記載せず、受け取りを退任後に先送りする計画を記した文書に、報酬額が1円単位で書かれていたことが10日、関係者への取材で分かった。東京地検特捜部は退任後の受領額が確定していた根拠の一つとみている。証券取引等監視委員会は10日、同法違反の疑いでゴーン容疑者と前代表取締役グレゴリー・ケリー容疑者(62)、法人としての日産を告発した。特捜部が同日起訴する。また、新たに約40億円の報酬を記載しなかった金融商品取引法違反の疑いで、同日中にも2人を再逮捕する。2人は、ゴーン容疑者の報酬が2015年3月期までの5年間で計約100億円だったのに、このうち退任後の報酬を記載せず、約50億円とした有価証券報告書を提出したとして逮捕された。18年3月期までの3年間にも同様の疑いがあり、虚偽記載の立件総額は約90億円になる。関係者によると、先送り計画が記された「報酬契約書」には、報酬総額、実際に支払われた額、未払い額の3種類の金額が1円単位で書かれていた。ゴーン容疑者や、秘書室に所属していた日本人の元幹部のサインがあった。この元幹部と外国人執行役員が特捜部との間で司法取引に合意し、不正を裏付ける保管資料を提出したとされる。

*8-5:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20181210&ng=DGKKZO38733440Q8A211C1MM0000 (日経新聞 2018年12月10日) ゴーン元会長、午後起訴 虚偽記載で東京地検 監視委が告発
 日産自動車元会長のカルロス・ゴーン容疑者(64)の報酬過少記載事件で、東京地検特捜部は10日午後、ゴーン元会長と元代表取締役のグレッグ・ケリー容疑者(62)、法人としての日産を金融商品取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)の罪で起訴する。特捜部は同日、2018年3月期まで3年間の有価証券報告書でゴーン元会長の報酬を計約40億円過少に記載したとして、同法違反容疑で2人を再逮捕する方針だ。証券取引等監視委員会は10日、15年3月期まで5年間の報酬過少記載について、ゴーン元会長とケリー役員、法人としての日産を同法違反容疑で東京地検に告発した。監視委としても、ゴーン元会長らの刑事責任を問う必要があると判断したもようだ。ゴーン元会長らは容疑を否認しており、起訴されれば公判で無罪を主張して争うとみられる。再逮捕容疑の捜査によってさらに20日間の勾留の可能性があり、身体拘束の長期化に対して海外の批判が強まることも予想される。関係者によると、ゴーン元会長は役員報酬の個別開示が義務化された10年3月期から、自身の報酬の一部について受領を先送りし、有価証券報告書に記載しないようにしていたとされる。先送り分を含めた報酬の総額は、10年3月期~12年3月期には年20億円を下回る水準だったが、毎年のように引き上げられ、17年3月期と18年3月期にはそれぞれ約24億円とされていたという。18年3月期の記載額は7億3500万円だったのに対し、記載のない先送り分は約16億円に上っていたとみられる。

*8-6:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20181211&ng=DGKKZO38770160R11C18A2MM8000 (日経新聞 2018年12月11日) ゴーン元会長ら再逮捕 直近3年の報酬、虚偽疑い
 日産自動車元会長のカルロス・ゴーン容疑者(64)の報酬過少記載事件で、東京地検特捜部は10日、ゴーン元会長と元代表取締役のグレッグ・ケリー容疑者(62)、法人としての日産を金融商品取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)の罪で起訴した。さらに直近3年間でも過少記載があったとして、ゴーン元会長らを同法違反容疑で再逮捕した。立件額は8年間で計91億円余となった。ゴーン元会長らは起訴内容・再逮捕容疑を否認しているとみられ、公判では無罪を主張して争う見通しだ。役員報酬に関する虚偽記載の起訴は初めて。企業統治(コーポレートガバナンス)に対する関心の高まりなどを背景に、特捜部は役員報酬も投資家の判断に影響を与え、虚偽記載をすれば刑罰の対象となる「重要な事項」に当たると判断した。有価証券報告書の虚偽記載には個人だけでなく法人の刑事責任を問う両罰規定があり、長期間にわたって経営トップの虚偽記載を止められなかった法人としての日産の責任も重いと判断した。日産では新車の完成検査で新たな不正が発覚。企業統治の面から、西川広人社長兼最高経営責任者(CEO)ら現経営陣の経営責任についても批判が強まりそうだ。日産の起訴を受け、東京証券取引所は同社株について上場廃止のおそれがあることを示す「特設注意市場(特注)銘柄」に指定するかどうかの検討に入る。特注銘柄は、有価証券報告書に重大な虚偽記載があり、会社の内部管理体制にも問題がある際に東証が指定する。指定期間中も通常どおり売買できるが、東証が内部管理体制の改善度合いを監視する。改善が認められれば指定解除する。西川社長は10日、社内に向け「法人として日産が起訴されるにいたったことは厳粛に受け止めている。ゴーン、ケリー(両容疑者)による私的な動機・目的で行われたことが原因だ」とコメントを出した。関係者によると、ゴーン元会長は自ら決めた各期の自身の報酬の一部について受領を先送りし、有価証券報告書に記載していなかったとされる。特捜部の起訴に先立ち、証券取引等監視委員会は10日、ゴーン元会長ら2人と日産を金商法違反容疑で東京地検に告発した。

*8-7:https://www.nikkei.com/paper/related-article/?b=20181211&c=DM1&d=0&nbm=DGKKZO38770160R11C18A2MM8000&ng=DGKKZO38743870Q8A211C1MM8000&ue=DMM8000 (日経新聞 2018年12月11日) 日産、不記載報酬を一括処理 今期決算で計上へ
 日産自動車はカルロス・ゴーン元会長と同社が役員報酬について有価証券報告書に虚偽の記載をした罪で起訴されたことを受け、記載されていなかった役員報酬に絡む費用を2019年3月期決算で一括処理する方針だ。正しい決算を作成するための社内管理体制が整っていると上場企業が投資家に向けて宣言する文書、「内部統制報告書」の訂正も検討する。ゴーン元会長が記載していなかった役員報酬は総額90億円前後とされるものの詳細が明らかになっていない部分もあり、日産は費用計上すべき額の把握を急いでいる。日産が今期、5000億円と見込む純利益は目減りする見通しだ。19年2月初旬とみられる18年4~12月期決算発表と合わせて開示する。日産内部では費用の一括処理案が有力。「虚偽記載の額が利益に対して小さい」(関係者)ためだ。ただ、取引所などとの今後のやりとり次第では過去にさかのぼって分割処理する案が検討される可能性もある。日産は10日、過年度の有価証券報告書を訂正する予定だと発表した。役員報酬の総額と1億円以上を受け取った役員の個別の報酬額などが対象になるとみられる。虚偽記載の疑いがある11年3月期以降の有価証券報告書が対象となる見込みだ。日産はゴーン元会長による費用の付け替えなどがなかったかも調査をしている。結果が確定し次第、必要であれば過去の有価証券報告書の損益計算書や貸借対照表など財務諸表を修正する見通しだ。

*9-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20181129&ng=DGKKZO38305510Y8A121C1MM8000 (日経新聞 2018年11月29日) 企業年金、積み立て手厚く、確定給付、制度改正で100社超 手元資金で危機に備え
 株価下落など将来の損失リスクに備え、企業年金の積立金を手厚く積む企業が増えている。2017年の制度改正で予防的な掛け金拠出が解禁されたのを受けた動きで、18年11月時点の導入企業はサッポロビールなど100を超えた。業績改善で手元資金が厚くなった企業が従業員の老後資金に還元している。配当などの株主還元や設備投資に続く手元資金の第3の活用策として同様の動きが広がりそうだ。企業の抱える現預金は17年度末時点で221兆円と5年前に比べ3割以上増えた。年金の掛け金は税務上の損金となることもあり、現預金を抱えるよりも効率的と判断した企業が拠出に動いている。企業は掛け金を基金など企業年金の運営主体に出し、その分を費用として計上する。厚生労働省は17年、従業員の年金額を保証する確定給付型企業年金を対象に「リスク対応掛け金」と呼ぶ仕組みを解禁した。金融危機など20年に1度程度の頻度で生じるような損失に備え、年金会計上の必要額を超えて掛け金を積み立てることを認める仕組みだ。この仕組みを活用した企業年金はサッポロビールやコーセーなど18年11月1日時点で104社・グループに上った。「より安定した年金制度を維持できる」(サッポロビール)という。企業年金の運用管理を受託するみずほ信託銀行によると「福利厚生の充実のために検討する企業が増えている」という。確定給付年金は運用不振で積み立て不足が生じると、企業は年金水準を維持するために掛け金を追加拠出して穴埋めする必要がある。90年代のバブル崩壊や08年のリーマン危機では株価の低迷などで巨額の積み立て不足が発生し、多くの企業で穴埋めを余儀なくされた。危機後には年金制度が企業経営を圧迫する事態の再発を防ごうと年金制度そのものを見直し、給付水準を下げる改革に踏み切る動きも相次いだ。今の企業の動きにはこうした悪循環を断ち切る狙いがある。リスク対応掛け金は株価急落などがあっても年金水準を維持できるように、企業業績に余力があるときに掛け金を本来必要な水準よりも多めに拠出しておくものだ。これにより企業年金の財政に「のりしろ」をつくり、将来、運用不振に直面しても積み立て不足に陥りにくくする。企業は突然、巨額の穴埋め負担を迫られるリスクが減り、経営の安定につながる。従業員にとっても年金財政が悪化して給付減額などを求められるリスクが減り、老後への備えが安定する利点がある。企業年金は確定給付型が主流だったが、リーマン危機後は従業員が運用先を決め、損失リスクも負う確定拠出年金に移行する企業が増えた。運用が好調だと将来の年金も増えるが、今は元本保証型などリスクを抑えた運用を選ぶ人が多い。掛け金にも上限があり、年金資産がなかなか積み上がらない課題がある。予防的拠出で確定給付型年金の安定性が高まれば、従業員の老後を支える福利厚生として存続・維持させる企業も増えそうだ。

*9-2:https://digital.asahi.com/articles/DA3S13817684.html (朝日新聞 2018年12月19日) 09年度報酬、一部返却 「退任後払い」の発端か ゴーン前会長
 日産自動車の会長だったカルロス・ゴーン容疑者(64)が役員報酬を過少記載したとして逮捕された事件で、ゴーン前会長が、役員ごとの報酬の開示制度が導入された2009年度分について、いったん満額で受け取った後、一部を返却したとみられることが、関係者への取材でわかった。差額を退任後の支払いにして隠蔽(いんぺい)する仕組みのきっかけになった可能性があり、東京地検特捜部は詳しい経緯を調べている。特捜部は、10~17年度の8年間の報酬を立件対象にし、計約91億円を各年度の有価証券報告書(有報)に記載しなかったという金融商品取引法違反の罪で、ゴーン前会長と前代表取締役グレッグ・ケリー容疑者(62)を起訴、再逮捕した。09年度の返却分も退任後に受け取ることにしたとみられるが、特捜部は仕組みが明確に確立したのは10年度分からとみて、09年度は除外した模様だ。関係者によると、ゴーン前会長は09年度分として十数億円をいったん受け取った。しかし、09年度末となる10年3月施行の改正内閣府令で、1億円以上の報酬を得た上場企業の役員は、名前と金額の個別開示が義務づけられた。日産は09年度決算から対象となった。このため、ゴーン前会長は「高額報酬」批判を懸念して一部を返却。10年6月末に提出した有報には返却後の約8億9千万円と記載したとみられる。ケリー前代表取締役らに「返した場合、有報への記載は実際の受け取り分だけでいいのか」と確認し、「返却分の記載は不要」という回答を得て返したという。関係者によると、ゴーン前会長はこうした経緯を踏まえ、翌10年度分からは、報酬の約半分は退任後に受け取る仕組みを最初から採用した。「総報酬」「支払った報酬」「延期報酬」といった趣旨の3項目を記した11年作成の文書には、09、10年度の2年分がまとめて記載され、前会長が署名していたという。一方、ゴーン前会長は、「総報酬」について、米国の自動車大手3社の最高経営責任者の報酬の平均値であり、「希望額として了解したという意味で署名した」と供述。「延期報酬」分は「将来の受領が確定していない」と述べ、記載義務を否定しているという。

<女性の能力に対する過小評価について>
PS(2018年12月15日追加):有報への虚偽記載もあやしくなってきたせいか、2018年12月14日、日産は、*10-1のように、「理由なき利益」を日産から得ていたとしてゴーン氏の姉をブラジル・リオデジャネイロ州の裁判所に提訴する方針を固めたそうだ。ゴーン氏の姉は、リオでコンサルタント会社を経営していた2002年に日産とアドバイザー業務契約を結び、日産から年約10万ドル(約1130万円)の支出を受けたが、日産は「業務実態はなかった」として会社経費の不正支出にあたるとする。しかし、*10-2のように、ゴーン氏の姉は、ブラジル生まれのレバノン育ちで、フランスのリヨン大学を卒業し、パリ・デカルト大学(パリV)などの大学院で民族学研究をした後、1995年に「Netune Ltda」の責任者に就任し、2013年3月~2017年3月には、フランスとブラジルの商工会議所の会長を務めた人であり、アラビア語、フランス語、英語、ポルトガル語の4か国語を話すことができるため、強力な営業マンだったと考えることもできる。そのため、「業務実態がなく、理由なき支払いだった」というのが本当かどうかは慎重な吟味を要する。日本の社会通念では、「60代の女性が大した仕事をしていたわけがないため、業務実態のない不正支出だろう」と思うのかも知れないが、私も佐賀地裁唐津支部で佐川急便に提訴された時、「この人はパートくらいでしか働いたことがなく、何も知らないのだろう」と推測され、呆れたとともに不利益を蒙ったのでわかるわけである。

*10-1:https://digital.asahi.com/articles/DA3S13812578.html (朝日新聞 2018年12月15日) 日産、ゴーン前会長の姉を提訴へ 
 日産自動車は14日、「理由のない利益」を日産から得ていたとして、前会長カルロス・ゴーン容疑者の姉をブラジル・リオデジャネイロ州の裁判所に提訴する方針を固めた。手続きに向けた準備を始めているという。日産によると、リオでコンサルタント会社を経営するゴーン前会長の姉は2002年に日産とアドバイザー業務契約を結び、日産から年約10万ドル(約1130万円)の支出を受けていたという。社内調査によると、姉に業務の実態はなかったといい、日産は会社経費の不正支出にあたるとみている。

*10-2:https://shiawase-no-tobira.com/carlos-ghosn-claudine-keireki-kaogazo-titioya-hahaoya-sister/ (わしろぐ) カルロスゴーン姉(Claudine)の経歴や顔画像は?父親と母親と妹についても
 カルロスゴーン姉(Claudine Bichara)の経歴や名前や顔画像があるのか調査していきます。カルロスゴーンは3人兄弟で、姉、ゴーン、妹の兄弟構成です。また、父親と母親と妹についても情報があるのかチェックしていきます。
●カルロスゴーン姉の経歴や顔画像は?
 名前は「クロディーヌ(Claudine Bichara)」というのが判明しています。ブラジル生まれ、その後、レバノンで育ちます。弟になるカルロスゴーンの誕生日が1954年3月9日ですので、年齢は64歳より上になりそうです(2018年11月23日現在)。カルロスゴーンが16歳でフランスに移住しますが、姉のクロディーヌは既にフランスに渡っています。クロディーヌはフランスのリヨン大学を卒業し、パリ・デカルト大学(パリV)などの大学院で民族学研究をしています。1995年に「Netune Ltda」というインターネット決済や電子取引の戦略などに関するコンサルティングサービスを提供する会社の立ち上げに協力し、責任者に就任します。2013年3月から2017年3月まで、フランスとブラジルの商工会議所の会長を務めます。現在、ブラジルのリオデジャネイロに住んでおり、日産リオのオフィスの昼食会に参加できる人物のようです。アラビア語、フランス語、英語、ポルトガル語の4か国語も話せます。
●カルロスゴーン姉も不正に関与?
 カルロスゴーンが姉に対して、業務実績がないのにコンサル料を支払っていたという報道がありました。姉はブラジルのリオに住んでいて、子会社に購入させたという住宅がブラジルにありますし、他にもありそうですね。(以下略)

<日本の資源と生産性について>
PS(2018/12/16追加): *11-1のように、COP24が、2018年12月15日、地球温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」を運用する実施指針を採択したそうだ。内容は、地球温暖化防止のため化石燃料をやめることで、これについては、*11-2のように、(私の提案で)日本がリードして、1997年に「気候変動に関する国際連合枠組条約の京都議定書」が採択されている。
 しかし、日本では「ハイブリッド車」止まりで、ゴーン氏率いる日産がEVを開発しても逆風を吹かせて足を引っ張り、三菱自動車が燃料電池車を開発しても黙殺してきた。このように、合理的な先端技術の実用化に時間をかけるのが我が国の生産性が低い原因であり、その後の世界競争を不利にしている。また、再エネで電力を作ればエネルギー資源はあるのに、「資源がない」と馬鹿の一つ覚えのように言っている“経済専門家”こそが、成長を阻害し国民を豊かにしない原因であり、これらは知識不足に由来するため、教育の充実が必要である。

*11-1:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO39011660W8A211C1MM8000/ (日経新聞 2018/12/16) パリ協定20年適用開始 COP24、実施指針を採択、温暖化防止へ一歩
 ポーランドで開かれている第24回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP24)は15日、地球温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」を運用する実施指針について合意し、採択した。焦点だった資金支援や削減目標を巡って先進国と途上国が折り合い、パリ協定が2020年から適用される。世界各国は温暖化防止に向けて一歩を踏み出す。議長を務めたポーランドのクリティカ環境副大臣は「次の世代に持続可能な社会をつくるため、パリ協定を稼働させる時がきた」と語った。パリ協定は15年にパリで開いたCOP21で合意して16年11月に発効した。産業革命以前より気温上昇を2度未満に抑える目標を掲げて約180カ国が批准した。ただ削減に向けた詳細なルールが決まっておらず、20年からの適用に向けてCOP24で交渉していた。COP24は会期を1日延長して15日夜まで協議を続けた。資金支援については先進国が歩み寄り、フランスやドイツなどが途上国向けの基金を一定額増やすと表明した。また先進国が2年ごとに将来の支援額を新たに示すことにした。資金支援についてはパリ協定を採択した15年、先進国が20年までに年間1千億ドルを途上国へ拠出すると約束していた。ところが米トランプ政権が17年に協定から離脱を表明し、オバマ政権時代に約束した資金拠出を取りやめた。今後は米国分を先進国がどれだけ穴埋めできるか課題となる。焦点の一つだった削減目標や削減した総量の検証を巡っては、先進国と途上国で差をつけず客観的なデータの提出など共通のルールを導入することでも合意。途上国にも先進国と同じ情報公開を求めた。一方、海外での削減分を目標達成に利用する「市場メカニズム」と、温暖化ガスを削減する目標期間を5年か10年のどちらにするかは結論を19年以降に先送りした。各国が現行の削減目標の深掘りを進めることでも一致した。パリ協定は各国が温暖化ガスの削減目標を公表して2度未満の達成を目指していたが、10月に気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が2度未満に抑えても海面上昇による国土の消失や洪水のリスクが高まるとする「1.5度報告書」を公表。削減目標の上積みが議論されていた。COP24の合意で参加国は20年までに削減目標を現行より増やせるか検証したうえで再提出しなければならない。日本もこれまで30年度に13年度比で26%削減する目標を公表しているが、さらなる上積みを求められそうだ。

*11-2:https://kotobank.jp/word/%E4%BA%AC%E9%83%BD%E8%AD%B0%E5%AE%9A%E6%9B%B8-2793 (京都議定書)
「気候変動枠組条約」に基づき1997年に京都で開かれた「地球温暖化防止京都会議」で議決した議定書。正式名称は「気候変動に関する国際連合枠組条約の京都議定書」。地球温暖化の原因となる、「温室効果ガス」の一種である二酸化炭素、メタン、亜酸化窒素、HFCs、PFCs、六フッ化硫黄について、先進国における削減率を90年を基準に各国別に定め、共同で約束期間内に目標を達成することを定めている。2008年~12年の間に、日本はマイナス6%、アメリカはマイナス7%、EUはマイナス8%と各地域で削減率を設定。日本ではこれをもとに二酸化炭素排出削減運動が展開されており、「ハイブリッド車」や「クールビズ」などが大きく注目されるきっかけとなった。(以下略)

<パリ協定ルールの採択は、環境を重視する企業に追い風であること>
PS(2018年12月17、18日追加):地球温暖化だけでなく他の排気ガスも深刻な公害だが、*12-1のように、COP24でパリ協定の実施ルールが採択され、先進国・発展途上国とも厳しいルールの下で温室効果ガスの排出削減を進めることになったのは、結果として全ての排気ガスを削減できるのでよかったと、私は思っている。しかし、先進国と発展途上国の定義は曖昧であり、時間の経過とともに変わるものでもあるため、一人当たり排出量及び国全体の排出量で、きちんと定義しなおした方がよいと思われる。また、環境を壊して工場を立て公害を出しつつ操業した方が、自然を維持するよりもGDPが上がるというパラドックスは補正しなければならないため、地球ベースで環境税を徴収して自然や緑を維持する国にその面積に応じて配分するのがよいと考える。このような中、COP24の結果、再エネ・EV・ゼロエミッション住宅などの技術を持っている企業は、世界進出のチャンスだということは間違いない。
 なお、*12-2のように、英自動車最大手ジャガー・ランドローバーは数千人規模の人員削減を検討しているそうだが、アフリカやインドに進出したい企業は、まずイギリスに進出してイギリスと手を組むのも一案だろう。
 また、日立が、*12-3のように、スイスのABBから送配電・電力システム部門を買収することで最終合意したが、そのアクションは速かった。ただ、①ABBがまず対象事業を分社して日立が出資し ②1~2年かけて出資比率を高めて完全子会社化する というやり方では、肝心な集団はそれまでに配置転換してしまい、日立には残りしか移転して来ない可能性があるので要注意だ。なお、日立の蓄電池や燃料電池を組み合わせれば、再エネも容易に使いこなせるだろう。
 12月17日、*12-4のように、EUが2030年の自動車のCO2排出量を21年比で37.5%減らす規制案をまとめ、これはガソリン車やハイブリッド車の燃費改善では達成困難で、EVシフトがカギを握るとのことだ。そのような中、現在の日本には捨てている再エネ電力も多いのに、「EVシフトが急加速すれば電力需給が逼迫する」「電力需要増に対応する多額の投資コストをどう負担するか」などと言っているのは愚かだ。駐車している時間が長い自動車自身にも、スマートな太陽光発電を取り付ければよいのではないか?

   
2018.12.3東京新聞     AFP        JCCCA    2017.11.17毎日新聞 

(図の説明:左図のように、エネルギー由来のCO2排出は、総量では中国が1番・米国が2番だ。しかし、一人あたり排出量は、中2つの図のように、米国が最大でカナダ・ロシア・ドイツ・イギリス・日本と続く。また、右図のように、米国がパリ協定から離脱しようとしているが、これは先進国・途上国という人為的で不公平な分類を使わず、CO2排出量に応じてGlobalに環境税を課し、吸収量に応じてその国・地域に配分するルールにすれば阻止できると思う)

   
       ameblo          2018.12.17東京新聞   2018.12.6毎日新聞

(図の説明:パリ協定の構造は、左図のように、“先進国”“能力のある国”が“後進国”“開発途上国”に資金支援という施しをする形になっているが、この区別は曖昧で、時代とともに変化するものだ。そのため、世界環境機関を作って、CO2排出源(主に化石燃料)からGlobalに環境税を徴収し、CO2吸収源(自然や緑)の量に応じて配分して環境保全に努めるのが、論理的で不公平がないと考える。そうすると、化石燃料の使用を控えて自然や緑を守る行動が促される。なお、一番右の図で、日本は「検討中」と書かれているが、2030年以降は交通系に化石燃料を使わず、省エネを徹底し、発電方法も再エネに切り替えるのが、あらゆる意味でよいと思う) 

*12-1:http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201812/CK2018121702000139.html (東京新聞 2018年12月17日) パリ協定のルール採択 COP24 全ての国に共通基準
 ポーランド・カトウィツェで開かれた国連気候変動枠組み条約第二十四回締約国会議(COP24)は十五日(日本時間十六日)、地球温暖化対策を進めるためのパリ協定の実施ルールを採択した。先進国と発展途上国が共通の厳しいルールの下で温室効果ガスの排出削減を進めることとなり、二〇二〇年の運用開始へ準備が整った。温暖化対策は国際的な仕組み作りに力を注ぐ段階を終えた。今後、深刻な被害を避けるために各国が脱炭素化への取り組みをどう強化するのか、具体的な行動が問われることになるが、米国が離脱を表明するなど先行きに不透明さも残る。議長を務めたポーランドのクリティカ環境副大臣は採択時の全体会合で「合意により、パリ協定の開始を確保できる。人類のために一歩を踏み出すことができた」と意義を強調した。交渉は三年にわたり、先進国と途上国で内容に差をつけるかどうかが焦点だった。採択されたルールは、二五年までに各国が出すことになる新しい削減目標や、削減の進み具合を検証する手法は、共通の厳しい基準を適用すると規定。詳しいデータの提出などが必要で、取り組みが透明化されて対策強化を促しやすくなると期待される。途上国への資金支援については、可能であれば先進国は二〇年から二年ごとに将来の拠出額を提示するよう求めた。削減目標を出さない国には順守委員会が対応するが、懲罰や制裁は科さないとした。パリ協定は一五年に採択され今月二日からのCOP24がルール作りに向けて設定された最後の場だった。会期後半は各国の環境相らが協議に加わって膠着(こうちゃく)状態の打開を図り、二日延長して十六日未明に閉幕した。

*12-2:http://qbiz.jp/article/145877/1/ (西日本新聞 2018年12月17日) 英ジャガー、数千人削減か EU離脱備えでコスト増
 英自動車最大手ジャガー・ランドローバーが数千人規模の人員削減を検討していることが16日分かった。英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)電子版などが報じた。英国の欧州連合(EU)離脱に備えるためのコスト増加に加え、ディーゼル車の不振や中国での販売落ち込みが業績に響いていることが理由。報道によると、5千人規模の削減になるとの予測もある。来年1月にも正式に発表するという。EU離脱が英経済の軸である自動車産業に与える影響が広がりつつある。ジャガーは英国内で約4万人を雇用し、これまでも国内工場で人員削減や操業時間の短縮を実施してきた。FTによると、ジャガーは10月、1年半以内に10億ポンド(約1400億円)のコスト削減を実施することを明らかにしていた。

*12-3:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO39021920X11C18A2MM0000/ (日経新聞 2018年12月17日) 日立、ABBの電力システム事業買収で合意 午後発表
 日立製作所は17日、電気を発電所から企業や家庭に届ける送配電など電力システム事業で、世界最大手のスイスABBから同部門を買収することで最終合意した。買収総額は6千億~8千億円程度になるようだ。日立が手掛けるM&A(合併・買収)では過去最大。再生可能エネルギーの普及や新興国の電力網整備で成長が見込まれる同分野の海外展開を急ぐ。日立とABBが17日午後に記者会見を開いて発表する。ABBがまず対象事業を分社して日立が出資。1~2年かけて出資比率を高めることで完全子会社にする方針だ。段階的な買収とすることで事業環境が大きく変わるリスクなどを軽減する。日立は送配電で世界首位となり、企業全体の規模では重電分野2位の独シーメンスと肩を並べる。ABBは産業用電機の世界最大手で、電力部門では制御システムを含めた送配電設備の製造や運営を世界中で手掛ける。2017年の部門売上高は約103億ドル(約1兆1700億円)、営業利益率は約8%を確保している。設備納入だけでなく送配電システム全体の運用も手がけ、売上高の4割以上をサービスで稼ぐ。日立の電力・エネルギー事業の売上高は18年3月期で4509億円。営業利益率は6%弱にとどまる。発電設備のほか、送配電・変電設備、再生エネなどを幅広く手がけるが、国内事業が9割以上を占める。原発関連など主力の国内電力事業が不振のため、海外市場の開拓が課題になっていた。22年3月期の連結売上高営業利益率を10%と3年で2ポイント高める目標を掲げる。電力システム事業は電力会社などから発注を受けて変電所を建てたり、電線を敷設したりする。設備運営を受託し、停電を防ぐために電力網全体の需要と供給を調整する役割を担う。太陽光発電や風力といった再生エネは天候により発電量が大きく変わるため、IT(情報技術)を使った高度な制御システムの需要が高まっている。

*12-4:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO39095650Y8A211C1EA2000/?nf=1 (日経新聞 2018/12/18) EUが迫る電気自動車シフト 乗用車CO2 37.5%削減
 欧州連合(EU)は17日、2030年の自動車の二酸化炭素(CO2)の排出量を21年比で37.5%減らす規制案をまとめた。今後自動車メーカーごとに具体的な削減幅を決める方針だが、ガソリン車やハイブリッド車の燃費改善では達成は困難とみられる。各メーカーは新車の3分の1程度を電気自動車(EV)などに代替する必要があるとの見方もある。EUではこれまで執行機関である欧州委員会と、加盟国政府の意見を代表する閣僚理事会、欧州議会がそれぞれ別のCO2の排出規制案を打ち出して議論していた。欧州委員会(30%)や閣僚理事会(35%)の提案よりも厳しく、最も厳しかった欧州議会(40%)の提案に近い形での決着となった。今後、欧州議会と閣僚理事会の承認を経て正式決定する。EUは21年に乗用車1台の1キロメートル走行あたりのCO2排出量を全企業平均で95グラム以下とする目標を掲げ、欧州市場で自動車を販売する各社が取り組んでいる。非営利団体「クリーン交通の協議会(ICCT)」によると、この目標でも17年は119グラム。消費者のディーゼル車離れで16年より増えており、これを大きく上回る目標の実現は容易ではない。今回決めた37.5%の規制値はEU全体の削減幅であり、すべての乗用車に一律に適用するのではない。販売台数や車種構成にあわせてメーカーごとに異なる削減幅が割り当てられることになる。それでも燃費の良いディーゼル車とハイブリッド車の比率を高める既存の戦略の延長線上で対応できる目標とみる向きは少ない。カギを握るのがEVへのシフトだが、17年のEUの新車販売に占めるEVの比率はプラグインハイブリッド車(PHV)を含めても1.4%にすぎない。今回の規制は各メーカーにEVシフトの急加速を迫る内容といえる。EUが重視するのは温暖化ガスの域内排出量を30年までに90年比で40%削減するとした「パリ協定」だ。さらに11月には欧州委員会が50年までに「実質ゼロ」を目指す新目標を提案。温暖化ガス削減で世界を主導する姿勢をアピールしてきた。自動車へのCO2排出削減でも高めの規制を打ち出すのもその一環といえる。EU域内では17年以降、フランスや英国、オランダなどが相次いで30~40年にガソリン車やディーゼル車の販売を禁止する計画を公表。11月にはスペインも追随した。CO2排出規制の強化はこうした「脱ガソリン・ディーゼル」の動きと表裏一体だ。削減規制は自動車が対象だが、EVへのシフトで需要の高まる電力部門については、再生可能エネルギーの拡大などで温暖化ガス削減を急ぐ。ただ、自動運転や人工知能(AI)の普及による電力需要が増える中で、EVシフトが急加速すれば電力の需給が逼迫する可能性もある。電力需要増に対応する多額の投資コストをどう負担するかも課題となる。

<EV化を誘導する中国の政策>
PS(2018年12月20日追加): *13のように、中国政府は厳しい規制で自動車産業の高度化と環境対応を進める狙いで、2019年1月10日からガソリンなどを燃料とするエンジン車をつくる工場の新増設を規制するそうで、よいと思う。PHEVも、エンジン付のため、車体が重くて居住空間が狭く、部品が多くてコスト高(=価格高)にもなるため、これまでの雇用は守られても消費者にとってメリットが少ない。従って、日本のメーカーもEVかFCVに変更する時だろう。

*13:https://digital.asahi.com/articles/DA3S13819401.html (朝日新聞 2018年12月20日) 「脱エンジン」中国加速 工場の新増設規制、生産を抑制 来月から
 中国政府は2019年1月10日から、ガソリンなど油を燃料にするエンジン車をつくる工場の新増設を規制する。完成車メーカーの新設による新工場建設を禁じるほか、既存メーカーの生産能力増強も制限する。日本メーカーの販売計画に影響する可能性もある。中国政府は現在、将来的なエンジン車の販売禁止に向けた計画の策定を進めており、まずは生産の抑制に乗り出す。厳しい規制を通じ、自動車産業の高度化と環境対応を進める狙いだ。国家発展改革委員会が10日付で出した「自動車産業投資管理規定」によると、中国国外で販売する場合を除き、エンジン車の生産メーカーの新設が禁止される。既存メーカーが生産能力を増やす場合も、過去2年の設備利用率が業界平均より高い場合などに限る。これまで新エネルギー車として優遇されてきたプラグインハイブリッド車(PHEV)も、エンジン車として規制対象になる。規定では、電気自動車(EV)を生産するメーカーの新設についても制限。建設規模は、乗用車が年産10万台、商用車は5千台を下回ってはならないことといった制限が加えられる。EVなどを普及させるための補助金目当ての「にわかEVメーカー」が乱立。こうした問題に対応する。日本メーカーでは、トヨタ自動車や日産自動車が、世界最大の市場である中国での販売増をねらい、工場の生産能力増強を計画している。規制にひっかかる場合は、今後の投資計画が狂う可能性もある。

<検察の姿勢と人権侵害>
PS(2018年12月22日):*14-1のように、ゴーン氏逮捕の争点となった「退任後の報酬」は、ゴーン氏はじめ司法取引に合意した日産の元秘書室長と外国人執行役員、東京地検特捜部、メディアがその仕組みを理解しているかどうかは怪しいが、確定拠出年金と同様、確実に受け取れる金額ではなく利子率の変化によって変わるものだと思われる。また、2018年3月期までの8年間に有価証券報告書に記載しなかった約91億円は、退職後に受領するものなので、受領時に認識して納税すべき退職慰労金と考えるのが普通だ。そのため、地検のステレオタイプで古い見立てに合う証言をするまで勾留したり、罪人呼ばわりしたり、粗末な場所に閉じ込めたりするのは、ゴーン氏だけでなく誰であっても人権侵害なのだ。従って、*14-2のように、東京地裁が2018年12月20日にゴーン氏とケリー氏の勾留延長を却下したのは英断だった。
 しかし、*14-3のように、東京地検特捜部は、2018年12月21日、新たな会社法違反(特別背任)を持ち出してゴーン氏を再逮捕して勾留を続けているので呆れる。容疑は*14-3・*14-4のように、①新生銀行との間で結んでいたスワップ契約による約18億円の損失を日産に付け替えた ②日産がオランダに設立した子会社「ジーア」とタックスヘイブン(租税回避地) にあるその子会社を通じて、レバノン・ブラジル・オランダ・フランスなどの高級住宅が購入され、ゴーン氏に無償提供された ③日産とゴーン氏の姉が実態のない「アドバイザリー契約」を結び、姉に年10万ドルが供与された ④日産が所有するジェット機を、日産の主要拠点がないレバノンへの往来に使用した ⑤娘の通う大学への寄付金や、家族旅行の費用にも会社資金が充てられていた などとされている。
 そのうち、①については、普通はドルか受取手が望む通貨で報酬を支払うため、日産が円でしか支払わないのは融通が利かなすぎる感があった。②については、所有権はまだ日産にあり、退職後に退職慰労金でジーアを購入すべく投資していたのであれば、ゴーン氏が言っていたことは首尾一貫する。さらに、③については、本当に実態がないかどうかわからず、④⑤については、現在は日産の主要拠点がなくても、日産の会長として中東に足掛かりを作る役に立っていたかも知れないため、既にある枠組みの中でルーチンワークしかしていない人には、トップの働きは理解できないのかも知れないと思えたわけである。

*14-1:http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201812/CK2018121902000118.html (東京新聞 2018年12月19日) 報酬文書にゴーン容疑者ら反論 きょう逮捕1カ月 「動かぬ証拠」検察に戸惑いも
 日産自動車前会長カルロス・ゴーン容疑者(64)の衝撃の逮捕から、十九日で一カ月になる。事件の争点となっているゴーン容疑者の「退任後の報酬」は、確実に受け取れるものだったと言えるのか-。文書という物的証拠を握っているとして強気な検察当局と、文書の解釈を巡り真っ向から反論するゴーン容疑者側。想定以上のせめぎ合いに、検察当局の戸惑いも透ける。「まるで言葉遊びのようだ。こういう展開になるとは予想外だった」。ある検察幹部が肩をすくめる。ゴーン容疑者と前代表取締役グレゴリー・ケリー容疑者(62)が問われている金融商品取引法違反事件は、二〇一八年三月期までの八年間、ゴーン容疑者の実際の役員報酬は計約百七十億円だったにもかかわらず、計約九十一億円を有価証券報告書に記載しなかったというものだ。東京地検特捜部は逮捕の約五カ月前、日産の元秘書室長と外国人執行役員と司法取引(協議・合意制度)に合意し、複数の文書を入手していた。最も重視したのは、報酬額が一円単位で記された一連の書面。年によって書式は異なるが、本来の報酬は「固定報酬」、実際に受け取って有価証券報告書にも記載した報酬は「支払った報酬」、その差額は「延期された報酬」などと英語で書かれ、ゴーン容疑者と秘書室長がサインしていた。ある検察幹部は逮捕前から「単なる希望額だったら、おおよその金額を書くはず。一円単位で記載していたのは、受け取りが確定していた動かぬ証拠」とみていた。別の幹部も「たとえ黙秘でも立証できる」とにらんでいた。ところが、ゴーン容疑者は逮捕されると「後任の最高経営責任者(CEO)が支払ってくれるかは未知数」と反論。最近では、役員報酬は複数の代表取締役と協議して決めるのが日産のルールなのに、自分一人で決めていたとして、「手続きに誤りがあったので確定はしていない」と主張している。検事は当初の取り調べでは、書面を突きつけず、存在をちらつかせながら追及していたとされる。だが、最近はゴーン容疑者に「書面があるから大丈夫なんだ」「いくら争ってもダメだ」と追及することも。一連の書面作成を巡り、司法取引した二人と直接関わったとされるケリー容疑者には、「(二人が)あなたたちに不利な証言をしている。何を言っても無駄だ」と詰め寄ることもあるという。東京拘置所にいる両容疑者の元には、領事館関係者らが頻繁に接見に訪れるため、一日の取り調べは五時間程度。通訳を交えており、実質的な調べはより短時間になる。ケリー容疑者は接見した関係者に「検事は怒るけど、通訳を介すから迫力ないね」と余裕を見せることもあるという。一方、捜査の過程では、退任後にどのような名目で支払うか検討した文書に、日産の西川(さいかわ)広人社長のサインがあったことも明らかに。ともに文書にサインしていたケリー容疑者は「今年九月、西川社長と『(支払いは)まだ確定したものではないよね』とやりとりした」と供述。特捜部は慎重に経緯を調べている。

*14-2:http://qbiz.jp/article/146118/1/ (西日本新聞 2018年12月20日) ゴーン前会長らの勾留認めず 東京地裁 近く保釈の可能性
 東京地裁は20日、金融商品取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)の疑いで再逮捕された日産自動車の前会長カルロス・ゴーン容疑者(64)と、前代表取締役グレゴリー・ケリー容疑者(62)の勾留延長を認めない決定をした。20日が勾留期限だった。東京地裁が東京地検特捜部の勾留延長を認めないのは異例だ。検察側が準抗告を検討する。最初の逮捕から約1カ月。近く保釈される可能性がある。欧米を中心に長期勾留への批判が出ていた。2人は共謀し、ゴーン容疑者の2016年3月期〜18年3月期の役員報酬が実際は計約71億7400万円だったのに、計29億400万円と過少に記載した有価証券報告書を関東財務局に提出したとして、10日に再逮捕された。11年3月期〜15年3月期には計約48億6800万円少なく記載したとして起訴されている。受領を退任後に先送りした分を記載していなかったとされる。関係者によると、2人は「退任後の報酬は確定しておらず、報告書への記載義務はない」と否認している。

*14-3:http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2018122190140234.html (東京新聞 2018年12月21日) ゴーン前会長、再逮捕 保釈見通し一転、特別背任疑い
 日産自動車の前会長カルロス・ゴーン被告(64)=金融商品取引法違反罪で起訴=が、私的な投資で生じた約十八億五千万円の損失を日産に転嫁するなどして会社に損害を与えたとして、東京地検特捜部は二十一日、会社法違反(特別背任)の疑いでゴーン被告を再逮捕した。東京地裁は二十日、地検が求めていたゴーン容疑者の勾留の延長を却下しており、保釈請求が認められれば二十一日にも保釈される可能性が浮上していた。ともに起訴された前代表取締役グレゴリー・ケリー被告(62)の弁護人は同日午前、地裁に保釈を請求。ゴーン容疑者は今回の再逮捕によって、さらに勾留が続く可能性が高まった。再逮捕容疑などでは、ゴーン容疑者は二〇〇八年十月、自身の資産管理会社と新生銀行との間で、通貨デリバティブ(金融派生商品)のスワップ取引を行っていたところ、評価額約十八億五千万円の損失が発生。この損失を含むすべての権利を日産に移し、損害を与えたとされる。また、この損失の付け替えに尽力した関係者が営む会社の口座に、〇九年六月から一二年三月までの間、四回にわたり、日産の子会社名義の口座から千四百万ドル(約十六億三千百万円)を振り込み、日産に損害を与えたとされる。関係者によると、ゴーン容疑者はかねて私的な投資をしていたが、〇八年秋のリーマン・ショックによる円高で多額の損失が発生。「飛ばし」の手法で約十八億五千万円の損失を日産に肩代わりさせたという。ゴーン容疑者はこの疑惑が報じられた先月下旬、弁護人に「当局から違法との指摘があり、付け替えは実行しなかった。日産に損失を与えていない」と説明したという。ゴーン容疑者は損失を含む権利を日産に移した後、再び資産管理会社に権利を戻したとされる。特捜部は権利を移した時点で特別背任は成立するとみている。特別背任の公訴時効は七年だが、海外に滞在している期間は除外されるため、立件が可能となった。
<特別背任>会社法で規定。取締役など特定の地位にある者が自分や第三者の利益のために任務に背く行為をし、会社に損害を与えた場合、10年以下の懲役か1000万円以下の罰金が科される。会社の経営に携わる立場での背任行為は大きな責任が問われるため、刑法の背任罪より法定刑が重い。

*14-4:https://mainichi.jp/articles/20181221/k00/00m/040/069000c?fm=mnm (毎日新聞 2018年12月21日) ゴーン前会長再逮捕 地検の経費不正疑惑の解明に注目
 会社法違反(特別背任)容疑で21日に再逮捕された日産自動車前会長のカルロス・ゴーン容疑者(64)を巡っては、会社資金の流用や、経費の不正使用とみられる疑惑が次々に浮上していた。東京地検特捜部の捜査で、数々の疑惑がどこまで解明されるか注目が集まっている。ゴーン前会長については、銀行との間で結んでいたスワップ契約による私的投資で受けた約18億円の損失を、2008年に日産に付け替えた不正経理疑惑が判明していた。この疑惑が今回の再逮捕容疑となったが、証券取引等監視委員会が当時、取引に関わった銀行に実施した検査で明らかになったとされていた。私的流用とみられる疑惑は他にもある。日産がオランダに設立した子会社「ジーア」とタックスヘイブン(租税回避地)の会社などを通じて流れた資金で、レバノンやブラジル、オランダ、フランスなどの高級住宅が購入され、前会長に無償提供されていた疑惑が浮上した。前会長はこの疑惑を否定しているとされる。また、日産と前会長の姉が実態のない「アドバイザリー業務契約」を結び、姉に年10万ドルが供与されたことも明らかになった。前会長は「正当な理由がある」と説明しているという。他にも、日産が所有するジェット機1機を、会社の主要拠点がないレバノンへの往来に使用した問題も指摘されていた。さらに、娘の通う大学への寄付金や、家族旅行の費用にも会社資金が充てられていた疑惑が浮上している。送金に関わっていたとされる社員らは特捜部に任意で事情聴取され、送金の詳細を説明している模様だ。「前会長は外出してのどが渇いて、部下に水を買わせる時も会社持ちだった。何から何まで会社のお金を使っていた」。日産関係者はそう声をひそめた。ゴーン前会長の私的流用は、ともに逮捕された前代表取締役のグレッグ・ケリー被告(62)=金融商品取引法違反で起訴=が、外国人執行役員らに具体的に指示していたとみられる。特捜部は送金記録を入手し、裏付け捜査を進めているとみられる。

<とにかくゴーン氏を陥れようとするのは、公正でないこと>
PS(2018年12月23日追加):*15-1・*15-2に、「①ゴーン氏再逮捕の理由は、自身の資産管理会社で生じた損失を日産に付け替え、さらに日産の資金約16億円を第三者に流出させた特別背任容疑」「②日産は逮捕容疑を踏まえ、ゴーン氏に損害賠償請求を検討する」「③ゴーン氏の資産管理会社(どこか?)が新生銀行と締結していた通貨取引に関するスワップ契約で損失を抱え、損失を含むこのスワップ契約を日産に移転し、約18億5000万円の評価損を負担する義務を日産に負わせた」「④この契約移転が証券取引等監視委と監査法人から相次いで問題視されたので、資産管理会社にスワップ契約を再移転した」「⑤ゴーン氏のサウジアラビアの知人が信用保証に協力し、この知人が経営する会社に日産子会社の口座から1470万ドル(現在のレートで約16億円)を振り込ませた疑いもある」と、ゴーン氏が業務上横領・特別背任の重罪を犯したかのように記載されている。
 しかし、③④については、ゴーン氏は監査法人から指摘されて契約を再移転し、その後、監査法人は適性意見を出しているので、日産に損失はなく、②は当たらない。そして、監査法人が、事前にこのような指導的機能を発揮して適性意見に導くことはよくある。さらに、新生銀行には全く瑕疵がなく、証券取引等監視委から問題視される理由がないため、証券取引等監視委は特捜に頼まれて嘘の証言をしているのではないかと思われる。
 また、①⑤のサウジアラビア人の知人が信用保証に協力し、日産子会社の口座から1470万ドル(約16億円)を振り込ませた疑いというのは、*15-3のように、ゴーン氏の直轄費から出したのであれば、企業には役員に認められた(ある程度の)使途不明金や交際費はよくあるため問題ない。さらに、*15-4には、「ゴーン氏が私的な損失を日産に付け替えたなどとして逮捕された特別背任事件で、ゴーン氏は取締役会で、全ての外国人取締役の役員報酬を外貨に換える投資を行う際の権限を、側近の秘書室幹部に与えるという決議をさせていた」と書かれているが、海外赴任した従業員の給料・報酬などは、通常は人事部で本人が必要とする通貨で支払うように決定し、通貨スワップ等は財務部が行う。しかし、日産の外国人役員は円でしか報酬をもらえなかったため、ゴーン氏が全ての外国人取締役を対象として自らの秘書室でそれを行うこととし、それに対して取締役会決議を得たのなら、むしろ気の毒なくらいで問題ない。つまり、何でもゴーン氏が悪いかのように言うのは、不公正でよくない。
 なお、*16のような冤罪事件は多く、不当に拘束された人は人生を台無しにされるため、死刑制度さえ廃止すればよいというものではない。つまり、「司法がメンツや信用を保つためなら、個人の人権を侵害してもかまわない」と考えていること自体を変えるべきであり、メディアは、日本でも無罪の推定が働くのだから、裁判で罪が確定するまでは、自らがさも偉いかのような言い方で人を罪人と呼ぶ浅はかな報道は止めるべきだ。

*15-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20181222&ng=DGKKZO39285720R21C18A2MM8000 (日経新聞 2018年12月22日) ゴーン元会長、再逮捕 日産から16億円流出か、損害賠償請求へ
 東京地検特捜部は21日、日産自動車元会長のカルロス・ゴーン容疑者(64)を会社法違反(特別背任)容疑で再逮捕した。自身の資産管理会社で生じた損失を日産に付け替え、さらに同社の資金約16億円を第三者に流出させた疑いが判明。日産は今回の逮捕容疑を踏まえて会社が受けた損害額を精査し、ゴーン元会長に対する賠償請求を検討する。今回の逮捕容疑はゴーン元会長による「会社の私物化」の疑いを強める構図。保釈の可能性が高まるなかで特捜部は3回目の逮捕に踏み切り、勾留はさらに長期化する見通しとなった。関係者によると、再逮捕容疑の発端は2008年のリーマン・ショックに伴う急激な円高。ゴーン元会長の資産管理会社は、新生銀行と締結していた通貨取引に関するスワップ契約で巨額の損失を抱え、銀行から担保不足を指摘された。新たな逮捕容疑の一つは、08年10月、このスワップ契約を損失を含めて日産に移転し、約18億5000万円の評価損を負担する義務を日産に負わせたというものだ。ところがこの契約移転が一部で問題視され、資産管理会社にスワップ契約を再移転することになった。この際、ゴーン元会長のサウジアラビアの知人が信用保証に協力したという。09~12年、自分と知人の利益を図り、知人が経営する会社に対し日産子会社から計1470万米ドル(現在のレートで約16億円)を振り込んだというのが2つ目の容疑だ。関係者によると、ゴーン元会長は調べに対し容疑を否認している。損失付け替えでは結果的に契約を再移転しており「日産の損失はない」と主張。知人には「日産のための仕事をしてもらっていた」とし、振り込みは業務の対価だと説明しているという。今後の捜査では、特別背任罪の構成要件である「自己または第三者の利益を図る目的」と日産の「財産上の損害」を立証できるかが焦点となる。今回の逮捕容疑は日産の内部調査では突き止められず、特捜部の捜査によって判明。司法取引で合意した日本人の幹部社員の証言や提出資料が重要な役割を果たしたという。幹部社員は秘書室長としてゴーン元会長を長年支えた側近だった。逮捕容疑の一部は約10年前の行為だが、ゴーン元会長は海外滞在が長く、特捜部は特別背任罪の公訴時効(7年)は成立していないと判断した。特捜部は10日、金融商品取引法違反の罪でゴーン元会長らを起訴し、同法違反容疑で再逮捕した。20日に東京地裁に勾留延長を請求したが却下され、保釈の可能性が出てきたため、予定を早めて新たな容疑で逮捕したとみられる。3回目の逮捕容疑について22日にも地裁に勾留請求する見通しだ。

*15-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20181222&ng=DGKKZO39298300S8A221C1MM0000 (日経新聞 2018年12月22日) ゴーン元会長の損失移転問題 監視委・監査法人が指摘
 日産自動車元会長のカルロス・ゴーン容疑者(64)の特別背任事件で、ゴーン元会長が私的な金融取引の損失を日産に付け替えた後、証券取引等監視委員会と監査法人から相次いで問題視されていたことが22日、関係者の話で分かった。外部の指摘を受け、ゴーン元会長は損失を自身の資産管理会社に再移転したという。損失付け替えは再移転で解消された形だが、特捜部は、いったん付け替えを実行した時点で日産に損害が生じており、会社法違反の特別背任罪が成立すると判断しているもようだ。ゴーン元会長は2008年10月、自身の資産管理会社が運用していたデリバティブ取引の契約を日産に移転し、評価損約18億5000万円を負担する義務を日産に負わせた疑いが持たれている。関係者によると、ゴーン元会長の資産管理会社が契約していた新生銀行の関連会社に監視委の検査が入った際に損失付け替えが発覚。日産の取締役会の議決を経ていないなど、コンプライアンス上の問題があると指摘された。同じころ、日産を担当する監査法人も会計監査の過程で付け替えを把握。「会社が負担すべき損失ではなく、背任に当たる可能性もある」との指摘が日産側にあったという。外部からの相次ぐ指摘を受け、ゴーン元会長はデリバティブ取引の契約を自身の資産管理会社に再移転することにした。この際、巨額の評価損に対応する追加担保が必要になり、サウジアラビアの知人の協力により信用保証を得ることができたという。ゴーン元会長はこの知人が経営する会社の預金口座に日産子会社の口座から1470万ドル(現在のレートで約16億円)を振り込ませた疑いも持たれている。関係者によると、ゴーン元会長は特別背任の容疑を否認。損失付け替えについては、結果的に契約を再移転していることなどから「日産の損失はなく、背任には当たらない」と主張している。知人への支払いは日産のための業務の対価だったと説明し、日産には損害を与えていないとしているという。

*15-3:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20181223&ng=DGKKZO39312900S8A221C1MM8000 (日経新聞 2018年12月23日) ゴーン元会長、CEO直轄費から捻出か 流出の16億円
 日産自動車元会長のカルロス・ゴーン容疑者(64)の特別背任事件で、日産からゴーン元会長の知人側に流出したとされる約16億円は「CEO reserve」と呼ばれる最高経営責任者(CEO)直轄の費用枠から捻出された疑いがあることが22日、関係者の話で分かった。東京地検特捜部は21日、約16億円の支払いにより日産に損害を与えたなどとする特別背任容疑でゴーン元会長を再逮捕した。一方、ゴーン元会長の弁護人によると、ゴーン元会長は「知人が日産のために行ったサウジアラビアでのトラブルの解決などへの対価だった」と容疑を否認している。ゴーン元会長は2008年10月、自身の資産管理会社が締結していたデリバティブ取引の契約を日産に移転し、約18億5千万円の評価損を同社に付け替えた疑いがある。その契約を自身の資産管理会社に戻した際に協力した知人の会社に対し、日産子会社から計1470万米ドル(現在のレートで約16億円)を振り込み入金させた疑いも持たれている。関係者によると、知人はサウジアラビアで会社を営む実業家で、日産から契約を再移転する際の信用保証を手助けした。当時CEOだったゴーン元会長は、必要に応じて使途を決められる「CEO reserve」と呼ばれる費用枠を持っており、知人側への資金もこの枠から日産子会社を経由して支出された可能性があるという。

*15-4:https://digital.asahi.com/articles/DA3S13824319.html (朝日新聞 2018年12月23日) 秘書室幹部に特別な権限 損失付け替え可能に ゴーン前会長
 日産自動車の会長だったカルロス・ゴーン容疑者(64)が私的な損失を日産に付け替えたなどとして逮捕された特別背任事件で、前会長が取締役会で、全ての外国人取締役の役員報酬を外貨に換える投資を行う際の権限を、側近の秘書室幹部に与えるという特別な決議をさせていたことが、関係者への取材でわかった。一般的なルールを装ったこの決議で、自らの報酬の投資で生じた損失を、他の取締役には隠したまま付け替えたとみられる。東京地検特捜部などによると、ゴーン前会長は2006年以降、自身の資産管理会社と新生銀行の間で、金融派生商品であるスワップ取引を契約。前会長が「日本円で受け取った報酬をドル建てにするため」と説明するこの契約で、08年秋のリーマン・ショック前後に、円高による多額の評価損が発生した。ゴーン前会長は同年10月、契約の権利を資産管理会社から日産に移し、約18億5千万円の評価損の負担義務を日産に負わせた疑いがある。関係者によると、銀行側は、日産の取締役会で権利移転の承認を得るよう求めた。だがゴーン前会長は「円建てで報酬を得ている全ての外国人取締役の利便を図るため」として、外貨に換える投資を行う際の権限を、秘書室幹部に与える議案を取締役会に諮った。そのまま議決されたという。ゴーン前会長は、この権利を再び自分に戻した際の信用保証に協力したサウジアラビアの実業家に、アラブ首長国連邦(UAE)の子会社「中東日産」を介して1470万ドル(現在のレートで約16億3千万円)を入金した特別背任容疑でも逮捕された。関係者によると、前会長は「サウジの日産販売店で起きたトラブルの処理や、中東から投資を集めてもらった報酬」として、最高経営責任者(CEO)の裁量で使える資金から支払ったと供述。容疑を否認しているという。

*16:https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130612-00010004-wordleaf-soci (Yahoo 2013/6/12) 東京電力女性社員殺害事件から考える冤罪の背景
 1997年の東京電力女性社員殺害事件で再審無罪となったネパール人のゴビンダ・プラサド・マイナリ氏を支援し続け目的を果たして解散していた「ゴビンダさんを支える会」が、この事件での教訓を生かし、2013年6月8日「なくせ冤罪! 市民評議会」として新たな活動をスタートしました。冤罪事件の背景には検察による「供述調書」の作成における問題点があると言います。
■事件の経緯
 「捜査・公判活動に特段の問題はなかったと考えているが、結果として、無罪と認められるゴビンダ・プラサド・マイナリ氏を、犯人として長期間身柄拘束したことについては、誠に申し訳なく思っている。」2012年10月29日の東京電力女性社員殺害事件再審初公判後、青沼隆之東京高検次席検事のコメントです。11月7日の再審判決当日、ゴビンダさんは「どうして私が15年間も苦しまなければならなかったのか、日本の警察、検察、裁判所はよく考えて、悪いところを直してください。」とコメントしました。1997年3月19日、東京都渋谷区円山町のアパートで、東京電力に務める39歳の女性が絞殺死体で発見され、同年5月20日、現場の隣のビルに住んでいたインド料理店店員のネパール人、ゴビンダさんが逮捕されました。決め手とされたのは、現場の鍵を持って居たことと、目撃証言でした。2000年4月14日に一度無罪判決を言い渡されましたが、同年12月22日、現場に残されたDNAなどを理由に逆転有罪、無期懲役判決を言い渡されました。ゴビンダさんは、獄中から再審を請求、様々な支援を得て、2011年に東京高検がDNA鑑定を実施し、遺体に付着していたDNAとゴビンダさんのDNAが一致しないことが判明しました。それでも、検察はゴビンダさんが犯人である可能性を主張し続けていました。
■報道の過熱による人権侵害
 この事件は、冤罪事件だったという警察・検察・裁判所の在り方だけではなく、マスコミをはじめとしたメディアの報道の在り方も議論の的になりました。捜査が進む中で、被害者女性が、大企業の管理職であり経済的な問題はなかったにも関わらず、対照的ともいえる私生活での事実が発覚し、マスコミの報道は過熱、事件とは直接関係のないプライベートまで暴露報道するようになり、被害者の家族が警察に抗議するに至りました。東京法務局は、行き過ぎた内容は人権侵害に当たるとして再発防止の勧告をし、スキャンダラスな報道は沈静化しましたが、たくさんの問題点があらわになりました。
■黙秘によって意に反する供述調書の作成を阻止
 警視庁はかなり早い段階からゴビンダさんを犯人だと決めつけていた、といいます。ゴビンダさんは不法滞在だったうえ、被害者とプライベートでの関係があったため、検察が調書を作りやすかったのでは、という議論もありました。この事件に関してお話を伺ったリンク総合法律事務所の梅津竜太弁護士によれば、冤罪事件の場合、意外に見落とされるのは「供述調書」の問題だと言います。「供述調書は検察官が作ります。被告人は、検察官が書いた供述調書の内容を確認して、押印するわけですが、細かいところをちゃんとチェックせずに、概ね合っていれば押さされてしまうことも多いんです。外国人などコミュニケーション能力が低い場合、もちろん通訳などはつくのですが、しっかりとチェックするのは難しいでしょう。」つまり「自白」とされている「供述調書」は自白自体ではなくて、自白を聞いて検察官が作成したものだということです。弁護人は、捜査段階の初めから、完全黙秘を貫く方針を取りました。これに対して「弁護人が捜査妨害をしてきた」などと言っている捜査関係者もあるといいます。しかし、上記のような背景事情がある以上、完全黙秘という方針を取らない限り、ゴビンダさんの意に反する供述調書が作られていた可能性は否定できません。仮にそうした調書が作成されていれば、今回の無罪判決はなかったのではないかと思います。「検事の作文」が真実として報道され、世論を形成してしまっている可能性があるわけです。日本の刑事事件の有罪率は99.9%という世界でも極めて高い水準を保っています。つまり起訴された時点で有罪はほぼ確定してしまいます。その理由として、検察官は情状を考慮して起訴しないことができる「起訴便宜主義(刑事訴訟法248条)」が機能していることが挙げられますが、あくまでも一要因に過ぎません。刑事裁判は、「疑わしきは罰せず」という原則があります。また「十人の真犯人を逃すとも一人の無辜(無罪の人)を罰すなかれ」という格言もあります。とはいえ、日々、冤罪事件が明るみに出ています。そしてその事実は、晴れることのない無数の冤罪の存在を証明していると言えます。警察の持つ捜査権限の強大さ、検察官が独占する起訴の選別、そして捜査書類中心の公判について、多くの人が知り、自分事と捉えて意見を持つことが必要ではないでしょうか。

<ゴーン氏に特別背任はあったか>
PS(2018/12/27、28追加): *17-3のように、ケリー氏が保釈されたが、取締役であるのに、取締役会や株主総会への出席に裁判所の許可が必要というのは解せない。また、首の手術をするとのことだが、それができる医師は日本でも少ないため、住居制限や海外渡航禁止があるのなら、しばらく様子を見た方が安全だと思われる。
 ゴーン氏については、*17-1、*17-2のように、東京地検特捜部は、2009~12年、ゴーン氏が日産子会社からサウジアラビアの知人に「販促費」「販売委託料」等として約1470万ドルを支出させたのは、実際には販促活動ではなく日産に損害を与えたので特別背任だとしている。そして、この支出は、2008年のリーマン・ショックに伴う急激な円高で、ゴーン氏の私的な資産管理会社(ジーア社?)が通貨スワップで評価損を抱えたため、契約相手の銀行側から担保不足を指摘され、①契約当事者を資産管理会社から日産に移転して約18億5000万円の評価損負担義務を付け替えた ②4カ月後に契約を資産管理会社に戻して担保不足にサウジアラビアの銀行から信用保証を得るため、サウジアラビアの知人に協力してもらった ③ゴーン氏は「業務の正当な報酬だった」としている ④約1470万ドルは、ゴーン氏が必要に応じて使途を決められる「CEOreserve」から「販売促進費」等の名目で「中東日産会社」を通じて支払われた という内容で、現在は「損害の有無」と「支出の趣旨」が主な対立点となっているそうだ。
 しかし、①については、日産は4か月間信用保証したが実損はなく、②のように、ゴーン氏は指摘を受けて契約を資産管理会社(誰の所有?)に戻し、数千万円の信用保証料や手数料はゴーン氏が負担したそうだ。さらに、本来なら日産が行うべき外為リスクの回避策が行われていないため、ゴーン氏自身が行ったものだろう。そのため、特捜部がこの一時的な損失付け替えをもって特別背任とするのは行き過ぎだと考える。さらに、サウジアラビアの知人が日産のためにサウジで政府や王族に対するロビー活動やトラブル解決などに尽力していたというのは、新しい市場を開くにあたって、国によってはロビー活動や*18のような袖の下が必要になることもある(25年前だが、私が中国深圳市に進出した日本企業の監査に行った時、その企業の社長が「袖の下を渡すことを知らず、いつまでも通関してもらえなかった」とこぼしていたことがある)。そのため、世界中が日本と同じ状況だと勘違いして行き過ぎた批判をしていると、日本企業の世界進出をやりにくくする。さらに、トラブル解決費は、日産がブレーキ性能の検査等で騒がれているのに世界でクレームが少ないのは、ゴーン氏のこういう支出のおかげではないのか?
 なお、サウジアラビアが女性に運転免許を解禁したため、これから中東は女性好みのEVを販売するよい市場となって顧客をつかむチャンスであり、技術は売れて初めて磨かれるにもかかわらず、このようにサウジアラビアの王族や販促に協力している人から反感を買うような営業感覚の鈍さがあるのは、世界市場への展開を危ぶませる。
 2018年12月28日には、日経新聞はじめ各メディアが、*17-4のように、ゴーン氏の信用保証に協力したのはサウジアラビアの財閥創業家出身で、同国中央銀行理事も務めるハリド・ジュファリ氏で、同氏は、日産が中東の販売業務支援のために設立した合弁会社の会長も務めていたと報じている。そのため、1470万ドルは「日産の業務の正当な対価」で、信用保証料はゴーン氏が自ら負担した数千万円に含まれると考えるのが妥当であり、東京地検特捜部のどうしても不正にこじつけたがる捜査は次元が低すぎると思う。

*17-1:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO39319590T21C18A2CC1000/ (日経新聞 2018/12/23) 知人への16億円、「販売促進費」名目で ゴーン元会長
 日産自動車元会長のカルロス・ゴーン容疑者(64)の特別背任事件で、日産からゴーン元会長のサウジアラビアの知人側に流出したとされる約16億円が「販売促進費」などの名目で支出されていたことが23日、関係者の話で分かった。東京地検特捜部は販促活動などの実態はなかったとみている。ゴーン元会長は「業務の正当な報酬だった」と反論しているという。逮捕容疑では、ゴーン元会長は2009~12年、日産子会社から知人が経営する会社に対し計約1470万ドル(現在のレートで約16億円)を支払わせ、日産に損害を与えたとされている。関係者によると、知人側への約16億円は、当時最高経営責任者(CEO)だったゴーン元会長が必要に応じて使途を決められる「CEO reserve」(CEO予備費)から捻出。「販売促進費」などの名目で、中東での販促などを担当しているアラブ首長国連邦の子会社「中東日産会社」を通じて支払われたという。この知人は09年初めごろ、ゴーン元会長の私的な金融取引の損失を巡って銀行に対する信用保証に協力。約16億円は、知人が経営している会社の預金口座に対し09年6月から12年3月にかけて4回に分けて振り込まれていた。特捜部は、知人が経営する会社は日産の販促に関わる業務を手掛けておらず、巨額の支払いに見合う活動実態はなかったと判断。信用保証に協力した見返りなどの趣旨だった疑いがあるとみているもようだ。一方、弁護人によると、ゴーン元会長は知人についてサウジアラビアのビジネス界の重要人物であると説明。日産のために同国の政府や王族へのロビー活動を担っていたほか、日産と現地販売店の間で深刻なトラブルが生じた際に解決に尽力するなどし、約16億円はこうした業務への正当な報酬だったと主張しているという。ゴーン元会長の私的な資産管理会社は08年のリーマン・ショックに伴ってデリバティブ取引の契約で巨額の評価損を抱え、契約相手の銀行から担保不足を指摘された。ゴーン元会長は担保の追加に応じず、08年10月に評価損ごと契約を日産に移転。しかし、証券取引等監視委員会などから契約移転を問題視され、09年2月ごろに契約を資産管理会社に戻したとされる。この際に改めて担保の不足が問題になり、サウジアラビアの知人が銀行に対する信用保証に協力したという。

*17-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?ng=DGKKZO39422390W8A221C1M10800 (日経新聞 2018年12月27日) 「会社に損害」か「正当な支出」か
 カルロス・ゴーン元会長の3度目の逮捕は会社法違反の特別背任容疑。私的な金融取引で生じた巨額損失を日産自動車に一時付け替え、さらに会社の資金約16億円を知人に流出させた疑いがあるとして、東京地検特捜部は「会社私物化」の疑惑に正面から切り込んだ。2008年のリーマン・ショックに伴う急激な円高によって、ゴーン元会長の私的な資産管理会社は通貨取引のスワップ契約で巨額の評価損を抱え、契約相手の銀行側から担保不足を指摘された。ゴーン元会長は担保の追加を拒み、08年10月、契約当事者の立場を資産管理会社から日産に移転。約18億5000万円の評価損を負担する義務を付け替えたという。約4カ月後の09年2月ごろには契約を再移転して資産管理会社に戻したが、その際に評価損の担保不足を巡ってサウジアラビアの知人が約30億円の信用保証で協力した。ゴーン元会長は09~12年、この知人が経営する会社に対し、日産子会社から計約1470万ドル(現在のレートで約16億円)を支出させたとされる。こうした事実関係についてはゴーン元会長側もほぼ認めており、「損害の有無」と「支出の趣旨」が主な対立点となっている。損失付け替えについて特捜部は、たとえ一時的だったとしても「評価損を負担する義務」を負わせたことは会社に損害を与える行為であると判断している。対するゴーン元会長は、契約移転中に定期的な精算で生じた数千万円の支払いも自ら負担しており、「日産に実損はない」と反論している。知人側に支出された約16億円を巡っては、「販売促進費」などの支出名目に実態はなく、信用保証への謝礼などの趣旨だったというのが特捜部の見方。一方、知人は日産のためにサウジで政府や王族に対するロビー活動、トラブル解決などに尽力しており「正当な報酬だった」とゴーン元会長は主張している。特捜部は、当時秘書室長の立場で損失付け替えなどの実務を担った元幹部社員と司法取引で合意し、捜査の支えとなる証言や証拠を得ているとみられる。さらに捜査を進め、証拠によってゴーン元会長の反論を突き崩せるかどうかが問われる。

*17-3:https://www.nikkei.com/paper/related-article/?b=20181226&c=DM1&d=0&nbm=DGKKZO39377820V21C18A2EA1000&ng=DGKKZO39341130V21C18A2EA1000&ue=DEA1000 (日経新聞 2018年12月26日) ケリー役員 保釈 取締役会出席、許可必要に
 日産自動車元会長のカルロス・ゴーン容疑者(64)の報酬過少記載事件で、東京地裁は25日、元代表取締役、グレッグ・ケリー被告(62)の保釈を認める決定をした。保釈保証金は7000万円で即日納付。東京地検の準抗告も棄却し、ケリー役員は同日夜、最初の逮捕から約1カ月ぶりに東京・小菅の東京拘置所を出た。関係者によると、保釈には住居の国内制限、海外渡航の禁止のほか、西川広人社長兼最高経営責任者(CEO)ら事件関係者との接触禁止などの条件が付いた。取締役会や株主総会に参加する場合、事前に裁判所の許可が必要となる。

