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2018年10月22、23、24日 外国人労働者と水産業 (2018年10月25、26、28、29日、11月1、2、3、7、14、16日追加)
  
   2018.10.4 Businessinsider        Goo       東洋経済

(図の説明:左図のように、日本の生産年齢人口は減少しているが、就業者数は増加している。これは、女性・高齢者だけでなく外国人労働者の増加にもよる。また、中央の図のように、日本で就労する外国人の数は、2017年10月末現在で約128万人いるが、このうち本来は労働者でない人が約58万人おり、その建前と本音の違いに限界が生じている。そこで、右図のように、新たに「特定技能」という資格で50万人超を受け入れる検討がなされているが、それでも最長10年の滞在期間・最初5年間の家族同伴不可により、まだ人材開国には程遠いと言わざるを得ない)

(1)外国人労働者の受け入れ拡大
1)外国人労働者の受け入れの必要性
 外国人労働者の受け入れ拡大が議論されているが、その理由には、*1-1・*1-2のように、水産業・農業・食品製造業・造船業・建設業・介護・飲食業・宿泊・サービス業・コンビニ店員など、外国人抜きでは仕事が回らない産業が増えている状況がある。

 外国人技能実習制度は、「日本が、先進国として技能・技術・知識を開発途上国に移転し、開発途上国の経済発展を担う『人づくり』に協力することを目的とする」という建前で作られているため、①3~5年で帰国しなければならず、熟練労働者になれなかったり ②労働内容に細かい制限を課して、労働者としての使い勝手を悪くしたり などの欠点があった。

 しかし、他国との価格競争上、日本人より人件費の安い外国人の労働力は欠かせず、それがなければ価格競争で負けた日本の産業は、繊維・家電・農業・水産業等々のように海外に流出することになる。にもかかわらず、現在は、外国人労働者の受け入れを制限しすぎて、本来は「労働者」ではない技能実習生と留学生を働かせている点が問題なのである。

2)高コスト構造による日本経済の敗北
 *1-2のように、最低賃金の差によって田舎は捨てられるという声もあるが、どこでも外国人労働者は最低賃金で働かなければならないという規則はない。そして、技能実習生は勤め先を変わる自由がないことこそ、外国人労働者に対する人権侵害である。そのため、離島でも付加価値の高い仕事を作りだす必要があり、日本人男性だけでなく、多様な人がアイデアを出せば、その可能性は高まると考える。

 例えば、*1-3のように、主婦の視点で女性農業者が開発したマルニの「ゆで野菜」は、①豊作時に市場価格が暴落する露地野菜を一定価格で買い取るため農家にも利点があり ②新鮮なうちに調理するので採れたての美味しさがあり ③家庭での調理の手間を省き ④家庭で出る生ごみを減らし ⑤都会なら生ごみになる部分を産地なら飼料や肥料にできるため、確かによいと思う。私は、「キャリアウーマン応援野菜」という命名もよいと思うが(女性)、この作業は機械化できると同時に、機械化後の作業を外国人労働者にやってもらうことも可能で、この状況は水産業も同じだ。なお、ゆでるよりも、しっかり洗って蒸した方が栄養素の流出が少ないだろう。

 一方で、*1-2は、安価な労働力に頼るのは危うく、新たな在留資格を設けると最低賃金近くで働く外国人を優先して派遣社員を切る企業が多くなり、仕事を奪われる日本人がいるとも記載している。しかし、企業はよりよい労働力をより安く求めており、国内でそれができなければ産業自体が国外に移転して技術もなくなってしまうのが、グローバル化した世界大競争時代における自由貿易の結果であり、日本人も、頑張らなければ生活できない労働者になる。

3)外国人労働者を受け入れるための環境整備
 政府は、*1-4のように、外国人労働者の受け入れ拡大に向け、来春の新資格創設をめざして、臨時国会に提出する入国管理法改正案などの骨子を示し、新たな在留資格で単純労働にも門戸を開くそうで、本格的な外国人材受け入れへカジを切ったのはよいと思う。

 しかし、「特定技能1号」の在留期間が最長5年、熟練者を想定して高い能力を条件とした「特定技能2号」は定期的な審査を経て長期滞在が可能になるのだそうで、在留資格の付与が小出しであるとともに、外国人労働者に対して極めて不利な条件を課している点で、不十分だ。

 また、外国人が生活するための環境整備は、教育・医療・介護・雇用・年金などがあり、外国人も保険料を支払い、また安心して生活できるように、地方自治体が具体的事例に基づく要望を行って、国はその環境整備に必要な予算をつけなければならないと考える。

(2)水産業の事例 ← 獲り過ぎだけが問題ではないこと

 
     2018.4.26朝日新聞       日本の漁業・養殖業生産量の推移


  世界の水産物生産量と     クロマグロ・二ホンウナギ・サンマの漁獲量推移
 1人当たり消費量の推移

(図の説明:日本の漁獲高は、1984年に1282万トンと最大を示し、2017年には400万トンを切って、1/3以下となった。そのうち養殖業はまあ横這いで、沿岸漁業は少し減少、沖合・遠洋漁業は大きく減少している。また、マイワシの生産量は著しく減少して0に近くなった。一方、水産物の生産量・消費量は世界で増加しており、日本の一人当たり水産物消費量は飛びぬけて多い。さらに、マグロ・鰻の漁獲高は大きく減り、サンマは世界ではさほど減っていないが日本で減った。そのため、漁獲高の減少理由は魚種によって異なると思われる)

 日本は、領海(海岸線から12海里)面積が約38万km2で世界第60位、排他的経済水域(EEZ、海岸線から200海里)面積が世界第6位で、内水を含む領海とEEZを合わせると約447万km2で世界第9位という豊富な海洋資源を持つ国である。

 しかし、*2のように、勝川東京海洋大准教授は、①日本の漁獲量は何十年も直線的に減少しており ②このまま減り続ければ2050年に漁獲がゼロになるペースで ③水産研究・教育機構の調査では、日本沿岸の水産資源の多くは低水準であり ④漁獲しようにも日本近海には魚がいないので、水産資源を守るために乱獲をやめ、水産物の漁獲規制と価値向上を急ぐ必要がある ⑤1989年に38万人いた漁業者は、2017年には15万人まで減少し、その多くは後継者のいない高齢漁業者だ と記載しておられる。

 私は、衆議院議員をしていた2005~2009年の間、佐賀県北部の全漁協・漁村を廻り、離島も含む漁業関係者の話を聞き、農水省に質問もしているため、考えをまとめると以下のとおりだ。

 まず、①については、確かに漁獲高は直線的に減少しているが、その原因の多くは、遠洋漁業・沖合漁業の減少であり、遠洋漁業は日本の若者が次第に労働環境のよくない漁船漁業を嫌い始めたため、漁船の乗組員に外国人の割合が増え、それとともに漁船の船籍や水産会社の国籍が日本から外国に移ったものが多い。そのため、日本人1人当たり水産物消費量はそれほど減っておらず、生産量の減少は外国からの輸入で賄っている。なお、獲れなくなったら捕食者の方が先に減るため、生物の数は、②のように直線的には減らない。

 また、沖合漁業・沿岸漁業の生産量減少は燃油高騰も大きな理由で、漁の損益分岐点が上がって、i)漁に出られない ii)自ら漁師を辞める iii)子に漁師を継がせない などの現象が起こり、その結果が⑤となって現れているのだ。そのため、漁船のエネルギーを燃油から自然エネルギー由来の地元産電力や水素に変更することは、損益分岐点を下げて水産業にも資することになる。

 このように、現在の漁業生産量は1980年代の1/3以下に減少しているため、③④で述べられている日本沿岸や瀬戸内海の水産資源が低水準である理由は、乱獲よりも水環境の悪化と海水の温暖化の方が大きな原因ではないかと考える。

 例えば、工業排水・生活排水などの汚水によって魚が住める環境をなくしたり、農業用除草剤で藻場を枯れさせたり、農薬で川を汚染したりなど、漁業のために水環境を守るという発想が乏しすぎたのだ。そして、近年は、漁村の下水道整備や農薬の制限によって汚水に関しては改善されつつあるものの、川に農業用の堰を作るのは川と海を行き来する魚類の数を減らす原因になっており、海砂を取るのもそこに産み付けられた魚の卵を殺している。さらに、原発を冷やすために海水を使っているのは、幼生を大量の海水とともに取り込んで煮殺して排出している。

 そのため、私は日本のEEZから安定的な水揚げを得る漁業を作りだす必要があることには賛成だが、そのためには、魚が住む環境を守るとともに、次世代を産む親魚を十分に確保できるようにしなくてはならないし、冷凍技術の進歩や6次産業化によって水産物の付加価値を高める必要もあると考える。

 また、近大マグロのような完全養殖魚は、餌を工夫してイワシのような水産資源をできるだけ使わないようにすれば、希望が持てる。

(3)イスラム教を信仰する外国人労働者への対応

  
 外国人を雇用する事業所数     産業別・国籍別雇用者数      *3-1より 

(図の説明:左図のように、我が国では外国人を雇用する事業所が2016年でも17万以上に増加し、中央の図のように、出身国は中国・ブラジル《日系人中心》・フィリピン・ベトナム・韓国など、容貌が日本人とあまり変わらず、仏教国・キリスト教国が多い。一方、右図のように、イスラム教国からの外国人労働者は、著しい女性差別や活動制限の多すぎる文化を持ち込むため、それをどこまで容認するかが問題となる)

 上図のように、地方や中小企業で外国人労働者はなくてはならない存在になっている。しかし、*3-1のように、イスラム女性のドレスコードは一つしかなく、公共の場で全身を覆うブルカを着用しなければ見せしめに罰せられたり、処刑されたりする。そして、これは、イスラム文化の中に住む女性の側からは疑問に思っても変えることのできない女性差別であり、日本に来てもこれをやられると、日本国内でもやっと実現しそうになっている男女平等を後戻りさせる。

 そのため、私は、*3-2のように、女性に、スカーフ・ブルカ・ニカブなどの服装を強制したり、教育や活動で差別したりすることを、「文化の多様性」などと言って認めようとする国連や日本国内の風潮は、テロ対策以前に、女性差別や人権に対して鈍感だと思う。

 また、*3-2・*3-3のように、「①ブルキニがだめならダイビングスーツもだめになる」「②尼僧はどうなんだ」「③ブルキニは女性を解放する」という声もあるそうだが、①のダイビングスーツは潜水する人に合理的必要性があって着るもので、②の尼僧は全員が強制されてなるものではないため、性格が異なる。

 それよりイスラム教国で未だに公の場では女性が肌や髪を出せず、③のようなブルキニで“女性が解放される”などと言っていることこそ、日本なら女性にだけ着物と帯の着用を強制するのと同様、女性の自由な活動を奪っているため、女性に対する人権侵害だ。これは、決してイスラム差別の口実ではなく、イスラム女性の解放は海外経験者から始めるしかないのである。

 そのため、イスラム教系の外国人労働者や家族は、フランスと同様、公の場での黒いベール・ブルカ・ニカブを禁止し、学校はモダンな制服を定めて洋服に慣れさせるのがよいと考える。これは、日本で着物から洋服に変えた時代と同じ方法だ。

<外国人労働者の受け入れ拡大>
*1-1:https://digital.asahi.com/articles/DA3S13734419.html (朝日新聞 2018年10月22日) (多民社会)外国人抜き、仕事回らない 実習生・留学生、造船もコンビニも
 「造船の島」として知られる広島県尾道市の因島(いんのしま)。「彼らぬきで、ものづくりはもう考えられない」。島の南部で、船の床板などをつくる村上造船所の村上善彦社長(59)は話す。工場では、日本人従業員と一緒にタイ人の技能実習生7人が白い火花を散らし、溶接作業に汗を流す。高齢で引退した熟練工に代わり、頼ったのが「日本で技能を学んで母国で生かす」名目で来日した実習生だった。実習生の給与は1年目が最低賃金と同額。2年目から上乗せする。月給は残業代を合わせ15万円ほど。中韓との価格競争を考えれば日本人より人件費が安い実習生は欠かせない。指導する側の日本人従業員の大半は50歳を超えた。きつい作業をいつまで続けられるか分からない。村上社長は「外国人労働者だけで生産できるようにしたい」と本気で考えている。「いらっしゃいませー」。人通りの消えた深夜3時。東京都心のコンビニに入ると、店の奥から声がかかった。バイトをしていたのはウズベキスタン出身のベクさん(22)。都内の日本語学校に通う留学生だ。週3回、夜10時から休憩1時間をはさんで朝8時まで。学費や家賃は月約13万円のバイト代でまかなう。「東京は時給が高い。だから来た。親にはお金を出してもらえないから」。日本語学校や専門学校で学ぶ留学生の多くは、法定の週28時間以内でバイトをしながら学校に通う。都市部では「コンビニ、居酒屋、弁当工場、清掃」が4大職種といわれる。いまコンビニ大手3社だけで、外国人店員は約5万2千人。各社の全従業員の5~8%にあたる。「東京都心に限ると3割を超える」(ローソン)という。
     ◇
 働く現場で「外国人頼み」が強まる。2017年に働き手のうち外国人が占める割合は09年の約2倍になった。「メイド・イン・ジャパン」も例外ではない。都会も地方も、本来「労働者」ではない実習生と留学生が支える。そこにいびつな構図も生まれる。

*1-2:https://digital.asahi.com/articles/DA3S13734428.html (朝日新聞 2018年10月22日) (多民社会)「最後の砦」、法令違反後絶たず
 全国一のホタテ産地である北海道。10月中旬、オホーツク海沿岸の興部(おこっぺ)町・沙留(さるる)漁協では、水揚げが終盤を迎えていた。漁協の加工場で働く45人のうち18人がベトナム人の技能実習生。「地元の人は高齢化で減る一方だ。もう実習生なしでは回らない」と鈴木精一参事は話す。オホーツク一帯では、実習生200人以上が働く自治体もある。ホタテの殻をむき、冷凍やボイルにしている加工場もある。「その取材はダメだ」。実習生頼みの実態を聞こうと地元業者の組合を訪ねると、即座に断られた。ちょうどこの地域に、実習生を受け入れた企業を監督する「外国人技能実習機構」が立ち入り検査に入っていた。相次ぐ抜き打ち検査に、地元の人たちは神経をとがらせる。水産加工で国が認める実習の職種は「加熱加工」などに限定されている。冷凍やボイルが「実習の対象になるかは灰色」(関係者)だ。「実習生頼み」が強まるなか、法令違反の一線を越える例も後を絶たない。北海道に次ぐホタテ出荷量を誇る青森県。県内のある水産会社では、作業員約120人のうち約30人が中国人実習生だ。同社は今年2月、実習生に最大100時間以上の残業をさせたとして労働基準監督署から書類送検された。この問題で、法令を守る態勢の再チェックを受けるため、別の実習生10人を今春受け入れる計画は4カ月延ばされた。この会社の幹部は「地元で募集をかけても日本人は高齢者しかきてくれない」。人手不足に直面する産業にとって、実習生は「最後の砦(とりで)」だ。
■賃金差「田舎は捨てられる」
 鹿児島・沖永良部島。9月中旬、サトウキビ畑の隣ではソリダゴが小さな黄色い花をつけていた。ベトナム人実習生数人がお彼岸用に仕分けをしていた。約1万4千人の島に、100人以上のベトナム人実習生がいるという。取材に応じてくれた農家の男性がつぶやいた。「実習生たちとも、こうしておしゃべりしているけど、いつも『明日は逃げるかもしれない』と思っている」。昨日まで仕事していた実習生が突然、飛行機や船で出ていく。この農家では、15年間で受け入れた実習生約100人のうち、10人以上が失踪した。多くはSNSなどで都市部にいる友人の情報に接し、逃げようと決めるようだ。どこでも実習生は最低賃金ぎりぎりで働いている。鹿児島と東京の最低賃金には200円以上の開きがある。実習生の受け入れには、往復の飛行機代や研修費などで数十万円かかる。失踪されれば、年間の作業計画も立ちいかなくなる。ただ実習生に逃げられた農家の男性は、外国から来た若者たちへの同情も示す。「そりゃ、あの子たちもお金のいいところに行きたいだろう」。実習生には原則、勤め先を変わる自由がない。だからこそ離島にいてくれるのだとも思う。「移動が自由にできるようになったら、誰も島に残らないよね。田舎は見捨てられる」
■建設業、依存高める
 働き手のうち、外国人が占める割合(依存度)は2017年に「51人に1人」に達し、リーマン・ショック後の09年と比べて2・2倍になった。三菱UFJリサーチ&コンサルティングの加藤真研究員が、政府統計を元に外国人への依存度を分析した。依存度が高いのは、宿泊・飲食サービス業で25人に1人、製造業でも27人に1人が外国人だ。なかでも食料品製造業では13人に1人を外国人が占めている。ここ数年で依存度が伸びているのは、東京五輪に向けて特需に沸く建設業だ。90人に1人を外国人が占め、依存度は09年の5倍に増えた。農林業(74人に1人)も3・6倍に増えた。依存度の増加率を都道府県別にみると、沖縄が3・84倍で最大。次いで福岡、鹿児島、北海道と続く。
■<解説>安価な「労働力」に頼る危うさ
 農業も漁業も町工場もコンビニも、日本人だけでは支えられなくなった。政府は新たな在留資格を設ける方針だ。だが外国人労働者の受け入れで一時的に人手不足が解消されても、日本が抱える問題を先送りするだけに過ぎない。最低賃金すれすれで働く外国人を優先し、派遣社員を切る企業も多くなるだろう。仕事を奪われる日本人の側と対立が起きても不思議ではない。神戸大の斉藤善久准教授(労働法)は「低賃金の労働力に頼る日本の産業構造は強まり、生活できない労働者が増える悪循環に陥る」と指摘する。超高齢化が進むなか、外国人が現場を支えたとしても、いずれは母国に帰る。永住権を認めなければ、やがて行き詰まるだろう。では社会保障や日本語教育にかかるコストを、誰がどう負担するのか。国が共生策を示さない現状では、移民に向き合う本質的な議論は封印されたままだ。安価な「労働力」の輸入が生む富は、雇う側に集まるとされる。地方で起きる技能実習生の失踪は、この国の地域格差が背景にある。社会の亀裂を防ぎ、低賃金に甘える産業構造を変えるためにも最低賃金自体の底上げを急ぐべきだ。持続可能性のある「多民社会」の未来をみすえなければ、先には進めない。

*1-3:https://www.agrinews.co.jp/p45553.html (日本農業新聞 2018年10月22日) うま味凝縮 手間要らず 真空パックで温野菜 働く女性支えたい 長崎県雲仙市の会社
 長崎県雲仙市で農産物の生産と加工を手掛ける(株)マルニは、温野菜を真空パックした「ゆで野菜」を時短食材として女性向けに売り込んでいる。主婦の視点で同社の女性農業者が開発した。国産のジャガイモ、ニンジンなどを皮ごとゆでてうま味を凝縮。パックを開ければそのまま使え、調理の下準備が要らない。同社は単身者や働く女性をターゲットに「キャリアウーマン応援野菜」と名付け、販路拡大を進める。使う野菜は、地元雲仙産がメイン。自分の畑以外にも地域の農家5、6戸と連携し、常に安全で安心できる野菜を調達する。豊作時には市場価格が暴落する露地野菜を一定価格で買い取るため、農家側の利点もある。味付けをしていないので、カレーやサラダなど普段の食事の他、そのままつぶせば離乳食にも使える。野菜の味や香り、栄養を残すため、あえて皮付きで加工した。商品は1、2人前の真空パックと使い切りサイズ。未開封なら冷蔵庫で60日間保存できる。ダイコンやジャガイモなど6種類の野菜とスイーツ付きのセットは3800円(税別)。同社のホームページから購入できる。開発した西田真由美さん(56)は農家であり主婦なだけに、女性の忙しさを痛感する。「調理で短縮した時間で本を読んだり子どもと遊んだり、自分の好きなことに使ってほしい」と強調する。

*1-4:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20181018&ng=DGKKZO36619070Y8A011C1EA1000 (日経新聞 2018年10月18日)外国人受け入れ拡大の制度設計を急げ
 政府は外国人労働者の受け入れ拡大に向け、臨時国会に提出する入国管理法改正案などの骨子を示した。新たな在留資格を設け、原則として認めてこなかった単純労働にも門戸を開く。外国人受け入れ政策の転換となる。心配なのは新制度を円滑にスタートできるかどうかだ。新しい在留資格を取得するための能力基準は、まだはっきりしていない。政府は来春の新資格創設をめざしており、時間的余裕は少ない。制度の中身の詰めを急ぐべきだ。一定の日本語力や技能を身につけていれば得られる「特定技能1号」と、より高い能力を条件とした「特定技能2号」の2つの在留資格が新設される。在留期間は1号が最長5年で、熟練者を想定した2号は定期的な審査を経て長期の滞在が可能になる。介護、農業、建設など、多様な分野で人手不足が深刻になっている。日本の成長力の底上げには、その緩和が不可欠だ。本格的な外国人材受け入れへと政府がカジを切ったことは妥当だ。求められるのは在留資格を付与するか否か判定する際、外国人の納得を得られるようにすることだ。透明性の高い制度が、働く場として外国人材に日本を選んでもらうため欠かせない。そのためには新しい在留資格を取得するための日本語能力と技能の試験を整え、合格基準を明確にしなくてはならない。日本語能力の試験は国際交流基金などによるテストが普及しているが、読む力と聞く力の確認に偏っていると指摘される。会話力などをみる民間のテストも取り入れて日本語試験を整備すべきだ。仕事の内容に応じて合格基準を弾力的に定めてもいいだろう。聞く力と話す力が一定程度あれば、就業にあまり支障がない場合も考えられる。技能のレベルをみる試験はもちろん、業種や職種別にきめ細かくつくる必要がある。子弟の就学や医療面の支援など、外国人が生活するための環境整備も急がなければならない。今回、賃金不払いなどの問題が多い技能実習制度は温存され、その見直しは課題として残る。外国人を雇用する企業への監督を強める仕組みが要るだろう。生産年齢人口が減る国は日本だけではなく、外国人材の確保に動く国は多い。外国人が安心して働け、暮らせる環境をつくれるか、日本の本気度が問われる。

<水産業の事例>
*2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20181017&ng=DGKKZO36544400W8A011C1KE8000 (日経新聞 2018年10月17日) 水産資源どう守る(上)乱獲・乱売の発想脱却を、漁獲規制と価値向上急げ 勝川俊雄・東京海洋大学准教授(1972年生まれ。東京大博士(農学)。専門は水産資源学)
<ポイント>
○主要漁業国で日本だけ生産大幅減の予測
○食糧難時代の漁業の仕組みが今なお残る
○消費者に価値伝えるマーケティング必須
 クロマグロやウナギ、サンマなど、我々の食に欠かすことができない水産物が不漁というニュースを頻繁に耳にするようになった。「不漁」という言葉からは、たまたまとれなかったという印象を受けるが、そうではない。日本の漁獲量は何十年も直線的に減少しており、今のまま減り続ければ2050年に漁獲がゼロになるペースである。水産研究・教育機構の調査では、日本沿岸の水産資源の多くは低水準である。漁獲しようにも日本近海には魚がいないのである。1989年に38万人いた漁業者は、17年には15万人まで減少し、その多くは後継者のいない高齢漁業者が占めている。日本だけを見ていると、漁業という産業に未来はないようだが、世界では漁業は成長産業である。国連食糧農業機関(FAO)が主要漁業国の生産量の将来予測をしたところ、先進国・途上国を含めて、養殖を中心に生産が増加するとの予測が得られている。大幅に減らしているのは日本のみである(図参照)。日本の漁獲量の減少要因として、地球温暖化や外国船の影響が引き合いに出されることが多い。世界的には生産は増えているのだから、地球温暖化で日本だけ魚が減るというのは非論理的である。また、沿岸域や瀬戸内海でも水産資源が減少していることから、外国船が問題の本質ではないことがわかる。80年代まで世界一の水揚げを誇った日本の水産業が、なぜ衰退しているのか。歴史を振り返りながら、構造的な問題について論じてみよう。日本の現在の漁業の仕組みができたのは戦後の食糧難の時代である。当時は国家の主権が及ぶのは陸から5キロメートルほどの領海に限られ、その外では好きなだけ魚をとれた。日本は不足する動物性タンパク質を供給するために、官民が協力して積極的に海外漁場を開発した。近場の魚が減れば、船を大きくしてより遠くの漁場へと向かった。流通・販売の事情も全く異なっていた。肉や乳製品は高級品で、日常の動物性タンパク質は水産物しかなかった。高度成長期を通じて人口は増え、水産物は飛ぶように売れた。コールドチェーン(低温輸送網)が未整備で、常温輸送が当然だった。水産物をとにかく消費地まで早く届けることが求められた。戦後の日本漁業が場当たり的に魚をとれるだけとって、市場に並べておくスタイルでスタートしたのは、それが合理的だったからである。そして順調に漁場を拡大し、漁獲量は世界一になり、高い利益を上げた。日本の漁業が輝いていた時代である。その後、漁業を取り巻く状況は大きく変化した。80年前後に各国が200カイリの排他的経済水域(EEZ)を設定し、日本漁船は海外の漁場から次々に追い出された。また途上国の漁船にコストで太刀打ちできなくなり、公海漁場でも勢力を縮小させた。消費構造にも変化があった。経済的に豊かになり、肉や乳製品などが庶民の手の届くようになった。バブル期前後は日本の魚価が世界一高く、海外から水産物が押し寄せた。日本人の水産物の消費量は増加し、01年に1日当たり110グラムに達した。その後は日本経済の停滞と世界的な魚価の高騰で、輸入は減少に転じた。国産魚も輸入魚も減少したために、消費量は16年に67グラムまで減った。国産魚の減少を放置すれば、食卓から水産物が減っていくだろう。漁業の衰退を食い止めるために何をしたらよいだろうか。今後、他国のEEZや公海で漁獲を増やす余地はない。自国のEEZから安定的な水揚げを得る漁業に切り替える必要がある。そのためには次世代を産む親魚を十分に確保できるように、漁獲量を制限しなくてはならない。その上で利益を伸ばすには、水産物の価値を高める必要がある。鮮度処理や加工による付加価値づけや、消費者に価値を伝えるためのマーケティングが求められている。EEZ時代の漁業のあるべき姿は、十分な親魚を残し、とった魚を高く売ることである。そのためにやるべきことは、資源管理と付加価値づけの2点である。日本以外の先進国では、ほぼ全ての商業漁獲対象の魚種に漁獲枠が導入されている。例えば米国は約500魚種、ニュージーランドは約100魚種に漁獲枠を設定している。ノルウェーのように国を挙げて海外市場の開拓やマーケティングに努めている国もある。80年代には、どこの国の漁業も現在の日本と大差のない状態であった。40年かけて資源管理と付加価値づけに取り組んで、漁業を成長産業に転換したのである。日本で国が漁獲枠を設定しているのは8魚種にすぎない。ホッケ、ブリ、カツオ、ヒラメなどの主要魚種もとりたい放題だ。その上、水産資源の持続性を無視して、過剰な漁獲枠が設定されているケースも多い。例えば資源の減少が懸念されるサンマの場合、昨年の漁獲量は7万6千トン、一昨年の11万トンに対して、漁獲枠は年26万4千トンであった。漁獲量の2倍以上の漁獲枠が設定されているのだから、漁獲規制として機能していないことは明白である。日本でも漁獲を規制すれば、短期的に水産資源が回復する可能性が高い。福島県では11年以降、原発事故の影響により、試験操業以外の漁獲が停止した。福島が主漁場だったヒラメの年間の漁獲率(漁獲量を資源量で割った値)は、震災前の6割から、震災後は1割へと減少した。その結果、ヒラメの資源量は震災前の8倍に増えている。漁獲率を下げたことで、魚が増えて、震災前よりも多くとれるようになった。底引き網を引く時間も少なくなり、燃油のコストが軽減された。そのうえ単価の高い大型のヒラメが安定して漁獲できるようになり、収益性は劇的に改善された。しかし、福島県海域で漁獲が全面再開されて、震災前のように全力で魚をとれば、数年で震災前の水準に戻るだろう。漁業が継続的に利益を生む状態を維持するには、漁獲規制が不可欠なのだ。漁獲規制に加えて、水産流通のあり方も見直す必要がある。安心安全を担保するためにトレーサビリティー(生産流通履歴)を確立し、バリューチェーン(価値の連鎖)を構築して、水産物の価値を消費者に伝えられるようにしなくてはならない。日本のEEZの広さは世界第6位で、その中に世界屈指の好漁場がある。資源管理さえすれば、安定して高い漁獲を上げることができる。また、世界に誇る魚食文化や加工技術があるので、魚の付加価値づけもできるはずである。日本の漁業は高い潜在力を持っているのだが、それが全く発揮できない漁業の現状がある。これを改めない限り、日本漁業に未来はない。日本でも、政治主導で漁業を改革する動きが活発化しつつある。今年1月の安倍晋三首相の施政方針演説では、漁獲量による資源管理を導入し、漁業の生産性を向上するという方針が示された。その後の規制改革推進会議では、漁獲規制による資源回復、水産物流通におけるトレーサビリティーの確保、水産物の付加価値を高める取り組みなどが、具体的に議論されている。他国の成功から謙虚に学び、日本にあったやり方で資源管理と付加価値づけに取り組んでいけば、日本の水産業が長いトンネルを抜ける日はそう遠くないだろう。

<イスラム文化と外国人労働者>
*3-1:https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2016/09/isis-80.php (ニューズウィーク日本版ウェブ 2016年9月8日) イスラム女性に襲われISISがブルカを禁止する皮肉
 ISIS(自称「イスラム国」、別名ISIL)の支配地域に暮らすイスラム教徒の女性にとって、ドレスコードは一つしかない。全身を覆うブルカだ。公共の場でブルカを着用しなければ見せしめに罰せられ、最悪の場合、処刑される。だが今後は、逆にブルカや顔を隠すベールを禁止せざるを得なくなるかもしれない。イラン国営の衛星放送「アルアラム」が伝えた。最近はフランスで、イスラム教徒の女性が着る肌の露出を控えた水着「ブルキニ」着用の是非をめぐる論争が過熱しているが、今度はISISが、イスラム女性が顔を隠すベールの着用を禁止しようとしているという。きっかけは、ブルカがISISに対するテロ攻撃に一役買う事件が起きたことだ。イラクの英語ネットメディア「イラキ・ニュース」の報道によると、事件は9月5日にイラク北部モスルの南方にあるシャルカットの検問所で発生した。ベールで顔全体を覆った一人の女が、隠し持っていたピストルでISISの戦闘員2人を撃ち殺したのだ。ブルカの着用は、厳格なイスラム国家の樹立を目指すISISにとっては絶対のはず。それが治安上の理由で例外を認めなければならないとは実に皮肉だ。今後も町の中ではブルカの着用が強制されるが、モスルにある治安施設や軍の検問所では着用が禁止される。モスルは2014年6月にISISが制圧したが、イラク軍や米軍主導の有志連合による空爆で劣勢に立たされている。
●ヨーロッパのテロ対策
 治安維持の問題としてブルカなどの着用を禁止する議論は、もともとヨーロッパの国々が始めたことだ。ヨーロッパで増え続けるイスラム教徒や、ISISに感化されたローンウルフ(一匹狼)によるテロが相次いだことに、各国政府が警戒を強めているからだ。国として顔の全体を隠すベールの着用を禁止したのはフランスとベルギーだけだが、イタリアやスイスでも各自治体の判断で禁止できる。移民に寛容な政策をとってきたドイツでも、相次ぐテロを背景に、ブルカ着用の禁止を支持する世論が高まりつつある。最近ではやはりフランスで、肌を露出できないイスラム女性のための水着ブルキニを禁止する動きが広がって、人種差別と批判された。ISISの支配下で女性がブルカ着用の義務から完全にブルカ着用を全面的に免除するよう方針転換するとは思えない。だが8月上旬にISISから解放されたばかりのシリア北部マンビジュの様子を伝えた映像や写真から、ISIS撤退後のモスルの光景は想像がつく。女性たちは堂々と顔を出して解放を喜んでいた。

*3-2:https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2016/08/post-5721.php (ニューズウィーク日本版ウェブ 2016年8月26日) フランス警官、イスラム女性にブルキニを「脱げ」
 フランス・ニースの海岸で警官がイスラム女性を取り囲み、服を脱がせる写真が話題になっている。今フランスでは、顔と手足以外の全身を覆うイスラム風の水着ブルキニの着用を禁止する自治体が相次ぎ、20カ所以上にのぼっている。ニースもそうした海岸の一つだ。だが、何も悪いことをしていない女性が武装した警官に命じられて服を脱ぐ光景は、まさにブルキニ禁止の理不尽さを象徴する光景。ロンドンのフランス大使館前ではブルキニ禁止に抗議するデモも行われた。そもそもなぜブルキニがだめなのか? フランスが既に禁じているイスラム女性のスカーフ、ブルカやニカブと違い、ブルキニは顔を覆わない。ブルキニがだめならダイビングスーツもだめになる。尼僧はどうなんだ、という声もある。ブルキニは、公の場で肌や髪を出せないイスラム女性のために考え出された水着に過ぎない。「フランスの価値観に反する」(バルス首相)、「公共の秩序を乱す」(ニース市長)などと理屈をいくら言われても、イスラム差別の口実ではないか、と思う。警官の写真で、それが確信に変わった人も多かったのではないか。

*3-3:http://digital.asahi.com/articles/ASJ913W06J91UHBI00K.html?iref=com_alist_8_02(朝日新聞2016年9月2日)「ブルキニは女性を解放」 デザイナーが込めた思いとは
 フランスの自治体が禁止して議論を呼んだイスラム教徒の女性向け水着「ブルキニ」。その「生みの親」であるオーストラリア人女性のアヒーダ・ザネッティさん(49)が朝日新聞の取材に応じ、「宗教を誇示するものではなく、女性を解放するものだ」と訴えた。ザネッティさんは、シドニー郊外でイスラム女性向けブティックを営む。レバノン生まれで2歳で豪州へ移住したイスラム教徒だ。きっかけは約13年前のバスケットボールに似たネットボールの試合だった。小学生のめいが長ズボンにハイネックのシャツ、頭にスカーフの姿で、暑さに真っ赤な顔でプレーしていたのを見て「信仰と豪州のライフスタイルが両立する服をつくろう」と決心した。フード付きのシャツにするなどして髪や体の線を見せずに機能的なユニホームをつくり、次に取り組んだのが水着だった。イスラム女性は「普段と同じ服で海へ入ってぬれるか、浜辺で足をひたすくらいしかできない」状況だったからだ。イスラム女性服のブルカと水着のビキニから「ブルキニ」と名付け、商標登録。9千~1万5千円程度で2004年からオンライン販売を始め、08年からこれまでに世界中で約70万枚を売り上げたという。フランスの複数の自治体が「宗教を誇示し、治安を乱す」などの理由で禁止したことには「悲しく困惑している」と話す。購入者の半分以上は非イスラム教徒で、皮膚がんや日焼けが心配な人や体の線を出したくない女性にも需要が高く、「イスラム女性を解放したいと工夫し、非イスラム教徒にも支持されている」と訴えた。豪カトリック大・宗教・政治・社会研究所のジョシュア・ルース所長は「1970年代に白豪主義に終止符を打ち、政教分離や世俗的な意識が強い豪州らしい発明品だ。豪州は、政府の戦略的な移民受け入れや強い社会福祉ネットで多文化主義に成功してきたが、直近の選挙では極右政党が躍進するなど懸念材料もある。仏のようにならないためには政治に意志と指導力が必要だ」と話す。

<就業者数が増えているのに少子化が問題?>
PS(2018年10月25日追加):*4に「①医療・介護などの歳出膨張をどう抑え、2019年10月の消費税率10%に引き上げ後の財政健全化の具体策を明らかにしてもらいたい」「②政府は外国人労働者の受入拡大に向けた入国管理法改正案を今国会に提出する」等が記載されている。
 しかし、①の医療・介護などの歳出膨張を抑える方法は、i)高齢者を就業させれば健康を維持できる期間が延び、医療・介護の支え手にもなること ii)再生医療や免疫療法等で病気を治せば、医療費・介護費を減らせること iii)医療保険で他国より高い値段で薬品購入するのをやめさせること iv)女性や外国人労働者の就業が増えれば、医療保険・介護保険の支え手が増えること v)役所もぼーとしていないで税外収入を得ればよいこと などがあり、現状維持を前提として「財政健全化=消費税増税」などと国民負担の増加のみを考えている点が浅い。
 つまり、財政健全化には、増税以外にまず無駄な歳出を徹底してなくすことが必要で、国に国際基準に基づいた公会計制度を導入するのがその第一歩になる。なお、保育所の充実や教育・保育の無償化は、少子化対策よりも質の高い人材の割合を増やすために必要だと考える。

*4:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20181025&ng=DGKKZO36895030V21C18A0EA1000 (日経新聞 2018年10月25日) 少子高齢化を克服する具体策が聞きたい
 自民党総裁選で勝利した安倍晋三首相は、あと3年の任期でいったい何を成し遂げるのか――。24日に召集された臨時国会の最大の焦点はそこにある。首相は衆参両院本会議の所信表明演説で「激動する世界を、そのど真ん中でリードする日本を創り上げる。次の3年間、私はその先頭に立つ決意だ」と強調した。重点政策に掲げたのは、国土強靱(きょうじん)化、地方創生、外交・安全保障の3つの柱だ。今国会で政府は西日本豪雨や北海道地震に対応する2018年度補正予算案の早期成立をめざす。迅速な復旧作業は当然だが、公共事業費のバラマキを避けるには災害に強い都市の将来像とセットで議論していく必要がある。地方創生では「全世代型社会保障」「生涯現役の雇用制度」「即戦力となる外国人材の受け入れ」に言及した。首相は「少子高齢化という我が国最大のピンチもまた、チャンスに変えることができるはずだ」と訴えた。安倍政権がめざす社会保障改革の中身はまだ不明確だ。医療や介護などの歳出膨張をどう抑え、19年10月に消費税率を10%に引き上げた後に財政健全化にいかに道筋をつけるか。具体策を早く明らかにしてもらいたい。政府は外国人労働者の受け入れ拡大に向けた入国管理法改正案を今国会に提出する。野党は就労を目的とした新たな在留資格について「事実上の移民政策だ」と指摘し、対決姿勢を強めている。介護、農業、建設分野などの人手不足を緩和し、成長力を底上げしていく方向性は正しい。同時に来日した外国人の生活を安定させて治安の悪化を避ける環境整備などについて、与野党で議論をもっと深める必要がある。首相は憲法改正に関して「政党が具体的な改正案を示すことで、国民の理解を深める努力を重ねていく」と強調した。自民党は憲法審査会に9条への自衛隊明記を含む改憲4項目の考え方を示す方針だ。幅広い合意形成には、他党の意見に耳を傾ける謙虚な姿勢が大事だろう。2日に発足した第4次安倍改造内閣では、新閣僚らの「政治とカネ」をめぐる疑惑が相次いで報じられた。野党は森友、加計両学園問題も引き続き追及していく構えだ。政府・与党は政治不信を招かないように、事実関係を国会で丁寧に説明していく責任がある。

<外国人労働者の差別はよくないこと>
PS(2018年10月26日追加):*5-1のように、自民党は、法務部会で治安悪化や環境整備の遅れに対する懸念の声が相次いで、「①期限なく家族の帯同を認めるのは話が違う」「②まず日本人の賃金を上げるべき」「③長期的な問題をしっかり制度設計すべき」「④外国人の権利について議論を深めることが大事」「⑤外国人を一元的な番号で管理すべき」などの反対意見により、外国人労働者受入拡大の新たな在留資格創設の部会了承を29日以降に見送るそうだ。
 しかし、②の気持ちはわかるものの、日本は人材鎖国をして産業を海外に追い出してきたし、①の「家族の帯同を認めない」は、*5-3のようなトランプ大統領批判をしながら言う人は自己矛盾だ。また、野党の移民・難民受け入れ反対も、*5-2の日本国憲法前文の中の「いずれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならない」に反する。さらに、技能実習生の労働形態には、18条の「何人も、いかなる奴隷的拘束も受けない。又、その意に反する苦役に服させられない」に反する部分がある。そのため、③④は尤もだが、素早く手を打つ必要があるため、具体的な問題は走りながら考えた方が効果的だと思う。また、⑤については、メディアの報道と異なり、外国人の犯罪率が日本人よりも高いという統計はないため、差別はよくない。
 そして、イスラム教の問題も、入国時に日本国憲法をしっかり教えておけば、20条に「何人も信教は自由だが、宗教上の行為、祝典、儀式又は行事に参加することを強制されない」ということが明記されているので、解決できるのではないかと考える。従って、私は、日本国憲法の内容は先進的で素晴らしいと思う。

*5-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20181026&ng=DGKKZO36923210V21C18A0PP8000 (日経新聞 2018年10月26日) 外国人の受け入れ拡大 自民、法案了承先送り 法務部会
 自民党は外国人労働者の受け入れ拡大に向けた新たな在留資格を創設する出入国管理法改正案の部会了承を29日以降に見送る。当初は26日の了承を目指していたが、法案を審議する法務部会で治安悪化や環境整備の遅れに対する懸念の声が相次いだため慎重に議論することとした。岸田文雄政調会長や長谷川岳法務部会長が25日、党本部で協議して先送りを決めた。部会での了承を急げば自民党を支持する保守層から反発が出かねないと判断した。来年夏の参院選をにらんで丁寧な審議を強調する。協議には小泉進次郎厚生労働部会長も出席し、厚労部会でも同法案を議論することを確認した。法務部会が24、25両日に開いた関係団体へのヒアリングでは、出席議員から在留資格の新設への賛否が交錯した。反対意見では「期限がなく家族の帯同を認めるというのは話が違う」「まずは日本人の賃金を上げるべきだ」などの意見が出た。「長期的な問題をしっかり制度設計するべきだ」「外国人の権利について議論を深めることが大事だ」「外国人を一元的な番号で管理すべきだ」などの声もあがった。入管法改正案は国内の人手不足を解消するため(1)滞在期間が最長5年で家族の帯同を認めない(2)熟練した技能を証明すれば滞在期間の更新と家族の帯同を認める――との2種類の在留資格を新設する内容だ。臨時国会で同法案を成立させ、来年4月から新制度の運用を始める方針だ。公明党も25日の会合で、入管法改正案に関して議論した。法案の了承は来週以降になる。野党は同法案を「移民法案」と批判しており、今国会で最大の対決法案になる見込みだ。

*5-2:http://www.houko.com/00/01/S21/000.HTM (日本国憲法 抜粋) 
前文
 日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し、われらとわれらの子孫のために、諸国民との協和による成果と、わが国全土にわたつて自由のもたらす恵沢を確保し、政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意し、ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する。そもそも国政は、国民の厳粛な信託によるものてあつて、その権威は国民に由来し、その権力は国民の代表者がこれを行使し、その福利は国民がこれを享受する。これは人類普遍の原理であり、この憲法は、かかる原理に基くものである。われらは、これに反する一切の憲法、法令及び詔勅を排除する。日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであつて、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めてゐる国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ。われらは、全世界の国民が、等しく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する。われらは、いづれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならないのであつて、政治道徳の法則は、普遍的なものであり、この法則に従ふことは、自国の主権を維持し、他国と対等関係に立たうとする各国の責務であると信ずる。日本国民は、国家の名誉にかけ、全力をあげてこの崇高な理想と目的を達成することを誓ふ。
第18条 何人も、いかなる奴隷的拘束も受けない。又、犯罪に因る処罰の場合を除いては、
      その意に反する苦役に服させられない。
第20条 信教の自由は、何人に対してもこれを保障する。いかなる宗教団体も、国から
      特権を受け、又は政治上の権力を行使してはならない。
    2 何人も、宗教上の行為、祝典、儀式又は行事に参加することを強制されない。
    3 国及びその機関は、宗教教育その他いかなる宗教的活動もしてはならない。

*5-3:https://www.jiji.com/jc/article?k=2018062001291&g=int (時事 2018/06/20) 英首相、米移民政策を批判=トランプ氏に問題提起へ
 メイ英首相は20日、議会で、不法移民の親子を引き離して収容するトランプ米政権の政策に関し、「子供がおりのような場所に入れられている画像に深く心をかき乱される。これは間違っており、同意しない。英国の(移民に対する)アプローチではない」と批判した。トランプ大統領は来月訪英する予定。メイ首相は「米国に不同意である時はそう伝える」と述べ、首脳会談でこの問題を取り上げる考えを示した。トランプ氏の訪問を拒否すべきだという声も上がっているが、首相は「大統領と議論するのは正しいことだ」と一蹴した。

<原発に経済合理性はないこと>
PS(2018年10月28日追加): *6-1のように、伊方3号機が再稼働したが、原発は温排水で水産業に悪影響を与えているだけでなく、*6-2のように、原発事故後、放射性物質の検査項目について合意していないため日本産食品に厳しい輸入規制を課したり、福島・宮城・茨城など10都県産の食品全部を輸入停止にしたりしている国は多い。日本国民も放射性物資の検査基準・検査項目・検査方法に合意はしていないが、これらの食品は国内では販売されており、原発は多額の被害を出して国民に迷惑をかけながら、保障もしていないのが実情なのである。
 一方、*6-3のように、北海道地震に伴う全道停電の間も、太陽光パネルを設置している家庭の多くは運転モードを切り替えることで電気を使えたため、災害時非常用電源としても太陽光発電の有効性が注目された。しかし、*6-4のように、九電は、再度、再エネ事業者に出力制御実施を要請し、その理由を、相変わらず「電力の需給バランスを整えることで大規模停電を防ぐため」と説明している。
 ただ、*6-5のように、太陽光など再エネ発電による電力価格は現在は高すぎるため、自家消費した残りの電力を販売するように導くため、*6-6の中国電力の単価を参考にすれば、再エネ電力の販売単価を高圧TOUAの最安値である9円68銭/kWh以下(例えば5~9円/kWh)に設定すれば、経済合理性から再エネを利用する企業が増える。そうすると、*6-7のような日本一の養殖ノリ生産地でも、遠浅の海を利用して支柱に風力発電機をとりつけてノリ養殖を行い、ハイブリッドで稼ぐことが可能になりそうだ。

  
2018.10.27東京新聞    有明海の海苔養殖(種付け時、成長後、製品完成)

(図の説明:有明海は日本一のノリの生産地で、ブランド化された右の写真の「有明海一番」は特に厳選された製品だが、ブランド品でなくても香りが良くて美味しいことは間違いなく、養殖の成功例だ。しかし、水産業者の所得向上には、風力発電を設置して水産業とハイブリッドで稼ぎ、燃料は輸入重油から再エネ由来・自家発電の電力や水素に変更するのがよいと思う)

*6-1:http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2018102701001684.html (東京新聞 2018年10月27日) 伊方3号機再稼働、臨界へ 愛媛、30日に発送電開始
 四国電力は27日未明、伊方原発3号機(愛媛県伊方町、出力89万キロワット)を再稼働させ、原子炉内で核分裂反応が安定的に持続する「臨界」に向け作業を進めた。順調に進めば臨界に達するのは27日夜。30日に発電と送電を始め、11月28日に営業運転に移る見通し。稼働中の原発は関西電力高浜4号機、九州電力川内1、2号機など全国で計8基となった。27日午前0時半、燃料の核分裂を抑えていた制御棒を引き抜き、原子炉を起動させた。臨界に達した後は、蒸気でタービンを回して発送電を開始する。出力を徐々に上げて調整運転を続け、原子力規制委員会の最終検査を経て営業運転に移る。

*6-2:https://www.agrinews.co.jp/p45615.html (日本農業新聞 2018年10月27日) 原発事故で規制の日本食品 輸入緩和を検討 中国
 安倍晋三首相は26日、北京で開かれた日中首脳会談で、中国側が日本産食品に対する輸入規制の緩和を検討する考えを示したことを明らかにした。中国は、東京電力福島第1原子力発電所事故に伴い、10都県産の全ての食品の輸入を停止している。今後両政府間で調整し、規制緩和の対象となる品目など具体的な内容を詰めるため、どこまで緩和されるかは、不透明な状況だ。安倍首相は同日、李克強首相との会談後、「東日本大震災以来続いてきた日本産食品に対する輸入規制について、中国側から、科学的な評価に基づき緩和することを積極的に考える旨、表明があった」と述べた。今後の規制緩和を見据え「中国の皆さんに日本が誇るおいしい農産物をもっと堪能していただきたい。活発な貿易は日中両国民の絆をさらに深める」とも強調した。同国は2011年の原発事故後、日本産食品に厳しい輸入規制を設定。福島、宮城、茨城など10都県産の食品全てを輸入停止の対象にしている。10都県以外も野菜や果実、牛乳、茶葉などは放射性物資の検査項目については両国間で合意していないため、日本からの輸出はできていない。

*6-3:http://qbiz.jp/article/141836/1/ (西日本新聞 2018年10月4日) 住宅太陽光を非常電源に 北海道地震、全域停電で威力 国「自家消費の手順確認を」
 北海道地震に伴う全域停電(ブラックアウト)の間でも、太陽光パネルを設置している家庭の多くでは、運転モードを切り替えることで電気を使えていたことが分かり、災害時非常用電源として太陽光の有効性が注目されている。経済産業省資源エネルギー庁は「平時から各家庭で操作方法を確認し、非常時に使えるように備えてほしい」と呼びかけている。一般社団法人太陽光発電協会(東京)が地震後、道内の家庭用太陽光パネル設置者を対象に非常時の活用についてアンケートを実施。2日までに367世帯から回答があった。その結果、発電した電気を自家消費する「自立運転に切り替えた」としたのは、82%の302世帯。一方、活用しなかった世帯は「そもそも自立運転機能を知らなかった」などと答えたという。電力会社の配電線を介さずに太陽光の電気をそのまま使えるようにする自立運転にすると、日照時間帯に限って非常用コンセントで最大1500ワットが使用可能となる。冷蔵庫や携帯電話の充電にはまず支障がない発電量だ。アンケートには「テレビで情報を得たり、友人の携帯電話の充電もできたりした」といった声が寄せられたという。固定価格買い取り制度の効果もあり、家庭用太陽光パネルの設置は全国で増加。経産省によると、九州での導入件数は2017年末現在で約34万5千件に上っている。自立運転への切り替えは基本的に(1)ブレーカーを落とす(2)自立運転のスイッチを入れる−という手順だが、詳細はメーカーによって異なる。このため識者からは「非常用電源としての活用を広げていくためには、国が手順の統一化を検討するべきだ」との指摘が出ている。

*6-4:http://qbiz.jp/article/143132/1/ (西日本新聞 2018年10月27日) 九電28日に出力制御実施も
 九州電力は26日、太陽光発電など再生可能エネルギー事業者に一時的な稼働停止を求める「出力制御」を、28日に九州本土で実施する可能性があると発表した。天気予報などを基に27日夕までに有無を判断する。27日は実施を見送る。28日は好天で太陽光発電量の増加が見込まれる一方、過ごしやすい気温で冷暖房の使用が控えられ、休日で事業向け電力需要が減少すると見ている。出力制御は、電力の需要と供給のバランスを整えることで大規模停電を防ぐための措置。九州本土ではこれまで13日以降、週末に計4回実施している。

*6-5:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20181027&ng=DGKKZO36980350W8A021C1EA4000 (日経新聞 2018年10月27日) 太陽光買い取り、新価格の公表を 経産省、固定制度終了迫り
 太陽光発電を決まった価格で買い取る制度が2019年から順次終わるのを受け、経済産業省は大手電力に次の買い取りメニューを公表するよう求めた。買い取りが無償になるとの誤った情報で、自家発電用の蓄電池を売るといった悪質な商法が広がる恐れがあるためだ。混乱が広がるのを防ぐため、消費者庁と連携して対策を急ぐ。住宅の屋根などに置く太陽光パネルによる発電を長期間、固定した価格で買い取る制度は09年11月に始まった。使い切れず余った電気を電力会社に売る仕組みだ。10年目となる19年に初めて期限を迎える。対象は19年の11月と12月だけで53万件に達し、23年までに165万件となる見通しだ。制度が終わると、電力を自宅で使うか、新たに電力会社が示す価格で売ることになる。風力などとあわせて固定価格買い取り制度(FIT)となった12年度の価格は1キロワット時あたり42円だった。制度終了後の価格はほとんど公表されていない。経産省は電力会社に対し、期限が迫る家庭に早急に通知することと、大手は遅くとも19年6月末までに新たな価格を示すことを要請した。

*6-6:http://www.energia.co.jp/elec/b_menu/h_volt3/pricelist_sangyou.html (中国電力の事例 抜粋)
■高圧電力A:電力量料金は,昼夜間の時間帯を区分しない標準的なメニュー。
①基本料金     1,220円40銭 /kWh
②電力量料金
   ・夏季      14円62銭 /kWh
   ・その他季    13円37銭 /kWh
■高圧TOUA:•高圧電力Aに比べ,昼間は割高,夜間や休日等(※注)は割安な電力量料金を設定したメニューで、夜間・休日等に使用量の多いお客さまにおすすめ。
①基本料金     1,220円40銭 /kWh
②電力量料金
  ピーク時間     20円61銭 /kWh
  昼間時間
   ・夏季      17円13銭 /kWh
   ・その他季    15円97銭 /kWh
   ・夜間時間     9円68銭 /kWh

*6-7:http://qbiz.jp/article/143014/1/ (西日本新聞 2018年10月25日) 有明海で養殖ノリの種付け解禁 佐賀県、16年連続首位狙う
 有明海の秋の風物詩となっている養殖ノリの種付け作業が25日、福岡、佐賀、熊本の3県で解禁となり、穏やかな海面を鮮やかなノリ網が彩った。ノリの初摘みは11月下旬ごろを予定。佐賀県有明海漁協は今シーズンの売上高231億円、生産量18億5千万枚を目標に掲げ、いずれも16年連続となる日本一を目指す。佐賀市の広江漁港では25日未明から、漁船が長さ約18メートル、幅約1・5メートルの網を載せ、次々と出航。沖合に到着した漁師らは、ノリの種付きのカキ殻がぶらさがった網を、海中にささる支柱に取り付けて丁寧に広げ、作業を終えると、お神酒を手にノリの成長を祈った。同漁協の徳永重昭組合長は「今年は、台風で支柱が倒れるなどの影響もあったが間に合った。連続して日本一が取れるよう、頑張っていきたい」と話した。

<プラスチック革命>
PS(2018年10月29日追加):*7-2のように、マイクロプラスチックが世界の塩の9割で検出されたり、海洋生物に被害を与えたりして海洋汚染が深刻化しているという問題について、*7-1のように、プラスチック製のペットボトル・弁当容器・惣菜容器・ストロー・レジ袋などのプラスチック製品の有料化や使用禁止を言い立てているメディアは多い。しかし、これは「環境保護には不便に耐えることが必要」と主張しすぎて、環境保護を煙たい存在にしている。
 実際には、レジ袋やストロー等の使用量が多くても、使用後にゴミ箱に捨てて燃やしていれば何ら問題はなく、「ゴミ箱(透明な袋を設置する形式のものもある)を置かない」「ゴミ箱があってもそこに捨てない」など、(津波で流されたもの以外は)人のマナーの悪さが問題なのである。環境省の政策担当者や記者は、布製のマイバッグに、肉・魚・冷たいものなどを直接入れると水分が生じた際に濡れるので、買い物の度に洗濯しなければならないことをご存知か?
 それよりも、プラスチック製品は原油から作るため、化石燃料を使わなくなれば原料も減り、日本なら竹や木材から強い紙やプラスチックを作って代替することが必要になるが、紙であっても使い終わったらゴミ箱に捨てるのが当然のマナーだ。
 そして、ペットボトルその他のプラスチックは再利用できる資源だが、住民に不便がないようにしながら(ここが重要)、きちんと分別して再利用できるようにしている自治体は殆どなく、ゴミを中国やタイなどに輸出していたとは論外だ。そして、今度は、生活を不便にしたり、家事担当者の負担を重くしたりすることしか考えつかないのは、いくら何でも愚かすぎる。
 なお、プラスチックをリサイクルするには、回収して洗浄し原料の形にしなければならないが、向島などの国境離島ではない過疎の離島にリサイクル工場と住居を作り、技術を持たない難民を、*7-3の外国人労働者として受け入れる方法もある。そうすると、外国で発生したプラスチックごみの再処理までできるかも知れないが、受入人数の総量を規制するには必要人数を事前に把握しなければならないので、次世代の人口割合も変わらないようにするためには、「日本に来てから産める子どもの数は○人以下」とするなどの制限をつけた方がよいだろう。その理由は、日本人の出生率が1.5のところに出生率6の民族が入ると、次世代ではその民族の割合が日本人の4倍になるからで、これが米国が経験していることなのである。

*7-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20181029&ng=DGKKZO37050570Z21C18A0PE8000 (日経新聞社説 2018年10月29日) プラスチックごみ削減へルール明確化を
 環境省はスーパーやコンビニエンスストアのレジ袋の有料化を義務付ける方針だ。廃棄されて海を汚染し、魚介類を通して人体に悪影響を及ぼす懸念もあるためだ。ペットボトルなどを含め、プラスチックごみ全体の削減につながる実効性のある制度が必要だ。レジ袋の使用量は国内で年間450億枚と推定される。スーパーの多くは既に自主的に有料にし、レジ袋を辞退する買い物客が半数を超えるという報告もある。一方、コンビニでは有料化が進んでいない。少量の飲食物を買うのに適した、小さく折り畳めて持ち歩きやすいマイバッグの普及など、工夫の余地はある。消費者の意識改革も促したい。もっとも、レジ袋は国内で廃棄される使い捨てプラスチック製品の一部を占めるにすぎない。ペットボトルや弁当容器など多様な製品を減らすにはメーカーの協力が欠かせない。たとえば、使い勝手の良さから種類が増えているペットボトル飲料の削減は企業の商品戦略に直結する。使用済みペットボトルの回収・再利用も課題を抱える。市町村やメーカーが回収するが、3割程度は中国などに輸出されている。再利用の処理の過程で一部が海に流出し、汚染源となっている。中国は最近、廃プラスチックの輸入を禁じた。タイなども規制に動き、使用済みペットボトルは行き場がなくなりつつある。環境省は2030年までに、使い捨てプラスチック容器や包装、レジ袋などの排出量を25%減らす目標を掲げた。しかし、どの時点と比べるかなどは曖昧で、ルールの明確化が欠かせない。アジア諸国の削減も支援するというが、それには、ペットボトルなどの処分を国内で完結させるしくみが必要だ。再利用しきれないプラスチックを高温で焼却処分し、熱を回収して発電に使う最新設備などの普及を急ぎたい。植物原料のプラスチックなど代替品の活用も重要だ。過去に多数の技術開発計画を実施しながら国内で事業化が進んでいないのはなぜか。課題を洗い出し、利用を増やす方法を探るべきだ。1人当たりの使い捨てプラスチック使用量が世界最多の米国と2位の日本は、6月の主要7カ国(G7)首脳会議で削減目標を盛り込んだ「海洋プラスチック憲章」に署名しなかった。国際社会の厳しい視線も忘れてはならない。

*7-2:http://www.tokyo-np.co.jp/article/economics/list/201810/CK2018102802000126.html (東京新聞 2018年10月28日) 世界の塩9割で微小プラを検出 39種調査
 海洋汚染が深刻化している微小なマイクロプラスチックが世界各地の塩から見つかったと、韓国・仁川大と環境保護団体グリーンピースのチームが発表した。二十一の国・地域から集めた三十九種のうち九割から検出され、アジアの国で含有量が多い傾向にあった。日本の塩は調査対象外。これまで各地の水道水や魚介類などからの検出も報告されており、世界で食卓の微小プラスチック汚染が進んでいる恐れがある。チームは「健康と環境のため、企業は率先して使い捨てプラスチック製品の製造や使用を減らす努力をするべきだ」と強調した。大きさ五ミリ以下のマイクロプラスチックは海などに大量に存在し、表面に有害な化学物質を吸着する性質がある。人の健康への影響は詳しく分かっていないが、日本や欧州など八カ国の人の便からも見つかっている。チームは米国や中国、オーストラリア、ブラジルなど二十一の国・地域の海塩や岩塩、塩湖の塩計三十九種を調べ、三十六種からマイクロプラスチックを検出した。塩一キロ当たりに含まれる数はインドネシアの海塩が突出して多く、約一万三千六百個だった。台湾の海塩の約千七百個、中国の海塩の約七百個と続き、上位十種のうち九種をアジアが占めた。一方、台湾の海塩は複数調べており、種類によってはマイクロプラスチックがなかった。フランスの海塩と中国の岩塩も検出されなかった。

*7-3:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO3697876026102018EA3000/ (日経新聞 2018/10/27) 入管法改正案、異論相次ぐ 自民部会 29日に再協議
 自民党法務部会(長谷川岳部会長)は26日、外国人労働者受け入れ拡大に向け、新たな在留資格を創設する入国管理法の改正案をめぐって議論した。出席者からは移民政策や治安の懸念、受け入れ人数の規模の明示や総量規制の必要などを問う意見が出たため、法案の了承を29日以降に見送った。26日の部会では業種別の運用方針を党の関係部会で議論し、地域や現場の声を政府が反映することなどを求める決議案を示した。この日の議論では、更新や家族の帯同が可能な特定技能2号の資格をめぐり「事実上の移民政策ではないのか」「抜本的な改正を考えているなら通常国会でやるべきだ」といった指摘や、人手不足の解消という経済的な観点だけでなく「治安の悪化時には受け入れを停止できるよう法案に盛り込むべきだ」との慎重論も出た。法務省は外国人の受け入れ規模は「業種別の方針策定と合わせ、見込み数を含めて将来の展望を示す」と説明するにとどめた。出席者からは「人手不足を理由に法律を作る場合、人手不足を証明しなければいけない」との意見も出たほか「事業者は外国人を雇う際にきちんと社会保険に入る仕組みにしてほしい」「外国人の親族の医療費や年金受給などの問題も検討すべきだ」との指摘もあった。政府は11月2日にも改正案を閣議決定し、臨時国会に提出することをめざす。

<女性の視点を無視するとビジネスチャンスを失うこと>
PS(2018年11月1日追加):外国人旅行者が多くの化粧品を買っていくことを悪く言うメディアが多く、他国に対してどうも生意気だと思っていたが、対中輸出するため日用品大手が国内で増産投資を始めたのはよいことだ。何故なら、日本産の化粧品・ヘアカラー等々は、人種の近いアジア人に適しており、現在はインターネット販売もできるため販売可能性が高いからだ。
 そのような中、*8-2のように、吸い口を付けるだけで飲ませることができる乳児用液体ミルクは、女性からは「常温で飲める」「衛生的」という理由で国内製造を求める声が続出しているにもかかわらず、①開発費用が高い ②牛乳の消費拡大に繋がりそうにない などの理由で二の足を踏まれているそうだ。しかし、乳児用液体ミルクは、育児の省力化だけでなく、水道水のよくない地域では粉ミルクより衛生的で健康によい上、アジアも視野に入れれば、この要望はもっと高くなって牛乳の消費拡大に繋がると思われる。そして、この際は吸い口も消毒済みで使い捨てのものを付けておく必要があるのは言うまでもない。

*8-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20181101&ng=DGKKZO37207230R31C18A0MM8000 (日経新聞 2018年11月1日) 日用品、国産を対中輸出、資生堂など 高品質強みに増産投資
 日用品大手が相次ぎ国内で増産投資に踏み切る。資生堂は2022年までに約1400億円を投じる。コーセーやユニ・チャームも新工場を稼働させる。訪日観光人気や越境EC(電子商取引)=総合2面きょうのことば=の広がりを受け、日本で製品を増産し中国などアジアに輸出するためだ。海外で高まる「日本製」への需要を満たすため、内需型産業の代表格だった日用品が輸出の新たな柱に育ちつつある。資生堂は20年までに国内能力増強に約950億円を投じる計画だったが、22年までに約450億円を積み増す。口紅やアイシャドーの主力拠点である掛川工場(静岡県掛川市)で21年までに新生産棟を建設し、増産に備える。化粧水などが主力の大阪工場(大阪市)も閉鎖方針を撤回する。同社は訪日客需要などがけん引し、18年12月期に売上高、営業利益とも過去最高を更新する見通し。19年に栃木県大田原市、20年に大阪府茨木市に国内で36年ぶりに新工場を建設するが、供給不足が続くとみて投資を増やす。同社の世界生産能力は8割増になる。コーセーも傘下の高級化粧品メーカー、アルビオン(東京・中央)が20年までに約100億円を投じ、埼玉県熊谷市の工場に新生産棟を建てる。アルビオンはスキンケア商品が訪日中国人に人気で、18年3月期の売上高約680億円の2割は訪日客の消費とみられる。ユニ・チャームは19年春、福岡県で国内で26年ぶりの新工場を稼働させる。中国で人気が高い高級紙おむつを生産し、中国への輸出拠点とする。従来、日用品メーカーが海外進出する場合、現地に生産拠点や販売網を築く必要があった。ネット通販の普及で、アリババ集団などの越境ECの仕組みを使い、自ら資産を持たずに海外展開することが容易になった。17年の訪日客数は16年比19%増の約2869万人と5年連続で過去最高を更新。17年の訪日客による買い物の総額約1兆6400億円のうち、化粧品や日用品は人気が高く、約4割を占める。訪日客は帰国後もネット通販を通じて継続購入する傾向がある。「日本製」へのニーズが高まり、海外での消費が国内の投資や雇用を生む好循環をつくっている。これまで日本の輸出をけん引してきたのは自動車(約12兆円)や半導体・電子部品(約4兆円)だった。日用品などは内需中心だったが、17年の化粧品輸出額は約3715億円と5年連続で過去最高を更新。おむつや文具なども含めると輸出総額は8千億円を超えた。機能や使いやすさなど人気を背景に、外需を取り込む動きが進めば輸出の新たな柱になる。日用品以外でも国内拠点の増産投資が相次ぐ。カルビーは今夏、約70億円を投じて京都工場(京都府綾部市)でフルーツ入りシリアル「フルグラ」の新ラインを稼働した。明治も20年秋、埼玉工場(埼玉県春日部市)に、粉ミルクなどを生産する新棟を稼働する。いずれもアジア輸出拡大を目指しており、縮む国内事業を補う新たな柱とする。

*8-2:https://www.agrinews.co.jp/p45659.html (日本農業新聞 2018年11月1日) 乳児用 液体ミルク 吸い口付けるだけ 災害時も活躍 国産があれば 国内製造・販売解禁も動きなし  原価高 メーカー慎重
 国内での製造、販売が8月に解禁された乳児用液体ミルクだが、国産品の流通には時間がかかりそうだ。開発費用が高いことなどから国内の乳業メーカーは製造に二の足を踏む。災害時に出回ったのはフィンランドなど海外産だ。産地からも「牛乳の消費拡大にはつながりそうにない」(酪農関係者)との声が上がる。一方で、子育て中の女性たちからは「常温で飲める」、「衛生的」といった理由から液体ミルクの国内製造を求める声が続出し、署名が約4万3000人にも上っている。署名を集める一般社団法人乳児用液体ミルク研究会代表の末永恵理さん(39)は、液体ミルクを手に、その重要性を強調する。2014年に娘の凛ちゃん(4)を出産した末永さん。「国内で製造・販売をするようになれば、輸送費がかからない分、購入しやすい価格になる。粉ミルクと同様、安心できる国産を求める全国のお母さんは多い」と切望する。末永さんは、夜中の頻繁な授乳時や外出時、体調不良の時に液体ミルクがあれば育児の助けになると感じ、同年11月から国内製造を求める署名運動を始めた。国産の粉ミルクは200ミリリットル分で60~80円だが、液体ミルクは米国産が約230円、フィンランド産が約150円と割高だ。外出時や災害時に役立つとして、解禁を望む署名運動は4万人以上に広がり、厚生労働省は製造と販売を認める改正省令を施行した。末永さんは「署名する人からは、災害時にお湯や火がない所でも子どもに衛生的な授乳ができる、と期待する声が大きい」と説明する。
●牛乳消費増に 貢献難しく
 液体ミルクは世界では流通するが、日本では食品衛生法の規格基準が整備されていなかったため長年製造できず、消費者の認知度が低かった。政府が検討の末、8月に製造・販売を解禁したものの、液体ミルクの解禁が即座に牛乳の消費拡大のチャンスにはつながらないようだ。日本乳業協会は「製造原価が高過ぎるのでメーカーは慎重姿勢」と指摘する。製造には、安全性承認に向けた申請作業や工場の整備も必要で、森永乳業や雪印メグミルクなどの大手メーカーも「現時点で製造の具体的な話は出ていない」と明かす。価格が割高で、利用は災害や外出時などに限定されるため、牛乳消費の需要増には現時点では貢献しないとの見立てだ。産地でも、原料が国産になる見通しが立っていないことから「農業振興には結び付かないのでは」(北海道の酪農家)との見方がある。
●普及に向けて 使用法発信を
 9月に発生した北海道地震では、東京都がフィンランド産の液体ミルクを被災地に送ったが、日本では日常的に使っていないことを理由に被災自治体が使用をちゅうちょしたケースもある。一方で、16年4月の熊本地震では支援物資として重宝された。液体ミルクは広く流通しているわけではないため、米国、フランス、フィンランドなどから個人的にインターネットなどで調達するしかない。順天堂大学大学院医学研究科の清水俊明教授は「災害の多い日本では液体ミルクの重要性が極めて高い。普及のためにはまず、安全性や使用法の発信が必要だ」と指摘する。
<ことば> 乳児用液体ミルク
 乳児用の粉ミルクと同じ、牛乳や生乳から取り出した成分でできている。液体なので湯で溶かす必要がなく、そのまま飲める。災害時の母乳代替品や育児負担の軽減につながるものとして期待される。ペットボトルや紙パックの容器に哺乳瓶の吸い口を取り付けるだけでいい。無菌で容器に充填(じゅうてん)されるので衛生的だ。

<外国人労働者と社会保険>
PS(2018年11月2、3日追加):*9-1及び下図のように、農林漁業だけでなく製造業等の中小企業も直面している人手不足の解消のため新たな在留資格を創設する外国人受入拡大案が閣議決定され、臨時国会成立、来年4月1日施行の段取りとなったのは一歩前進で、平成の次に向けての新しい出発だ。その対象分野は、建設業・農業ほか14業種から検討して法案成立後に法務省令で定められるそうだが、2号になるまで家族の帯同が認められないのは気の毒で、さらに、*9-4のように、農水省は農業を「特定技能2号」の対象外にする意向だそうだが、これは、①主任として働けるようになった頃に帰る ②「特定技能2号」にもなれる他の業種よりも農業が不利になり、農業を希望する外国人労働者が減る などの理由でよくない。
 また、外国人労働者も社会保障の支え手になるのだが、年金保険料等の支払いは、*9-3のように、帰国する人にとって日本で掛けた年金保険料が掛け捨てにならないために、日本での加入期間を祖国の年金制度に加入していた期間とみなして取り扱い、その国の年金を受給できるようにする必要がある(https://www.nenkin.go.jp/service/kaigaikyoju/shaho-kyotei/kyotei-gaiyou/20141125.html 参照)。しかし、現在は、そのための社会保障協定を結んでいる国が18カ国しかなく、この状況は海外勤務する日本人にとっても同様に不便であるため、できるだけ多くの国と社会保障協定を結んでいくことが求められる。そして、医療や介護保険制度についても、なるべく日本人と同等に相互主義で対応すべきだが、まだ制度が整っていない国には、制度を作るアドバイスをするのがよいだろう。
 なお、*9-2のように、受入人数に上限は設けず見込数を精査中とのことだが、労働力という要素が変われば他の要素も変わるため、事前に見込数を確定するのは難しそうだ。

   
2018.7.25     2018.10.14       2018.11.2      2018.11.2
西日本新聞      産経新聞        毎日新聞        日経新聞

*9-1:http://qbiz.jp/article/143503/1/ (西日本新聞 2018年11月2日) 外国人受け入れ拡大案、閣議決定 人手不足解消に新資格
 政府は2日、外国人労働者受け入れ拡大のため、新たな在留資格を創設する入管難民法などの改正案を閣議決定した。深刻さを増す人手不足を解消するため、これまで認めていなかった単純労働分野への就労を可能とする。政府は臨時国会で成立させ、来年4月1日に施行したい考え。受け入れ対象分野は建設業や農業など14業種から検討しており、成立後に法務省令で定める。高度な専門人材に限っていた受け入れ政策の転換で、多くの外国人が働き手として来日することが見込まれ、日本社会が大きく変容する可能性がある。一方、制度の詳細が固まっていないことに与党からも懸念があり、野党は攻勢を強める構え。政府は否定するが「事実上の移民政策だ」との指摘も出ており、国会審議は曲折が予想される。安倍晋三首相は衆院予算委員会で「人手不足は成長を阻害する大きな要因になり始めている。しっかりと制度を作る」と強調。山下貴司法相は閣議後の記者会見で「法改正は重要かつ急務だ」と話した。改正案によると、一定技能が必要な業務に就く特定技能1号と、熟練技能が必要な業務に就く2号の在留資格を新設。1号は在留期限が通算5年で家族帯同を認めないが、2号は期限の更新ができ、配偶者と子どもの帯同も可能。条件を満たせば永住にも道が開ける。外国人技能実習生から新資格への移行もできる。人手不足が解消された場合、法相がその分野の受け入れを停止する。与党の意見を受け、付則には施行から3年後、必要に応じて制度を見直す条項を盛り込んだ。外国人の報酬は同一業務に従事する日本人と同等以上とし、就労が認められた分野の中での転職も認める。特に1号の外国人の受け入れ先には、住居の確保や日本語教育などの計画を作成し、安定的な生活を支援することを義務付けた。法務省入国管理局を「出入国在留管理庁」に格上げ。受け入れ先は同庁長官の登録を受けた登録支援機関に、受け入れた外国人の支援を委託することも可能とした。成立後、政府は年内にも、制度の意義などを定めた基本方針を閣議決定する予定。方針の骨子案によると、1号の外国人が円滑に活動できるよう生活の支援を受け入れ先に求めることや、原則として直接雇用とすることなどを盛り込む。基本方針を基に、法相が関係閣僚と共同で、各分野の人材不足の状況などを記載した分野別運用方針を策定するとしている。

*9-2:https://www.agrinews.co.jp/p45677.html (日本農業新聞 2018年11月2日) 外国人材 上限設けず 見込み数を精査 衆院予算委で法相
 衆院予算委員会が1日始まり、国会論戦が本格化した。山下貴司法務相は外国人労働者の受け入れ拡大を巡り、受け入れ人数に上限は設けない方針を示し、農業を含む14業種で見込み数を精査しているとした。日米間の貿易協定交渉を進めることについて茂木敏充TPP担当相は、米国の環太平洋連携協定(TPP)復帰に有効との見方を示した。ただ、TPPと同等以上の譲歩すれば国内農業への打撃は広がり、米国のTPP復帰もかえって遠のく恐れがある。山下法相は立憲民主党の長妻昭代表代行への答弁。外国人労働者の受け入れ拡大へ「数値として上限を設けることは考えていない」と述べた。受け入れの規模は「農業、建設、宿泊、介護、造船など14業種から受け入れの見込み数を精査している」と述べた。ただ、人数規模を示す時期は「法案審議に資するよう作業を詰めたい」と明言を避けた。これに対し、長妻氏は「人数の規模も分からないとは、生煮えだ」と批判した。茂木担当相は公明党の石田祝稔政調会長への答弁。 米国のTPP復帰を目指す方針を維持しつつ日米2国間交渉を同時に進める通商戦略の整合性をただしたのに答えた。日本政府は、米国を除く11カ国によるTPPの新協定(TPP11)の発効を急ぐことで米国の焦りを引き出し、米国のTPP復帰を促す戦略を描いていた。だが、9月の日米首脳会談で貿易協定交渉の開始で合意した。茂木氏は「(日米)物品貿易協定交渉をしていくことが米国のTPP復帰に、プラスにはなってもマイナスになることはない」と述べ、今後の交渉に意欲を示した。一方で「現在の米国がすぐにTPPに復帰をするのは難しい面もある」との認識も示した。

*9-3:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20181103&ng=DGKKZO37328510S8A101C1MM8000 (日経新聞 2018年11月3日) 外国人の就労、環境整備急ぐ 4月から新在留資格 企業に支援や管理求める
 政府は2日、外国人労働者の受け入れ拡大に向けた出入国管理法改正案を閣議決定し、国会提出した。技能実習生らに限ってきた単純労働で初めて外国人の就労を認める内容。移民政策と一線を画しつつ、深刻な人手不足に対応する。来年4月の運用開始に向け、受け入れ体制の整備を急ぐ。改正案は新在留資格「特定技能」を設け、建設や介護など14業種に限定して受け入れる。一定の日本語力や技能があれば得られる「特定技能1号」は通算5年滞在できる。より高い能力を条件とした「特定技能2号」は定期的な審査を受ければ事実上の永住が可能で、家族の帯同も認める。14業種でどれだけ外国人労働者が増えるのか、政府試算は出ていない。改正案の国会成立後にまとめる分野別運用方針で、業種別の想定人数を示すとしている。三菱UFJリサーチ&コンサルティングの協力を得て政府統計をもとに分析した外国人労働者の割合は食料品製造で8%、繊維工業で6.7%、車や船などの輸送用機器で6%。製造業が上位を占めた。宿泊・飲食サービスは4%だった。政府は外国人が働きやすい環境づくりを急ぐ。年金や医療などの社会保障制度は国籍に関係なく適用される。その点では現在の外国人技能実習制度で来日した実習生も、新在留資格をとる外国人も、変わりはない。法改正によって就労目的の新在留資格で外国人を労働者として明確に位置づけ、受け入れる企業や団体が支援し、管理できる体制を整える。受け入れ企業は直接雇用が原則となる。2017年には7千人の技能実習生が失踪した。厚生労働省が17年に調査した事業所の7割にあたる4226事業所で、違法残業や賃金未払いなどの法令違反があった。実習生に月95時間の残業をさせ、残業代を時給400円しか払わない悪質な事例もみられた。放置できない状況だ。受け入れ企業は過去に技能実習生などの行方不明者を出していないことや、悪質な紹介業者が介在していないことが要件となる。法務省の入国管理局を格上げする「出入国在留管理庁」は受け入れ企業を指導し、立ち入り検査もする。
●保険料払い損も
 社会保障制度の課題もある。日本で働く外国人は日本人と同様に公的年金の保険料などが給与から天引きされる。年金を将来受け取るには10年以上の加入が必要で、払い損になるおそれがある。払い戻しは3年が上限。3年を超えて働き、支払った保険料は戻ってこない。米国など社会保障協定を結んだ国から来日した外国人は、母国企業から日本の支店勤務になった場合、二重払いをしなくて済む。ただし日本と社会保障協定を結んだ国は18カ国だ。医療については個人の月額負担に上限があり、実際は100万円を超す医療費がかかっても、個人負担は所得によっては数万円で済む。日本の医療を安価で受けられる。日本で医療保険に加入する外国人の親族が短期で来日し、高額な治療を受けて帰国する例がある。新資格で受け入れが進めば、海外に親族を抱える外国人労働者の急増も予想される。政府・自民党は健康保険の利用・加入要件を厳しくする方針だ。海外に住む親族の加入を制限する。19年にも健保法改正案を国会提出する。

*9-4:https://www.agrinews.co.jp/p45685.html (日本農業新聞 2018年11月3日) 外国人材拡大 閣議決定 農業は上限5年
 政府は2日、外国人労働者の受け入れ拡大に向けて、新たな在留資格を創設する出入国管理法などの改正案を閣議決定した。労働現場での就業を本格的に外国人に開放し、受け入れ施策の大転換となる。臨時国会で成立させ、農業など人手不足が深刻な業種を対象に、来年4月の受け入れ開始を目指す。一方で農水省は、事実上永住も可能となる在留資格「特定技能2号」について、農業は対象外にする方針を明らかにした。改正法案では、外国人向けの在留資格として「特定技能」の「1号」と「2号」を創設。1号は3年以上の技能実習の修了者らが対象で、受け入れ期間は通算5年が上限だが、家族の同伴は基本的に不可。「2号」はより高度な技能を問う試験への合格者が対象で、在留期間に上限はなく、家族も呼び寄せられる。政府は、受け入れ業種として農業や介護、建設など14業種を検討する。人手不足の深刻度合いなどを精査し、法案成立後に対象業種を正式に決定する。受け入れ人数に上限は設けない方向。業種別の制度の詳細は所管省庁が検討する。同日の閣議後会見で、吉川貴盛農相は「農業も水産も、現場から(外国人材の確保への)期待もある」と述べた。生産現場の人手不足の状況把握などを進め、農業が受け入れ対象になるよう、政府内で積極的に主張していく考えを示した。農水省によると、農業では特定技能2号について、農業法人の経営層に就く人材などが想定されるが「2号の人材を求める具体的な要望は上がっていない」(就農・女性課)。2号での受け入れは当面検討しない方針だ。改正案は与党内にも慎重論が強い。特に特定技能2号を巡り「実質的な移民受け入れではないか」との声が目立ち、自民党は2号を外国人に適用する際の条件の厳格化などを求める決議をした上で法案を了承。法案には、与党が求めていた施行3年後の見直し規定も盛り込まれた。一方、野党は、臨時国会での成立は拙速だとの構えを強めている。国会論戦では、対象業種や受け入れ人数の規模が不明確なため、「法案は生煮えだ」といった批判が既に相次いでおり、今後の審議は難航が予想される。

PS(2018年11月7日追加):厚労省は、*10のように、「①健保が加入者本人に扶養される三親等内の親族にも適用され、訪日経験のない海外の親族らが母国や日本で医療を受けて健保を利用する事例が生じているため、国内居住要件を追加する」「②日本の社会保障制度は国籍要件を設けていないため、改正後は日本人の扶養親族も同様に居住要件を満たす必要があるが、留学など一時的に日本を離れている場合は例外的に適用対象とする」「③自営業者らが入る国民健康保険も他者によるなりすましを防ぐため、受診時に在留カードを提示するよう求める」「④海外で出産した場合も四十二万円が支払われる出産育児一時金の審査も厳しくする見通し」そうだ。
 しかし、①②は、所得税の扶養要件と異なるので新たな矛盾を生む上、日本人と異なる扱いをすれば国籍による差別に当たる(憲法違反)。また、③の「なりすまし」チェックは、外務省が相手国と交渉して在留カードに扶養親族の明細と顔写真を添付し、その情報を大使館や領事館で更新できるようにしておけばすむことだ。そして、これらは所得税の申告や源泉徴収にも必要な情報で、外国人労働者も税金や保険料を負担しているため、給付時に日本人と差別することは許されない。また、④については、42万円もの出産育児一時金を渡すのは日本人に対してでもバラマキであり、出産にも健康保険を適用すればよいだろう。つまり、厚労省は、変な給付の削り方をするのではなく、社会保険の徴収漏れや無駄遣いがないようにすべきだ。

*10:http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201811/CK2018110702000148.html(東京新聞 2018年11月7日)健保、国内居住者に限定へ 外国人の不適切利用防止
 政府は六日、外国人による公的医療保険の不適切利用を防ぐため健康保険法を改正し、適用条件を厳格化する方針を固めた。加入者の被扶養親族が適用を受けるためには、日本国内に居住していることを要件とする方向で検討している。来年の通常国会への改正案提出を目指す。政府は外国人労働者の受け入れ拡大に向け、今国会で入管難民法改正案成立を期す考えだ。近年外国人による公的医療保険の不適切利用が問題化していることから対応を急ぐが、来年四月の労働者受け入れ拡大実施には間に合わない公算だ。会社員が対象の健康保険(大企業は健康保険組合、中小企業は協会けんぽ)は、加入者本人に扶養される三親等内の親族にも適用されるが、国内に住んでいる必要がない。このため訪日経験のない海外の親族らが母国や日本で医療を受けて健保を利用する事例が生じ、問題視されている。海外での医療費や扶養関係の確認が難しいといった課題もある。自民党内に対応を求める声が高まっていることから、厚生労働省は健保法を改正し、扶養親族への適用に国内居住要件を追加する方針。日本の社会保障制度は国籍要件を設けていないため、改正後は日本人の扶養親族も同様に居住要件を満たす必要がある。ただ、留学など一時的に日本を離れている場合は例外的に適用対象とする。このほか、自営業者らが入る国民健康保険でも他者によるなりすましを防ぐため、受診時に在留カードを提示するよう求めることも検討。海外で出産した場合も四十二万円が支払われる出産育児一時金の審査も厳しくする見通しだ。

<入管法の審議について>
PS(2018年11月14日追加): *11-1、*11-2のように、入管法の審議で、①受入規模 ②受入業種 ③社会保障制度のあり方が、主な論点になっているそうだ。①の受入規模については、大きな事情の変更がない限り、5年で34万人を上限とすることになったが、②の受入業種と分野別受入規模は、政府が「えいやっ」と上から決めるより、農業・漁業・製造業・サービス業などの外国人労働力を必要とする産業で次年度に必要な人数を毎年算出し、それに日本人の潜在労働力や機械化・効率化を加味して決めた方がよいと私は考える。また、③の外国人の社会保障制度については、日本は国籍・職業・所得で差別してはならない国であり、これは高額療養費制度の適用についても同じであって、医療費を圧迫するという理由で危険な作業に従事することの多い外国人労働者を差別することは許されない。
 一方で、外国人労働力の導入に反対する議員も多いとのことだが、それは人材を無駄遣いしている都会の大企業や役所の状態を前提としているのではないだろうか? 実際には、地方・中小企業・特定産業は、本当に労働力が足りないため今すぐにでも外国人労働者が必要な状態で、時間は、技能実習制度を導入した時からかけているのだ。
 そのため、技能実習生や留学生から特定技能1号に変更するのは希望があれば自由とし、要件を満たせば特定技能2号への変更も可能とするのが合理的だ。さらに、これまでも多くの外国人労働者が日本で働いてきたため、それらの人たちやそのケアをしていた人たちに意見を聞けば、環境整備に必要な論点は網羅される筈だ。私は、金融・報道関係者等で日本に住んでいる外国人の所得税確定申告を行っていたこともあるので知っているのだが、家族のケアや言語・教育における環境整備の必要性も見逃せない。


     2018.10.14、2018.11.3、2018.11.7東京新聞     2018.11.14西日本新聞 

*11-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20181114&ng=DGKKZO37706310T11C18A1MM8000 (日経新聞 2018年11月14日) 入管法案、衆院審議入り 外国人労働者、5年で最大34万人
 外国人労働者の受け入れ拡大に向けた出入国管理法改正案をめぐり、政府が法施行を予定する2019年度からの5年間で26万~34万人の受け入れを想定していることがわかった。政府関係者が明らかにした。安倍晋三首相は13日の衆院本会議で、政府が想定する外国人労働者の受け入れ規模を「受け入れ数の上限として運用することになる」と表明した。入管法改正案は13日の衆院本会議で審議入りした。首相は政府が想定する外国人労働者の受け入れ規模について「各省庁で現在精査中だ。法案審議に資するよう近日中に業種別の受け入れ見込み数を示す」と語った。そのうえで「大きな事情変更がない限り、この数字を超えた受け入れはしない」と指摘した。自民党の田所嘉徳氏への答弁。山下貴司法相は1日の衆院予算委員会で、外国人労働者の受け入れ規模に関し「数値として上限を設けることは考えていない」と答弁していた。与野党から「受け入れ数の上限を設けるべきだ」との声が出たことから方針転換したとみられる。政府は初年度の19年度に3万3千~4万7千人の外国人労働者の受け入れを見込むと試算。受け入れを増やす背景に、19年度で60万人以上、19年度からの5年間で130万~135万人の労働者が不足すると見込んだ。対象は、入管法改正案で新設する在留資格「特定技能」で想定する介護や農業など、国内の労働者だけでは労働力が不足する14の業種だ。

*11-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20181114&ng=DGKKZO37716480T11C18A1EA1000 (日経新聞 2018年11月14日) 規模・業種・社会保障、外国人受け入れで論戦
 政府・与党が今国会の最重要法案と位置づける出入国管理法改正案が13日の衆院本会議で審議入りした。選ばれる国に向けた制度設計で外国人の受け入れ規模や、その業種、社会保障制度のあり方の3つが主な論点になる。まず野党が追及したのが外国人の受け入れ規模だ。政府は深刻な人手不足を根拠に外国人受け入れが必要だと説明してきた。外国人が流入する分野の規模が分からなければ、受け入れを必要とする分野で働く日本人への影響は見通せない。政府には2019年度から5年間で外国人労働者を26万~34万人受け入れるとの試算がある。労働者が同じ期間に130万~135万人不足すると見込んで算出した。審議入りに間に合わなかったため、法務省は14日にも国会に受け入れ規模を提示する。2つ目は業種だ。新しい在留資格「特定技能」を設けるのは人手不足が深刻な農業や建設、宿泊など14業種のみ。高度な試験に合格し、熟練した技能を持つ人に「特定技能2号」を与える。2号の「ハードルはかなり高い」(山下貴司法相)ものの、家族の帯同が可能で将来の永住にも事実上、道が開ける。2号をどの程度付与するかが帯同家族への生活支援といった受け入れ体制の整備を左右する。最後は外国人の増加が社会保障制度に与える影響だ。日本は国籍や職業、所得にかかわらず、日本に住む人は公的な医療保険と年金制度に加入し、平等に医療や一定の年金を受け取れる。手術や入院などで高額な医療費がかかった場合に個人負担を軽くするための高額療養費制度は医療費を圧迫するとの懸念が与野党にある。野党は法務委員会だけでなく厚生労働委などとの連合審査も求めている。

<外国人労働者と難民>
PS(2018年11月14日追加): *12-1のように、水産業の競争力向上策として、①企業参入容易化が目的の漁業法改正 ②資源管理の徹底 などが処方箋に挙げられているが、これは原因を追及した上で解決策を決めたのではなく、農業と同じく「えいやっ」と出した結論だろう。何故なら、科学的競争力のある水産業を作るには、①の企業参入や②の資源管理だけでなく、漁船や装備のリニューアルが必要だが、日本の漁船や装備は漁業収入ではリニューアルできないほど高額であり、高コスト構造を変えない限り、日本での水産業は採算が合わないからである。
 なお、*12-2のように、日本で働く外国人が地方で住みやすいように地方自治体が環境整備を行い、それに関する補助を政府が行うのがよいと考える。その理由は、人手不足が深刻な地方は住宅・保育・教育などの余剰設備が多く生活費も安いので、言語・教育・確定申告・源泉徴収・社会保険などに関するサポート体制ができれば住みやすいからだ。
 また、*12-3の「ロヒンギャ帰還計画」は、あれだけの迫害を受け、やっとのことでバングラデシュに避難した難民をミャンマーに帰そうとするスキーム自体に無理がある。国連も、帰還したロヒンギャが再び迫害に遭う恐れがあると警告しており、私は、日本で引き受けてはどうかと考える。例えば、熊本県の上島、鹿児島県の長島のように、本土と繋がってはいるが独自性も保てるような離島に生活基盤を置き、男女とも農林漁業やそれらの加工に従事するなど、まずは日本語がわからなくても教育がなくてもできる仕事から始めればよいからだ。

   
 2018.1.27  外国人労働者産業別内訳   2018.6.16毎日新聞    新たな在留資格
  日経新聞

(図の説明:1番左のグラフのように、国内の外国人労働者は5年間で9割増えたが、左から2番目の円グラフのように、産業別では製造業が最も多く、水産業にはあまり入っていない。右の2つは、これまでの外国人労働者の在留資格別推移とこれから導入しようとする制度の概要だ)

*12-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20181114&ng=DGKKZO37726990T11C18A1EA1000 (日経新聞 2018年11月14日) 水産業の競争力増す改革を
 政府は企業が新規参入しやすいように漁業権制度などを見直す改革法案を閣議決定し、国会に提出した。旧態依然とした漁業法の抜本改正は70年ぶりだ。これを機に科学的な資源管理を徹底し、経営を合理化して競争力のある水産業に変わってほしい。日本の漁業生産額はピークだった1982年に比べ半減した。海外の漁業先進国に比べ、生産性も低いままだ。農林水産省が直近の統計をもとにまとめた国際比較では、漁船1隻あたりの漁獲量はノルウェーの20分の1、漁業者1人あたりの生産量も8分の1ほどしかない。小規模な漁業者が多く、資源管理も甘いから過剰漁獲に陥りやすい。その結果、所得は増えず、新しい漁船もつくれない。若い漁業者が思うように集まらないから外国人労働者への依存度が増してしまう。この悪循環を抜本改革で断ち切る必要がある。今回の改革は地域の漁業協同組合などに優先して与えられる漁業権の制度を見直し、漁協が適切に管理していない漁場や、利用されていない漁場には企業などが新規参入できるようにする。既得権益の多い漁業権制度に初めてメスを入れたことは評価できる。ただ、規模拡大の障害となり、漁協による漁業権行使料の徴収などが不透明な漁業権制度はなくし、公平な許可制度などに変えるのが理想だ。さらなる改革が求められる。政府が法律に基づき資源を管理する漁獲可能量(TAC)制度の対象も現行の8魚種から早急に増やすべきだ。乱獲を防ぎ、高く売れる時期まで待って取ることを促すため漁獲枠は漁船ごとに割り当てなければならない。規制緩和に加え、企業の参入などを排除しようとする漁業の閉鎖性も改めてもらいたい。農業が変わり始めたのは企業の新規参入を受け入れ、その技術力などを利用しようと考える農家が増えてきたからだ。いま変わらなければ日本の水産業の持続は危うい。

*12-2:https://digital.asahi.com/articles/DA3S13770765.html (朝日新聞 2018年11月16日) 地方に外国人材、政府で方策検討 新在留資格
 山下貴司法相は15日の参院法務委員会で「人手不足がより深刻な地域に外国人を受け入れやすくする方策を政府全体で検討したい」と述べ、新たな在留資格で受け入れる外国人が地方で働きやすくする仕組みを導入する考えを明らかにした。出入国管理法改正案では、新在留資格を持った外国人労働者の転職を認めており、人手不足が深刻な地方から賃金水準の高い都市部に流出する可能性が指摘されている。法務省の和田雅樹入国管理局長も「外国人材が地方で稼働するインセンティブを設けたい」と答弁した。

*12-3:https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20181116-00010000-afpbbnewsv-int (AFPBB News 2018/11/16) ロヒンギャ帰還計画、初日は志願者ゼロ 迫害恐れ帰国拒否
 ミャンマーのイスラム系少数民族ロヒンギャ(Rohingya)が隣国バングラデシュに大量流出して難民化した問題で、難民らをミャンマーに帰還させる計画が15日、開始日を迎えたものの、当局によると国境を渡り帰国した難民はいなかった。ミャンマー政府は、ロヒンギャ帰還の取り組みでバングラデシュ政府に不手際があったと非難した。ミャンマーでは昨年8月以降、軍の強硬な取り締まりから逃れるため、推定72万人のロヒンギャがバングラデシュに避難。国連(UN)は帰還したロヒンギャが再び迫害に遭う恐れがあると警告しており、帰還計画は議論を引き起こしている。難民の第1陣がミャンマーに帰還する予定だった15日、バングラデシュ当局者らは国境の検問所で難民らの到着を待ったが、検問所を訪れた人は一人もいなかった。一方、難民らは抗議デモを実施。ロヒンギャの男女や子ども約1000人が「私たちは行かない」など叫び声を上げた。帰還計画には国連や国際支援団体も反対しており、ロヒンギャの首長らによると、バングラデシュが作成した帰還者名簿に入っ260人の多くが身を隠している。対象となっている男性(85)は「やつらは息子2人を殺した。私は別の息子2人と一緒にバングラデシュに逃れた。どうか私たちを送り返さないでほしい。残りの家族も殺される」と訴えた。ミャンマーのミン・トゥ(Myint Thu)外務次官は記者らに対し、バングラデシュ政府の対応は「段取り面で不十分だ」と非難するとともに、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)がロヒンギャ帰還を妨害していると批判した。

| 経済・雇用::2018.1~ | 02:29 PM | comments (x) | trackback (x) |
2018.10.9 新技術によるイノベーション投資が、本物の経済成長とより豊かな社会を作り出すこと (2018年10月10、11、12、13、15、16、19、20、21日に追加あり)
  
                               2017.11.6朝日新聞

(図の説明:癌細胞は、日頃から細胞分裂の失敗などで一定割合できるが、左図のように、免疫力が強くて健康ないうちは免疫細胞の方が勝ち、免疫力が弱くなると増殖し始める。癌細胞は、もともとは自分の細胞であるため免疫が効きにくく、中央の図のように、これまで放射線療法・外科的療法・化学療法が標準治療だったが、これに堂々と免疫細胞が加わったわけだ。今回のノーベル賞受賞は、右図のように、「CTLA―4」という蛋白質が働かないようにして効果を出す免疫療法だ。私は、本人の免疫細胞を使えば、化学療法のように無差別に健康な細胞まで攻撃して副作用を起こすことがなくなるため、最も効果的な治療になる筈だと考える)

