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2020.5.11~13 日本の情けない遅れは、どうして起こったのか?(2020年5月14、16、17、18、19、20、21、22、23、24、26、27、28、30、31日、6月1、3、4、6、7日追加)
   
2020.3.6  2020.3.24   2020.3.2           2020.5.2朝日新聞
東京新聞   朝日新聞    毎日新聞   

 
          テレビ朝日              新型コロナウイルスの治療薬

(1)新型コロナウイルスの検査について
1)PCR検査について
 日本は、上の1番左の図のように、2020年3月5日まで、「①37度5分以上の発熱が4日以上続く場合」「②保健所などの帰国者・接触者相談センターに電話で相談し」「③帰国者・接触者外来などを受診し」「④そこの医師から依頼を受けて」「⑤保健所が必要性を判断すれば」「⑥各都道府県の地方衛生研究所などで検査を受けられる」ことになっていたが、検査を受けるまでの関門が5つもあるため、実際には検査を受けにくい仕組みになっていた。3月6日以降は、保健所を通さずに医師の判断で検査を実施し、民間の検査会社などが検体を調べることができるようになっていた。

 3月24日以降は、左から2番目の図のように、症状の要件は緩和されたものの、検査を受けるにはどこかで保健所を通さなければならなかった。しかし、具合が悪ければ、病名を特定するために、まず医療機関を受診して該当しそうな病気に関する検査を受けるのが当然なのである。にもかかわらず、①などの要件をつけて待機させたため、その期間中に重症になったり、死亡したり、保健所で事務的に排除されてPCR検査に辿りつけなかったり、検査後も結果が出るまでに3~7日かかったりなど、これまでの日本の医療ではあり得ないことが続いたわけだ。

 しかし、予算委員会では、上の右から2番目の図のように、安倍首相や加藤厚労相は、なるべくPCR検査をしようとする発言をし、検査を妨害する意図はなかったように見える。それでは、誰が、何の目的で、実質的にPCR検査を邪魔していたのかについては、読者の皆さんは、既にそれぞれの解答を持っておられるだろう。

 そのような中、2020年5月6日、*1-1-1・*1-1-2のように、加藤厚労相は、これまで「37度5分以上の発熱が続く場合」などとしてきた相談・受診の目安を「息苦しさや強いだるさがある場合、高熱が出た場合、基礎疾患がある人などは軽い発熱でも相談できるよう見直す」という考えを示されたが、“基礎疾患(そもそも範囲不明)”がなくても、高熱(定義できない)でなくても、高齢者(定義不明)でなくても、陽性であれば他人に感染させる可能性があり、リスクが高いとされるグループ以外の人でも場合によっては体調が急速に悪化することもあるため、受診に勝手な要件を設けて受診しにくくすること自体が問題なのである。

 従って、私は、*1-1-3の「ウイルスの有無を調べるPCR検査が日本は際立って少なく、人口10万人当たり検査数は、日本187.8人、韓国1198人、米国1752.3人、イタリア3159人、ドイツ3043.5人である」「国内の正確な感染実態を把握せずに、どうして社会経済活動の再開を判断できるのか」「政府の戦略には科学的根拠がない」等の指摘に賛成だ。

 しかし、政府が検査を増加するという説明を繰り返しているのに、検査が抑えられる運用が続いていたのは、政治家よりも厚労省(+専門家会議)の主導であるため、政治家が責任をとったり政権を変えたりしても状況は変わらないと思う。従って、本質の方を変えなければならないのだが、行政の言う通りにしか動けない政府や与党も、識見に基づく指導力がなさすぎるだろう。

2)PCR検査を倍にすれば、接触「5割減」でも収束可能
 厚労省と専門家会議が、PCR検査を渋って軽度及び中等度の感染者を市中に放置した結果、新型コロナウイルスが市中に蔓延することになったが、*1-1-4の九州大学の小田名誉教授(社会物理学)の「検査数を2倍にすれば接触機会が5割減でも14日で収束し、検査数が4倍なら接触機会を全く削減しなくても8日で収束するなど、接触機会の削減より検査と隔離の拡充の方が対策として有効である」としている。

 私は、モデルを使うのなら、小田名誉教授のモデルの方が、スペイン風邪流行時のモデルを使っているらしい専門家会議のモデルよりも、現代の医療に適合しており正しいと思う。さらに治療薬を使えば、回復が早くなり、隔離を要する病気でもなくなるだろう。

 なお、国は1日のPCR検査の能力を2万件まで拡充できるとしているので、少なく見積もっても検査数を2倍にすることはでき、さらに、*2-1のように、唾液でPCR検査を行ったり、全自動の機械を使ったりすれば、その他のネックもなくなるため4倍以上にすることも可能だ。そして、これらの工夫を最初の1カ月で行えば、「Good Job!」と言うことができて、日本医療の信頼を損なわずにすんだ筈だった。

(2)不十分な検査体制は日本医療の恥だが、それによる被害者は誰か?
1)政府の方針
 厚労省で感染症対策などを担当してきた自民党衆議院議員の国光氏は、*1-2-1のように、「①日本のPCR検査数が海外に比べて少ないのは、欧州などが軽症者を対象とするのに対し、日本は重症者から検査するためだ」「②国が37.5度以上の発熱が4日以上続くとしてきた受診の目安を緩めるのは評価するが、実際に検査するかは医師の判断なので、国は他の病気と同様に医師の検査基準を示してほしい」「③医師が検査すべきと判断したら保健所につなぐ」「④保健所は4日以上の発熱などの症状がなければ検査しない例があり、保健所が医師の判断を尊重する仕組みも必要だ」「⑤米国や韓国などで普及するドライブスルー方式は短時間で効率は良い」 「⑥国が地域ごとのPCRセンターを指定して検査を集約し、かかりつけ医がそこを紹介する体制がより効率的だろう」「⑦民間の検査機関を使う場合は病院から検体を送るのに2日など時間がかかる。民間は国指定のPCRセンターに協力すべきだ」「⑧PCR検査以外でも最低3~4時間で終わる『LAMP法』などの導入を支援すべきだ」「⑨関連法令を緊急に改正し条件や期限付きで担い手を広げるのも一案だ」などとしている。

 このうち、①②については、軽症者も時々刻々と症状が悪化するケースがあることを考えれば、医師の判断で他の病気も含めて速やかに検査する必要があり、検査するかしないかの判断に保健所をかませたことが失敗の始まりなのである。従って、③④の保健所との関係は、事後報告でよいこととするように、⑨の関連法を変えるべきである。

 さらに、⑤⑥⑦⑧については、工夫はいろいろとあるため、医療機関や民間検査センターよりも行動の遅い厚労省や保健所をカットするのが、最善の方法に思える。

 具体的に、保健所を通す方法は、*1-2-2のように、⑩検査の実施が滞って、発症から陽性確定まで7日間など長期化させ ⑪検査の機能不全を背景にした陽性判明の遅れが重症化リスクを高め ⑫陽性と判明していない感染者と他者との接触機会を増やしていた。そのため、“医療崩壊”を避けながら感染拡大を防ぐには、大学・研究所・民間検査機関を含めて検査機関を増やしたり、簡易検査キットを使ったりするなどの改善が必要なことは明らかだ。発熱から4日以上たってPCR検査を受け、7日も結果を待っていれば、その間に悪化する人は多い筈である。

 さらに、⑬PCR検査の実施数は全国で1日8000件前後が続くが、民間検査会社の受託は2000件ほどで、残りは国立感染症研究所(東京・新宿)や地方衛生研究所などの公的機関であり ⑭民間検査数は2月下旬まではゼロの日もあったし ⑮熱が出て気分が悪いといった程度ではすぐに検査を受けてもらえない状況で ⑯京都大学病院は、院内感染予防の視点から、無症状でも公費でPCR検査を受けられるようにすべきとの声明を出していたそうだ。

 しかし、日本は世界でも類を見ないクラスター潰しに専念し、クラスターに入ると見做された無症状者や軽症者を優先して入院させていたため、“孤発例(誰かから感染しているので、そんな筈はないが・・)”という非科学的な呼び名の経路不明な症状のある感染者の検査や治療に医療資源が廻らなかったそうなのである。

 なお、宮城県内で確認された新型コロナ感染者88人は、*1-2-3のように、感染経路不明な人ほど検査まで時間を要し、発症からPCR検査の結果が出るまでの最長は16日かかっており、最長の20代の男性は、4月9日に家族の感染が分かって11日に陽性と判定され、家族の感染がなければ検査すら受けられなかった可能性が高いそうだ。

 また、経路不明の仙台市の50代の女性は、医療機関を2カ所回った後、相談センターから紹介された一般医療機関の求めで検査を受け陽性判明まで9日かかったそうだが、感染者の初期症状は多様であるため、国が目安としていた「37.5度以上の熱が4日以上」「高熱・・」等に当てはまらない感染者は少なくない筈だ。

2)まとめ
 私も、*1-2-4のように、不十分なPCR検査体制は日本の恥であり、日本で新型コロナによる死者数が少ないのは、検査数が少ないため死因を新型コロナに分類されず、肺炎等の他の病気に分類されたり、原因不明とされたりしている人が多いという理由があると思う。

 さらに、新型コロナウイルスは肺炎だけがクローズアップされているが、味覚だけでなく、消化器にも異常をきたしたり、ウイルス性髄膜炎になったりなど、時間の経過とともに人間の免疫の方がウイルスに負け、ウイルスが増殖して全身に広がるにつれて、身体へのダメージは大きくなる。そのため、検査数を増やして早期発見・早期治療することが必要だったのであり、死んでから冥福を祈られても浮かばれないのである。

(3)日本における実用化の壁は何か?
 日本医師会の横倉会長は、*2-1のように、唾液で判定するPCR検査法の実用化を訴えられたそうだ。これは、米国で開発され、北海道大学で試験が進められており、鼻の奥や喉から粘液を採取する方法と同じ結果が出る上、手軽で医療関係者への感染リスクを減らすことが期待できるそうだ。よいものは、欠点を探して停止させるのではなく、早々に採用して欠点を補いながら使った方がよいと私も考える。

 また、スイス製薬大手のロシュは、*2-2のように、新型コロナウイルスの抗体検査薬が米食品医薬品局(FDA)から緊急使用許可を得たと発表し、判定確率は100%に近いそうだ。日本でも5月中に承認申請する方針で、抗体検査の精度が高まれば、免疫を持つ可能性のある人を特定しやすくなり、経済活動の正常化に役立ちそうである。

 そのほか、*2-3のように、「富士レビオ」が新型コロナ患者の検体から15~30分で検出できる「抗原検査キット」を開発し、医療現場において15分程度で判定可能となるので、政府は5月13日に薬事承認する方針だそうだ。私も、PCR検査などとの組み合わせで活用すれば、医療現場でのツールとして価値が大きいと考える。

 しかし、*2-4は「①日本も東京と東北地方で調査が進むが、検査キットの精度などを巡り課題が指摘されている」「②『大規模な抗体検査と診断で市民は安全に仕事に戻れる』とNY州のクオモ知事が抗体検査の意義を強調したが、精度に難点がある」「③そもそも免疫できない?」と記載しており、日本では、無理に欠点を探して実用化を阻む後ろ向きの声が多く、開発者に非生産的な時間と苦労をかけるのである。

 例えば、①②の検査キットや抗体検査の精度が仮に90%しかなかったとしても、90%の確率では当たって傾向がわかるため、何もせず傾向を全く把握していないよりはずっと良い。さらに、使いながら改良すれば精度は上がるため、何もせず、いつまでも0の状態でいるよりも始めた方がずっとよいのである。

 また、③の免疫ができないというのは、想像によるいちゃもんに過ぎない。何故なら、新型コロナから回復した人の血漿で重症患者が回復したという事実は、血液中に抗体ができ、それが新型コロナウイルスを打ち負かしたからにほかならないからだ。これを戦国時代に例えると、自分の兵隊(免疫)が新型コロナウイルスという敵に負けて全滅しかかっている時に、他国から強い援軍をさしむけてもらったようなものなのである。

 なお、新型コロナ感染者が多い米東部ニューヨーク州のクオモ知事は、*2-5のように、州内の医療従事者に対して感染歴を調べる抗体検査を行った結果、陽性割合が一般市民より低く、医療従事者が着用しているマスクや防護服に感染防止の効果が見られるということを明らかにしたそうだ。そのためにマスクや防護服を身に着けるので当たり前なのだが、抗体検査によって数量的なエビデンスを得た点が新鮮だ。

(4)あるべきスケジュールはこうだった
1)大型クルーズ船の扱いは失敗だったこと
 大型クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」の乗客は、2020年2月5~19日の14日間の隔離を終了して、*1-3-1のように、新型コロナの感染が確認されなかった約500人が下船したが、船内の感染対策が不十分であったため、隔離期間に感染を広げて乗客乗員542人を感染させたのが第1の不手際だ。

 そのため、アメリカ、カナダ、オーストラリア、イギリスの各国政府は、ダイヤモンド・プリンセスから政府チャーター機などで帰国した人たちに対し、さらに14日間の隔離措置をとり、韓国は自国民以外はダイヤモンド・プリンセス号の乗客の入国を禁止する方針を示した。しかし、日本の当局者は、「自分たちの対応は適切だった」と主張している。

 日本は、日頃からクルーズ船を誘致しているため、いざという時には適切なケアができなければならないし、そういう実績を積み重ねていくことによって初めて、クルーズ船の誘致が容易になったり、日本の医療水準の高さが認められて医療観光が視野に入ったりするのだ。そのため、大型クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」への対応は、今後の日本経済にとって大きなマイナス(成績なら“不可”)になった。

2)医療現場は仕方なくCTで判定
 PCR検査ができなかったため、*1-3-2のように、医療現場では、新型コロナ感染症の重症度判定にCTの画像診断を使い始めた。そのため、「肺炎を起こすような重症例についての見落としは少ない」と、政府専門家会議の尾身副座長が述べている。

 しかし、重症(既に免疫が負けてウイルスが増えた状態)になってから、人工呼吸器やECMOを使っても患者に負担をかける割に回復の見込みが小さいため、CT検査で肺に影が出る前に検査して治療するのが正攻法であり、その準備は、「ダイヤモンド・プリンセス」に対応していた2月中に、情報をかき集めて行っておかなければならなかったし、やろうと思えばできた筈だ。

(5)ワクチンの開発
 米政府は、*3-1のように、新型コロナウイルスのワクチン開発を急ぎ、米国生物医学先端研究開発局がJ&Jに約10億ドル投じて開発を本格化させているほか、米バイオ企業モデルナにも最大4億8000万ドル拠出してワクチンの開発と生産体制の整備を支援し、承認されたワクチンを早急に量産できるよう後押しし、年内に数億本の量産体制を目指すとのことだ。

 ここで、日本人には、「ワクチンの安全性・有効性を確かめる臨床試験は通常1年~1年半を要するのに、約8カ月で医療現場に投入する計画は安全性を無視している」などと言う人が少なくないが、安全性・有効性とスピードは両立できないものではないため、ピンチをチャンスに変えて利益を出すためには、安価で質の高いものを作って最初にゴールすることが必要だ。
 
 その理由は、世界で需要のある新型コロナワクチンは、安全性・有効性と世界一のスピードが達成できれば大きな利益を生むが、そうでなければ設備投資が無駄になって大きな損失を抱え込む可能性が高いからだ。新型コロナのワクチン候補は現在約50あり、ワクチンや特効薬の開発に成功すれば経済活動を停滞させる外出制限などの対策をとる必要がなくなるため、欧州や中国も国力をあげて開発を進めているそうだ。

 また、*3-2のように、世界では70を超えるワクチンの開発プログラムが進んでおり、日本では大阪大学と大阪大学発バイオベンチャーが、「DNAワクチン」という新しい手法を用いたワクチン開発に取り組むことを表明し、3月24日には動物実験用の原薬開発に成功している。

 これは、大腸菌を培養することで得られる「プラスミドDNA」に新型コロナウイルスの表面にあるタンパク質の一部を作り出す遺伝子を組み込んで体内に投与すると、体内で目的のタンパク質が作られ、免疫システムがそのタンパク質を排除対象として認識し、ウイルスが体内に侵入した時にウイルス表面にあるそのタンパク質を目印として排除する仕組みで、増産が簡単なので値段を安くでき、年内に医療従事者を中心に十数万人に接種することを目標にしているとのことだ。

 そのような中、*3-3のように、欧州委員会の呼びかけで国際会議が開かれ、ワクチン開発に世界が協力するとして、参加者が総額80億ドル以上の拠出を約束し、欧州委員会のライエン委員長は、これらの資金が前例のない国際協力の端緒になるとし、資金はさらに必要になるだろうと警告したそうだ。日本はこの中に入っているが、アメリカ・ロシアは参加せず、中国はEU大使が儀礼的に参加したのみで、ワクチン開発が進んで既に実用化が視野に入っている国は、自国のワクチン候補に資金を投じた方がメリットが大きいのである。

(6)治療薬
1)抗ウイルス薬の重要性
 新型コロナウイルスの治療薬としては、さまざまな薬が候補にあがっており、抗ウイルス薬「レムデシビル」は5月7日に承認され、抗ウイルス薬のアビガンも5月内に承認されそうだ。

 福岡県医師会は、*4-1のように、新型コロナウイルス感染症への効果が期待される新型インフルエンザ治療薬「アビガン」を、主治医が重症化の恐れがあると判断した場合は軽症でも早期投与できる独自の体制を整え、このように「主治医等が重症化の可能性を憂慮する患者」を対象に明記したことで、主治医が必要と判断すれば軽症でも早期投与が可能になった。

2)他の病気との類似性 ← 一致しているのでは?
 米ニューヨーク市保健局は、*4-2のように、5月4日、2~15歳の15人で「多臓器炎症型疾患」が確認され、それは、高熱や発疹、腹痛、吐き気、下痢などがみられる川崎病に似た症状で、うち10人が新型コロナのPCR検査や抗体検査で陽性が判明し、感染歴があることが分かったと発表した。

 新型コロナ感染拡大に伴い、同じような症例が英国・フランス・スペイン・イタリアなど欧州でも相次いで報告されており、「免疫の過剰反応で血管に炎症が起き、血栓ができやすくなった状態」と説明されているが、多臓器炎症は、免疫が負け始めてウイルスが増殖し、血管を通じて体中に廻った状態ではないかと、私は思う。

 実際、*4-3のように、敗血症(感染症を起こしている細菌・ウイルス・真菌・寄生虫等が増殖して炎症が全身に広がり、重大な臓器障害が起きて重篤になっている状態)は、感染症がきっかけとなって起きる症状で、その原因となる菌を見つけて、それに対する治療を早期に開始しなければ命に関わる。

 そして、どんな感染症でも、免疫の方が負ければ敗血症を起こす可能性があり、特に免疫力がまだついていない乳幼児や、高齢者、糖尿病などの慢性疾患やがんなどの基礎疾患がある人や、病気治療中で免疫力が低下している人は、感染症から敗血症を起こすリスクが高いのである。

 そのため、治療には、その感染症の原因となっている病原体を早急に特定して治療を開始することしかない。薬物治療であれば、細菌の場合は抗菌薬、ウイルスの場合は抗ウイルス薬、真菌の場合は抗真菌薬、寄生虫の場合は抗寄生虫薬を用いる。そして、発見が遅れるほど死亡リスクが高まり、助かった場合でも後遺症が残ることが多いのである。

(7)教育について

    

(図の説明:1番左は幅120cmの机、左から2番目はそれに合わせる引き出しで、並べ方によって人と人の距離を調節することができる。また、右の3つは、アクリル板を使った透明なパーティションで、学校・オフィス・役所などで自然な形で使うことが可能だ。そのため、こういうものを作れる会社は、結果的にビジネスチャンスになった)

 状況を理解して適切な判断をし、的確な行動に結び付けたり、主権者として政策を理解した上で選択したりできるためには、教育が重要である。  

 このような中、私は東大同窓会の会員なので、*5-1のように、東京大学総長の五神先生から、新型コロナウイルス感染症に関連する対応に関する総長メッセージが届いた。その中には、①東大は、学生の学びの機会を確保するために、オンライン授業への全面的な移行を進めた ②学生それぞれの接続環境によって不公平が生じないよう対策を講じている ③東大の研究力を活かして治療に寄与する薬剤の同定・検査技術の開発・疫学的解析など、様々な分野で研究・開発を進め、これまでにも感染阻止の効果が期待できる国内既存薬剤を同定したことを発表した ④PCR検査を迅速に行える検査機器の導入・コロナ対応ICUの整備・中等症患者に対応する病棟開設など全診療科の医師・看護師が参加して医療体制の充実を図った ⑤財政的基盤が脆弱な東大発ベンチャー企業の支援等の多数のことが必要で財政的下支えを要するため支援が欲しい ⑥東大は開学140年にわたる知の協創の拠点として、世界最高水準の学問の叡智を結集させ、この人類の新たな脅威に全力で立ち向かう所存だ 等が書かれていた。

 このうち、③④は、新型コロナに直接的に関係するものであるため頑張って欲しいし、⑤⑥も、同窓生を含めた全学の知恵を結集すれば、新たな手法が出てくるだろう。そして、これは、他大学も同じだ。

 また、①②は、オンライン授業とそれを可能にする接続環境を整備することによって、教育の新しいツールができたことを意味するが、関心のある授業を学外からオンラインで受講できるようにすると、東大の教官は優秀なので、高校生から定年後の大人にまで役立つと思う。

 一方、*5-2のように、佐賀県内の県立学校や各市町の小中学校などが14日から再開されるが、文科省ガイドラインの児童生徒同士の座席を1~2メートル離すというのが、40人規模の学級を抱える大規模校で難しいそうだ。そして、生徒一人に一台のiPadを配ってICT教育を進めている武雄市でさえ、授業を20人以下で行う方針を示しつつも、教員数の問題があって全授業での実施が難しいのだそうだ。しかし、教員数は、教員の定年を延長したり、退職した教員に復職してもらったり、ポスドクを採用したりすれば解決できると思われる。

 世界では、*5-3のように、新型コロナウイルス対策の全国的な休校で、全世界の72%、約13億人が登校できていないそうだ。私は、学力の「格差」よりも学力の「低下」の方が問題だと思うが、フランスは小学校は1学級15人以下として校内の動線を決め接触を減らすなどして感染を防ぎ、オンライン授業が広がる米国では、インターネット環境が整わない家庭の子どもの学習支援で官民が連携しているそうだ。

 日本は、2020年4月22日時点で小中の95%、高校の97%が休校していたが、公立小中高校の95%は同時双方向のオンライン指導ができていない。オンライン教育をやりたい時にはいつでもやれる体制にしておけば、それを利用したい生徒は、塾や大学の授業を聴講したり、外国の学校の授業を聴講したりもできて便利だと思う。

<参考資料>
*1-1-1:https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200506/k10012419171000.html (NHK 2020年5月6日) PCR検査 相談・受診の目安見直し 「発熱」も 近く公表
 新型コロナウイルスのPCR検査について、加藤厚生労働大臣は、これまで「37度5分以上の発熱が続く場合」などとしてきた、相談・受診の目安について、高熱が出た場合や基礎疾患がある人などは軽い発熱でも相談できるよう見直し、近く公表する考えを示しました。加藤厚生労働大臣は、6日神奈川県が進める「神奈川モデル」と呼ばれる医療体制のうち、中等症の患者が入院する「重点医療機関」に指定されている医療機関を黒岩知事と視察し、関係者と意見交換を行いました。このあと加藤大臣は記者団に対し、新型コロナウイルスのPCR検査をめぐり、これまで「37度5分以上の発熱が4日以上続く場合」などとしてきた相談・受診の目安について、「自宅で体調が急速に悪化する事例なども出てきているので、専門家や医療関係者、保健所の方々に素案を出して意見を聞いている」と述べ、見直しを進めていることを明らかにしました。そのうえで、新たな案について、「『高熱』と『発熱』という2つの概念を出す。『高熱』だと思った方はすぐ検査に行っていただく」と述べ、目安には基準とする体温の数値は明記せず、高熱が出た場合や基礎疾患がある人などは軽い発熱でも相談できるよう見直し、近く公表する考えを示しました。一方、加藤大臣は、「雇用調整助成金」の申請手続きについて、従業員20人以下の事業者については、一部簡素化して、申請に必要な平均賃金の算定を省略できるよう見直すことを明らかにしました。

*1-1-2:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO58899960Y0A500C2EA2000/ (日経新聞 2020/5/8) 「37.5度以上」削除 PCR相談目安改定 幅広い受診促す
 厚生労働省は8日、新型コロナウイルスが疑われるとして診察やPCR検査を受ける際の「相談・受診の目安」を改定し、「息苦しさや強いだるさ、高熱」がみられた場合にはすぐに相談するよう呼びかけた。これまでは「37.5度以上の発熱が4日以上」などの具体的条件を設定していたが、条件に満たない場合は検査を受けられないとの誤解が出ていた。従来の基準は検査の実施を抑える方向に働いていた可能性がある。新たな目安では、感染が疑われる人をより幅広く検査することで見落としをなくし、感染の再拡大を防ぐ狙いが鮮明になっている。新たな目安では、37.5度との数値基準を削除し、高熱など強い症状がある場合はすぐに相談してもらう。重症化しやすい高齢者や持病がある人、妊婦などは発熱やせきなど比較的軽い風邪の症状でも相談してもらう。従来の目安は厚労省が2月17日に公表。目安に当てはまると判断すれば、都道府県などが設置する「帰国者・接触者相談センター」に電話し、帰国者・接触者外来を紹介してもらう仕組みだった。だが目安に当てはまらないとして診察や検査を受けられないケースが相次ぎ、自宅療養中に容体が急変する事例も出た。同省の担当者は4日以上などとした従来の目安について「症状が短期間で治まることの多い季節性インフルエンザと区別するため、一定期間様子をみてもらう趣旨だった」と説明。インフルエンザが終息したことも受け、目安の見直しを決めたとしている。

*1-1-3:https://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-1118607.html (琉球新報社説 2020年5月8日) PCR検査の拡充 政府の無為無策問われる
 新型コロナウイルスの感染拡大で世界が出口に向けた模索を始める中で、ウイルスの有無を調べるPCR検査が日本は際立って少ない。国内の正確な感染実態を把握せず、どのように社会経済活動の再開を判断できるというのか。政府の出口戦略には、科学的根拠において不備があると言わざるを得ない。安倍晋三首相は4月6日の政府対策本部でPCR検査の実施可能数を全国で1日2万件に増やすと公言した。だが、現状の実施数は1日8千件前後と一向に増えておらず、対応の遅れが明らかだ。他国と比較したPCR検査の不十分さは政府の専門家会議も認めている。専門家会議が4日に示した資料から人口10万人当たりの検査数を見ると、日本が187・8人なのに対し、隣国の韓国では1198人、米国は1752・3人だ。イタリアは3159人、ドイツは3043・5人と3千人を超える国もあり、日本とは桁が違っている。有識者会議は、日本で検査能力が早期に拡充されなかった理由として、重症急性呼吸器症候群(SARS)や中東呼吸器症候群(MERS)の経験を踏まえて検査拡充を進めていた国々に比べ、日本では「PCR等検査能力の拡充を求める議論が起こらなかった」と指摘した。そのため、重症化の恐れがある人や濃厚接触者の診断のための検査を優先せざるを得なかったとしている。しかし、徹底したPCR検査が必要だという指摘は、新型コロナの国内での感染が始まった早い段階から上がっていたはずだ。緊急事態宣言をさらに延長する現状において、過去の感染症の経験に結び付けて検査の少なさを説明しているのは、現在進行形の対策の誤りを認めない言い逃れのように映る。新型コロナのような治療方法が確立されていない感染症については、検査で陽性者を特定し、隔離・治療して感染の拡大を封じ込めるしかない。世界保健機関(WHO)は「検査、検査、検査」と述べ、徹底的なウイルス検査を各国に求めていた。だが、日本政府は表面上検査を増加するという説明を繰り返しながら、実際には検査を抑える運用が続いてきた。軽症者が病院に殺到するのを防ぐ狙いから、感染疑いで受診する目安として37・5度以上の発熱が4日以上続いた場合などの基準を示してきたのはその一例だ。加藤勝信厚生労働相は6日になり、目安を見直す方針を示した。受診の基準を満たしていないことを理由に、検査を受けられない例が相次いでいるためだ。これまでの政府の無為無策が問われる。医療・研究機関などと連携して検査従事者の養成、機器の増産、迅速診断の確立などの課題解決に取り組み、十分なPCR検査を実施できる態勢を早急に整えるべきだ。

*1-1-4:https://digital.asahi.com/articles/ASN557T4WN54ULBJ01C.html?iref=comtop_8_03 (朝日新聞 2020年5月6日) PCR検査を倍にすれば、接触「5割減」でも収束可能?
 新型コロナウイルスのPCR検査を増やすことで自宅などで隔離療養する感染者を倍増できるなら、国民の接触機会は、国が求める「8割減」でなく「5割減」でも、感染は早期に収まるとする計算結果を、九州大学の小田垣孝名誉教授(社会物理学)がまとめた。経済活動と感染拡大防止の両立の「かぎ」はPCR検査にあることを定量的に示したもので、議論を呼びそうだ。小田垣さんは、感染拡大防止のために国が施策の根拠の一つとして活用する「SIRモデル」を改良。公表値を使って独自に計算した。SIRモデルは、まだ感染していない人(S)、感染者(I)、治癒あるいは死亡した人(R)の数が時間とともにどう推移するかを示す数式で、1927年、スペインかぜの流行を解析するために英国で発表された。疫学の専門家でなくても理解できる平易な数式で、1世紀を経た今回のコロナ禍でも国内外の多く識者がこの数式を現実に則して改良しながら、さまざまな計算結果を導いている。小田垣さんによると、このモデルの難点は、感染者を、他人にウイルスを感染させる存在として一律に扱っている点だ。だが、日本の現実の感染者は一律ではない。そこで、無症状や軽症のためPCR検査を受けずに通常の生活を続ける「市中感染者」と、PCR検査で陽性と判定されて自宅やホテルで隔離生活を送る「隔離感染者」の二つに感染者を分け、前者は周囲に感染させるが、後者は感染させないと仮定。さらに、陽性と判定されたらすぐに隔離されると仮定し、検査が増えるほど隔離感染者が増えて感染が抑えられる効果を考慮してモデルを改良し、解き直した。「接触機会削減」と「検査・隔離の拡充」という二つの対策によって新規感染者数が10分の1に減るのにかかる日数を計算したところ、検査数を現状に据え置いたまま接触機会を8割削減すると23日、10割削減(ロックアウトに相当)でも18日かかるとした。一方、検査数が倍増するなら接触機会が5割減でも14日ですみ、検査数が4倍増なら接触機会をまったく削減しなくても8日で達成するなど、接触機会削減より検査・隔離の拡充の方が対策として有効であることを数値ではじき出した。国は1日のPCR検査の能力を2万件まで拡充できるとしているが、実施数は最大9千件にとどまる。小田垣さんは「感染の兆候が一つでも表れた時点で隔離することが有効だろう。接触機会を減らす対策はひとえに市民生活と経済を犠牲にする一方、検査と隔離のしくみの構築は政府の責任。その努力をせずに8割削減ばかりを強調するなら、それは国の責任放棄に等しい」と指摘している。現実に実験したり調べたりすることが難しい状況で、モデル計算によって現実を再現するのがシミュレーションだ。一部の実測データをもとに全体を推測したり、どのような対策が最も効果的かを推定したりするのに使われる。国がコロナ禍を乗り切る政策判断にあたって根拠とするシミュレーションは、厚生労働省クラスター対策班が担う。1日の専門家会議では、同班が算出した「実効再生産数」のグラフが初めて示された。実効再生産数は、「ひとりの感染者が周囲の何人に感染させるか」を示す数字で、政策判断の目安として注目される。その数値の妥当性はどうか。シミュレーションは使うモデルやデータ、前提条件によって結果が大きく変わる。国の公表する新規感染者数や検査数などのデータは、最新の結果を反映していなかったり、すべての感染者を網羅できていない可能性があったりするなど信頼性に難がある。そのような中で、計算結果の正しさを主張するなら、計算手法や使う数値などの情報を公開すべきだが、これまで明らかにしていない。シミュレーションの妙味は、データ不備などの悪条件下でも、起きている現象の本質を捉えることにある。今回、小田垣孝・九州大名誉教授の結果は、「検査と隔離」という感染症対策の基本の重要性を示した。その徹底によって感染者数を抑え込んだ韓国の事例をみても、意義の大きさは論をまたない。PCR検査の件数がなかなか増えなかった日本では、市中感染者の実像を十分につかめていない。4月7日に緊急事態宣言が出て以降、国は「行動自粛」によって時間をかせぎ、その間に検査を拡充して医療態勢を整備し、次の波に備える作戦を取った。全国民を巻き込む施策を続ける以上、政策判断が恣意的であってはならない。西村康稔経済再生担当相が4日の会見で、今後の政策判断として「科学的根拠をもとに、データに基づいて」を強調したのはこうした理由からだろう。国のシミュレーションはクラスター対策班が一手に握る。詳しいデータの早期公開を実現し、他の専門家の試算も交えながらオープンな議論を進めるべきだ。その過程を経ずして「科学」をかたってはならない。

*1-2-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200510&ng=DGKKZO58917170Z00C20A5EA3000 (日経新聞 2020.5.10) 新型コロナ 政策を聞く〈PCR検査〉 国指定拠点に集約を 自民・衆院議員 国光文乃氏(くにみつ・あやの 東京医科歯科大院修了、内科医。厚労省で感染症対策などを担当。岸田派。衆院茨城6区、41歳)
 日本のPCR検査の数が海外に比べて少ないのは、欧州などが軽症者を対象とするのに対し日本は重症者から検査するためだ。軽症者らが受けられていない恐れはある。国が「37.5度以上の発熱が4日以上続く」などとしてきた受診の目安を緩める方針は評価するが、実際に検査するかは医師の判断だ。国は他の病気と同様に医師の検査基準を示してほしい。医師が検査すべきと判断したら保健所につなぐ。保健所は4日以上の発熱などの症状がなければ検査しない例があった。保健所が医師の判断を尊重する仕組みも必要だ。米国や韓国などで普及するドライブスルー方式は短時間で効率は良い。日本も一部の医師会や自治体が導入しており検査拡充の一助になる。国が地域ごとのPCRセンターを指定して検査を集約し、かかりつけ医がそこを紹介する体制がより効率的だろう。民間の検査機関を使う場合は病院から検体を送るのに2日など時間がかかる。民間は国指定のPCRセンターに協力すべきだ。医師ら法令で認める担い手で検査し切れない懸念はある。PCR検査以外でも最低3~4時間で終わる「LAMP法」などの導入を支援すべきだ。関連法令を緊急に改正し条件や期限付きで担い手を広げるのも一案だ。

*1-2-2:https://www.nikkei.com/paper/related-article/?R_FLG=1&b=20200510&be=・・ (日経新聞 2020.5.10)  コロナ検査 機能不全 結果まで1週間も 民間拡大カギ
 新型コロナウイルスに感染しているかどうかを判断するPCR検査の体制が感染者の拡大傾向に追いつけていない。検査の実施が滞っており、発症から陽性が確定するまでの期間が1週間と長期化し始めた。検査の機能不全を背景にした陽性判明の遅れは重症化リスクを高めるほか、潜在的な感染者と他者との接触機会を増やしかねない。医療崩壊を避けながら感染拡大を防ぐためにも、国による民間への検査委託の拡大や簡易検査の後押しが必要だ。日本経済新聞がコンサルティング会社、ジャッグジャパン(東京)が収集した陽性事例のデータを基に分析したところ、発熱やせきなど新型コロナウイルスの症状が出てから検査で陽性が確定するまでの期間は、7日移動平均で4月18日時点が7.3日と4月初旬から1.8日延びた。感染者数が拡大し検査を迅速にこなせなくなっているもようだ。厚生労働省は、重症化する人は発症から7日以降に肺炎症状が悪化するとしている。検査体制の強化が課題となるなか、民間への検体検査の委託拡大が急務だ。4月中旬以降、PCR検査の実施数は全国で1日当たり8000件前後が続く。うち民間検査会社の受託は2000件ほどで、残りは国立感染症研究所(東京・新宿)や地方衛生研究所などの公的機関だった。民間検査数は2月下旬まではゼロの日もあった。みらかホールディングス(HD)など国内の主要な検査会社の検査能力の合計は1日当たり約4000件とまだ余裕がある。各自治体の指定病院は、検査を民間ではなく地方衛生研究所に委ねる傾向が目立つ。「感染症は国が担うものだとの意識が強い」(検査会社)。長野では県が優先度に応じて民間か行政かの検査委託先を決める方針だが、こうした調整に乗り出す自治体はまだ少ない。民間が主に担ってきた軽症者の検体検査が増えにくい問題もある。現状では、熱が出て気分が悪いといった程度ではすぐに検査を受けられない。京都大学病院は15日、院内感染予防の視点から「無症状であっても公費でPCR検査を受けられるようにすべきだ」との声明を出した。香港や韓国では簡易キットも駆使した検査の大量実施が進む。日本でも楽天が20日、新型コロナウイルスの感染の可能性が分かる自宅でできる検査キットを発売した。ただ日本医師会が22日に「採取の方法が不適切であれば結果は信頼できず混乱を招く」との意見を出すなど医師を介さない検査は普及に壁がある。安倍晋三首相は6日、PCR検査の1日当たりの能力を2万件に倍増すると表明したが、進捗は遅く政府でも危機感が高まりつつある。「全国で同様の取り組みが広がるよう支援する」。加藤勝信厚労相は23日、東京都新宿区に新設されたPCR検査センターを視察した。検体検査はみらかの子会社に委託する。自民党の塩崎恭久元厚労相は「政府がクラスター(感染者集団)潰しを重視しすぎて検査体制の強化が後手に回った」と指摘している。

*1-2-3:https://www.kahoku.co.jp/special/spe1211/20200501_08.html (河北新報 2020年5月1日) PCR検査陽性判明まで最長16日 宮城県内88人、経路不明者は平均8日
 宮城県内で確認された新型コロナウイルス感染者88人を見ると、発症からPCR検査の結果が出るまでの最長期間は16日だった。発症から結果確定までをゼロ日とカウントした無症状者を含む全体の平均は6.6日。濃厚接触者は比較的早く検査を受けられたが、感染経路が不明な人ほど検査まで時間を要する傾向がある。感染経路が判明した濃厚接触者らに限れば平均5.5日(無症状者8人含む)で、経路不明者だけの平均は8.0日だった。経路不明の場合でも、東京から仙台市に引っ越した人や外国人の場合(計4人)は3~5日だった。陽性判明まで最も時間がかかったのは仙台市の20代男性。3月27日に発熱し、帰国者・接触者相談センター(保健所)の紹介で一般の医療機関を受診後、同30日に熱が下がった。4月9日に家族の感染が分かり、11日に陽性と判定された。家族の感染が判明しなければ、男性は検査を受けられなかった可能性が高い。経路不明の仙台市の50代女性は医療機関を2カ所回った後、相談センターから紹介された一般の医療機関の求めで検査を受けた。陽性判明まで9日かかった。感染者の初期症状は発熱、悪寒、倦怠(けんたい)感、せき、鼻づまり、関節痛、味覚や嗅覚の異常など多様。風邪の症状に似ており、無症状のケースもある。国が受診・相談の目安として出した「37.5度以上の熱が4日以上」に当てはまらない感染者が少なくない。

*1-2-4:https://digital.asahi.com/articles/ASN555QVWN54UTIL02Q.html?ref=mor_mail_topix1 (朝日新聞 2020年5月5日) 「不十分なPCR検査体制、日本の恥」 地方からの異論
 国の専門家会議が、対応が不十分だったとようやく認めた新型コロナウイルスのPCR検査体制。緊急事態宣言の解除に向けても、検査による現状把握は重要なカギだ。体制強化が進まず、検査を受けるべき人が受けられない状況に異を唱えてきたのは、現場をつかさどる地方のリーダーたちだった。
●国の専門家会議を痛烈に批判
 厚生労働省の発表によると、4月下旬の国内のPCR検査件数は1日約7千~9千件ほど。安倍晋三首相は4月6日に、PCR検査の実施能力を1日2万件に増やす方針を示したが、約1カ月たっても一度も1万件に達していない。4月1日の記者会見で「日本ではコミュニティーの中での広がりを調べるための検査はしない」と述べていた専門家会議の尾身茂副座長は、5月4日の会見で「確かに日本はPCRのキャパシティーを上げるということが、他の国に比べて遅れた」と認める一方で「死亡者のようなものは、だいたい正しい件数がピックアップされている」とも述べた。「PCR検査の不十分な体制は日本の恥」「惨憺(さんたん)たる状況」。現状を強く批判し、検査拡充の必要性を直言してきたのが、山梨大の島田真路(しんじ)学長(68)だ。島田学長は2002~03年の重症急性呼吸器症候群(SARS)流行の際、同大医学部付属病院の感染対策委員長を務めた。今回の新型コロナに対して、付属病院はPCR検査の態勢を強化。クルーズ船ダイヤモンド・プリンセスの乗客ら計14人の患者を受け入れてきた。3月6日に搬送された意識障害のある20代男性については、翌日のPCR検査で陽性が判明し、「髄膜炎の原因が新型コロナである可能性が極めて高い」と発表した。同31日に心肺停止で救急搬送された0歳女児の感染が判明した際は、ただちに医師や入院患者ら50人余りを検査し、救急体制も見直した。島田学長は自らの経験を踏まえ、医療関係者向けのサイト「医療維新」に3~4月に、「山梨大学における新型コロナウイルス感染症との闘い」と題した論考を計5回執筆。大学のホームページにも掲載した。検査が増えない理由について学長は、国の専門家会議が2月下旬に「限られたPCR検査の資源を、重症化のおそれがある方の検査のために集中させる必要がある」と表明したためとし、「検査上限を世界水準からかけ離れた低値にとどまり続けさせる大失態を招来した」と強く批判した。「3月下旬まで(自治体の)地方衛生研究所・保健所が検査をほぼ独占してきた」とも指摘。最前線で闘い続けている職員たちに謝意を示しつつ、週末に検査件数が下がっている事実も挙げて、行政機関のみに依存する体制を「そもそも無理筋」とした。専門家会議は5月4日の提言で保健所の体制強化を掲げたが、島田学長は論考の中で、早急な立て直しのためには、民間検査会社と地方の国立大学が大きな役割を担うべきだと主張した。さらに「未曽有の事態の今だからこそ、権威にひるまず、権力に盲従しない、真実一路の姿勢が全ての医療者に求められている」と訴えた。島田学長は4月30日の朝日新聞の取材に対して、国内の現状について「市中感染が広がり、原因不明で亡くなっている人もいるが、検査が少ないので実数がつかめていない」と指摘。「感染の疑いのある人が広く検査を受けられていない。国が検査を増やすと決めたなら、方針を変えたとはっきり自治体に伝え、マインドチェンジをする必要がある」と述べた。山梨大では、県内の検査体制拡充に向け、8日からドライブスルー方式の検査を始める予定だ。
●和歌山県、当初から異議
 「37・5度以上の熱が4日以上続くなら相談を」。新型コロナの受診について国が2月から示してきたこの目安に、当初から異を唱え、積極的にPCR検査を実施することで早期発見をめざしたのが和歌山県だ。仁坂吉伸知事は、県内の病院などで感染が確認された2月から、自ら記者会見に対応。「早期に発見し、感染が他に広がらないようにすることが大事。家にいることで、二次感染をさせてしまう可能性や重症化する可能性もある」と指摘し、自宅待機を推奨する国の姿勢に異論を唱えてきた。県では、発熱などの症状がある場合は、早めにかかりつけ医などを受診するよう呼びかけている。X線で肺炎像が確認されるなど、医師が必要と判断した場合はPCR検査を実施。陽性の場合は濃厚接触者らに対してもPCR検査し、感染者の早期発見に努めてきた。県内で確認された感染者は4日までに62人。PCR検査を受けた人は約3200人で、陽性率は約1・9%にとどまる。和歌山県では4月28日、自宅で死亡した60代男性について、死後に感染が確認された。死亡の約1週間前から親族に体調不良を訴えていたが、医療機関への相談はなかったという。仁坂知事は「『4日間は自宅待機』という情報をもとに受診をしなかったのならば、(方針を決めた専門家や、方針を流し続けたメディアに対して)怒りを感じる」と訴え、「受診を我慢しないでほしい」と改めて呼びかけた。県によると、仁坂知事は4月29日にあった全国知事会のウェブ会議でも「医療崩壊が発生していない県では、医者に行き、早期発見した方が医療崩壊を食い止めることができる」と主張した。
●山梨大学長「マインドチェンジが必要」
 山梨大の島田真路学長に4月30日、国内のPCR検査の現状についてどう見ているか聞いた。
―感染者の実態はつかめていると考えるか
 市中感染が広がり、原因不明で亡くなっている人もいるが、検査が少ないので実数がつかめていない。危機感を持っている。
―首相は検査を増やすと言っているのに、なぜ検査が増えないのか
 保健所が相談を受け、帰国者・接触者外来のドクターが診断して、という2段階の「制限」がある。ここで実質的に絞られ、感染の疑いのある人が広く検査を受けられていない。このスキームが変わっていない。国が増やすと決めたなら、自治体へはっきり方針を変えたと伝え、マインドチェンジをする必要がある。東京ではかかりつけ医の診断で検査できるような体制ができたが、医師会の協力も必要。でも、検査中に感染した場合の補償もないため、積極的にやる動きは広がっていない。
―週末や連休に検査が減ることが心配?
 そう思う。どのように医療や検査を維持するか。スタッフが減るのは事実で、役所や大きな病院では難しい面もあるが、人を増やして勤務シフトを見直すことも必要かもしれない。
―感染者が50人を超えた山梨県内の状況をどうみるか
 重症者が少なく、感染者数はやや落ち着いているが楽観できない。検査を今より10倍近く増やしてほしい。山梨大としてはドライブスルーPCR検査で貢献するが、各地域に検査場の拠点を設けてやるべきだ。

*1-3-1:https://www.bbc.com/japanese/51555374 (BBC 2020年2月20日) 「ダイヤモンド・プリンセス」から下船始まる 新型コロナウイルス陰性の乗客
 横浜港で19日午前、大型クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」で隔離されていた乗客のうち、新型コロナウイルス感染が確認されなかった約500人の下船が始まった。多くの乗客は今月5日から14日間の健康観察期間が19日で終了した。「ダイヤモンド・プリンセス」では新型コロナウイルス(COVID-19)に乗客乗員542人が感染した。中国大陸の外では最多の集団感染となった。今回下船が許可された乗客は、ウイルス検査で感染が確認されず、症状の出ていない人たち。日本メディアによると、対象者全員が下船し終わるのは21日の見通し。ただし、検査で陽性となった人と同室にいた人たちは検査で陰性となっても、健康観察期間の終了日が延びるため、隔離期間が続く。横浜港で取材するBBCのローラ・ビッカー記者によると、ダイヤモンド・プリンセスを降りた乗客たちはそのまま、待機していたバスやタクシーに乗ってその場を離れた。ダイヤモンド・プリンセスの乗客の出身地は50カ国以上で、世界的な感染拡大の発生源になる懸念が出ていると、ビッカー記者は指摘する。日本当局は18日には、船内で新たに88人の感染が確認されたと発表。これによって確認された船内の感染者数は542人になった。アメリカをはじめ複数の国はすでに、船内の自国民を政府チャーター機で帰国させたり、数日中に帰国させたりする予定。新型コロナウイルス大流行の中心地となった中国では、19日までに2004人が死亡した。感染が確認された人の数は中国大陸で7万4185人に達し、それ以外の国・地域では700例以上が確認されている。香港政府は19日、感染していた70歳男性が死亡したと発表した。香港での死者は2人目。中国大陸以外ではほかに、フランス、日本、フィリピン、台湾でそれぞれ1人死亡している。
●船内の感染対策を批判する専門家も
 ダイヤモンド・プリンセスから香港で降りた乗客の感染が確認された後、船は今月5日から横浜港で隔離状態に入った。乗客は当初、それぞれの客室内にとどまることを余儀なくされ、後に時間などを制限した状態でデッキに出ることが認められた。5日から2週間の観察期間で乗客乗員3711人のうち感染者が542人に達したことから、船内の感染対策を疑問視する専門家の声も出ている。神戸大学医学研究科感染症内科の岩田健太郎教授は18日、ダイヤモンド・プリンセスに同日に乗船して見た状況についてYouTubeに投稿したビデオで報告した。岩田教授は、ウイルスがまったくない安全区域(グリーンゾーン)とウイルスがいるかもしれない区域(レッドゾーン)を、船内で明確に区別していないと指摘。「感染対策は悲惨な状態」だと批判している。岩田教授はさらに、エボラ出血熱や重症急性呼吸器症候群(SARS)の大流行の最中に現場にいた時よりも、客船内の方が怖かったと述べた。この動画について教授は20日朝、ツイッターで「動画は削除しました」と報告したが、同日にはビデオ経由で東京の日本外国特派員協会で記者会見し、船内の感染対策の不備を重ねて指摘した。一方で、日本の当局者は自分たちの対応は適切だったと反論。感染例の大半は隔離期間の前に起きたものだろうと説明している。また、船内のゾーン区分はできているなど、岩田教授に異を唱える声も出ている。アメリカ、カナダ、オーストラリア、イギリスの各国政府は、ダイヤモンド・プリンセスから政府チャーター機などで帰国した人たちに対して、さらに14日間の隔離措置をとる。韓国は、自国民以外はダイヤモンド・プリンセスの乗客の入国を禁止する方針を示している。

*1-3-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200510&ng=DGKKZO58917950Z00C20A5EA1000 () コロナ重症度、CTで判定 肺炎の症状で見極め、態勢整わぬPCR補う
 新型コロナウイルス感染症の重症度の判定にコンピューター断層撮影装置(CT)の画像診断が威力を発揮することがわかってきた。疑わしい例や軽症でもCT画像で肺炎を早期発見できる可能性があり、重症化リスクの見極めや入院の必要性などの判断の手助けとなっている。日本ではPCR検査の拡大が最重要の課題だが、CTの有効活用も求められる。「日本はPCR検査は少ないが、CTの数は世界的にみても多い。肺炎を起こすような重症例についての見落としは少ない」。新型コロナに関する政府の専門家会議の尾身茂副座長は、緊急事態宣言の延長が正式に決まった4日の記者会見でこう説明した。重症者の把握や対応などでCT検査が重要な役割を果たしているという。PCR検査がウイルスの遺伝子を検知するのに対し、CT検査はエックス線で肺などの様子を詳しく調べる。ウイルスが見えるわけではなく感染の有無の確定的な判断には使えないが、肺炎があればその程度や特徴がわかる。PCR検査の態勢が追いつかない中、多くの医療機関がCTを活用している。聖マリアンナ医科大学病院(川崎市)は感染の疑いのある患者らに対し、CT検査を実施。陽性の可能性があれば、PCR検査の結果を待たず専用病棟に移すなどの対応を進める。同大学の松本純一講師は「患者の約半数は新型コロナ感染に特徴的な画像所見がある」と話す。専門家でつくる日本医学放射線学会がこのほどまとめた提言では、PCR検査に置き換わるものではないとしつつ、当面の対応として入院などの判断にCT検査を活用することは「許容される」とした。特に症状が重い場合などは、優先的に診る患者を判断する「トリアージ」のためのCT検査を推奨するという。CT検査はPCR検査ではわからない「重症度」の見極めに役立つ。クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」の感染者を受け入れた自衛隊中央病院(東京・世田谷)は陽性でも無症状や軽症だった人の約半数にCT検査で肺に影が見つかり、うち3分の1で症状が悪化したことを報告した。聖マリアンナ医科大学病院も一部患者の重症化の予測にCT検査を活用している。発熱から数日内にCT検査で肺に影が見られる場合などに重症化リスクが高いと判断することがあるという。日本はPCRなどのウイルス検査で後れを取ってきた。政府の専門家会議によると、人口10万人あたりの検査数は187件で、数千件にのぼる海外の主要国に見劣りする。一方、CTの数は世界有数だ。経済協力開発機構(OECD)によると日本の保有台数は人口100万人あたり約112台。50台未満の米欧各国を大きく上回り、海外に比べてもCT検査を受けやすい。画像診断の専門医が少ないのが課題だったが、足元ではオンラインのサービスの利用が拡大している。医療機関から届く画像の遠隔診断支援を手掛けるドクターネット(東京・港)では、2月中旬から新型コロナによる肺炎の疑いのある画像が寄せられ、4月にはその数が1日100件を超すようになった。CT検査には課題もある。特に要注意なのが検査室での感染拡大のリスクだ。入念な消毒などが欠かせない。新型コロナ感染症以外にもCT検査が必要な人は大勢おり、感染者が増えると対応が追いつかなくなる。日本医学放射線学会も「全ての新型コロナの患者にCT検査を勧めているわけではない」と強調する。海外では中国の医療機関などが人工知能(AI)を取り入れた画像診断を活用した。「CT大国」の利点をどう生かすか、日本の新型コロナ対応の鍵となる。

<実用化の壁>
*2-1:https://news.tv-asahi.co.jp/news_society/articles/000183477.html (テレ朝 2020/5/7) 「唾液でPCR検査を」日本医師会 実用化を申し入れ
 日本医師会の横倉義武会長は臨時の記者会見で、唾液で判定するPCR検査法の実用化を訴えました。日本医師会・横倉義武会長:「唾液を使ったPCR検査については、加藤厚生労働大臣に速やかに実用化をして頂くよう今朝、申し入れをした」。横倉会長によりますと、唾液を検体として新型コロナウイルスへの感染の有無を判断する検査方法については、北海道大学で研究が進められています。鼻の奥や喉から粘液を採取する方法よりも手軽で、医療関係者への感染リスクを減らすことが期待できるということです。

*2-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200505&ng=DGKKZO58781190U0A500C2NN1000 (日経新聞 2020.5.5) ロシュの抗体検査薬、米許可 正確性「ほぼ100%」 独が大量調達へ
 スイス製薬大手のロシュは3日、新型コロナウイルスの抗体検査薬が米食品医薬品局(FDA)から緊急使用許可を得たと発表した。同社は抗体を持っているかどうかを判定する確率が「100%に近い」とし、日本でも5月中に承認申請する方針。抗体検査の精度が高まれば、免疫を持つ可能性のある人を特定しやすくなり、経済活動の速やかな正常化に役立つとの見方がある。ロシュは約5200人分を検査し、PCR検査で新型コロナの感染が確認された人を14日後に検査したところ、100%で抗体が確認されたという。1時間当たり最大300人の測定が可能とする。各国の関心も高く、今月末にも欧米で数千万回分を提供する。ドイツのシュパーン保健相は4日、月内にロシュの抗体検査薬300万個を調達すると表明した。6月以降は月500万個ペースに増やす。簡易検査キットの場合、一般的な風邪の原因となるウイルスとコロナウイルスに対する抗体とを間違う可能性もあるが、ロシュのキットは新型コロナだけを99.8%の精度で特定できるとされる。簡易キットで生じる「見逃し」を防げれば、抗体を持った人の割合を特定でき、外出制限などの緩和も検討しやすくなる。地域ごとに事態が収束したかを判断する材料にもなる。現在、中国や英国などでは抗体検査を使って感染の広がりを調べる研究が進むが、ほとんどがイムノクロマト反応(抗原抗体反応)という仕組みを使った簡易検査キットだ。プレートの上に血液を1滴程度垂らすと、血液中の新型コロナに対する抗体の有無を調べられる。ただ精度が高くないため、なかなか経済活動の再開を判断するまでには至らないのが実情だ。

*2-3:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/520947 (佐賀新聞 2020.5.9) 抗原検査キットを13日に承認、新型コロナ、15~30分で判定
 政府は9日、新型コロナウイルスを患者の検体から15~30分で検出する「抗原検査」のキットを13日に薬事承認する方針を固めた。PCRによる検査が数時間かかるのに対し、医療現場で15分程度で判定が可能になるため、検査態勢の強化に貢献しそうだ。ただ精度はやや劣るため、陰性が出た場合は、念のためPCRによる検査を実施する見通しだ。開発した「富士レビオ」(東京)が4月に申請していた。加藤勝信厚生労働相は今月8日の衆院厚労委員会で「来週中に判断する。医療現場で使えるようになる。メーカーによると、かなりの数が提供され得る」と述べた。抗原検査はインフルエンザ検査でも広く使われる。ウイルス特有のタンパク質(抗原)を狙ってくっつく物質を使い、患者の検体に含まれるウイルスを発見する。病院で鼻の奥の粘液を取れば、装置のある地方衛生研究所などへ運ばずに、その場で調べられる。ただウイルス量の少ない患者は陰性となる可能性もある。加藤厚労相は「見落としもあるのでPCRで補っていく。一番いい組み合わせで活用を考えていく」と述べた。その上で、救急医療や手術前など、直ちに判断する必要のある医療現場ではツールとして価値があるとの考えを示した。安倍晋三首相は抗原検査についてPCR検査の前段階として活用し、検査態勢の強化を図ることに意欲を示している。

*2-4:https://mainichi.jp/articles/20200501/k00/00m/040/244000c (毎日新聞 2020.5.1) 感染全容知りたい、でも精度に難点、そもそも免疫できない? 各国で進む抗体検査、遅れる日本
 新型コロナウイルスの感染状況を分析するため、感染した痕跡を調べる抗体検査が各国で相次ぐ。米ニューヨーク(NY)州では住民の15%が感染したことをうかがわせるデータも。日本も東京と東北地方で調査が進むが、検査キットの精度などを巡り課題も指摘されている。「大規模な抗体検査と診断で、市民は安全に仕事に戻れる」。感染者が30万人にも上るNY州のアンドリュー・クオモ知事は4月19日の記者会見で、抗体検査の意義をこう強調した。同州は毎日2000人ずつ検査する予定で、トランプ米大統領も支援を表明。23日に発表された3000人分の結果では13.9%が抗体を保有していた。州全体で約270万人が既に感染している計算で、確認された感染者数の約10倍に上る。さらに、27日には保有率が14.9%に上昇。クオモ知事は「割合がどうなっていくのかを知りたい。決定を下すためのデータになる」と期待する。

*2-5:https://www.tokyo-np.co.jp/article/world/list/202005/CK2020050802000253.html (東京新聞 2020年5月8日) 医療従事者 陽性割合低く NY州抗体検査 マスクなど効果
 新型コロナウイルス感染被害が深刻な米東部ニューヨーク州のクオモ知事は七日の記者会見で、州内の医療従事者に対して感染歴を調べる抗体検査を行った結果、陽性の割合は一般市民より低かったことを明らかにした。クオモ氏は、医療従事者が着用しているマスクや防護服に感染防止の効果が見られるとして「とても良いニュースだ」と述べた。検査は約二万七千人の医療従事者に実施。ニューヨーク市では陽性の割合は約12%で、一般市民の約20%と比べて低かった。他の地域でもおおむね同様の傾向が出た。州当局によると、州内の感染による死者は前日比二百三十一人増の二万八百二十八人。入院中の患者数の減少は続いている。ニューヨーク市のデブラシオ市長は七日、来週から来月初めにかけて、希望する市民に対して十四万件の抗体検査を無料で行うと発表した。

<ワクチン>
*3-1:https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20200502-00000530-san-n_ame (産経新聞 2020.5.2) 米、年内にワクチン開発、量産計画 新型コロナ 官民で並行整備
 米国が新型コロナウイルスのワクチン開発を急いでいる。政府横断で進める「ワープ・スピード作戦」と呼ばれる計画は、有望なワクチン候補を手がける企業が、開発途中から生産体制を整備できるよう支援。年内に数億本の量産体制を目指す。世界的に競争が過熱する開発に国の威信をかけて臨む。米メディアに報じられた同作戦について、トランプ米大統領は4月30日の記者会見で、「責任者は私だ」と存在を認めた。ワクチンの安全性や有効性を確かめる臨床試験(治験)は通常1年~1年半を要するが、約8カ月で医療現場に投入する計画は「大げさではない」と述べ、スピード開発を主導する姿勢をみせた。すでに米国生物医学先端研究開発局(BARDA)がジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)と組んで、約10億ドル(約1060億円)を投じて開発を本格化させている。米バイオ企業モデルナにも最大4億8000万ドルを拠出した。米政府は資金拠出を通じて、ワクチン開発と生産体制の整備を一体的に支援。官民が連携し、医療現場への投入が承認されたワクチンを、早急に量産できるよう後押しする。企業にとっては、ワクチン投入が認められなければ設備投資が無駄になるリスクがあるが、政府支援を背景に「リスクを前提に先行して生産を始める」(米政権の新型コロナ対策チーム幹部)ことができる。J&Jは「米国内の施設の新設も含め、ワクチン生産体制を増強する」と表明した。世界保健機関(WHO)によると、新型コロナのワクチン候補は現在、約50ある。ワクチンや特効薬の開発に成功すれば、経済活動を停滞させる外出制限などの対策をとる重要性がなくなるだけに、欧州勢や中国も国力をあげて開発を進めている。医薬品の承認を担当する米食品医薬品局(FDA)のゴットリーブ元長官は、米紙への寄稿で「最初にゴールした国がいち早く経済を再建させ、国際的な影響力も高められる」として、米国が国際競争を制する必要性を強調した。

*3-2:https://www.businessinsider.jp/post-212222 (Bbusiness Insider 2020.5.1) 「早く、大量生産できる」新型コロナ国産ワクチン、年内供給を目指す。開発者に最新状況を聞いた
 世界中で流行が続く、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)。その治療薬やワクチンの開発は急務とされている。世界保健機関(WHO)の報告では、世界で70を超えるワクチンの開発プログラムが進んでいる。日本でも3月5日、大阪大学と大阪大学発のバイオベンチャー「アンジェス」が、従来のワクチンとは異なる「DNAワクチン」という手法を用いたワクチンの開発に取り組むことを表明。3月24日には、動物実験用の原薬の開発に成功している。アンジェスの創業者であり、DNAワクチンの開発に取り組む大阪大学大学院医学系研究科臨床遺伝子治療学の森下竜一教授に、DNAワクチンの開発状況、そして今後の対コロナ戦略について話を聞いた。
●世界初のプラスミドDNAを使った治療薬のノウハウを応用
— 森下先生はどのような研究をされているのでしょうか?
 森下竜一教授(以下・森下):私は、大阪大学で血管を再生させるための遺伝子治療薬を研究していました。その実用化のために設立した会社がアンジェスです。そこで2019年、大腸菌を培養することで得られる「プラスミドDNA」(環状のDNA)に、血管の再生に利用できる遺伝子を組み込んだ治療薬「コラテジェン」の実用化に成功しました。意図した遺伝子を組み込んだプラスミドDNAを体内に投与することで、体内で治療に必要とされる物質がつくられます。 厚生労働省から販売の認可が降り、世界初のプラスミドDNAを使った遺伝子治療薬となりました。他にも、プラスミドDNAをベースに、血圧を上げるホルモン(アンジオテンシンII)に対する抗体をつくるDNA治療薬の開発にも取り組んでいます。高血圧のDNAワクチンです。2020年3月には、オーストラリアで臨床試験を開始したことを報告しました。 来年には、結果が出てきます。
—なぜ、今回新型コロナウイルスのワクチン開発レースに参加できたのでしょうか?
森下:アンジェスは以前、アメリカのバイオテック「バイカル」に出資していました。バイカルは、エボラウイルスや鳥インフルエンザウイルスに対するDNAワクチンを開発しており、鳥インフルエンザウイルスが流行しかけたときに一緒に仕事をしていたんです。そのときの開発ノウハウと、アンジェスが実際に世界ではじめてプラスミドDNAを用いた遺伝子治療薬を製作したノウハウがあったため、迅速に新型コロナウイルスのワクチン開発をスタートできました。
●新型コロナウイルス用DNAワクチン
 プラスミドDNAに新型コロナウイルスの表面にあるタンパク質の一部を作り出すような遺伝子を組み込み、体内に投与する。体内で目的のタンパク質が作られると、免疫システムはそのタンパク質を排除対象として認識する。その結果、ウイルスが体内に侵入してくると、表面にあるタンパク質を目印にして排除されるようになる。生産にはタカラバイオさんにも協力いただくなど、現在は複数の企業連合のような形で開発を進めています。人工知能(AI)を利用して、第2世代のDNAワクチンの開発にも着手しています。
●パンデミックに有効なDNAワクチン
—DNAワクチンと従来のワクチンの違いはどのような点ですか?
森下:インフルエンザワクチンなどの普通のワクチンは、不活化ワクチンや生ワクチンと呼ばれ、その開発にはウイルスそのものが使われます。弱毒化(あるいは不活化)したウイルスを有精卵に接種して、「抗原」(ウイルスがもつ、免疫反応を引き起こすタンパク質)をつくります。それを体内に入れることで、免疫を担う「抗体」ができるという仕組みです。この手法は確立されたものですが、開発までにウイルスを見つけてから6〜8カ月くらいかかります。 また、有精卵を使う以上、すぐに大量生産することができません。一方で、DNAワクチンは大腸菌を増殖させれば(プラスミドDNAを増やせるので)、簡単に増産することが可能です。値段が比較的安いというのも一つの特徴です。また、ウイルスそのものを使うのではなく、ウイルスの遺伝情報をプラスミドに挿入して利用しているため、ウイルスのゲノム情報が公開されればすぐに開発に着手できる上、安全だというのも大きなポイントです。早期に大量生産でき、さらに安いという点が大きなメリットといえます。新型コロナウイルスのDNAワクチンとして、アメリカのバイオテクノロジー企業のモデルナが新型コロナウイルスのDNAデータが公開されてから42日でRNAワクチン(DNAワクチンと似たタイプのワクチン)を作りました。アンジェスは3月5日に開発を発表して、3月24日にはDNAワクチンが完成しました。20日間で作れたのは、世界最速です。
— ワクチンには副作用がつきものです。どういったものが考えられますか?
森下: 副作用は2つに分けて考えられます。1つは、ワクチンで免疫をつけること自体に対する副作用。もう1つは接種するワクチンの種類ごとに生じる副作用です。どんなワクチンでも、接種する際にADE(Antibody Dependent Enhancement)という現象が生じることがあります。ウイルスに感染しないためのワクチンを接種することで、逆にウイルスに感染しやすくなってしまう現象です。動物実験や一部のワクチンの臨床試験で報告されていますが、詳しいメカニズムは分かっていません。どういったワクチンを接種しても起こるため、そのリスクを踏まえてワクチンの接種対象を選ぶ必要があるでしょう。若い人が新型コロナウイルスに感染してもあまり重症にならないのであれば、ADEが生じるリスクを避けてワクチンを接種しないほうが良いかもしれません。一方、高齢者や合併症(既往歴)を持つ人など、新型コロナウイルスに感染した場合の致死率が高い人は、ADEが生じる割合を考慮してもワクチンを接種するメリットが大きいのではないでしょうか。また、感染する可能性が高い医療関係者に対するワクチンの接種も、デメリットを大きく上回るメリットがあるでしょう。
— 従来のワクチンとDNAワクチンで副作用に違いはありますか?
森下:生ワクチンや不活化ワクチンといった従来のワクチンは、ウイルスそのものを使うため、副作用としてウイルスの影響が出る可能性があります。また、ワクチン内にウイルスが混じる可能性もあります。一方、DNAワクチンについては、ほぼ副作用はないと思っています。2019年に販売を開始したコラテジェンという血管再生のDNA治療薬でも、今回開発しているDNAワクチンと同じ仕組みを使っています。臨床試験では、比較対象となった方々との間で、DNA治療薬を使ったことで生じる重篤な副作用はみられませんでした。
— 確認できる範囲では大きな副作用はなさそうということですね。では一方で、DNAワクチンの効果は従来のワクチンと遜色ないのでしょうか?
森下:DNAワクチンが安全なのは間違いないですが、抗体を作り出す能力が若干弱いとされるのが懸念点です。だからこそ、抗体をつくる能力を上げるために、 ほかの企業と一緒に、第2世代のDNAワクチンの開発にも力を入れています。プラスミドに組み込む遺伝子を調整したり、ワクチンと一緒に投与する「アジュバンド」と呼ばれる物質や、DNAワクチンと相性の良い抗体誘導ペプチドの研究を進めたりしています。
— ワクチンを接種したあと、効果の持続期間はどの程度になるのでしょうか? インフルエンザのように、毎年打たなければ意味がないのでしょうか?
森下: コロナウイルスに対するワクチンは前例がないため、正直、実際にやってみないと分かりません。インフルエンザワクチンの効果は大体3カ月くらいです。仮にコロナウイルスに対するワクチンが半年程度しかもたないとすると、毎年のように打たなければならなくなるので、少し厳しくなりますね。
— その場合、抗体ができやすい他のワクチンを検討しなければならないということでしょうか?
森下:正直なところ、DNAワクチンなどの新しいワクチンは、パンデミックを一時的にしのぐためのものです。恒常的に打つようなものではありません。とりあえず社会生活を維持し、その間に治療薬や通常のワクチンの開発が追いついてくるための、リリーフ役でしかありません。DNAワクチンはパンデミック対策に向いているといえば向いていると思いますが、対策のメインとして長期間据えるのは厳しいと思っています。実は、SARS(重症急性呼吸器症候群、コロナウイルスが原因の感染症)が流行した時に、従来の方法ではワクチンを作ることができませんでした。その際の経験などから、有精卵を使ってワクチンを作る手法だと、コロナウイルスに対するワクチンを作りにくいのではないかという話もあります。これがもし本当なら、先行きはかなり暗いです。
●自国のワクチンは自国で。年内に10万人分を確保へ
— 今後、どのようなステップで臨床試験が進んでいくのでしょうか?
森下:今、動物での試験を実施しているところです。その結果をもとに、7月からヒトへの臨床試験が行われます。 最終的な実用化に向けた試験も9月から実施する予定です。年内には、医療従事者を中心に十数万人にワクチンを接種することを目標としています。
— 性急な臨床試験で、安全性は十分担保されるのでしょうか?
森下:当然安全性の試験はしっかりと進めます。また、すでにある程度安全性について確認済みのものを利用しているので、その面での心配は低いと考えています。アジュバンドなどを加えるにしても、もう臨床現場で使われている物質、承認されている物質を使う予定です。
あらためて全く新しいものを開発すると、その承認に時間がかかりすぎてしまいますから。
— 臨床試験で効果が思うように出なければ、開発のやり直しになるのでしょうか?
森下: 第1世代でどの程度効果があるのかは分かりませんが、パンデミック用のワクチンの開発では、どうしてもそうした問題が起こります。また、仮に第1世代のワクチンを投与したときにできる抗体が少なかったとしても、ある程度の効果を見込んで接種を進めていくことになると思います。また、効果が思うように出なくても、バックアップとして準備している第2世代のDNAワクチンがあります。第2世代の開発は、2021年の前半に間に合えば良いかなというくらいです。
— 世界中で開発が進められていますが、日本のワクチンはどういった立ち位置なのでしょうか?
森下:モデルナやイノビオなど、アメリカの企業ではすでにヒトでの臨床試験に入っているところもあります。ただし、アメリカで仮にうまくワクチンができたとしても、それが日本にやってくるまでには時間がかかります。まずは、自国が優先になるはずです。加えて、仮に技術を提供してもらい日本で同じものをつくろうとしても、まったく同じ結果にはなりません。そういう意味では 複数のワクチンを並行して開発し続けるしかないと思います。少なくとも、自国でパンデミックに対応できる体制を整備しないといけません。

*3-3:https://www.bbc.com/japanese/52540664 (BBC 2020年5月5日) ワクチン開発で世界が協力、8500億円拠出 マドンナさんも
 新型コロナウイルスに対するワクチンや治療薬開発に向けた国際会議が4日開かれ、参加者らが総額80億ドル(約8500億円)以上の拠出を約束した。欧州委員会の呼びかけで行われた会議には30カ国以上が参加。国連や慈善団体、研究機関なども支援を発表した。欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長は、これらの資金が前例のない国際協力の端緒になると説明。一方で、資金はさらに必要になるだろうと警告した。この会議は欧州委員会のほか、イギリス、カナダ、フランス、イタリア、日本、ノルウェー、サウジアラビアが共同で主催。一方、アメリカとロシアは参加しなかった。昨年12月に新型ウイルスが発生した中国は、EU大使が代表として出席した。欧州連合(EU)によると、今回集まった資金のうち44億ドルがワクチン開発に、20億ドルが治療研究に、16億ドルが検査キットの製造に充てられるという。会議では、欧州委員会とノルウェーが共に10億ドルずつの拠出を約束。フランスとサウジアラビア、ドイツはそれぞれ5億ユーロ(約580億円)を、日本は850億円以上を支援する。また、米歌手マドンナさんも110万ドルの寄付を約束したという。開会の演説でフォン・デア・ライエン委員長は、「真の国際的な挑戦」のために誰もが資金を拠出すべきだと呼びかけた。「5月4日という日は世界中が協力した日として、新型ウイルスとの戦いの転換点になるだろう」。「協力者はたくさんいるが、目標はひとつ、このウイルスを倒すことだ」。ボリス・ジョンソン英首相も、専門知識を「共有すればするほど」、科学者はより早く「ワクチン開発に成功するだろう」と語った。自身もCOVID-19に感染し、一時は集中治療を受けていたジョンソン首相はこの席で、イギリスが3億8800万ユーロ(約515億円)を拠出すると発表した。共同声明で各国首脳は、今回の支援は「科学者と規制当局、産業と政府、国際機関、慈善団体、医療の専門家らによる前例のない国際協力の端緒になる」と説明。「世界が世界全体のためにワクチンを開発できれば、21世紀を象徴するグローバルな公益となるだろう」と述べている。この国際会議では、世界保健機関(WHO)の活動を支持する署名も行われた。WHOをめぐっては、アメリカが批判を強めている。
●ワクチンの実用化は来年半ばか
国連は、これまでの生活を取り戻すにはワクチンが不可欠だとしている。現在、世界各地でワクチンの開発プロジェクトが進められている。しかし多くの支援をもってなお、どの開発が成功し、効果を出すのかを見極めるには時間がかかる。専門家の大半は、ワクチンの実用化は、新型ウイルスが初めて確認されてから12~18カ月後に当たる2021年半ばごろになるだろうとしている。

<治療薬>
*4-1:https://www.nishinippon.co.jp/item/n/607425/ (西日本新聞 2020/5/11) アビガン投与「福岡県方式」構築 47機関、医師判断で早期対応可能に
 福岡県医師会は11日、新型コロナウイルス感染症への効果が期待される新型インフルエンザ治療薬「アビガン」を、主治医が重症化の恐れがあるなどと判断した場合、軽症でも早期投与できる独自の体制を整えたと発表した。県内47の医療機関が参加を表明しており、県医師会は「『福岡県方式』の構築で新たに投与できる患者はかなり多く、影響は大きい」としている。アビガン投与には、藤田医科大(愛知)などの観察研究への参加が必要。県医師会が一括して必要な手続きを行ったことで、これまで未参加だった27機関が加わり、計47機関で投与できるようになった。今後も増える見通し。主に重症や中等症の患者に投与されていたが、「主治医等が重症化の可能性を憂慮する患者」を対象に明記したことで、主治医が必要と判断すれば軽症でも早期投与が可能としている。投与には入院が必要という。ただ、アビガンは動物実験で胎児に奇形が出る恐れが指摘され、妊婦や妊娠の可能性がある人などには使えない。肝機能障害などの副作用も報告されており、患者への十分な説明と同意が必要となる。新型コロナ感染症の治療薬としては、厚生労働省が7日、米製薬会社が開発した「レムデシビル」を国内で初承認。安倍晋三首相はアビガンについても今月中に承認する意向を示している。

*4-2:https://digital.asahi.com/articles/ASN563RVMN55UHBI03L.html (朝日新聞 2020年5月6日) コロナ感染歴ある子どもに「川崎病」症状 欧米で相次ぐ
 新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、子どもに多い原因不明の難病「川崎病」に似た症例の報告が欧米で相次いでいる。多くが新型コロナの感染歴があり、大人でも似た症状の人がいる。新型コロナとの関連が指摘されている。米ニューヨーク市の保健局は4日、2~15歳の15人で「多臓器炎症型疾患」が確認されたと発表した。川崎病に似た症状で、高熱や発疹、腹痛、吐き気、下痢などがみられたという。そのうち10人が新型コロナのPCR検査や抗体検査で陽性が判明し、感染歴があることが分かった。いずれも亡くなってはいない。同じような症例は、英国やフランス、スペイン、イタリアなど欧州で相次いで報告されている。免疫の過剰反応で、血管に炎症が起き、血栓ができやすくなる。新型コロナに感染した大人からも見つかっている。世界保健機関(WHO)の感染症専門家マリア・ファンケルクホーフェ氏は、「新型コロナに感染した子どもの多くは症状が軽く、重症化する例は少ない。多臓器炎症を起こす例はとてもまれだ」と指摘。一方、ウイルスとの関連が疑われるため、現場の医師らで遠隔会議を開いて情報交換しているという。川崎病は1967年、旧日赤中央病院(東京都)に勤めていた小児科医の川崎富作さんが初めて報告した。全身の血管に炎症が起きる。疫学的にはアジア系、とくに日本人に多いとされている。日本での全国調査(2018年)では、患者の割合は0~4歳の人口10万人のうち360人程度で、致死率は0・03%となっている。遺伝的要因のほか、流行に地域性や季節性があるため、細菌やウイルスなどの感染が原因との説がある。

*4-3:https://doctorsfile.jp/medication/255/ (敗血症 2019/12/12) 順天堂大学医学部附属浦安病院 血液内科長 野口雅章先生
●概要
 感染症がきっかけとなって起きる、二次的な症状。具体的には、何らかの感染症を起こしている細菌などが増殖して炎症が全身に広がり、その結果、重大な臓器障害が起きて重篤になっている状態。敗血症を引き起こしたもととなる原因を見つけ、その治療を早期に開始しなければ、命に関わる危険もある。どんな感染症でも敗血症を起こす引き金になる可能性があり、特に、免疫力がまだついていない乳幼児や、高齢者、糖尿病などの慢性疾患やがんなどの基礎疾患がある人や、病気治療中で免疫力が低下している人は、感染症から敗血症を起こすリスクが高い。
●原因
 原因となる細菌として代表的なものに、連鎖球菌、ブドウ球菌、大腸菌、緑膿菌などが挙げられる。こうした細菌に感染することで、皮膚の化膿、肺炎などの呼吸器感染症や肝臓、腎臓、腸などの感染症など、さまざまな感染症が最初に起き、免疫力が低いとそこから敗血症が起きやすくなる。また、細菌だけでなく、インフルエンザウイルスなどのウイルスやカビなどの真菌、寄生虫などによる感染症も原因となり得る。カテーテルを挿入することによる尿路感染や、人工関節などを使用している場合も注意が必要。この他に、白血球の中の一種である好中球(こうちゅうきゅう)が減少する「好中球減少症」の状態だと、感染症にかかりやすくなり、敗血症を起こす可能性が高まる。好中球減少症は、遺伝性による先天的なものと、後天的なものがあり、抗がん剤による化学療法を受けているがん患者にもよく見られる。
●症状
 敗血症では何か1つの症状や兆候が出る、というようなことは基本的にはなく、障害が起きている臓器によって、さまざまな症状が起きる。初期の主な症状としては、悪寒を感じたり、全身のふるえや発熱(高熱になることが多い)、発汗などが見られたりすることが多い。症状が進行すると、心拍数や呼吸数の増加、血圧低下、排尿困難、意識障害などが生じてくる。重症化してしまうと、腎不全や肝不全といった臓器不全、敗血性ショックを招き、命を落とす危険が高まる。また、皮下出血が見られる場合は、播種性(はしゅせい)血管内凝固症候群(DIC)を併発した可能性があり、やはり重篤な状況である。
●検査・診断
 敗血症の原因となっている感染症を確認するために、胸部エックス線や全身CT検査などの画像診断を行う。また、血液検査や原因菌を特定するための培養検査も実施する。ただし、感染症治療のために抗菌薬が用いられている場合は、菌を培養できない可能性もある。感染症があり、その上で、意識障害がある、収縮期血圧が100mmHg以下、1分間の呼吸数 22回以上、の3つのうち、2つの要件を満たしていれば、敗血症の可能性が高い。確定診断のためには、さらに臓器障害の程度を調べる必要がある。
●治療
 感染症の原因となっている病原体を早急に特定して、治療を開始する。薬物治療であれば、細菌の場合は抗菌薬、ウイルスの場合は抗ウイルス薬、真菌の場合は抗真菌薬、寄生虫の場合は抗寄生虫薬を用いる。感染症の状態によっては、外科的治療が必要になるケースも。症状が進行している場合は、検査結果が出る前(原因菌が判明する前)から、抗菌薬を投与する場合も多い。その際、原因菌によって薬剤に耐性があることもあるため、どの抗菌薬を用いるかは、よく検討する必要がある。敗血性ショックが起きている場合は、血圧を上げるために大量の輸液や昇圧薬を点滴投与する。同時に酸素吸入や人工呼吸器を使って、高濃度酸素を投与するなどの全身管理を行う。この他、人工透析や、血糖値を下げる必要があれば、インスリン静脈内注射を行うなど、状況に応じた治療が行われる。
●予防/治療後の注意
 発見が遅れるほど死亡リスクが高まり、助かった場合でも後遺症が残ることが多い。後遺症は、治療後数週間を経てわかることもあるため、注意が必要。後遺症が出た場合は、それぞれの症状に応じて、リハビリテーションを行う。予防のために、乳幼児、高齢者や慢性疾患、がんなどの病気治療で免疫機能が低い人は、まず敗血症につながる感染症を起こさないことが重要となる。手洗いやうがいをこまめにして、風邪をひかないようにしたり、必要であればインフルエンザなどのワクチン接種を受けたりするなど、感染症にかかるリスクをできるだけ排除するようにしたい。

<教育>
*5-1:https://www.u-tokyo.ac.jp/ja/about/president/COVID-19-message-3.html (2020年4月21日 東京大学総長 五神 真) 新型コロナウイルス感染症に関連する対応について、総長メッセージ
●新型コロナウイルス感染症(COVID-19)緊急対策のために
 現在、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が、世界規模で爆発的に拡大しています。国内においても都市部を中心に患者が急増し、終息の見込みは立っておりません。特に海外では医療崩壊により十分な医療が受けられない状態に陥るケース等も発生し、これまでに例をみない被害が生じています。そうした困難を前に、現場で過酷な診療業務に就いている方々に、心からの敬意と感謝の意をお伝えしたいと思います。東京大学では、すべての構成員の健康を最優先するとともに、学生の学びの機会を確保するため、オンライン授業への全面的な移行を進めました。その一方で、学生それぞれの接続環境によって不公平が生じないよう対策を講じています。なによりも東京大学の学生には自立した個人として、その行動が他者や社会に与えることの自覚をもち、他者への思いやりを大切にすること、そしてこの危機は必ず終息するということを忘れず、焦らず、希望を持ち、諦めないことを伝えています。感染拡大を阻止するためには、治療薬やワクチンの開発等を進めることも喫緊の課題です。本学の研究力を活かして、治療に寄与する薬剤の同定や検査技術の開発さらには疫学的解析など様々な分野で研究・開発を進めています。これまでにも感染阻止の効果が期待できる国内既存薬剤を同定したことを発表するとともに、東京大学ではPCR検査を迅速に行うことのできる検査機器の導入、コロナ対応ICUの整備、中等症患者に対応する病棟の開設など、全診療科の医師・看護師が参加しての医療体制の充実を図ってきました。しかしながら、現時点で速やかに実行すべき取り組みは、これにとどまらず広範囲にわたります。ここに挙げた学習環境の整備や、医療体制の更なる充実はもちろんのこと、例えば財政的基盤が脆弱な東大発ベンチャー企業の支援等、それ以外にも多数考えられます。それらに対応するには、さらに充実した財政的下支えが必要不可欠です。いま、この未曾有の難局にあたり、東京大学は、開学140年にわたる知の協創の拠点として、世界最高水準の学問の叡智を結集させ、この人類の新たな脅威に全力で立ち向かう所存です。再び、安心して暮らせる日常を共に、一日も早く取り戻すべく、皆さまのご支援をお寄せいただきますよう、お願い申し上げます。

*5-2:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/522135 (佐賀新聞 2020.5.13) <新型コロナ>14日、佐賀県内の学校再開 「3密」回避に苦慮
 新型コロナウイルスの感染防止のため休校していた佐賀県内の県立学校や各市町の小中学校などが14日から、再開される。学校現場や教育委員会は、水泳の授業を中止するなど感染予防の対策を強化しているが、集団生活を送る上で密集などの「3密」を避けることは限界があり、難しい対応が迫られる。県教育委員会は、文部科学省のガイドラインに沿って換気の徹底や人数を分けた学習の検討など、再開後の感染防止対策を文書で通知した。児童生徒と教職員がマスクを着用することを明記し、給食では机を向かい合わせにせず、会話も控える。感染防止を理由に自主的に休む児童生徒は欠席扱いにしない。これらの特別措置の期限について県教委の担当者は「感染状況の見通しが立たず、当面続ける必要がある」と話した。文科省のガイドラインでは、児童生徒同士の座席を1~2メートル離すことが望ましいとしているが、40人規模の学級を抱える大規模校からは「空き教室がほとんどなくて距離を確保するのは難しく、マスク着用や換気の徹底をやるしかない」との声が漏れる。授業を20人以下で行う方針を示す武雄市は「各校で、できる限りの対応を考えているが、教員数の問題もあり、全授業での実施は難しい」としている。小城市や西松浦郡有田町などは水泳の授業について「更衣室が密集状態になり、換気も難しい」と中止を決めた。音楽では合唱や合奏を避けて鑑賞を先行させたり、家庭科の調理実習を年度後半にずらしたりするなど、各校で計画の変更を余儀なくされている。登下校時に密集する玄関やクラス単位で一斉となる教室の移動にも学校現場は気をもむ。杵島郡大町町では、保護者の意見を踏まえて集団登校を小学部と中学部で分ける。スクールバスを運行する多久市は、学校再開初日に乗車場所で座席の間隔を開けて利用するよう指導する。グループ学習など対面での学習活動も避けなければならず「密を避ける授業では話し合いなど『対話的学び』ができなくなる。これまでと違う形の授業で充実できるかどうかが心配」(大町町教委)との指摘も上がっている。

*5-3:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200511&ng=DGKKZO58922190Q0A510C2MM8000 (日経新聞 2020.5.11) 教室から消えた13億人 窮地が促す学び改革 コロナ、出口は見えるか(4)
 「多くの生徒らの学習が遅れている。学校再開の決定は簡単ではないが対応を急ぐべきだ」。国連教育科学文化機関(ユネスコ)のアズレ事務局長が4月末、声明で訴えた。新型コロナウイルス対策の全国的な休校は177カ国・地域で続き、全世界の72%、約13億人が登校できていない。学力格差への懸念が各国で強まる。11日から段階的に学校を再開するフランスのブランケール教育相は「休校を続けすぎると(自宅の学習環境の違いで)格差を助長する」と強調。小学校は1学級15人以下とし、校内の動線を決め接触を減らすなどして感染を防ぐ。オンライン(遠隔)授業が広がる米国では、インターネット環境が整わない家庭の子どもの学習支援で官民が連携する。カリフォルニア州はグーグルからパソコン4千台の提供を受け、生徒に配った。中国でもオンライン会議システムを使った授業が拡大中だ。ネット通販大手、アリババ集団のシステムの利用実績は約14万校、1億2千万人規模に上る。4月22日時点で小中の95%、高校の97%が休校していた日本。自宅学習は紙の教材が中心で、公立小中高校など約2万5千校の95%は同時双方向のオンライン指導ができていない。「子どもの勉強習慣がなくなってしまった」。夫と共働きの東京都内の女性(40)は焦りを募らせる。小5の次男が通う公立小は2週間に1度、宿題の進み具合を報告させるだけ。一方、私立中に通う長男は遠隔学習で以前と同じ時間割で勉強を続けている。足踏みの背景には教育のデジタル化の遅れがある。経済協力開発機構(OECD)の2018年調査によると日本の15歳生徒の8割が学校でデジタル機器を利用していない。学校の情報化を怠ってきたツケが出た形だ。出口に向けては重層的な戦略が要る。感染予防を徹底しての学校再開と再休校に備えた遠隔学習の環境整備は不可欠だ。政府内では学習の遅れを取り戻し、学事暦を国際標準に合わせる策として「9月入学・始業」の論点整理も進む。移行には課題もあるが、社会全体でグローバル化に向けた方策を抜本的に議論する好機だ。米ブルッキングス研究所などは学校や大学の4カ月間の休校により、若者の生涯収入減少などを通じて米国が将来的に被る経済損失が2.5兆ドル(250兆円)、年間国内総生産(GDP)の12%に上ると試算する。各国はこうした事態を懸念し、教育の再構築を進める。韓国は休校中、小中高生に情報端末など28万3千台を貸与。低所得世帯の約17万人にはネット通信費を支援した。緊縮財政で教育予算を削ってきたイタリアも遠隔教育の推進に8500万ユーロ(97億円)の予算を確保した。「危機をチャンスに変えたい」とアゾリーナ教育相。日本も社会総がかりで学びの保障に取り組む覚悟が要る。

<新型コロナの検査及び診療体制は憲法第25条違反である>
PS(2020年5月14日追加):*6-1のように、大相撲の力士、勝武士(28歳)が新型コロナに感染して体調が悪化し、4月4日頃から38度台の高熱が続いたが受入先医療機関が見つからず、4月8日夜に咳をした時に出るたんに血がまじる症状が出て初めて都内の病院に救急搬送されて入院でき、4月10日にPCR検査で陽性と確認され、4月19日からICUに入って、5月13日未明に多臓器不全で死去されたそうだが、このような人は多いだろう。
 このような診療の遅れについて、日経新聞は、*6-2のように、「①新型コロナウイルスの専門外来への窓口である帰国者・接触者相談センターのパンク状態が続いているから」「②国が相談の目安を緩めて負荷が増す恐れもある」「③帰国者・接触者相談センターで担当している看護師は、1日約2500件の電話のうち回線の制限から対応できるのは約500件までで、厚労省が5月上旬まで『37.5度以上の発熱が4日以上』等と設定していた相談目安に合致するので詳しく症状を聞く必要があると判断したのは10件ほどで、実際にPCR検査を勧めたのは1日平均3件だった」「④大半の相談はごく軽い微熱など殆ど症状がない状態で、取ることすらできない電話の中に数十人、すぐに検査が必要な人がいるのではないか」「⑤政府の専門家会議は5月4日にPCR検査の件数が十分に伸びていない理由として相談センターの業務過多を指摘し、人員の強化を訴えた」「⑥聖マリアンナ医科大の国島教授が、相談に対応できる保健師や看護師はとにかく人手不足なので、自動応答システムを使った相談の仕分けなどで、業務を効率化していくことも検討すべきだ」などと書いている。
 しかし、仕事を引き受けた以上は、①②③④のように人手不足だから命にかかわ電話の500/2500(20%)しか取れず、厚労省の目安に従って機械的に振り分けた結果、検査に至ったのはそのうち3/500(0.6%)しかなかったというのは、保健所や相談センターを通したのが間違いだったことを示しているにすぎない。従って、⑤のような焼け太りは許されず、そもそも⑥は、保健師や看護師には診断する資格や権限はないため、厚労省の目安に従って保健師・看護師・事務職などが検査の要否を判断すること自体が違法行為なのである。
 そのため、厚労省の指示は、違法行為であるだけでなく、国民の生存権を脅かしている上、国が社会保障や公衆衛生の向上・増進に努めなければならないとする日本国憲法第25条(*6-3参照)に違反している。そして、この大失敗の結果は、むしろ現場医療従事者の感染リスクを拡大させて苦労を強い、一般国民にも生命及び経済活動の両面で大きな迷惑をかけたため、この仕組みでPCR検査が遅れて重症化した人や亡くなった人の家族は、集団訴訟して実態を白日の下に晒すくらいでないと、今後も厚労省はじめ行政の態度は変わらないと思う。
 なお、このように検査が拒まれ、まともな医療も受けられない中で、埼玉市はじめ各地で、*6-4のような「こころの相談窓口」が設置されたのには呆れた。何故なら、病気になっても診療してもらえない不安や経済停止で経営破綻しかかっている事業者の不眠は、心が正常に働いている証拠であって異常ではないからで、その“処方箋”は、犠牲者が心理の専門家に相談して心理分析してもらうことではなく、病気になったら受診できる医療体制を復活し、緊急事態宣言の解除や足りない資金の補助・融資を行うことだからである。

*6-1:https://digital.asahi.com/articles/DA3S14475075.html (朝日新聞 2020年5月14日) 28歳力士、コロナで死去 勝武士 20代以下の死亡、国内初
 大相撲の三段目力士、勝武士の末武清孝さん(28歳、山梨県出身、高田川部屋)が新型コロナウイルスに感染して体調が悪化し、13日未明に多臓器不全のため死去した。日本相撲協会が発表した。協会は同日、過去の感染歴を調べる抗体検査を、約1千人いる親方、力士、裏方ら協会員の希望者全員に実施する方針も明らかにした。検査を終えるには、約1カ月かかる見通しだ。厚生労働省によると、20代以下が死亡するのは国内で初めて。新型コロナウイルス感染で亡くなったのは角界では初で、国内の主立ったプロスポーツの選手でも初めてとみられる。協会によると、勝武士は4月4日ごろから38度台の高熱が続いたが、受け入れ先の医療機関が見つからなかった。都内の病院に入院できたのは、せきをした際に出るたんに血がまじる症状が出て救急搬送された同8日の夜だった。協会は「都内の医療機関がひっぱくした時期と重なってしまいました」としている。この際に受けた簡易検査では陰性と判定されたが、同10日にPCR検査で陽性と確認され、同19日から集中治療室(ICU)に入っていた。複数の関係者によると、糖尿病の基礎疾患があったという。葬儀などは未定。勝武士が所属する高田川部屋では、師匠の高田川親方(元関脇安芸乃島)らも感染が確認されたが、いずれも軽症ですでに退院している。

*6-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200514&ng=DGKKZO59037720T10C20A5CR8000 (日経新聞 2020.5.14) コロナ相談窓口なお激務、症状と関係ない電話4割  検査の目安緩和で負荷増も
 新型コロナウイルスの専門外来への窓口である帰国者・接触者相談センターのパンク状態が続いている。全国の電話相談の件数はピーク時から減少しているものの、負担の大きい自治体からは「必要な電話が見逃されている」と不安の声が上がる。国が相談の目安を緩めたことを受け、負荷が増す恐れもある。専門家は体制強化や業務の自動化の整備を訴えている。「あんたに検査を受けられない人の気持ちが分かるのか」。北海道のある自治体の相談センターには、辛辣な言葉を浴びせる電話がしばしばかかってくる。担当する看護師によると、1日にかかってくる約2500件の電話のうち、回線の制限から対応できるのは約500件まで。厚生労働省が5月上旬まで「37.5度以上の発熱が4日以上」などと設定していた相談目安に合致するとみて、詳しく症状を聞く必要があると判断したのは10件ほど。実際に専門外来でのPCR検査を勧めたのは1日平均3件だった。この看護師は「基準に合致しない人でも不安を感じていることには変わりなく、検査が必要ないと言ってもすぐには納得してもらえない」と話す。大半の相談はごく軽い微熱などほとんど症状がない状態で、むしろ「取ることすらできない電話の中に数十人、すぐに検査が必要な人がいるのではないか」とみている。相談センターの受け付けは毎日24時間。常勤者の1人当たりの勤務は1日8~16時間で週5日間程度に及ぶ。しかも、残業が1時間ほど必要な日がほとんどだ。「帰宅しても疲れで食事すらできない日もある。心身ともに限界に近い」。厚労省は5月8日、診察やPCR検査を受ける際の「相談・受診の目安」を改めた。37.5度以上などとした従来の目安を削除した上で「息苦しさ、強いだるさ、高熱」といった症状がみられた場合はすぐに相談するよう求めている。感染者の見落としをなくして感染の再拡大を防ぐのが狙いだが、北海道地域保健課の担当者は「今後、相談センターの対応業務が増加する懸念がある」と話す。厚労省の公開資料を分析すると、全国のセンターで相談を受けた電話は、4月の1日平均で約2万3千件。直近は減少傾向にあるものの、一般的な質問など症状と関係のない相談が全体の4割近くを占め、実際に専門外来の受診に至るのは7%にとどまる。厚労省は一般的な相談の窓口を別に設けるといった体制強化を自治体に求めているが、一筋縄ではいかない。4月から一般相談窓口を開設した東京都では、一般窓口が開いていない深夜から朝に相談センターに電話が集中する。夕方以降の時間帯に200件前後で推移していた相談件数は、10日には約340件まで増加。都の担当者は「目安が変わった影響もあるだろう。質問の内容も広がり、1件あたりに応じる時間も体感的に長くなったと負担を感じる職員もいる」と明かす。政府の専門家会議は5月4日、PCR検査の件数が十分に伸びていない背景のひとつとして、相談センターの業務過多を指摘。改めて人員の強化を訴えた。聖マリアンナ医科大の国島広之教授(感染症学)は「相談に対応できる保健師や看護師はとにかく人手不足。チャットボット(自動応答システム)を使った相談の仕分けなどで、業務を効率化していくことも検討すべきだ」と指摘している。

*6-3:https://kotobank.jp/word/%E6%97%A5%E6%9C%AC%E5%9B%BD%E6%86%B2%E6%・・ より抜粋
日本国憲法第25条
1 すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。
2 国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。

*6-4:https://www.city.saitama.jp/002/001/008/006/013/002/p072196.html (埼玉市 2020年5月1日) 新型コロナウイルス感染症の拡大等に伴うこころのケアについて
 新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、わたしたちの生活にも大きな影響が出ています。環境の変化や先の見えない状況、行動の不自由さなどの中で、ストレス状態が長く続くと気持ちやからだや考え方に、様々な変化(反応)が起こりやすくなります。こうした反応は「誰にでも起こりうる自然な反応」ですが、長引くことで不調のきっかけになることもあります。(以下略)