*17-4:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20181228&ng=DGKKZO39458140X21C18A2CC1000 (日経新聞 2018年12月28日) ゴーン元会長「知人」はサウジ財閥創業家出身 ハリド・ジュファリ氏、30億円保証 日産と合弁の会長も
 日産自動車元会長のカルロス・ゴーン容疑者(64)の特別背任事件で、ゴーン元会長の私的損失を巡って信用保証に協力したのはサウジアラビアの財閥創業家出身で、同国の中央銀行理事も務めるハリド・ジュファリ氏だったことが27日、関係者の話で分かった。日産が中東の販売業務支援のために設立した合弁会社の会長も務めていたという。ジュファリ氏経営の会社には2009~12年、日産側から1470万ドル(現在のレートで約16億円)が入金されており、東京地検特捜部は信用保証の謝礼などの趣旨だったとみて調べている。弁護人によるとゴーン元会長は「日産のための業務の正当な対価であり、謝礼の趣旨はない」と主張しているという。関係者によると、ジュファリ氏はサウジアラビアの財閥「ジュファリ・グループ」の創業家出身。同国有数の複合企業「E・Aジュファリ・アンド・ブラザーズ」の副会長のほか、同国の中央銀行理事も務める。ジュファリ氏が経営する会社は08年10月、アラブ首長国連邦(UAE)に日産との合弁会社「日産ガルフ」を設立。同氏が会長に就任した。当時の発表では、同社は日産の中東市場の販売・マーケティング業務をサポートするとしていた。弁護人によると、ゴーン元会長とジュファリ氏は長年の友人。ゴーン元会長は「ロビー活動や現地のトラブル解決への対価として約16億円を支払った」と説明しているという。ゴーン元会長は通貨取引のスワップ契約で巨額損失を抱えた際、ジュファリ氏から約30億円の信用保証の協力を得た。これにより新生銀行から求められた追加担保を免れたとされる。日本経済新聞はジュファリ氏側に電子メールでコメントを求めたが、回答はなかった。

*18:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20181225&ng=DGKKZO39325660U8A221C1CR8000 (日経新聞 2018.12.25) 初の司法取引 きょう初公判 元幹部ら、タイ贈賄事件
 捜査協力の見返りに刑事責任を減免する日本版「司法取引」が初適用されたタイの発電所建設を巡る贈賄事件の公判が25日から東京地裁で始まる。不正競争防止法違反(外国公務員への贈賄)罪で起訴された元会社幹部3人のうち1人は無罪を主張する見通し。司法取引を巡っては虚偽供述などの恐れも指摘され、公判の行方は今後の制度運用にも影響しそうだ。起訴されたのは三菱日立パワーシステムズ(MHPS)の元取締役、内田聡被告(64)と元執行役員、錦田冬彦被告(63)、元部長、辻美樹被告(57)。起訴状によると、3人は2015年2月、タイの発電所建設に使う建設資材を港で荷揚げする際、荷揚げの許可条件違反を見逃してもらう見返りに、港湾当局の現地公務員に約3900万円相当の現地通貨バーツを支払ったとされる。25日に錦田被告と辻被告の初公判があり、19年1月11日に内田被告の初公判が開かれる。内田被告は無罪を主張する方針とみられる。事件では、法人としてのMHPSが東京地検特捜部と司法取引で合意。関係者によると、同社は合意内容に基づいて80点超の資料を提出し、役員らの事情聴取に協力。必要に応じて役員らが証人として出廷することも合意内容に含まれているという。こうした捜査協力の見返りに特捜部は同社の起訴を見送った。法取引を巡っては、自らの罪を逃れるために虚偽の供述をするリスクが指摘されてきた。今回は個人が罪に問われる一方で企業が起訴を免れたことに「トカゲのしっぽ切り」との批判もあった。公判などを通じて制度の課題や運用のあり方を検証していくことが求められている。

<ゴーン氏を有罪にするための嘘の記述が多いこと>
PS(2019/1/5追加): *19-1の「ゴーン氏が私的投資の損失付け替えを伏せて日産の取締役会承認を得た」と書かれている件は、日産の取締役を馬鹿にし過ぎている。何故なら、取締役は、部長まで勤めあげた人が多く、日産の仕組みや部下の監督に精通しているため、外国人取締役の役員報酬を外貨に替える権限をゴーン氏の秘書室幹部に与える案をゴーン氏が出せば、その目的や日産に損失が出るかどうかなどの必要事項を質問し、承認するかどうか判断できる筈だからだ。そして、私は、一時的に日産の信用を借りただけで、日産に実損は出ていないと思う。
 また、*19-2の「関係者によると、日産社内ではCEO予備費は自然災害に伴う見舞金など予算外の大きな支出に使うことを想定」としているが、この関係者は特捜部(国の機関)だろう。何故なら、国の予備費は自然災害など予定外の大きな支出に使うが、企業のCEO直轄費は多くの企業にあり、目的を明示しないで使うもので、災害の見舞金には損金算入できる費用や寄付金・ふるさと納税などを、目的を明示して使うのが合理的だからである。

*19-1:https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20181225-00000058-mai-soci (毎日新聞 2018/12/25) 投資損失付け替え伏せ、日産取締役会に ゴーン容疑者
 私的な投資の損失を日産自動車に付け替えたなどとして前会長、カルロス・ゴーン容疑者(64)=金融商品取引法違反で起訴=が会社法違反(特別背任)容疑で逮捕された事件で、損失付け替えが分からないよう偽装する取締役会決議が行われたとみられることが関係者への取材で明らかになった。東京地検特捜部は、前会長らが不正の隠蔽(いんぺい)を図る意図があったとみて捜査を進めている模様だ。ゴーン前会長は、新生銀行と契約した金融派生商品取引で多額の損失が生じたため、2008年10月に約18億5000万円の評価損を含む契約を日産に付け替えるなどしたとして21日に逮捕された。関係者によると、付け替えにあたって、新生銀行は前会長に取締役会の承認を得るよう要請。前会長は、自身の名前や損失の付け替えを明示することなく、外国人取締役の役員報酬を外貨に替える権限を秘書室幹部に与える案を諮り、承認されたという。元々、前会長の取引は役員報酬を円からドルに替える内容であったため、この承認で事実上、前会長の損失の付け替えが可能になったという。前会長は取締役会の承認を得たとして、新生銀行側に伝達したとされる。前会長は「(付け替えに関連する)取締役会の承認を得ている。会社に実害も与えていないので特別背任罪は成立しない」と供述している模様だ。これに対し、特捜部は、前会長が他の取締役らに分からないような形で「承認」を得て、側近だった秘書室幹部と共に付け替えを実行したとみている模様だ。この秘書室幹部は、既に特捜部と司法取引で合意しており、付け替えの経緯などについて特捜部に資料提出するなどしているとみられる。

*19-2:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO39665340U9A100C1CR8000/?nf=1 (日経新聞 2019/1/4) ゴーン元会長「直轄費」が焦点 知人側に支出70億円
 日産自動車元会長のカルロス・ゴーン容疑者(64)の特別背任事件で、ゴーン元会長が直轄で管理し、自ら使途を決めることができた「CEO予備費」に疑いの目が向けられている。この経費枠を使ってゴーン元会長の知人側に支出された資金は総額70億円近い。その実態は会社資金の私的流用だったのか、個人的な人脈を使ったトップビジネスだったのか――。関係者によると、CEO予備費は2008年12月ごろ、当時最高経営責任者(CEO)だったゴーン元会長の指示によって創設され、アラブ首長国連邦(UAE)の子会社「中東日産会社」内で管理されていた。中東日産は09~12年、CEO予備費から「販売促進費」などの名目で、ゴーン元会長の知人であるサウジアラビアの実業家、ハリド・ジュファリ氏が経営する会社に約1470万ドル(現在のレートで約16億円)を支出。ほぼ同時期、ゴーン元会長の中東の知人2人が経営するオマーンとレバノンの会社にも、約3200万ドル(同約35億円)、約1600万ドル(同約18億円)を支出していた。関係者によると、日産社内では、CEO予備費は自然災害に伴う見舞金など予算外の大きな支出に使うことを想定。ある日産幹部は「止められなかった責任は我々にもあるが、会社の資金が巧妙に私物化されていた」と問題視する。CEO予備費が創設されたのは、ゴーン元会長の資産管理会社が通貨取引のスワップ契約で約18億5000万円に上る評価損を抱え、銀行側から担保不足を指摘されていた時期と重なる。ゴーン元会長は08年10月、スワップ契約を評価損ごと日産に移転。その後、ジュファリ氏から約30億円の信用保証で協力を得て、09年2月に契約を自身の資産管理会社に再移転した。特捜部は、ジュファリ氏側への約16億円は信用保証の謝礼などの趣旨で、会社法違反の特別背任の疑いがあるとしている。別の2社への支出も私的な目的だった可能性があるとみている。他方、日産は08年10月、ジュファリ氏の会社と共に中東市場の販売・マーケティングを支援する合弁会社「日産ガルフ」をUAEに設立。会長にはジュファリ氏が就任した。オマーンとレバノンの会社も日産の販売代理店を務めるなど、日産とつながりが深い。この時期、日産が中東での販促を強化しようとしていたようにも見える。ゴーン元会長はジュファリ氏側への支出について「サウジの政府や王族に対するロビー活動、現地販売店とのトラブルの解決など、日産のために尽力してもらったことへの正当な対価だった」と説明。信用保証の謝礼など、個人的な目的を否定している。

<ゴーン氏の陳述について>
PS(2019年1月8日追加):有価証券報告書への虚偽記載については、後に報酬を受け取る契約をしていたとしても未受領で、退任後に受領する契約であるため役員退職慰労金となり、「開示されていない報酬は受け取っていない」というのは本当だ。さらに、日産が組んでもおかしくない通貨スワップを一時的に移転しただけで実損は与えておらず、取締役会の承認も得ているため、“特別背任”にはならないだろう。もともとは、メディアが「ゴーン氏の報酬が多すぎる」などという国際標準と異なる批判をしすぎたのが悪いのであり、これでは優秀な外国人は日本に来たがらなくなる。

*20:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190108&ng=DGKKZO39746100Y9A100C1MM0000 (日経新聞 2019年1月8日) ゴーン元会長「私は無実」 特別背任事件で陳述、50日ぶり公の場 勾留理由開示
 日産自動車元会長のカルロス・ゴーン容疑者(64)の特別背任事件で、裁判官が容疑者に勾留理由を説明する勾留理由開示の手続きが8日、東京地裁であった。出廷したゴーン元会長は自ら意見陳述し、「I am innocent(私は無実です)」と会社法違反(特別背任)容疑について潔白を主張した。ゴーン元会長が公開の場に姿を見せるのは2018年11月19日の最初の逮捕以来、50日ぶり。勾留理由開示にはゴーン元会長と弁護人3人、検察官2人が出廷。英語の法廷通訳人も参加した。冒頭、担当する多田裕一裁判官が氏名を尋ねると、ゴーン元会長は「カルロス・ゴーン・ビシャラ」と答えた。多田裁判官が特別背任の逮捕容疑の概要を述べ、勾留には正当な理由があると説明した後、ゴーン元会長は英語で用意した紙を読み上げる形で意見陳述した。ゴーン元会長は「私に対する容疑がいわれのないものであることを明らかにしたい」「私は会社の代表として公明正大かつ合法的に振る舞ってきた」とし、「私にかけられた容疑は無実です。根拠無く、不当に勾留されている」と強調した。特別背任容疑の一つは、08年10月、銀行から担保の追加を求められた通貨取引のスワップ契約を自身の資産管理会社から日産に移転し、評価損約18億5000万円を負担する義務を日産に負わせた疑い。これについて、ゴーン元会長は「日産に損失を負わせない限りにおいて契約を付け替えた」とし、日産に損害は与えていないと主張した。もう一つの容疑は、09年2月ごろにスワップ契約を資産管理会社に戻した際に信用保証で協力したサウジアラビアの実業家側に対し、09~12年、日産子会社から計1470万ドル(現在のレートで約16億円)を支出させた疑い。これについても「(知人の実業家は)日産の支援者で、現地の販売代理店との紛争解決にも尽力した。関係部署の承認に基づいて対価を支払った」とし、正当な支出だったと主張した。さらに、有価証券報告書に自身の報酬を過少に記載したとされる金融商品取引法違反にも言及。「開示されていない報酬は受け取っていない。後に報酬を受け取るという契約もしていない」として虚偽記載を否定した。弁護人は開示手続きの終了後、8日中にも勾留取り消しを東京地裁に請求する方針。取り消しが認められるケースは少ないが、今後の保釈請求も見据え、裁判所に直接ゴーン元会長の主張を訴える機会として開示手続きを利用したとみられる。東京地検特捜部が現在捜査している特別背任事件で、地裁が認めた勾留期限は11日。特捜部は同日までに起訴するかどうかを判断する。

| 経済・雇用::2018.12~ | 01:35 PM | comments (x) | trackback (x) |
2018年10月22、23、24日 外国人労働者と水産業 (2018年10月25、26、28、29日、11月1、2、3、7、14、16、18、20、21、22、23、24、25、27日追加)
  
   2018.10.4 Businessinsider        Goo       東洋経済
(図の説明:左図のように、日本の生産年齢人口は減少しているが、就業者数は増加している。これは、女性・高齢者だけでなく外国人労働者の増加にもよる。また、中央の図のように、日本で就労する外国人の数は、2017年10月末現在で約128万人いるが、このうち本来は労働者でない人が約58万人おり、その建前と本音の違いに限界が生じている。そこで、右図のように、新たに「特定技能」という資格で50万人超を受け入れる検討がなされているが、それでも最長10年の滞在期間・最初5年間の家族同伴不可により、まだ人材開国には程遠いと言わざるを得ない)

(1)外国人労働者の受け入れ拡大
1)外国人労働者の受け入れの必要性
 外国人労働者の受け入れ拡大が議論されているが、その理由には、*1-1・*1-2のように、水産業・農業・食品製造業・造船業・建設業・介護・飲食業・宿泊・サービス業・コンビニ店員など、外国人抜きでは仕事が回らない産業が増えている状況がある。

 外国人技能実習制度は、「日本が、先進国として技能・技術・知識を開発途上国に移転し、開発途上国の経済発展を担う『人づくり』に協力することを目的とする」という建前で作られているため、①3~5年で帰国しなければならず、熟練労働者になれなかったり ②労働内容に細かい制限を課して、労働者としての使い勝手を悪くしたり などの欠点があった。

 しかし、他国との価格競争上、日本人より人件費の安い外国人の労働力は欠かせず、それがなければ価格競争で負けた日本の産業は、繊維・家電・農業・水産業等々のように海外に流出することになる。にもかかわらず、現在は、外国人労働者の受け入れを制限しすぎて、本来は「労働者」ではない技能実習生と留学生を働かせている点が問題なのである。

2)高コスト構造による日本経済の敗北
 *1-2のように、最低賃金の差によって田舎は捨てられるという声もあるが、どこでも外国人労働者は最低賃金で働かなければならないという規則はない。そして、技能実習生は勤め先を変わる自由がないことこそ、外国人労働者に対する人権侵害である。そのため、離島でも付加価値の高い仕事を作りだす必要があり、日本人男性だけでなく、多様な人がアイデアを出せば、その可能性は高まると考える。

 例えば、*1-3のように、主婦の視点で女性農業者が開発したマルニの「ゆで野菜」は、①豊作時に市場価格が暴落する露地野菜を一定価格で買い取るため農家にも利点があり ②新鮮なうちに調理するので採れたての美味しさがあり ③家庭での調理の手間を省き ④家庭で出る生ごみを減らし ⑤都会なら生ごみになる部分を産地なら飼料や肥料にできるため、確かによいと思う。私は、「キャリアウーマン応援野菜」という命名もよいと思うが(女性)、この作業は機械化できると同時に、機械化後の作業を外国人労働者にやってもらうことも可能で、この状況は水産業も同じだ。なお、ゆでるよりも、しっかり洗って蒸した方が栄養素の流出が少ないだろう。

 一方で、*1-2は、安価な労働力に頼るのは危うく、新たな在留資格を設けると最低賃金近くで働く外国人を優先して派遣社員を切る企業が多くなり、仕事を奪われる日本人がいるとも記載している。しかし、企業はよりよい労働力をより安く求めており、国内でそれができなければ産業自体が国外に移転して技術もなくなってしまうのが、グローバル化した世界大競争時代における自由貿易の結果であり、日本人も、頑張らなければ生活できない労働者になる。

3)外国人労働者を受け入れるための環境整備
 政府は、*1-4のように、外国人労働者の受け入れ拡大に向け、来春の新資格創設をめざして、臨時国会に提出する入国管理法改正案などの骨子を示し、新たな在留資格で単純労働にも門戸を開くそうで、本格的な外国人材受け入れへカジを切ったのはよいと思う。

 しかし、「特定技能1号」の在留期間が最長5年、熟練者を想定して高い能力を条件とした「特定技能2号」は定期的な審査を経て長期滞在が可能になるのだそうで、在留資格の付与が小出しであるとともに、外国人労働者に対して極めて不利な条件を課している点で、不十分だ。

 また、外国人が生活するための環境整備は、教育・医療・介護・雇用・年金などがあり、外国人も保険料を支払い、また安心して生活できるように、地方自治体が具体的事例に基づく要望を行って、国はその環境整備に必要な予算をつけなければならないと考える。

(2)水産業の事例 ← 獲り過ぎだけが問題ではないこと

 
     2018.4.26朝日新聞       日本の漁業・養殖業生産量の推移


  世界の水産物生産量と     クロマグロ・二ホンウナギ・サンマの漁獲量推移
 1人当たり消費量の推移

(図の説明:日本の漁獲高は、1984年に1282万トンと最大を示し、2017年には400万トンを切って、1/3以下となった。そのうち養殖業はまあ横這いで、沿岸漁業は少し減少、沖合・遠洋漁業は大きく減少している。また、マイワシの生産量は著しく減少して0に近くなった。一方、水産物の生産量・消費量は世界で増加しており、日本の一人当たり水産物消費量は飛びぬけて多い。さらに、マグロ・鰻の漁獲高は大きく減り、サンマは世界ではさほど減っていないが日本で減った。そのため、漁獲高の減少理由は魚種によって異なると思われる)

 日本は、領海(海岸線から12海里)面積が約38万km2で世界第60位、排他的経済水域(EEZ、海岸線から200海里)面積が世界第6位で、内水を含む領海とEEZを合わせると約447万km2で世界第9位という豊富な海洋資源を持つ国である。

 しかし、*2のように、勝川東京海洋大准教授は、①日本の漁獲量は何十年も直線的に減少しており ②このまま減り続ければ2050年に漁獲がゼロになるペースで ③水産研究・教育機構の調査では、日本沿岸の水産資源の多くは低水準であり ④漁獲しようにも日本近海には魚がいないので、水産資源を守るために乱獲をやめ、水産物の漁獲規制と価値向上を急ぐ必要がある ⑤1989年に38万人いた漁業者は、2017年には15万人まで減少し、その多くは後継者のいない高齢漁業者だ と記載しておられる。

 私は、衆議院議員をしていた2005~2009年の間、佐賀県北部の全漁協・漁村を廻り、離島も含む漁業関係者の話を聞き、農水省に質問もしているため、考えをまとめると以下のとおりだ。

 まず、①については、確かに漁獲高は直線的に減少しているが、その原因の多くは、遠洋漁業・沖合漁業の減少であり、遠洋漁業は日本の若者が次第に労働環境のよくない漁船漁業を嫌い始めたため、漁船の乗組員に外国人の割合が増え、それとともに漁船の船籍や水産会社の国籍が日本から外国に移ったものが多い。そのため、日本人1人当たり水産物消費量はそれほど減っておらず、生産量の減少は外国からの輸入で賄っている。なお、獲れなくなったら捕食者の方が先に減るため、生物の数は、②のように直線的には減らない。

 また、沖合漁業・沿岸漁業の生産量減少は燃油高騰も大きな理由で、漁の損益分岐点が上がって、i)漁に出られない ii)自ら漁師を辞める iii)子に漁師を継がせない などの現象が起こり、その結果が⑤となって現れているのだ。そのため、漁船のエネルギーを燃油から自然エネルギー由来の地元産電力や水素に変更することは、損益分岐点を下げて水産業にも資することになる。

 このように、現在の漁業生産量は1980年代の1/3以下に減少しているため、③④で述べられている日本沿岸や瀬戸内海の水産資源が低水準である理由は、乱獲よりも水環境の悪化と海水の温暖化の方が大きな原因ではないかと考える。

 例えば、工業排水・生活排水などの汚水によって魚が住める環境をなくしたり、農業用除草剤で藻場を枯れさせたり、農薬で川を汚染したりなど、漁業のために水環境を守るという発想が乏しすぎたのだ。そして、近年は、漁村の下水道整備や農薬の制限によって汚水に関しては改善されつつあるものの、川に農業用の堰を作るのは川と海を行き来する魚類の数を減らす原因になっており、海砂を取るのもそこに産み付けられた魚の卵を殺している。さらに、原発を冷やすために海水を使っているのは、幼生を大量の海水とともに取り込んで煮殺して排出している。

 そのため、私は日本のEEZから安定的な水揚げを得る漁業を作りだす必要があることには賛成だが、そのためには、魚が住む環境を守るとともに、次世代を産む親魚を十分に確保できるようにしなくてはならないし、冷凍技術の進歩や6次産業化によって水産物の付加価値を高める必要もあると考える。

 また、近大マグロのような完全養殖魚は、餌を工夫してイワシのような水産資源をできるだけ使わないようにすれば、希望が持てる。

(3)イスラム教を信仰する外国人労働者への対応

  
 外国人を雇用する事業所数     産業別・国籍別雇用者数      *3-1より 

(図の説明:左図のように、我が国では外国人を雇用する事業所が2016年でも17万以上に増加し、中央の図のように、出身国は中国・ブラジル《日系人中心》・フィリピン・ベトナム・韓国など、容貌が日本人とあまり変わらず、仏教国・キリスト教国が多い。一方、右図のように、イスラム教国からの外国人労働者は、著しい女性差別や活動制限の多すぎる文化を持ち込むため、それをどこまで容認するかが問題となる)

 上図のように、地方や中小企業で外国人労働者はなくてはならない存在になっている。しかし、*3-1のように、イスラム女性のドレスコードは一つしかなく、公共の場で全身を覆うブルカを着用しなければ見せしめに罰せられたり、処刑されたりする。そして、これは、イスラム文化の中に住む女性の側からは疑問に思っても変えることのできない女性差別であり、日本に来てもこれをやられると、日本国内でもやっと実現しそうになっている男女平等を後戻りさせる。

 そのため、私は、*3-2のように、女性に、スカーフ・ブルカ・ニカブなどの服装を強制したり、教育や活動で差別したりすることを、「文化の多様性」などと言って認めようとする国連や日本国内の風潮は、テロ対策以前に、女性差別や人権に対して鈍感だと思う。

 また、*3-2・*3-3のように、「①ブルキニがだめならダイビングスーツもだめになる」「②尼僧はどうなんだ」「③ブルキニは女性を解放する」という声もあるそうだが、①のダイビングスーツは潜水する人に合理的必要性があって着るもので、②の尼僧は全員が強制されてなるものではないため、性格が異なる。

 それよりイスラム教国で未だに公の場では女性が肌や髪を出せず、③のようなブルキニで“女性が解放される”などと言っていることこそ、日本なら女性にだけ着物と帯の着用を強制するのと同様、女性の自由な活動を奪っているため、女性に対する人権侵害だ。これは、決してイスラム差別の口実ではなく、イスラム女性の解放は海外経験者から始めるしかないのである。

 そのため、イスラム教系の外国人労働者や家族は、フランスと同様、公の場での黒いベール・ブルカ・ニカブを禁止し、学校はモダンな制服を定めて洋服に慣れさせるのがよいと考える。これは、日本で着物から洋服に変えた時代と同じ方法だ。

<外国人労働者の受け入れ拡大>
*1-1:https://digital.asahi.com/articles/DA3S13734419.html (朝日新聞 2018年10月22日) (多民社会)外国人抜き、仕事回らない 実習生・留学生、造船もコンビニも
 「造船の島」として知られる広島県尾道市の因島(いんのしま)。「彼らぬきで、ものづくりはもう考えられない」。島の南部で、船の床板などをつくる村上造船所の村上善彦社長(59)は話す。工場では、日本人従業員と一緒にタイ人の技能実習生7人が白い火花を散らし、溶接作業に汗を流す。高齢で引退した熟練工に代わり、頼ったのが「日本で技能を学んで母国で生かす」名目で来日した実習生だった。実習生の給与は1年目が最低賃金と同額。2年目から上乗せする。月給は残業代を合わせ15万円ほど。中韓との価格競争を考えれば日本人より人件費が安い実習生は欠かせない。指導する側の日本人従業員の大半は50歳を超えた。きつい作業をいつまで続けられるか分からない。村上社長は「外国人労働者だけで生産できるようにしたい」と本気で考えている。「いらっしゃいませー」。人通りの消えた深夜3時。東京都心のコンビニに入ると、店の奥から声がかかった。バイトをしていたのはウズベキスタン出身のベクさん(22)。都内の日本語学校に通う留学生だ。週3回、夜10時から休憩1時間をはさんで朝8時まで。学費や家賃は月約13万円のバイト代でまかなう。「東京は時給が高い。だから来た。親にはお金を出してもらえないから」。日本語学校や専門学校で学ぶ留学生の多くは、法定の週28時間以内でバイトをしながら学校に通う。都市部では「コンビニ、居酒屋、弁当工場、清掃」が4大職種といわれる。いまコンビニ大手3社だけで、外国人店員は約5万2千人。各社の全従業員の5~8%にあたる。「東京都心に限ると3割を超える」(ローソン)という。
     ◇
 働く現場で「外国人頼み」が強まる。2017年に働き手のうち外国人が占める割合は09年の約2倍になった。「メイド・イン・ジャパン」も例外ではない。都会も地方も、本来「労働者」ではない実習生と留学生が支える。そこにいびつな構図も生まれる。

*1-2:https://digital.asahi.com/articles/DA3S13734428.html (朝日新聞 2018年10月22日) (多民社会)「最後の砦」、法令違反後絶たず
 全国一のホタテ産地である北海道。10月中旬、オホーツク海沿岸の興部(おこっぺ)町・沙留(さるる)漁協では、水揚げが終盤を迎えていた。漁協の加工場で働く45人のうち18人がベトナム人の技能実習生。「地元の人は高齢化で減る一方だ。もう実習生なしでは回らない」と鈴木精一参事は話す。オホーツク一帯では、実習生200人以上が働く自治体もある。ホタテの殻をむき、冷凍やボイルにしている加工場もある。「その取材はダメだ」。実習生頼みの実態を聞こうと地元業者の組合を訪ねると、即座に断られた。ちょうどこの地域に、実習生を受け入れた企業を監督する「外国人技能実習機構」が立ち入り検査に入っていた。相次ぐ抜き打ち検査に、地元の人たちは神経をとがらせる。水産加工で国が認める実習の職種は「加熱加工」などに限定されている。冷凍やボイルが「実習の対象になるかは灰色」(関係者)だ。「実習生頼み」が強まるなか、法令違反の一線を越える例も後を絶たない。北海道に次ぐホタテ出荷量を誇る青森県。県内のある水産会社では、作業員約120人のうち約30人が中国人実習生だ。同社は今年2月、実習生に最大100時間以上の残業をさせたとして労働基準監督署から書類送検された。この問題で、法令を守る態勢の再チェックを受けるため、別の実習生10人を今春受け入れる計画は4カ月延ばされた。この会社の幹部は「地元で募集をかけても日本人は高齢者しかきてくれない」。人手不足に直面する産業にとって、実習生は「最後の砦(とりで)」だ。
■賃金差「田舎は捨てられる」
 鹿児島・沖永良部島。9月中旬、サトウキビ畑の隣ではソリダゴが小さな黄色い花をつけていた。ベトナム人実習生数人がお彼岸用に仕分けをしていた。約1万4千人の島に、100人以上のベトナム人実習生がいるという。取材に応じてくれた農家の男性がつぶやいた。「実習生たちとも、こうしておしゃべりしているけど、いつも『明日は逃げるかもしれない』と思っている」。昨日まで仕事していた実習生が突然、飛行機や船で出ていく。この農家では、15年間で受け入れた実習生約100人のうち、10人以上が失踪した。多くはSNSなどで都市部にいる友人の情報に接し、逃げようと決めるようだ。どこでも実習生は最低賃金ぎりぎりで働いている。鹿児島と東京の最低賃金には200円以上の開きがある。実習生の受け入れには、往復の飛行機代や研修費などで数十万円かかる。失踪されれば、年間の作業計画も立ちいかなくなる。ただ実習生に逃げられた農家の男性は、外国から来た若者たちへの同情も示す。「そりゃ、あの子たちもお金のいいところに行きたいだろう」。実習生には原則、勤め先を変わる自由がない。だからこそ離島にいてくれるのだとも思う。「移動が自由にできるようになったら、誰も島に残らないよね。田舎は見捨てられる」
■建設業、依存高める
 働き手のうち、外国人が占める割合(依存度)は2017年に「51人に1人」に達し、リーマン・ショック後の09年と比べて2・2倍になった。三菱UFJリサーチ&コンサルティングの加藤真研究員が、政府統計を元に外国人への依存度を分析した。依存度が高いのは、宿泊・飲食サービス業で25人に1人、製造業でも27人に1人が外国人だ。なかでも食料品製造業では13人に1人を外国人が占めている。ここ数年で依存度が伸びているのは、東京五輪に向けて特需に沸く建設業だ。90人に1人を外国人が占め、依存度は09年の5倍に増えた。農林業(74人に1人)も3・6倍に増えた。依存度の増加率を都道府県別にみると、沖縄が3・84倍で最大。次いで福岡、鹿児島、北海道と続く。
■<解説>安価な「労働力」に頼る危うさ
 農業も漁業も町工場もコンビニも、日本人だけでは支えられなくなった。政府は新たな在留資格を設ける方針だ。だが外国人労働者の受け入れで一時的に人手不足が解消されても、日本が抱える問題を先送りするだけに過ぎない。最低賃金すれすれで働く外国人を優先し、派遣社員を切る企業も多くなるだろう。仕事を奪われる日本人の側と対立が起きても不思議ではない。神戸大の斉藤善久准教授(労働法)は「低賃金の労働力に頼る日本の産業構造は強まり、生活できない労働者が増える悪循環に陥る」と指摘する。超高齢化が進むなか、外国人が現場を支えたとしても、いずれは母国に帰る。永住権を認めなければ、やがて行き詰まるだろう。では社会保障や日本語教育にかかるコストを、誰がどう負担するのか。国が共生策を示さない現状では、移民に向き合う本質的な議論は封印されたままだ。安価な「労働力」の輸入が生む富は、雇う側に集まるとされる。地方で起きる技能実習生の失踪は、この国の地域格差が背景にある。社会の亀裂を防ぎ、低賃金に甘える産業構造を変えるためにも最低賃金自体の底上げを急ぐべきだ。持続可能性のある「多民社会」の未来をみすえなければ、先には進めない。

*1-3:https://www.agrinews.co.jp/p45553.html (日本農業新聞 2018年10月22日) うま味凝縮 手間要らず 真空パックで温野菜 働く女性支えたい 長崎県雲仙市の会社
 長崎県雲仙市で農産物の生産と加工を手掛ける(株)マルニは、温野菜を真空パックした「ゆで野菜」を時短食材として女性向けに売り込んでいる。主婦の視点で同社の女性農業者が開発した。国産のジャガイモ、ニンジンなどを皮ごとゆでてうま味を凝縮。パックを開ければそのまま使え、調理の下準備が要らない。同社は単身者や働く女性をターゲットに「キャリアウーマン応援野菜」と名付け、販路拡大を進める。使う野菜は、地元雲仙産がメイン。自分の畑以外にも地域の農家5、6戸と連携し、常に安全で安心できる野菜を調達する。豊作時には市場価格が暴落する露地野菜を一定価格で買い取るため、農家側の利点もある。味付けをしていないので、カレーやサラダなど普段の食事の他、そのままつぶせば離乳食にも使える。野菜の味や香り、栄養を残すため、あえて皮付きで加工した。商品は1、2人前の真空パックと使い切りサイズ。未開封なら冷蔵庫で60日間保存できる。ダイコンやジャガイモなど6種類の野菜とスイーツ付きのセットは3800円(税別)。同社のホームページから購入できる。開発した西田真由美さん(56)は農家であり主婦なだけに、女性の忙しさを痛感する。「調理で短縮した時間で本を読んだり子どもと遊んだり、自分の好きなことに使ってほしい」と強調する。

*1-4:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20181018&ng=DGKKZO36619070Y8A011C1EA1000 (日経新聞 2018年10月18日)外国人受け入れ拡大の制度設計を急げ
 政府は外国人労働者の受け入れ拡大に向け、臨時国会に提出する入国管理法改正案などの骨子を示した。新たな在留資格を設け、原則として認めてこなかった単純労働にも門戸を開く。外国人受け入れ政策の転換となる。心配なのは新制度を円滑にスタートできるかどうかだ。新しい在留資格を取得するための能力基準は、まだはっきりしていない。政府は来春の新資格創設をめざしており、時間的余裕は少ない。制度の中身の詰めを急ぐべきだ。一定の日本語力や技能を身につけていれば得られる「特定技能1号」と、より高い能力を条件とした「特定技能2号」の2つの在留資格が新設される。在留期間は1号が最長5年で、熟練者を想定した2号は定期的な審査を経て長期の滞在が可能になる。介護、農業、建設など、多様な分野で人手不足が深刻になっている。日本の成長力の底上げには、その緩和が不可欠だ。本格的な外国人材受け入れへと政府がカジを切ったことは妥当だ。求められるのは在留資格を付与するか否か判定する際、外国人の納得を得られるようにすることだ。透明性の高い制度が、働く場として外国人材に日本を選んでもらうため欠かせない。そのためには新しい在留資格を取得するための日本語能力と技能の試験を整え、合格基準を明確にしなくてはならない。日本語能力の試験は国際交流基金などによるテストが普及しているが、読む力と聞く力の確認に偏っていると指摘される。会話力などをみる民間のテストも取り入れて日本語試験を整備すべきだ。仕事の内容に応じて合格基準を弾力的に定めてもいいだろう。聞く力と話す力が一定程度あれば、就業にあまり支障がない場合も考えられる。技能のレベルをみる試験はもちろん、業種や職種別にきめ細かくつくる必要がある。子弟の就学や医療面の支援など、外国人が生活するための環境整備も急がなければならない。今回、賃金不払いなどの問題が多い技能実習制度は温存され、その見直しは課題として残る。外国人を雇用する企業への監督を強める仕組みが要るだろう。生産年齢人口が減る国は日本だけではなく、外国人材の確保に動く国は多い。外国人が安心して働け、暮らせる環境をつくれるか、日本の本気度が問われる。

<水産業の事例>
*2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20181017&ng=DGKKZO36544400W8A011C1KE8000 (日経新聞 2018年10月17日) 水産資源どう守る(上)乱獲・乱売の発想脱却を、漁獲規制と価値向上急げ 勝川俊雄・東京海洋大学准教授(1972年生まれ。東京大博士(農学)。専門は水産資源学)
<ポイント>
○主要漁業国で日本だけ生産大幅減の予測
○食糧難時代の漁業の仕組みが今なお残る
○消費者に価値伝えるマーケティング必須
 クロマグロやウナギ、サンマなど、我々の食に欠かすことができない水産物が不漁というニュースを頻繁に耳にするようになった。「不漁」という言葉からは、たまたまとれなかったという印象を受けるが、そうではない。日本の漁獲量は何十年も直線的に減少しており、今のまま減り続ければ2050年に漁獲がゼロになるペースである。水産研究・教育機構の調査では、日本沿岸の水産資源の多くは低水準である。漁獲しようにも日本近海には魚がいないのである。1989年に38万人いた漁業者は、17年には15万人まで減少し、その多くは後継者のいない高齢漁業者が占めている。日本だけを見ていると、漁業という産業に未来はないようだが、世界では漁業は成長産業である。国連食糧農業機関(FAO)が主要漁業国の生産量の将来予測をしたところ、先進国・途上国を含めて、養殖を中心に生産が増加するとの予測が得られている。大幅に減らしているのは日本のみである(図参照)。日本の漁獲量の減少要因として、地球温暖化や外国船の影響が引き合いに出されることが多い。世界的には生産は増えているのだから、地球温暖化で日本だけ魚が減るというのは非論理的である。また、沿岸域や瀬戸内海でも水産資源が減少していることから、外国船が問題の本質ではないことがわかる。80年代まで世界一の水揚げを誇った日本の水産業が、なぜ衰退しているのか。歴史を振り返りながら、構造的な問題について論じてみよう。日本の現在の漁業の仕組みができたのは戦後の食糧難の時代である。当時は国家の主権が及ぶのは陸から5キロメートルほどの領海に限られ、その外では好きなだけ魚をとれた。日本は不足する動物性タンパク質を供給するために、官民が協力して積極的に海外漁場を開発した。近場の魚が減れば、船を大きくしてより遠くの漁場へと向かった。流通・販売の事情も全く異なっていた。肉や乳製品は高級品で、日常の動物性タンパク質は水産物しかなかった。高度成長期を通じて人口は増え、水産物は飛ぶように売れた。コールドチェーン(低温輸送網)が未整備で、常温輸送が当然だった。水産物をとにかく消費地まで早く届けることが求められた。戦後の日本漁業が場当たり的に魚をとれるだけとって、市場に並べておくスタイルでスタートしたのは、それが合理的だったからである。そして順調に漁場を拡大し、漁獲量は世界一になり、高い利益を上げた。日本の漁業が輝いていた時代である。その後、漁業を取り巻く状況は大きく変化した。80年前後に各国が200カイリの排他的経済水域(EEZ)を設定し、日本漁船は海外の漁場から次々に追い出された。また途上国の漁船にコストで太刀打ちできなくなり、公海漁場でも勢力を縮小させた。消費構造にも変化があった。経済的に豊かになり、肉や乳製品などが庶民の手の届くようになった。バブル期前後は日本の魚価が世界一高く、海外から水産物が押し寄せた。日本人の水産物の消費量は増加し、01年に1日当たり110グラムに達した。その後は日本経済の停滞と世界的な魚価の高騰で、輸入は減少に転じた。国産魚も輸入魚も減少したために、消費量は16年に67グラムまで減った。国産魚の減少を放置すれば、食卓から水産物が減っていくだろう。漁業の衰退を食い止めるために何をしたらよいだろうか。今後、他国のEEZや公海で漁獲を増やす余地はない。自国のEEZから安定的な水揚げを得る漁業に切り替える必要がある。そのためには次世代を産む親魚を十分に確保できるように、漁獲量を制限しなくてはならない。その上で利益を伸ばすには、水産物の価値を高める必要がある。鮮度処理や加工による付加価値づけや、消費者に価値を伝えるためのマーケティングが求められている。EEZ時代の漁業のあるべき姿は、十分な親魚を残し、とった魚を高く売ることである。そのためにやるべきことは、資源管理と付加価値づけの2点である。日本以外の先進国では、ほぼ全ての商業漁獲対象の魚種に漁獲枠が導入されている。例えば米国は約500魚種、ニュージーランドは約100魚種に漁獲枠を設定している。ノルウェーのように国を挙げて海外市場の開拓やマーケティングに努めている国もある。80年代には、どこの国の漁業も現在の日本と大差のない状態であった。40年かけて資源管理と付加価値づけに取り組んで、漁業を成長産業に転換したのである。日本で国が漁獲枠を設定しているのは8魚種にすぎない。ホッケ、ブリ、カツオ、ヒラメなどの主要魚種もとりたい放題だ。その上、水産資源の持続性を無視して、過剰な漁獲枠が設定されているケースも多い。例えば資源の減少が懸念されるサンマの場合、昨年の漁獲量は7万6千トン、一昨年の11万トンに対して、漁獲枠は年26万4千トンであった。漁獲量の2倍以上の漁獲枠が設定されているのだから、漁獲規制として機能していないことは明白である。日本でも漁獲を規制すれば、短期的に水産資源が回復する可能性が高い。福島県では11年以降、原発事故の影響により、試験操業以外の漁獲が停止した。福島が主漁場だったヒラメの年間の漁獲率(漁獲量を資源量で割った値)は、震災前の6割から、震災後は1割へと減少した。その結果、ヒラメの資源量は震災前の8倍に増えている。漁獲率を下げたことで、魚が増えて、震災前よりも多くとれるようになった。底引き網を引く時間も少なくなり、燃油のコストが軽減された。そのうえ単価の高い大型のヒラメが安定して漁獲できるようになり、収益性は劇的に改善された。しかし、福島県海域で漁獲が全面再開されて、震災前のように全力で魚をとれば、数年で震災前の水準に戻るだろう。漁業が継続的に利益を生む状態を維持するには、漁獲規制が不可欠なのだ。漁獲規制に加えて、水産流通のあり方も見直す必要がある。安心安全を担保するためにトレーサビリティー(生産流通履歴)を確立し、バリューチェーン(価値の連鎖)を構築して、水産物の価値を消費者に伝えられるようにしなくてはならない。日本のEEZの広さは世界第6位で、その中に世界屈指の好漁場がある。資源管理さえすれば、安定して高い漁獲を上げることができる。また、世界に誇る魚食文化や加工技術があるので、魚の付加価値づけもできるはずである。日本の漁業は高い潜在力を持っているのだが、それが全く発揮できない漁業の現状がある。これを改めない限り、日本漁業に未来はない。日本でも、政治主導で漁業を改革する動きが活発化しつつある。今年1月の安倍晋三首相の施政方針演説では、漁獲量による資源管理を導入し、漁業の生産性を向上するという方針が示された。その後の規制改革推進会議では、漁獲規制による資源回復、水産物流通におけるトレーサビリティーの確保、水産物の付加価値を高める取り組みなどが、具体的に議論されている。他国の成功から謙虚に学び、日本にあったやり方で資源管理と付加価値づけに取り組んでいけば、日本の水産業が長いトンネルを抜ける日はそう遠くないだろう。

<イスラム文化と外国人労働者>
*3-1:https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2016/09/isis-80.php (ニューズウィーク日本版ウェブ 2016年9月8日) イスラム女性に襲われISISがブルカを禁止する皮肉
 ISIS(自称「イスラム国」、別名ISIL)の支配地域に暮らすイスラム教徒の女性にとって、ドレスコードは一つしかない。全身を覆うブルカだ。公共の場でブルカを着用しなければ見せしめに罰せられ、最悪の場合、処刑される。だが今後は、逆にブルカや顔を隠すベールを禁止せざるを得なくなるかもしれない。イラン国営の衛星放送「アルアラム」が伝えた。最近はフランスで、イスラム教徒の女性が着る肌の露出を控えた水着「ブルキニ」着用の是非をめぐる論争が過熱しているが、今度はISISが、イスラム女性が顔を隠すベールの着用を禁止しようとしているという。きっかけは、ブルカがISISに対するテロ攻撃に一役買う事件が起きたことだ。イラクの英語ネットメディア「イラキ・ニュース」の報道によると、事件は9月5日にイラク北部モスルの南方にあるシャルカットの検問所で発生した。ベールで顔全体を覆った一人の女が、隠し持っていたピストルでISISの戦闘員2人を撃ち殺したのだ。ブルカの着用は、厳格なイスラム国家の樹立を目指すISISにとっては絶対のはず。それが治安上の理由で例外を認めなければならないとは実に皮肉だ。今後も町の中ではブルカの着用が強制されるが、モスルにある治安施設や軍の検問所では着用が禁止される。モスルは2014年6月にISISが制圧したが、イラク軍や米軍主導の有志連合による空爆で劣勢に立たされている。
●ヨーロッパのテロ対策
 治安維持の問題としてブルカなどの着用を禁止する議論は、もともとヨーロッパの国々が始めたことだ。ヨーロッパで増え続けるイスラム教徒や、ISISに感化されたローンウルフ(一匹狼)によるテロが相次いだことに、各国政府が警戒を強めているからだ。国として顔の全体を隠すベールの着用を禁止したのはフランスとベルギーだけだが、イタリアやスイスでも各自治体の判断で禁止できる。移民に寛容な政策をとってきたドイツでも、相次ぐテロを背景に、ブルカ着用の禁止を支持する世論が高まりつつある。最近ではやはりフランスで、肌を露出できないイスラム女性のための水着ブルキニを禁止する動きが広がって、人種差別と批判された。ISISの支配下で女性がブルカ着用の義務から完全にブルカ着用を全面的に免除するよう方針転換するとは思えない。だが8月上旬にISISから解放されたばかりのシリア北部マンビジュの様子を伝えた映像や写真から、ISIS撤退後のモスルの光景は想像がつく。女性たちは堂々と顔を出して解放を喜んでいた。

*3-2:https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2016/08/post-5721.php (ニューズウィーク日本版ウェブ 2016年8月26日) フランス警官、イスラム女性にブルキニを「脱げ」
 フランス・ニースの海岸で警官がイスラム女性を取り囲み、服を脱がせる写真が話題になっている。今フランスでは、顔と手足以外の全身を覆うイスラム風の水着ブルキニの着用を禁止する自治体が相次ぎ、20カ所以上にのぼっている。ニースもそうした海岸の一つだ。だが、何も悪いことをしていない女性が武装した警官に命じられて服を脱ぐ光景は、まさにブルキニ禁止の理不尽さを象徴する光景。ロンドンのフランス大使館前ではブルキニ禁止に抗議するデモも行われた。そもそもなぜブルキニがだめなのか? フランスが既に禁じているイスラム女性のスカーフ、ブルカやニカブと違い、ブルキニは顔を覆わない。ブルキニがだめならダイビングスーツもだめになる。尼僧はどうなんだ、という声もある。ブルキニは、公の場で肌や髪を出せないイスラム女性のために考え出された水着に過ぎない。「フランスの価値観に反する」(バルス首相)、「公共の秩序を乱す」(ニース市長)などと理屈をいくら言われても、イスラム差別の口実ではないか、と思う。警官の写真で、それが確信に変わった人も多かったのではないか。

*3-3:http://digital.asahi.com/articles/ASJ913W06J91UHBI00K.html?iref=com_alist_8_02(朝日新聞2016年9月2日)「ブルキニは女性を解放」 デザイナーが込めた思いとは
 フランスの自治体が禁止して議論を呼んだイスラム教徒の女性向け水着「ブルキニ」。その「生みの親」であるオーストラリア人女性のアヒーダ・ザネッティさん(49)が朝日新聞の取材に応じ、「宗教を誇示するものではなく、女性を解放するものだ」と訴えた。ザネッティさんは、シドニー郊外でイスラム女性向けブティックを営む。レバノン生まれで2歳で豪州へ移住したイスラム教徒だ。きっかけは約13年前のバスケットボールに似たネットボールの試合だった。小学生のめいが長ズボンにハイネックのシャツ、頭にスカーフの姿で、暑さに真っ赤な顔でプレーしていたのを見て「信仰と豪州のライフスタイルが両立する服をつくろう」と決心した。フード付きのシャツにするなどして髪や体の線を見せずに機能的なユニホームをつくり、次に取り組んだのが水着だった。イスラム女性は「普段と同じ服で海へ入ってぬれるか、浜辺で足をひたすくらいしかできない」状況だったからだ。イスラム女性服のブルカと水着のビキニから「ブルキニ」と名付け、商標登録。9千~1万5千円程度で2004年からオンライン販売を始め、08年からこれまでに世界中で約70万枚を売り上げたという。フランスの複数の自治体が「宗教を誇示し、治安を乱す」などの理由で禁止したことには「悲しく困惑している」と話す。購入者の半分以上は非イスラム教徒で、皮膚がんや日焼けが心配な人や体の線を出したくない女性にも需要が高く、「イスラム女性を解放したいと工夫し、非イスラム教徒にも支持されている」と訴えた。豪カトリック大・宗教・政治・社会研究所のジョシュア・ルース所長は「1970年代に白豪主義に終止符を打ち、政教分離や世俗的な意識が強い豪州らしい発明品だ。豪州は、政府の戦略的な移民受け入れや強い社会福祉ネットで多文化主義に成功してきたが、直近の選挙では極右政党が躍進するなど懸念材料もある。仏のようにならないためには政治に意志と指導力が必要だ」と話す。

<就業者数が増えているのに少子化が問題?>
PS(2018年10月25日追加):*4に「①医療・介護などの歳出膨張をどう抑え、2019年10月の消費税率10%に引き上げ後の財政健全化の具体策を明らかにしてもらいたい」「②政府は外国人労働者の受入拡大に向けた入国管理法改正案を今国会に提出する」等が記載されている。
 しかし、①の医療・介護などの歳出膨張を抑える方法は、i)高齢者を就業させれば健康を維持できる期間が延び、医療・介護の支え手にもなること ii)再生医療や免疫療法等で病気を治せば、医療費・介護費を減らせること iii)医療保険で他国より高い値段で薬品購入するのをやめさせること iv)女性や外国人労働者の就業が増えれば、医療保険・介護保険の支え手が増えること v)役所もぼーとしていないで税外収入を得ればよいこと などがあり、現状維持を前提として「財政健全化=消費税増税」などと国民負担の増加のみを考えている点が浅い。
 つまり、財政健全化には、増税以外にまず無駄な歳出を徹底してなくすことが必要で、国に国際基準に基づいた公会計制度を導入するのがその第一歩になる。なお、保育所の充実や教育・保育の無償化は、少子化対策よりも質の高い人材の割合を増やすために必要だと考える。

*4:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20181025&ng=DGKKZO36895030V21C18A0EA1000 (日経新聞 2018年10月25日) 少子高齢化を克服する具体策が聞きたい
 自民党総裁選で勝利した安倍晋三首相は、あと3年の任期でいったい何を成し遂げるのか――。24日に召集された臨時国会の最大の焦点はそこにある。首相は衆参両院本会議の所信表明演説で「激動する世界を、そのど真ん中でリードする日本を創り上げる。次の3年間、私はその先頭に立つ決意だ」と強調した。重点政策に掲げたのは、国土強靱(きょうじん)化、地方創生、外交・安全保障の3つの柱だ。今国会で政府は西日本豪雨や北海道地震に対応する2018年度補正予算案の早期成立をめざす。迅速な復旧作業は当然だが、公共事業費のバラマキを避けるには災害に強い都市の将来像とセットで議論していく必要がある。地方創生では「全世代型社会保障」「生涯現役の雇用制度」「即戦力となる外国人材の受け入れ」に言及した。首相は「少子高齢化という我が国最大のピンチもまた、チャンスに変えることができるはずだ」と訴えた。安倍政権がめざす社会保障改革の中身はまだ不明確だ。医療や介護などの歳出膨張をどう抑え、19年10月に消費税率を10%に引き上げた後に財政健全化にいかに道筋をつけるか。具体策を早く明らかにしてもらいたい。政府は外国人労働者の受け入れ拡大に向けた入国管理法改正案を今国会に提出する。野党は就労を目的とした新たな在留資格について「事実上の移民政策だ」と指摘し、対決姿勢を強めている。介護、農業、建設分野などの人手不足を緩和し、成長力を底上げしていく方向性は正しい。同時に来日した外国人の生活を安定させて治安の悪化を避ける環境整備などについて、与野党で議論をもっと深める必要がある。首相は憲法改正に関して「政党が具体的な改正案を示すことで、国民の理解を深める努力を重ねていく」と強調した。自民党は憲法審査会に9条への自衛隊明記を含む改憲4項目の考え方を示す方針だ。幅広い合意形成には、他党の意見に耳を傾ける謙虚な姿勢が大事だろう。2日に発足した第4次安倍改造内閣では、新閣僚らの「政治とカネ」をめぐる疑惑が相次いで報じられた。野党は森友、加計両学園問題も引き続き追及していく構えだ。政府・与党は政治不信を招かないように、事実関係を国会で丁寧に説明していく責任がある。

<外国人労働者の差別はよくないこと>
PS(2018年10月26日追加):*5-1のように、自民党は、法務部会で治安悪化や環境整備の遅れに対する懸念の声が相次いで、「①期限なく家族の帯同を認めるのは話が違う」「②まず日本人の賃金を上げるべき」「③長期的な問題をしっかり制度設計すべき」「④外国人の権利について議論を深めることが大事」「⑤外国人を一元的な番号で管理すべき」などの反対意見により、外国人労働者受入拡大の新たな在留資格創設の部会了承を29日以降に見送るそうだ。
 しかし、②の気持ちはわかるものの、日本は人材鎖国をして産業を海外に追い出してきたし、①の「家族の帯同を認めない」は、*5-3のようなトランプ大統領批判をしながら言う人は自己矛盾だ。また、野党の移民・難民受け入れ反対も、*5-2の日本国憲法前文の中の「いずれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならない」に反する。さらに、技能実習生の労働形態には、18条の「何人も、いかなる奴隷的拘束も受けない。又、その意に反する苦役に服させられない」に反する部分がある。そのため、③④は尤もだが、素早く手を打つ必要があるため、具体的な問題は走りながら考えた方が効果的だと思う。また、⑤については、メディアの報道と異なり、外国人の犯罪率が日本人よりも高いという統計はないため、差別はよくない。
 そして、イスラム教の問題も、入国時に日本国憲法をしっかり教えておけば、20条に「何人も信教は自由だが、宗教上の行為、祝典、儀式又は行事に参加することを強制されない」ということが明記されているので、解決できるのではないかと考える。従って、私は、日本国憲法の内容は先進的で素晴らしいと思う。

*5-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20181026&ng=DGKKZO36923210V21C18A0PP8000 (日経新聞 2018年10月26日) 外国人の受け入れ拡大 自民、法案了承先送り 法務部会
 自民党は外国人労働者の受け入れ拡大に向けた新たな在留資格を創設する出入国管理法改正案の部会了承を29日以降に見送る。当初は26日の了承を目指していたが、法案を審議する法務部会で治安悪化や環境整備の遅れに対する懸念の声が相次いだため慎重に議論することとした。岸田文雄政調会長や長谷川岳法務部会長が25日、党本部で協議して先送りを決めた。部会での了承を急げば自民党を支持する保守層から反発が出かねないと判断した。来年夏の参院選をにらんで丁寧な審議を強調する。協議には小泉進次郎厚生労働部会長も出席し、厚労部会でも同法案を議論することを確認した。法務部会が24、25両日に開いた関係団体へのヒアリングでは、出席議員から在留資格の新設への賛否が交錯した。反対意見では「期限がなく家族の帯同を認めるというのは話が違う」「まずは日本人の賃金を上げるべきだ」などの意見が出た。「長期的な問題をしっかり制度設計するべきだ」「外国人の権利について議論を深めることが大事だ」「外国人を一元的な番号で管理すべきだ」などの声もあがった。入管法改正案は国内の人手不足を解消するため(1)滞在期間が最長5年で家族の帯同を認めない(2)熟練した技能を証明すれば滞在期間の更新と家族の帯同を認める――との2種類の在留資格を新設する内容だ。臨時国会で同法案を成立させ、来年4月から新制度の運用を始める方針だ。公明党も25日の会合で、入管法改正案に関して議論した。法案の了承は来週以降になる。野党は同法案を「移民法案」と批判しており、今国会で最大の対決法案になる見込みだ。

*5-2:http://www.houko.com/00/01/S21/000.HTM (日本国憲法 抜粋) 
前文
 日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し、われらとわれらの子孫のために、諸国民との協和による成果と、わが国全土にわたつて自由のもたらす恵沢を確保し、政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意し、ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する。そもそも国政は、国民の厳粛な信託によるものてあつて、その権威は国民に由来し、その権力は国民の代表者がこれを行使し、その福利は国民がこれを享受する。これは人類普遍の原理であり、この憲法は、かかる原理に基くものである。われらは、これに反する一切の憲法、法令及び詔勅を排除する。日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであつて、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めてゐる国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ。われらは、全世界の国民が、等しく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する。われらは、いづれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならないのであつて、政治道徳の法則は、普遍的なものであり、この法則に従ふことは、自国の主権を維持し、他国と対等関係に立たうとする各国の責務であると信ずる。日本国民は、国家の名誉にかけ、全力をあげてこの崇高な理想と目的を達成することを誓ふ。
第18条 何人も、いかなる奴隷的拘束も受けない。又、犯罪に因る処罰の場合を除いては、
      その意に反する苦役に服させられない。
第20条 信教の自由は、何人に対してもこれを保障する。いかなる宗教団体も、国から
      特権を受け、又は政治上の権力を行使してはならない。
    2 何人も、宗教上の行為、祝典、儀式又は行事に参加することを強制されない。
    3 国及びその機関は、宗教教育その他いかなる宗教的活動もしてはならない。

*5-3:https://www.jiji.com/jc/article?k=2018062001291&g=int (時事 2018/06/20) 英首相、米移民政策を批判=トランプ氏に問題提起へ
 メイ英首相は20日、議会で、不法移民の親子を引き離して収容するトランプ米政権の政策に関し、「子供がおりのような場所に入れられている画像に深く心をかき乱される。これは間違っており、同意しない。英国の(移民に対する)アプローチではない」と批判した。トランプ大統領は来月訪英する予定。メイ首相は「米国に不同意である時はそう伝える」と述べ、首脳会談でこの問題を取り上げる考えを示した。トランプ氏の訪問を拒否すべきだという声も上がっているが、首相は「大統領と議論するのは正しいことだ」と一蹴した。

<原発に経済合理性はないこと>
PS(2018年10月28日追加): *6-1のように、伊方3号機が再稼働したが、原発は温排水で水産業に悪影響を与えているだけでなく、*6-2のように、原発事故後、放射性物質の検査項目について合意していないため日本産食品に厳しい輸入規制を課したり、福島・宮城・茨城など10都県産の食品全部を輸入停止にしたりしている国は多い。日本国民も放射性物資の検査基準・検査項目・検査方法に合意はしていないが、これらの食品は国内では販売されており、原発は多額の被害を出して国民に迷惑をかけながら、保障もしていないのが実情なのである。
 一方、*6-3のように、北海道地震に伴う全道停電の間も、太陽光パネルを設置している家庭の多くは運転モードを切り替えることで電気を使えたため、災害時非常用電源としても太陽光発電の有効性が注目された。しかし、*6-4のように、九電は、再度、再エネ事業者に出力制御実施を要請し、その理由を、相変わらず「電力の需給バランスを整えることで大規模停電を防ぐため」と説明している。
 ただ、*6-5のように、太陽光など再エネ発電による電力価格は現在は高すぎるため、自家消費した残りの電力を販売するように導くため、*6-6の中国電力の単価を参考にすれば、再エネ電力の販売単価を高圧TOUAの最安値である9円68銭/kWh以下(例えば5~9円/kWh)に設定すれば、経済合理性から再エネを利用する企業が増える。そうすると、*6-7のような日本一の養殖ノリ生産地でも、遠浅の海を利用して支柱に風力発電機をとりつけてノリ養殖を行い、ハイブリッドで稼ぐことが可能になりそうだ。

  
2018.10.27東京新聞    有明海の海苔養殖(種付け時、成長後、製品完成)

(図の説明:有明海は日本一のノリの生産地で、ブランド化された右の写真の「有明海一番」は特に厳選された製品だが、ブランド品でなくても香りが良くて美味しいことは間違いなく、養殖の成功例だ。しかし、水産業者の所得向上には、風力発電を設置して水産業とハイブリッドで稼ぎ、燃料は輸入重油から再エネ由来・自家発電の電力や水素に変更するのがよいと思う)

*6-1:http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2018102701001684.html (東京新聞 2018年10月27日) 伊方3号機再稼働、臨界へ 愛媛、30日に発送電開始
 四国電力は27日未明、伊方原発3号機(愛媛県伊方町、出力89万キロワット)を再稼働させ、原子炉内で核分裂反応が安定的に持続する「臨界」に向け作業を進めた。順調に進めば臨界に達するのは27日夜。30日に発電と送電を始め、11月28日に営業運転に移る見通し。稼働中の原発は関西電力高浜4号機、九州電力川内1、2号機など全国で計8基となった。27日午前0時半、燃料の核分裂を抑えていた制御棒を引き抜き、原子炉を起動させた。臨界に達した後は、蒸気でタービンを回して発送電を開始する。出力を徐々に上げて調整運転を続け、原子力規制委員会の最終検査を経て営業運転に移る。

*6-2:https://www.agrinews.co.jp/p45615.html (日本農業新聞 2018年10月27日) 原発事故で規制の日本食品 輸入緩和を検討 中国
 安倍晋三首相は26日、北京で開かれた日中首脳会談で、中国側が日本産食品に対する輸入規制の緩和を検討する考えを示したことを明らかにした。中国は、東京電力福島第1原子力発電所事故に伴い、10都県産の全ての食品の輸入を停止している。今後両政府間で調整し、規制緩和の対象となる品目など具体的な内容を詰めるため、どこまで緩和されるかは、不透明な状況だ。安倍首相は同日、李克強首相との会談後、「東日本大震災以来続いてきた日本産食品に対する輸入規制について、中国側から、科学的な評価に基づき緩和することを積極的に考える旨、表明があった」と述べた。今後の規制緩和を見据え「中国の皆さんに日本が誇るおいしい農産物をもっと堪能していただきたい。活発な貿易は日中両国民の絆をさらに深める」とも強調した。同国は2011年の原発事故後、日本産食品に厳しい輸入規制を設定。福島、宮城、茨城など10都県産の食品全てを輸入停止の対象にしている。10都県以外も野菜や果実、牛乳、茶葉などは放射性物資の検査項目については両国間で合意していないため、日本からの輸出はできていない。

*6-3:http://qbiz.jp/article/141836/1/ (西日本新聞 2018年10月4日) 住宅太陽光を非常電源に 北海道地震、全域停電で威力 国「自家消費の手順確認を」
 北海道地震に伴う全域停電(ブラックアウト)の間でも、太陽光パネルを設置している家庭の多くでは、運転モードを切り替えることで電気を使えていたことが分かり、災害時非常用電源として太陽光の有効性が注目されている。経済産業省資源エネルギー庁は「平時から各家庭で操作方法を確認し、非常時に使えるように備えてほしい」と呼びかけている。一般社団法人太陽光発電協会(東京)が地震後、道内の家庭用太陽光パネル設置者を対象に非常時の活用についてアンケートを実施。2日までに367世帯から回答があった。その結果、発電した電気を自家消費する「自立運転に切り替えた」としたのは、82%の302世帯。一方、活用しなかった世帯は「そもそも自立運転機能を知らなかった」などと答えたという。電力会社の配電線を介さずに太陽光の電気をそのまま使えるようにする自立運転にすると、日照時間帯に限って非常用コンセントで最大1500ワットが使用可能となる。冷蔵庫や携帯電話の充電にはまず支障がない発電量だ。アンケートには「テレビで情報を得たり、友人の携帯電話の充電もできたりした」といった声が寄せられたという。固定価格買い取り制度の効果もあり、家庭用太陽光パネルの設置は全国で増加。経産省によると、九州での導入件数は2017年末現在で約34万5千件に上っている。自立運転への切り替えは基本的に(1)ブレーカーを落とす(2)自立運転のスイッチを入れる−という手順だが、詳細はメーカーによって異なる。このため識者からは「非常用電源としての活用を広げていくためには、国が手順の統一化を検討するべきだ」との指摘が出ている。

*6-4:http://qbiz.jp/article/143132/1/ (西日本新聞 2018年10月27日) 九電28日に出力制御実施も
 九州電力は26日、太陽光発電など再生可能エネルギー事業者に一時的な稼働停止を求める「出力制御」を、28日に九州本土で実施する可能性があると発表した。天気予報などを基に27日夕までに有無を判断する。27日は実施を見送る。28日は好天で太陽光発電量の増加が見込まれる一方、過ごしやすい気温で冷暖房の使用が控えられ、休日で事業向け電力需要が減少すると見ている。出力制御は、電力の需要と供給のバランスを整えることで大規模停電を防ぐための措置。九州本土ではこれまで13日以降、週末に計4回実施している。

*6-5:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20181027&ng=DGKKZO36980350W8A021C1EA4000 (日経新聞 2018年10月27日) 太陽光買い取り、新価格の公表を 経産省、固定制度終了迫り
 太陽光発電を決まった価格で買い取る制度が2019年から順次終わるのを受け、経済産業省は大手電力に次の買い取りメニューを公表するよう求めた。買い取りが無償になるとの誤った情報で、自家発電用の蓄電池を売るといった悪質な商法が広がる恐れがあるためだ。混乱が広がるのを防ぐため、消費者庁と連携して対策を急ぐ。住宅の屋根などに置く太陽光パネルによる発電を長期間、固定した価格で買い取る制度は09年11月に始まった。使い切れず余った電気を電力会社に売る仕組みだ。10年目となる19年に初めて期限を迎える。対象は19年の11月と12月だけで53万件に達し、23年までに165万件となる見通しだ。制度が終わると、電力を自宅で使うか、新たに電力会社が示す価格で売ることになる。風力などとあわせて固定価格買い取り制度(FIT)となった12年度の価格は1キロワット時あたり42円だった。制度終了後の価格はほとんど公表されていない。経産省は電力会社に対し、期限が迫る家庭に早急に通知することと、大手は遅くとも19年6月末までに新たな価格を示すことを要請した。

*6-6:http://www.energia.co.jp/elec/b_menu/h_volt3/pricelist_sangyou.html (中国電力の事例 抜粋)
■高圧電力A:電力量料金は,昼夜間の時間帯を区分しない標準的なメニュー。
①基本料金     1,220円40銭 /kWh
②電力量料金
   ・夏季      14円62銭 /kWh
   ・その他季    13円37銭 /kWh
■高圧TOUA:•高圧電力Aに比べ,昼間は割高,夜間や休日等(※注)は割安な電力量料金を設定したメニューで、夜間・休日等に使用量の多いお客さまにおすすめ。
①基本料金     1,220円40銭 /kWh
②電力量料金
  ピーク時間     20円61銭 /kWh
  昼間時間
   ・夏季      17円13銭 /kWh
   ・その他季    15円97銭 /kWh
   ・夜間時間     9円68銭 /kWh

*6-7:http://qbiz.jp/article/143014/1/ (西日本新聞 2018年10月25日) 有明海で養殖ノリの種付け解禁 佐賀県、16年連続首位狙う
 有明海の秋の風物詩となっている養殖ノリの種付け作業が25日、福岡、佐賀、熊本の3県で解禁となり、穏やかな海面を鮮やかなノリ網が彩った。ノリの初摘みは11月下旬ごろを予定。佐賀県有明海漁協は今シーズンの売上高231億円、生産量18億5千万枚を目標に掲げ、いずれも16年連続となる日本一を目指す。佐賀市の広江漁港では25日未明から、漁船が長さ約18メートル、幅約1・5メートルの網を載せ、次々と出航。沖合に到着した漁師らは、ノリの種付きのカキ殻がぶらさがった網を、海中にささる支柱に取り付けて丁寧に広げ、作業を終えると、お神酒を手にノリの成長を祈った。同漁協の徳永重昭組合長は「今年は、台風で支柱が倒れるなどの影響もあったが間に合った。連続して日本一が取れるよう、頑張っていきたい」と話した。

<プラスチック革命>
PS(2018年10月29日追加):*7-2のように、マイクロプラスチックが世界の塩の9割で検出されたり、海洋生物に被害を与えたりして海洋汚染が深刻化しているという問題について、*7-1のように、プラスチック製のペットボトル・弁当容器・惣菜容器・ストロー・レジ袋などのプラスチック製品の有料化や使用禁止を言い立てているメディアは多い。しかし、これは「環境保護には不便に耐えることが必要」と主張しすぎて、環境保護を煙たい存在にしている。
 実際には、レジ袋やストロー等の使用量が多くても、使用後にゴミ箱に捨てて燃やしていれば何ら問題はなく、「ゴミ箱(透明な袋を設置する形式のものもある)を置かない」「ゴミ箱があってもそこに捨てない」など、(津波で流されたもの以外は)人のマナーの悪さが問題なのである。環境省の政策担当者や記者は、布製のマイバッグに、肉・魚・冷たいものなどを直接入れると水分が生じた際に濡れるので、買い物の度に洗濯しなければならないことをご存知か?
 それよりも、プラスチック製品は原油から作るため、化石燃料を使わなくなれば原料も減り、日本なら竹や木材から強い紙やプラスチックを作って代替することが必要になるが、紙であっても使い終わったらゴミ箱に捨てるのが当然のマナーだ。
 そして、ペットボトルその他のプラスチックは再利用できる資源だが、住民に不便がないようにしながら(ここが重要)、きちんと分別して再利用できるようにしている自治体は殆どなく、ゴミを中国やタイなどに輸出していたとは論外だ。そして、今度は、生活を不便にしたり、家事担当者の負担を重くしたりすることしか考えつかないのは、いくら何でも愚かすぎる。
 なお、プラスチックをリサイクルするには、回収して洗浄し原料の形にしなければならないが、向島などの国境離島ではない過疎の離島にリサイクル工場と住居を作り、技術を持たない難民を、*7-3の外国人労働者として受け入れる方法もある。そうすると、外国で発生したプラスチックごみの再処理までできるかも知れないが、受入人数の総量を規制するには必要人数を事前に把握しなければならないので、次世代の人口割合も変わらないようにするためには、「日本に来てから産める子どもの数は○人以下」とするなどの制限をつけた方がよいだろう。その理由は、日本人の出生率が1.5のところに出生率6の民族が入ると、次世代ではその民族の割合が日本人の4倍になるからで、これが米国が経験していることなのである。

