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2019.5.3~4 GAFAの課税問題と個人データ保護問題 (2019年5月5、6、7、8、9、10、11、13、22、23、24日追加)
  
     2019.1.2産経新聞

(図の説明:左図のように、GAFAの創業は、アップル1976年、アマゾン1994年、グーグル1998年、フェイスブック2004年と、パソコンなどのハードを作ってきたアップル以外はインターネットが一般的になってから芽生えた若い企業だが、株価時価総額や売上高は兆円単位であり、時代のニーズに合ったサービスを行えば成功することがわかる。しかし、近年は、個人データの勝手な使用や移転、検索サイト等での人権侵害など、ニーズからかけ離れた横暴も見られる。また、中央の図のように、国際課税制度がグローバル企業の行動様式に追いついておらず、課税漏れも発生している。そのため、右図のような規制が検討されているわけだ)

(1)GAFAの問題について
 「GAFA(ガーファ)」とは、巨大IT企業であるグーグル・アップル・フェイスブック・アマゾンの頭文字をとったもので、*1-1のように、課税問題と個人データ保護の問題があるが、これは巨大企業だから生じる問題ではないと、私は考える。

1)課税問題について
 課税問題については、元・米グーグル副社長の村上氏が、*1-1で主張されているとおり、「GAFAは税金を払っていない」と言われることが多いが、現行税制下で脱税(税法違反の違法行為)をしているわけではなく、節税(税法に従って無駄な税金を節約すること)をしているにすぎないため、私も感情的な議論には反対だ。

 現行税制下で、日本等で営業している企業が納税しなくて済む理由は、税法が「企業は、進出国で支店や工場などの恒久的施設を持たなければ法人税を課されない」という規定になっており、GAFAなどのIT企業は配信拠点を外国に置いたまま恒久的施設を持たずに営業することができるからだ。

 しかし、倉庫が恒久的施設と認定された判例(http://www.bantoh.jp/article/14476063.html 参照)もあり、これは日本国内の倉庫で商品の保管・梱包・日本語版取扱説明書の同梱・宅配便での発送などが日本の従業員によって行われていたケースで、アマゾンの営業の一部はこれに当たるだろう。

 さらに、GAFAを含むグローバル企業は、タックスヘイブンに利益を集めれば合法的に税負担を軽くすることができるので問題になっているが、これもタックスヘイブン税制と外国税額控除を使って合法的に行われており(https://www.eyjapan.jp/library/issue/info-sensor/2017-06-07.html 参照)、上の判例のケースも、倉庫をタックスヘイブンに置き、そこで作業を行えば課税の軽減ができるわけである。

 そのため、私は、各国が、商法に「営業する国には、支店などの恒久的施設をおかなければならない」という規定を置いて、ある国で挙げた利益に対する税はその国で支払うことを義務付けるとともに、商品やデータ保護などにクレームがある場合も、その国の恒久的施設をその国で訴えればよいようにすれば、税制とデータ保護の問題が同時に解決できると考える。

 従って、「巨大企業だから、GAFAが悪い」と感情的に煽るのではなく、2019年6月の日本で開催されるG20財務相・中央銀行総裁会議で、各国がその国に恒久的施設を置くことを義務付ける点で合意すればよいだろう。

(注:タックスヘイブンとは、法人税や源泉課税などがゼロor低税率という税制優遇措置をとっている国・地域で、キュラソー、ケイマン、スイス、パナマ、バハマ、ルクセンブルクなどがこれにあたる。日本も、過疎地などで企業誘致したい場所の法人税率を下げればよいのでは?)

2)個人データ保護問題について
 *1-1にも書かれているとおり、検索やSNS等のサービスを提供するグーグルやフェイスブックなど「プラットフォーマー」と言われる企業は、インターネットやデータビジネスで強いポジションを握っているプラットフォーマーで、欧州では個人データ保護などのGAFA規制が強まっているそうだ。

 私は、個人データはその人のものであるため、便利さとの引き換えに勝手に他の目的に流用されること自体が人権侵害であり、欧州の個人データ保護規制が良識的だと考える。そのため、「米国が勝った」ではなく、米国も日本も人権侵害がないように必要な規制をしながら、誠実に事業を行わせなければならないのであり、これは中国・ロシアなど他の国々でも同じだ。

 アマゾンは、「いずれ注文しなくても必要な時に必要な商品が届くサービスも可能になる」「そのためには個人データの開示が必要だ」などと公言しているそうだが、これは過去の行動のみから判断するため、一度買ったらずっと同じ商品の広告が出たり、毎月同じものを買わされたりして役に立たないだけでなく、無駄なものを買わされて迷惑なこともある。従って、IoTによる技術革新も、個人の自由やプライバシーなどの基本的人権を踏みにじらない範囲でのみ許されることを、決して忘れてはならない。

(2)GAFAの規制について
1)問題は独占なのか?
 マッキンゼーの日本支社長だった経営コンサルタントの大前氏が、*1-2のように、「①GAFAなどのデジタルプラットフォーマーに対する規制圧力が世界中で強まっているが、この問題は『個人データの独占』と『課税』の2つがある」「②個人データの独占問題は、消費者がスマホやパソコンで検索や買い物をすると、その履歴が消費者の同意なくターゲティング広告に活用される行為が独占禁止法に違反する」「③課税問題はデジタルプラットフォーマーがタックスヘイブンや法人税率の低い国・地域に拠点を置き、実際に収益を上げている国で税金を納めていない」などの要点を書かれている。

 私は、①②については、(1)2)に記載したとおり、検索や買い物をするとその履歴が残ることまでは仕方がないが、これを消費者の同意なくターゲティング広告に利用したり、他企業に売却したりすることは人権侵害の問題であり、これは中小企業でも同じであるため独占の問題ではないと考える。つまり、アクセスデータを集めるところまではプラットフォーマーの特権になるが、個人データは個人のものであるため、その人の同意なく移動したり利用したりするのは人権侵害という憲法違反の問題なのだ。そのため、データの悪用を決して行わない信頼できるプラットフォーマーが現れれば、市場原理によってそちらの方が勝つと思われる。

 また、①③については、(1)1)に記載したとおり、各国が、営業する国に恒久的施設を置くことを義務付けることで合意すれば解決できる。

2)規制の妥当性
 現在、*1-2のように、世界中で個人データの取扱規制や新税導入などの動きが加速し、日本の公正取引委員会も、デジタルプラットフォーマーが不当に個人情報を集めた場合、「優越的地位の濫用」を個人との取引にも適用して独占禁止法を適用する方針を固めたそうだ。

 しかし、検索サービスやSNSサービスの対価として個人の情報を集めることは、デジタルプラットフォーマー以外の企業もやっており、「巨大な」「プラットフォーマー」「不当に集めた」という線引きが問題になるのは独占禁止法を適用しているからだ。そのため、個人情報やプライバシーを人権として護る消費者保護サイドの規制を作れば、境界の問題は生じない。

(3)個人データの悪用について
 政府が世界の巨大IT企業「プラットフォーマー」の規制に向けた議論を本格化させていることを受けて、*2-1のように、巨大IT、GAFA、プラットフォーマーについて、基本的な定義が示されている。

 しかし、私は、ネット経済の特性は、独占・寡占が進みやすいということよりも、少ない資本で誰でも起業でき、成功すれば急成長することだと思う。あとは、どういうサービスを提供するかというアイデアの勝負であり、個人情報の流出や人権侵害などの悪用を行う企業は、誠実で質の高い競争相手が出て来れば淘汰されるだろう。

 例えば、三越・高島屋・イトーヨーカドー・イオンなどが世界の流通ネットワークを活用して良いものを仕入れ世界に向けてネット通販したり、農協・漁協・真珠専門店などがよい産物を世界に向けてネット販売したりすれば、実質経済に根を下ろしているだけに、アマゾンより有利な位置から始められる筈だ。

 そのような中、*2-2-1のように、2018年5月にEUで施行された一般データ保護規則(GDPR)で、個人データ保護を厳しく企業に求めたのは重要なことだ。何故なら、巨大か否かを問わず、ITプラットフォーマーが勝手に個人データを流用すれば、個人は抗しきれないため、消費者保護の問題になるからだ。

 しかし、*2-2-2のように、日本政府がEUと交渉して互いの進出企業が現地で得た個人データを域外に持ち出すことを例外的に認める枠組みを作ったのだそうで、グローバル企業の事業拡大を後押しするためだと説明されているが、この発想の中には、消費者ニーズや個人情報を勝手に使われないようにして個人を護るという意識が全くないのである。

 日本が自由なデータ流通にこだわっているのは、産業振興のためには個人消費者を犠牲にすることを厭わないという全体主義的な発想からである。また、このような発想の国が、マイナンバーを使って個人管理を行い始めたのだから、日本人は気を付けなければならない。

 その巨大IT規制の政府案は、*2-3・*2-4のように、①取引条件の開示義務 ②独占禁止法での処分 ③個人情報の保護 を盛り込んでいるそうだが、個人情報保護に関しては、個人情報保護や人権侵害に鈍感な企業に消費者が近づかないよう企業名を公表するなどの厳格な態度が必要なのであり、企業の負担になる規制強化を避けようなどというのは論外である。

・・参考資料・・
<GAFAの課税問題と解決法>
*1-1:https://digital.asahi.com/articles/ASM365H4FM36UPQJ00K.html (朝日新聞 2019年3月17日) GAFA納税不十分? 元グーグル副社長「税制に問題」
 「GAFA」(ガーファ)と呼ばれるグーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン。こうした巨大IT企業への風当たりが世界的に強まっている。もっと納税すべきだ、という批判もその一つ。格差が広がる世界経済のいまを映すこの問題、どう考えれば良いのか。
●元・米グーグル副社長 村上憲郎さん「情緒的な規制、避けるべきだ」
 GAFAは支払うべき税金をきちんと払っていない、などと言われますが、違法な脱税をしているわけではないでしょう。節税をしている。それを問題視するなら、「納めなくても済む」という税制の方にこそ問題があるんですよ。税制を整えれば、それに従って、適法に納税すると思われます。最近は税金に限らず、データの集積などの問題も含めてGAFAへの批判が高まっています。ただGAFAもサービスを提供して対価を得るという商行為をしているわけで、情緒的に「GAFAが悪い」とあおることは即刻、やめるべきです。世界的に社会の格差が広がる中、特定の誰かに対する不満をあおることは負のエネルギーを生み、全体主義の復活にもつながりかねない。日本もGAFAへの規制に乗りだそうとしていますが、情緒的なアプローチだけは絶対避けるべきです。富の集中による不公平の存在は多くの人の指摘の通りですが、再分配をどうするかは難しい問題です。GAFAを生んだ米シリコンバレーでは高額所得者が集まった結果、住居費が上がりすぎ、普通の地元の人たちが住めなくなっています。米国の分厚い中間層も失われてきています。これまでの資本主義とは様相を異にしてきています。特に若い世代の格差をいかに少なくするかを根本的に議論すべき時期に来ている。ただそれは特定の私企業の責任ではありません。検索やSNSなどのサービスを提供するグーグルやフェイスブックなど「プラットフォーマー」と言われる企業は最強のポジションを握ってはいます。全てのビジネスの基盤となるからです。ただインターネットでのビジネスは、その上に幾層も重なるレイヤー構造です。動画配信大手のネットフリックスもプラットフォーマーですが、テレビ受像機をつくる企業、動作のアプリをつくる企業、番組などコンテンツをつくる企業など多くの層があります。それら全てが繁栄しないとプラットフォーマーも繁栄しません。「一人勝ち」はありえないんです。欧州では課税強化や個人データ保護などGAFAへの規制が強まっていますが、米国の本音は「勝った」でしょう。欧州にもそれなりの企業はあるけれど、データへのアクセスを罰則つきで規制されれば事業を大きくすることはできません。インターネットにつながる家電などのIoT(モノのインターネット)が成長分野ですが、データへのアクセスを制限された欧州企業は何もできず、地力を失っていくと思います。個人データの問題でもGAFAはやり玉にあがっていますが、便利さとの引き換えで利用者が判断すべき問題です。GAFAが最終的に提供しようとしているのは「執事サービス」です。執事は主人のすべてを知り尽くし、冷蔵庫に好物を常備しておく。アマゾンはいずれ、「注文しなくても必要な時に必要な商品が届く」サービスも可能になると公言している。そのためには全部見せる、つまり個人データの開示しかありません。私の見立てでは、21世紀は中国の圧勝になる。中国は東大も京大も東工大も10校ずつあるという感じで、米国で教育を受けた優秀な人たちも帰国し、一党独裁のもとで量子コンピューターなどの技術に集中投資できる。GAFAもいずれ、中国企業に取って代わられるかもしれない。GAFAを規制している場合じゃないんですよ。そんな世界で、日本はどうするか。もう若い人たちにやりたいようにやらせるしかありません。IoTの時代には車や産業ロボットなど、インターネットにつながるリアルな「モノ」がカギになります。日本はその「モノづくり」では蓄積があります。でも、そこで年寄りが威張るのではなく、若い人にこそ任せるべきです。
  ◇
むらかみ・のりお 1947年生まれ。日立電子(現日立国際電気)を経て米国系IT企業数社の日本法人代表を歴任。2003年~08年に米グーグル本社副社長兼日本法人社長。
●デロイトトーマツ税理士法人パートナー 山川博樹さん「データ時代に新しい税制を」
 グローバル企業に相応の課税ができていないのではないか、という議論が盛んになったのは、2000年ごろからです。対象は必ずしもIT企業だけではありませんでした。経済協力開発機構(OECD)はこの問題について、従来の国際ルールを元に、部分的な修正をしました。08年のリーマン・ショックがさらにこの議論を後押ししました。各国で財政が悪化し、所得増税などで国民の負担が増えた一方、グーグルやアップル、スターバックスなどが税負担を回避する仕組みを使っていることが次々と明るみに出ました。なかでもIT企業は各国で存在感を高め、利益も巨額なのに、納税のレベルが極端に低いのは不公平だ、という人々の意識が高まりました。フランスでは国民の怒りが、課税できない政府にも向かいました。なぜ課税できなかったのか。理由は大きく二つあります。まず、現行のルールでは企業が進出先の国で工場などの「恒久的施設」を持たなければ、法人税をかけられません。たとえば日本でアマゾンから電子書籍や映画を購入しても、配信拠点が米国にあれば法人税は米国で払い、日本には納めないことになります。もう一つは、税負担の少ないタックスヘイブン(租税回避地)などにほとんど実態のない子会社を作り、利益を移すとても高度な仕組みが作られていたことです。公開データによると、米IT企業など40社以上がこのやり方を使っていました。これは脱税ではありません。税制が追いついていないのです。ただ企業の存在感が大きくなったいま、もっと課税すべきだという声が出てくるわけです。OECDは15年、「税源浸食と利益移転(BEPS)に関する行動計画」をもとに、国際的な課税の共通ルール作りを始めました。世界中の国が同じルールにしないと抜け道が生まれるためです。現在、プロジェクトに約120の国・地域が参加しています。ただネット上の取引の扱いは積み残されました。既存ルールの根幹に関わる難しさがあるからです。ところが、この1年弱ほどの間にこの問題が急に進展し始めました。積極的に関わろうとしなかった米国が、議論に参加し始めたことが大きな理由です。トランプ政権は、GAFAなど米国企業だけが「狙い撃ち」にされるのはたまらないと思ったのでしょう。もう一つの背景は、一部の国が独自にIT企業に課税すると表明したことです。フランスは見切り発車で「デジタル課税」を始めると発表しました。米国も無視できず自ら関わらざるを得なくなりました。ただ欧州でも、アイルランドやルクセンブルク、オランダなど低い税率でIT企業を誘致してきた国と、それ以外の国との間で不協和音が起きています。いま求められているのは、データをビジネスにする時代に合った新しい税の考え方です。シリコンバレーのIT企業が持つ重要な価値は「アルゴリズム」です。市場のある国の利用者1人分のデータには意味がなく、集積して解析することで価値が生まれます。そしてこの活動は米国で行われています。では市場のある国でどういう理屈で課税するのか。また、各国で使われるアルゴリズムの開発やデータ管理の費用などをどう計算し、法人所得を算出するのか。極めて難しい問題です。新しいルールづくりで重要なのは、二重基準にならず、現行の制度から大きく乖離(かいり)しないこと。また、各国の税務当局や納税者、紛争を解決する裁判所などにとっても論理的に理解できるものにすることです。途上国も対応できるよう、簡素な計算式を使うなど実務的でなければなりません。6月には日本でG20財務相・中央銀行総裁会議が開かれる予定ですが、議論の進展を期待しています。
     ◇
やまかわ・ひろき 1959年生まれ。82年に国税庁に入り、調査査察部調査課長などを歴任。国際課税を長年担当してきた。14年からデロイトトーマツ税理士法人。

*1-2:https://www.news-postseven.com/archives/20190411_1348635.html (週刊ポスト 2019年4月19日号) 「GAFA独占」問題をどう解決するか、大前研一氏が分析
 商品やサービスを提供するプラットフォーム企業のうち、特に巨大なアメリカのIT企業4社は「GAFA」と呼ばれている。最近では、世界中でこの巨大企業が個人情報をかき集め、独占し、納税も巧みに逃れていることが問題となっている。経営コンサルタントの大前研一氏が、「GAFA独占」問題の解決について解説する。
 * * *
  「GAFA」(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)などの「デジタルプラットフォーマー」と呼ばれる巨大IT企業に対する規制圧力が、世界中で強まっている。この問題は、大きく分けて「個人データ独占」と「課税」の二つがある。まず個人データ独占問題は、消費者がスマホやパソコンで検索や買い物をすると、その履歴などの個人データが利用した企業に蓄積される。それをデジタルプラットフォーマーは世界規模で膨大に集めて事実上独占し、消費者の同意なくターゲティング広告(※ユーザーが閲覧したサイト、検索履歴、検索キーワードなどを基にユーザーの興味や関心、嗜好性を解析し、それに的を絞った広告を配信する手法)などの事業に活用して莫大な利益を上げている。そういう行為が独占禁止法に違反するとして、各国で批判が高まっているのだ。もう一つの課税問題は、デジタルプラットフォーマーがタックスヘイブン(租税回避地)や法人税率が低い国・地域に拠点を置き、法の抜け穴を利用して実際に収益を上げている国で税金を納めていないことである。この“税逃れ”をどう防ぐかが、世界中の政府の課題になっているのだ。だが、その解決は容易ではない。たとえば、もともと日本の独占禁止法の目的は「公正かつ自由な競争を促進し、事業者が自主的な判断で自由に活動できるようにすること」であり、市場メカニズムを正しく機能させるために「私的独占」「不当な取引制限」「不公正な取引方法」などを規制している。具体的には、不当な低価格販売などの手段を用いて競争相手を市場から排除したり、50%超のシェアを持つ事業者がいる市場で需要やコストが減少しても価格が下がらないなどの弊害が認められる場合に適用される。だが、デジタルプラットフォーマーの場合、それらのいずれも当てはまらない。それどころか、グーグルやフェイスブックは普通に利用する分にはタダであり、むしろ消費者の利便性や効率を高めている。また、そもそもデータは検索や買い物を通じて消費者自身が提供している。となると、GAFAなどが個人データを独占して莫大な利益を上げているのは企業努力の結果であり、それを規制するルールがあるかと言えば、従来の独占禁止法のどこを探しても見当たらないのだ。ただし、タダで便利なように見えて、実のところデジタルプラットフォーマーは様々な情報を吸い上げて利用者を“丸裸”にしている。情報シェアを高めることによって販売効率を高めるというのは昔からマーケティングの人間が憧れていたことであり、それをデジタルプラットフォーマーはほぼ自動的にやっているわけで、これほど一握りの大企業が情報を独占するという状況は、誰も想定していなかった。この巨大化したデジタルプラットフォーマーにタガをはめるため、世界中で個人データの取り扱い規制や新税導入などの動きが加速している。すでにEU(欧州連合)欧州委員会は3月20日、グーグルに対し、インターネット広告の分野でEU競争法(独占禁止法)に違反したとして14億9000万ユーロ(約1900億円)の制裁金を科した。日本の公正取引委員会も、デジタルプラットフォーマーが不当に個人情報を集めた場合、これまで企業間の取引にしか適用してこなかった「優越的地位の濫用(※取引上優越した地位にある企業が、取引先に対して不当に不利益を与える行為。独占禁止法により、不公正な取引方法の一つとして禁止されている)」を個人との取引にも適用し、独占禁止法を適用する方針を固めたと報じられている(『朝日新聞』3月6日付)。しかし、検索サービスやSNSサービスの対価として個人の情報を集めることは、デジタルプラットフォーマー以外の企業も、細々とではあってもみんなやっている。その線引きをどうするのか、中小企業は規制しなくてよいのか、という問題がある。また、課税問題については、各国での売り上げに応じてそれぞれの国で納税させる新たな税制が多くの国で検討されている。たとえばフランスは3月、国際収益が年間7億5000万ユーロ以上(国内での収益が同2500万ユーロ以上)のデジタル企業を対象にした「デジタル税」を導入すると発表した。イギリスやイタリア、スペイン、インドなども同様の新税を導入すると報じられている。しかし、これは国ごとではなく「グローバル課税」にしないと、根本的な解決策にならないと思う。ネットの世界はグローバル・ビレッジなので、国別に課税するという概念がなじまないからである。フランスやイギリスなどのように、単にその国での売上高に応じて納税させるのではなく、グローバルな収益から、その国の売上高に比例して納税させるべきだろう。なぜなら、GAFAは国別の収益を公表しないし、国別の経費もあまり意味を持たないからだ。したがって、企業本社での最終純利益を国別の売上高で按分する、という考え方である。これは日本の外形標準課税(*1)やアメリカのユニタリータックス(*2)に近い。
【*1:資本金・売上高・事業所の床面積・従業員数など、企業の事業規模を外形的に表す基準をベースに課税する方式。*2:アメリカの州が課す税で、州外の親会社・子会社・関連会社を一体のものとみなして全所得を合算し、その州における売上高や資産などで比例配分したものを州事業税の課税対象にする方式】

<個人データの悪用について>
*2-1:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/298464 (佐賀新聞 2018/11/6) 【共同】巨大IT、代表格はGAFA
 政府が世界の巨大IT企業「プラットフォーマー」の規制に向けた議論を本格化させています。
Q プラットフォーマーとは何ですか。
A 世界中で消費者と接点を持ち、購買行動や関心事項といった個人情報を収集、分析して各種サービスを提供している巨大IT企業のことです。膨大なデータを握ることで、企業がこれらIT企業を介さずには事業展開できないほど圧倒的な存在となっており、英語で基盤や土台を意味する「プラットフォーム」から命名されました。
Q 具体的な企業は。
A 代表格は「GAFA(ガーファ)」とくくられる米国の4社です。検索のグーグル、iPhone(アイフォーン)のアップル、会員制交流サイト(SNS)のフェイスブック、インターネット通販のアマゾン・コムの頭文字を取って、こう呼ばれています。
Q なぜ世界中に影響力を広げたのですか。
A 中小企業がネット通販を経由して世界で商品を販売する基盤を提供したり、交流サイトを使って海外の人々と連絡が取れたりと、利便性が非常に高いためです。
Q 問題点は。
A 主導権を握った企業の優位性が加速するネット経済の特性から、独占や寡占が進みやすく、取引企業や利用者への影響力が大きくなりすぎると指摘されています。人工知能(AI)を使ったサービスの不透明さや、個人情報の流出・悪用も課題となっています。

*2-2-1:https://www.nikkei.com/article/DGKKZO42098900W9A300C1M11200/ (日経新聞 2019/3/7) データ保護規制 世界に波紋、EUのGDPR、施行9カ月
 2018年5月に欧州連合(EU)が施行した一般データ保護規則(GDPR)が世界に波紋を広げている。個人データの保護を厳しく企業に求めており、大量のデータを握る米IT(情報技術)大手への攻勢を強めている。GDPRを契機として、データの自由な流通圏の構築を目指す日米欧と、国家主導のデータ管理を目指す中国との間でデータエコノミーを巡る覇権争いも激しくなってきた。

*2-2-2:https://www.sankei.com/politics/news/190123/plt1901230031-n1.html (産経新聞 2019.1.23) 欧州の個人データの移転規制、日本例外で発効
 日本と欧州連合(EU)との間で、互いの進出企業が現地で得た個人データを域外に持ち出すことを例外的に認める枠組みが23日に発効した。日EUは相互に個人情報保護の水準が十分であると認め、データ移転の際に個別の契約を求めるなどする規制をなくすことで、グローバル企業の事業拡大を後押しする。EUは昨年5月に企業などを対象に個人情報の保護を厳しくする一般データ保護規則(GDPR)を導入。仏当局は21日、米グーグルにGDPRに違反したとして5千万ユーロ(約62億円)の制裁金を科すなど、厳格な個人情報の取り扱いを求めている。

*2-3:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190425&ng=DGKKZO44146570U9A420C1EA2000 (日経新聞 2019年4月25日) 巨大IT規制、多面的に、政府案公表、成長との両立図る
 政府は24日、プラットフォーマーと呼ばれる巨大IT(情報技術)企業に対する規制のうち、公正な競争を求める案をまとめた。取引条件の開示義務に加え、独占禁止法での処分も盛り込んだ。25日には個人情報保護法改正に向けた原案も公表する。企業活動や消費者の利便性と調和を図りつつ、巨大IT企業を多面的に規制していく方針がみえてきた。政府は現在、公正競争、個人情報保護、デジタル課税という3つの政策的な観点から巨大IT企業の規制を検討している。公正競争の規制案は経済産業省、公正取引委員会、総務省と有識者が合同で協議する「デジタル・プラットフォーマーを巡る取引環境整備に関する検討会」がまとめた。データ寡占の防止や中小企業との取引適正化などが目的だ。今後は年央に出す政府の成長戦略に向け、各省庁が制度の具体化を進める。巨大IT企業はグーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン・ドット・コムを示す「GAFA」などが代表例だ。利便性の高いSNS(交流サイト)やネット通販、動画・音楽配信などを手掛けて急成長を続けるが、近年はその負の側面にも注目が集まる。例えば、ネット通販モールに出品する中小企業に対し、不利な取引条件を押しつけているとの懸念がある。公取委が巨大IT企業の取引先企業に実施した調査では「規約を一方的に変更され不当な不利益を受けている」との声が多く上がった。巨大IT企業は当初「場の提供者」にすぎないと位置づけられてきたが、その存在が消費者に広く受け入れられるようになった。扱う商品やサービス内容も膨大に増えており、取引先企業に対しても強い影響力を持つようになっている。取引企業の多くは守秘義務契約などに縛られて外部に窮状を訴えにくい。巨大IT企業はビジネスモデルが目まぐるしく変化するという性質も持つ。このため政府は独禁法の運用を見直し、今後は強制力を持つ「40条調査」も含めて業界全体の実態把握を定期的に進める方針だ。取引条件の開示を義務付ける新法もつくる方針だ。企業に自主改善を促しながら段階的に規制を強めていくなど、独禁法を補完する役割を担う。まず開示方法を行動規範として定めさせ、対外的に説明させる体制をつくる。法律や行動規範に違反した場合の初期対応として、該当する企業名や問題行為を公開し、自主的な改善を促す。ネット通販などインターネットを通じたビジネスは、消費者や取引先の評判に左右されやすい。政府は社名公表が一定の自主改善を促す効果があるとみる。公表後も改善されない場合は、新法に基づき業務改善命令など行政処分で対応する。それでも対応が不十分なら、企業規模や取引の依存関係などで優位にある企業が取引相手に不利な条件を押しつける独禁法上の「優越的地位の乱用」を適用して処分する方針だ。巨大IT企業の活動を抑制するような規制を強めるほど成長の勢いがそがれ、利用者の利便性が低下したりコスト負担が増したりする恐れがある。有望な市場の成長や技術革新を阻む懸念があり、政府はそうした副作用を抑えるように規制していくことになる。この規制案の厳しさは、欧州と米国の中間に位置する。欧州連合(EU)は競争法(独禁法)で高い課徴金の納付を命じるなど厳しい規制を持つ。逆に、多くの巨大IT企業の発祥の地である米国は取り締まり強化に慎重だ。日本は処分の前段階として「取引の透明化」に重きを置き、規制と成長の両立を図る。

*2-4:https://www.nikkei.com/paper/related-article/?b=20190425&c=DM1&d=0&nbm=DGKKZO44146570U9A420C1EA2000&ng=DGKKZO44148390U9A420C1EA2000&ue=DEA2000 (日経新聞 2019年4月25日) 仕組み作り、入り口段階 課税、各国の足並み乱れ
 プラットフォーマーと呼ばれる巨大IT企業を巡っては、個人情報保護の規制強化と課税ルールの見直しも重要な課題だ。強すぎる支配をけん制する仕組み作りは、まだ入り口の段階だ。個人情報保護委員会は25日、2020年に向けて検討している個人情報保護法改正の原案を公表する。巨大IT企業への規制強化は米フェイスブックの個人データのずさんな管理などが相次いで発覚したのがきっかけだった。保護法の見直しは避けられない論点だ。原案では、個人が企業に対し自分の個人情報の利用を止められる「利用停止権」の新設を盛りこむ。一方で情報を削除させられる「忘れられる権利」の導入までは踏み込まない。自分のデータを持ち運ぶ「データポータビリティー」も保護法には含めず、競争政策の一環として限定的な導入を目指す。保護法の改正は、個人情報を厳しく管理する欧州連合(EU)の一般データ保護規則(GDPR)を参考にしている。だが企業の負担になる規制強化を避けようとする方向性も目立つ。24日に発表した独禁法の面からのIT企業規制案と同様、政府は個人情報保護でも「規制を強めすぎると企業の技術革新を妨げかねない」との懸念を持つからだ。規制強化と産業育成の両立という難題を前に、慎重な議論を続ける。最も検討が難航するのが課税ルールの見直しだ。IT大手は支店などの拠点を持たず、ネットを通じて国境を越えたビジネスで収益を上げる。既存の法人税ルールで対応できないとの指摘も多い。新ルールを作るには国際間の合意が必要だが、より多くの税収を求める各国で意見が合わない。20カ国・地域(G20)と経済協力開発機構(OECD)は20年までに、デジタル経済に合った課税ルールの見直しに合意することを目指す。しかし欧州を中心にプラットフォーマーへの厳しい課税強化を求める声が上がる一方、米国などは「特定企業の狙い撃ちは間違っている」と反発。企業が持つブランド力や顧客データなどの「無形資産」への課税強化で代替する案も浮上する。意見のまとまりを待たず、英国やフランスが独自の「デジタル課税」の導入に動く。イスラエルやインドなど新興国の一部も同調し、各国の足並みは乱れる一方だ。国際課税ルールの見直しは、6月に日本で開かれるG20の財務相・中銀総裁会議や大阪での首脳会議(サミット)で主要議題のひとつになりそうだ。日本は議長国の役割が期待されるが、バラバラに分かれた意見のとりまとめは簡単ではない。

<求められる人材と教育>
PS(2019年5月5、6日追加):*3-1のように、「①次世代通信規格『5G』の特許出願数は、中国34%、韓国25%、米国14%、日本5%」「②出願件数が最も多い企業はファーウェイで、シェアは15.05%、研究開発費は年間100億ドル(約1兆1100億円)以上」「③特許を押さえた企業が主力プレーヤーになるため、特許数は自動運転など各国の新産業の育成や次世代の国力を左右する」と書かれている。
 ①③については、EVや自動運転技術を最初に開発し始めたのは日本なのに、このように遅らせてしまったのは政策や経営方針の問題であるため、原因を徹底的に追究した上で改善しなければ、今後も同じことが続くだろう。また、②の研究開発費は、物価水準と購買力平価を考慮すれば、日本なら10兆円以上の価値になるため、(長くは書かないが)物価上昇政策は百害あって一利なしだった。さらに、日本人が特許権に関する米中摩擦であたかも第三者であるかのように米国を批判するのはもってのほかで、自らの特許権も護らなければならない筈である。
 そのような中、経団連会長の中西氏が、*3-2のように、「イ. 日本は働けば豊かになる時代が終わった」「ロ. 過去に固執したらロクなことがないが、そこに気がついた人と気づかなかった人がいた」「ハ. 経団連の成長戦略は変化を受け止めようという内容で、いかに知恵でメシを食うかだが、科学技術をうまく使ったイノベーションは大きなヒントで、消費者の需要を引き出すことが元になり、新しい商機をつくる責任は民間が負う」「ニ. 環境を整えるのが政府の役割だ」「ホ. 日本は、高度成長という世界でもまれな成功体験があるので、なかなか変われない」「ヘ. 新時代を見通したとき、懸念するのはエネルギーの問題だ」「ト. インセンティブをつけてグリーンエネルギーに転換する総合的なシナリオを作り直すべきだ」「チ. 再生エネルギーを普及させるには、発電した電気をどう運び、どう蓄えるかという全体を設計しないといけない」「リ. 送配電網もデジタル技術で次世代化する投資が要る」「ヌ. 原発ももっと長い目でみた議論をすべきで、化石燃料を使いきったあと、原子力以外に生活や工業を支えるエネルギーはない」とおっしゃっている。
 しかし、イ. ロ. ハ. ニ.は経営学の分野では、ドラッカーなどが50年以上も前から言っていることで、ホ.の「日本の高度成長は世界でも稀な成功体験」というフレーズもよく耳にはするが、敗戦後の日本ではすべての物資が不足し労働力も減っていたため、働きさえすれば何を作っても売れ、賃金も安かったため加工貿易が成立したが、現在はそうではなく、多くの低賃金の国が世界経済に参入してきたため、本当に必要とされる高付加価値のものを作らなければ、国内でも売れないし、輸出もできなくなったのである。なお、エネルギーについては、チ. リ.はそのとおりだが、ヌ.の「化石燃料を使いきったら原子力」というのは、失礼ながらまだわかっていないようなので、勉強しなおしてもらいたい。
 なお、現在の経団連会長で日立の社長までやった人が、何故こういう初歩的なことを言うのかについては、中西氏が東大工学部電気工学科卒業のコンピュータエンジニアで、優秀ではあろうが経営学・経済学を本格的に勉強したことがないからだと思われる。そのため、高校・大学では経営学や政治・経済をもっと本格的に勉強させるべきで、日本では、民間企業も役所も学校も専門分野を早くから細かく分けすぎるため、全貌を見渡せるリーダーが育たないのである。
 このような中、*3-3のように、高校生の7割が在籍する普通科の在り方を議論している政府の教育再生実行会議が、各校ごとに重視する教育を明確にし、「国際化対応」「地域に貢献する人材育成」などに特色を類型化するよう提言するそうだ。しかし、生徒は、進学したいから普通科を選択しているのであり、地域の農林水産業も輸出入を行っており、科学技術に関する学会は国際学会(共通語は英語)であるため、「地域に貢献する人材や科学技術分野を牽引する人材に国際化は不要」とするのは、あまりにも現実離れしている。ただ、大学入試で文系・理系の両方の科目を問うのは、自分で考えて判断することのできる人材を育成するために必要不可欠だ。
 経済・会計・統計・民主主義のいずれも理解していない日経新聞論説フェローが、*4のように、「①令和デモクラシーへの道」として、「②政治に求められるのは人口減少社会での給付と負担の合意づくり」「③少子化に歯止めがかからず高齢化が進み、現在1億2600万人余の人口は2040年には1億1000万人ぐらいになって社会が縮む」「④社会保障費がかさむのは明らかで、負担を増やすか、給付を低下させるか、その両方かしか選択肢はない」「⑤産業競争力の劣化、弱体化は深刻なところに来ている」「⑥政治休戦のもと与野党合意で痛みを伴う課題を処理していくべき」「⑦チャーチル英首相の演説と同じく『千年後に最も輝かしい時だった』と言われるように、千年後の人たちから『あの頃みんなで我慢して危機を乗り越えたから今の日本がある』と言われるような令和の時代にしたい」などと堂々と記載している。
 しかし、このうち③は、日本が高度経済成長をしていた時期の日本の人口は1億人以下であったことから、人口減と産業の衰退は関係がなく、単に危機感を煽っているにすぎないことがわかる。それでも危機感を煽る理由は、②④のように、とにかく高齢者の負担増・給付減を行うことが目的という非道徳的で情けない有様なのだ。⑤は、ニーズに合った財・サービスを提供すれば産業競争力が強くなるのであるため、課題先進国の日本で高齢者向けのサービスや福祉を充実することは重要だ。そのため、⑥のように、政治休戦のもとで与野党合意で痛みを伴う課題を処理していくのは、国家総動員法の再来のようであり、これが①の令和デモクラシーであれば、令和天皇が可哀想すぎる。また、⑦のチャーチル英首相が演説した千年後に最も輝かしい時というのは、全体主義から民主主義を守った戦争のことであり、みんなで我慢して全体主義に戻す理念なき政策とは正反対である。また、②④は、単純な算術しかできない人の言うことだ。


 日本の人口推移  実質経済成長率推移 介護サービスと保険料推移 外国人労働者数推移

(図の説明:日本の人口は、左図のように、明治初期には3500万人しかおらず、急激に増加して1億人を超えたのは1966年のことだ。これは、多産多死型だった社会が産業革命で生産力を上げ、医学や学問の普及もあって多産少死から少産少死型に変わる過程で起こったことで、近年の少子化は、いつまでも女性に戦前の自己犠牲の価値観を押し付けて保育所を整備しなかったため、少産が行き過ぎたものである。また、左から2番目の図のように、日本の経済成長率が最も高かったのは人口が1億人以下だった時期であり、人口は経済成長率の重要な要素ではない。重要な要素は、消費者が必要とする財・サービスが生産され売れることであり、高齢化社会で不可欠な介護サービスは2000年に開始して以降、瞬く間に10兆円市場となった。そのため、介護は全世代型にするとともに、全体として労働力が足りなければ女性・高齢者の就業機会を増やし、右図のように、まだ少子型社会になっていない国から労働力を導入する方法もある。そして、労働力は量だけでなく質も重要で、日経新聞の論説フェローがこのレベルでは困るわけだ)

*3-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190503&ng=DGKKZO44412620T00C19A5MM8000 (日経新聞 2019年5月3日) 5G特許出願 中国が最大 世界シェア3分の1、自動運転など主導権狙う
 次世代通信規格「5G」に関する特許出願数で中国が34%と、現行の4Gの1.5倍以上のシェアを握ることがわかった。4Gでは欧米が製品の製造に欠かせない標準必須特許(SEP、総合2面きょうのことば)を握ったが、次世代産業のインフラとして注目される5Gでは中国が存在感を増す。特許数は自動運転など各国の新産業の育成や次世代の国力をも左右する。SEPは事業を進める上で代替の効かない技術の特許で、現在の4Gのスマートフォン(スマホ)では出荷価格のおよそ2%が特許使用料だという。国内の知財関係者によると総額は年間1兆円以上にのぼるといい、特許を押さえた企業が主力プレーヤーになる。独特許データベース会社のIPリティックスによると、3月時点の5G通信で必須となるSEPの出願数で中国は34.02%のシェアを持つ。出願件数が最も多い企業は華為技術(ファーウェイ)で、シェアは15.05%だった。中国勢は5位に中興通訊(ZTE)が、中国電信科学技術研究院(CATT)が9位に入った。通信技術で先行した米欧は3G、4Gで主力特許を保有した。そのため中国などは欧米企業に多くの特許利用料を支払わねばならなかった。そこで中国は次世代情報技術を産業政策「中国製造2025」の重点項目に位置付け、国を挙げて5G関連技術の研究開発を後押ししてきた。ファーウェイの5Gを含む研究開発費は年間100億ドル(約1兆1100億円)以上とされる。ファーウェイは基地局の開発などにかかわる特許の申請が多いとみられる。スウェーデンのエリクソンやフィンランドのノキアをしのぐ。ZTEも基地局などでシェアを伸ばしている。韓国はシェア3位のサムスン電子と4位のLG電子がけん引し、全体で25.23%と4Gから2ポイント以上シェアを高めた。一方、米国は14%と4Gに比べてシェアを2ポイント下げた。スマホの半導体などの特許を持ち、4Gの主力プレーヤーである米クアルコムも5Gではわずかにシェアを下げ、6位になっている。ただ、通信の場合、技術特許は積み重ねであり、5Gになっても3G、4Gの特許が引き続き使われる。クアルコムの優位性が一気に失われるとは考えにくい。同社の1~3月期の知財ライセンス部門の売上高は11億2200万ドルにのぼる。日本も5%と約4ポイントシェアを下げている。企業別シェアで12位の富士通は「狙った場所に電波を飛ばす技術など5G関連で様々な特許を持つ」という。SEPを持つ企業は特許収入で潤い、5G対応の基地局やスマホといった新たな設備を提供する際の価格競争力を高められる。一般的にSEPを多く持つ企業を抱える国ほど5Gインフラを安価に広げられ、次世代サービスで主導権を握りやすくなる。出願数に加え、使われる頻度の高い重要な特許を握れるかどうかも大きい。米国は安全保障上の理由で5Gに関してファーウェイなど5社からの政府調達を禁じる方針だ。しかし同社は5G製品の開発に欠かせない多くの特許を押さえており「ファーウェイは米国で製品を売ることができなくても特許利用料は獲得できる」(IPリティックスのティム・ポールマン最高経営責任者=CEO)。莫大な開発費と長期的なプランのもと、5Gの技術開発で中国は通信の世界で存在感を増している。その基盤の上で展開する各種サービスでも中国が米国をしのぐ存在になる可能性がある。

*3-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190503&ng=DGKKZO44277290W9A420C1MM8000 (日経新聞 2019年5月3日) 令和を歩む(1)経団連会長 中西宏明氏 変化受け止め、次の革新 
(*なかにし・ひろあき コンピューター設計者として日立製作所に入社。2010年に社長に就き、巨額赤字に陥っていた同社をV字回復させた。14年から会長。欧米での経営経験も持つ。18年5月に経団連会長に就任した。73歳)
 平成の約30年はものすごく変化が大きかった。冷戦が終結し、国際秩序を主導する存在がいない「Gゼロ」の世界になった。日本は働けば豊かになる時代が終わり、お金を持っている人も金利では稼げず、リスクをとらないとリターンが得られなくなった。電機業界も激動だった。良いモノを作れば売れるという価値観が通じなくなり、大赤字になった事業が次々と消えた。特に半導体の製造は他国にも可能になり、市場構造ががらがらと変わった。社会や文化の基盤が変わり、過去に固執したらロクなことがない。そこに気がついた人と気づかなかった人がいた。
●デジタル活用へ
 日本は社会基盤が変化するというデジタル革新の本質を受け止めきれないまま、ここまできてしまった。いまこそ変化を受け止め、先端技術で課題を解決する社会を目指すべきだ。経団連が2018年11月に示した成長戦略はこの変化を受け止めようという内容だ。いかに知恵でメシを食うか。日本は世界のなかで決して悪いポジションにいるわけではないが、高度成長という世界でもまれな成功体験があるので、なかなか変われない。いったんご破算にしたほうがいい。採用の問題も教育の問題もそうだ。教育では科学技術、工学、数学だけでなく、芸術も融合した「STEAM教育」が重要になる。デザインという言葉があるが、うまく人をコーディネートして新しい文化をつくるような仕事の組み立て方が注目される。日本には、これをお手本にすれば食べていけるという産業がない。ちがう発想で考えないといけない。産業政策も今あるものを守る発想は全部やめたほうがいい。次に挑戦する分野をどのように創っていくかという発想に立たないと、ずるずる後退していく。科学技術をうまく使ったイノベーション(革新)は大きなヒントだ。消費者の需要を引き出すことが、そのもとになる。新しい商機をつくる責任は民間が負う。環境を整えるのが政府の役割だ。新時代を見通したとき、懸念するのはエネルギーの問題だ。かつての電力会社は電力債の発行で得た資金で投資し(総括原価方式で)確実に回収できた。いまは将来を十分に見通せないため、15年間も投資が停滞している。電力会社に投資能力がないのに他の会社が入ってくる環境もない。
●競争力の危機
 経験から言えば、15年間も投資しなかった産業部門は国際競争力をなくす。経済は投資して回収するというお金が回る仕掛けのなかで技術が発展して資本が蓄積する。この仕組みが壊れている。民間の投資を呼び込むため、インセンティブをつけてグリーンエネルギーに転換する総合的なシナリオを作り直すべきだ。再生エネルギーを普及させるには、発電した電気をどう運び、どう蓄えるかという全体を設計しないといけない。送配電網もデジタル技術で次世代化する投資が要る。原発ももっと長い目でみた議論をすべきだ。化石燃料を使いきったあと、原子力以外に生活や工業を支えるエネルギーはない。日本は変わらなければならない。

*3-3:https://www.tokyo-np.co.jp/article/education/edu_national/CK2019042902000183.html (東京新聞 2019年4月29日) 高校普通科の画一化脱却を 政府会議提言へ
 高校生の七割が在籍する普通科の在り方を議論している政府の教育再生実行会議が、各校ごとに重視する教育を明確にし、特色を類型化するよう提言することが二十八日、関係者への取材で分かった。普通科の区分は維持しつつ、各校が示す特色により「国際化対応」「地域に貢献する人材育成」などの枠組みに分けることを想定。画一的とされる普通科の学びの改革を促す。五月中旬にまとめる第十一次報告に盛り込み、安倍晋三首相に提出する。高校段階での学びは、生徒の進学や職業選択に大きく影響する。ただ、グローバル化や、人工知能(AI)などの技術革新が進み、社会環境が大きく変わろうとする中、普通科では、大学受験を念頭に置いた指導や授業編成が大半で、生徒の多様な能力や関心に十分に応えられていないとの指摘がある。このため、文部科学相の諮問機関である中教審の今後の議論でも大きなテーマとして扱うことになっている。関係者によると、実行会議では、画一的な指導の原因として、各校が具体的な教育目標を掲げていないことに着目。提言で全国の高校に「どういう力を持った生徒に入学してほしいか」「特に力点を置く学習内容」「履修単位の認定方針」を明確にするよう求める。それらを踏まえた上で普通科を(1)国際的に活躍(2)科学技術の分野をけん引(3)地域課題を解決-といった各校の人材育成のイメージに応じて分類し、学びの変化を促す。具体的な分類や履修単位の設計については、中教審の議論に委ねる。また、今後、文系・理系の枠組みを超えた思考力が一層求められるとして、授業編成で文理分断型にならないことが重要と強調。大学入試でも文系・理系の科目をバランス良く問う方式に留意するよう言及する。提言では、高校教科書の見直しにも触れる。特に情報や工業などの技術革新が目覚ましい分野は、通常の四年ごとの改訂を待たず、弾力的に中身を変えられる仕組みの検討を要請する。

*4:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190506&ng=DGKKZO44264550W9A420C1TCR000 (日経新聞 2019年5月6日) 令和デモクラシーへの道、論説フェロー 芹川 洋一
 ふしぎなくらいに、元号とともに日本政治は動いてきた。なぜか改元のころの問題がその時代のメインテーマになるからだ。後講釈とばかりいえないほど、元号を通して見えてくる政治がある。明治はいうまでもなく維新で、天皇を中心にした国づくりが肝だった。自由民権運動もあり、立憲制をめざした。大正改元の直後には、第1次護憲運動がおこる。大正デモクラシーの起点だ。1918年には初の本格的な政党内閣である原敬内閣が誕生する。昭和は26年の改元と45年の敗戦で分ける必要がある。はじまりの時期は政党内閣制の定着が焦点で、そのあと崩壊して戦争へと突き進んでいった。戦後は国の再建、豊かな生活の実現が課題だった。自民党長期政権は利益分配でそれを達成しようとした。その行きづまりがはっきりしたのが89年の平成改元のころだ。政治とカネのスキャンダルが政治改革を促し、平成政治の基調となった。そして現在である。国力の回復と少子化・高齢化が主テーマであるのは論をまたない。とりわけ政治に求められるのは人口減少社会での給付と負担の合意づくりだ。その実現に令和デモクラシーの成否がかかっている。令和政治を考えるとき、今という時代をどうとらえるかが出発点になる。グローバル化、デジタル化の波のなか企業の国際競争力は落ちる一方で、この国を引っ張っていく産業のかたちがみえない。少子化には歯止めがかからず高齢化は進み、社会がどんどん縮んでいく。現在、1億2600万人余の人口は、2040年に1億1000万人ぐらいになると推計される。その間、生産年齢人口は減りつづけ、社会保障費がかさんでいくのは火を見るより明らかだ。財政は1000兆円を超える公的債務を抱える。負担を増やすか、給付を低下させるか、その両方かしか選択肢はない。それなのに奇妙な安定が支配しているのが今の日本だ。18年の内閣府の国民生活に関する世論調査では、現在の生活に満足している人の割合が74.7%に達し調査をはじめた57年以降で最高だという。「平成は日本敗北の時代だった」と言い切る経済同友会の小林喜光前代表幹事は「ゆでガエル日本」とも喝破する。カエルがぬるま湯につかっていてやがて熱い湯になり逃げだせず死んでしまうように、このままでは日本は立ち行かなくなるというわけだ。自民党中堅切っての論客である斎藤健・前農相も「産業競争力の劣化、弱体化は深刻なところに来ている。国際環境も大きく変わり、安全保障、通商政策を組みなおしていく外交力が問われているのに危機感がない」と嘆く。危機感がないのが最大の危機といっていいのかもしれない。いや応なく痛みや負担を迫られるとして、それを実現するための政治のあり方を、政府・与党と与野党の間でいかに整えるかがカギだ。まず政府・与党の問題は、政策を強力に推し進めていく政権のありように絡む。忖度(そんたく)政治や各省の思考停止など批判はあっても、正副官房長官と「官邸官僚」によって政権の中枢ができあがっている安倍晋三政権はひとつのモデルだ。チームで回していくしっかりした政権でないと「負担分配」を政治スケジュールにのせることなど不可能に近い。別の問題もある。父の福田康夫首相の秘書官をつとめた達夫衆院議員は「(07年)官邸に入ってびっくりしたのは引き継ぎ書類が一枚もなかったことだ。あったのはなぜか爪切り1個だけ。ゼロベースで首相が交代するのは国家的にも良くない」と振り返る。政権中枢のチームづくりと政策の継続性は、派閥が体をなさなくなった以上、政党が担うしかない。もうひとつは国会である。18年に当選3回で抜てきされ、いきなり外国人労働者の法案審議で矢面に立たされた山下貴司法相は「与党と野党がダメだしをするばかりでは政治不信を深めるだけだ。国会論戦でもっと論点をはっきりさせ、真の争点は何なのか国民に分かるようにしなければならない」と力説する。とくに負担と給付の問題は与野党による批判の応酬では済まなくなる。大枠で一致して乗り越えていく方法はないものか。その平成モデルが社会保障と税の一体改革についての12年の3党合意だった。平成デモクラシーの理論的支柱だった佐々木毅・元東大総長は「ほかのテーマは違っていてもいいから、領域を限定して休戦協定を結ぶ。その間は選挙をしないなど、かんぬきをかけて管理する方法はないだろうか」と語る。解散権をしばって、政治休戦のもと与野党合意で痛みを伴う課題を処理していく考え方だ。ここでも政党がその役割を果たせるかどうかにかかっている。思いおこしたい先人の言葉がある。40年6月、ナチス・ドイツが進軍、フランスが降伏寸前で、次は英国攻撃かと緊迫していたときのチャーチル英首相の演説だ。「もし大英帝国が千年つづいたならば(後世の)人びとが『これこそ彼らのもっとも輝かしいとき(ゼア・ファイネスト・アワー)であった』と言うように振る舞おう」。千年後の人たちから、あのころみんなで我慢して危機を乗り越えてくれたから今の日本がある、と言われるような令和の時代にしたいものだ。

<障害者雇用について>
PS(2019年5月7日追加):現行の障害者法定雇用率は、民間2.2%、国・地方公共団体2.5%で、対象は①身体障害者手帳を持つ身体障害者 ②療育手帳又は知的障害者判定機関の判定書を持つ知的障害者 ③精神障害者保健福祉手帳を持つ精神障害者のうち就労可能な人とされており、手帳や公的判定書を持たない人は、障害者のうちに入らない(https://snabi.jp/article/133#bn64a 参照)。しかし、2018年6月1日の実績では、国1.22%、都道府県2.44%、市町村2.38%で、いずれも法定雇用率を下回り、国には手帳や公的判定書を持たない人を障害者に数えたごまかしもあり、障害者に対する根強い差別意識が残っているようだ。
 このような中、*5のように、法定雇用率を達成した佐賀県内の民間企業割合が、8年連続で全国トップとなり、障害の回復に資する「ノーマライゼーション」の考え方が浸透しているのはよいことだ。さらに、雇用の場や収入がない障害者には生活保護費や障害者年金を支払わなければならず、“障害者”であってもできることはでき、“健常者”より得意なこともあるため、気を使いすぎずに雇用して支えられる側から支える側にまわってもらうのがWinWinである。

*5:https://digital.asahi.com/articles/ASM4B551BM4BTTHB00K.html?iref=comtop_list_biz_f01 (朝日新聞 2019年5月7日) 障害者の法定雇用率、達成した企業の割合 1位再び佐賀
 障害者の法定雇用率を達成した佐賀県内の民間企業の割合が、8年連続で全国トップとなった。厚生労働省佐賀労働局が4月、発表した。労働局は、障害がある人とない人が区別されずに暮らす「ノーマライゼーション」の考えが浸透しているのではないかなどと分析している。障害者雇用促進法では、従業員の一定割合以上の障害者を雇うことを事業主に義務づけている。現在、一般民間企業の法定雇用率は2・2%、国や地方自治体は2・5%などとなっている。労働局の集計(昨年6月1日時点)によると、雇用障害者数は2439・5人で6年連続、実雇用率は2・55%で5年連続でそれぞれ過去最高を更新。実雇用率は全国平均が2・05%の中、全国4位だった。県内の対象企業(従業員数45・5人以上)は603社。法定雇用率を達成した企業の割合は全国平均が45・9%に対し、佐賀県は66・3%で全国トップ。労働局は結果について「何か数字があるわけではない」としつつ、「小さい県ながらの良さがあると思う。『隣の企業がやっているからうちもやらなきゃ』というようなところも含めて、障害者雇用に対する『当たり前感』というような、ノーマライゼーションの考えがうまく浸透しているのではないか」と分析した。未達成企業203社のうち、障害者を1人も雇用していないのは106社だった。労働局は「1人目の雇用が障害者雇用の難しさとも言われている。丁寧に啓発、指導に取り組んでいきたい」としている。佐賀労働局は昨年12月、県内の公共機関の障害者雇用状況(昨年6月1日時点)を発表している。これによると、県の知事部局や県警、県教委はいずれも法定雇用率を満たさず、市町の機関も33機関中17機関が未達成だった。地方独立行政法人の県医療センター好生館も法定雇用率に達していなかった。障害者雇用を巡っては、昨年、中央省庁などでの雇用数の水増しが発覚し、問題となった。

<教育の視点から>
PS(2019年5月8、9、10、11日追加): *6-1に、「幼児教育・保育を無償化する子ども・子育て支援法改正案が9日に採決される」として、これについて「①実態は幼稚園・保育所に近いのに対象外になる施設がある」「②対象外施設は不公平だと反発している」と書かれている。しかし、幼児期も重要な教育期間であるため、①については、単なる居場所ではなく幼児教育・保育をきちんと行う施設を認可して無償化の対象にする「質の充実」が伴わなければならない。そして、②の対象外施設は、運営上の制約を避けるため認可施設になっていなかったとしても、預かっている子どもに認可施設よりよい環境を与えているのに変な制約を課されるので認可外でやってきたのであれば認可をとるようにしなければならないし、幼児教育・保育はしていないが預かる場所が必要だったので運営してきたのであれば、学童保育(それでも単なる居場所では困る)等に変更するか、幼児教育・保育ができる環境を整えるかすべきだ。何故なら、今回の変革は、無償で、幼児教育・保育をどの子にも与えることを重視したものだからである。
 また、*6-2のように、「細かすぎる校則」があるというのは、細かい校則がなければ何をするかわからない生徒が多いからかもしれないが(私は、そういう学校に行ったことがないのでよくわからないが)、理由も説明できずに「ルールはルール」としか答えられない教諭がいたとすればレベルが低すぎる。私は、生徒総会の要望をすべて認める必要はないと思うが、要望する人もデータや資料に基づく根拠を示し、要望を通すか通さないか決める人も、それらを基にして議論し検討した結果と結論に至った理由を示して、お互いが納得できるようにしなければならないと思う。つまり、教師は、日頃からそういう指導ができる人でなければならないのである。
 なお、2019年5月8日、*6-3のように、大津市の県道交差点で車2台がぶつかって保育園児の列に突っ込んだ事故があった。直進車と右折車がいる場合は直進車優先なので、事故の映像を見れば右折車が交通違反していることが一目瞭然だったが、何故か被害者の運転手も逮捕され批判された。また、保育園関係者の記者会見では、被害者である保育園の園長が泣いてばかりいて状況を説明しようともせずに隣の男性職員が説明していたのは、園長としての資質が疑われた。保育園側に過失はないが、園庭もないような環境だったため、もっとよい環境で子どもを預かれるように、市が小学校の空教室や空地などの便宜を計ったらどうかと思われた。
 そのような中、*6-4のように、2019年10月から幼児教育・保育を無償化する「子ども・子育て支援法改正案」が参院内閣委員会で可決され一歩前進した。これまでは「預かってくれるならどこでもよい」という選択肢のない状況だったが、今後は、産業界はじめ中等・高等教育関係者・保護者を含めて「どのような人材を育てたいのか」という観点から幼児教育・保育のあり方を検討し、国・地方自治体が指導監督やサポートをすることが重要だ。
 また、*6-5のように、低所得世帯の子どもを対象に高等教育負担を軽減する法案も参院文教科学委員会で可決され、一歩前進した。しかし、1970年代の国立大の授業料は年間1万2千円~3万6千円だったのに現在は54万円であり、この50年間に物価水準は3倍程度にしかなっていないため、教育費だけが著しく上がったのである。学生アルバイトは勉強にさしつかえない範囲にしなければ進学した意味がなく、県外に進学するか否かもその人の人生設計とそれに応えるべき大学の魅力によるため、高等教育の授業料は、誰でも無理なく負担できる範囲にすべきだ。なお、特に人材不足が懸念される分野は、さらに授業料を減免することも考えられる。
 2019年5月11日、*6-6のように、東京新聞が「①待機児童問題が深刻な都市部で園庭のない保育園が増加し、東京都文京区は78カ所の認可保育園のうち6割に園庭がない」「②東京都で2017年度に新設された認可保育園約270カ所のうち、基準通りに園庭を備えた園は2割に留まる」「③待機児童対策に追われる中、都心部ではすべての園に園庭を造るのが難しい」「④厚生労働省は、子どもの発育に重要な園外活動は今後も積極的に取り入れるよう求めている」と報じている。しかし、①②③は、これがまさに東京一極集中と狂ったような土地価格の弊害であり、地方の保育園の方がずっと恵まれている。また、小学校に空き教室が増えているので小学校に併設したり、安全対策を行ってビルの屋上に園庭のある保育園を作り、植物を植えるなどの工夫をすればよいと思うが、それもしていない。④の園外活動も重要だが、少子化そのものを問題にするよりも、園庭で安全に運動したり、外の風や季節を感じたりすることができる当たり前の保育施設を準備して誰でも入園できるようにし、育児しやすい環境を創るべきなのである。

  
  2019.5.8東京新聞       2018.11.9毎日新聞   教育費と物価水準の推移

(図の説明:左図のように、認可保育所と幼稚園の3~5歳児は保護者の働き方と関係なく原則として全世帯で全額無料、0~2歳児は住民税非課税世帯のみ無料となり、認可外保育所は一部補助となる。また、中央の図のように、給食費は3~5歳児は実費で、0~2歳児は保育料に含むとされている。なお、右図のように、教育費は物価水準と比較して著しく増加している)

*6-1:https://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201905/CK2019050802000140.html (東京新聞 2019年5月8日) 幼保無償化 あす参院委採決 対象外施設は反発「不公平」
 参院内閣委員会は七日の理事懇談会で、幼児教育・保育を無償化する子ども・子育て支援法改正案を九日に採決することを決めた。与党などの賛成多数で可決し、早ければ十日の参院本会議で成立する見込み。原案通り成立すると、実態は幼稚園や保育所に近いのに無償化対象から外れる施設が出る。認可外保育施設では、利用料補助は共働き世帯などに限られる。利用者らからは「政府が掲げる『三~五歳の原則無償化』と矛盾する」との声が上がっている。「お水がいっぱいたまっているよ」。四月中旬、千葉県松戸市の「小金原保育の会幼児教室」の園庭で、子どもたちが水たまりや砂場で元気に遊んでいた。団地の一角にあるこの教室は一九七五年に保護者らが設立し、障害児を含む多様な児童を受け入れてきた。運営上の制約を避けるため認可施設にならず、認可外施設として運営。改正案では、こうした施設は共働き世帯などに限り上限付きの補助が出る。ここでは大半の利用者が対象外だ。改正案は幼稚園や保育所などの認可施設では、保護者の働き方に関係なく無償化する。認可外施設で対象を絞るのは、やむなく認可外施設を利用する家庭への配慮だが、本来は認可施設に預けるのが望ましいとの原則に立つためだ。同教室の武中悦子事務局長は「幼稚園に断られた児童や共働きが難しい家庭を支え、行政の不備を補ってきたのに不公平だ」と嘆く。東京都西東京市で六二年から続く、自治会運営の「たんぽぽ幼児教室」は独自の運営を目指し、認可外施設の届け出をしていない。改正案では全利用者が無償化の対象外だ。平賀千秋・幼児教室部長は「保護者から選ばれなくなれば、存続できない」と心配する。自然体験を通じて子どもを育てる「森のようちえん」も同じ悩みを持つ。園舎なしや親の運営への参加などの柔軟性が強みだが、認可外施設でなければ無償化の枠から外れる。約二百団体が参加する「森のようちえん全国ネットワーク連盟」は昨年、全利用者の無償化を政府に要望したが、一律の無償化は見送られた。国会審議でも、与野党が一部の施設が無償化から漏れることを問題視したが、これまで法案の修正には至らず、衆院通過の際、五年後をめどに扱いを検討するという付帯決議を行うにとどまった。明星大の垣内国光(かきうちくにみつ)名誉教授(保育政策)は「自治体が評価する施設は対象にするなど、柔軟な運用をすべきではないか」と語った。

*6-2:https://www.nishinippon.co.jp/nnp/anatoku/article/508167/ (西日本新聞 2019年5月7日) 細かすぎる校則、変える妙案は 「ルールはルール」生徒の発案を押し返す教員も
 校則の必要性は認めつつも、細かな規定には疑問がある。これまでの取材を通して学校現場からはそうした声が多く聞かれた。校則は変えられないのか。各学校では生徒会執行部を中心に模索が始まっているが課題も多い。
●意見集約 押し返す現場
 校則の改廃について多くの学校は運用で決め、明記しているケースは少ない。取材班が入手した福岡県内の県立高校・中等教育学校の校則に関する資料で全文が記された学校でも規定は見当たらなかった。ただ、変える仕組みはあっても、事実上機能していない学校もある。「生徒総会で意見を吸い上げるようにしているが、声があっても(教師でつくる)生徒指導部で押し返してきた」。同県内の県立高校の男性教諭は打ち明けた。際限のない規制の緩和により学校が荒れることを心配する管理職ら教師側の都合がそうさせているという。学校側の姿勢に疑問を抱く教諭は「ダイバーシティ(多様性)を尊重する時代なのに息苦しさを感じる。『ルールはルール』としか言えず、根拠を持って指導できているかいつも思い悩んでいる」と話した。
●生徒会が議論する場に
 取材班は3月下旬、福岡県内の高校生徒会役員有志でつくる「福岡県高校生徒会連盟」の会合で校則の現状について尋ねた。連盟はそれぞれの学校が抱える課題について意見交換し解決策を探る目的で昨年4月に発足。これまでの活動には公私立の20校余のメンバーが参加している。男子生徒の一人は「そもそも校則って何なのでしょう」と問題提起。「生徒手帳に載っていなくても、ルールになっているものがあり、そういうものほど先生の解釈が分かれる」と訴えた。学校の決まり事の多くは生徒手帳に記されているが、その他の目に見えない規定や学校の「慣例」といった存在が混乱と不信感を招いているようだ。生徒からは「文化祭の異装規制の緩和を求めたが認められなかった」「学校に弁当以外の食べ物は絶対に持ち込めないのだろうか」といった声が聞かれた。あくまでイベントを盛り上げたり、空腹を補ったりするもので、そもそも風紀を乱す意図はない。生徒側の要望に工夫の余地があるとの指摘もあった。「生徒のアンケートを取るなど、きちんとした裏付けと議論の上で学校側を説得する姿勢が重要ではないか」。生徒の声を集約することは、学校側を話し合いの席に着かせるためにも効果的な手法だろう。「先生たちの信頼を得るために、今の校則をしっかり守る実績をつくることが必要だ」という声もあった。一方、ある男子生徒は「校則をころころと変えるのは良くない。でも、どうせ変えられないから仕方がないという姿勢も良くない」と話した。自分たちが学校生活を送る上でどんな校則が必要で不要か。そして生徒会執行部はどう関わるべきか。「校則を変えるために、校則の持つ意味を見つめ続けるのが生徒会の役割だ」と強調した。連盟の代表で西南学院高3年の田口夏菜さんは「校則の問題も含めて、これからもそれぞれの学校で悩んでいることを共有し、議論していきたい」と語った。
●理解示し柔軟な対応も
 学校側の抵抗を強く感じる校則の改廃だが、取材班が実施した福岡県立高校へのアンケートでは、生徒の要望を受けて実現した例がいくつも寄せられた。カーディガンやタイツの着用、マフラーの色の自由化、制帽や指定靴の廃止などだ。「生徒総会で議決された内容は前向きに検討する」「生徒のアンケートを参考にした」とする学校もあった。ある学校はPTAと生徒会が合同懇親会を毎年開き、保護者も一緒になって考える機会を設けていた。中でも目立ったのが携帯電話やスマートフォンに関する規定。時代の流れや防犯上の効果もあり、校内では使用禁止だが持ち込みを認める学校が増えてきているようだ。生徒たちの負わされる義務が増え、自由と権利が狭められているとも指摘される校則。変化の兆しはあるものの、学校と生徒の認識にはなおずれがある。次回は、インターネット上での校則を巡る意見から現状を考える。
    ×      ×
▼生徒会 中学、高校で自主的活動を促し、集団の一員としての資質を育成することを目的に全校生徒で構成する自治的な組織。学習指導要領の特別活動の一つで、生徒は主体的に組織をつくり、役割を分担すること。また、学校生活の課題を見いだして解決するために話し合い、合意形成を図って実践することとしている。生徒会長や会計などでつくる執行部(役員会)が生徒を代表して活動の推進を図り、他に体育委員会などの各種委員会がある。小学校は児童会。

*6-3:https://digital.asahi.com/articles/ASM584SD0M58PTIL017.html (朝日新聞 2019年5月8日) 容疑者「前をよく見ていなかった」 大津の園児死亡事故、子どもの交通事故を防ぐ
 8日午前10時15分ごろ、大津市大萱(おおがや)6丁目の丁字路の県道交差点で車2台がぶつかり、うち1台がはずみで保育園児の列に突っ込んだ。滋賀県警によると、近くのレイモンド淡海(おうみ)保育園に通う伊藤雅宮(がく)ちゃん(2)=同市大江5丁目=と原田優衣(ゆい)ちゃん(2)=同市大江2丁目=が死亡。男児(2)が意識不明の重体となっている。ほかに2~3歳の園児10人が重軽傷、引率していた保育士3人も軽傷を負った。県警は、車を運転していた無職の新立(しんたて)文子容疑者(52)=同市一里山3丁目=と無職の下山真子(みちこ)さん(62)=同市=を自動車運転死傷処罰法違反(過失運転致傷)容疑で現行犯逮捕。下山さんについては、8日夜に釈放された。県警によると、交差点で右折しようとした新立容疑者の乗用車と、直進してきた下山さんの軽乗用車が接触。その後下山さんの車が、散歩中に信号待ちをしていた園児らがいる歩道へ突っ込んだとの目撃証言があるという。新立容疑者は「前をよく見ていなかった」、下山さんは「右折車をよけようとハンドルを左に切った」との趣旨を供述。2人は、それぞれ別の大型量販店から帰宅する途中だったという。2人にけがはなく、同乗者もいなかった。現場はJR琵琶湖線瀬田駅の北西約1・5キロの湖岸道路。約200メートル南に、園児らが通うレイモンド淡海保育園がある。

*6-4:https://digital.asahi.com/articles/DA3S14007853.html?ref=pcviewpage (朝日新聞 2019年5月10日) 幼保無償化、参院委可決
 10月から幼児教育・保育を無償化するための子ども・子育て支援法改正案が9日、参院内閣委員会で自民党と公明党、国民民主党、日本維新の会の賛成多数で可決された。10日の参院本会議で成立する見通し。認可外保育施設で国の指導監督基準を満たさない場合も5年間は無償化対象とすることが焦点の一つとなっている。9日の内閣委で安倍晋三首相は「待機児童問題により、やむを得ず認可外保育施設を利用せざるを得ない方々についても、負担軽減の観点から経過措置を設けることとした」と説明。「都道府県などによる指導監督の充実を図る」と理解を求めた。一方、立憲民主党の牧山弘恵氏は「劣悪施設の不適切な延命につながる可能性がある」と指摘。立憲民主と共産などは、採決では改正案に反対した。

*6-5:https://digital.asahi.com/articles/DA3S14007852.html (朝日新聞 2019年5月10日) 「高等教育無償化」成立へ 中間所得層への支援継続は不透明 参院委可決
 10月に予定される消費増税を財源に、低所得世帯の子どもを対象に高等教育の負担を軽減する関連法案が9日、参院文教科学委員会で与党と一部野党の賛成多数で可決された。10日の参院本会議で可決、成立する見通しで、2020年4月から、授業料減免と給付型奨学金の支給が始まる予定だ。ただ、法案の審議では、制度の対象とならず、支援を受けられなくなる学生の扱いなど、解決すべき課題も浮かんだ。負担軽減策の柱は、授業料の減免と給付型奨学金の拡充だ。対象となるのは「両親と大学生、中学生」のモデル世帯で年収380万円未満の場合。収入ごとに減免額は3段階に分かれ、270万円未満の住民税非課税世帯は、国公立大が年間54万円で一部の大学を除き全額が免除、私立大は最大で70万円が減額される。奨学金は、非課税世帯なら国公立大の自宅生で約35万円、私大の下宿生ならば約91万円支給される。文部科学省は新制度で低所得世帯の大学などへの進学率が、現在の4割程度から全世帯平均の約8割まで上昇し、支援対象者が最大75万人になると推定。必要な予算は約7600億円と試算している。支援策は、低所得層の支援が手厚くなる一方、一定の収入を超えると全く受けられない。現在も多くの大学が収入や家族構成などに応じて授業料を減免しているが、国立大の場合は各大学で基準が異なり、個別の状況に応じて支援する学生を決めている。私大には減免額の半分を国が補填(ほてん)する仕組みがあり、給与所得者なら年収841万円以下の世帯まで対象にできる。こうした学生が今後どうなるか、まだはっきりしない。国会審議でも立憲民主党などから「現在、減免を受けている学生が制度の対象外になるのでは」との質問が相次いだ。柴山昌彦文科相は「対象とならない学生も生じうる」と認め、対策は「学びを継続する観点から、実態などをふまえて配慮が必要か検討する」と述べるにとどまった。文科省の担当者は「在学生を救いたいが、財務省との厳しい予算の折衝になる」と話す。文科政策を担当する財務省の中島朗洋主計官は「新制度は支援を低所得層に重点化するもの。中間所得層の在学生の支援は、大学が自らの経営判断で続ければいい」と語る。母子家庭で育ち、現在は姉と2人で東京都内で暮らす東京大3年の岩崎詩都香(しずか)さん(20)は「新しい制度になっても支援を受け続けられるのか」と不安を感じている。1年生の時から年間約54万円の授業料を免除されているが、新制度の対象とならない場合は生活が一変しそうだ。「アルバイトをかなり増やすことになると思う。疲れて勉強に差し支えが出ないか心配だ」
■県外に進学、加速か
 新制度によって、思わぬ影響が発生する可能性もある。大和総研は4月、文科省の試算を元に「約17万人が新たに大学や専門学校に進学し、対象者は約81万人にのぼる」との予測を公表した。この結果、島根、佐賀、秋田など9県では毎年、高校卒業者の4~5%が県外に進学し、首都圏では流入の方が多くなると予想。学生の大都市への集中が加速するとみる。さらに生活費などの心配が少なくなることで、学生アルバイトが数十万人規模で減ると予想もしている。人手不足に拍車をかける可能性があるとして、金融調査部の坂口純也研究員は「学生バイトに依存する業界は、人手を確保する対策が必要になるだろう」と指摘する。大学生らも支払う消費税の増税部分を使って、一部の学生の負担を軽減する制度にも疑問の声が上がっている。高等教育無償化を目指す学生らで作る「FREE」は3月、全国140の大学・短大・専門学校の学生1457人へのアンケート結果などをもとに声明を発表し、「消費増税は学生の暮らしと直結する。それを財源に使うことは新制度の大きな矛盾だ」と指摘した。

*6-6:https://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201905/CK2019051102000121.html (東京新聞 2019年5月11日) 園庭ない保育園 増える首都圏 外遊び必要だけど安全どう確保
 大津市で散歩中の保育園児と保育士の列に車が突っ込み、園児二人が死亡した事故を受け、首都圏各地の保育園は園外活動の安全確保に気をもんでいる。待機児童問題が深刻な都市部では、園庭のない保育園が増加。関係者は「外遊びは必須。安全対策を重ねて散歩させたい」と頭を悩ませている。七十八カ所の認可保育園のうち六割に園庭がない東京都文京区。その一つで働く保育士は「事故を受け、全職員で散歩での注意点を見直している」と話す。他の職員からは「信号待ちでは車道から離れるべきだ」と意見が出た。だがこの保育士は「歩くスピードが遅い子どもが青信号で渡り切るには離れすぎもよくない」と考える。こうした判断の難しさから「運転する人には気を付けてほしい」とあらためて願う。荒川区の園庭のない保育園の女性園長は「同じ場面に出くわしたら、仕事を続けられるだろうか」と声を落とす。四季を感じ、自然と触れ合う大切さから、毎日の散歩は欠かせない。散歩中は普段から保育士同士で声を掛け合うが「事故に遭った保育士も注意していた。命を守ることはすごく難しい」と実感している。都によると、二〇一七年度に新設された都内の認可保育園約二百七十カ所のうち基準通り園庭を備えた園は二割にとどまる。残りの八割は「公園の活用を前提に開設している」と都の担当者は話す。社会福祉法人信和会(中央区)が都内で運営する二つの保育園にも園庭がない。園内のホールで体操などをするが、外出は欠かせない。同法人の中田純子理事は「待機児童対策に追われる中、都心部では、すべての園に園庭を造るのは難しい。これからも、園外で子どもたちが安全に遊べるようにしたい」と話した。一方、園庭のある保育園でも、散歩時の安全を再点検している。横浜市中心部にある認可保育園では、大津市の事故翌日の九日に職員会議を開き、ガードレールのない散歩コースの変更を検討。保育士は「事故を受けて十日まで散歩は中止し、園庭遊びだけ。週明けから、安全確認できたコースで再開する」と話した。東京都大田区の認可保育園の園長は「事故当日から職員同士で危険箇所を出し合ったほか、警察署にもアドバイスを頼んでいる」と説明。「園外活動は交通ルールなどを学ぶ社会との接点。園庭があっても欠かせない」と力を込めた。
◆厚労省が注意喚起
 大津市で保育園児2人が亡くなった交通事故を受け、厚生労働省は10日、全国の認可保育園などに、散歩時の安全確保を呼び掛ける事務連絡を、都道府県を通じて出した。厚労省によると、大津市の事故では保育園側に問題はないと考えられるため、これまで各園で実施してきた危険箇所や交通量チェックを再度徹底するよう要請。その上で、子どもの発育に重要な園外活動は今後も積極的に取り入れるよう求めている。担当者は「危ないから園外に出てはだめ、という考えはよくない」と話した。

<女性蔑視を利用した偽情報による選挙妨害もあること>
PS(2019年5月9、24日追加): *7-1に書かれている週刊文春2007年10月4日号に掲載された記事は、佐賀県議会議員選挙の最中に発行されたもので、これにより私が立場をなくし、私を応援していた県議が落選した。また、週刊文春2008年1月24日号が発行されたのは、私と保利氏が公認争いをしていた最中で、選対委員長は菅(現官房長官)氏で、「勝つ候補を公認する」というふれこみだった。どちらの記事もキャリアウーマンを見下げた悪評の散布だったため、自民党から公認されずに落選した後に、私が週刊文春を提訴し、「記事の重要な部分で真実と信じる相当の理由があったとは認められない」とされて勝訴した。にもかかわらず、未だに「①メンバーに信用できない人たちがいます」「②とくに広津前議員は、真偽の程はわかりませんが、以下の記事を読む限りでは、かなり“電波”な人では?」「③およそ政治信条とか理念などの類を持ち合わせている候補とは思えない」等々、事実でもないのに政治家としての信用を貶める内容がHP上に掲載され続けており、IT会社は削除しないのである。これには選挙妨害の意図があるのが明白だが、メディアやIT企業の良識はこの程度なのだ。
 そして、*7-2-1のように、このように勝手に作りあげられた“個人情報”が不正利用されているわけだが、これは公正性・人権の両視点から許されるものではない。*7-2-2には、「『忘れられる権利』も要る」と書かれているが、忘れられる権利どころか、このような偽情報による名誉棄損や侮辱による違法行為に対しては毅然として対応し、逸失利益も十分に損害賠償させるという裁判所の意識改革が必要不可欠だ。そのため、「使わせない権利」で利用停止や削除を依頼するだけでなく、原則として「同意がなければ使わせない」という個人情報の保護規定が必要なのであり、EUのGDPRの方が信頼できるわけである。そのような中、*7-2-3のように、自民党の経済成長戦略本部が成長戦略提言案をまとめ、「第4次産業革命において最大の資源となる『データ』を利活用できる環境をいち早く整備する」と強調したそうだが、データは個人のものであるため、“データの自由な流通”を提唱するなど人権侵害も甚だしい。
 なお、2019年5月24日、*7-3のように、愛媛新聞が「①ヘイトクライムを防ぐため、ヘイトスピーチ法を見直して差別撤廃へ実効性を高める必要がある」「②現行法では、憲法が保障する表現の自由を侵害する恐れがあるとして禁止規定や罰則を設けていない」「③ヘイトスピーチを『違法』と位置づけていないので、ネット等で脅迫や中傷を受けた場合に大半が処罰されない」「④差別に基づく侮辱や脅迫はヘイトクライムであり、通常より厳しい処罰も検討すべき」「⑤野放し状態となっているネットへの対策強化も急務だ」等を記載している。①③④⑤は全くそのとおりで、②の憲法が保障する「表現の自由」も、他者を差別する表現を自由化するものではなく、戦争に向かって権力が暴走した時に反対を唱え易くするような志の高いもので、同じ日本国憲法に定められている「基本的人権の尊重」や「差別の禁止」より優先して適用されるわけではない。つまり、憲法が「表現の自由」を保障しているから暴言でもフェイクニュースでも何でも書いてよく、それによって損害を蒙る人がいてもよいということではないのである。

*7-1:http://www.asyura2.com/09/senkyo69/msg/142.html (阿修羅 2009 年 8 月 12 日) Re: たしかに、政策はいいと思いますが、メンバーに信用できない人たちがいます
「みんなの党」は、政策はいいと思いますが、メンバーに信用できない人たちがいます。「自民党から小選挙区で公認してもらえなかったから」。「自民党の比例区の名簿で優遇してもらえなかったから」。という理由で来たらしい候補がいますね。元・自民党の清水前議員とか、同じく元・自民党の広津前議員とか・・・。およそ、政治信条とか理念などの類を持ち合わせている候補とは思えない。とくに広津前議員は、真偽の程はわかりませんが、以下の記事を読む限りでは、かなり“電波”な人では?
●武部幹事長弁当事件 83会の「奇人変人リスト」
 「その瞬間、議員一同、凍りつきました」(山崎派議員)。山崎派の会合でのこと。山崎卓氏が「総裁選(の出馬)も考えてみたい」と言うと、一人の女性議員が手を挙げた。“ミセス空気が読めない女”と呼ばれる小泉チルドレン。誰もがひやりとしたのも遅く……。佐賀三区のがばい刺客、広津素子議員(54)は真顔で山崎氏に進言した。「山崎先生は女性スキャンダルでイメージが悪いので、難しいと思います」。自民党議員が笑いを噛み殺しながら言う。「“今週の広津語録”と言われるくらい、破壊的な発言が永田町を駆け巡っています。有名になったのは、佐賀の日本遺族会の方が東京に挨拶にみえた時。話を聞いた後、広津さんは、『遺族、遺族って、一体、何の遺族ですか』と(笑)。〇五年の郵政選挙の大量当選が生んだ珍現象です」。東大卒で公認会計士という経歴をもつ広津女史。「エキセントリックな点があり、ストレートにモノを言う。党本部や国会内の会合での質問に、いつも場が凍る」(別の自民党議員)。伊吹文明幹事長が党税調小委員長だった時、伊吹氏の説明が終わると、新人・広津氏が挙手をするや……。「伊吹先生の説明ではわかりにくいと思いますので、代わって私が説明します」。絶句したのは伊吹氏だけではない。農政の会合で農家による説明が終わると、広津氏が総括(?)した。「皆さん、農業をやめて転職したらいいと思います」。極めつけが「牛肉弁当事件」。チルドレンの親分、武部勤幹事長(当時)が、「いつでもメシを食いに来なさい」と新人たちに声をかけると、本当に広津氏は幹事長室に行って、置いてあった牛肉弁当を勝手に食べてしまったというのだ。その恨みではないだろうが、武部氏は新人議員のグループ「新しい風」に広津氏を誘っていない。抗議する彼女に、武部氏は「あれは仲良しクラブだから」と逃げたつもりが、逆に「私は仲良しじゃないんですか!」と怒らせてしまった。広津氏は小誌の取材に「全部まったくのウソです」と否定するが、広津語録は議員の間で今も更新中だ。
                            週刊文春07年10月4日号より
●派閥のドン山拓に「引退勧告」しちゃった広津素子センセイ
 “ミセス空気が読めない女”と呼ばれる、小泉チルドレンの広津素子議員(54)。昨年末、彼女は所属する派閥のボス山崎拓氏(71)にこう直談判したと言う。「先生はもう七十歳を超えている。辞めるべきだと思います!」。話は次期衆議院選挙、佐賀三区の公認問題を巡って切り出された。広津議員は現在、郵政造反・復党組である保利耕輔議員(73)と激しい公認争い中。保利氏に対して前述のように「七十歳を超えて~」と批判し、「山崎さんから若い人に道を譲るように言って下さい」と続けた。山崎派議員が苦笑しながら語る。「山崎先生は保利先生と同世代。保利先生に年だから辞めろなんて、山崎先生の口から言える訳がありません。広津さんの言葉を聞いて山崎先生は、『それは俺にも辞めろと言っているのか!』と激怒したようです」。ちなみにヤマタクが総裁選への意欲を示したときも、「山崎先生は女性スキャンダルでイメージが悪いので難しいと思います」(小誌〇七年十月四日号既報)。と広津氏は直言している。山崎派の重鎮、野田毅議員が新人を集め食事会を開いたときもこんな事件が。野田氏が「地方経済は疲弊している。今こそ地方への配慮が必要だ」などと持論を語り終えたあと、広津氏はこう言い放った。「先生は古いタイプの政治家ですね」。出席していた一年生議員が振り返る。「一瞬、場が凍りつき、われわれも冷や汗をかきました。野田さんは明らかに不機嫌だった。ご馳走になっているのに、普通そういうことを言いますか?(苦笑)」。東大卒で公認会計士という経歴の広津氏は、「自らの考えが正しいと信じて疑わないタイプ」(同前)。「昨年九月の安倍改造内閣が発表される前も、『次は私が女性代表で大臣になる』と公言し周囲を唖然とさせた。福田内閣の人選が進められているときには、官邸に電話して『私を副大臣か政務官に入れるべきだ』と直談判したという伝説もある」(全国紙政治部記者)。地元の評判も芳しくない。「人の名前を覚えないから人望がない。すぐ問題を起こすから会合等に呼ばないようにしているのですが、呼ばないと『女性蔑視だ!』と大騒ぎ。問題は人間性なんですけど・・・・・・」(自民党佐賀県連関係者)。そんな言動が災いしてか、事務所も大混乱の様子。「広津さんは入りたての秘書に、『明日から佐賀に行って後援会を作ってきてちょうだい』とか無茶ブリがすごいようです」(同前)。本人に取材すると、「すべてデタラメです。一体誰が言っているんですか」とご立腹。いや、みんな言ってるんですけど。郵政総選挙でも広津氏と対峙した保利氏は、周囲にこう公言しているという。「彼女が出る以上、私も絶対次の選挙に出る。それが佐賀県のためだ」
                             週刊文春08年1月24日号より

*7-2-1:https://www.kyoto-np.co.jp/info/syasetsu/20190508_3.html (京都新聞 2019年5月8日) 個人情報の保護  利用規制は国際潮流だ
 政府が個人情報保護法の大幅な見直しに乗り出した。2020年に提出を目指す改正法案にデータ漏えい時の報告の義務付けや罰則強化などを盛り込む方針だ。デジタル化の進展で本人の知らないうちに個人情報が不正利用される懸念が高まっており、議論を注視したい。現行の改正法は17年5月に全面施行され、3年ごとに見直す規定がある。これを踏まえ、政府の個人情報保護委員会が改正案に関する中間整理を公表し、意見公募手続きに入った。見直しの柱の一つは、企業が収集する住所や氏名といった個人情報について広告などへの利用停止を個人が求めた場合、適切な対応を義務付ける点だ。「使わせない権利」の新設とも言える。現行法は個人情報を保護する一方で、国家戦略としてビッグデータ活用を後押しする狙いもある。企業は収集した膨大な個人データを人工知能(AI)で解析し、サービス改善や生産性向上に活用しているが、情報流出による不正利用やプライバシーの侵害など負の側面が問題となっている。例えばインターネットで検索や買い物後、関連商品、サービスの広告がダイレクトメールなどで再三届くことがある。検索サイトを運営する企業などが検索履歴や購入記録を再利用しているためだ。企業側が情報の利用停止や削除に応じなければならないのは、現行法では情報の不正取得などに限られ、消費者の不満が強かった。「使わせない権利」で自身に関わるデータを管理しやすくなる。国境を越えて活動する巨大IT企業によって個人情報の独占が進み、データ乱用への懸念は強い。欧州連合(EU)は昨年、個人情報保護を強化する一般データ保護規則(GDPR)を施行し、個人データの運用を厳しく規制している。プライバシー権を重視し、立場の弱い利用者を守るのは国際的な潮流であろう。ただボーダーレス化した世界で個人情報を保護するには、国内法の規制だけでは済まない。政府は海外に拠点を置く企業にも適用する仕組みを検討しているが、欧米など各国との連携が欠かせない。EUが導入した「忘れられる権利」も課題だ。ウェブサイトに流出した写真や過去の犯罪歴の検索結果など、本人にとって不都合な情報の削除を、ネット事業者に求められる仕組みを法案に盛り込むかどうか。引き続き検討するとしたが、人権侵害を防ぎ、救済する観点から議論を急ぎたい。

*7-2-2:https://www.shinmai.co.jp/news/nagano/20190427/KT190426ETI090002000.php (信濃毎日新聞 2019年4月27日) 個人情報保護法 「忘れられる権利」も要る
 ネットで買い物や検索をすると、その後しばらくの間、関連する商品、サービスの広告がスマホやパソコンに届く。煩わしく思う人は多いだろう。ターゲティング広告と呼ぶ。買い物、検索サイトの会社がデータを第三者に売っているのだ。広告などへの利用停止を個人が求めた場合、応じるよう企業に義務付ける方向を政府の個人情報保護委員会が打ち出した。いわば自分の情報を「使わせない権利」だ。個人情報保護法改正の中間取りまとめに盛り込み、パブリックコメントを始めている。買い物や検索の履歴は本人のものだ。知らないところで第三者の手に渡るのは望ましくない。規制するのは当然だ。今の個人情報保護法では、情報の利用停止や削除に企業が応じなければならないのは、不正に取得したり、目的外で使ったりした場合に限られる。通常は、請求に応じる義務はない。ただし、流れは変わりつつある。欧州連合(EU)は昨年7月に施行した「一般データ保護規則」、略称GDPRにより、個人情報の収集、取り扱い方法について利用者の同意を得ることを企業に義務付けた。その少し前には、米交流サイト大手フェイスブックの利用者の個人情報流出が表面化した。情報は英国の政治コンサル会社の手に渡り、2016年の米大統領選でトランプ陣営の支援に利用された可能性が指摘されている。この問題をきっかけに、「使わせない権利」を求める声は米国でも高まった。今後、世界に広がっていくだろう。問題は、グーグル、アマゾンなど国境を超えて活動する巨大IT企業への対応だ。「使わせない権利」をボーダーレスの世界で保障するには、米欧など各国との連携が欠かせない。法律にうたうだけでは済まない。個人情報を巡っては、流出した写真や犯罪歴の検索結果など本人にとって不都合なデータの削除、消去もかねて課題になっている。「忘れられる権利」だ。中間取りまとめでは、改正案にこの権利を盛り込むかどうかは引き続き検討するとされた。欧州のGDPRには、市民は企業に個人情報を消去させることができる、との規定が盛り込まれている。日本でも成文化すべきだ。半面、政治家が自分に都合の悪い情報を消去させるようでは国民の知る権利が損なわれる。仕組みは慎重に検討したい。

*7-2-3:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190509&ng=DGKKZO44532230Y9A500C1PP8000 (日経新聞 2019年5月9日) データ流通新法、個人情報保護法と両輪 司令塔機能の組織新設
 自民党の経済成長戦略本部がまとめた成長戦略の提言案は「第4次産業革命において最大の資源となる『データ』を利活用できる環境をいち早く整備する」と強調した。安倍晋三首相は6月に大阪で開く20カ国・地域(G20)首脳会議で議長を務め、データの自由な流通に向けた枠組み作りを提唱する方針だ。与党からも国内でのデータの収集や管理などの枠組み構築を求め、日本主導の国際ルール作りを後押しする。提言案は政府が2020年に向けて検討する個人情報保護法の改正と新法を「車の両輪として、データ駆動社会における戦略的枠組みを構築する」と記した。個人情報保護法の改正案は個人が巨大IT(情報技術)企業のサービスを使う際に、購買履歴や位置情報などの個人情報を不正に利用された場合は利用を止められるようにするなどが柱となる。国際的なデータ流通に対応するため、政府内に司令塔機能となる「デジタル市場競争本部」(仮称)を早期に新設することも盛り込んだ。各省庁横断で専門家を交えて構成する。独占禁止法など関係法令に基づく企業への調査結果を聴取したり、米欧など主要国の競争当局と連携したりするための権限を与える。公正取引委員会と新組織が連携しながら巨大IT企業を監視する仕組みだ。

*7-3:https://www.ehime-np.co.jp/article/news201905240017 (愛媛新聞社説 2019年5月24日) ヘイトスピーチ法3年 差別根絶に向け不断の見直しを
 特定の人種や民族への差別をあおるヘイトスピーチ(憎悪表現)をなくすための対策法が成立して3年がたった。「不当な差別的言動は許されない」との宣言の下、抑止条例の施行などの取り組みが進んだが、根絶には程遠いのが現状だ。とりわけ昨年来、元徴用工や慰安婦問題で一層冷え込んだ日韓関係を背景に、街宣活動やインターネット上での過激な言動は収まる兆しがみえない。先月からは外国人労働者の受け入れ拡大が始まり、環境整備が不十分な中で、新たな差別も懸念される。憎悪犯罪(ヘイトクライム)を防ぐためにも、法改正を含めて不断に見直し、差別撤廃へ実効性を高める必要がある。現行法では、憲法が保障する表現の自由を侵害する恐れがあるとして、禁止規定や罰則を設けていない。ヘイトスピーチを「違法」と位置づけていないことから、ネットなどで脅迫や中傷を受けた場合、加害者の罪を問うには刑法を適用することになる。しかし、大半は不起訴となるなどして処罰されず、これまでに立件され、刑事罰が科されたことが判明したのは2件にとどまる。侮辱罪で科料9千円、名誉毀損(きそん)罪で罰金10万円の略式命令が下されたが、刑罰が軽いとの指摘がある。民事訴訟のケースでも被害者の負担は大きい。証拠を集める際、自身への悪意に満ちた言動に再び向き合わなければならなくなり、精神的苦痛を受ける。時間や費用もかかる。差別に基づく侮辱や脅迫はヘイトクライムであり、通常より厳しい処罰の検討も必要だろう。国は事件化しやすくしたり、被害者を救済したりする仕組みづくりを進めなければならない。野放し状態となっているネットへの対策強化も急務だ。法務省は3月、ネット上のヘイトスピーチに関して削除などの救済措置の対象を、個人だけではなく集団も含めるよう全国の法務局に通知した。不当な差別的言動は集団に向けられたものも多い。国には被害者からの申告がない場合でもネット業者に対して差別投稿を削除するよう要請するなど、積極的な対応を求めたい。取り組みが自治体任せとなっている点も是正しなければならない。川崎市や京都府が、公共施設でのヘイトスピーチを事前規制するガイドラインを施行しているほか、大阪市は条例でヘイトスピーチ認定後に個人や団体名を公表している。だが、ほかの多くの自治体は「表現の自由」への配慮を巡って対応に苦慮し、有効策を打てていない。国は、表現の自由の扱いや、何がヘイトスピーチに当たるかといった基準をできるだけ具体的に示し、取り組みを後押しすべきだ。条例の策定などを通して、行政や市民らが、差別を許さないという毅然(きぜん)とした態度を示すことが、ヘイトクライムの抑止力強化につながると再認識してもらいたい。

<本当の男女雇用機会均等へ>
PS(2019年5月13日追加): *8-1のように、パリで開かれた先進七カ国(G7)男女平等担当相会合が、2019年5月10日、「女性の人権や男女平等の促進のために法制度の拡大が必要」という認識で一致し、これは大統領が男女平等促進を重要政策に掲げるフランスが議長国だった成果であり、そのことはフランス以外が新法導入の約束に消極的だったことからもわかる。しかし、女性に対する暴力は、身体的なものだけではなく、女性蔑視を利用して自己に利益誘導しようとする精神構造も入るため、徹底した法制度の拡大が必要だ。
 例えば、*8-2の「IQ(論理的思考)とEQ(情緒的感性)には明確な男女差・年齢差がある」というように、あたかも科学的調査を行ったかのようだが、実際には差別意識を植え付ける記事がそうである。内容は「①CIYの診断結果で個人の様々な特性が明らかになるが、その中で特に『論理的に思考するタイプ』と『情緒的・感覚的に思考するタイプ』」で男女間に明確な差が出た」「②論理的に思考するタイプは全年齢層で男性割合が高く、情緒的・感覚的に思考するタイプは全年齢層で女性割合が高い」「③男性では新社会人(23歳~29歳)から40代にかけて論理的に思考するタイプが増加し、女性では高校・大学・社会人となるにつれて情緒的・感覚的に思考するタイプが増える」「④組織の中で男性は論理的であること、女性は情緒的で共感し合うことを求められる結果、年齢とともにそれぞれの思考性が変化する」「⑤男女で年齢とともに思考性が変化していく傾向があり、結果的に男性は論理的、女性は情緒的で共感力が高いという集団ができる」「⑥世代別では、男性ではゆとり第一世代~団塊ジュニア世代まで論理的に思考するタイプが高くなっており、女性では世代別の変化は見られない」「⑦個性や性格の半分は遺伝で決まり、残りの半分はその他の要因によって決まると言われている」「⑧男性で30−40代が論理的に思考するタイプが多く、50代をすぎると情緒的、感覚的に思考するタイプが増えていくので、年齢とともに性格が変化していると感じられる」などが書かれている。
 しかし、調査方法については、何を質問してどう答えれば「論理的」「情緒的・感覚的」と判定しているのか不明であり、判定する人の主観や分析力も見逃せない。さらに、①②のように見えたとしても、その要因は、高等教育で何を専攻し、どの職種でオン・ザ・ジョブ・トレーニングを受け、どういう立場(非正規・正規のヒラ・管理職・社長、専業主婦等)で働いてきたかによって考え方が変わるため、③④⑧の結果になる可能性もある。これについて述べているのが、*8-3の上野元東大教授だが、東大入学者の女性比率は現在では全体で約18.6%にまで増えているものの、法学部19.1%、経済学部17.9%、文学部28.8%、教育学部37.2%、教養学部30.2%、工学部8.9%、理学部12.2%、農学部26.6%、薬学部23.9%、医学部19.8%と工学部と理学部は10%前後であり、これは就職を考慮して専攻を決定した結果だろう。その結果、就職後のオン・ザ・ジョブ・トレーニングも異なり、東大以外では家政学系・芸術系・文学系に進学する女性も多いことから、社会全体の男女の育成方法や期待の違いが*8-2の結果を生んでいると思われる。ただ、⑤⑥のように、年齢で変化するか否かについては、現時点の異なる世代間比較をしても受けた教育や過ごした社会環境が異なるため正確な比較にならず、同じ世代を多変量解析でコホート分析した方が要素毎の影響がわかりやすい。⑦については、半々かどうかはわからないが、遺伝と環境の両方の要因で変化し、同じ人でも欧米と日本で振舞いを使い分けなければならないことさえある。つまり、日本は、“文化”の名の下に女性蔑視している国なのである。
 なお、*8-3には、「サークル選びは袋詰めで渡されたビラの束から『東大男子と○○大女子のサークル』と書かれたものを捨てることから始めなければならなかった」とも書かれているが、私が入った社交ダンスクラブは東大女子が少ないので日本女子大や東京女子大と合同で行っていたが、行けば東大女子もWelcomeだった。ただ、やるのは社交ダンスでも、幼い頃からバレエや日本舞踊を習っていた人はバシッと形が決まり、そうでない人はとてもかなわないため、*8-4の「習い事の低年齢化」はあってよいと考える。これを、「エリート志向の押し付け」とか「習い事は協調性を養う」などと言っている人は、クラブ活動以外はやったことがないように思われる。何故なら、子どもが主体性を示す年齢から始めては遅いものが多く、例えば、日本語をはじめとする語学・音感・楽器・ダンスなどは幼い方が覚えが早く、これらの基礎ができていると後の勉強に役だったり、(最近の日本では数と運動量で勝負しているらしい)アイドルが1人で歌っても聞くに堪える歌唱力を持てたりする底上げ効果があるからだ。