<検査とワクチン開発>
PS(2020年5月16、18日追加):*7-1のように、東京などの8都道府県を除く全国39県で緊急事態宣言が解除されたが、8都道府県も専門家の見解を踏まえて31日を待たずに21日に解除することもあり、その条件は、①1週間当たりの新規感染者が10万人あたり0.5人以下に低下したかどうか ②医療体制 ③検査体制の整備 などを目安に判断するそうだ。が、日本は、*7-2のように、PCR検査を徹底して行い1日数千人単位で感染者が出た欧米諸国と異なり、3月から5月15日に至るまで検査数を著しく制限しているため、現在も正確な感染者数はわからず、偽の安心に陥っている可能性がある。
 ただ、原発事故後の東北・関東では、放射性物質や花粉などの有害物質を吸い込まないために、マスクをしたり、空気清浄機をつけたりする人が多く、また、上下水道が整備され、国民全体として栄養状態がよく、衛生意識も比較的高く、室内に入る時は靴を脱ぐことなどから、他国よりも感染拡大が防げたかも知れない。そのため、罰則付のロックダウンでなければ効果がないということはなかった。
 このようにPCR検査数が足りない中、*7-3のように、新型コロナの大規模抗体調査を来月から複数自治体の住民を対象に1万人規模で実施して地域の感染状況を把握するというのは興味深い。しかし、これとは別に医療関係者は優先的に抗体検査をした方がよいし、東京や東北地方だけでなく日本中で大規模に行った方がよい。また、同じ県に住んでいても、都市部と農村部・年齢・性別などによって感染率が異なるだろう。なお、昨年採取した血液も一定割合で陽性となるそうだが、本当は昨年も無症状の感染者がいたか、風邪など同種のコロナウイルスにも反応しているのではないか?
 米トランプ政権は、*7-4のように、開発期間を大幅に縮めてワクチン開発を行うそうで、未感染の人に抗体(免疫)を作るにはワクチンの接種しかなく、開発に成功すれば世界でニーズがあるため、経済に関する感性がよいと思う。WHOは、5月5日時点で開発中のワクチンが100種を超え、ヒトへの臨床試験が始まったのが8種類あるとしている。また、IMFは、2020年の世界経済の成長率予測を1月にプラス3.3%と見込んでいたが、新型コロナ感染拡大後にマイナス3%へ引き下げ、日本の経済規模に匹敵する約500兆円の経済損失が生じたそうだ。このうち1%にあたる5兆円でもワクチンの開発に充てていたら損失を回避できたため、日本の「新常態」では、医療体制・検査体制の充実やワクチン・治療薬の研究開発投資が求められるのである。
 なお、*7-5のように、福岡市教育委員会は、5月15日、市立小・中・特別支援学校の夏休みを8月7~19日の13日間とし、授業時間を短縮して授業のこま数を最大7時間に拡大するなどして、臨時休校による学習の遅れを解消させるそうだ。これは、他の地域でも参考になるが、夏休みを短くするには教室にエアコンを設置することが不可欠になるため、フィルターや殺菌機能のついた空気清浄機能付エアコンの新製品が望まれる(これも、世界にニーズがある)。
 また、*7-6に、「①新型コロナ感染症にかかった多くの重症患者にとって最大の脅威はコロナウイルスそのものではなく、人体がウイルスと闘うために立ち上げる免疫システムだ」「②免疫システムは病原体から体を守るために不可欠だが、健康な細胞を傷つける激しい凶器にもなる」「③このサイトカインストームは過剰な炎症を引き起こす免疫システムの暴走である」「④そのため、免疫反応を抑制する必要がある」等と書かれているのには、私は賛成できない。
 何故なら、①は、治療の遅れを本人の免疫システムのせいにするもので、②は、ウイルスが侵入した細胞は健康な細胞でないため免疫は細胞ごと攻撃せざるを得ず、③の、身体中で炎症を起こしているのは、重症化して身体中で細胞がウイルスに侵され、ウイルス自体もどこにでもいる状態だからだ。そのため、④の、免疫システムの“過剰”な暴走だとして免疫反応を抑制するのはウイルスの激しい戦闘中に味方の免疫細胞(兵士)に戦闘中止の命令を出すのと同じである。
 従って、「サイトカインストーム」は新型コロナ感染症の人が亡くなる原因というより、亡くなる直前の激しい戦闘であり、「サイトカインストーム」がエボラ出血熱・インフルエンザ・マラリア・エリテマトーデス・特定の種類の関節炎などでも起こる新型コロナ特有のものでないのは、自衛軍に敵の侵入を知らせる警報だからで、新型コロナの「サイトカインストーム」も不必要に警報が鳴っているのではなく、敗血症になる寸前の激しい戦闘命令なのだろう。そして、血管が大量の免疫細胞で詰まるのは、闘って死んだ免疫細胞の山であり、患者を死に至らしめるのは、サイトカインストーム自体ではなく敗血症やウイルスによる血管を含む多臓器不全が原因だ。そのため、免疫が感染症と闘っている時に免疫反応を抑制するのは逆で、「サイトカインストーム」など起こさないうちに、ウイルスそのものを退治する抗ウイルス薬(援軍)や他の細菌の増殖を抑える抗生物質(援軍)を使うべきだと、私は思う。

   
  2020.5.11   2020.5.5     2020.5.2朝日新聞     2020.5.13 
  東京新聞    中日新聞                    東京新聞

(図の説明:1番左の図のように、2020年5月14日に全国の39県で緊急事態宣言が解除され、解除条件も示された。そして、左から2番目の図のように、専門家会議が「新しい生活様式」を示しているが、一部には普段から考慮しておくべきものがあるものの、人が生活する上で長く続けることが困難なものもある。厚労省の専門家会議が意図しているのは、右から2番目の図の第2波の山を先に延ばして低くすることだが、これはウイルスに対する消極的防衛にすぎず、弱い人がいつか感染して亡くなるのを排除することができない。ゲームチェンジして攻めに転じるには、検査と治療・ワクチン接種が必要だが、日本政府はこれには消極的で、外国がやっているのを見て少し真似している程度であるため、先進国の政府とは言えないのだ)

*7-1:https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2020/05/39821.php (Newsweek Japan 2020年5月14日) 緊急事態宣言、全国39県で解除 東京など8都道府県も可能なら21日に解除=安倍首相
 安倍晋三首相は14日夕に会見し、東京など8都道府県を除く全国39県で緊急事態宣言を解除すると正式発表した。8都道府県についても21日にも専門家の見解を踏まえ、可能であれば緊急事態宣言の期限である31日を待たずに解除する意向を示した。解除に当たっては1週間当たりの新規感染者が10万人あたり0.5人以下に低下したなど医療体制、検査体制を目安に判断したと説明。39県は今後、感染者の小集団(クラスター)対策で感染拡大を防止できるとの判断を示した。もっとも、解除された地域でも、外出自粛は要請しないが「人との接触は減らして欲しい。県をまたいだ移動も控えて欲しい」と訴えた。

*7-2:https://newsphere.jp/national/20200324-2/ (Newsphere 2020.3.24) なぜ日本の感染者は少ないのか……海外が見る「日本の謎」 新型肺炎
 世界中で感染者が急増している新型コロナウイルスだが、1日数千人単位で感染者が増えている欧米諸国に比べ、日本は数十人程度と少ない。検査の数を制限し、感染の実態が明らかにされていないという見方が海外では圧倒的で、今後は感染者が急増するのではないかと指摘されている。
◆異常に少ない検査数 日本の説明は理解されず
 日本の感染者数は1110人(3月23日時点)となっている。ブルームバーグは、日本は中国以外で最も早く感染が広がった国の一つなのに、先進国のなかでは最も影響を受けておらず、公衆衛生専門家も首をかしげていると述べる。海外のほとんどのメディアや専門家が「日本の謎」の理由として、検査数が少ないことを上げている。ビジネス・インサイダー誌は、カナダのマニトバ大学のジェイソン・キンドラチュク准教授の「検査しなければ感染者の見つけようがない」という言葉を紹介し、日本が検査能力の6分の1しか検査を行っていないと指摘している。日本は医療機関に過剰な負荷をかけないために検査を絞ると説明しており、国民には症状が出るまで家にいるよう求めている。この対応は、27万人に検査をして感染拡大を阻止した韓国の対応と比較されており、WHOを含め海外では韓国式がお手本と評価されている。ビジネス・インサイダー誌の記事が出た時点では、日本で検査を受けたのは1万6484人ほどだ。これは7600人当たり1人という検査数で、韓国の185人当たり1人に比べ、著しく低くなっている。
◆文化が幸い? 感染防止に貢献か
 そもそもダイヤモンド・プリンセス号の処理もできなかった日本が上手くやれているはずはないという辛らつな意見も聞かれるが、日本がある程度感染を抑えているという見方もある。中国に近いため、まだ制御可能な時期から危機感があり、消毒剤やマスクなどが売れて、国民が公衆衛生を守る基本ステップを受け入れたことが貢献したのではないかと見られている。アメリカの科学ジャーナリストのローリー・ギャレット氏は、少数の感染が制御可能な限定された地域で起こっていることが幸いしているのではないかと述べている(ブルームバーグ)。ビジネス・インサイダー誌は、もともと日本文化においては他国よりも社会的距離が遠いこと、以前から病気やアレルギーのある場合はマスクをする習慣が根付いていたことが、感染の拡大を防いだのかもしれないとしている。
◆検査なしでは実態わからず 偽の安心を懸念
 キンドラチュク准教授は、文化的な影響を否定はできないが、それだけでは説明できないと考えている。感染者数の少なさは「偽の安心感」だとし、日本ではまだ最も弱い人々への感染が広がっていない可能性があると述べる。この層に広がれば、あっという間に感染は拡大すると見ている(ビジネス・インサイダー誌)。英キングス・カレッジ・ロンドンの教授で、元WHOの政策チーフ、渋谷健司氏は、日本では集団感染のクラスター潰しに集中した結果、感染が封じ込められたのか、まだ見つかっていない集団感染があるのかのどちらかだと述べる。どちらも妥当だとしながらも、日本は爆発的感染を迎えようとしており、封じ込めからピークを遅らせる段階にもうじき移行すると予想している。検査数に関しては、増えてはいるものの十分ではないという認識だ(ブルームバーグ)。これまで感染者が少なく、何とか持ちこたえてきた日本の新型コロナウイルス対策だが、3月下旬から感染者が急増している。日本は検査数を絞ったクラスター叩きを戦略としてきたが、もう限界だという見方が海外では優勢だ。政府は感染拡大を受け緊急事態宣言で市民の外出や店舗などの営業自粛を求めているが、罰則つきの欧米式ロックダウンではないため、効果に疑問の声が出ている。
◆感染が抑えられてきた日本 いまは危険水域に
 海外メディアは、日本は感染の第一波の悪化を何とか回避してきたという見方だ。もっとも明白な理由は指摘されておらず、さまざまな憶測が飛び交っていた。米ABCは、予定通りの五輪開催のために、政府が数字を抑えようとしていたという噂を紹介している。米ウェブ誌『Vox』は、政府が肺炎患者に十分なコロナウイルス検査をしていない可能性もあると指摘。一方で、日本はもともと挨拶としての握手やハグ、キスなどが少ない文化だったこと、マスクの着用が浸透していたこと、早めに大型イベントの自粛や学校休校などの社会的隔離措置が取られたことなどが功を奏したとも見ている。こういった日本独特の理由が感染を遅らせたという認識が海外メディアには共通だ。

*7-3:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/523140 (佐賀新聞 2020.5.15) コロナ抗体調査1万人規模実施へ、厚労省、地域で感染の広がり把握
 加藤勝信厚生労働相は15日の閣議後記者会見で、新型コロナウイルスの大規模抗体調査を、来月から複数自治体の住民を対象に1万人規模で実施すると表明した。抗体検査は、感染から一定期間たった後に体内にできる抗体を、少量の血液から検出する方法。現在主に使われているPCR検査より簡単で、短時間で結果が出る。抗体は感染直後には検出が難しいため、診断目的ではなく、過去の感染歴を調べて地域での感染の広がりを把握する使い方が想定されている。東京都と東北地方で献血された血液の抗体を試験的に調べたところ陽性率は東京の500検体で0・6%、東北6県の500検体では0・4%だった。ただし、抗体がある可能性が低い昨年採取した血液も一定程度の割合で陽性となっており、誤って陽性と判定される例が含まれていると考えられているという。

*7-4:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200514&ng=DGKKZO59065040T10C20A5MM8000 (日経新聞 2020.5.14) 待望のワクチン開発 未来への投資、今こそ コロナ、出口は見えるか(6)
 「オペレーション・ワープ・スピード」。米トランプ政権が打ち出したワクチン開発の新戦略だ。第2次世界大戦中の「マンハッタン計画」にならい、企業や政府機関を総動員。通常は数年かかる開発期間を大幅に縮める。3日、トランプ大統領はテレビ番組で「年末までにワクチンが手に入る」と説明。全国民分の数億本を供給する目標を掲げた。ワクチンは体の免疫反応を引き出し、ウイルスの感染を阻む。感染拡大を抑えつつ行動制限を緩めるには、免疫を持つ人を増やすしかない。開発の行方が世界経済の命運を握る。世界保健機関(WHO)によると5日時点で開発中のワクチンは100種類を超える。ヒトへの臨床試験(治験)に進んだのは8種類ある。今やワクチンを誰もが待ち望む。だが、感染症対策はワクチンが最後の砦(とりで)になると分かっていながら、今までは危機意識が低かった。「コロナのようなRNAウイルスはリスクが高い」。2年前、米ジョンズ・ホプキンス大学はワクチンの備えを訴えた。パンデミック(世界的大流行)に対抗する技術の芽はあった。ウイルスのRNAやDNAといった遺伝物質を合成し、体に投与して免疫を高める方法だ。ウイルスの培養がいらず、4~5年かかるワクチンの開発期間を大幅に短縮できる。米モデルナや独ビオンテックは、1カ月程度でワクチン候補を作る技術を持つ。ワクチンを供給するグローバルな生産設備や国際拠点を2年前から準備しておけば、直ちに製造に取りかかれたかもしれない。ところが各国の予算は少なすぎた。日本経済新聞社が出資するアスタミューゼ(東京・千代田)が日米英中の感染症関連の研究開発予算(2018年)を調べると、米国は75億ドル(8000億円)、中国は53億ドル(5600億円)、英国は5億8000万ドル(620億円)、日本は5億3000万ドル(560億円)だった。「今後、世界で1000万人以上を殺すなら、それはミサイルではなくウイルスだ」。米マイクロソフト創業者のビル・ゲイツ氏は15年の講演会でこんな言葉を残した。国際通貨基金(IMF)は、20年の世界経済の成長率予測を1月にプラス3.3%と見込んでいたが、新型コロナの感染が拡大した後にマイナス3%へ引き下げた。単純計算で日本の経済規模に匹敵する約500兆円の経済損失が生じる。1%にあたる5兆円でもワクチンの開発に充てていたら、損失を回避できたはずだ。新型コロナ収束後の「新常態」では、まず感染症を甘く見た過去との決別が必要だ。ワクチン開発や治療、検査体制の確立で各国は連携し、どんな感染症にも立ち向かえる国際協調の枠組みを整えるべきだ。今こそ未来への投資が求められる。

*7-5:https://www.nishinippon.co.jp/item/n/608716/ (西日本新聞 2020/5/16) 小中学校の夏休み13日間に 福岡市、授業時間は10分短縮
 福岡市教育委員会は15日、市立の小中、特別支援学校について今年の夏休みを8月7~19日の13日間とすることを明らかにした。当初予定した7月22日~8月26日(36日間)から大幅に短縮した。また、授業時間を10分短くして小学校は35分授業、中学校は40分授業に変更。1日の授業こま数を最大7時間に拡大するなどして、臨時休校による学習の遅れを解消させる。学校が再開する21日から27日までは学年別に分散登校。28日から各クラスを2グループに分けて交互に登校するが、同じ地域の子どもが同じ日に登校できるよう配慮する。入学式は新入生の人数によって時間帯をずらすなど各学校で工夫。全校生徒が通常通り登校する全面再開は未定という。授業は前年度の未履修分から実施。国語、算数・数学など主要教科を優先させ、ほかの教科の一部学習内容は次学年に持ち越すことも容認する。土曜授業は隔週で行い授業時間の確保を図る。感染防止策としては、児童生徒の机の間隔を1~2メートル空けるほか、毎朝の検温を徹底。小学校では当面、遊具の使用を禁止する。市教委ではほかに、冬休みの短縮やプール授業の見合わせも検討している。

*7-6:https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/20/051100281/ (National Geographic 2020.5.12) コロナ患者、本当にこわい「免疫システムの暴走」、人体が立ち上げる“戦闘部隊”、サイトカインストームとは
 新型コロナウイルス感染症にかかった多くの重症患者にとって、最大の脅威となるのはコロナウイルスそのものではない。人体がウイルスと闘うために立ち上げる“戦闘部隊”だ。免疫システムは病原体から体を守るために不可欠だが、時に健康な細胞を傷つける激しい凶器にもなる。免疫反応が暴走する例の一つが、過剰な炎症を引き起こす「サイトカインストーム」だ。集中治療や人工呼吸器を必要とする場合を含め、新型コロナウイルス感染症の最も重篤な事例において、この現象が起こっているのではないかと考えられている。サイトカインストームは「新型コロナウイルス感染症にかかった人が亡くなる原因として最も多いものの1つ」と話すのは、米国ボストン市、ブリガム・アンド・ウィメンズ病院のアナ・ヘレナ・ジョンソン氏だ。臨床医や研究者たちは、現在も、サイトカインストームがどれほどの頻度で生じているのか、何がそれを引き起こすのかについて調べているところだ。こうした過剰な免疫反応は、新型コロナウイルス特有のものではないため、既存の治療法の中で有効だと思われるものの目星はついている。こうした治療法を他の治療薬と合わせれば、回復のスピードを早められるうえ、科学者たちがワクチンの開発を急ぐ間に致死率を下げられるかもしれない。「それが、このパズルの鍵のようなものです」と、米ワシントン大学の免疫学者マリオン・ペッパー氏は言う。
●免疫システムの暴走
 人間の体には、侵入した者を発見し退治する方法が用意されている。サイトカインは、こうした防御反応を調整するにあたり極めて重要なタンパク質だ。体の防衛軍を結集するために細胞からサイトカインが放出されると、極小の防犯アラームのような役割を果たし、免疫システム全体に侵入者の存在を知らせる。通常は、サイトカインの情報伝達によって免疫細胞および分子が感染箇所に動員される。防衛軍を動員する過程で、複数の種類のサイトカインが度々炎症を引き起こす。当該箇所での脅威が小さくなり始めると、サイトカインによる情報伝達は止まり、防衛軍は撤退することになるのが普通だ。しかし、サイトカインストームが起こると、「免疫システムが狂ってしまう」と話すのは、米コロンビア大学のウイルス学者アンジェラ・ラスムセン氏だ。サイトカインのアラームは止まるどころか鳴り続け、不必要に兵士を集め続けて、病原体そのものよりも体にダメージを与えてしまうことがある。たった一人の暗殺者を捕らえるために大軍を送るようなものだ。しまいには体全体が戦場と化してしまう。サイトカインストームが起こると、血管が大量の免疫細胞で詰まって交通渋滞のようになり、臓器に酸素や栄養分が届かなくなってしまうことがある。また、感染した細胞に向けられたはずの毒性を持つ免疫関連分子が、血管から漏れ出て健康な組織を損傷してしまうこともある。場合によっては、こうした分子の渦が呼吸困難を引き起こす。サイトカインストームが止まらない限り、患者は組織を損傷し、臓器不全を起こし、そして究極的には死に向かうことになる。サイトカインストームは症状が表れてから最初の数日間で全身に広がり、驚くほどの速さで勢いを強めていく。こうした状態になるケースとしては、二つのシナリオが考えられる。一つは、免疫システムが新型コロナウイルスを体から駆逐し損ねて、サイトカインがとめどなく放出されることになってしまう場合。もう一つは、感染が収まってからもサイトカインが放出され続ける場合だ。
●“嵐”を制御する
 サイトカインストームは様々な病気で見られる。エボラウイルス病(エボラ出血熱)、インフルエンザ、マラリア、エリテマトーデス、特定の種類の関節炎などだ。症状は人によって異なり、新型コロナの重症例における特徴もまだつかめていない。どういう人で起きるのかも定かではないが、遺伝的要因と年齢はいずれも関係がありそうだ。とは言え、サイトカインストームはある程度知られているものなので、対処法が開発されている。現在は新型コロナウイルス感染症における効果が検証されているところだ。注目が集まっているのは、重症患者において高濃度で見られるインターロイキン6(IL-6)と呼ばれるサイトカインだ。これに対する効果を期待されている治療薬の一つに、免疫細胞のIL-6受容体をブロックし防犯アラームが聞こえない状態にする、関節炎用のトシリズマブという薬がある。初期の複数の報告は、トシリズマブには効果があるとしている。米ネブラスカ大学医療センターの感染症専門医ジャスミン・マーセリン氏によれば、トシリズマブを投与された重症患者たちはその後回復するようだ。しかし、これまでに行われているのは事前に計画された臨床試験ではなく、その場その場でトシリズマブを投与された患者を追跡するものに留まると言う。トシリズマブを投与された患者を投与されなかった患者と比較しない限り、新型コロナウイルス感染症に対してどれだけ効いているのか、確かな結論を導くことは難しい。「投与なしに自力で回復していたかもしれませんから」とマーセリン氏は話す。現在、答えを出すために、対照群(臨床試験において、研究中の新しい治療を受けない群)を含めた臨床試験が世界で何十と行われている。たとえばフランスで進行中のものでは、64人の「中等症から重症」の患者にトシリズマブが投与され、通常の治療のみの65人と比較して、最終的に致死率および人工呼吸器の必要性が低くなることがわかってきている。
●生死を分ける治療のタイミング
 炎症が起こる前にそれを抑える方法もありかもしれないと話すのは、米マサチューセッツ大学医学部の免疫学者、ケイト・フィッツジェラルド氏だ。治療薬としては副腎皮質ホルモンや、やはり関節炎治療薬であるバリシチニブなどがある。いずれも細胞が様々な種類のサイトカインを生成するのを止める。ほかにも、他の病気の治療法として臨床試験が行われているものに、機械で血中からサイトカインを取り除き、サイトカインストームの終結を早めるという方法がある。だが、死に至るウイルスを前にしているとあって、免疫反応を抑制する治療法に対して専門家たちは慎重になっている。「こうした治療法のリスクは、真逆の方向へ行ってしまいかねないことです」と、マーセリン氏は話す。たとえば、免疫を抑制しすぎると、新型コロナウイルスと闘うことができなくなったり、他の細菌や真菌などの病原体が加わるかもしれない。新型コロナウイルス感染症関連での死亡例において、こうした危険な感染が原因となったものは少なくない。ラスムセン氏によると、治療のタイミングも重要だ。サイトカインをブロックする治療薬の投与が早すぎれば、ウイルスが「暴走する」ことがあり得る。しかし、待ちすぎれば、患者を救うには遅すぎた、ということになりかねない。生死を分けるそのタイミングがいつなのかを示唆する研究はある。IL-6による防犯アラームを聞こえなくするケブザラという治療薬は、人工呼吸器や集中治療を必要とする「重篤」な患者には効果がありそうだが、一段階下の「重症」レベル以下の患者には、特に効果はないようなのである。
●新型コロナウイルス感染症へのワンツーパンチ
 専門家たちは、サイトカインをブロックする方法は、ウイルスそのものを狙う抗ウイルス薬と組み合わせた時に最も有効かもしれないと考えている。「免疫反応にばかり注目して、その原因となっているものを見ないのでは進展しないでしょう」とマーセリン氏は言う。先週、米国立アレルギー感染症研究所は、新型コロナウイルスの自己複製能力を弱めるレムデシビルという抗ウイルス薬が、新型コロナウイルス感染症からの回復をある程度早めるようだとの予備的な調査結果を発表した。現在、レムデシビルと組み合わせて臨床試験が行われているサイトカインストーム治療薬とのコンビネーションで、さらに成果が出るかもしれない。しかし、この戦術が万全だというわけではないと、マーセリン氏は言う。治療薬同士が干渉して効果を打ち消してしまったり、場合によっては患者の容体を悪化させることもあり得る。臨床試験が続く間もパンデミックは広がっており、「結論に飛びつきたくなるものです」とジョンソン氏は話す。「しかし、証拠が出るのを待たなければなりません。毎週毎週、新しい事実が判明するのです」

<先端技術を普及させる理系教育の重要性>
PS(2020.5.17追加):*8-1・*8-2・*8-3のように、新型コロナの影響で世界の新車市場が壊滅的な状況に陥るなか、EU域内で始まった環境規制によってEVは欧州で健闘し、2020年1~3月の欧州18カ国のEV販売台数は前年同期から6割増えたそうだ。
 EVは、*8-4の日産自動車がゴーン社長の下、世界で最初に日本で開発され市場投入されたEVだ。しかし、最初からメディアにはEV批判が多く、最後は、このブログの2018年12月4日・2019年4月6日に記載した通り、「ゴーン氏の報酬が高すぎる」「姉や妻に疑惑がある」等のいちゃもんをつけて検察に介入させ、ゴーン氏の名誉を剥奪して刑事被告人に仕立て上げたのだ。このような妨害をせずに、ゴーン氏のやり方でEVに重点を移して世界で勝負すれば、3年で3割超も販売台数が減ることはなく世界で勝てたのに、今では「過剰な生産能力を削減する」「スペイン工場を閉鎖する」等の日本でゴーン氏が行った以上の人員整理を行う羽目になった。そして、これは、検察の介入が始まった時から予想できたことであるため、経営に介入して起こった失敗の原因をコロナでごまかすことができたのは、経産省にとって幸いだっただろう。
 このように、環境問題も認識できずに環境規制を疎かにし、それをクリアするツールであるEVのトップランナーを叩き続けてつぶしている日本の政府・メディアは、見識が低く、そのため将来を見通せず、大きなビジネスチャンスを失わせた。そして、これは、まともな理系教育を受けていない文系“(自分でそう思っている)エリート”が、理念なき利害調整に走って先端技術を殺した一例にすぎないため、高校まではすべての人への充実した理系教育が必要なのである。

*8-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200517&ng=DGKKZO59215560W0A510C2EA5000 (日経新聞 2020.5.17) 欧州でEV販売快走 1~3月6割増 コロナ禍でも勢い
 新型コロナウイルスの影響で世界の新車市場が壊滅的な状況に陥るなか、欧州で電気自動車(EV)が健闘している。2020年1~3月の欧州18カ国のEV販売台数は前年同期から6割増え、販売台数に占めるシェアは5%に近づいた。域内で始まった環境規制もあり、EVが浸透する「新常態」が生まれる可能性がある。「(EVなどの投入計画は)予定通り。妥協は一切しない」。独BMWのオリバー・ツィプセ社長は5月上旬の記者会見で訴えた。同社はハンガリー工場の新設延期などコロナ禍で緊縮に動くが、23年までに25車種のEVとプラグインハイブリッド車(PHV)を投入する方針は堅持し、投資にメリハリをつける。背景にあるのは好調な販売だ。BMWの1~3月のドイツでのEV・PHVの販売は前年同期から5割伸びた。これは全体の傾向でもいえる。欧州自動車工業会(ACEA)が12日に発表した欧州主要18カ国の1~3月のEV販売台数は12万7331台と前年同期比で57%増えた。欧州連合(EU)が20年から段階的に導入した新しい二酸化炭素(CO2)排出規制も影響しているが、新型コロナの影響で新車市場全体が27%減となるなか好調さが際立つ。

*8-2:https://www.nikkei.com/paper/related-article/?R_FLG=1&b=20200517&be=NDSKDBDGKKZ・・ (日経新聞 2020.5.17) 欧州EV販売1~3月57%増
 欧州自動車工業会(ACEA)は12日、欧州主要18カ国の2020年1~3月の電気自動車(EV)販売台数が12万7331台と前年同期比57%増えたと発表した。新型コロナウイルスの影響で新車市場全体が27%減となるなか、好調さを維持した。シェアは2.5ポイント上昇し4.6%に達した。

*8-3:https://www.nikkei.com/paper/related-article/?R_FLG=1&b=20200517&be=NDSKDBDGKKZ・・ (日経新聞 2020.5.17) 欧州、電動車シェア10%に 21年予測 各社、EVシフト競う
 フォルクスワーゲン(VW)のお膝元である欧州は、世界でも環境意識が高く、二酸化炭素(CO2)の排出規制も厳しい。電気自動車(EV)の販売も急増しており、VW以外の主要メーカーもEVシフトを競っている。欧州自動車工業会(ACEA)によると、西欧17カ国の2019年1~6月のEV販売台数は前年同期から9割増え、シェアは1ポイント上がって2%になった。新車販売全体が前年割れする中で好調さが目立つ。環境シンクタンクのT&Eは9日、20年の欧州連合全域のEV・プラグインハイブリッド車(PHV)の販売台数が100万台に達するとの予測を発表した。18年の合計シェアは2%だったが、20年に5%、21年には10%まで増えるとみる。T&Eのユリア・ポリスカノバ氏は「自動車大手がようやく腰を上げた。今後1、2年で高品質や低価格のEVが登場する」と背景を説明する。ダイムラーは10日、フランクフルト国際自動車ショーで、旗艦車「Sクラス」のEV版として「EQS」のコンセプト車を発表した。記者会見でオラ・ケレニウス社長は「自動車産業が急激に変わっており、全力で変革を進める」と話した。同社は22年までに欧州の自動車生産でCO2排出実質ゼロ、30年までに販売の半分以上を電動化モデルとする目標を掲げる。

*8-4:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200516&ng=DGKKZO59206570V10C20A5EA5000 (日経新聞 2020.5.16) 日産、過剰生産力にメス 2割減へ 欧州で不振、誤算重なる
 日産自動車は世界の工場を対象に過剰な生産能力を削減する。3年後をめどに現在の年約700万台から2割程度を減らす方針だ。スペイン工場を閉鎖する調整をするなど、生産体制再編の主な舞台は欧州になる。「今回の生産体制見直しの柱は欧州だ」。日産幹部はこう語る。日産は5月下旬に新たな中期経営計画を発表する予定だ。内田誠社長兼最高経営責任者(CEO)ら新経営陣がいち早くメスを入れることを決めたのが、欧州だ。商用車などを造るスペイン工場の生産能力は年約20万台で、稼働率は3割程度にとどまる。同工場で手掛ける車種は、提携先の仏ルノーの工場に生産を移管する。一方、年約50万台の生産能力を持ち日産にとって欧州で最も大切な拠点である英国工場では、ルノー車の生産を始める方向で詰めている。19年度の生産台数はフル稼働にははるかに及ばない32万台にとどまった。ルノーと一体で欧州での生産体制を見直し、日仏連合全体で効率化する。欧州では不振が続く。ピーク時の16年度は多目的スポーツ車(SUV)を中心に約78万台を販売した。だが、19年度は52万台と3年で3割超も減った。ナカニシ自動車産業リサーチの中西孝樹代表は「トヨタ自動車のハイブリッド車のような武器を持たない日産は欧州でシェア争いに敗れてきた。地元メーカーとの優劣も鮮明で事業の縮小は避けられない」とみる。これに3つの誤算が重なった。まず英国の欧州連合(EU)からの離脱(ブレグジット)だ。英国工場は約7割を欧州大陸に輸出する。今後の交渉次第でEU向けに関税がかかり、価格競争力が低下する懸念がある。新型コロナウイルスの感染拡大も想定外だった。外出規制で3月の欧州の販売台数は、前年同月比51%の大幅減だった。3つ目はルノーとの協業が、日産にメリットがある形で進まないことだ。例えば16年にルノーの仏フラン工場で委託生産を始めた小型車「マイクラ」(日本名マーチ)。当初は日産のインド工場で造り、欧州に輸出する計画だった。予定が変わった表向きの説明はコスト削減だが、日産側には「ルノーの工場の稼働率を上げるために生産を持っていかれた」との不満がある。日産は元会長のカルロス・ゴーン被告の掲げた拡大戦略と決別し、全販売台数の7割を占める日米中の3市場に投資などを絞り込んで経営を再建する。欧州の生産体制の見直しは新生日産の試金石になる。

<行政は、新型コロナ蔓延を利用したITによる監視社会への移行を意図している>
PS(2020年5月19日追加):速やかに治療すれば入院期間が短く医療崩壊は起こらないため、検査せずに、治療薬の承認を遅らせ、ワクチン開発に消極的で、クラスターを追いかけて差別を助長する公表ばかりしているので変だと、私は思っていた。そして、*9-1のように、携帯の位置情報や検索キーワードの履歴から集団感染の発生をつかむためとして、総務省・内閣官房・厚労省・経産省が、4月31日にNTTドコモなどの携帯電話大手3社・米グーグル・ヤフーなどIT大手6社に対して保有するビッグデータを新型コロナ対策に提供するよう要請したことを知って、行政は、新型コロナを利用してITによる監視社会に道筋をつけたいのだとわかった。しかし、「集団感染の発生を封じ込める必要性」といっても、このシステムは選挙妨害・捜査・しつこい広告など何にでも使えるため、国民は、個人の自由とプライバシーを侵害し、監視社会への入り口となる(マイナンバーカードを見よ)このシステムに反対した方がよいと思う。
 また、*9-2のように、厚労省は8300万人という歴史的な規模で、新型コロナ対策のための簡単な全国健康調査を行って、「37度5分以上の発熱が4日以上続いているか否か」を重視させる誤ったキャンペーン行い、ITはプライバシー管理に弱いのに遠隔診療・AIドクター・医療ビッグデータの活用を、これを機会として強引に進めようとしている。
 そして、*9-3のように、「①徹底した検査が、早期のウイルス封じ込めに成功した韓国の感染症対策の柱のひとつになった」「②韓国は接触者の追跡にビッグデータを活用し、クレジットカードの利用履歴や携帯電話の位置情報をもとに感染者の移動経路を明らかにした」「③韓国は、携帯電話会社の位置情報と患者のカード利用履歴から、感染者と接触した人を全員追跡して隔離する態勢を整えている」「④韓国の世論は感染拡大阻止のためなら個人のプライバシーが犠牲になっても良いという回答が多い」などとして、人権に関しては後進国である韓国や中国に追随することを奨励しているわけだ。
 しかし、*9-4は、もう少しまともに、「⑤ヨーロッパ各国の研究者が横断的に協力して開発した、EUのプライバシー保護規制に準拠した接触者追跡システムを発表した」「⑥感染者の行動追跡などの極めて私的な事柄を第三者に開示することを強いるたに、接触者の追跡と正当化されるが、正当化されることと、それが適当か、あるいは期待どおりに機能するかは別問題」「⑦監視化する世界にするのか」「⑧人権は尊重されなければならない」などを検討している。が、そもそも新型コロナへの感染を早期発見・早期治療できるようにすれば、プライバシーの侵害・移動の制限・それに対する巨額の補助金支給などを行わなくてすむので、そこに全力を集中すべきなのである。

*9-1:https://digital.asahi.com/articles/ASN3074G1N30ULFA02B.html (朝日新聞 2020年4月1日) 総務省、携帯・IT大手にビッグデータ要請 コロナ対策
 総務省などは31日、NTTドコモなど携帯電話大手3社や米グーグルやヤフーなどIT大手6社に対し、保有するビッグデータを新型コロナウイルスの感染対策のために提供するよう要請した。携帯の位置情報を使った人の移動データや検索キーワードの履歴から、集団感染の発生をつかむことなどに役立てる考えだ。首都圏を中心に感染者が急増する中、集団感染の発生を封じ込める必要性が高まっている。提供されたデータを分析し、外出自粛要請などの対策の実効性を検証することも期待できるという。その他のデータについても「利用可能なものは積極的にご提案いただきたい」(総務省)としている。高市早苗総務相は同日の閣議後会見で、「感染拡大防止策のより効果的な実施が可能となる」と強調した。同省のほか、内閣官房、厚生労働省、経済産業省が連名で要請した。

*9-2:https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200415/k10012388211000.html (NHK 2020年4月15日) “ビッグデータ”でコロナと闘う
 「いま発熱はありませんか?」。ITを駆使して8300万人もの人々に健康状態を問いかける。そんな前例のない大規模な調査が行われている。新型コロナウイルスの対策に必要な“ビッグデータ”の収集。感染リスクを抱えているのは、どんな職業の人で、どこにいて、どんな予防策をとっているのか。寄せられた大量のデータを分析することで、感染拡大の抑止にどのような対策が有効なのか、その道筋が見えてくるという。私たち一人ひとりが持つ情報の集積、ビッグデータは、猛威を振るう新型コロナウイルスに打ち勝つ有効な武器となるのか。
●歴史的な規模の調査
 先月31日から始まった厚生労働省の新型コロナウイルス対策のための全国健康調査。全国で8300万人という通信アプリ「LINE」のユーザーに直接呼びかけ、いまの健康状態などを聞き取っている。質問項目は、「いまの健康状態」「年齢」「性別」「住んでいる地域」「感染の予防行動」などいくつかの簡単なもの。調査にあたって、厚労省は、集めたデータは感染者の集団=クラスターの対策のための分析だけに使用し、個人のプライバシーが特定されないよう加工を行うとして、広く協力を呼びかけた。これまでに寄せられた回答は、およそ2500万人分。国民のおよそ5人に1人が回答した計算になる。回答は自主的な申告だが、感染リスクに関する重要なデータが明らかになってきた。37度5分以上の発熱が4日以上続いていると答えた人が、全国で約2万7000人に上ったのだ。都道府県ごとに見ると、沖縄県がもっとも高く、次いで東京都、北海道、大阪府が全国平均を上回っていた。国の緊急事態宣言が出されていない自治体でも、発熱を訴える人が数多くいることが分かった。さらに、発熱を訴えている人を職業別のグループで分類したところ、▽飲食店や外回りの営業など長時間の人との接触や密集を避けるのが難しい職業のグループでは0.23%と全体の平均の2倍余りに上っていた一方、▽在宅で家事や育児をする人など人との接触を避けることが比較的容易なグループでは0.05%と、全体の平均の半分以下の割合となっていた。これらの傾向から、日頃の行動で「社会的な距離を保つこと」「密閉・密集・密接のいわゆる3密を避けること」が感染リスクを下げるうえで重要であることが、データで裏付けられるかたちになった。発熱を訴えている人が、直ちに新型コロナウイルスに感染していることを示しているものではない。それでも、現状では希望した人すべてがすぐに感染の有無を調べる検査を受けられるわけではない中で、ウイルス感染の可能性のある人がどれくらいいるのか、どんな傾向があるのかが分かったのは初めてだ。
●自粛要請 その裏側にもデータ
 LINEを通した健康状態の聞き取り調査は、国に先立って一部の都府県で始まっていた。自治体の調査では、健康状態の聞き取りだけでなく、回答された内容にもとづいて、新型コロナウイルスの感染の可能性があるかどうかや、相談窓口への連絡の必要性などを自動のチャットで回答する仕組みになっている。もっとも早く3月上旬に導入した神奈川県では、県民20万人のビッグデータの分析結果が、知事が「不要不急の外出の自粛」を呼びかける根拠の一つとなった。その分析データも、発熱を訴える人の割合だった。ことし2月末から3月中旬まで、日ごとの発熱していると答えた人の割合は横ばいだった。しかし3月20日からの3連休のあと、その割合が急激に増えていた。そして、感染が確認された人の数も、それに伴うように増え始めていた。これに、県内の人出のデータを重ねると、3連休では行楽地への人出が増加しており、自粛ムードが緩んでいたことが見て取れる。神奈川県は、そのことが感染拡大につながった可能性があると考え、「不要不急の外出の自粛」を呼びかけたのだ。
●専門家が語る“データの力”
 LINEと国や自治体を結んで、ビッグデータを利用した調査や健康サポートのシステムを作り上げたのが、医療政策を専門とする慶應義塾大学医学部の宮田裕章教授だ。クローズアップ現代+にゲスト出演している宮田教授は、新型コロナウイルスの流行の兆しが見えていたことし2月下旬、ビッグデータの活用がいかに不可欠かを指摘していた。
*慶應義塾大学医学部 宮田裕章教授
 「もしこのまま感染がおさまらなかった場合に、どういった対策を打てばいいのか、判断の根拠になるものがない。患者だけでなく、自宅に待機している潜在的な患者も含めてエリアごとに把握しながら対策を考えないといけない」。 その後、宮田教授はLINEや厚労省と協議を重ね、調査の実施へとつながっていった。感染拡大の収束がまだ見えない中、データを活用することの重要性は今後さらに高まっていくと話す。
*宮田教授
 「今後もしオーバーシュート(感染爆発)が発生するとしても、症状を訴えている人の情報をより早く集めることで、どれくらいの患者が発生しうるのか、それに備えるための現場の準備につなげることができる。データを蓄積しながら判断を重ねて、人々に還元していく、これがいちばん大事です」
●IT企業もビッグデータを提供 
 LINE以外にも、新型コロナウイルスへの対策にビッグデータを役立てようという動きは、いくつかのIT企業の間で広がっている。グーグルは、地図アプリで集めた匿名のビッグデータを使って、新型コロナウイルスの影響を受けて世界各国の人々の活動がどれほど変化したかを、今月3日からブログで公開している。それによると、3月の1か月間の人々の活動量は、厳密な都市封鎖が行われたフランスでは大幅に減少した。一方、日本では駅など交通機関への人出は減少したものの、娯楽施設への人出は、3月下旬にかけての桜の開花や3連休のタイミングで増加していた。また、IT大手ヤフーでも、アプリを通じて匿名で提供を受けた人々の位置情報や購買履歴、検索ワードなどのビッグデータを厚労省に提供すると発表していて、分析の結果が対策に活用されることが期待されている。
●AI・ビッグデータがもたらす未来の医療
 日本以上に新型コロナウイルスの感染が広がっているイギリスでは、ビッグデータとAIを活用したサービスが、急速に普及している。イギリスのベンチャー企業「Babylon Health(バビロン・ヘルス)」が運営するAIを使った遠隔診療サービス「AIドクター」は、国の保険が適用され、すでに80万人以上が登録している。ことし2月には、新型コロナウイルスの診断プログラムが追加された。利用者は、スマートフォンやパソコンによるチャットで、AIに対して現在の体調や症状を申告する。すると、AIが自動で質問を投げかけて生活習慣や持病などを聞き取り、可能性のある病名を回答するという仕組みだ。24時間365日、待ち時間なく利用することができ、チャットの開始から可能性のある病名の回答までわずか数分ですむ。医療費がほぼ無料のイギリスでは、軽い症状でも人々が病院に頼るため、受診できるまで最大2週間かかることもある。このAIドクターが、医師に代わって最初の診断を担うことで、病院に駆けつける人を減らすことができ、今回の新型コロナウイルス対策でも医療現場を支える役割を果たしているという。
●AIの可能性
 AIドクターを支えているのが、患者の症例などの膨大な医療ビッグデータだ。AIは、データの分析・学習を重ねることで診断の精度を高め続けていて、ある医療テストでは、AIドクターの診断の精度が人間の医師を上回ったという結果も出ているという。さらに、カメラに映った患者の表情をAIが読み取ることで、患者自身も気付かない病気の兆候を見つけ出す試みなども行われ、新しい医療の可能性も示している。
*バビロン・ヘルス 最高医療責任者 モブシャー・バットさん
「ビッグデータを用いた医療は、今のような集団感染が起きた時こそ本領を発揮する。AIドクターを使えば、対面による感染リスクを減らしてサポートができる。世界中の国がこれを医療に導入するまでそれほど長い時間はかからないだろう」
このAIドクターは、イギリスだけでなくアフリカなど世界17か国で導入されていて、日本でのサービス開始も検討されているという。
●一人ひとりのデータが未来を支える
 大きな可能性を持つ医療ビッグデータの活用。しかし、一人ひとりの健康状態や病歴などは、最も厳密に管理されなければならないプライバシーデータ=個人情報でもある。集められたデータが目的外に流用されたり、外部に漏えいしたりすることはあってはならない。この点に関して、宮田教授は、データ活用には「信頼」が重要だと指摘する。
*宮田教授
 「皆さんから多くのデータを集めるためには、信頼される形でデータを使うことが必要。データの十分な管理がなされているか。公共の利益のために使われているか。第三者機関の監視や複数の機関が関わることで、信頼を高める仕組みを作る。データは誰かが持っているだけでなく、共有することによって価値が高まっていく。ひとりのデータがみんなのために役立てるだけではなく、そのデータが、結局、一人ひとりを支える仕組みを作ることによって社会そのものをいい方向に向けていきい」
 厚労省のLINEを使った調査は、これまでに3回行われ、今後も続けられる予定だ。合わせて行われている自治体の健康サポートでは、長期にわたって健康状態をフォローすることで、今後、回復に向けた医療ケアにつながるような分析も可能になるのではないかと期待されている。統計的な分析やAIによる解析によってより高い価値を産み出すビッグデータ。うまく活用すれば、私たちが新型ウイルスに対して立ち向かう大きな武器となるはずだ。ビッグデータとコロナウイルスについては、15日(水)午後10時放送予定のクローズアップ現代+で詳しくお伝えします。

*9-3:https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/20/051400292/ (National Geographic 2020.5.14) 新型コロナ、韓国はいかに感染爆発を食い止めているのか、大量の検査実施とビッグデータを活用した接触者の追跡が奏功
 韓国ソウル市にあるH+(エイチ・プラス)ヤンジ病院の駐車場に設置された新型コロナウイルス臨時検査場は、外から見ると普通のプレハブ住宅とあまり変わらない。だが、そのなかには真新しい透明のプラスチック板に囲まれたブースが4つ置かれ、危険な病原体を扱う研究室にあるように、プラスチック板に開けられた穴にゴム手袋が取り付けられている。患者はブースに入ると、プラスチック板の反対側にいる医師とインターコムを通じて会話し、手袋をはめた医師が患者の鼻と喉から検体を採取する。患者と医師が直接接触することはない。ブース内は陰圧状態が保たれていて、ウイルスを含んだ飛沫がブースの外に漏れ出ないようになっている。検体の採取が終わったら、防護服を着た職員がブース内を消毒し、ゴム製のワイパーでプラスチック板を掃除する。韓国全土に設置された同様のウォークイン式検査場は、大量で迅速な検査実施を可能とし、早期のウイルス封じ込めに成功した韓国の感染症対策の柱のひとつになっている。このほかにも、人口5100万人の韓国は接触者追跡にビッグデータを活用し、クレジットカードの利用履歴や携帯電話の位置情報をもとに感染者の移動経路を明らかにした。韓国の世論調査では、感染拡大を阻止するためなら個人のデジタルプライバシーが犠牲になっても良いという回答が多数派を占めている。当局は厳しい社会的距離政策を推進したが、その多くは自粛要請にとどまり、バーやレストラン、映画館の強制的な閉鎖措置は取られなかった。その韓国でも、コロナウイルスの流行が完全に終息したわけではない。最近になって複数のナイトクラブで集団感染が発生し、5月13日の時点で新規感染者は119人に増えた。それでも、韓国政府の対応は世界のお手本となるだろう。ここまで来るのは、簡単なことではなかった。
●過去の感染症から学んだ韓国
 韓国の迅速な対応は、過去の感染症から学んだことによる。2015年に流行したMERS(中東呼吸器症候群)により、韓国では186人が感染し、38人が死亡した。流行が終息してすぐに、韓国議会は接触者の追跡を包括的に実行できるよう法律を策定し、感染者と接触した人を全員追跡して隔離する態勢を整えた。衛生当局は、クレジットカード会社に対して患者のカード利用履歴を、携帯電話会社に対しては位置情報を要請する権限が与えられた。さらに、それをもとに再現された感染者の行動経路が、本人の名を伏せて公開される。人々はこれを見て、その経路上で自分が接触したかどうかを確認できる仕組みになっている。韓国では当初、毎日のように数百人の感染が報告され、ピークに達した2月29日には、主に大邱(テグ)市の宗教団体での集団感染により、909人の感染者が出た。だが接触者の追跡と大量の検査のおかげで、制御不能になる前に初期の感染者増加をなんとか抑え込むことに成功した。その後も同じ戦略によって、教会やゲームカフェ、コールセンターでの集団感染を早期に封じ込めた。4月15日、韓国は総選挙を実施し、2900万人がマスクと手袋を着けて投票に出かけた。投票所では全員の体温を測り、発熱している人を選別した。この選挙による感染者はひとりも報告されていない。韓国のデータ収集は、一部の国からは患者のプライバシー侵害だと言われるかもしれないが、韓国国民からは広く支持されている。ソウル大学公衆衛生大学院が3月4日に実施した調査では、1000人の回答者の78%が、ウイルス封じ込め対策を強化するためなら人権の保障が多少受けられなくても仕方がないと回答した。過去の流行の経験からも、国民は政府の正式なガイドラインが発表される前から外出自粛を始め、外ではマスクを着けるようになっていた。そして何よりも、韓国は2015年のMERS流行後、診断検査能力の拡充に乗り出していた。米国は疾病対策センター(CDC)の開発した検査キットに頼っていたが、韓国は民間企業を活用した。今年1月下旬、政府は国内のバイオテク企業に検査キットの開発を要請し、それから1カ月以内には1日1万件の検査を実施していた。韓国のバイオテク産業は近年急成長し、パンデミックが始まったころには既に増産の態勢が十分に整っていたと、ソウルの南、板橋(パンギョ)にあるTCMバイオサイエンス社の最高経営責任者トーマス・シン氏は言う。「ここ5年間で、韓国では多くのバイオテク企業が生まれました」。TCMも政府の要請に応じてキットを開発し、4月に食品医薬品安全処の認可を受けた。シン氏は、検査キットの開発は企業経営の観点からは必ずしも簡単な決断ではなかったと話す。新しい感染症は予測が難しく、早期に封じ込められれば初期開発費が回収できなくなってしまう。しかし、韓国はウイルス発生源である中国と強いつながりがあったため、韓国が中国と同じ状況に陥るのは時間の問題だと、TCMは考えた。さらに、世界市場でもビジネスチャンスが生まれるだろうと予測した。これまでのところ、同社は260万ドル(約2億7700万円)相当のキットを出荷している。(以下略)

*9-4:https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20200423-00071905-gendaibiz-pol&p=5 (Yahoo 2020/4/23) 新型コロナで世界が苦悩する「監視・プライバシー」をめぐる難題
●コロナ対策とプライバシーの問題
 新型コロナ対策のために、日本でもパーソナルデータの利用や接触者追跡のシステムの導入に向けた動きは本格的に始まろうとしている。4月1日の新型コロナ感染症対策専門家会議の見解で、「パーソナルデータの活用」「アプリ等を用いた健康管理」が言及され、6日には、内閣官房で「新型コロナウイルス感染症対策テックチーム」のキックオフ会議が開催され主要なIT事業者や移動通信会社、団体が参加している。世界的な流れも、プライバシーへの介入をなるべく少なくした接触者追跡のためのアプリ導入に向けた動きが進む。3月31日にはヨーロッパ各国の研究者が横断的に協力して開発した、EUのプライバシー保護規制に準拠した接触者追跡システムを発表。4月10日には、アップルとグーグルがスマートフォンを使った接触者追跡技術の共同開発を発表し、技術文書のドラフトをリリースした。4月13日には、日本でも民間団体による接触者追跡アプリの開発を待って政府が実用実験を行うことが報道された。感染症対策は、個人情報やプライバシーの問題と、社会的な必要性との間で慎重にバランスをとることが求められる分野だ。感染者の行動追跡はその典型で、どこへどのような手段で行き、誰と会ったかなどは極めて私的な事柄だ。通常、第三者に開示することを強いられるものではないが、接触者の追跡のために情報収集が正当化される。しかし、正当化されることと、それが適当か、あるいは機能するかは別問題だ。どのような個人情報をなぜ収集するのか、収集された個人情報をどのように利用し、誰に提供され、あるいはどこまで誰に開示されるのかなど、プロセスの透明性が確保され、適切な管理と規制のもとに置かれていなければ、信頼性を欠くからだ。また、「知りたい」「知っておきたい」ではなく、私的領域に介入してまで収集する必要性があることへの理解と、提供したことにより発生する不利益(接触者の隔離による社会生活上の制約など)に対する手当の両方が、本当に機能させるには不可欠だろう。今、感染症対策の伝統的手法に加えて、私たちが日々利用しているスマートフォン、SNS、アプリ、検索エンジンなどの利用により蓄積される位置情報や利用履歴などの個人データの利用や、情報技術を使った接触者追跡などの利用が加わりつつある。政府に法的な権限や根拠を手当てすれば、信頼性や透明性、そして発生する不利益への手当てを欠いたとしても、感染症対策としてデータの収集・利用は可能となるが、それで果たして良いのかが問われている。新型コロナの感染急拡大により、新たなツールやデータの収集・利用方法の開発・実装とすでにある個人に関する情報の提供・利用――技術的イノベーションと個人の私的領域への介入――が急速に、かつ同時並行的に進んでいる。こうした中で、感染症対策という非常時の手段として、どのような条件でどこまで正当化できるのかが今、問題になっている。新型コロナ対策として、個人情報やデータの利用について世界ではどのような取り組みが行われ、何が課題・問題になっているのかをまずはまとめたい。
●データを活用した対策の効果は…
 人の日常がデジタルの痕跡で残るようになり、従来とは異なる方法で感染者の監視・管理、接触者の追跡を行おうとする試みは以前からある。2014年に主にシエラレオネ、リベリア、ギニアで発生したエボラ出血熱の地域的流行が、最初にデジタル情報を本格的に使った感染症対応といわれている。この時、携帯通話データなどの個人情報が、国際的な官民援助機関の要求により通信事業者から提供されたものの、様々な問題を引き起こした一方で、感染予測に役立ったという根拠はなく、感染症対策としての効果が薄かったという検証結果も報告されている。報告では、ツールやシステムの開発の方が成果がわかりやすいので資金がつきやすく、独自のものが乱立しがちになること、それらは十分な評価・検証されずに実験的に投入されること、データを得ても効果的な対策ができなかっただけでなく、データは特定のツールやデバイスのユーザーに偏るため、脆弱で最も支援が必要な人ではなく、支援が必要ない人を支援する結果になる可能性があることなどが指摘されている(なお、この時の経験をもとに、人道支援分野では倫理的にかつ責任ある個人データの扱いが議論され、国連やWHOの方針等にも反映されている)。当時よりも個人データの集積・利用が進み、またエボラ出血熱のような一部地域での流行ではなく、新型コロナウイルス感染症は世界的流行となった。その中で、個人データの利用・提供とツールやシステムの開発・導入は様々なレベルで加速している。これらは主に、以下のようなものに分けることができる。この中で最も論争となっていることの一つが、位置情報の扱いだ。
 (1)感染者の行動履歴を携帯の位置情報のほか監視カメラなどから特定(中国、韓国、
   イスラエルなど)
 (2)アプリを義務的導入、一部地域で人々の行動監視(中国)
 (3)無症状・軽症の陽性者の自宅隔離監視ツール(台湾、韓国、オーストラリアの一部
   の州など)
 (4)匿名加工した位置情報の提供(アメリカ、ドイツなど)
 (5)匿名加工した健康管理アプリのデータの提供(ドイツなど)
 (6)ブルートゥースを使った接触者追跡アプリ
 (7)統計情報の提供
 (1)~(3)は、感染者や接触者に対して介入的に位置情報含む個人情報を収集・管理・行動を制限するもの、(4)、(5)はビッグデータの利用で位置情報や健康情報というセンシティブな情報を吸い上げるものだが(5)は任意のアプリ、(6)は個人の自発的意思によって使うものだがプライバシーへの介入が制限的と言われているが議論のあるものだ。(7)は個人への直接の関与・介入はないが、個人のセンシティブな情報の集積であるので目的を限定する必要があり、かつバイアスや差別を排除した利用をしないと政策判断を誤る可能性のあるものだ。
●監視化する世界?
 少し具体的に見ていくと、中国は既存の社区(コミュニティ)に分割した社会管理システムによる住民同士の相互監視と、情報システムを利用した監視システムの両面で住民を管理している。ニューヨークタイムス紙によると、感染拡大が明らかになると中央政府が地方政府に対策を求めた後、居住委員会や自治体が相互に競い合って住民の移動に関する独自の極端なルールを作り、相互監視が強化されているという。フォーリン・アフェアーズ誌によれば、100万人以上が地元で監視活動を行い、それに加えて、既存のAIを用いた顔認証システムの利用、スマートフォンアプリを義務化し、人に色分けしたタグ付けをして移動範囲の制限等を行っている。韓国は、2015年のMERS(中東呼吸器症候群)の流行時に感染者の訪問先を隠したと批判されたことで、感染症法が大幅に改正され、感染者の移動履歴などの詳細情報が公開されるようになった。また、接触者追跡のための聞き取り調査に加え、監視カメラ映像、クレジットカード使用歴、GPS情報を使っている。中国もシンガポールも、同じ手法で追跡調査を行っている。MITテクノロジー・レビュー誌によると、韓国では感染者が2メートル以内にいた、あるいは咳をしたときに同じ部屋にいると、「接触者」とされ、2週間の自己検疫が命じられ、移動が法的に禁じられる。接触者はアプリか電話で毎日の健康状態を報告し、移動した場合は警報が本人とケース担当者に送信される。2月26日に感染症予防法などの改正法案が成立し、入院や隔離措置に違反した場合の罰則を強化するなどしている。イスラエルは、安全保障局が裁判所の命令なしに個人の電話を追跡できる権限をネタニヤフ首相が承認。テロリストに対する監視方法を新型コロナ感染者の追跡に利用している。また、3月22日に接触者追跡アプリHamagenの提供をはじめた。アプリユーザーの位置情報と、陽性診断前14日間の感染者の位置情報を相互参照し、一致した人に対してどのような対応をすべきかを通知する保健省へのリンクが送信され、保健省にも報告がされる。ロイター通信によると、イスラエル国防省は、スパイウェア会社が作成した携帯電話から収集されたデータを分析するソフトウェアを使って、感染が疑われるものを特定して検査を計画している。感染者数の増大とともに、国防大臣は感染の可能性のある接触者の追跡にはもはや位置情報の追跡は効果的ではないと述べたという。位置情報を利用しているものには、陽性でも無症状者や軽症者の自宅検疫監視ツールがある。BBCによると、台湾では、自宅検疫を命じられた者は「Electric Fence」を起動してスマートフォンのデータが追跡され、外出すると連絡を受けた警察や地元当局が15分以内に対応。携帯電話の電源が切れていた場合は、自宅まで警察が来る。ポーランドでは、14日間の自宅での自己検疫を確実に行うためのアプリを公開。最初にセルフィーで写真を登録し、定期的に位置情報とともにセルフィーを送る要請が届き、20分以内に送信できないと警察により警告され、従わなかった場合は罰金が科される。自己検疫対象者は、アプリをダウンロードして使用するか、警察の訪問を受けるかを選択しなければならない。また、位置情報ではないが、ロイターによると、ロシアは帰国・入国者すべてに2週間の自己検疫を求めており、モスクワ警察は顔認証技術を使用し、200人以上の自己検疫対象者を違反者として取り締まったという。匿名加工した位置情報の提供を受けているのが、ドイツ、オーストリア、ベルギー、イタリア、スイス、スペイン、ポーランドなどだ。イギリスでも通信事業者などと協議中と伝えられているほか、欧州委員会はヨーロッパ通信大手事業者に対して、欧州委員会として利用法を管理するため、数億人分になる匿名化及び集計された域内の携帯電話のメタデータの共有を要請したと報じられた。アメリカも匿名化した位置情報の提供を受けているとされるが、通信事業者ではなく広告事業者がアプリを通じて収集したもののようだ。広告事業者の活動自体が不透明であり、位置情報の収集方法に疑義があるため批判の対象になっている。
●位置情報以外で接触者を追跡する方法
 そして今、もっとも導入が広がりそうなのが、位置情報以外で接触者を追跡する方法だ。シンガポール政府は、3月20日にスマートフォン向けのアプリTraceTogetherの提供を始めた。GPSやwifiはどこにいるかという位置情報を示すが、Bluetoothは例えば接続するイヤホンなどの機器との距離がわかるので、同じアプリを入れた機器同士の距離を計測して記録する。アプリストアから自分の意思でダウンロードし、起動して携帯番号を登録する必要があり、これが政府の管理するサーバーに登録されIDも自動生成され一元的に管理される。Bluetoothをオンにしておき、同じアプリの入ったスマホが近くにあると、(1)タイムスタンプ、(2)Bluetoothの信号の強さ、(3)機種、(4)一時的なID(定期的に変更される)の4情報が交換され、それぞれのスマホに記録される。TraceTogetherのウェブサイトによると、これらの情報は外部には送信されず政府が管理しないとされ、接触情報が使われるのはアプリのユーザーが感染した場合。本人の同意で保健省の職員がアプリ内の暗号化された情報を政府のサーバーにアップロードして解読し、過去21日間に2メートル以内に30分以上いた接触者を特定し、追跡担当者から接触者に電話をする。電話を受けて本人が同意をすると、その情報もアップロードして解読するという。誰が感染者か、接触者であるかは双方に伝えられないともしている。(なお、現在、TraceTogetherはオープンソースとなっているが、それより前にリバースエンジニアリングとユーザーのトラフィックを検証した結果として公表されているレポートによると、アプリがデータを政府のアプリケーション分析プラットフォームに送信していたという報告もある)。21日間経つとデータが消去され(ただし、この自動消去は4月8日のアップデートで実装されたので、アップデートしていないと21日を超えてデータが残る可能性がある)、Bluetoothをオフにすると記録は停止、アプリを削除すると蓄積されたデータと一元管理されているIDなどの情報も削除されるという。いつでも自分の意思で利用を停止、データ利用の撤回ができるとして、シンガポール政府は国民に利用を推奨し普及をはかっている。
●ヨーロッパで起きていること
 ヨーロッパでは8ヵ国130人以上の科学者などが、EUの個人データ保護規則であるGDPRに準拠したプライバシーを保護した汎ヨーロッパの接触トレース(Pan-European Privacy-Preserving Proximity Tracing:PEPP-PT)技術の設計・開発に共同で取り組んでいると4月1日に発表した。このプロジェクトでは、Bluetoothを利用したもので、各国や民間でそれぞれのアプリを開発・使用するのではなく、EU域内での技術の標準化し、国が識別でき、各国の公衆衛生などのプロセスで機能する特徴を備えるものとされる。アプリの匿名化したユーザーIDは中央で一元的に管理され、感染が確認されるとスマートフォンに蓄積された接触情報が中央サーバにアップロードされて解読され、接触者に連絡するものになるという。プロジェクトメンバーにフランス国立情報学自動制御研究所が含まれ、フランスはPEPP-PTを用いたアプリの準備を表明している。別のイニシアティブもあり、ヨーロッパの7つの研究機関の約25人の研究者によって設計された分散型プライバシー保護接近トレース(DP-PPT)が発表された。PEPP-PTとは異なり、アプリユーザーの仮名IDは中央に一元的に保存することを要求しない。より、国家による監視システムへの転用などをしにくくするためという。これとは別に、イギリスでも接触者追跡のためのアプリの導入を現在検討している。さらに冒頭に述べた通り、GoogleとAppleは共同で接触者追跡技術の共同開発を表明した。4月8日に欧州評議会は、新型コロナ対策として汎ヨーロッパの接触者追跡アプリと、匿名化及び集計された携帯の位置情報データを利用による新型コロナウイルスの展開のモデリングと予測を二本柱とした勧告を採択しており、方向性は作られつつある。
●人権は尊重されなければならない
 こうした世界各国の前のめり気味な動きに対する警戒感や問題点の指摘が、市民社会や研究者などから表明されている。もちろん、新型コロナ対策を効果的に行い、人の命を守る必要があることについて異論を唱える人はおらず、情報やツールがあれば解決するという単純化がもたらす深刻な副作用を懸念している。その懸念に対し、WHOの3月30日の定例記者会見で、健康関連の緊急事態対応を統括するマイケル・ライアン氏は、個々の市民に関する情報の収集や位置情報の追跡には、常に非常に深刻なデータ保護、人権の原則が関係していること、開発されるすべてのものが可能な限り最も慎重な方法で行われ、個人の自由や権利の基本原則を超えないようにしたいと述べている。電子フロンティア財団(Electronic Frontier Foundation; EFF)やプライバシー・インターナショナル(PI)など、プライバシーと市民的自由の問題に取り組むNPOは、早くからこの問題に対して警告し、問題点を繰り返し指摘してきた。4月2日には人権・デジタル権の問題に取り組む世界各国100以上のPIを含むNPOが連名で、新型コロナの世界的流行に対して電子的監視テクノロジーの使用には人権が尊重されなければならない旨の声明を出した。声明では、プライバシー権や表現・結社の自由といった権利に対する脅威となるため、新型コロナ対策のための国の取り組みが、電子的監視テクノロジー能力の大幅な拡張のための口実になってはならず、現在のような非常事態であっても、政府が個人や住民監視に電子的テクノロジーを用いる場合は厳格に人権を保障して実行することを求めた。また、政府が電子的監視テクノロジーを用いる場合には、適法かつ適切な方法でなければならないこと、例外的に監視権限を強化する場合はその期限を明確にすること、健康情報を含む個人データの収集・保存・集計を強化する場合は、新型コロナ対策のみに用いること、ビッグデータやAIを含む新型コロナ対策のためのいかなる電子監視テクノロジーの利用による差別や排除のリスクを踏まえることなどを求めている。EFFは、新型コロナ対策のための手段として電子的監視を含む新たな管理権限を政府が要求する場合、政府にはその手段が新型コロナ対策に効果的であることを示したか、有効性が示せた場合、その方法がどのくらい市民的自由を侵害するのか、そしてその侵害が過度でないとすると監視手段にはセーフガードがありそれが機能するかということを明らかにすべきだとしている。そして、アプリなどによる監視は個人の任意の同意による必要があること、個人情報は必要最小限収集・保存し、利用目的を明確かつ明らかにすること、情報セキュリティの透明性が必要であること、システムの設計段階でプライバシー保護を組み込むこと、立法府が関与し政府のプライバシー影響評価とポリシーへの市民のインプットを検討すること、監視プログラムの詳細を可能な限り公開し透明性を確保すること、バイアスを排除すること、市民の思想、信条、表現及び結社の自由をターゲットにしてはならないこと、安全措置の違反があった場合に訴訟ができること、有期限の手段とすることを求めた。こうした意見や声明が出される背景には、個人データを含むデータの取得や利用、テクノロジーの利用が、どこまで効果があるのかが明確ではないまま、悪化する状況に対応するため実験的に行われており、その結果として新たなシステムや権限を政府が獲得していくことになりかねないことへの懸念がある。例えば、ヨーロッパで取得が進む匿名化した位置情報については、データの加工には24~48時間かかるため、政府が取得してもビックデータ分析にほとんど役立たず、ヒートマップの方が有効で、また匿名化しても位置情報を使って15の人口統計的特性で99.98%の個人を特定できたという、インペリアルカレッジとルーヴェン・カトリック大の研究結果があるとの指摘がある。また、シンガポールが導入し、日本を含む世界各国で導入に向けた検討・準備が始まる接触者追跡アプリについても有効性には疑問が示されている。ビジネスインサイダーによると、オックスフォード大のビッグ・データ研究所は接触者追跡アプリについて有効だとの研究結果を発表したが、どのくらいアプリのユーザーが広く広がるか、そもそも検査が幅広く行われているか次第であり、また、アウトブレイクの早い段階で使用されることに効果があるという。また、アプリはすべての感染可能性を記録しているわけではなく、ユーザーに誤った安心感情を作り出す危険があるとしている。また、WIRED誌には、感染症対策ではたまたま飛行機に隣に座っただけの人も含めて個人情報が補足され、疾病管理データベースなどに登録されるなど、多くの人の情報が含まれる可能性があるが、そのデータがいつまで利用されるのかは明らかではなく、また利用が停止されることを多くの人が信じていないと研究者の指摘がある。また、ある時点で接触者追跡は接触者が多くなりすぎて実行不可能となるともしている。追跡者接触アプリを導入すると、従来より多くの接触者が機械的に特定され、たまたま居合わせた人など広範囲かつ大量に個人情報が収集されて保存、利用される可能性がある。そうした場合にいつまでどのような利用目的で個人情報を保有するのか、目的外利用は行われないのか、そして多くの接触者にどう対応するのかといったことの準備が必要であることは明らかだろう。

<RNAウイルスに対する安価なワクチン・治療薬>
PS(2020年5月20日):新型コロナに関して、現在は必要な検査も受けられず治療薬もない状態であるため、21世紀の医療が期待できない。そのため、私は、医者いらずのアロエやヨーグルトを飲む伝統的な方法をとっているが、これが意外と効いている。そのため、新型コロナのようなRNAウイルスが細胞に感染することを利用して、乳酸菌(麹菌でも可)に感染させ、生き残った乳酸菌株でヨーグルトを作れば、RNAウイルスに対するワクチンや治療薬の働きをするヨーグルトを安価に作れるのではないかと思う。ちょうど、*10-1のように、コロナ禍で牛乳が余るくらいに牛乳の生産能力はあるため、(すぐに需給調整したり、国の補助金に頼ったりするのではなく)付加価値の高い製品を作ることを考えた方が賢明であるし、牛乳はいろいろなやり方で使えるのである。
 さらに、*10-2のミドリムシも健康食品になっているが、新型コロナに感染させた後に生き残った株を増やせば、それには抗原や抗体を含ませることができ、(燃料としては高すぎるが)治療薬やワクチンとしてならアフリカでも使える安価なものを作れるのではないかと思う。

*10-1:https://www.agrinews.co.jp/p50774.html (日本農業新聞論説 2020年5月13日) コロナ禍酪農危機 一丸で生乳需給調整を
 新型コロナウイルス感染拡大に伴う緊急事態宣言の長期化で、生乳の需給緩和が重大局面を迎えている。特に主産地・北海道での生乳処理が限界に近づき、処理不可能乳が出かねない危機的状況だ。生乳需給調整へ酪農、乳業、行政が一体となり難局を乗り切るべきである。コロナ禍による急速な需要減少は、生乳生産全体の6割近くを占める北海道で深刻な事態を招いている。Jミルクは「ミルク・サプライチェーン(供給網)が寸断され、酪農・乳業界に大打撃を与えかねない」と懸念を募らせる。一方で、こうした現状が消費者に伝わりにくい実態にあるのも事実だ。家庭内需要に限れば、牛乳は前年対比で2桁伸び、乳製品消費も堅調だ。江藤拓農相をはじめ関係者挙げて牛乳・乳製品の消費拡大を呼び掛け効果も出てきた。だが問題は、「生クリーム、バターをはじめ生乳全体の半分近い業務用需要の落ち込み量をカバーできない」(Jミルク)点だ。例えばバターは家庭需要が好調だが、全体の2割にすぎない。生乳は全国で毎日約2万トン生産される。ホクレンをはじめ各指定生乳生産者団体は懸命の配乳調整を続けているが、行き場を失った大量の生乳をどう処理、販売していくのか。コロナ禍で既に欧米各地では生乳廃棄が相次ぐ。外出自粛で外食など業務用需要が大幅に縮小する一方、北海道の生乳生産は5月後半からピークとなる。5月の全国生乳生産見込みは65万トンで、前月に比べ2万5000トンも多い。全国の大半の小中学校休校継続で、学校給食向け生乳の道外移出も激減。需給の調整弁となるバター、脱脂粉乳を製造する道内の乳製品工場での処理能力を超えた生乳が供給されつつある。現在、製造余力のあるチーズ工場に生乳を振り向けるなど綱渡りの需給調整が続く。4月下旬、関係者は相次ぎ記者会見を行った。生乳需給が重大局面を迎えていることの危機感からだ。道内の生乳生産量が最も多い5、6月を過ぎれば需給は好転に向かうとの見方も強い。それまでの間に、需給調整と消費拡大を強力に進め、どう難局をしのぐかが最大の課題だ。国内酪農は、都府県の生産基盤弱体化が深刻で、需要が生産を常時上回る状態が続いてきた。始動した新たな酪農肉用牛生産近代化方針(酪肉近)でも、基盤強化と着実な増産実現が焦点となった。乳牛増頭で増産基調を維持しながら、コロナ禍の中で需給調整を徹底し、国内酪農を守らなければならない。関係機関は、月末にも直近情勢を踏まえた生乳需給見通しの具体的数字を示す。脱粉は需要低迷から在庫が過去最高水準に積み上がっている。農水省が1月に示した今年度の脱粉輸入枠は4000トン(製品換算)だが、当初から過大な数字との指摘が出ていた。今の生乳需給重大局面の中で、同省が輸入量の修正に踏み切るか注目したい。

*10-2:https://digital.asahi.com/articles/photo/AS20200213002231.html (朝日新聞 2020年2月13日) 航空機バイオ燃料、熱い視線 国内でも開発、コスト課題
 藻の一種に含まれる油脂やごみなどを原料とする「バイオジェット燃料」を、航空機燃料に導入する動きが進みつつある。地球温暖化を防ぐため、世界が二酸化炭素(CO2)削減に取り組むなか、大量のCO2を排出する航空業界も対応を迫られている。日本で普及するには安定供給とコスト削減がカギになる。
■原料にミドリムシ、木のチップ、衣料品…
 横浜市鶴見区にある、微細藻類のミドリムシを原料に使った健康食品などで知られるユーグレナ(東京都)が運営するバイオ燃料製造プラント。ここでミドリムシからとれる油脂や廃食油を原料に、航空機やバスなどで使える燃料をつくる実証試験が進められている。植物のように光合成で栄養分を体内にためるミドリムシは、周囲に酸素がないと細胞内に油脂を蓄積する性質がある。この油脂を燃料の原料として活用する。2018年秋に竣工(しゅんこう)したプラントは敷地面積約7800平方メートル、年間125キロリットルの燃料の製造能力がある。1月、このプラントの技術が、燃料を民間航空機に導入するのに必要な国際規格を満たすと認められた。同社は今春の初出荷を目指す。ネックは製造コスト。実証プラントを製造工場としても使う前提で、計算上1リットルあたり1万円になる。普及には同100円ほどにする必要があるという。同社バイオ燃料事業課の江達(こうたつ)課長は「コストの7~8割を占める原料をいかに安く手に入れるかがポイントになる」と話す。ミドリムシを安定、大量培養するため、同社は温暖で日射量が多いインドネシアやコロンビアで試験する計画を進める。国産バイオジェット燃料の普及に向けて、経済産業省と国土交通省は15年、検討委員会を設置。東京五輪・パラリンピック期間中にバイオジェット燃料を混ぜた燃料を使った飛行を目標の一つに掲げ、官民で議論してきた。ユーグレナも今年9月までの有償飛行実現を目標に掲げる。ユーグレナ以外にも、三菱日立パワーシステムズなどは木のチップなど木質系バイオマスを原料とし、液体燃料を作り出す技術を開発。ベンチャー企業グリーン・アース・インスティテュート(GEI)などは、回収した衣料品を糖に変えて菌の力でアルコールにしてから燃料にする。
■CO2排出減へ、供給足りず
 温暖化対策として脱炭素の動きが加速し、欧州では航空機を使わず、CO2排出がより少ない鉄道で移動する「飛び恥」という動きも生まれる中、航空業界も対応を急いでいる。国際民間航空機関(ICAO)は、国際線を運航する航空会社に、21年以降、CO2排出量を増やさない目標を課す。より燃費の良い機種への変更、燃料を節約できる運航方法の導入などとともに、化石燃料の代わりにバイオジェット燃料を使うことは、排出量を減らす一翼を担う。昨年11月までに世界21カ国の空港からの商業飛行の実績がある。日本航空と全日本空輸の大手2社だけでも1年に航空機から出るCO2は計約2千万トンにのぼる。日航は、09年に仙台などの上空で、17年には米シカゴ―成田便でバイオジェット燃料を含む燃料による試験飛行を実施。今年、GEI社の国産バイオジェット燃料を使うチャーター飛行を目指す。日航戦略グループの亀山和哉マネジャーは「CO2削減を長いスパンで考えている。バイオジェット燃料の調達は経営的にも大きな意味がある」と話す。全日空はユーグレナの実証プラントに協力するほか、国内外の燃料メーカーから供給を受ける体制を築く。全日空企画部の杉森弘明マネジャーは「(バイオジェット燃料など)持続可能な航空機燃料の導入は欠かせないが、生産量は世界的にもまだ少なく取り合いになっている」と言う。

<分散型エネルギー・自給率の向上と地方創成>
PS(2020年5月21日追加):日本政府が行っている大きな無駄遣いに原発の維持があり、原発を持つ大手電力会社の都合で、豊富な自然エネルギー(太陽光・風力・水力・潮流等)による発電が進まず、分散型エネルギーも進まず、エネルギー自給率は低く、環境負荷は大きいままだ。その上、自然エネルギーの豊富な農林漁業地帯にエネルギー代金を還流させずに、海外にエネルギー代金を大盤振る舞いで支払い続けているのだから、これほど馬鹿なことはない。
 そのような中、*11-1のように、東京新聞(中日新聞東京本社)は、本社編集部門のフロアで使用する電力(年間約百万キロワット時)を再生可能エネルギーに切り替えたとみなす「グリーン電力証書」購入し、編集部門が使用する照明・空調・記者やデスクの端末などに使う電力に再生可能エネルギーを利用したことになったそうだが、本当は東京の現場で取材する記者以外は東京にいる必要がなく、編集局・技術局・東京中日スポーツ総局・電子メディア局の管理部門や経理・総務・人事部門は、土地代が安くて豊かに暮らせる地方にオフィスを持ち、ITを使って分散型ワークをした方が早い上にコストが安い。例えば、社内だけで使う非公開のHPに、取材した記者が記事の原稿をジャンル毎に次々とアップし、それを編集者が編集して校正すれば、皆がどこにいても瞬く間に仕事ができる。また、英文で出したい記事は、インドオフィスの人に翻訳・編集をしてもらうと、(時差があるので)日本の夜中に安い賃金で働いてくれ、半日遅れで(欧米ではその日のうちに)英文の記事を出せるのである。
 そして、*11-2のように、地方もテレワークを導入して地方の拠点で都市圏の仕事を行えるよう、企業のオフィスを誘致できる拠点を整え始めている。企業にとっては、自然災害の発生リスクが小さな場所に多くのものを置いた方がリスクが小さい上に土地代が安く、地方も過疎にならないので助かるわけである。
 なお、*11-3のように、日本では、耕作放棄地が増えて生産基盤が弱体化し、1965年に7割を超えていたカロリー換算の食料自給率がたった37%に落ち込み、自国民を飢えさせながら食料を輸出する国はなく品質が保証されるとも限らないため、「食の安全保障」が乏しくなった。その上、マスクさえ中国に依存しているのでは、日本から輸出する製品がなくなるのは遠い先の話ではないと思われる。

*11-1:https://www.tokyo-np.co.jp/article/release/CK2019110802000196.html (東京新聞 2020年5月1日) 再生エネ電力で新聞編集します 本社「グリーン証書」取得
 東京新聞(中日新聞東京本社)は、本社編集部門のフロアで使用する電力(年間約百万キロワット時)を、再生可能エネルギーに切り替えたとみなす認証を取得しました。再エネを調達したと認める「グリーン電力証書」を購入して、火力や原発などではない再エネ由来の電力により、環境にやさしい新聞編集を目指します。グリーン電力証書は「日本自然エネルギー社」(東京)が発行しています。同社は国内で太陽光やバイオマスなどの再生エネ事業を手掛ける四十九発電所(計約三億キロワット)に発電委託。その発電量に見合った二酸化炭素(CO2)を削減したとみなして、環境を守ることに貢献したとする「証書」を売り出しています。第三者機関の日本品質保証機構が証書の価値を認証しています。東京新聞は十一月から、編集部門が使用する照明や空調、記者やデスク端末などに使う電力量に見合った証書(バイオマス発電)購入を開始しました。これにより編集作業の電力はバイオマスを使ったとみなされます。きょう八日朝刊の紙面から証書のロゴマークを掲載します。
◆環境保護重視、広がる購入 139社・団体がグリーン証書
 「グリーン電力証書」は、国内の企業で購入の動きが広がっている。再生可能エネルギーを利用したとみなされる仕組みを使い、環境保護の取り組みに積極的だと打ち出すのが狙いだ。背景には、企業の再エネ利用や二酸化炭素(CO2)削減の姿勢に対し、市民や機関投資家らの目が厳しくなっていることがある。証書発行を手掛ける日本自然エネルギー社によると、国内でグリーン電力証書を年間契約しているのは、トヨタ自動車や順天堂大医学部附属練馬病院など百三十九社・団体。年間契約電力量は計約二億五千万キロワット時に上る。味の素AGF(東京)はグリーン電力証書を購入することによって、一八年三月末から本社と営業拠点で使用する電力のすべて(約八十万キロワット時)を再エネでまかなっている形。アサヒビールは証書を通じ、主力商品スーパードライ(三五〇ミリリットル缶)の製造に風力発電とバイオマス発電を活用している。国内外の機関投資家は近年、「ESG(環境・社会・企業統治)投資」と呼ばれる考え方を重視し、環境保護や地球温暖化防止に積極的に取り組む企業に投資する姿勢を強めている。だが、多くの企業にとって自前の再エネ発電設備を持つのは難しい。そのため、グリーン電力証書などを活用して間接的に再エネ普及の促進に努めている。
     ◇
 東京新聞(中日新聞東京本社)が購入するグリーン電力証書は年間百万キロワットで、本社編集局、技術局、東京中日スポーツ総局、電子メディア局のフロアで一年間に使用する電力の総量分に相当します。

*11-2:https://www.agrinews.co.jp/p50842.html (日本農業新聞 2020年5月20日) [新型コロナ] 進むテレワーク導入 地方拠点で都市圏の仕事 北海道で誘致盛ん
●大学多数、災害同時発生リスク少で注目
 新型コロナウイルスの感染を防ぐため注目されている、在宅勤務などの職場以外で仕事する「テレワーク」。北海道では、企業のサテライトオフィスを誘致できる拠点を整えて、地域に人を呼び込む動きが以前から活発だ。先進地域の北見市では東京のIT企業が拠点を構え、学生にテレワークの体験の場を提供。ニセコ町では旧でんぷん工場を改装した施設が注目を集める。同市の担当者は今後、東京で働く必要性を考え直す企業や人が増えると予想、新たなニーズを地域の活力にと期待する。
●学生を地元に…インターン重視 北見市
 道内の自治体は、東京と同時に災害が起こるリスクの低さや大学の多さなどを背景にテレワークに注目。インターネット環境を整えた施設を設けるなどで企業や個人を呼び込んできた。道によると、道内35市町村がテレワークできる拠点を設置。2018年度末時点で、首都圏のIT企業を中心に64企業が道内にオフィスを開設しており、徳島県と並んで全国1位の数だった。全道に先駆けテレワークを軸に企業誘致を進めてきた北見市。地元の北見工業大学と連携し、IT企業の誘致にも力を入れ、20年5月時点で、東京に本社を置くジモティーなどIT企業4社が同市内に自社で拠点を持つ。うち3社は15年から総務省が始めた「ふるさとテレワーク推進事業」を活用して同市を訪れた。同事業を活用した地域数は15年度の15から19年度で58に増えた。同市の中心商店街に設置したサテライトオフィスには、テレビ会議システムやWi―Fiを完備する。このオフィスを事務所として使ったり、一時的に利用したりする人は年間延べ3000人。地方に拠点がない企業の「出張所」としてもニーズが高い。同市で現在力を入れているのが、同市外に進学した大学生を誘致した4企業などに就職を促すことを目的にした「ふるさとインターンシップ」だ。帰省費用は同市が負担し、東京の企業の仕事をテレワークで3日間、体験してもらう。2017年に始め、3年間で25人の学生が参加。市工業振興課の松本武工業係長は「地元の学生は北見には仕事がないと漠然と思っている。北見でも東京と同じような仕事ができると伝えている」と話す。市民に知ってもらう機会も設ける。東京に子どもがいる50、60代の親に、盆や正月の前に説明会を開く他、ちらしを配る。帰省した子どもに「テレワークについて伝えてほしい」と呼び掛けてもらう作戦だ。松本係長は今後、新型コロナウイルスの感染拡大でテレワークが注目され、社会全体で勤務形態が多様化すると、地方移住が進むのではないかと予想する。「東京に会社があるため仕方なく(都心に)住んでいる人もいただろうが、本当に会社に行く必要があるかを考え始めると思う。その時に北見市が選択肢に出てきてほしい」と話す。
●観光+αの力に ニセコ町
 スキーなど世界的な観光地・ニセコ町は、国内外からの長期滞在者向けに仕事もできる場所をつくろうと、地域の交流施設「ニセコ中央倉庫群」にテレワークできる環境を整えた。JAが所有していた倉庫やでんぷん工場を町が改修し、観光だけではなく仕事でも人を呼ぶ込む拠点にした。旧でんぷん工場には作業室、倉庫にはプロジェクターなどを整備した。19年度の利用者は延べ434人で、年々増加している。同倉庫群では、4月から地域おこし協力隊が企画したお菓子「NISEKO農OKAKI」を発売。同工場をかたどったパッケージには農業の歴史が書かれ、利用者に施設を紹介している。総務省は、企業のテレワーク導入の利点として優秀な人材の確保やコスト低減などを説明する。東京が本社の企業に勤め、同施設を利用する30代の男性も「賃貸で事務所を借りるよりも柔軟に動ける」と話す。

*11-3:https://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2020051802000116.html (東京新聞社説 2020年5月18日) コロナと食料 農業再生は「安全保障」
 田植えの季節。「密」とは無縁の空の下、粛々と作業が進む。この風景が消えていき、耕作放棄地が増えている。グローバルなモノの流れが突然止まる「コロナの時代」。農業再生は急務である。国連の世界食糧計画(WFP)は、新型コロナウイルスの影響で、食料不足に陥る人が激増すると予測する。ただでさえ温暖化の進行で、高温による大規模な森林火災や干ばつが頻発し、穀物生産や畜産が、深刻な打撃を受けている。その上に、コロナ危機の拡大による物流の停滞や、農作業の人手不足などが重なって、世界全体の飢餓人口は今年、二億六千五百万人に上り、昨年から倍増する恐れがあるという。まず直撃を受けるのは、気候変動の影響を受けやすく、食料を輸入に頼るアフリカなどの途上国には違いない。だが、輸入依存は日本も同じ。一九六五年には七割を超えていたカロリー換算の食料自給率は37%に落ち込んだ。半分以上を輸入に頼るということだ。現政権は「成長戦略」の名の下で、高級農産物の輸出拡大を念頭に、農業の大規模化、効率化には力を注ぐ。しかしその陰で、農家全体の高齢化は進み、耕作放棄地は増える一方だ。生産基盤の弱体化は止まらない。コロナ禍の拡大に伴って、ロシアなどが穀類などの輸出制限に踏み切った。世界貿易機関(WTO)は、自国の食料不足が危機的状況に陥った場合には、輸出を止める権利を認めている。「ほとんど影響は出ていない」と農林水産省は言うものの、温暖化が進行し、ウイルスとの“共存”を強いられる時代である。これからも、必要な時に必要なだけ、食べ物を売ってもらえる保証はない。例えばかつて、牛海綿状脳症(BSE)の流行で牛丼が姿を消した。今、コロナのまん延する米国で食肉の生産が減少し、豚肉の輸入に支障が出始めている。中国からの野菜輸入も一部途絶えた。海外依存リスクの顕在化-。コロナ禍の教訓だ。極端なマスク不足も極端な海外依存が原因だった。農産物は自然の恵み。マスクのように、すぐには増産に転じられない特殊な商品だ。農業再生は“危急重要”の課題である。このごろ盛んに「食の安全保障」と言う。それが国民の暮らしを守るということならば、核心は豊かな田畑を守るということだろう。コロナ危機を、いびつな成長戦略をただす転機にしたい。

<新型コロナの感染率と致死率について>
PS(2020年5月22、24日追加):*12-1のように、東大の児玉名誉教授らの研究グループが、都内の医療機関で5月1、2日に採取された血液を使って新型コロナの抗体の有無や量を調べたところ、500人分という検体の少なさはあるものの0.6%が陽性で、東京都の人口(約1400万人)から計算すると都内の人のうち約8万人に感染歴があると推計されたそうだ。そのため、*12-2のように、東京、大阪、宮城で抗体検査を1万人規模で実施するのは、「今後の感染拡大防止策」に役立つとともに、より正確な感染者数の把握ができる点で興味深く、北海道や九州でも行えばよいと思う。
 この新型コロナ致死率(死亡者数/感染者数)は、*12-3のように、全世界平均4.2%、イタリア・イラン6~8%前後、ドイツ0.2%以下、韓国1.1%と、各国で大きな差があるとされている。しかし、日本を例にとれば、①PCR検査の不備により新型コロナの死亡者がすべて把握されたわけではない ②感染者数も正確には把握されていない という理由で、致死率の値は実態とは異なり、国間の比較もできないと思う。そして、この新型コロナの致死率は、抗体検査を行って分母の全感染者数を把握すれば下がるし、しっかりPCR検査を行って他の死因に分類されていた死亡者を新型コロナの死亡者と認定すれば上がるものである。(参考:2020年5月22日現在、新型コロナの国内で確認されている感染者数は16,577人、死者数は814人)
 そのため、*12-4の「③人口100万人当たりの死者は米英で300~500人に対し、日本は約6人で大きな差がある」「④生活様式や医療格差だけでは説明できないと考え、人種ごとに異なる遺伝子によって免疫応答に違いが生じているとの仮説を立てた」「⑤患者の遺伝子解析を通じて解き明かそうというプロジェクトが始まり、特に注目しているのが免疫反応の司令塔の役割を果たすHLA(ヒト白血球抗原)である」「⑥ウイルスの遺伝子解析だけでは『半分』しか調べたことにならず、人間の遺伝子も解析することでワクチン開発を補完できる」「⑦新型コロナ感染症への抵抗性に関わる遺伝子が見つかれば、健康な時から血液検査でリスクを判定したり、ワクチンや治療薬の開発に貢献したりできる」という研究は21世紀風ではあるものの、その前に国毎に異なっている新型コロナの致死率の計算を揃える必要があるわけだ。
 私の個人的見解では、人種差よりも栄養格差・衛生環境格差・生活様式の差・医療水準の差の方がずっと大きく、人間の世代交代よりもウイルスの世代交代の方が比較にならないくらい早い(=進化しやすい)ため、初期に広がったウイルスよりも後から広がったウイルスの方が弱毒性で人を死に至らしめない方向に進化しているだろう(理由:そうでないウイルスは、次次と感染して生き残ることができないから)と推測できた。
 なお、PCR検査の陽性率も、*12-5のように、地域によって異なる把握方法をとっており、正確でもないため、民間の検査件数も含めて正確に計算すべきだ。国内で統一して陽性率を把握すると、同じような生活様式の国民間での陽性率の違いがわかり、WHOが世界で統一した基準を示して陽性率・死亡率を把握すると、栄養状態・生活環境・文化の異なる国民間での陽性率・死亡率の違いがわかるため、感染症に強い生活様式を割り出すことができる。それでも、PCR検査だけでは、感染を疑って検査した集団だけを検査するため陽性率が高く出るので、過去の感染歴を調べる抗体検査も重要なわけである。なお、数字を見るのは人を見ないということではなく、状況を定量的に把握する手段なのだ。


  2020.4.3    2020.5.14  2020.4.20    2020.4.3Yahoo  2020.5.24
  朝日新聞     朝日新聞   東京新聞               朝日新聞

(図の説明:1番左の図が国別致死率だが、国によって感染者数と死亡者数の網羅性が異なるため、厳密には比較できない。左から2番目の地域別を見ると、都市部の方が密であるため感染しやすいらしく、都市部に感染者が多く特定警戒区域になっている。中央の図の東京都男女別感染者の割合は、30~70歳では男性が多く、仕事の都合で閉じこもりにくいのではないかと思われる。しかし、80代になると女性の割合の方が高く、この世代は生存者そのものに女性が多いからだろう。右から2番目の図は、PCR検査と抗体検査の比較だが、症状のない感染者数も把握するには抗体検査が不可欠だ。1番右の図は、現在使われているPCR検査の陽性率の計算だが、算入されていない患者や二重・三重にカウントされている患者がおり、不正確になっている)

*12-1:ttps://www.jiji.com/jc/article?k=2020051500892&g=soc (時事 2020年5月15日) 東京大などのグループは15日、東京都内で採取された500人分の検体を使って新型コロナウイルスの抗体検査をしたところ、0.6%に当たる3人が陽性だったと発表した。都の人口に当てはめた場合、都内の8万人に感染歴があると推計される。 東大の児玉龍彦名誉教授らの研究グループは、都内の医療機関で5月1、2日に採取された血液を使い、抗体の有無や量を調べた。10代から90代の男女500人分のうち、20代と30代、50代の男性3人に陽性反応が認められた。児玉名誉教授は「きめ細かい対策のために、感染の危険性が高い職種などを知る必要がある」として抗体検査の必要性を指摘した。抗体は以前にかかった感染症と同じウイルスが再び体内に侵入した場合、体を守る特殊なタンパク質で、過去の感染歴を知ることができる。

*12-2:https://www.jiji.com/jc/article?k=2020052200403&g=soc (時事 2020年5月22日) 東京、大阪、宮城で抗体検査 1万人規模、新型コロナ感染状況調査―厚労省
 加藤勝信厚生労働相は22日の閣議後の記者会見で、新型コロナウイルスに対する抗体をどの程度の人が持っているか調べるため、東京、大阪、宮城の3都府県で、計1万人規模の抗体検査を実施する方針を発表した。6月初旬から開始する予定だ。抗体を調べれば新型ウイルスへの感染歴が分かり、日本全国の感染状況推計に役立つ。加藤厚労相は「今後の感染拡大防止策の検討に活用していきたい」と述べた。

*12-3:https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2020/03/post-92844.php (ニューズウィーク 2020年3月25日) 新型コロナ致死率に各国で大きな格差──イタリアでは8.3%
<全世界の致死率は4.2%だが、国によって数値には大きな開きが見られる。その要因とは?>
 新型コロナウイルス感染者数は3月19日までに全世界で23万人を突破し、死者数は9840人に達した。全体の致死率は単純計算で4.2%に上るが、イタリアやイランでは致死率が6~8%前後と高く、ドイツでは0.2%以下となるなど、各国で大きな開きがある。初期に感染者数が急増しながらも致死率が1.1%に抑えられている韓国は、検査と隔離政策を徹底。また、喫煙率が男性に比べて格段に低い女性が、男性より多く感染していることも、致死率を抑えた原因の1つとみられる。

*12-4:https://digital.asahi.com/articles/ASN5P5KCKN5PUCFI003.html?iref=comtop_8_07 (朝日新聞 2020年5月21日) なぜ人種で差 コロナ重症化、遺伝子解析で探る研究開
 新型コロナウイルス感染症が重症化する仕組みを、患者の遺伝子解析を通じて解き明かそうというプロジェクトが始まった。人口100万人当たりの死者は米英で300~500人なのに対し、日本では約6人で大きな差がある。研究グループはこの差が生活様式や医療格差だけでは説明できないと考え、人種ごとに異なる遺伝子によって免疫応答に違いが生じているとの仮説を立て、ゲノム解析で確かめることにした。重症化因子が判明すれば、今後のワクチン開発に生かせるという。東大や阪大、京大など7大学の研究者と研究機関などが参加。日本医療研究開発機構(AMED)から研究資金を得た。国内の約40の医療機関と連携、無症状から重症者まで、少なくとも600人の血液を調べ、9月までに報告をまとめる。慶応大の金井隆典教授が研究責任者を務める。特に注目しているのが、免疫反応をつかさどる司令塔の役割を果たすHLA(ヒト白血球抗原)。これを重症患者と無症状患者とで比較し、重症患者に特有の遺伝子を見つける。欧米でも進む同種の解析結果と照合すれば、日本人の死者数が少ない原因の解明にもつながるとしている。遺伝子解析が専門で東京医科歯科大特命教授の宮野悟・同大M&Dデータ科学センター長は「ウイルスの遺伝子解析だけでは『半分』しか調べたことにならない。宿主である人間の遺伝子も解析することでワクチン開発を補完できる」と話す。新型コロナウイルス感染症への抵抗性に関わる遺伝子が見つかれば、健康な時から血液検査でリスクを判定したり、ワクチンや治療薬の開発に貢献したりできるという。遺伝子と感染症には密接な関係があり、エイズウイルスに耐性を持つ遺伝子変異や、インフルエンザや肺炎に対して免疫が働かなくなる遺伝子病が見つかっている。かつてのシルクロード周辺に住む民族がかかりやすいベーチェット病など、遺伝子の違いによって、特定の病気になりやすい民族があることも知られている。

