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2021.7.22~ 身近に起こっている地球温暖化の影響
・・工事中ですが・・

(1)地球温暖化の影響で増える自然災害
1)洪水の多発とダム決壊の恐れ
イ)欧州の「100年ぶり」の豪雨 ← これから頻繁に起こるのでは?


  2021.7.16Yahoo    2021.7.17News Week     2021.7.17NHK

(図の説明:2021年7月16日、欧州西部を襲った記録的豪雨で河川が氾濫して発生した洪水)

 欧州西部を襲った記録的豪雨で、*1-1-1のように、水位の上昇が続いて河川が氾濫し、洪水が発生して住宅が押し流されるなどの大規模な被害が発生し、7月16日時点で、ドイツ・ベルギー・オランダで約1,300人の安否が確認されず、死者が120人を超えたそうだ。

 また、ケルン当局の報道官は「ネットワークが完全に遮断され、インフラは完全に破壊された。病院は患者を受け入れられなくなっている」とし、ドイツ政府は700人を超える軍隊を動員して救援にあたっているが、ダムが決壊すれば下流地域が一段の洪水に見舞われる恐れがあるとして放流も試みているとのことである。

 気象学者は、「気候変動の影響でジェットストリームの流れが変わったため、今回の豪雨が引き起こされた」と指摘し、欧州委員会のフォンデアライエン委員長も、「今回の洪水の規模を踏まえると気候変動が影響していることは明らかなので、迅速に対応する必要がある」という考えを示しているそうだ。

ロ)中国河南省は「1000年に1度」の暴雨 ← これから頻繁に起こると思うが・・


   2021.7.22Ameblo      2021.7.21BBC       2021.7.21Yahoo

(図の説明:中国河南省の記録的大雨で、左図は、地下鉄が浸水した様子、中央の図は、街中の様子、右図は、亀裂が生じて決壊する恐れがあるとされる満タンのダムの様子)

 中国河南省でも、7月17日以降に記録的な大雨が続き、*1-1-2のように、鄭州市で地下鉄が浸水するなどして7月21日までに少なくとも計16人が死亡して10万人が避難し、鄭州の気象局は「1000年に1度の暴雨」だとして警戒を呼びかけているそうだ。

 鄭州市では、7月17日以降の3日間で年間雨量に匹敵する617ミリの雨量を計測し、20日午後6時頃に、雨水が地下鉄構内への浸水を防ぐ遮水壁を越えて線路まで流れ込み、市内の地下鉄全線が運行停止となって、500人余りが避難したが逃げ遅れた12人が死亡した。このほか、家屋の倒壊等によっても4人が死亡したそうだ。

 また、*1-1-3のように、駅や道路が冠水し、住民1万人以上が避難を余儀なくされ、人口約9400万人の河南省に最高レベルの気象警報が発令されている。さらに、洛陽市のダムに20メートルほどの亀裂が生じて決壊する恐れも出ており、同地域には兵士が配備されいるが、軍は「いつ決壊してもおかしくない」と警告したそうだ。

 同地域では少なくとも今後24時間は土砂降りの雨が続くと予想されており、洪水発生の原因は複合的であるものの気候変動による気温上昇は激しい降雨のきっかけになる。

2)気温の上昇に伴う海面の上昇

   
    2020.1.16朝日新聞     2019.12.24日本気象協会  2019.9.25毎日新聞

(図の説明:左図は、世界の気温の推移を、1951~1980年の平均気温を基準として1880~2020年の年間平均気温についてグラフにしたもので、初めは低かった気温が近年になって急速に上がり、全体で約1°C上がっているが、上昇幅は新興国が市場参入して多くの化石燃料を使い始めた時期に大きくなっている。中央の図は、日本の気温が1981~2010年の平均を基準として年間平均でどれだけ高かったか低かったかを1899~2019年についてグラフにしたもので、マイナス部分が多いように見えるが、実際には1889年と比較して2019年は2°C近く上昇している。世界の気温上昇に伴って海水温も上がり、右図のように、1950年と比較すると2020年には既に30~40cmは海面上昇しており、これは見た目の実感と一致している)

   
  2021.7.22Gooddo     2021.7.21AmericanView    2018.11.15産経新聞
                    氷河の後退
(図の説明:気温が上がると海面が上昇する理由は、左図のように、極地の氷が解けたり、中央の図のように、山間部の氷河が解けて後退したりするからだ。右図は、北極海の氷が解け、北極海を通行しやすくなった場合の航路短縮のメリットを記載しているが、海面上昇で国土が狭くなったり、インフラが使えなくなったりするディメリットは考慮されていないようだ)

イ)氷河の融解
 *1-2-1のように、カナダ・フランス・スイス・ノルウェーの研究者が、NASAの衛星「Terra(テラ)」に搭載したカメラで世界各地21万カ所以上の氷河の写真を撮影し、20年分の衛星写真をまとめて、2000年から2004年にかけては年間2,270億メートルトンの氷河が失われ、2015~2019年には年間2,980億トンが解けて、このままのペースで融解が続けば、今世紀半ばには多くの氷河が完全に失われる可能性があると、『Nature』に掲載したそうだ。

 論文は、この変化の原因に温暖化や降水量の増加を挙げており、溶けて河川や海に注ぎ込んだ水の量は、過去20年間に観測された海面上昇分の約5分の1に相当するとしているが、過去20年間に観測された海面上昇分の約1/5にすぎないのなら、残りの4/5はどこから来たのか?

 日本でも、海面上昇は重大問題で、これまで標高の低かった地域は海抜以下になって下水の排水が困難となり、洪水も起こり易くなる。中国で地下鉄に水が流れ込んだ例は、東京・大阪でも他人事ではなく、これ以上、海抜の低い地域に人口を密集させて、そこに地下鉄をはじめとするインフラを集中投資することは意味が問われるようになった。

 氷河が減ると、氷河をバッファとして比較的低く保たれてきた海水温はさらに上がりやすくなり、急速に溶ける氷河の水は北インドでは狭い渓谷を下ってふたつのダムに到達し、200人が亡くなる事故という環境災害を引き起こした。そして、国連の気候変動に関する政府間パネルが2018年に発表した報告書は、その凄まじい洪水や地滑りが高山で起きやすくなっている原因を温暖な気候にあると指摘している。

ロ)2020年は日本も世界も平均気温が史上最高で、豪雨・異常高温が相次いだ
 2020年の世界と日本の平均気温は、*1-2-2のように、観測が始まった19世紀末以降最高となり、気温の上昇により各地で30年に一度の規模の高温や大雨が頻発し、日本では2020年7月に九州で長期にわたる豪雨災害が発生し、九州を襲う前の6月中旬以降に中国の長江の中・下流域で活動を活発化させて270人以上が死亡・行方不明となる豪雨を発生させていた。

 2020年夏以降は太平洋の中部・東部の海面水温が平年より低くなるラニーニャ現象が発生して2020年末から2021年にかけては寒い冬になったが、英国気象庁によると、2021年の世界の気温は2015年以降の数年間よりはラニーニャ現象の影響で少し涼しくなるものの、1850~1900年の平均よりは約1度高く、長期的な温暖化傾向に変わりはないとのことである。

 また、*1-2-3によると、都市部ではヒートアイランド現象による気温上昇が別途加味されるが、日本全体の気温の推移を確認する場合は都市部を除いた地点の全国をまんべんなく抽出して調べたところ、日本の平均気温は昭和元年から令和元年(1926~2019年)の94年間で1.4度上昇し、猛暑日も平成以降急激に増えて2010年代の10年間は1980年代と比較すると日数が4.6倍になるそうだ。

 その上、都市部は建築物・舗装道路・人工排熱等の影響で気温が上がりやすく、ヒートアイランド現象が起こるため、全国平均よりも気温の上昇が大きく、年間猛暑日も明確に多いそうだが、これも体感と一致している。

(2)それではどうすればよいのか
1)都市の構造を変える

   
     東京(日本)         大阪(日本)        福岡(日本)

(図の説明:左図は、東京の空中写真だ。スカイツリーの近くを流れる空を映して青く見えているのは隅田川で、下水道で処理しきれなくなった場合は汚水も流すため、近くで見ると濁っていてきれいでない。また、東京の地面は、殆どがコンクリートとアスファルトで覆われており、コンクリート製の建物が密集して緑が少ないため、ヒートアイランド現象を起こし易い。つまり、都市計画が乏しい。中央の図は、大阪の空中写真で、大阪城近くを撮影しているため緑が多く見えるが、街中は東京と同じかそれ以下だ。大阪城近くを流れている大川(旧淀川)や寝屋川も、空を映して青く見えてはいるが、近くで見るときれいな川ではない。なお、右図は、福岡の空中写真で、空港にJR直通の地下鉄が乗り入れていたり、空港が街に近かったりするのはよいが、都市は東京と同じくコンクリートとアスファルトで覆われ、コンクリートの建物が密集して緑は東京より少ない《福岡の人は「自然が近いからいい」と言っていたが》。そして、どの都市も飛行機から見ると家並が時代を経るに従って無秩序に広がっていき、都市計画はないようだ)

   
   ロンドン(英国)      パリ(フランス)      上海(中国)

(図の説明:左図は、ロンドンの空中写真で、東京よりは高さの揃った建物が並んでいるが、コンクリート・アスファルト・石造りの建物が多く、街中を流れるテムズ川はきれいでない。しかし、東京より緯度が高いため、年間平均気温は低い。中央の図は、凱旋門を中心として放射状に広がったパリの街で、建物の高さ・設計がかなり統一されているため、街の景観が良く絵になる。緑は道路からは多く見えないが、建物の中庭にもあるようだ。また、右図は上海で、競って近代的な建物を建てているので一つ一つはおしゃれな建物も多いが、街全体としての整合性・統一性がなく、少し路地に入ると昔ながらの汚ない建物も多い。緑は東京と同じか少し多いくらいで、道は広くなったが近くを流れる蘇州河・黄浦江の水はきれいでない。そのため、ここも、環境に配慮した都市計画が必要だろう)

(2)それではどうすればよいのか
1)都市の構造を変える
イ)日本の都市構造について
 日本の都市は、奈良・京都を除いて、道路は建物の隙間を利用して作ったかのように狭くてわかりにくく、碁盤の目になっていない。そのため、番地で住所を探しにくいが、スマホの地図を見ながら歩くと危ない上、逆に居場所を探知されて悪用されるケースもあるため、私自身はスマホを使っていない。