 欧米と日本の女性役員・管理職比率     2019.5.10西日本新聞(*8-2より)

(図の説明:1番左と左から2番目の図のように、日本の女性役員・女性管理職比率は、他国と比較して著しく低い。これは、合理的に見せかけた女性に対する頑固な差別があるからで、その差別の一つに、男性の論理性と女性の情緒性・感情性理論がある。しかし、1番右と右から2番目の図を見ると、日本では男女とも、またどの世代においても、情緒的・感情的なタイプが圧倒的に多く、論理的に思考できるタイプは半分以下しかいないことがわかる。そして、グラフに出ている男女の違いは、与えられた教育や職場環境による変化の程度だ)

*8-1:https://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201905/CK2019051202000118.html (東京新聞 2019年5月12日) 男女平等促進へG7「新法導入を」 担当相会合で一致
 パリで開かれた先進七カ国(G7)男女平等担当相会合は十日、女性の人権や男女平等の促進へ法制度の拡大が必要だとの認識で一致、共同声明で「男女の格差はここ数十年で総体的に減少したが、世界中で進展がかなり鈍っている」と指摘した。マクロン大統領が男女平等促進を重要政策に掲げる議長国フランスは、外部の諮問委員会がまとめた世界の男女平等促進法を参考にG7各国がそれぞれ新法を導入することを提案。ただ共同声明は「(他国の)優れた実践は名案の源となる」とするに留まり、導入の約束には至らなかった。ある参加国筋は「立法は議会の仕事だ」と述べ、フランス以外は新法導入の約束に消極的だったとの見方を示した。女性活動家ら三十人以上で構成する諮問委のメンバーの一人、女優のエマ・ワトソンさんは記者会見で「女性に対する暴力と闘う意欲的な法枠組みをG7構成国が早急に導入するよう期待する」と訴えた。諮問委は今後、模範となり得る各種の法律に関する最終報告をまとめ、各国に提示する。日本から出席した中根一幸内閣府副大臣は「男女平等の推進にはトップの意識改革が重要だ」と述べた。

*8-2:https://www.nishinippon.co.jp/nnp/news_release/article/509065/ (西日本新聞 2019年5月10日) IQ(論理的思考)とEQ(情緒的感性)には明確な男女差が
 COLOR INSIDE YOURSELF( https://ciy-totem.com/ )は43万人以上が利用する、自己診断サービスです。 43万人以上の診断結果をビッグデータ解析した結果みえてきた、個性や性格に関する興味深い統計データをお届けします。
●IQ(論理的思考)とEQ(情緒的感性)には明確な男女差が
 COLOR INSIDE YOURSELF(以下「CIY」)の診断結果では、個人の様々な特性が明らかになりますが、その中でも特に、「論理的に思考するタイプ」と「情緒的、感覚的に思考するタイプ」では、男女間で明確に差がでました。年齢別の診断結果の割合を多項式近似曲線で表すと、「論理的に思考するタイプ」は全年齢層で男性の割合が高く、逆に「情緒的、感覚的に思考するタイプ」では、全年齢層で女性の割合が高くなっています。ステレオタイプに言われているような「男性は論理的に考えるのが得意、女性は共感力が高い」というイメージに近い結果となりました。
●男女によって、求められる思考性が異なる?
 さらに、ライフスタイル別の統計結果を見ると、男性では新社会人(23歳~29歳)から40代にかけて「論理的に思考するタイプ」が増加しています。女性では、高校から大学、社会人になるに従って「情緒的、感覚的に思考するタイプ」が増えており、30代からは緩やかに減っていきます。
●年齢とともに性格が変化する要因は、何でしょうか?
 A:組織の中で、「男性は論理的であること、女性は情緒的で共感し合うこと」を求めら
   れた結果、年齢とともにそれぞれの思考性が変化していく
 B:そもそも男女で年齢とともに思考性が変化していく傾向があり、結果的に「男性は
   論理的、女性は情緒的で共感力が高い」という集団ができていく
 いずれの要因かまでは分析結果からはわかりませんでしたが、ここまで明らかになると、さらに興味深い洞察が得られそうです。
●年齢とともに性格は変わるのか?
 世代別の結果では、男性では「ゆとり第一世代~団塊ジュニア世代」までが、やや「論理的に思考するタイプ」が高くなっているようです。(女性では、世代別の変化は、あまり見られません。上述の通り、年齢や社会的なポジションに伴って性格が変わっていくのか、特定の世代に限って「論理的に思考するタイプ」がそもそも多いのかについても、興味深いポイントです。個性や性格の半分は遺伝で決まり、残りの半分はその他の要因によって決まると言われています。そのため加齢による性格の変化はそこまでないはずですが、男性で30−40代が「論理的に思考するタイプ」が多く、50代をすぎると「情緒的、感覚的に思考するタイプ」が増えていくという傾向を見ると、年齢とともに性格が変化しているとも感じられます。今後も継続的に結果を分析することで、年齢による変化なのか、特定の世代による傾向なのかを明らかにしていきたいと思います。

*8-3:https://digital.asahi.com/articles/ASM4R3V9HM4RUTIL011.html?iref=pc_rellink(朝日新聞 2019年4月24日)東大ジェンダー論講義、立ち見の盛況 上野さん祝辞反響
 社会学者の上野千鶴子さんが、12日の東大入学式で述べた祝辞が反響を呼んでいる。入学者の女性比率が約2割に過ぎないことなどを挙げて「性差別は東京大も例外ではない」と述べるなど、「おめでとう」一辺倒ではない祝辞。東大生たちはどう受け止めたのか。24日夕、東大駒場キャンパスであった「ジェンダー論」の授業。祝辞の影響か、3週連続で536席の教室に多数の立ち見が出た。担当する瀬地山角(せちやまかく)教授によると、前回の授業後に提出させた感想には、東大のジェンダー意識の現状を憂える男子学生のものが複数あった一方、上野さんの祝辞の間、鼻で笑っている男子学生がいた、との記述もあったという。このため、この日の授業は例年と順番を入れ替え、男女雇用機会均等法(1985年制定)ができるまでの女性が置かれていた状況について伝える内容に変更した。東大はこれまで、女子学生を増やそうと、女子高校生向けの説明会を開いたり、冊子を作ったりしてきた。2017年度からは、女子学生向けの家賃補助制度も始めた。それでも、今年度入学者の女子学生の比率は18・1%。前年度の19・5%を下回った。教授の女性比率も1割に満たない。04年度以降、上野さん以外に入学式で祝辞を述べた女性は、10年度の緒方貞子さんだけだ。瀬地山教授は「男女比は、大学だけで解決できる問題ではない。上野さんの祝辞は社会に向けた投げかけでもあった」とみる。上野さんは祝辞で「東京大学は変化と多様性に拓(ひら)かれた大学です。わたしのような者を採用し、この場に立たせたことがその証しです」と語った。上野さんに依頼した理由について、東大は「祝辞を行う者の選定経緯は公表していない」とするが、新入生の受け止めは様々だ。「日本最高峰の大学で、これだけ学生数に男女差があるのは問題だと私も思っていた。入学式の場で指摘してくれたのはよかった」。埼玉県の私立共学校から文Ⅲに進学した女子学生はそう話す。高校では国公立大をめざす女子も多かったが、祖父母世代から「女の子がそんなに難しい大学に行かなくても」と言われた経験がある子が複数いたという。都内の私立共学校から文Ⅰに進んだ男子学生も、「男女差別が残っているんだとわかり、驚いた。祝辞はつまらないのが相場だが、目を覚まされたような思いだった」。一方、神奈川県の私立男子校から理Ⅰに進学した男子学生は「説教されている気分になった。式で言うべきことか、と複数の男子が言っていた」と打ち明ける。「入学したての今はピンとこなくても、いずれじわじわと心に響いてくるのでは」と言うのは、東大出身でフリーランスの広報やライターとして働く平理沙子さん(28)だ。バイト先で大学名を言うと「すごく驚かれ」、就職活動では、同じサークルの男子学生たちは早々に内定を得ていくのに、女子たちは苦戦。面接では「なぜ東大に入ったのか」と根掘り葉掘り聞かれ、東大女子が「こだわりが強すぎる人」のように見られていると感じた。「高校までは男女平等と思っていたけれど、大学、就活、就職と進むうちに、男女の置かれた状況の違いに違和感が増していった」。「祝辞を評価しますか」「祝辞で取り上げられた東大の問題を、以前から認識していましたか」。祝辞への反響を受け、東大新聞は5月10日まで、大学内外の人を対象に賛否などを尋ねるウェブアンケートを実施中だ。これまでも上野さんが祝辞で触れた「東大女子参加不可」のサークルの存在など、東大のジェンダー問題について特集を組んできた。女性編集部員で、大学院2年の矢野祐佳さんは「6年間思ってきたことを、上野さんが代弁してくれた」と言う。「東大女子参加不可」のサークルは、入学時に怒りを感じたことの一つだ。サークル選びは、袋詰めで渡されたビラの束から「東大男子と○○大女子のサークル」と書かれたものを捨てることから、始めなければならなかった。「女子が2割というのは異常。東大の学生や教授の男女比が変われば、社会にもプラスの影響があると思う」。男性編集部員で工学部3年の高橋祐貴さんは「『祝辞にふさわしくない内容だった』と思っている人は、入学式の性質を理解していない。大学が全学生にメッセージを伝える場は入学式とガイダンスくらいしかなく、祝辞は重要なもの。いまジェンダーを取り上げたのは時勢にかなっていると思う」と指摘する。上野さんは祝辞で、3年前に起きた東大生5人による強制わいせつ事件にも言及した。高橋さんは「ここ数年、東大のジェンダー問題のひどさが露呈する出来事が相次ぎ、新入生の女子比率も下がった。そこに大学も危機感をもっているのだろう。祝辞は、新入生や東大の構成員、そして社会に向けた『男女比を改善しなければ』という東大からの強いメッセージだと思った」と受け止める。

*8-4:https://ryukyushimpo.jp/column/entry-917087.html (琉球新報 2019年5月13日) 習い事の低年齢化
 5歳、4歳、3歳、0歳―。順番にフィギュアスケートの浅田真央さん、羽生結弦さん、卓球の福原愛さん、水泳の萩野公介さんが競技に触れた年齢だ
▼トップアスリートには幼少の頃に競技人生の一歩を踏み出した人が目立つ。各界で若い人材が活躍したり成功を収めたりしているのを見て自分の子供も、と刺激を受ける親は多いだろう
▼習い事の低年齢化が進む。笹川スポーツ財団の2018年の調査では4~11歳の未就学児の72%が何らかのレッスンを受けていた。一番多いのは水泳。上位14位以内でサッカー、体操などスポーツ系が九つを占めた
▼未就学児のスポーツクラブへの加入率は15年の32・8%から17年は40・1%に増えた。背景には20年開催の東京五輪・パラリンピックの影響もあるだろう。単一か複数を幅広くさせるのか一長一短あるにせよ本人が望む習い事をさせるのは悪いことではない
▼ただ幼少期からの高度なトレーニングで体を痛める危険性もある。エリート志向の押し付けで競技へのやる気をそいでは元も子もない。プロで活躍できるのはごく一握りだが、習い事は協調性や集中力を養うことにも役立つ
▼最近、幼い子どもへのスポーツ指導者の役割として、遊びを先導する重要性が指摘される。体を動かす楽しさを感じさせるのである。大事なのは子どもたちの主体性を尊重することだ。

<ふるさと納税について>
PS(2019年5月22日追加):ふるさと納税制度は、生産年齢人口が都市部で働き、保育・教育・医療・介護費用を負担している地方には税収が集まりにくい構造になっているため、私が2005年に衆議院議員になってから提唱し始めて2008年にできた制度で、多くの方の御協力で大きく育った。しかし、所得税を計算する際に2000円は負担させる仕組みになっているため、この制度を利用した人は返礼品がなければ、その分だけ多く税金を払うことになる。そこで、考案されたのが、地場産品を返礼品にして地域振興しながら寄付金を集める方法で、私は名案だと思う。しかし、地場産品以外を返礼品とし、知恵を絞って多額の寄付を集めた大阪府泉佐野市、静岡県小山町、和歌山県高野町、佐賀県みやき町が、*9-1のように、ふるさと納税制度から除外された。しかし、泉佐野市の担当者が言う通り、ルール制定以前の募集を考慮するのは横暴で租税法定主義にも反するため、この取り扱いに関して提訴すれば勝訴できるだろう。また、大阪府泉佐野市、静岡県小山町、和歌山県高野町、佐賀県みやき町にも地場産品の生産者がおり、いつまでもふるさと納税制度から除外されたままでは不利益を蒙るため、市町がふるさと納税制度に復帰できるまで、大阪府、静岡県、和歌山県、佐賀県が代行する方法もある。
 なお、*9-2に、ふるさと納税流出額が1600億円になりそうだと書かれているが、生産年齢人口を集めた都市部では打撃というほどの金額ではなく、地場産品がないか、あっても工夫しなかった地域でもあるため、ここから流出するのは立法趣旨そのものである。

   

(図の説明:左図のように、ふるさと納税額は日本全国で著しく増加しており、この制度は当たったことがわかる。しかし、左から2番目の図のように、想定外の返礼品で稼いだ市町があり、制度から除外されてしまったが、これは違法な除外である。また、右から2番目の図のように、農漁業地帯が健闘しているのは制度の狙いどおりで、右図の市町村の順位も興味深い)

*9-1:https://digital.asahi.com/articles/ASM5K4KF5M5KULFA02C.html (朝日新聞 2019年5月17日) ふるさと納税、除外4市町の早期復帰を認めず 総務相
 石田真敏総務相は17日、ふるさと納税制度から外すと決めた大阪府泉佐野市など4市町の早期の制度復帰を認めない姿勢を示した。閣議後会見で「(他自治体に)正直者が損をすることをすべきではないという声がある」と述べた。4市町は泉佐野市、静岡県小山町、和歌山県高野町、佐賀県みやき町。通知を守らずに多額の寄付を集めていたと総務省が判断し、少なくとも来年9月末までは復帰できないことが決まっている。総務省令に基づく告示により、自治体は寄付の集め方や受け入れ額を今後も問われ続ける。石田氏は「募集実態や、ルール外返礼品で受け入れた寄付額の規模などに応じて検討する」と述べ、4市町の復帰時期に差をつける可能性を示唆した。一方、泉佐野市は週明けにも石田氏に質問状を送り、対象外とされた理由などを問う方針を明らかにした。同市の阪上博則・成長戦略担当理事は17日、石田氏の発言について「いつもの脅しではないか。過去の寄付募集を考慮すること自体が問題だ」と批判した。

*9-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190522&ng=DGKKZO45105200S9A520C1MM0000 (日経新聞 2019年5月22日) ふるさと納税 流出1600億円 今年度本社調査 2割増、横浜が最多
 全国の主要市区で2019年度、ふるさと納税の影響で流出する住民税の金額(税額控除額)が前年度比で2割以上増えることが日本経済新聞の調査でわかった。金額では約1600億円に上り、横浜市や東京都世田谷区など首都圏の流出が目立つ。返礼品競争でふるさと納税が拡大する一方、都市部の自治体の財政への打撃が大きくなってきた。ふるさと納税は出身地や好みの自治体に寄付すると、寄付額から2000円を引いた金額が所得税や住民税から控除される仕組み。住民税の控除は寄付した翌年度に適用され、住民が地域外に寄付した自治体は住民税が減ることになる。調査は2~4月、全国792市と東京23区の815市区を対象に実施。寄付の受け入れ額は810市区から、税額控除額は622市区から回答を得た。19年度の流出額が最も多いのは横浜市で、18年度比31%増の136億円となる見通し。名古屋市は75億円(24%増)で、世田谷区が53億円(29%増)だった。622市区の流出額は21%増の1581億円となった。国から地方交付税を受け取る自治体は流出額の一部が地方交付税で穴埋めされるが、交付税を受け取らない自治体はそのまま流出額となる。19年度の流出額のベースとなる18年度の寄付受け入れ額の810市区の合計額は、17年度比29%増の2704億円。首位はアマゾンギフト券を返礼品とした大阪府泉佐野市の497億円だった。2位は宮崎県都城市(83億円)で、北海道根室市(50億円)が続いた。ふるさと納税を巡っては、総務省が6月から、対象自治体を指定して返礼品を「寄付額の3割以下の地場産品」に限定する新制度を導入する。

<フェイクニュースとファクトチェック>
PS(2019年5月23日):*10-1のとおり、選挙で立候補した候補者への選挙妨害を目的とする情報が、噂という無責任な形でネット空間を飛びかう時代だが、ファクトチェックが必要なのは、ネットだけではなくメディアも同じだ。何故なら、女性蔑視に基づいて女性の能力や実績を過小評価する“常識的”な判断で、私が不利益を蒙ったことはすこぶる多いからである。
 例えば、上記のように、「ふるさと納税制度は私が提案してできた」と書くと、それが事実であるにもかかわらず、「女がそんなことをできるわけがない」「女がそんなことを言うのは謙虚でない」と受け取ったメディアが多く、その結果、ふるさと納税の発案者は、*10-2の福井県知事と制度導入時にたまたま総務大臣だった菅氏ということになった。
 しかし、それでは、「2人は長期間政治家であったのに、何故、2006年までふるさと納税制度を発案しなかったのか?」、「何故、ふるさと納税の盛んな県は、佐賀県はじめ九州に多く、福井県でないのか」「菅氏は力ある政治家なのに、何故、ふるさと納税制度を弁護しないのか」という疑問に全く答えられない。つまり、大多数のメディアがフェイクニュースを発信しており、ファクトチェックが甘いのである。そして、これはほんの一例にすぎない。
 その点、誰もがHPで自分の主張を述べられるようになったのは、政治家がメディアに変なことを一方的に言われっぱなしだった時代と比べれば革命的な進歩であり、ネットだけでなくメディアも、もっと公正・中立で深い分析に裏付けられた報道を行うべきなのである。

*10-1:https://ryukyushimpo.jp/special/entry-799530.html (琉球新報 2019年2月28日) ファクトチェック フェイク監視
 ネットで広がっているさまざまな情報。それをそのままうのみにするのは危険です。選挙でも立候補した候補に対して、さまざまな情報やうわさが飛び交っています。その情報は確かなものなのでしょうか。真実なのか、うそなのか判断がつかない情報をそのまま受け取ってしまっては正しい判断ができません。「フェイクニュース」というものが、2016年の米大統領選でネット上において大量に拡散され問題になりました。琉球新報は30日投開票の知事選に関するデマやうそ、フェイク(偽)情報を検証する「ファクトチェック―フェイク監視」を随時掲載し、特集ページの1コーナーとしてまとめます。ぜひ、読んでいただき投票に生かしてもらえれば、と思います。

*10-2:https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20181124-00010003-wordleafv-pol (Yahoo2018/11/24)返礼品競争が過熱 ふるさと納税発案の福井知事が語る「本来の趣旨」
 「ふるさと納税」といえば、寄付した自治体から「返礼品」がもらえるお得なサービス、というイメージを持つ人が少なくないかもしれない。今年は、この返礼品のニュースが世間を騒がせた。ブランド牛肉やコメ、家電製品などの豪華な返礼品をめぐり、総務省が9月、調達額が寄付額の3割を超える返礼品や地場産品ではないものの場合は制度の対象から外す方針を表明したのだ。自治体からは「特産品の豊富な町とそうでない町に格差が生じる」などと反発の声が上がる一方、脱・返礼品に向け、制度本来の趣旨の浸透を目指して「自治体連合」を立ち上げた自治体もある。この自治体連合を立ち上げたのは福井県。だがなぜ福井なのか疑問に思う人もいるだろう。実はふるさと納税は「国」ではなく、「地方」からの提案で誕生したもので、その発案者が福井県の西川一誠知事なのだ。西川知事に、制度スタートから10年たったふるさと納税の現状と今後について聞いた。
●広辞苑にも掲載された「ふるさと納税」
 2008(平成20)年にスタートしたふるさと納税。今年1月に改訂された岩波書店の「広辞苑」には、「スマホ」「上から目線」「LGBT」などの言葉とともに、「ふるさと納税」も新たな項目に追加された。西川知事は「普通名詞のような、国民的な認知をいただいた」と喜ぶ。「ふるさと」と銘打ってはいるが、生まれ故郷以外の特別ゆかりのない自治体に対しても寄付することが可能で、寄付金の一部が現在住んでいる自治体の住民税から控除されるという制度だ。ふるさと納税が誕生したきっかけは、1本の新聞記事だった。2006年10月の日本経済新聞に掲載された「経済教室」の欄で、西川知事が「故郷(ふるさと)寄付金控除」制度の導入を提案する記事を出したところ、学者や政治家の関心を引き、特に当時の菅義偉総務相の目に止まって制度化が実現した。
●地方と都市のアンバランスを税制で是正
 ふるさと納税にはどんな狙いがあるのか。西川知事は3つの理由を挙げるが、その1つが人口流出と一極集中が取りざたされる「地方と都市」の関係だ。「福井県は『幸福度』日本一で、東京は2位。『日本一』の県でお金をかけて育てて、『2位』の東京に行く」。西川知事は「幸福度ランキング」(日本総合研究所の)で3回連続1位に輝いた福井県から東京へ人口が流出する実状について嘆く。「若者は自然に大都市に行ってしまう。田舎では彼らを一生懸命教育する。つまり地方で出生してから、高校卒業まで地元で行政サービス受けて、進学などを機に大都市に出る。そのまま就職して大都市の自治体に納税する。このアンバランスな状況を税制で直したい」。福井県では、進学などで毎年約2500人が上京するが、戻ってくるのは600人程度だという。2つ目は「納税者主権の促進」。会社員の場合、給与などから源泉徴収されるので、自分が税金をいくら収めているか意識している人は必ずしも多くないだろう。ふるさと納税には、返礼品だけではなく、自治体の具体的な事業を選んで寄付できるものがある(プロジェクト応援型)。そうした行為を通じて地方政治に関与することで「自分はどの自治体に寄付して、どれくらいの控除を受けるのか、税の使いみちを自覚したい。一人ひとりの納税者としての意思と権限を促進したい」と語る。最後は「自治体政策の競争と向上」だ。寄付を集めるために、各自治体が政策や返礼品などで自分たちの魅力をアピールしたり、寄付がどう活用されたかなどの成果を説明したりすることが必要になる。それが自治体の政策づくりに創意工夫を生み、自治体間の切磋琢磨につながるという。「納税者主権を発揮してもらうことで、自治体側も政策の自主性を発揮する。こういういい循環が期待できる」

| 経済・雇用::2018.12~ | 09:55 PM | comments (x) | trackback (x) |
2019.4.15 新技術の普及と銀行・産業界における本物のリーダーシップの必要性 (2019年4月17、18、19、20、22、23、24、26、27日追加)

    フクイチ3号基      2019.4.15東京新聞     2019.4.3東京新聞

(図の説明:左図は、フクイチ3号基の爆発直後と現在の画像で、中央の図は、使用済核燃料を敷地内で移動させる仕組みだ。また、右図は再稼働しているか否かを示す全国の原発の様子だが、フクイチの影響がなかった西日本で危機感が薄いため、最悪の事態にならないことを祈る)

(1)再エネの普及を妨げている原発
1)経団連の原発推進提言について
 原発メーカーである日立出身の中西氏を会長とする経団連が、*1-1のように、「①原発は脱炭素社会に不可欠なエネルギーであり、再稼働・新増設が必要」「②最長60年の既存原発の運転期間を延長し、審査等で停止していた期間を運転期間に含めない事実上の延長をすべき」「③政府のエネルギー基本計画は2030年度の原発発電割合を20~22%とする目標を掲げているのに、廃炉が進めば目標達成が困難」等々、世界に逆行した先見の明のない提言をしている。
 
 しかし、①は、二酸化炭素以外の公害を無視しており、②は会計・税務の常識から大きく外れている。何故なら、60年という運転期間は機械装置の中では異常に長く、例えば非常用発電機の法定耐用年数は15年だ。そのため、延長前の40年ならまあいいかという程度であるのに、原発事故後に耐用年数を20年延長して60年にするなど狂ったとしか思えない。さらに、稼働せずに停止していればさびつくため、稼働していないのは運転期間の延長理由にはならない。

 また、③については、再エネが急速に普及してコスト低減している中、政府の2030年度の原発発電割合20~22%という目標は根拠もなく高すぎる設定をしているため、この目標を達成するために原発の再稼働・新増設を進めるなど思考停止も甚だしい。

 さらに、使用済核燃料は行き場がなく、核燃料サイクルは破綻し、高レベル放射性廃棄物の処分場もなく、安全強化や事故対応でコストが高騰した原発は低コストでもないため、世界の潮流に逆らってまで原発を推進するのは無責任である。それより、経産省や経団連が取り組むべき課題は、再エネを活用して0エミッション社会を作り、その技術を世界に売り出すことだろう。

2)やっと核燃料の取り出しを始めたフクイチ
 東京電力は、事故後8年経過した2019年4月15日、*1-2のように、フクイチ3号機の原子炉建屋上部にある使用済核燃料プールから冷却保管中の核燃料を取り出し始めたそうだが、その間には屋根を取り外して強い放射線を拡散し続けていた時期もあり、その無神経さには呆れる。

 そして、取り出した核燃料は2年もかかって敷地内の共用プールに移すだけであり、クレーンなどの機器に不具合が相次ぐなど、日本の中でも低い技術で形だけの原発事故処理をして、危機感もなく遊んでいるように見える。

3)フクイチ近海の水産物について
 韓国だけでなく、被災地付近からの水産物の輸入を禁止している国は多いが、*1-3のように、日本政府は福島など8県からの全水産物の禁輸措置を行っている韓国をWTOに提訴し、WTO上級委員会が禁輸を容認する報告書を出した。

 私は、安全性の確保は自由貿易に優先するため、これらの禁輸措置を行っている国々を「科学的根拠が無い」としてWTOに提訴すること自体に見識が伺われず、それでは日本国民も困るのだが、取り出した使用済核燃料を敷地内の共用プールに移して冷やし続ける行為は、汚染水の流出防止や水産業の復興には何ら寄与しないことを付け加えなければならない。

(2)再生医療は時間をかければ犠牲者が増えること
1)再生医療の普及について ← 「焦らず安全重視で丁寧に」という言葉は意味不明
 *2-1に、「再生医療で病気やけがを治す試みが大学病院などで相次いでいるが、期待が大きい一方、実用化のペースが速すぎると危ぶむ声もある」と書かれている。しかし、遅ければその患者さんが治療不能になるため、「安全重視で焦らず丁寧に治療法を確立する」というのは、言葉だけが踊っている意味不明の文章だ。

 そもそも、医療は時間を争って治療すべきもので、ゆっくりすればひどくなったり、治らなくなったり、命を失ったりする。また、従来の治療法ではうまく治らず、それよりよい方法だと考えられるからこそ、新しい治療法である再生医療を開発しているのであるため、「速すぎるのがいけない」という主張は全くおかしい。

 また、海外には、脊髄損傷を本人の脂肪幹細胞で治療したと言っていた権威もおり、幹細胞を使うのは正解だが、日本のように早々にiPS細胞のみに特化したのは他の可能性を封じ込めたという意味で愚かな決定だった。

 そして大切なことは、一定数以上の治験をしなければ、安全性・有効性に関するデータの裏付けもとれないため、意味も分からずに変な論理で先進治療を妨害するのは止めた方がよい。そのため、メディアには各学会に行って内容を理解して取材し、正しい記事を書く能力のある記者を置いておいたらどうかと考える。

2)腎臓病の例で説明する
i) 人工透析について
 公立福生病院で、*2-2のように、本人の意思を十分確認した上で人工透析を中止し、44歳の女性が死亡したため、病院は「問題なし」としているものの、離脱判断が正しかったか否かが問題になった。人工透析はシャントを永久に作ったまま、1回4時間・週3回くらいのペースで透析しなければならないため、透析から離脱したくなるのもよくわかるが、現在はそれを我慢して人工透析で現状維持するか腎移植するかしかなく、提供される腎臓は少ないわけである。

ii) 腎臓の再生医療について
 そのような中、*2-3のように、ES細胞(胚性幹細胞)を使って、ラットの体内にマウスの腎臓を作ることに自然科学研究機構や東京大らのグループが成功し、ES細胞やiPS細胞などの多能性幹細胞から腎臓という複雑で大型の臓器の再生に世界で初めて成功したそうだ。これは、種の近さから言えば、ヒトの腎臓をサルの体内に作ったのと同じくらいだが、将来はヒトの臓器をブタなどの動物の体内で作ろうとする研究が進められている。

 このほか、*2-4のように、徳島大学の安部准教授らが、腎臓を形成する複数の細胞を混合する共培養により、生体に近い腎臓の特性を持った立体的なKLSの作製に成功し、KLSは24時間の培養ででき、低コスト・短期間での作製が可能だそうだ。

 私は、このやり方で純粋な本人の腎臓を作った方がうまくでき、慢性腎不全で新たに人工透析を受ける患者は日本国内で毎年4万人おり、世界ではもっと多いため、速やかに創薬すべき実用化の段階に入っていると思う。そして、これが実用化されれば、患者さんの苦しみが本当の意味で緩和されると同時に、現状維持するだけの苦しくて高額な医療費の削減ができるわけだが、それには資金が必要で、まずはクラウドファンディングや銀行貸付が考えられるわけである。

3)白血病の例でも説明する
 競泳女子の池江璃花子選手の白血病が公表された後、*3-1のように、骨髄移植のドナー(提供者)登録に関心が集まっているそうだが、ドナーになるのも大変で、適合しても移植が実現するのは6割程度だそうだ。
  
 私の東大の友人にも35歳で白血病になり、弟さんに骨髄を提供してもらって6カ月の入院治療後に回復した人がいるが、彼は「だんだん弟の体になっていくような気がする」と言っていた。血液を作る骨髄細胞の多くが弟さんの細胞に変わっているのだから、確かにそうなるのだろう。

 そのため、池江璃花子選手のように、身体能力が才能にあたる人は、他の人の細胞が入ると今まで通りの強い選手ではいられないかも知れない。そのため、*3-2のような自分の免疫細胞の攻撃力を高める「CAR―T細胞」を利用した新型がん免疫製剤や、自分の骨髄細胞の健康な部分を使って治療できれば一番よいと思われる。しかし、これらの治療も、早く実用化して価格を下げなければ、使えずに亡くなる人が増えるわけだ。

(3)ゲノム編集食品について
 ゲノム編集された生物を使った食品の扱いについて、*4-1のように、厚労省がパブリックコメントを実施し、有識者調査会がまとめた報告書は「開発中の大半のゲノム編集食品は安全性審査を必要とせず、国への情報提供だけで販売を認めてよい」とする内容で、安全管理の杜撰さが浮き彫りになった。
 
 そのゲノム編集は未知の部分が大きいからいけないというよりは、①害虫がつかなくなる遺伝子を入れたり ②筋肉が多くなる遺伝子を入れたりして、それが食べた人に与える影響は検証されていないことが問題なのである。また、害虫は、虫の方も進化して耐性ができるため、より強い遺伝子を入れなければならなくなり、それが自然界に拡散すれば環境にも悪影響を与える。

 そのため、少なくとも消費者が選択可能なように、ゲノム編集食品の表示は不可欠だ。また、報告書では、その生物にはない遺伝子を導入する場合は遺伝子組み換え食品と同様の安全性審査が必要と判断したそうだが、食べ物でない場合は検証の仕方が異なるし、遺伝子の入れ方によっても異なるため、薬と同様、個別にしっかり検証されていることを条件とすべきだ。

 このような中、*4-2のように、「ゲノム編集食品は、予防原則で安全徹底を」と日本農業新聞が書いているとおり、買う側の選ぶ権利を保障するための食品表示は不可欠であり、顧客ファーストの精神がなければ消費者に選ばれないため、どんな産業も成功しない。作る人も、それがわかっているのである。

(4)事業承継について


      2018.7.31産経新聞          事業承継税制の2018年改正

(図の説明:左図のように、中小企業の経営者も高齢化し、後継者がいないため廃業して技術が失われるケースが増えた。そのため、中央と右の図のように、2018年改正で10年間の特例として贈与税・相続税免除の要件が大幅に緩和された。これにより、後継者は複数でも親族外でも税制優遇を受けられるようになり、多様な形の事業承継が考えられるようになった)

 これまで、オーナー経営の中小企業の株式を後継者に移して代替わりしようとすると、オーナーの生前なら贈与税、死後なら相続税が発生し、事業承継する後継者に不利な点が多いため、黒字でも廃業して技術が廃れる事例が少なくなかった。

 そこで、*5-1のように、事業承継を円滑に進められるよう、政府が2018年度に「事業承継税制」を改正し、納税猶予割合が8割から全額になり、対象株式も発行済株式総数の3分の2から全てに拡大され、事業承継時の税負担をゼロにすることが可能になった。また、孫の代まで経営を引き継げば、猶予されていた税負担は免除されるそうだ。

 さらに、*5-2のように、個人事業主が事業承継しやすい環境をつくるため、子が事業を継ぐ時に土地・建物にかかる贈与税支払を猶予する「個人版事業承継税制」も作り、2025年までに70歳を超える約150万人の個人事業主が引退で廃業を迫られるのを防ごうとしている。その制度の対象になるのは、地方の旅館・町工場・代々続く酒蔵などの家族経営をしている個人事業主で、新制度では土地・建物・設備にかかる税金の支払いが猶予されることになるそうだ。

(5)地銀を含む銀行の役割と今後の展望
 金融庁が、*6-1のように、地方銀行の監督指針を見直して、収益が低迷する地銀の逃げ道を断って経営改革を促す方向へかじを切るそうだが、人口減少や高齢化には対応できるものの、金融緩和と超低金利が銀行の利益にマイナスであることは明らかだ。

 しかし、経済活動を行っている企業である以上、一つの「特効薬」があるわけではなく、顧客ファーストで考えた時に必要とされるサービスを安く提供しているか否かが分かれ目になる。

 もちろん、*6-2のように、店舗・人員配置の合理化などで生産性を上げ、高付加価値化することは必要だが、人口減少は産業構造改革を通じてビジネスチャンスになる上、上記(1)~(4)に関するサービスもまさにニーズであるため、次の有望企業(=融資先)を育てて将来の自己資本比率や収益力を改善する手段にできる筈だ。

 農林中央金庫は、*6-3のように、ベトナム、フィリピンの大手銀行と包括的な業務提携を結び、現地銀行ならではの情報やネットワークを生かして日本の農業法人等の販路開拓や食農関連企業の海外進出・事業拡大の支援を本格化させるそうだ。また、オランダの協同組合金融機関「ラボバンク」とも既に提携しており、農業法人やJAグループ、食品関連企業に対する現地情報の提供・ビジネスマッチング・現地での協調融資・企業の合併・買収(M&A)への助言、現地通貨の供給などを目指すそうだ。

 このうち、国際化・ビジネスマッチング・M&Aの助言・事業承継の相談などは、地方銀行もできなければならない時代になっている。

・・参考資料・・
<再エネの普及を妨げる原発>
*1-1:https://www.hokkaido-np.co.jp/article/295255 (北海道新聞 2019.4.11) 経団連の提言 身勝手な原発擁護策だ
 構造的な問題を度外視した身勝手な原発回帰論と言うほかない。経団連が電力政策に関する提言を2年ぶりに発表した。原発を脱炭素社会に不可欠なエネルギーとし、再稼働や新増設を求めた。最長60年となっている既存原発の運転期間の延長や、審査などで停止した期間を運転期間に含めないで運転できる期間を事実上延ばすことも新たに盛り込んだ。東京電力福島第1原発事故は、原発がひとたび事故を起こせば取り返しがつかない現実を突きつけた。その教訓を生かす方策が見当たらない。再生可能エネルギーが急速に普及する中、安全基準の強化でコストが高騰した原発は、もはや有望なビジネスでもない。国民の不安に応えようとせず、世界の潮流に逆らって原発を推進するのは理解に苦しむ。安倍晋三政権や経済産業省は再稼働推進の姿勢を取るが、経団連の提言に乗って原発回帰を加速させることがあってはならない。提言は、温室効果ガスを排出する火力発電への依存度が8割を超え、再生エネで賄うにも限界があり、原発が不可欠だとした。政府のエネルギー基本計画で2030年度の原発の発電割合を20~22%とする目標を掲げたことにも触れ、「廃炉が進めば達成が困難」と再稼働の必要性を訴えた。だが計画は原発依存度を低減すると明記している。目標達成のために再稼働するのは本末転倒だ。原発の大きな問題は使用済み核燃料の行き場がないことである。核燃料サイクルは事実上破綻し、高レベル放射性廃棄物の処分場選定も進んでいない。福島の事故原因は解明されておらず、廃炉のめども立たない。こうした負の側面をどう克服するか説明を尽くさず、再稼働や新増設を訴えるのは無責任である。提言を主導したのは原発メーカー、日立製作所出身の中西宏明会長だ。中西氏は「再稼働をどんどんやるべきだ」と発言し、原発と原爆が混同されて再稼働が進まないとの認識を示したこともある。日立は英国の原発建設計画を凍結したばかりで、原発ビジネスの行き詰まりを中西氏は分かっているはずだ。経団連会長の立場を利用して原発産業を守ろうとしているとの疑念も招きかねない。経団連が取り組むべきは、再生エネを有効活用して原発依存を脱する道筋を示すことだ。政治への発言力をそのためにこそ生かさなければならない。

*1-2:https://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2019041590135634.html (東京新聞 2019年4月15日) プール核燃料、搬出開始 福島第一事故8年 3号機566体
 東京電力は十五日、福島第一原発3号機の原子炉建屋上部にある使用済み核燃料プールから、冷却保管中の核燃料の取り出しを始めた。事故から八年、炉心溶融(メルトダウン)を起こした1~3号機でプールからの核燃料取り出しは初めて。現場は放射線量が高く人が長時間いることができない。ほとんどの作業が遠隔操作であるため、難航することが予想される。3号機プールには、使用済みと未使用の核燃料計五百六十六体を保管。使用済み核燃料は長期間、強い放射線と熱を発するため、水中で冷やしている。東電は四月中に未使用の七体を取り出し、六月下旬から作業を本格化させる方針。核燃料は敷地内の共用プールに移す。取り出しを終えるまでに約二年かかる見込み。作業は午前八時半すぎに開始。建屋から五百メートル離れた免震重要棟内の操作室で、作業員がモニターの画面を見ながら取り出し機器を操作した。燃料取扱機で核燃料を一体(長さ四・五メートル、十五センチ四方、重さ約二百五十キロ)ずつ持ち上げ、水中に置いた専用容器(重さ約四十六トン)に七体入れる。一体を入れるのに二、三時間かけ、この日は午後八時まで作業する。一体目は、一時間半ほどで容器に入れることができた。その後、容器をクレーンで三十メートル下の一階に下ろし、トレーラーで共用プールに運び出す予定。3号機の核燃料取り出しは当初、二〇一四年末にも始める計画だったが、高線量が作業の壁となった。外部に放射性物質が飛び散らないよう、建屋上部にドーム型カバーを設置。東電は昨年十一月に取り出しを始める計画を示したものの、クレーンなどの機器に不具合が相次ぎ、点検や部品交換のため延期していた。4号機では、一四年末にプールから核燃料千五百三十五体を取り出し済み。地震発生時は定期検査で停止中で原子炉内に核燃料がなく、炉心溶融を免れた。水素爆発で建屋上部が吹き飛んだが線量は低く人が中で作業して一年程度で終えた。
◆解説
 福島第一原発3号機のプールからの核燃料取り出し作業は、同じく炉心溶融が起きた1、2号機の核燃料取り出しの行方を左右する。いずれも建屋内の放射線量が高く、人が中で長時間作業できず、遠隔操作で進めざるを得ないからだ。3号機プール周辺の線量は毎時五四〇マイクロシーベルトで、二時間で一般人の年間被ばく線量限度に達するレベル。プールに残る細かな汚染がれきを、アーム型機器で取りながらの作業だ。クレーンなどでトラブルが起きれば、人が建屋内で修理しなければならない。これら未経験の作業をこなし、ノウハウを積む必要がある。東電は1、2号機のプール内の核燃料取り出しを二〇二三年度に始める計画を立てたが、両号機は3号機よりも線量が高く厄介だ。特に1号機は建屋最上階に大きながれきが積み重なり、原子炉格納容器上のコンクリート製の巨大なふたがずれ落ちている。ふたのずれを元に戻さなければ、3号機同様の取り出し機器は設置できない。1号機は三百九十二体、2号機は六百十五体の核燃料がプールに残る。これらを高台の共用プールに移すことはリスク軽減のため不可欠。ただ3号機の作業次第では、1、2号機の取り出し計画の大幅な見直しが迫られる。

*1-3:https://digital.asahi.com/articles/DA3S13975075.html (朝日新聞 2019年4月12日) 日本の水産物、禁輸容認 韓国が逆転勝訴 WTO上級委
 韓国が東京電力福島第一原発事故の被災地などから水産物の輸入を全て禁止していることについて、世界貿易機関(WTO)の紛争を処理する上級委員会は11日、判決に当たる報告書を公表した。韓国に是正を勧告した第一審を大幅に修正して禁輸を容認し、事実上、日本の逆転敗訴となった。これで韓国の禁輸はしばらく続くとみられる。勝訴を追い風にほかの国・地域にも輸入規制の緩和を求める予定だった日本の戦略が狂う可能性が高い。日本政府関係者によると、上級委の報告書は、第一審の紛争処理小委員会による判断の主要部分が「誤りだった」と認定。その上で、福島など8県の全水産物の禁輸を「恣意(しい)的で不当な差別」として是正を求めた判断の主要部分を覆したという。上級委が第一審の判断を変えるのは異例だ。WTOの紛争処理は二審制のため、これで禁輸を容認したWTOの判断が確定するとみられる。ある政府関係者は「日本にとって残念な結果」と話した。韓国は2013年9月、同原発から汚染水が流出しているとして輸入規制を強化した。青森、岩手、宮城、福島、茨城、栃木、群馬、千葉の8県の水産物については輸入禁止の対象を一部から全てに拡大した。これに対し日本は15年8月、「科学的な根拠が無い規制だ」とWTOに提訴。18年2月、紛争処理小委員会では日本が勝訴したが、韓国が「国民の健康保護と安全のため」として上級委に上訴していた。今回の上級委の報告書は30日以内に正式に採択される見込みだ。農林水産省によると、原発事故後、一時54カ国・地域が日本産食品の輸入を規制した。撤廃が進む一方、いまも23カ国・地域で規制が続く。政府は、規制緩和の見通しを示さず、逆に規制を大幅に強化した韓国を提訴したが、ほかは訴えていない。政府は、今回の上級委の報告で勝訴を確定した上で、ほかの国・地域とも規制撤廃に向けた交渉を加速させていく戦略を描いていた。
■韓国による日本食品輸入規制をめぐる動き
<2011年3月> 東日本大震災で東京電力福島第一原子力発電所の事故が発生
<13年5月ごろ> 原発事故を理由とした輸入規制が韓国を含む54カ国・地域に拡大
<9月> 韓国が輸入規制を強化。8県産の全水産物を禁止に
<15年6月> 日韓の二国間協議が平行線に
<8月> 日本がWTOに提訴
<18年2月> WTO紛争処理小委員会(一審)で、日本が勝訴
<4月> 韓国が上級委員会(二審)に上訴
<19年4月> 上級委員会が報告書を公表

<再生医療は時間をかければ犠牲者が増えること>
*2-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190220&ng=DGKKZO41468640Z10C19A2EA1000 (日経新聞社説 2019年2月20日) 再生医療の普及焦らず丁寧に
 iPS細胞などを使う再生医療で病気やけがを治す試みが大学病院などで相次いでいる。期待が大きい一方、実用化のペースが速すぎると危ぶむ声もある。医師も患者も焦ることなく安全重視で丁寧に治療法を確立してほしい。厚生労働省の専門部会は18日、他人のiPS細胞をもとにした神経細胞で脊髄損傷の患者を治療する計画を、承認した。慶応大学が世界で初めて実施する。iPS細胞による再生医療は、2018年に京都大学のパーキンソン病治療や、大阪大学の心臓病治療の計画も認められた。理化学研究所などは神戸市で実施した目の難病のiPS細胞治療を、全国の病院に広げる計画だ。他の細胞を使う再生医療も実用化が進んでいる。骨髄液から得た細胞による脊髄損傷治療や、足の筋肉の細胞をもとにした心臓病治療の薬が、既に医薬品医療機器総合機構から「条件付き・期限付き承認」を取得している。この制度では、少人数の患者で安全性と一定の効果を確認した段階で市販を認め、その後は使いながら効果を確かめていく。量産が難しい細胞を使う薬の承認に適しており、新しい治療法を素早く患者に届けられる利点がある。今後、再生医療は条件付き・期限付き承認が主流になろう。ただ海外からは、臨床応用を急ぎすぎではないか、との声も出ている。英科学誌「ネイチャー」は最近、同制度による承認はデータの裏付けが不十分で慎重さに欠ける、とする批判記事を載せた。実際には、市販から数年間すべての利用データを集めて安全性と有効性を詳しく調べ、結果を公表する仕組みである。厚労省や開発者は説明を尽くし、理解を促していかなくてはならない。過去の臓器移植や遺伝子治療の例からもうかがえるように、いったん不信感が広がると先端医療が再び受け入れられるのは容易でない。再生医療が普及期に向かう今こそ、多くの人の納得が得られるよう最大限の努力が必要だ。

<腎臓病について>
*2-2:https://digital.asahi.com/articles/ASM3X53TKM3XULBJ00K.html?iref=comtop_8_03 (朝日新聞 2019年3月28日) 透析中止で死亡、病院「問題なし」 判断は正しかったか
 昨年、当時44歳の女性が人工透析をやめ、公立福生(ふっさ)病院(東京都福生市)で亡くなった。病院は28日、初めて報道各社の取材に応じ、女性の意思を十分確認した上で中止し、手続きなどに問題はなかったとの認識を示した。患者が透析中止を希望した場合、医療者はどのように対応すべきか。今回の件をふまえて学会で議論している。治療にあたった外科医(50)と松山健院長らが女性の治療経過を説明した。説明によると、糖尿病による腎不全や心筋梗塞(こうそく)などを起こし、人工透析をしていた女性は、左腕につくった透析用の血液の出入り口(シャント)の状態が悪化。血管の状態も悪く、新しくシャントをつくるのは難しい状態だった。昨年8月9日、女性はシャントが閉塞(へいそく)し、同病院を受診。外科医は首周辺に管を通す透析治療を提案したが、女性は「シャントがだめだったら透析をやめようと思っていた」と話し、拒否した。女性は透析の針を刺す際の痛みがつらいなどと語ったという。外科医は透析をやめると2週間くらいで死に至ると説明、女性は「よくわかっている」と答えたという。女性と女性の夫、外科医と看護師、ソーシャルワーカーを交えて再度話し合ったが、女性の意思は変わらず、夫も女性に同意した。外科医は透析からの「離脱証明書」に女性に署名してもらった。翌10日も、看護師、センターの内科医、ソーシャルワーカーが女性と夫に確認したが、意思は固かった。女性は14日に呼吸が苦しくなり入院。16日未明、呼吸の苦しさや体の痛みを訴え、看護師に「こんなに苦しいなら透析した方がいい。撤回する」と発言したことが記録に残っている。しかし、16日昼前に女性の症状が落ち着き、外科医が呼吸の苦しさや体の痛みが軽減されればよいか、それとも透析の再開を望むかと尋ねると、「苦しさが取れればいい」と答えたという。外科医は女性の息子2人にも説明して理解を得たうえで鎮静剤を増やし、女性は同夕に亡くなった。
●外科医「特異なケースだが丁寧に対応」
 外科医は「透析を続けるための措置を拒否したために透析が出来なくなった特異なケースだが、丁寧に対応し、出来ることはやらせてもらった」と述べた。今月6日に病院に立ち入り検査をした東京都は当初、外科医が透析をやめる選択肢を示した、と説明していた。この点について外科医は「中止の選択肢は示していない」と否定した。透析中止の判断をめぐり、都は、日本透析医学会の提言を踏まえて第三者も入る倫理委員会に諮るべきだったのに行わなかったとして、病院を口頭指導した。しかし、松山院長は「病気の進行や患者の透析離脱の強い希望などがあった。学会の提言には違反していない」と述べ、対応に問題はなかったとした。都の調べで、同病院では女性のほかに透析を始めなかったり、中止したりした患者20人が亡くなったことが判明している。病院側は「確認が取れていない」として説明しなかった。病院側の弁護士は、取材対応が問題の表面化から3週間以上後になったことについて、学会の調査や見解を待っていたため、などと説明した。都のほか、日本透析医学会と日本腎臓学会も調査を進めており、近く指導したり、見解を示したりする予定だ。
●「つらさ和らげる努力」必要
 日本透析医学会は2014年、どのような場合に透析を中止するかについての提言を示した。中止の検討対象を、がんを併発するなど終末期の患者に限定。終末期でない患者が強く中止を望む場合は、透析の効果を丁寧に説明し、それでも意思が変わらなければ判断を尊重するとしている。また、患者の意思が変われば透析を始めたり、再開したりすることも盛り込んだ。木澤義之・神戸大特命教授(緩和支持治療科)は、「病院側の説明では、本人の意向を何度も確認し、誠実に対応した印象だ」と話す。その上で、透析中止の判断後の重要性を指摘する。「がん以外の他の病気では家族への対応が不十分な場合も少なくない。今回、適切な苦痛緩和や家族の十分なケアが行われたのかという視点での検討も必要だ」と話す。JCHO(ジェイコー)千葉病院(千葉市)の室谷典義院長も「つらさを和らげる努力をどれだけしたかが大切だ」と指摘する。「つらさから逃れるために鎮静剤を使って結果的に患者が亡くなることはあるが、末期腎不全の患者の苦痛は透析をすることで和らぐことも少なくない」と話す。人工透析は週2~3回、1回で4~5時間かかり、身体的にも精神的にも負担が大きい。少数だが、脚の血管が詰まり透析の度に激痛が走る例もある。透析開始年齢が平均約70歳と高齢化して合併症を持つ人も少なくない。このため、透析をしたくない、やめたいという患者もいる。だが、多くの場合透析をすれば、何年も生きることができる。藤田医科大の稲熊大城教授(腎臓内科)は「心臓などに問題がなければ、透析を始めれば、その時点での平均余命の半分は生きられる」と説明する。70歳男性なら7年超にあたる。透析をしながら旅行やスポーツなどを楽しむ患者も少なくない。透析医学会は25日、透析をしているだけでは終末期に含まないとの見解を示した。患者の命にかかわる透析の中止などについては、慎重な検討が必要だ。清水哲郎・岩手保健医療大学長(臨床倫理学)は「方針決定には本人の意思の尊重が大前提だが、医学や生活への影響についての知識が不十分なままでの意思決定は必ずしも本人にとって最善とは限らない」と話す。患者が透析で余命が何年も見込めるのに透析を望まない場合や、透析の実態や費用などについて誤解している場合は、医療従事者は透析の効果やリスク、公的助成などについて十分に患者に説明し、理解してもらうことが欠かせない。清水さんは「医療従事者も含めて本人やチーム全体が合意に至らなければ、本人の人生観や価値観を踏まえた上で、何度も話し合いを繰り返すことが大切だ」と強調する。
●透析治療をめぐる女性患者(44)の経緯
1998年      糖尿病の指摘を受ける。その後、治療を始める
2007年      心筋梗塞(こうそく)で、東京都内の病院で治療
2015年12月   透析治療で通院していたクリニックの紹介で、福生病院を初めて受診
2018年 8月9日 透析に使うシャントが詰まり、福生病院を受診。女性は透析治療をしない意思を病院に告げる
       14日 福生病院に入院
       16日 女性は苦しくなり透析再開を希望。病院側は、女性が落ち着いたときに改めて意思を確認し、透析を再開しないことを確認。女性は夕方に死亡
2019年 3月6日 東京都が病院に立ち入り検査を実施
※福生病院の説明をもとに作成

*2-3:https://digital.asahi.com/articles/ASM266X2RM26UBQU01B.html (朝日新聞 2019年2月7日) ラットの体内にマウスの腎臓 ヒトの再生医療応用に期待
 ES細胞(胚(はい)性幹細胞)を使い、ラットの体内に別の種であるマウスの腎臓を作ることに、自然科学研究機構や東京大らのグループが成功した。将来的に、移植用のヒトの臓器を動物の体内で作る研究に応用したいという。研究成果は6日、ネイチャーコミュニケーションズに掲載された。自然科学研究機構生理学研究所の平林真澄准教授らのグループは、腎臓を作るのに不可欠な「Sall1」という遺伝子をなくした状態にしたラットの受精卵をつくり、そこにマウスのES細胞を注入。生まれたラットの体内に別の種であるマウスの細胞に由来する腎臓を作った。この遺伝子は他の臓器が機能するのにも必要なため、生まれたラットの多くは数時間しか生きられなかったという。今回のように、本来臓器ができる場所に空きを作り、ES細胞やiPS細胞などの多能性幹細胞由来の臓器を作る方法を応用し、将来的にヒトの臓器をブタなどの動物の体内で作ろうとする研究が進められている。今回の成果は「腎臓という大型主要臓器の再生に、世界で初めて成功した」としている。同グループは、膵臓(すいぞう)がないラットの体内でマウスの膵臓を作り、糖尿病にしたマウスに移植することに成功している。腎臓は血液中の老廃物を濾過(ろか)し、体の外に出す機能を持つ。慢性腎不全で透析治療が必要になった際、根本的な治療は腎移植だが、ドナー不足のため移植を受けられる患者は希望者の1~2%という。平林さんは「将来的にこの方法でヒトの腎臓を作り、移植で実用できる可能性を示せた」と話す。

*2-4:https://newswitch.jp/p/15569 (ニュースイッチ 2018年12月10日) “ミニ腎臓”作製成功、実用化へクラウドファンディング
 徳島大学の安部秀斉准教授らは、腎臓を形成する複数の細胞を混合する共培養により、生体に近い腎臓組織の特性を持った立体的な組織様構造体「KLS」の作製に成功した。KLSは24時間の培養で作製可能で、尿を濾過する糸球体と糸球体を保護する細胞「ポドサイト」も再現していた。均質なミニ腎臓を低コストかつ短期間で作製が可能になり、創薬への活用が期待される。実用化に向け、不特定多数から資金を集めるクラウドファンディング(CF)を通じて資金調達する。こうしたバイオ系の創薬技術でCFを実施するのは珍しいという。KLSは、腎臓の細胞3―6種類を3次元的に共培養して作製する。培養中に細胞は自然に集まって丸い構造をとる。作製したKLSは、糸球体とそれを保護する重要な組織であるポドサイトを有していた。また、発現している遺伝子を調べると生体内の腎臓の細胞と同様であった。KLSをマウスの皮下に移植すると血管の管腔構造ができたことから、生体内に近い培養条件でKLSを作製すれば血管の構造も作れる可能性も示された。慢性腎不全で新たに人工透析を受ける患者は日本国内で毎年4万人と言われる。高齢化に伴って腎機能は低下する傾向にあり、透析に移行する前に使える治療薬の開発が求められている。現在、創薬には高速で化合物の評価ができる「ハイスループット」という手法が用いられるが、これには実験用の均質な細胞や組織が大量に必要となる。KLSは分化細胞から作るため品質にばらつきが少なく、わずか24時間でできるため低コストで大量に製造できる。CFを通じて調達した資金はKLSの有用性を示すデータを取得するための実験や、KLSの実用化に向けたベンチャー設立に充てる。国の補助金の獲得を待たず、実用化を加速する。目標金額は数百万円規模と低めに設定する。多くの人に技術を認知してもらい、実用化へのアイデアを募る狙いもある。

<白血病の治療>
*3-1:http://www.tokyo-np.co.jp/article/living/life/201902/CK2019021902000181.html (東京新聞 2019年2月19日) 池江選手白血病公表 骨髄移植ドナーに関心 適合でも実現6割
 競泳女子の池江璃花子選手の白血病公表後、骨髄移植のドナー(提供者)登録に関心が集まっている。ただ、ドナーの辞退などもあり移植が実現するのは、六割程度。ドナーになれるのは五十五歳までで、若い世代を増やすことも急務となっている。日本骨髄バンク(東京)によると、登録できるのは、十八~五十四歳の健康な人(提供は二十~五十五歳)で、体重制限もある。献血ルームや保健所などで受け付け、約二ミリリットルを採血。後日、型が患者と適合すると、候補者に選ばれる。健康の確認検査などで計四回医療機関に行き、家族同席で最終同意書に署名した後は撤回できない。骨髄は全身麻酔で採取する。採取部位の痛みや発熱、まれにしびれなどの合併症が出ることがあり、最高一億円の補償制度がある。二〇一七年三月までに実施された二万二百六十六件のうち、入通院して保険金が支払われたケースは百七十一件(0・8%)。いずれも回復している。移植を待つ患者は昨年末現在、二千九百三十人。登録者は約四十九万人で、適合率は95%になったが、移植できたのは57%。健康上の理由や、仕事などで辞退したり、連絡が取れなかったりするドナーも少なくない。登録者の半数が「定年」に近い四十~五十代で、ドナー不足は続いている。
<骨髄移植> 白血病などの患者に、ドナーの骨髄液を点滴し、造血機能を回復させる治療。白血球の型はきょうだい間で4分の1、他人では数百から数万分の1の確率で一致するとされる。池江選手は骨髄移植が必要なケースかは、明らかになっていない。
◆命の重みを知り、大きな達成感 「体験に感謝」
 東京都の田中紀子さん(54)=写真=は7年前、骨髄を提供した。1995年にドナー登録し、忘れかけていた2012年夏。日本骨髄バンクから、白血球の型が一致する患者が見つかったと連絡を受けた。家族同席で弁護士から全身麻酔による事故の確率や採取後の痛みなどについて詳しく説明され、同意書に署名。「もうキャンセルできない」と念を押された。ところが、入院前日に、療養中の義父が死去。葬儀の準備で慌ただしい中、義理の母や姉が「生きている人を助けることを優先して」と背中を押してくれた。入院翌日に採取。マスクを着けられ、再び名前を呼ばれたときには終わっていた。採取した腰の部分は内出血で変色し、強く痛んだが、1週間で治まった。体験を通じ、命の重みを知り、大きな達成感を得た。知らないだれかを救うために仕事を調整し、家族を説得し、義父の葬式に出ないことを決めた。「困難に挑戦する自分を好きになれた。ドナーは患者さんのためだけでなく、むしろ自分のためにある」。提供相手は「九州在住の男性」とだけ知らされ、バンクを通じ、家族から感謝の手紙が届いた。若い時期にギャンブル依存の問題を抱えていた田中さんは今、「ギャンブル依存症問題を考える会」(東京)の代表として患者や家族の支援に飛び回る。その原点は「ドナー体験での達成感」という。9月でドナーの年齢上限を迎える。「夫や子どもがもし、『ドナーになる』と言ったら動揺すると思う。でも、反対はしない。自分はドナーをさせてもらい、本当に感謝しているから」

*3-2:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/340090 (佐賀新聞 2019年2月20日) 新型がん免疫製剤を了承、人工遺伝子で白血病治療
 厚生労働省の専門部会は20日、一部の白血病を治療する新型の細胞製剤「キムリア」の製造販売を了承した。人工遺伝子で患者の免疫細胞の攻撃力を高める「CAR―T細胞」を利用した国内初の治療法で、3月にも正式承認され、5月にも公的医療保険が適用される見通し。臨床試験(治験)で既存の治療法が効かない患者にも効果が得られたことから注目を集めている。
欧米では既に承認されているが、米国では1回の治療が5千万円以上に設定され、高額な費用が問題となっている。日本でも今後、価格が決定されるが、高額薬として知られるがん治療薬「オプジーボ」よりも高くなる可能性がある。

<ゲノム編集食品>
*4-1:https://www.kobe-np.co.jp/column/shasetsu/201902/0012083416.shtml (神戸新聞 2019/2/21) ゲノム編集食品/国の方針は拙速に過ぎる
 ゲノム編集された生物を使った食品の扱いについて、厚生労働省がパブリックコメントを実施している。有識者調査会が取りまとめた報告書は、開発中の大半のゲノム編集食品は安全性審査を必要とせず、国への情報提供だけで販売を認めてよいとする内容だ。厚労省は本年度中に結論をまとめ、具体的な仕組みをつくる方針を示しているが、議論が不十分で拙速に過ぎる。ゲノム編集はまだ未知の部分が大きい。なにより人が食べた場合の影響はどうなのか。審査を求める消費者団体などは、調査会の検討がわずか3カ月だったことを批判している。ゲノム編集食品の表示が要らない仕組みになれば、消費者に情報が伝わらず、食べる人の知る権利、選ぶ権利を奪うことになりかねない。ゲノム編集食品は、遺伝子を切断する酵素を使って効率よく改変できる。従来の遺伝子組み換え技術に比べて開発期間が大幅に短縮される。肉付きのいいマダイや収量の多いイネなどが開発されている。報告書では、その生物にない遺伝子を導入する場合は、遺伝子組み換え食品と同様の安全性審査が必要と判断した。一方、特定の遺伝子を壊した食品は審査を不要とした。国への情報提供は問題発生時の対応などのためで、法的な義務化はしない。従来の品種改良との違いがあまりないとの推論が根拠だが、そう言い切れるのか。編集された細胞ががん化する恐れが高まるなど、新たな報告や知見がもたらされている。一度に多くの遺伝子を改変した際のリスクも不透明だ。自然界に拡散した場合、悪影響が判明しても取り返しがつかない。審査も表示もない緩い規制の下で生産が広がり、予期せぬ問題が起きたら、誰がどう責任をとるのか。影響が予測しきれない新しい技術である。人の健康と環境に関わる問題として、安全を最優先に考えるべきだ。欧州連合(EU)では、予防原則の立場から遺伝子組み換え作物として規制すべきとの司法判断が下されている。各国の状況も参考にしながら、国会でもしっかりと時間をかけて議論する必要がある。

*4-2:https://www.agrinews.co.jp/p47358.html (日本農業新聞 2019年4月13日) ゲノム編集食品 予防原則で安全徹底を
 生物の遺伝子を効率的に改変できるゲノム編集。この技術を使って品種改良した農水産物の多くは厳格な安全性審査をせずに、今夏にも食品として販売できる見通しとなった。安全性について不安視する消費者は少なくない。買う側の選ぶ権利を保障するためにも、食品表示は不可欠である。ゲノム編集は新しい技術で、もともとある特性を消すため遺伝子の一部を削ったり、他の生物の遺伝子を導入したりする。目的の遺伝子をピンポイントで改変でき、開発期間を大幅に短くできるのが特徴。交配による育種や遺伝子組み換え(GM)技術に比べて簡単で間違いが少なく、汎用(はんよう)性がある。農業分野でも多収性の稲や日持ちするトマトなどの研究が進んでいる。農水省は2019年度から5年間で、ゲノム編集作物を五つ以上開発する「次世代バイオ農業創造プロジェクト」を始めた。19年度当初予算で1億100万円を計上。需要が見込め、収益性の高い品種をつくるのが目的だ。開発に取り組む研究機関を公募する。厚生労働省は報告書を3月にまとめ、開発者側は国に届け出れば販売してもよいとした。ただ届け出に法的な義務はなく、制度の実効性に疑問を投げ掛ける向きもある。安全性の審査が必要なのは新しい遺伝子を追加する場合だけ。もともとの遺伝子を取り除くなど改変する場合は不要とした。「従来の品種改良や自然界で起きる変化と区別がつかない」(同省)からだ。この報告書案について一般に意見を募集したところ、約700件が集まった。大半が「長期的な検証をしてから導入すべきだ」「自然界で起きる突然変異と同じとは思えない」など、安全性を懸念する声だった。この声は無視できない。「遺伝子」という命に関わる新技術の開発で賛否が分かれるのはやむを得ない。問題は、このような国民生活に影響を及ぼす重要課題について議論が不十分な上、1年足らずで方針をまとめてしまう拙速さにある。これは主要農作物種子法(種子法)が廃止されたのと同じ構図だ。作る側、食べる側の不安に応えようとしない国の姿勢が問われている。日本と同様、米国も技術開発や商品化の速度に法整備が追い付かない中、欧州司法裁判所は「自然には発生しない方法で生物の遺伝子を改変して得られた生物はGMに該当する」と判断した。疑わしいものは規制するという予防原則の立場を崩していない。生産現場への影響についての実証も十分とはいえない。技術を通して多国籍企業による種子の独占、支配が進むのではないかという見方もある。食の安全についてどう考えるか。いま一度、議論をする必要がある。その上で、消費者が食べる、食べないを選択できる表示を求めたい。これは国民の権利である。

<事業承継について>
*5-1:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO34657360X20C18A8EA2000/ (日経新聞 2018/8/27) 事業承継税制とは 孫まで円滑に引き継ぎ
▼事業承継税制 オーナー経営の中小企業の株式を後継者に移して代替わりをしようとすると、オーナーの生前なら贈与税、死後なら相続税が発生する。日本の産業を支える中小企業の技術・ノウハウが失われるのを防ぐには事業承継を円滑に進める必要があり、政府は2018年度に「事業承継税制」を大きく改正した。改正では納税が猶予される割合が8割から全額になり、対象となる株式も発行総数の3分の2から全てに拡大された。承継時点での税負担をゼロにすることが可能になっている。孫の代まで経営を引き継げば、猶予されていた税負担は免除される。優遇を受けるには都道府県知事に承継計画を提出しなければならないが、改正前に年500件ほどだった利用件数は大幅に増えると見込まれている。一方、法人を設立せず商売をしている個人事業主は長らく、商売用の土地の相続時に大幅に税額を減らす「小規模宅地等の特例」を活用してきた。ただ店舗に使う建物や設備は優遇対象外だったため、個人事業主でつくる納税者団体などが、対象に含めるよう求めてきた経緯がある。

*5-2:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO38283570Y8A121C1MM8000/ (日経新聞 2018/11/28) 個人事業主の事業承継支援へ税優遇 政府・与党検討
 個人事業主が事業承継をしやすい環境をつくるため、政府・与党は新たな税優遇制度を作る方針を固めた。子供が事業を継ぐとき、土地や建物にかかる贈与税などの支払いを猶予する「個人版事業承継税制」を作る。2025年までに70歳を超える個人事業主は約150万人いるとされる。引退期を迎えた個人事業主が税金を理由に廃業を迫られるのを防ぐ狙いだ。与党の税制調査会で制度の詳しい設計を議論したうえで、2019年度の税制改正大綱に新制度の創設方針を盛り込む方向だ。新制度の主な対象になるのは、地方の旅館や町工場、代々続く酒蔵などを家族経営しているような個人事業主。土地や建物などを含めて跡継ぎに事業承継する際は、控除を超える分に生前なら贈与税、死後なら相続税がかかる。政府・与党が検討している新制度は、土地や建物、設備にかかる税金の支払いを猶予する仕組み。10年程度の時限的な制度にすることで調整している。中小企業庁によると、個人事業主全体のうち相続税が実際にかかりそうなのは1割程度を占める。新制度が悪質な節税に利用されることを防ぐ対策も同時に設ける。個人事業主が事前に事業承継計画を都道府県に提出し、認可を受けることを条件にする。法人と違い、個人事業主は私用と事業用の資産の線引きが曖昧。資産の切り分けを第三者が確認することや、跡継ぎが承継後すぐに事業をやめないことを義務づける案を検討する。税優遇が過剰にならないようにもする。個人の土地の相続では今も「小規模宅地特例」と呼ばれる税優遇制度がある。土地の価格を8割減額して相続税を減らせる仕組みで、新制度の創設後はこの特例は税優遇を受けにくくする。現在は事業用の土地を買うために借金をした場合に私用の資産と相殺して節税したり、跡継ぎでない親族まで税優遇のメリットを受けたりできる。政府・与党は条件の厳格化でこうした問題点を解消し、個人事業主への税優遇が過剰にならないよう配慮する方針だ。

<地銀の役割と今後の展望>
*6-1:http://qbiz.jp/article/150743/1/ (西日本新聞 2019年3月23日) 地銀引き締め、再編頼み 金融庁監視強化 改善不十分で退場も 地元密着合理化に限界
 金融庁が地方銀行の監督指針を見直し、収益が低迷する地銀の逃げ道を断って経営改革を促す方向へかじを切る。人口減少や超低金利という「構造不況」が続く中で、特効薬のような事業戦略は見当たらない。圧力が行き過ぎれば、店舗の統廃合など無理なリストラで金融サービスが損なわれ、地域経済に禍根を残す懸念もはらんでいる。店舗などの減損処理で計約6800億円を損失計上−。みずほフィナンシャルグループ(FG)が6日に発表した2019年3月期連結業績予想の下方修正を、ある地銀幹部は「衝撃だった」と振り返る。頭をよぎったのは昨年5月、金融庁から業務改善命令を受け、収益力の抜本改革を迫られた福島銀行の事例だ。福島銀は収益力が下がった店舗の評価を低く見直す減損処理などにより、18年3月期決算で7年ぶりの赤字に転落した。処理の背景には、金融庁検査による厳しい追い込みがあったとささやかれる。「みずほFGと同様の損失処理を迫られれば、いきなり赤字に陥りかねない」。別の地銀幹部も首筋が寒くなった。金融庁は昨年、地銀が1行しかなくても単独での存続が難しい地域が青森、富山、島根など23県あるとの試算を公表。収益改善が見込めない地銀の市場からの「退出」に関する制度見直しにまで言及した。「環境を言い訳にする経営者は失格だ」。幹部は監督指針見直しの先に地銀の「廃業」さえも見据えている。昨年4月以降、新潟県や三重県、関西圏で地銀再編が進んだ。業界の耳目を集めたふくおかフィナンシャルグループと長崎県の十八銀行の再編は、公正取引委員会の審査を巡り混迷したが、ようやく来月実現する。政府は経営統合基準を緩和してさらに再編を促す構えだが、もはや再編相手をつかまえる体力すらないほどに弱体化した地銀もある。店舗や人員配置を大胆に見直して経営改革を急ぐメガバンクとは違い、過疎地も含めてネットワークを張り巡らせ、地域経済や雇用を支える役割を担う地銀の多くは、激しいリストラには二の足を踏まざるを得ないのが実情だ。金融庁が業務改善命令を連発すれば、経営トップの辞任ドミノが起こる可能性があるが、再建が進む保証はない。
*金融庁検査:金融機関が健全で適切な業務運営をしているかを金融庁と地方の財務局が協力して調べる仕組み。大手銀行や地方銀行、信用金庫などが対象。本支店への立ち入りに加え、書類提出や聞き取りなどを組み合わせる。内部管理体制や法令違反の有無を厳しくチェックする。人口減少に伴う地銀の存続可能性も重視している。

*6-2:http://qbiz.jp/article/150744/1/ (西日本新聞 2019年3月23日) 金融庁、地銀の監視強化 収益低迷に改善命令 月内にも指針
 金融庁は地方銀行など地域金融機関への監督指針を見直し、監視を強化する。「自己資本比率」の水準など財務の健全性を重視する考え方から、将来の収益力など事業の「存続可能性」の向上に軸足を移す。貸し出しなどの本業が赤字で業績が低迷する地銀に対し、店舗や人員の縮小などの速やかな改革を求める。月内にも公表する。今夏、問題があるとみられる地銀への検査に着手する見通しで、対応が遅れれば業務改善命令を出し、経営責任を明確化する。地銀の経営環境は、人口減少や日銀の大規模金融緩和に伴う超低金利の長期化で、収益力低下に歯止めがかからない。金融庁は厳しい経営環境でも存続できるビジネスモデルを構築するよう求めている。従来の監督指針では、不良債権問題を念頭に現在の自己資本比率が重要な指標だったが、新指針では将来の自己資本比率や収益力に着目する。自己資本比率が財務の健全性を示す国内基準の4%を上回っていても、本業で赤字を出し続けている地銀には、経営の改善を求める。地域の人口や企業数の増減、融資先の動向について分析し、経営陣から経営計画などについて聞き取り調査を行った後、立ち入り検査の必要性を検討する。金融庁が2018年3月期決算を分析したところ、全国の地銀106行のうち約半数の54行が本業で赤字になり、うち23行は5期以上連続で赤字だった。ある金融庁関係者は「日銀の超低金利政策の終わりは見通せない。経営者は背水の陣に立つ覚悟で改革に挑むべきだ」と強調する。金融庁は指針の見直しを前に一部の地銀に立ち入り検査を実施。福島銀行(福島市)に収益力強化を求める業務改善命令を出したほか、島根銀行(松江市)への対応も検討している。
   ◇   ◇
●生き残り模索、九州でも 
 九州の地方銀行も収益環境は厳しさを増している。2018年9月中間決算では九州の18行・グループ中、13行・グループが最終減益となった。各行とも店舗、人員縮減によるコスト削減や業務効率化に取り組むが、抜本的な改善は難しい。今回の指針見直しは、地銀に再編を迫る「布石」になる可能性もある。西日本シティ銀行(福岡市)は昨年1月、業務見直しと効率化を図る「業務革新室」を設置した。20年までに業務効率化などで事務量の3割を削減、現金自動支払機(ATM)の2割に当たる300台を減らすという。ふくおかフィナンシャルグループ(FFG、福岡市)傘下の熊本銀行(熊本市)は無人の4店舗を導入。佐賀銀行(佐賀市)も福岡県内の7支店1事業所を今月中に移転統合する。ただ店舗削減などは一時的な対策で、将来的な業績向上につながるとは言えない。4月のFFGと十八銀行(長崎市)の経営統合後も、地銀再編の動きが続くとの見方は根強い。九州フィナンシャルグループ(熊本市)社長で鹿児島銀行頭取の上村基宏氏は昨年末のインタビューで「単独で生き残れる状況ではない。結論の先送りはその分後れを取ることになる」と指摘した。

*6-3:https://www.agrinews.co.jp/p47146.html (日本農業新聞 2019年3月23日) アジア2銀行と提携 輸出や海外進出支援 農林中金
 農林中央金庫は22日、ベトナムとフィリピンの大手銀行と包括的な業務提携を結んだと発表した。現地銀行ならではの情報やネットワークを生かし、農林中金として日本の農業法人などの販路開拓や、日本の食農関連企業の海外進出などを支援する。他のアジアにある複数の国の銀行とも同様の連携を始め、食農分野での海外進出・事業拡大への支援を本格化させる。農林中金は2019年度から5カ年の次期中期計画で、国内の農家所得増大などにつなげるため、アジアの食農バンクとしての機能を発揮し、アジアの成長を取り込む方向を示している。今回提携を結んだのは、ベトナム投資開発銀行とフィリピンのBDOユニバンク。農林中金は、オランダの協同組合金融機関「ラボバンク」とも既に提携。ラボバンクもアジアの情報は持っているが、現地銀行と連携することで、より地域のきめ細かい情報やネットワークが活用できる。具体的には、農業法人やJAグループ、食品関連企業に対し、現地情報の提供やビジネスマッチング、現地での協調融資、企業の合併・買収(M&A)への助言、現地通貨の供給などを目指す。例えば、農業法人などが日本産農産物の販路を探している場合は、提携銀行からの情報やネットワークを生かして売り先を見つけ、商流を構築することなどが考えられる。輸出ではJA全農とも連携。農業生産資材企業の販路開拓のための出資や企業買収、低温のまま輸送するコールドチェーン構築のための現地企業との連携への支援なども想定できるという。こうした情報を生かし、各種サービス提供を進めるため、農林中金は4月から海外展開を支援するための専門チームを立ち上げ。シンガポール支店の人員も増強する。農林中金は「現地からの日本の農業や食品に対する関心は高い。農業法人に加え、食品企業を支援することで、国内の農林水産物の消費を増やすことにつながる」(営業企画部)と説明する。

<疑問を感じる思考法>
PS(2019年4月17、18日追加):*7-1に、「①福島県産の野菜・果物・魚の放射性物質検査で、2018年度に国の食品基準(1kgあたり100ベクレル以下)を上回ったのは約1万6000点のうち0.04%の6点だった」「②福島県は原発事故のあと県産の野菜・果物・魚 の一部で放射性物質の検査を行っている」「③国の基準を超える食品は、肉類は2011年度、野菜・果物は2013年度、穀類は2015年度から出ていない」としており、*7-2は、「④WTOで敗訴したが、風評被害を広げぬようにしよう」「⑤残念だが、食の安全で消費者の関心は国を問わず極めて高い」「⑥23カ国・地域で続いている輸入規制撤廃と風評被害の払拭をねばり強く進めたい」「⑦生産者、消費者への十分な説明が必要」としている。
 しかし、このブログに何度も書いたように、このうち①③は、国の食品基準(1kgあたり100ベクレル以下)なら無害だとする科学的根拠はないため、説明もされていない。また、基準以下の場合には反応しないように測定器が設定されており、“食べる部分”とする一部を測定しているに過ぎないとも聞いているため、「安全」という方が風評にすぎない。さらに、②のように、ごく一部しか測定せずに全体を推測して安全性を強調するのはリスクが高い。
 また、⑤のように、食の安全性に関する消費者の関心が高いことを残念だとしている点は根本的姿勢が間違っており、④のようにWTOで敗訴し、⑥のように23カ国・地域で輸入規制が続いているのは「日本基準以下なら安全なのだから、外国の輸入規制の方が風評被害にすぎず、ねばり強く撤廃しよう」としている点で、科学的な説明もできないくせに傲慢極まりない。そして、生産者、消費者の方が詳しいのに、⑦のように説明不十分としている点は呆れるのである。
 なお、上記のように、「国の食品基準(1kgあたり100ベクレル)以下なら安全だから、いくらでも食べよ」と根拠も示さずに主張しながら、*7-3に書かれているように、「⑧経団連は再稼働や新増設の推進を掲げ」「⑨福島事故で表面化した原発の問題点には触れず」「⑩最大81兆円の廃炉等事故対応費を税金と電気料金で国民に負担させ」「⑪世界で斜陽化する原発産業にこだわり続け」ようとしている。残念ながら、これは客観的数字を無視して何が何でも日本の主張が正しいと信じ、メディアも加担して誤った政策につき進んで行った過去を思い出させる。
 このような中、*8のように、2018年の農林水産物は、輸出額9,068億円・輸入額9兆6,688億円・貿易赤字8兆7,620億円で、輸出額に対して輸入額が10倍という圧倒的輸入超過の状況で貿易赤字が拡大しているそうだ。値段が高くて安全性に「?」がつくのでは当然とも言えるが、解決策は国民が需要していないものを供給してそれを食べるように強制することではなく、これまで(安倍政治ではなく戦後政治)の政策の失敗を含めて悪い点を一つ一つ変えていくことしかない。なお、うぬ惚れの結果、自動車もJapan Passingが始まっており、いつまで貿易黒字が続くかわからないため、このままでは米国のように双子の赤字になる可能性が高い。



(図の説明:1番左の図のように、牛白血病が増加しており、左から2番目の図のように、日本では東日本に出ている。右から2番目の図に書かれている症状は人間の癌に似ており、1番右の日経新聞記事のように、感染症だとされているものの癌免疫薬が効くそうだ。何故か?)


  宝島2015.3.24    宝島2015.3.9      宝島2015.3.25    宝島2015.3.24

(図の説明:この記事を掲載した雑誌宝島は、「風評被害」「差別」などと叩かれて廃刊に追い込まれたが、書かれている統計データや内容は常識的だった。放射線に当たるとDNAが壊されるため、白血病や癌が増えたり、生殖細胞や胎児に悪影響を与えたりする。また、心臓病の増加も報告されており、フクイチ事故で増えた分は、本当は原発被害や原発のコストにあたる)

*7-1:https://www3.nhk.or.jp/lnews/fukushima/20190417/6050005159.html (NHK 2019年4月17日) 放射性物質 基準超の食品は6点
 福島県産の野菜や果物、魚などの放射性物質の検査で、昨年度国の食品の基準を上回ったのはおよそ1万6000点のうち6点でした。基準を超えたのはイワナとヤマメ、たらの芽でした。福島県は原発事故のあと県内でとれた野菜や果物、魚などの一部で放射性物質の検査を行っています。昨年度は492品目、1万5941点を検査し、国の食品の基準の1キロあたり100ベクレルを超えたのは0.04%にあたる6点で、10点だった前の年度に比べ、4点減りました。基準を超えたのは、福島市、伊達市、桑折町の阿武隈川水系でとれたイワナ2点とヤマメ3点、北塩原村でとれた野生のたらのめ1点でした。基準超えの食品は原発事故の直後に比べ大幅に減少していて、肉類は平成23年度から、野菜や果物は25年度から、コメなどの穀類は27年度から、国の基準値を上回るものは出ていません。県環境保全農業課は、「安全安心を確保するにはこうしたデータがベースになるので、品目や検体の数も含めてこれまでと変わらず検査を徹底するとともに正確に情報発信していきたい」としています。

*7-2:https://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2019041702000164.html (東京新聞社説 2019年4月17日) WTO逆転敗訴 風評被害を広げぬよう
 福島県産などの水産物輸入禁止をめぐる韓国との貿易紛争で日本は敗訴した。残念だが、食の安全で消費者の関心は国を問わず極めて高い。ねばり強い対応で規制撤廃と風評被害の払拭(ふっしょく)を進めたい。一審は二〇一八年二月に日本の主張を認めただけに、最終判断の二審での逆転敗訴は想定外で、産地の漁師に落胆が広がっている。経緯をたどると、一一年三月の福島原発の事故後、放射性物質への懸念から日本の水産物の輸入規制が各国に広がった。このうち韓国は、一三年九月に汚染水流出を受けて規制を強化し、福島、宮城、岩手など八県の水産物の輸入を全面禁止した。安全対策に取り組んできた日本はこれを不当として、一五年八月、世界貿易機関(WTO)に提訴していた。WTOは貿易紛争を扱う唯一の国際機関。機能の低下も指摘されるが、外務省は「中立的な専門家の判断」としている。日本の食品の安全性を否定しない一方で、韓国の主張を認めた判決をよく分析してほしい。生産者、消費者への十分な説明が必要だ。原発事故から八年。輸入規制は五十四カ国・地域から二十三に減った。勝訴をてこに規制撤廃と輸出拡大を目指した政府の戦略は練り直しが必要だ。養殖ホヤの生産量全国一位の宮城県では原発事故前、七、八割を韓国に輸出していた。厳しい基準での放射性物質検査に協力し、規制解除を待ち望んできた生産者、産地の漁師らの落胆は察するに余りある。ただ日本でも過去、内外の食品、食物の安全性でさまざまな問題が起きている。牛海綿状脳症(BSE)では、今回とは逆に、米国から輸入禁止の条件が厳しすぎると批判を受けた。消費者が政府に慎重すぎるくらいの対応を求めるのは国ごとの面もある。ふたつ指摘しておきたい。まず、WTO改革による紛争処理機能の強化。多国間の枠組みであるWTOの権威が揺らげば、紛争は激化しかねない。二審を担当する委員七人のうち四人が空席という事態を早く解消すべきだ。そして原発事故の影響の大きさにあらためて向き合わなければいけない。輸入規制は二十三カ国・地域で続いている。風評被害を防ぎ、すべての消費国、消費者に受け入れられるには科学的なデータの蓄積と提供、丁寧で根気強い説明が不可欠となる。

*7-3:https://www.kobe-np.co.jp/column/shasetsu/201904/0012248199.shtml (日経新聞 2019/4/17) 経団連と原発/次代への開かれた議論を
 経団連の中西宏明会長がエネルギー政策の提言を発表した。自然エネルギー拡大に必要な送配電網や蓄エネ技術の開発など、重要な指摘が多数ある。ところが、肝心の原発については首をかしげる部分が多い。安全性確保や国民の理解を前提に、再稼働や新増設の推進を掲げている。だが福島事故が示したさまざまな問題に触れていないのは不自然だ。エネルギーの在り方は日本の命運を左右する。中西会長は、次代への責任として開かれた場で疑問に答え、幅広く議論してもらいたい。中西会長は年初のインタビューで、「国民が反対するものはつくれない」「理解を得るために一般公開の討論をすべき」と発言した。その後、「再稼働をどんどんやるべきだ」と積極姿勢を打ち出し、物議を醸した。経済界トップの呼び掛けに応じて、「原発ゼロ・自然エネルギー推進連盟」が公開討論を申し込んだが、経団連はずっと拒否している。今回の提言は化石燃料の依存度を下げるために原発再稼働の必要性を主張し、60年運転延長にまで踏み込んだ。中西会長は原発メーカーの日立製作所会長でもある。福島の事故で多くの人々が苦しんでいる中、原発の負の部分を語らないのは無責任ではないか。民間シンクタンクが最大81兆円とした廃炉など事故対応費は、税金と電気料金で国民が負担している。事故から8年経っても収束までの時期も費用も全く見通せない。こうした膨大な社会的費用を無視した主張は、国民の支持は得られない。もう一つ気掛かりなことは、世界で斜陽化する原発産業にこだわり続けることのリスクだ。政府が成長戦略とした原発輸出は総崩れの状況にある。巨額の安全対策費が必要で高リスクの原発と、世界の投資が集中する自然エネルギーでは競争力の差が広がり続ける。世界の潮流は自然エネルギーを中心に、蓄電池や電気自動車、住宅などをつないだ自立・分散型社会へと加速している。提言は、電気や関係業界のビジネスモデルが一変する可能性も指摘した。原発に固執せず本音で話し合ってほしい。

*8:https://www.agrinews.co.jp/p47405.html (日本農業新聞 2019年4月18日) 18年貿易赤字 農林水拡大 8・7兆円で1958億円増
 農林水産物の貿易赤字が拡大している。農水省のまとめによると2018年は、輸出額9068億円に対し、輸入額は9兆6688億円となり、貿易赤字は8兆7620億円と前年に比べ1958億円(2%)増えた。輸出額が約1000億円伸びたものの、輸入額の伸びがそれを大きく上回った。輸入額は過去最高を更新した。農産物(食品を含む)が6兆559億円(2%増)と貿易赤字の多くを占めている。ホームページで公表する03年以降で輸入額は最大。輸出額に対し、輸入額が10倍という圧倒的に輸入超過の状況だ。赤字額は林産物が1兆2182億円、水産物が1兆4879億円となっている。農産物の輸入品目を輸入額で見ると、豚肉、牛肉、トウモロコシ、生鮮・乾燥果実、鶏肉調製品、冷凍野菜が上位に並ぶ。19年は赤字幅がさらに拡大するとの懸念が強い。TPPや日本と欧州連合(EU)との経済連携協定(EPA)が相次いで発効。牛肉などの輸入が増えるなど、貿易収支悪化の懸念材料は多い。貿易協定交渉が始まった米国は、農林水産物輸入の最大の相手国。18年の輸入額は1兆8077億円で、トウモロコシや食肉が中心だ。それに対し、輸出額は1176億円にとどまる。1兆6901億円の赤字で、農林水産物全体の貿易赤字の2割を占める。

<思考するには基礎知識が必要であること>
PS(2019年4月19、20、22日追加):*9-1に、地球環境工学が専門で東大学長を勤められた小宮山氏が「①3・11以降、原発のコストが上がり、再エネは下がって逆転が早かった」「②送電線は国民が払った電気料金で整備してきたので単に電力会社のものではなく、公共事業で増強して社会の所有物にすべき」「③世界の潮流は完全に再エネシフトしており、欧州の再エネ比率は30%超、中国は25%、米国も30%程度で、日本の16%は完全に出遅れている」「④現在は、石油・石炭・天然ガスを輸入するため20兆~30兆円が海外に流れているが、再生エネで自給するようになれば、この金は国内に流れ地域の産業に変わるので地方の活性化という日本の根本的な課題の解決に繋がる」「⑤原発ゼロは必然で、再生エネ負担は後世への贈り物」と明言しておられるが、このようにわかりやすくポイントを必要十分に語れる背景には、工学・環境・政治(社会インフラ)・経済(地方活性化)などの幅広い知識と経験の裏打ちがある。
 そのような中、*9-2に、「イ. 小学6年と中学3年全員を対象として、文科省の全国学力テストが4月18日に行われた」「ロ.中3で初めて行われる英語では発信力を重視した」「ハ.国語と算数・数学は日常生活に関わる場面設定に基づく出題が中心になった」「ニ.佐賀県教育委員会は独自に小5、中1、2で国語、算数・数学の2教科のテストも実施した」「ホ.佐賀県内は前年度、小中学ともに漢字の読みや計算など基礎の正答率は高かったが、実験結果を考察するなどの応用問題を解く力に課題があった」等が書かれている。
 このうち、イについては、全国では小6と中3しか学力テストを行わないことに呆れ、佐賀県教育委員会がニのように独自に小5、中1、2でもテストを実施したことに賛成だが、思考するには理科・社会の知識も使うため、国語・算数(数学)と英語のみに限定した科目選択を行い、これだけが重要であるかのようなメッセージを与えるのはよくないと思う。また、ロのように、中3で初めて英語のテストを行って発信力を重視するというのも考え方が安易で、意味のある内容を説得力をもって発信するには背景となる知識が重要なので、小5から数国理社英の5科目はテストをして確実に身に着けさせた方が良く、そうしなければプアー日本人を生産してしまうだろう。また、ハの日常生活の場面における応用は、理科・社会・その他の知識も組み合わせて使うので意外と簡単ではなく、義務教育では幅広い基礎知識を確実に身に着ける方が重要だと考える。
 なお、地球温暖化対策に関する「パリ協定」は、このブログに記載してきたとおり、原発の欠点により、原発回帰ではなく再エネシフトを奨めている。そのため、*10-1のように、日本政府が原発を「実用段階にある脱炭素化の選択肢」などとG20サミットまでに正式決定して国連に提出するのは、ただイノベーションという言葉を繰り返しているだけで諸問題の解決はできておらず、外国の首脳はそれぞれ優秀であるため、日本政府の環境に関する知識や意識の低さをアピールして失笑を買うと思う。さらに、日本国民の金を湯水のように使うのも大きな問題だ。
 このような状況の下、*10-2のように、衆院沖縄3区と大阪12区の補欠選挙でいずれも自民党候補が敗れ、朝日新聞は、その原因を「①首相が沖縄に入らなかった」「②首相への忖度発言で塚田氏が国交副大臣を、復興に絡む失言で桜田氏が五輪相を辞任し、首相の任命責任が問われた」「③選挙期間中に首相側近が10月に予定される消費増税の延期に言及した」などとしているが、沖縄3区は米軍普天間飛行場移設に伴う名護市辺野古への土砂投入に対する批判であり、大阪12区は維新の党のこれまでの実績を評価したもので、どちらも有権者が地元を守るため地元に関する政策を判断したものであって、①②③のように、無理に安倍首相の人格や過失に問題をすりかえても当たらない。地方の有権者は、まじめに考えており馬鹿ではないのである。
  
*9-1:https://genpatsu.tokyo-np.co.jp/page/detail/969 (東京新聞 2019年3月11日) 「原発ゼロは可能だ」小宮山宏・三菱総研理事長インタビュー
 三菱総合研究所理事長の小宮山宏氏(74)は東京電力福島第一原発事故の前後に東電で監査役を務め、原子力業界を間近で見てきた。近年は再生可能エネルギーの推進を訴え、経済界に身を置きながら「原発ゼロは可能だ」と明言する数少ない一人。その真意を聞いた。(伊藤弘喜)
●3.11機に原発はコスト高く
−東電監査役時代からの考えが変わったのですか。
 あまり変わっていません。東電でも再生エネと省エネの重要性を主張し続けた。1990年から一貫して「温暖化の解決策となるエネルギー源は、再生エネと原子力しかない。ただし原子力には安全性の問題がある」と言ってきました。90年代、再生エネのコストはまだ高かった。技術的な見通しが完全には立っていなかったから。でも技術が進めば下がり、2050年ごろには安全対策でコストが上がる原子力と逆転すると思っていた。ところが3・11がきっかけとなり原子力のコストは上がり、再生エネはがんがん下がった。(逆転は)予想よりはるかに早かったです。
●送電線は公共事業で増強を
−なぜ日本で再生エネが拡大しないのでしょうか。
 背景に大手電力10社による地域独占体制がある。地域間をつなぐ送電線が細く、電力が足りなかったり余ったりした時、融通できる余地が少ないのです。送電線は誰のものか。国民が払う電気料金で整備してきたのだから、単に電力会社のものではありません。公共事業で増強し、社会の所有物にすべきです。昨年、世界で新設された発電所の70%は再生エネで火力が25%、原子力が5%。こうした傾向は近年、一定しており、世界の潮流は完全に再生エネにシフトしている。欧州では再生エネの比率は30%を超えた。中国でも25%、米国が3割ほど。日本は16%で完全に出遅れています。
●再生エネは地方を変える
−再生エネはどんな効果をもたらしますか。
 地方の活性化という日本の根本的な課題の解決につながります。今は石油や石炭、天然ガスを輸入するため20兆~30兆円が海外に流れている。再生エネで自給するようになれば、このお金は国内に流れ、地域の産業に変わります。間伐材や家畜のふん尿で発電するバイオマスの推進は、農林業の再生につながる。水が豊富な地域は水力を、風が強い地域は風力を−といった具合に、地域に合った再生エネに取り組めばいいのです。
−現状は、政府も経済界も原発再稼働に積極的です。
 20年後には原発はほとんど動いていないでしょう。新しい原発をつくるのは極めてコストが高い。長期的には、全てを再生エネでまかなうことに多くの人が合意できると思います。一番安いのだから。
●再生エネは後世への「贈り物」
−再生エネ電力を買い取る固定価格買い取り(FIT)制度は電気料金で下支えしています。それにより、国民負担が膨らんでいるという指摘があります。
 FITは再生エネを普及させるために、現世代が負担する制度です。原発が放射性廃棄物の負担を次世代に回していることとは逆の構造なのです。FITでの買い取り期間は10~20年。何万年も保管する必要がある放射性廃棄物と比べれば、FITの負担は我慢できる範囲だと思います。温室効果ガスを出さず、後世に負担を残さない「贈り物」となるエネルギー源は、再生エネ以外にありません。
【略歴】こみやま・ひろし 1944年、栃木県生まれ。東大大学院博士課程修了。工学博士。専門は地球環境工学。東大教授、東大学長などを経て、2009年から現職。09年6月~12年6月まで東電監査役。

*9-2:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/364133 (佐賀新聞 2019年4月19日) 全国学力テスト、県内は255校 中3で初の英語、発信力重視
 小学6年と中学3年の全員を対象とした文部科学省の「全国学力・学習状況調査」(全国学力テスト)が18日、一斉に行われた。中3で初導入の英語では自分の考えを書いたり話したりする発信力を重視。学習指導要領改定を踏まえ、基礎知識と活用力を一体的に問う新形式に変更された国語と算数・数学は、日常生活に関わる場面設定に基づく出題が中心となった。佐賀県内では、国公立の小中学校と特別支援学校、私立中の計255校、約1万5500人が試験に臨んだ。結果は7月に公表される。英語は「読む・聞く・書く・話す」の4技能を問い、このうち「話す」は、パソコンの画面の映像を見て英語で説明させる形式。生徒の声の録音データを基に採点を行う。テレビ局から将来の夢を聞かれたという設定で、内容を1分間考えた後に30秒で答える出題などがあった。国語と算数・数学はこれまで、基礎知識を問う「A問題」と活用力を測る「B問題」に分かれていたが、今回から統合し、活用力を意識した設問をそろえた。日常生活と結び付いた場面設定が多く、小学校国語では、畳職人へのインタビューのやりとりから自分の考えをまとめさせた。佐賀県教育委員会は独自に小5、中1、2で国語、算数・数学の2教科のテストも実施した。対象は公立の小中学校258校、約2万3千人。県教委は、7月末をめどに国から結果が届くことを受けて、前年度まで実施してきた独自の採点は行わない。県独自の調査分については6月下旬までに各学校に集計結果を送る。県内は前年度、小中学ともに漢字の読みや計算など基礎の正答率は高かった一方で、実験結果を考察するなどの応用問題を解く力に課題があった。県教委は、基礎学力の定着に向けた補充学習の実施や、家庭学習の定着に向けた手引を小中学の保護者に配布するなど五つの柱に沿って学力アップに取り組んでいる。今回の全国での参加は小学校1万9496校の約107万6千人、中学校1万22校の約104万5千人。国公立は全校、私立の参加率は50・1%だった。

*10-1:https://digital.asahi.com/articles/DA3S13985037.html (朝日新聞 2019年4月20日) 温暖化の対策案、「原発推進」鮮明 政府、国連に提出へ
 地球温暖化対策の国際ルール「パリ協定」に基づき、政府が国連に提出する長期戦略案が19日わかった。焦点の一つである原発は「実用段階にある脱炭素化の選択肢」とし、安全性・経済性・機動性に優れた炉を追求するとの目標を掲げた。政府の有識者懇談会の提言より、原発推進に前のめりな姿勢を鮮明にした。23日に公表し、国民から意見を募った上で6月に大阪である主要20カ国・地域首脳会議(G20サミット)までの正式決定をめざす。パリ協定は2015年に採択され、21世紀後半に温室効果ガスの排出を「実質ゼロ」にすることをめざしている。各国は20年までに国連に長期戦略を提出する必要がある。日本は「50年までに温室効果ガスを80%削減」との目標を掲げており、長期戦略は実現に向けたシナリオとなる。安倍晋三首相の指示で、政府の有識者懇談会が基本的な考え方を議論してきた。今月2日に公表した提言では、原発について省エネルギーや再生可能エネルギー、水素などとともに技術的な選択肢の一つとし、「安全性確保を大前提とした原子力の活用について議論が必要」だとして、推進までは踏み込んでいなかった。一方、長期戦略案では、原発を二酸化炭素(CO2)大幅削減に貢献する主要な革新的技術の一つとして取り上げ、「可能な限り原発依存度を低減する」としつつも、「安全確保を大前提に、原子力の利用を安定的に進めていく」とした。「もんじゅ」(福井県)で失敗した高速炉のほか、小型炉、高温ガス炉など具体的な技術例を挙げたうえで、「原子力関連技術のイノベーションを促進する観点が重要」とも言及した。

*10-2:https://digital.asahi.com/articles/ASM4P76P2M4PUTFK007.html?iref=comtop_8_01 (朝日新聞 2019年4月21日) 政権与党、参院選へ痛手 忖度・復興失言… 補選2敗
 衆院沖縄3区と大阪12区の補欠選挙が21日、投開票され、沖縄では野党系新顔、大阪では維新新顔が初当選し、自民党新顔がいずれも敗れた。与野党ともに夏の参院選の前哨戦と位置づけたが、政権与党は大きな痛手を受け、大阪で大敗した野党も連携が不発に終わった。2012年の政権復帰以降、国政選挙で強さを見せてきた安倍政権が補選でつまずいた。国政選挙にもかかわらず、安倍晋三首相は沖縄に入らず、大阪入りは投票前日。選挙の顔として不安を残した。「オール沖縄」や維新が、政権に対する批判票の受け皿になった形だ。新元号「令和」への好感から一部には内閣支持率が上昇した世論調査もあったが、首相らへの「忖度(そんたく)」発言で塚田一郎氏が国土交通副大臣を、復興に絡む失言で桜田義孝氏が五輪相を相次いで辞任。首相の任命責任が問われた中での選挙戦だった。大阪は維新のダブル選で圧勝した勢い、沖縄では米軍普天間飛行場移設に伴う名護市辺野古への土砂投入を強行してきた政権に対する厳しい批判の逆風にさらされた。大阪12区はもともと自民の議席のため、自民や公明の幹部は「せめて1勝」と口をそろえていたが、両選挙区とも自公協力がうまく機能しなかった。首相は投開票日前日に同じ選挙区内で異例という3カ所の街頭演説をこなしたが、自民幹部が一度は公言した公明党の山口那津男代表とのそろい踏みは実現しなかった。選挙期間中に首相側近が10月に予定される消費増税の延期に言及。政権内には、夏の参院選に合わせた衆参同日選論がくすぶる。しかし、公明は同日選に強く反対しており、自公の選挙協力がきしむ中で踏み切れるか不透明な状況だ。対する野党は、「辺野古移設反対」で一致した沖縄3区では連携を成功させた。しかし、大阪12区では共産党現職が辞職して無所属で立候補し、他党が協力する方式が不発に終わった。参院選で32ある1人区の候補者調整で、共産系候補が立候補するケースは限定的になりそうだ。

<高齢者・障害者差別から課題解決へ>
PS(2019年4月22、23日追加): *11-1・*11-2のように、「①高齢ドライバーが自動車事故を起こした」「②従って80代以上は免許返納を」「③地方では車がないと生活できない」「④犠牲者が気の毒」などという議論がよく起こるが、④だからといって、①②のように、「高齢になると判断能力が衰え、事故を起こしやすいので、80代以上は全員免許を返納せよ」というのは、「女性は運転能力がないので、女性には自動車免許を取らせない」というのと同様に属性に基づく根拠なき差別であり、人によって異なる。また、③のように、地方では車がないと生活できない上、都会でも運転が必要不可欠な場合もあるため、人権侵害にもなる。
 そして、*11-3のように、年代別の事故率は、20代・40代・30代が多く、80歳以上による交通事故は最も少ないそうで、データを読む場合は感情論に走らず、「母集団の数」「運転時間(あまり運転しない人は事故も少ないから)」などを揃えて正確に考察すべきだ。
 なお、障がい者はむしろ自動車が不可欠な場合もあるため、障がい者が運転できない自動車の構造は変えるべきであり、バリアフリーを実現するためにも自動運転や運転支援機能が重要なことは、前から指摘されていた。にもかかわらず、*11-4のように、未だに「CASEの重圧」などと記載されているのは、日本の自動車会社の決断の遅さを示しており、これについては既に進路が明確になっているため、ディーゼル車やハイブリッド車に経営資源を振り向けるよりも、EVや自動運転車に経営資源を集中した方が無駄なく競争できるわけである。
 このように、ともかく高齢者の能力を低く見たり、差別したりするキャンペーン発言が多い中、*12のように、佐賀県鹿島市に91歳で初当選した市議がおられ、「イ. 年寄りとは思っておらず、老け込むには早過ぎる」「ロ. 4年間やっていく自信がある」「ハ. 老人のことを専門にする人が、議会に1人くらいいてもいいのではないか」と言っておられるのは頼もしい。確かに、若くさえあればよいわけではなく、高齢者だからこそわかることも多いため、人口構成を反映した議員構成が必要だろう。


アウディの自動運転車 ベンツの自動運転車  ヤマトのEV配送車    日本郵便のEV

(図の説明:日本では、1995年前後からEVの市場投入をめざして研究開発してきたにもかかわらず、実用化はEUや中国の方が早く、それを見て後を追いかけることしかできていない。また、自動運転や運転支援も高齢化・運転手不足・バリアフリー等の視点から2000年代には言っていたのに、他国に後れをとってから慌てる構図が変わらないのは何故だろう?)