*12-5:https://digital.asahi.com/articles/ASN5R66BNN5DPTIL02F.html?iref=comtop_8_04 (朝日新聞 2020年5月24日) 陽性率の計算、地域でバラバラ…専門家「正確にすべき」
 新型コロナウイルスで注目されている陽性率は、全国的に統一された計算法が存在しない。感染の有無を調べるPCR検査を受けた人に占める陽性者の割合だが、地域によって民間による検査件数を含めなかったり、同じ人が複数回検査した際の扱いが違ったりしている。政府の専門家会議も問題視。統一を求める声があがっている。陽性率は感染状況を把握する上での重要な指標と位置付けられているが、計算法に違いがある。主に①民間病院などによる検査を集計に含むかどうか②退院時の陰性確認検査などを含むかどうか――の2点だ。今も緊急事態宣言の対象となっている北海道と首都圏の4都県、21日に解除された近畿3府県でも対応はバラツキがある。東京都は当初、行政が行う検査だけを集計。民間病院などによる検査は把握していなかった。そのため陽性率も公表してこなかったが、民間分も含めて集計するように改め、今月8日に初めて陽性率を発表した。退院時の陰性検査を除き、16~22日は1・3%だった。神奈川、兵庫の両県は現在も民間分を集計していない。千葉県は民間の検査機関から提供してもらったデータに陰性検査が含まれているため、いまは民間分を集計対象外としている。陰性検査を除いて集計に加える方向で準備をしているという。大阪府と京都府は、民間検査を含めている。埼玉県は当初、ほかの自治体と異なり、県が運営する保健所13カ所分と民間分だけを集計していたが、今月15日から政令指定市と中核市が運営する保健所4カ所分も加え、県内全体の陽性率を出している。北海道では、いまのところ民間の検査はしていないという。8都道府県はいずれも、退院時の陰性検査は含めていないが、厚生労働省によると、陰性検査などを陽性率に含めている県はほかに20近くあるという。統一された基準はないが、政府の専門家会議の尾身茂副座長は「行政による検査だけだと分母が少なくなり、民間の検査も加われば分母は正確になる。入院患者は(陰性検査を含めて)何回も検査するため、ダブルカウントすれば分母が過大になってしまう」と指摘。①は全体像を把握するために集計に含めるべきで、②は陽性率とは関係ないため含めるべきではないとの立場だ。計算の仕方によって、どれぐらいの誤差があるか公表されていないが、地域によって差があり、厚労省は国内の正確な陽性率を把握しきれていない。政府の専門家会議は14日、新型コロナウイルス感染症対策の状況分析・提言で「都道府県の状況を比較できるようにすることが重要」と問題提起した。
●専門家「PCR検査だけでは不十分」
 陽性率の計算法を統一しても、それだけでは不十分との指摘もある。東京大公共政策大学院の鎌江伊三夫特任教授(医療政策)は「感染を疑って検査した集団での陽性率には統計学上の偏りがある。検査数が少ない問題もあるため、信頼できる数値を導き出すことができない」とする。厚労省は13日、「抗原検査」の検査キットを承認した。この検査は数時間かかるPCR検査に比べて精度は下がるが、30分程度で感染しているかどうかが分かるため検査体制は拡充されそうだ。過去の感染歴を調べる「抗体検査」についても、来月にも1万人規模で実施する予定だ。鎌江氏は「PCR検査だけでなく、抗原検査や抗体検査も合わせて対象範囲を広げれば、市中でどれだけ感染が広がっているか推定できる。政府は、その算出ルールと調査システムを急いで作る必要がある」と指摘する。

<遅ければ置いて行かれるだけであること>
PS(2020年5月23日追加):*13-1のように、新型コロナウイルスに関する政府専門家会議の脇田座長(国立感染症研究所長)は、5月20日の衆院予算委員会で、「①感染を予防するワクチン開発の時期は年を越える」「②その先、どの程度で可能になるか現時点で答えるのは難しい」「③ワクチンは有効性に加え安全性の確保が重要で、副作用の有無を見極める必要がある」「④日本と海外のどちらが先にゴールにたどり着けるか分からない」と述べた。また、日本のメディアも、「⑤ワクチン開発には数年かかる」「⑥少なくとも、来年以降だ」などと、まるで遅いことがよいことであるかのように偉そうに言っていて鼻についたが、「意志なきところに成果は出ない」というのが人間界の原則だ。
 一方、英製薬大手のアストラゼネカは、*13-2のように、5月21日、英オックスフォード大学と開発する新型コロナウイルスのワクチンの10億回分の生産体制を整え、4億回分の受注契約は既に結び、今年9月には供給を始めると発表した。これについて、日本のメディアは「⑦世界でワクチンの開発競争が激しくなる中、自国分の確保を優先する動きがあり、公平な普及のあり方が課題となっている」などと述べているが、意志を持って全力で開発するというリスクをとった国が、いくらで誰に供給するかは自由であり、妨害こそすれ協力しなかった人が成果配分には「公平性」などと口出しするのは論外である。
 さらに、5月23日には、*13-3のように、「⑧ワクチン量産には多額の費用がかかり、欧米では開発のゴールを前に早くも量産技術を競い合うが、日本勢は出遅れ感が否めず政府が供給能力の強化に乗り出す」「⑨ワクチンは参入障壁が高い医薬品」「⑩世界のワクチン市場は米ファイザー、メルク、英グラクソ・スミスクライン、仏サノフィで8割以上を占める」「⑪寡占の背景には各社の豊富な供給能力にあるとされる」と記載しているが、日本は欧米より早く新型コロナが流行したため、⑧はやる気のなさの証明に過ぎず、このようなビッグチャンスに政府が資金を出さなくては生産できないことが情けないのであり、⑨⑩⑪は、これらの結果にすぎない。従って、もう一度書くが、マスクは中国、ワクチンは欧米依存では、日本から他国に輸出するものがなくなるのは時間の問題なのである。

 
    2020.5.17朝日新聞            2020.5.20産経BZ

(図の説明:左図のように、国内外のワクチン開発状況は、2020.5.17に朝日新聞が報道し、2020.5.20にはそのうち主なものについて産経BZが報道している。にもかかわらず、「ワクチン開発には数年かかる」「早くて来年」などと言っているのは、認識不足も甚だしいのだ)

*13-1:https://mainichi.jp/articles/20200521/ddm/012/040/070000c (毎日新聞 2020年5月21日) 新型コロナ 「ワクチン開発 越年」 専門家会議座長「安全性重視」
 新型コロナウイルスに関する政府専門家会議の脇田隆字座長(国立感染症研究所長)は20日の衆院予算委員会で、感染を予防するワクチン開発の時期について「年を越えると思っている。その先、どの程度で可能になるか現時点で答えるのは難しい」と述べた。諮問委員会の尾身茂会長は、8都道府県で継続している緊急事態宣言に関し「仮に解除されても、(新規の感染)報告者数ゼロが短期間続いたとしても、見えない感染が続いていると考えるべきだ」と注意を促した。脇田氏は、ワクチンは有効性に加え安全性の確保が非常に重要で、副作用の有無を見極める必要があると指摘した。「日本と海外のどちらが先にゴールにたどり着けるか分からない」とも語った。

*13-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200522&ng=DGKKZO59440450S0A520C2MM0000 (日経新聞 2020.5.22) 英アストラゼネカ、コロナワクチン9月に供給へ 
 英製薬大手のアストラゼネカは21日、英オックスフォード大学と開発する新型コロナウイルスのワクチンについて、10億回分の生産体制を整えたと発表した。4億回分の受注契約を結んでおり、9月にも供給を始める。世界でワクチンの開発競争が激しくなる中で自国分の確保を優先する動きがあり、公平な普及のあり方が課題となっている。同社は米生物医学先端研究開発局(BARDA)から10億ドル(約1070億円)の支援を受けたことも明らかにした。英フィナンシャル・タイムズによると同社が受注した4億回分のうち、およそ3億回分は米国向けになるという。アストラゼネカは英国政府ともワクチンの9月からの供給に向けて協力している。

*13-3:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200523&ng=DGKKZO59490600S0A520C2EA2000 (日経新聞 2020.5.23) ワクチン量産 設備が壁、特殊な技術 欧米勢が先行 日本、資金支援を検討
 新型コロナウイルスの予防ワクチンの実用化に向け欧米企業が普及のカギを握る量産体制の整備に動き出した。英医薬大手アストラゼネカが21日、英オックスフォード大学が開発したワクチンを年間10億回分供給できる体制を整えたと発表。米新興のバイオ企業モデルナも同規模の大量供給の体制を構築する。ワクチン量産には多額の費用がかかる。欧米では開発のゴールを前に早くも量産技術を競い合うが、日本勢は出遅れ感が否めず政府が供給能力の強化に乗り出す。アストラゼネカが量産するのは、オックスフォード大学が手掛ける開発スピードの速い最新ワクチンだ。量産工程には遺伝子を組み換えたウイルスを大量培養する装置やウイルスが外部流出しないように高度に衛生管理された施設が必要。アストラゼネカは設備を改良するなどして9月からの供給に備えるもようだ。
●数百億円が必要
 大量生産するワクチンの品質検査体制も欠かせない。充実した設備・体制は大手に限られる。オックスフォードが自前で大規模生産を進めると数百億円単位の投資費用がかかり、量産開始まで1~2年はかかる。バイオスタートアップ企業のモデルナも年10億回分の大量供給を実現するため、今月1日にスイスのロンザとの提携を発表した。治験用の小規模な生産設備を持つが、モデルナに量産できる設備はない。モデルナが手掛けるRNAワクチンは鶏卵や動物細胞などでウイルスを増やす従来型のワクチンと異なり、一般的な化学物質と同様に化学合成で作る。開発時間を従来型に比べて短縮できる。物質の仕組みは単純だが、量産は技術の蓄積がないと難しい。血液中で分解されないような製剤化技術や、成分を均質に保つには特殊な技術が必要だからだ。モデルナは量産に向け医薬品受託製造会社であるロンザの設備を活用する。モデルナはロンザへの製造技術の移転を6月中にも終え、7月にも試作品の生産を始める。現在、RNAワクチンを商業生産するノウハウを持つのは、モデルナと独ビオンテック、独キュアバックの3社とされる。ビオンテックは量産化で米ファイザーと組む。
●大手4社で8割
 ワクチンは参入障壁が高い医薬品だ。世界のワクチン市場は米ファイザー、メルク、英グラクソ・スミスクライン、仏サノフィで8割以上を占める。4社は主に従来型ワクチンを開発・生産し、寡占の背景には各社の豊富な供給能力にあるとされる。ワクチンの成分は特許で公開されているが、量産化には膨大な投資とノウハウが必要だ。ワクチン事業の競争力は開発技術だけでなく、供給能力も握る。欧米各国は量産技術を評価して各社のワクチン計画に資金支援する。アストラゼネカ・オックスフォード大学のワクチン計画には英政府が約27億円の助成金を出しているが、このほど米生物医学先端研究開発局(BARDA)から約1070億円の支援を受けたことも明らかになった。オックスフォードのワクチンを年4億回分から同10億回分に引き上げることができたのもBARDAの資金が支えたとされる。BARDAはオックスフォードと同様のワクチンを開発するジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)と約1000億円の設備費用を折半する。開発の成功メドがつく前から量産まで視野に入れて、米国向けにコロナワクチン確保を急ぐ。新型コロナワクチンの実用化で欧米勢と競う中国。政府と関係の深いバイオ企業や研究所でワクチン治験が実施されている。すでに有効性を確認する治験まで進んでいるワクチンもあり、最短で今秋の実用化を目指す。ただ、中国勢のワクチン量産化に向けての技術・ノウハウについては「公開情報がなくどれだけ供給されるかも不明」(国内医療関係者)。一方、日本でワクチンを供給できる企業は、武田薬品工業やKMバイオロジクス、第一三共、阪大微生物病研究会などに限られる。今回のコロナに対応するRNAなど最先端のワクチンを量産する企業はまだない。RNAワクチンでは第一三共が東京大学医科学研究所に開発で協力するが、量産体制について明らかにしていない。大阪大学発のバイオ企業アンジェスが進める新型コロナワクチンの量産は主にタカラバイオが担う。年間20万人分のワクチン開発の準備を進めているが、モデルナやオックスフォードのワクチンの0.02%にとどまる。政府もパンデミックに対応する製造技術の開発支援を進めてきたが、最先端のワクチンの量産への取り組みは遅れていた。ただ、ここにきて世界で新型コロナワクチンの量産化に向けての動きが相次いでいるのを受け、日本政府は国内企業がワクチンを大規模に生産できるように資金支援する検討に入った。「(ワクチンは)開発できるかより、生産しなくてはならないワクチンの量を懸念すべきだ」(サノフィのポール・ハドソン最高経営責任者=CEO)。欧米企業・政府関係者の間では、新型コロナワクチン実用化の議論での焦点は、開発からいち早く大量供給できる能力に移りつつある。量産化に向けた新型コロナワクチンの供給体制について議論を日本でも深める必要がある。

<米国と中国について>
PS(2020年5月26日、6月7日追加):*14-1・*14-3のように、中国政府は、「香港の民主化運動を抑制するには『強力な措置』が必要だ」として、香港基本法の付属文書に中国の国家安全法を追加する形で香港に国家安全機関を設立することなどを全人代で決めつつあるため、香港の人権や自由は中国本土並みに制限される恐れがあり、香港の「一国二制度」は危機に直面しているそうだ。これに対し、*14-4のように、当局が集会に先駆けて ①集会が無許可である ②新型コロナに関連した条例で8人超の集会が禁止である と警告したのに、大勢の民主派のデモ参加者らが集結し、警察は催涙弾と放水銃を発射して40人が逮捕されることとなって、新型コロナにより政治集会やデモも危険な行為となってしまった。
 また、*14-2・*14-3のように、台湾は、2009年から8年連続でオブザーバーとしてWHO総会に参加してきたが、2017年以降は中国の圧力で出席できず、今年は米国の下院議員205人がWHO総会に台湾をオブザーバーとして招くよう求める連名書簡をWHOのテドロス事務局長宛てに送付し、チェコにも台湾支持の動きがあったが、やはり実現しなかった。ここで、欧米諸国は本気で人権・自由・民主主義を護るための闘いに入ったと思われるが、日本の多くのメディアは、*14-5のように、「米中が結束するのが最良の防疫策だ」など米国が中国と仲良くしさえすればよいという論調で、「自由や民主主義は、自ら護らなければなくなるものだ」という発想に欠けていると思う。
 なお、WHOへの貢献は、下の図のように、資金拠出だけでも米国が飛びぬけており、その他の貢献も加えると欧米諸国の貢献が大きいが、現在のGDPから考えると中国はじめ貢献の小さすぎる国は多い。そのため、トランプ米大統領がWHOに書簡を送り、拠出金の恒久停止や脱退まで示唆して中国からの独立を要求したのは交渉のやり方として十分あり得ることで、何でもトランプ米大統領の性格のせいにすればよいという論調は考えが浅い。
 香港への国家安全法制の導入に関し、*14-6のように、中国を厳しく批判する米国・英国などの共同声明に日本政府も参加を打診され拒否したそうだ。しかし、中国を過度に刺激するのを回避して中国との関係改善を目指すのなら、日本は新型コロナをいつまでも「武漢ウイルス」と呼んだり、「中国製は質が悪い」などと言って中国差別をするのではなく、香港での一国二制度に関する中国の契約違反や人権侵害に対する指摘をして抗議する方が筋が通っており、中国人も気持がよいと思う。そのため、この日本の選択は、単に欧米諸国に追随するか否かという問題ではなく、日本が欧米諸国と同様に(全体主義ではなく)個人の人権を大切にする価値観を持っている国か否かという問題であり、実はここが危ういのである。

   
 2019.11.12朝日新聞   2019.11.28毎日新聞  2020.4.13    2020.5.21
                          朝日新聞     毎日新聞

(図の説明:1番左の図のように、2020年1月11日に台湾総統選で当選した蔡氏は、中国が打ち出す「一国二制度」による中台統一を拒絶し、台湾への武力行使を断念するよう中国共産党及び中国政府に呼び掛けた。米国のトランプ米大統領は、左から2番目の図のように、2019年11月27日に香港の人権と自治を擁護するための「香港人権・民主主義法案」に署名し、米国で同法を成立させた。そして、右から2番目の図のように、WHOは確かに中国寄りで、今年の総会には台湾のオブザーバー参加も認めなかったが、台湾は中華民国という独立国であるため、中国の方が内政干渉の無理な主張をしている。そのため、1番右の図のように、すべての国は、独立国が世界機関に代表を送ることに反対すべきではないだろう)


   2019.6.4朝日新聞         2019.4AFP      2020.3.31FS

(図の説明:左図のように、中国と米国は力で押しあっているが、日本は民主主義国で領土問題もあるため、まるで第三者ででもあるかのように米国を批判するのはおかしい。また、中国の軍事支出は米国より小さく見えるが、人件費や物価が安いため実質では米国より大きいだろう。なお、中央と右の図は、各国のWHOへの拠出金はじめ人材での貢献度を示しており、第二次世界大戦直後と現在ではGDP比が大きく異なるため、成長した国はGDPに応じて負担すべきだ)

*14-1:https://digital.asahi.com/articles/ASN5Q42L8N5QUHBI00S.html (朝日新聞 2020年5月22日) 中国、香港に国家安全法適用へ 一国二制度の重大危機
 中国政府は22日、香港での反政府活動を取り締まるための新たな治安法制の整備に着手した。香港に中国の国家の安全を守る機関を設立することなどが柱。昨年来の抗議デモなど香港で強まる動きを封じる狙い。香港で保障される人権や自由が中国本土並みに制限される恐れがあり、「一国二制度」は重大な危機に直面している。北京で22日午前に開幕した全国人民代表大会(全人代、国会に相当)で「香港での国家の安全を守る法制度の整備」が提案された。李克強(リーコーチアン)首相は政府活動報告で「憲法によって定められた責任を香港政府に履行させなければならない」と指摘した。香港基本法の付属文書に中国の国家安全法を追加するかたちで、同法を香港で適用する。香港政府トップの行政長官に対し、国家安全に関する教育の強化などを義務づける。香港メディアによると、提案は全人代の審議を経た後、全人代常務委員会が8月にも施行を決定するとの報道もある。香港基本法は、国家分裂や政権転覆の動きを禁じた「国家安全条例」の制定を求めるが、市民の反発で頓挫。しびれを切らした中国側が直接介入に踏み切る形となる。香港の民主派は「一国二制度が崩壊する」と強く批判している。昨年来のデモで中国への反発が高まるなか、市民感情をさらに刺激するのは確実で、香港の政治危機は深刻さを増しそうだ。

*14-2:http://japan.cna.com.tw/news/apol/202005150007.aspx (CNA 2020/5/15) 台湾のWHO参加めぐり米議員205人が連名書簡 チェコでも台湾支持の動き
 米の下院議員205人が、今年の世界保健機関(WHO)総会に台湾をオブザーバーとして招くよう求める連名書簡をWHOのテドロス事務局長宛てに送付したのを受け、外交部(外務省)は15日、心からの歓迎と感謝を表明した。書簡では、新型コロナウイルス対策における台湾の対応について触れ、台湾をWHOに迎え入れる行動に価値があることを証明しているとした上で、台湾がWHOのネットワークに入れずにいることや、台湾の統計資料が誤って中国のデータとして取り扱われていることを指摘。また、中華人民共和国を「中国」の代表だと承認した国連総会2758号決議やWHO総会25.1号決議にも言及し、これらの決議はいずれも、北京に台湾人民を代表する権利を与えていないと強調している。13日に送付された。発起人は、親台派の議員連盟に所属するスティーブ・シャボット議員(共和党)、アルビオ・シラズ議員(民主党)とジェリー・コノリー議員(民主党)。リズ・チェイニー共和党会議議長や外交委員会のエリオット・エンゲル委員長(民主党)らが署名した。
▽チェコ上院の2委員会でも台湾支持の決議
 チェコ上院の外交・国防・安全保障委員会と衛生・社会政策委員会で13日、WHO総会に台湾を招くようテドロス事務局長に提言するとともに、チェコ政府に台湾のWHO参加を支持するよう求める決議案がそれぞれ可決された。外交部が14日に明らかにした。同部は、チェコ議会の委員会で近年このような決議が可決されたことはなく、大変意義深いとし、深い感謝を表明した。その上で、WHOが特定加盟国の政治的操作に振り回されず、各界の声に耳を傾け、科学的見地に基づいて実務的に対応することに期待を寄せた。WHO総会は18日からテレビ会議の形式で開催される。台湾は2009年から8年連続でオブザーバーとして参加してきたが、17年以降は中国の圧力により出席できない状態が続いている。今年も招待状は届いておらず、参加の見通しは立っていない。これについてWHO側は、加盟国間の「政治的な共通認識が不足している」ためと説明している。

*14-3:https://www.afpbb.com/articles/-/3284462?cx_part=related_yahoo (AFP 2020年5月23日) 【解説】渦中の香港国家安全法、その内容と中国の思惑は?
中国の全国人民代表大会(National People's Congress、全人代、国会に相当)が提案した香港での国家安全法導入について、米国や同市の民主派は香港の自由への攻撃だと非難しており、経済中心地の同市で抗議運動が再燃する恐れが出ている。
■中国はなぜ導入に動いたのか?
 香港の「ミニ憲法」である基本法の第23条では、中国政府に対する「反逆、分離、扇動、転覆」を禁止する国家安全法を制定することが定められている。香港は長年にわたり同法の導入を試みてきたが、昨年同市をまひ状態に陥らせた民主派デモによってこの問題の緊急度が増し、中国政府の行動へとつながった。全人代で実際に立法を担う常務委員会の王晨(Wang Chen)副委員長は22日、香港民主化運動を抑制するには「強力な措置」が必要だと警告した。
■香港市民の意見は?
 香港基本法第23条は、香港市民が大切にしている表現や報道の自由などの権利剥奪につながることが懸念され、これまで施行されてこなかった。こうした自由は中国本土では認められておらず、香港では1997年の英国による中国への同市返還前に結ばれた合意で保護されている。2003年には同条項の施行が試みられたが、50万人が参加する街頭デモが発生し、見送られた。中国政府は、香港の立法会(議会)を迂回(うかい)し、国家安全法を直接制定する権限を全人代に与えようとしている。
■今後の展開は?
 法案は全人代最終日の28日に採決され、来月に再び開かれる会議で詳細が詰められる見通し。常務委員会の王副委員長は、香港での新法施行はその後になるとしており、同市では抗議デモがさらに激化する可能性がある。昨年の騒乱のきっかけとなった大規模デモを主催した市民団体「民間人権陣線(Civil Human Rights Front)」のリーダー、岑子傑(ジミー・シャム、Jimmy Sham)氏は香港市民に対し、再び数百万人規模の街頭デモを行うよう呼び掛けた。
■「一国二制度」はどうなる?
 民主派議員らは、同法の制定について、中国への返還後の香港での高度な自治を認めた「一国二制度」の終わりを意味すると主張している。民主派議員の陳淑莊(Tanya Chan)氏は、同法は「香港での『一国一制度』の正式施行を感じさせるものだ」と警鐘を鳴らした。

*14-4:https://www.afpbb.com/articles/-/3284632 (AFP 2020年5月24日) 香港で「国家安全法」めぐる抗議デモ、警察は催涙弾発射
 香港で24日、中国が先週提案した「国家安全法」に抗議するため、大勢の民主派のデモ参加者らが集結したところ、警察が催涙弾と放水銃を参加者に向けて発射した。ここ数か月で最も激しい衝突となった。中国の全国人民代表大会(National People's Congress、全人代、国会に相当)に議案が提出された「国家安全法」は中国政府に対する「反逆、分離、扇動」を禁止しようとするもの。香港では昨年、数か月にわたる大規模な反政府デモが繰り広げられ、時には暴力沙汰に発展。中国政府は、異論を容認しないと何度も警告していた。香港が大切にしてきた自由に終止符を打つ法案だとして民主派が警鐘を鳴らす中、繁華街の銅鑼湾(Causeway Bay)と湾仔(Wan Chai)に大勢の人々が集結し、スローガンを叫んだ。一部のデモ参加者はマスクを着用し、警察車両を阻止しようと仮設のバリケードを設置した。集会に先駆け当局は、集会が無許可であること、新型コロナウイルスに関連した条例で8人超の集会が禁止であると警告。その後機動隊が配置された。集会の参加者が膨れ上がる中、警察は催涙弾や催涙スプレーを使用しデモを散会させようとし、その後は放水砲や装甲車が配備された。その一方、デモ参加者は昨年行われた数多くのデモと同じ手法を用い、警察に向かって傘など物を投げつけた。警察は40人を逮捕したと発表している。

*14-5:https://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2020052302000149.html (東京新聞 2020年5月23日) WHOと米中 結束が最良の防疫策だ
 世界保健機関(WHO)が、米国と中国の対立で揺れている。新型コロナウイルスの世界規模での感染は止まっていない。各国が結束することこそが、最良の防疫策であることを再認識すべきだ。トランプ米大統領は「中国の操り人形」と呼ぶWHOに書簡を送り、中国からの独立を要求。三十日以内に実現しない場合、拠出金の恒久停止や脱退まで示唆した。初動が遅れた自らの責任を転嫁する姿勢が露骨だ。これに対して中国の習近平国家主席は、WHO総会のテレビ会議に出席して釈明。WHOの新型コロナ対応に関する独立・包括的な検証を求める決議にも賛成した。しかし検証の実施時期については「流行終息後」(習主席)とするだけで具体的に触れなかった。逆に習主席は「世界の公共衛生に協力する」として国際社会への大規模な援助を約束したが、これでは自国への批判をかわすのが狙いといわれても仕方ない。総会への台湾のオブザーバー参加問題も、米中の摩擦が影を落とした。「一つの中国」の原則にこだわる中国の反対で、参加が見送られた。台湾は感染防止で卓越した成果を上げ、世界の注目を集めている。過去に参加していた実績もある。多くの加盟国が参加を支持しており、当然認められるべきだ。確かに、中国とWHOとの関係や、一連の対応について、多くの国が不満と不信感を抱いている。しかし今は、世界が直面している危機的な状況を脱することを、最優先の課題にすべきだ。状況はロシアや南米、中東で依然として深刻だ。ブラジルでは感染が急拡大し、医療崩壊の瀬戸際に追い込まれている。WHOの弱体化は、国際機関に頼るしかない途上国や、弱い人々の救済遅れに直結する。総会でドイツのメルケル首相は、「どの国も一国では、この問題を解決できない」と、結束の重要性を訴えた。米中の指導者は、この言葉をかみしめてほしい。まずは、各国がウイルスとの戦いで得た教訓を分け合い、協力しあうことが大切だ。例えば、ウイルスの特性や感染経路、治療から得られた医学的な知見などだ。さらに百十以上の開発プロジェクトが進んでいるというワクチンに関する情報を、各国が共有することも急がれる。日本政府には、米中の緊張緩和と国際協調実現のため、積極的に動くことを望みたい。

*14-6:https://news.yahoo.co.jp/articles/e1dfcf36d1bbd64a8d7ba8a47eb7cd7b35292aa1 (Yahoo 2020/6/7) 日本、中国批判声明に参加拒否 香港安全法巡り、欧米は失望も
 香港への国家安全法制の導入を巡り、中国を厳しく批判する米国や英国などの共同声明に日本政府も参加を打診されたが、拒否していたことが6日分かった。複数の関係国当局者が明らかにした。中国と関係改善を目指す日本側は欧米諸国に追随しないことで配慮を示したが、米国など関係国の間では日本の対応に失望の声が出ている。新型コロナの感染拡大などで当面見合わせとなった中国の習近平国家主席の国賓訪日実現に向け、中国を過度に刺激するのを回避する狙いがあるとみられる。ただ香港を巡り欧米各国が中国との対立を深める中、日本の決断は欧米諸国との亀裂を生む恐れがある。

<日本で新型コロナの流行や死者数が抑制できた理由>
PS(2020年5月27、28日追加):*15-1のように、WHOのテドロス事務局長は、日本が緊急事態宣言を全面解除したことを受けて「新規感染者が大幅に減少し、死者数増も抑えられている」として、対策が「成功」したと評価されたそうだ。
 しかし、*15-2は、「①欧米メディアは、強制力のない外出自粛やPCR検査数の少なさにもかかわらず日本で感染が広がらなかったことに注目し、『不可解な謎』と報じている」「②オーストラリアABCは、公共交通機関の混雑、高齢者人口の多さ、罰則を伴わない緊急事態宣言は大惨事を招くためのレシピのようなもので、この死亡率の低さは奇跡に近い」「③日本は人口10万人当たり感染者数が13・2人で、G7のうち最も感染拡大の速度を抑え込んだ」「④日本の検査数は最少の人口10万人当たり212・8件で、最多イタリアの約4%しかなかった」「⑤10万人当たり死者数は、アジア・オセアニア地域の多くの国が日本の0・64人より少なかった」「⑥初期の水際対策が奏功した台湾の累計死者は、10万人当たり0・03人だった」と記載している。
 このうち、①④については、確かに検査数が少なく、新型コロナによる死者が他の死因に分類されている可能性が大いにあるが、超過死亡率を単純に全て新型コロナによる死者としてカウントしても死者数は少ない。また、水際対策は失敗したため、⑥のように、台湾よりも感染者・死者が増えた。つまり、厚労省が行った政策は、(意図的か過誤かはわからないが)検査数を増やさず、治療薬を承認せず、ワクチン開発も遅らせて、日本の能力を十分に引き出さない方向だった。そのため、国民はそれに気がつき、罰則を伴わない緊急事態宣言の中で自己防衛のために自主的に引きこもり、②③⑤の結果を得たのだ。そして、これができたのは、政府の優れた政策や幸運のおかげではなく、日本人の日頃からの栄養状態・生活習慣・清潔志向・上下水道などインフラの普及・除菌洗剤の使用など、生き残って増殖し感染するウイルスを減らす方向への努力が実を結びやすい環境にあったからだと思われる。
 なお、*15-3のように、新型コロナ感染死には把握漏れがあり、「超過死亡」が200人以上だと言われているが、「超過死亡」の分析に必要な日本政府の月報公表は2カ月遅れで、これも欧米の対応との間に差が出ており、欧米メディアは公開データに基づいて、死亡数は新型コロナで死亡したと報告された数より5~6割程度多く超過死亡があると分析しているそうだ。
 このような中、*15-4に、中央大学大学院戦略経営研究科教授の真野医師が、日本の新型コロナ対策が諸外国に比べて決して万全ではないのに死亡者が少なかった理由を、「⑦日本では救急車のたらい回しなどの問題はあったにせよ、医療崩壊が起こらなかった」「⑧日本は病院ベッド数が多く、医療キャパシティーが大きい」「⑨医療者のモチベーションが高い」「⑩高齢者施設における死亡者が少ない」「⑪病院が高齢者施設の代わりをしていることも多く、医療と介護連携が行われて、老健には医師が常駐し、介護老人福祉施設・高齢者対応集合住宅には医師が定期的に訪問診療している」「⑫医療崩壊を起こさずにピークアウトした韓国は、高齢者対応施設を36.1%増加させ、中でも療養病床を急速に増加させていた」と書いておられる。確かに、高齢者が介護施設で栄養バランスのよい食事を摂り、清潔な暮らしができて、医療介護の連携が進んでいるのは、日本の死亡者数を減らした大きな要素だろう。
 なお、知事会が、*15-5のように、「①第2波、第3波に備え、陽性かどうかを判定するPCR検査の強化や、ワクチンの早期実用化などが必要」「②第2波に適切に対処するには、これまでの新型コロナ対策を総括する必要がある」「③法制度も含め環境を整備するよう求めた」ところ、西村担当相は2020年度第2次補正予算案で自治体向け臨時交付金を2兆円増額したことに言及されたそうだ。しかし、これは、①②③の要請に対する的確な答えではなく、金をばら撒いてはぐらかしており、その金は西村氏のポケットマネーではなく国民の血税だ。そのため、最小の金を的を得たことに使ってもらいたい。
 また、*15-6のように、新型コロナ対策を検討してきた政府専門家会議の議事録を厚労省が作成していないとのことだが、この回答は開示できるような内容でないことを意味している。そして、これは、今後の日本の医療・介護はじめ社会保障全般に関する自民党・内閣官房・厚労省・財務省の考え方を示しているため、決して疎かにすべきではなく、人の命にかかわることに関して誰がどういう発言をしたかも重要で、議事録を公開させるべきだ。

    
  2020.5.24朝日新聞   2020.5.1東京新聞     2020.5.24朝日新聞 

(図の説明:左図は、ニューヨーク市内の新型コロナによる死者数と超過死亡数、中央の図は、米国の他の州の新型コロナによる死者数と超過死亡数、右図は東京都内の見逃された死者数だが、日本も米国のように速やかにデータを集めて状況分析できるようでないと、次の政策に活かせないわけである)


      *15-4【表1】           *15-4【表2】

(図の説明:左図のように、日本の介護ベッド数はスウェーデン・ベルギーの半数以下で、65歳以上100人に占める介護従事者数は、ノルウェー・スウェーデンの半数以下だ。そして、日本の新型コロナによる高齢者施設死亡者数は50人と著しく低いが、新型コロナ死亡者数を正確に把握すれば現在の10倍《500人》になるとしても、スウェーデンの630人とあまり変わらない)

*15-1:https://www.tokyo-np.co.jp/article/world/list/202005/CK2020052602000260.html (東京新聞 2020年5月26日) <新型コロナ>「日本の対策は成功、第2波に注意」 WHOが評価と警鐘
 世界保健機関(WHO)のテドロス事務局長は二十五日の記者会見で、日本が緊急事態宣言を全面解除したことを巡り、新規感染者が大幅に減少し死者数増も抑えられているとして対策が「成功」したと評価した。日本が今後も感染経路の特定などに注力する姿勢を示したことも称賛した。一方、WHOで緊急事態対応を統括するライアン氏は、中南米や南アジア、アフリカでは感染拡大局面にあるとして「われわれはまだ第一波の真っただ中にいる」と警告し、世界全体では依然厳しい状況が続いていると強調。日本や欧州などで感染拡大の鈍化に成功した国々を評価しつつも、外出制限などの解除により第二波が生じる可能性があると警戒を呼び掛けた。WHOで新型コロナの技術責任者を務めるバンケルコフ氏は、インフルエンザのように冬になると再燃するという説に関し、今のところ根拠はなく「季節に関係なく、人々が密集すると感染が起きる」と強調した。

*15-2:https://digital.asahi.com/articles/ASN5V3CQQN5TUHBI00S.html?iref=comtop_8_01 (朝日新聞 2020年5月26日) 「不可解な謎」 欧米メディアが驚く、日本のコロナ対策
 日本は新型コロナウイルスの流行抑止に成功していたのだろうか。各国のデータを分析し、人口10万人当たりの感染者数や検査件数、死者数を比べた。当初は日本の検査体制や、強制力のない緊急事態宣言の効果を疑問視していた欧米メディアは、現在の状況を驚きとともに伝えている。朝日新聞は主要7カ国(G7)について、それぞれ10万人当たりの累計感染者数と感染の有無を調べる検査件数を比較した。検査件数は各国の政府発表に基づいた。米国は各州の発表をまとめた民間の集計値を用いた。また、累計死者数は、世界的にみて比較的被害が抑えられているアジア・オセアニア地域の国々を選び、10万人当たりの人数を比べた。この結果、日本はG7で、10万人当たりの感染者数が13・2人で最も少なかった。一方、検査数も最少の212・8件で、最多のイタリアの約4%だった。英国は1日20万件の検査をめざし(日本の目標は1日2万件)、自宅などへ約80万件分の検査キットを郵送している。実際に個人が検査したかが不明なため、今回の比較時に郵送分は含めていない。ただ、含めた場合は1・5倍近い5013・0件まで増える。また、10万人当たりの死者数は、アジア・オセアニア地域の多くの国々で日本の0・64人より少なかった。たとえば、初期の水際対策が奏功した台湾の累計死者は7人で、10万人当たりでは0・03人だった。英オックスフォード大に拠点を置き、各国の感染データなどを集計している団体「Our World in Data」によると、日本は5月23日時点で100万人当たりの感染者数が世界208カ国・地域のうち多い順から136番目。同じく死者数は94番目だった。中東を除いたアジア地域で日本よりも死者数が多かったのはフィリピンとモルディブだけだ。一方、欧州疾病予防管理センター(ECDC)がまとめた各国データを朝日新聞が集計したところ、日本は、G7の中で最も感染拡大の速度を抑え込めていた。感染者が人口1千万人当たり1人以上になってからピークに達するまで、米国やフランス、ドイツが35日前後だったのに対し、日本は52日だった。また、G7で1日当たりの新規感染者数の推移をみると、最も多かった時期で、米国やイタリアは1千万人当たり900人を超えていたが、日本は50・9人(4月17日)だった。新型コロナウイルスを抑え込んだかに見える日本の状況を、海外メディアは驚きと共に伝えている。強制力のない外出自粛やPCR検査数の少なさにもかかわらず、日本で感染が広がらなかったことに注目し、「不可解な謎」「成功物語」などと報じている。
●何から何まで間違って…でもなぜ日本の感染拡大は広がらなかったのか、欧米メディアが注目しています。専門家はどう考えるのでしょうか。
 米誌フォーリン・ポリシーは日本の新型コロナ対策について「何から何まで間違っているように思える」と指摘した上で、それでも現状は「不思議なことに、全てがいい方向に向かっているように見える」と伝えた。「中国から大勢の観光客を受け入れてきたことを考えると、この死者率の低さは奇跡に近い」「日本がラッキーなだけなのか。それとも優れた政策の成果なのか、見極めるのは難しい」との見方も示した。
「不可解な謎」と題した記事を配信したのは、オーストラリアの公共放送ABCだ。公共交通機関の混雑ぶりや高齢者人口の多さ、罰則を伴わない緊急事態宣言を「大惨事を招くためのレシピのようだった」と表現。「日本は次のイタリアかニューヨークとなる可能性があった」と指摘した。海外ではこれまで、英BBCが「ドイツや韓国と比べると、日本の検査件数はゼロを一つ付け忘れているように見える」と報じるなど、日本のPCR検査数の少なさを疑問視する報道が相次いでいた。米ブルームバーグ通信はこの点について、「第1波をかわしたのは本当に幸運」「(第2波が来る前に)検査を1日10万件できるように準備しなくてはならない」という専門家の話をまとめた。英ガーディアン紙は「大惨事目前の状況から成功物語へ」とのタイトルで、日本人の生活習慣が感染拡大を防いだとの見方を伝えた。マスクを着用する習慣▽あいさつで握手やハグよりお辞儀をする習慣▽高い衛生意識▽家に靴をぬいで入る習慣などが、「日本の感染者数の少なさの要因として挙げられる」と指摘している。日本の専門家もこうした日本人の文化や習慣が感染拡大を防いだ一因とみる。東京医大病院渡航者医療センターの浜田篤郎教授(渡航医学)は「日本人の清潔志向とマスク文化が、第1波の抑え込みに一定の役割を果たした可能性がある」と話す。一方で、第1波を免れた分、第2波の拡大が懸念されるとして注意を呼びかける。「感染者が少なかったということは、免疫を持つ人が少ないということ。第1波より感染者が増える可能性がある」という。PCR検査数の少なさについては「やらなかったのではなく、できなかった」と指摘。「検査数を増やせば、症状が軽い陽性患者も出る。当初は宿泊施設での患者の受け入れもできず、病院で収容していたら間違いなく医療崩壊していた。第2波が来るまでに患者の収容体制などを整え、検査数を増やせるよう準備しておく必要がある」と話す。

*15-3:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO59508030U0A520C2NN1000/ (日経新聞 2020/5/24) コロナ感染死、把握漏れも 「超過死亡」200人以上か 、東京23区2~3月 必要な統計公表遅く、対策左右も
 新型コロナウイルスの感染が拡大した2月中旬から3月までに肺炎などの死亡者が東京23区内で200人以上増えた可能性がある。同じ期間に感染確認された死亡数は都全体で計16人。PCR検査で感染を確認されていないケースが潜み、把握漏れの恐れがある。こうした「超過死亡」の分析に必要な政府月報の公表は2カ月遅れで、欧米の対応と差が出ている。肺炎などの死亡数は、国立感染症研究所が「インフルエンザ関連死亡迅速把握システム」に基づき、公表している。集計では各保健所が死亡診断書の死因のうち、インフルエンザか肺炎を含む死亡数を入力する。感染研が過去の流行状況から推定した「流行なしの死者数」と比較し、統計的な誤差を超えた場合に超過死亡と判断する。すべての死因で比較すると、外出自粛などの対策による交通事故死や自殺の増減を含め、流行と対策が社会に与えた影響を総合的に推定できる。国際比較の指標にもなる。現時点の公表データによると、超過死亡は2月17日の週から3月下旬まで5週連続で発生。流行がなかった場合を50~60人上回り、計200人を超える。感染研が定義する「統計的な誤差を上回った死者数」という超過死亡数でも5週連続で20~30人程度に上る。実数は公表していない。超過死亡は19年後半も発生。インフルエンザの流行が早く、東京都で12月上旬に流行が拡大した影響とみられる。年明けには終息しており、再び超過死亡が発生した2月中旬以降は新型コロナが影響した可能性がある。感染研は「集計は例年、インフルエンザの流行が終わる3月末の死亡日までが対象。入力期限の5月末以降でないと今シーズン全体の分析はできない」としている。世界保健機関(WHO)は感染症の影響を分析する指標として超過死亡を推奨している。肺炎以外を含む総死亡数は厚生労働省が人口動態調査で死亡数などを毎月集計。都道府県からの報告は省令で「翌々月の5日まで」と定められ、公表は約2カ月後だ。検査未確認の死亡数が増えたとみられる4月分の公表は6月下旬になる。集計が遅いのは、届け出の電子化が進んでいないこともある。手書きの死亡届を受けた市区町村は電子システムに入力して保健所に送付するのに「一定の期間が必要」(同省)なためだ。欧米では迅速な死亡数の集計・公開が進む。3月以降、感染が急拡大した米ニューヨーク市は、死亡数をリアルタイムで把握する電子統計報告システムを開発した。市保健当局によると、WHOがパンデミックを宣言した3月11日から5月2日までの全死亡数は3万2107人。過去5年と比較し、2万4172人を超過死亡と推定。この間に1万8879人が検査などで感染を確認されており、残り5293人(22%)も「直接か間接的にパンデミック関連で死亡した可能性がある」と発表している。欧米メディアは公開データに基づき、死亡数は新型コロナで死亡したと報告された数より5~6割程度多く、超過死亡があると分析している。英医学誌ランセットは「週単位で超過死亡を把握することがパンデミックの規模を評価して適切な対策を打ち出すために最も必要」と指摘する。第2波に備え、検査の拡充や感染症に応じた医療態勢の強化だけでなく、データの公開が不可欠。横浜市立大学の五十嵐中・准教授(医療経済)は「迅速にデータを収集・公開し、民間とも連携し対策に役立ててほしい」と訴える。
■超過死亡 感染症が流行した一定の期間の死亡数が、過去の平均的な水準をどれだけ上回っているか示す指標。インフルエンザの流行を評価するために開発された。肺炎など直接関連する死因で比べると、持病で死亡して医師が感染を疑わずに検査していないケースも含め流行の影響を推定できる。

*15-4:https://diamond.jp/articles/-/236988 (Diamond 2020.5.13) 日本のコロナ死亡者が欧米より少ない理由、高齢者施設クラスターの実態 (真野俊樹:中央大学大学院戦略経営研究科教授、多摩大学大学院特任教授、医師)
 新型コロナウイルスの感染拡大は日本も徐々にピークアウトしてきているように見える。このまま外出自粛が守られて順調に行けば、懸念された医療崩壊もなさそうだ。一方、時々話題に出るのが介護崩壊だ。日本の新型コロナ対策は諸外国に比べ、PCR検査不足の問題をはじめ決して万全なものとはいえない。それでも死亡者が少ない理由は何か。医師(日本内科学会総合内科専門医)であり、かつビジネススクールで教える筆者が、日本の医療・介護制度から、その理由を指摘する。(中央大学大学院戦略経営研究科教授、医師 真野俊樹)
●日本は海外に比べ、高齢者施設での死亡者が少ない
 「緊急事態宣言」は5月末まで延長されることになったが、日本全国の死亡者数や感染者数は減少傾向にあり、日本も諸外国同様に新型コロナウイルスの感染がピークアウトをしてきたように思える。ここで、なぜ日本で死亡者数がこんなに少なかったのかを考えてみたい。よくメディアで話題になる医療崩壊とは、「患者が医学的な必要に応じ入院できないことなど、あるいは医師による適切な診断・治療を受けられないこと」を指す。具体的にはアメリカやイタリア、ベルギーといった国で起きているように、1日の死者が何百人、何千人という状態で、通常の医療的措置が成り立たない状態である。つまり、日本では、救急車のたらい回しなど新型コロナウイルス以外の重症疾患対応でいくつかの問題などがあるにせよ、医療機関は適切な医療を行える状況にあるので、医療崩壊は起きていないと考えられる。日本で医療崩壊が起きない理由として、『コロナで絶体絶命のイタリアと違い、日本で死者激増の可能性は低い理由』の記事で、「日本は病院ベッド数が多く医療キャパシティーが大きいこと」、そして「そこで働く医療者のモチベーションが高いこと」を指摘した。一方、海外の死亡者数が多い理由は、医療キャパシティーが少なく、医療崩壊が起きたためと指摘させていただいた。今回は、なぜ日本で死亡者が少ないのかについて、もう一つ気がついたことがあるので、それを報告したい。それは「高齢者施設における死亡者数」の差である。知られているように新型コロナウイルスは、高齢者の死亡者数が多い。つまり、高齢者施設でのクラスター発生は相当数の死亡者を生み出してしまう。米国では、高齢者施設がクラスター化している例の報告が多い。報道によれば、全米の死者の5分の1を占める約7000人に上るという。日系人も多く入居し、安部首相夫人が訪問したことでも有名で、筆者も訪問し調査をさせていただいたことがある、ニューヨーク・マンハッタン北部の高齢者施設「イザベラハウス」(写真)では、98人もの死者が出た。高齢者施設の1日の死者としては過去に例を見ない人数で、このうち46人は新型コロナウイルスの感染が死因で、残り52人は「その疑いがある」とされている。また英国では、毎日発表している死者の集計方法を4月末に変更し、高齢者施設などで亡くなった人の数も含めるようにした結果、死亡者数が急増した。
●高齢者施設の感染は、隠すことができない
 海外での介護の現状を見てみよう。表1にあるようにヨーロッパは介護関連施設(細かくはいろいろ区分があるが本稿では高齢者施設とする)が充実している。そして北欧では介護従事者の数も多い。高福祉国家の面目躍如といったところであろうか。
【表1】
介護事情の国際比較
 さて、日本での高齢者施設死亡者数はどうか。日本では表2にあるような高齢者施設死亡の統計がないので、時々話題になる新聞記事などのデータから追うしかない。
【表2】
 4月下旬の報道によれば、千葉では、新型コロナウイルスに感染して死亡した約半数の17人が高齢者施設の入居者だったという。群馬県伊勢崎市では、入居者・職員ら関係する67人が感染し、15人が亡くなった有料老人ホーム「藤和の苑(その)」(人数は5月1日現在)の例がある。しかし、ほかの県では話題にならないし、千葉のケースはどちらかといえば対策が不十分であった時期のものだ。何が言いたいのかと言えば、高齢者施設の感染は隠すことができないので、それが諸外国ほど話題になっていないのは間違いないということだ。そして、表1、2を見比べてもらえばわかるように、福祉国家として多額の介護費用を投入し、施設数も多く、さらに介護者数が多い北欧諸国でも、高齢者施設での死亡者が多い。一方、欧州で対応がよかったとされるドイツでは高齢者施設の死亡は相対的に少ない。これは、医療のキャパシティーと異なり、介護のキャパシティーが大きいことと、感染による死亡者数が無関係であることを示す。死亡者の多寡にはほかの理由があるはずだ。ここで筆者は、「1000人当たり(2017)介護ベッド数(うち病院)」の病院の比率に注目した。日本は制度上、病院が病気のみならず、高齢者のケアも行うというスタイルを取っていた。一時期批判されたが、「社会的入院」のように、高齢者が長期入院して生活を病院の中で行うということもあった。もちろん、これは病院の本来の機能からいえば必ずしも適切とはいえず、介護保険が導入され、徐々に改善されつつあった。
●病院が高齢者施設を代替した「特殊性」
 さて、以前の記事『コロナで絶体絶命のイタリアと違い、日本で死者激増の可能性は低い理由』では、日本で医療キャパシティーが多い理由として、日本の病院が十分に効率化されておらず、その途中であるということを指摘させていただいた。それと同じことがこの場合も言える。すなわち、病院が高齢者施設の代わりをしているのは「日本の特殊性」ということになる。表1を見ていただくと分かるが、海外に比べ、日本は病院以外の高齢者施設が少ない。世界一高齢者の比率が高い国でなぜこれが成り立っていたかというと、病院に高齢者が入院していたからである。すなわち、病院が高齢者施設の代わりをしているのは「日本の特殊性」ということになる。さらにいえば、急速な高齢化に伴い高齢者施設を増やしており、かつ日本の医療保険制度や介護保険制度を見習っている韓国でも同じように、病院が高齢者施設を代替している。ちなみに韓国も日本と同様、人口当たりの死亡者数が少ない。もちろん、在宅医療にシフトするという話もあるが、高齢者が病院に入院していないことの欠点は何であろうか。今回の新型コロナウイルスの感染爆発でわかるように、やはり、海外のように介護者中心でケアをしていると、感染症対策はおろそかになりがちだ。アメリカなどではスキルドナーシングホームといわれる高齢者施設には、医師や看護師はある程度関与するが、通常の高齢者施設であるナーシングホームなどへの関与は少ない。ここで、なぜ日本の病院の機能が諸外国と異なっているのか、病院の歴史から考えよう。病院(ホスピタル)の語源は「ホスピタリティー」であり、さらにこのホスピタリティーの語源は巡礼者に対してサポートを行っていた「ホスピス」から始まっている。つまり巡礼者が怪我や病気をした時のサポートを行う場、急性期の病院機能が中心であった。現在でも「ホスピス」は療養、そこから分化した「ホスピタル」は急性期医療を専門に行っている。ちなみに、日本ではホスピスの数は少ない。海外の病院は、巡礼者が目的を果たすためにそそくさと立ち去るのが通例であった。宗教的な病院が多いのも歴史的な背景として考えられる。アジアには巡礼のような概念はなく、日本においては病院機能というのはあくまで病めるものに対するサポートであり、病めるものが必要とする機能を全て提供するという視点に立っている。歴史を振り返ってみても、江戸時代の「赤ひげ」医師で知られる日本最古の国立病院とでもいうべき小石川療養所などは外科的な治療も行ったが、やはり薬を処方するという内科的な対応(本道といっていた)が中心だった。そのため平均在院日数も長かった。このように病院の機能が異なっていたのが「日本の特殊性」とされ、それを是正していこうというのが近年の流れであったのはすでに別の論説(『コロナで絶体絶命のイタリアと違い、日本で死者激増の可能性は低い理由』)でも指摘したとおりである。このような背景に加え、老人の医療費自己負担額が極めて低かったこともあり、患者が望む間は、病院で面倒を見るという社会的入院という事象が生まれた。
●介護保険導入10年以降で、医療と介護の連携が進んだ
 こういったこともあり、日本では高齢者用施設の数がなかなか増えなかった。現在では社会的入院はほぼなくなったとはいえ、病院に多くの高齢者が入院している。変化が起きたのは2000年に介護保険が施行されてからであるが、一気に高齢者施設数が増えたわけではないし、導入当初は介護と医療は分断していたが、近年では「医療介護連携」が叫ばれ、医療と介護の連続性が比較的保たれている。そして、新型コロナウイルス感染においては、それが幸いした。例えば、介護老人保健施設(老健)には医師が常駐しているし、特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設)においても契約している医師がおり、定期的に診察に訪れる。その他の高齢者対応の集合住宅も同様に定期的に訪問診療が行われるなど、医療の役割が充実している。おそらく日本の高齢者施設に新型コロナのクラスター感染が少なく、死亡者数が少ない理由は、介護施設従事者が必ずしも得意ではない感染管理に対して、医療従事者からのアドバイスがあったことが大きいのではなかろうか。ちなみに、医療崩壊を起こさずにピークアウトした韓国は、近年の急速な高齢化に伴い、高齢者対応施設を36.1%増加させているが、その中で療養病床を急速に増加させ、高齢者対応に占める病院の割合は60%以上と世界最大である。前回の論考では、医療キャパシティーが日本では大きかったことを、医療崩壊が起きにくい理由として記載したが、同じように、日本では医療介護連携が進んでいることを日本の死亡者を減らしている理由と主張したい。なお、日本同様に死亡者数が少ない東南アジアのデータはあまりないが、前掲表2のようにシンガポールでは日本同様に高齢者施設での死亡が少ない。高齢者対応が発展途上の国なので、直接関係があるかどうかは検証の必要があるが、シンガポールは、国土をエリアにわけて、それぞれで医療介護連携の仕組みを構築している。もう1つは、スウェーデンなどで見られるように、日本に比べると、欧米では高齢者施設から病院への搬送が少ないことが想像される。私が訪問調査した時も、「高齢者施設では発熱くらいでは、病院に搬送しないのが普通」との説明を受けた。もちろん日本では、一時的な発熱はともかく、何日も発熱が続けば、肺炎などを疑って搬送されるケースが多い。また、海外では総じてICU(集中治療室)への入室基準が厳しく、特に北欧などでは、高齢者はICUで治療を受けることが難しい。以上、筆者は、高齢者施設クラスターが少ないことが日本での、コロナ感染による死亡者が少ない理由の一つだと考える。高齢者施設クラスターは非常に危険であるが、日本の医療は、海外と比べても間違いなく安心できる体制になっており、一部で懸念されている介護崩壊も起きないだろう。しかし、今回の死亡者数が少ないという成果が偶然や奇跡といわれることなく、戦略的に医療介護分野の再編成を考えることも重要かもしれない。

*15-5:https://www.tokyo-np.co.jp/article/31691?rct=politic (東京新聞 2020年5月28日) 知事会、第2波に備え検査強化を 西村担当相に対策の充実を要請
 全国知事会長の飯泉嘉門徳島県知事は28日、西村康稔経済再生担当相とオンラインで会談し、新型コロナウイルス対策の充実を申し入れた。第2波、第3波に備え、陽性かどうかを判定するPCR検査の強化や、ワクチンの早期実用化などが必要としている。西村氏は2020年度第2次補正予算案で自治体向け臨時交付金を2兆円増額したことに言及。各自治体への配分額に関し、リーマン・ショック時に創設した交付金よりも多くなるよう「工夫をしたい」と述べた。申し入れは、第2波に適切に対処するには、これまでの新型コロナ対策を総括する必要があると指摘。法制度も含め環境を整備するよう求めた。

*15-6:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/528181 (佐賀新聞 2020.5.28) コロナ専門家会議、議事録作らず、歴史的事態検証の妨げに
 新型コロナウイルス対策を検討してきた政府専門家会議の議事録を政府が作成していないことが28日、分かった。共同通信の情報公開請求に、事務局である内閣官房が回答した。議事の概要と資料は公表されているが、各出席者の詳細な発言は記されておらず、対策検証の妨げになる可能性がある。政府は3月、新型コロナ問題を「歴史的緊急事態」に指定し、将来の教訓として公文書の管理を徹底することを決定。安倍晋三首相は「適切に、検証可能なように文書を作成、保存していると認識している。今後さらなる徹底を指示する」と強調していた。消極的な政府の開示姿勢に、専門家会議の委員からも疑問の声が出ている。専門家会議は、政府の対策を考える上で医学的な観点から助言をするために2月に設置。感染症や公衆衛生の専門家、法律家らが委員となった。国内の感染状況を分析した結果や、密閉、密集、密接の「三つの密」を避けることなど、求められる予防策を提言してきた。これまで14回開催されたが、全て非公開だった。共同通信が3月、内閣官房に対して、第1回~第6回の議事録などを情報公開請求したところ、5月に「作成および取得をしておらず保有していないため不開示とした」との通知が返ってきた。7回目以降の議事録についても作成していないという。現在、首相官邸のウェブサイトには第6回までの議事概要と資料は公開されているが、どの委員がどのような発言をしたのかは分からない。内閣官房は「(行政文書の管理に関する)ガイドラインに基づいてきちんと記録は残した」と説明している。一方で会議の委員からは「誰がどういう発言をしたかには責任を持ったほうがよい」など議事録の公開に前向きな意見が出ている。

<専門家会議の判断と経済について>
PS(2020年5月30日、6月1日追加):*16-1のように、5月29日、専門家会議は、国内の新型コロナ感染拡大に関するこれまでの国の対策への評価を公表し、「①クラスターの発生を防ぐ対策は、感染拡大を防ぐ点で効果的だった」「②3密(密閉、密集、密接)になると感染者が多く発生していることを指摘し、市民に対策を訴えることができた」「③緊急事態宣言は、人々の接触頻度を低くし、移動を抑えたため、地方への感染拡大に歯止めがかかった」「④3月10日頃までは全国で50人以下だったが、その後急増」「⑤3月以降の感染拡大は、欧州などからの旅行者・帰国者を通じて各地に広がったウイルスによる可能性が高い」「⑥専門家会議にデータを提供している西浦北大教授(理論疫学)は『特定業種の休業要請がどれだけ効いたかは、この後明らかにしていきたい』と語られた」そうだ。
 このうち、①のクラスター追跡は、特定の集団感染(クラスター)だけが存在する第一段階では意味があるが、市中に蔓延して満員電車や職場で普通に感染するようになった第二段階では職業差別を生じさせる以外には効果が薄い。つまり、第二段階では、PCR検査等の検査を増やして早期発見し、患者の重度に応じてホテルや病院に隔離して感染を防ぎつつ、根本的な治療を行うことが必要だったのだ。しかし、⑥の西浦北大教授はじめ専門家会議は、東京・大阪の職場や通勤状況、ホテルの収容能力、検査方法や治療薬の開発・承認には考えが至らず、緊急事態宣言と休業要請ばかりに感心があったため、犠牲が多く高くついたのである。また、②は感染症予防の常識であり、通常は感染した人を他に感染させなくなるまで隔離し、日本全国で③に至ることがないようにするものだ。さらに、④⑤は、旅行者・帰国者を検査したり、14日間隔離したりするなどの適切な入国管理を行えば防げた筈である。
 このように、必ずしもうまくいかなかった意思決定は、その原因を正確に突き止めて改善する必要があるが、*16-2のように、コロナ専門家会議は議事録を作成していないとされ、誰の提案で空気(方針)が決まったのかを国民は知ることができない。役人と違って専門家は、「⑥自分の発言に責任を持つので開示したいか、どちらでも構わない」「⑦率直に議論する場合でも専門性を活かして責任を持って言うので、発信者が特定された方が他の人の意見と自分の意見がごっちゃにされずよい」「⑧確定的に言えない場合は、そういう言い方をする」ため、発言者がわからない議事概要は誰にとっても不十分なのである。私もこのような事態に関する公文書は国民共有の歴史的資源であり、いろいろな方向からの研究材料でもあるため、それこそEvidenseに基づいて議論し、公表すべきだと考える。
 なお、緊急事態宣言と休業要請により雇用が逼迫し、非正規社員が雇い止めになったり、中小企業・個人企業が倒産したりなど経済がひどい状況になった。そして、それを食い止めるための補助金で数十兆円も支払うことになったが、もらう人ばかりでは計算が合わないため、誰がどのような形で負担し、その副作用がどう出るかも明確にしておくべきだ。
 琉球新報も、*16-3のように、2020年6月1日、「⑨政府の新型コロナ対策を医学的見地から検討してきた専門家会議の議事録が作成されていないのは、コロナ禍で我慢を強いられた国民への背信行為だ」「⑩首相官邸のウェブサイトに第6回までの議事概要と資料は公開されているものの、誰がどういう発言をしたのか分からない」「⑪会議が例示した“新しい生活様式”の提言は、暮らしや社会経済活動のあらゆる場面に変化を強いているので、過程を検証し教訓を後世に伝えるために議事録は不可欠」「⑫2020年3月、政府は新型コロナに関し国家・社会として記録を共有すべき“歴史的緊急事態”に指定しており、行政文書管理のガイドラインに基づく対応をすべき」「⑬主権者である国民に正しく情報開示し、後世に詳細な記録を残すことは公務員として当然の仕事」と記載しており、私も賛成だ。さらに近年は、会議を録音すれば自動的にコンピューターに取り込むことができ、外国語にも自動翻訳できるため、それらをチェックするだけで数か国語の議事録作成が可能だ。つまり、IT化しておけば、速記者を入れなくても恣意性の入らない議事録作成が容易なのに、政府こそ生産性が低くて遅れているのである。

  
   2020.5.29朝日新聞       2020.3.31東京新聞    2020.5.23佐賀新聞

(図の説明:左の2つの図のように、専門家会議は「緊急事態宣言は、抑制には貢献した」としているが、そのEvidenseも議論の過程も示されていない。しかし、この緊急事態宣言による休業要請によって、雇い止めにあった非正規労働者や破綻した中小企業・個人企業も多いので、効果と犠牲を比較考量して、犠牲の少ない方法を探すべきなのである)

*16-1:https://digital.asahi.com/articles/DA3S14494894.html (朝日新聞 2020年5月30日) 感染ピーク、緊急事態宣言前 専門家会議「抑制には貢献」
 国内の新型コロナウイルスの感染拡大について、政府の専門家会議は29日、これまでの国の対策への評価を公表した。緊急事態宣言は感染の抑制に貢献したとする一方、感染のピークは4月1日ごろで、宣言前だったことも明らかにした。感染が再び広がることを見据え、現時点の評価を行い、今後に生かす必要があると判断した。専門家会議はこの日まとめた提言で、クラスター(感染者集団)の発生を防ぐ対策は、感染拡大を防ぐなどの点で効果的だったと分析。3密(密閉、密集、密接)の条件がそろうと感染者が多く発生していることを指摘し、対策を市民に訴えることができたとした。4月7日に最初に出され、その後対象が全国に広がった緊急事態宣言については、人々の接触頻度が低いまま保たれ、移動も抑えられたため、地方への感染拡大に歯止めがかけられた、とした。実際にいつ感染したのか新規感染者の報告から逆算して推定したところ、ピークは4月1日ごろで、緊急事態宣言の前に流行は収まり始めていた。休業要請や営業自粛が都市部で早くから行われていた効果や、3密対策を含めた市民の行動の変化がある程度起きていた、と理由を推察した。会議のメンバーからは「結果的に宣言のタイミングは遅かった」との声もある。
■3月、遅れた水際対策 危機感は浸透
 専門家会議が推定感染日でまとめた患者数の推移をみると、3月10日ごろまでは全国で50人以下だったが、その後急増した。3月以降の感染拡大は、国立感染症研究所の調査によると、欧州などからの旅行者や帰国者を通じて各地に広がったウイルスによる可能性が高い。日本の当時の水際対策について、専門家会議の提言に詳しい分析はない。関西空港近くにある特定感染症指定医療機関のりんくう総合医療センター(大阪府泉佐野市)の倭(やまと)正也・感染症センター長は「3月中旬には海外からの持ち込みで広がったとみられる感染経路の追えない患者が増え、満床だった。感染が広がり始めた欧州からの便などの渡航制限は早くかけるべきだった」と指摘する。感染はその後どう推移し、減少に転じたのは何が影響したのか。多くの人が外出したと言われる3月20~22日の3連休を経て、東京都の小池百合子知事が不要不急の外出自粛を要請したのは25日。この日の推定感染者は約500人。さらに増えて数日後にピークに達した。30日、お笑いタレントの志村けんさんが肺炎で亡くなったと報道された。このころ都内の主要駅で人出が大きく減り始める。入国拒否が73カ国・地域に広がることが決まったのは4月1日。推定感染日でみた感染者数はこの日ごろをピークに減少に転じ、緊急事態宣言でさらに減っていった。東京大の広井悠准教授(都市防災)は「私たちの調査では3月中旬ごろから高齢者を中心にプライベートな外出を控えるようになった。五輪の延期や志村さんの死去などもあり、徐々に人々の危機感が高まっていたのではないか」と話す。29日夜の会見で、専門家会議にデータを提供している西浦博・北海道大教授(理論疫学)は「特定の業種の休業要請がどれだけ効いたかは、この後明らかにしていきたい」と語った。

*16-2:https://mainichi.jp/articles/20200529/k00/00m/010/214000c (毎日新聞 2020年5月29日) コロナ専門家会議「議事録」作成せず 菅氏「発言者特定されない議事概要で十分」
 菅義偉官房長官は29日の記者会見で、新型コロナウイルス感染症対策を検討する政府専門家会議の議事録を残していないと説明した。発言者が特定されない形の「議事概要」で十分だとし、発言者や発言内容を全て記録した議事録は作成していないとした。政府は今年3月、新型コロナウイルスを巡る事態を、行政文書の管理のガイドラインに基づく「歴史的緊急事態」に指定し、将来の教訓として通常より幅広い文書の作成を行うと決めていた。ガイドラインは会議の性質に応じ、①発言者や発言内容を記載した議事録などの作成を義務づける「政策の決定または了解を行う会議等」と、②活動の進捗(しんちょく)状況や確認事項などを記載した文書を作成する「政府の決定または了解を行わない会議等」に分けている。菅氏は会見で、専門家会議は②に該当するとし「ガイドラインに沿って適切に記録を作成している」と述べた。発言者を記載しない理由は「専門家に率直に議論いただくために、発信者が特定されない形で議事概要を作成、公表している」とした。西村康稔経済再生担当相は29日の会見で「1回目の専門家会議で、発言者を特定しない形で議事概要を作成すると説明し、理解をいただいた。終了後の記者会見で丁寧に説明しており、検証には会見録も使える」と語った。これに対し会議メンバーの岡部信彦・川崎市健康安全研究所長は「事務局が『議事概要を出す』と答えたので、ああそうですねということで終わった。(賛否の)手を挙げたわけじゃないから分からないが、全てではないが別に発言者名が出ても構わないというのが委員の意見だと思う」と記者団に語り、「僕は自分の発言に責任を持ちたいから発言は出ても構わない」と述べた。会議座長の脇田隆字・国立感染症研究所長は29日夜の会見で「一番大事なのは我々がどのように議論し、考え、どのような提言を政府にしているかを(記者会見などで)しっかり伝えることだと思う。議事録に関しては政府がお決めになっていることだ」とした上で、公開について「個人的にはどちらでも構わない」と言及。尾身茂副座長は同日の会議でメンバーから政府に公開検討を求める声があったと説明し、「政府が決めて名前を出すということになれば私自身は全然問題ない」と述べた。これに関し、立憲民主党の枝野幸男代表は党の会合で、東日本大震災に官房長官として対応した際に、政府の会議の議事録を作成していなかったことを当時野党の自民党や公明党に批判されたことに触れ、「9年前の指摘をそっくりそのままお返ししたい。今回はちゃんと記録を残せと、あらかじめこちらから指摘したのに、こんな大事な記録が残ってないのはとんでもない話だ」と批判した。国民民主党の玉木雄一郎代表も記者団の取材に「歴史に対する背信行為だ。公文書は国民共有の資源だという認識を現政権は著しく欠いている」と語った。

*16-3:https://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-1131196.html (琉球新報社説 2020年6月1日) コロナ専門家会議 議事録の作成は不可欠だ
 政府が、新型コロナウイルス対策を検討してきた専門家会議の議事録を作成していないことが分かった。公文書管理に対する安倍政権の姿勢は不誠実の一語に尽きる。コロナ禍で我慢を強いられている国民への背信行為でもある。専門家会議は、政府の対策を考える上で医学的な観点から助言するために2月に設置された。感染症や公衆衛生の専門家、法律家らがメンバーで、感染状況の分析結果を示し、「3密」回避などの予防策を提言してきた。これまで14回開催され、全て非公開だ。現在、首相官邸のウェブサイトに第6回までの議事概要と資料は公開されている。だが出席者の誰がどのような発言をしたのかは分からない。会議の議論は政府のコロナ関連政策の根拠となり、自治体もそれに基づいて施策を推し進める。会議が例示した「新しい生活様式」なる提言は人々の暮らしや社会経済活動のあらゆる場面にも大きな変化をもたらしている。後手に回ったコロナの水際対策や検査態勢、首相が突如表明した一斉休校、感染が拡大してからの緊急事態宣言の発令や解除。未知のウイルスの拡大に政府がどう対応し、専門家の意見はどのように政策に反映されたのか。過程を検証し、教訓を後世に伝えるために議事録が不可欠であることは指摘するまでもない。国民への影響度や重要性を考えれば本来、会議は公開すべき性格のものだ。そもそも政府は3月、新型コロナに関して国家・社会として記録を共有すべき「歴史的緊急事態」に指定している。行政文書管理のガイドラインに基づく対応だ。歴史的緊急事態は民主党政権下で2011年の東日本大震災に関連する会議の議事録が未作成だった反省から、12年にガイドラインに盛り込まれた。野党だった自民党は「政権の隠蔽(いんぺい)体質だ」と未作成を批判した経緯がある。政府は今回、作成していないことについて、政策を決定したり了解したりする会議はガイドラインで議事録作成が義務付けられるが、専門家会議はこれに該当しない―と説明している。菅義偉官房長官は「率直に議論してもらうため、発信者は特定されない形で議事概要を作成し公表している」と述べた。だが会議のメンバーからは議事録を公開しないことに疑問の声が出ている。安倍政権では陸上自衛隊による国連平和維持活動の日報隠蔽や、森友学園を巡る財務省の決裁文書改ざん、桜を見る会の招待者名簿廃棄など、無責任でずさんな公文書管理が相次いでいる。今回もそれらに通底する問題だ。主権者である国民と正直に向き合って正しく情報を開示し、後世に謙虚な姿勢で詳細な記録を残すことは公務員として当然の仕事のはずだ。会議の録音やメモがあるのではないか。政府は議事録を作成すべきである。

PS(2020年5月31日追加):*17-1のように、東京都と北九州市で新型コロナ感染者が増加しており、西村氏が市中で感染が広がっている可能性を指摘されたそうだが、北九州市の場合は、*17-4のように、PCR検査を増やしたため確認される感染者が増加したものだ。つまり、徹底的に検査すれば潜在患者が確定患者になり、見た目の感染者数が増えるため、背景の把握が重要だ。
 また、*17-2のように、熊本市は、3~5月に発生した新型コロナウイルスの三つの感染集団に関するゲノム解析で、2つは欧米系統のウイルスが福岡経由と関西経由で持ち込まれ、もう1つは海外から直接入ってきた可能性が高いことを感染者20数人分のゲノム解析で把握したそうだ。これは、現在だからできる技術で、それなら、どちらの方が症状が激しく、それには遺伝子のどこが変異したのかも知りたいものである。
 さらに、*17-3のように、米国の2020年産トウモロコシの価格が、①記録的な豊作 ②自動車の利用減少による燃料向け需要の低迷 ③品種更新 などにより若干下がり、今後10年は低迷が続くそうだが、私は食糧にも困っている人が多い時代に、トウモロコシから燃料を作る必要は全くないと前から思っており、むしろWHOが買い上げて食料不足の地域に配った方が免疫力を回復できると考える。なお、トウモロコシにユーグレナを混ぜると、安価に必要な栄養素を全部とれるようだ。

*17-1:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/529057 (佐賀新聞 2020.5.30) 西村氏、コロナ感染増加に危機感、東京と北九州、防止策徹底求める
 西村康稔経済再生担当相は30日の記者会見で、東京都と北九州市で新型コロナウイルスの感染者が増加していることについて「いずれも週単位でも増加傾向にあるので危機感を持って見ている」と警戒感を示した。緊急事態宣言は全国で解除されたが、感染者は引き続き発生するとして感染防止策の徹底を求めた京都では30日、感染者が新たに14人報告された。都内の感染者は累計で5231人となった。今月25日の緊急事態宣言解除後は再び微増の傾向を示し、翌26日からは29日の22人を最多に5日連続で2桁の水準。直近7日間の1日当たりの平均は約13・4人となった。死者は新たに2人が判明し、累計は304人。北九州市では新たに16人の感染が確認された。市では23日から感染者が再び増え始め、この8日間で計85人。新規感染者数は前日より減ったが、3日連続で2桁となった。福岡県内の感染者は計741人。西村氏は、北九州市では感染経路が追える感染者が一定程度いる一方で、「市内に(感染者が)散らばっている」として市中で感染が広がっている可能性を指摘した。

*17-2:https://www.nishinippon.co.jp/item/n/612602/ (西日本新聞 2020/5/30) 熊本市の感染集団に3ルート 福岡、関西、海外…ゲノム解析で推定
 熊本市で3~5月に発生した新型コロナウイルスの三つの感染集団に関するゲノム(全遺伝情報)解析で、二つは欧米系統のウイルスが福岡経由と関西経由に分かれて持ち込まれ、一つは海外から直接入ってきた可能性が高いことが29日、同市への取材で分かった。ウイルスが海外や大都市から地方に飛び火し、感染者周辺でさらに広がる構図が浮かぶ。福岡ルートの感染集団は、70代の男性医師(5月9日死亡)ら計12人。医師と同居していた妻や、立ち寄り先の「接客を伴う飲食店」関係者、乗車したタクシーの運転手、受診した病院の医療スタッフに感染が広がった。市は、感染者二十数人分の検体のゲノム解析を国立感染症研究所に依頼。その結果、医師ら計12人の検体のゲノム配列が一致し、福岡の感染グループとも共通していたことから、福岡から熊本への感染経路が推定できるという。関西ルートとみられるのは、馬肉料理店の経営者家族や従業員の計4人。海外からの直接ルートは温浴施設利用者ら計5人。市関係者は「関西や海外から訪れた人が熊本にウイルスを持ち込んだ可能性がある」とみている。一方、感染が判明して入院し、退院後に再び陽性となった女性のゲノム解析も依頼していたが、試料の不足で判定不能だった。体内に残ったウイルスの「再燃」か、別ルートで再感染したのかは解明できなかった。

*17-3:https://www.agrinews.co.jp/p50933.html (日本農業新聞 2020年5月30日) [新型コロナ] 米国産トウモロコシ 価格下落の見込み 記録的豊作や燃料需要低下 配合飼料に好影響も
 米国の2020年産トウモロコシの価格が下落する見通しになっている。記録的な豊作の予想。さらに新型コロナウイルスの影響で自動車の利用が減少し、燃料向けの需要も低迷しているためだ。相場が元に戻るには数年かかる見込みという。米国産トウモロコシを原料とする日本の配合飼料価格に影響する可能性もある。米国穀物協会は29日、日本と韓国、中国、台湾のユーザー向けにオンラインでセミナーを開催。米国のコンサルタント会社「プロ・エキスポート・ネットワーク」の代表が20年産トウモロコシの需給見通しを報告した。それによると、5月24日時点で播種(はしゅ)の進捗(しんちょく)率は88%と順調。品種更新の効果などもあって単収も増加を予想する。このまま順調にいけば、155億ブッシェル(1ブッシェル=約25キロ)の記録的な生産量になる。昨年は天候不順の作業遅れによって、生育期間が十分に確保できず、前年度比5%減の約136億ブッシェルだった。一方で、需要は弱まっている。報告によると、新型コロナウイルスの影響で、米国では自動車燃料の需要が減少。これに伴い燃料向けトウモロコシの需要も落ちている。米国ではトウモロコシから作るエタノールがガソリンに10%ほど混ぜられている。原油価格低迷も、燃料向けトウモロコシの需要が伸びない要因となっている。28日の米ニューヨーク原油(7月限)先物は1バレル33ドル71セントで前年より43%も下落している。消毒用エタノール需要の伸びに期待はあるが、失業者の増大、在宅勤務の慣れ、大規模な集会の減少などから燃料需要は回復に時間がかかるとみられる。その結果、トウモロコシ価格は「若干下がることが予想される」「この先も10年は低迷が続く」などとした。5月28日時点のシカゴ先物相場(7月限)は1ブッシェル当たり3ドル28セントで、1年前より22%安い。

*17-4:https://www.nishinippon.co.jp/item/n/612812/ (西日本新聞 2020/5/31) 北九州モデルで「第2波」対抗へ 濃厚接触者全員にPCR検査
●感染者の早期発見を優先
 新型コロナウイルスの感染が再拡大している北九州市は、PCR検査の対象を無症状の濃厚接触者にまで拡大し、クラスター(感染者集団)の追跡によって感染者を可能な限り絞り込むなど「第2波」(北橋健治市長)の一日も早い収束に懸命だ。目指すのは感染経路不明者を減らしつつ、早期発見で把握した感染者を治療、周りに接触させないことで拡大を抑え込む「北九州モデル」の確立。第2波は、人口密集地を発火点に都道府県レベルに広がることも想定され、それを「点」に抑え込めるかが今後の課題となってきている。同市のPCR検査数は30日136件、29日160件、28日が117件。これ以前の100件超えは4月15日までさかのぼる。再び感染者が出た今月23日から8日間で濃厚接触者は計404人となり、このうち30日までに290人のPCR検査が終了し、53人の陽性が判明した。市は従来、濃厚接触者のPCR検査については有症者に限り、症状がない人は経過観察としていた。無症状を含む全ての濃厚接触者の検査に踏み切ったきっかけは、第2波の発表初日となった23日。「市内で感染再発」の情報を受け、各医療機関が救急搬送で運ばれたコロナと無関係の患者を念のため調べたところ、次々と感染が発覚した。その一つ、門司メディカルセンター(門司区)では医療スタッフのクラスターが確認された。検査対象を広げれば、確認される感染者数も増えることは想定され、対外的に「市内で感染が広がっている」との印象を与えることは市も覚悟の上だ。30日まで8日間の感染者は経路不明32人を含む85人と増加の一途だが、北橋市長は「第2波の中、日本で初めて早期発見、早期治療のため全員を検査している。無症状の陽性者も多く出るが、短期決戦で収束させるには必要だ」と強調する。新型コロナウイルス感染症対策専門家会議構成員で東北大の押谷仁教授は「地域の中で感染が検出されないまま、伝播(でんぱ)が続くことがあり得る」のが、この感染症の特徴の一つとみており、「それが突然、顕在化してきた」と分析する。一方、感染経路不明者の割合は30日までの8日間で約37%と、27日までの約77%(22人中17人)から半減。濃厚接触者の比率が高まってきたためで、市の狙い通り感染者の「早期発見」が進んでいるともいえる。今後、同市以外でも第2波が襲来する恐れは十分にあり、押谷氏は「地域の中で隠れてしまっているクラスターや感染連鎖をいかに早く検知していくかが課題だ」と指摘する。

<役人の早期定年制による国の無駄遣い・マイナンバーなど>
PS(2020年6月3日追加):*18-1-1に、「①(社)サービスデザイン推進協議会が、新型コロナの影響を受けた中小企業などに現金を支給する『持続化給付金』の事務業務を、経産省から769億円で受託した」「②サービスデザインは、給付金の申請受付から審査までの管理・運営・広報といった業務を749億円で電通に再委託した」「③電通は、人材派遣のパソナ・ITサービスのトランスコスモスにさらに業務を外注した」と記載されている。この問題点は、i)経産省が殆ど何もしないサービスデザインに血税20億円(協議会の人件費・銀行に外注するための振込手数料等の経費と説明された)を抜かせたこと ii)再委託業務を通じて中小企業が提出した秘密保持義務のある書類を数社の民間企業に流したこと である。サービスデザインは、経産官僚が理事の1人をしている経産省の天下り先だろうが、税理士が守秘義務を守って提出した資料を再委託した民間企業に安易に渡すのは、国民のプライバシー保護について全く考慮していない証拠である上、持続化給付金とそれにまつわる情報にたかっているものだ。サービスデザインは、*18-1-2のように、2016年度以降、経産省の14件、1576億円の事業を受託し、そのうち9件を電通などの外部に再委託し、女性活躍に絡む事業は人材派遣のパソナに再委託していたそうで、この会社は電通やパソナに再委託するために作られた会社なのだろうが、私は、持続化給付金は地方自治体が地元の銀行を使って配布するのが妥当だったと思う。
 中央官庁が、天下り先を優遇して予算をつける(国民にとっては血税の無駄遣い)理由には、役人の早期退職制度と早期退職した官僚を理事等に迎えて細かい作業毎に別会社を作る慣習があり、このやり方が無駄遣いを生むため、役人の定年年齢を世間並みの65歳~75歳にする方がよほど安上がりなのだ。また、役人の方も、いらない会社の理事になるより遣り甲斐があり、(若ければ優れているというわけでもないので)人材の無駄遣いにならない。そのため、*18-2-1・*18-2-2のように、政府に定年引き上げを検討するよう定めた国家公務員制度改革基本法が2008年に成立しているのに、国家公務員の定年を段階的に65歳に引き上げる法案すらまだ通っていないというのは怠慢なのだ。また、検察官の定年を他の国家公務員と同じにするのは当然であり、人によって役職定年などを行うから不公平になるのであって、少子化で労働力不足の中、富を作り出さない公務員の採用人数を減らして定年を延長し、定年まで普通に働けるようにすればよいだろう。従って、野党の追及の論点・メディア・それに動かされた「世論」の方が、意図的でおかしかった。
 さらに、長寿命化に伴う生産年齢人口割合の減少で年金財政が逼迫するため(長くは書かないが、本当はこれが大きな失政)、*18-3のように、非正規労働者の厚生年金加入拡大・支え手増・国民年金だけの人の受給額底上げ・75歳からの年金受取開始を可能にして高齢者の就労を促す年金制度改革関連法が成立したそうだ。ただ、厚生年金は、現在、パートらの短時間労働者は従業員501人以上の企業で週20時間以上働くことなどが条件であるのを、2022年10月に従業員101人以上、2024年10月に51人以上に広げるそうで、ここで重視されているのは国民の老後生活の安定ではなく、形だけの年金制度の維持と企業の都合である。そして、これはあらゆる施策において同様なのだが、本来は小規模企業でも厚生年金に加入するくらいのことはすべきで、そのためのツール(例えば、ITを使った生産性向上/人など)は既にあるのである。
 このような憲法違反の政治・行政が行われているわが国で、*18-4のように、新型コロナ感染拡大を受けた国民への10万円の給付が遅くなったことを理由に、「マイナンバーと全口座をひも付けせよ」という議論が喧しいが、行政の本当の狙いは、イ)預金総額が中等以上の人への年金カット ロ)医療・介護サービスを使っている人への年金カット など、保険料を別に納めてきた社会保障を給付段階になって総合的に考えるような理不尽なことであるため、10万円の給付につられてマイナンバーの活用を促進すべきだと考えるのは甘すぎるのである。


  2020.6.2、2020.4.14朝日新聞         2020.4.9東京新聞  

(図の説明:持続化給付金事業を支払う仕組みは左図のようになっているが、そのために企業が用意する書類は、中央の図のように公開されていないもので、税理士が守秘義務を持って準備を助けているものだ。そして、計算方法は右図のとおりである。そのため、この処理を行うのに適した企業が電通等とは思われず、民間企業に再委託してよい性格のものでもない)

*18-1-1:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/529803 (佐賀新聞 2020.6.2) 持続化給付金、電通が業務を外注、パソナなどに、野党は追及強める
 新型コロナウイルスの影響を受けた中小企業などに現金を支給する「持続化給付金」を巡り、事務業務を受託した団体から再委託を受けた電通が、さらに人材派遣のパソナやITサービスのトランスコスモスに業務を外注していたことが2日、分かった。3社は団体の設立に関わっているとされ、野党は受注の流れが不透明だとして追及を強めている。団体は一般社団法人のサービスデザイン推進協議会(東京)で、2016年に設立した。経済産業省などによると、一般競争入札により769億円で受注。給付金の申請受け付けから審査までの管理・運営、広報といった業務を電通に749億円で再委託した。梶山弘志経済産業相は2日の持ち回り閣議後の記者会見で「いろんな業務が混ざっており(団体や再委託先で)分けて行っていた」と説明し、執行に問題はなかったとの認識を示した。これまでに団体が持続化給付金を含め、国から14事業の委託を受けていたことも明らかになった。うち9事業については電通やパソナなどに再委託していた。また政府は2日の野党によるヒアリングで、6月1日時点で団体の従業員計21人の中に、電通やパソナ、トランスコスモスからの出向者がいると明らかにした。団体の笠原英一代表理事は、自身が関わるウェブサイト上で「6月8日の総会で理事任期終了をもって代表理事を辞任する」と明らかにしている。

*18-1-2:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/530013 (2020.6.2) 事務団体、国事業1576億受託、コロナ給付金、97%再委託
 新型コロナウイルス対策の「持続化給付金」の事務を担う団体が2016年度以降、経済産業省の14件、総額1576億円の事業を受託し、9件を電通など外部へ再委託していたことが2日、同省が国会議員に示した資料で判明した。給付金では769億円で委託を受け、再委託費が97%に当たる749億円。団体が専任の常勤理事を置いていないことも分かり、野党は運営の実体が不透明だと批判している。
団体は16年に設立した一般社団法人のサービスデザイン推進協議会(東京)。協議会が受託した14件は16~20年度に執行された。再委託していた9件は、IT導入支援事業や、企業の後継者探しを手助けする事業など。他の再委託先も電通のグループ会社が多く、女性活躍に絡む事業では人材派遣のパソナに再委託していた。経産省などによると、持続化給付金事業は一般競争入札により協議会が受託し、給付金の申請受け付けから審査までの管理や運営の業務を電通に再委託した。委託費と再委託費の差額分の20億円は、協議会の人件費や、銀行に外注した振込手数料などの経費だと説明。電通は、パソナやIT大手トランスコスモスに業務を外注していた。協議会の理事はいずれも非常勤の8人で、電通やパソナ、トランスコスモスの関係者も就任している。3社は協議会設立に関わったとされる。野党は、電通などが直接受託せず、実体に乏しい団体が介在して公金が使われる状況を疑問視している。これに対し、梶山弘志経産相は2日の記者会見で、過去に事業を担った電通が国の補助金の振り込み元となったため、問い合わせが集中したと指摘。「原則、電通が直接受託しないと聞いている」と述べ、協議会の必要性を強調した。電通も2日、取材に応じ、業務執行に問題はないとの認識を示した。持続化給付金は、新型コロナで打撃を受けた中小企業などに現金を支給。5月1日から申請を受け付け、これまでに約100万件、計約1兆3400億円を給付した。

*18-2-1:https://www.nhk.or.jp/politics/articles/feature/37768.html (NHK 2020年5月27日) 検察庁法案 見送りの顛末
 検察庁法改正案。検察官の定年延長を可能にするこの法案は、国家公務員法改正案とともに国会に提出されたが、急転直下、今の国会での成立が見送られた。「ツイッター世論」、野党の抗戦、黒川検事長の賭けマージャン、そして与党の誤算。一連の事態を、追った。
●焦点は「定年延長」
 「国民の声に十分耳を傾けていくことが不可欠であり、国民の理解なくして、前に進めていくことはできない」。安倍総理大臣は、5月18日の夜、検察庁法の改正案について、今の国会での成立を見送る考えを表明した。検察庁法の改正案は、国家公務員の定年を段階的に65歳に引き上げるための法案とともに、一括して審議が行われた。一連の改正案は、少子高齢化が進む中、意欲と能力のある人が長く働ける環境を整えることが狙いだという。検察官の定年も、ほかの国家公務員と同様に、段階的に65歳に引き上げるとともに、内閣や法務大臣が認めれば定年延長を最長で3年まで可能にするものだ。焦点となったのは、「内閣や法務大臣が認めれば定年を最長で3年まで延長できる」という規定。野党側は、ことし1月に決定された東京高等検察庁の黒川検事長の定年延長との関係を問題にした。「法解釈の変更による不当な黒川検事長の定年延長を法改正によって、後付けで正当化しようとしている」と批判。「時の政権が恣意的に人事を行うことも可能になり、検察の独立性や三権分立が損なわれかねない」として、強く反発した。一方、政府は、黒川のこととは何ら関係はないとしている。また、「従来から、人事権者は内閣または法務大臣であり、法改正の前後で変わらず、恣意的な人事が行われることはない」と反論した。納得できない野党側は、定年延長を判断する際の基準を法案審議の段階で明確にすべきだと求めた。これに対し、政府は、法案成立後、施行までに新たな人事院規則に準じて、明確にするとした。野党側は、「今は、新型コロナウイルス対策に万全を期すべきだ」として、この時期の審議自体も批判していた。
●審議入りは「10万円」の日
 当初、国会での審議は粛々と始まった。審議入りは4月16日の衆議院本会議。この日の永田町は、10万円給付と緊急事態宣言の全国への拡大の話で持ちきりだった。収入が減少した世帯への30万円の現金給付を盛り込んだ補正予算案を組み替え、10万円の一律給付へと方針転換が行われた日だ。法案は、付託された衆議院内閣委員会で大型連休前に実質的な審議が始まることはなかった。
●発端は5月8日
 事態が動く発端となったのは、大型連休明け、5月8日の衆議院内閣委員会だった。検察庁法の改正案は、国家公務員の定年を段階的に65歳に引き上げるための法案とともに、実質的な審議がスタートした。しかし、森法務大臣の出席が認められなかったなどとして、立憲民主党などが委員会を欠席。自民・公明両党と、日本維新の会だけで質疑が行われた。
●「ツイッター世論」も、検察OBも動く
 ここで世論が大きく反応した。ツイッターには、もともとこの法案を懸念する声が出てはいたが、「#検察庁法改正案に抗議します」というハッシュタグによって、一気に拡散した。俳優や作家、ミュージシャンなどさまざまな分野の著名人も含め、抗議の投稿が相次いだのだ。さらに、検察OBからも反対意見が。ロッキード事件の捜査を担当した元検事総長ら検察OBの有志14人が、「検察の人事に政治権力が介入することを正当化するものだ」として反対する意見書を法務省に提出。
異例の事態となった。
●政府・与党の誤算
 しかしこれに与党内の反応は鈍かった。「ツイッター上の抗議の数だけでは、反発が広がっているかどうかは分からない」。「集団的自衛権の行使を可能にすることなどを盛り込んだ安全保障関連法の時のような大きな反発は感じない」。政府側は、「東京高等検察庁の黒川検事長の定年延長と結びつけられているが、関係ない」、「あくまで、ほかの役所と同様に、検察官などの定年も延長できるようにするために、法務省が提出したものだ」と主張。この時点では、まだ政府・与党内では、強気の声が少なくなかったのだ。こうした政府・与党内の雰囲気には、ある背景があった。カギは、検察庁法改正案とあわせて審議が行われた国家公務員法改正案だ。こちらは検察官や自衛官などを除く国家公務員の定年を段階的に65歳に引き上げる法案。公務員の定年の引き上げには、官公労=公務員の労働組合からの待望論が強かった。「国家公務員法改正案と一括で審議すれば、最後は押し切れる」と与党側が油断したわけではないだろうが、差し迫った緊張感は感じられなかった。審議入りの段階で、国家公務員法改正案と検察庁法改正案の一括での審議に、強い抵抗がなかったことも、この雰囲気を後押しした。しかし、このあと、政府・与党にとっては、誤算が重なることになる。野党側は、検察官の定年延長を可能にする規定が削除されなければ、採決を阻止するため、内閣委員長の解任決議案を提出することを検討。与党側は、衆議院本会議での採決は翌週に先送りすると譲歩した。
●世論を背に、野党が抗戦
 5月15日。この日、衆議院内閣委員会には、野党側の求めに応じて武田国家公務員制度担当大臣に加え、森も出席。与党側は、質疑のあと、委員会で採決を行いたいと提案した。野党側が、「採決は認められない」と反対するのは、もちろん織り込んでいたが、自民党内には、「野党側は不信任決議案などは出さない。採決は可能だ」という見方があった。しかし野党側は、衆議院内閣委員会の理事会が開かれている最中に、突然、武田大臣に対する不信任決議案を提出。その結果、委員会での採決も見送られた。野党側は、世論が追い風になっているとして、徹底抗戦する構えをみせた。
●政府・与党の戦略変更
 委員会での採決も行えなかったことで、政府・与党は、戦略の変更を迫られた。野党側が、当初検討していた内閣委員長の解任決議案などを今後、提出すれば、そのたびに採決は遅れる。衆議院通過後の参議院での審議も考えると、6月17日までの今の国会の会期内に成立させることができるか、危機感を募らせていた。翌16日(土)の夜。菅官房長官と、自民党の森山国会対策委員長、林幹事長代理の3人が極秘に会談し、対応が話し合われた。その結果、国家公務員法改正案も含めた法案全体を継続審議にして、今の国会での成立を見送ることも選択肢に浮上する。翌日の17日(日)には、菅が安倍に会談内容を報告した。ただ、この時点では、菅らはあくまでも審議を進めていく姿勢を示し、野党側の対応を見極めながら、最終的に判断する考えだったという。この夜、朝日新聞の世論調査の結果が伝えられた。内閣支持率が前月の41%から33%に下落(本記事の発行時点ではさらに下がり29%)。検察庁法改正案に「賛成」は15%、「反対」は64%だった。
●「ジャンプしていい」
 こうした中、週明け18日(月)、事態は大きく動くことになる。この日の朝刊1面トップで読売新聞が「今国会成立を見送る案が政府・与党内で浮上」と報じた。「世論反発に配慮、近く最終判断」との小見出し。成立を目指してきた与党幹部の間では、「おかしな話だ」「寝耳に水だ」といった声が相次いだ。「見送れば、これまでの説明が間違っていたことになる。会期を延長してでも成立させるべきだ」といった意見まで聞かれた。一方で、週末に協議を重ねていた菅と森山、林は連絡を取り合い、対応の検討を急いだ。昼には、森山と林が二階幹事長とともに衆議院議長公邸を訪れ、大島議長とも面会した。6月に入ると、新型コロナウイルスの感染拡大で、追加の経済対策を盛り込んだ第2次補正予算案の審議が控えている。ある自民党の幹部は、「検察庁法の改正案で国会が止まり、何も進まなくなる」と述べるなど、野党や世論を押し切って、採決に踏み切れば、政権にとって打撃となりかねないと懸念する声が出ていた。そしてギリギリの調整を進めた結果、二階は「ジャンプ(見送り)していいんじゃないか」と述べたという。午後3時前、安倍と二階が総理大臣官邸で会談。国民の理解なしに国会審議を進めることは難しいとして、今の国会での成立を見送る方針で一致した。この日のニュース7で、NHKは15~17日に行った世論調査の結果を放送した。内閣支持率は37%、不支持が45%。不支持が支持を上回るのは、おととし6月以来だ。検察庁法改正案への賛否は、「賛成」が17%、「反対」が62%だった。ある自民党の幹部は、こう漏らした。「新型コロナウイルスの影響で地元に帰って有権者の声を十分に聞くことができず、世論を感じきれなかった」。新型コロナウイルスへの対応をめぐっても、10万円の一律給付に変更し、閣議決定した補正予算案を組み替えるなど、う余曲折する場面があった。自民党内からは、「安倍総理大臣の求心力に影響が出て、『安倍1強』とも言われた政治情勢が変化しかねない」といった声もあがった。
●黒川、辞職
 さらに驚くことが起きる。見送りの翌々日の20日。「文春オンライン」が、「東京高等検察庁の黒川検事長が、新型コロナウイルスの感染拡大で外出自粛の要請が続く中、今月、東京都内で、新聞記者と賭けマージャンをした疑いがある」と報じたのだ。与野党双方から一斉に「事実なら辞任すべきだ」という声が上がった。森が「文春オンライン」の記事が出ることを知ったのは、前日19日。一方、黒川氏が「文春」から確認取材を受けたのは17日で、その日のうちに黒川は法務省の事務方に報告している。2日間の空白があったことについて、森は、なぜすぐに報告してこなかったのだと法務省幹部を叱責したという。そして黒川は21日、緊急事態宣言中に賭けマージャンをしていたことを認め、辞表を提出した。立憲民主党の枝野代表は、強く批判した。「定年延長できないという従来の解釈を国民にも、国会にも説明なく、こそこそと脱法的に変えて黒川検事長を在職させた判断の責任が問われる」。「今後、東京高等検察庁の検事長を誰かに代えるなら、政府の『黒川氏は余人をもって代えがたい』という説明は何だったのかと思う」。野党側は、「辞職での幕引きは許されない」として、黒川氏の定年を延長した政府の責任を徹底して追及するなど、攻勢を強めている。これに対し安倍は、定年延長の手続きに瑕疵(かし)はないとする一方、「最終的には内閣で決定するので、総理大臣として当然、責任はある。批判は真摯に受け止めたい」と述べた。また、検察官も含めた国家公務員の定年を段階的に引き上げる法案について、「国民の理解なくして前に進めることはできない。社会的な状況は大変厳しく、法案を作った時と状況が違うという意見が自民党にもある」と述べ、取り扱いを再検討する考えを示した。与党内からは、「黒川の辞職で政権へのダメージは避けられない」という声や、「検察庁法の改正案も仕切り直しで、むしろハードルは上がった。この国会で通しておくべきだった」という声さえ聞かれる。
●苦しい答弁続く
 一方の法務省。定年延長を可能にする規定は、去年10月の段階では盛り込まれておらず、去年秋の臨時国会で法案が提出に至らなかったことから再検討し、追加された経緯がある。野党側は、「黒川検事長の定年延長を後付けで正当化するものだ」などと、この点を最も強く批判していた。法務省は、検察官の定年延長を可能とする解釈変更は黒川の定年延長を決める前の1月中旬に検討したため、法案とは直接的な関係はないとしているが、そのことを明確に示す資料などは国会に示さず、苦しい答弁にならざるを得ない状況だった。検察庁法の改正案の成立見送りが決まったあと、法務省内では、次の国会に備えて、定年延長を判断する際の基準作りに着手し、すでに複数の案を作成している。しかし、黒川の辞職や、法案の取り扱いの再検討などの動きを受け、ある幹部からは、「今の改正案では次の国会でも批判は避けられない。もう定年延長の規定はなくしてもいいのではないか」という声も出ている。
●今後は
 検察庁法の改正案は、継続審議として次の国会で成立を目指すのか。それともいったん廃案にして、内容を再検討するのか。与党側は、「現時点では、法案を継続審議とする方向だが、決まったわけでなく、国会の会期末に結論を出したい」としている。一方で、黒川の辞職をめぐっては、国会で野党側の追及が続き、黒川への「訓告」処分が「軽すぎる」という批判もあがっている。訓告処分にした決定過程をただす質問に、森は「検事長の監督者である検事総長に対し、法務省の意見として訓告が相当と考える旨を伝えた。その結果、検事総長から私に対し、検事総長としても訓告が相当であると判断するという連絡があった。訓告の処分内容を決定したのはあくまで法務省と検事総長だ」という答弁を繰り返している。複数の法務省関係者によると、黒川氏から辞表が提出される前日の20日、本人から辞意が伝えられ、法務省内で、大臣、副大臣に事務次官らで協議が行われた。この場で、事務次官が処分を訓告とする案を示したのに対し、森は「懲戒処分の戒告に当たるのではないか」と指摘したという。しかし協議の結果、過去の処分例などから、訓告よりも重い懲戒処分には当たらず、訓告が妥当だという結論に至った。協議に参加した幹部の1人は、「その時点では、本人が辞めるので、武士の情けではないが、懲戒免職と同じことだと思った」と振り返る。翌21日に「黒川辞職」を安倍に報告する際、森はこの協議の経緯と、最終的に自ら了解したことを説明したと、複数の政府関係者は話している。検事長を法律上、懲戒処分にできるのは、任命権者である内閣だけだ。もし報告を受けて「軽い」と判断すれば、法務省に再検討を指示することもできた。訓告処分の判断について安倍は「検事総長が事案の内容など諸般の事情を考慮して、適正に処分を行ったものと承知している」と述べるにとどまっている。野党側は、「処分を決めたのは誰なのか」、「官邸の関与はなかったのか」に狙いを定め、追及を強めている。さらに、賭けマージャンをめぐり、常習賭博などの疑いで黒川前検事長らを刑事告発する動きが相次ぎ、検察当局は、今後、詳しい経緯について捜査を進めるものとみられる。森は26日、裁判官や弁護士に加え、有識者も参加した新たな会議「法務・検察行政刷新会議」(仮称)を設け、検察に対する信頼回復を図るための方策を検討していく方針を明らかにした。今回の処分に世論は強く反発しており法務・検察当局、安倍内閣の信頼は大きく傷つくことになった。信頼を回復する道のりは険しいものになると言わざるをえない。(文中敬称略)