(1)今年のノーベル賞
 今年のノーベル賞は、免疫を使った癌治療、生物・物理の研究者が使うレーザー応用技術、進化をまねた薬品の開発、気候変動や技術革新と経済成長を結び付けた理論など、私が指摘していた医学・生物・生態系分野の受賞が多くて嬉しいものだった。しかし、日本人のノーベル賞受賞者には、これまで女性が一人もおらず、これは、日本における女性研究者の軽視によるだろう。

1)ノーベル医学・生理学賞
 ノーベル医学・生理学賞は、*1-1、*1-2のように、京大の本庶佑特別教授と米テキサス大学のジェームズ・アリソン教授が受賞された。本庶氏らは免疫を使って癌を治療する方法を開発し、小野薬品とブリストル・マイヤーズスクイブが治療薬「オプジーボ」「ヤーボイ」を共同開発して、現在は皮膚癌・肺癌・胃癌などの癌に効くとされ、60カ国以上で承認されている。

 癌は、自分の細胞のDNAが変化したものであるため自身の免疫が効きにくいのだが、免疫が癌をたたく作用を抑制する「CTLA―4」という蛋白質が働かないようにすることで、効果を出したのだそうだ。そして、「オプジーボ」や「ヤーボイ」は、*3-3のように進行癌にすら効くのだから、それ以前のステージの癌で免疫を弱くする治療をしていない人なら、さらによく効く筈である。

 なお、現在は高額な薬価が問題になっているが、対象となる患者が増えて大量に生産されるようになれば、他の製品と同様、安くなる。さらに、現在、副作用とされているものの中には、大量の癌細胞を死滅させるため、一時的にショック状態を起こすものもあるようだ。

2)ノーベル物理学賞
 物理学賞は、*1-2のように、米国のアーサー・アシュキン(96)、フランスのジェラール・ムル(74)、カナダのドナ・ストリックランド(59)の3氏で、レーザーの応用技術で医学・工学などで研究を支えているものだそうだ。

 アシュキン氏が開発したのは「光ピンセット」と呼ばれる技術で、生物物理学の研究者の多くが使っているもので、ムル氏とストリックランド氏が開発したのは「チャープ・パルス増幅法(CPA)」という高強度の超短パルスレーザー技術で、近視矯正手術(レーシック手術)で使われているのだそうだ。

3)ノーベル化学賞
 化学賞は米国のフランシス・アーノルド(62)とジョージ・スミス(77)、英国のグレゴリー・ウィンター(67)の3氏で、生物の進化をまねることで作る医薬品開発に有用な蛋白質をつくる手法を開発されたのだそうだ。

 ただ、「①常に厳しく『なぜ』を問いつめる」「②若い人とも同じ目線で議論する」と書かれているうち、①は、科学者なら当然で、②も、よい発想をする(ここが重要)若い研究者なら研究を前進させるために当然なので、特に書くのがおかしいくらいであり、それをやっていない人がいるとすれば、その方が変である。

4)ノーベル経済学賞
 ノーベル経済学賞は、*1-3のように、気候変動や技術革新が持つ要素と経済成長を結び付けた業績を評価して、ウィリアム・ノードハウス米エール大教授(77)とポール・ローマー米ニューヨーク大教授(62)に授与されることになったそうだ。
 
 これまでの経済学は、環境や技術革新を無視していたが、ノードハウス氏は気候変動と経済成長の関係を定量モデルで説明して炭素税のような政策介入がもたらす効果を説明され、ローマー氏は技術革新が経済成長を促す「内生的成長理論」を確立されたそうで、これらは、確かに世界に役立つ研究だ。

 なお、メディアの中には、ノーベル経済学賞を受賞したのが日本人でないことを残念がるところもあったが、日本は、*1-4のように、大規模な金融緩和を行い、物価を上げ、そうすれば個人消費が増えるなどと言っている国だ。実際には、それによって、円の価値が下がり、モノの価値が上がって、円建の債権や預金を目減りさせているだけであり、日本の経済学者の多くが思考停止している。そのため、これで「ノーベル経済学賞・・」と言うのはおこがましすぎる。

(2)新技術が生む新しい市場とその技術の普及を阻む厚労省
 ノーベル生理学・医学賞を受賞した本庶佑氏が、免疫細胞による攻撃から癌細胞が逃れる仕組みを解明し、*2-1のように、小野薬品とブリストル・マイヤーズスクイブが癌免疫薬を開発して5兆円市場を生み出し、世界中の製薬会社がこの仕組みを応用した新薬の開発にしのぎを削っているそうだ。

 にもかかわらず、*2-2のように、厚労省が再生医療などの細胞を用いる治療の監視体制を強めるという馬鹿な方針を決め、「がん免疫療法」も効果がはっきりしないとして制限するそうだが、これは、癌治療のイノベーションを邪魔している。治療効果は、それを使って治療しなければいつまでも検証できないが、*3-3のように、進行癌でさえ治るという効果は他の治療法より優れているため、駄目な理由を挙げるのではなく、使えるように力を貸すべきだ。

(3)「オプジーボ」や「ヤーボイ」などの癌治療薬
 小野薬品の「オプジーボ」やBMSの「ヤーボイ」などの癌免疫薬は、*3-1のように、免疫細胞のオン・オフを制御する分子に作用するため「免疫チェックポイント阻害剤」と呼ばれ、癌細胞が免疫細胞にかけたブレーキを解除し、攻撃開始のスイッチを入れるのだそうだ。

 しかし、免疫による攻撃力が弱っていれば、いくらブレーキを解除しても癌細胞を攻撃して死に至らしめることはできない。そのため、進行癌よりも初期の癌、化学療法・放射線療法・リンパ節切除などで免疫力の弱くなった身体よりもその前の身体の方が効きがよいだろうし、*3-2のように、免疫細胞の攻撃力を高めるのも有効だろう。

(4)人材育成
 「百里の道も一歩から」と言われるように、ノーベル賞を受賞する科学者をトップとすれば、その下には、ピラミッド型に多くの人材がいる。その「初めの一歩」は小中高校での教育だが、これについて、*4のように、「教科の数値評価をなくす」という議論がされているそうだ。

 しかし、教科毎に行う数値評価をなくした上で、各教科で「知識・技能」「思考力・判断力・表現力等」などを項目ごとに「ABC」といった形で評価する「観点別評価」だけにするというのは、たいした知識もない小中高生に思考力や判断力を求めることになり、評価する先生の価値観やレベルにもばらつきがあるため、評価の客観性を無くし、勉強する目標や動機付けを失わせることになって、とりかえしがつかない。

 私は、児童生徒や保護者が数値評価のみに注目するのも問題だが、それを無くして知識獲得の目標や動機を失わせる方がよほど問題だと考える。日本人全員が手を繋いで仲良くサボっても、世界は待っていてはくれないのだから。

*1-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20181002&ng=DGKKZO35987710R01C18A0MM8000 (日経新聞 2018年10月2日) ノーベル生理学・医学賞に本庶氏、がん免疫療法開発
 スウェーデンのカロリンスカ研究所は1日、2018年のノーベル生理学・医学賞を京都大学の本庶佑特別教授(76)と米テキサス大学のジェームズ・アリソン教授(70)に授与すると発表した。本庶氏らは人の体を守る免疫の仕組みを利用してがんをたたく新たな治療法開発に道を開いた。研究成果を応用して、肺や腎臓など様々ながんに効く新しいがん治療薬が続々と登場している。日本のノーベル賞(総合2面きょうのことば)受賞者は16年の東京工業大学の大隅良典栄誉教授に続き26人目(米国籍を含む)。生理学・医学賞は計5人となった。授賞理由は「免疫抑制の阻害によるがん治療法の発見」。がんは先進国、新興国を問わず死因の上位に位置しており、カロリンスカ研は「世界で年間で数百万人もの命を奪うがんとの闘いで、本庶氏の発見に基づく治療法は極めて高い効果を示した」と評価した。同日、京大で記者会見した本庶氏は受賞の喜びを述べた上で、「私は基礎研究をしているが、医学で何らかの治療につながらないかと常に考えている」と語った。本庶氏は「PD―1」と呼ぶたんぱく質を免疫細胞の表面で発見し、92年に発表した。後にこのたんぱく質が、がんをたたく免疫の機能を抑えるよう働いていることを突き止めた。本庶氏の成果を生かし、小野薬品工業と米製薬大手ブリストル・マイヤーズスクイブ(BMS)が治療薬「オプジーボ」(一般名ニボルマブ)を共同開発。14年に世界に先駆けて日本で皮膚がんの薬として発売された。その後、肺や胃などのがんに対象が広がり、60カ国以上で承認されている。アリソン氏は90年代半ば、免疫ががんをたたく作用を抑制する「CTLA―4」という別のたんぱく質を働かないようにすることで、マウスのがんを治療することに成功し、論文を発表した。従来は体内で病気と闘う免疫の機能はがんにはうまく働かないことが大きな課題だったが、両氏の成果は新たな発想の治療法の道筋をつけた。免疫を利用してがんをたたくがん免疫薬は世界の製薬会社が開発に力を入れる。市場規模は17年で1兆円ともいわれる。一部の患者では薬が効いて長期間の生存を可能にする一方、高額な薬価が議論を呼んだ。本庶氏は同日、日本経済新聞のインタビューに「よい(研究の)タネなら必ず成功する。よいタネを生み出し育てることが最も重要だ」と強調した。授賞式は12月10日にストックホルムで開く。賞金は900万スウェーデンクローナ(約1億1500万円)。2氏で分け合う。
*本庶佑氏(ほんじょ・たすく) 1942年京都市生まれ。66年京都大学医学部卒業。京大大学院医学研究科博士課程修了後、米国立衛生研究所(NIH)や東京大学、大阪大学での研究を経て84年京大医学部教授。免疫細胞の表面にあるたんぱく質「PD―1」を発見し92年に論文発表。新たながん治療薬開発に道を開いた。13年文化勲章、16年京都賞。17年から現職。76歳。

*1-2:https://digital.asahi.com/articles/DA3S13707921.html (朝日新聞 2018年10月4日)ノーベル賞、3賞決まる 医学生理学賞に本庶さん、物理学賞に3氏、化学賞に3氏
 今年のノーベル賞は1~3日、自然科学系3賞が発表され、医学生理学賞に京都大の本庶佑(ほんじょたすく)特別教授らが選ばれた。物理学賞はレーザー技術を発展させた欧米の3氏に、化学賞は薬やバイオ燃料などの新たな作成法に道を開いた米英の3氏に贈られる。授賞式は12月10日にある。
■がん免疫治療法、切り開く チェックポイント阻害剤につながる発見 医学生理学賞に本庶佑さん
 医学生理学賞に決まったのは、京都大の本庶佑(ほんじょたすく)特別教授(76)と、米テキサス大MDアンダーソンがんセンターのジェームズ・アリソン教授(70)。それぞれの研究がきっかけとなり生まれた「免疫チェックポイント阻害剤」は、進行したがんは治らないとされるこれまでの常識を変えつつある。治療への活用はさらに広がろうとしている。こうした免疫治療薬は、免疫療法の一部。免疫療法は手術や抗がん剤、放射線に続く「第四の治療法」と期待されてきたが、これまでの大半は効果が確認されていない。本庶さんらは1991年、「PD―1」を見つけた。大学院生として本庶さんの研究室に所属し、発見に関わった滋賀医科大の縣保年(あがたやすとし)教授(53)によると、当初は細胞が自ら死ぬ現象にかかわる分子とみられていたが、その機能はなかなかはっきりと分からなかった。PD―1が相手役のたんぱく質とくっつくと免疫細胞の作用にブレーキがかかるらしいことが分かったのは、99年のことだった。やはり研究室の大学院生だった岩井佳子・日本医科大教授は2002年、抗体という物質でPD―1と相手役がくっつくのを邪魔すれば、抑えつけられた免疫のブレーキを外してがん細胞への攻撃力を高められることを報告。この物質が免疫チェックポイント阻害剤「オプジーボ」につながった。縣さんは「まさに点と点がつながるように、一つひとつの研究が積み重なって大きな成果につながった。本庶先生の指導力がそれだけ大きかった」と語る。オプジーボの効果は驚くほどだった。九州大病院の中西洋一・呼吸器科教授らは3年前、抗がん剤が効かずに状態が落ちていた肺がん患者に、オプジーボを初めて使った。数日のうちにがんが縮小し、患者は元気を取り戻した。この薬は、効く人には効果が長く続きやすいという特徴がある。千葉大腫瘍(しゅよう)内科の滝口裕一教授は「がんが転移しもう治らないと考えられた状態の人が、がんが増大しないまま数年間生き続けているケースも少なくない」と話す。アリソン教授も同じころ、免疫のブレーキにかかわる別の分子「CTLA―4」の研究を進め、この作用を利用したがん治療薬「ヤーボイ」の開発に道を開いた。本庶研で06~15年にPD―1の研究をした慶応大学の竹馬俊介講師によると、オプジーボはヤーボイよりも幅広い種類のがんの治療に使われ、臨床での評価はより高いという。東京都立駒込病院の吉野公二・皮膚腫瘍科部長は「オプジーボとヤーボイなど2種類を使うとさらに効果が高まることがあり、こうした手法が広がりそうだ」と話す。
■「オプジーボ」課題も
 課題もある。これらの薬には重症筋無力症や劇症1型糖尿病といった、従来の抗がん剤にあまり見られない副作用がある。また、免疫チェックポイント阻害剤は高価で、よく効くのは2~3割の人にとどまる。効くかどうかを事前に予測するのは難しい。最近、がん細胞の中の遺伝子変異が多い人では効きやすいらしいことがわかってきた。細胞中の数百の遺伝子を同時に調べて遺伝子変異の量をみる「パネル検査」という手法が開発され、来年にも国内で保険適用される可能性がある。
■レーザー応用技術、研究に寄与 物理学賞に米・仏・加の3氏
 物理学賞に決まったのは、米国のアーサー・アシュキン(96)、フランスのジェラール・ムル(74)、カナダのドナ・ストリックランド(59)の3氏。レーザーの応用技術を大きく発展させ、医学や工学など幅広い分野でいま、研究を支えている。アシュキン氏が開発したのは「光ピンセット」と呼ばれる技術だ。レーザーによって、細胞やウイルスといった微小な物体を自由自在に動かすことができる。大阪市立大の東海林竜也講師(分析化学)によると、光には物をとらえる力があることはわかっていたものの、だれも実証できなかった。アシュキン氏は1970~80年代にかけて、レーザーの光をレンズで集めることで、水溶液中の粒子を自由に動かせることを実証した。アシュキン氏の発見が、たんぱく質や分子を壊すことなく、自由に操る技術につながった。筋肉中の分子を操作する研究に使っている大阪大の柳田敏雄特任教授(生物物理学)は「分子やたんぱく質をつかまえることを通して、体の中のことがより分かる。生物物理学の研究者の多くが、いまは光ピンセットを使っている」とその業績をたたえる。ムル氏とストリックランド氏が開発したのは「チャープ・パルス増幅法(CPA)」という高強度の超短パルスレーザーの技術だ。レーザーのパルスの幅をいったん広げるなどしてから強度を高める独創的な手法を編み出した。東京大物性研究所の板谷治郎准教授は「それまで高強度のパルスを得るには、巨大な施設が必要だった。CPAの登場によって、実験室規模の装置ですむようになった」と話す。応用も幅広い。よく知られるのは近視矯正手術(レーシック手術)。京都大先端ビームナノ科学センターの橋田昌樹准教授によると、超短パルスレーザーは切れ味がよく、熱も出にくいので角膜を切るのに適している。また、装置の小型化を見込んで、がんの重粒子線治療の加速器などへの応用も検討されている。
■抗体医薬の開発加速 化学賞に米・英の3氏
 化学賞は米国のフランシス・アーノルド(62)とジョージ・スミス(77)、英国のグレゴリー・ウィンター(67)の3氏に決まった。生物の進化をまねることでバイオ燃料や医薬品の開発に有用なたんぱく質をつくる手法を開発した。アーノルド氏は、「指向性進化法」と呼ばれる自然界で起こる「選択」に似た方法で、さまざまな酵素を改良する手法を確立した。東京大学大学院総合文化研究科の新井宗仁教授は「洗剤に入っている酵素など、たんぱく質が壊れやすい環境でも働くように安定した酵素を作り出した。私たちも微生物から軽油をつくる研究を進めている」と話す。かつてアーノルド氏の研究室に在籍し共著の論文もある産業技術総合研究所の宮崎健太郎研究グループ長は「常に厳しく『なぜ』を問いつめる人で、若い人とも同じ目線で議論する人だった。そんな姿勢が今回の受賞につながったと思う」。スミス氏の開発した「ファージディスプレー」という技術は、抗体医薬などの開発につながった。ねらった標的に最もよくくっつく抗体を取り出す手法。ウィンター氏はリウマチなど自己免疫の病気に使われる「ヒュミラ」の開発につなげた。抗体医薬は乳がんなどの治療にも適用されている。東京大の菅裕明教授は、「彼らの技術は、抗体医薬の開発を加速させた」と高く評価。本庶佑氏が開発にかかわった免疫チェックポイント阻害剤「オプジーボ」の開発にも役立てられたという。

*1-3:http://qbiz.jp/article/142019/1/ (西日本新聞 2018年10月8日) ノーベル経済学賞に米の2教授 気候変動、技術革新巡り  
 スウェーデンの王立科学アカデミーは8日、2018年のノーベル経済学賞を、ウィリアム・ノードハウス米エール大教授(77)とポール・ローマー米ニューヨーク大教授(62)に授与すると発表した。気候変動や技術革新が持つ要素と、経済成長を結び付けた業績を評価した。アカデミーは両氏の業績に関して「どのように持続可能な経済成長を実現できるかという問いへの答えに、私たちをかなり近づけてくれる」と説明した。ノードハウス氏は気候変動と経済成長の関係を定量モデルで説明した。炭素税のような政策介入がもたらす効果を説明するのに用いられるという。「気候カジノ」や「地球温暖化の経済学」といった著書がある。ローマー氏は技術革新が経済成長を促すことを示す「内生的成長理論」を確立。新たなアイデアを促す規制や政策に関する研究を数多く生み出した。16〜18年には世界銀行のチーフエコノミストも務めた。授賞式は12月10日にストックホルムで開かれ、賞金900万クローナ(約1億1200万円)を両氏で分ける。

*1-4:http://qbiz.jp/article/135781/1/ (西日本新聞 2018年6月15日) 日銀、大規模緩和を維持 金融政策、米欧と違い鮮明
 日銀は15日、2日目の金融政策決定会合を開き、現行の大規模金融緩和策の維持を決めた。2%の物価上昇目標の達成が見通せない中、短期金利をマイナス0・1%、長期金利を0%程度に抑え、景気を下支えする。景気の現状判断は「緩やかに拡大している」で据え置いた。米連邦準備制度理事会(FRB)は13日、約3カ月ぶりの利上げを決定。欧州中央銀行(ECB)も14日、量的金融緩和政策を年内に終了することを決めた。米欧の中央銀行と日銀の間で金融政策の方向性の違いが鮮明になった。日銀は、個人消費の判断を「緩やかに増加している」、輸出は「増加基調にある」とし、それぞれ判断を据え置いた。4月の消費者物価指数は前年同月比0・7%上昇にとどまり、伸び率が2カ月連続で鈍化した。会合では、景気が堅調にもかかわらず、物価が伸び悩んでいる要因も議論したとみられる。年80兆円をめどとする長期国債の買い増し額や、年約6兆円の上場投資信託(ETF)の購入も維持した。片岡剛士審議委員は現行政策の据え置きに反対した。黒田東彦総裁は15日午後に記者会見を開き、金融政策の運営や景気、物価情勢について見解を示す。

<新技術が生む新市場とその普及を阻む厚労省>
*2-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20181002&ng=DGKKZO35988110R01C18A0TJ2000 (日経新聞 2018.10.2) がん免疫薬 5兆円市場生む、ノーベル賞に本庶氏 国内外で開発競争
 ノーベル生理学・医学賞を受賞した本庶佑氏が解明したのは、免疫細胞による攻撃からがん細胞が逃れる仕組みだ。これを応用したのが小野薬品工業の「オプジーボ」に代表されるがん免疫薬で、市場規模は2017年で1兆円とされる。25年にはこれが5兆円まで広がるともいわれ、世界中の製薬会社がこの仕組みを応用した新薬の開発にしのぎを削っている。オプジーボは小野薬品と米製薬大手ブリストル・マイヤーズスクイブ(BMS)が共同開発した。小野薬品の19年3月期の連結業績見通しは売上高が2770億円。このうち、900億円をオプジーボの直接的な販売で稼ぐ見通しだ。ほかに提携先などから得られるオプジーボのライセンス収入などは400億円程度あるとみられる。小野薬品の時価総額は15年ごろ1兆5千億円程度だった。これが、オプジーボ発売後の16年には、ピークとなる約3兆円を記録。長期にわたって効果を発揮する特徴があるほか、がんが消失するケースがあることなどから、株式市場でも高評価を得たためだ。オプジーボは発売時、100ミリグラム73万円。仮に1年使用した場合は3000万円以上かかるという試算が出たため、「あまりにも高すぎる」「財政を破綻させる」との批判が噴出した。少子高齢化が進む中、高騰する医療費と薬剤費が社会問題として取り上げられるようになった。その結果、本来2年に1度の薬価改定をまたず、17年2月に突然、オプジーボの薬価は半額に引き下げられた。医療費の抑制だけでなく、薬価制度そのものや社会保障の見直しに向けた議論を活発化させるきっかけにもなった。本庶氏が発見したのは「PD―1経路」と呼ぶ免疫の仕組み。がん細胞がこの仕組みを使って、免疫から逃れていたことを解明した。現在、この成果を生かした研究の方向性は大きく2つ。新しいがん免疫薬そのものを探すことと、すでに存在するがん免疫薬と他の抗がん剤などを一緒に使うことで効果を高める「併用療法」の確立だ。PD―1経路を遮断してがんを弱らせる仕組みを利用するがん免疫薬を扱うのは5陣営あり、このうちトップを走るのが小野薬などのオプジーボだ。このほか、米メルクの「キイトルーダ」、英アストラゼネカの「イミフィンジ」、スイスのロシュの「テセントリク」、独メルクの「バベンチオ」がある。ノバルティス(スイス)なども開発を進めている。国内勢は併用療法が主だ。第一三共は抗体に化合物を結びつけた抗体薬物複合体(ADC)の技術に強みを持つ。開発中の抗がん剤「DS8201」とオプジーボの併用療法の臨床試験(治験)を始める方針。エーザイや協和発酵キリンも自社開発の抗がん剤とオプジーボの併用療法を探る。このほか、創薬ベンチャー企業も名のりをあげており、古い医薬品を含め併用療法について研究している。日本勢では、ブライトパス・バイオ、キャンバス、オンコリスバイオファーマなどが担い手だ。併用療法の狙いは、一部の患者にしか効かないというがん免疫薬の欠点を補うことだ。ベンチャー各社の業績はまだ赤字基調だが、併用療法が実を結べば、恩恵を受ける患者数は格段に増える。その結果、巨額の収益をもたらす可能性がある。一方、がん免疫薬を含む「バイオ医薬品」では日本勢が出遅れているとの指摘がある。17年、世界で最も売れた医薬品である米アッヴィの関節リウマチ治療薬「ヒュミラ」(年間売上高は約2兆円)を含め、売上高の大きい製品ベスト5のうち、4品目がバイオ医薬品だとするデータもある。国内企業では、中外製薬が関節リウマチ治療剤「アクテムラ」、協和発酵キリンが抗がん剤「ポテリジオ」などを独自技術で開発したが、1兆円を超える薬には育っていない。京都大学の山中伸弥教授の功績であるiPS細胞をはじめとする再生医療でも、応用研究では欧米勢が先を行くとの指摘もある。日本発で革新の種が出たとしても、それをいかに育み収益に結びつけていくのか。企業の姿勢も問われそうだ。

*2-2:https://digital.asahi.com/articles/DA3S13713145.html (朝日新聞 2018年10月7日) 再生医療の監視強化へ 効果不明、多くの「がん免疫療法」も 厚労省方針
 厚生労働省は、再生医療など細胞を用いる治療の監視体制を強める方針を決めた。効果がはっきりしない多くの「がん免疫療法」も対象となる。医療機関が事前審査の内容と大きく異なる治療をした場合、国が把握できる仕組みにして、審査の議事録などをウェブ上に公開させて透明性を高める。がん免疫療法をめぐっては、ノーベル医学生理学賞の受賞が決まった、京都大の本庶佑(ほんじょたすく)特別教授の研究をもとに開発された「オプジーボ」などの免疫チェックポイント阻害剤が近年、登場。一部のがんに公的医療保険が適用されている。再生医療安全性確保法=キーワード=が規制する治療法とは別の手法だが、「免疫療法」と、ひとくくりで混同されることもある。細胞を用いる治療は、2014年施行の同法で規制された。iPS細胞の登場を契機に、患者の安全を確保しながら再生医療を発展させる目的に加え、患者自身の細胞を使う根拠が不明瞭な免疫療法や美容医療に網をかける狙いもあった。同法のもと、医療機関は治療の計画をつくり、病院や民間団体が設ける第三者の審査委員会に審査させる。ただ、審査の狙いは安全性の確保で、効果は保証していない。iPS細胞などを用いる「第1種」と比べ、患者の細胞を集めて使うがん免疫療法などの「第3種」は、審査委員会の要件が緩く、国のチェックを受けずに実施できる。東海大の佐藤正人教授(整形外科)の調査によると、第3種のがん免疫療法の届け出は、今年3月までに民間クリニックなどで1279件に上ることがわかった。高額な治療費を請求する施設もあり、問題視されている。同法の省令改正案では、計画に反する事態が起きたときの対応手順を新たに設け、治療に携わる医師に、医療機関の管理者への報告を義務づける。重大なケースは速やかに審査委員会の意見を聞き、委員会で出た意見を厚労省に報告させる。また、審査委員会の要件を厳しくし、第3種では、計画審査を頼んだ医療機関と利害関係のない委員の出席数を現在の2人以上から過半数とする方針だ。
厚労省は早ければ省令を今月中にも改正、公布する。
◆キーワード
<再生医療安全性確保法> 再生医療などの安全性の確保が主な目的で、細胞を用いた治療を広く規制する。計画の事前審査や国への届け出を義務づける。免疫の働きでがん細胞を倒そうとする「がん免疫療法」のうち、免疫細胞を使う手法も対象となる。

<癌治療薬>
*3-1:https://www.nikkei.com/paper/related-article/?b=20181007&c=DM1&d=0&nbm=DGKKZO36173760V01C18A0MY1000&ng=DGKKZO36173840V01C18A0MY1000&ue=DMY1000 (日経新聞 2018年10月7日) がん免疫薬 ブレーキ解除は逆の発想
 免疫の力を利用する抗がん剤を指す。小野薬品工業の「オプジーボ」や米BMSの「ヤーボイ」など最新のがん免疫薬は、免疫細胞のオン・オフを制御する分子に作用するため「免疫チェックポイント阻害剤」と呼ばれる。がん細胞が免疫細胞にかけたブレーキを解除し、攻撃開始のスイッチを入れる。従来のがん免疫薬が攻撃力を高めることを目指していたのに対し、逆の発想で開発された。対象患者を増やすため複数の免疫チェックポイント阻害剤や他の抗がん剤を併用する試みが盛んだ。BMSは大腸がん治療でオプジーボとヤーボイの併用療法の承認を取得した。患者ごとにがんの遺伝子変異を調べ、最適な治療薬を探す研究も活発になっている。

*3-2:https://www.nikkei.com/paper/related-article/tc/?b=20181002&bu (日経新聞 2018年10月2日) がんVS免疫療法 攻防100年、高コストや副作用が課題
 ウイルスや細菌などの病原体から身を守る免疫の仕組みを利用する「がん免疫療法」が注目されている。免疫をがん治療に生かす研究は100年を超す歴史があるが、科学的に治療効果を認められたものはほとんどなく、これまでは異端視されていた。状況を変えたのは2つの新しい技術の登場で、手術、放射線、抗がん剤などの薬物治療に次ぐ「第4の治療法」として定着しつつある。19世紀末、米ニューヨークの病院で、がん患者が溶血性連鎖球菌(溶連菌)に感染し高熱を出した。熱が下がって一命をとりとめると、不思議なことが起きていた。がんが縮小していたのだ。外科医ウィリアム・コーリーは急性症状を伴う感染症にかかったがん患者で似た症例があると気づき、殺した細菌を感染させてみたところ、がんが消える患者もいた。毒性の強い細菌に感染することで免疫が刺激され、がん細胞も攻撃したとみられる。コーリーの手法はがん免疫療法の先がけといわれる。だが副作用で命を落とす患者も多く、定着しなかった。免疫が再び注目されるのは1950年代後半だ。ノーベル生理学・医学賞を受賞したフランク・バーネット氏が「免疫が日々発生するがん細胞を殺し、がんを未然に防いでいる」という説を提唱。60年代以降、結核予防ワクチンのBCGを使う治療法や丸山ワクチンが登場した。その後、免疫細胞にがんを攻撃するよう伝えて活性化するサイトカインという物質や免疫の司令塔となる樹状細胞を利用する方法、ペプチドと呼ぶたんぱく質断片を使うワクチンなども試みられた。効果があると科学的に認められるには、いずれも数多くの患者を対象にした臨床試験(治験)が必要だ。しかも、抗がん剤など従来の治療を受けた患者らと比べて、治療成績がよくなることを示さなければならない。免疫療法でそうした効果を証明できたものはほとんどなかった。「がん細胞は免疫を巧妙にかいくぐっているからだ」と長崎大学の池田裕明教授は説明する。「免疫を活性化する手法ばかり研究していた」ことが失敗の原因とみる。20世紀末、がんが免疫の攻撃を逃れる仕組みの研究が進んだ。その中で見つかったのが「免疫チェックポイント分子」と呼ぶたんぱく質だ。免疫は暴走すると自身の正常な細胞も攻撃してしまうため、普段はアクセルとブレーキで制御されている。がん細胞はこの仕組みを悪用し、免疫にブレーキをかけて攻撃を中止させる。チェックポイント分子の「CTLA―4」や「PD―1」の働きが解明され、2010年代前半にその働きを阻害する薬が開発された。免疫細胞は攻撃力を取り戻してがん細胞を殺す。皮膚のがんの一種の悪性黒色腫で高い治療成績を上げ、肺がんや腎臓がんなどでも国内承認された。CTLA―4を発見した米テキサス州立大学のジェームズ・アリソン教授、PD―1を突き止めた京都大学の本庶佑特別教授はノーベル賞の有力候補といわれる。注目を集める新しい治療法はもうひとつある。「遺伝子改変T細胞療法」だ。患者から免疫細胞のT細胞を取り出し、がん細胞を見つけると活性化して増殖する機能を遺伝子操作で組み込む。増やしたうえで患者の体内に戻すと、免疫細胞はがんが消えるまで増殖する。大阪大学の保仙直毅准教授は「免疫のアクセルを踏みっぱなしにする治療法だ」と説明する。がんを見つけるセンサーに「キメラ抗原受容体(CAR)」を使うタイプはT細胞と組み合わせて「CAR―T細胞療法」とも呼ばれる。新潟大学の今井千速准教授らが米国留学中の04年に論文発表し、スイスの製薬大手ノバルティスが実用化。17年8月、一部の白血病を対象に米国で承認された。治療効果は抜群で、1回の点滴で7~9割の患者でがん細胞が消え、専門家らを驚かせた。日本でも近く実用化される見通しだ。2つのがん免疫療法にも課題はある。免疫チェックポイント阻害剤が効くのは承認されたがんのうちの2~3割の患者で、数百万円という高い投薬費も問題になった。CAR―T療法は塊を作る「固形がん」には効果が薄いとされる。過剰な免疫反応による発熱や呼吸不全などの副作用もある。遺伝子操作や細胞の培養にコストがかかり、治療費は5000万円を超す。課題の克服を目指す研究も国内外で進んでいる。がん免疫療法はこれからが本番だ。

*3-3:https://www.nikkei.com/paper/related-article/?b=20181002&c (日経新聞 2018年10月2日) がん免疫療法 末期の患者にも効果
 体に備わる免疫の仕組みを利用し、がんを攻撃する治療法。体内でがんを攻撃する免疫細胞を利用する。京都大学の本庶佑特別教授が見つけた「PD―1」たんぱく質はこの治療法に応用され、抗がん剤、手術、放射線治療に続く第4の治療法として広まった。人間の体では1日に数千個ものがん細胞ができるが、免疫細胞が排除している。本庶氏の発見に基づく免疫療法は、がん細胞がPD―1にブレーキをかけるのを阻止して免疫細胞が働けるようにし、がん細胞をたたく。新薬は従来の抗がん剤などでは治せない末期がんでも高い効果を示している。

<人材>
*4:https://digital.asahi.com/articles/DA3S13688456.html (朝日新聞 2018年9月21日) 教科の数値評価、なくなる? 中教審が議論、通知表に影響か
 学習指導要領の改訂にあわせて、学校現場での評価のあり方を話し合う中央教育審議会のワーキンググループ(WG)が20日にあり、教科ごとに数値評価する「評定」をなくすべきかどうかが議論された。参加した多くの有識者はなくしたうえで、各教科で「知識及び技能」「思考力・判断力・表現力等」など項目ごとに「ABC」といった形で評価する「観点別評価」だけにすべきだ、との立場を取った。評定は各教科を総括する位置づけで、児童生徒に渡される通知表や、受験で使われる内申書の元となる。文部科学省は通知で、小学校の中高学年では3段階、中学と高校では5段階でつけるよう求めている。かつては相対評価だったが、2002年度からは絶対評価となった。通知表の形式は学校の判断に委ねられるが、評定が廃止されれば現場への影響は大きい。新指導要領は20年度から小学校などで完全実施される予定。WGは年内に結論を出し、文科省はそれを受けて年度内にも教委などに通知する方針だ。20日の会議では、文科省が評価のあり方について論点整理した資料を提示。評定をなくすべき理由として▽学校ごとに重みづけが異なり、学習状況が適切に反映されていない場合がある▽児童生徒や保護者が数値評価のみに注目し、学習の改善につなげられていない▽きめ細かく一人ひとりを評価するためには、観点別評価の方が有効――とした。一方、維持すべき理由としては▽児童生徒や保護者は学習状況を全体的に把握できると考えている▽高校や大学の入試、奨学金の成績基準などで使われている――などを挙げた。これに対し、有識者からは「評定は数値のため客観的だという誤解がある」「一人ひとり寄り添って見ていくには観点別評価にすべきだ」といった意見が相次いだ。

<継続できる人は何割?>
PS(2018年10月10日追加):ノーベル賞受賞をきっかけに、メディアが「①継続が大切」「②失敗で諦めない」などと、あまりにも的外れた解説を訳知り顔でやっているのには眉をひそめた。何故なら、①については、*5のように、研究者が大学や研究機関に残ったとしても、他産業より低い報酬で短期の雇用契約を結ばされたり、継続的な雇用を得られず他産業に転出を余儀なくされたりするケースが多いからだ。また、②については、「実験したら仮説通りにいかなかった」というのは通常の研究過程であって「失敗」や「諦める」というような言葉は当たらず、これは試行錯誤でもないからだ。

*5:https://webronza.asahi.com/politics/articles/2012042000006.html (鈴木崇弘 城西国際大学客員教授《政治学》 2012年4月20日) ポスドク問題を社会変革のテコに――ある若者の試み
 「ポスドク問題」(注1)が語られて久しい。ポスドク問題とは、次のとおりだ。科学技術振興政策で、博士が多数つくりだされた。しかし、ドクターを取得するころには、年齢がある程度いっているため、企業の採用が難しく、大学などの研究職数も限られて就職先がないため、オーバードクターが問題となった。その問題の対応として、「ポスドク」(「ポストドクター」の略語)に職が用意された(これで、オーバードクター問題は一時緩和された)。しかし、それは大学や研究機関などと短期かつ不安定な形で契約を結ぶもので、正規雇用への保証がなく、低収入で不安定であり、問題の引き延ばしを図っただけのものであった。このように「ポスドク問題」とは、正規の仕事に就職できずに、長期間、非正規雇用を強いられる人材が増えている状況を指す。ポスドクは「高学歴ワーキングプア」ともいわれ、高齢化も進んでいるという。要は、供給者側の論理から科学技術の発展の必要が叫ばれ、それを進める専門的な人材の育成として博士などを多く生み出したものの、需要者側のニーズに合っていなかったのだ。博士号取得は実務とは別のことであり就職とは関係ないという議論もあるが、博士を目指す者の多くは、専門性をもち、社会や時代に貢献したいという気持ちからだと思う。ここでは、科学技術の発展という理想(それ自体は重要だが)だけ声高に訴えても、問題の解決にはならない。では、どうすればいいのか。(以下略)

<地方への海外企業誘致>
PS(2018年10月11日追加):私は外資系企業の監査や税務に従事することも多かったので、*6-2のブリストル·マイヤーズ(当時)には、1980年代後半、外部監査を担当していたプライス・ウォーターハウス(当時)から、ブリストル·マイヤーズ本社から来た内部監査担当者を手伝うために行ったことがあり、堅実な会社だと思っている。
 そのため、*6-1のように、政府が海外企業の国内投資拡大のために努力し、地方に雇用を作って地方を活性化するのはよいことであるとともに、欧米系の会社は女性差別が(ないとは言わないが)少ないため、地方にも女性が差別されずに自由に働ける場所が増えるだろう。
 そこで、唐津市の企業誘致だが、化粧品産業のみに特化すると医薬品と比較して付加価値が低いため、*6-2のような外資系企業を誘致し、九大と組んで世界的な製薬会社を育ててはどうか。労働力は、*6-3のように、外国人の就労も進み始めて、次第に整っていくのだから。

*6-1:http://qbiz.jp/article/141796/1/ (西日本新聞 2018年10月3日) 政府、海外企業誘致で地方支援へ 計画策定で全国24カ所
 政府は3日、海外企業の国内投資を拡大させるため、日本貿易振興機構(ジェトロ)と連携して全国24カ所の自治体による企業誘致計画の策定を支援する方針を固めた。日本への投資は東京を中心とする大都市に集中しており、地方への波及を進める狙いだ。計画は地域色のある農林水産品や観光資源、産業集積などの強みを生かした内容とする予定で、2018年度中の策定を目指している。ジェトロを通じ、海外企業とのマッチングや海外での投資セミナー開催なども支援する。日本は来年以降、国内初開催の20カ国・地域(G20)の首脳会合や、ラグビーの19年ワールドカップ(W杯)日本大会、20年東京五輪・パラリンピックなど、多数の国際イベントを抱えている。政府は全国に経済効果が及ぶ機会と捉えており、地方創生の取り組みを加速させたい考えだ。支援対象に選ぶ北海道旭川地域は豊富な農林資源を生かした家具製造が強み。アジアのデザイン関連企業などと組み、現地での販路拡大を目指している。医療機器関連メーカーが集まる福島県は海外企業を取り込んでさらなる集積拡大を図る。長野県小諸市はリゾート地の同県軽井沢町に近く、IT企業のサテライトオフィス(出先拠点)を呼び込む。佐賀県唐津市は化粧品産業の誘致を目指す。

*6-2:https://www.bms.com/jp/about-us.html (ブリストル·マイヤーズ スクイブ 会社情報)
 ブリストル·マイヤーズ スクイブは、深刻な病気を抱える患者さんを助けるための革新的な医薬品を開発し、提供することを使命とするグローバルなバイオファーマ製薬企業です。ブリストル·マイヤーズ スクイブは、大手製薬企業の事業基盤と、バイオテクノロジー企業の起業家精神と敏捷性を兼ね備えた、スペシャリティ·バイオファーマ企業です。独自のバイオファーマ戦略を推進し、命にかかわる深刻な病気を抱える患者さんに革新的な医薬品を提供するため、日々努力を重ねています。世界中で働く当社の従業員は、ブリストル·マイヤーズ スクイブの全ての活動の原動力であり、患者さんのため、今日も一丸となって取り組んでいます。世界中で何百万人という患者さんを助けるために、当社が注力するのは「がん」「心血管疾患」「免疫系疾患」「線維症」の重点疾患領域です。研究開発を通して、有望な化合物から成る持続可能なパイプラインを構築し、外部のイノベーションによる事業の拡大と加速に向け、積極的にパートナーシップを結んでいます。地球市民として、私たちは責任をもって持続可能な業務の遂行に取り組み、地域社会に還元するよう努めています。また、ブリストル·マイヤーズ スクイブ財団の活動を通じて、医療環境に恵まれない地域に暮らす人々のため、医療における格差をなくすこと、患者さんの転帰を改善することに全力を挙げています。これらの活動は、世界で最も深刻な状況におかれた人々に、新たな希望をもたらしています。

*6-3:https://www.agrinews.co.jp/p45316.html (日本農業新聞 2018年9月26日) 外国人の就労 人権と労働環境改善を
 農業現場で働く外国人の受け入れ制度が変わる。外国人技能実習生に加え、10月から愛知県で国家戦略特区を活用した外国人労働者の受け入れが始まり、来年4月には5年間を上限に就労できる新たな在留資格が創設の見通しだ。追い付かないのが人権の確保と労働条件の整備。働き手の目線で改善すべきだ。JA全中や日本農業法人協会などでつくる農業労働力支援協議会は、農業の雇用労働力は7万人不足していると推計する。これを補うのが特区と新たな在留資格の創設というわけだ。農業の労働問題に詳しい特定社会保険労務士の入来院重宏氏は、労働力を補う「蛇口が増えた」とみる。これまで技能実習生という一つの蛇口だけだったが、特区と新たな在留資格という二つの蛇口が加わったことで労働力の供給は一段と増える。懸念されるのは、受け止める器に“穴”が二つ開いていることだ。労働環境が他産業並みに整っていない。一つ目の穴は、1975年から続く労災保険の「暫定任意適用事業」。個人経営の農家の場合、従業員が4人以下であれば労災保険は任意加入となる。保険に入っていなければ、事故に遭った際は経営者が全額補償しなければならない。他産業並みの強制加入にすべきである。二つ目は、農業現場で働く労働者は労働時間、休憩、休日、割増賃金などについて労働基準法の適用除外となっていることだ。技能実習生は「他産業並みの労働環境を目指す必要がある」(農水省)として他産業と同じ労働条件。ところが労働者となった途端、労働時間などが適用除外となり労働条件に差が生じ、混乱を招きかねない。入来院氏は「この穴を早急に埋めないと、外国人も含めて農業に人が来なくなる」と指摘する。法務省によると中長期の在留外国人の数は約256万人(2017年末現在)。前年末に比べ約17万人増え、過去最高を更新した。最多は中国で73万人、韓国(45万人)、ベトナム(26・2万人)、フィリピン(26万人)、ブラジル(19万人)、ネパール(8万人)、インドネシア(5万人)と続く。特にベトナムは3割増、ネパールとインドネシアも2割増えた。だが、この流れも20年までのようだ。日本で働く外国人の実情を紹介した『コンビニ外国人』(芹澤健介氏、新潮新書)で、東京大学大学院で経済を学ぶベトナム人留学生は「いま日本には外国人が増えて困るという人もいますが、東京オリンピックが終わったらどんどん減っていく」と明かす。外国人の受け入れ制度が整っていないためで、多くの外国人が「人手不足で残業が多くなる」と考え、東京五輪後は日本以外の国に切り替えるという。求められるのは、働く者の人権確保と労働環境の整備だ。労働力不足時代を見据え、本丸の担い手育成と省力技術の開発・普及も急ぐべきだ。

<経産省主導のイノベーション妨害>
PS(2018年10月12、15、16日追加):*7-1のように、九電は太陽光などの再エネ発電事業者に「出力抑制」を実施する可能性があると公表した。現在、九州では、太陽光発電の接続量が800万kw程度(原発8基分)あり、さらに拡大しているが、九電は原発4基(約400万kw)を再稼働させた。これは、経産省が、*7-2のように、「2030年のエネルギーミックスを再エネ比率22~24%、原子力比率22~20%」とし、全体としてコストの高い原発による発電を優先して安価な再エネの普及を妨害したことによる。なお、「再エネは不安定」という弁解も、あまりに長期に渡るので聞き飽きたが、広域送電線や*7-3・*7-4のような水素を媒介にする再エネ貯蔵や蓄電池という方法もあるため、技術進歩によるイノベーションを経産省主導の不合理な“ルール”で遅れさせるのは、早急に止めるべきだ。
 なお、*7-5のように、北海道地震で北電の苫東厚真石炭火力発電所が停止したら全道が停電し、酪農家は自家発電装置で搾乳・冷蔵を続けることができたものの、自家発電装置を持たない乳業工場が相次ぎ操業を停止したため、行き場を失った生乳が廃棄を余儀なくされたそうだ。そのため、災害に備えた危機管理体制は必要不可欠で、「集中型電力システム」より「分散型電力システム」の方がリスクが小さいため、それを支える送電線が必要なのである。現在、北海道では、太陽光・風力だけでも160万kw(原発1.6基分)の発電量があり、集中型から地産地消の分散型に転換すれば危機管理と地域経済の両方を改善できるため、全農に電力会社(仮名:全農グリーン電力)を作り、農林漁業で発電した電力を集めて販売したらどうかと考える。
 また、*7-6のように、世界トップレベルのスマート農業の実現に向け、北海道でロボットトラクターやドローンの実証研究が始まり、大学・民間企業・行政などが連携するそうで、これはよいことだと思う。そして、これらの動力も再エネ由来の電力や水素燃料を使えば、これまでのように燃料費の高騰に悩んだり、それに国から補助を出したりする必要がなくなるため、再エネへの転換は素早く進めるべきだと考える。
 確かに、農業の生産性向上には、*7-7のような肥育期間の短縮もあるが、消費者の健康・生産性・付加価値を両立させるには、「ヘルシー佐賀牛」の分類を作って、脂肪割合が小さく蛋白質割合の大きな牛肉を、稲わら・ハーブ・みかんの皮・牧草などの割合を増やして育てたり、放牧したりする方法があるのではないだろうか?

*7-1:https://digital.asahi.com/articles/DA3S13719393.html (朝日新聞 2018年10月12日) 太陽光発電抑制、九電が検討 この土日、需給バランス保つため
 九州電力は11日、太陽光など再生可能エネルギーの発電事業者に一時的な発電停止を求める「出力抑制」を、この土日の13、14日に実施する可能性があるとホームページ(HP)で公表した。実施すれば、離島を除いて国内で初めて。4基の原発が再稼働した九州で、再生エネの一部が行き場を失う事態になりそうだ。土日は好天が予想され、出力調整の難しい太陽光の発電量が伸びるとみられる。一方、休日で工場などの稼働が減るうえ、秋の過ごしやすい気温で冷房などの電力の使用量も落ち込みそうだ。需要と供給のバランスが崩れると、電気の周波数が乱れ、発電所が故障を防ぐために停止し大規模停電につながる恐れがある。九電は火力の抑制などをしても需給バランスの維持が難しいと判断し、国のルールに基づき行う。天候次第で停止を見送る可能性もある。抑制の前日に最終判断をし、太陽光で約2万4千件、風力で約60件の契約から、発電を止める事業者を九電が選ぶ。出力の小さな一般家庭は対象外。選んだ事業者には電話やメールで知らせる。日照条件に恵まれた九州では、2012年に始まった再生エネの固定価格買い取り制度(FIT)を受けて太陽光発電の接続量が急増した。九州の需要のピークは1600万キロワット弱。太陽光は800万キロワット程度が接続されており、まだ拡大傾向にある。さらに九電は11年の東京電力福島第一原発事故後、この夏までに原発4基(計約400万キロワット)を再稼働させた。国のルールでは原発の発電を優先することになっており、再生エネの入る余地が狭まっている。今月下旬にも原発が稼働する四国電力でも、出力抑制の可能性がある。専門家からは、大手電力間を結ぶ送電線で余った電気をより多く送ったり、原発を優先するルールを見直したりするべきだとの意見も出ている。

*7-2:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO28676230Y8A320C1000000/ (日経BP速報 2018/3/28) 「再エネ比率22~24%」目標変えず 経産省が事務局案
 経済産業省は、総合資源エネルギー調査会 基本政策分科会を開催し、事務局案を2018年3月26日に公開した。同案は「エネルギー基本計画」の見直しに関するこれまでの議論を受けたもの。同案では、15年度に定めたエネルギーミックスを前提として、その達成に向けた課題を整理した構成になっている。「再生可能エネルギーの比率22~24%」などの従来の電源構成の目標値を変えない方針を明らかにした。「エネルギー基本計画」は3年ごとに見直すことになっており、前回は14年に改訂した。それを受け、15年に長期エネルギー需給見通し小委員会の場で、「2030年のエネルギーミックス(電源構成)」を議論し、「再エネの比率22~24%」「原子力の比率22~20%」などの目標値を決めた経緯がある。

*7-3:https://www.nikkei.com/paper/related-article/tc/?b=20181012&bu=BFBD9496・・(日経新聞 2018年10月12日) 水素プラント、川崎で起工 千代田化工など4社、太陽光の水素ステーション 実証施設、来年中にも
 北陸では初めてとなる水素ステーションの建設に向けた動きも富山県内で着々と進行する。富山水素エネルギー促進協議会は、太陽光発電の電気を使って水素を製造する水素ステーション実証施設の2019年中の設置を目指している。富山市、北酸など官民が連携して、富山市環境センターに施設を建設。太陽光という再生可能エネルギーを使って水の電気分解で水素を発生させ、燃料電池バスや燃料電池車のカーシェアなどへの利用を検討する。18年度の環境省の二酸化炭素排出抑制対策事業費等補助金を申請中。水素製造量は1日当たり燃料電池車2台分と規模は小さいが、同協議会は「導入当初としては十分」とし、20年までに県内に本格的な水素供給拠点を設けるという目標への足がかりとしたい考えだ。

*7-4:https://www.nikkei.com/paper/related-article/tc/?b=20181012&bu=BFBD9496・・(日経新聞 2017年12月11日) 水素発電実験、神戸で開始へ 世界初、市街に供給
 神戸市で水素を燃料に発電した電気を市街地の複数施設に供給する世界初の実証実験が2018年2月上旬に始まる。市民病院など4カ所に電気と熱を送る計画だ。川崎重工業と大林組が建設した発電所が人工島のポートアイランドに完成した。水素は温暖化ガス削減に向けた次世代エネルギーと有望視されており、地域での有効利用をめざす。神戸市が施設への電気供給などで協力した。

*7-5:https://www.agrinews.co.jp/p45411.html (日本農業新聞 2018年10月6日) 北海道地震1カ月 もろい電源 分散型急げ
 北海道地震に伴う生乳廃棄は人災と言っても過言ではない。北海道の酪農家の率直で切実な訴えである。9月6日未明、北海道胆振地方中東部を震源とした最大震度7を記録した北海道地震から1カ月。厚真町を中心に41人が犠牲になった。日本の食料基地を襲った地震は、全国の生乳生産の半数以上を占める酪農に大きな影を落とした。北海道電力苫東厚真石炭火力発電所の停止による全域停電(ブラックアウト)による搾乳の混乱だ。電源を失った酪農家は、持っていた自家発電装置で搾乳・冷蔵を続けることができたが、装置を持たない乳業工場は相次ぎ操業を停止、行き場を失った生乳は廃棄を余儀なくされた。道によると、6日から10日までの5日間の被害額は、全道で21億円に上った。これが冒頭の「人災」につながるわけだが、犯人捜しをしたいのではない。問題は、災害時の危機管理として、大規模停電を予測できなかったのかということである。災害を機に迅速な対応を取った地域もある。愛媛県のJAにしうわは、2004年9月の台風18号による停電で主力の温州ミカンのかん水に欠かせないスプリンクラーが停止。農家が手作業で水をまいたため、樹体に付いた塩分を落とし切れず、ミカンが大きな被害を受けた。このためJAは、非常時の補助電源として発電機70台を導入した経緯がある。地震発生時、道内の酪農家は自衛手段として自家発電装置を整備し、搾乳・冷蔵ができた。十勝地域のJA大樹町では7割、JAひろおでは8割の酪農家が発電機を導入していたという。一方で、道内の乳業工場39カ所のうち、自家発電設備を持っていたのは2工場だけ。酪農と乳業は「車の両輪」に例えられる。一方のタイヤが正常でももう一方がパンクをしていれば走ることはできない。災害に備えた自衛策は待ったなしである。さらに求めたいのは、停電の原因となった「集中型電力システム」の改善だ。ブラックアウトは、電気の需給バランスが乱れて発生した。地震後も稼働していた再エネ発電所があったにもかかわらず、厚真発電所の一つの停止により、その電力は活用できなかった。現行のシステムのもろさが露呈した格好だ。道内では太陽光、風力、水力、地熱、家畜や森林由来のバイオマス(生物由来資源)による再生エネルギーが盛んに導入されている。太陽光と風力だけを見ても160万キロワットの発電容量がある。これは地震前日の最大需要の4割に相当する。これをもっと活用すべきである。国は、再エネを主力電源と位置付けている。再エネの特徴である地域分散型を生かし、集中型から地産地消型の可能性を追求すべきだ。災害が常態化している今こそ、北海道地震の教訓を生かさねばならない。

*7-6:https://www.agrinews.co.jp/p45485.html (日本農業新聞2018年10月15日)一大拠点へ実証 ロボトラクターやドローン自動飛行 産官学が連携 北海道でスマート農業
 世界トップレベルのスマート農業の実現に向け、ロボットトラクターやドローン(小型無人飛行機)の実証研究が北海道で始まる。大学、民間企業、行政などが連携して、遠隔監視によるロボットトラクターや、ドローンの自動飛行による農薬散布などを試験。最先端のスマート農業技術が集まる一大拠点にする考えだ。14日に更別村で説明会を開き、取り組みが動きだした。内閣府の近未来技術等社会実装事業の一環。同事業は、人工知能(AI)や自動運転、ドローンなどの技術による地方創生を支援するのが狙い。道と同村、岩見沢市の3者が共同提案し、採択された。東京大学や北海道大学、ホクレンなどが参画する。実証する農機の無人走行システムは、北海道大学などと協力し、トラクターに取り付けたカメラの映像を通して、遠隔監視しながら走行させる。農地間の移動も公道を想定して自動運転で走らせる。水田地帯の同市と、畑作地帯の同村で分けて実証を進める。同村では、ドローンの自動飛行による農薬散布も実証する。夜間の自動散布や複数台による編隊散布なども検討しており、農業現場で利用しやすいシステムを検討する。ドローンで測定した生育データは蓄積して、スマートフォンのアプリケーションで活用。AIで生育状態を把握できるようにする。今後、11月中にも関係組織で事業に関する協議会を設立。具体的な実証内容やスケジュールを詰めていく。同村では14日、学や民間企業、JAなどの関係者を集め説明会を開催。JAさらべつの若園則明組合長は「1戸当たりの耕作面積が増える一方、人手不足は深刻。成功してほしい」と期待を込めた。西山猛村長は「未来の農業を開く一歩を踏み出せた。村だけでなく日本の農業を守ることにつなげたい」と意気込みを述べた。

*7-7:http://qbiz.jp/article/142397/1/ (西日本新聞 2018年10月16日) 佐賀牛肥育3カ月短縮 27カ月齢への技術確立 佐賀県畜産試験場
 佐賀牛など佐賀県産和牛の出荷月齢を通常の30カ月から27カ月に早期化しつつ、肉の質と量は良好に維持する技術を、県畜産試験場が確立した。近年、子牛価格と飼料代が高騰しており、出荷の回転率を上げて肥育農家の収益改善につなげる。同様の試みは九州でも広がっており、試験場は本年度中にマニュアルをまとめ、生産者への普及を図る。県によると、和牛の生産は、母牛から子牛を産ませる繁殖農家と、子牛を購入して育てて出荷する肥育農家の分業が一般的。県内では2月現在、繁殖農家468戸が約9200頭、肥育農家202戸が約3万5200頭を飼育する。ただ、県内の子牛価格は平均70万〜80万円と、10年ほど前の約2倍に値上がりした上、飼料代も高騰。試験場によると、肥育農家は収益を上げるのが難しくなっているといい、農家数は5年前より約2割減った。このため、出荷までのサイクルを早めて生産コストを抑えようと、2014年度から研究を始めた。
    ■    ■
 通常、肉用牛の出荷は30カ月ほどかかり、繁殖農家が子牛を育てる9カ月間の「育成期間」と、肥育農家による以後21カ月間の「肥育期間」に分かれる。育成期間は稲わらなど繊維質で低カロリーの餌を与え、肥育期間は肉に霜降りを入れるためにトウモロコシなど高カロリーの穀物を食べさせる。試験場は(1)育成は9カ月間のままで肥育を18カ月間に縮める「肥育期間短縮」(2)繁殖から育成まで一貫経営する農家用に、育成を6カ月間に縮めて肥育開始を早める「早期肥育開始」−の二つの方法の試験に取り組んだ。前者は肥育期間中、月ごとに飼料を増やしていくペースを従来より上げた。後者は生後6カ月から肥育用の飼料に少しずつ切り替え、8〜9カ月から完全に肥育用にした上、増量ペースも上げた。試験の結果、脂肪交雑(霜降りの度合い)を示す数値はいずれの方法も県平均7・2を上回った。肉量は県平均486キロと比べて、前者は483キロと若干少なかったが、後者は508キロと上回った。
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 ただ、新しい技術が生産者に浸透するには時間がかかりそうだ。JAさが畜産部によると、ブランド牛の買い手が品質を判断する上で重視するのは出荷月齢。内田武巳部長は「県内の肥育農家は月齢をかけて牛を大きく育て、肉量を確保して収益を得る傾向にある」と指摘する。牛を大きく育てつつ、脂肪交雑を維持するのはこれまでも課題で、試験場は今回、牛の体調を見ながら飼料を与えるタイミングや期間、量を調整。「肉質は十分維持できている」と太鼓判を押す。一方では、産地間競争も激化している。九州の他県も同様の試みに力を入れており、鹿児島県農業開発総合センター畜産試験場は7月、佐賀より3カ月少ない24カ月齢での出荷技術を確立したと発表した。鹿児島の担当者は「肉の質、量とも従来と遜色ない」としており、佐賀県畜産試験場も24カ月齢出荷の試験を進めている。
*佐賀牛:JAグループ佐賀の生産者が出荷した黒毛和牛の中で、肉質が最上級の5等級か、4等級のうち脂肪交雑(霜降りの度合い)が7以上を指す。佐賀牛を提供するJA直営のレストラン「季楽(きら)」が佐賀、福岡両市、東京・銀座にある。昨年11月に東京であった日米首脳会談に際しての夕食会でも振る舞われた。近年は香港や米国、シンガポールに輸出している。

PS(2018年10月13、19、21日追加): *8-1、*8-2のように、九電は九州7県の太陽光・風力発電事業者計約2万4千件(計475万キロワット→原発4~5基分)を対象に稼働停止を求める出力制御を13日に実施すると発表し、「電力の安定供給のため」と説明しているが、ここが思考停止によるイノベーション妨害なのである。蓄電池・水素生成・地域間送電線を使った電力の広域的運営など、方法はいくらでもあった筈だが、最も高コストでハイリスクの原発再稼働を選択したのが、またもや経産省の失敗である。
 なお、*8-3のように、北海道新聞も、九電が太陽光発電の一部事業者に「出力制御」を実施したことについて、「原発優遇の出力制御が度重なると、再エネの使い勝手が悪くなって普及に水を差すため、政府は現行の原発優先ルール見直すとともに、送電網を増強し、大型蓄電池や地産地消型の分散型電源など、再生エネを無駄にしない仕組み造りをすべきだ」等々と記載しており、全く賛成だ。
 さらに、*8-4のように、九電は、118万キロワットの再エネ出力を20、21日に停止させるそうだが、もったいないことだ。全体の電力料金を下げてエネルギーを(高齢者にとって、より安全な)電力にシフトさせたり、休日の電力料金を下げ労働力をローテーションして休日も工場を稼働させ、電力消費量を平準化する方法もあると思う。

   
      2018.10.13西日本新聞             2018.10.7佐賀新聞

(図の説明:左のグラフのように、九州では太陽光・風力で域内の電力需要をほぼ賄える状況になったが、さらに原発4基を再稼働したため電力が余った。今後は、1番右の図のように、漁業と親和性の高い洋上風力発電設備も据え付けていくため、原発なしでも他地域に送電できる状態になり、蓄電池・水素生成・他地域への送電線・九州域内での製造業のテコ入れなどが望まれる。そして、これは九州だけに特化した現象ではないだろう)

*8-1:http://qbiz.jp/article/142329/1/ (西日本新聞 2018年10月13日) 九電13日に出力制御 九州6県の太陽光9759件停止要請へ
 九州電力は12日、太陽光発電など再生可能エネルギー事業者に稼働停止を求める出力制御を13日に実施すると発表した。原発4基の稼働や再生エネ発電設備の増加などで九電管内の供給力は高まっており、需要と供給のバランスが崩れて大規模停電が起きるのを防ぐのが目的。離島以外では全国初となる。九州7県の出力制御対象は太陽光・風力発電事業者計約2万4千件(計475万キロワット)で、13日は熊本県を除く6県の太陽光発電9759件、計43万キロワット分を想定。九州各地で晴れて太陽光発電が増加する一方、気温低下により冷房などの電力需要が減ると判断した。実施は午前9時〜午後4時の7時間を想え定している。九電によると、余剰電力が最大になる時間帯は正午〜午後0時半ごろで、再生エネや火力、原子力発電などの供給力が1293万キロワットあるのに対し、需要は828万キロワットの見込み。国のルールに沿って、ダムに水をくみ上げる揚水運転や火力発電の出力抑制、他電力会社への送電などを行っても、43万キロワット分の余剰電力が生まれ、再生エネの出力制御が必要になるという。13日早朝の気象予報などで、最終的な出力制御量と対象事業者を確定する。九電の和仁寛系統運用部長は12日の記者会見で「電力の安定供給のために必要な対応であり、ご理解とご協力をお願いしたい」と語った。14日も出力制御を行う可能性があり、13日に実施の可否を判断する。(以下略)

*8-2:http://qbiz.jp/article/142300/1/ (西日本新聞 2018年10月13日) 再生エネ急増でも活用半ば 蓄電、送電は負担重く後手 九電出力制御
 九州電力が13日、太陽光発電の出力制御に踏み切ることになった。再生可能エネルギーの拡大を目的に国が固定価格買い取り制度(FIT)を導入した2012年以降、日照条件が良い九州では全国を上回る勢いで太陽光発電が急増している。政府は7月に閣議決定したエネルギー基本計画で再生エネの「主力電源化」を目指すとしているが、そのために必要となる蓄電池の普及などの対策は進んでいない。東京電力福島第1原発事故を受け「脱原発」の気運が高まる中で導入されたFIT。再生エネの高値買い取りが誘発剤となり、太陽光は爆発的に普及が進んだ。九電によると、FIT導入後の6年間で、管内の太陽光発電能力は7倍に増加している。核廃棄物も二酸化炭素(CO2)も排出しない再生エネだが、弱点もある。太陽光は日照がないと発電できないため、出力変動に備えて火力発電所など他の電源も同時に運用しておくことが不可欠。九電が今秋までに原発計4基を稼働させたことで電力の供給力が底上げされたことに加え、原発は出力調整が難しいこともあり、電力需要が落ち込む時期に再生エネの出力を絞る可能性が高まっていた。こうした状況で再生エネをどうやって拡大させるのか。その一つの方策が、日中の余剰電力をためて夜間などに使えるようにする「蓄電池」だ。国の補助を受けて九電は16年、福岡県豊前市に約200億円を投じて出力5万キロワットの大容量蓄電システムを整備した。しかし、これだけでは「焼け石に水」。九電管内の太陽光は毎月5万キロワット増え続けており、蓄電池だけで増加分に対応していくと仮定すれば、毎月200億円が必要な計算になる。九州で余った電気を、地域間送電線「関門連系線」を使って本州側に流す方法もある。だが、送電可能な再生エネの容量は、九州の太陽光発電能力の8分の1ほど。経済産業省の認可法人「電力広域的運営推進機関」が17年度に連系線そのものの容量倍増を検討したが、費用試算が1570億円に上ることから見送られた。経産省は19年度予算概算要求に蓄電技術の開発支援を盛り込んだほか、IoT(モノのインターネット)を使った需給バランス管理の高度化などを議論する研究会も今月設置する予定。しかし、再生エネ拡大に向けたコストを誰がどう負担するのかといった肝心の制度設計はこれから。経産省幹部は「当面は出力制御で対応することになる」と話す。急成長した再生エネに、制度が追いついていないのが現状だ。
   ◇   ◇
●「原発再稼働も一因」 九電が会見
 九州電力は12日、出力制御の実施決定を受けた記者会見で、増え続ける太陽光発電に設備面などで対応しきれていない現状を説明、今後も実施は不可避との認識を示した。「設備の増強が追いついていない」。九電の和仁寛系統運用部長は会見で説明した。九州には全国の約2割の太陽光発電所が集まっており、今後も導入が進むのは確実。「(ピーク時の)出力制御にご協力いただくことで再生可能エネルギーの受け入れ量は増える」と述べ、実施に理解を求めた。制御の対象になる事業者については「不公平感が出ないことが最も重要」と強調した。今夏、原発が4基運転体制になり、供給力の調整幅が狭くなったことも影響する。和仁氏は出力制御はさまざまな需給要因を踏まえた「総合的な判断」としながらも、「原子力発電所の再稼働が一因にはなっているかもしれない」と話した。

*8-3:https://www.hokkaido-np.co.jp/article/239370 (北海道新聞社説 2018年10月19日) 太陽光出力制御 原発優先ルール再考を
 九州電力が太陽光発電の一部事業者に一時的な発電停止を指示する「出力制御」を実施した。太陽光の発電量が増える日中に、電力の供給量が需要を上回り、大規模停電が起きるのを回避するためだという。胆振東部地震に伴う全域停電のような事態は避けねばならないが、問題はそのやり方だ。国のルールでは、原発より先に太陽光や風力の出力を制限すると定めている。だが原発優遇の出力制御が度重なると、再生可能エネルギーの使い勝手が悪くなり、普及に水を差さないか。再生エネを将来の主力電源とする国の方針に逆行する。政府は現行ルール見直しの道を探るとともに、需給バランスを保って出力制御を避ける仕組みづくりを急ぐべきだ。九州は日照条件の良さから太陽光発電の普及が進み、導入容量は原発8基分に相当する。今回は好天で発電量が多くなる一方、週末で工場稼働などが減り電力需要の低下が見込まれた。九電は火力発電を抑え、余剰電力を揚水発電の水のくみ上げや他の電力会社への送電に回したが、調整しきれず制御に踏み切った。見過ごせないのは、九電の原発4基が今夏までに再稼働し、供給力が底上げされていたことだ。そのため、冷房使用が減る今秋の出力制御の可能性が早くから取り沙汰されていた。供給過多が見込まれる中で再稼働が必要だったのか、検証が求められよう。原発は出力を一度下げると、戻すのに時間がかかり、経済産業省は出力調整が難しいと説明する。しかし、ドイツやフランスでは需要に応じて原発の出力を調整しており、不可能ではない。再生エネ事業者は一部を除き、出力制御に無補償で応じなくてはならず、日数の制限もない。発電を止めれば売電収入を失う。制御が頻発すれば収益が圧迫される。欧州でも再生エネの出力制御を行っているが、発電を停止した業者に補償金を支払う国が多い。国は固定価格買い取り制度などで再生エネ導入を促すが、拡大に環境整備が追いついていない。九州と本州を結ぶ送電線「関門連系線」の運用容量は、北海道と本州を結ぶ北本連系線を大きく上回るが、それでも足りなかった。送電網の増強に加え、大型蓄電池開発や地産地消型の分散型電源など、再生エネを無駄にしない仕組みが欠かせない。費用負担のあり方も含め国全体で考える時だ。

*8-4:http://qbiz.jp/article/142753/1/ (西日本新聞 2018年10月20日) 九電、再エネ出力21日も制御 初の100万キロワット超対象
 九州電力は20日、太陽光発電の一部事業者に対し、発電の一時停止を指示する再生可能エネルギーの出力制御を21日も実施すると発表した。先週末と20日に続く措置。制御対象は118万キロワットの計画で、これまでで最大。九州全体で気温が上昇せずに冷房需要が一段と減少する見通しの一方、好天で日中の太陽光の出力増加が見込まれるため。九電によると、20日に実施した再エネの出力制御は当初の計画では70万キロワット程度だったが、事前の想定より再エネの発電量が増えなかったとして、実際は最大で52万キロワット程度になった。制御の対象は13日が43万キロワット、14日が54万キロワットだった。

<ノーベル平和賞:人類発祥に関するゲノム研究が進めば・・>
PS(2018年10月15日追加):今年のノーベル平和賞は、*9-1のように、ISの性暴力を告発したイラクの宗教的少数派ヤジディー教徒のナディア・ムラドさんと、コンゴ民主共和国で性暴力被害者のケアを続けてきたデニ・ムクウェゲ医師に決まったが、2人の命がけの活動に敬意を表する。一方、中東では、レイプも「婚前・婚外交渉」として被害女性を殺害する「名誉殺人」が横行し、中東・アフリカには、レイプの加害者が被害者と結婚すれば罪を免れるという法律も残っているそうだ。このように、今の日本では想像すらできないことが起こる文化圏で、女性の地位向上を訴えるのは、誰であっても命がけであり、圧力が必要になることもあろう。従って、*9-3のように、サウジアラビア皇太子が、女性の運転免許を解禁したり、脱石油依存に舵をきったりしたことなども、多方面から批判されたことが想像に難くなく、このような中で「メディアなら何でも言いたい放題言ってよく、それは妨害されるべきでない」というのは、自らは改革を進めたことがない人の甘い考え方だと思う。
 なお、*9-2のように、『ゲノムが語る人類全史、アダム ラザフォード著』が出版され、現生人類が持っているゲノム分析から、地球上に人類が出現して拡散していった状況が解析されようとしていることがわかる。これは、「我々は、どうやって今ここにいるのか」を追求する究極の科学であり、ネアンデルタール人とホモ・サピエンスも交雑しており、まだ骨や歯も発見されていない「第四の人類」も存在するそうだ。さらに、文化とDNAの変化による進化(退化)の関係では、人類が農業を始めてからでんぷんを消化するアミラーゼを作る遺伝子が増えたり、乳を飲み続けるようになってからラクターゼを持続的に作り続けるよう遺伝子が変化したりなど、人類は今でも文化的要因に影響を受けながら進化(退化)を続けているわけである。つまり、現生人類の祖先はごく少数の人から始まり、環境に適応しつつ周りと交配したり闘ったりしながら現在に至っていることがわかれば、まずは人種差別がなくなりそうである。

*9-1:https://mainichi.jp/articles/20181006/k00/00e/030/233000c (毎日新聞 2018年10月6日) ノーベル平和賞、性暴力「泣き寝入り」「名誉殺人」に警鐘
 過激派組織「イスラム国」(IS)の性暴力を告発したイラクの宗教的少数派ヤジディー教徒、ナディア・ムラドさん(25)と、コンゴ民主共和国で性暴力被害者のケアを続けてきたデニ・ムクウェゲ医師(63)へのノーベル平和賞授与が決まった。実態が伝わりにくい中東・アフリカの紛争地域で性暴力に立ち向かった勇気が称賛される一方、性暴力に「泣き寝入り」する被害者が後を絶たない現状に国際社会が警鐘を鳴らした格好だ。ムラドさんの兄で、イラク北部クルド自治区の難民キャンプで暮らすホスニさん(37)は5日、毎日新聞の電話取材に「きょうだい6人が殺害され、私とナディアは生き残った。物静かで小さな妹が、大きな勇気を見せた成果。誇りに思う」と話した。ISは2014年8月にムラドさんの故郷コチョ村などに侵攻し、多くの女性をレイプした。戦時下での性暴力は住民に恐怖心を植え付け、支配する手段として使われる。ISはこの手法で暴虐の限りを尽くした。医師のムクウェゲさんは「レイプがコストの安い『戦争の武器』として使われている」と危機を訴え続けた。コンゴでは豊富な鉱物資源を争う中で、住民の恐怖をあおる手段としてレイプが頻発する。一方、女性の純潔が重視される中東諸国では、レイプも「婚前・婚外交渉」として被害者に厳しい視線が向けられるケースが多い。被害女性を「家族の名誉を傷付けた」として殺害する「名誉殺人」が横行する。ムラドさんの親戚のヤジディー教徒タメル・ハムドンさんは「過酷な体験をしながら、どれほど勇気を出したことだろう」と受賞決定の報に声を詰まらせた。被害者の「泣き寝入り」が珍しくない中東・アフリカには、レイプの加害者が被害者と結婚すれば罪を免れるという法律が各地に残る。だが近年、こうした法律も徐々に撤廃されている。モロッコでは12年、両親や裁判官の勧めで加害者と結婚した16歳の少女が自殺。これを機に法律廃止を求める声が高まり、14年に撤廃された。同様の法律はヨルダンやチュニジアでも廃止となった。国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウォッチは17年、この法律を維持するシリアやリビアなどに撤廃を求めた。

*9-2:http://honz.jp/articles/-/44595 (HONZ 仲野徹 2018年1月27日) 我らが ”サピエンス観” 崩壊! 『ゲノムが語る人類全史、作者:アダム ラザフォード、翻訳:垂水 雄二』
 ここまでわかったのか。あらためてゲノム科学のインパクトを感じる一冊だ。ゲノムとは、ある生物の全遺伝情報を指す。地球上の全生物の遺伝情報はDNAに蓄えられている。うんと簡略化して言うと、ゲノム情報とはACGTという四つの文字が延々と書き連ねられた書物のようなものである。そのサイズは生物によって異なるが、人間の場合は30億文字だ。その配列を決定する方法は猛烈なスピードで進歩してきた。2000年に最初のヒトゲノムが報告された時、13年の年月と三千億円の費用がかかった。それが今や10万円以下、数時間もあればできてしまう。信じられない技術革新だ。従来の酵素を使う方法とは全く異なったナノポアシークエンシングが開発されているが、これに使われる機械の大きさを知ったら、誰もが目を疑うはずだ。なにしろスマホを少し大きくしたくらいなのである。いうまでもなく、ゲノム解析の進歩は、医学に大きな進歩をもたらした。たとえば、数多くの遺伝性疾患の原因が明らかになったし、どのような遺伝子変異が、がんの発症に重要であるかもほぼ解明された。ひと昔前まで、人類進化の研究といえば、基本的に比較形態学、すなわち骨や歯の形の比較であった。しかし、ゲノム解析技術がそのあり方を大きく変えた。第一章のタイトルにもなっている『ネアンデルタール人との交配』が最も有名な例だろう。スヴァンテ・ペーボらが、1856年に発見されたネアンデルタール一号からDNAを抽出し、ゲノム解析を開始したのは1997年のことだ。その研究からわかった最も驚くべきことは、我々、現生人類であるホモ・サピエンスのゲノムに、絶滅したネアンデルタール人の遺伝子が3%近くも含まれていたことだ。なんと、現生人類は、かつてネアンデルタール人と交雑していたのである。ネアンデルタール人は言葉を使えたか、という問題にも大きな進歩があった。喉の構造は、現生人類とネアンデルタール人に大きな違いはない。しかし、それは必ずしも言葉を使えたことを意味しない。チンパンジーと現生人類ではFOXP2タンパクのアミノ酸配列が異なっている、など、いろいろな研究から、言語の能力にはFOXP2という遺伝子が重要であることがわかっている。さて、ネアンデルタール人のFOXP2はというと、現生人類と同じであった。このことは、ネアンデルタール人が言葉を使っていた可能性が非常に高いことを示している。もうひとつ、2006年、シベリア奥地のデニソワ洞窟で発見された、約4万年前に生きていたデニソワ人の話を聞けば、いかにゲノム解析がインパクトある方法であるかが一目瞭然だ。そこで発掘されたのは、歯が一本と小指の先っぽの骨だけだった。当然ながら、それだけでは多くのことはわからない。しかし、骨から抽出されたDNAを用いておこなわれた解析は、驚くべき事実をもたらした。なんと、この女性-女性であることもゲノム解析からわかった-は、現生人類ともネアンデルタール人とも違う「第三の人類」だった。さらに、デニソワ人のDNAの詳細な解析からいくと、どうやら、いまだその骨や歯が発見されていない「第四の人類」も存在していたようなのだ。これからも、ゲノム解析によって人類進化のスキームはどんどん書き換えられていくだろう。当分の間、目が離せない。そんな何十万年も前のことなんか興味がないという人もおられるかもしれないが、この本、章が進むにつれて時代が下ってくるので、心配はご無用。第二章『農業革命と突然変異』では、デンプンを分解する酵素であるアミラーゼの遺伝子が増えたことや、ミルクに含まれる糖分を分解する酵素であるラクターゼの持続的発現といった進化が、一万年前に始まった農業革命によってもたらされた、という話が紹介されている。このことは、人類は、今も進化を続けている。それも、文化的要因に大きな影響を受けながら進化している、ということを示している。逆に、遺伝子が文化的要因に影響を与えることも間違いない。サイエンスはロマンだ。(以下略)

*9-3:https://www.cnn.co.jp/world/35126663.html (CNN 2018.10.7 ) 政府批判のサウジ人記者、行方不明に 在トルコ領事館で殺害か
 イスタンブール(CNN) サウジアラビア政府への批判で知られる同国のジャーナリストが、トルコの最大都市イスタンブールで行方不明になった。米紙によると、同市のサウジ総領事館の中で殺害されたとの情報もある。行方が分からなくなっているのは、サウジ国籍のジャマル・カショギ氏。同氏の婚約者を含む3人の関係者によると、2日にイスタンブールのサウジ総領事館に入ったきり、出てきた形跡がないという。婚約者の女性は総領事館前まで一緒に行ったが、外で待っていたと話している。殺害の情報は、米紙ワシントン・ポストとロイター通信が6日、匿名のトルコ当局者らの話として伝えた。当局者らは今のところ、証拠や詳細を示していない。サウジ側は関与を否定している。ある当局者は、同氏が領事館を訪れた後、まもなく立ち去ったと述べた。ただし、これを裏付ける防犯カメラの映像などは公開されていない。トルコの国営アナトリア通信は、政府が同氏の行方を捜していると伝えた。サウジでは最近、ムハンマド皇太子の主導で、反体制的な聖職者やジャーナリスト、学者、活動化らが次々と拘束されている。ムハンマド皇太子は3日、米ブルームバーグとのインタビューで「隠すことは何もない」と語り、トルコ側による総領事館内の捜索も認めるとの姿勢を示した。カショギ氏は2017年にサウジから米国へ渡り、ムハンマド皇太子の政策を批判する記事などをワシントン・ポストに寄稿していた。

<経産省発の“改革”には人権侵害が多いこと>
PS(2018年10月19、20日追加):*10-1のように、消費税率引き上げに伴う影響緩和策として、経産省の発案で検討されている「キャッシュレス決済」の利用者へのポイント還元案のディメリットは、①クレジットカード保有者やスマホ利用者に限定され、公平性の問題があるだけでなく ②ビッグデータやIT技術を生かすと称して個人の購買活動を勝手に記録し、国民をしつこい広告・勧誘や政府の監視下におく ③従って、第4次産業革命を加速させるより、人権侵害になりやすい ④クレジットカードやスマホ決済は、目の前で金銭が出ていかないため支出額を感じにくくなり、支出のコントロールを失いやすい ⑤スマホ決済はリスク分散ができていないので、スマホを失くしたり盗まれたりすれば一巻の終わり などの欠点がある。
 また、*10-2のように、日本の経産省が米国やEUと国境を越えるデータの流通でルールづくりを目指しているそうだが、それならEUの情報保護規制をそのまま利用した方がよほどマシな規制である。さらに、個人データの利用は、国境を越えた場合のみならず国内でも厳格に本人の了解を求めるのが当たり前であり、それも了解する以外に選択肢がなかったり、了解しなければ不利益を受けるようではいけない。つまり、サイバーセキュリティー対策が不十分な国には、米国や日本も堂々と入っていることを忘れてはならないのだ。
 なお、*10-3のように、日本国憲法は、戦前の経験から、21条で「①集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する」「②検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない」と明確に定めており、無断のデータ利用や検閲は憲法違反だ。また、言論の自由・表現の自由は、メディアに限らず、すべての国民に保障されているが、人権より優先するものではない。さらに、学問の自由も、23条で保障されている。

*10-1:http://qbiz.jp/article/142660/1/ (西日本新聞 2018年10月19日) 消費増税「還元」高齢者ら置き去り キャッシュレス不慣れ、恩恵不透明 経産省発案、与党も不興
 2019年10月の消費税率引き上げに伴う影響緩和策として政府が検討している「ポイント還元」制度に、早くも疑問の声が相次いでいる。クレジットカードや電子マネーを使った「キャッシュレス決済」の利用者しか恩恵を受けられず、こうした支払いに不慣れな高齢者らが置き去りにされかねないためだ。発案したのは経済産業省。この機に「キャッシュレス決済」拡大を図ろうというあからさまな思惑が、閣僚や与党からも不興を買っている。この制度は、増税後に直前の駆け込み需要から一気に消費が落ち込む「反動減」を緩和する狙い。中小小売店での「キャッシュレス決済」の利用者を対象に、増税幅の2%分のポイントを付与。買い物などに使えるよう還元する仕組みが検討されている。経産省によると、国内のキャッシュレス決済の利用率(15年時点)は18・4%で、韓国の89%や中国の60%を大きく下回る。政府は購買データの活用や、訪日外国人観光客の消費拡大のため、25年までに国内の利用率を40%まで高めることを目指す。ポイント還元は普及の好機だ。7月に産学官で設立した協議会は、スマートフォンを使ったキャッシュレス決済「2次元コード決済」について、18年度内の規格標準化を目指すと打ち出した。経産省幹部は「消費税対策を奇貨として普及させたい」と話す。だが経産省の発想は経済基盤の整備に偏り、消費者側からの視点が抜け落ちた格好。スマホに不慣れな高齢者や、カード審査に通らない人はポイント還元の恩恵を受けられず、不公平な制度設計を疑問視する声が上がる。麻生太郎財務相は16日の記者会見で「田舎の魚屋で、大体クレジットカードなんかでやってる人はいない。現金でばっとやっていくという中で、どれだけうまくいくか」と首をひねった。公明党の石田祝稔政調会長は「システムを導入できなかった事業者、カードを持てなかった人にどういう対策ができるか」と提起した。世耕弘成経産相は16日の会見で「多くのキャッシュレス対応の選択肢を準備することも重要」と強調。対象をキャッシュレス決済に限定する考えを崩していないが、与党内ではプレミアム付き商品券や現金を配布する案も浮上し、臨時国会で議論を呼びそうだ。
   ◇   ◇
●公平性の問題生じうる 
 小黒一正法政大教授(公共経済学)の話 ポイント還元案は(ビッグデータやIT技術を生かす)第4次産業革命を加速させるきっかけにはなる。一方で、キャッシュレス決済ができるのは比較的所得の高いクレジットカード保有者やスマホ利用者に限定され、公平性の問題が生じうる。軽減税率に加え、還元も導入すれば税収増がさらに圧縮されるという財政面のデメリットも抱えている。

*10-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20181019&ng=DGKKZO36672510Z11C18A0MM8000 (日経新聞 2018年10月19日) 日米欧で「データ貿易圏」、情報流通へルール作り 台頭する中国を意識
 日本政府が米国や欧州連合(EU)と国境を越えるデータの流通でルールづくりを目指すことが分かった。個人や企業の情報を保護しながら人工知能(AI)などに安全に利用する仕組みをつくる。今年はEUの情報保護規制やフェイスブックの情報流出で米IT(情報技術)大手の戦略にほころびが生じた。台頭する中国とのデータの「貿易圏」争いを意識し、日米欧で連携を狙う。日本政府の目標は個人情報の保護やサイバーセキュリティー対策が不十分な国・地域、企業へのデータ移転を禁じる合意だ。国境を越えた移転には厳格に本人の了解を求め、透明性も高める。世耕弘成経済産業相、ライトハイザー米通商代表らが出席する日米欧貿易相会合で協議する。日本が議長国を務める2019年6月の20カ国・地域(G20)首脳会議までに合意して公表したい考えだ。日本の個人情報保護委員会、米連邦取引委員会(FTC)、欧州委員会司法総局で具体的な内容をまとめ、各国が法整備する。日本では個人情報保護法を改正する。これまでデータの世界はGAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン・ドット・コム)と呼ばれる米巨大企業が圧倒してきた。だがEUが5月、個人情報の保護を強化する一般データ保護規則(GDPR)を施行し、EU域外への個人データの移転を原則禁じたため、GAFAも対応を迫られている。今年はデータ流出事件が相次ぎ、米国内でもGAFAへの規制論があがりはじめた。GDPRとデータ流出でGAFAの覇権が揺らいだわずかな隙に、日本は欧米の橋渡しをしてルールづくりにつなげる構えだ。日本政府関係者は「米政府が欧州のGDPRに準拠した規制に関心を示し始めている」と話す。米国が欧州の基準に歩み寄るかが焦点になる。中国の管理社会型のデータ流通への警戒もある。中国はBAT(バイドゥ、アリババ、テンセント)と呼ばれる企業を前面に立てて国家が情報を吸い上げ、個人が特定された大量のデータが集まる。質も量も高水準なデータを使えばAIの競争力は飛躍的に高まる。既に東南アジアや中東、アフリカに売り込みを始めており、中国モデルのデータの貿易圏が広がりかねない。日米欧は中国に比べると人権に配慮し、ある程度匿名化したデータを使う。そのためにAIの能力で負ける可能性もある。国家主導・管理社会型の貿易圏が次の覇権を握る前に、透明性が高く人権に配慮した貿易圏をつくれば、域内で大量のデータを共有して競争力を高めることができる。あらゆるモノがネットにつながる「IoT」では、製造業に強みを持つ日本にもチャンスがある。欧米とは産業データも安全に流通させるルールをつくり、成長につなげる考えだ。

*10-3:http://www.houko.com/00/01/S21/000.HTM (日本国憲法 抜粋) 
第21条 集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。
   2 検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない。
第23条 学問の自由は、これを保障する。

| 経済・雇用::2018.1~ | 07:41 PM | comments (x) | trackback (x) |
2018.9.23 ふるさと納税・返礼品・税収の使途について (2018年9月24、25、26、29、30日、10月4、8日追加)

                                 218.9.20西日本新聞

(図の説明:左の図のように、ふるさと納税寄付額は、2008年の制度導入以降、大きく増加した。また、中央の図の佐賀県みやき町の返礼品に電気製品があったのは、都会では考えられないかも知れないが、地元の電気屋さんを残すためだったそうで、佐賀県上峰町の場合は、返礼割合は普通だが気合の入った質のよい返礼品が送られて来る。なお、佐賀県唐津市は唐津市出身の人が社長であるDHCに原料として唐津産のオリーブを使ってもらったり、宣伝してもらったりしているようだ。他はよく知らないが、それぞれ苦心の後が見えるのはよいと思う。さらに、右の図の部活動については、専門家が指導しなければ時間を使う割には根性論に陥って上達しないため、どうせやるのなら、給料を払ってオリンピックメダリストやオリンピックを目指したような選手をコーチとして雇い、時間の無駄なくうまくなれるようにした方がよいと思う)

(1)ふるさと納税に対するクレームについて
1)クレームの内容と反論
 私が提唱してでき、多くの方のアイデアと協力で大きく育った「ふるさと納税」が、*1-1のように、「①返礼品の抑制が広がる中でも増えた」「②ガソリン税に匹敵する規模で自治体の主要な収入源になった」「③幅広いアイデアが寄付を押し上げた」というのは嬉しいことだ。

 これに対し、*1-2のように、645億円の流出超過となった東京都などが、「待機児童対策に響く」等と指摘しているが、東京など企業の本社・工場が多い地域で多く徴収される仕組みになっている法人住民税や生産年齢人口の割合が高い都会で多く徴収される個人住民税などによる税収格差を是正するために、私は「ふるさと納税」を作ったので、都市から地方の自治体に税収が流れるのは最初から意図したことだった。

 なお、私は大学時代から30代後半まで東京都内に住んでいたのでよく知っているが、東京都の待機児童対策がふるさと納税制度制定前に進んでいたかと言えば全くそうではなく、莫大な無駄遣いが多いことは誰もが知っている事実だ。そのため、東京都が「待機児童対策に響く」などと指摘しているのは、持ち出しにクレームを言うための耳ざわりのいい口実にすぎない。

 さらに、「ふるさと納税」を集めるチャンスはどの自治体も平等に持っており、魅力的な製品やサービスを発掘(もしくは開発)して返礼品にした自治体が多くのふるさと納税を集めるられるのは、単なる税金の分捕合戦ではなく、地方自治体が自らの地域の長所を見つけて魅力ある産物を増やす工夫をすることに繋がっている。つまり、「うちには、何もない」と思っていた地方の人たちが、自らの産物に対する消費者の人気を肌で感じ、ネット通販やクラウドファンディングのノウハウを習得する機会になったのである。

 にもかかわらず、*1-3のように、日経新聞は、「ふるさと納税は原点に戻れ」と題して、「①寄付額の3割を超える高額な返礼品が増えた」「②地元の特産物以外の商品を送る市町村も多い」「③総務省の要請には法的な拘束力はないが、ルールに従う地域からみれば不公平」「④ふるさと納税は、富裕層に有利」「⑤ふるさと納税が日本の寄付文化を育んでいる面もあるが、自然災害の被災地には返礼品がなくても多額の寄付が集まっている」「⑥ふるさと納税は、故郷や気になる地域を個人の自由意思で応援する制度だ」「⑦見直しで高額な返礼品がなくなり、寄付額が減ったとしても仕方ない」などの批判をしている。

 しかし、私がふるさと納税制度の創設を提唱したのは、純粋な寄付文化を育むためではなく、育った地方に税源を与えつつ、地方を刺激するためであるため、⑤⑥⑦は、あまり努力しなかった自治体のクレームにすぎない。また、①③は、特に条文がないので、日本国憲法から導きだされる租税法律主義から考えて自由であり、それよりも、法律に根拠のないルールを勝手に作って「ルールだから守れ」と言う方が問題である。

 ただ、②のように、地元の特産物以外の商品を多額の返礼品にすれば、地元の産業を育てるチャンスを失い、税収も増えないため、総務省より地元住民がクレームを言うべきだろう。

2)控除限度額の計算
 上の④の「ふるさと納税は、富裕層に有利」というのは、税法の知識のない人が“富裕層(範囲も不明)”さえ叩けば批判になると勘違いしているお粗末な例で、このようなワンパターンの批判は止めるべきである。

 ふるさと納税の控除限度額は、*1-4のように、所得税からの控除限度額が「a)+b)」で、住民税からの控除限度額が「c)」であるため、「a)+b)+c)」の金額である。そして、返礼品がなければ2000円分はどこからも戻ってこず、寄付をしない人より多く税を納めることになるので、この2000円の方が問題だ。
  a)所得税からの控除額=(寄付金-2000円)×所得税率
  b)復興特別所得税から控除額=所得税からの控除額×復興特別所得税率2.1%
  c)住民税からの控除(基本分)=(寄付金-2000円)×住民税率10%

 つまり、所得が大きい人の控除限度額が大きくなるのは当然で、所得が大きい人は累進課税により多額の所得税・住民税を支払っているということなのだ。そして、ふるさと納税に対する批判の多くが、この所得税・住民税の仕組みを理解しておらず、もっともらしく感情論に終始しているのは問題である(「論理的→男性、感情的→女性」というジェンダーは成立しない)。

3)返礼品の発祥と規制の非妥当性
 そのため、この2000円をカバーしようとして考えだされたのが、ふるさと納税を受けた地域からのお礼の品であり、香典を持って行って香典返しをもらうことに例えられる。また、地元の産品であればもちろん産業振興になり、地元産には原料が地元産の場合もあるし、地元の電気屋さんがなくなったら困るため、そこの商品だったりする場合もある。従って、よく事情を聞かなければ妥当性は不明だ。

 ただ、「香川県直島町の担当者が、特産品が少なく簡単にはいかない」と言っているのは、役所の人が返礼品を考えるからで、地元の農協・漁協・商工会などと相談して魅力的な産品(米・レモン・オリーブ油・魚でもよい)を作って返礼品にすれば、それこそ地域振興に繋がる。

 従って、私は、総務省が、返礼品を寄付額の3割以下にすることや地元の農産品に限ることを強制する根拠は法律にはないし、地方自治体は工夫して、「廃止されそうな鉄道の維持」や「送電線の敷設・地中化」に使うというような使用目的を出してもよいと考える。

(2)総務省の対応と自治体
 総務省は、*2-1のように、ふるさと納税の返礼品は地場産品だけにするように通知を出し、*2-2のように、特産品の少ない自治体はこれに困惑しているそうだが、地域の人が「何もない」と思っている地域に優れた農林水産物があったりするため、それこそ地域振興のために知恵を絞るべきだ。

 また、*2-3の埼玉県毛呂山町は、農家の高齢化が進んで収穫されないユズ畑が増えているそうだが、ゆずジュースにしたり、レモンやオレンジに転作したりと、畑や作物の利用余地は大きい。また、*2-5のように、イノシシの皮で起業する人もおり、このような時に、ふるさと納税を「ガバメントクラウドファンディング」として使うのもよいと考える。

 なお、*2-4のように、総務省は、2017年4月に、寄付金に対する「返礼率」を3割以下にし、家電・金券類を扱わないよう求める通知を出し、2018年4月に、返礼品は地場産品に限るよう新たに求め、2018年7月に、ルールを守っていない寄付額の規模が大きな自治体を公表し改善を求めたそうだが、その“ルール”は法律で決まっているものではないため、租税法定主義から強制はできない。

 ただ、無茶なことをしてふるさと納税を集めても地域のためにならないため、それについては地域の人が苦情を言ったり、よりよいアイデアを出したりすべきだろう。

 なお、*2-6のように、JA全中は、准組合員のJAへの意思反映や運営参画促進に向けた具体策を提起するそうだが、6次産業化を進めるには、加工やサービスを行って貢献してくれる人を准組合員にしたり、理事にしたりすると、アイデアが集ってよいと考える。そのため、農業従事者以外を農協から排除する方が営業センスがない。

(3)問題の本質
 問題の本質について、*3のように、西日本新聞が「①返礼品の過当競争といわれても、ふるさと納税の寄付金に頼らざるを得ない地方財政の窮状がある」「②30%という線引きの基準は妥当か」「③税収格差が広がる中で、自治体同士が寄付という名の税金を奪い合う構図に陥っている」「④地方分権改革による国から地方への税源移譲こそが問題解決の本筋だ」「⑤原材料から製造・流通まで複雑に絡む『地元産品』を具体的にどう定義するのか」と記載している。

 私は、①④には賛成で、地方分権と言っても財源がなければ何もできないため、例えば企業の偏在とは関係のない消費税を全額地方税にするなどの税源移譲があってよいと考える。しかし、高所得者になる人を教育して都会に出した地方に見返りがあるのは自然であるため、ふるさとへの貢献をするふるさと納税があるのはよいことだと思う。

 また、②の30%基準は、まあそのくらいだろうという意味しかない。さらに、③については、単に自治体同士が税金を奪い合っているのではなく、それぞれの自治体の役所が、頭を絞って魅力的な産物を作ろうとしていることにも意味があり、新しい産物を軌道に乗せるため「ガバメントクラウドファンディング」を行って応援するのも名案だ。

 ⑤についても、確かに地元とはいろいろな関わり方があり、地元の産業振興に貢献してくれる企業は多いため、定義は困難だろう。

(4)ふるさと納税の使途
 ふるさと納税は、返礼品目的だとして批判されることが多いが、どの自治体も使途を選択できるようになっている。つまり、納税者が使途を指定することができるのが、他の税金とは異なるよい点で、自分が住んでいる地域に使途を指定してふるさと納税することもできる。
 
 例えば、*4-1のような産業スマート化センターの開設・IT導入を応援したり、*4-2のような剣道・体操・ヨット・バレーボール・化学などの部活指導を専門家に任せる資金を作ったり、*4-3のような障害者・高齢者のケアを充実する費用に充てたり、市長にお任せしたりと、地域も魅力的な使途を工夫するようになる点で意義深い。その時、単なる景気対策のバラマキような無駄遣いの使途に、ふるさと納税をする人はいないだろう。