*11-1:https://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201904/CK2019042002000261.html (東京新聞 2019年4月20日) 池袋暴走 「80代以上 免許返納を」 「地方暮らし 車が必須」
 東京・池袋の乗用車暴走事故があった現場では二十日午前、亡くなった母子を悼む人たちが次々と訪れ、花などを供えて手を合わせた。横断歩道のそばに設けられた献花台には、数十もの花束や人気アニメのキャラクターが描かれたお菓子などが並べられた。亡くなったのは、現場近くに住む松永真菜(まな)さん(31)と長女莉子(りこ)ちゃん(3つ)。近くのマンションに住む福沢有希子さん(40)は、花束の前で自転車を止め、後ろに乗った次女(4つ)と一緒に手を合わせた。「とても人ごととは思えない。無念と思いますが、天国で安らかに過ごしてほしい」と声を落とした。青信号の横断歩道を渡っていた人たちが巻き込まれた今回の事故。福沢さんは「青信号でもしっかり安全確認しよう」と家族で話し合ったという。近くの女性看護師(39)は「事故の時に近くにいれば。何かの助けになりたかった…」と悔やむ。八十七歳の高齢ドライバーによる事故を受け、栃木県で暮らす六十代の両親に電話で「運転に気を付けようね」と伝えたという。「地方では車がないと生活できない。実家に帰ったらタクシー代を渡したい」と話した。追悼に訪れた人たちの中には、高齢者の姿も。二歳の孫がいるという千葉県成田市の男性(75)は花束の前で手を合わせ、「あまりに悲しすぎる」と何度もハンカチで目を拭った。男性は毎日のように車を運転しているが、衰えも感じるという。「赤信号を漫然と見過ごさないよう意識しているが、高齢者講習を強化しないといけないのでは」と指摘した。三歳の孫がいるという近くに住む女性(66)は「亡くなった子と同じ公園で遊んだこともあったかもしれない。かわいい盛りなのに」と涙ぐんだ。痛ましい事故を受け、「八十代ぐらいで免許は返還してほしい」と語った。

*11-2:https://www.hokkaido-np.co.jp/article/298364 (北海道新聞 2019年4月20日) 82歳運転の乗用車、店舗入り口に突進 むかわ 2人軽傷 アクセルとブレーキ踏み間違えか
 20日午後2時5分ごろ、胆振管内むかわ町美幸4のホームセンター「ホーマックニコットむかわ店」の入り口付近に、同町穂別の会社役員男性(82)の乗用車が突っ込んだ。入り口前の園芸コーナーで作業をしていた店長の男性(53)と女性従業員(30)がはねられ、腰などを打つ軽傷を負った。乗用車は建物には衝突しなかった。苫小牧署によると、会社役員男性は駐車場に車を止めようとしていたという。同署はこの男性がアクセルとブレーキを踏み間違えたとみて調べている。

*11-3:https://news.yahoo.co.jp/byline/mamoruichikawa/ (Yahoo 2016/11/20) 高齢ドライバーの事故は20代より少ない 意外と知らないデータの真実
 10月、11月と高齢のドライバーによる交通死亡事故が相次いで報道されています。「登校の列に車、小1男児が死亡 横浜、児童8人けが」(朝日新聞 10月28日)。「駐車場のバー折って歩道の2人はねる…車暴走」(読売新聞 11月13日)。実際に統計上、高齢ドライバーによる死亡事故の件数は増加しているようです。「2014年に約3600件あった死亡事故のうち、65歳以上の運転者が過失の重い「第1当事者」になったケースは26%だった。約10年間で10ポイント近く増えている。 出典:北海道新聞11月17日社説『高齢ドライバー 事故防ぐ対策急ぎたい』」でも考えてみると、いま日本では急速に高齢化が進んでいます。それとともに65歳以上の人口が増えているわけですから、事故の件数が増えてしまうのはある意味で当然のことです。では高齢化の影響を除いた場合、高齢ドライバーによる事故は増えているのでしょうか?
●高齢ドライバーが起こす交通事故は20代より少ない
 上の図は、交通事故を起こした人(第1当事者)の数を年代別に、平成17年から27年まで見たデータです。ポイントは、年代別の「全件数」ではなく、「その年代の免許者10万人当たり、どのくらい事故を起こしているのか?」を調べていることです。こうすることで、より正確に「その年代の人が、どのくらい事故を起こしやすいのか」を知ることができます。(※16歳からのデータがあるのは、原付やバイクを含むからです。)まずわかることは、全年代でゆるやかに減っていることです。全体で見ると、10年前のおよそ半分になっています。では、どの年代がもっとも交通事故を起こしやすいのでしょうか?上から順番に見ていくと、「16~19歳」が傑出して多く、それに続くのが「20~29歳」。その次に来るのが「80歳以上」です。70代となると、他の年代とほとんど差はありません。とはいえ、高齢者になるとペーパードライバー(免許を持っているけれど運転しない人)の割合が多くなりそうです。そこで念のため、年代別の「全件数」のデータも調べてみました。驚いたことに、20代・40代・30代が多く、80歳以上による交通事故が最も少ないことがわかりました。少なくとも上記のデータからは、高齢者が若者と比べて特に交通事故を起こしやすいとは言えないのではないか?という気がしてきます。
●死亡事故は80歳以上で起こしやすいが、トップではない
 では、「死亡事故」に限定した場合はどうなるでしょうか?年代別の免許者10万人当たりの件数を見たデータです。まずわかることは、死亡事故も大幅に減っているということです。80歳以上に限定すると、10年前の半分程度に減っています。死亡事故の場合、確かに80歳以上の危険性が高いことがわかります。ただし「16~19歳」も高く、去年のデータでいえばわずかに80歳以上を上回っています。その次は、20代と70代が同じくらい。とはいえ、その他の年代と比べて、それほど多いとは言えないようです。上記のデータからは、「16~19歳と80歳以上の運転者は、死亡事故を起こしやすい」のではないか?ということがわかります。なおせっかくですから、年代ごとの交通死亡事故の「全件数」を見てみます。全件数でみると、やはり20代や40代が多く、80歳以上が起こす死亡事故は少ないことがわかります。この年代で運転している人が、そもそも少ないのかもしれません。
●データをもとに議論する大切さ
 いま高齢ドライバーが起こす死亡事故が急増していることが強調され、免許返納や認知機能検査などの重要性が指摘されています。確かにデータからも、件数としては少ないですが、80歳以上で死亡事故を起こす危険性が高いことが示されています。今後、高齢化のなかでこの年代のドライバーの絶対数が増えるのは確実ですから、対策が急務なことは間違いありません。ただ心配なのは、高齢ドライバーへの風当たりが必要以上に強まることです。例えば下記の報道で「高齢ドライバー」とされているのは、67歳の男性です。「高齢ドライバーにはねられ男性死亡 長崎」(日テレNEWS24・11月18日)65歳以上の人は「高齢者」とされるので、この男性を「高齢ドライバー」と呼ぶのは間違っていないかもしれません。でも実際の統計データは、60代のドライバーは20代より交通事故を起こしにくいことを示しています。わざわざ上記の事故を「高齢」と付けて報じることで、誤ったイメージが広がってしまう危険があります。繰り返しますが、死亡事故を減らすために、増え続ける高齢ドライバー(75歳以上)、とくに認知症に気づかないまま運転してしまう人への対策は有効だと考えられます。一方で高齢者にとって、自動車の運転が自立した生活の生命線であったり、「誇り」の象徴だったりするケースも少なくありません。いま対策が急務だからこそ、「なんとなく危なそう」というイメージではなく、データに基づいて「どんな年代の人に、何をすべきか」を冷静に考えていくことこそが大事なのではないでしょうか。
【注】第1当事者とは、事故当事者のうちもっとも過失の重い者のことを言います。

*11-4:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190421&ng=DGKKZO43942810Z10C19A4MM8000 (日経新聞 2019年4月21日) 自動車産業にCASEの重圧、直近ピーク比、時価総額57兆円減
 自動運転など新しい技術の潮流「CASE(ケース)」が、世界の自動車産業を揺さぶっている。ソフトウエアなど不慣れな領域で投資・開発の負担が膨らみ、IT(情報技術)大手など異業種との競争も激化する。「100年に一度の大変革期」に突入した自動車産業。投資マネーは離散し、自動車株の時価総額は2018年1月の直近ピーク比で約57兆円(21%)減少した。「(CASE対応で)毎年1000億円以上の開発費が必要。営業利益は大きなマイナスのリスクを抱えている」。トヨタ自動車の白柳正義執行役員は18年12月の労働組合員向けの説明会で述べた。春季労使交渉は13年ぶりに回答日までもつれ、賃上げ額は組合要求を下回った。アイシン精機の社内でも危機感は強い。主力製品の自動変速機(AT)は「自動車がすべて電動化されれば、不要になってしまう」(幹部)。ハイブリッド車向けにモーターを組み込んだATの生産を拡大するなど生き残りを懸命に探る。曙ブレーキ工業が私的整理の一種、事業再生ADR(裁判以外の紛争解決)を申請した背景にもCASEの重圧があった。業績が悪化するなかでも電動化を見据えた新しい構造のブレーキの開発を継続し、18年3月期の研究開発費は総額103億円と純利益の13倍に膨らんでいた。自動車産業の競争力を支えてきたのはエンジンなど「機械」の技術だ。しかし、CASE対応にはソフトウエアや半導体など別の技術が必要で、その領域ではIT大手など異業種勢が先行する。米グーグルは約10年前に自動運転車の開発に着手。手元資金も12兆円強と巨大で、有望な新技術を総ざらえするだけの財力もある。規制面での逆風も強く、英国とフランスはガソリン車・ディーゼル車の国内販売を40年までに禁止する方針だ。経営環境が悪化する自動車業界を投資マネーは回避している。主要自動車株の動きは世界の株式相場との連動性が薄れ、下振れが鮮明だ。15年末比で世界株が30%上昇しているのに対し、自動車株は4%安に沈む。同期間に米フォード・モーターや独ダイムラー、日産自動車の株価は2~3割下落。トヨタ、ホンダも1~2割下げた。半面、米ゼネラル・モーターズ、独フォルクスワーゲン(VW)は2割弱上昇。両社とも人員削減を含むリストラ策を決め、CASE対応の資金を捻出しやすくなったと市場で評価されている。部品メーカーでは世界大手の独コンチネンタルや仏ヴァレオが約3割下落。エンジンや変速機などの駆動系部品を手掛け、CASEに伴う事業規模の縮小が懸念材料だ。一方、電動車にも必要なシートなどの内装部品を扱う米リア・コーポレーション、ライト専業の小糸製作所は3~4割程度上昇している。トヨタが米配車サービス大手ウーバーテクノロジーズの自動運転部門への出資を決めるなど、既存勢力も巻き返しを急ぐ。自動車産業は裾野が広く、販売なども含めれば日本の全就業者の1割弱が従事するほどだ。「CASE革命」の帰結は、日本経済にも大きなインパクトを与える。

*12:https://digital.asahi.com/articles/ASM4N3RN9M4NUTPB008.html (朝日新聞 2019年4月21日) 市議初挑戦の91歳当選 マハティール氏復帰に押され
 静岡県熱海市議選(定数15)では、山田治雄氏(91)が1975年の初当選から連続で12回目の当選を果たした。全国市議会議長会などによると、昨年8月時点で全国最高齢の市議だった。選挙戦では1日数回~10回ほどの街頭演説をするなど精力的に活動。当選を重ねるにつれて、支持者も高齢化し、亡くなったり投票に行けなくなったりする人が増えた。議会の定例会ごとに出す1400枚の報告はがきや市民相談で支持者とつながり、今回も議席を守った。当選後、「活動を評価してもらえた。山積みの高齢者の問題に取り組む」と力を込めた。佐賀県鹿島市議選(定数16)では、山田氏より8カ月若い無所属新顔の電気事業会社会長、高松昭三氏(91)が初当選を果たした。取材に「年寄りと思っていない。4年間やっていく自信がある」と語った。市の老人クラブ連合会長と県の連合会副会長を務める。独り暮らしのお年寄りに対する見回り活動などに力を入れる中で、県や市の高齢者支援の予算が不十分だと感じ、「老け込むには早過ぎる」と初めて立候補した。マレーシアのマハティール氏が昨年5月、当時92歳で首相に返り咲いたことも背中を押したという。健康には自信があり、「80歳ぐらいにしか見えないとみんな言う」と話す。告示日の14日の出陣式で、「老人のことを専門に(対応)する人が、議会に1人くらいいてもいいのではないか」と演説。選挙戦では、高齢者に優しいまちづくりや地元の桜の名所の整備などを訴えた。一方、埼玉県北本市議選(定数20)では、無所属元職の神田庄平氏(94)が落選。20年ぶりの返り咲きはならなかった。

<環境税・自然エネルギー・道路の進歩など>
PS(2019年4月24、27日追加): *13-1のように、EUは2030年までに域内(加盟国28カ国)で販売するトラックやバスのCO₂排出量を2019年比で30%削減する方針を固め、温室効果ガスを出さない(水素や電気で走る)トラックの製造に向けた刺激にするそうだ。
 一方、日本は、*13-2のように、2030年度までの燃費規制で2020年度目標から約3割の改善を義務付け、EVは走行に必要な電気をつくる際に化石燃料などを消費してCO₂を排出するので“電費”という概念を設けるそうだが、自然エネルギーを使って発電すればCO₂を全く排出しないため、化石燃料の使用時にCO₂排出量に応じて課税するのが合理的であり、そうするとCO₂等の排出に対して課す環境税になるわけである。
 また、*13-3のように、小樽にある道路用資材製造販売の理研興業が、LEDで帯状に光るワイヤロープをネパールやインドネシアの街灯のない道路に試験設置してアジア市場の開拓を目指すそうだが、日本国内でも太陽光発電や蓄電池と組み合わせてLEDを使用したり、自動運転に必要な道路の設計や道路用資材の進歩があったりしてもよいと思われる。
 なお、*13-4に、政府が定めた5年間の農協改革集中推進期間の期限が2019年5月末で、JAの自己改革が一定の成果を上げていると記載されているのは喜ばしいことだが、次の5年間は再エネ電力を副産物として収入を増やし、農業機械を電動化してコストを下げることにより、農家所得を増やすことも加えてはどうかと考える。何故なら、そのための補助金をつけてもらって金銭分配による補助金をなくせば、TPPやFTAに対抗しつつ、環境・財政・経済のすべてに貢献できるからだ。そのため、農林漁業由来の再エネを農協等で集め、*13-5のようなガス会社の電力子会社、大手電力会社、地方自治体、運輸・一般会社に販売する方法が考えられる。


 2019.3.15東京新聞    環境税がCO₂を減らす仕組み  各国の環境税導入年と概要

(図の説明:左図のように、エネルギー基本計画は恣意的な印象操作の上に成り立っている。また、中央の図のように、環境税を導入するとCO₂削減効果・財源効果・アナウンス効果があり、ヨーロッパでは、右図のように、1990年~2000年代前半に環境税か炭素税が導入されている)

*13-1:http://qbiz.jp/article/149068/1/ (西日本新聞 2019年2月20日) トラックのCO2排出30%減へ EUが基本合意、30年まで
 欧州連合(EU)は2030年までに、域内で販売するトラックやバス(新車)の二酸化炭素(CO2)排出量を19年比で30%削減する方針を固めた。全28加盟国で組織する閣僚理事会と欧州議会が基本合意したと両機関が19日発表した。合意内容が両機関で承認されれば正式合意となる。排出削減は2段階で実施し、25年までに15%削減を目指す。法令として法的拘束力を持つ。トラックはEU域内全自動車のCO2排出量の27%を占めるが、日米などと違い、排出制限がない。EU欧州委員会は昨年5月、30%削減を提案していた。合意へ向けて協議を主導した緑の党のエイカウト欧州議員は同日、ツイッターで「温室効果ガスを出さない(水素や電気で走る)トラック製造に向けた刺激となる」と述べた。大手自動車メーカーを抱えるドイツは野心的目標に難色を示したが折れた形。欧州自動車大手などで組織する欧州自動車工業会は、欧州にはトラック用の充電施設や水素ステーションが皆無だと指摘。こうした状況で「電気や通常の燃料以外で走るトラックを運送業者が急に買い始めるとは想定できない」と訴えた。EUは乗用車を巡っても、30年までにCO2排出量を21年目標と比べ、37・5%削減する方針で基本合意している。

*13-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190424&ng=DGKKZO44097710T20C19A4MM8000 (日経新聞 2019年4月24日) 車燃費3割改善義務 30年度目標、EV普及2~3割へ 走行電力も抑制
 経済産業省と国土交通省は自動車メーカーに対し、2030年度までの燃費規制(総合2面きょうのことば)を課し、20年度目標から約3割の改善を義務付ける方針だ。現在は主にガソリン車やハイブリッド車を規制するが、電気自動車(EV)も同じ基準で位置づけ、メーカーに技術革新と販売車種の見直しを迫る。この規制で、EVを2~3割普及させる目標の達成を図る。燃費規制は個別の車種が対象ではなく、メーカーとして全販売台数の平均で達成しなければならない。11年に定めた現行の燃費規制は20年度にガソリン1リットルあたりの走行距離で約20キロメートルとした。09年度実績比で24.1%の改善を義務付ける内容だ。国内メーカーはこの基準を前倒しで達成できる見通しだ。新基準は両省が5月の大型連休明け後にも原案を示し、今夏をめどに決定する。これまでEVはガソリンを使わないため、燃料消費をゼロとして計算してきた。この方針を転換し、今後は走行に必要な電気をつくる際に化石燃料などを消費して二酸化炭素(CO2)を排出することで環境に負荷をかけているという概念を入れる。具体的にはEVが1キロメートル走るのにどれだけ電力を消費するかを示す「電費」という数値を消費燃費に換算し、電力使用量の削減に向けた技術革新を促していく。政府は今回の燃費規制を用い、次世代自動車の普及を進めていく方針だ。17年度時点でEVやプラグインハイブリッド車は新車販売台数の1%程度にすぎないが、30年に20~30%に高まる可能性がある。一方、従来のガソリン車は63%から30~50%に下がる見通しだ。一般的にEVはハイブリッド車やガソリン車に比べ環境負荷が小さく、燃費規制を達成するうえで有利とされる。一方で本格的な普及にはさらなる技術革新が必要だ。トヨタ自動車幹部は「ガソリン車だけで規制を満たすのは限界があり、当面の『現実解』であるハイブリッド車中心に電動車で対応することになる」と話す。三菱UFJモルガン・スタンレー証券の杉本浩一アナリストは「各社は電動車比率など従来掲げてきた数値目標の前倒しが求められるだろう」と指摘する。政府は基準達成を判定する際、燃費に加え、省エネ性能の高いエアコンなどを搭載していれば基準を緩和することも検討する。30年度までに中間評価をして新制度の目標が適正か検証もする。世界でも30年前後の燃費規制の検討が進む。欧州連合(EU)はCO2排出量を30年までに21年目標に比べて37.5%削減する案をまとめた。ただしEUは日本の目標と異なり、EVが走行のために使う電気の環境負荷を考慮しない仕組みだ。EVの普及を強力に迫る規制で、ハイブリッド車などには距離を置く政策といえる。中国政府は19年から国内で年3万台以上を生産・輸入する自動車メーカーに対し、EVなど一定割合の「新エネルギー車」の生産・販売枠を義務付ける新規制を導入した。目標は19年に10%、20年には12%とする方針で、欧州と同様にEVシフトを強力に進める。

*13-3:https://www.hokkaido-np.co.jp/article/282374 (北海道新聞 2019年3月3日) 光るワイヤロープ海外展開 小樽・理研興業 ネパールやインドネシア 街灯ない道路に
 道路用資材製造販売の理研興業(小樽、柴尾耕三社長)は、同社の看板商品である、発光ダイオード(LED)で帯状に光るワイヤロープの海外展開に本格的に取り組む。まずはネパールの街灯がない道路に試験設置し、車が安全走行できるかを検証。インドネシアを含め、経済成長で交通安全対策の需要が高まっているアジア市場の開拓を目指す。同社は防雪柵で約5割の道内シェアを持つ。今後の国内、道内市場の縮小を見込み、海外の開拓を今後の中核事業に位置づけた。2017年、中央アジア・キルギスの山岳道路に防雪柵を設置し、海外に初進出した。光るワイヤロープは、ロープに取り付けたLEDが明るく点灯し、暴風雪時でも視認性を確保できる商品。太陽光が電源で、18年に国際特許を出願した。同社は、売り込み先として人口の多いインドに隣接するネパールに着目。国際協力機構(JICA)の協力を得て、今夏から20年冬まで、首都カトマンズ近郊と南部を結ぶ幹線で、夜間は通行止めになっている街灯のない山岳道路約160キロに試験設置し効果を探る。

*13-4:https://www.agrinews.co.jp/p47455.html (日本農業新聞 2019年4月24日) 改革期限1カ月 JAの成果 発信の好機
 政府が定めた農協改革集中推進期間期限の5月末まで、あと1カ月。JAグループの自己改革の成果や今後の計画を発信する好機としたい。JAグループが地域に根差す協同組合であることを含め、理解を広げるきっかけにしよう。JAの自己改革は一定の成果を上げているが、3月の第28回JA全国大会で掲げた「自己改革の継続」も必要だ。同期間の期限を視野に、これまでの成果やこれからの計画の発信に力を入れるべきだ。2014年6月に政府が定めた「規制改革実施計画」では、「今後5年間を改革の集中推進期間」とし、JAグループに自己改革を求めた。規制改革推進会議は今年2月、「期間の最終年を見据え、さまざまな仕組みを徹底的に活用した自己改革がなされるよう促す」とし、重点フォローアップ事項の一つに据えた。組合員の声を踏まえた自己改革は着実に進展している。JA全中の18年4月時点の全JA調査によると、90%のJAが生産資材価格の引き下げや低コスト生産技術の確立・普及に取り組んでいる。この2年で9ポイント伸びた。第27回JA全国大会で決議した自己改革の「重点実施分野」に取り組むJAの割合は9分野全てで伸びた。「マーケットインに基づく生産・販売事業方式への転換」など4分野では10ポイント以上伸びている。全国連も成果を上げている。JA全農は17年3月に農家所得の増大に向けた事業改革方針と年次計画を策定。これまでの2年間は、米穀や園芸品目での直接販売金額、農薬の担い手直送規格の普及面積、肥料の銘柄集約・共同購入の仕組み作りなど、多くの項目で計画通り進んでいる。当初は、政府などから取り組みの具体化や高い目標の着実な実行を求める声があったが、順調に改革が進んでいることがうかがえる。JA全国大会では、JAグループ一体となって自己改革を継続することを決議した。それぞれのJAが組合員らの声を丁寧に聞きながら地域の課題に対応した改革を継続するとした。農水省調査によると、自己改革の進展について、JAと認定農業者の認識には依然として差がある。JAは組合員をはじめ広く国民に対し、これまでの成果や今後の取り組みについて発信し続けることが重要だ。全国大会では、改革の一つの節目としてこれまでの成果を広くアピールした。農協改革集中推進期間については、この間の改革の状況を政府が検証することになるが、JAとしては残り1カ月を有効に活用し、改革の成果などを対外的に発信する機会とすべきである。発信方法は多様だ。4、5月はイベントも多く、地域住民にJAの役割を知ってもらうチャンスとなる。トップ広報や組合員らの戸別訪問、マスコミへの発信など、さまざまな機会を捉えて情報発信を強化しよう。

*13-5:https://www.hokkaido-np.co.jp/article/300596 (北海道新聞 2019年4月27日) 北ガス、風力発電参入へ 規模・立地検討 電力販売増に対応 LNG火発も2割増強
 北海道ガス(札幌)の大槻博社長は26日、2019年3月期決算記者会見で「これからは再生可能エネルギーの取り合いになる」などと述べ、同社初の風力発電に早期参入する方針を示した。発電規模や立地場所は今後検討する。急成長する電力販売の増加に対応するため早ければ20年度にも、液化天然ガス(LNG)を使う北ガス石狩火力発電所(石狩市、出力7万8千キロワット)の発電能力を2割増強することも明らかにした。大槻社長は会見で「小さくても風力を自社で手がけたい」と話し、まずは小規模な風力発電を整備する考えを示した。風力発電のノウハウを積み、風力を含む再エネで他社との提携も視野に「中長期的には事業の大きな柱にしたい」と語った。ただ、天候に左右される再エネは出力が不安定で、太陽光発電などに加え、風力にも参入することで調整はさらに複雑になる。発電力の調節が容易な石狩湾新港のLNG火発の増強は、再エネ増加後の電力供給を安定させる狙いもある。

<新幹線長崎ルートの問題点と解決策>
PS(2019年4月26日追加):*14-1のように、佐賀県南部には既に九州新幹線の新鳥栖駅があり、「新鳥栖-武雄温泉」間は、在来線を乗り継いだ方が所要時間は大差ないのに停車駅は減らないので便利だという佐賀県内の事情がある。そのため、*14-2のように、全線フル規格で長崎まで新幹線を整備したければ、これまで特急が通っていなかった佐賀県北部の「福岡-前原-伊都-唐津(末盧)-名護屋-伊万里-有田-武雄温泉」又は「福岡-伊都-新唐津(北波多付近)-武雄温泉」を結び、筑肥線か西九州自動車道の用地を利用して高架を作りながら海岸沿いを走らせれば、用地買収が少なくて海の景色がよい。なお、呼子・玄海町の近くに名護屋駅を作ると、玄海原発が停止しても玄海町がさびれずにすむ。

 
新幹線長崎ルート予定 2018.3.31西日本新聞     佐賀県北部を走る筑肥線

(図の説明:左図の現在の計画で九州新幹線長崎ルートを建設すると、中央の表のように、佐賀県内は特急列車との時間差は少ないのに停車駅が減らされてマイナスが多く、確かに費用対効果が悪すぎる。しかし、右図の筑肥線か西九州自動車道用地に高架を作って佐賀県北部を通せば、現在は高速列車がなく用地買収も少ないため、費用対効果が高くなるのではないか?)

*14-1:https://www.nishinippon.co.jp/nnp/national/article/505860/ (西日本新聞 2019年4月26日) 「負担ゼロでも認めない」佐賀知事、新幹線建設を拒否 与党検討委 長崎ルート新鳥栖-武雄温泉
 佐賀県の山口祥義知事は26日、九州新幹線西九州(長崎)ルートを巡る与党検討委員会に出席し、新鳥栖-武雄温泉の建設について「佐賀県は新幹線整備を求めたことはなく、現在も求めていない」と拒否した。武雄温泉-長崎は2022年度までの開業を目指してフル規格での建設が進む。新鳥栖-武雄温泉が着工できなければ、武雄温泉で在来線を乗り継ぐ「対面乗り換え」が長引くが、山口氏は「やむを得ない」と述べた。与党側は佐賀県の財政負担の軽減策を示したが、山口氏は「財政負担の問題ではない。負担ゼロでも建設は認めない」と反発、議論は深まらなかった。山本幸三委員長は終了後、記者団に「地元の意見聴取は終えた」と述べた。与党側は整備方式案を早期にまとめる方針だ。長崎県の中村法道知事は9日の検討委に出席し、全線フル規格での早期整備を求めている。

*14-2:https://diamond.jp/articles/-/181109?page=3 (週刊ダイヤモンド 2018.10.4) LCCジェットスターvs九州新幹線「長崎の戦い」が明暗を分けた裏事情、国と自治体、事業者で、議論が紛糾する新幹線長崎ルート
 LCCでこんなに手軽に行ける長崎に、新幹線では行きたくても行けない事態が起きている。JR博多駅から九州新幹線に乗って13分、新鳥栖駅に着いた。ここから西に分岐する西九州ルート(長崎ルート)の整備方式をめぐり、国と自治体、JR九州ら利害関係者の間で議論が紛糾している。事の発端は、車輪の幅を変えて在来線と新幹線どちらの線路も走れる「フリーゲージトレイン」(FGT)の技術だった。長崎ルートの新鳥栖~武雄温泉では、地元の佐賀県の建設費を軽減する狙いから日本で初めてFGTを導入する計画を進めてきた。しかし、技術開発が難航し、導入は見送られた。すると今度は、在来線を新幹線の線路にする「フル規格」か、在来線の線路を広げて新幹線も走れるようにする「ミニ新幹線」かの議論が浮上した。新幹線の速達性はフル規格が圧勝するが、建設費は倍以上、6000億円も掛かる。JR九州と長崎県はフル規格を推す。その理由は、2022年度に武雄温泉以西(~長崎)でフル規格新幹線が先行開業するからだ。そうなると、当座は博多から長崎を目指す人は、新鳥栖まで新幹線、武雄温泉まで在来線、長崎まで再び新幹線という面倒な乗り換えをしなければならず、乗客数が伸び悩んでしまう。こうして新幹線効果が薄れてしまうことを、JR九州と長崎県は危惧している。

| 経済・雇用::2018.12~ | 10:14 PM | comments (x) | trackback (x) |
2019.1.31 EUに遠心力が働いた理由と日本の政府債務削減・自由貿易政策への呼びかけ (2019年2月2、3、4、7、9、10、12、13、16、18、19、21、22、23、24、25、26日、3月2、3《図》日に追加あり)
  
 2018.10.21朝日新聞        2017.9.1毎日新聞      2018.11.9時事

(図の説明:英国がEU離脱の国民投票を行った際、アイルランドでは反対が多く、特に北アイルランドは民族が北欧に近い。そのためか、英国は、離脱後も北アイルランドとEUを検問なしの状態にしたがっている。また、EU離脱の手切れ金は最大5.8兆円とされている)

 
  2018.7.10毎日新聞      2019.1.6毎日新聞    2018.12.21毎日新聞

(図の説明:左図のように、1年間に入国した移住者は、ドイツ・米国が多く、英国・日本・韓国は、その1/3~1/2で同程度だ。また、中央の図のように、日本の財政は悪化の一途を辿り、現在はGDPに対する債務残高が世界一である。さらに、2019年度予算案は、歳入・歳出が右図のようになっているが、地方が稼げれば地方交付税は減らせるし、借り換えすれば国債利子は減らすことができる。また、防衛費は多すぎるだろう)

(1)「保護主義」「ポピュリズム」「ナショナリズム」の定義は何なのか
 「スイスで開かれたダボス会議は、各国でポピュリズムとナショナリズムが台頭して国際協調や自由貿易の理念が揺らぎ、グローバル化の価値に関する議論が熱を帯びた」と、*1-1-1に書かれているが、トランプ米大統領が国境の壁を作ると主張したり、メイ英首相が英国のEU離脱交渉で苦労したりしているのは、反グローバル主義ではなく、国の主権が認められないほど過度な自由化を強制されることに対する国民の異議申し立てを反映したものである。

 そのため、これら多くの国民の異議申し立てを、*1-1-2のように、ポピュリズム(*1-6のうちの大衆迎合主義)として保護主義や国際協調の危機と一刀両断するのは、日本とは違って、既に徹底してグローバル化を行ってきた国の人々が到達した真理を無視する周回遅れの解釈であり、ポピュリズムなどと言っている人の方が、思考停止していると考える。

1)日本の経産省発案のTPPについて
 日本政府は、*1-1-3のように、「自由貿易の旗手として全力を尽くす」としているが、徹底したグローバル主義のEUは、*1-2-1のように、対米貿易交渉で農産品を除外した。何故なら、世界人口が爆発的に増加している中では、長期的には食糧を自給できる政策が必要であり、*1-2-2のように、狭い範囲の現在しか考えていない政策では、経済発展どころか自国民への食料確保もおぼつかなくなるからで、これもりっぱな産業政策なのである。

2)英国のEU離脱について
 メイ首相は、*1-3-1のように、国民投票で決まったEU離脱に向けた国内の合意形成に苦労しているが、その理由は、*1-3-2のように、①350億─390億ユーロ(410億─460億ドル)ものEUへの清算金支払い ②スコットランドの独立問題 ③EUの後押しを受けた北アイルランドのEU離脱反対 などだそうで、気の毒なほどの難題だ。

 そして、*1-3-3のように、2019年1月29日、英下院はEUとの離脱合意案の修正を求める議員提案を賛成多数で可決したが、EUのトゥスク大統領は、「離脱協定は再交渉しない」「英側が要求すれば離脱延期を検討する」としているそうで、私には、EUの要求は高すぎる手切れ金に思える。

 この両方を解決する方法としては、民族がヨーロッパに近くEU離脱反対が多かったことから、北アイルランド(又はアイルランド)を特区としてEUに加盟させ、その面積分の拠出金を支払い続けて、その面積に比例して手切れ金をカットしてもらうのはどうだろうか。その時、北アイルランド(又はアイルランド)と英国の間には税関が復活するのが道理で、そうなると公用語が英語というメリットがあるため、EUを視野に入れる企業は北アイルランド(又はアイルランド)に集積することになるだろう。

3)ギリシャの緊縮策について
 ギリシャは、*1-4のように、金融支援したEUの要求で、年金削減や増税などの緊縮策により財政黒字化を達成し、2017年には3年ぶりにプラス成長に転換したが、国内総生産(GDP)はギリシャ危機前に比べて約4分の3の規模に縮小したそうだ。

 EUは単一通貨ユーロを使うため、財政統合や共通予算の導入などが要求され、金融政策や財政政策の独立性が乏しい。もちろん、①速すぎるリタイアと年金受給 ②高すぎる公務員割合では、どこの国でも持続可能性がないが、国によって積極財政による投資を行うべき時期と財政黒字化に専念すべき時期に差があり、①②を解決するには、民間のよい仕事を増やして失業率を下げなければ国民が生活できなくなる。

 にもかかわらず、EUのように一律に財政規律のみを言っていると、それぞれの国の個性を活かした発展ができず、北部欧州と南部欧州の両方で不満が溜まる。そして、多くの国民が感じているこの真実を、「内向き姿勢のポピュリズム(大衆迎合主義)」として切り捨てていると、問題を深刻化させると同時に、遠心力を働かせることになるわけである。

4)イタリアの予算について
 イタリアも、*1-5のように、2019年予算案についてEUから修正を求められ、その内容は、公的債務の多いイタリアの支出増に対する懸念だそうだが、やはり失業者に対する支出を減らすには積極財政によって必要な投資を行い、失業者を減らす必要がある。そして、イタリアもギリシャも、歴史的建造物は壊れ、街が博物館のようになっているため、やるべき仕事は多い。

 なお、イタリアの公的債務残高は対GDP比131パーセントで、EU加盟国では金融支援を受けたギリシャの債務残高(GDP比179%《2016年》)に次いで2番目に多いとのことだが、これは、*2の日本の政府債務(GDP比239%《2016年》)よりずっと低い。しかし、公的債務や政府債務のみを取り上げて議論するのは間違っており、国有財産を差し引いた純債務について議論すべきであり、国有財産(資源を含む)は活かして使わなければならないのである。

(2)日本政府の債務について
 主に日本の財務省発の意見なのだが、*2は、GDP比で239%(2016年)もの世界一の借金を抱えている日本政府の財政の悪化が真の国難であり、その解決策は、①ハイパーインフレによる国の借金棒引き ②大幅増税 ③社会保障費などの国民に対するサービスの大幅削減 しかなく、①は副作用が強すぎるため、②③の併用を徐々に進める以外には処方箋はないとしている。

 この思考でおかしいのは、歴史のみを参考にし、条件は変わらないと見做して、小中学生でもできるような数字の加減乗除だけで結論を出していることだ。しかし、実際には、これまで利用していなかった資源を利用できるようになったり、生産性が飛躍的に伸びたり、それを支える国民の教育水準が上がったりしているため、それらを無駄にすることなく利用すべきなのだ。

・・参考資料・・
<国境を護ることは、大衆迎合主義か?>
*1-1-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190127&ng=DGKKZO40529660W9A120C1EA1000 (日経新聞 2019年1月27日) ダボス会議を陰らす反グローバル主義
 スイスで開いた世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)は、グローバル化をめぐる世界のきしみを色濃く映し出す会合となった。各国でポピュリズムとナショナリズムが台頭し、国際協調や自由貿易の理念が揺らぐ中で、グローバル化の価値をどう再定義するかという議論が熱を帯びた。政治ショーとして見ると、今年のダボス会議は精彩を欠いた。トランプ米大統領、メイ英首相、マクロン仏大統領らが、国内の混乱のため欠席したためだ。米国の「国境の壁」や英国の欧州連合(EU)離脱をめぐる騒動は、それぞれの国内で高まる反グローバル主義の帰結でもある。自分がグローバル化の犠牲者だと感じる人々が増え、多くの民主主義国で排外的な政治家が支持されている。この世界の現実に目を背けることはできない。グローバル化の旗を振ってきたダボス会議が、グローバル化のあり方を問い直す場に変質したといえる。だが、ダボスを悲観論が覆っていたわけではない。ショーの派手さはないが、企業経営者や学術界の重鎮が、膝を詰めて議論を深めた意義は大きい。単にグローバル化を礼賛するだけの理想論は聞こえず、課題ごとに現実的な打開策を探ろうとする声が目立った。注目を集めた個別の議題には、機能不全に陥った世界貿易機関(WTO)の改革、データ流通の国際ルールづくり、人工知能(AI)開発の指針、プラスチック環境汚染への取り組みなどがある。こうした国家単位では解決できない課題に焦点を当てて、各国の有力者が問題意識を共有すれば、反グローバル主義の抑制にもつながる。会議で浮き彫りになったのは、格差や衝突を生むのではなく多様な価値観を包み込む新しいグローバル化への期待である。米中欧の首脳がいないダボス会議は、安倍晋三首相が存在感を示す好機となった。日本が主導した電子商取引(EC)の国際ルールづくりで、中国を含む76カ国・地域が正式協議の開始で合意したのは、日本外交の成果といえる。とはいえ、6月に大阪で開く20カ国・地域(G20)首脳会議への意欲を語る首相の講演が、大きな反響を呼んだとは言い難い。米欧の指導力が衰えた今、国際秩序の再構築で日本が果たすべき役割は重い。世界に向けて語る言葉が説得力を持つには、経済と外交で着実に実績を積むしかない。

*1-1-2:http://qbiz.jp/article/147291/1/ (西日本新聞 2019年1月17日) 反保護主義へ、日本がG20主導 麻生氏「国際協調が危機」
 新興国を含む20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁代理会議が17日、東京都内で開かれ、日本が議長国を務める2019年のG20が始動した。米中貿易摩擦が深刻化する中での開催となり、麻生太郎財務相は冒頭で「国際経済秩序や国際協調は危機にひんしている」と強調。反保護主義や自由貿易体制の維持に向け、日本が議論を主導していく決意を表明した。日銀の黒田東彦総裁も「国際貿易は経済成長や生産性の向上をもたらす」と述べ、自由貿易の重要性を訴えた。代理会議は18日まで。G20は08年に起きたリーマン・ショックの克服に成果を上げたが、昨年の首脳宣言ではトランプ米政権の意向で反保護主義の文言が削られるなど、最近は協調体制の揺らぎが目立つ。米国が問題視する貿易赤字は旺盛な国内消費などの構造要因によるもので、米中や日米などの2国間交渉では解決困難だとの認識の共有を目指す。また中国を念頭に途上国融資の規模などの透明化を提案。米中に自制を促し、世界経済の安定成長への回帰を狙う。多国籍IT企業のデジタル取引への課税や仮想通貨への規制でも国際的な合意を目指す。高齢化による労働力不足などを乗り越える経済政策も議題とする。議論は、6月の財務相・中央銀行総裁会議(福岡市)や首脳会合(大阪サミット)に向けて行われる。日本はG20議長国として農相会合(新潟市)や労働雇用相会合(松山市)なども主催する。

*1-1-3:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO40223950Z10C19A1000000/ (日経新聞 2019/1/19) TPP閣僚級会合が開幕 首相「自由貿易の旗手へ全力」
 環太平洋経済連携協定(TPP)に参加する11カ国の閣僚級会合「TPP委員会」が19日、都内で開幕した。安倍晋三首相は会合の冒頭で「自由貿易の旗手として全力を尽くす決意だ」と述べた。「保護主義への誘惑が生まれているが、時計の針を決して逆戻りさせてはならない」と強調した。米中が追加関税の応酬を繰り広げるなど保護主義が世界で広がっており、首相は自由貿易圏の拡大の重要性を訴えた。TPPは昨年12月に発効した。閣僚級会合の開催は発効後初めて。茂木敏充経済財政・再生相が議長を務める。新たに加入を希望する国・地域との具体的な交渉手順などを正式に決定する。首相は「私たちの理念に共鳴し、TPPのハイスタンダードを受け入れる用意のある全ての国・地域に対し、ドアはオープンだ。自由で公正な貿易を求める多くの国々の協定への参加を期待している」と述べた。閉幕後に共同声明を発表する。

*1-2-1:http://qbiz.jp/article/147404/1/ (西日本新聞 2019年1月19日) EUが対米貿易交渉指針案を発表 農産物除外、立場に隔たり
 欧州連合(EU)欧州委員会は18日、米国との貿易交渉の指針案を発表した。工業製品の関税や非関税障壁の撤廃で合意を目指すことに集中し、農産品は交渉から「除外する」としている。ただ、米通商代表部(USTR)は11日、対EU交渉で農産品の包括的な市場開放を目指すと議会に通知。米欧の立場の隔たりは大きく、交渉入りが遅れる可能性がある。その場合、業を煮やしたトランプ米大統領が、欧州製自動車などに対する高関税導入を再び訴える恐れもありそうだ。EUの通商担当閣僚に当たるマルムストローム欧州委員は記者会見で、交渉開始時期は「(加盟国の貿易担当)閣僚理事会が決める」と述べるにとどめた。また、広範な自由貿易協定(FTA)を結ぶつもりはないと強調した。米農産品の輸入拡大はEU有力国で農業国のフランスなどが強く反対している。ユンケル欧州委員長とトランプ大統領は昨年7月、「自動車を除く工業製品」の関税撤廃協議の開始で合意。これによってトランプ氏が「本丸」と位置付ける欧州製自動車への高関税の発動をひとまず阻止した。

*1-2-2:https://www.agrinews.co.jp/p46499.html (日本農業新聞 2019年1月22日) 政治経済システムと経済学の欠陥 誤った「合理性」前提  東京大学大学院教授 鈴木宣弘氏
 日本は「保護主義と闘う自由貿易の旗手」のように振る舞っている。規制緩和・自由貿易を推進すれば、「対等な競争条件」で経済利益が増大すると言われると納得してしまいがちであるが、本質は、日米などのグローバル企業が「今だけ、金だけ、自分だけ」(3だけ主義)でもうけられるルールを世界に広げようとするたくらみである。現地の人は安く働かされ、国内の人も低賃金で働くか失業する。だから、保護主義VS自由貿易は、国民の利益VSオトモダチ(グローバル企業)の利益と言い換えると分かりやすい。彼らと政治(by献金)、行政(by天下り)、メディア(byスポンサー料)、研究者(by資金)が一体化するメカニズムは現在の政治経済システムが持っている普遍的欠陥である。環太平洋連携協定(TPP)は本来の自由貿易でないとスティグリッツ教授は言い、「本来の」自由貿易は肯定する。しかし、「本来の」自由貿易なるものは現実には存在しない。規制緩和や自由貿易の利益の前提となる完全雇用や完全競争は「幻想」で、必ず失業と格差、さらなる富の集中につながるからである。市場支配力のある市場での規制緩和(拮抗=きっこう=力の排除)はさらなる富の集中により市場をゆがめるので理論的に間違っている。理論の基礎となる前提が現実には存在しない「理論」は本来の理論ではない。理論は現実を説明するために存在する。「理論」に現実を押し込めようとするのは学問ではない。3だけ主義を利するだけである。本質を見抜いた米国民はTPPを否定したが、日本は「TPPゾンビ」の増殖にまい進している。実は、米国の調査(2018年)では、国際貿易によって国民の雇用が増えるか減るかという質問への回答は、米国が増加36%、減少34%に対し、日本は増加21%、減少31%。日本人の方が相対的に多くが貿易が失業につながる懸念を持っているのに、政治の流れは逆行している。理由の一つは、日本では国民を守るための対抗力としての労働組合や協同組合が力を巧妙にそがれてきたことにある。米国では最大労組(AFL―CIO)がTPP反対のうねりを起こす大きな原動力となったのと日本の最大労組の行動は、対照的である。 「自由貿易に反対するのは人間が合理的に行動していないことを意味する。人間は合理的でないことが社会心理学、行動経済学の最近の成果として示されている」と言う経済学者がいるが、行動経済学は人間の不合理性を示したのでなく、従来の経済学の前提とする合理性を否定したのである。3だけ主義で行動するのが「合理的」人間ではなく、多くの人はもっと幅広い要素を勘案して総合的に行動する。それが合理性である。米国でシカゴ学派の経済学をたたき込まれた「信奉者」たち(無邪気に信じているタイプも意図的に企業利益のために悪用しているタイプも)は、誤った合理性と架空の前提という2大欠陥を直視すべきだ。

*1-3-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190117&ng=DGKKZO40100720X10C19A1MM0000 (日経新聞 2019.1.17) 英議会、僅差で内閣不信任案否決 メイ首相続投、EU離脱 混迷続く
 英議会は16日夜(日本時間17日早朝)、メイ内閣の不信任決議案を採決し、与党・保守党などの反対多数で否決した。メイ首相はひとまず目先の危機を乗り切り、欧州連合(EU)からの離脱に向けた国内の合意形成に注力する。ただ15日に大差で否決された英・EUの離脱案に代わる案をまとめるのは簡単ではなく、英政治の混迷は続きそうだ。不信任決議案は英・EUで合意した離脱案の否決を受けて、野党第1党の労働党が提出した。採決には下院議員650人のうち、議長団などを除いた議員が参加。賛成306票、反対325票だった。閣外協力している北アイルランドの地域政党、民主統一党(DUP)の10人が反対に回り、DUPの支援がなければ不信任決議案が可決しかねない僅差の投票結果だった。続投が決まったメイ首相は「国民との約束であるEU離脱のために働き続ける」と語った。15日の離脱案の採決では保守党など与党内から大量の造反が出たため、政府側が230票差という歴史的な大差で敗れた。だが今回の不信任決議案では与党議員が解散・総選挙で議席を失うことを恐れ、メイ首相の支持に回った。不信任を免れたメイ英首相は今後、21日までに代替案を議会に提示する。英議会によると代替案の採決は30日までに行われる予定だ。メイ首相は英議会で支持を得られる案をつくるため、各党幹部と個別に会談を重ねる方針。そこで国内の意見を固めたうえで、EUとの再協議に臨みたい考えだ。ただ英議会ではEUとの明確な決別を求める意見もあれば、2度目の国民投票によるEU残留を求める声もあるなど議論の収拾がつく見通しは立たない。一方、EU側は離脱案の修正を認めておらず、仮に英側が超党派協議で案をまとめてもそれを受け入れるとは限らない。代替案が1つに絞れない中で経済に混乱を及ぼす「合意なき離脱」を避けるには、離脱時期の延長も視野に入る。欧州委員会の報道官は「英国が正当な理由を示せば、EU首脳は離脱時期の延期を受け入れる可能性がある」と語った。

*1-3-2:https://blogos.com/article/324715/ (ロイター 2018年9月13日) 英EU離脱交渉、合意可能だが決裂なら清算金支払わない=英担当相
 英国のラーブ欧州連合(EU)離脱担当相は12日付の英紙デーリー・テレグラフへの寄稿で、離脱後の関係を巡るEUとの合意は手の届くところにあるとの見方を示した。ただ、交渉が決裂した場合は離脱に伴う「清算金」の支払いを見送ることになると表明した。EU当局者らによる最近の発言を背景に、英国とEUが将来的な通商関係について合意することは可能との期待感が強まっており、ポンドは他通貨に対してここ数週間で上昇している。ただ、来年3月29日の離脱日が刻一刻と近づくなか、交渉はまだ決着しておらず、「合意なきブレグジット(英EU離脱)」のシナリオがなお存在している。ラーブ氏は「EUが英国に匹敵する野心と現実主義を掲げるならば、合意は手の届くところにある」と記した。EUのバルニエ主席交渉官が最近使った表現を踏襲した。ラーブ氏はまた、「合意なき」離脱は短期的な混乱をもたらすことになるが、「それを埋め合わせるだけの機会」が英国側に生じることになると指摘。「その場合は英政府はEUと合意した清算金を支払わない。全体の合意がなければ個別の合意は成立しない」と続けた。英国は既に350億─390億ユーロ(410億─460億ドル)の清算金の支払いに合意している。英国のEU離脱後、数十年間かけて支払うことになっている。

*1-3-3:http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2019013001001028.html (東京新聞 2019年1月30日) 英、離脱再交渉要求 EUは拒否、延期検討も
 英下院は29日夜(日本時間30日朝)、欧州連合(EU)との離脱合意案の修正を求める議員提案を賛成多数で可決した。EUに同案の再交渉を求める方針を示したメイ首相を支持した形だが、EUのトゥスク大統領は声明で、合意案の根幹である離脱協定は「再交渉しない」との姿勢を明確にした。離脱が3月29日に迫る中、経済や社会に大混乱をもたらしかねない「合意なき離脱」が一段と現実味を増した。
メイ氏は近くEUに再交渉を求める方針だが、局面打開の見通しは立っていない。こうした中、トゥスク氏は英側が要求すれば離脱延期を検討する用意があると表明した。

*1-4:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO34355090Q8A820C1EA1000/ (西日本新聞 2018/8/20) ギリシャ、自立へ一歩 EUの金融支援が終了
 欧州債務危機の震源地となったギリシャは20日、8年に及ぶ欧州連合(EU)の金融支援から脱却した。ギリシャは自立に向け国債市場に本格復帰し、安定発行という課題に向き合う。一方、単一通貨ユーロの改革は財政統合や共通予算の導入を巡り停滞、危機の再発防止に不安を残す。「生活が良くなる見通しがない。何も変わらない」。20日朝、アテネ中心部の議会前。5年前の失業を機に清掃の仕事を続けるユージニアさん(49)はこぼした。週5日1日12時間働くが月給は400ユーロ(約5万円)にすぎない。ギリシャは2009年に財政粉飾が発覚し、世界の金融市場を揺さぶった。10年から3次にわたった支援の融資総額は国際通貨基金(IMF)拠出分を加えると約2900億ユーロに達した。年金削減や増税などの緊縮策によって、ギリシャは財政黒字化を達成、17年には3年ぶりにプラス成長に転換した。だが、国内総生産(GDP)は危機前に比べ約4分の3の規模に縮小した。ギリシャは今後、債務の借り換えなど財政運営に必要な資金を国債市場から直接調達する。しかし金利はユーロ圏の低利融資を上回り、19年9月に任期満了が迫るチプラス政権も有権者受けを狙ったばらまき策の誘惑がつきまとう。国債の安定発行は容易ではないのが実情だ。四半期ごとに財政規律の順守を点検・監視するEUやIMFとの衝突懸念も拭えない。それでも「グレグジット」(ギリシャのEU離脱)まで取り沙汰されたギリシャ危機だったが、ユーロはひとまず生き延びた。ユーロ圏は危機時に加盟国を支援する常設基金「欧州安定メカニズム(ESM)」を創設。EU基本条約(リスボン条約)上は禁じていた加盟国への財政援助・金融支援に道を開き、危機時の耐性を強化。圏内でバラバラだった金融機関の監督なども一元化した。しかし、ギリシャ危機を結束して乗り切ったものの、平時から危機を予防するユーロ改革は道半ばだ。最たるものが「通貨はひとつだが、財政はバラバラ」という根本問題への対応。ユーロ圏の共通予算編成などを通じて、ドイツなど豊かな北部欧州から南欧への財政資金を移転する必要性が指摘されながらも、南欧のモラルハザードにつながるとの北部の懸念が強く、実現は遠い。ユーロ圏各国でも広がるポピュリズム(大衆迎合主義)の内向き姿勢もユーロ改革をさらに難しくしている。イタリアではポピュリズム政党「五つ星運動」と極右政党「同盟」の連立政権がギリシャ危機の反省で強化されたEUの財政規律ルールに反発。財政を巡る南北対立が再び深まる懸念が強まり、次の危機に結束した対応が取れるかどうかは不透明だ。19年で退任するユンケル委員長をトップとするEUの欧州委員会は現体制下での抜本的ユーロ改革を実質的に断念した。欧州が懸念するのはギリシャだけではない。米国との対立を端緒に通貨が急落したトルコの動きに神経をとがらせる。ギリシャの公的債務残高は17年末時点でGDP比約179%に達するのに対し、約28%のトルコ政府は財政体質は健全とみられるが、政権の強権化や中銀への圧力が通貨の信認低下を招いている。トルコで懸念されているのは、外貨建て債務負担の増大に苦しむ企業の破綻が相次ぎ、影響が銀行部門に及ぶ事態だ。トルコには欧州の主要行も進出している。ギリシャとは異なる種類の金融危機が欧州を襲う可能性は消えていない。

*1-5:https://www.bbc.com/japanese/45961814 (BBC 2018年10月24日) 欧州委、イタリアに予算案修正を要求 史上初
 欧州連合(EU)の欧州委員会は23日、イタリアの2019年予算案についてイタリア政府に修正を求めた。EU加盟国の国家予算案を欧州委員会が拒否したのは初めて。イタリアはユーロ圏で3番目に大きい経済規模を持つが、ただでさえ公的債務の膨らむイタリアの支出増を欧州委員会は懸念している。政権与党のポピュリスト政党「同盟」と「五つ星運動」は、失業者への最低収入保証など支出増を伴う選挙公約の実現を約束している。欧州委員会はイタリアに求める新たな予算案の提出期限を3週間とした。イタリアの予算原案は、欧州委員会の勧告に順守していない部分があり、それが「特に深刻」だと委員会は懸念を示している。欧州委員会のユーロ問題担当副委員長、バルディス・ドムブロフスキス氏は、委員会の懸念に対するイタリアの回答は、懸念緩和に「不十分」だったと指摘。ユーロの規則は全加盟国に平等だと述べた。イタリアのルイジ・ディ・マイオ副首相はフェイスブックに、「イタリア予算案が初めて、EUに嫌われた。特に驚かない。EUではなく、イタリア政府が作った初のイタリア予算だからだ!」と書いた。もう1人の副首相マッテオ・サルビーニ氏は、EUに予算を拒否されても「だからといって何も変わらない」と付け加えた。サルビーニ副首相は「欧州委員会は政府ではなく、国民を攻撃している。イタリア国民をさらに怒らせるだろう」と述べた。
●イタリアがより多くの支出を望む理由
 今年発足したイタリア新政権は、失業者への最低収入保証などによる「貧困の終結」を約束している。
他の貧困対策には、減税や定年引き上げ撤廃など、3月の選挙で重要公約を実現するための施策が含まれている。EUに反発するジュゼッペ・コンテ首相はすでに、財政赤字が国内総生産(GDP)の2.4%より大きくなることはないと主張していた。ただ、財政赤字目標は前政権が提示した予算案の3倍となっている。イタリアの公的債務残高は対GDP比131パーセントとなっており、EU加盟国では金融支援を受けたギリシャに次ぐ2番目。この債務を無理に返済すれば、10年前の金融危機からいまだ回復できていないイタリア国民を苦しめると政府は主張している。イタリア経済は依然として金融危機前の2008年の水準まで回復していない。同盟と五つ星運動は、支出増が経済成長に弾みをつけるとしている。
●劣悪なイタリアの債務状況
 ユーロ離脱について中立を保つイタリアのジョバンニ・トリア財務相と、海外アナリストは、イタリアの財政赤字が対GDP比2%以下を維持し、場合によっては1.6%の低水準にまで下がってほしいと期待していた。EUはユーロ圏の規則として、財政赤字をGDPの3%以下とするよう求めている。GDPの2.4%というイタリアの財政赤字状況はこの制限値に近づいており、同国の債務状況は警戒が必要な水準になっている。ドムブロフスキス副委員長は、「欧州委員会がユーロ圏内の国に予算案草案の修正を求めざるを得なくなったのは今回が初めてだが、イタリア政府にそう要求する以外の代替案はないと判断した」と述べた。イタリアの納税者が、教育費と同じくらいの額を公的債務返済にあてなくてはならない事態になっていると、ドムブロフスキス氏は指摘した。同氏は「ルール違反は、最初は魅力的に見えるかもしれない。自由になるという幻想を提供してくれるので」と述べた。「借金を借金で返そうとするのは、魅力的かなこともしれない。しかしいずれ、債務負担が限界を超えてしまえば(中略) 最終的には一切の自由を失ってしまう」。イタリアが予算案を9月に発表すると、市場の混乱は数週間続いた。欧州委員会が23日にイタリア予算案を拒否すると発表するまで、欧州市場の株価は過去2年近くで最低水準まで下落した。委員会の発表後、市場におけるイタリアの地位の相対基準として使われるイタリア・ドイツ10年債利回り格差は、過去最大となる314ベーシスポイントまで広がった。
<解説>イタリアは譲らない――ケビン・コノリー、BBC欧州特派員
 イタリアはEUと衝突する道に突進しており、論争はユーロ圏を未知の領域に導いている。
EU当局は予算案を拒否し、修正案を要求する権利を持つ。要求が無視されれば、罰金を科すこともできる。EUがこの段階まで進むのは初めてだ。EUの政治的エネルギーは現在、英国のEU離脱交渉に吸い取られている。その最中だというのに、EUはさらに、最大級の加盟国との対立を長引かせることと、他のユーロ圏各国にルール違反をさせないよう強硬策でにらみを利かせることの是非を、比較検討しなくてはならない。イタリア政府は、自分たちが決めた対策は成長回復に必要なものなので、譲歩するつもりはないと主張している。

*1-6:https://dictionary.goo.ne.jp/jn/205148/meaning/m0u/ (Goo) ポピュリズムの意味
 1 19世紀末に米国に起こった農民を中心とする社会改革運動。人民党を結成し、政治の
   民主化や景気対策を要求した。
 2 一般に、労働者・貧農・都市中間層などの人民諸階級に対する所得再分配、政治的
   権利の拡大を唱える主義。
 3 大衆に迎合しようとする態度。大衆迎合主義。

<日本の財政>
*2:https://blogs.yahoo.co.jp/sansantori/43451236.html?__ysp=5pel5pys44Gu5YWs55qE5YK15YuZ5q6L6auYIOWvvkdEUOavlCDoqJjkuos%3D (Yahoo 2017/10/22) 政府債務が対GDP比200%超の国の末路-(1)
 昨夜から雨。今日は衆院選の投票日。午後からは台風接近で雨に加えて強風が吹きそうなので、午前中に投票所に行く予定。安倍総理によると今回は「国難」選挙だそうだが、真の国難とは、日本政府の財政の悪化だろう。GDP比で239%(2016年)もの世界一の借金を抱えている国の国政選挙だというのに、各党の立候補者も、これについては一言も触れようとしない。このままでは、国民全体が本当に「ゆでガエル」になってしまう。書店に行くと、「国の借金をもっと増やしても日本は大丈夫だ!」と主張する本が未だに山積みされている。ということは、今までの延長線上を走っていれば問題ないと考えている日本人が、まだまだたくさんいるということを示している。この機会に、この問題について明確にしておきたい。まずは、過去の歴史のおさらいから。下に過去約130年間の日本政府債務の推移のグラフを示す。青色で示した純債務は、粗債務から政府の保有する金融資産を引いた残りを示している。小さなものも入れると粗債務のピークは三つある。1905年前後の日露戦争、1944年のピークは太平洋戦争、1990年前後のバブル崩壊であり、前の二つは戦争からの財政回復過程である。現在、急速に進行中の政府債務増加は、いつがピークになるのだろうか?さっぱり先が読めない。日露戦争の後、当時の明治政府の財政規律は厳格であった。プライマリーバランスが厳しく守られ、財政は順調に回復している。一方、先の大戦直後の急激な回復は、いわば国による債務の踏み倒しであり、国による国民財産の強奪によって成し遂げられたものである。ハイパーインフレ(消費者物価が戦前の350倍に急騰)と、新円切り替えの強行によって、銀行や国民が抱えていた発行済の国債は紙くずに化けてしまった。国家財政の破産、デフォルトにほかならない。バブル崩壊後のわずかな回復については、プライマリーバランスの健全化と若干の経済成長によるものであった。この辺は大事なところなので、このグラフの出典元である次の記事をぜひ読んでいただきたい。特に、プライマリーバランス実現の先送りを表明した安倍総理、ならびに消費税8%→10%実施の先送りを唱えている野党幹部は必読すべきだと思う。
●「政府債務の歴史に教えられること」 独立行政法人 経済産業研究所
 さて、現在の日本のように対GDP比で200%を超える政府負債を抱えた国家が、破産に陥ることなく健全に財政を回復できた例はいままでにあったのだろうか?筆者は最近、この点に興味を持って時々調べているが、現在までの調査結果によれば、デフォルトを回避できた例は過去にたった二例しかない。いずれも英国に関するものである。一方、過剰な政府債務が原因で国家破綻した例は、それこそ無数にある。下に、英国の過去300年間にわたる政府債務の推移を示す。米国と日本の推移も合わせて示している。なお、このグラフも、上に挙げた経済産業研の記事からの引用である。第二次大戦後の日本のように国家破綻した場合には、債務が急速にほぼゼロとなる。これに対して、英国・米国のように、経済成長、緊縮財政、ゆるやかなインフレによって安全に財政が改善した場合には、債務は時間をかけて徐々に下降していることがよく判る。英国の政府負債推移の中の1820年前後のピークは、1815年に終結した対仏ナポレオン戦争の戦費によるものである。この巨額負債は、大英帝国の全盛期であった19世紀末のビクトリア女王の時代までかかって返済されている。ご存知のように、19世紀の英国はインドや東南アジアなどの海外に膨大な植民地を領有していた。国内では蒸気機関を応用した鉄道や織物産業などが飛躍的に発展して産業革命が進行中であった。また、インドで栽培したアヘンを中国に売りつけるなど、軍事力を背景として弱小国から強引に利益を強奪する手法も得意技だった。これらの急速な経済発展と利益蓄積によって、対GDP比200%の政府負債を約50%まで削減できたのである。次の英国政府負債のピークは、第二次大戦中の1945年の約250%である。1914年に勃発した第一次世界大戦の戦費返済が進まないうちに、第二次世界大戦が始まってしまったのである。二度の大戦後の英国は海外植民地が次々に独立、世界経済の中心は米国に移って国内経済は疲弊した。戦後すぐの労働党による主要産業の国有化も失敗に終わり、英国の製造業はほぼ壊滅した。閉塞状況下の1950年代にはアラン・シリトーの「長距離走者の孤独」などに描写された「怒れる若者たち」が現れた。この流れを受けて1960年代にはリバプールにビートルズ(戦後の英国における最大の世界貢献?)が誕生した。この時期の英国社会の困窮については、次の記事からも読み取ることができる。
●「GDP比250%の政府債務を二度も返した英国」
 1945年から約40年をかけてぼう大な戦費をほぼ返済したわけだが、この間のインフレ率が高かったことも、国民生活では困窮したものの、負債の軽減には効果があった。英国経済が上向きに転じたのは、今世紀になってから世界経済のグローバル化によってロンドンが金融業の中心地として復活したためとされている。現在の国際社会においては、19世紀の英国のような、海外植民地からの収奪、アヘン戦争勝利などによる相手国からの賠償金獲得などは、到底、実行不可能である。日本政府がいま抱えている巨額の政府負債の解消は、次の三種類の方策のいずれかによるほかはない。
① ハイパーインフレによる国の借金棒引き、要するに国家の破産宣言
② 大幅増税
③ 社会保障費などの国民に対するサービスの大幅削減
①は政府自体が無責任極まりないし、あまりにも副作用が強く、かつ社会の大混乱は必至であり回避するのが当然である。②と③の併用を徐々に進める以外には処方箋はないはずだ。国内のエコノミストや経済誌の記事の大部分もほぼ同じ結論なのだが、一部には、「まだ国の借金を増やしても全然OK」というトンデモ論を吹聴している者がいる。「世の中には、タダのメシなどない」(There ain't no such thing as a free lunch.)。次回は、このトンデモ論の中味について調べて見たい。なお、次の資料には、世界各国で過去に発生した国家破綻・デフォルトの事例が多数挙げられています。
●「財政再建にどう取り組むか」 日本総研
 この資料の中の各先進国債務の比較図を下に示しておきましょう。ベルギーやイタリアはいったん債務が100%を超えたものの、自力での財政再建努力によっていくぶんかは回復しています。数年前には破綻が危惧されたあのギリシャも、2016年時点の債務残高はGDP比で179%と最近は債務の増加が止まっています。一貫して債務が増え続けているのは日本だけです。

<国民の資産を大切に活かそう>
PS(2019年2月2、3日追加):*3-1のように、九州・沖縄で大学発ベンチャーの育成を目指して、産学組織「九州・大学発ベンチャー振興会議」が活動しておりよいことだが、課題は「大学から良いシーズが出るかどうか」だけでなく、「良いシーズを見つける眼力」と「育てる力」もある。
 例えば、*3-2のミノムシ糸の量産は、「新たな繊維強化プラスチックとして実用化でき、飼育は温度管理などを徹底すれば場所を選ばない」とされる。また、*3-3のように、温度管理の費用を抑えるために、暑さに強い蚕の新品種を開発することも可能であり、蚕にいろいろな遺伝子を組み込めば、蚕を工場とすることもできる。そして、これらは、教育水準の低い移民の女性にもでき、付加価値の高い仕事にすることが可能だ。さらに、*3-4のように、他国と同じワインやチーズを作って価格競争に苦しまなくても、日本の自然や技術を活かした良い製品を作れば新市場が開けるだろう。例えば、ワインは葡萄を原料にしなくても、耕作放棄されたみかん畑や梨畑のみかんや梨を使って美味しいものができるし、アイスクリームのような冷凍技術を使えば、船で安価に輸送でき、日本独自の美味しさを輸出することも可能だ。そして、このように、地方にも多くのシーズが眠っているため、*3-5のように、水需要が減少していると考えるのは早計だ。近年は、特に水に関して節水を行いすぎて不潔な状況が散見されるため、まずは水不足にならず、節水しなくても流水で十分に洗える社会を作って欲しい。
 なお、*3-6のように、生産調整して作らないことに奨励金を出すやり方は、補助金を使ってやる気を失わせ、耕作放棄地を増やす結果となるなど、稲作で既に失敗している。仮に「“供給過多”で価格を押し下げている」のであれば、国産の牛乳・米粉・小麦粉などと合わせた加工品(プロも使うケーキスポンジ等)にし、国内外に新しい市場を作ればよいと思われる。
 最後に、*3-7の種子は、長年かけて作られた知的所有権の塊であるにもかかわらず、農水省があっさりと種子法を廃止して、国民の財産を投げ捨てた。それに危機感を感じて、地方自治体で種子法を事実上“復活”させたのはよいが、種子を守り育てるためには予算が必要なので、こういう投資にこそ補助金が必要なのである。

   
2018.12.6ITmedia NEWS 2016.2.25毎日新聞      2019.1.17上毛新聞

(図の説明:左図のように、みのむしから世界最強の糸を取りだすことができ、量産も可能だそうだ。また、中央の図のように、蚕は目的の遺伝子を注入することによって、さまざまな特性を持った絹糸を作ることができる。さらに、右図のように、暑さに強い蚕もできている。生物系は、物理・化学よりも科学としての研究・開発が遅れていたため、現在はシーズの宝庫になっており、やり方によっては○兆円市場が期待できそうだ)

*3-1:http://qbiz.jp/article/148161/1/ (西日本新聞 2019年2月2日) 九州の大学発ベンチャー支援、初年度は5400万円拠出 10大学から20件応募
 九州・沖縄で大学発ベンチャー企業の育成を目指す産学組織「九州・大学発ベンチャー振興会議」は1日、事業化に向けた資金を援助する「ギャップ資金」として、2018年度は20件のシーズ(種)に対し、5400万円を拠出したと発表した。18年度が初の資金提供で、10大学から20件の応募があった。5400万円のうち、会議のメンバー企業などが1700万円、ふくおかフィナンシャルグループ企業育成財団が1千万円、残りを大学が負担した。19年度は最大8千万円の拠出が目標。同会議は「メンバー企業や提供額の上積みに加え、大学から良いシーズが出るかどうかが鍵になる」と話した。ギャップ資金は、大学の研究成果の事業化に向け、試作品開発や市場調査に活用する資金。同会議は昨年3月、メンバーの大学や企業が折半し、18年度から5年間、毎年5千万円程度を拠出する計画に合意していた。

*3-2:http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1812/06/news077.html (ITmedia NEWS 2018年12月6日) 「クモの糸を凌駕する」ミノムシの糸、製品化へ 「世界最強の糸」と期待
 医薬品メーカーの興和(名古屋市)と、農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構・つくば市)は12月5日、ミノムシの糸の製品化を可能にする技術開発に成功したと発表した。ミノムシの糸はクモの糸より弾性や強度が高いことを発見。「これまで自然界で最強と言われていたクモの糸をしのぐ、世界最強」の糸だとアピール。新たなバイオ素材としての応用に期待し、早期に生産体制を構築する。ミノムシの吐く糸は、弾性率(変形しにくさ)、破断強度、タフネスすべてにおいてクモの糸を上回っていることを発見したほか、熱に対しても高い安定性を示したという。ミノムシの糸を樹脂と複合することで、樹脂の強度が大幅に改善されることも分かった。ミノムシから1本の長い糸を取り出す技術を考案し、特許を出願したほか、効率的な採糸方法も確立。ミノムシの人工繁殖や大量飼育法も確立したという。ミノムシの糸は、タンパク質から構成されているシルク繊維であるため、「革新的バイオ素材として、脱石油社会に貢献できる持続可能な製品」と期待を寄せるほか、再生医療用素材としての可能性にも期待している。

*3-3:https://www.jomo-news.co.jp/news/gunma/politics/105581 (上毛新聞 2019/1/17) 暑さに強い蚕の新品種 群馬県が開発 夏場も収量と質 維持へ
 近年の夏の猛暑による蚕の成育不良に対応するため、群馬県蚕糸技術センター(前橋市)は16日、暑さに強い新たな蚕品種を育成したと発表した。猛暑でも通常の品種に比べて高品質を維持し、1割以上多い繭の収量を見込める。昨夏の記録的猛暑で、本年度の県内の繭生産量は前年度比1割減の41.07トンに落ち込むなど、高温による障害が顕著に表れており、経営安定のため農家などから対策を求める声が上がっていた。今年夏に農家で実証飼育試験を行い、実用化されれば、9番目の県オリジナル品種となる。
◎最も過酷な7、8月に実証飼育実験へ
 同センターは2012年度から新品種の育成を始め、暑さに強い日本種原種「榛しん」と中国種原種「明めい」を交配した交雑種を生み出した。昨年夏の試験飼育は新品種と、普及している夏秋蚕用品種の「ぐんま200」「錦秋鐘和きんしゅうしょうわ」を同じ条件で育てて比較した。6月26日に掃き立てを行い、7月20日に上蔟じょうぞく。桑を与える4~5齢の12日間の蚕室の気温を調べたところ、夜間も含めて平均気温は30度前後で、日中は40度に達することもあった。飼育の結果、蚕3万匹当たりの収繭量は新品種が48.42キロに対し、ぐんま200が43.55キロ、錦秋鐘和42.62キロと1割以上の差が生じた。品質の目安であり、繭糸のほぐれやすさを示す「解じょ率」は新品種が77%に対し、他の2品種は50%台。新品種は過酷な環境でも生存でき、健全なさなぎの割合も94.30%と高かった。県蚕糸園芸課によると、本年度の蚕期ごとの繭生産量は春蚕16.10トン(前年度比10%減)、夏蚕5.66トン(同19%減)、初秋蚕2.16トン(同26%減)、晩秋蚕13.83トン(同6%減)、初冬蚕3.33トン(同1%増)と、夏の減少幅が大きい。暑さを考慮し、養蚕農家が夏の生産を控える動きもあったという。飼育量の多い春蚕の5月に気温の高い日が続き、成育不良が発生したことも響いた。同課は「猛暑でも育てられれば、養蚕農家の経営の安定を図れる。これまでより、蚕室内の気温に神経質にならずに済むので、生産者の労力軽減につながる」としている。農家での実証飼育試験は夏蚕(7月)か初秋蚕(8月)の時期に行う。その後、9月中旬のぐんまシルク認定委員会での県オリジナル品種の認定を目指す。

*3-4:https://www.agrinews.co.jp/p46610.html (日本農業新聞 2019年2月2日) [メガFTA] 日欧EPA発効 小売り先行値下げ ワイン、チーズ 国産と競合激化
 欧州連合(EU)との経済連携協定(EPA)が1日に発効したことを受け、スーパーなど小売業界でワインやチーズなどの値下げ競争が早くも始まっている。発効と同時に小売価格を1~3割引き下げることで関税削減効果を先取りし、売り上げ増を狙う。関税は、ワインが即時撤廃、チーズは段階的に下がり16年目には無税(ソフト系は枠内)になる。環太平洋連携協定(TPP)と併せ、今後多様な品目で値下げの動きは強まる。国産との競合が激しくなりそうだ。「日欧EPA発効記念・欧州ワイン一斉値下げしました」。大手スーパー・イオンの系列となるイオンスタイル幕張新都心(千葉市)の酒類売り場に大きな看板が置かれた。イタリアやフランスなどのEU産ワインがずらりと並んだ。イオンは同日、全国約3000店舗で、最大330種類のEU産ワインを平均で1割値下げした。同社で販売する輸入ワインの7割の値が下がった。関税撤廃で、1本(750ミリリットル)換算で最大約93円の関税が0円になる。同社は「関税撤廃分より値下げ幅の大きい商品もある」と明かす。値下げは期間限定ではなく継続する考え。同社は今月のEU産ワインの売り上げを前年比3割増と見込む。店舗では同日、EU産食品の特売フェアも開いた。スペイン産豚バラ薄切り肉(100グラム105円)、イタリア産のパスタやトマトソースなどを2、3割安で販売。3日までの期間限定でPRする。値下げはコンビニ業界へも広がる。セブン―イレブンは1日からEU産ワイン3品を1割値下げ。ファミリーマートは2日から14品を最大17%引きで販売する。チーズでは、ソフトチーズの値下げが早くも表面化した。西日本でスーパーを展開するイズミ(広島市)は1日から最大20品のチーズを値下げした。ドイツ産カマンベールを23%安で扱うなど、13日までの限定セールを展開する。日欧EPAでは農林水産物の82%の関税が撤廃され、大幅な自由化となった。EU産のブランド力が消費者に認知されており、「需要拡大が見込める」と大手コンビニ。多様な品目で値下げ競争が進む恐れがある。

*3-5:https://blogs.yahoo.co.jp/toshi8686/65364408.html?__ysp=5rC06YGTIOe1jOWWtumboyDoqJjkuos%3D (読売新聞 2018/11/13) 市町村の水道事業を統合へ…人口減などで経営難
 政府は、水需要の減少で経営悪化が続く市町村の水道事業について、都道府県を調整役に6580事業者の統合を進める方針を固めた。事業の広域化によって経営効率を高めるのが狙いで、2019年度から着手する。事業統合に応じた市町村に対しては、国が財政支援を手厚くする。総務省の「水道財政のあり方に関する研究会」が、こうした方針を盛り込んだ報告書を近く公表する。報告書案などによると、都道府県は域内の水道事業者である市町村と協議し、将来の人口動態などを踏まえて統合すべき市町村の組み合わせを盛り込んだ「広域化推進プラン」を策定する。国は、プランに基づいて統合を進めた市町村に対し、国庫補助金の拡充や地方交付税の増額で実現を後押しするという流れだ。統合の形態は、水道事業全体の経営統合のほか、〈1〉浄水場など一部施設の共同設置・共同利用〈2〉料金徴収や施設管理など業務ごとの共同化――などを想定している。一部の統合でも、工事の一括発注などで無駄なコストを省け、経費削減につながるという。政府が統合を推し進めるのは、人口減などで水の使用量が減り、全国的に経営難が続いているためだ。

*3-6:https://www.agrinews.co.jp/p46615.html?page=1 (日本農業新聞 2019年2月2日) 生産調整鶏卵で発動 1月補填49・418円 
 鶏卵価格が低迷した際に生産調整する国の成鶏更新・空舎延長事業が1日、発動した。実施主体である日本養鶏協会が発表した。今年度の発動は2回目。同日の標準取引価格が1キロ142円となり、発動基準の安定基準価格(163円)を下回ったことを受けた。供給過多で価格を押し下げているため、需給改善で価格安定を図る。価格下落を補填(ほてん)する事業は同日に1月分を発動した。同事業は、成鶏を出荷後、新たにひなを導入せず、鶏舎を60日以上空舎にした生産者に奨励金を交付する。成鶏が10万羽以上の場合は1羽当たり210円、10万羽未満の場合は同270円を交付する。対象期間は1月2日から、価格が安定基準価格を上回る前日まで。今年度は4月下旬~6月下旬に5年ぶりに発動していた。鶏卵価格差補填事業による1月の補填金は1キロ49・418円となった。同月の標準取引価格が111・72円と、基準価格(185円)を下回ったためだ。今年度は両事業の発動回数が多く、財源が枯渇する恐れがあった。必要な財源を確保した上で、1月分の価格差補填金を交付する。そのため、満額(65・952円)の交付とはならない。JA全農たまごの同日の東京地区のM級は1キロ145円。今年の初取引価格(100円)に比べ大きく上げたが、 前年を15%下回って推移する。

*3-7:https://www.agrinews.co.jp/p46530.html (日本農業新聞 2019年1月25日) 種子法廃止の対応 現場の危機 受け止めよ
 命の根幹である種子をなんとしても守る──。思いがうねりとなり自治体を動かしている。主要農作物種子法(種子法)廃止から1年を待たず10道県が種子法に代わる条例制定へ動く。他の県でも意見書の提出が相次いでいる。なぜ廃止したのか。現場の声に耳を傾けたのか。強引な政権運営のひずみである。日本農業新聞が47都道府県に聞き取った。種子法は廃止されたが、各地で事実上の“復活”を遂げた。既に種子の安定供給を担保する新たな条例を制定したのは山形、埼玉、新潟、富山、兵庫の5県。来年度の施行に向けて準備を進めるのは北海道、岐阜、長野、福井、宮崎の5道県。先代から受け継いできた大切な種子を失っていけないとの危機感の表れである。2017年1月から19年1月22日までに地方議会から国会に出された意見書は、衆参併せて250件を超えた。農家や消費者、識者らでつくる「日本の種子(たね)を守る会」による種子法復活を訴える署名は17万筆に達している。憤りの声は自民党の地方議員からも上がっている。福岡県の市議はこう主張する。「種子を守ることは農家の将来を守ることにつながる。党派を超えて条例の必要性を県に求めていく」。岐阜県の市議も「なぜ法律を廃止したのか、いまだに納得できない。種子の尊さに自民も野党も関係ない」。危機感は党派を超えて共有されている。種子法は、食糧の安定確保に向けて1952年に制定された。都道府県に米、麦、大豆の優良な品種を選定して生産し、普及することを義務付け、60年以上守られてきた。国民の食を支える上で、重要な法律だったためだ。だが農水省は、都道府県が自ら開発した品種を優先的に「奨励品種」に指定して公費で普及しており、種子開発に向けた民間参入を阻害していると判断。17年2月に廃止法案が閣議決定され、2カ月後の4月には、わずか12時間の審議時間であっけなく成立した。現場の農家を含め、反対の声が全く聞き入れられなかった。そもそも種子法に民間参入を阻害する規定などない。だが、民間企業の参入を推し進める政府にとって、種子も例外ではなかったといえる。規制改革推進会議に突き動かされるように、廃止在りきで審議が進んだとしか考えられない。そうした中、地方自治体で進む条例化の動きは、種子の品種開発や安定供給に自治体自らが責任を持つという強い意志の表れだ。種子法廃止に対し、地方から「ノー」を突き付けている。このうねりがさらに広がることを期待したい。政府は自治体の動きを真摯(しんし)に受け止め、現場の声を大切にした政権運営をすべきである。4月には統一地方選が行われる。種子法も争点の一つとなるだろう。改めて廃止の意味を問いたい。

<介護や社会保障に関して、軽すぎる論説が多いこと>
PS(2019年2月4日追加):サ高住は、プライバシーを害することなく介護の不要な人から必要性の高い人まで受け入れることができるため、高齢化社会の有力な解の一つであるとともに、学生・単身者・共働き・出産前後の全世代に便利な住宅である。そのため、*4-2のように、高松で老朽マンションを改修してアシストホームを作ったのは一歩前進であり、新築マンションでも家事サポートや訪問介護などのサービスを付けた方が誰にとっても便利だと、私は考える。
 しかし、日経新聞は、*4-1で、家賃の安い住戸は「要介護3以上」の入居者が5割を占め、自立した高齢者向けとの想定に反して特別養護老人ホーム(特養)が対応すべき低所得で体の不自由な人が流入し、安いサ高住は介護報酬で収入を補おうと過剰に介護を提供しがちで、特養より公費の支出が膨らむ懸念があるから問題だとしている。これは、介護制度の理念が、家族を介護に縛りつけずに自宅療養できるようにすることで、散在する自宅に住むよりはサ高住にまとまって住んでもらった方が介護者の負担が軽くなることを考えれば的外れだ。
 また、特養と老健(https://kaigo.homes.co.jp/manual/facilities_comment/list/hoken/tokuyo/hikaku_rouken/参照)の入居条件は特養が要介護3~5、老健は要介護1~5で、居室タイプはどちらも個室と多床室があって、多床室ではプライバシーが保てず、周囲が重度障害者ばかりでは居住環境が悪くなるため、「高齢者だから死ぬまで置いておけばよいだろう」という発想でなければ、要件を満たした民間賃貸住宅を自治体がサ高住として登録するのはよいことだ。
 さらに、日経新聞は、*4-3のように、医療・介護の知識のない大学教授が「①介護従事者の確保に限界がある」「②現物給付の4~6割程度を現金給付して同居家族に介護させよう」「③女性要介護者は男性より家族に大きな負担をもたらす」などと書いた記事を掲載しているが、①については、我が国は外国人労働者の導入に消極的だったため、それを改善した後の動向を見ることが必要である上、②については、家族のうちの誰かが介護を担当することを想定しており、その人は患者の症状を理解した介護ができるのか、密室で家族による高齢者いじめや不正が起こらないかについて検討していない。さらに、③については、疫学的調査に基づいて語っていないと思われ、大学教授が科学的調査に基づかず科学的根拠も示さずに語るのは言語道断である。
 このような中、*4-4のように、外国人労働者受入拡大を行う改正入管難民法施行(2019年4月1日)に合わせ、介護現場で働く外国人や外国人を受け入れる介護事業者を多方面からサポートする「就労支援センター」(ICEC)が福岡県小郡市に発足したのはよいことだが、他地域では介護現場で働く外国人の増加を予定していないと言うのだろうか。また、*4-5のように、少子化で我が国の教育施設は余剰が多くなっているため、大学・専門学校が留学生の比率を上げるのは当然であり、その中に介護や看護も入れればさらによいと思われる。 

*4-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190203&ng=DGKKZO40813420R00C19A2MM8000 (日経新聞 2019年2月3日) 高齢者向け賃貸、安いほど要介護者流入、公的支出 膨らむ懸念
 見守りなどのサービス付き高齢者向け住宅(サ高住=総合2面きょうのことば)。日本経済新聞が全国の利用実態を調べると、家賃月8万円未満の安い住戸は多くの介助が要る「要介護3以上」の入居者が5割を占めた。自立した高齢者向けとの想定に反し、特別養護老人ホーム(特養)が対応すべき低所得で体が不自由な人が流入している。安いサ高住は介護報酬で収入を補おうと過剰に介護を提供しがちで、特養よりも公費の支出が膨らむ懸念がある。サ高住は国が2011年につくった制度。バリアフリーで、安否確認などの要件を満たした民間賃貸住宅を自治体が登録する。18年末時点で全国に約7200棟、23万8千戸が存在する。法律上「住宅」なので介護は義務ではない。訪問介護などを使いたい入居者は介護事業者と契約するが、実際は介護拠点を併設し、事業者が同じケースは多い。明治大の園田真理子教授は「家賃を安くして入居者を募り、自らの介護サービスを多く使わせる動きが起きやすい」と指摘する。
●特養に入れず
 本来、要介護3以上の低所得者の受け皿は公的な色彩が濃い特養だ。毎月一定額の利用料も相対的に安く、その範囲で食事や介護を提供する。必要以上にサービスを増やして、介護報酬を稼ぐ動きは起きにくい。ただ職員不足で受け入れを抑える特養が目立ち、全国に30万人の待機者がいる。行き場を失った高齢者がサ高住になだれ込む。日経新聞はサービス費を含む家賃と入居者の要介護度のデータが公開されている1862棟を対象に、その相関を分析した。家賃の平均は約10万6千円。全戸数に占める要介護3以上の住民の比率は34%だった。家賃別にみると、8万円未満の同比率は48%に達していた。金額が上がるほど比率は下がり、14万円以上は20%にとどまった。「介護報酬を安定的に得るため、要介護度の高い人を狙い、軽い状態の人は断っている」。関東で数十棟を営む企業の代表は打ち明ける。1月に茨城県ひたちなか市のサ高住を訪ねると、併設デイサービスに約10人が集まっていた。多くが車いすに乗る。住民の4分の3が要介護3以上だ。
●介護報酬狙う
 介護報酬の1~3割は利用者負担。残りは税金と介護保険料で賄う。要介護度が進むと支給上限額は増える。介護保険受給者は平均で上限額の3~6割台しか使っていないが、同社の計画上は住民が85%を使う前提だ。「夜勤の人件費を捻出するのに必要。暴利は貪っていない」と主張する。兵庫県で家賃が安いサ高住の管理人も「上限額の90%を併設サービスで使ってもらっている」と話す。16年の大阪府調査では、府内のサ高住は上限額の86%を利用し、要介護3以上は特養より費用がかさんでいた。安いサ高住に要介護度の高い人が集まる傾向は都市圏で顕著だ。8万円未満の物件に住む要介護3以上の比率は首都圏が64%、関西圏が57%。都市圏は土地代が高く、家賃を下げた分を介護報酬で補うモデルが広がっている懸念がある。「デイサービスを『行って寝ていればいい』と職員に説得されて仕方なく使った」。サ高住の業界団体にこんな苦情も集まる。日本社会事業大の井上由起子教授は「国も学者もこれほど介護施設化すると考えていなかった。一部のサ高住が介護報酬を運営の調整弁に使うと、介護保険制度の持続性が揺らぐ」と警戒。運営費は家賃のみで吸収するのが筋だと訴える。すべてのサ高住が過剰に介護をしているわけではないが、個別の実態を捉えるのは難しい。一般社団法人の高齢者住宅協会は「介護状況の開示や法令順守を事業者に強く促していく」という。民間主導のサ高住は行政も運営・整備計画を把握していない。それがサ高住の乱立につながり、介護報酬で経営を成り立たせようとする動きを招く。介護施設との役割分担を明確にし、立地の最適配分も考えなければ悪循環は断ち切れない。(斉藤雄太、藤原隆人、久保田昌幸)
*調査概要 高齢者住宅協会が運営するサ高住の情報提供システムで2018年12月時点に公開されていた家賃と住民の要介護度のデータを抽出。家賃は共益費と見守りのサービス費を含め、同じ施設で最高と最安が異なる場合は中間値を用いた。食事や入浴の介助が必要で、特養の入所基準である「要介護3」以上の住民の割合を家賃の水準別に分析した。

*4-2:https://www.nikkei.com/paper/related-article/tc/?b=20190203&bu=BFBD・・ (日経新聞 2019年2月3日) 高齢者向け賃貸、安いほど要介護者流入 公的支出 膨らむ懸念サービス付き高齢者向け住宅 老朽マンションを改修 高松のSUN
 介護事業を展開するSUN(高松市)は老朽化したマンションを改修し、一部をサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)として提供する=写真。サ高住と賃貸マンションが同一の建物に混在するのは香川県では初めて。老朽化したマンションの空き部屋対策につながるという。1986年に完成した既存のマンションを改修し、名称を「アシストホーム」とした。一部をサ高住として提供する。部屋の広さは32~36平方メートルと全室30平方メートル以上は全国的にみても珍しく、12戸を用意した。車いすに乗ったまま使える洗面台や手すり付きのトイレなどの設備を備えている。月額の利用料は単身の高齢者が食事の提供を受ける場合、約14万円が目安となる。訪問看護ステーションや居宅介護支援事業所などと連携して、高齢者の生活を支える。