*7-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20181029&ng=DGKKZO37050570Z21C18A0PE8000 (日経新聞社説 2018年10月29日) プラスチックごみ削減へルール明確化を
 環境省はスーパーやコンビニエンスストアのレジ袋の有料化を義務付ける方針だ。廃棄されて海を汚染し、魚介類を通して人体に悪影響を及ぼす懸念もあるためだ。ペットボトルなどを含め、プラスチックごみ全体の削減につながる実効性のある制度が必要だ。レジ袋の使用量は国内で年間450億枚と推定される。スーパーの多くは既に自主的に有料にし、レジ袋を辞退する買い物客が半数を超えるという報告もある。一方、コンビニでは有料化が進んでいない。少量の飲食物を買うのに適した、小さく折り畳めて持ち歩きやすいマイバッグの普及など、工夫の余地はある。消費者の意識改革も促したい。もっとも、レジ袋は国内で廃棄される使い捨てプラスチック製品の一部を占めるにすぎない。ペットボトルや弁当容器など多様な製品を減らすにはメーカーの協力が欠かせない。たとえば、使い勝手の良さから種類が増えているペットボトル飲料の削減は企業の商品戦略に直結する。使用済みペットボトルの回収・再利用も課題を抱える。市町村やメーカーが回収するが、3割程度は中国などに輸出されている。再利用の処理の過程で一部が海に流出し、汚染源となっている。中国は最近、廃プラスチックの輸入を禁じた。タイなども規制に動き、使用済みペットボトルは行き場がなくなりつつある。環境省は2030年までに、使い捨てプラスチック容器や包装、レジ袋などの排出量を25%減らす目標を掲げた。しかし、どの時点と比べるかなどは曖昧で、ルールの明確化が欠かせない。アジア諸国の削減も支援するというが、それには、ペットボトルなどの処分を国内で完結させるしくみが必要だ。再利用しきれないプラスチックを高温で焼却処分し、熱を回収して発電に使う最新設備などの普及を急ぎたい。植物原料のプラスチックなど代替品の活用も重要だ。過去に多数の技術開発計画を実施しながら国内で事業化が進んでいないのはなぜか。課題を洗い出し、利用を増やす方法を探るべきだ。1人当たりの使い捨てプラスチック使用量が世界最多の米国と2位の日本は、6月の主要7カ国(G7)首脳会議で削減目標を盛り込んだ「海洋プラスチック憲章」に署名しなかった。国際社会の厳しい視線も忘れてはならない。

*7-2:http://www.tokyo-np.co.jp/article/economics/list/201810/CK2018102802000126.html (東京新聞 2018年10月28日) 世界の塩9割で微小プラを検出 39種調査
 海洋汚染が深刻化している微小なマイクロプラスチックが世界各地の塩から見つかったと、韓国・仁川大と環境保護団体グリーンピースのチームが発表した。二十一の国・地域から集めた三十九種のうち九割から検出され、アジアの国で含有量が多い傾向にあった。日本の塩は調査対象外。これまで各地の水道水や魚介類などからの検出も報告されており、世界で食卓の微小プラスチック汚染が進んでいる恐れがある。チームは「健康と環境のため、企業は率先して使い捨てプラスチック製品の製造や使用を減らす努力をするべきだ」と強調した。大きさ五ミリ以下のマイクロプラスチックは海などに大量に存在し、表面に有害な化学物質を吸着する性質がある。人の健康への影響は詳しく分かっていないが、日本や欧州など八カ国の人の便からも見つかっている。チームは米国や中国、オーストラリア、ブラジルなど二十一の国・地域の海塩や岩塩、塩湖の塩計三十九種を調べ、三十六種からマイクロプラスチックを検出した。塩一キロ当たりに含まれる数はインドネシアの海塩が突出して多く、約一万三千六百個だった。台湾の海塩の約千七百個、中国の海塩の約七百個と続き、上位十種のうち九種をアジアが占めた。一方、台湾の海塩は複数調べており、種類によってはマイクロプラスチックがなかった。フランスの海塩と中国の岩塩も検出されなかった。

*7-3:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO3697876026102018EA3000/ (日経新聞 2018/10/27) 入管法改正案、異論相次ぐ 自民部会 29日に再協議
 自民党法務部会(長谷川岳部会長)は26日、外国人労働者受け入れ拡大に向け、新たな在留資格を創設する入国管理法の改正案をめぐって議論した。出席者からは移民政策や治安の懸念、受け入れ人数の規模の明示や総量規制の必要などを問う意見が出たため、法案の了承を29日以降に見送った。26日の部会では業種別の運用方針を党の関係部会で議論し、地域や現場の声を政府が反映することなどを求める決議案を示した。この日の議論では、更新や家族の帯同が可能な特定技能2号の資格をめぐり「事実上の移民政策ではないのか」「抜本的な改正を考えているなら通常国会でやるべきだ」といった指摘や、人手不足の解消という経済的な観点だけでなく「治安の悪化時には受け入れを停止できるよう法案に盛り込むべきだ」との慎重論も出た。法務省は外国人の受け入れ規模は「業種別の方針策定と合わせ、見込み数を含めて将来の展望を示す」と説明するにとどめた。出席者からは「人手不足を理由に法律を作る場合、人手不足を証明しなければいけない」との意見も出たほか「事業者は外国人を雇う際にきちんと社会保険に入る仕組みにしてほしい」「外国人の親族の医療費や年金受給などの問題も検討すべきだ」との指摘もあった。政府は11月2日にも改正案を閣議決定し、臨時国会に提出することをめざす。

<女性の視点を無視するとビジネスチャンスを失うこと>
PS(2018年11月1日追加):外国人旅行者が多くの化粧品を買っていくことを悪く言うメディアが多く、他国に対してどうも生意気だと思っていたが、対中輸出するため日用品大手が国内で増産投資を始めたのはよいことだ。何故なら、日本産の化粧品・ヘアカラー等々は、人種の近いアジア人に適しており、現在はインターネット販売もできるため販売可能性が高いからだ。
 そのような中、*8-2のように、吸い口を付けるだけで飲ませることができる乳児用液体ミルクは、女性からは「常温で飲める」「衛生的」という理由で国内製造を求める声が続出しているにもかかわらず、①開発費用が高い ②牛乳の消費拡大に繋がりそうにない などの理由で二の足を踏まれているそうだ。しかし、乳児用液体ミルクは、育児の省力化だけでなく、水道水のよくない地域では粉ミルクより衛生的で健康によい上、アジアも視野に入れれば、この要望はもっと高くなって牛乳の消費拡大に繋がると思われる。そして、この際は吸い口も消毒済みで使い捨てのものを付けておく必要があるのは言うまでもない。

*8-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20181101&ng=DGKKZO37207230R31C18A0MM8000 (日経新聞 2018年11月1日) 日用品、国産を対中輸出、資生堂など 高品質強みに増産投資
 日用品大手が相次ぎ国内で増産投資に踏み切る。資生堂は2022年までに約1400億円を投じる。コーセーやユニ・チャームも新工場を稼働させる。訪日観光人気や越境EC(電子商取引)=総合2面きょうのことば=の広がりを受け、日本で製品を増産し中国などアジアに輸出するためだ。海外で高まる「日本製」への需要を満たすため、内需型産業の代表格だった日用品が輸出の新たな柱に育ちつつある。資生堂は20年までに国内能力増強に約950億円を投じる計画だったが、22年までに約450億円を積み増す。口紅やアイシャドーの主力拠点である掛川工場(静岡県掛川市)で21年までに新生産棟を建設し、増産に備える。化粧水などが主力の大阪工場(大阪市)も閉鎖方針を撤回する。同社は訪日客需要などがけん引し、18年12月期に売上高、営業利益とも過去最高を更新する見通し。19年に栃木県大田原市、20年に大阪府茨木市に国内で36年ぶりに新工場を建設するが、供給不足が続くとみて投資を増やす。同社の世界生産能力は8割増になる。コーセーも傘下の高級化粧品メーカー、アルビオン(東京・中央)が20年までに約100億円を投じ、埼玉県熊谷市の工場に新生産棟を建てる。アルビオンはスキンケア商品が訪日中国人に人気で、18年3月期の売上高約680億円の2割は訪日客の消費とみられる。ユニ・チャームは19年春、福岡県で国内で26年ぶりの新工場を稼働させる。中国で人気が高い高級紙おむつを生産し、中国への輸出拠点とする。従来、日用品メーカーが海外進出する場合、現地に生産拠点や販売網を築く必要があった。ネット通販の普及で、アリババ集団などの越境ECの仕組みを使い、自ら資産を持たずに海外展開することが容易になった。17年の訪日客数は16年比19%増の約2869万人と5年連続で過去最高を更新。17年の訪日客による買い物の総額約1兆6400億円のうち、化粧品や日用品は人気が高く、約4割を占める。訪日客は帰国後もネット通販を通じて継続購入する傾向がある。「日本製」へのニーズが高まり、海外での消費が国内の投資や雇用を生む好循環をつくっている。これまで日本の輸出をけん引してきたのは自動車(約12兆円)や半導体・電子部品(約4兆円)だった。日用品などは内需中心だったが、17年の化粧品輸出額は約3715億円と5年連続で過去最高を更新。おむつや文具なども含めると輸出総額は8千億円を超えた。機能や使いやすさなど人気を背景に、外需を取り込む動きが進めば輸出の新たな柱になる。日用品以外でも国内拠点の増産投資が相次ぐ。カルビーは今夏、約70億円を投じて京都工場(京都府綾部市)でフルーツ入りシリアル「フルグラ」の新ラインを稼働した。明治も20年秋、埼玉工場(埼玉県春日部市)に、粉ミルクなどを生産する新棟を稼働する。いずれもアジア輸出拡大を目指しており、縮む国内事業を補う新たな柱とする。

*8-2:https://www.agrinews.co.jp/p45659.html (日本農業新聞 2018年11月1日) 乳児用 液体ミルク 吸い口付けるだけ 災害時も活躍 国産があれば 国内製造・販売解禁も動きなし  原価高 メーカー慎重
 国内での製造、販売が8月に解禁された乳児用液体ミルクだが、国産品の流通には時間がかかりそうだ。開発費用が高いことなどから国内の乳業メーカーは製造に二の足を踏む。災害時に出回ったのはフィンランドなど海外産だ。産地からも「牛乳の消費拡大にはつながりそうにない」(酪農関係者)との声が上がる。一方で、子育て中の女性たちからは「常温で飲める」、「衛生的」といった理由から液体ミルクの国内製造を求める声が続出し、署名が約4万3000人にも上っている。署名を集める一般社団法人乳児用液体ミルク研究会代表の末永恵理さん(39)は、液体ミルクを手に、その重要性を強調する。2014年に娘の凛ちゃん(4)を出産した末永さん。「国内で製造・販売をするようになれば、輸送費がかからない分、購入しやすい価格になる。粉ミルクと同様、安心できる国産を求める全国のお母さんは多い」と切望する。末永さんは、夜中の頻繁な授乳時や外出時、体調不良の時に液体ミルクがあれば育児の助けになると感じ、同年11月から国内製造を求める署名運動を始めた。国産の粉ミルクは200ミリリットル分で60~80円だが、液体ミルクは米国産が約230円、フィンランド産が約150円と割高だ。外出時や災害時に役立つとして、解禁を望む署名運動は4万人以上に広がり、厚生労働省は製造と販売を認める改正省令を施行した。末永さんは「署名する人からは、災害時にお湯や火がない所でも子どもに衛生的な授乳ができる、と期待する声が大きい」と説明する。
●牛乳消費増に 貢献難しく
 液体ミルクは世界では流通するが、日本では食品衛生法の規格基準が整備されていなかったため長年製造できず、消費者の認知度が低かった。政府が検討の末、8月に製造・販売を解禁したものの、液体ミルクの解禁が即座に牛乳の消費拡大のチャンスにはつながらないようだ。日本乳業協会は「製造原価が高過ぎるのでメーカーは慎重姿勢」と指摘する。製造には、安全性承認に向けた申請作業や工場の整備も必要で、森永乳業や雪印メグミルクなどの大手メーカーも「現時点で製造の具体的な話は出ていない」と明かす。価格が割高で、利用は災害や外出時などに限定されるため、牛乳消費の需要増には現時点では貢献しないとの見立てだ。産地でも、原料が国産になる見通しが立っていないことから「農業振興には結び付かないのでは」(北海道の酪農家)との見方がある。
●普及に向けて 使用法発信を
 9月に発生した北海道地震では、東京都がフィンランド産の液体ミルクを被災地に送ったが、日本では日常的に使っていないことを理由に被災自治体が使用をちゅうちょしたケースもある。一方で、16年4月の熊本地震では支援物資として重宝された。液体ミルクは広く流通しているわけではないため、米国、フランス、フィンランドなどから個人的にインターネットなどで調達するしかない。順天堂大学大学院医学研究科の清水俊明教授は「災害の多い日本では液体ミルクの重要性が極めて高い。普及のためにはまず、安全性や使用法の発信が必要だ」と指摘する。
<ことば> 乳児用液体ミルク
 乳児用の粉ミルクと同じ、牛乳や生乳から取り出した成分でできている。液体なので湯で溶かす必要がなく、そのまま飲める。災害時の母乳代替品や育児負担の軽減につながるものとして期待される。ペットボトルや紙パックの容器に哺乳瓶の吸い口を取り付けるだけでいい。無菌で容器に充填(じゅうてん)されるので衛生的だ。

<外国人労働者と社会保険>
PS(2018年11月2、3日追加):*9-1及び下図のように、農林漁業だけでなく製造業等の中小企業も直面している人手不足の解消のため新たな在留資格を創設する外国人受入拡大案が閣議決定され、臨時国会成立、来年4月1日施行の段取りとなったのは一歩前進で、平成の次に向けての新しい出発だ。その対象分野は、建設業・農業ほか14業種から検討して法案成立後に法務省令で定められるそうだが、2号になるまで家族の帯同が認められないのは気の毒で、さらに、*9-4のように、農水省は農業を「特定技能2号」の対象外にする意向だそうだが、これは、①主任として働けるようになった頃に帰る ②「特定技能2号」にもなれる他の業種よりも農業が不利になり、農業を希望する外国人労働者が減る などの理由でよくない。
 また、外国人労働者も社会保障の支え手になるのだが、年金保険料等の支払いは、*9-3のように、帰国する人にとって日本で掛けた年金保険料が掛け捨てにならないために、日本での加入期間を祖国の年金制度に加入していた期間とみなして取り扱い、その国の年金を受給できるようにする必要がある(https://www.nenkin.go.jp/service/kaigaikyoju/shaho-kyotei/kyotei-gaiyou/20141125.html 参照)。しかし、現在は、そのための社会保障協定を結んでいる国が18カ国しかなく、この状況は海外勤務する日本人にとっても同様に不便であるため、できるだけ多くの国と社会保障協定を結んでいくことが求められる。そして、医療や介護保険制度についても、なるべく日本人と同等に相互主義で対応すべきだが、まだ制度が整っていない国には、制度を作るアドバイスをするのがよいだろう。
 なお、*9-2のように、受入人数に上限は設けず見込数を精査中とのことだが、労働力という要素が変われば他の要素も変わるため、事前に見込数を確定するのは難しそうだ。

   
2018.7.25     2018.10.14       2018.11.2      2018.11.2
西日本新聞      産経新聞        毎日新聞        日経新聞

*9-1:http://qbiz.jp/article/143503/1/ (西日本新聞 2018年11月2日) 外国人受け入れ拡大案、閣議決定 人手不足解消に新資格
 政府は2日、外国人労働者受け入れ拡大のため、新たな在留資格を創設する入管難民法などの改正案を閣議決定した。深刻さを増す人手不足を解消するため、これまで認めていなかった単純労働分野への就労を可能とする。政府は臨時国会で成立させ、来年4月1日に施行したい考え。受け入れ対象分野は建設業や農業など14業種から検討しており、成立後に法務省令で定める。高度な専門人材に限っていた受け入れ政策の転換で、多くの外国人が働き手として来日することが見込まれ、日本社会が大きく変容する可能性がある。一方、制度の詳細が固まっていないことに与党からも懸念があり、野党は攻勢を強める構え。政府は否定するが「事実上の移民政策だ」との指摘も出ており、国会審議は曲折が予想される。安倍晋三首相は衆院予算委員会で「人手不足は成長を阻害する大きな要因になり始めている。しっかりと制度を作る」と強調。山下貴司法相は閣議後の記者会見で「法改正は重要かつ急務だ」と話した。改正案によると、一定技能が必要な業務に就く特定技能1号と、熟練技能が必要な業務に就く2号の在留資格を新設。1号は在留期限が通算5年で家族帯同を認めないが、2号は期限の更新ができ、配偶者と子どもの帯同も可能。条件を満たせば永住にも道が開ける。外国人技能実習生から新資格への移行もできる。人手不足が解消された場合、法相がその分野の受け入れを停止する。与党の意見を受け、付則には施行から3年後、必要に応じて制度を見直す条項を盛り込んだ。外国人の報酬は同一業務に従事する日本人と同等以上とし、就労が認められた分野の中での転職も認める。特に1号の外国人の受け入れ先には、住居の確保や日本語教育などの計画を作成し、安定的な生活を支援することを義務付けた。法務省入国管理局を「出入国在留管理庁」に格上げ。受け入れ先は同庁長官の登録を受けた登録支援機関に、受け入れた外国人の支援を委託することも可能とした。成立後、政府は年内にも、制度の意義などを定めた基本方針を閣議決定する予定。方針の骨子案によると、1号の外国人が円滑に活動できるよう生活の支援を受け入れ先に求めることや、原則として直接雇用とすることなどを盛り込む。基本方針を基に、法相が関係閣僚と共同で、各分野の人材不足の状況などを記載した分野別運用方針を策定するとしている。

*9-2:https://www.agrinews.co.jp/p45677.html (日本農業新聞 2018年11月2日) 外国人材 上限設けず 見込み数を精査 衆院予算委で法相
 衆院予算委員会が1日始まり、国会論戦が本格化した。山下貴司法務相は外国人労働者の受け入れ拡大を巡り、受け入れ人数に上限は設けない方針を示し、農業を含む14業種で見込み数を精査しているとした。日米間の貿易協定交渉を進めることについて茂木敏充TPP担当相は、米国の環太平洋連携協定(TPP)復帰に有効との見方を示した。ただ、TPPと同等以上の譲歩すれば国内農業への打撃は広がり、米国のTPP復帰もかえって遠のく恐れがある。山下法相は立憲民主党の長妻昭代表代行への答弁。外国人労働者の受け入れ拡大へ「数値として上限を設けることは考えていない」と述べた。受け入れの規模は「農業、建設、宿泊、介護、造船など14業種から受け入れの見込み数を精査している」と述べた。ただ、人数規模を示す時期は「法案審議に資するよう作業を詰めたい」と明言を避けた。これに対し、長妻氏は「人数の規模も分からないとは、生煮えだ」と批判した。茂木担当相は公明党の石田祝稔政調会長への答弁。 米国のTPP復帰を目指す方針を維持しつつ日米2国間交渉を同時に進める通商戦略の整合性をただしたのに答えた。日本政府は、米国を除く11カ国によるTPPの新協定(TPP11)の発効を急ぐことで米国の焦りを引き出し、米国のTPP復帰を促す戦略を描いていた。だが、9月の日米首脳会談で貿易協定交渉の開始で合意した。茂木氏は「(日米)物品貿易協定交渉をしていくことが米国のTPP復帰に、プラスにはなってもマイナスになることはない」と述べ、今後の交渉に意欲を示した。一方で「現在の米国がすぐにTPPに復帰をするのは難しい面もある」との認識も示した。

*9-3:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20181103&ng=DGKKZO37328510S8A101C1MM8000 (日経新聞 2018年11月3日) 外国人の就労、環境整備急ぐ 4月から新在留資格 企業に支援や管理求める
 政府は2日、外国人労働者の受け入れ拡大に向けた出入国管理法改正案を閣議決定し、国会提出した。技能実習生らに限ってきた単純労働で初めて外国人の就労を認める内容。移民政策と一線を画しつつ、深刻な人手不足に対応する。来年4月の運用開始に向け、受け入れ体制の整備を急ぐ。改正案は新在留資格「特定技能」を設け、建設や介護など14業種に限定して受け入れる。一定の日本語力や技能があれば得られる「特定技能1号」は通算5年滞在できる。より高い能力を条件とした「特定技能2号」は定期的な審査を受ければ事実上の永住が可能で、家族の帯同も認める。14業種でどれだけ外国人労働者が増えるのか、政府試算は出ていない。改正案の国会成立後にまとめる分野別運用方針で、業種別の想定人数を示すとしている。三菱UFJリサーチ&コンサルティングの協力を得て政府統計をもとに分析した外国人労働者の割合は食料品製造で8%、繊維工業で6.7%、車や船などの輸送用機器で6%。製造業が上位を占めた。宿泊・飲食サービスは4%だった。政府は外国人が働きやすい環境づくりを急ぐ。年金や医療などの社会保障制度は国籍に関係なく適用される。その点では現在の外国人技能実習制度で来日した実習生も、新在留資格をとる外国人も、変わりはない。法改正によって就労目的の新在留資格で外国人を労働者として明確に位置づけ、受け入れる企業や団体が支援し、管理できる体制を整える。受け入れ企業は直接雇用が原則となる。2017年には7千人の技能実習生が失踪した。厚生労働省が17年に調査した事業所の7割にあたる4226事業所で、違法残業や賃金未払いなどの法令違反があった。実習生に月95時間の残業をさせ、残業代を時給400円しか払わない悪質な事例もみられた。放置できない状況だ。受け入れ企業は過去に技能実習生などの行方不明者を出していないことや、悪質な紹介業者が介在していないことが要件となる。法務省の入国管理局を格上げする「出入国在留管理庁」は受け入れ企業を指導し、立ち入り検査もする。
●保険料払い損も
 社会保障制度の課題もある。日本で働く外国人は日本人と同様に公的年金の保険料などが給与から天引きされる。年金を将来受け取るには10年以上の加入が必要で、払い損になるおそれがある。払い戻しは3年が上限。3年を超えて働き、支払った保険料は戻ってこない。米国など社会保障協定を結んだ国から来日した外国人は、母国企業から日本の支店勤務になった場合、二重払いをしなくて済む。ただし日本と社会保障協定を結んだ国は18カ国だ。医療については個人の月額負担に上限があり、実際は100万円を超す医療費がかかっても、個人負担は所得によっては数万円で済む。日本の医療を安価で受けられる。日本で医療保険に加入する外国人の親族が短期で来日し、高額な治療を受けて帰国する例がある。新資格で受け入れが進めば、海外に親族を抱える外国人労働者の急増も予想される。政府・自民党は健康保険の利用・加入要件を厳しくする方針だ。海外に住む親族の加入を制限する。19年にも健保法改正案を国会提出する。

*9-4:https://www.agrinews.co.jp/p45685.html (日本農業新聞 2018年11月3日) 外国人材拡大 閣議決定 農業は上限5年
 政府は2日、外国人労働者の受け入れ拡大に向けて、新たな在留資格を創設する出入国管理法などの改正案を閣議決定した。労働現場での就業を本格的に外国人に開放し、受け入れ施策の大転換となる。臨時国会で成立させ、農業など人手不足が深刻な業種を対象に、来年4月の受け入れ開始を目指す。一方で農水省は、事実上永住も可能となる在留資格「特定技能2号」について、農業は対象外にする方針を明らかにした。改正法案では、外国人向けの在留資格として「特定技能」の「1号」と「2号」を創設。1号は3年以上の技能実習の修了者らが対象で、受け入れ期間は通算5年が上限だが、家族の同伴は基本的に不可。「2号」はより高度な技能を問う試験への合格者が対象で、在留期間に上限はなく、家族も呼び寄せられる。政府は、受け入れ業種として農業や介護、建設など14業種を検討する。人手不足の深刻度合いなどを精査し、法案成立後に対象業種を正式に決定する。受け入れ人数に上限は設けない方向。業種別の制度の詳細は所管省庁が検討する。同日の閣議後会見で、吉川貴盛農相は「農業も水産も、現場から(外国人材の確保への)期待もある」と述べた。生産現場の人手不足の状況把握などを進め、農業が受け入れ対象になるよう、政府内で積極的に主張していく考えを示した。農水省によると、農業では特定技能2号について、農業法人の経営層に就く人材などが想定されるが「2号の人材を求める具体的な要望は上がっていない」(就農・女性課)。2号での受け入れは当面検討しない方針だ。改正案は与党内にも慎重論が強い。特に特定技能2号を巡り「実質的な移民受け入れではないか」との声が目立ち、自民党は2号を外国人に適用する際の条件の厳格化などを求める決議をした上で法案を了承。法案には、与党が求めていた施行3年後の見直し規定も盛り込まれた。一方、野党は、臨時国会での成立は拙速だとの構えを強めている。国会論戦では、対象業種や受け入れ人数の規模が不明確なため、「法案は生煮えだ」といった批判が既に相次いでおり、今後の審議は難航が予想される。

PS(2018年11月7日追加):厚労省は、*10のように、「①健保が加入者本人に扶養される三親等内の親族にも適用され、訪日経験のない海外の親族らが母国や日本で医療を受けて健保を利用する事例が生じているため、国内居住要件を追加する」「②日本の社会保障制度は国籍要件を設けていないため、改正後は日本人の扶養親族も同様に居住要件を満たす必要があるが、留学など一時的に日本を離れている場合は例外的に適用対象とする」「③自営業者らが入る国民健康保険も他者によるなりすましを防ぐため、受診時に在留カードを提示するよう求める」「④海外で出産した場合も四十二万円が支払われる出産育児一時金の審査も厳しくする見通し」そうだ。
 しかし、①②は、所得税の扶養要件と異なるので新たな矛盾を生む上、日本人と異なる扱いをすれば国籍による差別に当たる(憲法違反)。また、③の「なりすまし」チェックは、外務省が相手国と交渉して在留カードに扶養親族の明細と顔写真を添付し、その情報を大使館や領事館で更新できるようにしておけばすむことだ。そして、これらは所得税の申告や源泉徴収にも必要な情報で、外国人労働者も税金や保険料を負担しているため、給付時に日本人と差別することは許されない。また、④については、42万円もの出産育児一時金を渡すのは日本人に対してでもバラマキであり、出産にも健康保険を適用すればよいだろう。つまり、厚労省は、変な給付の削り方をするのではなく、社会保険の徴収漏れや無駄遣いがないようにすべきだ。

*10:http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201811/CK2018110702000148.html(東京新聞 2018年11月7日)健保、国内居住者に限定へ 外国人の不適切利用防止
 政府は六日、外国人による公的医療保険の不適切利用を防ぐため健康保険法を改正し、適用条件を厳格化する方針を固めた。加入者の被扶養親族が適用を受けるためには、日本国内に居住していることを要件とする方向で検討している。来年の通常国会への改正案提出を目指す。政府は外国人労働者の受け入れ拡大に向け、今国会で入管難民法改正案成立を期す考えだ。近年外国人による公的医療保険の不適切利用が問題化していることから対応を急ぐが、来年四月の労働者受け入れ拡大実施には間に合わない公算だ。会社員が対象の健康保険(大企業は健康保険組合、中小企業は協会けんぽ)は、加入者本人に扶養される三親等内の親族にも適用されるが、国内に住んでいる必要がない。このため訪日経験のない海外の親族らが母国や日本で医療を受けて健保を利用する事例が生じ、問題視されている。海外での医療費や扶養関係の確認が難しいといった課題もある。自民党内に対応を求める声が高まっていることから、厚生労働省は健保法を改正し、扶養親族への適用に国内居住要件を追加する方針。日本の社会保障制度は国籍要件を設けていないため、改正後は日本人の扶養親族も同様に居住要件を満たす必要がある。ただ、留学など一時的に日本を離れている場合は例外的に適用対象とする。このほか、自営業者らが入る国民健康保険でも他者によるなりすましを防ぐため、受診時に在留カードを提示するよう求めることも検討。海外で出産した場合も四十二万円が支払われる出産育児一時金の審査も厳しくする見通しだ。

<入管法の審議について>
PS(2018年11月14日追加): *11-1、*11-2のように、入管法の審議で、①受入規模 ②受入業種 ③社会保障制度のあり方が、主な論点になっているそうだ。①の受入規模については、大きな事情の変更がない限り、5年で34万人を上限とすることになったが、②の受入業種と分野別受入規模は、政府が「えいやっ」と上から決めるより、農業・漁業・製造業・サービス業などの外国人労働力を必要とする産業で次年度に必要な人数を毎年算出し、それに日本人の潜在労働力や機械化・効率化を加味して決めた方がよいと私は考える。また、③の外国人の社会保障制度については、日本は国籍・職業・所得で差別してはならない国であり、これは高額療養費制度の適用についても同じであって、医療費を圧迫するという理由で危険な作業に従事することの多い外国人労働者を差別することは許されない。
 一方で、外国人労働力の導入に反対する議員も多いとのことだが、それは人材を無駄遣いしている都会の大企業や役所の状態を前提としているのではないだろうか? 実際には、地方・中小企業・特定産業は、本当に労働力が足りないため今すぐにでも外国人労働者が必要な状態で、時間は、技能実習制度を導入した時からかけているのだ。
 そのため、技能実習生や留学生から特定技能1号に変更するのは希望があれば自由とし、要件を満たせば特定技能2号への変更も可能とするのが合理的だ。さらに、これまでも多くの外国人労働者が日本で働いてきたため、それらの人たちやそのケアをしていた人たちに意見を聞けば、環境整備に必要な論点は網羅される筈だ。私は、金融・報道関係者等で日本に住んでいる外国人の所得税確定申告を行っていたこともあるので知っているのだが、家族のケアや言語・教育における環境整備の必要性も見逃せない。


     2018.10.14、2018.11.3、2018.11.7東京新聞     2018.11.14西日本新聞 

*11-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20181114&ng=DGKKZO37706310T11C18A1MM8000 (日経新聞 2018年11月14日) 入管法案、衆院審議入り 外国人労働者、5年で最大34万人
 外国人労働者の受け入れ拡大に向けた出入国管理法改正案をめぐり、政府が法施行を予定する2019年度からの5年間で26万~34万人の受け入れを想定していることがわかった。政府関係者が明らかにした。安倍晋三首相は13日の衆院本会議で、政府が想定する外国人労働者の受け入れ規模を「受け入れ数の上限として運用することになる」と表明した。入管法改正案は13日の衆院本会議で審議入りした。首相は政府が想定する外国人労働者の受け入れ規模について「各省庁で現在精査中だ。法案審議に資するよう近日中に業種別の受け入れ見込み数を示す」と語った。そのうえで「大きな事情変更がない限り、この数字を超えた受け入れはしない」と指摘した。自民党の田所嘉徳氏への答弁。山下貴司法相は1日の衆院予算委員会で、外国人労働者の受け入れ規模に関し「数値として上限を設けることは考えていない」と答弁していた。与野党から「受け入れ数の上限を設けるべきだ」との声が出たことから方針転換したとみられる。政府は初年度の19年度に3万3千~4万7千人の外国人労働者の受け入れを見込むと試算。受け入れを増やす背景に、19年度で60万人以上、19年度からの5年間で130万~135万人の労働者が不足すると見込んだ。対象は、入管法改正案で新設する在留資格「特定技能」で想定する介護や農業など、国内の労働者だけでは労働力が不足する14の業種だ。

*11-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20181114&ng=DGKKZO37716480T11C18A1EA1000 (日経新聞 2018年11月14日) 規模・業種・社会保障、外国人受け入れで論戦
 政府・与党が今国会の最重要法案と位置づける出入国管理法改正案が13日の衆院本会議で審議入りした。選ばれる国に向けた制度設計で外国人の受け入れ規模や、その業種、社会保障制度のあり方の3つが主な論点になる。まず野党が追及したのが外国人の受け入れ規模だ。政府は深刻な人手不足を根拠に外国人受け入れが必要だと説明してきた。外国人が流入する分野の規模が分からなければ、受け入れを必要とする分野で働く日本人への影響は見通せない。政府には2019年度から5年間で外国人労働者を26万~34万人受け入れるとの試算がある。労働者が同じ期間に130万~135万人不足すると見込んで算出した。審議入りに間に合わなかったため、法務省は14日にも国会に受け入れ規模を提示する。2つ目は業種だ。新しい在留資格「特定技能」を設けるのは人手不足が深刻な農業や建設、宿泊など14業種のみ。高度な試験に合格し、熟練した技能を持つ人に「特定技能2号」を与える。2号の「ハードルはかなり高い」(山下貴司法相)ものの、家族の帯同が可能で将来の永住にも事実上、道が開ける。2号をどの程度付与するかが帯同家族への生活支援といった受け入れ体制の整備を左右する。最後は外国人の増加が社会保障制度に与える影響だ。日本は国籍や職業、所得にかかわらず、日本に住む人は公的な医療保険と年金制度に加入し、平等に医療や一定の年金を受け取れる。手術や入院などで高額な医療費がかかった場合に個人負担を軽くするための高額療養費制度は医療費を圧迫するとの懸念が与野党にある。野党は法務委員会だけでなく厚生労働委などとの連合審査も求めている。

<外国人労働者と難民>
PS(2018年11月14日追加): *12-1のように、水産業の競争力向上策として、①企業参入容易化が目的の漁業法改正 ②資源管理の徹底 などが処方箋に挙げられているが、これは原因を追及した上で解決策を決めたのではなく、農業と同じく「えいやっ」と出した結論だろう。何故なら、科学的競争力のある水産業を作るには、①の企業参入や②の資源管理だけでなく、漁船や装備のリニューアルが必要だが、日本の漁船や装備は漁業収入ではリニューアルできないほど高額であり、高コスト構造を変えない限り、日本での水産業は採算が合わないからである。
 なお、*12-2のように、日本で働く外国人が地方で住みやすいように地方自治体が環境整備を行い、それに関する補助を政府が行うのがよいと考える。その理由は、人手不足が深刻な地方は住宅・保育・教育などの余剰設備が多く生活費も安いので、言語・教育・確定申告・源泉徴収・社会保険などに関するサポート体制ができれば住み易くなるからである。
 また、*12-3の「ロヒンギャ帰還計画」は、あれだけの迫害を受け、やっとのことでバングラデシュに避難した難民をミャンマーに帰そうとするスキーム自体に無理があると思う。国連も、帰還したロヒンギャが再び迫害に遭う恐れがあると警告しており、私は、日本で引き受けてはどうかと考える。例えば、熊本県の上島、鹿児島県の長島のように、本土と繋がってはいるが独自性も保てるような離島に生活基盤を置き、男女とも農林漁業やそれらの加工に従事するなど、まずは日本語がわからなくても教育がなくてもできる仕事から始めればよいだろう。

   
 2018.1.27  外国人労働者産業別内訳   2018.6.16毎日新聞   2018.10.12Yahoo
  日経新聞

(図の説明:1番左のグラフのように、国内の外国人労働者は5年間で9割増えたが、左から2番目の円グラフのように、産業別では製造業が最も多く、水産業にはあまり入っていない。右の2つは、これまでの外国人労働者の在留資格別推移とこれから導入しようとする制度の概要だ)

*12-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20181114&ng=DGKKZO37726990T11C18A1EA1000 (日経新聞 2018年11月14日) 水産業の競争力増す改革を
 政府は企業が新規参入しやすいように漁業権制度などを見直す改革法案を閣議決定し、国会に提出した。旧態依然とした漁業法の抜本改正は70年ぶりだ。これを機に科学的な資源管理を徹底し、経営を合理化して競争力のある水産業に変わってほしい。日本の漁業生産額はピークだった1982年に比べ半減した。海外の漁業先進国に比べ、生産性も低いままだ。農林水産省が直近の統計をもとにまとめた国際比較では、漁船1隻あたりの漁獲量はノルウェーの20分の1、漁業者1人あたりの生産量も8分の1ほどしかない。小規模な漁業者が多く、資源管理も甘いから過剰漁獲に陥りやすい。その結果、所得は増えず、新しい漁船もつくれない。若い漁業者が思うように集まらないから外国人労働者への依存度が増してしまう。この悪循環を抜本改革で断ち切る必要がある。今回の改革は地域の漁業協同組合などに優先して与えられる漁業権の制度を見直し、漁協が適切に管理していない漁場や、利用されていない漁場には企業などが新規参入できるようにする。既得権益の多い漁業権制度に初めてメスを入れたことは評価できる。ただ、規模拡大の障害となり、漁協による漁業権行使料の徴収などが不透明な漁業権制度はなくし、公平な許可制度などに変えるのが理想だ。さらなる改革が求められる。政府が法律に基づき資源を管理する漁獲可能量(TAC)制度の対象も現行の8魚種から早急に増やすべきだ。乱獲を防ぎ、高く売れる時期まで待って取ることを促すため漁獲枠は漁船ごとに割り当てなければならない。規制緩和に加え、企業の参入などを排除しようとする漁業の閉鎖性も改めてもらいたい。農業が変わり始めたのは企業の新規参入を受け入れ、その技術力などを利用しようと考える農家が増えてきたからだ。いま変わらなければ日本の水産業の持続は危うい。

*12-2:https://digital.asahi.com/articles/DA3S13770765.html (朝日新聞 2018年11月16日) 地方に外国人材、政府で方策検討 新在留資格
 山下貴司法相は15日の参院法務委員会で「人手不足がより深刻な地域に外国人を受け入れやすくする方策を政府全体で検討したい」と述べ、新たな在留資格で受け入れる外国人が地方で働きやすくする仕組みを導入する考えを明らかにした。出入国管理法改正案では、新在留資格を持った外国人労働者の転職を認めており、人手不足が深刻な地方から賃金水準の高い都市部に流出する可能性が指摘されている。法務省の和田雅樹入国管理局長も「外国人材が地方で稼働するインセンティブを設けたい」と答弁した。

*12-3:https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20181116-00010000-afpbbnewsv-int (AFPBB News 2018/11/16) ロヒンギャ帰還計画、初日は志願者ゼロ 迫害恐れ帰国拒否
 ミャンマーのイスラム系少数民族ロヒンギャ(Rohingya)が隣国バングラデシュに大量流出して難民化した問題で、難民らをミャンマーに帰還させる計画が15日、開始日を迎えたものの、当局によると国境を渡り帰国した難民はいなかった。ミャンマー政府は、ロヒンギャ帰還の取り組みでバングラデシュ政府に不手際があったと非難した。ミャンマーでは昨年8月以降、軍の強硬な取り締まりから逃れるため、推定72万人のロヒンギャがバングラデシュに避難。国連(UN)は帰還したロヒンギャが再び迫害に遭う恐れがあると警告しており、帰還計画は議論を引き起こしている。難民の第1陣がミャンマーに帰還する予定だった15日、バングラデシュ当局者らは国境の検問所で難民らの到着を待ったが、検問所を訪れた人は一人もいなかった。一方、難民らは抗議デモを実施。ロヒンギャの男女や子ども約1000人が「私たちは行かない」など叫び声を上げた。帰還計画には国連や国際支援団体も反対しており、ロヒンギャの首長らによると、バングラデシュが作成した帰還者名簿に入っ260人の多くが身を隠している。対象となっている男性(85)は「やつらは息子2人を殺した。私は別の息子2人と一緒にバングラデシュに逃れた。どうか私たちを送り返さないでほしい。残りの家族も殺される」と訴えた。ミャンマーのミン・トゥ(Myint Thu)外務次官は記者らに対し、バングラデシュ政府の対応は「段取り面で不十分だ」と非難するとともに、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)がロヒンギャ帰還を妨害していると批判した。

<日本語教育など>
PS(2018年11月18日追加): *13に、「入管難民法改正案を巡って外国人への日本語教育の在り方が課題になっているが、対応できるか」と書かれているが、私は、日本語教師の統一資格がなかったとしても、教師の資格と経験のある人なら、①教科書や指導要領があり ②一定の研修を受ければ 教えられると考える。また、60代で定年になった教師の多くは、きちんと報酬を払えば優秀な潜在的人材と言える。さらに、日本語教育は、児童生徒だけでなく配偶者など他の家族にも必要で、日本語だけでなく他の科目にも勉強したいものは多々あると思われる。何故なら、話したり生活したりできるためには、語学だけではなく、その国の最低限の常識やバックグラウンドの理解が必要だからだ。

*13:http://qbiz.jp/article/144371/1/ (西日本新聞 2018年11月18日) 日本語教育 遅い対応 入管難民法改正 国、資格検討は来年度 関係者「外国人増加対応できるか」
 外国人労働者の受け入れを拡大する入管難民法改正案を巡り、外国人に向けた日本語教育の在り方が課題になっている。政府は教育の質向上のため日本語教師の能力を証明する新たな資格を導入する方針。日本語教師はなり手不足などでボランティアに頼る現状が問題視されてきたが、来年4月施行に向けて急ぐ中で、政府の対応の遅さを指摘する声も出ている。「外国人から選ばれるのに必要なのは雇用環境、社会保障、子どもの教育だ」(国民民主党の吉良州司氏)。今後、外国人労働者の増加が見込まれる中、14日の衆院文部科学委員会では、日本語教育の充実を求める声が相次いだ。日本語教師は統一した資格がないため、教育機関や教師の能力によって教育内容に差があることが問題視されている。技能実習生にも入国後に約1カ月間の日本語講習が課されるが、九州のある受け入れ団体は「素人が独自のやり方で教えている。日本の生活になじめるよう親身になる団体もあれば、規定の時間をこなせばいいと考える団体もある」と現状を打ち明ける。文科省は教師の能力を測る資格の創設を検討している。柴山昌彦文科相は委員会で「外国人が日本で円滑に生活できる環境を整備することで、共生社会の実現を図ることが重要だ」と強調した。ただ、日本語教師は、低賃金と不安定な雇用形態などからなり手不足が指摘されており、外国人が多い地域では資格の導入に期待と不安が入り交じる。東京都新宿区の担当者は「公立学校への支援もボランティアに頼っている部分があり、資格がハードルになれば教える人が集まらないかもしれない」。浜松市の浜松国際交流協会は「資格をつくるだけでは意味がなく、安定した雇用を担保するなど日本語教師の処遇改善が必要だ」と訴える。だが、文科省が資格の詳細を検討するのは、来年度の文化審議会だ。「法案提出と併せて整備しておくべきだ」。15日の参院文教科学委員会では、松沢成文氏(希望の党)が対応の遅さを批判した。学校現場も深刻だ。文科省によると、日本語指導が必要な児童生徒は2016年度の調査で約4万4千人(日本国籍を含む)で、この10年間で1・7倍に増加。政府が検討する新在留資格では、特定技能2号の外国人は家族の帯同が認められ、日本語指導が必要な児童生徒はさらに増えると見込まれている。在留外国人は希望すれば日本の公立小中学校などに無償で通うことができるが、進学率の低さが課題だ。17年度の調査では、日本語指導が必要な高校生の進学率は42・2%で、高校生全体の70・8%と大きな差がある。高校への進学率のデータはないが、文科省は「高校段階で就学者は3分の1程度に減っている」と見ている。文科省は日本語指導に必要な教員定数の増加などの対策を始めているが、外国人も教える福岡県の教員からは「現状でも厳しいのに、さらなる外国人増加に対応できるのか」と不安の声も漏れる。ある野党議員は、政府の取り組みの本気度に疑問を投げ掛ける。「多文化共生社会をつくり得る環境までいっていない。やったふりをしているだけだ」

<外国人の報酬問題に端を発したゴーンさん逮捕事件>
PS(2018年11月20、21、22、23、24日追加): *14-1のように、日産自動車会長のカルロス・ゴーン氏が逮捕されたが、日産自動車の平成30年3月期の有価証券報告書(http://cdn.ullet.com/edinet/pdf/S100DHAZ.pdf)を見ると、売上高は約12兆円、経常利益は7,500億円、包括利益は7,400億円、役員総報酬17.7億円、代表取締役会長ゴーン氏の報酬は7.4億円、外部監査人は新日本有限責任監査法人で適性意見が出ている。新日本有限責任監査法人はBig4であるE&Yと提携しているため、ゴーン氏の確定申告はE&Yが行っていると思われ、節税はしても法律違反となるような脱税はなかっただろう。また、同じ平成30年3月期のトヨタ自動車の有価証券報告書(http://cdn.ullet.com/edinet/pdf/S100DA2Y.pdf)を見ると、売上高は約12兆円、経常利益は2.2兆円、当期純利益は1.9兆円、役員総報酬は21億円、最高額の報酬を受けているのは平取締役Didier Leroy氏で報酬は10億円、外部監査人はPWCあらた有限責任監査法人で適性意見が出ている。そのため、Didier Leroy氏の確定申告はPWCが行っているだろう。
 それでは、何がいけなくてゴーン氏が容疑者にされているのかと言えば、「有価証券報告書への報酬の虚偽記載だ」と日本のメディアは盛んに言っているが、外部監査人は適性意見を出しているので、有価証券報告書に虚偽記載はないか、あったとしても投資家がミスリードされるほど大きなものではないと判断したわけだ。また、ゴーン氏が利用していたとされる不動産を管理しているオランダ子会社は特定目的会社だと思うが、特定目的会社は連結対象にならないため有価証券報告書に記載されていなくても合法的である上、日産からゴーン氏に不動産の所有権が移転されたわけではないので、家賃補助の一部が所得と見做される場合を除いてゴーン氏の報酬にはならない。さらに、トヨタ自動車の平取締役Didier Leroy氏と比較するとゴーン氏の報酬は外国人経営者の相場より低いため、何らかの形で差額を補填する契約になっていたのかもしれない(そうでなければ、優秀な外国人経営者は雇えないから)。さらに、*14-2のように、ゴーン氏はオランダ子会社からも報酬を得ていたのに有価証券報告書に記載していなかった疑いがあることも有価証券報告書の虚偽記載にあたり金融商品取引法違反だと書かれているが、オランダ子会社は上場していないので開示義務はなく、開示されるのは日産の連結財務諸表であるため連結対象外の子会社から受け取った役員報酬も記載しなければならないかどうかは疑問だ。なお、内部監査人は、経営者の下にいるため経営者の不正は指摘できないのが普通で、株主や投資家保護のためには監査役・外部監査人が任命されているわけである。
 そして、ゴーン氏逮捕の報道後に日産・ルノーグループの株価が下がった理由は、むしろ今後の日産・ルノーグループの業績を悲観してのことではないか? 私は、スペインのバルセロナで、ゴーン氏が「Technology is exciting!」と大きなテレビ画面で自動運転の宣伝をしていたのを見て、ゴーン氏なら世界のニッサンのトップにふさわしいが、西川氏は日本の日産の社長にしかなりえず、ゴーン氏の経営判断は素晴らしかったと考える。そのため、権力闘争のために不法行為を使って相手の名誉を失わせる国をFairだとは思わない。しかも、今後は、ルノーは日産と縁を切ってもEVで組む相手が今では中国・ドイツ・アメリカ・日本等に多々いるので問題ないが、日産は最初にEVを市販したもののラインナップが少なく、フランスのルノーと一緒にやらなければ中東やアフリカなどの市場を開拓する能力はないため、次第に遅れていくと思われる。
 そうなると、何が有価証券報告書虚偽記載に当たるのか不明なのだが、日経新聞は、*14-3のように、ゴーン氏は有価証券報告書虚偽記載の疑いで逮捕されたので、「カリスマが変質して独善になったゴーン氏退場」と記載している。そして、①日産とルノーのトップを兼務し始めたころから独裁者に変貌し始めた ②後継者を見つけることはトップの責務だ ③数年前に乗り換えた最高級機種のプライベートジェットはゴーン会長専用機だった ④日本に来る回数は減った ⑤世界中の政官財の要人や親族らと豪華なディナーを囲むことが増えて現場からだんだん離れていった などとしている。しかし、①は凡庸なことを繰り返して言うことしかできない人と話す時間はもったいなく相談しても意味がないことを無視しているし、②は日本でよく言われるトップさえ辞めさせればよいという変な批判だし、③④⑤は今後のニッサンの世界戦略を考える立場なら日本で会長席を温めているよりも重要なことである。なお、プライベートジェットは時間と体力を惜しんで世界を駆けまわる経営者の必需品で世界では常識であり、世界中の政官財の要人と親しくなることも誤らない世界戦略を作ったりEV優遇策を入れてもらったりするために必要なことだ。つまり、日本メディアの批判は、その人の職務も考えずに「自分よりいい思いをしている人がいるのは平等でない」という感情的な悪口を繰り返している点が幼稚なのである。
 なお、*14-4には、日産は資本金約60億円を全額出資してオランダに子会社「ジーア」を設立し、ゴーン氏の自宅用物件の購入などにあてていたことが分かったと記載されているが、この金額はゴーン氏がこれまでに受けとった報酬と外国人経営者の報酬相場との差額であるため、退職時にゴーン氏がジーアの株式を受け取る契約があったと考えると全体の筋が通る。タックスヘイブンに会社を作ることは違法ではなく、こうすると所得税を節税しながら不動産投資をすることができるわけだ。しかし、このような複雑なことをしなければならなかった根本的問題点は、日本人が自分と比較してゴーン氏の報酬が高すぎるという嫉妬に基づく批判をしすぎたことであり、ゴーン氏が拘留されているのは人権侵害だと思う。
 日経新聞は、2018年11月23日、*14-5のように、ゴーン氏は2018年3月期までの8年間で計約80億円の報酬を記載していなかったと書いているが、これがニッサン・ルノーの会長・社長としてゴーン氏の本来の報酬との差額に当たり、その報酬を記載しなかったのは、心ない批判でトップとしての権威が失われるのを避けたかったからだろう。そのため、「ストック・アプリシエーション権」は放棄して、その分も「ジーア」に投資していたのではないかと思う。監査法人が適性意見を付けているのだから、この役員報酬の記載漏れが投資家をミスリードするほど重大な金商法違反に当たらないのは明らかで、それでもゴーン氏を“容疑者”と呼んで拘留し続けるのは人権侵害であり、今の弁護士は変えた方がよい。なお、日本の司法は、経済・会計・国際税務に弱く、超domesticで発想が古い上、人権侵害にも疎いため、ゴーン氏は日本での取り調べの状況をメモして出版し、これをきっかけに日本の司法改革を進めるのも一つの貢献ではある。
 今回のゴーンさん逮捕事件をよく考えると、これで得したのは権力闘争の相手と市場の競争相手だが、確かに日産の利益率はトヨタよりかなり低かった。理由はいろいろあると思うが、EVへの逆風が強くインフラ整備が追い付いていなかったことも大きな原因だろう。しかし、*14-6のように、オーストリア政府はEVだけ制限速度を緩める優遇策でEVの普及を促すそうだし、このほかにヨーロッパではスイス・イタリアにもEV優遇策がある。私は、自動運転や安全支援システム搭載車にも、自動車保険の保険料を安くするなどのメリットがあってよいと考える。

   

(図の説明:左図のように、平均的役員報酬の額は日米欧で全く異なり、日本は著しく低い。また、右図のように、日本の中にも役員報酬の高い上場企業はあり、ゴーン氏の報酬が特別高いわけではないと思われる)

*14-1:http://qbiz.jp/article/144496/1/ (西日本新聞 2018年11月20日) 仏政府、ルノー取締役会に要請 「暫定経営陣を」、会長逮捕で
 フランスのルメール経済・財務相は20日、日産自動車会長のカルロス・ゴーン容疑者が逮捕されたことを受け、ゴーン容疑者がトップを務めるフランス自動車大手ルノーに対し、暫定的な経営陣を直ちに据えるよう求める考えを示した。公共ラジオのインタビューに答えた。ロイター通信によると、ルノーは20日中に取締役会を開くと表明。フランス政府の要求に基づき対応を協議するとみられる。フランス政府はルノーの筆頭株主で議決権の約15%を占める。ルメール氏は、ゴーン容疑者は逮捕により「(ルノーなどの)企業連合を率いることのできる状況ではない」と指摘する一方、解任を求めるには「私たちに(根拠となる)証拠がない」と説明。日本側に、日産が検察に提供した情報の共有を求める意向を示した。事件発覚後、フランスでのゴーン容疑者の報酬申告などに問題がないかどうか調べたが「注意すべき点は何もなかった」と明らかにした。またゴーン容疑者の逮捕により、ルノーと日産、三菱自動車の連合は「不安定化している」との認識を示し、連合の維持が「フランスと日本双方の利益だ」と日本側に訴えると語った。

*14-2:http://qbiz.jp/article/144551/1/ (西日本新聞 2018年11月21日) ゴーン会長、海外報酬も不記載か オランダ子会社、住宅購入も
 金融商品取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)の疑いで逮捕された日産自動車の代表取締役会長カルロス・ゴーン容疑者(64)が、日産本社以外にもオランダにある子会社から報酬を得ていたのに、有価証券報告書に記載していなかった疑いがあることが21日、関係者への取材で分かった。子会社からの報酬は毎年、億単位に上っていたという。この子会社などが、ゴーン容疑者が無償で利用したとされるフランス、オランダ、レバノン、ブラジルの住宅を購入していたことも判明した。東京地検特捜部は、オランダの子会社が不正の中核的な役割を担っていたとみて、設立の経緯や、ゴーン容疑者側近の代表取締役グレゴリー・ケリー容疑者(62)の関与を捜査。虚偽記載が長期にわたっていたことなどから、「両罰規定」を適用し、法人としての日産の立件も視野に捜査を進める。ゴーン容疑者は海外の複数の住宅を利用していたが、正当な理由がないのに賃料などを支払っていなかったとされる。住宅の購入には、ケリー容疑者の部下に当たる法務担当の外国人執行役員が関与。特捜部は執行役員との間で司法取引に合意している。ゴーン容疑者は、日産の有価証券報告書に自分の報酬を約50億円少なく記載したとして、ケリー容疑者とともに19日に逮捕された。関係者によると、株価に連動した報酬を受け取る権利数十億円分も付与されていたが、これも住宅の賃料などとともに有価証券報告書に記載していなかった。特捜部は、付与された権利分と賃料分を、いずれも報酬として有価証券報告書に記載する義務があったとみているもようだ。

*14-3:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20181122&ng=DGKKZO38026130R21C18A1MM8000 (日経新聞 2018年11月22日 抜粋) ゴーン退場 20年目の危機(下) カリスマ変質 独善に
 「こんなことが許されていいのか」。日産自動車会長のカルロス・ゴーン容疑者の詳細な情報を知る立場にいた日産の幹部は、不正につながる情報に目を疑った。同幹部をきっかけに半年ほど前から数人が極秘調査を開始。金融商品取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)の疑いでのゴーン会長逮捕につながった。
●ぎりぎりの時期
 同じ時期の今年4月、ゴーン会長は日産の親会社、仏ルノーとの資本関係見直しを突然表明した。かねて経営統合をにらんでいたゴーン会長。統合実現の際には日仏連合を統括する役職に就くことも関係者にほのめかしていた。ある日産幹部は「来年春までに統合を正式決定するつもりだったのでは」と話す。19日の逮捕はゴーン会長の野望を阻むぎりぎりのタイミングだった。1999年、経営危機に直面した日産を救済する形で資本提携を結んだルノーが日産に送りこんだのがゴーン会長(当時は最高執行責任者=COO)だった。「セブンイレブン」の異名がつけられるほど朝から晩まで働き、2000年に日産の社長に就いた後も大規模なコスト削減などで業績をV字回復させ、カリスマ経営者と呼ばれるようになった。05年、ルノーの最高経営責任者(CEO)にも就いたゴーン会長。日産とルノーのトップを兼務し始めたころから独裁者に変貌し始めた。ゴーン会長を日産に送り込んだ元ルノー会長のルイ・シュバイツァー氏が09年に退くと、日産とルノーの経営を掌握。自らを「アライアンスのファウンダー(創業者)」と呼ぶようになり、いつしか暴君と恐れられる存在に。あらがえない幹部や社員は日産を去った。
●見限った幹部ら
 「誰かのように権力にしがみつくことはしたくない。後継者を見つけることはトップの責務だ」。ゴーン会長の「右腕」とされた元日産副社長のアンディ・パーマー氏は今月7日の来日時にこう話していた。今の肩書は英高級自動車、アストンマーティン社長。「ゴーンさんがいたら、いつまでもトップになれない」。4年前、日産を去る際にこう漏らした。パーマー氏が移籍した同時期には、ルノーで「ポスト・ゴーン」が確実視されていたカルロス・タバレスCOOが仏グループPSAのトップに移籍。「日産の先行きを心配している」と話すパーマー氏の言葉は、2週間後に現実になった。今年5月には日産の最高財務責任者(CFO)だったジョセフ・ピーター氏が退職。「アライアンス経営に苦言を呈していた」と、ある日産幹部はゴーン会長との確執が退社の原因と見る。身柄を拘束された日に日本に降り立ったプライベートジェットは数年前に乗り換えた最高級機種で、販売価格は60億円以上とされる。機体番号は「NISSAN」を連想する「N155AN」で、実質的なゴーン会長専用機だった。日本に来る回数は減り、世界中の政官財の要人や親族らと豪華なディナーを囲むことが増え「現場からだんだん離れていった」(日産の西川広人社長)。様々な対立感情もうずまく国際提携を20年にわたり維持できたのは、ゴーン会長の独裁ともいえる力があったからだ。その体制が崩れた今、模範といわれた国際提携も最大の試練を迎える。

*14-4:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO38052960R21C18A1MM0000/?n_cid=NMAIL006 (日経新聞 2018/11/22) 租税回避地へ資金移動 ゴーン会長「自宅」購入で
 日産自動車会長のカルロス・ゴーン容疑者(64)の報酬過少記載事件で、日産の子会社がタックスヘイブン(租税回避地)などの会社に投資資金を移し、ゴーン会長の自宅用物件の購入などにあてていたことが22日、関係者の話で分かった。東京地検特捜部も同様の事実を把握し、取引の実態を隠す狙いがあったとみて調べているもようだ。関係者によると、日産は2010年ごろ、資本金約60億円を全額出資してオランダに子会社「ジーア」を設立。社内会議では、ベンチャービジネスへの投資が目的と説明された。その後、ジーアは、租税回避地として知られる英領バージン諸島に設立した孫会社に資金の一部を移動。孫会社は11年、ブラジル・リオデジャネイロのリゾート地、コパカバーナにある高級マンションを5億円超で購入した。改装などの費用も孫会社が負担し、マンションはゴーン会長の自宅として無償提供されていた。一方、ジーアがバージン諸島につくった別の孫会社は、ジーアからの資金でレバノンの会社を買収。このレバノンの会社がベイルートにある高級住宅を約10億円で購入していた。この物件もゴーン会長の自宅として無償で提供されていた。リオとベイルートの2つの物件の購入や改装などにかかった費用は総額で20億円を超えるとされる。2物件はゴーン会長自らが選定し、一連の資金移動や取引は日産の代表取締役、グレッグ・ケリー容疑者(62)が指揮。ゴーン会長の側近の一人とされる外国人の専務執行役員(54)がジーアを管理し、物件の契約手続きなどを担当した。ゴーン会長を巡って、日産は社内調査の結果として▽報酬の過少記載▽投資資金の流用▽経費の不正支出――の3点の不正行為が確認されたと説明。リオとベイルートの物件の購入は投資資金の流用にあたるとみられる。 会社の役員などが自己または第三者の利益を図る目的で任務に背く行為をし、会社に損害を与えた場合、会社法の特別背任罪が適用される可能性がある。ただ、今回のケースでは複数の海外子会社が関わり、国境をまたいで資金が移動するなどしており、証拠収集のハードルは高いとみられる。

*14-5:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20181123&ng=DGKKZO38122880T21C18A1MM8000 (日経新聞 2018年11月23日) ゴーン元会長、未記載8年で80億円か 日産、役員総報酬修正も
 日産自動車のカルロス・ゴーン元会長の報酬過少記載事件で、ゴーン元会長が有価証券報告書に記載せずに受け取った金銭報酬が2018年3月期までの8年間で計約80億円に上る疑いがあることが22日、関係者の話で分かった。同期間で計約132億円と記載された役員の金銭報酬総額も修正が必要となる可能性がある。東京地検特捜部は会計上の処理などを詳しく調べているもようだ。役員報酬を巡っては10年3月期から、報酬が年1億円以上の役員について氏名と報酬額を有価証券報告書に記載することが義務化された。関係者によると、ゴーン元会長は仏ルノーの大株主である仏政府からの高額報酬批判を懸念していたといい、義務化を機に大幅に報酬を減額。ただ、実際は減額分を補填する形で、有価証券報告書に記載しない金銭報酬を毎年約10億円受け取っていた疑いがある。日産は08年6月の株主総会で役員の金銭報酬の総額について年29億9千万円を上限とした。有価証券報告書の記載では、09年3月期の役員報酬の総額は約25億円だったが、個別開示が義務化された10年3月期の金銭報酬の総額は約16億円に急減。その後も14億~18億円程度で推移している。10年3月期以降のゴーン元会長の金銭報酬は7億~11億円程度で、18年3月期までの8年間は計78億9100万円と記載されていた。東京地検特捜部は、未記載の金銭報酬約80億円のうち15年3月期までの5年間の約50億円について、金融商品取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)の疑いでゴーン元会長らを逮捕した。一方、80億円の金銭報酬の未記載とは別に、「ストック・アプリシエーション権」(SAR)と呼ばれる株価連動型インセンティブ受領権についても、ゴーン元会長は18年3月期までの4年間に約40億円分を付与されながら有価証券報告書に記載しなかったとされる。日産側はSARの不記載についても特捜部に情報提供。特捜部は金商法違反に当たるかどうか慎重に調べを進めている。

*14-6:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO3813967024112018MM0000/ (日経新聞 2018/11/24) オーストリア、EVだけ制限速度引き上げ 普及促す
 オーストリア政府は電気自動車(EV)だけ速度制限を緩める優遇策を2019年から始める。ガソリン車などが最高時速100キロメートルに制限されている道路でも、時速130キロメートルで走れるようにする。消費者がEVを購入したくなる環境をつくり普及を促す。制限速度を引き上げるEV優遇策は珍しい。オーストリアの高速道路の法定制限速度は時速130キロメートルだが、約2割にあたる440キロメートルの区間は大気汚染防止法で時速100キロメートルまでに抑えられている。EVは走行中に窒素酸化物などの有害物質を排出しないため、法改正で速度制限の例外とする。ハイブリッド車は優遇対象に含まない。現地メディアによるとEVを判別するために緑色のナンバーを発行し、取り締まり機が時速100キロメートル超えを検知しても、所有者を罰金などの対象から除く。オーストリアの新車販売に占めるEVの比率は18年1~9月に1.6%だった。ドイツや英国を上回り、欧州では比較的高いが、二酸化炭素(CO2)排出量の削減目標を達成するためには、EVの普及を急ぐ必要があると判断した。各国はEVを買う際の補助金や税金の免除などさまざまな普及促進策を採用している。オーストリアはノルウェーなどが実施しているバス専用レーンを走行できるようにしたり、公共の駐車場を無料にしたりするなどの優遇策も広げる。


PS(2018年11月24日追加):昨日、「日本の司法は、経済・会計・国際税務に弱い」と書いたが、司法は少なくとも法律には詳しくなければ困る。にもかかわらず、*15-1は、「ゴーン氏が退任後に報酬を受け取る契約書を日産と交わし、5年度分で約50億円が積み立てられていたことがわかり、将来支払いが確定した報酬として開示義務があるため、東京地検特捜部は事実上の隠蔽工作と判断して契約書を押収した」としている。しかし、日本の民法には、契約自由の原則がある上、退職金や退職年金にあたる退職後に受け取る報酬(日産から見れば過去勤務債務)は現在の報酬とは考えない。これは、どの取締役も退職金や退職年金の金額までは開示していないのと同じであり、会長や社長だからといって金融商品取引法の開示義務を拡大解釈するのは法的公平性に反しており法治国家とは言えない。なお、*15-2に、弁護士のケリー氏が「役員報酬は全て適切に処理した」として容疑を否認しているそうだが、通常、東京地検特捜部が想定しているような法律違反にあたる馬鹿なミスはしないため、そのとおりだろう。

*15-1:https://digital.asahi.com/articles/DA3S13783009.html (朝日新聞 2018年11月24日) 退任後の報酬、50億円隠蔽か ゴーン前会長と日産、契約 特捜部、過少記載と判断
 日産自動車の会長だったカルロス・ゴーン容疑者(64)が役員報酬約50億円を有価証券報告書に記載しなかったとして逮捕された事件で、ゴーン前会長が退任後に報酬を受け取る契約書を日産と交わし、毎年約10億円、5年度分で約50億円が積み立てられていたことがわかった。東京地検特捜部はこの契約書を押収。将来の支払いが確定した報酬として開示義務があり、事実上の隠蔽(いんぺい)工作と判断した模様だ。ゴーン前会長は、側近で前代表取締役のグレッグ・ケリー容疑者(62)と共謀し、2010~14年度の5年分の役員報酬について、実際は計約99億9800万円だったのに、有価証券報告書には約50億円少ない計約49億8700万円と記載したとする金融商品取引法違反の容疑で逮捕された。日産は08年、取締役の金銭報酬の総額について、上限を29億9千万円と決定。有価証券報告書に記載された08年度の報酬総額は約25億円だった。一方、上場会社の役員報酬は09年度の決算から、年1億円以上を受け取る役員の名前と金額の開示が義務づけられた。日産の09年度分の取締役報酬の総額は約16億円に減り、その後も15億円前後になった。このうち、ゴーン前会長分は10億円前後だった。関係者によると、ゴーン前会長は自分が受け取るべき報酬は約20億円と考えていたが、報酬の個別開示の義務化を受け、「高額だ」と批判されることを懸念。役員報酬は約10億円にとどめ、別の名目でさらに約10億円を受け取る仕組み作りが必要だと考えたという。このため、自分が退任した時に顧問などになる契約を日産と締結。契約料として約10億円を毎年積み立て、退任後に支払われることにした。この約10億円は、取締役の報酬上限である29億9千万円のうち、使わなかった十数億円から支出したという。特捜部はこれを事実上の隠蔽工作だと判断。契約料を受け取るのは退任後だとしても、契約書は毎年交わされており、その都度、役員報酬として報告書に記載し、開示する義務があるとみている模様だ。ゴーン前会長は、直近の15~17年度分の報酬についても、同様の手口で約30億円を過少記載した疑いがあり、特捜部は立件する方針を固めている。虚偽記載の総額は8年度分で約80億円にのぼる見通しだ。

*15-2:https://digital.asahi.com/articles/ASLCS4QZJLCSUTIL009.html?iref=comtop_8_01 (朝日新聞 2018年11月24日) ケリー容疑者「役員報酬、全て適切に処理」 容疑を否認
 日産自動車の代表取締役会長だったカルロス・ゴーン容疑者(64)が役員報酬約50億円を隠したとして金融商品取引法違反(虚偽記載)の疑いで逮捕された事件で、共謀したとされる前代表取締役グレッグ・ケリー容疑者(62)が逮捕後、「役員報酬などは全て適切に処理していた」と容疑を否認していることが、関係者への取材でわかった。ケリー前代表取締役の逮捕容疑に対する認否が明らかになるのは初めて。2人は、2010~14年度のゴーン前会長の役員報酬について、実際は計約99億9800万円だったのに、有価証券報告書には約50億円少ない計約49億8700万円と記載したとして、19日に東京地検特捜部に逮捕された。ケリー前代表取締役は、米国の大学を卒業後、法律事務所の弁護士を経て1988年に北米日産に入社した。一貫して人事畑を歩み、08年に日産本社の執行役員に就任。常務執行役員を経て、12年に代表取締役に就いた。ゴーン会長の「側近中の側近」として大きな影響を持っていたとされるが、日本の日産本社にはほとんど姿を見せなかったという。


PS(2018年11月25、27日追加): *16-1に、「①ケリー容疑者が隠蔽主導か」「②経理は見抜けなかった」「③ゴーン氏と日産が毎年交わしていた契約書には報酬総額を約20億円と明記され、その年に受け取る約10億円と退任後に受け取る約10億円が分けて記載されており、前会長の直筆のサインもあった」「④社内の経理部門や外部監査人が見抜けないよう隠蔽したとみられる」「⑤ケリー氏は逮捕後、『社内に相談し、社外の意見ももらって問題ないと判断したたので適法だと思う』と説明している」と書かれている。
 しかし、何が法律違反かもわからないのに“容疑者”と呼んで大々的に広報するのは人権侵害だ。また、①⑤は、ケリー氏自身が日本や関係国の法律に詳しいわけではないため、社内・社外の意見を聞いて判断したと考える方が自然で、これは*16-2のケリー氏の「役員報酬記載や物件購入などについて、社内の担当者と相談し、外部の法律事務所や金融庁にも問い合わせて処理した」という説明とも合致しており、普通のプロセスである。なお、人事情報は誰にでも見せるべきものではないが、経理のトップと担当者は知っていなければ会計処理できず、有価証券報告書も作れず、外部監査人に説明することもできないので、②④は経理と外部監査人の両方を馬鹿にした説明だ。さらに、③の内容については、報酬総額約20億円をどういう形で契約書に明記したかは私は見ていないので知らないが、外部監査人は見た筈で、退職後にもらう報酬を退職金として扱うのは通常のことであって、この退職後にもらう筈の報酬を特別目的会社を使って海外不動産の購入等で運用していたとすれば、債務が確定していたとしても従業員の退職給付や確定拠出年金に近いものであり、犯罪ではないと思う。
 なお、2018年11月27日付で朝日新聞が、*16-3のように、「ゴーン前会長、17億円の私的損失、日産に転嫁か」という記事を書いているが、このように「か」を付けなければならないような不確定な記事を掲載すると、事実と異なった場合には名誉棄損・侮辱となり、これらの悪口報道によって失った機会利益もゴーン氏の損失とカウントされる。なお、何故か会社の名称を伏せているが、このゴーン氏の資産管理会社がジーアではないのか?また、「ゴーン氏が担保を追加しない代わりに、損失を含む全ての権利を日産に移した」というのは、約17億円の損失を日産に肩代わりさせたのではなく日産の保証を得たということで、その後にゴーン氏がこの会社に自分の将来の退職金をつぎ込んで将来の自宅等を購入したのなら日産に損失は与えていない。また、三菱自動車も会長職を解任したのは、このような理由で権威を失った人は会長として機能しないからであり、その原因が虚偽であった場合は、ゴーン氏は虚偽を報道したメディアや日産に名誉棄損・侮辱による慰謝料と機会損失に関する請求をすることができる。そして、特捜部が把握したから正しいかのような記事を書くことは、普段からメディアが主張している「権力を批判する言論の自由」などではなく、つての少ない外国人をターゲットにして権力と会社側についており、実際には権力を持っておらず自分たちに無害と思われる政治家やマイノリティーを集団で叩いて、権力と闘っているかのように見せているだけだ。