<ふるさと納税に対するクレーム>
*1-1:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO30385930R10C18A5EA3000/?n_cid=SPTMG002 (日経新聞 2018年9月11日) ふるさと納税、3000億円視野 返礼品抑制でも伸び
 ふるさと納税が返礼品の抑制が広がるなかでも増えている。日本経済新聞が全国814市区を調査したところ、6割が2017年度の寄付額が増えると見込む。市区分だけでも2014億円と前年度より10%伸びており、都道府県や町村分を含めると3000億円の大台を突破する勢い。自治体の歳入としてはガソリン税に匹敵する規模で、主要な収入源になってきた。17年度の自治体別の増額幅をみると、最も多かったのは1億円未満で全体の45%を占める。5億円以上は3%にとどまっており、1億~5億円未満が11%だった。ふるさと納税が特定の自治体に集中するのではなく、利用の裾野が広がり多くの自治体で厚みを増している構図が浮かび上がる。総務省によると16年度の実績は2844億円。市区の合計額はふるさと納税全体の64%を占めていた。都道府県は1%で町村は35%だった。市区と町村の伸び率はこれまでほぼ同じ水準で推移しており、17年度は全国の総額で3000億円の大台を超える見通しだ。総務省は17年4月に資産性の高い返礼品などを自粛し、返礼割合も3割以下に抑えるよう各自治体に通知。18年4月には返礼品の見直しの徹底を改めて求める追加の通知を出している。通知後も高い返礼割合の自治体は残るが、集め方や使い道の工夫が広がっている。北海道夕張市はあらかじめ使途を明示した。インターネットで不特定多数の人から少額の寄付を募るクラウドファンディングの手法を採用。少子化に悩んでいた地元の高校を救うプロジェクトなどが共感を呼び、寄付額が3000万円増えた。青森県弘前市は重要文化財である弘前城の石垣修理や弘前公園の桜の管理といった街づくりに参加できる仕組みが人気を集め、前年度より1億6000万円上積みした。「高額」の返礼品だけでなく、幅広いアイデアが寄付を押し上げている。一方で16年度にトップ30だった市区のうち、6割が17年度は減少すると見込む。家電を返礼品から外した長野県伊那市(16年度2位)は66億円減少。パソコンの返礼品をやめた山形県米沢市(同5位)も17億円減った。ただ、全体では17年度も16年度より10%伸びる見通し。上位の減少分を幅広い自治体の増加分でカバーしている形だ。自治体の最大の歳入は約4割を占める地方税。16年度は約39兆円だったが、人口減時代を迎え今後の大幅な増収は見込みにくい。3000億円規模の歳入は自治体にとって、ガソリン税や自動車重量税の地方分と並ぶ規模になる。ふるさと納税が地方税の収入を上回る例も出ており、自治体の「財源」としての存在感は高まっている。16年度首位の宮崎県都城市を抑え、17年度の見込み額でトップになったのは大阪府泉佐野市(同6位)。関東、関西を中心に約130億円を集め、16年度より約95億円増えた。ふるさと納税の額は同市の16年度地方税収入の約6割にあたる。返礼品を大幅に増やして1000以上を用意。黒毛和牛などが人気で、3月までは宝飾品や自転車もそろえていた。返礼割合は17年度で約4割と総務省が求める基準より高かったが、18年度は約3割まで下げる方針だ。一方、税収が「流出」している自治体からは不満の声も漏れる。東京23区では16年度だけで386億円が流出。世田谷区では52億円減った。自治体によっては「既存事業や新規の事業計画に影響が出る可能性がある」と懸念するところもある。調査は2月下旬から4月下旬に実施。802の市区から回答を得た。
▼ふるさと納税 生まれ育った故郷や応援したい自治体に寄付できる制度。納税者が税の使い道に関心を持ったり、寄付を受けた地域を活性化させたりする目的で2008年度に導入された。寄付額から2000円を差し引いた金額(上限あり)が所得税と個人住民税から控除される。15年度から控除上限額を2倍に引き上げ、確定申告せずに税額控除の手続きができる特例制度を導入して利用が広がった。

*1-2:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO33497750X20C18A7EA1000/?n_cid=SPTMG022 (日経新聞 2018年9月11日) ふるさと納税、東京都から645億円の流出に
 総務省は27日、ふるさと納税で控除される住民税が2018年度に全国で約2448億円になると発表した。前年度に比べて37%増えた。都道府県別では、東京都内の控除が約645億円で最も多い。その分だけ、都内の自治体の税収が他の道府県に流出していることになる。待機児童対策などに響くとの指摘もあり、大都市圏の自治体にとっては頭の痛い状況だ。ふるさと納税は故郷や応援したい自治体に寄付できる制度で、原則として寄付金から2千円を引いた額が所得税や住民税から控除される。今回は18年度分の課税対象となる17年の寄付実績から、地方税である住民税の控除額を算出し、都道府県別に集計した。ふるさと納税による寄付の伸びを反映し、住民税の控除額も軒並み増えている。最大の東京都からの「流出額」は約180億円増えた。第2位の神奈川県は257億円と約70億円膨らんだ。こうした大都市圏の自治体からは「行政サービスに影響が出かねない」との声が漏れる。ふるさと納税を巡っては、自治体が高額な返礼品を用意することでより多くの寄付を集めようとする競争が過熱した問題がある。総務省は17年4月、大臣通知で各自治体に「良識のある対応」を要請し、返礼品を寄付額の3割以下にすることなどを求めた。子育て支援や街づくりなどに使い道を明確にするなど、既に多くの自治体は対応を見直している。返礼割合が3割を超える市区町村は、18年6月時点で1年前の半分以下の330自治体に減った。それでも制度自体の人気は根強い。ふるさと納税は17年度には初めて3千億円を突破した。一方、税収の流出に悩む大都市圏でも地域資源の活用などの工夫で、寄付を集める取り組みが広がる。大阪府枚方市は市長が案内する文化財見学ツアーを用意し、17年度に2億8000万円を受け入れた。東京都墨田区は「すみだの夢応援助成事業」と銘打って、農園開設などの民間プロジェクトを選んで寄付できるようにしている。

*1-3:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180920&ng=DGKKZO35549490Z10C18A9EA1000 (日経新聞社説 2018年9月20日) ふるさと納税は原点に戻れ
 野田聖子総務相がふるさと納税制度の見直しを表明した。過度な返礼品を送っている自治体への寄付は税制優遇の対象から外す方針だ。これを機に同制度の本来の趣旨を再確認したい。ふるさと納税は制度ができて今年で10年になる。当初、年間の寄付額は100億円前後で推移していたが、2013年度ごろから増え始め、17年度は3653億円と前年度よりも3割増えた。寄付が増えた最大の理由は高額な返礼品だ。ネット上で仲介する民間サイトが増えて比較しやすくなったこともあって、自治体間の返礼品競争が過熱した。総務省は17年4月に、返礼品の金額を寄付の3割以下にすることなどを要請したが、今年9月時点でも全国の約14%の自治体が従っていない。地元の特産物以外の商品を送る市町村も多い。総務省の要請には法的な拘束力はないが、ルールに従う地域からみれば納得できないだろう。現状では不公平感がぬぐえない。17年度に全国で最も寄付を集めた大阪府泉佐野市は、地元産品以外も含め肉やビール、宿泊券など1千種類以上の返礼品をそろえ、返礼率も最大で5割にのぼるという。もはやカタログ通販だ。こうした自治体がある以上、優遇税制を見直すのはやむを得ない。過度な返礼品以外にも、ふるさと納税には様々な批判がある。例えば富裕層に有利な点だ。所得が多い人ほど税金の控除額が増えるためだ。ふるさと納税が日本の寄付文化を育んでいる面もあるが、自然災害の被災地には、返礼品がなくても多額の寄付が集まっている。特産品の代わりに故郷にある墓を掃除したり、同制度を使って資金を募って過疎地での起業を後押ししたりする市町村もある。ふるさと納税はその名の通り、故郷や気になる地域を個人の自由意思で応援する制度だ。今回の見直しで高額な返礼品がなくなり、寄付額が減ったとしても、それは仕方がないのではないか。

*1-4:https://zuuonline.com/archives/165336 (抜粋) ふるさと納税の控除額の計算方法
 ふるさと納税には「納税」という言葉がついているが、寄付金控除のひとつだ。各自治体に寄付をすることで、原則として寄付額から2000円を差し引いた金額が、所得税と住民税から控除される。例えば1万円を寄付すると、2000円を差し引いた8000円が所得税と住民税から控除される。住民税の控除は、さらに基本分と特例分に分かれる。住民税控除の特例分はふるさと納税特有のもので、他の寄付金控除にはない。寄付金の額から2000円を引いた金額の全額を控除できるように、特別に考え出されたのが特例分なのだ。ただし、住民税の特例分には一定の上限(個人住民税所得税割の2割)があるので、注意が必要だ。ふるさと納税全体の計算式は以下のとおり。
  ふるさと納税控除=所得税控除(+復興特別所得税控除)+住民税控除(基本+特例)
●所得税からの控除
 ふるさと納税は原則、所得税と住民税からその控除額を計算する。所得税の確定申告における寄付金控除には、所得税率を掛ける前の所得から差し引かれる「所得控除」と、所得税率を掛けた後の税額から直接差し引かれる「税額控除」があるが、ふるさと納税は所得控除に該当する。そのため、ふるさと納税をした金額から2000円を引いたものに所得税率を掛けた額が、所得税からの控除額になる。2037年12月31日までは、所得税のほかに所得税率の2.1%の税率の復興特別所得税がかかり、ここからもふるさと納税の控除がおこなわれる。所得税等から差し引かれる控除額は、以下の算式の合計額となる。
  ①所得税からの控除額=(寄付金-2000円)×所得税率
  ②復興特別所得税から控除額=所得税からの控除額×復興特別所得税率2.1%
 所得税率は以下の表で確認できる。
   <所得税速算表>
   課税される所得金額      税率     控除額
   195万円以下          5%       0円
   195万円超 330万円以下    10%   9万7500円
   330万円超 695万円以下    20%    42万7500円
   695万円超 900万円以下    23%   63万6000円
   900万円超 1800万円以下    33%  153万6000円
   1800万円超 4000万円以下   40%  279万6000円
   4000万円超 45% 479万6000円
 ※課税される所得金額は、所得金額から所得控除を差し引いた後の金額。
●住民税からの控除(基本分)
 ふるさと納税は所得税だけでなく、住民税からも控除される。住民税は基本分と特例分にわかれるが、基本分はふるさと納税だけでなく、寄付金控除すべてに共通の基本的な計算方法だ。ふるさと納税をした金額から2000円を引いたものに、住民税率を掛けた額が住民税からの控除額(基本分)になる。計算式は以下の通り。
  ③住民税からの控除(基本分)=(寄付金-2000円)×住民税率10%
 ※住民税の内訳は道府県民税の税率が4%、市町村民税の税率が6%。
●住民税からの控除(特例分)
 住民税控除の特例分は、ふるさと納税をした金額から2000円を引いたもの全額が控除できるように考え出された、いわば「ふるさと納税のための控除」だ。所得税や住民税からの控除基本分から控除しきれなかったものを、特例分で控除するイメージとなる。計算式は以下の通り。
  ④住民税からの控除(特例分)=(寄付金-2000円)-所得税からの控除分
                            -住民税からの控除(基本分)
 ふるさと納税控除に占める特例分の割合は以下の式で求められる。
  ⑤特例分の税率=100%-「所得税の税率」×(100%+復興特別所得税率2.1%)
                         -「住民税からの控除(基本分)10%
 所得税率が5%の場合なら、ふるさと納税控除に占める特例分の割合は100%-5%×102.1%-10%=84.895%となり、所得税率が20%なら100%-20%×102.1%-10%=69.58%となる。所得税率が異なっていても、特例分の割合を調整することで誰もが「寄付金-2000円」の控除を受けることができるようになっている。ただし、特例分には上限があり、個人住民税所得税割の2割と決まっている。ふるさと納税の金額から2000円をマイナスした金額が、個人住民税所得割額の20%を超える場合の特例分は、上記の計算式に関係なく個人住民税所得割額×20%となる。寄付額を考える際に考慮してほしい。

<総務省の対応と自治体>
*2-1:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO28778380Q8A330C1MM0000/?n_cid=SPTMG053 (日経新聞 2018年9月11日) ふるさと納税、返礼品は地場産品だけに 総務省通知
 総務省はふるさと納税の返礼品を地場産品に限るよう自治体に求める。4月1日付で通知を発送する。海外のものなど「ふるさと」とは関係がなかったり、縁遠かったりするものを返礼品にする自治体がある。本来の目的から外れていることを問題視、自治体どうしの過剰な競争を防ぐ狙いだ。通知に強制力はないが、変更を迫られる自治体も多そうだ。ふるさと納税は2016年度の寄付額が15年度比72%増の2844億円と最高を更新。一方で、制度の趣旨に沿った運用ができるかがかねて課題になってきた。一部の自治体で、海外産のワインやシャンパン、関係のない地域の調理器具やフルーツなどを取り扱っているケースがある。今回の通知には「区域内で生産されたものや提供されるサービスとすることが適切」と明記する。「制度の趣旨に沿った良識のある対応」として地場産品に限るよう自粛要請する。たとえば岐阜県七宗町は民間のギフトカタログを返礼品にしている。町内の商店街に返礼品のアイデアを募り、ギフトカタログを返礼品に加えていた。町の担当者は今回の通知に「特産品の多い豊かな自治体と格差が広がるだけだ」と話した。総務省は17年4月にも寄付額のうち返礼品が占める価格を3割以下に抑え、家電や宝飾品などの換金性の高い品もやめるよう通知している。これに対しては、多くの自治体が返礼品の分量や寄付額を変更するなどして対応した。今回の通知では具体的な基準は示さないが、対応を迫られる自治体も多いとみられる。総務省は自治体のふるさと納税活用事例も公開し、地域振興に生かした事例を紹介。改めて高額返礼品の自粛を求めるなどして、ふるさと納税で起業や産業振興などを支援するよう自治体に促す。野田聖子総務相は30日の閣議後の記者会見で「結果として都市に本社を持つ企業の収益につながる事態になっている。新しい地場産品を作るという発想を持ってほしい」と話した。
■戸惑う自治体、モノからコトへ模索
 自治体側からは戸惑いの声が漏れる。輸入品のホーロー鍋を返礼品にしていた福島県南相馬市は「どう対応するか考えなければいけない」。東日本大震災の生活基盤再生を手掛けるNPOをふるさと納税で支援する形だが、総務省の通知に抵触するおそれもある。関西地方の自治体は別の自治体とふるさと納税で返礼品を融通する協定を結んだ。日用品などが割安で手に入るとして寄付額を伸ばした。「震災の被災地支援」としてこうした協定を結ぶ自治体も多く、「自治体の自主性を奪いかねない」との懸念もくすぶる。昨年の返礼率の引き下げを背景に、寄付金を起業や地域振興にいかそうという動きが相次ぐ。総務省は寄付金の使途を明確にして、ふるさと納税をクラウドファンディングのように募る「ガバメントクラウドファンディング」といった手法を促す。岐阜県池田町はローカル線の「養老線」の存続活動に寄付金を使う。鹿児島県霧島市は集めた寄付金で商店街のテナントを使った起業を支援する事業を始めた。ふるさと納税サイト「ふるさとチョイス」を運営するトラストバンク(東京・目黒)によると、同社が立ち上げたガバメントクラウドファンディングの本数は2017年に111件と前年の約2倍に増えた。須永珠代社長は「地域の自立を促す有効な制度となるよう、一定のルールを設けることが大切だ」と指摘する。ふるさと納税は返礼品を競う「モノ」から、「コト」へと比重を移しつつある。もっとも、16年度の寄付金受け入れ額では宮崎県都城市を筆頭に上位は牛肉など食品の人気が高い自治体が占めており、模索が続く。

*2-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180915&ng=DGKKZO35411780U8A910C1EA5000 (日経新聞 2018年9月15日) 総務省、ふるさと納税見直し、特産品少ない自治体、困惑
 総務省が「ふるさと納税」の見直しに動き始めた。目先の寄付金を集めようと豪華な返礼品をそろえる競争が過熱。地域と関係の薄い家電製品や高級酒などが返礼品になる例まで出ていた。自粛要請しても一部自治体は従わず、業を煮やした総務省は11日、過度な返礼品を用意する自治体への寄付を税優遇から除外する抜本策を表明した。2019年度税制改正での実現を目指す。「ふるさと納税は存続の危機にある。ショッピングではない」。11日の閣議後の記者会見。野田聖子総務相はいつになく厳しい表情で苦言を呈した。「制度の趣旨をゆがめているような団体については、ふるさと納税の対象外にすることもできるよう見直しを検討する」。ふるさと納税が始まったのは2008年度。自治体への寄付金に応じて税金を控除する制度で、故郷や災害の被災地などを応援するのが本来の狙い。都市部の住民が田舎の故郷や災害で傷ついた地域などを寄付金で応援するというわけだ。原則として寄付金から2千円を引いた額が住民税や所得税から控除される。当初は年100億円にも満たなかった寄付額は17年度には3653億円にまで拡大した。だが、理想と現実はかけ離れている。いびつな光景はそこかしこに広がる。ビールやギフトカードに化粧品、海外ホテルの宿泊券、都内料亭の食事券。ふるさと納税のインターネットサイトや自治体のホームページをのぞくと、そんな返礼品がズラリと並ぶ。寄付するお金とは別に原則2千円の自己負担で好みの返礼品を手に入れられる。その行為は買い物とかわりない。控除される税金は本来、寄付者の居住地で何らかの行政サービスに充てられるはずのものだ。それが別の地域に流れていく。その先で地場産品の消費拡大など地域振興につながるならまだしも、返礼品が地場産品ではないケースも目立つ。日本全体として貴重な税財源が嗜好品のお取り寄せに使われているとの見方もできる。総務省も問題を黙って見過ごしてきたわけではない。17年度には大臣通知で全国の自治体に「良識のある対応」を呼びかけた。具体的な目安として返礼品の調達価格を寄付金の3割以内に抑えることを求めた。地場産品以外の扱いも控えるよう要請した。18年度にも同様の大臣通知を改めて出した。この7月には、地場産品以外の過度に高額な返礼品で10億円以上の寄付を集める全国12市町の具体名を公表。警告の意味も込めた。ゆがみは徐々に是正されてはいる。返礼割合が3割を超える自治体は16年度で1156と全体の65%を占めていたが、直近の9月1日時点では246(14%)に減少した。民間のカタログギフトを返礼品にしていた岐阜県七宗町は総務省の通知を受けた今春に除外した。秋田市は10月までに3割超の返礼品を取り下げる予定。クルーズ船の乗船クーポン券はすでに申し込みサイトから削除した。一方で見直しに消極的な自治体も少なくない。香川県直島町の担当者は「見直さないわけにはいかないが、特産品が少なく簡単にはいかない」とこぼす。今後、見直す時期や意向が決まっていない自治体は174(10%)。ビールなどを返礼品として17年度に135億円と全国最多の寄付を集めた大阪府泉佐野市は総務省の調査に回答していない。それぞれの事情や言い分はあるにせよ、一定の税収を確保したいのが自治体の本音。通知を順守する自治体からは「正直者がバカをみないようにしてほしい」との声も上がる。制度の創設から丸10年。原点を改めて問い直す時期に来ている。

*2-3:https://digital.asahi.com/articles/CMTW1809211100003.html?iref=pc_ss_date (朝日新聞 2018年9月21日) 毛呂山のユズ「収穫して」
◇ボランティアと農家募集■高齢化で放置される畑増え
 古くからユズの産地として知られ「桂木ゆず」を特産する埼玉県毛呂山町は10月から、「収穫してほしい」農家と「収穫したい」ボランティアをそれぞれ募集する。農家の高齢化が進み、実がなっても収穫されないユズ畑が増えているため。ジュース製造など6次産業化を進めるなか、もったいないユズを減らして収量を増やすねらいだ。町では近年、11月中旬~12月下旬ごろの収穫期を過ぎ正月明けになっても、実を付けたままの木々が目立つようになった。町の高齢化率は今年8月1日に32・5%で、10年前から11・5ポイントも上昇。ユズ畑の多くは山の斜面にあり、木にはしごを掛けるなどして実をもいで、斜面を運び下るのは重労働だ。町の担当者によると、収穫を続ける農家からも「体がきついので、年々、とれる範囲が狭まっている」という声が上がっている。町内の栽培面積は計約10ヘクタールあり、150トンはとれるはずが、昨年度の出荷量は約100トン。「差のほとんどは、放置されている畑の分とみられる」うえ、収穫しないと木に新しい実がならなくなってしまうという。応募した農家は、募集に応じた摘み手「ゆず採り隊員」に収穫してもらい、出荷する。町は「隊員に収穫物の一部など若干の謝礼あり」としている。ともに募集期間は10月1日~31日。町産業振興課(049・295・2112)へ。

*2-4:https://dot.asahi.com/wa/2018082200060.html?page=1 (週刊朝日 2018.8.24) 過熱する「ふるさと納税」競争 “国と闘う”自治体の本音
 好きな自治体に寄付すれば、特産品などがもらえるふるさと納税。自治体間の競争は激しく、寄付金に対する「返礼率」が3割を超える商品も多数ある。家電や商品券など地場産品以外もあり国は改善を求めてきたが、従わないとして公表された自治体が複数ある。あえて“国と闘う”本音は?ふるさと納税のメリットは、地方の農林水産物や特産品などいろんな返礼品をもらえることだ。寄付金を集めるための返礼品競争が過熱する中で、総務省は引き締めを図ってきた。昨年4月には寄付金に対する「返礼率」を3割以下にすることや、家電や金券類を扱わないよう求める通知を出した。今年4月には、返礼品は地場産品に限るよう新たに求めた。7月にはルールを守っていない寄付額の規模が大きな自治体を公表し、改善を求めた。返礼率が3割以上で、地場産品以外を返礼品にしているにもかかわらず、通知に従わない12自治体だ。総務省は通知は強制ではないとしているが、自治体が受け入れないのは極めて異例だ。どんな事情があるのか。「うちは肉や米など人気を集める地場産品がない。“アイデア力”で勝負しなければ、自治体の格差が広がってしまうだけです」。こう主張するのは泉佐野市(大阪府)の担当者だ。2017年度の寄付額は135億円で全国トップ。前年度の約4倍と大きく伸びている。返礼品を紹介するサイトをのぞくと、「黒毛和牛切落し1.75キログラム」「魚沼産コシヒカリ 15キログラム」などが並ぶ。和牛は鹿児島県産などで、米は新潟県のものだ。格安航空会社(LCC)のピーチ・アビエーションの航空券に換えられるポイントといった、金券類に相当するものもある。品数は前年度から約400品増やして1千品以上になり、返礼率は全体で45%に達する。まるで大手通信販売のサイトのようだ。やり過ぎではないかとの批判もあるが、担当者はこう話す。「市内に本店、支店がある事業者に返礼品を提供してもらっている。和牛は地元の老舗が目利きしたお肉。航空会社のポイントは市内の関西空港の活性化につながった」。総務省の通知に従わない背景には、市の厳しい財政状況もある。関西空港へつながる道路や駅前整備などの費用がかさみ、04年に財政非常事態宣言を出し、09年には「財政健全化団体」に陥った。職員を6割減らすなどして14年に健全化団体から抜け出してはいるが、今後の地域活性化にはふるさと納税の寄付金に期待を寄せる。「財政難で市内の大半の小中学校でプールがない。ふるさと納税のおかげで新しくプールが一つ設置でき、これからも順次整備していく予定です」(担当者)。みやき町(佐賀県)は72億円と寄付額が全国4位。佐賀牛など地場産品もあるが、他にも人気の返礼品がある。タブレット端末iPad(アイパッド)や、旅行大手エイチ・アイ・エスのギフトカードだ。返礼品を選ぶサイトでは、この二つは8月上旬の時点で、人気のため数カ月待ちとなっている。担当者は返礼品の意図をこう説明する。「ギフトカードの使途は限定されていないが、みやき町への里帰りに使ってもらいたい。iPadには町の映像が見られるアプリがついていて、町内出身者には地元を思い出してもらい、町外の人にはPRになります」

*2-5:http://www.tokyo-np.co.jp/article/ibaraki/list/201809/CK2018092102000148.html (東京新聞 2018年9月21日) イノシシの皮で起業目指す 城里町の地域おこし協力隊員・瀬川さん
 城里町の地域おこし協力隊員として活動する瀬川礼江(ゆきえ)さん(26)が、食害が深刻なイノシシの皮を加工・販売する起業に向け、インターネットのクラウドファンディングで出資を募っている。「革製品の選択肢にイノシシを入れてもらえるようにしたい」と意気込む瀬川さん。田畑を荒らす「厄介者」を、資源として利用する文化を根付かせるための応援を呼び掛ける。瀬川さんは土浦市出身。東京で就職したが「地域や人とのつながりを持ち、人生の実になる仕事がしたい」と、町の地域おこし協力隊員に応募。二〇一六年四月の採用後すぐに町職員に誘われ、狩猟免許と散弾銃所持の許可を取得した。猟友会に同行すると、仕留めたイノシシの皮は、利用されることなく捨てられていた。他地域を調べると、西日本で加工・販売が事業として成り立っていることが分かった。イノシシ革の特徴について「なめすと牛革より柔らかい。傷も付きにくく、お手入れもほとんどいらない」と瀬川さん。野生のため、最初から傷が付いている場合もあるが「それも味だと思う」と話す。協力隊員の任期が切れる一九年四月の起業を目指して皮の加工方法を学び、工房として使える物件を探した。町内の元鮮魚店を借りられる目途が立ち、改装や設備に必要な七十五万円を集めるべく、クラウドファンディングサイト「Makuake」に登録した。クラウドファンディングの期間は十月十五日まで。出資してくれた人には、金額に応じてコースターや小物入れなどを贈る。二十日現在、目標額の三割強が集まっている。町農業政策課によると、町内で捕獲されたイノシシは一七年度に約二百五十頭に上り、一八年度も前年を上回るペース。瀬川さんは「捨てられていた物が、ちょっとした工夫で日常に彩りを加えてくれる。県の魅力も伝えていけるような物作りの場にしたい」と話している。

*2-6:https://www.agrinews.co.jp/p45246.html?page=1 (日本農業新聞 2018年9月20日) 准組参画の仕組みを JAごとに要領策定 全中が具体策提起
 JA全中は、准組合員のJAへの意思反映や運営参画促進に向けた具体策を提起した。今年度中に各JAで要領を策定し、仕組みを整備した上で来年度から実践する。対象者の選定や具体的な手法など検討のポイントを示した。准組合員モニターや准組合員総代制度などの例を参考に、JAごとに取り組みを進める。JAの准組合員は約608万人(2016年度)と正組合員を上回り、増加を続けている。ただ、協同組合でありながら、多くの准組合員にJAへの意思反映、運営参画への道が開かれていないとの課題があった。一方で2016年4月に施行された改正農協法では、施行後5年後までに准組合員の利用規制の在り方検討に向けた調査を行い、結論を得るとされる。准組合員の位置付けの明確化も重要になる。JAグループでは15年度の27回JA全国大会決議で、准組合員を「農業振興の応援団」と位置付け段階的に意思反映・運営参画を進めることを盛り込んでいた。来年3月の28回大会・県域大会の議案策定に向けた基本的考え方でも意思反映・運営参画の強化を明記。こうした方針を踏まえ、今回具体策をまとめた。全中はまず、各JAで正組合員も含めたJA自己改革の対話運動を通じた組合員の意思反映を重視する。その上で、各JAで准組合員の意思反映や運営参画を促す要領の策定を提起。全中によると、全国平均で准組合員のうち3、4割は農家出身者で、JAへの意思反映が一定にできているとみられる。事業利用などで加入した残りの6、7割を対象に、意思反映などができる仕組みを目指す。JAごとの実態に合わせて、准組合員の位置付け、意思反映などの手法を要領にまとめる。意思反映の希望の有無や事業利用量、接点の多さなどで対象を選定する手法も考えられるとした。具体例として、准組合員の集いや人数を限定したモニター、支店ふれあい委員への選出、准組合員総代制度などを挙げる。さまざまな仕組みを組み合わせて、段階を踏んで参画ができる仕組みが望ましいとした。こうした取り組みは既に実践しているJAもあり、全中は事例集や導入マニュアルも整備している。全中は「何らかの意思反映ができている准組合員の割合や現在設けている仕組みによって、取り組みは変わってくる。JAの実態に合わせて声を聴く機会を設けていくことが重要だ」(JA改革推進課)と強調する。

<問題の本質>
*3:https://www.nishinippon.co.jp/nnp/syasetu/article/450066/ (西日本新聞 2018年9月16日) ふるさと納税 高額返礼品だけの問題か
 野田聖子総務相が、ふるさと納税制度の抜本的な見直しを表明した。寄付金に対する自治体の行き過ぎた「豪華返礼品」などを排除して制度本来の趣旨を取り戻すのが狙いという。高価な返礼品で寄付金を集める手法は問題である。国が自粛を求めても応じようとしない自治体の姿勢も問われよう。ただ、法律を改正して強制的に排除する手法が妥当かどうかは議論の余地がある。同時に、返礼品の過当競争といわれても、ふるさと納税の寄付金に頼らざるを得ない地方財政の窮状にも目を向けたい。出身地の故郷や応援したい市町村など好きな自治体に寄付をすれば、自己負担の2千円を除く金額が所得税や住民税から差し引かれる。ふるさと納税制度は2008年4月に始まった。控除される寄付額の上限を2倍にするなど制度が拡充される一方、常に問題視されてきたのが自治体の返礼品だった。返礼品に関する法令上の規定はない。だが、制度が普及するにつれて一部の自治体は返礼品の豪華さを競い合うようになる。商品券や旅行券のように換金できるものや、地場産品とは無縁と思われる物品などで返礼するケースも続々と出てきた。総務省の調査(今月1日時点)によると、九州の64市町村を含む全国246の自治体が寄付額の3割を超す返礼品を贈っていた。これは、全国の自治体の13・8%に相当するという。総務省は寄付額の30%超の高額品や地元産以外の物品を除外するよう総務相通知で要請してきたが、これを法制化する。要請に応じている自治体は現状は不公平と訴えており、野田総務相は「一部自治体の突出した対応が続けば、制度自体が否定される」という。確かに一理ある。だが、他方で30%という線引きの基準は妥当か。原材料から製造・流通まで複雑に絡む「地元産品」を具体的にどう定義するのか。地方が納得する議論が必要だ。地方自治に関わる問題である。地方が国の言うことを聞かないから-という理由で法改正まで持ち出すのはいかがなものか。素朴な疑問も禁じ得ない。もちろん返礼品とは無関係にふるさと納税をしている人は、たくさんいる。自然災害の被災地にこの制度を活用した寄付が集まるようになったのも、望ましい効用の一つと評価したい。問題の核心は、税収格差が広がる中で、自治体同士が寄付という名の税金を奪い合う構図に陥っていることだ。地方が全体として豊かになるためにはどうすべきか。地方分権改革による国から地方への税源移譲こそが問題解決の本筋であろう。

<ふるさと納税の使途>
*4-1:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/277384 (佐賀新聞 2018.9.20) 佐賀県産業スマート化センター開設へ、10月、IT技術導入を支援
 人工知能(AI)やモノのインターネット(IoT)など最新テクノロジーを企業に積極的に導入してもらうとともに、IT産業の成長を支援しようと、佐賀県は10月1日、佐賀市の県工業技術センター内に「県産業スマート化センター」を開設する。県内外の企業のソフトやデバイスなど約20種類を無料で使うことができる。アドバイザーを配置し、相談対応や導入支援も行う。10月22日にオープニングイベントを開く。センターは工業技術センターの生産技術棟内に開設する。ショールームを設け、AIやIoTなどの最新技術を気軽に体験できる。他に人材育成やセミナーなど多彩なメニューを予定している。本部機能は県工業技術センター内に置くが、教育機関やコワーキングスペース(共有オフィス)、IT企業などの協力を得て、セミナー開催やソフトウエアの体験を行うサテライト拠点を県内に設置する展望も描いている。また、同センターの運営や、最新技術の体験・展示に協力するサポーティングカンパニーも県内外から多数参画する予定だ。県産業労働部の担当者は「最新技術を導入したい県内企業のニーズはあったが、IT事業者との接点がほとんどなかった。センターが両社をつなぐ役目を担えれば」と話す。

*4-2:http://qbiz.jp/article/141042/1/ (西日本新聞 2018年9月20日) 【あなたの特命取材班】「ブラック部活変えよう」教諭が発信 顧問は強制、休日返上 「苦しみ」共有 全国へ
 休みもなく、長時間化する部活動の練習が「ブラック部活」ともいわれ、学校現場を疲弊させている。西日本新聞あなたの特命取材班は5月に現状を報じたが、その後も変わらぬ状況に悲痛な声が絶えない。一方で、悩みを抱えるのは生徒だけではない。多くの学校で部活動の顧問が「強制」となっている中、部活の在り方に異議を唱え、発信する教諭が福岡にいる。「先生も生徒もみんな苦しんでいる」。思いは全国へ広がっている。福岡県の公立中学校に勤務する体育教諭、中村由美子さん(39)=仮名=は2014年、会員制交流サイト(SNS)上でつながった全国の教員仲間6人で「部活問題対策プロジェクト」を立ち上げた。インターネット上で(1)教諭に対する顧問の強制(2)生徒に対する入部の強制(3)採用試験で部活顧問の可否を質問すること−に反対する署名を集め続け、署名数は現在、延べ6万を超える。中村教諭は体育教諭だが本年度、部活の顧問を受け持たない。初めて「拒否」したのは15年。きっかけは自身の子どもの異変と病気だった。それまで長年、部活の指導を求める保護者や学校の期待に応えてきた。ソフトテニス、剣道、バレーボールなど、全て運動部の正顧問を受け持ち、平日の帰宅は午後9〜11時。土日は毎週練習試合を引率し、年間を通しての休みは盆と正月の数日のみ。帰宅後も、保護者から相談などの電話が自宅にかかってくる。その間、家庭に割く時間はなく、子どもの世話は両親頼み。10年前、ストレスをためた当時小学生だった長女の異変に気付けず、担任から、もっと長女に目を向けるよう指摘された。14年、次男の出産時に1歳だった長男の血液の病気が分かり、働き方を見直そうと決めた時、SNS上で同じような悩みを抱える教諭らと出会った。
   ■    ■   
 長時間化する部活は教員の多忙化の大きな原因だ。文部科学省の16年の調査では、中学教員が土日に部活指導に費やす時間は2時間10分と、10年前より1時間4分増えた。昨年のスポーツ庁の全国調査でも、公立中の平日の活動日数は休みなしの5日が52%で最も多く、土曜の活動は「原則毎週」が69%。本来は強制できないが、全教員が顧問になるのを原則としているのが6割で、顧問を担当する教員の半数以上が疲労や休息不足などの悩みを抱えていた。福岡都市圏の公立中学の50代男性教諭は「たくさん練習試合に連れて行ってくれるのがいい先生だという、保護者からのプレッシャーもある」と話す。
   ■    ■   
 中村教諭は部活の顧問を断った15年以降、これまで以上に生徒指導と授業研究に力を注ぐ。16、17年は副顧問として、保護者対応を受け持ち、顧問のサポート役に徹した。正式に部活を持たないからといって、保護者や生徒との関係に支障はなく、これまでできなかった新しい授業スタイルを考え、実践することもできるようになった。部活を熱心に指導する教諭については「すごいと思うし、ありがたい」。一方で、専門知識を持たずに顧問を受け持たされる教諭が多い現状に一番問題があると感じてもいる。「部活指導のスペシャリストはごく一部。最新の指導法や知識を学ぶ時間も与えられないまま指導にあたることが、長時間の練習や試合の詰め込みにつながっているのではないでしょうか」。教諭が黙っていては何も変わらない。教諭、生徒、保護者、それぞれの部活に対する温度差に悩みながらも、中村教諭はこれからも発信を続けるつもりだ。

*4-3:http://qbiz.jp/article/140099/1/ (西日本新聞 2018年9月2日) 【あなたの特命取材班】障害者施設切られる冷房 熱帯夜続きでも「午後9時半まで」 福岡近郊「熱中症が心配」
 岐阜市の病院で、エアコンが故障した部屋に入院していた患者5人が相次いで死亡する問題が発覚して2日で1週間。福岡市近郊の障害者支援施設に親族が入所中という女性から、特命取材班にSOSが届いた。「施設の冷房が午後9時半から朝まで消される。半身不随で感覚が鈍く体も不自由なので、熱中症が心配です」。こうした施設の暑さ対策はどうなっているのか。女性が情報を寄せた施設は福岡県が設置主体で、社会福祉法人に経営を委託している。女性によると、親族は脳梗塞で倒れ、リハビリのために入所している。この8月、夜に冷房がついたことは一度もなく、夜間は「送風」に設定されている。「熱い風が吹いている。窓を開けても風通しが悪くて涼しくならない。相部屋の人も『暑い』と言っており、冬場は寒くても暖房が切られるので毛布を着込まないといけない、と聞いた」。冷房を入れるよう施設側に頼んではと思うが、女性の親族は「やっと入れた施設に感謝している。苦情のようなことを言いたくない」と話しているという。施設がある自治体に気象台の観測地点がないため、近隣である福岡市の8月の気温を調べてみた。午後11時の月間平均気温は29度。夜の最低気温が25度以上の熱帯夜でなかったのは1日だけだった。施設に取材した。担当者は「確かに午後9時半〜午前7時半は冷房は効いていない」と認めた上で「窓は網戸付きで暑ければいつでも開けられる。扇風機の持ち込みも可能」と説明。夜間に冷房を切る理由を聞くと「以前からそう運用している。この夏も苦情などはなく、暑さで体調を崩した人もいない」と強調した。
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 九州各地の障害者支援施設に尋ねてみると、対応には「温度差」が浮かぶ。熊本県社会福祉事業団の「県身体障がい者能力開発センター」(熊本市)は「毎日午前6時半から午前2時までエアコンをつけており、それ以降も暑ければ午前4時まで稼働する」。鹿児島県社会福祉事業団の「ゆすの里」(同県日置市)では「常時エアコンをつけ、湿度や温度に応じて職員が調整する」という。長崎県佐世保市の施設は昼夜問わず廊下だけ冷房を入れ、居室は入所者の希望に応じてつけたり、部屋の湿度や温度によって職員が調整したりしている。担当者は「1〜2人部屋で狭いため、冷えすぎて風邪をひく人もいる」と室温調整の難しさを語った。一方で、経済事情もちらつく。ある障害者施設の職員は「経営が苦しく、電気代節約のため夜間はなるべくエアコンを切るよう指示された」と打ち明けた。
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 空調管理に関する国の基準はないのか。厚生労働省によると、障害者自立支援法に基づく通知で「空調設備等により施設内の適温の確保に努めること」と定めている。同省障害福祉課は「エアコン稼働などは施設の判断」とした上で、「利用者の状況を踏まえて空調など適切な生活環境を支援するのは、基本の基本」と指摘した。福祉サービスの苦情を受け付ける福岡県社会福祉協議会の運営適正化委員会の担当者は「施設利用者や家族、職員から『エアコンの効きが悪い。蒸し暑い』という相談がこの夏、数件あった。それでも夜間にエアコンを切るという施設は聞いたことがない」という。気象庁が「命の危険がある災害」と表現した猛暑。意思表示が難しい障害者もいるだけに、家族の心配は尽きない。女性が情報を寄せた冒頭の施設について、福岡県障がい福祉課は、本紙の取材をきっかけに「熱中症などの事故が起きないよう、必要に応じて冷房をつけるよう指導した」としている。

<美味しい冷凍総菜は必ず当たる>
PS(2018年9月24日追加): *5の農商工連携はよいと思う。これに関して、私は、昼間、日清の「食卓便」という冷凍おかずを食べることがあり、その理由は、①電子レンジ4分半の加熱で簡単に食べられる ②管理栄養士が栄養バランスを考えている ③一つ一つの惣菜は少ないが全体として満足感がある ④一食でもバランスよく食べておくと他の食事で少々偏っても何とかなる からだ。また、「低糖質」というジャンルもある。これらは、まずくはないが美味しいとも言えないため、このような栄養バランスを考えて作られた冷凍総菜がもっと美味しければ、当たると思う。そのため、農協・漁協・商工会・森林組合が協力し、採れたての新鮮な材料を使って作るとよいと考える。現在は、ネット通販で産地まで指定してモノを売買できる時代で、地方にもチャンスがあり、ガリバーなども使えば中国への輸出も容易になる。なお、駅弁で鍛えた九州の弁当は美味しいので、管理栄養士の企画・監修があれば、すぐ良い商品ができるだろう。

*5:https://www.agrinews.co.jp/p45295.html (日本農業新聞 2018年9月24日) 「共創の日」 農商工連携で地域振興
 きょう24日は「共創(きょうそう)」の日。JA全中と森林、漁業、商工の全5団体が互いの連携を通じて地方創生につなげようと、東京都内で初の大規模イベントを開く。地域に根差した各団体が手を組み、商品開発や販路開拓などで互いを身近なパートナーと認め合う契機としたい。5団体は、全中と全国森林組合連合会、全国漁業協同組合連合会、全国商工会連合会、日本商工会議所。2017年5月に全国・地域段階の団体同士の連携を通じて、地方創生につなげようと協定を結んだ。「共創」という言葉には、農林漁業と商工業で新たな産業を「共に創造していく」との思いを込めた。例えば商品開発。和歌山県のJAわかやまは、和歌山商工会議所と連携して、地元産ショウガを使ったジンジャーエールを開発している。きっかけとなったのは市を含めた3者の連携協定。商工会議所は飲料販売業者や卸先の小売店の紹介などで協力し、17年には160万本を売り上げる人気商品となった。商品開発の事例が多いが、山林を手入れした際の間伐材を森林組合が買い取る際に、一部を商工会の発行する商品券で支払うといったユニークな取り組みも生まれている。大企業にはまねのできない地域に根差した団体の連携は、国も着目する。今回のイベントは内閣官房が18年度に新設した「多業種連携型しごと創生推進事業」を活用した。業種の枠を超えた地域の民間団体が連携を深め、新たな事業を生み出し、成功例を広めるのが狙いだ。地方では少子高齢化に伴う人口減少、労力不足で産業衰退が大きな課題となっている。JAだけでこうした課題に立ち向かうには限界がある。このため自治体や地域運営組織、他の協同組合、商工団体と幅広く連携する必要がある。特に大きな可能性があるのは商工団体との連携だ。商工会は主に町村にあり、比較的小規模な会員が多く全国に1653ある。会員数は約80万。主に市にある商工会議所は全国に515あり、会員となる事業者数は125万に上る。地域に根差した産業を担い、地域の振興を目的とする団体でJAと相通じる部分は多い。会員企業は、販路や商品開発などのノウハウも持っている。連携は既に進んでいる。全国の商工会議所のうちJAが加入しているのは約半数。農林水産資源を活用した事業を手掛ける商工会議所のうち、3割がJAと連携している。ただ、JA側から積極的に連携を呼び掛ける例は少ないという。連携によって収益が増え、商品化に結び付くケースは多く、双方が「地域振興に向けたパートナー」と改めて認識する必要がある。まず成功例を共有しよう。地方の民間団体の底力を発信し、各地で「共創」が広がることを期待したい。

<北海道ブラックアウトと原発再稼働>
PS(2018年9月25、26、30日追加): *6-1のように、北海道地震があった日、太陽光発電施設も風力発電施設も壊れなかったが、北電が送電を停止したため全道で停電した。これに関して、①再エネ発電の不安定性 ②送電線の容量制限 などの言い訳がされるが、東日本大震災から既に7年半も経過しており、①②とも解決する技術がある。にもかかわらず、技術が活かされずに停電させた理由は、安定的な電力と主張する原発の再稼働を求める声が北海道に広がるのを待ったからではないのか。そもそも、電力自由化に伴って送配電会社の中立性は不可欠であるため、2020年にようやく大手電力の発電と送配電部門を切り離す発送電分離が始まるのでは、遅すぎて再エネ事業者には被害が続出している。つまり本気ではなかったということで、2020年に送配電部門を切り離したとしても、電力会社の支配下にあれば同じだ。従って、別の送電線を準備することが必要なのだ。
 そのような中、*6-2のように、佐賀県議会が本会議で、九電の玄海原発に貯蔵されている使用済核燃料に課税対象を拡大する条例を可決し、これによって税収は現行と合わせて5年間で約187億円になるそうだが、可能性が0ではない原発事故がいったん起これば、佐賀県の農林漁業は壊滅的打撃を受け、住民も長く住めなくなるため、もっと大きな損失になる。従って、原発は、使用済核燃料まで含めて、早々に手じまって欲しいわけだ。
 さらに、北海道ブラックアウトと時期を同じくして、*6-3のように、広島高裁が仮処分決定で2017年12月に運転差し止めを命じていた四電伊方原発3号機は、仮処分が取り消されて再稼働可能になったそうだ。しかし、万一でも事故が起こった場合に迷惑するのは、周辺の広い地域に及ぶため、高松高裁、山口地裁岩国支部、大分地裁でも係争中であり、大分地裁が9月28日に決定を出すそうなので、国土を大切にする判断をして欲しいものである。
 伊方原発3号機再稼働容認の広島高裁判決について、*6-4のように、佐賀県内の市民団体も批判しており、「原発なくそう!九州玄海訴訟」原告団の長谷川団長が「破局的噴火の可能性に関し、分からないことを安全だと思うのは間違っている。それを社会通念とは言わない」とされたのは正しい。司法では、人権保護のために「疑わしきは罰せず」だが、これは犯罪の場合であり、安全性については、安全かどうかわからない飛行機は飛ばせないのと同様、「疑わしきは行わず」が社会通念であり、これも人権の観点からである。
 なお、*6-5のように、広島高裁判決は、「①9万年前の阿蘇山(伊方原発から130km)破局的噴火を想定して火砕流が及ぶ可能性を検討」「②ガイドに従えば原発の立地は認められない」「③原発以外では巨大噴火に備える規制や対策はなく、国民の不安や疑問も目立たないので巨大噴火リスクは受け入れるのが社会通念」としているそうだが、①②は正しいものの、③については、原発や核燃料があったか否かでその後の復興に大きな違いが出るため、原発については特に慎重になるべきだと考える。また、国民の不安や疑問による“社会通念”は、東日本大震災級の地震や津波・活断層・地球温暖化等に対しても甘かったので、新しい知見に従って“社会通念”の方を修正すべきである。

   
               2018.9.29西日本新聞 

*6-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180925&ng=DGKKZO35694020U8A920C1MM8000 (日経新聞 2018年9月25日) エネルギー日本の選択 再生エネ、なぜ生かせず? 北海道地震が問う危機(中)
 海道が地震に見舞われた6日、太陽光発電事業者のスパークス・グリーンエナジー&テクノロジーの谷脇栄秀社長は釧路市にある大規模太陽光発電施設(メガソーラー)に異常が無いとの報告に胸をなで下ろした。しかし、それもつかの間、別の問題が浮上した。北海道電力が送電再開を認めなかったのだ。一般家庭で約7000戸分の電力を発電しても送電できない状況が約1週間続いた。
●風力増加があだ
 北海道は地価が安く、広い土地を確保できるため、再生可能エネルギーを高値で買い取る制度(FIT)が始まった2012年以降、メガソーラーの新設が相次いだ。風況にも恵まれ、風力発電施設は国内の1割超が北海道に集まる。17年末時点で道内の太陽光や風力の発電容量は合計160万キロワット前後と、仮にフル稼働すれば道内の電力需要の半分をまかなえる計算だ。地震直後、停電で電力変換装置などが壊れるのを防ぐための安全装置が働き、太陽光や風力発電施設は送電を停止した。北海道電は停電を解消するため、老朽化した発電設備を再稼働したり、自家発電設備を持つ企業から電力をかき集めたりした。一方、送電再開をなかなか認められなかったのが太陽光や風力。天候で発電量が変動する「不安定電源」である点がネックとなった。通常は太陽光や風力の発電量に合わせて火力発電の出力を調整して需給バランスをとる。主力の苫東厚真火力発電所が停止した北海道電は本州から電力を送る「北本連系設備」をフル活用したが、調整余力は限られた。再生エネからの送電を再開すると天候などで出力が急低下した場合に対応できず、再びブラックアウトになる恐れがあった。
●電力補完に難題
 電気事業連合会の勝野哲会長(中部電力社長)は「(今回の停電を)検証し、再生エネのデメリットを打ち消せるような運用にしたい」と語る。国は新しいエネルギー基本計画で再生エネを「主力電源化」する方針を打ち出した。地震で浮かび上がったのは、再生エネが主役となる時代に避けて通れない課題だ。緊急時に機動力を欠く石炭火力から液化天然ガス(LNG)などへのシフトを進めないと再生エネとの補完関係を築くことは難しい。大手電力は地域間で予備電力を融通し、太陽光や風力の発電量の急変に備える体制作りを急いでいるが、今回の地震で電力を融通する送電線容量が小さいことが浮き彫りになった。欧州の電力システムは再生エネ仕様に姿を変えつつある。ドイツでは北部で発電した風力由来の電力を南部の消費地へ送る送電線建設の計画が進む。国境をまたいで調整力を融通し合っており、欧州の送電会社連合は30年までに約20兆円を投じて送電線を増強する計画を公表している。天候に左右される太陽光の発電量を予測しながら全体の需給を調整する仕組みもある。国内では10電力会社の地域独占が長く続き、それぞれが閉じた世界で需給のバランスをとってきた。20年にようやく大手電力の発電と送配電部門を切り離す発送電分離が始まり、再生エネ事業者がさらに参入しやすくなる可能性がある。今のうちに使いこなす仕組みを考えないと、「宝の持ち腐れ」は変わらない。

*6-2:http://qbiz.jp/article/141253/1/ (西日本新聞 2018年9月25日) 玄海原発への燃料税拡大条例可決 佐賀県議会、5年間で21億円
 佐賀県議会は25日に開いた本会議で、九州電力玄海原発(同県玄海町)で貯蔵されている使用済み核燃料に課税対象を拡大する条例を可決した。課税期間は2019年度から5年間で、総務相の同意が得られれば実施する。貯蔵期間が5年を超えた使用済み核燃料1キログラム当たり500円を課すもので、5年間で約21億円の税収を見込む。税収は現行の項目と合わせ、5年間で計約187億円になる。避難の際に使う道路や港の整備費などに充てる。県はこれまで、原子炉の出力や、使用される核燃料の価格に応じて課税してきた。東京電力福島第1原発事故を踏まえ、玄海原発でも全基が運転停止となったことや、玄海1号機の廃炉決定で税収が減ったため、使用済み核燃料も課税対象とするよう九電に求め、今年8月に合意に達した。九電は県議会での審議に当たり、核燃料税に関する情報発信強化や、歳出抑制に努めることなどを求める意見書を提出。これに対し、一部県議や市民団体から「県民の安心安全をないがしろにしている」「傲慢だ」など批判の声が出ていた。玄海原発は、6月までに3、4号機が再稼働し、1号機では既に廃炉作業が始まっている。2号機だけが再稼働か廃炉か扱いが決まっていない。

*6-3:https://mainichi.jp/articles/20180925/k00/00e/040/242000c (毎日新聞 2018年9月25日) 広島高裁 :伊方原発3号機、再稼働可能に 四電異議認める
●運転差し止めを命じた12月の仮処分決定取り消し
 四国電力伊方原発3号機(愛媛県伊方町、停止中)の運転差し止めを命じた昨年12月の広島高裁仮処分決定(野々上友之裁判長=当時)を巡る異議審で、同高裁(三木昌之裁判長)は25日、四電が申し立てた異議を認め、仮処分決定を取り消した。高裁段階で初めて示された差し止め判断は9カ月で覆り、3号機は法的に再稼働が可能になった。昨年12月13日の広島高裁仮処分決定は、原子力規制委員会の内規を厳格に適用し、原発から半径160キロの範囲にある火山に関しては噴火規模が想定できない場合、過去最大の噴火を想定すべきだと指摘。その上で、伊方原発から約130キロ離れた阿蘇カルデラ(阿蘇山、熊本県)について、9万年前の破局的噴火で火砕流が伊方原発の敷地に到達していた可能性に言及し、「立地として不適」と断じた。ただ、広島地裁で別に審理中の差し止め訴訟で異なる判断がされる場合を考慮し、差し止め期限を今年9月末までとした。四電の申し立てによる異議審は2回の審尋が開かれた。四電側は「阿蘇カルデラには大規模なマグマだまりがなく、3号機の運転期間中に破局的噴火を起こす可能性は極めて低い」と強調。さらに「9万年前の噴火でも火砕流は原発の敷地内に到達していない」とした。一方、住民側は「火山噴火の長期予測の手法は確立しておらず、破局的噴火が起こる可能性は否定できない」と改めて反論。「四電の実施した調査は不十分で、9万年前の噴火で火砕流が原発に到達していたとみるのが常識的」と訴えた。また、仮処分決定が「合理的」とした基準地震動についても争点となり、四電側は「詳細な調査で揺れの特性などを十分把握した」、住民側は「過小評価」と主張した。3号機は2015年7月、規制委が震災後に作成した新規制基準による安全審査に合格。16年8月に再稼働し、昨年10月、定期検査のため停止した。四電は今年2月の営業運転再開を目指していたが、運転差し止めの仮処分決定で停止状態が続いている。3号機の運転差し止めを求める仮処分は、住民側が10月1日以降の運転停止を求め新たに広島地裁に申し立てている。高松高裁、山口地裁岩国支部、大分地裁でも係争中で、このうち大分地裁は9月28日に決定を出す。

*6-4:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/279902 (佐賀新聞 2018年9月26日) 県内の市民団体 稼働容認を批判 伊方原発3号機
 昨年12月の稼働差し止めの仮処分決定から一転、広島高裁が四国電力伊方原発3号機(愛媛県)の稼働を容認する決定を出した25日、九州電力玄海原発(東松浦郡玄海町)の運転差し止めを求めている原告団などは「論理的に破綻している」「三権分立の体をなしていない」と批判の声を強めた。今年3月に佐賀地裁で運転差し止めの仮処分申請が却下され、福岡高裁での抗告審開始を待つ「原発なくそう!九州玄海訴訟」原告団の長谷川照団長(79)は「破局的噴火の可能性に関し、分からないことを安全だと思うのは間違っている。それを社会通念とは言わない」と憤った。「玄海原発プルサーマルと全基をみんなで止める裁判の会」の石丸初美代表(67)は「同じ裁判所で真逆の判断が出るとは。原発の裁判では司法の主体性が失われている」と嘆いた。

*6-5:https://digital.asahi.com/articles/DA3S13702384.html (朝日新聞社説 2018年9月30日) 原発と火山 巨大噴火から逃げるな
 火山の噴火、とりわけ1万年に1回程度という巨大噴火が原発にもたらす危険とどう向き合うのか。安全審査を担う原子力規制委員会を中心に検討を続けねばならない。四国電力の伊方原発3号機(愛媛県)の運転再開を巡り、阿蘇山(熊本県)噴火のリスクに関して広島高裁の2人の裁判長が正反対の判断を示した。昨年末には運転差し止めを求める住民の申請が認められたが、四電からの異議を受けた今月の決定は運転にお墨付きを与えた。原子力規制委には「火山影響評価ガイド」という審査の内規がある。原発から160キロ以内の火山を対象に、噴火に伴う危険性を評価する手順を定める。伊方から130キロの阿蘇山について、広島高裁はガイドに沿って9万年前の破局的噴火を想定し、火砕流が及ぶ可能性を検討。今月の決定も昨年末と同様に「ガイドに従えば原発の立地は認められない」とした。それにもかかわらず結論が分かれた根底には、「社会通念」への姿勢の違いがある。原発以外では巨大噴火に備える規制や対策は特になく、国民の不安や疑問も目立たない。巨大噴火のリスクは受け入れるのが社会通念ではないか――。昨年末の決定は、こうした考えに理解を示しつつ、福島第一原発事故後に発足した規制委の科学的・技術的な知見に基づくガイドを重視した。今月の決定は、噴火の予測が困難なことなどからガイドは不合理とし、社会通念から結論を導いた。あいまいさを伴う社会通念を前面に出した司法判断には疑問が残る。放射能に汚染された地域への立ち入りが厳しく制限される原発事故の深刻さは、福島の事故が示す通りだ。原発を巡る「社会通念」とは何か、議論を尽くす必要がある。まずは規制委である。規制委は3月、事務局を通じて「巨大噴火によるリスクは社会通念上容認される」との考えを示した。今月の広島高裁の決定も触れた見解だが、「委員会の使命である科学的評価を放棄した」との批判が出ている。その広島高裁決定が「火山ガイドは不合理」としたことについては、更田豊志委員長が会見でガイドにわかりにくさがあることを認め、修正に言及した。表現の手直しにとどめず、自らの役割を含めて「原発と火山」を問い直さねばならない。火山噴火が懸念される原発は伊方に限らず、九州電力の川内原発(鹿児島県)など各地にある。国民的な議論の先陣を切ることを規制委に期待する。

<新技術の日本社会への導入の遅れ>
PS(2018年9月29日、10月4日追加): *7-1のように、トヨタがやっとレクサスをEV化するそうだが、これは中国で2019年以降はEVやPHVなどの一定割合の販売が義務付けられ、他国に尻を押された形だ。そして、2020年に中国への輸出を開始し、同年夏ごろから欧州でも販売するそうだが、EV技術は最初に日本で開発されたにもかかわらず汎用化が他国より遅れたのは、*7-2のように、日本では理系が開発した技術を社会に落とし込む際に問題があるからだ。そのため、文理融合を視野に入れた九大の“知の拠点”づくりは一歩先に出たことになる。
 そのような中、*7-3のように、日米新通商交渉として、まるで1980年代かのように「車か農業か」という交渉をしている。しかし、今後は日本産の自動車に価格競争力があるわけはなく、環境車技術も中国や欧州に後れをとりそうであるため、移転可能な自動車工場をアメリカに移転し、食糧生産している農業を疎かにせず、食料自給率を上げる方が重要だろう。
 なお、*7-4のように、米テスラが社運をかける新型EVの量産は軌道に乗ったが、イーロン・マスクCEOが8月に公表した後に撤回した株式非公開化計画を巡る混乱が続いているそうだ。私は、マスク氏の先見性・目標設定・迅速さは大変よいと思うが、EVの生産が軌道に乗らないうちに他の先進分野に手を出しすぎて経営が悪化しているのではないかと思うので、優秀な財務専門家をつけ、EVは大量生産して市場投入することに慣れた会社と組むのがよいと考える。また、米国の環境規制に関する緩和が逆風になっているのは気の毒だ。
 また、日本のホンダと米GMが、*7-5のように、自動運転技術で提携して次世代技術を共同開発するそうで結果が楽しみだが、既存の自動車会社は運転に関する膨大なデータと大量生産の仕組みを既に持っているため、適切な会社と提携すれば、販売市場(ニーズは国によって異なる)を見据えた技術開発を行うことができる。また、交通系は、飛行機から船まで、早く電動か水素燃料と自然エネルギーの組み合わせにして欲しい。

*7-1:http://qbiz.jp/article/141561/1/ (西日本新聞 2018年9月29日) レクサス初のEV、九州で生産 20年にも中国、欧州投入 トヨタ
 トヨタ自動車は、高級ブランド「レクサス」としては初となる電気自動車(EV)の生産を、子会社のトヨタ自動車九州(福岡県宮若市)で始める方針を固めた。2020年にも中国と欧州に先行投入する。新型の小型スポーツタイプ多目的車(SUV)「UX」をベースに開発し、当初は年間計1万5千台前後を輸出する。UXのEVは20年春ごろにも中国への輸出を開始し、同年夏ごろからは欧州でも販売する。UXは車高が比較的高く、蓄電池などを搭載するスペースが確保しやすいほか、車体がコンパクトで1回の充電による航続距離を伸ばしやすい利点もある。生産を手掛けるトヨタ九州は、国内外のレクサス工場の中でも高い技術力を誇る。永田理社長は従業員をトヨタ本体の設計開発部門に派遣し、EVを含む新分野への対応に向けた準備を進めていることを明らかにしていた。中国では19年以降、自動車メーカーにEVやプラグインハイブリッド車(PHV)など新エネルギー車の一定割合の販売が義務付けられる。トヨタは20年春ごろ、小型SUV「C−HR」をベースにしたEVの現地生産にも乗り出す。一方、トヨタの欧州向けEVの量産計画が明らかになるのはUXが初めて。現地ではコンパクトタイプのSUVが人気で、EVの投入でレクサスの競争力の強化を図る。トヨタは20年代前半に、全世界で10車種以上のEVの販売を計画。国内向けでは20年の東京五輪に合わせて小型EVの市販も検討している。レクサスは富裕層が台頭する中国と欧州で販売が好調で、UXは世界的に人気が高まるSUVの小型タイプ。今年11月末の日本での発売を皮切りに海外でも順次、エンジン車とハイブリッド車(HV)を販売することが決まっている。

*7-2:http://qbiz.jp/article/141563/1/ (西日本新聞 2018年9月29日) 九大、伊都キャンパスへ移転完了 AIバス、自動運転、水素研究…「未来」実験場に
 九州大の伊都キャンパス(福岡市西区)への移転事業が完了し、29日に記念式典が開かれる。箱崎キャンパス(同市東区)から文系の学部と農学部が28日までに引っ越しを終え、単一では国内最大規模の広さ272ヘクタールのキャンパスに、学生と教職員計約1万8700人が通うことになる。建物の老朽化や航空機の騒音に加え、箱崎や六本松(同市中央区)に分散したキャンパスを統合することを目的に、1991年に移転が決まった。2000年6月に着工し、05年の工学部から移転が始まった。大学周辺の開発も進み、05年にJR筑肥線の九大学研都市駅が開業。翌06年には同駅前に大型の複合商業施設がオープン。伊都キャンパスが広がる同市西区・西部地域と福岡県糸島市の人口は、1999年の約13万9千人から現在は約17万人に増加した。29日は式典のほかにアカデミックフェスティバルも開催され、学生や教員らによるトークショーや研究成果の発表、キャンパスツアーなども行われる。
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●文理融合、企業と連携  
 九州大の伊都キャンパスは、ヤフオクドーム約40個分、箱崎キャンパスの約5・8倍という広大な面積を持つ。九大はこのキャンパスを存分に生かし、未来を見据え、「文理統合型の伊都キャンパスがアジアの“知の拠点”になれるよう、研究成果を世界に発信し続けたい」と意気込む。今月中旬、車体に「AI運行バス」と記されたワゴン車が伊都キャンパス内を走っていた。福岡市から出向しているキャンパス計画室の山王孝尚助教によると、NTTドコモが行っている「オンデマンド交通」の実験という。バスに時刻表はない。スマートフォン内の専用アプリで、行き先と乗り場を選んで送信すると予約完了。わずか1分足らずでバスが到着した。「今は夏休みで利用は少ないですが、授業があっている時期でも待ち時間は10分以下です」。乗客のニーズを人工知能(AI)が集約し、最適な道順を検出する仕組み。学内の乗降場19カ所は、10月から41カ所に増える。同社の担当者は「客がいなければ走らないから、決められたバス停を必ず巡る路線バスより、はるかに効率的。公共交通機関に乏しい地方で力を発揮する」。すでに鹿児島県肝付町や福島県会津若松市などで公道実験が行われ、本年度中の商用化を目指すという。「伊都キャンパスは少し先の社会の実験装置」。移転担当理事の安浦寛人副学長は、新たな九大をこう位置付ける。NTTドコモ以外にも日産自動車やディー・エヌ・エー(DeNA)が自動運転の実験を行った。新エネルギーとして期待される水素研究は「世界の最先端を行く」(安浦副学長)分野だ。移転に合わせ、本年度には文理融合の「共創学部」を新設した。「理系が開発した技術を、文系の視点でどう社会に落とし込むか。統合型キャンパスで文理の連携は加速するだろう」。安浦副学長は強調する。ただ、研究施設の整備や充実度が増す一方で、九大が2月に公表したアンケート結果ではキャンパスと周辺施設に不満を持つ学生は55・6%に上った。交通手段やスーパー、飲食店などの充実を求める声が目立ち、学生の生活環境の向上も喫緊の課題といえる。キャンパス計画室副室長の坂井猛教授(都市計画)は「ゼロからつくった伊都キャンパスは、まだまだ発展途上。民間や地域と協力して、魅力あるキャンパスにしなければならない」。九大の“知の拠点”づくりが本格始動する。

*7-3:http://qbiz.jp/article/141477/1/ (西日本新聞 2018年9月28日) 「車の代わりに農業犠牲か」 日米新通商交渉 九州の生産者広がる懸念 
 日米が2国間の新たな通商交渉入りで合意したことに対し、九州の農業関係者には懸念と憤りが広がった。「日本政府は自動車を守る代わりに、農業を犠牲にするつもりではないか」と指摘するのは福岡県農政連委員長で、同県久留米市でコメやキュウリなどを生産する八尋義文さん(51)。農林水産品は環太平洋連携協定(TPP)で合意した水準までしか関税引き下げを認めないとの日本の立場を米国は尊重する考えだが「安倍晋三首相はトランプ大統領に逆らえない感じなので今後、どう転ぶか分からない」と危惧する。生乳やチーズを生産するミルン牧場(佐賀市)の横尾文三社長(70)も「日本は工業製品の輸出を増やすために国内農業を犠牲にしてきたが、今回もそれを繰り返す懸念がある」と厳しい表情。豚肉と牛肉の生産や販売などを手掛ける南州農場(鹿児島県南大隅町)グループの石松秋治会長(63)は「日本政府が工業製品重視のスタンスであるのは自明のことで、仕方がない面がある。そうしないと日本経済が成り立たないからだ」とした上で、農産物の関税引き下げについて「TPPの水準内にとどめてほしい」と要望、「農業保護の施策もしっかりとやってほしい」と注文する。JA福岡中央会の倉重博文会長は「交渉において農林水産物が工業製品の犠牲とならないか強い懸念がある」とのコメントを発表した。

*7-4:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20181004&ng=DGKKZO36070470T01C18A0TJ3000 (日経新聞 2018年10月4日) テスラEV、量産軌道に 「モデル3」7~9月計画を達成 資金面など懸念なお
 米テスラが社運をかける新型電気自動車(EV)「モデル3」の量産が軌道に乗ってきた。2日に発表した2018年7~9月期の生産実績は5万3239台と計画(5万~5万5千台)を達成した。8月に公表しその後撤回した株式非公開化計画を巡る混乱は続くがイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)が「生産地獄」と例えた危機は脱しつつある。モデル3はこれまで高級車に特化してきたテスラにとって初めての普及価格帯の車種だ。最も安価なグレードは3万5千ドル(約400万円)に抑えた。納車は2年待ちとなる見通しにもかかわらず、16年3月末の予約開始直後には1週間で32万5千台を超える注文が殺到した。ただ、量産実績が乏しいことから生産現場ではロボットによる生産自動化などが難航。当初は17年末としていた「週産5千台」の目標達成時期を2度延期した。先行投資が膨らんだことで資金流出も拡大し、18年春ごろから金融筋では倒産危機説まで公然と語られるようになっていた。マスク氏は組み立て工程を含む完全自動化によって自動車生産に革命をもたらすと息巻いていたが、18年4月ごろからは「行き過ぎた自動化は間違いだった」と発言するようになる。一部の工程では自動化を一時的に断念し、人手を活用することで生産を上積みする方針に転換した。量産のボトルネックとなっていた車両の組み立てラインを2本から3本に増設したことで、7~9月期の週当たり生産台数は約4100台で安定するようになった。ライン改修のためにたびたび生産を中断していた4~6月期に比べ、生産ペースはほぼ倍増した。モデル3の納車先は北米に限られており、世界最大のEV市場となった中国市場などへの販路拡大が今後の課題となる。ただ、貿易戦争のあおりで米国から中国に輸出するテスラ車には7月から40%の関税が課されるようになり、競争上の不利を強いられている。突破口と位置づけるのが、18年7月に表明した上海市への新工場建設計画だ。電池から車両までを一貫生産する方針で、早ければ19年にも着工する。生産車種は明らかにしていないものの、テスラは「モデル3の立ち上げから学んだ多くの教訓を生かして、迅速に効率的な生産体制を構築する」と説明する。懸念はやはり資金調達だ。マスク氏はこれまで20億ドルに上る中国新工場への初期投資は地元の金融機関からの借り入れによって賄うと主張しているが、具体的な説明はない。株式非公開化の情報開示をめぐり米証券取引委員会(SEC)とは和解したものの米司法省の捜査は続いているとみられる。金融機関などとの交渉に影響を及ぼす可能性は残っている。

*7-5:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20181004&ng=DGKKZO36096900T01C18A0MM8000 (日経新聞 2018年10月4日) ホンダ、GMと自動運転提携、3000億円拠出、技術開発 IT大手含めデータ争奪
 ホンダと米ゼネラル・モーターズ(GM)は3日、自動運転技術で提携すると発表した。ホンダは同日、自動運転分野のGM子会社に7億5千万ドル(約850億円)を出資した。事業資金の提供も含め合計3000億円規模を投じて次世代技術を共同開発する。自動運転ではIT(情報技術)大手などを含めて業種を超えた開発競争が激しくなっている。規模を追求してきた自動車業界の再編はデータの収集や活用を軸とする新たな段階に入った。ホンダが出資したのはGMクルーズホールディングスだ。GMが2016年に約10億ドルで買収した企業が母体で、18年にソフトバンクグループが自社で運営するファンドを通じて約2割を出資している。ホンダの出資比率は5.7%で、GM、ソフトバンクに次ぐ3位の株主になった。ホンダは今後12年で20億ドルの資金も提供し、無人タクシーの専用車両をGMと共同開発する。無人タクシーサービスを事業化して世界展開することも視野に入れている。GMのメアリー・バーラ最高経営責任者(CEO)は3日の記者会見で「まずはサンフランシスコで無人タクシーの実証実験を行い実用化にこぎ着けたい。安全が一番大切な要素だ。実用化すれば効率的に展開していく」と述べた。ホンダとGMは13年にまず燃料電池車(FCV)で提携した。基幹部品を米国で共同生産することを決めている。電気自動車(EV)開発でも18年6月に高効率の新型電池の共同開発を発表した。今回、自動運転が加わったことで、次世代車に関しては包括的に提携したことになる。自動運転の技術開発は米グーグルや米アップルなどIT大手がリードしてきた。一方、自動車大手は運転に関する膨大なデータを持つ。ホンダとGMを合わせた17年の世界販売台数は1400万台を超える。提携には自動車メーカー主導の開発を狙う面もありそうだ。次世代の自動車では「CASE」(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)と呼ばれる新領域での技術開発が競争力を分ける。特に自動運転は歩行者ら周囲の認識や複雑な走行の制御技術などが必要となり、開発費の負担が大きい。米ボストン・コンサルティング・グループは無人タクシーの開発に35年までに1.8兆ドルの投資が必要と予測する。GMは世界の自動車大手の中では先行している。19年には限られた条件下で完全自動運転が実現する「レベル4」の量産車を初めて実用化する方針だ。一方のホンダが劣勢にあるのは否めない。自動運転技術はグーグル系のウェイモと共同開発してきたがこれまでのところ成果は乏しい。3日の記者会見でウェイモとの関係を問われたホンダの倉石誠司副社長は「他社については回答を控える」と述べるにとどめた。トヨタ自動車や米フォード・モーターも外部連携を通じ自動運転技術の開発を進めている。ただ、ホンダとGMのように自動車大手同士が手を組むのは事実上初めてだ。

<男女とも持っているジェンダー>
PS(2018年10月8日追加): *8-1のように、ノーベル医学・生理学賞に京都大特別教授の本庶さんが選ばれたのは喜ばしいことで、本庶さん夫妻が会見された内容のうち、本所さん自身が語られたことには賛成する部分が多かった。しかし、妻の滋子さんは、(大学で理系を専攻し、研究の大変さを理解していたとしても)自分が研究してノーベル賞をとったわけではないので、世間知らずのおしゃべりがすぎたようだ。例えば、「①主人は何でもあきらめず、とことん極める」「②そういう態度が、この結果につながったと思う」「③亭主関白は若い頃の話で、定年後は優しくなった」などだ。①②については、*8-2のような東京医大の「男子優遇」は、リーダー・管理職・研究者などへの選別時にはさらに激しくなり、諦めたのではなく諦めさせられた女性も多い上、③については、働く女性や女性研究者は、家庭の細かいことを自分以外の人に丸投げして仕事や研究に邁進することなどできない中で社会を変えながら頑張ってきたため、家庭で夫を支えただけの旧来型の女性に偉そうなことを言われる筋合いはないからだ。
 また、*8-3の「無意識の偏見を克服しよう」という記事は賛成する部分も少なくないが、「無意識の偏見」には、「女性は家庭優先なので、仕事は疎かだ」という先入観や女性がリーダーになることを志すと「傲慢」「生意気」「自分を知らない」などと批判する日本社会の“常識”も含まれる。また、女性自身が「高下駄を履かせてもらっている男性より自分の方がリーダーや管理職に向かない」などと本気で思っているわけではなく、現在の家事の配分状況や上記の「傲慢」「生意気」「自分を知らない」などという世間からの批判をかわす意味が大きいため、*8-3の記事も、女性自身の性格の責任にしている点で女性蔑視を含んでいる。

*8-1:https://www.sankei.com/west/news/181002/wst1810020035-n1.html (産経WEST 2018.10.2) 「充実した人生」「あきらめない性格が受賞に」 本庶さん夫妻で会見
 ノーベル医学・生理学賞に決まった京都大特別教授の本庶佑(ほんじょたすく)さん(76)は、受賞発表から一夜明けた2日、妻の滋子(しげこ)さん(75)とともに京大で記者会見した。本庶さんが「こういう人生を2度やりたいというと、ぜいたくだといわれるくらい充実した人生」と独特の表現で喜びの心境を語り、滋子さんは「主人のあきらめない姿勢が結果につながった」とたたえた。2人はこの日午前8時50分ごろ、会見に向かうため京都市内の自宅を出発。約10分後、京大百周年時計台記念館に到着し、関係者から花束を受け取ると笑みを見せた。紺のスーツに水色のネクタイ姿の本庶さんと、おそろいの水色のスーツで会見に臨んだ滋子さん。本庶さんは「本当に幸運な人生を歩いてきた」と関係者に改めて感謝した上で、「家庭の細かいことはタッチせず、僕は典型的な亭主関白として研究に邁進してきた。家族にも感謝したい」と話した。滋子さんは、「(これまで)あっという間の時間だったがノーベル賞を受賞する結果になり、大変うれしい」と喜んだ。滋子さんも大学で理系を専攻しており、研究の大変さは理解していたという。大勢の報道陣を前に緊張した様子で応じる滋子さんに、本庶さんは時折、心配そうなまなざしを向けていた。米国や東大、阪大、京大と研究の場を求める本庶さんに長年寄り添ってきた滋子さんは、素顔も披露。「主人は何でもあきらめない。とことん極める。家の中でも中途半端な話をしないといったそういう態度をみてきた」と明かした上で、「この結果につながったのではないかと思う」と語った。本庶さんは自他ともに認めるゴルフ好き。夫婦でプレーすることもあるといい、「ゴルフについても研究熱心」と趣味でも突き詰める夫の性格を披露した。さらに会見で「亭主関白」だと語った本庶さんについて、「若い頃の話で、定年後はかなり優しくなった」と話した。

*8-2:http://qbiz.jp/article/140103/1/ (西日本新聞 2018年9月3日) 外科医不足 解消遠く 若手、女性 敬遠鮮明に 志願者増へ取り組みも
 手術室で華麗にメスをさばき、患者の命を救う−。漫画「ブラック・ジャック」に象徴されるような外科医が花形だった時代も今は昔。きつい勤務や訴訟リスクから、若手医師が外科を敬遠する傾向が続いている。高齢化が進み、がんなど外科手術が必要な患者の増加が予想される中、担い手不足が深刻化している。「針先を自分の方に向けないとうまくいかないよ」。8月31日夜、九州医療センター(福岡市中央区)が若手医師を対象に開いた外科技術を競うコンテスト。ベテランの指導を受けながら、医師1、2年目の研修医ら若手11人が、縫合や切開など外科医に求められる繊細な作業に挑戦した。若手に外科への興味を持ってもらおうと、今回初めて企画。自身も心臓外科医の森田茂樹院長は成績上位者に表彰状を渡し「ぜひ外科に来て」と呼び掛けた。日本外科学会によると、医師全体の数は毎年増加しているのに外科学会入会者は減少。30年ほど前は入会者が2千人を超える年もあったが近年は800〜900人台にとどまっている。3年目以降の若手医師が希望の診療科と研修場所を選ぶ「専門医養成制度」で今年、外科を選んだ人数は福岡39人(定員127人)▽佐賀3人(同12人)▽長崎6人(同25人)▽熊本12人(同20人)▽大分8人(同11人)▽宮崎3人(同12人)▽鹿児島11人(同29人)−など、全都道府県で定員を大きく下回った。学会内では「今は中堅・ベテランに支えられているが、10年、20年後に外科医不足が深刻になる」との危機感が広がっている。コンテストに参加した研修1年目の田中里佳さん(25)は「外科は格好よくてやりがいがある一方で、大変だというイメージもある」。病院に勤務する外科医は、緊急の患者に対応するための当直や呼び出しがあり、他の診療科よりも長時間勤務になりがちだ。患者の命を左右する手術の重圧にもさらされる。福岡市のベテラン外科医は「かつては命を救いたいという単純な思いで外科を目指す若手が多かった。毎晩病院に泊まり込んで1件でも多く手術を任せてもらい、経験を積もうと必死だったが、働き方改革の風潮で今の若手は勤務時間が終わると帰るし、無理強いもできない」と嘆く。外科医が少ない傾向は、特に女性医師に顕著だ。厚生労働省の調査によると、2016年末時点で全国の医師のうち女性の割合は約21%だったが、外科に限ると約9%。長時間労働と出産・子育ての両立の難しさが要因とみられる。女性が外科など特定の診療科目を敬遠せざるを得ない現状が、東京医科大で明るみに出た「男子優遇」問題の背景にあるとも指摘される。コンテストを企画した九州医療センターの竹尾貞徳統括診療部長は「外科医が減れば一人一人の負担が増え、労働環境がさらに過酷になる悪循環に陥ってしまう。昔のように根性論で教育するのではなく、子育て支援など若手が働きやすい環境づくりを進める必要がある」と話している。

*8-3https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180930&ng=DGKKZO35929050Z20C18A9EA1000 (日経新聞社説 2018年9月30日) 「無意識の偏見」を克服しよう
 働く女性の数は増え、仕事と子育ての両立支援も充実してきた。真の活躍につなげるうえで、欠かせないことがさらにある。「無意識の偏見」を克服することが、その一つだ。無意識の偏見とは、誰もが気づかずに持っている、考え方、ものの見方の偏りのことだ。育った環境や経験などから培われたもので、必ずしも悪いものではない。だがときとしてそれが多様な人材の育成を阻害することがある。例えば「女性はリーダーに向いていない」「男性は常に仕事優先」などだ。管理職が先入観を持っていると、男性か女性かで部下への仕事の割り当てや期待のかけ方に違いが生じやすくなる。とりわけ育児期には最初から「女性は家庭が優先。負担の重い仕事はかわいそう」となりがちだ。一つ一つは小さなことでも、積み重なって女性の成長機会を奪い「自分は期待されていない」などと、意欲がそがれることがある。男性にとっても、管理職の思い込みが本意でないこともあろう。大事なのは、誰もが無意識の偏見を持っていると自覚することだ。意識すれば慎重に判断できるようになる。属性ではなく一人ひとりにきちんと目を向けること、コミュニケーションを密にし、ときに背中を押すことも必要だ。一方、女性自身も「自分には管理職は無理だ」などと、最初から萎縮してしまうのは、良くない。これもまた、無意識の偏見の一つだ。日本企業の管理職に占める女性の比率は、まだ1割ほどだ。女性の育成・登用を着実に進めるには、職場をあげての意識改革が欠かせない。先駆的な企業の一つ、ジョンソン・エンド・ジョンソンは複数の研修を開いている。少子高齢化が進む日本では、性別はもちろん、年齢、病気や障害の有無などにかかわらず、誰もが自分の力を発揮できる環境を整えることが大切だ。多様な人材を生かす土壌をどうつくるか。誰もがまさに当事者として考えたい。

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2018.9.17 日本の国家予算の使い方と社会保障・災害など (2018年9月18、19、20、21、22日に追加あり)
(1)本当の無駄遣いは何か
1)2019年度予算概算要求について


2018.9.1西日本新聞 平成時代の国家予算増加 平成31年内訳 歳出・歳入・債務の推移  

(図の説明:平成時代は消費税導入とともに始まり、増税額以上の景気対策を行って、国と地方の債務合計は増加の一途を辿った時代だと総括できる。なお、平成31年度の概算要求内訳では、0金利の下でも国債利払いが9兆円もあるが、これは借り換えによって節約できる歳出だ。また、地方交付税は、地方自治体が稼ぐためのエンジンを持てば、減らすことのできる歳出である)

 各省庁の2019年度予算概算要求は、*1-1のように、過去最大の102兆円台後半となり、その理由は「①医療・介護などの社会保障が過去最高額」「②借金返済に回す国債費が全体を押し上げた」「③2019年10月の消費税増税に伴う景気対策や幼児教育無償化費用を上積み」「④地上配備型迎撃システムの取得で2352億円計上して防衛費が過去最高額」「⑤外国人材受入拡大に備えた入国在留管理庁(仮称)新設」「⑥国債費は低金利にもかかわらず5.5%増の24兆5874億円」「⑦地方交付税15兆8111億円」等と記載されている。

 このうち、②の国債返済は借金を減少させて利払いを減らす効果があるため問題はなく、借金の返済と他の歳出を同じ次元で取り上げる方がむしろ問題だ。また、⑥は、低金利を利用して国債を借り換えれば国債の利払費は小さくなる。

 また、①は、よく槍玉に挙げられるが、国民は社会保険料を支払った上でサービスを受けているため、発生主義で将来支払額を予想して合理的な積立金管理を行っておけば、問題になることはなかった筈だ。そのため、サービスを提供する時になって支払原資が足りないなどと言っているのは、管理者の放漫経営の責任であり、国民に迷惑をかける筋合いのものではない。

 さらに、③のうちの幼児教育無償化はよいものの、消費税増税に伴う景気対策に増税分以上を使うのなら、増税しない方が国民から絞り取らないだけよい。また、災害復興や21世紀型の便利で安全な街づくりへの投資を行えば大型の景気対策にもなるため、景気対策だけを目的とする無駄遣いをする必要はない。

 なお、④は高すぎるし、⑤は入国在留管理庁を作って金と人材を無駄遣いするのではなく、入国管理局の名称を変更してここで行った方がよいと思われる。そして、入国管理局の仕事が増える分は、新規雇用ではなく、定年延長して余った人材をうまく配置して使えばよいだろう。

 さらに、⑦の地方交付税は、地方がよい製品やサービスを生産して自立すればするほど、息切れしそうな大型機関車の東京からの分配を減らすことができるため、機関車になれる地域を増やすことこそ、全国民を豊かにする。

2)北海道地震・西日本豪雨のに対する補正予算について
 政府は、*1-2のように、北海道地震や西日本豪雨災害の復旧費を確保するため、1兆円超を準備するそうだ。しかし、標高の低い場所・川を埋め立てた場所・扇状地・天井川の傍の低い場所などに住宅を造って「堤防があるから安心」と考えていたり、がけ崩れが起こりやすい場所に住宅を作ったりして被害に会ったのは、甘く見ていた自然に仕返しされたようなものである。

 そのため、これらの住宅地を元の状態に戻す「復旧」ではなく、このような被害が二度と起こらない、さらに進化させた都市計画に基づく街づくりと復興を行うべきで、そうすれば災害復興は単なる景気対策ではなく、21世紀に向けた重要な投資となる。

3)国家予算をコントロールする方法
 来年度予算案の概算要求が5年連続で100兆円を超えて過去最大を更新し、*1-3は、「①危機感なき借金まみれの予算をいつまで続けるのか」「②法律で縛ったらどうか」などと記載している。

 しかし、財政健全化のために“国際公約”をして「2020年度までに基礎的財政収支(クラブ)を黒字化する」というのも、不完全な現金主義である上、主権者たる国民が不在である。また、大災害があっても財政や貿易収支が黒字でなければならない理由はなく、必要な資材や労働力は輸入してでも速やかに復興するのが被害を最小にする方法だ。そのため、いざという時には支出できるよう、平時は単なる景気対策のような無駄遣いを慎むものである。
 クラブ 税収・税外収入と歳出(国債費《国債の元本返済と利払費》を除く)の収支

 そのため、財政を法律で縛ったり国際公約したりするのではなく、合理的な歳出をするため国の経費も発生主義で把握するように、国に国際会計基準に基づく複式簿記による公会計制度を導入し、貸借対照表・収支計算書を迅速に作成して予算委員会における討議資料とし、国の予算を主権者である国民の監視下におく必要がある。

(2)安全を無視した街づくり
1)「備え」は甘すぎた
 西日本新聞が、*2-1-1・*2-1-2のように、「備えに隙はなかったか」「北海道地震の死者40人」という記事を書いているが、私には、すべての災害が「想定外」で、危機管理に基づく備えというものがあまりにも甘く、ゆとりがなさすぎたように思えた。

 例えば、北海道全体の停電という電力系統の脆弱さと土砂崩れや液状化が起こる場所での住宅地造成は人災と言わざるを得ない。また、関西空港が台風くらいで機能不全に陥ったのも唖然としたが、標高の低い干拓地であれば当然であるため、もっと海面との間にゆとりをとるべきだった。さらに、ブロック塀も、中に強い鉄筋でも入っていなければ地震の時に危ない上、景観も悪いため、もっと速やかに素敵な生垣などに変えておくべきだっただろう。

 なお、*2-1-3のように、地震発生前の2018年6月26日、「北海道南東部で震度6弱以上の大地震のリスクが上昇している」と朝日新聞に掲載されたが、「発電所が集中して立地しておりセキュリティーが甘い」「住宅地の立地が悪い」というのは短期間には修正のしようがないため、最初にしっかりした都市計画を行わなかったことが最大の問題である。

2)連続した大型台風と水害
 台風21号で、*2-2-1のように、関空が冠水し、「大阪湾沿岸を中心に記録的な高潮になった」「猛烈な風が大阪湾岸に吹きつけた」「140年に1度という想定を超える高潮だった」などの言い訳がされているが、要するに十分な「ゆとり」を見ていなかったのだと思う。

 そして、*2-3-1のように、これまで①浸水想定域に住宅を誘導し ②街の集約計画を掲げる主要な自治体の約9割で浸水リスクの高い地区にも居住を誘導している ということが、日経新聞の調べで分かったそうだ。都市の効率向上といっても、災害リスクの高い場所に建物を建てれば、「床上浸水」などで建物や家財道具を台無しにして資本効率を悪くするとともに、大切な人や二度と作れぬ思い出も失うことになるため、最初の都市計画が重要だ。

3)北海道地震

           2018.9.6、朝日新聞、中日新聞ほか

(図の説明:北海道地震で土砂崩れが多発して死者まで出たのは痛ましいが、崩れた土砂の中にある木は太くて良質の木材だ。そのため、全国の森林組合や木材会社の人等がボランティアに行って木材を集めておけば、あちこちの復興の手助けになると考える)

 北海道の厚真町は、*2-2-2のように、震度7の揺れに襲われて緑の山林に赤土がむき出しになった場所が散在する土砂崩れの現場となったが、よく見ると、山はこうしてあのような形になったのだと思われる光景であり、大昔から続いてきた土砂崩れのように見える。

 北海道地震では、*2-3-2のように、札幌市のベッドタウンが液状化による大きな被害を受け、道路が陥没したり、マイホームが大きく傾いたりし、専門家は、かつてあった川沿いに被害が集中していると分析して二次被害に注意を呼びかけている。市の宅地課は、河川を覆って地下に水路を残し、周辺から削った土砂で里塚地区を造成したと言っているそうだが、これは自然の水の流れをあまりにも軽視した宅地造成である。

 そのため、我が国が高齢化と人口減少に直面していることを活用して、高台にケアしやすいマンションを多く作り、危険度の高い地域から移転して、危険度の高い地域には住まないような進歩した都市計画が必要だ。

(3)大災害時代になった理由とそれに対する備え


    月の公転軌道     火星の公転軌道 現在の火星と水 40億年前の火星の海 
                      2018.7.26朝日新聞
(図の説明:1番左の図が月の公転軌道、左から2番目の図が火星の公転軌道で、どちらも少し楕円形であるため、地球に接近する時があり、両方が接近して太陽と一直線に並ぶ時、地球が受ける引力は最大になる。地球は、日頃から月の引力を受けて潮の満ち引きがあり、地球のマントルが冷えない理由に月の引力によって地球が揉まれていることが挙げられている。また、火星には40億年前は最大水深1600mの海が存在していたそうで、現在は、地表には氷・地下には水も存在するそうだ。なお、火星が冷えてしまったのは、月のような惑星を持たないことが理由で、火星の水が少なくなったのは、火星の引力が弱く大気が薄いため、蒸発した水が地表に戻らなかったことによるのかも知れない。そのため、地球の水が(100%かどうかはわからないが)循環して地表に戻り、生物の生存環境を保っていることには感謝すべきだろう)

 日本農業新聞が、2018年9月13日、*2-4-1のように、「大災害時代が人と社会の変革を迫る」という記事を書いており、近年の大災害がよくまとまっている。

 その内容は、専門家は「①大型災害が多発する『危険サイクル』に入ったと警告」「②地震が活動期に入って水害などと連動し、複合災害を起こしている」「③災害が多発する危険周期に入った」「④社会は、こうした巨大災害に対応できていない」「⑤縦割りの防災行政、司令塔機能の混乱、中央政府と当該自治体の連携不足」「⑥専門家や科学的知見の不足、情報伝達の不備などの問題が浮き彫りになっている」「⑦町村は、財政難や人材難に苦しみ機動的に対応できない」「⑧大災害は、人々の意識や社会システムの変革を迫っている」「⑨農村、都市問わず少子高齢化で地域力が衰退している」「⑩大規模災害のたびに過疎集落は存廃の危機に陥り、国土の荒廃が進むので、防災基点の国づくりこそ百年の計だ」などである。

 ④については、災害の大型化は常態化したので、「想定外」という言葉は通用せず、本当は「想定外」でもなく無視していただけと思われる局面も多い。また、近年は特に、以前よりもゆとりのない設計が多い印象であるため、予報・一時的避難・救済・復旧以前に、巨大災害に適応した街づくりへの迅速な復興が必要なのであり、⑤⑦だから防災庁が必要とはならない。

 また、①②③については、869年に起こった貞観(三陸)地震が参考になる。当時の陸奥国東方沖日本海溝付近を震源域として発生したマグニチュード8.3以上の貞観地震は巨大で、津波の被害も大きく、地震の前後には多くの火山噴火があった。また、貞観地震の5年前の864年には富士山の貞観大噴火も起きており、9年後の878年にM 7.4の相模・武蔵地震(現在の関東地方における地震)が起こり、西日本では前年の868年に播磨地震、18年後の887年に仁和地震(M 8.0 - 8.5、南海トラフ巨大地震と推定)が起こり、一定期間毎に同じことが起こっている。

 ⑥については、専門家に、日本で地震・火山・津波などが一定期間毎に多発する理由の科学的説明をして欲しい。私も大災害が続く理由はわからないが、*3-1、*3-2のように、「火星が地球に大接近し、同時に太陽や月と一直線になる時に地球にかかる引力が最大になり、地球内部のマントルが大きなエネルギーによって揉まれ、温度が上がって流動性が高くなるのではないか?」「そのため陸上だけでなく海底火山の噴火も増え、大型台風が発生しやすくなり、地球温暖化によって海水温が上昇しているため、なかなか衰えないのではないか?」と推測する。

 従って、⑧はそのとおりだが、⑨⑩のように、高齢化と人口減少が同時に起こっている現在、少しでも田畑を広くとるために崖のそばに住んだり、水害の出やすい場所に住んだりするよりも、高齢者は高台のマンションなどに移住して住宅管理や介護の手間を省き、他の人も安全性を重視した環境の良い街づくりを進めるのがよいと考える。

 なお、*2-4-2のように、「首都直下型地震が起これば、荒川や隅田川沿いの下町は壊滅する可能性がある」と書かれているが、海抜ゼロメートル地帯に居住するのは楽天的過ぎると思われ、軟弱地盤や谷底低地に当たるような場所は速やかに公表して対策を取るべきだ。

*1-1:http://qbiz.jp/article/140085/1/ (西日本新聞 2018年9月1日) 概算要求102兆円後半 医療、防衛、国債費が膨張 19年度
 財務省は31日、各省庁からの2019年度予算の概算要求を締め切った。基本的な経費を扱う一般会計の要求総額は過去最大の102兆円台後半に膨張。医療などの社会保障や防衛費が最高額になったほか、借金返済に回す国債費が全体を押し上げた。歳出抑制額の目安を設けないなど肥大化の歯止めを欠き、12月の編成後には当初予算で初めて100兆円の大台に乗る可能性が高まった。19年10月の消費税増税に伴う景気対策や幼児教育無償化などの費用を編成過程で上積みすることも拡大要因になる。来夏に参院選を控えた与党の歳出圧力は強く、暮らしに必要な経費を賄い財政健全化にも配慮するやりくりは険しそうだ。要求段階の100兆円超えは5年連続。国・地方の政策経費は78兆円前後に上り、省庁別では厚生労働省が18年度当初予算比2・5%増の31兆8956億円を占めた。他省庁分を含む社会保障費は医療や介護などの給付が増えて約6千億円多い32兆円超となり、財務省は査定で抑制する方針。防衛省は2・1%増の5兆2986億円を求めた。北朝鮮の脅威に対処する地上配備型迎撃システム「イージス・アショア」の取得関連で2352億円を見込んだ。各省は看板政策を優遇する「特別枠」を使い、増額要求を掲げた。西日本豪雨などを受けた防災分野や働き方改革、訪日客誘致を重視。外国人材の受け入れ拡大に備えた「入国在留管理庁」(仮称)の新設や、皇位継承の予算もある。自治体に配る地方交付税は一般会計ベースで15兆8111億円。政策関連と別にかかる国債費は5・5%増の24兆5874億円。近年は長期金利の低下で利払い費が圧縮されてきたが、今回は18年度要求と同じ1・2%と想定しており、超低金利の財政効果が表れにくくなっている。
   ◇   ◇
●景気優先で規律緩む一方 消費増税対策は別枠
 2019年度当初予算の各省庁からの概算要求総額は5年連続で100兆円を超え、過去最大となった。当初予算には19年10月の消費税増税に向けた経済対策も加わる見込みで、財務省が要求額を絞り込んでも、歳出総額は史上初の100兆円突破となる公算が大きい。目先の景気を優先し、社会保障費の増大にも目をつぶる。緩みっぱなしの財政規律がまたも後回しになりそうな気配が早くも漂う。
「消費税増税にきちんと対応したい。景気後退を招くようでは(10%への増税を)過去2回延期した意味がない」。概算要求締め切りに先立つ8月27日、麻生太郎財務相は予算編成を担う財務省幹部たちにこう訓示した。強調したのは財政規律ではなく、景気への配慮だった。予算編成の最大の焦点は、消費税増税後の消費の冷え込みを避けるための経済対策だ。政府は過去2度の消費税増税時にいずれも景気後退を招いたことを踏まえ、年末までに住宅や自動車の購入支援を柱とした対策をまとめる。関連予算は概算要求とは別枠で乗ることになる。14年4月に税率8%に上げた際の経済対策の規模は約5兆5千億円。日銀の試算では10%への引き上げに伴う家計負担増は年約2兆2千億円だが、与党内には10兆円規模の対策を求める声もある。来年の統一地方選や参院選をにらんだ政治の意向に押されれば、19年度当初予算は18年度当初(97兆7千億円)を大きく上回りかねない。予算の約3分の1を占める医療、介護などの社会保障費を抑制しようという機運も乏しい。厚生労働省の要求総額は過去最大の31兆8956億円。18年度まで5千億円に抑えていた高齢化に伴う社会保障費の伸びは6千億円と見込む。19年度予算編成では18年度までの3年間と異なり、伸びを年5千億円程度に抑える数値目標がない。渡りに船とばかりに他省も増額要求が目立つ。国土交通省は西日本豪雨を踏まえた水害対策などを掲げ、18年度当初予算比19%増の6兆9070億円を要求。防衛省の要求額も、北朝鮮の脅威を理由に装備増強などで過去最大になった。文部科学省も学校へのクーラー設置などで同11%増の5兆9351億円を要求している。企業収益が堅調で税収が増加傾向でも、歳出の2割超を借金返済が占め、歳入の3割超を新たな借金に頼る異常な財政構造は続く見通し。国と地方の借金残高は1千兆円を超え、国内総生産(GDP)の約2倍に達する先進国で最悪の水準。このままでは安倍政権の思惑通りに金融緩和で物価が上昇しても、金利上昇で国債の利払い費がかさみ、財政が行き詰まる恐れがある。9月の自民党総裁選で連続3選すれば、7年目の予算編成となる安倍政権。将来世代に痛みをつけ回す「大盤振る舞い」を改める気配はない。森友学園を巡る決裁文書改ざんなどで信頼を失った財務省が歳出抑制の主導権を握れるか。険しい予算編成になりそうだ。
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●「入国管理庁」創設など588億円 外国人就労拡大へ各省要求
 政府が来年4月から、新たな在留資格による外国人労働者の受け入れを拡大する中、各省の来年度予算の概算要求に関連経費が盛り込まれた。法務省は外国人の就労拡大に対応する「入国在留管理庁」(仮称)新設に伴う人件費やシステム改修費など588億円を計上。厚生労働省は外国人材受け入れの環境整備などで100億円を要求した。入国在留管理庁は入国管理局を格上げして設置。外国人の入国審査などを担う出入国管理部と、国内の外国人の生活や日本語習得を支援する在留管理支援部を置く。出入国審査と在留管理体制強化のため計585人の増員も要求している。厚労省は外国人を雇用する事業所への指導体制強化に10億円を要求。外国人技能実習生に対する相談事業の拡充と、企業などが適切に実習生を受け入れているかを検査する体制強化のために68億円、外国人留学生が日本で就職するよう促すため、職場で実施する日本語研修の支援費用などに8億6千万円を計上した。農林水産省は「農業支援外国人適正受け入れサポート事業」として3億8500万円を求めた。日本で即戦力となり得る知識や技能があるかを評価するため、現地で試験を実施する日本の民間団体への支援費用を盛り込み、外国人からの苦情相談窓口の設置も支援する。文部科学省は生活レベルの日本語を学ぶ環境を整えるための新規モデル事業に約3億円を計上。モデル自治体として15程度の都道府県、政令市を公募し、地域の実態を調査したり外国人と自治体などをつなぐコーディネーターを配置したりして先進事例の構築を目指す。