*4-3:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190204&ng=DGKKZO40775630R00C19A2KE8000 (日経新聞 2019年2月4日) 介護危機、乗り越えられるか 現金給付で従事者抑制を、外国人の安定確保厳しく 中村二朗・日本大学教授(1952年生まれ。慶応義塾大修士《商学》。専門は労働経済学、計量経済学)
<ポイント>
○従事者確保で女性や高齢者活用には限界
○現金給付を現物より抑えれば財政上も益
○保険者の広範地域への再編や連携強化を
 急速に高齢社会を迎えた日本では2000年に介護保険制度が導入された。ドイツの制度に倣いながらも、要介護対象者や提供される介護サービスを幅広く設定したことで多くのメリットがあるとされる。しかし財政的には多額の支出を余儀なくされた。団塊世代が後期高齢者になる25年には介護保険の利用者は約900万人、財政規模は20兆円前後に達するといわれる。大きな課題は財政規模の抑制と介護従事者の確保だ。介護は3K(きつい・汚い・危険)的な職場というだけでなく、現保険制度では事業所全体の収入が規定され、その範囲内で介護従事者の処遇条件を決定する必要がある。処遇改善のための加算制度はあるが介護事業者の裁量で賃金を設定することは難しい。一方で介護事業者に裁量を委ねても、事業所支出に占める人件費比率が特養で約6割、通所・訪問で7~9割と高いため、介護費用の増加を通じて介護財政をさらに逼迫させる恐れがある。介護財政の抑制と介護従事者の確保とは両立が極めて難しい課題だ。本稿では、介護財政の抑制という課題を念頭に置きながら、今後の介護従事者不足に対する解決策を検討する。問題を考えるうえで主要な前提・課題を整理しておこう(表参照)。現状の課題は、未婚者や結婚しても子供のいない高齢者(チャイルドレス高齢者)の増加と、女性要介護者の比率が全体の約7割と高いことだ。高齢者の同居比率が低下しており、居宅介護のために同居率を高めようという議論がある。しかし子供のいる高齢者の同居率はそれほど低下していない。こうした状況で介護従事者の必要性を少なくするために家族介護の拡充による居宅介護を重視する政策には無理がある。また福岡市の65歳以上の介護保険データを用いた多相生命表(健康、要介護度別平均余命)による分析では、女性の要介護者は人数が多いだけでなく、介護期間が長期にわたる傾向があり、費用も男性と比べ4割前後高くなる。今後は要介護度の高い高齢者と、都市部での要介護者の増加が予想される。現状でも要介護者の多くは女性だが、その傾向は今後も続くだけでなく都市部でより顕著に表れることが予想される。女性要介護者は男性に比べ家族に大きな負担をもたらすことが確認されている。都市部では住宅事情などにより居宅介護は難しさを増す。財政支出と必要な介護従事者の増加をもたらすだけでなく、居宅介護と施設介護のあり方を大きく変化させる可能性がある。現状および今後の問題点を考慮したうえで、必要な介護従事者をどのように確保すればよいのだろうか。対応の方向性は2点だ。一つは必要な従事者数を確保するための環境を整備することであり、もう一つは必要な従事者数の抑制策を講じることだ。以下では、今後の対応策と実現可能性について検討したい。従事者数の確保については2つの対応策に大別できる。一つは女性や高齢者のさらなる活用だ。女性の活用では介護従事者の資格要件の緩和措置などがとられているが、労働条件が悪いままでは安定的に一定量を確保するのは難しい。高齢者はボランティア的な仕事としては受け入れられる可能性は高いが、安定的に活用できる人材ではない。もう一つは外国人労働者の導入だ。日本が魅力的な国である限りは、外国人労働者は安定的に活用できる人材としてみることもできる。しかし日本人と同等の処遇ならば、介護従事者の賃金が低い現状のままでは必要な人員を確保できるかわからない。既に外国人介護福祉士としては経済連携協定(EPA)により受け入れられており、17年度までに約3500人が来日し、700人以上が介護福祉士の国家試験に合格している。こうした外国人は送り出し国で看護学校などを卒業し「N3」以上の日本語資格を持っている。また日本で介護福祉士の国家試験を受けるために受け入れ事業所などで様々な教育を受けている。事業所は1人あたり200万~300万円程度の費用を負担しているが、合格率は5割程度だ。合格後は在留資格が得られるが、他の事業所への転職も可能で、受け入れ事業所は多くのリスクを抱えている。現状のEPA介護従事者に対しては、事業者や利用者も高く評価しているケースが多い。しかし現在想定される新たな外国人労働者に対して、EPAでの受け入れと同様の手厚い対応ができるのだろうか。受け入れ人数が桁違いに増えるだけでなく、受け入れ要件もEPAに比べ緩和される可能性が高い。受け入れ態勢や教育環境の整備、それらの費用を誰が負担するのかなど慎重な議論が必要だろう。さらに今後も、日本が外国人労働者に魅力的な国であり続ける保証はない。むしろ5~10年先の本当に必要な時期に外国人労働力を確保できなくなるリスクはかなり高い。仮に介護従事者を増やすことに成功しても、財政上の問題は解決されない。両者をともに解決するには、単に必要人員の確保だけでなく必要な従事者数を抑える視点が大切だ。しかし介護現場では新技術の導入などである程度の労働生産性の向上は望めるが、大きな効果は期待できない。では、どうすればよいのか。介護サービスの提供は例外を除いて、保険制度で指定された事業所でしかできない。介護サービスが現物給付で実施されているためだ。この枠組みを外せば、介護事業所以外でも介護サービスを提供することが可能となり、必要な介護従事者数を抑制できる。そのための方策の一つは、ドイツや韓国などで採用されている現金給付もしくはバウチャー(利用券)制度の導入だ。ドイツのように介護をする家族にも保険から手当などを支払えれば、居宅介護が増えて必要な介護従事者数を抑制する効果も期待できる。保険導入時に現金給付との併用案が検討されたが、事業者の反対や不正利用の懸念などを理由に採用されなかった。確かに保険導入前の状況を考えると当時の反対理由もうなずける。しかし介護サービス需要の増加や介護関連事業所の増加により、介護市場が成長し競争メカニズムが働く余地が大きい。さらにこれまでの保険事業で蓄積されたデータを活用・分析することにより、不正利用を見つけやすくなっている。また日本独自のシステムとしてケアマネジャー制が導入されており、利用者や事業所を監視する役割を拡充することにより不正利用や不効率な利用を防止できるだろう。現金給付を選んだ場合には現物給付の4~6割程度の支給にできるならば、財政上のメリットも生じる。今後生じる様々な課題に対応するには、介護保険を運営する保険者に求められる役割はより高度なものとなる。基礎自治体をベースとした一部の保険者は難しい問題を抱えることになる。保険者については、より広範な地域への再編・連携強化や都市部と非都市部との連携などを検討すべきだ。介護施設や人材などの効率的な運用ができるだけでなく、要介護者の地域的偏在や地域間の保険料格差などを改善することができよう。従来の制度を土台としながら、現金給付の導入や保険者の枠組みなどを今後の状況に即した制度に見直すことなどを含め、人材不足の解消と財政の健全化を目指す整合的な方策を考えることが急務だ。

*4-4:http://qbiz.jp/article/148203/1/ (西日本新聞 2019年2月4日) 介護就労の外国人指導 4月 小郡に支援センター 受け入れ施設に助言も
 外国人労働者の受け入れを拡大する改正入管難民法の施行(4月1日)に合わせ、介護現場で働く外国人や、外国人を受け入れる介護事業者を多方面からサポートする「就労支援センター」(ICEC)が福岡県小郡市に発足する。同法に基づく新たな在留資格「特定技能」の労働者や技能実習生などが対象で、介護に必要な日本語教育や生活面の指導、事業者側への助言も行う。こうした包括的な支援組織は九州で珍しいという。ICECを立ち上げるのは、1998年に発足した外国人就労支援事業会社「インターアジア」(小郡市)。経済連携協定(EPA)に基づいて来日した介護福祉士候補生や、日本のフィリピンパブや飲食店などで働いた後、介護業界に新たな働き口を求める在留外国人たちを対象に、介護職員の基礎的な資格「介護職員初任者研修」の講座を行ってきた。卒業生は6カ国の300人以上に上る。017年11月に介護分野が追加された外国人技能実習生は、入国時だけでなく、来日2年目にも日本語能力試験に合格することが求められる。介護の現場では、生活指導も含めた教育をどうするか、不安視する声が上がっていた。ICECは「アルツハイマー病」「安静」「嚥下(えんげ)」など介護に必要な用語を中心に、日本語教育や文化教育、生活面もサポートする。事業者側に対しては経営者だけでなく、外国人と一緒に働く職員全員に助言する。講師は約20人。介護福祉士や看護師の資格を持つ日本人や、介護福祉士の資格を持つ同社の卒業生など、日本の介護現場で働いた経験のあるフィリピン、ベトナム、中国出身の外国人も加わるという。同社の中村政弘代表(78)は「外国人は日本を介護先進国と捉え、期待して来日する。まずは日本人職員に、介護のプロとして『外国人を育てる』という意識を持ってもらえるような助言をしたい」と言う。17年9月、在留期限を更新できる在留資格「介護」が新設され、技能実習生や特定技能の労働者も介護福祉士の資格を取得すれば「介護」に変更申請できる。ICECでは、希望者向けに介護福祉士の資格取得を目指す講座も開設する予定。中村代表は「日本に残り、日本の介護を支え続ける外国人も育てたい」と話す。
*介護と外国人労働者  厚生労働省の推計によると、2025年度に介護人材が約34万人不足する恐れがある。国は改正入管難民法に基づく新在留資格「特定技能1号」(通算で5年が上限)の介護分野で、19年度から5年間で最大6万人の外国人労働者を受け入れる方針。介護職種の外国人技能実習生(最長5年)は“第1号”が昨年7月に来日。施設が実習生を受け入れるには、日本の監督機関「外国人技能実習機構」に実習計画を申請し、認定を受ける必要がある。昨年12月末時点での申請は1516人で、うち946人の計画が認定された。

*4-5:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190202&ng=DGKKZO40806230R00C19A2EA5000 (日経新聞 2019年2月2日) 大学・専門学校の留学生比率 地方、初の5%超え 昨年、サービス人気
 地方にある大学や専門学校など高等教育機関で、2018年に留学生の比率が全学生の5%を初めて超えたことが日本学生支援機構の調査などで分かった。三大都市圏を除く39道県別では群馬や茨城で上昇が目立っており、6県が東京都の比率を上回った。少子化や東京一極集中に悩む地方の教育機関にとって、留学生の獲得は経営の要にもなりつつある。日本学生支援機構の外国人留学生在籍状況調査と文部科学省の学校基本調査を使い、高等教育機関の学生に占める留学生の割合を都道府県別に算出した。39道県で18年の留学生の総数は7万3320人。全学生数に占める割合は5.4%と、前年に比べ0.5ポイント上がった。留学生の比率は11年の東日本大震災後に停滞していたが、13年に底を打って以降は急速に上昇している。39道県のうち、13年比で最も比率が伸びたのは群馬県。13年は3%だったが、18年は15%と大幅に高まった。同県の担当者は「群馬大や上武大、高崎経済大といった以前から留学生が多かった大学ではそれほど増えていない。大幅に増えているのはNIPPONおもてなし専門学校だ」と話す。同校は群馬ロイヤルホテルグループの学校法人が13年に設立した専門学校。ベトナムやネパールを中心に約500人の留学生が日本のホテルや旅館、飲食店などのサービスを実践的に学んでいるという。群馬県内に本部を置く東京福祉大学の留学生が増えていることも比率を押し上げた。同大は留学生が約800人と学生の2割を占める。出身国別にみると、中国が最も多いが「最近はベトナム、ネパールも目立つ」(同大)。39道県で2番目に留学生比率が上昇したのは茨城県で、18年は11%とこの5年で5ポイント伸びた。国内有数の留学生数を誇る筑波大学に加え、東京家政学院大学系列の筑波学院大学などで留学生の増加が目立った。筑波学院大学によると、「留学生に人気の専攻はビジネスや情報系。18年はベトナムが一番多かった」という。留学生の生徒総数では東京都が約6万7000人と突出して多いが、全生徒の比率でみると7%。留学生の比率では大分県が16%と、全国で最も高かった。生徒数のほぼ半数を留学生が占める立命館アジア太平洋大学がある影響が大きい。このほか、山口、福岡、長崎県も東京の比率を上回った。高等教育の国際化に詳しい上智大学の杉村美紀教授は「人口減少が厳しい地方では留学生で人材を確保しようとする動きが強まっている」と指摘する。経済協力開発機構(OECD)の資料によると、欧米諸国のほとんどは高等教育機関の留学生比率が日本より高い。国際競争力を高めるためにも今後、留学生の人材育成は地方にとって重要性を増す。大学の外での交流を促すなど、地域全体で留学生を迎え入れる体制づくりがより求められそうだ。

<呆れて一言では語れないこと>
PS(2019年2月7、9、10日追加): *5-1-1のように、「厚労省の統計不正による過少給付は雇用保険・労災保険・船員保険などを合わせて564億円になり、2019年内に追加給付を開始する」とのことで、(統計は正確でなければならないものの)失った記録の復元は、新聞・TV・HP等で連絡先を示して関係する期間に受給した人に申し出てもらい、日本年金機構(旧社会保険庁)の年金記録と照合・立証して支払えばよい。つまり、雇用保険は、再就職済で困っておらず、申し出ない人まで探し出して渡す必要はないのだ。
 なお、*5-1-2のように、毎月勤労統計は不適切に調査されており、2018年の物価変動の影響を除く実質賃金の伸びが実態よりかさ上げされていたことが発覚し、民間の試算でも2018年の1人当たり実質賃金は大半がマイナスだそうだ。これには非正規の働き手が増えた要因もあり、名目賃上げ率は2%前後で2018年1~11月の実質賃金のうち9カ月分が前年を下回ったそうだが、1カ月単位の短期間かつ1%前後の賃金の増減で消費者心理が変わるわけではなく、子どもが生まれた場合の収入減・負担増・年金までを加味した生涯収支を考慮して貯蓄と消費の割合を決めているため、予算委員会で大量の時間を使うには議論が小さすぎる。そして、「消費者は名目賃金で賃金動向を実感する」というのは誰のことか不明であり、物価上昇率が名目賃金上昇率より高くて実質可処分所得が小さくなっていることにはすぐ気付くため、あまりに一般消費者を馬鹿にした見方だ。なお、今後は、企業がデータで賃金・品目毎の売上・仕入(単価と数量)を提出すれば、全数調査して毎月の平均賃金・卸売物価・消費者物価を出せそうである。
 このような中、*5-2のように、公的年金で運用損を出し、社会保障の負担増・給付減ばかりしていれば、*5-3-1のとおり、静かに少子化が進むのは当然のことで、できることとできないことを理性的に判断して行動しているのは、子どもの少ない(orいない)人の方だろう。また、*5-3-2のように、信濃毎日新聞も「少子化の責任は女性にあると言いたいようであるため、麻生氏は暮らしや人権に関わる問題について正しい理解ができない人である」として、首相の任命責任も問われると記載している。ただ、首相は子どもがおらず、どちらかと言えば被害者に当たるため、麻生氏の発言の責任まで取らせるのは酷ではないか?なお、麻生氏は、2008年、麻生内閣で内閣府特命担当大臣(男女共同参画・少子化対策)として出産したという理由で小渕優子氏を初入閣させており、出産奨励は麻生氏の本音だ。そして、これは、「女性は産む機械」「ママさんたちが『一緒に子どもを産みたい』という形で国家に貢献してくれればいい」という産めよ増やせよ論であり、時代錯誤だ。さらに、*5-3-3のように、京都新聞も「少子化となる環境こそ問題なのに、女性に責任を押し付けている」としているのは正論である。

*5-1-1:https://mainichi.jp/articles/20190204/k00/00m/040/250000c?fm=mnm (毎日新聞 2019年2月4日) 統計不正問題 年内に追加給付開始へ 延べ2000万人超に564億円
 厚労省が公表した追加給付の工程表によると、過少給付は雇用保険や労災保険、船員保険などを合わせて564億円で、対象者は延べ2000万人超。追加給付が始まる時期は、保険の種類や現時点での受給の有無などによって異なる。現行の受給者は比較的早く、雇用保険が4月▽労災保険が6月▽船員保険が4月。既に受給が終わっている人は雇用保険が11月ごろ▽労災保険が9月ごろ▽船員保険が6月――と見込む。システム改修などの都合で例外的に時間がかかる対象者もおり、労災保険の一部では追加給付の開始が12月ごろにずれ込む見通しだ。この問題では、各保険の過去の受給額だけではなく現行の受給額も過少になっている。厚労省は3~6月に、適正な受給額に是正することを既に発表している。

*5-1-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190207&ng=DGKKZO40975120W9A200C1EE8000 (日経新聞 2019年2月7日) 18年実質賃金かさ上げ 不適切統計問題、実態は非正規増え、下落圧力
 毎月勤労統計の不適切調査を受け、足元の賃上げの評価の難しさが一段と鮮明になった。2018年の物価変動の影響を除く実質賃金の伸びが実態よりかさ上げされていたことが発覚。民間の独自試算でも18年の1人当たり実質賃金は大半がマイナスだ。だが非正規の働き手が増えるなど、全体をならした賃金水準には下落圧力がかかっている。雇用者増や賃上げの効果をすべて否定する議論も乱暴だといえる。連合によると、18年労使交渉による賃上げ率は全体で2.07%。中小だけでも1.99%と20年ぶりの高水準だった。それでも野党は国会論戦などで18年1~11月の実質賃金のうち9カ月分で前年を下回ったと主張する。賃上げをしているのに、なぜ1人当たりの実質賃金は下がるのか。厚生労働省がもともと公表していたデータで実質賃金が前年を下回るのは6カ月分だった。野党の試算は同じ事業所を比べる「共通事業所」ベースで、物価上昇率を使って名目値から割り戻したものだ。みずほ総合研究所の独自試算でも18年1~11月のうち8カ月分が前年比マイナスだ。人々は物価の動きと自身の懐事情を勘案しながらモノやサービスを買うかどうか判断するので、実質賃金は消費者心理を分析するうえで重要な指標だ。ここで無視できないのは、1人当たりの実質賃金に低下圧力がかかる構造的な要因だ。総務省の労働力調査によると、18年の女性の就業者数は前年比で3%増え、男性の1%増を上回った。65歳以上の就業者数も18年は前年比7%増えた。女性や高齢者は非正規で働く人も多い。このため賃上げをしても、1人当たりの賃金にならすと、下落方向への圧力が働きやすくなる。その一方で、例えばこれまで夫だけが働いていた世帯で新たに妻も働くようになれば、家計全体としての所得は増えることが多いだろう。安倍晋三首相が「総雇用者所得は名目も実質もプラスだ」と主張するのも、消費を支える家計全体の購買力を意識したものだ。総雇用者所得は1人当たり賃金と雇用者数を掛け合わせた値だ。18年1~11月の総雇用者所得は実質で前年比1.0~3.6%増えた。第一生命経済研究所の星野卓也氏は「実質賃金が下がっても、暮らしが悪くなったとは言い切れない」と指摘する。消費動向を判断するため、所得の総量を重視するという説明には一定の説得力がある。むろん、低収入の働き手ばかりが増えて1人当たり賃金が伸びなければ、消費全体は勢いづかない。実質賃金がマイナスでも賃上げ効果をすべて否定できないのと同じく、総雇用者所得の増加だけで消費の先行きを安心できるわけではない。ニッセイ基礎研究所の斎藤太郎氏は「消費者は見た目の名目賃金でまず賃金動向を実感する。実質に加え、名目も合わせて見るべきだ」と、丁寧な議論の必要性を訴える。民間エコノミストの間では独自に賃金動向を分析する試みもある。三菱UFJモルガン・スタンレー証券の宮崎浩氏は日銀のアンケート調査などを使って分析。18年の賃金は上昇基調とみる。第一生命経済研の星野氏は雇用保険のデータから1人当たり賃金を算出し、17年度の実質値はマイナスだった。18年度分のデータはまだないが「物価上昇率が鈍く、18年度の実質賃金は上がっている可能性がある」という。

*5-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190202&ng=DGKKZO40786420R00C19A2EA4000 (日経新聞 2019年2月2日) 公的年金運用損、最大の14.8兆円 10~12月、株安が打撃
 公的年金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は1日、2018年10~12月期の運用損失が14兆8039億円だったと発表した。市場運用を始めた01年度以降、四半期ベースでは過去最大となった。GPIFは14年の運用改革で相場変動の影響をより受けやすくなった。環境や社会への貢献を重視するESG投資などの取り組みを強めて安定的な運用につなげる。米中貿易戦争や欧州政治の不透明感を背景とした世界的な株安が響いた。ただこれまでの累積の収益額は56兆7千億円に及んでおり、年金財政を維持するために必要な水準は確保している。資産別の運用損益を見ると、国内株で7兆6千億円、外国株で6兆8千億円の損失となった。

*5-3-1:https://www.ehime-np.co.jp/article/news201902070016 (愛媛新聞社説 2019年2月7日) 麻生氏「少子化暴言」 責任の国民への押し付け許すな
 不適切な発言をしては、撤回し開き直る。既視感のある光景がまたも繰り返された。麻生太郎副総理兼財務相が、少子高齢化に関し「子どもを産まない方が問題」と発言した。さまざまな理由で子どもをつくりたくてもつくれない人たちに対して著しく配慮を欠いた暴言だ。「産む・産まない」については、あくまで個人の自由意思に基づくものであることも理解できておらず、人権感覚に大いに疑問符が付く。そもそも少子化の要因は、これまでの国の見通しの甘さと不十分な政策にある。にもかかわらず今回の発言は、その責任を国民に転嫁するものだ。安倍晋三首相は発言について言及していないが、なぜ放置したままなのか理解できない。「子どもを産み、育てやすい日本」をつくるという政権の方針が、出産の「押し付け」を意味するものではないなら、麻生氏の処遇も含め、危機感を持って対処する必要がある。麻生氏の発言があったのは、地元・福岡での国政報告会。自身が生まれた頃より平均寿命が30歳長くなったと指摘し、「年寄りが悪いみたいなことを言う変なやつがいっぱいいるけど、それは間違いだ。子どもを産まなかった方が問題なんだから」と述べた。2014年にも同様の発言をしており、何の反省もしていないことは明らかだ。野党のみならず、与党からも批判を受けた麻生氏は、発言を撤回。「一部女性の方が不快に思われる。それはおわび申し上げる」とも述べたが、不妊に悩む人には男性もいることを認識しておらず、失言の上塗りでしかない。少子化を含む人口減少問題は「静かな有事」とまでいわれる状況にある。政府は、女性1人が生涯に生む子どもの数「合計特殊出生率」を1.8に引き上げる目標を掲げるが、17年で1.43と低水準のままだ。だが「子どもがほしい」「第2子、第3子を持ちたい」、との希望を抱きながらも、経済的な事情や社会的なサポートの不足から、断念する夫婦が少なくないことを忘れてはならない。現状はこうした人たちへの国からの支援が行き届いていない。長く予算を担当してきた麻生氏が少子化を語るなら、まず国の「無策」への反省からだろう。少子化を巡る失言や暴言は麻生氏に限らない。昨年も、子どもを産まないことを「勝手な考え」とした自民党の二階俊博幹事長や、「必ず3人以上の子どもを産み育てていただきたい」と結婚披露宴で呼び掛けていると発言した同党の加藤寛治衆院議員が批判された。偏った家族観への固執は、党の体質ではないかと疑わざるを得ない。子どもがいない人を一方的に断罪しかねない発言は、社会に無用の分断をもたらすものであり、国民の代表である政治家として許されない。持論を自由に発信したいなら、せめて今の立場を自ら退いてからにすべきだ。

*5-3-2:https://www.shinmai.co.jp/news/nagano/20190209/KP190208ETI090004000.php (信濃毎日新聞 2019年2月9日) 麻生氏発言 首相の責任も問われる
 暮らしや人権に関わる問題について正しい理解ができない人を、なぜ政権の中枢に起用し続けるのか。安倍晋三首相の責任も問われる事態だ。副総理兼財務相の麻生太郎氏が、支持者らを集めて開いた地元・福岡での会合で少子高齢化に関連して「子どもを産まない方が問題だ」と述べた。自身が生まれた頃と比べ平均寿命が30歳長くなったと指摘し、「年寄りが悪いみたいなことを言う変なのがいっぱいいるけど、それは間違いだ」とした上での発言だ。少子化の責任は女性にある、と言いたいかのようだ。少子化の背景には保育所不足、雇用の不安定化など産みたくても産めない事情がある。そんな世の中にした一番の責任は、長年政権の座にある自民党にある。そもそも子どもを産むか産まないかは自己決定権の問題である。産まないことを「問題」だと批判するのは人権侵害につながる。発言に弁護の余地はない。麻生氏は5年前にも同じようなことを言っている。選挙の応援演説で、少子高齢化に伴う社会保障費の増加について「高齢者が悪いというようなイメージをつくっている人が多いが、子どもを産まないのが問題だ」と述べた。麻生氏はその時は、保育施設などの不足で産みたくても産めないのが問題との趣旨であり、「誤解を招いた」と釈明した。同じ発言が繰り返されたことから見て、「問題」とするのは本音と受け止めるほかない。麻生氏はこれまで、ほかにも暴言、失言を重ねている。財務省幹部によるセクハラ問題では「はめられて訴えられているんじゃないかとか、いろいろなご意見は世の中いっぱいある」。医療費を巡る政府の会議では「たらたら飲んで、食べて何もしない人(患者)の分の金(医療費)を何で私が払うんだ」。そこには社会的弱者への共感がない。そんな人が第2次安倍内閣の発足以降、副総理兼財務相のポストに居座り続けている。足元で森友学園問題が起きても責任を取らず、留任した。「女性は産む機械」「ママさんたちが『一緒に子どもを産みたい』という形で国家に貢献してくれればいいなと思う」…。政府・自民党幹部が過去に重ねてきた発言の数々を思い出す。一人一人の個性を大切にし、権利を保障するよりも、国のために国民を動員する発想がにじむ。党の体質も問われている。

*5-3-3:https://www.kyoto-np.co.jp/info/syasetsu/20190209_4.html (京都新聞社説 2019年2月9日) 麻生氏の暴言  またか、と看過できぬ
 麻生太郎副総理兼財務相が「子どもを産まないほうが問題だ」と発言し、批判を浴びている。
発言の根底には政策の不備を女性らに責任転嫁する姿勢が見え、言葉足らずでは済まされない。
発言は3日に地元福岡県で開いた支持者向けの会合であった。少子高齢化問題を語る中、「年寄りが悪いみたいなことを言う変なのがいっぱいいるけど、それは間違いだ。子どもを産まなかったほうが問題なんだから」と言及した。麻生氏は翌日、衆院予算委員会で野党から問いただされて発言を撤回し、その後、陳謝した。予算委で批判されても、にやけるばかりの麻生氏の態度を不快に感じた国民は少なくないだろう。麻生氏は「長寿化より、少子化のほうが社会保障や財政の持続可能性の脅威となるということを申し上げた」と釈明した。だが2014年にも同様の発言をして批判を受けており、本音とも取れる。政治家の言葉には、さまざまな立場の人が耳を傾けている。弱者の痛みを共有し、発言がどう受け止められるのかと聴衆の思いをくみ取りながら話せば、暴言を発することはないだろう。安倍晋三政権は女性活躍や働き方改革を掲げている。ところが麻生氏に限らず、出産を巡って政権や与党の中枢にいる政治家の発言が物議を醸してきた。確かに日本が抱える多くの問題は高齢化と併せ、少子化が急激に進んでいることに起因している。働いて、社会を支える世代が減るから社会保障制度が揺らぎ、経済成長が低迷している。とはいえ子どもを産む、産まないは、個人の問題だ。少子化の背景には労働環境など社会的障壁があり、望んでも「産めない」環境こそが問題であるのに、女性らに責任を押し付けていないか。長時間労働の是正や育児休暇の充実、経済的不安の解消によって仕事を続けつつ希望通りに子どもを産み育てられる環境を整える―それこそが政治の責務だ。根本的な対応を怠ってきた帰結が今日の少子化であろう。麻生氏は政権ナンバー2にもかかわらず、耳を疑うような放言、暴言が目立つ。いずれも閣僚としての資質に疑問符が付く。発言の揚げ足を取る考えは毛頭ないが、繰り返される暴言を、またか、批判しても無駄だ、と寛容に受け止めてはなるまい。安倍首相は麻生氏を不問に付してきたが、「1強」のおごりが顔をのぞかせていないか。国民の理解を得られるとは思えない。

<地方創成と教育の充実>
PS(2019年2月12、13日追加):子育て世帯の負担を軽減して少子化対策に繋げるだけでなく、どの子にも3~5歳時に適した教育を与えるという意味で、義務教育で無償の小学校への入学年齢を3歳にすればよいと私は思うが、*6のように、3〜5歳児の全世帯幼保無償化を行うのも一歩前進だ。しかし、0〜2歳児は、夫婦で育休をとれば家庭で育てる選択肢もあるため、無理に預かる必要はないだろう。また、地域住民を増やすには、「教育が充実している」というのが重要な要素であるため、市長は産業振興を支える人材を創るという意味だけでなく、教育そのものの充実にも一歩進んだ取り組みを行い、恵まれた環境になったらそれを宣伝するのがよいと考える。
 また、*6-2のように、資生堂が中国を中心とする海外向け需要の急増に対応することを目的として久留米市に進出することにしたのは、九州は地の利を活かしてアジアへの輸出に熱心に取り組んでいるため的を得ている。また、久留米大学が近くにあるため、化粧品会社がバイオと結び付いて、品質の維持・向上だけでなく新製品の開発を企画できるメリットもあるだろう。また、必要な原料を、近くの農漁業で供給できるメリットもある。
 なお、*6-3のように、インターネット上の漫画・小説・写真・論文等のあらゆるコンテンツをダウンロードすることを、文化庁が著作権侵害として全面的に違法とする方針を決定したそうだが、最近は、学生でもインターネット上に掲載されている世界の論文に直接アクセスして教科書より先端の知識を入手したり、政治家が書いた政策を直接見て切磋琢磨したりしている時代であるため、文化庁のドアホな方針は、日本の論文数をさらに減らし、文化力を下げるだろう。

*6-1:http://qbiz.jp/article/148622/1/ (西日本新聞 2019年2月12日) 幼保無償化法案を閣議決定 3〜5歳児は全世帯、成立急ぐ
 政府は12日、幼児教育・保育の無償化を実施するための子ども・子育て支援法改正案を閣議決定した。今年10月から3〜5歳児は原則全世帯、0〜2歳児は住民税非課税の低所得世帯を対象に、認可保育所や認定こども園、幼稚園の利用料を無料にする。認可外保育施設などは一定の上限額を設けて費用を補助。政府、与党は今国会の重要法案と位置付け、早期成立を目指す。政府は同日、低所得世帯の学生を対象に、大学や短大などの高等教育機関の無償化を図る新たな法案も閣議決定した。授業料や入学金を減免するほか、返済不要の給付型奨学金を支給する。来年4月の施行を目指す。幼保無償化は、子育て世帯の負担を軽減し少子化対策につなげる狙い。安倍政権が掲げる「全世代型社会保障」の一環で、財源には消費税率10%への引き上げに伴う税収増加分を充てる。3〜5歳児の場合、私立幼稚園の一部は月2万5700円、認可外施設やベビーシッター、病児保育などのサービスは月3万7千円を上限とする。0〜2歳児は月4万2千円まで補助する。認可外施設は保育士の配置数などで国が定める指導監督基準を満たすことが条件だが、法施行後5年間は基準を満たさない施設も対象となる。制度の検討過程で、全国市長会が「指導監督基準を満たさない施設まで含めると、子どもの安全に責任が持てない」と強く反発。このため地域事情に応じて、市町村条例で対象施設の基準を厳格化することも認める。朝鮮学校幼稚部やインターナショナルスクールなどは、国の基準を満たさない場合は無償化の対象にならない。

*6-2:http://qbiz.jp/article/148678/1/ (西日本新聞 2019年2月13日) 資生堂の久留米進出、九州の産業に多様化期待 雇用拡大、地元企業と連携も
 九州初となる資生堂の新工場が福岡県久留米市に建設されることが決まった。訪日外国人客の増加を受け、高まる「メード・イン・ジャパン」製品への需要に応えるとともに、アジアへの輸出にも対応する。これまで自動車や半導体製造などを中心に発展してきた九州にとっても、産業の多様化につながり、雇用にとどまらない経済波及も期待されるものの、化粧品産業の裾野拡大などは未知数だ。「(バイオ産業の集積を目指す)『福岡バイオバレープロジェクト』に弾みがつく。新しい雇用も生まれ、地方創生という観点からも非常に感謝している」。福岡県の小川洋知事は12日の立地協定締結式で、資生堂の新工場進出に期待を寄せた。九州は自動車や半導体製造などを基幹産業として発展。技術や人材の移転が進み、部品メーカーなど関連産業も集まって、一大集積地を形成するようになった。ただ、輸出依存の高い九州の製造業は海外の景気悪化や国際競争の激化などのあおりを受けることもあり、より多様な産業が求められている。今回、化粧品の世界的ブランドが進出することで、九州の産業構造の重層化が進む。資生堂の魚谷雅彦社長も「地元のITベンチャーといろいろな取り組みができるのではないか。バイオ分野との連携もできれば新しい価値を生み出していける」と地元との協調にも意欲をみせた。雇用が広がる側面もある。久留米市の大久保勉市長は、大学生の地元定着率が低いことに触れ「有名企業に就職できることはすばらしい」と期待。資生堂は地元での雇用規模は今後固めるとしているが、「かなり地元の人に協力いただくことになると思う」(魚谷社長)という。高い品質の「日本ブランド」製品を維持し、地元の産業として育てるには質の高い人材の養成、確保も課題になる。一方、自動車産業のように、原料の供給などで裾野が広がるかは不透明だ。佐賀県唐津市を中心に化粧品産業の拠点化を目指す動きもあるが、資生堂側は既存取引先の九州工場からの仕入れなどにとどまる可能性もあり、供給網への参入といった進出の波及効果は、現段階では見通せない。
    ◇   ◇
●海外需要の急増に対応 品質維持、向上が鍵
 資生堂が福岡県久留米市に化粧品の工場新設を決めたのは、中国を中心とする海外向け需要の急増に対応するのが最大の狙いだ。少子高齢化、人口減少で国内市場の伸びが期待しづらい中、同社は既に連結売上高の6割近くを海外で稼いでいる。海外市場で高い人気を誇る資生堂の「メード・イン・ジャパン」。その品質とブランド力を維持することこそ、新鋭工場の使命といえる。日本製の化粧品は、2010年ごろから急増した訪日外国人による「爆買い」で人気に火が付いた。爆買いが沈静化した後も人気は持続。帰国後に通信販売で買い求める中国人も少なくない。国の統計によると、化粧品の17年の国内出荷額は約1兆6千億円で過去最高。対中輸出額は18年までの8年間で10倍に増えた。資生堂の海外市場での売れ筋は、高価格帯ブランド「SHISEIDO」「クレ・ド・ポー ボーテ」のほか、中価格帯の「エリクシール」など。「長年の研究開発の成果や最新技術を採用している点など『日本の資生堂』が信頼されている」との同社グローバル広報部の言葉を裏付けるように、数字も伸びている。18年12月期の売上高をみると、中国向けは前期比32・3%、アジア太平洋圏は13・9%それぞれ伸びた。海外からの「神風」を受け、栃木県、大阪府に続く工場新設に踏み切る資生堂。だが化粧品の世界では、欧米勢の攻勢も激しい。また最近では、日本製への信頼を失墜させる品質問題が日本企業で相次いでいる。海外市場の期待を裏切らない品質の維持、向上こそが、資生堂の勝ち残り戦略と言って過言ではない。

*6-3:https://digital.asahi.com/articles/ASM2D6F8NM2DUCVL03V.html (朝日新聞 2019年2月13日) 著作権侵害、スクショもNG 「全面的に違法」方針決定
 著作権を侵害していると知りながら、インターネット上にある漫画や写真、論文などあらゆるコンテンツをダウンロードすることを全面的に違法とする方針が13日、文化審議会著作権分科会で了承された。「スクリーンショット」も対象となり、一般のネット利用に影響が大きいことから反対意見が出ていた。悪質な行為には罰則もつける方向で、文化庁は開会中の通常国会に著作権法の改正案を提出する。早ければ来年から施行となる見込み。これまでは音楽と映像に限って違法だったが、被害の深刻な漫画の海賊版サイト対策を機に、小説や雑誌、写真、論文、コンピュータープログラムなどあらゆるネット上のコンテンツに拡大されることになった。個人のブログやツイッターの画面であっても、一部に権利者の許可なくアニメの絵やイラスト、写真などを載せている場合は、ダウンロードすると違法となる。メモ代わりにパソコンやスマートフォンなどの端末で著作権を侵害した画面を撮影して保存する「スクリーンショット」もダウンロードに含まれる。このため「ネット利用が萎縮する」と批判が起きていた。ただ、刑事罰の対象範囲については、著作権分科会の法制・基本問題小委員会で「国民の日常的な私生活上の幅広い行為が対象になる」ため慎重さを求める声が相次ぎ、「被害実態を踏まえた海賊版対策に必要な範囲で、刑事罰による抑止を行う必要性が高い悪質な行為に限定する」こととした。いわゆる「海賊版サイト」からのダウンロード▽原作をそのまま丸ごと複製する場合▽権利者に実害がある場合▽反復継続して繰り返す行為――などを念頭に、今後文化庁が要件を絞り込む。

<在留資格の根拠が不明確で恣意的である>
PS(2019年2月16、21日追加):*7-1の「高度人材ポイント制」の加点対象大学が、現在は旧帝大・早大・慶大などの13大学に限られており、地方大学に少なく、その選択に明確な基準がないのには驚いた。外国人在留資格優遇大学の拡大は、単に「高度人材の地方分散」という要請だけでなく、有用な人材を集められるか、公平性はあるかなどの視点も重要であるため、恣意性がが入らないように、各大学の申請により合理的な基準(少なくとも国立大学は入るようでなければならないし、農業・保育・介護など需要の多い科目を教えている大学も入れるべきである)に基づいて行われるべきである。
 また、*7-2のように、熊本県警は入管難民法(資格外活動・不法残留)違反で、菊池市の製造工場で働くベトナム国籍の技能実習生ら12人を逮捕し、その理由は「技能実習の在留資格を持つ人が資格外活動の許可を受けずに同工場で補助作業員として働いて報酬を受け取った」「在留期間を超えた」などだそうだ。しかし、人手が足りず、少子化を問題にしながら、日本で働いている外国人を軽微なことで犯罪者扱いするのは人権侵害も甚だしく、日本のメディアがトランプ大統領を批判するのは何かを間違えている。
 なお、*7-3のように、新しい外国人雇用制度に期待している農業は、積み残された課題をまじめに指摘しているため、一つ一つの課題を解決していくことが望まれる。

*7-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190216&ng=DGKKZO41350440V10C19A2MM8000 (日経新聞 2019年2月16日) 外国人在留資格、優遇大学を拡大 高度人材、地方へ分散促す
 政府は外国人の学歴や年収を点数にして評価する「高度人材ポイント制」の加点対象を地方大の卒業者にも広げる。地方大出身者が在留資格を取りやすくする。4月に新在留資格による外国人労働者の受け入れが始まるのを前に、相対的に賃金が高い都市部への人材の集中を避け、人手不足が深刻な地方への分散を促す。高い技能を持った外国人を地方経済の活性化に生かす狙いだ。高度人材ポイント制は2012年に導入した。学歴や年収、職歴といった項目ごとにポイントを設け、70点に達すると「高度専門職」の在留資格を与える制度。配偶者の就労や親の帯同などで優遇を受けられる。18年6月時点で約1万3千人が認定されており、政府は22年末までに2万人に増やす目標を掲げる。対象は大学教員などの研究職や企業の営業職、経営者といった人材。活動の種類によって異なるものの、例えば博士号取得で20~30点、法相が指定する大学を卒業した場合は10点を加算する。今回はこの対象校を広げる。3月をメドに地方を含む100以上の大学に拡大する。これまでは東大をはじめとする旧帝大や早大、慶大など全国13大学に限られていた。既存の対象校には広島大や九州大なども含まれていたが岡山大や熊本大など、より人口が少ない地域の大学にも広げる。加点対象大学の卒業者でなくても、職歴や年収に応じて加算されるポイントで高度専門職の在留資格を得られる。ただ加点対象の大学を卒業すれば10点を獲得でき、在留資格をより取得しやすくなる。政府は留学の段階から外国人が地方を選びやすくなるとみる。基準となるのは英教育誌タイムズ・ハイヤー・エデュケーションなどが公表する世界大学ランキングに選ばれた大学。国際化の取り組みに文部科学省が補助金を出す「スーパーグローバル大学」の指定校も対象とする。政府は4月からの外国人材の受け入れ拡大を控え、運用に関する基本方針を昨年12月に決定。外国人材が大都市圏に集中するのを防ぐため、必要な措置をとると明記した。事実上の単純労働を対象とする新在留資格「特定技能」を巡っては、先進的な取り組みを進める自治体への財政支援制度をつくる方針を打ち出した。

*7-2:http://qbiz.jp/article/149120/1/ (西日本新聞 2019年2月21日) 技能実習生ら12人逮捕 熊本の同じ工場 入管法違反容疑
 熊本県警は19日、入管難民法違反(資格外活動や不法残留)の疑いで、同県菊池市の製造工場で働くベトナム国籍の技能実習生ら12人を逮捕した。逮捕されたのは、菊池市泗水町永のチン・ヴァン・ズン容疑者(25)らで、11人が技能実習、1人が留学の資格で来日していた。逮捕容疑は、チン容疑者ら技能実習の在留資格を持つ2人が、昨年11月〜今年2月19日、資格外活動の許可を受けずに同工場で補助作業員として働き、報酬を受け取った疑い。8人が在留期間を3カ月〜3年半超えて日本に滞在した不法残留、2人が偽造在留カードを所持した疑い。県警によると、12人は一軒家2棟に6人ずつで暮らしていた。近隣住民から「不審な外国人がいる」と通報があったという。12人は同じ派遣会社から工場に派遣されたと話しており、県警は派遣元の会社からも事情を聴いている。
   ◇   ◇
●熊本で外国人労働者急増 地震後、人手足りず
 日本で働く外国人労働者は昨年10月時点で146万463人に達し、届け出が義務化された2007年以降、最多を更新した。熊本県では1万155人が働き、前年からの増加率は31・2%と全国で最も高かった。少子高齢化や景気回復に伴う労働力不足に加え、熊本県では「震災後の人手不足も要因」(熊本労働局)とみられ、外国人労働者の増加傾向は今後も続くとみられる。国籍別ではベトナムが約4割を占め、中国、フィリピンが続く。同労働局によると、資格別では「技能実習」が6295人で6割超。就労する産業別では「農業、林業」29・2%、「製造業」28・3%、「卸売業、小売業」10・8%、「建設業」8・8%の順に多かった。技能実習生が、より収入が高い職を求めるなどして失踪する事例も相次ぐ。熊本県警によると、昨年1年間の失踪者は247人に上り、15年の2・8倍となっている。

*7-3:https://www.agrinews.co.jp/p46802.html (日本農業新聞 2019年2月21日) 外国人雇用制度 課題積み残し 生活支援誰が? 派遣元のサポート期待 技能実習生受け入れ法人
 昨年の臨時国会で改正出入国管理法が成立し、4月から新たに外国人を雇用する制度がスタートする。短期間の受け入れも可能となり、農・漁業では直接雇用だけでなく派遣形態でも受け入れができるようになるため、生産現場の期待は高い。ただ、外国人労働者が地域社会になじめるような生活支援の枠組みなど不透明な部分が多く、制度開始を前に、不安を訴える声が上がる。働く外国人にとっては、家族の呼び寄せが基本的にできないなど、先送りされた課題も残る。鳥取県大山町の「当別当育苗」では、フィリピンからの技能実習生、アンジェリカ・キントさん(27)がポット苗を運ぶ作業に励む。「ここに来てよかった。親切で学ぶことが多い。ごますりじゃなくて、本音よ」。個室が整備されるなど働く環境に感謝するものの、母国に残した3人の子どもを思うと、切ない気持ちがこみ上げるという。夫と義理の母が子育てをするが「お金をためて仕送りをするの。早く会いたいわ」と話す。年間160万ポット のスイカやトマトなどの苗を専業農家向けに出荷する同社。32年前に商社マンから農家に転職した當別當英治さん(68)が経営し、5年前から技能実習生を年間4人程度受け入れる。「気持ちよく働いてもらった方が経営にプラスになる。コミュニケーション不足は仕事のミスにつながる」と考え、実習とは別に、来日後1年間は毎日、自ら日本語を教え、対話を深める。食事や旅行などイベントも欠かさず、研修生の母国の文化や国民性を勉強して理解し、日常生活をサポートしてきた。国際貢献の名の下に行う研修と、事実上は労働力として受け入れる現場の実態に「無理がある」と感じていたことから、新制度に期待は大きい。作物に応じた派遣を希望し「直接雇用ならサポートもできる限りするが、派遣で生活支援を派遣会社が担うことになれば農家の負担軽減になる」と考える。
●家族呼び寄せ 要望強く
 家族の呼び寄せや生活支援をどこが担うかなど、4月からの制度開始を前に積み残された課題は多い。新制度では、外国人から要望の強い家族の呼び寄せは原則できないが、子どもを母国に残す場合、一時帰国は可能になる。ただ、来日、帰国時と同様に、一時帰国でも飛行機代は外国人が負担することになる見通しだ。人権の観点から家族帯同への要望は強く、経済同友会も1月に必要性を提言している。新制度では、受け入れる農家や派遣会社が支援できない場合、日本語習得や社会で暮らすための教育、住宅確保や手続きのサポートといった生活支援などを国が認定する「登録支援機関」が担う。業界団体や弁護士、社会労務士などが想定される。監理団体が登録支援機関になることもできる。ただ、同機関がどの地域で、どこまできめ細かくサポートできるかは不透明だ。外国人雇用を視野に入れる関東の農家は「実習生のように、受け入れ農家が責任を問われない派遣(形態)に期待している」と本音を明かす。法務省は今月から新たな仕組みについて、47都道府県で説明会を開いている。同省は「雇用計画や支援計画の基準などを記した政省令を公表できていないが、説明できる範囲で理解を求めていく」(入国管理局)とし、細部は「検討中」を繰り返す。4月からの施行を前に、自治体担当者は「国に聞いても不明確な点ばかり。人手不足対策は切実な問題なので、走りながら課題を検証して、運用を改善していくしかない」などと説明する。全国に先駆けて外国人を派遣する「農業サービス事業体」を発足し、5月から外国人を生産現場に派遣する長崎県は「政府の方針を受けて生活支援などを決めていきたい」(農業経営課)としている。
●現行制度 教訓生かせ
 外国人技能実習生や新たな在留資格を研究する早稲田大学の堀口健治名誉教授の話
 新たな制度は4月に始まるが、仕組みが定まっておらず“生煮え”の状況だ。当面、農家やJAは技能実習生で対応を進めることになるだろう。技能実習制度では、訪れる外国人も受け入れる農家側も双方にメリットがあるよう、生活面も含めて多くの農家は配慮してきた。新制度では、技能実習制度に比べると作業に制限がないことがメリットとされるものの、トラブルも想定される。費用負担や手続きなど、どこが責任を負ってフォローするのか、派遣で支援体制が機能するのかなど、課題が残される。技能実習制度の教訓や仕組みを生かした対応が求められる。

<医療の充実も地方創成の手段の一つであること>
PS(2019年2月14、21日追加):*8-1のように、九経連が、医療機関の外国人患者受入態勢整備を進めるため、「九州国際医療機構」を設立して多言語対応やトラブル対策を支援し、「訪日客などにしっかりした医療を提供するとともに、先端医療を国際的に供給するシステムをつくりたい」としているのはよいことだが、多言語に対応するのは容易でないため、AIなど医療分野以外からの機器開発による支援も重要だ。しかし、*8-2のように、「医療ツーリズム」市場も世界で急拡大しており、環境の良い場所で高度な医療を受けて完治したいというニーズは今後も増え、2021年まで年率13%で成長が続くそうで、医療は高付加価値の“観光”の一つになりつつある。
 一方で、*8-3のように、日本にも医師不足地域があり、「年1900~2000時間」までの残業を認めるとする厚労省の原案が出ているが、これは医師を他の人の2倍働かせる内容で、よほど健康で病気になったことがなく病人の気持ちはわからないといった人しか医師を続けられないというパラドックスを作る上、医師が研鑽する時間をとるのも難しくする。厚労省は、*8-4のように、「2036年時点に各都道府県で必要とされる医師数を推計すると、最も医師の確保が進んだ場合でも宮崎など12道県で計5323人の不足が見込まれる」としているが、おおざっぱに全体数を推計するのではなく、診療科による医師の偏在もなくすよう頭を使うべきである。
 しかし、ちょっと気を付ければ無駄に医師を忙しくする必要のないことも多いのに、*8-5の事例のように、私は(いつも風邪をうつされないように自分がマスクをかけて電車に乗るのだが)、先日、マスクを忘れて電車に乗った時、隣に来た男性に咳をされ風邪をうつされてしまった。このように、みんなに迷惑をかけるのに、マスクもせずに大きな口をあけてせき込むのはマナー違反であり、まさか「こういうことを言うのが相手を傷つける」などという教育はしていないだろうが、学校での清潔・マナーに関する教育に疑問が持たれる。

  
  2018.7.28東洋経済  2018.11.15東京新聞    2019.2.18西日本新聞

(図の説明:左図のように、日本における外国人労働者数は毎年20万人ペースで増加しており、中央の図のように、人手不足はさらに増える見込みだ。また、右図のように、医師数も不足している地域があるが、診療科による医師の偏在もあるため、総量調整だけでは解決しない)

*8-1:http://qbiz.jp/article/148407/1/ (西日本新聞 2019年2月7日) 外国人診療態勢強化へ 九経連が医療機関支援組織 多言語化やトラブル対策
 九州経済連合会は6日、医療機関での外国人患者の受け入れ態勢整備を進めるため、「九州国際医療機構」を設立した。在留外国人や訪日客が増加する中、医療従事者向けのセミナーを開催するなどして、多言語対応の充実や医療費未払いといったトラブル対策を支援する。代表理事に就任した九州大病院の赤司浩一病院長は福岡市で記者会見し「訪日客などにしっかりと医療を提供するとともに、先端医療を国際的に供給するシステムをつくりたい」と抱負を述べた。九経連の麻生泰会長は「医療を通じて外国人に安心感を提供することが、観光やビジネスの面で九州の魅力アップにつながる」と強調した。法務省などによると、九州の在留外国人は13万1532人(2018年6月末)。九州の空港や港から入国した外国人は、18年に初めて年間500万人を超えたとみられる。在留外国人や訪日客の受診が増えるのに伴い、医療機関の言語対応が不十分で適切な診療ができなかったり、外国人患者が日本の公的医療保険制度を不適切に利用したりする事例も起きている。機構は九経連に事務局を置き、問診票などの多言語対応支援や医療通訳の勉強会開催、多言語で受診できる医療機関や医療保険制度など外国人向けの情報発信にも取り組む。治療目的の「医療ツーリズム」で来日する患者と受け入れ医療機関のマッチング支援も手掛ける考えだ。

*8-2:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO36751950S8A021C1MM0000/ (日経新聞 2018/10/22) 医療ツーリズム、世界で急拡大 新興国が誘致競う
 国外を医療目的で訪れる「医療ツーリズム」の市場が世界で急拡大している。主要国の高齢化や格安航空会社(LCC)など安い交通手段の発達により、タイなど新興国渡航の人気が高まる。各国で査証(ビザ)要件を緩めるなど需要取り込みの競争も激しい一方で、地元市民の医療が後回しになるとの批判も出ている。米プライスウォーターハウスクーパース(PwC)が2018年に明らかにした調査によると、医療ツーリズムの世界市場は16年時点で681億ドル(約7兆6千億円)だったという。21年まで年率13%で成長が続くと試算している。16年は世界で約1400万人が移動したとみられ、訪問先はタイ、メキシコ、ブラジルなど新興国が人気だ。医療レベルが比較的高いにもかかわらず、物価が安いため。治療費を含めた旅費は1人あたり約3千~1万ドルで、通常の観光より多い傾向にある。市場拡大の背景には高齢化がある。50年に4人に1人が65歳以上となる中国などが需要をけん引する。また国内線で成長したLCCが国際線にも広がり、移動が手軽になっている。誘致合戦も過熱する。タイは「アジアの医療ハブ」構想を打ち出し、官民で取り組んできた。調査会社によると、17年に医療ツーリズムで訪れた人はのべ330万人と世界トップのもようだ。18年には4%増の同342万人の見込みだ。タイ政府は17年、治療目的の観光客向けに査証(ビザ)の滞在許可期間を延長した。中国など周辺5カ国からの観光客はそれまでより最大76日長い90日滞在できるようにした。バンコクが拠点の富裕層向け私立病院はホテル並みと評される豪華な設備を整え、呼び込みに躍起だ。近年台頭するのがインドで、訪問者は17年に約49万5千人と15年の2.1倍に増えた。医療機器や医師が優れている割に費用が安いのが一因で、手術費は先進国の2割で済む例もあるという。医療レベルが不十分な近隣やアフリカ諸国のほか、インドの伝統医学「アーユルベーダ」を目的にした欧米や中東の訪問者も多い。インド政府は医療人材のスキルを高める研修や、外部にアピールするイベントなどに補助金を出している。病院最大手アポロ・ホスピタルズは英語やヒンディー語などが話せない患者のために通訳を置き、母国から付き添う家族のために宿泊先を探すといった手厚い対応をしている。中東からの旅行者が多いのがトルコだ。地元メディアによると医療目的の訪問者は10年間で急増し、17年に約70万人が訪れた。人気の一つが男性向け植毛で、年10万人以上が治療を受ける。予約までの日にちの短縮や通訳の手配などを官民で進めており、18年には外国人の治療費の一部を付加価値税(VAT)の対象外とした。欧州ではハンガリーやルーマニアなど東欧の人気が伸びている。メキシコも、医療費が高くなりがちな米国の旅行者を多く受け入れる。一方で問題点も指摘される。米国の疾病予防管理センターは言葉が分からない国での治療、品質が分からない薬剤に危険が伴うと指摘する。オーストラリアでは17年、マレーシアで脂肪吸引などを受けた男性が帰国後に死亡したと報じられた。たとえばインドでは医師や病床数が足りず、低所得者層や農村部には十分な医療サービスが行き渡っていない。こうした国民が置き去りにされる中、国外の高所得者が恩恵を受ける医療ツーリズムを批判的にみている個人もいる。日本政府も医療ツーリズムを成長分野と位置づけ、巻き返しをねらう。ただ、16年の医療滞在ビザ発行は1307件にとどまっている。海外での認知度が乏しいうえ、新興・途上国と比べてコストが高い点が伸び悩んでいる原因とみられる。

*8-3:https://www.nikkei.com/article/DGKKZO3981696009012019EE8000/ (日経新聞 2019/1/10) 医師不足地域「年1900~2000時間」 残業規制で厚労省原案
 厚生労働省が2024年4月から適用する医師の残業時間の上限規制の原案がわかった。医師不足の地域の病院などでは「年1900~2000時間」まで容認する案だ。連合など関係団体に示して調整を進めているが、一般労働者の上限規制を大幅に上回るため、議論は難航が予想される。4月施行の働き方改革関連法では一般労働者で年720時間以内、単月100時間未満などの残業時間の上限規制を課す。医師も規制対象だが、厚労省は医師向けの独自ルールを今年度中に固め、5年後に適用する。一般の医師の残業時間の上限は休日労働込みで960時間とする方針。その上で地域医療に欠かせない病院などに勤務する医師は特例で上限を緩める。原案では特例は35年度末までの経過措置とする方針。勤務間インターバルなどの健康確保措置も義務付ける。

*8-4:http://qbiz.jp/article/148936/1/ (西日本新聞 2019年2月18日) 医師不足12道県5000人超 36年推計 都市からの配分急務
 厚生労働省が2036年時点で各都道府県で必要とされる医師数を推計すると、最も医師の確保が進んだ場合でも、宮崎など12道県で計5323人の不足が見込まれることが17日、関係者への取材で分かった。医師確保が進まない場合、必要な人数を満たせない34道県の不足分を積み上げると、3万人超となる。東京や大阪、福岡、佐賀、長崎など13都府県では、その場合でも必要人数を上回る医師が確保できると予測されており、大都市圏から不足地域に医師を配分する施策が急務となる。厚労省は36年度までに医師が都市部に集中する偏在問題の解消を目指している。今回の集計結果を18日の有識者検討会に報告し、医師確保策の議論の材料とする。今後、医師が足りない地域に関しては、地元で一定期間勤務することを義務付ける大学医学部の「地域枠」を優先的に配分するなど、対策を強化したい考えだ。検討会では、医師が集中している現状の度合いを示す「医師偏在指標」を、都道府県が複数の市町村などをまとめて設定する「2次医療圏」ごとに提示。都道府県など3次医療圏単位でも示し、医師不足が顕著な岩手、新潟、青森など15県は「医師少数3次医療圏」とする方針。今回の推計は、患者の年齢や性別による受診率や、配置されている医師の性や年齢、将来の人口変化などを考慮し、36年時点で必要とされる医師数を算出。2次医療圏ごとでは、全国335カ所のうち約220カ所で医師が不足する結果となった。都道府県ごとの推計をみると、医師確保が最も進んだ場合でも、新潟で1534人、埼玉1044人、福島804人の不足が生じる。医師確保が進まなかった場合は、埼玉で5040人、福島で3500人、茨城で2376人と不足人員がさらに増えると推計。必要人数を満たせなかった34道県の不足分を、他の都道府県からの流入を考慮せず、単純に積み上げると、3万4911人となる。一方、その場合でも、東京で1万3295人、大阪で4393人、福岡で2684人が必要な医師数を上回ることが見込まれている。

*8-5:http://qbiz.jp/article/149044/1/ (西日本新聞 2019年2月20日) せき込む音が高速バス車内に響く・・・
 せき込む音が高速バス車内に響く。せきの主は反対側の窓側席の男性。マスクはしていないようだ。世の中ではインフルエンザが流行中。バスの中は逃げ場がない。「勘弁してほしい」と思い窓からずっと外を見ていた。近くの客は気が気じゃなかっただろう。そんな体験から10日余り。のどが痛くてせきが止まらない。鼻水が出て顔が熱っぽい。病院で検温すると38度7分。「見るからに怪しい」と医師。ウイルス検査でA型のところに赤い線が出た。ワクチンを打っていたので症状が軽くて済んだ。職場を強制退去させられ、しばらくは自宅軟禁生活だ。編集局内でインフルエンザがじわじわ広がっている。世間ではピークは過ぎたようだが、流行の終わりかけに発症するとは中年男の悲哀。今週初めからのどが痛かったのにマスクをしてなかった自分を猛省。

<地方の発展はみんなの幸福に繋がるのに・・>
PS(2019年2月19日追加):*9のように、金沢産野菜と農産加工品を東京に運ぶ貨客混載の高速バスが運航を開始したそうだ。人口の少ない地方は、バスも貨客混載しなければ走らせることができないくらいだが、それなら貨物積載部分の面積が大きな地方仕様のバスがあってもよいと思われる。このような中、2020年開催の二度目の東京オリンピック・パラリンピックに2兆円以上もかけ、東京の地下鉄工事は1路線1,000億円以上と言われながら、地方が返礼品を工夫し地場産品を開発しながら、ふるさと納税によって少々住民税を集めると東京圏から苦情が出るというのは、それこそ背景や歴史を無視したエゴ以外の何物でもないだろう。

*9:https://www.agrinews.co.jp/p46779.html (日本農業新聞 2019年2月19日) 高速バスで野菜直送 東京便スタート JA金沢市
 金沢産の野菜と農産加工品を東京に運ぶ貨客混載の高速バス「産地直送あいのり便」の初便が18日、西日本JRバス金沢営業所を出発した。バスのトランクスペースを使って生産量が少ない「加賀野菜」などを輸送し、販路拡大や運送費のコスト削減、農家の所得増大につなげる。今後、月に4便程度の運行と都内各所での即売会などを計画する。輸送されたのはサツマイモ「五郎島金時」や「加賀れんこん」「金沢春菊」などの加賀野菜と加工品各9品目の計4ケース。JA金沢市が集荷した。金沢営業所前で積み込み、JAの辰島幹博常務は「小ロットでも可能な新しい輸送事業となる。金沢産野菜の発信の広がりに期待する」とあいさつした。バスは午前9時半に金沢駅発、午後5時22分に新宿駅着の「金沢エクスプレス2号」。野菜マーケティング販売などのアップクオリティ(東京)が運営を担当し、19日、三菱地所(同)の社員に直販する。アップクオリティによると、バス会社と連携した農産物の貨客混載輸送は9県目。担当者は「都内のレストランやスーパーからも注文を取りたい」と話した。西日本JRバスでは農産物の貨客混載輸送は初めて。金沢営業所の丸岡範生所長は「バスは3列シートで定員が28人と少なく、トランク収納に余裕がある。定期便を使って輸送したい」とした。JAの辰島常務は「昨年の試験輸送では鮮度が高く、速く届くと好評だった。生産量の確保が今後の課題だ。これまで以上に、若い人にも加賀野菜を栽培してもらいたい」と期待を寄せる。

<地方創成とふるさと納税>
PS(2019年2月22、23《写真等》、24、25日追加):地方が発展するためには、*10-1のように、所得の高い仕事を増やし、地域の魅力をアピールして移住者を増やすのが最も合理的である。そのためには、今後の成長産業である農林漁業資源を活かして生産者の所得を増やしたり、製造業の事業所・本社機能が地方に移るような施策を行うことが必要だ。しかし、海外も含めて立地の選択肢が多い製造業は、税制よりも販売エリアへのアクセス・労働力の質と単価・関連産業からの調達を考慮して立地を決定するため、間違いのない意思決定と筋の通った普段の誘致努力が必要だ。一方で、*10-2の地方創生目的で文化庁などの政府機関の一部を地方移転するというのは、政府機関の生産性はもともと高くなく、分散すればさらに効率が下がるため、首都機能の一部をまとめて疎開でもさせるのでなければ、国全体としてはマイナスだろう。
 また、*10-3のように、対馬の漁業者でつくる「対馬の漁業者の所得向上を実現する会」が、①対馬市への公設市場開設 ②燃料費の高騰対策 等の要望書を提出したそうだ。しかし、①については、対馬はよい水産物を作っているため、公設市場をいくつも通すより東京・大阪・福岡の公設市場の出張所を対馬につくってもらった方が、手数料を省くことができるのではないか?また、②については、「船の燃料費が高いから補助しろ」と20年以上も言い続けるのはあまりに工夫がなく、船を電動船に変えて島で発電した自然エネルギー由来の電力で動かしたり、クロマグロの漁獲制限で所得が半減したのならクロマグロの完全養殖をしたり、船に魚を効率よく漁獲できる機材を備えたりすればよいと考える。
 *10-4-1、*10-4-2のように、ふるさと納税額は、泉佐野市が2017年に135億円を集め、2018年には360億円に達する勢いで他地域から苦情が出るほどだが、私は商才があると思った。泉佐野市は関西空港を持ち、瀬戸内海・淡路島・四国に面した美しくて歴史的交通の要衝であるため、泉佐野市にアマゾンやガリバーと同じくらい世界に通用するネット通販会社(例えば、大王《おおきみ》という名前)を作って、質の良いものを販売してはどうか? そして、地方自治体が、ふるさと納税により、一村一品のような小さな目標ではなく、自らの長所を活かして堂々と売れる物を開発してきたことは、ふるさと納税制度の大きな成果なのである。
 なお、今日(2019年2月24日)わかったのだが、*10-5のように、半島・離島・奄美群島のうち一定の基準を満たす地域は、「個人又は法人が機械・装置、建物・その附属施設及び構築物の取得等をして事業の用に供すると5年間の割増償却ができる」という税制優遇があるそうだ。

  
移住希望地域               長崎県対馬市の様子

(図の説明:左図のように、移住希望地域は長野県が連続1位で、都市部から地方への移住に抵抗感のない人は多いことがわかる。また、左から2番目の図のように、長崎県対馬市は韓国の釜山と49kmしか離れていない国境離島であり、リアス式海岸が美しい。そして、ここでは獲る漁業だけでなく、右から2番目の写真のようなマグロの養殖・1番右の写真のような真珠の養殖・その他の魚介類の養殖も盛んだ。つまり、対馬は、今後のアジアの台頭で潜在力が高くなる島であり、付加価値の高い仕事をするための資本投下や人材投入が必要な時期なのである。また、真珠も素敵なアクセサリーに加工して販売した方が付加価値が上がるし、ふるさと納税の返礼品にしてもよいと考える)

 
イタリア製   フランス製      スペイン製          日本製

(図の説明:念のため、各国の真珠のブローチを並べて見たところ、ヨーロッパ製は台座のデザインが華やかで、日本製は真珠は多くついているのだが、台座が簡素なため全体としておとなしくなっている。そのため、外国のデザイナーを入れてみるのも一案だろう)

*10-1:https://www.shinmai.co.jp/news/nagano/20190220/KT190219ATI090041000.php (信濃毎日新聞 2019年2月20日) 移住希望地 長野県1位 2年連続
 認定NPO法人ふるさと回帰支援センター(東京)が19日に発表した2018年の移住希望地ランキングによると、1位は2年連続で長野県となった。2位は前年3位の静岡県、3位は前年16位の北海道だった。長野県は年代別でも30〜50代でトップ。20代以下では新潟県、60代では北海道、70代以上では宮崎県が1位だった。長野は20代以下で2位、60代で3位、70代以上で2位。長野県楽園信州・移住推進室は、市町村と連携した情報発信などが要因と分析。阿部守一知事は「来年度は『信州暮らし推進課』を設置し、一層充実した体制の下で移住、交流の促進に取り組む」としている。18年に同法人が運営する情報センターを利用した人や、セミナー参加者に移住したい都道府県を複数回答可で質問。9776件を集計した。

*10-2:https://www.kochinews.co.jp/article/252817/ (高知新聞 2019.2.10) 【一極集中の拡大】地方創生の本気度を問う
 東京一極集中に歯止めがかからず、むしろ加速している実態があらためて明らかになった。総務省が公表した2018年の人口移動報告によると、東京圏(埼玉、千葉、東京、神奈川)は転入者が転出者を14万人近く上回る転入超過となった。前年より1万4千人以上多く、一極集中が拡大した。その半面、39道府県が人口の流出を意味する転出超過で、高知県は2300人余り。全国の市町村の7割以上で転出超過となった。日本人に限った統計でも、東京圏は23年連続で転入が上回った。安倍政権が地方創生本部を新設した14年以降の5年間は、10万人超えが続く。東京圏の吸引力が強まっているのは皮肉といえる。東京一極集中は、戦後の高度経済成長政策のひずみとして問われ続けてきた課題だ。近年は20年の東京五輪に向けた建設ラッシュや、企業の業績改善に伴う慢性的な人手不足という要因もあろう。ただ、安倍政権は地方創生を看板政策に掲げ、選挙のたびに地方の期待を取り込んできた。その本気度が問われる実態であり、危機感を持って政策を見直すべきだ。15年度にスタートした地方創生の総合戦略は、東京圏と地方の転出入を20年に均衡させる目標を掲げている。だが、目に見える成果は上がっていない。達成に向けた目玉政策は、本社機能を東京23区から地方に移す企業への優遇税制だったが、昨年11月現在で認定は25件。企業を大胆に動かす誘導策にはなり得ていない。昨年も東京23区にある大学の定員増を10年間禁止する新法が成立。さらに、人口流出をせき止めるダムとして重点支援する「中枢中核都市」に高知市を含む82市を選んだ。こうした政策の実効性も現時点では見通せない。中枢中核都市については地方から、周辺の人口を吸い上げる「ミニ集中」を懸念する見方が強い。人の流れを変えるインパクトでいえば、政府機関の地方移転も文化庁の京都府移転などごく小規模にとどまっている。一極集中の是正という本来の狙いに照らせば、期待できる効果はあまりに小さい。省庁の強い抵抗が繰り返されてきた課題とはいえ、ここでも安倍政権の本気度に疑問符が付く。首都直下地震など災害リスク対応という観点もある。リーダーシップを持って議論し直す必要がありはしないか。政府は19年度、総合戦略の新5カ年計画を策定する。これまでの政策を真摯(しんし)に検証し、地方の意見を取り入れながら、実効性がある政策に向け大胆に見直すべきだ。高知県も転出入者ではかる「社会増減」を19年度にゼロにする目標を掲げてきた。雇用創出や移住の環境整備など粘り強い努力が欠かせまい。また、現場の実態を踏まえた有効な政策を国に実現させるには、なお積極的に声を上げていく姿勢が必要になる。

*10-3:http://qbiz.jp/article/149041/1/ (西日本新聞 2019年2月20日) 対馬の漁業者、公設市場開設など県に要望
 長崎県対馬市の漁業者でつくる「対馬の漁業者の所得向上を実現する会」(宮崎義則会長)は19日、県庁を訪れ、同市への公設市場開設や燃料費の高騰対策など5項目を県に求める5325人分の署名と要望書を提出した。県側は「施策の参考にしたい」と述べたが、漁業所得の具体的な改善策には言及しなかった。同会は昨年末に発足。署名には漁業者のほか、船の燃料や電気設備を扱う業者も協力した。同会によると対馬には魚市場がなく、売り上げの半額をかけて本土の市場に出荷しているという。また本土と対馬の燃料費の格差を県が補てんするように求めている。要望書では他に、クロマグロの漁獲制限で半減した所得対策や、違法操業への取り締まり強化を訴えている。同会は「市場があれば流通ルートに乗りにくい魚も販売でき、漁業者の利益が増える」としている。

*10-4-1:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO32713260W8A700C1LKA000/ (日経新聞 2018/7/6) ふるさと納税、関西首位は大阪・泉佐野市の135億円 17年度
 総務省は6日、応援したい自治体に寄付できる「ふるさと納税」による2017年度の寄付額を発表した。関西2府4県は1位が大阪府泉佐野市の135億円で前の年度の約4倍。2位は和歌山県湯浅町の49億円で同5倍だった。総務省は17年4月、返礼品の調達額を寄付額の3割以下にするなど「良識ある対応」を求めたが、3割を超えた両自治体の寄付額が急増した。泉佐野市は17年度の返礼率は約4割。返礼品の品ぞろえを1000種類以上と16年度より300種類以上増やした。もっとも選ばれたのが肉。1万円以上の寄付で黒毛和牛切り落とし1.75キログラムの人気が高かった。湯浅町は地域振興を目的に地元の約70商店が取り扱う商品を返礼品としている。肉やウナギなど高額な返礼品が人気を集めた。返礼率も最大4割だった。両市町とも18年度は返礼率を3割以下とするなどの対応をとる。関西2府4県の寄付額の総額は前年度から1.9倍の437億円だった。豪華な返礼品を自粛する動きが出る中でも、制度が徐々に浸透し、全国と同様に伸びた。地域課題を解決する財源に、ふるさと納税を活用する自治体も目立っている。大阪府吹田市は国立循環器病研究センター(同市)に入院する子どもの家族が低料金で宿泊できる施設の移転費の一部にあてる。個人や法人からの寄付を含めて目標の2億円に達した。

*10-4-2:http://qbiz.jp/article/149331/1/ (西日本新聞 2019年2月25日) ふるさと納税3倍、大阪・泉佐野 規制批判し、ギフト券も贈る
 大阪府泉佐野市は25日、ふるさと納税による2018年度の寄付額が、約135億円だった17年度の3倍近い360億円になる見込みだと明らかにした。市はふるさと納税制度で過度な返礼品を規制する総務省方針に反発し、3月末までの予定で返礼品に加えてインターネット通販大手「アマゾン」のギフト券を贈るキャンペーンを始めていた。千代松大耕市長は記者会見で「キャンペーンの効果が出たが、19年度以降は大幅に減額するだろう。総務省の動きはふるさと納税の縮小につながる」と規制方針を改めて批判した。市によると、18年度は当初から17年度を上回るペースの寄付が寄せられた。360億円は2月に始めたキャンペーンの効果も考慮した12月末時点での想定で、最終的にはさらに増える可能性もある。国会で審議中の地方税法改正案は返礼品を「調達費が寄付額の30%以下の地場産品」とし、これを守る自治体のみを制度対象にすると規定している。市は4月以降、寄付の受け付けを一時停止し、改正法に適合させるため約2カ月かけて返礼品の見直しなどをするという。

*10-5:http://www.mlit.go.jp/kokudoseisaku/chisei/hra_zei.html (国土交通省) 半島・離島・奄美群島における割増償却制度
 半島地域・離島地域又は奄美群島のうち、市町村の長が産業の振興に関する計画を策定する(一定の基準を満たすものに限る。)地区として関係大臣が指定する地区において、個人又は法人が、機械・装置、建物・その附属施設及び構築物の取得等をして対象事業(製造業・旅館業・農林水産物等販売業)の用に供した場合は、5年間の割増償却ができます。(以下略)

<地方創成と自治体の連携>
PS(2019年2月24日、3月2日追加):*11-1の「圏域」については、例えば、市町村毎に上下水道を運用するよりも、いくつかの市町村が一つの会社に管理運用を任せて市町村間で水を売買したり、圏域に一つの最新型ゴミ処理施設を作ったりした方が効率がよくなるし、基幹病院や中学・高校も小さな市町村まで1セットづつ持っている必要はなく、いくつかの市町村が圏域として協力した方が質が高くて効率も良くなるだろうが、その「圏域」として最適な範囲はインフラ別に異なるため、協力したい市町村が必要なネットワークを作るのがよいと思われる。つまり、国が財源を使って無理やり連携や合併を強いると、むしろやりにくくしてマイナスになることもあるため、地方自治体が連携したい時にそれを手助けするのがよいと思う。
 なお、*11-2は、「今ごろ次世代エネルギーとして水素の利用拡大に向けた政府工程表が作られているのは10年遅い」というのが私の感想だが、再生可能エネルギーで電力や水素を作れば、地方の住民が必死で稼いだなけなしの金を湯水のように外国に支払ったり、輸送に金がかかりすぎて生産物を運べず産地として成立しなかったりするということがなくなるため、地方自治体や民間が先に立って世論を作り、国に進めさせるのがよいと考える。
 私は、福岡市のJR博多駅と博多港を結ぶ交通なら、*11-3のようなロープウエーではなく、博多港まで高架で電車を走らせるか地下鉄を乗り入れるのがよいと思う。何故なら、乗車することが目的の観光だけでなく生活の中で乗るものであるため、便利が一番だからだ。これは、空港も同様で、途中にモノレールがあったり、乗り換えが多かったり、階段が多かったりして乗り継ぎが不便なのは、大きな荷物を持って乗ることが多い交通機関として現代の生活にマッチしていない。つまり、国交省は、首都圏で国際線と国内線を別の空港にしたことも含めて交通機関の連結を考えず、利用者の利便性を重視しなかったために、使い勝手の悪い交通ネットワークを作ってしまったわけである。


2019.2.22  2019.2.21西日本新聞     2018.9.17朝日新聞  2019.3.2西日本新聞
 東京新聞
(図の説明:左と中央の図のように、日本政府内で水素ステーション設置が本格的に動き出したそうだが、燃料電池車《iMiev》ができてから既に10年以上が経過しており、あまりに遅いと言わざるを得ない。また、右から2番目の図のように、自動車だけでなく電車にも蓄電池電車や燃料電池車ができて脱電線できそうな時代であり、次は船舶や航空機等の輸送手段に応用すべき時である。なお、交通機関は安全で乗換や所要時間が少ない方がよいため、福岡市内のロープウェイはBestな選択でないと思われる)

*11-1:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/341631 (佐賀新聞 2019年2月24日) 「圏域」構想が反対上回る 市町村連携、自治体アンケート
 人口減少が進む地域の住民サービスを維持するため、新たな広域連携として、複数の市町村でつくる「圏域」が行政を運営する構想に全国自治体の計34%が反対し、賛成は計30%にとどまったことが23日、共同通信のアンケートで分かった。市町村の独自性が維持できない懸念のほか、国主導で議論が進むことへの警戒感が強い。一方で市町村の人材不足を補うため、連携強化による行政の効率化を期待する意見もある。この構想は昨年7月、総務省の有識者研究会が2040年ごろの深刻な人口減少を見据えて提言。圏域への法的権限や財源の付与も求めた。政府は第32次地方制度調査会の主要テーマとし、来年夏までに一定の結論をまとめる方針だ。調査では「反対」9%、「どちらかといえば反対」25%、「賛成」4%、「どちらかといえば賛成」26%だった。「その他」34%は、制度の詳細が固まっていないため賛否を判断できないなどの理由が多かった。反対理由は「地方の声を踏まえて慎重に議論すべきだ」の40%が最も多い。研究会が自治体側と十分な対話のないまま提言した経緯もあり、地方からは「小さい町を次々と合併へ追い込もうとしているのではないか」(兵庫県新温泉町)との声が上がる。
●佐賀県内は賛否拮抗
 佐賀県の20市町のうち、新たな広域連携に賛成と答えたのは7市町、反対は6市町で賛否が拮抗(きっこう)した。「詳細が不明」などとして、7市町は賛否を示さなかった。「賛成」は鳥栖市、「どちらかといえば賛成」は唐津、伊万里の2市と吉野ヶ里、基山、みやき、江北の4町。「どちらかといえば反対」は多久、武雄、嬉野、神埼の4市、玄海、白石の2町だった。賛成の市町は「地方創生の取り組みだけでは今後、地域活性化は難しい」(唐津、鳥栖)、「『圏域』で新たなブランド構築など観光や産業面で期待できる」(伊万里)、「『圏域』内で同一水準の住民サービスが提供できるようになる」(吉野ヶ里、みやき)、「法的根拠や財源を持つことで、圏域での取り組みの実効性が高まる」(江北)などを理由に挙げた。反対の市町は「将来の地方自治のあり方については、地方の声を踏まえて慎重に議論すべき」(武雄、白石)、「従来の中枢連携都市圏や定住自立圏など広域連携の枠組みで特に問題がない」(神埼)、「自治体独自の住民サービスがしにくくなるなど、自治が失われる恐れがある」(玄海町)とした。

*11-2:http://www.tokyo-np.co.jp/article/economics/list/201902/CK2019022202000139.html (東京新聞 2019年2月22日) 水素ステーション無人化 20年目標 燃料電池車普及へ 政府工程表案
 次世代エネルギーとして期待される水素の利用拡大に向けた政府の工程表原案が二十一日、明らかになった。燃料電池車(FCV)に補給する「水素ステーション」を二〇二〇年までに無人で運営できるようにする目標を設定。コンビニ併設型のステーション拡大も盛り込んだ。二〇年の東京五輪・パラリンピックや二五年の大阪・関西万博など国際行事に合わせ技術力を世界に発信。二酸化炭素(CO2)を排出しない環境に配慮した燃料と位置付け、官民一丸で活用を促進する。水素ステーションを全国規模で整備するため国の補助対象を現行の大都市中心から全都道府県に拡大することを検討する。トヨタ自動車やパナソニックなど民間企業とつくる協議会で月内にも公表し、三月末までの正式決定を目指す。ステーションを現状の約百カ所から二〇年度までに百六十カ所、二五年度までに三百二十カ所整備する従来目標は据え置いた。無人化による営業時間拡大や人件費削減などの利点を想定。代わりに運営者が遠隔監視する仕組みの構築が必要で、安全性を確保できるかどうかが焦点になる。FCVは二五年にスポーツタイプ多目的車(SUV)やミニバンといった新車種を投入する。二〇年までに四万台、二五年までに二十万台、三〇年までに八十万台を普及させる目標を維持した。現状は約三千台とかけ離れているが新車種投入で巻き返す。東京五輪では福島県で再生可能エネルギーを使って製造した水素を、FCVや選手村のエネルギーとして利用する。大阪・関西万博でも日本の先端技術や水素の魅力を国内外にアピールする。最初の工程表は一四年に策定され、今回は三年ぶり二回目の改訂となる。工程表とは別に作成された一七年の水素基本戦略や、一八年のエネルギー基本計画を今回の原案に反映させた。資源に乏しく原発依存度の低下も図る日本にとって水素は重要なエネルギーになり得るが、生産や管理に費用がかかることが課題だ。採算を良くするため計画を具体化した一方、従来目標の据え置きも目立った。特にFCVの普及は遅れており、今後も工程表通りに進むかどうかは不透明だ。

*11-3:http://qbiz.jp/article/149655/1/ (西日本新聞 2019年3月2日) 福岡ロープウエー「尚早」 自民市議団が検討費削除提案 予算修正案、可決の公算大
 福岡市のJR博多駅と博多港を結ぶロープウエー構想を巡り、市議会(60人)最大会派の自民党市議団(18人)は1日、市の2019年度一般会計当初予算案に計上された実現可能性の検討費5千万円を削除する修正案を提案すると発表した。南原茂会長は「ロープウエー限定の調査は受け入れられない」と述べ、検討費を予備費に移す案を示した。ロープウエーは市議会で反対論が根強く、修正案の可決は確実な情勢。賛成が過半数を突破し3分の2に迫る可能性も出ている。「ロープウエーに絶対反対ではないが、時期尚早で議論ができない」。市議団の打越基安副会長は、与党第1党ながら修正案に踏み切った理由を説明した。ロープウエーは、高島宗一郎市長が昨秋の市長選で公約に掲げ、3選後の今年1月には有識者や市幹部による研究会が「ロープウエーが望ましい」と提言。市議団には「結論ありきで議会軽視だ」との不満が募っていた。一部には「検討だけならいいのでは」との容認論もあったが、市議選(4月7日投開票)が迫る中、「市民にはロープウエー反対の声が多い」との見方も浮上。福岡空港への出資問題などで対立した高島市長とのあつれきも根底にあり、多数決で修正案の提出が決まったという。ほかの会派では、立憲民主や国民民主などでつくる福岡市民クラブ(8人)が、検討費を生活交通の調査に移す独自の修正案を検討中で今後、自民側と調整に入るとみられる。共産党市議団(7人)も独自の案を提出するが、「自民案にも乗ることができる」。福岡維新の会(3人)や緑と市民ネットワークの会(2人)も同調する見通し。一方、与党会派のみらい・無所属の会(5人)は「計上されたのはあくまで検討費」との立場。公明党市議団(11人)は「自民の話を聞いて冷静に対応する」、高島市長に近い自民党新福岡(3人)は「議会の議論を注意深く見守る」と述べるにとどめた。修正案が可決された場合、高島市長は地方自治法に基づく首長の「拒否権」である再議(審議のやり直し)を議会に求め、出席議員の3分の1超が修正案に反対すれば否決することもできる。高島市長はこの日、「市議会の意見をうかがいながら適切に対応する」とのコメントを発表したが、具体的な対応策は示さなかった。

<膨大な無駄遣いと失う資産の事例>
PS(2019年2月25、26日追加): *12-1-1のように、米軍普天間飛行場の辺野古移設に関する県民投票は、投票率52.48%・反対72.2%で、同じ言葉を繰り返すだけの政府“説明”にも関わらず、沖縄県民の正しい意思が示されたと思う。辺野古には、*12-1-2のように、軟弱地盤が存在し「地盤改良」という名のさらなる莫大な費用と環境破壊が必要で、工期も長期化することがわかっていた。一方、国内外の空港のある他の離島を使えば軟弱地盤ではない上、埋め立て費用も時間もかからないため、沖縄県民の判断をポピュリズムと呼べる人はいない。
 また、*12-2-1のように、2011年3月に起きたフクイチ原発事故のデブリ接触調査が、2019年2月13日に初めて行われ、デブリの取り出しに今後30~40年かかり、これが廃炉の最大の難関・廃炉の実現を占う試金石などと書かれているため、全体として必要になる膨大な費用を明らかにすべきだ。さらに、1~4号機の原子炉建屋を取り囲むように、20年度にも海抜11メートルの防潮堤が建つと書かれているが、東日本大震災でフクイチに押し寄せた津波の高さは15mで、海抜11メートルの防潮堤では意味がないため、またまた本気度が疑われる。
 そのような中、*12-2-2に、東日本大震災とフクイチ原発事故からの復興のため2012年2月10日に発足し期限が10年と定めらている復興庁について、「原発事故による福島県の復興は10年ではできず長期にわたるので新しい組織を立ち上げる」と記載されている。しかし、国民は多額の復興税(所得税の2.1%)を支払ってきたため、これまでコストセンターである復興庁が使った予算とそれによって得られた成果を国民の前にガラス張りにすることから始めるべきであり、そんなこともできない既得権益としての新復興庁ならいらない。
 なお、*13に、国は「放射能濃度が基準値(8千ベクレル/kg)以下の汚染土は、最大99%再利用可能として福島県内の公共事業で再利用する計画を進めている」と書かれているが、汚染土が未だ野積みされている地域を避難解除している無神経さに呆れる。前にもこのブログに記載したが、8千ベクレル/kgの土砂1t(総計:8,000ベクレルX1,000 kg=800万ベクレル)を人里から離れた山中に捨てるのと、8千ベクレル/kgの土砂1,400万立方メートル(8,000ベクレルX1,000 kgX14,000,000m3X1.7《土の比重t/m3》=約190兆ベクレル)を人が居住している地域で再利用するのは人体に対する影響が全く異なるため、基準値以下か否かで判断するのはまやかしだ。また、放射性物質の濃度は技術開発すれば低減できるわけではなく、エネルギーを放射線として出しながら別の物質に変わるのを待つ必要があり、その半減期は、ヨウ素131は8日、セシウム137は30年、ストロンチウム90は29年、プルトニウム239は2.4万年、ウラン238は45億年などであるため、それらが人体に与える影響を心配するのは単なる「不安」ではなく「科学的」なのである。そのため、厳格に管理しながら帰還困難区域の堤防やかさ上げに再利用するのは可能かも知れないが、環境省が「再利用は県内、県外を問わない」としているのは、日本中に放射性物質をばら撒くことになり、住環境にも農林漁業にも悪影響があって、日本の環境省の見識が問われるのである。

   
2018.12.30東京新聞    2018.3.10毎日新聞        汚染土の処理

(図の説明:左図のように、大本営発表ではなく市民が計測した放射能汚染地図では、関東地方もしっかり汚染されている。また、中央の図のように、福島県などの被汚染地域では、未だに汚染土を入れたフレコンバッグが民家や田畑の傍におかれている。そして、汚染土の処理も、右図のように、ほこりを立てたり、地下水と交わらせたりなど、不注意極まりないのだ)

*12-1-1:http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2019022401001712.html (東京新聞 2019年2月25日) 辺野古埋め立て反対が72% 沖縄県民投票、52%投じる
 米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古移設を巡る県民投票は24日投開票の結果、辺野古沿岸部の埋め立てに「反対」が72・2%となった。投票率は、住民投票の有効性を測る一つの目安とされる50%を超えて52・48%だった。玉城デニー知事は近く安倍晋三首相とトランプ米大統領に結果を伝達する。県側は民意を踏まえ、改めて移設を断念するよう迫るが、県民投票結果に法的拘束力はなく、政府は推進方針を堅持する見通しだ。「賛成」は19・1%、「どちらでもない」は8・8%。反対票は投票資格者の4分の1に達した。投票条例に基づき、玉城氏には結果を尊重する義務が生じた。

*12-1-2:https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190223-00000023-ryu-oki (琉球新報 2019.2.23) 岩屋防衛相、工事長期化認める 辺野古新基地 軟弱地盤改良へ 「新要素加わった」
 米軍普天間飛行場の移設に伴う名護市辺野古の新基地建設を巡り、岩屋毅防衛相は22日の閣議後会見で、軟弱地盤が存在し工期が長期化するとの指摘について「地盤改良という新たな要素が加わったので、その分は(工期が)延びていくとは思う」と述べた。これまで政府は国会答弁などで、一般的な工法により地盤改良が可能であると強調する一方、工期の延長に関しては明確に説明していなかったが、岩屋氏は工事が一定程度長期化するとの認識を示した。政府が長期化を認めたのは初めて。岩屋氏は会見で、軟弱地盤の対応について「一般的な工法を用いて、相応の期間で確実に地盤改良と埋め立て工事をすることが可能だ」と強調した。「相応の期間」がどの程度なのかについては具体的な明示は避けた。軟弱地盤は辺野古の埋め立て予定海域の大浦湾側にあり、防衛省は砂を締め固めたくい約7万7千本を打ち込み、地盤を強化する工法を検討している。県は20日、埋め立て承認撤回を巡る防衛省の審査請求に関して反論の意見書を国土交通省に提出した。その中で防衛省が軟弱地盤の改良に使うくいに650万立方メートルの砂が必要になり、新基地建設が長期化し普天間飛行場の固定化につながることなどを指摘している。軟弱地盤が水深90メートルの地点まで達していることを含め、岩屋氏は22日の会見で「具体的なことは詳細な設計が決まればしっかり説明したい」と話した。

*12-2-1:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO41168350S9A210C1I00000/?n_cid=NMAIL006 (日経新聞 2019/2/12) 初のデブリ接触調査 福島第1、直前ルポ
 3月で事故から8年となる東京電力福島第1原子力発電所に日本経済新聞の記者が12日、単独取材に入った。13日から始まる炉心溶融(メルトダウン)で溶け落ちた核燃料(デブリ)の本格的な調査に向けた準備作業が進んでいた。デブリの取り出しは今後30~40年かかる廃炉における最大の難関で、廃炉の実現を占う試金石となる。「調査装置がスタンバイしている」。1~4号機の原子炉建屋を眺める高台から、東電の木元崇宏リスクコミュニケーターは2号機の原子炉建屋を指さした。最大15メートルある調査装置は複数のパーツに分かれて、建屋内で出番を待つ。13日早朝から組み立て原子炉格納容器の横の穴から入れてデブリに触れる。建屋の脇には調査に携わる作業員が待機する小さなコンテナが並んでいた。すぐ近くの道から2号機を見上げた。2号機は事故時に水素爆発が起きなかったため淡い水色の原子炉建屋の輪郭がしっかりと残るが、内部の線量は非常に高い。視察時間は5分程度に限られた。2号機の調査は装置の先端にある2本の指でデブリをつまみ、硬さやもろさなどを調べる。政府と東電は2019年度に取り出し方法などを決めて、21年に取り出しを始める計画だ。ただデブリの取り出しは極めて難しい。もし実現できなければ、東電の経営や福島の復興に大きな影響を与えることになる。生々しい姿が残る場所もあった。3、4号機の建屋の間にある中央制御室だ。事故直後に当直の作業員らが対応にあたった最前線に足を踏み入れた。薄暗い部屋をペンライトで照らすと、「格納容器ベント」などと書かれた操作レバーや事故時の走り書きのようなメモが目に付いた。何かを捜していたのか、床に散乱する鍵の束なども大災害の混乱を物語っていた。中央制御室から出て海沿いでは原発構内を津波から守る防潮堤の建設工事が始まろうとしていた。1~4号機の原子炉建屋を取り囲むように、20年度にも海抜11メートルの防潮堤が建つ。17年に政府の地震調査研究推進本部が、千島海溝沿いで巨大地震が近い将来に発生する可能性があると発表したのを受けた対策だ。震災から8年がたち、作業環境を整え、自然災害への備えを万全に、長い廃炉作業に臨む時期だ。すれ違う構内の作業員の「お疲れさまです」との声を耳に福島第1原発を後にした。

*12-2-2:https://blogos.com/article/357375/ (BLOGOS 2019年2月12日) 復興庁 新たな組織立ち上げへ
 復興庁は、東日本大震災と東京電力福島第一原発事故からの復興のために、 2012年2月10日に発足し、10年間と期限を定められています。トップは、 首相で、事務の統括をする補佐として復興相が置かれています。各省庁、 自治体、団体・企業などの出向者など520人が働いています。10年になる2021 年度には、復興庁は廃止されるため、政府は、復興を引き継ぐ新たな組織を立ち 上げる、と報じられています。原発事故による福島県の復興などは、10年では とてもできず長期にわたるためと、南海トラフ地震など将来の巨大災害に対応する 役割も、新しい組織には担わせることも検討する、ということで、今年夏に閣議 決定する方針です。原発事故があった福島県だけなく、津波被災地の復興事業も 土地のかさ上げや震災弱者などの支援事業などが、2021年3月までには終わら ないことが、復興庁の検証で判明しました。総額32兆円の復興予算は、復興庁の 廃止とともに原則として使えなくなることなどもあり、政府・与党は、新たな組織を 立ち上げて、2021年4月以降も、国が復興事業に関与し続ける必要がある いう認識で一致した、とのこと。しかし、大型公共事業を新たに計画するわけでは ないので、金融庁や消費者庁のような内閣の「外局」として、担当大臣を置く方針、 ということです。国が支援し続けることは、当然のことだと思います。しかし、これ までの復興事業、それを担った復興庁の役割と各省庁の関係など、また、将来の 巨大災害をどのように含めるのか等、しっかり検証して、あらたな形を、私たちにも わかりやすく議論して、進めてもらいたいと思います。これまでも、復興庁に、 自らの省庁の権限が奪われるのではないかという警戒感などから、必ずしも スムーズに運用されていないことがありました。自治体との関係も含めて しっかり議論して、新しい組織を、効果的に働けるものにしてほしいと思います。

*13:http://www.asahi.com/shimen/20190226/index_tokyo_list.html (朝日新聞 2019年2月26日) 福島の汚染土、再利用計画 「最大99%可能」国が試算 地元住民の反対受け難航
 東京電力福島第一原発事故後、福島県内の除染で出た汚染土は1400万立方メートル以上になる。国は放射能濃度が基準値以下の汚染土について、最大で99%再利用可能と試算し、県内の公共事業で再利用する計画を進めている。県外で最終処分するためにも総量を減らす狙いがあるとするが、地域住民から「放射線が不安」「事実上の最終処分だ」と反発が出ており、実現は見通せていない。中間貯蔵施設には4年前から汚染土の搬入が始まり、19日時点で235万立方メートルが運びこまれた。2021年度までに東京ドーム11個分に相当する1400万立方メートルが搬入される予定だ。汚染土は45年3月までに県外の最終処分場に搬出されることが決まっている。だが最終処分場を巡る交渉や議論は始まっていない。環境省の山田浩司参事官補佐は「(最終処分を)受け入れていただくのは簡単ではない。現時点では全国的な理解を進める段階だ」と話す。汚染土の再利用はその理解を進める手段の一つという位置づけだ。同省は有識者会議で16年6月、「全量をそのまま最終処分することは処分場確保の観点から実現性が乏しい」として、再利用で最終処分量を減らし、県外での場所探しにつなげる考えを提示。▽「指定廃棄物」(1キロあたり8千ベクレル超)の放射能濃度を下回ったり、下げたりした汚染土を再利用▽管理者が明確な公共事業などで使う▽道路や防潮堤の基礎のように安定した状態が続く使い方――などの条件を示した。また再利用する汚染土の量については18年12月の同じ会議で、濃度低減などの技術開発が最も進んだ場合、1400万立方メートルのほぼすべてが再利用でき、最終処分すべき汚染土は全体の約0・2%、3万立方メートルほどに減らせるという試算を明らかにした。しかし思惑通り進むとは限らない。同省は「再利用の対象は県内、県外を問わない」としているが、実証事業と称して実際に再利用計画を提案したのは県内の3自治体のみ。二本松市など2自治体では住民の反対を受け、難航している。同市で反対署名を集めた鈴木久之さん(62)は「約束を変えて県内で最終処分しようとするもので、再利用はおかしい」と批判する。

<その他の国民負担と生活・産業>
PS(2019年3月2、3《図》日追加):*14-1のように、経済同友会が温暖化ガス抑制のため提言をまとめ、政府が2030年の電源構成で原発の比率を20~22%と定めているのを受けて、政府に原発を使い続けるための原子力政策再構築を促したそうだ。しかし、原発は温排水を排出して地球温暖化対策にもマイナスである上、環境にはさらに深刻な被害を及ぼすため、このように科学的合理性を持たず生産性の低い金の使い方ばかりして昔返りしたがる人が、経産省や経営意思決定の重要な場所に多いことが日本の実質賃金が延びない大きな理由である。
 また、*14-2のように、東海第二から電気を受け取る東電HDが約1900億円と東北電力・中部電力・関西電力・北陸電力3社が1200億円を原電東海第二原発に資金支援する計画だそうだが、そういうことに支援するくらいなら東電はうなぎ上りに上がった電気料金(これも国民負担であり、上昇は生活や産業を妨害している)を下げるべきだ。そのため、周辺自治体は、もう一度、原発事故が起こって故郷や農地はじめ膨大な資産を失うまで原発稼働を容認し続けるのではなく、速やかに脱原発に向かわせるべきであり、それが損失を最小化する方法だ。
 なお、*14-3の東日本大震災は、原発事故がなければ速やかに街づくりや復興ができた筈だが、原発事故によって帰郷や居住が妨げられている。そして、外国人労働者も、こういう場所に住みたくないのは同じである。

  
   2019.3.2東京新聞       2019.2.14西日本新聞   2019.2.21北海道新聞

(図の説明:左2つの図のように、原発事故の影響を強く受けた地域は、当然のことながら水稲の作付を元に戻すことができていない。また、中央の図のように、原発は大災害を想定外として、地震・火山列島である日本全国に広がっている。そして、北海道の泊原発は、右図のように、内浦湾が噴火湾であるため外輪山の上に建設されており、付近は活断層や地震が多い)

*14-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190301&ng=DGKKZO41866540Y9A220C1EE8000 (日経新聞 2019年3月1日) 原発利用継続へ「政策再構築を」 経済同友会が提言
 経済同友会は28日、二酸化炭素(CO2)など温暖化ガスを抑制するための提言をまとめた。当面は原子力発電を使い続ける必要があるとしたうえで、政府に「現実を改めて国民に丁寧に示し、原子力政策を再構築すべきだ」と求めた。政府が2030年の電源構成で原発の比率を20~22%と定めているのを受け、目標達成に向けてあらゆる努力をすべきだと訴えた。経済同友会は長期的には原発を減らしていく「縮原発」を主張する一方、環境問題への対応から当面は原発が必要だとの立場をとる。

*14-2:https://digital.asahi.com/articles/DA3S13916101.html (朝日新聞 2019年3月2日)東電、東海第二支援1900億円 安全対策3000億円に膨張 再稼働見通せぬ中
 原発専業会社の日本原子力発電が再稼働をめざす東海第二原発(茨城県)をめぐり、電力各社による資金支援の計画案が明らかになった。安全対策工事費が従来想定の2倍近い約3千億円に膨らむとし、東海第二から電気を受け取る東京電力ホールディングス(HD)が3分の2に当たる約1900億円を支援する。これに東北電力のほか、中部電力、関西電力、北陸電力の3社も支援することが柱だ。再稼働時期は2023年1月を想定しているが、周辺自治体から再稼働の了解を得るめどは立っていない。自治体の同意を得られずに廃炉になった場合、東電などは巨額の損失を被る可能性がある。福島第一原発事故を起こした東電は、国費投入で実質国有化された。にもかかわらず、再稼働が見通せない他社の原発を支援することに批判が出るのは必至だ。計画案によると、再稼働前の19年4月から22年末までに約1200億円が必要とし、受電割合に沿って東電が8割の約960億円、東北電が2割の約240億円を負担。東電は、東海第二から将来得る電気の料金の「前払い」と位置づけ、銀行からの借り入れで賄う見通し。東北電は前払いか、原電の銀行借り入れへの債務保証の形で支援する。稼働後の23年1月~24年3月に必要な約1800億円は原電が銀行から借り入れる。これに対し、東電が約960億円、東北電が約240億円、中部電など3社が計約600億円を債務保証する。関電と中部電、北陸電は、原電の敦賀原発2号機(福井県、停止中)から受電していたことを根拠に支援に加わる。だが、敦賀2号機は原子炉建屋直下に活断層の存在が指摘されて再稼働は難しく、受電の見通しは立たない。直接電気を受けない東海第二の支援に乗り出すことは、株主らの反発を受ける可能性がある。原電は保有する原発4基のうち2基が廃炉作業中で、再稼働を見込める原発は東海第二しかなく、資金繰りが厳しい。東海第二が廃炉となれば原電の破綻(はたん)が現実味を帯び、原電に出資する電力各社は巨額の損失を被りかねないため、支援を検討していた。