 そのため、これからの都市造りは、あらかじめ安全性で土地にランクを付け、水やエネルギーの供給計画を立て、必要な交通システム・上下水道・電気・ガス・病院・学校・保育所・介護施設・緑地などのインフラ整備を行う必要がある。何故なら、そういうことを考えずに建物を増やしていくと、災害のリスクが上がり、結局は住環境が悪くなるからで、既にできている都市も、今後10~100年の街づくり計画を立て、それに合わせていく必要があると思う。

ロ)「空飛ぶクルマ」を使った交通システム
 JALは、*3-3のように、2025年度に、三重県等で空港と観光地を結ぶ「空飛ぶクルマ」を使ったサービスを始めるそうだ。空港を起点に目的地に行く「空飛ぶクルマ」が実用化されれば、道路の渋滞緩和や過疎地の交通に役立ちそうだ。

 しかし、「クルマ」が空から落ちてきては人も建物もたまったものではないため、事故時も安全が保たれるクルマづくり・道づくり・ルール作りをして欲しい。例えば、道路を3階建てにして、1階は歩行者・自転車・緑地用、2階は自動車用、3階は「空飛ぶクルマ」用にしておけば、「空飛ぶクルマ」は最悪でも3階に落ちるだけですみ、3階に不時着することも可能になる。そして、目的地となる場所は、建物の屋上か3階以上にポートを作る必要があろう。

 なお、この交通システムは、これまで道路の整備が遅れていた場所で作った方が早くできそうで、もしアフリカで作れば、サバンナを道路で分断せずに自動車専用道路を作ることができる。

・・以下、工事中・・


・・参考資料・・
<洪水の多発と地球温暖化の関係>
*1-1-1:https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2021/07/1201300.php (Newsweek、Reuters 2021年7月17日) ドイツ・ベルギー洪水の死者120人超に、行方不明約1300人
 欧州西部を襲った記録的な豪雨で河川の氾濫により洪水が発生し、16日時点でドイツ西部などで約1300人の安否が確認されていない。水位の上昇が続き、一部地域で通信が途絶える中、ドイツとベルギー両国の死者は120人を超えた。ドイツのラインラント・プファルツ州とノルトライン・ウェストファーレン州に加え、ベルギーとオランダで、河川の氾濫で住宅が押し流されるなど大規模な被害が発生。これまでにドイツだけでも103人の死亡が確認された。このうち12人は、夜間に鉄砲水に襲われたケルン南方のジンツィッヒにある障がい者施設の入所者だった。地元メディアは、洪水による家屋倒壊が増えているため、犠牲者数が増加する恐れがあると報道。ベルギーではこれまでに少なくとも20人の死亡が確認され、安否不明は20人となっている。ドイツでは16日時点で約11万4000世帯が停電。洪水に見舞われている一部の地域では携帯電話網が機能停止に陥り、被災者と連絡が取れない状態になっている。ラインラント・プファルツ州では、ケルン南方のアールワイラー地区で約1300人の安否が未確認。ケルン当局の報道官は「ネットワークが完全に遮断され、インフラは完全に破壊された。病院は患者を受け入れられなくなっている」と述べた。ドイツ政府は700人を超える軍隊を動員し、救援にあたっている。独政府報道官によると、メルケル首相は次期首相候補であるキリスト教民主同盟(CDU)のラシェット党首から捜索や救助活動を巡る状況報告を受け、近く被災地を訪問する予定という。ARD(ドイツ公共放送連盟)は、メルケル首相が18日にシュルトを訪れると報じた。当局は、ダムが決壊すれば下流地域が一段の洪水に見舞われる恐れがあるとして、放流を試みている。ドイツ西部シュタインバッハタール・ダムは昨晩にかけて決壊の恐れが高まったため、下流地域で約4500人が避難した。気象学者は、気候変動の影響でジェットストリームの流れが変わったために今回の豪雨が引き起こされたと指摘。欧州委員会のフォンデアライエン委員長も、今回の洪水の規模を踏まえると気候変動が影響していることは明らかだとし、迅速に対応する必要があるとの考えを示した。

*1-1-2:https://digital.asahi.com/articles/ASP7P4142P7PUHBI00V.html (朝日新聞 2021年7月21日) 地下鉄浸水12人死亡 中国・河南「千年に1度の暴雨」
 中国・河南省で17日以降、記録的な大雨が続き、省都の鄭州市で地下鉄が浸水するなどして21日までに少なくとも計16人が死亡、10万人が避難した。鄭州の気象局は「1千年に1度の暴雨」だとして、警戒を呼びかけている。習近平(シーチンピン)国家主席は同日、被災者の救済に取り組むよう関係部門に対して重要指示を出した。中国メディアによると、鄭州市では、20日午後4~5時の1時間で201・9ミリの雨が降り、中国全土での観測史上最大を記録した。17日以降の3日間では、鄭州市の年間雨量にほぼ匹敵する617ミリの雨量を計測したという。地元メディアによると、鄭州市では20日午後6時ごろ、地下鉄構内への浸水を防ぐ遮水壁を越えて雨水が線路にまで流れ込んだ。市内の地下鉄は全線が運行停止となり500人余りが避難したが、逃げ遅れた12人が死亡したという。ほかに5人がけがを追った。中国のSNSには、鄭州市内の地下鉄車内で乗客が胸のあたりまで水につかったまま取り残されている様子を映した動画も投稿されている。このほか、鄭州市内では家屋の倒壊などによって4人が死亡した。

*1-1-3:https://www.bbc.com/japanese/57911006 (BBC 2021年7月21日) 中国・河南省で記録的豪雨 12人死亡、1万人以上が避難
 中国中部・河南省は、今月16日から続く記録的豪雨で、深刻な洪水被害に見舞われている。駅や道路が冠水し、住民1万人以上が避難を余儀なくされている。当局によると、鄭州市でこれまでに少なくとも12人が死亡した。また、主要道路が閉鎖され、空の便が欠航するなど、10都市以上に被害の影響が出ている。人口約9400万人の河南省には最高レベルの気象警報が発令されている。洪水発生の原因は複合的だが、気候変動による気温上昇は激しい降雨のきっかけになる。
●ダム決壊の恐れも
 ソーシャルメディアでは、道路全体が水没している様子が画像から確認できる。水の流れは速く、車やがれきが漂流しているのがわかる。こうした中、河南省のダムが決壊する恐れが出ている。当局によると、洛陽市のダムに20メートルほどの亀裂が生じている。同地域には兵士が配備され、軍は声明で「いつ決壊してもおかしくない」と警告した。ツイッターには、鄭州市で浸水した地下鉄の車両に乗っていた乗客が、肩のあたりまで水に浸かっている映像が投稿されている。現実の状況を撮影したものなのかは不明。救助隊がロープを使って人々を安全な場所に引き上げる様子や、列車の座席に立って水に浸からないようにする人の姿などが確認できる。車両内に何人が閉じ込められているのかは不明だが、これまでに数百人が救助されたとの報告がある。シャオペイと名乗る人物は、中国のソーシャルメディア「微博(ウェイボ)」に助けを求めるメッセージを投稿した。「車両内の水が自分の胸にまで達している。もう声も出ません」。消防局はその後、この人物が救助されたと明らかにした。
●3日間で1年分の雨量
 「生まれてからずっと鄭州市で暮らしているが、こんな大雨は経験したことがない」と、56歳のレストラン経営者はAP通信に語った。鄭州市ではこの3日間で、通常の1年分の雨量に匹敵する雨が降ったと報じられている。同地域では少なくとも今後24時間は土砂降りの雨が続くと予想されている。