*1-2:http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2018090701001576.html (東京新聞 2018年9月7日) 政府、地震や豪雨で補正編成へ 1兆円超か、臨時国会冒頭に提出
 政府は7日、北海道の地震や西日本豪雨など相次ぐ災害の復旧費を確保するため、2018年度補正予算案を編成する方針を固めた。秋の臨時国会冒頭に提出する方向で与党と協議する。災害級とされた今夏の酷暑を踏まえ、小中学校のクーラー設置推進費なども想定しており、規模は1兆円を上回る可能性がある。補正予算は例年、税収見積もりの修正などを反映させて12月ごろに編成している。18年度は災害対応を進めた後、年末補正を組むという二段構えで臨むことになる。補正予算案には西日本豪雨による洪水で壊れた河川堤防の修理や土砂崩れの再発防止、北海道の地震の復旧費などを盛り込む。

*1-3:http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2018090302000176.html (東京新聞社説 2018年9月3日) 膨張する予算 法律で縛ったらどうか
 来年度当初予算案の概算要求は五年連続で百兆円を超え、過去最大を更新した。危機感なき借金まみれ予算をいつまで続けるのか。自ら抑制できないのなら、法律をつくって縛るしかないだろう。財政健全化の国際公約だった「二〇二〇年度までの基礎的財政収支(プライマリーバランス=PB)の黒字化目標」を六月に断念した直後の予算編成である。当然、厳しい概算要求基準を設けるかと思いきや、今回も歳出上限の設定を見送るなど相変わらずの締まりのなさだ。PB黒字化を実現できなかったのは経済成長率を甘く設定したためだ。成長頼みが通用しないのは明白なのに、いまだ政権が「経済再生なくして財政健全化なし」を基本方針とするのは危機感がなさすぎると言わざるを得ない。毎年繰り返される手法も問題がある。今回も、人づくり革命など政権が掲げる主要政策に優先的に予算を配分する「特別枠」を設け、一八年度より約一割増の四・四兆円に積み増した。歳出にメリハリを付けるのが特別枠の狙いというが、実態は各省庁が便乗して似たような要求を並べ、かえってメリハリを失っていると批判された。この手法がはたして政策効果を上げているのかどうか検証すべきだ。概算要求とは別枠で、一九年十月からの消費税増税の影響を和らげるための経済対策の予算も組む。自民党から十兆円規模を求める声がある。8%から10%に引き上げると税収増は五兆円程度だ。これでは右手で増税し、左手では税収増の倍の額をバラまくようなものだ。一体、何のための増税か分からない。来年は参院選や統一地方選があり、歳出圧力は例年になく強い。査定する財務省は不祥事が響いて弱体化しているのでなおさら心配だ。財政健全化が官僚や政治家任せでは進まないのであれば、法律で強制力を持たせるしかないのではないか。かつては、米国の包括財政調整法(OBRA)などにならい、財政健全化の具体策を盛り込んだ財政構造改革法を定めたこともある(一九九七年)。金融危機など日本経済が不況に直面して凍結されはしたが、欧州連合(EU)をはじめ多くの国・地域が法制度によって財政健全化に努めている。先進国で最悪の借金を抱え、少子高齢化が最も深刻な日本も再導入を検討すべきだ。 

<安全を無視した街づくり>
*2-1-1:https://www.nishinippon.co.jp/nnp/syasetu/article/447633/ (西日本新聞 2018年9月7日) 自然災害続発 「備え」に隙はなかったか
 記録的な猛暑に加え、豪雨、台風禍、そして今度は大地震が列島を襲った。ひと夏にこれだけ自然災害が続くのは異例で、非常事態といってもよかろう。しかし、「想定外」という言葉で済ますわけにはいかない。自然の脅威に対して、私たちの「備え」はなお脆弱(ぜいじゃく)である。その現実を見据え、被災地の支援などに全力を挙げたい。きのう未明、北海道で最大震度7の地震が起きた。強風と高潮で関西空港を閉鎖に追い込むなどした台風21号が過ぎ去った直後のことだった。揺れは広域に及んだ。大規模な土砂崩れや液状化現象による人的被害に加え、道全域が停電して二次被害が広がるなど、かつてない事態が生じた。政府は人命救助と併せ、本州からの送電や電源車両の手配など緊急対応に追われた。電力は言うまでもなく、ライフラインの要である。供給が長時間、広域にわたってストップすれば生活や生産の基盤は損なわれ、影響は計り知れない。まずは全面復旧が急務だが、北海道電力の地震対策や電力の需給管理システムに不備はなかったのか、詳しい検証を進める必要があろう。一方、地震直前の台風禍で関西空港が機能不全に陥ったのも衝撃的だった。滑走路が水没した上、強風で流されたタンカーが連絡橋に衝突し、多数の乗降客らが孤立する状況に陥った。海上に立地する同空港を巡っては、地盤の軟弱さや高潮対策の難しさが指摘されていた。今回は高潮とタンカーの衝突が重なり「想定外の事案」とされるが、当初3千人と伝えられた孤立した人の数が、時を追って5千人、8千人と変遷するなど危機管理の甘さが露呈した。九州の北九州、長崎両空港を含め、海上や海沿いに立地する全国各地の空港の災害対策も再点検すべきだろう。今夏の災害を振り返ると、6月の大阪府北部地震では、私たちの身近にあるブロック塀の倒壊で女子児童が死亡する惨事が起きた。ブロック塀の保守・点検の必要性は過去の震災で指摘されながら、全国的に進んでいない実態が明らかになった。岡山県で大規模な洪水が起きるなどした7月の西日本豪雨では、河川の改修工事が行き届いていなかったり、洪水の危険性を知らせるハザードマップが浸透していなかったり、基本的な対策の不備が指摘された。地震や火山噴火の予知は依然難しい。近年まれな気象現象が列島に災害をもたらしてもいる。自然は常に私たちの「想定」の隙を突いてくる。改めてそう胸に刻み、決して終わりのない「備え」に努めたい。

*2-1-2:http://qbiz.jp/article/140486/1/ (西日本新聞 2018年9月10日) 死者40人、捜索を終了 安否不明者なくなる、北海道地震
最大震度7を観測した北海道の地震で、道は10日、死者は40人になり、安否不明者はいなくなったと発表した。不明者の捜索が続いていた厚真町は、捜索を終了したと明らかにした。道内では電力の供給不足を補うため、節電の取り組みが本格化。北海道電力は、地震前の需要ピーク時に電力供給力が追いついていないとして、計画停電も検討している。官公庁や公共交通機関は、照明の減灯や運行本数の削減などを始める。道などによると、9日に安否不明だった2人が厚真町で見つかり、それまでに心肺停止で発見されていた2人と合わせ、4人の死亡が確認された。10日午前2時すぎにも同町の土砂崩れ現場で最後まで安否が分からなかった男性(77)が心肺停止の状態で見つかり、その後死亡が確認された。厚真町の死者は36人で、札幌市、苫小牧市、むかわ町、新ひだか町で各1人。同日午前10時現在で避難者は約2700人、断水は約8千戸。高橋はるみ知事は9日の記者会見で、平常より2割の電力削減が必要とした上で「大変に厳しいが、計画停電や再度の停電が生じれば、復旧途上にある暮らしや企業活動への影響は大きい」と道民や企業に協力を求めた。北海道と経済産業省は10日、地元の経済団体などとつくる連絡会を開催。効果的な節電方法について話し合う。道や札幌市は所有する施設で冷暖房やエレベーターなどの使用を抑制。JR北海道は札幌と旭川、室蘭を結ぶ特急の一部を運休する。札幌市営の地下鉄や路面電車も日中に運行本数を減らす。6日の地震で北電の最大の火力、苫東厚真火力発電所(厚真町)が停止し、電力需給バランスが崩れ、道内全域の約295万戸が一時停電。北電は苫東厚真の復旧に1週間以上かかる可能性があるとしており、供給不足が長期化する恐れがある。安倍晋三首相は9日の地震の関係閣僚会議で、死者数について「これまで42人の方々が亡くなられた」と述べた。

*2-1-3:https://digital.asahi.com/articles/ASL6Q4R1DL6QULBJ008.html?iref=comtop_8_02 (朝日新聞 2018年6月26日) 大地震のリスク、北海道南東部が上昇 18年版予測地図
 政府の地震調査研究推進本部は26日、今後30年以内に特定の地点が強い揺れに見舞われる確率を示す「全国地震動予測地図」の2018年版を公表した。震度6弱以上の確率は、北海道南東部で前年と比べて大きく上昇した。地図は地震の起きやすさと地盤の揺れやすさの調査をもとに作製。確率はすべて今年1月1日時点。政府が昨年末に見直した、千島海溝沿いの地震活動の評価を反映し、マグニチュード(M)8・8程度以上の超巨大地震などを考慮した。新たなデータを反映した結果、釧路市で69%(前年比22ポイント増)、根室市78%(15ポイント増)、帯広市22%(9ポイント増)などった。プレート境界で起きる大地震は100年前後の間隔で繰り返し発生する。南海トラフは前回発生した1940年代から70年以上経っており、東海から四国の太平洋側や首都圏は、静岡市70%、名古屋市46%、大阪市56%、高知市75%、千葉市85%など、前年同様に高い確率になっている。一方、活断層による地震は、プレート境界で起きる地震と比べて一般的に発生間隔が長く、陸域や日本海側の確率は新潟市13%、福岡市8・3%など、太平洋側に比べて低い。ただ、確率が低くても過去に大きな地震は発生している。18日に発生した大阪北部地震で、震度6弱を観測した大阪府高槻市は22・7%だったが、同本部地震調査委員長の平田直・東京大教授は「震度6弱以上の揺れが起きる確率がゼロの地域は全国にどこにもない。家庭や職場で備えを進めて欲しい」としている。予測地図は、防災科学技術研究所がつくるウェブサイト「地震ハザードステーション」(http://www.j-shis.bosai.go.jp/別ウインドウで開きます)で閲覧できる。任意の地点の発生確率や、地震のタイプ別の確率の違いなどを見ることができる。(

*2-2-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180914&ng=DGKKZO35322970T10C18A9TJN000 (日経新聞 2018.9.14) 猛烈な南風 高潮を増幅、台風21号で関空が冠水
 非常に強い台風21号の影響で、大阪湾沿岸を中心に記録的な高潮になり、関西国際空港(大阪府泉佐野市)の滑走路が冠水するなど大きな被害が出た。複数の要因が重なったが、特に南よりの猛烈な風が南西に開いた大阪湾の岸に吹きつけた影響が大きいという。大阪湾は高潮が起こりやすい。関空は護岸のかさ上げなどで対策を進めてきたが「140年に1度」という想定を超える高潮には、なすすべがなかった。台風21号が通過した4日、大阪市で3メートル29センチ、神戸市で2メートル33センチの潮位を記録した。いずれの地点も、死者194人を出した1961年の第2室戸台風時の潮位を上回った。国内最悪の高潮被害を出した1959年の伊勢湾台風での名古屋市の3メートル89センチ、2012年の台風16号で有明海に面する佐賀県太良町で観測した3メートル46センチに次ぐ水準だ。京都大学防災研究所准教授の森信人さんが各地の潮位データをもとに解析すると、大阪市南部から神戸市付近まで大阪湾奥の広い範囲で高さ3メートルに迫る高潮が発生していた。大阪湾の沿岸地域は第2室戸台風のほか、1950年のジェーン台風、1965年の台風23号などで大きな被害にあっている。森さんは「高潮発生リスクが高く危険な地域だ」と指摘する。
●気圧低下も要因
 高潮は台風などの強い低気圧が通過する際に、海面が高くなって波が岸へ押し寄せてくる現象だ。台風は周囲よりも気圧が低く、上昇気流によって掃除機に吸い上げられるように海面が上昇する。気圧が1ヘクトパスカル下がると、海面は1センチ上昇するとされる。さらに岸に向かって吹く強い風で海水が吹き寄せられ、海面が上昇する。風の威力は大きく、風速が2倍になれば海面の上昇幅は4倍になる。大阪湾を通過したころの台風21号の中心付近の気圧は950ヘクトパスカルほど。午後1時半すぎ、関西国際空港で瞬間風速が58.1メートルを記録した。猛烈な高潮になったのは、こうした要因がそろったからだ。京大の森さんの解析では、気圧低下の影響で海面が60~70センチ上昇した。満潮が近づいていたため、いつもより50センチ高かったという。ここに南西から南南西の猛烈な風が吹いたことで「さらに2メートルほど潮位が上昇した」。大阪湾では午後1時から2時にかけて、風向きが東よりから南よりに変わったタイミングで各地の潮位が上昇した。もし、台風21号の接近が一週間ずれていたら、潮位が最も高くなる大潮の時期と重なった。森さんは「潮位はさらに1メートル20センチほど高くなり、大きな被害を出した可能性が大きい」と警鐘を鳴らす。
●不十分だった対策
 高潮で最も深刻な被害を受けたのが関西国際空港だ。2本あるうちのA滑走路が水没し、第1ターミナルが水浸しになって停電した。海水は高潮や津波対策としてかさ上げした護岸を30センチほど乗り越えていた。暴風で流されたタンカーによって連絡橋が大きく損傷し、追い打ちをかけた。関空を運営する関西エアポートの担当者は5日夜の記者会見で「備えていたつもりだったが、甘かった。高潮は想定を超えていた」と説明した。だが、対策は十分だったとはいえない。関空のある人工島は軟らかい地盤にあり、地盤沈下が深刻だ。A滑走路は1994年の開港時から約3メートル40センチ沈んでおり、海面からの高さは最も低いところだと1メートル40センチほどだ。今も年に6センチほど沈んでいる。護岸のかさ上げは地盤が沈下した分を補っているにすぎない。護岸を高くするには、航空法の規制がある。むやみに護岸を高くすれば、航空機が着陸する際に邪魔になる。滑走路全体をかさ上げすれば解決するが、巨額の費用がかさむうえに工事中は便数を減らす必要があり、実現は難しい。地球温暖化が進むと海面の上昇が進むとされる。そうなると高潮のリスクは高まる。京大の森さんの研究によると、現在よりも気温が4度上昇すると、大阪湾で第2室戸台風に匹敵する2.5メートル以上の高潮が発生する頻度が増す。森さんは「台風による高潮は常に起こりうるリスクだと認識すべきだ」と呼びかける。

*2-2-2:https://digital.asahi.com/articles/ASL984TZRL98UTIL01Y.html?iref=comtop_8_03 (朝日新聞 2018年9月8日) 開墾してできた厚真町、覆った土砂 「ショックな光景」
 厚真町は、南端で太平洋に面する。海岸へと広がる地形と厚真川水系を生かした米づくりで知られる。海岸沿いには、今回の大停電のきっかけになった北海道電力の苫東(とまとう)厚真火力発電所がある。そんな町を震度7の揺れが襲った。死亡と心肺停止を合わせると33人(8日午後9時現在)。いずれも北部の山間地の集落だ。町長の宮坂尚市朗(しょういちろう)さん(62)の家は南部にある。地震後、自宅を出てから町役場まで、一見して大きな被害はなさそうに見えた。だが、テレビに映った北部の映像に言葉を失った。とりわけ被害が大きかったのは、34人が暮らす吉野地区だ。死亡と心肺停止を合わせて17人。広い土地にもかかわらず、民家が集まって立っていた。「町の初期に、発展の中心になった場所だからでしょう」と宮坂さんは言う。町のホームページによると、明治3年に新潟から移り住んだ人が原野を切り開いて小屋を建て、明治17年に北部も開墾したのが旧厚真村の始まりとされる。この町で生まれ育った農家の日西善博さん(65)は、地震当日にヘリで救助され、土砂崩れの状況を上空から見た。「あんな景色は生まれて初めて。緑の山林があるはずが、粘土層と赤土が見えて、ショックな光景だった」。8日までに、大半の世帯で電気は復旧した。だが、水道や通信網が元に戻るには、相当の時間が見込まれる。「全町民が被災者」と宮坂さんは言う。いま役場には、自衛隊や警察の車両が駐車場に並び、24時間、慌ただしく人々が出入りする。町長室で取材に応じた宮坂さんは、「長い戦いになる」と言った。

*2-3-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180902&ng=DGKKZO34840540R30C18A8MM8000 (日経新聞 2018.9.2) 浸水想定域に住宅誘導、まち集約の自治体9割で 防災後手、計画の再点検を
 西日本豪雨などで洪水被害が相次ぐ日本列島。天災への備えが一段と求められるなか、まちの集約計画を掲げる主要な自治体の約9割で、浸水リスクの高い地区にも居住を誘導していることが日本経済新聞の調べで分かった。こうした地区にはすでに住宅が集まっているケースもあり、都市の効率向上と災害対策を両立させる難しさが浮き彫りになった。まちづくりと防災対策を擦り合わせ、集約計画を再点検する必要がある。全国でコンパクトシティー形成をめざす「立地適正化計画」の策定が進んでおり、120以上の市町が居住を誘導する区域を設定している。都市密度を高めて1人あたりの行政費用を抑えるためで、区域外の開発には届け出を求めている。一方で各自治体は洪水時の浸水予測をハザードマップなどで公表。1メートル以上の浸水であれば一戸建ての床上、3メートル以上であれば2階まで浸水する恐れがあるとされる。
●「床上」リスク高く
 日本経済新聞は居住誘導区域を3月末までに発表した人口10万人以上の54市を対象に、調査表や聞き取りを通じて浸水想定区域との重なり具合を調べた。その結果、全体の89%となる48市で1メートル以上の浸水想定区域の一部が居住誘導区域となっていた。うち45市は大人の身長に近い2メートル以上の区域とも重なっていた。「床上浸水リスクは避けたほうがいい」。名古屋市の立地適正化計画を検討した有識者会議のある委員はこう主張した。3月にできた計画を見ると、庄内川沿いの広範囲で1メートル、2メートル以上の浸水の恐れがあるのに居住誘導区域となっている。市の原案に対し、「リスクが高い地区に誘導する必要があるのか」との異論は根強くあったが、既に市街地が形成されていると主張する市の事務局が押し切った。浸水想定3メートル以上の地区は外した。都市計画課は「2階に避難できるかどうかで判断した」と説明するが、足腰の悪いお年寄りが階段をのぼるのは難しい。市の都市計画審議会会長を務める名城大の福島茂教授は「5年ごとに計画を評価する。合意形成を進めて区域を見直せばいい」と語る。市によっては大きな河川のそばで、浸水想定区域をすべて避けるとまちづくりが成り立たない事情もある。信濃川に沿って街並みがある新潟県長岡市は居住誘導区域のほぼ全域が0.5~5メートルの浸水想定区域と重なる。淀川に面する大阪府枚方市も85%程度で1メートル以上、約6割で3メートル以上の浸水リスクがある。都市計画課は「浸水想定区域を除くのは極めて困難。洪水リスクの事前周知や避難体制の整備など対策を進める」と説明する。多くの自治体は防災対策を施せば浸水リスクを軽減できると主張する。だが、立地適正化計画をつくる段階で、都市整備と防災の部署がどこまで細部を擦り合わせたか。東日本のある自治体の防災担当は「居住誘導区域の詳細が分からない」と回答。都市整備担当も浸水想定区域との重複度合いについて「細かく把握していない」という。居住誘導区域に占める1メートル以上の浸水想定区域の割合は、高知市のように1%と低い市もあるが、多くが「把握していない」(千葉県佐倉市、神奈川県大和市、大阪府高槻市など)と答えた。
●西日本豪雨で被害
 西日本豪雨で被害を受けた広島県東広島市では居住誘導区域で浸水があった。一部は浸水リスクが指摘されていた。都市計画課は「誘導区域が今のままでいいとは思わないが、被害対策が最優先で都市計画の議論に着手できていない」という。「居住誘導区域内の浸水想定を詳細に分析すべきだ」と訴えるのは土木工学に詳しい日本大学の大沢昌玄教授だ。リスクの度合いに応じて防災対策の優先順位を決めやすくなるという。そのうえでリスクが高い地域については「誘導区域からできるだけ除外したほうがいい」と強調する。

*2-3-2:https://digital.asahi.com/articles/DA3S13677813.html?ref=pcviewpage (朝日新聞 2018年9月14日)液状化「なぜ自分の家が」 新築に「危険」判定 北海道地震
 北海道地震で、札幌市のベッドタウンが液状化による大きな被害を受けた。道路が陥没したり、マイホームが大きく傾いたりした光景に、住人らはショックを隠せない。専門家は、かつてあった川沿いに被害が集中していると分析し、二次被害に注意を呼びかける。札幌市東部にある清田区里塚地区は、1970年代後半から住宅地として整備されてきた。この地区で暮らす建設業の清本翔馬さん(27)は、昨年建てたばかりの2階建て住宅が市の応急判定で「危険」とされた。妻の紗耶佳(さやか)さん(28)と「なぜ自分の家が」と頭を抱えている。6日未明、翔馬さんは激しい揺れで目が覚めた。恐る恐る外に出ると、雨が降っていないのに水が激しく流れる音がする。自宅前の道路が背丈ほど陥没し、濁流となっていた。40年ローンで建てたマイホーム。加入する地震保険では、建築費の3分の1しかカバーできない。「先は見えないが、親も里塚で暮らし、自分が生まれ育った場所。またここで暮らしたい」と翔馬さんは話す。市宅地課によると、里塚地区は河川を覆って地下に水路を残し、周辺から削った土砂で造成されたという。被害が大きかった地域は約5ヘクタールに及ぶ。市が7~12日に実施した応急危険度判定では、里塚地区などの計539件中、倒壊の恐れがある「危険」は85件、「要注意」は88件あった。同じ里塚地区でも、被害には大きな差が現れた。清本さん宅から直線距離で約200メートル離れた近藤陽子さん(43)宅は食器が落ちた程度で、液状化の影響をほとんど受けなかった。「同じ里塚なのに別世界のよう。私たちは被害が少なかったけれど、避難する方や陥没した道路を見るたびに、里塚の傷の大きさを痛感しています」
■被害、以前の川沿いに集中
 北海道大の渡部要一教授(地盤工学)は地震直後に札幌市清田区里塚周辺の現場に入り、地面の陥没や隆起、土砂が噴き出している様子などを調査した。12日、朝日新聞がチャーターしたヘリコプターに同乗し、現場周辺を目視した。渡部教授によると、現場周辺はかつて田んぼが広がり、川も流れていた。今回、被害が大きかった住宅や公園は、かつて流れていた川沿いに集中していることが上空からも確認出来たという。「地震による液状化で流動化した地盤が、土砂となってかつての川に沿って地下で動き、それが一気に地上にあふれた。そこに水道管の破裂によって生じた水が加わったことで、泥水が道路を冠水させたと考えられる」。渡部教授は「もし、仮説通りの液状化が起こっているとすれば、土砂が流れ出た後の地下の地盤は空洞化している恐れがあり、現場周辺では陥没などの地盤の変化を注意深く見守る必要がある」と話している。

*2-4-1:https://www.agrinews.co.jp/p45166.html (日本農業新聞 2018年9月13日) 大災害時代 「人と社会」の変革迫る
 北海道地震から1週間。近年、災害が大規模化し、繰り返し列島を襲う。異常が常態となり、「想定外」は通用しない。専門家は大型災害が多発する「危険サイクル」に入ったと警告する。大災害時代の防災、減災対策は今や国家的課題だ。大災害は、人々の意識や社会システムの変革を迫っている。災害は、地震や風水害だけではない。口蹄(こうてい)疫や鳥インフルエンザ、豚コレラなどの家畜伝染病、凶悪テロなどの犯罪も含む。災害は社会や経済状況を映す。自然災害も例外ではなく、地球温暖化の進展と比例して猛威を振るう。少子高齢化や過疎集落の増加、地域コミュニティーの弱体化など社会・産業構造の変化も被害を拡大させ、復旧・復興の長期化を招いている。北海道地震では、電源の一極集中が広域停電を引き起こした。半世紀にわたって防災・復興の研究と実践に携わる、室崎益輝・兵庫県立大学教授(減災復興政策研究科長)は、平成に入って災害が多様化し大規模化していると言う。地震が活動期に入り、水害などと連動し複合災害を引き起こしやすくなっていると指摘。「災害が多発する危険周期に入った」と警告する。事実、平成30年間の主な自然災害を見ると、北海道南西沖地震(1993年)、阪神・淡路大震災(95年)、新潟県中越地震(2004年)、そして未曽有の東日本大震災(11年)。近年も熊本地震(16年)、九州北部豪雨(17年)と続き、今年も大阪北部地震、西日本豪雨、台風21号、北海道地震と頻発する。問題は社会の側が、こうした巨大災害に対応できていないことだ。縦割りの防災行政、司令塔機能の混乱、中央政府と当該自治体の連携不足、専門家や科学的知見の不足、情報伝達の不備などの問題が浮き彫りになっている。加えて本来、防災・復旧・復興の当事者であるはずの市町村は、財政難や人材難に苦しみ機動的に対応できない。道路や橋、河川などインフラの老朽化も被害に拍車を掛ける。さらに目を向けなければならないのが、農村、都市問わず少子高齢化でコミュニティー機能が弱っていることだ。地域力の衰退は、共助の弱体化に直結し、被害の拡大を招く。大規模災害のたびに過疎集落は存廃の危機に陥り、国土の荒廃が進み、さらなる災害の引き金となる負の連鎖が止まらない。災害は社会の弱点や矛盾を映す。災害対策基本法など法制度の充実強化はもとより、防災教育、予防対策、初期対応、復旧・復興に向けて省庁の壁を越えて横断的に取り組む体制が不可欠だ。併せて、災害に強いインフラ整備に予算を重点投入すべきである。そして地域振興や1次産業の活性化は、国土防災につながるという視点が必要だ。地域の防災力を高めることが、大災害時代を生き抜く術になる。防災基点の国づくりこそ百年の計だ。

*2-4-2:https://news.nifty.com/article/domestic/society/12151-14868/ (niftyニュース 2018年2月28日) 首都直下型地震が起これば荒川や隅田川沿いの下町が壊滅する可能性
①東京都は首都直下型地震に備え、危険度を5段階にランク付けしたマップを公表した
②荒川や隅田川沿いなど、下町エリアに危険度が高い地域が集中しているという
③しかも、直下型を想定したこのマップでは、津波の被害が考慮されていないらしい
■「下町が壊滅する!」直下型地震で地獄と化す東京都ゼロメートル地帯
 2月15日、東京都は4年半ぶりに“危険度ランク”を発表。いつ発生しても不思議ではない首都直下型地震に備え、町や丁目で区切った5177カ所を対象に、危険度を5段階にランク付けしたマップを公表した。それを見ると、危険度が高い地域が下町エリアに集中していることが一目瞭然。荒川や隅田川沿いの下町に広がる軟弱な地盤や谷底低地に当たる場所は、地震が起きた際に揺れが増幅されやすく、しかも古い木造住宅が密集しているためだ。防災ジャーナリストの渡辺実氏は言う。「東京都は震災対策条例にもとづいて、1975年から約5年ごとに地震に対する建物倒壊や火災などの危険度を調査、公表してきました。しかし、開発が進んでいる地域では建物の耐震化が進んで評価が上昇しているのに対し、荒川、隅田、足立区では高齢化が進み、建て替えをしようというエネルギーもないというのが実状なんです」。木造住宅が密集している環状7号線の内側を中心としたドーナツ状のエリアや、JR中央線沿線でも火災危険度が高い。「首都直下型地震の際は帰宅難民の大量発生が指摘されていますが、都心から郊外の自宅へ帰宅する際、環状七号線一帯の火災により、都心へ戻る人が出てくる。それが新たな帰宅難民とぶつかることで、さらなる混乱も予想されます。そこへ、関東地震(1923年)の時に発生したような火災旋風が襲う可能性もあるのです」(同)。ただ、8回目の作成となった今回のマップでは、耐震性の高い建物への建て替えや、耐震改修工事などが反映され、倒壊危険度は前回に比べ平均で約20%低下している。また、火災の危険度では、延焼時間の想定が6時間から12時間にまで伸びたが、不燃性の建材を使った建物が増えたことや道路の拡幅工事、公園整備などが進んだ結果、リスクは平均約40%低下したという。しかし問題は、直下型を想定したこのマップでは、津波の被害が考慮されていない点だ。特に23区の東部にはゼロメートル地帯が広がっている。巨大地震の際は、ここに大きな水害が出る危険があるという。渡辺氏が続ける。「東京湾の満潮面より低い、いわゆるゼロメートル地帯が、墨田区、江東区に広がり、23区の面積の約20%にも及びます。そしてそこに、約150万人が生活をしている。考えておかなければならないのは、満潮時に地震が来た時です。火災や揺れで住民が動揺しているところへ、地震により防潮堤が破壊され大量の水が流れ込む。そうなった場合は、想定外の大パニックとなる可能性があるのです」。怖い順の格言である「地震雷火事親父」の親父の部分はかなり怪しくなってきたが、東日本大震災の恐怖は未だ脳裏から離れない。首都直下地震は30年以内に7割の確率で起こると言われているが、それは明日にもやってくるかも知れないのだ。

<火星の話>
*3-1:https://digital.asahi.com/articles/ASL7B5V8VL7BULBJ00Y.html (朝日新聞 2018年7月23日) 火星が大接近 観察は8月が狙い目、小型望遠鏡で模様も
 火星が31日、地球に大接近する。火星はおよそ2年2カ月ごとに接近するが、6千万キロ弱まで近づくのは15年ぶりだ。観察しやすいのは8月で、小型の望遠鏡でも模様が見える。近年は水の痕跡など、探査機による発見も相次いでいる。火星大接近を控えた先月16日、東京・中野にある光学メーカー「ケンコー・トキナー」本社で、望遠鏡の選び方や使い方を紹介する体験会が開かれた。親子連れら約20人が参加。光学デモンストレーターの渡辺一生さんが「火星は今回、土星と同じくらいの大きさに見える。鏡の直径が8センチクラスの望遠鏡でも模様が見えそう」と説明すると、参加者は「撮影には何が必要か」などと熱心に質問していた。父親と来ていた小学6年の男の子(11)は「望遠鏡の使い方のコツが分かったので、火星だけじゃなく木星や土星も見てみたい」と楽しみにしていた。火星は地球のすぐ外側の軌道を回っていて、地球はおよそ2年2カ月ごとに内側から追い越している。この時に最も近づくが、火星の軌道は地球より楕円(だえん)の度合いが強いため、接近する距離は毎回異なり、6千万キロより近づく「大接近」があったり、1億キロまでしか近づかない「小接近」があったりする。2003年の距離は5600万キロ弱で、「6万年ぶり」とも言われた超大接近だった。この夏の火星大接近は5800万キロ弱と、03年に匹敵する近さだ。「大シルチス」という表面の黒い模様や、ドライアイスなどでできた南北の極冠の様子も望遠鏡で見やすくなる。ただ、火星では今年5月に大規模な砂嵐が発生して、模様が広範囲で覆われる状態が続いている。砂嵐が収まるのはしばらく先になりそうだ。また、7月だとまだ火星が夜遅くにしか上がってこないこともあり、国立天文台も「観察しやすいのは8月や9月」として、観望会もその時期に予定している。
●火星の地下に氷残る?
 火星の大きさは地球と月の間くらいだが、地形は極めてダイナミックだ。最高峰のオリンポス山は高さ26キロで、太陽系で最大の山と言われる。すそ野の広がりは600キロに達する。東京―岡山間よりも長い距離だ。また、米探査機が発見したマリナー渓谷は全長5千キロ、幅100キロに及ぶ。地球によく似た特徴もある。1日の長さはほとんど同じ約24時間40分。地軸の傾きもほぼ一緒で夏や冬がある。地球の100分の1の大気圧とはいえ大気がある。気温は平均マイナス55度だが、夏には20度を超すことがある。氷が溶けて液体の水が存在できる温度だ。実際、1996年に打ち上げられた米探査機「マーズ・グローバル・サーベイヤー」が、地下からしみ出た水が地表を流れたように見える地形を上空から撮影した。今も地下に氷が残っているのではないかという期待が高まっている。最近の研究では、地球で生命が生まれた40億年ほど前、火星にも大量の水があったらしいことが分かってきた。であれば、微生物やその痕跡が残っていても不思議ではない。だが、火星の海は消え失せ、赤茶けた大地が広がる荒涼とした世界になった。米航空宇宙局(NASA)のジェイムズ・グリーン博士は5月に来日した際、「火星で起きたことは地球でも起こりうる。地球の運命がどうなるのかを理解するためには、火星を調べることが近道だ」と語った。
●各国が探査
 火星探査はかつて米ソが覇を争ったが、近年は日欧も計画を本格化させている。先陣を切ったのは旧ソ連だ。60年以降、探査機「マルス」シリーズを次々と打ち上げた。だが、軌道に乗せることが難しく、失敗が続いた。初めて火星を近くから撮影したのは65年の米探査機「マリナー」4号だった。さらに、米国は76年に、「バイキング」1、2号の着陸機を軟着陸させた。初めて地表の鮮明な写真が撮られ、大気も観測した。地表では現在、米国の探査車「オポチュニティー」と「キュリオシティ」が活動している。NASAは今年6月、キュリオシティが火星の岩石から炭素や水素を含む有機物を発見したと発表。しかし、生命がいた直接的な証拠は未発見だ。NASAは5月には火星の地中を掘って地質などを調べる着陸機「インサイト」も打ち上げた。将来的には火星の岩石を地球に持ち帰ったり、有人探査をしたりする野心的な計画を立てている。欧州宇宙機関(ESA)もロシアと協力し、火星の本格探査を始めた。16年に打ち上げた探査機は軌道投入に成功。20年には探査車を打ち上げる予定だ。日本も探査機「のぞみ」を1998年に打ち上げたが軌道投入に失敗。リベンジを計画している。狙うのは火星本体ではなく、二つある衛星「フォボス」と「ダイモス」だ。小惑星探査機「はやぶさ」で磨いた試料採取の技術などを応用し、どちらかの衛星から石や砂を持ち帰る火星衛星探査計画(MMX)を進めている。打ち上げは2024年度の予定だ。宇宙航空研究開発機構(JAXA)の川勝康弘・プリプロジェクトチーム長は「どういう小天体に水や有機物が多く含まれ、惑星に物質を運んだのかを突き止める手がかりにしたい」と話す。
●NASAの有人探査計画
 NASAは2030年代に宇宙飛行士を火星に送り込む探査を計画している。まず月の周りに宇宙ステーションを建設。そこを中継基地にして火星に向かう。ただ、片道でも1年ほどかかるため、飛行士の健康管理や被曝(ひばく)対策、事故への備えなど課題は尽きない。費用も巨額になりそうだ。

*3-2:https://digital.asahi.com/articles/ASL7S7GV8L7SULBJ01G.html (朝日新聞 2018年7月26日) 火星、氷床の下に大量の水? 「生命生き残れる環境」
 火星の南極にある氷床の下に大量の水をたたえた「湖」が存在する可能性が高いと、イタリア国立宇宙物理学研究所などのチームが25日、発表した。「生命が生き残れる環境だ」という。27日発行の米科学誌サイエンスに論文が掲載される。太陽から平均約2億2800万キロ離れた火星には、地球の約100分の1の大気があり、生命の「材料」とされる有機物も岩石から発見されている。約40億年前は大量の水に覆われていたと考えられ、現在も北極や南極周辺に氷床が残っている。研究チームは、欧州宇宙機関(ESA)の探査機「マーズ・エクスプレス」が2012~15年に得た南極周辺の観測データを分析。電波の反射具合から、厚さ約1・5キロの氷床の下に、水とみられる層が幅20キロにわたって湖のように存在することがわかった。水がある氷床の底の温度は零下約70度と推定されるが、塩分が濃いことや氷床の圧力がかかっていることで液体のまま存在できているらしい。研究所のロベルト・オロセイ氏は「生命にとって好ましい環境ではないが、水中では単細胞生物などが生き残れる可能性がある」としている。地球外での水の存在は、木星の衛星「エウロパ」や土星の「エンケラドス」などでも予想されているが、火星はより太陽に近く、光や熱で生命活動の元になる化学反応が起きやすい。宇宙航空研究開発機構(JAXA)宇宙科学研究所の臼井寛裕教授(岩石学・地球化学)は「火星に水があるなら、地球と似た生物がいる可能性が高まったと言える」と話している。

<復興と防災>
PS(2018年9月18日追加): 本文に私が、「高齢化と人口減少に直面していることを活用して、高台にケアしやすいマンションを作って危険度の高い地域から移転する都市計画」等と記載したのは、*4-1のように、多様な世代が暮らしやすい街を高台に作って移り住むことだ。こういう街への転居なら、生活がより安全で便利になるので、移転する人も満足できるだろう。
 また、*4-2のように、旧耐震基準で建てられた大型施設の1割に倒壊リスクのあることが明らかになったそうだ。そして、*4-3のように、台風21号による飛来物や倒木がぶつかったことで、福井、滋賀、京都、大阪、兵庫、奈良、和歌山の2府5県で、電柱600本以上が折れる被害が出て6日間24万戸超が停電したが、電線地中化や分散発電が進んでいれば、毎年来る台風でこのように多くの人が停電の不便を味わう必要はなかった筈である。
 さらに、*4-4のように、溜池の危険性が西日本豪雨などで浮き彫りになり、地震による決壊も続発しているそうだ。確かに、政府は溜池の補強を急いで防災と安全機能を高めるべきで、溜池に農業用電力を発電する小水力発電設備を取りつけてもよいと思われる。
 なお、都会でも、*4-5のように、南海トラフ巨大地震発生時に震度6弱以上の揺れが想定される地域を含む24府県にある37国立大のうち、保有する研究機器や歴史的史料を保護するための防災計画を策定している大学は4分の1に留まるそうだ。貴重な研究機器や史料は大学に限らず保管されていると思うが、近いうちに首都直下型地震が起こるとされている関東は準備ができているのだろうか。

*4-1:http://qbiz.jp/article/140105/1/ (西日本新聞 2018年9月3日) 旧公団 ついのすみかに 北九州市小倉南区 徳力団地に医療と福祉拠点 多様な世代が暮らす街へ
 小倉南区、徳力団地−。1960年代半ばに開発された約2300戸のこの旧公団住宅の一角に診療所と特別養護老人ホーム(特養)を併設した「メディカル&ケアとくりき」が8月1日、オープンした。「お父さん。私が毎日来られるようになって、よかろう」。入所者の家族、所紀世子さん(79)が話し掛けると「まあ、気持ちはいいよ」と車いすの夫、泰政さん(84)は照れくさそうにうなずいた。徳力団地に約20年前から住む所夫婦に転機が訪れたのは約10年前だった。泰政さんが脳出血で倒れ体が不自由になった。典型的な「老老介護」で夫の面倒を見続けた紀世子さんは介護7年目でついに倒れてしまった。介護疲れ。1カ月の入院生活を送り限界を悟った。泰政さんは宗像市の有料老人ホームに入所し、その間、紀代子さんは足の不調を覚え手術を受けた。入所していた約3年間、泰政さんの元に通えたのは5回ほどだった。泰政さんの体調も悪化した。「よその土地には、なじめんやった」と泰政さんは振り返る。メディカル&ケアとくりきに入所できた今、紀世子さんは自宅からつえをつきながら通える。「夫も明るく元気になった。友達もいる団地に住み続けられて助かる」。紀世子さんに笑みがこぼれた。
   ◆    ◆
 高度経済成長期の60〜70年代、都市部への人口集中に伴って大規模化していった旧公団住宅は急速に住民が高齢化している。都市再生機構(UR)が管理する1500団地73万戸を対象に2015年に実施した調査では住人の平均年齢は51・2歳で、65歳以上の割合は34・8%に上り、15歳未満は8・6%にとどまった。5年で平均年齢は4・6歳上昇し、高齢化率は9・7ポイント上がった。一方15歳未満の割合は2・2ポイント下がった。URは自治体などと協力し、メディカル&ケアとくりきのような医療と福祉を合わせた複合型拠点を2025年度までに150カ所設置する。14年度から始まり、全国各地で現在133団地で着手や検討が進む。九州では北九州市や福岡市、宗像市の8団地で病院を誘致するなど複合型拠点づくりに取り組んでいる。こうした複合型拠点の開設は、戦後の第1次ベビーブーム期に生まれた「団塊の世代」が75歳以上になる25年度をめどに住まいや医療、介護などの生活支援を一体的に提供する「地域包括ケア」を構築する国の政策にも沿う。URは「(旧公団住宅での)医療と福祉の複合型拠点形成を多様な世代が暮らせる街づくりの先行事例にしたい」と意欲を見せる。
   ◆    ◆
 高齢になっても住み慣れた地域で医療や介護、生活支援サービスを一体的に受けられる地域包括ケアの重要性にいち早く着目したのがメディカル&ケアとくりきの山家滋院長だった。住民基本台帳では3月現在、徳力団地は65歳以上が41%を占め、80歳以上11・4%、85歳以上でも4・8%に上る。自治会が実施した調査では80歳以上の独居高齢者は120人以上いた。50年以上にわたって同団地内で診療所を開いてきた「徳力団地診療所」は以前から往診も実施してきた。01年に診療所を引き継いだ山家院長は、50人以上の往診患者を抱えるうちに入院高齢者に比べ、回復が早く症状が緩和することを実感するようになった。「療養環境の変化はやはりストレスが大きい。自宅と変わらない風景と近所づきあいが続くことで患者の負担感が全然違うと気がついた」。山家院長は小倉南区の社会福祉法人「菅生会」の理事長も兼ねることになり、URに協力を要請。医院と社会福祉法人の協業による拠点開設にこぎ着けた。団地敷地内にあった診療所を4階建てビルに建て替え。無床の診療所、特養29床と併設ショートステイ10床が入居し地域との交流スペースもある。団地や近隣の高齢者たちが次々に入所している。

*4-2:https://digital.asahi.com/articles/DA3S13556772.html (朝日新聞 2018年6月26日) 震度6強―古い大型施設、1割倒壊リスク 学校や病院1万棟、国交省集計
 旧耐震基準で建てられた、病院や小中学校といった規模が大きい全国の建物1万棟余りのうち、1割弱にあたる約1千棟で、震度6強以上の地震が起きると倒壊や崩壊の危険性が高いことが国土交通省のまとめでわかった。大阪府北部を震源とする最大震度6弱の地震から25日で1週間。より強い地震が起きた場合、これらの建物は損壊し、大きな被害が出る恐れがある。現在の耐震基準は1981年6月に導入され、震度6強~7の地震でも倒壊、崩壊しないことが求められている。自治体は、旧耐震基準で建てられた3階建て5千平方メートル以上の旅館や店舗▽2階建て5千平方メートル以上の老人ホームなど、多くの人が出入りする一定規模以上の建物について、耐震性の診断結果を集約し、順次公表していった。同省は、今年4月までに公表された46都道府県(東京の一部と和歌山を除く)に関し、結果を取りまとめた。棟数は計約1万600棟で、▽9%にあたる約1千棟が震度6強~7の地震で倒壊・崩壊する危険性が高い▽7%にあたる約700棟が震度6強~7の地震で倒壊・崩壊する危険性がある――と判明した。合わせて16%となるこれらの建物について、同省は「耐震不足」と認定し、対応を求めている。また、危険性が高いとされた割合(公表時)は東京都が4%、福岡市が4%なのに対し、大阪市が14%、札幌市が18%と地域によって差も生じた。今回の診断は多くの人が出入りする大規模な建物に限られ、ほかにも耐震性が不足している建物は少なくないとみられる。同省は25年までに、「耐震不足」とされた建物の耐震化を完了させたい考えだ。個別の診断内容は、結果を公表している各自治体のホームページで確認できる。

*4-3:http://qbiz.jp/article/140332/1/ (西日本新聞 2018年9月6日) 台風で電柱600本以上折れる 関電、6日も24万戸超停電
 関西電力は6日、台風21号による飛来物や倒木がぶつかったことで、福井、滋賀、京都、大阪、兵庫、奈良、和歌山の2府5県で、電柱600本以上が折れる被害が出たと明らかにした。また、6日午後3時現在で約24万6千戸が停電しており、他の電力会社からの応援を含めた8千人超の態勢で、7日中に大部分を復旧させる方針を改めて強調した。6日午後3時までの延べ停電戸数は約219万戸で、阪神大震災の約260万戸に次ぐ規模となった。

*4-4:https://www.agrinews.co.jp/p45073.html (日本農業新聞 2018年9月3日) ため池管理 安全性高める補強急げ
 急がなければならない。ため池の危険性が西日本豪雨などで浮き彫りになった。地震による決壊も続発している。政府はため池の補強を急ぎ、防災機能と安全性を高めるべきだ。ため池は、西日本を中心に全国に約20万カ所ある。主に雨の少ない地域で農業用水を確保するために作られた。洪水調節や土砂流出を防止する効果に加え、生物の生息場所や地域の憩いの場になるなど多面的な機能を果たしている。農業にとって重要な施設だが、老朽化が進んでいる。2ヘクタール以上の農地に水を供給しているため池は約6万カ所で、このうち7割が江戸時代以前に作られた。担い手の減少や高齢化から管理が行き届かず、堤が崩れたり、排水部が詰まったりしている。農水省がまとめた全国調査によると、ため池の下流に住宅や公共施設ができ、決壊すると大きな被害が予想される「防災重点ため池」は1万カ所を上回った。さらに都道府県の詳細調査では、調査対象の5割強で耐震不足、4割弱で豪雨対策が必要だった。決壊した場合の浸水被害を予想したハザードマップを作り、地域に配っているのは半分に満たない。こんなお寒い状態で防災とはいえない。近年は都市住民との混住化が進み、災害の危険性は増している。ハザードマップを完備し、災害に備えるべきだ。最近10年のため池被災は、7割が豪雨、3割が地震で堤の決壊や流失を起こしている。記録的な豪雨は、常識では考えられない降水量をもたらす。昨年7月の九州北部豪雨や、今年7月の西日本豪雨では大きな被害につながった。この異常事態を念頭に置きながら、耐震性や洪水防止策を強めるなど安全性を強化するべきだ。一方、ため池の所有者が複数に及んだり、工事費用の負担が重かったりと、改修工事の合意形成も容易ではないのが実態だ。地方自治体任せにするのではなく、政府全体がしっかり支援すべきだ。現場のニーズに応えられるように予算を十分確保し、改修工事などの補助率を高めるなど、現場の負担を減らす方法も考えなければならない。ため池での死亡事故も続発している。ここ10年は年平均で20人以上が亡くなっている。60歳以上の高齢者が多く、水の利用が多くなる5~9月にかけて多発している。警戒を強めるべきだ。釣りなど娯楽中の事故も多い。ため池を管理している水利組合や行政、土地改良区は、子どもたちが危険な箇所に立ち寄らないよう注意喚起したり、安全柵を設置したりする対策も進める必要がある。農山村に人が少なくなり、管理の目は行き届かない。放置されたままのため池はないか。もう一度、下流域の住民を含めてみんなで点検し、必要な整備を急ぐ必要がある。政府や地方自治体は、一日でも早くため池の防災対策に取り組むべきだ。

*4-5:https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180901-00000022-mai-soci (毎日新聞 2018/9/1) <南海トラフ地震>機器や史料の保護対策 域内国立大25%
 南海トラフ巨大地震の発生時に震度6弱以上の揺れが想定される地域を含む24府県にある37国立大のうち、保有する研究機器や歴史的史料を保護するための防災計画を策定している大学は4分の1にとどまることが、毎日新聞のアンケートで明らかになった。大学には貴重な研究機器や史料が多く、対策が求められそうだ。アンケートは、6月の大阪北部地震で最大震度の6弱を観測した大阪府茨木市で、大阪大の研究施設に被害が出たことを受けて実施し、静岡大を除く36大学が回答した。地震や津波、火災などに備え、研究機器や二度と手に入らない古文書などの歴史的史料に対する免震装置の設置や防火対策など、物品が対象の防災計画を策定しているか尋ねたところ、策定済み9(25%)▽未策定24(67%)▽検討中2▽その他1--だった。策定済みの9大学のうち、名古屋大は東日本大震災(2011年)を受け、重要な機材や史料の損害を防ぐためにガイドラインを定めた。熊本大も熊本地震(16年)後に大規模災害対応マニュアルを改定し、大災害を機に計画を整備した大学が目立った。大阪北部地震で被害を受けた阪大は「策定の検討を始める予定」と回答した。未策定の24大学の多くは、人命の安全や2次災害防止が目的の防災計画はあるが、研究機器などは対象外。神戸大や広島大などは研究室や部局ごとに設備の転倒防止や防火対策を進めているが、「被害規模の想定が困難」(山梨大)と物品の防災の難しさを指摘する声もあった。被災時に必要な支援策では、28大学が「国による経済的支援が必要」と回答。機密文書の取り扱いに詳しい専門家の派遣や、施設を使えなくなった研究者の受け入れを他大学に求める意見もあった。一方、国立大学の研究施設や所蔵史料の防災対策に関して、国としての対応の有無を文部科学省に照会したが、確認できなかった。6月18日に起きた大阪北部地震では、阪大で1台約23億円する電子顕微鏡2台が損傷し、復旧まで1年以上かかる見通しだ。iPS細胞(人工多能性幹細胞)を使った世界初の心臓病治療の研究でも栄養管理が中断し、細胞の培養をやり直すことになった。

<防災庁と防災 ← 狭い視野では何もできないこと>
PS(2018年9月18日追加):(3)に記載したように、「①社会が災害に対応できていないから防災庁が必要」とする意見があり、*5-1のように、「②官僚は応答性と専門性があるが、専門性が身につかなければ若手は霞が関から離れる」「③少人数で政策を決めるトップダウンが進むほど、大多数の政策立案に関われない官僚たちはいらだつ」という記事もある。
 しかし、全体を見渡して重要性を判断する教育が徹底している公認会計士と全分野を担当する国会議員の両方を経験してきた私が官僚を見ると、②については、官僚機構は優秀な人を採用しているのに、入省年次と入省時の成績や学歴ですべてが決まり、リスクをとったら損をするシステムであるため、優秀な人を普通の人に育てているように見える(結果としては、さすがと思われる人も多いが・・)。また、2年毎に関連のない部署に異動させる官僚機構こそが、超ジェネラリスト(「何でも知っている」とされる何もできない人)を作り、スペシャリスト(専門家)を育てることができないシステムだ。そして、これは安倍首相や政治家が作った風土ではなく、官僚機構そのものの文化なのである。
 このような中、③については、内閣府は各省庁出身者を抱えているため、内閣府で決められる政策は単なるトップダウンではなく、各省庁の提言を踏まえている筈で、少人数で決めたものではない。また、国会議員とのすり合わせは、官僚も交えて自民党の専門部会や国会の各委員会で行われているため、残る問題は、どういう理念の下で提言を取捨選択したかであり、ここに民間議員の意見も入っている筈なのだ。そのため、官僚がいらだつのは、政策の取捨選択に関してだと思うが、私から見ると、官僚の政策は現場を見ておらず、省庁内の男社会という狭い視野であるため、疑問を感じることが多い。そして、官僚は主権者である有権者の選挙を経ていない。
 また、①については、災害対策は、気象庁・防衛省・警察庁・国土交通省・環境省・農水省・経産省・厚労省・財務省・総務省・文科省など殆どすべての省庁が関わるため、防災庁を作って防災しか考えたことのない官僚が行うよりも、内閣府を土台として内閣が政治決定した方が速やかで的確な判断ができる。そのため、省庁を細かく分けて小さな分野を専門とし、他のことはわからない狭い“専門家”を作るよりも、内閣府を司令塔にする方が合目的的なのである。
 例えば、*5-2のように、大型台風19号、20号も発生し、8月に発生した台風は8個に上り、*5-3のように、硫黄島では火山性地震が1日500回超に増加している。また、*5-4のように、地震調査委員会が全国地震動予測地図を公表しており、これに対応するには短期的避難では足りず、原因究明して都市計画や建築物の構造から考え直さなければならない。そのためには全省庁が知恵を絞る必要があり、その対応には内閣府の方が適しているわけである。

*5-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180918&ng=DGKKZO35362850U8A910C1MM8000 (日経新聞 2018年9月18日) 政と官 細る人財(2) 白書は「遺書」、頭脳流出の波
 「労使ともにリスクを避けて雇用の維持を優先している姿勢がみられる」。2017年夏に公表された経済財政白書は第1章で、雇用を守るために低賃金・長時間労働がはびこっていると問題提起した。内閣府で執筆に携わった森脇大輔氏。まだ30歳代だが「遺書のつもりで書いた」。
●1年で1685人離職
 年次と学歴ばかりを重視し、変化するリスクを拒む霞が関への批判を込めた。閉じた世界では変化は生まれない。そんな思いから白書公表の直前、サイバーエージェントに転職した。今はネット広告システムの研究開発を手掛ける一方、研究者として論文も書く。総務省の若手チームは6月、省内の働き方改革を提言した。メンバーの橋本怜子さんは自ら希望し、鎌倉市役所に出向した。霞が関は外との交流や勉強の時間が持てず、民間に比べ給料も低い。「優秀な若手が辞めていくのは当然」と思う。止まらぬ頭脳流出。霞が関の25~39歳の行政職の離職者は16年度に1685人。ここ5年、じわじわ増えている。一方、キャリア官僚の試験申込者数は17年度で2万3425人と前年度比4%減。20年間で約4割減った。財務省は10年度に官民交流拡大など50の提言をまとめたが「次官が代わるたびに改革の勢いが鈍った」(同省幹部)。官を取り巻く環境はさらに厳しさを増している。息子の大学入学に絡む汚職で幹部が逮捕された文部科学省。若手官僚は「国からではなく、現場から教育を変えようという人材が増えるだろう」と嘆く。安倍政権が教育無償化の具体化を進めるなか、教育行政の担い手が犯罪に手を染めた衝撃は計り知れない。
●官邸主導に不満
 明治大学の田中秀明教授は、官僚の役割として政治家からの要求に応える「応答性」と、制度などの深い知識を持つ「専門性」があると指摘する。「現政権は過度に応答性を重視するが、専門性が身につかなければ若手は霞が関から離れる」。かつて社会保障分野では、首相経験者の橋本龍太郎氏ら大物政治家がボスとして強い力を持っていた。10年ほど前までは尾辻秀久元参院副議長ら「4人会」が政策決定の中心。いわゆる族議員の「密室政治」だが、政治家が決めた政策の方向性を官僚が制度に落とし込むという政と官の一種の役割分担があり「役人としてやりがいを感じた」(元厚労省首脳)。いまは安倍政権下で官邸主導が進む。農林水産省の若手は「政府が掲げる『農産物輸出1兆円』の目標も、目標設定のための分析は不十分。単に切りがいい数字を挙げただけとしか思えない」という。少人数で政策を決めるトップダウンが進むほど、大多数の政策立案に関われない官僚たちはいらだちを募らせる。「70歳、80歳まで仕事する時代。戦力として働き続けたい」。安永崇伸氏(46)は昨夏、経済産業省を辞めた。将来の資源エネルギー庁長官とも嘱望されていたが、かねて考えていたように、コンサルタントとしてエネルギーを自身の生涯の仕事とする道を選んだ。官僚も人の子。機械の歯車ではない。官であれ民であれ、やりがいを見失えば、未来を信じて働くことは難しくなる。

*5-2:https://ryukyushimpo.jp/news/entry-785556.html (琉球新報 2018年8月20日) 台風19号、夜大東接近 20号も発生、今月8個目
 強い台風19号は、19日午後9時現在、東京都・小笠原諸島の父島の西南西約460キロにあり、ゆっくりした速さで西北西へ進んでいる。20日から21日にかけて沖縄地方に接近する恐れがあり、大東島地方では20日夜は非常に強い風が吹き、沿岸の海域では大しけとなる見込み。また、18日午後9時に発生した台風20号は19日午後9時現在、南鳥島近海にあり、西北西へ進んでいる。19日午後9時現在、台風19号の中心気圧は955ヘクトパスカルで、中心付近の最大風速は40メートル、最大瞬間風速は60メートル。中心から半径130キロ以内は風速25メートル以上の暴風域となっている。大東島地方は台風接近により20日午後から次第に北西の風が強く吹き、夜遅くには非常に強い風が吹く見込み。沖縄本島地方沿岸も20日からうねりを伴い波が高くなる見込み。台風の進路によっては21日から大しけとなる。8月に入って台風の発生が相次いでおり、20号で8個目となった。

*5-3:https://www.hokkaido-np.co.jp/article/226400?rct=news (北海道新聞 2018年9月8日) 硫黄島で火山性地震増加 1日で500回超、噴火の可能性
 気象庁は8日、東京の硫黄島で火山性地震が増加し、同日午前2時ごろから午後9時までに566回観測したと発表した。噴火する可能性がある。沿岸での小規模な海底噴火にも注意が必要。1日の地震回数が500回を超えたのは2012年4月27日以来。硫黄島は現在、海上、航空両自衛隊の基地があり、民間人の上陸は制限されている。

*5-4:http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201806/CK2018062602000279.html (東京新聞 2018年6月26日) 関東圏 震度6弱高確率 地震調査委予測 危険性変わらず
 政府の地震調査委員会(委員長・平田直(なおし)東京大教授)は二十六日、三十年以内に震度6弱以上の揺れに襲われる危険性を示す全国地震動予測地図二
〇一八年版を公表した。南海トラフ巨大地震が懸念される太平洋岸では静岡市が70%、長大活断層が走る四国は高知市が75%と各地で引き続き高い確率となった。沖合で新たに巨大地震が想定された北海道東部は、根室市が63%から78%となったのをはじめ大幅に上がった。地震調査委を所管する林芳正文部科学相は同日の記者会見で「地震はどこでも発生することを念頭に置いて、防災に役立ててほしい」と述べた。最大震度6弱を観測した大阪府北部地震が十八日にあった近畿地方でも、50%前後と高い数値が目立つ。活断層が多い上に、地盤が揺れやすい平野が広がるためという。神奈川県沖を走る相模トラフの巨大地震や、東京周辺を直撃する首都直下地震が懸念される関東地方も高いまま。六月に入って周辺で地震活動が活発化した千葉市が85%と都道府県庁所在地では最も高かった。揺れの計算には地盤の性質が反映されているが、プレートが複雑に重なる南関東では大地震が多数想定されており、横浜市、水戸市も80%を超えるなど強い揺れの確率も高くなっている。南海トラフ巨大地震の発生確率は毎年上昇するため、西日本の太平洋岸は名古屋市が46%、和歌山市が58%など一七年版と同じか、わずかに確率が上昇。近畿から四国、九州に延びる長大な活断層「中央構造線断層帯」などの評価を昨年見直したため、四国四県は確率が1~2ポイント高まった。北海道東部は沖合のプレート境界、千島海溝沿いで大津波を伴う巨大地震が繰り返していたとの研究結果を踏まえて、釧路市が47%から69%になるなど大幅に上昇した。評価は今年一月一日が基準。最新版は防災科学技術研究所のウェブサイトで公開され、住所から発生確率を検索できる。<全国地震動予測地図> ある場所がどのくらいの地震の揺れ(地震動)に襲われるのかを「今後30年間で震度6弱以上」といった表現で、全国規模で示した地図。プレートが沈み込む海溝で起きる地震や、内陸の活断層で起きる地震の評価結果を基に政府の地震調査委員会が作成、公表している。

<省庁再々編は改善になるか>
PS(2018年9月19、20、21日追加): *6-1のように、北海道地震から10日以上が経過し、被災地では中断していた農作業が再開し始めたが、人手不足が深刻化しているそうだ。厚真町で水稲や畑作物を33ha栽培する山崎さんは、既に大規模化している北海道の農業者であるため、この農業を体験しておくことは勉強になる。そのため、未だ田畑の区割りが小さな東北の農家で農作業が終わった人、農高や大学農学部の学生は、体験方々、ボランティアに行くとよいだろう。
 また、農業は、*6-2のように、「スマート農業」が始まり、農水省が2019年度から全国50カ所で「スマート実証農場」を整備して大規模な実証試験を始めるそうだ。次世代を担う高校生・大学生は、農業系・工業系を問わず見学に行き、「自分なら、何をどうする」ということを考えておく方がよいと思われる。
 このような中、*6-3のように、「①自民党本部で行政の効率化を議論する総会が開かれて省庁再々編の提言がまとまった」「②内閣府の担当領域の広さや子育て政策を担う部署の分散が問題視された」「③最も批判を集めて再々編の目玉になったのは厚労省で、法案作成が雑・データの扱いも粗末・法案の渋滞がひどい」「④国会の委員会は役所別に設置し、その所管法案を審議する。ある法案が審議入りしたらその採決まで別の法案は審議しない慣例がある」「⑤政治家が答弁するなら、官僚はより丁寧に準備しないといけないので、役所は大変になった」「⑥政と官は表裏一体だから、官を斬るなら政も血を流す覚悟が求められる」等が書かれている。
 このうち、②の内閣府の担当領域の広さは全分野をカバーするため当然だが、子育て政策を担う部署が厚労省と文科省に分散していたのは、確かに幼児教育と保育の改革を妨げてきた。また、③の厚労省で法案作成が雑・データの扱いも粗末・法案の渋滞がひどいと言われる理由は、忙しすぎたからではなく、「結果ありきの調査をして結論に合うデータを作ってもよい」という感覚で法案作成をしてきたからであるため、組織再編をするより、考え方を変えるべきである。
 また、⑤についても、主権者が選んだ政治家が答弁するのは民主主義の当然であるため、矛盾なく速やかに説明できる資料を普段から作っておくのは仕事の一部であり、それで役所が大変になったというのなら、農業のIT化・機械化を見習うべきである。さらに、⑥の「官を斬るなら政も血を流せ」などという発言は、議論してよりよい結果に辿り着こうとする民主主義の論理ではなく、パワハラを含む暴力発言であり、主権者への連絡係であるメディアがこの程度にしか民主主義を理解しておらず人権意識が薄いのが、最も大きな問題なのである。
 最後に、④の委員会を役所別に設置しているのは、英国のように提出法案毎に委員会を作ればよいと思うが、首相の370時間の答弁は、モリカケ問題のように全体から見れば小さな金額で本質を外した質問の繰り返しによるものが多かった。これは野党が悪いというよりは、個人の人格攻撃を行うやりとりしかスクープできないメディアの質の悪さと怠慢が原因であり、メディアはこのやり方を「国民に合わせて、視聴率を上げるため」などと弁解しているが、一般国民の方がメディアの製作者よりも質が高いというのが、これまで見てきた私の感想だ。
 ただし、*7-1のように、石破派の斎藤農相が、総裁選で安倍首相を支持しなかったことによって辞任圧力を受けたのは、経産省出身の議員だからこそ農林水産品の輸出に関して農相としてよい仕事をしていたのでもったいないことだ。なお、*7-2の「カツカレー食い逃げ事件」は、いつもの冷えたまずいカレー(私がカレールーを使って作った具沢山の鶏カレーの方が、よほどヘルシーで美味しい程度)だったので投票を辞めたか、首相サイドには秘書が偵察に来ていたか、最後に調整に動いた人がいるのか、ともかくあのカレーでは誘因にならない(笑)。

*6-1:https://www.agrinews.co.jp/p45229.html (日本農業新聞 2018年9月19日) 北海道地震 ジャガイモ、カボチャ最盛期 収穫遅れ小麦播種も迫る パート不足深刻 厚真町
 北海道地震から10日以上たち、被災地では中断していた農作業が再開し始める一方、人手不足が深刻化している。ジャガイモなどの収穫が最盛期だった北海道厚真町では、農作業のパートタイマーも被災。水稲の収穫や、小麦の播種(はしゅ)も始まるため焦燥感が募る。自ら人を集め、急ピッチで作業を進める農家も出てきた。特に人手が必要なのは、ジャガイモとカボチャだ。ジャガイモは4人ほどで収穫機に乗り、機械が掘り上げた芋をコンテナに詰める。カボチャは手作業で収穫する。元々、人手不足だったが、より人手が集まりにくい状況だ。JAとまこまい広域によると、地震発生前日の5日時点での集荷量は、ジャガイモが予定量1700トンのうち3割、カボチャは1200トンの2割にとどまる。厚真町で水稲や畑作物を33ヘクタール栽培する山崎基憲さん(44)は、自宅や倉庫の片付けが一段落し、17日からジャガイモの収穫を再開した。3・5ヘクタールのうち残りは7割で、例年より1週間以上遅れているという。「今後、水稲や小麦もある。早くしないと雪が降る前に作業を終えられない」と気をもむ。山崎さんはボランティアチーム「石狩思いやりの心届け隊」にジャガイモの収穫を依頼。17~24日のうち6日間、2、3人が来る予定だ。同チーム代表の熊谷雅之さん(50)は「農作業支援は初めて。少しでも早く収穫が進むよう、これからも協力したい」と話す。

*6-2:https://www.agrinews.co.jp/p45230.html (日本農業新聞 2018年9月19日) 「スマート農業」始動 見て 触って 使って…便利さ実感 実証農場50カ所 農水省19年度
 農水省は2019年度から、ロボット技術や情報通信技術(ICT)を活用したスマート農業の普及に向けて、全国50カ所に「スマート実証農場」を整備して大規模な実証試験を始める。水稲や野菜、果樹、畜産など各品目で、1作通して複数のスマート農業技術を組み合わせ、省力効果や経営効果を確認。最適な技術体系を確立する。全国8カ所で説明会を開き、協力する生産者やメーカーを募る。
●協力農家を募集 8会場で説明会
 19年度予算概算要求に「スマート農業加速化実証プロジェクト」事業として50億円を盛り込んだ。事業は19年4月~21年3月の2年間。「スマート実証農場」は、生産者や農機メーカー、研究機関、JA、自治体などでつくるコンソーシアムが運営する。各品目で、さまざまなスマート農業技術を導入したときの生産データや経営データを蓄積・分析する。同省は稲作で使える技術として、ロボットトラクター、自動運転田植え機、自動水管理システム、ドローン(小型無人飛行機)を使った種子・薬剤散布などを挙げる。その他にも、施設園芸では統合環境制御システム、接ぎ木ロボット、収穫ロボットなど、果樹では人工知能(AI)によるかん水制御、自動草刈り機、作業者が身に着けるアシストスーツなどの導入を提案する。事業では、これらの技術の導入や改良に要する費用、人件費などを補助する。事業を管轄する同省農林水産技術会議事務局は「スマート農業普及のためには、技術体系の確立だけでなく、農家に実際に見て使ってもらうことが重要」(研究推進課)と説明。実証農場には、農家の視察や農機の試乗などを積極的に受け入れるよう求める。事業説明会は18日の広島、島根を皮切りに、北海道、岩手、東京、愛知、香川、熊本で開く。参加希望者が定員を上回った会場もあり、追加で開くことも検討している。

*6-3:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180919&ng=DGKKZO35367050U8A910C1MM8000 (日経新聞 2018年9月19日) 政と官 細る人財(3) 滞る国会改革、すり減る現場
 9月5日、自民党本部で開いた会合で省庁再々編の提言がまとまった。行政の効率化を議論する行政改革推進本部の総会だ。内閣府の担当領域の広さや、子育て政策を担う部署が分散していることなどが問題視された。
●苦肉の分割構想
 1府12省庁で最も批判を集め、再々編の目玉になったのは厚生労働省だ。甘利明本部長は「現状で問題ないと言った歴代厚労相はいない」と分割を提言した。記者団にも「国会の答弁回数が2000回を超え、法案作成が雑だ。データの扱いも粗末だ」と説明した。構想が動き始めたのは2017年夏だ。自民党の国会対策委員会が「厚労委員会の法案の渋滞がひどい。対応してほしい」と首相官邸に求めた。直前の17年通常国会では厚労省の労働基準法改正案が成立しなかった。既に17年秋の臨時国会では、同省の働き方改革法案を提出する予定が入っていた。臨時国会で2法案を成立させたいが「重要法案は1国会1本」が相場とされる。もっと迅速に法案を処理できないか――という訴えだ。国会の委員会は役所別に設置し、その所管法案を審議する。ある法案が審議入りしたらその採決まで別の法案は審議しない慣例がある。この2つのルールに従うと医療や年金、雇用などの重要政策が集中する厚労委では法案が渋滞する。官邸は水面下で検討チームをつくった。「厚労相の他に特命担当相を設ける」「副大臣に答弁させる」などの案があがった。党では厚労委を2つに分ける話もでた。だが国会の機能に直接踏み込む案は野党が反発し、実行は難しい。1年かけて出てきたのが厚労省分割案だ。厚労省を割れば政策の遂行能力が高まるほか、役所に応じて設置される厚労委も割れて法案審議の場が増える。官にメスを入れて政を変えるやり方だ。
●首相出席370時間
 学習院大教授の野中尚人氏は「国会の仕組みは55年体制から変わらない。世の変化についていけていない」と語る。日本と同様に議院内閣制をとる英国は提出法案ごとに委員会をつくるため、法案は渋滞しない。首相や閣僚も委員会での法案審議にほとんど出席することはない。16年、安倍晋三首相は国会に約370時間出席したがキャメロン首相の議会出席は約50時間。審議は進み、内閣は外交に時間を割ける。自民党もこうした国会改革に動く。日本は01年の省庁再編と同時に副大臣・政務官制度を導入した。英国がモデルだが役割は中途半端だ。経済産業官僚出身の斎藤健農相は「役所の局長の答弁がなくなり、ほとんど政治家が答弁している」と話す。「政治家が答弁するなら、官僚はより丁寧に準備しないといけない。役所は大変になった」と強調する。政治家の答弁を増やした結果、裏で支える官僚の負荷は予想以上に高まり現場がすり減る。官僚の仕事の精度が落ちた理由は政治の側にもある。5日の自民党行革本部では「行革をやるには、すさまじいことになる覚悟が必要だ」との声が出席議員から上がった。行革は政が官に斬り込むもの、とみられがちだ。だが政と官は表裏一体だ。官を斬るなら政も血を流す覚悟が求められる。

*7-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180920&ng=DGKKZO35518800Z10C18A9PP8000 (日経新聞 2018.9.20) 農相への辞任圧力発言で応酬 、首相陣営「どーんと構えて」 石破氏「ウソ言う人でない」
 自民党石破派の斎藤健農相が党総裁選で安倍晋三首相(総裁)を支持する国会議員から辞任圧力を受けたと発言した問題で、首相と石破茂元幹事長の両陣営が応酬を繰り広げている。首相陣営の選挙対策本部の甘利明事務総長は19日「斎藤さんはどーんと構えて、それがどうしたというぐらいでやったほうが政治家としての格が上がる」と述べた。石破氏は「斎藤氏はウソを言う人ではない。昔はそういうことはよくあった、何が悪いんだという言い方は絶対間違っている」と強調した。斎藤氏は14日の千葉市での会合で、首相を支持する議員から「石破氏を応援するなら農相の辞表を書いてからやれと圧力を受けた」と発言した。首相は17日のテレビ番組で「陣営に聞いたらみんな『そんなことがあるはずがない』と怒っていた。そういう人がいるなら名前を言ってもらいたい」と反論した。

*7-2:https://digital.asahi.com/articles/ASL9N7WH2L9NUTFK03Q.html?iref=comtop_8_02(朝日新聞2018年9月21日)投票前のカツカレー「4人が食い逃げ」 安倍陣営嘆く
 カツカレーを食い逃げしたのはだれだ?――。自民党総裁選で安倍晋三首相(党総裁)の陣営が投開票直前に振る舞ったカツカレーを食べながら、実際に首相には投票しなかった議員がいるのではないか。首相陣営がこんな話題で持ちきりになっている。首相陣営は20日昼、東京都内のホテルで「必勝出陣の会」を開催。首相も出席して結束を確認した。首相を支持する衆参議員用に験担ぎのカツカレーが333食分振る舞われ、完食された。業界団体関係者ら議員以外の出席者用には別途、カレーが準備されていたという。ところが、実際に首相が得た議員票は329票。少なくとも4人がカレーを食べながら首相には投票しなかった計算になる。陣営幹部は嘆く。「カレーを食べて首相に投票しなかった議員がいる。一体だれなんだ」

<激甚災害の指定と復興>
PS(2018年9月20日追加): *8-1のように、北海道地震の道路・橋などの土木インフラの被害額は少なくとも1000億円に上るそうだが、この規模なら、*8-2の激甚災害の指定を受けることがができる。激甚災害の指定を受けると、被災した自治体が行う復旧事業に対する国からの補助率が、①道路や堤防などインフラの復旧事業は8割から9割程度 ②農業施設の復旧事業は9割程度 と上がり、中小企業も経営再建の融資を受けやすくなる。
 しかし、この制度の欠点は、復旧に重点を置くため、津波が来たり、天井川の傍だったりする危険な地域にも住宅地を再建して、「賽の河原の石積み」という大きな無駄遣いの繰り返しを促してしまうことだ。そのため、次の災害を予防する観点から、復旧ではなく、適切な都市計画に基づいた復興に誘導するよう、激甚災害の指定を改正するのがよいと考える。

*8-1:http://qbiz.jp/article/141077/1/ (西日本新聞 2018年9月20日) 北海道地震、土木の被害1000億円 道路や橋など、損壊多発
 北海道の地震で、道路や橋など土木インフラの被害額が少なくとも1千億円に上ることが20日、道への取材で分かった。被害が大きかった地域では調査が終わっておらず、さらに額は膨らむ見通しだ。土砂崩れで36人が死亡した厚真町などで道路の損壊が多発し、札幌市でも道路が陥没した。河川への土砂流入などの被害もあった。これとは別に、道は農林水産業の被害額が推計約397億円に上ったとしている。土砂崩れによる林や農地の被害が大きかった。観光分野では宿泊予約のキャンセルが延べ94万2千人に上り、全体の損失額を推計約292億円としていた。加えて、地震後の停電や節電による製造業への影響も見込まれる。高橋はるみ知事は20日の道議会本会議で、土木や農林など直接的な被害額だけで約1500億円に上ったと答弁。復旧に向けて「産業への影響の実態を、幅広く把握することが重要だ」と述べた。

*8-2:http://www.bousai.go.jp/kohou/oshirase/h12/120324/120324.html (内閣府) 「激甚災害指定基準」、「局地激甚災害指定基準」及び「激甚災害に対処するための特別の財政援助等に関する法律施行令」の一部改正について
1 改正の経緯
 激甚災害制度は、国民経済に著しい影響を与えるような激甚な災害が発生した場合に、公共土木施設や農地等の災害復旧に必要な費用の負担に関して国庫補助の嵩上げを行い、地方公共団体の財政負担を軽減することなどを目的として昭和37年に創設されました。公共土木施設災害復旧事業等に係る激甚災害の指定(全国的規模の本激の指定)については、制度発足当初は毎年1~2件指定されていましたが、市町村単位で行われるいわゆる「局激」を除けば、昭和59年以降の指定は阪神・淡路大震災の1件のみとなっています。このため、近年の地方公共団体における財政の逼迫状況等を踏まえ、被災した団体の財政負担の緩和を図るとともに、被災地域の円滑かつ早期の復旧を図ることを目的として、公共土木施設等に激甚な被害が発生した災害については、これを適切に激甚災害に指定できるよう、「激甚災害指定基準」(昭和37年中央防災会議決定)の一部、「局地激甚災害指定基準」(昭和43年中央防災会議決定)の一部及び「激甚災害に対処するための特別の財政援助等に関する法律施行令」(昭和37年政令第403号。以下「施行令」といいます。)の一部を改正しました。
2 激甚災害指定基準(公共土木施設関係)
 激甚災害の指定には、
  ① 全国的に大きな被害をもたらした災害を指定する場合(いわゆる本激)と
  ② 局地的な災害によって大きな復旧費用が必要になった市町村を指定する場合
    (いわゆる局激)の二つがあり、さらに①の本激には、
    A. 全国的に大規模な災害が生じた場合の基準(本激A基準)と
    B. Aの災害ほど大規模でなくとも、特定の都道府県の区域に大きな被害が
      もたらされた場合の基準(本激B基準)があります。
3 改正の概要
1)本激A基準
 本激Aの指定基準は、全国の査定見込額が全国の地方公共団体の標準税収入の一定割合を超えることを要件としていますが、この割合を大幅に引き下げることにしました。平成11年度の標準税収入(約30兆円)をもとに計算すれば、従来は約1兆2,000億円でしたが、改正後は約1,500億円を超える被害があれば本激の指定が可能になります。
     4%      →   0.5%
  約1兆2,000億円      約1,500億円
2)本激B基準
 本激B基準は、次の2つの要件を満たす必要があります。第1の要件は、全国の査定見込額が全国の地方公共団体の標準税収入の一定割合を超えることですが、この割合についても大幅に引き下げることとしました。平成11年度の標準税収入(約30兆円)をもとに計算すれば、従来は約3,600億円でしたが、改正後は約600億円を超える被害があれば、これを満たすことになります。
    1.2%      →   0.2%
  約3,600億円         約600億円
第2の要件は、次のいずれかを満たすことですが、これも大幅に引き下げることとしました。
  <中略>
4 改正日及び適用期日
・激甚災害指定基準及び局地激甚災害指定基準の改正
  平成12年3月24日 中央防災会議決定。
・激甚災害に対処するための特別の財政援助等に関する法律施行令の一部を改正する政令
  平成12年3月24日 閣議決定。
  平成12年3月29日 公布、施行。
当該改正基準等は、平成12年1月1日以後に発生した災害から適用されます。

<教育を疎かにすると、こうなるということ>
PS(2018/9/22追加): *9-1のように、ヨーロッパでは、鉄道車両も環境シフトして独シーメンスや仏アルストムが蓄電池駆動や水素燃料の新型車両を投入している。にもかかわらず、(私が提案して)最初にEVや太陽光発電を開発した筈の日本では、*9-2のように、未だに①節電要請 ②太陽光発電は不安定だから火力発電の更新が不可欠 ③電力自由化と安定供給の両立を立ち止まって点検すべき ④電力の安定供給には電源の最適な組み合わせと適切な設備更新が欠かせない などと言っている。
 このうち①については、LEDや断熱材の使用等でヒトに不便な思いをさせずに節電するのが文明だ。また、②については、火力や原子力で熱を発生させなければエネルギーの安定供給ができないと考えている阿保さが情けない。さらに、③については、電力会社が地域独占していたから競争がなくいつまでも進歩しなかったので、市場経済の中で電力を自由化し、複数の電力会社が切磋琢磨して良いサービスを工夫することこそが、安い電力を安全に安定供給するためのKeyである。さらに、④については、「電源の最適な組み合わせ」とは、合理性のない発電方法も含めて少しずつ何でもやるように人為的に決めるものだと思っているところに呆れる。
 そのため、日経新聞の記者は、経済学や独禁法も知らず、原発や火力発電が環境に与える影響も考慮できないのかと、記者になる人の知性の劣化に驚かされる。従って、高校卒業までは、文系もしっかり理系の勉強をする教育システムにしておかなければならず、スポーツばかりやって単純なルールを(不合理でも)守ることしかできない人間を作ってはならない。身体だけ強くても頭で考えられなければ、最初に機械やAIにとって代わられる人材になるからだ。


 独、seamens               トヨタ         中国     
 燃料電池電車    燃料電池船    燃料電池トラック     蓄電池特急

*9-1:https://www.nikkei.com/article/DGKKZO35640080R20C18A9EA6000/ (日経新聞2018/9/22)鉄道車両も環境シフト 独シーメンスや仏アルストム 蓄電池駆動や水素燃料
 自動車に続き鉄道車両でも環境負荷を減らす動きが広がってきた。独シーメンスは2019年に蓄電池で駆動する新型車両を投入する。仏アルストムは燃料電池で動く鉄道車両が営業運転を始めた。もともと環境に優しいとされる鉄道車両だが、欧州ではディーゼルエンジンで動く車両も多く、新技術を生かした環境対応が進む。ドイツ・ベルリンで21日まで開催した世界最大の鉄道ショー「イノトランス」。2年に1度のショーは、今後の鉄道業界の動向を占ううえで、関係者が最も関心を寄せる展示会だ。18年の今回、名だたる大手メーカーに共通したのはデジタル化と環境配慮の2本柱だ。独シーメンスはオーストリア連邦鉄道と共同で、蓄電池で駆動する試作車両「デジロML シティジェットエコ」を展示した。架線を通じ電気を受け取れる区間で列車の蓄電池を充電し、架線がない非電化区間では蓄電池から電気を取り出し走行する。ディーゼル駆動の旅客車両に比べて二酸化炭素(CO2)の排出量を最大50%削減できる。ディーゼルエンジン特有の騒音もない。19年後半に営業運転を始める計画だという。18年内に独シーメンスと鉄道部門で事業統合する予定の仏アルストムも環境対応車を投入。燃料電池で走る世界初の「水素電車」が営業運転を始めたと発表した。車両の上に燃料電池と水素タンクを備える。燃料電池で水素と空気中の酸素を反応させて発電し、モーターを回して走る。世界最大手の中国中車は素材に炭素繊維強化プラスチック(CFRP)を使った地下鉄向けのコンセプト車両を出展した。車体が軽くなり、エネルギー効率は13%向上するという。日本勢では東芝インフラシステムズが、鉄道車両向けのリチウムイオン電池として世界で初めて欧州規格を取得した製品を披露した。イノトランスの開幕イベントでは仏アルストムのアンリ・プパール=ラファルジュ最高経営責任者(CEO)が「もはや最高速度などは誰も口にしない。どれほどクリーンな電車を出せるかが重要だ」と強調した。広大な欧州大陸では郊外などで非電化路線が多いが、非電化路線はディーゼル機関車などが欠かせなかった。欧州鉄道産業連盟(UNIFE)は18日、世界の鉄道ビジネスが21~23年平均で1920億ユーロ(約25兆円)と、15~17年平均に比べ18%程度拡大すると発表した。「持続可能性のある移動手段としての利点が鉄道市場の成長に寄与する」と指摘した。自動車など他の交通システムと同様に、鉄道車両も環境性能が競争軸の一つになってきた。

*9-2:https://www.nikkei.com/article/DGKKZO35667860R20C18A9EA1000/ (日経新聞社説 2018/9/22) 北海道停電が示す安定供給の課題
 北海道電力は地震の影響で止まっていた苫東厚真火力発電所(厚真町)の1号機を再稼働させた。これに伴い、家庭や企業に求めていた1割の節電要請を解除した。電力需要が増える冬を控え、北海道の人々もまずは、ほっとしただろう。とはいえ、電源をかき集めた綱渡りの状態は変わらない。気を緩めるわけにはいかない。重要なのはなぜ、北海道全域が停電する「ブラックアウト」が起きたのか。その検証を急ぐことだ。そこから日本全体の安定供給への課題が見えてくるはずだ。
●自由化との両立点検を
 地震発生時、310万キロワットの需要のほぼ半分を、苫東厚真発電所が供給していた。一つの発電所に極端に集中した理由を考えるには、北海道電が置かれた経営の状況に目を向ける必要がある。北海道電の火力発電所は老朽化が進む。苫東厚真の4号機が2002年に稼働して以降、新設はない。最大の出力を持つ泊原子力発電所(泊村)は再稼働の前提となる安全審査の途中だ。泊原発の長期停止に伴い、北海道電は2度、値上げした。北海道電の電気料金は、沖縄電力を除く大手電力9社の中で最も高い。16年の電力小売りの全面自由化によって消費者は電力会社を選べるようになった。新規参入する事業者から見れば、電気料金の高い北海道は攻めどころだ。北海道では1割の家庭が北海道電から新電力に契約を変えた。この割合は東京電力や関西電力に次いで高い。中規模工場や商業施設向けの「高圧」と呼ぶ契約では約3割の顧客を失った。古くて小さな発電所は発電効率が悪い。北海道電は規模が大きく、コストが安い苫東厚真を最大限、活用せざるを得なかったのではないか。そんな無理が大停電であらわになったとすれば、電力自由化と安定供給の両立を立ち止まって点検すべきだろう。電力の安定供給には電源の最適な組み合わせと適切な設備更新が欠かせない。北海道で起きたことが、他の地域で起こらないとは言い切れない。電力システム改革の仕上げとして、20年には電力会社の発電部門と送電部門の経営を分ける発送電分離が実施される。分離後の供給責任を負うのは送配電会社だ。発電会社は新規参入する事業者を含め、自らの利益最大化のために動く。そうなると、投資が進まなかったり、特定の地域や発電方式に偏ったりする可能性がある。誰が日本全体の最適な供給のバランスを考え、長期的な視野で整備を促すのか。今回の大停電を受けて、その仕組みを再点検することが重要だ。電力改革の一環で、全国の送電網を一元管理するために設立された電力広域的運営推進機関の役割と責任は一段と大きくなるだろう。太陽光や風力など再生可能エネルギーの増加も、安定供給に課題を突きつけている。適地に恵まれる北海道の再エネ発電能力は約360万キロワット。そのうち170万キロワットを占める太陽光や風力は、停電からの復旧にあたり、送電網につながっていても全量を供給力として計算できなかった。時間や天候で発電量が変動する太陽光や風力は、過不足を補う別の電源が必要になるからだ。
●火力発電の更新不可欠
 平時でも同じ問題が立ちふさがる。夕刻になり日が陰ると太陽光発電の量は急に減る一方、夕食の準備や家路につく人々の電力消費が増える。需給バランスが崩れれば停電の引き金になりかねない。急減する太陽光を短時間で補う火力発電所や蓄電池が必要になる。温暖化ガスを出さない再エネは最大限伸ばしたい。そのためにも火力発電所の適切な更新が必要だが、太陽光の補完役だけでは稼働率が低く投資を回収できない。火力の更新投資を長期で促す制度を整えなければならない。太陽光や風力の適地は基幹送電線から離れた場所にあることも多い。基幹網につなげる送電線をつくるには多額の投資が必要だが、出力が変わる太陽光や風力は利用率が低い。結果的に消費者に過度の負担を強いる送電線の増強には慎重であるべきだ。北海道地震では本州からの電力融通も限られた。全国を10地域に分ける日本の電力供給体制の限界といえる。地域を越えて電力を効率的にやりとりする体制に変えていく必要がある。長期的には大型発電所の電気を送電線で運ぶ現行の仕組みから、地域ごとに電気をつくり、その場で使う分散電源へ電力インフラを再構築する発想も大切だろう。

| 経済・雇用::2018.1~ | 12:35 PM | comments (x) | trackback (x) |
2018.8.21 過疎地を含む地方を走るJRとその収益構造について (2018年8月22、24、25、26日に追加あり)
 
 北海道のジャガイモ畑   同、羊の放牧    同、乳牛の放牧  同、豚と山羊の放牧


  昭和新山   知床の紅葉     冬の摩周湖    釧路湿原   函館の朝市

(図の説明:北海道は、豊かな自然と食に恵まれ、再エネや観光資源にも事欠かない筈である)

(1)JR北海道の現状と解決策
1)JR北海道の改善策について
 石井国交大臣は、2018年7月27日、*1-1、*1-2のように、2019~20年度に400億円台の財政支援を実施することを決め、監督命令を出して経営改善策の着実な実行を指示し、北海道新幹線の札幌延伸後の2031年度中の経営自立を目指して、①外国人客を誘致するための観光列車の充実 ②不動産業など鉄道以外の部門の強化による収益増加と不採算路線のバス転換などのコスト削減を徹底するよう求めたそうだ。

 記事による改善策を見る限り、JR北海道の改善策はJR九州が行って成果を上げてきた内容と似ている。ただし、JR北海道は民営化していないため、経営に国交省が口を出し、営業センスのない選択をする場合があるのが、他のJRと異なる。国交省が営業センスのない事例は、国際線の成田と国内線の羽田を離れた場所に造って乗り換えを不便にしたり、羽田に行くのに浜松町からモノレールに乗らなければならないような不便な連結にしたりして、空港の利便性を損なう設計をしていることである。

 そのため、私は、北海道の自然や食を背景に持つJR北海道は、本当は素晴らしい潜在力を持っており、早々に民営化して、次第に持ち株会社が鉄道子会社・旅行子会社・運輸子会社・不動産子会社・送電子会社などを所有する形にした方がよいと考える。また、空港には、新幹線と在来線の両方か、少なくとも在来線が乗り入れるべきだ。

2)再エネと送電網
 大手電力は、*1-3のように、不当な顧客の囲い込みをしているだけでなく、*1-4のように、送電線の容量不足を理由に、再エネで発電された電力の買取制限を行って、再エネの普及を遅らせている。

 そのため、*1-4の送電網整備には、鉄道会社の敷地に鉄道会社が送電線を敷設して送電料をもらう仕組みを取り入れるのがよいと考える。何故なら、既にあるインフラを利用して最も安価に送電線を敷設でき、農地で発電された電力を消費地に送って送電料をもらい、廃線にする鉄道を最小にすることができるからだ。また、環境や景観に注意しながらも、農地で発電できれば農業補助金を減らすことが可能だ。

(2)JR九州について
 JR九州の場合は、*2-1、*2-2のように、東証1部に上場でき、「不動産事業」が快走を演出したそうだ。JR九州は、首都圏からはJR北海道と同じくらいの距離だが、鉄道事業を行っているメリットを活かし、運輸サービス・駅ビル・不動産などの事業を行って、現在のニーズに応えているのが成功の秘訣だ。

 そのため、今後、送電事業も行うとすれば、「JR九州」という社名も変更した方が利害関係者にわかりやすいと思われる。

(3)地方の新幹線について
 新幹線については、JR北海道はフル規格でスムーズに進んでいるため、*3のJR九州のようなフル規格化に関する議論はなく、簡単に見える。

 しかし、並行在来線を廃止すると確かに生活の足が損なわれるため、在来線がある場所に、そのまま在来線を走らせるか、私鉄もしくはバスを走らせるなどの代替案が必要になる。

<JR北海道について>
*1-1:http://qbiz.jp/article/138246/1/ (西日本新聞 2018年7月27日) JR北海道に経営改善指示 国交相が監督命令
 石井啓一国土交通相は27日、JR北海道にJR会社法に基づく監督命令を出し、経営改善策の着実な実行を指示した。北海道新幹線の札幌延伸後の2031年度中の経営自立を目指し、収益増加とコスト削減を徹底するよう求めた。JR北海道の島田修社長は、国交省で藤井直樹鉄道局長から命令書を受け取り「重く受け止め、不退転の決意で経営改善に取り組む」と述べた。監督命令では、19年度から30年度までの長期計画を定め、外国人客を誘致するための観光列車の充実や、不動産業など鉄道以外の部門の強化を求めた。国交省が計画の進み具合や効果を3カ月ごとに検証し、結果を公表する。同社への監督命令は、レール検査数値の改ざん問題などを受けて出した14年1月に続き2回目。経営改善の取り組みを怠った場合、取締役らに100万円以下の過料が科される。

*1-2:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO34295450X10C18A8ML0000/ (日経新聞 2018/8/20) JR北に国が問う覚悟、長期援助拒み2年で成果迫る
 経営再建中のJR北海道に対し国土交通省は7月、2019~20年度に400億円台の財政支援を実施すると表明した。期限を設けてさらに身を切る改革を求め、同社への監視を強める新たな体制を敷く。過去に何度も国から支援を受け、待ったなしの状況にあるJR北は、この2年間で収益改善への覚悟が問われる。改革の行方は地域の足に影を落とす。「経営自立への取り組みを着実に進めることを求められたのを重く受け止める。不退転の覚悟で取り組む」。JR北の島田修社長は7月27日、国土交通省での記者会見で語った。これに先立ち、同省は同社にとって2度目となる行政処分「監督命令」を発令。事実上、経営を監視下に置いた。国が異例の2度目の監督命令を出したのは、度重なる支援に関わらず、一向に経営が改善しない体質にしびれを切らしたからだ。例えば直近では16年度から設備投資や修繕のために計1200億円を拠出。にもかかわらず同社の18年3月期の連結営業損益は過去最大の416億円の営業赤字と業績は悪化している。JR北は北海道新幹線の札幌延伸を予定する30年度まで12年間の財政支援を求めていた。新幹線が札幌までつながれば利用が拡大し収益に貢献するとの想定に基づく。国はこれを拒み、支援をまず20年度までとした。JR北が求める21年度以降の支援には関連法の改正も必要で、「国民の理解を得られるか」(同省幹部)が壁となる。そこで国は2年間と期限を区切り、JR北に「目に見える成果」(石井啓一国交相)を上げるよう求めた。たとえ再び税金を投入するとしても、広く納得を得られる実績が不可欠だからだ。島田社長は「改善のプロセスを確認してもらえるものを出すことが大切だ」とし、財政支援を踏まえた収支見通しや経営自立への行程表を早期に示す考え。国交省はこれらが「絵に描いた餅になってはいけない」とし、経営改善への具体策も求めている。国交省の求める「目に見える成果」とは何か。収益改善にはコスト削減と増収策が条件となる。コスト削減の最たるものが不採算路線の廃線だ。JR北は列車を走らせるだけで年間約160億円もの赤字を生む13区間を抱えている。国交省は特に利用が少ない5区間のバスへの転換を求める。その道筋を付けるため、沿線自治体などと協議を急ぐ必要がある。増収策では遊休地を生かした不動産事業などで稼ぐ力を付けつつ、急増する訪日客をどう鉄道利用に結び付けるかという視点が重要になる。約20年ぶりとなる運賃引き上げも視野に入れる。地域を巻き込んだ利用促進策も欠かせない。道東の釧網線(東釧路―網走)では、高速バス大手のウィラー(大阪市)が9月から同区間の鉄道と沿線駅を発着するバスが乗り放題になる乗車券を販売する。根室線(釧路―根室)では根室市がふるさと納税サイト運営会社と鉄路存続へ寄付金を募り始めた。だが、こうした試みは限定的だ。地元治体の主体性も欠かせない。国交省は地域との連携策として、区間ごとの利用目標の設定を例に挙げる。地域で一定の時期を定め、輸送人員や駅の利用者を何人増やすかなどの数値目標を掲げ、検証も交えながら集客を進めるというもの。豪雨災害からの全線復旧を目指す福島県の只見線は同様の取り組みを始めた。これら「宿題」と引き換えに得た国の支援を、JR北は設備増強などに生かす。不採算路線のうち維持を検討する8区間では、地元自治体が国と同水準の費用を負う条件で施設や車両を改修。道内外との物流を支えるJR貨物が走行する区間の設備修繕も進める。支援が一時の赤字穴埋めに終わらぬよう、国交省は四半期ごとに進捗を検証するなど目を光らせる。「2年間で目に見える成果を出す」。島田社長は国交省の監督命令発令後の記者会見でこう繰り返した。JR北は有言実行を迫られている。
■廃線対象の沿線自治体、対応に濃淡
 JR北海道が利用者の少なさから「単独では維持困難」とする留萌線の深川―留萌間にある石狩沼田駅。昼間に降りるのは地元の高校生と高齢住民の数人だけで、夕方には人気もなくなる。沼田町の玄関口としては寂しい光景だ。無人の駅舎内では「駅の利用実績を確保することが必要」と張り紙が訴えていた。同区間を含む5区間が廃線によるバス転換を迫られているが、沿線自治体との協議には濃淡がある。石勝線夕張支線(新夕張―夕張)は夕張市が2019年4月の廃線に合意。札沼線(北海道医療大学―新十津川)も沿線自治体が廃線容認へ調整を進める。日高線(鵡川―様似)は自治体側が道路も線路も走れる「デュアル・モード・ビークル(DMV)」など新交通の導入を断念し、バス転換も選択肢とした。一方で留萌線(深川―留萌)は路線維持を求める沿線4市町が「JR側からの説明を待つ」として受け身の姿勢。根室線(富良野―新得)は、16年夏の台風被害で東鹿越―新得間が不通となっていることもあり、早期復旧と路線維持をめざす住民運動が展開されている。いずれもJR北と直接協議に進んでいない。ただ、JR北への財政支援に際し、国土交通省は不採算路線のバス転換を推し進めるよう促した。留萌市の中西俊司市長も「現時点での国の姿勢と重く受け止める」と話す。赤字路線への国の直接的な支援が望み薄となった今、道内自治体も地域交通をどう守っていくかが問われている。