*14-3:https://digital.asahi.com/articles/DA3S13916066.html (朝日新聞 2019年3月2日) (東日本大震災8年)細る介護、異郷の施設へ 被災地から170人、青森で入所
 東日本大震災の被災地で介護施設が見つからないお年寄りを、青森県弘前市の高齢者福祉施設が受け入れ続けている。8年間で延べ170人。古里に帰れぬままの人も多く、35人が異郷で亡くなった。震災のひずみが行き場のないお年寄りを今も生んでいる。雪深い津軽に、社会福祉法人弘前豊徳会が運営する「サンタハウス弘前」はある。介護老人保健施設などの入所者の2割、66人が岩手、宮城、福島3県の被災地からだ。宮城県気仙沼市の千葉ツヤ子さん(87)は仮設住宅で1人で暮らしていた2015年秋、脳梗塞(こうそく)で入院。要介護度は3、退院後の自立生活が難しくなった。市内に住む息子が近くの施設に申し込んだが、どこも待機が100人以上。病院が困った末に相談したのがサンタハウスだった。入所3年を超えた千葉さん。「みな親切にしてくれる。でもやっぱり帰りたいんだよね」。震災では多くの高齢者施設が被災し、避難所暮らしが難しい要介護者が大勢出た。厚生労働省は特例で、遠くの施設が定員を超えて受け入れてもよいとする通知を出した。名乗り出る施設が少ない中、サンタハウスは新規増床中で、たまたま個室や職員に余裕があった。被災地の病院などに呼びかけ、11年は6人を受け入れた。当初、「緊急事態」は1、2年で終わると考えていた。ところが被災地では施設が復旧しても職員が集まらない。要介護者は増え続けた。サンタハウスで窓口となった宮本航大さん(40)の携帯電話には、自治体の地域包括支援センターやケアマネジャーから相談が途切れなかった。12年以降も毎年数人~二十数人が入所した。最近は、認知症が進んだり、家族との縁が薄れていたりといった人も増えている。現在の入所者のうち、16人が生活保護受給者で、その半数程度は身寄りがないという。一方で帰郷はなかなか進まない。サンタハウスは昨年から、3県にある600施設に空き状況を聞くなどの取り組みを進める。ただ多くのお年寄りにとって、弘前が終(つい)のすみかになる可能性は高い。今年1月19日には89歳の男性をみとった。4日後、気仙沼市から一人暮らしの77歳の男性が入所した。災害公営住宅で倒れているのを民生委員が見つけなければ、孤独死が避けられないケースだった。
■要介護者は増、人手は不足
 被災地では、介護に頼らざるを得ないお年寄りが増え、一方で施設の人手は足りていない。「避難所から仮設、災害公営住宅へと移るたび、環境が変わる。閉じこもり、体調を崩す人が年々増えた」。気仙沼市のケアマネジャーはそう話す。震災で配偶者を亡くしたり、子どもが都市部に出たりして独居になる人も多い。宮城県の沿岸部5地区の65歳以上の被災者約3500人を対象にした東北大の追跡調査によると、要介護認定割合は10年から18年にかけて16ポイント上昇。沿岸部の介護職の有効求人倍率(18年12月)は、気仙沼ハローワーク管内で4・88倍、岩手県釜石管内で4・95倍など高水準の所が多い。施設を増やそうにも、介護職員が集まらない現実がある。一気に進む高齢化、地域や家族の支える力の低下、働き手不足。「日本のあちこちで起きる事態を被災地は先取りしてしまった」と気仙沼市の高橋義宏・高齢介護課長。市は移住者で介護の仕事に就く人に補助金を出すなど対策に躍起だ。サンタハウスの宮本さんは「介護現場では今も震災が続いている」と話す。

<防災に名を借りた公共事業の無駄遣いもある>
PS(2019年3月3日追加): *15-1に、東日本大震災後8年の現在、高さ12.5 mの巨大防潮堤の建設が進んだと書かれているが、宮城県による津波痕跡調査の結果では、*15-3のように、気仙沼市の中島海岸付近、南三陸町志津川荒砥海岸付近は21.6m、女川町近辺は18.3mの高さの津波が来襲し、1960年チリ地震津波を想定して決められた10mの堤防・護岸を殆どの場所で越えた。そのため、12.5 mの新しい巨大防潮堤の高さがどういう根拠で決められたのか不明だが、景観や視界を遮るわりには避難のための時間的猶予を与える程度にしかメリットがなく、景気対策だけが目的の理念なき膨大な無駄遣いに見える。
 従って、(前にもこのブログに記載したが)標高25~30 m超にあるゴルフ場や農地の方を住宅地として開発し、標高の低い場所に農地・牧場・発電設備・公園などを作って、人や動物はいつでも高い場所に避難できるようにしておくべきである。そのため、*15-2のように、42市町村の過半数が被災の記録を廃棄したのかも知れないが、東日本大震災の記録は防災だけでなく科学研究にも重要な資料であるため、マイクロフィルムにして国立国会図書館に保管するのがよいと思う。また、この大震災と大津波は、海上保安庁・メディア・個人の動画に多く記録されているため、日本地図上に地震・津波の映像を張り付けて誰でも参考にできるようなHPを作れば、人によって異なる視点の気付きがあると思う。なお、住む場所を決めるのは個人の自由だが、次回の地震・津波は想定外ではないため、被害があったら自己責任(=主に自費)で再建すべきで、そのためには個人で災害保険や生命保険に入っておく必要があるが、災害保険料・生命保険料の掛金も該当地域の安全性を考慮して変えるのが合理的だ。
 それでも、地震・津波だけなら適切な都市計画をすれば復興に邁進できたのだが、*15-4のように、福島県では本格的なコメ作り再開への環境が整いつつあっても、長い避難の間に農業をやめた人も多く、若い世代はなかなか町に戻ってこず、再開の意向のない農家が45%あるそうで、私はこの数字を尤もだと考える。

    
                  東日本大震災の津波

*15-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190303&ng=DGKKZO41979240T00C19A3CC1000 (日経新聞 2019年3月3日) (東日本大震災8年)巨大防潮堤 建設進む
 東日本大震災の発生から11日で8年となるのを前に、被災地を上空から取材した。福島県では東京電力福島第1原子力発電所事故で使えなくなったゴルフ場や農地に大量の太陽光パネルが設置されていた。岩手県の海岸線では壁のような巨大防潮堤の建設が進む。震災と原発事故が地域に残した影響の大きさと、今なお途上の復興を異例の眺めが物語っていた。2017年に帰還困難区域を除き避難指示が解除された福島県富岡町。再開のメドが立たずに閉鎖したゴルフ場「リベラルヒルズゴルフクラブ」のコースは、黒光りする太陽光パネルに覆われていた。18年12月に設置を終えたという。町内には17年完成の大規模太陽光発電所「富岡復興メガソーラー・SAKURA」もあり、原発事故の影響で増えた遊休農地の利用が進む。緑や黒の土のう袋が並ぶ汚染土の仮置き場はさらに広がり、雑草が茂る周辺の荒れ地とともに重苦しい雰囲気を漂わせる。宮城、岩手両県の沿岸部では海と陸を分かつような防潮堤が目を引く一方、多くの漁港付近に養殖用の漁網が浮かび水産業の再生もうかがえた。岩手県陸前高田市ではそびえ立つ壁のような防潮堤の増設が続く。台形型の防潮堤の高さは12.5メートル。土地のかさ上げ工事に伴いクレーン車やトラックが激しく行き交い、茶色い土ぼこりが舞っていた。かさ上げした土地に約2年前にオープンした商業施設「アバッセたかた」の駐車場には多くの車があり、にぎわいが伝わってきた。

*15-2:https://digital.asahi.com/articles/DA3S13917665.html (朝日新聞 2019年3月3日) (東日本大震災8年)被災の記録、残らぬ恐れ 42市町村の過半数、既に廃棄も
 東日本大震災で被災した岩手、宮城、福島各県の42市町村の過半数が、被災時の対応や復興の過程で作成した「震災公文書」の一部を既に廃棄したか、廃棄した可能性がある。朝日新聞の調査で判明した。当時のメモや写真なども10市町村が保存していなかった。保存ルールが統一されていないのが原因で、対策が必要になりそうだ。
■保存、対応分かれる
 公文書管理法は2011年4月施行。内閣府は翌年、震災関連公文書を「国家・社会として記録を共有すべき歴史的に重要な政策事項」として適切な保存を国の機関に通知した。ただ通知の対象に地方自治体は含まれていない。朝日新聞は1~2月、42自治体にアンケートした。市町村は公文書を、▽1、3、5、10、30年ごとに保存期限を決める▽永年保存する――など、同法や内部規程に沿ってそれぞれ管理している。42市町村に保存期限が過ぎて廃棄した震災公文書があるか尋ねたところ、6市町村が「ある」、16市町村が「可能性がある」と回答。国からの通知文書やボランティア名簿などを廃棄していた。「保存期限がきた」(宮城県多賀城市)、「全て保管するスペースがない」(福島県飯舘村)などを理由に挙げた。今後、保存期限が過ぎると廃棄する震災公文書があるかを問うと、「ある」は12市町村、「未定」は17市町村だった。公文書の管理を各部署に任せている市町村も多く、全庁的な判断の有無とその時期が重要になる。例えば宮城県気仙沼市は昨年になって「当分の間は捨てない」と定めたが、それ以前は捨てていた恐れがある。一方、廃棄した文書が「ない」と回答した岩手県釜石市は12年、「11年度以降の震災公文書は全て永久保存」と決めており、早期の判断で対応が分かれた。また、市町村が公文書として取り扱わなくても、職員の手控えメモやホワイトボードの記録、写真なども震災の重要な記録であるほか、当時の対応を検証できる資料だが、10市町村が「保存していない」と答えた。
■国・県・民間も保存後押しを
 神戸大の奥村弘教授(歴史資料学)の話 災害に関わる公文書は、保存期間の長短に関わらず、被災時の様子や被災後に行政や住民がどのように対応したか示している可能性がある。将来の災害対応に向けた資料として、できるだけ保存していく必要がある。ただ、一自治体で保存していくのは保存場所や人手確保といった課題が残る。場所の確保に加え、被災直後から文書保存に向けた応援職員を派遣するなど、国や県レベルでの保存や支援の仕組みが必要だ。また、被災者や復旧・復興に携わった民間団体レベルでも資料を残す動きを起こすことが、災害の記録と記憶を後世に伝える上で重要になる。(以下略)

*15-3:https://www.fukkoushien-nuae.org/2011/07/17/・・ (宮城県調査) 津波、気仙沼・南三陸20メートル超 
 宮城県は東日本大震災の津波で浸水した県沿岸部について、津波痕跡調査結果をまとめた。気仙沼市、南三陸町の2カ所では、基準海面からの高さが20メートルを超える地点で痕跡が確認された。ほとんどの場所で既存の堤防、護岸を越えていた。調査は4月中旬から6月末、陸上約1200地点、河川約1300地点で実施。海岸線から最も近い場所の痕跡を採用し、東京湾平均海面と比べた高さを計測した。調査地点の中で最も高い位置の痕跡は気仙沼市の中島海岸付近、南三陸町志津川の荒砥海岸付近で、ともに21.6メートルだった。両海岸周辺でも20メートル近い痕跡があった。死者・行方不明者が900人を超す女川町近辺では5.5~18.3メートルで痕跡を確認。児童74人が死亡、行方不明になっている石巻市大川小に近い北上川では、12.5メートルの高さに跡が残っていた。七北田川河口から県南にかけての仙台平野沿岸では福島県境付近が最も高く、15メートル前後に達した。津波で滑走路などの施設が浸水した仙台空港付近は13.3メートルだった。松島町など一部を除き、津波は既存の堤防、護岸(高さ3.2~7.2メートル)を大きく越えた。堤防や護岸の高さは、主に1960年に発生したチリ地震津波や高潮を想定して決められていた。国は6月下旬、堤防、護岸の高さや規模について、県が過去の測定値や歴史文献を踏まえ、入り江や湾ごとに決めるとの方針を示した。県は本格復旧時の高さや工法について検討を進めている。

*15-4:http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201903/CK2019030202000189.html (東京新聞 2019年3月2日) <原発のない国へ 事故8年の福島> (3)帰農へ歩み 不安の種も
 収穫されたコメを低温貯蔵するカントリーエレベーターや種苗センターが国道6号沿いに完成するなど、本格的なコメ作り再開への環境が整いつつある福島県楢葉町。農地に置かれていた除染土入りの黒い袋は、めっきり減った。東京電力福島第一原発周辺にある中間貯蔵施設への搬出が進んでいるためだ。町北部の上繁岡地区で、農家の佐藤充男さん(74)はコメ作り再開のため、仲間五人と「水田復興会」を結成した。昨年は八ヘクタールで作付けをし、今年は二倍以上の十八ヘクタールに増やし、近い将来には五十ヘクタールにまで拡大することを目指している。「三年前から徐々に作付けを増やしてきたが、最近では買いたたかれるような風評被害を感じない。譲ってくれと引き合いもかなりあるんだ」と、佐藤さんは語る。「田んぼとして使っていることが大切」と食用米の他、飼料米も大幅に増やす計画で、自宅近くに仲間と共同所有する大型農機の倉庫も建てた。冬の間も準備に余念がない。ただ、長い避難の間に農業をやめた人も多く、若い世代はなかなか町に戻ってこない。「俺は農業が好きだし、仲間とワイワイやるのも好きだからやっている。ただし、この先どうなっていくかは、まだ見通せないな」と話した。町の同じ地区で、塩井淑樹(よしき)さん(68)は風評被害を見越して、コメから観賞用の花「トルコキキョウ」栽培に切り替えた。三年前から七棟のビニールハウスで試行錯誤を続ける。薄い赤紫の花が咲き、出荷を待つハウスもあれば、これから植え付けるハウスもある。「植え付け、出荷を順繰りにしていくから忙しいんだよ。手をかけて形を整えれば、評価も高くなる。自分は見よう見まねでやっているから、まだまだだ。もっとうまくなれば、収入も増えるんだが…」。需要に素早く応える「産地」として市場で認められるには、仲間の農家が多い方が有利。今は三軒にとどまるものの、イチゴの観光農園から転身した三十九歳の男性もいる。幼い子がいて、二十キロ以上離れたいわき市から車で通って栽培する日々。若い担い手は力を込めて言った。「軌道に乗ったとは言えない。話にならないほど収入は減り、これで食べていけるほどではない。原発に依存してきたから、プロの農家は多くはない。でも、生まれ育ったこの地は好きだし、プロとして生き残っていかないと」 
◆農家 再開意向なし45%
 楢葉町など比較的汚染度の低い地域では、農地を深く耕して降った放射能を薄め、他の地域では汚れた表土を5センチほど除去し山砂を加えた。放射性セシウムを吸着する鉱物ゼオライトを土に混ぜたほか、農作物の成長期にカリウムを散布。こうした対策で、農作物へのセシウム移行を防げることも確かめられている。福島相双復興官民合同チームが2018年、被災12市町村の農家1429人に実施した調査では、営農を「再開済み」と「再開意向あり」は合わせて40%、一方で「再開意向なし」は45%に上った。

| 経済・雇用::2018.12~ | 02:28 PM | comments (x) | trackback (x) |
2019.1.9~12 日本経済における人口構造の変化と労働力・需要構造の変化 (2019年1月13、14《図の説明等》、18、19、20、21、25、26、28、30、31日に追加あり)
 2019年(平成31年)の新年、おめでとうございます。

(1)人口減少が経済悪化の原因ではないこと


  日本の経済成長率推移    “高齢者”割合の急速な増加    人口構造の変化

(図の説明:左図の「経済成長率(数学的には、GDPの変化率)」は、戦後から第一次オイルショックまでは9%前後であり、オイルショックからバブル崩壊時までは4%前後だった。そして、バブル崩壊後は、リーマンショック時にマイナスになったものの、だいたい1%前後で推移している。つまり、誰もが購入したいと思う新製品がある時にはGDPが急激に増え(=変化率が高くなり)、それがなければ安定した状態が続くということだ。また、日本の人口は、中央と右図のように、“高齢者”の割合が大きくなっていくが、これは購入したいと思う需要構造が変化することを示している。そのような中、介護は需要が増えるサービスの代表で、雇用吸収力も大きいため、必要な介護サービスを削減するのは経済にマイナスだ。また、生産年齢人口に入れられない“高齢者”の定義は、寿命が延びれば高くなるのが当然で、女性の労働参加や外国人労働者の受け入れも増えるため、働く人や支える人が足りなくなるという主張は正しくないと考える)

1)世界と日本の人口推移
 2100年には、*1-1のように、世界の人口は112億人、日本の人口は8,500万人になり、平均寿命は世界82.6歳、日本93.9歳になるそうだ。しかし、これについては、日本では、機械化・高齢者の雇用・女性の雇用・外国人労働者の受入拡大などのように、既に対応を始めているので問題ないと考える。

 また、世界の人口は増え、日本の人口は減るため、2100年の平均出産数は、世界では1.97人まで減り、日本では1.79人に増えるそうで、これは数世代かけて生物的調整が働くからだ。

 さらに、60歳以上の人口は、2100年には世界全体で現在の3倍以上になるとのことだが、世界でも平均寿命が82.6歳まで延びるのに、高齢者の定義を「60歳(又は65歳)以上」のまま変えないのが、実態に合わないわけである。

2)人口構造の変化と労働力・需要の変化
 政府は、*1-2のように、「国内景気は、緩やかに回復している」としているが、私は金融緩和しなくても景気は回復したと思う。何故なら、東日本大震災等の大災害で多くの都市が壊滅的打撃を受け、リスクの小さい環境のよい街に再生するためには、莫大な公共投資が必要だからだ。そのため、このようにどうせ多額の国費を使わなければならない機会をとらえて、リスクや環境を考慮した進歩した街づくりを行い、無駄遣いの方は徹底してなくして欲しかった。

 なお、大災害からの復興で建設に従事する労働力が不足している時に、同時に東京オリンピックや万博の誘致をしたのには疑問を感じるが、外国人労働者の受入拡大が実現したため、労働力のネックは次第になくなると思われる。

 私は、個人消費が勢いに欠ける理由は、金融緩和と公共投資で景気を持たせているものの、①年金が主な収入源である65歳以上人口が29%を占めるのに、物価上昇やマクロ経済スライドなどで実質年金を減らしこと ②人口の29%を占める高齢者の社会保障も負担増・給付減にしたこと ③賃金上昇が物価上昇に追いつかず、現役世代の実質賃金も増えなかったこと ④消費税上昇分が物価に上乗せされ、明確に国民負担増となったこと などだと考える。

 つまり、可処分所得が減れば、家計が破綻しないためには支出を減らすしかないため、現在は節約することが国民の唯一の選択肢になっており、これが消費者の財布のひもが固い本当の理由なのだ。しかし、景気拡大で、若い男性だけでなく高齢者や女性の雇用も増え、労働参加率が上がったことは重要だった。

3)実質賃金の上昇には、迅速なイノベーションが必要であること


日米の実質賃金推移   膝軟骨の再生医療    介護の市場規模     燃料電池バス 

(図の説明:米国は実質賃金が順調に伸びているのに対し、日本は低迷したままである。これは、金融緩和で金をじゃぶじゃぶにして物価を上げはしたものの、「本物の革新」が速やかにできないからだ。「本物の革新」とは、求められる新技術を積極的に作って実用化し、国民生活を豊かにしていくことだが、新しい技術ができると否定やバックラッシュが多く、日本で最初に実用化するのが難しいという状況がある。また、技術や生産の元になる特許権も粗末にされており、この点で、我が国の意識は開発途上国のままなのである)

i)日本のイノベーションは、バックラッシュが多くて速度が遅い
 日経新聞と一橋大学イノベーション研究センターが、*1-3-1のように、共同で世界の主要企業の「イノベーション力」ランキングをまとめたところ、米国のIT企業が上位を独占し、日本はトヨタ自動車の11位が最高で、楽天とソニーが30位台だったそうだ。

 日本のメディアは、イノベーションの例として、既に常識となっているITやAIのクローズアップをすることが多いが、EV・自然エネルギー・自動運転・再生医療・癌の免疫療法・介護制度なども立派なイノベーションであり、それにあった道づくりや街づくりをして実用化していく必要があるにもかかわらず、EV・自然エネルギー・癌の免疫療法・介護などへの逆風を初め、バックラッシュが多くて産業を育てることができず、我が国が損失を蒙っているケースは多い。

ii)高すぎる洋上風力発電機
 大手電力が、*1-3-2のように、洋上風力発電設備を建設し始めたのはよいことで、漁業関係者の理解は、その施設が同時に漁礁(魚介類のゆりかご)や養殖施設の役割を果すように設計すればすぐに得られると思う。また、海は国有地であるため、騒音・振動・悪景観などの公害を出さなければ、地元の理解は容易に得られるだろう。

 ただ、「東電は、最大100基程度を数千億円かけて建設し、合計出力を原発1基相当の100万キロワットにすることも可能」としているが、風力発電機一基を設置するのに数十億円かかるというのは、1桁高すぎる。このように、ちょっと新しい技術を、いつまでも高価で実用化できないものにしているのも、我が国産業の悪い慣習だ。

iii) 再生医療の遅い進歩
 再生医療が商用化の段階に入り、*1-3-3のように、高齢化に伴う膝関節症などにグンゼ、オリンパス、中外製薬、ジャパン・ティッシュ・エンジニアリング等の日本企業が参入しているそうだ。膝関節症は、日本人の5人に1人が患う病気であるため需要が多いが、その他の病気も再生医療で解決できるものが次第に増えていくと思われる。そして、需要増は、他国でも数年遅れで日本と同じ経過を辿るのである。

 その再生医療は、私が衆議院議員をしていた2005~2009年の間に、厚労省・文科省・経済産業省が協力して力を入れ始めたもので、日本では医療分野での研究が盛んだったため、この分野で日本企業が世界をリードできる可能性はもっと高かった。

 しかし、このような時にネックになるのが公的医療保険でカバーする治療費の範囲であり、理論的には、副作用がなく効果の高い治療法であり、治して介護費用を少なくできるものでもあるため、積極的に多くの症例に使えるようにして治療費を抑え、公的保険でカバーできるようにすることが重要なのである。

iv) オプジーボの発明から見えた日本における特許権の軽視
 がん免疫薬は、*1-3-4のように、本庶氏らが1991年に発見した遺伝子「PD―1」の機能阻害でがんを治療できる可能性を示し、京大に特許出願を要請したが、知的財産に関心が薄かった京大は「特許維持費用を負担できない」として拒否したそうだ。

 そのため、小野薬品と特許を共同出願したが、本庶氏と小野薬品が結んだ契約では、発明の使用を小野薬品に独占的に認める専用実施権と、本庶氏が受け取る対価の料率などを決め、その対価の料率が1桁小さかったのだそうだ。

 しかし、もともと求められていた癌免疫治療薬の売り上げはうなぎ登りで、一人の研究者が思いついたアイデアに端を発した2024年売上額は年4兆円との想定もあり、仮に年4兆円の売り上げで0.5%の特許権料率なら毎年200億円の特許権収入が入ることになる。しかし、日本では、このように知識や技術に対する評価が低く、大切にされないのが問題なのである。

v) 2019年、新時代へのトップの意識
 西日本新聞が、*1-3-5のように、2019年1月9日、JR九州の青柳社長と西鉄の倉富社長に新時代へのインタビューをしている。

 JR九州の青柳社長は、「地域に応じて最適解を」として、①自動運転技術の導入 ②タクシー・バスとの融合 ③柱は鉄道と不動産 ④商業施設だけでなくオフィス・ホテル・大型コンベンション施設なども開発 ⑤志を共にする企業と連携して街づくりに貢献したい とのことである。

 西鉄の倉富社長は、①成長の柱は海外で、ASEANでのマンション・一戸建て住宅、付随する商業施設などを増やしていく ②グループ全体で結束して大型プロジェクトを進める ③福岡空港に『スマートバス停』を導入する ④次世代型開発の一つとして、スーパー、病院、医療・介護サービス付きマンションなど、シニア世代に必要な機能が近距離にまとまっている地域を造る ⑤モニターやセンサーを活用して機械化を進めるなど最適な技術導入や効率化が大事 などとしており、よいと思う。

4)社会保障の負担増・給付減が景気悪化の最大の理由である
 しかし、厚生労働省は、*1-4のように、2019年に公的年金の財政検証を実施し、当面の年金財政は健全だと確認するが、支給の長期的な先細りは避けられないとしている。しかし、私は、①高齢者が長く働いて70歳超からの年金受給開始も選べるようになったり ②女性の労働参加率が増えたり ③外国人労働者が増えたり ④パート社員へも厚生年金が適用されたり ⑤産業を効率化したり、産業の付加価値を高くしたり ⑥エネルギー料金を海外に支出するのを止めたりすれば、一律に支給開始年齢を引き上げなくてもやれるのが当然だと考える。

 そもそも、所得代替率(現役の手取り収入に対する年金額の比率)が50%ならよいというのも根拠はないが、上のような対応をしても年金や社会保障が持続可能でないと言うのなら、厚労省の管理やメディアの報道の仕方に問題があるのだ。つまり、いつまでも負担増・給付減のみを言い続け、それに反対するのをポピュリズムと呼ぶような思考停止は止めるべきである。

(2)改正入管難民法について


 2018.11.10産経新聞     2018.11.14産経新聞    2018.12.25 2018.12.8
                              西日本新聞  毎日新聞    

(図の説明:一番左の図のように、日本国内で働いている外国人労働者は、2017年に約128万人で、既に日本で欠かすことのできない人材となっている。しかし、現在は、外国人を専門的・技術的分野以外は労働者として受け入れておらず、技能実習生として受け入れているため、悪い労働条件を押し付けたり、仕事を覚えた頃に母国に返さなければならなかったりして、雇用者・被用者の双方に不便な状態なのだ。そのため、左から2番目の図のように、分野別に必要とされる人数を労働者として受け入れ、右の2つの図のように、環境整備をすることになったわけだ)


 日本とASEAN諸国の    介護人材の需給推計   外国人受入に関する政府の基本方針
  人口ピラミッド

(図の説明:左図のように、日本の人口ピラミッドはつぼ型になっているが、ASEAN諸国等にはピラミッド型の国も多いため、今なら、その気になれば外国人労働者を受け入れることが可能だ。実際に、介護分野では、中央の図のように、2025年には40万人近くの人材が不足すると言われている。しかし、「入国した外国人も都市に集中するのでは?」「日本人の雇用が奪われるのでは?」と懸念する人もいるので、右図のように、政府の基本方針が出されたわけである)

1)外国人労働者受入拡大について
 政府は、*2-1、*2-2のように、2018年12月25日、来年4月からの外国人労働者受入拡大に向けた新在留資格「特定技能」の枠組みを定めた「基本方針」と業種毎に人数などの詳細を決めた「分野別運用方針」を閣議決定したそうだ。

 介護や建設などの深刻な人手不足14業種で受け入れを決め、来年4月から5年間で最大34万5150人がこの在留資格を得ることを見込んでおり、関係閣僚会議では共生のための環境整備施策をまとめた総合的対応策も決定したとのことである。しかし、私は、この14業種だけでなく、美容師も労働力確保と技術交流を兼ねて外国人美容師の就労を認めてもらう嘆願書を出したと聞いており、これは意義のあることだと考える。
 
 なお、外国人が大都市圏に集中しないように措置を講じるとのことだが、仕事・住居・医療などの福祉・教育で安心できれば、多少の賃金格差は問題にならないと思う。

2)農業分野の外国人労働者受入拡大
 農業分野は、*2-3-1のように、受入人数の見込みは、5年間で最大3万6500人、外国人も栽培管理から集出荷、加工、販売など生産現場の全般の作業に携われるとし、受入農家は雇用労働者を一定期間以上受け入れた経験があることなどを要件とし、受入形態は、農家の直接雇用だけでなく人材派遣業者を通じた受け入れも認めている。

 TPPが発効し、*2-3-2のように、九州の農家が「組織化」で対抗するには、大規模化して必要な労働力を確保することが必要だ。そのためには、機械化とともに外国人労働者の雇用が有力なツールとなり、*2-3-3のように、大分県内に、来年にもアジア出身者らを対象として農林業の担い手を育成する国際専門校が開校して、若者の就業・定住を促進し、国際ビジネスの創造や海外販路の拡大も狙うというのは、迅速で頼もしい。

3)介護分野の外国人労働者受入拡大
 外国人は日本全国の介護現場で活躍しており、*2-4のように、2019年4月施行の外国人労働者の新たな受け入れ制度では、全職種で介護分野が最多の人数となる見込みだ。介護は、2020年には12.2兆円規模、2025年には15.2兆円規模になる実需であり、2025年には253万人の雇用が見込まれている大きな産業なのだが、何故か粗末にされている。

 また、介護現場における外国人の登用は今後も拡大し続けると見込まれ、先進国を中心に介護分野の外国人の受け入れは進んでいるそうだ。そのため、就労のハードルが高い日本を避けて他国に人材が流れる恐れもあるため、外国人が技術をしっかりと習得し、安心して生活を送れる環境を整えなければならないようだ。

 さらに、介護だけでなく家政婦も外国人を登用できれば、女性の仕事と子育ての両立が容易になったり、自宅療養がやりやすくなったりするが、男性が大半の議員では気が付かないようだ。

4)外国人労働者の受入環境整備
 2019年4月に始まる外国人労働者の受入拡大に向け、*2-5のように、受入環境の整備に重点を置いて各省庁が予算措置を行い、例えば、厚労省は①雇用状況視察 ②受入先の改善指導 ③医療機関の多言語化支援 などの予算を確保し、外務省は将来的な人材の獲得合戦を見据えて、海外での日本語教育や現地での日本語教師の育成・教材開発などを行うそうだ。

 そのほか、*2-6のように、外国人と働くには、さまざまな問題が発生し、一律の対応は通用しないそうだが、しばらくやれば問題がパターン化するため、自治体や企業も次第に対応に慣れてくるだろう。

(4)家事労働の軽視と女性差別

 
2018.12.18 ジェンダーギャップ指数順位   2018.9.3    2018.9.5 2018.8.7
西日本新聞                  西日本新聞    中日新聞 産経新聞

(図の説明:一番左の図のように、2018年版男女格差報告によると、日本は男女平等度が世界で110位と低い。また、左から2番目の図のように、2011~2017年の内訳では、政治・経済の分野で特に平等が進んでおらず、教育においても中位以下である。また、医師全体に占める女性の割合は21.1%だが、外科系は8.7%しかおらず、戦力としての女性医師への期待の薄さからか、いくつかの医科大学で入試における女性への不利な扱いがあったのは記憶に新しい)

1)日本の男女平等度
 スイスの「世界経済フォーラム」は、2018年12月18日、*3-1のように、2018年版「男女格差報告」を発表し、日本は149カ国中110位で政治・経済分野で女性の進出が進んでおらず、G20では下位グループに位置しており、中国(103位)、インド(108位)よりも低かったと報告している。G20で日本より低かったのは、韓国(115位)、トルコ(130位)、サウジアラビア(141位)の3カ国しかなく、この3カ国には悪いが、名誉ある地位とは言えない。

 日本の最初の男女雇用機会均等法は、*3-2のように、1985年に国連の「女子差別撤廃条約」という外圧を利用し、経済界の反対を押し切って制定されたが、男女の雇用機会均等を努力義務にまでしかできなかったため、ないよりはよいものの骨抜きの部分が多かった。そして、1997年の改正で、努力義務規定を禁止規定にしたものの、まだ骨抜きの部分があるわけである。

 また、保育所は、「(本来は母親が育てるべきものだが)保育に欠ける者への福祉」として整備されたため、十分にはなく、学童保育は存在しなかった。そのため、出産退職せざるを得なかった女性も多く、出生率は落下の一途を辿った。つまり、保育所や学童保育が十分に整備され仕事を継続できるのでなければ、仕事を辞めるか、出産を諦めるしかなかったのである。

 これに対し、現在では、将来の支え手である子どもを増やすことを目的として(これも失礼な話だが)、①男性の家事・育児参加 ②社会の子育て支援 ③働き方改革 などを主張する人が多い。しかし、両方が力いっぱい働いている夫婦で、①のように、男性が家事・育児に参加し、③の働き方改革で2人とも5時に終業しても、通勤時間を考えれば、②の社会の子育て支援だけでは過労になる。何故なら、家事は、それだけでも仕事になるくらいの労働量だからだ。そのため、*3-3のように、働く女性の数は、働き盛りの25~44歳で伸び悩んでいるわけだ。

 従って、私は、仕事と子育てを無理なく両立するには、保育所や学童保育だけでなく、家政婦の雇用や家事の外注をやりやすくすることが必要だと考えている。

2)管理職や専門職に女性より男性が選ばれる理由は何か
i)医大入試における女性差別の衝撃と社会“常識”
 *3-4-1、*3-4-2、*3-4-3のように、多くの医科大学で不正入試を行い、女子学生や多浪生を不利に扱っていたのは衝撃的だったが、特に、順天堂大学が女子を不利に扱った理由を、①女子は男子より精神的な成熟が早く、受験時はコミュニケーション能力も高いが、入学後はその差が解消されるため補正する必要があった ②女子寮の収容人数が少なかった と、説明したのには呆れた。

 このうちの①については、順天堂大学は医学的検証資料として学術論文を提出し、心理学者が、「そのような内容を主張しているわけではない心理学の論文を安易に引用するような姿勢に対して、強い懸念を表明する」という見解を発表したのが、あざやかだった。また、②ついては、東大は、現在では、日本人学生と留学生の男女が共に豊島国際学生宿舎に入れるようにして相互交流や国際交流の推進を図っているのであり、個室なら寮自体が男女別でなくてもよい上、寮に入ることが大学に行くために不可欠なことでもない筈だ。

 ただ、「女子の方が精神的な成熟は早いが、後で男子に抜かれる」「女子の方がコミュニケーション能力は男子よりも高いが、数学や論理学は男子の方ができる」などというのは、初等・中等教育でも教師がよく言うことであり、要するに、「成人では、男子より女子の方が仕事の能力が低いため、女子を教育するのは無駄だ」という結論にしたがっているわけだ。

 そして、これは、特定大学の医学部だけの問題ではなく、教育段階や企業の採用・研修・配置・昇進段階でよく出てくる女性差別の根拠となっている先入観(社会常識)であるため、女性蔑視をなくすには、この先入観を廃することに正面から向き合わなければならない。

ii)女子だけに保育園の質問するのは何故か?
 医学部専門予備校「メディカルラボ」は、*3-4-5のように、女子の合格率が低い大学は、面接で女子に厳しい質問をする傾向があり、ある大学では女子にだけ「患者がたくさん待っている時、自分の子どもが急病で保育園から呼び出されたらどうしますか」と質問をしていたとしている。

 共働き時代なので、男子にも同じ質問をしてみればよさそうだが、こういう質問の背景には、医大の入試が大学病院の勤務医採用に直結しているからであるとされ、他学部を卒業して企業の採用試験にのぞむときも同じであるのに、こちらはまだ問題にされていない。

 私自身は、「小児科のある病院に病児保育施設を設け、通院圏の保育園や学童保育で病気になった子どもは、まず全員そこに連れて行き、そこで診察した後、保護者が迎えに来るまで預かっておくシステムにすればよい」と考えるが、これは国会議員として地元の保育園を廻って、園長・保育士・親などから意見を聞いて出てきた解であるため、受験生には難しいと思われる。

iii)診療科による男女の医師の偏在と都市部への偏在
 *3-5のように、①女性医師は全員、子育てで現場を離れたり、勤務が制限されたりすることが少なくなく ②診療科で男女に偏在があり ③女性医師だけが都市に集中する というのが、仮に本当で改善できないのであれば、女性医師が戦力にならないと思われても仕方が無い。

 しかし、①は、保育所や学童保育が整備され、家政婦を雇いやすくすれば解決できる。また、②は、女性医師が少ない診療課では、女性医師を差別なく採用して活躍させているかについても検討しなければならない。さらに、③については、多くの症例を見ることができる場所に集中したがるのは、女性医師だけでなく男性医師もであるし、都市の方が都合がよいのは、子の教育や配偶者の仕事との調整もあるからで、これは女性医師特有の問題ではないと思われる。

 ただ、「軽症患者の夜間救急への対応の必要性」と言われても、本人が重症か軽症かを判断できる場合は少ないため、病院に行くことを国民が躊躇しなければならないようなシステムにするのは感心しない。私は、医療に関する問題の本質は、診療報酬を下げ過ぎたため十分な数の医師を確保することができず、働いている医師に過重な負担がかかっていることだと考える。

参考資料
<人口と経済>
*1-1:http://qbiz.jp/article/112572/1/ (西日本新聞 2017年6月22日) 世界人口 2100年には112億人に 国連予測、日本は29位
 国連経済社会局は21日、世界人口が現在の76億人から2050年に98億人に増え、2100年には112億人に達するとの予測を発表した。24年ごろまでにインドが中国を抜き国別で1位となり、日本は現在の11位(1億2700万人)から次第に順位を下げ、2100年には8500万人で29位になるとした。経済社会局は最貧国での集中的な人口増加が貧困や飢餓の撲滅などを掲げた国連の「持続可能な開発目標(SDGs)」履行に向けた課題になると指摘している。予測によると、2100年のインドの人口は15億1700万人、中国は10億2100万人で、両国だけで世界人口の22・7%を占める。上位10カ国のうち、5カ国をアフリカ諸国が占めた。世界全体の平均寿命は2015〜20年の71・9歳から、95〜2100年には82・6歳まで延びる見通し。日本は84歳から93・9歳になる。女性1人が出産する子どもの平均数については、世界全体で同期間に2・47人から1・97人に減ると予想。一方で日本は1・48人から1・79人に増えると見込んだ。高齢化も進み、60歳以上の人口は世界全体で50年までに現在の2倍以上、2100年までに3倍以上になるとしている。

*1-2:http://qbiz.jp/article/146151/1/ (西日本新聞 2018年12月21日) 景気拡大「戦後最長」 12年12月から73ヵ月間に 12月の月例報告
 政府は20日発表した12月の月例経済報告で、国内景気は「緩やかに回復している」とし従来の判断を維持した。同じ表現は12カ月連続。茂木敏充経済再生担当相は関係閣僚会議で、2012年12月から続く景気拡大期が今月で73カ月(6年1カ月)に達し、00年代の戦後最長期(02年2月〜08年2月)と並んだ可能性が高いと表明した。12年12月の安倍政権発足以来の景気拡大は、来年1月で戦後最長も超えそうな情勢だが、賃金の伸び悩みで肝心の個人消費が勢いに欠け、実感は広がっていない。茂木氏は記者会見で「日本経済の基礎体力を引き上げることで回復の実感を強めたい」と述べ、人手不足の解消や生産性向上につながる政策実行に注力する考えを示した。月例経済報告は、個別項目では公共投資を「このところ弱含んでいる」として1年ぶりに下方修正。その他は一部の表現変更にとどめた。先行きを巡っては「緩やかな回復が続くことが期待される」とした上で、米中貿易摩擦など通商問題の動向や世界経済の不確実性、金融資本市場の変動などに留意する必要があると指摘した。月例経済報告の景気判断は現段階の政府見解。景気の拡大期間は、正式には専門家でつくる景気動向指数研究会がデータを分析し判定する。
   ◇   ◇
●「最長」に減速の影 賃金伸びず乏しい実感
 2012年12月からの景気拡大期が、来年1月で戦後最長を超えそうな情勢だ。ただ、かつての高度成長期とは違って経済成長率は低空飛行。アベノミクスによる円安・株高を追い風に企業業績や雇用は改善したが、賃金の伸び悩みで消費者の財布のひもは固く、好況の実感は乏しい。来年10月に消費税増税を控える中、海外経済は米中貿易摩擦などで減速懸念が強まっており、景気の先行きは予断を許さない。「名目GDP(国内総生産)が過去最大となり、企業収益も過去最高を記録した。雇用・所得環境も大幅に改善し、地域ごとの景況感のばらつきが小さいのも特徴だ」。茂木敏充経済再生担当相は20日の記者会見でこう胸を張った。大胆な金融政策▽機動的な財政出動▽成長戦略−の三本の矢を掲げたアベノミクス。日銀の大規模金融緩和が円安を誘い、堅調な海外経済を背景に輸出が拡大して企業収益が改善。12年12月の安倍政権発足前に1万円台だった日経平均株価は、2万円台まで回復した。しかし賃上げは十分でなく、GDPの半分以上を占める個人消費は力強さに欠ける。内閣府は今回の景気拡大について、名目総雇用者所得の伸びを根拠に「00年代の戦後最長期と比べ、雇用・所得環境が大幅に改善した」と説明した。だが、物価の影響を除く実質ベースの伸び率は年0・9%と、戦後最長期の年1・0%を下回っており「企業が賃上げに踏み込まない限り消費意欲も高まらない」(エコノミスト)との見方は強い。さらに、今回の景気拡大期の実質経済成長率は1・2%と低調。高度成長期のいざなぎ景気の11・5%に遠く及ばず、00年代の戦後最長拡大期の1・6%と比べても見劣りする。少子高齢化に伴う人口減が進む中、人手不足も成長を阻む要因となっており、日本経済の実力を引き上げるような構造改革を進めない限り、企業も賃上げや設備投資を進めにくい。日本が「頼みの綱」とする世界経済にも変調の兆しが出ている。目下の懸案は米中貿易摩擦。今月初旬の首脳会談で中国への追加関税が棚上げされたものの、中国通信機器大手の華為技術(ファーウェイ)副会長が逮捕されたことで再燃。中国経済には減速感も出ており、金融の引き締め局面に入った米国の景気も先行きは楽観できない。世界的な景況悪化で為替が円高に振れるなどすれば「日本にとって新たな不安材料になる」(大和総研の児玉卓氏)との懸念も出ている。
*景気拡大 経済活動が活発な状態を指す。経済は景気が改善する拡大期と悪化する後退期が交互に訪れると考えられているが、景気の流れがどちらに向かっているか判断するには時間がかかる。2012年12月から続く現在の景気拡大は昨年9月で「いざなぎ景気」を抜き、戦後2番目の長さになったが、内閣府が正式に認定したのは今月だった。

*1-3-1:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO39102650Y8A211C1000000/ (日経新聞 2018/12/19) イノベーション力、米IT突出 トヨタ11位・楽天33位、日経・一橋大「イノベーション力」ランキング
 日本経済新聞は一橋大学イノベーション研究センターと共同で、世界の主要企業の「イノベーション力」ランキングをまとめた。首位のフェイスブックやアマゾン・ドット・コムなど米IT(情報技術)企業が上位を独占。日本はトヨタ自動車の11位が最高で、次ぐ楽天とソニーが30位台だった。意思決定や収益力などで日本勢は見劣りする。新たなイノベーションの波が次々と押し寄せるなか、経営のスピードが足りない。意思決定の素早さなど革新を生み出す「組織力」、技術開発の力を示す「価値創出力」、イノベーションの種をうまく育てられるかを示す「潜在力」の3つを指標にした。QUICK・ファクトセットの決算データを使い、金融・不動産を除く時価総額の大きい国内168社、海外150社を対象に算出した。フェイスブック、アマゾン、アルファベット(グーグル)、アップルの米国勢が4位までを占めた。4社の頭文字を取った「GAFA」は時価総額や営業利益、研究開発投資、設備投資がいずれも5年前より急伸した。GAFAは人工知能(AI)や自動運転、次世代の超高速コンピューターである量子コンピューターなど産業や社会を大きく変えうる最先端技術に積極投資する。取締役は少数精鋭で、女性の登用にも熱心だ。「意思決定と事業展開のスピードを高めることにつながっている」と一橋大の青島矢一イノベーション研究センター長は説明する。日本企業のトップはトヨタ自動車の11位にとどまる。設備や研究開発への投資意欲が旺盛で、イノベーションの種を育てる努力への評価は高い。しかし、GAFAとの差は歴然としている。例えば、1位のフェイスブックと2位のアマゾンは、価値創出力に寄与する営業利益が5年間でそれぞれ3655%、417%増えた。潜在力に寄与する研究開発投資や設備投資を大幅に増やしている。成長が資金力を高め、それを将来への投資に充てて事業拡大につなげる好循環を生んでいる。20世紀にはなかった企業の成長戦略だ。平成が始まった1989年、日本企業は時価総額ランキングで上位を独占した。トヨタ自動車や現新日鉄住金、パナソニック、日産自動車、日立製作所、東芝などが入った。約30年たち、上位にいるのはトヨタだけだ。日本勢の低迷はバブル後の経済の低成長が原因ではない。高品質の製品を量産する「日本流」の行き詰まりがある。日本企業は中核部品の開発や作り込み、完成品の組み立てまで自前主義と完璧主義にこだわった。イノベーションが既存技術の延長線上にあった時代には大きな武器だった。だが、イノベーションの条件は一変した。GAFAに代表される新興企業はスピード重視だ。必要な技術は他社から調達して素早く事業化、不完全でも投入して市場の反応を待ち改良する。次々に新事業の開始と閉鎖を繰り返し正解を見つける。こうした手法で社会に欠かせない商品やサービスを作り上げた。日本を代表するものづくり企業も手をこまねいているわけではない。「モビリティカンパニーに変わるために、ソフトバンクとの提携は不可欠」。10月4日、東京都内で開いた記者会見で、トヨタの豊田章男社長はこう語り、ソフトバンクグループの孫正義会長兼社長と固く握手した。両社は自動運転など移動サービス事業で手を組んだ。世界では自動車・IT企業が手を組み、自動運転技術の開発にしのぎを削る。実現にはAIや半導体といった技術だけでなく、ライドシェアなどのサービスや地図データも欠かせない。トヨタは電気自動車向けの次世代電池の開発にも取り組んでいるが、次世代の自動車に必要な要素を押さえるには自前主義では時間がかかりすぎる。パナソニックは津賀一宏社長の号令下、あえて未完成品を世に出す計画だ。スピード感を重視するシリコンバレー流の改革に取り組む。完璧な製品を志向すると投入したころには、市場を席巻されている。問題が残っても先に進める手法を取り入れる。日本マイクロソフト会長などを務めた樋口泰行専務役員ら、スピード経営を体感した幹部が主導する。
*調査の概要 イノベーション力は公開されている決算データから、3つの指標についてスコアを測定した。海外企業も含めて公開されている最新の決算データを使い、日本企業は2018年3月期を基本にした。「組織力」は外部取締役や女性取締役の割合が高いほど経営陣の多様性があり、市場変化に機動的に対応できると判断。役員の数が少なくて平均年齢が低いほど組織運営が柔軟で、意思決定が速いと評価した。「価値創出力」は株式の時価総額や営業利益、売上高に占める営業利益の比率、海外売上高比率などで構成。それぞれについて5年前との変化率を加味した。「潜在力」は研究開発投資や設備投資、販売管理費とそれぞれの5年前からの伸びを踏まえて点数をつけた。一橋大学イノベーション研究センターの青島矢一センター長、和泉章教授、江藤学教授、軽部大教授、清水洋教授、延岡健太郎教授(現大阪大学教授)、大山睦准教授、中島賢太郎准教授、カン・ビョンウ専任講師の協力を得た。

*1-3-2:http://qbiz.jp/article/146749/1/ (西日本新聞 2019年1月8日) 大手電力、洋上風力に熱 低コスト・需要見据え積極投資 開発には地元の理解が鍵に
 東京電力ホールディングスや九州電力などの大手電力が、洋上風力発電への積極的な投資に動きだした。洋上は陸上と比べて安定して風が吹き、低い経費で発電が可能だ。「再生可能エネルギーに消極的」という、大手電力のイメージを変える効果にも期待をかける。漁業関係者など地元の理解を得られるかが開発の鍵を握る。東電は昨年11月、千葉県銚子沖で大規模な洋上風力を建設するため、地盤調査を始めた。風力事業推進室の井上慎介室長は「風が安定して吹き、風力発電の支柱を立てるのに適した浅い海が広がっている」と話す。洋上は陸上と違い、一つの区域に集中して風力発電機を設置することができるのも利点だ。将来的には火力発電より発電コストを低減することができるとする見方もある。東電は条件が整えば最大100基程度を数千億円かけて建設し、合計の出力を原発1基相当の100万キロワットにすることも可能だと説明する。銚子沖を含め、今後10年間で200万〜300万キロワットの洋上風力を建設する目標を掲げる。他の大手電力の投資も活発だ。九州電力は西部ガス(福岡市)などと、北九州港で出力約22万キロワット、事業費1750億円の計画を進めており、2022年の着工を予定する。東北電力と関西電力、中部電力の3社は秋田県内の能代港と秋田港の計画に参画している。企業や家庭には環境に配慮し、再生エネでつくった電気を買いたいという需要が増えるとみられる。経済産業省や東電によると、再生エネの固定価格買い取り制度によって営業運転している洋上風力は、長崎県五島市沖の1基(出力1990キロワット)と東電の千葉県銚子沖の1基(同2400キロワット)。一方、計画中の洋上風力の出力を合わせると全国で計500万キロワット程度になるという。国も法制度を整備して後押しする。昨年11月に成立した洋上風力発電普及法は、自治体や漁協が参加する協議会で調整した上で、国が「促進区域」を指定し、最大30年間にわたり発電を許可することが柱だ。大手電力幹部は「新法で漁業などの利害関係者との調整ルールが明確化され、長期にわたり海域が利用できるため、投資計画が立てやすくなる」と話している。洋上風力発電 海上に設置した巨大な風車で電気をつくる再生可能エネルギー。電気は海底ケーブルで陸地に送る。海底に固定した土台の上に風車を設置する「着床式」と海上に風車を浮かべる「浮体式」がある。着床式が世界の主流で、遠浅の海域が広い欧州が先進地域。一つのプロジェクトで総出力100万キロワット規模の大型計画も具体化している。

*1-3-3: https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190107&ng=DGKKZO39689860W9A100C1MM8000 (日経新聞 2019年1月7日) 再生医療、商用段階に、患者2500万人の膝治療で実用化
 再生医療(総合経済面きょうのことば)が商用化の段階に入る。高齢化などに伴う膝関節の病気に企業が相次いで再生医療を応用する。グンゼは軟骨の再生を促す素材を欧州で発売。オリンパスや中外製薬は培養した軟骨を使う方法の実用化を急ぐ。膝関節の病気は日本人の5人に1人が患うため、その治療は再生医療の本丸と目されている。治療法が浸透し関連産業が活性化すれば、再生医療で日本が世界をリードする可能性もある。再生医療は人体の組織や臓器を再生し機能を取り戻す技術だ。実用化で先行したのは皮膚や心臓などの治療。重いやけど患者は年5千人で、うち60件程度が再生医療技術を治療に生かしている。経済産業省は、2012年に2400億円だった世界の再生医療に関連する市場規模が、30年には20倍超の5兆2千億円に拡大するとしている。今回、各社が着目するのは膝関節の病気「変形性膝関節症」。潜在患者数は高齢者を中心に国内だけで2500万人いるとされる。これまでは手術で人工関節を導入するしか根治する方法はなく、症状の重い年8万人が手術を受けていた。患者数が多い病気に再生医療を応用することで、市場が一気に広がりそうだ。グンゼは1月、軟骨再生を促す繊維シートを欧州で発売する。手術で軟骨に傷をつけると、軟骨のもとになる細胞や栄養分がしみ出す。シートがそれらを取り込み軟骨を立体的に再生する。日本では20年にも臨床試験(治験)を始める。オリンパスは1月、患者の軟骨を培養し体内に戻す治験を国内で始める。23年3月までに承認申請する。中外製薬も、スタートアップのツーセル(広島市)と組み、国内で最終段階の治験を進めている。21年にも承認を得たい考えだ。旭化成は18年10月、京都大学などから、けがで傷ついた軟骨の治療にiPS細胞を使う権利を獲得した。欧米ではスタートアップ企業が再生した軟骨を販売しているケースもあるが、日本企業はより多様な治療法の研究を手がけている。膝軟骨以外にも再生医療の研究が進む。既存の治療手段に乏しい神経細胞の分野がその一つで、このほどニプロが開発した治療用の細胞が、脊髄損傷向け再生医療技術として国に承認された。患者数が多い心不全の治療への応用研究も活発で、慶応大学発スタートアップのハートシードなどが治験を目指している。再生医療で臓器や組織を再生できれば、治療にとどまらず、老化して機能が衰えた臓器の置き換えも可能だ。生活の質を向上させ、寿命を延ばすと期待されている。これまで再生医療が普及しなかったのは、細胞を注入する手術が難しかったり、効果が十分に確認できなかったりしたからだ。富士フイルムホールディングス傘下のジャパン・ティッシュ・エンジニアリング(J―TEC)が12年から培養軟骨を販売するが、手術が難しく18年3月期の販売額は約3億円(約150件)にとどまる。ただ、ここにきて各社は手術を大幅に簡略化している。今後は公的な保険でカバーできる範囲に治療費を抑えることなどが課題となりそうだ。

*1-3-4:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190109&ng=DGKKZO39787730Y9A100C1EA1000 (西日本新聞 2019年1月9日) オプジーボの対価「桁違い」、本庶氏と小野薬、食い違い生んだ契約
 がん免疫薬につながる基礎研究でノーベル賞を受賞した本庶佑・京都大学特別教授と「オプジーボ」を実用化した小野薬品工業。産学連携の類いまれな成功事例だが、対価を巡る仲たがいが影を落とす。背景には両者が交わした契約があった。「小野薬は研究自身に全く貢献していない」(本庶氏)。「我々の努力や貢献もあった」(相良暁社長)。2018年10月の授賞決定後、お祝いムードに水を差す両者の応酬に注目が集まった。
●水掛け論の発端
 本庶氏は「論文に小野薬の研究員の名はない。彼らの言う貢献は『金を出した』という意味だ」と主張。一方で小野薬は本庶氏の恩師の早石修京大教授(故人)の紹介で30年以上、研究員を本庶氏の元に派遣し資金提供してきた。今も毎年5000万円を寄付する。水掛け論でいがみ合うきっかけは、02年に共同出願した特許だ。本庶氏らは91年に発見した遺伝子「PD―1」の機能阻害でがんを治療できる可能性を示した。本庶氏は当初、京大に出願を要請したが、知的財産に関心が薄かった京大側は「(特許を維持する)費用を負担できない」として拒否。小野薬と共同出願した。小野薬は05年、米企業と共同開発を始めることになり、本庶氏と小野薬は1つの契約を結ぶ。これが今に至るまでこじれる原因となる。契約では発明の使用を小野薬に独占的に認める専用実施権と、本庶氏が受け取る対価の料率などを決めた。両者とも具体的な内容は明らかにしていない。本庶氏は「後から見ればとんでもない契約で相場に比べて対価の料率が1桁小さかった」と憤る。大学の研究者では交渉力は弱かった。さらに契約に含む特許の範囲で両者の食い違いも判明。本庶氏は再交渉を迫り小野薬も応じかけたという。そんなときに事態が急変する。米メルクが14年にPD―1の仕組みを応用したがん免疫薬「キイトルーダ」を発売、特許侵害が表面化したからだ。小野薬は共同開発した米ブリストル・マイヤーズスクイブとともに特許侵害を提訴。本庶氏もデータ提出や証言などで貢献し、メルクは特許を認める内容で和解した。ぎくしゃくする両者が他社の特許侵害で共闘する格好になった。本庶氏は事前に小野薬に訴訟協力の対価を求めて「新しい提案があった」という。小野薬はメルクから100億円を超える一時金と売り上げの一部を受け取った。ただ新提案の合意に至らず本庶氏は不信感を募らせる。一方で小野薬は当初の契約に基づいて対応しているとの立場だ。リスクを負って世界初の治療薬を生み出した自負もあり後出しで膨らむ要求に応じる前例は作りたくない。契約内容を含めて相良社長は取材に「今は回答したくない」と答えた。
●売上額4兆円も
 こじれる両者の関係をよそに、がん免疫薬の売り上げはうなぎ登りだ。小野薬とブリストル、メルクだけでなく、類似のがん免疫薬が相次いで発売。24年の売上額は年4兆円との試算もある。本庶氏と小野薬の特許が利用されれば、小野薬に巨額の対価が入る。本庶氏は18年12月、若手研究者を支援する「本庶佑有志基金」を京大内に立ち上げた。ノーベル賞の賞金に加えがん免疫薬の対価も充てる考え。「仮に年4兆円の売り上げで0.5%の料率なら5年で1000億円だ」(本庶氏)。小野薬側は若手研究者の支援には賛成しているが、基金へ協力する意思表明はまだない。研究者支援は国の役割で、営利企業は収入を自社の研究開発や株主還元に使うのが本来だ。株主の意向を見極める必要がある。契約した当時と比べて、大学と企業の関係は変わった。政府は大学に対する企業の投資を3倍に増やす目標を掲げ大学に「特許で稼げ」と迫る。ただ大学の交渉力は弱く、企業と対等な契約ができるかは心もとない。京大の産学連携担当者は「本庶先生は大学と企業の今後の関係を対等にするためにも、譲歩せず小野薬と交渉を続けるだろう」と語る。共存共栄のための産学連携の新しい仕組みづくりが急務だ。

*1-3-5:http://qbiz.jp/article/146817/1/ (西日本新聞 2019年1月9日) 2019 新時代へ トップインタビュー(4)
●地域に応じ最適解を JR九州 青柳俊彦社長
−人口減少が進む中、鉄道事業の収益改善が課題となる。
 「鉄道は設備の保守点検が宿命で、維持費用を下げつつ安全性、信頼度を高めることが大事。一方で自動運転技術も無視できない。踏切がない場所であれば導入も難しくない。外部で開発、導入されている技術を引き続き勉強していく」「タクシーや乗り合いバスなどとの融合も検討する。地域や利用者にとって一番いい方法を探る。(一部不通が続く)日田彦山線は鉄道での復旧を目指し、自治体との協議を進める」
−2019年度から新しい中期経営計画がスタートする。
 「今までの成長をさらに高め、伸ばす計画を策定中だ。10年後のJR九州の姿を描く。新たな時代に合わせて情勢は変わるだろうが、われわれの柱はやはり鉄道と不動産だ」
−熊本や宮崎、長崎など九州各地で駅ビル開発が続く。
 「長年『沿線人口を増やす』を合言葉に、九州全体の発展を考えてきた。商業施設だけでなく、オフィスやホテル、大型コンベンション(MICE)施設など、国内外での経験を生かした開発に積極的に取り組む」
−福岡市でも博多駅周辺や博多ふ頭ウオーターフロント地区の再開発計画がある。
 「駅ビルでの集客実績は着実に積み上げている。特に博多駅周辺は街が広がって、にぎわいが増した。(博多駅と博多港地区を結ぶ)ロープウエー構想など、人を運ぶ点にも強みがある。大型の再開発案件を取れなかった昨年の反省を踏まえ、志をともにする企業と連携して、街づくりに貢献したい」
   ◇   ◇
●海外事業成長の柱に 西日本鉄道 倉富純男社長
−昨年は福岡市都心部の大名小跡地や福ビル街区、博多区の青果市場跡地など、大きな再開発計画に次々と着手した。
 「これまで西鉄が積み上げてきた信頼の力が発揮された1年だったと思う。新しい時代も汗をかくことの重要性は変わらない。グループ全体で結束し、大型プロジェクトを進めていく」
−運営会社に参画する福岡空港が4月に完全民営化される。
 「国内線と国際線の連絡バス停留所に、電子表示で外国語にも対応する『スマートバス停』を導入するなど、できることから利便性を改善する。滑走路が2本に増える2025年に向け、商業やホテル機能の計画を前のめりで固めていく」
−今後の重点分野は。
 「成長の柱は海外だ。東南アジア諸国連合(ASEAN)地域でのマンションや一戸建て住宅のほか、付随する商業施設なども増やしていく。国内外での観光需要取り込みも重要で、ホテルも年に1、2棟は着実に開発していきたい」
−天神大牟田線の雑餉隈駅(福岡市博多区)や春日原駅(福岡県春日市)の高架化、駅前開発を進めている。
 「次世代型開発の答えの一つは三国が丘駅(同県小郡市)だ。スーパーや病院、医療・介護サービス付きマンションなど、シニア世代に必要な機能が近距離にまとまっている。その地域での暮らしを快適にすることで、沿線人口を増やしたい」
−進む人手不足への対策は。
 「モニターやセンサーを活用して保線作業の機械化を進めるなど、最適な技術導入や効率化が大事だ」

*1-4:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20181228&ng=DGKKZO39456300X21C18A2EE8000 (日経新聞 2018年12月28日) 年金改革、女性・高齢者に的 来年に財政検証、保険料増へ加入対象拡大
 厚生労働省は2019年、公的年金の財政検証を実施する。当面の年金財政は健全だと確認する見通しだが、支給の長期的な先細りは避けられない。これを受け検討する制度改正では、働く女性と高齢者が焦点だ。パート社員への厚生年金適用や、70歳超からの受給開始も選べるようにし、保険料収入を増やす。一方、支給開始年齢の一律引き上げなど抜本改革は見送られる可能性が高い。財政検証は5年に1度実施する。人口構成や経済情勢の変化に合わせ、将来の年金財政の収支見通しなどを作る。「100年安心」をうたった公的年金の定期健康診断という位置づけだ。検証の結果、5年以内に所得代替率(現役の手取り収入に対する年金額の比率)が50%を下回ると見込まれる場合、給付減額や保険料率の引き上げが避けられなくなる。14年に実施した前回の財政検証では、安定して経済成長する「標準ケース」で43年度に所得代替率が50.6%になるという結果だった。足元の景気は緩やかに回復しており、19年の検証でも5年以内に50%を下回る試算は出ない見込みだ。ただ、年金財政を長期にわたり維持できるかの不安は残る。次の制度改正では、年金支給の財源となる保険料を増やす取り組みに軸足を置く。実施することが確実な具体策の一つは、年金の受給開始年齢について、70歳を超えてからも選べるようにすることだ。今の制度は65歳が基準で、60~70歳の間であればいつから年金をもらうか選択できる。健康寿命が延びて、働く高齢者が増えているのを受けた制度見直しといえる。年金は受け取り始める年齢を遅らせるほど、月当たりの支給額が増えるという仕組みだ。70歳で受け取り開始なら、65歳より4割程度増える。制度改正で高齢者の就労がさらに増えれば、年金の保険料収入が増える。働く女性を念頭に、パート労働者の厚生年金加入も促す。今の制度は(1)従業員501人以上の企業で就労(2)労働時間が週20時間以上(3)賃金が月8.8万円以上――などを満たす人が適用対象だ。この基準を引き下げ、厚生年金に加入する短時間労働者を増やしていく方向で検討が進む見通し。ただ、長い目で公的年金財政の持続性を高めるには(1)支給開始年齢(2)保険料率(3)支給額――の見直しを一体的に実施することが不可欠との見方が少なくない。厚労省は支給開始年齢を一律に引き上げなくても、人口減少などに応じて給付を抑える「マクロ経済スライド」で、将来にわたり年金財政を維持できるとの立場だ。ただ、同スライドを過去に発動したのは1度きり。海外では支給開始年齢を60歳代後半にしている国も多く、有識者の間では一律引き上げを検討すべきだとの意見が根強い。

<改正入管難民法>
*2-1:https://digital.asahi.com/articles/ASLDS3575LDSUTIL003.html?iref=comtop_list_pol_n03 (朝日新聞 2018年12月25日) 外国人労働者、介護など14業種で受け入れへ 閣議決定
 政府は25日、来年4月からの外国人労働者の受け入れ拡大に向けて、新在留資格「特定技能」の枠組みを定めた「基本方針」と、業種ごとに人数などの詳細を決めた「分野別運用方針」を閣議決定した。介護や建設など14業種での受け入れを決め、来年4月からの5年間で最大34万5150人がこの在留資格を得ることを見込む。閣議に先立って開かれた関係閣僚会議では、外国人の受け入れや共生のための「総合的対応策」の最終案を決定。安倍晋三首相は「外国人が日本で働いてみたい、住んでみたいと思えるような制度の運用、社会の実現に全力を尽くして下さい」と指示をした。この日決定された内容で、政府が出入国管理法の国会審議で「成立後に示す」としてきた新制度の全体像を示す「3点セット」が出そろった。ただ、検討中の施策や抽象的な表現にとどまる取り組みも少なくなく、来春からの実効性は不透明だ。政府は年内に基本方針や分野別運用方針の内容などが反映された政省令についてパブリックコメントの募集を始め、来年3月に公示する方針だ。相当程度の技能が必要な「特定技能1号」の資格を得るには、技能試験と日本語試験に合格しなければならない。基本方針には、全ての業種に共通する内容として、外国人労働者が大都市に集中するのを防ぐ▽悪質なブローカーを介在させない▽外国人の給与は日本人と同等額以上にする――などが盛り込まれた。分野別運用方針には、14業種ごとの、来年4月からの5年間の最大受け入れ見込み人数が明記された。最多は介護の6万人、最少は航空の2200人。技能試験と日本語試験を来年4月から実施するのは介護と宿泊、外食の3業種で、他の11業種は来年度中に実施予定。当面は、試験を受けずに在留資格を変更できる技能実習生が担い手の中心となりそうだ。熟練した技能が必要な「特定技能2号」を活用するのは建設と造船・舶用工業の2業種。技能試験に合格するだけでなく、一定期間の実務経験も必要だ。新設される技能試験は2業種とも、21年度に実施される予定という。

*2-2:http://qbiz.jp/article/146287/1/ (西日本新聞 2018年12月25日) 改正入管法 政府方針を決定 5年間で最大34万5150人受け入れ
 政府は25日、改正入管難民法に基づく外国人労働者受け入れ拡大の新制度について、基本方針などを閣議決定し、全容を固めた。深刻な人手不足を理由に、高度専門職に限っていた従来施策を変更。特定技能1号、2号の在留資格を新設して単純労働分野にも広げ、来年4月から5年間で最大34万5150人を受け入れる。外国人が大都市圏に集中しないよう措置を講じるとしたが、地方との賃金格差などを埋める施策を打ち出せるかどうかが課題だ。閣議で受け入れ見込み数などを記載する分野別運用方針、関係閣僚会議で受け入れの環境整備施策をまとめた総合的対応策も決定した。基本方針では、受け入れの必要性を具体的に示すよう関係省庁に要請。対象は14業種で、見込み数は大きな経済情勢の変化がない限り上限として運用する一方、必要に応じて見直し、受け入れ停止を検討することも記した。

*2-3-1:https://www.agrinews.co.jp/p46156.html (西日本新聞 2018年12月18日) 外国人就労で政府案 農作業全般 可能に 雇用側「経験」が要件
 改正出入国管理法(入管法)に基づく外国人労働者の新たな受け入れ制度で、農業分野の制度詳細を盛り込む運用方針、運用要領の政府案が17日、判明した。外国人は栽培管理から集出荷、加工、販売など、生産現場の全般の作業に携われるとした。農家など受け入れ側の要件としては、雇用労働者を一定期間以上受け入れた経験があることなどを盛り込んだ。農業の運用方針などの案は、農水省を中心に関係省庁で策定。19日の自民党農林合同会議で審議した上で、政府は年内に正式決定する。受け入れ人数の見込みは、5年間で最大3万6500人とした。農相は、実際の受け入れがこの人数を超えそうな場合は法相に受け入れ停止を求める。事実上の受け入れ上限の位置付けだ。外国人の業務としては、作物の栽培管理や家畜の飼養管理をはじめ、JAなどの施設での作業を念頭に集出荷、選別作業を位置付ける。運用方針を受けて、さらに細かな内容を盛り込む運用要領の案には、農畜産物の製造・加工、販売、冬場の除雪など外国人と同じ職場で働く日本人が通常従事している作業も、付随的に担えることも定める。外国人の受け入れ形態は、農家など受け入れ側の直接雇用か、人材派遣業者を通じた受け入れとする。直接雇用の場合は一定期間以上、労働者を雇用した経験があることが条件。派遣業者を通じた受け入れの場合、一定期間以上の労働者の雇用経験か、人材派遣に関する講習などの受講者を責任者として配置することが必要とした。新制度による就労では、3年間の技能実習の修了者以外は、一定の技能や日本語能力を問う試験への合格が求められる。技能を問う試験の実施主体は公募で決めるが、全国農業会議所が務めることを想定。日本語の能力試験では、難易度の区分で下から2番目の、基本的な日本語を理解できる「N4」以上の水準を求める。

*2-3-2:http://qbiz.jp/article/146551/1/ (西日本新聞 2018年12月30日) TPP発効 九州農家「組織化」で対抗 輸入増、競争激化に危機感
 環太平洋連携協定(TPP)が30日発効、海外産の安い農産物の輸入が一層拡大することが予想される。農家は競争激化へ危機感を強め、組織化などで対抗する動きを強めている。福岡県産ブランド「博多和牛」の品質向上を図ろうと、県肉用牛生産者の会(肥育農家70戸)と県和牛改良協議会(繁殖農家51戸)などは11月、「福岡県肉用牛振興協議会」(福岡市)を発足させた。福岡県内では、子牛を誕生させて一定期間育てる繁殖農家と、子牛を買い取って出荷まで育てる肥育農家はつながりが希薄だった。協議会は合同研修などを通じ、飼育環境や飼料に関する情報交換や連携を強化。誕生から出荷まで地域で一貫的に行う形を築き、品質向上につなげたい考えだ。農林水産省はTPP11発効に伴い、牛肉の国内生産額が約200億〜約399億円減少すると試算。協議会会長で博多和牛を生産する堀内幸浩さん(45)=福岡県朝倉市=は「海外からの牛肉は赤身で、霜降りが中心の和牛と激しく競合するとは考えていないが、国際的な競争が強まるのは必至。その中で博多和牛が生き抜くためには質向上は欠かせない」と強調する。熊本県宇城市の酪農家川田健一さん(50)は2016年、同市や熊本市の酪農家4人で株式会社「うきうき」(宇城市)を設立した。乳牛の飼料となるトウモロコシの収穫作業を地域の酪農家から請け負うのが主業務だ。飼料収穫機などの大型機械は自己資金に加え国の補助金、JAからの借り入れで確保。18年は6酪農家の計約33ヘクタールを請け負った。設立のきっかけは酪農家の高齢化や人手不足。牛舎での作業以外に、農地での作物栽培などを行うのが難しくなり、牛ふんの堆肥活用ができず処理に苦慮するという悪循環が見られるようになったためだ。農水省試算では、TPPによる牛乳・乳製品の生産額減少は約199億〜約314億円。うきうきの社長を務める川田さんは「今後は廃業する酪農家の乳牛や施設を引き受けることも考えている。組織化によるコスト削減の強みを発揮し地域の酪農を守りたい」と表情を引き締める。

*2-3-3:http://qbiz.jp/article/146690/1/ (西日本新聞 2019年1月6日) 農林業担い手育成へ国際専門校 九州定住、海外販路狙う 大分県内に来年にも アジア出身者ら対象
 政府が外国人労働者の受け入れ拡大を図る中、アジア出身の留学生らを人手不足にあえぐ農林業の担い手に育成する専門学校「アジアグローカルビジネスカレッジ」(仮称)の設立計画が大分県内で進んでいることが分かった。2020年にも開校予定。若者の就業・地元定住を促し、国際ビジネスの創造や海外販路の拡大も狙う。こうした農林業の国際専門学校は全国的に珍しい。昨年11月に発足した設立準備委員会は、九州の農林事業者、学校法人、企業、大学教授、中国の貿易業者らで構成。大分県内の空き校舎を活用し、九州の若者のほか、今後提携するアジアなど10カ国の農業高校の卒業生らに呼び掛ける。総定員は180人、半数程度は留学生を想定している。計画では「グローカル学科」に(1)スペシャリストコース(2)マネジメントコース(3)ビジネス創造コース−を設置。(1)ではコメやユズなど休閑地を活用した九州の特産農作物の栽培や無人の農林業ロボットの操作、(2)では農林業法人の経営ノウハウを学ぶ。(3)は農作物を海外に販売できる人材の育成を目指し、中国・上海やシンガポールなどのバイヤーとウェブ上で交渉する実践的な授業をする。留学生はコース選択の前に1年半〜2年、日本語学科で日本語や商用英語などを学ぶ。卒業生の進路は、農林業法人への就職のほか、耕作放棄地や高齢化した農家の田畑を活用した農林業法人の設立、地元農産品を留学生の母国向けにネット通販する貿易業の起業などを想定。韓国・大邱市の永進専門大や中国・四川省の四川農業大との提携が内定、交換留学も行いたいという。農林水産省によると、15年の九州の農業就業人口は32万7624人で、1990年の4割ほどに減少。このうち30歳未満は9747人と、90年の2割以下に落ち込んでいる。一方、厚生労働省によると、農業に従事する外国人技能実習生は2万4039人(17年10月末現在)。改正入管難民法に基づき、政府はさらに農業分野の外国人労働者の受け入れを拡大する方針。専門学校は新設される在留資格にも対応する授業を目指す。設立準備委の関係者は「卒業生の8割に、九州の農林業に定着してもらうのが目標」としている。
   ◇   ◇
●農林業のプロ育成目指す 九州農業けん引期待
 日本の農業現場が高齢化や人手不足に陥る中、政府は外国人労働力の受け入れに前のめりになっている。大分県内で2020年の開校を計画する国際専門学校「アジアグローカルビジネスカレッジ」(仮称)は、単に人手不足解消という狙いだけでなく、海外販路開拓も含め、「農業王国」九州をリードする人材の育成も目指している。農林水産省によると、九州各県の農業就業人口(2015年)は、福岡5万6950人(1990年比58・8%減)▽佐賀2万6244人(同63・7%減)▽長崎3万4440人(同57・2%減)▽熊本7万1900人(同54・5%減)▽大分3万5208人(同60・6%減)−と、大幅に減っている。後継者確保に悩む農家も多い。外国人受け入れ拡大に向け、政府が昨年12月25日に閣議決定した分野別運用方針は、農業分野では「雇用就農者数が現時点で約7万人不足」し、「基幹的農業従事者の68%が65歳以上」といった課題を明記した。4月に創設される新たな在留資格のうち「特定技能1号」では農業分野で最大3万6500人を受け入れる方針だが、在留期間は通算5年。家族帯同が認められ、在留期限を更新できる「技能2号」は「農業分野では、現時点で導入予定はない」(法務省入国管理局)という。アジアグローカルビジネスカレッジは留学生の卒業後の進路として、九州の耕作放棄地を利用した農林業法人や、農産物の海外販売を手掛ける貿易法人の起業など、より専門性の高い「農林業のプロ」を想定。在留期限を更新できる在留資格「経営・管理」などを取得してもらう。設立準備委員会の関係者は「長期間にわたり九州の農業を引っ張るような高度人材の育成につなげたい。母国に戻り、活躍するグローバルな人材も送り出したい」としている。

*2-4:https://www.agrinews.co.jp/p46244.html?page=1 (日本農業新聞 2018年12月26日) 外国人材 介護現場で活躍 欠かせぬ戦力に 資格取得にも意欲的 JA愛知厚生連足助病院
 全国の介護現場で外国人が活躍している。来年4月施行の外国人労働者の新たな受け入れ制度では、全職種の中で介護分野が最多人数となる見込みだ。経済連携協定(EPA)で3人の外国人を受け入れ、現場の戦力になっているJA愛知厚生連の足助病院(豊田市)の現場から、メリットや課題を探る。介護医療院を運営する同病院では、フィリピン出身の女性3人が勤務している。双子のヘロナ・アケミさん(24)、ユミコさん(24)姉妹は、2016年に着任した。職員から介護技術や日本語の指導を受け、介護福祉士国家試験合格を目指している。2人は、ホールで昼食を取る利用者に「おいしいですか」「ゆっくり食べてくださいね」と日本語で優しく声を掛ける。利用者の女性は「頑張っているから応援したくなる」と話す。2人は着任前の研修で日本語を勉強してきたが、利用者の方言に苦戦している。アケミさんは「『えらい』という言葉が『とても』の意味で使われるのが分からなかった」と苦笑い。分からない言葉は、職員に尋ねて地道に語彙(ごい)を増やしている。2人はフィリピンの大学で介護を勉強した。「フィリピンでは誰でもできる仕事と捉えられがちで、介護施設も少ない。プロフェッショナルとして働ける日本は魅力的だ」と口をそろえる。「利用者に家族のような温かい介護ができるようになりたい」と前を向く。介護医療院の松井孝子課長は「現場では、日本人の新人と同じようにチェックリストを使って教えている。利用者に丁寧に接し、良い印象を持たれている」と評価する。同病院が外国人を受け入れたのは、介護人材の確保が難しくなっているためだ。看護部の大山康子部長は「地元の高校生が就職する場合、市の中心部の企業に就職する傾向が強い。好景気が続く中、介護職に就く人は少ない」と話す。定年退職した職員を再雇用し人材を確保しているが、中堅、若手の層が薄い。14年、同病院に初の外国人人材としてエンピス・ラブジョイ・パルシアさん(25)が着任した。住む場所も同病院が用意し、ベッド、テレビ、自転車などは、職員が持ち寄り提供した。正月は和服を着る体験会を開き、日本文化に親しめるよう心掛けた。現場での実習に加え、過去の試験問題を解く練習を繰り返すよう指導。ラブジョイさんは18年に国家試験に合格。アケミさんとユミコさんは20年の合格を目指す。同病院では、今後も外国人人材の受け入れを続ける予定だ。大山看護部長は「意欲がある若手人材は貴重だ。3人が頑張る姿を見て、受け入れてよかったと言う職員も増えた」と話す。一方で「日本と海外では介護のやり方が異なる。日本の介護のノウハウを習得したいと考える人材でなければ、現場での活躍は難しい」と説明する。
●安心できる環境づくりを
 外国人介護人材を研究する聖徳大学心理・福祉学部社会福祉学科の赤羽克子教授の話
介護現場での外国人登用は拡大し続けるだろう。新たな受け入れ制度が始まれば、さらに加速するはずだ。一方で、来日して介護福祉士の資格を取得しても、孤独を感じて帰国した例がある。外国人同士のコミュニティーづくりの支援が必要だ。先進国を中心に介護分野の外国人の受け入れが進んでいる。就労のハードルが高い日本を避け、他国に人材が流れる恐れもある。外国人が技術をしっかり習得し、安心して生活を送れる環境を整えなければならない。
<メモ>外国人介護人材の受け入れ 
 EPAに基づく受け入れが08年度から始まり、現在はインドネシア、フィリピン、ベトナムの3カ国が対象。17年度までに3529人を受け入れた。介護福祉士候補者として介護施設で就労しながら、資格取得を目指す。他にも、介護福祉士資格を取得した留学生に対する在留資格、技能実習の制度がある。来年4月には、改正出入国管理法(入管法)に基づく新たな受け入れ制度が始まり、国は5年間で5、6万人の人材確保を見込む。

*2-5:http://qbiz.jp/article/146225/1/ (西日本新聞 2018年12月22日) 外国人就労促進へ力 関係省庁予算案 環境整備や技能評価
 来年4月に始まる外国人労働者の受け入れ拡大に向け、関係省庁の2019年度当初予算案が出そろった。相談窓口の設置など、受け入れ環境の整備に重点が置かれたほか、技能や日本語評価のための試験実施に向けた予算措置が目立つ。厚生労働省は、受け入れた外国人の雇用状況を確認するための視察や、受け入れ先の改善指導といった体制整備に8億1千万円を計上した。外国人が安心して医療機関にかかれるよう、病院の多言語化支援に17億円を確保。介護現場で働く人が円滑に利用者や他の従業員となじめるよう、日本語や介護技能を学ぶ研修費用などに11億円を充てる。諸外国でも外国人労働者の活用が進んでいる。外務省は将来的な人材の獲得合戦を見据え、海外での日本語教育事業として10億3千万円を計上。現地での日本語教師の育成や教材の開発を行う。文部科学省は、全国50程度の都道府県や政令市を対象に、日本語教育が必要な外国人を把握するための調査費や、各地域に日本語教室をつくってもらうための補助事業費として4億9700万円を見込む。熟練した技能を持つ人に限定した在留資格「特定技能2号」では家族の帯同が認められている。連れてきた子どもに対する就職相談や地域での居場所づくりに取り組む公立高校への補助事業費に1億円を充てた。国土交通省は、建設分野での受け入れ環境整備に2億2400万円を確保。現在の緊急受け入れで不適切な賃金支払いや過重労働が問題化したため、受け入れ業者の実態調査を強化する。航空業界では、今後整備士の大量退職が見込まれ、外国人の受け入れに期待が高まる。海外での整備士養成の現状を調べる費用として1800万円を計上した。日本を訪れる外国人観光客は今年初めて年間3千万人を超え、東京五輪に向けてさらなる増加が見込まれる。観光庁は、観光を担う人材確保に向けて1億4400万円を計上。宿泊業での雇用環境を整えるため、外国人向けセミナーの開催や教材開発を行う。経済産業省は、業界団体を対象に、外国人の労務管理や生活指導のノウハウを伝えるセミナー開催などのため1億円を充てた。農林水産省は、農業と漁業、飲食料品製造業、外食業の4分野で、知識や技能評価のための現地試験を実施する。試験問題作成や、会場設営を支援するために3億5千万円を確保した。法務省は、全国100カ所に多言語で応じる生活相談窓口を設置するため、自治体に20億円(うち10億円は18年度補正予算案)の交付金を配分する。出入国在留管理庁新設に当たり、18年度補正予算案には13億5200万円も盛り込んだ。

*2-6:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20181228&ng=DGKKZO39485570X21C18A2EA1000 (日経新聞 2018年12月28日) 外国人と働く(4) 一律対応は通用しない
 「滞納していた保険料を分けて払いたい」訪日外国人や忘年会の会社員でにぎわう東京・歌舞伎町の新宿区役所本庁舎。4階の医療保険年金課の窓口には、12月に入ってもこんな問い合わせをする外国人が足を運ぶ。国民健康保険(国保)の手続きを管轄する部署の課長、村山透(56)は「留学生の来日が集中する4月と10月は外国人が殺到する。12月はすいている方だ」と明かす。区内には12月1日現在、約4万3600人の外国人が暮らしている。中国や韓国、欧米、アフリカなど出身国・地域は計140弱。「日本で一番助かるのは病院にかかりやすいこと」(中国人の女子留学生、20)との声がある一方、月額数千円程度の保険料が未払いの外国人も増加傾向だ。区は4月、納付を促す催告書にベトナム語とミャンマー語、ネパール語を加えた。人数が増え、出身地が広がる外国人住民。地域で向き合う自治体の体制はどうか。JR川口駅東口の複合施設「キュポ・ラ」には埼玉県川口市の協働推進課の窓口がある。応対する職員は3人で、英語や中国語が母国語の「国際交流員」が補助する。この人員で3万3000人の外国人の相談にあたる。生活習慣や納税など、文化の違いに根ざしたトラブルは幅広い。係長の川田一(44)は「何度も説明しないと理解してもらえない場合も多い」とこぼす。多様化する外国人住民に、自治体の一律対応は通用しなくなりつつある。各地の自治体でつくる「外国人集住都市会議」は11月28日、外国人受け入れに関する意見書を東京・霞が関の法務省に提出した。名前を連ねたのは浜松市や群馬県太田市など15自治体で、ピーク時からほぼ半減した。日系ブラジル人対応で連携する目的で設立されたが、出身地が広がり、共有できるテーマやノウハウが乏しくなり、一部の自治体が離脱した。北海道紋別市の水産加工会社、光進水産は外国人技能実習生の住宅で無料Wi―Fiが使えるようにしている。暮らしやすい環境を整え、実習生をつなぎ留めるためだ。それでも、社長の斉藤則光(66)は「日本の若者と同じように、都会に出て行ってしまうのではないか」との不安は消えない。働き手として住み続けてもらうには何が必要か。自治体や企業の試行錯誤は続く。

<家事労働の軽視と女性差別>
*3-1:http://qbiz.jp/article/145946/1/ (西日本新聞 2018年12月18日) 男女平等、日本は110位 18年、賃金格差縮小でやや上昇
 ダボス会議で知られるスイスの「世界経済フォーラム」は18日、2018年版「男女格差報告」を発表した。日本は調査対象となった149カ国中110位で、賃金格差の縮小などにより前年より順位を四つ上げた。しかし政治、経済分野で依然女性の進出が進んでいないとされ、20カ国・地域(G20)では下位グループに位置、中国(103位)、インド(108位)より低かった。報告書では、日本は女性の議員や閣僚の少なさから政治分野(125位)が低評価で、経済分野(117位)も幹部社員の少なさなどから前年より順位を三つ下げた。「依然として男女平等が進んでいない国の一つだ」と指摘されている。首位は10年連続でアイスランド。2位ノルウェー、3位スウェーデンと北欧諸国が上位に並んだ。G20では12位のフランスがトップで、次いでドイツの14位。米国は51位だった。日本より低かったのは韓国(115位)、トルコ(130位)、サウジアラビア(141位)の3カ国。世界経済フォーラムは「世界全体として政治分野で男女格差が拡大するなど格差解消の動きは足踏み状態だ。このスピードでは完全解消に108年かかる」と強調した。男女格差報告は各国の女性の地位を経済、教育、政治、健康の4分野で分析、数値化している。

*3-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190110&ng=DGKKZO39807280Z00C19A1KE8000 (日経新聞 2019年1月10日) 平成の終わりに(5)女性活躍誇れる国 目指せ、多様性向上、企業・社会に益 村木厚子・元厚生労働事務次官(1955年生まれ。高知大文理卒、旧労働省へ。津田塾大客員教授)
〈ポイント〉
○第1子出産で離職する女性比率高止まり
○育児への男性の参加と社会の支援が重要
○女性活躍進むが他国に比べスピード遅い
 男女雇用機会均等法は、昭和の終わりに近い1985年に制定された。それから30年余りが経過した今日、「女性活躍」は再び政府の最重要課題の一つとなり、これに加えて「働き方改革」が大きな政策課題となっている。本稿では、これらがそれ自体、社会的に重要であるだけでなく、日本にとって最も深刻な社会課題である少子高齢化への対応や、さらには多くの企業が目指す新たな価値創造にとっても重要な役割を果たすことについて述べたい。均等法は、国連の「女子差別撤廃条約」という外圧を借りながら、経済界の強い反対を押し切って誕生した。女性が性別により差別されることなく、かつ母性を尊重されつつ充実した職業生活を営むことを基本理念に、雇用の場での機会と待遇の均等を確保することを目的とした。しかしその後、女性の多くが育児や介護などの家庭責任を負う状況では、女性の活躍どころか、就業の継続そのものが難しいことが次第に明らかになった。このため「育児休業法」(現在は育児・介護休業法)が91年に制定され、子どもが満1歳になるまでの間、育児休業を男女労働者に付与することなどが義務付けられた。これで「均等」と「(仕事と家庭の)両立」という車の両輪がそろった。その後、均等法も育児・介護休業法も順次強化され、さらには2015年に成立した女性活躍推進法で、「機会」の均等のみならず、女性活躍の「結果」が出ているかどうかを企業などが検証し、対策や目標数値を盛り込んだ計画を策定し実行するいわゆるPDCA(計画、実行、評価、改善)の実施と、その内容の公表が義務付けられた。こうした均等と両立の施策の充実により、女性の就業率や管理職比率の向上、男女間の賃金格差の解消などが、平成の全時代を通じゆっくりとではあるが進んだ。だがなかなか変わらない現実もある。育児・介護休業法により女性の育児休業取得率は、07年以降は常に80%を超えるが、男性の取得率はまだ5%台にとどまる。法律は男女労働者を対象にしていても、育児は女性の仕事という構図はほとんど変わっていない。第1子を出産した女性の出産前後の就業状況をみると、結婚して仕事を辞める女性は均等法施行後徐々に減っている。だが第1子の出産後も就業を継続する女性の割合は、10年ごろまでは20%台で推移していた。こうした中で別の大きな問題が顕在化してくる。出生率の低下だ。出生率は80年代半ばごろから低下が続き、05年に史上最低の1.26を記録した。少子高齢化の急速な進展は将来世代への過大な負担を意味する。加えて社会保障負担の増大による財政の悪化により、次世代への負担の付け回しが既に始まっている。社会の疲弊や財政破綻を避け、平成の次の時代、長寿を喜べる社会にするためには、「支え手」を増やすしかない。今の支え手である働く女性を増やすことと将来の支え手である子どもを増やすことは同時に実現できるのだろうか。答えは他の先進国の状況をみれば明らかだ。経済協力開発機構(OECD)加盟諸国のデータをみると、おおむね女性の労働力率が高い国は出生率も高く、逆に女性の労働力率が低い国は少子化に苦しんでいる。女性が活躍する社会が、同時に希望する子どもを持つことができる社会だ。これを日本で実現する鍵は何か。他国の状況や国内のニーズ調査などから政府がたどり着いた結論は、男性の育児参加と社会の子育て支援の重要性だった。具体的には、男性を含めた働き方の改革と保育の充実だ。保育が、男女が子どもを持ち、ともに働き続けるための必要条件であることは疑いがない。このため「社会保障と税の一体改革」の中で、消費税率引き上げによる増収分の一部を保育に充てることになり、ここ数年、急速に整備が進み始めた。この分野は今後も手を緩めてはならない。次は働き方改革だ。各種調査で、子どもを持つ女性が仕事を続けるための条件として挙げたのは、職場全体の勤務時間や両立を支援する雰囲気、勤務時間の柔軟性などだ。日本の残業時間は国際的にみても長く、男性の家事・育児参加の度合いは低い。就学前の子どもを持つ父親の家事・育児時間は日本は1日平均約1時間強で、欧米の半分以下だ。夫の家事・育児参加時間が長い家庭ほど妻の就業継続率が高く、2人目以降の子どもを持つ確率が高いこともわかってきた。妻だけが育児を担う「ワンオペ育児」が少子化につながることが裏付けられた。そして男性の育児参加には労働時間の短縮が必要だ。18年6月には働き方改革関連法が成立した。残業の上限規制、高度プロフェッショナル制度(脱時間給制度)の導入、同一労働同一賃金の推進などが柱だ。長時間労働の是正、多様で柔軟な働き方の導入、多様な働き方に見合う公正な処遇を受けられるルールづくりを目指すものだ。これらが実現すれば、男女がともに、さらには高齢者、障害者など多様な労働者が自分に合った多様な働き方で力を発揮することができる。働き方改革は労働者の健康だけでなく、男女が仕事で活躍し、家庭生活を充実させ、さらには多様な支え手が社会を支えることを可能にし、社会全体の持続可能性を高めるための重要な政策となった。「女性活躍」からスタートして男女の「働き方改革」へと広がってきた政策の方向性は間違っていない。問題は改革のスピードだ。図が示すように、結婚し第1子を出産した後も働き続ける女性は10年ごろから増え始めたが、それでも4割にも満たない。世界経済フォーラムが公表する男女平等の度合いを示す「ジェンダー・ギャップ指数」で、日本のランキングは149カ国中110位(18年)と極めて低い。しかも中長期でみると、ずるずると順位を下げている。関連の国際機関に、日本の女性活躍は進んでいるのになぜ順位が下がるのか問い合わせたところ、「日本は良くなっているが、ほかの国はもっと速いスピードで良くなっている」との答えが返ってきた。長時間労働の是正も同様の状況だ。スピードを上げるために政府は何をすべきか。女性活躍や働き方改革の進捗状況を点検し、政策効果を分析し、さらなる対策や目標値を明示して、これを広く国民と共有しながら取り組みを進めていく、すなわち女性活躍推進法で企業に義務付けたPDCAの実施だ。特定分野でのクオータ制(割当制)の導入も検討してよい時期だ。女性活躍も働き方改革も日本社会にとっては最重要課題だが、個々の企業にとってはどうだろうか。まだ多くの企業はこれを「コスト」と受け止めているのではないか。だが調査研究によれば、女性の役員が多い企業は比較的業績が良く、ワーク・ライフ・バランスの取り組みやフレックスタイム制を進める企業は、一定の時間はかかるが大幅に付加価値生産性が上がる。平成の次の時代の企業の最大課題は新たな価値の創造だ。女性をはじめ多様な人材が活躍できるダイバーシティー(多様性)の実現はそのための大きな原動力だ。そう認識し、本気で取り組む企業が増えれば、改革のスピードは上がり、企業の成長と社会の成長の好循環が生まれる。

*3-3:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO39490190Y8A221C1EA4000/?n_cid=NMAIL006 (日経新聞 2018/12/28) 働く女性3000万人、超えられぬ壁 働き盛り伸び悩む
 働く女性の数が3000万人の大台を目前に足踏みしている。総務省が28日発表した11月の労働力調査によると、女性の就業者数は2964万人(季節調整値)で前月に比べ7万人減った。順調に増えてきたが、5カ月ぶりに減少に転じた。高齢者や学生ら若者が女性の働き手を増やすけん引役だが、全体の底上げには25~44歳を中心とする働き盛りの世代の動向がカギとなる。11月の就業者数は男女合わせて6713万人。このうち男性は3749万人で全体の56%。30年前は6割だったが、働く女性が増えて男女比率は半々に近づいている。11月の女性の就業者数を年代別に17年末と比べると、伸び率が最も高いのが15~24歳だ。就業者数は284万人で13%増えた。全体の伸び(3%)を大きく上回る。13~17年はおおむね240万~250万人台で推移してきた。少子化で人口が減るなか、18年に急増した要因は「時給上昇と労働条件の緩和だろう」とSMBC日興証券の宮前耕也シニアエコノミストは話す。有効求人倍率は1.6倍を超え、人手不足は深刻だ。アルバイトを募集する際、時給を上げ、就業は週1回でも良いといった条件にするなど、学生にとって働きやすくなった。景気要因の大きい学生の雇用状況に対し、65歳以上の高齢女性で働く人は安定して増えそうだ。11月の就業者数は366万人で、17年末と比べると11%増だ。一方、就業率は17.9%。65歳以上の男性の就業率が33.6%で、高齢女性の伸びしろは大きい。気がかりなのは働き盛りにあたる25~44歳。就業者数は17年末に比べ1%減った。働く意欲は持っていても、子どもを預けることができず就労を諦めている女性もいる。都市部を中心に保育所に預けられない待機児童は全国で約2万人にのぼる。働き続けられる環境整備が欠かせず、政府は対策を急ぐ必要がある。

*3-4-1:https://digital.asahi.com/articles/ASLD92PS3LD9UBQU001.html?iref=pc_extlink (朝日新聞 2018年12月9日) 不適切な入試、岩手医科大・金沢医科大・福岡大でも
 岩手医科大、金沢医科大、福岡大の3私立大が8日、一斉に各大学で会見を開き、医学部入試で「文部科学省から不適切な点があると指摘された」と公表した。募集要項で明記せずに現役生や地元高校の卒業生ら、特定の受験生を優遇していたが、いずれも「問題ないと思っていた」と釈明した。文科省は同省幹部の汚職事件をきっかけに、東京医科大の医学部入試で不適切な得点操作が発覚したことを受け、全国81大学の医学部入試を調べている。10月に「複数の大学で不適切な入試が行われている」と発表し、大学の自主的な公表を求めていた。岩手医科大は、34人が受験して7人が合格した今年の編入試験で、同大歯学部の出身者3人を優遇した。地域医療に貢献する人材育成のために出願時に約束させている、付属病院や関連病院で卒業後6年以上、勤務する条件を守る可能性を重視したという。佐藤洋一・医学部長は「出身者に優位性を持たせるのは、私学の裁量の範囲内と考えていた」と話した。今年度入学の一般入試で不合格となった7、8人より、評価が明らかに低かった1人を追加合格させた点も、不適切と指摘されたという。判断の基準について問われた佐藤医学部長は、「公表を差し控えたい。特定の属性で合格させておらず、不都合な点はないと考えていた」とした。金沢医科大は今年度のAO入試で同窓生の子ども、北陸3県(石川・福井・富山)の高校の卒業生、現役生と1浪生に加点していた。同窓生の子は10点、石川の高校出身者には5点、富山、福井については3点、現役・1浪生には5点を加えていた。編入試験でも北陸3県の高校出身者や年齢に応じて得点を調整。これらの操作によって約10人が不合格になったという。さらに、一般入試の補欠合格者を決める際にも年齢を考慮していた。会見した神田享勉(つぎやす)学長は「大学の機能を保ちながら、北陸の医療を支えていくのは困難。同窓生の子どもや現役・1浪生、北陸3県出身者の方が地域に残るというデータがある」と得点調整の理由を説明した。福岡大では、高校の調査書の評価を点数化する際、現役生を有利にしていた。一般入試の評価では、1浪は現役生の半分で、2浪以上は0点だった。2浪以上は受験できない推薦入試でも、同様に差をつけていたという。「高校時代の学力・成績も評価したかったが、卒業から年数が経つと基礎学力評価の有効性が下がる」として、2010年度入試から始めたという。11月下旬に文科省から不適切との指摘を受けて再検討し、高校側の保存期間を過ぎて調査書を提出できない浪人生もいることなどから「不適切」と結論づけた。月内に第三者を含む調査委員会を設け、追加合格などを検討するという。会見はいずれも午前11時に開始された。この日になった理由を問われ、3大学とも「近く、一般入試の出願が始まるため」と同様の説明をした。会見日時が重なったことについて、福岡大の黒瀬秀樹副学長は「びっくりしている。示し合わせているわけでは全くない」と話した。