*18-2-2:https://www.tokyo-np.co.jp/article/14095 (東京新聞 2020年5月23日) <#ウォッチ 検察庁法改正案>公務員定年延長 廃案へ調整 政府、批判受け方針転換
 政府は二十二日、検察官を含む国家公務員の定年を六十五歳まで引き上げる一括法案を廃案にする方向で調整に入った。安倍晋三首相は二十二日の衆院厚生労働委員会で、法案を見直す考えを表明した。検察人事に対する政治介入との批判を受け、方針転換を迫られた。安倍政権は高齢者の就労を促し社会保障制度の担い手を増やす全世代型社会保障を看板政策に掲げており、野党は整合性の取れない対応を批判した。首相は衆院厚労委で「コロナショックで民間の給与水準の先行きが心配される中、公務員先行の定年延長が理解を得られるのか議論がある。もう一度ここで検討すべきではないか」と強調した。公明党の斉藤鉄夫幹事長も同日の記者会見で、一括法案に関し「見直すことに反対はしない」と同調した。首相が見直しの理由に挙げた新型コロナウイルス感染拡大による景気悪化は、一括法案が実質審議入りした八日には既に深刻化していた。政府・与党が先週まで衆院で採決を強行しようとしていた姿勢とは、説明のつじつまが合わない。三月末には、希望する人が七十歳まで働けるよう企業に努力義務を課すことを柱とした高年齢者雇用安定法などの改正法が成立。高齢者の就業を促す法整備が進んだばかりだった。このため、立憲民主党などの野党統一会派で無所属の小川淳也氏は、この日の衆院厚労委で「首相が生涯現役社会を掲げてきたのに政策に一貫性がない」と批判した。国家公務員の定年を巡る議論は、これまでも難航した経緯がある。二〇〇八年に成立した国家公務員制度改革基本法は、政府に定年引き上げを検討するよう定め、人事院は一八年、法改正を求める意見書を内閣と国会に提出した。これを受け、政府は一九年の通常国会で関連法案の提出を検討したが、同年春の統一地方選や七月の参院選を前に「公務員優遇」との世論の反発を懸念し見送った。

*18-3:https://www.chunichi.co.jp/article/64283 (中日新聞 2020年5月29日) 厚生年金、パート加入拡大 受け取り75歳開始可能に
 パートら非正規労働者への厚生年金の加入拡大を柱とした年金制度改革関連法が29日の参院本会議で、与党や立憲民主党などの賛成多数により可決、成立した。国民年金だけの人の受給額底上げと、保険料を払う制度の支え手増を図る。加入義務が生じる企業の規模要件を2022年10月に従業員101人以上、24年10月に51人以上に広げる。75歳からの年金の受け取り開始を可能にするなど高齢者就労を促す施策も盛り込んだ。厚生年金は、パートら短時間労働者は現在、従業員501人以上の企業で週20時間以上働くことなどが条件。企業規模の要件を2段階で引き下げる。

*18-4:https://www.jiji.com/jc/article?k=2020060100983&g=pol (時事 2020年6月1日) マイナンバーと全口座ひも付け「年内検討」 菅官房長官
 菅義偉官房長官は1日の記者会見で、マイナンバーと預貯金口座のひも付けに関し、「全ての口座をマイナンバーにひも付けすることについて、年内に関係省庁と検討することになっている」と語った。新型コロナウイルス感染拡大を受けた国民への10万円給付で混乱したことについては、「マイナンバーをさらに活用できれば、もっと迅速に給付できるとの指摘がある」と述べ、マイナンバー活用を促進すべきだと強調した。

<日本の検査数は、なぜ伸びないのか>
PS(2020年6月4日追加):*19-1のように、中国の湖北省政府衛生当局は、2020年6月2日、武漢市の殆どの住民(約990万人)に新型コロナのPCR検査を行い、そのうち300人に陽性反応が出たが全員無症状だったと発表した。検査は5月14日~6月1日の19日間に実施され、1日の検査件数は最大で147万件にも上り、日本とは規模感が全く異なるが、10人の検体を一度に検査機にかけると薄まって陽性判定が減るのではないかとも思われた。一方、なかなか増えない日本の検査数について、全国知事会が、早期に感染者を発見して一定期間隔離する「積極的感染拡大防止戦略への転換」に向け、PCR検査の実施件数や対象を広げる提言を含む「日本再生宣言」採択を行ったそうだ。
 また、経団連も6月2日に開いた総会で、*19-3のように、「今後1年間の活動方針は、新型コロナウイルス感染症の克服と、そのダメージを乗り越える経済成長の実現」と決めたそうだ。確かに、東京に一極集中しすぎたことにより、手洗いの水さえ(30秒ではなく)3秒程度しか出ない公共施設の多いことがコロナ禍で浮き彫りになり、人口が集中しすぎることの反省は必要不可欠だ。また、ITだけでなく、医療用機器・備品や治療薬・ワクチンなどの高付加価値製品への進出も、現在の日本の技術レベルなら容易であるため、外国依存から脱却しつつ積極的な製品づくりをすべきだと考える。
 なお、新型コロナの感染歴を調べるには抗体検査が有効で、*19-4のように、塩野義製薬が血液から10分で判定できる検査キットを発売したが、これは中国企業の製品だ。日本の方は、開発しても速やかに承認されない国であるため開発する企業がなく、その結果、特許権も得られずビッグチャンスを逸しており、中国製は性能が悪いなどと評論する資格などはない。従って、何故、日本はこうなるのかについて、徹底した原因分析と改善が必要だ。

*19-1:https://digital.asahi.com/articles/DA3S14499258.html (朝日新聞 2020年6月3日) 武漢全住民検査、300人に陽性反応 全員無症状 新型コロナ
 中国・湖北省政府の衛生当局は2日、世界で最初に新型コロナウイルスの感染が広がった武漢市で5月半ばから全住民に実施した「全員検査」の結果を発表した。体内のウイルスの有無を調べるPCR検査で約990万人を調べ、300人に陽性反応が出た。全員が無症状だったという。この300人の濃厚接触者の中に陽性者はおらず、当局は「感染の広がりは認められない」としている。発表によると、検査は5月14日~6月1日の19日間に実施された。陽性者の割合は0・003%で当局は「割合は極めて低い」とする一方、「疫学の観点からみれば、散発的な拡大の可能性がないとは言えない」とした。1月23日に都市封鎖された武漢では累計の感染者が発病者だけで5万人を超えた。4月8日に封鎖は解除されたが、その後も職場復帰などのためにPCR検査を受けた人の中から無症状の感染者の発覚が続き、5月に一つの団地で新たに6人の発病者が確認されたことを機に、市は「社会の中の恐怖を取り除く」として全員検査に踏み切った。当局は看護師や地域の診療所の医師らに訓練を受けさせて検査態勢を拡充。「社区」と呼ばれる網の目のように張り巡らされた町内会組織も動員して団地の庭や街角の広場、商業施設の駐車場など様々な場所に検査場が設けられた。検査場には早朝から夜まで列ができ、1日の検査件数は最大で147万件にも上った。速度を上げるため、10人の検体を一度に検査機にかけ、陽性が出れば10人全員を再検査するという方法をとった地域もある。

*19-2:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO59956860U0A600C2000000/ (日経新聞 2020/6/4) 全国知事会、「日本再生宣言」採択へ
 全国知事会は4日、テレビ会議システムで全国知事会議を開いた。新型コロナウイルスの感染予防と社会経済活動の両立を目指す「コロナを乗り越える日本再生宣言」を採択する予定だ。各都道府県の経験を共有し、医療体制を再構築するため、各地の感染事例を収集・分析する取り組みに着手する。今夏をめどに現行制度の改善に関する対策をまとめる方針。同日の知事会議には過去最多の45都道府県の知事がネット中継で参加。会議の冒頭、飯泉嘉門会長(徳島県知事)は「コロナと共生する新たな局面を迎えた。今後は第2波、第3波の感染拡大をいかに抑えるかがポイントだ」と述べた。今年の全国知事会議は滋賀県で開催予定だったが、新型コロナの感染拡大を受けて、全国の知事が集まる会議開催は難しいと判断。初めてウェブ会議で開催した。早期に感染者を発見し、囲い込む「積極的感染拡大防止戦略への転換」に向け、PCR検査の実施件数や対象を広げる提言をまとめる予定。地方の税財源の確保・充実に関する提言もまとめる。

*19-3:https://digital.asahi.com/articles/DA3S14499286.html (朝日新聞 2020年6月3日) 「コロナ克服と成長の実現を」 経団連が活動方針
 経団連は2日に開いた総会で、今後1年間の活動方針を「新型コロナウイルス感染症の克服と、そのダメージを乗り越えるような経済成長の実現」に決めた。中西宏明会長(日立製作所会長)は「特に雇用の維持には特段の配慮をし、みなさん(会員企業)と一緒に取り組んでいきたい」と呼びかけた。中西氏はさらに、「コロナ禍で東京一極集中に対する反省も強く出てきたと思う」と話し、「大規模な災害やパンデミックに強い国づくりという観点で取り組んでいきたい」と述べた。経団連は、感染対策と経済成長のカギになるのは、デジタル革新だとし、急速に広がったテレワーク(在宅勤務)やオンライン授業をさらに進め、行政や金融などの手続きもスマートフォンなどで簡単にできるようにすべきだと訴える。新任の副会長には、太田純・三井住友フィナンシャルグループ(FG)社長、佐藤康博・みずほFG会長、菰田正信・三井不動産社長、安永竜夫・三井物産社長が就いた。感染対策のため、都内の会場には中西会長と新たに選ばれた副会長らだけが集まり、他のメンバーはテレビ会議で参加した。

*19-4:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/530733 (佐賀新聞 2020.6.4) 塩野義が抗体検査キット 調査・研究向け
 塩野義製薬は3日、新型コロナウイルスの感染歴を調べる抗体検査キットを発売したと発表した。血液から10分で判定する中国企業の製品で、マイクロブラッドサイエンス(東京)を輸入元とする。感染の広がりを把握する疫学調査や研究に役立てる考えで、医療機関や自治体などに販売する。抗体検査は感染歴を調べる目的で、現在感染しているかどうかを調べるPCR検査や抗原検査とは異なる。塩野義は当初、PCR検査前の簡易検査への使用を視野に入れていたが、性能評価を踏まえて研究用途が適切と判断した。50回分入りで、希望小売価格は15万4千円。

<ファクターXは何だったのか?>
PS(2020.6.6追加):*20-1のように、東京大学先端科学技術研究センターの児玉名誉教授らのチームが、都内の一般医療機関で無作為に新型コロナの抗体検査を実施し、「①10~90代の500検体のうち3例が陽性(0.6%)だった」「②行った抗体検査は、鼻風邪コロナ4種には反応しない」「③加藤厚労相も都内と東北6県で採血された献血から無作為に抽出した各500検体のうち、東京3件(0.6%)・東北2件(0.4%)の陽性反応が出たと発表した」「④一般医療機関と非常に健康な人が行う献血の双方から0.6%という同じ結果が出たため、東京都の罹患率として0.6%という数字は信頼性が高い」「⑤従って、東京都の人口1398万人の0.6%に相当する約8万人が感染しており、東京都の確定感染者が5,070人なのでその16倍いることになる」「⑥集団免疫閾値60%と100倍もの差が出た理由は何か」「⑦新型コロナウイルスについての日本人の傾向は、IgGが先に反応が起きてIgMの反応が弱い」「⑧重症例ではIgMの立ち上がりが早く、IgMの反応が普通に起こる」「⑨軽くて済んだ人は、すでにさまざまなコロナウイルスの亜型にかかっており、東アジアの特に沿海側にそういう方が多そうだ」「⑩2002~03年のSARS(重症急性呼吸器症候群)の抗体は新型コロナウイルスにも反応する」「⑪SARSの流行以来、さまざまなコロナウイルス(SARS-X)が東アジアに流行した可能性がある」「⑫その結果、欧米に比べて東アジアの人は最初にIgGが出てくる免疫を持っており、IgMの反応がなくIgGの反応が出るらしい」等と述べておられる。これをまとめると、①③④⑤から、東京都では罹患率が0.6%で約8万人が感染し、感染者は検査による確定感染者の16倍いた。また、②⑦⑧⑨⑩から、⑪⑫のように、さまざまなコロナウイルス(SARS-X)が東アジアに流行し、欧米に比べて東アジアの人はコロナウイルスに対して最初にIgGが出てくるような後天的免疫を持っているので重症化したり死亡したりする人が少なく、⑥のように集団免疫閾値60%と100倍もの差が出たようで、これがファクターXの1つだろう。そのほか、社会的距離を置く日本文化・マスクの着用・新型コロナウイルスへの免疫耐性を与えるHLA(http://hla.or.jp/about/hla/参照)・BCG接種等による免疫強化もあるようだ。
 また、*20-2のように、京都大学の山中教授も、日本の対策が緩いのに感染者の広がりが世界の中でも遅い理由として、⑬徹底的なクラスター対応 ⑭高い衛生意識 ⑮ハグや握手などの接触が少ない生活文化 ⑯日本人の遺伝的要因 ⑰BCGをはじめとする公衆衛生政策 ⑱2020年1月までの何らかのウイルス感染の影響 ⑲ウイルスの遺伝子変異の影響などを挙げておられる。私は、罰則がなくても社会的縛りが強いのが日本の特性であるため、日本の対策が緩かったとは思わない。また、⑬については、クラスターに固執しすぎて市中での蔓延を見逃して早期発見できず、⑭⑮⑱⑲はそのとおりで、⑯については、もともと各種のコロナウイルスが多い地域で長期間生きてきた民族は、その種のウイルスに強い先天的遺伝形質を獲得している可能性が高いと思う。さらに、⑰については、BCGだけではないと思うが、40代で重症になった私のいとこは、小学校入学前はスペインで育った帰国子女であるため、1970年代後半の小学校入学前に日本で行われスペインでは行われなかった予防接種は受けていないのである(それは何?)。
 なお、⑲のウイルス変異は、日本に入ってくる時にウイルスが穏やかになることが多いが、それは毒性の強いウイルスは宿主に激しい症状を出すため検疫を通過することができず、また、⑮のように接触の少ない環境では生き残りにくいからだろう。
 このような中、*20-3のように、 麻生財務相が参院財政金融委員会で、「日本で新型コロナウイルス感染症による死者が欧米の主要国と比べて少ないのは、民度のレベルが違うから」と発言して論議を呼んでいるが、①教育が行きわたり外国人も少ないため、末端までコロナ対策の意味が理解できている ②その民度の高さは、新型コロナを憲法に緊急事態条項を加える口実とされないために頑張れるほどである という意味で、私も全体として民度が高いと思っている。そのため、麻生氏の答えの後、みんな何も言えずに絶句するのだと思う。

  
                 *20-1より

*20-1:https://news.yahoo.co.jp/byline/kimuramasato/20200520-00179344/ (YAHOO 2020/5/20) 「東京の感染者は8万人」抗体検査から推計 日本をコロナから守ったのはSARS-X?
●東京の抗体検査、陽性率は0.6%
 [ロンドン発]東京大学先端科学技術研究センターの児玉龍彦名誉教授(がん・代謝プロジェクトリーダー)らのチームが5月1、2の両日、都内の一般医療機関で無作為に新型コロナウイルスの抗体検査を実施した結果、10~90代の500検体のうち3例が陽性(0.6%)でした。 児玉氏によると、行った抗体検査は再現性も安定性も高く、鼻風邪コロナ4種には反応しないそうです。陽性例は20代、30代、50代のいずれも男性でした。 一方、加藤勝信厚生労働相も、4月に都内と東北6県で採血された献血の中から無作為に抽出した各500検体のうち東京で3件(0.6%)、東北で2件(0.4%)の陽性反応が出たと発表したばかりです。 政府は6月をメドに1万件規模で抗体検査を実施する計画です。これまで国内で最も感染者が多い東京都で感染がどれぐらい広がっているのかはっきりしませんでした。 児玉氏は「一般医療機関と非常に健康な人が行う献血の双方から0.6%という同じ結果が出た。0.6%という数字は一般的な東京都の罹患(りかん)率として信頼性が高いと考えられる」と強調しました。 東京都の人口1398万人の0.6%に相当する約8万人が感染しているということが一つの目安になるとの見方を児玉氏は示しました。東京都の感染者は5070人なので約16倍です。
●集団免疫閾値60%との大きな違い
 新型コロナウイルスの「基本再生産数(患者1人から二次感染する人数)」を2.5人で試算した場合、流行が終息する集団免疫閾値は60%と考えられています。 しかし日本で最も感染が広がった東京都でさえ、罹患率は0.6%、100倍もの差が出た理由は何でしょう。 児玉氏は記者会見で、今回の抗体検査とは別に東京大学先端科学技術研究センターがん・代謝プロジェクトとして次のような見方を示しました。児玉氏はB型肝炎の予防プロジェクトに参加したことがあるそうです。 「B型肝炎では抗体のうち、まずIgM(病原体に感染したとき最初につくられる抗体、ピンク色の点線)型が出てきて次にIgG(IgMがつくられた後に本格的につくられる。ピンク色の実線)型が出て回復に向かう」 「その後、中和抗体(紺色の実線)が出てくると二度とかからないという免疫ができる」 「劇症肝炎はウイルスが増えることではなく、ウイルスに対する免疫反応が過剰に起こってしまうことで起こる(サイトカインストーム)」と児玉氏は話しました。
●抗体の出方が違う
 「新型コロナウイルスについて精密に計測すると、IgM(ピンク色の点線)の反応が遅くて弱いという日本人における傾向が出てきた。これまでは先程のB型肝炎のように 先にIgMが出てきて次にIgG(ピンク色の実線)が出てくるというストーリーを説明してきた」 「実際に新型コロナウイルスに対する反応を見ますと、IgGが先に反応が起きてIgMの反応が弱いということが分かってきた」 「臨床機関で検討され、これから発表される結果を見てみると、重症例でIgM(赤い点線)の立ち上がりが早い。細い線で書かれている軽症例やその他の例ではIgMの反応が遅い。重症化している例ではIgMの反応が普通に起こる」
●SARS-X流行の仮説
 「軽くて済んでいるという人は、すでにさまざまなコロナウイルスの亜型にかかっている。そういう方が東アジアに多いのではないか。特に沿海側に流行っている可能性があるのではないか」 「そういう人たちの場合、IgMの反応がなくて、IgGの反応が出てくる。新型コロナウイルスも配列がどんどん進化している。2002~03年のSARS(重症急性呼吸器症候群)の抗体が新型コロナウイルスにも反応することが知られている」 「SARSの流行以来、実際にはさまざまなコロナウイルス(SARS-X)が東アジアに流行していた可能性があるのではないか」 「その結果として、欧米に比べて東アジアの感染が最初にIgGが出てくるような免疫を持っていた可能性があるのではないかということも考えられる」 「ただこれは学問的な仮説なので今後、新型コロナウイルスの反応を見ながら学問的な研究が進められる」と児玉氏は締めくくりました。
●新型コロナが日本で流行らない5つの仮説
 米エール大学の岩崎明子教授は「なぜ日本の新型コロナウイルスの症例はこんなに少ないのか」と題した論文で5つの仮説を挙げています。
 (1)もともと社会的に距離を置く日本文化。マスクの着用。
 (2)日本では毒性の強い新型コロナウイルスが流行する前に集団免疫を付与する穏やかな
   タイプの新型コロナウイルスにさらされた可能性。エビデンスはない。(筆者注:京都
   大学大学院医学研究科の上久保靖彦特定教授らの研究グループが唱えている)
 (3)気道における新型コロナウイルスのレセプターであるACE2の発現が日本人はいくらか
   少ない可能性。
 (4)日本人は新型コロナウイルスに対する免疫耐性を与える明確なHLA(ヒトの組織適合性
   抗原)を持っている。
 (5)BCG接種が免疫を訓練・強化している。
 岩崎教授はスーパースプレッダーによるクラスター(患者集団)の発生を抑え込んだのが大きいと指摘しています。これまでの予備検討ではわが国の新型コロナウイルスの感染者では、早期のIgM上昇が見られない患者が多く、一方IgGは感染2週目にはほぼ全員が上昇を示していたそうです。今後、抗体の大量測定によって診断と重症度判定、さらにSARS-Xの静かなる流行で日本人は新型コロナウイルスに対する免疫を前もって身につけていたかどうか研究が進められる予定です。

*20-2:https://news.yahoo.co.jp/articles/3d4fe34fa5d956e9bfe8767dbe01ca6f49c6b14b (ハフポスト日本版編集部 2020/5/29) ファクターXとは?山中伸弥教授がサイトで仮説立て話題に。大阪府の吉村知事も「あるのでは」と言及
 京都大学の山中伸弥教授が新型コロナウイルス感染症に関する情報を公開しているサイトに記載している『ファクターX』という言葉が、ネット上で注目を集めている。5月28日から29日にかけて、日本テレビやテレビ朝日など複数のテレビ局が朝の情報番組で取り上げられていた。一体、何を指す言葉なのだろうか。山中教授が公開しているサイトには「『ファクターX』を探せ」と題して、文章が綴られている。山中教授は、新型コロナウイルスへの感染対策について「日本の対策は世界の中でも緩い方に分類されます。しかし、感染者の広がりは世界の中でも遅いと思います。何故でしょうか?? たまたまスピードが遅いだけで、これから急速に感染が増大するのでしょうか?それとも、これまで感染拡大が遅かったのは、何か理由があるのでしょうか?」と投げかけた。その上で、「私は、何か理由があるはずと仮説し、それをファクターXと呼んでいます。ファクターXを明らかにできれば、今後の対策戦略に活かすことが出来るはずです」と感染拡大や死者の数が海外の他の国と比べて抑えられているとされる現状には何らかの要因があるとの見解を示し、それを「ファクターX」と名付けていると説明した。山中教授は「ファクターX」となる候補として、以下を挙げた。
 1)感染拡大の徹底的なクラスター対応の効果
 2)マスク着用や毎日の入浴などの高い衛生意識
 3)ハグや握手、大声での会話などが少ない生活文化
 4)日本人の遺伝的要因
 5)BCG接種など、何らかの公衆衛生政策の影響
 6)2020年1月までの、何らかのウイルス感染の影響
 7)ウイルスの遺伝子変異の影響
 山中教授が仮説として立てた「ファクターX」については、専門家も言及している。「京都大学 ウイルス・再生医科学研究所 附属感染症モデル研究センター」でウイルス共進化研究分野を主宰する宮沢孝幸氏は24日、Twitterで「山中教授も言っておられますが、ファクターXなるものがあるのかもしれません」と発信。宮沢氏は続けて、「だとしたら、欧米の基準に引っ張られるのではなく、国内の数字を一番に参考にして施策するべきではないでしょうか」とつづり、新型コロナウイルス対策において日本国内のデータを最も参考にして策を講じるべきとの考えを示していた。また、大阪府知事の吉村洋文氏は25日の囲み取材の際、新型コロナウイルス感染による死者数が日本は海外の他の国と比べて抑えられているとされることについて「ヨーロッパとは違う、何か、“ファクターX”があるのでは」と話していた。ネット上では、「ファクターXは何なのか。あるとしたら早く解明されてほしい」「文化や衛生面もやはり要因になっているのかな」など、様々な声があがっていた。

*20-3:https://digital.asahi.com/articles/DA3S14502063.html (朝日新聞 2020年6月5日) 麻生氏、死者少ないのは「民度が違う」 コロナ巡り自説
 麻生太郎財務相は4日の参院財政金融委員会で、日本で新型コロナウイルス感染症による死者が欧米の主要国と比べて少ないとしつつ、その理由として「民度のレベルが違う」から、との自説を披露した。生活や文化の程度を示す「民度」との表現を使い、日本の優位性を誇りたかったようだが、他の国をおとしめることになりかねない発言だ。罰則などを伴わない自粛を中心とする日本の感染拡大防止策について、自民党の中西健治氏が「自由という価値をこの危機にあたって守り続けている。高い評価を受けられるべきでは」と質問した。麻生氏は「憲法上の制約があったから、結果として最大限だった、という風に理解して、それでも効果があったというところがミソ」と答弁。米英仏の人口あたりの死者数を例に挙げながら、日本がそうした国より相対的に死者の比率が低いと強調した。さらに、他国の人から問い合わせを受けたとして、「そういった人には『お宅とうちの国とは国民の民度のレベルが違うんだ』と言って、みんな絶句して黙る」とのエピソードを紹介した。麻生氏の発言に野党議員からの批判が出ている。共産党の志位和夫委員長はツイッター上で「世界中で差別や分断でなく、連帯が大切といううねりが起こっているときに、平気でこういう発言をするとは」と指摘。立憲民主党の蓮舫副代表も「海外に発信されてほしくない」と投稿した。

| 経済・雇用::2018.12~ | 12:49 PM | comments (x) | trackback (x) |
2020.4.19~22 国の社会保障費削減とその他の予算の無駄遣い (2020年4月23、24、25、26、27、29、30日、5月1、2、3、4《図》、8、9、10日追加)
 
 2019.1.6毎日新聞  2018.12.21時事 2019.12.20朝日新聞 2020.4.10東京新聞  

(図の説明:1番左の図のように、日本の税収による歳入は毎年増える歳出よりも小さいため、国債残高は年毎に大きくなっている。左から2番目の図は、国の税収に占める税の種類だ。2020年度予算案は新型コロナ流行前に作成されたが、右から2番目の図のように、約103兆円であり、これに加えて、1番右の図のように、新型コロナによる経済対策を約108兆円行っている)

(1)2020年度予算は約103兆円で過去最大だった
 *1-1-1・*1-1-2のように、2020年度予算は過去最大の約103兆円で成立し、その中の予備費に新型コロナ対策の一部が入っている。

 一般会計の歳出総額は2019年度の101.5兆円より1.2%増の約103兆円と8年連続過去最大を更新し、新型コロナ対策にも予備費5000億円から緊急経済対策の一部に充てるそうだ。さらに、新型コロナに対応する経済対策のため、2020年度補正予算案の編成に着手し、その金額は(3)のように108兆円にもなるため、2020年度の予算は、合計211兆円になる。余程、金が余っているのだろう(皮肉)。

 そして、一般会計の歳出総額については、年金・医療・介護などの社会保障費が5.1%増えて約36兆円となったから全体を押し上げたと説明されている。しかし、年金・医療・介護の費用増加は高齢者割合の増加によってあらかじめ予測できていたため、発生主義で引当金を引き当てておくことが必要だったのであり、それをやっておかなかったのは、国(厚労省・財務省)の責任である。そのため、世代間対立を作って、その責任を社会保障の負担増・給付減として高齢者に押し付けているのは、契約違反であると同時に責任逃れも甚だしい。

 さらに、歳出の無駄遣いが多い割には、「教育費は高いのに、教育インフラは貧弱」という日本の状況は、毎年のように行われる景気対策で国から棚ぼた式に降ってくる金を当てにするような勉強不足でプライドのない国民を大量に作っているため、この悪循環を断ち切るには「教育内容の充実」や「教育環境の整備」が欠かせない。にもかかわらず、「社会保障費は、消費税で賄わなければならない」などという社会保障を人質にした根拠のない世界でも類を見ない消費税増税のずる賢い言い訳の真実性を確かめもせず、馬車馬よろしく足並みを揃えて財務省の政策宣伝をしてきたメディアの質も問われる。

 なお、歳出の財源となる税収は約63兆円と見込まれ、差額の148兆円は国債の増加で賄うそうだが、国債の返済は、①資源国のような国の税外収入獲得 ②資源や過去に作られた資産などの国の資産の有効活用 ③本物の無駄遣い排除 ④借りた当事者か一般国民による返済 によるほかにはないことを忘れてはならない。なお、国がお金を増刷してお金の価値を薄めるのは、全国民に知らないうちに負担させているため、④に入る。

(2)新型コロナの性格と緊急事態宣言
 安倍首相は、*1-3-1のように、新型コロナの世界的な拡大について「第3次世界大戦は核戦争になるだろうと考えていたが、このコロナウイルス拡大こそ第3次世界大戦だと認識している」語られたそうだ。私も、「第3次世界大戦は核戦争になるだろう」と考えていたが、このようなウイルスを使えば宣戦布告が不要で、責任者も不明にできるため、(人道には反するが)武器としては確かに便利だ。ぎょ

 そして、この新型コロナは、感染した当初は発症せずに次々と感染し、しばらくすると宿主を重篤にして死に至らしめるため、(高齢者・持病のある人・難民などの)健康弱者を殺すのによくできたウイルスだ。そして、新型コロナ蔓延後の厚労省の対応やメディアの報道を見ていると、もしかしたらアメリカの他の同盟国か日本がばら撒いたウイルスではないかと思うくらいで、社会保障費を削減したがっている日本の厚労省・財務省も、大いに動機がありそうだ。

 そのような状況の下、*1-3-2のように、安倍首相は4月7日、感染が急拡大している東京、神奈川、埼玉、千葉、大阪、兵庫、福岡の7都府県に、4月7日から5月6日までの緊急事態宣言を出されたが、何故かメディアにはそれより強い制限を望む声が多く、首相は、*1-3-3のように、4月16日に対象地域を全都道府県に拡大された。そのため、新たに対象となった地域の知事が法的根拠のある外出自粛要請をすることが可能となったが、私は、地域差があるので、これで十分だと考える。

 今回の新型コロナ感染騒動について私が異常だと思うのは、治療するために最大の努力を注がず、外出自粛や店舗閉鎖などの国民生活への制限ばかりを進めようとしていることだ。これによって、医療体制が逼迫しているという説明の下、トリアージを行って助ける命の選別を行い、国民経済への甚大な被害を緩和するためとして多大な補正予算を組むことも可能になった。

 さらに、新型コロナのクラスター追跡にかこつけて、国民を追跡するコロナ感染追跡アプリを解禁したが、これはいつでも情報を開示できる上、選挙妨害にも使えるため、偏った監視社会への入り口になることを忘れてはならない。日本国民は、それを望んでいるのか?

(3)緊急事態宣言による約108兆円の追加経済対策
 事業総額約108兆円という過去最大の経済対策が、*1-2-1のように閣議決定され、このうち政府が実際に支出する財政支出は約40兆円で、経済への打撃を抑え、雇用を維持する目的の現金給付や資金繰り対策がその柱だそうだ。

 そして、企業の資金繰り対策としては、*1-2-2のように、45兆円規模の政府系金融機関による無利子融資や減収企業に対する給付金を作った。また、外出自粛や休業要請で収入が激減して生活に困窮する人が増えているため、*1-2-3のように、家計向けの現金給付として一律10万円(3人家族なら合計30万円)を給付することになった。しかし、収入が激減していない人もいるため、一律10万円の給付を不要な人は請求しない選択ができる制度にした方がよい。

 また、政府は中小企業や個人事業主向けの資金繰り対策として「持続化給付金」と呼ぶ現金給付と減収世帯向けの「生活支援臨時給付金」に6兆円を投じて5月からの支給を目指し、このほか税金や社会保険料の支払いを原則1年猶予したり、民間金融機関が自治体の制度融資を使って実質無利子で融資する仕組みを設けたりもするそうだが、最終的に①誰に ②どういう理由で ③何をするのか ④手続きすべき人 ⑤その予算 を、わかりやすい一覧表にして欲しい。

 しかし、新型コロナへの効果が期待される抗インフルエンザ薬「アビガン」の備蓄や人工呼吸器、マスクの生産支援にも予算を付けたのはよいが、早期発見して早期治療を行えば他の経済対策はいらなくなるのに、ここで備蓄に重きを置くのはやはり不自然である。

(4)治療薬、汎用性ワクチンなど
 2018年にノーベル医学・生理学賞を受賞された本庶佑京都大学特別教授は、*1-4-1のように、新型コロナウイルスについて、①PCR検査の大幅増 ②東京圏、大阪圏、名古屋圏などでの完全外出自粛 ③外国で有効性が示された治療薬の早期導入 を提言しておられた。私も、②を始めとする予防も重要だが、①のように検査を大幅に増やし、③のように外国で有効性が示された治療薬は早期に導入すべきだと考える。

 そのような中、日本の厚労省は、怠慢で承認を遅らせたり、頭が固くて科学的根拠のない理由で承認しなかったりして、日本発の新薬も日本では実用化できず、優秀な研究者が日本を離れることを余儀なくされており、もったいないこと甚だしい。

 そして、*1-4-2に、④新型コロナ感染拡大が続く中、世界では治療薬開発が急ピッチで進む ⑤製薬会社は既存薬を転用することで開発期間を短くして早期の市場投入を目指す ⑥回復した患者の血液成分を使った治療法も試されている ⑦既存の医療技術・手法の掘り起こしも進む ⑧新型コロナの猛威を止めるには迅速な審査や承認を可能にする仕組みも欠かせないが、日本は「先駆け審査指定制度」を使っても、承認に最短6カ月程度かかる 等が記載されているのは、今更ながらの事実である。

 しかし、*1-4-3の「血漿療法」は、感染早期だけでなく重症になった患者にも効くものの、血液を提供した人の他の感染症が移るリスクとの比較秤量をすべきなのだ。

 なお、コロナウイルス自身が変異したり、人為的に変異させてバイオテロに使ったりする可能性もあるので、ワクチンは汎用性の高いものを作って欲しい。「BCG接種をしている国で新型コロナによる死亡者が少ない傾向がある」そうだが、BCG接種する国は、予防としていろいろなワクチンを投与する予防政策の進んだ国なのではないか? 例えば、日本なら、インフルエンザワクチンを投与していたり、65歳以上は肺炎球菌のワクチンを投与していたりするため、コロナウイルスへの抗体や肺炎を起こす他の細菌への抗体のある人が多いという具合である。

 米国では、*1-4-4のように、スタンフォード大の研究チームが、4月19日までに西部カリフォルニア州サンタクララ郡の住民を対象に新型コロナの抗体検査を行い、感染した人は4月初めに2.5~4.2%で、確認されている感染者の50~85倍に及んでいる可能性があり、この推計を基にした致死率は0.1~0.2%と算出したそうだ。また、その検査はドライブスルーの検査場を3カ所設けて4月3~4日に実施したため、検査を受けるには車も必要で、被験者には一定の偏りが生じ得るとしている。疫学調査は、このように真実を追及するために行い、母集団の偏りも認識しておくものだ。

(5)国民の暮らし
 新型コロナの蔓延が始まる前から、消費税増税・実質的な年金カット・社会保険料の負担増・物価上昇などで、高齢者を中心として暮らし向きは悪くなった。*2-1は、総務省の家計調査で、1世帯当たりの消費支出が昨年10月の消費税増税後、今年1月まで4カ月連続マイナスだったと記載している。

 私は、「経済活性化のために、消費すべきだ」という政策は人を幸福にしないが、国民が自らの福利を増加させるために消費することは必要だと考える。しかし、例えば美容院は、実質目減りした所得の中で、節約されやすい業種らしく、消費税増税後にぐっと客が減り、コロナ蔓延以降は客が途絶えた。が、なくなられては困る業種だ。

 そのため、*2-2のように、自民・公明両党の税制調査会が、2020年4月2日、新型コロナの影響を緩和する税負担軽減措置をまとめ、需要減に苦しむ中小・零細企業の納税猶予を決めたが、消費税減税については議論しなかったそうだ。ただし、この消費税減税案は、経済活性化のための時限措置として消費税を減税して消費と駆け込み需要を喚起するという詐欺のようなことを意図しており、国民生活を向上させることを意図しているわけではないため、将来の生活を考える国民がこれで需要を誘発されることはないと思われる。

 また、*2-3のように、2020年度の年金額は昨年度比0.2%のプラス改定となったが、消費税が2%上がり、それに応じて物価は2%以上あがったことから、実質目減りしている。この状況は、「マクロ経済スライド」と呼ばれる賃金や物価の変化から少子高齢化に伴う調整率を差し引いて改定率を決めるルールが作られたことによって起こっており、「マクロ経済スライド」の根拠に合理性はないが、何が何でも高齢者への給付を減らすことが目的で作られた制度だ。

 一方、高齢者の健康保険料・介護保険料は上昇が続き、2020年4月から働くシニアを対象とする雇用保険料の徴収もあるそうだ。しかし、親や配偶者に介護が必要となり、仕事を休んで従事する場合は「介護休業給付金」を受け取れるとのことである。

 このような中、*2-3のように、介護を家族で抱え込まずに社会全体で支え合うという理念で、(私が提案して)始まった介護保険制度が2020年4月で20年を迎えたが、未だに40歳以上の人しか介護保険制度に加入できない。しかし、この20年で社会の意識改革は進み、サービスの利用者は2000年は149万人だったが、2019年は487万人と3倍になっている。

 しかし、「介護保険の維持・存続について懸念する」と答える自治体は多く、問題点は、①介護現場の人手不足 ②費用の膨張 ③財源の確保 だそうだ。①の人手不足は、外国人労働者を入れて賃金を上げすぎないようにしないと、②のように費用は膨張するがサービスは減るという日本独特の行き詰まり産業になる。そうなると、③の財源確保にも嫌気のさす人が増える。

 つまり、これまでの国の見直しは、被介護者よりも介護制度を守ることを優先して「負担増」「サービス減」を繰り返し、当初は利用者の所得に関係なく1割だった自己負担割合を一定の収入がある人は2割とし、次に現役並みに所得が高い人は3割に引き上げたが、介護サービスの方は、特別養護老人ホームの新規入所者を要介護3以上に限定し、要支援1、2を対象者とした訪問介護・通所介護は全国一律の介護保険から切り離して市区町村の事業に移したものである。

 このため、「介護の社会化」を目指しているのに、高齢者が高齢者をケアする「老老介護」が広がり、介護疲れによる虐待や介護離職も増えているが、せっかく慣れてくれた外国人労働者は国に追い返しながら、「介護需要に人材確保が追いつかない」と言っているわけだ。

 ここで、*2-4のように、日経新聞は「会社員にズシリ、社会保険料30%時代、団塊世代が75歳に、迫る2022年危機」という見出しで、「医療・介護・年金の合計保険料が給与に占める比率が2022年度に労使合計で30%に迫り、人生100年時代のマイナス面も見えている」としている。つまり、社員が直接給与から支払うのは半分の15%だが、それでも親を養い家族介護していた時代より大変だと言っているのである。

 さらに、「介護保険制度の対象を全世代に広げ、介護保険料の支払いを平等にして保険料を引き下げよう」という記述はなく、「健保連は団塊の世代が75歳になり始める年を『2022年危機』と位置付け、現役世代の重い負担を見直すよう国に改革を求めた」としている。

 結論として、「高齢者は年金・医療・介護費の増加で現役世代の重荷になるから、人生100年時代バラ色ではない」と言い続けてきているのであり、このように利己的で冷たい主張の出所を考えれば、日本の国会議員・財務省・厚労省の中には、新型コロナウイルスを歓迎している人が多いように思われるわけである。

(6)社会保障財源と(本物の)無駄遣いの排除
1)資源で税外収入を稼ぐ

 
  2018.9.25エコノミスト    2019.4.22エコノミスト   2019.9.18Livedoor

(図の説明:左図のように、サウジアラビアは石油収入で歳入の約7割を賄い、残りの3割を非石油収入で賄っている。それには、中央の図のように、サウジアラビアの恵まれた油田があり、右図のように、現在は世界有数の原油生産量を誇っているが、「ビジョン2030」と呼ぶ将来を見据えた経済構造高度化構想も打ち出している)

 歳出の財源となる国の収入は、(1)に書いたように、①資源国のような国の税外収入獲得 ②資源や過去に作られた資産などの国の資産の有効活用 ③本物の無駄遣いの排除 ④税収 などがあり、国債は借金であるため、国がこれらの収入から返済するのが正道だ。

 このうち、①については、サウジアラビアを例にすると、*3-1-2のように、国営石油企業サウジアラムコから得る石油収入で歳入の約7割を賄い、残りの3割を非石油収入で賄っているが、所得税・法人税・消費税などの課税はない。しかし、地球環境維持のため世界が化石燃料の使用を控えていることで、ここ数年は原油価格の低迷や不安定な値動きが続き、ムハンマド皇太子は、2016年4月、石油依存の経済構造を脱却しようと「ビジョン2030」と呼ぶ経済構造高度化構想を打ち出した。

 そして、サウジアラムコは、油田開発・石油精製・石油化学を一貫操業する巨大企業となり、これまでフレアとして燃やしていたLNGも世界最大の輸出国となることを表明して、今後10年間でLNGに1500億ドルを投資するとして構造改革に取り組んでいる。私は、資源を金に換えて国民生活を豊かにしようと努力しているサウジアラビアは、世界一高い価格で資源を買い漁って国民に迷惑をかけている日本よりも、(民主主義の問題はあるものの)経済政策においてずっと賢くて偉いと思う。

2)豊富な再エネを使えない日本
 1)のように書くと、「日本は資源のない国だから・・」と100年1日の如き決まり文句の反論が出るが、欧州では、*3-1-1のように、太陽光発電の電力で水素を製造し、既存の天然ガスパイプラインで輸送して産業や発電に活用する大規模な「グリーン水素パイプライン計画」が始まろうとしており、これは、これまでパイプラインを建設してきた欧州で生き残るための工夫だそうだ。

 日本はパイプラインがないため、豊富な再エネを使って発電し、蓄電や送電線を使っての送電を行えば、全く有害物質を出さずに電力を資源にすることができる。にもかかわらず、日本の会社が、オーストラリアの褐炭をガス化して水素を作り、それを日本に運ぶサプライチェーンを作ろうとしたり、外国の再エネで作った水素をわざわざアンモニアにして日本に運んで発電に使う計画を立てたりしているのは、意味が分かっていない「馬鹿」としか言いようがない。そもそも、今後の日本は、何を売ってエネルギーを買うつもりなのか?

3)豊富な森林資源も利活用できない日本
 日本に豊富な森林資源を手入れして環境を護ろうと森林環境税を作っても、*3-2のように、それを山林・田畑・緑地帯・藻場などの緑地面積に応じて自治体に配分するのではなく、人口に応じて配分すれば、「緑地を増やして手入れしよう」ではなく「木を切って緑地を壊し、人口を増やそう」という動機づけになり、「森林整備」に使われる分は税収配分額の35%にしかならず、本末転倒だろう。つまり、管理している森林が少なく、CO₂を多く排出してO₂をあまり作らない大都市が、森林環境税を多く配分してもらう理由はないのである。

 また、終戦復興期・高度経済成長期に造林した森林が、*3-3のように、伐採期を迎えて稼ぎ時になり、民有林の伐採や植林を担う森林組合には、地球温暖化防止の観点からも期待が大きい。しかし、①森林組合員の高齢化が進み ②女性の登用も遅れており ③相続を機に所有者が把握できなくなる事例も相次ぎ ④組合活動も滞りがちだそうだ。

 しかし、林野庁が、森林所有者と同居していない複数の子を「推定相続人」として正組合員になる道を開くのは、森林の維持管理にむしろマイナスではないかと思う。何故なら、昔から「田を分ける者」を「田分者(たわけもの)」と言い、その理由は、所有権を細分化することにより生産性を下げるとともに、人数が増えることによって経営意思決定を遅くするからである。

 さらに、固定資産税は市区町村が課税しているため、山林に相続が生じた場合は相続者を特定して固定資産税の支払者を決めなければ、固定資産税を徴収できない。そのため、相続者の義務である登記の変更もせず、所有者が不明なまま固定資産税も払わずに打ち捨て、所有者が分からなくなってしまった森林を作るのは、市区町村の怠慢にすぎない。そのため、所有者が不明で連絡がつかず、固定資産税も払っていないような森林なら、一定期間を過ぎた後は市区町村が収容して公有林として利活用すればよいだろう。

4)国民の財産である国有財産の安価な払い下げ
 森友学園問題とは、2016年6月20日、安倍首相夫人が名誉校長となっていた「森友学園」に、財務省が大阪府豊中市の国有地を払い下げた際、土地の鑑定評価額は9億5,600万円だったのに、ゴミ撤去費用という名目で8億2,200万円を割り引き、1億3,400万円という極めて安い価格で売却した事件だ。

 野党は、「安倍首相夫人の知り合いだから1個人に国民の財産である国有財産を極めて安い価格で売却し、国民に損害を与えた」として、“えこひいき”とか“忖度”として来る日も来る日も長時間の追求を続け、安倍首相が「私や妻が関わっていれば、首相も国会議員も辞める」と言われたのだが、私は、あの言い方は本当に知らなかったのだと思った。

 もちろん、1個人や1法人に国有財産を安く払い下げたり無料で使わせたりするのは、他の国民に損害を与えるためよくない。しかし、これまで見てきたように、日本の行政府が、国有林の使用権や年金資産で購入したホテルなどの膨大な金額の国有財産を二束三文や無料で1個人や1法人に譲るのは、(残念ながら)よくあることだ。これが生じる理由は、国が国有財産を資産として認識し、国民の財産として管理し、それを増やしたり有効活用したりする発想を持っていないからで、これが本当の問題点であり論点なのである。

 それでは、何故、たった8億円(211兆円の1/263,750)の値引きだけが、予算委員会で長時間をとって追及されたのかと言えば、それは安倍首相を引きずりおろすための権力闘争だからだ。その権力闘争の中で、*3-4の近畿財務局の担当職員だった赤木俊夫さんが犠牲になられたわけだが、私は、政策に正面から反論するのではなく、権力闘争のためのゴシップづくりに専念するメディアや政治家は、民主主義社会の国民のためにならないため評価しない。

5)歳出の中の膨大な無駄遣い
 私も、*3-5のように、時代が代わって防衛ニーズも変化している中、もっと安価で効果的な代替案はいくつも考えられるため、強引な辺野古新基地建設は基地建設ありきの血税の無駄遣いだと思っている。そして、各地で琉球新報のように無駄遣いを1つ1つつぶしていけば、かなりの財源を捻出でき、本当に必要なことに使える筈だ。

・・参考資料・・
<国家予算>
*1-1-1:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO57307490X20C20A3MM8000/ (日経新聞 2020/3/27) 2020年度予算が成立 過去最大の102兆円 予備費、新型コロナ対策に
 2020年度予算が27日の参院本会議で可決、成立した。一般会計の歳出総額は19年度当初に比べ1.2%増の102兆6580億円で、8年連続で過去最大を更新した。新型コロナウイルスの感染拡大に対応するため、予備費として盛り込んだ5000億円から今後策定する緊急経済対策の財源を充てる。政府は20年度予算の成立を受け、新型コロナに対応する経済対策を盛り込んだ20年度補正予算案の編成に着手する。一般会計の歳出総額が100兆円を超えるのは2年連続。総額の35%を占める医療・年金などの社会保障費が5.1%増えて35兆8608億円となり全体を押し上げた。高齢化に伴う社会保障費の自然増のほか、19年10月の消費税増税の税収分を活用する教育無償化や低年金者の支援給付金などが加わった。新型コロナへの対応では既に策定した2回の緊急対応策の財源として19年度予算の予備費から約2800億円を使った。今後策定する経済対策にはまず20年度予算の予備費を充て、これから策定する20年度補正予算とあわせて財源とする。安倍晋三首相は参院本会議に先立つ27日の参院予算委員会の締めくくり質疑で、経済対策について「わが国経済への甚大な影響のマグニチュードに見合うだけの必要かつ十分な、強大な経済財政政策を講じていかねばならない」と述べた。

*1-1-2:https://www.jiji.com/jc/article?k=2019121301392&g=eco&utm_source=・・ (時事 2019年12月13日) 一般会計、102兆円台後半 税収63兆円台に―20年度予算案
 政府は13日、2020年度予算案の一般会計総額を102兆円台後半とする方向で調整に入った。19年度当初予算の101.5兆円を上回り、過去最大で、2年連続で100兆円を超える。財源となる税収は63兆円台となる見通しだ。社会保障費や防衛費がいずれも過去最高額となる見込みで、歳出総額を押し上げる。社会保障費では、高齢化に伴う医療・介護費の増加や、消費税増税に伴う幼児教育・保育の無償化に必要な経費の増加分が主な要因だ。防衛費も宇宙、サイバーなど新領域での対処能力強化で膨張する。

*1-2-1:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO57787830X00C20A4EE8000/?n_cid=SPTMG002 (日経新聞 2020/4/7) 108兆円経済対策、雇用維持に向け過去最大規模
 事業総額108.2兆円という過去最大の経済対策が7日、閣議決定された。政府が実際に支出する財政支出でも39.5兆円と過去最大だが、事業総額の規模の大きさがひときわ目立つ。現金給付や資金繰り対策が柱となる。経済の打撃を抑え、雇用を維持する目的で巨額の支出となった。6日夕に安倍晋三首相が表明する直前まで、明らかにされていた対策の規模は「リーマン危機後の対策を上回る規模」というもの。60兆円超が一つの目安だったため、100兆円を超える額が急に表明されたことに驚く向きも多かった。増えた分はどこから来たのか。新たに加わったのは、企業向けに打ち出された税や社会保険料の支払い猶予の26兆円分だ。2019年12月に打ち出された19年度補正予算の未執行分19.8兆円(財政支出ベースで9.8兆円)も加えられた。税や社会保険料は政府が肩代わりするわけではないため、原則1年の猶予期間が終われば企業が負担する必要がある。これまでにない措置だったため総額に加えられるか不明だったが、足元の企業の資金繰り支援に直接関わることから加算されることになった。売り上げが急減した企業でも雇用を維持できるように配慮した。19年度の補正予算ももともと消費増税による需要の落ち込みや東京五輪・パラリンピックに対応するものだ。緊急事態宣言が発令されたなかでどこまでが執行されるかは不透明だが、今後の経済を下支えするとの理由から合算された。もっとも、政府による財政支出の総額は新たに追加された分だけでも財政支出ベースで29.2兆円に上る。「かさ増し分」を差し引いても、過去の経済危機時より大型の財政措置がとられたことになる。財政支出の内訳をみると、雇用の維持や企業の事業継続に関わる部分は合計10.6兆円と大きな部分を占めた。具体的には中小企業や個人事業主向けの給付金2.3兆円や減収世帯向けの給付金4兆円だ。民間金融機関が自治体の制度融資を使って実質無利子の融資をする仕組みにも2.7兆円を付けた。新型コロナの感染拡大が長期化した場合にも、手を打った。感染症の対策予備費として1.5兆円を計上。今後急な支出が必要になった場合に備えた。企業向けには財政投融資を活用した日本政策投資銀行の「新型コロナリバイバル成長基盤強化ファンド(仮称)」を創設。企業に対して総額1000億円規模で出資できる仕組みも作った。課題はこうした緊急対策を緊急事態宣言が発令されたなかで迅速に執行できるかどうかだ。融資相談や給付金の窓口で発生している人手不足の問題を早期に解決し、足元で経済の底割れを回避するための手段を講じる必要がある。

*1-2-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200408&ng=DGKKZO57765930X00C20A4MM8000 (日経新聞 2020.4.8) 資金繰り支援45兆円 政府が緊急経済対策決定
 政府は7日夕の臨時閣議で、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う緊急経済対策を決定した。事業規模は過去最大の108兆円。このうち企業の資金繰り対策は45兆円規模となる。政府系金融機関による無利子融資や減収企業に対する給付金などで急速に深刻化する企業の財務基盤を支える。家計向け現金給付は月収減などの要件を満たした世帯に30万円を支給する。対策を盛り込んだ補正予算案は4月中の成立を目指す。2020年度本予算で対応する分を含めた財政支出の総額は39.5兆円でこちらも過去最大となる。このうち今回の補正予算に対応する16.8兆円を国債発行でまかなう。14.4兆円が赤字国債になる。資金繰り対策では中小企業や個人事業主向けの「持続化給付金」と呼ぶ現金給付や減収になった世帯向けの「生活支援臨時給付金」に合計6兆円を投じる。世帯向けは約1300万世帯分の予算を確保。政府は5月からの支給を目指すとしているが、手続きが煩雑で自治体によっては支給が夏ごろになる可能性もある。このほか税金や社会保険料の支払いを原則1年間猶予したり、民間金融機関が自治体の制度融資を使って実質無利子で融資する仕組みを設けたりする。制度融資を受け付ける自治体の窓口が人手不足に陥っていることなどに対応する。経済対策は新型コロナの感染防止を最優先に掲げた。需要が低迷を続けるなかでも企業や家計が破綻しないように手当てする一方、新型コロナへの効果が期待される抗インフルエンザ薬「アビガン」の備蓄や人工呼吸器、マスクの生産支援にも予算を付けた。新型コロナの感染拡大収束後は観光業などの需要喚起策に乗り出す。旅行商品やイベントのチケットを購入した人などにクーポン券などを出す。サプライチェーン(供給網)の再構築のために海外拠点を国内に回帰させる企業にも補助を出す。

*1-2-3:https://www.shinmai.co.jp/news/nagano/20200418/KP200417ETI090013000.php (信濃毎日新聞 2020.4.18) 一律10万円給付 国民目線欠いた責任重く
 政府、与党が新型コロナウイルスの感染拡大を受け、全国民に一律10万円を給付する検討を始めた。補正予算案に盛り込んでいた減収世帯対象の30万円の給付は取り下げる。安倍晋三首相はこれまで、一律給付には否定的な考えを示していた。閣議決定した予算案を組み替えるのは極めて異例である。コロナウイルスの感染拡大に伴う外出自粛や休業の要請で、収入が大幅に減少して生活に困窮する人たちが増えている。迅速に支援することが必要だ。それなのに政府の対応はスピード感に欠けている。政府内で現金給付案が浮上したのは3月中旬だ。現在の補正予算案が順調に成立したとしても、支給開始は5月になる予定だった。予算案の組み替えで、国会提出は1週間程度遅れる。成立は5月1日にずれ込む可能性がある。支給開始はさらに遅れる。減収世帯を対象にした30万円の給付は、要件が複雑で分かりにくい。世帯主を対象として、共働きが増えている実情にも配慮していなかった。対象は全世帯の2割にとどまり、不公平感から国民の批判が高まっていた。一律給付は野党などが当初から求めていた案だ。富裕層が対象になることや、給付総額が膨らむなどの問題もあるため、与党も一度は減収世帯対象で合意していた。それが一転したのは、支持者離れを懸念した公明党などが強硬に一律給付を主張したためだ。安倍首相はきのうの記者会見で「緊急事態宣言を行い、全国に広げていく中で、国民が乗り越えていくには一律給付が正しいと判断した」と唐突な方針変更の理由を述べ、判断の遅れを陳謝した。最初に緊急事態を宣言したのは補正予算案を閣議決定した7日だ。当初から感染拡大や外出自粛で国民生活が困難になることは分かっていたはずだ。状況を見誤って混乱し、後手に回った政府の責任は重い。一律給付で給付の総額は当初の約4兆円から12兆円超に膨れ上がる。財源は赤字国債が想定されている。補正予算案を組み替えるなら、終息後の消費喚起策など当面は必要ない項目を削除して、歳出抑制に努めるべきだ。麻生太郎財務相はきのうの会見で「要望される方、手を挙げる方に配る」との考えを示している。首相の一律給付の方針と異ならないか。これ以上の混乱は認められない。早急に調整して方針を決め、国民に説明する必要がある。

*1-3-1:https://digital.asahi.com/articles/DA3S14444769.html (朝日新聞 2020年4月17日) 首相、コロナ拡大を「第3次世界大戦」 面会した田原総一朗氏、明かす
 新型コロナウイルス感染症の世界的な拡大に伴う混乱について、安倍晋三首相が「第3次世界大戦」と表現していたことがわかった。首相と面会したジャーナリストの田原総一朗氏が14日、自身のブログで明らかにした。田原氏は10日に首相官邸を訪れ、首相と面会した。田原氏のブログによると、首相は「第3次世界大戦は核戦争になるであろうと考えていた。だがこのコロナウイルス拡大こそ、第3次世界大戦であると認識している」と語ったという。田原氏が、「緊急事態宣言はなぜ遅れたのか」と問うと、首相は財政への悪影響を理由に「ほとんどの閣僚が反対していた」と明らかにしたという。田原氏は、閣僚による財政悪化への懸念を「平時の発想」と指摘。首相がこうした「平時の発想」から、感染拡大を戦争ととらえる「戦時の発想」に転換したことで、宣言を出すに至ったと分析している。

*1-3-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200408&ng=DGKKZO57766680X00C20A4MM8000 (日経新聞 2020.4.8) 緊急事態宣言を発令 首相「接触8割減を」、東京など7都府県、経財相「地域追加も」 新型コロナ
 安倍晋三首相は7日、政府の新型コロナウイルス感染症対策本部で特別措置法に基づく緊急事態宣言(総合2面きょうのことば)を発令した。感染が急拡大している東京、神奈川、埼玉、千葉、大阪、兵庫、福岡の7都府県が対象で実施期間は7日から5月6日まで。宣言が出たことで7都府県の知事は外出自粛や営業休止を要請する法的な裏付けを得たが各知事の判断は揺れている。米欧では強制力がある外出禁止令を出す例がある。イタリアも罰金付きの外出制限を出したが感染者の増加が鈍化するまで時間がかかった。日本の外出自粛要請は強制力がないため住民の自発的な対応が不可欠になる。今回の宣言で感染爆発を防げるかは未知数だ。首相は7日夜、首相官邸で66分間、記者会見した。「もはや時間の猶予はないとの結論に至った」と説明した。「国民生活、国民経済に甚大な影響を及ぼす恐れがある。経済は戦後最大の危機に直面している」と強調した。いまのペースで感染拡大が続けば感染者が2週間後に1万人、1カ月後には8万人を超えるとの見通しを示した。「緊急事態を1カ月で脱出するには人と人との接触を7割、8割減らすことが前提だ」と協力を求めた。ホテルなどの協力を得て関東で1万室、関西で3千室を確保したと話した。感染拡大防止策を講じ、保育所や学童保育は規模を縮小して開くと説明した。地方には「重症化リスクが高い高齢者もたくさんいる」と指摘し、対象地域の都市部から地方への移動を控えたり、原則として自宅で仕事をしたりすることを呼びかけた。バーやナイトクラブ、カラオケ、ライブハウスへの出入りも自粛するよう訴えた。西村康稔経済財政・再生相は同日の国会答弁で対象地域は「必要があれば追加を考えたい」と語った。宣言の対象に入らなかった福井県の杉本達治知事は同日「緊急事態宣言直前の状況だ。医療体制は逼迫している」と訴えた。人の外出や往来を減らせなければ感染拡大が続き、宣言の対象地域の追加や期間延長が現実味を帯びる。発令を受け7都府県の知事は住民に外出自粛などを求める。知事は娯楽施設など人が集まる施設の使用を制限するよう求めたり、学校の休校を要請したりできる。強制力はないが、事業者が正当な理由なく応じなければ「要請」より強い「指示」を出して事業者の名前も出せる。発令後も鉄道やバスなど公共交通機関は運行を続ける。食料品や医薬品などの生活必需品を扱うスーパーマーケットやドラッグストアも営業する。最低限の生活を維持した上で人と人が接触する機会を減らす狙いだ。

*1-3-3:https://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2020041601001482.html (東京新聞 2020年4月16日) 安倍首相、全国に緊急事態宣言 7都府県から拡大、5月6日まで
 安倍晋三首相は16日、新型コロナウイルスの感染増加に対応する緊急事態宣言の対象地域を全都道府県に拡大した。7日に発令した東京、大阪など7都府県から対象地域を追加。新たに対象となった地域の知事は、法的根拠のある外出自粛要請が可能となった。期間は5月6日まで。感染拡大に歯止めをかけ、医療崩壊を防ぐには、大型連休中を含めた人の移動を全国一斉に抑える必要があると判断した。16日夜に効力が発生した。緊急事態宣言は改正特別措置法(新型コロナ特措法)に基づく私権制限を伴う措置。海外のような都市封鎖(ロックダウン)は想定していない。

*1-4-1:https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20200413-00000006-ykf-soci (夕刊フジ 2020.4.13) ノーベル賞・本庶氏、新型コロナ対策で緊急提言! 病態解明と治療薬につながる研究「100億円投入せよ」
 2018年にノーベル医学・生理学賞を受賞した本庶佑(ほんじょ・たすく)京都大学特別教授(78)が11日朝、日本テレビ系情報番組「ウェークアップ!ぷらす」に生出演し、新型コロナウイルス研究への「100億円」投入を訴えるなど、緊急提言した。「個人的には、一番厳しいやり方が効果がある。中途半端でダラダラやると長くなる。できれば、短期間でコントロールできるのが望ましい」。本庶氏は、人の動きへの規制について、こう語った。「医療崩壊」を防ぐために、「1カ月の完全外出自粛」も提言している。免疫とがん細胞と結びつけるタンパク質「PD-1」を発見し、がん免疫治療薬「オプジーボ」の開発につなげた、世界的な免疫療法の権威。新型コロナウイルスについても、以下のように主張している。(1)PCR検査の大幅増(2)東京圏、大阪圏、名古屋圏などで完全外出自粛(3)外国で有効性が示される治療薬の早期導入。本庶氏は「多くの人が不安に思っているのは死者が多いこと。死亡率は5%を超える。インフルエンザは0・1%。(新型コロナウイルスは)最後に免疫不全で、あっという間になくなってしまう」と指摘した。ワクチンや特効薬の開発が注目されるが、「このタイプのウイルスは、ワクチンができにくい。製薬企業も大規模投資はリターンがないので、尻込みする」といい、インフルエンザ治療薬「アビガン」や、8日に国内での臨床実験が開始された「トリシズマブ」の導入を提言した。最後に本庶氏は「(日本政府が)100億円を研究者に対する、病態解明と治療薬につながる研究に出していただければと信じている」と締めくくった。

*1-4-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200419&ng=DGKKZO58240640Y0A410C2MM8000 (日経新聞 2020.4.19) 新型コロナ治療薬 開発急ピッチ、世界で治験650件 有効性なお見極め
 新型コロナウイルス感染拡大が続くなか、世界で治療薬開発が急ピッチで進んでいる。製薬会社は既存薬を転用することで開発期間を短くし、早期の市場投入を目指す。回復した患者の血液成分を使った治療法も試されており、既存の医療技術・手法の掘り起こしも進む。新型コロナの猛威を止めるには、迅速な審査や承認を可能にする仕組みも欠かせない。新型コロナ治療薬の開発は待ったなしだ。米国の臨床試験登録データベースによると、18日時点、世界で650以上のコロナの治験が登録されている。治療薬、ワクチンや再生医療など様々な研究が進む。17日の米株式市場で、米医薬大手ギリアド・サイエンシズの株価が約10%急騰した。ギリアドのエボラ出血熱の治療薬候補だった「レムデシビル」が新型コロナ重症患者の回復につながったとのリポート内容が伝わったためだ。レムデシビルはエボラの治療薬として有効性が低いとして開発が中断された薬だ。富士フイルムホールディングスの「アビガン」も別の病気の治療薬として開発された。いずれも新型コロナウイルスが体内で増殖するのを防ぐ効果があると報告されている。ギリアドは5月にもレムデシビルの初期治験データを得られるとしている。有効性が確認できれば米食品医薬品局(FDA)に対して承認を申請し、早ければ夏にかけて米国の医療現場で使える可能性がある。一方、アビガンは日米で治験を開始。最短で6月末までに治験を終え、早くて年内にも市場に出てくるとの観測がある。新型コロナ特有の症状が、重症の肺炎だ。その肺炎重症化を抑制する効果があるとされるのがリウマチ治療薬だ。スイス・ロシュの「アクテムラ」や仏サノフィなどの「ケブザラ」がそのリウマチ新薬だ。アクテムラは4月から治験をスタート。9月までに治験終了を見込んでおり、米国で今秋の承認を目指し動いている。ケブザラは2021年3月に治験終了を見込み、承認はその1~2カ月後になるとの観測がある。新型コロナ治療では既存の治療法も応用されている。コロナから回復した患者の血液を使う「血漿(けっしょう)」を投与する治療法だ。国内では国立国際医療研究センターが早ければ4月中にも試験的な治療を試みる方針だ。回復者の血漿の成分を活用した「血漿分画製剤」では、武田薬品工業が米CSLベーリングと組み開発を進める。年内の実用化を目指している。世界の製薬会社や研究所が新型コロナ治療薬開発に既存の薬や技術を応用するのは、有効性が確認されればすぐに医療現場で使えるようになるからだ。新薬をゼロから開発し、実用化するには10年近くかかる。既存薬は安全性確認など時間のかかる作業が終わっているため、短期間で薬として使える可能性がある。現在、既存薬で新型コロナ薬として期待されているのは十数種類。治験で有効性が確認できれば、各国の規制当局への承認申請に進む。「治療薬承認に向けあるゆる障壁を取り除く」。米トランプ大統領が新型コロナ薬の早期承認を公言しており、有効性が確認された薬があれば1カ月程度で承認される可能性がある。欧州や英国でも規制当局が新型コロナ治験支援や条件付きでの迅速承認を準備している。一方、日本は承認審査スピードを速める「先駆け審査指定制度」(総合2面きょうのことば)があるが最短で6カ月程度だ。日本は薬価が決まるのにも1~2カ月かかり、海外に比べ時間がかかる。18日には国内で新型コロナ感染者が1万人を超えた。世界でコロナ感染者は200万人、死者は15万人に達する。治療薬への期待は過熱気味で、米国立アレルギー・感染症研究所のファウチ所長は「(薬の効果は)科学的に有効性を証明しなければいけない。間違った希望は持たないでほしい」と呼びかける。有効性を見極めつつ、副作用リスクや供給能力を慎重に判断する必要性もある。

*1-4-3:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200419&ng=DGKKZO58237600Y0A410C2EA5000 (日経新聞 2020.4.19) 血漿療法、月内にも試験 新型コロナ治療へ国内で
 新型コロナに対する治療法は、既存薬の転用だけではない。コロナから回復した患者の血液を使う「血漿(けっしょう)療法」という治療法もある。国内でも早ければ4月中にも試験的な投与が始まる。血漿は血液から赤血球や白血球などを取り除いた成分のことで、「アルブミン」や「グロブリン(抗体)」といったたんぱく質が含まれる。このうちグロブリンには様々な性質があり、血漿から分離し精製することで免疫不全の治療や重度の感染症治療に使える医薬品となる。実はこの仕組みは日本の近代医学の父、北里柴三郎博士が世界で初めて確立した。今回の新型コロナでは、回復した人の血液の中にはコロナを排除する免疫(抗体)が存在するケースがある。この成分を重症患者に投与すれば体内のウイルスを排除するのに役立つことが期待される。中国でも重症患者に対する血漿療法で回復した人がいるとする報告が出ており、米食品医薬品局(FDA)も血漿投与を認め、カナダでも大規模な臨床研究が始まった。日本でも国立国際医療研究センターが早ければ4月中にも試験的な治療を試みる方針だ。回復者の血液を使った血漿製剤で製薬企業も動き始めた。先頭を走るのは血漿分画製剤の世界大手、武田薬品工業だ。血漿療法には別の感染症にかかるといったリスクもあり、副作用や合併症の危険性もある。聖路加国際病院救急部の一二三亨副医長は「治療法がない感染症にも応用でき、理論的には感染早期に投与すると高い効果が期待できる」と話す。

<暮らし>
*2-1:https://www.nishinippon.co.jp/item/n/596450/ (西日本新聞 2020/3/31) 暮らし向き4年ぶりマイナス域
 総務省の家計調査によると、1世帯当たりの消費支出は昨年10月の消費税増税後、今年1月まで4カ月連続マイナスと低迷している。今回、福岡の生活者の暮らし向きについて調査した結果、1年前より暮らし向きが「良くなった」「どちらかというと良くなった」の割合から、「悪くなった」「どちらかというと悪くなった」の割合を減じた「暮らし向き判断指数」は、昨年から5・7ポイント低下のマイナス2・0ポイントとなり、2015年以来のマイナス域を記録。福岡でも増税後の消費マインド低下がうかがえる結果となった。

*2-2:https://www.jiji.com/jc/article?k=2020040201087&g=eco (時事 2020年4月3日) コロナ対策、消費減税を一蹴 冷え込む需要、さらに混乱―与党税調
 自民、公明両党の税制調査会は2日、新型コロナウイルスの影響を緩和する税負担軽減措置をまとめた。需要減に苦しむ中小・零細企業の納税猶予を打ち出す一方で、与野党を問わず多くの議員が訴えていた消費税減税は見送られた。コロナの影響が色濃い消費の喚起へ「税率ゼロ」の主張もあったが、国民の混乱を招くとの懸念が強く、与党税調として消費減税は「まったく議論しなかった」(幹部)と一蹴した。自民党の若手有志は3月30日、政府が検討している大型経済対策に消費税減税を盛り込むよう要望。趣旨に賛同した党内議員は100人を超えたといい、各地で顕在化した飲食や宿泊などの需要急減に強い危機感を唱えた。経済対策に反映させるため、政府が3月中下旬に集中開催した民間ヒアリングでも「経済を活性化させるためなら、消費減税の効果が大きい」(外食大手首脳)との声が上がった。コロナ禍で人、モノ、カネの移動が大幅に制約される「緊急事態宣言」が俎上(そじょう)に載るなど景気の先行きに暗雲が漂う。時限措置として思い切った減税による消費喚起と駆け込み需要の誘発効果も取り沙汰されたが、雲散霧消した。前回2014年4月に消費税率8%へ引き上げた際には大幅な需要変動が起きた。昨年10月の消費税増税では回避しようと、政府・与党が飲食料品の軽減税率やキャッシュレス決済時のポイント還元制度などに巨費投入を決めた経緯もある。今回の与党税調でも、ただでさえ需要が冷え込む中、「短期間での税率変更はかえって国民が混乱する」との認識が支配した。財務省は現行税率10%への引き上げを2度延期した安倍政権に「相当身構えた」(幹部)が杞憂(きゆう)に終わった。

*2-3:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO57305810X20C20A3PPE000/ (日経新聞 2020/3/29) 年金、新年度「実質目減り」 介護保険料は大幅増も
 もうすぐ4月。新年度入りに伴って、シニアが受け取る公的年金の金額や現役世代らが納める社会保険料などが切り替わる。これらの改定は、世帯収入の増減やそれを踏まえた消費動向にも影響してくる。いつどうなるかを知り、家計の運営に生かしたい。まずは年金から。2020年度の年金額は昨年度比0.2%のプラス改定となった。自営業者らが加入する国民年金(満額)は月6万5141円と133円増え、主に会社員だった人が受け取る厚生年金(夫婦2人分の標準額)は同22万724円と458円増える。2年連続のプラスだが、増える金額はわずかだ。
■物価ほど増えず
 昨秋に消費税が2%上がったことを考えれば、0.2%の増額はいかにも少ない。なぜなら、改定の際の2つのルールで増加率が削られ、物価ほど増えない「実質目減り」が続くからだ(図A)。1つは賃金や物価の変化に応じて本来の改定率を決める基本ルール、そしてそこから少子高齢化に伴う調整率を差し引く「マクロ経済スライド」だ。基本ルールでは、新たに年金をもらい始める人は賃金、いったんもらい始めたらその後は物価に連動するのが原則だが、04年からもらい始めた人も経済環境によっては賃金に合わせるようになった。これによって本来の改定率は物価より小さくなる場合が増えた。状況によってはさらにスライド率が差し引かれ、年金の伸びが抑えられる。20年度は物価が0.5%上がったが、賃金は0.3%だった。基本ルールに沿って本来の改定率は賃金の0.3%となった。さらにスライド率の0.1%が引かれ、最終的な改定率は0.2%になった。日本年金機構は年金受給者に対し、6月に新しい年金額の通知書を送付する。2カ月分まとめて払うので、4、5月分が6月15日に振り込まれる予定。今後「年金は物価ほど増えないことを頭に入れておきたい」(ニッセイ基礎研究所の中嶋邦夫主任研究員)。現役世代が納める保険料はどうか。厚生年金の保険料は17年9月から、給与水準(標準報酬月額)に対する比率が18.3%(労使合計)で固定された。このため保険料は増えないと思っている会社員もいるようだが固定されたのはあくまで料率。これに報酬を掛けて計算する保険料は昇給すれば増える場合がある。また、今年9月には標準報酬月額の上限が改定される見通し。月収など実際の報酬が63.5万円以上あると標準報酬月額の等級が上がり、保険料負担が企業、本人それぞれで年3.3万円増える(図B)。保険料の負担を減らすには、計算の際に用いるこの標準報酬月額の等級を下げればよいのだが、「会社員に名案はなかなか見当たらない」と社会保険労務士の永山悦子氏は話す。よく言われるのが、残業を調整して4~6月の給料を減らすこと。通常はこの3カ月の平均の報酬で標準報酬月額を出し、9月から1年間適用する。だが、実際には会社員が残業をコントロールして等級を下げるのは難しい。近年は働き方改革で残業も減っている。交通費も標準報酬月額に含まれるので、会社の近くに引っ越せば下がるという人もいるが、家賃などの出費が増えたら逆効果だ。自営業者らが払う国民年金保険料は130円増えて1万6540円となる。
■雇用保険でも徴収
 健康保険料と介護保険料は上昇が続いている。介護では給料など報酬額に比例して保険料が決まる「総報酬割」を4年かけて段階的に増やしており、最終年度の20年度は全面導入となる(図C)。報酬が高い人が多くいる健保組合の負担が増え、料率が大きく上がるところも出てくる。健保と介護は料率改定が3月(実際の保険料に反映されるのは4月の給料からが多い)で、標準報酬月額は9月(同10月)となる。このため「春は料率、秋は標準報酬月額の改定によって、年2回保険料が変わる場合がある」と社会保険労務士の篠原宏治氏は話す。4月から変わる制度では働くシニアを対象とする雇用保険料の徴収がある。雇用保険は失業した際の生活を保障する制度(図D)。17年から65歳以上の社員も条件を満たせば適用対象になったが、これまで保険料は免除されていた。被保険者の負担は0.3%(一般の事業)で、月額では数百円程度という人が多そうだ。標準報酬月額ではなく、給料から天引きされるので保険料の金額は毎月変わる。以前は一度しかもらえなかった「高年齢求職者給付金」は、失業を繰り返したとしても求職活動をするたびに受け取れるようになっている。「65歳未満は雇用保険から失業給付などを受けると特別支給の老齢厚生年金が支給停止になったが、65歳以上はこの給付金をもらっても年金額に影響はない」(永山氏)という。親や配偶者に介護が必要になり、仕事を休んで従事する場合は「介護休業給付金」を受け取れることも知っておきたい。

*2-3:https://www.kochinews.co.jp/article/358500/ (高知新聞社説 2020.4.4) 【介護保険20年】持続可能性が問われる
 介護を家族で抱え込まず、社会全体で支え合う―。そんな理念で始まった介護保険制度が、4月で20年を迎えた。「介護の社会化」は40歳以上の人が支払う保険料と税金、利用者の自己負担で賄う制度だ。介護の必要度合いを軽い方から「要支援1、2」「要介護1~5」と7段階に分類。訪問介護や通所介護(デイサービス)など、在宅や施設への入所といった多様なサービスを選べるようになった。この20年で社会の意識改革が進み、サービス利用者は2000年の149万人から19年は487万人と3倍になった。制度は定着したといえるだろう。その一方で、世界有数のスピードで進む高齢化は、介護現場の人手不足などさまざまなほころびを見せ始めた。制度の持続可能性に黄信号が点滅している。共同通信が3月、都道府県庁所在地と政令市の計52自治体に実施したアンケートによると、回答があった50自治体のうち、介護保険の維持、存続について1自治体を除いて全てが「懸念する」と答えた。制度の問題点を聞いた設問では、介護現場の人手不足、費用の膨張、財源の確保の順で多かった。人手不足の中でもヘルパー不足は深刻な状況に陥っている。一般的に介護職員は、重労働の割には賃金が安いといわれる。2月公表の政府資料では、全産業平均に比べて月額9万円程度低い。新規採用が難しい上に、離職率も高い。政府はおおむね3年に1度、制度を見直してきた。段階的に賃金の引き上げを実施してきたが、焼け石に水の状態だ。自治体アンケートでは賃上げの財源として国の税金を増やすべきだとの意見が目立った。これまでの国の見直しは、制度を守ることを優先するあまり、「負担増」と「サービスの縮小」の繰り返しに終わってきた。当初は利用者の所得に関係なく1割だった自己負担割合を、一定の収入のある人は2割とし、次には現役並みに所得が高い人は3割に引き上げた。サービスの面では、特別養護老人ホーム(特養)の新規入所者を原則、要介護3以上に限定。また、要支援1、2を対象者とした訪問介護と通所介護は、全国一律の介護保険から切り離し、市区町村の事業に移した。「介護の社会化」を目指しながら、高齢者が高齢者をケアする「老老介護」も広がっている。介護疲れから虐待に発展する事件や、介護を理由にした離職も増えている。介護需要に人材確保が追いつかない。高齢の夫婦のみの世帯も増えている。介護する人への支援を強化するには、自治体が要望する国の税金投入も考えるべきだ。小手先の改革を繰り返しても、サービスが低下しては本末転倒だろう。制度開始の原点に立ち戻り、持続可能性を高める道を探りたい。

*2-4:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO57061100R20C20A3K15200/ (日経新聞 2020/3/22) 会社員にズシリ 社会保険料30%時代、団塊世代が75歳に 迫る「2022年危機」
 医療・介護・年金の合計保険料が給与に占める比率が30%に迫っている。改めて聞くと負担の大きさに驚く会社員も多いだろう。三大社会保険料はなぜこんなに上がっているのか。中身を知ると「人生100年」のマイナス面も見えてくる。
■労使合計 社会保険料が急上昇
 健康保険組合連合会(健保連)は昨年まとめた「今、必要な医療保険の重点施策」の中で1つの推計を示した。大企業の会社員らが負担する医療・介護・年金の三大社会保険料は2022年度に合計額が給与水準(標準報酬)の30%を超える。これは労使を合計した平均値で、社員が直接給与から払うのは半分ほどだが、それでも大きな負担だ。健保連は団塊の世代が75歳になり始めるこの年を「2022年危機」と位置付け、現役世代の重い負担を見直すよう国に改革を求めた。「全組合の平均が30%に乗るというのは負担増が伝わりやすい数字。現役世代に自分たちの負担を知ってほしいし、高齢者にも知ってほしい。そしてみんなでどうしたらよいか考える必要がある」と健保連の田河慶太理事は話す。一般に会社員は社会保険料などが天引きされたあとの手取りの給料に目が向かいがち。「保険料の負担増加に気付きにくく、しっかり訴えた方がよいと考えた」と続けた。健保連の試算では、全国約1400の健保組合の平均の医療の保険料率は22年度に9.8%となり、19年度比で約0.6ポイント増える。介護は同2.0%と同0.4ポイント増加する。これに厚生年金(18.3%)を加えると30.1%となる。組合によってはすでに30%に乗っているところもある。中小企業の会社員が入る全国健康保険協会(協会けんぽ)では19年度で平均が30%を超えている。原因は高齢化に伴う医療・介護費の増加と、アンバランスな負担の構造にある。年間の医療費は42.6兆円、介護費は10.2兆円(ともに18年度)に上り、年々増え続けている。特に大きいのが、より多くの医療・介護を必要とする75歳以上の後期高齢者の増加だ。この世代は年金以外の収入が少なく、医療・介護の多くを国と現役世代が賄う仕組みになっている。医療ではこれら高齢者への拠出金が膨らみ、介護では費用の約4分の1を現役世代が負担している。人生100年時代に向けて、国は高齢者らも活躍できる社会づくりを掲げるが、社会保険料の面から考えるとバラ色とはいえない。医療・介護費の増加は続き、負担に歯止めが掛かりそうもないからだ。年金には「マクロ経済スライド」という給付を抑制する仕組みがあるが、医療や介護にはない。健保連の推計では三大保険料の合計は25年度には31%に上がる。国が18年に公表した「2040年を見据えた社会保障の将来見通し」では、健保組合の医療・介護の1人当たりの保険料率は、医療が最大で11.2%、介護が2.6%(計画ベース)となる。仮に年金が18.3%のままなら、保険料の合計は最大で32%台に上がることになる。

<財源と無駄遣い>
*3-1-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200405&ng=DGKKZO57629330T00C20A4TM3000 (日経新聞 2020.4.5) 欧州でグリーン水素パイプライン計画
 太陽光発電の電力で水素を製造して既存の天然ガスパイプラインで輸送、産業や発電に活用する大規模な「グリーン水素パイプライン計画」が欧州で始まろうとしている。2050年までに脱炭素を目指す欧州連合(EU)の長期目標に沿う。計画のまとめ役を担う仏ソラドベント社(本社パリ)の創業者、ティエリー・ルペック氏に計画の内容や背景を聞いた。
――どのような計画ですか。
 天然ガスパイプラインを管理・運営するガスTSO(系統運用者)からの依頼で、競争力のあるグリーン水素の生産、輸送、消費の大規模な企業コンソーシアムを結成している。スペインに60万キロワット級の電解工場を建て、太陽光発電の電力で水素を製造する。これをTSOが保有する既存のパイプラインで消費地に運ぶ。ユーザーは化学や肥料、鉄鋼などの工場、発電所、工業用熱生産だ。天然ガスと石炭を代替する」「最初のプラントはいずれ100万キロワット級に拡張する計画だ。重要なのは液化天然ガス(LNG)に対抗できる競争力を持てるかだ。そのために早期の大規模化を狙う。50年までに100万Btu(Btuは英国熱量単位)あたり7.5ドルを目指す。スペインに続いて、欧州とパイプラインがつながるアルジェリアやチュニジアでの太陽光発電による水素製造を視野に入れている」
――なぜまずスペインなのか。
 「スペインは固定価格買い取り制度(FIT)で太陽光発電が急増した後、制度廃止などで停滞していた。しかし太陽光発電のコストが十分に下がったため再び建設ブームが始まっている。問題は電力網が満杯で発電事業者に系統接続の権利があっても容易につなげない。余裕のある電力で水素をつくることで太陽光発電の変動性を解消し電力系統の安定運用に資する」
――天然ガスパイプラインに水素を流すにはパイプラインの改修が必要になるのでは。
 「送ガス網への設備投資については、この1年でTSO自身の認識に大きな変化があった。既存の設備で天然ガスとのブレンドでも100%水素でも輸送可能だと姿勢を変えた。コンプレッサーなど一部設備は改修が必要だが、パイプラインを作り直す必要はない」
――見方が変わったのはなぜ。
 「生き残りだ。欧州は脱炭素に向けて動いている。TSOはガスの生産と消費を結ぶ『中流』の事業だが、天然ガスの供給も消費も減っていく。パイプラインが座礁資産になる。グリーン水素の輸送を担い資産価値を復活させ、雇用も維持したいと経営者たちは考えた。グリーンなエネルギーを望む顧客が増え、その要望に応えることが生き残るために不可欠だと判断したのだ」
――コンソーシアムに参加する企業は。
 「スペインのエナガス、イタリアのスナム、フランスのGRTガスとテレガ、ドイツのOGE、ベルギーのフラクシス、オランダのガスユニなどのTSOが中心だ。これらのTSOは『ガス・フォー・クライメット』という団体を組織している。ほかに電解装置のメーカーや太陽光発電のデベロッパーなどが参画する。欧州投資銀行(EIB)やほかの投資銀行、投資家からも私たちの計画は支持されている」
――脱炭素を掲げるEUの取り組みは非常に野心的だが、達成可能か。
 「達成できなければ私たちは非常に困った状況に陥る。前向きに考え、どう達成するかという問いを発すべきだ。欧州の目標が野心的に過ぎ、達成できなかったことは過去にもある。目標や規制は大事だが、起業家や投資家が動かなければ脱炭素は困難だ。世界最大規模の機関投資家であるノルウェー政府年金基金はエナガスの大株主だが、グリーン水素に強い関心をもつ。いま投資家が動き始めている」
#   #   #
 ルペックさんに会うのは2年ぶり。以前にインタビューしたときは仏大手電力エンジーの副社長だった。グリーン水素のためベンチャーに転じた。グリーン水素のプロジェクトは日本でもいくつかある。川崎重工業はオーストラリアの褐炭ガス化でもたらされる水素を日本に運ぶサプライチェーンを構想、液化水素タンカーを建造している。東京ガスは自然エネルギーの電力でつくった水素をアンモニアにして日本に運び発電などに使う計画を公表している。また千代田化工建設などはブルネイで調達した水素をメチルシクロヘキサンという化学物質に反応させ液体にして運び、消費地で水素に分離するというシステムを提案し実証に挑む。

*3-1-2:https://weekly-economist.mainichi.jp/articles/20190507/se1/00m/020/048000c (エコノミストオンライン 2019年4月22日) サウジアラムコ起債に応募殺到 LNG、石油化学でも影響力増大=岩間剛一
 サウジアラビアの国営石油企業サウジアラムコに、世界の債券投資家の注目が集まっている。サウジの実力者ムハンマド皇太子が推し進める経済構造改革の原資として予定していたサウジアラムコのIPO(新規株式公開)は断念に追い込まれたが、次善の策として打ち出したサウジアラムコの債券発行計画に対し、運用難に悩む債券投資家の応募が殺到。サウジアラムコは当初予定よりも調達資金を積み増し、まさに面目躍如といったところだ。サウジアラムコにとっては今回が世界の債券市場へのデビューとなる。ロイター通信などによれば、サウジアラムコは3年、5年、10年、20年、30年の年限に分けて起債し、100億ドル(約1兆1000億円)を調達する予定だった。ところが、フタを開けてみると投資家からの応募が殺到し、4月9日時点で1000億ドルを超えたという。これを受けて、サウジアラムコは起債額を120億ドルへと積み増した。驚くのは、その発行条件である。債券発行時の利回りは信用力の高い米国債を基準に決められ、ブルームバーグなどによれば、サウジアラムコ10年債の利回りは米国債に105ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)上乗せした水準となった。この利回りの水準は同じ年限のサウジ国債を12.5bp下回っており、サウジアラムコが持つ豊富な原油埋蔵量や収益力の高さが、債券市場では政府(ソブリン)よりも高く評価された結果といえる。
●米アップルの1・8倍
 実際、サウジアラムコの業績は驚異的だ。サウジアラムコが4月1日、初の起債を前に投資家向けに開示した財務情報によれば、2018年のEBITDA(利払い・税引き・償却前利益)は2240億ドル(約24兆6000億円)、純利益は1111億ドル(約12兆円)とケタ違いの規模だった。純利益は上場企業で世界最大の米アップル(595億ドル、18年9月期)の1.8倍を超え、同じ石油企業の米エクソンモービル(208億ドル、18年12月期)の5倍以上に達する。サウジアラムコの強みは、サウジの石油・天然ガス開発を独占していることにある。サウジは南米ベネズエラに次ぐ、世界第2位の原油埋蔵国だが、超重質油で生産コストの高いベネズエラの原油と異なり、軽質であるうえに生産コストが1バレル当たり4ドル程度に過ぎない。世界最大の産油国となった米国のシェールオイルの生産コスト(1バレル当たり30ドル超)と比較しても、極めて高いコスト競争力を持った世界一の優良原油である(図)。サウジアラムコは債券発行で調達した資金を手元資金と合わせて、世界的化学メーカーに成長した国営企業サウジ基礎産業公社(SABIC)の買収に充てる。その企業価値は1000億ドル(約11兆円)にのぼり、株式の7割は政府系ファンド「パブリック・インベストメント・ファンド」(PIF)が保有する。サウジアラムコがSABICを買収すれば、7兆円以上の資金が政府の経済構造改革の原資となる。サウジ政府はもともと、企業価値が2兆ドル(約220兆円)ともされるサウジアラムコの株式のうち、5%をニューヨーク、ロンドン両証券取引所へ上場し、1000億ドル(約11兆円)の調達をもくろんでいた。だが、サウジの原油埋蔵量などは重要な国家機密であり、どこまでサウジアラムコの財務状況が開示されるのかが不透明だった。サウジ側は両証取に上場基準の緩和を求めるなどしたが、受け入れられることはなかった。加えて、昨年10月に起きたサウジ人著名記者の殺害事件により、サウジ政府とムハンマド皇太子が国際社会から非難され、欧米諸国の証券市場や金融機関の支援を得ることが難しくなった。そこで、サウジ政府はIPOを断念し、開示の基準が緩い債券発行へと方針転換する。世界的な低金利環境が続く中、投資家は相応の金利が見込める優良・大型の投資先を渇望していた。また、株主責任を負う株式への直接投資とは異なり、債券投資は国際社会の非難も浴びにくいという事情もあった。
●構造改革の「先兵」に
 サウジは政府歳入の7割近くを石油収入に依存する。だが、ここ数年は原油価格の低迷や不安定な値動きが続き、昨年12月に発表した19年の政府予算は5年連続の赤字を見込む。そのため、サウジ政府は増税や補助金の削減など財政健全化に取り組むが、国民に不満が高まって王族支配の根幹すら揺らぎかねない。そうした危機感を背景に、ムハンマド皇太子が16年4月、石油依存の経済構造を脱却しようと打ち出したのが「ビジョン2030」と呼ぶ経済構造高度化構想である。ビジョン2030では、数値目標を掲げて製造業や中小企業の振興など経済多角化を目指すとしたが、その原資として当初期待していたのがサウジアラムコのIPOだった。そのIPOが頓挫したことで経済構造改革の行方も危ぶまれたが、サウジアラムコの起債によって評価を一変させた。また、サウジアラムコはSABIC買収により、油田開発から、石油精製、石油化学と、上流から下流まで一貫操業する巨大企業となり、サウジ政府の改革を資金面で支える先兵ともなる。サウジアラムコは、さらに野心的な目標を掲げる。LNG(液化天然ガス)の輸出プラントを持たず、これまでは原油生産に随伴する天然ガスはフレアとして燃やすだけだったが、アミン・ナセルCEO(最高経営責任者)は昨年11月、30年までに世界最大のLNG輸出国となることを表明。今後10年間で天然ガスに1500億ドルを投資するとし、敵対するLNG大国のカタールやイランを脅かす姿勢を鮮明にした。サウジアラムコは石油化学部門も強化しており、今年2月には中国・遼寧省で中国企業とエチレン生産能力が年間150万トン、石油精製能力が日量30万バレルに達する総額100億ドルの石油精製・石油化学コンビナート建設で合意した。また、中国や韓国、インドネシアなどアジア諸国の製油所にも出資し、貴重な原油輸出先と位置づけるアジア諸国の囲い込みを図っている。債券市場やLNG、石油化学にまで及ぶサウジアラムコの影響力は、もはやとどまるところを知らない。

*3-2:https://mainichi.jp/articles/20200331/ddn/003/010/012000c (毎日新聞 2020年3月31日) 森林環境税の使途、「森の整備」は35% 先行配分、74自治体調査
 安倍政権が創設した森林環境税について、全国の道府県庁所在市と政令市、東京23区(計74自治体)の2019年度の使途を調べたところ、最大の目的である「森林整備」に使われるのは、税収配分の見通し額の35%にとどまることがわかった。大都市は管理する森林が少なく、国産材を利用した公共事業に充てるケースが多い。森の荒廃防止を掲げて納税者1人につき年1000円を徴収する新税のひずみが早くも浮かんだ。森林環境税の徴収は24年度からだが、政府は早急な災害対策のために森林整備が急務だとして、別の財源を準備。19年度から先行的に、譲与税として自治体への配分を始めた。

*3-3:https://www.agrinews.co.jp/p50423.html (日本農業新聞 2020年3月31) 森林組合法改正案 役割発揮へ体質強化を
 民有林の本格的な利用期を迎え、伐採や植林を担う森林組合の活性化が課題になっている。地球温暖化防止の観点からも期待が高い。山村を支える人々の利益につながるように、組合員の拡大や若返りなどにより森林組合の体質強化を急ぐべきだ。森林組合は、森林所有者である組合員の委託を受けて植林や下刈り、間伐、主伐など山の作業全般的を担う。全国に620余りあり、組合員は151万人に及ぶ。農業との兼業も多い。山村住民の高齢化に伴って組合員の高齢化と減少が進み、総会や総代会などへの参加も減っている。女性の登用も遅れ、正組合員に占める割合は10%、役員に占める割合は0・5%と低水準だ。相続を機に所有者が把握できなくなる事例も相次ぎ、組合活動も滞りがちだという。一方、民有林は、終戦復興や高度経済成長期に造林した森林が主伐期を迎えている。これからが稼ぎ時である。せっかくの財を「宝の持ち腐れ」にしてはならない。また、切った後に植林をしないと山が荒れる。植林から伐採まで計画的に取り組む森林組合の役割は重要度を増す。山村に富をもたらすこの時機を逸してはならない。林野庁は、森林組合法の改正案を今国会に提出し体質強化を後押しする。森林所有者と同居していない子どもら「推定相続人」に正組合員になれる道を開き、人数制限も撤廃する。組合員の若返りと女性の参画を進め、組合活動の活性化を促したい考えだ。総会や理事会での論議も活発になると期待される。森林所有者が将来分からなくなるのを防ぐことにもつながる。問題は実効性だ。親元を離れて暮らす「推定相続人」に、森林管理や組合活動への関心を高め積極的に参加してもらうにはどうするか。また、組合員数が多くなった一部林家の発言力が高まることを懸念する声もある。国会審議では、こうした点について丁寧な論議が必要だ。改正案では一部の事業を他の森林組合などに継承できるようにする「吸収分割の制度」や、新たな連合会を設置して事業を継承できる「新設分割の制度」を設ける。小規模な組合が多様な連携で林産物の輸出など事業拡大を目指すという方向性は一定に理解できるが、リスクも伴う。組合員の理解が不可欠だ。政府は、所在が不明な森林所有者に代わって森林組合が管理できるようにしたり、国有林の樹木を採取できる権利を林業経営者に与えたりする法制度を整備し、本格的な利用期に備えている。また地球温暖化防止や国土保全、水の涵養(かんよう)といった森林の公益的な機能を維持するため、森林環境税を財源にした森林の管理制度を創設し、課税に先行して自治体への資金の譲与を開始した。森林管理の中心的な担い手として、森林組合の役割は一層重要となる。国民の期待に応えられるよう、森林組合改革への一層の取り組みが期待される。

*3-4:https://www.nishinippon.co.jp/item/n/594829/ (西日本新聞社説 2020/3/25) 森友学園問題 なぜ再調査をしないのか
 決裁文書の改ざんという前代未聞の不祥事は一体、誰が何のために引き起こしたのか。疑惑の真相解明に向けた新たな契機としなければならない。学校法人「森友学園」の国有地売却問題で財務省近畿財務局の担当職員だった赤木俊夫さんが、同省理財局長だった佐川宣寿(のぶひさ)元国税庁長官の指示で決裁文書の改ざんを強制され自殺に追い込まれたとして、遺族が国と佐川氏に損害賠償を求めて提訴した。遺族は赤木さんの手記や遺書も公表した。この問題が発覚したのは2017年2月だ。安倍晋三首相や昭恵夫人の関与も取り沙汰され、首相は同17日の衆院予算委員会で「私や妻が関わっていれば、首相も国会議員も辞める」と断言していた。手記によれば、近畿財務局の上司から赤木さんに初めて改ざんの指示があったのは、この首相答弁の9日後だった。赤木さんは「全て佐川局長の指示です。学園に厚遇したと受け取られる疑いの箇所は全て修正するよう指示があったと聞きました」としている。手記は関係者が実名で記され、日時や会話のやりとりなど具体的な情報や動きが詳述されている。改ざんに手を染めることへの抵抗と苦悩とともに「財務省が真実に反する虚偽の答弁を貫いていることが最大の原因」「うそにうそを塗り重ねるという、通常ではあり得ない対応」と所属組織を告発している。何より驚かされるのは、こうした遺書や手記を突き付けられても、首相や麻生太郎財務相が「再調査の必要はない」と開き直っていることだ。その論拠は財務省が18年6月に公表した調査報告書と「齟齬(そご)がない」「新事実がない」からだという。財務省の報告書は理財局長だった佐川氏が「方向性を決定づけた」としてはいる。しかし、具体的な指示や動機、背景には踏み込んでいない。いわば核心部分の曖昧さは麻生財務相が当時、いみじくも「それが分かれば苦労しない」と述懐した通りだ。財務省の一局長だけの判断で国会と国民を欺く決裁文書改ざんが可能なのか。そんな疑問も改めて湧く。そもそも財務省の調査は内部調査にすぎず、身内による聞き取りの限界が指摘されていた。ここは第三者機関で再調査するのが当然ではないか。国会にも注文したい。立法府もまんまと財務省に「だまされた」問題である。与野党の別なく、国政調査権を駆使して政府と財務省の姿勢をただすべきだ。「刑事訴追の恐れがある」として証人喚問で肝心な部分の証言を拒んだ佐川氏の再喚問が必要なのは言うまでもない。