*1-3:http://qbiz.jp/article/139362/1/ (西日本新聞 2018年8月17日) 電力の不当な顧客囲い込み規制へ 大手と新電力の競争促進、経産省
 経済産業省が大手電力による不当な顧客囲い込みの規制に乗り出すことが17日、分かった。新電力に契約を切り替えようとする情報を利用し、安い料金プランを提示して引き留める「取り戻し営業」が対象。情報の「目的外利用」として電気事業法上の問題行為に位置付ける。大手と新電力の健全な競争促進に向け、年内にも指針案の取りまとめを目指す。電力小売りの自由化により、大手と新電力の競争は激化している。企業は家庭と比べて大量の電力を使うため、電力会社にとって収益への寄与が大きい。世耕弘成経産相は「できるだけ早く公正な競争条件を整えたい」と話している。取り戻し営業が問題視されていることについて大手電力は「新電力側のうがった見方だ。切り替えの情報を転用しないように、社内で契約管理と営業の部門で情報共有できない仕組みになっている」と反発している。新電力は顧客から契約先の切り替えの申し込みがあると、電力広域的運営推進機関(広域機関、東京)のシステムを使い、顧客に代わって大手電力に対し契約解除を取り次ぐのが一般的だ。大手電力は広域機関から連絡を受け、契約解除の手続きを行う。ただ機器工事のため新電力が供給を始めるまで最大2カ月程度の時間がかかる。その間に大手が大幅な割安料金を提示すれば、顧客に切り替えを思いとどまらせ、契約をつなぎとめることも可能だ。経産省が7月に開いた有識者会議では、大手電力による取り戻し営業の問題が取り上げられた。有識者の委員は割安な料金の提示は「不当廉売」に当たる可能性があると指摘し、「独禁法と(電力を適正に取引するよう求めている)電気事業法の二重の面で問題になる」と批判した。

*1-4:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180508&ng=DGKKZO30155150X00C18A5PP8000 (日経新聞 2018年5月8日) 送電網整備へ「財政支援を」 自民委が再生エネ提言案
 自民党の再生可能エネルギー普及拡大委員会(委員長・片山さつき参院議員)は、太陽光や風力など再生エネの普及に向け送電網の整備に財政支援を求める提言案をまとめた。送電網不足が導入を阻んでいるとして、財政投融資などの活用で整備を促すよう求める。8日に開く同委員会の会合で示し、政府と党執行部に申し入れる。電力大手が持つ送電網の空き容量が減り、再生エネの発電事業者が電気を送れない事態が起きている。

<JR九州の場合>
*2-1:https://www.nikkei.com/article/DGXLASDZ25H80_V21C16A0000000/ (日経新聞 2016/10/25 ) JR九州上場、快走演出した「不動産事業」
 九州旅客鉄道(JR九州)が25日、東京証券取引所第1部に上場した。朝方から買い注文が膨らみ、取引開始から30分ほどたって付けた初値は3100円と、売り出し価格(公開価格、2600円)を19%上回る水準。ひとまずは順調な「走り出し」といえそうだが、人気の背景を探ると、少し気掛かりな点も浮かび上がる。
■営業利益でみると「不動産会社」
 「現在は運輸サービス事業と駅ビル・不動産事業の利益がそれぞれ全体の4割。しばらくの間はこの構成で成長を目指す」。青柳俊彦社長は午前中、経済専門チャンネルの番組に出演し、成長のけん引役として不動産事業への期待感を隠さなかった。JR九州は社名の通り、鉄道事業が主力ではあるが、実は不動産事業が孝行息子。九州新幹線をはじめとする鉄道事業は2017年3月期にひとまず黒字化する計画だが、営業利益でみると連結全体の4割にすぎない。残る6割のうち、4割分を稼ぐのが駅ビル不動産事業。営業利益でみれば、鉄道事業と同じ規模なのだ。JR九州はJR博多駅の駅ビル「JR博多シティ」(福岡市)や4月に開業したオフィスビル「JRJP博多ビル」(同)など駅前の不動産を活用した商業施設や賃貸用不動産を運営しており、今後も駅ビルや駅ナカを開発していく方針を示す。保有不動産の収益力を高めるというストーリーは、東日本旅客鉄道(JR東日本)や東海旅客鉄道(JR東海)が歩んできた成長路線と重なる。初値時点でのJR九州の時価総額は4960億円と1兆~3兆円に達する、他のJR3社と比べると小粒だが、割安なJR九州に投資する理由は十分にある。
■不動産マネーの「逃げ場」にも
 完全民営化で経営の自由度が高まれば、成長のけん引役である駅ビル運営で大規模投資や他社との連携などに踏み切りやすくなる。楽天証券の窪田真之氏も、「高収益の駅ビル不動産事業は、これからさらに利益を拡大する余地がある」と指摘する。JR九州株の初値は、不動産事業への「期待料込み」ともいえる。実際、日本株の運用担当者の間では、「国内外の機関投資家がJR九州の不動産事業に注目して投資しようという動きも出ていた」という。そして、もう一つのJR九州にとっての追い風も吹いたのかもしれない。日本国内の不動産に向かっていた投資マネーの変調だ。ここ数年来の不動産価格の高騰で、投資額に見合う利回りを得にくくなっており、今年1~9月の累計で海外勢や国内の事業法人は不動産をこぞって売り越した。行き場を失った不動産への投資資金が向かいやすいのは、流動性が高く、一時期に比べて過熱感が薄れた不動産投資信託(REIT)や株式。つまり、巨大な投資マネーの流れの中で、JR九州株が資金の「一時的な逃げ場」になったのかもしれない。
■初値は「追い風参考記録」か
 もっとも、期待通りの水準だった初値が「追い風参考記録」になる恐れもある。JR九州が自社で保有する不動産は九州地方が中心で、東京や東海地域の一等地に資産を持つJR東日本やJR東海とは異なるからだ。不動産市況の過熱感が想定外に強まれば、新規の案件の取得や開発にかかるコストが膨らむ。今後、九州より不動産市場が大きな首都圏、成長著しいアジア地域で不動産ビジネスを拡大したとしても、リスクは消えない。25日のJR九州株は初値に比べて178円(5.7%)安い2922円で午前の取引を終えた。シナリオ通りに不動産事業を伸ばし、JR東日本など旧国鉄民営化の成功事例に加われるだろうか。

*2-2:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO30336810Q8A510C1LX0000/?n_cid=SPTMG002 (西日本新聞 2018/5/10) 九州が最高益 前期最終、鉄道の採算性なお課題
 JR九州が10日発表した2018年3月期の連結決算は、純利益が前の期比13%増の504億円と過去最高だった。運輸サービスや不動産などほぼ全ての部門で営業増益だった。主力の鉄道事業は2期連続の黒字を確保したが、16年3月期に実施した費用圧縮の会計処理の効果が大きい。処理前の基準では20億円の赤字に相当し鉄道事業の採算性はなお課題だ。売上高は8%増の4133億円だった。訪日客の増加などに伴う新幹線の旅客増や、熊本地震直後の減少の反動で鉄道収入が増えた。キャタピラー九州の連結子会社化も寄与した。営業損益では運輸サービス事業が14%増の292億円。不動産賃貸収入が増えた駅ビル・不動産業も232億円と2%増えた。営業利益、経常利益ともに5期連続で過去最高を更新した。ただ主力の鉄道事業の採算性にはなお課題が残る。16年3月期に5268億円分の固定資産を減損処理し、減価償却費を大幅に減らした。だが鉄道は毎年の安全投資が欠かせず、再び減価償却費が膨らむのは避けがたい。20年3月期からは国から受けていた固定資産税の減免措置もなくなり、さらに利益を圧迫する。青柳俊彦社長は「ローカル線の赤字はむしろ拡大している」と強調した。九州北部豪雨の影響で一部不通となっている日田彦山線では、復旧費用の算出や負担方法に関する自治体との協議が続いている。業績好調を受けJRの負担を求める自治体側の圧力が強まる可能性もあり、慎重な姿勢をみせた。
          ◇
 JR九州は10日、車両整備や駅構内業務などを手掛ける子会社3社を再編すると発表した。7月1日付で、JR九州メンテナンス(福岡市)が車両整備やビル設備管理部門を分割し、ケイ・エス・ケイ(同)が承継。社名は「JR九州エンジニアリング」に変更する。様々な駅業務を担うJR九州鉄道営業(同)をJR九州メンテナンスが吸収合併し、社名は「JR九州サービスサポート」とする。

<地方の新幹線>
*3:http://qbiz.jp/article/139384/1/ (西日本新聞 2018年8月18日) フル規格化、佐賀県市長会は要望見送り 新幹線西九州ルート
 佐賀県市長会(会長・秀島敏行佐賀市長)は17日、嬉野市で会合を開き、九州市長会(10月)に提案する事項などを協議した。武雄、嬉野両市から出されていた九州新幹線西九州(長崎)ルートの全線フル規格化を求める要望は見送った。会合の後、嬉野温泉駅(仮称)の建設現場を市長会として初めて見学した。会合では、新幹線を巡る各市の温度差が浮き彫りになった。橋本康志鳥栖市長は「フル規格になれば、長崎線全体が並行在来線となり、生活の足としての機能が損なわれる恐れがある。整備ルートも未定で、いつできるか不透明だ」と指摘。秀島市長が「市長会として見解をまとめられる状況にない」と述べた。武雄市の小松政市長は「引き続き議論する場を設けてほしい」と呼び掛けた。会合は、山口祥義知事に提出する要望書の取りまとめが主な議題で、JR九州の交通系ICカードの導入促進やスクールカウンセラーによる相談体制充実などを求める計26項目を決めた。30日に提出する。駅建設現場の視察では、市長たちは高架橋へ上り、鉄道・運輸機構の職員から土木工事が終わり、レールを敷設し、駅舎建設に向け着手する段階との説明を受けた。嬉野市の村上大祐市長は「実際に現場を見てもらい、新幹線について考えてもらうきっかけになったのでは」と話した。

<農業の進展と機械化・大規模化>
PS(2018年8月22、24日追加):農業及びそれに付随する食品産業は、地方の重要な産業だ。しかし、戦後、第一次産業が軽視されてきたため、我が国の食料自給率は減少の一途を辿り、他の先進国に著しく見劣りする状態になった。また、農業従事者の数は減り、他産業以上に高齢化しているが、農業を大規模化・機械化して担い手の所得を増やすためには、農業従事者の一定の減少は必要だった。
 そして、現在、*4-1のように、GPSに導かれて大規模農地を自動操舵するトラクターが普及期に入って省力化が期待されている。また、*4-2のように、新規就農者がAIで熟練農業者の技術を短期間で身に付ける学習支援システムも普及し始めた。そして、*4-3のように、農業の競争力強化のため、気象や土壌などの関連情報を集積したデータベースを作って開放する方針だそうで、これはいろいろな使い方ができそうだ。
 さらに、*4-4のように、農産物の輸出額は過去最高を更新し続けているが、相手のニーズに合ったものを作れば、さらに輸出を伸ばすことも可能だ。例えば、中国に中華料理の原材料や中食用加工品、EUに短時間でゆでられるスパゲッティやオリーブオイルなどである。中華料理の原材料で既に当たったものは、干ナマコと干クラゲだ。
 また、*4-5のように、農水省が米粉の本格輸出に向けて欧米で市場調査に乗り出したそうで、市場調査して輸出を図るのはよいものの、「水田があるから米を作り、グルテンを含まない小麦の代替品として米を売る」というのでは、考え方が逆なので需要に限界がある。つまり、「①小麦粉よりよい特性を持っているから米粉を売る(例:米粉のパンは固くならず、和風のおかずをサンドしても合う)」「②米でしかできないものを作って売る(例:酒・団子・餅・和菓子等の加工品を売る)」「③需要に合う作物を作る」「④小麦も品種改良し、より美味しいものを作って売る」というような姿勢でないと、農業は補助金ばかり使う産業になってしまう。

   
     各国の食料自給率      日本の食料自給率推移   農業就業人口の推移

*4-1:https://www.agrinews.co.jp/p44952.html(日本農業新聞 2018年8月22日)自動操舵装置、GPSシステム 導入進み出荷最多 北海道8割普及けん引 府県でも需要増
 トラクターの自動操舵(そうだ)装置と、運転を支援するGPS(衛星利用測位システム)ガイダンスシステムの2017年度の出荷台数が過去最多になったことが、北海道の調査で分かった。人手不足が深刻化する中、作業負担の軽減などを見込んで導入されたのが主な要因とみられる。今後も府県も含め、導入数は増える見通しだ。GPSガイダンスシステムは、トラクターなどに装着し、圃場(ほじょう)内での走行路をモニター上に表示する製品。正確、効率的な作業が見込め、省力化につながる。出荷台数は17年度、計2910台と、統計を取り始めた08年度以来の最多となった。そのうち、北海道向けは76%と、導入をけん引した。08年度からの累計出荷台数は1万1500台で、8割が北海道向けだ。GPSガイダンスシステム以上に省力化が見込めるトラクターの自動操舵装置の出荷台数も同年度で過去最多の1770台だった。08年度以降の累計出荷台数は4800台で、このうち92%が北海道向けとなった。こうした機器について、メーカー担当者は「北海道では通信環境の整備が進んだことや、利用者が増えて導入のハードルが下がったことなどが要因」とみる。自動操舵装置の新規販売が多かった別のメーカー担当者は「府県でも、担い手世代を中心に導入が増えた。家族経営でも使っており、疲労軽減や、初心者でも熟練者並みの作業ができるところが受けている」と指摘した。今後とも北海道を中心に、府県でも導入が進む見通しだ。道は「北海道内では、1戸の農家で複数台持つケースが増えた。規模拡大が進む中、少ない人数で適期に作業するために必要性が高まっている」(技術普及課)とみる。道が聞き取り調査した企業は、GPS機器を扱う井関農機、クボタ、クロダ農機、ジオサーフ、トプコン、ニコン・トリンブル、日本ニューホランド、ヤンマーアグリジャパン、IHIアグリテックの9社。調査企業は、16年度より1社増えた。

*4-2:https://www.agrinews.co.jp/p44893.html (日本農業新聞 2018年8月15日) AIで熟練技術習得 学習システム全国へ 17府県14産地が導入 農水省
 農水省は、人工知能(AI)を活用し、新規就農者が熟練農業者の技術を短期間で身に付ける学習支援システムの普及に力を入れる。熟練者の視線や行動をアイカメラなどで撮影し、データを収集。新規就農者がタブレット端末などでいつでも学べる仕組み。全国17府県の14産地が導入した。熟練者の技術継承が課題となる中、同省は全都道府県にシステムを広めたい考えだ。同省が、システム普及に乗り出したのは2016年度。その年の補正予算で1億円を措置。JAや県、メーカーなどでつくる協議会を対象に、システム整備にかかる費用の一部を助成した。この助成を活用し、計17府県の14協議会がシステムを導入。品目はブドウ、ミカンなどの果樹を中心に10品目以上に及ぶ。助成はもうないが、同省は、14協議会をモデルケースとして成果を発信し、他の産地にも導入を促している。14協議会の一つが、ミカンの産地であるJA三重南紀。熟練者がアイカメラを装着し、ミカンの剪定(せんてい)時の視線を撮影。若手農業者もカメラを付けて同じ作業をして、その映像をタブレット上で見比べる。両者の違いを示すことで、作業の改善に役立てることが目的だ。JAはクイズも作成。画面上で摘果に適するミカンを選ぶと、熟練者の答えが正解として表示される。JA営農柑橘(かんきつ)課はシステムについて「高齢化が進む熟練した農家の技術を若手に引き継いでいくために有効な手段」と期待している。

*4-3:http://qbiz.jp/article/139433/1/ (西日本新聞 2018年8月20日) 農業強化へデータ集積、政府 気象や土壌の情報、担い手に開放
 政府は20日、農業の競争力強化のため、気象や土壌などの関連情報を集積したデータベースをつくり、担い手や企業に開放する方針を決めた。農作業の効率化や農産物の品質向上に役立ててもらうのが狙いで、2019年4月の本格運用を目指す。環太平洋連携協定(TPP)の発効などを見据え、安価な海外産農産物の流入増に備える思惑もありそうだ。政府が構築するのは気象や土壌、農地の区画などの情報を集めた「農業データ連携基盤」。農家や農機メーカーなどが基盤にアクセスしてデータを活用する。17年12月に試験運用が始まった。背景には貿易自由化の進展がある。日本はTPPに加え、欧州連合(EU)との経済連携協定(EPA)発効も控える。海外農産物との競争激化は必至だ。今月から始まった米国との閣僚級貿易協議では一段の市場開放を迫られており、農業強化が急務になっている。農機メーカーは、データを活用した営農管理ソフトを独自に開発しているが、さまざまな情報を農家が一元的に利用できる仕組みはなかった。政府は、利用できる情報が飛躍的に増えることで、生産技術や農産物の品質が向上すると期待する。基盤には農産物の流通状況や市況情報も登録する。農家は商品が不足している市場にタイミング良く出荷したり、需要が高い作物の栽培面積を増やしたりして、収益拡大につなげることができそうだ。農機メーカーや有識者らでつくる「農業データ連携基盤協議会」の神成淳司会長(慶応大教授)は「情報を提供する企業が増えることで競争が発生し、より有益な情報が集まる。それを活用することで、農業強化につながる」と話している。

*4-4:http://qbiz.jp/article/139028/1/ (西日本新聞 2018年8月10日) 農産物輸出額、過去最高を更新 4358億円、上半期15%増
 農林水産省は10日、2018年上半期(1〜6月)の農林水産物・食品の輸出額が、前年同期比15・2%増の4358億円になったと発表した。今年は為替相場が輸出に不利な円高基調で推移したが、6年連続で過去最高を更新した。19年に通年で1兆円を目指す政府目標の実現へ大きく前進した。品目別では、サバが50・0%増の205億円だったほか、牛肉が37・4%増の108億円、日本酒が21・8%増の105億円。幅広い品目で輸出が伸びたのが特徴で、日本食品に対する支持が世界的に定着しつつあることがうかがえる。輸出先は1位が香港で、中国、米国が続く。トップ3は変わらなかったが、中国が前年同期比32・1%増と大きく伸びており、存在感が高まっている。下半期についても農水省の担当者は「悪材料はなく、引き続き伸びが期待できる」と分析。通年では9千億円規模になる公算だ。輸出は1品目20万円超の貨物が対象。農水省は今回初めて、少額(20万円以下)の輸出額を試算し、18年上半期は232億円と推計した。輸出額には算入しない参考値だが、今後増加が期待できる国をまたいだ電子商取引(越境EC)の状況把握につなげる狙いがある。

*4-5:https://www.agrinews.co.jp/p44940.html (日本農業新聞 2018年8月21日) 米粉輸出戦略 売り込め 日本ブランド
 米粉の本格輸出に向け、農水省が今月から欧米で市場調査に乗り出した。世界最高水準の表示制度を武器に国産米粉の販路拡大を目指す。コスト低減、現地ニーズに合った商品開発、輸出事業者への支援など課題も多い。水田をフルに生かしつつ、健康食材として注目の米粉を「ジャパンブランド」として世界に広めていこう。官民一体となって米粉輸出の機運が高まってきた。農水省は昨年9月、斎藤健農相の肝いりで「コメ海外市場拡大戦略プロジェクト」を立ち上げ、輸出事業者の支援を始めた。米や日本酒、米加工品の2019年の輸出目標を10万トンに設定。現状の4倍増という意欲的なものだ。その後、米粉麺業者など参加事業者は増え、約60社13万3000トンに積み上がっている。プロジェクト推進の観点からも米粉を戦略品目に位置付けるよう求めたい。米粉の輸出は緒に就いたばかりだ。17年の推計では5社50トン程度にとどまる。麺など加工品を加えても約80トンにすぎない。各社とも輸出を増やし、来年は総計で10倍となる目標を掲げるが、世界の市場規模と国産米粉の優位性を考えれば、飛躍的に伸ばせるはずだ。欧米では、小麦アレルギーの原因となるグルテンを含まない「グルテンフリー」食品の市場が急激に伸びている。日本貿易振興機構(ジェトロ)によると、米国の市場規模は5600億円(16年)で毎年約3割増と急成長。欧州は5年前に1200億円市場だったが、今年まで年率10%の伸びを見せる。日本では昨年、米粉の用途別基準と、グルテンを含まない「ノングルテン」の表示制度がスタート。この基準はグルテン含有量が1ppm以下で欧米の20分の1。世界最高レベルの基準で、欧米のグルテンフリー市場で優位に立つ。実際、NPO法人国内産米粉促進ネットワークが行った欧米市場調査でも大きな関心が寄せられた。日本の米粉は微細粉で溶けやすく、使いやすいと好評。パンやパスタ、菓子原料など用途も広く、現地の米粉などと差別化ができると手応えを感じている。同ネットは12月にスペインのグルテンフリー見本市で米粉製品の展示・商談会を開く計画だ。農水省も今月から欧米でグルテンフリー食品の市場調査を始めた。小麦粉の代替として、どの層に、どういう食材・商品として受け入れられるのか。価格帯や流通・販路と併せ、実態を調べる。日本食品海外プロモーションセンター(JFOODO)も米粉輸出の普及促進を支援。米国、フランスを重点に20年には2900トン、8億円の輸出戦略目標を描く。政府はこの好機に「ジャパンブランド」の米粉振興を国家戦略にすべきだ。米粉の本格輸出に向け、官民挙げて、製粉・販売コストの低減、市場調査、輸出環境の整備、商品開発、現地認証コストの負担軽減、販路開拓の取り組みを加速させよう。

<食料自給率に重要な漁業を国が軽視していること>
PS(2018年8月25日追加):*5-1のように、陸上自衛隊がオスプレイを佐賀空港に配備することを要請し、佐賀県の山口知事が着陸料として年に5億円を受け取ることで合意したそうだが、*5-2のように、佐賀空港の西側を33haも干拓して南西諸島の防衛力強化を行うというのは、ここが南西諸島から遠く離れ、標高の低い土地であるため合理性に欠ける。そのため、佐賀空港を選ぶ理由について、論理的かつ合理的な説明を要する。
 さらに、*5-3のように、オスプレイは開発段階から事故が相次ぎ、「ウィドウ・メーカー」(未亡人製造機)と呼ばれているが、確かに飛びやすそうな形状ではなく、積み荷には毒物も含むと思われる。そのため、年間5億円くらいなら既存のダムその他で発電する自然エネルギーで稼げるのに、オスプレイ基地を強要するのは、地方の重要な産業で食糧自給率にも影響する漁業を軽視している。また、干拓して海の環境を壊しながら、放流したり海底耕運したりしても、税金ばかり使って効果はなく、日本にはそのような無駄遣いをしている余裕はない。

   
 *5-1より  *5-2より           オスプレイ

(図の説明:佐賀空港の右側に見える黒いものは有明海苔の養殖網だ。私は、オスプレイの垂直離着陸の発想はよいが、空気抵抗から考えて飛びやすい形ではなく、これが米軍機も含めて日本中の空を飛び回れるというのは異様な判断だと思う)

*5-1:http://qbiz.jp/article/139739/1/ (西日本新聞 2018年8月25日) 佐賀オスプレイ受け入れ 知事表明 国が着陸料100億円 漁協、県と協議開始へ
 陸上自衛隊オスプレイの佐賀空港配備を要請されている佐賀県の山口祥義知事は24日、県庁で記者会見し、県として受け入れる考えを表明した。これに先立ち国と県は同日、オスプレイを含む自衛隊機の着陸料として国が県に20年間で100億円を支払い、県がこれを元に有明海漁業の振興を図る基金を創設することなどで合意。県は今後、空港を自衛隊に共用させないことを明記した県有明海漁協との公害防止協定覚書付属資料の見直しに向けた交渉に入る。山口知事は受け入れの理由について「防衛省の要請は国の根幹にかかわる国防安全保障に関することで県としては基本的に協力する。負担を分かち合う部分があると思う」と強調した。着陸料については、国が毎年5億円ずつを県に支払う。県は有明海の漁業振興のために国などが行う稚貝放流やしゅんせつなどの公共事業に合わせて裁量を持って使えるようにし、残りは事故が起きた場合の補償に充てるため積み立てる。このほか国、県、有明海漁協との間で環境保全や補償に関して話し合う協議会の設置や、自衛隊機が事故を起こした場合に備えて防衛省と県との間にホットラインを設けることなども合意した。配備計画は2014年7月に防衛省が県に要請。米軍機の事故が相次ぎ、今年2月には同県神埼市で陸自ヘリコプター事故が起きて協議が一時中断していた。今回の受け入れ表明でオスプレイ配備が大きく前進し、小野寺五典防衛相は「知事からご理解いただいたことはオスプレイ配備に向けて非常に大きな進展。感謝したい」とコメントした。山口知事は受け入れ表明後、県有明海漁協を訪れ、徳永重昭組合長と会談。公害防止協定覚書付属資料の見直しに向けた協議に入るよう要請した。徳永組合長は「知事の表明は組織として受け止めたい」と述べ、応じる構えを見せた。ただ、有明海の漁業者や配備予定地の地権者の中には、オスプレイの安全性や事故が起きた場合の深刻な被害に対する懸念は依然として根強く、見直しは難航も予想される。国の当初計画によると、佐賀空港にはオスプレイ17機のほか、陸上自衛隊目達原(めたばる)駐屯地(同県吉野ケ里町)のヘリコプター約50機も移駐し、隊員700〜800人を配置する。離着陸は1日約60回で年間約1万7千回。空港西側の干拓地33ヘクタールを造成し、駐機場や格納庫、弾薬庫、隊員の庁舎を整備する。

*5-2:http://qbiz.jp/article/139740/1/ (西日本新聞 2018年8月25日) 防衛省「大きな進展」 オスプレイ受け入れ表明 用地取得交渉へ
 佐賀県の山口祥義知事が24日、陸上自衛隊の輸送機オスプレイの佐賀空港での受け入れを表明したことで、配備計画は実現に向けて大きく動きだした。陸自相浦駐屯地(長崎県佐世保市)に本部を置く離島防衛部隊「水陸機動団」との一体運用を目指す防衛省は、相浦から約60キロの佐賀空港を最適地として2014年から交渉を続けてきた。防衛省幹部は「4年もかかったが理解が得られて良かった」と歓迎し、地権者でもある漁業者らとの協議も進めたい考えだ。計画では、佐賀空港西側の干拓地33ヘクタールを造成し、オスプレイ17機や陸自目達原(めたばる)駐屯地(佐賀県吉野ケ里町)のヘリコプター約50機を配備する。防衛省は、活発化する中国の海洋進出を見据えた南西諸島の防衛力強化に向け3月に水陸機動団を創設。上陸作戦に強い米海兵隊にならった「日本版海兵隊」で、他国に奪われた離島の奪還作戦を展開する際、オスプレイで隊員を輸送することなどを想定している。「非常に大きな進展だ。漁業者をはじめ県民の理解と協力を得られるよう誠心誠意対応していく」。佐賀県知事の表明を受け、交渉を担ってきた末永広防衛計画課長は防衛省で記者団に語った。漁業者らとの用地取得交渉は、公害防止協定を巡る佐賀県と同県有明海漁協の協議が調うのを待って行う方針。オスプレイの騒音によるコノシロ(コハダ)漁への影響について追加調査も早期に実施する考えで、防衛計画課は「県と漁協の議論に歩調を合わせる形で漁業者の懸念を払拭(ふっしょく)することが必要だ」としている。20年間で100億円とした着陸料の支払時期については「着陸料という性格上、実際に佐賀空港に機体が配置されてからになる」との考えを示した。佐賀空港の米軍利用となる在沖縄米軍オスプレイの訓練移転については、15年10月に中谷元・防衛相(当時)が提案を取り下げており、同課は「その状況は変わっていない」としながらも、沖縄の基地負担の軽減のため、今後も他の都道府県と同様に訓練移転の候補地になる可能性を示唆した。

*5-3:https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/195787 (日刊ゲンダイ 2016年12月14日) 沖縄だけじゃない オスプレイ墜落の恐怖は全国に拡大する
 米軍普天間基地(沖縄県宜野湾市)所属の垂直離着陸機オスプレイが13日夜、沖縄本島東方の海岸付近に墜落。機体はバラバラに壊れ、海中に沈んだ。これがもし市街地だったらと思うと、背筋が寒くなる。オスプレイは開発段階から事故が相次ぎ、犠牲者は40人近くに上るため、「ウイドーメーカー」(未亡人製造機)と呼ばれている。オスプレイが普天間基地に配備された2012年以降もモロッコや米フロリダ州、ノースカロライナ州、ハワイ州、カリフォルニア州で墜落や不時着するトラブルを起こしている。普天間基地には現在24機が配備されており、今月に入って宜野座村の民家の上空で物資の吊り下げ訓練を行い、地元住民が抗議したばかり。今回の事故に地元住民からは「市街地に墜落していたら大惨事だった」「オスプレイ配備を受け入れた日本政府の責任は大きい」などと怒りの声が上がっている。
■日本各地の米軍基地に飛来
 だが、オスプレイ墜落の恐怖は沖縄県に限ったことではない。年明け早々には、米軍のオスプレイの定期整備を陸上自衛隊木更津駐屯地(千葉県木更津市)で行うことが決まっている。定期整備のたびに首都圏上空をオスプレイが飛び回ることになる。さらに、防衛省は昨年5月、オスプレイ17機を約30億ドル(当時のレートで約3570億円)で購入することを決め、19年度から陸上自衛隊が佐賀空港(佐賀県佐賀市)で順次配備する計画だ。また、米軍は17年にオスプレイ3機を東京都の横田基地に配備し、21年までに10機を常駐させると発表した。オスプレイはこれまでも沖縄以外に山口県の岩国、横田、静岡県のキャンプ富士、神奈川県の厚木の各米軍基地に飛来している。このままでは、日本中どこにいてもオスプレイ墜落の恐怖が付きまとうことになる。

<地方の有望産業である林業を、軽視からスマート化・産業化へ>
PS(2018年8月26日追加):*6-1、*6-3のように、所有者が管理放棄したり、所有者が不明だったりして手入れされずに荒れた森林を、2024年度から「森林環境税」を導入して市町村が管理するそうだ。これは遅すぎるくらいの話だが、今まで放っておいた森林が手入れされたところで所有者が現れて「所有権の侵害だ」などと言うのは、憲法12条に定められた権利の濫用に当たるだろう。何故なら、所有者不明ということは、所有者にとって不要な資産で、所有権を放棄しており、固定資産税も払っていないため、市町村が収容していて当然だからである。
 また、既に森林環境税を導入している自治体は、「二重課税」にならないよう自治体の森林環境税を廃止して、森林・田畑・藻場・街路樹・公園などの緑地面積に応じて国の森林環境税を配分してもらう必要がある。都市で多く排出されるCO₂を緑が光合成してO₂に変えているため、都市住民にも森林環境税を負担させるのが公正であり、それが国で森林環境税を導入する意味であるため、*6-2のように、日経新聞が「森林環境税は直接的な恩恵を感じづらい都市住民の理解を得られない」などと書いているのは、都市住民のエゴにすぎない。
 さらに、*6-3に、「民間企業による伐採を国有林でも拡大する動きもある」と書かれているが、国有林の立木は国民の財産であり資源でもあるため、不当に安い価格で私企業に利用させるのは筋が通らない。国や地方自治体に林業に詳しい職員が少ないのであれば、効率化が進む事務系の職員を減らして森林管理の専門家を増やすべきだろう。また、民間に委託した場合も立木の代金はもらうべきで、国民の資源であり財産でもある立木を無料もしくは市場価格以下の安値で譲渡するのは、民法400条の「善良なる管理者の注意義務」に反する。
 なお、林業も、*6-4のように、ICTや航空機を利用してスマート化しつつあり、戦後に各地で植林された杉・ヒノキ等が利用時期を迎えているため、成長産業として期待できる筈だ。

     
      福岡県の説明      スマート林業   2017.12.8   2017.12.8
                            東京新聞    産経新聞

(図の説明:1番左の図のように、福岡県が森林環境税の必要性を説明している。このように、森林環境税は既に導入している自治体が多いため、国で導入するのは都市部で森林の少ない地域の国民にも森林環境税を負担してもらうことが目的なのだ。また、2番目の図のように、林業もスマート化しつつある。そのため、ただでさえ負担増・給付減の中で課税される森林環境税は、国民の森林資源を最大限に活かしつつ、環境を維持するために使うべきである)

*6-1:https://www.agrinews.co.jp/p43805.html (日本農業新聞 2018年4月14日) 森林経営管理法案 国民理解に審議尽くせ
 所有者が放置している森林を市町村や業者が代わって管理する森林経営管理法案の本格審議が始まった。国民に新たな負担となる森林環境税の導入が前提となる。森林管理に国民理解が進むように丁寧な審議を望む。森林の所有者である林家は、9割近くが10ヘクタール以下の零細経営で、4分の1が地元不在者だ。木材価格の低迷や人手不足で伐採が進まず、伐採適期を迎えた人工林がもうすぐ5割に達する。間伐ができず、荒廃が進む森林も多い。法案は、森林所有者の責務を明確にし、伐採などの責務を果たせない場合に、市町村や業者が代わって管理できる仕組みを導入するものだ。50年を上限とする「経営管理権」と「経営管理実施権」の二つの新しい権限をつくり、市町村や森林業者が間伐や伐採ができるようにする。伐採した木材の販売も行える。所有者の同意が前提だが、所有者が見つからないときに市町村の勧告や知事の裁定で同意したと見なす「公告制度」を新設する。似たような方式は、農地で導入されている。所有者の特定が困難な森林の整備を進めるにはやむを得ない措置といえる。ただ、突然、所有者が現れたときなどの対応を明確にして、所有権の侵害にならないように慎重な取り扱いが必要だ。政府は、国会審議を通じて林家の不安を払拭(ふっしょく)するべきだ。管理を引き受ける業者がどれくらい現れるかが、新しい制度の要になる。斎藤健農相は「地域の雇用に貢献する民間事業者を優先する」としているが、結局、採算の見込める森林だけに限られ、大半が市町村に集中する可能性が高い。そこで政府は、「森林環境税」を2024年度から導入し、市町村の管理費の財源を確保する。それまでの19~23年度は地方譲与税を配分する。市町村に過度に押し付けるようなことがあってはならない。地方自治体の職員は限られており、人的支援も重要だ。「森林環境税」は、1人当たり年1000円を個人住民税に上乗せして徴収するものだ。既に37府県と横浜市は森林整備のための独自税を導入しており、「二重課税」にならないように使い分けが重要だ。混乱しないように国会できちんと説明する必要がある。森林経営が魅力を失った背景には、木材の輸入自由化政策がある。国産材の利用を促す方策も急ぐべきだ。1000万ヘクタールの人工林は約半分が主伐期を迎える。国産材を優先して使った場合の支援も厚くしたい。二酸化炭素の森林吸収目標を達成したり、水源のかん養など70兆円に及ぶ多面的機能を維持したりするには、間伐や伐採が欠かせない。根付きの悪い「もやし林」が増え、豪雨時の防災機能の弱体化も指摘されている。こうした山の窮状を国民に知ってもらう必要もある。市町村にだけ森林管理を押し付けるようなことがあってならない。

*6-2:https://www.nikkei.com/article/DGXKZO23659070Y7A111C1EA1000/ (日経新聞 2017/11/18 ) 森林環境税を導入する前に
 手入れがされずに放置されている人工林を集約する新たな制度を林野庁がつくる。市町村が仲介役になって意欲のある林業経営者に貸与し、経営規模を拡大する。所有者がわからない森林などは市町村が直接管理するという。森林を適切に管理することは地球温暖化対策として重要なうえ、保水力を高めて土砂災害を防ぐ効果もあるが、問題は財源だ。政府・与党は「森林環境税」の創設を打ち出した。他の予算を見直して財源を捻出するのが先だろう。日本の国土面積の3分の2は森林で、その4割はスギやヒノキなどの人工林が占める。戦後植林した木々が成長して伐採期を迎えているが、零細な所有者が多いこともあって、多くが利用されていないのが現状だ。「森林バンク」と名付けた新制度は所有者が間伐などをできない場合、市町村が管理を受託し、やる気のある事業者に再委託する仕組みだ。一度に伐採や間伐をする森林を集約できれば、作業効率が向上してコストが下がる。近くに作業道がないなど条件が悪い森林は市町村がまず手を入れたうえで再委託する。所有者が不明で放置されている森林についても一定の手続きを経たうえで利用権を設定し、市町村が扱う。現在、国産材の用途拡大が進み始めている。経営規模の拡大を通じて林業を再生する好機だ。財政力が弱い市町村が継続的に事業に取り組むためには安定財源が要ることは理解できる。しかし、森林環境税は個人住民税に上乗せして徴収する方針だ。直接的な恩恵を感じづらい都市住民の理解を得られるだろうか。全国の8割の都道府県や横浜市はすでに、似たような税金を徴収している。都道府県と市町村の役割がどうなるのかについても判然としない。人材が乏しい市町村では、都道府県が作業を代行する手もあるだろう。森林整備は必要とはいえ、新税の前に検討すべき課題が多いと言わざるを得ない。

*6-3:https://www.agrinews.co.jp/p44236.html (日本農業新聞 2018年6月2日) 17年度林業白書 新たな森林管理を注視
 2017年度の林業白書がまとまった。手入れが行き届かない森林を整備するため、来年度から新たに導入する森林管理システムを取り上げた。財源となる森林環境税の創設と併せ、森林・林業行政は新たな段階に踏み出す。安い外材輸入に頼って国内の森林を放置してきた弊害が随所に出ている。特に民有林は、山に入る機会が減り、管理が不十分で荒廃が進む森林も多い。伐採期を迎えても切れず、「宝の持ち腐れ」が懸念される。83万戸の林家の9割近くが10ヘクタール以下の零細経営で高齢化も進む。しかも4分の1近くが不在村だ。持ち主が不明な林地も多い。このまま放ってはおけないと政府は、所有者が放置している森林を市町村が代わって管理する新しい仕組みを導入する。白書は、その経過と仕組みを重点的に説明した。所有者が伐採や造林、保育などの「責務」を果たせなければ、立木伐採などの管理を第三者が行えるようにする。今国会で成立した森林経営管理法では経営管理権と経営管理実施権の二つの新しい権限を創設し、市町村や林業経営者に与える。所有者の同意が原則だが、管理が適正に行われていないと市町村が判断した場合には、同意したと見なす制度を新設する。所有者不明で同意が得られなくても伐採ができるようにするためだ。伐採に適さない森林は市町村が管理する。財源に「森林環境税」を充てることも決まっている。森林を守る新しい仕組みを白書で大きく取り上げたのは、政府の意欲の表れであろう。国民にも負担を課すものであり、林家などに一定の責務を求めるのはやむを得ない。懸念がないわけではない。新システムは安倍政権が目指す「林業・木材産業の成長産業化」を踏まえたものだが、民間企業が主体の伐採業者による「乱伐」を引き起こすのではないかとの指摘が出ている。民間企業による伐採を国有林でも拡大する動きもあり、国民的財産を企業の営利目的に利用することへの批判も出始めている。新システムは市町村の役割を高める。しかし、林業に詳しい職員はごく一部に限られる。森林管理を市町村に過度に押し付けることになり、混乱をもたらしかねない。こうした国民の疑問に白書が十分に応えているとは言い難い。森林をきちんと維持する基本は、現地に住む林家の経営を安定させ、きめ細かな管理が行えるように環境を整えることだろう。規模拡大も含め後継者が育つように、新しい技術の導入や販売先の確保などへの支援が必要だ。白書は、林家育成の視点が弱い。今後の課題である。大きな政策転換には、当事者はもとより、国民の理解が重要だ。政府は、あらゆる機会を通じて森林の果たしている役割と、管理の大切さを国民に訴えていかなければならない。

*6-4:http://qbiz.jp/article/137407/1/ (西日本新聞 2018年7月13日) ICT活用し「スマート林業」 政府、安定供給目指す
 政府は航空機からのレーザーを使った測量で得られる詳細な地理空間情報や情報通信技術(ICT)を活用し、担い手不足や高齢化が進む林業を再生させる「スマート林業」の取り組みを始めた。植林した木の本数や高さを正確に把握し、作業の効率化や国産材の安定供給につなげる考えだ。2018年度は熊本など5県をモデル地域に選び、実践事業を開始した。計画では、軽飛行機や小型無人機ドローンに搭載したレーザーを山林に照射。木の高さを測定し、一定の範囲に何本あるかを把握する。幹の太さも推定できるという。実施主体は都道府県ごとに、市町村や林業の事業者らで構成する「地域協議会」。測量で得た山林のデータをインターネットのクラウド上で協議会メンバーが共有し、山林の管理や、需要に応じた木材の産出をより効率的に行う仕組みだ。山林情報は従来、実際に山へ入り、どの種類の木が何本あるかを手作業で記してきた。測量データを使えば、大幅な省力化が期待できるという。18年度は石川、長野、愛知、山口、熊本の5県で実践事業を開始。課題を分析し、3年後の21年度には5都道府県程度で本格的な運用を目指す。林野庁によると、1980年に約14・6万人いた林業従事者は、2015年には4・5万人に減少。65歳以上の割合は25%に上る。一方、戦後に各地で植えられた杉やヒノキといった人工林は成長が進み、本格的な利用時期を迎えている。

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2018.7.26 日本経済と外国人労働者 (2018年7月27、28、30日に追加あり)
    
2018.7.26西日本新聞  外国人労働者推移(国籍別)  中間管理職の月給比較

(1)外国人労働者の受入拡大について
 政府は、*1-1のように、特に人手不足が深刻な農業・介護・建設・宿泊・造船で外国人の就労を認める新たな在留資格の創設について、2019年4月を目指して準備を進めていたが、他業界からも外国人労働者受入を求める声が上がっていることを受けて、*1-3のように、水産・食品加工・外食・製造業など、さらに約10分野を対象に加える方針だそうだ。

 日本には、既に外国人労働者に支えられている産業も多く、外国人労働者を使うという選択肢があれば、これまでに海外に出ていってしまった産業のうち、国内で製造できるようになるものも多いため、生産年齢人口が減少して人手不足になる局面で規制緩和を行うのは良いと思う。

 また、介護は、*1-2のように、1万人の受入をベトナム政府と合意し、数値目標方式をインドネシア・カンボジア・ラオスなどにも広げて人材を確保するそうだが、こうなると、日本では、介護や生活支援を、①出産時 ②病児 ③退院直後 などを含む全世代に広げることが可能になる。また、他の国でも介護保険制度を作り、条約で相互に同様のサービスを受けられるようにすると、助かる人が多いだろう。

 もちろん、外国人労働者も生活者でもあるため、受入拡大のためには、環境づくりが必要だ。しかし、「来日後1年内に日本語で日常会話ができる『N3』の能力を得なければ帰国」というのは厳しすぎ、私は介護に日本語は不可欠でないため、「N3」のレベルに達しなかった人でもチーム介護の1員として働けば、帰国しなければならないほどではないと考える。

 なお、*1-3に書かれている「入国管理庁」の新設については、最近、「○○庁」の新設が多いが、これは行政改革の趣旨に反する。そのため、本当に「庁」を作る必要があるか否かについては、検証を要する。

(2)おかしな反対論
 日経新聞が、2018年7月26日、*2-1に、「政府が外国人の受け入れ拡大を表明しているので、①安い賃金で働く外国人が増え ②物価の下押し圧力になりかねない」としている。

 しかし、①のような外国人を日本に受け入れなければ、その企業は賃金の安い外国に移転するか、廃業するかして、日本の産業はますます空洞化する。また、②のように、「物価を上げることが目的」というのは、日本国民や日本経済のためになる政策ではない。何故なら、日本が自由貿易をする限り、高コスト構造の日本製品ではなく、安い賃金の国の安価な製品が売れるグローバルな時代になっているからである。その時、技術は生産している場所で発達するため、輸出国の製品が次第に良くなり、日本からは技術が消える。

 そのため、*2-2のように、「人手不足はバブル時代以来の水準だが、当時と大きく違うのは消費も国内総生産(GDP)もほとんど増えていない」というのは、年金生活者も含めて収入が増えない以上、物価を上げれば購入数量が減るからで、当然のことである。

 従って、少子高齢化で日本の産業や総人口を支える労働力が不足するのなら、外国人労働者を受け入れればよく、働く能力も意欲もある高齢者や女性に雇用を保障するためには、年齢や性別による差別を禁止をすればよい。つまり、「物価上昇」や「インフレ率の目標達成」こそ、変な目標なのである。

(3)外交と経済
 日経新聞が実施した2018年度の「研究開発活動に関する調査」で、*3-1のように、回答企業の43.9%が日本の科学技術力が低下していると指摘したそうだ。その理由は、中国やインドなど新興国の台頭で、10年後の研究開発力はインドや中国が日本を抜くと予想されているそうだが、どちらも人口が多く、熱心に教育を行い、開発された技術の採用判断に無駄がない。それが、油断して無駄遣いばかりしている日本との違いである。

 また、「企業は研究分野の選択と集中が必要だ」としているが、誤った選択と集中は大きな発見を見過ごす場合がある。そのため、的確な判断と予算付けが必要なのだが、これは官僚がやるのではなく、意識の高い専門家の助言を得る必要がある。

 なお、日本で外国人労働者の受け入れに反対している人が、*3-2のトランプ大統領の ①米国第一主義 ②保護主義 ③雇用の確保 ④国境管理の厳格化 をのべつまくなく批判し続けてきたのは自己矛盾である上、我が国の外交にも悪影響を与えてきた。私は、どの国にも産業政策はあり、その国に必要な産業は育てなくてはならず、既にいる国民の雇用も守らなければならないため、「日本は特別な国」という発想は甘えだと考える。また、雇用の確保や国境管理は日本の方がずっと厳しく、かなり制限された外国人労働者の受け入れでさえ、*2-1、*2-2のような反論が出ているということを忘れてはならない。

<外国人労働者の受入拡大>
*1-1:https://www.agrinews.co.jp/p44690.html (日本農業新聞 2018年7月25日) 外国人就労新在留資格 来年4月に創設へ 受け入れ業種拡大も 首相指示
 政府は24日、外国人労働者の受け入れ拡大に向けた初の関係閣僚会議を首相官邸で開いた。安倍晋三首相は、人手不足が深刻な業種で外国人の就労を認める新たな在留資格の創設ついて、「来年4月を目指して準備を進めたい」と述べ、検討を加速するよう指示。今後、外国人の受け入れ対象業種について、従来検討してきた農業や介護など5業種以外にも広げることや、外国人の在留管理を一元的に担う官庁の立ち上げも検討する。政府は6月に決めた経済財政運営の基本方針「骨太の方針」に新たな在留資格の創設を盛り込んだ。一定の技能、日本語能力を問う試験に合格した外国人を対象に、通算5年を上限に就労を認める。3年間の技能実習の修了者は試験を免除する。秋の臨時国会に関連法案を提出する方針だ。閣僚会議には安倍首相の他、上川陽子法相、斎藤健農相らが出席。安倍首相は「法案の早期提出、受け入れ業種の選定などの準備を速やかに進めてもらうようお願いする」と述べた。法務省には、増加が見込まれる在留外国人の管理を行うため、組織の抜本見直しを指示した。受け入れ業種の選定では、政府は、特に人手不足が深刻な農業、介護、建設、宿泊、造船を念頭に検討を進めてきた。一方、水産業や食品関連業など他の業界からも受け入れを求める声が上がっていることを受け、業種の追加も検討。政府は関連法の成立後に決める受け入れの基本方針で、具体的な基準を示し、年内にも受け入れ業種を正式決定する見通しだ。

*1-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180725&ng=DGKKZO33346320U8A720C1MM8000 (日経新聞 2018年7月25日) 介護人材1万人受け入れ ベトナムと合意、政府20年目標、インドネシアにも打診
 政府はベトナム政府と同国からの介護人材の受け入れ拡大で合意した。政府は1年以内に3000人、2020年夏までに1万人の数値目標を設け、ベトナム側もこれに協力する。期限と受け入れ数を掲げ、環境整備を急ぐ。介護分野の人手不足は深刻で、今回の数値目標方式をインドネシアなど他国にも広げ、介護人材を確保する。政府の健康・医療戦略推進本部(本部長・安倍晋三首相)がベトナムの労働・傷病兵・社会問題省と6月に日本への介護の人材受け入れ促進で合意したことが判明した。首相は24日、外国人労働者の受け入れ拡大への環境づくりを関係閣僚に指示した。日越首脳は年内にも介護・医療で日本とアジア各国が協力を進める「アジア健康構想」で覚書を結ぶ見通し。介護人材の受け入れ強化も柱の一つにする。政府はインドネシアやカンボジア、ラオスなどからも受け入れ拡大を進める。ベトナムからの人材の受け入れは昨年11月から介護分野でも始まった外国人技能実習制度を活用する。日本語試験で、ある程度日常会話ができる「N4」の能力を持つ人を対象に最長5年の滞在を認める。技能実習を修了した人はさらに最長5年の就労資格を得られる新制度も創設する。介護の技能実習制度の利用者はまだ数人しかいない。来日後1年内に、日本語で日常会話ができる「N3」の能力を得なければ帰国しなければいけない。学習費用の自己負担が重荷になり、来日に二の足を踏むためだ。政府はベトナム人の学習費用を支援し、高齢者の「自立支援」の手法も学べる優良法人を選ぶ。日本人と同様の給与水準も保証。第1弾で12業者を選定した。12業者で3千人を受け入れられる。ベトナム政府もまず6つの優良業者を人材を送り出す機関として認定する。現在、介護人材は経済連携協定(EPA)を通じて来日している。08年~17年の累計で約3500人で、新たに3千人来日すれば、海外の人材はほぼ倍になる。政府の予算で実施するEPAによる受け入れ拡大には限界があり、政府は今後、技能実習制度を活用する。経済産業省によると15年に日本の介護人材は4万人足りなかった。外国から1万人来ても3万人超足りない。35年には人材不足は79万人に達するという。人手が足りないことを主因に15~17年度に全国で整備された特別養護老人ホームは計画の7割にとどまる。国際的な人材獲得競争は激しい。韓国は外国人労働者の人数の枠を決めて受け入れを進める。日本も数値目標を定めて受け入れ拡大を目指すものの、外国人技能実習制度で一定の条件を定めているため、簡単に人数が伸びるかはわからない。

*1-3:http://qbiz.jp/article/138036/1/ (西日本新聞 2018年7月25日) 「外国人就労」10分野追加 新在留資格で外食、製造、漁業 政府方針 「入国管理庁」新設も検討
 人手不足を補うために外国人の就労を認める新たな在留資格に関し、政府が、これまで想定していた介護など5分野だけでなく、外食産業や製造業などさらに約10分野を対象に加える方針であることが分かった。実質的に単純労働の分野にも門戸を広げる。安倍晋三首相は24日の関係閣僚会議で、来年4月からの制度開始に向け、準備を加速するよう指示。上川陽子法相は同日の記者会見で、法務省の組織改編で「入国管理庁」のような新たな官庁を設置する検討に入ったことを明らかにした。新資格の受け入れ業種で想定していた5分野は、建設、介護、農業、宿泊、造船。政府関係者によると、これに加え、製造業では金属プレスや鋳造などの金属加工業を追加する方針。非製造業でも、食品加工業や漁業などを追加し、10分野ほど増やす方向で検討しているという。いずれも重労働で人手不足が深刻な分野。各省庁が業界の要望も聴き、受け入れ業種の詳細を詰める。閣僚会議で首相は「法案の早期提出、受け入れ業種の選定などの準備を速やかに進めてほしい」と指示。「外国人を社会の一員として受け入れ、円滑に生活できる環境整備をすることが重要な課題だ」と述べた。新たな在留資格創設により、国内で暮らす外国人は大幅な増加が見込まれる。政府が「入国管理庁」の新設を検討するのは、外国人に対する日本語教育や医療面などでの支援のほか、出入国管理の体制強化が必要になるからだ。この日の閣議では、法務省に受け入れ体制整備に向けた総合調整権限を与えることを決めた。上川氏は会見で「(法務省の)入国管理局を抜本的に組織改編し、入国管理庁のような外局を設けることも含め、検討を進める」と述べた。新たな在留資格では、在留期間は最長5年とし、家族の帯同は認めない。日本語能力や技能に関する試験を実施する一方、技能実習の修了者は試験を免除する。政府は来年4月の制度開始に向け、今秋に想定される臨時国会に入管難民法改正案を提出する方針。
   ◇   ◇
●人手確保へ見切り発車 体制、支援策 これから
 政府は、新たな在留資格による外国人労働者の受け入れを、当初想定の5分野からさらに10分野ほど増やし、一気に拡大する。2025年ごろに約50万人の受け入れが必要と試算してきたが、さらに数十万人単位での受け入れが見込まれる。人手不足の解消が期待される半面、来年4月に迫る制度開始に向けた政府の受け入れ体制や外国人への支援策は検討が始まったばかり。外国人政策は国の在り方を大きく変えるだけに、“見切り発車”への不安は拭えない。「既に外国人なしに成り立たない業種は多い。少子高齢化を見据えれば、今やるしかないんだ」。30年までに700万人超の働き手が減るとされる中、政府関係者は、受け入れ拡大を急ぐ理由をこう強調した。政府が受け入れ方針に転じた外食産業などのサービス業は現在、日本語学校などで学ぶ多くの外国人留学生が支えている。製造業でも、技術習得を名目にした技能実習生が重労働を担っている。いずれのケースも就労時間などに制約があるため、政府は就労を目的とした新資格で正面から外国人を受け入れ、より効率的に長時間、働いてもらいたいという狙いがある。人手不足に悩むのは、地方の中小企業や農家など自民党を支えてきた層とも重なる。新制度の開始を急ぐ背景には、来年の統一地方選や参院選を控える政権の思惑もにじむ。政府は24日、外国人との共生を目指し、日本語教育の充実や相談窓口の整備などを盛り込んだ「総合的対応策」の案を示したが、法務省関係者は「正直に言うと、これまでと同じ言葉を並べただけ」と漏らす。新設を検討する「入国管理庁」も、大掛かりな組織改編が必要になる。政府内には、建設業など実質的な単純労働の分野で多くの外国人を受け入れれば、景気悪化時に職を失った日本人とのあつれきが生まれるとの懸念も根強い。現行の技能実習制度を巡っても、人手不足の解消を求める業界団体の要望を受ける形で、制度が始まった1993年の17業種から、17年12月時点で77業種へとなし崩し的に対象を拡大。低賃金で長時間労働を強いるなどの問題が指摘されてきた。支援団体などからは「外国人がモノ扱いされることがないよう、丁寧な制度設計をしてほしい」と求める声が上がっている。

<おかしな反対論>
*2-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180726&ng=DGKKZO33417090V20C18A7EE8000 (日経新聞 2018年7月26日) 上がらぬ物価を探る(3)外国人増、賃金伸び鈍化 高収入の人材少なく
 6月半ば、大阪府東大阪市の工場ではベトナム人やインドネシア人らが朝から金属部品を熱心に磨いていた。京セラに燃料電池、マツダに自動車の部品などを納める従業員約110人の三共製作所。製造にかかわる働き手は実に約6割が外国人の技能実習生だ。
●人件費の調整弁
 「人手不足を解消し固定費を下げるには外国人を増やすしかなかった」。同社の松本輝雅社長はこう語る。「技術を学んで母国でいかしたい」。こう話す23歳のネパール人実習生、シグデル・ススマさんの月収は15万円ほどだ。厚生労働省の調べでは日本で働く外国人は2017年に128万人だった。日本の就業者全体の2%。この5年で人数も割合も倍増した。BNPパリバ証券によると12年から17年にかけては外国人の留学生と技能実習生は合計で30万人弱増えた。一方専門的な資格をもつ人材は10万人強しか増えていない。同社の河野龍太郎氏は「留学生や技能実習生が人手不足を背景にコンビニや工場などで安い賃金で働いている。日本の労働需給が逼迫しても賃金が上がらないのはこうした外国人労働者が増えたことが一因だ」と指摘する。
●平均月収13万円
 大和総研によると、日本の常用雇用者4926万人の平均月収は35万4855円なのに対し、外国人の技能実習生は同13万円ほどだという。日銀の簡易な推計でも、技能実習生の時給は約800円にすぎず、日本人のパート時給などよりも安いとみている。5月の完全失業率は2.2%と25年ぶりの低さだったが賃金の足取りは鈍い。政府は外国人の受け入れ拡大を表明している。政府関係者は「官邸が介護の人手不足に業を煮やして決めた。将来は年間20万人規模の受け入れが目安」と明かす。安い賃金で働く外国人は確実に増える。物価の下押し圧力になりかねない。

*2-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180726&ng=DGKKZO33414870V20C18A7EN2000 (日経新聞 2018年7月26日) 外国人労働者受け入れの是非
 政府は外国人労働者の在留資格の基準を緩め、就労を促進しようとしている。人手不足が特に深刻な農業や建設に外国人労働者で対応しようという意図だ。本当のところ、日本は人手不足なのか。データをみると、実際に雇用数は拡大し、労働市場が逼迫して完全失業率も低下している。人手不足はバブル時代以来の水準という声さえある。しかし、当時と大きく違うのは、消費も国内総生産(GDP)もほとんど増えていないということだ。完全失業率とは、労働人口のうち全く働いていない者の割合だ。1時間でも働いていれば完全失業者にはならない。つまり、数字上の失業率が減っても、雇用の中身が劣化していれば、生産は増えない。実際、GDPが増えていない以上、実労働時間は増えていないはずだ。もし増えているなら、効率が低下しているということだ。望ましいことではない。そもそも消費が増えていない以上、生産量を増やしても意味がない。こうした状況で利益を確保するなら、賃金を抑えるしかない。そのための外国人労働者導入だ。そんな目先の話ではなく、少子高齢化によって、総人口を支えるための労働力が不足するから、外国人労働者の導入は絶対に必要だという見方もある。実際、総人口当たりの64歳までの労働人口の比率をみると、減少傾向にある。ところが、同じ比率を65歳以上まで含めて計算すると増えている。これは寿命が延び、働く能力も意欲もある高齢者が増えているからだ。高齢者は支えられるだけでなく、支える側にもなる。雇用と景気の健全な回復は需要が伸び、必要な生産量が増えてはじめて可能だ。それが賃金の上昇につながり、物価も上昇して、ようやくインフレ率の目標達成が視野に入る。ところが需要は回復していない。限られた需要で利益を確保しようと、低賃金で働かせることを考える企業もある。手っ取り早いのは外国人労働者だ。実際、外国人労働者の劣悪な雇用状態が問題になっている。経済停滞の原因は需要の伸び悩みにある。低賃金の維持ばかり考え、雇用の質を落として労働者を確保しても、数字上の雇用が改善するだけだ。需要が伸びなければ景気の本格回復はない。

<外交と経済>
*3-1:https://www.nikkei.com/article/DGKKZO33416300V20C18A7TJ2000/ (日経新聞 2018/7/26) 「日本の技術力低下」43% 本社調査 10年後、中印と逆転も
 日本経済新聞社が実施した2018年度の「研究開発活動に関する調査」では、回答企業の43.9%が日本の科学技術力が低下していると指摘した。上がったとの見方は289社中10社にとどまった。中国やインドなど新興国の台頭が理由で、10年後の研究開発力ではインドや中国が日本を抜くと予想する。現状と10年後の研究開発力を、国別に5点満点で評価してもらった。現状について、インドは平均3.0、中国は3.5と日本の3.8より低い。だが、10年後にはインドは3.8、中国は4.3で日本の3.7を上回った。業界別でみると自動車・自動車部品では、中国が日本や米国を上回り、欧州に次ぐ実力になるという結果だった。日本の科学技術力の低下を指摘しているのはITや機械・エンジニアリング・造船、素材で多く、いずれも50%を超えた。文部科学省科学技術・学術政策研究所によると、研究の質の高い研究論文数は2013~15年平均で日本は世界9位。10年前の4位から急落した。10年前には6位の中国が米に次ぐ2位に上昇した。論文は5~10年後の国の科学技術力を映す先行指標といわれており企業も危機感を強めている様子がうかがえる。こうした状況への対策として各企業が挙げたのは研究分野の選択と集中、企業と大学が共同で研究を進める産学官連携だ。国内での連携については47.1%、海外での連携については36.7%の企業が増やす方針を示した。徹底できるかが今後のカギを握りそうだ。だが国内大学との連携について、企業の44.6%は「迅速な成果を期待できない」などと問題点を指摘した。政府は大学改革をてこにイノベーション創出を目指すが、学問の自由が失われることに大学側の反発も強くどこまで進むか不透明だ。このままでは、米中との差が広がりかねない。

*3-2:https://www.nikkei.com/article/DGXLASGM21H33_R20C17A1EB1000/ (日経新聞 2017/1/21) 各国メディア、トランプ氏の政策疑問視
 米国の第45代大統領にドナルド・トランプ氏が20日就任したことを受け、米国や世界のメディアは就任式の模様や今後の国際情勢の展望を詳報した。米メディアはトランプ氏の就任演説が既存の政治・社会の批判に終始した点を疑問視した。国外では欧州やメキシコのメディアが「米国第一」の姿勢を不安視する一方、ロシアメディアは米国との関係改善への期待を報じた。米紙ニューヨーク・タイムズ(電子版)が注目したのは「エスタブリッシュメント(支配階級)の拒絶を続けるトランプ氏の姿勢」だった。これまでの米大統領は改革を主張しつつ、ある程度、そうした層と付き合ってきたことを指摘。「トランプ氏はどうやって彼らと協力して国を治めるつもりなのだろうか」と、就任演説で示された政策方針に疑問を呈した。一方、ワシントン・ポスト(電子版)はトランプ氏の演説内容が、都市犯罪や雇用の流出など米国の現状に対する非難に終始したと指摘。「オバマ前大統領の民主党政権から共和党政権への移行というより、新しい形の独立した権力や政治を作ると話しているようだった」と評した。英紙ガーディアン(電子版)はトランプ氏が言及した「米国第一」について「オバマ政権の多国間主義に代わる、外交・安全保障政策の中核になることがはっきりした」と述べた。その上で「米国の核兵器や通常戦力を強化するが、他国の防衛や海外の紛争解決のために使う意志は薄いということだ」と読み解いた。仏紙ルモンド(電子版)は就任演説を冷静に報じつつも、米国だけでなくフィリピン、ドイツ、英国でも反トランプのデモがあったことを「世界中でデモ」との見出しで紹介。警戒感が米国外にも広く高まっていることを指摘した。トランプ氏を批判的に報じてきた独紙フランクフルター・アルゲマイネは米欧関係が「複雑になる」と断じた。独誌シュピーゲルはトランプ氏が就任演説で「反対派との闘争を宣言した。世界に不安が広がった」などと指摘した。メキシコの主要各紙の電子版は、新政権の写真や記事で埋め尽くされた。「トランプ氏、環太平洋経済連携協定(TPP)からの離脱、北米自由貿易協定(NAFTA)の再交渉、壁建設を繰り返す」(フィナンシエロ紙)のように関心の高い通商・移民政策に関しての記事が大半を占めた。中国の国営新華社などは就任を速報し、関心の高さを示した。新華社は「米国第一主義を主とし、保護主義を基調とする就任演説」だと指摘。雇用の確保や国境管理の厳格化に関する発言を伝えた。米大統領就任の際の反対派デモ活動がこれまでにない規模だったことにも触れた。ただ、中国国営中央テレビは就任式の様子を中継しなかった。就任演説で中国への批判が出る可能性を懸念した可能性がある。ロシアの国営テレビ「ロシア1」は1時間半のニュース番組枠で40分以上を割いて就任式を伝えた。「(ロシアとの関係改善を主張する)トランプ氏は大統領選での勝利以来、圧力にさらされてきた」「米メディアはロシアとの関係を巡る疑惑を執拗に取り上げ、式典を台無しにしようとした」などと批判の矛先を米メディアに向けた。韓国・聯合ニュースは米韓関係について「(トランプ政権が)防衛費負担の引き上げや、米韓自由貿易協定(FTA)の見直しを要求すれば、同盟が揺れる可能性がある」と分析。中国製品に高い関税をかければ米中の対立が深まって「朝鮮半島に影響が及ぶ可能性が非常に大きい」との見方も示した。

<上海のリニアモーターカーと蘇州刺繍>
PS(2018年7月27、30日追加):公認会計士協会埼玉会の親睦兼視察旅行で、3日間、上海に行ってきた。帰路に、龍陽路から浦東空港まで*4-1のリニアモーターカーに乗り、最高時速は300 km/hだったが、10分程度で空港に到着した。確かに、横幅が広く座席配置は6列で新幹線より1列多く、日本のように地下を走るのではなく、地上を走る設計なので景色がよかった。シートの青色カバーは、モノレール程度の感覚だった。中国は、2001年 3月1日に、このリニアモーターカーの建設を開始し、2004年1月1日には商業運行を開始しているのだから迅速だ。そのほか、上海近郊の道路は6~8車線となっており、高層ビルが立ち並び、長期の街づくり計画もよいと思われた。「百聞は一見に如かず」と言うため、見聞に行かれるとよいと思う。「羽田空港⇔上海浦東空港」は3時間、「福岡空港or九州佐賀国際空港⇔上海浦東空港」なら2時間弱の飛行距離である。
 なお、*4-2のように、九州佐賀国際空港から台湾の格安航空会社LCCが運航し始め、「佐賀⇔台北」での搭乗利用が2018年7月29日にスタートしたそうだ。九州は、これから中産階級の人口が20億人に達するアジア諸国に東京より近いため、他も含めてアジアの航空会社が乗り入れると、次の展開が見えてくるだろう。


     上海のリニアモーターカー           蘇州刺繍

(図の説明:上海のリニアモーターカーと蘇州刺繍の写真。蘇州刺繍は薄い絹地に裏と表で別の図案を刺繍したものや、日本の帯や着物地があったのは驚きだった。日本の光る絹糸をここに輸出すると、面白い製品ができそうだ)

*4-1:http://flyfromrjgg.hatenablog.com/entry/shanghai_linear_maglev (イケてる航空総合研究所 2016.9.11) 上海に行ったらリニアモーターカーに乗れ!
 上海浦東から上海市内に出る最速の方法はリニアモーターカーです。おおっと、リニアモーターカーは和製英語でしたね。英語では「マグレブ」って言うんでした。さぁ、マグレブに乗って上海の街へと繰り出しましょう。ん~やっぱり「マグレブ」って日本語で呼ぶことに違和感があります。「リニア」って呼んだ方が日本語ではしっくりきます。ということで、自分で「マグレブ」が正しいと言っておきながら「マグレブ」は使わずに「リニア」を使うことにします。日本にリニアが開業したあかつきには、きっと「リニア」が世界標準になりますので…。
●片道50元で龍陽路まで
 リニアに乗るには発券カウンターで「往復(Round Trip)」か「片道(One Way)」かを伝えるだけです。片道は50元(750円)。往復で買うと片道40元となり往復で80元(1,200円)となります。乗車時間は7~8分なのに片道750円は高い気がしてしまいますが、速いんだから仕方ありません。距離で考えれば結構長い距離を走っていますので、合理的な値段と言えば合理的な値段です。切符はここで買いましょう。リニアの終点は龍陽路(ロンヤンルー)。上海市内と言ってもあまり中心部には近くないです。上海の中心部に行きたい場合は、龍陽路から地下鉄かタクシーに乗らなければいけません。龍陽路から延伸する計画があったようですが、上手く話が進まずに開業から12年経った今でも開業区間は空港から龍陽路までです。もう少し中心部まで言ってくれたら随分と便利になると思うんですけどね。ホームは待合室の下にあり、時間まではホームに入れません。僕が乗った朝9時台は20分間隔の運行で、たまたま前の列車が出た直後とあり、20分も待たされることになりました。いくら速いと言っても20分も待たされるとせっかくの高速移動が無駄になっちゃいますよね。運行間隔がもう少し短かかったらなぁと思います。
●未来鉄道リニアらしからぬ車内
 リニアが入線してきました。地下鉄並の大きさを想像していると意外と横幅が広くて焦ります。1両の長さも結構長く、地下鉄並の長さを想定しているとかなり長く感じます。車内に足を踏み入れると、豪華なのか質素なのか分からない雰囲気にやや違和感を覚えます。照明や壁などの内装はそこそこなんですが、シートがダサ過ぎるんです。「何?この青色のカバー被ったシート?」ってな感じでお世辞にも格好いいシートとは言えません。座席配置は3-3で新幹線よりも1列多いです。シートは回転させることはできず、前向きの座席と後ろ向きの座席がちょうど真ん中で向かい合う方式を採っています。グループで座る場合はここが一番快適でしょう。シートピッチは意外と狭いです。基本的にガラガラですので、もう少しシートピッチを広くして欲しいと思います。本当に窮屈なんですよ。未来鉄道のリニアのはずなのにシートピッチはLCC並。何回乗ってもシートピッチだけは大きな違和感を覚えます。
●最高時速は430km/h
 浦東空港から龍陽路までの所要時間は約8分。最高時速は430km/hです。ただ、430km/hと言っても最高時速が出ている時間は30秒程度で、残りの時間は加減速に使われておしまいです。しかしやはり加速していくのは気持ちが良いもので、僕は最初の加速フェーズがたまらなく好きです。そして430km/hに達するとかなり速いと感じます。また減速していくのも面白くて200km/hくらいになると異常に遅く感じるんです。加速していく過程の200km/hと減速していく過程の200km/hは、まるで速さの感覚が違うんですよ。相対的な感覚ってホント不思議ですよねぇ。龍陽路に到着しました。わずか8分の高速移動体験でした。「もう終わりかよ」ってな感じです。降りるとこんな風。リニアの龍陽路駅は地下鉄の龍陽路駅と繋がっており、ガラスの向こう側は地下鉄からの人波です。5月1日に行った時の1日目の上海滞在は時刻表上で約6時間半。9時に着いて15時半には次の目的地へ出発します。上海市内で観光できる時間はそんなに長くはありません。それで急いでリニアに乗ったというわけです。
●最高時速300km/hのときもある
 そして空港に戻る時にもリニアに乗ることにしました。20分間隔の運行ではタイミングって非常に重要ですね。8分の所要時間で20分待つのは何だか不合理な気がします。こいつ、結構可愛いヤツなんです。この時の最高時速は301km/h。理由は分かりませんが、たまにこういうことがあるみたいですね。300km/hでも十分に速いんですが、行きの430km/hと比べたらうんと遅いです。300km/hですと中国新幹線よりも遅いことになりますから…。行きよりも遅い300km/hで走った割には、そんなに所要時間が変わることもなく空港に到着。430km/h出してる時間が短いですので影響も少ないんです。
●リニアは一種の観光スポット
 最後に。最高時速430km/hのリニアモーターカー。ここまで速い地上鉄道に乗れるのも世界で上海くらいなもんです。上海リニアは一種の観光スポットだと思って下さい。現地ではあんまり人気のないところが、観光スポット的な感じがします。僕は何度上海に来てもこれに乗りたくなってしまうんです。速い乗り物って無性に乗りたくなりません?何だか鉄道の速度で430km/hと聞くと未体験ゾーンな気がして何だかウズウズしちゃうわけです。そんなわけで、上海に行ったのなら乗ったことがあってもなくてもリニアに乗りましょう。

*4-2:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/252338 (佐賀新聞 2018年7月30日) 佐賀空港の台北線、佐賀からの搭乗スタート
 台湾の格安航空会社(LCC)タイガーエア台湾が運航する佐賀-台北線で、佐賀空港からの搭乗利用が29日、スタートした。従来、台湾からのツアー客を対象に運航していたが、佐賀空港から出発する人も利用できるようになった。カウンター前では、第1便となる午後12時30分発の搭乗手続きのため、日本国内での観光を終えた台湾の家族連れらでごった返した。佐賀空港での記念式典で山口祥義知事は「佐賀からの利用が可能になり、台湾の人は佐賀と近くなったと実感しているのでは」と歓迎の言葉を述べた。タイガーエア台湾の張鴻鐘董事長は、昨年6月から始まったツアー客限定のチャーター便の就航に至る経緯を振り返り「台北-佐賀間の定期便就航の手続きは最終段階にある。台北への第1便には当然、山口知事に乗ってもらうつもり」と話し、関係者の笑いを誘った。佐賀を中心に4日間、家族4人で観光地を巡った台北市の林芊彣さん(15)は「唐津城と祐徳稲荷神社が印象に残った」と話した。日本には数え切れないほど訪れたといい「佐賀を含め、日本と台湾を結ぶ拠点が多くなるのは喜ばしい」と笑みを浮かべた。台北便は週2往復で、木曜と日曜に運航している。

<豪雨被害から将来を見据えた安全な街づくりへ>
PS(2018/7/28追加):*5-1のように、記録的豪雨を含む大雨被害があった西日本地域に「激甚災害の指定」を行って復旧事業の補助率を上げるそうで、大災害が発生した地域が激甚災害の指定を受けて補助率を上げてもらえるのは有難いものの、激甚災害の指定は、「復旧事業」に限られているのが問題だ。何故なら、例えば、広島県倉敷市のように、住宅地が天井川の底より低い場所にあり、堤防だけが頼りなどというセキュリティーを無視した街づくりをしている場所に、年中復旧費用を出しているほど我が国の財政はゆとりがないため、少子高齢化して人口が減少している現在、住宅地には高い安全な場所だけを選び、災害リスクのある地域は農漁業地帯にするなど、激甚災害の指定は「復旧」に限らず「街づくり」をも応援しなければならないからだ。具体的には、住宅地は高所に作って一戸建てやマンションを分譲し、これまでの住宅と等価交換できるようにすればよく、高齢世帯は介護サービス等を受けやすい便利なマンションに移るのがよいと思われる。
 なお、*5-2のように、農業も甚大な被害は受けるのだが、住宅と比較すればやり直しが効く被害だと言える。そのため、専門家のアドバイスを受けながら、その土地にあった農産物の再配置を考えるのがよいだろう。

   
      2018.7.14朝日新聞          土砂と災害ゴミ

(図の説明:災害に遭われた方々にはお見舞い申し上げるが、自然条件から考えて災害に遭いやすい地域で、今後も同じことが起こり易い場所が多いように見える。そのため、必要な場所は災害ゴミと土砂を使って埋め立てたり、住宅は高台に移転したりするなど、国民の努力と血税が「賽の河原の石積み」にならないような復興計画を立てるべきだ)

*5-1:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO33321010U8A720C1EAF000/ (日経新聞 2018/7/24) 西日本豪雨を激甚災害指定 政府、復旧事業の補助率上げ
 政府は24日、西日本を襲った記録的豪雨を含む大雨被害の激甚災害指定を閣議決定した。指定は27日付。国から被災自治体の復旧事業に対する補助率を1~2割程度引き上げる。自治体の財政負担を軽くし、道路や河川、農地などの復旧事業を後押しする。指定対象は梅雨前線の停滞などに伴う被害。地域は限定せず、西日本豪雨より前に発生した北海道の大雨被害も含む。公民館や学校といった公共施設の復旧事業も支援する。被災した中小企業の借り入れを債務保証する「災害関係保証」を適用し、資金繰りを支える。激甚指定は従来、数カ月かかることもあった。政府は昨年12月に運用を見直し、最速1週間程度で指定見込みを公表できるよう改めた。安倍晋三首相は15日、運用改善後初となる指定見込みを公表。21日に広島県を視察した際、24日の閣議決定を表明した。激甚災害は政府の中央防災会議が定めた基準に基づき指定する。復旧に必要となりそうな費用の額などを踏まえ、判定する仕組み。近年では、2017年6~7月にかけての九州北部豪雨や16年の熊本地震を指定した。

*5-2:https://www.agrinews.co.jp/p44709.html (日本農業新聞 2018年7月27日) 西日本豪雨 ミカン島の被害甚大 若手 逆境に再興誓う 松山市
 西日本豪雨は、新規就農者や若い後継者の田畑を直撃した。若手農家とともにブランド化を進めてきた矢先の大被害に、産地は苦境に立たされている。松山市の興居島では、通行止めの解消など生活環境の復旧に伴い、農業被害が次々と明るみになっていく厳しい現実の中、若手らは消防団の活動に励む。つらい気持ちを抑え「ミカンの島を必ず復興する」と誓う。
●園地復旧 「一歩ずつ」
 「甘平」「紅まどんな」「せとか」など愛媛県が誇る中晩かんの木が根こそぎになる土砂崩れが各地で発生した松山市泊町。研修を経て4月に就農したばかりの川根勝弘さん(45)の園地も半分が被害に遭った。同町には30、40代の若手農家が毎年増えていた。JA松山市に出荷する仲間とともに、安定収入が見込める「紅まどんな」で勝負をかけようとしていた矢先の大打撃だった。川根さんは水槽まで流される豪雨の猛威を目の当たりにした。「まだ生きている木もあるが、パイプも水源も被害に遭い、防除も摘果もできない。どうすればいいのか」と落ち込む。川根さんら若い農家は連日、消防団活動に出向く。あまりの打撃に離農を口にする高齢者もいるという。園地の面積が小さく高齢化が進む同町では、規模拡大が難しい。かんきつは木を植えて収入が見込めるまで年数を要し、並大抵の努力では復旧できないことは川根さん自身が痛感している。それでも「ここまでブランドをつくってきた。一人じゃない。一歩ずつ頑張れば5年、10年と時間はかかっても復活できる」と園地に向かう。
●先輩農家と手携えて
 松山市由良町は代々、急傾斜地を切り開いてミカンを作ってきた。近年は、JAえひめ中央と農家が団結して「紅まどんな」などを地域ぐるみで栽培。そんな、小さくても光る産地を豪雨が襲った。同JA経営支援課の林諭さん(40)は「後継者が多く、産地を挙げて高級かんきつを生産する目標に向けて盛り上がっていた」と肩を落とす。1・5ヘクタールを栽培する坂本和久さん(35)は、伊予カンの園地が崩れ、水源の池が流され、「紅まどんな」のハウスも被害に遭った。島の至る所が被害に見舞われ「これから帰ろうとする若者の足止めになるのが心配。農業には自然災害のリスクがあると教訓にするしかない」と冷静に語る。坂本さんら若手農家は連日、消防団活動や復旧に泥まみれで作業する。そんな若者の姿に、地域の年配者らも「若い後継者のためにも踏ん張ろう」と考えている。「島の若い農家が重機で道路の土砂を取り除き、行けるようになった園地もある。泣いてばかりはいられない」と農家の石田六一郎さん(75)。農家の山岡建夫さん(66)は「後継者世代の被害も深刻。だが、若者のためにも水や防除を何とかしたい」と繰り返す。JAの林さんは「農業がないと地域は成り立たない。水害前、地域は活気に満ちていた。若者と先輩農家が手を携え復旧する」と力を込める。

| 経済・雇用::2018.1~ | 07:48 PM | comments (x) | trackback (x) |
2018.5.14 経済と環境の必然性から見た自動車、エネルギー、医療・介護の進路 (2018年5月15、16、19、20、21日に追加あり)
     
        2018.5.12日経新聞     2018.5.10、2018.5.13日経新聞  

(図の説明:日産とルノーはどちらがグループの利益に貢献しているかという論調になっているが、経営方針を間違わずに必要な投資を行うことが最も重要である。そして、日産・ルノー組の成功は、日本人でないゴーン社長の経営方針決定による成功によるため、今後とも日産の経営陣がイニシアティブをとらないのが成功への道だろう。しかし、再生医療に関しては、多くのヒト幹細胞候補があって次々と応用に供せられているため、集中と選択をするのはまだ早すぎる)

    
        2018.5.13東京新聞           2018.5.10日経新聞

(図の説明:経産省の次期エネルギー基本計画骨子案は、再エネの普及が世界より大きく遅れ、世界では手終い始めている原発に20%以上も依存をしようとしており、経産省の思考停止が明らかだ。そのため、経産省に任せておいては、中国はじめアジア諸国にも遅れることになる)

(1)自動車の進路は明確であること
1)競争ルールの変化とライバルの増加
 自動車の競争ルールは明らかで、「①地球環境の維持目的から、アジアだけでなくアフリカ大陸まで自動車が普及しても環境を汚さないこと」「②少子高齢化の進行から、自動運転や高度な運転支援を行えること」が、必要条件になる。

 そのような中、2018年3月期に過去最高益を更新したトヨタ自動車の豊田社長は、*1-1のように、「ライバルも競争ルールも変わり、生死をかけた闘いであり、テクノロジーカンパニーは我々の数倍のスピード、豊富な資金で新技術に投資を続けている」としているが、これは日本では20年前から予測できたことであるため、最初からEVとFCVに集中投資していれば、遅れることはなかった筈だ。

 また、コストには、コスト削減と原価低減があり、コスト削減は既にある技術を改善して地道にコストを減らすことで、これはトヨタはじめ日本企業のお家芸だ。一方、原価低減は、スキームを変えて劇的にコストを減らすことで、例えばガソリンエンジンをやめてEVにしたり、原発や化石燃料をやめて再エネに替えたりすることなどであり、コスト削減効果がずっと大きい。

 しかし、日本政府や日本企業は、自らスキームを変えて原価低減する判断をすることができず、他国がやって初めてあわてて追いつこうとする(これは、日本における文系への理数教育の不十分さによるだろう)。EVのケースでも、私が1995年頃にEVの提案をした後、すぐEVの開発・販売を行う決断をしたのはゴーン氏率いるルノー・日産組であり、日本人を社長とする他の自動車大手は、燃費の改善やハイブリッド車でお茶を濁した。

 そして、現在は、*1-4のように、「日産・ルノーはどちらが牽引役か」という問いになっているが、先見の明ある判断こそが無駄な開発コストをかけずに収益力を上げる重要な要素であるため、ルノーの方が牽引役としてふさわしく、ゴーン氏の任期が切れる時期を視野にしているのなら、再度、フランスから優秀なCEOを招くのが、双方が納得できる有効な方法になろう。
 
 なお、EV・FCV・自動運転・再エネによる自家発電などの技術を確立すれば、*1-3のような鉄道も含め、移動手段全体をもっと合理的にできる筈だ。そのため、このエネルギー変革は、自動車会社・JR・地域にとって、大きなチャンスにすることが可能である。

2)世界の市場へ
 *1-2のように、トヨタが総力戦でアフリカ大陸の開拓を始めたのは面白い。アジアの次はアフリカであるため、アフリカの豊かな自然を壊さないように、アフリカでハイウェイや高速鉄道を整備しながら、EV・FCVやそれらの電車を走らせ、太陽光・地熱などの再エネ発電で経済を進めればよいと考える。つまり、日本で行った途中の試行錯誤は省略してよいのだ。

 また、自動運転には地図が不可欠だが、日本にはパイオニアなどのナビを作る会社やゼンリンなどの正確な地図を作る会社もあり、自動運転車の必需品となる地図は、世界をグーグルに独占させなくても、現在ある地図を世界地図に変えれば、既存の技術で世界市場が視野に入る。

(2)研究開発の遅れと武田薬品のシャイアー買収
1)先進技術を獲得することの重要性
 日本は、*1-5のように、再生医療分野の応用研究に関する特許出願で、欧米・中国・韓国の後じんを拝しているそうだが、再生医療の応用研究を始めたのは1995年頃であり、経産省・厚労省・文科省が協力して本格的に始めたのは、私が衆議院議員をしていた2007年頃のことであり、どちらもそれを言い出したのは私であり、世界の先を行っていた。

 にもかかわらず、現在、日本の特許出願や論文が欧米中韓を下回っているのは、①iPS細胞以外の再生医療を排除したので、iPS細胞以外の研究者は国内で研究しにくくなり、外国に脱出して研究している人もいること ②常識や多数を善とする先端科学とは反する価値観を浸透させたこと ③日本のメディアが、科学とは無関係の自らの基準で論文を叩きすぎたこと ④勉強しないことや理数系に弱いことをファッションにする傾向があり、理数系の勉強を疎かにしたこと などが原因だ。

 しかし、ルノーが日産と合併したいと考えるのは、日産・三菱がEVやFCVの技術を持っているからであり、武田薬品のシャイアー買収のように、遅れたから低金利の金にモノを言わせて買収し、技術を獲得しようという試みは、相手会社に歓迎されないのでうまくいかない。つまり、自らが得意分野を持っていない提携や買収は相手会社に歓迎されず、高い買い物になって買収価格も回収できないケースが多いのである。

2)武田薬品のシャイアー買収について
 武田薬品が、*1-6のように、アイルランドのシャイアーを総額7兆円弱の過去最大金額で買収したとして新聞が大騒ぎしていたが、やはり裏に投資銀行の暗躍があり、この案件は、関係者の利益が最大の目的で成立したのではないかと思われた。

 何故なら、シャイアーが開発して特許を持っているのは難病薬であるため、利益率がいいと言っても大量に売れるわけではなく、それが総額7兆円もの買収価格に相当するかどうか不明だからである。

 日本企業は、金融緩和で低金利の金にモノを言わせ、持たぬ技術を獲得するために敵対的M&Aを行って得意になっていることがあるが、そのようにして失敗した事例に、東芝のウェスティングハウス買収がある。そのため、せっかくよい製品を持っている武田薬品が似た運命を辿らないことを、私は希望している。

(3)日中韓首脳会談
 安倍首相と李克強首相が、*2-1のように、経済を軸とした実務レベルの合意を行って日中両国の雪解けを演出したのはよかったのだが、尖閣諸島問題は棚上げにしてそのままだった。

 また、会談後の共同記者発表で、安倍首相は「日本と中国が力を合わせてアジアの旺盛なインフラ需要に応えていく」と述べられ、李首相も「中日は世界の主要経済大国だ。共に国際貿易の自由化を守り、経済グローバル化の発展を推進することで合意した」と語られ、よいことだ。

 しかし、*2-2のように、中国の李克強首相は、日本の経済界が東京都内で開いた歓迎レセプションで、「日中両国は世界の主要経済国として、保護主義に反対し自由貿易を守る責任がある」と述べられたそうで、それは尤もなことではあるが、既に中国が食品・EV・太陽光発電などで対日輸出の方が多くなる状況であることを考えると、油断していた日本は、米国と同様、自由貿易を喜んでばかりいる立場ではない。

 なお、李首相が、「日中が連携して世界経済の発展に貢献すべきだ」「『一帯一路(現代版シルクロード)』と日本を繋ぎたい」と述べられたのにも、私は賛成だ。

(4)エネルギーの転換
 *4-1、*4-2のとおり、現在は、再生可能エネルギー(再エネ)を拡大するエネルギー計画の方針転換に踏み込むべき時だが、経産省は、次期エネルギー基本計画の骨子案で、「原発依存度を下げる」としながら「原発は重要なベースロード電源」と位置付けて2030年度の原発の発電割合を20〜22%としており、自己矛盾だらけで本気度が感じられない。

 世界は、既に再エネへのシフトに舵を切っており、やっぱり日本は遅れた。しかし、私は、フクイチ事故後、速やかにこのブログにその解決策を記載しており、それは、全体から見て唯一の解決策であるため、世界は「パリ協定」でその解決策を速やかに取り入れ、再生エネの普及と価格低下を実現して、論理ではなく感情で突っ走った日本は時代遅れになったわけである。

 また、技術進歩により再エネの普及割合は経産省の予想を超えるスピードで進んでいるため、経産省が長期的な電源毎の発電割合を決めるのは、むしろ再エネの普及を妨げる。そのため、できるだけ、再エネを推進する方針で原発の再稼働を控えればよいのだ。そのために必要な原発地元への支援も、フクイチ事故後すぐにこのブログに記載している。

 なお、*4-3のように、小泉元首相も「原発支援のカネを自然エネルギーに向ければ、原発が供給していた30%程度の電力は、10年で自然エネルギーによって供給でき、将来、全電源を自然エネルギーにできる」と言っておられるが、まさにそのとおりで、電源こそ選択と集中を行うべき時期なのである。

(5)医療・介護の一部産業化
 介護制度についても、*3-1のように、「2025年には未曽有の超寿社会になるため、医療や介護サービスの需要が急増して費用も大幅に膨らむ」というような報道が多い。しかし、70代後半になると足腰が弱って介護を必要とする機会が増えるのは、65歳前後で定年を迎えて運動量・緊張感ともに減るからで、退職年齢を70歳以上に上げるか、定年を無くすかすれば医療・介護費は減るだろう。

 また、①1人暮らし ②高齢者数の増加 ③医療・介護費の増大 も課題とされることが多いが、これを問題としか捉えない点が、厚労省はじめ政府リーダーの頭の悪さだ。何故なら、人口の年齢構成が変われば市場のニーズが変わるのは当然であり、日本はこの意味で中流階級の多い課題先進国であるため、必要とされるサービスを的確に供給すれば、上記の中国はじめ世界で歓迎される新しい産業を作ることができるからである。

 そのためには、政府の社会保障だけでなく、*3-3のセコムの見守りサービス・ホームサービスや、*3-4の東急グループが知識とノウハウを結集して作る誇りをもって住める上質なシニアレジデンスのように、民間企業の知見と実行力がモノを言うため、政府・自治体は、これらを後押しするのもよいと思われる。

 なお、「若者が足りない」という発言もよく聞くが、*3-2のように、広い視野で外国人の受け入れを一般的に行えば、国民負担増なく、世界と日本の問題を同時に解決できるのである。

<自動車の進路>
*1-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180510&ng=DGKKZO30285370Z00C18A5EA2000 (日経新聞 2018年5月10日) トヨタ、異業種と生存競争 社長「ルール変わった」 研究開発、今期も1兆円超
 トヨタ自動車は2018年3月期に過去最高益を更新し、19年3月期も底堅い業績が続く見通しだ。それでも豊田章男社長は9日、「ライバルも競争のルールも変わり、生死をかけた闘い」などと事業環境の厳しさを強調した。今期の研究開発費と設備投資の合計額は2兆4500億円と、11年ぶりに過去最高を更新する。自動運転など新たな領域で、海外IT大手など異業種の巨人との競争に備える意味合いがある。「テクノロジーカンパニーは我々の数倍のスピード、豊富な資金で新技術に投資を続けている」。東京本社(東京・文京)での決算説明会で、豊田社長の論点は「未知の世界」という競争環境、「お家芸」である原価低減、トヨタ生産方式の徹底など多岐にわたった。成果が出るまで時間のかかる自動運転や電動化、コネクテッドカー(つながる車)への投資が増え、経営方針を正確に理解してもらう必要があるためで、説明会は2時間超と異例の長さになった。19年3月期の研究開発費は1兆800億円と2年連続で過去最高で、次世代技術には35%を費やす。設備投資額との合計は5年前と比べて3割増やす。3月にはデンソー、アイシン精機と自動運転を開発する新会社を設立。元グーグル幹部をトップに据え、数年で3000億円以上を投じる。6月には主力車を刷新し、コネクテッドカーの市販車を公開することも明らかにした。トヨタの視線の先にあるのは海外IT大手の姿だ。米グーグルは米国で地球200周分の公道テストを終え、年内に世界初の無人輸送サービスを始める計画。中国の百度(バイドゥ)も、独ダイムラーなど世界企業約50社と組んで、自動運転開発「アポロ計画」を進める。自動運転などの新領域が主戦場となり、研究開発にどれだけの金額を投入できるかが今後の競争力を左右する。企業財務のデータベース、QUICKファクトセットでみると直近1年間のトヨタの研究開発費は約94億ドル。ダイムラーや独BMWを上回り、自動車業界では高い水準にある。ただ、海外IT大手との比較では安心はできない。米アップルは約127億ドルと自動車業界で研究開発費が最大の独フォルクスワーゲン(VW)に迫り、グーグルは約177億ドルとトヨタの2倍近い規模だ。研究開発費などの原資となる現金創出力(営業キャッシュフロー)でも差がある。トヨタは365億ドルとVW(約29億ドル)などを突き放し、自動車業界では抜きんでている。しかし、グーグル(約391億ドル)にはとどかず、アップル(約674億ドル)ははるか先を行く。「トヨタの真骨頂はトヨタ生産方式と原価低減の2つ。未来を生き抜くために徹底的に磨く」。研究開発費や投資の拡大が避けられないだけに、既存車種の開発や生産の方法の見直しには今まで以上に力を入れる。トヨタ生産方式をさらに徹底するため、提携したスズキやマツダのノウハウも吸収していく。4月には子会社の日野自動車がVWの商用車部門と次世代技術などで提携。「まさか乗用車のライバルと合意するとは」(トヨタ系部品首脳)と衝撃が走った。大きな転換期を「100年に一度の大チャンスととらえ、これまでにない発想でチャレンジする」(豊田社長)という。

*1-2:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO29917750X20C18A4940M00/ (日経新聞 2018/5/7) 最後の「辺境」 総力戦でアフリカ開拓(トヨタの未来)
 南アフリカ共和国のダーバンにあるホテル。アフリカの約40カ国をカバーするトヨタ自動車の販売代理店の代表者が3月に集まった。「顧客に近づいて強みを伸ばしていこう」。アフリカ本部トップの今井斗志光常務役員は代表者会議で檄(げき)を飛ばした。今井氏は1月、豊田通商からトヨタに役員として招かれた異色の経歴を持つ。豊田通商でアフリカ事業に約30年関わってきた。「中長期でトヨタをさらにアフリカで強くして欲しい」。今井氏が昨年11月、トヨタの豊田章男社長から言い渡されたミッションの一つがアフリカ攻略だ。アフリカの人口は2050年に25億人と中国を抜く規模に拡大する見込み。新車市場はまだ年間約120万台だが、人口増と経済発展で将来は巨大市場に育つと予測される。トヨタの販売台数はアフリカでまだ約20万台と、グローバルの約2%にとどまるが存在感は大きい。これから本格的に車の普及期に入る地域でマーケットリーダーの地位を守っていけるかはトヨタの未来の成長力を左右する。「フリートデー」と呼ぶイベントが数回に分けて南アフリカで昨年開かれた。アフリカの一般消費者にとって車は高根の花で、新車を買うのは政府や企業、非政府組織(NGO)が中心。こうした顧客を50団体ほど招き、工場やテストコースを見てもらう。フリートデーはトヨタや豊田通商など「オールトヨタ」で実施した初のイベントで優良顧客にトヨタをより身近に感じてもらい、ブランド力を高めるのが狙いだ。トヨタがアフリカで事業を始めたのは1950年代後半と早い。南アフリカなどに多目的スポーツ車(SUV)「ランドクルーザー」を輸出したのが始まりだ。62年には南アフリカで工場を稼働させ、地道にアフリカ各地に販売、サービス拠点も整備していった。自然が豊かなアフリカでは車の故障が命に関わるアクシデントになる。「頑丈で壊れにくい」といった評判が広がり人気となった。今井氏は「アフリカでは多くの人がトヨタ車を買いたいと言い、それを裏切ってこなかった。信頼の『残高』が高いと思う」という。ただアフリカでは中国や韓国勢の参入も相次ぎ、競争は激化している。車のシェアなど新サービスの浸透も予測され、従来の延長線ではない戦略も必要だ。「ウーバーのドライバーになるなら、トヨタ車はどうだい」。米ウーバーテクノロジーズがケニアに設けた拠点。ここでウーバーに新規登録する運転手に試験的に中古車を売り込んでいるのは豊田通商グループのトヨツウオートマートケニアだ。アフリカでは固定電話を飛び越え、スマートフォンが普及した。先回りしてニーズを取り込む。トヨタの新興国での存在感は東南アジアを除けば十分ではない。巨大市場に育った中国やインドでは出遅れが目立ち、巻き返しを急ぐ。そうした中、アフリカは長い年月をかけて市場を切り開き、開拓者としての強さを残す地域。試行錯誤を重ねながら「最後の辺境」で勝ち抜けるか。オールトヨタの総力戦が続く。

*1-3:http://qbiz.jp/article/133601/1/ (西日本新聞 2018年5月11日) JR九州が過去最高益 鉄道の収益も改善 3月期連結
 JR九州が10日発表した2018年3月期連結決算は、訪日外国人客の増加を受け鉄道旅客運輸収入が増えたことなどで、売上高が前期比8・0%増の4133億7100万円だった。経常利益が10・7%増の670億4500万円、純利益が12・6%増の504億1千万円となり、売上高、利益ともに過去最高だった。
新幹線利用客の増加や熊本地震の反動などで鉄道旅客運輸収入が46億円増加したほか、キャタピラー九州の連結子会社化などにより増収となった。九州豪雨や台風18号の災害による特別損失を38億円計上したものの、熊本地震があった前期より特別損益は改善した。単体の鉄道事業は282億円の営業利益を確保。株式上場に伴う経営安定基金の取り崩しなどによる利益押し上げ効果を除くと、実質的には約20億円の赤字だったが、増収や効率化で前期より大幅に改善した。青柳俊彦社長は記者会見で「ローカル線の赤字はさらに拡大している」とし、地方路線はなお厳しい状況にあると説明。自治体などの理解を得るため「鉄道事業の収支構造をある程度、お話しすることになるのではないか」と述べ、路線別の収支などを公表する可能性を示唆した。時期は未定としている。次期は、鉄道事業の減価償却費増加などにより、増収減益を見込む。