*3-4-2:https://digital.asahi.com/articles/ASLDB76NZLDBUBQU00X.html?iref=pc_ss_date?iref=pc_extlink (朝日新聞 2018年12月11日) 順大・北里大で不適切な医学部入試 女子など不利な扱い
 順天堂大と北里大は10日、医学部で女子や浪人回数の多い受験生を不利に扱う不適切な入試を行っていた、と発表した。順大は「女子はコミュニケーション能力が高いため、補正する必要がある」として、面接などを行う2次試験の評価で、男女で異なる合格ラインを用いるなどした。北里大は今年度の一般入試で繰り上げ合格者に連絡する際、男子や浪人回数の少ない受験生を優先させた。順大によると、不適切な入試の結果、2017、18年春の入試で計165人が不当に不合格となった。順大はこのうち2次試験で不合格となった48人(うち女子47人)を追加合格にする方針を示した。順大は女子を不利に扱った理由について①男子よりも精神的な成熟が早く、受験時はコミュニケーション能力も高いが、入学後はその差が解消されるため補正する必要があった②女子寮の収容人数が少なかった――と説明。ただ、この問題で設置した第三者委員会からは、いずれも「合理的な理由はない」と指摘された。新井一学長は「当時は大学の裁量の中で妥当と判断した。不適切とされたので、今後はなくす」と謝罪した。北里大は今後、第三者委を設置して対応を検討する。医学部入試をめぐって不適切な入試を認めたのはこれで8大学になる。

*3-4-3:https://digital.asahi.com/articles/ASLDC4389LDCUBQU00H.html?iref=pc_ss_date?iref=pc_extlink (朝日新聞 2018年12月11日) 「女子の方がコミュ力高い」 順大、医学部入試で不利に
 医学部入試での女子差別が再び明らかになった。順天堂大は10日に会見を開き、男女によって異なる合格ラインを設定していたと明らかにしたうえで「女子の方が精神的な成熟が男子より早く、コミュニケーション能力が高い。ある意味で、男子を救うためだった」と説明した。「受験生、保護者、関係者に多大な心配とご迷惑をおかけし、深くおわび申し上げます」。午後4時に始まった会見の冒頭、新井一学長と代田浩之医学部長は、深く頭を下げた。順大が文部科学省から「不適切」との指摘を受けて、10月に設置した第三者委員会の報告書は、女子と浪人回数の多い受験生を構造的に不利に扱っていたと指摘した。出願者の半分近くを占める「一般A方式」の1次試験では、一定順位を下回る受験生については性別、浪人回数、調査書の評価によって異なる合格基準を設定。女子や浪人回数の多い男子は、2次試験に進むことが困難だった。面接などを行う2次試験では地域枠と国際枠を除く全ての入試区分で、男女について異なる合格ラインを設定。順大は1次試験の順位をランクごとに分け、2次試験の成績(満点は5・40~5・65点)を組み合わせて合否判定する。1次試験の評価が男女で同じランクの場合、女子の2次試験の合格ラインが0・5点厳しかった。この仕組みは遅くとも2008年度から行われていたという。報告書によると、順大は男女で異なる取り扱いをした理由を第三者委に「入学後に男性の成熟が進み、男女間のコミュニケーション能力の差が縮小され、解消される」と主張。多数の教職員が「女子受験者に対する面接評価の補正を行う必要があった」と説明し、医学的な検証をした資料として学術誌の論文も提出していた。だが、第三者委は「面接では受験者個人の資質こそが性差よりも重視されるべきだ」と指摘し、「合理性はない」と退けた。順大は医学部の1年生が全員、寮で生活する。順大は「女子寮の収容力に限界があり、合格者を制限する必要があった」とも述べたが、第三者委は「新たな寮ができた後も合格判定基準が変わっていない」として合理性を認めなかった。17年度と18年度の2次試験を再判定した結果、計48人(うち女子47人)を追加合格とし、今後、28日を期限に意向を確認して希望者全員の入学を認める。その分、19年度入試の募集定員を減らす。2年間の1次試験で不合格とされた計117人には入学検定料を返す。2次試験を受けさせない理由について代田医学部長は「過去の入試と来年度の入試の難易度を合わせるのは難しい」とした。16年度以前の受験生については補償を含めて「考えていない」という。会見で新井学長は「当時は私学の裁量の範囲内だと考えていた」と話した。第三者委の指摘を受けて「現時点では不適切だった」と述べ、19年度入試からこうした扱いは全廃するとともに、調査書も評価に入れないと説明した。自身の進退を含めた処分は「不正ではないので考えていない」という。文部科学省の調査によると、順大の過去6年間の平均合格率は男子9・16%、女子5・50%。女子と比べて男子の合格率が1・67倍となり、全国81大学で最も高かった。順大が当初、文科省の調査に不正を否定していた点を問われ、新井学長は「補正という考えであり、差をつけているという認識はしていなかった」と説明した。北里大も10日、18年度の一般入試で繰り上げ合格者に連絡する際に、男子や浪人年数の短い受験生を優先させていたと公表した。記者会見はせず、ホームページに掲載した。北里大によると、入学者に占める女子の割合や、22歳以上の受験生の合格率が、ほかの私立大医学部より高いという。担当者は「合格した男子学生の辞退率が高く、抜けた部分を埋め合わせるためだった」と話した。今後、第三者委を設置して、18年度以前の入試についても調べ、不利に扱った受験生らへの対応を検討する。

*3-4-4:https://digital.asahi.com/articles/ASLDL4DZNLDLUBQU008.html (朝日新聞 2018年12月18日) 順天堂大入試「コミュ力」問題、心理学者が相次ぎ懸念
 順天堂大医学部の入試で、女子のコミュニケーション能力が高いため男子の点数を補正した、と大学側が説明した問題に関連し、「日本パーソナリティ心理学会」(理事長=渡辺芳之・帯広畜産大教授)が16日、大学側が根拠として第三者委員会に米テキサス大教授の1991年の論文を提出したことについて、「そのような内容を主張しているわけではない心理学の論文を安易に引用するような姿勢に対して、強い懸念を表明する」などとする見解を発表した。同会には、パーソナリティー研究に関わる心理学者らが参加している。見解では、「入学試験において、パーソナリティーに関係する心理学の研究知見を特定の人々に対する不利益な扱いの根拠として引用する事例が発生した。研究成果に対して多様な解釈があり得ることはもちろんだが、他の研究分野の知識を、その研究本来の文脈や目的から離れて不適切に引用することは好ましいことではない」としている。これとは別に、三浦麻子・関西学院大教授ら心理学者の有志も16日、声明を発表。「根拠」とされた論文は「児童期から成人期までのパーソナリティー発達と男女差を検討したもので、『女性の方が精神的な成熟が早く、相対的にコミュニケーション能力が男性より高い傾向がある』という知見を提出したものではない」として、根拠として用いたことを「非科学的」と批判。「性別ごとの平均値による比較を個別の人物評価に一律に当てはめるべきではない」とし、「心理学研究の素朴な引用によって差別的言動を正当化する行為全般に、心理学者として断固抗議する」としている。

*3-4-5:https://digital.asahi.com/articles/ASLCH4F21LCHUTIL019.html?iref=comtop_8_06 (朝日新聞 2018年12月15日) 医学部入試、選ぶ側に裁量 女子だけに保育園の質問も
 医学部入試に関する調査を進めてきた文部科学省は14日に最終報告を公表し、改めて公正な入試の必要性を訴えた。「入試が不適切だった」と公表した各大学も、選抜方法を改めるとしている。ただ、「何が公正か」という課題は残る。特に医学部の場合は、ほとんどの大学が面接を含む2次試験を行っており、選ぶ側の裁量が大きい。面接試験は、患者と接するコミュニケーション能力や丁寧に説明する力など、医師に求められる資質や適性をみるために大切とされる。主に医学部に進む東京大理科3類では2018年度入試から11年ぶりに復活し、19年度入試は九州大を除く全ての医学部で行われる。ただ、面接は学力試験と比べ、面接をする人の「主観」に左右されやすい。不正発覚の発端となった東京医科大の小西真人・入試委員長は、2年間で101人を不正に不合格にしていたと発表した11月7日の会見で「完全な客観性は面接には無理。大学側に、ある一定の裁量があることは確か」と語った。各大学の男女の合格率や面接内容を分析してきた医学部専門予備校「メディカルラボ」(本部・名古屋)によると、女子の合格率が低い大学は、面接で女子に厳しい質問をする傾向がある。ある大学では女子にだけ「患者がたくさん待っている時、自分の子どもが急病で保育園から呼び出されたらどうしますか」と質問をしていたという。複数の医師は、こうした質問の背景に、入試が大学病院の勤務医の「採用」につながっているという面があると指摘する。同校本部教務統括の可児良友さんは「男子や現役を多く確保したいという大学側の意識が変わらないと、現状が変わらないかもしれない」と不安だ。2次試験の問題は、面接だけではない。得点配分を公表していない私立大も多く、運用が不透明との批判がある。文科省の調査で「不適切な疑いがある」と指摘を受けた10大学のうち、ただ一つ、「問題はなかった」との立場の聖マリアンナ医科大(川崎市)の場合、1次の学力試験は400点満点。2次試験では100点ずつの小論文と面接に加え、調査書などを点数化して合格者を決めているが、この部分の配点は募集要項に記しておらず、評価基準もなかった。文科省はこの点数化の際、「女性より男性、多浪生より現役生が、顕著に高い」と指摘したが、大学側は「受験生を個々に総合評価している」と反論した。同大の広報担当者は取材に「面接官によって、男子や現役に高くつける人はいるかもしれないが、一律に加点していることはない」と答えた。14日の会見で柴山昌彦文科相は同大との見解の相違について「かなり大きな溝がある」として第三者委員会による調査を求めた。ただ、大学側は実施しない方針という。

*3-5:https://digital.asahi.com/articles/ASLCK2JPSLCKUBQU003.html?iref=pc_ss_date?iref=pc_extlink (朝日新聞 2018年11月17日) 診療科で男女偏在・都市に集中… 入試不正の背景は
 医学部入試で受験者の性別で差をつけてきた背景には、診療科による男女の偏りや都市部への偏在など、医療界が抱える問題がある。専門家は一連の入試不正を社会全体で考える契機にすべきだと指摘する。女性医師は子育てなどで現場を離れたり、勤務が制限されたりすることが少なくない。2016年の厚生労働省の調査によると、外科など長時間や不規則な勤務が強いられる診療科では女性は1割にも満たない。皮膚科(47%)や眼科(38%)などで割合が高く、特定の診療科に偏っている。女性外科医のキャリア支援を続ける日本女性外科医会役員の明石定子・昭和大学准教授(乳腺外科)は「一連の問題が明るみに出て入試改革が進んで現場で女性が増えれば、医療界も変わらざるを得なくなる」と話す。昔と比べて、時短勤務などの制度は広がりつつある。だが、明石さんは「家庭を重視して勤務負担を軽減すればいいわけではない」とも指摘する。「時短の時期が長くなれば医師としてのキャリアを短くしてしまう。育児中であってもキャリアを積める仕組みが必要だ」と話す。医師の労働条件が改善できない理由の一つに、都市に医師が集中し、へき地で深刻な医師不足になっている実態がある。辺見公雄・全国自治体病院協議会名誉会長は「最近は『すめば都』ではなく、『都がすみか』という傾向がより強まっている」という。同協議会が地域医療を支える自治体病院に今春行ったアンケートによると、医師の労働時間短縮について、48%が「実施できない」と答えた。辺見さんは「出身地とは離れた地域でも何年か診療できる若い人材が求められていることを理解して欲しい」と話す。働きやすい病院の認証事業を手がけるNPO法人イージェイネットの瀧野敏子代表理事は医療機関の合理化を進めることも重要だと指摘する。軽症患者の夜間救急への対応の必要性など検討課題は多いという。「合理化できるかもしれない労力の担い手を、事情を抱えてフル稼働できない女性医師らに求めるのではなく、『それは必要なのか』と国民も巻き込んで考えていくべきだ」と話す。

<運輸部門の生産性の低さを何とかしよう>
PS(2019年1月13日追加):日本では、道路が混んで自動車が低速でしか走行できず、運輸部門の生産性が著しく低い時代が何十年も続いているが、中国では、民主主義や一人一人の国民の豊かさに不安はあるものの、6車線道路やリニア・モーターカーができ、EVシフトを進めているという点で、必要なことを着々とやっているように見える。また、日本発のアイデアだった「電動化」「自動運転化」は、日本ではバックラッシュを受けてゆっくりとしか進まないが、世界では、*4-1-1、*4-1-2のように、短期間で市場投入の時代に入った。
 もちろん、電力を化石燃料で作っていては意味がないが、*4-2-1のように、JXTGエネルギーも洋上風力発電の開発を国内外で検討する考えを示しており、私は、再生可能エネルギーで安く電力を作り、給油所を水素充填及び充電拠点に替えて、燃料電池車やEVを相手として安くエネルギーを販売すればよいと考える。そして、安い電力や水素を得るには、このほかに、*4-2-2のような黒潮発電や地熱発電もあり、*4-3のように、経産省が、発電コストの引き下げを促すために風力発電を2021年度から全面入札制にするとのことである。
 さらに、*4-2-3のように、自立した水素エネルギー供給システムも作ることができる。
 
*4-1-1:https://www.nikkei.com/paper/related-article/tc/?b=20190113&bu=BFBD9496・・ (日経新聞 2019年1月13日) 自動運転・電動車で新戦略 フォード・都市と連動/VW・3600億円投資 北米自動車ショー
 開幕した北米国際自動車ショーで、自動車産業の潮流である「自動化」「電動化」の強化へ世界大手が新戦略や大型投資を表明した。米新車販売は2017年に8年ぶりの減少となったが、中国に次ぐ世界2位市場として3位日本の3倍以上の規模。進取の気性にも富む。依然、米市場での浮沈が経営戦略を左右する。米フォード・モーターは14日に発表会を開き、都市インフラを重視した自動運転構想を表明した。ジェームス・ハケット最高経営責任者(CEO)は「駐車場の空き状況と連動したナビゲーションなど、都市インフラとの連動」を提案した。次世代型の都市構想を打ち出すうえで初期段階から車両との連携を進め、燃費節約などにつなげる方針だ。フォードは21年に自動運転車の導入を計画しており、ハケットCEOは「まずは自動運転を使った移動・輸送受託のビジネスモデルを広げることに注力する」と中小企業なども顧客とすることを示唆した。電動化対策としては、フォードは22年までに電気自動車(EV)など電動車40モデルに最大で110億ドル(約1兆2200億円)を投資する。今後の新製品開発はトラックや多目的スポーツ車(SUV)を軸にする方針。20年には主力のピックアップトラックでハイブリッド版を投入するほか、SUV型のEVも発売する。従来の20年までの投資計画規模は45億ドルで、2.4倍だ。新技術をテコに、米国全体で自動車産業を再興しようとの機運が高まっているようだ。米運輸長官のイレーン・チャオ氏は14日、「技術革新を促すよう政策を仕分けし、米国の競争力を高めて雇用を生み出す」と積極的に新技術の利用促進を進める方針を強調した。例に挙げたのが米ゼネラル・モーターズ(GM)が申請したハンドル、ペダルなしの自動運転車の導入だ。GMのメアリー・バーラCEOは「完全自動運転への大きな一歩」と自動運転やEVへの熱意をアピールした。自動運転に関する米国の政策方針として、チャオ運輸長官はトップダウン式に特定の技術を推すことはせず「技術中立的」に官民連携を進めることを強調した。安全性試験の仕組みや安全に関わるデータベースの確立で連携していく。企業の取り組みが依然、カギを握ることになり、GMやフォードが新戦略を打ち出すのもこのためだ。フォードの発表会では創業家のビル・フォード会長が「10年前は死にかけていたがデトロイトは復活した」と宣言していた。確かに都市の中心部は再投資され、きれいな公園が整備され、ニューヨークにあるようなこじゃれたレストランが増えており、復権を印象づけていた。自動運転などを巡っては、米グーグルなどIT(情報技術)大手も交えた異業種との競争にも一歩も引かない構えを見せたといえる。米国重視はビッグスリーだけではない。独フォルクスワーゲン(VW)も3年間で、北米に33億ドル(約3660億円)以上を投資することを表明、積極的な北米展開をアピールした。ショー開催期間中に披露される各社の車種は、米国で人気の大型車が中心になる見通し。一般公開は20日からで、ここ数年は80万人規模が来場する。

*4-1-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190113&ng=DGKKZO39971690S9A110C1EA5000(日経新聞 2019年1月13日)米GM、キャデラックにEV 中国に的
 米自動車大手ゼネラル・モーターズ(GM)は11日、高級車ブランド「キャデラック」で電気自動車(EV)を発売する計画を明らかにした。中国などのEV需要の高まりを受け、高級EVを品ぞろえに加える。「シボレー」「ビュイック」の両ブランドは販売車種を絞り込み、グローバルで設計や部品を共通化して収益性を高める。米ニューヨークで開いた投資家向け説明会で、メアリー・バーラ最高経営責任者(CEO)が明らかにした。同社のEVは「シボレー・ボルト」が主力だが、EVでも最大市場の中国でのシェア拡大に向け、中国の富裕層に人気が高い「キャデラック」ブランドでEVを追加する。GMは発売時期や車種を明らかにしていないが、開発中の新型充電池を搭載し、フル充電で300マイル(約480キロメートル)以上の走行距離をめざしているとみられる。高級EVの市場では米テスラなどがライバルとなる。中国の新車市場は18年に28年ぶりに前年実績を下回ったもようだ。GMの販売も前年割れとなったが、「キャデラック」ブランドの販売は20万台超と17%増加した。バーラCEOは「足元の市況は厳しいが、長期的には中国はまだ成長が見込める」とコメント。19年は新型車とモデル改良を含めて過去最多の20車種以上を中国に投入する。昨年11月に北米で完成車とエンジンの計5工場の生産を休止すると発表した。トランプ米大統領は雇用減につながるとして同社を批判しているが、バーラCEOは「規制や通商の変化など課題は多く、経済環境が堅調なうちに手を打っておく必要がある」と改めてリストラの必要性を強調した。北米の生産再編と合わせて「シボレー」「ビュイック」ブランドの車種を絞り込む。20年前半までに中国やブラジル、メキシコなどの新興国向けに設計と部品を共通化した小型車や多目的スポーツ車など8車種を投入し、地域ごとに異なる既存の車種と置き換える。

*4-2-1:http://qbiz.jp/article/147084/1/ (西日本新聞 2019年1月12日) JXTG、洋上風力発電に意欲 石油最大手が再生可能エネ強化
 石油元売り最大手JXTGホールディングスの事業会社、JXTGエネルギーの大田勝幸社長(60)は12日までに共同通信のインタビューに応じ、洋上風力発電の開発を国内外で検討する考えを示した。「最初は単独でできないので、他社との提携を考えたい」と話した。地球温暖化問題で事業環境の激変が予想されており、再生可能エネルギーを強化する。「投資規模は言える段階ではないが、再生エネはやらなくてはいけない」と語り、ガソリンなどの石油製品に依存しない経営体制をつくることを目指す。一方、今年4月に出光興産と昭和シェル石油が経営統合することが決まり、石油元売りは再編で先行したJXTGとの2強体制になる。「規模で勝るJXTGは統合効果も大きい。出光・昭和シェルの2、3歩先を行く」と話した。JXTGは今年、給油所のブランドを「ENEOS(エネオス)」に統一し、サービス向上に力を入れる。ブランドを統合後も当面併存させる出光・昭和シェルと比べ、強みだと指摘した。米国は対イラン制裁で、原油禁輸に関し日本などを一時的に適用除外としたが、今春に復活する見通しだ。イラン原油について「採算性の魅力がある。条件が整えば輸入を継続したい」と述べた。

*4-2-2:http://qbiz.jp/article/147088/1/ (西日本新聞 2019年1月13日) 「黒潮発電」本格実験へ IHIが離島向け 鹿児島沖で今夏から
 IHIは今年夏から、黒潮の流れを利用した「海流発電」の実用化に向けた本格的な実験を鹿児島県・トカラ列島沖で実施する。出力100キロワットの装置を海中に設置し、2020年まで1年間実験する。実用化の目標は20年代初め。将来的には出力2千キロワット級に大型化し、コスト削減を図る。離島向けなどに新たな再生可能エネルギーとして売り込みたい考えだ。海流発電は、九州から本州の太平洋側を南から北へ向かう黒潮の流れを発電に生かそうという日本独自のアイデア。黒潮の流れは天候や時間帯に左右されないことから、太陽光や風力などと異なり、安定した電力が得られる自然エネルギーとして注目されている。同社が開発した実験用の発電装置は三つの円筒状の構造物を組み合わせたもので、長さと幅は約20メートル。円筒二つの先端に取り付けた直径11メートルの羽根が回って発電する。海底の土台(シンカー)とワイヤでつながれた装置は、たこ揚げのように海中に浮いて発電。装置は水面下約50メートルにあり、上を船舶が通過しても支障はない。羽根は風力発電のようにゆっくり回るため、海洋生物にも影響はないという。同社は17年夏にもトカラ列島沖で7日間、この装置で実験しており、今回は1年間かけて台風などの影響も調べ、実用化に向けた課題を探る。今回の実験が成功すれば、実用化に向け前進。将来的には、装置を複数並べて発電することも可能という。現在の発電コスト目標はディーゼル発電と同程度の1キロワット時当たり40円ほどだが、「大規模太陽光発電に匹敵する20円以下が将来目標」(機械技術開発部海洋技術グループの長屋茂樹部長)。ディーゼル発電を使っている離島などに売り込んでいきたいという。

*4-2-3:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190113&ng=DGKKZO39909860R10C19A1MY1000 (日経新聞 2019年1月13日) 水素を生かす(中)駅でエネルギー供給 災害時も
 JR東日本の武蔵溝ノ口駅(川崎市)は構内で使う電気や温水の一部を、自立した水素エネルギー供給システムでまかなっている。災害時にライフラインが寸断されても、一時的な滞在場所として利用可能だ。上り線のホームには東芝が開発したシステムが3基並んでいる。ホームの屋根に敷いた太陽光パネルで発電し、貯水タンクの水を分解して水素を作る。水素はタンクに貯蔵するほか燃料電池で発電する。照明だけでなく、夏はミストシャワーを動かす電力になる。温水も供給できるため、冬はベンチを温める。腰掛けると、じわりと暖かい。水素の製造、貯蔵、利用を一貫してできるのが特徴だ。2017年にJR東日本の駅で初めて導入した。横幅6メートル、高さと奥行きが2.5メートルのコンテナ型で、船やトラックで運べる。国内では横浜市や宮城県など各地で設置が始まった。海外での利用にも期待を寄せる。東芝エネルギーシステムズの中川隆史担当部長は「水素を身近なエネルギーとして役立てていきたい」と話す。

*4-3:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190113&ng=DGKKZO39975400S9A110C1MM8000 (日経新聞 2019年1月13日) 風力発電で全面入札制 経産省、21年度から 発電コスト下げ促す
 経済産業省は再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度(FIT)で2021年度以降、安い電力だけを買う「入札制」を風力発電に全面的に導入する方針だ。欧州などに比べ発電コストが高止まりしているため、事業者に低コスト化を促し競争力を高める。太陽光でも入札制の範囲を拡大する方針で、再生エネ全体で育成から競争への比重を高める。17日に開く有識者会議で風力発電について「早期の入札制導入を検討する」との方針を示す。国が募集量と買い取り価格の上限を決めた上で売電の希望価格を募る方式。安い電力を示す事業者から順番に買い取り契約をするため、値下げ圧力がかかる。入札による買い取り価格はFITの固定価格買い取り同様、電気代に上乗せされる。19年度の買い取り価格は陸上風力が1キロワット時あたり19円で、洋上風力は同36円。洋上風力には一部案件で入札制を実施する方向になっていた。FIT法の見直しを予定している21年度以降には固定買い取り制度ではなく、入札制への全面切り替えを原則とする。背景にあるのは風力発電コストの高さだ。直近では1キロワット時あたり13.9円と世界平均(8.8円)の約1.6倍になっている。欧州は入札制を広く導入し、発電事業者に競争を促したことで発電コストを抑えた。経産省は30年に発電コストを世界平均並みの8~9円にする目標を掲げるが、現状のままでは達成が厳しいとみられる。高額買い取りが事業者のコスト削減を遅らせていた面もあるとみて、入札制で努力を促す。再生エネでは太陽光でも入札制の対象が拡大されるなど競争路線が加速している。現状の再生エネ比率は16%でこのうち風力は0.6%にとどまる。政府は再生エネを「主力電源」と位置づけ、30年度に再生エネを22~24%まで比率を高める方針。風力を1.7%にする目標を掲げている。

<エネルギーの自給率と長期戦略について>
PS(2019/1/18追加): *5-1に、「①日立が再エネ価格の急落で英国での原発建設計画を凍結する」「②再エネ価格の急落は想定外だった」「③日立は2012年11月、英ホライズン・ニュークリア・パワーを買収して英国事業に乗り出していた」「④原発新設を手がけていないと保守や廃炉などの技術も保てない」「⑤ビッグデータ分析やAIの活用などは膨大な電力を消費するため、再エネだけではカバーできない」「⑥日本は長期を見通す議論が不足している」「⑦原発をエネルギー政策のなかでどう位置づけていくかの将来像が固まらないとビジネスとしての原発は存続できない」と書かれている。しかし、①②③⑥については、簡単な装置で発電でき、燃料を使わず、公害の少ない再エネ価格の急落を想定できず、フクイチ後に英ホライズンを買収したことこそ(英国は、これで十分メリットがあった)、経営者として長期を見通す能力に欠けていたのである。また、④⑤は言い訳に過ぎず、⑦のビジネスとしての原発なら国民負担による政府補助金に頼ることなく、事故時には製造物責任法に基づく損害賠償を行い、最終処分まで含めてビジネスベースに乗せるべきであり、従って原発はビジネスにはならないということだ。
 なお、*5-2のように、九電は、費用対効果が十分でないとの判断から、出力559,000kwの玄海原発2号機を廃炉にする見通しになったそうだ。リスクまで考慮すると、再稼働している玄海3、4号機、川内1、2号機も早く終わり、原発よりずっと簡単な装置で発電でき、燃料を使わず、公害の少ない再エネに移行するのが、長期的にはより安価になるだろう。

*5-1:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO40153500X10C19A1TJ3000/?nf=1 (日経新聞 2019/1/17) 日立が英計画の凍結発表 再生エネ台頭、原発に誤算
 日立製作所が原子力発電事業の存続をかけて取り組んできた英国での原発建設計画を凍結する。再生可能エネルギーによる電力価格の急落など、当時は想定していなかった誤算が重なり苦渋の決断を強いられた。原発事業をリスクとみる投資マネーの動きも圧力になった。東原敏昭社長兼最高経営責任者(CEO)は17日の記者会見で、凍結理由を「経済合理性の観点からすると、諸条件の合意には想定以上の時間を要すると判断した」と説明した。英国政府との協議は今後も続ける。一方的な打ち切りにすると「英国政府に対し巨額の違約金が発生する可能性がある」(交渉関係者)との懸念もあったようだ。日立は2012年11月、英ホライズン・ニュークリア・パワーを買収して英国事業に乗り出した。発表当時、原発担当役員は「原発を建設する場所がどうしても欲しかった」と語った。原発新設を手がけていないと保守や廃炉などの技術も保てない――。11年の東日本大震災時に起きた原発事故で逆風が吹くなか、望みをつなぐ一手だった。英国には原発でつくった電気を市場価格より高く買い取る制度があり、採算を確保しやすいとの判断もあった。だが、事業環境は大きく変わった。太陽光や風力といった再生エネの台頭だ。技術革新や普及に伴う規模の効果により再エネによる発電コストは年々低下。英国で実施された洋上風力発電の入札では、落札価格が17年までの2年で半分になった。原発の電気を高く買い取るための実質的な国民負担は年々重くなり、政府は修正に動いた。英政府が日立のプロジェクトに対し内々に示した買い取り価格は1千キロワット時あたり70ポンド(約9800円)台前半。先行する他の原発に比べ約2割低かったという。この水準では採算が狂う。危機感を募らせた日立の中西宏明会長は18年5月、英メイ首相と会談し、他の部分での支援を求めた。英政府が用意したのが資金調達コストを下げる仕組みだ。総事業費3兆円のうち2兆円超を英国側が融資するというものだ。残りの資金は日立、日本企業、英国政府・企業がそれぞれ3分の1ずつ出資することにした。トップ会談でつかんだ果実。これを第2の誤算が打ち消した。東京電力ホールディングスなど国内電力の出資拒否だ。日本企業からの出資者集めは日本政府の役割だったが、説得は難航した。特に、日立がつくる沸騰水型軽水炉(BWR)の使い手である東電が動かなかった。「事故を起こし再稼働も進まない中では国民の理解が得られない」。他の電力も見送りに傾く。投資家の目も厳しくなった。「原発のように先行きが不透明な事業を持つ企業の株を中長期で持ちたいとは思わない」(国内投資顧問幹部)。日立も意識しており、ある首脳は昨夏「(国内では原発再稼働が進まず)膨大な資産が何の収入も生んでいない。投資家からみたらそれだけでバツだ」とこぼした。11年に原発事業からの撤退を決めたライバル、独シーメンスと比べ、日立の時価総額は3分の1にとどまってきた。国内企業の中では構造改革に先行したにもかかわらず、株価は日経平均にも見劣りする。英国での計画凍結が伝わった今月11日は前日比9%上昇した。原発事業そのものにも資金は集まりにくくなっている。「ホライズンへの出資を希望していた企業やファンドも、再生エネが台頭するにつれ離れていった」(日立幹部)。ただ、ビッグデータ分析や人工知能(AI)の活用など、今後の産業の進化を支える技術の多くは膨大な電力を消費する。東原社長は17日の記者会見で「エネルギーの安定供給を考えると、再生エネだけでカバーはできない」と強調した。原発なしで電力需要をまかない続けられるのかは明確でない。1月7日。経団連会長の立場で、政府への要望を聞かれた中西氏はこう答えた。「日本は本当に大丈夫か、長期を見通す議論が不足している。エネルギー問題はその典型だが、方向付けに対する議論をどの政治家もやらない」。原発をエネルギー政策のなかでどう位置づけていくか。将来像が固まらないと、ビジネスとしての原発は存続しえない。

*5-2:http://qbiz.jp/article/147063/1/ (西日本新聞 2019年1月12日) 玄海原発2号機廃炉へ 稼働38年、安全対策費多額に  九電、年度内にも結論
 九州電力が玄海原発2号機(佐賀県玄海町、出力55万9千キロワット)の再稼働を断念し、廃炉にする見通しになったことが分かった。廃炉となった玄海1号機と同様、安全対策工事などで多額の費用がかかり、投資効果が十分に得られないとの判断に傾いたとみられる。早ければ2018年度内にも最終判断する。玄海2号機は1981年3月に稼働。2011年1月に定期点検に入って以来、運転を停止している。原則40年とされる運転期限は21年3月で、再稼働し、運転期間を延長するには、1年前の20年3月までに国に申請するルールがある。運転延長を目指す場合、申請前に約半年に及ぶ「特別点検」を実施する必要もあり、実際には19年中の存廃決定を迫られている。運転延長には東京電力福島第1原発事故後の新規制基準に適合させるため、テロに備えた特定重大事故等対処施設(特重施設)などの整備が必要。九電は再稼働した玄海3、4号機用に設ける特重施設との共用は距離的に難しいと判断、単独での建設も用地確保が困難とみている。加えてケーブルの難燃化対応なども必要で、安全対策にかかる費用の総額は「廃炉にした1号機とあまり変わらない可能性がある」(幹部)という。九電が再稼働した原発4基に投じた安全対策費は計9千億円超。2号機の安全対策工事の期間も見通せず、20年間の運転延長では経済性が十分に担保できないと判断したもようだ。一方、再稼働済みの玄海3、4号機の出力は各118万キロワット、川内原発1、2号機(鹿児島県薩摩川内市)は各89万キロワットある。さらに石炭火力で100万キロワットの松浦発電所2号機(長崎県松浦市)が今年稼働予定、九州の太陽光発電の総出力は800万キロワットを超えるなど、供給面では、出力が小さい玄海2号機を再稼働する意義は薄れている。廃炉費用364億円が見込まれる玄海1号機と同時期に廃炉を進めることで、効率的に作業ができる利点も考慮したとみられる。全国では福島第1原発事故後に7原発10基(福島第1を含まず)が廃炉を決め、老朽原発を中心に選別の動きが進んでいる。

<思考における基礎知識の重要性>
PS(2019年1月19日追加):*6-1に、厚労省は、「(外国人材の受け入れ拡大による効果については考慮していないが)ゼロ成長で高齢者や女性の就労が進まない場合には、2040年の就業者数は2017年に比べて1285万人減る」という推計を出したそうで、これを解決するには、労働参加率を上げて量を増やすだけでなく、労働力の質を上げることも重要だ。そのため、*6-2のように、①幼児教育・保育の無償化で、子どもが早くから教育を受けられるようにする ②高等教育の負担を軽減する ③保育所や学童保育の整備で女性の就労を容易にする 等が必要だ。
 しかし、私は、質の確保という意味から、認可外保育施設を無償化対象として永続させることには賛成できない。そのかわり、*6-3のように、学童保育や保育所に待機児童が多いため、就学年齢を3歳からとし、0~2歳は保育、3歳以上は小学校と学童保育という分け方をして、教育の質も同時に充実させるのがよいと考える。
 なお、*6-4のように、厚労省は「毎月勤労統計」を2004年~2018年に東京都で1/3しか実施せず、これが法律違反だということで大騒ぎになっているが、無作為抽出すれば全数調査しなくても正確な統計にすることはできるため、2018年に東京都分を3倍にしたのは一概に誤っているとは言えない。また、統計上の平均値を基にして、個人の失業(又は育児・介護休業)給付額を決めるのは論理的でなく、保険料掛金に反映される失業・育児・介護休業直前の個人の給与を基にして決めるべきである。現在はコンピューター時代で、個人を管理することは容易で必要不可欠でもあるため、個人の直前の給与や掛金の払込履歴を基にすべきだ。ちなみに、日本は失業率が低いので失業保険にゆとりがあり、育児・介護休業する場合の給付も包含できるわけだ。

*6-1:http://qbiz.jp/article/147116/1/ (西日本新聞 2019年1月15日) 就業者数が1285万人減 2040年、初の推計
 厚生労働省は15日、雇用政策研究会(座長・樋口美雄労働政策研究・研修機構理事長)を開き、経済成長がない「ゼロ成長」で高齢者や女性の就労が進まない場合、2040年の就業者数は17年に比べて1285万人減るとの推計を示した。研究会は雇用促進策や人工知能(AI)などの技術を活用できる環境の整備を求めている。高齢者数がほぼピークを迎える40年時点の推計を出すのは初めて。4月からの新たな外国人材の受け入れ拡大による効果については「制度が始まっていない」として考慮していない。一方で、日本語教育の充実や生活者としての外国人支援の推進が必要と指摘した。推計では、25年と40年の各時点の就業者数を算出。17年の就業者数が6530万人だったのに対し、25年は448万人減の6082万人になり、40年は5245万人にまで落ち込む見通しだ。17年と40年を比べると、男性711万人減、女性575万人減と、男性の減少幅が大きい。厚労省は「人口減少が原因」としている。産業別では、17年から40年にかけて最も減少するのは、287万人減が見込まれる卸売・小売業だった。221万人減の鉱業・建設業と206万人減の製造業が続く。他が減少する中、医療・福祉分野だけは103万人増加する見通しだ。厚労省は、女性活躍や高齢者雇用政策が一定程度の効果を上げた場合の就業者数も試算。25年は17年比187万人減の6343万人、40年は同比886万人減の5644万人だった。

*6-2:https://digital.asahi.com/articles/DA3S13796591.html (朝日新聞 2018年12月4日) 「市町村の負担、1000億円減」 幼保無償化、政府案軸に調整
 来年10月に始まる幼児教育・保育の無償化で新たに必要となる財源について、政府は3日、年間8千億円のうち市町村負担を当初案より約1千億円少ない約3千億円とする案を地方側に示した。地方側も歩み寄る姿勢を示し、この案を軸に調整が進む見通しとなった。ただ、政府は認可外保育施設を無償化対象とする方針を変えておらず、保育の質の確保は課題のままだ。宮腰光寛少子化対策担当相ら関係4閣僚と、全国知事会、全国市長会、全国町村会の各会長が無償化について協議するのは、11月21日に続いて2回目。国は、新たに公費負担が生じる認可外施設などについて、当初案で3分の1としていた国の負担を2分の1に引き上げる譲歩案を示した。地方側は「評価する」と表明したうえで、持ち帰って検討するとした。安倍政権は昨年秋の衆院選の目玉公約として無償化を打ち出したが、負担割合については十分な調整を欠いた。昨年12月の「国と地方の協議の場」で、地方6団体が「国の責任で、地方負担分も含めた安定財源を確保」と主張したことなどから、「地方も負担に理解を示している」(内閣府幹部)と解釈したからだ。政府は今年11月になって、地方も消費税率引き上げによる増収分から無償化の財源を出すのは当然だとして当初案を示したが、地方側は「負担割合に関する説明は一切なかった」「国が全額負担するべきだ」と猛反発、混乱が広がった。保育の質の確保も課題となった。政府は、認可保育園に入れずに認可外施設を利用する家庭への対応として認可外施設も無償化の対象とする方針だが、指導監督基準を満たしていない認可外施設も多い。地方側は「劣悪な施設に対して公費を投入することは耐え難い」と訴えた。根本匠厚生労働相は3日の協議で国と地方の協議の場を新設し、無償化の対象とする認可外施設の範囲などについて議論する方針を説明した。ただ、譲歩案には保育の質の確保に向けた対応策の詳細は盛り込まれていない。
■高等教育の負担軽減、負担割合了承
 低所得者世帯の子どもが大学などへ進学する際の負担軽減策は、国と地方の負担割合がおおむね了承された。授業料や入学金の減免は(1)国立・私立の大学や短大などは国が全額(2)公立の大学・短大などは設置する都道府県・市町村が全額(3)私立専門学校は、国と都道府県が半分ずつの割合とし、給付型奨学金は国が全額を負担する。ただ、知事会からは専門学校が集中する大都市圏への財政的な配慮を求められ、今後関係する省庁が対応を検討する。主な支援対象は住民税非課税世帯(年収270万円未満)で、国公立大の学生は国立大の授業料標準額(約54万円)を全額免除し、私立大生は約71万円を減額する。給付型奨学金は教科書代や自宅外生の家賃なども対象になる。

*6-3:http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2018122801001178.html (東京新聞 2018年12月28日) 学童保育、1万7千人入れず 小学校高学年で増加、厚労省公表
 厚生労働省は28日、共働きやひとり親家庭の小学生を預かる放課後児童クラブ(学童保育)について、利用を希望しても定員超過などで入れない待機児童は、今年5月時点で1万7279人だったと公表した。1~3年生の低学年で減少する一方、4~6年生の高学年は増加。全体では前年より109人増えた。子育てをしながら働く女性が増えているため利用希望者も年々拡大。政府は2018年度中に待機児童を解消する計画だったが、需要の高まりを受けて達成時期を21年度末へ先送りした。9月に公表した新たな計画では計152万人分の利用枠を確保することを目標に掲げている。

*6-4:https://digital.asahi.com/articles/DA3S13853478.html (朝日新聞 2019年1月18日) 過少給付、延べ2015万人に 統計不正、厚労次官ら処分へ
 厚生労働省の「毎月勤労統計」をめぐる問題で、同統計をもとに給付水準が決まる雇用保険や労災保険、船員保険で本来より少なく給付されていた人が、延べ約2015万人になることが分かった。当初公表の人数から約42万人増える。厚労省は11日の発表で計約1973万人としていたが、精査した結果、失業手当や育児休業給付などを含む雇用保険の対象者が約42万人上積みされたという。過少給付は雇用調整助成金などの助成金30万件でもあった。追加給付に関する費用は、事務費やシステム改修費などの約200億円を含めて約800億円に上る。政府は、問題が発覚する前の昨年12月21日に閣議決定した2019年度予算案を見直し、この問題の対応に必要な予算を反映させた予算案を18日に閣議決定し直す予定。こうした対応は極めて異例だ。一方、根本匠厚労相は同省の鈴木俊彦事務次官らを処分する方向で検討に入った。同省関係者によると、省内に設置された特別監察委員会の検証結果を踏まえて、具体的な処分内容を決めるという。この問題では、04年からの不正な抽出調査の無断実施や、本来の全数調査に近づけるために昨年1月に始まったデータ補正が組織的に行われ、隠蔽(いんぺい)された疑いが出ている。
■閉会中審査、24日に開催
 衆院厚労委員会は17日、24日に閉会中審査を行うことを決めた。審議時間は、与野党の同委員会の筆頭理事の協議で4時間で合意した。

PS(2019年1月20、26、30日追加): *7-1のように、改正入管難民法成立を受けた外国人労働者受入拡大制度で、①大都市圏に外国人が集中しない措置を講じる ②2019年4月からの5年間累計で最大34万5150人を受け入れる ③農漁業は派遣の雇用形態も認める ④外国人への支援に関する総合的対応策に各種行政サービスの多言語化を推進する ⑤報酬は日本人と同等以上にする 等が定められ、これを受けて、ジャガイモやビワの生産で屈指の長崎県が、深刻な人手不足から外国人労働者を雇う「派遣会社」を設立して県内の農家や農業生産法人に強力な“助っ人”の派遣を始める計画だそうだ。しかし、このようなニーズのある地域は、九州・沖縄だけでなく、中国・四国・中部・北陸・東北・北海道にも多いと思われる。
 一方で、*7-3のように、ホンジュラスなど母国での暴力やギャング犯罪を逃れ、より良い生活を送る機会を得ようとして、2018年10月半ばから、幼い子供のいる家族連れで数千人が中米を北上しメキシコ経由で米国に入ろうとしているそうだ。いくら移民に寛容なアメリカでも、そう次々と移民の入国を認めると失業者が増えて困るだろうが、ホンジュラス(元スペイン領)は、*7-4のように、農業・牧畜・林業が盛んで、メロン・コーヒー・高原野菜・果樹・トウモロコシ・バナナ・柑橘類・サトウキビ・アブラヤシなどを生産している国であるため、日本で農業をやりたい人を募集すると、日本の農業における人手不足が解消するとともに、これらの農業生産に慣れた人を雇うこともできるのではないだろうか。なお、*7-5のように、国土交通省が2018年4月から「全国版空き家・空き地バンク」の本格運用を始めており、就農希望者向けには「農地付き空き家」も検索できるそうだ。これには、各地域の防災・生活支援情報・小学校区も表示できるとのことで、移住の準備はかなり整っていると言える。
 また、耕作放棄された荒廃農地が2017年に28万3000ヘクタールに上り、*7-6のように、再生には受け手の確保が課題というもったいない状況だが、世界には、住む場所を追われて難民となっている人も多いため、これを結び付けるのはよいと思われる。また、日本は稲作・畑作を前提としてモノを考えるため、抜根や区画整理を必要不可欠とするが、放牧・木の実・その他の栽培を選択肢に加えれば、必要な整備は変わる。そのため、最も風土を活かした経済性に富む栽培について、輸出や外国人労働力を含めた広い視野で考え直し、地域が産学連携して賢い基本計画を作った上で、国に支援を求めるのがよいと思われる。
 2019年1月30日、*7-7のように、日本農業新聞に「地方創生の地方版総合戦略の77%が都会のコンサルティング会社などに外部委託して策定されていたことが専門機関の調査で明らかになった」と書かれている。私も、監査法人在籍中にそういう調査をしたことがあるのでわかるのだが、東京のコンサルティング会社は、日本や海外の類似市町村の例を速やかに調査し、自治体や地域の人から情報を集めて文章に纏めるのはうまいが、その地域の長所を使った今後の発展戦略を本当に企画できるわけではない。そのため、地方自治体が、通常業務(ITによる効率化が容易)にかまけて長期基本計画の策定を重い負担だと考えるのは職務放棄だ。しかし、過去にコンサルティング会社が作った長期基本計画があれば、それをたたき台にして新しく必要な調査を加え、新計画を策定することが容易であるため、それは無駄ではなかったと考える。なお、「自発性を促す仕組みを・・」という意見もあるようだが、子どもではないので、地方自治体が中心となって地域の住民や産業界の意見を聞きながら基本計画を作るのは当然だろう。


                 2018.10.26BBC

*7-1:http://qbiz.jp/article/145771/1/ (西日本新聞 2018年12月14日) 大都市圏集中防止を明記 農業、漁業は派遣認める 外国人就労拡大の全容判明
 改正入管難民法などの成立を受けた外国人労働者受け入れ拡大の新制度の全容が13日、政府関係者への取材で分かった。制度の方向性を定める基本方針には、大都市圏に外国人が集中しないような措置を講じると明記。分野別運用方針では、国会答弁と同じく来年4月から5年間の累計で最大34万5150人を受け入れ、農業と漁業は派遣の雇用形態も認めるとした。外国人への支援内容を盛り込む総合的対応策には各種行政サービスの多言語化推進を記載した。政府は25日にも基本方針を閣議決定し、分野別運用方針なども年内に定める。基本方針によると、外国人が大都市圏などに過度に集中しないよう「必要な措置を講ずるよう努め」、失踪者が出ないよう関係機関が連携する。人手不足で受け入れが必要なことを客観的かつ具体的に示すよう関係省庁に求め、分野別運用方針に書き込む受け入れ見込み数を、大きな経済情勢の変化がない限り、上限として運用する。報酬額は日本人と同等以上を求め、新在留資格「特定技能1号」の外国人への支援内容として、出入国時の送迎や住宅確保、生活オリエンテーション実施、日本語習得支援、行政手続きの情報提供などを挙げた。分野別運用方針では、雇用形態はフルタイムで原則直接雇用だが、季節で仕事量が変わる農業と漁業は派遣も可能とした。業種ごとに主な業務内容も示し、介護は訪問系サービスを対象外とした。同一業種内や業務内容が似ていれば転職も認める。総合的対応策では、行政や生活の相談に多言語で応じる一元的窓口の創設を支援すると規定。多言語化推進の項目としては医療、災害情報を国から自治体へ伝える全国瞬時警報システム(Jアラート)、110番、運転免許試験などを示した。新制度に関する省令の骨子案も判明。受け入れる外国人は18歳以上とし、一時帰国を希望した際は休暇を与え、本人が帰国旅費を捻出できない場合は負担することを受け入れ先に義務付ける。
●「左官」「接客」など業務記載 運用方針  
 外国人労働者の受け入れ対象業種や見込み数を記載する分野別運用方針は、新制度の根幹部分を担う。概要案は11月14日に政府が提示したものと同じ、14業種を対象に5年で最大34万5150人という内容で、「精査中」と注釈を付けた。業種ごとに、新在留資格「特定技能1号」取得に必要な試験内容や雇用形態、建設業なら「型枠」「左官」といった主な業務も記載した。資格取得に必要な技能試験は、業種を所管する各省庁が新設する。いずれの業種も日本語能力判定テスト(仮称)か現行の日本語能力試験の通過が求められる。政府は当面、ベトナムなどアジア8カ国で判定テストの受験ができるようにし、利用状況を踏まえて受験地拡大を検討。介護業はさらに専門的な介護日本語評価試験(仮称)も受ける必要がある。従事する主な業務も示し、造船・舶用工業では「溶接」「塗装」、宿泊業では「フロント」「接客」などを挙げた。介護業は入浴や食事を助ける「身体介護」などで、「訪問系サービスは対象外」と注記された。原則直接雇用だが、農業と漁業は、季節で仕事量が大きく変わるため、派遣も可能。「風俗営業関連の事業所に該当しない」(外食業)など、受け入れ先に特に課す条件も明記した。
*外国人の就労拡大 少子高齢化などを背景とした人手不足に対処するため、入管難民法を改正し、在留資格「特定技能1号」「同2号」を新設した。一定技能が必要な業務に就く1号は、在留期限が通算5年で家族帯同を認めない。熟練技能が必要な業務に就く2号は期限が更新でき、配偶者と子どもの帯同も可能。資格は生活に支障がない程度の日本語能力が条件で、各業種を所管する省庁の試験を経て取得するほか、技能実習生からの移行も多く見込んでいる。

*7-2:http://qbiz.jp/article/147376/1/ (西日本新聞 2019年1月19日) 長崎県、農業に外国人材活用 派遣会社設立へ 元技能実習生の確保目指す
 ジャガイモやビワの生産で屈指の長崎県が深刻な人手不足に悩まされている。高齢化も著しく、重労働の現場は「技能実習生」抜きには成り立たないのが実情。県は近く外国人労働者を雇う「派遣会社」を設立、農繁期を迎える5月をめどに、県内の農家や農業生産法人に強力な“助っ人”の派遣を始める計画だ。県によると、派遣会社は県の出資団体や民間企業が共同で出資。外国人は派遣会社と契約する仕組みで、賃金や待遇は、その派遣会社に所属する日本人労働者と同一にする。重労働現場での外国人材活用を認める改正入管難民法(4月施行)は、技能実習を3年間経験した外国人に対し、農漁業や介護など14業種での就労を認める方針。期間は5年間。派遣会社は同法に該当する「元技能実習生」を労働力として確保、契約を目指す。県が2017年11月に県内の全7農協と複数の法人に「不足する労働力」を確かめたところ、年間を通じて約300人が不足する、との回答が寄せられた。そのため派遣会社の雇用数は発足当初50人を目標とし、受け入れ態勢を整えながら3年で300人にする。県は外国人材の住居について、受け入れる法人の社員寮や農家での住み込みを想定。外国人が地域社会にうまくなじむには住民の理解が不可欠で、県農林部は「地域に連絡協議会を設置してもらい交流会を開き、外国人が安心して暮らせるようにする」としている。
●現行制度では課題多く 
 県が設立する派遣会社で雇用予定の「技能実習生」は、低賃金や長時間労働が問題になってきた。派遣会社ではこうした問題が起きぬよう県は指導を強める。1993年に始まった現行の技能実習制度では、実習生は国内の「監理団体」が受け入れ、工場や農家に派遣。実習生は派遣先と雇用契約を結ぶ仕組みで、その報酬は同じ場所で働く日本人労働者と「同等以上」(技能実習法)との定めがある。団体は、派遣先を指導する責任を負う。しかし、外国人労働の受け入れを巡る国会審議では、最低賃金以下や長時間の労働を強いられ、失踪する問題が顕在化。出入国管理白書によると、2017年に失踪した実習生は全国で7089人に上り、13年(3566人)に比べてほぼ倍増した。県が県内の監理団体に行った調査では、17年12月から18年11月の1年間に15人が失踪したという。問題の根底には、実習生を「安価な労働力」とみなす一部受け入れ現場の意識の低さがある。白書では、17年に実習生を受け入れた全国213機関で発覚した不正行為は計299件。賃金不払いが139件で最も多く、本人の同意がない契約書を作るなどが73件、労働関係法令違反が24件と続く。一方、技能実習生がより良い賃金や待遇を求めて都会に出て行くケースもあり、失踪の一因にもなっている。政府は法務省入国管理局を「出入国在留管理庁」に格上げし、受け入れ先の監督、外国人労働者の指導や支援を強化。県設立の派遣会社も、同庁の指導を受けながらの運営となる見通しだ。

*7-3:https://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-45987807 (BBC 2018年10月26日) 中米の「移民キャラバン」 数千人が米国目指し川のように北上中
 10月半ばから数千人が中米を北上し、メキシコ経由で米国に入ろうと集団で移動している。その多くが幼い子供のいる家族連れで、ホンジュラスなど母国での暴力やギャング犯罪を逃れ、より良い生活を送る機会を得ようとしている。国連推計にいると、この「移民キャラバン」の人数は約1000人から7000人以上に膨れ上がった。「人の川」のようだと言う人もいる。報道写真家エンカルニ・ピンダード氏が、グアテマラから国境を越えてメキシコに入る人たちの様子を記録した。「移民キャラバン」は10月13日、犯罪の多発するホンジュラスのサンペドロスーラを出発した。そこからヌエベ・オコテペケまで歩き、グアテマラに入った。しかし、移民に対する強硬姿勢を掲げて当選したドナルド・トランプ米大統領は、11月6日の中間選挙を目前に、移民キャラバンの米国入国は認めないと宣言。メキシコとの国境に米陸軍を出動させ、メキシコとの国境を閉鎖する方針という。「キャラバンを見るたびに、あるいはこの国に違法に来る、あるいは違法に来ようとしている人たちを見るたびに、民主党のせいだと思い出すように。この国のどうしようもない移民法を変えるための票を、民主党がくれないんだ!」とトランプ氏はツイートした。別のツイートでは、移民の集団の中には「犯罪者や、正体不明の中東の人間が混ざっている」と、具体的な証拠を提示しないまま主張した。ピンダード氏撮影の写真では、移民が掲げたプラカードに「移民は犯罪じゃない。国境なしで自由を」と書かれている。集団はグアテマラを通過して19日から20日にかけて、メキシコ国境にたどり着き、両国を隔てるスチアテ川にかかる橋を目指した。そのほとんどはホンジュラス人で、バックパックにホンジュラスの旗をくくりつけていた人もいた。橋の反対側ではメキシコの連邦警察や軍の数百人が待ち受けていた。メキシコ当局はこれに先立ち、適切な旅券や査証を持たない人は入国を認めない方針を示していた。入国審査官は押しよせる移民の書類を1人ずつ確認したため、19日夜までに入国が認められたのはわずか300人で、5000人が橋で待たされ続けた。6日にわたり歩き続けた移民の中には、暑さと疲労のため、国境の橋で気絶する人もいた。橋のグアテマラ側で待つ人たちのいら立ちがつのり、投石する人も出た。警察は催涙ガスでこれに応えた。続いた混乱のなか、数人が負傷し、数人の子供が親とはぐれてしまった。この父親と息子は催涙ガスを浴びながら、それでもお互いを離さなかった。国境で36時間待ち続けた挙句、検問所で正式にメキシコ入りできたのはわずか600人だった。待ちくたびれて、メキシコ当局に強制送還されるのではないかと恐れる人の中には、橋からロープをつたってスチアテ川に入ったり、飛び込む人もいた。その場しのぎのいかだに乗った移民もいれば、川を泳いで渡った人もいた。無事にメキシコに入った人たちは、国境沿いの街、シウダード・イダルゴの中央広場に集まり、喜びを分かち合った。地元の人たちの演奏に合わせて踊る人たちもいた。メキシコ側の地元の人たちは、移民を支援している。寝泊りする広場に衣類や食料を届けたり、特に体力のない人たちを自家用車に乗せたりしている。しかし、定員オーバーのトラックやSUVに乗るのは、場合によっては危険だ。グアテマラで1人、メキシコで1人、乗った車両から落ちてホンジュラス人が命を落としているという。それでも旅を続ける人たちは、色々な場所で可能な限りの休憩をとりながら、北へ北へと移動している。米国国境まではまだ数週間かかる見通しだ。

*7-4:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9B%E3%83%B3%E3%82%B8%E3%83%A5%E3%83%A9%E3%82%B9 (ウィキペディアより抜粋) ホンジュラス
1.中東部(エル・パライソ、フランシス・モラサン、オランチョ県) … 国土中央部の山地と山間部の盆地と首都を含む行政の中心区域。植民地時代に鉱山と牧畜開発進められる。今日も農牧林業が盛んである。
2.南部(チョルテカ、パジェ県) … 中央山地南麓に広がる平野部。植民地時代には鉱山と牧畜開発が行われ、アグロインダストリーと輸出用メロンの生産を行っている。また、パン・アメリカン・ハイウェーが通り、太平洋岸の輸出港サン・ロレンソンを有する。
3.中西部(コマヤグア、インティプカ、ラ・パス県) … コマヤグア平野と山岳地帯。平野部でセメント工業、食品工業が発達し、山岳地域でコーヒー豆、高原野菜・果樹を生産している。
4.西部(コパン、レンビラ、オコテペケ県) … 全体に山地。トウモロコシ、コーヒー豆、タバコの生産と谷底平野では牧畜が営まれ、アグロインダストリーが行われている。
5.北西部(コルテス、サンタ・バルバラ、ヨロ[ジョロ]県) … 山地と河川の働きによって形成された堆積平野とがカリブ海まで広がる。バナナ、柑橘類、サトウキビ、牧畜など多様な農業が展開している。このほか金属、科学、セメント工業なども発達している。サン・ペドロ・スラは空港、幹線道路、鉄道の交差点であり、外港プエルト・コルテスは大西洋の主要港となっている。
6.北東部(アトランティダ、コロン、グラシアス・ア・ディオス、イスラス・デ・バイーア県) … カリブ海岸に卓越する堆積平野と島嶼部。人口密度が低く、バナナ、アブラヤシなどのプランテーション農業が盛ん、観光開発が進行。

*7-5:https://www.agrinews.co.jp/p43782.html (日本農業新聞 2018年4月12日) 空き家・空き地バンク 全国情報を一元化 国交省
 インターネット上で全国の空き家情報を一元化し、空き家を持つ自治体と空き家に住みたい人をマッチングする国土交通省の「全国版空き家・空き地バンク」の本格運用が4月から始まった。同省の空き家対策事業の一環で、空き家情報を全国規模で集約したのは初めて。就農希望者向けに「農地付き空き家」も検索できる。同省は「農ある暮らしへの潜在的な移住希望者を掘り起こせる」(不動産業課)と強調する。
●農村への移住促す
 これまで自治体が個別に発信していた空き家情報を集約し、物件の設備や概要などの情報を統一。利用者が希望の条件を基に地域を問わずに検索できるようにした。空き家の利活用を進め、地方への移住を後押しする。農地付き空き家だけでなく、「店舗付き空き家」の検索項目も作り、就農希望者や、農村で起業したい人らの移住を促し、地域活性化につなげる。全国版空き家バンクを運営するのは2社。4月1日時点で「LIFULL」には2411件、「アットホーム」には1004件の登録がある。ネット上で全国版空き家バンクと検索し、いずれかのホームページ(HP)に進む。それぞれのHPに農地付き、店舗付きの特集ページが設けられており、値段順、面積順で比べて選ぶことができる。空き家バンクに取り組む約700の自治体のうち、半数以上の492自治体が参加。試行運用した昨年10月から半年で、売買101件、賃貸41件が成約しており、本格運用でさらに増える見通しだ。
●農地付き物件も
 農地付き空き家は204戸が登録。物件情報の他に、各地域の防災、生活支援情報も掲載する。地震での揺れやすさや浸水の可能性、買い物施設や小学校区などを、物件の周辺の地図に重ねて表示できるようにした。今後さらに参加する自治体が増えるとみられる。人口減が進む中で、空き家の利活用は社会問題になっており、同省は「自治体や所有者が、空き家を活用するきっかけにしたい」と期待する。

*7-6:https://www.agrinews.co.jp/p46539.html (日本農業新聞 2019年1月26日) 荒廃農地 再び増加 「再生困難」は19万ヘクタール 17年
 耕作が放棄され作物が栽培できなくなった荒廃農地が、2017年は前年を2000ヘクタール上回る28万3000ヘクタールとなり、増加傾向に転じたことが農水省の調査で分かった。森林化が進むなどして再生が困難な農地は、調査開始以来の最大の19万ヘクタールとなった。食料・農業・農村基本計画で掲げる耕地面積の目標440万ヘクタールを達成するには、荒廃農地をいかに減らすかが欠かせず、受け手の確保などが課題となる。全国の荒廃農地は、16年に28万1000ヘクタール(前年比3000ヘクタール減)となり、それまでの増加傾向が減少に転じていた。再生利用された農地が前年比6000ヘクタール増の1万7000ヘクタールに上ったことなどが追い風となったが、17年になって再び増加傾向に戻った格好だ。17年に再生利用された農地は1万1000ヘクタールにとどまった。荒廃農地のうち、再生利用が困難と見込まれる面積は、17年になって19万ヘクタールとなった。08年に調査を始めて以来最大となった前年をさらに7000ヘクタール上回った。一方、抜根や区画整理などで栽培が可能になる面積は前年度から6000ヘクタール減少し、9万2000ヘクタールとなった。基本計画では、25年時点で耕地面積440万ヘクタールを維持する目標を立てる。「中山間地域直接支払交付金や基盤整備事業などで、現在の年間再生ペースは1万ヘクタールを超えている」(同省地域振興課)が、目標達成には荒廃農地の発生を21万ヘクタールに留めつつ、 14万ヘクタールの発生抑制なども必要になる。都道府県別に見ると、再生利用された面積が前年よりも増えたのは6県だけだった。再生利用の面積が483ヘクタール減り、前年の4割の334ヘクタールにとどまった福島県は「年によって増減が変動するが、農地が再生しても、利用する受け手を確保するのが難しい状況は続いている」(農村振興課)と話す。

*7-7:https://www.agrinews.co.jp/p46575.html (日本農業新聞 2019年1月30日) 地方創生「総合戦略」―77%が委託 “現場発”どこに? 外注先は東京集中
 安倍政権の「地方創生」政策が来年度で一区切りを迎え、次期計画策定に向けて政府や自治体が動きだす。ただ、地方創生の基盤となった地方独自の計画「地方版総合戦略」の8割が、都会のコンサルティング企業などに外部委託して策定されていたことが専門機関の調査で明らかになった。農家ら住民の声を生かす“現場発の地方創生”に向けた仕組みを求める声が上がる。
●第2期へ自治体に負担感
 地方創生政策は、人口減少や地域経済の縮小に対し、「まち」「ひと」「しごと」を柱に数値目標を掲げて2015年度から始まった。自治体は今後5年の政策目標や施策の基本方向を盛り込んだ地方版総合戦略を策定。国は、戦略策定などに1市区町村当たり1000万円超を交付した。地域の将来設計を描く総合戦略だが、地方自治総合研究所が18年に公表した調査結果では、回答した1342市町村のうち77%がコンサルタントなど外部に策定を委託したことが判明。「事務量軽減」「専門知識を補う」が主な理由で、外注先は東京都内に本社を置く企業に集中していた。把握できた598市町村の外部委託料は40億円を超した。同研究所は「形式的に作った自治体が多い」と問題提起する。20年度は新たな「地方創生」政策に入ることから、内閣官房は1月28日、第1期の総合戦略に関する検証会を発足させ、第2期に向けた目標設定の在り方などを議論した。来年度は、国も自治体も5年間の検証と戦略の見直しをする年になる。ただ、地方自治体にとって新たな策定は重い負担だ。「住民の声を反映させた戦略が理想だが、通常業務もありコンサルに任せざるを得ない」(関東の自治体)、「前回は国からの指示でJAや銀行に会議に入ってもらい議論して作ったが、次はできるだけ簡素化させたい」(関東甲信の自治体)などの声が上がる。
●福岡県赤村 議論重ね“おらが政策”に
 人口3000人の福岡県赤村。15年に国に提出した地方版総合戦略は、農家や子育て中の女性ら住民によるワークショップを重ね、村の強みや弱みを議論した上で作り出した。農業や観光など各部門の課題を洗い出したことから、ワークショップに参加した農家の男性は「村の農業政策に当事者意識が持てるようになった」と感じる。認定農業者の増加や子育て支援の充実など、他の自治体も設ける目標から、大学との連携による新規ビジネス立ち上げなど独自の目標も多く設けた。戦略をきっかけに、地域おこし協力隊も導入。現在は村の農作物を販売する特産物センターの売り上げ向上やトロッコ列車など、観光分野の新規事業に着手している。担当した同村政策推進室の松本優一郎係長は「認定農業者数など目標達成が非常に厳しい分野もあるが、目標は村で積み上げた数字で、作成までのプロセスに意味があったと思う」と話す。来年度の策定と検証を控える同村。およそ50人の役場の正職員での見直しや検証の事務負担はあるが、同村は「住民の声をまた何らかの形で反映させたい」(政策推進室)考えだ。米粉の商品化などを進める協力隊の長瀬加菜さん(39)は「再び戦略を作るなら、私も関わってみんなと話し合いたい」と意欲的だ。ただ、同村のように住民を交えたワークショップで作り上げた地方版総合戦略を策定した自治体はわずか。もともと各自治体は同戦略とは別に総合計画を立てている。外部委託せずに市職員が戦略を作った西日本の自治体は「次期はコンサルに任せないと負担が重い。総合計画があるのに、戦略を作る意味もよく分からない」と本音を明かす。
●自発性促す仕組みを
 地方自治総合研究所の今井照主任研究員の話
地方のための税金が、結果として東京の企業の利益になってしまった。地方版総合戦略の策定は、国が時間を区切り市町村を上から評価し、市町村の自発性が生かされなかった。国が自治体を審査するような現状の地方創生の仕組みは改めるべきだ。計画を作るのなら、例えば小学校区など地域の単位で住民が議論して積み上げるような仕組みが必要だ。農家も声を上げてほしい。

<“高齢者”雇用期間延長が年金に与える効果について>
PS(2019年1月21日追加): *8-1に、日経新聞の郵送世論調査で、70歳を過ぎても働く意欲を持っている人が3割以上を占めるが、その理由は老後の不安(社会保障負担増・給付減)に備えた収入確保だそうだ。しかし、働くことは、社会の支え手である喜び・これまで培ってきた人的ネットワークの維持、それらによる健康の維持など多様な福利があり、公的年金の支給開始年齢が原則65歳になった現在では、65歳までの収入確保は必要不可欠となった。そして、この解決法を「中福祉・中負担」か「高福祉・低負担」かの二者択一で求めるのは、他の要因を不変と見做している点で誤っている。
 また、*8-3のように、すべての民間企業が定年を65歳に延長しているわけではないからといって、公務員の65歳への定年延長に反対するのは不毛な足の引っ張り合いにすぎず、公務員から完全70歳定年制を施行してもらってもよいわけだ。そうすれば、①少子化の中、新しく公務員にする優秀な若者(税金で養われており、自らは稼いでいない)の数を減らせるし ②公務員に“高齢者”もいた方が高齢者のニーズを汲み易い上、③(働かない人に支払う)年金を減らすことができ ④結果として年金資産の要積立額が減る。さらに、⑤天下りさせるコストが不要になり ⑥働いている方が病気になりにくいため、医療費も抑えられるだろう。
 そのため、私は完全な70歳以上定年制を民間企業に広げてもよいと考える。退職給付会計を使っている民間企業なら、「退職時~退職時の平均余命」に退職年金を支給することを前提として退職給付引当金を引き当てるので、退職年齢を60歳から70歳に引き上げた場合には退職給付引当金の要引当額が約10年分減少し、それを繰り戻して新規投資に利用することができる。これは、新規就業者の給与と退職者への年金を二重に支払うより、安上がりでもあるだろう。
 なお、*8-3には、「政治家が人事権を握ったので、政治家の顔色を見る幹部官僚が増え、忖度を生む土壌になった」という誤った記載がもう1つある。日本国憲法に定められた国民主権の下、選挙で有権者の負託を受けたのは政治家であって官僚ではないため、政治主導が民主主義の具現であり、それによって変な運用になっていたのであれば、民主主義制度を変えるのではなく、正しく原因分析してその部分を変える必要があるのだ。
 また、*8-2のように、年金支給額は物価上昇も加味すれば下がる一方で、社会保障負担は高齢者で特に上昇している。それで100年先まで制度が持続しても、制度の本来の役割は果たせないため、上記のようにいろいろな方法を考えるべきであり、「給付を抑制して高齢者から将来世代に財源を回し、制度を持続させさえすればよい」という発想は思考停止だ。つまり、厚生年金の加入対象を拡大させ、高齢者も働ける環境整備を行い、年金資金の徴収・運用・支払いなどを目的にかなった公平・公正で正確なものにすべきなのである。
 そして、*8-4の「消えた年金」問題は、旧社会保険庁(現在の日本年金機構)の年金管理のいい加減さによるものだが、2007年からは改善し始めたのであり、漏れや不適切な管理・運用は1961年に国民皆年金制度が発足して以来行われていたことだ。また、「年金特別便」を送って本人に職歴や加入期間を確認する方法で正確な年金記録を作ることを提案したのは、当時衆議院議員だった私で、確認して外部証拠を入手するのは監査の手法であるため、改善に着手した第1次安倍政権を叩いて退陣させたのは、全く的外れだった。現在では、年金定期便(https://kotobank.jp/word/%E5%9B%BD%E6%B0%91%E7%9A%86%E5%B9%B4%E9%87%91-182588 参照)が本人に定期的に送られているため、その内容をチェックし、間違いがあったら日本年金機構に速やかに連絡するのが、本人の正当な注意の範囲となっている。

    
  年金特別便           年金定期便         2018.6.19西日本新聞

(図の説明:一番左が、社会保険庁の記録内容を本人に確認するために送った年金特別便で、中央の2つは、現在、定期的に本人に送られている年金定期便だ。内容の年金支給金額を見て、不愉快になったり不安になったりすることもあるかもしれないが、気を付けてチェックしておく必要がある。それによって、老後の資金計画が立てやすくもなる。なお、一番右のグラフの“高齢者”が働く理由は、収入の確保が大きいものの、決してそれだけではないことを示している)

*8-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190121&ng=DGKKZO40135950X10C19A1MM8000 (日経新聞 2019年1月21日) 「70歳以上まで働く」3割、郵送世論調査 老後に不安も
 日本経済新聞社が初めて実施した郵送世論調査で、70歳を過ぎても働く意欲を持っている人が3割を占めた。働いている人に限定すると37%に上る。2017年の70歳以上就業率(15%)を上回り、高齢者就労を促進する政府の取り組みにあわせて労働参加が進みそうだ。一方で8割近くが老後に不安を感じている。社会保障の負担増や給付減に備え、長く働いて収入を確保しようとする様子がうかがえる。何歳まで働くつもりかを聞くと平均66.6歳だった。高年齢者雇用安定法では希望者全員を65歳まで雇うよう義務づけているが、これを上回った。60歳代に限ると平均は69.2歳に上がり、70歳以上まで働く意欲のある人が45%を占めた。就労と密接な関係にある公的年金の支給開始年齢は現在、原則として65歳だ。基礎年金(国民年金)は20~59歳が保険料の支払期間で、60~64歳は支払わないが原則支給もない。一定のセーフティーネットを維持しつつ、働く意欲のある高齢者には働いてもらえるような社会保障改革の議論が急務になっている。雇用形態別で見るとパート・派遣社員らで70歳以上まで働くと答えた人は34%だった。年収別では低いほど70歳以上まで働く意欲のある人が多い傾向があった。300万円以上500万円未満の人は32%、300万円未満は36%に上った。収入に不安があるほど長く働く必要性を感じるとみられる。老後に不安を感じている人は77%を占めた。30~50歳代で8割を超えており、この世代では不安を感じる理由(複数回答)で最も多いのはいずれも「生活資金など経済面」だった。全体では健康への不安が71%で最も多く、生活資金など経済面が69%で続いた。老後に向けて準備していること(複数回答)を聞くと「生活費など資金計画」が46%で最多。続いて「健康づくりなど予防活動」が41%で、「具体的な貯蓄・資産運用」をあげる人も33%いた。将来の生活に必要なお金を得るための取り組み(複数回答)として、最も多かったのは「預貯金」で59%。「長く働くための技能向上」も13%に上っており、生涯現役を見据えスキルアップに意欲を示す傾向が強まりそうだ。一方、社会保障制度のあり方を巡っては意見が割れた。「中福祉・中負担」と、財政状況から現実味の乏しい「高福祉・低負担」がそれぞれ3割で拮抗した。年収別でみると、高所得者は「中福祉・中負担」を支持する一方、所得が低くなるほど「高福祉・低負担」の支持が高い傾向にあった。安倍政権が実施した社会保障改革は介護保険料の引き上げなど高収入の会社員らの負担が増える施策が目立つ。社会保障制度の持続性を高めるには、対象の多い低所得者層の負担や給付の見直しが欠かせないが、改革の難しさがうかがえる。いま幸福かどうかを10点満点で聞いたところ、平均は6.4点。既婚者で子どもが小さい世帯ほど点数が高かった。10年後の点数について「現在と同程度」を5点として尋ねると、平均5.5点と現状よりやや高い結果だった。調査は日経リサーチが18年10~11月に、全国の18歳以上の男女を無作為に抽出して郵送で実施。1673件の回答を得た。回収率は55.8%。

*8-2:http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2019012102000141.html (東京新聞社説 2019年1月21日) 年金額の改定 安心の傘を広げたい
 公的年金の二〇一九年度の支給額が決まった。物価・賃金が上がったためわずかな増額となる。だが、将来の給付額は目減りしてしまう時代だ。さらなる制度改正を通じて安心の傘を広げたい。年金額は物価や賃金の増減に合わせて変わる。一九年度は基準とする過去の物価、賃金とも上昇した。年金額もそれに合わせて増えるが、新年度はその上昇分より少し低く伸びを抑えられる。物価・賃金の伸びより上昇率を抑える仕組みが働くからだ。だから実質的には額の目減りになる。なぜこんな仕組みがあるのか。年金の財政を将来も維持するためだ。この仕組みを使って百年先まで財源を保つことを狙っている。 この仕組みは〇四年の制度改正で導入されたが、物価・賃金が下がるデフレ下では使わないルールだ。長くデフレが続いたため過去には一五年度に初めて動いただけで、新年度が二度目になる。支給開始年齢を六十五歳から引き上げるとの声もあるが、この仕組みが動く限りそうしなくても財源は確保できる想定だ。それに支給開始年齢の引き上げは今受給している高齢者には適用されない。若い世代が対象となる。一方、給付抑制の仕組みは今の高齢者から将来世代に財源を回す制度だ。大人世代は子や孫に持続できる制度を渡す責任があるが、そうならこの仕組みの理解が進むよう政府は粘り強く説明をし続ける責務がある。今年は五年に一度の年金財政の“健康診断”である財政検証が公表される。年金制度の今後百年の見通しを冷静に注意深く見たい。そうはいっても年金額が目減りしていくことは変わらない。課題は低年金になりやすい低所得労働者の支援だ。職場の厚生年金に加入できないパートなど非正規の人は自ら国民年金に入るしかないが、年金額は不十分だ。厚生年金に加入できれば保険料負担は減り年金額は増える。加入条件は一六年秋に緩和され既に約四十万人が加入したが、まだ雇用者の一部だ。非正規で働く高齢者が増えている現状では、もっと対象を拡大させるべきだ。既に受給している低年金高齢者の支援も必要である。消費税率が10%になるとそれを財源に最大月五千円を給付する制度が始まる。だが、これも額は十分とはいえない。高齢者も働ける環境整備や、安価な住宅の供給など複眼で高齢期の生活を支える策を考えたい。

*8-3:https://business.nikkei.com/atcl/report/16/021900010/032900064/ (日経ビジネス 2018年3月30日) 「定年延長」固まり、霞が関改革が急務に、現状のまま「65歳」なら組織停滞は必至
●数百万人の公務員が定年延長の対象に
 森友学園問題で官僚のあり方が問われている中で、官僚の定年を現在の60歳から65歳に引き上げる動きが着々と進んでいる。政府は2月に関係閣僚会議を開いて定年延長を決定。2019年の通常国会に国家公務員法などの改正案を提出する見通し。2021年度から3年ごとに1歳ずつ段階的に引き上げ、2033年度に65歳とする。この手の官僚の待遇改善の常ではあるが、国家公務員全体を対象にし、地方公務員も巻き込んで制度改革を打ち出している。65歳定年になる対象の公務員は数百万人。決して高い給与とは言えず天下りなど無縁の、現場の公務員を巻き込んで制度変更することで、国民の反対論を封じ込めるが、このままでは最も恩恵を受けるのが霞が関の幹部官僚になる。長い時間をかけて段階的に変えていくというのも官僚の常套手段で、一度決めてしまえば、経済情勢や国や地方自治体の財政状態がどう変わろうと、着々と定年年齢が延びていく。一方で、「2033年度の話」と聞くと遠い将来の話のように感じるため、国民の関心は薄れる。なぜ、公務員の定年引き上げが必要なのか。「無年金」時代を無くすというのが理屈だ。公務員年金の支給開始年齢は段階的に引き上げられているが、2025年度には65歳になる。定年が60歳のままだと定年後すぐに年金が受けとれず、無収入になってしまう、それを防ぐためだというわけだ。一見正論だが、それなら民間企業に勤める人も事情は同じだ。だが、民間企業が定年を65歳に延長しているかといえば、そうではない。現在、企業は、高齢者雇用安定法という法律で60歳以上の人の雇用促進を義務付けられている。定年を延長するか、定年自体を廃止するか、再雇用するかの3つのうちいずれかを選択するよう求められているのだ。ご存知のように多くの企業は「再雇用」を選択している。これまでの給与に関係なく、その人の働きに見合うと思う金額を提示、働く側はその金額に納得した場合、嘱託社員などとして働く。納得できずに別の会社に転職していく人も少なくない。
●60歳までの「身分保証」は今後も継続
 だが、単純に「定年延長」となるとそうはいかない。それまでの給与体系に準じた金額を支払うことになる。もちろん「役職定年」を導入するなど、人件費総額が膨らまない工夫をしている会社がほとんどだ。政府は公務員の定年引き上げについて2017年6月に「公務員の定年の引上げに関する検討会」を設置し、制度設計などについて検討してきた。座長は古谷一之官房副長官補。財務省出身の官僚である。さすがに財政赤字が続き、国の借金が1000兆円を超えている中で、総人件費が大きく膨らむ案を出すことはできない。「(1)60歳以上の給与水準を一定程度引き下げる」「(2)原則60歳以降は管理職から外す『役職定年制』を導入する」――という「方向性」も定年延長と同時に政府は決めている。きちんと民間並みに改革しようとしているではないか、と見るのは早計だ。裏読みすれば、給与水準を下げるのは60歳以上だけ、しかも「一定程度」。役職定年制も導入するが、「60歳以降」に限り、しかも「原則」である。何しろ、役所は企業と違い、完璧な年功序列システムである。しかも基本的に「降格」はできない仕組みになっている。そうした60歳までの「身分保証」は今後も継続、というわけだ。現状でも役所トップの事務次官の定年は法律で62歳となっており、一般の定年60歳よりも2歳上の「例外」になっている。定年が65歳になるとともに、次官の定年も引き上げられる可能性が高い。具体的な制度設計は今後、人事院が行うが、ここも官僚たちの組織である。「民間並み」という官僚の給与の引き上げを「勧告」するあの人事院だ。もちろん、あまり高いとは言えない給料で一生懸命に働き、大した退職金ももらえない現場の公務員の定年引き上げが不要だというつもりはない。人手不足の中で、働ける人にはいくつになっても働いてもらうことが重要であることも当然だ。そもそも「定年」などという仕組みはなくても良いのかもしれない。だが、そのためには人事制度が柔軟であることが前提になる。きちんと能力に見合った仕事に就き、能力相応の給与をもらう。仕事ができるかどうかに関係なく、同期入省が一律に昇進していく霞が関の仕組みを変えることが前提になる。今、森友学園への国有地売却に伴う決裁文書の改ざん問題で、「内閣人事局」への批判の声が上がっている。首相や官房長官など「政治家」が人事権を握ったことで、政治家の顔色を見る幹部官僚が増えたというのだ。それが「忖度」を生む土壌になっているというのである。公務員は一部の政治家の部下ではなく、国民全体への奉仕者だ、という建前をかざされると、なるほど、利権にまみれた政治家が人事権を握るのは問題だ、と思ってしまいがちだ。だが、そうした官僚のレトリックは本当なのだろうか。内閣人事局ができる前は、各省庁の事務次官が実質的な人事権を握っていた。建前上は各省の大臣が権限を持つが、大臣が幹部人事に口出しをするとたいがい大騒ぎになった。新聞も政治家の人事介入だ、と批判したものだ。
●「降格」すらできない硬直化した制度
 だが、その結果、「省益あって国益なし」と言われる各省の利益最優先の行政がまかり通った。この四半世紀続いてきた公務員制度改革は、そうした各省の利益優先をぶち壊して、「官邸主導」「政治主導」の体制を作ることに主眼が置かれてきた。その、仕上げの1つが「内閣人事局」だったわけだ。霞が関の幹部官僚600人余りについて、内閣人事局が一元的に人事を行う。企業でいえば、子会社にしか人事部がなく、それぞれバラバラにやっていた人事を、統合的に人事を行う「本社人事部」を遅まきながら新設したというわけだ。内閣人事局が国全体の政策執行を前提に人事を行うことが極めて重要だと言える。それでも、政治家が人事を握るのは問題だ、というキャンペーンにうなずいてしまう人もいるに違いない。政治家はダーティーで、官僚はクリーン。政治家は一部の利権の代弁者で、官僚は国民全体の利益を考えている。そんなイメージが知らず知らずのうちに国民に刷り込まれている。では、本当にそうなのか。政治家は選挙制度にいろいろ問題はあるとしても「国民の代表」であることは間違いない。では、官僚は「国民の代表」なのか。私たちは、政治家は選ぶことができる。官僚たちに忖度を強いるような利権誘導型の政治家や政党には、次の選挙で逆風が吹き荒れることになる。国民のためにならない歪んだ人事を行い、歪んだ政策を実行した党は、政権与党から引きずり下ろせば良いのである。だが、私たち国民は官僚をクビにすることはできない。実は政治家も官僚をクビにできない仕組みになっている。公務員には身分保証があるのだ。内閣人事局で人事権を政治家が握ったといっても、官僚ひとり降格することは難しい。逆にいえば、降格できないからポストが空かず、抜擢人事もできない。民間企業では全く考えられない人事システムなのだ。それを維持したまま定年を延長するのは危険だ。組織が一段と高齢化し、若い官僚の権限は今以上に薄れていく。官僚組織が停滞することになりかねない。では、どうするか。定年延長に合わせて、内閣人事局の権限をさらに強めるべきだ。幹部官僚については降格や抜擢、復活ができるようにし、内閣の方針に従って適材適所の配置を行う。身分保証をなくす一方で、幹部官僚については定年を廃止する。年齢に関係なく抜擢し、適所がなくなれば退職していただく。会社の取締役を考えれば分かりやすい。社長に気に入られて若くして取締役になっても、1期でお払い箱になることもある「民間並み」の仕組みだ。幹部官僚は民間からも出入り自由にすれば良い。米国の「政治任用」のような仕組みだ。定年延長という大きな制度改革を前に、霞が関の幹部人事のあり方を変える公務員制度改革をまず行うべきだろう。

*8-4:https://www.nikkei.com/article/DGKKZO29090100W8A400C1TM1000/ (日経新聞 2018/4/7) 消えた年金
 厚生労働省外局の社会保険庁を舞台にした年金スキャンダル。2007年に発覚、管理する年金記録のうち約5000万件が名義不明だった。保険料の納付記録が残っていない事態も判明。前者を宙に浮いた記録問題、後者は消えた記録問題と呼ぶ。名寄せに追われ、延べ1億人の受給者・加入者に加入歴を示す「ねんきん特別便」を送った。社保庁は組織や人事の規律が甘く、その体質を厚労省幹部が見ぬふりをしていたことが不祥事を増幅させた。後始末に翻弄された第1次安倍政権の退陣を早める一因になった。同庁は民間色を強めた日本年金機構に衣替えしたが、年金記録にまつわる不祥事は今も続いている。

<価値がないかのように粗末にされた国民の財産>
PS(2019年1月25、28日):*9-1のように、種子法が廃止されたが、優良な種子は農業生産の基礎で、多額の公費を使って開発された国民の財産だ。そのため、農水省が2017年の通常国会で種子法を廃止したのは、農業や知的所有権に対する認識の低さの表れである。それに対して市町村議会が県議会に種子法に関する意見書を提出し、県が独自の条例を制定しつつあるのは少し安心だが、市町村や県だけでは種子の改良費・開発費を賄いきれないため、開発された種子に知的所有権の対価を少し上乗せするなど、改良費や開発費を賄う仕組みを考えるべきである。
 また、*9-2のように、林野庁は、規模拡大を目指す林業者が国有林を利用し経営基盤を拡充することができるようにする目的で、意欲ある林業者が国有林を伐採して木材として販売できる制度を新設し担い手育成に繋げるそうだが、国有林もまた国民の税金で育成され、守られてきた国民の財産であるため、管理・伐採権は有償にすべきだ。国の借金が多いから社会保障は負担増・給付減にし、消費税も増税しながら、全国民の財産を特定の国民にプレゼントするのは、あまりにも無節操である。なお、近年の伊万里港は、*9-4のような歴史で、*9-3のように、2018年のコンテナ貨物取扱量が過去最多を更新したそうだ。近くには豊富な林産資源があり、中国木材も進出していることから、原木だけでなく、建材や家具などを徹底して機械加工し、デザインや品質の良い木材製品を生産して輸出もできるようにすると、国産資源を活かした利益率の高い経営ができるだろう。


 2018.3.28朝日新聞   2017.6.21朝日新聞         林野庁

(図の説明:一番左と中央の図のように、それぞれの地域は気候に合わせたブランド農産品を作っているが、それは種子の改良によるところが大きい。また、その種子の供給を民間のみに任せると、食料安全保障(種子も含む)・国民の安全・環境・地域振興よりも営利第一になることは自明だ。そのため、民間企業が種子を供給することを妨げる必要はないが、公的資産である種子を公的に維持・改良していくことも重要だ。また、一番右の図のように、全国民の財産である国有林の利用権を無償で特定の国民に付与するのも、国民の財産を侵害する行為だ)

*9-1:https://www.agrinews.co.jp/p46536.html (日本農業新聞 2019年1月25日)種子法廃止に危機感 条例化・準備 10道県 市町村議会 制定へ意見書続々 本紙調べ
 主要農作物種子法(種子法)の廃止を受け、日本農業新聞が47都道府県に聞き取り調査した結果、同法に代わる独自の条例を既に制定したのは5県、さらに来年度施行に向けて準備を進めるのは5道県に上ることが分かった。その他、市町村の地方議会から種子法に関する意見書を受け取っている県議会は10県。米や麦、大豆の種子の安定供給への危機感は強く、条例化を求める動きが自治体で広がっている。条例を既に制定したのは山形、埼玉、新潟、富山、兵庫。全国筆頭の種子産地である富山県は、1月に県主要農作物種子生産条例を施行した。種子生産者に安心して栽培を続けてもらう考えだ。来年度の施行に向けて準備をするのは北海道、福井、長野、岐阜、宮崎の5道県。福井県は種子の品種開発や生産に関する独自の条例の骨子案を示して2月4日までパブリックコメントを募集する。4月施行を目指す。政府は、米、麦、大豆の種子の生産と普及を都道府県に義務付けていた種子法を2018年4月1日で廃止した。公的機関中心の種子開発から民間参入を促す狙いだったが、行政の取り組みの後退や将来的な種子の高騰、外資系企業の独占などを懸念する声が続出。農業県などが先行して条例化に踏み切っている。条例に向けて具体的な動きを示していないものの、地方議会から意見書が提出された県は10県に上った。要領・要綱などで種子法廃止後も栽培体制を維持するものの、農家らから品質確保などで不安の声が広がっているためだ。滋賀県は県内19市町のうち大津市、東近江市など14市町の議会から県条例を求める意見書が出ている。同県は「他県の状況や生産現場の声を踏まえて研究していく」(農業経営課)と強調。福岡県も、18年12月時点で県内全市町村の2割に当たる12市町議会から県への意見書が出ている。18年12月には栃木県上三川町議会、千葉県匝瑳市議会などが県に条例制定などを求めた。上三川町は「農家である議員の発案で国と県に要望書を出すことにした」(議会事務局)と説明。年明けも、種子法に関する意見書を市町村議会が出す動きが相次ぐ。福岡県小竹町議会は1月16日、宮城県栗原市議会は18日に県に意見書を出した。条例を既に制定した県は「他県から参考に教えてほしいという問い合わせが相次いでいる」と明かす。条例を制定しておらず、地方議会から意見書を受け取っていない県の担当者も「廃止後も従来通りの対応を要領で進めているので問題ない。ただ、農業に力を入れる中で他県での条例化の動きは無視できない」などと話す。JAグループや農業、消費者団体などから陳情や要望されている県も複数あり、今後も条例化の動きは広がる見通しだ。
<ことば> 主要農作物種子法
 1952年に制定、2018年4月に廃止された。都道府県に米、麦、大豆の優良な品種を選定して生産、普及することを義務付けていた。農水省は、都道府県が自ら開発した品種を優先的に「奨励品種」に指定して公費で普及させており、種子開発への民間参入を阻害しているなどとして、17年の通常国会に同法の廃止法案を提出。自民党などの賛成多数で可決、成立した。

*9-2:https://www.agrinews.co.jp/p45927.html (日本農業新聞 2018年11月27日) 国有林伐採権を付与 新たな制度林野庁検討 林業 担い手育成
 林野庁は、規模拡大を目指す林業者が国有林を利用し、経営基盤を拡充することができるよう新たな仕組みを構築する。国有林の一定区域を10年単位で伐採できる権利を与え、販売収入を確保し、長期的な経営計画が立てられるようにする。新たな森林管理システムで森林を集積・集約する受け手の確保を狙う。来年の通常国会に法案を提出する。同庁は、規模拡大を目指す林業者に森林を集積・集約する新たな森林管理システムを構築。2019年4月に関連法を施行して制度として動きだす。関連法では所有者が管理できない私有林のうち、採算ベースに乗りそうな私有林について、市町村が意欲があると判断した林業者らに管理を委託できる。一方、同システムは、森林の管理を担う受け手をどう確保するかが課題となっている。このため同庁は、規模拡大に意欲のある林業者が国有林を伐採して、木材として販売できる制度を新設し、「林業者の経営基盤を拡充し、森林の受け手育成につなげたい」(経営企画課)考えだ。具体的には、同システムに位置付けられた林業者らに対し、10年間を基本に上限を50年として数百ヘクタール、年間数千立方メートルの伐採ができる権利を与える。国有林の立木販売では現在、販売先が決まっている場合、最長3年間の契約ができるルールがある。さらに長い期間、伐採できるようにして、長期的な林業経営の見通しを立てられるようにする。国有林の伐採量が増えることで木材価格に影響が出ないよう、権利の取得には条件を設ける。住宅以外の建築物での木材利用や、輸出などに取り組む事業者らとの連携が必要となる。投資だけを目的とする場合には、権利付与の対象にはしない。伐採後の国有林の再生に向けて、権利を得た林業者に対し、主伐と再造林に一貫して取り組むことを求める。造林経費は国が支出する。林業者は具体的な施業計画を作り、実践する。

*9-3:http://qbiz.jp/article/147795/1/ (西日本新聞 2019年1月28日) 伊万里港3年連続最多更新 18年コンテナ貨物取扱量 増便や大型クレーン導入 作業効率向上要因
 伊万里港(佐賀県伊万里市)の2018年のコンテナ貨物取扱量が3万7346個(20フィートコンテナ換算)となり、3年連続で過去最多を更新した。同港は九州有数のコンテナ貨物取扱量があり、世界的な拠点港の韓国・釜山港に近く、航路増便やターミナル拡張、大型クレーン導入による作業効率の向上で需要が伸びているという。18年の取扱量の内訳は、輸出9912個、輸入2万7434個でいずれも前年を上回った。輸出はパルプ製品・古紙が最多の70・4%を占め、輸入は家具類34・4%、日用品雑貨15・1%−だった。航路別では釜山の1万4856個が最も多く、前年から3360個増えた。伊万里港は1967年に開港、97年に国際コンテナターミナルが開設した。2013年には大型コンテナ船が寄港可能な水深13メートルの岸壁が完成。博多港などで導入済みだった大型クレーン「ガントリークレーン」を取り入れ、コンテナ荷役のスピードは従来の約2倍になった。福岡、佐賀、長崎県にまたがる西九州道の延伸工事が進み、港周辺の交通アクセスが改善。運搬用の大型車が渋滞に巻き込まれるケースが少なく、港の利便性が向上したという。97年の航路は釜山のみだったが、現在は釜山のほか中国の大連、青島、上海などを結ぶ航路と、神戸港を経由する国際フィーダー航路を合わせ、5航路、週7便が就航している。佐賀県港湾課は「アジアに近い利点を生かし、国際物流の拠点としてさらなる航路開拓や増便を目指したい」としている。

*9-4:http://www.city.imari.saga.jp/13211.htm (伊万里市 2017年9月1日更新) 伊万里港の変遷(下)
 今回は、平成9年の伊万里港国際コンテナターミナル供用開始から、現在までの歴史です。
●発展を続ける伊万里港
 伊万里港は、平成9年2月に国際コンテナターミナルが供用を開始し、同年4月から韓国・釜山港との間に国際定期航路が開設されました。ここからコンテナ貨物の国際貿易拠点としての歴史が始まりました。また、平成14年から平成20年までにかけては、久原地区の伊万里団地に中国木材株式会社が進出したことに始まり、木材・水産加工・半導体企業などが次々と進出しました。さらに平成15年3月には、伊万里湾により東西に分かれていた港湾機能を結ぶ『伊万里湾大橋』が完成。待望されていた伊万里港の港湾機能の一体化と、地域のシンボルとしての役割を担っています。 平成25年4月には、伊万里港コンテナターミナルに大型化する船舶に対応するための水深13メートルの岸壁とガントリークレーンの整備が完了し、荷役作業の効率が飛躍的に向上しています。現在では、釜山航路に加え、華南・韓国航路、大連・青島航路、上海航路の4航路、神戸港との国際フィーダー航路が1航路の5航路・週7便が運航しています。航路の増加や施設の整備により、コンテナ貨物の取扱量も順調に増加しています。輸入では、家具・家具装備品、日用品、動物性飼料原料(魚粉) などが主な取扱貨物となっており、約410社が伊万里港を利用して輸入をしています。輸出では、ロール紙、古紙、原木・木材製品などが主な取扱貨物となっており、約160社が伊万里港を利用して輸出をしています。平成28年は、過去最高の取扱量(実入り)を記録し、九州では、博多港、北九州港、志布志港(鹿児島県)に次ぐ第4位となっています。これまで時代の流れとともに様々な役割を果たしてきた伊万里港。次の50年に向け、さらなる発展が期待されます。
●お問合わせ先
伊万里港開港50周年記念事業推進室
 所在地/〒848-8501 佐賀県伊万里市立花町1355番地1
 電話番号/0955-23-2466 FAX/0955-22-7213
 E-mail/ imariwan-kokudou@city.imari.lg.jp

PS(2019年1月30日追加): 私も、*10-1のように、公共部門の民間開放として水道事業民営化への道を開いて民間に運営権を長期間売り渡すと、料金高騰や水質悪化に繋がるのではないかと思ったので、先日、唐津ガスの社長にお会いした時にどう思うか尋ねたところ、「必要な縛りを入れておけばいいんじゃないですか」と言われて、「確かに」と納得した。確かに、電気・ガスは、(料金は上下水道よりずっと高いが)民営化されており、品質の問題は起こっていない。ただ、電気・ガス・水道が別々に道路をほじくり返すと、道路に工事中が増え、生産性が低くなり、多くの人に迷惑をかけるのが問題なだけである。
 そのような中、*10-2のように、西部ガスの道永次期社長が、事業の多角化をするという抱負を述べておられるが、高齢化が進む中、消費者にはガスより電気の方が安全という選択も働くため、従来のガス需要はさほど伸びないと思われる。そのため、人が入って作業できる大きさの共同溝を作って電線・ガス管・水道管を道路の地下に埋設し、ITを駆使して管理する事業を、国や地方自治体の補助を受けてやったらどうかと思う。何故なら、ガス管は既に地下に埋設されており、今後は、上下水道管の老朽化や電線の地中化に対する需要が増えるからだ。
 
*10-1:https://digital.asahi.com/articles/ASLCQ5FM9LCQULBJ00L.html?iref=pc_extlink (朝日新聞  2018年11月25日) 水道事業、民営化に道 海外では料金高騰・水質悪化例も
 公共部門の民間開放を政府が進めるなか、水道事業にも民営化への道が開かれる。事業の最終責任を自治体が負ったまま、民間に運営権を長期間売り渡せるようになる。水道法改正案に盛り込まれ、開会中の臨時国会で成立する見通しだ。海外では、料金高騰や水質悪化で公営に戻す動きもあり、導入への懸念は強い。7月に衆院を通過した改正案が22日、参院厚生労働委員会で審議入りした。民営化の手法は「コンセッション方式」と呼ばれ、企業が運営権を買い取り、全面的に運営を担う。契約期間は通常20年以上だ。自治体が利用料金の上限を条例で決め、事業者の業務や経理を監視する。安倍政権は公共部門の民間開放を成長戦略として推進。2013年に閣議決定した日本再興戦略で「企業に大きな市場と国際競争力強化のチャンスをもたらす」と位置づけた。空港や道路、水道、下水道をコンセッション方式の重点分野とし、空港や下水道では導入例が出てきたが、水道はゼロだった。今の制度では、最終責任を負う水道事業の認可を、自治体は民営化する際に返上する必要があり、大きな障壁だった。改正案では、認可を手放さずにできるようにして、導入を促す。
●300億円超削減、試算
 改正を見据えた動きもある。県内25市町村に飲み水を「卸売り」する宮城県は工業用水、下水道と一括にしたコンセッション方式を検討している。人口減少などで、飲み水を扱う水道事業の年間収益は今後20年で10億円減る一方、水道管などの更新費用はこの間、1960億円を見込む。「経営改善にはこの方法が一番」と、県企業局の田代浩次・水道経営改革専門監は話す。県内では、浄水場でのモニター監視や保守点検など多くの業務を民間が担う。県の構想では、これらの運転業務に加え、一部の設備の管理・更新を20年間、民間に任せる。資産の7割を占める水道管はこれまで通り県が担う。バラバラだった業務委託契約を一括にでき、コスト削減効果は計335億~546億円と試算する。浜松市も水道で検討している。管路や設備の更新の必要性が高まる一方で、人口減や節水機器の普及で収益減は確実だ。水道事業の経営は堅調だが、「経営が健全なうちに先手を打つ必要がある」と担当者はいう。同市は今年4月、下水道事業に全国初のコンセッション方式を導入。「水メジャー」と呼ばれる水道サービス大手仏ヴェオリア社の日本法人などが20年間の運営権を25億円で手に入れた。開始から半年たちトラブルはないという。市上下水道部の内山幸久参与は「実施計画や要求水準を定めて、行政が最終責任者として関与することで公共性は担保できる」と話す。
●安定供給に懸念も
 だが、営利企業に委ねる負の面もある。先行する海外では水道料金の高騰や水質悪化などのトラブルが相次ぐ。失敗例は監視機能などに問題がみられ、改正案では、水道は国や都道府県が事業計画を審査する許可制とし、自治体の監視体制や料金設定も国などがチェックする仕組みにする。政府は「海外での課題を分析し、それらに対処しうる枠組みだ」と説明するが、「災害や経営破綻(はたん)時に給水体制が守れるか」「海外では監視が機能しなかった」など、不信の声は絶えない。先んじて導入の条例を検討した大阪市は「経営監視の仕組みに限界がある」「効果が市民に見えにくい」などの意見から17年に廃案になった。新潟県議会は今年10月、「安全、低廉で安定的に水を使う権利を破壊しかねない」として、改正案の廃案を求める意見書を賛成多数で可決した。自民党議員も賛成した。拓殖大の関良基(せきよしき)教授(環境政策学)は「水道は地域独占。役員報酬や株主配当、法人税も生じ、適正な料金になるのか疑問だ」とし、「問題が起きたときにツケを払うのは住民だ」と改正案に反対する。東洋大の石井晴夫教授(公益企業論)は「コスト削減や雇用創出といった民間が持つ良い点を採り入れられる」と利点を挙げる一方、「災害時対応への備えは不可欠。料金も『こんなはずではなかった』とならないよう、正確な需要予測や収支見通しを示した上で住民の合意を得るべきだ」と話す。
●30年で料金5倍…パリは再公営化
 フランスでは、世界で民営水道事業を手がける「ヴェオリアウォーター」など「水メジャー」と呼ばれる巨大多国籍企業がある。仏メディアによると、3分の2の自治体が民営を導入している。だが近年は、「水道料金が高い」として公営に転じる動きもある。パリは1984年、二つの水メジャーに水道事業を委託した。だが2010年に再び公営化した。水道料金の高騰が主な理由で、パリ市によると、10年までの30年間で、水道料金は5倍近くに上がったが、10年以降は伸びが止まっているという。現在、4人家庭が毎月支払う平均的な水道料金は30ユーロ(3900円)ほどだ。パリの水道事業を担う公営企業「オ・ドゥ・パリ」のバンジャマン・ジェスタン専務取締役は「水道事業は、水源管理や配水管のメンテナンスなど、100年単位での戦略が必要だ。短期的な利益が求められる民間企業は、設備更新などの投資は、後回しになりがちだ」と話す。「民間企業は株主に利益を還元しなければいけないが、我々にはそれがない。何十年も運営を任せっぱなしにしていると、行政の制御がきかなくなりがちで、不透明やムダな運営も生まれやすい」。南仏ニームでは、半世紀の間、水メジャーに委託し、設備の老朽化が放置されたために、漏水率が30%に至っている様子が報じられた。南東部ニースは、価格を安くすることを理由に13年に公営に方針転換。パリ近郊のエソンヌと周辺自治体も、パブリックコメントを経て、17年から公営事業に転換した。一方、南西部ボルドーのように「上下水道事業すべてを自治体が担うのは負担が大きすぎる」として、公営に戻すのを見送ったところもある。
     ◇
〈コンセッション方式〉 国や自治体が公共施設の所有権を持ったまま、運営権を民間に渡せる制度。2011年のPFI法改正で制度が整備された。契約期間は通常20年以上で、企業は運営権の対価を支払う一方、料金収入や民間融資で施設の建設や運営、維持管理にあたる。自治体は利用料金の上限を条例で決め、事業者の業務や経理を監視する。水道法改正案では、水道は国や都道府県が事業計画を審査する許可制とし、自治体の監視体制や料金設定も国などがチェックするとしている。

*10-2:http://qbiz.jp/article/147926/1/ (西日本新聞 2019年1月30日) ガス以外の事業加速 西部ガス・道永次期社長が抱負
 西部ガス(福岡市)は29日、道永幸典取締役常務執行役員(61)が4月1日付で社長に昇格し、酒見俊夫社長(65)が代表権のある会長に就くトップ人事を正式発表した。道永氏は「事業の多角化と液化天然ガス(LNG)ビジネスの展開という2本のレールに列車を走らせることが役割で、スピードアップや軌道修正も行う。(社員や株主、地域社会に)役に立つことを肝に銘じて励む」と決意を述べた。道永氏を起用した理由について、酒見氏は「自由化が進む中、新しい発想、柔軟な発想でリーダーシップを取れることが新社長のポイント。道永氏は行動力やスピード感があり、発想が非常にユニークだと常々感じていた」と説明。熊本地震の対応や、マンション開発・販売会社エストラスト(山口県下関市)の買収でも力を発揮したと評価した。道永氏は事業の多角化に向け、新分野に精通したキャリア採用を積極的に進め、企業の合併・買収(M&A)に取り組む方針も明らかにした。「冒険ではなく、精査してチャレンジする。途中で撤退する勇気は一番大事な勇気だと思っている」と述べた。都市ガスの小売り自由化に伴う競争激化など経営環境は厳しい。西部ガスから九州電力へのガス契約の切り替えは1月20日現在で約7万8千件に上り「厳しい状況が続いている」(酒見氏)。西部ガスは約7万9千件の電気契約を獲得しているが、九電が昨年7月に公表した熱中症予防プランでは先行され後手に回った。道永氏は「もうちょっと競争したいとは思っている」と意欲をみせた。西部ガスは2026年度にガス供給・販売事業以外の売上高をグループで現状の3割程度から5割程度に引き上げるのが目標。ホテルや温浴施設事業への参入、LNG輸出事業に向けたロシア企業との覚書(MOU)締結などを進めている。
*道永 幸典氏(みちなが・ゆきのり)九大経済学部卒。81年西部ガス。執行役員情報通信部長、常務執行役員総務広報部長などを経て、16年6月から取締役常務執行役員。61歳。福岡県筑紫野市出身。
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●スピード感、柔軟思考が強み 道永次期社長 
 ガス事業の「中枢」を歩んでいないと自他共に認める新しいタイプのトップ。入社以来延べ約30年間、IT化の推進や料金算定などシステム関連業務に携わってきた。自由化や人口減少でガス事業の競争環境が厳しさを増す中、従来の手法にとらわれない柔軟な思考で成長を進めることを期待されての抜てきだ。社長就任を打診されたのは1月中旬。「大変だな」と感じた一方「やってやろうというワクワク感、高揚感がある」。持ち前のポジティブな姿勢で前を向く。現在の中期経営計画は2019年度まで。けん引することになる次期計画では、ガス事業の拡大を目指しつつ、現体制が着々と進めていた事業の多角化を加速させる必要がある。鍵となる「スピード感」をこれまでも大切にしてきた。熊本地震ではいち早く現地に飛んで指示を出した。料金システム改定の際は不眠不休で対応した。今後の事業多角化についても、「スモールスタートでできそうな事業で胸に秘めているものがある」と早くも意欲を示す。グループ5千人の従業員を率いるリーダーの在り方として「率先難事」と自ら行動する大切さを挙げる。トップ営業にも積極的に取り組む意向だ。「唯一無二の趣味」と語るゴルフはベストスコア71。「ネットワークづくりには最適のスポーツ」と積極的にラウンドを重ねている。

| 経済・雇用::2018.12~ | 10:31 PM | comments (x) | trackback (x) |
2018.12.4 合併・買収・組織再編にまつわる経営意思決定と会計制度 (2018年12月5、6、7、8、9、10、13、14、15、16、17、18、19、20、21、23、27、28日、2019年1月5日追加)
           2018.11.22朝日新聞

(図の説明:左図のように、平均的役員報酬の額は日米欧で全く異なり、日本は著しく低い。また、中央のように、自動車大手の経営トップを比べてもゴーン氏の報酬が特別高いわけではなく、トヨタの場合は外国人副社長の報酬の方が日本人社長よりも高い。さらに、右図のように、日本企業にも役員報酬の高い上場企業があり、ゴーン氏の報酬が特に高いわけではない)

 書かなければならないことは多いのだが、私は、監査だけでなく税務やコンサルティングの経験もあり、組織再編税制・連結納税制度・退職給付会計・暖簾の会計処理・税効果会計等々の変更を提案してきた人であるため、今日は、ゴーン氏の「有価証券報告書への虚偽記載」によるとされる逮捕劇と合併・買収について記載する。

(1)ルノー・日産の事例から
1)経営統合を阻止するためのゴーンさんの逮捕
 *1-1、*1-2のように、日産は、ルノーとの経営統合を阻止すべく、ゴーン氏の不正行為について少人数の極秘チームで内部調査を進め、財務担当役員交代後に、秘書室幹部に司法取引させてゴーン氏を逮捕に追い込み、これを理由に会長を解任したというのがStoryの全貌だろう。メディアは、最初から「ゴーン容疑者」「不適切な支出」「有価証券報告書への虚偽記載」「個人に依存した体制」などという文言を使っていたが、日産自動車は個人企業ではないため、ゴーン氏の報酬についても優秀な財務部や法務部が関与して不法行為にならないよう気を付けたのは想像に難くない。また、ゴーン氏自身が日本や世界の法律・税務に詳しいわけではないため、ケリー氏を通じて社内外で検討させたのも当然のことと思われる。
 
 そして、*1-3のように、フランスのマクロン大統領は、仏ルノー・日産自動車・三菱自動車の3社連合について、ルノーの筆頭株主である仏政府は日産元会長のゴーン氏逮捕後の混乱収拾に乗り出す姿勢を示すことで、3社の「対等な関係」を目指す日産をけん制するそうだが、交渉役のゴーン元会長が不在になり、影響力拡大を狙う仏政府の思惑が崩れ始めていると日本のメディアは伝えている。

 しかし、EVかガソリン車かを選択する時代は既に終わったので、持ち株会社の下には「ルノー、日産、三菱自動車」をぶらさげるのではなく、①EV・燃料電池車 ②ES・燃料電池船 ③EA・燃料電池航空機 ④ゼロエミッション住宅 ⑤研究開発 ⑥マーケティング(新市場開拓や政策立案を含む)等々、製品や機能別に会社をぶら下げるべき時代になったようだ。こうなると、従来のエンジニアも新技術・新市場で活躍するしかないが、活躍の場は少なくないだろう。

 ゴーン氏の速やかな判断のおかげで、現在、ニッサンはEVや自動運転技術が他社より少し進んでいるが、ゴーン氏のようなリーダーを失い、調整とカイゼンしかできなくなった日産が全体を率いるよりは、(フランスはじめヨーロッパは、既にEVを普及させる政策には入っているのだから)フランス政府肝入りのルノーが全体を率い、3社を統合して組織再編を行い、それぞれの分野でトップに立つ機会を狙った方がよいように思う。そのためにも、コスモポリタンでヨーロッパ人ではないゴーン氏を失ったのは、日本勢にとって痛かったのではないか?