*3-5:https://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-1103589.html (琉球新報社説 2020年4月8日) 辺野古軟弱地盤工事 基地建設ありきを改めよ
 また計画のずさんさが露呈した。血税の無駄遣いをこれ以上、許してはならない。新型コロナウイルスの感染拡大で経済が大打撃を受けている中ではなおさらだ。名護市辺野古の新基地建設を巡り、軟弱地盤の改良工事に向けて政府が設置した有識者会議「技術検討会」の説明資料に20カ所のミスが判明した。護岸の安定性に関する数値の間違いに加え、計算結果が正しく反映されていない図表、粘性土の強度を示すグラフにも修正箇所があった。間違ったデータを基に審議していたことは大きな問題だ。軟弱地盤を巡っては、防衛省が3月までに少なくとも6件の護岸・岸壁工事の発注を打ち切っていたことも判明している。うち5件は護岸や岸壁そのものの建設に至っていないにもかかわらず、一部の工事や地質調査などに使われた経費として6件で計約303億円が業者に支出された。軟弱地盤が明らかになった影響で護岸建設を先送りせざるを得ないのが理由だ。この宙に浮いた多額の税金の使途について防衛省は詳細に説明する責任がある。無駄遣いになった経費があれば、極めて重大な問題だ。防衛省は本紙の取材に対し一部事業の最終支払額を3桁も間違え、224億7785万9千円を2億9214万円と説明していた。護岸本体には着工せず浮具や調査などに当初契約の約1・4倍の支出をしていた。税金の使い方が極めて乱暴だ。ここまでミスが続けば、政府の説明の信頼性は完全に失われたと言っていい。新基地建設ありきでなりふり構わず工事を進める姿勢が原因だろう。事業の可否判断や評価の基になるデータがずさんなのだから、事業を中止して再調査や検証をすべきである。辺野古を調査した専門家が防衛省のデータや検討会の審議の在り方を疑問視して質問状を送っても、政府、検討会のいずれも再検討を拒否した。このやり方は、通常の公共工事の進め方から逸脱している。行政をゆがめる手法だ。辺野古の新基地建設を巡っては、軟弱地盤以外にも、米国が設定した飛行場周辺の高さ制限の逸脱や活断層など、建設計画策定後に新しい事実が次々と判明した。政府は総工費を当初の2・7倍に上る9300億円、完成までの期間は12年に試算を変更した。巨額の税金を使ってまで工事を強行するのは、県との裁判を有利に進め、埋め立ては止められないという既成事実をつくるためだろう。基礎的データの修正や計画変更が相次ぐずさんな工事に膨大な血税を投じるのはばかげている。県が設けた専門家会議は辺野古に固執せず在沖米軍基地を県外・国外へ分散することが「近道」と提唱している。新型コロナ対策で多額の財政支出が必要な中、辺野古新基地は最大の無駄遣いと言える。政府は基地建設ありきの強硬姿勢を改め、建設を即刻断念すべきだ。

<10万円の給付とふるさと納税>
PS(2020年4月23日追加):*4-1のように、広島県の湯崎知事が、「緊急経済対策として県職員が国から受け取る現金10万円を、県の対策事業の財源に活用したい」という考えを表明して波紋を広げたが、私も、公務員やサラリーマンの多くは、新型コロナ感染防止のための外出自粛や休業要請で所得が減るわけではないため、現金10万円を受け取った上で、困っていない人は自主的に寄付してよいと思う。その際、*4-2-1・*4-2-2のように、農漁業は政府の臨時休校要請で学校給食が停止し、農畜産物の供給が混迷して牛乳・野菜の販売が滞っているため、これらを返礼品にして「ふるさと納税(居住地の自治体でも可)」を募ったらどうか? 公務員の皆さんは、各自治体の政策や返礼品を比べつつ、自分の自治体でさらに工夫できる余地を考えれば、次に活かせると思う。

*4-1:https://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/202004/CK2020042202000275.html (東京新聞 2020年4月22日) <新型コロナ>職員の「10万円」 県財源に 「給付から寄付」念頭 広島知事発言波紋
 広島県の湯崎英彦知事は二十一日、緊急経済対策として県職員が国から受け取る現金十万円を、県の対策事業の財源に活用したい考えを表明した。自主的な寄付として募り、新たに設ける基金に積み立てる手法などを念頭に、仕組み作りを急ぐ。国による十万円の給付は全ての国民を対象に五月から始まる見通しで、湯崎知事の突然の発言は波紋を広げている。県職員連合労働組合の大瀬戸啓介中央執行委員長は「驚いている。新型コロナの感染防止で職員は懸命に働き、家庭状況もさまざまだ。一律の対応を求められるのかなどを注意深く見守る」と話した。湯崎知事は休業要請の協力金について発表した記者会見で、県職員が受け取る十万円の扱いについて言及した。協力金や他の対策に多額の費用がかかるとの見通しを説明。「必要な財源が圧倒的に足りない。捻出する時に、今回(国から)給付される十万円を活用することで、聖域なく検討したい」と強調した。具体的な仕組みについては「まさに検討しなければならない」と述べ、制度設計を急ぐとした。県職員が受け取った十万円を積み立てる基金を新たに創設し、事業費に充てる方策かという問いには「そういうイメージだ」と応じた。県によると、知事が任命権を持つ県職員は四千四百五十一人(四月一日時点)。全職員から十万円を集めると、四億四千五百万円余りとなる。

*4-2-1:https://www.agrinews.co.jp/p50200.html (日本農業新聞 2020年3月5日) 学校給食停止 産地、業者の救済不可欠
 新型コロナウイルスの感染拡大防止に向けた政府の臨時休校要請で学校給食が停止し、農畜産物の供給が混迷している。牛乳や野菜の販売でキャンセルが相次ぐ。このままでは産地や関連事業者の売り上げ減少は必至。政府の支援が欠かせない。春休みを前に学校給食は例年より2週間早く停止した。影響が大きいのは給食向け牛乳(学乳)だ。国内の飲用向け生乳生産量(年間約400万トン)の1割近くを占める。仕向け量が多い関東では10万トンを学乳に供給するが、2週間で7500トンもの生乳が行き先を失う恐れがある。指定団体には、メーカーから取引休止の連絡が相次ぐ。北海道から都府県への生乳移送もキャンセルが発生している。乳業業界は、加工原料乳に振り向けようと対応に追われる。しかし、乳製品工場は人員の確保が難しく、処理能力にも限りがある。観光客の大幅落ち込みが響き、土産用の加工品の需要が低下している。酪農家は影響の長期化を不安視する。文部科学省によると、学校給食の1人1食当たりの食品別摂取量(2017年度)は、牛乳が200グラムで最多。野菜類が91グラムと続き、米や果実など幅広く供給している。全国学校給食会連合会によると、給食のメニューや調達する食材は1カ月前に決めているところが多く、影響は広がる見通しだ。JA東京むさし小平支店は、地元の小学校や中学校の学校給食センターに食材を提供してきたが、3月分の野菜などの契約4500キロが全てキャンセルとなった。食材を供給する他のJAからは「学校給食は安定した単価で買い取ってもらっていた」と影響を懸念する。給食向け食材に占める国産割合は76%、地元食材に限っても26%に及ぶ。農畜産物の重要な販売先で、産地は安定した取引が見込める。給食は児童や生徒が国産食材の魅力に触れる。食育の観点からも重要だ。新型コロナ問題で農畜産物の売り先がなくなり、取引価格の低下や廃棄する事態になれば、給食を支える産地や関連事業者にとって大きな痛手となる。政府の支援が求められる。萩生田光一文科相は「関係省庁と連携し、事例に応じて具体的な対応を検討していく」と発言。生乳を加工原料乳に仕向けると牛乳より販売価格が安くなるが、江藤拓農相は「(減収分は)何らかの手だてをしたい」と支援に前向きな姿勢を示した。産地や業者が今後も事業を継続できるよう、政府は早急に救済の具体策を示すべきだ。一斉休校で子どものいる家庭では自宅で過ごす時間が長くなる。給食や外食の機会が減った分、家庭での消費が高まっている。行き先を失った農畜産物の廃棄は何としても避けたい。農水省はホームページで牛乳や牛肉、野菜、切り花といった農畜産物の家庭での消費を呼び掛けている。窮状にある産地を応援する輪を広げていこう。

*4-2-2:https://www.agrinews.co.jp/p50599.html (日本農業新聞 2020年4月21日) [新型コロナ] 緊急事態宣言で需給緩和 生乳 家庭消費拡大を メーカーに支援策 農水省
 農水省は20日、新型コロナウイルス感染拡大防止に向けた緊急事態宣言に伴い、業務用の牛乳乳製品需要が減退したことで、「生乳需給が大幅な緩和局面に入った」と厳しい認識を示した。産地で生乳が増産傾向となる一方、全国的な一斉休校に伴い需要の低迷が続く。「家庭用消費の一層の拡大を図ってほしい」と訴え、バターやチーズの増産で需給調整に協力する乳業メーカーへの支援策も示した。同省は同日に臨時の記者会見を開いた。乳業メーカーからの聞き取りを基に、生クリームなど業務用の牛乳乳製品の落ち込み分を算出すると、3月は2割減、緊急事態宣言発令後の4月は5~7割の減少を見込んだ。乳製品を主に作る北海道は、4月だけで生乳換算で7~9万トンの業務用需要がなくなるとした。同省は6月中旬にかけての需給調整は予断を許さないとの認識を示す。在庫が潤沢な脱脂粉乳へは、生乳から仕向けられる量に限界があるとする。できる限り家庭内で牛乳・乳製品の消費を増やし、行き場を失う生乳の発生を未然に防ぐことを目標に掲げた。具体的には、18歳未満の子どもが週1回コップ1杯分(200ミリリットル)牛乳を飲む量を増やすことで、学校給食の1週間分(9500トン)の約4割に相当する生乳が消費されると試算。インターネット交流サイト(SNS)やホームページなどで、「もうあと1杯、もうあと1本飲んでもらいたい」と、家庭での購入を促す考え。合わせて、チーズやバター、全粉乳などの製造を増加することで、需給調整に協力するメーカーには19億円の予算を措置し、生乳1キロ当たり数円の支援を行うと表明。「事業の具体的な要綱については、近日中に明らかにする」(牛乳乳製品課)としている。

<日本の製造業と医療>
PS(2020年4月24日追加):*5-1-1のように、埼玉県の50代と70代の男性が自宅待機中に容体悪化で死亡する事例が発生したが、そもそも厚労省が作った“軽症者”の定義がおかしく、急性疾患である感染症に自宅療養を優先するという判断も変だったのである。本来は、学校閉鎖した3月上旬には、医師・看護師が常駐するホテルを準備して速やかに検査・治療・療養を行う体制にすべきだったし、それは可能だった筈だ。にもかかわらず、死人を出すまで動かないのが日本の行政の怠慢で、それに加えて「子育ての関係で自宅療養を選択せざるを得ない人」というのは、家事や子どもの世話が外出を伴う重労働であることを考えれば、厚労省の言う“軽症”の感染症を抱えた人は不可能なのである。
 このような中、*5-1-2のように、米国NY州で無差別サンプリングによる抗体検査を実施した結果、陽性が約14%で、州全体で26万3000人確認されている感染者数は実際にはその10倍の約270万人となり、大都市のニューヨーク市では21.2%が陽性だそうだ。日本は、未だに「抗体検査の信頼性が100%ではないので・・」などという馬鹿なことを言っている人がいるが、何もわからないよりは多少の誤差があっても概要がわかった方がずっとましなのである。また、*5-1-3のように、英オックスフォード大学の研究チームが、2020年4月23日、新型コロナウイルスのワクチン候補を使った臨床試験を開始し、世界中では少なくとも5例の治験が行われており、ドイツも、2020年4月22日、ビオンテックが開発する新型コロナワクチンの治験を認可したそうだ。日本では、また厚労省が何とかかんとか言って、新型コロナの流行が終息した頃にワクチンが認可されるかもしれないが、それでは意味がなく、*5-2-1のようなことがいつまでも解決されずに続くのだが、これが日本の医療行政の現状なのである。
 さらに、*5-2-2・*5-2-3のように、政府が配布を進める布マスクのようなローテク製品でさえ、虫・髪の毛・糸くずの混入やカビの付着など不良品が相次ぐ始末だ。マスクに他の細菌やウイルスがついていれば有害であるため、製造工程の衛生管理は重要だ。そのため、私は送ってきたらまず洗浄・除菌してから使おうと思っていたが、それにしてもこの布マスクは、政府が国内の商社など納入業者5社(興和:54億8000万円、伊藤忠商事:28億5000万円、マツオカコーポレーション:7億6000万円、3社の合計90億9000万円)を通して中国・ベトナム・ミャンマーから調達したのだそうだ。厚労省は、それぞれの調達枚数を明らかせず、「開示すれば、マスクの単価を計算できることになり、今後の調達などに影響を及ぼす恐れがある」などと説明しているそうだが、①マスクさえ外国に発注しなければ作れず ②管理もせずに衛生管理の悪い環境で制作させ ③単価は国民に公表できないほど高い というのが、(あまりに情けないものの)日本の製造業の現状と言わざるを得ないようだ。

   
 2020.4.24読売新聞      2020.4.8毎日新聞      2020.4.8東京新聞

(図の説明:左図は、抗体検査によるニューヨーク州の推定新型コロナ感染者数で、予防しにくい階層・人種の感染者割合が高いことがわかる。中央の図は、行動制限をした場合の東京・大阪の予想感染者数推移で、右図は、行動制限を続けた場合の経済への打撃とその対策だ)

*5-1-1:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/515852 (佐賀新聞 2020.4.24) 埼玉死亡受けホテル療養移行急ぐ、自宅待機の患者数把握も
 加藤勝信厚生労働相は24日の記者会見で、新型コロナウイルス感染症で自宅療養中の患者数を把握する考えを示した。埼玉県内の50代と70代男性が自宅待機中に容体が悪化して死亡する事例が発生したことを受けての対応。自治体が用意し、看護師らが常駐するホテルや宿泊施設での療養に速やかに切り替える。一方、埼玉県の大野元裕知事は24日、「このような事態に至ったわれわれの責任は重い」と記者団に述べた。基礎疾患のない軽症者や無症状者の自宅待機を認める方針を改め、原則としてホテルでの療養に切り替える。加藤氏は「自宅療養と宿泊療養の内訳について都道府県から情報を得るよう努力したい」と強調。子育ての関係で自宅療養を選択せざるを得ない人もいるとして「患者や家族へのフォローアップをしっかりするよう自治体にお願いしている」と述べた。施設の準備が整わなければ引き続き自宅を容認する。厚労省は今月2日、病床の逼迫による医療崩壊を避けるため、軽症や無症状感染者は宿泊施設やホテル、自宅での療養を検討するよう都道府県に通知。加藤氏は23日になってホテルや宿泊施設での療養を基本とすると方針転換した。厚労省はマニュアルを作成し、宿泊施設では保健師か看護師が日中は常駐し、医師も電話で対応することや、症状悪化時に適切に対応できるよう搬送手段や受け入れの医療機関と事前に調整するよう求めている。高齢者や妊婦、糖尿病などの基礎疾患がある人などは重症化のリスクが高いため、原則入院となる。

*5-1-2:https://news.biglobe.ne.jp/international/0424/0585979323/tbs_tab.html (TBS 2020.4.24) 米NY州抗体検査で陽性14%、感染者数 公式発表の10倍か
アメリカ・ニューヨーク州で、新型コロナウイルスに感染したことがあるかを調べる抗体検査を実施した結果、陽性がおよそ14%だったことがわかりました。感染者の数が公式発表の10倍にのぼる可能性があるということです。ニューヨーク州のクオモ知事は23日、感染の実態を把握するため、アメリカで初めて実施した大規模な抗体検査の結果を発表しました。それによりますと、州内各地でおよそ3000人を無作為で抽出し、抗体検査をしたところ、全体の13.9%が陽性でした。大都市のニューヨーク市では21.2%が陽性で、5人に1人以上が感染していたことになります。州全体ではこれまで26万3000人の感染者が確認されていますが、抗体検査の感染率から、その10倍のおよそ270万人が感染した可能性があるということです。その場合、致死率は低くなり、感染者のおよそ0.5%になるとしています。

*5-1-3:https://www.newsweekjapan.jp/stories/technology/2020/04/post-93231.php (Newsweek 2020年4月24日) オックスフォード大、新型コロナウイルスのワクチン治験開始
 英オックスフォード大学の研究チームが23日、新型コロナウイルスのワクチン候補を使った臨床試験を開始した。ワクチンの有効性や副作用の有無を調べる。新型コロナワクチンを巡っては世界中で100種程度の候補が開発中で、少なくとも5例の治験が行われている。ドイツ当局は22日、バイオ医薬ベンチャーのビオンテックが開発する新型コロナワクチンの治験を認可した。[ロイター]

*5-2-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200423&ng=DGKKZO58359930S0A420C2MM8000 (日経新聞 2020.4.23) 綱渡りの中小支援、33都道府県が協力金、資金難なお深刻
 新型コロナウイルスの感染拡大で中小企業の資金繰り不安が増すなか、33の都道府県が休業協力金を給付することが分かった。先行する東京都は最大100万円の給付金の受け付けを22日に始めたが、関係書類をそろえるなどの手続きは煩雑で、支給まで2週間かかる。緊急事態宣言が5月7日以降も続いた場合、都が確保した960億円の予算は不足しそうだ。経済の土台をなす中小支援は綱渡りの状況だ。日本経済新聞が22日時点の状況を調べたところ、高知や沖縄など37都道府県が感染拡大を防ぐため休業要請を決めた。このうち33都道府県が要請に応じた事業者への協力金など支援策を用意する。先駆け事例となるのが都で、休業や時短営業の要請に応じた事業所や店舗に協力金を給付する。支給額は1店舗なら50万円、複数店舗なら100万円だ。この日は受け付け開始の午後3時以降、130回線ある都の問い合わせ用電話がひっきりなしに鳴り続けた。事業者が気にするのはそろえるべき書面だ。所定の申請書のほか、都が休業要請した11日以前に営業していたことを示す書類、営業に必要な免許や許可を得ていることが分かる書類などが必要だ。都は税理士や公認会計士などの専門家による事前の書面審査を奨励し、チェックが無ければ「支給まで時間を要する場合がある」とした。台東区の焼肉店経営者は22日にすぐ協力金を申請しようと準備していたが、専門家が見つからず断念。後日、税理士に相談したうえで郵送で申請することにした。この経営者は「個人で申請するのは難しい」と話す。デジタル対応の壁もある。都内でバーを営む女性経営者は22日、協力金の申請書類一式を、知り合いの税理士に送った。申請には「休業の状況が確認できる書類」が必要。店舗のホームページがあれば休業を告知する画面を印刷するだけで済むが、パソコンとは無縁だ。休業日を手書きした張り紙を急ごしらえし店舗のドアに貼り付けて写真を撮った。給付を受けてもビジネスが成り立つかは事業者による。都内に和食居酒屋など2店舗を持つ経営者は「100万円では家賃や人件費をまかなえない」と話す。4月に新店舗を開く予定だったため、3店舗分の費用がかかっている。今は夜間は店を閉めているが、固定費だけで毎月300万円以上かかるという。支給開始が5月7日以降となることも「翌週の資金繰りすら危うい中小には厳しい」(都内の弁護士)との指摘がある。申請できるのは都の休業要請に従う事業者だが、線引きが難しい場合もある。食料品の専門店を百貨店に展開している都内の中小企業は全店舗の7割近くとなる20店弱を休業中。一部は都ではなく百貨店の要請で休業しており「対象になるのかわからず困っている」(同社社長)。13万事業者の申請を念頭に960億円の予算を確保した協力金だが、緊急事態宣言を政府が延長した場合、都の休業要請も延びる見通し。事業者の資金繰り負担は増え、都幹部も「2回目の給付も想定しなければならない」と話す。日本の中小企業数は2016年時点で約358万社あり、大企業も含めた企業数全体の99%を占める。働く人は約3220万人と、大企業(約1460万人)が抱える雇用の2倍超だ。資金支援は財政力がある都が先行したが、その後に政府が総額1兆円の地方創生臨時交付金を協力金に充てることを決定した。二の足を踏んでいた自治体も一気に休業要請と協力金の創設に動き出したが、期間が長引けば財政負担も高まる。経済の痛みを最小限にとどめるためにも、実効性ある感染対策が不可欠だ。

*5-2-2:https://mainichi.jp/articles/20200421/k00/00m/040/185000c (毎日新聞 2020年4月21日) 虫混入、カビ付着…全戸配布用の布マスクでも不良品 政府、公表せず
 新型コロナウイルスの感染拡大防止に向け、政府が配布を進める布マスクに、虫が混入するなど不良品が相次いで確認されている。厚生労働省は18日、妊婦向けの布マスクのうち1901件について不良品の事例を発表し、21日に妊婦向けマスクの配布中止を決定。しかし、政府のマスク等物資対策班の関係者によると、18日時点で全戸配布用に準備していたマスクでも不良品が発見されており、これについては公表していない。政府の衛生面での認識が問われるとともに、全戸配布のスケジュールにも影響しそうだ。布マスクは政府が一括して購入し、全国5000万世帯に2枚ずつ配布する計画で、約466億円が投じられる。先月下旬から、妊婦向けに50万枚▽高齢者の介護・福祉施設向けに1930万枚▽小中高校に800万枚――を優先的に配布。続いて感染者の多い東京都内などで全戸配布が始まっている。厚労省は18日、妊婦向けの布マスクに関して「変色している」「髪の毛が混入していた」「異臭がする」などの報告が相次ぎ、80市町村で1901件の報告があったと発表。大阪府内の自治体では、ガーゼの黄ばみや変色、ゴミの混入も確認。発表を受け、ツイッター上では「健康被害はないのか」「安心して使えない」などの不安の声が広がった。しかし、政府の対策班に配られた内部文書によると、18日時点で妊婦向け以外の全戸配布用に包装を始めた200万枚のうちでも、虫や髪の毛、糸くずの混入、カビの付着など200件の異物混入などの問題事例を確認。これについては公表しなかった。マスク配布を担当する厚労省経済課は、妊婦向け以外の不良品を非公表とした理由について「回答できない」とし、全戸向けのマスク配布については「現時点で中止は検討していない」としている。
  ×   ×
 相次ぐ異物混入などの発覚を受け、政府は各都道府県に注意喚起の通達を出し、一部の業者が製作したマスクについては全品回収を始めた。マスクの製造企業名などは公表されていないが、政府関係者によると、国内の商社など納入業者5社が中国やベトナム、ミャンマーから調達している。(以下、略)

*5-2-3:https://news.tbs.co.jp/newseye/tbs_newseye3961647.html (TBSNews 2020年4月22日) 政府配布の布マスク、3社から90億円あまり
 新型コロナウイルス対策で全世帯に配布する布マスクについて、政府が大手商社など3社から、合わせて90億9000万円で調達していたことが明らかになりました。これは、社民党の福島みずほ党首が厚生労働省からの回答としてツイッターで明らかにしたもので、興和が54億8000万円、伊藤忠商事が28億5000万円、マツオカコーポレーションが7億6000万円でした。3社合わせて90億9000万円ですが、政府は、布マスクの費用を総額で466億円と説明しており、福島氏は差額についてさらに問い合わせるとしています。また厚生労働省は、それぞれの調達枚数も明らかにしておらず、「開示した場合、マスクの単価を計算できることとなり、今後の調達などに影響を及ぼす恐れがある」などと説明しています。布マスクをめぐっては、全国の妊婦のために配布した布マスクに汚れなどが相次いで見つかっていますが、厚生労働省は共産党の小池書記局長の問い合わせに対して、妊婦向けマスクの製造メーカーはこれら3社を含む4社であることを明らかにしています。

<日本の産業と農家の収益性>
PS(2020年4月25、26、27日追加):*6-1に記載されている「①食料を供給し暮らしを支えているのは農業」「②大都市への人口集中の危険性を露呈」「③事態が収束すれば、農山村への田園回帰の流れはますます広がる」「④テレワークが広がり、分散型社会の必要性とその可能性を立証している」「⑤効率性・採算性による医療再編の動きを看過してはならない」「⑥キーワードは持続可能性」のうち、①は漁業も入るものの事実だ。また、大都市で生まれ育って並ぶこと自体に意義を感じるようになった集団を見ると、他にすることはないのかと思う。しかし、こういう人が多数派を占める②の状況は問題であるため、③④は必ず進めるべきだ。また、分散しなければ、災害時も考慮した⑥の持続可能性は、視野に入らない。そのインフラとなる⑤の医療再編は、本物の効率性・採算性は考えるべきだが、セキュリティーまで考慮したものでなければならないし、病気(特に急性疾患)への対応は時間との勝負なのである。
 このような中、*6-2のように、日米貿易交渉は食料自給率を無視し、日本の産業は自動車と自動車部品さえあればよいかのような交渉をしているが、これもおかしい。今後、何を売って、どこから、どういう品質の食料を買うつもりなのか? “食料生産力”さえあれば、日頃から生産していなくても高品質のものを生産できると考えるのは、マスクの事例を見ればわかるとおり、甘すぎて馬鹿げた幻想にすぎない。
 さらに、*6-3のように、国の登録品種から農家が「種取り・株分け」することを禁ずる改正種苗法案が国会の審議に入り、農家の自家増殖が一律禁止されるそうで、これは優良なブドウやイチゴの登録品種が海外に持ち出されにくくするためとされているが、優良品種の流出防止なら海外でも品種登録すればよく、海外で品種登録が認められない程度の“新”品種なら、日本の農家が自家増殖するのも自由であるべきだ。また、主要農作物種子法を「民間の開発意欲を阻害する」という理由で廃止し、国や都道府県の試験研究機関が保有する種苗に関する知見を海外企業も含む民間企業へ提供するよう求めているのは、これまで金を払って作ってきた国民の財産を無償で提供するもので、特許権の価値を無視したものである。
 なお、*7-1のように、北海道は、4月23日、「北海道短期おしごと情報サイト」を立ち上げ、農家などの人手確保に悩む職種が求人情報を掲示し、休業等で短期的な仕事を求める人を結び付けて人手不足解消を支援するそうだ。外国人技能実習生が入国できない状況で、運送業・小売業も人手不足に拍車が掛かっているため、よいアイデアだと思う。また、牛乳や乳製品等の需給緩和については、牛乳・卵は免疫強化にも役立つので、2000ml入りの牛乳パックを作ったり、冷凍できる乳製品を作ったりするのがよいと思う。
 また、農業の人手不足については、*7-2のように、鹿児島県鹿屋市の堀之内さんが、梅園地を中国人の岳淑芬さん(31歳、女性)と劉亜男さん(30歳、女性)に託す準備を進めているそうだ。2人は事務所の電話に滑らかな日本語で応えたり、パソコンに向かって売上・仕入のデータを入力できたり、現場で農作業の指示を出したり手本を見せたりもでき、やる気と誠意と能力があるという意味で人柄がよいのだろう。
 農水省は、*7-3のように、新型コロナ感染拡大の影響で外国人技能実習生らが来日できずに人材確保が難航している農家を支援するため、代替人材を雇って労賃が予定を上回った場合の掛かり増し分を1時間500円を上限として、交通費、宿泊費、保険料とともに補助の対象とするそうだ。技能実習生の代わりに学生やJA職員らが援農する際の費用も支援し、これは農業高校・農業大学校・JAなどを対象とするそうだが、私は、大学生(特に農学・生物学・工学・栄養学専攻など)も良い経験になるため、入れた方がよいと思う。

  

(図の説明:左から、米作、ブドウ、りんご。田畑で並んでいる人などはおらず、農業はいつも人手不足。コミュニケーションは土や植物と行い、自然は美しい)



(図の説明:上は、ふるさとチョイスで牛乳と卵から検索した写真。1番左はオホーツクの牛乳、左から2番目は高千穂牧場の乳製品、右から2番目はダチョウの卵を使ったアイスクリーム、1番右は抗生物質・薬品不使用の卵が80個も入った箱で、その豊かさに笑顔になった)

*6-1:https://www.agrinews.co.jp/p50538.html (日本農業新聞 2020年4月14日) “国難”の先を見る 持続社会へ教訓学ぼう
 国難を乗り切り、どんな社会を切り開くのか。新型コロナウイルスの感染拡大が止まらない。社会のもろさが表明化し、恐怖と緊張、閉塞(へいそく)感が覆う。危機の中で、食料を供給し暮らしを支えているのが農業だ。大切さが改めて認識され始めた。“コロナ後”を見据え、農を基に持続可能な社会を考えたい。新型コロナウィルスの感染者の急増を受けて政府は、7都府県に対し一定の私権の制限が可能となる緊急事態宣言を出した。対象地域だけでなく全国の住民が不安な日々を余儀なくされ、外出自粛や入国制限などで、飲食店や観光を中心に地域経済は深刻な打撃を受けている。政府は万全の対策をスピード感を持って行うべきだ。コロナ禍から教訓を学び収束後の社会を展望することが、考えや行動、働き方を変え危機を乗り切ることにつながる。キーワードは持続可能性だ。感染者は東京都や大阪府などで急増。大都市への人口集中の危険性を露呈した。食品の買いだめも発生し、食料確保への都市住民の不安感も表面化。そんな今だからこそ、“ポストコロナ”を見つめる力を持ちたい。事態が収束すれば、農山村への田園回帰の流れはますます広がるだろう。今は行き来が難しいが、都市と農村の連帯が重要となってくる。さらに、多くの企業が在宅勤務に移行し、遠隔でも仕事ができるテレワークが広がっている。分散型社会の必要性と、それが可能であることを立証しているといえる。働く場所や時間を柔軟に選べるようにすることは働き方改革と、ライフスタイルや価値観に合った生き方ができる社会づくりにつながる。企業にとってもリスクを軽減できるという価値がある。「今こそ農業の底力を示す時だ」。こう意気込む農家がいる。農の価値や食料自給、流通の重要性を人々が感じている。お金があるから肉や野菜、米が食べられるのではない。土と水が、豊かな農村があり、技を持つ農家と、集出荷や物流、加工、販売に携わる人がいるからこそ、食べ物が手に入る。そして医療の大切さ。厚生労働省は公的医療機関の再編を促しているが、命に直結する問題である。効率性や採算性による再編の動きを看過してはならないと言える。感染源を巡る差別や、失業者の増加や賃金低下による所得格差の拡大などで、今後さらに社会の分断が深まる恐れがある。災害時に必要なのは助け合いだ。休校になった子どもに弁当が配られたり、需要が減った農畜産物の“応援消費”が活発になったりしている。分散型社会や農業・農村、流通、医療、助け合いの大切さなどコロナ禍の教訓はいくつもある。これらは暮らしの安全保障の基盤でもある。自制心と冷静さで外出を自粛しつつ、未来に目を向け、歩み始めよう。

*6-2:https://www.agrinews.co.jp/p50606.html (日本農業新聞 2020年4月22日) [新型コロナ] 日米協定 新型コロナ拡大が波及 予備協議先送り
 日米貿易協定の追加交渉に向けた両国の予備協議の行方が不透明な状況となってきた。4月末までに協議を整える方針だったが、両国で新型コロナウイルスの感染拡大が深刻化し、協議が進展していないことなどが影響している。米国大統領選も本格化し、追加交渉を巡る動きは先送りの様相が濃くなってきた。ただ、米国は依然として追加交渉に対する意欲を持っており、予断を許さない状況は続く。日米両首脳が昨年9月に署名した日米共同声明では、協定発効から4カ月以内に「関税や他の貿易上の制約、サービス貿易や投資に係る障壁、その他の課題」の中から交渉範囲を決める協議を終える方針を示している。このうち、関税について日本政府は「自動車、自動車部品以外は想定をしていない」(交渉を担った茂木敏充外相)としているが、関税交渉が始まれば双方の攻めと守りの品目の駆け引きは必至。農業分野が除外されるかは不透明だ。両政府は協議を「複数回行っている」(同)。ただ、交渉関係者によると日程調整などにとどまり、交渉範囲を具体化させる協議には至っていないとみられる。正式な予備協議は電話での対応も想定している。新型コロナも協議に影響を与えつつある。日本では感染者が1万人を超えたが、米国は世界で最も深刻で感染者は70万人、死者は4万人を超えた。首都ワシントンの外出制限で、交渉を担う米通商代表部(USTR)は担当者が出勤できないといい、在米日本大使館では感染者も出ている。日本政府関係者は「この1、2カ月は接触すらできていないのではないか」としている。交渉範囲を決める予備協議が進んだとしても、実際の交渉は、米国大統領選以降との見方が強い。既に選挙戦は本格化。トランプ大統領と、バイデン前副大統領の一騎打ちの構図が固まり、投開票まで半年余りとなっている。とはいえ、米政府は追加交渉への意欲は失っていない。3月31日に公表した外国貿易障壁報告書では日米協定を成果として誇示した一方、「全ての農産品をカバーしていない」と指摘。追加交渉への意欲を表明した。日本の米や豚肉の輸入制度などにも改めて懸念を示している。

*6-3:https://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2020042502000153.html (東京新聞社説 2020年4月25日) 種苗法改正 農業崩壊にならないか
 国の登録品種から農家が種取りや株分けをすることを禁ずる改正種苗法案が、大型連休明けにも国会の審議に入る。国民の命を育む食料の問題だ。コロナ禍のどさくさ紛れの通過は、許されない。現行の種苗法により、農産物の新しい品種を生み出した人や企業は、国に品種登録をすれば、「育成者権」が認められ、著作権同様、保護される。ただし、農家が種取りや株分けをしながら繰り返し作物を育てる自家増殖は、「農民の権利」として例外的に容認されてきた。それを一律禁止にするのが「改正」の趣旨である。原則容認から百八十度の大転換だ。優良なブドウやイチゴの登録品種が、海外に持ち出されにくくするためだ、と農林水産省は主張する。果たして有効な手段だろうか。もとより現政権は、農業に市場原理を持ち込むことに熱心だ。米や麦などの優良品種の作出を都道府県に義務付けた主要農作物種子法は一昨年、「民間の開発意欲を阻害する」という理由で廃止。軌を一にして農業競争力強化支援法が施行され、国や都道府県の試験研究機関が保有する種苗に関する知見を、海外企業も含む民間企業へ提供するよう求めている。そこへ追い打ちをかけるのが、種苗法の改正だ。対象となる登録品種は、今のところ国内で売られている種子の5%にすぎず、農家への影響は限定的だと農水省は言う。だが、そんなことはない。すでに種子法廃止などにより、公共種子の開発が後退し、民間種子の台頭が進んでいる。その上、自家増殖が禁止になれば、農家は許諾料を支払うか、ゲノム編集品種を含む民間の高価な種を毎年、購入せざるを得なくなる。死活問題だ。小農の離農は進み、田畑は荒れる。自給率のさらなる低下に拍車をかけることになるだろう。在来種だと思って育てていたものが実は登録品種だったというのも、よくあることだ。在来種を育てる農家は絶えて、農産物の多様性は失われ、消費者は選択肢を奪われる。そもそも、優良品種の流出防止なら、海外でも品種登録をした方が有効なのではないか。何のための「改正」なのか。種子法は、衆参合わせてわずか十二時間の審議で廃止になった。種苗法改正も国民の命をつなぐ食料供給の根幹にかかわる問題だ。今度こそ、十二分に議論を尽くしてもらいたい。

*7-1:https://www.agrinews.co.jp/p50617.html (日本農業新聞 2020年4月24日) 北海道がコロナ対策 農家に働き手仲介 サイトで休業者に
 北海道は23日、農家に働き手を仲介するインターネットサイトを立ち上げた。農業など人手確保に悩む職種が求人情報を掲示し、ホテルや飲食店の休業などで短期的な仕事を求める人を結び付ける仕組み。新型コロナウイルス感染拡大の影響で深刻化している農家の人手不足解消を支援する。
●SNSで需要喚起
 立ち上げたのは「北海道短期おしごと情報サイト」。道が同日発表した新型コロナの感染拡大に伴う新たな経済対策の柱の一つとなる。道内では、観光客の激減で多くのホテルや飲食店などが従業員の雇用を続けるのが厳しい状況にある。一方、農業は定植などの繁忙期にもかかわらず、外国人技能実習生が入国できない産地があるなど、運送業や小売業などとともに人手不足に拍車が掛かっている。サイトでは人手不足に悩む道内の農家や企業などが、募集する仕事の場所や内容、時給、連絡先といった情報を登録する。登録するのは農業や運送業、小売業などを想定している。募集対象は6カ月以内の短期のアルバイト。情報は誰でも確認ができ、求人者に連絡を取り調整する。道が同日発表した新たな経済対策には、道産食品の消費拡大策も盛り込まれた。牛乳・乳製品については、小・中学校の臨時休校などで生乳需給が緩和し、乳製品の保管が限界に達してきている状況だ。そこで「SОS! 牛乳チャレンジ」と題した需要の喚起策に取り組む。牛乳を飲んでいる姿をインターネット交流サイト(SNS)に投稿し、フォロワーに牛乳の消費を呼び掛けてもらうという試み。牛乳が苦手な場合は、飲むヨーグルトやチーズでもよいという。同日開いた臨時の記者会見で鈴木直道知事は「私も近いうちに牛乳をがぶがぶ飲んで投稿したい」と話し、積極的な投稿を呼び掛けた。

*7-2:https://www.agrinews.co.jp/p50618.html (日本農業新聞 2020年4月24日) 育てた園地 荒れさせぬ 元技能実習生を後継者に 「大切なのは人柄」 鹿児島県鹿屋市の梅農家 堀之内辰男さん
 鹿児島県鹿屋市の堀之内辰男さん(80)は、梅園地を中国人の岳淑芬さん(31)と劉亜男さん(30)に託す準備を進めている。2人は堀之内さんが10年以上前に受け入れた元技能実習生。後継者が見つからず悩んでいた堀之内さんのため、在留資格を取って日本に定住した。堀之内さんは「自分が造った園地を地域に残せる」と安堵(あんど)する。「はい、堀之内農園です」。事務所の電話に滑らかな日本語で応える。パソコンに向かえば売り上げや仕入れデータの入力作業もこなす。営業部長である岳さんの仕事だ。加工部長の劉さんは現場で農作業の指示を出す。日本人には日本語で、中国人実習生には中国語で。剪定(せんてい)などの手本を見せていく。どちらの仕事も以前は堀之内さんだけで担っていた。引退を見据え、2人に仕事を引き継いだ。「まだ危なっかしいところはあるけど、あと1、2年で任せられるかな」。堀之内さんは手応えを感じ、笑みを見せる。2人は2007年、堀之内農園に技能実習生としてやってきた。当時、堀之内さんは漁師をやめて就農したばかり。営農技術は他の農家ほど教えられない。代わりに2人の日本語習得に力を入れた。会話の練習をしたり、日本語検定の問題集を買いそろえたり。日本語学校に通って取得する日本語検定1級の資格が取れるほど、語学力は向上。周囲を驚かせた。当時は技能実習生への不当な扱いが問題になっていた時期。岳さんの同期実習生には逃げ出してしまった人もいる。「自分たちは本当に恵まれていた」。2人は感謝する。中国に帰ってからも堀之内さんと電話で近況を話していた岳さん。70歳を超えた堀之内さんに後継者がおらず、困っていることを知った。岳さんは迷った。通訳や翻訳の仕事に就きたかったからだ。それでも「恩返しをしたい」という気持ちが捨てられなかった。悩んだ末に一緒に研修を受けた劉さんを誘い、日本行きを決めた。二人は留学の在留資格を取り、私立鹿児島国際大学に進学した。国内の大学を卒業していると就労の許可も下りやすい。留学中に仕事をしてもらうことはできないが、堀之内さんは生活支援をしながら卒業を待った。二人が大学を卒業して今年で4年。岳さんは「技術・人文知識・国際業務」と書かれたカードを得意げに掲げる。専門的な知識を持った人だけが得られる在留資格だ。これまでは毎年更新が必要だったが、長く働いている実績から3年に1度で済むようになった。「日本農業の後継者として認めてもらっているようでうれしい」と岳さんは笑う。外国人を後継者にすることに周囲から批判や懸念の声もあった。だが、自分が造った園地を残すために迷わず進んできた。「正義感があって、ちゃんとした人柄なら民族なんて関係ない」。二人の働きぶりに堀之内さんは確信する。

*7-3:https://www.agrinews.co.jp/p50644.html (日本農業新聞 2020年4月27日) コロナ禍 技能実習生が来日不能 代替雇用の農家支援 時給や宿泊・保険…JA・学生援農も 農水省検討
 農水省は、新型コロナウイルス感染拡大の影響で外国人技能実習生らが来日できず、人材確保が難航している農家らの支援に乗り出す。代替人材を雇い、労賃などが当初の予定を上回った場合、掛かり増し分を一定水準で補助する考え。学生やJA職員が農家の援農に出向く場合にかかる経費なども補助対象とする。農家の生産規模の維持につなげる方針だ。来日の見通しが立たない農業関係の技能実習生や特定技能外国人は1900人に上り、人材確保は急務の課題となっている。同省は、2020年度補正予算案に「農業労働力確保緊急支援事業」として46億4600万円を計上。具体的な支援内容を固めた。予定していた技能実習生らが来日できなくなった農家や法人などを対象に、新たに募集するなどして代替人材を雇い入れる場合の掛かり増し経費を補助する。労賃は、当初予定を上回った額に対して、1時間500円を上限に補助する方針。交通費や宿泊費、保険料も補助の対象とする方向で検討している。4月1日までさかのぼって、支援申請できるようにする予定だ。人材募集にかかる経費も支援の対象となる。農家やJAなどが人材マッチングサイトに情報を掲載したり、ちらしを作ったりする際の費用を半額以内で補助する。技能実習生らの代わりに、学生やJA職員らが援農する際の費用も支援する。農業高校や農業大学校、JAなどが対象。実習として作業を手伝ったり、業務として現場に出向いたりする場合の交通費や宿泊費、保険料を実費で補助する。JAが職員に手当を支払った場合は、1日4000円程度を上限に支援する考えだ。一連の支援策の申請窓口は、全国農業会議所となる予定。具体的な申請方法は現在、調整している。詳細は今後、同省ホームページで動画を配信するなどして解説する。

<新型コロナの検査と治療>
PS(2020年4月27日追加):*8-1-1のように、新型コロナに感染しているか否かを判断するPCR検査の結果がわかるまでに、4月初旬は1.8日を要したが4月18日時点には7.3日と延び、発症から7日以降に症状が悪化することから結果が分かった時には手遅れになっている。また、その間、陽性と知らずに市中にいる結果、潜在的感染者を増やすのに“貢献(皮肉)”もしている。こう書く理由は、検査の能力不足と言われているが、民間検査会社はPCR検査の能力に余裕がある上、*8-2-1のように、横浜市立大の研究チームが2020年3月9日に抗体を検出する新しい検査法を開発して15~30分で結果が分かるようになっている。さらに、*8-2-2のように、米国のAbbott社が開発した新型コロナの新検査法は、結果が出るまで5分で検査機関への往復も不要だ。また、*8-2-3のように、島津製作所が、2020年4月20日、検査時間を半分にする「新型コロナウイルス検出試薬キット」を発売もしている。
 にもかかわらず、厚労省は、*8-1-2のように、2020年3月4日、「検査料の点数の取扱いについて」「新型コロナウイルス核酸検出の保険適用に伴う行政検査の取扱いについて」などを発出し、2020年3月6日からPCR検査のみを保険適用にしたが、「検査キット原価+防護服原価+検査活動」の合計である診療報酬に13,500円(1350点)、単なる郵送費に4,500円(1800点-1350点=450点)を設定しており、単なる郵送と比較して知識と訓練を要し危険を伴う検査活動に対して低すぎる単価を設定した。さらに、自己負担分や補助金額の処理は付加価値のない複雑さであり、「PCR検査を効率的に行うための会議」で、さらに時間がかかるようにした。つまり、厚労省は、新型コロナが市中に蔓延し始めてもクラスター潰しに専念し、効率的な検査と治療をする気はなかったと言わざるを得ないのだ。
 さらに、治療については、*8-3のアビガンが有力候補だが、未だに「申請後の審査の期間を短縮して年内の承認をめざすが、緊急的な対応での特例扱いでどこまで早められるかは未知数」などと、ぼけたことを言っている。アビガンが胎児に奇形が生じる可能性があることについては、卵子は生まれた時から持っているものなので、出産を予定する女性と妊娠中の女性が使わなければよいのであって、その他の人は使ってよい。また、男性の精子は次々と作って捨てているものなので、アビガンを使ってすぐに子づくりをしなければよく、「使い方」は使用上の注意に書いてある筈だ。
 このようにして、検査も治療もやろうと思えばできたのにせず、新型コロナを市中に蔓延させ、緊急事態宣言で経済活動を止め、その代償として、*9-1のような25兆円超にものぼる補正予算案を提出して財源を全て国債で賄うことになったのであるため、この責任は屁理屈を付けて国民に押し付けるのではなく、政治と行政で取るべきだ。そのため、解雇と再雇用の約束がセットになっていても失業保険を給付したり、*9-2の雇用調整助成金も失業保険から支払ったりすればよいだろう。

   
  2020.4.6 Our World in Date     中日新聞     2020.4.27佐賀新聞

(図の説明:左図のように、人口100万人あたりの日本の新型コロナ検査数は非常に少なく、これでは蔓延するのが当たり前で、真の新型コロナの感染者数も死亡者数も不明だ。また、「医療崩壊を防ぐ」と連呼しつつ、重症者を増やして感染者と医療従事者を犠牲にし、中央の図の緊急事態宣言によって国民に不便を強いた上、経済活動の停止で収入の道を絶った。それに対し、右図のように、国債を原資とした25兆円の経済対策を行うそうだが、政府の失敗の責任を国民への請求書の押し付けで解決する体質は、必ず変えなければならない)

*8-1-1:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO58426540T20C20A4MM8000/?n_cid=NMAIL006_20200424_A (日経新聞 2020/4/23) 滞るコロナ検査、結果まで1週間 民間委託拡大カギ
 新型コロナウイルスに感染しているかどうかを判断するPCR検査の体制が感染者の拡大傾向に追いつけていない。検査の実施が滞っており、発症から陽性が確定するまでの期間が1週間と長期化し始めた。検査の機能不全を背景にした陽性判明の遅れは重症化リスクを高めるほか、潜在的な感染者と他者との接触機会を増やしかねない。医療崩壊を避けながら感染拡大を防ぐためにも、国による民間への検査委託の拡大や簡易検査の後押しが必要だ。日本経済新聞がコンサルティング会社、ジャッグジャパン(東京)が収集した陽性事例のデータを基に分析したところ、発熱やせきなど新型コロナウイルスの症状が出てから検査で陽性が確定するまでの期間は、7日移動平均で4月18日時点が7.3日と4月初旬から1.8日延びた。感染者数の拡大が続き、検査が間に合わずに確定が遅れている可能性がある。厚生労働省は、重症化する人は発症から7日以降に肺炎症状が悪化するとしている。検査体制強化が課題となるなか、能力に余裕がある民間への検体検査の委託拡大が急務となっている。4月中旬に入ってからのPCR検査の実施数は、全国で1日当たり8000件前後が続く。うち民間の検査会社による受託件数は2000件ほどで、残りは国立感染症研究所(東京・新宿)や地方衛生研究所などの公的機関が担っている。民間検査数は2月下旬まではゼロの日もあった。みらかホールディングス(HD)など国内の主要な検査会社の検査能力の合計は1日当たり約4000件と見られており、能力を活用できていない。民間シフトを阻む一因にはスピードよりも実績を重んじる医療界の慣行がうかがえる。各自治体の指定病院は、検査を民間ではなく地方衛生研究所に委ねる傾向が目立つ。「感染症は国が担うものだという意識が強い」(検査会社)。長野では県が優先度に応じて民間か行政かの検査委託先を決める方針だが、こうした調整に乗り出す自治体はまだ少ない。民間が主に担ってきた軽症者の検体検査が増えにくい問題もある。現状では、熱が出て気分が悪いといった程度ではすぐには検査を受けられない。京都大学病院は15日、院内感染予防の視点から「無症状であっても公費でPCR検査を受けられるようにすべきだ」との声明を出した。民間側もPCR装置の調達に苦戦している。世界中で新型コロナの感染拡大が続いており「装置の争奪戦になっている」(国内検査会社)。香港や韓国では簡易キットも駆使した検査の大量実施が進む。日本でも楽天が20日、法人向けに新型コロナウイルスの感染の可能性が分かる自宅でできる検査キットを発売した。ただ日本医師会が22日に「採取の方法が不適切であれば結果は信頼できず混乱を招く」との意見を出すなど、医師を介さない検査は普及に壁がある。安倍晋三首相は6日、PCR検査の1日当たりの能力を2万件に倍増すると表明したが、進捗は遅く政府でも危機感が高まりつつある。「全国で同様の取り組みが広がるよう支援する」。加藤勝信厚労相は23日、東京都新宿区で地域の医師会が設置したPCR検査センターを視察した。検体検査はみらか傘下のエスアールエルに委託する。自民党の塩崎恭久元厚労相は「2月ごろから民間の検査機関を活用すべきだとの声は医療現場などにあった。政府がクラスター(感染者集団)潰しを重視しすぎて検査体制の強化が後手に回った」と指摘している。韓国やイタリアは、当初から大量の検査件数をこなした結果、軽症者が病院に押し寄せて医療キャパシティーがパンクしたという経緯があった。下表は各国の検査数、感染者数、死亡者数の比較だ。見れば分かるが他の国でも検査数と死亡者数はあまり相関性がない。検査対象の絞り込みは、社会全体の感染のフェーズに適した形で行うべきだ。しかし、その際にも検査のメリットとデメリットの冷静な見極めが必要なのは変わりない。「検査用キットや防護具、熟練した臨床検査技師などのリソースは有限で、すぐにそれらを急激に増やすことはできない。医師が病歴や身体所見などの情報から的確に絞り込んだ感染疑いのある人を対象とし、必要な検査を精度と安全性が確保できる環境で十分に行い、精度が担保できない環境での不必要な検査を乱発しないことが、検査が社会全体にもたらすアウトカム(結果)を上げるのには重要だ」と、日本臨床検査医学会名誉会員で日本感染症学会日本環境感染学会の評議員も務める、上尾中央総合病院の熊坂一成臨床検査科科長兼感染制御室室長は指摘する。新型コロナウイルスパンデミックは、日本と世界が持つ検査や健診についての認知のゆがみを浮き彫りにした。私たちは日頃から健診・検査とどう向き合えばいいのか。特集『健康診断のホント』全18回を通じて詳しく見ていこう。

*8-1-2:https://gemmed.ghc-j.com/?p=32688 (GemMed 2020.3.5) 新型コロナウイルス検出のためのPCR検査、3月6日から保険適用―厚労省
目次
○1 検体の郵送等状況などに応じて、1800点または1350点を算定
○2 都道府県等から「患者の自己負担分」を公費補助
○3 「PCR検査を効率的に行うための会議」を設置し、地域で実施可能な検査数等把握を
 新型コロナウイルス感染症疑い患者への診断、新型コロナウイルス感染症で入院している患者の退院可能性を判断するための検査(PCR)を3月6日から保険適用し、医師は「保健所の判断」を待たずに検査を実施することが可能とする。本検査は、感染症の発生状況、動向、原因究明のための積極的疫学調査に用いることはできない―。診療報酬上、▼検査所等の検体を郵送する場合には1800点(1万8000円)▼それ以外の場合には1350点(1万3500円)―とするが、「都道府県から医療機関等に検査を委託するもの」と取り扱い、患者の自己負担は求めないこととする―。なお、当面は院内感染防止・検査の精度管理の観点から、▼帰国者・接触者外来▼帰国者・接触者外来と同様の機能を持つと都道府県が認めた医療機関―においてPCR検査を実施することとする―。厚生労働省は3月4日に通知「検査料の点数の取扱いについて」や通知「新型コロナウイルス核酸検出の保険適用に伴う行政検査の取扱いについて」などを発出し、こうした点を明らかにしました。
●検体の郵送等状況などに応じて、1800点または1350点を算定
 中華人民共和国武漢市で発生したとみられる新型コロナウイルスが本邦でも猛威を振るい、各地で患者クラスター(集団感染)が生じ、残念なことに死亡例も発生しています。安倍晋三内閣総理大臣が全国の小学校・中学校・高等学校に休校を要請したり、イベント等の開催自粛要請を行うなど、国民生活にも大きな影響が出ており、政府は2月25日に政府は2月25日に「新型コロナウイルス感染症対策の基本方針」を決定。医療体制に関し、▼患者数増等を見据え、医療機関における病床や人工呼吸器等の確保を進める▼患者数が大幅に増えた状況では、一般医療機関の外来で、診療時間や動線を区分するなどの感染対策を講じた上で、新型コロナウイルス感染疑い患者を受け入れる▼高齢者や 基礎疾患を有する者では、重症化しやすいことを念頭におき、より早期・適切な受診につなげる▼風邪症状がない高齢者や基礎疾患を有する者等に対する継続的な医療・投薬等については、感染防止の観点から、「電話による診療等により処方箋を発行する」など、極力、医療機関を受診しなくてもよい体制を構築する―などの考えを明確化しています。そうした中で今般、新型コロナウイルス感染症を鑑別するための検査が保険適用されるに至ったものです。まず、「新型コロナウイルス感染症が疑われる患者」に対する診断の目的、あるいは「新型コロナウイルス感染症治療で入院している患者」の退院可能性判断の目的のために、患者の▼喀痰▼気道吸引液▼肺胞洗浄液▼咽頭拭い液▼鼻腔吸引液▼鼻腔拭い液―からの検体を用いて、新型コロナウイルス検出の薬事承認・認証を得ている体外診断用医薬品(「病原体検出マニュアル 2019-nCoV」(国立感染症研究所)に記載、あるいはこれに準じたものに限る)で実施した場合に、次のように診療報酬を算定できます。
(1)検体を、「感染性物質の輸送規則に関するガイダンス 2013-14年版」(国立感染症研究所)記載のカテゴリーB感染性物質の規定に従い、検体を採取した医療機関以外の施設へ輸送して、検査を委託して実施した場合には1800点(D023【微生物核酸同定・定量検査】の12「SARSコロナウイルス核酸検出」(450点)の4回分)
  →この場合、レセプトの摘要欄に検査実施施設名を記載する
(2)それ以外の場合には1350点(同の3回分)
「新型コロナウイルス感染症が疑われる患者」の診断目的で検査を実施した場合には、診断確定までに(1)(2)に沿った点数を1回に限り算定できます。ただし、発症後に「陰性」であったものの、「新型コロナウイルス感染症以外の診断がつかない」場合には、さらに1回、(1)(2)の沿った点数を算定できます。なお「検査が必要と判断した医学的根拠」をレセプトの摘要欄に記載することが必要です。また「新型コロナウイルス感染症治療で入院している患者」の退院可能性判断目的で検査を実施した場合には、1回に限り(1)(2)に沿った点数を算定できます。この場合には検査実施の日付とその結果をレセプトの摘要欄に記載することが求められます。
●都道府県等から「患者の自己負担分」を公費補助
 ところで、医療保険は「公費」「保険料」「患者負担」の3要素を財源としており、患者負担は年齢・収入によって1-3割に設定されています。患者負担徴収には「応益負担」(受益に応じた負担を行う)や「患者に医療保険財源は有限である」ことを知らせるなどの意味合いがあり、医療機関が自己判断で減免することは認められません。しかし、今般、厚労省は「帰国者・接触者外来を設置している医療機関等で実施する『保険適用された検査』は、都道府県から医療機関等に行政検査を委託するもの」と取り扱い、「患者負担を求めない」こととする考えを明確にしました。もっとも、その際には、医療機関で「患者負担分」の収入が減少してしまうため、減少分について「公的な補助」が行われます。
具体的には、次のような流れとなります。
▽感染症指定医療機関等(▼感染症指定医療機関▼それ以外で都道府県知事の勧告によって新型コロナウイルス感染症患者を入院させる医療機関▼「帰国者・接触者外来を置く医療機関」「帰国者・接触者外来と同様の機能を有すると都道府県が認めた医療機関」―)が、都道府県等と委託契約を結ぶ(契約が3月6日以降となっても、3月6日から適用)
▽都道府県等から医療機関等を経由して、患者に対しPCR検査にかかる患者負担額相当を支給する(患者負担と相殺することが認められ、この場合、事実上「患者負担ゼロ」となる)
【補助金額】
▽3割負担者
・6歳(義務教育就学)から70歳まで・70歳以上のうち「現役並み所得」者
上記区分に沿って(1)では5850円、(2)では4500円
▽2割負担者
・6歳未満(義務教育就学前)・70-74歳
上記区分に沿って(1)では3900円、(2)では3000円
▽1割負担者
・75歳以上
上記区分に沿って(1)では1950円、(2)では1500円
●「PCR検査を効率的に行うための会議」を設置し、地域で実施可能な検査数等把握を
 なお厚労省は、検査体制の充実を求めるとともに、検査実施体制の把握・調整等を行うための会議体設置を都道府県等に求めています。検査実施体制の把握・調整等を行うための会議体には、▼医師会▼病院団体▼感染症指定医療機関▼地方衛生研究所▼衛生検査所協会▼帰国者・接触者外来を設置する医療機関―などが参加。「地域でPCR検査実施が可能な機関(医療機関も含む)」「各機関で1日当たり実施可能な検査数」を把握したうえで、地域内で効率的にPCR検査を実施できるような対策・方向を検討し、関係者間で調整することが求められます。例えば「受診者が一部機関に偏ってしまい、検査が実施できない」といった事態を避けることが狙いです。こうした情報は、会議体から都道府県に、都道府県から厚労省に提供され、効率的な検査実施に向けたアドバイスにつなげられます。

*8-2-1:https://www.tokyo-np.co.jp/article/kanagawa/list/202003/CK2020031002000245.html (東京新聞 2020年3月10日) <新型コロナ>血清から抗体検出 横浜市立大が新検査法開発
 横浜市立大の研究チームは九日、新型コロナウイルス感染の新検査法を開発したと発表した。血液から分離した血清を調べて、ウイルスに対抗して免疫がつくる抗体を検出する仕組み。検査キットが実用化されれば十五~三十分で結果が分かる。外部に委託せず、病院内で検査を行えるようになることが期待される。チームが新検査法を感染が分かっている患者六人に実施したところ、いずれも陽性反応が確認された。感染早期は抗体が見つかりにくいため、発症から七~十日経過した患者に有効という。現在行われているのは、遺伝子から感染を調べるPCR検査で、結果が出るまでに四~六時間程度待つ必要がある。病院から外部に検体を送る手間なども掛かるため、多くの検査を行うのが難しくなっている。

*8-2-2:https://jp.techcrunch.com/2020/03/28/2020-03-27-a-new-fda-authorized-covid-19-test-doesnt-need-a-lab-and-can-produce-results-in-just-5-minutes/ (TC 2020年3月28日) 5分間で陽性がわかるAbbottの新型コロナ検査、米食品医薬局が新たに認可
 ヘルスケアテクノロジーのAbbottが開発した新型コロナウイルス(COVID-19)の新検査方法は、結果が出るまでの時間がこれまでで最速で、しかもその場でできるため検査機関への往復が必要がない。現在、全世界的なパンデミックを起こしている新型コロナウイルスを検査するこの方法は、米国のFDA(食品医薬局)から緊急時使用許可を受けており、来週から検査の生産を開始する。1日に5万件を検査できる。このAbbott ID NOW COVID-19という検査は、診断プラットフォームAbbott ID NOWを使用する。検査装置は小さな台所用品ほどのサイズで、陽性の結果は5分間、陰性は15分間以下で出る。臨床の現場や診療所などでも検査できるようになること、また検査とその結果が出るまでの時間が短くなることから、非常に有用な手段になる。他の国で使われてきた高速検査や、結果の精度を確認しないFDAの新しいガイドラインによる高速検査方法と違い、この検査は患者から採取した唾液や粘液を使う分子検査法を利用する。従って患者の体内にあるウイルスのRNAを同定でき、ウイルスの実際の存在を検出できる。これに対して、血液中に抗体を探す方法は、すでにウイルスのいない回復した患者の血液中の抗体も陽性として見つけるかもしれない。この検査の利用可能性に関する良いニュースは、検査に使用するAbbottのハードウェアID NOWが、米国ではすでに臨床現場即時遺伝子検査用として広く普及していることだ。ID NOWは医師のオフィスや救急病院、集中治療室などの医療施設に設置されていることが多い。Abbottによると、この新しい迅速検査と3月18日にFDAの緊急時使用認可を受けた施設での検査と合わせて4月には500万件の検査が可能になるという。検査が、新型コロナウイルスによるパンデミックに対処する上で初期の問題の1つだ。一定人口あたりの検査実施数で、他国に後れをとっていた。そのためウイルスの拡散とそれによる呼吸器疾患を正確に調べることもできなかった。患者は、検査まで待つ日数が長すぎると不満の声をあげており、接触の可能性が高くてそれらしき症状が出ていても、これまでは迅速な対応を受けることができなかった。

*8-2-3:https://www.shimadzu.co.jp/news/press/zfdyn69049lnnr8r.html (SHIMADZU 2020年4月10日) 煩雑な手作業を省き、検査時間を半分に、「新型コロナウイルス検出試薬キット」を発売
 島津製作所は、4月20日にかねてより開発を進めていた「新型コロナウイルス検出試薬キット」を発売いたします。当面は国内のみの販売となりますが、5月以降の海外輸出も視野に入れて準備を進めてまいります。現状の遺伝子増幅法(PCR法)による新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の検出では、鼻咽頭拭い液などの試料(検体)からRNAを抽出して精製する煩雑な作業が必要です。これが多数の試料を迅速に検査する際の妨げになってきました。本キットの使用によってRNAの抽出・精製工程が省けるため、検査に要する人手を大幅に削減でき、かつ2時間以上かかっていたPCR検査の全工程を従来の半分である約1時間に短縮できます。96検体用PCR装置を用いて、96検体を検査した場合でも1時間半以内で行えます。また、手作業を行わずに済むため、人為的なミスの防止にもつながります。「新型コロナウイルス検出試薬キット」は、当社独自のAmpdirect技術※1 をベースに国立感染症研究所のマニュアル※2 に沿って開発しました。同技術は「生体試料に含まれるたんぱく質や多糖類などのPCR阻害物質の作用を抑制できるため、DNAやRNAを抽出・精製することなく、生体試料をPCRの反応液に直接添加できる」というものです。島津製作所は、これまでにAmpdirect技術を用いて、腸管出血性大腸菌やサルモネラ属菌、赤痢菌、ノロウイルスなどの病原体検出試薬を開発・販売しており、ここで培った技術を応用して新型コロナウイルス検出試薬の開発を行いました。
※1 Ampdirectは島津製作所の登録商標です。
※2 国立感染症研究所 「病原体検出マニュアル 2019-nCoV」(以下略)

*8-3:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200427&ng=DGKKZO58518390W0A420C2NN1000 (日経新聞 2020.4.27) アビガン早期承認 未知数、スピード感で米欧に後れ 厚労省、特例の活用鈍く
 新型コロナウイルス感染症の治療薬として期待が高まるアビガンの国内での早期承認が課題となっている。厚生労働省は申請後の審査の期間を短縮して年内の承認をめざすが、緊急的な対応での特例扱いでどこまで早められるかは未知数だ。もともと米欧などに比べ薬を現場で使えるようにするまでの仕組みが硬直的で、スピード感が劣る問題もある。アビガンは富士フイルム富山化学が抗インフルエンザウイルス薬として2014年に製造・販売の承認を得た。新型インフルの流行を念頭にした備蓄用で一般に流通はしていない。今の備蓄は200万人分。新型コロナでは1人の治療にインフルの3倍の量が必要とされ、コロナ患者では約70万人分に相当する。中国でいち早く新型コロナで治療効果を発揮した例がある。日本は現在100人規模の治験を進めており、政府はアビガンの備蓄を20年度中に現在の最大3倍にあたるコロナ患者200万人分に増やす方針だ。富士フイルムは設備の増強で9月には生産量を月30万人分に引き上げる。薬が患者に使えるようになるまでには大きく2つの段階がある。安全性や有効性を臨床試験で確かめる「治験」と、製薬会社の申請を受けて治験の結果を検証・評価する「承認審査」だ。市場投入を急ぐには承認審査の短縮が鍵を握る。インフル薬として承認済みのアビガンも、新型コロナでは投与量が3倍と大幅に異なるため安全性などを改めて確かめる必要がある。6月末までに順調に治験が終われば申請手続きに入る。日本では通常、承認審査に1年かかる。厚労省は13日、医薬品審査で新型コロナの治療薬を最優先に進めると明らかにした。審査期間を最大限短縮する特例の一つが15年に創設した「先駆け審査指定制度」。画期的な薬が開発された場合などに6カ月をメドに短縮できる。18年2月に塩野義製薬の抗インフルエンザ薬「ゾフルーザ」を申請から4カ月程度で承認した。アビガンは先駆けの指定を受けていない。加藤勝信厚労相は21日、新型コロナ治療薬の承認審査を「できる限り短期で対応したい」と述べた。先駆けの場合の6カ月に「こだわるつもりは全くない」とも語った。念頭にあるのは医薬品医療機器法に基づく措置だ。希少疾病用の医薬品など特に必要性が高いと認めた場合に最優先で審査できると定める。厚労省はこの特例を活用する構えだが、どこまで短縮できるかは未知数だ。米欧はスピード感と柔軟性がある。米国は国家の安全に重大な影響がある緊急時は米食品医薬品局(FDA)が未承認の医薬品でも使用を認める仕組みがある。通常は承認までに6カ月程度かかる薬でも短期間で使えるようになる。薬の場合は過去は2カ月程度の例があった。今回は約1カ月とみられ、検査キットなどはさらに早い。豚由来の新型インフルエンザが09年に流行した時はPCR検査キットを6日で許可した。日本との保険制度の違いなどから既存薬も別の病気の治療に使いやすい。米国がこうした対応をとるのは、炭疽(たんそ)菌などバイオテロ対策が念頭にあったためだ。テロや戦争という非常時には安全を最優先する名目で異例の対応も容認されやすい。今回の新型コロナへの対応を巡りFDAは3月に検査キットの申請を受理してから24時間以内で承認した。通常は数週間かかる手続きだという。欧州連合(EU)で医薬品を審査する欧州医薬品庁(EMA)も緊急承認の手続きがある。通常約210日の承認審査を約70日にする制度だ。一般的に医薬品の承認を規制当局に申請する場合、有効性や安全性、臨床試験などのデータをそろえて提出する必要がある。資料一式で10万ページ以上にもなる膨大な量だ。EMAの緊急承認では製薬会社が個々のデータができるとその都度、提出して審査を受ける。同時並行で審査が進むため、審査期間は大幅に短くなる。緊急対応が迫られる日本はアビガンの投与を望む患者らの不満が高まる。承認されない限りは研究目的での利用に限られる。病院が審査会などを開いて投与を認める手続きをとる必要がある。福岡市は国家戦略特区を活用してこの手続きを省略し、医師の判断で軽症段階から投与できるように厚労省に要望した。日本医師会からはアビガンの早期承認を求める声が上がる。政府内では緊急時に機動的に対応しない厚労省への不満は多い。厚労省が早期の承認に慎重な背景には1970~80年代の薬害エイズ事件の苦い記憶がある。アビガンは胎児に奇形が生じる可能性が指摘されており、副作用への目配りは欠かせない。同時に、いまは危機に備えた対応が迫られている。

*9-1:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/516805 (佐賀新聞 2020.4.27) 25兆円超の補正予算案提出、コロナ対策、30日成立へ
 政府は27日、2020年度補正予算案を国会に提出した。新型コロナウイルスの緊急経済対策の実施に向け、歳出総額25兆6914億円を計上。全国民に現金10万円を給付するため、7日に一度決定した予算案を組み替え、8兆8857億円増額した。中小企業の資金繰り支援や医療体制の整備などの費用も計上し、財源は全て国債で賄う。与野党は30日に成立させる審議日程で合意している。補正予算案では、当初計画していた減収世帯への30万円給付を取り下げ、全国民に一律10万円を配る「特別定額給付金」を追加。事務経費を含めて12兆8803億円を計上した。早い自治体では、5月上旬にも支給を始める。中小企業に最大200万円、フリーランスを含む個人事業者に最大100万円を給付する「持続化給付金」には2兆3176億円を充てた。児童手当の受給世帯への子ども1人当たり1万円給付も手当てした。全世帯への布マスク配布や、人工呼吸器やマスクの生産支援を措置。新型コロナに効果が期待される新型インフルエンザ治療薬「アビガン」の備蓄確保や、ワクチン開発支援も盛り込んだ。自治体向けの臨時交付金1兆円や新型コロナ予備費1兆5千億円に加え、感染終息後の消費喚起策を反映した。民間投資も含めた緊急経済対策の事業規模は、10万円給付の予算を加算し、117兆1千億円となっている。

*9-2:https://www.tokyo-np.co.jp/article/ibaraki/list/202004/CK2020042702000128.html (東京新聞 2020年4月27日) <コロナ緊急事態>県内のハローワーク 雇用助成金相談が急増 経営者、休業と雇用維持に苦心
 新型コロナウイルスの感染拡大による休業要請や営業時間短縮を受け、県内のハローワークでは、休業などに伴う従業員への手当を国が助成する、雇用調整助成金を巡る相談が急増している。政府は二十五日、助成額をより強化することを発表。ただ、経営者側は、事業の存続と従業員の雇用の維持を両立させるため、対応に悩む。働く側からも雇用継続を不安視する相談が増えつつある。「外出自粛で新たな契約や受注が減っている。資金繰りが厳しい」。土浦市の土浦公共職業安定所(ハローワーク土浦)に、相談で訪れた市内の建築・不動産業の女性は、ため息交じりに状況をそう説明する。女性の会社は業務を続けるが、十人ほどの従業員の休みを週二日から四日に増やした。交代制で勤務してもらい、退社時間も一時間早めた。女性は「コロナが終息した後、すぐに通常業務に戻れるよう、従業員を確保しながら、会社の経営も守らなければならないのが難しい」と不安を口にした。ハローワーク土浦では、一日平均で三十件ほどの相談があり、女性のほかにも、経営者らが席で順番を待っていた。相談が増えているのは、中国人観光客の利用が多かったバスなどの観光業者らで、外出自粛が呼び掛けられるようになると、飲食や小売り、旅館業者にも広がっているという。雇用調整助成金は、雇用を守りながら事業を続けてもらう狙いで、新型コロナで休業や事業縮小を余儀なくされた経営者に対し、従業員に支払う休業手当を助成する。四月から六月までの休業などに適用される特例で、中小企業の場合、助成率を従来の三分の二から最大十割(一人一日当たり八千三百三十円を上限)に引き上げる。申請から一~二カ月程度で支給を受けられる。茨城労働局によると、相談は一月に開始し、二月上旬から増え始め、三月末からは急増。三月十日~四月十日の一カ月間で、県内の各ハローワークや労働局で約三千件の相談があった。また、茨城労働局は、求職状況の悪化も見込む。売り上げが落ち込んでいる飲食店のパート従業員などの在職者が、先行きの不安から求職相談するケースが増えている。一方で、求人募集する企業は減ってきているため、今後の有効求人倍率は減少するとみられる。茨城労働局職業安定課の担当者は「雇用情勢へのコロナの影響は、今後出てくるだろう」と話した。

<検査と治療を抑制した論理と新型コロナの蔓延>
PS(2020年4月29日追加):ダイヤモンドが、2020年4月13日、*10-1のように、日本がコロナでPCR検査抑制を決めた論理を図解付きで、「①検査を増やせば感染の封じ込めに繋がるわけではない」「②感度・特異度が100%の検査は存在しないため、検査前に有病率の高い集団になるよう絞り込むのが、医師の診察・保健所・帰国者・接触者外来などの相談窓口の経由だ」「③まず医師が診察して発熱などの症状がある人を抽出し、その中から胸部X線画像などで新型コロナを疑わせる所見が確認できた人を抽出し、ここに濃厚接触者や渡航歴から感染の疑いがある人も含めて検査してようやく陽性的中率が高まる」「④検査数をむやみに増やすと、検査が患者にもたらす利点よりエラーの問題の方が大きくなる」「⑤現状で治療法がない新型コロナ肺炎は、検査で陽性となっても治療法が陰性の人と同じ対症療法であるため、偽陽性者を収容することによって重症患者のためのベッドが塞がれる」「⑥新型コロナの確定検査として今のところ唯一のPCR検査にはすご腕技術者が必要で、個人防護具を毎回着替えることも必要」「⑦最も大事なのは重症化を抑えて死亡率を上げないことなので、重症の人を正しく絞り込んで医療キャパシティーを空け、経路調査と接触調査を行ってクラスターを突き止め、クラスターをつぶすために検査するということを主眼に置くべきだ」と説明している。そして、この論理は、メディアで何度も報道されたものと類似しているため、厚労省及び専門家会議の公式見解なのだろう。
 しかし、①⑤は、治療法は中国が早くから公表しており、*8-3のような治療薬もあるため、厚労省が屁理屈を言って承認しないのが問題なのである。また、②については、100%の検査は存在しないが、その対応法はあり、医師が必要と判断しても保健所・帰国者・接触者外来などの“相談窓口”が事務的に止めて、*10-3のような無念の孤独死の後に新型コロナ感染が判明しているようなことが問題なのである。より被害の大きいこちらに対する損害賠償は、厚労省(→国民の税金)がするつもりか?さらに、*10-2-4のように、厚労省は埼玉県で50代と70代の男性2人が自宅待機中に容体が悪化して死亡したことを受けて、4月28日、自宅療養中の患者に「表情・外見」「息苦しさ」「意識障害」などの12項目の症状がある場合は自治体に連絡することにしたそうだが、そのような状態になった時に自治体に連絡して時間を浪費することなどできないため、速やかに医師に相談すべきなのだ。さらに、③の要件は、重症の人とクラスターの中に入った無症状の人を混在させており、(もう長くは書かないが)科学的でも効率的でもないのだ。また、④⑤⑥⑦については、厚労省とその肝いりの専門家会議が、*10-2-1・*10-2-2・*10-2-3のように、何カ月も同じ後ろ向きのことを言っている間に、検査方法も*8-2-1、*8-2-2、*8-2-3のように短所を改善した方法が開発され、外国では承認されている。これが、日本の厚労省の問題点なのである。
 さらに、*10-4に、「⑧首相は、新型インフルエンザ治療薬『アビガン』の活用を進める方針も示し、1月末から2月の初めに新型コロナウイルスの治療に有望だとの報告があったと言及し、(患者)本人にぜひ希望していただき、医師に『自分は使いたい』と言ってほしい」と語った」「⑨立憲民主党など野党5党は事業者の家賃負担を支援する法案を衆院に共同提出」と書かれている。しかし、⑧については、私のいとこ(45歳、男性)が入院して酸素吸入した後も頭が割れるように痛かったので、ウイルス性髄膜炎なども心配して担当医にアビガンを使ってくれるよう頼んだが、担当医に「重症ではないので、あなたには使えない」と言われた。しかし、アビガンは、軽症時に使わなければ効果が低いため、承認されていないことが問題なのだ。また、⑨の家賃については、そもそも日本企業は、家賃を払うために働いているかと思うほど収益に占める家賃の割合が高く、それが日本国内で仕事をしにくくしている理由の一つだ。にもかかわらず、バブルで収益還元価値よりも高くなりすぎた家賃(不動産価格)を1990年代に苦労して修正したのを、再び上昇させて喜んでいたのが馬鹿というほかないのである。

   
 2020.4.6 Our World in Date    2020.4.13ダイヤモンド(*10-1より)

(図の説明:左図のように、日本の人口100万人あたりの新型コロナ検査数は著しく低い。また、中央の図のように、ダイヤモンドが、検査を抑制している理由を検査数を増やしても治療薬がないため死亡者は減らないからと説明している。さらに、右図のように、完璧な検査法はなく、新技術も見通し不良だとしている。しかし、このような硬直的な考え方が、新しい検査方法や治療薬の開発・実用化を妨害し、検査数の低下をもたらし、国民の命を無駄に失わせた上、膨大な経済対策を必要にさせているのだ)

*10-1:https://diamond.jp/articles/-/234135?page=5 (ダイヤモンド 2020.4.13) 日本がコロナで「PCR検査抑制」を決めたロジックを完全図解 
新型コロナウイルスの感染が世界に広がる中、注目を集めているのが“検査”だ。検査を増やせば感染の封じ込めにつながるという意見も多いが、そこには落とし穴がある。特集『健康診断のホント』(全18回)の#1では、日本が「PCR検査抑制」という戦略を採ったロジックを図解で分かりやすくお伝えする。 
●マイクロソフト創業者ビル・ゲイツ氏が、楽天の三木谷浩史氏が「検査」に関心
希望する全ての人に新型コロナウイルスの検査を――。このような使命に燃える経営者が増えている。米マイクロソフトの創業者ビル・ゲイツ氏は、自身の福祉財団で、米シアトル周辺地域の住民に向けて、家庭用の新型コロナ検査キットを配布する計画を発表した。自宅で鼻の内側を綿棒で拭って採取した検体をアマゾン配送網で検査センターに送ると、新型コロナへの感染の有無を調べられるという。日本でも「検査キット100万個を無料で配る」と孫正義・ソフトバンクグループ会長兼社長が発言(後に撤回)すれば、楽天の三木谷浩史会長兼社長も「日本は新型コロナ検査が遅れており、このままでは信頼感がなくなる。非対面やドライブスルーで検査し、まず初診はスマートフォンを使った遠隔医療を」と主張している。「検査を増やせば感染の実態が分かり、迅速な隔離と治療につなげられる。もっと検査を」という声は、日本でも世界でも、政治家、企業人、一般人の別を問わず多い。しかし、今回の新型コロナの流行や、感染者がどこにいるか分からない状態を生み出したその元凶の一端は、皮肉なことに「検査」にもあると考えられるのだ。新型コロナウイルスパンデミックは、日本と世界が持つ検査や健診についての認知のゆがみを浮き彫りにした。私たちは日頃から健診・検査とどう向き合えばいいのか。特集『健康診断のホント』全18回を通じて詳しく見ていこう。はなから頼りにされている検査だが、そもそもこの検査とは何か。感染している人を正しく陽性と判定する確率を「感度」、そして感染していない人を正しく陰性と判定する確率を「特異度」と呼ぶ。感度・特異度が100%の検査は存在しない。これが大前提だ。上図を見てほしい。左の20人中10人が感染している(有病率50%)状態で、感度70%、特異度90%の検査をしたとする。感染している10人のうち3人が陰性(偽陰性)、感染していない10人のうち1人が陽性(偽陽性)になる。この検査で陽性となった人の中で実際に感染している人の比率(陽性的中率)は88%だ。一方、検査を受ける人の数が多く有病率が9%と低い右の集団では、陽性的中率は41%に下がってしまった。陽性判定の半分以上が「ぬれぎぬ」を着せられたわけだ。病気の人を探したいのに当たりが半分以下では困る。ならば、検査前に有病率が高い集団になるよう絞り込まなければいけない。現在新型コロナの検査は医師の診察または保健所や帰国者・接触者外来などの相談窓口を経由して行うようになっている。「なかなか検査してくれない」とブーイングも上がるが、まさにこれは検査対象をフィルタリングしているのである。先の図のように、まず医師が診察し、全体の中から発熱などの症状がある人を抽出、さらにその中から胸部X線画像などで新型コロナを疑わせる所見が確認できた人を抽出する。ここに濃厚接触者や渡航歴から感染の疑いがある人も含めて検査。これでようやく陽性的中率が高まる。「検査を意味なく渋っている」のではない。病状のない人にまで検査を乱発すると見逃しやぬれぎぬを続出させるだけだ。正しい絞り込みなしに検査したところでまともに感染者は見つからない。検査の数を増やせば増やすほど偽陰性・偽陽性が増える。仮に1000万人に広げるとしよう。すると先の図で示した通り、有病率が全体の90%と高くとも、最大で360万人の偽陰性者、つまり「本当は感染しているのに誤った陰性結果に安心して野に放たれる人」をつくり出すことになる。ダイヤモンド・プリンセス号の乗客の検査でも、陰性証明書を手に安心して街に出た偽陰性の人から感染が広がったということがあった。これと同様のことが起きる。また「検査数をむやみに増やすと、検査が患者にもたらす利点よりエラーの問題の方が大きくなるのではないか」と東京大学公共政策大学院の鎌江伊三夫特任教授はみる。というのも、現状で治療法がない新型コロナ肺炎では、検査で陽性となると本人は隔離されるが、治療法は陰性の人と同じ対症療法だからだ。そのため偽陽性者を収容することによって、より重症の真陽性患者のために空けるべきベッドがふさがれるのも見逃せない。
●機械だけじゃ無理、すご腕技術者が支えるPCR検査
 ただし、きちんとしたフィルタリングの上で「検査数」を増やすべきなのは確かだ。それには何が必要か。まずは現行のPCR(ポリメラーゼ連鎖反応)検査について知る必要がある。新型コロナの確定検査として今のところ唯一のPCR検査。その工程は大きく四つに分かれる。まずは医師、看護師などが患者から検体を採取する。新型コロナの場合、ウイルスは肺に近い下気道の方にいるため、国立感染症研究所は気道からの吸引液か、鼻からスワブを突っ込み咽頭から液を拭い取る方法を推奨している。この作業自体も飛沫感染の危険を伴う。そのため個人防護具を着て1人終わるごとに毎回手順通りに着替えることが本来は必要になる。検体を他の検査機関に輸送するにも二次感染を防ぎ検体の品質を維持するため厳重な態勢が必要だ。冒頭のビル・ゲイツ財団が計画する「自分で検体を取って郵送する」やり方は大いに問題がある。検体が検査機関に到着すると、臨床検査技師の出番である。PCR検査では、検体前処理の図版中の写真のようにバイオハザード対応のキャビネットの中で、人手による前処理作業をすることが欠かせない。遺伝子検査業務は無資格者でもできるが、経験の浅い人がやると失敗や感染の危険がある。ここまでやっていよいよPCR反応にかける。DNAと試薬の入ったチューブを、温度の変化を繰り返しながらDNAを大量に増幅させ、見える形にしてようやく「陽性」と判定が出る。ここにたどり着くまでに数多くのハードルがあり、逆に言えば検査の工程上、落とし穴が多く偽陰性が出やすいということだ。検査精度を保ったまま検査数を増やすのは難しい。感染拡大を機にさまざまな新検査方式が登場してはいるが、大半は実用化に至っていない。迅速検査のイムノクロマトが普及すれば、クリニックで検査ができるようにはなるが、これは感度70%、特異度99%ほどといわれている現行のPCRよりも精度が落ちる見込みだ。また、感染の初期には使えない可能性も高い。そもそも、検査はなぜ行うのか。感染した個人の治療に役立て、社会の感染状況を科学的に分析するという二つの目的があるが「最も大事なのは重症化を抑え、死亡率を上げないこと。だから重症の人を正しく絞り込み、その分の医療キャパシティーを空ける。そして経路調査と接触調査を行い、クラスターを突き止め、つぶすために検査をするということを主眼に置くべきだ」と米国立衛生研究所・アレルギー感染症研究所博士研究員の峰宗太郎氏は指摘する。

*10-2-1:https://www.mixonline.jp/tabid55.html?artid=69146 (ミクスオンライン 2020/4/23) 新型コロナ専門家会議 「対策のフェーズが変わった」医療崩壊と重症化の防止に力点
 政府の新型コロナウイルス感染症対策専門家会議は4月22日、厚労省内で記者会見し、緊急事態宣言発出後の状況分析と現状の課題について提言した。副座長の尾身茂氏(地域医療機能推進機構理事長)は、医療提供体制とPCR検査体制について、「対策のフェーズが変わった」と述べ、「医療崩壊防止と重症化防止により死亡者数の最小化を図っていくかに力点を置く」と強調した。感染拡大で患者数が増加することに備えて、地域医師会と協力し、かかりつけ医が患者から直接相談を受ける体制を整える。かかりつけ医は必要に応じて地域医師会が運営する「コロナ検査センター(PCRセンター)」に検査を依頼。無症候者や軽症者は自宅療養、宿泊療養で対応する。一方、都道府県は感染症指定病院への受入れを重症・中等症の患者に割り当てるなど、地域で医療崩壊を起こさせないような連携体制の構築を求めた。
◎感染者の増加のスピードに追いつかない
 専門家会議はこの日の会見で、東京都など一部地域で「感染者の増加のスピードに追いついていない状況」となっていることに危機感を表明した。その上で、都道府県知事のリーダーシップのもと、①医療機関の役割分担の促進、②PCR等検査の実施体制の強化、③保健所体制の強化、④感染状況の共有、⑤搬送体制の整備-に取り組むよう要請した。また国に対しては、感染リスクと背中合わせでウイルスと闘っている医療従事者のために、感染防護具などの確保、検査試薬、検体採取スワブ等の資材の安定確保に最大限努力するよう要請した。
◎患者の相談や受診に「かかりつけ医」が参画 地域医師会との協力体制構築を
このうち医療機関の役割分担の促進では、地域医師会との連携を強く求めた。発熱症状などを訴える患者の相談や受診については、地域の「かかりつけ医」が参画するよう求めている。これまでの対応では、帰国者・接触者相談センターが窓口となっていたが、感染者が増加していることから、別途、地域の診療所等の活用による「2系統体制」を構築する。かかりつけ医がPCR検査の必要性を認めた場合は、地域の医師会が運営するコロナ検査センターに検査を直接依頼できる。これにより検査実施から結果までの時間を短縮できるほか、自宅療養、宿泊療養への患者の振り分けや、その後の療養指導などを地域の医師会と連携して行うことができる。すでに東京都医師会が「地域のPCRセンター」を最大47立ち上げることを表明している。この際のPCR検査については、保険診療として民間の検査会社を活用することができる。
◎重症化リスクの高い人「day0、day1でも即座に相談を」尾身副座長
 なお、この日は新型コロナウイルス感染症を疑う症状の定義で新たな見解を示した。高齢者や基礎疾患がある重症化リスクの高い人、妊婦については、「肺炎が疑われるような強いだるさ、息苦しさ、37.5℃以上の発熱が続くなどの症状が、ひとつでもある場合は、4日を待たずすぐに相談して欲しい」と呼びかけた。「day0(発熱初日)、day1(発熱1日後)でも即座に相談して欲しい」と強調した。毎日体温を測定するなどして、体調管理を行い、”普段と違う”というサインに自ら耳を傾ける必要性を指摘した。また小児については、小児科医による診察が望ましいとした。
◎治療薬「重症化するリスクの高い患者に適切な治療薬を」
 治療薬やワクチンについては現在、観察研究や治験が複数進行中。尾身副座長はこの重要性を強調したうえで、薬事承認まで一定の期間を要することから、「副作用等を慎重に検討しつつも、迅速に臨床での使用を検討することが必要」と指摘した。現在の投薬については、あくまで”緊急避難的な対応”として、「医師の判断による治療薬の投与は日本感染症学会の見解をもとに、医療機関で所定の手続きをとり、患者の同意を取得した上で、引き続き継続すべき」とした。また、重症化するリスクの高い患者に対して、重症化する前に適切な治療薬を選択することが必要とした。ただし、重症化する前の投与は、研究として行われるべきとした。また、重症な予兆を示唆する「重症化予測マーカー」の確立に向けて、研究班を立ち上げ、結果を早急に臨床現場で活用できるよう検討することを求めた。尾身副座長は、「重症化予防、死亡者をできるだけ減らしたいというのが最優先の課題」と述べ、重症化しやすい患者を同定し、適切な治療につなげることの重要性を強調した。
◎「人との接触を8割減らす、10のポイント」を公表
 このほか専門家会議は「人との接触を8割減らす、10のポイント」を公表した。具体的には、①ゴールデンウイークはオンライン帰省、②スーパーは1人または少人数で、③ジョギングは少人数、公園はすいた時間を、④待てる買い物は通販で、⑤飲み会はオンラインで、⑥診療は遠隔診療、定期受診は間隔を調整、⑦筋トレやヨガは自宅で動画を活用、⑧飲食は持ち帰り、宅配も、⑨仕事は在宅勤務、⑩会話はマスクをつけて-の実施を呼びかけ、ヒトとの接触機会を「最低7割、極力8割」まで減らすことを実践して欲しいと要請した。専門家会議はまた、正確な国民の感染状況を確認するため、抗体保有状況を確認する等の「血清抗体調査」を継続的に行う体制を整備する方針も盛り込んだ。

*10-2-2:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%96%B0%E5%9E%8B%E3%82%B3%・・ (Wikipediaより、新型コロナウイルス感染症対策専門家会議メンバーを抜粋)
座長:  脇田隆字(国立感染症研究所所長)
副座:  長尾身茂(地域医療機能推進機構理事長)
構成員: 岡部信彦(川崎市健康安全研究所所長)
     押谷仁(東北大学大学院医学系研究科教授)
     釜萢敏(日本医師会常任理事)
     河岡義裕 (東京大学医科学研究所感染症国際研究センターセンター長)
     川名明彦(防衛医科大学医学教育部教授)
     鈴木基(国立感染症研究所感染症疫学センターセンター長)
     舘田一博(東邦大学医学部教授)
     中山ひとみ(霞ヶ関総合法律事務所弁護士)
     武藤香織(東京大学医科学研究所教授)
     吉田正樹(東京慈恵会医科大学医学部教授)

*10-2-3:https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200428/k10012409751000.html (NHK 2020年4月28日) 緊急事態宣言「全国対象に期間延長を」日本医師会 常任理事
 新型コロナウイルスの感染拡大に伴う緊急事態宣言について、政府の専門家会議のメンバーで日本医師会の常任理事を務める釜萢敏氏は「感染者の減少が十分とは言えない」として、全国を対象としたまま、来月6日までの期間を延長すべきだという考えを示しました。日本医師会の釜萢常任理事は記者会見で、緊急事態宣言について「延長するかどうかを判断する大きな指標の1つは、各地の医療提供体制だ。医療資源の乏しい地域ではひとたび院内感染が発生すると一気にひっ迫した状況になるので、全国で感染者が増えないようにすることが必要だ」と指摘しました。そのうえで「宣言から3週間がたったが、当初狙っていたほどの感染者の減少には至っていない。対象を全国に拡大したのは、感染者が多い地域からの人の移動で感染を広げるリスクがあったからだが、その懸念はまだしばらく続く」と述べ、全国を対象としたまま、来月6日までの期間を延長すべきだという考えを示しました。

*10-2-4:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/517520 (佐賀新聞 2020.4.28) 厚労省、緊急性高い12症状公表、「胸の痛み」「脈がとぶ」
 厚生労働省は28日、新型コロナウイルス感染症の軽症者や無症状の感染者がホテルなどの宿泊施設や自宅で療養する際、注意すべき緊急性の高い症状を公表した。「胸の痛みがある」「肩で息をしている」「脈がとぶ」といった12項目の症状。一つでも当てはまれば自治体の相談窓口か宿泊施設の看護師らにすぐに連絡するよう呼び掛けている。厚労省は埼玉県で50代と70代の男性2人が自宅待機中に容体が悪化して死亡したことを受け、軽症者や無症状者の療養先を原則ホテルや宿泊施設に切り替えた。ただ、施設の準備が整わないといった場合は、引き続き自宅療養を容認している。療養中に症状の変化に素早く気付いて対応できるよう、患者本人や家族に確認してもらいたい考え。「表情・外見」「息苦しさ」「意識障害」に分けて緊急性の高い症状を示している。具体的には「唇が紫色になっている」「ゼーゼーしている」「ぼんやりしている(反応が弱い)」「横になれない。座らないと息ができない」などを挙げている。軽症者は宿泊施設や自宅での療養中にウイルス量が増える可能性がある。そのため、自身で1日3~4回、朝昼晩や就寝前に症状をこまめに確認するよう求めている。

*10-3:https://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/202004/CK2020042602000150.html (東京新聞 2020年4月26日) <新型コロナ>単身赴任男性、無念の孤独死 発熱6日後検査、死後コロナ判明
 全国の警察が変死などとして扱った十五人が、新型コロナウイルスに感染していたことが判明した問題。そのうちの一人が、東京都世田谷区の社員寮で急死した五十代の男性会社員だった。単身赴任中の男性は発熱後、保健所に相談しようとしたものの電話がつながらず、PCR検査を受けられたのは発熱から六日後。検査結果が出たのは、命が失われた後だった。死に至るまでの状況を証言したのは、男性の友人。取材に「遺族が嫌がらせを受ける恐れがある」と、会社名など身元を特定する情報は報じないよう求めた。友人によると、男性が発熱したのは今月三日。その少し前から職場の上司に発熱とせきがあったため、男性は九州の自宅に残る妻に「新型コロナに感染したかもしれない」とLINE(ライン)でメッセージを送っていた。男性は世田谷保健所の相談センターに何度も電話したが、回線が混み合っていたためか、一度もつながらなかったという。男性が自宅待機していた七日、上司はPCR検査で陽性と判定された。男性は会社から「濃厚接触者に当たる可能性がある。検査を受けるように」と言われ、再び相談センターに電話したが、またしてもつながらなかった。かかりつけ医が保健所に連絡してくれたことで、男性は二日後の九日にようやく検査を受けられることに。だが、病院は検査を受ける人であふれていたようで、妻に「結果が出るまで一週間かかると言われた」とメッセージを送っている。入院することもなく寮に戻った男性。「せきがひどくて眠れない。胸が痛い」「薬局に薬を届けてもらった」。十日夜、妻にラインで状況を伝えた後、応答がなくなった。翌十一日、寮で暮らす同僚が部屋に様子を見に行くと、既に息絶えていた。警視庁玉川署は変死事案として捜査。妻が死因は新型コロナによる肺炎だと知ったのは、同署に呼ばれた十三日だった。密封された遺体は、防護服姿の署員によって葬儀会社の車に積み込まれ、妻との対面がかなわないまま火葬された。同行した友人は「明るくて健康なラガーマンだった。一人でいながら一向に保健所に電話がつながらず、どれほど不安だったか」と唇をかんだ。男性の妻は友人を通じて本紙に、「発熱もせきもあったのになかなか検査を受けられず、入院もできなかった。同じことが繰り返されぬよう、(行政などは)態勢をきちんと整えてほしい」との言葉を寄せた。
      ◇ 
 世田谷区の感染者数は都内の市区町村で最多。保健所の相談センターに電話が殺到したことから、区は十三日、回線数を六回線に倍増させ、担当職員も六人から九人に増やした。
都医師会は今月中に、保健所の相談センターを通さなくても開業医らの判断で検査できる「PCRセンター」を都内に十カ所ほど開く考えを示している。
◆50代男性 死亡の経過
4月3日 発熱。少し前から上司が発熱とせき。妻に「新型コロナに感染したかも」とライン。
     保健所の相談センターに何度も電話したが、つながらず
  7日 上司が陽性と判明。会社から検査を受けるように言われたが、相談センターに
     電話つながらず
  9日 ようやくPCR検査。「結果が出るまで1週間かかると言われた」と妻にライン
 10日 夜「せきがひどくて眠れない。胸が痛い」などと妻にライン後、応答なくなる
 11日 男性が自室で亡くなっているのを同僚が見つける
 13日 新型コロナによる肺炎が死因だと、妻が警察から知らされる
     電話殺到を受け、世田谷区が相談センターの態勢を強化

*10-4:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/517250 (佐賀新聞 2020.4.28) 首相、家賃支援で追加対策検討、アビガン活用に意欲、衆院予算委
 安倍晋三首相は28日の衆院予算委員会で、新型コロナウイルスの感染拡大を受けた事業者への家賃支援を巡り、追加の対策を検討する意向を示した。自民党の岸田文雄政調会長の提案に対し、党の検討を受け止めると表明。「この状態がさらに延びることになれば当然、さらなる対策も考えなければならない。ちゅうちょなく、やるべきことをやる」と応じた。新型インフルエンザ治療薬「アビガン」の活用を進める方針も示した。立憲民主党など野党5党は事業者の家賃負担を支援する法案を衆院に共同提出。首相は野党の動向も念頭に、家賃を巡る追加支援に前向きな姿勢を示したとみられる。首相は事業者などへの支援を巡り、手続きの迅速化を急ぐ意向も言明。「今はまさに非常時だ。多くの方々が経営を続けることができるかどうか、生きるか死ぬかの状況に直面している。今までの発想を変えなければならない」と述べた。岸田氏は企業が従業員を休ませた場合に支給する「雇用調整助成金」などを巡り、窓口対応の遅さを指摘。首相は自身の責任で改善を図るとした上で「危機を乗り越えることを最優先に、不正などは事後対応を徹底すればいい」と強調した。立民の枝野幸男代表は、金銭的に厳しい状況の大学生などへの支援に関し、中小企業や個人事業主向けの「持続化給付金」を適用すべきだと主張。首相は給付型奨学金や雇用調整助成金で対応できるとして慎重な考えを示した。首相はアビガンに関し、1月末から2月の初めに新型コロナウイルスの治療に有望だとの報告があったと言及。「(患者)本人にぜひ希望していただき、医師に『自分は使いたい』と言ってほしい」と語った。