*1-4:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO30433100S8A510C1EA5000/?nf=1 (日経新聞 2018/5/12) ルノー・日産、主従は? 資本の論理か「実力」か
 仏ルノーが資本提携先の日産自動車からの利益を支えに業績を回復させている。ルノーの連結純利益に占める日産からの貢献分は5割を超えた。両社には資本関係を見直す構想も浮上しているが、どちらが連合のけん引役なのか考え方に相違がある。資本の論理か企業の実力か――。巨大自動車連合が新たな経営形態を模索する上で亀裂が生じる可能性がある。「あらゆる選択肢を排除しない」。両社の会長を務めるカルロス・ゴーン氏は、ルノーの最高経営責任者(CEO)としての任期が切れる2022年までに連合の新しい枠組みを築く意向を示す。背景には「日産をルノー傘下にしっかり組み込み、両社の関係を不可逆的なものにする」という仏政府の意向がある。ルノーと日産は99年に資本提携し、三菱自動車を加えた3社で連合を組んでいる。ルノーは日産に43%、日産もルノーに15%それぞれ出資しており、日産は三菱自株式の34%を保有する。ルノーは欧州債務危機などで業績が低迷した時期があったが、14年12月期以降は4期連続で連結純利益が増えた。株価も上昇し、13年末に約2兆2000億円だった時価総額は足元で約3兆4千億円と、一時は2倍近い開きがあった日産に近づきつつある。一見、ルノー本体の快走による好循環に見えるが、実は業績拡大を陰で支えているのは日産への出資から得た「持ち分法投資利益」だ。ルノーの純利益に占める日産からの利益の割合を有価証券報告書などをもとに計算(一部日経推定含む)すると、17年12月期のルノーの純利益51億ユーロ(約6600億円)のうち、約5割を日産からの利益が占める。13年12月期からの5カ年でみても、毎年5割以上を日産分が占め、多い年では純利益の全てを日産から得ている年もあった。日産株から受け取る配当金も巨額だ。日産は17年3月期に900億円近くをルノーに支払った。ルノーにとって日産は自動車産業のパートナーという立場を超え、「経営上もはや欠くことのできない存在」(外資系証券アナリスト)といえる。そのため、資本の論理でいえば43%を出資するルノーが企業連合の盟主になるが、日産からしてみると、ルノーの業績を支えている稼ぎ頭の「我こそが主役」という意識が強い。17年の販売台数も日産の581万台に対しルノーは376万台。ある日産幹部は「企業としての力は当社の方が上だ」と言い切る。日産とルノーが資本関係を見直す検討をしている背景には、ルノーに15%を出資する筆頭株主の仏政府からの圧力があるとされる。仏政府からすれば、時価総額が日産に近づきつつある今こそ、経営統合などルノー主導での日産の取り込みに絶好のタイミングと見ていてもおかしくない。日産の西川広人社長兼CEOは「会社ごと一体化することにメリットは見えない」と合併などの経営統合には慎重姿勢だ。新たな経営形態の骨格が固まるには水面下での綱引きがしばらく続きそうだ。

*1-5:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180513&ng=DGKKZO30433300S8A510C1EA1000 (日経新聞 2018年5月13日) 再生医療 応用で見劣り 日本の特許出願・論文、欧米中韓下回る
 iPS細胞をはじめとする再生医療分野で、応用研究に関連する特許出願では日本が欧米や中国、韓国の後じんを拝していることが、特許庁による調査で分かった。再生医療の国内市場規模は2030年には1兆8000億円になるとの試算もある。知的財産をおさえられると、将来的に市場を奪われかねない実態が浮き彫りになった。同庁は新産業につながる注目技術について、特許出願や学術論文の状況を調べる技術動向調査を毎年実施。今回は再生医療につながる「ヒト幹細胞」関連技術や電気自動車(EV)に使う蓄電池「リチウム2次電池」など12テーマを調べた。調査結果は14日発表する。ヒト幹細胞は様々な細胞に分化し、傷ついた組織や臓器の機能を戻す。07~15年では、幹細胞の分離精製・増殖など基礎技術の出願数は日本は米中と拮抗したが、細胞移植など応用に関する「再生医療・細胞治療」は米国は日本の約5倍、中国が約2倍に達し、欧州と韓国も日本を上回った。米中はiPS細胞より実用化で先行する胚性幹細胞(ES細胞)で応用技術を開発。同庁は「iPS細胞による再生医療産業の発展に影響する可能性がある」と分析する。論文数では出願者のランキング(07~15年)はトップは米カリフォルニア大学。仏国立保健医学研究機構、韓国のソウル大学校が続き、iPS細胞を発明した山中伸弥教授が所属する京都大学は8位だった。特許取得が現状の研究開発力を示すなら、学術論文は5~10年先の中長期の研究開発力を占う指標。日本の競争力に陰りが出ている。EVの走行距離を高める次世代電池として期待される「リチウム2次電池」の調査でも、日本の遅れが懸念された。リチウムイオン電池より性能が高い全固体電池は顕著だ。中核となる電解質材料に関する特許出願で酸化物系や硫化物系などを含めると日本は09~15年で1243件と222件で2位の韓国の6倍近く特許を出願するなど他国を圧倒した。トヨタ自動車は硫化物系、酸化物系ともに世界の主要企業を上回った。ただ中長期の研究力を測る論文数では日本は米や欧州、中国より少なかった。酸化物系は12~13年こそ日本の論文数は多いが、14年に米や中国、韓国とほぼ同じ水準。16年は米と欧州の論文数の半分。硫化物系は日本勢が16年も1位だが、米や欧州、中国、韓国との差は縮んできている。リチウム2次電池全体で見ても、出願者ではトヨタが2位、パナソニックが3位など日本が健闘するが、論文になると状況は変わる。12~16年の論文では1位の中国科学院から4位の清華大学まで中国勢が上位を独占。10位以内に中国籍の機関が8つ入る一方、日本は1つも入っていない。

*1-6:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180510&ng=DGKKZO30251050Z00C18A5EE9000 (日経新聞 2018.5.10) 武田メガ買収 投資銀が陰の主役、助言役、有力日米6社が獲得 野村とゴールドマン主導
 武田薬品工業によるアイルランド製薬大手シャイアーの買収は、日本のM&A(合併・買収)史を塗り替える案件になる。買収総額は7兆円弱と日本企業のM&Aで過去最大。舞台裏では案件獲得を狙う投資銀行の攻防があった。最終的に助言役に名を連ねたのは「オールスター」とも呼ぶべき日米の有力6社。欧州勢は苦杯をなめ、明暗をわけた。グローバルな再編を繰り返してきた製薬業界。日本勢は蚊帳の外に置かれてきたが、武田がついに社運を懸けて動いた。水面下で案件を主導したのが、国内証券最大手の野村ホールディングスだ。主幹事として築いた武田との長年の関わりを武器に、新株発行と現金を組み合わせた買収の仕組みを整えた。野村は昨年度のM&A助言の国内ランキングで首位だった。今回の1件だけで、野村が昨年度手がけたM&A総額(6兆7千億円)に並んだ。この巨額買収に関われたかどうか。投資銀行業界に与える影響は甚大だ。武田側には米JPモルガン・チェースも付いた。外貨調達など資金面でも支援する。フランス出身の武田のクリストフ・ウェバー社長が信頼を置くフランス人バンカーが在籍する米エバコアも助言役に入った。買収交渉はシャイアーが米国本社を置く米ボストン近郊、アイルランド、英国ロンドンなどを舞台に行われた。投資銀行が仲介し頻繁に国際電話をつないで詳細を詰めていったようだ。シャイアー側に付いたのはゴールドマン・サックス、シティグループ、モルガン・スタンレーの米大手3社。中でもゴールドマンが交渉を主導した。M&A助言業務は「売り手」の会社に付くのが鉄則。交渉が頓挫しない限り、確実に案件をものにできるからだ。投資銀6社が受け取る報酬総額は空前の200億円規模になる可能性もある。シャイアー買収を巡って武田と争ったアイルランド製薬大手アラガンは、買収検討を表明後に株価が急落。わずか数時間後に提案を取り下げた。米国勢で漏れたバンクオブアメリカ・メリルリンチはアラガンに助言していた。UBSやドイツ銀行といった欧州勢も苦杯をなめた。製薬業界では対抗提案が出ることも少なくない。ただ今回は日米6社が武田案件に関与し、競合他社が即座に対抗案を出すのが難しくなっている面もある。武田の買収がもたらす恩恵は助言業務以外にも広がる。約3兆円のつなぎ融資の後に想定される社債などの引き受けを巡り、すでに投資銀各社の動きが激しい。ただ、先行きは予断を許さない。巨額買収の負担を嫌気し武田株は年初来高値の1月中旬から3割強下げた。株主の支持を得られるかは不透明。今回は買収成立時に得られる成功報酬の比率が高いとされているのも難しい案件の証しだろう。日本企業では珍しい株式交換を活用し、巨額の買収に乗り出した武田。ある投資銀の幹部は「無事に成立すれば、成長を加速させる日本企業の大型M&Aへの道を開く」と期待を寄せる。

<日中韓首脳会談>
*2-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180510&ng=DGKKZO30285630Z00C18A5PP8000 (日経新聞 2018年5月10日) 日中、急速に「雪解け」 トランプ氏への危機感 後押し、自由貿易で連携強調 元建て債券の投資緩和
 安倍晋三首相と中国の李克強(リー・クォーチャン)首相は9日の会談で、経済を軸とした実務レベルの合意を成果として並べ、日中両国の雪解けを演出した。保護主義を強めるトランプ米大統領への危機感が、結果的に日中の関係改善を加速した形だ。ただ、両首相は、沖縄県・尖閣諸島をめぐる問題や歴史問題など両国間に横たわる火種は素通りした。安倍首相と李首相は9日の会談で、経済分野での連携姿勢を強調した。日本の金融機関が人民元建てで中国の株式や債券に投資する際の規制緩和や、日本産食品の輸入規制緩和に向けた協議体設立など合意事項をずらりとそろえた。2012年に日本政府が踏み切った尖閣諸島の国有化を機に、日中関係は「戦後最悪の状況」(日中外交関係者)に陥った。今回の合意は、関係が実務協力を進める段階まで回復したことを示す。急速な関係改善を後押ししたのはトランプ米大統領の「米国第一」の姿勢だ。中国は貿易問題などでの緊張を受け、日本を含む近隣国との関係修復を急いでいる。安倍首相には秋の自民党総裁選をにらみ外交成果を打ち出したい思惑があり、両国の利害が一致した。両首相がアピールしたのが経済協力だ。安倍首相は会談で「戦略的互恵関係の下、全面的な関係改善を進め、日中関係を新たな段階へ押し上げていきたい」と表明。会談後の共同記者発表では「日本と中国が力を合わせてアジアの旺盛なインフラ需要に応えていく」と述べた。李首相も「中日は世界の主要経済大国だ。共に国際貿易の自由化を守り、経済グローバル化の発展を推進することで合意した」と語った。 日中間で停滞していた金融協力で踏み込んだ。中国には機関投資家を対象に、元建てでの中国の株式や債券への投資を認める人民元適格外国人機関投資家(RQFII)の投資枠がある。取得しているのはアジアや欧米など10以上の国・地域で、日本の金融機関は政治情勢などを理由に与えられていない。今回の首相会談で2千億元(3.4兆円)の投資枠の付与で合意した。中国は外資の投資に規制をかけているが、RQFIIの枠を得た金融機関は新規株式公開(IPO)などに参加できる。枠を得ようとするメガバンクや証券会社などの動きが活発になる見通しだ。両国の通貨交換(スワップ)協定の再開に向けた協議入りでも合意。同協定は金融危機時などに互いに通貨を融通しあう仕組みだ。市場の混乱などで元の調達が難しくなった際、日銀を通じて調達できるようになる。第三国へのインフラ輸出でも協力。アジア開発銀行(ADB)の試算によると、アジアのインフラ需要は年1.7兆ドル(約185兆円)。両国は電力や交通、デジタル分野の輸出拡大に向け、企業経営者や関係閣僚による新たな枠組みをつくることで合意した。ただ、自由貿易の推進も、各論に入れば温度差がある。中国が震源とされる鉄鋼の過剰生産について、世耕弘成経済産業相は9日午前、中国の鍾山商務相に「市場歪曲(わいきょく)的な措置の除去が重要」と是正を求めた。知的財産の侵害問題でも、中国が外資企業に事実上、強制的な技術移転を求める制度などを温存している。

*2-2:http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2018051001001290.html (東京新聞 2018年5月10日) 【経済】日中両国で保護主義反対を 李首相が連携呼び掛け
 中国の李克強首相は10日、日本の経済界などが東京都内で開いた歓迎レセプションで「日中両国は世界の主要経済国として、保護主義に反対し、自由貿易を守る責任がある」と述べ、日中が連携して世界経済の発展に貢献すべきだと強調した。李氏は「(中国の現代版シルクロード構想)『一帯一路』と日本の成長戦略をつなぎ合わせたい」とも述べた。中国は、保護主義色を強めるトランプ米政権との間で貿易摩擦が激化する中、貿易や投資の面で日本との連携を強化したいとの思惑がある。「一帯一路」の日本への協力呼び掛けは、インフラ建設などで両国間の協力を深め、同構想を推進させたい考えがある。

<医療・介護の一部産業化>
*3-1:http://qbiz.jp/article/133273/1/ (西日本新聞 2018年5月7日) 2025年、未曽有の「超寿社会」 団塊の世代は全員75歳以上に 医療、介護費10年で膨脹
 今から7年後の2025年。人口に占める65歳以上の割合が3分の1に近づき、お年寄りの10人に6人は後期高齢者という未曽有の局面を迎える。「超寿社会」とでも呼ぶべき新たな時代だ。膨張する医療や介護の費用。急がれる認知症や孤独死への対策。18年度は政府のさまざまな取り組みが動きだす重要な節目だ。日本が直面する「2025年問題」を考える。
Q 「2025年問題」とは。
A 2025年は戦後の1947〜49年に生まれた「団塊の世代」全員が75歳以上に
  なる年です。第1次ベビーブーム世代とも呼ばれ、2015年の国勢調査によると
  約638万人。突出して人口の多いこの世代の高齢化が進むため、医療や介護サー
  ビスの需要が急増し、費用も大幅に膨らむと懸念されています。
Q なぜ75歳に着目するのでしょう。
A 個人差はあるものの、一般的には70代後半になると病気がちになり、足腰が
  弱って介護を必要とする機会が増えます。75歳以上は「後期高齢者」と位置付
  けられ、国の医療保険制度も別立ての仕組みになっています。高齢者の定義は
  65歳以上とされていますが、14年のデータによると65〜74歳の1人当たり
  年間医療費は平均で55万4千円なのに対し、75歳以上では90万7千円と1・6
  倍に。介護費も5万5千円から53万2千円と、10倍近くに跳ね上がります。
Q 1人暮らしや認知症の高齢者の増加も課題になりそうです。
A 未婚のまま老後を迎える人も増え、25年には65歳以上の5分の1は1人暮らし
  になります。認知症の高齢者は6年前のデータでは全国に462万人でしたが、
  25年には700万人程度まで増えるとみられています。1人暮らしだと家族が
  介護するのは難しいですし、認知症の人の介護には多くのマンパワーが必要で
  す。独居と認知症の増加により、高齢者人口の伸び以上に必要とされるサービス
  の量が増える可能性があります。
Q 医療や介護の費用はどこまで膨らむのでしょうか。
A 政府の推計では、25年度に年金や子育て費用も含め、社会保障給付費は
  148兆9千億円に上ります。このうち、医療には54兆円、介護に19兆8千億円
  を要します。15年度と比べると、医療は1・4倍、介護は1・9倍に膨らむ計算で、
  医療と介護がいかに社会保障費を押し上げるかが分かります。
Q 少子化も進んでいますし、社会保障の費用を誰が負担するのか難しい時代になりますね。
A はい。25年の高齢化率(総人口に占める65歳以上の割合)は30%。75歳
  以上だけでも2180万人で18%に上ります。「高齢者の高齢化」が進み、現役
  世代の負担の重さに拍車がかかります。1人の高齢者を税金や保険料で支える
  のに、1960年代は20〜64歳が9・1人の「胴上げ型」だったのが、2025年には
  1・8人で支える形となり、50年代には支え手が1・2人しかいない「肩車型」に
  なると説明されることがあります。そこで政府は、支え手を増やそうと女性の就労
  や高齢者の長期雇用を促しています。一部には外国人労働者の活用拡大を
  主張する声もあります。
    ◇   ◇
●人材確保へ待遇改善を 清家篤・慶応大客員教授
 2025年問題が深刻なのは、高齢者の増加で医療や介護の費用が加速度的に膨らむ点だ。年金の給付は受給者数に比例して伸びていくだけだが、医療・介護分野では、病気や要介護になりやすい75歳以上の後期高齢者の増加によって、給付は高齢者全体の増加率を上回るペースで増える。医療や介護は単なるお金の問題だけでなく、医師や看護師、介護福祉士といった人材を確保しなければならない点で、年金よりもずっと難しい。彼らが気持ちよく働いてもらう上で必要な人材育成や待遇改善を抜きにサービスの充実はあり得ず、そのための財源の確保は欠かせない。「介護離職」への対応も強化していく必要がある。自分の親や配偶者の親、あるいは配偶者の介護は切実な問題。仕事を続けたくても、介護サービスの供給が追いつかなければ、離職を余儀なくされる。労働者本人はもちろん、企業にとっても痛手だし、何よりも働き手が減るのは大きな社会的損失だ。何も手を打たなければ、これから30年までに800万人もの労働力人口が減少するとの推計もある。働く意思と能力のある人たちが、年齢にかかわりなく能力を発揮できる生涯現役社会をつくる。これが、豊かさと活力を維持していく鍵になる。高齢者や女性の就労を促進すると同時に、外国人雇用を広げることも視野に入ってくるだろう。
    ×   ×
*清家篤(せいけ・あつし) 慶応大商学部客員教授、日本私立学校振興・共済事業団理事長。専門は労働経済。2009〜17年、慶応義塾長。政府の社会保障制度改革国民会議で会長を務めた。1954年生まれ。東京都出身。

*3-2:https://www.agrinews.co.jp/p43816.html (日本農業新聞 2018年4月16日) 外国人受け入れ 労働環境 他産業並みに
 愛知県、新潟市、京都府は国家戦略特区制度を活用し、外国人労働者の受け入れを始める。より良い人材の確保と雇用後の混乱を避けるためには、農業も他産業並みの労働環境・条件にしていく必要がある。全国に先駆けた取り組みで、内閣府や自治体などで構成する「適正受入管理協議会」が設置され次第、受け入れが始まる見通しだ。懸念されるのは、特区の仕組みとこれまでの技能実習生とは、割増賃金、休日などの労働条件が違うことだ。認識不足のまま受け入れた場合、現場での混乱が心配される。国内の労力不足が深刻化する中、外国人に産業を支えてもらおうと各地で受け入れが進んでいる。法務省が発表した2017年末の在留外国人の数は前年比7・5%増の256万人で過去最多を更新した。農業分野も、今や大規模な産地ほど外国人の力なしに成立しない状況になっている。国家戦略特区制度を活用して外国人労働者の受け入れを表明した愛知県は、18年度予算に農業支援外国人受入事業308万円を計上。出身地の母国語に対応できる電話相談窓口を設け、長期雇用できる環境を整えることで“強い農業”の実現につなげたい考えだ。留意すべきは、特区制度を利用して農業現場で働く外国人労働者と技能実習生とは労働条件に違いがあることだ。労働基準法では、休憩時間を除き1日8時間、1週40時間までと法定労働時間を設けている。だが、農業は気象条件に左右されやすく、悪天候の日や農閑期に休みが取れるため、この規定の適用除外となっている。つまり、1日8時間を超えて働かせてよいなど、労働時間や休日、休憩を自由に設定できる。所定の労働時間を超えた場合は超過分の賃金を払う必要はあるが、法律で定めた「割増賃金」を払う必要はない。一方、技能実習生は「労働生産性の向上のために、適切な時間労働管理を行い、他産業並みの労働環境を目指していくことが必要」(農水省就農・女性課)との観点から、法に準拠した労働時間や休憩、休日などが求められ、残業した場合も割増賃金を支払う必要がある。特区雇用の外国人と外国人実習生の間に、割増賃金の支払いをはじめとする労働条件の差を持ち込んだ場合、現場が混乱する恐れがある。農業法人などで働く日本人の労働者も同様だ。農業の労務管理に詳しい特定社会保険労務士の入来院重宏氏は「雇用確保に向け、最近では農業でも1日8時間を超えて労働させた場合などは割増賃金を支給するケースが増えている」と指摘する。農水省で農業の働き方改革について検討が始まり、他産業並みの労働条件に見直す動きも相次いでいる。農産物を購入する消費者を含めて「安ければいい」という考えを根本的に改める時にきているのではないか。

*3-3:https://www.secom.co.jp/lp/hs/s14/?utm_source=yahoo&utm_medium=cpc&utm_campaign=AG502yss&wapr=5adf286e セコム見守りサービス、セコムホームサービス 

*3-4:http://www.tokyu-welina.jp/ 東急ウェリナ、東急電鉄のシニアレジデンス
シニア世代の皆さまに安心で心豊かな人生を過ごしていただきたい。東急ウェリナは、東急電鉄の100%子会社である東急ウェルネスが運営するシニアレジデンスです。東急電鉄は、これまで街づくりを事業の根幹に置き、長年にわたって沿線に暮らす人々の生活に密着した様々なサービスを提供してきました。そんな東急電鉄が街づくりの集大成として掲げた事業がシニアのための住まい、生活区間の提供です。「この国の発展を担ってこられたシニア世代の皆さまに安心で心豊かな人生を過ごしていただきたい。『終のすみかとしてここを選んでよかった』と思っていただける住まいとしたい」。それが私たち東急ウェリナの使命と捉え、東急グループの知識とノウハウを結集し、住む方が誇りをもってお住まいいただける上質な住環境をお届けいたします。

<エネルギーの転換>
*4-1:http://www.shinmai.co.jp/news/nagano/20180430/KT180428ETI090006000.php (信濃毎日新聞 2018年4月30日) エネルギー計画 方針転換に踏み込む時
 方針転換を先送りにした計画では、エネルギー安定供給の要請に応えられない。
経済産業省が有識者会議に示した次期エネルギー基本計画の骨子案である。国の中長期的なエネルギー政策の指針となる。原発依存度をどう下げるか。再生可能エネルギーをどう拡大するか。道筋を示していない。計画は3年ごとに見直される。いまの計画は、2030年度の原発の発電割合を20〜22%、再生エネを22〜24%としている。骨子案は、これを据え置いている。原発は12年の原子炉等規制法の改正で、運転開始後40年の廃炉が原則になった。現在ある原発は老朽化が進む。ルールを徹底すると、30年の原発比率は2割を大きく下回ると指摘されている。据え置かれた原発の割合を達成するには、新増設や運転延長が前提となる。福島第1原発事故を踏まえれば、安全面からも認められない。世論の批判が強い原発を温存するのに加え、「重要なベースロード電源」との位置付けも踏襲している。原発が低コストとする根拠も揺らいでいる。事故後に厳しくなった国の新規制基準に対応するには、大規模な安全対策が必要だ。仮に20年の運転延長が認められても、最長60年で廃炉になる。出力が小さい原発ほど採算は合わない。四国電力伊方2号機など、採算面から廃炉を選ぶ事例も増えている。骨子案は原発の「再構築」を提言しているが、具体的内容がはっきりしない。これではエネルギー政策の指針の役目は果たせない。新増設は経済面からも厳しくなっている現実を直視すべきだ。次期計画は、2050年に温室効果ガスを8割削減する国際公約に対応する必要がある。このため、30年に加え、50年に向けた長期戦略を含む内容となる。骨子案は太陽光や風力などの再生エネについて、主力電源化を進めると明記した。一方、50年の発電割合目標を示すことは見送った。本気度が疑われる。原発が実質的に高コスト化する一方で、再生エネへのシフトは世界的な潮流となっている。日本は立ち遅れている。再生エネの普及に向けた課題解決には、公正な競争を促す電力市場の整備や、送電網の適正な運用といった取り組みが欠かせない。原発依存から脱却して再生エネに比重を移す―。政府は、転換方針を計画でより具体的に打ち出していくべきだ。

*4-2:http://www.kyoto-np.co.jp/info/syasetsu/20180429_3.html (京都新聞社説  2018年4月29日) 再生エネ転換  主力電源化へ具体策示せ
 経済産業省が新しいエネルギー基本計画の骨子案を策定した。再生可能エネルギーの「主力電源化」を初めて盛り込む一方、原子力や火力発電も温存し、時代遅れの感は否めない。太陽光や風力といった再生エネへの転換を急ぐ世界的な潮流に日本だけが取り残されてはなるまい。経産省の有識者会議がまとめた2050年を見据えたエネルギー長期戦略の提言を踏まえ、30年に向けた指針に加え、50年への戦略を示した。新計画は今夏にも閣議決定される。温暖化対策の国際枠組みである「パリ協定」に基づき、日本は50年に温室効果ガスの排出量を8割削減する目標を掲げている。脱炭素化に向けて、これまで軽視されがちだった再生エネ転換に本腰を入れる姿勢は一歩前進であり、評価できる。だが長期的な電源ごとの発電割合や具体的な道筋は示さなかった。技術革新の進展の予想は難しいとはいえ物足りない。日本は原子力や火力を重視してきたため、再生エネの発電比率は15年で14・6%にとどまり、イタリア39・8%、スペイン35・3%、ドイツ30・6%などに比べ遅れが際立つ。コスト面でも16年に欧州平均で1キロワット時当たり10円の太陽光発電費用が日本では20円と割高だ。再生エネ転換の遅れを取り戻すには、価格引き下げや安定供給への技術開発が鍵となる。発電効率の向上に加え、発電量が天候に左右されやすいため需給の調整技術や高性能な蓄電池の開発、電力需要の大きい都市部への送電網の増強-といった課題を一つずつ着実に解決していかねばならない。最も疑問符が付くのは原発の将来像だ。東京電力福島第1原発事故後、脱原発を求める世論は根強く、「原子力政策の再構築」を掲げた。「可能な限り依存度を低減する」という現行の政府方針を維持して原発の新増設にも言及しなかったものの、安全性の高い原子炉の開発や核燃料サイクル政策を進めるという。原発のあり方が曖昧な状況が今後も続きそうだ。国内産業は発電コストの安い原発抜きに海外と勝負できないとの経済界の意向が透ける。だが福島事故後、安全対策費用がかさむ原発は割安な電源と言い難い。脱原発を鮮明にしてこそ、原発に頼らない新技術の開発や投資も強い動きとなろう。「化石燃料の効率的・安定的利用」にも固執した。効率の悪い石炭火力を廃止してCO2の排出が比較的少ないガス火力への移行は当然だが、火力発電の温存は脱炭素化に逆行する。これとは別に政府は先日、本年度から5年間程度で取り組む第5次環境基本計画を閣議決定した。環境省主導で再生エネ活用を推進する方針だが、経済活動への影響を懸念する経産省の戦略とは相いれない。双方の整合性が欠かせない。新計画でも再生エネの発電割合を30年度に22~24%という目標は据え置くが、原子力や火力に過度に依存していては再生エネへの転換は進まない。国際水準に比べて遜色なく、国民の理解を得られる再生エネ戦略の道筋を明確に示すべきだ。

*4-3:http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201805/CK2018051302000140.html (東京新聞 2018年5月13日) 【政治】<原発のない国へ>全電源、自然エネにできる 小泉純一郎元首相インタビュー
 小泉純一郎元首相(76)が本紙のインタビューに応じ、原発事故後も原発稼働を前提とする安倍政権のエネルギー政策を「反省がない」と批判するとともに、「原発支援のカネを自然エネルギーに向ければ、原発が供給していた30%程度の電力は10年で自然エネルギーで供給でき、将来、全電源を自然エネルギーでできる国になる」と、原発稼働を直ちにやめ、自然エネルギーへの転換を促進すべきだとの考えを強調した。小泉氏は「首相の権限は強い。もし首相が(原発ゼロを)決断すれば、自民党はそんなに反対しない」と政治決断を求めるが、安倍晋三首相では「やめられない」とも述べ、原発ゼロの実現には首相交代が必要だとの考えを強調した。原発ゼロの実現を期待できる政治家として河野太郎外相の名を挙げた。自らが進める原発ゼロに向けた運動と野党との連携については「自民党の首相がそういう(原発ゼロの)決断をすれば、野党は黙っていても喜んで協力する」と否定した。小泉氏は福島第一原発事故後、「安全で、コストが一番安く、永遠のクリーンエネルギーだという原発推進論者の三つの大義名分がうそだと分かった」と指摘。「(原発事故後の)七年間(事実上の)原発なしで一日も(大きな)停電がない。原発ゼロでやっていけることを証明している」と、原発ゼロは即時可能だと強調した。また、使用済み核燃料の最終処分場建設の見通しが立っていないことに関し、「処分場を見つけられない原発を政府が認めることが不思議で仕方がない」と厳しく批判した。使用済み燃料を再処理して、燃料として再利用する核燃料サイクル事業は「破綻している。永遠の夢の原子炉と言われたもんじゅは故障で幻の原子炉になった。まさに無駄遣いだ」と撤退を提唱した。安倍政権が進める原発輸出政策については「危険性があり、自分の国で(原発建設が)できないから外国に売り込もうとする発想が分からない」と批判。潜在的な核抑止力になるとして原発を推進する意見には「なんで抑止力というのか分からない。日本が核兵器を持てるわけがない。そういうことを言う人の理論が分からない」とした。このインタビューは十一日午後、東京都品川区の城南信用金庫本店で行われた。
<こいずみ・じゅんいちろう> 1972年の衆院選で初当選、連続12期務める。厚相、郵政相を歴任し、2001年に首相就任。戦後4位となる5年5カ月の長期政権を築いた。09年に政界引退。東京電力福島第一原発事故後、原発ゼロを訴えて講演活動を続ける。近著に「決断のとき-トモダチ作戦と涙の基金」。76歳。
◆世界2040年に再生エネ66%予測
 2011年の東京電力福島第一原発事故後、国内の全ての原発が運転を停止した。しかし政府は再稼働を急いでおり、現在は関西電力大飯原発(福井県おおい町)など5基が稼働中。発電に占める原発の割合は16年度には1.7%に低下したが、政府はこの数値を30年度には20~22%に高める目標をエネルギー基本計画で示している。政府は来月下旬にも決める新たな基本計画でも、この数値を維持する方針だ。一方、海外では福島の原発事故後、ドイツ、韓国が原発ゼロ政策に転換。依存度引き下げを目標に掲げる国も相次ぐ。米情報会社ブルームバーグ・グループによると、40年時点で世界全体の発電に占める原発の割合は3.5%に低下。逆に、再生可能エネルギーは66.3%に上がる見通し。

<対馬・沖縄の開発について>
PS(2018年5月15日追加):*5-1には、人手不足で新たに福岡から2人を雇い、近くに従業員用アパートを建てる計画だと書かれているが、韓国語のできる日本人より日本語のできる韓国人の方が多いため、日本語のできる韓国人を雇用した方が早いし、韓国人のニーズを把握しやすいのではないだろうか。さらに、対馬に来れば日本のものは何でも買えたり、日本の最先端医療・リハビリ・介護などを利用できたりするようにしておけば、中国・韓国などから買物や治療目的で定期的に来る人も増えるだろう。
 なお、*5-2の沖縄は、観光客は増えたものの在日米軍専用施設がまだ約70%も存在し、県民本位の経済開発になっていない。そのため、どうすれば長所を伸ばして県民本位の発展ができるかについて、内閣府特命担当大臣(沖縄及び北方対策、海洋政策)の福井氏を交えて沖縄開発総合計画を作り、実行すればよいと考える。福井氏は、国土交通省出身で沖縄担当大臣になる前に海洋基本法を中心となって作られ、地盤の高知県でも同じように地域振興の問題を解決しようとしておられるので、こちらから行った方が話が速いと考える。

*5-1:http://qbiz.jp/article/132240/1/ (西日本新聞 2018年4月20日) 韓国人客26万人に焦る過疎の町 「商機」でも…店、人手不足 対馬の玄関口・比田勝港
 近年、観光地として韓国人に人気の長崎県対馬市で、急増する旅行者の受け入れ態勢づくりが追い付かないでいる。特に北部の玄関口、比田勝(ひたかつ)港周辺では観光客向け施設や店舗が足りず、働き手不足にも悩む。地元の商工会は「韓国人観光客を照準にした創業相談も増えているが、十分なサービスを提供するには程遠い状況」と、過疎の町に訪れた商機を生かせない現状に気をもむ。比田勝から韓国・釜山までは直線距離で50キロ余り。日韓の5社が高速船を運航し、最短1時間10分で結ぶ。韓国人観光客が増える契機となったのが2011年3月の東日本大震災。韓国で日本への観光旅行が敬遠される中、同年10月にJR九州高速船(福岡市)が比田勝−釜山に「ビートル」の定期航路を開設すると、韓国人に「近場の対馬なら」という機運が広がり、手頃で自然豊かな海外旅行先として人気となった。11年まで年間2万人前後だった比田勝港への入国者数は、12年に約8万人と激増。その後も年々増え続け、17年は26万人余りが比田勝港から入国し、対馬市への総入国者の72%が利用、対馬中心部の厳原港より約16万人も多かった。だが、比田勝地区周辺は人口1500人程度の過疎の町。そこに出国者も含めると、多い日で3千人前後の韓国人が行き来するため、既存の店舗や施設ではとてもさばききれない。韓国人観光客向けの新規店舗を開業しても、地元には働き手がなく、韓国語を話せる人材も皆無に等しい。港近くにある創業70年のすし店「みなと寿し」では毎日、昼時に行列ができる。客の急増を受け、昨年春に20代の職人を福岡市から呼び寄せた。「まだ人手は足りないが、地元に雇える人もいない」と3代目店主の武末智彦(のりひこ)さん(42)。5月までに新たに福岡から2人を雇い、近くに従業員用アパートを建てる計画だ。今月27日には、比田勝港国際ターミナル前に、地域初のコンビニ「ポプラ」が開店予定。フランチャイズ契約するJTC(福岡市)によると「当初、求人への反応は鈍かったが、何とか開店できる形を整えた」と、従業員5人を確保した。ただ、年中無休の店舗を運営するには「ぎりぎり」で、求人を継続するという。対馬市商工会上対馬支所ではハングル講座も開かれている。4月に支所長となった山岡審司さん(55)は比田勝出身。子どもの頃から過疎化が進む故郷を見てきただけに「町の変化には驚くばかり。このチャンスを逃さないよう、対応策をしっかりと考えたい」と話している。

*5-2:https://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-718771.html (琉球新報社説 2018年5月15日) 日本復帰46年 沖縄振興の根本的転換を
 1972年の5月15日、沖縄は日本に復帰した。その前年の71年11月、沖縄国会と言われた第67臨時国会に、琉球政府の屋良朝苗行政主席は復帰措置に関する建議書を提出した。建議書は「はじめに」の項で「基地のない平和の島としての復帰」を望んだ。復帰後も改善されない最も大きな障害は米軍基地の存在だ。在日米軍専用施設の集中度は復帰時の約75%から約70%に減るにとどまり、整理縮小は進んでいない。2016年の米軍属女性暴行殺人事件、米軍普天間飛行場所属の垂直離着陸輸送機MV22オスプレイの名護市安部墜落、17年の普天間第二小学校への米軍ヘリ窓落下事故など事件事故が頻発し、県民の命が脅かされている。しかし基地の負担を軽減するどころか、安倍政権は普天間飛行場の名護市辺野古への新基地建設を強行している。沖縄県知事が明確に反対し、新基地建設の賛否が争点となった全県選挙ではほぼ反対の候補者が当選した。建議書が掲げた「地方自治の確立」は、新基地建設を強行する政府によって妨げられている。建議書は「県民本位の経済開発」も掲げた。本土に比べて大きく立ち遅れた沖縄の振興策として、約10兆円の「振興開発費」が投下された。確かに道路や港湾などインフラは大きく進んだ。しかし県民所得は全国平均の約7割、失業率は全国ワーストといった貧しさの部分は解消していない。子どもの貧困率は全国平均の2倍に上る。保育サービスが貧弱で、待機児童が多く、保育料は高い。離島の過疎化も深刻だ。過去の沖縄振興は社会資本整備に偏り、教育福祉施策を充実させる努力を怠ってきた。沖縄振興の仕組みを根本から見直す必要がある。12年に始まった沖縄振興一括交付金は、地域主権に基づいた沖縄の裁量による予算との当初の意義付けは失われ、基地政策の見返りで予算の多寡が決まる、国にとって都合のよいものとなってしまった。それが沖縄振興のゆがみを増幅している。復帰と同時に始まった沖縄振興開発特別措置法に基づく沖縄振興計画は第5次の折り返し点を過ぎた。私たちは第5次の終わりと、次の沖縄振興の仕組みを真剣に論議し、真の「県民本位の経済開発」を考えねばならない時期に来ている。建議書が挙げた新生沖縄像は、国家に押し付けられるのではなく、自らの未来を自らが決めるという姿だ。苛(か)烈(れつ)な沖縄戦と米国統治による圧政を経験した呻吟(しんぎん)の中から生み出された県民全体の願いと言えよう。自立と自律。これを実現することこそ、次世代に対する私たち世代の責任だ。沖縄自治構想会議は「沖縄エンパワーメント」と題した構想を発表し、沖縄振興と自治の在り方の根本的転換を提唱している。沖縄の将来について考える日としたい。

<経産省の阿保ぶり>
PS(2018年5月16日追加):経産省は、*6のように、2030年に向けて中長期的エネルギー政策の方向性を示す「第五次エネルギー基本計画」の素案を公表したが、その内容は、①再生可能エネルギーの主力電源化を打ちだし ②原発への依存度を可能な限り低減するとしながら ③原発を「重要なベースロード電源(?)」と位置付けて ④2030年度に目指す電力量のうち20~22%を原発で賄うとする電源比率の目標を維持する(??) というものだ。しかし、2030年度に20~22%なら現在よりもずっと高い比率であるため、原発への依存度を可能な限り低減するという内容と、完全に矛盾する。つまり、環境・エネルギー政策・地域経済のいずれも、経産省を当てにしてはならないということになる。

*6:http://www.tokyo-np.co.jp/article/economics/list/201805/CK2018051602000255.html (東京新聞 2018年5月16日) 【経済】原発のない国 機運高まる中 エネ計画 原発推進鮮明
 経済産業省は十六日、二〇三〇年に向けた中長期的なエネルギー政策の方向性を示す「第五次エネルギー基本計画」の素案を公表、審議会に示した。原発については「重要なベースロード(基幹)電源」と位置付けるとともに、「原子力政策の再構築」を掲げ、再稼働や核燃料サイクル、原発輸出などの推進姿勢を明示した。基本計画は三~四年に一回、見直す。三〇年度に目指す電力量のうち、原発で20~22%をまかなうとする電源比率の目標は維持する。目標達成には、原子力規制委員会で審査中の全原発でも足りない三十基程度が必要とされ、実現性を疑問視する声は根強い。素案は原発に関し「可能な限り依存度を低減」としつつも、再稼働を進めるという従来の方針を踏襲。今回は新たに、五〇年までに温室効果ガスを大幅に削減するための「実用段階にある選択肢」との位置付けも加えた。高速増殖原型炉もんじゅ(福井県敦賀市)の廃炉などで実現が見通せない核燃料サイクルも、推進姿勢を変えなかった。新増設は明記しなかったが「安全性・経済性・機動性に優れた炉の追求」を掲げ、その余地を残した。一方、再生可能エネルギーは主力電源化を打ちだし、送電網への受け入れ強化や不安定さを補う技術などの課題解決を進める。ただ、委員から「主力電源にするなら目標も変えるべきだ」との意見が出ていた三〇年度時点の目標は、従来の22~24%に据え置いた。経産省は素案を取りまとめ、与党と調整した上でパブリックコメント(意見公募)を実施し、六月末にも閣議決定したい考えだ。
◆4年の変化反映せず
 経済産業省のエネルギー基本計画の素案は、二〇一四年以来四年ぶりの見直しをうたいながら、この間の情勢変化に正面から向き合ったとは言えない内容となっている。東京電力福島第一原発事故以降、再稼働した原発は八基で、一六年度の電力量に占める原発の割合は1・7%。三〇年度の目標の20~22%を実現するには、稼働から四十年たった古い原発を十数基、運転延長したり、原発を新設したりすることが必要となる。どちらも実現性に乏しい。福島の事故以降、原発の安全対策規制が強化され建設費用は増加。工期の遅れも常態化している。米原発大手ウェスチングハウス・エレクトリックは、米国で原発新設の工期遅れを繰り返し一七年三月に破綻。三菱重工業などがトルコで進める原発計画は、総事業費が当初想定の二倍の四兆円以上に膨らむとみられ、伊藤忠商事が三月に撤退した。日立製作所が進める英国の原発新設も総事業費が三兆円規模に膨らむことから、支援を巡る英政府との協議が難航している。一方、再生可能エネルギーはコスト低下と導入拡大が進む。一七年の太陽光発電の平均入札価格は一〇年の三分の一以下の十一円に低下。一五年には累積設備容量で風力発電が原発を超え、一七年には太陽光発電も原発を追い抜いた。この四年の変化を踏まえれば原発の目標を下げ、再生エネの目標を引き上げるのが自然だ。だが、両方とも変えずに据え置くという経産省の姿勢からは、原発の存続を目指す意図が透けてみえる。

<風力発電機の改良>
PS(2018年5月19日追加):*7-1のように2重羽根にするよりも、扇風機のような6枚羽にした方が、安価で風をエネルギーに変える力が強いのではないだろうか。また、①鳥を巻き込まない ②音や低周波を出さない などの環境に配慮したスマートな構造にすることは必要不可欠で、それには、農協などの身近に需要のあるところと組んで農家の要望を取り入れて改良し、よいものができれば、これも日本だけでなく世界で売れる製品になると考える。
 なお、風力発電機に監視カメラを付けて見張り役も兼ねさせ、*7-2、*7-3のように人間が相手の場合は警察やセコムなどが駆けつけて逮捕し、*7-4のように、有害鳥獣が相手の場合は捕獲するか、DNAに嫌だと刻みこまれた天敵の鳴き声を発して追い払うかするシステムにすればよいのではないだろうか。


*7-1より             その他の工夫型風力発電機

*7-1:http://qbiz.jp/article/134170/1/ (西日本新聞 2018年5月19日) 電力新時代:2重羽根で発電に新風 元九大生起業のベンチャーが実用化 小型「風洞」も今夏販売
 風力発電機の羽根を前後2重にして発電効率を高める装置を開発したベンチャー企業「日本風洞製作所」(福岡県久留米市)が、第1号の製品を納品した。開発の過程で生まれた小型の風洞試験装置も商品化のめどがついて今夏に販売開始予定。新しい発想の製品で“風”を巻き起こすか注目される。同社は、九州大で風車の研究をしていたローン・ジョシュアさん(23)=長崎市出身=が在学中の2016年に起業した。羽根を2重にすると風を受け止めやすく有効に使える一方、前後の羽根の回転数が異なり、エネルギーを発電機にうまく伝えにくい課題が生じる。ローンさんは動力を統合して効率よく伝える装置を考案、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の助成を受けて実証試験をした後、17年から受注生産を始めた。第1号は高さ4メートル、羽根の直径2・2メートル、出力1キロワットの風力発電機を2基。2月末、福岡市東区の原看護専門学校の屋上に取り付けた。年間の総発電量は同等サイズの発電機の約2倍を見込み、駐車場の照明などに利用する。風車は強風による故障が課題だが、風速25メートル以上になると自動で風車を倒して保護する最新のシステムも取り入れた。今後は出力5キロワットや20キロワットなど製品の大型化を進める。既に西日本シティ銀行などが設立したファンドや一般企業から開発資金を調達。汎用(はんよう)の部品も活用し、導入経費を抑え「通常よりコストパフォーマンスが50%高い風車を売りにする」とローンさんは意気込む。風車研究の一環で造った風洞試験装置も注目されている。人工的に風を起こして空気抵抗を測る装置で、高さ、幅ともに1・5メートルほどに小型化したのが特徴。大学や大手企業が持っているこれまでの風洞装置は一戸建て住宅ほどの大きさがあったという。空気抵抗が重要な自転車産業の見本市に17年に出展したところ、約100社から問い合わせがあり、受注にもつながった。「研究開発に使いたいという需要が多い」とローンさん。風洞と風力発電機の相乗効果にも期待する。

*7-2:https://www.agrinews.co.jp/p43677.html (日本農業新聞 2018年3月31日) 果樹盗難 感知、警告 山梨・JAこま野と富士通がシステム 市内全域に導入
 JAこま野と富士通、富士通アイ・ネットワークは、4月から果樹盗難抑止システムの運用を始める。JAが管轄する南アルプス市内全域で導入。ここまで広範囲の導入は全国初の試みだ。果樹園への不審者の侵入を感知し、サイレンなどで警告することで果樹の盗難被害を減らす狙い。電源は太陽光発電を利用により、低コストで稼働できる。JAの依頼で富士通などが3年前から開発に取り組んできた。遠赤外線センサーで直径30メートルの範囲を360度監視、侵入者を感知すると威嚇音と赤色灯で警告し、園主にはメールで通知する。小動物などによる誤作動を防ぐため、水平方向と下方向に向けた二つの遠赤外線センサーを組み合わせて対応する。JAは30台を用意し、希望する農家に月額のリース契約で貸し出す予定。農家は盗難の危険がある収穫期だけ契約できるため、費用負担の軽減につながる。JAの小池通義組合長は「多くの農家に利用してもらい、防犯センサーがあるという情報が広まることで、盗難防止につなげたい」と期待を込める。JAは組合員向けの説明会を開き、順次農家へのリースを開始する。園地での使用を考えて電源はソーラーパネルで発電、消費電力の少ない無線方式を導入。太陽光がなくても4日間は稼働できる。設置や移動が簡単なため、収穫時期に合わせて、園地を移動させて使うこともできる。オプションで気温や湿度を計るセンサーの取り付けも可能で、さまざまなデータ管理ができる。28日には、JA本所で「果樹盗難抑止サービス導入に関する協定」の調印式を開いた。

*7-3:https://www.agrinews.co.jp/p44091.html (日本農業新聞 2018年5月17日) 野菜盗難相次ぐ 被害者落胆 「栽培やめる」 宮崎県延岡市
 宮崎県延岡市で、野菜の盗難が相次いでいる。収穫直前の野菜を、時期を見計らったかのように盗む手口だ。被害に遭った農家は「悔しい。苦労を踏みにじる行為で許せない」と口をそろえる。「栽培をやめる」と意欲をなくす人も出ており、野菜泥棒が地域農業の大きな問題になっている。同市大貫町の富山重利さん(82)は11日、JA延岡の直売所「ふるさと市場」に出荷する直前だったニンニク30本以上を盗まれた。午前7時ごろに畑に行き、ニンニクがごっそりなくなっている光景にがくぜんとした。富山さんは50アールの畑でブロッコリーやエダマメ、レタスなどを通年栽培する。以前から盗難に遭っていたが、今年に入り度重なる盗難に悩まされるようになった。富山さんは「自転車で周辺を見回っているような不審な人物を見掛けた。近所の人たちも知っている。証拠がないので何とも言えないが」と、やるせない表情だ。すぐに警察に相談し、「自分でも看板を設置するなど対策をしてほしい」とのアドバイスを受けた。畑の周囲にネットを張ったが、「無駄な労力と経費。今後も続くようなことがあれば、被害届を出す」と話す。また、出荷前の野菜を何度も盗まれた同市片田町の70代の女性は「1、2個程度なら諦めもつくが、大量に持って行かれるとやる気がなくなる」と話す。軽トラックなどを使った大胆な手口という。「もう気力もなえた。栽培中の野菜もあるので年内は農業を続けるが、その後はやめようと思う」と肩を落とす。野菜だけでなく、肥料を入れるバケツや、トラクターなどを圃場(ほじょう)に入れる際に使う農機ブリッジなどの資材を盗まれる被害もある。

*7-4:http://www.saga-s.co.jp/articles/-/213180 (佐賀新聞 2018年5月19日) 有害鳥獣の駆除学ぶ 行政、農業関係者ら、上峰町で11人
 上峰町の有害鳥獣対策講習会が1日、野生獣類捕獲技術研修センター(みやき町)であった。行政関係者や農業者、地域住民、狩猟免許所持者ら11人が、狩猟と有害鳥獣駆除の違いやわなの構造などについて知識を深めた。上峰町は昨年11月、狩猟免許取得費用に補助金を出すなど、有害鳥獣駆除に力を入れている。講習会は有害鳥獣の「捕獲駆除隊」発足に向け、関係者の知識や技術の向上を目指そうと開き、今後も月1回程度実施する予定。同町と連携協定を結ぶ捕獲用品開発製造の「三生」(鳥栖市)の和田三生社長が講師を務めた。講習会では、和田社長が狩猟と有害鳥獣駆除の違いについて、「有害駆除は農業や林業に被害があった場合の緊急避難的な捕獲で、短期間で終息させるのが大事」などと説明。わなの性能に加え、それを使う人の技術力が重要だと強調した。また、同社が開発・製造したイノシシや小動物用の箱わなを見学。参加者はわなの構造や、動物がかかった時の器具の動きなどを興味深く観察した。自ら狩猟免許を取得し、講習にも参加した武広勇平町長は「箱わなの種類が数多くあるなど知らないことばかり。有害鳥獣の被害軽減に向け、駆除のICT化などにも取り組みたい」と話した。上峰町内の狩猟免許所持者は現在5人。イノシシやカラスによる農作物への被害が増加しているほか、水路や法面の破壊も問題となっており、町によると被害額は年間数百万円に上るという。

<中国の壮大な都市計画と日本>
PS(2018年5月20、21日追加):中国は、*8-1のように、「1000年の大計画」として次世代の先端技術を活用した自動運転のスマートシティーを北京の南西約100kmの農村に作るそうで、計画性なく掘ったり埋めたりして無駄遣いしながら進歩していない日本と違い、計画が壮大で羨ましい。ただ、道路や鉄道などの交通インフラを地下に作ると、走りながら街を見て暗黙知の情報を得たり、景色を見たりする楽しみがなくなるのは残念だ。日本の場合は、定期的に地震・津波が来るため地下は危険であり、3階建ての道路網・鉄道網を作った方がよいと思う。
 なお、こうなると、産業だけでなく街づくりや環境も中国の方がよくなり、*8-2のように、「日本語を勉強して日本で技術を学んだのは損だった」という結果になる。そのため、これからも外国人に来てもらえる国であるためには、外国人差別を止め、労働者として働く資格を与え、技能の資格取得者には高度な専門性を持つ人材と同様に永住資格を認めるべきである。
 また、*8-3のように、トラックのドライバーが不足し、情報誌で求人しても反応がなく、廃業や事業売却を余儀なくされる業者もあるそうだが、ニューヨークでタクシーに乗るとインドやバングラデシュ出身の運転手が多い。トラックは、(和英両用の)ナビと運転技術があれば、日本語がうまくなくても運転できるため、運転手にも外国人を採用したらどうかと考える。


  *8-1より                        *8-2より

(図の説明:中国は、北京市近郊に2035年に1000年の大計画で未来都市を作り上げるそうで、全体としては魅力的だが、自動車道や鉄道が地下に埋設されて風景を楽しむことができなくなるのは残念だ。日本の場合は、地震・津波の多い国であるため、地下は危険であり3階建くらいの道路・鉄道網がよい。どちらにしても、世界では人口ボーナスがあるうちに外国人労働者を入れなければ、それぞれの国が少子高齢化社会になってからでは外国人労働者も来ないだろう)

*8-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180520&ng=DGKKZO30735500Z10C18A5MM8000 (日経新聞 2018年5月20日) 中国、自動運転の新都市 2035年にも、新・開発独裁 米と覇権争い
 中国が自動運転のアクセルを踏み込む。北京市近郊に2035年につくり上げる習近平(シー・ジンピン)国家主席肝煎りの未来都市で、個人の乗用車を世界で初めて全て自動運転にする。共産党がすべてを取り仕切り、インフラや法制度を整え技術も磨く。経済大国になってもなお国家主導で産業振興を進めようとする中国。企業の自由競争を前提にイノベーションで世界をリードしてきた米国に、「新・開発独裁」で中国が挑む構図が鮮明になってきた。新しい都市「雄安新区」は「千年の大計画」として昨年発表した壮大なプロジェクトだ。北京から南西約100キロメートルの河北省の農村につくり、次世代の先端技術を活用したスマートシティー(環境配慮型都市)にする。22年に基礎インフラを整え、最終的な面積は東京都に匹敵する2千平方キロメートル規模。将来の人口は200万人以上を見込む。総投資額は2兆元(約35兆円)との試算もある。
●個人用の全車に
 政府が4月に発表した新区の計画概要などによると、人工知能(AI)を駆使して自動運転を実現するモデル地区を設けて関連産業を振興する。計画の草案づくりに参加した徐匡迪・元上海市長は「道路や鉄道などの大部分の交通インフラは地下に構築する」と語る。その道路では「公共交通を中心に据え、個人が使う車は自動運転車で補完的役割を担う」と新区の建設計画のトップを務める陳剛・同区党工委書記は明らかにした。まっさらな土地に自動運転車を前提に設計する新しい都市は、非自動運転車や歩行者が入り交じる既存インフラとの調和という課題と無縁だ。未来都市のモデルとして世界への誇示をもくろむ。米アリゾナ州では3月に公道で実験中だったウーバーテクノロジーズの自動運転車が歩行者をはねて死亡させる事故が発生し、想定外の条件への対応の難しさを浮き彫りにした。世界各国ではドライバーの注意や監視を前提とするジュネーブ条約やウィーン条約が足かせになり、自動レベルの高い車を実用化する法制度の整備がままならない。中国は両条約とも批准しておらず、共産党がこうと決めれば法規制などの環境は一気に整う。現在の中国の自動運転技術の水準は、中国長安汽車集団が4月に公開した新車に搭載した加減速などを支援する「レベル2」程度とみられる。17年秋に「レベル3」の機能がある高級セダンを発売した独アウディなど日米欧勢に遅れており、政府主導で開発の速度も上げる。国家プロジェクトの認定を与えたネット大手、百度(バイドゥ)は、雄安新区ができる河北省政府とAIなどを取り入れた運転技術の研究を開始。交通インフラと自動運転を一体で開発するのが特徴で、3月には中国国有通信大手、中国電信集団(チャイナテレコム)などと共同で次世代高速通信規格「5G」を使う実証試験を始めている。国家総動員ともいえる体制で開発する自動運転車と関連インフラを世界に広める構想を掲げる中国に、米国は警戒をあらわにしている。通商政策担当のナバロ大統領補佐官は「中国はAIや自動運転など未来の産業の支配をもくろんでいる」と指摘。中国との貿易摩擦の主題を赤字削減からハイテク分野での覇権抑え込みに移している。米国は知的財産侵害のほか、補助金などの政府の政策も激しく批判。両国の対峙は「自由主義対国家主義」の様相だ。
●群がる海外大手
 経済発展の途上にある国家が国民の民主的な政治参加を制限して急速な成長と近代化を実現する開発独裁は、1960年代からアジアや南米にみられた。多くは発展とともに民主主義国家に移行したが、中国は例外だ。世界第2位の経済大国になりながら一党独裁の共産党の号令で国有、民間を問わずに企業が目標実現へ一斉に動く新・開発独裁は、自由主義陣営からは異質に映る。それでも海外の自動車・IT(情報技術)大手は中国に群がる。百度が主導する開発プロジェクトには米フォード・モーター、独ダイムラーに加え、米インテル、米エヌビディア、米マイクロソフトなどが並ぶ。中国も先端技術導入や海外展開をにらみ外国企業の参加を呼び掛けている。中国の17年の新車販売台数は世界首位の2887万台。2位の米国の1.7倍、日本の5.5倍に達する。知財侵害への警戒はあっても「政府の強い後押しで自動運転の実現に向けて進む世界最大市場を無視できない」。ある海外自動車大手の幹部は打ち明けた。

*8-2:http://qbiz.jp/article/134211/1/ (西日本新聞 2018年5月20日) 外国人就労受け入れ拡大に政府転換 新資格の創設着手 骨太に明記へ
 政府は、人手不足が深刻な分野の労働力を補うため、外国人の受け入れ拡大へ大きくかじを切る。最長5年間の技能実習を終えた外国人が、さらに5年間働ける新たな在留資格「特定技能(仮称)」の創設に着手。高い専門性があると認められれば、その後の長期雇用を可能とすることも検討している。従来の技能取得という名目から、就労を目的とした受け入れ施策に転換する。6月に決定する「骨太方針」に外国人との「共生」を初めて盛り込み、日本語学習教育の支援などにも取り組む方針だ。現行制度では、高度な専門性を持つ人材を除き、外国人労働者を積極的に受け入れていない。農業やサービス業などの分野で、技術取得を名目とした技能実習生や留学生がアルバイトで対応しているのが現状だ。政府が検討する新たな在留資格「特定技能(仮称)」は就労を目的とする制度。農業、介護、建設、造船などの分野が対象となる。現行の技能実習の修了者だけでなく、各業界団体が実施する日本語能力や専門技能に関する試験に合格すれば資格が与えられる。政府は新たな在留資格の導入を前提に、目標とする外国人労働者数を試算。介護分野は毎年1万人増、農業分野では2017年の約2万7千人が23年には最大10万3千人に大幅に拡大すると試算。建設分野で17年の約5万5千人を25年時点で30万人以上に拡大、造船分野は25年までに2万1千人を確保することが必要としている。外国人観光客の急増により、地方の旅館やホテルを中心に人手不足が深刻化している宿泊業も技能実習の対象に追加する方針。今年3月時点で、留学生のアルバイトなど約3万8千人が働いているが、30年までにさらに8万5千人を確保したい考えだ。また、大学や専門学校を卒業した留学生が就労できる分野の拡大や、在留資格手続きの簡素化なども検討している。外国人が増加することで、地域での孤立やトラブルも予想される。政府は、外国人の仕事や生活が充実するよう、相談体制強化や日本人との交流促進などにも力を入れる。
   ◇   ◇
●「開国」に欠かせぬ共生 
 【解説】 政府が「労働開国」に踏み切る背景には「外国人をどれだけ受け入れるかではなく、どうすれば来てもらえるかという時代になってきた」(官邸筋)との危機感がある。人口減と少子高齢化が進む日本だけでなく世界各国で人手不足が深刻化し、人材の争奪戦が過熱しているためだ。これまで安倍晋三首相は「いわゆる移民政策は取らない」と繰り返してきた。現実は「裏口からそっと入れて人手不足を補うのが国策」(与党議員)だった。外国人労働者は昨年10月までの1年で約20万人も増え、約128万人と過去最多を記録した。うち4割は途上国からの留学生のアルバイトと、技術の海外移転が目的の技能実習生だ。いずれも建前上は「学びたい人」で、留学生に就労時間の制限があるなど労働者の権利が制限されている。こうした建前と現実のひずみが、不法就労や過酷労働の温床となってきた。実習生の就労や長期雇用を可能にする制度の創設、大学や専門学校を卒業した留学生の就労拡大…。学びたい人から働きたい人へ、スムーズに転換できるよう制度を整備しつつ、徐々に「開国」していく狙いだ。一方で外国人に「来てもらえる国」となるには、労働者としてだけでなく、生活者として受け入れる施策が車の両輪となる。実習生は職場移転の自由や家族帯同が認められていない。長期就労に道を開くなら許可すべきだ。日本語教育や多言語対応の相談窓口の充実も欠かせない。出入国管理を含む政策を一元的に担う「外国人庁」創設、課題を地域で把握して対応する自治体の部署の整備も求められる。他人の不幸の上に自分の幸福を築くような「移民ネグレクト(放置)」に終止符を打ち、共生の施策を政府が打ち出せるか、注視したい。

*8-3:http://qbiz.jp/article/133881/1/ (西日本新聞 2018年5月21日) ドライバー不足深刻 福岡・筑後地区で県トラック協会 人材確保へ初の合同説明会
 運輸、物流業界を支えるドライバー不足が全国的に深刻さを増している。福岡県筑後地区でも同様の悩みを抱えており、県トラック協会久留米分会は20日午後1〜4時、久留米市東合川の「地場産くるめ」で、初の「求人転職合同説明会」を開く。未経験者にも対象を広げて人材確保を図る。
●情報誌に求人、反応なし、廃業、事業売却の業者も
 説明会には、久留米市や小郡市、うきは市などに事業所がある22社が参加予定。求人する職種はドライバーに限らず、整備、クレーン作業、倉庫内作業、一般事務など幅広い。対象は、20〜60代の正社員採用やアルバイトを希望する男女。普通免許しか持っていない場合でも、採用後に中型や大型免許などを取得できる助成制度があるという。北野運輸(久留米市)の堀江藤樹社長は「ハローワークや情報誌に求人を出しても、電話一本来ない。状況は深刻。5年後はどうなるか…」と語り、業界全体の行方に危機感を募らせる。40人いるドライバーの平均年齢は48歳で、年々、高齢化が進む。将来への不安や後継者不足から、廃業や事業売却に踏み切る同業者も増えているという。ブリヂストンの工業製品を主に扱う「チクホー」(同)では、高校新卒者の採用を始めた。以前は経験者の中途採用が中心だったが、それでは人が集まらず、大型免許が取得できる21歳まで、働きながら免許取得にかかる費用を補助している。「今は免許がないのが当たり前。高卒の新人を4年かけて育てています」(村田潤一郎社長)という。新たに車両を増やそうとしてもドライバーを確保できるめどが立たず二の足を踏んだり、長距離の運送の人繰りが難しくなったりと、経営への影響も出ているという。特に若い世代のドライバーの層が薄く、村田社長は「本人よりも、親の世代に3K(きつい、汚い、危険)や、(映画の)トラック野郎のイメージがあって、いい顔をされない」と明かす。帝国データバンク福岡支店の今年1月の調査によると、九州・沖縄の企業で、正社員の従業員が不足していると回答した割合は52・8%で、過去最高を更新した。業種別の「運輸・倉庫」では56・8%だった。説明会は参加無料。事前予約や履歴書は不要。問い合わせは久留米分会=0942(40)8701。

| 経済・雇用::2018.1~ | 01:13 PM | comments (x) | trackback (x) |
2018.4.22 データは、集め方、解釈、使い方が重要で、そのためには、その分野に関する総合的な知識が必要なのである ← しかし、みんなで考えれば、よい解決策も出るだろう (2018年4月23、25、26、27、28、30日、5月2、3日追加)
   
  名目と購買力平価によるGDP      欧州・中国・日本の電源構成
                       2018.4.17、14東京新聞   

(図の説明:日本は物価水準が高いため、名目GDPでは中国との差が小さいが、購買力平価換算では中国との差が大きい。また、日本は、最も自国に有利で環境にも良いエネルギーである再生可能エネルギーの採用を進めず、電源構成に占める再エネ割合はヨーロッパだけでなく中国よりも小さい上、今後の普及計画も見劣りする)

   
 アジアの再エネ  世界の再エネ  日本のレアアース      原発再稼働への
  導入ペース   普及と電力価格               九州電力の執念 
  2018.4.19   2018.4.15    2018.4.19        2018.4.21
  日経新聞     東京新聞    西日本新聞        西日本新聞

(図の説明:世界は、再エネの普及時代に入り、それに伴って電力価格が下がっている。また、アジアの再エネ普及は他地域を上回っている。日本は、南鳥島付近の海底にレアアースが大量に存在することがわかり、21世紀の電源構成を邪魔する者は、現在は既得権益者しかいない)

(1)経済発展には総合的知識に基づいた計画性が必要であること
1)中国の出資規制緩和について
 中国は、1992年10月の14回党大会以降、市場経済に基づく社会主義(社会主義市場経済)と世界経済への参入に進路を明確化し、*1-1、*1-2のように、外資系企業が中国へ進出する際には、中国企業(もしくは個人)と合弁させ、外国資本の出資割合は50%以下しか認めなかった。これは、中国が市場を開放するにあたって自国の産業を育成するためで、技術を吸い尽くしていらなくなった外資は、追い出すこともできるようにした。私は、この頃、中国に進出する日本企業のケアをするために中国の外資規制を調査して、その巧みさに感心して唸った。
 
 その中国政府は、2018年4月17日、乗用車分野への外国企業の出資規制を、2018年中にEVなどの新エネルギー車、2020年にトラックやバスなどの商用車、2022年に乗用車で撤廃すると発表した。しかし、今や中国の新エネルギー車は国際競争力を持っており、新エネルギー車で出遅れた日本や米国の自動車メーカーにとっては、特に事業拡大の機会にはならないだろう。日本の経産省は、馬鹿の一つ覚えのように自由貿易のみを提唱しているが、1980年代と同様、日本の自動車産業の方が進んでいると考えている点が思考停止で甘い。

 しかし、中国政府は、2018年末までに造船・航空機の外資規制も撤廃するそうで、これらはまだ世界中でガソリン・エンジンを使っているため、日本が新エネルギー製品を投入すればリードできそうだが、日本の経産省は現状維持に汲々としており、環境でリードしようという先進的な意気込みがない。 
 
2)再エネに関する日本の遅れ
 また、中国では、*1-3のように、政府が2007年に再エネ拡大計画を立てて再エネが急速に増え、2017年の発電に占める再エネ割合は約33%となり、2050年には再エネを中心にするそうだ。また、世界1位、2位の企業を含めて200社以上の太陽光発電機器メーカーが激しく競い合い、値下げ競争をしているため、太陽光電力の価格が下がっているとのことである。

 さらに、日本の東電福島第一原発事故を受けて中国政府が原発の建設計画を大幅に見直し、2013年以降、原発の新規建設計画を承認しておらず、2050年には大半の電気を再エネで賄い、EVも再エネで動くことになるそうで、これは、私が、1995年前後に、日本で(もちろん世界でも)最初に提唱し、馬鹿者どもの逆噴射でつぶされたことだった。

 また、再エネは、*1-4のように、アジアでも急伸し、世界全体の伸び率の5割を大きく上回って5年で倍増しており、それを牽引しているのは中国とインドとのことだ。また、アラブ首長国連邦(UAE)やサウジアラビアなどでは、100万キロワット以上のギガソーラーが相次いで建設されており、エネルギーの脱炭素化と脱原発は進むであろう。

 しかし、日本では、*1-5のように、25年経ってもまだ「再エネを主力電源にするには技術上の課題がある」などとしているが、競争力はやっている人につき、やらない人にはつかないので、最初から見極めることなどできない。そもそも、20~25年もの間、「再エネは自然条件による変動の大きい」などとして解決策を講じず、それを解決しないのも論外である。

 さらに、日本の場合は、*1-9のように、大手電力会社が自らの経営のために原発再稼働を望み、まだ原子力か火力で発電することしか考えず、*1-6のように、「送電線に空き容量がない」として再エネ電力の送電を拒んで、新規参入してきた再エネ事業者を破たんさせてきた。このシステムは、日本で起業が少なく、*1-8のようにイノベーションが進まない理由の一つである。

3)レアアース
 希少金属のレアアース等は、自動車産業、電子産業を始めとして広い分野で使われ、現在の先端技術に不可欠な資源だが、その殆どは中国で産出されている。そして、経産省は「資源は輸入するもの」という頭を切り替えられず、日本の先端産業は中国の意図次第で左右されるようになっている。

 そのような中、*1-7のように、海洋研究開発機構や東大のチームが、日本の排他的経済水域内の南鳥島沖にレアアース等が1600万トン超埋蔵されているとの推計を発表した。国としてやればすぐできるのに、相変わらず「現時点で利用できる見通しは立っていない」「今後10年で採掘技術を開発する」など、国の真剣さがないわけだ。

4)化粧品の「爆買い」と品切れ
 このようにぼけっとしていながら、*1-10のように、中国人客が「爆買い」して中国で転売されるとして、ブランドイメージ低下を懸念して、日本の化粧品メーカーが顧客に購入個数の制限を求めたそうだ。

 しかし、同じアジア人であるため、化粧品に望まれることが近く、今は売れるのが当たり前の時で、これは有難いことであって、今のうちに中国に販売ルートを作って必要な特許を取り、ブランドイメージを打ち立てなければならないにもかかわらず、「アルバイトを使って買い占めた」「化粧品の爆買い」などと客を馬鹿にしたり、購入禁止にしたりしている。そんな態度では、それに近いものが中国で安く生産され、日本人もそちらを買うようになるだろう。
 
 つまり、日本人は、日本人を持ち上げるために、中国などの中進国や後進国の人を馬鹿にすることが多いが、実際には、日本は、1980年代から30年に渡って進んでいないことに、謙虚に気付くべきである。

(2)教育研究の重要性
1)研究とイノベーション
 全米科学財団(NSF)がこのほどまとめた報告書で、*2-1のように、科学技術の論文数で中国が米国を上回り世界1位となったそうだ。2016年に発表された論文数は、中国が約43万本で約41万本の米国を抜き、3位以下は、インド、ドイツ、英国で、日本は6位だった。

 研究はイノベーションに直結するため、研究者の質と量の確保が重要なのだが、日本だけ研究論文数が13%減っているのである。これは、「勉強だけできても」などと無意味な比較をしたり、理数系教育を疎かにしたり、研究者をポスドクにして冷遇したりしたせいで、*2-2のように、過度に不正を言い立てて研究者の地位を魅力ないものにしたことも一因だろう。

2)個人情報の利用はどこまで認められるか
 日経新聞は、*2-4のように、「データの世紀だ」「データは情報資源だ」「データを集めろ」「データは新たな石油だ」などと言っているが、データは、①誰が ②何の目的で ③どういう集め方をして ④どのように比較したりトレースしたりして結果を出すか についてきちんと計画していなければ、ただのゴミだったり、個人情報の不正利用になったり、監視社会を作ったりする。私は、誰かが失敗するまで、それがわからないのを不思議に思う。

 そして、*2-5のように、8700万人の会員情報を不正流出させた米フェイスブックのマーク・ザッカーバーグ最高経営責任者は、米議会上院の公聴会で証言して全面的に謝罪したが、利用者の個人情報を利用して利益を得る組織はフェイスブックだけではない。また、*2-6のように、利用者の個人情報を悪用するのもIT関連企業だけではなく、コンピューターウイルスの作成者でさえ野放しになっている現在、悪用の防止は不可能である。

 そのため、欧州では2018年5月に、企業などに個人情報の厳格な扱いを義務づける「一般データ保護規則」が施行されるそうで、日本も、欧州や米国などの先進国並みに個人情報保護を重視すべきだ。

(3)データ分析と研究
 日立製作所・ヤマトホールディングスなどの大手企業9社が、*3-1のように、データ分析の専門家「データサイエンティスト」の育成に乗り出し、そのデータサイエンティストには統計学に加え、データを取捨選択して問題解決につなげる能力も求めるそうだ。

 しかし、問題解決は、その分野の十分な知識がなければできないため、それぞれの分野(例えば、医学・薬学・マーケティングなど)の人がデータ分析の知識を持つべきなのであり、“データ分析のプロ”が問題解決をできるわけがない。また、“統計学を専門に教える大学”で、統計学しか勉強しなかった人が、どういう問題なら解決できるのか疑問だ。

 さらに、*3-2のように、日本の科学研究の実力が急速に低下しているのは、科学者や研究者を大切に育成しなかったことが原因である。そして、政府支出を評価する「独立財政機関」を設置しても、そこが正しい評価をできなければ、天下り先として政府支出がさらに増えるだけで、「政府研究開発投資はGDP比の1%にすることを目指す」というような支出金額の目標しか立てられないのであれば、単なる無駄遣いになるだろう。

 それでは、何故、そのようなお粗末な結果になってしまっているのかと言えば、*3-3の「全国学力テストの小6と中3で、これまで国語と算数・数学しかテストしていなかったが、3年ぶりに理科を加えて3教科で実施する」というように、近年、勉強することをないがしろにしているからである。

 そう言う理由は、上に書いたように、イノベーションのもとになる研究があっても、経営者・官僚・政治家・メディア・国民などがその価値を認めて前に進める態勢をとらなければ、イノベーションの種を殺してしまうからで、そのためには、文系・理系を問わず、必要な知識を持っておくことが必要不可欠だからである。

(4)データの読み方


  平均寿命の推移    医師数/人口1000人     GDPの推移  家電普及率推移

(図の説明:日本人の平均寿命は、1950年には男58.0歳、女61.5歳だったが、1965年まで急激に上昇し、その後2010年までは少し緩やかなカーブで上昇している。そして、2011年の東日本大震災で短縮したが、その後、さらに緩やかなカーブで上昇し始め、90歳~100歳の間で収束するように見える。1965年までの急激な上昇は、栄養状態・衛生状態の改善により乳児死亡率(0歳で死亡するため平均値を下げる)が減ったためだと言われている。その後、1965~2010年のカーブは少し緩やかになって漸増している。この平均寿命のカーブは、人口1000人当たりの医師数のカーブより、人口一人当たりのGDPのカーブや洗濯機・冷蔵庫などの家電普及率のカーブに似ている。そのため、長寿には、まず十分でバランスの良い栄養による体力づくりや清潔さが必要で、それでも病気になった場合に医師が関与して治癒させることが大切だということがわかる。なお、2011年の東日本大震災を境に寿命の伸びが緩やかになり、これを生活習慣病が原因だとする人もいるが、生活習慣病だけが原因なら1990年頃から寿命の伸びが緩やかになってよかった筈だと思うので、死亡原因別の死亡率推移も比較すべきだ)

1)県毎の平均寿命・健康寿命の比較
 2015年の都道府県別平均寿命は、滋賀県が長野県を抜き、男性が全国1位、女性が4位となって、長野県は30年ぶりに男性トップを奪われたそうだ。*4-1のように、どちらも健康を重視していることには変わりないが、県ごとに原因追及を行って対策を講じるのはよいことだ。

 また、*4-2のように、男女を合わせた平均寿命を1990年と2015年で比べると、都道府県の格差は広がっており、2015年トップの滋賀県(84.7歳)と最下位の青森県(81.6歳)は3.1歳の差があるそうだ。そのため、生活習慣(喫煙、食生活など)の見直しは必要で、都道府県間の格差分析は生活環境や実態の違いを把握するのに有効だろう。

2)介護保険制度について
 厚労省は、*4-3のように、介護が必要な高齢者の身の回りを世話する「生活援助」について、平均以上の利用回数になる介護計画を市町村に届けるよう義務づけ、過剰な利用を洗い出し、本人の自立支援や重度になるのを防ぐ中身かどうか検証するそうだ。

 しかし、何が過剰かの判断は重要で、生活援助を減らすと新たに施設に入らなければならない高齢者も出るため、施設を増やして高齢者を収容した方が安上がりで高齢者のQOLが高くなるのか否か熟考すべきだ。何故なら、月30~40回(1日1~2回)と生活援助の利用回数が多い高齢者というのは、甘えている人というより、重篤だが自宅で過ごそうとしている独立性の高い高齢者だと思われるからである。

 なお、介護サービスの需要は実需であり、介護保険制度は始まって20年未満であるため、介護給付費が2025年にかけて現状の2倍の20兆円規模まで膨らむと予想されるのは全く自然で、生活援助が給付費の1%程度であるにもかかわらず無駄遣いを指摘する声が多いのは、「家事は仕事のうちに入らない楽なものである」と考える人が少なくないからだろう。しかし、多くの老夫婦世帯で生活援助は必要不可欠であるし、男性だけが残った世帯ではさらに重要になっている。

 そのため、生活援助のより安価な担い手を確保したり、保険適用と保険不適用(自由)の混合介護をやりやすくして、安いから頼むのではない実需を探って適正額を決め、必要と認められるものは速やかに保険適用にしていくのがよいと考える。

 なお、*4-4のように、介護保険料を8割の自治体で上げ、健保組合は全国の約1400組合のうち3割が2018年度に保険料率を引き上げたので、給付抑制が必要だとする意見がある。しかし、現在の介護保険料は40歳以上からしか徴収していないため、まず受益者である働く人すべてから介護保険料を徴収するように改正し、価格の高すぎる機材の必要性とその価格の見直しから始めるべきだ。

<経済発展への総合的知識の必要性>
*1-1:http://qbiz.jp/article/132030/1/ (西日本新聞 2018年4月17日) 中国、車の外資規制撤廃へ EV18年、乗用車22年に
 中国政府は17日、乗用車分野への外国企業の出資規制を、2022年に撤廃すると発表した。現在は現地合弁企業に対する50%までの出資しか認めていないが、この規制を取り除く。電気自動車(EV)などの新エネルギー車は18年中に、商用車では20年に、それぞれ出資規制を撤廃する。日本の自動車メーカーにとっては、中国事業拡大のチャンスになりそうだ。自動車分野の規制緩和は、米国や日本が強く求めてきた。米中貿易摩擦などで中国市場の閉鎖性への批判が高まる中、基幹産業である乗用車分野の開放策を打ち出すことで、改革・開放政策の継続を印象付ける狙いだ。中国政府は、ガソリン車などを含む乗用車での撤廃により、自動車業界での出資規制は全てなくなると説明している。中国の習近平国家主席は10日の演説で、改革・開放政策を進めるために自動車などの分野で市場開放に取り組む姿勢を示していた。

*1-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180418&ng=DGKKZO29492320X10C18A4MM8000 (日経新聞 2018年4月18日) 中国、車の外資規制撤廃 22年に、市場開放アピール
 中国政府は17日、外資系自動車メーカーの乗用車分野の出資規制を2022年に撤廃すると発表した。同年までに電気自動車(EV)や商用車など自動車産業の外資規制をすべて撤廃する。米国との貿易摩擦をにらみ、市場開放をアピールするのが狙い。世界最大の自動車市場で日本勢を含む外資メーカーの経営戦略の自由度が高まりそうだ。国家発展改革委員会が新しい政策を発表した。習近平(シー・ジンピン)国家主席が10日に博鰲(ボーアオ)アジアフォーラムで表明した自動車産業などの外資規制の緩和方針を受け、自動車の分野別にロードマップを明らかにした。これまでは外資の出資は50%が上限だった。外資規制撤廃の時期は、18年中にEVなどの新エネルギー車、20年にトラックやバスなどの商用車、22年に乗用車とする。中国政府が17年4月に発表した自動車産業の中長期発展計画では「25年までの外資規制の緩和」としており、時期を前倒しするとともに撤廃にまで踏み込んだ。過半出資にこだわって中国進出が難航する米電気自動車メーカー、テスラなどを後押しする狙いとみられる。新エネ車を除き原則2社までだった中国での自動車生産の合弁会社数の制限も22年に撤廃する。中国政府の新しい外資規制撤廃で、日本勢を含む外資メーカーは中国市場での経営の自由度が高まる。一方、外資系自動車大手幹部は「中国側の協力を得られなくなると中国事業にマイナスに働くので、出資比率の引き上げは慎重に考える必要がある」と漏らす。具体的な規制緩和の扱いについても「これから公表される詳細な細則などをみないと分からない」(外資系メーカー幹部)との指摘もある。中国政府は自動車以外でも、18年末までに造船、航空機製造の外資規制を撤廃する。すでに公表した金融以外でも、18年以降にエネルギーや資源、インフラ、交通、流通分野で規制緩和を順次進める方針を打ち出した。中国の新車販売台数は17年で2887万台。世界2位の米国の1.7倍、日本の5.5倍に達する。乗用車を中心に独フォルクスワーゲン(VW)、米ゼネラル・モーターズ(GM)、日産自動車、ホンダ、トヨタ自動車が合弁で生産するブランドが上位を占める。規制緩和によって中国市場で外資と中国メーカーの競争が進み、業界再編が進むとの見方も出ている。

*1-3:http://www.tokyo-np.co.jp/article/economics/list/201804/CK2018041402000147.html (東京新聞 2018年4月14日) 【経済】<原発のない国へ 世界潮流を聞く> (1)中国「50年には再生エネ中心」
◆中国国家気候変動戦略研・李俊峰教授
 世界各国で太陽光、風力など再生可能エネルギーが飛躍的な拡大を続けている。日本政府が依然、原発を基幹電源として位置付け、再生エネルギーが伸び悩んでいるのと対照的だ。世界潮流から何を学ぶべきか。国内各地の再生エネ導入の現場をルポした第一部に続き、研究者やビジネスマンなど世界の専門家たちにエネルギー事情の最前線を聞く。
-中国の再生エネの導入状況は。
 「中国政府が二〇〇七年に再生エネの拡大計画を立ててから、再生エネが急速に増えており、一七年の発電に占める再生エネの割合は計約33%に増えている。これまでは水力、風力の割合が大きかったが今後は太陽光が急増する。二〇年の目標は35%だが、前倒しで達成できるかもしれない。経済政策を立案する国家発展改革委員会は三〇年の目標として、温室効果ガスを排出しない非化石電力である再生エネと原子力で電気の50%超を賄うことを掲げている。原子力はこのうち5%にも満たないだろう」
-再生エネ増加の背景は。
 「技術が進歩し、大量生産が可能になった。太陽光発電用のパネルなど設備投資費用は〇七年から十年間で八分の一まで下がり、いまも急速に下がり続けている」
「これに伴い発電費用は下がるので、電力会社が発電会社から買い取る際の固定価格も大規模太陽光は今年は一キロワット時当たり〇・五五元(九・二円)まで下がっている。これも日本(本年度十七円)の半額だ。二五年には石炭より安くなり、買い取り制度そのものが不要になるだろう」
-なぜそれほど設備投資費用が下がっているのか。
 「太陽光発電設備を作るメーカーが激しく競っているためだ。中国では太陽光メーカーは世界一、二位の企業を含め二百社以上がひしめき合っている。いまや中国メーカーが世界の太陽光生産の70%を占める。風力タービンのメーカーも二十社以上ある。受注を巡って値下げ競争が起きている」
-原発政策は。
 「中国政府は日本の東京電力福島第一原発事故を受け、原発の建設計画を大幅に見直した。一三年以降は新規の建設計画を承認していない。すでに建設中の原発はあるが、二〇年時点の原発の設備容量の目標はもともとの百二十ギガワットから半分以下の五十五ギガワットに大幅に下方修正している」。「建設途上にある国産原子炉が成功すれば、流れが変わるかもしれないが、原発の問題は高い建設費用と安全性だ。人口が大きい中国ではどこに建てたとしても集住地域が近くにあり、安全面のリスクが高い。中国の国土は広いが、最終処分場をつくるメドもたっていない」
-中国は自動車もガソリン車から電気自動車(EV)に転換する計画を発表しているが、発電以外の計画は。
 「二〇五〇年には大半の電気を非化石電力で賄うことになり、再生エネが中心になっているだろう。EVの電気も再生エネで賄うことになる」
<り・しゅんほう> 中国国家気候変動戦略研究・国際協力センター教授。同センターはエネルギー政策を研究し政府に助言している。過去には中国の国家戦略を立案する国家発展改革委員会のエネルギー研究所副所長も務め、政府の再生エネの関連法や中長期計画の立案に携わった。

*1-4:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180419&ng=DGKKZO29568160Z10C18A4MM0000 (日経新聞 2018年4月19日) 再生エネ、アジアで急伸 5年で倍増、中国けん引
 再生可能エネルギーの導入がアジアで急拡大している。国際再生可能エネルギー機関(IRENA)の調べによると2017年末の発電容量は5年でほぼ倍増。世界全体の伸び率の5割を大きく上回った。太陽光発電を推進する中国やインドの伸びが大きい。環境意識が強い欧州などに加えアジアでも採用が増え、世界で再生エネの存在感がいっそう高まりそうだ。17年末の再生エネの発電容量は21億7900万キロワットだった。発電方式別では水力が53%、風力が24%、太陽光が18%と続く。太陽光の構成比が過去5年で約2.6倍となり、伸びが大きい。けん引するのが中国で、太陽光が5年で36倍に増えた。13年に再生エネを高い価格で買い取る制度を導入して大気汚染の一因とされる石炭火力発電を抑制。太陽光発電施設の新設が相次ぎ、中国資本の太陽電池メーカーも育った。太陽光発電はパネルの価格下落で発電コストが5年で約半分に下がったうえ「風力ほど設置や運営のノウハウが要らない」(自然エネルギー財団の大林ミカ氏)。中国では17年も16年に比べ68%増えるなど増加率は高水準が続く。水力発電も過去5年で36%増えた。足元で再生エネの導入が急速に進んでいるのがインドだ。17年の増加率は18%と、比較可能な01年以降で最高となった。ソフトバンクグループが合計2千万キロワットの再生エネ発電所を建てる計画を掲げ、17年4月に一部設備が稼働した。日本では過去5年で2.1倍に増えた。増加分の96%が太陽光だ。発電容量の地域別構成比はアジアが42%、欧州が24%だ。欧州も過去5年で30%増えたが伸び率はアジアより低かった。国際エネルギー機関(IEA)によると、再生エネが世界の総発電量に占める比率は16年に24%に高まった。40年には再生エネの発電量が2.6倍に増え、総発電量の40%に高まるとみている。アラブ首長国連邦(UAE)やサウジアラビアなどでは100万キロワット以上の太陽光発電施設「ギガソーラー」が相次いで建設されている。

*1-5:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180411&ng=DGKKZO29216810Q8A410C1EE8000 (日経新聞 2018年4月11日) 再生エネ「主力」へ技術課題 2050年戦略、競争力見極め難しく
 経済産業省は10日、省内の有識者会議で2050年に向けた国の長期エネルギー戦略の提言を取りまとめた。太陽光や風力など再生可能エネルギーを「主力電源」にする目標を明記した。ただ再生エネを主力にするには技術的な課題も多い。火力なども含めてどの電源や技術に経済性や競争力があるのか、今後も難しい見極めが迫られる。今夏をめどに閣議決定するエネルギー基本計画に反映する。再生エネを主軸としつつ蓄電池や火力、原子力など多様な技術や電源を組み合わせて変化に対応できるようにする。エネルギー情勢を客観的に分析し、最適な選択に向けた判断材料を示す新組織も設立する。再生エネは海外に比べて高コストから脱却できておらず、発電システムの一層の効率化を事業者に促す。再生エネの大量導入を受け入れられる送配電網の整備も課題。天候や季節で出力が変動する弱点を補うためには、火力発電など他の手段の活用も必要になる。それぞれに技術的な課題が多く50年の明確なエネルギー構成は示せなかった。原子力は依存度を低減する方針を明記する一方、「脱炭素化の選択肢」として「安全性や経済性、機動性に優れた炉の追求」も続ける。10日の会議では原子力について、「地球温暖化への対応を考えると依存度低減は合理的ではない。逃げてはだめだ」(コマツの坂根正弘相談役)といった意見が出た。一方で「推進しないほうがいい」(イーズの枝広淳子代表取締役)との異論もあり、明確な方向付けはできなかった。

*1-6:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180418&ng=DGKKZO29496450X10C18A4EE8000 (日経新聞 2018年4月18日) 再生エネ拡大へ、送電線空き活用 経産省会議が対応策
 再生可能エネルギーの普及拡大を議論する経済産業省の有識者会議は17日、発電コストの低減策や、送電線の空き容量を柔軟に運用するルールなどを盛り込んだ対応策の骨子をまとめた。今夏にも改定するエネルギー基本計画に反映する。有識者会議は送電線の利用ルールを見直し、使える容量を拡大する「コネクトアンドマネージ」を2018年度から順次導入する方針を示した。空き容量をどこまで活用できるかを今後、経産省と電力会社で詰める。自然条件による変動の大きい太陽光や風力などの再生エネを大量に導入する場合、電力の需給バランスを保つ方法を確保する必要がある。骨子では蓄電池や水素などのコスト低減を目指し、技術開発を加速する方針も明記した。政府は2030年度に再生エネ比率を22~24%にする目標を掲げている。再生エネを主力電源とするためには、詳細な制度づくりや技術開発に課題が残る。

*1-7:http://qbiz.jp/article/132184/1/ (西日本新聞 2018年4月19日) 南鳥島沖の深海に希土類1000万トン超 世界消費の数百年分
 海洋研究開発機構や東京大のチームは、太平洋の南鳥島沖の深海底で見つかったレアアース(希土類)を含む泥の濃度を調査した結果、2500平方キロの範囲で埋蔵量が1600万トンを超すとの推計を発表した。周辺は日本の排他的経済水域(EEZ)内で、世界で消費されるレアアースの数百年分に相当する大量の資源だとしている。ただ実用レベルの採掘技術が存在しないため、現時点で利用できる見通しは立っていない。東京大の加藤泰浩教授は「企業や研究機関と検討を進め、今後10年で実際に使える採掘技術を開発したい」と話している。チームはこれまでに南鳥島沖の水深約5千メートルの海底にジスプロシウムやイットリウムなどを含む泥が2500平方キロにわたって広がっているのを発見している。調査船で25カ所の海底を掘削して泥に含まれるレアアースの濃度を調べると、北西部の約100平方キロで特に濃度が高かった。この海域だけで120万トン、全体では1600万トンを超す埋蔵量があると推定される。泥に含まれる粒状の生物の骨や歯には多くのレアアースが含まれ、それらをすくい上げて回収することで採掘コストを抑えることができるとチームはみている。

*1-8:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180411&ng=DGKKZO29236340Q8A410C1CR8000 (日経新聞 2018年4月11日) イノベーション、日本勢創出難しく 研究者3000人調査 「国際的成果少ない」26%
 文部科学省科学技術・学術政策研究所は10日、日本の産学の研究者約3000人を対象とした意識調査の結果を発表した。国際的に突出した成果が日本から出ているか、との質問では回答者の26%が前回調査に比べて状況が悪化していると回答した。政府は画期的な研究成果をイノベーションにつなげて経済成長を実現する方針だが、研究現場の認識と大きな開きがあることがうかがえる。同研究所は、研究現場の意識変化を継続的に追う目的で2016年に調査を初めて実施。17年末に同じ回答者を対象に2回目の調査を実施して1回目と比較。対象者は大学や公的研究機関に所属する約2100人、企業に所属する約700人で回答率は92.3%だった。国際的に突出した成果が生み出されているかとの質問は26%が前回よりも悪化しているとした。変化なしは68%で、改善したとするのは5%だけだった。状況を10点満点にすると回答者の平均は大学所属の研究者が4.1と前回に比べ0.58ポイント低下、産業界も0.5ポイント減の4だった。研究成果がイノベーションにつながっているかという質問でも20%の回答者が悪化とした。ポイントも大学で0.4ポイント低下の4.1、産業界は0.29ポイント減の3.3だった。日本の研究状況が悪化している理由として、中国やインドの台頭による国際的な地位低下、学術論文の動向などを挙げた。ベテラン研究者の固定観念が若手研究者の自由な発想を妨げているのではとの回答もあった。ノーベル賞の受賞などは近年目立つものの、過去の蓄積によるもので今後は研究力が落ちる一方という意見も多かった。

*1-9:http://qbiz.jp/article/132329/1/ (西日本新聞 2018年4月21日) 九電、社長交代で成長戦略へかじ 原発4基実現へ、経営再建にめど
 九州電力のトップが約6年ぶりに交代する人事が固まった。2011年の東京電力福島第1原発事故後、大きく傷んだ経営を立て直す環境づくりに一定のめどがついたことが背景にある。今後、重要度が増すのは成長戦略。瓜生道明社長から後を継ぐ池辺和弘氏が、成長の歩みをどのように進めるのかが焦点だ。原発の長期停止による火力発電の燃料費負担増加で、九電の財務は急激に悪化。2012年3月期から4年連続で赤字を計上し、有利子負債は約1・5倍に膨らんだ。収支改善と電力の供給力確保が喫緊の課題となる中、瓜生氏は原発再稼働を推進。川内原発1号機(鹿児島県薩摩川内市)は福島事故後で全国第1号となった。並行して経費削減を徹底。16年の電力、17年のガスと続いた小売り全面自由化、20年の発送電分離に向けた「カンパニー制」導入など、重要課題への対応も指揮した。3月の会見では「嫌というほど濃密な6年間だった」と振り返った。最後の大きな課題が川内1、2号機と玄海3、4号機(佐賀県玄海町)の原発4基体制の実現。玄海3号機が蒸気漏れで一時発送電が停止になったものの、4号機の再稼働への影響は抑えられ、「経営の大きな節目」(九電幹部)を乗り越える見通しがついた。役員の序列では10人抜きで社長に昇格する池辺氏。昨年6月に22人抜きで取締役常務執行役員に就いた後は、若手社員のアイデアや他社技術を活用した新規事業創出に携わり、トップとして成長戦略を進めるための布石との見方もあった。一方、財務は好転しているとはいえ、自由化で競争は激化し、経営環境はなお厳しい。池辺氏も策定に関わった中期的な財務目標では連結の経常利益を17〜21年度の平均で1100億円以上などと掲げるが、社内でも「かなり高い目標」との見方がある。池辺氏は2月、役員制度の見直しに関する記者会見で「意思決定の迅速化が重要」と語った。九電が目指す「日本一のエネルギーサービスを提供する企業グループ」実現のためには、スピード感ある対応が鍵を握る。

*1-10:https://digital.asahi.com/articles/ASL3Z52XCL3ZULFA00Z.html (朝日新聞 2018年3月31日) 化粧品「爆買い」制限広がる 品切れ・海外への転売懸念
 化粧品メーカーが顧客に商品の購入個数の制限を求める動きが広がっている。訪日客向け販売の急増による品切れや、一部が海外で転売されていることが背景にある。訪日客への販売増で業界は好調だが、品切れによる既存顧客への悪影響や、転売によるイメージ低下の懸念から、購入制限を求めざるを得なくなっている。
●「バイト20人で買い占め」 化粧品「爆買い」の実態
 ファンケルは2月、メイク落とし「マイルドクレンジングオイル」の購入個数を「1週間に1人10個まで」とする日中2カ国語の顧客向け通知を直営店に出した。中国人客が「爆買い」したとみられる商品が現地で転売される例が見つかり、ブランドイメージ低下を懸念した。コーセー子会社のアルビオンは昨年末から、「アルビオン」ブランドの乳液の購入を1日1個に制限。ネットに顧客向けの「お願い」を日中英3カ国語で出した。訪日客への販売増で生産が追いつかなくなったという。資生堂は2月ごろから、銀座の百貨店などで「SHISEIDO」ブランドの美容液の購入を1日1個に制限。店頭に営利目的購入を禁じる日中英3カ国語の掲示も出した。制限は「多くのお客様に届けるため」(広報)という。購入制限は訪日客増とともに2015年ごろから目立ち始めた。最近は対象商品が増え、1回あたりの個数の上限も減らす傾向にある。訪日客向けが好調で、資生堂とポーラは直近の決算で営業利益が過去最高、コーセーも最高益の見込みだが、急増した販売の「副作用」が購入制限という形で表面化している。

<データと研究>
*2-1:https://www.sankei.com/world/news/180125/wor1801250041-n1.html (産経新聞 2018.1.25) 科学・工学分野の論文数、中国が初の首位 米国抜く 日本6位 米財団調査
 各国の科学技術力の分析に当たる全米科学財団(NSF)がこのほどまとめた報告書で、科学技術の論文数で中国が初めて米国を上回り世界首位となったことが分かった。日本は6位となり、新興国ではインドにも追い抜かれており、科学技術立国としての基盤低下が懸念されそうだ。報告書はNSFが2年ごとにまとめている。2016年に発表された論文数は中国が約43万本となり、米国の約41万本を抜いた。3位以下はインド、ドイツ、英国が続き、日本は6位と低迷した。7位以下はフランス、イタリア、韓国。報告書がまとめた統計によると、直近10年間の国別の論文数の推移は、中国が約124%増と大きく飛躍。インドも182%増と伸び、新興国の躍進が著しい。日本は13%減った。米国が7%増、欧州連合(EU)域内は28%増だった。論文数を分野別にみると、中国は工学分野で欧米を上回ったが、医学・生物学分野では米国などが優位を保った。中国は科学研究の底上げのため、民間を含む研究開発費を増加させている。論文数増加は、こうした事情が背景にあるとみられる。