2)司法取引の問題点 ― 経営権争いに司法取引を用い、軽微な“罪”を言い立てて、
  実力者を追い出すことが可能になったこと
 司法取引が導入された時から、私は冤罪や人権侵害の温床になると考えていたが、やはり、*1-4のように、「①報酬合意文書は秘書室で秘匿され、取締役会に諮られていなかった」「②将来の支払いを確定させた文書だ」と、東京地検特捜部が文書作成に直接関与したとする秘書室幹部は、司法取引を行って証言したそうだ。

 しかし、取締役会は株主総会で認められた役員報酬(30億円)のうち、支払われなかった部分についてゴーン氏に一任することを承諾していたのだから、ゴーン氏は取締役会に諮っていたことになり、①は虚偽である。また、*1-6のように、報酬文書には日産の別の幹部のサインもあり、ケリー氏が「会社としても退任後の報酬支払いを把握していた証拠だ」としているのは本当だろう。

 なお、東京地検特捜部は、「退任後に支払う報酬は確定していたので、有価証券報告書に記載義務がある」として受領額の確定性を論点にしている。しかし、従業員の退職給付債務も、退職金規程等(企業と従業員の契約)に基づくに制度と解されており、誰でも自己都合退職時の支給額は確定しており、会社都合の場合はそれより大きくなる。そして、企業は、当該会計期間までに発生した退職給付債務を現在価値に割引いて退職給付支払いのためだけに使用する年金基金などに外部拠出し、年金基金は企業からの拠出金を元本として株式や債券等で運用して、従業員が退職した際に退職金を支払う。そのため、日産の従業員だった取締役は、この退職給付を必ず受け取るが、有価証券報告書にはそれを記載しておらず、弁護士のケリー前代表取締役が合法な方法だと言ったのは本当で、②の将来支払確定性は従業員の退職給付債務にもあるのである。

 従って、*1-5のように、退職後の報酬不記載を違法性の焦点にした時点で、日本の特捜や検察は敗北した。にもかかわらず、自白させるために拘留期間を伸ばす目的で逮捕容疑を2015年3月期までとそれ以後に分けたのは悪どい。さらに、どの取締役も書いていない退職後の報酬を書かなかったことを金商法違反(有価証券報告書の虚偽記載)だとして、ゴーン氏を逮捕するのは法の下の平等に反する。

 そのため、*1-7のように、ゴーン氏が「嘘の自白は耐えられない」として、一貫して容疑を否認しているのは当然だ。また、ゴーン氏は、フランスの工学系グランゼコールの一つパリ国立高等鉱業学校を卒業した人で、法律や会計の専門家ではないため自らの正当性を理論的に説明することはできないかも知れないが、社内外の専門家に相談して行動したと思われるので、嘘の自白を強要するのはやめるべきである。

3)役員報酬の相場と透明性
 経産省は、2015年3月に、「日本と海外の役員報酬の実態及び制度等に関する調査報告(http://www.meti.go.jp/meti_lib/report/2015fy/000134.pdf#search=%27IFRS+%E5%BD%B9%E5%93%A1%E5%A0%B1%E9%85%AC+%E9%96%8B%E7%A4%BA%E8%A6%8F%E5%AE%9A%27)」をトーマツグループに委託し、トーマツグループがしっかりした報告書を提出しているので、役員報酬に関心のある方は参照されたい。

 その中に、「日本国内における役員報酬の決定方法は、取締役が代表取締役に一任する会社が58%を占め、報酬委員会で協議して取締役会で決議する会社は15%に留まる」と書かれている。また、*1-8にも書かれているように、ゴーン氏問題を受けて高額批判が出ている役員報酬は、主要企業のトップの報酬を比較すると、日本は米国の1割程度で国際的には低い水準にあり、日本は経営者も含めた人材獲得のグローバル競争で後れを取る恐れがある。これは、高度専門職や研究者も同じだ。

 しかし、*1-9のように、日産は、ゴーン容疑者の裁量で報酬額を決めてきた現行の仕組みが不正の温床だと判断し、役員報酬の決定過程を透明化するために、報酬委員会を新設することを検討するそうだ。こうすると、確かに特定の人が槍玉に挙げられることはなくなり、決定過程も透明にはなるが、必要な人をヘッドハントして業績や相場に応じた報酬を支払うことはできにくくなる。また、50%以上の人が賛成することは、現在の常識であって先端ではないのである。

 なお、ゴーン氏は日産から7億3500万円の役員報酬を得ていたそうだが、ルノーから得ていた報酬は、ルノーは日産の被連結子会社でないため、日産の連結財務諸表に掲載されない。つまり、会社の資本関係やそれに伴う連結範囲を吟味せずに、こういう問題を語ることはできないのである。

(2)不適切な合併・買収に関する論評
 このように、破綻寸前だった日産をよみがえらせたゴーン氏のやり方が非難され、*2-1のように、世界的な企業規模の大型化についていけていないため日本企業の「小粒化」が進んでいると書かれた記事がある。しかし、合併して瞬間的に大規模になればよいわけではなく、合併後にシナジー効果を発揮して大きな成果の得られることが合併の本当の意義である。

 また、長寿だから新陳代謝が鈍くて成長力がないわけではなく、時代にあった的確な戦略を作ってそれを実行できるか否かが問題であるため、歴史があり優秀な人材の揃っている企業が強いことは多い。さらに、他と比べたから成長率が上がるわけではなく、成長率が上がること自体が企業の目的でもない。

 それどころか、国民生活を犠牲にした金融緩和でじゃぶじゃぶにした金で無理にM&Aをして大損した例は、枚挙に暇がない。例えば、*2-2の東芝の例のように、自らは技術がないため高すぎる買収額で技術があると思われる会社を買収したケースは、相手が納得していないので、金をむしり取られただけでうまくいかなかった。

 なお、買収額と本当の企業価値のギャップは、現在は全て暖簾に計上しているが、本来の暖簾部分と高値買いした部分とに分け、後者は直ちに償却するか買収を行った経営者がいる数年のうちに償却するのがFairである。しかし、本来の暖簾部分は、時間の経過とともに価値が上がることも多いため、価値がなくなった時に減損処理する現在の会計処理が妥当だと考える。

 また、*2-3のように、銀行・生保・商社は、大きくさえあればよいと、日本型の「メガ合併」や「救済合併」をよく行ったが、それによりコスト・システム運営費などを削減できればよいものの、人事でやりにくさが増したり、企業の数が減ったため製品やサービスに個性がなくなり、消費者が求めるサービスが減ったりしたという現象もあった。

 そのような中、*2-4のように、ゴーン氏は聖域なき改革を行い、工場閉鎖・人員削減・系列破壊を行って非効率にメスを入れ、破綻寸前だった日産はV字回復を果たしたのだが、ゴーン氏は恨まれているようである。工場労働者と経営者との報酬格差が日本ではよく批判されるが、日産が破綻していれば全員が職を失っていたのであり、時代に先んじた正しい意思決定をすることは、小田原評定の議論をしているよりずっと重要なことである。

(3)暖簾の会計処理
 暖簾の会計処理について、*3のように、国際会計基準(IFRS)を策定する国際会計基準審議会(IASB)が、企業買収を巡る会計処理の見直しを始めたと書かれているが、(2)で述べたとおり、暖簾は買収先企業の収益還元価値と純資産の差額がブランド力等と解され、買い手企業が資産計上でき、その価値がなくなった時に減損損失を計上するのが正しいと、私は考える。

 しかし、日本の合併・買収は、高値買いした価格と純資産の差額をすべて暖簾に計上するため、問題が起こる。つまり、高値買いした価格と収益還元価値の差額は、直ちに償却するか買収した経営者のいる数年のうちに償却し、収益還元価値と純資産の差額は、暖簾として計上し続けるのが適切であろう。

<ルノー・日産の事例>
*1-1:http://qbiz.jp/article/144694/1/ (西日本新聞 2018年11月24日) 日産、今春から極秘チーム結成 ゴーン前会長の不正調査
 日産自動車が、逮捕された前代表取締役会長カルロス・ゴーン容疑者の不正行為について、今年春ごろから役員を含む少人数の極秘チームを結成し、社内調査を進めていたことが24日、関係者への取材で分かった。財務担当の役員交代を機に、不適切な支出が確認された。フランス自動車大手ルノー主導による経営統合をゴーン容疑者が進めることを警戒し、会長解任を急いだことも判明した。統合を阻止するために調査を始めたわけではないが、経営戦略を巡る日産内部の対立が事件発覚の引き金となったことが裏付けられた。関係者によると、ゴーン容疑者が会社の資金を不当に使っている疑いは以前から浮上していた。だが、絶対的な権力を持つゴーン容疑者から不利な扱いを受けるのを恐れ、社内には声を上げられない雰囲気が広がっていたという。転機となったのは今年5月。最高財務責任者(CFO)がそれまでの外国人から日本人の軽部博氏に交代した。財務部門のメンバーが代わり、不適切な支出が次々と明るみに出た。ゴーン容疑者による証拠隠滅や妨害を警戒し、社内調査は秘密保持を徹底した。司法取引した外国人の専務執行役員らも調査に協力した。6月ごろから大手弁護士事務所も加わり、証拠を積み上げていった。日産は公表時期を慎重に検討。ゴーン容疑者は今年3月以降、日産とルノーの資本関係を見直す発言を繰り返すようになり、日本人役員を中心に日産内で経営の自立性を失うことへの警戒が広がった。ゴーン容疑者が年内にも協議開始の提案をするとの情報があり、今回、来日したタイミングで公表する手はずを整えたという。関係者は「協議が始まった後に不正を発表し、クーデターという見方が強まるのを避けた」と話す。

*1-2:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO38263090X21C18A1EA2000/?n_cid=NMAIL006 (日経新聞 2018/11/28) 日産「日仏対等」探る 出資「4割ルール」焦点に、3社連合トップ、29日初会合
 日産自動車と仏ルノー、三菱自動車の3社連合のトップが29日、オランダで会合を開く。カルロス・ゴーン容疑者(64)が逮捕されて以降、初めてのトップ協議になる。出資比率や提携内容の見直しを通じ「対等な関係」を模索する日産と、支配的な地位を維持したいルノー――。日仏連合は「ゴーン後」の新しい枠組みを構築する作業に着手するが、日産とルノーの溝は深く妥協点を見いだすのは容易ではない。29日のトップ協議は、新車開発や部品調達など重要事項を決める統括会社「ルノー日産B・V」(アムステルダム)が舞台になる。日産の西川広人社長と三菱自の益子修会長は、現地に行かずテレビ会議で参加。ルノーからは暫定トップのティエリー・ボロレ最高執行責任者(COO)が加わる見通しだ。3社連合の実権をゴーン元会長に委ねてきた西川氏とボロレ氏にとっては事実上の「外交デビュー」となる。29日は「込み入った話には踏み込まない」(日産幹部)見通しで、3社連合の枠組みを維持する方針の確認にとどまるとみられる。「個人に依存した体制を見直すいい機会になる」。ゴーン元会長の逮捕を受けた19日の記者会見。3社連合への影響を聞かれた西川社長は危機ではなく好機だと強調した。日産は29日の初協議を経て、ルノーとの対等な関係の構築に動き出すとみられる。日産が求める「対等」とは何か。その柱はルノーとの資本構造と事業面での不均衡の是正だ。「4割ルール」――。日産とルノーの資本関係にはフランスの会社法が重みを持つ。ルノーは日産株を43.4%持ち議決権もある一方、日産が15%持つルノー株には議決権がない。仏会社法の定めでは、40%以上の出資を受ける企業は、出資元の企業の株式を保有しても議決権を持てない。ルノーは資本面で優位に立つ。日産は08~18年に出願した特許が約6万8千件とルノーの2倍を超えるなど、先端技術や販売台数、収益力などでルノーに勝る。しかし北米で売る主力車を経営不振だった韓国のルノー子会社で生産するなど、ルノーを支えることを主眼とした判断も迫られた。日産にとっては、こうした事業面のゆがみを解消するには資本による支配構造の見直しが必要だ。考えられる選択肢はいくつかある。仏会社法ではルノーの日産への出資比率が4割を割れば、原則として日産もルノーの議決権を得るとみられる。逆に日産がルノー株を25%まで買い増せば、日本の会社法に基づきルノーが持つ日産の議決権が消える。持ち株会社を設立し、日産とルノーが事業会社としてぶら下がる案もある。両社の間には「改定アライアンス基本合意書(RAMA)」と呼ばれる協定がある。ルノーは日産の合意なしに日産株を買い増せないが、日産は仏政府などから経営干渉を受けたと判断した場合、ルノーの合意なしにルノー株を買い増せる。日産はこの協定をカードにルノーと見直し協議を進める可能性がある。ただ、ルノーは仏政府にとって数少ない虎の子の企業だ。仏国内では有力企業が次々と外資の手に渡っている。支持率低迷にあえぎ国内投資や雇用を重視するマクロン政権が、現在のルノーの支配的地位を譲る事態は想定しにくい。日産は12月17日に取締役会を開きゴーン元会長の後任人事を協議する。ルノーは後任会長を送る意向を示したのに対し、西川社長を軸に検討する日産は拒否したとされ、水面下で両社の綱引きはすでに始まっている。泥沼の主導権争いを避け、妥協点を見いだせるか。日仏連合は岐路に立つ。

*1-3:
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20181202&ng=DGKKZO38440120R01C18A2EA2000 (日経新聞 2018年12月2日) 3社連合、崩れる仏の思惑、マクロン氏「維持・安定を」
 フランスのマクロン大統領が日本時間1日未明、日産自動車と仏ルノー、三菱自動車の3社連合について安倍晋三首相と議論した。ルノーの筆頭株主である仏政府が日産元会長のカルロス・ゴーン容疑者の逮捕後の混乱収拾に乗り出す姿勢を示すことで、3社の「対等な関係」を目指す日産をけん制する。交渉役のゴーン元会長が不在になり、影響力拡大を狙う仏政府の思惑が崩れ始めている。
20カ国・地域(G20)首脳会議に合わせた会談は15分という短時間だった。マクロン氏は「3社連合を維持し、安定させるのが重要だ」と語り、仏政府が支援する姿勢を明確にした。逮捕されたゴーン元会長については「司法的な手続きは進めなければいけない」と日本の司法制度を尊重する姿勢もみせた。会談は当初予定されていなかったが、マクロン氏の呼びかけで開かれた。直前の11月29日に日産・ルノー・三菱自の3社トップが会合を開き、今後の方針は3社による合議制で決めると合意していた。仏政府にしてみれば、「ルノー優位の連合」という構図にヒビが入った瞬間だった。日仏首脳会談を開く重要な狙いは、ルノー優位の連合の関係見直しを求める日産へのけん制だ。かつて国営の「ルノー公団」だったルノーは仏国内で4万8000人の雇用を抱える、いわば「国策企業」だ。日産車の生産移管などで仏国内での雇用を創出している。マクロン氏の支持率は17年の就任以来最低の2割台に急落している。自ら連合の維持を訴えることで、ルノーを巡る経営や雇用への不安を打ち消そうとする狙いがある。経済産業デジタル相だった2015年、マクロン氏はルノー株を買い増して影響力の拡大を図った。さらに日産・ルノーの経営統合を目指したとされ、日産から激しい反発を生んだ。ゴーン元会長の逮捕後に遠心力を強める日産に対し、マクロン氏が首脳会談で自らの指導力を見せつける必要があった。G20の直前、仏経済紙レゼコーは政府幹部の「我々には『重火器』がある。つまり、ルノーに日産株を買い増しさせる」との声を伝えた。信頼関係の崩壊につながる極めて荒っぽい提案だが、仏政府内に強硬派がいることを日産に知らしめた。自動車行政を所管するルメール経済・財務相は、はっきりと仏政府が介入する姿勢をみせている。11月下旬の仏メディアの取材に「ルノーと日産が互いの出資比率を変えることを望まない」と語った。

*1-4:https://digital.asahi.com/articles/DA3S13789560.html (朝日新聞 2018年11月29日) 報酬合意文、秘書室で秘匿 取締役会に諮られず ゴーン前会長 関与の幹部、司法取引
 日産自動車の会長だったカルロス・ゴーン容疑者(64)が約50億円の役員報酬を有価証券報告書に記載しなかったとして逮捕された事件で、この約50億円を退任後に受け取ることで日産と合意した文書は、秘書室で極秘に保管されていたことが関係者への取材でわかった。東京地検特捜部は、文書作成に直接関与した秘書室幹部と司法取引し、将来の支払いを確定させた文書だという証言を得た模様だ。関係者によると、この文書は役員報酬を管理する秘書室で管理され、経理部門や監査法人には伏せられていた。退任後に支払うという仕組みは取締役会にも諮られなかったという。ゴーン前会長と前代表取締役のグレッグ・ケリー容疑者(62)は、2014年度までの5年間の前会長の報酬が実際は約100億円だったのに、有価証券報告書に約50億円と虚偽記載したという金融商品取引法違反の疑いで逮捕された。関係者によると、ゴーン前会長は高額報酬への批判を避けるため、各年度に受け取る額は約10億円にとどめたうえで、さらに約10億円を退任後に受領するという文書を毎年、日産と交わしていたという。特捜部は、外国人執行役員と共に、ゴーン前会長に長年仕えた秘書室の日本人幹部と司法取引。捜査に協力する見返りに刑事処分を減免することにした。秘書室幹部は合意文書を特捜部に提供。さらに文書の解釈について、退任後に支払う約10億円は約20億円の年間報酬の一部で、将来の支払いが確定しているなどと証言したとみられる。特捜部は、司法取引しなければ入手困難な文書を得たうえ、解釈に関する当事者の証言を得られたことを重視し、隠蔽(いんぺい)工作と判断した模様だ。
■「従業員のやる気考慮」 ゴーン前会長、容疑否認
 ゴーン前会長が、約20億円の報酬のうち毎年開示するのは約10億円にとどめ、差額の約10億円を退任後に受け取ることにしたとされる点について、「(公表したら)従業員のモチベーションが落ちると思った」と話していることが、関係者への取材でわかった。関係者によると、2008年秋のリーマン・ショックで日産の業績が下がったため、ゴーン前会長の報酬も減った。その後、日産の業績は回復。ゴーン前会長は報酬を元に戻そうと考えたが、開示すれば従業員のやる気を失わせてしまうと考えたという。退任後の報酬の支払いについては「確定したものではなく、記載義務はない」と容疑を否認。弁護士でもあるケリー前代表取締役に相談して「『合法な方法です』と言われた」とも主張しているという。

*1-5:https://www.nikkei.com/paper/related-article/tc/?b=20181201&bu=BFBD9496EABAB5E (日経新聞 2018年12月1日) 報酬不記載の違法性焦点 ゴーン元会長逮捕1週間、先送り80億円、開示対象? 受領額確定か否か
 日産自動車元会長のカルロス・ゴーン容疑者(64)の逮捕から26日で1週間を迎えた。役員報酬約80億円の過少記載方法の違法性を巡り、検察側とゴーン元会長側が争う構図が鮮明になってきた。業績をV字回復させたカリスマ経営者は、逮捕容疑以外にも会社を「私物化」していた不正行為が発覚。事件を機に、日産・ルノーの資本関係の見直し協議が本格化するなど「ゴーン元会長退場」の余波は広がる。関係者によると、有価証券報告書に記載されていないゴーン元会長の役員報酬は▽受け取りを先送りした金銭報酬=8年間で計約80億円▽株価上昇と連動した額の金銭を受け取れる「ストック・アプリシエーション権」(SAR)=4年間で計約40億円分――の2種類があるとされる。関係者によると、2種類のうち受領を先送りした報酬は毎年約10億円、2018年3月期までの8年間で計約80億円に上る。東京地検特捜部が金融商品取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)にあたるとしてゴーン元会長らを逮捕した容疑は、このうち15年3月期まで5年間の約50億円を対象としたもようだ。日産では近年、役員報酬の総額上限を29億9千万円と設定。ゴーン元会長は上限内で各役員への報酬の配分を決める権限を持ち、自身は年20億円前後としていた。だが、10年に報酬1億円以上の役員について報酬額の開示が義務化されると、高額報酬への批判を避けるため、約10億円の受領を退任後などに先送りし、有価証券報告書に記載しないことにしたという。金融庁によると、内閣府令では開示対象の報酬を「職務執行の対価として会社から受ける財産上の利益」と定義。ストックオプションや退職慰労金なども含まれ、開示義務は受け取る見込み額が明らかになった時点で生じるという。青山学院大の八田進二名誉教授(会計学)も「支払いの時期にかかわらず、額が決まった時点で記載の義務が生じる」と説明する。東京地検特捜部は報酬先送りについて記載した文書を入手するなどしており、ゴーン元会長が受け取る報酬額は固まっていたので受け取り前でも記載の義務はあったと判断しているもようだ。ただ、先送り分の引当金などは計上されていなかったとみられ、ゴーン元会長らは「確実に支払われると決まっていなかった」などと容疑を否認しているという。2種類の報酬のうちSARについても、他の役員は付与された分を記載していたのに、ゴーン元会長は18年3月期までの4年間に得た計約40億円分を記載していなかったとされる。SARの場合、受け取れる金額は権利を行使した時点の株価で決まる。会計実務に詳しい専門家によると、開示義務が生じるのはSARを付与された時点とする考え方がある一方、権利行使が可能になった時点だとする考え方もあり、運用は各企業に委ねられているのが実情という。金商法に詳しいある弁護士は「開示ルールが必ずしも明確ではなく、SARの不記載を立件するハードルは高いだろう」と話している。投資家の判断の元となる有価証券報告書の虚偽記載は証券市場の公正さに対する信頼を損なう犯罪とされ、検察当局は厳しい姿勢で臨んでいる。06年には法定刑も「5年以下の懲役もしくは500万円以下の罰金」から「10年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金」に引き上げられた。一般的には、投資の判断材料として、役員報酬の重要度は財務諸表などより低い。しかし、企業統治の健全さなどを評価する指標として開示が義務化された経緯もあり、特捜部は巨額の報酬を株主や投資家の目から隠した悪質性は高いと判断しているもようだ。

*1-6:http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2018120201001679.html (東京新聞 2018年12月2日) 報酬文書、日産の別幹部もサイン ゴーン前会長側近が作成
 日産自動車の前会長カルロス・ゴーン容疑者(64)=金融商品取引法違反の疑いで逮捕=が有価証券報告書に記載せず、退任後に受け取ることにした報酬の支払い名目を記した文書に、作成者の前代表取締役グレゴリー・ケリー容疑者(62)=同=のほか、当時のより上位の役員クラスの日産幹部がサインしていたことが2日、関係者への取材で分かった。文書はケリー容疑者が常務執行役員だった2010年ごろから数年間、毎年作成されていた。ケリー容疑者は、自分やゴーン容疑者らだけでなく、会社としても退任後の報酬支払いを把握していた根拠だと主張するとみられる。

*1-7:http://qbiz.jp/article/145135/1/ (西日本新聞 2018年12月3日) 「うその自白耐えられない」 ゴーン容疑者、一貫し容疑否認か
 金融商品取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)の疑いで逮捕された日産自動車の前会長カルロス・ゴーン容疑者(64)が周囲に「うその自白をすると自分の評判が落ちるので耐えられない」と話していることが3日、関係者への取材で分かった。一貫して容疑を否認しているとみられる。ゴーン容疑者は、2011年3月期〜15年3月期の5年間に、自分の報酬を約50億円少なく記載した有価証券報告書を提出した疑いで逮捕された。毎年の報酬額を約20億円と設定し、このうち退任後に受け取ることにした半分程度を記載しなかった点が容疑となった。関係者によると、ゴーン容疑者は退任後の報酬について、東京地検特捜部の調べに「あくまでも希望額だった」などと供述。記載していない事実は認めた上で、支払いは確定しておらず、報告書への記載義務はなかったと主張している。さらに、側近の前代表取締役グレゴリー・ケリー容疑者(62)=金融商品取引法違反の疑いで逮捕=に事前に確認し、記載しなくても合法との回答を得ていたとも説明しているという。不記載の総額は18年3月期までの8年間で総額80億円を超えるとみられ、特捜部は直近3年分の立件も検討している。

*1-8:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20181201&ng=DGKKZO38423100R01C18A2MM8000 (日経新聞 2018年12月1日) 役員報酬 きしむ日本流、「ゴーン問題」で注目 水準・透明性に課題
 日産自動車元会長カルロス・ゴーン容疑者の問題を受け、高額批判も出ている役員報酬。ただ、主要企業のトップの報酬を比較すると日本は米国の1割程度にとどまり、国際的には低い水準にある。経営者も含めた人材獲得のグローバル競争で後れを取る恐れがある。役員報酬を適切な水準へと見直していくべきだとの指摘があり、同時に決定過程を透明にするといった対応も課題となる。開示されているベースでゴーン元会長の2017年度の報酬は仏ルノーや三菱自動車の分も含めて約19億円にのぼる。日産からは7億3500万円で、役員報酬全体(18億5700万円)の約4割を得ていた。ゴーン元会長の報酬は過少に記載されていた疑いがあり、全体に占める比率はもっと高かった可能性もある。投資資金や会社経費を巡る「私物化」疑惑もある。海外子会社を通じてブラジルやレバノンに自宅用の住宅を購入させたり、姉と実態のないコンサルタント契約を結んで報酬を払ったりしていたとされる。様々な問題が指摘されてはいるが、ゴーン元会長の報酬額が国際的に突出しているわけではない。半導体大手ブロードコム約117億円、放送大手CBS約79億円、旅行サイトのトリップアドバイザー約54億円――。米労働総同盟・産別会議によると米国では17年も多くの最高経営責任者(CEO)が高額な報酬を得た。自動車大手のCEOだと米ゼネラル・モーターズが約25億円、米フォード・モーターは約19億円だ。社会主義的な風潮から高額報酬に批判的なフランスでも、医薬大手サノフィや化粧品大手ロレアルのCEOは約12億円を得ている。日本の役員報酬の平均水準は海外を大きく下回る。米コンサルティング会社、ウイリス・タワーズワトソンがまとめた17年度の日米欧主要企業のCEO報酬によると、米国の14億円に対して日本はわずか1.5億円。ドイツや英国、フランスと比べても2~3割の水準にとどまる。「総中流」時代のなごりで格差への抵抗感が強く、高額な報酬を避ける経営者が多いためだ。報酬が1億円以上だと個別名の開示が必要になるため、「9990万円」程度に抑えるケースも珍しくない。業績や株価に連動する「インセンティブ報酬」の比率が国際的に低いという違いもある。
●低成長でも高報酬
 この結果、日本の役員報酬には「上方硬直性」が生じている。国内上場企業の17年度の役員報酬合計は約8800億円と10年度比で31%増加。だが、業績ほどには伸びていないため、純利益に占める役員報酬の比率は同期間に4%から1.95%へと半減した。個別企業でみても報酬と業績の関係はあやふやだ。東京商工リサーチのデータで国内主要100社の取締役ひとりあたりの報酬を算出し、業績動向を反映しやすい時価総額との関係を調べたところ、17年度中に「時価総額が大きく伸びたのに報酬は低位」の会社が2割にのぼった。反対に「時価総額の伸びが鈍いのに報酬は高位」も2割弱あった。日産は時価総額が約3%増と低成長なのに、報酬額は約2億700万円と全体の平均値を上回る。ゴーン元会長の報酬が過少に記載されていたなら、「低成長・高報酬」の度合いはもっと強かった計算になる。
●委員会26%どまり
 日本の役員報酬には「決め方が不明確」という問題もある。報酬総額は株主総会の承認が必要だが、どう配分するかは「社長一任」としている企業が多い。歴史的に低い水準の報酬が続き、突っ込んだ議論が求められてこなかったためだ。一方、米上場企業は「報酬委員会(総合2面きょうのことば)」の設置が義務付けられている。報酬委は外部の有識者などを交え、客観性をもたせながら取締役など個人別の報酬を決めるための仕組みだ。日本で報酬委(任意導入含む)を設置しているのは日立製作所やブリヂストンなどの932社。全上場企業の約26%にすぎない。日産も報酬委はなく、ゴーン元会長は自身の報酬を「お手盛り」で決めていたとされる。「透明性と緊張感のある報酬制度は競争力の源泉」と一橋大学の伊藤邦雄特任教授は指摘する。外国人も含めて優秀な経営者を引きつけるには、日本の役員報酬は欧米に見劣りしない水準へと切り替わっていく必要がある。報酬委などの活用で透明性を高め、利害関係者の納得を得やすくするといった制度上の工夫がその第一歩になる。

*1-9:http://www.tokyo-np.co.jp/article/economics/list/201811/CK2018112202000162.html (東京新聞 2018年11月22日) 日産、報酬制度変更へ ゴーン容疑者 ルノーと統合模索
 日産自動車が、代表取締役会長カルロス・ゴーン容疑者(64)が役員報酬を過少に申告したとして逮捕されたことを受け、役員報酬制度を変更する検討に入ったことが二十一日分かった。事実上、ゴーン容疑者の裁量で報酬額を決めてきた現行の仕組みが不正の温床と判断した。フランス大手ルノーとの企業連合の在り方も見直す。二十二日に臨時取締役会を開き、ゴーン容疑者の会長職を解く。ゴーン容疑者が今年九月の取締役会でルノーとの資本関係の見直しを提案していたことも判明した。役員報酬は決定過程を透明化するため、報酬委員会を新設し「委員会設置会社」に移行することなども検討する。甘い内部監査の是正は急務で、関係者は「報酬委員会などの設置は避けられない」と話す。現在の社内規定で各役員の報酬は、取締役会議長でもあるゴーン容疑者が、共に逮捕された代表取締役のグレゴリー・ケリー容疑者、西川広人社長と相談して決まる。企業連合の見直しは、ルノーから日産への出資比率の引き下げや新たな役員構成が焦点。英紙は二十日、ゴーン容疑者がルノーと日産の経営統合を考えていたと報じた。日産経営陣はかねて統合論に反発しており、ゴーン容疑者の失脚が関係再構築の呼び水となる。ただ日産がルノー株の15%を持つのに対し、ルノーは日産株の43・4%を保有し発言権が強いため、調整は難航が予想される。一方、ルノーは二十日に臨時取締役会を開き、ナンバー2のティエリー・ボロレ最高執行責任者が最高経営責任者(CEO)代理に就任する人事を決めた。ゴーン容疑者の会長兼CEO職の解任は先送りした。日産経営陣で代表権を持つ取締役はゴーン、ケリー両容疑者が欠け西川氏だけになり、補充が必要だ。他の取締役は六人で、うち二人がルノー出身。両容疑者を早期に取締役からも外すため臨時株主総会を開くことも議論になりそうだ。

<不適切な合併・買収に関する論評>
*2-1:https://www.nikkei.com/paper/morning/?b=20181118&d=0 (日経新聞 2018年11月18日) 小粒になった日本企業、「寿命」突出の89年 成長鈍く
 日本企業の「小粒化」が進んでいる。世界的な企業規模の大型化についていけていないためで、米国では企業の1社あたり時価総額が2000年末の2.6倍になった一方、日本は1.7倍にとどまる。企業再編などによる「新陳代謝」が鈍く、成長力の差を生んでいるとの指摘が多い。企業の競争環境の見直しなどが今後の課題となる。
●中国に逆転許す
 00年末に9.9億ドル(約1120億円)だった日本の1社あたり時価総額は17年末に17億ドルまで増えた。だが、米国は27.5億ドルから72.3億ドルと大きく伸ばし、「日米格差」は2.8倍から4.3倍に広がった。5億ドルだった中国は5.4倍の27億ドルと日本を逆転。「日中格差」は0.5倍から1.6倍に拡大した。米国ではアマゾン・ドット・コムやグーグル親会社のアルファベット、中国ではアリババ集団や騰訊控股(テンセント)など若いネット企業が急成長したためだ。日本でもソフトバンクグループやファーストリテイリングなどが健闘しているが、そうした新たな成長企業の数・時価総額の増え方などで見劣りする。ネットビジネスでの出遅れ、土台である日本経済の低迷、規制緩和の鈍さ、経営者マインドの保守性、語学力も含めたグローバル人材の不足――。背景には様々な要因がある。なかでも特に深刻だと多くの専門家が指摘するのが「企業の新陳代謝が国際的にみて鈍い」(帝京大学の宿輪純一教授)という問題だ。確認のために上場企業の「平均寿命」を試算してみた。期中の新規上場を含めて上場社数の年間平均が100社だったとする。上場廃止が10社なら、1年で10分の1の企業が消えたことになる。全企業が入れ替わるには10年かかるペースなので、「平均寿命(上場維持年数の平均値)」は10年だと見なせる。この計算だと17年時点で米ニューヨーク証券取引所の上場企業は「15年」、英ロンドン証取は「9年」。これに対して日本取引所の上場企業は「89年」と極端に長寿だと分かった。NY証取では約130社が新規に上場し、これを上回る150社強が消えた。この結果、上場社数(期中平均)は約2300と前年より約60社減少。上場社数は16年から減少が続いている。米証券取引委員会への提出資料で上場廃止の理由(上場投資信託など除く)を調べると、約8割がM&A(合併・買収)によるものだった。競争力の一段の強化を狙った大型再編や独自の強みをもつ小型企業の買収が多発しているからだ。17年にはダウ・ケミカルとデュポンが統合し、世界最大の化学会社ダウ・デュポンが誕生している。
●「長寿」があだに
 一方、日本取引所は100社強増えた一方で、上場廃止は40社どまり。上場社数は増え続けており、3600社弱と世界的にも多い。再編などの動きが鈍いためで、「日本には成長ではなく、企業存続を目的とする経営者が多い」(みずほ証券の菊地正俊氏)との指摘がある。景気低迷が長期にわたって続いたうえ、日本では銀行の力が強いため、M&Aなどを駆使して積極的に成長を狙うよりも、借金返済が確実になる安定型の経営が選ばれやすいようだ。これが突出した「長寿」につながっている。このため倒産も国際的にみて少ない。帝国データバンクによると17年までの10年間に倒産した日本の上場企業は79社。同期間に米国では総資産1億ドル以上に限っても331社が連邦破産法11条を申請している。日本と違って米国では経営上の選択肢と割り切って早めに倒産を申請するので再生も容易になる。倒産には時代遅れの企業から資本や人材を解き放ち、新たな成長企業を育ちやすくする効用もある。成長志向の弱さという問題は以前より悪化している可能性がある。日銀が年6兆円規模で上場投資信託(ETF)を購入し、東証1部に上場してさえいれば一定の買いが入る。業績低迷を放置していても株安による市場からの圧力を受けにくくなった。成長ではなく上場維持だけを目的にする経営マインドの土壌になっている。起業を促しつつ、事業や会社そのものの売却、破綻処理などのハードルを下げ、経営者には成長へのインセンティブを明確にする――。企業の新陳代謝を活発にするトータルな施策が、成熟期に入った日本経済には一段と重要になっている。

*2-2:https://medium.com/@newsgimon/東芝-westinghouse失敗の本質-1-9bbf2894469e (ニュースノギモンNov 19, 2017 抜粋)東芝:Westinghouse失敗の本質(1)
 日本のマスコミは、よく日本のモノづくりを礼賛していますが、ときに行き過ぎているのではないかと思うことがあります。確かに日本の電動自転車やシャワートイレに感動する外国人は多いでしょう。ただ、そういった画期的な製品というのは、ここ数年出ていないように見受けられます。日本のモノづくりの現場を同業の外国人が視察して感動する、そういう番組があるのも「もう一度自信を取り戻したい」という願望の裏返しに思えてなりません。日本のモノづくり神話、本当は疑っているんですよね? 率直にいうと、日本の製造業は大手になればなるほどモノづくりカルチャーというより、モノ(単一の)カルチャーに支配されていているのではないかと思っています。一つの企業文化の中に押し込められているので、悪い方向に流れ始めても軌道修正ができない。悪い方向に進んだ結果、失敗が起きても敗因分析はされない。なぜなら、モノカルチャーでは自己と他者が同一視されるので、誰かに責任をとらせるようなことをすると自分に返ってくるようで怖いのです。大手製造業では、多くの人は新卒で入社し、なんなら寮や社宅で同じコミュニティに属し、上意下達が根付いていて、「それ違うんじゃないの?」という気力が抜け落ちて行きます。名門といわれる企業ほど、外国人・中途採用にとって狭き門であり「異論」を持つ人間が主流派になりづらい現状があるのではないでしょうか。「それ違うんじゃないの」という人不在で突き進んで行った代表例、それが東芝だと思っています。僭越ながら東芝社内にかわり私めが失敗分析をさせていただきますね。東芝は、子会社であるWestinghouseの原子力事業により、巨額の損失を抱えることになりました。このことについて日本のマスコミの多くは、良心的にも「東芝がダマされた」「東芝は見抜けなかった」という論調で掲載しています。その根底にあるのは「日本の生真面目な製造業は、マネジメントが下手であるため欧米企業の暴走をコントロールできない」という思想ではないでしょうか。マネジメントが下手なのは事実かもしれませんが、果たして問題はWestinghouseの暴走にあったのでしょうか。
(あらすじ)
 この2年間、東芝は話題につきなかったので、Westinghouseにフォーカスしてことの経緯をざっくり振り返ります。
i)東芝が買ったWestinghouse(WEC)がShawの子会社のStone& Webster(S&W)という会社と原子力発電所の建設を受注した
ii)工期が遅れた
iii)プロジェクトの責任一本化のためにS&Wを買った
iv)S&Wの工期遅れによる損失がものすごいとわかった
といった感じです。
●買収における失敗
①高すぎた買収額
 そもそも東芝がWestinghouseを買収しようとした際、市場の想定価格は18億ドル程でしたが、東芝はライバル達に競り勝つために54億ドルで交渉権を得ました。当時の記事に、「3年単位で25億ドルのキャッシュフローを稼げるから大丈夫」という東芝幹部の発言が残っています。東芝の当時の主力事業は、半導体やハードディスクなど投資の規模・スピードともにもとめられる事業でした。その需要サイクルから考えると、キャッシュフローが一定に維持できるか疑問が残ります。一方で、東芝にしてみるとだからこそ、安定した収益の柱としてエネルギーにかけたのでしょう。結論からいうと、数年後のリーマンショックによる景気後退と、高すぎた買収額と企業価値とのギャップ(のれん)により、東芝のガバナンスは歪められていきます。
②買収がゴールだった時代
 2006年は、日本板硝子が英ピルキントンを6,160億円、ソフトバンクが英ヴォーダフォンを1兆7500億円、JTが英ガラハーを2兆2000億円で買収するなど、大型買収が目白押しでした。この年、日本企業による外国企業の買収が、始めて外国企業による日本企業買収を上回り、まさに外国企業買収のれい明期といえます。成功例として語られるM&Aもある一方で、この東芝の件については「どのように統合し、ガバナンスを利かせていくか」が考えられていなかったように思えます。もちろん、統合後の事業シナジーは描かれていました。問題は買収される側の心理をよく理解していなかったということです。日本企業の生え抜き文化では、経営陣の指示のもと組織は粛々と機能していくため、従業員への配慮を忘れてしまったのかも知れません。
③一方通行のシナジー戦略
 東芝の描いた絵というのは、次のようなものでした。原子力ルネッサンスが花開く(原子力市場が再興する)といわれるアメリカや、日本企業にハンディキャップのある中国や欧州市場でWestinghouse(WEC)にマーケティグを頑張ってもらい、その上がりをいただこう。WECがとってきたプロジェクトに東芝のタービンや周辺機器も入れてもらおう。原子力発電所の設計技術は、大きくBWR(※1)とPWR(※2)の2つに分けられています。東芝はBWRの会社だったので、世界の3/4を占めるPWR市場にリーチできることに当時の報道ではフォーカスされています。一方、当の東芝は、WECの販売力への期待もかなり大きかったようです。スピード感が重視される海外案件は、日本企業にとって依然言葉の壁、規制の壁が大きく立ちはだかります。東芝のプレスリリースに記載された以下のコメントにも、WECの裁量に任せる感が出ていますね。その方がスピーディに売り上げが上がっていくとの想定でしょう。
※1:沸騰水型軽水炉、※2:加圧水型軽水炉、加圧水型の方が安全性が高いといわれている
(ウェスチングハウス社については、これまでの経営体制と方針を尊重し、引き続き 独立性を保持した事業運営が行われます。また、当社およびパートナー企業とのシナ ジーが最大限にはかられるよう体制を強化し、さらなる事業の拡大を目指します。 出典:2006年10月東芝プレスリリース)
④自由裁量≠ロイヤリティ
 買われた側のWECの人たちはどう思うでしょうか。「このM&AでWECはどう成長させる気なの?」となりませんか。相互に刺激し成長していくビジョンがなければ、モチベーションは下がります。独立性が保たれるのは結構ですが、リーダーシップや共有の成長ビジョンが示されないと、「金持ちがバックについた」くらいの感覚になっても致し方ないように思えます。買収時に発表された運営体制の図には、常勤の取締役2人、CFO(最高財務責任者)・CCO(最高調整責任者、東芝の造語)、コーディネーションスタッフの派遣を行うと書かれています。コーディネーションオフィスは、人員が記載されていませんが、WEC内に1つ東芝内に1つ作られていたようで、恐らく本社との情報共有くらいの役割しか担っていなかったのでは、と思う次第です。経験上ですが(※)、直轄の現地法人であっても本社に自動的に情報が入るとはを限りません。必ず、どの情報をどの様に誰に伝えるか選択されます。世界のPWR特許の4割を抑えている名門WECが、買収されたからといって、真っ正直にタイムリーに報告しようとするでしょうか。コーディネーションオフィスをおいたぐらいでは、恙無い情報共有とは至らないはずです。ましてガバナンスを利かせるという点においては、いうに及ばずです。
※:東芝での勤務経験はございません。悪しからず。
⑤ふりかえり
 買収時における失敗要因は、以下に集約されるのではないでしょうか。
  1.買収額が高すぎた
  2.買収後のビジョン共有ができていなかった
  3.Westinghouseの信頼獲得に失敗した

*2-3:https://gendai.ismedia.jp/articles/-/50896 (週刊現代 2017.2.7 抜粋)銀行・生保・商社・自動車…これから始まる一流企業「大合併」、人口減少社会で生き残るために
 「勝者総取り」の時代だ。ごく一部の企業だけが突出して成長して輝く一方で、大多数は無残に死んでいく。勝ち残るためにはライバルとも手を組む。経営者たちはもう動き出している。
●「メガ合併」の衝撃
 みずほフィナンシャルグループ(FG)と三井住友トラスト・ホールディングス(HD)が、傘下の資産管理銀行を統合すると報じられてから約2週間。いまだ銀行業界では、この統合劇による衝撃の余波が収まらない。今回の統合は、コストやシステム運営費を減らしたいという思惑が一致したライバル同士が手を組んだもの――。新聞やテレビではそんな経済解説がなされているが、銀行業界のインナーたちはまったく違った視点からこの統合劇を眺め、戦々恐々としている。「現在、日本の銀行業界は青息吐息の経営を強いられています。ただでさえ人口減少で経済のパイが縮小して利ザヤを稼ぎづらくなっている中、日本銀行がマイナス金利政策を導入したことでトンネルの先がまったく見通せない状況に追い込まれている。そうした中で、今回の統合話が急浮上してきたことの意味は何かと言えば、メガバンクですら生き残るためには手段を選んでいられず、系列を超えた金融再編が一気に幕を開ける可能性が出てきたということです。すでに日本の銀行界では、'90年代後半から'00年代前半にかけて、不良債権問題から経営破綻、経営危機が勃発し、現在の3メガに集約された経緯があります。あれから10年以上が経ち、この体制すら維持するのが厳しくなってきた。ここからは、生き残りをかけた大合併劇が起こり得る」(元日本興業銀行金融法人部長で経済評論家の山元博孝氏)。そんな金融再編の「目玉」として銀行界で噂になっているのが、みずほと三井住友FGの「メガ合併」という驚愕のシナリオである。順を追って説明すると、まず今回はみずほが出資する資産管理サービス信託銀行と、三井住友トラストが出資する日本トラスティ・サービス信託銀行の統合だが、その先にはみずほFGと三井住友トラストHD同士が一緒になる可能性がある。みずほ幹部が、「確かにそれは検討されている」として内情を明かす。「現在のみずほFGの佐藤康博社長は、信託銀行部門を強化したいという想いが強い。信託銀行は普通の銀行と違い不動産業ができるため、低金利時代にあって高い仲介手数料を稼げる絶好のビジネスになるからです。佐藤社長は、みずほ銀行とみずほ信託銀行を統合させて、全国の支店で不動産業を展開させる壮大な構想まで考えていた。みずほ信託銀行が三井住友トラストHD傘下の三井住友信託銀行と一緒になれれば、まさにその強力な一手となり得る」。三井住友トラストも、「みずほと近づくメリットは大きい」と、三井住友グループ幹部は言う。「三井住友FGが同じ金融グループ内で自分たちを格下として見るのが気に入らないし、仮に統合となれば経営の主導権を握られるのは目に見えている。そのため、三井住友銀行の國部毅頭取と三井住友信託銀行の常陰均社長は表向き良好な関係だが、水面下での駆け引きは激しくなっている。その点、みずほ相手であれば、交渉次第では『対等合併』という形に持ち込める」。次に、両社がそうして蜜月を深めるほど、三井住友FGとしては黙ってはいられなくなる。三井住友は昨年度にみずほの後塵を拝して業界3位に転落しており、みずほと三井住友トラストが統合すれば、その差は広がるばかりだからである。「そこでいま業界内で語られているのが、三井住友と大和証券グループ本社の『復縁話』です」と、銀行業界を長く取材する金融専門記者は言う。

*2-4: https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20181123&ng=DGKKZO38122570S8A121C1EA2000 (日経新聞 2018.11.23) 「経営者ゴーン」の功罪
 カルロス・ゴーン元会長の「犯罪」に注目が集まっているが、ここでは事件からあえて距離を置き、企業のトップリーダーとしてのゴーン元会長の功罪を分析してみる。ゴーン元会長の日本での歩みの中で最大の衝撃をもたらしたのは、日産に赴任直後の1999年10月に発表した「日産リバイバルプラン(NRP)」だ。当時の日産は業績が長期にわたって低迷し、売れ筋の車にも乏しく、自動車業界でも「終わった会社」と突き放す見方が多かった。その危機を救ったのが仏ルノーから送り込まれたゴーン元会長の聖域なき改革であり、その基本設計であるNRPだ。ほぼ手つかずだった工場閉鎖や人員削減、「系列破壊」とまでいわれた調達改革を断行し、長年の非効率にメスを入れた。影響は自動車だけでなく、隣接産業にも波及した。川崎製鉄とNKKの統合など鉄鋼再編が加速したのは、ゴーン改革による調達先の絞り込みが直接の引き金だった。こうした改革の結果、日産はV字回復を果たした。「業績が悪くなったのはしがらみを断ち切れなかった経営のせいで、開発や生産などの車づくりの実力まで落ちていたわけではなかった。ゴーンさんは私たちにそれを気づかせてくれた」と日産社員は振り返る。自信回復の波は他の日本企業にも広がった。2000年ごろのいわゆるITバブルの崩壊で業績が悪化したのを機に、松下電器産業(現パナソニック)やコマツは事業や関連会社を思い切って整理し、業績を立て直した。一時的な痛みは覚悟のうえでウミを出し、心機一転、再出発する――。基本的な発想はゴーン改革と同じであり、そこから学ぶことも多かったのだろう。コマツの再生を主導した坂根正弘元社長は「ゴーンさんは常に意識する存在だった」と述べたことがある。今から振り返れば、ゴーン元会長が日産の経営に専念していた05年までが最も輝いていた時期かもしれない。ルノーと日産の両社のトップを兼ねるようになって以降はやや精彩を欠いた。中国への積極投資や三菱自動車への出資などで日産・ルノー連合の規模はトヨタ自動車と肩を並べるまでに巨大化したが、収益性やエコカーの技術力などもろもろひっくるめた会社の総合力ではまだまだ差が大きいのではないか。「コミットメント(必達目標)」はゴーン経営の代名詞にもなったが、実は最近の中期経営計画はほとんど未達に終わっている。17年3月期までの6年間の計画「日産パワー88」は期間中に電気自動車を150万台売るという目標を掲げたが、実績は30万台前後にとどまった。目標と結果がここまで乖離(かいり)するのは、そもそも計画を策定する側が市場の実態をきちんと把握できていないか、販売や開発の前線の士気がよほど低下しているのか。いずれにしても、会社が重大な問題を抱えているというシグナルに違いないが、そこに日産経営陣が機敏に手を打つ気配は感じられなかった。過去19年でカリスマ経営者は何を残したか、その歴史的評価が定まるのはゴーン元会長が去ったこれからかもしれない。

<暖簾の会計処理>
*3:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO35330630T10C18A9MM8000/ (日経新聞 2018/9/13) M&A「のれん」費用計上の義務化検討 国際会計基準、見直し、21年にも結論
 国際会計基準(IFRS)を策定する国際会計基準審議会(IASB)が、企業買収を巡る会計処理の見直しに着手したことが明らかになった。買収代金のうち相手企業の純資産を超えて支払った「のれん」と呼ぶ部分について、費用計上義務付けの議論を始め、2021年にも結論を出す。大型のM&A(合併・買収)が相次ぎ、企業財務への影響が強まっていることを考慮した。欧州中心に広がるIFRS採用企業には業績の下押し要因となる。IASBのハンス・フーガーホースト議長が日本経済新聞の取材で明らかにした。のれんは買収先企業のブランド力などの対価と解釈され、買い手企業が資産計上する。日本の会計基準では最長20年で償却し、費用として処理していく。IFRSではのれんの償却は不要な一方、買収先企業の財務が悪化した際などにのれんの価値を一気に引き下げる減損損失の計上を求める。巨額の減損損失を突然公表するケースもあり、投資家から分かりにくさを指摘されてきた。フーガーホースト議長は減損損失を巡る企業の判断が「楽観的になりやすい」うえ、計上のタイミングも「遅すぎる」と指摘した。IASB内でも以前からのれんの会計処理を巡る問題が意識されてきたものの、これまでは現状維持派が優勢で議論を始めてこなかった。しかし、議長の意向などを踏まえ、議論を始めると7月に正式に決定。今後、規制当局など利害関係者から意見を集めたうえで、のれんの償却を義務付けるかどうか判断する。企業業績への影響は大きい。IFRSは欧州を中心にアジアなど120以上の国・地域に広がる。日本では武田薬品工業、三菱重工業、ソフトバンクグループなどが導入している。IFRS採用企業には大型M&Aを実施するケースも目立つ。17年度時点で国内IFRS導入企業(約160社)は約14兆円、欧州の主要600社は240兆円ののれんを抱える。仮に20年間の定期償却が導入されると、日欧合計で年間13兆円の減益要因が生じる計算になる。中国では主要100社で約10兆円ののれんがある。中国の会計基準はIFRSとの互換性を重視しており、今後、対応を迫られる可能性がある。大型M&Aが活発な米国ではのれんは主要500社で340兆円にのぼる。米国会計基準ではのれんの償却は不要。ただ、世界の主流になりつつあるIFRSが変更されれば、米国でも見直し議論が出そうだ。のれんの償却は企業財務の予見性を高め、投資家のメリットとなる。その半面、M&Aのコストを増やし、企業活動を阻害するとの反対論も根強い。IFRSの見直し議論も今後、曲折が予想される。

<ゴーン氏逮捕事件と日本の刑事司法手続き>
PS(2018年12月5、7日追加):ゴーン氏が役員報酬を過少記載したとして逮捕された事件に関して、側近だったケリー氏は、*4-1のように、「退任後の支払いのうち隠したとされる分は、前会長の秘書室が開示義務はないと外部に確認した」と供述しておられるそうだが、有価証券報告書の記載事項について疑問がある時は、外部監査人や金融庁に確認をとり、根回しをしておくのが普通であるため、こちらが事実だと考える。
 もし退職金でなく、コンサルタント料であったとすれば、コンサルタントとしての役務提供を行うか否かによって契約が実行されるかどうかは変化するが、60代で退任するゴーン氏なら、退任後にコンサルタントとして有益な役務提供ができると考えても決しておかしくない(日本には、顧問として残っている元役員も多い)。
 なお、*4-2のように、ゴーン氏逮捕事件は、日本の刑事司法に世界の目を向けさせ、長く是正されてこなかった問題点をあらためて浮き彫りにしているが、これこそ人権を重視する時代に合わせて改革すべきである。そうでないと、危なくてやっていられないからだ。
 また、2018年12月7日、日経新聞は社説で、*4-3のように、「①ゴーン氏事件で、海外から日本の捜査手法や刑事手続きに対する批判が相次いでいるので、見直すべき点は検討課題とすべき」としながらも、「②司法制度や司法文化の違いを無視した単純比較や、誤解、思い込みも目立つ」「③一方的な批判を放置すれば、刑事司法に対する国民の信頼を損ない、国際的な日本のイメージが傷つく」「④証拠のあれこれではなく、明示されたルール、裁判所の関与、人権への一定の配慮の仕組みを伝えればいい」「⑤フランスでは警察による勾留は原則24時間にとどまるが、予審の段階で最長4年に及ぶ勾留が認められる」「⑥欧米では捜査側に幅広い通信傍受や司法取引、おとり捜査といった強い権限が与えられるので、容疑者に弁護士の立ち会いを認めている」「⑦日本では捜査手法は限定しており、取り調べに比重を置いて弁護士立ち会いを認めずに供述を引き出すやり方を採用してきた」などと記載している。
 しかし、④のような高飛車な言い方をするのなら、①は枕詞にすぎないだろう。そして、③を防止するため、法務省・最高裁は制度の違いを丁寧に説明して正しく反論する姿勢が求められるとしているが、②のように、文化や制度が違うから問題なのではなく、有罪と決まってもいない人を生活環境の悪い拘置所に長期間拘留し、弁護士もつけずに自白に導く手法が拷問に近く、これは日本人に対してでも人権侵害なのである。さらに、④の「罪状や証拠は関係ない」「明示されたルール・裁判所の関与・人権への一定の配慮の仕組みを伝えればいい」などとするのは、その制度そのものを問題にしている時に、思考停止だ。私は、⑤のフランスの仕組がどうかは知らないが、ゴーン氏のような司法取引で最初から事実が確認されている“罪”なら24時間の勾留で終わる筈だし、容疑者に弁護士の立ち会いを認めるのは、⑥⑦のような捜査手法とは全く関係なく、司法に詳しくない一般人の人権を守るためだということを忘れていると思う。

*4-1:https://digital.asahi.com/articles/DA3S13798329.html (朝日新聞 2018年12月5日) 「開示義務ない、秘書室が確認」 ゴーン前会長側近
 日産自動車の会長だったカルロス・ゴーン容疑者(64)が巨額の役員報酬を過少記載したとして逮捕された事件で、側近の前代表取締役グレッグ・ケリー容疑者(62)が、退任後の支払いにして隠したとされる分について「前会長の秘書室が開示義務はないと外部に確認した」と供述していることがわかった。相談した外部の弁護士や会計士の事務所名も具体的に挙げているという。違法性の認識をめぐる、東京地検特捜部との対立が鮮明になった。特捜部は2人を金融商品取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)の疑いで逮捕。2010~17年度の8年間の年間報酬は各約20億円だったが、各約10億円は退任後の支払いにして計約90億円を隠蔽(いんぺい)し、退任後はコンサルタント料などの別名目に紛れ込ませて支出する計画だったとみている。一方、関係者によると、ケリー前代表取締役は、前会長の退任後の処遇をめぐる計画は、役員報酬とは無関係だと主張。前会長の秘書室に指示して会計事務所などに法的な問題点を問い合わせたとし、「取締役として各年度に行った職務への報酬ではなく、開示義務はないと確認した」「日産として確認したということだ」と強調しているという。特捜部が有力な証拠とみる関連書類についても、「前会長に見せる時は『退任後の支払いを確約するものではない』と何度も言っていた」と説明しているという。

*4-2:https://www.shinmai.co.jp/news/nagano/20181203/KT181130ETI090020000.php (信濃毎日新聞 2018年12月3日) 刑事手続き 不備を見直す機会に
 日産自動車の前会長カルロス・ゴーン容疑者が逮捕された事件は日本の刑事司法手続きにも世界の目を向けさせた。長く是正されてこなかった問題点があらためて浮き彫りになっている。一つは、捜査当局が被疑者を取り調べる際の弁護士の立ち会いだ。日本の刑事訴訟法は、立ち会わせる権利を明記していない。一方、欧米をはじめ各国が立ち会いを認めている。米国では、1966年の連邦最高裁の判決に基づき、被疑者が権利を放棄しない限り、立ち会わせるルールが確立された。欧州連合(EU)は、権利として保障することを加盟国に義務づけている。取調官が密室で被疑者に自白を迫る捜査手法は、冤罪(えんざい)を生む温床となってきた。弁護士の立ち会いは、取り調べの可視化(録音・録画)と並んで、その弊害を防ぎ、人権を守る手だてである。一昨年の刑訴法改正で、可視化は実現したが、裁判員裁判の対象となる事件などごく一部に限定された上、幅広い例外規定が設けられた。弁護士の立ち会いは、法制審議会の議論の過程で抜け落ち、制度化は見送られた。供述が得にくくなり、真実の解明を妨げる、といった捜査側の主張が背景にある。密室での不当な取り調べを防ぐには、可視化の範囲を広げて事後の検証を可能にするとともに、弁護士の立ち会いを認めることが欠かせない。もう一つの問題点は、否認している容疑者の身柄拘束を長引かせる「人質司法」だ。精神的、肉体的に追いつめて自白を迫るために使われてきた実態がある。裁判所が勾留を認めれば、逮捕してから最長で20日余の拘束が可能だ。ゴーン容疑者も12月10日まで勾留が延長された。検察の勾留請求を裁判所が退ける例が以前より増えたとはいうものの、全体の5%に満たない。起訴されると、拘束はさらに続く。2009年の郵便不正事件で、厚生労働省の局長だった村木厚子さんの勾留は160日余に及んだ。後に無罪が確定している。長く拘束されれば、社会的にも大きな不利益を被る。仕事を失う場合もある。虚偽の自白を強いて冤罪を招けば、取り返しがつかない。否認しているからと不公正な扱いをすることは許されない。憲法は、適正な刑事手続きの保障を重んじ、詳細な定めを置いている。刑事司法制度の現状はそれを踏まえたものになっているか。あらためて見つめ直し、社会に議論を広げる機会にしたい。

*4-3:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20181207&ng=DGKKZO38655270X01C18A2EA1000 (日経新聞社説 2018年12月7日) 海外からの捜査批判に説明を
 有価証券報告書に虚偽の記載をした疑いで日産自動車のカルロス・ゴーン元会長が逮捕された事件で、海外から日本の捜査手法や刑事手続きに対する批判が相次いでいる。こうした指摘に真摯に耳を傾け、見直すべき点があれば検討課題としていくことは当然だ。ただ、日本と欧米とでは刑事司法全体の仕組みが大きく異なる。一連の批判の中には、司法制度や司法文化の違いを無視した単純な比較や、誤解、思い込みによる主張も目立つ。一方的な批判を放置すれば、刑事司法に対する国民の信頼を損なうとともに、国際的な日本のイメージが傷つくことになりかねない。法務省や最高裁には制度の違いなどをていねいに説明し、正しく反論する姿勢が求められる。必要なのは事件の証拠のあれこれではない。明示されたルール、裁判所の関与、人権への一定の配慮。こうした仕組みを堂々と伝えればいい。「公判で明らかにする」「捜査のことは答えない」だけで済む時代は終わっている。海外からの代表的な批判に、容疑者の勾留期間の長さがある。東京地検特捜部による捜査では、地検が48時間、その後は裁判所の判断で通常20日間、身柄が拘束される。一方、フランスでは警察による勾留は原則24時間にとどまる。だがその後、日本にはない制度である「予審」の段階で最長4年に及ぶ勾留が認められている。欧米では捜査側に幅広い通信傍受や司法取引、おとり捜査といった強い権限が与えられている。これに対抗する形で取り調べの際、容疑者に認めているのが弁護士の立ち会いだ。日本では捜査手法は限定して取り調べに比重を置き、弁護士立ち会いを認めずに供述を引き出すやり方を採用してきた。そうした手法が、容疑を認めなければ保釈されない「人質司法」へつながるなど負の側面も持っていることは否定できない。ゴーン事件で相次いだ批判を、日本に適したよりよい刑事司法制度を考えるためのきっかけにしたい。

<日本のガラパゴス世論は世界で拒否されること>
PS(2018年12月6日追加): 「パナマ文書」を挙げ、*5のように、タックスヘイブンを利用して各国首脳や富裕層が節税していることを、すべて脱税や資金洗浄などの犯罪に当たるかのように、日本の全メディアが批判し報道した時期があった。しかし、タックスヘイブンとは、法人税・源泉税などが低い国・地域で、それぞれの国が理由があって決定している法定税率である上、日本も租税条約に調印しているので、タックスヘイブンを利用すること自体を批判するのは的外れである。もし、脱税や犯罪組織の資金洗浄等に使われていれば、それを罪として起訴するのは妥当だが、全てのタックスヘイブン利用事例が脱税や犯罪組織の資金洗浄に結びついているかのような批判をするのは、タックスヘイブンを持っている国やタックスヘイブンを利用している人・法人の全てに対して失礼であり、誹謗中傷・侮辱による実害を与えているケースもある。特に、各国首脳に対して無知で的外れた批判をしていると、日本の外交上の不利益となる上、行き過ぎれば日本をまた孤立に追い込むことになるので注意すべきだ。

*5:https://digital.asahi.com/articles/DA3S13799967.html (朝日新聞 2018年12月6日) 「パナマ文書」、米で初の起訴 弁護士・顧客ら、脱税・資金洗浄の罪
 タックスヘイブン(租税回避地)を利用した各国首脳や富裕層の実態を暴いた「パナマ文書」に関連し、米司法省は4日、文書が流出したパナマの法律事務所「モサック・フォンセカ」の弁護士や顧客ら4人を、脱税や資金洗浄の罪で起訴したと発表した。文書を巡る米国での訴追は初めて。起訴されたのは、同事務所の弁護士でパナマ国籍のラムセス・オーウェンズ被告(50)、顧客でドイツ国籍のハラルド・フォン・デア・ゴルツ被告(81)ら。発表によると、オーウェンズ被告らは2000~17年ごろ、パナマや香港で設立したペーパーカンパニーや架空の基金を使って、複数の顧客について米国での脱税や資金洗浄を行ったとされる。また、フォン・デア・ゴルツ被告は米国在住で納税義務があったにもかかわらず、自身などが設立したペーパーカンパニーを国外の母名義と偽り、脱税に使ったとされる。オーウェンズ被告は逃亡中という。米司法省は今回の起訴について、「国境を越えて行われる金融犯罪や脱税を立件するという、我々の決意を示している」との声明を発表した。パナマ文書の実態は、16年4月に「国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)」が報道し、アイスランドとパキスタンの首相が辞任した。パナマ当局は17年2月、同事務所の創業者2人を資金洗浄の容疑で逮捕。同事務所は今年3月末に閉鎖した。

<入管難民法改正と外国人労働者の受入拡大>
PS(2018年12月7、10日追加):*6-1、*6-2のように、入管難民法が国会を通過し、トランプ大統領の移民政策を批判しながら日本では認めていなかった外国人労働者の“単純労働分野”への就労を認めることになったのは、一歩前進だ。もちろん、受入規模など確定していないことは多いが、市場経済の下で事前に確定するのは無理である。
 また、技能実習生の問題は、外国人労働者に新しい選択肢を用意して技能実習生から移行できるようにしたため、何もしないよりはずっとよいだろう。さらに、首相が「移民政策でない」と言っておられたのは、外国人労働者受入拡大に強く反対する自民党内などの慎重派対策であり、野党が主張するやり方では、技能実習生問題も解決しなかったと思われる。
 今後は、言語・住宅・教育・社会保障等の問題解決が必要だが、全市町村が多言語に対応するのは費用対効果が悪すぎるため、同言語の人に集って住んでもらう方向で住宅を整備し、教育・社会保障は不公正・不公平のないようにすべきと考える。また、人手不足で外国人労働者の受け入れを積極的に行いたい市町村はそれを実行して共生するようにし、従来の住民だけでやりたい市町村はそうすればよい。しかし、市町村に選択の余地ができたので、まずは市町村が総合計画を作って、それに基づいて外国人労働者を受け入れ、必要な支援を国に要請すれば、あまり混乱なく結果が出ると思う。
 入管難民法が国会を通過したことについて、日本農業新聞は、*6-3のように、「①特定技能1号の創設が柱で、これは家族の呼び寄せを認めない」「②1号より高度な技能試験に合格すれば特定技能2号になれ、在留期間に上限がなく家族を呼び寄せられる」「③政府は農業では2号の人材を求める要望はないとして当面1号の受け入れに限り、人材派遣業者が雇用契約を結んで複数農家に派遣する形態も認める」としている。①②は、状況を見ながら判断していくことになるだろうが、③は農業では必要であり、この仕組みは外国人に限らず日本人にも有効だ。また、遺伝資源の海外流出は、技能実習生に技術移転すれば当然のこととなり、技術移転をやめ知的財産権の保護意識を高めれば解決する。
 また、西日本新聞は、*6-4のように、「九州・沖縄と山口の9県計293市町村のうち4割超の128自治体で、①高齢化 ②人口減少に伴う他産業の雇用減により、介護サービスなど医療・福祉業が雇用の最大の受け皿になった」としている。①は、今後、日本全国で次第に起こることだが、②の人口が減少したから他産業で雇用が減少するというのは、モノやサービスの需要内容が変化するだけで、輸出も可能であるため、短絡的過ぎると思う。
 なお、内閣府の高齢社会白書によると、2017年の高齢化率は、沖縄・福岡以外の7県で29.2〜33.4%と全国(27.7%)を上回り、2045年には9県とも6.3〜10.4ポイント上昇する見通しだそうで、医療・福祉分野は人手不足で、入管難民法改正による外国人労働者の受け入れ拡大では介護業も対象になったが、外国人労働者を含めた人材確保に加え、機械化による生産性向上や高齢者が暮らしやすくなる仕組み作り などが不可欠であることは間違いない。

  
  2018.11.29新潟日報  2018.12.8東京新聞 2018.12.1西日本新聞(*6-4より)

*6-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20181208&ng=DGKKZO38698860X01C18A2EA2000 (日経新聞 2018年12月8日) 「選ばれる国」へ制度設計、外国人受け入れ5年最大34万人 生活支援や待遇、政省令に先送り
 外国人労働者の受け入れを拡大する出入国管理法改正案は日本社会のあり方を変える。政府は28日に具体的な対策をまとめ、2019年4月の制度開始へ準備を加速する。「選ばれる国」へ外国人労働者への生活支援、待遇の改善を急ぐ。「選ばれる国」へ日本の賃金水準がアジアの外国人労働者にとって魅力的に映るのか。新制度の対象となるのは比較的低賃金の職種が多い。中国やタイでも少子高齢化や労働力不足が進み、アジアのなかでも人材獲得競争は激しくなる。日本の賃金水準はライバルとなるアジア諸国に比べ突出して高いとは言えない。日本貿易振興機構(JETRO)の17年度の調査によると、一般工の賃金は東京で月額2406ドル。香港は1992ドル、シンガポールは1630ドルと日本に迫る。政府は外国人労働者の賃金水準について「日本人と同等以上」を支払うように求める。外国人労働者が増えることで日本人の賃金水準も下がるのではないかとの懸念は根強い。人手不足が深刻な地方ではなく、賃金水準が高い首都圏など都市部に外国人が集まるとの予測がある。制度は法律ではなく、政省令で決めるものが多い。今後5年間の受け入れ見込み数を分野別の運用方針で示す。どのくらいの外国人を受け入れるかが分からなければ、企業は対応しづらい。法務省は11月、新たに外国人労働者を受け入れる14業種を所管する省庁が推計した受け入れ見込み数を国会に提示した。現時点で5年後に14業種合計で145万5千人の人手が不足すると仮定し、19年4月から5年間で最大34万5150人を受け入れる見通しだ。山下貴司法相は「この数字を上回ることはない」と説明した。上限は外国人労働者が急増した場合、受け入れ停止を判断する基準になる。各業界を所管する閣僚が受け入れ上限に近づいた際に法相に停止の判断を求める仕組みだ。上限は各業界が外国人を採用する目安になる。日本で暮らす外国人が増えれば、様々な問題が生じる。住居の契約に伴う手続きやゴミ出しのルールなど日本の習慣に外国人は戸惑う。ドイツのように欧州では外国人の急増が国内政治を揺るがした例もある。外国人にとって特に高いのが日本語の壁だ。行政手続きに多言語対応は欠かせない。銀行口座の開設や転居に伴う手続きにも多言語が必要だ。日本語教育や行政窓口の設置など地方自治体が実務の大部分を担う。熟練した技能が必要で在留資格の更新と家族帯同が可能な「特定技能2号」を巡っては試験の制度設計も課題だ。資格を得るのに十分な能力があるか判断する試験は細部を詰め切れていない。日本で働く外国人は日本人と同様に公的年金の保険料などが給与から天引きされる。保険料の払い損になる恐れがある。厚生労働省は健康保険に外国人労働者の扶養家族に居住要件を求める法改正を検討中だ。新設する「特定技能」を取得する外国人労働者の大半は現行の技能実習生から移る。技能実習制度を巡って最低賃金を下回る低賃金や違法な長時間労働、パワハラの問題も明らかになっている。参院法務委員会で立憲民主党の有田芳生氏は15~17年の3年間で技能実習生69人が自殺や実習中の事故に巻き込まれて亡くなったと追及した。日本に来る前に母国で多額の保証金を払わせる悪質ブローカー(仲介業者)も存在する。法務省は悪質業者を排除するため、多額の保証金を払っていないか事前に確認すると省令に記す。法務省は実態調査の結果を来年3月末に公表する。大島理森衆院議長は改正法が施行する前に運用方針や政省令の内容を国会に報告するよう要求。安倍晋三首相は施行前に制度の全容を国会に示すと明言した。

*6-2:https://www.kyoto-np.co.jp/info/syasetsu/20181208_4.html (京都新聞社説 2018年12月8日) 改正入管難民法  議論は尽くせていない
 入管難民法などの改正案を巡る国会審議が大詰めを迎えた。これまで原則認めてこなかった外国人労働者の単純労働分野への就労を認めるものだ。高度な専門人材に限っていた政策の転換であり、社会を変える可能性がある。だが議論は全く深まりを欠いた。採決を押し切ろうとした政府与党の国会軽視の姿勢は容認できない。受け入れの規模や対象業種をどうするのか。必要な技能や運用の詳細は不明確だ。次々と明るみになった技能実習生の実態も含め、外国人労働者問題の論点を掘り下げたとは言い難い。大島理森衆院議長は与野党へ異例の裁定を行い、来年4月の改正法施行前に政省令を含めた法制度の全体像を国会に報告させるとした。政府与党のまずい国会運営に対し、立法府の長が注文をつけた形だ。だが、本来は制度の全体像こそ国会で審議すべきではなかったか。外国人労働者を受け入れた後の議論は全くできていない。権利をどう保障するかや日本人と地域で共生する仕組みなど、幅広い分野での検討が早急に求められる。その「司令塔」となるのは法務省に新設される出入国在留管理庁とされる。新在留資格の創設に伴い増加する外国人の管理や、雇用する企業などへの監視を行うほか、共生に向けた受け入れ環境整備も担うという。だが、日本語教育や住宅確保など担当する領域は広い。同庁だけで対応できるのか疑問だ。関係省庁との連携と情報共有が欠かせない。健康保険や年金など社会保障制度の準備も遅れている。教育や医療、福祉など身近なサービスを提供する自治体の役割が一層重要となる。言葉の壁や生活習慣の違いもあり、現在はボランティアや市民団体の活動に頼っているのが現実だ。マンパワーも不足しており、負担も重くなるため国の支援が不可欠である。総務省によると、今年4月時点で外国人住民向けの指針や計画を策定している自治体は46%にとどまる。住民に占める外国人の割合は地域差が大きく、地域の実情にあった支援態勢が欠かせない。官民挙げて整えていくべきだ。政府は年内に受け入れ環境の整備に関する総合対策を取りまとめる方針だが、改正法施行まで残された時間は少ない。働く外国人の生活と人権を守る視点で制度を改善していく必要がある。来月召集予定の通常国会でも引き続き議論を深めていかねばならない。

*6-3:https://www.agrinews.co.jp/p46078.html (日本農業新聞 2018年12月9日) 改正入管法が成立 4月施行 外国人就労 農業も
 外国人労働者の受け入れ拡大に向けた改正出入国管理法が8日、参院本会議で可決、成立した。3年間の技能実習の修了者ら一定の技能を持つ外国人が、通算5年を上限に日本で働ける在留資格「特定技能1号」の創設が柱。農業など14業種を受け入れ対象にし、来年4月に施行する。労働現場への就労を本格的に外国人に開放し、受け入れ施策の大転換となる。今後、業種ごとの具体的な制度設計が焦点となる。国会審議では「失踪や死亡などが相次ぐ技能実習制度の課題解決が先決だ」と一部野党が訴え、法改正に反対。与党側が押し切る形になった。改正法では、1号よりも高度な技能を問う試験に合格した外国人に対象とした特定技能「2号」も創設。在留期間に上限はなく、家族も呼び寄せられる。1号は基本的に家族の呼び寄せは認めない。政府は農業では2号の人材を求める具体的な要望はないとして、当面1号の受け入れに限る。外国人は受け入れ経営体が直接雇用契約を結ぶのが原則だが、政府は、農業では人材派遣業者が雇用契約を結び、複数農家に派遣する形態も認める方針。農業は繁忙期と農閑期の差が激しく、個別では周年雇用が難しい面があることに考慮する。業種ごと具体的な制度設計は、所管省庁を中心に今後定める業種別受け入れ方針で明確化する。政府は、同方針を含む制度の全容を法施行前に示す方針。来年の通常国会で議論になる見通しだ。農業では同一外国人を複数産地で連携して受け入れられるか、和牛精液など遺伝資源の海外流出の懸念がある肉牛経営での受け入れはどうするのかなど、不明確な点も多い。政府が制度設計で、これらの課題にどう対応するのかが焦点になる。

*6-4:http://qbiz.jp/article/145088/1/ (西日本新聞 2018年12月1日) 老いる九州、雇用「医療・福祉」最多 九経調分析 自治体4割でトップ、変わる受け皿
 九州・沖縄と山口の9県計293市町村のうち4割超の128自治体(2016年)で、医療・福祉業の従業者数が業種別で最多となっていることが、九州経済調査協会の分析で分かった。09年時点では44市町村だったが約3倍に増加。高齢化によるニーズの拡大に加え、人口減少に伴う他産業の雇用減で、介護サービスなど医療・福祉業が雇用の最大の受け皿になっている。九経調が国の経済センサス調査の民間事業所従業者数から算出した。医療・福祉業の従業者が最多を占める県別の自治体数は、福岡28▽佐賀6▽長崎10▽熊本22▽大分8▽宮崎9▽鹿児島21▽沖縄16▽山口8。北九州市や佐賀市、長崎市、熊本市、宮崎市、鹿児島市といった大都市や県庁所在地に加え、人口に占める65歳以上の高齢者の割合(高齢化率)が20%以下と低い福岡県春日市なども含まれる。09年は従業者数トップが製造業の自治体が104、小売業が101だった。16年は製造業が101で微減となる一方、小売業は32に激減。人口減やネットショッピングの普及など流通構造の変化が背景にある。9県全体の医療・福祉従業者は09年比26・7%増の113万4千人となり、伸び率は全産業中で最大。全雇用者数に占める割合も17・3%と09年から3・9ポイント上昇し、小売業を抜いてトップになった。内閣府の高齢社会白書によると17年の高齢化率は、沖縄(21・0%)、福岡(27・1%)以外の7県で29・2〜33・4%と全国(27・7%)を上回っている。45年には9県とも6・3〜10・4ポイント上昇する見通しだ。医療・福祉業は人手不足が特に深刻化しており、政府が今国会の成立を目指す入管難民法改正による外国人労働者の受け入れ拡大では、介護業も対象になる見通し。調査を担当した九経調の渡辺隼矢研究員は「外国人労働者を含めた人材確保に加え、介護用ロボット導入や、医療介護が必要な人を地域全体で支える仕組みづくりが不可欠」と指摘している。

<有価証券報告書における役員報酬の重要性>
PS(2018年12月9、13日追加): 有価証券報告書は、株主や投資家の投資判断に資するために作成するもので、*7-1の「有価証券報告書への役員報酬の“虚偽記載”」は、それが認定されたとしても重要性が低い(仮に重要性が高ければ、監査証明をした監査法人も責任を免れず、監査証明を得ておくことは経営者を守る効果もあるのだ)。また、*7-2で、機関投資家団体のワリング事務局長が述べておられるように、投資家にとっての重要事項は、「利益と配当」「企業価値向上と株価上昇」であるため、役員は、報酬額だけでなく、報酬に見合った能力を有しているかどうかが重要になる。
 しかし、日産は、*7-3のように、4度目の検査不正が明らかになったそうで、これは企業価値を落とすが、日産車が事故を起こしたという話は聞かないため、私には、検収や検査に資格がいるのか、その検査は有用なのかという疑問が残る。また、その理由をリストラによる人員不足だとしている点は、どうも日本的発想すぎておかしい。しかし、このような報道があると、日産の企業価値が落ちるのは確実だ。
 なお、2018年12月13日、*7-4のように、朝日新聞が「政治資金監査制度」で少なくとも23人の国会議員関係政治団体が監査を担当した税理士など監査人から寄付を受けており、「監査人として独立性がない」と問題視している。2007年に導入したこの監査制度も、最初に私が提唱してできたので説明すると、私が考えていたよりもずっと狭くて不十分な形の監査になったため、これは本物の監査とは言えないのだ。本物の監査と言えないポイントは、①「国会議員関係の政治団体のすべての支出をチェックする」と定められているので、収入はチェックしなくてもよい ②独立性の要件に関する規定や指針がない ③監査担当者に監査論を勉強して監査の実務経験を積んだ公認会計士以外(税理士、弁護士)の人を認めている ④公認会計士が本物の監査を行って責任を持てるには、政治資金会計も複式簿記による網羅的で検証可能な通常の会計にする必要があるが、現在は単式簿記による収支のみの記載で不都合な収支は記載しないことも可能であるため、監査をしてもそれを見つけられず、監査人も責任を持ちかねる(これは、政治家も会計担当者の不正をチェックできないということ) などである。政党と政治家の関係は、会社と従業員ではなく任意組合と組合員に近いため、政党が政治家を管理するのは妥当でないと思うが、不十分な監査では主権者に政治資金のありようが正しく開示されず、政治家もいちゃもんから守ってもらえないため、政治資金会計も複式簿記による網羅的で検証可能な通常の会計(市販の会計ソフトを使えるので簡単で安上がりな上、税務事務所に計算を委託することも可能)に変更して正規の監査を行うべきである。これは、国会議員に限らず地方議員も同じだ。

   
   日産リーフ     日産リーフ軽    日産リーフセダン 資源エネルギー庁より

(図の説明:一番右の図のように、太陽光発電とEVを組み合わせれば、脱燃料費・脱排気ガスの究極のエコカーができる。女性は、ガソリン車で走るのが目的ではなく、実用目的で自動車に乗っており、環境には敏感であるため、本来はEVの格好の顧客になる。しかし、安全性に疑問符がつくのはご法度で、さらに日産車のデザインは怖い面構えで角ばっており、スタイルもかっこよくないため、女性を遠ざけている。日産の役員構成を見ると、取締役は全員男性で執行役員47名のうち女性は2名だが、もっと女性の声を反映させ、デザインにはフランスのデザイナーのアドバイスなどを入れて、スマートでかわいいスタイルするとさらに売れると思う。例えば、服はピエールカルダン、靴はフェラガモ、車はニッサンの○○と言われるようにだ)

*7-1:http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201812/CK2018120902000132.html (東京新聞 2018年12月9日) 「役員報酬虚偽記載」初の事件化 悪質性、分かれる見解 ゴーン容疑者あす起訴
 日産自動車の前会長カルロス・ゴーン容疑者(64)が逮捕された事件で、ゴーン容疑者が問われている有価証券報告書への「役員報酬の虚偽記載」は、これまで刑事事件として立件されたケースがない。役員報酬が投資家の判断にどれだけ影響するかは、市場関係者らの間でも見解が分かれている。東京地検特捜部は勾留期限の十日、金融商品取引法違反の罪で起訴する見通しで、今後の司法判断が注目される。「役員報酬は企業の姿勢が顕著に表れる重要事項。額を偽ることは投資家を欺く行為で、許されない」。検察幹部はうその報酬を記載する悪質性を強調する。経営方針や財務状況などさまざまな企業情報が盛り込まれ、有価証券報告書は「年度ごとの成績表」とも評される。ただ、うそを書けばすべて罪に問われるわけではなく、金商法は「重要事項への虚偽記載」を罰すると定めている。何が重要事項に該当するのか、明確な定義はない。ある市場関係者は「投資家の判断を左右する事項すべて」と解説する。これまで罪に問われてきたのは、ライブドア元社長や旧カネボウ経営陣の粉飾決算事件、オリンパス元会長らの損失隠し事件などで、利益や資産などが重要事項とみなされた。役員報酬が刑罰の対象になったケースは、金融庁の担当者も「聞いたことがない」といい、「案件ごとに判断するしかない」とする。実際、役員報酬が重要事項に当たるのか、定まった見解はない。ある投資家は「役員報酬は一応チェックする程度。投資する上で、主な参考情報とすることはない」と言い切る。証券市場に詳しい弁護士も「役員報酬が投資判断に大きな影響を与えるかどうかは疑問だ」と、重要事項との見方に否定的だ。一方で、大和総研の横山淳主任研究員は「正当な理由なくトップが高額な報酬を得ている会社は信頼されない。部下たちが仕事へのやる気を保てているか否かの判断材料にもなる」と重視する。ある市場関係者も「今の時代、投資家はコーポレートガバナンス(企業統治)を注視している。特に経営者の資質、報酬体系には厳しい目が注がれている」と指摘。「今回の事件はリーディングケース。何が重要事項かは、社会のニーズによって変わるのではないか」と語った。

*7-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20181207&ng=DGKKZO38654510W8A201C1TJ3000 (日経新聞 2018年12月7日) 日本、統治改革の再加速を 日産巡り機関投資家団体提言 ワリング事務局長
 欧米の主要機関投資家で構成する国際コーポレート・ガバナンス・ネットワーク(ICGN)のケリー・ワリング事務局長が、日産自動車のカルロス・ゴーン元会長逮捕を受け、日本経済新聞に対し「事件をきっかけに日本は企業統治改革を加速させるべきだ」と強調した。具体的には「社外取締役の質の向上」や「独立性の高い指名・報酬委員会の設置」を挙げた。日本のガバナンス改革に影響を与えそうだ。
主な発言は以下の通り。
【日産ショックの教訓】
 日産ほどの大企業が報酬委員会も設けず、報酬の配分が実質的にトップ1人に委ねられていた事実は、世界中の投資家にショックを与えている。日本は安倍晋三政権のもと、2014年から本格的なガバナンス改革が始まった。進捗は順調だったと言えるだろう。しかし、足元では「自分たちはよくやっている」という自己充足感も広がってはいなかっただろうか。その意味で、日産ショックは日本の市場関係者にガバナンス改革の再加速を促す目覚まし音(ウエイクアップ・コール)となったのではないか。
【社外取締役】
 ゴーン元会長逮捕を受け、金融庁にガバナンス改革を提言した。まず、社外取締役だ。人数を増やすだけでなく、経営や金融・財務に通じた人材を多く採用し、取締役会の質を上げる必要がある。経営の専門家が求められる。性別や国籍、年齢で制限しなければ、日本にも社外取締役の候補者はたくさんいる。取締役の教育制度も拡充すべきだ。
【報酬問題】
 監査役会設置会社であっても、上場企業ならば任意で指名・報酬委員会を設置し、トップの選任や役員報酬算定の方法を決めるようにしてほしい。役員報酬の金額の多さだけに目を向けるべきではない。大切なのは企業価値を向上させるために、どんなトップをいかに処遇するかという、透明性の高いルールづくりだ。
【日本への働きかけ】
 日産ショックをきっかけに外国人投資家は日本企業のガバナンスに改めて目を向けるだろう。ICGNは金融庁のほか経団連や東京証券取引所などと意見交換の場を持ち、市場の立場から建設的な提案をしていきたい。2019年7月には東京で年次総会を開く。日本の企業人もお招きしガバナンス改革を話し合いたい。
*ICGN:米カリフォルニア州職員退職年金基金(カルパース)など米欧の年金基金が1995年に設立。運用総額は34兆ドル(約3800兆円)に達し、世界の株式市場に強い影響力を持つ。ワリング事務局長は日本の金融庁に度々招かれ、企業統治に関する指針づくりを助言している。