<緊急事態宣言のさらなる延長と教育>
PS(2020年4月30日、5月1、2、4《図》日追加):*11-1に「①東京都の4月28日の感染者は112人で、その4割弱の42人は感染経路不明」「②都市部を中心に新型コロナの収束の兆しが見えず、知事会の要請を受けて、政府が緊急事態宣言を1カ月程度延長する方針」「③5月1日に開く政府専門家会議で状況分析する」「④専門家会議の座長を務める脇田国立感染症研究所長は、4月29日の参院予算委員会で、延長の是非を判断する材料として(i)感染の広がり (ii)接触削減などの行動変容 (iii)医療提供体制 の3点を挙げた」「⑤首相は『薬とワクチンの開発によって収束ということになる』と説明した」と書かれている。しかし、①の東京都は特に人混みが多く感染経路不明者が出るのは当たり前であるのに、③④の政府専門家会議と厚労省は、自分たちが三密の中で、いつまでもクラスター追跡に専念し、論文に書けない程度の統計数字の発表ばかり行って市中蔓延に至らしめ、検査も絞って⑤の治療に結び付けず、②の新型コロナ収束に失敗した張本人であるため、政府専門家会議は厚労省の代弁者ではなく、それこそITを使って各地で治療・研究の第一線で働いている医師や研究者の組織に変更する必要があるだろう。
 さらに、*11-2のように、全国知事会は、新型コロナ対策に関する国政への提言をしてよいことだと思うが、緊急事態宣言を全国一律に延長するかどうかについては、感染状況が下の右図のように都道府県によって異なるため、それぞれの都道府県の判断に従った方がよく、むしろ全国知事会は検査の充実と治療薬の早期承認を要望された方が効果的だと思う。
 なお、*11-2の「⑥休校する地域とそうでない地域で学力差が生じる懸念がある」「⑦この機に9月入学の欧米に合わせるべきだ」という意見については、私は、他の要素での格差も大きいので、①のように首都圏の公立校が不利になる格差だけを問題にするのは、むしろ不公平だと思う。そのため、護送船団方式でいっせいに不利にするのはむしろマイナスで、それぞれの不利について各自治体で解決法を考えるべきだと思う。また、⑦や*11-3-2の9月入学については、高校・大学はグローバル・スタンダードに合わせた方が留学・就職に便利だが、小中学校を何歳の何月から始めるかは各自治体が自らの不利をカバーするように考え、次第にBest Practiceに収れんさせるのがよいと考える。
 文科省が、*11-3-1のように、「⑧新型コロナ感染拡大による休校を解除する際、優先度の高い小学1年・小学6年・中学3年の登校を先行するよう各自治体に求める方針を固めた」「⑨任意の分散登校を行い、学級ごとに登校時間をずらす・・」というのは、文科省の仕事としては小さすぎる。それより、これを機会に1学級の人数を標準30人に決め、そのための教員増加や感染症を広げず学業がはかどる空調を備えた学校施設への改修に補助を行う方がよいだろう。
 なお、*11-4のように、安倍首相は新型コロナの感染拡大で長期化する学校休校を踏まえ、9月入学制を来年導入する可否の具体的検討に入り、教育界だけでなく社会全体に大きな影響を及ぼすとして各府省庁の事務次官に課題の洗い出しを指示されたそうだ。私も、欧米諸国・中国などと同じ秋入学にした方が便利だと思うが、小1児童の入学時期が秋になれば移行期4~8月は保育所等の受け入れ態勢が課題となる上、子どもの数が減って小学校はゆとりがあり、共働きが増えて保育園は不足しているため、この際、小学校入学年齢を英国と同じ5歳か約87%の子どもが幼稚園か保育園に入る3歳にするのがよいと思う。

  

(図の説明:左図は、新型コロナウイルスの電子顕微鏡写真で、中央の図は、新型コロナウイルスをエアロゾルにした時の生存期間だ。これだけはっきり見えているウイルスを、「目に見えない敵」と表現するのは非科学的なのでやめた方がよい。また、右図が新型コロナウイルスの都道府県別感染者数で、《不完全な統計でも》人同士の距離が近くなる都会に多いことがわかる)


英国の義務教育制度      日米の教育制度       日本の幼稚園・保育園通園率

(図の説明:左図のように、英国は5歳の時に小学校に入学し、中央の図のように、日米は6歳の時に小学校に入学する。また、右図のように、日本では、3歳で幼稚園か保育園に通っている子どもが約87%おり、5歳では98%の子どもが幼稚園か保育園に通っている)

*11-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200430&ng=DGKKZO58627330Q0A430C2PE8000 (日経新聞 2020.4.30) 新型コロナ、収束の兆し見えず、緊急事態宣言延長、知事会も要請 専門家会議あす開催
 政府が緊急事態宣言を1カ月程度延長する方針を固めたのは、宣言発令から3週間が過ぎても、都市部を中心に新規の感染者数が十分に下がらないためだ。全国の自治体からも全都道府県での延長を求める声が相次いでいる。新型コロナウイルスの感染拡大は収束の兆しがなおみえない。30日で緊急事態宣言を全国に広げて2週間になる。5月1日に開く政府の専門家会議で状況を分析する。新規感染者数は鈍化傾向にあるが、なお高止まっている。東京都は29日、新たに47人の感染が確認されたと発表した。前日の28日は112人で、その4割弱にあたる42人が感染経路が不明だった。1日の死者数も最多の9人だった。地方でも札幌市で過去最多に並ぶ26人に達するなど、一部の地域で高水準の新規感染者が確認されている。安定した収束傾向には至っていない。延長の対象地域を巡っては、全国知事会が29日にテレビ会議方式で開いた会合で全国一律で延長すべきだとの意見が多く出た。一部の地域で先行して宣言を解除すれば、都道府県境を越えてその地域に人が流入する可能性を懸念している。静岡県の川勝平太知事は会合で「県内は感染まん延期の直前だ。宣言延長では県境をまたぐ移動を防ぐためにも対象地域を限定すべきではない」と訴えた。秋田県の佐竹敬久知事は「大都市の感染拡大が収まらない限り、全国的なリスクは残る」と述べた。30日にも新型コロナ対策を担う西村康稔経済財政・再生相に緊急提言として提出する。29日の参院予算委員会には専門家会議の座長を務める脇田隆字・国立感染症研究所長が出席した。延長の是非を判断する材料として(1)感染の広がり(2)接触削減などの行動変容(3)医療提供体制――の3点を挙げた。現状の患者数が2週間前の感染状況を反映しているとされ、脇田氏は「ピークアウトしたかどうかまだ判断できない。1週間程度感染の状況を見て判断する」と話した。安倍晋三首相は29日、日本医師会の横倉義武会長と首相官邸で会い、医療現場の現状を巡り意見交換した。感染者数を抑制できなければ、医療現場の崩壊につながりかねないとの懸念は強い。これも延長判断の大きな理由になったとみられる。政府が緊急事態宣言を1カ月で終えるために掲げた「人と人の接触機会8割削減」という目標も達成できていない。NTTドコモのモバイル空間統計によると、28日の新宿周辺の人出は感染拡大前に比べて70.8%減少した。福岡市の天神周辺は58.9%減にとどまるなど、地方ではなお外出自粛が不十分だとの見方がある。首相は衆院予算委で緊急事態宣言の根拠となる改正特別措置法のさらなる改正に触れた。「今の対応や法制で十分に収束が見込まれないのであれば、当然新たな対応も考えなければならない」と指摘した。西村経財相は27日、自治体が特措法に基づく休業指示を出しても従わない事例が多発した場合に、法改正で罰則規定を設ける考えがあると言及していた。宣言を延長しても、収束のめどが立っているわけではない。首相は予算委で「薬とワクチンの開発によって収束ということになる」と説明した。米国で秋にもヒトへのワクチン接種が可能になるとの見通しを示し「日本も研究を加速させていきたい」と言明した。感染者が少数にとどまる県では全国を対象としたまま延長することへの慎重論もある。佐賀県の山口祥義知事は29日の全国知事会会合で「(感染者が多い)都市部に合わせるのではなく、地方それぞれの特性があっていいのではないか」と発言した。

*11-2:https://www.shinmai.co.jp/news/nagano/20200430/KT200429ETI090009000.php (信濃毎日新聞 2020年4月30日) 全国知事会 住民目線で国政に注文を
 国の対策が後手に回る中、現場に近いところで指揮を執る知事の役割が重要性を増している。全国知事会が新型コロナウイルス対策に関する国政への提言を議論した。噴出する課題は医療、福祉、教育などあらゆる場面に及ぶ。地域における感染防止の課題や暮らしへの影響を国が把握し切れない状態は、今後も続くだろう。各知事は国政に対し、住民の目線で具体的な提案を重ねていかねばならない。全国知事会は、その先頭に立ってもらいたい。今回焦点になった一つは、緊急事態宣言を全国一律に延長するかどうかだ。一部の地域で解除すると、他の地域から人が移動して感染を広げる恐れがある。ただ、感染状況は都道府県によって開きがある。延長に伴う財政負担への懸念から否定的な知事もおり、温度差が目立った。一律延長の検討を国に求める方針を確認したものの、今後は、財政力の違いも踏まえどんな提言を示せるかが課題となりそうだ。知事会はこれまで、医療や検査の体制整備を国に求めてきた。既に独自の取り組みを進めている都道府県も多い。それぞれの経験を基に、有効な対策を共有する取り組みも重要になってくる。気になるのは、強権的な姿勢が目立ち始めた点だ。新型コロナ特措法に基づく休業要請に応じない事業者に罰則を設けるよう、法改正を求める声が出ている。支援策が不十分なまま、従わないのが悪い、と決め付ける雰囲気を社会に醸成するような対応が良い方向に向かうとは思えない。やむにやまれず営業する事業者がいれば、その声に耳を傾け、実効性ある対策を探っていくのが知事の役割ではないか。私権の制限には慎重であるべきだ。ここにきて知事の間で急速に盛り上がってきたのが、小中高校や大学の休校長期化を受けた9月入学制の導入論議である。長野県を含む17県の知事でつくる「日本創世のための将来世代応援知事同盟」などで賛成が相次いだ。休校する地域とそうでない地域で学力差が生じる懸念があり、この機に9月入学の欧米に合わせるべきだとの意見がある。一方、社会的な影響の大きさを考えて慎重な意見もある。一石を投じた意義はある。重要なのは現場に即して考える視点だろう。学校や家庭は子どもたちの学習機会を保障しようと努力を続けている。飛び越えて議論が進むことがあってはならない。

*11-3-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200501&ng=DGKKZO58653800Q0A430C2CC1000 (日経新聞 2020.5.1) 小1・小6・中3 優先登校 文科省指針 再開時、受験・「慣れ」配慮
 文部科学省は新型コロナウイルス感染拡大による休校を解除する際、小学1年、小学6年、中学3年の登校を先行するよう各自治体に求める方針を固めた。1日にも開かれる政府の専門家会議の報告を踏まえ、同日中に全国に通知する指針に盛り込む。学校では感染拡大の原因となる3密(密閉・密集・密接)になりやすい。登校の一斉再開を避け、優先度の高い学年から段階的に再開することで、感染リスクを抑える狙いがある。萩生田光一文科相は30日の参院予算委員会で「段階的に必要最小限度の教育活動を開始することが重要だ」と指摘。「例えば任意の分散登校を行い、進学を控える最終学年から学習活動を開始するなど様々な工夫が考えられる」と述べた。小6と中3は受験や卒業を控えており、現状の学事日程では休校期間中の授業時間を次の学年で補えない。小1は集団生活に慣れ始める時期であることなどを考慮した。文科省はこれまでの指針で、学校を再開する場合は毎朝の検温や換気の徹底、マスク着用などの対策をとることを求めていた。今回の指針では学級ごとに登校時間をずらすことなども選択肢として盛り込む見通しだ。

*11-3-2:https://www.nikkei.com/paper/related-article/?b=20200501&c=DM1&d=・・ (日経新聞 2020.5.1) 小池・吉村知事が9月入学求める 共同でメッセージ
 東京都の小池百合子知事と大阪府の吉村洋文知事は30日、学校の9月入学の導入などを求める共同メッセージを発表した。9月入学が多くの国で導入されていることを踏まえ「若者が世界で活躍するためにも重要だ」(吉村氏)と両知事が賛成の立場を示した。小池知事による生配信の動画サイトに吉村知事が出演し、共同メッセージを公表した。小池氏は「日本の教育が世界のスタンダードになっていくために中身の濃い議論をスピーディーに行うことが必要だ」と強調した。また、新型コロナウイルスの感染拡大防止策の一環として、休業に協力した事業者への家賃支援を迅速に法制化するよう国に要望した。改正新型インフルエンザ対策特別措置法で、防止対策を円滑に講じられるように自治体による裁量権の拡大も求めた。

*11-4:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/518770 (佐賀新聞 2020.5.1)  9月入学制、論点整理着手、来年導入、6月上旬にも方向性
 安倍晋三首相は新型コロナウイルスの感染拡大で長期化する学校休校を踏まえ、9月入学制を来年導入する可否の具体的検討に入った。教育界だけでなく社会全体に大きな影響を及ぼすとして、首相官邸が各府省庁の事務次官に課題の洗い出しを指示した。政府筋が1日、明らかにした。論点整理を受け、6月上旬にも方向性をまとめたい考えだ。首相は国会で「選択肢として検討する」と答弁。「課題が解決されれば現実味を帯びる」(政府筋)との見方が出ている。9月入学案は、学習の遅れや、学校再開時期のばらつきが生じることへの不安解消策として浮上した。欧米諸国や中国などの秋入学に足並みをそろえ、海外留学や外国人留学生の受け入れ加速を狙う意味合いもある。一方、9月入学とした場合、4月を起点とする社会・経済システムとの整合を図る必要が生じる。3月卒業を前提に実施される国家試験の日程調整が求められるほか、企業採用へ影響する可能性もある。小1児童の入学時期が秋にずれ込めば、移行期の4~8月は保育所などの受け入れ態勢が課題となる。導入論に対し、自民、立憲民主両党では「難題が多い」として慎重姿勢が目立つ。一方、国民民主党は導入に向けた提言案をまとめている。政府と自治体側の擦り合わせも不可欠だ。9月入学は9年前に東京大学が検討を始めたものの、最終的に見送った経緯がある。菅義偉官房長官は5月1日の記者会見で「時々刻々と変化する事態を注視しながら、文部科学省を中心に必要な対応を前広に検討していきたい」と述べた。

<やはりおかしい“緊急事態”“医療崩壊”の連呼 ← 得したのは誰か?>
PS(2020年5月3、8、9、10日追加):*12-1のように、専門家会議やメディアは、「①医療崩壊になりそう」「②医療体制が逼迫」と連呼し、「③緊急事態宣言を延長し」「④新たな生活様式の呼びかけ」たが、その根拠として「⑤実効再生産数(感染者1人が何人に感染させるかを示す値)を挙げ、⑤が1より大きければ流行は拡大し小さければ収束していくとした。
 しかし、⑤については、*12-2のように、日本におけるPCR検査の割合は諸外国と比較して人口比で極端に低く、このような背景の下に机上で産出された西浦北大教授(理論疫学)の実効再生産数は、空想上の数字でしかなく(嘘だと思ったら、それを論文にして世界に発表してみればよい)、そこから出た結論も空想にすぎない。そして、検査数の増加スピードも著しく遅いため、患者を早期に発見し、薬を使って早期治療を行わない結果、重症化させて長期入院を必要とするようになり、②の医療体制の逼迫が起こるのである。また、西浦北大教授(理論疫学)の実効再生産数には、治療薬出現の効果も考慮されていない。
 さらに、④の「新たな生活様式の呼びかけ」は、具体的には、i)3密回避 ii)手洗い iii)テレワーク だそうだが、i)は回避できない場合もあるため、病気の人は病欠したり、マスクをかけたり、職場の1人当たり面積にゆとりを持たせたり、席の配置を考えたりすべきなのである。また、ii)は新型コロナに限らず常識で、iii)のテレワークができるのは、どこででもできる仕事をしている人に限られ、家庭で仕事をすれば仕事と家庭生活の区別がつきにくく、生産性も落ちるので、私は勧めない。ただ、満員電車による通勤は感染症を広げるため、企業は都会に置くオフィスの就業者数を本当にそこでしか仕事ができない人に限り、職場内のテレワークを使って他の場所でもできる仕事は、自家用車で通勤できる地方に置いた方が、(子どもの教育も含めて)環境がよく、仕事がはかどり、生活費は安いため、人件費や賃貸料の削減に繋がるのである。
 なお、PCR検査が増えない理由には、*12-3のように、陽性患者が出ると職場の同僚や家族まで中傷や偏見に晒されて事業経営に悪影響が出るため、検査を自粛するという行動もありそうだ。感染者本人を差別するのも罪だが、これらの一般の反応を作ったのは、「(治療薬については副作用ばかりを強調し)効果的な治療薬のない絶望的な病気で、繁華街でうつって周囲に迷惑をかける」という印象を植えつけたメディアの報道に大きな責任がある。
 また、医療行為を行う前から、①②のように「医療崩壊」「医療体制の逼迫」と連呼し、日本の医療水準が後進国並みに低いかのような行動を国民に強いているのは、専門家会議や厚労省に問題があり、これは検査方法や治療薬の工夫を妨害した。そして、*12-4のように、日本政府は、新型コロナの治療薬として米ギリアド社の「レムデシビル」を米食品医薬品局(FDA)が認可したという理由で日本での早期承認に動いているが、情けないにもほどがあり、これによって日本の製薬会社は外国(特に米国)で開発して承認をとらなければ日本国内でも使用されないという状況を招いているのだ。さらに、大量生産の段階になると、アビガンのように日本はコストが高すぎて中国で生産しなければ利益が出ず、いくら紙幣を印刷して国民の預金価値を薄めて金を捻出しても、その金は他国の景気を回復させるだけという状況である。これは高付加価値の薬剤に限らず、*13のような食料・エネルギーにも及んでおり、「日本は、何を売って必要なものを買うつもりですか?」という問いを、再度、経産省に投げかけざるを得ない。
 このように、不確かな数字を根拠に際限のない休業要請をした結果、社会経済活動が停止して破綻する事業者や解雇される雇用者も出ている。そのため、*12-5のように、大阪府は、入院患者のベッド使用率が一定の数値を下回るなどした場合に休業と外出自粛要請を段階的に解除するという独自基準を設ける方針を決めた。医療崩壊の危機をことさら叫んで受診を控えるように呼びかけていた(とんでもない)NHKの調査によっても、*12-6のように、病床数に占める入院中及び入院必要な患者数が100%を超えるのは東京都(131%)だけで、軽症者のホテル収容を実施しているのにその収容数は収容能力と比べて著しく低く、工夫もせずに「危機だ」「危機だ」と叫んでいるわけだ。また、50%以上100%未満は北海道(81%)、石川県(81%)、群馬県(71%)、福岡県(70%)、兵庫県(65%)、千葉県(61%)、滋賀県(58%)、奈良県(58%)、富山県(57%)、愛知県(57%)、埼玉県(56%)、沖縄県(56%)、京都府(51%)等の13道県しかなく、それでもホテルなどの宿泊施設に収容可能な軽症者がまだ病院にいることが多い。そのため、ホテルなどの宿泊施設における健康管理と病院との連携を充実させれば、病床数に占める入院中及び入院必要な患者数は逼迫しない筈なのである。これに加えて、*12-7のように、東京都は年代別の新型コロナによる死亡者数を公表し、「60代以上が9割で、男性が85人・女性が37人」としているが、これくらいのサンプル数でジャンル別の傾向はわからず、「死亡者は高齢者・持病のある人に多い」という馬鹿の一つ覚えの偏見を生むのに加担している(これも嘘だと思ったら、論文にして世界に発表してみればよい。症例数や検査割合の少なさ、考察の浅さに呆れられるだけだろう)。
 なお、この騒ぎで得した人は、まず「携帯電話端末の位置情報を、どさくさに紛れて使えるようにした人」「テレワークの機材を生産している人」「テレワークを進めたかった人」などだが、その他については、読者にお任せしたい。
 *12-8に、「新型コロナ感染者の療養先は自宅がホテル等の宿泊施設の2.3倍で、厚労省が軽症者や無症状者に宿泊施設の利用を優先してもらう方針を示しているのに、移行が進んでいない」と書かれている。しかし、「宿泊療養が時には受け入れてもらえない」というとんでもないこともあるのかもしれないが、東京(自宅療養者635人)・埼玉(自宅療養者354人)・大阪(自宅療養者332人)・千葉(自宅療養者約250人)・神奈川(自宅療養者約250人)・福岡(自宅療養者81人)はホテルの多い地域である上、全国の宿泊施設で1万2090室が受け入れ可能となっているのに約7%しか利用されていないのでは宿泊施設を準備した意味がないため、自宅療養を選んだ人に理由を聞いて改善すべきだ。病院入院後の回復期にホテル療養をした私のいとこの場合は、宿泊施設のホテルはシーツの交換が全くなく、部屋の掃除や洗濯も自分でしなければならず、下着やタオルが足りなくなっても当然外出できないため、病気の人に不潔な状態での我慢を強いる状態になっているようだった。
 新型コロナ感染者のうち軽症者・無症状者の隔離と療養に充てるため、長崎県が8医療圏にそれぞれ設ける計画で内定したホテルの周辺住民が反対を表明し、選定が難航して宿泊施設が決まらないのだそうだ。しかし、*12-9のように、ホテルの活用は既に行われており、神奈川県では運営の一部を自衛隊が担当し、福岡県は人出が減っているJR博多駅前等のホテルを確保しており、医療圏毎に必要とも思われないので、できたところから始めればよいのではないか?
 朝日新聞が、2020年5月10日の社説に、*12-10のように、「⑪米国が重症者向けに緊急使用を許可したレムデシビルを、厚生労働省はスピード承認した」「⑫治療薬の早期開発に期待を寄せる声は多いが、有効性や安全性を確かめる手続きをないがしろにするわけにはいかない」「⑬現場の医師が注目しているのは、国内のメーカーが開発し、新型インフルエンザ用に承認されているアビガンだ」「⑭アビガンの月内承認をめざしている首相に、京大の山中伸弥教授からさらなる前倒しに向けて『鶴のひと声』を求められる場面もあった」「⑮多くの患者はアビガンを使わずに回復しており、催奇性があるので前のめりになりすぎるのは禁物だ」「⑯対象から外れた患者が発言を頼りに投与を希望したら、その対応で現場の負担が増える」「⑰政府は40カ国以上にアビガンを無償提供すると表明したが、国内患者の健康に関わるだけでなく国際協力にもつながる薬だからこそ、手順を踏んで遺漏のないようにしたい」「⑱薬害の歴史を忘れることなく、コロナ禍に適切に対処しなければならない」と記載している。⑱から、この記事は、アビガンの早期承認を要望している人は催奇性という副作用を知らないか忘れているという前提の上に立っているが、⑬⑭の現場の医師や京大の山中教授が自分よりも薬の作用・効果と副作用を知らないと考えているのは無知の上に傲慢だ。また、⑮については、もちろんアビガンを使わずに回復した患者もいるが、それだけ回復に時間がかかり、重症化するリスクも高くなり、助けられるのに死亡した患者を犠牲にしたのである。また、⑯の手間より、重症化を防ぎ入院期間を短くしながら命を助ける効果の方が大きいから、⑬のように現場の医師が期待しているのだ。なお、⑫のように、国内での承認に時間ばかりかかるため、⑪のように、「外国で承認されたから、横並びで・・」などという情けない理由で承認したり、⑰のように、国内では使えないうちに海外に無償提供したりしなければならず、日本の開発関係者は国内で開発すると徒労に終わることが多すぎるのだ。「10万円、マスク来ぬうち、コロナ去り」はまだ笑い話にできるが、「アビガンも、承認せぬうち、コロナ去り」は、文系のドアホが人の命をないがしろにした結果であるため、とうてい笑い話にならない。


 2020.5.2朝日新聞             2020.4.26Yahoo  2020.4.29東京新聞

(図の説明:1番左の図のように、一人の患者が何人に感染させるかで新規感染者数が異なるそうだが、これは大数を正確に処理した結果として出るもので、個人が他人に感染させる数は職業・電車通勤の有無等によって大きく異なる。左から2番目は、緊急事態宣言による行動自粛によって感染の山を右にずらすという論理だが、PCA検査数が少なく感染者が市中を歩いている状態では感染者数はますます増え、それを治療しないことにより重傷者が増えて医療崩壊は早まる。右から2番目の図は、外出自粛や休業要請で事業者がいつまで持つかを質問した結果で、1番右の図は、外出自粛や休業要請により非正規労働者から解雇や雇い止めが始まっている様子だ)

*12-1:https://digital.asahi.com/articles/DA3S14463367.html (朝日新聞 2020年5月2日) (時時刻刻)くすぶる感染、長丁場 感染者減「期待に至らず」 専門家提言 新型コロナ
 1日に政府の専門家会議がまとめた提言は新型コロナウイルスの新たな感染者は減っているとしつつも、減り具合が目指したほどではなく、医療体制も逼迫(ひっぱく)していると指摘した。長期の対応を迫られるなか、感染リスクが高い3密を避け、接触機会を減らした「新たな生活様式」の定着を呼びかけた。専門家会議が1日午後に開いた記者会見。尾身茂副座長は「感染者数は減少しているが、そのスピードは我々の期待するまでには至らなかった」と語った。緊急事態宣言直後の4月11日に全国の新たな感染者数が700人近くになったが、最近は200人ほどの日もある。ただ、1日に数十人だった3月上旬~中旬に比べると、まだ多い。減少ペースも「急増のペースに比べると緩やかに見える」と提言は指摘し、「大都市圏から人が移動したことで、地方に感染が拡大した」と分析した。感染が拡大しているかをみる重要な指標の一つが「実効再生産数」だ。感染者1人が何人に感染させるかを示す値で、1より大きければ流行は拡大し、小さいと収束していく。全国で2・0(3月25日時点)、東京で2・6(3月14日時点)だったが、4月10日時点では全国で0・7、東京で0・5まで下がった。厚生労働省クラスター対策班に参加する西浦博・北海道大教授(理論疫学)は、1を下回ったのは全国も東京も緊急事態宣言が出る前の4月1日ごろだったと説明。そのうえで、「全国的にみると、8割の接触機会の削減で求めていた水準には達していない」と指摘。目標とする0・5以下になることを確認していく必要があるとした。ただ、PCR検査の件数が限られ、とくに流行地域で感染者を把握しきれていないとの指摘もある。尾身さんも会見で「我々は感染の実態の一部を把握しているに過ぎない」と認めた。宣言の延長判断で重要なもう一つの要素が医療現場の逼迫だ。患者は平均2~3週間入院する。特に人工呼吸器が必要な重症患者の入院は長期化する。全国的に人工呼吸器が必要な患者はこの1カ月で3倍超に増えて約280人、人工心肺が必要な患者も約2・5倍に増えて約50人になっている。会見で、会議のオブザーバーを務める東京都立駒込病院の今村顕史・感染症センター長は「患者数が減っても重症重篤の患者でかなり病床が埋まっている。軽症者にも重篤になる人がいる。(医療現場の)負担は続いている」と話した。
■続く通勤、接触減に限界
 提言では、厚労省のクラスター対策班が分析する人同士の接触機会がどれくらい減ったかのデータが示された。西浦さんは「(政府目標の8割減を)達成できた所とできなかった所がまだらだった」と述べた。主要な駅周辺などを対象にして、携帯電話端末の位置情報をもとにその区域の人口密度と、同じ時間帯に同じ区域にいた人の数などから、計算式を使って割り出した。感染拡大前の1月17日と4月24日(ともに平日)を比べると、東京・丸の内周辺では夕方から夜間は81%減だが、渋谷駅周辺では昼間は49%減、夕刻から夜間は62%減と目標に満たなかった。大阪市の難波駅は同じく29%減と41%減だった。県境を越えた移動は、神奈川、千葉、埼玉の3県と東京との間の減少率は昼間35~41%と小さかった。西浦さんは「都心への通勤を続ける限りは、(強制ではない)自粛要請のレベルでは限界があることがわかった」などと語った。ただ個人の属性や行動パターンなどで大きく変わることがあり、精度や技術的課題は多いとも話した。
■制限下の生活「定着を」 3密回避、手洗い、テレワーク 地域でメリハリ、緩和条件は示されず
 新型コロナは世界に蔓延(まんえん)し、現状では根絶は困難だ。「一定期間はこの新たなウイルスとともに社会で生きていかなければならない」。提言は、対策が長丁場になることを覚悟しなければならないと呼びかけた。ウイルスの蔓延防止を最優先にしつつ、社会経済活動とどう両立させるか。提言では、地域ごとに対策にメリハリをつける考えを前面に出した。感染状況が厳しい地域では新たな感染者数が一定水準に減るまで、外出や営業の自粛要請などを続ける。十分減れば対策を緩められる対象にする。要件の一つは感染状況だ。新たな感染者数や感染者が増えるペースが一定水準にまで減り、感染把握に必要なPCR検査などがすぐできることを求める。もう一つの要件は医療の状況。新型コロナの患者を診るための医療機関の役割分担や、軽症者らに対応する宿泊療養施設の確保を挙げる。これらをもとに総合的に判断してもらうとした。ただ、対策を緩められる地域でも以前の生活に戻る状況は想定していない。感染拡大のリスクが高い密集・密閉・密接の「3密」を徹底的に避け、手洗いや他人との距離を保つのは不可欠。テレワークなども重要とする。全国的な大規模イベントも、感染対策が整わなければ中止などを求めるとしている。「長丁場を前提とした『新しい生活様式』の定着が必要だ」。会見で尾身さんは強調した。こうした対策で感染を抑え込みながら、早期診断と治療法の確立やワクチン開発を待つ狙いだ。ただ、対策を緩和する要件にある一定水準とはどの程度の減少なのかや、緩和できる対策の範囲は明らかでない。「新しい生活様式」も、人との接触が避けられない環境の人がいるなど、定着には課題がある。ただ、以前の生活に戻せば感染拡大がすぐに起きる可能性は、外部の研究者も指摘する。東京大の大橋順准教授(集団ゲノム学)の推計によると、人口10万人の都市の感染者数が50人になった時点で他人との接触頻度を8割減らすと、30日後には23人まで減少。だが、接触頻度が元に戻ると約15日で50人に戻った。大橋さんは「医療崩壊を防ぎ、ワクチンや治療法が開発されるまでの時間をかせぐためには、接触頻度を減らす努力を継続することが必要だ」と話す。

*12-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200503&ng=DGKKZO58692210R00C20A5EA2000 (日経新聞 2020.5.3) 検査目標 日本は独の14分の1 世界で拡充、米は1カ月で倍増
 新型コロナウイルスで制限した経済活動の再開をにらみ、各国が検査の大幅増加へ動き出した。日本は1日2万件の検査を目標とするが他国との差は大きく、人口比ではドイツが日本の14倍、米国も同5倍の目標を掲げる。経済再開に向けて感染の実態把握は不可欠で、日本がこのまま検査を増やせなければ緊急事態宣言解除のハードルは高い。一部地域で爆発的感染が落ち着いてきたのを受け、各国は外出制限の出口戦略を練り始めた。感染の再拡大と医療崩壊を避けるには、検査を増やして感染拡大の兆しをつかむ体制が不可欠だ。米国は現在、1日23万件のペースで感染の有無を調べるPCR検査を実施している。5月中の目標として、4月中旬(1日15万件)の2倍の「週200万件(=1日29万件)」を掲げる。現在の新規感染者は平均で1日2万7千人程度。米政権は陽性率が10%に下がる程度まで検査を増やす計画で、感染者が現在と同じなら27万人を検査することになる。「感染者1人あたり平均5人の濃厚接触者が出る」(米厚生省幹部)とみており、接触者13万5千人にも検査が必要だ。合計40万5千人になり、感染者が現状のままだと検査件数はまだ足りない。米政権は外出制限の効果で感染者が今後減っていくことを想定する。接触者もあわせて十分な検査ができるくらい感染者が減った州から、飲食店の営業を条件付きで認めるなど、段階的に経済活動を再開する方針だ。フランス政府は5月11日から商店などを再開するのにあわせ、検査能力を現状の実施件数の5倍にあたる1日10万件に増やすと発表した。外出する人が増えることで新規感染者が最大で現状の2倍の1日3千人に伸び、濃厚接触者を25人と仮定。全員をカバーしたうえで、余裕をみた検査能力を確保する。ドイツは4月中に1日20万件、英国は同10万件を目標としていた。ドイツの直近の検査数は同7万件、検査能力は同14万件あるとするが、目標達成は遅れている。検査を増やすには、人員や医療品の確保が不可欠だ。米政権は大手薬局チェーンに検査場設置を要請。CVSヘルスは5月中に最大1千カ所で1日5万件を実施する。検査用の綿棒や試料は、非常時に大統領権限で企業に命令できる「国防生産法」で増産を求める。米は6、7時間かかるPCR検査に加え、その場で結果が出る15分程度の「抗原検査」の普及も急ぐ。ウイルス特有のたんぱく質(抗原)を検出するもので、過去に感染したことがあるか調べる「抗体検査」とは別だ。抗体検査は発症直後は診断しづらいため、抗原検査でPCRを補完する。日本政府は1日2万件を目標に掲げ、同1万5千件を実施できる体制を整えたとしている。ただ実際の検査件数は同8千~9千件にとどまる。人口比でも日本の検査目標は見劣りする。人口1人あたりの目標件数はドイツが日本の14倍、英仏が9倍、米国は5倍だ。他国は経済再開と検査拡充をセットにして出口戦略を立てており、日本の出遅れは否めない。検査の人手不足などを補おうと、日本政府は検体採取業務を歯科医師にも認めると決めたほか、ドライブスルー検査の実施を自治体に促すといった対策を講じる。ただ安倍晋三首相も国会答弁で「目詰まりや地域差がある」と認める。検査拡充で感染実態が把握できなければ、緊急事態宣言の解除はおぼつかない。経済活動の正常化にはさらに検査拡充が必要との試算もある。米ハーバード大は米国民全員が毎月2回検査できる1日2千万件の検査体制を提言する。一度陰性になっても安全と言えないためだ。シンガポールは当初封じ込めに成功したとみられていたが、外国人労働者の寮で感染が再び広がった。労働者の大規模検査が必要になり、人口570万人の同国の検査数は12万件を超えた。

*12-3:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/519100 (佐賀新聞 2020.5.3) <新型コロナ>病院襲う感染デマ 「おたくやろ」「来ないで」憶測で詰問、伊万里や嬉野 中傷、偏見…家族にも
 新型コロナウイルスの感染が拡大する中、佐賀県内でも中傷や風評被害が起きている。伊万里市ではデマを発端に、同じ職場の人やその家族までもが中傷や偏見にさらされ、職員の感染が確認された嬉野市の病院の関係者も差別的な行為を受けており、心を痛めている。「本当に怖い思いをした。憶測で情報を広めることが、どれだけ多くの人を傷付けることになるか知ってほしい」。伊万里市新天町にある山口病院理事長の藤邑(ふじむら)葉子さん(62)は訴える。3月31日、佐賀県が県内2例目の感染者を「伊万里市の60代女性で、福岡市に住む30代男性医師の母親」と公表した。「山口病院の藤邑さんでは…」。デマはその日のうちに広がり始めた。年代が一致し、20代の息子が佐賀県内の病院で研修医をしていることなどから類推されたようだ。「おたくやろ」。翌日以降、病院に問い詰めるような電話が十数件かかってきた。患者からも聞かれた。いくら否定しても「かん口令が敷かれとるとやろ」。来院者や運営する介護施設の利用者が激減した。風評被害は、職員やその家族にも広がった。看護師の子どもは保育所で他の園児と離された。入院患者や通所者の家族が、職場や塾に「来ないでほしい」と言われたという話も聞いた。藤邑さんは、地元のケーブルテレビで20日間以上「当院職員の感染ではございません」などと書いた静止画像を放送した。来院者に説明し、関係者には文書も送った。元気で健在だということをアピールするため、できるだけ外を出歩いた。市にも相談した。「やれることは全部やろうという思いだった」。外来事務職員の感染が確認された嬉野医療センターの看護師も差別的な扱いを受けた。買い出しに出掛けた店の駐車場で、車のダッシュボードにセンターの駐車証を置いていると「近寄らないで」という感じで手を払うそぶりをされた。別の店でも同じようなことがあった。看護師の母親は「娘は外出も、人との接触も最小限に抑えている。私も娘の家に食料品を届けても、会わずにドアノブに掛けて帰る。感染者が出た直後は病院にも非難の電話が多かったと聞く。医療従事者が、家族を含めて感染拡大を防ぐために必死に頑張っていることを分かってほしい」と話す。ナイトクラブで県内初のクラスター(感染者集団)が発生した武雄市は、職員がネットパトロールを重ねている。悪質なケースは把握していないが、感染者が確認されると「だれ」「どこの人」と、必ず電話がかかるという。対策本部は「県からは人を特定するような情報は入らないので『情報がない』と伝えるが、怒る人もいる。仮に知っていても教えることはない」と強調する。

*12-4:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200503&ng=DGKKZO58764440S0A500C2MM8000 (日経新聞 2020.5.3) 日本、レムデシビル特例承認へ 米の緊急認可受け
 日本政府は2日、新型コロナウイルスの治療薬として米医薬大手ギリアド・サイエンシズの「レムデシビル」の使用に向けて施行令を改正した。米食品医薬品局(FDA)がレムデシビルの緊急使用を認可したのを受け日本も異例の早期承認に動く。トランプ米大統領は1日、FDAがレムデシビルの緊急使用を認可したと発表した。臨床試験(治験)で感染者の回復を早める効果を確認したとして重症患者への使用を認める。米国立衛生研究所(NIH)が4月29日に回復期間が短縮したとの暫定的な治験結果を公表しており、2日後の緊急認可となった。日本でレムデシビルが承認申請されれば「1週間程度で承認できる体制を整えるよう指示した」(加藤勝信厚生労働相)として、早ければ5月中にも特例承認が下りる可能性がありそうだ。

*12-5:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200503&ng=DGKKZO58767500S0A500C2MM8000 (日経新聞 2020.5.3) 大阪府、経済再開へ基準 病床使用率など 休業要請解除、 15日可否判断
 大阪府は2日、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う休業と外出自粛の要請について、解除する際の独自基準を設ける方針を決めた。入院患者のベッド使用率が一定の数値を下回るなどした場合、段階的に解除する。政府が緊急事態宣言を1カ月程度延長する方針を固めるなか、影響の大きい経済活動の再開に向けた出口戦略を明確に示す必要があると判断した。改正新型インフルエンザ対策特別措置法では、感染症対策で国と自治体が調整を行うことになっている。府は、政府が4日に発表する緊急事態宣言の延長を受けて5日に詳しい数値などを決める。ただ、大阪単独で解除に踏み切れば兵庫県や京都府など周辺自治体との人の往来が増し、感染が再び拡大する可能性もあり、今後、国や他の自治体との調整も必要になりそうだ。独自基準は2日の府コロナ対策本部会議で決めた。全国に先駆けた動きで、吉村洋文知事は会議終了後「社会経済活動を(通常に)戻すために基準を示す」と述べた。府は解除の基準の一つとして、医療機関のベッド数と入院患者数に基づく「病床使用率」を用いる方針。重症者向けは50%、中等・軽症者は60%を下回れば、段階的に解除する案を軸に検討。現在はいずれも下回るが、検査で陽性と確認された人の割合なども参考にしながら15日に解除の可否を判断する方針だ。府が独自基準を設ける背景には、事業者や府民から休業や外出自粛について理解と協力を得るためには解除に向けた目標設定が欠かせないとの判断がある。政府の専門家会議は1日、外出自粛などを緩和する判断材料として、新規感染者数が十分に抑えられていることや医療提供体制の確保などを挙げたが、具体的な数値は示されなかった。府内の感染者数は1600人超と東京都に次ぐ規模だが、1日までの直近1週間の新規感染者数は193人。4月上旬から3週連続で350~370人台だったのに比べると大きく減ったほか、感染経路不明の患者数の割合も下がっており、出口戦略を探りやすい環境が整ったとみている。事業者などへの休業要請を巡り、小池百合子都知事は2日、吉村知事らとのテレビ会議で「都としての出口戦略を検討したい」と述べた。

*12-6:https://www3.nhk.or.jp/news/special/coronavirus/medical/ (NHK 2020年4月28日) 医療崩壊の危機、新型コロナ対応のベッド数と入院患者数データ
 新型コロナウイルスに対応する医療体制について、NHKが全国の都道府県に取材したところ、入院患者の数が準備している病床数の8割を超えているところは、北海道・東京都・石川県の3都道県となっています。すでに27都道府県で、軽症者に宿泊施設などで療養してもらう対応をとるなどして病床がひっ迫する状況はやや緩和されましたが、専門家は今後も病床を増やすとともに宿泊施設などで療養する患者の健康を十分確認できる体制が必要だとしています。
●新型コロナ対応のベッド数と入院患者数:NHK調べ 4月27日時点の最新データ
①都道府県 ②新型コロナ対応ベッド数 ③入院中の患者数(入院必要な人含む) ④ベッドに対する割合 ⑤軽症者はホテルに
 ①北海道  ②400  ③323  ④81%  ⑤実施
 ①青森県  ②38   ③8   ④21%  ⑤準備中
 ①岩手県  ②184  ③0    ④0%   ⑤準備中
 ①宮城県  ②388  ③27   ④7%   ⑤実施
 ①秋田県  ②105  ③9    ④9%   ⑤準備中
 ①山形県  ②150  ③28   ④19%  ⑤準備中
 ①福島県  ②113  ③49   ④43%  ⑤実施
 ①茨城県  ②151  ③68   ④45%  ⑤実施
 ①栃木県  ②130  ③40   ④31%  ⑤準備中
 ①群馬県  ②143  ③102   ④71%  ⑤実施
 ①埼玉県  ②457  ③254   ④56%  ⑤実施
 ①千葉県  ②471  ③288   ④61%  ⑤実施
 ①東京都  ②2000  ③2619  ④131%  ⑤実施
 ①神奈川県 ②1000  ③213   ④21%  ⑤実施
 ①新潟県  ②234  ③34   ④15%   ⑤実施
 ①富山県  ②205  ③116   ④57%  ⑤実施
 ①石川県  ②170  ③137   ④81%  ⑤実施
 ①福井県  ②114  ③48   ④42%   ⑤実施
 ①山梨県  ②80   ③22   ④28%   ⑤実施
 ①長野県  ②227  ③51   ④22%   ⑤準備中
 ①岐阜県  ②458  ③78   ④17%   ⑤実施
 ①静岡県  ②200  ③35   ④18%   ⑤準備中
 ①愛知県  ②350  ③198  ④57%   ⑤実施
 ①三重県  ②124  ③27   ④22%   ⑤準備中
 ①滋賀県  ②95   ③55   ④58%   ⑤実施
 ①京都府  ②213  ③109  ④51%   ⑤実施
 ①大阪府  ②900  ③423  ④47%   ⑤実施
 ①兵庫県  ②372  ③241  ④65%   ⑤実施
 ①奈良県  ②73   ③42   ④58%   ⑤実施
 ①和歌山県 ②124  ③29  ④23%   ⑤準備中
 ①鳥取県  ②322  ③2    ④1%    ⑤準備中
 ①島根県  ②225  ③20   ④9%    ⑤準備中
 ①岡山県  ②117  ③12   ④10%   ⑤準備中
 ①広島県  ②200  ③85   ④43%   ⑤実施
 ①山口県  ②320  ③15   ④5%    ⑤準備中
 ①徳島県  ②130  ③1    ④1%    ⑤確保
 ①香川県  ②43   ③20   ④47%   ⑤確保
 ①愛媛県  ②70   ③16   ④23%   ⑤実施
 ①高知県  ②74   ③17   ④23%   ⑤実施
 ①福岡県  ②300  ③211  ④70%   ⑤実施
 ①佐賀県  ②70   ③26  ④37%   ⑤実施
 ①長崎県  ②102  ③10   ④10%  ⑤確保
 ①熊本県  ②312  ③47   ④15%  ⑤準備中
 ①大分県  ②222  ③25   ④11%  ⑤準備中
 ①宮崎県  ②100  ③8    ④8%   ⑤実施
 ①鹿児島県 ②143  ③7    ④5%   ⑤準備中
 ①沖縄県  ②160  ③90   ④56%  ⑤実施
 NHKでは、全国の放送局を通じて27日時点の新型コロナウイルスに対応する病床や入院患者の数などについて都道府県に取材しました。それによりますと、新型コロナウイルスの患者が入院するために確保している病床の数は、全国合わせて1万2500床余りで、先週に比べておよそ1200床増えました。また現在の入院患者は少なくともおよそ6300人で、先週と比べるとおよそ350人減りました。さらに軽症者に宿泊施設などで療養してもらう対応をとっているところは、27都道府県となり、先週から10か所増えました。その結果、都道府県別に確保できている病床数に対して入院患者や入院などが必要な人の数が8割を超えているのは、先週から3か所減って、いずれも「特定警戒都道府県」の北海道と東京都、それに石川県の合わせて3都道県となりました。一方で、宿泊施設や自宅で療養や待機をしている人は、病床が確保できていない人たちも含めて24都道府県で2400人を超えています。
●宿泊施設や自宅で療養や待機をしている人
・大阪府 約600人
・埼玉県 400人超
・神奈川県 350人余
・千葉県 300人近く
・東京都 200人近く
・福岡県 200人近く
 埼玉県で自宅待機中だった患者が死亡したことを受けて、厚生労働省は軽症者などの療養は宿泊施設を基本とする方針に変えましたが、ほとんどの都道府県は、病院や宿泊施設での療養を原則とする対応にしているとしています。また、医療機関の役割分担を進めようと重症者と中等症の患者を診る「重点医療機関」をすでに定めているところは23府県で、検討や準備を進めているのが6都道県、18県は定めていないと回答しました。さらに懸念していることを聞いたところ、病床や宿泊施設の確保に加え、宿泊施設で軽症者のケアを行う医師や看護師の確保が難しいといった声や感染拡大が続くにつれ、新型コロナウイルスの患者以外の医療への影響が懸念されるといった声が出ています。また、引き続き、医療用のマスクやガウンなどが不足する中での院内感染対策も多くのところが課題に挙げました。感染症に詳しい川崎市健康安全研究所の岡部信彦所長は、「病床の状況は改善されてきたと見られるが、まだ十分ではない。医療資源が少ない地方で、感染者が一気に増えるおそれもあり、重症患者の治療を早く適切に行い亡くなる人を減らすために今後も医療機関が病床を増やし行政が支援することが必要だ。また、一般の人たちには、連休中も外出を控えるなど感染拡大を抑えるための協力をしてほしい」と話しています。また、宿泊施設などでの療養が増えてきていることについて、「はじめは軽症であっても、容体が急変することもある。自宅療養の場合には、息苦しさを感じるなど具合が悪くなったと感じたら保健所などに連絡してもらいたい。行政や医療機関が連絡体制を整えるなど、医師や看護師が患者の健康を十分確認できる体制をとる必要がある」と指摘しました。

*12-7:https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200501/k10012415081000.html (NHK 2020年5月1日) 東京都 年代別の死亡者公表 60代以上が9割 新型コロナ
 東京都は新型コロナウイルスに感染して死亡した人の年代別の内訳を公表し、60代以上が全体のおよそ9割を占めていることを明らかにしました。都内では新型コロナウイルスの感染が確認された126人が1日までに死亡しています。このうち、確認中の4人を除く122人について都が年代別の内訳を公表しました。それによりますと、
  ▽30代以下と100歳以上で死亡した人はいなかった一方、
  ▽40代が1人、
  ▽50代が9人、
  ▽60代が18人、
  ▽70代が40人、
  ▽80代が38人、
  ▽90代で16人となっています。
 60代以上が全体のおよそ9割を占め、中でも最も多い70代と次に多い80代だけで6割余りとなるなど、高齢者の死亡が多くなっています。これについて都は、複数の病院で集団感染が発生して持病のある人が感染したことや、高齢者が重症化しやすいことが要因とみています。性別で見ますと、▽男性が85人、▽女性が37人と、男性が女性の2倍以上となっていて、都は、流行の初期に男性が感染するケースが相次いだことや、たばこを吸うなど持病がある人が男性に多かったことなども要因の1つと見ています。都の福祉保健局は「死亡は高齢者に集中しているが、若い世代の人たちも感染拡大につながらないよう自制してほしい」と話しています。

*12-8:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO58794080W0A500C2CE0000/ (日経新聞 2020/5/6) 新型コロナで自宅療養、宿泊施設の2倍超 移行進まず
 厚生労働省は6日、新型コロナウイルスの感染者の療養先についての全国調査結果を発表した。4月28日時点で8711人の感染者のうち、自宅で療養している人は1984人だった。ホテルなどの宿泊施設の療養者の2.3倍に上る。厚労省は軽症者や無症状の人に自宅療養より宿泊施設の利用を優先してもらう方針を示しているが、移行は十分に進んでいない。加藤勝信厚労相は6日、「現場では宿泊療養がときには受け入れてもらえないという話も出ている」と報道陣に語った。調査によると、検査で陽性となった全国の感染者数(死亡者や回復した人を除く)は4月28日時点で8711人で、うち入院者が5558人で最多。自宅療養が1984人、宿泊施設での療養が862人だった。自宅療養を都道府県別にみると、東京が635人で最も多く、埼玉354人、大阪332人が続いた。千葉、神奈川は約250人で、福岡は81人。この6都府県以外は30人以下で、大半は0人だった。施設療養の最多も東京で198人だった。ほぼ同時期に行われた別の調査では、全国の宿泊施設で1万2090室が受け入れ可能となっており、約7%しか利用されていないことになる。東京など自宅療養が多い6都府県でも8%にとどまり、施設が使われていない状況だ。東京の担当者は「症状が軽い人は自宅での療養を望む人も多い」と話す。施設では家族への感染が防げるほか、看護師や保健師が24時間常駐して入院への切り替えもスムーズだとして「施設療養を積極的に利用してもらいたい」としている。感染者の多い自治体では、医療機関に肺炎になるなど中等症以上の治療に専念してもらうため、軽症者などは医師の判断で施設や自宅での療養に切り替えてきた。ただ、埼玉県では自宅待機者が死亡。厚労省は4月23日、容体急変に対応するため、自宅より施設療養を優先する通知を出した。

*12-9:https://www.nishinippon.co.jp/item/n/606824/ (西日本新聞 2020/5/9) 軽症者ホテルの選定難航 長崎県、周辺住民の不安強く
 新型コロナウイルス感染者で軽症と無症状の人たちの隔離、療養に充てるため、長崎県が借り上げる宿泊施設が決まらない。県内の8医療圏にそれぞれ設ける計画だが、長崎市内では“内定”したホテルの周辺住民が反対を表明するなど選定は難航しているもようだ。「宿泊療養施設の運営につきましては、県が万全を期して行ってまいります」。地元に配布された中村法道知事の名前入りの文書には、感染者は検査で2度の陰性が確認できないと退所できない、ごみの管理は徹底する-など運営方針が記されている。県は医療崩壊を防ぐため、102床の専門病床は重症者と中等症者用に確保し、症状が軽い人向けに宿泊施設を準備する。住民たちもその方針には賛成しているが、「居住エリアから離れた場所にしてほしい」「公共施設を活用してはどうか」との声が上がる。県担当課は医療機関が近くにあることを条件としており、安全確保に努める姿勢を示しているが、不安は解消されていない。県内では4月18日以降は新たな感染は確認されていない。だが停泊中のクルーズ客船で140人超のクラスター(感染者集団)が発生、県医師会が「医療危機的状況宣言」を出したことも住民の不安を強くしているようだ。県が応募した施設はベッド付きの洋室が50部屋以上(離島部は20部屋以上)あり、それぞれバスとトイレを備えることが条件。壱岐を除く7医療圏で計23施設(計2096部屋)の応募があり、目標の千人分は突破している。こうしたホテルの活用は他県でもみられ、神奈川県では運営の一部を自衛隊が担当。福岡県は「住宅地から離れ、外出自粛で人出が減っている」との理由で福岡市のJR博多駅前などのホテルを確保している。

*12-10:https://digital.asahi.com/articles/DA3S14470582.html (朝日新聞社説 2020年5月10日) コロナ治療薬 前のめり排して着実に
 新型コロナの治療薬としていくつかの薬が候補に挙がり、試験や研究が進められている。その一つで米国が重症者向けに緊急使用を許可したレムデシビルを、厚生労働省はスピード承認した。国内の審査を簡略化できる制度を使った異例の措置だ。当然ながら副作用の懸念もあり、投与した患者全員の追跡調査をして、慎重に効能を検証することが求められる。治療薬の早期開発に期待を寄せる声は多い。関係者は最善の努力を尽くして、これに応えてもらいたい。しかし、だからといって有効性や安全性を確かめる手続きをないがしろにするわけにはいかない。いま現場の医師が注目しているのは、国内のメーカーが開発し、新型インフルエンザ用に承認されているアビガンだ。新型コロナの治療薬としての承認をめざした治験が進んでいるが、それと並行して、多くの医療機関が参加する医学研究(臨床研究)も行われ、実際に患者に服薬してもらっている。安倍首相は4日の会見で「3千例近い投与が行われ、効果があるという報告も受けている」と述べ、月内の承認をめざす考えを示した。6日放映のネット番組では対談した京大の山中伸弥教授から、さらなる前倒しに向けて「首相の鶴のひと声」を求められる場面もあった。だが前のめりになりすぎるのは禁物だ。多くの患者はアビガンを使わずに回復している。アビガンを使って良くなった症例をいくら集めても、薬の効果を見極めるのは難しい。期待先行で評価するようなことがあってはならず、また、動物実験で重い副作用が報告されていることにも留意する必要がある。思い起こすのは、02年に世界に先駆けて日本で承認された抗がん剤のイレッサだ。「副作用の少ない夢の新薬」ともてはやされたが、販売直後からその副作用が原因とみられる死亡例が相次いだ。どんなタイプの患者に効果があるかなどの情報が不十分なまま、広く使われたことが深刻な被害を生んだ。首相が、病院の倫理委員会の承認が条件としつつ「希望すれば誰でも服用できる」と繰り返しているのも、混乱を招く恐れがある。全ての病院で処方できるわけではないし、対象から外れた患者が発言を頼りに投与を希望したら、その対応で現場の負担はさらに増えかねない。政府は40カ国以上にアビガンを無償提供すると表明した。国内患者の健康に関わるだけでなく国際協力にもつながる薬だからこそ、手順を踏んで遺漏のないようにしたい。薬害の歴史を忘れることなく、コロナ禍に適切に対処しなければならない。

*13:https://www.agrinews.co.jp/p50658.html (日本農業新聞 2020年4月29日) コロナと輸出制限 食料安保確立の契機に
 新型コロナウイルスの感染拡大で農畜産物の消費が混乱し、農業者を苦しめている。食料の輸出制限が相次ぐ中で浮き彫りになったのは、食と農はひとつながりの関係にあることだ。国内生産が縮小すれば食の不安は増大する。食料の安定供給が揺らがないよう、国を挙げて生産基盤強化を急ぐべきだ。食料自給率37%(2018年度、カロリーベース)の日本にとって、日々の食卓をどう守るか考えざるを得ない事態だ。新型コロナの感染が地球規模で広がり食料貿易に影響が出ている。中でも輸出制限は輸入国の食料安全保障を脅かしかねない。世界最大の小麦輸出国ロシアは4~6月の穀物輸出量に制限を設けた。第5位の輸出国のウクライナも国内販売を優先し、輸出制限に踏み切る可能性がある。米では世界第3位の輸出国ベトナムが新たな輸出契約を3月下旬に停止した。国内の需給状況を確認する一時的な措置ともみられるが、同国政府は主食の確保に神経をとがらせる。農水省は、これらの国は主要な輸入先でないため「日本の食料輸入に影響が生じているとの情報は入っていない」とする。日米欧やロシアなど20カ国・地域(G20)は農相会議で「いかなる不当な制限的措置を回避する」ことを確認した。ただ、どんな場合が「不当」に当たるかは輸出国と輸入国で温度差があるだろう。自国民の食料確保を輸出より優先するのは政府の役割として当然ともいえる。輸出制限回避の担保を得たとは言い難い。また世界貿易機関(WTO)ルールは新たな輸出制限を設ける時はWTOに通知し、輸入国と協議することなどを定める。しかし輸出制限の歯止めとして実効性はあいまいだ。各国政府の意図と関係なく食料流通が止まる恐れもある。米国では食肉処理工場で感染が広がり、複数社が操業を停止した。同国の豚肉供給量の4、5%を占める工場も含まれ、食料品店では食肉が今後不足するだろうとの報道もある。世界最大の米の輸出国・インドでは、都市封鎖による混乱で輸出業者が新規契約の締結をやめている。グローバリゼーションで、効率性や安さを優先し食料の供給網を世界中に広げてきたことが一転、地球規模の感染拡大でリスクとなって現れつつある。日本では食料不安はまだ顕在化していない。国内で農業者が懸命に生産を続け、国民の食を守っているからだ。ただ外出自粛や休校、飲食店の休業などによる需要減と価格低下で、経営が苦境にある農業者も多い。食料の安定供給は瀬戸際にある。食料自給率が低い中で、生産力がさらに弱まれば食料不安が噴き出す恐れがある。消費者が農業者を支える番だ。輸入依存を見直し、食と農の結び付きを強めていく。その契機とすべきだ。そのために政府は、農業経営を継続できるよう支援するとともに、食料供給の実態を国民に伝えることが求められる。

| 経済・雇用::2018.12~ | 08:48 PM | comments (x) | trackback (x) |
2020.2.23 日本は、今後、何で食べていくつもりですか? ← 妄想に基づく優越感だけでは食べていけないこと (2020年2月24、26、27、29日、3月2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、13、14、16、18、19、20、22、23、25、26、27日追加)

   購買力平価ベースのGDP   2018.12.18朝日新聞   2019.12.21毎日新聞

(図の説明:物価上昇の影響を除いた購買力平価ベースのGDPは、左図のように、日本は停滞しており、現在はインドと接戦の状態だ。一方、中国は、等比級数的にGDPが伸びているが、これまでは安い人件費に支えられた製造業の発展が主な要因で、現在は先端産業にも進出している。アメリカは人件費が特に安いわけでもないのに、購買力平価ベースのGDPが順調に伸びており、開拓者精神と人材の多様性に支えられているのだろう。また、中央の図は、中国の近年の出来事とGDPの上昇をグラフに示したもので、中国は市場経済を目標にして以降、GDPの伸びが著しいことが明らかだ。右図の日本の2020年度予算は、予算委員会であまり議論されていない《又は議論していても報道されていない》が、持っている資産を活かし、無駄遣いを省いて教育を重視し、技術や人材を大切にしなければ、将来がおぼつかない)

 経産省はじめ政府が愚かなため、日本は1億人の人口を抱えながら、食料(自給率37%)やエネルギー(自給率7.4%)の殆どを輸入し、輸入するための金を稼ぐ手段である製造業やサービス業も他国に譲ってしまった。このままでは、将来は、食料やエネルギーを輸入する金もなくなるため、今日は、事例を挙げてそのことについて説明する。

(1)農林業生産物の外国依存
1)日本における食品の自給率低下
 農林水産省は、*1-1・*1-2のように、2030年度の食料自給率目標として輸入飼料を与えた国内の畜産物を「国産」に含めた数値を新たに設定する方針だそうだが、これを国産に含めていけない理由は、飼料の輸入が止まれば、その畜産物を生産できなくなるからだ。

 これは、政府が農産物の市場開放を優先したため政府が掲げた食料自給率の目標に達しないことを隠すためだろうが、そもそもカロリーだけで自給率が100%になっても生きてはいけない。まして、「45%の目標が37%に落ち込んだが、新たな算定方法で計算し直すと46%に跳ね上がった」などというのは、次元の低い数字遊びにすぎず、飼料増産・耕畜連携・国産飼料を与えた畜産物の消費という機運を削ぎ、食料安全保障の確立のための飼料自給率向上への取り組みを疎かにするものだ。

 また、*1-3のように、社会全体の「食の安全」への意識の高まりの中、国は2015年に食品表示法を施行して原産地表示の義務化を進めているが(日本政府が定めると妥協の産物になるため、EUと同じにした方がよい)、不十分なこの原産地表示でさえ、「中国産」を「国産」と偽るなどの虚偽表示が多いそうである。

2)榊(サカキ)も中国産
 日本の神事に欠かせないサカキは、国内に広く自生しているにもかかわらず、*2のように、殆ど中国産で、その理由は、国産材が売れなくなって森林の手入れが減り、木材の下に自生しているサカキを切り出して販売していた供給が減ったからだそうだ。

 佐藤幸次さんは、そこにビジネスチャンスを見つけて10年前に国産サカキの供給に乗り出したが、軌道に乗せるまでは大変だったそうだ。

(2)和服も中国製
 今回の新型コロナウイルス騒ぎで、日本で使われているマスクの80%が中国製だということがわかって驚いたが、日本文化の象徴とされる和服についても、*3のように、①絹糸の殆どが中国産で、made in Japanの着物生地は絶滅寸前であり ②仕立ての半分以上は、ベトナムなど海外の職人が行っており 流通する「日本の着物」の大半は、「中国産の糸」を用いて、日本で仕立てたか、ベトナムなど海外の工場で仕立てたものだそうだ。

 これは、品質管理を日本企業が行いつつ、人件費をはじめとするコストの安い中国・ベトナム・ミャンマーなどで生産するようになったためで、そうなった理由は、日本国内では人件費・水光熱費・地代等の必要経費は上がったが、それに見合った生産性向上ができなかったため、国内で生産すれば価格が高くなりすぎて一般市民が買えなくなったという日本市場の現実がある。

 この後、日本での生産が0になれば、品質管理ができる日本人もいなくなり、日本からは技術もなくなるが、この現象は、時間の差はあれ他産業にも起こったことで、主に東西冷戦終了後の1990年代から始まったことである。こうなってしまうと、仮に景気がよくなっても、国内ではなく輸入する相手国に金が落ちる仕組みとなる。

(3)工業製品も中国にシフト
 私は、東西冷戦が終了した1990年代にODA担当をしていたため、共産主義経済の国が経済敗北し、共産主義経済から市場主義経済に移行した国をずっと市場主義経済だった国が援助しつつ技術移転していた現場にいて、その内容を見てきた。そして、現在、(長くなりすぎるので1つ1つ例を挙げはしないが)市場主義経済の国だった筈の日本が、中国やロシアよりも共産主義経済の弱点を具現しているように見えるのである。

 例えば、国内メーカーだったが、日本で変に叩かれて台湾メーカーとなったシャープは、*4-1のように、初めて第5世代(5G)移動通信システムに対応したスマートフォンを発表したそうだ。メディアが的外れの叩き方をして、日本の優良メーカーを日本から追い出したのは本当に残念なことだった。

 一方、*4-2のように、中国で発生した新型コロナウイルスによる肺炎の拡大で、スマートフォンなど世界の電子機器の生産に影響が出ているのには、電子機器における中国の重要性が現れている。つまり、中国は、食品・軽工業製品を生産・輸出しているからといって重工業製品・IT産業で遅れているわけではなく、最先端の電子機器も生産しているのであり、これは一国の政策として当然のことなのだ。

 さらに、*4-3のように、新型コロナウイルスによる肺炎の感染拡大が続く中、中国からの部品供給が滞ったため、日産自動車は九州の完成車工場の稼働を一時停止するそうで、国際貿易センターによると、2019年の中国からの自動車部品の輸入額は30億ドル(約3300億円)と、重症急性呼吸器症候群(SARS)が流行した03年の約10倍になっているそうだ。

 つまり、日本が現状維持や後戻りばかりしている間に、中国はEVや自動運転車でも最先端を走っており、これは、国を挙げて本気でEVや自動運転車の開発を行う意思決定をし、それに基づいて皆が行動した結果だ。にもかかわらず、経産省は、「自動車だけは永遠に日本の方が優れている」と考えているようだが、それもいつまで続くかわからない幻想なのである。

(4)サービス業
 製造業は、コストの低い国が立地上の比較優位性を持つのに対し、サービス業は、消費地でしか生産できないため、日本にも立地の比較優位性があり、雇用吸収力もある産業だ。しかし、経産省はじめ日本政府は、製造業と比較すると、サービス業は眼中にないらしい。

1)観光業
 中国で発生した新型コロナウイルスによる肺炎拡大で中国政府が海外への団体旅行を禁止した1月末以降、旅客便の運休やクルーズ船の寄港取りやめが相次ぎ、沖縄県の観光施設・ショッピングモール・ドラッグストアなどから中国人団体客の姿が消えて、沖縄県経済の屋台骨である観光業に影を落としているそうだ。

 このように、「日本は中国はじめ外国の観光客を迎えて外貨を稼いでいるのに、メディアが『爆買い』などという嘲るような言い方をするのは罰当たりだ」と私は思っていたが、客の姿が消えて初めて、その有難味がわかったようだ。観光で行ける場所は世界に少なくないため、今後は観光客を疎かにしない方がよい。

2)医療・介護
 日本の医療は質が良かったにもかかわらず、近年は、*5-2のように、厚労省が医療費抑制しか考えずに医療叩きばかりしているため質が落ちた。医療の質が高ければ、人間ドック・医療・リハビリなどを目的とした観光を設定して稼ぐこともできたが、新型コロナウイルスへの対応を見ても諸外国から見劣りするもので、もともとあった付加価値の高い宝を、浅い思考と狭い視野でなきものにしようとしているわけである。

 さらに、介護も、実需に基づいた日本発のサービスで、高齢化とともに世界で実需が増えるサービスであるのに、厚労省や財務省には社会保障という名の無駄遣いにしか見えないらしく、ブラッシュアップするどころか人口減少による支え手不足を理由として高齢者の負担増・給付減しか考えていない。そして、40歳以上の人からのみ高額の介護保険料を徴収する不公正を是正しようという気配すらない。

(5)日本は、人材・熟練技術者やその育成を怠ってきた
 このような新しい製品やサービスを作って軌道に乗せるのは、科学的・論理的にモノを考えることのできる人材だ。しかし、日本は、人材を計画的に育てておらず、*6-1のように、①量子研究でも後れた ②日本発の再生可能エネルギーの使用も遅れた ③日本発の再生医療もiPS細胞に偏りすぎて遅れた ④日本発の癌免疫療法も遅れた 等の状況だ。その理由は、「司令塔がない」というよりは、「司令塔にふさわしい人材をリーダーにしていない」からである。

 さらに、知性が重要な時代になったのに、*6-2のように、高等教育を極めた高度人材に大学も企業も活躍の場を与えて育成していない。既に人口に占める博士の割合は増えているため、「博士≒高度研究者」である必要はなく、小・中・高校の教諭も博士を優先して採用してもよいと思う。なお、考えるための基礎知識は必要だが、覚えて終わりの知識では役にたたないのだ。

 また、基礎知識のある人が就職しても、本当の人材や熟練技術者になるためには、On the job training が欠かせない。そのため、*6-3のように、①“ゆとり教育”で基礎知識を減らしたのは人材の育成にマイナスだった ②“働き方改革”によって、知識の吸収期であり仕事に熱中している人にまで働かないことを強制するのはよくない ③労働基準法改正が日本人の「勤労は美徳」という勤労観にトドメを刺して、日本の競争力をますます無くさせている ④残業禁止でダブルワーカーが増えそうだ ⑤「手に職」が付かなくなり技能伝承がやりにくくなる ⑥このままでは何の保護も保障もなく勤勉に働いて日本社会に貢献してきた経営者の多くが労基法違反の“犯罪者”になる ⑦これでは中小企業の多くが消滅してしまうだろう ⑧日本人が働き過ぎだったのは、戦後日本を復興した前の世代のことである というのに、私は賛成だ。

<食品の自給率>
*1-1:https://www.hokkaido-np.co.jp/article/394897 (北海道新聞 2020/2/20) 食料自給率 失政覆う数値かさ上げ
 農林水産省が、2030年度の食料自給率目標として、輸入飼料を与えた国内の畜産物を「国産」に含めた数値を新たに設定する方針を示した。政府は現在、25年度にカロリーベースの自給率を45%に引き上げる目標を掲げている。18年度実績は過去最低の37%にまで落ち込んだが、新たな算定方法で計算し直すと46%に跳ね上がる。農産物の市場開放を優先し、自給率低迷を放置する安倍晋三政権の「攻めの農政」の欠陥を覆い隠そうとしている。そう勘繰られても仕方あるまい。安直な数値のかさ上げで、輸入飼料に依存する畜産業の実態を見えにくくするのは大いに問題だ。新しい自給率目標は、今春改定される農政指針「食料・農業・農村基本計画」に明示される。輸入飼料を与えた畜産物を除いた従来方式の指標と併記するという。今回の措置について、農水省は「畜産農家の生産努力を反映させ、国産品を購入する消費者の実感を高めるため」と説明するが、姑息(こそく)以外の何物でもない。輸入飼料を与えた畜産物は統計上、国産に含まれなかっただけであって、店頭で輸入品扱いされているわけでも、消費者が国産品と認めていないわけでもない。政府に問いたいのは、そもそもなぜ食料自給率向上を政策目標としてきたのかということである。地球規模で見れば、途上国の人口増、気候変動、疫病、戦争などで、いつ食料争奪戦が起きても不思議はない。自給率は、輸入を絶たれた場合でも国民の食を守れるかどうかの目安であるはずだ。新たな指標は輸入飼料への依存度をさらに高めかねず、政策本来の趣旨に逆行している。背景として思い当たるのが昨夏の日米首脳会談である。首相はトランプ大統領の要請をのみ、米中貿易摩擦でだぶついた飼料用トウモロコシの大量輸入を約束した。トウモロコシの輸入が増えても自給率が上がる算定方法をわざわざ用いるのは、農家のためではなく、日米両首脳にとって政治的に好都合だからではないのか。これは「国産飼料に立脚した畜産の確立」を掲げ、コメ農家に飼料用米への転作を促してきた従来の農政とは明らかに矛盾する。安倍政権は以前にも「国際基準に合わせる」などの理由で、国内総生産(GDP)を年間30兆円規模かさ上げした。経済指標を恣意(しい)的に扱い、成果を誇示するのはいいかげんにやめるべきだ。

*1-2:https://www.agrinews.co.jp/p50020.html (日本農業新聞 2020年02月15日) 新たな自給率目標 飼料増産の機運そぐな
 次期の食料・農業・農村基本計画で農水省は、飼料自給率を反映しない新たな自給率目標を設定する方針だ。畜産農家の生産努力を考慮するなどの狙いがあるが、飼料の多くを輸入し、その依存度が高まっているのが実態だ。食料安全保障の確立へ飼料自給率向上への取り組みがおろそかになってはならない。日本の飼料自給率は25%(2018年度)と低い。それを反映させた現行の自給率の算定では畜産物は低くなり、全体が上がらない要因になっている。現行のカロリーベースは過去最低の37%(同)。飼料自給率を高めないと、畜産農家が頑張って生産を増やしても全体の自給率の向上にはつながりにくい。新たな自給率目標はカロリーベース、生産額ベースともに飼料自給率を反映しない「産出段階」の数値。カロリーベースでは46%になる。現行基本計画の目標の45%を上回り、数値を高く見せるためではないかとの誤解を招きかねない。狙いについて分かりやすい説明が必要だ。また飼料自給率を反映しないと輸入飼料に依存している実態が見えにくくなる懸念がある。飼料自給率は3年連続で低下。そうした危機感が国民に伝わらず、飼料増産・耕畜連携や、国産飼料給与の畜産物を食べようといった機運がそがれるようなことがあってはならない。飼料自給率向上の要である飼料用米について現行基本計画は、25年度には、13年度の10倍に当たる110万トンに増やす目標を設定。しかし作付面積は米の生産調整を見直してから18、19年産と連続で減り、18年産の生産量は43万トンにとどまった。飼料自給率の低い日本は、飼料の輸入が滞れば畜産物生産に大きな影響が出る。食料安保が危ぶまれる中、新たな自給率目標設定を巡っては慎重な扱いを求める声が相次ぐ。自民党では「飼料の国産化にマイナスにならないように」、次期基本計画を議論する同省の食料・農業・農村政策審議会の企画部会でも「土地利用型の飼料作物の振興を」などの意見が出た。自給率目標を含む基本計画の根拠法である食料・農業・農村基本法は、「食料の安定供給の確保」のために「国内の農業生産の増大が基本」「国民生活の安定に著しい支障が出ないよう供給を確保」といった理念を掲げる。それを具現化するのが自給率目標だ。国内で作れるものは作るとの姿勢を堅持すべきだ。飼料用米をはじめ飼料生産は農地の有効活用の上でも重要で、自給力の確保にも役立つ。次期基本計画では、飼料自給率を反映した従来の自給率目標と反映しない新たな目標を、カロリーベースと生産額ベースそれぞれで設定、四つの数値が並ぶことになる。これに飼料自給率目標を加えると五つになる。新たな自給率目標の設定には、消費者に国産消費の意義を実感してもらう狙いもある。同省は、各目標の役割を丁寧に説明し理解を深める必要がある。

*1-3:https://www.nishinippon.co.jp/item/n/542448/ (西日本新聞 2019/9/12) 義務化でも消えぬ不正 相次ぐ産地偽装
 2000年代に入り全国各地で相次ぐ食品偽装。11日、福岡県北九州市の食品加工会社が「中国産」の梅を「国産」と偽って販売していたことが明らかになった。社会全体の「食の安全」への意識の高まりの中で、企業にとってそれまで培った信頼を大きく損なう問題だ。国は15年に食品表示法を施行、原産地表示の義務化を進めるが、不正は後を絶たない。02年に雪印食品(東京)が牛海綿状脳症(BSE)対策事業を悪用して外国産の肉を国産と偽装していたことが分かり、同社は解散した。日本食品や日本ハム子会社でも同様の偽装が明らかになった。07年には高級料亭「船場吉兆」(大阪)で、九州産の牛肉と認識しながら兵庫県の高級ブランド牛「但馬牛」「三田牛」のラベルを張る、ブロイラーを「地鶏」として販売するなどの偽装が発覚。賞味・消費期限の偽りや料理の使い回しなどの不正も明らかになった。料理部門で営業を再開したが、崩れた「老舗」の信頼を取り戻せず翌年に廃業した。食品加工会社「キャセイ食品」(東京)も08年、長崎工場で「九州産」「国産」として生産した冷凍野菜の一部に中国産を混ぜて出荷していたと明らかにした。同社は経営破綻した。
   ◇   ◇
 各地で相次いだ産地や賞味期限の偽装などを受け、国は2013年、それまで食品衛生法など3法で定めた食品の表示規定を一元化。食品表示法として施行され、加工食品の添加物、賞味期限などの表示基準を守るよう義務付けた。原料の原産地表示についても、来年3月末までに、全ての生鮮食品、輸入食品、一部の加工食品(もち、漬物、野菜冷凍食品、おにぎりなど)に義務付けた。さらに、22年4月までに、国内で製造したすべての加工食品について、重量割合が最も大きい原材料の原産地表示が義務化される。違反行為への罰則も強化。原産地について虚偽の表示をした食品の販売をした場合は2年以下の懲役または200万円以下の罰金に処する-などと定める。だが、食に関わる不祥事は消えない。昨年には大分市の水産品販売会社がギンザケをサーモントラウトと偽るなど不適正な表示で商品を販売。福岡県大牟田市の水産物卸売業も中国や韓国で1年ほど育てて輸入したアサリの成貝を、熊本県内で1~6カ月養殖した後に熊本産として流通業者に販売、九州農政局に是正を指示された。

<神事に用いるサカキも中国産>
*2:https://agri.mynavi.jp/2020_01_27_104254/ (マイナビ農業 2020年02月17日) 国産サカキを商機に。売り手優位のビジネス手法とは
 日本の神事にとって欠かせない植物であるサカキのほとんどは、じつは中国産だ。彩の榊(さいのさかき、東京都青梅市)を運営する佐藤幸次(さとう・こうじ)さんはそこにビジネスチャンスがあるとにらみ、約10年前に国産サカキの供給に乗り出した。だが経営を成長軌道に乗せるまでには、大きな試練が待ち受けていた。
●日本で売られるサカキのほとんどは中国産
 サカキは、緑の葉が茂った枝を束ねて神棚に供えたり、神社で参拝者が神前にささげる玉串(たまぐし)に使われたりする植物。名前の由来には、神と人間の境界にある境木(さかき)を語源とする説がある。一般に「サカキ」と呼ばれているものには、「ホンサカキ」と葉っぱがやや小さい「ヒサカキ」の2種類がある。いずれもツバキ科の常緑広葉樹で、国内に広く自生している。ここでは両者を区別せず、サカキと表記する。なぜ日本の神事に使うサカキが中国産なのか。背景の一つが林業の衰退だ。国産の杉やヒノキが売れていたときは、森林の手入れの一環として下に自生しているサカキを切り出し、販売していた。だが輸入木材に押されて林業の収益性が下がり、森林を手入れする機会が減るのに伴い、サカキの供給も細っていった。林業に携わる人が高齢化し、作業をする人が減ったことがこうした流れに拍車をかけた。そこに登場したのが中国産だ。今から30年ほど前に日本の業者が中国でサカキの栽培や加工の仕方を教え、日本向けに輸出し始めた。今や日本で流通しているサカキの8割以上は中国産と言われている。そこに商機を見いだしたのが、当時20代後半の佐藤さんだった。
●山の中で見つけた大量のサカキ
 佐藤さんは17歳で高校を中退し、埼玉県飯能市にある実家の花屋で働き始めた。高校を辞めたのはミュージシャンになりたかったからだ。音楽会社にデモテープを送ったりしてみたが、実力不足を感じ、家業を手伝うことにした。サカキに注目した理由はいくつかある。家の仕事を手伝うかたわら、修行のために大手の花屋で働いてみた。そこで中国産のサカキが1カ月に2000束も売れていることを知った。実家の50倍以上。佐藤さんは「サカキってこんなに売れるんだ」と驚いた。実家で売っていたサカキも中国産だった。段ボール箱に入ったサカキを市場から仕入れると、神棚などに供えるサカキの束を指す「造り榊(さかき)」が「シクリサカキ」と誤記されていたりした。もちろんその箱は店には置かないようにしていた。だがあるとき、客の一人から「おまえが売っているのはニセモノだ」と言われ、「これは日本のか」と厳しく問いつめられた。佐藤さんは「今なら違いがはっきりわかります」と話す。中国産は輸送効率を高めるために箱にぎゅうぎゅう詰めにすることが多く、葉っぱが蒸れて弱ってしまうことがあるからだ。その客は違いを一目で見抜くほど目が肥えていたのだった。この一件を通して、佐藤さんは国産のサカキに需要があることを知った。転機は29歳のときに訪れた。佐藤さんは折に触れ、祖母の眠る霊園に行く習慣があった。その日も墓前で手を合わせると、霊園に隣接する山に足を踏み入れた。佐藤さんにとって墓参後の散歩コースだった。ふと見ると、目の前にサカキの木があった。横を見ると、そこにもサカキの木。周囲を見回すと、霧が晴れて風景の輪郭がはっきりするように、大量のサカキが目に飛び込んできた。心の中で「うわーっ」と叫んだ。どれも葉っぱが大きくてツヤがあり、濃い緑色をしていた。自分が店で扱っているサカキとは別物だった。「これだけあれば商売ができる」。佐藤さんはその日のうちに、「花屋を辞める」と両親に告げた。山の持ち主を調べたところ、ある鉄道会社が所有していることがわかった。十数回電話してようやくアポイントメントを取り、担当者に会いに行くと「サカキを切っていいよ」と快諾してくれた。販売用に植えたものではなく、他のサカキと同様、自生したものだったからだ。ちょうどそのころ、鉄道会社は山の中に20キロもの長さの遊歩道を造ることを計画していた。もともとある山道の両側10メートルを整備し、幅20メートルほどの遊歩道を造るという構想だった。担当者と話し合った結果、地面から60センチの高さで切ったサカキの株を遊歩道に残すことが決まった。切った上の部分は佐藤さんが販売用に使う。株から枝が伸びてくれば、それも切って商品にすることができる。山道の両側に生えた雑草や雑木を刈る作業を請け負うことで、佐藤さんは販売用のサカキを無償で確保することができるようになった。一人でビジネスを立ち上げることを決め、実家を出て市内のアパートに移り住んだ。順調なスタートのはずだった。だがすぐに大きな壁に直面した。せっかく手に入れたサカキが思うように売れなかったのだ。
●売り手優位のビジネスを確立
 これまで花やサカキを仕入れていた近くの市場が、最初の販売の場になった。当時はセリにかけると5キロで2500円、花屋から事前に指名で注文が入っていると3500円が相場だった。初の出荷は50キロ。注文は取っていなかったので、「セリで2万5000円くらいで売れればいいな」と思って出した。ところがフタを開けてみると、合計で2500円。期待したほどセリで買い手がつかなかったのだ。「ショックでした」。佐藤さんはそのときのことをこうふり返る。昼はアルバイトでビルや住宅を解体する仕事をし、夜にサカキを切り出しに行く生活が始まった。サカキの販売ではとても生計が成り立たないからだ。そんな生活を始めて1年半ほどたったときのことだ。解体のバイトを終えてアパートに帰ると、路上に大量の荷物が積んであった。「邪魔だなあ」と思いながら近づいてみて驚いた。「うわっ、これ自分のだ」。丁寧に積まれた布団の上にサカキの枝が置いてあった。家財道具一式が自室から外に運び出されていたのだ。生活は困窮を極めていた。アパートに住んでほどなくしてまず携帯代を払えなくなり、1年たったころにはガスも電気も止まり、家賃も払えなくなっていた。そしてついにアパートを追い出され、車の中で寝泊まりするようになった。それから約1カ月。バイト先の解体業者のもとを、兄が訪れた。「おまえ何やってるんだ。やっと見つけたぞ。電話ぐらいつながるようにしとけ」。そう言って携帯代を貸してくれた。「一つ報告がある」。兄がバイト先を訪れたのは、携帯代を貸すことが本当の目的ではなかった。「花屋からおまえあてにサカキの注文が入ってるぞ」。これが佐藤さんにとって初の注文となった。注文は月に2回で、それぞれ50キロずつ。その後もずっと続く定期注文だった。値段は5キロで3500円で、1カ月で7万円の収入だ。市場に熱心に売り込みに来る佐藤さんの姿を見た花屋が、注文を出してくれたのだ。「うれしかった」。そうふり返るのも当然だろう。この注文からほどなくして、佐藤さんは東京都青梅市で事務所を借り、株式会社「彩の榊」を立ち上げた。飯能市を離れたのは、友人たちとの付き合いを断ち、サカキの仕事に本格的に集中するためだった。佐藤さんはその後、受注を徐々に増やしていった。それを可能にしたのが営業努力。市場を通した販売では限界があると考え、花屋を直接回るようにしたのだ。「注文につながるのは100軒に3軒くらい」(佐藤さん)しかなかったが、珍しい国産サカキを評価してくれる花屋が少しずつ増えていった。品質の高さも追い風になった。中国産のサカキが切り出してから日本の花屋に届くまで約40日かかるのに対し、彩の榊は3日。どちらのサカキが生き生きとしているかは言うまでもない。さらに中国産と品質面で差を出すため、効率優先で輸送時にサカキの束を箱にぎっしり詰めたりしなかった。彩の榊には現在、1カ月に20万束の注文が入る。収量に限りがあるため、そのうち対応できているのは1万5000束で、値段は5キロで5000円。圧倒的な売り手優位のビジネスだ。そのほか玉串用などの「1本モノ」も月に約5000本販売している。快進撃はこれにとどまらない。彩の榊は既存のサカキの商売の枠を超える新たなビジネスの手法を取り入れ、飛躍のときを迎えようとしている。

<和服も中国製>
*3:http://masaziro.com/?p=880 (MASAJIRO 2016.3.23より抜粋) メイドインジャパンの着物生地は絶滅寸前である。
 「絹糸のほとんどは中国産です。それより驚いたことに、仕立ての半分以上は、ベトナムなど海外の職人が行っていると言われています。」また、農林水産省によると、2014年の養蚕農家はわずか393戸で、生糸の生産量も27トン足らずとなっており、ピーク時の1934年(4万5000トン)から1600分の1に減少し、もはや「絶滅寸前」といっても差し支えない。つまり、流通する「日本の着物」の大半は、「中国産の糸」を用いて日本で仕立てたものか、ベトナムなど海外の工場で仕立てられたものだという現実があるのだ。だからこそ、MASAZIROは100年前、大正や昭和初期の着物生地に拘るのです。ご存じのように、絹糸の生産のピークは昭和9年、この時期を境にして生産量が減少し、ナイロンや化学繊維の出現により日本の養蚕業が衰退していったのです。2000年には殆ど国内生産は無くなりました、でも需要は旺盛になってきます。そこで人件費の安い中国やベトナム、ミャンマーで生産されるようになってくるのですが、もちろん品質管理は日本が行うのです、品質には間違いがないのですが、・・・。水を差すようですが、そこに日本の職人のプライドがあるように思えないのです、コストを下げ利益の増大を図る、経済の原則にのっとった大量産商品となっていくのです。あくまでも政次郎の偏った観かたかもしれませんが・・・。現在流通している着物生地には、国産の絹糸で国内で手織されてものは殆ど流通していないのです、あるとすれば価格に糸目をつけない裕福な人々の為に極々僅かに流通しているのに過ぎなく、まず、私たち庶民の目には触れることはありません。実は政次郎、そのことは統計を見るまでもなく肌で感じていたのです。(以下略)

<工業製品も中国にシフト>
*4-1:https://www.nishinippon.co.jp/item/o/584770/ (西日本新聞 2020/2/17) シャープが5Gスマホ発表
 シャープは17日、国内メーカーとして初めて第5世代(5G)移動通信システムに対応したスマートフォンを発表した。10億色の表現力を持つ独自の液晶技術「IGZO(イグゾー)」を採用し、超高精細の8Kカメラを搭載するなどの特色を打ち出し、先行する韓国や中国勢に対抗する。5Gは高速大容量が特長で、今春に予定される国内での商用サービス開始に合わせて発売する。シャープの新型スマホを用いると、映画などの動画データを数秒でダウンロードできる。肌の質感や青空の濃淡を忠実に表示できる液晶ディスプレーを採用し、強い日差しの下でも快適に視聴できる。

*4-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200219&ng=DGKKZO55798040Y0A210C2MM8000 (日経新聞 2020.2.19) スマホ 細る供給網、アップル、売上高「予想届かず」 新型肺炎で稼働率低く
 中国で発生した新型コロナウイルスによる肺炎の拡大が、スマートフォンなど世界の電子機器の生産を揺さぶっている。米アップルは17日、2020年1~3月期の売上高予想が達成できない見込みと発表した。電子機器の受託製造サービス(EMS)が集まる中国で主力のiPhoneの生産が滞れば、日本などアジアのスマホ部品メーカーに影響が広がる。中国は世界各地から電子部品などを輸入し、最終製品を輸出する。世界のスマホ生産台数の65%が中国に集まる。国際貿易センターによると、中国は19年1~11月にスマホやパソコンなどの頭脳となる集積回路を2783億ドル(約30兆6千億円)輸入し、携帯電話を1132億ドル輸出した。液晶パネルでは中国が世界の生産能力の半分を占めるほか、日本や韓国製のパネルをスマホ向けに組み立てる工場も多い。アップルはこのサプライチェーン(供給網)を効率よく生かしてきた。iPhoneの大半は中国に集まる台湾・鴻海(ホンハイ)精密工業などEMSの拠点で生産される。アップルが主要取引先の所在地をまとめたリストによると、世界で809ある取引先の拠点の47%が中国に集中する。アップルは従来1~3月期の売上高は前年同期比9~15%増の630億~670億ドルと予想していたが、17日に達成できないと発表。中国のiPhone関連工場の操業は同日までに全て再開したものの、省や市をまたぐ移動に制限がかかり、トラック運転手が不足し物流にも支障が出る。生産拠点で労働力の不足や部材の目詰まりが起き、「iPhoneの世界的な供給が一時的に制限される」(アップル)。アップルは新型肺炎の影響が見通せないとして新たな業績予想を控えた。野村グループの米インスティネットは17日付のリポートで、20年1~3月の売上高が会社の従来見通しを40億ドルほど下回ると分析。同期間のiPhone販売台数は市場予想を600万台下回る4200万台とみる。台湾の部品メーカーなど複数のサプライヤーによれば、中国のiPhone工場の稼働率は足元で30~50%で、3月いっぱいは影響が残る見込み。世界最大の製造拠点とされる鴻海の鄭州工場(河南省)は先週に地元当局の認可を得て生産を再開したが、稼働率は上がっていないもようだ。スマホの部品点数は1千点以上といわれる。生産は再開されても一部部品はスマホの工場に届かず、供給網は完全に復旧していない。台湾のEMS大手幹部によると、プリント基板の中国での調達に影響が出ている。スマホに数百個単位で搭載されるコンデンサーの需給も逼迫する。日本勢では村田製作所がアップルの高級スマホ向けにコンデンサーを供給しているとみられる。TDKはスマホ向け電池の最大手で中国に拠点を構える。米調査会社IDCは1~3月期の中国のスマホ出荷台数が30%以上減る可能性があるとみる。スマホ生産の停滞が長引けば、部品在庫も積み上がり部品メーカーが生産調整に入る可能性がある。

*4-3:https://www.nikkei.com/nkd/industry/article/?DisplayType=2&n_m_code=042&ng=DGKKZO55501650R10C20A2TJC000 (日経新聞 2020/2/12) 車部品輸入の3割 中国製 エンジン周辺の中核も 、新型肺炎、供給に影響 国内各社、代替生産の動き
 新型コロナウイルスによる肺炎の感染拡大が続くなか、国内の自動車生産にも影響が出てきた。中国からの部品供給が滞り、日産自動車は九州の完成車工場の稼働を一時停止する。日本では車部品の中国からの輸入が、輸入全体の3割超を占め存在感を示している。エンジン周辺の基幹部品などを輸入する企業もあり、部品各社は対応に追われている。「日本で使う中国の部品は多い。在庫を細かく調べるには時間もかかる」。ある日産幹部はこう話す。九州工場では日本で売るミニバン「セレナ」や、北米への輸出が多い多目的スポーツ車(SUV)を生産する。同工場の稼働停止は物流網の混乱が要因とみられるが、調達自体が難しくなっている部品も出ている。ある部品会社によるとハイブリッド車(HV)などに使う電装品の一部で調達が難しくなっており、「(日産は)日本国内で代替調達できないか検討しているようだ」という。調達を巡る混乱は長期化する可能性もでている。国際貿易センターによると2019年の中国からの自動車部品の輸入額は30億ドル(約3300億円)と、重症急性呼吸器症候群(SARS)が流行した03年の約10倍となった。約22兆円とされる日本の車部品市場全体に占める比率は2%弱だが、日本は輸入部品のうち、37%(19年)を中国から輸入し、中国比率が米国などに比べ高い。多くはバネや繊維・樹脂製の部品、素材など、小さく輸送コストがかかりにくいもののようだ。中国では一部地域で企業活動が再開されたが、ホンダは11日、中国・広東省広州市の乗用車工場について、17日以降の生産再開を目指す方針を明らかにした。一部従業員は10日に出勤を始めたものの、広州市から新型肺炎の感染防止の対応策を申請するよう求められ、生産準備に時間がかかるという。従来は「できるだけ早く生産を再開したい」としていた。広州市などで運営する乗用車向けのエンジンやトランスミッションなどの部品工場も、17日以降の生産開始を目指す方針を示した。新型肺炎が最初に広がった武漢市にある工場の生産再開時期は引き続き「17日の週」で変えなかった。部品のサプライチェーン(供給網)の正常化には時間がかかりそうで、代替生産などを視野に入れる企業も相次ぐ。内装部品の寿屋フロンテ(東京・港)はシートなどの布素材を中国から仕入れる。3月上旬までの在庫は確保しているが「長期化に備えて生産設備のある日本で代替できるか設備の確認を始めた」(同社)。足回り部品のエフテックは武漢工場でつくるブレーキペダルをフィリピンで代替生産することを決めた。「一時的に他の企業からの調達に切り替えてもらう必要があるかもしれない」と話すのは、ホンダとの取引が多いショーワだ。ドアなどの開閉を補助するガススプリングを中国で生産し、日本にも輸入するが他の地域に生産設備がない。トヨタ自動車系の中央発条はドアロックケーブルなどを日本に供給しており、「すぐに代替生産ができない品目もある」という。自動車部品メーカーは2000年代から東南アジアなどに調達先を分散させる「チャイナプラス1」の動きを進めてきた。「車内の内張りシートは人件費の安いバングラデシュ経由からの調達を増やしており、中国への依存は低い」(シート大手のテイ・エステック)との声も聞かれる。ただ近年は中国の技術力が上がり、エンジンなど「難易度の高さから日本での生産に依存していた領域で中国への生産移管が増えている」(伊藤忠総研の深尾三四郎主任研究員)。自動車の心臓部となる部品だけに、少量でも供給が滞れば国内生産に支障が出やすい。いすゞ自動車が調達するエンジン周辺部品のターボチャージャー(過給器)は一部が武漢で生産されており、「武漢以外の地域で調達する予定だ」(南真介取締役)。他の部品も中国から調達しているものがあるため、在庫を確認し、生産移管などの必要性を慎重に見極めるという。供給網の混乱などが「長期化すれば(国内の生産に)影響が出る可能性もある」と南氏は話す。中国政府は次世代車の国産化を推奨し、電動化に欠かせない部品の生産拠点は中国に集まりつつある。車載電池では寧徳時代新能源科技(CATL)など2社で世界で2割超のシェアを持ち、トヨタなど日本勢も協業を進める。中国の動向が日本の自動車生産に影響を与える構図は一段と強まりそうだ。

<サービス業>
*5-1:https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/538085 (沖縄タイムス社説 2020年2月22日) [新型肺炎と県経済]難局というべき状況だ
 中国で発生した新型コロナウイルスによる肺炎拡大が、県経済の屋台骨である観光業に影を落としている。裾野の広い産業だけに、地域全体への影響が心配される。楽観を許さない状況だ。人気の観光施設やショッピングモール、ドラッグストアから中国人団体客の姿が消えて、1カ月近くになる。中国政府が海外への団体旅行を禁止した1月末以降、旅客便の運休やクルーズ船の寄港取りやめが相次いだためだ。影響は甚大で、県内の総合スーパーや百貨店のほとんどで、春節期間中の免税品売上高が前年より10%も低下した。国際通りの小売店やタクシーも売り上げが落ち込み、ホテルや観光バスも厳しい状況が続く。2019年に沖縄を訪れた外国人は約293万人。中でも中国人の伸びが目立ち、4人に1人に当たる約75万人を占めていた。懸念されるのは、感染を恐れて外出や旅行を控える動きが国内でも広がりつつあることだ。南西地域産業活性化センターは、新型肺炎の影響が半年ほど続き、中国人を中心に入域観光客が50万人減った場合、観光収入は281億円減少すると試算する。01年の米同時多発テロ後の風評被害で観光客が激減した際、観光収入が200億円余も減る憂き目に遭った。しかし終息のめどが立たず、誘客活動などが打ち出しにくいという点では、今回の方が深刻といえる。
   ■    ■
 感染封じ込めに時間がかかれば、地域経済へのダメージは大きくなる。特に地方の中小零細企業にとっては資金繰りが不安材料だ。政府は緊急対策として、中小企業を支援するための5千億円規模の貸し付けや保証枠を確保。経営が苦しくても雇用を維持する企業には、雇用調整助成金の支給要件緩和を決めた。県内でも観光事業者らでつくる沖縄ツーリズム産業団体協議会が、玉城デニー知事を訪ね、経営支援や雇用対策助成の拡充などを要請したばかりだ。既に県には支援融資制度などに関する問い合わせが相次いでいる。県経済への影響を最小限に抑えるためにも、官民で危機意識を共有し、取れる対策の全てをスピード感をもって進めなければならない。同時に「安全宣言」後の戦略も、今から練っておく必要がある。
   ■    ■
 好調に推移してきた県経済だが、昨夏以降、日韓関係の悪化による韓国人旅行者の減少、観光の目玉でもある首里城火災、豚熱感染など、いくつもの試練に見舞われている。一番怖いのは「旅行は控えよう」という消費マインドの冷え込みという。情報をしっかりと伝え、風評被害の防止にも努めたい。沖縄ツーリズム産業団体協議会は、県民の県内旅行の促進も求めている。県経済の正念場だ。この難局に一丸となって立ち向かおう。

*5-2:https://www.agrinews.co.jp/p49066.html (日本農業新聞 2019年10月24日) 「病院再編リスト」 農村部に波紋 「実情分かってない」
 厚生労働省が医療費抑制のため、競合地域にある病院との再編・統合を促す必要があるとして病院を実名で公表したことに、農村部の住民から戸惑いの声が上がっている。診療実績が乏しいと判断した病院をリスト化したもので、強制力はないが「身近な病院がなくなってしまう」「地域の事情を考えていない」などと声が上がる。同省は再編・統合について本格的な議論を要請。来年9月までに結論を求める。
●実績ありき疑問 人口減少考慮を
 秋田県八郎潟町の湖東厚生病院は2010年、医師不足から存廃論議になったが、住民の署名運動で守った。「湖東病院を守る会」代表で、水稲30ヘクタールを栽培する同町の齊藤久治郎さん(72)は、近隣の3町村の代表らと協力して、3万件の署名を集めた。必死の訴えに同病院は新体制で再編し、在宅療養支援に力を入れ、14年に再スタートした。齊藤さんは「守り抜いたと思ったが、再編・統合の話が再度出て困惑している」と肩を落とす。救急は秋田市の病院と連携し、慢性疾患や在宅医療を主にして医師不足の課題をクリアした。JA秋田厚生連は「がんや救急医療のデータを抜き出して“診療実績が乏しい”というが、役割分担したから当たり前。地域実情を理解していない」と疑問を投げ掛ける。福島県は3カ所の厚生連病院の名が上がった。JA福島厚生連は「あまりに唐突。地方の高齢化、人口減少が一切考慮されていない。都会と同じ物差しで測っているのではないか」と憤る。
●国の狙いは医療費抑制
 医療費は団塊世代が75歳以上となる25年に急増する見込み。17年度の国民医療費は43兆710億円で、25年には56兆円にまで膨らむ見通しだ。そのため同省は医療費抑制に向け、各都道府県に対し、25年に必要なベッド数などを定めた地域医療構想を策定させ、見直しを求めていた。だが、各地で議論は膠着(こうちゃく)しており、同省は全国の1455の公的な医療機関を調べ、診療実績が乏しいなどを理由に424機関の実名を公表。統合再編に向けた議論の活性化を呼び掛けた。だが、突然の実名公表に現場からは不満の声が続出している。リストには農村地域の医療機関が多く含まれる。患者の高齢化が進む。公共バスの廃止などで通院に悩む人も多い。実態を考慮せずに医療費削減と病床数だけでの線引きには疑問の声が上がる。地域医療の在り方を再検証する意味合いが強いが、地域での調整は難航が見込まれる。

<人材>
*6-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200219&ng=DGKKZO55800690Z10C20A2MM8000 (日経新聞 2020.2.19) 革新攻防(上) 米中2強、資金力突出 日本、技術競争退場の危機
 米国と中国が激しく覇権を争う先端技術の開発で、日本の存在感の低下に歯止めがかからない。世界のテクノロジーの潮流から脱落する危機が迫る。
●量子研究で後れ
 政府が1月に決定した「量子技術イノベーション戦略」。世界に後れる現状に危機感を示すとともに、異例の反省が盛り込まれた。「政府全体として必ずしも整合性ある取組が行われてこなかった」。次世代の高速計算機、量子コンピューターなどの量子技術は米中が開発にしのぎを削る主戦場だが、日本は戦う体制すら整っていなかった。全米科学財団によると、民間を含む研究開発費の世界首位は米国で5490億ドル(約60兆円、2017年時点)。中国も4960億ドルに達する。日本は1709億ドルで米中の3分の1だ。もはや資金力の差は埋めようがない。科学技術立国の幻想にとらわれ、あらゆる研究を望み続けたらいずれの成果も取り損ねる。量子技術の開発は関係省庁のそれぞれの都合で進められ、後手に回った。量子コンピューターも研究初期はNECが先行したが、国をあげて技術を開花させる発想はなかった。その間、米グーグルはカリフォルニア大学のグループの技術に着目。傘下に迎えて19年に最先端のスーパーコンピューターを上回る性能を実証し、世界を驚かせた。
●司令塔見当たらず
 米中が技術覇権を争い、かつてない速さで研究開発が進むいま、有望な技術をいち早く見いだせるかは死活問題。日本の将来につながる技術の支援を優先し、旧弊やしがらみを断って実行に移す覚悟が必要だ。批判もあるが中国はトップダウンで研究を進め、米国にも強い指導力でイノベーションを創出する国防高等研究計画局(DARPA)のような組織がある。日本には技術を見極める目や投資の決断力を持つ司令塔が見当たらない。日本発のiPS細胞の研究支援も中途半端。基礎から応用までを見渡す米国などに見劣りする。量子技術や人工知能(AI)への投資も不十分になる恐れがある。最先端のテクノロジーは将来の産業競争力や安全保障を左右する。中国は16年に打ち上げた人工衛星「墨子号」を使った量子暗号の実験などで先行。衛星を使えば、世界規模で通信の機密を守る究極の盾が手に入る。研究を率いてきた潘建偉氏は中国で「量子の父」と呼ばれ、習近平(シー・ジンピン)国家主席も高い期待を寄せるとされる。量子暗号は量子コンピューターが既存の暗号を破ると危惧される20年先も通信や金融取引の安全を守る。米調査会社クラリベイト・アナリティクスによると14~18年の量子暗号の研究論文数で中国は世界首位。東芝が最高速の暗号化技術をもつなど日本の研究水準も高いが、このままでは中国の独走を許しかねない。米国も「量子科学における中国の躍進は軍事的、戦略的バランスに影響を与えうる」(新米国安全保障研究所)と警戒する。日米は19年末に量子技術で協力する声明を発表した。24年までに宇宙飛行士を月に送る計画でも米国は日本に連携を迫る。日本は応じる方針だが、米国との連携にかけるなら、その中で存在感を高める戦略が問われる。

*6-2:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO54013110S0A100C2SHF000/?n_cid=SPTMG002 (日経新聞社説 2020/1/4) 若い博士が広く活躍できる社会に、次代拓く人材を(中)
 日本の社会は若い博士たちに冷たい。高等教育を極めた高度人材の卵に、大学も企業も十分な活躍の場を与えていない。グローバル化に対応しながら明日を切り開くイノベーションの創出を目指すなら、博士をうまく生かす社会に転じなければならない。
●給付型奨学金を広げよ
 日本で毎年新たに博士になる人の数が減少している。100万人あたりの博士号取得者数が米国やドイツ、英国、韓国に比べて半分以下で、さらにこの10年で1割以上も減った(2016年度)。先進国ではあまりみられない、由々しき事態だ。1990年代、政府は科学技術創造立国を目指し、若手の博士研究者を増やす政策をとった。しかし、大学にも企業にも見合った数のポストを用意しなかった。定職につけない高学歴な博士はポスドクと呼ばれ、「漂流する頭脳」として社会問題にもなった。科技政策の失敗といえる。若者にとって博士は将来への不安を抱える「不安定な身分」の代名詞に変質した。優秀でも修士のまま卒業する方が就職に有利と、博士を目指す人も減る。選考のハードルを下げて博士課程の定員を死守する大学院も少なくない。海外は知的集約型社会に向き合うため、国も企業も優れた博士の獲得を競う。日本の博士冷遇は世界の潮流に逆らっている。早急に「負の連鎖」を断ち切らなければならない。まず取り組むべきは、博士の育成環境を改善することだ。欧米や中国では優秀な博士課程の学生を一人前の研究者として扱う。学費は事実上免除し給与も払う。日本の場合、年間50万円超の学費が重くのしかかる。奨学金でまかなっても将来、返せる当てはない。生活費もアルバイトで稼がなければならない。金銭面で博士を敬遠する修士も多い。手始めに給付型奨学金を拡充してみてはどうだろう。2011年に開設した沖縄科学技術大学院大学は、学費を含め年間約300万円を支援金として学生に給付し、学業や研究に専念させる。同大学院大は19年、質の高い論文に関するランキングで世界トップ10に入った。若手の活躍が結果を生む証しとなった。大学の研究室の「構造改革」も急務だ。博士の多くは大学での研究職を希望する。しかし、教授を頂点にしたピラミッド構造が残っており、ポスドクや博士課程の学生は雑務が多く研究もままならない。こうした「ブラック研究室」は時代遅れでしかない。若手人材の正規ポストを確保するには、シニア世代の研究者が流動化する仕組みも要る。国立大学では定年延長に伴って50歳代、60歳代が増えた。これでは教授、准教授といったポストがなかなかあかない。大学力を磨くのに新陳代謝は欠かせないが、柔軟な発想を持つ若手研究者だけが任期付きで割をくうのはおかしい。博士が活躍できる場は大学や研究機関とは限らない。海外では企業の研究者やベンチャー経営者、投資家、官僚など実に多彩だ。
●知識でなく疑う力磨け
 日本製鉄には新卒採用とは別に博士課程の学生やポスドクに特化した制度がある。年俸制で3年間雇い、研究のプロとして働いてもらう。その後は本人と相談の上、正社員として採用する。出会いを作るユニークな取り組みだ。産学が協力し、半年、1年といった長期のインターンシップ(就業体験)を導入、博士と企業とが相互に理解を深める機会こそ有意義ではないだろうか。博士が在籍する企業はそうでない企業より製品やサービスでイノベーションを起こす確率が高いとの調査結果もある。中小、中堅企業での効果が顕著だという。大学も博士の質は担保してほしい。なり手が減っているからといって、適性や能力を見極めずに量の確保に走るのでは本末転倒だ。どんな情報もネットで手に入るデジタル社会では、単なる知識よりも疑う力や解決する力が高度人材には求められる。これまでの日本の高等教育は学問が細分化された結果、視野の狭い専門家が育つ傾向が強かった。2つ以上の専門領域を習得する「ダブルメジャー」を目指す仕組みがあってもいい。社会が求める博士像を追求し、育んでいくことが大切だ。

*6-3:http://tingin.jp/opinion3.html (北見式賃金研究所 北見昌朗 平成30年8月) “働かない改革”は“ゆとり教育”の二の舞になる! 中国に負けて、日本は二流国に転落へ
●働き方改革は選挙の美辞麗句
 安倍首相は、働き方改革を主要政策に掲げる。「生産性を向上して、ベースアップを実現して暮らしの向上を図る」と語る。だが、北見昌朗はそもそも生産性がなぜ急に上がるのか理解できない。これまで遊んでいたわけではないのに、なぜ、どうして生産性が上がるのか? そんなの選挙用の美辞麗句であり、根拠がないプロパガンダだと言わざるを得ない。
●ゆとり教育は土曜日に働かない人を産み出した
 働き方改革と二重写しになってしまうのは、ゆとり教育だ。政府は学習時間と内容を減らしてゆとりある学校を目指し、2002年4月6日から公立小中学校及び高等学校の多くで毎週土曜日が休みになり完全な週5日制となった。ゆとり教育はデメリットが取りざたされることが多いが、代表的なものが「学力低下」だ。それまで相対評価と言われていた通知表の評価を個人ごとに見る「絶対評価」に変えた。また「競争社会」をやめようと、運動会の徒競走は全員1位、学芸会では全員主役になるといった内容も物議を呼んだ。だが、「順位を付けない」という考えは現実社会とはかけ離れており、社会に出てから挫折する子供が増えてしまった。この“ゆとり教育”の悪影響は大きかった。土曜日に授業が休みだったために、社会に出ても土曜日の勤務を嫌がる若者にしてしまった。
●「仕事が終わるまでやる」のは日本人の美徳
 新労働基準法では、残業が厳しく制限される。一定時間を過ぎてしまうと、企業側が違法になってしまうので、帰らせるほかなくなってしまう。目の前にドッサリと仕事が残っていても、サッサと帰るのである。それによる顧客離れは当然予想される。そもそも日本人は昔から仕事をやりきってから帰った。みなで一緒に汗を流して、やり切ってきた。「勤労は美徳だ」という勤労観は、わずかながら残っていたと思うが、それにトドメを刺すのが今回の労働基準法改正である。これでは米国人や中国人に負けてしまう。
●ダブルワーカーが増える
 残業削減は、従業員にとっても厳しい問題だ。残業代が減った分だけ年収が減ってしまうだろう。大手企業ならば、ベースアップという形で利潤を従業員に還元できるかもしれないが、中小企業には元々そんな余裕はない。会社側は、副業を禁止している就業規則を見直し、アルバイトを黙認する方向になるだろう。残業代減を補うため、従業員は終業後にアルバイトに精を出すようになる。夜遅くまで働いたら、それこそ身体を痛めそうだ。
●「手に職」が付かなくなり技能伝承がなくなる
 厳しい残業規制により、成り立たなくなる仕事がある。長い修業が必要な職人仕事だ。例えば「宮大工」という仕事がある。社寺の建築や修復を行う仕事だが、それには長い下積み時代が必要である。カンナがけは、今なら機械で一瞬でできるが、それでは腕が身に付かないので、あくまでも人間が行う必要がある。このような職人芸は、たくさんある。和食職人、和菓子職人、陶器職人、木工職人など枚挙に暇がない。それらが消滅しかねないのだ。
●このままでは経営者の多くが労基法違反の“犯罪者”になる
 北見昌朗は顧客からこう言われるようになってきた。「これだけ残業規制が厳しくなるともうやっていけない。モノ造りを止めろというのと一緒だ」。このように言われると、北見昌朗は返す言葉もない。社会保険労務士として労働基準法の遵守を求めるのが仕事だ。だが、現実には困難なことを知っている。このグラフを見てほしい。「愛知県 中小 製造業 男性社員 残業時間数」だ。縦軸は残業時間数で、横軸は年齢である。縦軸に赤ラインが引いてあるのが30時間で、36協定の遵守ラインだ。これを超過すると違法になりかねないが、超過しているのは52.9%いる。従業員に違法残業をさせると、経営者は労働基準法違反ということで犯罪者になってしまう。中小企業の経営者は、勤勉に働いて日本社会に貢献してきた。今の日本社会で、一番猛烈に働いてきたのは、社長さんたちだ。何の保護もなし、保障もなしで身を粉にして働いてきた方々だ。社長が経営の自信を喪失してしまうと、誰も継がなくなり、いよいよ後継者難で、中小企業が消滅してしまうだろう。
●「日本人は働き過ぎ」は過去の話
 そもそも、日本人が働き過ぎだったのは、前の世代のことだ。戦後の日本を復興した方々のことだ。北見昌朗は午後5時過ぎに名古屋駅から電車に乗ると、思わず車内を見渡してしまう。ネクタイを締めた中高年男性がいっぱい乗っているのだ。おそらく17時に会社を出て、18時までに帰宅するのであろう。働き盛りの男が、そんなに早く帰って、いったいどうするのか? と言いたくなる。公庁や大手企業では、年間休日120日が一般的になっているが、年休20日を取得したら、1年間の4割も休むことになる。こんなことで、日本はやっていけるのだろうか? 資源もないのに。日本人は、もっと働くべきだ。次の世代のためにも、もっと、もっと働こう!