*2-2:https://digital.asahi.com/articles/ASL454HRCL45PLBJ005.html?iref=comtop_8_03 (朝日新聞 2018年4月12日) 研究不正、大学教育で防げ 「インチキ論文」見破り方も
 東京大分子細胞生物学研究所や京都大iPS細胞研究所など、著名な機関で研究をめぐる不正が相次いでいる。国は大学や研究機関に対して、ビデオ教材などによる不正防止教育を求めているが、効果はいま一つだ。そうした中、危機感を募らせた大学の間では、学生たちが不正に手を染めないようにと、独自の教育プログラムを取り入れる試みが広がり始めている。「どこが、どう怪しいのか。どう修正すべきか。考えをまとめてください」。滋賀県立大の高倉耕一准教授(生態学)が、学生たちに呼びかけた。受講する十数人の学生が持ち寄ったのは、健康器具や化粧品などのチラシ。他社製品との違いをアピールする言葉が並ぶ。「事例紹介ばかりで、肝心のデータがない」「グラフの目盛りを操作して効果を大きく見せている」。学生たちが、互いに意見をぶつけあう。大学院の「環境研究倫理特論」という授業のひとコマだ。
●不正見抜くソフトの使い方も
 「身近なチラシの観察は、自分が不正に手を染めず、上からの不正の指示に批判的に対処するためのトレーニングです」と高倉さん。この授業は昨秋から今年2月まで15回行われ、学内外の9人が講師を務めた。「インチキ論文」を見破る技術として、画像の切り貼り・使い回しや不正な統計処理などを見抜くソフトの使い方を教えたり、過去の研究不正の裁判記録を読み解いたりした。「特論」を企画した原田英美子准教授(植物科学)は、主任教授などの上司が指示し、若手を巻き込んで組織的に行われる「トップダウン型」の不正を念頭に置いたという。若手は生活のために、人事権者の理不尽な指示に従わざるを得ない。「学生には怪しい論文や研究室を見抜く目を持ち、近づかないようにしてほしい」と話す。互いに意見を出し合って問題の解決策を探るアクティブ・ラーニング(参加型)の授業は学生に好評で、今秋にも同様のプログラムを予定している。
●過去の不正を題材に議論
 東京工業大でも、大学院の修士課程で、選択科目として研究倫理の講義を行っている。2016年度は約290人、17年度は約240人が受講した。座学のほか、ほぼ毎回グループ討議を行う。過去の不正事例を題材に「科学者が重視すべき価値」、「不正が起きた原因や背景」などについて、学生同士で話し合う。講義を担当した東工大の札野順教授(科学技術倫理)は「論文の作成・出版は、本来、研究成果を共有し、研究をより進める手段にすぎない。しかし、それ自体が目的化していることが不正の背景にある」と指摘する。「研究する意味や目的を正しく知れば不正はおのずと減るはず」。19年度からは、対象を学部1年生から博士課程までに拡充する計画だ。
●「不安定な雇用環境が背景」指摘も
 京都大iPS細胞研究所で1月に発覚した研究不正は、任期付きで採用された30歳代の研究者が起こした。成果を出さないと次のポストが得られない若手の不安定な雇用環境が、不正の背景として指摘されている。若手だけでなく、研究代表者らも、国からの補助金が減り続ける中で予算獲得の強い圧力の下にある。科学界全体が過度の成果主義にさらされている。研究不正の防止に特効薬はなく、海外でも大きな課題となっている。東京大医科学研究所の技術専門職員で、日本医療研究開発機構の主査として海外の事例を調査した池上徹さんによると、たとえばカリフォルニア大学のある教員は、「倫理、および『生き抜く』術」と題した討議やロールプレー(役割演技)などのプログラムを導入。研究倫理上問題となる具体的な状況を参加者たちが自ら設定し、論文の責任著者、研究グループの代表者、雑誌の編集者、資金を出した機関の人などの立場で対応を演じ合う。研究者として生き残るため、正解のない問題に対して、自分ならどうするかを考えてもらう試みだ。他大学の教員らの間でも、同様の取り組みが草の根的に広まりつつあるという。
●文科省の不正防止教育「不十分」
 日本では文部科学省が、国の研究費を受ける条件として、不正防止教育を大学などに課している。ただ、ビデオ教材を視聴する「eラーニング」が中心で、不正防止には不十分との指摘は多い。一方、東工大や滋賀大のように教育カリキュラムに組み込む大学独自の参加型のプログラムは、まだ全国でも数えるほど。国立大学の法人化を機に、国からの運営費交付金が減り、新たな教育プログラムに必要な専門の教員を雇う十分なお金が大学側にないという事情もある。池上さんは「研究倫理を、大学の研究教育の一分野として確立する必要がある。そのための予算と教員の措置は、ぜひとも必要だ」と指摘する。

*2-4:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180403&ng=DGKKZO28878060S8A400C1MM8000 (日経新聞 2018年4月3日) データの世紀 情報資源、世界を一変、始まった攻防(1)人体から宇宙まで 企業・国、先頭競う
 世界各地で毎日、企業の活動や個人の行動などから膨大な量のデータが生み出される。つぶさに分析すれば成長の原動力になる「新たな資源」だが、人の行動を支配しうるリスクも抱える。企業や国を巻き込んだ攻防も始まり、世界はデータの世紀に入った。3月27日。英下院の委員会に、赤く染めた短髪にスーツ姿の男性が現れた。米フェイスブックで約5千万人分のデータが不正流出し米大統領選の選挙工作に使われた疑いが浮上。男性は問題を内部告発した英データ分析会社、ケンブリッジ・アナリティカの元社員だ。この会社は流出データの提供を受けていた。証言に費やされた時間は延々、3時間半。米国では大統領選への関与が注目されている。一方、英国で議論を呼んだのは、委員の質問に淡々と答えていたこの男性が、2016年の英国の欧州連合(EU)離脱を問う国民投票にも関与していたと示唆したことだ。委員「もしその関与がなかったら?」。男性「国民投票の結果は、違っていたかもしれません」
●「新たな石油」
 データ分析は個人の行動をも動かす領域にまで高度化した。全世界のフェイスブックの利用者は月間20億人以上。「フェイスブック上での反応を分析して広告を打てば、消費者を大きく動かせる」。米コロンビア大学のサンドラ・マッツ准教授らの研究では、「いいね!」ボタンの押し方などから得た嗜好に沿ってその個人に合った化粧品の広告を流すと「購買数は54%増えた」という。全世界で1年間に生み出されるデータの量は既にギガ(10億)の1兆倍を意味する「ゼタ」バイトの規模に達する。米調査会社IDCの予測では、25年に163ゼタバイトと16年比10倍に増える。これは全人類一人一人が、世界最大の米議会図書館の蔵書に相当するデータを生み出すような規模だ。ネットの検索履歴や車の走行情報が新サービスを生み、経済や政治のデータがマネーを動かす。「データは新たな資源」「新たな石油」。米インテルやIBM、中国アリババ集団などIT(情報技術)大手の経営者は口をそろえる。限りある石油と違い猛烈な勢いで膨張するデータを、世界中の企業が吸い上げる。宇宙からは、モノの動きを見逃すまいと人工衛星の「目」が光る。港のタンカーの出入りやスーパーの駐車場の稼働状況から、公式情報より早く経済の動向を予測。データを駆使するヘッジファンドが利益を上げる。「全世界を毎日撮影する」。日本でも超小型人工衛星開発のアクセルスペース(東京・中央)が18年秋、大きさ数十センチメートルの衛星を3基打ち上げ、最終的に50基に増やす。「衛星画像を様々なデータなどと組み合わせて分析すれば、ビジネスになる」(中村友哉社長)
●病気リスク軽減
 データは命をも救いうる。米アルファベットは17年4月、傘下企業を通じ1万人の心拍などの健康情報を少なくとも4年間集めるプロジェクトを始めた。日本でも内閣府と東京大学や京都大学が共同で18年6月から、あらゆるモノがネットにつながる「IoT」技術を使い生活環境と血圧の関係を即時測定する実証実験を始める。病気リスクの軽減が狙いだ。20世紀を石油の世紀とすれば、21世紀はデータの世紀。その先頭を走るのがグーグルやアップルなど「GAFA」と呼ばれる米IT4社だ。合計時価総額は10年代前半、かつて「セブン・シスターズ」と呼ばれた石油大手4社を逆転した。急拡大ぶりは、勃興時の石油産業の姿にも重なる。石油の大量供給は世界で自動車産業の発展をもたらした。一方、巨大化の弊害も指摘された。ジョン・ロックフェラー氏らが19世紀後半に設立したスタンダード石油は1911年に反トラスト法(独占禁止法)で分割。後に栄えたエクソンやテキサコなど巨大7社も、今は4社に集約された。現在は、肥大化したGAFAに対する逆風が世界で強まる。歴史は繰り返す。データの世紀が問いかけるのは、産業構造の転換や企業間の攻防にとどまらない。石油の世紀には、石油輸出国機構(OPEC)が誕生。中東諸国による石油支配を生み出し、石油危機を通じて先進国経済を大きく揺さぶった。そのアキレスけんを守ろうと米国が同地域に軍事介入する結果となった。データの世紀は米国1強にもみえる。だが世界のルールと一線を画す独自政策で、官民を挙げて世界中からデータの収集にかかる中国のような国もある。ロシアもデータの力で世界を揺さぶる。「宗教や民族や国家といった従来の枠組みに代わり、情報を軸とした新たな世界秩序の構築が始まる」。慶応義塾大学の山本龍彦教授は、そう予言する。その行き先を、まだ誰も知らない。

*2-5:https://digital.asahi.com/articles/DA3S13446853.html (朝日新聞 2018年4月12日) FB全面謝罪、議会追及かわす 情報流出でザッカーバーグ氏、米公聴会証言
 米フェイスブック(FB)のマーク・ザッカーバーグ最高経営責任者(CEO)が10日、米議会上院の公聴会で証言し、最大8700万人の会員情報が不正流出した問題について全面的に謝罪した。だが、利用者の個人情報を利用して収益をあげる巨大IT企業の事業モデルそのものへの不信感は拭えていない。(ワシントン=香取啓介、青山直篤、江渕崇)
■対策講じ、低姿勢貫く
 ダービン議員「昨日どこのホテルに泊まったか教えてくれませんか?」。ザッカーバーグ氏「ここでは明らかにしたくありません」。ダービン氏「これがプライバシー。FBが集めている情報なのです」。公聴会では上院定数の半数近い44人の議員が次々と質問。追及は5時間近くにわたった。普段のTシャツ姿ではなく、紺色のスーツに水色のネクタイを締めて臨んだザッカーバーグ氏。「我々は会社を経営する上でたくさんの間違いを犯してきました」などと対策の遅れや不十分さを謝罪し、低姿勢を貫いた。「世界の人々をつなぐ」との理想を掲げるFBは、誰でも無料で使える。その代わり、利用者がインターネット上に出す個人情報を元にして広告主に広告スペースを提供し、収入を得る。創業14年で、利用者は世界で20億人を超えた。情報の不正流出が発覚したのは3月。アプリを通じて利用者の個人情報が抜き取られ、2016年の米大統領選でトランプ陣営を支援した英選挙コンサル会社に不正利用された疑惑が持ち上がった。偽ニュースの拡散を許し、選挙への介入を招いたとの批判もある。FBは先週来、アプリ開発者の情報へのアクセス制限や広告表示の自主規制など、対策を発表。議員からは政府による規制に関する質問も相次いだが、ザッカーバーグ氏は「正しい規制なら歓迎する」と応じ、論戦にならないようにした。広告なしの有料版を検討しているか問われると「広告モデルが10億人単位の人々にサービスを届ける唯一の道だ」と答えた。追及をかわしたかにみえるザッカーバーグ氏だが、不信感はくすぶっている。「使命よりも広告の価値を上位に置く事業モデルなのに、米国人のプライバシーを守るために自らの意思で本当に変われるとどうして信じられるだろうか」。ハッサン上院議員はこう問いかけた。
■規制強化求める声も
 問題が深刻になった背景には、米巨大IT企業が情報や富を独占し、米政治や社会がその悪影響への懸念を強めていることがある。米調査会社によると、フェイスブックとグーグルだけで昨年の米デジタル広告市場の6割以上を稼ぎ、寡占度合いは年々高まる。欧州に比べ、独占に甘い競争政策をとってきた米国だが、今回の問題を契機に流れが変わる可能性はある。欧州では5月、企業などに個人情報の厳格な扱いを義務づける「一般データ保護規則」が施行される予定で、ザッカーバーグ氏も順守を誓った。米国でも同様の厳しい規制が必要だとする見方が出ている。ニューヨーク大学のロバート・シーマンズ准教授は「データの収集や利用について人々が注意を払うきっかけになった。消費者が完璧なプライバシーを得ることはできなくなっている」と話す。

*2-6:http://www.saga-s.co.jp/articles/-/204114 (佐賀新聞 2018年4月12日) FB悪用対策「不十分」
 米交流サイト大手フェイスブック(FB)のマーク・ザッカーバーグ最高経営責任者(CEO)は10日、個人情報の不正利用やFBを通じたロシアの米大統領選介入など一連の問題について、対策の不備を認めて陳謝した。「悪用防止に十分な対応をしていなかったのは明らかだ。私の過ちで、申し訳ない」と述べた。上院司法委員会と商業科学運輸委員会の合同公聴会に出席した。サイト利用者保護のため、偽アカウントや投稿内容を確認する要員を年内に5千人増やし、約2万人にすると表明。個人情報の収集や利用に関し、規制強化の必要性を指摘する議員らに「正しい規制であれば歓迎する」と一定の理解を示した。一連の問題でのザッカーバーグ氏の議会証言は初めて。反省の姿勢を強調し、イメージ悪化や利用者離れの食い止めを図った。株式市場では再発防止策の説明が評価され、FBの株価は前日と比べ、4・5%上昇した。ザッカーバーグ氏は、モラー特別検察官によるロシア疑惑捜査にFBが協力中だと明らかにした。自身は聴取を受けていないと語った。最大8700万人分の利用者の個人情報を不正取得した英政治コンサルティング会社ケンブリッジ・アナリティカについて、2015年に情報削除を要求したが実際は消されず、確認が足りなかったと責任を認めた。同社は16年米大統領選でトランプ陣営のために個人情報を使ったとされる。大統領選中にFBに虚偽情報を投稿していたロシア企業インターネット・リサーチ・エージェンシーに関し「約470のアカウントやページがあり、約8万件の投稿をしていた。約1億2600万人が影響を受けたと推定される」と説明した。

<研究とデータ分析>
*3-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180402&ng=DGKKZO28858360R00C18A4MM8000 (日経新聞 2018年4月2日) データ分析のプロ、産学で育成 日立など9社、5大学と
 日立製作所やヤマトホールディングスなど大手企業9社がデータ分析の専門家「データサイエンティスト」の育成に乗り出す。東京大学など5大学と組み、企業が持つビッグデータを使った大学院生の育成プログラムを始める。産業のデジタル化と人工知能(AI)の導入が進むなか、データを扱える専門家の層の厚さは企業の競争力を左右する。産学が手を携え実践的な専門家を育てる。データサイエンティストには数値の規則性を探り出したりする統計学に加え、データを取捨選択して問題解決につなげる能力も求められる。業界ごとの課題を理解し企業のエンジニアと意思疎通することも要求される。フリーマーケットアプリ大手のメルカリ(東京・港)ではデータサイエンティストが利用履歴などをもとに、サイト画面の改善や顧客動向の予測につなげている。パナソニックは17年、製品の故障予測などを目指し、優秀なデータサイエンティストが在籍する米企業を数十億円で買収した。日本では統計学を専門に教える大学が少ないなど、育成体制に課題があった。課題解決に向け「一般社団法人サーキュラーエコノミー推進機構」を立ち上げた。日立やヤマトに加え、アステラス製薬、NTTドコモ、MS&ADインシュアランスグループホールディングスなどが参画。元経済産業事務次官の望月晴文氏が代表理事に就いた。推進機構は東大、京都大など5大学と育成プログラムを立ち上げ、大学院生を対象に7週間、データの分析手法を教える。まずは特定の研究室の学生が原則費用負担なしで受講できるようにする。初年度は20~30人を育成し、早期に年間100人体制に増やす。プログラムは参画する事業会社の持つデータを使い、経営課題を解決する人材の確保にもつなげる。物流会社の配送ルートの策定や新薬候補物質の探索方法といったテーマが浮上しているようだ。大学側はプログラムを授業の一環として組み込んだり、単位認定したりすることを検討する。データサイエンティストは争奪戦が激しく、求人情報大手が扱う求人は1年間で6倍近くに増えた。

*3-2:https://toyokeizai.net/articles/-/176110? (東洋経済 2017年6月16日) 日本の科学研究の実力が急速に低下している、政府支出を評価する「独立財政機関」の設置を
末廣 徹 : みずほ証券 シニアマーケットエコノミスト
 2017年度版の「科学技術白書」(6月2日政府、閣議決定)によると、主要な科学論文誌に発表された論文のうち、引用された件数の多い論文の国別順位で、日本はこの10年間で4位から10位に下がっており、基礎研究力の低下が著しいと指摘されている。すでに日本の基礎研究力の低下は議論されており、政府は4月に行われた総合科学技術・イノベーション会議(議長は安倍晋三首相)で名目GDP(国内総生産)600兆円の達成に向け、技術革新を推進するための研究開発への投資額を来年度から3000億円上積みする方針を固めた。生産性向上のためには科学技術のブレークスルーが必要となるが、日本の財政を考えると大盤振る舞いできる状況にはない。第5期科学技術基本計画で示されている「(政府研究開発投資は)対GDP比の1%にすることを目指す」を中心に議論せざるをえないため、研究開発投資の金額を増やすためにはGDPを増やす必要がある。これはつまり、「高い経済成長をするためには高い経済成長が必要である」と言っていることになり、とても苦しい状況だ。3月23日に英国の科学誌『ネイチャー』(Nature)は「日本の科学成果発表の水準は低下しており、ここ10年間で他の科学先進国に後れを取っている」と発表した。世界の8000以上の大学や研究機関における研究を指数化したNature Index(科学論文の本数を指数化したもの)において、日本の論文の割合が2012年から2016年にかけて6%低下したという。指数の水準は米国、中国、ドイツ、英国に続く5位につけているが、2~4位の国とは距離が拡大しつつある。(以下略)

*3-3:http://qbiz.jp/article/131976/1/ (西日本新聞 2018年4月17日) 全国学力テスト、小6と中3で実施 理科加え3教科、7月に結果公表
 小学6年と中学3年の全員を対象にした文部科学省の「全国学力・学習状況調査」(全国学力テスト)が17日、一斉に行われた。国語と算数・数学に加え、3年ぶりに理科を加え3教科で実施し、計約213万4千人が参加。結果は7月に公表する。参加は小学校1万9629校の約107万2千人と、中学校1万80校の約106万2千人。国公立は全校で、私立の参加率は49・8%。東日本大震災で事実上実施できなかった2011年度を除き、今回で11回目となる。同時に子どもたちに学習意欲や生活習慣などを尋ねる質問調査も実施し、さまざまな分析に役立てる。

<データの読み方>
*4-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180402&ng=DGKKZO28791810Q8A330C1TCC000 (日経新聞 2018年4月2日) 寿命 データ活用で延ばす、滋賀県、長野抜き男性1位に 課題見つけ改善策具体的に
 2017年12月に厚生労働省が発表した15年の都道府県別平均寿命で、滋賀県が男性で全国1位、女性で4位となり、長寿県として注目を集める。30年ぶりに男性トップを奪われた長野県は、滋賀県との違いをデータ分析した報告をまとめ、5年後の首位奪還を目指す。全都道府県で平均寿命と健康寿命は延びているものの、データ分析を踏まえた食事、喫煙、運動など生活習慣病の長期的な対策などによって明暗が分かれている。「一に健康、二に健康、三に健康。健やかな滋賀をつくろう」。滋賀県の三日月大造知事は18年1月、年頭の記者会見で「健康」を繰り返して強調し、医療・福祉・保健のネットワーク基盤の拡充と同時に、ビッグデータを活用して取り組むことを宣言した。
●もとは平均以下
 同県は15年の都道府県別の平均寿命で、男性が81.78歳で初めて全国トップになった。女性も87.57歳で4位。三日月知事は「滋賀県民は長生きだと注目された」と喜ぶ。もともと長寿県だったわけではない。約50年前の1965年時点では滋賀県の男性の平均寿命は67.26歳で、全国平均(67.74歳)を下回って全国27位。女性も72.48歳で全国平均(72.92歳)より低く、全国31位にとどまっていた。転機は約30年前から本格的に取り組んだ生活習慣病対策だ。その一つが86年から始めた「滋賀の健康・栄養マップ」調査だ。当時、県民の食事や生活習慣に関するデータは十分に把握できていなかった。「県の情報処理システムが改善され、大きなデータを扱えるようになり、県独自に初めて実施した」(県健康寿命推進課)。5年に1度の調査で県内の地域ごとに県民の健康状態を分析。データに基づき、栄養バランスや運動、余暇、虫歯予防の大切さを伝えるガイドブックを作り、県内全世帯に配った。「健康への1%投資運動」として、1日24時間の1%となる15分程度を散歩や体操など運動に充てることを具体的に県民に呼びかけた。県健康寿命推進課は「主体的に健康づくりに取り組む県民が増えるきっかけにつながった」とみる。喫煙率も男性は5割超だったが、県の計画で2001年に「喫煙率を半減させることが望ましい」と努力目標を設定。数値目標を掲げる自治体は珍しかったが、禁煙か完全分煙を行っているとして登録した飲食店を「受動喫煙ゼロのお店」と公表して後押しした。その結果、喫煙率は激減し、16年に男性で20.6%と全国で最も低い県となった。対策の広がりとともに県の平均寿命の順位は上昇した。男性は05年、10年の調査で2位、今回(15年)調査で初めて1位になった。女性も05年に13位で全国平均を上回り、10年は12位、今回は4位に食い込んだ。
●健康寿命も長く
 自立した生活を過ごせる健康寿命も滋賀県は長い。東京大学大学院の国際保健政策学教室と米ワシントン大学の共同調査によると、滋賀県は男女合わせた健康寿命は15年までの25年間で4.1歳延び、福岡、佐賀と並び全国で最も延びた。「滋賀県と比べ、働き盛り世代で運動習慣のある人が少ない」。0.03歳の僅差で男性の平均寿命トップから30年ぶりに陥落して2位だった長野県は「長野県の健康課題~平均寿命男性1位の滋賀県との対比から」という報告をまとめた。働き盛り世代の運動不足のほか、滋賀県と比べて食塩の摂取量や喫煙者も多いことがトップ陥落の主因として、18年1月中旬に開いた健康づくり推進県民会議で報告を公表。データで課題を明確にし、県民に健康づくりを呼びかけていく。生活習慣病対策を放置すると、平均寿命に大きく響く。長寿県で知られていた沖縄県は00年の調査で女性はトップを維持したが男性は前回調査の4位から一気に26位まで転落。40~50代の脳卒中や糖尿病による死亡率の高さが原因だった。平均寿命が延びても、健康寿命が延びなければ、寝たきりの高齢者が増え、医療・介護費の大幅増になるだけだ。寿命を延ばすための生活習慣病対策は同じ県内でも地域で異なる。財政に限りがある中、データ分析で不十分な分野を見直し、有効な対策を地域ぐるみで採り入れる工夫が必要だ。

*4-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180402&ng=DGKKZO28791850Q8A330C1TCC000 (日経新聞 2018年4月2日) 地域格差、最大で3.1歳 「喫煙対策 強化が必要」
 男女を合わせた平均寿命を1990年と2015年で比べると、都道府県の格差は広がっている。両年とも全国平均以上だったのは19都府県あり、逆にいずれも平均未満だったのは18道府県と二極化している。平均以上から平均未満に転落した県、平均未満から平均以上に改善した県もそれぞれ5県あった。男女合わせた都道府県ごとの寿命のデータは、東京大学大学院の国際保健政策学教室が米ワシントン大と共同で分析した。調査によると、1990年に男女合わせた平均寿命が最も長い長野県(80.2歳)と最も短い青森県(77.7歳)の差は2.5歳だったが、2015年にはトップの滋賀県(84.7歳)と最下位の青森県(81.6歳)の差は3.1歳。25年間で差は0.6歳広がった。健康寿命も1990年に最も長い長野県(71.5歳)と最も短い高知県(69.2歳)の差は2.3歳だったが、2015年にはトップの滋賀県(75.3歳)と最下位の青森県(72.6歳)の差は2.7歳で、0.4歳拡大した。分析した東大大学院の渋谷健司教授は「喫煙対策は強化する必要がある。男女とも食生活の見直しも不可欠」と指摘。「今後、都道府県格差をさらに詳しく分析し、実態を踏まえた対策が必要」と話している。

*4-3:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180403&ng=DGKKZO28902210S8A400C1MM8000 (日経新聞 2018年4月3日) 生活援助 使いすぎ抑制 厚労省 介護計画、月30~40回で届け出
 厚生労働省は介護が必要な高齢者の身の回りを世話する「生活援助」について、平均以上の利用回数になる介護計画(ケアプラン)を市町村に届けるよう義務づける。過剰な利用を洗い出し、本人の自立支援や重度になるのを防ぐ中身かどうか検証する。介護費用の膨張を抑制する狙い。4月中にも正式に決定し、10月から始める。生活援助は介護が必要な高齢者の家を訪問し、掃除や調理、買い物など身の回りを世話する訪問介護サービスの一つ。自己負担は1回数百円と安価に利用できる。その半面、平均を大きく上回る過剰利用が問題視される。厚労省は、利用回数が平均を大きく上回る場合、ケアプランをつくるケアマネジャーに届け出を義務づける。市町村は「必要以上の利用になっていないか」「他のサービスで代替できないのか」などの観点からプランを検証。必要に応じて変更を求める。対象は介護の必要性の度合いで異なるが、おおむね月30~40回前後の利用とし、対象者は年間で数万人規模に上るとみられる。2016年9月のデータによると、生活援助の利用者(48万5千人)は月間平均で11回程度使っている。そのうち31回以上の利用者が2万5千人を占め、100回を超える例もあった。介護給付費は25年にかけて現状の2倍の20兆円規模まで膨らむと予想される。生活援助は給付費の1%程度だが、無駄遣いを指摘する声も多い。定額制の別のサービスがあるのに生活援助を使ったり、生活援助を使いすぎて本人の自立がかえって難しくなったりしていると指摘され、効率化が急務だ。利用回数の上限設定や軽度者の対象除外の是非も議論になっている。厚労省は、不足する生活援助の担い手の育成も始める。新設の短期研修を受ければ、利用者の自宅を訪問して生活援助できる資格を与える。

*4-4:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180419&ng=DGKKZO29537990Y8A410C1MM8000 (日経新聞 2018年4月19日) 介護保険料 止まらぬ上昇、自治体の8割上げ/健保も3割 給付抑制が急務
 介護保険料の引き上げが広がっている。日本経済新聞の調べでは、65歳以上の介護保険料は8割の市区町村で上がった。現役世代が加入する企業の健康保険組合では、全国の約1400組合のうち3割が2018年度に保険料率を引き上げた。介護給付費は過去10年間で57%増え、医療費の伸びを大きく上回る。介護保険制度(総合2面きょうのことば)の維持には給付抑制が課題だ。65歳以上の介護保険は市区町村や広域連合が運営する。保険料は介護サービスに必要な費用の見通しなどをもとに自治体が3年ごとに見直す。18~20年度の基準月額を15~17年度より引き上げた自治体は全体の8割。月額6000円を超える自治体は前期の1割強から4割に増えた。制度が始まった00年度の全国平均は2911円で2倍の水準にあたる。7000円超の自治体も50を上回り、3倍以上になった。基準月額が最も高かったのは福島県葛尾村。9800円と前期から3割引き上げた。「東日本大震災の避難生活の影響もあってか、村内の要介護認定率が高まっている。人口減少で被保険者の数自体も限られている」(住民生活課)。東京都は8700円の青ケ島村、大阪府では大阪市の7927円が最も高かった。最も低かったのは北海道音威子府村で前期と同じ3000円に据え置いた。「村には介護サービスが乏しく給付が少ない。住民も介護が必要になる前にサービスが充実する都市部に転出していく」(住民課)という。40~64歳の会社員らが負担する介護保険料は18年度の月平均が5723円。10年前に比べ45%増えた。特に収入の多い大企業で負担が増している。18年度に保険料率を引き上げたのは450程度で健保全体の3割を占める。JRグループ、ファーストリテイリング、新日鉄住金などの健保が引き上げた。要因は健保加入者の平均収入に応じて、介護納付金の負担額を決める「総報酬割」の導入だ。17年度から段階的に導入しており、20年度に完全実施する。厚生労働省の試算では導入前に比べ、平均で月700円程度の負担増になる見込みだ。社会保険料の負担が増えれば、賃上げ効果が薄まる可能性もある。介護給付費は15年度で約9兆円。10年間で57%増えた。この間の国民医療費の伸びは3割弱だ。一定の給付抑制策は欠かせない。例えば、軽度な要介護者向け料理などの生活援助サービスは一部の利用者が月100回以上使う例がある。回数制限など抜本的な見直しが必要になる。今後の見通しも厳しい。「団塊の世代」が全員75歳以上となる25年度には、65歳以上の保険料はさらに上昇する。沖縄県と大阪府は9000円を超えると推計。東京や京都、石川など11都府県が8000円以上を見込む。保険料は年間で10万円の大台が迫ってくる。調査は日本経済新聞社が4月上旬、全国1571の市区町村などの保険者をまとめている都道府県を対象に実施。広島県を除く46都道府県が回答した。25年度の推計は31都道府県が答えた。

<原発は地球では過去のエネルギー>
PS(2018年4月23、25、28日追加):*5-1のパナソニックのように、新興国や途上国に、教育や地場産業創出の支援として太陽光発電・蓄電システムや照明を寄贈するのはよいことで、パナソニックや日本のよいイメージを新興国や途上国の人に定着させることもできる。
 一方、*5-2のように、日本の経産省有識者会議は「再生可能エネルギーを主力電源にする」という提言をしたが、「原発は温暖化対策のための選択肢として維持し続ける」という姿勢を変えなかった。しかし、公害は二酸化炭素の排出だけでなく、原発によるものもあるため(そんなことも知らずに、気を付けている人に対して、「風評被害」「ポピュリズム」などと言っているのが呆れる)、日本政府は世界に遅れている。また、現在は原発0でも電力に困らないため、可能な限り低減するなら原発は0になるのに、*5-5のように、経産省は新エネルギー基本計画骨子案を示し、再エネを主力電源化するが原発は脱炭素化の選択肢として「可能な限り依存度を低減する」としている。
 なお、*5-3のように、九電は、管内で再稼働を目指していた原発4基全ての再稼働のめどが立ったことで経営を刷新し、新しい取締役常務執行役員の池辺和弘氏は「エネルギーサービスで日本一の会社にしたい」と意気込んでいるそうだ。しかしながら、こういう判断では、世界進出も日本一も難しいと、私は考える。何故なら、*5-4のように、原発輸出は福島原発事故で状況が一変して、多くの原発関連会社が①採算悪化 ②破綻 ③撤退 しているので、もし九電がアフリカでインフラ整備に進出するとすれば、日本と同じ段階を踏む必要はなく、初めから地熱・太陽光等の再エネを基本とした方が世界の潮流に乗っており、感謝されるからだ。

 
 爆発直後の原発  何年も野積みされている除染土  増える汚染水タンク 原発輸出状況
           福島第一原発事故の現実              *5-4より

(図の説明:福島原発事故は過小報道されたが、実際は広い地域が放射性物質で汚染され、その除染土は今でも野済みされたままである。また、汚染水は完全には除染できないため、タンクに溜まっていくばかりだ。もちろん、核廃棄物の最終処分場もない。このように何の解決もできず、国の補助金で成り立っているにもかかわらず、安いから今後も原発を稼働させるというのは、環境と国の財政負担を無視した姿勢である)

*5-1:http://qbiz.jp/article/132436/1/ (西日本新聞 2018年4月23日) パナ、太陽光発電で開発支援 100周年で途上国に
 パナソニックは23日、創業100周年に合わせてアジアやアフリカなどの新興国や途上国を対象に、太陽光発電システムを活用した教育や地場産業の創出といった開発支援を始めたと発表した。十分な電力供給のない地域に太陽光発電・蓄電システムや照明を寄贈するなどして、地域の発展や貧困解消を目指す。まずインドネシア、ミャンマー、ケニアの3カ国で、現地で活動する非政府組織(NGO)などと共同で支援を開始し、対象国・地域を順次拡大する。寄贈したシステムは家庭や学校、集会場の明かりとして使ってもらったり、発電した電気を活用して農産物や水産物の加工といった産業づくりに役立ててもらったりする。パナソニックは、これまでも電力供給のない地域に太陽電池付きの小型照明を寄贈する「ソーラーランタン10万台プロジェクト」を実施。2013年以降、30カ国で10万台以上を無償提供している。

*5-2:http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2018042302000131.html (東京新聞社説 2018年4月23日) 再生可能エネ 主役に起用するのなら
 「再生可能エネルギーを主力化する」-。経済産業省の有識者会議からの提言だ。風力や太陽光を電力の未来を担う主役に据える、というのなら、それなりの舞台と待遇を用意すべきではないか。風力や太陽光といった再生可能エネルギーを「主力電源」にすると持ち上げる一方で、原発は温暖化対策のための「選択肢」として維持し続ける-。二〇五〇年のエネルギー政策はどうあるべきかを考える、経済産業省の有識者会議による提言だ。風力や太陽光は増やしましょう。だが原発に関しても、依存度は小さくするが、なくすわけではないという。相変わらず、どっちつかずと言うしかない。第一に「主力電源」という位置付けが、よく分からない。四年前に閣議決定された国の第四次エネルギー基本計画でも、再生可能エネは「有望かつ重要な低炭素の国産エネルギー」と位置付けられて、最大限、導入を加速するとされてきた。政府は現在、三〇年時点の再生可能エネの比率は、原発とほぼ同じ、22~24%と決めている。“先進国”と言われるドイツは、五〇年までに消費電力の少なくとも80%を再生可能エネルギーで賄う目標を掲げている。そのために、太陽光と風力を最優先で利用してもらい、足らない分を揚水発電やバイオマス発電などで補うよう、電力の供給体制も変えてきた。「主力電源」とうたうからには、少なくとも現行を大幅に上回る導入の数値目標、そして、基幹送電線への優先接続など給電システムの改革案を具体的に明示すべきなのである。送電網の拡充などに時間と費用がかかるという意見もある。しかし、3・11を経験し、原発の新増設は、もう不可能と言っていい。老朽化していく原発に膨大な費用を投じて安全対策を施しながら、あと三十年、恐る恐る使い続けていくよりは、はるかに安上がりかつ合理的ではあるまいか。原発維持は、温室効果ガスの排出をなくしていくためだという。しかし、原発の燃料であるウランの採掘などの過程で、かなりの二酸化炭素(CO2)が排出されるという指摘もある。再生可能エネ普及の加速こそ、脱炭素化の王道でもあり、世界の主流なのである。「脱炭素化のため」と言われても、原発維持の口実にしか聞こえない。

*5-3:http://qbiz.jp/article/132437/1/ (西日本新聞 2018年4月23日) 再稼働めどで九電社長交代 昇格の池辺氏「日本一の会社に」
 九州電力は23日、瓜生道明社長(69)の後任に取締役常務執行役員の池辺和弘氏(60)を昇格する人事を発表した。管内で再稼働を目指していた原発4基全ての再稼働のめどが立ったことで経営を刷新する。6月就任予定で社長交代は6年ぶり。福岡市で記者会見した池辺氏は「エネルギーサービスで日本一の会社にしたい」と意気込んだ。瓜生氏は代表権のある会長に就く。貫正義会長(73)は相談役に退く見通し。瓜生氏は池辺氏を後任の社用に抜てきした理由について「知識もあるが、視野の広さが突出している。今後の難局を乗り越えられる」と述べた。池辺 和弘氏(いけべ・かずひろ)東大卒。81年九州電力。執行役員を経て17年6月から取締役常務執行役員。大分県出身。

*5-4:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180425&ng=DGKKZO29808960V20C18A4EA2000 (日経新聞 2018.4.25) 原発輸出 福島の事故で状況一変
▽…安倍政権は原子力発電所の海外展開を成長戦略の柱に位置づける。民主党政権時代の2009年、アラブ首長国連邦(UAE)の原発新設計画で有力視されていた日立製作所と米ゼネラル・エレクトリック(GE)の企業連合が、官民一体で取り組んだ韓国勢に受注競争で敗れたのがきっかけになった。▽…11年の東京電力福島第1原発の事故を機に状況が変わる。10年にベトナムの原発計画で三菱重工業などが受注する方針が固まったが、ベトナム政府が16年、財政難などを理由に計画中止を決定。トルコ・シノプの原発計画も当初は東芝と東京電力の企業連合が受注する予定だった。▽…国内だけでなく、ドイツやスイス、韓国など脱原発を掲げる国が増え、世界的に需要増は見込めない。仏原発大手、アレバ(現フラマトム社)は原発計画の遅れから採算悪化に陥り、仏政府主導で経営再建を選んだ。東芝も米原発子会社ウエスチングハウスの経営破綻を機に海外事業から撤退。新設計画の先細りに加え、供給体制の弱体化が起きるなど状況が大きく変わっている。

*5-5:http://qbiz.jp/article/132909/1/ (西日本新聞 2018年4月28日) エネルギー基本計画の骨子案を提示 「再生」導入加速促す
 経済産業省は27日、新しいエネルギー基本計画の骨子案を有識者会議に示した。再生可能エネルギーの導入を加速して主力電源化する一方で、原発を「脱炭素化の選択肢」として今後も活用していくのが柱。5月に原案をまとめ、夏にも政府が閣議決定する。基本計画は、これまで2030年に向けた方針を示してきたが、50年を見据えた長期的な視点を取り入れた。地球温暖化対策の国際的な枠組み「パリ協定」で、50年に温室効果ガスを8割削減する目標を掲げており、その達成を目指す。骨子案では、再生エネの発電コストを下げ、余った電気をためる蓄電池などの技術開発を進める。原発については、可能な限り依存度を低減する方針を維持したものの、原発発電比率など50年段階での数値目標は示さなかった。会議では、原発の新増設が明記されていない骨子案に対し、原発推進派の委員から「原発の位置付けがはっきりしない」などと批判が相次いだ。脱原発派の委員からも「原発低減の文言は残っているが、(具体的な)施策が盛り込まれていない」との声が上がった。

<電力へのエネルギーシフト>
PS(2018年4月25、26、27日、5月3日追加):世界最大級の北京国際自動車ショーの報道向け公開が始まり、*6-1のように、世界14カ国・地域から計1200社余りが参加して1000台以上の自動車が展示される見通しで、中国はEVを機にゲームチェンジを図る狙いが伺えるそうだが、中国の政策ならそれが可能だろう。しかし、世界でEV車に変えることは、中国・インドが本格的に市場参入してきた1995年前後に私が日本の経産省に提案したが、日本メーカーは日産自動車以外はEVを作らず、ハイブリッド車でお茶を濁したのである。そして、日本における最初の“空気”は「EVは音がしないから危険だ」「EVは走行距離が短い」などとEVをくさすものばかりで、それを改善しようという努力はなかった。つまり、何に対しても、日本人は、“その場の空気を読む”だけの役立たずが多く、「空気を変えよう」とか「空気をきれいにしよう」と志す人が「変人」や「発達障害」扱いされてイノベーションを阻害するのである。
 そのような中、*6-2のように、安川電機がワイヤレス充電できる電動船を世界で初めて開発したのはよかった。電動タイプを漁船に利用すれば、離島なども地域で発電した電力で操作性の良い漁船を使うことができ、電動タイプを大型船に利用すれば港の水をきれいすることができる。そのため、これは、欧州や中国だけでなく、日本でも普及を推進すべきである。なお、「乗り物が電動化すれば産油国が困るのでは?」と高いエネルギー代を支払いながら言っているド阿呆な日本人もいるが、*6-3のように、サウジアラビア政府は、ムハンマド・ビン・サルマン皇太子の指揮下で脱石油依存の経済改革を進めており、こちらは技術協力した方が感謝される。
 また、日欧の自動車大手は、*6-4のように、中国でEVの現地生産を広げるそうで、特に独BMWのように次世代EVを先行投入するのは競争に勝つための英断だ。日本でもEV化が最も遅れている自動車大手のホンダは、2018年に合弁会社の広汽本田が中国初となるEV生産を開始するそうだが、私の夫は日本でホンダ車に乗っており、そろそろ買い変え時期だが何度も買い変えたくはないのでホンダが日本でEVを発売するまで待っており、私は最近のホンダの動きにとろさを感じている。社内で煮詰まっていると変化できないので、ホンダならBMW・ボルボ等と出資関係を持って取締役を交換してはどうかと考える。
 ジョイントベンチャー(JV)の好事例は、*6-5の富士写真フイルムと英国ゼロックス社の合弁により1962年に創立された「富士ゼロックス(株)」で、ゼロックスの謄写に関するアイデアと富士写真フイルムの確かな写真技術が組み合わさって優秀なコピー機ができている。しかし、富士フイルムホールディングスが米事務大手ゼロックスを全部買収しようとすると、株主から提訴されたりする上、いらぬ部分まで買うことになる。そのため、私は、新ビジネスに有用な部分だけ出し合って新会社を作り、持株会社の下につけた方が双方の株主が納得する上、新会社の階層が浅くて風通しがよく、経営しやすいのではないかと考える。
 なお、*6-6のように、パナソニック、天津力神電池などが数年内に中国で始まるEV電池市場の争奪戦を始めたそうだが、日本は1995年頃からEV電池の開発をしていたのに、日系電池メーカーが何度も戦略転換を強いられるような逆噴射が多く、今頃、あわてて争奪戦に加わっていることが情けない。同じかそれ以上の技術なら、物価水準の低い中国産の方が安くてよいに決まっており、これが変化を嫌がる体質と高コスト構造が日本の製造業を外国に追い出した理由なのである。


*6-4より 北京国際自動車ショー(左から、日産、トヨタ、ホンダ、比亜迪のEV)  

*6-1:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO29814760V20C18A4MM0000/?nf=1 (日経新聞 2018/4/25) 中国、EVで覇権狙う 北京自動車ショー開幕
 世界最大級の自動車展示会、北京国際自動車ショーの報道向け公開が25日午前に始まった。電気自動車(EV)に傾斜する中国メーカーに加え現地で一定の生産比率を義務付けられる日米欧勢も電動技術を誇示した。エンジン車では先進国の壁を越えられなかった中国がEVを機にゲームチェンジを図る狙いが展示からうかがえる。世界14カ国・地域から計1200社余りが参加し、展示する自動車は1000台を上回る見通し。このうち新しいEVとプラグインハイブリッド車(PHV)だけで170台が出展される。会場は中国勢のEVが目立つ。北京汽車集団傘下の北京新能源汽車は人工知能(AI)でエネルギー効率や安全性を高めた車種を披露。北京汽車の徐和誼董事長は「EVやPHVを成長戦略の中心とし世界トップクラス入りを狙う」と話した。日本車では日産自動車が中国で生産するEVを2018年後半に現地で発売すると発表した。トヨタ自動車は20年までに新たに10の電動車を中国で追加する計画を明らかにした。開幕に先立ち独フォルクスワーゲン(VW)のヘルベルト・ディース社長は「中国は世界の自動車産業のカギとなる市場だ」と強調した。中国政府の統計によると、17年のEVとPHVの世界販売台数は142万台。このうち中国は55%を占め78万台と2位の米国の約3.5倍に相当するという。メーカー別でも13万台の比亜迪(BYD)のほか北京汽車と浙江吉利控股集団の年間販売が10万台規模に達した。先進国メーカーでは米テスラが10万3千台で日産自動車は7万3千台。中国勢の販売は大半が現地だが物量の実績で日米欧メーカーに優位に立っている。中国政府は大気汚染や渋滞の対策としてガソリン車の規制を強め、市場が広がった。これを受け現地大手がこぞってEVやPHVに参入し完成車や専用部品を手掛ける300社ものスタートアップが勃興している。将来の基幹産業の芽が育ち、苗●(つちへんに于)・工業情報化相は「市場としての世界一は3年連続だ」と胸を張る。19年にはEVやPHVで一定比率の生産を義務付ける。巨大市場をバックに外資が技術を持ち込まなければ売らせないという得意の誘導策を持ち出した。EVなどで一定比率を生産できないメーカーはクリアしている競合の余剰分を「クレジット」として買い入れないとガソリン車の生産制限を受ける可能性がある。EVの現地生産で出遅れれば成長が難しくなる。一方、50%までとしている自動車メーカーへの外資出資ルールは22年までに全廃する。目指すのは米テスラをはじめとするEVメーカーの誘致だ。規制の強化と緩和の両面の取り組みで中国にEV工場を引き込もうともくろむ。「ガソリン車では外資にかなわなかったがEVでは接近した勝負になる」。工業情報化省幹部は言う。部品点数が減るEVでは先進国メーカーと横一線で開発をスタートできると読む。多くの中国メーカーは出資規制緩和で外資と競うようになる。自動車ショーでは中国勢がその水準に達しているか否かを世界の競合が見定めようとしている。

*6-2:http://qbiz.jp/article/132575/1/ (西日本新聞 2018年4月25日) 世界初、電動船ワイヤレス充電 安川電機が開発 プラグ接続不要、煩雑さ軽減
 安川電機(北九州市)は24日、電気で動く「電気推進船」向けの非接触型(ワイヤレス)充電システムを世界で初めて開発したと明らかにした。欧州を皮切りに中国などで本格販売を始める。二酸化炭素(CO2)削減を目的とした欧州の環境規制などで電気推進船の導入拡大が見込まれており、充電システムを含む船舶関連事業を新たな収益事業の一つに育てる構えだ。電気推進船はバッテリーにためた電気で動く「電気タイプ」と、重油などを使い船内の発電機でモーターを動かす「ハイブリッドタイプ」があり、同社のシステムは電気タイプ向け。港の岸壁に送電設備を設置し、受電設備のある船が近づくと、電気を供給する仕組み。バッテリーに充電して推進用のモーターを動かすほか、船内の照明や空調などの電気設備に利用する。現在は岸壁の充電スタンドからプラグを接続して給電しており、システム導入で充電の煩雑さの軽減が図れる。国土交通省によると国内の電気推進船は現在33隻。ディーゼルエンジンの船舶に比べ揺れが少ないため、多くが旅客船として活用されているという。環境面に加え、大型のエンジンが不要で船内の空きスペースが増えるなどのメリットもあり、欧州や中国でも小、中型の観光船や貨物船に導入され、大型化に向けた研究開発も進んでいる。安川電機は2020年に欧州で船舶に対する排ガス規制が強化されるため、電気推進船の導入が進むと予想。16年に買収したフィンランドの船舶エンジン機器メーカー「バルチラ社」の船舶用電気推進装置部門のノウハウと、自社のコンバーター技術を融合させ、今回の充電システムを開発したという。18年2月期に10億円弱だった船舶事業売上高を、21年2月期には80億円まで伸ばすことを目指す。扇博幸システムエンジニアリング部長は「技術を強みに競争力を高め、新たな分野を開拓していく」と話した。

*6-3:http://qbiz.jp/article/132599/1/ (西日本新聞 2018年4月25日) サウジ、石油外収入1.2兆円 脱依存へ数値目標
 サウジアラビア政府は24日、ムハンマド・ビン・サルマン皇太子の指揮下で進める脱石油依存の経済改革で、国営企業の民営化などにより2020年までに石油以外の収入として90億ドル〜110億ドル(約9800億〜1兆2千億円)を達成することを柱とする計画文書を発表した。ロイター通信などが報じた。サウジ政府は世界最大の石油企業である国営サウジ・アラムコの新規株式公開を目玉に、石油依存からの脱却を目指す経済構造改革「ビジョン2030」を推進中。今回の文書は20年までの数値目標を示しており、最大1万2千人の雇用創出も盛り込んだ。

*6-4:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180426&ng=DGKKZO29830190V20C18A4EA2000 (日経新聞 2018年4月26日) トヨタ、自社開発EVを中国生産 20年発売 北京自動車ショー 日産・BMWも現地投入
 日欧の自動車大手が中国で電気自動車(EV)の現地生産を広げる。トヨタ自動車は25日に開幕した北京国際自動車ショーで、自社開発のEVを中国で生産して2020年に発売する戦略を示した。独BMWなどは次世代EVを先行投入する。中国は世界最先端のエコカー市場になり重要度が一段と高まる。「EVを他地域に先駆けてやっていく」。トヨタ自動車の中国本部長、小林一弘専務役員は同日、モーターショー会場でこう述べた。自社開発EVを中国で現地生産することを初めて示した。中国政府は19年にEVなどを一定比率生産することを義務付けた。これに対応できないメーカーは対応済みの競合メーカーの余剰分を「クレジット」として買い入れないとガソリン車の生産制限を受ける可能性がある。トヨタは中国の合弁相手2社からEVを調達し、19年にも販売することを検討していた。中国のEV市場拡大と規制強化をにらみ、現地生産に踏み切る。「カローラ」と「レビン」のプラグインハイブリッド車(PHV)を19年から現地生産で発売する。20年までにPHVやEVなど新たに電動車10車種を追加し、電動車の中核部品の現地生産も進める考えを示した。日産自動車はトヨタに先駆けて、中国で生産するEVを18年後半に現地で発売する。ホンダも18年に合弁会社の広汽本田が中国初となるEVの生産を開始。19年にはもう一つの合弁会社の東風本田でもEVの生産を始める計画だ。EVシフトで先行する欧州メーカーも中国で生産・開発を強化する。独BMWはEVやPHVの「iシリーズ」から多目的スポーツ車(SUV)の「iX3」のコンセプト車を初公開した。20年に中国で世界に先行して発売する計画。中国以外の発売は未定で現地生産も予定する。ハラルト・クリューガー社長は「(iX3は)ゲームチェンジャーになる。中国はあらゆる車で先行する」と話した。独フォルクスワーゲン(VW)は21年までに中国の6工場でEVなど電動車の生産を始める。22年までに中国で電動化や自動運転、コネクテッド技術などへの投資に150億ユーロ(約2兆円)を充てる方針を発表した。全世界で340億ユーロ(約4兆6600億円)の投資を計画するうち、4割以上を中国に投じる計算だ。中国の吉利傘下のスウェーデンの自動車大手、ボルボ・カーも25年までに販売台数の半分をEVにすると発表した。

*6-5:http://qbiz.jp/article/132867/1/ (西日本新聞 2018年4月27日) ゼロックス買収交渉再開か 富士フイルム、ロイター報道
 富士フイルムホールディングス(HD)による米事務大手ゼロックスの買収計画を巡り、ロイター通信は26日、米ゼロックス側がニューヨークの裁判所に富士フイルムHDとの交渉再開を伝えたと報じた。関係者の話としている。米ゼロックスは、計画が富士フイルムHD側に有利な内容だとして反対する米国の物言う株主から提訴されている。富士フイルムHDが1月に発表した買収計画は、米ゼロックスと合弁子会社の富士ゼロックスを経営統合させ、米ゼロックス株の過半を取得する内容。今年7〜9月期の手続き完了を目指すとしていた。ペーパーレス化が進む事務機市場で生き残るための大型再編が狙い。

*6-6:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO30095740S8A500C1XA0000/ (日経新聞 2018年5月3日、日経産業新聞 2018年5月2日) 「EV電池」争奪戦前夜、最大手パナも正念場
 中国で数年内に始まると確実視されるのが、電気自動車(EV)電池市場の争奪戦だ。中国政府の政策変更で日本勢が苦しんできた中国勢優位のハンディは解消に向かう。野心的な中国メーカーの追い上げを許すまいと、世界首位のパナソニックも将来の市場拡大に備える。日中企業同士のつばぜり合いがにわかに激しさを増してきた。北京市内から南東方面に2時間ほど車を走らせると、中国電池大手、天津力神電池の本社が見えてくる。力神は中国国有企業の傘下で、1997年に創業。米アップル、米デル、韓国サムスン電子グループ、華為技術(ファーウェイ)など向けにパソコンやスマホの電池を供給してきた。2019年に始まる新エネルギー車(NEV)規制では自動車メーカーが一定比率のEVやPHVなどNEVの製造・販売を義務付けられる。大量の電池を確保できるかは死活問題。力神のある社員は「日本車向けにまだ実績はないが、検討中の話はある」と明かす。
■驚異的な成長曲線、中国勢が大増産
 力神は車載電池では12年に電動バス向けの供給を始めたにすぎない新興メーカーだが、驚異的な成長曲線を描く。17年には車載用と民生用を合わせた電池の生産能力で10ギガワット時に到達した。すべてが車載向けではないが「電気自動車(EV)需要の高まりに対応するため、20年には30ギガワット時、25年には60ギガワット時まで伸ばしていく」(同社)と威勢が良い。世界首位のパナソニックが米テスラとネバダ州に建設した巨大電池工場「ギガファクトリー」の能力が35ギガワット時。中国新興メーカーの工場のスケールの大きさがわかる。「将来EVブームに本当に火がつけば、大きな電池のキャパが必要になる。例えば(2000億円前後を投資した)ギガファクトリーが10個分くらい。そのときが本当の勝負。そのときに勝てるよう準備を進めていきたい」。パナソニックの津賀一宏社長は電池事業の将来像をこう語る。
■政策変更で日本勢にも勝機
 ただ近年、日系電池メーカーは何度も戦略転換を強いられてきた。日産自動車はNECと共同出資した車載電池子会社を中国の投資ファンドに売却。GSユアサは独ボッシュなどとの車載電池セル開発の合弁会社を解消した。パナソニックはトヨタと協業検討する形で、テスラ傾倒のリスクを分散する方針に転じた。防戦一方の展開を強いられる要因だったのが、中国の自国優位の政策だった。ただ政府が補助金を与える電池メーカーを選ぶ「ホワイトリスト」制度が事実上形骸化した。ホワイトリストに代わって16年ごろから始まった現在の電動車向け補助金制度は、日系電池メーカーの電池を搭載した車も対象になりそうだ。日系や欧米の自動車メーカーによるNEVの製造・販売は19年から本格化する見込み。トヨタ自動車は4月25日に開幕した北京国際自動車ショーで、自社開発のEVを中国で生産して20年に発売する戦略を明らかにした。ホンダもEVやプラグインハイブリッド車(PHV)など20車種超を25年までに投入する計画を発表。中国でのビジネスチャンス拡大の可能性は大きく広がってきた。中国勢は強気の投資計画をぶち上げる。中国電池最大手の寧徳時代新能源科技(CATL)は20年に50ギガワット時規模まで増産する計画を発表。NEVへの対応を急ぐ日系自動車などグローバルメーカーへの供給拡大をもくろむ考えが透ける。日本も負けていない。出荷量ベースで自動車向けリチウムイオン電池世界首位のパナソニックは、大連工場(遼寧省)で3月から車載用リチウムイオン電池の量産出荷を始めた。まずは北米向け出荷から始めたが「早ければ年内にも中国合弁向けに出荷を始める」(車載担当の久田元史氏)と、鼻息は荒い。1年後に控えるNEV規制という号砲は、従来の完成車メーカーと電池メーカーの序列を変える可能性すら秘める。パナソニックを筆頭とする「日の丸電池」にとっては難しいかじ取りを迫られる半面、最大のチャンスにもなる。

<バラマキ外交と国民負担増>
PS(2018年4月30日):*7-1のように、世耕経産相が北極圏ヤマル半島で昨年末に生産を始めた液化天然ガス施設や積出港の視察でロシアを訪問し、日本のLNG購入や事業出資で日ロ経済協力計画を進める方針とのことである。しかし、購買力平価によるGDPも技術力(分野によっては日本より上)もさほど変わらないロシアからLNGを高く買うことで、エネルギーのために国富を流出させて経済協力しようという頭は20~30年古い(もちろん、他より高く買えば売る国からは喜ばれるが、それは売る側には能力があるが買う側は馬鹿ということだ)。
 一方で、*7-2のように、日本にも「メタンハイドレート」という天然ガス資源が無尽蔵に存在し、既にガス生産に成功しており、こちらなら国富が国内で循環して海外に出ない。エネルギーとしてなら、水素や再エネによる電力の方が公害を出さないため優れているが、天然ガスを使うのなら国産を使うべきだ。
 また、日本政府は、これだけ無能な放漫経営をして国民に負担をかけながら、福祉となると、*7-3のように、財政逼迫として負担増・給付減を続けている。そのため、政府・メディア関係者は、憲法改正を言う前に、まず現在の日本国憲法(特に第25条)をよく理解すべきだ。

*7-1:http://qbiz.jp/article/132952/1/ (西日本新聞 2018年4月29日) 北極LNG事業に日本参加を期待 ロシア閣僚、世耕経産相を案内
 世耕弘成経済産業相は29日、北極圏のロシア北部ヤマル半島で進む天然ガス開発で、昨年末に生産を始めた液化天然ガス(LNG)施設や積み出し港を視察するため、ヤマロ・ネネツ自治管区サベッタを訪れた。日本のLNG購入や事業出資に期待するロシアのオレシキン経済発展相が案内した。「ヤマル」は「サハリン2」に続くロシアで2番目のLNG事業。ロシア天然ガス大手ノバテクが主導し、フランスのトタル、中国石油天然ガス集団(CNPC)も出資するが、日本側の購入契約はない。ノバテクは2022年以降に予定する新たなLNG事業「北極2」に出資するよう日本に促している。ヤマルの生産能力は年550万トン。19年には1650万トンに増やし、サハリン2を上回る見通し。近隣の北極2も同等の巨大事業で、日本政府は「LNGの一大供給源」になると注目している。ノバテク幹部は29日、世耕氏や同行した日本企業幹部らに対し、北極2について説明。ただ北極2は、冬に氷で覆われる北極海航路を使うため、輸送コストや供給の安定性に問題がある。また、日本勢が出資し日本の輸入の約1割を占めるサハリン2も生産拡大を検討中で、北極2と競合する恐れがある。世耕氏は28日、モスクワでシュワロフ第1副首相らと会談した。5月下旬に予定される安倍晋三首相のロシア訪問に向け、日ロ経済協力計画を進め、成果にする方針だ。

*7-2:http://www.itmedia.co.jp/smartjapan/articles/1705/09/news077.html (スマートジャパン 2017年5月9日) 自然エネルギー:夢の国産天然ガス資源「メタンハイドレート」、4年ぶりにガス産出に成功
 日本近海の海底に分布し、国産の天然ガス資源として期待されている「メタンハイドレート」。資源エネルギー庁が愛知県と三重県の沖合で進めているメタンハイドレートら天然ガスを取り出す海洋試験で、4年ぶりにガス生産に成功した。メタンハイドレートは天然ガスの主成分であるメタンと水が低温かつ高圧の状態で結晶化した物質で、地球上では極地や深海にのみ存在する。過去の政府の調査で東部南海トラフ海域には、メタンに換算して約1.1兆m3の砂層型メタンハイドレートが存在すると推定されている。これは日本の2015年のLNG輸入量に換算して、約11年分に相当する量だ。国内で消費するLNGのほとんどを海外からの輸入に頼る日本にとって、メタンハイドレートを資源として利用できるようにするメリットは大きい。ポイントは、水深1000m以深のさらに海底下数百mに分布するメタンハイドレートから、いかに天然ガスの主成分であるメタンガスを取り出すかだ。深海の地層の中に固体として存在するメタンハイドレートをエネルギーとして利用するには、分解してメタンガスと水に分け、さらにメタンガスだけを回収する必要がある。資源エネルギー庁は2013年3月に今回と同じ愛知県と三重県の沖合にある第二渥美海丘で、メタンハイドレートからメタンガスを生産する第1回の海洋産出試験を実施している。地球深部探査船「ちきゅう」を使用して約6日間にわたってメタンガスを連続生産することができた。そして2017年4月7日から4年ぶりとなる第2回の海洋産出試験を実施し、5月4日の10時頃にメタンガスの生産を確認できた。第2回の試験では、第1回と同様に「減圧法」という手法でメタンハイドレートからメタンガスを取り出している。これは坑井内の圧力を減少させてメタンハイドレートを分解する方法だ。この他には坑井内に温水を循環させてメタンハイドレートを加温て分解する「温水循環法」などがある。減圧法で課題となるのが、出砂対策だ。第二渥美海丘にある砂層型と呼ばれるメタンハイドレートからメタンガスを取り出すと、同時に砂が出てくる。第1回の試験ではこの砂がパイプつまるトラブルが発生したため、当初の予定より早く生産を打ち切らなくてはならなかった。そこで今回は異なる出砂対策を施した2本の生産用坑井を用い、まず一方の坑井で3~4週間程度のガスの連続生産を行うことが1つの目標となっている。次にもう一方の坑井において、1週間程度のガスの連続生産を試みる。試験は2016年6月下旬頃まで行う予定だ。

*7-3:https://www.agrinews.co.jp/p43861.html (日本農業新聞論説 2018年4月21日) 改正介護保険法 利用者に不安与えるな
 改正介護保険法が4月、スタートした。介護保険財政の逼迫(ひっぱく)は深刻な現実だが、給付費削減へ向けて利用者や事業者に負担を求めるだけでは課題は解決しない。「介護の社会化で生活の質を高める」という創設の原点に立ち返って、「地域福祉」の在り方を考える必要がある。今回の制度改定は「2025年問題」への対策が柱。自己負担額の見直しや、介護予防を強化し「自立支援」に積極的に取り組む事業者への報酬を手厚くすることなどが特徴だ。「2025年問題」とは、団塊の世代が75歳以上となって超高齢社会が到来し、介護や医療など社会保障の給付と負担が一段と増すことを指す。25年には、75歳以上が約2200万人になるという推計があり、総人口に占める割合は2割。1割だった10年に比べると、急速に高齢化が進んでいく。この問題を視野に入れた主な改正のポイントは、自己負担額での3割負担の導入や、介護予防による「自立支援」を重視したことだ。医療との連携や、リハビリテーションの強化で介護不要な状態までの改善を目指し、成果を上げた事業者へ報酬を手厚くする。だが、事業者が改善の見込みがある人だけを選んだり、保険料を払っても望むサービスを受けられなくなったりする懸念がある。身体的な介護予防に力点を置いた場合、認知症の人への支援はどうするのかなど、さまざまな課題がある。介護保険制度は2000年にスタート。背景にあったのは、①家族介護で特に女性に重い負担がかかる②在宅介護ができないと病院へ(社会的入院)③病院で尊厳が軽視される──といった社会状況だった。制度導入前、介護は家族内の問題であり、“できれば家の奥に隠しておきたいこと”だった。取材を受けてくれる家族を探すのも困難だった。公的介護サービスが当たり前になっている現在と比べると、制度が定着していることを実感する。状況は明らかに改善した。一方で、3年ごとに行われる制度の見直しが財政面にばかりに目が向くきらいがある。制度の安定的な運用は重要だが、「高齢者自らがサービスを選び、決定することで尊厳が守られる」とした制度の理念を置き去りにするようなことは許されない。介護サービスを必要とする高齢者が安心して利用できる制度が「尊厳」の出発点となる。介護の目的は食事や排せつ、入浴などの支援(サービス提供)だけにあるのではない。人と人の良い関係に基づいた支援により、人間らしい生活を送ることにある。地域に密着したJAの強みは、このような関係性を築いてきたことだ。地域の食と農を生かし、女性部パワーを活用したきめ細かな対応で、利用者に喜ばれる高齢者支援活動を続けていきたい。

<自然を知って活用すべき>
PS(2018/5/2追加):*8-1のように、今治市の松山刑務所大井造船作業場から脱走した平尾受刑者は尾道市の向島から泳いで本州に渡ったそうだが、警察もメディアも流れが速く水温が低いので島内での潜伏を有力視して、警察犬も導入し延べ1万5000人(日当1万円とすると、人だけで1.5億円)を投じて向島内を捜索していた。しかし、尾道水道は最も狭い所で200メートルしかなく、満潮・干潮間の潮目が変わる時には流れが止まり(この潮流変化を利用したのが「壇ノ浦の戦い」で、源氏が平家に勝った戦法である)、泳ぐとエネルギーを使って暑くなるのでこのくらいの水温は問題なく、私でも泳いで渡ることができる。そのため、海辺で育った男性なら潜って渡ることも可能だろうと、私は思っていた。しかし、警察やメディアは、「季節や日によっては潮の流れが速い」などと言って、1日に2回ある満潮・干潮間の潮流の停止を未だ知らないようである。この警察やメディアの問題点は、地元の人に聞けばすぐわかる情報を入手せず、自然に関する知識もないため、判断が誤っているということだ。そして、これは、警察やメディアに限らず農水省・国土交通省の官僚や裁判官にもそういう人が多いため、根の深い問題なのである。ただ、この事件が長期間報道されたおかげで、この地域は島が多く流れの早くなる場所も多いため潮流発電に向いており、オリーブやアーモンドなど地中海のような作物を植えて、計画的に都会や海外から新しい住民を呼び寄せたらよいということもわかった。
 このような中、*8-2のように、佐賀、福岡、熊本3県の漁業団体は1日、福岡高裁が示した開門に代わる100億円基金案による和解を「強く期待する」との統一文書を発表したそうだが、確かに本質ではなく策略でゲームのように国を動かそうとする官僚や政治家は多い。しかし、人間は自然の代弁者にすぎないため、このやり方では、人間は動かせても自然の仕返しを受けるだろう。私も、この状況なら、調整池からの排水が有明海に行き渡るようにこまめに排水する必要があると思うが、それは潮受け堤防の排水口に発電機をつけて干満差6メートルの海で満潮・干潮毎に発電しながら行えば、ポンプを使うよりも排水のメリットが出て、安価にこまめな排水ができると考える。

*8-1:https://www.jiji.com/jc/article?k=2018050100122&g=soc (時事通信 2018/5/1) 「泳いだ」海、最短200メートル=逃走経路の解明急ぐ-受刑者脱走 
 愛媛県今治市の松山刑務所大井造船作業場から受刑者の平尾龍磨容疑者(27)が脱走し22日ぶりに逮捕された事件で、県警などは1日、逃走経路などについて本格的な捜査を始めた。平尾容疑者は潜伏していた広島県尾道市の向島から「泳いで本州に渡った」と供述。対岸の同市内までは最短距離で200メートルほどで、泳いで渡ることは可能という。向島は広さ約22平方キロメートル。山林に覆われ、空き家が1000戸以上点在する。広島、愛媛両県警は、平尾容疑者が脱走した4月8日から延べ1万5000人を投じて捜索。同24日には、島北部の防犯カメラに平尾容疑者とみられる男が映っていたことが分かった。両県警は、島内の港や本州につながる道路で検問を実施していることや、海水の温度が15度前後と低いことから、島内での潜伏を有力視していた。平尾容疑者は、向島と本州の間にある尾道水道を泳いで渡ったとみられる。尾道海上保安部によると、尾道水道は最も狭い所で200メートルほど。季節や日によっては潮の流れが速いが、「泳ぎの得意な人なら、泳ぎ切ることはできる。場所を選べば渡れる」という。平尾容疑者は向島で「空き家に潜伏していた」と供述。逮捕された際は、脱走時と異なる衣服を着ていた。現金などを盗みながら空き家を転々としていた可能性があり、両県警は足取りを詳しく調べる。愛媛県警は1日午後、平尾容疑者を送検した。

*8-2:http://qbiz.jp/article/133103/1/ (西日本新聞 2018年5月2日) 佐賀県漁協が諫干「非開門」容認に転換 原告の漁業者側は反発
 国営諫早湾干拓事業(長崎県諫早市)の潮受け堤防開門を巡る訴訟の和解協議に関し、佐賀、福岡、熊本3県の漁業団体は1日、福岡高裁が示した開門に代わる100億円基金案による和解を「強く期待する」との統一文書を発表した。佐賀県有明海漁協は100億円基金案に一貫して反対してきたが、容認にかじを切った形だ。訴訟当事者の漁業者側の孤立化は必至だが、和解協議を拒否する姿勢を崩しておらず、和解成立が厳しい状況に変わりはない。3県の漁業団体は訴訟の当事者ではないが、基金を運営する立場。統一文書では「高裁が示した開門しない前提の和解協議を進めて欲しいとの考えで一致」と明記し、国の基金案とともに有明海再生事業の継続やこまめな排水の確実な実施、基金とは別枠での排水ポンプの増設を和解協議で取り上げるよう求めている。佐賀県の漁協では諫早湾に近い西南部5支所が、干拓による漁業被害を訴えており、開門調査を求める意見は根強いが、統一文書の文言調整については4月24日の運営委員長会議で執行部に一任されていた。福岡、熊本の漁業団体トップと1日に福岡県柳川市で会見した佐賀県有明海漁協の徳永重昭組合長は、報道陣に方針転換かどうかを問われ「裁判所が開門しないことを前提に勧告しているので、そう捉えざるを得ない」と説明。「有明海再生に向け、いろんな意味で弾みがついてほしい」と話した。一方、漁業者側の馬奈木昭雄弁護団長は統一文書について「和解実現を望む思いは受け止めるが、非開門を前提とする和解案は明らかに間違っている」と強調し、従来通り和解協議を拒否する考えを示した。3県漁業団体は8日、統一文書を斎藤健農相に提出する方針。判決期日は7月30日。
   ◇   ◇
●開門見えず苦肉の容認 「和解拒めば基金逃す」 国予算でも揺さぶられ
 「福岡高裁が示した和解の実現を強く期待する」。国営諫早湾干拓事業の開門を巡る訴訟の和解協議に関し、佐賀県有明海漁協が1日、開門によらない和解を容認する姿勢に転じた。湾の潮受け堤防が閉め切られて21年。これまで開門断念につながるような選択は突っぱねてきた。何が契機となったのか。
■福岡、熊本に歩調
 和解案容認派の福岡、熊本両県の漁業団体に、佐賀も歩調を合わせた。
3県のトップが顔をそろえ、統一文書を発表した1日の記者会見。佐賀の徳永重昭組合長は「ここ(統一文書)に書いていることが全て」と険しい表情を浮かべた。一方で、福岡高裁が和解勧告で示した開門に代わる基金案については最後まで言及を避けた。佐賀には、国に開門を求める裁判の原告漁業者や諫早湾の近くで赤潮被害に苦しむ漁業者がいる。これが福岡、熊本の漁業団体との「最大の違い」(漁協幹部)で、非開門の和解案を拒んできた理由だ。
しかし、漁協幹部や県関係者には懸念が広がっていた。昨年4月に「開門しない」と方針決定した国に反発し続ければ「予算を削られかねない」。2018年度政府予算では、開門調査を命じた10年の確定判決後、農林水産省が計上してきた開門準備経費が消えた。毎年約18億円を計上する有明海再生事業も「国の予算は単年度ごとに決まる」(農水省)と見直しに含みを持たせる。
■漁業者から不安
 「開門」を求める佐賀の有明海西南部の漁業者からも「基金案を拒み続けたら開門も基金も逃しかねない」との声が出てきた。7月に予定される福岡高裁判決は和解勧告を踏まえ「非開門の決断が下される」とみられているためだ。国の“揺さぶり”に呼応するように、福岡、熊本両県の漁業団体が佐賀説得に動いた。佐賀県漁協内部は「原告団の一部がいるのに、容認は口が裂けても言えない」「福岡、熊本から『俺たちの気持ちをくんでほしい』と言われる」との意見が交錯。板挟みとなった。
■「包囲網」が完成
 こうした状況に佐賀県も現実路線に転じた。これまで開門を求め「漁業者に寄り添う」としてきた山口祥義知事は今、「漁協に寄り添う」と県漁協の組織決定に重きを置く。県幹部も、諫早湾を閉め切った調整池からの小まめな排水で有明海が再生すれば「開門調査に代わりうる」と3月の県議会で説明。地元県議は「県の対応は以前とまったく変わった。高裁の和解勧告が引き金になった」と憤る。決着を急ぎたい国は判決ではなく、和解による解決を望んでいるが、原告漁業者が協議を拒んでいる。佐賀県漁協の「和解容認」で、原告を協議のテーブルへ引っ張り出す“包囲網”が完成したといえる。「ニンジンをぶら下げて(相手を)動かす。国には策士がいる」。佐賀県漁協の幹部は歯がみした。

| 経済・雇用::2018.1~ | 03:35 PM | comments (x) | trackback (x) |
2018.3.9~11 働き方改革・雇用・人口減少など (2018年3月12、15、17、19、20、21日に追加あり)
(1)働き方改革・裁量労働制・高度プロフェッショナル制度について

    
   2018.1.22日経新聞     2017.8.24、2018.2.15東京新聞 2018.2.24佐賀新聞

1)裁量労働制について
 「裁量労働制は、i)平均的な方で比べれば ii)一般労働者より勤務時間が短い というデータもある」等と政府は答弁してきたが、*1-1-1のように、i)の「平均」は、統計的に求めた平均値でも最頻値でもなく(この統計学は小学校で勉強済)、企業が勝手に選んだ者だった。また、ii)の根拠となったデータは、裁量労働制で働く労働者と一般労働者への質問内容が異なり、比較できるシロモノではなかった。

 これに対して、日経新聞は、*1-1-2のように、「①政争している場合か」「②一人ひとりの能力を最大限に生かし、生産性を高める多様な働き方ができる土俵づくりを急がなければならない」「③日本の1人当たり労働生産性は経済協力開発機構(OECD)加盟35カ国の中で21番目と欧米諸国に劣後したままだ」「④反対があるから延期するでは、あまりに稚拙」等と反論した。

 確かに、誰かを辞めさせるための政争の具としてのみ追及する党には眉をひそめる点もあるが、重要なのは、本当に裁量労働制の下で働く労働者が一般労働者よりも仕事の進め方や労働時間を自分で工夫でき、モチベーションが上がって生産性を上げられているかどうかである。これについては、経産省・経団連など企業側の要請で裁量労働制を拡大するために、厚労省が故意に結果ありきの非科学的な調査をしたことが明らかで、裁量労働制を拡大すれば本当に労働生産性が上がるわけではない。そして、小学校でも習うような統計を国会議員も中央省庁の役人も理解しておらず、議論のツールにできていない状態こそが、日本の労働生産性の低さを招いているのである(ちなみに、医学・薬学の分野では、当然のこととして正確な調査と統計処理を行うため、私はじめ医学部卒の人なら、30分も話を聞けばいい加減な調査をしたことがわかる)。

 そして、安倍首相は、*1-1-3のように、裁量労働を巡る残業データに異常な数値117件が見つかった問題を受け、衆院予算委員会で聞き取った1万件超の全データを再精査すると表明されたが、これは、データの誤入力や聞き取りミスのような小さなミスではなく、調査そのものが真実を知る目的で科学的に設計されたものではないという大きな問題であるため、やるとすれば科学的に設計した調査をやり直さなければならないのだ。

 そのため、この状況は、加藤厚労大臣が引責辞任すればすむような問題ではなく、法律を変更すればよりよくなるという実証もないのに変更して改悪する事例で、国民の経済活動を政府が邪魔しているものだ。加藤厚労相は東大法学部卒で大蔵省出身の典型的なエリートだが、それでも、いい加減な調査に基づいた効能より害の方が大きそうな法律変更であることを理解してストップをかけることができなかったのだから、首相や担当大臣を変えればすむような問題ではなく、他の人がやっても同じかそれ以下のことしかできないかもしれないという問題なのである。

 これは、東大はじめ、他国の法律を翻訳することしかやってこなかった法学部教育に問題があるからで、多くの官僚を出している東大は、事実を正確に調査・分析してから法律変更する法学部教育に率先して改めるべきである。そして、これは、事実の科学的調査と法律の変更、法律変更後の影響のフォローアップなどを卒論で経験させれば簡単にできるものだ。

 そのため、私は、*1-1-4の佐賀新聞の「裁量労働制を削除して、議論を一からやり直せ」という佐賀新聞の記事が正しいと考える。また、高度プロフェッショナル制度も、本当に仕事の進め方や労働時間を自分で管理できる人だけが対象になっているわけではないため、なくすのがBetterで、現在の労基法のように自ら仕事を管理できる立場の管理職に残業手当がつかなければ十分だろう。

2)高度プロフェッショナル制度について
 高度プロフェッショナル制度の対象も、①研究開発・金融・コンサルタントなどの高度な専門的知識を要する業務に就く年収1075万円以上の労働者で ②労働者本人が希望し ③職務の範囲を明確にする などの要件をみたせば、労働者が労働時間管理の対象から外れる制度だ。

 しかし「高度な専門的知識を要する業務に就く年収1075万円以上の労働者だから、必ず経営者との交渉力があって希望が通る」とは限らない。また、何故、研究開発・金融・コンサルタントを、高度な専門的知識を要する業務と定義したかも不明だ。

 つまり、“高度な専門的知識を要する業務”としたことで納得したような気になっている人が多いが、これら専門職の人も最初から高度なわけではなく、仕事をしながらOn the job trainingを積んで次第に高度になっていくものだ。その典型例は、*1-2-1の医師で、医師国家試験を通ったからといってすぐ高度と言えるわけではなく、多くの事例に遭遇しながら先輩医師の指導を受け、経験を積み重ねることによって、次第に“高度”になっていくものである。

 そのため、私は、年収要件をつけ職業の特定をしたから残業代は0でよいというのは間違いで、*1-2-2のように、生産性を重視する経済界の要請で2015年4月に国会提出された高度プロフェッショナル制度は、働く人の視点に立てば働き方改革法案から削除すべきだと考える。

3)では、何が不十分なのか
 労働基準法は、第2次産業の労働者を主な対象として昭和22年に制定された法律で、当時はベルトコンベアーで運ばれてくる部品を組み立てるなど労働時間と成果が一致する働き方をしている人が多く、状況に合っていた。しかし、そうでない労働者が増えた現在では、能力評価の視点も加わり、労働時間の長さではなく成果で労働者の待遇を決めるニーズが増えたということに、私も賛成だ(https://bengoshihoken-mikata.jp/archives/1568 参照)。

 しかし、成果によって労働者の待遇を決めるために必要なことは、裁量労働制や高度プロフェッショナル制度のような残業代を0にする法律ではなく、公正に実績を評価して賃金や昇進に反映させる仕組みだ。しかし、日本人は、自ら経験のない人が多いせいか、上から下まで公正な実績評価を苦手とする場合が多く、(3)3)で書くとおり、うまく機能しないのである。
 
(2)人口減少と労働力


     世界の人口       日本の人口推移   老齢年金の額  働きたい高齢者

 「少子化の影響により、産業界では現役世代の人口減少が既に深刻な労働力不足をもたらしている」「対処法としては、①ITなどによる省力化 ②国内の潜在労働力の活用 ③外国からの移入 の3点が挙げられる」と、*2-1で、西日本新聞が記載している。

 しかし、これまでは、生産年齢人口の男性のポストを増やすために、分けない方がよい職務を細切れに分け、女性や高齢者を何とか辞めさせようとし、外国人に門を閉ざしてきたのだ。そのため、まず、65歳定年制を無くして働きたい人は働けるようにすれば、支える側から支えられる側に移る人が減るとともに、健康寿命が延びて医療費・介護費の増加を抑制できる。

 また、細かすぎる職務の区割りを適切にして、もう少し広い視野で仕事ができるようにすべきであるとともに、これまで女性は働かない方がよいかのように言われ、専業主婦への不可逆的移動圧力が社会的にあったが、働きたい女性が気持ちよく働ける社会環境を作れば、労働力不足の解消に確実に役立つだろう。

 さらに、現在は、外国人労働者なしでは日本社会は回らなくなったと言われるほどだが、地球全体は人口が増えすぎて困っている状況であるため、日本は入国した外国人労働者を正規の労働者と認めて労働基準法を適用すべきだ。そして、高齢者・女性・外国人労働者などの多様な人材が活躍している方が、それらの人々のニーズを知ってビジネスに繋げやすいのである。

 なお、*2-2のように、九州生産性本部は、「2017年度 人事部門の抱える課題とその取り組みの実態調査」の結果、「企業や団体が直面している課題は優秀な人材の確保・定着」「人手不足が深刻」と回答した割合がどちらも70%前後あったことを明らかにした。その影響は、「技術継承ができない(55.8%)」「商品・サービスの質の低下(29.6%)」「失注の増加(22.6%)」などだそうだ。

(3)これまで労働市場から締め出していた潜在労働力の活用
1)高齢者の雇用
 政府は、*3-1のように、高齢者施策の指針となる高齢社会対策大綱を閣議決定した。その内容は、65歳以上を一律に高齢者とみることをやめ、公的年金の受給開始時期を70歳超も選択できるようにし、高齢者の就労を促すことを狙って、年齢にかかわらず柔軟に働ける環境を整備することだそうだ。

 しかし、65歳を過ぎてから新規雇用・再雇用される高齢者の70%がパートなどの非正規で、正規は女性19%、男性35%しかいない。これでは、高齢者が安心して気持ちよく働ける状態からは程遠く、それさえ改善すれば働いた方が年金を受給するよりも高額の所得を得られるため、高齢者も文句はないだろう。それより、「高齢者=不健康」「高齢者=ボランティア活動で満足すべき」などと決めつけるのは、年齢による差別である。そして、社会貢献する必要がある人に年齢制限はなく、慣れた仕事を通した社会貢献が最も強力である。

 また、九州経済調査協会は、*3-2のように、九州のニュータウンの調査を行い、2015年の高齢化率(65歳以上)は20.8%で、九州全体の高齢化率28.0%は下回ったが、30%を超えるニュータウンも少なくなく、再生に向けた支援や取り組みが必要だとした。古い「ニュータウン」は便利な場所にあり、似たような世代の人が購入しているため、保育・教育・介護などのニーズが一斉に変化するのが特徴だ。しかし、訪問診療・訪問看護・訪問介護は、同じニーズの人が集まった場所の方が効率的にできるため、便利な場所にあるニュータウンは、容積率の制限を緩和して高さを増し、従来の住民は無料で新築に住み替えることができる形で建て替えて、新たな住民も募集してはどうかと、私は考える。

2)女性の雇用


 2018.3.7 2018.2.28 2017.12.25  65歳以上の介護保険料  大学別平均年収
    日経新聞      東京新聞

 世界経済フォーラムが発表したジェンダーギャップ指数について、*4-1のように、日本弁護士連合会会長が「①日本は、調査対象144カ国中114位と前年より順位を落とした」「②日本は、健康1位、教育74位という女性の現状よりも、経済114位、政治参画123位など女性の地位で順位が低い」「③特に国会議員の男女比は129位、閣僚の男女比は88位と大幅に低いが、女性の政治参加は、あらゆる分野における女性の地位向上の必須条件である」「④経済は若干改善したものの、給与格差、管理職や専門職での男女比が100位以下と低い」「⑤女性活躍推進法の完全施行で女性活躍は大きなうねりになった」等の談話を公表している。

 このうち①②③④については、他国は本気で努力しているのに、日本は「形だけ」や「やっているふり」をしている地域・職種が多いため、次第に置いて行かれたものである。また、⑤については、(私が資料を付けて手紙で頼んだ)安倍首相はじめ何人かの国会議員の力が大きい。

 さらに、*4-2のように、政府が上場企業に女性取締役の起用を促すため、改定予定のコーポレートガバナンス・コードで取締役会に女性がいない企業は投資家に理由を説明するよう求めたのはよいことだが、こうすると、*4-3のように、候補者が少ない(又は、いない)という言い訳が必ず出てくる。

 しかし、最初の男女雇用機会均等法施行は1985年で、男女の雇用機会均等を努力義務から義務に変更した改正男女雇用機会均等法施行は1999年であるため、現在も女性取締役候補者が少ないと言う企業は、最初の14年間は女性を育てる努力をせず、後の19年間は脱法行為をしており、その間、労働基準監督署もそれを見て見ぬふりしていたということになる。

 なお、女性に取締役となる資質がないわけでないことは、他国との女性取締役比率の比較を見れば明らかで、日本では、能力ある女性もさまざまな社会的圧力や社会環境によって昇進を妨げられたり、離職したりしたのだということを、世界経済フォーラムのジェンダーギャップ指数は物語っているのである。

 しかし、女性が取締役となる資質を有するには、仕事を継続して男性と同レベルの知識や経験を有していなければならず、その妨げになっているのは、*4-6のような保育所・学童保育施設の不備、*4-4のような介護負担による離職などだ。つまり、女性に家事負担を押し付け、その家事負担を支えるインフラは心もとないわけである。

 にもかかわらず、*4-5のように、「40歳以上からしか介護保険料を徴収しない」「高齢者の介護保険料を上げる」「介護サービスを減らす」などと言うのは、自分は介護を担当しないと考えている男性の視点であり、まさに国会議員や閣僚に女性が少なく、女性のニーズを政治に織り込めていない例になっている。

3)成果主義(=能力主義)の採用について
 それでは、0歳から保育所に預けられた子どもの発育は、祖父母・父母・叔父・叔母などを含む家族が見ていた場合と比べてよいか否かについては、(私は、3歳児神話を信じているわけではないが)1人の子どもを複数の家族が暖かいまなざしで見守っている場合と複数の0歳児を保育士が仕事で見守っている場合では、その子の注目のされ方・愛情の与えられ方・手のかけられ方は違うと考える。

 その違いが子どもに与える影響は、正確な調査をしなければわからないが、やり方によっては、家族ではできないプロの教育を保育所・幼稚園・児童館などはできる可能性もあるため、子どもにとってどれが一番よいかは、場合によって異なるだろう。

 そのような中、女性は出産や夫の転勤を機に離職や転職を迫られることが多いので、*4-7のように、勤務年数ではなく公正な成果の測定による「成果型(=実績主義or能力主義)」で給料を払ってもらわなければ大損なのである。一方、男性は、1つの会社で勤め上げることが可能な人が多いため、年齢が高くなるほど年功序列型が得なわけだが、それができるなら女性も年功序列の方が楽でよいに違いない。

 しかし、公正に成果を測定して「成果型(=実績主義or能力主義)」で給料を支払う仕組みこそが、労働者を年齢・性別・学歴・国籍などの属性で決めつけずに、高齢者・女性・外国人が気持ちよく活躍できる社会を作るための必要条件なのである。なお、転勤が多い人は、いつも慣れない仕事をしているため、本当は労働生産性が低いと思われる。

(4)外国人労働者の雇用
 厚労省は、2018年1月26日に、*5-1のように、「2017年10月末時点の外国人労働者数が127万8,670人で、日本の雇用者総数の約2%を占める水準だった」と発表した。国籍は、中国が全体の29.1%、ベトナムが18.8%、フィリピンが11.5%で、立場は技能実習生と留学生が多く、専門的・技術的分野もいたそうだ。

 日本の外国人労働者の受入体制は遅れており、政府は単純労働者の受け入れを認めていないが、私は、企業・農協・漁協・森林組合・人材派遣会社等を通して、雇用のある単純労働者を受け入れれば、海外に出てしまった第一次・第二次産業を地方で再生することも可能だと考える。

 そのような中、政府は、*5-2のように、国家戦略特区に指定した新潟市、愛知県、京都府で外国人の農業就労を解禁する方針を固めたそうだが、「①国家戦略特区のみに限定」「②1年以上の農業実務経験が必要」「③農業に関する専門知識や技術を持つことも条件」「④受け入れる人材は、農作業に必要な日本語を話せる外国人」「⑤受入期間3年以内」などの規制をするそうで、本当に受け入れる姿勢とは思えない。また、独立して農業をやるわけではなく、企業・農協・農業生産法人などの従業員として農業やその関連産業に従事するのであれば、この①~⑤は、双方のニーズに合わない規制だ。

 ただ、合計特殊出生率が2016年で1.44人の日本人の中に同出生率が3~6人の異民族が移住してくると、次世代は2~4倍の割合になる(例えば、1世代目が10%なら2世代目は20~40%になる)。これは米国で実際に起こっており、ドイツのメルケル首相も難しい立場に立たされている事象であるため、移住総数や出生率には注意しなければならないだろう。

<働き方“改革”・裁量労働制・高度プロフェッショナル制度>
*1-1-1:https://digital.asahi.com/articles/DA3S13368806.html (朝日新聞社説 2018年2月21日) 裁量労働制 政府の説明は通らない
 もともと比べられないデータを比べ、国会で説明したのはまずかった。しかし政策の中身には影響がないから、法案は予定通り、近く国会に出す。安倍首相の国会答弁とその撤回を巡って論戦が続く裁量労働制の適用拡大について、政府の姿勢をまとめれば、こうなる。こんな説明は通らない。野党が求める通り、政策論議の基礎となるしっかりしたデータをそろえてから議論するのが筋だ。問題となっているのは、あらかじめ定めた時間を働いたとみなす裁量労働の人と、一般の労働者の1日の労働時間を比べたデータだ。「裁量労働制の拡大は長時間労働を助長しかねない」と懸念する野党に対し、首相は1月末の国会答弁でこのデータに基づき「平均的な方で比べれば一般労働者より短いというデータもある」と反論した。しかし、裁量労働の人と一般労働者では質問内容が異なり、両者は比較できないものだった。厚生労働省によると、調査の担当者とは別の職員が15年に野党への説明資料として作り、国会審議でも使われてきた。あくまでミスだったという。だが、こんな重要な資料を大臣に報告もせず職員が勝手に作るとは、にわかに信じがたい。誰の指示で、どんな意図で作られたのか。徹底的に解明することが不可欠だ。問題となった比較データそのものは、裁量労働制拡大を検討した厚労省の労働政策審議会には示されていない。従って法改正を進めることに問題はない。政府はそう強調する。しかし政府はこのデータを、長時間労働への懸念に反論する支えとしてきた。誤った説明を繰り返し、賛否が分かれる論点の議論を尽くさずにきたこと自体が、大きな問題である。疑問に答える先頭に立つべきは、行政の責任者である首相だ。裁量労働を広げても心配ないと言わんばかりだった基本認識が問われる。ところが首相は「厚労省から上がってきた答弁(案)にデータがあったから、紹介した」「すべて私が詳細を把握しているわけではない」と、ひとごとのようだ。データ比較は不適切だと厚労省が認識したのは、最初の首相答弁から4日後の今月2日。7日には加藤厚労相に報告されたのに、首相が答弁を撤回したのは14日だった。2週間近くも問題が放置されたことになる。政府の対応はあまりに鈍く、国会軽視もはなはだしい。こんな状況で、法案を国会で審議するわけにはいかない。政府に再考を求める。

*1-1-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180222&ng=DGKKZO27219470R20C18A2EA2000 (日経新聞 2018年2月22日) 政争している場合か
 なぜこうも時間ばかりが費やされるのだろうか。政府は野党の反発を踏まえて働き方改革関連法案を修正し、裁量労働制の拡大など大半の制度の施行を1年遅らせる検討に入った。日本は人口減で働き手が減る。人工知能(AI)の登場で従来通りの働き方は通用しなくなる。一人ひとりの能力を最大限に生かし、生産性を高める多様な働き方ができる土俵づくりを急がなければならない。働き方改革を政争の具にしている場合ではない。日本生産性本部によると、日本の1人当たり労働生産性は経済協力開発機構(OECD)加盟35カ国の中で21番目と欧米諸国に劣後したままだ。そんな状況にもかかわらず、裁量労働制の拡大も脱時間給制度導入も3年前の国会で提案されながら、審議もされずにずるずると今に至っている。野党などの「かえって長時間労働を助長する」といった批判が強かったためだ。そのような声には長時間労働を防ぎ、労働者の健康を守る仕組みづくりで対応するのが筋。「反対があるから延期する」では、あまりに稚拙ではないだろうか。仕事の進め方や労働時間を自分で工夫し、モチベーションを上げ、生産性を上げられる人は少なくないはずだ。そういう人たちには制度面で後押しし、日本の成長につなげる必要がある。マイナス面を是正し、プラス面を生かす議論こそが求められている。働き方改革の法案には長時間労働の是正や同一労働同一賃金なども盛り込まれている。「多くを詰め込んだ一つの法案にまとめるのは乱暴」との批判もあるが、世界的に進む大きな環境変化に、大きな対応の素地をつくっておくのは間違いではない。すべての世代が性別に関係なく、生き生き働ける環境は欠かせない。改革に「待った」をかけ続けるだけでは何も進まない。

*1-1-3:https://mainichi.jp/articles/20180223/k00/00m/010/124000c (毎日新聞 2018年2月22日 ) 裁量労働制:安倍首相「全データ1万件超を再精査」
衆院予算委で表明 加藤厚労相の引責辞任を否定
 安倍晋三首相は22日の衆院予算委員会の集中審議で、裁量労働を巡る残業データに異常な数値117件が見つかった問題を受け、個々の事業場から聞き取った1万件超の全データを再精査すると表明した。加藤勝信厚生労働相の引責辞任は否定し、裁量労働制の拡大を含む働き方改革関連法案を今国会へ提出する方針も変えないとした。一方で加藤氏は、法案の内容を「妥当」と結論づけた厚労省の労働政策審議会(労政審)で、一般労働と裁量労働の労働時間を比べた議論はしていなかったと明らかにした。「長時間労働が問題だという認識は、(労政審の)各委員にあった」と釈明したが、裁量労働制の拡大に反対する野党は「根拠のない法案だ」と撤回を要求。政府が月内を予定した法案の提出は3月以降にずれ込む見通しだ。首相は予算委で、異常なデータについて「改めておわびする」と陳謝。データの基になった調査票が厚労省の倉庫から発見されたことを受け、「調査票と(それを基に)入力したデータを突き合わせ、精査しなければいけない」と述べた。再精査の期限は「1万件以上あり、いつまでにとは言えない」とした。加藤氏は調査票の現物を国会へ提出する考えを示した。問題になった「2013年度労働時間等総合実態調査」は、全国の1万1575事業場から労働基準監督官が聞き取りなどを実施。厚労省は21日に異常な数値が117件(87事業場)見つかったと発表した。野党は働き方改革法案が「間違ったデータに基づいていた」とし、労政審で議論をやり直すよう要求。だが加藤氏は「(異常があったのは)主たるデータではない。全体として結論は変える必要がない」と拒否した。 予算委では与党議員からも、「(首相が答弁を撤回した)性格の異なるデータ比較は極めて不適切だ。猛省を促す」(公明・佐藤茂樹氏)と政府の対応に批判が相次いだ。首相は法案に盛り込む裁量労働制の拡大に関し、(1)労使の合意や労働者本人の同意が前提(2)みなし労働時間と実態がかけ離れた場合は、適切に指導する(3)対象を限定し、営業職全体に広がるという懸念を払拭(ふっしょく)する--などとして理解を求めた。

*1-1-4:http://www.saga-s.co.jp/articles/-/187727 (佐賀新聞 2018年3月2日) 裁量労働制の削除、議論を一からやり直せ
 政府が今国会の最重要法案と位置付ける働き方改革関連法案を巡り、安倍晋三首相は「不適切データ」の発覚によって批判が噴出した裁量労働制の拡大を削除すると正式に表明した。骨格部分の切り離しは政権への大きな打撃となるが、世論の反発が強まれば、9月の自民党総裁選での連続3選に影響すると判断したとの見方も出ている。裁量制拡大は罰則付きの残業時間規制、非正規労働者の処遇改善に向けた同一労働同一賃金、高収入の一部専門職を労働時間規制から外す高度プロフェッショナル制度(高プロ)と並ぶ4本柱の一つ。政府は残り三つの柱は維持して今国会に法案を出し、成立を目指す方針を変えていない。だが裁量制の断念で法案に対する不信や不安は拭いがたいものになった。もともと8本の法案を一本化し、労働環境の改善に資する規制の強化とともに緩和も実現させようというやり方に野党や労働組合は強く反対していた。さらに規制強化について、経済界の要望から中小企業の残業規制を1年延期する修正案が用意されるなど改革の後退に不満が募っている。残業規制が施行後5年間猶予される医師や建設業労働者らの懸念も根強い。裁量制を除外してしまえば、あとは予定通りにというわけにはいかない。規制強化と緩和の切り離しも含め、議論を一からやり直すべきだ。実際に働いた時間ではなく、あらかじめ決められた時間に基づいて賃金を支払う裁量労働制の対象業務拡大を巡っては野党が「長時間労働を助長し、過労死を増やしかねない」と批判。安倍首相は1月末に厚生労働省の裁量労働データを持ち出して「裁量労働制で働く人の労働時間は一般労働者より短いというデータもある」と反論した。ところが野党の追及で、一般労働者に「1カ月で最も長く働いた日の残業時間」を聞き、裁量制で働く人には単に1日の労働時間を尋ねるという不適切な調査手法が明らかになり、首相は答弁を撤回。その後も「異常値」が次々に発覚した。政府が盛んに強調した裁量制の労働時間縮減効果を支える根拠が崩れたのだから、今回の削除は当然だ。ただ問題はまだまだある。まず野党が「残業代ゼロ法案」と批判する高プロの導入。高収入の金融ディーラーや研究開発職などは時間外労働をしても割増賃金をもらえなくなるが、どれくらいの人に影響が及ぶのか、はっきりしない。サービス残業の実態についても厚労省は調査していない。さらに働く人のためになるはずの残業規制では、中小企業に限って適用を1年延期する修正案が先に厚労省から自民党に提示されている。やはり中小の同一労働同一賃金や残業代割増率引き上げも遅らせる。「人手不足に残業規制が重なると、労働力が確保できなくなる」との経済界の訴えが反映された。もう一つ忘れてはならないのは、医師や建設業労働者は残業規制の適用が施行後5年間猶予されることだ。厚労省の調査でも医師は長時間労働を余儀なくされ、建設業については2020年東京五輪・パラリンピックに向け労働環境が厳しくなることが予想される。どうすれば、過重労働や過労死をなくせるか、本当に働く人のためになるのかという根本に立ち返り、制度設計について議論を尽くすべきだ。

*1-2-1:http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201802/CK2018022402000152.html (東京新聞 2018年2月24日) 医師の長時間労働 特定機能病院7割に勧告
 大規模病院で違法残業や残業代の未払いが相次ぎ発覚している問題で、高度医療を担う全国八十五の特定機能病院のうち、七割超の六十四病院で労働基準法違反があったとして労働基準監督署が是正勧告し、少なくとも二十八病院に複数回の勧告をしていたことが二十三日、明らかになった。共同通信が二〇一三~一七年の関係資料を入手した。藤田保健衛生大病院(愛知県)など五病院に関しては勧告が四回繰り返され、労使協定(三六協定)の未締結や労基署への無届けを指摘された病院も六病院あった。勤務医らの長時間労働の根深さが裏付けられ、医師の働き方改革の議論に影響がありそうだ。勧告を受けた病院や運営法人の中には、三六協定の上限時間を引き上げることで違反状態を解消しようとする病院もあった。がん研究会有明病院(東京都)を運営するがん研究会は、三六協定に基づく医師の残業上限(月八十時間)を超える残業をさせたなどとして一六年十二月に勧告を受け、「過労死ライン」とされる百時間を大幅に上回る百五十五時間を上限とする協定を結び直していた。四回の勧告があったのは藤田保健衛生大、奈良県立医大、山口大、愛媛大、長崎大の各病院。長崎大病院は、時間外労働に関する労使協定の上限時間(月八十時間)を超える月九十五時間の残業をさせたなどとして一三年三月に是正勧告を受け、一七年六月までほぼ毎年、違法残業か割増賃金の未払いで勧告を受けた。未払い分は既に支払ったという。藤田保健衛生大のほか、千葉大、日本医大(東京都)、横浜市立大、京都府立医大の各病院と静岡県立静岡がんセンターは、医師らとの間に三六協定を結んでいなかったり労基署に届け出ていなかったりしたにもかかわらず残業させたとして勧告を受けた。いずれも現在は協定を結び、届け出もしているとしている。医師の長時間労働は、診療の求めを原則拒めないと医師法が規定する「応召義務」も一因とされ、厚生労働省の検討会が在り方について議論。患者への説明など一部の業務を他の職種に任せるタスク・シフティング(業務移管)の推進を柱とした緊急対策をまとめた。
◆是正勧告を受けた関東の21特定機能病院
【東京】
杏林大学医学部付属病院
慶応義塾大学病院
がん研究会有明病院
昭和大学病院
帝京大学医学部付属病院
東京医科歯科大学医学部付属病院
東京医科大学病院
東京慈恵会医科大学付属病院
東京大学医学部付属病院
東邦大学医療センター大森病院
国立国際医療研究センター病院
日本医科大学付属病院
日本大学医学部付属板橋病院
【神奈川】
北里大学病院
横浜市立大学付属病院
聖マリアンナ医科大学病院
東海大学医学部付属病院
【千葉】
千葉大学医学部付属病院
国立がん研究センター東病院
【栃木】
独協医科大学病院
【茨城】
筑波大学付属病院