*16-1:https://digital.asahi.com/articles/DA3S13784124.html (朝日新聞 2018年11月25日) ケリー容疑者、隠蔽主導か 経理、見抜けず ゴーン容疑者報酬
 日産自動車の会長だったカルロス・ゴーン容疑者(64)が役員報酬約50億円を有価証券報告書に記載しなかったとして逮捕された事件で、ともに逮捕された前代表取締役のグレッグ・ケリー容疑者(62)が、前会長が退任後にこの50億円を受け取るという仕組み作りを主導していた疑いがあることがわかった。関係者によると、経理部門も見抜けない形で報酬を隠蔽(いんぺい)していたという。
■「適切に処理」周囲に説明
 退任後の報酬のためにゴーン前会長と日産が毎年交わしていた契約書には、報酬総額を約20億円と明記したうえで、開示してその年に受け取る約10億円と退任後に受け取る約10億円を分けて記載していたことも判明。前会長の直筆のサインもあった。東京地検特捜部はこの契約書を入手し、重要な物証として詳しい経緯を調べている。ゴーン前会長は側近のケリー前代表取締役と共謀し、2014年度までの5年度分の役員報酬について、実際は約100億円だったのに有価証券報告書には約50億円と虚偽の記載をしたとする金融商品取引法違反の容疑で逮捕された。1億円以上の報酬を得た役員は、09年度の決算から名前と金額の個別開示が義務づけられた。関係者によると、このルールの導入前は、ゴーン前会長の報酬は約20億円だったが、ゴーン前会長は開示によって「高額だ」と批判を浴びるのを懸念。表向きの報酬は約10億円になるよう、ケリー前代表取締役に対策を指示したという。ケリー前代表取締役は、残りの約10億円は別の名目で毎年、蓄積して退任後に受け取れる様々な仕組みを構築。ゴーン前会長の退任後に、コンサルティング契約や、競合する会社を設立しないという契約を結ぶことなどを考えたという。こうした仕組みを把握していたのはケリー前代表取締役らごく少数で、社内の経理部門や外部の監査法人が見抜けないように隠蔽したとみられるという。一方、ケリー前代表取締役が逮捕後、役員報酬などについて「全て適切に処理していた。適法だと思う」と周囲に説明していることが24日、関係者への取材でわかった。「社内に相談し、社外の意見ももらって問題ないと判断した」と語っているという。

*16-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20181125&ng=DGKKZO38151530U8A121C1MM8000 (日経新聞 2018年11月25日) ゴーン元会長の報酬「適切に処理」 逮捕の日産役員説明
 日産自動車元会長のカルロス・ゴーン容疑者(64)の報酬過少記載事件で、元代表取締役のグレッグ・ケリー容疑者(62)が報酬の記載などについて「担当者らと相談し、適切に処理した」と説明していることが24日、関係者の話で分かった。東京地検特捜部にも同様の趣旨の供述をするとみられる。ケリー役員は日産の投資資金を流用した海外物件購入などの不正行為も主導したとされる。関係者によると、ケリー役員は報酬過少記載や物件購入などについて「(社内の)担当者と相談し、外部の法律事務所や金融庁にも問い合わせて処理した」と説明。不正行為との認識はないと主張しているという。ゴーン元会長とケリー役員は15年3月期までの5年間の有価証券報告書に元会長の金銭報酬を約50億円過少に記載したとして金融商品取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)の疑いで特捜部に逮捕された。

*16-3:https://digital.asahi.com/articles/DA3S13786345.html (朝日新聞 2018年11月27日) 私的損失、日産に転嫁か ゴーン前会長、17億円 特捜部把握
 役員報酬を有価証券報告書に約50億円分少なく記載した疑いで逮捕された日産自動車の前会長カルロス・ゴーン容疑者(64)が2008年、私的な投資で生じた約17億円の損失を日産に付け替えていた疑いがあることがわかった。証券取引等監視委員会もこの取引を把握し、会社法違反(特別背任)などにあたる可能性があると、関係した銀行に指摘していたという。東京地検特捜部も同様の情報を把握している模様だ。複数の関係者によると、ゴーン前会長は日産社長だった06年ごろ、自分の資産管理会社と銀行の間で、通貨のデリバティブ(金融派生商品)取引を契約した。ところが08年秋のリーマン・ショックによる急激な円高で多額の損失が発生。担保として銀行に入れていた債券の時価も下落し、担保不足となったという。銀行側はゴーン前会長に担保を追加するよう求めたが、ゴーン前会長は担保を追加しない代わりに、損失を含む全ての権利を日産に移すことを提案。銀行側が了承し、約17億円の損失を事実上、日産に肩代わりさせたという。一連のやりとりの中で、銀行側は、権利を日産に移す条件として、日産の取締役会で承認を取るよう求めたが、ゴーン前会長側はこの要請を拒否。銀行側は日産が大手企業であることなどを考慮し、ゴーン前会長の意向を最終的に受け入れた。銀行側との交渉にはゴーン前会長に近い幹部が関わっていたという。関係者によると、監視委は同年に実施した銀行への定期検査でこの取引を把握。ゴーン前会長の行為が、自分の利益を図るために会社に損害を与えた特別背任などにあたる可能性があり、銀行も加担した状況になる恐れがあると、銀行に指摘したという。特捜部は、ゴーン前会長による会社の「私物化」を示す悪質な行為とみている模様だ。ゴーン前会長は、10~14年度の5年分の役員報酬を約50億円少なく有価証券報告書に記載した金融商品取引法違反の容疑で逮捕された。直近の15~17年度分の約30億円も過少に記載した疑いがある。このほか、海外の高級住宅を会社側に購入させて家族で利用したり、業務実態がない姉のために年10万ドル(約1100万円)前後を支出させたりした疑惑が浮上している。日産の広報は「捜査が入っているので、何も答えられない」とコメントした。
■三菱自も会長職を解任
 三菱自動車は26日夕、臨時取締役会を開き、ゴーン容疑者の会長職を解任し、代表権を外すことを全会一致で決めた。会長は次の株主総会までの間、暫定的に益子修・最高経営責任者(CEO)が兼務する。ゴーン容疑者は日産自動車、仏ルノー、三菱自の会長を兼務し、3社連合の経営を率いてきたが、日産も22日の臨時取締役会で会長職を解き、代表権を外すことを全会一致で決めていた。一方、ルノーは20日の取締役会でゴーン会長兼CEOの解任を見送り、CEOの暫定代行にティエリー・ボロレ最高執行責任者(COO)を充てる人事を決めた。日産・三菱自とルノーの間で対応は分かれている。

| 経済・雇用::2018.1~2018.11 | 02:29 PM | comments (x) | trackback (x) |
2018.10.9 新技術によるイノベーション投資が、本物の経済成長とより豊かな社会を作り出すこと (2018年10月10、11、12、13、15、16、19、20、21日に追加あり)
  
                               2017.11.6朝日新聞

(図の説明:癌細胞は、日頃から細胞分裂の失敗などで一定割合できるが、左図のように、免疫力が強くて健康ないうちは免疫細胞の方が勝ち、免疫力が弱くなると増殖し始める。癌細胞は、もともとは自分の細胞であるため免疫が効きにくく、中央の図のように、これまで放射線療法・外科的療法・化学療法が標準治療だったが、これに堂々と免疫細胞が加わったわけだ。今回のノーベル賞受賞は、右図のように、「CTLA―4」という蛋白質が働かないようにして効果を出す免疫療法だ。私は、本人の免疫細胞を使えば、化学療法のように無差別に健康な細胞まで攻撃して副作用を起こすことがなくなるため、最も効果的な治療になる筈だと考える)

(1)今年のノーベル賞
 今年のノーベル賞は、免疫を使った癌治療、生物・物理の研究者が使うレーザー応用技術、進化をまねた薬品の開発、気候変動や技術革新と経済成長を結び付けた理論など、私が指摘していた医学・生物・生態系分野の受賞が多くて嬉しいものだった。しかし、日本人のノーベル賞受賞者には、これまで女性が一人もおらず、これは、日本における女性研究者の軽視によるだろう。

1)ノーベル医学・生理学賞
 ノーベル医学・生理学賞は、*1-1、*1-2のように、京大の本庶佑特別教授と米テキサス大学のジェームズ・アリソン教授が受賞された。本庶氏らは免疫を使って癌を治療する方法を開発し、小野薬品とブリストル・マイヤーズスクイブが治療薬「オプジーボ」「ヤーボイ」を共同開発して、現在は皮膚癌・肺癌・胃癌などの癌に効くとされ、60カ国以上で承認されている。

 癌は、自分の細胞のDNAが変化したものであるため自身の免疫が効きにくいのだが、免疫が癌をたたく作用を抑制する「CTLA―4」という蛋白質が働かないようにすることで、効果を出したのだそうだ。そして、「オプジーボ」や「ヤーボイ」は、*3-3のように進行癌にすら効くのだから、それ以前のステージの癌で免疫を弱くする治療をしていない人なら、さらによく効く筈である。

 なお、現在は高額な薬価が問題になっているが、対象となる患者が増えて大量に生産されるようになれば、他の製品と同様、安くなる。さらに、現在、副作用とされているものの中には、大量の癌細胞を死滅させるため、一時的にショック状態を起こすものもあるようだ。

2)ノーベル物理学賞
 物理学賞は、*1-2のように、米国のアーサー・アシュキン(96)、フランスのジェラール・ムル(74)、カナダのドナ・ストリックランド(59)の3氏で、レーザーの応用技術で医学・工学などで研究を支えているものだそうだ。

 アシュキン氏が開発したのは「光ピンセット」と呼ばれる技術で、生物物理学の研究者の多くが使っているもので、ムル氏とストリックランド氏が開発したのは「チャープ・パルス増幅法(CPA)」という高強度の超短パルスレーザー技術で、近視矯正手術(レーシック手術)で使われているのだそうだ。

3)ノーベル化学賞
 化学賞は米国のフランシス・アーノルド(62)とジョージ・スミス(77)、英国のグレゴリー・ウィンター(67)の3氏で、生物の進化をまねることで作る医薬品開発に有用な蛋白質をつくる手法を開発されたのだそうだ。

 ただ、「①常に厳しく『なぜ』を問いつめる」「②若い人とも同じ目線で議論する」と書かれているうち、①は、科学者なら当然で、②も、よい発想をする(ここが重要)若い研究者なら研究を前進させるために当然なので、特に書くのがおかしいくらいであり、それをやっていない人がいるとすれば、その方が変である。

4)ノーベル経済学賞
 ノーベル経済学賞は、*1-3のように、気候変動や技術革新が持つ要素と経済成長を結び付けた業績を評価して、ウィリアム・ノードハウス米エール大教授(77)とポール・ローマー米ニューヨーク大教授(62)に授与されることになったそうだ。
 
 これまでの経済学は、環境や技術革新を無視していたが、ノードハウス氏は気候変動と経済成長の関係を定量モデルで説明して炭素税のような政策介入がもたらす効果を説明され、ローマー氏は技術革新が経済成長を促す「内生的成長理論」を確立されたそうで、これらは、確かに世界に役立つ研究だ。

 なお、メディアの中には、ノーベル経済学賞を受賞したのが日本人でないことを残念がるところもあったが、日本は、*1-4のように、大規模な金融緩和を行い、物価を上げ、そうすれば個人消費が増えるなどと言っている国だ。実際には、それによって、円の価値が下がり、モノの価値が上がって、円建の債権や預金を目減りさせているだけであり、日本の経済学者の多くが思考停止している。そのため、これで「ノーベル経済学賞・・」と言うのはおこがましすぎる。

(2)新技術が生む新しい市場とその技術の普及を阻む厚労省
 ノーベル生理学・医学賞を受賞した本庶佑氏が、免疫細胞による攻撃から癌細胞が逃れる仕組みを解明し、*2-1のように、小野薬品とブリストル・マイヤーズスクイブが癌免疫薬を開発して5兆円市場を生み出し、世界中の製薬会社がこの仕組みを応用した新薬の開発にしのぎを削っているそうだ。

 にもかかわらず、*2-2のように、厚労省が再生医療などの細胞を用いる治療の監視体制を強めるという馬鹿な方針を決め、「がん免疫療法」も効果がはっきりしないとして制限するそうだが、これは、癌治療のイノベーションを邪魔している。治療効果は、それを使って治療しなければいつまでも検証できないが、*3-3のように、進行癌でさえ治るという効果は他の治療法より優れているため、駄目な理由を挙げるのではなく、使えるように力を貸すべきだ。

(3)「オプジーボ」や「ヤーボイ」などの癌治療薬
 小野薬品の「オプジーボ」やBMSの「ヤーボイ」などの癌免疫薬は、*3-1のように、免疫細胞のオン・オフを制御する分子に作用するため「免疫チェックポイント阻害剤」と呼ばれ、癌細胞が免疫細胞にかけたブレーキを解除し、攻撃開始のスイッチを入れるのだそうだ。

 しかし、免疫による攻撃力が弱っていれば、いくらブレーキを解除しても癌細胞を攻撃して死に至らしめることはできない。そのため、進行癌よりも初期の癌、化学療法・放射線療法・リンパ節切除などで免疫力の弱くなった身体よりもその前の身体の方が効きがよいだろうし、*3-2のように、免疫細胞の攻撃力を高めるのも有効だろう。

(4)人材育成
 「百里の道も一歩から」と言われるように、ノーベル賞を受賞する科学者をトップとすれば、その下には、ピラミッド型に多くの人材がいる。その「初めの一歩」は小中高校での教育だが、これについて、*4のように、「教科の数値評価をなくす」という議論がされているそうだ。

 しかし、教科毎に行う数値評価をなくした上で、各教科で「知識・技能」「思考力・判断力・表現力等」などを項目ごとに「ABC」といった形で評価する「観点別評価」だけにするというのは、たいした知識もない小中高生に思考力や判断力を求めることになり、評価する先生の価値観やレベルにもばらつきがあるため、評価の客観性を無くし、勉強する目標や動機付けを失わせることになって、とりかえしがつかない。

 私は、児童生徒や保護者が数値評価のみに注目するのも問題だが、それを無くして知識獲得の目標や動機を失わせる方がよほど問題だと考える。日本人全員が手を繋いで仲良くサボっても、世界は待っていてはくれないのだから。

*1-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20181002&ng=DGKKZO35987710R01C18A0MM8000 (日経新聞 2018年10月2日) ノーベル生理学・医学賞に本庶氏、がん免疫療法開発
 スウェーデンのカロリンスカ研究所は1日、2018年のノーベル生理学・医学賞を京都大学の本庶佑特別教授(76)と米テキサス大学のジェームズ・アリソン教授(70)に授与すると発表した。本庶氏らは人の体を守る免疫の仕組みを利用してがんをたたく新たな治療法開発に道を開いた。研究成果を応用して、肺や腎臓など様々ながんに効く新しいがん治療薬が続々と登場している。日本のノーベル賞(総合2面きょうのことば)受賞者は16年の東京工業大学の大隅良典栄誉教授に続き26人目(米国籍を含む)。生理学・医学賞は計5人となった。授賞理由は「免疫抑制の阻害によるがん治療法の発見」。がんは先進国、新興国を問わず死因の上位に位置しており、カロリンスカ研は「世界で年間で数百万人もの命を奪うがんとの闘いで、本庶氏の発見に基づく治療法は極めて高い効果を示した」と評価した。同日、京大で記者会見した本庶氏は受賞の喜びを述べた上で、「私は基礎研究をしているが、医学で何らかの治療につながらないかと常に考えている」と語った。本庶氏は「PD―1」と呼ぶたんぱく質を免疫細胞の表面で発見し、92年に発表した。後にこのたんぱく質が、がんをたたく免疫の機能を抑えるよう働いていることを突き止めた。本庶氏の成果を生かし、小野薬品工業と米製薬大手ブリストル・マイヤーズスクイブ(BMS)が治療薬「オプジーボ」(一般名ニボルマブ)を共同開発。14年に世界に先駆けて日本で皮膚がんの薬として発売された。その後、肺や胃などのがんに対象が広がり、60カ国以上で承認されている。アリソン氏は90年代半ば、免疫ががんをたたく作用を抑制する「CTLA―4」という別のたんぱく質を働かないようにすることで、マウスのがんを治療することに成功し、論文を発表した。従来は体内で病気と闘う免疫の機能はがんにはうまく働かないことが大きな課題だったが、両氏の成果は新たな発想の治療法の道筋をつけた。免疫を利用してがんをたたくがん免疫薬は世界の製薬会社が開発に力を入れる。市場規模は17年で1兆円ともいわれる。一部の患者では薬が効いて長期間の生存を可能にする一方、高額な薬価が議論を呼んだ。本庶氏は同日、日本経済新聞のインタビューに「よい(研究の)タネなら必ず成功する。よいタネを生み出し育てることが最も重要だ」と強調した。授賞式は12月10日にストックホルムで開く。賞金は900万スウェーデンクローナ(約1億1500万円)。2氏で分け合う。
*本庶佑氏(ほんじょ・たすく) 1942年京都市生まれ。66年京都大学医学部卒業。京大大学院医学研究科博士課程修了後、米国立衛生研究所(NIH)や東京大学、大阪大学での研究を経て84年京大医学部教授。免疫細胞の表面にあるたんぱく質「PD―1」を発見し92年に論文発表。新たながん治療薬開発に道を開いた。13年文化勲章、16年京都賞。17年から現職。76歳。

*1-2:https://digital.asahi.com/articles/DA3S13707921.html (朝日新聞 2018年10月4日)ノーベル賞、3賞決まる 医学生理学賞に本庶さん、物理学賞に3氏、化学賞に3氏
 今年のノーベル賞は1~3日、自然科学系3賞が発表され、医学生理学賞に京都大の本庶佑(ほんじょたすく)特別教授らが選ばれた。物理学賞はレーザー技術を発展させた欧米の3氏に、化学賞は薬やバイオ燃料などの新たな作成法に道を開いた米英の3氏に贈られる。授賞式は12月10日にある。
■がん免疫治療法、切り開く チェックポイント阻害剤につながる発見 医学生理学賞に本庶佑さん
 医学生理学賞に決まったのは、京都大の本庶佑(ほんじょたすく)特別教授(76)と、米テキサス大MDアンダーソンがんセンターのジェームズ・アリソン教授(70)。それぞれの研究がきっかけとなり生まれた「免疫チェックポイント阻害剤」は、進行したがんは治らないとされるこれまでの常識を変えつつある。治療への活用はさらに広がろうとしている。こうした免疫治療薬は、免疫療法の一部。免疫療法は手術や抗がん剤、放射線に続く「第四の治療法」と期待されてきたが、これまでの大半は効果が確認されていない。本庶さんらは1991年、「PD―1」を見つけた。大学院生として本庶さんの研究室に所属し、発見に関わった滋賀医科大の縣保年(あがたやすとし)教授(53)によると、当初は細胞が自ら死ぬ現象にかかわる分子とみられていたが、その機能はなかなかはっきりと分からなかった。PD―1が相手役のたんぱく質とくっつくと免疫細胞の作用にブレーキがかかるらしいことが分かったのは、99年のことだった。やはり研究室の大学院生だった岩井佳子・日本医科大教授は2002年、抗体という物質でPD―1と相手役がくっつくのを邪魔すれば、抑えつけられた免疫のブレーキを外してがん細胞への攻撃力を高められることを報告。この物質が免疫チェックポイント阻害剤「オプジーボ」につながった。縣さんは「まさに点と点がつながるように、一つひとつの研究が積み重なって大きな成果につながった。本庶先生の指導力がそれだけ大きかった」と語る。オプジーボの効果は驚くほどだった。九州大病院の中西洋一・呼吸器科教授らは3年前、抗がん剤が効かずに状態が落ちていた肺がん患者に、オプジーボを初めて使った。数日のうちにがんが縮小し、患者は元気を取り戻した。この薬は、効く人には効果が長く続きやすいという特徴がある。千葉大腫瘍(しゅよう)内科の滝口裕一教授は「がんが転移しもう治らないと考えられた状態の人が、がんが増大しないまま数年間生き続けているケースも少なくない」と話す。アリソン教授も同じころ、免疫のブレーキにかかわる別の分子「CTLA―4」の研究を進め、この作用を利用したがん治療薬「ヤーボイ」の開発に道を開いた。本庶研で06~15年にPD―1の研究をした慶応大学の竹馬俊介講師によると、オプジーボはヤーボイよりも幅広い種類のがんの治療に使われ、臨床での評価はより高いという。東京都立駒込病院の吉野公二・皮膚腫瘍科部長は「オプジーボとヤーボイなど2種類を使うとさらに効果が高まることがあり、こうした手法が広がりそうだ」と話す。
■「オプジーボ」課題も
 課題もある。これらの薬には重症筋無力症や劇症1型糖尿病といった、従来の抗がん剤にあまり見られない副作用がある。また、免疫チェックポイント阻害剤は高価で、よく効くのは2~3割の人にとどまる。効くかどうかを事前に予測するのは難しい。最近、がん細胞の中の遺伝子変異が多い人では効きやすいらしいことがわかってきた。細胞中の数百の遺伝子を同時に調べて遺伝子変異の量をみる「パネル検査」という手法が開発され、来年にも国内で保険適用される可能性がある。
■レーザー応用技術、研究に寄与 物理学賞に米・仏・加の3氏
 物理学賞に決まったのは、米国のアーサー・アシュキン(96)、フランスのジェラール・ムル(74)、カナダのドナ・ストリックランド(59)の3氏。レーザーの応用技術を大きく発展させ、医学や工学など幅広い分野でいま、研究を支えている。アシュキン氏が開発したのは「光ピンセット」と呼ばれる技術だ。レーザーによって、細胞やウイルスといった微小な物体を自由自在に動かすことができる。大阪市立大の東海林竜也講師(分析化学)によると、光には物をとらえる力があることはわかっていたものの、だれも実証できなかった。アシュキン氏は1970~80年代にかけて、レーザーの光をレンズで集めることで、水溶液中の粒子を自由に動かせることを実証した。アシュキン氏の発見が、たんぱく質や分子を壊すことなく、自由に操る技術につながった。筋肉中の分子を操作する研究に使っている大阪大の柳田敏雄特任教授(生物物理学)は「分子やたんぱく質をつかまえることを通して、体の中のことがより分かる。生物物理学の研究者の多くが、いまは光ピンセットを使っている」とその業績をたたえる。ムル氏とストリックランド氏が開発したのは「チャープ・パルス増幅法(CPA)」という高強度の超短パルスレーザーの技術だ。レーザーのパルスの幅をいったん広げるなどしてから強度を高める独創的な手法を編み出した。東京大物性研究所の板谷治郎准教授は「それまで高強度のパルスを得るには、巨大な施設が必要だった。CPAの登場によって、実験室規模の装置ですむようになった」と話す。応用も幅広い。よく知られるのは近視矯正手術(レーシック手術)。京都大先端ビームナノ科学センターの橋田昌樹准教授によると、超短パルスレーザーは切れ味がよく、熱も出にくいので角膜を切るのに適している。また、装置の小型化を見込んで、がんの重粒子線治療の加速器などへの応用も検討されている。
■抗体医薬の開発加速 化学賞に米・英の3氏
 化学賞は米国のフランシス・アーノルド(62)とジョージ・スミス(77)、英国のグレゴリー・ウィンター(67)の3氏に決まった。生物の進化をまねることでバイオ燃料や医薬品の開発に有用なたんぱく質をつくる手法を開発した。アーノルド氏は、「指向性進化法」と呼ばれる自然界で起こる「選択」に似た方法で、さまざまな酵素を改良する手法を確立した。東京大学大学院総合文化研究科の新井宗仁教授は「洗剤に入っている酵素など、たんぱく質が壊れやすい環境でも働くように安定した酵素を作り出した。私たちも微生物から軽油をつくる研究を進めている」と話す。かつてアーノルド氏の研究室に在籍し共著の論文もある産業技術総合研究所の宮崎健太郎研究グループ長は「常に厳しく『なぜ』を問いつめる人で、若い人とも同じ目線で議論する人だった。そんな姿勢が今回の受賞につながったと思う」。スミス氏の開発した「ファージディスプレー」という技術は、抗体医薬などの開発につながった。ねらった標的に最もよくくっつく抗体を取り出す手法。ウィンター氏はリウマチなど自己免疫の病気に使われる「ヒュミラ」の開発につなげた。抗体医薬は乳がんなどの治療にも適用されている。東京大の菅裕明教授は、「彼らの技術は、抗体医薬の開発を加速させた」と高く評価。本庶佑氏が開発にかかわった免疫チェックポイント阻害剤「オプジーボ」の開発にも役立てられたという。

*1-3:http://qbiz.jp/article/142019/1/ (西日本新聞 2018年10月8日) ノーベル経済学賞に米の2教授 気候変動、技術革新巡り  
 スウェーデンの王立科学アカデミーは8日、2018年のノーベル経済学賞を、ウィリアム・ノードハウス米エール大教授(77)とポール・ローマー米ニューヨーク大教授(62)に授与すると発表した。気候変動や技術革新が持つ要素と、経済成長を結び付けた業績を評価した。アカデミーは両氏の業績に関して「どのように持続可能な経済成長を実現できるかという問いへの答えに、私たちをかなり近づけてくれる」と説明した。ノードハウス氏は気候変動と経済成長の関係を定量モデルで説明した。炭素税のような政策介入がもたらす効果を説明するのに用いられるという。「気候カジノ」や「地球温暖化の経済学」といった著書がある。ローマー氏は技術革新が経済成長を促すことを示す「内生的成長理論」を確立。新たなアイデアを促す規制や政策に関する研究を数多く生み出した。16〜18年には世界銀行のチーフエコノミストも務めた。授賞式は12月10日にストックホルムで開かれ、賞金900万クローナ(約1億1200万円)を両氏で分ける。

*1-4:http://qbiz.jp/article/135781/1/ (西日本新聞 2018年6月15日) 日銀、大規模緩和を維持 金融政策、米欧と違い鮮明
 日銀は15日、2日目の金融政策決定会合を開き、現行の大規模金融緩和策の維持を決めた。2%の物価上昇目標の達成が見通せない中、短期金利をマイナス0・1%、長期金利を0%程度に抑え、景気を下支えする。景気の現状判断は「緩やかに拡大している」で据え置いた。米連邦準備制度理事会(FRB)は13日、約3カ月ぶりの利上げを決定。欧州中央銀行(ECB)も14日、量的金融緩和政策を年内に終了することを決めた。米欧の中央銀行と日銀の間で金融政策の方向性の違いが鮮明になった。日銀は、個人消費の判断を「緩やかに増加している」、輸出は「増加基調にある」とし、それぞれ判断を据え置いた。4月の消費者物価指数は前年同月比0・7%上昇にとどまり、伸び率が2カ月連続で鈍化した。会合では、景気が堅調にもかかわらず、物価が伸び悩んでいる要因も議論したとみられる。年80兆円をめどとする長期国債の買い増し額や、年約6兆円の上場投資信託(ETF)の購入も維持した。片岡剛士審議委員は現行政策の据え置きに反対した。黒田東彦総裁は15日午後に記者会見を開き、金融政策の運営や景気、物価情勢について見解を示す。

<新技術が生む新市場とその普及を阻む厚労省>
*2-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20181002&ng=DGKKZO35988110R01C18A0TJ2000 (日経新聞 2018.10.2) がん免疫薬 5兆円市場生む、ノーベル賞に本庶氏 国内外で開発競争
 ノーベル生理学・医学賞を受賞した本庶佑氏が解明したのは、免疫細胞による攻撃からがん細胞が逃れる仕組みだ。これを応用したのが小野薬品工業の「オプジーボ」に代表されるがん免疫薬で、市場規模は2017年で1兆円とされる。25年にはこれが5兆円まで広がるともいわれ、世界中の製薬会社がこの仕組みを応用した新薬の開発にしのぎを削っている。オプジーボは小野薬品と米製薬大手ブリストル・マイヤーズスクイブ(BMS)が共同開発した。小野薬品の19年3月期の連結業績見通しは売上高が2770億円。このうち、900億円をオプジーボの直接的な販売で稼ぐ見通しだ。ほかに提携先などから得られるオプジーボのライセンス収入などは400億円程度あるとみられる。小野薬品の時価総額は15年ごろ1兆5千億円程度だった。これが、オプジーボ発売後の16年には、ピークとなる約3兆円を記録。長期にわたって効果を発揮する特徴があるほか、がんが消失するケースがあることなどから、株式市場でも高評価を得たためだ。オプジーボは発売時、100ミリグラム73万円。仮に1年使用した場合は3000万円以上かかるという試算が出たため、「あまりにも高すぎる」「財政を破綻させる」との批判が噴出した。少子高齢化が進む中、高騰する医療費と薬剤費が社会問題として取り上げられるようになった。その結果、本来2年に1度の薬価改定をまたず、17年2月に突然、オプジーボの薬価は半額に引き下げられた。医療費の抑制だけでなく、薬価制度そのものや社会保障の見直しに向けた議論を活発化させるきっかけにもなった。本庶氏が発見したのは「PD―1経路」と呼ぶ免疫の仕組み。がん細胞がこの仕組みを使って、免疫から逃れていたことを解明した。現在、この成果を生かした研究の方向性は大きく2つ。新しいがん免疫薬そのものを探すことと、すでに存在するがん免疫薬と他の抗がん剤などを一緒に使うことで効果を高める「併用療法」の確立だ。PD―1経路を遮断してがんを弱らせる仕組みを利用するがん免疫薬を扱うのは5陣営あり、このうちトップを走るのが小野薬などのオプジーボだ。このほか、米メルクの「キイトルーダ」、英アストラゼネカの「イミフィンジ」、スイスのロシュの「テセントリク」、独メルクの「バベンチオ」がある。ノバルティス(スイス)なども開発を進めている。国内勢は併用療法が主だ。第一三共は抗体に化合物を結びつけた抗体薬物複合体(ADC)の技術に強みを持つ。開発中の抗がん剤「DS8201」とオプジーボの併用療法の臨床試験(治験)を始める方針。エーザイや協和発酵キリンも自社開発の抗がん剤とオプジーボの併用療法を探る。このほか、創薬ベンチャー企業も名のりをあげており、古い医薬品を含め併用療法について研究している。日本勢では、ブライトパス・バイオ、キャンバス、オンコリスバイオファーマなどが担い手だ。併用療法の狙いは、一部の患者にしか効かないというがん免疫薬の欠点を補うことだ。ベンチャー各社の業績はまだ赤字基調だが、併用療法が実を結べば、恩恵を受ける患者数は格段に増える。その結果、巨額の収益をもたらす可能性がある。一方、がん免疫薬を含む「バイオ医薬品」では日本勢が出遅れているとの指摘がある。17年、世界で最も売れた医薬品である米アッヴィの関節リウマチ治療薬「ヒュミラ」(年間売上高は約2兆円)を含め、売上高の大きい製品ベスト5のうち、4品目がバイオ医薬品だとするデータもある。国内企業では、中外製薬が関節リウマチ治療剤「アクテムラ」、協和発酵キリンが抗がん剤「ポテリジオ」などを独自技術で開発したが、1兆円を超える薬には育っていない。京都大学の山中伸弥教授の功績であるiPS細胞をはじめとする再生医療でも、応用研究では欧米勢が先を行くとの指摘もある。日本発で革新の種が出たとしても、それをいかに育み収益に結びつけていくのか。企業の姿勢も問われそうだ。

*2-2:https://digital.asahi.com/articles/DA3S13713145.html (朝日新聞 2018年10月7日) 再生医療の監視強化へ 効果不明、多くの「がん免疫療法」も 厚労省方針
 厚生労働省は、再生医療など細胞を用いる治療の監視体制を強める方針を決めた。効果がはっきりしない多くの「がん免疫療法」も対象となる。医療機関が事前審査の内容と大きく異なる治療をした場合、国が把握できる仕組みにして、審査の議事録などをウェブ上に公開させて透明性を高める。がん免疫療法をめぐっては、ノーベル医学生理学賞の受賞が決まった、京都大の本庶佑(ほんじょたすく)特別教授の研究をもとに開発された「オプジーボ」などの免疫チェックポイント阻害剤が近年、登場。一部のがんに公的医療保険が適用されている。再生医療安全性確保法=キーワード=が規制する治療法とは別の手法だが、「免疫療法」と、ひとくくりで混同されることもある。細胞を用いる治療は、2014年施行の同法で規制された。iPS細胞の登場を契機に、患者の安全を確保しながら再生医療を発展させる目的に加え、患者自身の細胞を使う根拠が不明瞭な免疫療法や美容医療に網をかける狙いもあった。同法のもと、医療機関は治療の計画をつくり、病院や民間団体が設ける第三者の審査委員会に審査させる。ただ、審査の狙いは安全性の確保で、効果は保証していない。iPS細胞などを用いる「第1種」と比べ、患者の細胞を集めて使うがん免疫療法などの「第3種」は、審査委員会の要件が緩く、国のチェックを受けずに実施できる。東海大の佐藤正人教授(整形外科)の調査によると、第3種のがん免疫療法の届け出は、今年3月までに民間クリニックなどで1279件に上ることがわかった。高額な治療費を請求する施設もあり、問題視されている。同法の省令改正案では、計画に反する事態が起きたときの対応手順を新たに設け、治療に携わる医師に、医療機関の管理者への報告を義務づける。重大なケースは速やかに審査委員会の意見を聞き、委員会で出た意見を厚労省に報告させる。また、審査委員会の要件を厳しくし、第3種では、計画審査を頼んだ医療機関と利害関係のない委員の出席数を現在の2人以上から過半数とする方針だ。
厚労省は早ければ省令を今月中にも改正、公布する。
◆キーワード
<再生医療安全性確保法> 再生医療などの安全性の確保が主な目的で、細胞を用いた治療を広く規制する。計画の事前審査や国への届け出を義務づける。免疫の働きでがん細胞を倒そうとする「がん免疫療法」のうち、免疫細胞を使う手法も対象となる。

<癌治療薬>
*3-1:https://www.nikkei.com/paper/related-article/?b=20181007&c=DM1&d=0&nbm=DGKKZO36173760V01C18A0MY1000&ng=DGKKZO36173840V01C18A0MY1000&ue=DMY1000 (日経新聞 2018年10月7日) がん免疫薬 ブレーキ解除は逆の発想
 免疫の力を利用する抗がん剤を指す。小野薬品工業の「オプジーボ」や米BMSの「ヤーボイ」など最新のがん免疫薬は、免疫細胞のオン・オフを制御する分子に作用するため「免疫チェックポイント阻害剤」と呼ばれる。がん細胞が免疫細胞にかけたブレーキを解除し、攻撃開始のスイッチを入れる。従来のがん免疫薬が攻撃力を高めることを目指していたのに対し、逆の発想で開発された。対象患者を増やすため複数の免疫チェックポイント阻害剤や他の抗がん剤を併用する試みが盛んだ。BMSは大腸がん治療でオプジーボとヤーボイの併用療法の承認を取得した。患者ごとにがんの遺伝子変異を調べ、最適な治療薬を探す研究も活発になっている。

*3-2:https://www.nikkei.com/paper/related-article/tc/?b=20181002&bu (日経新聞 2018年10月2日) がんVS免疫療法 攻防100年、高コストや副作用が課題
 ウイルスや細菌などの病原体から身を守る免疫の仕組みを利用する「がん免疫療法」が注目されている。免疫をがん治療に生かす研究は100年を超す歴史があるが、科学的に治療効果を認められたものはほとんどなく、これまでは異端視されていた。状況を変えたのは2つの新しい技術の登場で、手術、放射線、抗がん剤などの薬物治療に次ぐ「第4の治療法」として定着しつつある。19世紀末、米ニューヨークの病院で、がん患者が溶血性連鎖球菌(溶連菌)に感染し高熱を出した。熱が下がって一命をとりとめると、不思議なことが起きていた。がんが縮小していたのだ。外科医ウィリアム・コーリーは急性症状を伴う感染症にかかったがん患者で似た症例があると気づき、殺した細菌を感染させてみたところ、がんが消える患者もいた。毒性の強い細菌に感染することで免疫が刺激され、がん細胞も攻撃したとみられる。コーリーの手法はがん免疫療法の先がけといわれる。だが副作用で命を落とす患者も多く、定着しなかった。免疫が再び注目されるのは1950年代後半だ。ノーベル生理学・医学賞を受賞したフランク・バーネット氏が「免疫が日々発生するがん細胞を殺し、がんを未然に防いでいる」という説を提唱。60年代以降、結核予防ワクチンのBCGを使う治療法や丸山ワクチンが登場した。その後、免疫細胞にがんを攻撃するよう伝えて活性化するサイトカインという物質や免疫の司令塔となる樹状細胞を利用する方法、ペプチドと呼ぶたんぱく質断片を使うワクチンなども試みられた。効果があると科学的に認められるには、いずれも数多くの患者を対象にした臨床試験(治験)が必要だ。しかも、抗がん剤など従来の治療を受けた患者らと比べて、治療成績がよくなることを示さなければならない。免疫療法でそうした効果を証明できたものはほとんどなかった。「がん細胞は免疫を巧妙にかいくぐっているからだ」と長崎大学の池田裕明教授は説明する。「免疫を活性化する手法ばかり研究していた」ことが失敗の原因とみる。20世紀末、がんが免疫の攻撃を逃れる仕組みの研究が進んだ。その中で見つかったのが「免疫チェックポイント分子」と呼ぶたんぱく質だ。免疫は暴走すると自身の正常な細胞も攻撃してしまうため、普段はアクセルとブレーキで制御されている。がん細胞はこの仕組みを悪用し、免疫にブレーキをかけて攻撃を中止させる。チェックポイント分子の「CTLA―4」や「PD―1」の働きが解明され、2010年代前半にその働きを阻害する薬が開発された。免疫細胞は攻撃力を取り戻してがん細胞を殺す。皮膚のがんの一種の悪性黒色腫で高い治療成績を上げ、肺がんや腎臓がんなどでも国内承認された。CTLA―4を発見した米テキサス州立大学のジェームズ・アリソン教授、PD―1を突き止めた京都大学の本庶佑特別教授はノーベル賞の有力候補といわれる。注目を集める新しい治療法はもうひとつある。「遺伝子改変T細胞療法」だ。患者から免疫細胞のT細胞を取り出し、がん細胞を見つけると活性化して増殖する機能を遺伝子操作で組み込む。増やしたうえで患者の体内に戻すと、免疫細胞はがんが消えるまで増殖する。大阪大学の保仙直毅准教授は「免疫のアクセルを踏みっぱなしにする治療法だ」と説明する。がんを見つけるセンサーに「キメラ抗原受容体(CAR)」を使うタイプはT細胞と組み合わせて「CAR―T細胞療法」とも呼ばれる。新潟大学の今井千速准教授らが米国留学中の04年に論文発表し、スイスの製薬大手ノバルティスが実用化。17年8月、一部の白血病を対象に米国で承認された。治療効果は抜群で、1回の点滴で7~9割の患者でがん細胞が消え、専門家らを驚かせた。日本でも近く実用化される見通しだ。2つのがん免疫療法にも課題はある。免疫チェックポイント阻害剤が効くのは承認されたがんのうちの2~3割の患者で、数百万円という高い投薬費も問題になった。CAR―T療法は塊を作る「固形がん」には効果が薄いとされる。過剰な免疫反応による発熱や呼吸不全などの副作用もある。遺伝子操作や細胞の培養にコストがかかり、治療費は5000万円を超す。課題の克服を目指す研究も国内外で進んでいる。がん免疫療法はこれからが本番だ。

*3-3:https://www.nikkei.com/paper/related-article/?b=20181002&c (日経新聞 2018年10月2日) がん免疫療法 末期の患者にも効果
 体に備わる免疫の仕組みを利用し、がんを攻撃する治療法。体内でがんを攻撃する免疫細胞を利用する。京都大学の本庶佑特別教授が見つけた「PD―1」たんぱく質はこの治療法に応用され、抗がん剤、手術、放射線治療に続く第4の治療法として広まった。人間の体では1日に数千個ものがん細胞ができるが、免疫細胞が排除している。本庶氏の発見に基づく免疫療法は、がん細胞がPD―1にブレーキをかけるのを阻止して免疫細胞が働けるようにし、がん細胞をたたく。新薬は従来の抗がん剤などでは治せない末期がんでも高い効果を示している。

<人材>
*4:https://digital.asahi.com/articles/DA3S13688456.html (朝日新聞 2018年9月21日) 教科の数値評価、なくなる? 中教審が議論、通知表に影響か
 学習指導要領の改訂にあわせて、学校現場での評価のあり方を話し合う中央教育審議会のワーキンググループ(WG)が20日にあり、教科ごとに数値評価する「評定」をなくすべきかどうかが議論された。参加した多くの有識者はなくしたうえで、各教科で「知識及び技能」「思考力・判断力・表現力等」など項目ごとに「ABC」といった形で評価する「観点別評価」だけにすべきだ、との立場を取った。評定は各教科を総括する位置づけで、児童生徒に渡される通知表や、受験で使われる内申書の元となる。文部科学省は通知で、小学校の中高学年では3段階、中学と高校では5段階でつけるよう求めている。かつては相対評価だったが、2002年度からは絶対評価となった。通知表の形式は学校の判断に委ねられるが、評定が廃止されれば現場への影響は大きい。新指導要領は20年度から小学校などで完全実施される予定。WGは年内に結論を出し、文科省はそれを受けて年度内にも教委などに通知する方針だ。20日の会議では、文科省が評価のあり方について論点整理した資料を提示。評定をなくすべき理由として▽学校ごとに重みづけが異なり、学習状況が適切に反映されていない場合がある▽児童生徒や保護者が数値評価のみに注目し、学習の改善につなげられていない▽きめ細かく一人ひとりを評価するためには、観点別評価の方が有効――とした。一方、維持すべき理由としては▽児童生徒や保護者は学習状況を全体的に把握できると考えている▽高校や大学の入試、奨学金の成績基準などで使われている――などを挙げた。これに対し、有識者からは「評定は数値のため客観的だという誤解がある」「一人ひとり寄り添って見ていくには観点別評価にすべきだ」といった意見が相次いだ。

<継続できる人は何割?>
PS(2018年10月10日追加):ノーベル賞受賞をきっかけに、メディアが「①継続が大切」「②失敗で諦めない」などと、あまりにも的外れた解説を訳知り顔でやっているのには眉をひそめた。何故なら、①については、*5のように、研究者が大学や研究機関に残ったとしても、他産業より低い報酬で短期の雇用契約を結ばされたり、継続的な雇用を得られず他産業に転出を余儀なくされたりするケースが多いからだ。また、②については、「実験したら仮説通りにいかなかった」というのは通常の研究過程であって「失敗」や「諦める」というような言葉は当たらず、これは試行錯誤でもないからだ。

*5:https://webronza.asahi.com/politics/articles/2012042000006.html (鈴木崇弘 城西国際大学客員教授《政治学》 2012年4月20日) ポスドク問題を社会変革のテコに――ある若者の試み
 「ポスドク問題」(注1)が語られて久しい。ポスドク問題とは、次のとおりだ。科学技術振興政策で、博士が多数つくりだされた。しかし、ドクターを取得するころには、年齢がある程度いっているため、企業の採用が難しく、大学などの研究職数も限られて就職先がないため、オーバードクターが問題となった。その問題の対応として、「ポスドク」(「ポストドクター」の略語)に職が用意された(これで、オーバードクター問題は一時緩和された)。しかし、それは大学や研究機関などと短期かつ不安定な形で契約を結ぶもので、正規雇用への保証がなく、低収入で不安定であり、問題の引き延ばしを図っただけのものであった。このように「ポスドク問題」とは、正規の仕事に就職できずに、長期間、非正規雇用を強いられる人材が増えている状況を指す。ポスドクは「高学歴ワーキングプア」ともいわれ、高齢化も進んでいるという。要は、供給者側の論理から科学技術の発展の必要が叫ばれ、それを進める専門的な人材の育成として博士などを多く生み出したものの、需要者側のニーズに合っていなかったのだ。博士号取得は実務とは別のことであり就職とは関係ないという議論もあるが、博士を目指す者の多くは、専門性をもち、社会や時代に貢献したいという気持ちからだと思う。ここでは、科学技術の発展という理想(それ自体は重要だが)だけ声高に訴えても、問題の解決にはならない。では、どうすればいいのか。(以下略)

<地方への海外企業誘致>
PS(2018年10月11日追加):私は外資系企業の監査や税務に従事することも多かったので、*6-2のブリストル·マイヤーズ(当時)には、1980年代後半、外部監査を担当していたプライス・ウォーターハウス(当時)から、ブリストル·マイヤーズ本社から来た内部監査担当者を手伝うために行ったことがあり、堅実な会社だと思っている。
 そのため、*6-1のように、政府が海外企業の国内投資拡大のために努力し、地方に雇用を作って地方を活性化するのはよいことであるとともに、欧米系の会社は女性差別が(ないとは言わないが)少ないため、地方にも女性が差別されずに自由に働ける場所が増えるだろう。
 そこで、唐津市の企業誘致だが、化粧品産業のみに特化すると医薬品と比較して付加価値が低いため、*6-2のような外資系企業を誘致し、九大と組んで世界的な製薬会社を育ててはどうか。労働力は、*6-3のように、外国人の就労も進み始めて、次第に整っていくのだから。

*6-1:http://qbiz.jp/article/141796/1/ (西日本新聞 2018年10月3日) 政府、海外企業誘致で地方支援へ 計画策定で全国24カ所
 政府は3日、海外企業の国内投資を拡大させるため、日本貿易振興機構(ジェトロ)と連携して全国24カ所の自治体による企業誘致計画の策定を支援する方針を固めた。日本への投資は東京を中心とする大都市に集中しており、地方への波及を進める狙いだ。計画は地域色のある農林水産品や観光資源、産業集積などの強みを生かした内容とする予定で、2018年度中の策定を目指している。ジェトロを通じ、海外企業とのマッチングや海外での投資セミナー開催なども支援する。日本は来年以降、国内初開催の20カ国・地域(G20)の首脳会合や、ラグビーの19年ワールドカップ(W杯)日本大会、20年東京五輪・パラリンピックなど、多数の国際イベントを抱えている。政府は全国に経済効果が及ぶ機会と捉えており、地方創生の取り組みを加速させたい考えだ。支援対象に選ぶ北海道旭川地域は豊富な農林資源を生かした家具製造が強み。アジアのデザイン関連企業などと組み、現地での販路拡大を目指している。医療機器関連メーカーが集まる福島県は海外企業を取り込んでさらなる集積拡大を図る。長野県小諸市はリゾート地の同県軽井沢町に近く、IT企業のサテライトオフィス(出先拠点)を呼び込む。佐賀県唐津市は化粧品産業の誘致を目指す。

*6-2:https://www.bms.com/jp/about-us.html (ブリストル·マイヤーズ スクイブ 会社情報)
 ブリストル·マイヤーズ スクイブは、深刻な病気を抱える患者さんを助けるための革新的な医薬品を開発し、提供することを使命とするグローバルなバイオファーマ製薬企業です。ブリストル·マイヤーズ スクイブは、大手製薬企業の事業基盤と、バイオテクノロジー企業の起業家精神と敏捷性を兼ね備えた、スペシャリティ·バイオファーマ企業です。独自のバイオファーマ戦略を推進し、命にかかわる深刻な病気を抱える患者さんに革新的な医薬品を提供するため、日々努力を重ねています。世界中で働く当社の従業員は、ブリストル·マイヤーズ スクイブの全ての活動の原動力であり、患者さんのため、今日も一丸となって取り組んでいます。世界中で何百万人という患者さんを助けるために、当社が注力するのは「がん」「心血管疾患」「免疫系疾患」「線維症」の重点疾患領域です。研究開発を通して、有望な化合物から成る持続可能なパイプラインを構築し、外部のイノベーションによる事業の拡大と加速に向け、積極的にパートナーシップを結んでいます。地球市民として、私たちは責任をもって持続可能な業務の遂行に取り組み、地域社会に還元するよう努めています。また、ブリストル·マイヤーズ スクイブ財団の活動を通じて、医療環境に恵まれない地域に暮らす人々のため、医療における格差をなくすこと、患者さんの転帰を改善することに全力を挙げています。これらの活動は、世界で最も深刻な状況におかれた人々に、新たな希望をもたらしています。

*6-3:https://www.agrinews.co.jp/p45316.html (日本農業新聞 2018年9月26日) 外国人の就労 人権と労働環境改善を
 農業現場で働く外国人の受け入れ制度が変わる。外国人技能実習生に加え、10月から愛知県で国家戦略特区を活用した外国人労働者の受け入れが始まり、来年4月には5年間を上限に就労できる新たな在留資格が創設の見通しだ。追い付かないのが人権の確保と労働条件の整備。働き手の目線で改善すべきだ。JA全中や日本農業法人協会などでつくる農業労働力支援協議会は、農業の雇用労働力は7万人不足していると推計する。これを補うのが特区と新たな在留資格の創設というわけだ。農業の労働問題に詳しい特定社会保険労務士の入来院重宏氏は、労働力を補う「蛇口が増えた」とみる。これまで技能実習生という一つの蛇口だけだったが、特区と新たな在留資格という二つの蛇口が加わったことで労働力の供給は一段と増える。懸念されるのは、受け止める器に“穴”が二つ開いていることだ。労働環境が他産業並みに整っていない。一つ目の穴は、1975年から続く労災保険の「暫定任意適用事業」。個人経営の農家の場合、従業員が4人以下であれば労災保険は任意加入となる。保険に入っていなければ、事故に遭った際は経営者が全額補償しなければならない。他産業並みの強制加入にすべきである。二つ目は、農業現場で働く労働者は労働時間、休憩、休日、割増賃金などについて労働基準法の適用除外となっていることだ。技能実習生は「他産業並みの労働環境を目指す必要がある」(農水省)として他産業と同じ労働条件。ところが労働者となった途端、労働時間などが適用除外となり労働条件に差が生じ、混乱を招きかねない。入来院氏は「この穴を早急に埋めないと、外国人も含めて農業に人が来なくなる」と指摘する。法務省によると中長期の在留外国人の数は約256万人(2017年末現在)。前年末に比べ約17万人増え、過去最高を更新した。最多は中国で73万人、韓国(45万人)、ベトナム(26・2万人)、フィリピン(26万人)、ブラジル(19万人)、ネパール(8万人)、インドネシア(5万人)と続く。特にベトナムは3割増、ネパールとインドネシアも2割増えた。だが、この流れも20年までのようだ。日本で働く外国人の実情を紹介した『コンビニ外国人』(芹澤健介氏、新潮新書)で、東京大学大学院で経済を学ぶベトナム人留学生は「いま日本には外国人が増えて困るという人もいますが、東京オリンピックが終わったらどんどん減っていく」と明かす。外国人の受け入れ制度が整っていないためで、多くの外国人が「人手不足で残業が多くなる」と考え、東京五輪後は日本以外の国に切り替えるという。求められるのは、働く者の人権確保と労働環境の整備だ。労働力不足時代を見据え、本丸の担い手育成と省力技術の開発・普及も急ぐべきだ。

<経産省主導のイノベーション妨害>
PS(2018年10月12、15、16日追加):*7-1のように、九電は太陽光などの再エネ発電事業者に「出力抑制」を実施する可能性があると公表した。現在、九州では、太陽光発電の接続量が800万kw程度(原発8基分)あり、さらに拡大しているが、九電は原発4基(約400万kw)を再稼働させた。これは、経産省が、*7-2のように、「2030年のエネルギーミックスを再エネ比率22~24%、原子力比率22~20%」とし、全体としてコストの高い原発による発電を優先して安価な再エネの普及を妨害したことによる。なお、「再エネは不安定」という弁解も、あまりに長期に渡るので聞き飽きたが、広域送電線や*7-3・*7-4のような水素を媒介にする再エネ貯蔵や蓄電池という方法もあるため、技術進歩によるイノベーションを経産省主導の不合理な“ルール”で遅れさせるのは、早急に止めるべきだ。
 なお、*7-5のように、北海道地震で北電の苫東厚真石炭火力発電所が停止したら全道が停電し、酪農家は自家発電装置で搾乳・冷蔵を続けることができたものの、自家発電装置を持たない乳業工場が相次ぎ操業を停止したため、行き場を失った生乳が廃棄を余儀なくされたそうだ。そのため、災害に備えた危機管理体制は必要不可欠で、「集中型電力システム」より「分散型電力システム」の方がリスクが小さいため、それを支える送電線が必要なのである。現在、北海道では、太陽光・風力だけでも160万kw(原発1.6基分)の発電量があり、集中型から地産地消の分散型に転換すれば危機管理と地域経済の両方を改善できるため、全農に電力会社(仮名:全農グリーン電力)を作り、農林漁業で発電した電力を集めて販売したらどうかと考える。
 また、*7-6のように、世界トップレベルのスマート農業の実現に向け、北海道でロボットトラクターやドローンの実証研究が始まり、大学・民間企業・行政などが連携するそうで、これはよいことだと思う。そして、これらの動力も再エネ由来の電力や水素燃料を使えば、これまでのように燃料費の高騰に悩んだり、それに国から補助を出したりする必要がなくなるため、再エネへの転換は素早く進めるべきだと考える。
 確かに、農業の生産性向上には、*7-7のような肥育期間の短縮もあるが、消費者の健康・生産性・付加価値を両立させるには、「ヘルシー佐賀牛」の分類を作って、脂肪割合が小さく蛋白質割合の大きな牛肉を、稲わら・ハーブ・みかんの皮・牧草などの割合を増やして育てたり、放牧したりする方法があるのではないだろうか?

*7-1:https://digital.asahi.com/articles/DA3S13719393.html (朝日新聞 2018年10月12日) 太陽光発電抑制、九電が検討 この土日、需給バランス保つため
 九州電力は11日、太陽光など再生可能エネルギーの発電事業者に一時的な発電停止を求める「出力抑制」を、この土日の13、14日に実施する可能性があるとホームページ(HP)で公表した。実施すれば、離島を除いて国内で初めて。4基の原発が再稼働した九州で、再生エネの一部が行き場を失う事態になりそうだ。土日は好天が予想され、出力調整の難しい太陽光の発電量が伸びるとみられる。一方、休日で工場などの稼働が減るうえ、秋の過ごしやすい気温で冷房などの電力の使用量も落ち込みそうだ。需要と供給のバランスが崩れると、電気の周波数が乱れ、発電所が故障を防ぐために停止し大規模停電につながる恐れがある。九電は火力の抑制などをしても需給バランスの維持が難しいと判断し、国のルールに基づき行う。天候次第で停止を見送る可能性もある。抑制の前日に最終判断をし、太陽光で約2万4千件、風力で約60件の契約から、発電を止める事業者を九電が選ぶ。出力の小さな一般家庭は対象外。選んだ事業者には電話やメールで知らせる。日照条件に恵まれた九州では、2012年に始まった再生エネの固定価格買い取り制度(FIT)を受けて太陽光発電の接続量が急増した。九州の需要のピークは1600万キロワット弱。太陽光は800万キロワット程度が接続されており、まだ拡大傾向にある。さらに九電は11年の東京電力福島第一原発事故後、この夏までに原発4基(計約400万キロワット)を再稼働させた。国のルールでは原発の発電を優先することになっており、再生エネの入る余地が狭まっている。今月下旬にも原発が稼働する四国電力でも、出力抑制の可能性がある。専門家からは、大手電力間を結ぶ送電線で余った電気をより多く送ったり、原発を優先するルールを見直したりするべきだとの意見も出ている。

*7-2:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO28676230Y8A320C1000000/ (日経BP速報 2018/3/28) 「再エネ比率22~24%」目標変えず 経産省が事務局案
 経済産業省は、総合資源エネルギー調査会 基本政策分科会を開催し、事務局案を2018年3月26日に公開した。同案は「エネルギー基本計画」の見直しに関するこれまでの議論を受けたもの。同案では、15年度に定めたエネルギーミックスを前提として、その達成に向けた課題を整理した構成になっている。「再生可能エネルギーの比率22~24%」などの従来の電源構成の目標値を変えない方針を明らかにした。「エネルギー基本計画」は3年ごとに見直すことになっており、前回は14年に改訂した。それを受け、15年に長期エネルギー需給見通し小委員会の場で、「2030年のエネルギーミックス(電源構成)」を議論し、「再エネの比率22~24%」「原子力の比率22~20%」などの目標値を決めた経緯がある。

*7-3:https://www.nikkei.com/paper/related-article/tc/?b=20181012&bu=BFBD9496・・(日経新聞 2018年10月12日) 水素プラント、川崎で起工 千代田化工など4社、太陽光の水素ステーション 実証施設、来年中にも
 北陸では初めてとなる水素ステーションの建設に向けた動きも富山県内で着々と進行する。富山水素エネルギー促進協議会は、太陽光発電の電気を使って水素を製造する水素ステーション実証施設の2019年中の設置を目指している。富山市、北酸など官民が連携して、富山市環境センターに施設を建設。太陽光という再生可能エネルギーを使って水の電気分解で水素を発生させ、燃料電池バスや燃料電池車のカーシェアなどへの利用を検討する。18年度の環境省の二酸化炭素排出抑制対策事業費等補助金を申請中。水素製造量は1日当たり燃料電池車2台分と規模は小さいが、同協議会は「導入当初としては十分」とし、20年までに県内に本格的な水素供給拠点を設けるという目標への足がかりとしたい考えだ。

*7-4:https://www.nikkei.com/paper/related-article/tc/?b=20181012&bu=BFBD9496・・(日経新聞 2017年12月11日) 水素発電実験、神戸で開始へ 世界初、市街に供給
 神戸市で水素を燃料に発電した電気を市街地の複数施設に供給する世界初の実証実験が2018年2月上旬に始まる。市民病院など4カ所に電気と熱を送る計画だ。川崎重工業と大林組が建設した発電所が人工島のポートアイランドに完成した。水素は温暖化ガス削減に向けた次世代エネルギーと有望視されており、地域での有効利用をめざす。神戸市が施設への電気供給などで協力した。

*7-5:https://www.agrinews.co.jp/p45411.html (日本農業新聞 2018年10月6日) 北海道地震1カ月 もろい電源 分散型急げ
 北海道地震に伴う生乳廃棄は人災と言っても過言ではない。北海道の酪農家の率直で切実な訴えである。9月6日未明、北海道胆振地方中東部を震源とした最大震度7を記録した北海道地震から1カ月。厚真町を中心に41人が犠牲になった。日本の食料基地を襲った地震は、全国の生乳生産の半数以上を占める酪農に大きな影を落とした。北海道電力苫東厚真石炭火力発電所の停止による全域停電(ブラックアウト)による搾乳の混乱だ。電源を失った酪農家は、持っていた自家発電装置で搾乳・冷蔵を続けることができたが、装置を持たない乳業工場は相次ぎ操業を停止、行き場を失った生乳は廃棄を余儀なくされた。道によると、6日から10日までの5日間の被害額は、全道で21億円に上った。これが冒頭の「人災」につながるわけだが、犯人捜しをしたいのではない。問題は、災害時の危機管理として、大規模停電を予測できなかったのかということである。災害を機に迅速な対応を取った地域もある。愛媛県のJAにしうわは、2004年9月の台風18号による停電で主力の温州ミカンのかん水に欠かせないスプリンクラーが停止。農家が手作業で水をまいたため、樹体に付いた塩分を落とし切れず、ミカンが大きな被害を受けた。このためJAは、非常時の補助電源として発電機70台を導入した経緯がある。地震発生時、道内の酪農家は自衛手段として自家発電装置を整備し、搾乳・冷蔵ができた。十勝地域のJA大樹町では7割、JAひろおでは8割の酪農家が発電機を導入していたという。一方で、道内の乳業工場39カ所のうち、自家発電設備を持っていたのは2工場だけ。酪農と乳業は「車の両輪」に例えられる。一方のタイヤが正常でももう一方がパンクをしていれば走ることはできない。災害に備えた自衛策は待ったなしである。さらに求めたいのは、停電の原因となった「集中型電力システム」の改善だ。ブラックアウトは、電気の需給バランスが乱れて発生した。地震後も稼働していた再エネ発電所があったにもかかわらず、厚真発電所の一つの停止により、その電力は活用できなかった。現行のシステムのもろさが露呈した格好だ。道内では太陽光、風力、水力、地熱、家畜や森林由来のバイオマス(生物由来資源)による再生エネルギーが盛んに導入されている。太陽光と風力だけを見ても160万キロワットの発電容量がある。これは地震前日の最大需要の4割に相当する。これをもっと活用すべきである。国は、再エネを主力電源と位置付けている。再エネの特徴である地域分散型を生かし、集中型から地産地消型の可能性を追求すべきだ。災害が常態化している今こそ、北海道地震の教訓を生かさねばならない。

*7-6:https://www.agrinews.co.jp/p45485.html (日本農業新聞2018年10月15日)一大拠点へ実証 ロボトラクターやドローン自動飛行 産官学が連携 北海道でスマート農業
 世界トップレベルのスマート農業の実現に向け、ロボットトラクターやドローン(小型無人飛行機)の実証研究が北海道で始まる。大学、民間企業、行政などが連携して、遠隔監視によるロボットトラクターや、ドローンの自動飛行による農薬散布などを試験。最先端のスマート農業技術が集まる一大拠点にする考えだ。14日に更別村で説明会を開き、取り組みが動きだした。内閣府の近未来技術等社会実装事業の一環。同事業は、人工知能(AI)や自動運転、ドローンなどの技術による地方創生を支援するのが狙い。道と同村、岩見沢市の3者が共同提案し、採択された。東京大学や北海道大学、ホクレンなどが参画する。実証する農機の無人走行システムは、北海道大学などと協力し、トラクターに取り付けたカメラの映像を通して、遠隔監視しながら走行させる。農地間の移動も公道を想定して自動運転で走らせる。水田地帯の同市と、畑作地帯の同村で分けて実証を進める。同村では、ドローンの自動飛行による農薬散布も実証する。夜間の自動散布や複数台による編隊散布なども検討しており、農業現場で利用しやすいシステムを検討する。ドローンで測定した生育データは蓄積して、スマートフォンのアプリケーションで活用。AIで生育状態を把握できるようにする。今後、11月中にも関係組織で事業に関する協議会を設立。具体的な実証内容やスケジュールを詰めていく。同村では14日、学や民間企業、JAなどの関係者を集め説明会を開催。JAさらべつの若園則明組合長は「1戸当たりの耕作面積が増える一方、人手不足は深刻。成功してほしい」と期待を込めた。西山猛村長は「未来の農業を開く一歩を踏み出せた。村だけでなく日本の農業を守ることにつなげたい」と意気込みを述べた。

*7-7:http://qbiz.jp/article/142397/1/ (西日本新聞 2018年10月16日) 佐賀牛肥育3カ月短縮 27カ月齢への技術確立 佐賀県畜産試験場
 佐賀牛など佐賀県産和牛の出荷月齢を通常の30カ月から27カ月に早期化しつつ、肉の質と量は良好に維持する技術を、県畜産試験場が確立した。近年、子牛価格と飼料代が高騰しており、出荷の回転率を上げて肥育農家の収益改善につなげる。同様の試みは九州でも広がっており、試験場は本年度中にマニュアルをまとめ、生産者への普及を図る。県によると、和牛の生産は、母牛から子牛を産ませる繁殖農家と、子牛を購入して育てて出荷する肥育農家の分業が一般的。県内では2月現在、繁殖農家468戸が約9200頭、肥育農家202戸が約3万5200頭を飼育する。ただ、県内の子牛価格は平均70万〜80万円と、10年ほど前の約2倍に値上がりした上、飼料代も高騰。試験場によると、肥育農家は収益を上げるのが難しくなっているといい、農家数は5年前より約2割減った。このため、出荷までのサイクルを早めて生産コストを抑えようと、2014年度から研究を始めた。
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 通常、肉用牛の出荷は30カ月ほどかかり、繁殖農家が子牛を育てる9カ月間の「育成期間」と、肥育農家による以後21カ月間の「肥育期間」に分かれる。育成期間は稲わらなど繊維質で低カロリーの餌を与え、肥育期間は肉に霜降りを入れるためにトウモロコシなど高カロリーの穀物を食べさせる。試験場は(1)育成は9カ月間のままで肥育を18カ月間に縮める「肥育期間短縮」(2)繁殖から育成まで一貫経営する農家用に、育成を6カ月間に縮めて肥育開始を早める「早期肥育開始」−の二つの方法の試験に取り組んだ。前者は肥育期間中、月ごとに飼料を増やしていくペースを従来より上げた。後者は生後6カ月から肥育用の飼料に少しずつ切り替え、8〜9カ月から完全に肥育用にした上、増量ペースも上げた。試験の結果、脂肪交雑(霜降りの度合い)を示す数値はいずれの方法も県平均7・2を上回った。肉量は県平均486キロと比べて、前者は483キロと若干少なかったが、後者は508キロと上回った。
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 ただ、新しい技術が生産者に浸透するには時間がかかりそうだ。JAさが畜産部によると、ブランド牛の買い手が品質を判断する上で重視するのは出荷月齢。内田武巳部長は「県内の肥育農家は月齢をかけて牛を大きく育て、肉量を確保して収益を得る傾向にある」と指摘する。牛を大きく育てつつ、脂肪交雑を維持するのはこれまでも課題で、試験場は今回、牛の体調を見ながら飼料を与えるタイミングや期間、量を調整。「肉質は十分維持できている」と太鼓判を押す。一方では、産地間競争も激化している。九州の他県も同様の試みに力を入れており、鹿児島県農業開発総合センター畜産試験場は7月、佐賀より3カ月少ない24カ月齢での出荷技術を確立したと発表した。鹿児島の担当者は「肉の質、量とも従来と遜色ない」としており、佐賀県畜産試験場も24カ月齢出荷の試験を進めている。
*佐賀牛:JAグループ佐賀の生産者が出荷した黒毛和牛の中で、肉質が最上級の5等級か、4等級のうち脂肪交雑(霜降りの度合い)が7以上を指す。佐賀牛を提供するJA直営のレストラン「季楽(きら)」が佐賀、福岡両市、東京・銀座にある。昨年11月に東京であった日米首脳会談に際しての夕食会でも振る舞われた。近年は香港や米国、シンガポールに輸出している。

PS(2018年10月13、19、21日追加): *8-1、*8-2のように、九電は九州7県の太陽光・風力発電事業者計約2万4千件(計475万キロワット→原発4~5基分)を対象に稼働停止を求める出力制御を13日に実施すると発表し、「電力の安定供給のため」と説明しているが、ここが思考停止によるイノベーション妨害なのである。蓄電池・水素生成・地域間送電線を使った電力の広域的運営など、方法はいくらでもあった筈だが、最も高コストでハイリスクの原発再稼働を選択したのが、またもや経産省の失敗である。
 なお、*8-3のように、北海道新聞も、九電が太陽光発電の一部事業者に「出力制御」を実施したことについて、「原発優遇の出力制御が度重なると、再エネの使い勝手が悪くなって普及に水を差すため、政府は現行の原発優先ルール見直すとともに、送電網を増強し、大型蓄電池や地産地消型の分散型電源など、再生エネを無駄にしない仕組み造りをすべきだ」等々と記載しており、全く賛成だ。
 さらに、*8-4のように、九電は、118万キロワットの再エネ出力を20、21日に停止させるそうだが、もったいないことだ。全体の電力料金を下げてエネルギーを(高齢者にとって、より安全な)電力にシフトさせたり、休日の電力料金を下げ労働力をローテーションして休日も工場を稼働させ、電力消費量を平準化する方法もあると思う。

   
      2018.10.13西日本新聞             2018.10.7佐賀新聞

(図の説明:左のグラフのように、九州では太陽光・風力で域内の電力需要をほぼ賄える状況になったが、さらに原発4基を再稼働したため電力が余った。今後は、1番右の図のように、漁業と親和性の高い洋上風力発電設備も据え付けていくため、原発なしでも他地域に送電できる状態になり、蓄電池・水素生成・他地域への送電線・九州域内での製造業のテコ入れなどが望まれる。そして、これは九州だけに特化した現象ではないだろう)