*7-3:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20181207&ng=DGKKZO38634640W8A201C1EA1000 (日経新聞 2018.12.7) 日産、深まる統治不全 新たな検査不正、ブレーキなど
 日産自動車が新車を出荷する前の完成検査で新たな不正をしていたことが6日、分かった。不正発覚は2017年9月から4回目だ。企業統治(コーポレートガバナンス)の不全やコンプライアンス(法令順守)意識の低さに改善の兆しが見えない。元会長のカルロス・ゴーン容疑者(64)の逮捕に新たな不正発覚が追い打ちとなり、西川広人社長兼最高経営責任者(CEO)ら経営陣への批判がさらに強まりそうだ。今回の不正は、国土交通省が日産の主力工場に立ち入り検査した10月以降、社内調査で見付かった。ブレーキなど複数の項目が対象とみられる。日産は国交省とリコール対応などを協議しており、月内にも詳細を公表する見通しだ。
●防止策を再検証
 日産では完成車の品質検査不正が後を絶たない。17年9月に資格を持たない従業員が完成車の検査をしていたことが発覚した。18年7月には一部の完成車を対象にする抜き取り検査で、燃費・排ガスデータの書き換えや不適切な条件での試験が見つかった。18年9月末には全ての新車を対象にした検査で、決められた試験を省いたことなどが明らかになった。一連の不正はゴーン元会長が仏ルノーから派遣された翌年の00年代以降、常態化していた。不正の背景には「効率性やコスト削減に力点を置くあまり、検査員を十分に配置せず技術員も減らした」(外部の弁護士事務所が9月にまとめた調査報告書)ことがある。国交省は無資格検査を受けて日産に対し、17年9月と18年3月に2度の業務改善指示を出している。再発防止策の進捗を四半期ごとに報告させるほか、重点監視の対象として抜き打ち検査を増やしてきた。日産は9月に再発防止策を盛り込んだ最終報告書を公表し、一連の問題に区切りをつけたはずだった。再発防止策とともに今後6年間で測定装置などに1800億円を投じ、検査部門に670人を採用する計画を打ち出していた。西川社長は9月時点で「できる限り将来の再発防止に努めることが私の仕事だ」と述べた。しかし新たな不正発覚で、再発防止策そのものの再検証は避けられない。
●発覚は4度目
 ゴーン元会長逮捕を受け、日産はガバナンス不全が指摘されている。01年に日産のCEOに就いたゴーン元会長は人事と報酬の両方の決定権を持っていたとされ、絶対的な存在として長期間君臨。独立した社外取締役を主要メンバーにした報酬委員会などの仕組みもなかった。報酬過少記載事件ではゴーン元会長らに加え、法人としての日産の刑事責任も問われる見通しだ。西川社長ら同社の取締役らも虚偽記載という不正を見逃したとして、民事上の責任を追及され、損害賠償を求められかねない。ゴーン元会長逮捕に加えて4度目の検査不正が明らかになったことで、西川社長を含む現経営陣の経営責任を問う声が強まる可能性がある。日産同様に完成検査を巡る不正が相次ぐSUBARU(スバル)では、6月には当時の吉永泰之社長兼CEOが責任を取り、CEO職を返上。代表権のない会長に退くなど経営責任に波及している。「ポスト・ゴーン体制」を担う西川社長には、経営トップとしての説明責任が求められる。

*7-4:https://digital.asahi.com/articles/DA3S13809380.html (朝日新聞 2018年12月13日) 23議員の政治団体、監査人から寄付 公正さ、疑問の声 17年収支報告書
 国会議員の政治資金の支出を第三者がチェックする「政治資金監査制度」で、少なくとも23人の国会議員の関係政治団体が、監査を担当した税理士などの監査人から寄付を受けていたことがわかった。外部性の確保が求められる監査を支援者にまかせていた形になり、専門家からは「公正ではない」と疑問視する声もある。11月30日までに全国で公表された2017年の政治資金収支報告書を分析したところ、23の国会議員関係政治団体に対し、それぞれを監査する監査人が1万~40万円を寄付していた。総額は約340万円だった。総務省によると、監査制度は、不適正な支出が疑われた閣僚の事務所費問題などをきっかけに、07年の政治資金規正法の改正で導入された。公認会計士や税理士など「外部性を有する第三者」が、国会議員関係政治団体のすべての支出をチェックすると定められた。監査人は「監査の対象となる国会議員関係政治団体との間に密接な身分関係を有してはならない」とされ、対象の政治団体の役職員や議員の配偶者が務めることはできない。ただし、監査人が団体側に寄付することは禁止されていない。政治資金規正法に詳しい富崎隆・駒沢大教授(政治学)は「監査は利害関係のない人が行うのが前提で、政治家を支援している寄付者がするのはおかしい」と指摘する。「公正な収支報告書を有権者が見られるようにすることが重要で、各団体が監査人の選定や費用負担などに難しい面があるなら政党が責任を持つべきだ」と話す。

<退職金・退職年金の認識時期>
PS(2018年12月14、19日追加):*8-1のように、今回のゴーンさん逮捕事件はルノーと日産の組織再編に端を発したものだが、市場経済の中での経済闘争に微“罪”で刑事を介入させるのは、人権侵害である上、公正ではない。そのため、「権力闘争になれば、われわれは大砲を持ち出し、ルノーに対して日産への出資比率を上げるよう要請する用意がある」という仏政府幹部の言葉は理解できる。また、*8-2のように、米ウォールストリート・ジャーナルは、ゴーン氏は米国での販売不振や度重なる検査不正をめぐり、西川社長の解任と経営陣の刷新の考えを一部の役員に伝えていたとも報じている(西川社長は否定)。
 なお、ゴーンさん逮捕の根拠について、東京地検特捜部は確定債務だったか否かを論点とし、*8-3のように「日産の取締役会で決定され、文書化されているから確定債務だ」とか、*8-4のように「文書に報酬額が1円単位で書かれていたから確定債務だ」などとして、有価証券報告書への役員報酬の過少記載による金商法違反と結論づけている。しかし、*9-1の企業年金も、給付額は個人毎に債務が確定しており、企業は掛金の拠出時に費用計上するが、受取人の所得となるのは退職後にその年金をもらった時であり、認識時期にずれがある。また、企業は、現在価値に割り引いて掛け金を拠出するため、1円単位になるのが普通だ。
 さらに、*8-3には、役員報酬の決定をゴーン氏に一任することは取締役会で2年ごとに諮られ、決定事項として文書に残されていたと書かれているため、役員報酬の決定は、ゴーン氏の独断ではなく取締役会の承認済である。「実は異論は言えなかった」と弁解する取締役がいれば、その人は取締役としての任務を怠っていたので、報酬を払う価値がなかったということになる。さらに、違法行為があれば、監査役は是正しなければならず、言えなかったという弁解は通用しない。つまり、「確定債務だから、その期の報酬だ」という結論が誤りなのである。
 そのような中、*8-5のように、12月10日午後、東京地検特捜部はゴーン氏、ケリー氏及び日産を金商法違反(有価証券報告書の虚偽記載)の罪で起訴したが、本来は裁判所が即時棄却しなければならない。しかし、法学系の人は会計に疎く、殆ど全員が退職給付の会計と税務を理解しておらず、「自分が黒と言えば白でも黒になる」「特捜が起訴した以上は、(人権よりも)司法のメンツと信用が大切」などと思っているため、結論が危ぶまれるわけだ。そして、*8-6のように、罪状が確定していない人を長期間拘留して自白を促すのは人権侵害だ。
 なお、*8-7のように、日産は、不記載報酬を一括処理して今期決算で計上するそうだが、私は日産退職後に支払う報酬であるため、退職慰労金として一括処理するのが正しいと考える。また、日産はゴーン氏と同社が有価証券報告書に虚偽記載したため「内部統制報告書」の訂正も検討するそうだが、有価証券報告書と内部統制をチェックしていた監査法人は、どういう見解を持っているのだろうか。重要な虚偽記載なら、「見つけられなかった」では済まないからだ。
 2018年12月19日、朝日新聞が、*9-2のように、「ゴーン氏は2009年度分の報酬として十数億円をいったん受け取ったが2010年3月施行の改正内閣府令で1億円以上の報酬を得た上場企業の役員の名前と金額の個別開示が義務づけられたため、一部返却して退任後に受け取ることにし、翌年度分からは報酬の約半分は退任後に受け取る仕組みを最初から採用した」と記載しており、当時の日本国内での高額報酬批判から、そのような対応をしたことが理解できる。ここで問題なのは、①日本では、高額報酬として世界常識から外れた批判をしたこと ②国会を通さず、内閣府令で個人情報の過度な開示規定を定めたこと ③個人の報酬認識時期は受領時であるのに、企業の債務確定時と解釈していること(受領時に認識しなければ、受領者は確定申告・納税ができない) などである。これは、逆の立場に立って考えればすぐわかることなのに、意図的な解釈を行うことによって筋の通らない制度にした事例だ。

*8-1:http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201812/CK2018121202000132.html (東京新聞 2018年12月12日) <ゴーン事件の底流>(2)自動車戦争 日仏ぶつかる国益
 「出資比率と統治は現状通りが望ましい。世耕氏と、統治のルールは変わらないことで一致した」十一月二十五日の仏報道番組。仏ルノーと日産自動車、三菱自動車の三社連合について、仏経済・財務相ブルーノ・ルメールは、三日前の経済産業相の世耕弘成(せこうひろしげ)との会談内容をこう説明した。会談は三社の会長だったカルロス・ゴーンの逮捕後、仏側の要請を受け、訪問先のパリで急きょ行われた。世耕はこの発言に強く反発。二十七日の閣議後会見で「日産のガバナンス(統治)に関して、何か他国と約束するようなことは全くない」と否定した。ルノーは日産株の43・4%を保有する筆頭株主で、仏政府はルノー株15%を保有する物言う株主だ。フランスでは、今回の事件をルノーとの関係を対等にしようとする日産側のクーデターとの見方が根強い。仏大統領エマニュエル・マクロンと首相の安倍晋三の首脳会談が行われた十一月末のG20直前、仏経済紙レゼコーは「権力闘争になれば、われわれは大砲を持ち出し、ルノーに対して日産への出資比率を上げるよう要請する用意がある」という仏政府幹部の言葉を紹介した。「大砲」はルノーの大株主としての強力な議決権行使を意味する。マクロンは経済相だった二〇一五年、ルノー株を買い増した上で、二年以上株式を保有する長期株主に一株当たり二票の議決権を認めるフロランジュ法を利用し、日産とルノーの経営統合に動いたこともある。ゴーン逮捕で、再び日仏の国益がぶつかり合うことになる。
◆特捜と連携、官邸は「サポート」
 カルロス・ゴーン逮捕翌日の十一月二十日、日産自動車専務執行役員の川口均が首相官邸を訪れ、官房長官の菅義偉に事件の経緯を説明し謝罪した。川口は「日産とルノーとのアライアンス(提携)の関係でサポートしていただけるとお聞きした」と記者団に語った。一昨年五月の三菱自動車との提携発表前にも官邸で、菅に事前報告していた。仏マクロン政権はルノーと日産の経営を一体化し、日産車の仏国内での生産に意欲的とされる。日産には、独自性が失われ、ルノーにのみこまれていく恐怖感が募る。日産側の動きにも日本政府の影がちらつく。日産のある執行役員はゴーン逮捕後、政府と連絡を取り合っているのかという報道陣の質問に「(政府には)心配いただいている。今回の件だけでなく、フロランジュ法のときも日本政府としての考え方を仏政府に伝えてもらった。国をまたがることなので、いろいろとお話をさせてもらっている」と明かした。検察との司法取引に協力した日産側の弁護士は元東京地検特捜部検事の熊田彰英。安倍政権や自民党の「守護神」とも呼ばれるやり手だ。日産は特捜部とも密に連携。米在住のグレゴリー・ケリーとゴーンが同時に来日するのは珍しく、日産側はゴーンの帰国スケジュールを特捜部に伝えていた。日産の川口は渉外担当が長く、大手企業幹部は「議員会館や霞が関でよく見かける。菅長官は地元が日産本社のある横浜で、事前に相談を受けていても不思議ではない」と推測する。自動車業界に詳しい大手監査法人関係者は、米司法省がカルテル容疑で摘発した日系自動車部品メーカー四十六社と役員三十二人が有罪(五月現在)となったことなどを例に分析する。「国対国の自動車戦争は日米、米独で起きており、それが日仏でも起きたのでは」 

*8-2:http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201812/CK2018121002000047.html (東京新聞 2018年12月10日) ゴーン容疑者、西川社長の解任計画か 販売不振など不満
 米紙ウォールストリート・ジャーナル(電子版)は九日、金融商品取引法違反の疑いで逮捕された日産自動車の前会長カルロス・ゴーン容疑者(64)が、逮捕前に西川(さいかわ)広人社長の解任を計画していたと報じた。ゴーン容疑者は二〇一七年に日産の社長を退き、西川氏を後継者に指名した。だが、同紙によると、ゴーン容疑者はここ数カ月間、米国での販売不振や度重なる検査不正をめぐり、西川氏の経営手腕に対して不満を募らせていたという。このためゴーン容疑者は一部の役員に経営陣を刷新したいとの考えを伝えており、十一月二十二日の取締役会で西川氏の解任を提案する意向だったという。だが、ゴーン容疑者は同十九日、役員報酬を過少に記載したとして、金融商品取引法違反の疑い(有価証券報告書の虚偽記載)で東京地検特捜部に逮捕され、二十二日の取締役会では自らが会長職を解任された。一方、西川氏はここ数カ月間、内部通報を受けゴーン容疑者の不正について社内調査を行い、検察に情報提供したことを明らかにしており、ゴーン容疑者による西川氏の解任計画とほぼ同じ時期にゴーン容疑者の不正に対する社内調査が進められていたことになる。同紙はゴーン容疑者による西川氏の解任計画を、西川氏自身が知っていたかや、それが逮捕のタイミングに影響したかどうかは分からないとしている。

*8-3:https://digital.asahi.com/articles/DA3S13810942.html (朝日新聞 2018年12月14日) 報酬「ゴーン前会長に一任」 日産取締役会で決定、文書化
 日産自動車の前会長カルロス・ゴーン容疑者(64)が役員報酬を過少記載したとして逮捕された事件で、ゴーン前会長に役員報酬の決定を一任することが取締役会で2年ごとに諮られ、決定事項として文書に残されていたことが関係者への取材でわかった。東京地検特捜部は文書を入手し、報酬額の確定に関する重要な証拠とみている模様だ。ゴーン前会長側は、退任後の支払いにして隠したとされる報酬について、「希望額」で、社内の手続きを経ていないため「確定していない」と反論。これに対して特捜部は、取締役会での一任によって、ゴーン前会長が正式な権限に基づいて支払いを確定していたと立証できるとみている模様だ。関係者によると、取締役の任期(2年)に合わせる形で2年に1回、役員の報酬額はゴーン前会長に一任すると取締役会で決定していた。前会長が社長兼最高経営責任者(CEO)だった時期は「CEOに一任」とし、17年に会長に退くと「会長に一任」と変更された。異論はなく、取締役会の内容は決定事項として文書に残されているという。日産は役員報酬について「取締役会議長」が「代表取締役と協議の上、決定する」と定める。この議長はゴーン前会長で、一任を決めた取締役会には他の代表取締役も出席しているため、特捜部は「協議」を経ていると判断した模様だ。立件対象となった8年間では、西川広人社長兼CEOと志賀俊之取締役が代表取締役の時期もあったが、特捜部は前代表取締役のグレッグ・ケリー容疑者(62)以外は、報酬の後払いを把握していなかったとみている。一方、ゴーン前会長側は、ケリー前代表取締役以外と協議せずに決めたのであれば、社内規定に違反しており、「確定しているとはいえない」と主張している。

*8-4:http://qbiz.jp/article/145494/1/ (西日本新聞 2018年12月10日) ゴーン氏報酬文書、金額1円単位 特捜部、支払い確定の根拠に
 金融商品取引法違反の疑いで逮捕された日産自動車の前会長カルロス・ゴーン容疑者(64)が報酬の一部を有価証券報告書に記載せず、受け取りを退任後に先送りする計画を記した文書に、報酬額が1円単位で書かれていたことが10日、関係者への取材で分かった。東京地検特捜部は退任後の受領額が確定していた根拠の一つとみている。証券取引等監視委員会は10日、同法違反の疑いでゴーン容疑者と前代表取締役グレゴリー・ケリー容疑者(62)、法人としての日産を告発した。特捜部が同日起訴する。また、新たに約40億円の報酬を記載しなかった金融商品取引法違反の疑いで、同日中にも2人を再逮捕する。2人は、ゴーン容疑者の報酬が2015年3月期までの5年間で計約100億円だったのに、このうち退任後の報酬を記載せず、約50億円とした有価証券報告書を提出したとして逮捕された。18年3月期までの3年間にも同様の疑いがあり、虚偽記載の立件総額は約90億円になる。関係者によると、先送り計画が記された「報酬契約書」には、報酬総額、実際に支払われた額、未払い額の3種類の金額が1円単位で書かれていた。ゴーン容疑者や、秘書室に所属していた日本人の元幹部のサインがあった。この元幹部と外国人執行役員が特捜部との間で司法取引に合意し、不正を裏付ける保管資料を提出したとされる。

*8-5:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20181210&ng=DGKKZO38733440Q8A211C1MM0000 (日経新聞 2018年12月10日) ゴーン元会長、午後起訴 虚偽記載で東京地検 監視委が告発
 日産自動車元会長のカルロス・ゴーン容疑者(64)の報酬過少記載事件で、東京地検特捜部は10日午後、ゴーン元会長と元代表取締役のグレッグ・ケリー容疑者(62)、法人としての日産を金融商品取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)の罪で起訴する。特捜部は同日、2018年3月期まで3年間の有価証券報告書でゴーン元会長の報酬を計約40億円過少に記載したとして、同法違反容疑で2人を再逮捕する方針だ。証券取引等監視委員会は10日、15年3月期まで5年間の報酬過少記載について、ゴーン元会長とケリー役員、法人としての日産を同法違反容疑で東京地検に告発した。監視委としても、ゴーン元会長らの刑事責任を問う必要があると判断したもようだ。ゴーン元会長らは容疑を否認しており、起訴されれば公判で無罪を主張して争うとみられる。再逮捕容疑の捜査によってさらに20日間の勾留の可能性があり、身体拘束の長期化に対して海外の批判が強まることも予想される。関係者によると、ゴーン元会長は役員報酬の個別開示が義務化された10年3月期から、自身の報酬の一部について受領を先送りし、有価証券報告書に記載しないようにしていたとされる。先送り分を含めた報酬の総額は、10年3月期~12年3月期には年20億円を下回る水準だったが、毎年のように引き上げられ、17年3月期と18年3月期にはそれぞれ約24億円とされていたという。18年3月期の記載額は7億3500万円だったのに対し、記載のない先送り分は約16億円に上っていたとみられる。

*8-6:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20181211&ng=DGKKZO38770160R11C18A2MM8000 (日経新聞 2018年12月11日) ゴーン元会長ら再逮捕 直近3年の報酬、虚偽疑い
 日産自動車元会長のカルロス・ゴーン容疑者(64)の報酬過少記載事件で、東京地検特捜部は10日、ゴーン元会長と元代表取締役のグレッグ・ケリー容疑者(62)、法人としての日産を金融商品取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)の罪で起訴した。さらに直近3年間でも過少記載があったとして、ゴーン元会長らを同法違反容疑で再逮捕した。立件額は8年間で計91億円余となった。ゴーン元会長らは起訴内容・再逮捕容疑を否認しているとみられ、公判では無罪を主張して争う見通しだ。役員報酬に関する虚偽記載の起訴は初めて。企業統治(コーポレートガバナンス)に対する関心の高まりなどを背景に、特捜部は役員報酬も投資家の判断に影響を与え、虚偽記載をすれば刑罰の対象となる「重要な事項」に当たると判断した。有価証券報告書の虚偽記載には個人だけでなく法人の刑事責任を問う両罰規定があり、長期間にわたって経営トップの虚偽記載を止められなかった法人としての日産の責任も重いと判断した。日産では新車の完成検査で新たな不正が発覚。企業統治の面から、西川広人社長兼最高経営責任者(CEO)ら現経営陣の経営責任についても批判が強まりそうだ。日産の起訴を受け、東京証券取引所は同社株について上場廃止のおそれがあることを示す「特設注意市場(特注)銘柄」に指定するかどうかの検討に入る。特注銘柄は、有価証券報告書に重大な虚偽記載があり、会社の内部管理体制にも問題がある際に東証が指定する。指定期間中も通常どおり売買できるが、東証が内部管理体制の改善度合いを監視する。改善が認められれば指定解除する。西川社長は10日、社内に向け「法人として日産が起訴されるにいたったことは厳粛に受け止めている。ゴーン、ケリー(両容疑者)による私的な動機・目的で行われたことが原因だ」とコメントを出した。関係者によると、ゴーン元会長は自ら決めた各期の自身の報酬の一部について受領を先送りし、有価証券報告書に記載していなかったとされる。特捜部の起訴に先立ち、証券取引等監視委員会は10日、ゴーン元会長ら2人と日産を金商法違反容疑で東京地検に告発した。

*8-7:https://www.nikkei.com/paper/related-article/?b=20181211&c=DM1&d=0&nbm=DGKKZO38770160R11C18A2MM8000&ng=DGKKZO38743870Q8A211C1MM8000&ue=DMM8000 (日経新聞 2018年12月11日) 日産、不記載報酬を一括処理 今期決算で計上へ
 日産自動車はカルロス・ゴーン元会長と同社が役員報酬について有価証券報告書に虚偽の記載をした罪で起訴されたことを受け、記載されていなかった役員報酬に絡む費用を2019年3月期決算で一括処理する方針だ。正しい決算を作成するための社内管理体制が整っていると上場企業が投資家に向けて宣言する文書、「内部統制報告書」の訂正も検討する。ゴーン元会長が記載していなかった役員報酬は総額90億円前後とされるものの詳細が明らかになっていない部分もあり、日産は費用計上すべき額の把握を急いでいる。日産が今期、5000億円と見込む純利益は目減りする見通しだ。19年2月初旬とみられる18年4~12月期決算発表と合わせて開示する。日産内部では費用の一括処理案が有力。「虚偽記載の額が利益に対して小さい」(関係者)ためだ。ただ、取引所などとの今後のやりとり次第では過去にさかのぼって分割処理する案が検討される可能性もある。日産は10日、過年度の有価証券報告書を訂正する予定だと発表した。役員報酬の総額と1億円以上を受け取った役員の個別の報酬額などが対象になるとみられる。虚偽記載の疑いがある11年3月期以降の有価証券報告書が対象となる見込みだ。日産はゴーン元会長による費用の付け替えなどがなかったかも調査をしている。結果が確定し次第、必要であれば過去の有価証券報告書の損益計算書や貸借対照表など財務諸表を修正する見通しだ。

*9-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20181129&ng=DGKKZO38305510Y8A121C1MM8000 (日経新聞 2018年11月29日) 企業年金、積み立て手厚く、確定給付、制度改正で100社超 手元資金で危機に備え
 株価下落など将来の損失リスクに備え、企業年金の積立金を手厚く積む企業が増えている。2017年の制度改正で予防的な掛け金拠出が解禁されたのを受けた動きで、18年11月時点の導入企業はサッポロビールなど100を超えた。業績改善で手元資金が厚くなった企業が従業員の老後資金に還元している。配当などの株主還元や設備投資に続く手元資金の第3の活用策として同様の動きが広がりそうだ。企業の抱える現預金は17年度末時点で221兆円と5年前に比べ3割以上増えた。年金の掛け金は税務上の損金となることもあり、現預金を抱えるよりも効率的と判断した企業が拠出に動いている。企業は掛け金を基金など企業年金の運営主体に出し、その分を費用として計上する。厚生労働省は17年、従業員の年金額を保証する確定給付型企業年金を対象に「リスク対応掛け金」と呼ぶ仕組みを解禁した。金融危機など20年に1度程度の頻度で生じるような損失に備え、年金会計上の必要額を超えて掛け金を積み立てることを認める仕組みだ。この仕組みを活用した企業年金はサッポロビールやコーセーなど18年11月1日時点で104社・グループに上った。「より安定した年金制度を維持できる」(サッポロビール)という。企業年金の運用管理を受託するみずほ信託銀行によると「福利厚生の充実のために検討する企業が増えている」という。確定給付年金は運用不振で積み立て不足が生じると、企業は年金水準を維持するために掛け金を追加拠出して穴埋めする必要がある。90年代のバブル崩壊や08年のリーマン危機では株価の低迷などで巨額の積み立て不足が発生し、多くの企業で穴埋めを余儀なくされた。危機後には年金制度が企業経営を圧迫する事態の再発を防ごうと年金制度そのものを見直し、給付水準を下げる改革に踏み切る動きも相次いだ。今の企業の動きにはこうした悪循環を断ち切る狙いがある。リスク対応掛け金は株価急落などがあっても年金水準を維持できるように、企業業績に余力があるときに掛け金を本来必要な水準よりも多めに拠出しておくものだ。これにより企業年金の財政に「のりしろ」をつくり、将来、運用不振に直面しても積み立て不足に陥りにくくする。企業は突然、巨額の穴埋め負担を迫られるリスクが減り、経営の安定につながる。従業員にとっても年金財政が悪化して給付減額などを求められるリスクが減り、老後への備えが安定する利点がある。企業年金は確定給付型が主流だったが、リーマン危機後は従業員が運用先を決め、損失リスクも負う確定拠出年金に移行する企業が増えた。運用が好調だと将来の年金も増えるが、今は元本保証型などリスクを抑えた運用を選ぶ人が多い。掛け金にも上限があり、年金資産がなかなか積み上がらない課題がある。予防的拠出で確定給付型年金の安定性が高まれば、従業員の老後を支える福利厚生として存続・維持させる企業も増えそうだ。

*9-2:https://digital.asahi.com/articles/DA3S13817684.html (朝日新聞 2018年12月19日) 09年度報酬、一部返却 「退任後払い」の発端か ゴーン前会長
 日産自動車の会長だったカルロス・ゴーン容疑者(64)が役員報酬を過少記載したとして逮捕された事件で、ゴーン前会長が、役員ごとの報酬の開示制度が導入された2009年度分について、いったん満額で受け取った後、一部を返却したとみられることが、関係者への取材でわかった。差額を退任後の支払いにして隠蔽(いんぺい)する仕組みのきっかけになった可能性があり、東京地検特捜部は詳しい経緯を調べている。特捜部は、10~17年度の8年間の報酬を立件対象にし、計約91億円を各年度の有価証券報告書(有報)に記載しなかったという金融商品取引法違反の罪で、ゴーン前会長と前代表取締役グレッグ・ケリー容疑者(62)を起訴、再逮捕した。09年度の返却分も退任後に受け取ることにしたとみられるが、特捜部は仕組みが明確に確立したのは10年度分からとみて、09年度は除外した模様だ。関係者によると、ゴーン前会長は09年度分として十数億円をいったん受け取った。しかし、09年度末となる10年3月施行の改正内閣府令で、1億円以上の報酬を得た上場企業の役員は、名前と金額の個別開示が義務づけられた。日産は09年度決算から対象となった。このため、ゴーン前会長は「高額報酬」批判を懸念して一部を返却。10年6月末に提出した有報には返却後の約8億9千万円と記載したとみられる。ケリー前代表取締役らに「返した場合、有報への記載は実際の受け取り分だけでいいのか」と確認し、「返却分の記載は不要」という回答を得て返したという。関係者によると、ゴーン前会長はこうした経緯を踏まえ、翌10年度分からは、報酬の約半分は退任後に受け取る仕組みを最初から採用した。「総報酬」「支払った報酬」「延期報酬」といった趣旨の3項目を記した11年作成の文書には、09、10年度の2年分がまとめて記載され、前会長が署名していたという。一方、ゴーン前会長は、「総報酬」について、米国の自動車大手3社の最高経営責任者の報酬の平均値であり、「希望額として了解したという意味で署名した」と供述。「延期報酬」分は「将来の受領が確定していない」と述べ、記載義務を否定しているという。

<女性の能力に対する過小評価について>
PS(2018年12月15日追加):有報への虚偽記載もあやしくなってきたせいか、2018年12月14日、日産は、*10-1のように、「理由なき利益」を日産から得ていたとしてゴーン氏の姉をブラジル・リオデジャネイロ州の裁判所に提訴する方針を固めたそうだ。ゴーン氏の姉は、リオでコンサルタント会社を経営していた2002年に日産とアドバイザー業務契約を結び、日産から年約10万ドル(約1130万円)の支出を受けたが、日産は「業務実態はなかった」として会社経費の不正支出にあたるとする。しかし、*10-2のように、ゴーン氏の姉は、ブラジル生まれのレバノン育ちで、フランスのリヨン大学を卒業し、パリ・デカルト大学(パリV)などの大学院で民族学研究をした後、1995年に「Netune Ltda」の責任者に就任し、2013年3月~2017年3月には、フランスとブラジルの商工会議所の会長を務めた人であり、アラビア語、フランス語、英語、ポルトガル語の4か国語を話すことができるため、強力な営業マンだったと考えることもできる。そのため、「業務実態がなく、理由なき支払いだった」というのが本当かどうかは慎重な吟味を要する。日本の社会通念では、「60代の女性が大した仕事をしていたわけがないため、業務実態のない不正支出だろう」と思うのかも知れないが、私も佐賀地裁唐津支部で佐川急便に提訴された時、「この人はパートくらいでしか働いたことがなく、何も知らないのだろう」と推測され、呆れたとともに不利益を蒙ったのでわかるわけである。

*10-1:https://digital.asahi.com/articles/DA3S13812578.html (朝日新聞 2018年12月15日) 日産、ゴーン前会長の姉を提訴へ 
 日産自動車は14日、「理由のない利益」を日産から得ていたとして、前会長カルロス・ゴーン容疑者の姉をブラジル・リオデジャネイロ州の裁判所に提訴する方針を固めた。手続きに向けた準備を始めているという。日産によると、リオでコンサルタント会社を経営するゴーン前会長の姉は2002年に日産とアドバイザー業務契約を結び、日産から年約10万ドル(約1130万円)の支出を受けていたという。社内調査によると、姉に業務の実態はなかったといい、日産は会社経費の不正支出にあたるとみている。

*10-2:https://shiawase-no-tobira.com/carlos-ghosn-claudine-keireki-kaogazo-titioya-hahaoya-sister/ (わしろぐ) カルロスゴーン姉(Claudine)の経歴や顔画像は?父親と母親と妹についても
 カルロスゴーン姉(Claudine Bichara)の経歴や名前や顔画像があるのか調査していきます。カルロスゴーンは3人兄弟で、姉、ゴーン、妹の兄弟構成です。また、父親と母親と妹についても情報があるのかチェックしていきます。
●カルロスゴーン姉の経歴や顔画像は?
 名前は「クロディーヌ(Claudine Bichara)」というのが判明しています。ブラジル生まれ、その後、レバノンで育ちます。弟になるカルロスゴーンの誕生日が1954年3月9日ですので、年齢は64歳より上になりそうです(2018年11月23日現在)。カルロスゴーンが16歳でフランスに移住しますが、姉のクロディーヌは既にフランスに渡っています。クロディーヌはフランスのリヨン大学を卒業し、パリ・デカルト大学(パリV)などの大学院で民族学研究をしています。1995年に「Netune Ltda」というインターネット決済や電子取引の戦略などに関するコンサルティングサービスを提供する会社の立ち上げに協力し、責任者に就任します。2013年3月から2017年3月まで、フランスとブラジルの商工会議所の会長を務めます。現在、ブラジルのリオデジャネイロに住んでおり、日産リオのオフィスの昼食会に参加できる人物のようです。アラビア語、フランス語、英語、ポルトガル語の4か国語も話せます。
●カルロスゴーン姉も不正に関与?
 カルロスゴーンが姉に対して、業務実績がないのにコンサル料を支払っていたという報道がありました。姉はブラジルのリオに住んでいて、子会社に購入させたという住宅がブラジルにありますし、他にもありそうですね。(以下略)

<日本の資源と生産性について>
PS(2018/12/16追加): *11-1のように、COP24が、2018年12月15日、地球温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」を運用する実施指針を採択したそうだ。内容は、地球温暖化防止のため化石燃料をやめることで、これについては、*11-2のように、(私の提案で)日本がリードして、1997年に「気候変動に関する国際連合枠組条約の京都議定書」が採択されている。
 しかし、日本では「ハイブリッド車」止まりで、ゴーン氏率いる日産がEVを開発しても逆風を吹かせて足を引っ張り、三菱自動車が燃料電池車を開発しても黙殺してきた。このように、合理的な先端技術の実用化に時間をかけるのが我が国の生産性が低い原因であり、その後の世界競争を不利にしている。また、再エネで電力を作ればエネルギー資源はあるのに、「資源がない」と馬鹿の一つ覚えのように言っている“経済専門家”こそが、成長を阻害し国民を豊かにしない原因であり、これらは知識不足に由来するため、教育の充実が必要である。

*11-1:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO39011660W8A211C1MM8000/ (日経新聞 2018/12/16) パリ協定20年適用開始 COP24、実施指針を採択、温暖化防止へ一歩
 ポーランドで開かれている第24回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP24)は15日、地球温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」を運用する実施指針について合意し、採択した。焦点だった資金支援や削減目標を巡って先進国と途上国が折り合い、パリ協定が2020年から適用される。世界各国は温暖化防止に向けて一歩を踏み出す。議長を務めたポーランドのクリティカ環境副大臣は「次の世代に持続可能な社会をつくるため、パリ協定を稼働させる時がきた」と語った。パリ協定は15年にパリで開いたCOP21で合意して16年11月に発効した。産業革命以前より気温上昇を2度未満に抑える目標を掲げて約180カ国が批准した。ただ削減に向けた詳細なルールが決まっておらず、20年からの適用に向けてCOP24で交渉していた。COP24は会期を1日延長して15日夜まで協議を続けた。資金支援については先進国が歩み寄り、フランスやドイツなどが途上国向けの基金を一定額増やすと表明した。また先進国が2年ごとに将来の支援額を新たに示すことにした。資金支援についてはパリ協定を採択した15年、先進国が20年までに年間1千億ドルを途上国へ拠出すると約束していた。ところが米トランプ政権が17年に協定から離脱を表明し、オバマ政権時代に約束した資金拠出を取りやめた。今後は米国分を先進国がどれだけ穴埋めできるか課題となる。焦点の一つだった削減目標や削減した総量の検証を巡っては、先進国と途上国で差をつけず客観的なデータの提出など共通のルールを導入することでも合意。途上国にも先進国と同じ情報公開を求めた。一方、海外での削減分を目標達成に利用する「市場メカニズム」と、温暖化ガスを削減する目標期間を5年か10年のどちらにするかは結論を19年以降に先送りした。各国が現行の削減目標の深掘りを進めることでも一致した。パリ協定は各国が温暖化ガスの削減目標を公表して2度未満の達成を目指していたが、10月に気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が2度未満に抑えても海面上昇による国土の消失や洪水のリスクが高まるとする「1.5度報告書」を公表。削減目標の上積みが議論されていた。COP24の合意で参加国は20年までに削減目標を現行より増やせるか検証したうえで再提出しなければならない。日本もこれまで30年度に13年度比で26%削減する目標を公表しているが、さらなる上積みを求められそうだ。

*11-2:https://kotobank.jp/word/%E4%BA%AC%E9%83%BD%E8%AD%B0%E5%AE%9A%E6%9B%B8-2793 (京都議定書)
「気候変動枠組条約」に基づき1997年に京都で開かれた「地球温暖化防止京都会議」で議決した議定書。正式名称は「気候変動に関する国際連合枠組条約の京都議定書」。地球温暖化の原因となる、「温室効果ガス」の一種である二酸化炭素、メタン、亜酸化窒素、HFCs、PFCs、六フッ化硫黄について、先進国における削減率を90年を基準に各国別に定め、共同で約束期間内に目標を達成することを定めている。2008年~12年の間に、日本はマイナス6%、アメリカはマイナス7%、EUはマイナス8%と各地域で削減率を設定。日本ではこれをもとに二酸化炭素排出削減運動が展開されており、「ハイブリッド車」や「クールビズ」などが大きく注目されるきっかけとなった。(以下略)

<パリ協定ルールの採択は、環境を重視する企業に追い風であること>
PS(2018年12月17、18日追加):地球温暖化だけでなく他の排気ガスも深刻な公害だが、*12-1のように、COP24でパリ協定の実施ルールが採択され、先進国・発展途上国とも厳しいルールの下で温室効果ガスの排出削減を進めることになったのは、結果として全ての排気ガスを削減できるのでよかったと、私は思っている。しかし、先進国と発展途上国の定義は曖昧であり、時間の経過とともに変わるものでもあるため、一人当たり排出量及び国全体の排出量で、きちんと定義しなおした方がよいと思われる。また、環境を壊して工場を立て公害を出しつつ操業した方が、自然を維持するよりもGDPが上がるというパラドックスは補正しなければならないため、地球ベースで環境税を徴収して自然や緑を維持する国にその面積に応じて配分するのがよいと考える。このような中、COP24の結果、再エネ・EV・ゼロエミッション住宅などの技術を持っている企業は、世界進出のチャンスだということは間違いない。
 なお、*12-2のように、英自動車最大手ジャガー・ランドローバーは数千人規模の人員削減を検討しているそうだが、アフリカやインドに進出したい企業は、まずイギリスに進出してイギリスと手を組むのも一案だろう。
 また、日立が、*12-3のように、スイスのABBから送配電・電力システム部門を買収することで最終合意したが、そのアクションは速かった。ただ、①ABBがまず対象事業を分社して日立が出資し ②1~2年かけて出資比率を高めて完全子会社化する というやり方では、肝心な集団はそれまでに配置転換してしまい、日立には残りしか移転して来ない可能性があるので要注意だ。なお、日立の蓄電池や燃料電池を組み合わせれば、再エネも容易に使いこなせるだろう。
 12月17日、*12-4のように、EUが2030年の自動車のCO2排出量を21年比で37.5%減らす規制案をまとめ、これはガソリン車やハイブリッド車の燃費改善では達成困難で、EVシフトがカギを握るとのことだ。そのような中、現在の日本には捨てている再エネ電力も多いのに、「EVシフトが急加速すれば電力需給が逼迫する」「電力需要増に対応する多額の投資コストをどう負担するか」などと言っているのは愚かだ。駐車している時間が長い自動車自身にも、スマートな太陽光発電を取り付ければよいのではないか?

   
2018.12.3東京新聞     AFP        JCCCA    2017.11.17毎日新聞 

(図の説明:左図のように、エネルギー由来のCO2排出は、総量では中国が1番・米国が2番だ。しかし、一人あたり排出量は、中2つの図のように、米国が最大でカナダ・ロシア・ドイツ・イギリス・日本と続く。また、右図のように、米国がパリ協定から離脱しようとしているが、これは先進国・途上国という人為的で不公平な分類を使わず、CO2排出量に応じてGlobalに環境税を課し、吸収量に応じてその国・地域に配分するルールにすれば阻止できると思う)

   
       ameblo          2018.12.17東京新聞   2018.12.6毎日新聞

(図の説明:パリ協定の構造は、左図のように、“先進国”“能力のある国”が“後進国”“開発途上国”に資金支援という施しをする形になっているが、この区別は曖昧で、時代とともに変化するものだ。そのため、世界環境機関を作って、CO2排出源(主に化石燃料)からGlobalに環境税を徴収し、CO2吸収源(自然や緑)の量に応じて配分して環境保全に努めるのが、論理的で不公平がないと考える。そうすると、化石燃料の使用を控えて自然や緑を守る行動が促される。なお、一番右の図で、日本は「検討中」と書かれているが、2030年以降は交通系に化石燃料を使わず、省エネを徹底し、発電方法も再エネに切り替えるのが、あらゆる意味でよいと思う) 

*12-1:http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201812/CK2018121702000139.html (東京新聞 2018年12月17日) パリ協定のルール採択 COP24 全ての国に共通基準
 ポーランド・カトウィツェで開かれた国連気候変動枠組み条約第二十四回締約国会議(COP24)は十五日(日本時間十六日)、地球温暖化対策を進めるためのパリ協定の実施ルールを採択した。先進国と発展途上国が共通の厳しいルールの下で温室効果ガスの排出削減を進めることとなり、二〇二〇年の運用開始へ準備が整った。温暖化対策は国際的な仕組み作りに力を注ぐ段階を終えた。今後、深刻な被害を避けるために各国が脱炭素化への取り組みをどう強化するのか、具体的な行動が問われることになるが、米国が離脱を表明するなど先行きに不透明さも残る。議長を務めたポーランドのクリティカ環境副大臣は採択時の全体会合で「合意により、パリ協定の開始を確保できる。人類のために一歩を踏み出すことができた」と意義を強調した。交渉は三年にわたり、先進国と途上国で内容に差をつけるかどうかが焦点だった。採択されたルールは、二五年までに各国が出すことになる新しい削減目標や、削減の進み具合を検証する手法は、共通の厳しい基準を適用すると規定。詳しいデータの提出などが必要で、取り組みが透明化されて対策強化を促しやすくなると期待される。途上国への資金支援については、可能であれば先進国は二〇年から二年ごとに将来の拠出額を提示するよう求めた。削減目標を出さない国には順守委員会が対応するが、懲罰や制裁は科さないとした。パリ協定は一五年に採択され今月二日からのCOP24がルール作りに向けて設定された最後の場だった。会期後半は各国の環境相らが協議に加わって膠着(こうちゃく)状態の打開を図り、二日延長して十六日未明に閉幕した。

*12-2:http://qbiz.jp/article/145877/1/ (西日本新聞 2018年12月17日) 英ジャガー、数千人削減か EU離脱備えでコスト増
 英自動車最大手ジャガー・ランドローバーが数千人規模の人員削減を検討していることが16日分かった。英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)電子版などが報じた。英国の欧州連合(EU)離脱に備えるためのコスト増加に加え、ディーゼル車の不振や中国での販売落ち込みが業績に響いていることが理由。報道によると、5千人規模の削減になるとの予測もある。来年1月にも正式に発表するという。EU離脱が英経済の軸である自動車産業に与える影響が広がりつつある。ジャガーは英国内で約4万人を雇用し、これまでも国内工場で人員削減や操業時間の短縮を実施してきた。FTによると、ジャガーは10月、1年半以内に10億ポンド(約1400億円)のコスト削減を実施することを明らかにしていた。

*12-3:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO39021920X11C18A2MM0000/ (日経新聞 2018年12月17日) 日立、ABBの電力システム事業買収で合意 午後発表
 日立製作所は17日、電気を発電所から企業や家庭に届ける送配電など電力システム事業で、世界最大手のスイスABBから同部門を買収することで最終合意した。買収総額は6千億~8千億円程度になるようだ。日立が手掛けるM&A(合併・買収)では過去最大。再生可能エネルギーの普及や新興国の電力網整備で成長が見込まれる同分野の海外展開を急ぐ。日立とABBが17日午後に記者会見を開いて発表する。ABBがまず対象事業を分社して日立が出資。1~2年かけて出資比率を高めることで完全子会社にする方針だ。段階的な買収とすることで事業環境が大きく変わるリスクなどを軽減する。日立は送配電で世界首位となり、企業全体の規模では重電分野2位の独シーメンスと肩を並べる。ABBは産業用電機の世界最大手で、電力部門では制御システムを含めた送配電設備の製造や運営を世界中で手掛ける。2017年の部門売上高は約103億ドル(約1兆1700億円)、営業利益率は約8%を確保している。設備納入だけでなく送配電システム全体の運用も手がけ、売上高の4割以上をサービスで稼ぐ。日立の電力・エネルギー事業の売上高は18年3月期で4509億円。営業利益率は6%弱にとどまる。発電設備のほか、送配電・変電設備、再生エネなどを幅広く手がけるが、国内事業が9割以上を占める。原発関連など主力の国内電力事業が不振のため、海外市場の開拓が課題になっていた。22年3月期の連結売上高営業利益率を10%と3年で2ポイント高める目標を掲げる。電力システム事業は電力会社などから発注を受けて変電所を建てたり、電線を敷設したりする。設備運営を受託し、停電を防ぐために電力網全体の需要と供給を調整する役割を担う。太陽光発電や風力といった再生エネは天候により発電量が大きく変わるため、IT(情報技術)を使った高度な制御システムの需要が高まっている。

*12-4:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO39095650Y8A211C1EA2000/?nf=1 (日経新聞 2018/12/18) EUが迫る電気自動車シフト 乗用車CO2 37.5%削減
 欧州連合(EU)は17日、2030年の自動車の二酸化炭素(CO2)の排出量を21年比で37.5%減らす規制案をまとめた。今後自動車メーカーごとに具体的な削減幅を決める方針だが、ガソリン車やハイブリッド車の燃費改善では達成は困難とみられる。各メーカーは新車の3分の1程度を電気自動車(EV)などに代替する必要があるとの見方もある。EUではこれまで執行機関である欧州委員会と、加盟国政府の意見を代表する閣僚理事会、欧州議会がそれぞれ別のCO2の排出規制案を打ち出して議論していた。欧州委員会(30%)や閣僚理事会(35%)の提案よりも厳しく、最も厳しかった欧州議会(40%)の提案に近い形での決着となった。今後、欧州議会と閣僚理事会の承認を経て正式決定する。EUは21年に乗用車1台の1キロメートル走行あたりのCO2排出量を全企業平均で95グラム以下とする目標を掲げ、欧州市場で自動車を販売する各社が取り組んでいる。非営利団体「クリーン交通の協議会(ICCT)」によると、この目標でも17年は119グラム。消費者のディーゼル車離れで16年より増えており、これを大きく上回る目標の実現は容易ではない。今回決めた37.5%の規制値はEU全体の削減幅であり、すべての乗用車に一律に適用するのではない。販売台数や車種構成にあわせてメーカーごとに異なる削減幅が割り当てられることになる。それでも燃費の良いディーゼル車とハイブリッド車の比率を高める既存の戦略の延長線上で対応できる目標とみる向きは少ない。カギを握るのがEVへのシフトだが、17年のEUの新車販売に占めるEVの比率はプラグインハイブリッド車(PHV)を含めても1.4%にすぎない。今回の規制は各メーカーにEVシフトの急加速を迫る内容といえる。EUが重視するのは温暖化ガスの域内排出量を30年までに90年比で40%削減するとした「パリ協定」だ。さらに11月には欧州委員会が50年までに「実質ゼロ」を目指す新目標を提案。温暖化ガス削減で世界を主導する姿勢をアピールしてきた。自動車へのCO2排出削減でも高めの規制を打ち出すのもその一環といえる。EU域内では17年以降、フランスや英国、オランダなどが相次いで30~40年にガソリン車やディーゼル車の販売を禁止する計画を公表。11月にはスペインも追随した。CO2排出規制の強化はこうした「脱ガソリン・ディーゼル」の動きと表裏一体だ。削減規制は自動車が対象だが、EVへのシフトで需要の高まる電力部門については、再生可能エネルギーの拡大などで温暖化ガス削減を急ぐ。ただ、自動運転や人工知能(AI)の普及による電力需要が増える中で、EVシフトが急加速すれば電力の需給が逼迫する可能性もある。電力需要増に対応する多額の投資コストをどう負担するかも課題となる。

<EV化を誘導する中国の政策>
PS(2018年12月20日追加): *13のように、中国政府は厳しい規制で自動車産業の高度化と環境対応を進める狙いで、2019年1月10日からガソリンなどを燃料とするエンジン車をつくる工場の新増設を規制するそうで、よいと思う。PHEVも、エンジン付のため、車体が重くて居住空間が狭く、部品が多くてコスト高(=価格高)にもなるため、これまでの雇用は守られても消費者にとってメリットが少ない。従って、日本のメーカーもEVかFCVに変更する時だろう。

*13:https://digital.asahi.com/articles/DA3S13819401.html (朝日新聞 2018年12月20日) 「脱エンジン」中国加速 工場の新増設規制、生産を抑制 来月から
 中国政府は2019年1月10日から、ガソリンなど油を燃料にするエンジン車をつくる工場の新増設を規制する。完成車メーカーの新設による新工場建設を禁じるほか、既存メーカーの生産能力増強も制限する。日本メーカーの販売計画に影響する可能性もある。中国政府は現在、将来的なエンジン車の販売禁止に向けた計画の策定を進めており、まずは生産の抑制に乗り出す。厳しい規制を通じ、自動車産業の高度化と環境対応を進める狙いだ。国家発展改革委員会が10日付で出した「自動車産業投資管理規定」によると、中国国外で販売する場合を除き、エンジン車の生産メーカーの新設が禁止される。既存メーカーが生産能力を増やす場合も、過去2年の設備利用率が業界平均より高い場合などに限る。これまで新エネルギー車として優遇されてきたプラグインハイブリッド車(PHEV)も、エンジン車として規制対象になる。規定では、電気自動車(EV)を生産するメーカーの新設についても制限。建設規模は、乗用車が年産10万台、商用車は5千台を下回ってはならないことといった制限が加えられる。EVなどを普及させるための補助金目当ての「にわかEVメーカー」が乱立。こうした問題に対応する。日本メーカーでは、トヨタ自動車や日産自動車が、世界最大の市場である中国での販売増をねらい、工場の生産能力増強を計画している。規制にひっかかる場合は、今後の投資計画が狂う可能性もある。

<検察の姿勢と人権侵害>
PS(2018年12月22日):*14-1のように、ゴーン氏逮捕の争点となった「退任後の報酬」は、ゴーン氏はじめ司法取引に合意した日産の元秘書室長と外国人執行役員、東京地検特捜部、メディアがその仕組みを理解しているかどうかは怪しいが、確定拠出年金と同様、確実に受け取れる金額ではなく利子率の変化によって変わるものだと思われる。また、2018年3月期までの8年間に有価証券報告書に記載しなかった約91億円は、退職後に受領するものなので、受領時に認識して納税すべき退職慰労金と考えるのが普通だ。そのため、地検のステレオタイプで古い見立てに合う証言をするまで勾留したり、罪人呼ばわりしたり、粗末な場所に閉じ込めたりするのは、ゴーン氏だけでなく誰であっても人権侵害なのだ。従って、*14-2のように、東京地裁が2018年12月20日にゴーン氏とケリー氏の勾留延長を却下したのは英断だった。
 しかし、*14-3のように、東京地検特捜部は、2018年12月21日、新たな会社法違反(特別背任)を持ち出してゴーン氏を再逮捕して勾留を続けているので呆れる。容疑は*14-3・*14-4のように、①新生銀行との間で結んでいたスワップ契約による約18億円の損失を日産に付け替えた ②日産がオランダに設立した子会社「ジーア」とタックスヘイブン(租税回避地) にあるその子会社を通じて、レバノン・ブラジル・オランダ・フランスなどの高級住宅が購入され、ゴーン氏に無償提供された ③日産とゴーン氏の姉が実態のない「アドバイザリー契約」を結び、姉に年10万ドルが供与された ④日産が所有するジェット機を、日産の主要拠点がないレバノンへの往来に使用した ⑤娘の通う大学への寄付金や、家族旅行の費用にも会社資金が充てられていた などとされている。
 そのうち、①については、普通はドルか受取手が望む通貨で報酬を支払うため、日産が円でしか支払わないのは融通が利かなすぎる感があった。②については、所有権はまだ日産にあり、退職後に退職慰労金でジーアを購入すべく投資していたのであれば、ゴーン氏が言っていたことは首尾一貫する。さらに、③については、本当に実態がないかどうかわからず、④⑤については、現在は日産の主要拠点がなくても、日産の会長として中東に足掛かりを作る役に立っていたかも知れないため、既にある枠組みの中でルーチンワークしかしていない人には、トップの働きは理解できないのかも知れないと思えたわけである。

*14-1:http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201812/CK2018121902000118.html (東京新聞 2018年12月19日) 報酬文書にゴーン容疑者ら反論 きょう逮捕1カ月 「動かぬ証拠」検察に戸惑いも
 日産自動車前会長カルロス・ゴーン容疑者(64)の衝撃の逮捕から、十九日で一カ月になる。事件の争点となっているゴーン容疑者の「退任後の報酬」は、確実に受け取れるものだったと言えるのか-。文書という物的証拠を握っているとして強気な検察当局と、文書の解釈を巡り真っ向から反論するゴーン容疑者側。想定以上のせめぎ合いに、検察当局の戸惑いも透ける。「まるで言葉遊びのようだ。こういう展開になるとは予想外だった」。ある検察幹部が肩をすくめる。ゴーン容疑者と前代表取締役グレゴリー・ケリー容疑者(62)が問われている金融商品取引法違反事件は、二〇一八年三月期までの八年間、ゴーン容疑者の実際の役員報酬は計約百七十億円だったにもかかわらず、計約九十一億円を有価証券報告書に記載しなかったというものだ。東京地検特捜部は逮捕の約五カ月前、日産の元秘書室長と外国人執行役員と司法取引(協議・合意制度)に合意し、複数の文書を入手していた。最も重視したのは、報酬額が一円単位で記された一連の書面。年によって書式は異なるが、本来の報酬は「固定報酬」、実際に受け取って有価証券報告書にも記載した報酬は「支払った報酬」、その差額は「延期された報酬」などと英語で書かれ、ゴーン容疑者と秘書室長がサインしていた。ある検察幹部は逮捕前から「単なる希望額だったら、おおよその金額を書くはず。一円単位で記載していたのは、受け取りが確定していた動かぬ証拠」とみていた。別の幹部も「たとえ黙秘でも立証できる」とにらんでいた。ところが、ゴーン容疑者は逮捕されると「後任の最高経営責任者(CEO)が支払ってくれるかは未知数」と反論。最近では、役員報酬は複数の代表取締役と協議して決めるのが日産のルールなのに、自分一人で決めていたとして、「手続きに誤りがあったので確定はしていない」と主張している。検事は当初の取り調べでは、書面を突きつけず、存在をちらつかせながら追及していたとされる。だが、最近はゴーン容疑者に「書面があるから大丈夫なんだ」「いくら争ってもダメだ」と追及することも。一連の書面作成を巡り、司法取引した二人と直接関わったとされるケリー容疑者には、「(二人が)あなたたちに不利な証言をしている。何を言っても無駄だ」と詰め寄ることもあるという。東京拘置所にいる両容疑者の元には、領事館関係者らが頻繁に接見に訪れるため、一日の取り調べは五時間程度。通訳を交えており、実質的な調べはより短時間になる。ケリー容疑者は接見した関係者に「検事は怒るけど、通訳を介すから迫力ないね」と余裕を見せることもあるという。一方、捜査の過程では、退任後にどのような名目で支払うか検討した文書に、日産の西川(さいかわ)広人社長のサインがあったことも明らかに。ともに文書にサインしていたケリー容疑者は「今年九月、西川社長と『(支払いは)まだ確定したものではないよね』とやりとりした」と供述。特捜部は慎重に経緯を調べている。

*14-2:http://qbiz.jp/article/146118/1/ (西日本新聞 2018年12月20日) ゴーン前会長らの勾留認めず 東京地裁 近く保釈の可能性
 東京地裁は20日、金融商品取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)の疑いで再逮捕された日産自動車の前会長カルロス・ゴーン容疑者(64)と、前代表取締役グレゴリー・ケリー容疑者(62)の勾留延長を認めない決定をした。20日が勾留期限だった。東京地裁が東京地検特捜部の勾留延長を認めないのは異例だ。検察側が準抗告を検討する。最初の逮捕から約1カ月。近く保釈される可能性がある。欧米を中心に長期勾留への批判が出ていた。2人は共謀し、ゴーン容疑者の2016年3月期〜18年3月期の役員報酬が実際は計約71億7400万円だったのに、計29億400万円と過少に記載した有価証券報告書を関東財務局に提出したとして、10日に再逮捕された。11年3月期〜15年3月期には計約48億6800万円少なく記載したとして起訴されている。受領を退任後に先送りした分を記載していなかったとされる。関係者によると、2人は「退任後の報酬は確定しておらず、報告書への記載義務はない」と否認している。

*14-3:http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2018122190140234.html (東京新聞 2018年12月21日) ゴーン前会長、再逮捕 保釈見通し一転、特別背任疑い
 日産自動車の前会長カルロス・ゴーン被告(64)=金融商品取引法違反罪で起訴=が、私的な投資で生じた約十八億五千万円の損失を日産に転嫁するなどして会社に損害を与えたとして、東京地検特捜部は二十一日、会社法違反(特別背任)の疑いでゴーン被告を再逮捕した。東京地裁は二十日、地検が求めていたゴーン容疑者の勾留の延長を却下しており、保釈請求が認められれば二十一日にも保釈される可能性が浮上していた。ともに起訴された前代表取締役グレゴリー・ケリー被告(62)の弁護人は同日午前、地裁に保釈を請求。ゴーン容疑者は今回の再逮捕によって、さらに勾留が続く可能性が高まった。再逮捕容疑などでは、ゴーン容疑者は二〇〇八年十月、自身の資産管理会社と新生銀行との間で、通貨デリバティブ(金融派生商品)のスワップ取引を行っていたところ、評価額約十八億五千万円の損失が発生。この損失を含むすべての権利を日産に移し、損害を与えたとされる。また、この損失の付け替えに尽力した関係者が営む会社の口座に、〇九年六月から一二年三月までの間、四回にわたり、日産の子会社名義の口座から千四百万ドル(約十六億三千百万円)を振り込み、日産に損害を与えたとされる。関係者によると、ゴーン容疑者はかねて私的な投資をしていたが、〇八年秋のリーマン・ショックによる円高で多額の損失が発生。「飛ばし」の手法で約十八億五千万円の損失を日産に肩代わりさせたという。ゴーン容疑者はこの疑惑が報じられた先月下旬、弁護人に「当局から違法との指摘があり、付け替えは実行しなかった。日産に損失を与えていない」と説明したという。ゴーン容疑者は損失を含む権利を日産に移した後、再び資産管理会社に権利を戻したとされる。特捜部は権利を移した時点で特別背任は成立するとみている。特別背任の公訴時効は七年だが、海外に滞在している期間は除外されるため、立件が可能となった。
<特別背任>会社法で規定。取締役など特定の地位にある者が自分や第三者の利益のために任務に背く行為をし、会社に損害を与えた場合、10年以下の懲役か1000万円以下の罰金が科される。会社の経営に携わる立場での背任行為は大きな責任が問われるため、刑法の背任罪より法定刑が重い。

*14-4:https://mainichi.jp/articles/20181221/k00/00m/040/069000c?fm=mnm (毎日新聞 2018年12月21日) ゴーン前会長再逮捕 地検の経費不正疑惑の解明に注目
 会社法違反(特別背任)容疑で21日に再逮捕された日産自動車前会長のカルロス・ゴーン容疑者(64)を巡っては、会社資金の流用や、経費の不正使用とみられる疑惑が次々に浮上していた。東京地検特捜部の捜査で、数々の疑惑がどこまで解明されるか注目が集まっている。ゴーン前会長については、銀行との間で結んでいたスワップ契約による私的投資で受けた約18億円の損失を、2008年に日産に付け替えた不正経理疑惑が判明していた。この疑惑が今回の再逮捕容疑となったが、証券取引等監視委員会が当時、取引に関わった銀行に実施した検査で明らかになったとされていた。私的流用とみられる疑惑は他にもある。日産がオランダに設立した子会社「ジーア」とタックスヘイブン(租税回避地)の会社などを通じて流れた資金で、レバノンやブラジル、オランダ、フランスなどの高級住宅が購入され、前会長に無償提供されていた疑惑が浮上した。前会長はこの疑惑を否定しているとされる。また、日産と前会長の姉が実態のない「アドバイザリー業務契約」を結び、姉に年10万ドルが供与されたことも明らかになった。前会長は「正当な理由がある」と説明しているという。他にも、日産が所有するジェット機1機を、会社の主要拠点がないレバノンへの往来に使用した問題も指摘されていた。さらに、娘の通う大学への寄付金や、家族旅行の費用にも会社資金が充てられていた疑惑が浮上している。送金に関わっていたとされる社員らは特捜部に任意で事情聴取され、送金の詳細を説明している模様だ。「前会長は外出してのどが渇いて、部下に水を買わせる時も会社持ちだった。何から何まで会社のお金を使っていた」。日産関係者はそう声をひそめた。ゴーン前会長の私的流用は、ともに逮捕された前代表取締役のグレッグ・ケリー被告(62)=金融商品取引法違反で起訴=が、外国人執行役員らに具体的に指示していたとみられる。特捜部は送金記録を入手し、裏付け捜査を進めているとみられる。

<とにかくゴーン氏を陥れようとするのは、公正でないこと>
PS(2018年12月23日追加):*15-1・*15-2に、「①ゴーン氏再逮捕の理由は、自身の資産管理会社で生じた損失を日産に付け替え、さらに日産の資金約16億円を第三者に流出させた特別背任容疑」「②日産は逮捕容疑を踏まえ、ゴーン氏に損害賠償請求を検討する」「③ゴーン氏の資産管理会社(どこか?)が新生銀行と締結していた通貨取引に関するスワップ契約で損失を抱え、損失を含むこのスワップ契約を日産に移転し、約18億5000万円の評価損を負担する義務を日産に負わせた」「④この契約移転が証券取引等監視委と監査法人から相次いで問題視されたので、資産管理会社にスワップ契約を再移転した」「⑤ゴーン氏のサウジアラビアの知人が信用保証に協力し、この知人が経営する会社に日産子会社の口座から1470万ドル(現在のレートで約16億円)を振り込ませた疑いもある」と、ゴーン氏が業務上横領・特別背任の重罪を犯したかのように記載されている。
 しかし、③④については、ゴーン氏は監査法人から指摘されて契約を再移転し、その後、監査法人は適性意見を出しているので、日産に損失はなく、②は当たらない。そして、監査法人が、事前にこのような指導的機能を発揮して適性意見に導くことはよくある。さらに、新生銀行には全く瑕疵がなく、証券取引等監視委から問題視される理由がないため、証券取引等監視委は特捜に頼まれて嘘の証言をしているのではないかと思われる。
 また、①⑤のサウジアラビア人の知人が信用保証に協力し、日産子会社の口座から1470万ドル(約16億円)を振り込ませた疑いというのは、*15-3のように、ゴーン氏の直轄費から出したのであれば、企業には役員に認められた(ある程度の)使途不明金や交際費はよくあるため問題ない。さらに、*15-4には、「ゴーン氏が私的な損失を日産に付け替えたなどとして逮捕された特別背任事件で、ゴーン氏は取締役会で、全ての外国人取締役の役員報酬を外貨に換える投資を行う際の権限を、側近の秘書室幹部に与えるという決議をさせていた」と書かれているが、海外赴任した従業員の給料・報酬などは、通常は人事部で本人が必要とする通貨で支払うように決定し、通貨スワップ等は財務部が行う。しかし、日産の外国人役員は円でしか報酬をもらえなかったため、ゴーン氏が全ての外国人取締役を対象として自らの秘書室でそれを行うこととし、それに対して取締役会決議を得たのなら、むしろ気の毒なくらいで問題ない。つまり、何でもゴーン氏が悪いかのように言うのは、不公正でよくない。
 なお、*16のような冤罪事件は多く、不当に拘束された人は人生を台無しにされるため、死刑制度さえ廃止すればよいというものではない。つまり、「司法がメンツや信用を保つためなら、個人の人権を侵害してもかまわない」と考えていること自体を変えるべきであり、メディアは、日本でも無罪の推定が働くのだから、裁判で罪が確定するまでは、自らがさも偉いかのような言い方で人を罪人と呼ぶ浅はかな報道は止めるべきだ。

*15-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20181222&ng=DGKKZO39285720R21C18A2MM8000 (日経新聞 2018年12月22日) ゴーン元会長、再逮捕 日産から16億円流出か、損害賠償請求へ
 東京地検特捜部は21日、日産自動車元会長のカルロス・ゴーン容疑者(64)を会社法違反(特別背任)容疑で再逮捕した。自身の資産管理会社で生じた損失を日産に付け替え、さらに同社の資金約16億円を第三者に流出させた疑いが判明。日産は今回の逮捕容疑を踏まえて会社が受けた損害額を精査し、ゴーン元会長に対する賠償請求を検討する。今回の逮捕容疑はゴーン元会長による「会社の私物化」の疑いを強める構図。保釈の可能性が高まるなかで特捜部は3回目の逮捕に踏み切り、勾留はさらに長期化する見通しとなった。関係者によると、再逮捕容疑の発端は2008年のリーマン・ショックに伴う急激な円高。ゴーン元会長の資産管理会社は、新生銀行と締結していた通貨取引に関するスワップ契約で巨額の損失を抱え、銀行から担保不足を指摘された。新たな逮捕容疑の一つは、08年10月、このスワップ契約を損失を含めて日産に移転し、約18億5000万円の評価損を負担する義務を日産に負わせたというものだ。ところがこの契約移転が一部で問題視され、資産管理会社にスワップ契約を再移転することになった。この際、ゴーン元会長のサウジアラビアの知人が信用保証に協力したという。09~12年、自分と知人の利益を図り、知人が経営する会社に対し日産子会社から計1470万米ドル(現在のレートで約16億円)を振り込んだというのが2つ目の容疑だ。関係者によると、ゴーン元会長は調べに対し容疑を否認している。損失付け替えでは結果的に契約を再移転しており「日産の損失はない」と主張。知人には「日産のための仕事をしてもらっていた」とし、振り込みは業務の対価だと説明しているという。今後の捜査では、特別背任罪の構成要件である「自己または第三者の利益を図る目的」と日産の「財産上の損害」を立証できるかが焦点となる。今回の逮捕容疑は日産の内部調査では突き止められず、特捜部の捜査によって判明。司法取引で合意した日本人の幹部社員の証言や提出資料が重要な役割を果たしたという。幹部社員は秘書室長としてゴーン元会長を長年支えた側近だった。逮捕容疑の一部は約10年前の行為だが、ゴーン元会長は海外滞在が長く、特捜部は特別背任罪の公訴時効(7年)は成立していないと判断した。特捜部は10日、金融商品取引法違反の罪でゴーン元会長らを起訴し、同法違反容疑で再逮捕した。20日に東京地裁に勾留延長を請求したが却下され、保釈の可能性が出てきたため、予定を早めて新たな容疑で逮捕したとみられる。3回目の逮捕容疑について22日にも地裁に勾留請求する見通しだ。

*15-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20181222&ng=DGKKZO39298300S8A221C1MM0000 (日経新聞 2018年12月22日) ゴーン元会長の損失移転問題 監視委・監査法人が指摘
 日産自動車元会長のカルロス・ゴーン容疑者(64)の特別背任事件で、ゴーン元会長が私的な金融取引の損失を日産に付け替えた後、証券取引等監視委員会と監査法人から相次いで問題視されていたことが22日、関係者の話で分かった。外部の指摘を受け、ゴーン元会長は損失を自身の資産管理会社に再移転したという。損失付け替えは再移転で解消された形だが、特捜部は、いったん付け替えを実行した時点で日産に損害が生じており、会社法違反の特別背任罪が成立すると判断しているもようだ。ゴーン元会長は2008年10月、自身の資産管理会社が運用していたデリバティブ取引の契約を日産に移転し、評価損約18億5000万円を負担する義務を日産に負わせた疑いが持たれている。関係者によると、ゴーン元会長の資産管理会社が契約していた新生銀行の関連会社に監視委の検査が入った際に損失付け替えが発覚。日産の取締役会の議決を経ていないなど、コンプライアンス上の問題があると指摘された。同じころ、日産を担当する監査法人も会計監査の過程で付け替えを把握。「会社が負担すべき損失ではなく、背任に当たる可能性もある」との指摘が日産側にあったという。外部からの相次ぐ指摘を受け、ゴーン元会長はデリバティブ取引の契約を自身の資産管理会社に再移転することにした。この際、巨額の評価損に対応する追加担保が必要になり、サウジアラビアの知人の協力により信用保証を得ることができたという。ゴーン元会長はこの知人が経営する会社の預金口座に日産子会社の口座から1470万ドル(現在のレートで約16億円)を振り込ませた疑いも持たれている。関係者によると、ゴーン元会長は特別背任の容疑を否認。損失付け替えについては、結果的に契約を再移転していることなどから「日産の損失はなく、背任には当たらない」と主張している。知人への支払いは日産のための業務の対価だったと説明し、日産には損害を与えていないとしているという。

*15-3:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20181223&ng=DGKKZO39312900S8A221C1MM8000 (日経新聞 2018年12月23日) ゴーン元会長、CEO直轄費から捻出か 流出の16億円
 日産自動車元会長のカルロス・ゴーン容疑者(64)の特別背任事件で、日産からゴーン元会長の知人側に流出したとされる約16億円は「CEO reserve」と呼ばれる最高経営責任者(CEO)直轄の費用枠から捻出された疑いがあることが22日、関係者の話で分かった。東京地検特捜部は21日、約16億円の支払いにより日産に損害を与えたなどとする特別背任容疑でゴーン元会長を再逮捕した。一方、ゴーン元会長の弁護人によると、ゴーン元会長は「知人が日産のために行ったサウジアラビアでのトラブルの解決などへの対価だった」と容疑を否認している。ゴーン元会長は2008年10月、自身の資産管理会社が締結していたデリバティブ取引の契約を日産に移転し、約18億5千万円の評価損を同社に付け替えた疑いがある。その契約を自身の資産管理会社に戻した際に協力した知人の会社に対し、日産子会社から計1470万米ドル(現在のレートで約16億円)を振り込み入金させた疑いも持たれている。関係者によると、知人はサウジアラビアで会社を営む実業家で、日産から契約を再移転する際の信用保証を手助けした。当時CEOだったゴーン元会長は、必要に応じて使途を決められる「CEO reserve」と呼ばれる費用枠を持っており、知人側への資金もこの枠から日産子会社を経由して支出された可能性があるという。

*15-4:https://digital.asahi.com/articles/DA3S13824319.html (朝日新聞 2018年12月23日) 秘書室幹部に特別な権限 損失付け替え可能に ゴーン前会長
 日産自動車の会長だったカルロス・ゴーン容疑者(64)が私的な損失を日産に付け替えたなどとして逮捕された特別背任事件で、前会長が取締役会で、全ての外国人取締役の役員報酬を外貨に換える投資を行う際の権限を、側近の秘書室幹部に与えるという特別な決議をさせていたことが、関係者への取材でわかった。一般的なルールを装ったこの決議で、自らの報酬の投資で生じた損失を、他の取締役には隠したまま付け替えたとみられる。東京地検特捜部などによると、ゴーン前会長は2006年以降、自身の資産管理会社と新生銀行の間で、金融派生商品であるスワップ取引を契約。前会長が「日本円で受け取った報酬をドル建てにするため」と説明するこの契約で、08年秋のリーマン・ショック前後に、円高による多額の評価損が発生した。ゴーン前会長は同年10月、契約の権利を資産管理会社から日産に移し、約18億5千万円の評価損の負担義務を日産に負わせた疑いがある。関係者によると、銀行側は、日産の取締役会で権利移転の承認を得るよう求めた。だがゴーン前会長は「円建てで報酬を得ている全ての外国人取締役の利便を図るため」として、外貨に換える投資を行う際の権限を、秘書室幹部に与える議案を取締役会に諮った。そのまま議決されたという。ゴーン前会長は、この権利を再び自分に戻した際の信用保証に協力したサウジアラビアの実業家に、アラブ首長国連邦(UAE)の子会社「中東日産」を介して1470万ドル(現在のレートで約16億3千万円)を入金した特別背任容疑でも逮捕された。関係者によると、前会長は「サウジの日産販売店で起きたトラブルの処理や、中東から投資を集めてもらった報酬」として、最高経営責任者(CEO)の裁量で使える資金から支払ったと供述。容疑を否認しているという。

*16:https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130612-00010004-wordleaf-soci (Yahoo 2013/6/12) 東京電力女性社員殺害事件から考える冤罪の背景
 1997年の東京電力女性社員殺害事件で再審無罪となったネパール人のゴビンダ・プラサド・マイナリ氏を支援し続け目的を果たして解散していた「ゴビンダさんを支える会」が、この事件での教訓を生かし、2013年6月8日「なくせ冤罪! 市民評議会」として新たな活動をスタートしました。冤罪事件の背景には検察による「供述調書」の作成における問題点があると言います。
■事件の経緯
 「捜査・公判活動に特段の問題はなかったと考えているが、結果として、無罪と認められるゴビンダ・プラサド・マイナリ氏を、犯人として長期間身柄拘束したことについては、誠に申し訳なく思っている。」2012年10月29日の東京電力女性社員殺害事件再審初公判後、青沼隆之東京高検次席検事のコメントです。11月7日の再審判決当日、ゴビンダさんは「どうして私が15年間も苦しまなければならなかったのか、日本の警察、検察、裁判所はよく考えて、悪いところを直してください。」とコメントしました。1997年3月19日、東京都渋谷区円山町のアパートで、東京電力に務める39歳の女性が絞殺死体で発見され、同年5月20日、現場の隣のビルに住んでいたインド料理店店員のネパール人、ゴビンダさんが逮捕されました。決め手とされたのは、現場の鍵を持って居たことと、目撃証言でした。2000年4月14日に一度無罪判決を言い渡されましたが、同年12月22日、現場に残されたDNAなどを理由に逆転有罪、無期懲役判決を言い渡されました。ゴビンダさんは、獄中から再審を請求、様々な支援を得て、2011年に東京高検がDNA鑑定を実施し、遺体に付着していたDNAとゴビンダさんのDNAが一致しないことが判明しました。それでも、検察はゴビンダさんが犯人である可能性を主張し続けていました。
■報道の過熱による人権侵害
 この事件は、冤罪事件だったという警察・検察・裁判所の在り方だけではなく、マスコミをはじめとしたメディアの報道の在り方も議論の的になりました。捜査が進む中で、被害者女性が、大企業の管理職であり経済的な問題はなかったにも関わらず、対照的ともいえる私生活での事実が発覚し、マスコミの報道は過熱、事件とは直接関係のないプライベートまで暴露報道するようになり、被害者の家族が警察に抗議するに至りました。東京法務局は、行き過ぎた内容は人権侵害に当たるとして再発防止の勧告をし、スキャンダラスな報道は沈静化しましたが、たくさんの問題点があらわになりました。
■黙秘によって意に反する供述調書の作成を阻止
 警視庁はかなり早い段階からゴビンダさんを犯人だと決めつけていた、といいます。ゴビンダさんは不法滞在だったうえ、被害者とプライベートでの関係があったため、検察が調書を作りやすかったのでは、という議論もありました。この事件に関してお話を伺ったリンク総合法律事務所の梅津竜太弁護士によれば、冤罪事件の場合、意外に見落とされるのは「供述調書」の問題だと言います。「供述調書は検察官が作ります。被告人は、検察官が書いた供述調書の内容を確認して、押印するわけですが、細かいところをちゃんとチェックせずに、概ね合っていれば押さされてしまうことも多いんです。外国人などコミュニケーション能力が低い場合、もちろん通訳などはつくのですが、しっかりとチェックするのは難しいでしょう。」つまり「自白」とされている「供述調書」は自白自体ではなくて、自白を聞いて検察官が作成したものだということです。弁護人は、捜査段階の初めから、完全黙秘を貫く方針を取りました。これに対して「弁護人が捜査妨害をしてきた」などと言っている捜査関係者もあるといいます。しかし、上記のような背景事情がある以上、完全黙秘という方針を取らない限り、ゴビンダさんの意に反する供述調書が作られていた可能性は否定できません。仮にそうした調書が作成されていれば、今回の無罪判決はなかったのではないかと思います。「検事の作文」が真実として報道され、世論を形成してしまっている可能性があるわけです。日本の刑事事件の有罪率は99.9%という世界でも極めて高い水準を保っています。つまり起訴された時点で有罪はほぼ確定してしまいます。その理由として、検察官は情状を考慮して起訴しないことができる「起訴便宜主義(刑事訴訟法248条)」が機能していることが挙げられますが、あくまでも一要因に過ぎません。刑事裁判は、「疑わしきは罰せず」という原則があります。また「十人の真犯人を逃すとも一人の無辜(無罪の人)を罰すなかれ」という格言もあります。とはいえ、日々、冤罪事件が明るみに出ています。そしてその事実は、晴れることのない無数の冤罪の存在を証明していると言えます。警察の持つ捜査権限の強大さ、検察官が独占する起訴の選別、そして捜査書類中心の公判について、多くの人が知り、自分事と捉えて意見を持つことが必要ではないでしょうか。

<ゴーン氏に特別背任はあったか>
PS(2018/12/27、28追加): *17-3のように、ケリー氏が保釈されたが、取締役であるのに、取締役会や株主総会への出席に裁判所の許可が必要というのは解せない。また、首の手術をするとのことだが、それができる医師は日本でも少ないため、住居制限や海外渡航禁止があるのなら、しばらく様子を見た方が安全だと思われる。
 ゴーン氏については、*17-1、*17-2のように、東京地検特捜部は、2009~12年、ゴーン氏が日産子会社からサウジアラビアの知人に「販促費」「販売委託料」等として約1470万ドルを支出させたのは、実際には販促活動ではなく日産に損害を与えたので特別背任だとしている。そして、この支出は、2008年のリーマン・ショックに伴う急激な円高で、ゴーン氏の私的な資産管理会社(ジーア社?)が通貨スワップで評価損を抱えたため、契約相手の銀行側から担保不足を指摘され、①契約当事者を資産管理会社から日産に移転して約18億5000万円の評価損負担義務を付け替えた ②4カ月後に契約を資産管理会社に戻して担保不足にサウジアラビアの銀行から信用保証を得るため、サウジアラビアの知人に協力してもらった ③ゴーン氏は「業務の正当な報酬だった」としている ④約1470万ドルは、ゴーン氏が必要に応じて使途を決められる「CEOreserve」から「販売促進費」等の名目で「中東日産会社」を通じて支払われた という内容で、現在は「損害の有無」と「支出の趣旨」が主な対立点となっているそうだ。
 しかし、①については、日産は4か月間信用保証したが実損はなく、②のように、ゴーン氏は指摘を受けて契約を資産管理会社(誰の所有?)に戻し、数千万円の信用保証料や手数料はゴーン氏が負担したそうだ。さらに、本来なら日産が行うべき外為リスクの回避策が行われていないため、ゴーン氏自身が行ったものだろう。そのため、特捜部がこの一時的な損失付け替えをもって特別背任とするのは行き過ぎだと考える。さらに、サウジアラビアの知人が日産のためにサウジで政府や王族に対するロビー活動やトラブル解決などに尽力していたというのは、新しい市場を開くにあたって、国によってはロビー活動や*18のような袖の下が必要になることもある(25年前だが、私が中国深圳市に進出した日本企業の監査に行った時、その企業の社長が「袖の下を渡すことを知らず、いつまでも通関してもらえなかった」とこぼしていたことがある)。そのため、世界中が日本と同じ状況だと勘違いして行き過ぎた批判をしていると、日本企業の世界進出をやりにくくする。さらに、トラブル解決費は、日産がブレーキ性能の検査等で騒がれているのに世界でクレームが少ないのは、ゴーン氏のこういう支出のおかげではないのか?
 なお、サウジアラビアが女性に運転免許を解禁したため、これから中東は女性好みのEVを販売するよい市場となって顧客をつかむチャンスであり、技術は売れて初めて磨かれるにもかかわらず、このようにサウジアラビアの王族や販促に協力している人から反感を買うような営業感覚の鈍さがあるのは、世界市場への展開を危ぶませる。
 2018年12月28日には、日経新聞はじめ各メディアが、*17-4のように、ゴーン氏の信用保証に協力したのはサウジアラビアの財閥創業家出身で、同国中央銀行理事も務めるハリド・ジュファリ氏で、同氏は、日産が中東の販売業務支援のために設立した合弁会社の会長も務めていたと報じている。そのため、1470万ドルは「日産の業務の正当な対価」で、信用保証料はゴーン氏が自ら負担した数千万円に含まれると考えるのが妥当であり、東京地検特捜部のどうしても不正にこじつけたがる捜査は次元が低すぎると思う。

*17-1:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO39319590T21C18A2CC1000/ (日経新聞 2018/12/23) 知人への16億円、「販売促進費」名目で ゴーン元会長
 日産自動車元会長のカルロス・ゴーン容疑者(64)の特別背任事件で、日産からゴーン元会長のサウジアラビアの知人側に流出したとされる約16億円が「販売促進費」などの名目で支出されていたことが23日、関係者の話で分かった。東京地検特捜部は販促活動などの実態はなかったとみている。ゴーン元会長は「業務の正当な報酬だった」と反論しているという。逮捕容疑では、ゴーン元会長は2009~12年、日産子会社から知人が経営する会社に対し計約1470万ドル(現在のレートで約16億円)を支払わせ、日産に損害を与えたとされている。関係者によると、知人側への約16億円は、当時最高経営責任者(CEO)だったゴーン元会長が必要に応じて使途を決められる「CEO reserve」(CEO予備費)から捻出。「販売促進費」などの名目で、中東での販促などを担当しているアラブ首長国連邦の子会社「中東日産会社」を通じて支払われたという。この知人は09年初めごろ、ゴーン元会長の私的な金融取引の損失を巡って銀行に対する信用保証に協力。約16億円は、知人が経営している会社の預金口座に対し09年6月から12年3月にかけて4回に分けて振り込まれていた。特捜部は、知人が経営する会社は日産の販促に関わる業務を手掛けておらず、巨額の支払いに見合う活動実態はなかったと判断。信用保証に協力した見返りなどの趣旨だった疑いがあるとみているもようだ。一方、弁護人によると、ゴーン元会長は知人についてサウジアラビアのビジネス界の重要人物であると説明。日産のために同国の政府や王族へのロビー活動を担っていたほか、日産と現地販売店の間で深刻なトラブルが生じた際に解決に尽力するなどし、約16億円はこうした業務への正当な報酬だったと主張しているという。ゴーン元会長の私的な資産管理会社は08年のリーマン・ショックに伴ってデリバティブ取引の契約で巨額の評価損を抱え、契約相手の銀行から担保不足を指摘された。ゴーン元会長は担保の追加に応じず、08年10月に評価損ごと契約を日産に移転。しかし、証券取引等監視委員会などから契約移転を問題視され、09年2月ごろに契約を資産管理会社に戻したとされる。この際に改めて担保の不足が問題になり、サウジアラビアの知人が銀行に対する信用保証に協力したという。

*17-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?ng=DGKKZO39422390W8A221C1M10800 (日経新聞 2018年12月27日) 「会社に損害」か「正当な支出」か
 カルロス・ゴーン元会長の3度目の逮捕は会社法違反の特別背任容疑。私的な金融取引で生じた巨額損失を日産自動車に一時付け替え、さらに会社の資金約16億円を知人に流出させた疑いがあるとして、東京地検特捜部は「会社私物化」の疑惑に正面から切り込んだ。2008年のリーマン・ショックに伴う急激な円高によって、ゴーン元会長の私的な資産管理会社は通貨取引のスワップ契約で巨額の評価損を抱え、契約相手の銀行側から担保不足を指摘された。ゴーン元会長は担保の追加を拒み、08年10月、契約当事者の立場を資産管理会社から日産に移転。約18億5000万円の評価損を負担する義務を付け替えたという。約4カ月後の09年2月ごろには契約を再移転して資産管理会社に戻したが、その際に評価損の担保不足を巡ってサウジアラビアの知人が約30億円の信用保証で協力した。ゴーン元会長は09~12年、この知人が経営する会社に対し、日産子会社から計約1470万ドル(現在のレートで約16億円)を支出させたとされる。こうした事実関係についてはゴーン元会長側もほぼ認めており、「損害の有無」と「支出の趣旨」が主な対立点となっている。損失付け替えについて特捜部は、たとえ一時的だったとしても「評価損を負担する義務」を負わせたことは会社に損害を与える行為であると判断している。対するゴーン元会長は、契約移転中に定期的な精算で生じた数千万円の支払いも自ら負担しており、「日産に実損はない」と反論している。知人側に支出された約16億円を巡っては、「販売促進費」などの支出名目に実態はなく、信用保証への謝礼などの趣旨だったというのが特捜部の見方。一方、知人は日産のためにサウジで政府や王族に対するロビー活動、トラブル解決などに尽力しており「正当な報酬だった」とゴーン元会長は主張している。特捜部は、当時秘書室長の立場で損失付け替えなどの実務を担った元幹部社員と司法取引で合意し、捜査の支えとなる証言や証拠を得ているとみられる。さらに捜査を進め、証拠によってゴーン元会長の反論を突き崩せるかどうかが問われる。

*17-3:https://www.nikkei.com/paper/related-article/?b=20181226&c=DM1&d=0&nbm=DGKKZO39377820V21C18A2EA1000&ng=DGKKZO39341130V21C18A2EA1000&ue=DEA1000 (日経新聞 2018年12月26日) ケリー役員 保釈 取締役会出席、許可必要に
 日産自動車元会長のカルロス・ゴーン容疑者(64)の報酬過少記載事件で、東京地裁は25日、元代表取締役、グレッグ・ケリー被告(62)の保釈を認める決定をした。保釈保証金は7000万円で即日納付。東京地検の準抗告も棄却し、ケリー役員は同日夜、最初の逮捕から約1カ月ぶりに東京・小菅の東京拘置所を出た。関係者によると、保釈には住居の国内制限、海外渡航の禁止のほか、西川広人社長兼最高経営責任者(CEO)ら事件関係者との接触禁止などの条件が付いた。取締役会や株主総会に参加する場合、事前に裁判所の許可が必要となる。

*17-4:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20181228&ng=DGKKZO39458140X21C18A2CC1000 (日経新聞 2018年12月28日) ゴーン元会長「知人」はサウジ財閥創業家出身 ハリド・ジュファリ氏、30億円保証 日産と合弁の会長も
 日産自動車元会長のカルロス・ゴーン容疑者(64)の特別背任事件で、ゴーン元会長の私的損失を巡って信用保証に協力したのはサウジアラビアの財閥創業家出身で、同国の中央銀行理事も務めるハリド・ジュファリ氏だったことが27日、関係者の話で分かった。日産が中東の販売業務支援のために設立した合弁会社の会長も務めていたという。ジュファリ氏経営の会社には2009~12年、日産側から1470万ドル(現在のレートで約16億円)が入金されており、東京地検特捜部は信用保証の謝礼などの趣旨だったとみて調べている。弁護人によるとゴーン元会長は「日産のための業務の正当な対価であり、謝礼の趣旨はない」と主張しているという。関係者によると、ジュファリ氏はサウジアラビアの財閥「ジュファリ・グループ」の創業家出身。同国有数の複合企業「E・Aジュファリ・アンド・ブラザーズ」の副会長のほか、同国の中央銀行理事も務める。ジュファリ氏が経営する会社は08年10月、アラブ首長国連邦(UAE)に日産との合弁会社「日産ガルフ」を設立。同氏が会長に就任した。当時の発表では、同社は日産の中東市場の販売・マーケティング業務をサポートするとしていた。弁護人によると、ゴーン元会長とジュファリ氏は長年の友人。ゴーン元会長は「ロビー活動や現地のトラブル解決への対価として約16億円を支払った」と説明しているという。ゴーン元会長は通貨取引のスワップ契約で巨額損失を抱えた際、ジュファリ氏から約30億円の信用保証の協力を得た。これにより新生銀行から求められた追加担保を免れたとされる。日本経済新聞はジュファリ氏側に電子メールでコメントを求めたが、回答はなかった。

*18:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20181225&ng=DGKKZO39325660U8A221C1CR8000 (日経新聞 2018.12.25) 初の司法取引 きょう初公判 元幹部ら、タイ贈賄事件
 捜査協力の見返りに刑事責任を減免する日本版「司法取引」が初適用されたタイの発電所建設を巡る贈賄事件の公判が25日から東京地裁で始まる。不正競争防止法違反(外国公務員への贈賄)罪で起訴された元会社幹部3人のうち1人は無罪を主張する見通し。司法取引を巡っては虚偽供述などの恐れも指摘され、公判の行方は今後の制度運用にも影響しそうだ。起訴されたのは三菱日立パワーシステムズ(MHPS)の元取締役、内田聡被告(64)と元執行役員、錦田冬彦被告(63)、元部長、辻美樹被告(57)。起訴状によると、3人は2015年2月、タイの発電所建設に使う建設資材を港で荷揚げする際、荷揚げの許可条件違反を見逃してもらう見返りに、港湾当局の現地公務員に約3900万円相当の現地通貨バーツを支払ったとされる。25日に錦田被告と辻被告の初公判があり、19年1月11日に内田被告の初公判が開かれる。内田被告は無罪を主張する方針とみられる。事件では、法人としてのMHPSが東京地検特捜部と司法取引で合意。関係者によると、同社は合意内容に基づいて80点超の資料を提出し、役員らの事情聴取に協力。必要に応じて役員らが証人として出廷することも合意内容に含まれているという。こうした捜査協力の見返りに特捜部は同社の起訴を見送った。法取引を巡っては、自らの罪を逃れるために虚偽の供述をするリスクが指摘されてきた。今回は個人が罪に問われる一方で企業が起訴を免れたことに「トカゲのしっぽ切り」との批判もあった。公判などを通じて制度の課題や運用のあり方を検証していくことが求められている。

<ゴーン氏を有罪にするための嘘の記述が多いこと>
PS(2019/1/5追加): *19-1の「ゴーン氏が私的投資の損失付け替えを伏せて日産の取締役会承認を得た」と書かれている件は、日産の取締役を馬鹿にし過ぎている。何故なら、取締役は、部長まで勤めあげた人が多く、日産の仕組みや部下の監督に精通しているため、外国人取締役の役員報酬を外貨に替える権限をゴーン氏の秘書室幹部に与える案をゴーン氏が出せば、その目的や日産に損失が出るかどうかなどの必要事項を質問し、承認するかどうか判断できる筈だからだ。そして、私は、一時的に日産の信用を借りただけで、日産に実損は出ていないと思う。
 また、*19-2の「関係者によると、日産社内ではCEO予備費は自然災害に伴う見舞金など予算外の大きな支出に使うことを想定」としているが、この関係者は特捜部(国の機関)だろう。何故なら、国の予備費は自然災害など予定外の大きな支出に使うが、企業のCEO直轄費は多くの企業にあり、目的を明示しないで使うもので、災害の見舞金には損金算入できる費用や寄付金・ふるさと納税などを、目的を明示して使うのが合理的だからである。

*19-1:https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20181225-00000058-mai-soci (毎日新聞 2018/12/25) 投資損失付け替え伏せ、日産取締役会に ゴーン容疑者
 私的な投資の損失を日産自動車に付け替えたなどとして前会長、カルロス・ゴーン容疑者(64)=金融商品取引法違反で起訴=が会社法違反(特別背任)容疑で逮捕された事件で、損失付け替えが分からないよう偽装する取締役会決議が行われたとみられることが関係者への取材で明らかになった。東京地検特捜部は、前会長らが不正の隠蔽(いんぺい)を図る意図があったとみて捜査を進めている模様だ。ゴーン前会長は、新生銀行と契約した金融派生商品取引で多額の損失が生じたため、2008年10月に約18億5000万円の評価損を含む契約を日産に付け替えるなどしたとして21日に逮捕された。関係者によると、付け替えにあたって、新生銀行は前会長に取締役会の承認を得るよう要請。前会長は、自身の名前や損失の付け替えを明示することなく、外国人取締役の役員報酬を外貨に替える権限を秘書室幹部に与える案を諮り、承認されたという。元々、前会長の取引は役員報酬を円からドルに替える内容であったため、この承認で事実上、前会長の損失の付け替えが可能になったという。前会長は取締役会の承認を得たとして、新生銀行側に伝達したとされる。前会長は「(付け替えに関連する)取締役会の承認を得ている。会社に実害も与えていないので特別背任罪は成立しない」と供述している模様だ。これに対し、特捜部は、前会長が他の取締役らに分からないような形で「承認」を得て、側近だった秘書室幹部と共に付け替えを実行したとみている模様だ。この秘書室幹部は、既に特捜部と司法取引で合意しており、付け替えの経緯などについて特捜部に資料提出するなどしているとみられる。

*19-2:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO39665340U9A100C1CR8000/?nf=1 (日経新聞 2019/1/4) ゴーン元会長「直轄費」が焦点 知人側に支出70億円
 日産自動車元会長のカルロス・ゴーン容疑者(64)の特別背任事件で、ゴーン元会長が直轄で管理し、自ら使途を決めることができた「CEO予備費」に疑いの目が向けられている。この経費枠を使ってゴーン元会長の知人側に支出された資金は総額70億円近い。その実態は会社資金の私的流用だったのか、個人的な人脈を使ったトップビジネスだったのか――。関係者によると、CEO予備費は2008年12月ごろ、当時最高経営責任者(CEO)だったゴーン元会長の指示によって創設され、アラブ首長国連邦(UAE)の子会社「中東日産会社」内で管理されていた。中東日産は09~12年、CEO予備費から「販売促進費」などの名目で、ゴーン元会長の知人であるサウジアラビアの実業家、ハリド・ジュファリ氏が経営する会社に約1470万ドル(現在のレートで約16億円)を支出。ほぼ同時期、ゴーン元会長の中東の知人2人が経営するオマーンとレバノンの会社にも、約3200万ドル(同約35億円)、約1600万ドル(同約18億円)を支出していた。関係者によると、日産社内では、CEO予備費は自然災害に伴う見舞金など予算外の大きな支出に使うことを想定。ある日産幹部は「止められなかった責任は我々にもあるが、会社の資金が巧妙に私物化されていた」と問題視する。CEO予備費が創設されたのは、ゴーン元会長の資産管理会社が通貨取引のスワップ契約で約18億5000万円に上る評価損を抱え、銀行側から担保不足を指摘されていた時期と重なる。ゴーン元会長は08年10月、スワップ契約を評価損ごと日産に移転。その後、ジュファリ氏から約30億円の信用保証で協力を得て、09年2月に契約を自身の資産管理会社に再移転した。特捜部は、ジュファリ氏側への約16億円は信用保証の謝礼などの趣旨で、会社法違反の特別背任の疑いがあるとしている。別の2社への支出も私的な目的だった可能性があるとみている。他方、日産は08年10月、ジュファリ氏の会社と共に中東市場の販売・マーケティングを支援する合弁会社「日産ガルフ」をUAEに設立。会長にはジュファリ氏が就任した。オマーンとレバノンの会社も日産の販売代理店を務めるなど、日産とつながりが深い。この時期、日産が中東での販促を強化しようとしていたようにも見える。ゴーン元会長はジュファリ氏側への支出について「サウジの政府や王族に対するロビー活動、現地販売店とのトラブルの解決など、日産のために尽力してもらったことへの正当な対価だった」と説明。信用保証の謝礼など、個人的な目的を否定している。

<ゴーン氏の陳述について>
PS(2019年1月8日追加):有価証券報告書への虚偽記載については、後に報酬を受け取る契約をしていたとしても未受領で、退任後に受領する契約であるため役員退職慰労金となり、「開示されていない報酬は受け取っていない」というのは本当だ。さらに、日産が組んでもおかしくない通貨スワップを一時的に移転しただけで実損は与えておらず、取締役会の承認も得ているため、“特別背任”にはならないだろう。もともとは、メディアが「ゴーン氏の報酬が多すぎる」などという国際標準と異なる批判をしすぎたのが悪いのであり、これでは優秀な外国人は日本に来たがらなくなる。

*20:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190108&ng=DGKKZO39746100Y9A100C1MM0000 (日経新聞 2019年1月8日) ゴーン元会長「私は無実」 特別背任事件で陳述、50日ぶり公の場 勾留理由開示
 日産自動車元会長のカルロス・ゴーン容疑者(64)の特別背任事件で、裁判官が容疑者に勾留理由を説明する勾留理由開示の手続きが8日、東京地裁であった。出廷したゴーン元会長は自ら意見陳述し、「I am innocent(私は無実です)」と会社法違反(特別背任)容疑について潔白を主張した。ゴーン元会長が公開の場に姿を見せるのは2018年11月19日の最初の逮捕以来、50日ぶり。勾留理由開示にはゴーン元会長と弁護人3人、検察官2人が出廷。英語の法廷通訳人も参加した。冒頭、担当する多田裕一裁判官が氏名を尋ねると、ゴーン元会長は「カルロス・ゴーン・ビシャラ」と答えた。多田裁判官が特別背任の逮捕容疑の概要を述べ、勾留には正当な理由があると説明した後、ゴーン元会長は英語で用意した紙を読み上げる形で意見陳述した。ゴーン元会長は「私に対する容疑がいわれのないものであることを明らかにしたい」「私は会社の代表として公明正大かつ合法的に振る舞ってきた」とし、「私にかけられた容疑は無実です。根拠無く、不当に勾留されている」と強調した。特別背任容疑の一つは、08年10月、銀行から担保の追加を求められた通貨取引のスワップ契約を自身の資産管理会社から日産に移転し、評価損約18億5000万円を負担する義務を日産に負わせた疑い。これについて、ゴーン元会長は「日産に損失を負わせない限りにおいて契約を付け替えた」とし、日産に損害は与えていないと主張した。もう一つの容疑は、09年2月ごろにスワップ契約を資産管理会社に戻した際に信用保証で協力したサウジアラビアの実業家側に対し、09~12年、日産子会社から計1470万ドル(現在のレートで約16億円)を支出させた疑い。これについても「(知人の実業家は)日産の支援者で、現地の販売代理店との紛争解決にも尽力した。関係部署の承認に基づいて対価を支払った」とし、正当な支出だったと主張した。さらに、有価証券報告書に自身の報酬を過少に記載したとされる金融商品取引法違反にも言及。「開示されていない報酬は受け取っていない。後に報酬を受け取るという契約もしていない」として虚偽記載を否定した。弁護人は開示手続きの終了後、8日中にも勾留取り消しを東京地裁に請求する方針。取り消しが認められるケースは少ないが、今後の保釈請求も見据え、裁判所に直接ゴーン元会長の主張を訴える機会として開示手続きを利用したとみられる。東京地検特捜部が現在捜査している特別背任事件で、地裁が認めた勾留期限は11日。特捜部は同日までに起訴するかどうかを判断する。

| 経済・雇用::2018.12~ | 01:35 PM | comments (x) | trackback (x) |

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