<新型肺炎の治療、病院船など>
PS(2020年2月24日追加):*7-1のように、政府は専門家会議を開いて重症化リスクの高い新型肺炎患者の治療を優先するための基本方針の作成を進めているそうだが、拡大ペースを遅らせ、重症化させないためには早期発見・早期治療が必要であるのに、「風邪の症状や37.5度以上の発熱が4日以上続く場合や強いだるさ(倦怠感)や息苦しさ(呼吸困難)がある場合は、最寄りの保健所などに設置される『帰国者・接触者相談センター』に問い合わせる」という現在の指針では誰でも重症化する。そのため、本当に治療する気があるのなら、インフルエンザと同様、かかりつけ医を受診すれば必要な検査や薬は保険適用できるようにするのがBestだ。
 また、*7-2のように、1~2隻くらいは大型の病院船を持っておくのがよいと思われ、これなら感染症の封じ込めだけでなく、国内外の災害時に派遣して海上から被災地に医療提供することが可能だ。この場合、病院船の所属や運行責任は、日赤か防衛省になるだろう。さらに、離島の多い自治体が小型の病院船を保有していれば、*7-3の「平時の利用法」として、医師のいない離島を1週間に1度は廻って、健診・診療・薬の処方・リハビリなどを行うことができ、この場合の病院船の所属や運行責任は、民間病院か地方自治体になると思われる。

 
 2020.2.24琉球新報                 病院船

*7-1:https://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2020022401001191.html (東京新聞 2020年2月24日) 新型肺炎、重症化防止へ基本方針 専門家会議で作成、急増に備え
 国内での新型コロナウイルスによる肺炎(COVID19)の拡大を受け、政府は24日、専門家会議を開き重症化のリスクが高い新型肺炎の患者の治療を優先するための基本方針の作成を進めた。25日にも開く政府の対策本部で決定する。基本方針は、患者が国内で大幅に増える事態に備えるのが目的。会議では、重症化しやすい高齢者や持病がある人の治療を優先するとともに、拡大のペースを遅らせることを目指した対策を議論する。これまでに策定した新型インフルエンザ対策の基本方針を一部参考にするとみられる。

*7-2:https://www.nishinippon.co.jp/item/n/586613/ (西日本新聞 2020/2/24) 病院船で新型肺炎封じ込めへ 超党派議連27日に発足
 新型コロナウイルスによる肺炎(COVID19)が拡大する中、大規模災害時や感染症の流行危機事態に医師や医療設備を乗せて治療に当たる「病院船」構想に注目が集まり始めた。閣僚から活用に前向きな発言も飛び出し、27日には超党派の国会議員らでつくる病院船の新議員連盟も発足する。国に導入を働き掛けてきた関係者は、機運をさらに高めたい意向だ。「配備の在り方を加速的に検討していく必要がある」。12日の衆院予算委員会で、新型肺炎に絡み病院船への見解を問われた加藤勝信厚生労働相は、こう明言した。河野太郎防衛相も14日の記者会見で、導入に向けた検討に意欲を見せた。患者を隔離して専門治療を集中的に施し、感染症を封じ込める機能が期待される病院船のニーズを、関係閣僚が相次いで認めた形だ。病院船構想が生まれたのは、1995年の阪神大震災がきっかけ。米国などの実例を参考に、陸上交通が寸断されるような災害時に、海上から被災地に医療を提供するシステムを探る議論が起こった。2011年の東日本大震災後には一時、内閣府も「災害時多目的船」の導入を模索した。だが、建造や維持管理に巨額のコストがかかることや、法改正を伴うことから見送られた経緯がある。その後、14年には自民、公明両党による「海洋国日本の災害医療の未来を考える議員連盟」(会長・額賀福志郎元財務相)が設立され、19年3月、病院船の活用を国に促す法案の骨子をまとめた。議員立法として早期成立を目指すため、今月27日には新たに野党を加えた7党による「災害医療船舶利活用推進議員連盟」を立ち上げる。関係者によると、新議連は条文化の作業を進め、今国会に法案を提出したい考え。災害時医療などに船舶を組み込むことを国に義務付け、法施行の1年後をめどに必要な個別法の追加整備を求める内容という。自民中堅は「耳目が集まっている今、議論をしっかり積み上げたい」と話す。

*7-3:https://www.nishinippon.co.jp/item/n/586614/ (西日本新聞 2020/2/24) 病院船導入 災害時有効な医療アプローチ 元九州大特任教授に聞く
 「病院船」導入に向けた活動に長年取り組み、議員連盟の設立にも携わる元九州大特任教授で公益社団法人モバイル・ホスピタル・インターナショナルの砂田向壱理事長=福岡市=に、今後の見通しや課題を聞いた。
-なぜ導入を急ぐのか。
 「災害大国の日本で、陸上の交通手段が遮断されたときに、海からの医療アプローチは軽視できない。東日本大震災の津波被害を考えれば、その利点はイメージしやすい。病院船は、南海トラフ巨大地震や首都直下地震の発生前に整備しておかないと手遅れになる。船は医療施設だけでなく、避難所機能としても有効だ」
-災害が発生していない平常時の利用法がネックになっていると聞く。
 「平常時も、全国一律の医療サービスが提供できるよう市町村のスキルアップに用いることができるし、沿岸部の巡視船という役割も担える。国民の財産としての使い道は幅広い」
-巨額の建造費に国民の理解は得られるか。
 「中古の船を買い取り、内部を改造して最新鋭の医療機器を備えれば、コストは抑えられる。国民のニーズによって船の規模や隻数は決まる。必ずしも大きければ良いというものでもない」
-理想的な災害時の医療体制とは。
 「現在の復興庁を『災害庁』のような組織に改編し、研究や装備開発、訓練を一元的に管轄できるようにしたい。全国に技術支援できる仕組みも必要だ。新しい議連では、民間のノウハウや知恵を積極的に活用していく。国民の合意を得るために奔走したい」

<日本政府がPCR検査を渋る理由は何か?>
PS(2020年2月26、29日追加): 2月5~19日の期間は船内で隔離しなければならなかったダイアモンドプリンセス号内は、*8-1のように、“検疫”として船内の感染管理・健康管理に不備があったため、COVID-19の船内感染を起こしてしまった。にもかかわらず、下船基準は検疫期間中には感染がなかったものとして扱い、クルーズ船で旅するほど元気だった人を死亡させて「高齢者だから仕方がない」としている点が不誠実である。本来は、2月5~19日の期間に同乗した家族が同室だったとしても、それ以外は船内の隔離と健康管理を徹底しなければならなかったのだ。また、クルーズ船の乗客には退職後の比較的ゆとりある高齢者が多いため、乗客の中には社会的地位の高かった人も多かった(元医師を含む)だろう。そのため、ダイアモンドプリンセス号のスタッフは、隔離を開始した時に全員のPCR検査を行ってその後の清潔を徹底すべきだったし、これらがいい加減であれば、各国で(批判のための批判ではない)科学的な批判が出る。
 なお、*8-2・*8-3のように、インド・デリー大学とインド理工学院に所属する研究者たちがまとめた「新型コロナウイルスはSARSウイルスとエイズウイルスを武漢ウイルス研究所が人工的に合成したものでは」とする論文があり、この研究者たちは「このウイルスが自然発生することは考えられない」としている。また、ハーバード大学公衆衛生学教授のエリック・ファイグルーディン博士は自身のツイッターで「武漢市の海鮮市場はウイルスの発生源ではない」と発信されたそうだ。「生物兵器」であれば、SARSウイルスのように若い兵隊に打撃を与えるウイルスの方が合目的的だが、年金や社会保障を要する基礎疾患のある高齢者に打撃を与えて大騒ぎになる新型コロナウイルスなら厚労省や財務省に都合がよさそうだ。そのため、今後は広くPCR検査して完治させるとともに、どこで感染拡大するかを見極めるべきである。
 世界保健機関(WHO)は2月28日、*8-4のように、COVID19の地域別の危険性評価を、世界全体を「非常に高い」に引き上げ、WHOで緊急事態対応を統括するライアン氏が各国に感染拡大防止態勢の強化を訴えられた。日本では、2月27日、安倍首相が新型コロナウイルス感染対策として全国の小中学校や高校などに臨時休校を要請する方針を表明し、これについてはさまざまな意見があるものの、*8-5のように、65%(60代:75・1%、10代:73・6%、70代以上:70・1%)の人が賛成だそうだ。一方、子育て世代の多い年齢層で反対が比較的多いが、佐賀県では、*8-6のように、学童保育の受け入れ先が春休みや夏休みと同じ体制で受け入れるようで、学童保育の整備が何とか進んでいたのはよかった。ただ、*8-7のように、PCR検査システムの問題による検査難民が出ているので、検査を早急に保険適用にし、医師の指示があれば検査できるようにすべきだ。

   
  2020.2.7東京新聞  2020.1.31朝日新聞  2020.2.20中日新聞 2020.2.20朝日新聞

(図の説明:1番左の図のように、新型コロナウイルスの感染力はインフルエンザと比較して著しく高くはないが、スーパースプレッダーもいた。その結果、左から2番目の図のように、中国の感染者は1月中に等比級数的に増え、現在は他国でも広がり始めている。日本では、右から2番目の図のように、武漢からチャーター便で帰国した人の中には死亡者はいないが、“検疫”としてクルーズ船に閉じ込められた人の中からは死亡者が出ている。その死亡者は、1番右の図のように、80代ではあるが、元々はクルーズ船で旅行できるほど元気だった人なのだ)

*8-1:https://www.niid.go.jp/niid/ja/diseases/ka/corona-virus/2019-ncov/2484-idsc/9422-covid-dp-2.html (国立感染症研究所 2020年2月26日更新) 現場からの概況:ダイアモンドプリンセス号におけるCOVID-19症例
●背景
 背景情報は2月19日掲載の「現場からの概況:ダイアモンドプリンセス号におけるCOVID-19症例」(以下、「現場からの概況2月19日掲載版」)を参照されたい。(https://www.niid.go.jp/niid/ja/diseases/ka/corona-virus/2019-ncov/2484-idsc/9410-covid-dp-01.html)
●検疫の状況
 2月5日-19日の間、クルーズ船ダイアモンドプリンセス号(以下クルーズ船)に対し検疫が実施された。検疫期間中、陽性者の「濃厚接触者」等追加的なリスクがあった者については検疫期間が延長された旨、乗客に通知している。
●下船手順
 下船基準は次の3つの項目、1)陽性者と部屋を共有していない14日間の検疫期間が完了していること、2)検疫期間最終日までに採取した検体がPCR検査でSARS-CoV-2陰性であること、3)検疫期間の最終日の健康診断で異常が確認されないこと、を全て満たす者である。2月20日時点で1600人以上が既に下船している。検査は当初高リスクの乗客から実施されたが、2月11日からは全ての乗客が検査対象に拡大実施された。検査は80歳以上の乗客から実施され、75歳以上、70歳以上、70歳未満と順次実施拡大された。全乗客の検査実施後、検査対象が全乗員へ拡大された。COVID-19に関し国際的なガイドラインではPCR検査の実施を考慮した検疫は求められていないが、日本政府はより確実性を高めるためにPCR検査を実施した。
●データ収集
 「現場からの概況2月19日掲載版」 (https://www.niid.go.jp/niid/ja/diseases/ka/corona-virus/2019-ncov/2484-idsc/9410-covid-dp-01.html)に記載されているデータ収集方法に加え、船内の常設診療所からの後方視的な情報収集が開始された。
●暫定的な結果
 2月20日の時点で、82名の乗員と537名の乗客を含む、619名が陽性者であった(2月5日時点の乗船者の16.7%)。合計3,011検体が検査され、重複の者も含め延べ621検体が陽性(20.6%)であった。乗客のうち70歳から89歳が最も感染していた(表1)。発症日の情報が確認できたCOVID-19症例(n = 197)のうち、終日検疫が実施された最初の日である2月6日より前に発症した人が34名(17.3%)、2月6日以降に発症した人が163名(82.7%)であった(図1)。197例のうち163例(乗員48名、乗客115名)は検疫期間中に判明し、定員が2名以上の各客室で最初の陽性者であった者は52名(最小)から92名(最大)の範囲であった(この範囲には、無症候性症例及び発症日が不明の有症状症例が含まれる)。そのうち3名(最小)から7名(最大)が2月6日から開始された検疫期間の7日目以降に報告された者である(表2)。各客室別の乗客人数が増加するに従いCOVID-19陽性者の割合も増加している(図2)。陽性者のうち318名(51%、乗員10名、乗客308名)は、検体が採取された時点では無症状であった。
●暫定的な結論
 現在入手可能な疫学情報に基づいて評価すると、2月3日にクルーズ船が横浜に入港する前にCOVID-19の実質的な伝播が起こっていたことが分かる。発症日が報告されている陽性者数の減少は、アウトブレイクの自然経過、検疫の実施、またはその他の未知の要因によって説明が可能と思われる。各客室の乗客人数別確定症例の割合と、陽性者と客室を共有した確定例の数に基づいて検討すると、客室内の乗客は共通の曝露があったか、客室内でウイルスが伝播した可能性がある。 船の性質上、乗船しているすべての人を個別に隔離することはできず、客室の共有が必要であった。また、乗客が乗船している間、一部の乗員はクルーズ船の機能やサービスを維持するため任務を継続する必要があった。 遅れ報告を考慮した結果、発症日がわかっている陽性者数のピークは2月7日であった。 最近陽性者の報告数が多くなっていることは、検査対象者の拡大によって説明できるが、そのほとんどは無症候性症例である。クルーズ船の乗員乗客で報告された無症候性症例の割合は、他の場所で報告されているものよりもかなり高い。 この主な要因は、2月11日から体系的な検査が実施されその数が日々増加したことが一因と考えられる。一部の症例は、客室内での二次感染例であった可能性はあるが、検疫が始まる前に感染した可能性も否定できず、実際にいつ感染したか、判断は難しい。しかし、これらの無症候性症例は下船後入院し、同室者は濃厚接触者として最終接触日から新たに14日間の隔離期間を開始している。無症候性症例が下船前に判明したことを考えると、この体系立てた検体採取には意義があったと考えられる。現時点では、無症候性症例からの感染伝播に関する知見は国際的にも乏しい。そのため、船内の無症候性症例に関する継続的な調査により得られる情報は、世界的なCOVID-19アウトブレイクにおいて重要である。 (無症候性症例の下船後の発症状況に関する情報が収集されている)。クルーズ船において判明した症例は、感染症発生動向調査(NESID)に報告された情報も含め、臨床症状、重症度、および無症候性症例の評価のためついてさらなる調査が継続して行われている。 この情報は、このクルーズ船事例とCOVID-19の世界的な状況の理解に重要である。
●暫定的対応とガイダンス
 下船者のほとんどが14日間の検疫を確定患者と部屋を共有せず終了し、PCRの検査で陰性、健康チェックにより症状(発熱、咳、呼吸困難など)がない事を確認された。陽性確定例との接触がある者は、最終接触日から14日間が隔離期間となる。この該当者には隔離期間中の乗客に対する食事の配膳等の生活支援に貢献していた、乗員の大半が含まれる。1600人を超える乗客が下船し、今後の焦点は乗員の感染予防となる。下船者は、PCR検査陰性、下船時の健康チェック異常なし、および症状なく14日間の検疫期間を経過しているが、追加の予防措置として絶対に必要な場合を除き、14日間自宅にとどまるよう求められている。また、自分自身で健康チェックを実施し、症状を認めれば医療機関に連絡することになっている。追記:本稿のデータ収集にあたり、クルーズ船に乗船し、乗員乗客の健康管理のために多大な努力と貢献をされた医療チームや関係者、クルーズ船の機能維持に貢献されたダイアモンドプリンセス号のスタッフと本社のご協力に謝意を表します。

*8-2:https://www.msn.com/ja-jp/news/world/%E6%96%B0%・・・ (女性セブン 2020年3月5日号) 新型コロナウイルス 「研究所から流出」説の真偽を追う
 連日新型コロナウイルスの話題が後を絶たない。全世界での感染者は7万人を超え、死者は約2000人となった(2月19日現在)。当初、ウイルスは自然発生と報道されていたが、ここにきて、武漢にある研究所からの流出疑惑が持ち上がっている──。中国・武漢市に世界トップレベルのウイルス研究所「中国科学院武漢病毒(ウイルス)研究所」がある。この研究所が備える最新鋭の設備の1つが、BSL4(バイオセーフティーレベル4)実験室だ。実験室では、SARSやエボラ出血熱のような、感染力が強くて危険なウイルスのコントロールも可能で、洪水の被害が及ばない場所に設置され、マグニチュード7の揺れにも耐えうるという。しかしいま、この研究所から新型コロナウイルスが流出したのではないかという疑惑が持ち上がっている。1月末、インド・デリー大学とインド理工学院に所属する研究者たちがまとめた「新型コロナウイルスにエイズウイルスと不自然な類似点がある」とする論文が物議をかもした。さらにこの研究者たちは「このウイルスが自然発生することは考えられない」とした。この論文は大バッシングののちに撤回されたが、一部のネットユーザーの間で内容が拡散。「新型コロナウイルスはSARSウイルスとエイズウイルスを武漢ウイルス研究所が人工的に合成したものでは」という憶測も飛び交い、不安が高まったのだ。さらに1月28日、ハーバード大学公衆衛生学教授のエリック・ファイグルーディン博士は自身のツイッターで「武漢市の海鮮市場はウイルスの発生源ではない」と発信。たちまち世界中のメディアで取り上げられた。中国メディア『大紀元』は、2月6日、オンラインゲーム開発会社の会長が自身のSNSで「武漢の研究所が新型コロナウイルスの発生源」と発言したと報じている。この人物は、かつて中国の生物学者が動物実験で使った牛や豚を食肉業者などに転売していた事件があったことから、新型コロナウイルスに感染した動物が市場で売られたのではないかと疑っているという。現在、中国版Googleともいわれる検索サイト「百度」で「武漢病毒研究所」と検索すると、検索候補に「泄露(漏洩)」という文字が。疑惑は広まる一方のようだ。
◆何度も北京の実験室からSARSが流出
 中国では過去にも“ヒューマンエラー”が起きたことがある。2004年、北京にあるBSL3の要件を満たす実験室から、SARSウイルスが流出する事件が発生し、責任者が処罰されている。中国メディアの報道などによると、研究員がBSL3実験室からSARSウイルスを持ち出し、一般の実験室で研究をしたことで感染が広まった。感染した研究者の1人は、症状が出たあと自力で病院に移動。看護師に感染させ、鉄道で実家に向かったことが確認されている。さらに、この研究者を看病した母親が感染、死亡している。元産経新聞北京特派員の福島香織さんが言う。「この頃、研究所からのウイルス流出や実験動物のずさんな管理が何度か問題になっていました。例えば、動物実験ではウイルスを動物に感染させたりするのですが、実験が終わったらウイルスを不活化、つまり無害化させる処理をしなければいけない。ところが、処理が完璧ではない状態でゴミ箱に捨てたり、外に廃棄したりしたことからSARSウイルスの感染が拡大したと指摘されています」
◆武漢ではコウモリに宿るウイルスを研究
 冒頭の最新ウイルス研究施設は、新型コロナウイルスの発生源とされている華南海鮮市場から約30km離れた場所にある。「世界有数のウイルス研究所を擁するフランスの技術協力を得て完成しました。SARS事件があったのと同じ2004年頃から研究所を整備する計画が始まり、北京五輪やチベット問題などの紆余曲折があった末、2015年に竣工し、2018年から稼働しています」(福島さん)。今回疑惑を向けられている武漢ウイルス研究所のBSL4実験室の評価は高かった。中国メディア『財新』は、この実験室のチームが2017年に、複数のコウモリを起源とするSARS型コロナウイルスが変異したものがSARSウイルスであることを突き止めたと報じた。チームリーダーでBSL4実験室副主任の女性研究者は「コウモリ女傑」とも呼ばれ、コウモリの研究で政府から表彰されたこともあった。そのコウモリの実験で発生したウイルスが華南海鮮市場に流出した可能性はあるのだろうか。しかし、先の女性研究者は、SNSで一連の疑惑を真っ向から否定。「新型コロナウイルスと研究所は無関係であることを私は命をかけて保証する」という内容の投稿をした。中国メディア『財経』も、仮に実験室から流出したとしたら研究スタッフが真っ先に感染しているはずだが、そうではなかったと疑惑を打ち消す報道をしている。しかし今度は香港メディアが華南海鮮市場から300mほどの場所にある実験室「武漢疾病予防管理センター」からウイルスが流出したという内容の論文(のちに削除)の存在を報じるなど、依然ウイルスの出所には疑惑がつきまとう。発生源は華南海鮮市場ではないのだろうか。「医学誌『ランセット』に中国の医師たちが寄稿した分析によると、新型コロナウイルスの患者41人を調べたところ、発生源とされる華南海鮮市場に関係しているのは27人。さらに最も早い昨年12月1日に入院した初期患者4人のうち、3人が市場とは無関係でした」(福島さん)。中国事情に詳しいジャーナリストの富坂聰さんは「そもそも野生動物の市場取引は中国でも違法」と話す。「中国当局もSARSの経験を教訓に厳しく取り締まってきましたが、時間と共にそれが緩くなり、武漢では堂々とヤミ市場が開かれていました。違法だからこそ希少価値が出て、野生動物の値段が上がってしまう。中国に限ったことではありませんが、お金さえもらえればなんでもする人はたくさんいます。いまも違法な野生動物のヤミ市場は開かれているでしょう。武漢ではないところでウイルスが出てもおかしくない状況でした」
◆いまも中国のどこかで新型コロナウイルスの研究が
 新型コロナウイルスは猛威を振るい続けている。「香港大学医学院は1月27日に、新型コロナウイルスの感染者は約1週間ごとに倍増しており、4~5月頃にピークを迎え、夏頃までに減退していくと発表しました」(福島さん)。ただ、ひと段落着いたとしても安心はできない。7月24日から東京五輪が始まり、今年だけで世界中から3600万人もの人が訪日すると予想されている。一旦収束したように見えても群衆の中で知らぬ間に感染し、それをまた本国に持ち帰る人がいてもおかしくない。本当のパンデミックは夏以降にやってくるかもしれないのだ。昭和大学医学部内科学講座臨床感染症学部門主任教授の二木芳人さんが言う。「ウイルスは宿主に感染を繰り返すことによって更に変化が生じます。インフルエンザウイルスのように変異し、またタイプの異なるコロナウイルスが大流行を引き起こす恐れもあります」。今回、武漢の研究所から流出したわけではなかったとしても、今後流出が起こらないとは限らない。ある感染症の専門医は言う。「SARSウイルスと同様、新型コロナウイルスも再発防止のため、すでにどこかの研究所に保管され、研究が進められているはず。人の手がかかわる以上、ヒューマンエラー発生のリスクは伴います」。発生源の根源にあるのは、“人の愚かさ”か。

*8-3:https://news.yahoo.co.jp/byline/kazuhirotaira/20200225-00164456/ (Yahoo 2020.2.25)新型コロナウイルス:「生物兵器」の陰謀論、政治家やメディアが振りまく
 新型コロナウイルスの感染源をめぐり、これが「生物兵器」だとする陰謀論の拡散が続く。ネットを舞台とした拡散に加えて、メディアや政治家などが、それを後押ししていることも大きい。そして拡散の背景として、中国政府の情報開示への不信感もつきまとう。だがこのような陰謀論の氾濫は、結果として人種差別を呼び起こしたり、感染拡大を悪化させてしまう危険性も指摘される。19日には公衆衛生や感染学の専門家である著名な科学者ら27人が、この陰謀論を否定する共同声明を英医学誌「ランセット」に発表。陰謀論の拡散を批判している。リアルの感染拡大と陰謀論の拡散。その二つを結びつけるのは、なお正体が明らかにならない新型ウイルスへの不安感だ。
●上院議員と「生物兵器」
 新型コロナウイルスと「生物兵器」を結びつける陰謀論は、米国のテレビ4大ネットワークの一つ、FOXでも取り上げられている。共和党の上院議員、トム・コットン氏はFOXニュースに16日夜に出演し、新型コロナウイルスについて、中国・武漢のウイルス研究所からの「流出疑惑」を主張した。コットン氏は、新型コロナウイルスの感染源として、ツイッターなどで武漢の「ウイルス研究所」を名指ししてきた。現在、世界保健機関(WHO)が新型コロナウイルスの感染源としているのは、武漢市江漢区にあり、野生動物なども取引されてきた武漢華南海鮮卸売市場だ。コットン氏はFOXニュースの中で、感染源は海鮮市場ではない、と述べる。そして海鮮市場から数マイルの場所に「バイオセーフティレベル4の感染症の特別研究所がある」としている。コットン氏が名指ししているのは、長江を挟んだ対岸、12キロ(7.5マイル)ほど南東にある武漢市武昌区の中国科学院武漢ウイルス研究所の施設「武漢国家生物安全実験室」だ。「武漢国家生物安全実験室」は危険度の高い病原体を扱うことができる安全対策が施された「バイオセーフティレベル4(BSL-4)」の研究所。日本では国立感染症研究所村山庁舎(東京都武蔵村山市)がBSL-4施設だ。コットン氏は、断定はしないものの、新型コロナウイルスと「武漢国家生物安全実験室」について、こう発言している。この感染症の感染源がここ(ウイルス研究所)だという証拠はない。ただ中国はこの問題発覚当初から、二枚舌とうそばかりだ。我々は少なくとも証拠をもとに問いただしていく必要がある。だが中国は、そのための証拠すら一切明らかにしようとはしていない。
●メディアが火をつける
 新型コロナウイルスを「武漢国家生物安全実験室」や「生物兵器」と結び付ける陰謀論は、すでに様々な専門家から繰り返し否定されてきている。だが、これに火がつくきっかけの一つが、メディアだった。英大衆紙のデイリーメールは新型コロナウイルスによって武漢市の「封鎖」が始まった1月23日、「武漢国家生物安全実験室」のことを取り上げている。記事の中で同紙は、同研究所が2018年に中国初のBSL-4施設として稼働する前、病原体の「流出」を懸念する声が米科学者らから上がった、などと指摘。また、地図付きで海鮮市場と実験室の位置関係も掲載している。さらに、中国では2004年に北京の研究所でSARSウイルスが「流出」した経緯がある、などとしていた。デイリーメールの記事には、いくつかの事実がある。一つは2017年2月の科学誌「ネイチャー」の記事で、「武漢国家生物安全実験室」の安全性に米専門家らが懸念を表明していた点だ。さらに、2004年に北京でSARSの集団発生が起きた際には、北京の国立ウイルス学研究所で、BSL-3の実験室のSARSコロナウイルスを、一般の実験室に持ち出して実験に使ったことが感染源となったことも、公表されている事実だ。ただ、今回の新型コロナウイルスの感染と「武漢国家生物安全実験室」を結びつけるデータは、これまで明らかになっていない。また上述の「ネイチャー」の記事には、2020年1月付で「編集者追記」が掲載され、新型ウイルスと「実験室」を結びつける証拠はなく、新型ウイルスの感染源は市場と見られている、と述べられている。
●陰謀論、拡散と否定
 米保守紙のワシントン・タイムズは2019年1月26日、イスラエルの軍事専門家のコメントとして、新型コロナウイルスの感染源が「武漢ウイルス研究所」の可能性があり、同研究所が関わる「生物兵器計画」とつながっている、などと報じている。この記事を、トランプ政権の元首席戦略官兼大統領上級顧問で、右派サイト「ブライトバート・ニュース」の会長だったスティーブン・バノン氏が、自身のポッドキャストで拡散しているという。さらに1月31日、インドの研究グループが、新型コロナウイルスに、HIVウイルスとの「異様な類似点がある」などとする論文を公開。ウイルスへの「人為的操作」の憶測が拡散する。だが、調査手法や結論に関する専門家らからの批判を受け、論文は2日後に撤回されている。刺激的な情報は広く拡散する。ネット調査会社「バズスモー」のデータによれば、デイリーメールの最初の記事はフェイスブックで20万回以上共有され、ワシントン・タイムズの記事もやはりフェイスブックで16万回以上共有されている。撤回されたインドの研究チームの論文も、フェイスブックでは2万回以上共有された。中国の崔天凱・駐米大使は2月9日、米CBSの報道番組「フェイス・ザ・ネイション」に出演し、新型コロナウイルスと武漢の研究所を結びつけることを批判し、こう述べている。憶測やうわさを扇動し、人々に拡散させるのは極めて有害で、危険なことだ。それらはパニックを引き起こしてしまう。そして、人種差別、外国人差別を煽ることになる。これらはウイルス対策への協力態勢を著しく損なうものだ。ただ混乱の背景には、中国の情報開示についての不信感も影を落とす。象徴的なのが武漢の眼科医、李文亮氏のケースだ。李氏は「原因不明」だった今回の新型コロナウイルスについて、2019年12月30日という早い段階でネット上で感染への注意喚起をし、警察の事情聴取を受けた。さらに李氏は、自らも感染し、2月7日に亡くなっている。FOXニュースに出演したコットン氏も、李氏のケースを取り上げ、中国政府の対応を批判した。
●27人の専門家が否定する
 新型コロナウイルスの感染源をめぐるこれらの陰謀論やデマの氾濫に対し、世界的に知られる公衆衛生の専門家27人は2月19日、英医学誌「ランセット」に共同声明を発表した。共同声明に名を連ねているのは、SARSの感染源とコウモリを結び付けた研究など知られる国際NPO「エコヘルス・アライアンス」代表のピーター・ダスザック氏、全米科学財団(NSF)長官などを歴任し、ジョンズ・ホプキンス大学公衆衛生大学院特別教授、沖縄科学技術大学院大学学園理事なども務めるリタ・コルウェル氏、英医学研究支援団体「ウェルカム・トラスト」代表で、2003年にベトナムでSARS患者の治療にあたったジェレミー・ファラー氏、元米国立感染症センター(NCID)所長で米エモリー大学大学院教授、ジェームズ・ヒューズ氏ら。声明は、各国の専門家による研究は、いずれも新型コロナウイルスが野生生物由来だと指摘。さらに、陰謀論の氾濫について、こう述べている。陰謀論は、ただ不安やうわさ、偏見をかき立て、今回のウイルスに対する世界的な協力の取り組みを危険にさらす。科学的エビデンスと、虚偽情報や憶測への団結した取り組みの推進。我々は、WHOのアダノム事務局長によるこの呼びかけを支持する。
●陰謀論の被害
 陰謀論やデマには、具体的な被害が伴う。今回の新型コロナウイルス感染拡大にともなって、中国人を中心としたアジア系に対する差別や排斥の動きが欧米などで広まっている。また、感染症に関するデマの拡散によって適切な対策が取られず、感染そのものの拡大に悪影響を及ぼす。そんなシミュレーション結果を英国立イーストアングリア大学教授で感染症を専門とするポール・ハンター氏らが発表している。ただ、従来のデマや陰謀論がそうであるように、新型コロナウイルスをめぐっても、情報戦の様相もある。感染源にまつわる陰謀論には、バリエーションがあり、その一つが、米国の陰謀である、とするものだ。フォーリン・ポリシーによれば、ロシアメディアでは、新型コロナウイルスが、米国の「生物兵器」、もしくは米国の製薬会社による策略、との陰謀論が流布している、という。不安の拡大には、それに乗じた様々な意図も入り込む。冷静さは常に必要だ。

*8-4:https://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2020022990135918.html(東京新聞 2020年2月29日)<新型コロナ>WHO「危険性最高」評価引き上げ 感染55カ国・地域に
 世界保健機関(WHO)は二十八日(日本時間二十九日未明)、新型コロナウイルスによる肺炎(COVID(コビッド)19)の地域別の危険性評価で、世界全体と日本を含む中国周辺地域を「高い」から、中国と同じ最高レベルの「非常に高い」に引き上げた。ウイルス感染が世界各地に拡大し、死者・感染者数の増加に歯止めがかからないことから、世界的に流行していると認定した形だ。中国を発端に韓国、イラン、イタリアなどで大規模感染が確認され、日本でも市中感染とみられる例が相次いでおり、終息の見通しが立たない現状に危機感を示し、各国に一層の警戒を呼び掛けた。事態は急速に変化しているが、WHOのテドロス事務局長は記者会見で、多くの国では大規模な市中感染は起きておらず「抑え込みは依然可能だ」と語った。WHOで緊急事態対応を統括するライアン氏は「危機が高まっている」と述べ、各国に感染拡大防止態勢の強化を訴えた。二十八日付のWHOの状況報告によると感染者は五十五カ国・地域の八万人以上に上った。中国では新規感染者が少なくなる傾向にあるが、感染は世界の五大陸(ユーラシア、アフリカ、北米、南米、オーストラリア)に波及。テドロス氏によると、イタリアに関連した感染者二十四人が十四カ国で、イランに関連した九十七人が十一カ国で確認された。中国以外の国からも感染者が「輸出」される事例が増え、世界的な危険性が高まったと認めざるを得なくなった。WHOはこれまで、世界各地の感染例は中国と比べると格段に数が少なく大半の感染経路も把握できているとしていた。WHOは一月三十日に国際保健規則に基づき、新型コロナウイルスの感染拡大が「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」に該当すると宣言。危険性評価は一月二十三日付のWHOの状況報告から掲載され(1)中国(2)中国周辺地域(3)世界全体-の区域で評価。これまで中国は「非常に高い」、世界全体と中国周辺地域は「高い」となっていた。

*8-5:https://www.nishinippon.co.jp/item/n/587674/ (西日本新聞 2020/2/27) 「臨時休校」65%が賛成 高齢者と10代割合高く あな特通信員アンケ
 新型コロナウイルス感染対策として全国の小中学校や高校などに臨時休校を要請する方針を安倍晋三首相が表明したことを受け、「あなたの特命取材班」は27日夜、無料通信アプリLINE(ライン)でつながる全国約1万1千人の通信員に緊急アンケートを実施した。2251人が回答、方針への「賛成」が約65%を占めた。年代別では、60代の賛成の割合が最も高い75・1%に上り、次いで10代(73・6%)、70代以上(70・1%)の順だった。「このくらいのことをしないと感染は広がるばかり」(福岡県・男性)、「初動指示が遅すぎた」(同県・男性)という声が上がった。子育て世代が多い年齢層では反対が比較的多く、30代では反対が最多の41・1%、次いで40代(36・5%)。「仕事を休めない。子どもだけ置いて行けない」(大分県・女性)のほか「急すぎる」、春休みまでという期間に「長すぎる」という声が目立った。男女別では男性の賛成が68・8%に対し、女性は62・5%。感染が確認された福岡、熊本両県ではそれぞれ64・7%、77・1%が賛成した。「子どもの面倒を誰が見ますか」という質問には、「誰もいない」という切実な声が一斉に寄せられた。小学校高学年や中学生の子どもについては、心配でも「子どもだけで留守番させる」(福岡県・女性)という人が多かった。子どもが低学年で、祖父母など頼れる人がいない場合は「夫婦交代で仕事を休むしかない」(同県・女性)との嘆きが漏れた。収入減少を懸念する声も多く「国が休業補償すべきだ」(鹿児島県・女性)、「どうしても面倒を見られない家庭のための緊急施設の整備が急務」(福岡県・男性)という意見があった。

*8-6:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/494188 (佐賀新聞 2020/2/27) 〈防ごう 新型コロナ〉学童の受け入れ先
※土日は休みの自治体もあります。
【佐賀市】受け入れ先=児童クラブで検討中▶日時=3日から、午前8時~午後6時半▶対象=利用申し込みをして決定が出ている児童▶問い合わせ=市子育て総務課、電話0952(40)7285
【唐津市】検討中。2日までに詳細を決め、保護者に通知する
【鳥栖市】受け入れ先=放課後児童クラブ▶日時=3~15日(日曜除く)、午前8時~午後6時▶対象=通年で登録している児童のみ▶問い合わせは市生涯学習課、電話0942(85)3694
【多久市】受け入れ先=各校のなかよしクラブ▶日時=3日から、正午~午後7時▶対象=本年度の利用申し込みをしている児童▶問い合わせ=市学校教育課、電話0952(75)2227。
【伊万里市】受け入れ先=各学校の留守家庭児童クラブ▶日時=3~14日、午前8時~午後7時▶対象=本年度の利用申し込みをしている児童▶問い合わせ=市教育総務課、電話0955(23)2125
【武雄市】受け入れ先=小学校の放課後児童クラブ▶日時=3日から、午前8時~午後7時▶対象=利用申し込みをしていない児童でも、保護者の事情によっては受け入れ可能▶問い合わせ=各児童クラブ、こどもみらい課、電話0954(23)9215
【鹿島市】受け入れ先=各校の児童クラブ▶日時=3日から、午前7時半~午後6時10分(延長は午後7時)、弁当を持参▶対象=市内の児童で子どもを見る人がいない家庭。新規利用は就労証明が必要で、市役所に申請する▶問い合わせ=市福祉課、電話0954(63)2119
【小城市】受け入れ先=各校の放課後児童クラブ▶日時=3日から、午前8時~午後7時までで検討中▶対象=本年度の利用申し込みをしている児童▶問い合わせ=市教育総務課、電話0952(37)6130
【嬉野市】受け入れ先=各校の放課後児童クラブ▶日時=3~15日、午前7時半から午後7時まで▶受付期間=3日~15日まで▶対象=通常の利用申し込みをしている児童、長期休暇時のみ申し込みをしている人▶問い合わせ=市子育て未来課、電話0954(66)9121、もしくは、市福祉課、電話0954(42)3306
【神埼市】検討中。2日までに詳細を決め、保護者に通知する▶問い合わせ=市社会教育課、電話0952(44)2731
【吉野ヶ里町】受け入れ先=各小学校の放課後児童クラブ▶日時=3~15日、午前7時半~午後6時(1時間延長可)▶対象=1、2月の平日に利用している児童のみ▶問い合わせ=町社会教育課、0952(37)0341
【基山町】受け入れ先=放課後児童クラブ▶日時=3日から、午前8時~午後7時▶対象=普段から利用している児童のうち1年生から3年生まで受け入れ予定▶問い合わせ=町こども課、電話0942(92)7968
【上峰町】受け入れ先=放課後児童クラブ▶日時=3日から、午前8時~午後7時▶対象=通常から利用している児童のうち1、2年生を受け入れ。学校で受け入れるなどの対応も検討中▶問い合わせ=町住民課、0952(52)7412
【みやき町】受け入れ先=放課後児童クラブ▶日時=3日から、午前7時半~午後7時▶対象=利用登録している児童。学校を開けることも含めて検討中▶問い合わせ=町こども未来課、0942(89)4097
【玄海町】受け入れ先=さくら児童館、みどり児童館▶日時=3日から、午前8時~午後6時▶対象=どうしても預ける必要がある場合のみ対応。申請のない児童生徒の対応も検討中▶問い合わせ=両児童館、町住民課こども・くらし係、電話0955(52)2158
【有田町】受け入れ先=放課後児童クラブ▶日時=3~14日、月~土曜の午前8時~午後6時(延長30分)、日曜は休み▶対象=既に登録をしている児童のみ▶問い合わせ=有田町子育て支援課、電話0955(25)9200
【大町町】検討中
【白石町】受け入れ先=各校の放課後児童クラブ▶日時=3~15日、午前7時40分~午後6時▶対象=利用申し込みしている人。申し込みしていない人の対応も検討している▶問い合わせ=町保健福祉課、電話0952(84)7116
【江北町】受け入れ先=各小中学校、江北小にある放課後児童クラブ、町子どもセンター「うるる」▶日時・対象=午前8時15分~午後2時15分は学校の教室を開放して受け入れ。放課後児童クラブは利用申し込みをしている児童が対象で午後6時半まで▶問い合わせ=町子ども教育課、電話0952(86)5621
【太良町】受け入れ先=各校の児童クラブ▶日時=3~15日、午前8時半~午後6時▶対象=申し込みをしている児童。新規利用は要望次第で検討する▶問い合わせ=町民福祉課、電話0954(67)0718

*8-7:https://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-1081535.html (琉球新報社説 2020年2月28日) 政府の新型肺炎対策 検査体制の拡充が急務だ
 政府の危機管理能力のなさが鮮明になってきた。新型コロナウイルスによる肺炎(COVID19)の感染拡大阻止で安倍政権の対応が後手に回り、国民の間に不安と混乱を広げている。その最大の要因は、新型コロナウイルスの有無を調べるPCR検査が十分に行われておらず、感染がどれだけ広がっているのか実態を把握しきれていないことにある。発熱やせきが続いても新型コロナウイルスの検査を受けられず、医療機関をたらい回しにされる事例が報告されている。感染者数を増やさないために、検査を制限しているのではないかと疑いの目を向けられても仕方がない。政府はこれまで1日最大約3800件の検査能力があると説明してきたが、この1週間の実績は1日平均約900件にとどまっている。これに対し隣国の韓国は1日平均約3400件の検査を実施し、これまでの検査総数は約5万3千件となっている。韓国では2015年に中東呼吸器症候群(MERS)への対応が遅れ、政権が批判された。これが教訓となり韓国政府はPCR検査の検査時間を短縮し、民間病院に検査キットを配布して検査の網を拡大してきた。日本では厚生労働省が当初「国内では人から人への持続的な感染は認められない」との認識を示すなど、事態を楽観視していた。集団感染が起きたクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」への対応を巡っても、感染防止対策に不備があったと指摘されている。大きな失態だ。陰性が確認された乗客をクルーズ船から下船させたが、栃木や徳島、千葉県では公共交通を利用して帰宅した下船者の感染が判明する事態になった。政府の泥縄式の対応がウイルスを拡散させている可能性が否定できない。終息の道筋が見えない中で、スポーツや文化行事の開催自粛も広がっている。25日に厚労省が発表した基本方針では「全国一律の自粛要請を行うものではない」としていた。だが、安倍晋三首相が翌26日に「国が判断しなければならない。大規模な感染リスクがある」と中止の要請へと方針を一転させたことで、イベント当日に公演中止が決まるなど混乱を招いた。現場に負担を押し付けるやり方は市民生活や経済活動を混乱させる。「最終的な責任は市や町にあると国が逃げている」(谷本正憲石川県知事)との指摘や厚労省に任せきりにしているとの批判もある。首相は3月2日から春休みが明けるまで全国の小中高校などに臨時休校を要請する意向を示した。感染の広がりが不明な中で、場当たり的な印象も否めない。政府は検査の規模と速度を上げる必要がある。検査を希望する全ての人が検査を受けられるよう、民間機関への検査委託の拡大など診断体制を早急に強化すべきだ。

<普及せずに失う日本発の先進技術とその理由>
PS(2020/2/27追加):*9-1のように、パナソニックもテスラの「ソーラールーフ」で採用されるはずだった黒屋根のような太陽電池のデザインと発電効率の両立が難しく、テスラの求める仕様に合わないとして共同生産を解消するそうだ。そして、テスラの現行のソーラールーフは、コストも安い中国企業などの電池を採用しているそうで、太陽光発電装置が日本発だったことを考えると情けない。パナソニックが生産した太陽電池は日本のハウスメーカーなどが使っているそうだが、それもデザインが今一つで、設置の傾斜角度を30度にするため、見た目がさらに悪くなっている。日本では、「環境保護≒その他のすべてを犠牲にしてよい」と考えているようだが、この発想は改めるべきだ。
 また、ジョンソン英首相は、*9-2のように、「ガソリン車(ハイブリッド車を含む)とディーゼル車の販売禁止を従来より5年早い2035年から実施する」と表明するそうだが、2030年からでよいのではないだろうか。首相がそう表明すれば、充電施設は整備され、大量生産によりEVの値段も下がる。日本は、現状維持や妥協の発想と妨害によってEVも遅れたが・・。

*9-1:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO56059920W0A220C2MM0000/?n_cid=SPTMG002 (日経新聞 2020/2/26) テスラとパナソニック、太陽電池の共同生産解消へ
 米電気自動車(EV)メーカーのテスラとパナソニックは太陽電池の共同生産を解消する。テスラの太陽光パネルに使う太陽電池を生産するため、両社は米ニューヨーク州で工場を運営してきた。ただ実際はテスラ製パネルでの採用はほとんどなく、生産量が増えないため近く稼働を止める。中国勢が台頭する中、日本の太陽電池メーカーの退潮が鮮明になる。テスラにとって太陽光事業はEVに次ぐ柱だが、当初の戦略を修正する。両社は米ネバダ州にある車載電池工場「ギガファクトリー1」を軸としたEV向け電池の共同生産は引き続き維持する。テスラとパナソニックは2016年に太陽電池の生産で提携すると発表。米ニューヨーク州バッファロー市に「ギガファクトリー2」と呼ぶ工場を設け、17年から太陽光パネルの中核部材である太陽電池などの生産を始めた。工場の運営主体はテスラでパナソニックは製造設備の購入など投資の一部を負担。主にパナソニックが生産を担当する太陽電池は、テスラの主力の太陽光パネルである「ソーラールーフ」で採用されるはずだった。ソーラールーフは黒い屋根のように見えるデザイン性が最大の特長だが、パナソニック製の太陽電池は見た目と発電効率の両立が難しくテスラの求める仕様に合わなかった。現行のソーラールーフはコストも安い中国企業などの電池を採用しているもよう。パナソニックは同工場で生産した太陽電池を、テスラの代わりに日本のハウスメーカーなどに販売してきた。

*9-2:https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2020/02/20355.php (Newsweek 2020年2月4日) イギリス、2035年からガソリン車とディーゼル車を販売禁止へ 5年前倒し
 ジョンソン英首相は4日に行う講演で、ガソリン車とディーゼル車の販売禁止について、従来より5年前倒しの2035年から実施すると表明する見通し。英国は今年、11月にグラスゴーで開かれる国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)の議長国を務める。4日にロンドンで開かれる関連イベントでの講演を前に、ジョンソン首相は声明で「COP26の開催は英国と世界各国にとって気候変動対策強化の重要な機会になる」と指摘。「2050年排出実質ゼロの目標に向けた今年の英国の計画を明らかにするともに、諸外国に排出実質ゼロを英国とともに公約するよう求めるつもりだ」とした。ジョンソン氏は、排出実質ゼロの早期達成に向け、クリーンな技術への投資や自然生息地の保全、気候変動の影響への耐性を高めるための方策を含めた国際的な取り組みを呼び掛ける見通し。ガソリン車とディーゼル車の販売禁止については、2035年か、可能であればさらに早い時期に前倒しで実施する計画を示す。ガソリンエンジンと電気モーターを併用するハイブリッド車も含まれるという。実施前に意見公募を行う。英国以外にも、フランスは2040年以降、ガソリン車とディーゼル車の販売を禁止する方針で、ノルウェーの議会は、25年までに国内の全ての車を排出ゼロにする法的拘束力のない目標を採択した。ただ、英国ではディーゼル車とガソリン車が国内販売の9割を依然占めており、充電施設の数が少なく、エコカーのモデルも限定的で割高との声が聞かれる。

<新型コロナウイルス対策としての全国一斉休校>
PS(2020年3月2、3、16日追加):*10-3のように、重要な仕事をしている女性が多いとは思わず、家庭へのしわ寄せを考えずに、安倍首相が新型コロナウイルス感染防止として、2020年3月2日から全国の小中高校・特別支援学校を一斉に休校にする方針を出された時には、私も「原発廃止と再エネによる分散発電やEV化ではなく、勉強させない方向への意思決定は随分速やかだ」と思った。つまり、感染者が1人も確認されていない自治体(離島を含む)にまで休校を要請する必要性はないと思われるため、全国一斉休校にした科学的根拠を明確にすべきだ。ただし、学校に行くのは全員の義務だが、保育園や学童保育を使うのは親が必要と判断した家庭だけであるため、この期間に保育園や学童保育を開所するのに矛盾はない。
 また、学校給食の停止で、*10-2のように、学校給食向け牛乳・野菜等のキャンセルが相次いで供給者が困っているそうだが、それだけではなく、これを給食として児童・生徒に与えて健康を維持させているため(これには親は感謝すべきだ)、一斉休校で免疫力や体力が低下する児童・生徒も出そうだ。そのため、*10-1のように、参院予算委員会は、2020年度予算案全体ではなく(??)、新型コロナウイルス対応策などが中心的な議題になるとのことである。
 なお、新型コロナウイルスの感染防止のために始まった全国小中高校の一斉休校で、*10-4のように、朝から預かる学童保育の負担が重くなり、同時に感染をどう防ぐかが問題となっているそうだが、朝から預かる必要性は、休みの日なら日常のことであり、感染防止も新型コロナウイルスに限らずインフルエンザ・はしか・水疱瘡など他の感染症でも同じだ。従って、私は東大女子同窓会を通して1990年代から必要性を言っていたので、未だに保育所や学童保育の不備に慌てている自治体があるとすれば、それは働く女性のニーズを無視して女性に負担を押し付けてきた自治体の怠慢であり、同情の余地はないと思う。むしろ、新型コロナのおかげで、必要不可欠なインフラの未整備が浮き彫りになったことに感謝すべきだ。
 このような中、*10-5のように、マイクロソフトの創業者ビル・ゲイツ氏が取締役を退任し、①気候変動 ②教育 ③公衆衛生 に関わる慈善事業に専念されるそうだ。これは本当に偉いことだが、①②③の命題は、今後のITに求められる技術であるため、ゲイツ氏の判断は長期的には新製品や新サービスのBig market(大市場)を創造することになり、慈善事業に終わらないだろう。例えば、IT教育なら、*10-6のように、オンラインで動画を使った教育をすることもでき、日本に居ながら外国の授業を受けることもできる。これは、学校に行く意義とは別に、開発途上国や地方ではなくてはならないものだ。ちなみに、私は「Nature」の日本法人で、地球45億年の歴史を5分くらいに短縮した大陸移動説の動画を見せていただいたことがあるが、想像を超える科学的事実が画像で表わされており、特に注目したい場所(例えば、恐竜時代の日本など)を拡大して見ることもできて感動した。このほか、イギリスやアメリカの授業を聞けば、他の学科を英語で学習することもできるため、テレビサイズに大きくできるYuTubeがあれば助かる。また、「そこまでやると、学習時間が足りない!」という問題については、*10-7のように、佐賀県は、(私の提案で)私立だけでなく公立高校も中高一貫併設校になっているところが4か所あり、このように中高一貫校の6年間や幼稚園・小中一貫校で年齢に応じた内容を効果的に学べるようにすれば、「時間が足りない」という問題は解決できる。そのため、必要なのは、学習内容をできるだけ前倒しし、学習計画を効率化しながら再編することである。

*10-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200302&ng=DGKKZO56249020R00C20A3PE8000 (日経新聞 2020.3.2) 新型コロナ対応で与野党論戦 自民・世耕氏「休校は有効」 国民・大塚氏「経緯説明を」
 参院予算委員会は2日から安倍晋三首相と全閣僚が出席し、2020年度予算案の基本的質疑に入る。新型コロナウイルスの対応策などが中心的な議題となる。それに先立ち与野党の参院幹部は1日のNHK番組で、政府の対応策について討論した。自民党の世耕弘成参院幹事長は首相の休校要請に関して「迅速に対応することが重要だ。全国的にどこで広がるか明確でない状況で、休校は有効だ」と評価した。「休業補償を具体化するなど不安の払拭に努めることが重要だ」と訴えた。公明党の西田実仁参院会長も「休業補償や子供の居場所づくりなどセットで公表するほうが混乱は少ない」と指摘した。世耕氏は国会論戦を前に「今は批判や糾弾の段階ではなく、政府が能力を存分に発揮できるようにサポートすべき時期だ」とも強調した。立憲民主党の長浜博行参院議員会長は「自治体に責任を押しつけるのではなく、国として何をすべきかだ」と述べた。国民民主党の大塚耕平代表代行も休校要請について「なぜこういう判断に至ったか説明を聞きたい」と語った。共産党の小池晃書記局長は専門家を国会に参考人として呼び、政府の対応を検証すべきだと主張した。大塚氏は休校で学校給食がなくなり、材料を納入する業者などに悪影響が出ることに懸念を示した。日本維新の会の片山虎之助共同代表は「国が一律に要請するのはいかがか」と批判し、地方自治体の判断に任せるべきだとの考えを示した。日本経済全体への影響について、大塚氏は「事業者が決済できない状況が発生している」として、政府が支払い猶予措置などを講じるべきだと提案した。イベント中止によるキャンセル料を念頭に、イベント業者らへの損害をなくすように求める考えを示した。小池氏は消費税率を5%に引き下げるように主張し、世耕氏は否定した。

*10-2:https://www.agrinews.co.jp/p50163.html (日本農業新聞 2020年2月29日) 新型肺炎で臨時休校 給食停止で産地混乱 生乳、野菜行き場なく
 新型コロナウイルスの感染拡大防止へ、政府が示した全国小中高校の臨時休校方針で学校給食が停止がすることを受け、農畜産物の供給に混乱が生じている。学校給食向けの牛乳(学乳)は飲用向け生乳の1割近くで、供給先を失った産地やメーカーは対応に苦慮する。野菜でも給食向け取引のキャンセルが相次ぐなど影響が広がっている。学校給食に提供する生乳は、全国の飲用向け(年間約400万トン)の1割弱で全て国産。うち最も供給量の多い関東は年間10万トンを学乳に仕向ける。管内の公立学校が2週間休校になると、このままでは7500トンもの生乳が行き先を失う。関東生乳販連は28日午後4時現在で、取引メーカーからキャンセルが相次ぐ。キャンセル分は日量最大で80トンを見込む。余力のある乳業メーカーに引き受けてもらい、難しければ長期休みに稼働率を上げる乳製品工場に納めたい考え。実質、春休みが前倒しになる形だが、工場の人員確保は難しく、どこまで対応できるかは不透明だ。「暖冬で生乳生産が上向く一方、飲用需要も全体的に下がっている。学乳の停止でダブルパンチ」(同生乳販連)と嘆く。乳用牛など50頭を管理し、千葉酪農農業協同組合を通じ小学校に牛乳を出荷する千葉県内の牧場の代表は「まだ損害は出ていないが、先行きが見えない。影響の長期化が心配」と不安視する。北海道では都府県に定期的に移送する生乳のキャンセルの多発を懸念する。キャンセル分は道内の乳業メーカーが引き受け、主に加工向けに振り向ける。生乳増産と飲用向け需要の低迷に加え、観光客の減少で土産用の加工品需要も低下している。大手乳業関係者は「乳業各社や指定団体と協力して生乳需給が崩れないようにしたい」と話す。文部科学省によると、学校給食の1人1食当たりの食品別摂取量(2017年度)は、牛乳が200グラムで最多。野菜類が91グラム、米が52グラムと続く。学校給食向けに出荷する産地やJAなどにも影響が及ぶ見通しだ。東京都小平市の小中学校に食材を提供してきたJA東京むさし小平支店は、3月分の野菜などの契約4・5トンがキャンセルとなった。同JAは「非常に混乱している。市場に荷が集中し相場に影響が出るのも心配」と話す。月約200万円分の野菜を東広島市内の給食センターなどに供給してきたJA広島中央は「学校給食は安定した単価で買い取ってもらっていた」ため、供給停止を懸念する。学校給食材の供給などを担う各都道府県学校給食会でつくる全国学校給食会連合会は「給食メニューや食材調達は約1カ月前に決めるところが多い。食材キャンセルなど影響は出る」とみる。文科省は28日、学校給食に供給してきた産地やJA、業者の支援について「現時点で補填(ほてん)などは想定していないが、影響を踏まえ各省と連携し検討する」としている。

*10-3:https://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-1082245.html (琉球新報社説 2020年2月29日) 新型コロナ休校要請 「全国一斉」の根拠説明を
 あまりにも唐突で場当たり的と言わざるを得ない。安倍晋三首相が、新型コロナウイルスの感染防止のため3月2日から春休みに入るまで全国の小中学校、高校や特別支援学校を臨時休校にするよう要請する方針を打ち出したのである。萩生田光一文部科学相は「専門家から、学校が集団感染のリスクが高いとかねて意見があり、政府が大方針を示した」と理由を説明する。だが、感染者が出た都道府県だけでなく、1人も確認されていない県を含め、一律に休校を求める必要があるのか。混乱を拡大させるだけではないのか。一斉休校の科学的根拠をしっかりと説明することが不可欠だ。新型コロナウイルスを巡るこの間の政府の対応は後手後手だった。集団感染が起きたクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」で乗員乗客を船内に隔離したものの、封じ込めに失敗した。未曽有の事態に対処できず右往左往する政府の無策ぶりは日を追うごとに鮮明になっている。一斉休校の要請は、高まる批判を払拭(ふっしょく)する狙いがあるとみられるが、短兵急で稚拙な印象は否めない。知事や市長などから戸惑いや懸念、批判の声が出た。「家庭の負担が大きい」などとして要請に従わない自治体もある。かえって指導力のなさを露呈した。文科省が一斉休校の要請を通知する一方で、厚生労働省は小学生を放課後に預かる放課後児童クラブ(学童保育)などは原則として開所するよう都道府県に通知した。ちぐはぐな対応に映る。休校による保護者の負担は大きい。学習に遅れが出る。学校現場は混乱している。少なくとも、もっと早い段階で休校要請の用意があることを周知しておくべきだった。首相は、休校に伴うさまざまな課題について「政府として責任を持って対応する」と明言した。きめ細かな対策が欠かせない。「急速な拡大の瀬戸際にある」と専門家は指摘するが、どこまで感染が広がっているかは分かっていない。ウイルスの有無を調べるPCR検査の体制が整っていないからだ。検査費用の公的医療保険適用を含め、必要な対策が大きく立ち遅れている。首相周辺の危機意識も薄い。秋葉賢也首相補佐官は首相が全国的なイベントの自粛を要請した26日の夜、地元仙台市で出版記念パーティーを開いた。集団感染が起きやすいとされる立食形式だ。これでは示しがつかない。麻生太郎財務相は、臨時休校要請を巡り、働く母親などがいる家庭への対応を質問した記者に「つまんないこと聞くねえ」とつぶやいた。つまらないのは自身の態度だ。不謹慎としか言いようがない。首相は、一生懸命に取り組んでいるという印象を与えるためのパフォーマンスではなく、実効性のある方策を着実に実行してもらいたい。

*10-4:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200303&ng=DGKKZO56282830S0A300C2CC1000 (日経新聞 2020.3.3) 学童保育の負担ずしり 新型コロナ、一斉休校初日、朝から預かり/「感染どう防ぐ」
 新型コロナウイルスの感染防止に向け、2日から始まった全国小中高校の一斉休校。子どもを預かる各地の放課後児童クラブ(学童保育)は開所時間を前倒しし、朝から対応に追われた。働く親たちは「受け入れてくれて助かった」と安堵したが、預かる施設側は「密集空間でどう感染を防げばいいのか」「人手が足りなくなるのでは」と悩んでいる。文部科学省の2月28日の通知を受け、感染者のいない島根県を除く46都道府県の小中高校で2日から順次、一斉休校が始まった。各地の学童保育では、通常は放課後の開所時間を朝に前倒しし、仕事などで親が自宅で見られない子どもの受け皿となった。区立小学校が休校になった東京都文京区の学童クラブには2日午前8時前から続々と児童が集まった。小学校1年の娘を預けに来た男性会社員(50)は、学童側から「登録済みで保育が必要な場合は午前中から受け入れる」との通知を2月28日に受け取ったという。「共働きで、ここが受け入れてくれなかったら、どうしていいのか分からなかった」と話した。福岡市でも2日朝から、市内139カ所の放課後児童クラブで児童の受け入れを始めた。同市博多区の同クラブでは小学1~6年の児童約40人が手洗いやアルコール消毒をして中に入った。市によると、臨時休校が決まった2月28日以降、新たに約1千人が同クラブに入会したという。臨時休校中の児童の受け皿として期待されている学童には問い合わせが増えているが、施設側は悩みを抱える。「どこまで(感染を)防げるのかはわからない」。東京都葛飾区の区立梅田小学校内の学童保育クラブ責任者、佐々木美緒子さんは心配そうに話す。密集を避けるため、児童約50人を2班に分けたが「結局、学校の教室と同じ人数や環境で集まっている」と話す。大阪府寝屋川市の小学校では2日から24日までの休校期間中、午前8時から午後5時まで預かる児童には給食を提供している。この日、市立石津小学校では預かった35人を4つの教室に分散させ、給食時は全員が前を向いて極力会話しないように注意を促した。森本朋美校長は「保護者の負担を少しでも軽減するため給食の提供は続けたい」と話した。名古屋市緑区の学童保育クラブの男性職員は「子どもを1カ所に集めないために休校にしたのに、学校より小さく、設備が乏しい学童に集めてもいいのだろうか」と困惑する。開所を朝に早めたが、職員の人数は変わらず負担は増している。「アルバイトのシフトを調整できなければ、常勤職員が朝から晩まで働くしかない」と語った。学童保育約100カ所で児童を午前から受け入れた東京都足立区。一部の区営施設には新型コロナ対策で閉鎖中の高齢者施設から職員が応援に入ったが、運営を民間に委託する施設では職員の人手不足や長時間労働の恐れが出ている。区の担当者は「預かりを希望する家庭が増える可能性もあり、今後の受け入れ数は読めない」と語った。

*10-5:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO56792950U0A310C2000000/?n_cid=SPTMG002 (日経新聞 2020/3/14) ビル・ゲイツ氏、マイクロソフト取締役を退任
 米マイクロソフトは13日、創業者のビル・ゲイツ氏(64)が同社の取締役を退任したと発表した。自ら設立した財団で取り組んでいる気候変動や教育、公衆衛生に関わる慈善事業に専念するため。サティア・ナデラ最高経営責任者(CEO)らへの「テクノロジーアドバイザー」の役割は続ける。ゲイツ氏は1975年に友人のポール・アレン氏とマイクロソフトを創業し、パソコン用基本ソフト(OS)「ウィンドウズ」で一時代を築いた。2000年までマイクロソフトのCEOを、14年まで取締役会長を務めた。一方で2000年には妻のメリンダ氏とともに、環境問題や新興国の病気など社会課題を扱うビル&メリンダ・ゲイツ財団を設立。財団活動に軸足を移すため、08年以降はマイクロソフトの仕事は「非常勤」にしていた。今回取締役も辞めることで、慈善事業に費やす時間を一段と増やす。ゲイツ氏は友人のウォーレン・バフェット氏が率いる米投資会社バークシャー・ハザウェイの取締役も退任する。ゲイツ氏は「リンクトイン」への投稿で「バークシャーとマイクロソフトのリーダーシップはかつてなく強くなっているため、このステップを踏むのに適切な時期だ」と説明した。ただ、ゲイツ氏は「マイクロソフトの取締役を退任することは会社から完全に離れることではない」とも述べ、技術面のアドバイザーとして関与を続ける意思を示した。ナデラ氏は13日に声明を出し「マイクロソフトはビルの継続的な技術に対する情熱とアドバイスを受けて、製品とサービスを前進させていく」と述べた。新型コロナウイルスの感染拡大が続くなか、ゲイツ財団は同分野でも活動を積極化している。最近は2月に新型コロナウイルス対策に最大1億ドル(約108億円)を拠出すると発表した。

*10-6:https://www.nishinippon.co.jp/item/n/592277/ (西日本新聞 2020/3/16) にわかに注目、オンライン学習 新型コロナで突然の休校… 企業も支援
●学校の意義見つめ直す機会にも
 新型コロナウイルスの感染拡大の影響で小中高校の臨時休校が続く中、子どもたちが自宅にいても学べるオンライン学習が注目されている。企業による教材の無料公開が相次いでいるほか、学校現場も教師が課題の送信や質疑応答などを工夫。情報通信技術(ICT)を使った教育の浸透と、教室で学ぶ意義の見直しにもつながっている。「楽しみだったし、ドキドキした」。福岡市中央区の福岡雙葉高2年の香山礼美さん(17)は11日、ビデオ会議システムによる学級の朝礼に臨んだ。スマートフォンに並んだ級友や担任の表情に触れて「安心した」と香山さん。臨時休校に入って以降、初めて顔を見る人が大半だったという。ICT教育に力を入れ始めた同校では本年度、全ての教師にタブレット端末を配備した。その環境を利用して教師たちは休校中、生徒向けに小テストや添削、解説動画に加え、黒板の前で撮影した授業の動画を配信。1本の動画を5分にまとめたり、別の教師が生徒役をしたりするなどの工夫を凝らす。ただ、授業の代替ではないため、どこまで取り組むかは生徒次第だ。生徒の関心を伸ばす鍵の一つが教師の「素顔」。今春、定年を迎える教師のメッセージ動画を配信すると生徒間で大きな話題となった。その反響を受け、歌に合わせて踊る教師の姿なども見られるようになった。一方で授業動画は思わぬ効果も。「生徒がノートに書いたり、自分たちが板書したりする時間を省くと50分でやっていた内容を約15分にまとめられた。自分の動画を見て話す早さや滑舌も見直せた」と甲斐恭平教諭(29)は話した。
   ◇   ◇
 福岡市西区の福岡西陵高では臨時休校に入った3日、教師たちが学校のタブレットを手にオンライン学習の手法を確認し合った。九州大と連携し、デジタル教材の活用法を探る同校は生徒と教師に保護者も加えて学級、部活動など設定したグループ内で文章や写真、動画を送受信できるシステムを導入。生徒たちには休校前、自宅のパソコンやスマートフォンを使って交信するよう伝えていた。「生徒を個別に呼び出して指導ができるわけではない。いかに生徒がやりたくなる課題を提供できるかが大切」と、中心になって進める吉本悟教諭(39)は言う。休校から10日余り。連絡事項や課題の伝達に加え、テレビ会議システムで一部の補習授業も実践した。今後は海外の学校とつなぎ、生徒間の交流会も計画している。
   ◇   ◇
 こうした学校現場の取り組みに、教育関連企業も積極的に“参戦”する姿勢を見せている。通信教育事業のZ会(静岡県三島市)や小学館集英社プロダクション(東京)、学研ホールディングス(東京)などの業界大手はそれぞれ、専用サイトを設けるなどし、学習方法や授業解説の動画といった教材を相次いで公開している。経済産業省は2月28日に家庭学習に役立つ取り組みを紹介するサイトを開設。50社・団体以上を載せており、担当課には一時、対応できないほど掲載の要望が殺到したという。4月からプログラミング教育が小学校で必須となるのをにらんだ企画もある。福岡市のベンチャー企業「しくみデザイン」は4月上旬まで、同社が無料で提供しているアプリを使ったデジタル作品を応募してもらうコンテストを実施中だ。パソコンやスマホがあれば、どこでも学べるオンライン学習。それでも、多くの生徒は教室で気軽に話し合い、学び合える友人が隣にいないことに不都合を感じている。福岡雙葉高の甲斐教諭は「生徒たちが集まらないとできないことは何なのかを突き詰めないといけない」と話す。突然の臨時休校は、学校での学びの意義をあらためて感じる機会でもあるようだ。

*10-7:https://www.gakkou.net/kou/src/?srcmode=ci&ci=2&p=41 (中高一貫教育校併設型高校より抜粋)
1.佐賀県立唐津東高等学校 佐賀県唐津市 公立 普通科 中高一貫教育校
2.弘学館高等学校 佐賀県佐賀市 私立 普通科 中高一貫教育校
3.佐賀清和高等学校 佐賀県佐賀市 私立 普通科 専門学科 中高一貫教育校
4.佐賀県立武雄高等学校 佐賀県武雄市 公立 普通科 中高一貫教育校
5.佐賀県立致遠館高等学校 佐賀県佐賀市 公立 普通科 専門学科 中高一貫教育校
6.東明館高等学校 佐賀県基山町 私立 普通科 中高一貫教育校 
7.佐賀県立烏栖高等学校 佐賀県鳥栖市 公立 普通科 中高一貫教育校
8.龍谷高等学校 佐賀県佐賀市 私立 普通科 中高一貫教育校
9.早稲田佐賀高等学校 佐賀県唐津市 私立 普通科 中高一貫教育校

<新型コロナウイルスの治療法と特措法>
PS(2020年3月4日追加):新型コロナウイルス「COVID-19」が怖いのは、「有効な治療法がないから」と言われるが、*11-1のように、治療薬として①抗ウイルス薬レムデシビル ②抗HIV薬「カレトラ」 ③抗インフルエンザウイルス薬「アビガン」 の3種類が有望視されており、レムデシビルは、現在は承認されていないが、エボラ出血熱の治療薬として開発され、コロナウイルスが引き起こすMERSやSARSへの効果も示唆されて、中国と米国では既に臨床試験が始まっており、日本でも承認申請に向けた試験を3月にスタートするそうだ。ただし、ワクチンは予防には役立つが、既に罹患している人には無意味だ。そのような中、中国では罹患して治った人の血清を注射することによって重傷者が回復した例があり、これなら自分の免疫で回復しきれないほどの重症患者にも有効だろうが、人間の血清は供給に限度がある。
 そのため、私は、MERS・SARS・COVID-19がコロナウイルスであることから、*11-2のように、コロナウイルスに効く血清を医療用の無菌豚で作っておけば重症患者の治療に汎用することができ、乳牛で作って牛乳に免疫を出せれば、(乳児が母乳から免疫をもらうように)牛乳を飲んで免疫を作ることもできると思う。
 このように、現在の日本は感染症への対処法が多くなっているため、私は、*11-3のように、「政府や自治体の権限強化は抑制的であるべきで、憲法に反する法律で人権を制限しすぎるべきではない」という意見に賛成だ。

*11-1:https://answers.ten-navi.com/pharmanews/17853/ (AnswersNews 2020/2/28) 新型コロナウイルス 治療薬・ワクチンの開発動向まとめ【COVID-19】
 世界各地で広がる新型コロナウイルス感染症「COVID-19」。治療薬やワクチンの開発動向をまとめました(2020年2月28日昼時点の情報をもとに執筆。内容は随時更新する予定です。
●治療薬
 2月28日時点でCOVID-19の治療薬として有望視されているのは、▽米ギリアド・サイエンシズの抗ウイルス薬レムデシビル▽米アッヴィの抗HIV薬「カレトラ」(一般名・ロピナビル/リトナビル)▽富士フイルム富山化学の抗インフルエンザウイルス薬「アビガン」(ファビピラビル)――の3種類。レムデシビルは、現時点では世界中のどの国でも承認されていません。日本では、国立国際医療研究センターの研究班による観察研究として、一部の医療機関でこれら3種類の薬剤の投与が始まっています。3月には、レムデシビルの承認申請に向けた医師主導治験がスタートする予定。日本感染症学会は2月26日、3種類の薬剤のうち国内で承認されているカレトラとアビガンをCOVID-19に使用する際の留意点などをまとめた指針を発表しました。
●レムデシビル(米ギリアド)
 ギリアドは2月26日、COVID-19を対象にレムデシビルの臨床第3相(P3)試験を始めると発表しました。試験は、重症患者400人を対象としたものと、中等症患者600人を対象としたものの2本で、アジアを中心に診断例が多い世界各国の医療機関が参加。いずれも、レムデシビルを5日間または10日間、静脈内投与し、発熱と酸素飽和度を指標として有効性を評価します。レムデシビルはすでに、中国(中日友好医院主導)と米国(国立アレルギー・感染症研究所=NIAID主導)で臨床試験が始まっており、ギリアドによる企業治験はこれらの試験データを補完するものになるとみられています。中国での試験は4月に結果が得られる見通し。日本でも承認申請に向けた医師主導治験が3月にスタートする予定です。レムデシビルはもともと、エボラ出血熱の治療薬として開発されていた核酸アナログ。これまでの研究では、コロナウイルスが引き起こすMERS(中東呼吸器症候群)やSARS(重症急性呼吸器症候群)への効果が示唆されており、ギリアドは2月3日に発表した声明で「今回の新型コロナウイルス以外のコロナウイルスで得られているデータは希望を与える内容だ」としています。
●カレトラ(米アッヴィ)
 カレトラは、ウイルスの増殖を抑えるプロテアーゼ阻害薬ロピナビルと、その効果を増強するリトナビルの配合剤。日本では2000年にHIV感染症に対する治療薬として承認されています。これまでのin vitroや動物モデルを使った研究では、MERSへの有効性が示されており、COVID-19に対してもバーチャルスクリーニングで有効である可能性が示されています。米国の臨床試験登録サイト「CrinicalTrials.gov」によると、中国ではCOVID-19を対象としたカレトラの臨床試験が複数、実施中。日本感染症学会の指針によると、国内では2月21日までに国立国際医療研究センターで7人の患者に投与されています。
●アビガン(富士フイルム富山化学)
 アビガンは2014年に日本で承認された抗インフルエンザウイルス薬。新型インフルエンザが発生した場合にしか使用できないため、市場には流通していませんが、国は新型インフルエンザに備えて200万人分を備蓄しています。アビガンは、インフルエンザウイルスの遺伝子複製酵素であるRNAポリメラーゼを阻害することでウイルスの増殖を抑制します。COVID-19を引き起こす新型コロナウイルスもインフルエンザウイルスと同じRNAウイルスであることから、効果を示す可能性があると期待されています。ただし、動物実験で催奇形性が確認されているため、妊婦や妊娠している可能性がある人には使うことができず、妊娠する可能性がある場合は男女ともに避妊を確実に行う必要があります。中国の臨床試験登録サイト「Chinese Clinical Trial Registry(ChiCTR)」によると、中国では2月28日時点でCOVID-19に対するアビガンの臨床試験が4本進行中です。
●その他
 これら3つの薬剤以外では、米リジェネロン・ファーマシューティカルズがCOVID-19に対する抗体医薬の開発に向けて米国保健福祉省(HHS)と提携。米ジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)は、中国の医療機関からの要請に応じて抗HIV薬「プレジコビックス」(ダルナビル/コビシスタット)を提供し、同薬を使った臨床試験が行われています。CrinicalTrials.govやChiCTRによると、抗マラリア薬のクロロキンや抗ウイルス薬のインターフェロン、抗インフルエンザウイルス薬の「タミフル」(オセルタミビル)や「ゾフルーザ」(バロキサビル)などが、中国でCOVID-19を対象とした臨床試験が行われています(2月28日時点)。
●ワクチン
 COVID-19を予防するワクチンの臨床試験も近く始まる見通しです。米バイオベンチャーのモデルナは2月24日、開発中のコロナウイルスに対するワクチン「mRNA-1273」の治験薬を初めて出荷したと発表しました。米NIAIDが近くP1試験を始める予定です。CrinicalTrials.govに登録されている情報によると、mRNA-1237のP1試験は18~55歳の健康な男女45人を対象に実施。ワクチンを4週間隔で2回投与し、安全性と免疫原性を評価します。新型コロナウイルスに対するワクチンの開発をめぐっては、ノルウェーに本部を置く「感染症流行対策イノベーション連合(CEPI)」が、▽米イノビオ▽豪クイーンズランド大▽モデルナ・NIADI▽独キュアバック――とパートナーシップを締結。英グラクソ・スミスクラインはアジュバント技術の提供でCEPIの開発プログラムに協力しています。仏サノフィとJ&Jは、米HHS傘下の米国生物医学先端研究開発局(BARDA)と協力してワクチン開発を進めると発表しました。日本企業では、アイロムグループ子会社のIDファーマが、復旦大付属上海公衆衛生臨床センターとワクチンの共同開発で合意。両者はセンダイウイルスベクターを使った結核ワクチンを共同開発しており、その経験を生かして新型コロナウイルスに対するワクチンの開発を目指すといいます。

*11-2:https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/16/050900160/ (日経BP 2016.5.10) 18種の毒ヘビに有効、画期的な血清製造法を開発、アジアの毒ヘビからアフリカの種の血清も!年間9万人超を救えるか
 毎年、全世界で9万4000人もの人々が毒ヘビに咬まれて命を落としている。死者数が特に多い地域は、南アジアとサハラ以南のアフリカだ。彼らの命を救えないのは、抗ヘビ毒の血清が手に入りにくいからだ。ヘビ毒は複数の種類のタンパク質からなり、ヘビの種類によって成分や構成が異なる。そのためかなり最近まで、毒ヘビに咬まれたら、その種類のヘビの毒にだけ効く専用の抗毒血清で治療するのが最善とされてきた。だが、それには約600種の毒ヘビのうち、どれに咬まれたのか正確に分かる必要があるうえ、各種のヘビ毒に効く血清を備蓄しておくコストもかかる。また、アフリカには複数種のクサリヘビやコブラの毒に効く抗毒血清があり、現在はそれを使った治療が最も有効だ。しかし、報道によると、この血清の備蓄は2016年6月にも枯渇するという。血清の大半を製造していたフランスの製薬会社が、利益の出ない血清の生産をやめてしまったからである。このたび、タイの科学者たちが、アジアとアフリカの18種のヘビの毒に効く抗毒血清を作る方法を発見したと、いわゆる「顧みられない熱帯病(neglected tropical disease)」の研究を扱う科学誌『PLOS Neglected Tropical Diseases』に研究成果を発表した。研究チームは、自分たちの血清は従来のものより安く、より広い範囲のヘビ毒に効果があるので、血清を最も必要とする貧しい地域にも供給できると主張している。
●ヘビ毒をろ過して濃度を高める
 タイ、バンコクのチュラポーン研究所のカヴィ・ラタナバナンクーン氏は、ヘビ毒の恐ろしさを何度もじかに経験している。「私はこれまでに15匹の犬を飼いましたが、そのうちの5匹がコブラに咬まれて死んでいます」と彼は言う。「自宅の庭に体長1.5mのコブラが現れることもあります。私たちにとって、毒ヘビは身近な問題なのです」。より多くの種類のヘビ毒に効く血清を開発するため、ラタナバナンクーン氏の研究チームは、アジアの主要な毒ヘビである4種のコブラと2種のアマガサヘビから12種類のヘビ毒のサンプルを採取した。なかでもアマガサヘビ(Bungarus multicinctus)は手に入りにくかったので、野生のヘビを1匹100ドルで買い取るという口コミを広めて入手したという。捕獲されたヘビは、タイ赤十字社が運営するスネークファームが保護して、研究チームのために毒を採取した。抗ヘビ毒血清の一般的な作製法では、致死量に満たないヘビ毒を天然のままの状態でウマに注射し、できてきた抗体を回収する。けれども今回の研究では、12種類のサンプルのうち9種類を「超ろ過」して最も致死性の高い毒性タンパク質を取り出し、ろ過できるだけの量がなかった残りの3種類のヘビ毒と一緒に投与した。研究チームは、毒以外の成分を減らし、ヘビ毒の最も重要なタンパク質の濃度をあげることで、複数のヘビ毒に効く抗体の多い血清を一度に作れると考えたのだ。彼らの論文によると、こうして得られた血清を、ヘビ毒を注射したマウスに注射したところ、そのすべてが回復したという。さらに、この血清は、研究に用いた6種のヘビの毒だけでなく、類縁種の12種のヘビの毒にも効果があることが明らかになった。ラタナバナンクーン氏が特に驚いたのは、この血清が、アフリカのエジプトとカメルーン原産のヘビの毒にも効いたことだった。これらはいずれもコブラの仲間なので、毒素も似ているせいかもしれない。研究チームは、この方法で、アジアとアフリカのコブラ科のすべてのヘビの毒に効く血清を作れるようになるだろうと考えている。
●「特許を取得する予定はありません」
 米アリゾナ大学VIPER研究所のレスリー・ボイヤー所長は、実験で作られた抗体の数は、血清の有効性の指標となるもので、なかなか立派な数字であるが、他の開発中の抗毒血清に比べて特に多くはないと言う。また、ラタナバナンクーン氏らの研究が小規模で、新しい血清による治療の結果を、伝統的な専用の血清による治療の結果と直接比較していない点は問題だと指摘する。けれども彼女は、この研究は原理を証明したよい実験であり、ハイテク技術を駆使して合成抗毒血清を開発しようとする取り組みに比べると泥臭いが、より実用的なアプローチであるかもしれないと言う。「私自身は、彼らの方法は好きですね。アジアの小さな国々では、めずらしいヘビによる咬傷を治療する方法がなくて困っていると聞きます。ラタナバナンクーン氏らの血清が実用化されれば、こうした国々の公衆衛生は大幅に向上するでしょう」とボイヤー氏。彼女は、タイの研究チームが、もっと多くの研究資金を獲得して、より大規模な比較対照試験を実施できるようになることを願っている。動物を使っての試験が終わったら、今度はヒトでの臨床試験だ。研究チームは、自分たちのマルチ血清を市販するときには、手頃な価格で容易に入手できるようにするつもりだと強調する。ラタナバナンクーン氏は言う。「製造プロセスは非常に簡単なので、特許を取得する予定はありません」

*11-3:https://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2020030402000175.html (東京新聞社説 2020年3月4日) 新型コロナ 特措法の検討は慎重に
 安倍晋三首相は、新型コロナウイルス対策に立法措置を表明した。事態悪化を想定した対応は重要だが、目指す法整備は政府などの権限を強めるものだ。必要な対応なのか慎重な検討が求められる。首相が唐突に表明したイベントの自粛や小中高校の一斉休校の要請に法的な強制力はない。そこに批判があったことも要因なのだろう。法整備を言い出している。感染症の封じ込めにはあらゆる対策を取りたいが、政府や自治体の権限強化は抑制的であるべきで十分な議論が要る。想定されているのは新型インフルエンザ等対策特別措置法(特措法)の改正である。今国会での早期の成立を目指している。特措法は、感染症拡大防止のため企業活動や国民生活を規制する法律で、二〇〇九年の新型インフルエンザの流行を機に検討が始まり一二年に成立した。鳥インフルエンザが発生し、深刻な被害を招く新型インフルエンザに変異して人から人への感染が懸念された一三年に施行された。特措法では重大な被害の恐れがある新型インフルエンザが国内で発生、急速なまん延の恐れがあると政府が判断した場合、緊急事態を宣言する。自治体はあらかじめ定めた計画に沿って対応する。懸念されるのは国民の私権を制限する権限が知事などにあることだ。不要不急の外出の自粛を要請できる。劇場、学校などの使用制限を管理者に要請し、従わなければ指示できる。集会や移動の自由が大きく制限されかねない。土地や建物を借りて臨時の医療施設を設置できるが、所有者の同意がなくても強制使用できる。新型インフルエンザ被害が深刻な場合、国内死亡者は十七万~六十四万人と想定されている。それでも当時、日弁連などから規制は人権が侵害されかねないとの批判が出た。新型コロナウイルスもどんな被害を及ぼすのか不明な点は多い。だが、首相は一斉休校が必要だと判断した根拠を示していない。専門家の意見も聞いていなかった。独断で決める姿勢では「有事」を理由に過剰な制限を求められる不安は消えない。一斉休校の要請に際し文部科学省や厚生労働省との連携が不十分で学校や保育所、雇用などへの支援が後手に回っている。政府はまず政府内の連携を密にし、国民が自主的に判断できるよう正確な情報発信を心掛けるべきだ。現状でもすべきことはある。

<厚労省や保健所が積極的に検査をしなかった理由は・・>
PS(2020年3月5日追加):先進国であり、国民皆保険制度を持つ国である日本で、*12-1のように、医師が必要と判断しても保健所が認めずPCR検査を実施できなかった例が全国で30件以上あり、大半が理由不明であるというのは問題だ。保健所が認めなかった理由は「重症でない(5件)」「濃厚接触者でない(1件)」「理由不明(残り)」だが、民間検査会社が参入すれば対応可能件数は増えるため、このようなことが起こった理由を考える必要がある。ただし、保険適用した後の自費負担分まで公費で補填する必要はないと思う。
 このような中、2020年2月28日、日経新聞が、*12-2の「①中小企業の健康保険料の地域差が拡大している」「②格差を縮める措置が2019年度で終わり、労使折半の保険料の負担は企業で年数百万円、個人で年数万円の差になる」「③医療費がかさみ保険料が高い地域は、医療の効率を高める努力を一段と迫られる」「④保険料率が高い地域ではその分、企業の投資や個人消費に回らなくなり、地域経済にマイナス」「⑤高齢化が進む中で医療費を抑えるには、医療費がかさみやすい生活習慣病の予防などが欠かせない」という記事を掲載した。しかし、①は真実だが、これまでの国家による資本投資額の地域差、それによるサラリーマンと自営業者の比率差、高齢者と生産年齢人口の比率差などがあるため、健康保険料を県単位で決め、②のように格差を縮める措置を2019年度で辞める制度にしたこと自体が間違っているのだ。従って、③の「保険料が高い地域は医療の効率が悪い」と言うのは何も考えていない単純さがある。また、④は日本全国で保険料を同じにすることや(長くは書かないが)治療の効率化・言い値での薬価支払いを見直すことで医療保険を無駄遣いしないように厚労省が努力するのが筋である。さらに、⑤の生活習慣病の予防はもちろん重要だが、どんなに生活習慣病を予防しても生物である以上は必ず死ぬため、高齢になれば何らかの病気をもつ人が増えるのは当然なのだ。
 このような中、*12-3・*12-4のように、厚労省が都内で開いた社会保障審議会の医療保険部会で、「⑥現役世代の重荷になるため、75歳以上の高齢者の医療費の窓口負担を原則2割に引き上げる」ための議論が交わされたそうだ。私は、本当に現役並み所得(その金額が問題)があるのなら3割自己負担にしてもよいと思うが、高額療養費制度で月毎の自己負担に低い上限を設けて低所得になっても医療費を払えることを徹底しなければ、日本は高齢者になると病気をしても検査も治療も受けられないとんでもない国になると考える。さらに、「高齢者が増え続ける中、負担の仕組みを変えない限り現役世代の過度な負担になる」というのは、世代毎の疾病罹患率は違うのに、罹患率の低い若い世代のみを企業の健康保険制度に入れ、罹患率が上がった定年後の世代は国民健康保険に入れ、75歳を過ぎると高齢者医療制度に入れる仕組み自体が保険の仕組みから外れているのだ。つまり、リスクの低い時に保険料を支払った場所でリスクが高くなった後もケアしなければ保険として成立せず、リスクの高い高齢者だけをケアする保険が赤字になるのは当たり前なのである。また、後期高齢者医療制度なら1割負担の人の医療費の半分は公費で賄われるが、3割負担の人の医療費は公費負担がなく現役世代の保険料で賄うため、3割負担の人が増えれば現役世代の負担が増えるなどとみみっちいことを言っているが、3割負担できるほどの所得は健康でなければ稼得できないし、働いている方が健康でもいられるのである。
 このように、厚労省はじめ厚生労働族の議員は、複雑なだけで理論的でない医療保険制度を作っておきながら高齢者を邪魔者扱いしているため、高齢者を狙い撃ちするウイルスなどは非常に都合がよく、検査や治療もしたくないのではないかと推測する次第である。