*1-2-1:https://news.yahoo.co.jp/articles/794b549b846d24273ef57f58173d01c107872ca7 (Yahoo 2021/5/1) 世界の山間部の氷河が、2050年までに“完全消失”する:衝撃の研究結果が意味すること
 これまでに氷河を散策した経験がないなら、近いうちに行きたくなるかもしれない。標高の高い場所にある世界の氷河が、科学者が想定していたよりも速く溶けていることが判明したのだ。すでに2015年以降だけで年間3,000億トン近くの氷が失われている。4月28日に発表された包括的な研究によると、このままのペースで融解が続けば、今世紀半ばには多くの氷河が完全に失われる可能性があるという。このほどカナダとフランス、スイス、ノルウェーの研究者たちが、米航空宇宙局(NASA)の衛星「Terra(テラ)」に搭載された特殊なカメラで撮影された20年分の衛星写真をまとめた。このカメラは「ASTER(Advanced Spaceborne Thermal Emission and Reflection Radiometer=アスター)」と呼ばれる機器で、世界各地の21万カ所以上の氷河の写真を撮影している。氷河の表面の特徴を立体的に捉えるために、撮影にはふたつのレンズが使用された。今回の研究にはグリーンランドと南極の大規模な氷床は含まれていないが、こちらは別の科学者のチームが調査している。今回の研究は『Nature』に掲載されたもので、2000年から04年にかけて年間2,270億メートルトンの氷河が失われたことが判明した。ところが15~19年には、溶ける量が年間2,980億トンまで増えていたことも明らかになっている。こうした変化の原因として論文では、温暖化や降水量の増加を挙げている。すべてを合わせると、溶けて河川や海に注ぎ込んだ水の量は、過去20年間に観測された海面上昇分の約5分の1に相当するという。
●人々の生活を脅かす現象
 問題は海面上昇にとどまらないが、重大な問題であることには変わりない。インドネシアやバングラデシュ、パナマ、オランダといった沿岸国や米国の一部の住民の生活が脅かされているからだ。また内陸地域の一部では、何百万人もの人が雪解け水からきれいな水を得ている。降雪量が少ないときは、長年にわたって氷河が予備の水源になっているのだ。そうした状況はアンデス山脈やヒマラヤ山脈、アラスカ州の一部に特に見られている。「氷河は地球全体の多くの場所に冷涼で豊富な水を提供しています」と、ノーザンブリティッシュコロンビア大学の地球科学教授で今回の論文執筆者のひとりであるブライアン・メヌーノスは言う。「これらの氷河がなくなると、そうしたバッファとしての機能が失われてしまいます」。これまでの氷河溶解に関する研究では、空間的にも時間的にもほとんど計測が実施されていなかった。このため氷河が実際にどれほど後退しているのかについては、不明瞭な点があったという。それが詳細な衛星写真を使うことで、「わたしたちの推計では不明確な部分を大幅に減らすことができました」と、メヌーノスは言う。21万1,000カ所すべての氷河のデータを処理するために、ノーザンブリティッシュコロンビア大学のスーパーコンピューター1台を1年間にわたってほぼフル稼働させる必要があった。
●厳しい未来への警鐘
 今回の研究結果は厳しい未来に警鐘を鳴らしているのだと、ブリストル大学の地理学教授のジョナサン・バンバー(今回の研究には参加していない)は言う。「これは21世紀の世界の氷河の質量損失に関する最も包括的、徹底的かつ詳細な評価です。かなり詳細な研究結果のおかげで、世界全体の個々の氷河の変化を初めて知ることができました」と、バンバーは説明する。現在の傾向が続けば、標高の低い山地の一部では2050年までに氷河が完全に失われることが分析で示されていると、バンバーは言う。「研究自体やその成果は素晴らしいものですが、最上段に掲げられたメッセージはとても悲観的です。氷河は消えゆく運命にあり、水源や自然災害、海面上昇、観光、そして地域の生活に深刻な影響を与えているのです」。論文の筆者たちも、この評価と同じ考えだ。ノーザンブリティッシュコロンビア大学のメヌーノスは、今世紀半ばまでにカスケード山脈やモンタナ州のグレイシャー国立公園などの場所から氷が完全になくなるだろうと指摘している。「見られるうちに見ておいたほうがいいでしょうね」と、メヌーノスは促す。急速に溶ける氷河が生み出す水は、環境災害を引き起こすことがある。例えば今年2月には、融解が進んでいたヒマラヤの氷河が北インドで崩れ、水の壁が狭い渓谷を下ってふたつのダムに到達して200人が亡くなる事故が起きた。国連の気候変動に関する政府間パネルが18年に発表した報告書は、そうした凄まじい洪水や地滑りが高山で起きやすくなっている原因は、温暖な気候にあると指摘している。「氷河の後退や永久凍土の融解によって山の斜面の安定が崩れ、氷河湖の数や面積が増えると予測される」と、報告書では結論づけている。「その結果、地滑りや洪水、水が滝状に流れる現象が、かつてそうした現象がなかった場所でも起きるだろう」
●氷河の損失の半数が北米に
 カナダと欧州の研究者たちが執筆した今回の論文は、アラスカやカナダ西部、米国で溶けつつある氷河が、世界全体で加速する氷河の質量損失の半分近くを占めていることも突き止めている。「アラスカ州の南東部は心配な場所です。ここ10年間で途方もない変化が起きています」と、メヌーノスは指摘する。アラスカ州では融解する氷が原因で地震の規模が大きくなっている。3月に『Geophysical Research』に掲載されたアラスカ大学フェアバンクス校の研究者たちの論文によると、氷河の下にある地面が隆起して圧力が解放され、付近の断層にかかる力に影響を及ぼしているのだという。全体としては悪いニュースではあるが、研究チームが20年間の衛星写真からまとめたデータの量に専門家は感銘を受けている。「本当に素晴らしい成果だと思いました」と、NASAゴダード宇宙飛行センターの雪氷圏科学研究所所長のトム・ノイマンは言う。「時系列の威力がはっきりと示されています。多くの場合、こうした調査には5~7年単位の年月がかかります。研究チームがいまでも優れたデータを集めているという事実は驚きに値します。そうしたデータは史上初の成果を得る上で大きな力になったのです」。ノイマンは、NASAの地球観測衛星「ICESat-2」のミッションのプロジェクトサイエンティストを務めている。ICESat-2は、地球の極地にレーザーを反射させて氷河や極地の氷床の損失を計測し、世界の海面上昇への影響を監視する。「20年は続けたいと思います。そしていつの日か、今回の論文のようなものを執筆できればいいですね」と、ノイマンは語る。

*1-2-2:https://www.sankeibiz.jp/workstyle/news/210104/cpd2101040638001-n1.htm (産経BZ 2021.1.4) 2020年は日本も世界も平均気温が史上最高 豪雨、異常高温相次ぐ
2020年の世界と日本の平均気温が、観測が始まった19世紀末以降、最高となる見込みであることが気象庁の調査で分かった。気温上昇に伴い、各地で30年に一度の規模の高温や大雨などが頻発。国内も九州で豪雨災害が発生するなどした。地球温暖化も寄与したとみられ、2020年は新型コロナウイルスだけでなく、気象も人類に牙を向いた年として記憶されそうだ。一方、今年はこうした傾向がやや緩和されるとの見方もある。気象庁によると、世界の1~11月の平均気温は平年(1981~2020年の平均)から0・47度上がり、16年1~11月の0・45度を抜いて1891年以降、歴代1位となった。100年で0・75度上昇したことになる。太平洋南東側やアフリカ大陸の南東側の海を除くほとんどの地域で、平年より平均気温が高くなった。日本の平均気温も1898年の観測開始以来、過去最高となり、平年より1・07度高かった。100年あたりでは1・27度上昇した。各地で異常高温もみられ、気象庁がまとめた主な現象だけでも世界の11地域で発生。シベリアの一部地域では気温が平年より14・2度高くなり、永久凍土まで解ける地域もあった。気象庁のまとめでは、8~9月に米国西部で森林火災が発生するなど、2020年は8件の気象災害が発生。うち6件が大雨、1件がハリケーンによる被害だった。6~10月にインドなどを含む南アジアで発生した大雨で、周辺では2700人以上が亡くなった。国内では7月に九州で長期にわたる豪雨災害が発生したが、この雨をもたらした暖かく湿った空気と長く停滞した梅雨前線は、九州を襲う前の6月中旬以降、中国の長江の中・下流域でも活動を活発化させ、270人以上が死亡・行方不明となる豪雨を発生させた。気象庁異常気象情報センターの担当者は「20年が暑かった原因は、温室効果ガスによる地球温暖化に加えて複数ある」と分析する。20年初頭は北極にある寒気が南に降りてきにくい大気の状態だったことから、暖冬が進行。さらに19年ごろからインド洋の海面水温が平年より高まったことが地球全体に広がり、年間を通してさらなる温暖化に寄与した可能性があるという。一方、20年夏以降は太平洋の中部・東部の海面水温が平年より低くなるラニーニャ現象が発生。ラニーニャ現象が発生した年は日本列島は寒くなる傾向にあるといい、20年末から21年にかけては一転して寒い冬となるという。気象庁と同様に地球温暖化を監視している英国気象庁によると、21年の世界の気温は15年以降の数年間よりはラニーニャ現象の影響で少し涼しくなるものの、1850~1900年の平均よりは約1度高く、長期的な温暖化傾向に変わりはないとみられる。

*1-2-3:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000006.000044799.html(パシフィック・コミュニケーションズより抜粋 2020年3月23日)昭和から令和で気温1.4度上昇!
■平成の31年間は1989年の観測史上、もっとも日本の気温が上昇した期間。
 昭和元年から令和元年(1926~2019年)の94年間で、日本の平均気温は1.4度上昇。
■世界全体で見ても平均気温は上昇傾向。2019年の世界の年平均気温は史上2番目の高さで、15~19年の5年間、10~19年の10年間の平均気温はいずれも過去最高。
■気象庁発表によると、2020年3月~5月の気温は全国的に高く、夏(6月~8月)の気温も全国的に平年並みか、高め。昨年より早い時期から真夏の太陽が照り付けると想定される。
■日本全体で進む高気温化
 都市化による影響が小さい全国15地点(※)の年平均気温偏差(濃い折れ線)および全国13地点*1の猛暑日*2の平均年間日数(薄い折れ線)の推移。
*1:全国15地点:網走*,根室,寿都,山形,石巻,伏木,飯田*,銚子,境,浜田,彦根,宮崎*,多度津,名瀬,石垣島(全国13地点:全国15地点のうち、*以外の地点)
 ※都市部ではヒートアイランド現象による気温上昇が別途加味されるため、日本全体の気温推移を確認する場合は、都市部を除いた地点を全国まんべんなく抽出している。
*2:日最高気温が35度以上の日
 日本気象協会によると、昭和元年から令和元年(1926~2019年)の94年間で、日本の平均気温が1.4度上昇したことがわかりました。2015年7月に発表された研究によると、大気中の二酸化炭素レベルが現在とほぼ同じだった300万年前の気温は、現在よりも2℃から3℃高く、海抜は最低でも6メートル高かったことがわかっています(※)。この内容から単純に計算すると、気温が1度上昇するごとに海面は2mほど高くなることから、気温1.4度の上昇がどれほど大きな変化かわかるでしょう。中でも、平成以降の約30年は気温が一段と高くなっており、統計的にも平成の30年は1898年の統計開始以降、最も暑い30年間だったと言うことができます。また、猛暑日の出現日数についても1920年から10年刻みで日数を確認したところ、平成以降急激に猛暑日が増えていることがわかりました。特に2010年代の10年間は1980年代と比較すると猛暑日の日数が4.6倍にも及ぶほか、1926年以降で猛暑日の出現日数が多かった年をランキングにしてみると、上位5カ年のうち4カ年が平成元年以降に集中するなど、直近30年の気温の高さが伺えます。
 ※Dutton et al. 2015 https://science.sciencemag.org/content/349/6244/aaa4019
■都市部でも大きな変化が
 横浜・京都・福岡など都市部では全国平均よりも大きく気温が上昇。年間の猛暑日数に関しても明確な増加傾向にあることが分かりました。一般的に、都市域では建築物や人工排熱などで気温が下がりにくいヒートアイランド現象の影響を受けやすいため、その効果が全国平均よりも顕著な気温上昇傾向として表れた可能性があります。
■令和を迎えた昨年、日本全体の年平均気温の最高を更新。2020も高気温の見通し
 2020年1月、気象庁は、2019年の日本の年平均気温(基準値との差:+0.92℃)が、1898年の統計開始以来で最も高い値であると発表。加えて、世界気象機関(WMO)は、2019年の世界の年平均気温(基準値との差)が史上2番目の高さであり、15~19年の5年間、10~19年の10年間の平均気温はいずれも過去最高であると発表するなど、日本だけでなく世界全体で見ても多くの研究で高気温化が認められています。日本全体の気温上昇は、地球温暖化の影響と自然変動の影響を受けていると考えられ、今後ますます注意が必要です。また、気象庁が20 年2月25日に発表した、向こう3ヶ月(3月~5月)と今年夏(6月~8月)の天候見通しによると、今年の夏の気温も全国的に平年並みか高めになるとのことです。また、梅雨時期の降水量はほぼ平年並みで、その後は高気圧に覆われて晴れる日が多くなると予想。昨年は7月下旬まで雨が続き、気温が上がらなかったことを考えると、今年は昨年より早い時期から真夏の太陽が照り付けるでしょう。この結果を受けて、日本気象協会は、今年は本格的な夏を待たずに、いち早く猛暑対策を行う必要があるとしています。(以下、略)