*8-1:http://qbiz.jp/article/142329/1/ (西日本新聞 2018年10月13日) 九電13日に出力制御 九州6県の太陽光9759件停止要請へ
 九州電力は12日、太陽光発電など再生可能エネルギー事業者に稼働停止を求める出力制御を13日に実施すると発表した。原発4基の稼働や再生エネ発電設備の増加などで九電管内の供給力は高まっており、需要と供給のバランスが崩れて大規模停電が起きるのを防ぐのが目的。離島以外では全国初となる。九州7県の出力制御対象は太陽光・風力発電事業者計約2万4千件(計475万キロワット)で、13日は熊本県を除く6県の太陽光発電9759件、計43万キロワット分を想定。九州各地で晴れて太陽光発電が増加する一方、気温低下により冷房などの電力需要が減ると判断した。実施は午前9時〜午後4時の7時間を想え定している。九電によると、余剰電力が最大になる時間帯は正午〜午後0時半ごろで、再生エネや火力、原子力発電などの供給力が1293万キロワットあるのに対し、需要は828万キロワットの見込み。国のルールに沿って、ダムに水をくみ上げる揚水運転や火力発電の出力抑制、他電力会社への送電などを行っても、43万キロワット分の余剰電力が生まれ、再生エネの出力制御が必要になるという。13日早朝の気象予報などで、最終的な出力制御量と対象事業者を確定する。九電の和仁寛系統運用部長は12日の記者会見で「電力の安定供給のために必要な対応であり、ご理解とご協力をお願いしたい」と語った。14日も出力制御を行う可能性があり、13日に実施の可否を判断する。(以下略)

*8-2:http://qbiz.jp/article/142300/1/ (西日本新聞 2018年10月13日) 再生エネ急増でも活用半ば 蓄電、送電は負担重く後手 九電出力制御
 九州電力が13日、太陽光発電の出力制御に踏み切ることになった。再生可能エネルギーの拡大を目的に国が固定価格買い取り制度(FIT)を導入した2012年以降、日照条件が良い九州では全国を上回る勢いで太陽光発電が急増している。政府は7月に閣議決定したエネルギー基本計画で再生エネの「主力電源化」を目指すとしているが、そのために必要となる蓄電池の普及などの対策は進んでいない。東京電力福島第1原発事故を受け「脱原発」の気運が高まる中で導入されたFIT。再生エネの高値買い取りが誘発剤となり、太陽光は爆発的に普及が進んだ。九電によると、FIT導入後の6年間で、管内の太陽光発電能力は7倍に増加している。核廃棄物も二酸化炭素(CO2)も排出しない再生エネだが、弱点もある。太陽光は日照がないと発電できないため、出力変動に備えて火力発電所など他の電源も同時に運用しておくことが不可欠。九電が今秋までに原発計4基を稼働させたことで電力の供給力が底上げされたことに加え、原発は出力調整が難しいこともあり、電力需要が落ち込む時期に再生エネの出力を絞る可能性が高まっていた。こうした状況で再生エネをどうやって拡大させるのか。その一つの方策が、日中の余剰電力をためて夜間などに使えるようにする「蓄電池」だ。国の補助を受けて九電は16年、福岡県豊前市に約200億円を投じて出力5万キロワットの大容量蓄電システムを整備した。しかし、これだけでは「焼け石に水」。九電管内の太陽光は毎月5万キロワット増え続けており、蓄電池だけで増加分に対応していくと仮定すれば、毎月200億円が必要な計算になる。九州で余った電気を、地域間送電線「関門連系線」を使って本州側に流す方法もある。だが、送電可能な再生エネの容量は、九州の太陽光発電能力の8分の1ほど。経済産業省の認可法人「電力広域的運営推進機関」が17年度に連系線そのものの容量倍増を検討したが、費用試算が1570億円に上ることから見送られた。経産省は19年度予算概算要求に蓄電技術の開発支援を盛り込んだほか、IoT(モノのインターネット)を使った需給バランス管理の高度化などを議論する研究会も今月設置する予定。しかし、再生エネ拡大に向けたコストを誰がどう負担するのかといった肝心の制度設計はこれから。経産省幹部は「当面は出力制御で対応することになる」と話す。急成長した再生エネに、制度が追いついていないのが現状だ。
   ◇   ◇
●「原発再稼働も一因」 九電が会見
 九州電力は12日、出力制御の実施決定を受けた記者会見で、増え続ける太陽光発電に設備面などで対応しきれていない現状を説明、今後も実施は不可避との認識を示した。「設備の増強が追いついていない」。九電の和仁寛系統運用部長は会見で説明した。九州には全国の約2割の太陽光発電所が集まっており、今後も導入が進むのは確実。「(ピーク時の)出力制御にご協力いただくことで再生可能エネルギーの受け入れ量は増える」と述べ、実施に理解を求めた。制御の対象になる事業者については「不公平感が出ないことが最も重要」と強調した。今夏、原発が4基運転体制になり、供給力の調整幅が狭くなったことも影響する。和仁氏は出力制御はさまざまな需給要因を踏まえた「総合的な判断」としながらも、「原子力発電所の再稼働が一因にはなっているかもしれない」と話した。

*8-3:https://www.hokkaido-np.co.jp/article/239370 (北海道新聞社説 2018年10月19日) 太陽光出力制御 原発優先ルール再考を
 九州電力が太陽光発電の一部事業者に一時的な発電停止を指示する「出力制御」を実施した。太陽光の発電量が増える日中に、電力の供給量が需要を上回り、大規模停電が起きるのを回避するためだという。胆振東部地震に伴う全域停電のような事態は避けねばならないが、問題はそのやり方だ。国のルールでは、原発より先に太陽光や風力の出力を制限すると定めている。だが原発優遇の出力制御が度重なると、再生可能エネルギーの使い勝手が悪くなり、普及に水を差さないか。再生エネを将来の主力電源とする国の方針に逆行する。政府は現行ルール見直しの道を探るとともに、需給バランスを保って出力制御を避ける仕組みづくりを急ぐべきだ。九州は日照条件の良さから太陽光発電の普及が進み、導入容量は原発8基分に相当する。今回は好天で発電量が多くなる一方、週末で工場稼働などが減り電力需要の低下が見込まれた。九電は火力発電を抑え、余剰電力を揚水発電の水のくみ上げや他の電力会社への送電に回したが、調整しきれず制御に踏み切った。見過ごせないのは、九電の原発4基が今夏までに再稼働し、供給力が底上げされていたことだ。そのため、冷房使用が減る今秋の出力制御の可能性が早くから取り沙汰されていた。供給過多が見込まれる中で再稼働が必要だったのか、検証が求められよう。原発は出力を一度下げると、戻すのに時間がかかり、経済産業省は出力調整が難しいと説明する。しかし、ドイツやフランスでは需要に応じて原発の出力を調整しており、不可能ではない。再生エネ事業者は一部を除き、出力制御に無補償で応じなくてはならず、日数の制限もない。発電を止めれば売電収入を失う。制御が頻発すれば収益が圧迫される。欧州でも再生エネの出力制御を行っているが、発電を停止した業者に補償金を支払う国が多い。国は固定価格買い取り制度などで再生エネ導入を促すが、拡大に環境整備が追いついていない。九州と本州を結ぶ送電線「関門連系線」の運用容量は、北海道と本州を結ぶ北本連系線を大きく上回るが、それでも足りなかった。送電網の増強に加え、大型蓄電池開発や地産地消型の分散型電源など、再生エネを無駄にしない仕組みが欠かせない。費用負担のあり方も含め国全体で考える時だ。

*8-4:http://qbiz.jp/article/142753/1/ (西日本新聞 2018年10月20日) 九電、再エネ出力21日も制御 初の100万キロワット超対象
 九州電力は20日、太陽光発電の一部事業者に対し、発電の一時停止を指示する再生可能エネルギーの出力制御を21日も実施すると発表した。先週末と20日に続く措置。制御対象は118万キロワットの計画で、これまでで最大。九州全体で気温が上昇せずに冷房需要が一段と減少する見通しの一方、好天で日中の太陽光の出力増加が見込まれるため。九電によると、20日に実施した再エネの出力制御は当初の計画では70万キロワット程度だったが、事前の想定より再エネの発電量が増えなかったとして、実際は最大で52万キロワット程度になった。制御の対象は13日が43万キロワット、14日が54万キロワットだった。

<ノーベル平和賞:人類発祥に関するゲノム研究が進めば・・>
PS(2018年10月15日追加):今年のノーベル平和賞は、*9-1のように、ISの性暴力を告発したイラクの宗教的少数派ヤジディー教徒のナディア・ムラドさんと、コンゴ民主共和国で性暴力被害者のケアを続けてきたデニ・ムクウェゲ医師に決まったが、2人の命がけの活動に敬意を表する。一方、中東では、レイプも「婚前・婚外交渉」として被害女性を殺害する「名誉殺人」が横行し、中東・アフリカには、レイプの加害者が被害者と結婚すれば罪を免れるという法律も残っているそうだ。このように、今の日本では想像すらできないことが起こる文化圏で、女性の地位向上を訴えるのは、誰であっても命がけであり、圧力が必要になることもあろう。従って、*9-3のように、サウジアラビア皇太子が、女性の運転免許を解禁したり、脱石油依存に舵をきったりしたことなども、多方面から批判されたことが想像に難くなく、このような中で「メディアなら何でも言いたい放題言ってよく、それは妨害されるべきでない」というのは、自らは改革を進めたことがない人の甘い考え方だと思う。
 なお、*9-2のように、『ゲノムが語る人類全史、アダム ラザフォード著』が出版され、現生人類が持っているゲノム分析から、地球上に人類が出現して拡散していった状況が解析されようとしていることがわかる。これは、「我々は、どうやって今ここにいるのか」を追求する究極の科学であり、ネアンデルタール人とホモ・サピエンスも交雑しており、まだ骨や歯も発見されていない「第四の人類」も存在するそうだ。さらに、文化とDNAの変化による進化(退化)の関係では、人類が農業を始めてからでんぷんを消化するアミラーゼを作る遺伝子が増えたり、乳を飲み続けるようになってからラクターゼを持続的に作り続けるよう遺伝子が変化したりなど、人類は今でも文化的要因に影響を受けながら進化(退化)を続けているわけである。つまり、現生人類の祖先はごく少数の人から始まり、環境に適応しつつ周りと交配したり闘ったりしながら現在に至っていることがわかれば、まずは人種差別がなくなりそうである。

*9-1:https://mainichi.jp/articles/20181006/k00/00e/030/233000c (毎日新聞 2018年10月6日) ノーベル平和賞、性暴力「泣き寝入り」「名誉殺人」に警鐘
 過激派組織「イスラム国」(IS)の性暴力を告発したイラクの宗教的少数派ヤジディー教徒、ナディア・ムラドさん(25)と、コンゴ民主共和国で性暴力被害者のケアを続けてきたデニ・ムクウェゲ医師(63)へのノーベル平和賞授与が決まった。実態が伝わりにくい中東・アフリカの紛争地域で性暴力に立ち向かった勇気が称賛される一方、性暴力に「泣き寝入り」する被害者が後を絶たない現状に国際社会が警鐘を鳴らした格好だ。ムラドさんの兄で、イラク北部クルド自治区の難民キャンプで暮らすホスニさん(37)は5日、毎日新聞の電話取材に「きょうだい6人が殺害され、私とナディアは生き残った。物静かで小さな妹が、大きな勇気を見せた成果。誇りに思う」と話した。ISは2014年8月にムラドさんの故郷コチョ村などに侵攻し、多くの女性をレイプした。戦時下での性暴力は住民に恐怖心を植え付け、支配する手段として使われる。ISはこの手法で暴虐の限りを尽くした。医師のムクウェゲさんは「レイプがコストの安い『戦争の武器』として使われている」と危機を訴え続けた。コンゴでは豊富な鉱物資源を争う中で、住民の恐怖をあおる手段としてレイプが頻発する。一方、女性の純潔が重視される中東諸国では、レイプも「婚前・婚外交渉」として被害者に厳しい視線が向けられるケースが多い。被害女性を「家族の名誉を傷付けた」として殺害する「名誉殺人」が横行する。ムラドさんの親戚のヤジディー教徒タメル・ハムドンさんは「過酷な体験をしながら、どれほど勇気を出したことだろう」と受賞決定の報に声を詰まらせた。被害者の「泣き寝入り」が珍しくない中東・アフリカには、レイプの加害者が被害者と結婚すれば罪を免れるという法律が各地に残る。だが近年、こうした法律も徐々に撤廃されている。モロッコでは12年、両親や裁判官の勧めで加害者と結婚した16歳の少女が自殺。これを機に法律廃止を求める声が高まり、14年に撤廃された。同様の法律はヨルダンやチュニジアでも廃止となった。国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウォッチは17年、この法律を維持するシリアやリビアなどに撤廃を求めた。

*9-2:http://honz.jp/articles/-/44595 (HONZ 仲野徹 2018年1月27日) 我らが ”サピエンス観” 崩壊! 『ゲノムが語る人類全史、作者:アダム ラザフォード、翻訳:垂水 雄二』
 ここまでわかったのか。あらためてゲノム科学のインパクトを感じる一冊だ。ゲノムとは、ある生物の全遺伝情報を指す。地球上の全生物の遺伝情報はDNAに蓄えられている。うんと簡略化して言うと、ゲノム情報とはACGTという四つの文字が延々と書き連ねられた書物のようなものである。そのサイズは生物によって異なるが、人間の場合は30億文字だ。その配列を決定する方法は猛烈なスピードで進歩してきた。2000年に最初のヒトゲノムが報告された時、13年の年月と三千億円の費用がかかった。それが今や10万円以下、数時間もあればできてしまう。信じられない技術革新だ。従来の酵素を使う方法とは全く異なったナノポアシークエンシングが開発されているが、これに使われる機械の大きさを知ったら、誰もが目を疑うはずだ。なにしろスマホを少し大きくしたくらいなのである。いうまでもなく、ゲノム解析の進歩は、医学に大きな進歩をもたらした。たとえば、数多くの遺伝性疾患の原因が明らかになったし、どのような遺伝子変異が、がんの発症に重要であるかもほぼ解明された。ひと昔前まで、人類進化の研究といえば、基本的に比較形態学、すなわち骨や歯の形の比較であった。しかし、ゲノム解析技術がそのあり方を大きく変えた。第一章のタイトルにもなっている『ネアンデルタール人との交配』が最も有名な例だろう。スヴァンテ・ペーボらが、1856年に発見されたネアンデルタール一号からDNAを抽出し、ゲノム解析を開始したのは1997年のことだ。その研究からわかった最も驚くべきことは、我々、現生人類であるホモ・サピエンスのゲノムに、絶滅したネアンデルタール人の遺伝子が3%近くも含まれていたことだ。なんと、現生人類は、かつてネアンデルタール人と交雑していたのである。ネアンデルタール人は言葉を使えたか、という問題にも大きな進歩があった。喉の構造は、現生人類とネアンデルタール人に大きな違いはない。しかし、それは必ずしも言葉を使えたことを意味しない。チンパンジーと現生人類ではFOXP2タンパクのアミノ酸配列が異なっている、など、いろいろな研究から、言語の能力にはFOXP2という遺伝子が重要であることがわかっている。さて、ネアンデルタール人のFOXP2はというと、現生人類と同じであった。このことは、ネアンデルタール人が言葉を使っていた可能性が非常に高いことを示している。もうひとつ、2006年、シベリア奥地のデニソワ洞窟で発見された、約4万年前に生きていたデニソワ人の話を聞けば、いかにゲノム解析がインパクトある方法であるかが一目瞭然だ。そこで発掘されたのは、歯が一本と小指の先っぽの骨だけだった。当然ながら、それだけでは多くのことはわからない。しかし、骨から抽出されたDNAを用いておこなわれた解析は、驚くべき事実をもたらした。なんと、この女性-女性であることもゲノム解析からわかった-は、現生人類ともネアンデルタール人とも違う「第三の人類」だった。さらに、デニソワ人のDNAの詳細な解析からいくと、どうやら、いまだその骨や歯が発見されていない「第四の人類」も存在していたようなのだ。これからも、ゲノム解析によって人類進化のスキームはどんどん書き換えられていくだろう。当分の間、目が離せない。そんな何十万年も前のことなんか興味がないという人もおられるかもしれないが、この本、章が進むにつれて時代が下ってくるので、心配はご無用。第二章『農業革命と突然変異』では、デンプンを分解する酵素であるアミラーゼの遺伝子が増えたことや、ミルクに含まれる糖分を分解する酵素であるラクターゼの持続的発現といった進化が、一万年前に始まった農業革命によってもたらされた、という話が紹介されている。このことは、人類は、今も進化を続けている。それも、文化的要因に大きな影響を受けながら進化している、ということを示している。逆に、遺伝子が文化的要因に影響を与えることも間違いない。サイエンスはロマンだ。(以下略)

*9-3:https://www.cnn.co.jp/world/35126663.html (CNN 2018.10.7 ) 政府批判のサウジ人記者、行方不明に 在トルコ領事館で殺害か
 イスタンブール(CNN) サウジアラビア政府への批判で知られる同国のジャーナリストが、トルコの最大都市イスタンブールで行方不明になった。米紙によると、同市のサウジ総領事館の中で殺害されたとの情報もある。行方が分からなくなっているのは、サウジ国籍のジャマル・カショギ氏。同氏の婚約者を含む3人の関係者によると、2日にイスタンブールのサウジ総領事館に入ったきり、出てきた形跡がないという。婚約者の女性は総領事館前まで一緒に行ったが、外で待っていたと話している。殺害の情報は、米紙ワシントン・ポストとロイター通信が6日、匿名のトルコ当局者らの話として伝えた。当局者らは今のところ、証拠や詳細を示していない。サウジ側は関与を否定している。ある当局者は、同氏が領事館を訪れた後、まもなく立ち去ったと述べた。ただし、これを裏付ける防犯カメラの映像などは公開されていない。トルコの国営アナトリア通信は、政府が同氏の行方を捜していると伝えた。サウジでは最近、ムハンマド皇太子の主導で、反体制的な聖職者やジャーナリスト、学者、活動化らが次々と拘束されている。ムハンマド皇太子は3日、米ブルームバーグとのインタビューで「隠すことは何もない」と語り、トルコ側による総領事館内の捜索も認めるとの姿勢を示した。カショギ氏は2017年にサウジから米国へ渡り、ムハンマド皇太子の政策を批判する記事などをワシントン・ポストに寄稿していた。

<経産省発の“改革”には人権侵害が多いこと>
PS(2018年10月19、20日追加):*10-1のように、消費税率引き上げに伴う影響緩和策として、経産省の発案で検討されている「キャッシュレス決済」の利用者へのポイント還元案のディメリットは、①クレジットカード保有者やスマホ利用者に限定され、公平性の問題があるだけでなく ②ビッグデータやIT技術を生かすと称して個人の購買活動を勝手に記録し、国民をしつこい広告・勧誘や政府の監視下におく ③従って、第4次産業革命を加速させるより、人権侵害になりやすい ④クレジットカードやスマホ決済は、目の前で金銭が出ていかないため支出額を感じにくくなり、支出のコントロールを失いやすい ⑤スマホ決済はリスク分散ができていないので、スマホを失くしたり盗まれたりすれば一巻の終わり などの欠点がある。
 また、*10-2のように、日本の経産省が米国やEUと国境を越えるデータの流通でルールづくりを目指しているそうだが、それならEUの情報保護規制をそのまま利用した方がよほどマシな規制である。さらに、個人データの利用は、国境を越えた場合のみならず国内でも厳格に本人の了解を求めるのが当たり前であり、それも了解する以外に選択肢がなかったり、了解しなければ不利益を受けるようではいけない。つまり、サイバーセキュリティー対策が不十分な国には、米国や日本も堂々と入っていることを忘れてはならないのだ。
 なお、*10-3のように、日本国憲法は、戦前の経験から、21条で「①集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する」「②検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない」と明確に定めており、無断のデータ利用や検閲は憲法違反だ。また、言論の自由・表現の自由は、メディアに限らず、すべての国民に保障されているが、人権より優先するものではない。さらに、学問の自由も、23条で保障されている。

*10-1:http://qbiz.jp/article/142660/1/ (西日本新聞 2018年10月19日) 消費増税「還元」高齢者ら置き去り キャッシュレス不慣れ、恩恵不透明 経産省発案、与党も不興
 2019年10月の消費税率引き上げに伴う影響緩和策として政府が検討している「ポイント還元」制度に、早くも疑問の声が相次いでいる。クレジットカードや電子マネーを使った「キャッシュレス決済」の利用者しか恩恵を受けられず、こうした支払いに不慣れな高齢者らが置き去りにされかねないためだ。発案したのは経済産業省。この機に「キャッシュレス決済」拡大を図ろうというあからさまな思惑が、閣僚や与党からも不興を買っている。この制度は、増税後に直前の駆け込み需要から一気に消費が落ち込む「反動減」を緩和する狙い。中小小売店での「キャッシュレス決済」の利用者を対象に、増税幅の2%分のポイントを付与。買い物などに使えるよう還元する仕組みが検討されている。経産省によると、国内のキャッシュレス決済の利用率(15年時点)は18・4%で、韓国の89%や中国の60%を大きく下回る。政府は購買データの活用や、訪日外国人観光客の消費拡大のため、25年までに国内の利用率を40%まで高めることを目指す。ポイント還元は普及の好機だ。7月に産学官で設立した協議会は、スマートフォンを使ったキャッシュレス決済「2次元コード決済」について、18年度内の規格標準化を目指すと打ち出した。経産省幹部は「消費税対策を奇貨として普及させたい」と話す。だが経産省の発想は経済基盤の整備に偏り、消費者側からの視点が抜け落ちた格好。スマホに不慣れな高齢者や、カード審査に通らない人はポイント還元の恩恵を受けられず、不公平な制度設計を疑問視する声が上がる。麻生太郎財務相は16日の記者会見で「田舎の魚屋で、大体クレジットカードなんかでやってる人はいない。現金でばっとやっていくという中で、どれだけうまくいくか」と首をひねった。公明党の石田祝稔政調会長は「システムを導入できなかった事業者、カードを持てなかった人にどういう対策ができるか」と提起した。世耕弘成経産相は16日の会見で「多くのキャッシュレス対応の選択肢を準備することも重要」と強調。対象をキャッシュレス決済に限定する考えを崩していないが、与党内ではプレミアム付き商品券や現金を配布する案も浮上し、臨時国会で議論を呼びそうだ。
   ◇   ◇
●公平性の問題生じうる 
 小黒一正法政大教授(公共経済学)の話 ポイント還元案は(ビッグデータやIT技術を生かす)第4次産業革命を加速させるきっかけにはなる。一方で、キャッシュレス決済ができるのは比較的所得の高いクレジットカード保有者やスマホ利用者に限定され、公平性の問題が生じうる。軽減税率に加え、還元も導入すれば税収増がさらに圧縮されるという財政面のデメリットも抱えている。

*10-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20181019&ng=DGKKZO36672510Z11C18A0MM8000 (日経新聞 2018年10月19日) 日米欧で「データ貿易圏」、情報流通へルール作り 台頭する中国を意識
 日本政府が米国や欧州連合(EU)と国境を越えるデータの流通でルールづくりを目指すことが分かった。個人や企業の情報を保護しながら人工知能(AI)などに安全に利用する仕組みをつくる。今年はEUの情報保護規制やフェイスブックの情報流出で米IT(情報技術)大手の戦略にほころびが生じた。台頭する中国とのデータの「貿易圏」争いを意識し、日米欧で連携を狙う。日本政府の目標は個人情報の保護やサイバーセキュリティー対策が不十分な国・地域、企業へのデータ移転を禁じる合意だ。国境を越えた移転には厳格に本人の了解を求め、透明性も高める。世耕弘成経済産業相、ライトハイザー米通商代表らが出席する日米欧貿易相会合で協議する。日本が議長国を務める2019年6月の20カ国・地域(G20)首脳会議までに合意して公表したい考えだ。日本の個人情報保護委員会、米連邦取引委員会(FTC)、欧州委員会司法総局で具体的な内容をまとめ、各国が法整備する。日本では個人情報保護法を改正する。これまでデータの世界はGAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン・ドット・コム)と呼ばれる米巨大企業が圧倒してきた。だがEUが5月、個人情報の保護を強化する一般データ保護規則(GDPR)を施行し、EU域外への個人データの移転を原則禁じたため、GAFAも対応を迫られている。今年はデータ流出事件が相次ぎ、米国内でもGAFAへの規制論があがりはじめた。GDPRとデータ流出でGAFAの覇権が揺らいだわずかな隙に、日本は欧米の橋渡しをしてルールづくりにつなげる構えだ。日本政府関係者は「米政府が欧州のGDPRに準拠した規制に関心を示し始めている」と話す。米国が欧州の基準に歩み寄るかが焦点になる。中国の管理社会型のデータ流通への警戒もある。中国はBAT(バイドゥ、アリババ、テンセント)と呼ばれる企業を前面に立てて国家が情報を吸い上げ、個人が特定された大量のデータが集まる。質も量も高水準なデータを使えばAIの競争力は飛躍的に高まる。既に東南アジアや中東、アフリカに売り込みを始めており、中国モデルのデータの貿易圏が広がりかねない。日米欧は中国に比べると人権に配慮し、ある程度匿名化したデータを使う。そのためにAIの能力で負ける可能性もある。国家主導・管理社会型の貿易圏が次の覇権を握る前に、透明性が高く人権に配慮した貿易圏をつくれば、域内で大量のデータを共有して競争力を高めることができる。あらゆるモノがネットにつながる「IoT」では、製造業に強みを持つ日本にもチャンスがある。欧米とは産業データも安全に流通させるルールをつくり、成長につなげる考えだ。

*10-3:http://www.houko.com/00/01/S21/000.HTM (日本国憲法 抜粋) 
第21条 集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。
   2 検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない。
第23条 学問の自由は、これを保障する。

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2018.9.23 ふるさと納税・返礼品・税収の使途について (2018年9月24、25、26、29、30日、10月4、8日追加)

                                 218.9.20西日本新聞

(図の説明:左の図のように、ふるさと納税寄付額は、2008年の制度導入以降、大きく増加した。また、中央の図の佐賀県みやき町の返礼品に電気製品があったのは、都会では考えられないかも知れないが、地元の電気屋さんを残すためだったそうで、佐賀県上峰町の場合は、返礼割合は普通だが気合の入った質のよい返礼品が送られて来る。なお、佐賀県唐津市は唐津市出身の人が社長であるDHCに原料として唐津産のオリーブを使ってもらったり、宣伝してもらったりしているようだ。他はよく知らないが、それぞれ苦心の後が見えるのはよいと思う。さらに、右の図の部活動については、専門家が指導しなければ時間を使う割には根性論に陥って上達しないため、どうせやるのなら、給料を払ってオリンピックメダリストやオリンピックを目指したような選手をコーチとして雇い、時間の無駄なくうまくなれるようにした方がよいと思う)

(1)ふるさと納税に対するクレームについて
1)クレームの内容と反論
 私が提唱してでき、多くの方のアイデアと協力で大きく育った「ふるさと納税」が、*1-1のように、「①返礼品の抑制が広がる中でも増えた」「②ガソリン税に匹敵する規模で自治体の主要な収入源になった」「③幅広いアイデアが寄付を押し上げた」というのは嬉しいことだ。

 これに対し、*1-2のように、645億円の流出超過となった東京都などが、「待機児童対策に響く」等と指摘しているが、東京など企業の本社・工場が多い地域で多く徴収される仕組みになっている法人住民税や生産年齢人口の割合が高い都会で多く徴収される個人住民税などによる税収格差を是正するために、私は「ふるさと納税」を作ったので、都市から地方の自治体に税収が流れるのは最初から意図したことだった。

 なお、私は大学時代から30代後半まで東京都内に住んでいたのでよく知っているが、東京都の待機児童対策がふるさと納税制度制定前に進んでいたかと言えば全くそうではなく、莫大な無駄遣いが多いことは誰もが知っている事実だ。そのため、東京都が「待機児童対策に響く」などと指摘しているのは、持ち出しにクレームを言うための耳ざわりのいい口実にすぎない。

 さらに、「ふるさと納税」を集めるチャンスはどの自治体も平等に持っており、魅力的な製品やサービスを発掘(もしくは開発)して返礼品にした自治体が多くのふるさと納税を集めるられるのは、単なる税金の分捕合戦ではなく、地方自治体が自らの地域の長所を見つけて魅力ある産物を増やす工夫をすることに繋がっている。つまり、「うちには、何もない」と思っていた地方の人たちが、自らの産物に対する消費者の人気を肌で感じ、ネット通販やクラウドファンディングのノウハウを習得する機会になったのである。

 にもかかわらず、*1-3のように、日経新聞は、「ふるさと納税は原点に戻れ」と題して、「①寄付額の3割を超える高額な返礼品が増えた」「②地元の特産物以外の商品を送る市町村も多い」「③総務省の要請には法的な拘束力はないが、ルールに従う地域からみれば不公平」「④ふるさと納税は、富裕層に有利」「⑤ふるさと納税が日本の寄付文化を育んでいる面もあるが、自然災害の被災地には返礼品がなくても多額の寄付が集まっている」「⑥ふるさと納税は、故郷や気になる地域を個人の自由意思で応援する制度だ」「⑦見直しで高額な返礼品がなくなり、寄付額が減ったとしても仕方ない」などの批判をしている。

 しかし、私がふるさと納税制度の創設を提唱したのは、純粋な寄付文化を育むためではなく、育った地方に税源を与えつつ、地方を刺激するためであるため、⑤⑥⑦は、あまり努力しなかった自治体のクレームにすぎない。また、①③は、特に条文がないので、日本国憲法から導きだされる租税法律主義から考えて自由であり、それよりも、法律に根拠のないルールを勝手に作って「ルールだから守れ」と言う方が問題である。

 ただ、②のように、地元の特産物以外の商品を多額の返礼品にすれば、地元の産業を育てるチャンスを失い、税収も増えないため、総務省より地元住民がクレームを言うべきだろう。

2)控除限度額の計算
 上の④の「ふるさと納税は、富裕層に有利」というのは、税法の知識のない人が“富裕層(範囲も不明)”さえ叩けば批判になると勘違いしているお粗末な例で、このようなワンパターンの批判は止めるべきである。

 ふるさと納税の控除限度額は、*1-4のように、所得税からの控除限度額が「a)+b)」で、住民税からの控除限度額が「c)」であるため、「a)+b)+c)」の金額である。そして、返礼品がなければ2000円分はどこからも戻ってこず、寄付をしない人より多く税を納めることになるので、この2000円の方が問題だ。
  a)所得税からの控除額=(寄付金-2000円)×所得税率
  b)復興特別所得税から控除額=所得税からの控除額×復興特別所得税率2.1%
  c)住民税からの控除(基本分)=(寄付金-2000円)×住民税率10%

 つまり、所得が大きい人の控除限度額が大きくなるのは当然で、所得が大きい人は累進課税により多額の所得税・住民税を支払っているということなのだ。そして、ふるさと納税に対する批判の多くが、この所得税・住民税の仕組みを理解しておらず、もっともらしく感情論に終始しているのは問題である(「論理的→男性、感情的→女性」というジェンダーは成立しない)。

3)返礼品の発祥と規制の非妥当性
 そのため、この2000円をカバーしようとして考えだされたのが、ふるさと納税を受けた地域からのお礼の品であり、香典を持って行って香典返しをもらうことに例えられる。また、地元の産品であればもちろん産業振興になり、地元産には原料が地元産の場合もあるし、地元の電気屋さんがなくなったら困るため、そこの商品だったりする場合もある。従って、よく事情を聞かなければ妥当性は不明だ。

 ただ、「香川県直島町の担当者が、特産品が少なく簡単にはいかない」と言っているのは、役所の人が返礼品を考えるからで、地元の農協・漁協・商工会などと相談して魅力的な産品(米・レモン・オリーブ油・魚でもよい)を作って返礼品にすれば、それこそ地域振興に繋がる。

 従って、私は、総務省が、返礼品を寄付額の3割以下にすることや地元の農産品に限ることを強制する根拠は法律にはないし、地方自治体は工夫して、「廃止されそうな鉄道の維持」や「送電線の敷設・地中化」に使うというような使用目的を出してもよいと考える。

(2)総務省の対応と自治体
 総務省は、*2-1のように、ふるさと納税の返礼品は地場産品だけにするように通知を出し、*2-2のように、特産品の少ない自治体はこれに困惑しているそうだが、地域の人が「何もない」と思っている地域に優れた農林水産物があったりするため、それこそ地域振興のために知恵を絞るべきだ。

 また、*2-3の埼玉県毛呂山町は、農家の高齢化が進んで収穫されないユズ畑が増えているそうだが、ゆずジュースにしたり、レモンやオレンジに転作したりと、畑や作物の利用余地は大きい。また、*2-5のように、イノシシの皮で起業する人もおり、このような時に、ふるさと納税を「ガバメントクラウドファンディング」として使うのもよいと考える。

 なお、*2-4のように、総務省は、2017年4月に、寄付金に対する「返礼率」を3割以下にし、家電・金券類を扱わないよう求める通知を出し、2018年4月に、返礼品は地場産品に限るよう新たに求め、2018年7月に、ルールを守っていない寄付額の規模が大きな自治体を公表し改善を求めたそうだが、その“ルール”は法律で決まっているものではないため、租税法定主義から強制はできない。

 ただ、無茶なことをしてふるさと納税を集めても地域のためにならないため、それについては地域の人が苦情を言ったり、よりよいアイデアを出したりすべきだろう。

 なお、*2-6のように、JA全中は、准組合員のJAへの意思反映や運営参画促進に向けた具体策を提起するそうだが、6次産業化を進めるには、加工やサービスを行って貢献してくれる人を准組合員にしたり、理事にしたりすると、アイデアが集ってよいと考える。そのため、農業従事者以外を農協から排除する方が営業センスがない。

(3)問題の本質
 問題の本質について、*3のように、西日本新聞が「①返礼品の過当競争といわれても、ふるさと納税の寄付金に頼らざるを得ない地方財政の窮状がある」「②30%という線引きの基準は妥当か」「③税収格差が広がる中で、自治体同士が寄付という名の税金を奪い合う構図に陥っている」「④地方分権改革による国から地方への税源移譲こそが問題解決の本筋だ」「⑤原材料から製造・流通まで複雑に絡む『地元産品』を具体的にどう定義するのか」と記載している。

 私は、①④には賛成で、地方分権と言っても財源がなければ何もできないため、例えば企業の偏在とは関係のない消費税を全額地方税にするなどの税源移譲があってよいと考える。しかし、高所得者になる人を教育して都会に出した地方に見返りがあるのは自然であるため、ふるさとへの貢献をするふるさと納税があるのはよいことだと思う。

 また、②の30%基準は、まあそのくらいだろうという意味しかない。さらに、③については、単に自治体同士が税金を奪い合っているのではなく、それぞれの自治体の役所が、頭を絞って魅力的な産物を作ろうとしていることにも意味があり、新しい産物を軌道に乗せるため「ガバメントクラウドファンディング」を行って応援するのも名案だ。

 ⑤についても、確かに地元とはいろいろな関わり方があり、地元の産業振興に貢献してくれる企業は多いため、定義は困難だろう。

(4)ふるさと納税の使途
 ふるさと納税は、返礼品目的だとして批判されることが多いが、どの自治体も使途を選択できるようになっている。つまり、納税者が使途を指定することができるのが、他の税金とは異なるよい点で、自分が住んでいる地域に使途を指定してふるさと納税することもできる。
 
 例えば、*4-1のような産業スマート化センターの開設・IT導入を応援したり、*4-2のような剣道・体操・ヨット・バレーボール・化学などの部活指導を専門家に任せる資金を作ったり、*4-3のような障害者・高齢者のケアを充実する費用に充てたり、市長にお任せしたりと、地域も魅力的な使途を工夫するようになる点で意義深い。その時、単なる景気対策のバラマキような無駄遣いの使途に、ふるさと納税をする人はいないだろう。

<ふるさと納税に対するクレーム>
*1-1:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO30385930R10C18A5EA3000/?n_cid=SPTMG002 (日経新聞 2018年9月11日) ふるさと納税、3000億円視野 返礼品抑制でも伸び
 ふるさと納税が返礼品の抑制が広がるなかでも増えている。日本経済新聞が全国814市区を調査したところ、6割が2017年度の寄付額が増えると見込む。市区分だけでも2014億円と前年度より10%伸びており、都道府県や町村分を含めると3000億円の大台を突破する勢い。自治体の歳入としてはガソリン税に匹敵する規模で、主要な収入源になってきた。17年度の自治体別の増額幅をみると、最も多かったのは1億円未満で全体の45%を占める。5億円以上は3%にとどまっており、1億~5億円未満が11%だった。ふるさと納税が特定の自治体に集中するのではなく、利用の裾野が広がり多くの自治体で厚みを増している構図が浮かび上がる。総務省によると16年度の実績は2844億円。市区の合計額はふるさと納税全体の64%を占めていた。都道府県は1%で町村は35%だった。市区と町村の伸び率はこれまでほぼ同じ水準で推移しており、17年度は全国の総額で3000億円の大台を超える見通しだ。総務省は17年4月に資産性の高い返礼品などを自粛し、返礼割合も3割以下に抑えるよう各自治体に通知。18年4月には返礼品の見直しの徹底を改めて求める追加の通知を出している。通知後も高い返礼割合の自治体は残るが、集め方や使い道の工夫が広がっている。北海道夕張市はあらかじめ使途を明示した。インターネットで不特定多数の人から少額の寄付を募るクラウドファンディングの手法を採用。少子化に悩んでいた地元の高校を救うプロジェクトなどが共感を呼び、寄付額が3000万円増えた。青森県弘前市は重要文化財である弘前城の石垣修理や弘前公園の桜の管理といった街づくりに参加できる仕組みが人気を集め、前年度より1億6000万円上積みした。「高額」の返礼品だけでなく、幅広いアイデアが寄付を押し上げている。一方で16年度にトップ30だった市区のうち、6割が17年度は減少すると見込む。家電を返礼品から外した長野県伊那市(16年度2位)は66億円減少。パソコンの返礼品をやめた山形県米沢市(同5位)も17億円減った。ただ、全体では17年度も16年度より10%伸びる見通し。上位の減少分を幅広い自治体の増加分でカバーしている形だ。自治体の最大の歳入は約4割を占める地方税。16年度は約39兆円だったが、人口減時代を迎え今後の大幅な増収は見込みにくい。3000億円規模の歳入は自治体にとって、ガソリン税や自動車重量税の地方分と並ぶ規模になる。ふるさと納税が地方税の収入を上回る例も出ており、自治体の「財源」としての存在感は高まっている。16年度首位の宮崎県都城市を抑え、17年度の見込み額でトップになったのは大阪府泉佐野市(同6位)。関東、関西を中心に約130億円を集め、16年度より約95億円増えた。ふるさと納税の額は同市の16年度地方税収入の約6割にあたる。返礼品を大幅に増やして1000以上を用意。黒毛和牛などが人気で、3月までは宝飾品や自転車もそろえていた。返礼割合は17年度で約4割と総務省が求める基準より高かったが、18年度は約3割まで下げる方針だ。一方、税収が「流出」している自治体からは不満の声も漏れる。東京23区では16年度だけで386億円が流出。世田谷区では52億円減った。自治体によっては「既存事業や新規の事業計画に影響が出る可能性がある」と懸念するところもある。調査は2月下旬から4月下旬に実施。802の市区から回答を得た。
▼ふるさと納税 生まれ育った故郷や応援したい自治体に寄付できる制度。納税者が税の使い道に関心を持ったり、寄付を受けた地域を活性化させたりする目的で2008年度に導入された。寄付額から2000円を差し引いた金額(上限あり)が所得税と個人住民税から控除される。15年度から控除上限額を2倍に引き上げ、確定申告せずに税額控除の手続きができる特例制度を導入して利用が広がった。

*1-2:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO33497750X20C18A7EA1000/?n_cid=SPTMG022 (日経新聞 2018年9月11日) ふるさと納税、東京都から645億円の流出に
 総務省は27日、ふるさと納税で控除される住民税が2018年度に全国で約2448億円になると発表した。前年度に比べて37%増えた。都道府県別では、東京都内の控除が約645億円で最も多い。その分だけ、都内の自治体の税収が他の道府県に流出していることになる。待機児童対策などに響くとの指摘もあり、大都市圏の自治体にとっては頭の痛い状況だ。ふるさと納税は故郷や応援したい自治体に寄付できる制度で、原則として寄付金から2千円を引いた額が所得税や住民税から控除される。今回は18年度分の課税対象となる17年の寄付実績から、地方税である住民税の控除額を算出し、都道府県別に集計した。ふるさと納税による寄付の伸びを反映し、住民税の控除額も軒並み増えている。最大の東京都からの「流出額」は約180億円増えた。第2位の神奈川県は257億円と約70億円膨らんだ。こうした大都市圏の自治体からは「行政サービスに影響が出かねない」との声が漏れる。ふるさと納税を巡っては、自治体が高額な返礼品を用意することでより多くの寄付を集めようとする競争が過熱した問題がある。総務省は17年4月、大臣通知で各自治体に「良識のある対応」を要請し、返礼品を寄付額の3割以下にすることなどを求めた。子育て支援や街づくりなどに使い道を明確にするなど、既に多くの自治体は対応を見直している。返礼割合が3割を超える市区町村は、18年6月時点で1年前の半分以下の330自治体に減った。それでも制度自体の人気は根強い。ふるさと納税は17年度には初めて3千億円を突破した。一方、税収の流出に悩む大都市圏でも地域資源の活用などの工夫で、寄付を集める取り組みが広がる。大阪府枚方市は市長が案内する文化財見学ツアーを用意し、17年度に2億8000万円を受け入れた。東京都墨田区は「すみだの夢応援助成事業」と銘打って、農園開設などの民間プロジェクトを選んで寄付できるようにしている。

*1-3:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180920&ng=DGKKZO35549490Z10C18A9EA1000 (日経新聞社説 2018年9月20日) ふるさと納税は原点に戻れ
 野田聖子総務相がふるさと納税制度の見直しを表明した。過度な返礼品を送っている自治体への寄付は税制優遇の対象から外す方針だ。これを機に同制度の本来の趣旨を再確認したい。ふるさと納税は制度ができて今年で10年になる。当初、年間の寄付額は100億円前後で推移していたが、2013年度ごろから増え始め、17年度は3653億円と前年度よりも3割増えた。寄付が増えた最大の理由は高額な返礼品だ。ネット上で仲介する民間サイトが増えて比較しやすくなったこともあって、自治体間の返礼品競争が過熱した。総務省は17年4月に、返礼品の金額を寄付の3割以下にすることなどを要請したが、今年9月時点でも全国の約14%の自治体が従っていない。地元の特産物以外の商品を送る市町村も多い。総務省の要請には法的な拘束力はないが、ルールに従う地域からみれば納得できないだろう。現状では不公平感がぬぐえない。17年度に全国で最も寄付を集めた大阪府泉佐野市は、地元産品以外も含め肉やビール、宿泊券など1千種類以上の返礼品をそろえ、返礼率も最大で5割にのぼるという。もはやカタログ通販だ。こうした自治体がある以上、優遇税制を見直すのはやむを得ない。過度な返礼品以外にも、ふるさと納税には様々な批判がある。例えば富裕層に有利な点だ。所得が多い人ほど税金の控除額が増えるためだ。ふるさと納税が日本の寄付文化を育んでいる面もあるが、自然災害の被災地には、返礼品がなくても多額の寄付が集まっている。特産品の代わりに故郷にある墓を掃除したり、同制度を使って資金を募って過疎地での起業を後押ししたりする市町村もある。ふるさと納税はその名の通り、故郷や気になる地域を個人の自由意思で応援する制度だ。今回の見直しで高額な返礼品がなくなり、寄付額が減ったとしても、それは仕方がないのではないか。

*1-4:https://zuuonline.com/archives/165336 (抜粋) ふるさと納税の控除額の計算方法
 ふるさと納税には「納税」という言葉がついているが、寄付金控除のひとつだ。各自治体に寄付をすることで、原則として寄付額から2000円を差し引いた金額が、所得税と住民税から控除される。例えば1万円を寄付すると、2000円を差し引いた8000円が所得税と住民税から控除される。住民税の控除は、さらに基本分と特例分に分かれる。住民税控除の特例分はふるさと納税特有のもので、他の寄付金控除にはない。寄付金の額から2000円を引いた金額の全額を控除できるように、特別に考え出されたのが特例分なのだ。ただし、住民税の特例分には一定の上限(個人住民税所得税割の2割)があるので、注意が必要だ。ふるさと納税全体の計算式は以下のとおり。
  ふるさと納税控除=所得税控除(+復興特別所得税控除)+住民税控除(基本+特例)
●所得税からの控除
 ふるさと納税は原則、所得税と住民税からその控除額を計算する。所得税の確定申告における寄付金控除には、所得税率を掛ける前の所得から差し引かれる「所得控除」と、所得税率を掛けた後の税額から直接差し引かれる「税額控除」があるが、ふるさと納税は所得控除に該当する。そのため、ふるさと納税をした金額から2000円を引いたものに所得税率を掛けた額が、所得税からの控除額になる。2037年12月31日までは、所得税のほかに所得税率の2.1%の税率の復興特別所得税がかかり、ここからもふるさと納税の控除がおこなわれる。所得税等から差し引かれる控除額は、以下の算式の合計額となる。
  ①所得税からの控除額=(寄付金-2000円)×所得税率
  ②復興特別所得税から控除額=所得税からの控除額×復興特別所得税率2.1%
 所得税率は以下の表で確認できる。
   <所得税速算表>
   課税される所得金額      税率     控除額
   195万円以下          5%       0円
   195万円超 330万円以下    10%   9万7500円
   330万円超 695万円以下    20%    42万7500円
   695万円超 900万円以下    23%   63万6000円
   900万円超 1800万円以下    33%  153万6000円
   1800万円超 4000万円以下   40%  279万6000円
   4000万円超 45% 479万6000円
 ※課税される所得金額は、所得金額から所得控除を差し引いた後の金額。
●住民税からの控除(基本分)
 ふるさと納税は所得税だけでなく、住民税からも控除される。住民税は基本分と特例分にわかれるが、基本分はふるさと納税だけでなく、寄付金控除すべてに共通の基本的な計算方法だ。ふるさと納税をした金額から2000円を引いたものに、住民税率を掛けた額が住民税からの控除額(基本分)になる。計算式は以下の通り。
  ③住民税からの控除(基本分)=(寄付金-2000円)×住民税率10%
 ※住民税の内訳は道府県民税の税率が4%、市町村民税の税率が6%。
●住民税からの控除(特例分)
 住民税控除の特例分は、ふるさと納税をした金額から2000円を引いたもの全額が控除できるように考え出された、いわば「ふるさと納税のための控除」だ。所得税や住民税からの控除基本分から控除しきれなかったものを、特例分で控除するイメージとなる。計算式は以下の通り。
  ④住民税からの控除(特例分)=(寄付金-2000円)-所得税からの控除分
                            -住民税からの控除(基本分)
 ふるさと納税控除に占める特例分の割合は以下の式で求められる。
  ⑤特例分の税率=100%-「所得税の税率」×(100%+復興特別所得税率2.1%)
                         -「住民税からの控除(基本分)10%
 所得税率が5%の場合なら、ふるさと納税控除に占める特例分の割合は100%-5%×102.1%-10%=84.895%となり、所得税率が20%なら100%-20%×102.1%-10%=69.58%となる。所得税率が異なっていても、特例分の割合を調整することで誰もが「寄付金-2000円」の控除を受けることができるようになっている。ただし、特例分には上限があり、個人住民税所得税割の2割と決まっている。ふるさと納税の金額から2000円をマイナスした金額が、個人住民税所得割額の20%を超える場合の特例分は、上記の計算式に関係なく個人住民税所得割額×20%となる。寄付額を考える際に考慮してほしい。

<総務省の対応と自治体>
*2-1:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO28778380Q8A330C1MM0000/?n_cid=SPTMG053 (日経新聞 2018年9月11日) ふるさと納税、返礼品は地場産品だけに 総務省通知
 総務省はふるさと納税の返礼品を地場産品に限るよう自治体に求める。4月1日付で通知を発送する。海外のものなど「ふるさと」とは関係がなかったり、縁遠かったりするものを返礼品にする自治体がある。本来の目的から外れていることを問題視、自治体どうしの過剰な競争を防ぐ狙いだ。通知に強制力はないが、変更を迫られる自治体も多そうだ。ふるさと納税は2016年度の寄付額が15年度比72%増の2844億円と最高を更新。一方で、制度の趣旨に沿った運用ができるかがかねて課題になってきた。一部の自治体で、海外産のワインやシャンパン、関係のない地域の調理器具やフルーツなどを取り扱っているケースがある。今回の通知には「区域内で生産されたものや提供されるサービスとすることが適切」と明記する。「制度の趣旨に沿った良識のある対応」として地場産品に限るよう自粛要請する。たとえば岐阜県七宗町は民間のギフトカタログを返礼品にしている。町内の商店街に返礼品のアイデアを募り、ギフトカタログを返礼品に加えていた。町の担当者は今回の通知に「特産品の多い豊かな自治体と格差が広がるだけだ」と話した。総務省は17年4月にも寄付額のうち返礼品が占める価格を3割以下に抑え、家電や宝飾品などの換金性の高い品もやめるよう通知している。これに対しては、多くの自治体が返礼品の分量や寄付額を変更するなどして対応した。今回の通知では具体的な基準は示さないが、対応を迫られる自治体も多いとみられる。総務省は自治体のふるさと納税活用事例も公開し、地域振興に生かした事例を紹介。改めて高額返礼品の自粛を求めるなどして、ふるさと納税で起業や産業振興などを支援するよう自治体に促す。野田聖子総務相は30日の閣議後の記者会見で「結果として都市に本社を持つ企業の収益につながる事態になっている。新しい地場産品を作るという発想を持ってほしい」と話した。
■戸惑う自治体、モノからコトへ模索
 自治体側からは戸惑いの声が漏れる。輸入品のホーロー鍋を返礼品にしていた福島県南相馬市は「どう対応するか考えなければいけない」。東日本大震災の生活基盤再生を手掛けるNPOをふるさと納税で支援する形だが、総務省の通知に抵触するおそれもある。関西地方の自治体は別の自治体とふるさと納税で返礼品を融通する協定を結んだ。日用品などが割安で手に入るとして寄付額を伸ばした。「震災の被災地支援」としてこうした協定を結ぶ自治体も多く、「自治体の自主性を奪いかねない」との懸念もくすぶる。昨年の返礼率の引き下げを背景に、寄付金を起業や地域振興にいかそうという動きが相次ぐ。総務省は寄付金の使途を明確にして、ふるさと納税をクラウドファンディングのように募る「ガバメントクラウドファンディング」といった手法を促す。岐阜県池田町はローカル線の「養老線」の存続活動に寄付金を使う。鹿児島県霧島市は集めた寄付金で商店街のテナントを使った起業を支援する事業を始めた。ふるさと納税サイト「ふるさとチョイス」を運営するトラストバンク(東京・目黒)によると、同社が立ち上げたガバメントクラウドファンディングの本数は2017年に111件と前年の約2倍に増えた。須永珠代社長は「地域の自立を促す有効な制度となるよう、一定のルールを設けることが大切だ」と指摘する。ふるさと納税は返礼品を競う「モノ」から、「コト」へと比重を移しつつある。もっとも、16年度の寄付金受け入れ額では宮崎県都城市を筆頭に上位は牛肉など食品の人気が高い自治体が占めており、模索が続く。

*2-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180915&ng=DGKKZO35411780U8A910C1EA5000 (日経新聞 2018年9月15日) 総務省、ふるさと納税見直し、特産品少ない自治体、困惑
 総務省が「ふるさと納税」の見直しに動き始めた。目先の寄付金を集めようと豪華な返礼品をそろえる競争が過熱。地域と関係の薄い家電製品や高級酒などが返礼品になる例まで出ていた。自粛要請しても一部自治体は従わず、業を煮やした総務省は11日、過度な返礼品を用意する自治体への寄付を税優遇から除外する抜本策を表明した。2019年度税制改正での実現を目指す。「ふるさと納税は存続の危機にある。ショッピングではない」。11日の閣議後の記者会見。野田聖子総務相はいつになく厳しい表情で苦言を呈した。「制度の趣旨をゆがめているような団体については、ふるさと納税の対象外にすることもできるよう見直しを検討する」。ふるさと納税が始まったのは2008年度。自治体への寄付金に応じて税金を控除する制度で、故郷や災害の被災地などを応援するのが本来の狙い。都市部の住民が田舎の故郷や災害で傷ついた地域などを寄付金で応援するというわけだ。原則として寄付金から2千円を引いた額が住民税や所得税から控除される。当初は年100億円にも満たなかった寄付額は17年度には3653億円にまで拡大した。だが、理想と現実はかけ離れている。いびつな光景はそこかしこに広がる。ビールやギフトカードに化粧品、海外ホテルの宿泊券、都内料亭の食事券。ふるさと納税のインターネットサイトや自治体のホームページをのぞくと、そんな返礼品がズラリと並ぶ。寄付するお金とは別に原則2千円の自己負担で好みの返礼品を手に入れられる。その行為は買い物とかわりない。控除される税金は本来、寄付者の居住地で何らかの行政サービスに充てられるはずのものだ。それが別の地域に流れていく。その先で地場産品の消費拡大など地域振興につながるならまだしも、返礼品が地場産品ではないケースも目立つ。日本全体として貴重な税財源が嗜好品のお取り寄せに使われているとの見方もできる。総務省も問題を黙って見過ごしてきたわけではない。17年度には大臣通知で全国の自治体に「良識のある対応」を呼びかけた。具体的な目安として返礼品の調達価格を寄付金の3割以内に抑えることを求めた。地場産品以外の扱いも控えるよう要請した。18年度にも同様の大臣通知を改めて出した。この7月には、地場産品以外の過度に高額な返礼品で10億円以上の寄付を集める全国12市町の具体名を公表。警告の意味も込めた。ゆがみは徐々に是正されてはいる。返礼割合が3割を超える自治体は16年度で1156と全体の65%を占めていたが、直近の9月1日時点では246(14%)に減少した。民間のカタログギフトを返礼品にしていた岐阜県七宗町は総務省の通知を受けた今春に除外した。秋田市は10月までに3割超の返礼品を取り下げる予定。クルーズ船の乗船クーポン券はすでに申し込みサイトから削除した。一方で見直しに消極的な自治体も少なくない。香川県直島町の担当者は「見直さないわけにはいかないが、特産品が少なく簡単にはいかない」とこぼす。今後、見直す時期や意向が決まっていない自治体は174(10%)。ビールなどを返礼品として17年度に135億円と全国最多の寄付を集めた大阪府泉佐野市は総務省の調査に回答していない。それぞれの事情や言い分はあるにせよ、一定の税収を確保したいのが自治体の本音。通知を順守する自治体からは「正直者がバカをみないようにしてほしい」との声も上がる。制度の創設から丸10年。原点を改めて問い直す時期に来ている。

*2-3:https://digital.asahi.com/articles/CMTW1809211100003.html?iref=pc_ss_date (朝日新聞 2018年9月21日) 毛呂山のユズ「収穫して」
◇ボランティアと農家募集■高齢化で放置される畑増え
 古くからユズの産地として知られ「桂木ゆず」を特産する埼玉県毛呂山町は10月から、「収穫してほしい」農家と「収穫したい」ボランティアをそれぞれ募集する。農家の高齢化が進み、実がなっても収穫されないユズ畑が増えているため。ジュース製造など6次産業化を進めるなか、もったいないユズを減らして収量を増やすねらいだ。町では近年、11月中旬~12月下旬ごろの収穫期を過ぎ正月明けになっても、実を付けたままの木々が目立つようになった。町の高齢化率は今年8月1日に32・5%で、10年前から11・5ポイントも上昇。ユズ畑の多くは山の斜面にあり、木にはしごを掛けるなどして実をもいで、斜面を運び下るのは重労働だ。町の担当者によると、収穫を続ける農家からも「体がきついので、年々、とれる範囲が狭まっている」という声が上がっている。町内の栽培面積は計約10ヘクタールあり、150トンはとれるはずが、昨年度の出荷量は約100トン。「差のほとんどは、放置されている畑の分とみられる」うえ、収穫しないと木に新しい実がならなくなってしまうという。応募した農家は、募集に応じた摘み手「ゆず採り隊員」に収穫してもらい、出荷する。町は「隊員に収穫物の一部など若干の謝礼あり」としている。ともに募集期間は10月1日~31日。町産業振興課(049・295・2112)へ。

*2-4:https://dot.asahi.com/wa/2018082200060.html?page=1 (週刊朝日 2018.8.24) 過熱する「ふるさと納税」競争 “国と闘う”自治体の本音
 好きな自治体に寄付すれば、特産品などがもらえるふるさと納税。自治体間の競争は激しく、寄付金に対する「返礼率」が3割を超える商品も多数ある。家電や商品券など地場産品以外もあり国は改善を求めてきたが、従わないとして公表された自治体が複数ある。あえて“国と闘う”本音は?ふるさと納税のメリットは、地方の農林水産物や特産品などいろんな返礼品をもらえることだ。寄付金を集めるための返礼品競争が過熱する中で、総務省は引き締めを図ってきた。昨年4月には寄付金に対する「返礼率」を3割以下にすることや、家電や金券類を扱わないよう求める通知を出した。今年4月には、返礼品は地場産品に限るよう新たに求めた。7月にはルールを守っていない寄付額の規模が大きな自治体を公表し、改善を求めた。返礼率が3割以上で、地場産品以外を返礼品にしているにもかかわらず、通知に従わない12自治体だ。総務省は通知は強制ではないとしているが、自治体が受け入れないのは極めて異例だ。どんな事情があるのか。「うちは肉や米など人気を集める地場産品がない。“アイデア力”で勝負しなければ、自治体の格差が広がってしまうだけです」。こう主張するのは泉佐野市(大阪府)の担当者だ。2017年度の寄付額は135億円で全国トップ。前年度の約4倍と大きく伸びている。返礼品を紹介するサイトをのぞくと、「黒毛和牛切落し1.75キログラム」「魚沼産コシヒカリ 15キログラム」などが並ぶ。和牛は鹿児島県産などで、米は新潟県のものだ。格安航空会社(LCC)のピーチ・アビエーションの航空券に換えられるポイントといった、金券類に相当するものもある。品数は前年度から約400品増やして1千品以上になり、返礼率は全体で45%に達する。まるで大手通信販売のサイトのようだ。やり過ぎではないかとの批判もあるが、担当者はこう話す。「市内に本店、支店がある事業者に返礼品を提供してもらっている。和牛は地元の老舗が目利きしたお肉。航空会社のポイントは市内の関西空港の活性化につながった」。総務省の通知に従わない背景には、市の厳しい財政状況もある。関西空港へつながる道路や駅前整備などの費用がかさみ、04年に財政非常事態宣言を出し、09年には「財政健全化団体」に陥った。職員を6割減らすなどして14年に健全化団体から抜け出してはいるが、今後の地域活性化にはふるさと納税の寄付金に期待を寄せる。「財政難で市内の大半の小中学校でプールがない。ふるさと納税のおかげで新しくプールが一つ設置でき、これからも順次整備していく予定です」(担当者)。みやき町(佐賀県)は72億円と寄付額が全国4位。佐賀牛など地場産品もあるが、他にも人気の返礼品がある。タブレット端末iPad(アイパッド)や、旅行大手エイチ・アイ・エスのギフトカードだ。返礼品を選ぶサイトでは、この二つは8月上旬の時点で、人気のため数カ月待ちとなっている。担当者は返礼品の意図をこう説明する。「ギフトカードの使途は限定されていないが、みやき町への里帰りに使ってもらいたい。iPadには町の映像が見られるアプリがついていて、町内出身者には地元を思い出してもらい、町外の人にはPRになります」

*2-5:http://www.tokyo-np.co.jp/article/ibaraki/list/201809/CK2018092102000148.html (東京新聞 2018年9月21日) イノシシの皮で起業目指す 城里町の地域おこし協力隊員・瀬川さん
 城里町の地域おこし協力隊員として活動する瀬川礼江(ゆきえ)さん(26)が、食害が深刻なイノシシの皮を加工・販売する起業に向け、インターネットのクラウドファンディングで出資を募っている。「革製品の選択肢にイノシシを入れてもらえるようにしたい」と意気込む瀬川さん。田畑を荒らす「厄介者」を、資源として利用する文化を根付かせるための応援を呼び掛ける。瀬川さんは土浦市出身。東京で就職したが「地域や人とのつながりを持ち、人生の実になる仕事がしたい」と、町の地域おこし協力隊員に応募。二〇一六年四月の採用後すぐに町職員に誘われ、狩猟免許と散弾銃所持の許可を取得した。猟友会に同行すると、仕留めたイノシシの皮は、利用されることなく捨てられていた。他地域を調べると、西日本で加工・販売が事業として成り立っていることが分かった。イノシシ革の特徴について「なめすと牛革より柔らかい。傷も付きにくく、お手入れもほとんどいらない」と瀬川さん。野生のため、最初から傷が付いている場合もあるが「それも味だと思う」と話す。協力隊員の任期が切れる一九年四月の起業を目指して皮の加工方法を学び、工房として使える物件を探した。町内の元鮮魚店を借りられる目途が立ち、改装や設備に必要な七十五万円を集めるべく、クラウドファンディングサイト「Makuake」に登録した。クラウドファンディングの期間は十月十五日まで。出資してくれた人には、金額に応じてコースターや小物入れなどを贈る。二十日現在、目標額の三割強が集まっている。町農業政策課によると、町内で捕獲されたイノシシは一七年度に約二百五十頭に上り、一八年度も前年を上回るペース。瀬川さんは「捨てられていた物が、ちょっとした工夫で日常に彩りを加えてくれる。県の魅力も伝えていけるような物作りの場にしたい」と話している。

*2-6:https://www.agrinews.co.jp/p45246.html?page=1 (日本農業新聞 2018年9月20日) 准組参画の仕組みを JAごとに要領策定 全中が具体策提起
 JA全中は、准組合員のJAへの意思反映や運営参画促進に向けた具体策を提起した。今年度中に各JAで要領を策定し、仕組みを整備した上で来年度から実践する。対象者の選定や具体的な手法など検討のポイントを示した。准組合員モニターや准組合員総代制度などの例を参考に、JAごとに取り組みを進める。JAの准組合員は約608万人(2016年度)と正組合員を上回り、増加を続けている。ただ、協同組合でありながら、多くの准組合員にJAへの意思反映、運営参画への道が開かれていないとの課題があった。一方で2016年4月に施行された改正農協法では、施行後5年後までに准組合員の利用規制の在り方検討に向けた調査を行い、結論を得るとされる。准組合員の位置付けの明確化も重要になる。JAグループでは15年度の27回JA全国大会決議で、准組合員を「農業振興の応援団」と位置付け段階的に意思反映・運営参画を進めることを盛り込んでいた。来年3月の28回大会・県域大会の議案策定に向けた基本的考え方でも意思反映・運営参画の強化を明記。こうした方針を踏まえ、今回具体策をまとめた。全中はまず、各JAで正組合員も含めたJA自己改革の対話運動を通じた組合員の意思反映を重視する。その上で、各JAで准組合員の意思反映や運営参画を促す要領の策定を提起。全中によると、全国平均で准組合員のうち3、4割は農家出身者で、JAへの意思反映が一定にできているとみられる。事業利用などで加入した残りの6、7割を対象に、意思反映などができる仕組みを目指す。JAごとの実態に合わせて、准組合員の位置付け、意思反映などの手法を要領にまとめる。意思反映の希望の有無や事業利用量、接点の多さなどで対象を選定する手法も考えられるとした。具体例として、准組合員の集いや人数を限定したモニター、支店ふれあい委員への選出、准組合員総代制度などを挙げる。さまざまな仕組みを組み合わせて、段階を踏んで参画ができる仕組みが望ましいとした。こうした取り組みは既に実践しているJAもあり、全中は事例集や導入マニュアルも整備している。全中は「何らかの意思反映ができている准組合員の割合や現在設けている仕組みによって、取り組みは変わってくる。JAの実態に合わせて声を聴く機会を設けていくことが重要だ」(JA改革推進課)と強調する。

<問題の本質>
*3:https://www.nishinippon.co.jp/nnp/syasetu/article/450066/ (西日本新聞 2018年9月16日) ふるさと納税 高額返礼品だけの問題か
 野田聖子総務相が、ふるさと納税制度の抜本的な見直しを表明した。寄付金に対する自治体の行き過ぎた「豪華返礼品」などを排除して制度本来の趣旨を取り戻すのが狙いという。高価な返礼品で寄付金を集める手法は問題である。国が自粛を求めても応じようとしない自治体の姿勢も問われよう。ただ、法律を改正して強制的に排除する手法が妥当かどうかは議論の余地がある。同時に、返礼品の過当競争といわれても、ふるさと納税の寄付金に頼らざるを得ない地方財政の窮状にも目を向けたい。出身地の故郷や応援したい市町村など好きな自治体に寄付をすれば、自己負担の2千円を除く金額が所得税や住民税から差し引かれる。ふるさと納税制度は2008年4月に始まった。控除される寄付額の上限を2倍にするなど制度が拡充される一方、常に問題視されてきたのが自治体の返礼品だった。返礼品に関する法令上の規定はない。だが、制度が普及するにつれて一部の自治体は返礼品の豪華さを競い合うようになる。商品券や旅行券のように換金できるものや、地場産品とは無縁と思われる物品などで返礼するケースも続々と出てきた。総務省の調査(今月1日時点)によると、九州の64市町村を含む全国246の自治体が寄付額の3割を超す返礼品を贈っていた。これは、全国の自治体の13・8%に相当するという。総務省は寄付額の30%超の高額品や地元産以外の物品を除外するよう総務相通知で要請してきたが、これを法制化する。要請に応じている自治体は現状は不公平と訴えており、野田総務相は「一部自治体の突出した対応が続けば、制度自体が否定される」という。確かに一理ある。だが、他方で30%という線引きの基準は妥当か。原材料から製造・流通まで複雑に絡む「地元産品」を具体的にどう定義するのか。地方が納得する議論が必要だ。地方自治に関わる問題である。地方が国の言うことを聞かないから-という理由で法改正まで持ち出すのはいかがなものか。素朴な疑問も禁じ得ない。もちろん返礼品とは無関係にふるさと納税をしている人は、たくさんいる。自然災害の被災地にこの制度を活用した寄付が集まるようになったのも、望ましい効用の一つと評価したい。問題の核心は、税収格差が広がる中で、自治体同士が寄付という名の税金を奪い合う構図に陥っていることだ。地方が全体として豊かになるためにはどうすべきか。地方分権改革による国から地方への税源移譲こそが問題解決の本筋であろう。

<ふるさと納税の使途>
*4-1:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/277384 (佐賀新聞 2018.9.20) 佐賀県産業スマート化センター開設へ、10月、IT技術導入を支援
 人工知能(AI)やモノのインターネット(IoT)など最新テクノロジーを企業に積極的に導入してもらうとともに、IT産業の成長を支援しようと、佐賀県は10月1日、佐賀市の県工業技術センター内に「県産業スマート化センター」を開設する。県内外の企業のソフトやデバイスなど約20種類を無料で使うことができる。アドバイザーを配置し、相談対応や導入支援も行う。10月22日にオープニングイベントを開く。センターは工業技術センターの生産技術棟内に開設する。ショールームを設け、AIやIoTなどの最新技術を気軽に体験できる。他に人材育成やセミナーなど多彩なメニューを予定している。本部機能は県工業技術センター内に置くが、教育機関やコワーキングスペース(共有オフィス)、IT企業などの協力を得て、セミナー開催やソフトウエアの体験を行うサテライト拠点を県内に設置する展望も描いている。また、同センターの運営や、最新技術の体験・展示に協力するサポーティングカンパニーも県内外から多数参画する予定だ。県産業労働部の担当者は「最新技術を導入したい県内企業のニーズはあったが、IT事業者との接点がほとんどなかった。センターが両社をつなぐ役目を担えれば」と話す。

*4-2:http://qbiz.jp/article/141042/1/ (西日本新聞 2018年9月20日) 【あなたの特命取材班】「ブラック部活変えよう」教諭が発信 顧問は強制、休日返上 「苦しみ」共有 全国へ
 休みもなく、長時間化する部活動の練習が「ブラック部活」ともいわれ、学校現場を疲弊させている。西日本新聞あなたの特命取材班は5月に現状を報じたが、その後も変わらぬ状況に悲痛な声が絶えない。一方で、悩みを抱えるのは生徒だけではない。多くの学校で部活動の顧問が「強制」となっている中、部活の在り方に異議を唱え、発信する教諭が福岡にいる。「先生も生徒もみんな苦しんでいる」。思いは全国へ広がっている。福岡県の公立中学校に勤務する体育教諭、中村由美子さん(39)=仮名=は2014年、会員制交流サイト(SNS)上でつながった全国の教員仲間6人で「部活問題対策プロジェクト」を立ち上げた。インターネット上で(1)教諭に対する顧問の強制(2)生徒に対する入部の強制(3)採用試験で部活顧問の可否を質問すること−に反対する署名を集め続け、署名数は現在、延べ6万を超える。中村教諭は体育教諭だが本年度、部活の顧問を受け持たない。初めて「拒否」したのは15年。きっかけは自身の子どもの異変と病気だった。それまで長年、部活の指導を求める保護者や学校の期待に応えてきた。ソフトテニス、剣道、バレーボールなど、全て運動部の正顧問を受け持ち、平日の帰宅は午後9〜11時。土日は毎週練習試合を引率し、年間を通しての休みは盆と正月の数日のみ。帰宅後も、保護者から相談などの電話が自宅にかかってくる。その間、家庭に割く時間はなく、子どもの世話は両親頼み。10年前、ストレスをためた当時小学生だった長女の異変に気付けず、担任から、もっと長女に目を向けるよう指摘された。14年、次男の出産時に1歳だった長男の血液の病気が分かり、働き方を見直そうと決めた時、SNS上で同じような悩みを抱える教諭らと出会った。
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 長時間化する部活は教員の多忙化の大きな原因だ。文部科学省の16年の調査では、中学教員が土日に部活指導に費やす時間は2時間10分と、10年前より1時間4分増えた。昨年のスポーツ庁の全国調査でも、公立中の平日の活動日数は休みなしの5日が52%で最も多く、土曜の活動は「原則毎週」が69%。本来は強制できないが、全教員が顧問になるのを原則としているのが6割で、顧問を担当する教員の半数以上が疲労や休息不足などの悩みを抱えていた。福岡都市圏の公立中学の50代男性教諭は「たくさん練習試合に連れて行ってくれるのがいい先生だという、保護者からのプレッシャーもある」と話す。
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 中村教諭は部活の顧問を断った15年以降、これまで以上に生徒指導と授業研究に力を注ぐ。16、17年は副顧問として、保護者対応を受け持ち、顧問のサポート役に徹した。正式に部活を持たないからといって、保護者や生徒との関係に支障はなく、これまでできなかった新しい授業スタイルを考え、実践することもできるようになった。部活を熱心に指導する教諭については「すごいと思うし、ありがたい」。一方で、専門知識を持たずに顧問を受け持たされる教諭が多い現状に一番問題があると感じてもいる。「部活指導のスペシャリストはごく一部。最新の指導法や知識を学ぶ時間も与えられないまま指導にあたることが、長時間の練習や試合の詰め込みにつながっているのではないでしょうか」。教諭が黙っていては何も変わらない。教諭、生徒、保護者、それぞれの部活に対する温度差に悩みながらも、中村教諭はこれからも発信を続けるつもりだ。