*12-1:https://digital.asahi.com/articles/DA3S14390352.html (朝日新聞 2020年3月5日) PCR検査、保健所「認めず」30件 大半は理由不明 新型コロナ
 新型コロナウイルスの感染を判定するPCR検査をめぐり、日本医師会は4日の記者会見で、医師が必要と判断しても保健所が認めずに検査を実施できなかった例が全国で30件あまり確認されたと明らかにした。集計途中といい、13日以降に最終結果をまとめる。新型コロナウイルスのPCR検査は現在、感染症法に基づく「行政検査」とされ、保健所が認めないと実施できない。日本医師会によると、保健所が認めなかった理由は「重症ではない」が5件、「濃厚接触者ではない」が1件などで、大半は理由が不明という。厚生労働省は行政検査は続ける一方で、保険を適用して保健所を介さない検査も始める方針。保険適用で民間検査会社の参入が進めば、対応件数が増える可能性がある。厚労省は当初5日に適用する方針だったが調整に時間がかかり、6日に適用すると発表した。

*12-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200228&ng=DGKKZO56123960X20C20A2MM8000 (日経新聞 2020.2.28) 健康保険料 広がる地域差 中小従業員、年数万円 地方経済に影響も
 中小企業が加入する健康保険で、保険料の地域差が拡大している。2020年度は最も高い佐賀県が10.73%で、最も低い新潟県より1.15ポイント高くなる。格差を縮める措置が19年度で終わり、労使折半の保険料の負担は企業で年数百万円、個人では年数万円の差になる。医療費がかさみ保険料が高い地域は、医療の効率を高める努力を一段と迫られる。主に中小企業を対象とする全国健康保険協会(協会けんぽ)が20年度の保険料率を決めた。全国平均の料率は12年度以降、10.0%を保っているが、実際の料率は都道府県ごとに異なる。加入者1人あたりの医療費が多いほど料率が高くなる。最も高い県と低い県の料率をみると、20年度の差は6年前の4倍近くに広がる。協会けんぽ佐賀支部の試算によると、従業員300人で平均の標準報酬月額が30万円の企業の場合、企業の負担は最も料率が低い新潟県と比べて年621万円多い。従業員も同額を負担するため、1人あたりの収入は年2万円超少なくなる。佐賀支部は「企業の存続にかかわる重大事」として、格差が広がりにくい仕組みを求めている。保険料が高いと企業と個人の負担が増す。大和総研の神田慶司氏は「保険料率が高い地域ではその分、企業の投資や個人消費に回らなくなり、地域経済にマイナスだ」と指摘する。高齢化が進む中で医療費を抑えるには、医療費がかさみやすい生活習慣病の予防などが欠かせない。20年度の保険料率が最も低い新潟県は、生活習慣病を予防するための健診の受診率が高い。実施体制を備えた健診機関と協力して事業所に受診を呼びかけている。都道府県ごとに保険料率を定めるのは、地域ごとに医療費の抑制を促すためだ。協会けんぽは09年度に全国一律から都道府県別の料率に切り替え、格差が急に広がらないよう経過措置を講じてきた。それが徐々に縮小されて19年度で終わり、20年度は一段と格差が広がることになった。企業は赤字なら法人税の負担はなくなるが、社会保険料は業績にかかわらず払う。協会けんぽの料率には65歳以上の高齢者医療制度を支えるための「仕送り分」を含む。19年度は1.73%の介護保険料、18.3%の厚生年金保険料を加え、中小企業の社会保険料は平均で計30.03%となった。

*12-3:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200228&ng=DGKKZO56129440X20C20A2EE8000 (日経新聞 2020.2.28) 窓口負担のゆくえ(下) 高齢者「2割」 どこまで 現役世代の重荷を左右
 「原則2割負担にすることが必要ではないか。対象を絞ると効果が限定的になる」。厚生労働省が27日、都内で開いた社会保障審議会(厚労相の諮問機関)の医療保険部会。75歳以上の高齢者の医療費の窓口負担の引き上げを巡って議論が交わされた。現役世代が公的医療で支払う窓口負担は診察でかかった医療費の3割。ただ75歳以上の高齢者は原則として1割で、現役並み所得のある人のみが3割を負担している。政府の全世代型社会保障検討会議が2019年12月にまとめた中間報告では「22年度までに、75歳以上であっても一定所得以上なら負担割合を2割とする」と明記した。これを受け、厚労省では2割負担とする人の所得水準を線引きする議論を進めている。年40兆円を超す医療費の財源は、主に現役世代が払い込む保険料が49.4%、税金などの公費が38.4%だ。患者負担は11.6%。重い病気やけがをした人の負担を抑えるために月ごとの自己負担に上限を設ける高額療養費制度があるため、窓口負担割合が原則3割でも全体でみると低い水準に抑えられている。国際的に見ると、日本の医療の自己負担は比較的軽い。経済協力開発機構(OECD)によると、家計の最終消費支出に占める医療費負担の割合は2.6%でOECD平均(3.3%)を下回っている。一方、医療支出に税や保険料といった公的な財源が占める割合は84%で加盟国で3番目に高い。医療費は高齢になるほど高くなる傾向にある。高齢者が増え続けるなかで負担の仕組みを変えない限り、現役世代が支払う保険料や税金を上げ続けるしかない。実際、大企業の社員が入る健康保険組合の平均保険料率は上昇する一方だ。19年度は9.2%(これを労使折半)で、22年度には9.8%になると見込む。75歳以上の負担割合に新たに2割の区分を設けるのは、こうした現役世代の負担増をやわらげる狙いがある。ただし、対象者が少なければ、現役世代が背負う荷を軽くする効果は小さくなる。高齢者の負担を増やす改革が骨抜きになれば、いずれ必要になるのは「給付の抑制」(厚労省幹部)だ。例えば、外来で医療機関を受診する際に一律で数百円を支払う「ワンコイン負担」。全世代型社会保障検討会議で検討されたものの、導入は見送られた。医療費の負担などを定める健康保険法は02年の改正時に「将来にわたって7割の給付を維持する」とする付則をつけた。ワンコインが追加で生じると自己負担が3割を超え、この付則に反することになる。日本医師会などはこれも論拠に定額負担の導入に強く反対してきた。ただし現役世代に過度な負担を求め続ければ、付則を見直し、3割という窓口負担の「上限」を突破せざるを得ない日がやってくる。「上限3割」という医療保険制度の基盤を少しでも長く維持するためにも、高齢者の負担の見直しを着実に進めていく必要がある。奥田宏二、新井惇太郎が担当しました。

*12-4:https://digital.asahi.com/articles/ASN2W7GWCN2WUTFL00W.html (朝日新聞 2020年2月28日) 75歳以上の医療費どうなる 現役世代負担増の可能性も
 75歳以上が診療所や病院の窓口で払う、医療費の自己負担割合の引き上げをめぐる具体的な議論が27日、始まった。今は原則1割で一定の所得があれば3割だが、政府は昨年末の全世代型社会保障検討会議の中間報告で、2割の区分を新設する方針を表明。その対象とする所得の線引きだけでなく、3割負担の対象を広げるかも焦点になる。75歳以上は後期高齢者医療制度の対象で、約1700万人いる。現役並みの所得があるとして3割負担になるのは、単身世帯なら年収約383万円以上、課税対象となる所得が145万円以上の場合。政府は、この基準の見直しも検討項目に盛り込んだ。少子高齢化で医療費の増加が課題になる中、自己負担を増やすことで、医療制度を支える現役世代の負担を軽くする狙いがある。ところが27日の社会保障審議会部会では、3割負担の人を増やすと、逆に「現役世代の負担増になりかねない」との指摘が出た。後期高齢者医療制度では、1割負担の人の医療費は半分が公費で賄われる一方、3割負担の人の医療費は公費負担がなく、その分は現役世代の保険料で賄っている。そのため3割負担の人が増えれば、公費負担は軽くなるが、現役世代の負担は増える構図だ。この点をどう考え、実際に所得基準を見直すかが論点になる。一方、新設する2割負担の対象規模をめぐっては、「『原則2割』に」(経済団体)、「乱暴ではないか」(日本医師会)などと意見が割れた。政府内でも、財務省などは「半分以上を2割負担に」との主張が根強いが、厚生労働省は「75歳以上は所得が減り、医療費がかかる。多くの人に2割負担を求めるのは非現実的だ」(幹部)と慎重だ。政府は6月の「骨太の方針」までに具体策を決める。

<クルーズ船による観光は高齢化社会のトレンドなのに・・>
PS(2020年3月6日追加): 米大型クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」の姉妹船「グランド・プリンセス」に、新型コロナに感染して死亡した高齢男性が乗っていたため、*13-1のように、カリフォルニア州のニューサム知事の要請を受けて沖合に停泊し、検査キットをヘリコプターで運んで船内で数時間のうちに検査を終えたそうだ。日本も乗船者全員を速やかに検査し、結果に応じた対応をとっていれば、船内隔離は成功していたのにと思う。
 そのような中、*13-2は「①沖縄ツーリストが観光客減による経営悪化を受け、社員の4割以上に当たる最大250人の計画的休業に踏み切った」「②同社の計画的休業は、新型コロナによる感染拡大が企業経営を直撃し、自助努力だけでは立ち行かない深刻な局面に入ったことを意味する」「③厚労省は雇用調整助成金の特例を感染拡大で売り上げが落ちた企業にも幅広く適用し、イベント自粛で従業員を休ませた場合でも適用するので周知を徹底し経済的停滞感を払拭に努めなければならない」としている。しかし、クルーズ船への対応で「さすが日本の医療は信頼できる」という評判をとっておけば、一時的に沈んだとしても日本の観光産業の今後は明るかったのに、ピンチをチャンスに変える方法も考えずにクルーズ船の入港を拒否し、政府助成に頼ろうとする発想では今後の回復もおぼつかないだろう。
 
*13-1:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO56464480W0A300C2000000/ (日経新聞 2020/3/6) 米クルーズ船、沖合で乗客乗員の検査開始 キットを空輸
 新型コロナウイルスに感染して死亡した高齢男性が搭乗していた米大型クルーズ船「グランド・プリンセス」が5日までに、当初の予定を変更して出港地の米サンフランシスコ沖合まで戻った。男性と同じ時期に乗船していた約20人に感染の兆候がある。同船は港に接岸せず、米当局は検査キットをヘリコプターで運び込んで実態調査を始めた。グランド・プリンセスは米カーニバルが運航し、新型コロナの集団感染が発生して多数の乗客を横浜港で隔離した「ダイヤモンド・プリンセス」の姉妹船に当たる。カーニバルなどによると、死亡した男性は2月にグランド・プリンセスに乗船した。同船は2月下旬に乗客の大半をサンフランシスコで入れ替えてハワイに向かったが、途中で男性の感染と死亡が判明。検査のためにメキシコの手前で引き返し、サンフランシスコに向かっていた。4日に記者会見した米カリフォルニア州のニューサム知事によると、乗客・乗員21人に感染の兆候がある。また、米メディアによると、死亡した男性と同時に搭乗していた約60人が現在も乗船している。5日朝、100人未満を対象に米疾病対策センター(CDC)などが検査を始めた。グランド・プリンセスは当初、サンフランシスコ港に直接戻る予定だったが、ニューサム知事などの要請を受けて沖合に停泊して検査を実施する方針に切り替えた。取材に応じたカリフォルニア州公衆衛生局の担当者によると、空輸したキットを使って船内での検査を数時間で終え、キットをサンフランシスコ郊外の同局の拠点に運んで感染の有無を調べる。米国では、ダイヤモンド・プリンセスの集団感染に対する日本政府の対応を批判する声が出ていた。米ワシントン・ポスト(電子版)によると、米上院が5日に開いた公聴会で米国土安全保障省の幹部は日本の隔離が効果的であれば感染拡大を防げたと発言した。だが、グランド・プリンセスも「洋上隔離」が長期に及べば、同様に問題となる可能性がある。

*13-2:https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/542929 (沖縄タイムス社説 2020年3月5日) [新型肺炎 観光直撃]雇用守る有効な対策を
 県内旅行業大手の沖縄ツーリスト(OTS)は、観光客減による経営悪化を受け、社員の4割以上に当たる最大250人の計画的休業に踏み切った。観光分野で沖縄経済を支えてきた同社の計画的休業は、新型コロナウイルスによる感染拡大が企業経営を直撃し、もはや自助努力だけでは立ち行かない深刻な局面に入ったことを示している。厚生労働省が休業手当の一部を補助する雇用調整助成金の対象を拡大したことを受けたもので、休業期間中の給与は満額支給するという。OTS以外にも観光関連産業を中心に、従業員の休業を余儀なくされる企業が相次いでいる。沖縄観光は逆風の真っただ中にある。県によると2月時点で、海外と県内を結ぶ航空路線は前年同月比で73便減り、クルーズ船寄港も56隻が中止になった。日韓関係の悪化や香港の情勢不安によるインバウンド(訪日観光客)減少に続き、新型コロナに伴う中国団体客、さらに国内客の旅行マインドの冷え込みで、出口が見えない状況が続いている。影響は旅行業やホテルなどの宿泊施設にとどまらず、観光バス、飲食業や行楽施設など幅広い業界に広がっている。本土では、中国客のキャンセルを受けた老舗旅館、食品製造業者が破綻に追い込まれるケースが出てきている。県内では倒産は発生していないものの、長期化すれば、持ちこたえられない会社も出てくるのではないか。
■    ■
 体力の弱い中小零細企業や自営業者への支援に猶予はない。厚労省は雇用調整助成金の特例を感染拡大で売り上げが落ちた企業にも幅広く運用。イベントの自粛で従業員を休ませた場合でも適用する。周知を徹底し、経済的停滞感を払拭(ふっしょく)するよう努めなければならない。政府は近く2700億円を超える第2弾となる緊急対応策をまとめる。くらし全般を覆う不安を少しでも解消することが、喫緊の課題だ。自民党がまとめた提言には「コロナ対策特別貸付」の創設、観光業へのクーポンやポイント発行などを通じた支援、休校措置で休業せざるを得なくなった個人事業主や非正規雇用者への支援が盛り込まれている。野党と協力して検討を加速してほしい。感染の抑止と経済対策を両輪として、政府には全力を尽くしてもらいたい。
■    ■
 沖縄観光コンベンションビューローの委員会は、感染拡大が及ぼす今後3カ月の影響について、入域観光客数が前年同期と比べ152万人減って、県内消費額も1024億円減少すると推計している。現在の状況が続けば、2001年の米同時多発テロ後の被害を上回る。雇用悪化への懸念が高まり、長期的な景気後退への分水嶺(れい)に立っている。目前の危機を直視し、政治主導による踏み込んだ対策が必要だ。取り得る施策を総動員し、乗り越えなければならない。

<休職する保護者の支援範囲について>
PS(2020年3月7、8、9、14日追加):*14-1・*14-2に、「①COVID19の拡大による全国一斉休校で、子のために休職する保護者の所得減少を補償するため、正規・非正規を問わず休職した保護者を対象に新助成金制度を創設する」「②従業員を休業させた企業に支払う雇用調整助成金による支援を1月までさかのぼって実施する」「③フリーランス(個人事業主)や自営業者は対象にならないため、怒りの声が上がった」「④仕事を休んだ従業員に給料を全額払った企業を対象に正規、非正規雇用を問わず、1人当たり日額上限8,330円の助成金を払う」「⑤医療態勢を強化する」などが書かれている。
 私は、①②③④について、“多様な働き方を後押しする”として、労働基準法や男女雇用機会均等法による最低保障すらされない非正規やフリーランスを増やすことにはずっと反対してきた。しかし、正規雇用の就職先を探してもそういう仕事が見つからないため仕方なく非正規・フリーランスの仕事を選択したのではなく、自分の都合で非正規・フリーランス・自営業などを選択した人は自己責任が当然であり、自ら所得補償保険等に入っておくべきだったのである。そのため、「国の意思決定が科学的根拠もないのに行われ、損失を被ったので損害賠償すべきだ」と考える人は、裁判で争うのが筋であって、他の人が納めた血税の配分をねだるのはおかしい。また、⑤については、徹底して速やかにやるべきで、遅すぎたくらいだ。
 なお、*14-3のように、少子化対策・生産性向上・地方活性化の三つの課題を中心にこれまでの対応策などを検証して骨太の方針に反映させるそうだが、生産性の向上には人材の質の向上(≒教育+On the job training)が重要な役割を果たすため、“少子化対策”は単に出生数を増やすために金をばら撒けばよいわけではない。また、地方活性化には、産業構造を見据えた効果的な地方への投資が不可欠である。
 *14-4は、新型コロナ対策で公立小中学校が一斉休校となったことに関して、「⑥休校2週間をどう過ごすのか」「⑦保護者からストレスをため込むことを心配する声」「⑧図書館は席に着いての読書や学習などは控えるよう呼び掛けている」「⑨学習塾も休校期間中は在宅学習」「⑩体を動かさないから寝付きが悪い」「⑪休校期間の基本は自宅で過ごすを守ってもらう」と記載しているが、⑥⑦については、前の学年で使った主要科目の教科書を通しで読んで理解し、時間が余ったら次の学年で学習する主要科目の教科書を予習しておくのがよく、私は、春休みにはそうしていた。そうすれば、前の学年で学んだことを理解した上で次の学年に進むことができるからだ。⑧⑨⑪は、自宅の環境によるので、自宅で落ち着いて勉強や読書ができる人はそうすればよいが、自宅では落ち着かない家庭は臨機応変にするしかない。⑩については、頭を使うこともエネルギーを使うため、勉強や読書をすれば眠れる筈だ。ただ、運動も大切なので、家の手伝いをしたり、犬を散歩に連れて行ったり、学校に行って鉄棒の練習をしたり、走ったりすればよく、遊ぶことだけが運動ではないので、子どもを甘やかしすぎるのはむしろよくない。それどころか、勉強もさせずに子どもを甘やかしていると、科学的思考もできず、高齢者への思いやりもない自己中の人間になるため、親の顔が見たいような人間に育てないよう注意すべきだ。
 *14-5のように、高校で文理をコース分けして数Ⅲ(微分・積分)を学ばない人を80%近く作ることや大学で理・工・農・医・薬学などを専攻する理系学生の割合が全体の約26%にすぎないことは、論理的・科学的思考力に欠ける人材を数多く作り、労働生産性低迷の要因になっている。実は、経済学も行動学・微分・積分・統計学を通じてミクロとマクロが繋がっているのだが、ミクロとマクロは別物だと断じる経済学者は多く、誤った経済政策の温床となっている。そのため、「⑫高校段階での文理コース分けを止めて全ての生徒が数Ⅲまで学べようにすること」「⑬(殆どの人が高校を卒業する時代に合わせて)初等~中等教育のカリキュラムを合理化し、数Ⅲまで十分に学べるようにすること」「⑭初等・中等教育段階から理数系学問の面白さを生徒に伝えられるようにすること」は必要不可欠である。
 PCR検査力には問題がなかったのに新型コロナに対する日本の検査数が海外と比較して少ない理由を、日経新聞が2020年3月12日、*14-6のように、「⑮早期発見できても早期治療に繋がらないから」「⑯病気の特徴や広がりなどの感染の全体像をつかむ積極的疫学調査で患者を検査して治療する医療行為ではなかったから」「⑰公衆衛生の発想は感染防止策を探るなど病気から社会全体を守ることで、ロシュの検査キットを使って国内の民間会社が検査をし出すと性能のばらつきで疫学調査に最も大切なデータの収集が難しくなるから」などと記載していた。しかし、新型コロナの治療法の候補も多くなっているため、⑮は誤りだし、疫学調査はサンプル調査で全体を推計することが可能なため、⑯のように国立感染症研究所が積極的疫学調査をしているからといって、国内の民間検査会社がロシュの検査キットを使ってPCR検査をやってはならない理由にはならない。むしろ、多く検査した方が重症化率・死亡率が正確に出る上、治療法も考えやすいのだ。さらに、⑰の「公衆衛生の発想は感染防止策を探るなど病気から社会全体を守ることで、一人一人の患者を治療することではない」というのも、学問の自由から公衆衛生もいろいろな調査をすることができるため、決めつけである。例えば、日本公衆衛生雑誌の2020年2月号には、「要支援高齢者のフレイルと近隣住民ボランティアのソーシャル・キャピタルの関連」「幼児を持つ親の家族のエンパワメント尺度の開発」「高齢者の自立喪失に及ぼす生活習慣病、機能的健康の関連因子の影響:草津町研究」等の論文が掲載されており、治療や予防のために研究をするのであって、研究のために治療を犠牲にするという発想はない。つまり、⑮⑯⑰は、陸軍病院が発祥の国立感染症研究所と厚労省の主張であり、公衆衛生一般の発想ではない。そのため、(たぶん文系の)新聞記者も、分野によって担当を分けて日本公衆衛生雑誌くらいの科学誌は普段から読んでおいて記事を書かなければ、誤った記事を書いて有害無益になるのである。

*14-1:https://www.nishinippon.co.jp/item/n/588268/ (西日本新聞 2020/3/1) 安倍首相、休職保護者の所得補償を表明 新型肺炎対策第2弾策定へ 
 新型コロナウイルスによる肺炎(COVID19)拡大を受け、安倍晋三首相は29日、首相官邸で初めて記者会見した。全国の小中高校、特別支援学校に一斉の臨時休校を要請したことに理解を求め、子どものために休職する保護者の所得減少を補償する新たな助成金制度の創設を表明。従業員を休業させた企業に支払う雇用調整助成金による支援を、特例的に1月までさかのぼって実施するとした。首相は、卒業や進学、進級の節目を控えた時期に一斉休校を要請したのは「断腸の思い」と発言。発表が唐突すぎるとの指摘が出ていることに対し、「十分な説明がなかったのはその通りだが、責任ある立場として判断をしなければならず、時間をかけているいとまはなかった。どうか理解をいただきたい」と述べた。新型肺炎の現状については、専門家の見解を基に「今からの2週間程度、感染拡大を防止するため、あらゆる手を尽くすべきだと判断した」と説明。正規、非正規を問わず休職した保護者を対象にする新助成金制度をはじめ、本年度の予備費を活用した緊急対策の第2弾を今後、10日間程度でまとめる考えを示した。医療態勢の強化では、3月の第1週中にウイルス検査に医療保険を適用するとともに、時間を15分程度に短縮できる新たな簡易検査機器を月内に導入する見通しを明らかにした。新型肺炎にも一定の有効性が認められている新型インフルエンザ治療薬「アビガン」など三つの薬を使用し、治療薬の早期開発につなげていくとした。終息に向け一刻も早い立法措置が必要とし、野党にも協力を依頼したいと話した。今夏の東京五輪・パラリンピックを予定通り行うかを問われ、「アスリートや観客にとって安全、安心な大会となるよう万全の準備を整えていく」と答えた。首相は「道のりは予断を許さない。大変な苦労を国民の皆さまにおかけするが、お一人お一人の協力を深く深くお願いする」と頭を下げた。

*14-2:https://digital.asahi.com/articles/DA3S14390313.html (朝日新聞 2020年3月5日) 休業へ助成なし、フリーランス悲鳴 多様な働き方推進、政権の姿勢と矛盾 新型コロナ
 安倍政権が打ち出した新型コロナウイルスの感染対策に対し、企業に雇われずに働くフリーランス(個人事業主)が怒りの声を上げている。政権は臨時休校に伴って仕事を休んだ保護者の支援策を発表したが、フリーランスは対象にならなかった。「多様な働き方」を推進する政権はフリーランスを保護する姿勢を示してきたにもかかわらず、矛盾する対応に与党内からも見直しを求める声が出ている。校正の仕事を自宅で請け負う埼玉県の女性(41)は頭を抱える。安倍晋三首相が突然表明した「全国一斉休校」の要請で小学5年、2年の男児の世話に追われ、仕事に専念できなくなったからだ。毎月8万円ほどの収入が欠かせないが、「今月は稼げそうにない。4月も引き続き一斉休校なんてことにならないか不安です」。厚生労働省は2日、仕事を休んだ従業員に給料を全額払った企業を対象に正規、非正規雇用を問わず、1人当たり日額上限8330円の助成金を出す新制度を発表した。だが、フリーランスや自営業者が対象外とされたことに、女性は「納得できない」と憤る。「自営やフリーは自己責任なのか。国は多様な働き方を後押しするなら、多様なセーフティーネットも用意するべきだ」と訴える。カメラマンや編集者、俳優などフリーランスの働き手は国内300万人超とされる。だが、労働法制は会社と雇用契約を結んだ働き手を前提とするため、フリーランスはしばしばその網からこぼれ落ちてしまう。加藤勝信厚労相は参院予算委で「フリーランスの仕事は多様で、このスキーム(枠組み)を適用することは非常に難しい」と答弁。安倍首相は「その声をうかがう仕組みを作り、強力な資金繰り支援をはじめ対策を考えたい」と述べた。政府が想定するのは、5千億円の緊急貸し付け・保証枠の活用だが、これは訪日中国人客らの激減などで打撃を受けた観光産業などの支援を念頭に置く。あくまでも返済が必要な「融資」であり、金融機関の審査も受ける。政府の対応に与党内からも不満が出ている。公明党の斉藤鉄夫幹事長は4日、菅義偉官房長官と面会し、「フリーランスは資金繰り(支援)ではとても持たない」などとして対応を求めた。斉藤氏によると、菅氏は「踏み込んでやる」と答えたという。法政大の浜村彰教授(労働法)は「現行制度の枠組みでは、フリーの人たちに救いの手を差し伸べるのは難しい。セーフティーネットを整えないまま、こうした働き方を政策として進めていいのかという問題が提起されている」と指摘した。

*14-3:https://digital.asahi.com/articles/DA3S14390354.html (朝日新聞 2020年3月5日) 少子化対策を検証へ
 内閣府は4日、西村康稔経済再生相が主宰する有識者懇談会「選択する未来2・0」を設置すると発表した。少子化対策と生産性の向上、地方活性化の三つの課題を中心にこれまでの対応策などを検証し、今夏とりまとめる骨太の方針に反映させることを目指す。

*14-4:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/497485 (佐賀新聞 2020.3.8) <新型コロナ>休校2週間どう過ごす ストレスや運動不足、保護者は心配
 新型コロナウイルス対策で佐賀県内の公立小中学校が一斉臨時休校となって5日が過ぎた。放課後児童クラブ(学童保育)を利用しない児童の多くは、家で過ごすことになり、保護者からはストレスをため込むことを心配する声も上がる。学校側は不要な外出は控えるよう求めているが、約2週間に及ぶ「在宅」生活に保護者らは「子どもがかわいそう」「どう過ごせばいいの」と悩ましげだ。県こども未来課によると、県内では通常、小学生の4人に1人が学童保育を利用している。臨時休校中の利用状況は「通常の半分くらい」といい、大半の児童は自宅や親族の家で毎日過ごしていることになる。学童保育の利用が懸念したほど多くない現状に対し、「保護者には臨時休校の目的を理解してもらっている」と同課の担当者。ただ、学童保育の現場の支援員は「家に居ることが飽きた子や友達と会いたい子など、今後は増えるのではないか」とみている。休校中の過ごし方について行政や学校は「大勢が集まる場所への外出は避け、基本的に自宅で過ごす」ことを求めており、学校以外で子どもが多かった場所も軒並み利用を制限している。市町の図書館は本の貸し出しは行うが、席に着いての読書や学習など長時間の滞在は控えるよう呼び掛ける。学習塾も「休校期間中は在宅学習にする」(公文教育研究会)など休講にしている所が多い。6日昼の武雄市の商業施設。県外から祖父母の所に遊びに来ていた2人の小学生の母親(35)は「昨日までほとんど家にいて体を動かさないから寝付きも悪く、『食っちゃ寝』の繰り返しで生活のリズムが崩れている。ストレスがたまっているようだし、土日はどこかに連れて行ってあげたい」と話す。小学4年の姪(めい)を連れた伊万里市の女性(51)は「息抜きをさせようと思ってここまでドライブ。何だか子どもがかわいそうで」と同情した。子どものストレス対策について県教委は「配慮が必要な児童生徒への家庭訪問やスクールカウンセラーの派遣など、各現場で個別に対応する」としている。運動や体力づくりも自宅で行うことを求め、休校期間はあくまでも「基本は自宅で過ごす」を守ってもらう考えだ。国立病院機構嬉野医療センター感染対策室の重松孝誠・感染管理認定看護師は「原則は外出しないこと」とした上でこう述べる。「元々、元気に遊んでいた子が1、2週間も家でじっとしていると、免疫力に影響する基礎体力を低下させる心配もある。大人の観察が行き届き、手洗いなどの対策をしっかり行うのであれば、少人数の友達と外で気分転換程度に遊んでもいいのではないか」

*14-5:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200309&ng=DGKKZO56523740X00C20A3CK8000 (日経新聞 2020.3.9) 高校の文・理コース分け 労働生産性低迷の要因に、関西学院大学長 村田治 数学成績と相関/AI理解に数3必須
 村田治・関西学院大学長は、国際学力テストの数学の成績と国の経済成長率や生産性は正の相関関係にあるのに、数学の成績がトップクラスの日本が当てはまらないのは、高校の2、3年で文系・理系に分かれ、数学の学習をやめる生徒が多いからだと指摘する。昨年12月に発表された経済協力開発機構(OECD)の「生徒の学習到達度調査(PISA2018年)」で、わが国の読解力が参加国・地域の中で15位(OECD加盟国中では11位)に転落したことが大きなニュースになった。読解力のスコアが下がったこと自体は残念であるが、数学や科学のスコアはそれぞれOECD加盟国では1位と2位を維持した。
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 読解力、数学、科学の3つのリテラシーの中で、これからの世界において特に重要と考えられるのが数学リテラシーである。昨年3月に経済産業省が発表した報告書「数理資本主義の時代」において、「第4次産業革命を主導し、さらにその限界すら超えて先に進むために、どうしても欠かすことのできない科学が三つある。それは、第一に数学、第二に数学、そして第三に数学である!」とうたわれている。
また、昨年6月に統合イノベーション戦略推進会議の報告書「AI戦略 2019」が発表されたが、人工知能(AI)や情報科学の理解には微分、線型代数、統計学の数学能力が欠かせないといわれている。数学に絞ると、OECD加盟国中で09年は4位、12年は2位、15年は1位、18年も1位とトップクラスにある。この傾向は03年から変わらず、数学の学力は15年間トップクラスを維持している。実は、国際学力テストの数学スコアと経済成長率等の間には正の相関関係が観察されるとの研究成果がある。1980年代以降、経済成長論の分野では人的資本ストックの水準が研究開発やイノベーションを通じて技術進歩を促し、経済成長率や生産性成長率を上昇させられるかどうかという実証研究が盛んに行われた。多くの研究は人的資本の代理変数として教育の量的指標である初等・中等教育から高等教育に至る就学年数を用いたが、必ずしも確定的な実証結果を見いだせずにいた。これに対して、米国の経済学者ハヌシェックらは、教育の質が重要だとしてPISAなどの国際学力テストのスコアを用いて経済成長率等への影響を分析した。その結果、数学や科学の学力が経済成長率や生産性成長率にプラスの影響を与えることを見いだした。この関係を簡単な図で示したのが左図である。図の横軸はOECD主要加盟国の03年のPISA数学スコアの国別平均値を示しており、縦軸は16~18年の労働生産性成長率の3カ年平均値を表している。03年のPISA数学スコアと16~18年の労働生産性成長率の3カ年平均値の関係を見るのは、PISAは15歳(高校1年生)で受けるため、生徒たちが社会に出て活躍するまでのタイムラグを考慮したためである。図からわかるように、数学スコアと労働生産性成長率の間には正の相関が見いだされる。他方、わが国の労働生産性は18年のデータによるとOECD加盟国中21位、16~18年の労働生産性の平均成長率は約0.56%とOECD加盟国中20位である。
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 このように、わが国の数学の学力はOECD加盟国でトップクラス(03年以降の6回のPISAの数学の平均順位は3位)にありながら、近年の労働生産性、労働生産性成長率は下位に低迷する。これはPISA数学スコアと労働生産性成長率の正の相関関係から、わが国が大きく逸脱していることを意味する。なぜ、わが国はPISAの数学スコアがトップクラスにありながら、労働生産性成長率は下位にあるのだろうか。この謎を解く鍵はPISAの実施年齢にあると考えられる。PISAは高校1年生が対象となる。従って、高校1年生までは、わが国の高校生の数学リテラシーはOECD加盟国でトップクラスであることは間違いない。だが、多くの高校は早ければ2年生、遅くとも3年生になると文系と理系にコースを分ける。13年3月の国立教育政策研究所「中学校・高等学校における理系選択に関する研究最終報告書」によると、高校3年生全体に占める理系コースの比率は約22%である。また、文部科学省の「15年度公立高等学校における教育課程の編成・実施状況調査」によると、数学3を履修している生徒の割合は21.6%にすぎない。さらに19年度「学校基本調査」によると、大学で理学、工学、農学、医・薬学などを専攻する理系学生の割合は全体の約26%である。高校1年生段階まではOECD加盟国でトップクラスの数学リテラシーを誇っていたわが国の高校生は、その後、文系と理系のコース分けによって、80%近くが数学を学ばなくなってしまう。このため、十分な数学リテラシーを伴った人的資本の蓄積が進まず、わが国経済において技術進歩やイノベーションが起こりにくく労働生産性上昇率が鈍化していると推察される。一刻も早く、高校段階での理系と文系のコース別編成を止め、全ての生徒が数学3まで学べようにすべきだと考える。さらに、AIの理解に必要な微分が数学3の範囲であることを考慮すると、現在の高校段階での文理の区別を止めることは喫緊の課題である。そのためには、初等・中等教育段階から数学それ自体の面白さを生徒に伝える工夫も必要となる。

*14-6:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200312&ng=DGKKZO56692180S0A310C2EA1000 (日経新聞 2020.3.12) 「疫学調査」優先の誤算 、新型コロナ検査数、日本少なく 不安と不満生む
 新型コロナウイルスに対する日本の検査数はなぜ海外に比べて少ないのだろう。感染の有無をみるPCRの検査力に問題があったわけではない。厚生労働省が当初、医療行為としてではなく、感染拡大を抑える「疫学調査」と位置づけたからだ。ただ、思うように封じ込めはできず、世界でも感染が拡大。専門家と一般の人々の認識にずれが生じ「過少検査」への不安と不満が生まれた。がんにしろ生活習慣病にしろ、現代医療のイロハは「早期発見」だ。早い段階で診断がつけば治療の選択肢も増え、症状が悪くなったり死に至ったりするリスクは減る。
●公衆衛生の発想
 今回の新型コロナウイルスによる肺炎のように治療薬のない病気だと話は違ってくる。早期発見できても必ずしも「早期治療」にはつながらない。医療としてみれば検査をする意味は薄れる。PCR検査を担ってきた国立感染症研究所は3月1日、脇田隆字所長名で「市民の皆様へ」と題した文書をホームページ上に公表した。「検査数を抑えることで感染者数を少なくみせかけようとしている」という批判に対し、事実誤認だと反論した。この文書に「積極的疫学調査」という医学用語が何度も登場する。厚労省や感染研が検査を慎重に進めた理由を知るキーワードだ。疫学調査とは新しい感染症が発生した際、感染者や濃厚接触者、疑いがある人の健康状態を調べ、病気の特徴や広がりといった感染の全体像をつかむ調査だ。患者一人一人を検査して治療する医療行為ではなく、感染防止策を探るなど病気から社会全体を守る公衆衛生の発想に基づく。だからこそ感染研は必要な試薬や装置を組み合わせて自前で確立した検査手法にこだわった。中国・武漢をはじめ世界に供給していた製薬世界大手ロシュの検査キットを使って国内の民間会社が検査をし出すと、性能のばらつきで疫学調査にとって最も大切なデータの収集が難しくなる。これが検査能力の拡大を阻むボトルネックとなった。「検査漬け」という言葉があるように、日本では誰でも病気になったら医師の判断で血液検査や画像検査を受けられる。国民皆保険なので自己負担も少ない。これほど臨床検査のハードルが低い「検査大国」は珍しい。ウイルスの国内侵入を防ぐ水際対策は不発に終わり、ヒトからヒトへの感染例が続く。日に日に増す不安から、検査慣れした日本社会では、なぜ新型コロナウイルスへのPCR検査が受けられないのかという疑問が、やがて不信、不満へと変わっていった。
●早く適正検査に
 韓国がドライブスルー方式を活用し積極的にPCR検査を実施する様子が伝わると、検査の目的をきちんと伝えてこなかった厚労省や感染研に対し「感染隠し」の疑念が生まれた。政治介入もあったのだろう。厚労省は2月半ば、臨床検査として保険適用にする方向にかじを切らざるを得なくなった。ロシュが供給する試薬は臨床試験を経ていない研究用だが、感染研の手法と同レベルの性能であると「お墨付き」を与えた。3月6日から保険適用が始まった。新型コロナウイルスに対するPCR検査は医療行為の一環の臨床検査となった。しかし当面はかかりつけ医などが血液検査のように民間会社に直接委託するのではなく、全国約860カ所の「帰国者・接触者外来」の医師が検査の必要性を判断しなければならない。新型コロナウイルスに感染しても8割は軽症のまま回復する。肺炎の症状が確認されない段階で多くの人が検査を求めると、今の日本の医療体制では現場が混乱し重症患者への治療に支障をきたすことにもなりかねないとの懸念が医療関係者にはある。ただ早期発見の検査が阻まれる現状のままでは、社会の不安や不満はなかなか消えない。検査が広がり陽性者が早く見つかれば感染拡大を抑える効果も期待できる。未知の感染症に対する検査のあり方に正解はないが、早く過少検査を「適正検査」にしなければならない。

<社会保障のうちの介護保険制度とその財源>
PS(2020年3月9、10日追加):*15-1は、「①市区町村の99%が全国共通の要介護度判定を2次審査で変更し、同じ状態でも利用できるサービスが地域で異なる」「②自治体は独自の判断理由を住民に周知しなければ公平性が保てない」「③要介護度を上げる自治体が多く、財政負担が増す方向」「④国の指針は介護の手間を基準とし、病気の重さや同居人の有無を理由に変更はできないとしているが、家族介護が見込めると要介護度を下げる自治体もある」としている。
 しかし、*15-2のように、現在の介護保険制度は、65歳以上の第1号被保険者の保険料は所得に応じて市区町村が決め、その保険料は市区町村ごとに異なるため、要介護度判定に市区町村の考えが入るのは当然だ。ただし、40~64歳の第2号被保険者は加入している医療保険の算定方法に基づいて保険料が決まり、16の特定疾病が原因で要支援・要介護となった人にのみ支給される。40歳未満は保険料を納めない代わりに介護も受けられず、40~64歳は保険料は納めるが特定疾病以外では介護を受けられない。そして、65歳以上は所得の割に高い保険料を市区町村に収めながら、介護を受けるとつべこべ言われる。私は、介護保険制度は、複雑なだけで公平・公正でない制度を改め、年齢にかかわらず所得のある人はすべて所得に応じて保険料を支払い、介護が必要な時には遠慮なく介護を受けられる制度にすべきだと思う。そうすれば、出産、病児、障害児のケアなど40歳未満で介護が必要になった人も利用でき、多くの問題が解決する。
 にもかかわらず、「介護保険料の負担は重い」などと自己中なことを言う人も多いため、国民負担を増やすことばかり考えるのではなく、*15-3の世界需要の数百年分も存在するレアアースやメタンハイドレートなどの国有鉱物資源を速やかに採掘し、*15-4のような地熱発電所の積極的開発でエネルギー変換を行い、国は税収以外の収入を獲得して国民負担を減らすのがよいと思う。そのため、エネルギーは電力を主とし、*15-5のように、発送電分離を徹底して再エネ発電による電力を集めやすいシステムを早急に作る必要がある。ただし、全国で唯一の公的電力網を作れば、今度はそれが独占や既得権となって進歩が阻害されるため、地方自治体・鉄道会社・ガス会社・通信会社・電力会社などが地下等に電線を整備し、電力や送電に自由競争を導入してエネルギーコストを下げるのが、日本にとって必要不可欠なことである。
 昨年10~12月期の国内総生産(GDP)が実質で前期より1.8%(年換算7.1%)減ったのは、*15-6のように、新型コロナウイルスとは全く関係がなく、昨年10月の消費増税で個人消費が減ったからにすぎない。台風被害の影響を書くメディアも多いが、台風被害は有無を言わせず家屋や家電の消費を促すため、これを日本のGDPに取り込めないのは製造業が中国はじめ外国へ移転してしまっているという情けない結果だ。そして、製造業が外国に移転してしまった理由は、人件費の高騰・古い規制や習慣による支配・エネルギーの高止まり等々、産業政策の失敗の結果である。また、そういう将来性の薄い国がいくら金融緩和しても、企業が国内で設備投資を行う理由に乏しいため、国内投資は増えない。そのような中で、天災のように見える新型コロナウイルスは、メディアからそれらの本質的議論を隠した功労者になっている。


                  *15-2より
(図の説明:左と中央の図のように、介護保険の財源は、被保険者が支払った介護保険料50%、国25%、都道府県12.5%、市町村12.5%となっている。そして、右図のように、年金生活者の多い65歳以上の1号被保険者が財源の23%を支払っており、40歳未満は全く支払っていない。そのため、40歳未満も保険料を支払って介護保険に加入させるとともに、社会保障には国民負担だけでなく国有財産から得る収入を多く投入して負担を軽くすべきだ)

*15-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200307&ng=DGKKZO56519820W0A300C2MM8000 (日経新聞 2020.3.7) 要介護度 ばらつく認定、判定、99%の自治体が変更 独自の裁量 住民に見えず
「全国一律」という介護保険制度の前提が崩れている。サービスを受けたい人の要介護度の認定(総合2面きょうのことば)を巡り、市区町村の99%が全国共通の判定を2次審査で変更。申請件数に占める変更比率は自治体でゼロから41%までばらつきがあることがわかった。同じ身体状態でも利用できるサービスが地域で異なることになる。自治体は独自の判断理由を住民に周知しないと、公平性が保てなくなる。要介護度は介助が必要な度合いに応じ、軽い順に要支援1~2、要介護1~5の7段階。立ち上がるのに支えが要る程度なら要支援1、寝たきりの場合は要介護5に相当する。生活上の自律性や認知機能を問う全国共通の調査票に基づきコンピューターで判定。その後、個別事情を考慮し、医師などで構成する介護認定審査会が決める。審査会で議論する材料は自治体で異なる。要介護度を上げれば、利用できるサービス量や種類は増える。要介護5の場合、介護保険からの支給限度額は月約36万円で要介護1は約17万円。むやみに上げると介護需要が膨らみ、保険財政の負担が増す。不必要に下げれば適切なサービスを利用できない懸念が出る。日本経済新聞は厚生労働省に情報公開請求し、2次審査で判断を変えた比率の自治体別データを入手した。最新の2018年10~11月で100件以上を審査した904市区町村が対象だ。
●指針から逸脱も
892市区町村が要介護度を変えていた。変更率は平均9.7%。変更率が5%未満の自治体数は3割、10%以上は4割だった。77市区町で20%を超し、ばらつきが大きい。ゼロは12市町。多くの自治体で上げる事例と下げる事例が混在しているが、相対的に上げている自治体が多く、財政負担が増す方向に働いている。国の指針は介護の手間を基準とし、病気の重さや同居人の有無を理由に変更はできないとしている。だが、変更率が高い自治体では指針に合わない事例があった。変更率が35%と3番目に高い東京都国立市は大半が要介護度を引き上げていた。末期がん患者は一律に要介護5とする独自運用があるからだ。高齢者支援課は「容体が急変しても対応できるようにするためだ」という。1次審査より要介護度を引き上げる割合が30%超の自治体は埼玉県三郷市や三重県四日市市など8つ。千葉県銚子市も末期がんは要介護2以上にする慣習があるという。21%で要介護度を下げた埼玉県和光市の審査会委員は「家族介護が見込めると下げる」という。宮崎市や兵庫県西宮市も同居人の有無が影響している可能性があるという。変更率が41%で、下げた割合が33%弱の福岡県みやこ町は「調査票の特記事項にある事情を議論した結果」と述べた。日本介護支援専門員協会の浜田和則副会長は「自治体が独自基準を設けてもおかしくない」と指摘する。認定は市区町村の自治事務だからだ。
●住む場所が左右
問題は独自基準が明文化されておらず、審査も非公開である点だ。19年に長野市から埼玉県内に移った80代女性は要支援1から要介護1に上がった。親族は「住む場所でこれほど違うのか」と驚いた。NPO法人「となりのかいご」の川内潤代表理事は「独自基準があるなら住民に丁寧に説明すべきだ」と訴える。国は18年度、要介護度を維持・改善した自治体に交付金を手厚く配る制度を設けた。ニッセイ基礎研究所の三原岳主任研究員は「自治体の方針で変わる要介護度を指標にすると、交付金狙いで要介護度を下げようとする地域が出かねない」と語る。

*15-2:https://kaigo.homes.co.jp/manual/insurance/decision/ (LIFULLより抜粋) 介護保険の仕組み、保険料はどうやって決まるのか
(1)介護保険の仕組み
 介護保険とは、介護を必要とする人が少ない負担で介護サービスを受けられるように、社会全体で支えることを目的とした保険制度です。
*介護保険の対象となる人
 40歳以上の健康保険加入者全員が必須で加入(被保険者になる)します。40歳になった月(実際は、40歳の誕生日の前日)から保険料の支払い義務が発生し、それ以降は生涯に渡り保険料を支払うことになります。もし介護サービスが必要な要支援や要介護の認定を受けた場合、被保険者は収入に応じた自己負担割合で、その介護度に応じた介護サービスを受けることができます。ただし、介護保険サービスを利用する人になっても、介護保険料の支払いは続きます。要介護になったからといって、保険料支払いが免除されるというものではありません。介護保険サービスの利用料は、利用する本人は1~3割負担となっており、残りの費用は自治体が支払う形となっています。では、その財源はどのように調達しているのでしょうか。
(2)被保険者には2種類の区分がある
 介護保険の加入者は65歳以上の第1号被保険者と、40歳から64歳の第2号被保険者に区分されています。
 区分             第1号被保険者      第2号号被保険者
①年齢             65歳以上の人      40歳以上65歳未満の
                           公的医療保険加入者 
②介護保険サービスを      要支援・要介護の    16の特定疾病※が原因で
  利用できる人        認定を受けた人    要支援・要介護となった人
③保険料            所得に応じて市区    加入している医療保険の 
                町村が決める     算定方法に基づいて決まる                   
 第1号被保険者の場合、要介護状態になった理由が何であれ、介護保険サービスを利用できます。それに対して第2号被保険者がサービスを利用できるのは、厚生労働省が定める16種類の特定疾病が要介護状態の原因となった場合に限られます。そのため、たとえば事故などで要介護状態になったとしても、第2号被保険者は介護保険サービスを利用することはできないのです。
※16の特定疾病とは
・末期がん、関節リウマチ、筋萎縮性側索硬化症、後縦靭帯骨化症、骨折を伴う骨粗鬆症、初老期における認知症、パーキンソン病関連疾患、脊髄小脳変性症、脊柱管狭窄症、早老症、多系統萎縮症、糖尿病性神経障害・糖尿病性腎症および糖尿病性網膜症、脳血管疾患、閉塞性動脈硬化症、慢性閉塞性肺疾患、両側の膝関節または股関節に著しい変形を伴う変形性関節症
(3)介護保険料は健康保険料とともに給与天引き
 現役世代である第2号被保険者と65歳以上の第1号被保険者では、介護保険料の支払い方法も保険料の計算法も違います。40歳から64歳までのいわゆる現役世代、第2号被保険者の場合は、給料をもらっている人は、健康保険料と一緒に給料から天引きされます。保険料は、健康保険料・厚生年金保険料と同じように、標準報酬月額を使って計算します。
*標準報酬月額とは
毎年4月~6月の給与額を平均し、その平均した額を、標準報酬月額表の等級(報酬額の区分)にあてはめて決めるものです。その等級によって「健康保険料」「介護保険料」「厚生年金保険料」が決まるというわけです。保険料は、その年の9月から翌年の8月まで基本同じ金額を使用します。たとえば、東京都で4月~6月の給与の平均額が40万円だった場合、協会けんぽを例にとると、等級27(厚生年金の等級は24)の39万5,000円~42万5,000円の間に入ります。この範囲にあてはまる人の標準報酬月額は41万円となり、健康保険料と介護保険料をあわせた額は2万3,841.5円と決まります。この標準報酬月額表は、都道府県で異なり、また各健康保険組合でも異なるため、健康保険料・介護保険料・厚生年金の額は、自分がどこに所属しているかで変わります。なお介護保険料は、健康保険料・厚生年金保険料と同様に、原則、被保険者と事業主が同額ずつ負担します。
*自営業の場合は国民健康保険に上乗せして納付
自営業の場合、国民健康保険に加入をしていますので、国民健康保険料に上乗せして納付します。40歳になる年に、介護保険料の上乗せがない金額で先に国民健康保険料の納付金額の通知が届き、介護保険料については別途納付書が届きます。そのため、最初の年は納付を忘れないよう覚えておきましょう。なお、介護保険料の金額は自治体によって多少異なります。
(4)第1号被保険者の保険料は自治体ごとに異なる
 65歳以上である第1号被保険者の介護保険料は、自治体ごとに決められています。各自治体は、3年ごとに介護サービスに必要な給付額の見込みを立て、予算を組みます。その予算のうち、国が25%、都道府県と市町村が12.5%ずつ。そして27%が第2号被保険者の保険料、残りの23%が第1号被保険者の納める保険料となっています。
*介護保険料の基準額
 全員一律で同じ保険料にしてしまうと、収入によっては負担が大きくなってしまいます。そのため、所得基準を段階に分けて、それぞれの保険料率を掛け合わせて金額を決める定額保険料となっています。この所得段階は国の指針だと0.45倍~1.7倍までの9段階ですが、自治体によってはもっと細かい区分を使用しているところもあります。例えば東京都新宿区の場合では、段階区分は16段階となり、0.4倍~3.7倍まで料率に差をつけて公平性を保っています(※2019年4月1日時点)。第1号被保険者になると、保険料は基本的には年金から天引きされる「特別徴収」となり、年金の支払いにあわせて2カ月ごとに2カ月分が差し引かれます。ただし、年金の額が年額18万円に満たない場合は、「普通徴収」となり、納入書で支払うことになっています。また、第2号被保険者に扶養されているサラリーマンの妻などは、健康保険料を自分で納めていませんので、64歳までは扶養家族として介護保険料も支払っていません。ただし、65歳になり、第1号被保険者に変わるタイミングで、年金から介護保険料が天引きされるようになります。介護保険料は、居住している自治体によって金額が変わります。第2号被保険者の場合、入っている健康保険によっても金額は変わります。また、自分が第1号被保険者なのか、第2号被保険者なのかによって、金額の計算方法も納入の仕方も異なるのです。40歳になるとき、そして65歳になるときは注意が必要です。
監修者:森 裕司 株式会社HOPE代表、介護支援専門員、社会福祉士、精神保健福祉士、障がい支援専門員、医療ソーシャルワーカーを11年間経験後、ケアマネジャーとして相談援助をする傍ら、医療機関でのソーシャルワーカーの教育、医療・介護関連の執筆・監修者としても活動。企業の医療・介護系アドバイザーとしても活躍中。

*15-3:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO29216170Q8A410C1EA2000/ (日経新聞 2018/4/10)南鳥島のレアアース、世界需要の数百年分、早大・東大などが分析
 早稲田大学の高谷雄太郎講師と東京大学の加藤泰浩教授らの研究チームは、日本の最東端にある南鳥島(東京都)周辺の海底下にあるレアアース(希土類)の資源量が世界の消費量の数百年分に相当する1600万トン超に達することを明らかにした。詳細な資源量を明らかにしたのは初めて。レアアースを効率よく回収する技術も確立した。政府や民間企業と協力して採掘を検討する。レアアースはハイブリッド車や電気自動車、風力発電機などの強力な磁石、発光ダイオード(LED)の蛍光材料といった多くの最先端技術に使われる。だが、中国への依存度が高いのが問題視されてきた。日本の排他的経済水域(EEZ)に眠る資源を取り出すことができれば資源小国から脱却できる可能性がある。研究チームは、南鳥島の南方にある約2500平方キロメートルの海域で海底のサンプルを25カ所で採集し、レアアースの濃度を分析した。その結果、ハイブリッド車などの強力な磁石に使うジスプロシウムは世界需要の730年分、レーザーなどに使うイットリウムは780年分に相当した。研究チームはまたレアアースを効率的に回収する技術も確立した。レアアースを高い濃度で含む生物の歯や骨を構成するリン酸カルシウムに着目。遠心力を使って分離したところ、濃度は2.6倍に高められた。これは中国の陸上にある鉱床の20倍に相当する濃度だ。東大の加藤教授は「経済性が大幅に向上したことで、レアアースの資源開発の実現が視野に入ってきた」と強調する。レアアースを巡っては、日本は大部分を中国からの輸入に依存する。中国は全世界の生産量の約9割を握るため、価格の高騰や供給が不安定になる事態が発生してきた。一方、東大の加藤教授らは2012年に南鳥島周辺でレアアースを大量に含む可能性が高い泥を発見。14年には三井海洋開発、トヨタ自動車などと「レアアース泥開発推進コンソーシアム」を設立し、回収技術の開発に取り組んできた。研究成果は英科学誌サイエンティフィック・リポーツ(電子版)に10日掲載された。

*15-4:https://www.sankei.com/economy/news/150303/ecn1503030022-n1.html (産経新聞 2015.3.3) 日本も見習うべきか 「資源小国」から「地熱大国」へ変貌したアイスランド いまや電力輸出も視野
 世界最北の島国アイスランドは、地熱発電所の積極的な開発を続け、エネルギーを化石燃料の輸入に頼る「資源小国」からの脱却を果たした。いまや自国の電力需要は地熱などの再生可能エネルギーだけで賄うことができ、近年は電力の輸出にも関心を寄せる。日本も豊富な地熱資源量を持つとされるが、法規制などが障壁となり、アイスランドのような“地熱大国”への道のりは遠い。
               ◇
 首都レイキャビクから東に約20キロ。広大な火山の裾野にある同国最大のヘトリスヘイジ地熱発電所からは、猛烈な勢いで水蒸気がわき上がっていた。同発電所は約30万キロワットの発電と、約13万キロワット相当の熱水供給能力を持つ。同発電所は2006年に、レイキャビク・エナジー社が運転を開始した。同社の担当者は、「地熱はアイスランドの石油だ」とほほえんだ。発電に使用しているタービンは日本製だという。
◆かつては輸入頼み
 人口約32万人のアイスランドは、かつて典型的な資源小国だった。1973年の石油危機を機に、地熱の開発を本格化したのは「国内に石炭や石油などの天然資源がなかった」(グンロイグソン首相)ためだ。

*15-5:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200309&ng=DGKKZO56477670W0A300C2KE8000 (日経新聞 2020.3.9) 発送電分離の課題(下)系統運用、公的機関へ移行を、伊藤公一朗・シカゴ大学准教授(1982年生まれ。カリフォルニア大バークレー校博士。専門はエネルギー経済学)
<ポイント>
○法的分離では公平な送配電線利用は困難
○地域ごとに送配電会社設けるのは非効率
○災害や再生エネ見据えた全国系統運用を
 欧米諸国は約20年前に発送電分離を終えており、各国の経験やデータ分析結果が蓄積されている。その知見を基に日本政府の計画を検証すると、重大な懸念材料とさらなる改革が必要である点がみえてくる。本稿では、電力網のような公共的インフラ(社会基盤)を運用するうえで重要となる「独立性」と「網羅性」の2つのキーワードを柱に、論点整理と提言をしたい。現在の日本では電柱や電線といった送配電網の系統運用は、大手電力会社が地域独占的に手掛けている。例えばある時間帯に誰に送電線を使わせるか、どんな使用料金を課すか、どこに新規の送電線を引くかという決定は地域独占企業が担っている。だが大手電力会社は発電部門や小売部門も抱えている。そのため自社の利益追求の手段として、新規参入の発電事業者や小売業者が送配電網を利用することを制限したり、送配電網の利用料金を高く設定したりする懸念が生じる。この懸念を払拭するには系統運用の独立性を確保する必要がある。現行の政府案は法的分離と呼ばれる方式だ。大手電力会社は、自社の送配電部門を子会社化し、その子会社は持ち株会社の傘下に置かれる。そのうえで政府は監視と規制により、親会社と子会社の独立性を目指すという。しかし経済理論、各国の経験および学術的データ分析結果に鑑みると、この方法で独立性を確保できる可能性は非常に低い。第1に営利企業である大手電力会社は持ち株会社一体としての利益を追求するため、親会社と子会社のつながりが消える保証はない。第2に政府の監視と規制には「情報の非対称性」の問題がつきまとう。送配電網の運用では運用者しか知り得ない緻密な情報が付随する。また営利企業は情報を政府に示さないインセンティブ(誘因)がある。情報を直接持たない政府が適切な監視・規制をするのは難しく、監視精度を高めようとするほど莫大な税金が投じられることになる。以上の理由から欧米のほぼ全地域で法的分離は採用されていない。世界的な主流は、公的な第三者組織である独立系統運用機関(ISO=Independent System Operator)を設立し、送配電網の系統運用を完全移行する方式だ。大手電力会社には送配電網を運用する組織はなくなり、系統運用は公的組織に任せられる。同方式のもう一つの特徴は、送配電網の所有権は大手電力会社に残したままでもよい点だ。英国は所有分離という最も強い発送電分離を実施し、大手電力会社から送配電網の所有権を奪った。しかし所有分離は財産権を巡る訴訟を生む可能性があり、大手電力会社の財務的ダメージも大きい。そのため送配電網の所有権は大手電力会社に残し、運用だけを独立系統運用機関へ移行する方法が最善との見解が有力になっている。電力網運用でもう一つの重要な要素は網羅性だ。政府案では、法的分離後も10社の送配電会社が各地域の大手電力会社の子会社として存続する。だが国際的には、電力網のような公共的ネットワークを運用する際は狭い地域ごとでなく、広域的運用が望ましいとの見解が一般的だ。実際に欧州、北米、南米では電力網の系統運用統合が進んでいる。日本でも電力網の系統運用を全国的に一括する便益は大きい。第1に東日本大震災や北海道地震などの災害時、電力が過剰な地域から不足地域へスムーズに送電できる。第2に全国的にみて低コストの発電所から優先的に発電させる「広域的メリットオーダー」という方法を採ることで、電力料金を低下させられる。第3に再生可能エネルギー拡大に向けても全国的な電力網の運用が鍵になる。再生エネの弱点は気候条件に左右される発電量の不安定性だ。だが近年のデータ分析結果によれば、地域間で多様な日本の気候条件は発電量の不安定性を是正できる可能性を秘めている。太平洋側で風力が弱いとか、太陽が出ていない場合でも、日本海側では風が吹き太陽が出ている場合がある。そのとき、電力網が広域的に運用されていれば、ある地域で落ちた発電量を別地域からの電力で調整できる。国土が広くない日本で10社もの送配電会社を残すことは合理的ではない。以上のような独立性と網羅性の確保を考えた場合、日本でも公的な独立系統運用機関を設立し、全国的な送配電網を一括して運用することが望ましい。有識者や政府内にもこの認識はあり、電力システム改革の第1段階として電力広域的運営推進機関が2015年に設立された。今のところ同機関の業務の中心は独立系統運用機関が手掛ける業務の一部に限られる。政府はできる限り早い段階で公的な独立系統運用機関を設立し、全国的な送配電網の系統運用を実施すべきだ。政府案では法的分離を進める根拠として、法的分離を採用したフランスの事例を挙げる。だがフランスは実質的国有企業である1社が全国の電力供給網を担っている。従って法的分離で送配電部門が子会社化した際には、国有の1企業が全国の送電網を運用することになり、実質的には公的な独立系統運用機関が設立されたのと近い形態だった。また電力システム改革に反対する意見として、発送電分離を実施すると安定供給が失われる、送電設備への投資が低下する、発電費用が上昇するという論考がある。だがこの主張を裏付ける科学的エビデンス(証拠)は存在しない。拙著「データ分析の力」で解説しているように、これらの主張は相関関係を因果関係と誤って解釈しているものが多く注意が必要だ。例えば発送電分離をした地域としていない地域を単純比較した分析があるが、気候、発電所の形態、燃料費、環境規制など地域間の様々な違いが考慮されておらず、因果関係を示していない。では発送電分離や電力システム改革の効果について因果関係を検証したエビデンスは存在するのか。この20年間、経済学の実証研究と呼ばれる分野では様々なデータ分析を駆使して研究が進んだ。例えばナンシー・ローズ米マサチューセッツ工科大(MIT)教授らの研究グループは、発送電分離を進めたうえで発電部門の総括原価方式を廃止し、卸売市場取引での自由競争を導入すると、発電所の生産効率性が向上し、発電費用が下がることを示した。さらにスティーブ・シカラ米シカゴ大助教授は全米の発電所の毎時発電データと費用データを分析し、発送電分離後の卸売市場を通じた電力取引は高コストの発電所の生産量を減らし、低コストの発電所の生産量を増やすため、社会全体の発電費用も下がることを示した。いずれも国際的学術誌「アメリカン・エコノミック・レビュー」に発表されたもので、慎重に因果関係を検証した分析結果だ。電力システム改革は大きな利害が絡む難しい政治課題だ。だからこそ諸外国の経験や科学的エビデンスを基に政策決定をして、国民全体の便益を主眼とした改革を追求していくべきだ。

*15-6:https://digital.asahi.com/articles/DA3S14396623.html (朝日新聞 2020年3月10日) GDP年7.1%減
 内閣府が9日発表した昨年10~12月期の国内総生産(GDP)の2次速報は、実質(季節調整値)で前期(7~9月期)より1・8%減った。年率換算では7・1%減。1次速報(年率6・3%減)から下方修正された。マイナス成長は5四半期ぶり。昨年10月の消費増税に加え、台風被害などの影響もあり、個人消費と企業の設備投資が大きく落ち込んだ。減少幅は、前回の増税があった14年4~6月期(年率7・4%減)に近い水準となった。下方修正の主因は設備投資の下ぶれで、1次速報の前期比3・7%減から4・6%減に下方修正された。個人消費は2・9%減から2・8%減に上方修正された。今年1~3月期は新型コロナウイルスの悪影響が強く出るとみられ、国内景気はさらに厳しい局面に入っている。

<東日本大震災からの復興検証←無駄遣いはなかったか>
PS(2020年3月10、12、13日追加):*16-1のように、政府は3月10日、東日本大震災とフクイチ事故から9年となるのを前に、復興推進会議と原子力災害対策本部の合同会合を首相官邸で開き、安倍首相が「必要な復興事業を確実に実施するための財源を確保し、被災地が安心して復興に取り組めるようにする」と述べられたそうだが、残っている事業とその予算はいくらだろうか?このような災害は、実際にモノがなくなったり、住めなくなったりしているため、その損害を回復することが重要であって、心のケア(具体的に何?)の問題ではないと、私は考える。また、原発事故については、激烈な毒物を放出したため、廃炉も汚染水対策も困難で、被災者に寄り添うとすれば、「①フレコンバッグは積みっぱなし」「②汚染水を海に放出」「③避難指示を解除したから、住民を呼び戻す」などという選択肢はない。納税者は復興税を黙って支払ってきたので、これまでの復興税の使い方とその効果を開示してもらいたいと思う。
 また、前原子力規制委員長の田中俊一氏は、*16-2のように、現在は福島県飯舘村で暮らし、「原発はいずれ消滅します」と言っておられる。ただ、住民が戻らない理由を「避難の長期化で新たな仕事をもった」「子どもの学校の関係」「診療所の問題」「福島県産食品への風評被害」と考えておられるのは、(本当は危険な場所には住みたくないからであるため)甘い。また、「食品規格の国際基準は、一般食品の放射性セシウムの基準値を1キロあたり1000ベクレルと定めているが、日本は原発事故後、より厳しい同100ベクレルとしている」としておられるのは嘘である。何故なら、*16-3のように、食品の国際規格を作成しているコーデックス委員会の指標は年間1mSVを超えないよう設定されており、日本の食品中の放射性物質の新基準は、食品からの被曝上限を暫定の年間5mSVから年間1mSVに引き下げたものだからだ。つまり、田中氏は、国民の健康に無関心なのだ。
 さらに、*16-4のように、東日本大震災の津波で被災した土地に総額4,600億円投じてかさ上げされた土地区画整理事業は、宮城など被災3県で造成された宅地の約35%にあたる約238haが未利用になっているそうだが、岩手県陸前高田市の場合は30mの津波が来たのに10mしかかさ上げしていないため55%の未利用はむしろ少ないくらいなのである。そのほか、宮城県気仙沼市、福島県いわき市などの未利用地も単に時間がかかっただけが理由ではないと思われるため、正確な原因分析が必要だ。
 原発は、事故を起こせば猛毒の放射性物質をとてつもなく広い環境にばら撒き、人間が近づいてそれを処理することはできず、事故の可能性を0にすることなど不可能であるため、私がこのブログで記載してきたように、脱原発して再エネに転換するのが、日本にとってあらゆる面で最善の策なのである。しかし、*16-5のように、全原発の即時運転停止を記した「原発ゼロ法案」や「分散型エネルギー利用促進法案」は、(野党が提出したためか)一度も審議されていない。もちろん、原発立地地域は、1974年に制定された電源三法交付金制度によって原発から利益を得ているが、それを負担しているのは国民である上、危険を伴う原発立地地域は人口が全国平均より早く減少し、高齢化率も全国平均より高い。従って、他の産業による地域再生を盛り込んだ「原発ゼロ法案」は、日本全体のみならず原発立地地域にとってもプラスなのであり、原発にすがりついて現状維持を図ることこそ、最も安易で政治の責任を果たさないやり方なのだ。
 原発事故で猛毒の放射性物質により汚染された環境には内水面や海も含み、*16-6のように、韓国はじめ各国による水産物の禁輸や規制措置が行われている。韓国の禁輸措置については、日本はWTOに提訴して2019年に敗訴したが、その理由は、安全性の問題を自由貿易とすり替えたことである。しかし、この提訴によって、日本食品の安全性は日本政府によって担保されないことを世界にアピールしたことになり、日本国民も、「協力」や「付き合い」でリスクのある食品を食べさせられては困るのである。そして、これを「不安」「風評」「差別」などと強弁するのは見え透いた逃げ口上にすぎない。そのため、これまで東北沿岸部の経済を支えてきた水産業は、最新の設備を備えた(化石燃料を使わない)船を使って遠洋に出るしかなく、そのためにかかる増加コスト(漁船の新造費、燃料・人件費などの増加コスト)は原発被害として東電か政府に補償してもらうべきだ。また、地球温暖化で海水温が上がれば、従来の魚種を捕獲することができないのは当然で、魚種を変えるか北に移動して漁獲するしかない。さらに、養殖も、汚染が0でないその付近の水や餌を使うと価値がなくなるのである。

 

(図の説明:1番左の図のように、福島第一原子力発電所は、もともと周囲と同じような高台だった場所を削って低くして作り、その結果、左から2番目の図のように、津波に襲われた。この時、非常用電源も地下に置いていたため、津波で使えなくなった。つまり、今回の原発事故は、想定を甘くした結果の連続として招かれたため、甘い想定と安全神話による人災なのだ。また、原発事故後は(山林を除いて)除染を行い、右から2番目の図のように、大量の除染土が今でも放置されており、台風時に流された。さらに、大量に出る汚染水は、浄化後もストロンチウム等を含むため安全ではないが、経産省は「トリチウムしか含まないため安全で、薄めて海洋放出するか空中放出するしかない」と言っているのである)

*16-1:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/498155 (佐賀新聞 2020.3.10) 被災地復興へ「財源確保」と首相、大震災9年で政府合同会合
 政府は10日、東日本大震災や東京電力福島第1原発事故から11日で9年となるのを前に、復興推進会議と原子力災害対策本部の合同会合を首相官邸で開いた。安倍晋三首相は「必要な復興事業を確実に実施するための財源を確保し、被災地が安心して復興に取り組めるようにする」と述べた。安倍首相は、被災地の現状について「復興は着実に進展している一方、被災者の心のケアや廃炉・汚染水対策などの課題は残されている」と指摘。2021年度以降5年間で必要となる復興事業の財源を今年夏ごろまでに示す考えを重ねて示した。合同会合では、避難者が震災直後の47万人から今年2月時点で4万8千人まで減少したことや、住宅再建や交通網整備の進捗状況を田中和徳復興相が報告した。田中復興相は記者会見で「現場主義を徹底し、被災者に寄り添いながら全力で復興に取り組む」と述べた。政府は21年度以降の復興政策を定めた法案を今国会に提出しており、早期成立を目指す。法案は、復興庁の設置期限を30年度末まで10年間延長し、引き続き復興相を置く内容。原発事故の影響が続く福島県の支援では、避難指示を解除した地域に住民を呼び込む施策を拡充する。復興推進会議の議長と原子力災害対策本部長は、首相が務めている。

*16-2:https://mainichi.jp/articles/20200306/dde/012/040/020000c (毎日新聞 2020年3月6日) 原発はいずれ消滅します 福島・飯舘村で暮らす、前原子力規制委員長・田中俊一さん
 東京電力福島第1原発事故から間もなく9年。あの人は今、何を思っているだろうか。事故後に設置された、原発の安全審査を担う原子力規制委員会の初代委員長、田中俊一さん(75)のことだ。2017年に退任後、「復興アドバイザー」として暮らす福島県飯舘村を訪ねた。飯舘村を南北に走る国道399号から細い山道を上っていくと、田中さんが1人で暮らす木造平屋建ての一軒家があった。前日降った雪がうっすらと積もっている。「今年は降ってもすぐに解けます。暖冬の影響ですね。ここで暮らして3度目の冬ですが、過去2年は雪が一度積もったら春まで残っていた」。村が所有するこの家を賃借したのは、原子力規制委の委員長を退任した3カ月後、17年12月のことである。旧知の菅野典雄村長から「静養にいいですよ」と誘われたのがきっかけだった。「飯舘山荘」と名付けたこの借家と、茨城県ひたちなか市の自宅を行ったり来たり。月の半分は飯舘村で過ごし、無償の復興アドバイザーとして、国と村の橋渡し役になったり、視察に訪れる人たちに村の現状を説明したりしている。「事故後、『原子力ムラ』にいた自分に何ができるかを考え、11年5月に放射線量が非常に高い飯舘村長泥(ながどろ)地区で除染実験を行った。この地区は今も帰還困難区域のまま。事故に向き合う私の原点がこの村にあります」。そんな田中さんに復興の進捗(しんちょく)度を尋ねると、渋い顔になった。「なかなか進みません。少しずつ努力していますが、元々暮らしていた住民の多くが戻ってこない。避難が長期になり、新たな仕事をもったり、子どもの学校の関係があったりして、村外に家を建てた人も多い。特に、若い人は都会志向が強い」。長泥地区を除き村の避難指示が解除されたのは17年春のことだ。震災前の人口は約6200人だが、現在暮らすのは約1400人。震災前、村内の小中学校には約530人が通っていたが、20年度は65人の見通しだ。「避難先の学校に子どもを通わせる親の多くはわざわざ村内の学校に戻らせようとしません。村には診療所が1カ所ありますが、開いているのは週2日。病を抱えている人は戻りにくい」。そして、いまだに続く福島県産食品への風評被害を強調する。食品規格の国際基準では、一般食品の放射性セシウムの基準値を1キロあたり1000ベクレルと定めているが、日本は原発事故後、より厳しい同100ベクレルとしている。「あなたは、あえて厳しく制限している地域のものを食べたいと思いますか? セシウムは検出されないのに『買いたくない』という心理が働き、風評を固定化している。福島県産食品の輸入停止を続ける国がまだあるのはそのためです。現実を無視した前提で決められた現在の基準を見直さなければ、福島の農水産業の復興はできません」。食品の「安心・安全」観に一石を投じる。福島県は郷里でもある。東北大で原子核工学を学び、日本原子力研究所(現日本原子力研究開発機構)へ。原発事故前は日本原子力学会の会長や、内閣府原子力委員会の委員長代理を務めた。原子力ムラの中枢を歩んできたとの印象だが、本人は傍流だと自嘲する。「私は核燃料サイクルの実現は技術的に無理だと言ってきたので『村八分』の存在です。使用済み核燃料を再処理して高速増殖炉でプルトニウムを増やして、1000年先、2000年先のエネルギー資源を確保しようと言っているのは世界でも日本だけ。安全神話も私は信じていなかった。科学的に『絶対安全』はあり得ない。日本の原子力政策はうそだらけでした」。こんなエピソードがある。原発事故まっただ中の11年3月15日、皇居で当時の天皇、皇后両陛下に原発事故についての解説を求められた。地震の影響で茨城の自宅と東京を結ぶJR常磐線も高速道も不通だった。(以下略)

*16-3:https://www.mhlw.go.jp/shinsai_jouhou/dl/leaflet_120329.pdf#search=%27%E4%B8%80%E8%・・ (食品中の放射性物の新たな基準値)
 東京電⼒福島第⼀原⼦⼒発電所の事故後、厚生労働省では、⾷品中の放射性物質の暫定規制値を設定し、原子力災害対策本部の決定に基づき、暫定規制値を超える食品が市場に流通しないよう出荷制限などの措置をとってきました。暫定規制値を下回っている食品は、健康への影響はないと一般的に評価され、安全性は確保されています。しかし、より一層、食品の安全と安心を確保するために、事故後の緊急的な対応としてではなく、長期的な観点から新たな基準値を設定しました(平成24年4月1日から施行)。放射性物質を含む食品からの被ばく線量の上限を、年間5ミリシーベルトから年間1ミリシーベルトに引き下げ、これをもとに放射性セシウムの基準値を設定しました。
●放射性セシウムの暫定規制値(単位:ベクレル/kg)
食品群   野菜類 穀類 肉・卵・魚 その他  牛乳・乳製品  飲料水
規制値          500                 200      200
●新たな基準
食品群  一般食品  乳児用食品  牛乳  飲料水
規制値   100       50       50    10
※線量の上限を1ミリシーベルトとした理由
○食品の国際規格を作成しているコーデックス委員会の指標が、年間1ミリシーベルトを超えないように設定されていること。
○多くの食品の放射性物質の濃度が、時間の経過とともに相当程度低下傾向にあること。
※食品区分の考え方
○特別な配慮が必要な「飲料水」「乳児用食品」「牛乳」は区分し、それ以外の食品は、個人の食習慣の違い(飲食する食品の偏り)の影響を最小限にするため、一括して「一般食品」と区分しています。(以下略)

*16-4:https://digital.asahi.com/articles/DA3S14396621.html?iref=mor_articlelink02 (朝日新聞 2020年3月10日) (東日本大震災9年)かさ上げ宅地、35%未利用 国交省、検証へ 被災3県
 東日本大震災の津波で被災した土地をかさ上げする土地区画整理事業で、宮城など被災3県で造成された宅地の約35%にあたる約238ヘクタールが未利用になっていることが、国土交通省の調査でわかった。東京ドーム約51個分で、国交省は新年度に事業の検証を始める。3県の未利用地の総面積が判明するのは初めて。区画整理事業は、土地をかさ上げして宅地や道路を造り、元の地権者に新たな宅地を割り当てる手法。復興庁によると、岩手、宮城、福島3県の21市町村で実施され、総額4600億円が投じられた。事業は9割以上進み、2020年度末の完成をめざしている。国交省によると、調査は昨年10~11月、21市町村を対象に行い、昨年9月末時点の活用状況を調べた。住宅や店舗などが建設済みや建設中の場合を「利用済み」とした。残りは未利用地となるが、今後利用される予定の土地も含まれる。住宅向けの宅地を整備していない4市町を除く17市町村では、造成済みの674・8ヘクタールのうち、237・9ヘクタールが利用されていなかった。未利用の割合は、岩手県陸前高田市が55%と最多で、次いで宮城県気仙沼市が51%、福島県いわき市が49%だった。未利用地が生まれたのは、地権者の同意やかさ上げに時間がかかり、避難先などでの再建を選んだ人が相次いだためだ。国交省は新年度、有識者らによる検証委員会を立ち上げ、来年3月までに対策をとりまとめる。南海トラフ巨大地震など次の大災害が起きた時に同様の未利用地が発生することを防ぐ。

*16-5:https://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/202003/CK2020030902000135.html (東京新聞 2020年3月9日) <東日本大震災9年>原発ゼロ法案 2年たなざらし 与党、再生エネも審議応じず
 脱原発や再生可能エネルギーの推進を目指して野党が提出した法案が、一度も審議されず最長で二年間取り置かれている。政府・与党も再生エネの普及に言及しているものの、野党提出法案は原発の再稼働を進める安倍政権の姿勢と対立するため、与党が審議に応じないからだ。たなざらしの関連法案は五本。立憲民主、共産などの四党は二〇一八年三月、全原発の即時運転停止を記した「原発ゼロ基本法案」を衆院に提出した。法施行後五年以内の全原発廃炉や電力供給量に占める再生エネの割合を三〇年に40%に上げることを盛り込んだ。翌一九年六月には、再生エネの普及を確実にするため、エネルギーの地産地消を促す「分散型エネルギー利用促進法案」など四法案も追加で提出した。うち三法案には国民民主党も提出に加わった。法案はいずれも衆院経済産業委員会に付託されたが一度も審議されていない。議員立法は政府が提出した法案の後に審議されるのが通例だ。衆院経産委理事の自民党議員は「野党提出法案を、政府提出法案より優先して審議することは難しい」と話す。政府提出法案の審議後でも、多数を占める与党が認めなければ野党提出法案は扱われない。一八年六月に会期が一カ月余延長された際、同委では「原発ゼロ」以外に審議する法案がなかったのに、自民党は委員会開催すら応じなかった。原発を基幹電源とする政権の方針を踏まえたためだ。安倍晋三首相は今国会で「原発ゼロは責任あるエネルギー政策とはいえない。再稼働は原子力規制委員会が認めた原発のみ、地元の理解を得ながら進めていく」と強調した。立民の枝野幸男代表は本紙の取材に「審議する時間は十分にあった。原発事故を経験した国の国会として、あまりに無責任だ」と自民党の対応を批判した。

*16-6:https://digital.asahi.com/articles/DA3S14399438.html (朝日新聞 2020年3月12日) (東日本大震災9年)海と生きる町、岐路 サンマ大不漁、韓国のホヤ禁輸続く
 東日本大震災で大きな被害を受けた岩手、宮城の水産業が岐路に立たされている。全国有数の水揚げ量を誇ってきたが、昨年秋にはサンマの記録的な不漁に見舞われ、韓国によるホヤの禁輸措置も長引く。なりわい再生の中心となる水産加工業も、人手不足や販路喪失に苦しんでいる。「大変な年だった。今までのようには魚がとれなくなっている」。本州一のサンマの水揚げ量を誇る岩手県大船渡市。漁獲から加工・販売まで手がける鎌田水産の鎌田仁社長(46)は話す。保有していたサンマ漁船2隻のうち1隻を震災で焼失したが、その後5隻を新造し事業を拡大してきた。ところが昨年、半世紀ぶりの不漁に直面し、水揚げ量は例年の約3分の1に沈んだ。単価の上昇はあったが、水揚げ金額は3割減。イワシなど他の魚種の扱いを増やして補ったという。全国さんま棒受網漁業協同組合によると、震災前に約20万~30万トンあった全国のサンマ水揚げ量は、直近5年間は10万トン前後に低迷。昨年はさらに4万トンまで落ち込んだ。不漁対策として水産庁は昨年、公海での通年操業を解禁。鎌田水産も9億円を投じて遠方で操業できる漁船を建造中だ。鎌田社長は「サンマをやめる選択肢はない。ただ、他の魚の扱いを増やすとか、柔軟に対応していかないといけない」と話す。全国一の生産量を誇った宮城県のホヤも苦しい。震災前、ホヤは年間約1万5千トンの水揚げがあり、7割を韓国に輸出していた。だが、原発事故の影響で、韓国は2013年から輸入を禁止。日本は世界貿易機関(WTO)に提訴したが昨年敗訴し、韓国による輸入再開の見通しは立っていない。県や漁業者らは首都圏などで消費拡大のキャンペーンを進めてきた。国内消費量は震災前の2倍となる5千トンまで増えたが、それでも消費し切れず、県漁協は16年から3年続けて計1万5千トンを焼却処分した。東京電力からの補償も20年度で終わる。石巻市のホヤ漁師は「出荷先が少ないために生産量を制限し、東電の補償で食いつないでいるようなもの」と話す。
■水産加工業、人手足りず販路も失う
 沿岸部の経済を支える水産加工業は、国が震災後に新設したグループ補助金などを活用して再起を図った。中小企業が工場などを再建する費用の75%を国と県が負担する制度だが、自己負担分を賄うために県の無利子貸付制度を利用した事業者も多い。宮城県石巻市にある水産加工会社は今年2月、事業承継のため同業者に株式譲渡した。震災の翌年、グループ補助金と県の無利子貸付制度を使い、被災した工場を約2億円かけて再建。13年には別の補助金で計6億円かけて本社と新工場を造った。ところが、従業員を募っても復興特需が続く建設業などに流れた。売り上げの7割を占めたイカの不漁に加え、ホヤも韓国の禁輸措置で行き場を失った。売り上げは震災前の半分ほどに低迷し、2年連続の赤字。男性社長(67)は昨年夏、金融機関の支店長にM&A(企業合併・買収)の意向を伝えた。県の貸付金など1億円を超す借金返済が数カ月後から順次始まる予定だった。社長は「人より早く再開すれば客はついてくると思ったが、現実は違った」と振り返る。岩手県宮古市の水産加工会社「須藤水産」は約6億円のグループ補助金を使って冷凍・冷蔵設備を再建したが、全容量の1割の約100トンしか使っていない。昨年、仕入れができたサンマは例年の1割の約400トン。不漁で、仕入れ価格が2倍近くにはね上がったためだ。昨年の売り上げは例年の3割減の約10億円。3年ほど前からコンビニに土地を貸し、賃料収入で売り上げを補う。須藤一保専務(47)は「魚屋だけでやっていくのが難しくなっている」と訴える。福島を含む3県によると、今年1月末現在、グループ補助金を利用した事業者のうち74事業者が倒産しており、業種別では水産加工が3割と最も多い。
■経営モデル、転換課題
 水産加工業は岩手、宮城のなりわい再生の核だ。生鮮冷凍水産物の生産量は宮城が全国3位、岩手が8位(いずれも2018年)と上位に食い込む。食料品製造業に携わる事業所のうち、水産加工業の割合は宮城が45%、岩手も25%を占める。長年、売り上げを支えてきた手法は、近くの港に豊富に水揚げされる魚を安値で大量に仕入れて冷凍。高値になる時期に、大手の流通業者や量販店に販売するものだった。だが、冷凍したり切り身にしたりする程度で加工度は低く、別の地域の事業者でも代替しやすかった。震災で休止している間に、流通業者は海外や国内の別の地域の加工業者と取引を結んでいったという。再開しても、不漁と人手不足で出荷量が安定せず販路を取り戻せていない。国は首都圏などのスーパーや百貨店のバイヤーなどを三陸に招き、100社以上の水産加工業者と引き合わせる商談会の開催を支援。経営コンサルタントによる事業計画見直しや海外輸出の後押しをしてきた。宮城県石巻市の水産加工会社「ヤマナカ」は、19年度から韓国系商社と組み、ホヤを米国のコリアンタウン向けにサンプル供給するほか、ベトナムへの輸出も始めた。だが、震災前のビジネスモデルから転換できた業者は一部にとどまる。福島を含む3県の沿岸37市町村に朝日新聞が行ったアンケートでは、回答があった30市町村のうち、水産加工業の業況が「震災前の水準まで回復していない」と答えた自治体が8割を超えた。東北大地域イノベーション研究センター長の藤本雅彦教授(経営学)は「専門家の助言や事業者同士の連携で、加工度が高く付加価値がある独自商品の開発を、長い時間をかけて進めるべきだ」と指摘。「海外も含めて市場開拓していこうという意欲ある経営者を、育てていく必要がある」と話している。

<日本は、なぜ合理的な判断ができないのか?>
PS(2020年3月18日追加):*17-1のように、米国カリフォルニア州の米産地で水をためた冬の水田でサケを育て、3月末に数千のキングサーモンの稚魚を河川に放流して太平洋に向かわせる計画が進んでいるそうだ。日本も一毛作地帯なら冬の水田で何かをできるだろうに、いつまでも工夫がないのは不思議である。さらに、*17-2のように、政府は再エネ普及に使い道が限られている金をフクイチ事故の処理費用にも使えるようにしたいそうだが、(事故を起こした電力会社を清算して財産を充当し、脱原発してからならまだわかるが)「原発・化石燃料のコストが安く、再エネは高い」などと言いながら再エネ促進費を原発事故処理に転用するなど論外だ。
 さらに、*17-3のJAの経営基盤強化をするには、農地や農業設備を活用した発電を進め、JAが電力を集めて販売する仕組みにすれば、農業補助金も削減でき、金利の低い今なら設備投資がやりやすいだろうが、従来と同じスキームから決して抜け出せないのが不思議だ。
 また、*17-4のように、大分県日田市はJR日田彦山線の不通区間で「次世代モビリティ」導入に向けた実証実験を行うそうだが、そのEVはゴルフ場を走るカートのようなおもちゃで、これでは住民生活には使えない。*17-5の2010年2月3日の記事に紹介されているように、スイスのマッターホルン山麓にあるツェルマットでは、1990年代から排気ガスによる大気汚染防止のための自治体条例によってEVか観光用馬車しか走っておらず、私も1998年にツェルマットでこのEVに乗った時は感心したものの、EVの運転士に「馬力が足りなくないですか」と尋ねたくらいだったが、運転士の答えは「大気汚染防止のためだから、我慢しなくちゃ」というものでさらに感心したのである。日本なら大手自動車会社も多いので、不便なく走れるEVもすぐ作れると思って経産省に提案したのだが、社会保障を減らして外国に多額の燃料費を払うのが目的としか思えないような行動しかしておらず、未だにEVは希少車種である。これらは、太平洋戦争という航空戦の時代に、日露戦争の巨艦主義から抜け出せなかったのと同じであり、これでは何をやっても決して勝てないと思う。
 このような中、ゴーン氏が1999年に社長として就任した日産自動車だけが、*17-6のように、批判を浴びながらEVを発売した。ゴーン氏の「リバイバルプラン」は、調整型の日本人社長にはできない系列部品会社の淘汰や資本提携の解消を伴っており、これはコストカットしたり、通常のガソリン車からEVや自動運転車に転換する場合に必要なのだが、恨まれるので誰もやりたくない仕事だ。そのため、私は、ゴーン氏の逮捕理由や新社長のメッセージを聞いただけで、優秀なリーダーを失った日産の現在の漂流と低迷は予測できたのである。
 なお、日本は、*17-7のように、地価の上昇をよいことだとして地価上昇を促す金融緩和策を採っているが、これは人件費の高騰とあいまって産業の空洞化を招いている。何故なら、地価の上昇分は製品原価に加えられて製品価格を高くすると同時に、製品に占める人件費の割合を低くするからだ。そのため、このカンフル剤は、不動産業以外の産業にとってはディメリットであり、ゴーン氏が地価や人件費の安い新興国で生産体制の増強を進めたのは、多くのグローバル企業が行っている正攻法の経営手法なのだ。それでも日本に製造業を誘致したい地域があれば、工場用地を安く貸し出したり、外国人労働者の導入などで他国と競争力のある人件費にしなければならない。生産性の向上は、他国もすぐ追いつき、これまで基盤のなかった国・地域の方が整理の時間がかからない分だけ早いかもしれないのである。

  
  2020.3.10東京新聞      2018.11.5朝日新聞  

(図の説明:左図のように、日本は豊富にある再エネを使わず、衰退期にある原子力と化石燃料に執着している。また、中央の図のように、農業は継承者が少なく、既にある資産の農地も1/3に減少させたが、これは《長くは書かないが》今までの農業政策の誤りによる。さらに、右図のように、資源が豊富な林業も1/3に減らしており、これらの理由は工夫がないことに尽きる)

  

(図の説明:左図のように、水産業もピーク時の1/3程度の漁獲高になっており、右図のように、GDPに占める製造業の生産高や製造業就業者割合も低下の一途を辿っている。残りは、サービス業と無職であり、日本のモノづくりは猛烈な勢いで衰退していると言える)

*17-1:https://www.agrinews.co.jp/p50312.html (日本農業新聞 2020年3月16日) 冬の水田サケ養殖 多面的な機能PR 放流で資源回復 米・カリフォルニア米産地
 米国カリフォルニア州の米産地では、水をためた冬の水田でサケを育てる計画が進んでいる。3月末には丸々と太った数千のキングサーモン稚魚が河川に放流され、サンフランシスコのゴールデンゲートを通って太平洋に向かう。自然保護に熱心な地元住民に水田の多面的機能を訴えるのが狙いだ。「昨年の試験は洪水で(稚魚の成育が)理想的な環境にならなかった。2年目となる今年は、改善を加え成育は順調。期待している」と語るのは、カリフォルニア州米委員会(CRC)のジム・モリス部長。30年以上も米業界を見守っている専門家だ。放流される稚魚のうち1000匹には無線発信装置を付け、放流後の行動を調べる。これまでの試験で、暖かい水田で育つため、稚魚は自然界を上回る成育ぶりを示している。試験が成功すれば、商業化の道を模索するという。ただ、サクラメント市周辺に広がる約20万ヘクタールの水田で、河川と結んでたん水状態にできるのはごく一部。全ての水田で稚魚を育てるのは難しい。並行して計画するのが、水田を利用した大量のプランクトンの供給だ。稚魚は川を下りながら餌を探すが、河川は浄化が進みプランクトンが少ない。冬の間、水田でプランクトンを育て、稚魚の通過のタイミングに合わせ、水田の水口から必要なプランクトンをたっぷりと与える。米産地がサケ対策に動き始めたのは8年前。環境保護団体などによると、サンフランシスコ湾に流れ込む河川流域は、かつてキングサーモンなどが成育する場所だったが、ダム建設や水不足で匹数が激減している。そこで上流にあるカリフォルニア米の冬水田んぼに目を付けた。サケの稚魚を養殖しそのまま放流できれば、資源回復につながる可能性があるとして研究プロジェクトが始まった。同州は大気汚染を理由に、2001年ごろから稲わらの焼却を厳しく規制。農家の多くが冬場のたん水で稲わらを分解させるようになった。冬場に餌を求めて数百万羽の野鳥が集まり、観光客やハンターが詰めかけるようになった。思わぬ好展開に、米業界は「水田の多面的な機能」を大々的に宣伝し始めた。自然保護の象徴でもあるサケの資源回復で“二匹目のどじょう”を狙う。

*17-2:https://digital.asahi.com/articles/DA3S14406691.html (朝日新聞 2020年3月18日) 原発事故処理に再エネ財源 目的外使用、可能に 政府法案
 政府は、再生可能エネルギーの普及などに使い道が限られているお金を、東京電力福島第一原発事故の処理費用にも使えるようにする。処理費用が想定よりさらに膨らむ恐れがあり、財源が逼迫(ひっぱく)することに備えるという。使ったお金は将来、返すとしているが、一時的でも原発政策の失敗を別の目的で集めたお金で穴埋めすることになる。原発のお金を今の仕組みでは賄えなくなってきている。政府は一般会計予算とは別に、エネルギーの関連予算を「エネルギー対策特別会計」(エネ特)で管理している。さらにエネ特の中で目的別に財布を分けていて、原発の立地対策など主に原子力政策に使う「電源開発促進勘定」(電促勘定、年3千億円ほど)、再生エネや省エネの普及、燃料の安定供給などに使う「エネルギー需給勘定」(エネ需勘定、年8千億円ほど)などがある。電促勘定の財源は、電気利用者の電力料金に上乗せされている電源開発促進税で、エネ需勘定は石油や石炭を輸入する事業者などから集める石油石炭税となっている。両税はいずれも、それぞれの勘定の目的にしか使えない特定財源だ。ところが、政府は今月3日、エネ需勘定から「原子力災害からの福島の復興及び再生に関する施策」に使う資金を、電促勘定に繰り入れられるようにするための改正特別会計法案を閣議決定し、国会に提出した。エネ特で勘定間の繰り入れを可能にする変更は初めてという。背景には、電促勘定の苦しい台所事情がある。同勘定の収入は例年大きく変わらない。ただ、東電が負担するはずの原発事故の処理費用について、2013年12月の閣議決定で一部を政府が負担することになり、14年度から汚染土などの廃棄物を保管する中間貯蔵の費用を電促勘定から毎年約350億円計上してきた。その処理費用は当初想定より膨らんでいる。経済産業省が16年末に公表した試算で、中間貯蔵事業は1・1兆円から1・6兆円になり、電促勘定からの支出は17年度から年約470億円に増えた。政府関係者によると、今後さらに増える可能性があり、財源が足りなくなりかねないという。政府は改正法案を今の国会で成立させ、来年4月の施行をめざす。法案では繰り入れた資金は将来、エネ需勘定に戻すことも定めているので問題ないとする。ただ、再エネ普及などのために集めたお金を一時的にでも、国民の間で賛否が割れる原発のために使えるようにする変更には反発も予想される。青山学院大学の三木義一・前学長(税法)は「特別会計は一般会計に比べ、国会で審議される機会が少なくチェックが利きにくい。今回の変更の内容は原発に関わるだけに重大で、異論を唱える国民もいるのではないか。適切な改正なのかどうか、政府は国民にわかりやすく説明する必要がある」と話す。

*17-3:https://www.agrinews.co.jp/p50288.html (日本農業新聞 2020年3月13日) 進むJA経営強化 グループ挙げ強み発揮
 全国のJAで経営基盤強化に向けた動きが活発化している。店舗再編や経済事業の見直しなど、具体策に既に着手しているJAも多い。JAグループの強みは総合事業と全国ネットワークだ。単に人員や施設の合理化だけでしのぐのではなく、地域や組合員のニーズに応えた事業を広げることが重要だ。
金融機関を巡る環境は厳しい。農林中央金庫は2019年から信連やJAの預金に対する金利(奨励金)の引き下げを始めた。共済事業も苦戦しており、JA経営は難しさを増す。しかし、JAの対策は既に始まっている。1月にJA全中が全国6カ所で開いた「自己改革実践トップフォーラム」では、11JAが主に経営基盤強化に向けた実践内容を報告した。各JAでは、店舗再編や施設集約といった効率化戦略と、農業生産の拡大などにつながる経済事業をはじめとした成長戦略を併せて進めている。埼玉県のJAあさか野は、08年ごろから支店再編を検討し、昨年までに17店舗を9店舗にした。同時に相談機能を強化し、相談件数や貸出金を伸ばす。岩手県のJA新いわては、支所や施設の再編、園芸品目の生産・販売強化など13の具体策をまとめた。具体的な効果を金額で示し、事業利益の確保を目指す。農村では、過疎化や高齢化、労働力不足など多くの課題が出ている。情報通信技術(ICT)などを活用し、組合員の暮らしを総合的にサポートするといった新たな事業も構想したい。総合事業を手掛けるJAとして、事業間連携強化の工夫も考えられる。自動車事業と自動車共済、ローンを結び付け事業を安定させているJAもある。JAグループの強みのもう一つが、全国ネットワークだ。600のJAがあり、県域、全国域に連合会がある。連携した事業展開やノウハウの共有、専門性の発揮などができる。県域によって体制は異なるが、経営基盤強化でも、全中・中央会と農林中金・信連、全農・経済連が連携してJAを支援。財務分析や経済事業改革の提案などを進める。先に挙げたJA新いわては、全国連・県連が連携して支援し、具体的な計画を策定した。JAグループ全体の基本方針は4月にも決める。全中の中家徹会長は6日の記者会見で、経営基盤強化は経済事業の収支改善や店舗再編をはじめとする効率化が柱となると指摘。「JAが多様化している中で、現場実態に合わせた取り組みになる」として、JAごとの工夫を重視する。信用・共済事業に依存しがちだったJAの収益構造はこの機に見直す必要があるだろう。大事なのは事業を縮小するのではなく、総合事業を手掛ける協同組合として、いかに営農と地域を支えていくかという視点だ。組合員や住民のニーズに応えつつ、収益の上がる事業モデルを探っていく必要がある。

*17-4:https://www.nishinippon.co.jp/item/n/591722/ (西日本新聞 2020/3/13) 日田彦山線不通地区でEV実験 日田市、住民の足確保へ利便性検証
 大分県日田市は今秋、同市大鶴地区と夜明地区で新たな移動手段「次世代モビリティ」導入に向けた実証実験を行う。九州豪雨で被災したJR日田彦山線の不通区間の両地区は過疎化、高齢化が進んでおり、住民の足確保だけでなく復興の象徴にもしたい考え。