<政策の方針と予算>
*2-1-1:https://digital.asahi.com/articles/DA3S14983912.html (朝日新聞社説 2021年7月22日) 30年電源構成 原発維持は理解できぬ
 2050年に脱炭素社会を実現するために、30年度にどんな電源構成をめざすべきか。経済産業省がきのう、政府の次期エネルギー基本計画の素案で新しい目標を示した。再生可能エネルギーを「最優先」と明記し、30年度の再エネ比率を36~38%と現行目標より14ポイント高くした。再エネを主力電源と明確に位置づけたことは評価できる。一方、理解できないのが、原子力の比率を20~22%に据え置いたことだ。国際エネルギー機関(IEA)が集計した昨年の国内の発電実績の速報では、原発の割合は4・3%に過ぎない。素案が示す原発比率の達成には、新規制基準で審査中の11基を含む国内の原発27基を、8割の高稼働率で運転させる必要がある。しかし現実には、福島の事故以来、国民の不信感が根強く、再稼働は進んでいない。コストが安い電源だとの主張も根拠が揺らいでいる。経産省が今月まとめた電源別の発電コスト試算の最新結果では、30年に新設する原発は1キロワット時当たり11円台後半以上。04年には5・9円とされていたが、安全対策費用が増え続けて上昇傾向が止まらない。30年時点で8円台前半~11円台後半と最も安くなる見通しの事業用太陽光など、コスト低下が進む再エネとは対照的だ。素案が「可能な限り原発依存度を低減」としながら、非現実的な目標を掲げざるを得ないのは、30年度の温室効果ガス排出を13年度より46%減らす新しい政府目標との整合性を取る必要があるからだろう。それだけ無理をしても、30年度の電源構成の目標で最も大きいのは火力だ。昨年実績の7割からは下がる見通しだが、依然、41%もある。そもそも、8年半後の電源構成を現状から大きく組み替えることには限界がある。発電施設の建設や送電システムの改革には時間がかかるからだ。まずやるべきは、脱炭素社会実現をめざす50年のあるべき電源構成の姿を示すことではないか。主役は現時点では、再エネしか考えられない。昨年の発電実績で21・7%と、現行の30年目標(22~24%)に匹敵する水準に育った再エネの潜在力を、できる限り生かすのが得策だ。30年度の数字は、50年の目標に向けての足取りを検証するための中間指標との位置づけで考え直すのが望ましい。太陽光や風力など電源ごとに具体的な施策を挙げた長期の実行計画をまとめ、検証と修正を重ねながら柔軟に進めていく。そんな態勢を整えることこそ、脱炭素社会への早道になるだろう。

*2-1-2:https://www.kochinews.co.jp/article/471271/ (高知新聞 2021.7.14) 再生エネの優位性を磨け
 2030年時点の各電源の発電コストについて経済産業省が示した新たな試算は、太陽光が最安になった。これまで最も安いとされた原子力のコストが上昇し、太陽光は初めて原子力を下回った。原子力は東京電力福島第1原発事故を受けた規制強化に伴い、安全対策費が膨らんだ。このため前回15年の試算より1割程度上がった。改正地球温暖化対策推進法は、50年までの脱炭素社会の実現を明記している。そのためには、大規模な省エネルギーとともに、二酸化炭素(CO2)排出量の4割を占める電力部門の対応が鍵を握る。中期目標では、30年度の排出量を13年度比で46%削減する。取り組みの加速が求められている。太陽光など再生可能エネルギーは導入量の増加で主力電源になると見込まれる。今夏をめどに改定する「エネルギー基本計画」に合わせた電源構成の新目標は、現行より引き上げる方向で検討されている。火力は縮小へ国際的な圧力がある。そこで、原子力は目標を維持するとの見方が出ている。CO2を排出しない再生エネと原発の電源割合を引き上げることで補うことをもくろむ。発電コストを巡っても、経産省は原子力の安さを強みと位置付けてきた。だが、その見方も安全性とともに揺らいでしまった。災害などを想定した事故防止対策のコスト増加が見込まれる。第1原発の廃炉で最難関とされる溶融核燃料(デブリ)の取り出し費用などは含んでおらず、コストはさらに上昇することは間違いない。この試算は発電設備を新たに更地に建設して運転した場合を前提としている。土地取得の費用などは含まず、利用状況などで数値は変動するとはいえ、運転開始から40年を過ぎた原発が再稼働する中、新増設は厳しい状況だ。石炭火力はCO2排出抑制の対策費がかさむため、上昇を見込む。一方、太陽光の発電コストは、事業用、住宅向けとも下がるとした。世界的に普及が進むことでパネルなどの価格が低下するとみる。陸上風力や液化天然ガス(LNG)火力なども、発電コストを最も安く見込んだ場合の試算値では、原子力の発電コストを下回った。ただし、再生エネへの期待を膨らませても、導入は簡単に拡大するものではない。送電網の整備費などは今回の試算に含まれていない。天候に左右される発電条件など、乗り越えなければならない課題も多い。来年4月施行予定の改正温対法は、太陽光や風力発電などの促進区域を市町村が設定する制度を創設する。手続きの簡素化や資金面での優遇を想定している。だが、生態系や景観の悪化を懸念する住民らの反対運動も目立つようになった。国は土砂災害などが想定される地域は指定対象から除外する方針のようだが、地域の混乱を誘発するようでは本末転倒だ。再生エネの優位性を生かすように、きめ細やかな対応が求められる。

*2-1-3:https://www.ehime-np.co.jp/article/news202107150013 (愛媛新聞社説 2021年7月15日) 太陽光「最安電力」 再生エネを促進し原発は全廃を
 経済産業省が2030年時点での発電コストの試算を示し、「最も安い電力」が原子力から太陽光に交代した。太陽光の発電コストが原子力を下回るのは初めてとなる。原子力は発電コストの安さを強みとしてきた。だが、安全性への懸念や、高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の最終処分などの問題に加え、経済的な優位性も揺らぎ、存在意義は薄れる一方となっている。国は太陽光など再生可能エネルギーの主力電源化を推し進めるとともに、原発の速やかな全廃に道筋を付けるべきだ。試算は、発電設備を更地に新設して運転するのが前提となっている。原子力の発電コストは04年試算で1キロワット時当たり5・9円だったが、11年の東京電力福島第1原発事故を機に上昇。前回15年は10・3円以上、今回は11円台後半以上だった。前回試算と比べると、1基当たり平均1千億円と見積もった安全対策費が今回は2千億円になった。福島の事故を巡る廃炉や賠償、除染などの見積額も12兆2千億円からほぼ倍増。これらが発電コストを押し上げている。廃炉で最難関の溶融核燃料取り出しや、除染土壌の最終処分の費用は試算に含まれておらず、原発のコストが上振れするのは避けられないだろう。二酸化炭素(CO2)排出量が多い石炭火力も排出抑制対策に費用がかかり、発電コストの上昇が見込まれる。地球温暖化の元凶でもあり、原発と同様に一刻も早く廃止すべきだ。一方、太陽光は世界的な普及拡大でパネルなどの価格が低下し、発電コストが下がる。最安の計算値は、事業用が1キロワット時当たり8円台前半、住宅用が9円台後半。陸上風力も原子力を下回る見通しという。今年5月、「50年までの脱炭素社会実現」を明記した改正地球温暖化対策推進法が成立。政府は30年度の温室効果ガス排出量を13年度比で46%減らす目標を掲げる。達成に向け、省エネと合わせ、より安全で安価な再生エネの普及拡大に注力するのが合理的といえる。ただ、課題も残る。太陽光や風力発電の適地は全国に分散しており、大消費地への送電網拡張が欠かせない。天候の変化に備えた蓄電池の整備なども必要になる。こうした費用は試算に入っておらず、コストを抑える取り組みが重要だ。大規模施設を設置するための森林伐採が土砂災害リスクを高めるとの懸念もある。水質や景観への悪影響を理由とした反対運動も各地で起きている。国は地元に対応を丸投げしてはならない。行政と住民、事業者の利害を調整し、丁寧に合意形成を図る制度が必要ではないか。経産省は今月21日にもエネルギー基本計画の改定案を提示する。計画の土台となる30年度の電源構成目標で、再生エネを大きく伸ばす姿勢を明確に打ち出し、民間企業による投資拡大や技術革新につなげたい。

*2-2-1:https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA0311G0T00C21A7000000/ (日経新聞 2021年7月3日) 概算要求に特別枠 22年度予算、成長分野の投資促す
 財務省は2022年度予算の概算要求基準で、成長分野に優先的に予算配分できる特別枠を設けるよう調整する。各省庁で使い道を決められる裁量的経費を前年度からまず10%減らすよう求め、削減額の3倍を特別枠で要求できるようにする。デジタル化の加速や脱炭素など菅義偉政権が力を入れる分野で政策を集め、投資を促す狙いがある。概算要求基準は各省庁による予算要求のルールとして位置づけられる。政府が近く与党と調整し、正式に決める。各省庁は8月末までに財務省に概算要求を出す。財務省は金額と政策を査定し、年末までに政府の予算案をつくる。政府は6月に閣議決定した経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)で①グリーン社会の実現②デジタル化の加速③少子化の克服④地方の活性化――の4分野を今後の重点課題にした。22年度予算編成に向けて、既存の事業の見直しを求めてメリハリを利かせたうえで、重点分野の予算を増やす。公共事業や教育など一般会計の裁量的経費は、21年度当初予算で約15兆円だった。前提として各省庁には既存経費の10%削減を求める。特別枠は削った額の3倍を上乗せして要求できる。人件費など義務的経費を減らした分についても特別枠に入れることを認める。歳出に上限は設定しない。新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、昨年の予算編成では概算要求の締め切りを1カ月遅らせて9月末にするなどの対応を取った。特別枠も設けなかったため、22年度は例年のかたちに戻る。予算規模の大きい社会保障関係費の扱いについては、骨太方針に従い、過度に膨張しないよう高齢化に伴う伸び(自然増)に抑える方針を示す。21年度予算では社会保障費の伸びを4800億円と見込んでいたが、薬価改定などで実質的な伸びを3500億円にとどめた。22年度は団塊の世代が75歳以上になり始める影響もあって、自然増はこれまでより増える見通し。医師の技術料など診療報酬の見直しなどでどれくらい伸びを圧縮できるかが今後の焦点になる。新型コロナに関連する予算などでは、影響が現時点で見通しにくいことを考慮し、金額を示さない事項要求を認める。21年度の当初予算は一般会計で106.6兆円と9年連続で過去最大を更新した。22年度も膨張が予想される。