*4-3:http://qbiz.jp/article/140099/1/ (西日本新聞 2018年9月2日) 【あなたの特命取材班】障害者施設切られる冷房 熱帯夜続きでも「午後9時半まで」 福岡近郊「熱中症が心配」
 岐阜市の病院で、エアコンが故障した部屋に入院していた患者5人が相次いで死亡する問題が発覚して2日で1週間。福岡市近郊の障害者支援施設に親族が入所中という女性から、特命取材班にSOSが届いた。「施設の冷房が午後9時半から朝まで消される。半身不随で感覚が鈍く体も不自由なので、熱中症が心配です」。こうした施設の暑さ対策はどうなっているのか。女性が情報を寄せた施設は福岡県が設置主体で、社会福祉法人に経営を委託している。女性によると、親族は脳梗塞で倒れ、リハビリのために入所している。この8月、夜に冷房がついたことは一度もなく、夜間は「送風」に設定されている。「熱い風が吹いている。窓を開けても風通しが悪くて涼しくならない。相部屋の人も『暑い』と言っており、冬場は寒くても暖房が切られるので毛布を着込まないといけない、と聞いた」。冷房を入れるよう施設側に頼んではと思うが、女性の親族は「やっと入れた施設に感謝している。苦情のようなことを言いたくない」と話しているという。施設がある自治体に気象台の観測地点がないため、近隣である福岡市の8月の気温を調べてみた。午後11時の月間平均気温は29度。夜の最低気温が25度以上の熱帯夜でなかったのは1日だけだった。施設に取材した。担当者は「確かに午後9時半〜午前7時半は冷房は効いていない」と認めた上で「窓は網戸付きで暑ければいつでも開けられる。扇風機の持ち込みも可能」と説明。夜間に冷房を切る理由を聞くと「以前からそう運用している。この夏も苦情などはなく、暑さで体調を崩した人もいない」と強調した。
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 九州各地の障害者支援施設に尋ねてみると、対応には「温度差」が浮かぶ。熊本県社会福祉事業団の「県身体障がい者能力開発センター」(熊本市)は「毎日午前6時半から午前2時までエアコンをつけており、それ以降も暑ければ午前4時まで稼働する」。鹿児島県社会福祉事業団の「ゆすの里」(同県日置市)では「常時エアコンをつけ、湿度や温度に応じて職員が調整する」という。長崎県佐世保市の施設は昼夜問わず廊下だけ冷房を入れ、居室は入所者の希望に応じてつけたり、部屋の湿度や温度によって職員が調整したりしている。担当者は「1〜2人部屋で狭いため、冷えすぎて風邪をひく人もいる」と室温調整の難しさを語った。一方で、経済事情もちらつく。ある障害者施設の職員は「経営が苦しく、電気代節約のため夜間はなるべくエアコンを切るよう指示された」と打ち明けた。
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 空調管理に関する国の基準はないのか。厚生労働省によると、障害者自立支援法に基づく通知で「空調設備等により施設内の適温の確保に努めること」と定めている。同省障害福祉課は「エアコン稼働などは施設の判断」とした上で、「利用者の状況を踏まえて空調など適切な生活環境を支援するのは、基本の基本」と指摘した。福祉サービスの苦情を受け付ける福岡県社会福祉協議会の運営適正化委員会の担当者は「施設利用者や家族、職員から『エアコンの効きが悪い。蒸し暑い』という相談がこの夏、数件あった。それでも夜間にエアコンを切るという施設は聞いたことがない」という。気象庁が「命の危険がある災害」と表現した猛暑。意思表示が難しい障害者もいるだけに、家族の心配は尽きない。女性が情報を寄せた冒頭の施設について、福岡県障がい福祉課は、本紙の取材をきっかけに「熱中症などの事故が起きないよう、必要に応じて冷房をつけるよう指導した」としている。

<美味しい冷凍総菜は必ず当たる>
PS(2018年9月24日追加): *5の農商工連携はよいと思う。これに関して、私は、昼間、日清の「食卓便」という冷凍おかずを食べることがあり、その理由は、①電子レンジ4分半の加熱で簡単に食べられる ②管理栄養士が栄養バランスを考えている ③一つ一つの惣菜は少ないが全体として満足感がある ④一食でもバランスよく食べておくと他の食事で少々偏っても何とかなる からだ。また、「低糖質」というジャンルもある。これらは、まずくはないが美味しいとも言えないため、このような栄養バランスを考えて作られた冷凍総菜がもっと美味しければ、当たると思う。そのため、農協・漁協・商工会・森林組合が協力し、採れたての新鮮な材料を使って作るとよいと考える。現在は、ネット通販で産地まで指定してモノを売買できる時代で、地方にもチャンスがあり、ガリバーなども使えば中国への輸出も容易になる。なお、駅弁で鍛えた九州の弁当は美味しいので、管理栄養士の企画・監修があれば、すぐ良い商品ができるだろう。

*5:https://www.agrinews.co.jp/p45295.html (日本農業新聞 2018年9月24日) 「共創の日」 農商工連携で地域振興
 きょう24日は「共創(きょうそう)」の日。JA全中と森林、漁業、商工の全5団体が互いの連携を通じて地方創生につなげようと、東京都内で初の大規模イベントを開く。地域に根差した各団体が手を組み、商品開発や販路開拓などで互いを身近なパートナーと認め合う契機としたい。5団体は、全中と全国森林組合連合会、全国漁業協同組合連合会、全国商工会連合会、日本商工会議所。2017年5月に全国・地域段階の団体同士の連携を通じて、地方創生につなげようと協定を結んだ。「共創」という言葉には、農林漁業と商工業で新たな産業を「共に創造していく」との思いを込めた。例えば商品開発。和歌山県のJAわかやまは、和歌山商工会議所と連携して、地元産ショウガを使ったジンジャーエールを開発している。きっかけとなったのは市を含めた3者の連携協定。商工会議所は飲料販売業者や卸先の小売店の紹介などで協力し、17年には160万本を売り上げる人気商品となった。商品開発の事例が多いが、山林を手入れした際の間伐材を森林組合が買い取る際に、一部を商工会の発行する商品券で支払うといったユニークな取り組みも生まれている。大企業にはまねのできない地域に根差した団体の連携は、国も着目する。今回のイベントは内閣官房が18年度に新設した「多業種連携型しごと創生推進事業」を活用した。業種の枠を超えた地域の民間団体が連携を深め、新たな事業を生み出し、成功例を広めるのが狙いだ。地方では少子高齢化に伴う人口減少、労力不足で産業衰退が大きな課題となっている。JAだけでこうした課題に立ち向かうには限界がある。このため自治体や地域運営組織、他の協同組合、商工団体と幅広く連携する必要がある。特に大きな可能性があるのは商工団体との連携だ。商工会は主に町村にあり、比較的小規模な会員が多く全国に1653ある。会員数は約80万。主に市にある商工会議所は全国に515あり、会員となる事業者数は125万に上る。地域に根差した産業を担い、地域の振興を目的とする団体でJAと相通じる部分は多い。会員企業は、販路や商品開発などのノウハウも持っている。連携は既に進んでいる。全国の商工会議所のうちJAが加入しているのは約半数。農林水産資源を活用した事業を手掛ける商工会議所のうち、3割がJAと連携している。ただ、JA側から積極的に連携を呼び掛ける例は少ないという。連携によって収益が増え、商品化に結び付くケースは多く、双方が「地域振興に向けたパートナー」と改めて認識する必要がある。まず成功例を共有しよう。地方の民間団体の底力を発信し、各地で「共創」が広がることを期待したい。

<北海道ブラックアウトと原発再稼働>
PS(2018年9月25、26、30日追加): *6-1のように、北海道地震があった日、太陽光発電施設も風力発電施設も壊れなかったが、北電が送電を停止したため全道で停電した。これに関して、①再エネ発電の不安定性 ②送電線の容量制限 などの言い訳がされるが、東日本大震災から既に7年半も経過しており、①②とも解決する技術がある。にもかかわらず、技術が活かされずに停電させた理由は、安定的な電力と主張する原発の再稼働を求める声が北海道に広がるのを待ったからではないのか。そもそも、電力自由化に伴って送配電会社の中立性は不可欠であるため、2020年にようやく大手電力の発電と送配電部門を切り離す発送電分離が始まるのでは、遅すぎて再エネ事業者には被害が続出している。つまり本気ではなかったということで、2020年に送配電部門を切り離したとしても、電力会社の支配下にあれば同じだ。従って、別の送電線を準備することが必要なのだ。
 そのような中、*6-2のように、佐賀県議会が本会議で、九電の玄海原発に貯蔵されている使用済核燃料に課税対象を拡大する条例を可決し、これによって税収は現行と合わせて5年間で約187億円になるそうだが、可能性が0ではない原発事故がいったん起これば、佐賀県の農林漁業は壊滅的打撃を受け、住民も長く住めなくなるため、もっと大きな損失になる。従って、原発は、使用済核燃料まで含めて、早々に手じまって欲しいわけだ。
 さらに、北海道ブラックアウトと時期を同じくして、*6-3のように、広島高裁が仮処分決定で2017年12月に運転差し止めを命じていた四電伊方原発3号機は、仮処分が取り消されて再稼働可能になったそうだ。しかし、万一でも事故が起こった場合に迷惑するのは、周辺の広い地域に及ぶため、高松高裁、山口地裁岩国支部、大分地裁でも係争中であり、大分地裁が9月28日に決定を出すそうなので、国土を大切にする判断をして欲しいものである。
 伊方原発3号機再稼働容認の広島高裁判決について、*6-4のように、佐賀県内の市民団体も批判しており、「原発なくそう!九州玄海訴訟」原告団の長谷川団長が「破局的噴火の可能性に関し、分からないことを安全だと思うのは間違っている。それを社会通念とは言わない」とされたのは正しい。司法では、人権保護のために「疑わしきは罰せず」だが、これは犯罪の場合であり、安全性については、安全かどうかわからない飛行機は飛ばせないのと同様、「疑わしきは行わず」が社会通念であり、これも人権の観点からである。
 なお、*6-5のように、広島高裁判決は、「①9万年前の阿蘇山(伊方原発から130km)破局的噴火を想定して火砕流が及ぶ可能性を検討」「②ガイドに従えば原発の立地は認められない」「③原発以外では巨大噴火に備える規制や対策はなく、国民の不安や疑問も目立たないので巨大噴火リスクは受け入れるのが社会通念」としているそうだが、①②は正しいものの、③については、原発や核燃料があったか否かでその後の復興に大きな違いが出るため、原発については特に慎重になるべきだと考える。また、国民の不安や疑問による“社会通念”は、東日本大震災級の地震や津波・活断層・地球温暖化等に対しても甘かったので、新しい知見に従って“社会通念”の方を修正すべきである。

   
               2018.9.29西日本新聞 

*6-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180925&ng=DGKKZO35694020U8A920C1MM8000 (日経新聞 2018年9月25日) エネルギー日本の選択 再生エネ、なぜ生かせず? 北海道地震が問う危機(中)
 海道が地震に見舞われた6日、太陽光発電事業者のスパークス・グリーンエナジー&テクノロジーの谷脇栄秀社長は釧路市にある大規模太陽光発電施設(メガソーラー)に異常が無いとの報告に胸をなで下ろした。しかし、それもつかの間、別の問題が浮上した。北海道電力が送電再開を認めなかったのだ。一般家庭で約7000戸分の電力を発電しても送電できない状況が約1週間続いた。
●風力増加があだ
 北海道は地価が安く、広い土地を確保できるため、再生可能エネルギーを高値で買い取る制度(FIT)が始まった2012年以降、メガソーラーの新設が相次いだ。風況にも恵まれ、風力発電施設は国内の1割超が北海道に集まる。17年末時点で道内の太陽光や風力の発電容量は合計160万キロワット前後と、仮にフル稼働すれば道内の電力需要の半分をまかなえる計算だ。地震直後、停電で電力変換装置などが壊れるのを防ぐための安全装置が働き、太陽光や風力発電施設は送電を停止した。北海道電は停電を解消するため、老朽化した発電設備を再稼働したり、自家発電設備を持つ企業から電力をかき集めたりした。一方、送電再開をなかなか認められなかったのが太陽光や風力。天候で発電量が変動する「不安定電源」である点がネックとなった。通常は太陽光や風力の発電量に合わせて火力発電の出力を調整して需給バランスをとる。主力の苫東厚真火力発電所が停止した北海道電は本州から電力を送る「北本連系設備」をフル活用したが、調整余力は限られた。再生エネからの送電を再開すると天候などで出力が急低下した場合に対応できず、再びブラックアウトになる恐れがあった。
●電力補完に難題
 電気事業連合会の勝野哲会長(中部電力社長)は「(今回の停電を)検証し、再生エネのデメリットを打ち消せるような運用にしたい」と語る。国は新しいエネルギー基本計画で再生エネを「主力電源化」する方針を打ち出した。地震で浮かび上がったのは、再生エネが主役となる時代に避けて通れない課題だ。緊急時に機動力を欠く石炭火力から液化天然ガス(LNG)などへのシフトを進めないと再生エネとの補完関係を築くことは難しい。大手電力は地域間で予備電力を融通し、太陽光や風力の発電量の急変に備える体制作りを急いでいるが、今回の地震で電力を融通する送電線容量が小さいことが浮き彫りになった。欧州の電力システムは再生エネ仕様に姿を変えつつある。ドイツでは北部で発電した風力由来の電力を南部の消費地へ送る送電線建設の計画が進む。国境をまたいで調整力を融通し合っており、欧州の送電会社連合は30年までに約20兆円を投じて送電線を増強する計画を公表している。天候に左右される太陽光の発電量を予測しながら全体の需給を調整する仕組みもある。国内では10電力会社の地域独占が長く続き、それぞれが閉じた世界で需給のバランスをとってきた。20年にようやく大手電力の発電と送配電部門を切り離す発送電分離が始まり、再生エネ事業者がさらに参入しやすくなる可能性がある。今のうちに使いこなす仕組みを考えないと、「宝の持ち腐れ」は変わらない。

*6-2:http://qbiz.jp/article/141253/1/ (西日本新聞 2018年9月25日) 玄海原発への燃料税拡大条例可決 佐賀県議会、5年間で21億円
 佐賀県議会は25日に開いた本会議で、九州電力玄海原発(同県玄海町)で貯蔵されている使用済み核燃料に課税対象を拡大する条例を可決した。課税期間は2019年度から5年間で、総務相の同意が得られれば実施する。貯蔵期間が5年を超えた使用済み核燃料1キログラム当たり500円を課すもので、5年間で約21億円の税収を見込む。税収は現行の項目と合わせ、5年間で計約187億円になる。避難の際に使う道路や港の整備費などに充てる。県はこれまで、原子炉の出力や、使用される核燃料の価格に応じて課税してきた。東京電力福島第1原発事故を踏まえ、玄海原発でも全基が運転停止となったことや、玄海1号機の廃炉決定で税収が減ったため、使用済み核燃料も課税対象とするよう九電に求め、今年8月に合意に達した。九電は県議会での審議に当たり、核燃料税に関する情報発信強化や、歳出抑制に努めることなどを求める意見書を提出。これに対し、一部県議や市民団体から「県民の安心安全をないがしろにしている」「傲慢だ」など批判の声が出ていた。玄海原発は、6月までに3、4号機が再稼働し、1号機では既に廃炉作業が始まっている。2号機だけが再稼働か廃炉か扱いが決まっていない。

*6-3:https://mainichi.jp/articles/20180925/k00/00e/040/242000c (毎日新聞 2018年9月25日) 広島高裁 :伊方原発3号機、再稼働可能に 四電異議認める
●運転差し止めを命じた12月の仮処分決定取り消し
 四国電力伊方原発3号機(愛媛県伊方町、停止中)の運転差し止めを命じた昨年12月の広島高裁仮処分決定(野々上友之裁判長=当時)を巡る異議審で、同高裁(三木昌之裁判長)は25日、四電が申し立てた異議を認め、仮処分決定を取り消した。高裁段階で初めて示された差し止め判断は9カ月で覆り、3号機は法的に再稼働が可能になった。昨年12月13日の広島高裁仮処分決定は、原子力規制委員会の内規を厳格に適用し、原発から半径160キロの範囲にある火山に関しては噴火規模が想定できない場合、過去最大の噴火を想定すべきだと指摘。その上で、伊方原発から約130キロ離れた阿蘇カルデラ(阿蘇山、熊本県)について、9万年前の破局的噴火で火砕流が伊方原発の敷地に到達していた可能性に言及し、「立地として不適」と断じた。ただ、広島地裁で別に審理中の差し止め訴訟で異なる判断がされる場合を考慮し、差し止め期限を今年9月末までとした。四電の申し立てによる異議審は2回の審尋が開かれた。四電側は「阿蘇カルデラには大規模なマグマだまりがなく、3号機の運転期間中に破局的噴火を起こす可能性は極めて低い」と強調。さらに「9万年前の噴火でも火砕流は原発の敷地内に到達していない」とした。一方、住民側は「火山噴火の長期予測の手法は確立しておらず、破局的噴火が起こる可能性は否定できない」と改めて反論。「四電の実施した調査は不十分で、9万年前の噴火で火砕流が原発に到達していたとみるのが常識的」と訴えた。また、仮処分決定が「合理的」とした基準地震動についても争点となり、四電側は「詳細な調査で揺れの特性などを十分把握した」、住民側は「過小評価」と主張した。3号機は2015年7月、規制委が震災後に作成した新規制基準による安全審査に合格。16年8月に再稼働し、昨年10月、定期検査のため停止した。四電は今年2月の営業運転再開を目指していたが、運転差し止めの仮処分決定で停止状態が続いている。3号機の運転差し止めを求める仮処分は、住民側が10月1日以降の運転停止を求め新たに広島地裁に申し立てている。高松高裁、山口地裁岩国支部、大分地裁でも係争中で、このうち大分地裁は9月28日に決定を出す。

*6-4:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/279902 (佐賀新聞 2018年9月26日) 県内の市民団体 稼働容認を批判 伊方原発3号機
 昨年12月の稼働差し止めの仮処分決定から一転、広島高裁が四国電力伊方原発3号機(愛媛県)の稼働を容認する決定を出した25日、九州電力玄海原発(東松浦郡玄海町)の運転差し止めを求めている原告団などは「論理的に破綻している」「三権分立の体をなしていない」と批判の声を強めた。今年3月に佐賀地裁で運転差し止めの仮処分申請が却下され、福岡高裁での抗告審開始を待つ「原発なくそう!九州玄海訴訟」原告団の長谷川照団長(79)は「破局的噴火の可能性に関し、分からないことを安全だと思うのは間違っている。それを社会通念とは言わない」と憤った。「玄海原発プルサーマルと全基をみんなで止める裁判の会」の石丸初美代表(67)は「同じ裁判所で真逆の判断が出るとは。原発の裁判では司法の主体性が失われている」と嘆いた。

*6-5:https://digital.asahi.com/articles/DA3S13702384.html (朝日新聞社説 2018年9月30日) 原発と火山 巨大噴火から逃げるな
 火山の噴火、とりわけ1万年に1回程度という巨大噴火が原発にもたらす危険とどう向き合うのか。安全審査を担う原子力規制委員会を中心に検討を続けねばならない。四国電力の伊方原発3号機(愛媛県)の運転再開を巡り、阿蘇山(熊本県)噴火のリスクに関して広島高裁の2人の裁判長が正反対の判断を示した。昨年末には運転差し止めを求める住民の申請が認められたが、四電からの異議を受けた今月の決定は運転にお墨付きを与えた。原子力規制委には「火山影響評価ガイド」という審査の内規がある。原発から160キロ以内の火山を対象に、噴火に伴う危険性を評価する手順を定める。伊方から130キロの阿蘇山について、広島高裁はガイドに沿って9万年前の破局的噴火を想定し、火砕流が及ぶ可能性を検討。今月の決定も昨年末と同様に「ガイドに従えば原発の立地は認められない」とした。それにもかかわらず結論が分かれた根底には、「社会通念」への姿勢の違いがある。原発以外では巨大噴火に備える規制や対策は特になく、国民の不安や疑問も目立たない。巨大噴火のリスクは受け入れるのが社会通念ではないか――。昨年末の決定は、こうした考えに理解を示しつつ、福島第一原発事故後に発足した規制委の科学的・技術的な知見に基づくガイドを重視した。今月の決定は、噴火の予測が困難なことなどからガイドは不合理とし、社会通念から結論を導いた。あいまいさを伴う社会通念を前面に出した司法判断には疑問が残る。放射能に汚染された地域への立ち入りが厳しく制限される原発事故の深刻さは、福島の事故が示す通りだ。原発を巡る「社会通念」とは何か、議論を尽くす必要がある。まずは規制委である。規制委は3月、事務局を通じて「巨大噴火によるリスクは社会通念上容認される」との考えを示した。今月の広島高裁の決定も触れた見解だが、「委員会の使命である科学的評価を放棄した」との批判が出ている。その広島高裁決定が「火山ガイドは不合理」としたことについては、更田豊志委員長が会見でガイドにわかりにくさがあることを認め、修正に言及した。表現の手直しにとどめず、自らの役割を含めて「原発と火山」を問い直さねばならない。火山噴火が懸念される原発は伊方に限らず、九州電力の川内原発(鹿児島県)など各地にある。国民的な議論の先陣を切ることを規制委に期待する。

<新技術の日本社会への導入の遅れ>
PS(2018年9月29日、10月4日追加): *7-1のように、トヨタがやっとレクサスをEV化するそうだが、これは中国で2019年以降はEVやPHVなどの一定割合の販売が義務付けられ、他国に尻を押された形だ。そして、2020年に中国への輸出を開始し、同年夏ごろから欧州でも販売するそうだが、EV技術は最初に日本で開発されたにもかかわらず汎用化が他国より遅れたのは、*7-2のように、日本では理系が開発した技術を社会に落とし込む際に問題があるからだ。そのため、文理融合を視野に入れた九大の“知の拠点”づくりは一歩先に出たことになる。
 そのような中、*7-3のように、日米新通商交渉として、まるで1980年代かのように「車か農業か」という交渉をしている。しかし、今後は日本産の自動車に価格競争力があるわけはなく、環境車技術も中国や欧州に後れをとりそうであるため、移転可能な自動車工場をアメリカに移転し、食糧生産している農業を疎かにせず、食料自給率を上げる方が重要だろう。
 なお、*7-4のように、米テスラが社運をかける新型EVの量産は軌道に乗ったが、イーロン・マスクCEOが8月に公表した後に撤回した株式非公開化計画を巡る混乱が続いているそうだ。私は、マスク氏の先見性・目標設定・迅速さは大変よいと思うが、EVの生産が軌道に乗らないうちに他の先進分野に手を出しすぎて経営が悪化しているのではないかと思うので、優秀な財務専門家をつけ、EVは大量生産して市場投入することに慣れた会社と組むのがよいと考える。また、米国の環境規制に関する緩和が逆風になっているのは気の毒だ。
 また、日本のホンダと米GMが、*7-5のように、自動運転技術で提携して次世代技術を共同開発するそうで結果が楽しみだが、既存の自動車会社は運転に関する膨大なデータと大量生産の仕組みを既に持っているため、適切な会社と提携すれば、販売市場(ニーズは国によって異なる)を見据えた技術開発を行うことができる。また、交通系は、飛行機から船まで、早く電動か水素燃料と自然エネルギーの組み合わせにして欲しい。

*7-1:http://qbiz.jp/article/141561/1/ (西日本新聞 2018年9月29日) レクサス初のEV、九州で生産 20年にも中国、欧州投入 トヨタ
 トヨタ自動車は、高級ブランド「レクサス」としては初となる電気自動車(EV)の生産を、子会社のトヨタ自動車九州(福岡県宮若市)で始める方針を固めた。2020年にも中国と欧州に先行投入する。新型の小型スポーツタイプ多目的車(SUV)「UX」をベースに開発し、当初は年間計1万5千台前後を輸出する。UXのEVは20年春ごろにも中国への輸出を開始し、同年夏ごろからは欧州でも販売する。UXは車高が比較的高く、蓄電池などを搭載するスペースが確保しやすいほか、車体がコンパクトで1回の充電による航続距離を伸ばしやすい利点もある。生産を手掛けるトヨタ九州は、国内外のレクサス工場の中でも高い技術力を誇る。永田理社長は従業員をトヨタ本体の設計開発部門に派遣し、EVを含む新分野への対応に向けた準備を進めていることを明らかにしていた。中国では19年以降、自動車メーカーにEVやプラグインハイブリッド車(PHV)など新エネルギー車の一定割合の販売が義務付けられる。トヨタは20年春ごろ、小型SUV「C−HR」をベースにしたEVの現地生産にも乗り出す。一方、トヨタの欧州向けEVの量産計画が明らかになるのはUXが初めて。現地ではコンパクトタイプのSUVが人気で、EVの投入でレクサスの競争力の強化を図る。トヨタは20年代前半に、全世界で10車種以上のEVの販売を計画。国内向けでは20年の東京五輪に合わせて小型EVの市販も検討している。レクサスは富裕層が台頭する中国と欧州で販売が好調で、UXは世界的に人気が高まるSUVの小型タイプ。今年11月末の日本での発売を皮切りに海外でも順次、エンジン車とハイブリッド車(HV)を販売することが決まっている。

*7-2:http://qbiz.jp/article/141563/1/ (西日本新聞 2018年9月29日) 九大、伊都キャンパスへ移転完了 AIバス、自動運転、水素研究…「未来」実験場に
 九州大の伊都キャンパス(福岡市西区)への移転事業が完了し、29日に記念式典が開かれる。箱崎キャンパス(同市東区)から文系の学部と農学部が28日までに引っ越しを終え、単一では国内最大規模の広さ272ヘクタールのキャンパスに、学生と教職員計約1万8700人が通うことになる。建物の老朽化や航空機の騒音に加え、箱崎や六本松(同市中央区)に分散したキャンパスを統合することを目的に、1991年に移転が決まった。2000年6月に着工し、05年の工学部から移転が始まった。大学周辺の開発も進み、05年にJR筑肥線の九大学研都市駅が開業。翌06年には同駅前に大型の複合商業施設がオープン。伊都キャンパスが広がる同市西区・西部地域と福岡県糸島市の人口は、1999年の約13万9千人から現在は約17万人に増加した。29日は式典のほかにアカデミックフェスティバルも開催され、学生や教員らによるトークショーや研究成果の発表、キャンパスツアーなども行われる。
   ◇   ◇
●文理融合、企業と連携  
 九州大の伊都キャンパスは、ヤフオクドーム約40個分、箱崎キャンパスの約5・8倍という広大な面積を持つ。九大はこのキャンパスを存分に生かし、未来を見据え、「文理統合型の伊都キャンパスがアジアの“知の拠点”になれるよう、研究成果を世界に発信し続けたい」と意気込む。今月中旬、車体に「AI運行バス」と記されたワゴン車が伊都キャンパス内を走っていた。福岡市から出向しているキャンパス計画室の山王孝尚助教によると、NTTドコモが行っている「オンデマンド交通」の実験という。バスに時刻表はない。スマートフォン内の専用アプリで、行き先と乗り場を選んで送信すると予約完了。わずか1分足らずでバスが到着した。「今は夏休みで利用は少ないですが、授業があっている時期でも待ち時間は10分以下です」。乗客のニーズを人工知能(AI)が集約し、最適な道順を検出する仕組み。学内の乗降場19カ所は、10月から41カ所に増える。同社の担当者は「客がいなければ走らないから、決められたバス停を必ず巡る路線バスより、はるかに効率的。公共交通機関に乏しい地方で力を発揮する」。すでに鹿児島県肝付町や福島県会津若松市などで公道実験が行われ、本年度中の商用化を目指すという。「伊都キャンパスは少し先の社会の実験装置」。移転担当理事の安浦寛人副学長は、新たな九大をこう位置付ける。NTTドコモ以外にも日産自動車やディー・エヌ・エー(DeNA)が自動運転の実験を行った。新エネルギーとして期待される水素研究は「世界の最先端を行く」(安浦副学長)分野だ。移転に合わせ、本年度には文理融合の「共創学部」を新設した。「理系が開発した技術を、文系の視点でどう社会に落とし込むか。統合型キャンパスで文理の連携は加速するだろう」。安浦副学長は強調する。ただ、研究施設の整備や充実度が増す一方で、九大が2月に公表したアンケート結果ではキャンパスと周辺施設に不満を持つ学生は55・6%に上った。交通手段やスーパー、飲食店などの充実を求める声が目立ち、学生の生活環境の向上も喫緊の課題といえる。キャンパス計画室副室長の坂井猛教授(都市計画)は「ゼロからつくった伊都キャンパスは、まだまだ発展途上。民間や地域と協力して、魅力あるキャンパスにしなければならない」。九大の“知の拠点”づくりが本格始動する。

*7-3:http://qbiz.jp/article/141477/1/ (西日本新聞 2018年9月28日) 「車の代わりに農業犠牲か」 日米新通商交渉 九州の生産者広がる懸念 
 日米が2国間の新たな通商交渉入りで合意したことに対し、九州の農業関係者には懸念と憤りが広がった。「日本政府は自動車を守る代わりに、農業を犠牲にするつもりではないか」と指摘するのは福岡県農政連委員長で、同県久留米市でコメやキュウリなどを生産する八尋義文さん(51)。農林水産品は環太平洋連携協定(TPP)で合意した水準までしか関税引き下げを認めないとの日本の立場を米国は尊重する考えだが「安倍晋三首相はトランプ大統領に逆らえない感じなので今後、どう転ぶか分からない」と危惧する。生乳やチーズを生産するミルン牧場(佐賀市)の横尾文三社長(70)も「日本は工業製品の輸出を増やすために国内農業を犠牲にしてきたが、今回もそれを繰り返す懸念がある」と厳しい表情。豚肉と牛肉の生産や販売などを手掛ける南州農場(鹿児島県南大隅町)グループの石松秋治会長(63)は「日本政府が工業製品重視のスタンスであるのは自明のことで、仕方がない面がある。そうしないと日本経済が成り立たないからだ」とした上で、農産物の関税引き下げについて「TPPの水準内にとどめてほしい」と要望、「農業保護の施策もしっかりとやってほしい」と注文する。JA福岡中央会の倉重博文会長は「交渉において農林水産物が工業製品の犠牲とならないか強い懸念がある」とのコメントを発表した。

*7-4:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20181004&ng=DGKKZO36070470T01C18A0TJ3000 (日経新聞 2018年10月4日) テスラEV、量産軌道に 「モデル3」7~9月計画を達成 資金面など懸念なお
 米テスラが社運をかける新型電気自動車(EV)「モデル3」の量産が軌道に乗ってきた。2日に発表した2018年7~9月期の生産実績は5万3239台と計画(5万~5万5千台)を達成した。8月に公表しその後撤回した株式非公開化計画を巡る混乱は続くがイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)が「生産地獄」と例えた危機は脱しつつある。モデル3はこれまで高級車に特化してきたテスラにとって初めての普及価格帯の車種だ。最も安価なグレードは3万5千ドル(約400万円)に抑えた。納車は2年待ちとなる見通しにもかかわらず、16年3月末の予約開始直後には1週間で32万5千台を超える注文が殺到した。ただ、量産実績が乏しいことから生産現場ではロボットによる生産自動化などが難航。当初は17年末としていた「週産5千台」の目標達成時期を2度延期した。先行投資が膨らんだことで資金流出も拡大し、18年春ごろから金融筋では倒産危機説まで公然と語られるようになっていた。マスク氏は組み立て工程を含む完全自動化によって自動車生産に革命をもたらすと息巻いていたが、18年4月ごろからは「行き過ぎた自動化は間違いだった」と発言するようになる。一部の工程では自動化を一時的に断念し、人手を活用することで生産を上積みする方針に転換した。量産のボトルネックとなっていた車両の組み立てラインを2本から3本に増設したことで、7~9月期の週当たり生産台数は約4100台で安定するようになった。ライン改修のためにたびたび生産を中断していた4~6月期に比べ、生産ペースはほぼ倍増した。モデル3の納車先は北米に限られており、世界最大のEV市場となった中国市場などへの販路拡大が今後の課題となる。ただ、貿易戦争のあおりで米国から中国に輸出するテスラ車には7月から40%の関税が課されるようになり、競争上の不利を強いられている。突破口と位置づけるのが、18年7月に表明した上海市への新工場建設計画だ。電池から車両までを一貫生産する方針で、早ければ19年にも着工する。生産車種は明らかにしていないものの、テスラは「モデル3の立ち上げから学んだ多くの教訓を生かして、迅速に効率的な生産体制を構築する」と説明する。懸念はやはり資金調達だ。マスク氏はこれまで20億ドルに上る中国新工場への初期投資は地元の金融機関からの借り入れによって賄うと主張しているが、具体的な説明はない。株式非公開化の情報開示をめぐり米証券取引委員会(SEC)とは和解したものの米司法省の捜査は続いているとみられる。金融機関などとの交渉に影響を及ぼす可能性は残っている。

*7-5:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20181004&ng=DGKKZO36096900T01C18A0MM8000 (日経新聞 2018年10月4日) ホンダ、GMと自動運転提携、3000億円拠出、技術開発 IT大手含めデータ争奪
 ホンダと米ゼネラル・モーターズ(GM)は3日、自動運転技術で提携すると発表した。ホンダは同日、自動運転分野のGM子会社に7億5千万ドル(約850億円)を出資した。事業資金の提供も含め合計3000億円規模を投じて次世代技術を共同開発する。自動運転ではIT(情報技術)大手などを含めて業種を超えた開発競争が激しくなっている。規模を追求してきた自動車業界の再編はデータの収集や活用を軸とする新たな段階に入った。ホンダが出資したのはGMクルーズホールディングスだ。GMが2016年に約10億ドルで買収した企業が母体で、18年にソフトバンクグループが自社で運営するファンドを通じて約2割を出資している。ホンダの出資比率は5.7%で、GM、ソフトバンクに次ぐ3位の株主になった。ホンダは今後12年で20億ドルの資金も提供し、無人タクシーの専用車両をGMと共同開発する。無人タクシーサービスを事業化して世界展開することも視野に入れている。GMのメアリー・バーラ最高経営責任者(CEO)は3日の記者会見で「まずはサンフランシスコで無人タクシーの実証実験を行い実用化にこぎ着けたい。安全が一番大切な要素だ。実用化すれば効率的に展開していく」と述べた。ホンダとGMは13年にまず燃料電池車(FCV)で提携した。基幹部品を米国で共同生産することを決めている。電気自動車(EV)開発でも18年6月に高効率の新型電池の共同開発を発表した。今回、自動運転が加わったことで、次世代車に関しては包括的に提携したことになる。自動運転の技術開発は米グーグルや米アップルなどIT大手がリードしてきた。一方、自動車大手は運転に関する膨大なデータを持つ。ホンダとGMを合わせた17年の世界販売台数は1400万台を超える。提携には自動車メーカー主導の開発を狙う面もありそうだ。次世代の自動車では「CASE」(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)と呼ばれる新領域での技術開発が競争力を分ける。特に自動運転は歩行者ら周囲の認識や複雑な走行の制御技術などが必要となり、開発費の負担が大きい。米ボストン・コンサルティング・グループは無人タクシーの開発に35年までに1.8兆ドルの投資が必要と予測する。GMは世界の自動車大手の中では先行している。19年には限られた条件下で完全自動運転が実現する「レベル4」の量産車を初めて実用化する方針だ。一方のホンダが劣勢にあるのは否めない。自動運転技術はグーグル系のウェイモと共同開発してきたがこれまでのところ成果は乏しい。3日の記者会見でウェイモとの関係を問われたホンダの倉石誠司副社長は「他社については回答を控える」と述べるにとどめた。トヨタ自動車や米フォード・モーターも外部連携を通じ自動運転技術の開発を進めている。ただ、ホンダとGMのように自動車大手同士が手を組むのは事実上初めてだ。

<男女とも持っているジェンダー>
PS(2018年10月8日追加): *8-1のように、ノーベル医学・生理学賞に京都大特別教授の本庶さんが選ばれたのは喜ばしいことで、本庶さん夫妻が会見された内容のうち、本所さん自身が語られたことには賛成する部分が多かった。しかし、妻の滋子さんは、(大学で理系を専攻し、研究の大変さを理解していたとしても)自分が研究してノーベル賞をとったわけではないので、世間知らずのおしゃべりがすぎたようだ。例えば、「①主人は何でもあきらめず、とことん極める」「②そういう態度が、この結果につながったと思う」「③亭主関白は若い頃の話で、定年後は優しくなった」などだ。①②については、*8-2のような東京医大の「男子優遇」は、リーダー・管理職・研究者などへの選別時にはさらに激しくなり、諦めたのではなく諦めさせられた女性も多い上、③については、働く女性や女性研究者は、家庭の細かいことを自分以外の人に丸投げして仕事や研究に邁進することなどできない中で社会を変えながら頑張ってきたため、家庭で夫を支えただけの旧来型の女性に偉そうなことを言われる筋合いはないからだ。
 また、*8-3の「無意識の偏見を克服しよう」という記事は賛成する部分も少なくないが、「無意識の偏見」には、「女性は家庭優先なので、仕事は疎かだ」という先入観や女性がリーダーになることを志すと「傲慢」「生意気」「自分を知らない」などと批判する日本社会の“常識”も含まれる。また、女性自身が「高下駄を履かせてもらっている男性より自分の方がリーダーや管理職に向かない」などと本気で思っているわけではなく、現在の家事の配分状況や上記の「傲慢」「生意気」「自分を知らない」などという世間からの批判をかわす意味が大きいため、*8-3の記事も、女性自身の性格の責任にしている点で女性蔑視を含んでいる。

*8-1:https://www.sankei.com/west/news/181002/wst1810020035-n1.html (産経WEST 2018.10.2) 「充実した人生」「あきらめない性格が受賞に」 本庶さん夫妻で会見
 ノーベル医学・生理学賞に決まった京都大特別教授の本庶佑(ほんじょたすく)さん(76)は、受賞発表から一夜明けた2日、妻の滋子(しげこ)さん(75)とともに京大で記者会見した。本庶さんが「こういう人生を2度やりたいというと、ぜいたくだといわれるくらい充実した人生」と独特の表現で喜びの心境を語り、滋子さんは「主人のあきらめない姿勢が結果につながった」とたたえた。2人はこの日午前8時50分ごろ、会見に向かうため京都市内の自宅を出発。約10分後、京大百周年時計台記念館に到着し、関係者から花束を受け取ると笑みを見せた。紺のスーツに水色のネクタイ姿の本庶さんと、おそろいの水色のスーツで会見に臨んだ滋子さん。本庶さんは「本当に幸運な人生を歩いてきた」と関係者に改めて感謝した上で、「家庭の細かいことはタッチせず、僕は典型的な亭主関白として研究に邁進してきた。家族にも感謝したい」と話した。滋子さんは、「(これまで)あっという間の時間だったがノーベル賞を受賞する結果になり、大変うれしい」と喜んだ。滋子さんも大学で理系を専攻しており、研究の大変さは理解していたという。大勢の報道陣を前に緊張した様子で応じる滋子さんに、本庶さんは時折、心配そうなまなざしを向けていた。米国や東大、阪大、京大と研究の場を求める本庶さんに長年寄り添ってきた滋子さんは、素顔も披露。「主人は何でもあきらめない。とことん極める。家の中でも中途半端な話をしないといったそういう態度をみてきた」と明かした上で、「この結果につながったのではないかと思う」と語った。本庶さんは自他ともに認めるゴルフ好き。夫婦でプレーすることもあるといい、「ゴルフについても研究熱心」と趣味でも突き詰める夫の性格を披露した。さらに会見で「亭主関白」だと語った本庶さんについて、「若い頃の話で、定年後はかなり優しくなった」と話した。

*8-2:http://qbiz.jp/article/140103/1/ (西日本新聞 2018年9月3日) 外科医不足 解消遠く 若手、女性 敬遠鮮明に 志願者増へ取り組みも
 手術室で華麗にメスをさばき、患者の命を救う−。漫画「ブラック・ジャック」に象徴されるような外科医が花形だった時代も今は昔。きつい勤務や訴訟リスクから、若手医師が外科を敬遠する傾向が続いている。高齢化が進み、がんなど外科手術が必要な患者の増加が予想される中、担い手不足が深刻化している。「針先を自分の方に向けないとうまくいかないよ」。8月31日夜、九州医療センター(福岡市中央区)が若手医師を対象に開いた外科技術を競うコンテスト。ベテランの指導を受けながら、医師1、2年目の研修医ら若手11人が、縫合や切開など外科医に求められる繊細な作業に挑戦した。若手に外科への興味を持ってもらおうと、今回初めて企画。自身も心臓外科医の森田茂樹院長は成績上位者に表彰状を渡し「ぜひ外科に来て」と呼び掛けた。日本外科学会によると、医師全体の数は毎年増加しているのに外科学会入会者は減少。30年ほど前は入会者が2千人を超える年もあったが近年は800〜900人台にとどまっている。3年目以降の若手医師が希望の診療科と研修場所を選ぶ「専門医養成制度」で今年、外科を選んだ人数は福岡39人(定員127人)▽佐賀3人(同12人)▽長崎6人(同25人)▽熊本12人(同20人)▽大分8人(同11人)▽宮崎3人(同12人)▽鹿児島11人(同29人)−など、全都道府県で定員を大きく下回った。学会内では「今は中堅・ベテランに支えられているが、10年、20年後に外科医不足が深刻になる」との危機感が広がっている。コンテストに参加した研修1年目の田中里佳さん(25)は「外科は格好よくてやりがいがある一方で、大変だというイメージもある」。病院に勤務する外科医は、緊急の患者に対応するための当直や呼び出しがあり、他の診療科よりも長時間勤務になりがちだ。患者の命を左右する手術の重圧にもさらされる。福岡市のベテラン外科医は「かつては命を救いたいという単純な思いで外科を目指す若手が多かった。毎晩病院に泊まり込んで1件でも多く手術を任せてもらい、経験を積もうと必死だったが、働き方改革の風潮で今の若手は勤務時間が終わると帰るし、無理強いもできない」と嘆く。外科医が少ない傾向は、特に女性医師に顕著だ。厚生労働省の調査によると、2016年末時点で全国の医師のうち女性の割合は約21%だったが、外科に限ると約9%。長時間労働と出産・子育ての両立の難しさが要因とみられる。女性が外科など特定の診療科目を敬遠せざるを得ない現状が、東京医科大で明るみに出た「男子優遇」問題の背景にあるとも指摘される。コンテストを企画した九州医療センターの竹尾貞徳統括診療部長は「外科医が減れば一人一人の負担が増え、労働環境がさらに過酷になる悪循環に陥ってしまう。昔のように根性論で教育するのではなく、子育て支援など若手が働きやすい環境づくりを進める必要がある」と話している。

*8-3https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180930&ng=DGKKZO35929050Z20C18A9EA1000 (日経新聞社説 2018年9月30日) 「無意識の偏見」を克服しよう
 働く女性の数は増え、仕事と子育ての両立支援も充実してきた。真の活躍につなげるうえで、欠かせないことがさらにある。「無意識の偏見」を克服することが、その一つだ。無意識の偏見とは、誰もが気づかずに持っている、考え方、ものの見方の偏りのことだ。育った環境や経験などから培われたもので、必ずしも悪いものではない。だがときとしてそれが多様な人材の育成を阻害することがある。例えば「女性はリーダーに向いていない」「男性は常に仕事優先」などだ。管理職が先入観を持っていると、男性か女性かで部下への仕事の割り当てや期待のかけ方に違いが生じやすくなる。とりわけ育児期には最初から「女性は家庭が優先。負担の重い仕事はかわいそう」となりがちだ。一つ一つは小さなことでも、積み重なって女性の成長機会を奪い「自分は期待されていない」などと、意欲がそがれることがある。男性にとっても、管理職の思い込みが本意でないこともあろう。大事なのは、誰もが無意識の偏見を持っていると自覚することだ。意識すれば慎重に判断できるようになる。属性ではなく一人ひとりにきちんと目を向けること、コミュニケーションを密にし、ときに背中を押すことも必要だ。一方、女性自身も「自分には管理職は無理だ」などと、最初から萎縮してしまうのは、良くない。これもまた、無意識の偏見の一つだ。日本企業の管理職に占める女性の比率は、まだ1割ほどだ。女性の育成・登用を着実に進めるには、職場をあげての意識改革が欠かせない。先駆的な企業の一つ、ジョンソン・エンド・ジョンソンは複数の研修を開いている。少子高齢化が進む日本では、性別はもちろん、年齢、病気や障害の有無などにかかわらず、誰もが自分の力を発揮できる環境を整えることが大切だ。多様な人材を生かす土壌をどうつくるか。誰もがまさに当事者として考えたい。

| 経済・雇用::2018.1~2018.11 | 03:51 PM | comments (x) | trackback (x) |
2018.9.17 日本の国家予算の使い方と社会保障・災害など (2018年9月18、19、20、21、22日に追加あり)
(1)本当の無駄遣いは何か
1)2019年度予算概算要求について


2018.9.1西日本新聞 平成時代の国家予算増加 平成31年内訳 歳出・歳入・債務の推移  

(図の説明:平成時代は消費税導入とともに始まり、増税額以上の景気対策を行って、国と地方の債務合計は増加の一途を辿った時代だと総括できる。なお、平成31年度の概算要求内訳では、0金利の下でも国債利払いが9兆円もあるが、これは借り換えによって節約できる歳出だ。また、地方交付税は、地方自治体が稼ぐためのエンジンを持てば、減らすことのできる歳出である)

 各省庁の2019年度予算概算要求は、*1-1のように、過去最大の102兆円台後半となり、その理由は「①医療・介護などの社会保障が過去最高額」「②借金返済に回す国債費が全体を押し上げた」「③2019年10月の消費税増税に伴う景気対策や幼児教育無償化費用を上積み」「④地上配備型迎撃システムの取得で2352億円計上して防衛費が過去最高額」「⑤外国人材受入拡大に備えた入国在留管理庁(仮称)新設」「⑥国債費は低金利にもかかわらず5.5%増の24兆5874億円」「⑦地方交付税15兆8111億円」等と記載されている。

 このうち、②の国債返済は借金を減少させて利払いを減らす効果があるため問題はなく、借金の返済と他の歳出を同じ次元で取り上げる方がむしろ問題だ。また、⑥は、低金利を利用して国債を借り換えれば国債の利払費は小さくなる。

 また、①は、よく槍玉に挙げられるが、国民は社会保険料を支払った上でサービスを受けているため、発生主義で将来支払額を予想して合理的な積立金管理を行っておけば、問題になることはなかった筈だ。そのため、サービスを提供する時になって支払原資が足りないなどと言っているのは、管理者の放漫経営の責任であり、国民に迷惑をかける筋合いのものではない。

 さらに、③のうちの幼児教育無償化はよいものの、消費税増税に伴う景気対策に増税分以上を使うのなら、増税しない方が国民から絞り取らないだけよい。また、災害復興や21世紀型の便利で安全な街づくりへの投資を行えば大型の景気対策にもなるため、景気対策だけを目的とする無駄遣いをする必要はない。

 なお、④は高すぎるし、⑤は入国在留管理庁を作って金と人材を無駄遣いするのではなく、入国管理局の名称を変更してここで行った方がよいと思われる。そして、入国管理局の仕事が増える分は、新規雇用ではなく、定年延長して余った人材をうまく配置して使えばよいだろう。

 さらに、⑦の地方交付税は、地方がよい製品やサービスを生産して自立すればするほど、息切れしそうな大型機関車の東京からの分配を減らすことができるため、機関車になれる地域を増やすことこそ、全国民を豊かにする。

2)北海道地震・西日本豪雨のに対する補正予算について
 政府は、*1-2のように、北海道地震や西日本豪雨災害の復旧費を確保するため、1兆円超を準備するそうだ。しかし、標高の低い場所・川を埋め立てた場所・扇状地・天井川の傍の低い場所などに住宅を造って「堤防があるから安心」と考えていたり、がけ崩れが起こりやすい場所に住宅を作ったりして被害に会ったのは、甘く見ていた自然に仕返しされたようなものである。

 そのため、これらの住宅地を元の状態に戻す「復旧」ではなく、このような被害が二度と起こらない、さらに進化させた都市計画に基づく街づくりと復興を行うべきで、そうすれば災害復興は単なる景気対策ではなく、21世紀に向けた重要な投資となる。

3)国家予算をコントロールする方法
 来年度予算案の概算要求が5年連続で100兆円を超えて過去最大を更新し、*1-3は、「①危機感なき借金まみれの予算をいつまで続けるのか」「②法律で縛ったらどうか」などと記載している。

 しかし、財政健全化のために“国際公約”をして「2020年度までに基礎的財政収支(クラブ)を黒字化する」というのも、不完全な現金主義である上、主権者たる国民が不在である。また、大災害があっても財政や貿易収支が黒字でなければならない理由はなく、必要な資材や労働力は輸入してでも速やかに復興するのが被害を最小にする方法だ。そのため、いざという時には支出できるよう、平時は単なる景気対策のような無駄遣いを慎むものである。
 クラブ 税収・税外収入と歳出(国債費《国債の元本返済と利払費》を除く)の収支

 そのため、財政を法律で縛ったり国際公約したりするのではなく、合理的な歳出をするため国の経費も発生主義で把握するように、国に国際会計基準に基づく複式簿記による公会計制度を導入し、貸借対照表・収支計算書を迅速に作成して予算委員会における討議資料とし、国の予算を主権者である国民の監視下におく必要がある。

(2)安全を無視した街づくり
1)「備え」は甘すぎた
 西日本新聞が、*2-1-1・*2-1-2のように、「備えに隙はなかったか」「北海道地震の死者40人」という記事を書いているが、私には、すべての災害が「想定外」で、危機管理に基づく備えというものがあまりにも甘く、ゆとりがなさすぎたように思えた。

 例えば、北海道全体の停電という電力系統の脆弱さと土砂崩れや液状化が起こる場所での住宅地造成は人災と言わざるを得ない。また、関西空港が台風くらいで機能不全に陥ったのも唖然としたが、標高の低い干拓地であれば当然であるため、もっと海面との間にゆとりをとるべきだった。さらに、ブロック塀も、中に強い鉄筋でも入っていなければ地震の時に危ない上、景観も悪いため、もっと速やかに素敵な生垣などに変えておくべきだっただろう。

 なお、*2-1-3のように、地震発生前の2018年6月26日、「北海道南東部で震度6弱以上の大地震のリスクが上昇している」と朝日新聞に掲載されたが、「発電所が集中して立地しておりセキュリティーが甘い」「住宅地の立地が悪い」というのは短期間には修正のしようがないため、最初にしっかりした都市計画を行わなかったことが最大の問題である。

2)連続した大型台風と水害
 台風21号で、*2-2-1のように、関空が冠水し、「大阪湾沿岸を中心に記録的な高潮になった」「猛烈な風が大阪湾岸に吹きつけた」「140年に1度という想定を超える高潮だった」などの言い訳がされているが、要するに十分な「ゆとり」を見ていなかったのだと思う。

 そして、*2-3-1のように、これまで①浸水想定域に住宅を誘導し ②街の集約計画を掲げる主要な自治体の約9割で浸水リスクの高い地区にも居住を誘導している ということが、日経新聞の調べで分かったそうだ。都市の効率向上といっても、災害リスクの高い場所に建物を建てれば、「床上浸水」などで建物や家財道具を台無しにして資本効率を悪くするとともに、大切な人や二度と作れぬ思い出も失うことになるため、最初の都市計画が重要だ。

3)北海道地震

           2018.9.6、朝日新聞、中日新聞ほか

(図の説明:北海道地震で土砂崩れが多発して死者まで出たのは痛ましいが、崩れた土砂の中にある木は太くて良質の木材だ。そのため、全国の森林組合や木材会社の人等がボランティアに行って木材を集めておけば、あちこちの復興の手助けになると考える)

 北海道の厚真町は、*2-2-2のように、震度7の揺れに襲われて緑の山林に赤土がむき出しになった場所が散在する土砂崩れの現場となったが、よく見ると、山はこうしてあのような形になったのだと思われる光景であり、大昔から続いてきた土砂崩れのように見える。

 北海道地震では、*2-3-2のように、札幌市のベッドタウンが液状化による大きな被害を受け、道路が陥没したり、マイホームが大きく傾いたりし、専門家は、かつてあった川沿いに被害が集中していると分析して二次被害に注意を呼びかけている。市の宅地課は、河川を覆って地下に水路を残し、周辺から削った土砂で里塚地区を造成したと言っているそうだが、これは自然の水の流れをあまりにも軽視した宅地造成である。

 そのため、我が国が高齢化と人口減少に直面していることを活用して、高台にケアしやすいマンションを多く作り、危険度の高い地域から移転して、危険度の高い地域には住まないような進歩した都市計画が必要だ。

(3)大災害時代になった理由とそれに対する備え


    月の公転軌道     火星の公転軌道 現在の火星と水 40億年前の火星の海 
                      2018.7.26朝日新聞
(図の説明:1番左の図が月の公転軌道、左から2番目の図が火星の公転軌道で、どちらも少し楕円形であるため、地球に接近する時があり、両方が接近して太陽と一直線に並ぶ時、地球が受ける引力は最大になる。地球は、日頃から月の引力を受けて潮の満ち引きがあり、地球のマントルが冷えない理由に月の引力によって地球が揉まれていることが挙げられている。また、火星には40億年前は最大水深1600mの海が存在していたそうで、現在は、地表には氷・地下には水も存在するそうだ。なお、火星が冷えてしまったのは、月のような惑星を持たないことが理由で、火星の水が少なくなったのは、火星の引力が弱く大気が薄いため、蒸発した水が地表に戻らなかったことによるのかも知れない。そのため、地球の水が(100%かどうかはわからないが)循環して地表に戻り、生物の生存環境を保っていることには感謝すべきだろう)

 日本農業新聞が、2018年9月13日、*2-4-1のように、「大災害時代が人と社会の変革を迫る」という記事を書いており、近年の大災害がよくまとまっている。

 その内容は、専門家は「①大型災害が多発する『危険サイクル』に入ったと警告」「②地震が活動期に入って水害などと連動し、複合災害を起こしている」「③災害が多発する危険周期に入った」「④社会は、こうした巨大災害に対応できていない」「⑤縦割りの防災行政、司令塔機能の混乱、中央政府と当該自治体の連携不足」「⑥専門家や科学的知見の不足、情報伝達の不備などの問題が浮き彫りになっている」「⑦町村は、財政難や人材難に苦しみ機動的に対応できない」「⑧大災害は、人々の意識や社会システムの変革を迫っている」「⑨農村、都市問わず少子高齢化で地域力が衰退している」「⑩大規模災害のたびに過疎集落は存廃の危機に陥り、国土の荒廃が進むので、防災基点の国づくりこそ百年の計だ」などである。

 ④については、災害の大型化は常態化したので、「想定外」という言葉は通用せず、本当は「想定外」でもなく無視していただけと思われる局面も多い。また、近年は特に、以前よりもゆとりのない設計が多い印象であるため、予報・一時的避難・救済・復旧以前に、巨大災害に適応した街づくりへの迅速な復興が必要なのであり、⑤⑦だから防災庁が必要とはならない。

 また、①②③については、869年に起こった貞観(三陸)地震が参考になる。当時の陸奥国東方沖日本海溝付近を震源域として発生したマグニチュード8.3以上の貞観地震は巨大で、津波の被害も大きく、地震の前後には多くの火山噴火があった。また、貞観地震の5年前の864年には富士山の貞観大噴火も起きており、9年後の878年にM 7.4の相模・武蔵地震(現在の関東地方における地震)が起こり、西日本では前年の868年に播磨地震、18年後の887年に仁和地震(M 8.0 - 8.5、南海トラフ巨大地震と推定)が起こり、一定期間毎に同じことが起こっている。

 ⑥については、専門家に、日本で地震・火山・津波などが一定期間毎に多発する理由の科学的説明をして欲しい。私も大災害が続く理由はわからないが、*3-1、*3-2のように、「火星が地球に大接近し、同時に太陽や月と一直線になる時に地球にかかる引力が最大になり、地球内部のマントルが大きなエネルギーによって揉まれ、温度が上がって流動性が高くなるのではないか?」「そのため陸上だけでなく海底火山の噴火も増え、大型台風が発生しやすくなり、地球温暖化によって海水温が上昇しているため、なかなか衰えないのではないか?」と推測する。

 従って、⑧はそのとおりだが、⑨⑩のように、高齢化と人口減少が同時に起こっている現在、少しでも田畑を広くとるために崖のそばに住んだり、水害の出やすい場所に住んだりするよりも、高齢者は高台のマンションなどに移住して住宅管理や介護の手間を省き、他の人も安全性を重視した環境の良い街づくりを進めるのがよいと考える。

 なお、*2-4-2のように、「首都直下型地震が起これば、荒川や隅田川沿いの下町は壊滅する可能性がある」と書かれているが、海抜ゼロメートル地帯に居住するのは楽天的過ぎると思われ、軟弱地盤や谷底低地に当たるような場所は速やかに公表して対策を取るべきだ。

*1-1:http://qbiz.jp/article/140085/1/ (西日本新聞 2018年9月1日) 概算要求102兆円後半 医療、防衛、国債費が膨張 19年度
 財務省は31日、各省庁からの2019年度予算の概算要求を締め切った。基本的な経費を扱う一般会計の要求総額は過去最大の102兆円台後半に膨張。医療などの社会保障や防衛費が最高額になったほか、借金返済に回す国債費が全体を押し上げた。歳出抑制額の目安を設けないなど肥大化の歯止めを欠き、12月の編成後には当初予算で初めて100兆円の大台に乗る可能性が高まった。19年10月の消費税増税に伴う景気対策や幼児教育無償化などの費用を編成過程で上積みすることも拡大要因になる。来夏に参院選を控えた与党の歳出圧力は強く、暮らしに必要な経費を賄い財政健全化にも配慮するやりくりは険しそうだ。要求段階の100兆円超えは5年連続。国・地方の政策経費は78兆円前後に上り、省庁別では厚生労働省が18年度当初予算比2・5%増の31兆8956億円を占めた。他省庁分を含む社会保障費は医療や介護などの給付が増えて約6千億円多い32兆円超となり、財務省は査定で抑制する方針。防衛省は2・1%増の5兆2986億円を求めた。北朝鮮の脅威に対処する地上配備型迎撃システム「イージス・アショア」の取得関連で2352億円を見込んだ。各省は看板政策を優遇する「特別枠」を使い、増額要求を掲げた。西日本豪雨などを受けた防災分野や働き方改革、訪日客誘致を重視。外国人材の受け入れ拡大に備えた「入国在留管理庁」(仮称)の新設や、皇位継承の予算もある。自治体に配る地方交付税は一般会計ベースで15兆8111億円。政策関連と別にかかる国債費は5・5%増の24兆5874億円。近年は長期金利の低下で利払い費が圧縮されてきたが、今回は18年度要求と同じ1・2%と想定しており、超低金利の財政効果が表れにくくなっている。
   ◇   ◇
●景気優先で規律緩む一方 消費増税対策は別枠
 2019年度当初予算の各省庁からの概算要求総額は5年連続で100兆円を超え、過去最大となった。当初予算には19年10月の消費税増税に向けた経済対策も加わる見込みで、財務省が要求額を絞り込んでも、歳出総額は史上初の100兆円突破となる公算が大きい。目先の景気を優先し、社会保障費の増大にも目をつぶる。緩みっぱなしの財政規律がまたも後回しになりそうな気配が早くも漂う。
「消費税増税にきちんと対応したい。景気後退を招くようでは(10%への増税を)過去2回延期した意味がない」。概算要求締め切りに先立つ8月27日、麻生太郎財務相は予算編成を担う財務省幹部たちにこう訓示した。強調したのは財政規律ではなく、景気への配慮だった。予算編成の最大の焦点は、消費税増税後の消費の冷え込みを避けるための経済対策だ。政府は過去2度の消費税増税時にいずれも景気後退を招いたことを踏まえ、年末までに住宅や自動車の購入支援を柱とした対策をまとめる。関連予算は概算要求とは別枠で乗ることになる。14年4月に税率8%に上げた際の経済対策の規模は約5兆5千億円。日銀の試算では10%への引き上げに伴う家計負担増は年約2兆2千億円だが、与党内には10兆円規模の対策を求める声もある。来年の統一地方選や参院選をにらんだ政治の意向に押されれば、19年度当初予算は18年度当初(97兆7千億円)を大きく上回りかねない。予算の約3分の1を占める医療、介護などの社会保障費を抑制しようという機運も乏しい。厚生労働省の要求総額は過去最大の31兆8956億円。18年度まで5千億円に抑えていた高齢化に伴う社会保障費の伸びは6千億円と見込む。19年度予算編成では18年度までの3年間と異なり、伸びを年5千億円程度に抑える数値目標がない。渡りに船とばかりに他省も増額要求が目立つ。国土交通省は西日本豪雨を踏まえた水害対策などを掲げ、18年度当初予算比19%増の6兆9070億円を要求。防衛省の要求額も、北朝鮮の脅威を理由に装備増強などで過去最大になった。文部科学省も学校へのクーラー設置などで同11%増の5兆9351億円を要求している。企業収益が堅調で税収が増加傾向でも、歳出の2割超を借金返済が占め、歳入の3割超を新たな借金に頼る異常な財政構造は続く見通し。国と地方の借金残高は1千兆円を超え、国内総生産(GDP)の約2倍に達する先進国で最悪の水準。このままでは安倍政権の思惑通りに金融緩和で物価が上昇しても、金利上昇で国債の利払い費がかさみ、財政が行き詰まる恐れがある。9月の自民党総裁選で連続3選すれば、7年目の予算編成となる安倍政権。将来世代に痛みをつけ回す「大盤振る舞い」を改める気配はない。森友学園を巡る決裁文書改ざんなどで信頼を失った財務省が歳出抑制の主導権を握れるか。険しい予算編成になりそうだ。
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●「入国管理庁」創設など588億円 外国人就労拡大へ各省要求
 政府が来年4月から、新たな在留資格による外国人労働者の受け入れを拡大する中、各省の来年度予算の概算要求に関連経費が盛り込まれた。法務省は外国人の就労拡大に対応する「入国在留管理庁」(仮称)新設に伴う人件費やシステム改修費など588億円を計上。厚生労働省は外国人材受け入れの環境整備などで100億円を要求した。入国在留管理庁は入国管理局を格上げして設置。外国人の入国審査などを担う出入国管理部と、国内の外国人の生活や日本語習得を支援する在留管理支援部を置く。出入国審査と在留管理体制強化のため計585人の増員も要求している。厚労省は外国人を雇用する事業所への指導体制強化に10億円を要求。外国人技能実習生に対する相談事業の拡充と、企業などが適切に実習生を受け入れているかを検査する体制強化のために68億円、外国人留学生が日本で就職するよう促すため、職場で実施する日本語研修の支援費用などに8億6千万円を計上した。農林水産省は「農業支援外国人適正受け入れサポート事業」として3億8500万円を求めた。日本で即戦力となり得る知識や技能があるかを評価するため、現地で試験を実施する日本の民間団体への支援費用を盛り込み、外国人からの苦情相談窓口の設置も支援する。文部科学省は生活レベルの日本語を学ぶ環境を整えるための新規モデル事業に約3億円を計上。モデル自治体として15程度の都道府県、政令市を公募し、地域の実態を調査したり外国人と自治体などをつなぐコーディネーターを配置したりして先進事例の構築を目指す。

*1-2:http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2018090701001576.html (東京新聞 2018年9月7日) 政府、地震や豪雨で補正編成へ 1兆円超か、臨時国会冒頭に提出
 政府は7日、北海道の地震や西日本豪雨など相次ぐ災害の復旧費を確保するため、2018年度補正予算案を編成する方針を固めた。秋の臨時国会冒頭に提出する方向で与党と協議する。災害級とされた今夏の酷暑を踏まえ、小中学校のクーラー設置推進費なども想定しており、規模は1兆円を上回る可能性がある。補正予算は例年、税収見積もりの修正などを反映させて12月ごろに編成している。18年度は災害対応を進めた後、年末補正を組むという二段構えで臨むことになる。補正予算案には西日本豪雨による洪水で壊れた河川堤防の修理や土砂崩れの再発防止、北海道の地震の復旧費などを盛り込む。

*1-3:http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2018090302000176.html (東京新聞社説 2018年9月3日) 膨張する予算 法律で縛ったらどうか
 来年度当初予算案の概算要求は五年連続で百兆円を超え、過去最大を更新した。危機感なき借金まみれ予算をいつまで続けるのか。自ら抑制できないのなら、法律をつくって縛るしかないだろう。財政健全化の国際公約だった「二〇二〇年度までの基礎的財政収支(プライマリーバランス=PB)の黒字化目標」を六月に断念した直後の予算編成である。当然、厳しい概算要求基準を設けるかと思いきや、今回も歳出上限の設定を見送るなど相変わらずの締まりのなさだ。PB黒字化を実現できなかったのは経済成長率を甘く設定したためだ。成長頼みが通用しないのは明白なのに、いまだ政権が「経済再生なくして財政健全化なし」を基本方針とするのは危機感がなさすぎると言わざるを得ない。毎年繰り返される手法も問題がある。今回も、人づくり革命など政権が掲げる主要政策に優先的に予算を配分する「特別枠」を設け、一八年度より約一割増の四・四兆円に積み増した。歳出にメリハリを付けるのが特別枠の狙いというが、実態は各省庁が便乗して似たような要求を並べ、かえってメリハリを失っていると批判された。この手法がはたして政策効果を上げているのかどうか検証すべきだ。概算要求とは別枠で、一九年十月からの消費税増税の影響を和らげるための経済対策の予算も組む。自民党から十兆円規模を求める声がある。8%から10%に引き上げると税収増は五兆円程度だ。これでは右手で増税し、左手では税収増の倍の額をバラまくようなものだ。一体、何のための増税か分からない。来年は参院選や統一地方選があり、歳出圧力は例年になく強い。査定する財務省は不祥事が響いて弱体化しているのでなおさら心配だ。財政健全化が官僚や政治家任せでは進まないのであれば、法律で強制力を持たせるしかないのではないか。かつては、米国の包括財政調整法(OBRA)などにならい、財政健全化の具体策を盛り込んだ財政構造改革法を定めたこともある(一九九七年)。金融危機など日本経済が不況に直面して凍結されはしたが、欧州連合(EU)をはじめ多くの国・地域が法制度によって財政健全化に努めている。先進国で最悪の借金を抱え、少子高齢化が最も深刻な日本も再導入を検討すべきだ。 