*1-2-2:http://www.shinmai.co.jp/news/nagano/20180302/KT180301ETI090007000.php (信濃毎日新聞 2018年3月2日) 働き方改革 高プロ創設も切り離せ
 安倍晋三首相が今国会に提出予定の働き方改革関連法案から、裁量労働制の対象拡大の部分を切り離すことを決めた。実際の労働時間に関係なく、あらかじめ決めた時間を働いたとみなし、賃金を支払う制度である。労働時間に応じた残業代を支払う必要がないため、長時間労働を招く懸念が付きまとう。政府は裁量制で働く人たちの労働時間や業務量の変化などを調査せずに、対象拡大を法案に盛り込もうとした。影響が不明のまま審議することはできない。法案作成に使った厚生労働省の調査も、調査目的が違う上、大量の異常値が見つかった。法案から切り離すのは当然だ。安倍首相は裁量制の実態調査を実施する方針を示している。慎重かつ厳密に行わなければならない。厚労省調査のデータ異常の原因を突き詰め、手法を改善しなければ信頼性は保てない。調査結果だけでなく、すべてのデータも最初から公表するべきである。関連法案には容認できない点がまだ残る。最大の問題は「高度プロフェッショナル制度(高プロ)」創設である。労働基準法上、労働時間の上限は週40時間、1日8時間とされ、超えた場合は時間外労働として残業代を支払う必要がある。残業代には働かせすぎた会社に対するペナルティーの意味がある。高プロは、収入1075万円以上で「高度な専門的知識を必要とし、労働時間と成果の関連が高くない」仕事の人を、この規制から外す。安倍首相は「柔軟な働き方を可能にする」と述べている。果たしてそうだろうか。どんな長時間労働も労働者の判断として扱われ、残業代はない。企業の刑事責任が問われる範囲は狭くなる。会社から過大な成果や仕事を求められる心配もある。法案に設けられている健康確保措置も十分ではなく、過重労働に歯止めがかからないだろう。経営者には年収要件の引き下げを求める声もある。導入後、対象が拡大していく懸念は拭えない。高プロ創設は、生産性を重視する経済界の要請で2015年4月に国会提出された。過労死を増やすとして野党が反対し、審議入りが見送られてきた経緯がある。単独では難しいからといって、労働団体が要望してきた残業規制などとセットにして成立を図るのは認められない。安倍首相がいう「働く人の視点に立つ働き方改革」が真実なら、法案から削除するべきである。

<人口減少と労働力>
*2-1:https://mainichi.jp/articles/20180109/ddm/005/070/038000c (毎日新聞社説 2018年1月9日) 論始め2018 人口減少と労働力 従来の枠組みを超えよう
 2017年に生まれた子どもは推計94万人で、過去最少となった。死亡数から出生数を引いた「自然減」は40万人を超える。これはまだ序の口で、25年には64万人、40年は89万人、60年には94万人が1年間に減っていく。人口の少ない県や政令市が毎年一つずつ消えていくようなものだ。産業界では現役世代の人口減少がすでに深刻な労働力不足をもたらしている。20年には416万人が不足するとの試算もある。従来の枠組みを超えた取り組みが必要だ。労働力不足への対処法としては、(1)ITなどによる省力化(2)国内の潜在労働力の活用(3)外国からの移入--の3点が挙げられる。ITを使った事務の省力化は医療や介護の現場でも少しずつ進んでいる。膨大な情報を瞬時に処理できる人工知能(AI)や、力仕事を人に代わって行うロボットも期待される。しかし、AIやロボットでは置き換えることが難しい仕事も多い。
●「65歳定年」の見直しを
 現在は働いていない高齢者や専業主婦は貴重な潜在労働力だ。各種統計で使われている「生産年齢人口」(15~64歳)は、50年には約2500万人も減るとされている。しかし、「生産年齢」と言っても、現在は10~20代前半で働いている人は少ない。むしろ65歳を過ぎても働いている人の方が多い。今後も65歳以上の人口は増えていく。日本人の健康寿命は延びており、65歳で定年とする制度や慣行の見直しが必要ではないか。元気で働く意欲のある高齢者、高学歴で専門職のキャリアがありながら育児や介護のため離職している女性などが働けるようになれば、労働力不足の解消に大きく貢献するだろう。自宅や近くのオフィスで働くテレワークを導入する企業も増えている。さまざまな事情で通勤が難しい人の活用も進めていくべきだ。問題は外国人労働者である。一昨年、日本で働く外国人は初めて100万人を超えて108万人となった。特に多いのがアジア諸国からの技能実習生や就労目的の留学生だ。技能実習生は約21万1000人、留学生は約20万9000人で、それぞれ前年より25%も増えた。都市部のコンビニ店ではアジア系留学生の働く姿がよく見られる。彼らの存在なしでは日本の社会は回らなくなったと思えるほどだ。技能実習制度は「開発途上国への技能移転」を名目に1993年に始まった。小さな繊維関係の会社や農業・漁業などで働く人が多い。一部を除けば、日本人がやりたがらない過重労働や危険な仕事を担っており、労働者としての権利保障の枠外に置かれているのが実態だ。実習生はブローカーに多額の仲介料や保証金を取られる上、日本に滞在できるのは原則3年。決められた会社でしか働けないため、低賃金で劣悪な職場環境に不満があっても転職ができない。
●矛盾多い外国人労働者
 こうした技能実習制度は国内外から強い批判を浴びてきた。政府は受け入れ期間の3年から5年への延長、実習生からの保証金や違約金の徴収禁止などに取り組んでいる。17年には「外国人技能実習機構」を新設し、実習計画のチェックを厳しくすることにした。それでも政府の基本姿勢は、日本への定住は認めず、安価な労働力として活用する、という枠内にとどまっている。生活習慣や宗教・文化の異なる集団が大量に国内に流入し、定住することで生じる摩擦を警戒する意見は根強い。労働力不足を補うために拙速な政策変更を行えば混乱が生じることにもなるだろう。ただ、現行の技能実習や留学の制度は、本来の目的とかけ離れている。働き手不足を補ってくれる貴重な戦力なのに、制度の隙間(すきま)で使い捨てにしているのも同然ではないか。少なくとも、労働者として認められる最低賃金や労働時間のルールを実習生らにも適用すべきである。最近では中国沿岸部の上海など、日本より賃金が高い都市も出てきた。韓国やタイで働くベトナムやミャンマーの労働者も増えている。このままでは日本を訪れる外国人労働者はいなくなるのではないか。日本の社会が人口減で縮小し、活気を失わないためには、これまでの発想を変えるべきだ。高齢者や女性、外国人労働者など多様な人材が活躍できる社会を目指したい。

*2-2:http://qbiz.jp/article/129128/1/ (西日本新聞 2018年3月3日) 7割が人手不足「深刻」 九州生産性本部調査 技術継承に懸念
 九州生産性本部(会長=田中優次西部ガス会長)は2日、2017年度「人事部門の抱える課題とその取り組みの実態調査」の結果を発表した。企業や団体が直面している課題として最も多かったのは「優秀な人材の確保・定着」の69・1%で、人手不足について「深刻化している」「やや深刻化している」と回答した割合も70・7%に上った。調査は昨年11〜12月、九州7県の企業・団体を対象に実施し、328件の回答を得た。人手不足が「深刻化」「やや深刻化」と答えた企業・団体に、その影響を尋ねると「技術継承ができない」(55・8%)が最も多く、「商品・サービスの質の低下」(29・6%)▽受注に失敗するなど「失注の増加」(22・6%)▽「利益の減少」(19・9%)−が続いた。18年春新卒の採用活動で「予定通り採用できなかった」と答えたのは36・7%で、前年調査に比べ4・5ポイント上昇。19年春の新卒採用を増やすのは22・0%に倍増した。働き方改革には8割以上取り組んでおり、具体的には「長時間労働の管理・是正」(90・0%)や「育児休業や短時間勤務など子育て世代の支援」(63・6%)が多かった。「テレワークなどの在宅勤務」「副業・兼業の容認」は数%にとどまり、同本部は「想定よりも取り組む企業が少なかった」としている。

<高齢者の雇用>
*3-1:https://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-669102.html (琉球新報社説 2018年2月21日) 高齢社会対策大綱 「老後の安心保障」基本に
 政府は高齢者施策の指針となる高齢社会対策大綱を閣議決定した。65歳以上を一律に高齢者とみることを見直し、公的年金の受給開始時期を70歳超も選択できるようにする。高齢者の就労を促すことを狙い、年齢にかかわらず柔軟に働ける環境の整備を打ち出した。高齢者を一律で65歳以上とみる考え方は、確かに現実的ではない。高齢でも自立生活が送れる「健康寿命」は男性71・19歳、女性74・21歳である。厚生労働省が2016年に実施した調査では「高齢者だと思う年齢」の質問に「70歳以上」との回答が41・1%で最も多かった。日本老年学会なども17年に「高齢者」の定義を現在の65歳から10歳引き上げて75歳以上に見直し、前期高齢者の65~74歳を「准高齢者」として社会の支え手と捉え直すよう求める提言を発表している。一方、16年版厚生労働白書によると、60歳以上を対象にした調査で65歳を超えても働きたいと7割が希望しているものの、実際に働いている人は2割にとどまっている。厚労省の調査では、昨年1月から7月までに65歳を過ぎてから新たに雇用、または再雇用された高齢者約65万人のうち、70%がパートなどの非正規だった。正社員は女性19%、男性35%でしかない。現状は「年齢にかかわらず柔軟に働ける環境」には程遠い。その改善は急務である。高齢者の年齢を見直す大きな理由の一つに年金支給額の抑制があるのは確実だ。25年には全人口の3人に1人が65歳以上で占める。働き盛りの世代が高齢者を支えることを前提につくられた年金制度は、現行のままでは維持できなくなってきている。受給開始を70歳以上も選択できるようにしたのは「選択肢の幅を広げる」(加藤勝信厚労相)ためではない。幅を広げることで、早めに受給する人への支給額を減らし、全体として支給額を抑制するのが目的である。国は年金支給水準を抑制する政策を既に実施している。支給額をこれ以上、減額することは断じて認められない。安倍晋三首相は高齢社会対策会議で「高齢化はますます進行し、地方人口の減少も見込まれている。全ての世代が幅広く活躍できるような社会を実現することが重要だ」と述べた。安倍首相が言う「活躍」とは、働くことで日本経済に貢献することなのだろう。強い違和感を禁じ得ない。加齢や障がいが原因で働けない高齢者もいることを忘れてはいないか。それぞれの立場で、社会に貢献できることはあるはずである。高齢者の雇用確保も重要である。だが、高齢者施策の基本は「老後の安心」を保障することである。就労促進と併せ、支えが必要になったときに安心して暮らせる仕組みを充実させなければ、超高齢社会は乗り越えられない。

*3-2:http://qbiz.jp/article/129402/1/ (西日本新聞 2018年3月8日) ニュータウンの高齢化率2割超 40%近い地域も 九経調調査
 九州経済調査協会(福岡市)が行った九州のニュータウンに関する調査によると、2015年の高齢化率(65歳以上)は20・8%(推計値)だった。九州全体の高齢化率28・0%を下回ったが、30%を超えるニュータウンも少なくなく、再生に向けた支援や取り組みが必要としている。国土交通省が13年度に作成したニュータウンリスト(対象は計画戸数が千戸以上もしくは計画人口3千人以上など)と国勢調査を組み合わせて推計し、3月の九州経済調査月報でリポートとしてまとめた。県別でみると鹿児島、長崎、宮崎、大分で高齢化率が20%を超えた。九経調によると、この4県は1960〜70年代に開発されたニュータウンが多く、鹿児島県では40%に迫る地域も複数あった。福岡県は1980年代以降も開発が進んだこともあり、高齢化率は九州平均を下回った。ただ福岡市東部から宗像市にかけたエリアのほか、大野城市や北九州市小倉北区、小倉南区などで高齢化率が30%を超えるニュータウンが目立った。九経調の竹下和希研究員は「全てのニュータウンで若者の流入を前提とした再生を期待するのは困難」と指摘。リポートでは団地住民が農業を通じてにぎわいを生み出している福岡県宗像市の「日の里ファーム」を紹介し、「高齢者を地域の担い手として位置付け、生きがい創出に重点を置くなど、多様な再生が必要になる」としている。

<女性の雇用>
*4-1:https://www.nichibenren.or.jp/activity/document/statement/year/2017/171201.html (日弁連会長声明 2017年12月1日 日本弁護士連合会会長 中本和洋) 世界経済フォーラムのジェンダーギャップ指数に対する会長談話
 世界経済フォーラム(WEF、本部・ジュネーブ)は、2017年11月2日、同年の世界各国の男女平等の度合を指数化した「グローバル・ジェンダー・ギャップ」を発表した。日本は、調査対象144か国のうち、114位と前年より3つ順位を落とし、過去最低となった。2015年が101位、2016年が111位と年々順位を落としている。ジェンダーギャップ指数は、女性の地位を、経済、政治、教育、健康の4分野で分析し、ランク付けしているが、日本は、経済114位、政治参画123位であるのに対し、教育74位、健康1位と分野間のばらつきが大きい。特に、女性の地位改善の鍵ともいうべき政治分野が最も順位が低く、国会議員の男女比が129位、閣僚の男女比は昨年の50位から88位と大幅に落ち込んでいる。生活の基盤となる経済は昨年の118位から若干改善したが、給与格差、管理職や専門職での男女比は、いずれも100位以下と低い。教育の分野では、初等・中等教育や識字率が1位であるため、教育全体では74位であるが、高等教育は101位といまだに低い水準にとどまっている。日本政府は、「すべての女性が輝く社会づくり」をその重点課題に掲げ、2017年6月6日には「女性活躍加速のための重点方針2017」を明らかにした。その中で、女性の職業生活における活躍の推進に関する法律が完全に施行されてから1年余りが経過し、「女性活躍は大きなうねりになっている」との現状認識を示し、また女性活躍の実現に不可欠な働き方改革の取組を今後も強力に進めるとしている。しかし、2017年のジェンダーギャップ指数は調査が始まってから過去最低の順位を記録しており、上記施策が十分に成果を上げたとは言いがたい。国民の半数を占める女性の意見が十分に反映されてこそ、男女平等の視点を有する各種施策の立案が可能となることから、女性の政治参加は、あらゆる分野における女性の地位向上のための必須の条件である。当連合会においても、会内における男女共同参画の重点課題として、意思決定過程への女性会員の参画拡大に取り組んでいるところである。また、高等教育における格差解消は、社会に出てからの経済分野や政治分野における男女格差の改善に大きな影響を及ぼすことから、政府の掲げる女性活躍推進における有効な布石となるはずである。したがって、当連合会は、日本政府に対し、2017年のジェンダーギャップ指数の順位が過去最低となった事実を厳粛に受け止め、女性活躍を更に推進するために、働き方改革の取組にとどまらず、女性の政治参加及び高等教育における男女格差解消を重点課題とし、我が国のあらゆる分野にはびこっている性差別を根絶するためのより実効性のある具体的措置、施策を早急に講じるよう求めるものである。

*4-2:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO27450860X20C18A2SHA000/ (日経新聞 2018年2月28日) 女性取締役増を統治指針に 政府方針、企業に説明責任
 政府は上場企業に女性取締役の起用を促す。今春に改定するコーポレートガバナンス・コード(企業統治指針に方針を示し、取締役会に女性がいない企業は投資家に理由を説明するよう求める。上場企業の役員に占める女性の割合は、欧米は2~3割だが日本は4%弱にすぎない。国際標準に近づける仕組みづくりが急務だった。同指針は東京証券取引所が上場企業向けに定める企業統治の規範で、取締役会のあり方や役員報酬の決め方などを規定する。強制力はない。金融庁は3月にも、有識者を交えた同庁の会合で指針の改定案を示す。「ジェンダーや国際性の面を含む多様性」を求める規定を盛り込む。パブリックコメント(意見公募)を経て5月中に改定案を固め、それを踏まえ東証が導入する予定だ。指針の実効性を高めるため、新たに「投資家と企業の対話ガイドライン」をつくる。社内・社外の取締役に関して「ジェンダーや国際性の面を含む多様性を十分に確保した形で構成されているか」「取締役として女性が選任されているか」を企業に問う内容だ。ガイドラインにも強制力はないが、女性取締役を起用しない上場企業は、決算説明会や投資家向け説明会などで機関投資家や株主、マスメディアなどに理由を明らかにする必要が生じる。内閣府の資料によると、監査役なども含む「役員」に占める女性の割合は、日本の上場企業は2017年に3.7%。15年のフランスの34.4%や英国の23.2%、米国の17.9%などに比べ、圧倒的に少ない。欧州では役職の一定数を女性に割り当てる「クオータ制」の導入で女性登用が制度化されている。03年にノルウェーが採用後、フランスやドイツ、イタリアなどに広がった。多くの国では役員への女性登用の水準を3~4割としており、満たさない企業に罰金などの処分を科す国もある。自主的な取り組みもある。英国では女性役員比率を3割以上に引き上げることを目指す上場企業でつくる「30%クラブ」がある。米国やカナダなどに支部があり機関投資家なども加盟できる。日本は政府の男女共同参画基本計画で20年までに上場企業の女性役員の割合を10%以上にする目標を掲げている。安倍晋三首相は13年に上場企業の役員のうち1人は女性を起用するよう経済界に要請。15年には有価証券報告書で女性役員比率を示すよう義務付けていた。同指針を改定するのは、15年に導入して以来、初めてとなる。女性活躍や多様性の確保に加えて、今回の改定では社外取締役の増員も検討する。現行の指針の「2人以上」を「3分の1以上」に変更する方針だ。安倍政権は、日本企業の国際競争力を高める重要施策としてコーポレートガバナンスの強化を進めてきた。こうした施策を盛り込んだ指針を導入した後、外国人投資家の日本株の保有比率は上昇している。16年度の保有比率も30.1%と、15年度比で0.3ポイント上がった。海外勢の保有額は約174兆7000億円と同時期に13%増えた。

*4-3:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO27457780X20C18A2EE8000/?n_cid=SPTMG002 (日経新聞 2018年2月28日) 候補少ない女性取締役、人材争奪戦も
 政府が女性取締役の起用を求めることで取締役会の顔ぶれが多様になれば、企業統治が前進し機関投資家の投資マネーを呼び込みやすくなる。一方で女性の役員は候補者が少なく、現在でも複数の企業で役員を兼任する事例は珍しくない。女性取締役の起用が広がれば人材の獲得競争が一段と激しくなりそうだ。コーポレートガバナンス・コード(企業統治指針)に強制力はないが、企業は実質的に説明責任を負う。指針改定で取締役に女性を起用する企業が増える可能性は高い。日本企業の取締役会は多くの場合、生え抜きの中高年男性で構成され多様性に欠けるとの批判があった。経営コンサルティングのエゴンゼンダー(東京・千代田)の佃秀昭社長は「取締役会に女性を迎えれば長年の慣習にとらわれない議論ができる」と指摘する。年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)や米運用会社のJPモルガン・アセット・マネジメントなども女性比率の引き上げを求めている。女性取締役の起用が進めば機関投資家が投資しやすくなり、株式市場の活性化につながる。ただ、企業にとっては候補者探しが課題だ。厚生労働省の雇用均等基本調査によると16年度の女性管理職の比率は12.1%だった。部長相当の役職では6.5%にとどまる。生え抜きの女性役員を登用するには女性の管理職を一段と増やす取り組みが欠かせない。社外で探すのも簡単ではない。ガバナンス助言会社プロネッド(東京・港)の昨年7月の調査によると、東証1部上場企業の社外役員(監査役含む)を4社以上兼任する女性は12人いた。弁護士や大学教授といった経歴が多く「これらの職種では獲得競争が激しくなる」(酒井功社長)。労務行政研究所の調査では2016年度の社外取締役の年間報酬は平均で669万円だった。候補者の争奪戦が激しくなれば報酬が一段と高くなる恐れもある。この調査では女性の社外役員を選任する企業の割合は株式時価総額1兆円以上の企業で71%なのに対し100億円未満では16%で、企業規模により対応に差が生じる可能性もある。

*4-4:http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201712/CK2017122502000209.html (東京新聞 2017年12月25日) 「介護離職考えた」半数 管理職 業務との両立悩む
 介護を経験した管理職の半数近くが、退職を検討したことが人材会社アデコの調査で分かった。60%以上が公的な介護休暇・休業や社内制度を利用しづらいと感じていることも判明。「業務に支障が出る」などとして仕事との両立に悩む姿が浮かんだ。政府は介護離職ゼロを目指しているが、実現の見通しは立っておらず、働き続けるための環境整備が緊急に求められそうだ。企業の管理職は介護と仕事の両立を迫られる可能性が高い年代。調査は十月、親族を介護した経験がある部長職、課長職六百人を対象にインターネットで実施した。介護離職について20%が「何度も考えた」、28%が「一、二回考えた」と回答。「考えたことは一度もない」は53%だった。離職を考えた人の理由で最も多かったのは「体力・精神的な負担や不安」で、考えたことがない人は「収入面での不安」が多かった。介護で会社を休んだことがある四百二人が利用した制度を複数回答で尋ねたところ、最多は有給休暇で88%。育児・介護休業法で定められている介護休暇は16%、介護休業はわずか3%だった。同社は「介護休暇中は無給の企業が多く、雇用保険から給付金が支給される介護休業も事前の手続きがハードルになっている」と分析している。社内制度では半日・時間単位休暇の利用が多かったが、「制度自体がない」との回答も目立った。「介護関連制度が利用しづらい」と答えた人は63%。理由は「自身の業務に支障が出る」「部下の業務に支障が出る」「介護を理由に休みを取る管理職がいない」などだった。介護に携わる部下がいる二百八十四人のうち92%が「部下を支援したい」と回答したが、「実際に支援できた」と答えたのは74%だった。
 ◇ 
 四捨五入のため、合計は100%になりません。

*4-5:http://www.saga-s.co.jp/articles/-/189884 (佐賀新聞 2018年3月7日) 介護保険料6千円超が65%、4月から85%の44市区で増額
 4月に3年ぶりに改定される65歳以上の高齢者の介護保険料(基準額)について、都道府県庁所在地(東京は都庁のある新宿区)と政令指定都市の計52市区のうち65%の34市区で月額6千円を超す見込みであることが7日、共同通信の調査で分かった。85%に当たる44市区で引き上げられ、据え置きは8市にとどまる。多くの自治体で値上げするのは、高齢化の進行で介護サービスの利用が増え給付費が増加することや、事業者に支払う報酬が4月から0・54%引き上げられるため。介護施設の整備を進めていることも影響した。

*4-6:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180105&ng=DGKKZO25320040U8A100C1EE8000 (日経新聞 2018.1.5) 保育ニーズ、正確に把握 厚労省、申込者以外も推計
 厚生労働省は待機児童の解消をめざし、保育のニーズの実態把握を正確にする。2018年度から、これまで集計してきた保育所の申込者数とは別に「保育所への入所が必要だが申し込まなかった」といったケースを含め把握する。市町村ごとに見込み数を集め、厚労省が公表する。原則、すべての市区町村を対象にする。待機児童がいる自治体だけでなく、今はいなくても保育ニーズの増加が今後想定される場合も対象にする。厚労省は「子育て安心プラン」で、20年度末までに新しい保育定員枠32万人分を整備する方針を示している。民間調査では、保育所を利用できなかった親の4割が申し込みをしていない。申込者だけでは保育需要を把握できないことが浮き彫りになっている。18年度からは毎年度、推計の中で実際には申し込みに至らないケースを把握し、実態との差があれば原因を分析する。需要の推計や実績は厚労省が市区町村ごとに一括して公表する。厚労省は実態の「見える化」を促し、自治体が需要の過小評価などによって、待機児童数を少なく見せることがないようにする。政府が保育の定員枠を増やすための予算確保をしても、需要が多い地域に局所的に保育所が足りないミスマッチや、保育需要の適正な把握がされなければ待機児童の解消にはつながらない。

*4-7:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20150105&ng=DGKKZO81541250U5A100C1M10700 (日経新聞 2015.1.5) 働く意識、多様化進む 男性は「年功序列」 / 女性は「成果型」
 働き手の仕事に対する意識は世代や性別で多様化している。年齢に応じて給料を払う「年功序列型」と、働きに応じて支払う「成果型」のどちらの賃金制度がいいか尋ねたところ、全体ではほぼ半々だったが、男性は年齢が高くなるほど年功型を好み、女性は成果型を支持する傾向があった。年功を支持する男性は20代が52.9%、50代は63.5%。大企業の中高年男性は1つの会社で勤め上げる人が多い。残業や転勤に耐えた長年の貢献に報いてほしいという意識が強い。一方、女性は転職経験がある人が58.8%と男性(40.7%)より高く、短期間の実績が給与につながる成果型に支持が集まった。女性は夫の転勤や出産を機に離職や転職を迫られやすい。男性に比べ会社への帰属意識が低く、生活環境の変化などに合わせて転職する人が少なくない。海外勤務志望については、働く人の78.2%が「海外で仕事をしたいと思わない」と答え、内向き志向が強かった。主な理由(3つまで選択)は「語学力に自信がない」が65.7%と最も多く、「治安が悪い」(45.8%)、「国内でもやりがいのある仕事はできる」(40.8%)と続いた。大手企業を中心に海外で働くグローバル人材の需要が高まっている一方、働く側の多くは国内を出たがらないようだ。年代別では、20~30代で「海外で仕事をしたい」と答えた人が24.6%と40代(21.6%)を上回り、若い層の海外志向はやや高い。大学教育の国際化対応で、英語での授業や海外留学が一般的になっていることもありそうだ。

<外国人の雇用>
*5-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180127&ng=DGKKZO26189750W8A120C1EA4000 (日経新聞 2018.1.27) 外国人労働者 最多に 10月末127万人、5年で60万人増 人手不足の職場補う
厚生労働省は26日、2017年10月末時点の外国人労働者数が127万8670人だったと発表した。前年同期から18%増え、増加は5年連続。企業の届け出を義務化した07年以降で過去最高を更新した。製造業で働く技能実習生やサービス業で働く留学生らの増加が目立ち、人手不足が深刻な職場を外国人で補う構図が強まっている。外国人労働者の数は12年から急激に増加し、5年間で約60万人増えた。日本の雇用者総数の約2%を占める水準だ。外国人を雇う事業所の数も、前年同期比12.6%増の19万4595カ所と過去最高になった。国籍別にみると、中国が37万2263人で全体の29.1%を占める。ベトナムの18.8%、フィリピンの11.5%が続いた。伸び率はベトナムが最も高く、前年同期と比べて約4割増えた。資格別にみると、労働現場で外国人労働者を実習生として受け入れる技能実習制度の在留資格が25万7788人、留学が25万9604人だ。ともに2割以上増えた。高度人材などの「専門的・技術的分野」も23万8412人と18.6%増。技能実習の8割近くが製造業か建設業で、留学の半数以上が卸小売業かサービス業で勤務している。日本での受け入れ体制整備は遅れている。政府は高度人材の受け入れに前向きだが、単純労働者の受け入れは認めていない。技能実習制度や留学生として事実上の単純労働者が急増しているのが実態だ。外国人を活用したいという企業も増えているものの、実習生の数や年数には限度がある。

*5-2:http://qbiz.jp/article/129389/1/ (西日本新聞 2018年3月7日) 新潟など3特区で外国人就農解禁 高齢化で人手不足が深刻化
 政府が国家戦略特区に指定している新潟市、愛知県、京都府の3自治体で外国人の農業就労を解禁する方針を固めたことが7日、分かった。1年以上の農業実務の経験を持つことが条件で、受け入れ期間は通算3年を上限とする。国内農業は高齢化が進んで人手不足が深刻化しており、経験や技能のある即戦力を海外から呼び込んで現場を活性化する狙いがある。外国人の就農は昨年9月施行の改正国家戦略特区法で認められた。この3自治体が第1弾となる見通しで、9日にも特区諮問会議を開いて決定する。特区で効果が確認された場合は、全国に広げることも検討する。受け入れる人材は、実務経験に加え、農作業に必要な日本語を話せる外国人の中から選ぶ。農業に関する専門知識や技術を持つことも条件とし、外国人に働きながら技術を学んでもらう技能実習制度とは区別する。対象者は人材派遣会社と雇用契約を結び、各地の農業生産法人や農家へ派遣される。農作業だけでなく、農作物の加工・販売を手掛ける「6次産業」にも従事できる。技能実習制度を巡っては、過重労働や賃金不払いが問題となっている。特区の就農受け入れではこうしたトラブルを防ぐため、日本人と同水準の賃金を保証。人材派遣会社に対し、受け入れ先での雇用状況を確認した上で、政府や自治体でつくる協議会に報告することを義務付ける。


<役所の労働生産性と資本生産性>
PS(2018年3月12、17、20日追加):労働生産性を高めることは常識となったが、資本生産性(資本1円投入あたりの生産量)については、未だ無視されている。しかし、*6-1-1のように、岩手県陸前高田市で10mかさ上げされた宅地(総費用:1,400億円、造成面積:約300ヘクタール)の引き渡しが始まったが、かさ上げした宅地は空き地が目立つそうだ。それは当然のことで、*6-1-2のように、陸前高田の津波は、海岸から約500メートルにあるガソリンスタンドで15.1mを記録しているため、10mしかかさ上げされていない地盤の弱い埋立地は安全ではないからである。そのため、国民が本来の所得税に2.1%上乗せして「東北の復興のため」にと黙って支払った復興特別所得税によるこの事業の資本生産性は0に近い。また、*6-1-1には、高台移転が間違っていたかのように書かれているが、津波高に対して十分な高さのある地盤の強い山側に移転する高台移転と、15m以上の津波が来る地域で10mしかかさ上げされていない地盤の弱い埋立地を作ることとは全く異なる。これを、事前に考えなかったのは、心のこもった復興ではなく、ヘリコプター・マネー(税金の無駄遣い)だったからである。
 さらに、*6-1-1は、女川町が公共施設や市街地を、元のJR女川駅周辺に集約したのがよいことであったかのように書いているが、女川町では、*6-1-3のように、17m超の津波に襲われ谷状の町が壊滅して、高台にある病院の1階部分も津波で激しく損傷したのだ。次の津波が来たら、また同じことを繰り返して、国民から復興税をとるつもりだろうか。しかし、次の災害時は、わかっていてやったことなので、自己責任にしてもらいたい。 怒
 その上、気仙沼市の大谷海岸地区では、*6-2-1のように、宮城県が55億円の予算で海抜9.8メートルの防潮堤を整備するそうだが、気仙沼市の津波の高さは20メートルを超えていたため、背後地約4.0haを防潮堤と同じ高さにかさ上げしても、陸前高田市と同様、誰も使わないだろう。それでも10m弱の防潮堤を作り、10mかさ上げすればよいと考えるのは愚かとしか言いようがなく、この事業の資本生産性はマイナスである。何故なら、役に立たないだけではなく、*6-2-2のように、生態系と景観を破壊するからだ。
 なお、津波の危険性だけでなく、福島第1原発事故による放射能汚染も環境を破壊し住民が近寄ることすら困難にして先が見えないが、*6-3-1の凍土遮水壁もまた金を使うことが目的の資本生産性の低い支出だった。原子力規制委員会は、国の基準以下に薄めて汚染水を海に放出する必要があるなどとしているが、2倍に薄めて2倍の分量を放出すれば放射性物質の放出量は変わらないため薄めることに意味はなく、こういう発想をする人たちが放射性物質汚染に対する注意を風評被害と呼ぶのは、あまりにもおこがましい。
 その上、原発立地自治体は、平時でも、*6-3-2のように、原発の再稼働や定期検査で作業員が来たり(この時、宿泊)、重機で工事をしたりして原発需要がある上、迷惑料である電源開発促進税などが入るが、それらは消費者が電力料金に含めて支払っているのだ。そして、今後も新たなテロ対策施設の建設が控えるとしているが、世界は卒原発の時代で、*6-3-3のように、東日本大震災前後から新燃岳の噴火や大地震が増えているにもかかわらず火山噴火のリスクを低く想定しているため、それこそ集中と選択で電源を自然エネルギーに移行し、玄海町は農産物・海産物・関連工業品やサービスにシフトするのがよいと考える。
 九電は、既にインドネシアで世界最大規模のサルーラ地熱発電に参画しており(http://www.kyuden.co.jp/press_h170322-1.html 参照)、また、*6-3-4のように、九電工がインドネシアのスンバ島で太陽光発電と蓄電池を組み合わせて電力を安定供給する「エネルギーマネジメントシステム(EMS)」の実証事業を始めたくらいで、再生可能エネルギーを活用した“地産地消”の電力供給も既にできる状況になり、これらは、「(日本を含む)世界中どこでも通用する技術」なのである。
 しかし、*6-3-5のように、佐賀地裁は、九電玄海原発3、4号機運転差し止めを求める仮処分の申し立てを退け、「原発なくそう! 九州玄海訴訟」本訴訟の原告団長元佐賀大学長の長谷川照さん等が「国内や世界の情勢を考えると司法は遅れている」と嘆かれた。司法は、内容だけでなく、お白洲で裁くような作りであり、明治時代から形式を変えていないのも遅れている。

*6-1-1:https://digital.asahi.com/articles/DA3S13398484.html (朝日新聞 2018年3月12日) (東日本大震災7年)高台移転に時間、戻らぬ被災者 大事業難航、戸数35%減
 東日本大震災の被災地でまちづくりが縮んでいる。宅地造成による住宅の計画戸数は約1万8300戸と、5年前の計画から35%減少した。復興までの期間が長引き、別の場所に居を構える選択をした住民が少なくないためだ。今後の震災を想定し、こうした教訓をいかす取り組みも始まっている。岩手、宮城、福島3県の自治体が実施する高台移転(防災集団移転や土地区画整理事業によるかさ上げなど)について、復興庁の資料を元に集計した。2012年12月時点で約2万8100戸だった高台移転による住宅の計画戸数は、17年9月時点で約1万8300戸(12年比35%減)。岩手が約7500戸(同26%減)、宮城が約9千戸(同42%減)、福島が約1900戸(同26%減)だった。
■陸前高田、用地交渉も壁
 津波で市街地が壊滅した岩手県陸前高田市。今年1月、かさ上げされた市の中心部で宅地の引き渡しが始まった。総費用1400億円、造成面積は東京ドーム64個分の約300ヘクタール。被災地最大となる住まいの再建事業はようやく出口に差し掛かった。だが、かさ上げした新たな宅地はいま、空き地が目立つ。市が行った最新の意向調査では、いまだ利用予定がない宅地は6割。長い歳月を要したことで、完成を待ちきれない人たちは別の地に住まいを求めた。上部徳七さん(88)は震災から5年後、内陸部に土地を購入して自宅を再建した。妻(86)とみなし仮設のアパートで暮らしていたが、かさ上げ部の宅地の引き渡しは2018年度の後半と伝えられた。「死ぬ前に一刻も早く家を建てたかった」と振り返る。復興事業に時間がかかったのはなぜか。市は山を削って高台移転を進めたほか、津波にのまれた旧市街地を10メートル前後かさ上げすることを決め、住民の私有地に宅地や道路を再整備する区画整理事業を活用した。大がかりな事業に最初から壁が立ちはだかる。まずは用地だ。地権者約2200人と交渉するため、北海道から長崎の離島まで足を運んだ。工事が始まってからも復興工事の集中や東京五輪関連の建設需要で資材や人手が不足した。時間が経つにつれ、かさ上げ同様、高台での住宅再建を望む被災者も減少。計画を見直し、区画数を縮小していった。結局、全体の事業認可は震災から3年後。すべての宅地ができるのは、計画から2年遅れの20年度の見通しだ。戸羽太市長は「5年ぐらいのスパンなら待ってくれる住民もいた。スピード感を持ってやらないと人の気持ちが変わって外に出て行ってしまう」と話す。
■「以前と同規模、非現実的」 女川、駅前に市街地集約
 被災地で人口流出が続く中、その現実を踏まえて計画を進める自治体もある。宮城県女川町。建物全体の8割以上が被害に遭い、人口は約6割に減少した。「震災の被害は人口減を加速させる」。そう考えた町は、地元企業と連携し、公共施設や市街地をJR女川駅周辺に集約。住宅約1420戸(12年12月)の計画を、昨年9月までに760戸に修正した。新たに造った交流センターの面積は被災した公民館の約7割にとどめた。「被災前と同規模の街を造るのは現実的ではない」と町の担当者は説明する。
■将来の被災想定、復興にも備え 次の街の姿、住民と共有
 南海トラフ地震の被害が想定される地域では、東日本大震災の教訓を踏まえた対策が始まっている。行政が住民とともに被災後の復興を考える「復興事前準備(事前復興)」だ。和歌山県は2月、「復興計画事前策定の手引き」をまとめた。東日本大震災では復興計画策定まで9カ月、そこから住民の合意を得て事業認可まで2年半という事例があった。時間がかかれば人口の流出を招くため、手引きは、街を高台で再建するのか、防潮堤を強化し、かさ上げして再建するのか、といった災害後の街の姿を、普段から行政と住民が共有することが重要と指摘。市町村には復興事業で使う用地に関し、地権者や境界の把握、埋蔵文化財の発掘調査などを済ませておくよう求めている。県の担当者は「被災から1年以内の事業着手も不可能ではない。住民参加型で市町村ごとに復興計画を作りたい」と話す。
■<視点>人口減前提の区画整理を
 土地区画整理事業で造ったまちに空き地が生まれることは懸念されていた。もともと高度経済成長期に都市部で頻繁に使われた手法だ。社会全体の人口が増えるため、宅地や公共用地の再整備に時間がかかっても、土地の利用が進むことを前提にしている。東北の多くは震災前から人口減と高齢化に悩む過疎のまちだった。震災で人口流出は加速し、時間がかかるかさ上げ工事での再建を待てない高齢者は多かった。人口増を前提とした区画整理は手法としてそぐわなかったが、当時はこれほど大規模なかさ上げと土地の造成ができる制度は、区画整理以外に用意されていなかった。人口減の時代、このままでは次の災害でも、同じような空き地を生み出すことになりかねない。東日本大震災の事例を検証し、より短期間で宅地や公共用地を造成できる制度のあり方を考えるべきだ。

*6-1-2:https://www.iwate-np.co.jp/article/2018/1/16/1642 (岩手日報 2018/1/16) 津波高さ示す看板撤去へ 陸前高田のガソリンスタンド
 東日本大震災で陸前高田市を襲った巨大津波の高さを示す同市高田町のガソリンスタンドの看板が、夏までに撤去される見通しになった。周辺の道路や土地がかさ上げされてスタンドが移転するためで、運営会社は津波の恐ろしさを伝える貴重な資料として市に保存を働き掛ける考えだ。スタンドは海岸から約500メートルにある「オカモトセルフ陸前高田」。津波で事務所は流失したが、2012年に同じ場所で営
*9-2業を再開した。看板は一部がへこんだり、はがれたりしたため補強工事を施し、津波到達地点を示す矢印と「津波水位15・1M」の文字を記した。スタンドは今年7月ごろ市内の別の場所に移転する予定。看板の移設も検討しているが、市などによると、屋外広告の面積を規制する県条例に抵触するため困難という。運営会社の担当者は「被害の大きさを感じられる看板。何とかして保存したい」と話している。

*6-1-3:https://www.nikkei.com/article/DGXNASFK05015_V00C11A4000000/ (日経新聞 2011/4/5) 高台の病院を襲った17m超の津波、宮城県女川町
 岩手県大船渡市から宮城県石巻市にかけて三陸沿岸の建物の被害を見て回った。なかでも、津波の破壊力という点で強く印象に残ったのが、宮城県女川(おながわ)町だ。女川町は石巻市の東側にある港町。県外の人にとっては、「女川原子力発電所のある町」といったほうが分かりやすいかもしれない(発電所の敷地は女川町と石巻市にまたがっている)。同原発は2011年3月11日の震災発生時に停止し、今のところ放射線漏れなどの被害は報告されていない。それもあって、一般メディアで女川町の津波被害に関する情報は少ない。しかし、建築・土木関係者は、この町で起きたことを知っておくべきだろう。下の写真を見てもらいたい。女川港を東に望む女川町立病院の駐車場付近から見た、女川町の街並みと病院の建物だ。谷状の町が津波でほぼ壊滅してしまっていることに驚かされる。それにも増して驚かされるのが、高台の上に建つ病院の1階部分が津波で激しく損傷していることだ。

*6-2-1:http://www.kahoku.co.jp/tohokunews/201801/20180121_13016.html (河北新報 2018年1月21日) 気仙沼・大谷海岸、復活へ一歩 防潮堤工事始まる 21年度には海水浴場再開へ
 東日本大震災で被災した宮城県気仙沼市本吉町の大谷海岸地区で、宮城県が海抜9.8メートルの防潮堤を整備し、気仙沼市が背後地に「道の駅」をつくる復旧工事が20日、始まった。砂浜が失われるとして、県が当初計画した防潮堤は住民が反対し、見直しを実現させた。位置を内陸に移し、国道との「兼用堤」とする工事は2020年度に完了し、21年度には海水浴場が再開する。防潮堤(長さ約680メートル)は見た目の高さが6~7メートル。国道の約980メートル区間を9.8メートルまでかさ上げして防潮堤の役目も持たせる。海側は緩やかな傾斜で階段を付け、海水浴客が休憩できるようにする。事業費は約55億円を見込む。市は背後地約4.0ヘクタールを防潮堤と同じ高さにかさ上げし、道の駅「大谷海岸」を復旧させる。事業費は25億円で20年度内の完成を目指す。県は当初、砂浜に防潮堤を築く計画を立てたが、住民が強く反発。地元の街づくり団体が建設位置を内陸に移し、国道との兼用堤とする対案を市に提出し、県が見直した。今回の工事で震災前と同じ約2.8ヘクタールの砂浜が確保される。現地であった着工式には県、市の関係者ら約90人が出席。くわ入れなどで工事の安全を祈った。山田義輝副知事は「砂浜を確保するために地域が一体となり、希望がある計画ができた」とあいさつ。菅原茂市長は「海水浴場と道の駅の復活、国道からの景観の確保を維持することができた」と強調した。大谷海岸の大谷海水浴場は環境省の「快水浴場百選」にも選ばれ、震災前の10年は約6万5000人が訪れた。ピーク時の1975年には約43万5000人でにぎわった。大谷地区振興会連絡協議会の鈴木治雄会長は「多くの行楽客でにぎわう、最高の海水浴場になるだろう」と歓迎。大谷里海(まち)づくり検討委員会の芳賀孝司副会長は「かつての大谷のにぎわいを取り戻す」と話した。

*6-2-2:https://www.nikkei.com/article/DGXNZO74004420Z00C14A7X93000/ (日経新聞 2014/7/12、日経産業新聞 2014年7月10日付) 巨大防潮堤、被災地で反対運動 議論に住民不在
 宮城県気仙沼市にある小泉海岸は白砂青松の砂浜で、環境省の「快水浴場百選」にも選ばれた浜辺である。ここに高さ14.7メートルと日本一の巨大防潮堤が計画され、物議をかもしている。底辺は90メートルにも及び、砂浜を覆いつくさんばかりだ。
■景観・生態系の破壊を疑問視
 小泉海岸は東日本大震災の津波で海岸線が200メートルも後退し、砂浜や松林が消失した。そこに事業費230億円の巨大防潮堤が計画された。「震災直後、高台移転とセットだと誤解して、防潮堤を受け入れざるを得ないと思った住民が多かった。今は防潮堤によって美しい海と暮らしが分断されるのが辛い」。地元の阿部正人氏らは巨大防潮堤に反対を訴えている。小泉海岸のように、被災地では巨大防潮堤に反対する住民運動が起きている。国は約1兆円を投じ、600カ所に総延長400キロメートルの防潮堤を整備する計画だ。しかし、高台移転で人が住まなくなる地域に巨額を投じて防潮堤を造ることや、景観や生態系が破壊されることを疑問視する声が高まり、建設を中止したり高さを下げたりする動きが広がっている。こうした中で国は6月4日に海岸法を15年ぶりに改正。海岸の防災・減災対策を検討する際に、住民や学識経験者が参加する「協議会」を都道府県が設置できるという新制度を打ち出した。これまで国や都道府県が決めていた防災・減災の方法を、今後は市民や研究者などが参加して決定できる。国の海岸行政の大転換でもある。「既に決定した計画への住民参加を狙ったものではない」(国土交通省)が、防潮堤建設に影響を与えるのは間違いない。そもそも巨大防潮堤に各地で反対運動が起きているのは「計画作りに住民が参加できなかったことが一因」と九州大学の清野聡子准教授は指摘する。震災後、国は地震の規模と津波をシミュレーションし、湾ごとに津波の高さを弾き出した。この数字を受けて県が防潮堤の高さを決めた。しかし「波が来る方向や浜辺近くの地形、河川の有無で津波の高さは変わるのに、細かな条件を入れずに国はシミュレーションした。本来なら地元住民にも加わってもらい、津波の遡上の仕方など過去の知見を生かすべきだった」と清野准教授は指摘する。このように国の計算結果には幅があった。その過程を住民にほとんど公開しないまま、数字だけが一人歩きしてしまったのである。
■住民による津波の測量も可能に
 震災から3年たって、小泉海岸には砂浜や干潟が復活し、豊かな生態系が戻りつつある。未来に残す故郷の風景をもう一度住民同士で話し合ってもらいたいと、首都大学東京の横山勝英准教授は被災地図に防潮堤をCGで合成した画像を作成した。防潮堤ができた後の町の様子を実感してもらうためだ。そこには防潮堤が要塞のように町を囲む姿が浮かび上がる。横山准教授は防潮堤を低くして陸側にセットバックし、海側の砂浜や汽水域を保全する方が、防災上も環境上も効果があると代替案を提案する。清野准教授は海岸法の改正により住民参加の法定協議会ができることを評価し「予算も付き、住民による津波の測量も可能になるだろう」という。建設が始まった巨大防潮堤の見直しにも弾みが付きそうだ。

*6-3-1:https://mainichi.jp/articles/20180303/ddm/005/070/041000c (毎日新聞社説 2018.3.3) 福島第1原発の凍土遮水壁 費用に見合う対策なのか
 東京電力が、福島第1原発で土壌を凍らせ地下水の流入を防ぐ「凍土遮水壁」の効果を初めて試算した。汚染水の発生削減効果は1日約95トンで、効果は限定的だとみられる。政府と東電は、凍土壁を汚染水対策の切り札と位置付け、国費約345億円が投入された。凍結の維持にも毎年十数億円かかる。費用に見合った効果が出ているのか。政府には、しっかりと検証し、今後の汚染水対策に生かす責務がある。凍土壁は1~4号機の建屋の周囲(全長約1・5キロ)に約1500本の凍結管を地下30メートルまで打ち込み、冷却液を循環させて造る。2017年11月に凍結作業をほぼ終えた。東電の発表によれば、雨水や地下水に起因する汚染水の発生量は、凍結後の3カ月間平均で1日約110トンだった。凍結前の15年冬に比べると約380トン減少していた。東電は、地下水をくみ上げる井戸を設置したり、雨水の浸透を防ぐために敷地を舗装したりする対策も同時に実施している。380トン削減はこうした対策を合わせた結果で、凍土壁による削減効果は、あくまでもその一部に過ぎない。それでも東電は、凍土壁などの成果で「建屋に地下水を近づけない水位管理システムが構築された」という。認識が甘くはないか。今回、汚染水の発生量を比較したのは降水量が少ない冬場だ。台風の接近が相次いだ昨秋には、降雨で汚染水の発生量が急増した。より長期間の評価が欠かせない。建屋の東側にはケーブルや配管を通すトンネルがある。そこには凍結管が入っておらず、凍土壁で地下水を完全に遮断することはできない。現状では、汚染水の発生がいつ止まるのか、分からないままだ。汚染水は「多核種除去装置」で浄化するが、放射性物質の一種のトリチウムだけは除去できない。浄化後の処理水は原発敷地内のタンクに貯蔵されており、20年度までしかタンクの増設計画は示されていない。原子力規制委員会は、国の基準以下に薄めて海に放出する必要があるとの立場だが、漁業関係者などの間では風評被害への懸念が根強い。処理水をどう処分するのかのめどが立たない限り、汚染水対策はいつ行き詰まってもおかしくない。

*6-3-2:http://qbiz.jp/article/129830/1/ (西日本新聞 2018年3月15日) 玄海再稼働で再び町に特需 「原発あるから」依存なお 廃炉時代の自立模索も
 6年余り全基停止していた九州電力玄海原発(佐賀県玄海町)の3号機が23日にも再稼働する。貧しい農漁村だった玄海町に原発建設計画が浮上したのは半世紀ほど前。以来、町は原発の受け入れと引き換えに経済的恩恵を受けてきた。東京電力福島第1原発事故を経てもなお、原発への依存は続く。「廃炉の時代」をにらみ、自立の道を探る動きも出ている。玄海原発の敷地に、作業員を乗せた大型バスが次々と乗り入れる。正門から数百メートル離れた場所にはショベルカーなどの重機が並び、新たな安全対策で手狭になった敷地を拡大する造成工事が急ピッチで進む。福島の事故から約9カ月後の2011年12月、玄海原発は全4基が停止した。大きな打撃を受けた町の経済は今、「再稼働特需」で息を吹き返しつつある。原発から南東へ約1キロ。溝上孝利さん(59)が営む民宿「要太郎」も原発停止後、宿泊客がぱたりと途絶えた。再び客が戻り始めたのは、再稼働に向けた安全対策が始まった13年ごろから。客室稼働率は停止以前より3割ほど増えた。この間、溝上さんは原発関連以外の収入を増やそうと、町のふるさと納税の返礼品となる海産物を販売したり、高校生のスポーツ合宿誘致に力を入れたりしてきた。「豊かな自然や食を生かして暮らしていけるよう、変えんといかん」。一方、原発では今後も新たなテロ対策施設の建設が控える。いずれ定期検査も行われ、作業員らでにぎわう。「やっぱり原発があるから町は大丈夫だ」。町民から、そんな声も漏れる。
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 原発の稼働と町の財政は直結する。18年度一般会計予算案の歳入は、国の交付金など原発関連が6割。原発停止に伴う税収減で17年度、23年ぶりに地方交付税(普通交付税)を受け取る「交付団体」になったが、「再稼働すれば税収が回復し、19年度は不交付団体に戻る」(岸本英雄町長)。町議会は昨年9月の選挙で、原発推進派が全議席を占めた。年内にも改定される国のエネルギー基本計画に、原発の新増設を明記するよう求める意見書案を19日の本会議で可決する。「意見書は原発立地町の責任だ」と町議会の脇山伸太郎総務文教委員長。原発に世論の厳しい視線が注がれる中、増設にこだわる背景には「税収減につながる1号機の廃炉決定がある」とみる町民もいる。「原発がある町から、原発“も”ある町へ」。岸本町長が唱えてきたキャッチフレーズだ。実際には町も町議会も、原発に依存する姿勢を変えていない。
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 町民の受け止め方は一様ではない。福島の事故で、原子力災害への不安は以前より高まっている。町の人口は1955年に9720人だったが、今年2月現在、5717人に減った。原発の恩恵を受けつつ、過疎化に歯止めはかからない。町とは対照的に、自立を模索する動きもある。農家や商業関係者が16年、町おこしチーム「Genkai Hot Runner(GHR)」を結成した。「若い人が減り、このままでは町が寂れる」。代表の世戸耕平さん(38)は危機感をあらわにする。目を付けたのはイチゴやハウスミカンなどの農産品だ。原発補助金を活用し、佐賀県内有数の産地になった。隣接する唐津市の飲料メーカーと共同でイチゴやミカンを使ったサイダーを商品化し、年間2千本を出荷。福岡市内にアンテナショップの開業も目指す。「原発があったから産地になれた」。GHRメンバーでイチゴ農家の渡辺高広さん(54)は言う。「でも、原発の増設は現実的には無理。地域が自立して生きていけるようにしなければ」

*6-3-3:http://qbiz.jp/article/130026/1/ (西日本新聞 2018年3月17日) 【玄海再稼働】原発まで130キロ阿蘇火山リスクは? 九電→破局的噴火の予兆わかる 専門家→データに限界、予測困難 安全性の見方定まらず
 原発に対する火山の危険性が注目されている。広島高裁は昨年12月、熊本県の阿蘇カルデラの噴火リスクを理由に四国電力伊方原発3号機(愛媛県伊方町)の運転差し止めを決定。群馬県の草津白根山や宮崎、鹿児島県境の霧島連山・新燃岳(しんもえだけ)など各地の火山で噴火も相次ぐ。再稼働が間近に迫る九州電力玄海原発3号機(佐賀県玄海町)と阿蘇カルデラの距離は、伊方原発とほぼ同じ約130キロ。安全性に問題はないのか。噴火の想定が難しいこともあり、見方は分かれる。原子力規制委員会は火山対策指針として「火山影響評価ガイド」を策定。原発から160キロ以内の火山を対象に、安全性確認や対応策を電力会社に求めている。九電は玄海原発に関し、阿蘇カルデラや雲仙岳、九重山など17火山を「将来活動の可能性がある」と判断。その上で、過去の噴火履歴や地質調査を根拠に、いずれも原発が稼働している今後数十年の間に火砕流が発生しても原発敷地内には達しないと結論づけた。火山灰が到達する可能性はあるが、降灰時も非常用発電機が機能を維持できるように昨年11月、吸気口にフィルターを設けた。広島高裁が指摘した「破局的噴火」のリスクについては、九州で過去に破局的噴火を起こした五つのカルデラを調査。約9万年前に阿蘇カルデラで発生した破局的噴火では山口県付近まで火砕流が到達したとされるが、活動周期や地下のマグマに関する文献から「破局的噴火の直前の状態ではない」とする。大規模噴火を起こすマグマの動きは地殻変動や地震を引き起こすことから「破局的噴火の予兆は捉えられる」と九電の瓜生道明社長は説明する。
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 一方、火山の専門家は噴火予測の難しさを指摘。東京大地震研究所の中田節也教授は噴火履歴に関するデータは限られており「巨大噴火の想定には限界がある」と語る。火山影響評価ガイドについては「立地選定の情報にするなら分かるが、既存の原発の安全性審査に用いるのは違和感がある」と疑問を呈す。熊本県阿蘇市にある京都大火山研究センターの大倉敬宏教授は、阿蘇カルデラで巨大噴火が起こる可能性は当面は低いとの認識を示しつつ「観測データから噴火の前兆はある程度捉えられるが、規模や時期まで予測するのは難しい」と話す。九電は「できるだけ多角的に捉えることが重要」とモニタリングを強化する方針だ。ただ、破局的噴火は九州全域に大被害をもたらすような規模。両教授とも「原発だけの問題ではなくなる。噴火規模をどこまで想定するか国民的な議論も必要」とする。

*6-3-4:http://qbiz.jp/article/129814/1/ (西日本新聞 2018年3月15日) インドネシアで「地産地消エネ」 九電工が実証開始 送電手段ない離島で活用
 九電工(福岡市)がインドネシアのスンバ島で取り組む、太陽光発電と蓄電池を組み合わせて電力を安定供給する「エネルギーマネジメントシステム(EMS)」の実証事業が始まった。基幹送電網の整備が進んでいない離島で、再生可能エネルギーを活用した“地産地消”の電力供給を図るもので、他地域にも広がるか注目を集める。スンバ島は首都ジャカルタから東に約1400キロに位置。面積は九州の約3分の1、人口は約50万人。九電工によると、近年は観光地として注目されており、電力需要は増加傾向にあるという。島内の電力は主にディーゼル発電機を利用しており、二酸化炭素(CO2)の排出や燃料費が課題。インドネシア政府は島を再エネ導入のモデル地域と位置付けて出力500キロワットの太陽光発電所を整備したものの、出力が不安定で十分な電力供給ができていなかった。九電工のEMSは、双方向通信が可能な電力計で需給の状況を把握し、発電や蓄電を制御。雨天時や夜間など発電が止まる時間帯でも安定的に電力を供給できる。「蓄電池まで含めて全てのデータを集約して一体的に制御できるシステムは珍しい」と九電工国際事業部の松村敏明担当部長。昨年、特許を取得している。スンバ島の実証事業は、環境省が海外で展開する補助事業として実施。200キロワット時の電力を昼間の6時間供給する計画で、1月から本格運用が始まった。今のところ、安定した電力供給が続いているという。蓄電には鉛蓄電池を使用。日本で一般的なリチウム電池と比べコストが3分の1程度に抑えられる上、扱いやすい。寿命の短さが課題だったが、2系統の供給系統を交互に使って充放電の効率を上げることで、最大20年ほど使える計算になるという。通信技術を生かし、遠隔地で運用できる点も現地で高く評価されている。稼働状況は九電工の本社で監視。現地での作業は定期的な設備の清掃や点検程度で、維持費用も抑えられる。10年ほど運用すれば初期投資を回収できると見込む。有人の離島が数千に上るインドネシアは電力供給網の整備が遅れている。スンバ島の実証事業は低コストで電力の安定供給に道を開くと期待される。九電工は無電化地域を想定してEMSを開発した。松村部長は「世界中どこでも通用する技術」と語り、海外での受注拡大も見据える。

*6-3-5:http://mainichi.jp/articles/20180320/k00/00e/040/287000c (毎日新聞 2018年3月20日) 玄海原発:「司法は遅れている」申立人の元佐賀大学長
●運転差し止め認めず
 佐賀地裁が20日、九州電力玄海原発3、4号機(佐賀県玄海町)の運転差し止めを求める仮処分の申し立てを退けた。九電は予定通り23日に3号機を再稼働できることになり、司法に望みを託した申立人らは「裁判所に声が届かなかった」と肩を落とした。「原発がどれだけ時代遅れか司法は気づいてくれない」。市民団体「原発なくそう! 九州玄海訴訟」の関係者が「不当決定」と書かれた垂れ幕を掲げると、佐賀地裁(佐賀市)前に詰め掛けた申立人らからはため息が漏れた。弁護団の板井優弁護士は「不当決定というよりも、これは違法だ」と憤りを見せた。申立人の一人で福岡市東区の立川由美さん(47)は「いくらこういう決定が出ようと、私たちは絶対にあきらめない」と涙を流した。今回の決定をした裁判長は、別の市民団体による同様の仮処分の申し立てについても、昨年6月に却下している。申立人の一人で元佐賀大学長の長谷川照(あきら)さん(79)=佐賀市=は立ちはだかった司法の壁に「国内や世界の情勢を考えると司法は遅れている」と嘆いた。早稲田大理工学部と京都大の大学院で原子核理論を学んだ。戦後復興の中で核の平和利用が議論されていた時代。大学の友人たちは原子力関連の企業に就職していった。長谷川さんにも企業から声がかかったが「平和利用と言っても、人命より金を優先するようになる」と考え、大学で学び続ける道を選んだ。6年間務めた学長を2009年9月に退任した後の11年3月、東日本大震災で津波被害を伝える映像に衝撃を受けた。子供の時に千葉で体験した空襲の記憶を思い起こした。「空襲では自宅も燃えた。がれきが残った様子やぽつんと電車がある様子が重なった」。津波は東京電力福島第1原発事故を引き起こした。「やっぱり原発はやめておいた方がいい」と感じた。原発訴訟に関わる弁護士に声をかけられ、12年1月、「原発なくそう! 九州玄海訴訟」の結成に参加。玄海原発の操業差し止めを求める本訴訟の原告団長に就いた。司法で原発を止めるのは「相当運がよくないと難しい」と考えているが、まだ本訴は続いている。「福島の事故は収束していない。再生可能エネルギーに転換しないといけない」。そう語気を強めた。


PS(2018年3月15日追加):*7のように、麻生財務相が、①佐川氏を呼び捨てにしたことを批判しつつ ②組織のトップが責任を足らなければ示しがつかない とするいくつかの記事を見たが、メディアは、こんな自己矛盾にも気がつかないのだろうか。②のように、「財務相トップの麻生氏が責任をとるべき」と言うのなら、同じ組織の人について外部の人に話す時は、①のように、謙譲の意味で呼び捨てにするのが正しい日本語で、これは、毎日新聞の社長が従業員のことを第三者に話す時に、様やさんを付けないのと同じである。
 また、②のように、「トップが必ず責任を足らなければならないか」については、日本では戦国時代に高松城開城と当主の切腹をもって毛利家と羽柴秀吉が和睦して以降、トップが責任をとって部下を助けることを美談としてきた。しかし、現在の経営学では「権限なきところに責任なし」というのが常識で、権限を持って指示した人に責任があり、権限がなく指示する立場でもない人に責任はない。そのため、事実を明らかにしなければ責任の所在は明らかにならない筈だが、何でもいいからトップが頭を下げ、引責辞任すればよいという日本の習慣は、むしろ問題をうやむやにして改善に向かわせないのである。
 なお、私は麻生財務相と仲がいいわけではないが、この際、複式簿記による公会計制度を導入して国の資産や税収の使い方をガラス張りにするのは、民間企業の社長出身で腕力のありそうな麻生氏が適任ではないかと思っている次第だ。 

*7:https://mainichi.jp/articles/20180314/k00/00e/010/275000c?fm=mnm (毎日新聞 2018年3月14日) 森友文書改ざん:「佐川が…」責任転嫁に躍起 国会審議
 「森友学園」(大阪市)との国有地取引に関する決裁文書の改ざん問題で、財務省が「書き換え」を認めてから初めての国会審議が14日始まった。野党が欠席する中、政府・与党からは、理財局長だった佐川宣寿前国税庁長官に責任を押し付けるような発言が相次ぎ、識者からは「国民の理解は得られない」と批判の声が上がった。「(佐川氏の)答弁が誤解を受けることのないようにした。『そんたく』した話ではない」。14日午前の参院予算委員会。自民党の西田昌司氏から、財務省が文書を削除するなどした理由を問われた麻生太郎財務相は言い切った。佐川氏を呼び捨てにし、「書き換えは本省の利害で行われたもの。(政治家の)不当な圧力はなかった」と繰り返し、自身や安倍晋三首相らの関与がなかったと強調した。「書き換えは佐川氏が自分に不都合なことを直したこと。自分のためにやった」「(削除された内容は)公表しても問題ない文書。書き換えにより、かえって(首相の)ご夫人や総理が迷惑を受けた」。西田氏の質問にも、改ざんの責任を同省に求めようとする思惑がにじむ。西田氏の矛先は、学園の籠池泰典前理事長にも向けられた。補助金の不正受給による詐欺罪などに問われていることを強調。昨年3月の証人喚問で、事実と異なる証言をしたなどとして「まさに詐欺の語り口。(国有地売却問題は)詐欺で容疑を受けた人が首謀した事件だ」と断じた。安倍首相も、決裁文書から削られた妻昭恵氏に関する記述について「(記載された発言は)籠池さんが(近畿財務局に)語ったこと」などと述べ、「書き換え前の文書を見ても、私や妻が関わっていないということは明らか」と断言した。質疑を通じ、改ざんなどの責任を財務省や籠池氏にとどめようとする政府と与党の「連係プレー」を印象づけた。政治アナリストの伊藤惇夫さんは「政府が佐川氏や財務省理財局に責任を押し付けようとしているのは見え見えで、このままでは国民の理解を得られない」と批判。「与党側に『重要法案の審議が進まない』という声があるが、そもそも森友問題を1年間もうやむやにしてきたのは政府・与党だ。こういう事態に陥った以上、与党側が佐川氏や昭恵氏の国会招致に応じなければ議論は進まないだろう」と語った。


PS(2018年3月19日追加):*8のように、全自動編み機の島精機製作所の株価が、アジアの賃金上昇や省人化の流れで急騰したそうだが、これは、課題先進国の日本が課題を解決する製品・サービスを作って、20~30年後に他のアジア諸国で売れ始めた良い例だ。私は、全自動織機やプリント型自動染色機も日本国内に生産拠点を戻すことができ、しばらくすれば他国でも売れ始めると考えている。

*8:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180319&ng=DGKKZO28300750Z10C18A3ENI000 (日経新聞 2018年3月19日) 島精機 全自動編み機、中国で好調、ゴールドマン報告書追い風
 全自動編み機を手掛ける島精機製作所の株価が16日、急騰した。一時は前日比860円(13%)高の7620円をつけた。終値は10%高の7440円。日経平均株価が反落するなか、東証1部の値上がり率で4位に入った。ゴールドマン・サックス証券が15日、新規にリポートを出したのがきっかけだ。ゴールドマンは15日付で、島精機の投資判断を3段階で最上位の「買い」、目標株価を1万円として調査を始めた。担当アナリストの劉京元氏は「アジアの賃金上昇や省人化の流れを見ると、成長余地は大きい」と指摘する。すでに島精機をカバーする証券会社は6社。そのうち大和証券と岩井コスモ証券の2社が目標株価を算出し、いずれも7500円に設定する。ゴールドマンが高い目標株価を掲げたのを受けて、機関投資家や個人に買いが広がった。島精機はニットなどを全自動で編む機械を世界で唯一、開発する。値段は一般の編み機に比べて約4倍と高価だが、人件費の高騰する中国などで販売が伸びている。2018年3月期は連結売上高が前期比17%増の730億円、純利益は39%増の100億円を見込む。岩井コスモの大西等氏は「為替の円高はリスクだが、中国市場で利益率の高い製品が普及期に入ったのはプラスだ」と評価する。今期の予想PER(株価収益率)は27倍とミシン大手のJUKI(13倍)より高い。ただ、17年4~12月期の純利益は通期計画の9割に達し、業績の上振れ期待が強い。今後の成長戦略が明確になれば、株価は一段高となる可能性もある。


PS(2018年3月20日追加):*9-1のように、JR鹿児島中央駅西口地区再開発を巡り、鹿児島県が市道の拡幅に必要な測量調査を1年以上拒否し続けているとのことだが、新幹線の駅ができると通院圏や購買圏が沿線に広がるため、再開発するチャンスである。長崎市新大工町一帯の再開発は、*9-2のように、長崎玉屋の田中丸氏が中心になって市と協力し、「国内外の観光客が楽しめる」「地域の可能性を発揮する」などのコンセプトで21世紀型の街づくりが進んでいる。鹿児島市の場合は、郵便局も協力すれば広いエリアの再開発ができるため、京都駅などを参考に鹿児島の長所を出せばよいと思われる。さらに、新しいマンションには、*9-3のようなAIスピーカーを装備すれば、自宅療養や一人暮らしの高齢者の役にも立つだろう。

    
   *9-1より      *9-2より    西日本新聞2018.1.21
  鹿児島市のケース     長崎市のケース    福岡市のケース

*9-1:http://qbiz.jp/article/130192/1/ (西日本新聞 2018年3月21日) 進まぬ再開発事業 JR鹿児島中央駅西口 県が道路測量拒否 JR九州の計画に影響も
 鹿児島市のJR鹿児島中央駅西口地区再開発を巡り、土地を所有する鹿児島県が市道の拡幅に必要な測量調査を1年以上拒否し続けている。市は再開発に伴う道路整備は欠かせないとしているが、実現の見通しは立たない。既にビル建設計画を進めているJR九州は、事業進捗(しんちょく)に影響が出る恐れもあるとして、県の対応に気をもんでいる。西口地区には県が約1万平方メートル▽JR九州が8500平方メートル▽日本郵便(JP)が5700平方メートル▽市が700平方メートル−をそれぞれ所有。4者は2006年、11年の九州新幹線全線開通を見据え、計2万5千平方メートルの一体的な開発を目指して連絡会を発足した。09年にはコンベンション施設やホテルなど望まれる機能の基本規模を提示。概算工事費などの調査報告書をまとめたが、周辺で同種施設の民間開発が相次いだため協議は停滞し、14年8月に個別活用を含め幅広く検討する方針に転換した。JR九州は16年8月、所有地に商業ビルやマンションを建設する計画を発表。市も17年1月の連絡会で、再開発区域内で市道拡幅などの道路整備を提案した。拡幅時には所有地の一部提供が想定され、JRとJPは受け入れたものの、県だけは「現有地を確保したい」として応じず、連絡会も以降開かれていない。県の姿勢にJR九州幹部は「困った」と戸惑う。既に敷地内の建物の解体を始めており「県があと半年テーブルにつかなければ、着工や開業が計画より遅れるかもしれない」と危ぶむ。
     ▽△
 県は3月県議会で、所有地について「県民にとって最も望ましい利活用方法を検討中」と繰り返し、方針を示す時期も明らかにしなかった。県議の一人は「県民の貴重な財産。何年も『検討しています』だけでは納得できない」と批判する。表向きは活用方針を検討中とする県だが、腹案があるとの見方は強い。老朽化した県立総合体育館の建て替え地だ。県は有識者の検討委員会を設置し、市中心部を想定したアリーナ的施設整備が望ましいとする提言を2月に受けた。西口の土地は提言に符合する。新体育館構想は県から非公式に連絡会側に伝えられているという。県の構想を進めるには県所有地だけでは手狭。残り3者の協力が不可欠だが、JR九州幹部は「50年に一度の開発で計画を変えるつもりはない」と話し、JPも取材に「(現在の施設を)今後も活用する方針だ」と答えた。再開発の行方は見通せない。
:http://qbiz.jp/article/130201/1/ (西日本新聞 2018年3月21日) 九州の都市再開発、新大工町再開発図を公表 市長「観光客楽しめるよう」 組合「可能性を発揮したい」
 長崎市新大工町一帯の再開発を進める「新大工町地区市街地再開発組合」(田中丸弘子理事長)が20日、田上富久市長に事業の進捗(しんちょく)状況を報告、2021年度に完成予定の再開発ビルのイメージ図を示した。田上市長は「国内外の観光客が楽しめるようにしてほしい」と要望、田中丸氏は「地域の可能性を発揮したい」と述べた。組合によると、地元商店街の雰囲気も大切に、長崎の食文化体験ゾーンも手掛ける考えという。一帯は長崎玉屋の閉店に伴って再開発に向けた動きが始まり、14年1月に準備組合が発足。4年がかりで協議を進め、今年2月の本組合設置にこぎ着けた。組合の事業計画によると、旧長崎玉屋ビルがある北街区3800平方メートルに26階建て複合ビルを建設。地下1階に駐車場、1〜3階に商業施設を配し、4〜26階は分譲マンション大手の大京グループ(東京)が購入して販売する。国道34号を挟む南街区1300平方メートルは12階建て駐車場ビルを建設し、11〜12階はオフィスとする。総事業費は163億円。再開発を契機に市は二つの再開発ビルをつなぐ歩道橋を掛け替える。国と県は長崎電気軌道・新大工町停留所の西側に横断歩道を設けてスロープでつなぎ、車いすでも乗降可能なバリアフリー構造とする方針。

*9-3:http://qbiz.jp/article/130111/1/ (西日本新聞 2018年3月20日) 九電がAIスピーカー参入 家電操作や節電アドバイス
 九州電力は、人工知能(AI)搭載の対話型スピーカーを使った新サービスを今夏から始める。さまざまなものをインターネットでつなぐIoT技術を生かし、家電の操作や節電アドバイス、防犯などができるようにする。AIスピーカー製造の技術を持つ企業と協力して独自の端末を開発。利用者の話し掛けに応じてサービスを提供する。蓄積したデータを端末が分析し、各家庭に合わせた電化製品の自動制御もできるという。19日には、スピーカーがアニメキャラクターの音声で応答するサービスを導入すると発表。第1弾として「妖怪ウォッチ」のウィスパーを起用する。利用者の指示に「了解でうぃっす!」などと答える。24、25日に東京であるアニメイベントで披露し、今後、キャラの追加を検討するという。電力の小売り全面自由化で競争が激化する中、利便性の高いサービス提供で顧客獲得につなげる。毎月利用料を徴収する料金体系を予定しており、新たな収益源をつくる狙いもある。料金や開始時期は今後詰める。無料モニターも募集する予定。

| 経済・雇用::2018.1~ | 04:24 PM | comments (x) | trackback (x) |
2018.1.29 高齢化した成熟国家では、医療・介護などの福祉サービスは実需であること (2018年1月30、31日、2月1、2、3、4、7、10日に追加あり)
   
      日本の人口構成の変化               *3-3より

(図の説明:日本の年齢階層別人口は、1番左と左から2番目のグラフのとおり、高齢者の割合が増えて、収入構造《賃金・年金》と需要構造が変わった。つまり、全収入に占める年金収入の割合が増え、高齢者向けサービスの実需が増加したのだ。にもかかわらず、政府は、高齢者向けサービスを削減し、インフレによって高齢者の資産移転を行ったため、不要な需給ギャップが生じ、GDPの伸びも抑制された。こういう不要なことをしなければ、高齢化社会で真に必要とされる財・サービスの開発と供給が進み、それは今後、世界で必要とされた筈である。なお、何歳まで健康かという問題については、左から2番目のグラフで同年齢の人口が急カーブで減り始める頃までと思われ、健康状態は人によって異なるため階段状になっているわけである)

  
  購買力平価による各国GDPの推移    日本の実質・名目賃金と消費者物価指数

(図の説明:その需給ギャップを解消するためとして、インフレ政策を行い、生産性の低い政府支出に多くの予算を配分し、実需を抑制したため、購買力平価で比較して日本のGDPの伸びは先進国・開発途上国を合わせて最低になった。また、インフレ政策で実質賃金の伸びもマイナスになっている《年金支給額は当然マイナス》が、これは国民を主体としない政策の結果である)

(1)医療について
1)医師の長時間労働と医師の時給
 *1-1、*1-2のように、杏林大学医学部付属病院が36協定を超えて医師に残業させ、残業した時の割増賃金も不十分だったとして三鷹労基署から是正勧告・改善指導を受けたり、北里大学病院の36協定の結び方が不適切で「協定が無効だ」と労基署から指摘されたりしているが、医師には応召義務があり、(役所と違って)9時~5時の勤務時間には入らないことも多々ある職種であるため、これに近いことはどの病院でも行われていると思われる。また、残業代を請求できる医師ばかりではないため、医師の時給はかなり低くなるだろう。

 それでは、労働基準法を順守する上で必要な医師数は確保できるのかと言えば、例えば、*1-3のように、正常出産でも「9時~5時」の間に子どもが生まれるとは限らない産婦人科で、医師数を確保できていない。産婦人科医を増やすことも必要だと言われているが、*1-6のように、地域や診療科間で医師数は偏在しており、外科系や産婦人科は医師数が減っている診療科なのである。

 外科の医師数が減る理由は、手術が長引いたり、重篤な患者の治療を行ったりするため、医師の労働が過重になるからだが、だからといって、*1-4のように、救急患者が「たらい回し」にされて治るものも治らないという事態になってはならない。これを解決するには、医師個人の善意に依存して医師に重労働を課し命を削らせてきた現在の医療政策を改め、十分な数の医師を配置して無理なく診療できる組織体制を作ることが必要で、そのためには、診療報酬削減一辺倒の現在の医療政策を改めなければならない。

2)女性医師割合の増加で起こったこと

  
     2018.1.28東京新聞    女性の医師割合及び医師国家試験合格者割合の推移

 医師国家試験合格者に占める女性割合は次第に増加し、2014年は31.8%となり、これに伴って医療機関で働く2016年末の女性医師数は、*1-5のように、6万4305人で全体の21%となった。男女比は年齢層が若いほど女性の割合が高く、29歳以下は35%、30代は31%を占め、20年前と比べると29歳以下も全世代で8%高くなったそうで、私はよいことだと考える。

 また、私は、女性だからといって妊娠・出産を機に離職して職場復帰しない人はむしろ少なく、そのために男女雇用機会均等法で育児休業等が定められているのだと思うが、女性医師は結婚後のことも考えて過重労働を強いる診療科を敬遠し、無理の少ない診療科に集まる傾向があるそうだ。それもあって、地域や診療科による医師の偏在が起こっているため、希望者の少ない地域や診療科は、担当する医師を厚遇する必要があるだろう。

(2)介護について

  

(図の説明:介護保険制度は、導入されて17年しか経過しておらず、全世代型になっていないため不完全だが、著しい伸びが見込まれている。これは、核家族化した高齢化社会を迎えた日本で、本当に必要とされている実需だからだ)

   
  2018.1.27日経新聞   2017.6.27読売新聞     2018.1.27東京新聞 

(図の説明:政府は、その実需を無駄遣いであるかのように抑制することに努めているが、身体が動かなくなった人が自宅で暮らすには家事支援も必要であるため、少なくとも混合介護を認めるべきであろう)

 介護保険制度は、1995年前後に私が提案し、1997年の国会で制定された介護保険法に基づいて、2000年4月1日に施行され、2000年時点で184万人だった介護保険制度の利用者は、2025年には657万人になると予想されている。これだけ利用者が増加するのは、核家族の多い成熟した高齢化社会の日本で、合理的な介護サービスは必要性の高い実需だからにほかならない。

 厚労省は、*2-1のように、自立支援や重度化を防ぐ取り組みに報酬を手厚くし、医療との連携拡大を促すそうだが、このうち医療と介護の連携は当然のことで、自立支援に頑張った事業者が報われる仕組みは必要であるものの、どうしても自立できないから介護サービスを利用している人も多いため、*2-2、*2-3のように、介護報酬の改定は、利用者の生活の質の向上に資する利用者本位のもので、無理に自立を押しつける改定であってはならないと考える。

 日経新聞は、「介護サービスは生産活動ではなく無駄遣い」と見做しているせいか、*2-5のように、「給付の効率化、給付削減が不十分」という記載が多い。しかし、核家族化した高齢化社会の日本で、介護サービスは必要性の高い実需であるため利用者の増加があるのであり、やみくもな介護費の抑制はむしろGDPを落とす。

 そのため、私は、医療・介護は保険適用分と自己負担分を作って混合でサービスを受けることを可能にし、自己負担でも多くの人が購入するサービスは、順次保険適用にしていくのがよいと考える。そうすれば、保険適用を前提とした日本だけ不当に高い価格付けはなくなるだろう。

 なお、東京新聞は、*2-4のように、「介護の見直しに、必要性を増す担い手の確保策が十分か疑問が残る」という記事を書いており、これらはしっかりと考慮されなければならない。

(3)年金と高齢者雇用
 日本老年学会などは、*3-1のように、医療の進展や生活環境の改善により、10年前に比べて身体の働きや知的能力が5~10歳は若返っていると判断し、現在65歳以上とされている高齢者の定義を75歳以上に見直すよう求める提言を発表した。

 そのため、75歳まで働ける人は、*3-2のように、年金受給開始を75歳からに選択することもでき、年金支給開始年齢を遅らせた人は毎月の受給額が増える制度を拡充し、定年延長など元気な高齢者が働ける仕組み作りも進めるのはよいと考える。働いている人の方が認知症にならず、身体も元気でいられるので、介護サービスを使わずにすみ、多面的なメリットがある。

 そのような中、*3-3に、日経新聞が、「2008年のリーマン・ショック以降、先進国を苦しめてきた『需要不足』と呼ばれる状態が約10年ぶりに解消される見通しとなり、米国の景気回復を追い風に貿易や投資が刺激され、需要が増えている」としているのには驚いた。

 何故なら、未だに日本の需要を米国輸出とそのための投資に頼っているが、これは先進国ではなく低賃金を使った製造業による輸出に頼る開発途上国の発想であり、この前提は戦後すぐの日本には正しかったかも知れないものの、現在には全く当てはまらないからである。現在は、福祉サービスなどの内需を満たす方向で需要を作り出すのが、国民を豊かにするための正道だ。

 なお、東日本大震災の復興需要があり、福祉サービスの担い手も足りないため、金融緩和しなくても失業率を最低水準にし、さらに人手が足りない状態を作ることはできたと思われる。にもかかわらず、金融緩和とインフレ政策で実質賃金を下げたことは、不問に付されるべきでない。

 また、「失業率が下がるほど物価が上がるという相関関係は、右肩下がりの“フィリップス曲線”に示されるが、日本や米国は失業率が完全雇用と考えられている水準を下回っている割に物価の反応が鈍い」とも書かれているが、過去に米国で観測されたフィリップス曲線を出すまでもなく、実質賃金や実質年金が下がれば需要が減る上、現在の需給は国内だけでなく開発途上国も含めた世界市場で調整されているため、安い賃金で働く開発途上国が市場経済に参入してくる限り、物価は上がらない。これは、1990年以降の米国でも観測されていることであり、賃金の高い先進国は別の豊かさを考えるべきなのである。

<医療>
*1-1:https://digital.asahi.com/articles/DA3S13322983.html (朝日新聞 2018年1月20日) 杏林大の医師、長時間労働 月100時間超の例も 労基署が是正勧告
 東京都三鷹市の杏林大学医学部付属病院が、労使間の時間外労働の取り決め(36協定)を超えて医師に残業させ、残業した時の割増賃金も不十分だったとして、設置者の杏林学園が三鷹労働基準監督署から是正勧告と改善指導を受けていたことが分かった。杏林大は「勧告を真摯(しんし)に受け止める」としており、働き方の見直しに着手。医師数百人に不足分の賃金数億円を支払ったとしている。杏林大などによると、勧告と指導は昨年10月26日付。杏林大は就業規則と協定で、医師について週39時間の所定労働時間、月最大70時間の残業時間を定めているが、労基署の調査では約700人の医師のうち約2%が「過労死ライン」とされる残業80時間を超え、100時間を超える医師も数人いたという。労働基準法が定める、残業に対する割増賃金も一部の医師について法定の割増率を下回っていた。杏林大は昨年末、同年4~9月の不足分を対象者に支払ったという。長時間労働の理由について、杏林大は朝日新聞の取材に「医師には(治療を求められたら拒めない)応召義務があり、患者側に立って丁寧な診療をしたり、手術が予想以上に長引いたりすることがある」などと説明している。割増賃金については、法定割増率を下回る別の手当を支払っていたという。同病院は高度な医療を提供する施設として国が承認する全国85の「特定機能病院」の一つ。2016年度の外来患者は約64万9千人、入院患者は約29万5千人に上る。医師の長時間労働や勤務管理を巡っては、聖路加国際病院(東京都中央区)や北里大学病院(相模原市)なども労基署から是正を求められていることが明らかになっている。厚生労働省は有識者会議で医師の働き方についての議論を進めており、18年度末までに具体案を取りまとめる予定だ。

*1-2:https://digital.asahi.com/articles/DA3S13318146.html (朝日新聞 2018年1月18日) 北里大病院、勤務ずさん管理 医師の労働時間定めず、36協定不適切
 北里大学病院(相模原市)が、医師らを残業させるために必要な労使協定(36〈サブロク〉協定)の結び方が不適切で、協定が無効だと相模原労働基準監督署(同)から指摘されていたことがわかった。医師の勤務時間を就業規則で定めずに違法な残業をさせていたなどとして、労働基準法違反で是正勧告や改善指導も受けており、大病院のずさんな労務管理の実態が明らかになった。勧告や指導は昨年12月27日付。法定労働時間を超えて病院職員を働かせるには、労働者の過半数で組織する労働組合か、労働者の過半数代表者と36協定を結び、残業の上限時間などを定める必要がある。北里大病院の関係者によると、病院には労組がなく、各部門の代表が集まる「職員代表の意見を聴く会」で過半数代表者を選び、残業の上限を「月80時間」などとする36協定を代表者と結んでいた。だが、各部門の代表になるには所属長の推薦が必要なうえ、人事担当の副院長ら幹部が過半数代表の選出に関わっていた。このため選出の手続きが労基法の要件を満たさないと指摘されたという。2千人以上いる職員の残業が違法状態にあったことになり、この点でも是正勧告を受けた。また、同病院は「勤務時間管理規程」に従って職員の勤務を管理し、所定労働時間は週38時間とする▽残業させる場合は責任者の承認を必要とする――ことなどを定めているが、医師や管理職をこの規程の「適用除外」にしていた。北里大病院は全国に85ある、高度な医療を提供する「特定機能病院」の一つ。2016年10月時点で医師約600人が勤務しているが、始業・終業の時刻や所定労働時間、休日についてのルールがない状態で働かされていたことになる。同病院の職員によると、職員の出退勤時間を打刻するタイムカードはあるが、医師の多くは出勤か退勤のどちらか一方のみを打刻するよう病院側から指導されていたという。長時間労働が長年常態化していたとの声もある。医師がどれだけ残業したかの十分な記録がないため、違法残業の時間や未払い残業代の規模の把握も難しいとみられる。残業時間の上限規制の導入を目指す政府は、医師への規制適用を5年をめどに猶予する方針だ。だが、組織ぐるみともみられかねない大病院の不適切な労務管理が明るみに出たことで、勤務医の労働環境の改善を急ぐよう求める声が強まるのは必至だ。

*1-3:https://yomidr.yomiuri.co.jp/article/20171108-OYTET50038/ (読売新聞 2017年11月8日) リスクの高い出産に対応する病院、6割が産科医不足
 リスクの高い出産に対応する総合周産期母子医療センターの約6割が労働基準法を順守する上で必要な産婦人科医を確保できていない、とする初の推計を日本産婦人科医会がまとめた。宿直や休日の日直の限度回数を超えた勤務が常態化している恐れがあるという。労基法では、労働基準監督署の許可があれば、労働時間の規制外となる宿直や日直を認めている。厚生労働省は通知で、1人につき宿直は週1回、日直は月1回が限度としている。同センターは、合併症のある妊産婦や新生児の集中治療を行う医療機関で、全国に107施設が指定されている。原則24時間、複数の産婦人科医の勤務が要件だ。同医会では、通知と要件に従った場合の宿直・日直体制には16人が必要と試算。今年6月、同センターの人員体制を調査したところ、107施設中66施設(62%)で産婦人科の常勤医が16人未満だった。非常勤医を加えても56施設(52%)が16人に達しなかった。実際は、高齢や妊娠・育児中などで宿直・日直を免除、軽減される医師も多い。16人以上いても、限度回数を超えている医師がいる可能性がある。産婦人科医不足を巡っては、同センターなど地域の基幹病院に医師を集めて、勤務負担を減らす対策が進む。同医会の中井章人常務理事は「さらに集約化を図るとともに、産婦人科医を増やす方策も必要だ。地域や診療科間での医師の偏在解消が急務だ」と話している。

*1-4:https://dot.asahi.com/dot/2017112200086.html?page=1 (AERA 2017.11.24) 救急患者「たらい回し」の裏側 断らざるを得ない当直医の窮状とは、連載「メディカルインサイト」
 11月7日、香川県内の県立病院で昨年度、時間外労働が2千時間を超える勤務医がいたことが報じられた。県は背景に医師不足があるとし、医師確保に努めているという。だが、「妙案はない」とも。現役の医師であり、東京大学医科学研究所を経て医療ガバナンス研究所を主宰する上昌広氏は、著書『病院は東京から破綻する』で、医師不足が原因で患者を受け入れられない病院側の実情を、自身の経験をもとに打ち明けている。
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 2013年1月、埼玉県久喜市で救急車を呼んだ75歳(当時)の男性が、県内外の25病院から合計36回、受け入れを断られ、最終的には県外の病院で死亡しました。典型的な「救急患者のたらい回し」です。亡くなった患者さんのご冥福をお祈りすると同時に、医師も患者受け入れが嫌で断っているのではないことをお伝えしたいと思います。埼玉県は日本で最も人口あたりの医師の少ない地域の一つです。私自身の経験から考えても、埼玉県の病院の当直医師が、全ての救急車を受け入れることは不可能です。私は1995年から2001年まで、大宮赤十字病院(現さいたま赤十字病院)の内科・循環器科に常勤、非常勤医師として勤務しました。06年から現在に至るまで、埼玉県北部に存在する行田総合病院に内科非常勤医師としても勤務しています。大宮赤十字病院に勤務していた頃、私は20代でした。1人でも多くの患者を診ようと、先輩医師に当直業務をかわってもらうことも珍しくありませんでした。当時の大宮赤十字病院では、内科は一般内科1人と循環器科1人の2人当直体制でした。周辺の医療機関と比較して、恵まれていたと思います。三次救急を受け入れる地域の基幹病院だったため、次から次に救急車がやってきました。一睡もできないことも珍しくありませんでした。その後、都内の虎の門病院や国立がんセンター中央病院(当時)に勤務し、当直業務をこなしましたが、大宮赤十字病院との違いに啞然としたことを覚えています。大宮赤十字病院では、心肺停止から急性心筋梗塞、脳卒中までの患者を引き受けていました。こうした患者は早期の対応が求められます。たとえば、心筋梗塞の患者が来たら、すぐに検査や治療を指示し、同時に緊急カテーテル検査を行うか判断しなければなりません。判断に困るときは、先輩医師に電話して、指示を仰ぎました。心臓カテーテル検査を実施すると決めれば、他の先輩医師にも電話して、緊急来院をお願いしました。彼らが来てから検査に入ることもありました。このような重症患者に対応している間は、別の患者を診ることは不可能です。脳卒中や心筋梗塞など、迅速な対応が必要な患者の場合は、救急隊から連絡を受けても、「申し訳ない」と思いながら、お断りしたことが何度もあります。これが、当直医の立場から見た「救急患者のたらい回し」の実態なのです。
■「緊急受け入れ病院」制度の限界
 埼玉県は、救急車の「たらい回し」を防止するため、14年4月には全ての救急車にタブレット端末を設置し、15年2月には「緊急受け入れ病院」を4ヵ所から12ヵ所に増やすことを決定しました。「緊急受け入れ病院」制では、埼玉県が認定する施設で、受け入れを2回断られた患者に対し、3回目で必ず対応することが義務づけられます。埼玉県によれば、タブレット端末の導入により、受け入れ照会が4回以上の「たらい回し」患者は14%減少したそうですが、この程度では問題は解決するとは思えません。「緊急受け入れ病院」を指定し、補助金と引き替えに救急車を引き受けさせても、他の患者を治療している間、病院のベッドで待ってもらうことになります。結局、救急隊の代わりに当直医に責任をなすりつけるだけです。脳卒中や心筋梗塞の治療は時間との戦いです。こうした形骸的な対応は患者にとって決していいことではありません。医師不足が深刻な千葉県や埼玉県で、「救急患者のたらい回し」を減らすには、医師を増やすしかありません。ところが、それが困難です。医師会や医学部経営者など既得権者の思惑が絡むからです。既得権を打破するには、市民が問題を認識し、既得権者を批判する必要があります。そうすれば行政や政治は動かざるを得なくなります。
※『病院は東京から破綻する』から抜粋

*1-5:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180129&ng=DGKKZO26119940V20C18A1TY5000 (日経新聞 2018.1.29) 女性医師、働き続けやすく、東京女子医大 育児での離職者再研修/総合メディカル モール設立開業を支援
 遅れていた女性医師のキャリアと出産・育児との両立を後押しする動きが広がっている。20代では医師の3割超が女性になった。日本の医療を支えるために女性の活躍は不可欠で、復職支援や働き続けやすい環境づくりを進める。「この1、2年で症状が変わったことはありますか」。東京女子医科大学病院(東京・新宿)の総合診療科で1月上旬、山口あけみ医師(40)が精密検査に訪れた男性を診察していた。山口さんは2017年秋、約10年間の専業主婦生活から、非常勤医師として医療現場に復帰した。同大学卒業後、付属の医療機関に勤めていたが、4年目に夫の仕事の都合で米国に引っ越すため離職した。現在4~10歳の2男2女を育てている。17年1月の帰国を機に、医師の仕事を通じて社会に役割を持ちたいと復帰を願ったものの、長く現場を離れ不安があった。「仕事を忘れているのでは」「ミスを起こしてしまったら」。後押ししたのが同大の女性医師再研修部門が提供する「再研修―復職プロジェクト」だった。原則3カ月で希望者の要望に沿った頻度、内容の研修をする。制度は06年度に始まり、結婚や育児などで医療現場から離れた女性医師が対象だ。卒業校は問わない。17年1月までに233人が相談し、96人が研修を受けた。休職していた相談者のうち75%が復職した。山口さんは子育てとの両立を考え週1度、総合診療科で研修した。指導医にアドバイスをもらいながら実際に診療をして「自分にもできる役割がある」と前向きになれたという。再研修部門の唐沢久美子部門長は「キャリアが多様化し、一旦離職する医師も増えた。復職したいときに相談できる人がいないことが課題。人材という宝を掘り起こす必要がある」と話す。厚生労働省によると医療機関で働く16年末の女性医師数は6万4305人で全体の21%。ただ男女比は年齢層が若いほど女性の割合が高く、29歳以下は35%、30代は31%を占める。20年前と比べると29歳以下も、全世代でみても8ポイント高くなった。日本医師会の今村定臣常任理事は「女性には妊娠・出産など男性と異なるライフステージがあるが、女性に働いてもらわなければ医療現場は立ちゆかなくなる」と指摘。医師会は厚労省から委託を受け、就業希望者に医療機関を無料で紹介する「女性医師バンク」をつくった。一方、08年から子育てや介護中の医師らに基本3年間の「キャリア支援制度」を提供するのが岡山大学病院(岡山市)。それまでの定員と別に応募医師を配置する。勤務時間や頻度が比較的自由になる。制度利用後は大学病院で常勤復帰したり、地域の病院に就職したり。希望者が増え、来年度からは受け入れ可能時間を増やす予定だ。働き方改革も進む。久留米大学病院(福岡県久留米市)は18年度、小児科のワークライフバランスを進める取り組みを、他科に紹介し広げる意向だ。ママさん医師が活躍中の小児科は13年末から土日にしっかり休めるよう体制を整備。休日にも主治医が担当患者の見回りやガーゼ交換をしていたのを、基本的に全て当直医が対応するよう変更した。入院患者らに対応する医師約20人の土日の平均勤務時間は、1日平均3.5時間から2.7時間に減少。患者から大きな不満はないという。キャリア支援を担当する一人、守屋普久子医師は「結婚出産を控える若手の女性医師が増える中、働き続けやすい環境作りが必要。大学病院で人材が不足すれば地域に医師を派遣できなくなる可能性もあり、地域医療に影響を及ぼしかねない」と話す。働く場を自ら作ることで子育てとの両立を図ろうとする試みもある。医療コンサルティング大手の総合メディカルは開業を希望する女性医師向けに19年4月に複数のクリニックが集まる「女医モール」の開業を都内2カ所で目指す。社内に女性社員主体の「JOY☆Working Team」を設け、医師の募集や開業地の選定に当たる。将来は子育て中の女性がワークシェアできる体制の医療モール開設も目指す。保育園と小学校に通う3人の子を育てながら首都圏の病院に勤める40代女性医師は開業を検討中だ。同医師は「自宅近くで開業できれば、子どもの下校後にクリニックで宿題をさせるなど、そばにいられる」と話す。今は父母の力も借りながら午前8時半~午後5時半を定時として働くが、緊急時には突如の時間外勤務や深夜の対応が必要なことがある。いつまでこの生活を続けられるか不安を感じるそうだ。ただ、「これまで約20年キャリアを積んで来られたのは、大学や患者さんから多くの機会を与えられてきたから。医師として返し続けることが使命」と強調する。医療に携わり続ける気持ちは変わらない。

*1-6:http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2018012801001532.html (東京新聞 2018年1月28日) 専門医研修、地方は低迷 外科「10人未満」27県
 若手医師に分野ごとの高度な知識や技術を身に付けてもらうため、4月から新たに始まる専門医養成制度で、医師が希望する研修先が大都市に集中し、地域に大きな偏りがあることが28日、分かった。外科は東京での研修希望者が170人に上る一方、青森、高知など27県は10人未満、内科でも9県が15人以下だった。指導医の数など、研修機関としての基準を満たす病院が地方に少ないことが背景にある。新たな制度は大学の医学部教授や公的機関の代表で構成する一般社団法人「日本専門医機構」(2014年設立)が運営。研修先登録結果は同日までに機構が公表した。

<介護>
*2-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180127&ng=DGKKZO26194380W8A120C1EA3000 (日経新聞 2018.1.27) 介護自立支援、報酬手厚く、重度化防止も対象 医療と連携拡大促す
 厚生労働省は26日、4月から適用する介護保険サービスの新しい料金体系(介護報酬)を公表した。介護を受ける人の自立に向けた支援や、重度化を防ぐ取り組みに報酬を手厚く配ることが特徴だ。効率化に向け残された