*2-2-2:https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA13AP70T10C21A7000000/ (日経新聞 2021年7月15日) 米欧の財政支出、脱炭素・ITに集中 日本は配分課題
 米国や欧州が新型コロナウイルス危機の出口を見据え、環境やデジタルの分野で数十兆円規模の巨額の財政支出に動き始めた。税財源の計画も打ち出し、数年単位の持続的な成長戦略と位置づける。明らかになっているメニューの比較で日本は支出が実質的に10分の1に及ばず、メリハリも効いていない。長期構想に基づいて予算を無駄なく戦略的に配分する仕組みを整えなければ国際競争で劣後する恐れがある。米欧はもともと産業振興に巨額の補助金などを投じることには慎重だった。ただ脱炭素などの新技術の開発では政府がインフラ開発などで旗を振らなければ、民間の投資が伸びにくい。国家を挙げて技術覇権の確立を狙う中国に後れを取りかねないとの危機感も米欧政府の背中を押す。米バイデン政権が掲げた「雇用計画」は8年間で2兆ドル(約220兆円)をインフラ整備や気候変動対策に投じる。電気自動車(EV)を購入する消費者への補助金などに総額約19兆円、電力網の刷新に約11兆円など巨額のメニューが並ぶ。中国との覇権争いも絡むデジタル経済のカギを握る半導体支援も重点テーマだ。2022会計年度(21年10月~22年9月)から5年間で、米国内に工場や開発拠点を設ける企業への補助金など計5.7兆円を出す法案を米議会上院が可決した。政策を実現する財源確保の一環で法人税率の引き上げや富裕層への課税強化策も表明している。欧州連合(EU)は気候変動分野に集中投資する。21年から7年間の中期予算と「コロナ復興基金」の計約1兆8千億ユーロ(230兆円)のうち3割を気候変動対策にあてる。目玉は水素戦略だ。30年までに日本の目標の3倍超にあたる年1千万トンの生産体制を整える。EUは14日、国境炭素税の案を公表した。環境対策が不十分な国・地域からの輸入品に欧州の排出枠価格と同程度の税を課す。事実上の関税として年100億ユーロ近くの収入を想定し、環境投資の新たなサイクルを回す。中国は2014年から基金を作り、半導体関連技術に5兆円超の大規模投資を進めている。上海に二酸化炭素排出枠の取引所を設け、気候変動対策にも本腰を入れる。成長分野への支出で日本は質量ともに見劣りする。脱炭素に10年間で2兆円を投じる基金は20年度第3次補正予算に急きょ盛り込んだ。EVなど向けの経産省の補助金は21年度に155億円で、19兆円の米補助金に比べ桁違いに少ない。第一生命経済研究所の永浜利広氏は「経済規模の違いを考えても日本の支出は米国の10分の1以下。成長力で差が広がりかねない」という。単年度主義の硬直的な予算で赤字国債の発行に頼る財政運営も限界がある。大和総研の神田慶司氏は「コロナ後にどういう経済社会をつくるのか、財政健全化に目配りしつつ、いつまでにどれだけの政策・予算が必要なのか大きな青写真が見えない」と指摘する。日本もコロナによる経済への打撃を和らげるため、予算は大幅に増やしている。国際通貨基金(IMF)の集計によると20年以降の財政対応は計88兆円、国内総生産(GDP)比にして15.9%に上る。米国の25.5%ほどではないが、先進国で中程度の水準だ。しかし規模ありきの編成の結果、約30兆円を使い残した。無駄な部分を大胆に見直しつつ、民間の投資を促すような戦略的配分が求められる。政府は22年度予算編成ではデジタルや脱炭素などに充てる特別枠を2年ぶりに設けた。実際は各省庁のばらばらの要求の受け皿という面がある。経済成長がないまま政府債務ばかり膨らむ危うい状態に陥る恐れがある。経済協力開発機構(OECD)の見通しによると日本の21年と22年の実質成長率は主要7カ国(G7)で最も低い。長期展望や柔軟性に乏しい予算や政策の仕組みのままでは米欧の背中がますます遠のきかねない。

*2-2-3:https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR13BNE0T10C21A7000000/ (日経新聞 2021年7月14日) EU並み気候変動対策、第三国に要求 国境炭素税
 欧州連合(EU)の欧州委員会が14日公表する国境炭素調整措置(CBAM)案は、第三国にEU並みの気候変動政策を要求するものだ。中国やロシアをはじめ、日米なども対象になる可能性がある。EUは緩やかに導入を進めることで他国との対立を避けたい考えだが、貿易摩擦につながるリスクがある。「第三国の生産者が排出を減らすインセンティブになる」。欧州委の担当者はこう強調する。EU域外の事業者がEUに製品を輸出するために排出減に向けて努力するというわけだ。実際、EU並みの気候変動対策をとっていれば制度の対象にはならない。CBAMは国境炭素税とも呼ばれる。影響が大きそうなのがロシアや中国、トルコの企業だ。EUの輸入に占める割合を見ると、セメントではトルコが37%を占めるほか、肥料では36%をロシアが、鉄鋼ではトップ3に中国、ロシア、トルコが名前を連ねる。厳しい環境規制で競争力の低下を懸念する欧州の鉄鋼やセメント業界などは制度の導入を支持する一方、中ロや日米などの域外国は懸念を示してきた。保護主義的な措置で、世界貿易機関(WTO)の無差別原則などのルールに違反しているのではないかといった理由だ。EU高官は6月、日本経済新聞の取材に「2050年に温暖化ガス排出の実質ゼロを宣言した先進国を念頭に置いた制度ではない」と述べた。だが日米などの企業のすべての製品が対象外になるかは不透明な面が残る。日米などは全国的な排出量取引制度を持たないため、EUと同等の環境対策をしているとデータで示すことが難しい可能性がある。EUでは排出量取引に基づいて、二酸化炭素(CO2)を出す権利の価格が日々公開される。データで示せなければ、制度の対象になるリスクが高まる。EU内にも貿易摩擦につながりかねないと不安視する声はある。とりわけ米国とはトランプ前政権時代には通商問題を巡って関係が冷え込んだ。フォンデアライエン欧州委員長は6月のバイデン大統領との首脳会談でCBAMを巡って意見交換することに同意するなど、一定の配慮を見せた。23年から3年間の移行期間を設けたのも、各国の理解を得るためだ。制度が成立するには、加盟国の承認と欧州議会の同意を得る必要がある。成立までに1~2年かかるとの見方もあり、制度設計を巡って曲折がありそうだ。日本経済研究センターは欧米が国境炭素調整を導入した場合の日本の製造業への影響について、CO2・1トンあたり50ドル(約5500円)の場合、EU向けに年2.5億ドル、米英に年5.67億ドルを支払う可能性があると試算する。業種別の負担額は機械産業で290億円、輸出額の大きい自動車産業も215億円になる。関税の上乗せで輸出額も減少する見通しだ。試算ではCO2排出量の多い鉄鋼業は欧米への輸出額が5・7%、窯業・土石業で4・7%、それぞれ減少する見通し。日本も炭素税などを導入すれば越境課税は回避できる。ただCO2・1トンあたり50ドルの炭素税を導入すると、日本経済研究センターは製造業の納税額が約1兆2010億円になると試算する。19年度に企業が納めた法人税(10.8兆円)の1割強に相当する。

*2-3:https://www.tokyo-np.co.jp/article/118798 (東京新聞 2021年7月23日) 中国・台山原発、仏なら一時停止 燃料棒破損、合弁の電力会社見解
 中国広東省の台山原発の燃料棒が破損し冷却材中の放射性物質の濃度が上昇した問題で、合弁で同原発を建設したフランス電力(EDF)は23日までに「フランスであれば、状況を正確に把握し(濃度上昇の)進行を止めるため、原子炉を一時停止する」との見解を発表した。23日付のフランス紙レゼコーは「事故ではないが、進行性の状態で深刻だ。フランスであれば、できるだけ早く原子炉を止める必要がある」とのEDF関係者のコメントを伝えた。EDFは22日の声明で、原子炉を止めるかどうかの決定は、中国側が主導権を握る運営企業にあると指摘した。