<安全を無視した街づくり>
*2-1-1:https://www.nishinippon.co.jp/nnp/syasetu/article/447633/ (西日本新聞 2018年9月7日) 自然災害続発 「備え」に隙はなかったか
 記録的な猛暑に加え、豪雨、台風禍、そして今度は大地震が列島を襲った。ひと夏にこれだけ自然災害が続くのは異例で、非常事態といってもよかろう。しかし、「想定外」という言葉で済ますわけにはいかない。自然の脅威に対して、私たちの「備え」はなお脆弱(ぜいじゃく)である。その現実を見据え、被災地の支援などに全力を挙げたい。きのう未明、北海道で最大震度7の地震が起きた。強風と高潮で関西空港を閉鎖に追い込むなどした台風21号が過ぎ去った直後のことだった。揺れは広域に及んだ。大規模な土砂崩れや液状化現象による人的被害に加え、道全域が停電して二次被害が広がるなど、かつてない事態が生じた。政府は人命救助と併せ、本州からの送電や電源車両の手配など緊急対応に追われた。電力は言うまでもなく、ライフラインの要である。供給が長時間、広域にわたってストップすれば生活や生産の基盤は損なわれ、影響は計り知れない。まずは全面復旧が急務だが、北海道電力の地震対策や電力の需給管理システムに不備はなかったのか、詳しい検証を進める必要があろう。一方、地震直前の台風禍で関西空港が機能不全に陥ったのも衝撃的だった。滑走路が水没した上、強風で流されたタンカーが連絡橋に衝突し、多数の乗降客らが孤立する状況に陥った。海上に立地する同空港を巡っては、地盤の軟弱さや高潮対策の難しさが指摘されていた。今回は高潮とタンカーの衝突が重なり「想定外の事案」とされるが、当初3千人と伝えられた孤立した人の数が、時を追って5千人、8千人と変遷するなど危機管理の甘さが露呈した。九州の北九州、長崎両空港を含め、海上や海沿いに立地する全国各地の空港の災害対策も再点検すべきだろう。今夏の災害を振り返ると、6月の大阪府北部地震では、私たちの身近にあるブロック塀の倒壊で女子児童が死亡する惨事が起きた。ブロック塀の保守・点検の必要性は過去の震災で指摘されながら、全国的に進んでいない実態が明らかになった。岡山県で大規模な洪水が起きるなどした7月の西日本豪雨では、河川の改修工事が行き届いていなかったり、洪水の危険性を知らせるハザードマップが浸透していなかったり、基本的な対策の不備が指摘された。地震や火山噴火の予知は依然難しい。近年まれな気象現象が列島に災害をもたらしてもいる。自然は常に私たちの「想定」の隙を突いてくる。改めてそう胸に刻み、決して終わりのない「備え」に努めたい。

*2-1-2:http://qbiz.jp/article/140486/1/ (西日本新聞 2018年9月10日) 死者40人、捜索を終了 安否不明者なくなる、北海道地震
最大震度7を観測した北海道の地震で、道は10日、死者は40人になり、安否不明者はいなくなったと発表した。不明者の捜索が続いていた厚真町は、捜索を終了したと明らかにした。道内では電力の供給不足を補うため、節電の取り組みが本格化。北海道電力は、地震前の需要ピーク時に電力供給力が追いついていないとして、計画停電も検討している。官公庁や公共交通機関は、照明の減灯や運行本数の削減などを始める。道などによると、9日に安否不明だった2人が厚真町で見つかり、それまでに心肺停止で発見されていた2人と合わせ、4人の死亡が確認された。10日午前2時すぎにも同町の土砂崩れ現場で最後まで安否が分からなかった男性(77)が心肺停止の状態で見つかり、その後死亡が確認された。厚真町の死者は36人で、札幌市、苫小牧市、むかわ町、新ひだか町で各1人。同日午前10時現在で避難者は約2700人、断水は約8千戸。高橋はるみ知事は9日の記者会見で、平常より2割の電力削減が必要とした上で「大変に厳しいが、計画停電や再度の停電が生じれば、復旧途上にある暮らしや企業活動への影響は大きい」と道民や企業に協力を求めた。北海道と経済産業省は10日、地元の経済団体などとつくる連絡会を開催。効果的な節電方法について話し合う。道や札幌市は所有する施設で冷暖房やエレベーターなどの使用を抑制。JR北海道は札幌と旭川、室蘭を結ぶ特急の一部を運休する。札幌市営の地下鉄や路面電車も日中に運行本数を減らす。6日の地震で北電の最大の火力、苫東厚真火力発電所(厚真町)が停止し、電力需給バランスが崩れ、道内全域の約295万戸が一時停電。北電は苫東厚真の復旧に1週間以上かかる可能性があるとしており、供給不足が長期化する恐れがある。安倍晋三首相は9日の地震の関係閣僚会議で、死者数について「これまで42人の方々が亡くなられた」と述べた。

*2-1-3:https://digital.asahi.com/articles/ASL6Q4R1DL6QULBJ008.html?iref=comtop_8_02 (朝日新聞 2018年6月26日) 大地震のリスク、北海道南東部が上昇 18年版予測地図
 政府の地震調査研究推進本部は26日、今後30年以内に特定の地点が強い揺れに見舞われる確率を示す「全国地震動予測地図」の2018年版を公表した。震度6弱以上の確率は、北海道南東部で前年と比べて大きく上昇した。地図は地震の起きやすさと地盤の揺れやすさの調査をもとに作製。確率はすべて今年1月1日時点。政府が昨年末に見直した、千島海溝沿いの地震活動の評価を反映し、マグニチュード(M)8・8程度以上の超巨大地震などを考慮した。新たなデータを反映した結果、釧路市で69%(前年比22ポイント増)、根室市78%(15ポイント増)、帯広市22%(9ポイント増)などった。プレート境界で起きる大地震は100年前後の間隔で繰り返し発生する。南海トラフは前回発生した1940年代から70年以上経っており、東海から四国の太平洋側や首都圏は、静岡市70%、名古屋市46%、大阪市56%、高知市75%、千葉市85%など、前年同様に高い確率になっている。一方、活断層による地震は、プレート境界で起きる地震と比べて一般的に発生間隔が長く、陸域や日本海側の確率は新潟市13%、福岡市8・3%など、太平洋側に比べて低い。ただ、確率が低くても過去に大きな地震は発生している。18日に発生した大阪北部地震で、震度6弱を観測した大阪府高槻市は22・7%だったが、同本部地震調査委員長の平田直・東京大教授は「震度6弱以上の揺れが起きる確率がゼロの地域は全国にどこにもない。家庭や職場で備えを進めて欲しい」としている。予測地図は、防災科学技術研究所がつくるウェブサイト「地震ハザードステーション」(http://www.j-shis.bosai.go.jp/別ウインドウで開きます)で閲覧できる。任意の地点の発生確率や、地震のタイプ別の確率の違いなどを見ることができる。(

*2-2-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180914&ng=DGKKZO35322970T10C18A9TJN000 (日経新聞 2018.9.14) 猛烈な南風 高潮を増幅、台風21号で関空が冠水
 非常に強い台風21号の影響で、大阪湾沿岸を中心に記録的な高潮になり、関西国際空港(大阪府泉佐野市)の滑走路が冠水するなど大きな被害が出た。複数の要因が重なったが、特に南よりの猛烈な風が南西に開いた大阪湾の岸に吹きつけた影響が大きいという。大阪湾は高潮が起こりやすい。関空は護岸のかさ上げなどで対策を進めてきたが「140年に1度」という想定を超える高潮には、なすすべがなかった。台風21号が通過した4日、大阪市で3メートル29センチ、神戸市で2メートル33センチの潮位を記録した。いずれの地点も、死者194人を出した1961年の第2室戸台風時の潮位を上回った。国内最悪の高潮被害を出した1959年の伊勢湾台風での名古屋市の3メートル89センチ、2012年の台風16号で有明海に面する佐賀県太良町で観測した3メートル46センチに次ぐ水準だ。京都大学防災研究所准教授の森信人さんが各地の潮位データをもとに解析すると、大阪市南部から神戸市付近まで大阪湾奥の広い範囲で高さ3メートルに迫る高潮が発生していた。大阪湾の沿岸地域は第2室戸台風のほか、1950年のジェーン台風、1965年の台風23号などで大きな被害にあっている。森さんは「高潮発生リスクが高く危険な地域だ」と指摘する。
●気圧低下も要因
 高潮は台風などの強い低気圧が通過する際に、海面が高くなって波が岸へ押し寄せてくる現象だ。台風は周囲よりも気圧が低く、上昇気流によって掃除機に吸い上げられるように海面が上昇する。気圧が1ヘクトパスカル下がると、海面は1センチ上昇するとされる。さらに岸に向かって吹く強い風で海水が吹き寄せられ、海面が上昇する。風の威力は大きく、風速が2倍になれば海面の上昇幅は4倍になる。大阪湾を通過したころの台風21号の中心付近の気圧は950ヘクトパスカルほど。午後1時半すぎ、関西国際空港で瞬間風速が58.1メートルを記録した。猛烈な高潮になったのは、こうした要因がそろったからだ。京大の森さんの解析では、気圧低下の影響で海面が60~70センチ上昇した。満潮が近づいていたため、いつもより50センチ高かったという。ここに南西から南南西の猛烈な風が吹いたことで「さらに2メートルほど潮位が上昇した」。大阪湾では午後1時から2時にかけて、風向きが東よりから南よりに変わったタイミングで各地の潮位が上昇した。もし、台風21号の接近が一週間ずれていたら、潮位が最も高くなる大潮の時期と重なった。森さんは「潮位はさらに1メートル20センチほど高くなり、大きな被害を出した可能性が大きい」と警鐘を鳴らす。
●不十分だった対策
 高潮で最も深刻な被害を受けたのが関西国際空港だ。2本あるうちのA滑走路が水没し、第1ターミナルが水浸しになって停電した。海水は高潮や津波対策としてかさ上げした護岸を30センチほど乗り越えていた。暴風で流されたタンカーによって連絡橋が大きく損傷し、追い打ちをかけた。関空を運営する関西エアポートの担当者は5日夜の記者会見で「備えていたつもりだったが、甘かった。高潮は想定を超えていた」と説明した。だが、対策は十分だったとはいえない。関空のある人工島は軟らかい地盤にあり、地盤沈下が深刻だ。A滑走路は1994年の開港時から約3メートル40センチ沈んでおり、海面からの高さは最も低いところだと1メートル40センチほどだ。今も年に6センチほど沈んでいる。護岸のかさ上げは地盤が沈下した分を補っているにすぎない。護岸を高くするには、航空法の規制がある。むやみに護岸を高くすれば、航空機が着陸する際に邪魔になる。滑走路全体をかさ上げすれば解決するが、巨額の費用がかさむうえに工事中は便数を減らす必要があり、実現は難しい。地球温暖化が進むと海面の上昇が進むとされる。そうなると高潮のリスクは高まる。京大の森さんの研究によると、現在よりも気温が4度上昇すると、大阪湾で第2室戸台風に匹敵する2.5メートル以上の高潮が発生する頻度が増す。森さんは「台風による高潮は常に起こりうるリスクだと認識すべきだ」と呼びかける。

*2-2-2:https://digital.asahi.com/articles/ASL984TZRL98UTIL01Y.html?iref=comtop_8_03 (朝日新聞 2018年9月8日) 開墾してできた厚真町、覆った土砂 「ショックな光景」
 厚真町は、南端で太平洋に面する。海岸へと広がる地形と厚真川水系を生かした米づくりで知られる。海岸沿いには、今回の大停電のきっかけになった北海道電力の苫東(とまとう)厚真火力発電所がある。そんな町を震度7の揺れが襲った。死亡と心肺停止を合わせると33人(8日午後9時現在)。いずれも北部の山間地の集落だ。町長の宮坂尚市朗(しょういちろう)さん(62)の家は南部にある。地震後、自宅を出てから町役場まで、一見して大きな被害はなさそうに見えた。だが、テレビに映った北部の映像に言葉を失った。とりわけ被害が大きかったのは、34人が暮らす吉野地区だ。死亡と心肺停止を合わせて17人。広い土地にもかかわらず、民家が集まって立っていた。「町の初期に、発展の中心になった場所だからでしょう」と宮坂さんは言う。町のホームページによると、明治3年に新潟から移り住んだ人が原野を切り開いて小屋を建て、明治17年に北部も開墾したのが旧厚真村の始まりとされる。この町で生まれ育った農家の日西善博さん(65)は、地震当日にヘリで救助され、土砂崩れの状況を上空から見た。「あんな景色は生まれて初めて。緑の山林があるはずが、粘土層と赤土が見えて、ショックな光景だった」。8日までに、大半の世帯で電気は復旧した。だが、水道や通信網が元に戻るには、相当の時間が見込まれる。「全町民が被災者」と宮坂さんは言う。いま役場には、自衛隊や警察の車両が駐車場に並び、24時間、慌ただしく人々が出入りする。町長室で取材に応じた宮坂さんは、「長い戦いになる」と言った。

*2-3-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180902&ng=DGKKZO34840540R30C18A8MM8000 (日経新聞 2018.9.2) 浸水想定域に住宅誘導、まち集約の自治体9割で 防災後手、計画の再点検を
 西日本豪雨などで洪水被害が相次ぐ日本列島。天災への備えが一段と求められるなか、まちの集約計画を掲げる主要な自治体の約9割で、浸水リスクの高い地区にも居住を誘導していることが日本経済新聞の調べで分かった。こうした地区にはすでに住宅が集まっているケースもあり、都市の効率向上と災害対策を両立させる難しさが浮き彫りになった。まちづくりと防災対策を擦り合わせ、集約計画を再点検する必要がある。全国でコンパクトシティー形成をめざす「立地適正化計画」の策定が進んでおり、120以上の市町が居住を誘導する区域を設定している。都市密度を高めて1人あたりの行政費用を抑えるためで、区域外の開発には届け出を求めている。一方で各自治体は洪水時の浸水予測をハザードマップなどで公表。1メートル以上の浸水であれば一戸建ての床上、3メートル以上であれば2階まで浸水する恐れがあるとされる。
●「床上」リスク高く
 日本経済新聞は居住誘導区域を3月末までに発表した人口10万人以上の54市を対象に、調査表や聞き取りを通じて浸水想定区域との重なり具合を調べた。その結果、全体の89%となる48市で1メートル以上の浸水想定区域の一部が居住誘導区域となっていた。うち45市は大人の身長に近い2メートル以上の区域とも重なっていた。「床上浸水リスクは避けたほうがいい」。名古屋市の立地適正化計画を検討した有識者会議のある委員はこう主張した。3月にできた計画を見ると、庄内川沿いの広範囲で1メートル、2メートル以上の浸水の恐れがあるのに居住誘導区域となっている。市の原案に対し、「リスクが高い地区に誘導する必要があるのか」との異論は根強くあったが、既に市街地が形成されていると主張する市の事務局が押し切った。浸水想定3メートル以上の地区は外した。都市計画課は「2階に避難できるかどうかで判断した」と説明するが、足腰の悪いお年寄りが階段をのぼるのは難しい。市の都市計画審議会会長を務める名城大の福島茂教授は「5年ごとに計画を評価する。合意形成を進めて区域を見直せばいい」と語る。市によっては大きな河川のそばで、浸水想定区域をすべて避けるとまちづくりが成り立たない事情もある。信濃川に沿って街並みがある新潟県長岡市は居住誘導区域のほぼ全域が0.5~5メートルの浸水想定区域と重なる。淀川に面する大阪府枚方市も85%程度で1メートル以上、約6割で3メートル以上の浸水リスクがある。都市計画課は「浸水想定区域を除くのは極めて困難。洪水リスクの事前周知や避難体制の整備など対策を進める」と説明する。多くの自治体は防災対策を施せば浸水リスクを軽減できると主張する。だが、立地適正化計画をつくる段階で、都市整備と防災の部署がどこまで細部を擦り合わせたか。東日本のある自治体の防災担当は「居住誘導区域の詳細が分からない」と回答。都市整備担当も浸水想定区域との重複度合いについて「細かく把握していない」という。居住誘導区域に占める1メートル以上の浸水想定区域の割合は、高知市のように1%と低い市もあるが、多くが「把握していない」(千葉県佐倉市、神奈川県大和市、大阪府高槻市など)と答えた。
●西日本豪雨で被害
 西日本豪雨で被害を受けた広島県東広島市では居住誘導区域で浸水があった。一部は浸水リスクが指摘されていた。都市計画課は「誘導区域が今のままでいいとは思わないが、被害対策が最優先で都市計画の議論に着手できていない」という。「居住誘導区域内の浸水想定を詳細に分析すべきだ」と訴えるのは土木工学に詳しい日本大学の大沢昌玄教授だ。リスクの度合いに応じて防災対策の優先順位を決めやすくなるという。そのうえでリスクが高い地域については「誘導区域からできるだけ除外したほうがいい」と強調する。

*2-3-2:https://digital.asahi.com/articles/DA3S13677813.html?ref=pcviewpage (朝日新聞 2018年9月14日)液状化「なぜ自分の家が」 新築に「危険」判定 北海道地震
 北海道地震で、札幌市のベッドタウンが液状化による大きな被害を受けた。道路が陥没したり、マイホームが大きく傾いたりした光景に、住人らはショックを隠せない。専門家は、かつてあった川沿いに被害が集中していると分析し、二次被害に注意を呼びかける。札幌市東部にある清田区里塚地区は、1970年代後半から住宅地として整備されてきた。この地区で暮らす建設業の清本翔馬さん(27)は、昨年建てたばかりの2階建て住宅が市の応急判定で「危険」とされた。妻の紗耶佳(さやか)さん(28)と「なぜ自分の家が」と頭を抱えている。6日未明、翔馬さんは激しい揺れで目が覚めた。恐る恐る外に出ると、雨が降っていないのに水が激しく流れる音がする。自宅前の道路が背丈ほど陥没し、濁流となっていた。40年ローンで建てたマイホーム。加入する地震保険では、建築費の3分の1しかカバーできない。「先は見えないが、親も里塚で暮らし、自分が生まれ育った場所。またここで暮らしたい」と翔馬さんは話す。市宅地課によると、里塚地区は河川を覆って地下に水路を残し、周辺から削った土砂で造成されたという。被害が大きかった地域は約5ヘクタールに及ぶ。市が7~12日に実施した応急危険度判定では、里塚地区などの計539件中、倒壊の恐れがある「危険」は85件、「要注意」は88件あった。同じ里塚地区でも、被害には大きな差が現れた。清本さん宅から直線距離で約200メートル離れた近藤陽子さん(43)宅は食器が落ちた程度で、液状化の影響をほとんど受けなかった。「同じ里塚なのに別世界のよう。私たちは被害が少なかったけれど、避難する方や陥没した道路を見るたびに、里塚の傷の大きさを痛感しています」
■被害、以前の川沿いに集中
 北海道大の渡部要一教授(地盤工学)は地震直後に札幌市清田区里塚周辺の現場に入り、地面の陥没や隆起、土砂が噴き出している様子などを調査した。12日、朝日新聞がチャーターしたヘリコプターに同乗し、現場周辺を目視した。渡部教授によると、現場周辺はかつて田んぼが広がり、川も流れていた。今回、被害が大きかった住宅や公園は、かつて流れていた川沿いに集中していることが上空からも確認出来たという。「地震による液状化で流動化した地盤が、土砂となってかつての川に沿って地下で動き、それが一気に地上にあふれた。そこに水道管の破裂によって生じた水が加わったことで、泥水が道路を冠水させたと考えられる」。渡部教授は「もし、仮説通りの液状化が起こっているとすれば、土砂が流れ出た後の地下の地盤は空洞化している恐れがあり、現場周辺では陥没などの地盤の変化を注意深く見守る必要がある」と話している。

*2-4-1:https://www.agrinews.co.jp/p45166.html (日本農業新聞 2018年9月13日) 大災害時代 「人と社会」の変革迫る
 北海道地震から1週間。近年、災害が大規模化し、繰り返し列島を襲う。異常が常態となり、「想定外」は通用しない。専門家は大型災害が多発する「危険サイクル」に入ったと警告する。大災害時代の防災、減災対策は今や国家的課題だ。大災害は、人々の意識や社会システムの変革を迫っている。災害は、地震や風水害だけではない。口蹄(こうてい)疫や鳥インフルエンザ、豚コレラなどの家畜伝染病、凶悪テロなどの犯罪も含む。災害は社会や経済状況を映す。自然災害も例外ではなく、地球温暖化の進展と比例して猛威を振るう。少子高齢化や過疎集落の増加、地域コミュニティーの弱体化など社会・産業構造の変化も被害を拡大させ、復旧・復興の長期化を招いている。北海道地震では、電源の一極集中が広域停電を引き起こした。半世紀にわたって防災・復興の研究と実践に携わる、室崎益輝・兵庫県立大学教授(減災復興政策研究科長)は、平成に入って災害が多様化し大規模化していると言う。地震が活動期に入り、水害などと連動し複合災害を引き起こしやすくなっていると指摘。「災害が多発する危険周期に入った」と警告する。事実、平成30年間の主な自然災害を見ると、北海道南西沖地震(1993年)、阪神・淡路大震災(95年)、新潟県中越地震(2004年)、そして未曽有の東日本大震災(11年)。近年も熊本地震(16年)、九州北部豪雨(17年)と続き、今年も大阪北部地震、西日本豪雨、台風21号、北海道地震と頻発する。問題は社会の側が、こうした巨大災害に対応できていないことだ。縦割りの防災行政、司令塔機能の混乱、中央政府と当該自治体の連携不足、専門家や科学的知見の不足、情報伝達の不備などの問題が浮き彫りになっている。加えて本来、防災・復旧・復興の当事者であるはずの市町村は、財政難や人材難に苦しみ機動的に対応できない。道路や橋、河川などインフラの老朽化も被害に拍車を掛ける。さらに目を向けなければならないのが、農村、都市問わず少子高齢化でコミュニティー機能が弱っていることだ。地域力の衰退は、共助の弱体化に直結し、被害の拡大を招く。大規模災害のたびに過疎集落は存廃の危機に陥り、国土の荒廃が進み、さらなる災害の引き金となる負の連鎖が止まらない。災害は社会の弱点や矛盾を映す。災害対策基本法など法制度の充実強化はもとより、防災教育、予防対策、初期対応、復旧・復興に向けて省庁の壁を越えて横断的に取り組む体制が不可欠だ。併せて、災害に強いインフラ整備に予算を重点投入すべきである。そして地域振興や1次産業の活性化は、国土防災につながるという視点が必要だ。地域の防災力を高めることが、大災害時代を生き抜く術になる。防災基点の国づくりこそ百年の計だ。

*2-4-2:https://news.nifty.com/article/domestic/society/12151-14868/ (niftyニュース 2018年2月28日) 首都直下型地震が起これば荒川や隅田川沿いの下町が壊滅する可能性
①東京都は首都直下型地震に備え、危険度を5段階にランク付けしたマップを公表した
②荒川や隅田川沿いなど、下町エリアに危険度が高い地域が集中しているという
③しかも、直下型を想定したこのマップでは、津波の被害が考慮されていないらしい
■「下町が壊滅する!」直下型地震で地獄と化す東京都ゼロメートル地帯
 2月15日、東京都は4年半ぶりに“危険度ランク”を発表。いつ発生しても不思議ではない首都直下型地震に備え、町や丁目で区切った5177カ所を対象に、危険度を5段階にランク付けしたマップを公表した。それを見ると、危険度が高い地域が下町エリアに集中していることが一目瞭然。荒川や隅田川沿いの下町に広がる軟弱な地盤や谷底低地に当たる場所は、地震が起きた際に揺れが増幅されやすく、しかも古い木造住宅が密集しているためだ。防災ジャーナリストの渡辺実氏は言う。「東京都は震災対策条例にもとづいて、1975年から約5年ごとに地震に対する建物倒壊や火災などの危険度を調査、公表してきました。しかし、開発が進んでいる地域では建物の耐震化が進んで評価が上昇しているのに対し、荒川、隅田、足立区では高齢化が進み、建て替えをしようというエネルギーもないというのが実状なんです」。木造住宅が密集している環状7号線の内側を中心としたドーナツ状のエリアや、JR中央線沿線でも火災危険度が高い。「首都直下型地震の際は帰宅難民の大量発生が指摘されていますが、都心から郊外の自宅へ帰宅する際、環状七号線一帯の火災により、都心へ戻る人が出てくる。それが新たな帰宅難民とぶつかることで、さらなる混乱も予想されます。そこへ、関東地震(1923年)の時に発生したような火災旋風が襲う可能性もあるのです」(同)。ただ、8回目の作成となった今回のマップでは、耐震性の高い建物への建て替えや、耐震改修工事などが反映され、倒壊危険度は前回に比べ平均で約20%低下している。また、火災の危険度では、延焼時間の想定が6時間から12時間にまで伸びたが、不燃性の建材を使った建物が増えたことや道路の拡幅工事、公園整備などが進んだ結果、リスクは平均約40%低下したという。しかし問題は、直下型を想定したこのマップでは、津波の被害が考慮されていない点だ。特に23区の東部にはゼロメートル地帯が広がっている。巨大地震の際は、ここに大きな水害が出る危険があるという。渡辺氏が続ける。「東京湾の満潮面より低い、いわゆるゼロメートル地帯が、墨田区、江東区に広がり、23区の面積の約20%にも及びます。そしてそこに、約150万人が生活をしている。考えておかなければならないのは、満潮時に地震が来た時です。火災や揺れで住民が動揺しているところへ、地震により防潮堤が破壊され大量の水が流れ込む。そうなった場合は、想定外の大パニックとなる可能性があるのです」。怖い順の格言である「地震雷火事親父」の親父の部分はかなり怪しくなってきたが、東日本大震災の恐怖は未だ脳裏から離れない。首都直下地震は30年以内に7割の確率で起こると言われているが、それは明日にもやってくるかも知れないのだ。

<火星の話>
*3-1:https://digital.asahi.com/articles/ASL7B5V8VL7BULBJ00Y.html (朝日新聞 2018年7月23日) 火星が大接近 観察は8月が狙い目、小型望遠鏡で模様も
 火星が31日、地球に大接近する。火星はおよそ2年2カ月ごとに接近するが、6千万キロ弱まで近づくのは15年ぶりだ。観察しやすいのは8月で、小型の望遠鏡でも模様が見える。近年は水の痕跡など、探査機による発見も相次いでいる。火星大接近を控えた先月16日、東京・中野にある光学メーカー「ケンコー・トキナー」本社で、望遠鏡の選び方や使い方を紹介する体験会が開かれた。親子連れら約20人が参加。光学デモンストレーターの渡辺一生さんが「火星は今回、土星と同じくらいの大きさに見える。鏡の直径が8センチクラスの望遠鏡でも模様が見えそう」と説明すると、参加者は「撮影には何が必要か」などと熱心に質問していた。父親と来ていた小学6年の男の子(11)は「望遠鏡の使い方のコツが分かったので、火星だけじゃなく木星や土星も見てみたい」と楽しみにしていた。火星は地球のすぐ外側の軌道を回っていて、地球はおよそ2年2カ月ごとに内側から追い越している。この時に最も近づくが、火星の軌道は地球より楕円(だえん)の度合いが強いため、接近する距離は毎回異なり、6千万キロより近づく「大接近」があったり、1億キロまでしか近づかない「小接近」があったりする。2003年の距離は5600万キロ弱で、「6万年ぶり」とも言われた超大接近だった。この夏の火星大接近は5800万キロ弱と、03年に匹敵する近さだ。「大シルチス」という表面の黒い模様や、ドライアイスなどでできた南北の極冠の様子も望遠鏡で見やすくなる。ただ、火星では今年5月に大規模な砂嵐が発生して、模様が広範囲で覆われる状態が続いている。砂嵐が収まるのはしばらく先になりそうだ。また、7月だとまだ火星が夜遅くにしか上がってこないこともあり、国立天文台も「観察しやすいのは8月や9月」として、観望会もその時期に予定している。
●火星の地下に氷残る?
 火星の大きさは地球と月の間くらいだが、地形は極めてダイナミックだ。最高峰のオリンポス山は高さ26キロで、太陽系で最大の山と言われる。すそ野の広がりは600キロに達する。東京―岡山間よりも長い距離だ。また、米探査機が発見したマリナー渓谷は全長5千キロ、幅100キロに及ぶ。地球によく似た特徴もある。1日の長さはほとんど同じ約24時間40分。地軸の傾きもほぼ一緒で夏や冬がある。地球の100分の1の大気圧とはいえ大気がある。気温は平均マイナス55度だが、夏には20度を超すことがある。氷が溶けて液体の水が存在できる温度だ。実際、1996年に打ち上げられた米探査機「マーズ・グローバル・サーベイヤー」が、地下からしみ出た水が地表を流れたように見える地形を上空から撮影した。今も地下に氷が残っているのではないかという期待が高まっている。最近の研究では、地球で生命が生まれた40億年ほど前、火星にも大量の水があったらしいことが分かってきた。であれば、微生物やその痕跡が残っていても不思議ではない。だが、火星の海は消え失せ、赤茶けた大地が広がる荒涼とした世界になった。米航空宇宙局(NASA)のジェイムズ・グリーン博士は5月に来日した際、「火星で起きたことは地球でも起こりうる。地球の運命がどうなるのかを理解するためには、火星を調べることが近道だ」と語った。
●各国が探査
 火星探査はかつて米ソが覇を争ったが、近年は日欧も計画を本格化させている。先陣を切ったのは旧ソ連だ。60年以降、探査機「マルス」シリーズを次々と打ち上げた。だが、軌道に乗せることが難しく、失敗が続いた。初めて火星を近くから撮影したのは65年の米探査機「マリナー」4号だった。さらに、米国は76年に、「バイキング」1、2号の着陸機を軟着陸させた。初めて地表の鮮明な写真が撮られ、大気も観測した。地表では現在、米国の探査車「オポチュニティー」と「キュリオシティ」が活動している。NASAは今年6月、キュリオシティが火星の岩石から炭素や水素を含む有機物を発見したと発表。しかし、生命がいた直接的な証拠は未発見だ。NASAは5月には火星の地中を掘って地質などを調べる着陸機「インサイト」も打ち上げた。将来的には火星の岩石を地球に持ち帰ったり、有人探査をしたりする野心的な計画を立てている。欧州宇宙機関(ESA)もロシアと協力し、火星の本格探査を始めた。16年に打ち上げた探査機は軌道投入に成功。20年には探査車を打ち上げる予定だ。日本も探査機「のぞみ」を1998年に打ち上げたが軌道投入に失敗。リベンジを計画している。狙うのは火星本体ではなく、二つある衛星「フォボス」と「ダイモス」だ。小惑星探査機「はやぶさ」で磨いた試料採取の技術などを応用し、どちらかの衛星から石や砂を持ち帰る火星衛星探査計画(MMX)を進めている。打ち上げは2024年度の予定だ。宇宙航空研究開発機構(JAXA)の川勝康弘・プリプロジェクトチーム長は「どういう小天体に水や有機物が多く含まれ、惑星に物質を運んだのかを突き止める手がかりにしたい」と話す。
●NASAの有人探査計画
 NASAは2030年代に宇宙飛行士を火星に送り込む探査を計画している。まず月の周りに宇宙ステーションを建設。そこを中継基地にして火星に向かう。ただ、片道でも1年ほどかかるため、飛行士の健康管理や被曝(ひばく)対策、事故への備えなど課題は尽きない。費用も巨額になりそうだ。

*3-2:https://digital.asahi.com/articles/ASL7S7GV8L7SULBJ01G.html (朝日新聞 2018年7月26日) 火星、氷床の下に大量の水? 「生命生き残れる環境」
 火星の南極にある氷床の下に大量の水をたたえた「湖」が存在する可能性が高いと、イタリア国立宇宙物理学研究所などのチームが25日、発表した。「生命が生き残れる環境だ」という。27日発行の米科学誌サイエンスに論文が掲載される。太陽から平均約2億2800万キロ離れた火星には、地球の約100分の1の大気があり、生命の「材料」とされる有機物も岩石から発見されている。約40億年前は大量の水に覆われていたと考えられ、現在も北極や南極周辺に氷床が残っている。研究チームは、欧州宇宙機関(ESA)の探査機「マーズ・エクスプレス」が2012~15年に得た南極周辺の観測データを分析。電波の反射具合から、厚さ約1・5キロの氷床の下に、水とみられる層が幅20キロにわたって湖のように存在することがわかった。水がある氷床の底の温度は零下約70度と推定されるが、塩分が濃いことや氷床の圧力がかかっていることで液体のまま存在できているらしい。研究所のロベルト・オロセイ氏は「生命にとって好ましい環境ではないが、水中では単細胞生物などが生き残れる可能性がある」としている。地球外での水の存在は、木星の衛星「エウロパ」や土星の「エンケラドス」などでも予想されているが、火星はより太陽に近く、光や熱で生命活動の元になる化学反応が起きやすい。宇宙航空研究開発機構(JAXA)宇宙科学研究所の臼井寛裕教授(岩石学・地球化学)は「火星に水があるなら、地球と似た生物がいる可能性が高まったと言える」と話している。

<復興と防災>
PS(2018年9月18日追加): 本文に私が、「高齢化と人口減少に直面していることを活用して、高台にケアしやすいマンションを作って危険度の高い地域から移転する都市計画」等と記載したのは、*4-1のように、多様な世代が暮らしやすい街を高台に作って移り住むことだ。こういう街への転居なら、生活がより安全で便利になるので、移転する人も満足できるだろう。
 また、*4-2のように、旧耐震基準で建てられた大型施設の1割に倒壊リスクのあることが明らかになったそうだ。そして、*4-3のように、台風21号による飛来物や倒木がぶつかったことで、福井、滋賀、京都、大阪、兵庫、奈良、和歌山の2府5県で、電柱600本以上が折れる被害が出て6日間24万戸超が停電したが、電線地中化や分散発電が進んでいれば、毎年来る台風でこのように多くの人が停電の不便を味わう必要はなかった筈である。
 さらに、*4-4のように、溜池の危険性が西日本豪雨などで浮き彫りになり、地震による決壊も続発しているそうだ。確かに、政府は溜池の補強を急いで防災と安全機能を高めるべきで、溜池に農業用電力を発電する小水力発電設備を取りつけてもよいと思われる。
 なお、都会でも、*4-5のように、南海トラフ巨大地震発生時に震度6弱以上の揺れが想定される地域を含む24府県にある37国立大のうち、保有する研究機器や歴史的史料を保護するための防災計画を策定している大学は4分の1に留まるそうだ。貴重な研究機器や史料は大学に限らず保管されていると思うが、近いうちに首都直下型地震が起こるとされている関東は準備ができているのだろうか。

*4-1:http://qbiz.jp/article/140105/1/ (西日本新聞 2018年9月3日) 旧公団 ついのすみかに 北九州市小倉南区 徳力団地に医療と福祉拠点 多様な世代が暮らす街へ
 小倉南区、徳力団地−。1960年代半ばに開発された約2300戸のこの旧公団住宅の一角に診療所と特別養護老人ホーム(特養)を併設した「メディカル&ケアとくりき」が8月1日、オープンした。「お父さん。私が毎日来られるようになって、よかろう」。入所者の家族、所紀世子さん(79)が話し掛けると「まあ、気持ちはいいよ」と車いすの夫、泰政さん(84)は照れくさそうにうなずいた。徳力団地に約20年前から住む所夫婦に転機が訪れたのは約10年前だった。泰政さんが脳出血で倒れ体が不自由になった。典型的な「老老介護」で夫の面倒を見続けた紀世子さんは介護7年目でついに倒れてしまった。介護疲れ。1カ月の入院生活を送り限界を悟った。泰政さんは宗像市の有料老人ホームに入所し、その間、紀代子さんは足の不調を覚え手術を受けた。入所していた約3年間、泰政さんの元に通えたのは5回ほどだった。泰政さんの体調も悪化した。「よその土地には、なじめんやった」と泰政さんは振り返る。メディカル&ケアとくりきに入所できた今、紀世子さんは自宅からつえをつきながら通える。「夫も明るく元気になった。友達もいる団地に住み続けられて助かる」。紀世子さんに笑みがこぼれた。
   ◆    ◆
 高度経済成長期の60〜70年代、都市部への人口集中に伴って大規模化していった旧公団住宅は急速に住民が高齢化している。都市再生機構(UR)が管理する1500団地73万戸を対象に2015年に実施した調査では住人の平均年齢は51・2歳で、65歳以上の割合は34・8%に上り、15歳未満は8・6%にとどまった。5年で平均年齢は4・6歳上昇し、高齢化率は9・7ポイント上がった。一方15歳未満の割合は2・2ポイント下がった。URは自治体などと協力し、メディカル&ケアとくりきのような医療と福祉を合わせた複合型拠点を2025年度までに150カ所設置する。14年度から始まり、全国各地で現在133団地で着手や検討が進む。九州では北九州市や福岡市、宗像市の8団地で病院を誘致するなど複合型拠点づくりに取り組んでいる。こうした複合型拠点の開設は、戦後の第1次ベビーブーム期に生まれた「団塊の世代」が75歳以上になる25年度をめどに住まいや医療、介護などの生活支援を一体的に提供する「地域包括ケア」を構築する国の政策にも沿う。URは「(旧公団住宅での)医療と福祉の複合型拠点形成を多様な世代が暮らせる街づくりの先行事例にしたい」と意欲を見せる。
   ◆    ◆
 高齢になっても住み慣れた地域で医療や介護、生活支援サービスを一体的に受けられる地域包括ケアの重要性にいち早く着目したのがメディカル&ケアとくりきの山家滋院長だった。住民基本台帳では3月現在、徳力団地は65歳以上が41%を占め、80歳以上11・4%、85歳以上でも4・8%に上る。自治会が実施した調査では80歳以上の独居高齢者は120人以上いた。50年以上にわたって同団地内で診療所を開いてきた「徳力団地診療所」は以前から往診も実施してきた。01年に診療所を引き継いだ山家院長は、50人以上の往診患者を抱えるうちに入院高齢者に比べ、回復が早く症状が緩和することを実感するようになった。「療養環境の変化はやはりストレスが大きい。自宅と変わらない風景と近所づきあいが続くことで患者の負担感が全然違うと気がついた」。山家院長は小倉南区の社会福祉法人「菅生会」の理事長も兼ねることになり、URに協力を要請。医院と社会福祉法人の協業による拠点開設にこぎ着けた。団地敷地内にあった診療所を4階建てビルに建て替え。無床の診療所、特養29床と併設ショートステイ10床が入居し地域との交流スペースもある。団地や近隣の高齢者たちが次々に入所している。

*4-2:https://digital.asahi.com/articles/DA3S13556772.html (朝日新聞 2018年6月26日) 震度6強―古い大型施設、1割倒壊リスク 学校や病院1万棟、国交省集計
 旧耐震基準で建てられた、病院や小中学校といった規模が大きい全国の建物1万棟余りのうち、1割弱にあたる約1千棟で、震度6強以上の地震が起きると倒壊や崩壊の危険性が高いことが国土交通省のまとめでわかった。大阪府北部を震源とする最大震度6弱の地震から25日で1週間。より強い地震が起きた場合、これらの建物は損壊し、大きな被害が出る恐れがある。現在の耐震基準は1981年6月に導入され、震度6強~7の地震でも倒壊、崩壊しないことが求められている。自治体は、旧耐震基準で建てられた3階建て5千平方メートル以上の旅館や店舗▽2階建て5千平方メートル以上の老人ホームなど、多くの人が出入りする一定規模以上の建物について、耐震性の診断結果を集約し、順次公表していった。同省は、今年4月までに公表された46都道府県(東京の一部と和歌山を除く)に関し、結果を取りまとめた。棟数は計約1万600棟で、▽9%にあたる約1千棟が震度6強~7の地震で倒壊・崩壊する危険性が高い▽7%にあたる約700棟が震度6強~7の地震で倒壊・崩壊する危険性がある――と判明した。合わせて16%となるこれらの建物について、同省は「耐震不足」と認定し、対応を求めている。また、危険性が高いとされた割合(公表時)は東京都が4%、福岡市が4%なのに対し、大阪市が14%、札幌市が18%と地域によって差も生じた。今回の診断は多くの人が出入りする大規模な建物に限られ、ほかにも耐震性が不足している建物は少なくないとみられる。同省は25年までに、「耐震不足」とされた建物の耐震化を完了させたい考えだ。個別の診断内容は、結果を公表している各自治体のホームページで確認できる。

*4-3:http://qbiz.jp/article/140332/1/ (西日本新聞 2018年9月6日) 台風で電柱600本以上折れる 関電、6日も24万戸超停電
 関西電力は6日、台風21号による飛来物や倒木がぶつかったことで、福井、滋賀、京都、大阪、兵庫、奈良、和歌山の2府5県で、電柱600本以上が折れる被害が出たと明らかにした。また、6日午後3時現在で約24万6千戸が停電しており、他の電力会社からの応援を含めた8千人超の態勢で、7日中に大部分を復旧させる方針を改めて強調した。6日午後3時までの延べ停電戸数は約219万戸で、阪神大震災の約260万戸に次ぐ規模となった。

*4-4:https://www.agrinews.co.jp/p45073.html (日本農業新聞 2018年9月3日) ため池管理 安全性高める補強急げ
 急がなければならない。ため池の危険性が西日本豪雨などで浮き彫りになった。地震による決壊も続発している。政府はため池の補強を急ぎ、防災機能と安全性を高めるべきだ。ため池は、西日本を中心に全国に約20万カ所ある。主に雨の少ない地域で農業用水を確保するために作られた。洪水調節や土砂流出を防止する効果に加え、生物の生息場所や地域の憩いの場になるなど多面的な機能を果たしている。農業にとって重要な施設だが、老朽化が進んでいる。2ヘクタール以上の農地に水を供給しているため池は約6万カ所で、このうち7割が江戸時代以前に作られた。担い手の減少や高齢化から管理が行き届かず、堤が崩れたり、排水部が詰まったりしている。農水省がまとめた全国調査によると、ため池の下流に住宅や公共施設ができ、決壊すると大きな被害が予想される「防災重点ため池」は1万カ所を上回った。さらに都道府県の詳細調査では、調査対象の5割強で耐震不足、4割弱で豪雨対策が必要だった。決壊した場合の浸水被害を予想したハザードマップを作り、地域に配っているのは半分に満たない。こんなお寒い状態で防災とはいえない。近年は都市住民との混住化が進み、災害の危険性は増している。ハザードマップを完備し、災害に備えるべきだ。最近10年のため池被災は、7割が豪雨、3割が地震で堤の決壊や流失を起こしている。記録的な豪雨は、常識では考えられない降水量をもたらす。昨年7月の九州北部豪雨や、今年7月の西日本豪雨では大きな被害につながった。この異常事態を念頭に置きながら、耐震性や洪水防止策を強めるなど安全性を強化するべきだ。一方、ため池の所有者が複数に及んだり、工事費用の負担が重かったりと、改修工事の合意形成も容易ではないのが実態だ。地方自治体任せにするのではなく、政府全体がしっかり支援すべきだ。現場のニーズに応えられるように予算を十分確保し、改修工事などの補助率を高めるなど、現場の負担を減らす方法も考えなければならない。ため池での死亡事故も続発している。ここ10年は年平均で20人以上が亡くなっている。60歳以上の高齢者が多く、水の利用が多くなる5~9月にかけて多発している。警戒を強めるべきだ。釣りなど娯楽中の事故も多い。ため池を管理している水利組合や行政、土地改良区は、子どもたちが危険な箇所に立ち寄らないよう注意喚起したり、安全柵を設置したりする対策も進める必要がある。農山村に人が少なくなり、管理の目は行き届かない。放置されたままのため池はないか。もう一度、下流域の住民を含めてみんなで点検し、必要な整備を急ぐ必要がある。政府や地方自治体は、一日でも早くため池の防災対策に取り組むべきだ。

*4-5:https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180901-00000022-mai-soci (毎日新聞 2018/9/1) <南海トラフ地震>機器や史料の保護対策 域内国立大25%
 南海トラフ巨大地震の発生時に震度6弱以上の揺れが想定される地域を含む24府県にある37国立大のうち、保有する研究機器や歴史的史料を保護するための防災計画を策定している大学は4分の1にとどまることが、毎日新聞のアンケートで明らかになった。大学には貴重な研究機器や史料が多く、対策が求められそうだ。アンケートは、6月の大阪北部地震で最大震度の6弱を観測した大阪府茨木市で、大阪大の研究施設に被害が出たことを受けて実施し、静岡大を除く36大学が回答した。地震や津波、火災などに備え、研究機器や二度と手に入らない古文書などの歴史的史料に対する免震装置の設置や防火対策など、物品が対象の防災計画を策定しているか尋ねたところ、策定済み9(25%)▽未策定24(67%)▽検討中2▽その他1--だった。策定済みの9大学のうち、名古屋大は東日本大震災(2011年)を受け、重要な機材や史料の損害を防ぐためにガイドラインを定めた。熊本大も熊本地震(16年)後に大規模災害対応マニュアルを改定し、大災害を機に計画を整備した大学が目立った。大阪北部地震で被害を受けた阪大は「策定の検討を始める予定」と回答した。未策定の24大学の多くは、人命の安全や2次災害防止が目的の防災計画はあるが、研究機器などは対象外。神戸大や広島大などは研究室や部局ごとに設備の転倒防止や防火対策を進めているが、「被害規模の想定が困難」(山梨大)と物品の防災の難しさを指摘する声もあった。被災時に必要な支援策では、28大学が「国による経済的支援が必要」と回答。機密文書の取り扱いに詳しい専門家の派遣や、施設を使えなくなった研究者の受け入れを他大学に求める意見もあった。一方、国立大学の研究施設や所蔵史料の防災対策に関して、国としての対応の有無を文部科学省に照会したが、確認できなかった。6月18日に起きた大阪北部地震では、阪大で1台約23億円する電子顕微鏡2台が損傷し、復旧まで1年以上かかる見通しだ。iPS細胞(人工多能性幹細胞)を使った世界初の心臓病治療の研究でも栄養管理が中断し、細胞の培養をやり直すことになった。

<防災庁と防災 ← 狭い視野では何もできないこと>
PS(2018年9月18日追加):(3)に記載したように、「①社会が災害に対応できていないから防災庁が必要」とする意見があり、*5-1のように、「②官僚は応答性と専門性があるが、専門性が身につかなければ若手は霞が関から離れる」「③少人数で政策を決めるトップダウンが進むほど、大多数の政策立案に関われない官僚たちはいらだつ」という記事もある。
 しかし、全体を見渡して重要性を判断する教育が徹底している公認会計士と全分野を担当する国会議員の両方を経験してきた私が官僚を見ると、②については、官僚機構は優秀な人を採用しているのに、入省年次と入省時の成績や学歴ですべてが決まり、リスクをとったら損をするシステムであるため、優秀な人を普通の人に育てているように見える(結果としては、さすがと思われる人も多いが・・)。また、2年毎に関連のない部署に異動させる官僚機構こそが、超ジェネラリスト(「何でも知っている」とされる何もできない人)を作り、スペシャリスト(専門家)を育てることができないシステムだ。そして、これは安倍首相や政治家が作った風土ではなく、官僚機構そのものの文化なのである。
 このような中、③については、内閣府は各省庁出身者を抱えているため、内閣府で決められる政策は単なるトップダウンではなく、各省庁の提言を踏まえている筈で、少人数で決めたものではない。また、国会議員とのすり合わせは、官僚も交えて自民党の専門部会や国会の各委員会で行われているため、残る問題は、どういう理念の下で提言を取捨選択したかであり、ここに民間議員の意見も入っている筈なのだ。そのため、官僚がいらだつのは、政策の取捨選択に関してだと思うが、私から見ると、官僚の政策は現場を見ておらず、省庁内の男社会という狭い視野であるため、疑問を感じることが多い。そして、官僚は主権者である有権者の選挙を経ていない。
 また、①については、災害対策は、気象庁・防衛省・警察庁・国土交通省・環境省・農水省・経産省・厚労省・財務省・総務省・文科省など殆どすべての省庁が関わるため、防災庁を作って防災しか考えたことのない官僚が行うよりも、内閣府を土台として内閣が政治決定した方が速やかで的確な判断ができる。そのため、省庁を細かく分けて小さな分野を専門とし、他のことはわからない狭い“専門家”を作るよりも、内閣府を司令塔にする方が合目的的なのである。
 例えば、*5-2のように、大型台風19号、20号も発生し、8月に発生した台風は8個に上り、*5-3のように、硫黄島では火山性地震が1日500回超に増加している。また、*5-4のように、地震調査委員会が全国地震動予測地図を公表しており、これに対応するには短期的避難では足りず、原因究明して都市計画や建築物の構造から考え直さなければならない。そのためには全省庁が知恵を絞る必要があり、その対応には内閣府の方が適しているわけである。

*5-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180918&ng=DGKKZO35362850U8A910C1MM8000 (日経新聞 2018年9月18日) 政と官 細る人財(2) 白書は「遺書」、頭脳流出の波
 「労使ともにリスクを避けて雇用の維持を優先している姿勢がみられる」。2017年夏に公表された経済財政白書は第1章で、雇用を守るために低賃金・長時間労働がはびこっていると問題提起した。内閣府で執筆に携わった森脇大輔氏。まだ30歳代だが「遺書のつもりで書いた」。
●1年で1685人離職
 年次と学歴ばかりを重視し、変化するリスクを拒む霞が関への批判を込めた。閉じた世界では変化は生まれない。そんな思いから白書公表の直前、サイバーエージェントに転職した。今はネット広告システムの研究開発を手掛ける一方、研究者として論文も書く。総務省の若手チームは6月、省内の働き方改革を提言した。メンバーの橋本怜子さんは自ら希望し、鎌倉市役所に出向した。霞が関は外との交流や勉強の時間が持てず、民間に比べ給料も低い。「優秀な若手が辞めていくのは当然」と思う。止まらぬ頭脳流出。霞が関の25~39歳の行政職の離職者は16年度に1685人。ここ5年、じわじわ増えている。一方、キャリア官僚の試験申込者数は17年度で2万3425人と前年度比4%減。20年間で約4割減った。財務省は10年度に官民交流拡大など50の提言をまとめたが「次官が代わるたびに改革の勢いが鈍った」(同省幹部)。官を取り巻く環境はさらに厳しさを増している。息子の大学入学に絡む汚職で幹部が逮捕された文部科学省。若手官僚は「国からではなく、現場から教育を変えようという人材が増えるだろう」と嘆く。安倍政権が教育無償化の具体化を進めるなか、教育行政の担い手が犯罪に手を染めた衝撃は計り知れない。
●官邸主導に不満
 明治大学の田中秀明教授は、官僚の役割として政治家からの要求に応える「応答性」と、制度などの深い知識を持つ「専門性」があると指摘する。「現政権は過度に応答性を重視するが、専門性が身につかなければ若手は霞が関から離れる」。かつて社会保障分野では、首相経験者の橋本龍太郎氏ら大物政治家がボスとして強い力を持っていた。10年ほど前までは尾辻秀久元参院副議長ら「4人会」が政策決定の中心。いわゆる族議員の「密室政治」だが、政治家が決めた政策の方向性を官僚が制度に落とし込むという政と官の一種の役割分担があり「役人としてやりがいを感じた」(元厚労省首脳)。いまは安倍政権下で官邸主導が進む。農林水産省の若手は「政府が掲げる『農産物輸出1兆円』の目標も、目標設定のための分析は不十分。単に切りがいい数字を挙げただけとしか思えない」という。少人数で政策を決めるトップダウンが進むほど、大多数の政策立案に関われない官僚たちはいらだちを募らせる。「70歳、80歳まで仕事する時代。戦力として働き続けたい」。安永崇伸氏(46)は昨夏、経済産業省を辞めた。将来の資源エネルギー庁長官とも嘱望されていたが、かねて考えていたように、コンサルタントとしてエネルギーを自身の生涯の仕事とする道を選んだ。官僚も人の子。機械の歯車ではない。官であれ民であれ、やりがいを見失えば、未来を信じて働くことは難しくなる。

*5-2:https://ryukyushimpo.jp/news/entry-785556.html (琉球新報 2018年8月20日) 台風19号、夜大東接近 20号も発生、今月8個目
 強い台風19号は、19日午後9時現在、東京都・小笠原諸島の父島の西南西約460キロにあり、ゆっくりした速さで西北西へ進んでいる。20日から21日にかけて沖縄地方に接近する恐れがあり、大東島地方では20日夜は非常に強い風が吹き、沿岸の海域では大しけとなる見込み。また、18日午後9時に発生した台風20号は19日午後9時現在、南鳥島近海にあり、西北西へ進んでいる。19日午後9時現在、台風19号の中心気圧は955ヘクトパスカルで、中心付近の最大風速は40メートル、最大瞬間風速は60メートル。中心から半径130キロ以内は風速25メートル以上の暴風域となっている。大東島地方は台風接近により20日午後から次第に北西の風が強く吹き、夜遅くには非常に強い風が吹く見込み。沖縄本島地方沿岸も20日からうねりを伴い波が高くなる見込み。台風の進路によっては21日から大しけとなる。8月に入って台風の発生が相次いでおり、20号で8個目となった。

*5-3:https://www.hokkaido-np.co.jp/article/226400?rct=news (北海道新聞 2018年9月8日) 硫黄島で火山性地震増加 1日で500回超、噴火の可能性
 気象庁は8日、東京の硫黄島で火山性地震が増加し、同日午前2時ごろから午後9時までに566回観測したと発表した。噴火する可能性がある。沿岸での小規模な海底噴火にも注意が必要。1日の地震回数が500回を超えたのは2012年4月27日以来。硫黄島は現在、海上、航空両自衛隊の基地があり、民間人の上陸は制限されている。

*5-4:http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201806/CK2018062602000279.html (東京新聞 2018年6月26日) 関東圏 震度6弱高確率 地震調査委予測 危険性変わらず
 政府の地震調査委員会(委員長・平田直(なおし)東京大教授)は二十六日、三十年以内に震度6弱以上の揺れに襲われる危険性を示す全国地震動予測地図二
〇一八年版を公表した。南海トラフ巨大地震が懸念される太平洋岸では静岡市が70%、長大活断層が走る四国は高知市が75%と各地で引き続き高い確率となった。沖合で新たに巨大地震が想定された北海道東部は、根室市が63%から78%となったのをはじめ大幅に上がった。地震調査委を所管する林芳正文部科学相は同日の記者会見で「地震はどこでも発生することを念頭に置いて、防災に役立ててほしい」と述べた。最大震度6弱を観測した大阪府北部地震が十八日にあった近畿地方でも、50%前後と高い数値が目立つ。活断層が多い上に、地盤が揺れやすい平野が広がるためという。神奈川県沖を走る相模トラフの巨大地震や、東京周辺を直撃する首都直下地震が懸念される関東地方も高いまま。六月に入って周辺で地震活動が活発化した千葉市が85%と都道府県庁所在地では最も高かった。揺れの計算には地盤の性質が反映されているが、プレートが複雑に重なる南関東では大地震が多数想定されており、横浜市、水戸市も80%を超えるなど強い揺れの確率も高くなっている。南海トラフ巨大地震の発生確率は毎年上昇するため、西日本の太平洋岸は名古屋市が46%、和歌山市が58%など一七年版と同じか、わずかに確率が上昇。近畿から四国、九州に延びる長大な活断層「中央構造線断層帯」などの評価を昨年見直したため、四国四県は確率が1~2ポイント高まった。北海道東部は沖合のプレート境界、千島海溝沿いで大津波を伴う巨大地震が繰り返していたとの研究結果を踏まえて、釧路市が47%から69%になるなど大幅に上昇した。評価は今年一月一日が基準。最新版は防災科学技術研究所のウェブサイトで公開され、住所から発生確率を検索できる。<全国地震動予測地図> ある場所がどのくらいの地震の揺れ(地震動)に襲われるのかを「今後30年間で震度6弱以上」といった表現で、全国規模で示した地図。プレートが沈み込む海溝で起きる地震や、内陸の活断層で起きる地震の評価結果を基に政府の地震調査委員会が作成、公表している。

<省庁再々編は改善になるか>
PS(2018年9月19、20、21日追加): *6-1のように、北海道地震から10日以上が経過し、被災地では中断していた農作業が再開し始めたが、人手不足が深刻化しているそうだ。厚真町で水稲や畑作物を33ha栽培する山崎さんは、既に大規模化している北海道の農業者であるため、この農業を体験しておくことは勉強になる。そのため、未だ田畑の区割りが小さな東北の農家で農作業が終わった人、農高や大学農学部の学生は、体験方々、ボランティアに行くとよいだろう。
 また、農業は、*6-2のように、「スマート農業」が始まり、農水省が2019年度から全国50カ所で「スマート実証農場」を整備して大規模な実証試験を始めるそうだ。次世代を担う高校生・大学生は、農業系・工業系を問わず見学に行き、「自分なら、何をどうする」ということを考えておく方がよいと思われる。
 このような中、*6-3のように、「①自民党本部で行政の効率化を議論する総会が開かれて省庁再々編の提言がまとまった」「②内閣府の担当領域の広さや子育て政策を担う部署の分散が問題視された」「③最も批判を集めて再々編の目玉になったのは厚労省で、法案作成が雑・データの扱いも粗末・法案の渋滞がひどい」「④国会の委員会は役所別に設置し、その所管法案を審議する。ある法案が審議入りしたらその採決まで別の法案は審議しない慣例がある」「⑤政治家が答弁するなら、官僚はより丁寧に準備しないといけないので、役所は大変になった」「⑥政と官は表裏一体だから、官を斬るなら政も血を流す覚悟が求められる」等が書かれている。
 このうち、②の内閣府の担当領域の広さは全分野をカバーするため当然だが、子育て政策を担う部署が厚労省と文科省に分散していたのは、確かに幼児教育と保育の改革を妨げてきた。また、③の厚労省で法案作成が雑・データの扱いも粗末・法案の渋滞がひどいと言われる理由は、忙しすぎたからではなく、「結果ありきの調査をして結論に合うデータを作ってもよい」という感覚で法案作成をしてきたからであるため、組織再編をするより、考え方を変えるべきである。
 また、⑤についても、主権者が選んだ政治家が答弁するのは民主主義の当然であるため、矛盾なく速やかに説明できる資料を普段から作っておくのは仕事の一部であり、それで役所が大変になったというのなら、農業のIT化・機械化を見習うべきである。さらに、⑥の「官を斬るなら政も血を流せ」などという発言は、議論してよりよい結果に辿り着こうとする民主主義の論理ではなく、パワハラを含む暴力発言であり、主権者への連絡係であるメディアがこの程度にしか民主主義を理解しておらず人権意識が薄いのが、最も大きな問題なのである。
 最後に、④の委員会を役所別に設置しているのは、英国のように提出法案毎に委員会を作ればよいと思うが、首相の370時間の答弁は、モリカケ問題のように全体から見れば小さな金額で本質を外した質問の繰り返しによるものが多かった。これは野党が悪いというよりは、個人の人格攻撃を行うやりとりしかスクープできないメディアの質の悪さと怠慢が原因であり、メディアはこのやり方を「国民に合わせて、視聴率を上げるため」などと弁解しているが、一般国民の方がメディアの製作者よりも質が高いというのが、これまで見てきた私の感想だ。
 ただし、*7-1のように、石破派の斎藤農相が、総裁選で安倍首相を支持しなかったことによって辞任圧力を受けたのは、経産省出身の議員だからこそ農林水産品の輸出に関して農相としてよい仕事をしていたのでもったいないことだ。なお、*7-2の「カツカレー食い逃げ事件」は、いつもの冷えたまずいカレー(私がカレールーを使って作った具沢山の鶏カレーの方が、よほどヘルシーで美味しい程度)だったので投票を辞めたか、首相サイドには秘書が偵察に来ていたか、最後に調整に動いた人がいるのか、ともかくあのカレーでは誘因にならない(笑)。

*6-1:https://www.agrinews.co.jp/p45229.html (日本農業新聞 2018年9月19日) 北海道地震 ジャガイモ、カボチャ最盛期 収穫遅れ小麦播種も迫る パート不足深刻 厚真町
 北海道地震から10日以上たち、被災地では中断していた農作業が再開し始める一方、人手不足が深刻化している。ジャガイモなどの収穫が最盛期だった北海道厚真町では、農作業のパートタイマーも被災。水稲の収穫や、小麦の播種(はしゅ)も始まるため焦燥感が募る。自ら人を集め、急ピッチで作業を進める農家も出てきた。特に人手が必要なのは、ジャガイモとカボチャだ。ジャガイモは4人ほどで収穫機に乗り、機械が掘り上げた芋をコンテナに詰める。カボチャは手作業で収穫する。元々、人手不足だったが、より人手が集まりにくい状況だ。JAとまこまい広域によると、地震発生前日の5日時点での集荷量は、ジャガイモが予定量1700トンのうち3割、カボチャは1200トンの2割にとどまる。厚真町で水稲や畑作物を33ヘクタール栽培する山崎基憲さん(44)は、自宅や倉庫の片付けが一段落し、17日からジャガイモの収穫を再開した。3・5ヘクタールのうち残りは7割で、例年より1週間以上遅れているという。「今後、水稲や小麦もある。早くしないと雪が降る前に作業を終えられない」と気をもむ。山崎さんはボランティアチーム「石狩思いやりの心届け隊」にジャガイモの収穫を依頼。17~24日のうち6日間、2、3人が来る予定だ。同チーム代表の熊谷雅之さん(50)は「農作業支援は初めて。少しでも早く収穫が進むよう、これからも協力したい」と話す。

*6-2:https://www.agrinews.co.jp/p45230.html (日本農業新聞 2018年9月19日) 「スマート農業」始動 見て 触って 使って…便利さ実感 実証農場50カ所 農水省19年度
 農水省は2019年度から、ロボット技術や情報通信技術(ICT)を活用したスマート農業の普及に向けて、全国50カ所に「スマート実証農場」を整備して大規模な実証試験を始める。水稲や野菜、果樹、畜産など各品目で、1作通して複数のスマート農業技術を組み合わせ、省力効果や経営効果を確認。最適な技術体系を確立する。全国8カ所で説明会を開き、協力する生産者やメーカーを募る。
●協力農家を募集 8会場で説明会
 19年度予算概算要求に「スマート農業加速化実証プロジェクト」事業として50億円を盛り込んだ。事業は19年4月~21年3月の2年間。「スマート実証農場」は、生産者や農機メーカー、研究機関、JA、自治体などでつくるコンソーシアムが運営する。各品目で、さまざまなスマート農業技術を導入したときの生産データや経営データを蓄積・分析する。同省は稲作で使える技術として、ロボットトラクター、自動運転田植え機、自動水管理システム、ドローン(小型無人飛行機)を使った種子・薬剤散布などを挙げる。その他にも、施設園芸では統合環境制御システム、接ぎ木ロボット、収穫ロボットなど、果樹では人工知能(AI)によるかん水制御、自動草刈り機、作業者が身に着けるアシストスーツなどの導入を提案する。事業では、これらの技術の導入や改良に要する費用、人件費などを補助する。事業を管轄する同省農林水産技術会議事務局は「スマート農業普及のためには、技術体系の確立だけでなく、農家に実際に見て使ってもらうことが重要」(研究推進課)と説明。実証農場には、農家の視察や農機の試乗などを積極的に受け入れるよう求める。事業説明会は18日の広島、島根を皮切りに、北海道、岩手、東京、愛知、香川、熊本で開く。参加希望者が定員を上回った会場もあり、追加で開くことも検討している。

*6-3:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180919&ng=DGKKZO35367050U8A910C1MM8000 (日経新聞 2018年9月19日) 政と官 細る人財(3) 滞る国会改革、すり減る現場
 9月5日、自民党本部で開いた会合で省庁再々編の提言がまとまった。行政の効率化を議論する行政改革推進本部の総会だ。内閣府の担当領域の広さや、子育て政策を担う部署が分散していることなどが問題視された。
●苦肉の分割構想
 1府12省庁で最も批判を集め、再々編の目玉になったのは厚生労働省だ。甘利明本部長は「現状で問題ないと言った歴代厚労相はいない」と分割を提言した。記者団にも「国会の答弁回数が2000回を超え、法案作成が雑だ。データの扱いも粗末だ」と説明した。構想が動き始めたのは2017年夏だ。自民党の国会対策委員会が「厚労委員会の法案の渋滞がひどい。対応してほしい」と首相官邸に求めた。直前の17年通常国会では厚労省の労働基準法改正案が成立しなかった。既に17年秋の臨時国会では、同省の働き方改革法案を提出する予定が入っていた。臨時国会で2法案を成立させたいが「重要法案は1国会1本」が相場とされる。もっと迅速に法案を処理できないか――という訴えだ。国会の委員会は役所別に設置し、その所管法案を審議する。ある法案が審議入りしたらその採決まで別の法案は審議しない慣例がある。この2つのルールに従うと医療や年金、雇用などの重要政策が集中する厚労委では法案が渋滞する。官邸は水面下で検討チームをつくった。「厚労相の他に特命担当相を設ける」「副大臣に答弁させる」などの案があがった。党では厚労委を2つに分ける話もでた。だが国会の機能に直接踏み込む案は野党が反発し、実行は難しい。1年かけて出てきたのが厚労省分割案だ。厚労省を割れば政策の遂行能力が高まるほか、役所に応じて設置される厚労委も割れて法案審議の場が増える。官にメスを入れて政を変えるやり方だ。
●首相出席370時間
 学習院大教授の野中尚人氏は「国会の仕組みは55年体制から変わらない。世の変化についていけていない」と語る。日本と同様に議院内閣制をとる英国は提出法案ごとに委員会をつくるため、法案は渋滞しない。首相や閣僚も委員会での法案審議にほとんど出席することはない。16年、安倍晋三首相は国会に約370時間出席したがキャメロン首相の議会出席は約50時間。審議は進み、内閣は外交に時間を割ける。自民党もこうした国会改革に動く。日本は01年の省庁再編と同時に副大臣・政務官制度を導入した。英国がモデルだが役割は中途半端だ。経済産業官僚出身の斎藤健農相は「役所の局長の答弁がなくなり、ほとんど政治家が答弁している」と話す。「政治家が答弁するなら、官僚はより丁寧に準備しないといけない。役所は大変になった」と強調する。政治家の答弁を増やした結果、裏で支える官僚の負荷は予想以上に高まり現場がすり減る。官僚の仕事の精度が落ちた理由は政治の側にもある。5日の自民党行革本部では「行革をやるには、すさまじいことになる覚悟が必要だ」との声が出席議員から上がった。行革は政が官に斬り込むもの、とみられがちだ。だが政と官は表裏一体だ。官を斬るなら政も血を流す覚悟が求められる。

*7-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180920&ng=DGKKZO35518800Z10C18A9PP8000 (日経新聞 2018.9.20) 農相への辞任圧力発言で応酬 、首相陣営「どーんと構えて」 石破氏「ウソ言う人でない」
 自民党石破派の斎藤健農相が党総裁選で安倍晋三首相(総裁)を支持する国会議員から辞任圧力を受けたと発言した問題で、首相と石破茂元幹事長の両陣営が応酬を繰り広げている。首相陣営の選挙対策本部の甘利明事務総長は19日「斎藤さんはどーんと構えて、それがどうしたというぐらいでやったほうが政治家としての格が上がる」と述べた。石破氏は「斎藤氏はウソを言う人ではない。昔はそういうことはよくあった、何が悪いんだという言い方は絶対間違っている」と強調した。斎藤氏は14日の千葉市での会合で、首相を支持する議員から「石破氏を応援するなら農相の辞表を書いてからやれと圧力を受けた」と発言した。首相は17日のテレビ番組で「陣営に聞いたらみんな『そんなことがあるはずがない』と怒っていた。そういう人がいるなら名前を言ってもらいたい」と反論した。

*7-2:https://digital.asahi.com/articles/ASL9N7WH2L9NUTFK03Q.html?iref=comtop_8_02(朝日新聞2018年9月21日)投票前のカツカレー「4人が食い逃げ」 安倍陣営嘆く
 カツカレーを食い逃げしたのはだれだ?――。自民党総裁選で安倍晋三首相(党総裁)の陣営が投開票直前に振る舞ったカツカレーを食べながら、実際に首相には投票しなかった議員がいるのではないか。首相陣営がこんな話題で持ちきりになっている。首相陣営は20日昼、東京都内のホテルで「必勝出陣の会」を開催。首相も出席して結束を確認した。首相を支持する衆参議員用に験担ぎのカツカレーが333食分振る舞われ、完食された。業界団体関係者ら議員以外の出席者用には別途、カレーが準備されていたという。ところが、実際に首相が得た議員票は329票。少なくとも4人がカレーを食べながら首相には投票しなかった計算になる。陣営幹部は嘆く。「カレーを食べて首相に投票しなかった議員がいる。一体だれなんだ」

<激甚災害の指定と復興>
PS(2018年9月20日追加): *8-1のように、北海道地震の道路・橋などの土木インフラの被害額は少なくとも1000億円に上るそうだが、この規模なら、*8-2の激甚災害の指定を受けることがができる。激甚災害の指定を受けると、被災した自治体が行う復旧事業に対する国からの補助率が、①道路や堤防などインフラの復旧事業は8割から9割程度 ②農業施設の復旧事業は9割程度 と上がり、中小企業も経営再建の融資を受けやすくなる。
 しかし、この制度の欠点は、復旧に重点を置くため、津波が来たり、天井川の傍だったりする危険な地域にも住宅地を再建して、「賽の河原の石積み」という大きな無駄遣いの繰り返しを促してしまうことだ。そのため、次の災害を予防する観点から、復旧ではなく、適切な都市計画に基づいた復興に誘導するよう、激甚災害の指定を改正するのがよいと考える。

*8-1:http://qbiz.jp/article/141077/1/ (西日本新聞 2018年9月20日) 北海道地震、土木の被害1000億円 道路や橋など、損壊多発
 北海道の地震で、道路や橋など土木インフラの被害額が少なくとも1千億円に上ることが20日、道への取材で分かった。被害が大きかった地域では調査が終わっておらず、さらに額は膨らむ見通しだ。土砂崩れで36人が死亡した厚真町などで道路の損壊が多発し、札幌市でも道路が陥没した。河川への土砂流入などの被害もあった。これとは別に、道は農林水産業の被害額が推計約397億円に上ったとしている。土砂崩れによる林や農地の被害が大きかった。観光分野では宿泊予約のキャンセルが延べ94万2千人に上り、全体の損失額を推計約292億円としていた。加えて、地震後の停電や節電による製造業への影響も見込まれる。高橋はるみ知事は20日の道議会本会議で、土木や農林など直接的な被害額だけで約1500億円に上ったと答弁。復旧に向けて「産業への影響の実態を、幅広く把握することが重要だ」と述べた。