<先端技術の応用>
*3-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20210715&ng=DGKKZO73887760V10C21A7MM8000 (日経新聞 2021.7.15) EU、ガソリン車販売を35年に禁止、排出ゼロへ包括案、国境炭素税は23年にも
 欧州連合(EU)の欧州委員会は14日、温暖化ガスの大幅削減に向けた包括案を公表した。ハイブリッド車を含むガソリン車など内燃機関車の新車販売について2035年に事実上禁止する方針を打ち出した。環境規制の緩い国からの輸入品に事実上の関税をかける国境炭素調整措置(CBAM)を23年にも暫定導入する計画だ。欧州委案が成立するには、原則として加盟国との調整や欧州議会の審議を経る必要がある。企業や域外国の反発も避けられそうにない。欧州委の政策パッケージは、30年までに域内の温暖化ガスの排出量を1990年比55%減らす目標を実現するための対策だ。2030年目標は50年に排出実質ゼロにする目標の中間点となる。欧州委はガソリンやディーゼルといった内燃機関車について、35年に事実上禁止する方針を初めて提案した。自動車のCO2排出規制を同年までに100%減らすよう定める。フォンデアライエン欧州委員長は14日の記者会見で「化石燃料に依存する経済は限界に達した」と述べ、速やかに脱炭素社会を実現すると表明した。対応を迫られる自動車業界は反発を強める。ドイツ自動車工業会のヒルデガルト・ミュラー会長は7日、「35年にCO2をゼロとすることはハイブリッド車を含むエンジン車の事実上の禁止だ。技術革新の可能性を閉ざし、消費者の選ぶ自由を制限する。多くの雇用にも響く」と訴えた。トヨタ自動車幹部は「戦略練り直しは避けられない」と話す。欧州委は燃料面からも運輸部門の排出減を促す。自動車とビルの暖房用の燃料を対象にした新しい排出量取引制度を設け、CO2排出にかかる炭素価格を上乗せする。EUには産業や電力など大規模施設を対象にした排出量取引制度がある。だが炭素価格の上昇による燃料費の高騰が低所得層の家計を圧迫しかねないとの批判もあり、当面は別建ての制度とする。従来の排出量取引制度では海運を新たに対象とする。欧州委が導入を目指すCBAMは国境炭素税とも呼ばれる。当初は鉄鋼、アルミニウム、セメント、電力、肥料の5製品を対象とする方針。23年からの3年間を移行期間として暫定的に始め、事業者に報告義務などを課す。26年から本格導入され、支払いが発生する見通しだ。欧州委は30年時点でCBAMに関連する収入を年91億ユーロ(約1.2兆円)と見込む。制度案では、EU域外の事業者が環境規制が十分でない手法でつくった対象製品をEUに輸出する場合、EUの排出量取引制度に基づく炭素価格を支払う必要がある。製品の製造過程における排出量に応じた金額を算出し、事業者に負担させる。EU域内外の負担が等しくなるという考え方だ。

*3-2-1:https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGS155WI0V10C21A7000000/ (日経新聞 2021年7月21日) 中韓勢、東南アジア市場でEV先手 長城汽車や現代自
 日本車が圧倒的なシェアを占める東南アジアの自動車市場に、中国・韓国メーカーが電気自動車(EV)で先手を取ろうとしている。タイでは中国・長城汽車、インドネシアで韓国・現代自動車が現地生産に乗り出す。両社とも現地政府のEV振興策に呼応した。日本勢は、21日に発表したトヨタ自動車やスズキなどの商用車連合で、こうした動きに対抗する構えだ。「変化する時が来た」。長城汽車は6月末、バンコクで開いた新車発表会で日本車への宣戦布告ともとれるスローガンを打ち出した。タイは日本車の生産・販売シェアが約9割に達するものの、大半をガソリン車が占める。長城汽車は3年間でEVを含む9車種の電動車を投入して市場の切り崩しを狙う。同社は2020年にタイから撤退した米ゼネラル・モーターズ(GM)の工場を取得して参入した。800億円弱を投じて人工知能(AI)技術やロボットを導入し、年産能力約8万台の「スマート工場」に改修。手始めに6月からハイブリッド車(HV)の生産を始めた。23年までにEV生産を開始する計画だ。工場改修はタイ政府のEV振興策を利用し、最長8年間の法人税免除の恩典を受けた。タイは30年までに国産車の3割をEVにする目標を掲げる。長城汽車タイ法人の張佳明社長は「タイで電動車のリーダーとなり、産業高度化に協力する」と強調する。タイは東南アジア最大級の自動車市場だが、EVシフトは遅れている。自動車大手はEVを現地生産しておらず、20年の販売台数は約1400台にすぎない。このうち約6割を中国・上海汽車集団の輸入車が占める。同社はタイ財閥チャロン・ポカパン(CP)グループとの合弁工場でEVを現地生産する予定という。日本車は日産自動車の「リーフ」やトヨタ自動車の高級車「レクサス」の一部車種の輸入販売にとどまる。現地生産は三菱自動車が23年から開始する計画を持つものの、全体的にはHVを優先する傾向が強い。充電インフラが整っておらず、所得水準もまだ低いためだ。長城汽車もまず、中国で補助金分を引いた実売価格が約120万円の小型EV「欧拉」を、中国から輸出してタイ市場に投入する。市場開拓を進めながら時期をみて現地生産に切り替えるとみられる。野村総合研究所タイの山本肇シニアマネジャーは「中国勢が間隙を突いて、低価格EVでシェアを伸ばしてくるのは確実だ」と指摘する。タイと並ぶ域内2大市場の一角であるインドネシアには現代自動車が攻め入る。首都ジャカルタ近郊で総事業費約1700億円の工場建設が進む。当初の年産能力は15万台で、年内にガソリン車の生産を開始する。現地報道によると22年にもEV生産に乗り出す。同国は日本車の販売シェアが9割台後半と、ほぼ市場を独占してきた。現代自の工場建設にはインドネシア政府の働きかけがあった。進出が決定した19年11月はインドネシアと韓国が経済連携協定(EPA)を妥結した時期と重なる。韓国から輸入する自動車部品の大半が無関税となり、韓国メーカーは日本車と同等な条件での競争が可能になった。インドネシア政府は19年の大統領令で、国産車の20%をEVとする目標を打ち出した。だが、同国が13年に出した小型エコカーの振興策を受けて、日本車は設備増強を実施済みで追加投資に慎重だ。そこで白羽の矢が立ったのが現代自動車だった。タイ、インドネシア両政府に共通するのは、動きが鈍い日本車へのいらだちだ。タイではEV普及目標の引き上げを検討する政府に対し、日本車の業界団体に当たるバンコク日本人商工会議所自動車部会が「全体でのゼロエミッションを考えて段階的に進めるべきだ」として慎重な議論を求めた。タイは火力発電が中心のため、EVだけ増やしても温暖化ガスの排出は減らせないという理屈だ。インドネシアも同様の課題を抱える。日本車の主張は一理あるものの、中韓勢との投資競争に後れをとれば、かつて家電や携帯電話でシェアを失ったように自動車市場も奪われかねない。
●商用車も日本強く 5社連合で守り固める
 日本車は東南アジアで1960年代から現地組み立てを始め、主要6カ国の新車販売に占めるシェアは約8割に達した。ただ、足元で中国勢がEVで小型車のみならず商用車でも攻勢をかける。21日にスズキやダイハツ工業が、トヨタ自動車、日野自動車、いすゞ自動車の商用車連合に合流すると発表したのも、中国勢の攻勢に対抗する守り固めの意味がある。東南アジア最大級の市場のタイは小型商用車「ピックアップトラック」が市場の半分以上を占める。20年の国内販売全体でもいすゞのシェアは23%に達し、トヨタ(31%)に次ぐ2位を占める。インドネシアでも日野、三菱ふそうトラック・バス、いすゞが商用車で寡占状態だ。だが、日本勢のすきを狙い、中国勢が商用車でも攻勢をかける。タイでは商用車大手、北汽福田汽車がEVトラックを21年中にも発売する予定だ。現状、スズキは軽商用車の海外展開をしていない。5社連合で技術力を結集した小型EVなどを出せれば、日本勢の存在感が維持できる可能性がある。

*3-2-2:https://www.webcg.net/articles/-/44769 (Webcg 2021.7.1) ボルボが全車EV化へ向けたロードマップを発表
 ボルボが全車EV化へ向けたロードマップを発表の画像拡大ボルボ・カーズは2021年6月30日(スウェーデン現地時間)、製品ラインナップの完全な電気自動車(EV)化へ向けた、技術ロードマップを発表した。ボルボが全車EV化へ向けたロードマップを発表の画像拡大目指すは実走行距離1000kmのEVボルボは現在、自社製品の急速な電動化と、より長い一充電走行可能距離や短い充電時間を可能とするバッテリーセル技術の開発を推し進めている。特にプロダクトについては、近い将来、SUVタイプの新型EVを投入し、2020年代半ばにはその次の世代となる第3世代のEVも導入するとしている。このモデルでは、航続距離をさらに伸ばすとともに、バッテリーパックをクルマのフロアに統合し、セル構造を利用して車両全体の剛性を高める、より高効率な車両パッケージも実現するという。一方、バッテリーの開発・生産に関しては、スウェーデンの大手バッテリーメーカーであるノースボルトと提携。現在のものより最大で50%エネルギー密度の高いバッテリーセルの開発を計画している。さらに2020年代の後半には、1000Wh/リッターというエネルギー密度の達成と、実走行距離1000kmのEVの実現を目指しているという。また充電に要する時間については、バッテリー技術の向上、ソフトウエアや急速充電技術の継続的な改善により、2020年代の半ばまでに現在のほぼ半分になると予想している。生産や廃棄の段階における環境負荷低減にも腐心ボルボはプロダクトの電動化以外の点でも二酸化炭素排出量の削減を推進。ノースボルトと共同開発するバッテリーセルについては100%再生可能エネルギーを使用して生産することを目指しており、他のサプライヤーとも2025年までに100%再生可能エネルギーでバッテリーを生産できるよう、取り組みを進めているという。加えて、使用済みバッテリーのリユースやリサイクルについても計画。エネルギー貯蔵などの二次利用の可能性も調査を進めている。EVのエネルギーインフラでの活用についても計画しており、SUVタイプの次世代EVでは、双方向充電により車載バッテリーの電気を電力網に流すことができるようになるという。これにより、EVのドライバーは電力の生産時に排出されるCO2量がピークとなる時間には、電力網にエネルギーを供給してCO2の排出抑制に貢献。そしてCO2排出量が減少する時間にクルマを充電することができるようになると説明している。(webCG)

*3-2-3:https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR223I60S1A720C2000000/ (日経新聞 2021年7月22日) 独メルセデス、30年にもEV専業に 5.2兆円投資
 独自動車大手ダイムラーの高級車事業会社、メルセデス・ベンツは22日、販売する新車を2030年にもすべて電気自動車(EV)にすると発表した。8つの電池セル工場を新設するなど、30年までに400億ユーロ(約5兆2000億円)をEVに投資する。オンラインで開いた記者会見で、オラ・ケレニウス社長は「高級車のEVシフトは加速している。転換点は近づいており、30年までにメルセデスは準備できているようにする。EVファーストからEVオンリーに踏み込む」と述べた。22年に満充電で航続距離1000キロメートル以上の新型車を発表する。25年にEV専用の車台(基本設計)を3種類導入。それ以降に出す車台はすべてEV専用とする。代表車種の「Sクラス」や「Cクラス」の次期モデルはEVだけになる見通しだ。ガソリン車などの販売終了時期は市場によって前後するとしている。ハラルト・ウィルヘルム最高財務責任者(CFO)は30年までにEVの生産コストを同じ車格のガソリン車と同等水準に引き下げるとしたうえで、売上高に占める調整後EBIT(利払い・税引き前損益)比率を10%以上で維持するとの見通しを示した。EVに不可欠な車載電池では専業メーカーと共同で世界に8つの大型工場を設ける。4つは欧州で、米国と中国にも建設する。年間生産能力は高級EV200万台分前後に相当する計200ギガワット時(2億キロワット時)を計画する。メルセデスはこれまで30年に新車販売の半分をEVかプラグインハイブリッド車(PHV)にし、39年にガソリン車の販売終了などで二酸化炭素(CO2)排出を実質ゼロにする「カーボンニュートラル」を目指す計画を掲げていた。半分をEV・PHVにする期限は25年に前倒しする。EV専業化に向け、PHVを含むエンジン搭載車への投資を26年までに19年比で8割減らす。欧州連合(EU)の欧州委員会は14日、35年にエンジン搭載車の販売を事実上禁止する規制案を発表した。すでに独フォルクスワーゲン(VW)傘下の独アウディや、ボルボ・カー(スウェーデン)、英ジャガーなどの高級車ブランドが相次いでEV専業への転身を発表している。

*3-2-4:https://www.nikkei.com/article/DGXZQOFD21AF30R20C21A7000000/?n_cid=SPTMG002 (日経新聞 2021年7月21日) トヨタ、商用車連合を拡大 大型から軽まで電動化
 トヨタ自動車が中心の商用車連合にスズキとダイハツ工業が加わる。トヨタにとって電動化など脱炭素における商用車分野の協業の総仕上げとなる。4月に日野自動車といすゞ自動車と立ち上げた商用車の技術開発会社に軽自動車を得意とする2社が加わり、大型から小型まで商用車を全方位で開発する体制が整う。「国内の自動車保有台数7800万台のうち軽は(4割の)3100万台を占める。地方では半数を超える」。トヨタの豊田章男社長は21日の記者会見でこう切り出し、「商用軽は収益だけを考えると非常に厳しいが日本では欠かせないものだ」と軽の重要性を強調した。スズキの鈴木俊宏社長は「求めやすい価格で脱炭素を実現するには単独では非常に難しい」と参加の理由を説明した。「企業としても脱炭素をアピールできる軽の商用電気自動車(EV)へのニーズはこれまでも高かった」と別のスズキ幹部は背景をこう解説する。今回の協業で改めて強調したのが、商用車分野を電動化や脱炭素の技術開発の起点とする考えだ。物流を担う商用車はあらかじめ決められたルートを通ることが多い。「(充電設備など)インフラとセットで考えることが不可欠」(豊田社長)なEVや燃料電池車(FCV)などの開発には向いている。トヨタが日野・いすゞとの商用車連合を発表した際、念頭にあったのが、福島県での再生エネルギーから作った水素を活用したFCVのトラックによる物流網の構築だった。今回の参画で、FCVの軽商用車も視野に入り取り組みが広がる可能性がある。3月の商用車提携発表後に、自治体・インフラ事業者、運送事業者など、多くの関係者から一緒にやりたいとの声がトヨタに寄せられた。荷物の集配所から受け取る人までの「ラストワンマイル」の物流を担う軽自動車は電動化やコネクテッドなど新技術の開発には欠かせないと判断した。トヨタからスズキとダイハツに声をかけた。軽の商用車が加わることで、中長距離物流を支える大中型トラックを含めて物流に関わる技術開発が加速できるとみる。鈴木社長は「大型と軽がつながることで非常に効率がいい物流ができる。大きな成果に結びつくのではないか」と期待を示す。トヨタにとっては、大きさの制約がある中で、いかに安く作るかを突き詰めてきた軽メーカーのノウハウを取り込む狙いもある。電動化やつながる車などは今後いかに安く作れるかがカギとなる。商用車を軸とした5社連合で、新たなプロジェクトを始める起点にもなり得る。

*3-2-5:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20210724&ng=DGKKZO74149360U1A720C2MM8000 (日経新聞 2021.7.24) GXの衝撃(5)取捨選択、欧州が主導 ルールが決する競争力
 欧州委員会が4月に公表した、分類を意味する「タクソノミー」と呼ぶ数百ページの資料。企業が手がける事業がどういう基準を満たせば「持続可能」と判別されるかを示す。「まるで『閻魔(えんま)大王』みたいに企業が選別される」。こんな受け止め方が広がる。電池製造や発電などが対象で、欧州連合(EU)の温暖化ガス排出の8割をカバーする。企業は基準外の製品を作れなくなるわけではないが、ESG(環境・社会・企業統治)が広がる中、投資を集めにくくなる。
●PHVにも逆風
 環境に優しいとされる製品もやり玉に挙がる。例えば日本の自動車メーカーが強みを持つプラグインハイブリッド車(PHV)。2026年以降は「持続可能」などの分類から外れ、新車で売りにくくなる恐れがある。PHVは、ガソリン車と電気自動車(EV)の間に位置する。EVへの移行期に伸びると見込まれているが「タクソノミーでPHVの普及期の寿命は5年ほど短くなった」と専門家は分析する。石炭火力発電がタクソノミーで外される一方、天然ガスは欧州でも意見が割れる。ポーランドなど東欧諸国は「脱石炭を進めるうえで当面は認めるべきだ」と訴える。逆風の予兆はあった。「控えめに言ってガスは終わった」。欧州投資銀行(EIB)のホイヤー総裁の1月の発言。21年末までにガスへの投融資から原則、手を引く方針を表明し波紋を呼んだ。
●ガスも縮小懸念
 天然ガスは石炭より二酸化炭素(CO2)排出量が4割少ない。天候によって変わる太陽光や風力の発電量を補う役割から、石炭から再生エネへの移行期の「つなぎ役」になるとされてきた。「天然ガスの黄金時代」が到来するとのリポートを国際エネルギー機関(IEA)が公表したのは10年前。クリーンとされる液化天然ガス(LNG)の消費はこの間に6割増えた。ただ、IEAは21年5月、50年のカーボンゼロ達成には、ガスを含む化石燃料の開発投資の即時停止が必要とのシナリオを公表した。日本エネルギー経済研究所の二宮康司氏は「今のままでは30年代以降、ガスも石炭のように悪者扱いされる」とみる。国内最大手の東京ガスが関東で張り巡らすガスのパイプラインは地球1.5周分。輸入のため港湾に設けたLNG基地は1カ所で1000億円規模だ。ガスが石炭のように縮小の道をたどればこうした設備が「座礁資産」となり使い道を失う。タクソノミーのような欧州発のルールが世界の潮流となってきたケースは多い。欧州各国によるガソリン車の販売規制の表明を伊藤忠総研の深尾三四郎氏は「欧州自動車メーカーのディーゼル不正を機に欧州が有利になるようなルールに変えてしまった」と指摘する。車が製造されてから廃棄されるまでの10年間の「ライフサイクル」でみたCO2の排出量は、IEAの20年のまとめによるとガソリン車で1台あたり平均34トン程度だった。EVが24~28トンで、PHVは約25トンと、PHVは環境性能に優れるケースもあるのにEU基準ではアウトになる。欧州がEV導入の高い目標を掲げる中、ESGの圧力により、石油開発は足元で急減。ただ実際に選ぶのは消費者で、EVの普及が遅れれば需給バランスが大きく崩れ、ガソリン価格は高騰しかねない。多角的なリスクを抱えながら企業は難しい選択を迫られている。日本は通貨や通商などで欧米主導のルールを受け入れることが多かった。グリーントランスフォーメーション(GX=緑転)でルールをつくる側に回れるかどうかは、産業競争力にとどまらず、国益をも左右する。

*3-3:https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC071580X00C21A7000000/?n_cid=NMAIL006_20210709_Y (日経新聞 2021年7月9日) JAL「空飛ぶクルマ」で旅客輸送 25年度に事業化
 日本航空(JAL)は2025年度に「空飛ぶクルマ」を使った事業に乗り出す。三重県などで空港と観光地を結ぶ旅客輸送サービスを始める。ANAホールディングス(HD)も25年度に同様のサービスへの参入を検討している。空の移動が身近になれば道路渋滞の緩和や過疎地の交通対策にも役立つ。海外でも実用化競争が進んでおり、新ビジネスに見合うルール整備が課題となる。空飛ぶクルマは空を飛び近中距離を手軽に移動する次世代の乗り物。JALが使うのはeVTOL(電動垂直離着陸機)と呼ぶ2人乗りのドローン型の機体で、航続距離は35キロメートル。最高時速は110キロ。三重県とこのほど実証実験や事業化に向けた連携協定を結んだ。機体を開発したのはJALが20年に出資したドイツのスタートアップ、ボロコプター。リチウムイオン電池に蓄えた電気で複数のプロペラを回して飛ぶ。まず20キロの近距離圏内を飛ぶ実験を進め、さらに地方の都市間を結ぶような50~150キロの中距離圏のサービスを検証する。事業化の際は発着ポートを設けやすい空港を起点に観光地をつなぐ見通し。料金は今後詰める。最終的には中距離圏内であらゆる場所に行き来するタクシーのようなサービスにする構想だ。輸送事業者としてだけでなく、操縦者の訓練や安全管理などのオペレーターサービスを他の輸送事業者に提供して稼ぐ仕組みも想定する。空飛ぶクルマは滑走路が不要で機動性が強み。都市内を簡単に移動できるため、交通渋滞の解消につながると期待されている。交通手段に乏しい過疎地の移動問題の克服にもつながる。一方で社会で広く受け入れられるサービスとするにはルール整備が不可欠だ。三重県は特区として空飛ぶサービスを認めているが、他県との行き来はできない。政府は電動かつ自動操縦で飛ぶ機体を空飛ぶクルマと見なし、ルールづくりを急いでいる。機体は航空機とみなされるため航空法に基づく制度の見直しが必要で、25年までに詰める。航空機燃料を使わないため安全基準も新たな考え方が必要となる。操縦ライセンス、運航の決まりなど整理すべき点は多い。実用化では海外が先行する。トヨタ自動車が出資する米新興企業のジョビー・アビエーションは24年に輸送サービスの商用化を計画。欧州エアバスも24年のパリ五輪での有人サービスの実現を目指している。将来はスマートフォンから予約可能なタクシーサービスの提供をめざす。国内航空大手は空飛ぶクルマなど次世代モビリティー事業を成長の柱の一つと期待する。米モルガン・スタンレーは40年までに世界の空飛ぶクルマの市場規模が1兆5千億ドル(約165兆円)に成長すると予測する。

| 環境::2015.5~ | 01:08 PM | comments (x) | trackback (x) |
2021.7.8~19 国家100年の計どころか30年の計がやっとできた日本 ← それでは他国を見て真似することしかできず、一見バランスの良い予算を作ってそれを消化することが目的になり、矛盾する政策も多いこと (2021年7月20、21日に追加あり)