*8-2:http://www.bousai.go.jp/kohou/oshirase/h12/120324/120324.html (内閣府) 「激甚災害指定基準」、「局地激甚災害指定基準」及び「激甚災害に対処するための特別の財政援助等に関する法律施行令」の一部改正について
1 改正の経緯
 激甚災害制度は、国民経済に著しい影響を与えるような激甚な災害が発生した場合に、公共土木施設や農地等の災害復旧に必要な費用の負担に関して国庫補助の嵩上げを行い、地方公共団体の財政負担を軽減することなどを目的として昭和37年に創設されました。公共土木施設災害復旧事業等に係る激甚災害の指定(全国的規模の本激の指定)については、制度発足当初は毎年1~2件指定されていましたが、市町村単位で行われるいわゆる「局激」を除けば、昭和59年以降の指定は阪神・淡路大震災の1件のみとなっています。このため、近年の地方公共団体における財政の逼迫状況等を踏まえ、被災した団体の財政負担の緩和を図るとともに、被災地域の円滑かつ早期の復旧を図ることを目的として、公共土木施設等に激甚な被害が発生した災害については、これを適切に激甚災害に指定できるよう、「激甚災害指定基準」(昭和37年中央防災会議決定)の一部、「局地激甚災害指定基準」(昭和43年中央防災会議決定)の一部及び「激甚災害に対処するための特別の財政援助等に関する法律施行令」(昭和37年政令第403号。以下「施行令」といいます。)の一部を改正しました。
2 激甚災害指定基準(公共土木施設関係)
 激甚災害の指定には、
  ① 全国的に大きな被害をもたらした災害を指定する場合(いわゆる本激)と
  ② 局地的な災害によって大きな復旧費用が必要になった市町村を指定する場合
    (いわゆる局激)の二つがあり、さらに①の本激には、
    A. 全国的に大規模な災害が生じた場合の基準(本激A基準)と
    B. Aの災害ほど大規模でなくとも、特定の都道府県の区域に大きな被害が
      もたらされた場合の基準(本激B基準)があります。
3 改正の概要
1)本激A基準
 本激Aの指定基準は、全国の査定見込額が全国の地方公共団体の標準税収入の一定割合を超えることを要件としていますが、この割合を大幅に引き下げることにしました。平成11年度の標準税収入(約30兆円)をもとに計算すれば、従来は約1兆2,000億円でしたが、改正後は約1,500億円を超える被害があれば本激の指定が可能になります。
     4%      →   0.5%
  約1兆2,000億円      約1,500億円
2)本激B基準
 本激B基準は、次の2つの要件を満たす必要があります。第1の要件は、全国の査定見込額が全国の地方公共団体の標準税収入の一定割合を超えることですが、この割合についても大幅に引き下げることとしました。平成11年度の標準税収入(約30兆円)をもとに計算すれば、従来は約3,600億円でしたが、改正後は約600億円を超える被害があれば、これを満たすことになります。
    1.2%      →   0.2%
  約3,600億円         約600億円
第2の要件は、次のいずれかを満たすことですが、これも大幅に引き下げることとしました。
  <中略>
4 改正日及び適用期日
・激甚災害指定基準及び局地激甚災害指定基準の改正
  平成12年3月24日 中央防災会議決定。
・激甚災害に対処するための特別の財政援助等に関する法律施行令の一部を改正する政令
  平成12年3月24日 閣議決定。
  平成12年3月29日 公布、施行。
当該改正基準等は、平成12年1月1日以後に発生した災害から適用されます。

<教育を疎かにすると、こうなるということ>
PS(2018/9/22追加): *9-1のように、ヨーロッパでは、鉄道車両も環境シフトして独シーメンスや仏アルストムが蓄電池駆動や水素燃料の新型車両を投入している。にもかかわらず、(私が提案して)最初にEVや太陽光発電を開発した筈の日本では、*9-2のように、未だに①節電要請 ②太陽光発電は不安定だから火力発電の更新が不可欠 ③電力自由化と安定供給の両立を立ち止まって点検すべき ④電力の安定供給には電源の最適な組み合わせと適切な設備更新が欠かせない などと言っている。
 このうち①については、LEDや断熱材の使用等でヒトに不便な思いをさせずに節電するのが文明だ。また、②については、火力や原子力で熱を発生させなければエネルギーの安定供給ができないと考えている阿保さが情けない。さらに、③については、電力会社が地域独占していたから競争がなくいつまでも進歩しなかったので、市場経済の中で電力を自由化し、複数の電力会社が切磋琢磨して良いサービスを工夫することこそが、安い電力を安全に安定供給するためのKeyである。さらに、④については、「電源の最適な組み合わせ」とは、合理性のない発電方法も含めて少しずつ何でもやるように人為的に決めるものだと思っているところに呆れる。
 そのため、日経新聞の記者は、経済学や独禁法も知らず、原発や火力発電が環境に与える影響も考慮できないのかと、記者になる人の知性の劣化に驚かされる。従って、高校卒業までは、文系もしっかり理系の勉強をする教育システムにしておかなければならず、スポーツばかりやって単純なルールを(不合理でも)守ることしかできない人間を作ってはならない。身体だけ強くても頭で考えられなければ、最初に機械やAIにとって代わられる人材になるからだ。


 独、seamens               トヨタ         中国     
 燃料電池電車    燃料電池船    燃料電池トラック     蓄電池特急

*9-1:https://www.nikkei.com/article/DGKKZO35640080R20C18A9EA6000/ (日経新聞2018/9/22)鉄道車両も環境シフト 独シーメンスや仏アルストム 蓄電池駆動や水素燃料
 自動車に続き鉄道車両でも環境負荷を減らす動きが広がってきた。独シーメンスは2019年に蓄電池で駆動する新型車両を投入する。仏アルストムは燃料電池で動く鉄道車両が営業運転を始めた。もともと環境に優しいとされる鉄道車両だが、欧州ではディーゼルエンジンで動く車両も多く、新技術を生かした環境対応が進む。ドイツ・ベルリンで21日まで開催した世界最大の鉄道ショー「イノトランス」。2年に1度のショーは、今後の鉄道業界の動向を占ううえで、関係者が最も関心を寄せる展示会だ。18年の今回、名だたる大手メーカーに共通したのはデジタル化と環境配慮の2本柱だ。独シーメンスはオーストリア連邦鉄道と共同で、蓄電池で駆動する試作車両「デジロML シティジェットエコ」を展示した。架線を通じ電気を受け取れる区間で列車の蓄電池を充電し、架線がない非電化区間では蓄電池から電気を取り出し走行する。ディーゼル駆動の旅客車両に比べて二酸化炭素(CO2)の排出量を最大50%削減できる。ディーゼルエンジン特有の騒音もない。19年後半に営業運転を始める計画だという。18年内に独シーメンスと鉄道部門で事業統合する予定の仏アルストムも環境対応車を投入。燃料電池で走る世界初の「水素電車」が営業運転を始めたと発表した。車両の上に燃料電池と水素タンクを備える。燃料電池で水素と空気中の酸素を反応させて発電し、モーターを回して走る。世界最大手の中国中車は素材に炭素繊維強化プラスチック(CFRP)を使った地下鉄向けのコンセプト車両を出展した。車体が軽くなり、エネルギー効率は13%向上するという。日本勢では東芝インフラシステムズが、鉄道車両向けのリチウムイオン電池として世界で初めて欧州規格を取得した製品を披露した。イノトランスの開幕イベントでは仏アルストムのアンリ・プパール=ラファルジュ最高経営責任者(CEO)が「もはや最高速度などは誰も口にしない。どれほどクリーンな電車を出せるかが重要だ」と強調した。広大な欧州大陸では郊外などで非電化路線が多いが、非電化路線はディーゼル機関車などが欠かせなかった。欧州鉄道産業連盟(UNIFE)は18日、世界の鉄道ビジネスが21~23年平均で1920億ユーロ(約25兆円)と、15~17年平均に比べ18%程度拡大すると発表した。「持続可能性のある移動手段としての利点が鉄道市場の成長に寄与する」と指摘した。自動車など他の交通システムと同様に、鉄道車両も環境性能が競争軸の一つになってきた。

*9-2:https://www.nikkei.com/article/DGKKZO35667860R20C18A9EA1000/ (日経新聞社説 2018/9/22) 北海道停電が示す安定供給の課題
 北海道電力は地震の影響で止まっていた苫東厚真火力発電所(厚真町)の1号機を再稼働させた。これに伴い、家庭や企業に求めていた1割の節電要請を解除した。電力需要が増える冬を控え、北海道の人々もまずは、ほっとしただろう。とはいえ、電源をかき集めた綱渡りの状態は変わらない。気を緩めるわけにはいかない。重要なのはなぜ、北海道全域が停電する「ブラックアウト」が起きたのか。その検証を急ぐことだ。そこから日本全体の安定供給への課題が見えてくるはずだ。
●自由化との両立点検を
 地震発生時、310万キロワットの需要のほぼ半分を、苫東厚真発電所が供給していた。一つの発電所に極端に集中した理由を考えるには、北海道電が置かれた経営の状況に目を向ける必要がある。北海道電の火力発電所は老朽化が進む。苫東厚真の4号機が2002年に稼働して以降、新設はない。最大の出力を持つ泊原子力発電所(泊村)は再稼働の前提となる安全審査の途中だ。泊原発の長期停止に伴い、北海道電は2度、値上げした。北海道電の電気料金は、沖縄電力を除く大手電力9社の中で最も高い。16年の電力小売りの全面自由化によって消費者は電力会社を選べるようになった。新規参入する事業者から見れば、電気料金の高い北海道は攻めどころだ。北海道では1割の家庭が北海道電から新電力に契約を変えた。この割合は東京電力や関西電力に次いで高い。中規模工場や商業施設向けの「高圧」と呼ぶ契約では約3割の顧客を失った。古くて小さな発電所は発電効率が悪い。北海道電は規模が大きく、コストが安い苫東厚真を最大限、活用せざるを得なかったのではないか。そんな無理が大停電であらわになったとすれば、電力自由化と安定供給の両立を立ち止まって点検すべきだろう。電力の安定供給には電源の最適な組み合わせと適切な設備更新が欠かせない。北海道で起きたことが、他の地域で起こらないとは言い切れない。電力システム改革の仕上げとして、20年には電力会社の発電部門と送電部門の経営を分ける発送電分離が実施される。分離後の供給責任を負うのは送配電会社だ。発電会社は新規参入する事業者を含め、自らの利益最大化のために動く。そうなると、投資が進まなかったり、特定の地域や発電方式に偏ったりする可能性がある。誰が日本全体の最適な供給のバランスを考え、長期的な視野で整備を促すのか。今回の大停電を受けて、その仕組みを再点検することが重要だ。電力改革の一環で、全国の送電網を一元管理するために設立された電力広域的運営推進機関の役割と責任は一段と大きくなるだろう。太陽光や風力など再生可能エネルギーの増加も、安定供給に課題を突きつけている。適地に恵まれる北海道の再エネ発電能力は約360万キロワット。そのうち170万キロワットを占める太陽光や風力は、停電からの復旧にあたり、送電網につながっていても全量を供給力として計算できなかった。時間や天候で発電量が変動する太陽光や風力は、過不足を補う別の電源が必要になるからだ。
●火力発電の更新不可欠
 平時でも同じ問題が立ちふさがる。夕刻になり日が陰ると太陽光発電の量は急に減る一方、夕食の準備や家路につく人々の電力消費が増える。需給バランスが崩れれば停電の引き金になりかねない。急減する太陽光を短時間で補う火力発電所や蓄電池が必要になる。温暖化ガスを出さない再エネは最大限伸ばしたい。そのためにも火力発電所の適切な更新が必要だが、太陽光の補完役だけでは稼働率が低く投資を回収できない。火力の更新投資を長期で促す制度を整えなければならない。太陽光や風力の適地は基幹送電線から離れた場所にあることも多い。基幹網につなげる送電線をつくるには多額の投資が必要だが、出力が変わる太陽光や風力は利用率が低い。結果的に消費者に過度の負担を強いる送電線の増強には慎重であるべきだ。北海道地震では本州からの電力融通も限られた。全国を10地域に分ける日本の電力供給体制の限界といえる。地域を越えて電力を効率的にやりとりする体制に変えていく必要がある。長期的には大型発電所の電気を送電線で運ぶ現行の仕組みから、地域ごとに電気をつくり、その場で使う分散電源へ電力インフラを再構築する発想も大切だろう。

| 経済・雇用::2018.1~2018.11 | 12:35 PM | comments (x) | trackback (x) |
2018.8.21 過疎地を含む地方を走るJRとその収益構造について (2018年8月22、24、25、26日に追加あり)
 
 北海道のジャガイモ畑   同、羊の放牧    同、乳牛の放牧  同、豚と山羊の放牧


  昭和新山   知床の紅葉     冬の摩周湖    釧路湿原   函館の朝市

(図の説明:北海道は、豊かな自然と食に恵まれ、再エネや観光資源にも事欠かない筈である)

(1)JR北海道の現状と解決策
1)JR北海道の改善策について
 石井国交大臣は、2018年7月27日、*1-1、*1-2のように、2019~20年度に400億円台の財政支援を実施することを決め、監督命令を出して経営改善策の着実な実行を指示し、北海道新幹線の札幌延伸後の2031年度中の経営自立を目指して、①外国人客を誘致するための観光列車の充実 ②不動産業など鉄道以外の部門の強化による収益増加と不採算路線のバス転換などのコスト削減を徹底するよう求めたそうだ。

 記事による改善策を見る限り、JR北海道の改善策はJR九州が行って成果を上げてきた内容と似ている。ただし、JR北海道は民営化していないため、経営に国交省が口を出し、営業センスのない選択をする場合があるのが、他のJRと異なる。国交省が営業センスのない事例は、国際線の成田と国内線の羽田を離れた場所に造って乗り換えを不便にしたり、羽田に行くのに浜松町からモノレールに乗らなければならないような不便な連結にしたりして、空港の利便性を損なう設計をしていることである。

 そのため、私は、北海道の自然や食を背景に持つJR北海道は、本当は素晴らしい潜在力を持っており、早々に民営化して、次第に持ち株会社が鉄道子会社・旅行子会社・運輸子会社・不動産子会社・送電子会社などを所有する形にした方がよいと考える。また、空港には、新幹線と在来線の両方か、少なくとも在来線が乗り入れるべきだ。

2)再エネと送電網
 大手電力は、*1-3のように、不当な顧客の囲い込みをしているだけでなく、*1-4のように、送電線の容量不足を理由に、再エネで発電された電力の買取制限を行って、再エネの普及を遅らせている。

 そのため、*1-4の送電網整備には、鉄道会社の敷地に鉄道会社が送電線を敷設して送電料をもらう仕組みを取り入れるのがよいと考える。何故なら、既にあるインフラを利用して最も安価に送電線を敷設でき、農地で発電された電力を消費地に送って送電料をもらい、廃線にする鉄道を最小にすることができるからだ。また、環境や景観に注意しながらも、農地で発電できれば農業補助金を減らすことが可能だ。

(2)JR九州について
 JR九州の場合は、*2-1、*2-2のように、東証1部に上場でき、「不動産事業」が快走を演出したそうだ。JR九州は、首都圏からはJR北海道と同じくらいの距離だが、鉄道事業を行っているメリットを活かし、運輸サービス・駅ビル・不動産などの事業を行って、現在のニーズに応えているのが成功の秘訣だ。

 そのため、今後、送電事業も行うとすれば、「JR九州」という社名も変更した方が利害関係者にわかりやすいと思われる。

(3)地方の新幹線について
 新幹線については、JR北海道はフル規格でスムーズに進んでいるため、*3のJR九州のようなフル規格化に関する議論はなく、簡単に見える。

 しかし、並行在来線を廃止すると確かに生活の足が損なわれるため、在来線がある場所に、そのまま在来線を走らせるか、私鉄もしくはバスを走らせるなどの代替案が必要になる。

<JR北海道について>
*1-1:http://qbiz.jp/article/138246/1/ (西日本新聞 2018年7月27日) JR北海道に経営改善指示 国交相が監督命令
 石井啓一国土交通相は27日、JR北海道にJR会社法に基づく監督命令を出し、経営改善策の着実な実行を指示した。北海道新幹線の札幌延伸後の2031年度中の経営自立を目指し、収益増加とコスト削減を徹底するよう求めた。JR北海道の島田修社長は、国交省で藤井直樹鉄道局長から命令書を受け取り「重く受け止め、不退転の決意で経営改善に取り組む」と述べた。監督命令では、19年度から30年度までの長期計画を定め、外国人客を誘致するための観光列車の充実や、不動産業など鉄道以外の部門の強化を求めた。国交省が計画の進み具合や効果を3カ月ごとに検証し、結果を公表する。同社への監督命令は、レール検査数値の改ざん問題などを受けて出した14年1月に続き2回目。経営改善の取り組みを怠った場合、取締役らに100万円以下の過料が科される。

*1-2:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO34295450X10C18A8ML0000/ (日経新聞 2018/8/20) JR北に国が問う覚悟、長期援助拒み2年で成果迫る
 経営再建中のJR北海道に対し国土交通省は7月、2019~20年度に400億円台の財政支援を実施すると表明した。期限を設けてさらに身を切る改革を求め、同社への監視を強める新たな体制を敷く。過去に何度も国から支援を受け、待ったなしの状況にあるJR北は、この2年間で収益改善への覚悟が問われる。改革の行方は地域の足に影を落とす。「経営自立への取り組みを着実に進めることを求められたのを重く受け止める。不退転の覚悟で取り組む」。JR北の島田修社長は7月27日、国土交通省での記者会見で語った。これに先立ち、同省は同社にとって2度目となる行政処分「監督命令」を発令。事実上、経営を監視下に置いた。国が異例の2度目の監督命令を出したのは、度重なる支援に関わらず、一向に経営が改善しない体質にしびれを切らしたからだ。例えば直近では16年度から設備投資や修繕のために計1200億円を拠出。にもかかわらず同社の18年3月期の連結営業損益は過去最大の416億円の営業赤字と業績は悪化している。JR北は北海道新幹線の札幌延伸を予定する30年度まで12年間の財政支援を求めていた。新幹線が札幌までつながれば利用が拡大し収益に貢献するとの想定に基づく。国はこれを拒み、支援をまず20年度までとした。JR北が求める21年度以降の支援には関連法の改正も必要で、「国民の理解を得られるか」(同省幹部)が壁となる。そこで国は2年間と期限を区切り、JR北に「目に見える成果」(石井啓一国交相)を上げるよう求めた。たとえ再び税金を投入するとしても、広く納得を得られる実績が不可欠だからだ。島田社長は「改善のプロセスを確認してもらえるものを出すことが大切だ」とし、財政支援を踏まえた収支見通しや経営自立への行程表を早期に示す考え。国交省はこれらが「絵に描いた餅になってはいけない」とし、経営改善への具体策も求めている。国交省の求める「目に見える成果」とは何か。収益改善にはコスト削減と増収策が条件となる。コスト削減の最たるものが不採算路線の廃線だ。JR北は列車を走らせるだけで年間約160億円もの赤字を生む13区間を抱えている。国交省は特に利用が少ない5区間のバスへの転換を求める。その道筋を付けるため、沿線自治体などと協議を急ぐ必要がある。増収策では遊休地を生かした不動産事業などで稼ぐ力を付けつつ、急増する訪日客をどう鉄道利用に結び付けるかという視点が重要になる。約20年ぶりとなる運賃引き上げも視野に入れる。地域を巻き込んだ利用促進策も欠かせない。道東の釧網線(東釧路―網走)では、高速バス大手のウィラー(大阪市)が9月から同区間の鉄道と沿線駅を発着するバスが乗り放題になる乗車券を販売する。根室線(釧路―根室)では根室市がふるさと納税サイト運営会社と鉄路存続へ寄付金を募り始めた。だが、こうした試みは限定的だ。地元治体の主体性も欠かせない。国交省は地域との連携策として、区間ごとの利用目標の設定を例に挙げる。地域で一定の時期を定め、輸送人員や駅の利用者を何人増やすかなどの数値目標を掲げ、検証も交えながら集客を進めるというもの。豪雨災害からの全線復旧を目指す福島県の只見線は同様の取り組みを始めた。これら「宿題」と引き換えに得た国の支援を、JR北は設備増強などに生かす。不採算路線のうち維持を検討する8区間では、地元自治体が国と同水準の費用を負う条件で施設や車両を改修。道内外との物流を支えるJR貨物が走行する区間の設備修繕も進める。支援が一時の赤字穴埋めに終わらぬよう、国交省は四半期ごとに進捗を検証するなど目を光らせる。「2年間で目に見える成果を出す」。島田社長は国交省の監督命令発令後の記者会見でこう繰り返した。JR北は有言実行を迫られている。
■廃線対象の沿線自治体、対応に濃淡
 JR北海道が利用者の少なさから「単独では維持困難」とする留萌線の深川―留萌間にある石狩沼田駅。昼間に降りるのは地元の高校生と高齢住民の数人だけで、夕方には人気もなくなる。沼田町の玄関口としては寂しい光景だ。無人の駅舎内では「駅の利用実績を確保することが必要」と張り紙が訴えていた。同区間を含む5区間が廃線によるバス転換を迫られているが、沿線自治体との協議には濃淡がある。石勝線夕張支線(新夕張―夕張)は夕張市が2019年4月の廃線に合意。札沼線(北海道医療大学―新十津川)も沿線自治体が廃線容認へ調整を進める。日高線(鵡川―様似)は自治体側が道路も線路も走れる「デュアル・モード・ビークル(DMV)」など新交通の導入を断念し、バス転換も選択肢とした。一方で留萌線(深川―留萌)は路線維持を求める沿線4市町が「JR側からの説明を待つ」として受け身の姿勢。根室線(富良野―新得)は、16年夏の台風被害で東鹿越―新得間が不通となっていることもあり、早期復旧と路線維持をめざす住民運動が展開されている。いずれもJR北と直接協議に進んでいない。ただ、JR北への財政支援に際し、国土交通省は不採算路線のバス転換を推し進めるよう促した。留萌市の中西俊司市長も「現時点での国の姿勢と重く受け止める」と話す。赤字路線への国の直接的な支援が望み薄となった今、道内自治体も地域交通をどう守っていくかが問われている。

*1-3:http://qbiz.jp/article/139362/1/ (西日本新聞 2018年8月17日) 電力の不当な顧客囲い込み規制へ 大手と新電力の競争促進、経産省
 経済産業省が大手電力による不当な顧客囲い込みの規制に乗り出すことが17日、分かった。新電力に契約を切り替えようとする情報を利用し、安い料金プランを提示して引き留める「取り戻し営業」が対象。情報の「目的外利用」として電気事業法上の問題行為に位置付ける。大手と新電力の健全な競争促進に向け、年内にも指針案の取りまとめを目指す。電力小売りの自由化により、大手と新電力の競争は激化している。企業は家庭と比べて大量の電力を使うため、電力会社にとって収益への寄与が大きい。世耕弘成経産相は「できるだけ早く公正な競争条件を整えたい」と話している。取り戻し営業が問題視されていることについて大手電力は「新電力側のうがった見方だ。切り替えの情報を転用しないように、社内で契約管理と営業の部門で情報共有できない仕組みになっている」と反発している。新電力は顧客から契約先の切り替えの申し込みがあると、電力広域的運営推進機関(広域機関、東京)のシステムを使い、顧客に代わって大手電力に対し契約解除を取り次ぐのが一般的だ。大手電力は広域機関から連絡を受け、契約解除の手続きを行う。ただ機器工事のため新電力が供給を始めるまで最大2カ月程度の時間がかかる。その間に大手が大幅な割安料金を提示すれば、顧客に切り替えを思いとどまらせ、契約をつなぎとめることも可能だ。経産省が7月に開いた有識者会議では、大手電力による取り戻し営業の問題が取り上げられた。有識者の委員は割安な料金の提示は「不当廉売」に当たる可能性があると指摘し、「独禁法と(電力を適正に取引するよう求めている)電気事業法の二重の面で問題になる」と批判した。

*1-4:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180508&ng=DGKKZO30155150X00C18A5PP8000 (日経新聞 2018年5月8日) 送電網整備へ「財政支援を」 自民委が再生エネ提言案
 自民党の再生可能エネルギー普及拡大委員会(委員長・片山さつき参院議員)は、太陽光や風力など再生エネの普及に向け送電網の整備に財政支援を求める提言案をまとめた。送電網不足が導入を阻んでいるとして、財政投融資などの活用で整備を促すよう求める。8日に開く同委員会の会合で示し、政府と党執行部に申し入れる。電力大手が持つ送電網の空き容量が減り、再生エネの発電事業者が電気を送れない事態が起きている。

<JR九州の場合>
*2-1:https://www.nikkei.com/article/DGXLASDZ25H80_V21C16A0000000/ (日経新聞 2016/10/25 ) JR九州上場、快走演出した「不動産事業」
 九州旅客鉄道(JR九州)が25日、東京証券取引所第1部に上場した。朝方から買い注文が膨らみ、取引開始から30分ほどたって付けた初値は3100円と、売り出し価格(公開価格、2600円)を19%上回る水準。ひとまずは順調な「走り出し」といえそうだが、人気の背景を探ると、少し気掛かりな点も浮かび上がる。
■営業利益でみると「不動産会社」
 「現在は運輸サービス事業と駅ビル・不動産事業の利益がそれぞれ全体の4割。しばらくの間はこの構成で成長を目指す」。青柳俊彦社長は午前中、経済専門チャンネルの番組に出演し、成長のけん引役として不動産事業への期待感を隠さなかった。JR九州は社名の通り、鉄道事業が主力ではあるが、実は不動産事業が孝行息子。九州新幹線をはじめとする鉄道事業は2017年3月期にひとまず黒字化する計画だが、営業利益でみると連結全体の4割にすぎない。残る6割のうち、4割分を稼ぐのが駅ビル不動産事業。営業利益でみれば、鉄道事業と同じ規模なのだ。JR九州はJR博多駅の駅ビル「JR博多シティ」(福岡市)や4月に開業したオフィスビル「JRJP博多ビル」(同)など駅前の不動産を活用した商業施設や賃貸用不動産を運営しており、今後も駅ビルや駅ナカを開発していく方針を示す。保有不動産の収益力を高めるというストーリーは、東日本旅客鉄道(JR東日本)や東海旅客鉄道(JR東海)が歩んできた成長路線と重なる。初値時点でのJR九州の時価総額は4960億円と1兆~3兆円に達する、他のJR3社と比べると小粒だが、割安なJR九州に投資する理由は十分にある。
■不動産マネーの「逃げ場」にも
 完全民営化で経営の自由度が高まれば、成長のけん引役である駅ビル運営で大規模投資や他社との連携などに踏み切りやすくなる。楽天証券の窪田真之氏も、「高収益の駅ビル不動産事業は、これからさらに利益を拡大する余地がある」と指摘する。JR九州株の初値は、不動産事業への「期待料込み」ともいえる。実際、日本株の運用担当者の間では、「国内外の機関投資家がJR九州の不動産事業に注目して投資しようという動きも出ていた」という。そして、もう一つのJR九州にとっての追い風も吹いたのかもしれない。日本国内の不動産に向かっていた投資マネーの変調だ。ここ数年来の不動産価格の高騰で、投資額に見合う利回りを得にくくなっており、今年1~9月の累計で海外勢や国内の事業法人は不動産をこぞって売り越した。行き場を失った不動産への投資資金が向かいやすいのは、流動性が高く、一時期に比べて過熱感が薄れた不動産投資信託(REIT)や株式。つまり、巨大な投資マネーの流れの中で、JR九州株が資金の「一時的な逃げ場」になったのかもしれない。
■初値は「追い風参考記録」か
 もっとも、期待通りの水準だった初値が「追い風参考記録」になる恐れもある。JR九州が自社で保有する不動産は九州地方が中心で、東京や東海地域の一等地に資産を持つJR東日本やJR東海とは異なるからだ。不動産市況の過熱感が想定外に強まれば、新規の案件の取得や開発にかかるコストが膨らむ。今後、九州より不動産市場が大きな首都圏、成長著しいアジア地域で不動産ビジネスを拡大したとしても、リスクは消えない。25日のJR九州株は初値に比べて178円(5.7%)安い2922円で午前の取引を終えた。シナリオ通りに不動産事業を伸ばし、JR東日本など旧国鉄民営化の成功事例に加われるだろうか。

*2-2:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO30336810Q8A510C1LX0000/?n_cid=SPTMG002 (西日本新聞 2018/5/10) 九州が最高益 前期最終、鉄道の採算性なお課題
 JR九州が10日発表した2018年3月期の連結決算は、純利益が前の期比13%増の504億円と過去最高だった。運輸サービスや不動産などほぼ全ての部門で営業増益だった。主力の鉄道事業は2期連続の黒字を確保したが、16年3月期に実施した費用圧縮の会計処理の効果が大きい。処理前の基準では20億円の赤字に相当し鉄道事業の採算性はなお課題だ。売上高は8%増の4133億円だった。訪日客の増加などに伴う新幹線の旅客増や、熊本地震直後の減少の反動で鉄道収入が増えた。キャタピラー九州の連結子会社化も寄与した。営業損益では運輸サービス事業が14%増の292億円。不動産賃貸収入が増えた駅ビル・不動産業も232億円と2%増えた。営業利益、経常利益ともに5期連続で過去最高を更新した。ただ主力の鉄道事業の採算性にはなお課題が残る。16年3月期に5268億円分の固定資産を減損処理し、減価償却費を大幅に減らした。だが鉄道は毎年の安全投資が欠かせず、再び減価償却費が膨らむのは避けがたい。20年3月期からは国から受けていた固定資産税の減免措置もなくなり、さらに利益を圧迫する。青柳俊彦社長は「ローカル線の赤字はむしろ拡大している」と強調した。九州北部豪雨の影響で一部不通となっている日田彦山線では、復旧費用の算出や負担方法に関する自治体との協議が続いている。業績好調を受けJRの負担を求める自治体側の圧力が強まる可能性もあり、慎重な姿勢をみせた。
          ◇
 JR九州は10日、車両整備や駅構内業務などを手掛ける子会社3社を再編すると発表した。7月1日付で、JR九州メンテナンス(福岡市)が車両整備やビル設備管理部門を分割し、ケイ・エス・ケイ(同)が承継。社名は「JR九州エンジニアリング」に変更する。様々な駅業務を担うJR九州鉄道営業(同)をJR九州メンテナンスが吸収合併し、社名は「JR九州サービスサポート」とする。

<地方の新幹線>
*3:http://qbiz.jp/article/139384/1/ (西日本新聞 2018年8月18日) フル規格化、佐賀県市長会は要望見送り 新幹線西九州ルート
 佐賀県市長会(会長・秀島敏行佐賀市長)は17日、嬉野市で会合を開き、九州市長会(10月)に提案する事項などを協議した。武雄、嬉野両市から出されていた九州新幹線西九州(長崎)ルートの全線フル規格化を求める要望は見送った。会合の後、嬉野温泉駅(仮称)の建設現場を市長会として初めて見学した。会合では、新幹線を巡る各市の温度差が浮き彫りになった。橋本康志鳥栖市長は「フル規格になれば、長崎線全体が並行在来線となり、生活の足としての機能が損なわれる恐れがある。整備ルートも未定で、いつできるか不透明だ」と指摘。秀島市長が「市長会として見解をまとめられる状況にない」と述べた。武雄市の小松政市長は「引き続き議論する場を設けてほしい」と呼び掛けた。会合は、山口祥義知事に提出する要望書の取りまとめが主な議題で、JR九州の交通系ICカードの導入促進やスクールカウンセラーによる相談体制充実などを求める計26項目を決めた。30日に提出する。駅建設現場の視察では、市長たちは高架橋へ上り、鉄道・運輸機構の職員から土木工事が終わり、レールを敷設し、駅舎建設に向け着手する段階との説明を受けた。嬉野市の村上大祐市長は「実際に現場を見てもらい、新幹線について考えてもらうきっかけになったのでは」と話した。

<農業の進展と機械化・大規模化>
PS(2018年8月22、24日追加):農業及びそれに付随する食品産業は、地方の重要な産業だ。しかし、戦後、第一次産業が軽視されてきたため、我が国の食料自給率は減少の一途を辿り、他の先進国に著しく見劣りする状態になった。また、農業従事者の数は減り、他産業以上に高齢化しているが、農業を大規模化・機械化して担い手の所得を増やすためには、農業従事者の一定の減少は必要だった。
 そして、現在、*4-1のように、GPSに導かれて大規模農地を自動操舵するトラクターが普及期に入って省力化が期待されている。また、*4-2のように、新規就農者がAIで熟練農業者の技術を短期間で身に付ける学習支援システムも普及し始めた。そして、*4-3のように、農業の競争力強化のため、気象や土壌などの関連情報を集積したデータベースを作って開放する方針だそうで、これはいろいろな使い方ができそうだ。
 さらに、*4-4のように、農産物の輸出額は過去最高を更新し続けているが、相手のニーズに合ったものを作れば、さらに輸出を伸ばすことも可能だ。例えば、中国に中華料理の原材料や中食用加工品、EUに短時間でゆでられるスパゲッティやオリーブオイルなどである。中華料理の原材料で既に当たったものは、干ナマコと干クラゲだ。
 また、*4-5のように、農水省が米粉の本格輸出に向けて欧米で市場調査に乗り出したそうで、市場調査して輸出を図るのはよいものの、「水田があるから米を作り、グルテンを含まない小麦の代替品として米を売る」というのでは、考え方が逆なので需要に限界がある。つまり、「①小麦粉よりよい特性を持っているから米粉を売る(例:米粉のパンは固くならず、和風のおかずをサンドしても合う)」「②米でしかできないものを作って売る(例:酒・団子・餅・和菓子等の加工品を売る)」「③需要に合う作物を作る」「④小麦も品種改良し、より美味しいものを作って売る」というような姿勢でないと、農業は補助金ばかり使う産業になってしまう。

   
     各国の食料自給率      日本の食料自給率推移   農業就業人口の推移

*4-1:https://www.agrinews.co.jp/p44952.html(日本農業新聞 2018年8月22日)自動操舵装置、GPSシステム 導入進み出荷最多 北海道8割普及けん引 府県でも需要増
 トラクターの自動操舵(そうだ)装置と、運転を支援するGPS(衛星利用測位システム)ガイダンスシステムの2017年度の出荷台数が過去最多になったことが、北海道の調査で分かった。人手不足が深刻化する中、作業負担の軽減などを見込んで導入されたのが主な要因とみられる。今後も府県も含め、導入数は増える見通しだ。GPSガイダンスシステムは、トラクターなどに装着し、圃場(ほじょう)内での走行路をモニター上に表示する製品。正確、効率的な作業が見込め、省力化につながる。出荷台数は17年度、計2910台と、統計を取り始めた08年度以来の最多となった。そのうち、北海道向けは76%と、導入をけん引した。08年度からの累計出荷台数は1万1500台で、8割が北海道向けだ。GPSガイダンスシステム以上に省力化が見込めるトラクターの自動操舵装置の出荷台数も同年度で過去最多の1770台だった。08年度以降の累計出荷台数は4800台で、このうち92%が北海道向けとなった。こうした機器について、メーカー担当者は「北海道では通信環境の整備が進んだことや、利用者が増えて導入のハードルが下がったことなどが要因」とみる。自動操舵装置の新規販売が多かった別のメーカー担当者は「府県でも、担い手世代を中心に導入が増えた。家族経営でも使っており、疲労軽減や、初心者でも熟練者並みの作業ができるところが受けている」と指摘した。今後とも北海道を中心に、府県でも導入が進む見通しだ。道は「北海道内では、1戸の農家で複数台持つケースが増えた。規模拡大が進む中、少ない人数で適期に作業するために必要性が高まっている」(技術普及課)とみる。道が聞き取り調査した企業は、GPS機器を扱う井関農機、クボタ、クロダ農機、ジオサーフ、トプコン、ニコン・トリンブル、日本ニューホランド、ヤンマーアグリジャパン、IHIアグリテックの9社。調査企業は、16年度より1社増えた。

*4-2:https://www.agrinews.co.jp/p44893.html (日本農業新聞 2018年8月15日) AIで熟練技術習得 学習システム全国へ 17府県14産地が導入 農水省
 農水省は、人工知能(AI)を活用し、新規就農者が熟練農業者の技術を短期間で身に付ける学習支援システムの普及に力を入れる。熟練者の視線や行動をアイカメラなどで撮影し、データを収集。新規就農者がタブレット端末などでいつでも学べる仕組み。全国17府県の14産地が導入した。熟練者の技術継承が課題となる中、同省は全都道府県にシステムを広めたい考えだ。同省が、システム普及に乗り出したのは2016年度。その年の補正予算で1億円を措置。JAや県、メーカーなどでつくる協議会を対象に、システム整備にかかる費用の一部を助成した。この助成を活用し、計17府県の14協議会がシステムを導入。品目はブドウ、ミカンなどの果樹を中心に10品目以上に及ぶ。助成はもうないが、同省は、14協議会をモデルケースとして成果を発信し、他の産地にも導入を促している。14協議会の一つが、ミカンの産地であるJA三重南紀。熟練者がアイカメラを装着し、ミカンの剪定(せんてい)時の視線を撮影。若手農業者もカメラを付けて同じ作業をして、その映像をタブレット上で見比べる。両者の違いを示すことで、作業の改善に役立てることが目的だ。JAはクイズも作成。画面上で摘果に適するミカンを選ぶと、熟練者の答えが正解として表示される。JA営農柑橘(かんきつ)課はシステムについて「高齢化が進む熟練した農家の技術を若手に引き継いでいくために有効な手段」と期待している。

*4-3:http://qbiz.jp/article/139433/1/ (西日本新聞 2018年8月20日) 農業強化へデータ集積、政府 気象や土壌の情報、担い手に開放
 政府は20日、農業の競争力強化のため、気象や土壌などの関連情報を集積したデータベースをつくり、担い手や企業に開放する方針を決めた。農作業の効率化や農産物の品質向上に役立ててもらうのが狙いで、2019年4月の本格運用を目指す。環太平洋連携協定(TPP)の発効などを見据え、安価な海外産農産物の流入増に備える思惑もありそうだ。政府が構築するのは気象や土壌、農地の区画などの情報を集めた「農業データ連携基盤」。農家や農機メーカーなどが基盤にアクセスしてデータを活用する。17年12月に試験運用が始まった。背景には貿易自由化の進展がある。日本はTPPに加え、欧州連合(EU)との経済連携協定(EPA)発効も控える。海外農産物との競争激化は必至だ。今月から始まった米国との閣僚級貿易協議では一段の市場開放を迫られており、農業強化が急務になっている。農機メーカーは、データを活用した営農管理ソフトを独自に開発しているが、さまざまな情報を農家が一元的に利用できる仕組みはなかった。政府は、利用できる情報が飛躍的に増えることで、生産技術や農産物の品質が向上すると期待する。基盤には農産物の流通状況や市況情報も登録する。農家は商品が不足している市場にタイミング良く出荷したり、需要が高い作物の栽培面積を増やしたりして、収益拡大につなげることができそうだ。農機メーカーや有識者らでつくる「農業データ連携基盤協議会」の神成淳司会長(慶応大教授)は「情報を提供する企業が増えることで競争が発生し、より有益な情報が集まる。それを活用することで、農業強化につながる」と話している。

*4-4:http://qbiz.jp/article/139028/1/ (西日本新聞 2018年8月10日) 農産物輸出額、過去最高を更新 4358億円、上半期15%増
 農林水産省は10日、2018年上半期(1〜6月)の農林水産物・食品の輸出額が、前年同期比15・2%増の4358億円になったと発表した。今年は為替相場が輸出に不利な円高基調で推移したが、6年連続で過去最高を更新した。19年に通年で1兆円を目指す政府目標の実現へ大きく前進した。品目別では、サバが50・0%増の205億円だったほか、牛肉が37・4%増の108億円、日本酒が21・8%増の105億円。幅広い品目で輸出が伸びたのが特徴で、日本食品に対する支持が世界的に定着しつつあることがうかがえる。輸出先は1位が香港で、中国、米国が続く。トップ3は変わらなかったが、中国が前年同期比32・1%増と大きく伸びており、存在感が高まっている。下半期についても農水省の担当者は「悪材料はなく、引き続き伸びが期待できる」と分析。通年では9千億円規模になる公算だ。輸出は1品目20万円超の貨物が対象。農水省は今回初めて、少額(20万円以下)の輸出額を試算し、18年上半期は232億円と推計した。輸出額には算入しない参考値だが、今後増加が期待できる国をまたいだ電子商取引(越境EC)の状況把握につなげる狙いがある。

*4-5:https://www.agrinews.co.jp/p44940.html (日本農業新聞 2018年8月21日) 米粉輸出戦略 売り込め 日本ブランド
 米粉の本格輸出に向け、農水省が今月から欧米で市場調査に乗り出した。世界最高水準の表示制度を武器に国産米粉の販路拡大を目指す。コスト低減、現地ニーズに合った商品開発、輸出事業者への支援など課題も多い。水田をフルに生かしつつ、健康食材として注目の米粉を「ジャパンブランド」として世界に広めていこう。官民一体となって米粉輸出の機運が高まってきた。農水省は昨年9月、斎藤健農相の肝いりで「コメ海外市場拡大戦略プロジェクト」を立ち上げ、輸出事業者の支援を始めた。米や日本酒、米加工品の2019年の輸出目標を10万トンに設定。現状の4倍増という意欲的なものだ。その後、米粉麺業者など参加事業者は増え、約60社13万3000トンに積み上がっている。プロジェクト推進の観点からも米粉を戦略品目に位置付けるよう求めたい。米粉の輸出は緒に就いたばかりだ。17年の推計では5社50トン程度にとどまる。麺など加工品を加えても約80トンにすぎない。各社とも輸出を増やし、来年は総計で10倍となる目標を掲げるが、世界の市場規模と国産米粉の優位性を考えれば、飛躍的に伸ばせるはずだ。欧米では、小麦アレルギーの原因となるグルテンを含まない「グルテンフリー」食品の市場が急激に伸びている。日本貿易振興機構(ジェトロ)によると、米国の市場規模は5600億円(16年)で毎年約3割増と急成長。欧州は5年前に1200億円市場だったが、今年まで年率10%の伸びを見せる。日本では昨年、米粉の用途別基準と、グルテンを含まない「ノングルテン」の表示制度がスタート。この基準はグルテン含有量が1ppm以下で欧米の20分の1。世界最高レベルの基準で、欧米のグルテンフリー市場で優位に立つ。実際、NPO法人国内産米粉促進ネットワークが行った欧米市場調査でも大きな関心が寄せられた。日本の米粉は微細粉で溶けやすく、使いやすいと好評。パンやパスタ、菓子原料など用途も広く、現地の米粉などと差別化ができると手応えを感じている。同ネットは12月にスペインのグルテンフリー見本市で米粉製品の展示・商談会を開く計画だ。農水省も今月から欧米でグルテンフリー食品の市場調査を始めた。小麦粉の代替として、どの層に、どういう食材・商品として受け入れられるのか。価格帯や流通・販路と併せ、実態を調べる。日本食品海外プロモーションセンター(JFOODO)も米粉輸出の普及促進を支援。米国、フランスを重点に20年には2900トン、8億円の輸出戦略目標を描く。政府はこの好機に「ジャパンブランド」の米粉振興を国家戦略にすべきだ。米粉の本格輸出に向け、官民挙げて、製粉・販売コストの低減、市場調査、輸出環境の整備、商品開発、現地認証コストの負担軽減、販路開拓の取り組みを加速させよう。

<食料自給率に重要な漁業を国が軽視していること>
PS(2018年8月25日追加):*5-1のように、陸上自衛隊がオスプレイを佐賀空港に配備することを要請し、佐賀県の山口知事が着陸料として年に5億円を受け取ることで合意したそうだが、*5-2のように、佐賀空港の西側を33haも干拓して南西諸島の防衛力強化を行うというのは、ここが南西諸島から遠く離れ、標高の低い土地であるため合理性に欠ける。そのため、佐賀空港を選ぶ理由について、論理的かつ合理的な説明を要する。
 さらに、*5-3のように、オスプレイは開発段階から事故が相次ぎ、「ウィドウ・メーカー」(未亡人製造機)と呼ばれているが、確かに飛びやすそうな形状ではなく、積み荷には毒物も含むと思われる。そのため、年間5億円くらいなら既存のダムその他で発電する自然エネルギーで稼げるのに、オスプレイ基地を強要するのは、地方の重要な産業で食糧自給率にも影響する漁業を軽視している。また、干拓して海の環境を壊しながら、放流したり海底耕運したりしても、税金ばかり使って効果はなく、日本にはそのような無駄遣いをしている余裕はない。

   
 *5-1より  *5-2より           オスプレイ

(図の説明:佐賀空港の右側に見える黒いものは有明海苔の養殖網だ。私は、オスプレイの垂直離着陸の発想はよいが、空気抵抗から考えて飛びやすい形ではなく、これが米軍機も含めて日本中の空を飛び回れるというのは異様な判断だと思う)

*5-1:http://qbiz.jp/article/139739/1/ (西日本新聞 2018年8月25日) 佐賀オスプレイ受け入れ 知事表明 国が着陸料100億円 漁協、県と協議開始へ
 陸上自衛隊オスプレイの佐賀空港配備を要請されている佐賀県の山口祥義知事は24日、県庁で記者会見し、県として受け入れる考えを表明した。これに先立ち国と県は同日、オスプレイを含む自衛隊機の着陸料として国が県に20年間で100億円を支払い、県がこれを元に有明海漁業の振興を図る基金を創設することなどで合意。県は今後、空港を自衛隊に共用させないことを明記した県有明海漁協との公害防止協定覚書付属資料の見直しに向けた交渉に入る。山口知事は受け入れの理由について「防衛省の要請は国の根幹にかかわる国防安全保障に関することで県としては基本的に協力する。負担を分かち合う部分があると思う」と強調した。着陸料については、国が毎年5億円ずつを県に支払う。県は有明海の漁業振興のために国などが行う稚貝放流やしゅんせつなどの公共事業に合わせて裁量を持って使えるようにし、残りは事故が起きた場合の補償に充てるため積み立てる。このほか国、県、有明海漁協との間で環境保全や補償に関して話し合う協議会の設置や、自衛隊機が事故を起こした場合に備えて防衛省と県との間にホットラインを設けることなども合意した。配備計画は2014年7月に防衛省が県に要請。米軍機の事故が相次ぎ、今年2月には同県神埼市で陸自ヘリコプター事故が起きて協議が一時中断していた。今回の受け入れ表明でオスプレイ配備が大きく前進し、小野寺五典防衛相は「知事からご理解いただいたことはオスプレイ配備に向けて非常に大きな進展。感謝したい」とコメントした。山口知事は受け入れ表明後、県有明海漁協を訪れ、徳永重昭組合長と会談。公害防止協定覚書付属資料の見直しに向けた協議に入るよう要請した。徳永組合長は「知事の表明は組織として受け止めたい」と述べ、応じる構えを見せた。ただ、有明海の漁業者や配備予定地の地権者の中には、オスプレイの安全性や事故が起きた場合の深刻な被害に対する懸念は依然として根強く、見直しは難航も予想される。国の当初計画によると、佐賀空港にはオスプレイ17機のほか、陸上自衛隊目達原(めたばる)駐屯地(同県吉野ケ里町)のヘリコプター約50機も移駐し、隊員700〜800人を配置する。離着陸は1日約60回で年間約1万7千回。空港西側の干拓地33ヘクタールを造成し、駐機場や格納庫、弾薬庫、隊員の庁舎を整備する。

*5-2:http://qbiz.jp/article/139740/1/ (西日本新聞 2018年8月25日) 防衛省「大きな進展」 オスプレイ受け入れ表明 用地取得交渉へ
 佐賀県の山口祥義知事が24日、陸上自衛隊の輸送機オスプレイの佐賀空港での受け入れを表明したことで、配備計画は実現に向けて大きく動きだした。陸自相浦駐屯地(長崎県佐世保市)に本部を置く離島防衛部隊「水陸機動団」との一体運用を目指す防衛省は、相浦から約60キロの佐賀空港を最適地として2014年から交渉を続けてきた。防衛省幹部は「4年もかかったが理解が得られて良かった」と歓迎し、地権者でもある漁業者らとの協議も進めたい考えだ。計画では、佐賀空港西側の干拓地33ヘクタールを造成し、オスプレイ17機や陸自目達原(めたばる)駐屯地(佐賀県吉野ケ里町)のヘリコプター約50機を配備する。防衛省は、活発化する中国の海洋進出を見据えた南西諸島の防衛力強化に向け3月に水陸機動団を創設。上陸作戦に強い米海兵隊にならった「日本版海兵隊」で、他国に奪われた離島の奪還作戦を展開する際、オスプレイで隊員を輸送することなどを想定している。「非常に大きな進展だ。漁業者をはじめ県民の理解と協力を得られるよう誠心誠意対応していく」。佐賀県知事の表明を受け、交渉を担ってきた末永広防衛計画課長は防衛省で記者団に語った。漁業者らとの用地取得交渉は、公害防止協定を巡る佐賀県と同県有明海漁協の協議が調うのを待って行う方針。オスプレイの騒音によるコノシロ(コハダ)漁への影響について追加調査も早期に実施する考えで、防衛計画課は「県と漁協の議論に歩調を合わせる形で漁業者の懸念を払拭(ふっしょく)することが必要だ」としている。20年間で100億円とした着陸料の支払時期については「着陸料という性格上、実際に佐賀空港に機体が配置されてからになる」との考えを示した。佐賀空港の米軍利用となる在沖縄米軍オスプレイの訓練移転については、15年10月に中谷元・防衛相(当時)が提案を取り下げており、同課は「その状況は変わっていない」としながらも、沖縄の基地負担の軽減のため、今後も他の都道府県と同様に訓練移転の候補地になる可能性を示唆した。

*5-3:https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/195787 (日刊ゲンダイ 2016年12月14日) 沖縄だけじゃない オスプレイ墜落の恐怖は全国に拡大する
 米軍普天間基地(沖縄県宜野湾市)所属の垂直離着陸機オスプレイが13日夜、沖縄本島東方の海岸付近に墜落。機体はバラバラに壊れ、海中に沈んだ。これがもし市街地だったらと思うと、背筋が寒くなる。オスプレイは開発段階から事故が相次ぎ、犠牲者は40人近くに上るため、「ウイドーメーカー」(未亡人製造機)と呼ばれている。オスプレイが普天間基地に配備された2012年以降もモロッコや米フロリダ州、ノースカロライナ州、ハワイ州、カリフォルニア州で墜落や不時着するトラブルを起こしている。普天間基地には現在24機が配備されており、今月に入って宜野座村の民家の上空で物資の吊り下げ訓練を行い、地元住民が抗議したばかり。今回の事故に地元住民からは「市街地に墜落していたら大惨事だった」「オスプレイ配備を受け入れた日本政府の責任は大きい」などと怒りの声が上がっている。
■日本各地の米軍基地に飛来
 だが、オスプレイ墜落の恐怖は沖縄県に限ったことではない。年明け早々には、米軍のオスプレイの定期整備を陸上自衛隊木更津駐屯地(千葉県木更津市)で行うことが決まっている。定期整備のたびに首都圏上空をオスプレイが飛び回ることになる。さらに、防衛省は昨年5月、オスプレイ17機を約30億ドル(当時のレートで約3570億円)で購入することを決め、19年度から陸上自衛隊が佐賀空港(佐賀県佐賀市)で順次配備する計画だ。また、米軍は17年にオスプレイ3機を東京都の横田基地に配備し、21年までに10機を常駐させると発表した。オスプレイはこれまでも沖縄以外に山口県の岩国、横田、静岡県のキャンプ富士、神奈川県の厚木の各米軍基地に飛来している。このままでは、日本中どこにいてもオスプレイ墜落の恐怖が付きまとうことになる。

<地方の有望産業である林業を、軽視からスマート化・産業化へ>
PS(2018年8月26日追加):*6-1、*6-3のように、所有者が管理放棄したり、所有者が不明だったりして手入れされずに荒れた森林を、2024年度から「森林環境税」を導入して市町村が管理するそうだ。これは遅すぎるくらいの話だが、今まで放っておいた森林が手入れされたところで所有者が現れて「所有権の侵害だ」などと言うのは、憲法12条に定められた権利の濫用に当たるだろう。何故なら、所有者不明ということは、所有者にとって不要な資産で、所有権を放棄しており、固定資産税も払っていないため、市町村が収容していて当然だからである。
 また、既に森林環境税を導入している自治体は、「二重課税」にならないよう自治体の森林環境税を廃止して、森林・田畑・藻場・街路樹・公園などの緑地面積に応じて国の森林環境税を配分してもらう必要がある。都市で多く排出されるCO₂を緑が光合成してO₂に変えているため、都市住民にも森林環境税を負担させるのが公正であり、それが国で森林環境税を導入する意味であるため、*6-2のように、日経新聞が「森林環境税は直接的な恩恵を感じづらい都市住民の理解を得られない」などと書いているのは、都市住民のエゴにすぎない。
 さらに、*6-3に、「民間企業による伐採を国有林でも拡大する動きもある」と書かれているが、国有林の立木は国民の財産であり資源でもあるため、不当に安い価格で私企業に利用させるのは筋が通らない。国や地方自治体に林業に詳しい職員が少ないのであれば、効率化が進む事務系の職員を減らして森林管理の専門家を増やすべきだろう。また、民間に委託した場合も立木の代金はもらうべきで、国民の資源であり財産でもある立木を無料もしくは市場価格以下の安値で譲渡するのは、民法400条の「善良なる管理者の注意義務」に反する。
 なお、林業も、*6-4のように、ICTや航空機を利用してスマート化しつつあり、戦後に各地で植林された杉・ヒノキ等が利用時期を迎えているため、成長産業として期待できる筈だ。

     
      福岡県の説明      スマート林業   2017.12.8   2017.12.8
                            東京新聞    産経新聞

(図の説明:1番左の図のように、福岡県が森林環境税の必要性を説明している。このように、森林環境税は既に導入している自治体が多いため、国で導入するのは都市部で森林の少ない地域の国民にも森林環境税を負担してもらうことが目的なのだ。また、2番目の図のように、林業もスマート化しつつある。そのため、ただでさえ負担増・給付減の中で課税される森林環境税は、国民の森林資源を最大限に活かしつつ、環境を維持するために使うべきである)

*6-1:https://www.agrinews.co.jp/p43805.html (日本農業新聞 2018年4月14日) 森林経営管理法案 国民理解に審議尽くせ
 所有者が放置している森林を市町村や業者が代わって管理する森林経営管理法案の本格審議が始まった。国民に新たな負担となる森林環境税の導入が前提となる。森林管理に国民理解が進むように丁寧な審議を望む。森林の所有者である林家は、9割近くが10ヘクタール以下の零細経営で、4分の1が地元不在者だ。木材価格の低迷や人手不足で伐採が進まず、伐採適期を迎えた人工林がもうすぐ5割に達する。間伐ができず、荒廃が進む森林も多い。法案は、森林所有者の責務を明確にし、伐採などの責務を果たせない場合に、市町村や業者が代わって管理できる仕組みを導入するものだ。50年を上限とする「経営管理権」と「経営管理実施権」の二つの新しい権限をつくり、市町村や森林業者が間伐や伐採ができるようにする。伐採した木材の販売も行える。所有者の同意が前提だが、所有者が見つからないときに市町村の勧告や知事の裁定で同意したと見なす「公告制度」を新設する。似たような方式は、農地で導入されている。所有者の特定が困難な森林の整備を進めるにはやむを得ない措置といえる。ただ、突然、所有者が現れたときなどの対応を明確にして、所有権の侵害にならないように慎重な取り扱いが必要だ。政府は、国会審議を通じて林家の不安を払拭(ふっしょく)するべきだ。管理を引き受ける業者がどれくらい現れるかが、新しい制度の要になる。斎藤健農相は「地域の雇用に貢献する民間事業者を優先する」としているが、結局、採算の見込める森林だけに限られ、大半が市町村に集中する可能性が高い。そこで政府は、「森林環境税」を2024年度から導入し、市町村の管理費の財源を確保する。それまでの19~23年度は地方譲与税を配分する。市町村に過度に押し付けるようなことがあってはならない。地方自治体の職員は限られており、人的支援も重要だ。「森林環境税」は、1人当たり年1000円を個人住民税に上乗せして徴収するものだ。既に37府県と横浜市は森林整備のための独自税を導入しており、「二重課税」にならないように使い分けが重要だ。混乱しないように国会できちんと説明する必要がある。森林経営が魅力を失った背景には、木材の輸入自由化政策がある。国産材の利用を促す方策も急ぐべきだ。1000万ヘクタールの人工林は約半分が主伐期を迎える。国産材を優先して使った場合の支援も厚くしたい。二酸化炭素の森林吸収目標を達成したり、水源のかん養など70兆円に及ぶ多面的機能を維持したりするには、間伐や伐採が欠かせない。根付きの悪い「もやし林」が増え、豪雨時の防災機能の弱体化も指摘されている。こうした山の窮状を国民に知ってもらう必要もある。市町村にだけ森林管理を押し付けるようなことがあってならない。

*6-2:https://www.nikkei.com/article/DGXKZO23659070Y7A111C1EA1000/ (日経新聞 2017/11/18 ) 森林環境税を導入する前に
 手入れがされずに放置されている人工林を集約する新たな制度を林野庁がつくる。市町村が仲介役になって意欲のある林業経営者に貸与し、経営規模を拡大する。所有者がわからない森林などは市町村が直接管理するという。森林を適切に管理することは地球温暖化対策として重要なうえ、保水力を高めて土砂災害を防ぐ効果もあるが、問題は財源だ。政府・与党は「森林環境税」の創設を打ち出した。他の予算を見直して財源を捻出するのが先だろう。日本の国土面積の3分の2は森林で、その4割はスギやヒノキなどの人工林が占める。戦後植林した木々が成長して伐採期を迎えているが、零細な所有者が多いこともあって、多くが利用されていないのが現状だ。「森林バンク」と名付けた新制度は所有者が間伐などをできない場合、市町村が管理を受託し、やる気のある事業者に再委託する仕組みだ。一度に伐採や間伐をする森林を集約できれば、作業効率が向上してコストが下がる。近くに作業道がないなど条件が悪い森林は市町村がまず手を入れたうえで再委託する。所有者が不明で放置されている森林についても一定の手続きを経たうえで利用権を設定し、市町村が扱う。現在、国産材の用途拡大が進み始めている。経営規模の拡大を通じて林業を再生する好機だ。財政力が弱い市町村が継続的に事業に取り組むためには安定財源が要ることは理解できる。しかし、森林環境税は個人住民税に上乗せして徴収する方針だ。直接的な恩恵を感じづらい都市住民の理解を得られるだろうか。全国の8割の都道府県や横浜市はすでに、似たような税金を徴収している。都道府県と市町村の役割がどうなるのかについても判然としない。人材が乏しい市町村では、都道府県が作業を代行する手もあるだろう。森林整備は必要とはいえ、新税の前に検討すべき課題が多いと言わざるを得ない。

*6-3:https://www.agrinews.co.jp/p44236.html (日本農業新聞 2018年6月2日) 17年度林業白書 新たな森林管理を注視
 2017年度の林業白書がまとまった。手入れが行き届かない森林を整備するため、来年度から新たに導入する森林管理システムを取り上げた。財源となる森林環境税の創設と併せ、森林・林業行政は新たな段階に踏み出す。安い外材輸入に頼って国内の森林を放置してきた弊害が随所に出ている。特に民有林は、山に入る機会が減り、管理が不十分で荒廃が進む森林も多い。伐採期を迎えても切れず、「宝の持ち腐れ」が懸念される。83万戸の林家の9割近くが10ヘクタール以下の零細経営で高齢化も進む。しかも4分の1近くが不在村だ。持ち主が不明な林地も多い。このまま放ってはおけないと政府は、所有者が放置している森林を市町村が代わって管理する新しい仕組みを導入する。白書は、その経過と仕組みを重点的に説明した。所有者が伐採や造林、保育などの「責務」を果たせなければ、立木伐採などの管理を第三者が行えるようにする。今国会で成立した森林経営管理法では経営管理権と経営管理実施権の二つの新しい権限を創設し、市町村や林業経営者に与える。所有者の同意が原則だが、管理が適正に行われていないと市町村が判断した場合には、同意したと見なす制度を新設する。所有者不明で同意が得られなくても伐採ができるようにするためだ。伐採に適さない森林は市町村が管理する。財源に「森林環境税」を充てることも決まっている。森林を守る新しい仕組みを白書で大きく取り上げたのは、政府の意欲の表れであろう。国民にも負担を課すものであり、林家などに一定の責務を求めるのはやむを得ない。懸念がないわけではない。新システムは安倍政権が目指す「林業・木材産業の成長産業化」を踏まえたものだが、民間企業が主体の伐採業者による「乱伐」を引き起こすのではないかとの指摘が出ている。民間企業による伐採を国有林でも拡大する動きもあり、国民的財産を企業の営利目的に利用することへの批判も出始めている。新システムは市町村の役割を高める。しかし、林業に詳しい職員はごく一部に限られる。森林管理を市町村に過度に押し付けることになり、混乱をもたらしかねない。こうした国民の疑問に白書が十分に応えているとは言い難い。森林をきちんと維持する基本は、現地に住む林家の経営を安定させ、きめ細かな管理が行えるように環境を整えることだろう。規模拡大も含め後継者が育つように、新しい技術の導入や販売先の確保などへの支援が必要だ。白書は、林家育成の視点が弱い。今後の課題である。大きな政策転換には、当事者はもとより、国民の理解が重要だ。政府は、あらゆる機会を通じて森林の果たしている役割と、管理の大切さを国民に訴えていかなければならない。

*6-4:http://qbiz.jp/article/137407/1/ (西日本新聞 2018年7月13日) ICT活用し「スマート林業」 政府、安定供給目指す
 政府は航空機からのレーザーを使った測量で得られる詳細な地理空間情報や情報通信技術(ICT)を活用し、担い手不足や高齢化が進む林業を再生させる「スマート林業」の取り組みを始めた。植林した木の本数や高さを正確に把握し、作業の効率化や国産材の安定供給につなげる考えだ。2018年度は熊本など5県をモデル地域に選び、実践事業を開始した。計画では、軽飛行機や小型無人機ドローンに搭載したレーザーを山林に照射。木の高さを測定し、一定の範囲に何本あるかを把握する。幹の太さも推定できるという。実施主体は都道府県ごとに、市町村や林業の事業者らで構成する「地域協議会」。測量で得た山林のデータをインターネットのクラウド上で協議会メンバーが共有し、山林の管理や、需要に応じた木材の産出をより効率的に行う仕組みだ。山林情報は従来、実際に山へ入り、どの種類の木が何本あるかを手作業で記してきた。測量データを使えば、大幅な省力化が期待できるという。18年度は石川、長野、愛知、山口、熊本の5県で実践事業を開始。課題を分析し、3年後の21年度には5都道府県程度で本格的な運用を目指す。林野庁によると、1980年に約14・6万人いた林業従事者は、2015年には4・5万人に減少。65歳以上の割合は25%に上る。一方、戦後に各地で植えられた杉やヒノキといった人工林は成長が進み、本格的な利用時期を迎えている。

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2018.7.26 日本経済と外国人労働者 (2018年7月27、28、30日に追加あり)
    
2018.7.26西日本新聞  外国人労働者推移(国籍別)  中間管理職の月給比較

(1)外国人労働者の受入拡大について
 政府は、*1-1のように、特に人手不足が深刻な農業・介護・建設・宿泊・造船で外国人の就労を認める新たな在留資格の創設について、2019年4月を目指して準備を進めていたが、他業界からも外国人労働者受入を求める声が上がっていることを受けて、*1-3のように、水産・食品加工・外食・製造業など、さらに約10分野を対象に加える方針だそうだ。

 日本には、既に外国人労働者に支えられている産業も多く、外国人労働者を使うという選択肢があれば、これまでに海外に出ていってしまった産業のうち、国内で製造できるようになるものも多いため、生産年齢人口が減少して人手不足になる局面で規制緩和を行うのは良いと思う。

 また、介護は、*1-2のように、1万人の受入をベトナム政府と合意し、数値目標方式をインドネシア・カンボジア・ラオスなどにも広げて人材を確保するそうだが、こうなると、日本では、介護や生活支援を、①出産時 ②病児 ③退院直後 などを含む全世代に広げることが可能になる。また、他の国でも介護保険制度を作り、条約で相互に同様のサービスを受けられるようにすると、助かる人が多いだろう。

 もちろん、外国人労働者も生活者でもあるため、受入拡大のためには、環境づくりが必要だ。しかし、「来日後1年内に日本語で日常会話ができる『N3』の能力を得なければ帰国」というのは厳しすぎ、私は介護に日本語は不可欠でないため、「N3」のレベルに達しなかった人でもチーム介護の1員として働けば、帰国しなければならないほどではないと考える。

 なお、*1-3に書かれている「入国管理庁」の新設については、最近、「○○庁」の新設が多いが、これは行政改革の趣旨に反する。そのため、本当に「庁」を作る必要があるか否かについては、検証を要する。

(2)おかしな反対論
 日経新聞が、2018年7月26日、*2-1に、「政府が外国人の受け入れ拡大を表明しているので、①安い賃金で働く外国人が増え ②物価の下押し圧力になりかねない」としている。

 しかし、①のような外国人を日本に受け入れなければ、その企業は賃金の安い外国に移転するか、廃業するかして、日本の産業はますます空洞化する。また、②のように、「物価を上げることが目的」というのは、日本国民や日本経済のためになる政策ではない。何故なら、日本が自由貿易をする限り、高コスト構造の日本製品ではなく、安い賃金の国の安価な製品が売れるグローバルな時代になっているからである。その時、技術は生産している場所で発達するため、輸出国の製品が次第に良くなり、日本からは技術が消える。

 そのため、*2-2のように、「人手不足はバブル時代以来の水準だが、当時と大きく違うのは消費も国内総生産(GDP)もほとんど増えていない」というのは、年金生活者も含めて収入が増えない以上、物価を上げれば購入数量が減るからで、当然のことである。

 従って、少子高齢化で日本の産業や総人口を支える労働力が不足するのなら、外国人労働者を受け入れればよく、働く能力も意欲もある高齢者や女性に雇用を保障するためには、年齢や性別による差別を禁止をすればよい。つまり、「物価上昇」や「インフレ率の目標達成」こそ、変な目標なのである。

(3)外交と経済
 日経新聞が実施した2018年度の「研究開発活動に関する調査」で、*3-1のように、回答企業の43.9%が日本の科学技術力が低下していると指摘したそうだ。その理由は、中国やインドなど新興国の台頭で、10年後の研究開発力はインドや中国が日本を抜くと予想されているそうだが、どちらも人口が多く、熱心に教育を行い、開発された技術の採用判断に無駄がない。それが、油断して無駄遣いばかりしている日本との違いである。

 また、「企業は研究分野の選択と集中が必要だ」としているが、誤った選択と集中は大きな発見を見過ごす場合がある。そのため、的確な判断と予算付けが必要なのだが、これは官僚がやるのではなく、意識の高い専門家の助言を得る必要がある。

 なお、日本で外国人労働者の受け入れに反対している人が、*3-2のトランプ大統領の ①米国第一主義 ②保護主義 ③雇用の確保 ④国境管理の厳格化 をのべつまくなく批判し続けてきたのは自己矛盾である上、我が国の外交にも悪影響を与えてきた。私は、どの国にも産業政策はあり、その国に必要な産業は育てなくてはならず、既にいる国民の雇用も守らなければならないため、「日本は特別な国」という発想は甘えだと考える。また、雇用の確保や国境管理は日本の方がずっと厳しく、かなり制限された外国人労働者の受け入れでさえ、*2-1、*2-2のような反論が出ているということを忘れてはならない。

<外国人労働者の受入拡大>
*1-1:https://www.agrinews.co.jp/p44690.html (日本農業新聞 2018年7月25日) 外国人就労新在留資格 来年4月に創設へ 受け入れ業種拡大も 首相指示
 政府は24日、外国人労働者の受け入れ拡大に向けた初の関係閣僚会議を首相官邸で開いた。安倍晋三首相は、人手不足が深刻な業種で外国人の就労を認める新たな在留資格の創設ついて、「来年4月を目指して準備を進めたい」と述べ、検討を加速するよう指示。今後、外国人の受け入れ対象業種について、従来検討してきた農業や介護など5業種以外にも広げることや、外国人の在留管理を一元的に担う官庁の立ち上げも検討する。政府は6月に決めた経済財政運営の基本方針「骨太の方針」に新たな在留資格の創設を盛り込んだ。一定の技能、日本語能力を問う試験に合格した外国人を対象に、通算5年を上限に就労を認める。3年間の技能実習の修了者は試験を免除する。秋の臨時国会に関連法案を提出する方針だ。閣僚会議には安倍首相の他、上川陽子法相、斎藤健農相らが出席。安倍首相は「法案の早期提出、受け入れ業種の選定などの準備を速やかに進めてもらうようお願いする」と述べた。法務省には、増加が見込まれる在留外国人の管理を行うため、組織の抜本見直しを指示した。受け入れ業種の選定では、政府は、特に人手不足が深刻な農業、介護、建設、宿泊、造船を念頭に検討を進めてきた。一方、水産業や食品関連業など他の業界からも受け入れを求める声が上がっていることを受け、業種の追加も検討。政府は関連法の成立後に決める受け入れの基本方針で、具体的な基準を示し、年内にも受け入れ業種を正式決定する見通しだ。

*1-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180725&ng=DGKKZO33346320U8A720C1MM8000 (日経新聞 2018年7月25日)