 2021.7.2日経新聞 2021.7.7NHK   2021.7.8朝日新聞   2021.6.2東京新聞
 *4-1-2より
(図の説明:1番左の図は「人口100万人当たり新型コロナ死者数の推移」で、日本は欧米に比べて著しく低いが、近くの韓国より高い。また、欧米・韓国は治療薬とワクチンで感染を抑え込み、日本はこれをやらなかったので、また山ができている。さらに、左から2番目の図のように、人口10万人当たり療養者数が30人以上になると医療が逼迫すると言ったり、機能不全になると言ったりするのも異常で、右から2番目の図のように、病床使用率20%代をステージ3として五輪を無観客にしているのだから、何を考えているのかと思う。なお、1番右の図のように、職域接種が進み始めるとワクチンが足りないと言って接種を停止しており、政府の過失《もしくは故意》にも程があるのだ)

(1)国家100年の計
1)中国、習近平総書記の演説にはあった国家100年の計
 中国共産党の習近平総書記が、7月1日、*1-1のように、北京市天安門広場で党創立100年記念式典の演説を行われた。私は、中国が改革開放を始めた1990年代に公認会計士・税理士として中国進出企業の監査・国際税務・ODA等で関わっていたため、中国が1990年代に生産で遅れていた理由と、それを克服した経緯を一部ではあるが知っている。そのため、習近平総書記の演説について気がついたことを指摘する。

イ) 国家100年の計について
 国家100年の計について、習総書記は、「①中国は、後進的な状態から世界第2位の経済大国へと歴史的な躍進を達成し、それは共産党主導で実現させた」「②全党と全国各民族人民による持続的な奮闘で、党創立最初の100年に掲げた目標を実現し、この地に『小康社会』を築き上げ、絶対的な貧困問題を歴史的に解決し、社会主義現代化強国の全面的な実現という次の100年の奮闘目標に向けて邁進している」とされている。

 しかし、中国を名目GDP世界第2位の経済大国にしたのは、鄧小平(1920~1926年にパリ留学)が1978年12月に改革開放路線に転換したからで、鄧小平路線の特徴は、i)経済優先 ii)不均等発展の容認 iii)社会主義体制外の改革先行方式 iv)市場経済の積極的導入 等であり、これら社会主義市場経済体制が中国の経済発展を作った。また、鄧小平氏は1980年代には政治体制改革の必要性も説いていたが、1989年の天安門事件後に政治体制改革を放棄したそうだ。

 なお、習総書記は、「③中国共産党は誕生当初から、中国人民に幸福をもたらし、中華民族の復興をもたらすことを使命と決めており、この100年、中国共産党が中国人民を束ね率いた全ての奮闘、全ての犠牲、全ての創造は中華民族の偉大な復興を実現するという一つのテーマに帰結する」とされており、使命に関する理念は立派だと思うが、共産主義の必要性があったかどうかは疑問である。

 何故なら、日本は自由主義でも太平洋戦争後の廃墟から約20年で立ち直り、復興期の私の両親の働く姿と1980~1990年代の中国の若者の働く姿がよく似ていたため、中国は大国であるため広くてまとめにくくはあるだろうが、むしろ共産主義体制をとったことで経済発展が30年遅れたように思うからである。

ロ)中華民族の歴史
 中華民族の歴史については、「④中国共産党と中国人民の勇敢で強固な奮闘で、中華民族が搾取され、辱めを受けた時代は過ぎ去ったことを世界に宣言する」「⑤私たちは社会主義革命を進め、中国で数千年にわたって続いていた封建的な搾取と圧迫の制度を消滅させ、中華民族の有史以来、最も広く深い社会変革を実現した」とされている。

 確かに④⑤のように、中国共産党が列国の支配から中華民族を解放し、深い社会変革を実現したのかもしれないが、私は(他国の実情はよくわからないものの)、蒋介石が中国に自由主義経済を作っていれば、停滞の30年もなかったかもしれないと思う。

ハ)社会主義について
 習総書記は、社会主義について、「⑥中国を救い発展させられるのは中国の特色ある社会主義だけだ」「⑦揺るぎなく改革開放を推進し、計画経済体制から活力に満ちた社会主義市場経済体制への歴史的転換を実現した」「⑧改革開放こそが現代中国の前途と運命を決める鍵となる一手であり、中国が大股で時代に追いついた」「⑨100年前、中国共産党の先駆者たちは、真理を堅持し、理想を守り、初心を実行し、使命を担い、犠牲を恐れず、勇敢に戦い、党に忠誠心を持ち、人民に背かない、偉大な建党精神をつくり上げ、これが中国共産党の精神の源」とされているが、⑧の改革開放や社会主義市場経済体制は、本当は社会主義でも共産主義でもない。そして、中国は市場主義経済に移行して後、大股で時代に追いついたのである。

 東西冷戦後、社会主義体制だった国に関与して私がつくづく思ったことは、自由主義市場経済体制における自由競争こそが工夫と発展を産み、国の経済発展の原動力になるということだった。そのため、私は、経済で儲けさえすればよいという近視眼的な自由ではなく、理念とセーフティネットを持った進化した自由競争が必要だと考えている。

二)中国の今後について
 習総書記は、「⑩2012年の第18回党大会以降、我々は経済一辺倒ではなく政治・文化・社会・環境保護の一体的な発展を重視する『五位一体』体制を見据えて推進した」「⑪中国の革命、建設、改革、中国共産党の創立と強化、発展のために大いに貢献した毛沢東・周恩来・劉少奇・朱徳・鄧小平・陳雲といった同志ら上の世代の革命家を深く忍ぶ」「⑫中国共産党の100年の奮闘から過去に私たちが成功できた理由を見て、未来にどうやって成功を続けられるか明らかにし、それによって新しい道で揺るぎなく、初心の使命を心に刻み、美しい未来を切り開かねばならない」「⑬中国のことをうまくやるために、カギとなるのは党だ」「⑭中国の特色のある社会主義はなぜ良いのか、それはマルクス主義によるものだ」としておられる。

 ⑩については、尤もだ。また、習総書記が共産党の党大会でされた演説なので、⑪⑫⑬⑭を言うのも当然だが、ロ)に書いたように、マルクス主義は競争を廃して人々の工夫をやめさせるため、技術が進歩・発展することは少なかった。これが、人間の欲求を動機づけとして活用しないマルクス主義の国すべてに起こった停滞という歴史的事実である。

 それでは、何故、中国は改革開放後、名目GDPが世界第2位の経済大国まで発展できたのかといえば、第1に、欧米や日本など外国に見本があったため、それを目標にして一丸となって進むには共産主義体制下での強力な管理体制が有効だったからだ。また、第2に、(科挙のように)海外も含む有能な研究者を厚遇で集めて付加価値を上げる努力をし、世界の研究者を集めて学会を開き、世界の優良企業を誘致して、世界の知を積極的に受け入れたことが大きい。

 ただ、第3に、購買力平価によるGDP総額は、2020年に中国が世界第1位、米国が第2位になっているが、同じ購買力平価による1人当たりGDP(分配の仕方にもよるが、国民1人1人の豊かさの指標)は、2020年に中国は世界73位(同米国7位、日本28位)であり、これは中国は人口が多く物価が安いために起こったことである(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%90%84%E5%9B%BD%E3%81%AE%E4%B8%80%E4%BA%BA%E5%BD%93%E3%81%9F%E3%82%8A%E5%AE%9F%E8%B3%AAGDP%E3%83%AA%E3%82%B9%E3%83%88 、 http://www.iti.or.jp/column031.htm 参照)。

 そして、このようなことは、日本でも、明治維新後の中央集権と官僚制の開始や太平洋戦争後の復興期に同様に起こったが、世界1の分野が増えて外国に見本がなくなった時、多様性がなく自由な発想のできない制度は工夫がなされにくいので、次の方向性を見失うのだ。

ホ)外交について
 外交の歴史については、「⑮中華民族は平和、和睦、調和を5000年以上にわたって追求し、継承してきた」「⑯中華民族の血には、他人を侵略し、覇権を追求する遺伝子はない」と言われているが、三国志などを見る限り国内での酷い戦争も多かったように私は思うが、漢民族は比較的温和だったと聞いてはいる。

 また、今後の外交理念として、「⑰人類の将来の運命に心を配り、世界のすべての先進的な力と協力して前進する」「⑱中国は常に世界平和の建設者であり、世界の発展の貢献者であり、国際秩序の擁護者だ」「⑲新たな道のりでは、平和、開発、協力、互恵の旗印を高く掲げ、独立した外交政策を追求し、平和的発展の道を守り、新しい形の国際関係の構築を促進しなければならない」「⑳人類の運命共同体の道を守り、『一帯一路』の質の高い発展を促し、世界に新たな機会を提供しなければならない」「㉑平和、開発、公正、正義、民主、自由という全人類共通の価値観を守る」と言われているのは、総論賛成だ。

 しかし、⑱⑲㉑については、国際秩序は「国際法が国内法に優先する」という人類共通の約束事があるため、国内法を優先させて他国の領土を侵害するのは許されないし、「内政干渉しない」という原則もあるため、既に独立国である中華民国(台湾)を無理に併合したり、同国の外交を妨害したりすることも許されない。そして、中国の民主主義や人権に関しては、強力な一党独裁で遅れていることが事実であるため、そろそろ本気で民主化すべき時だろう。

 なお、日本では悪口を言う人も多いが、⑳の「一帯一路」は中国国内での経験を基にして、それを他の開発途上国にも敷衍しているものであるため、善意で行う限り、良いことだと思う。

へ)防衛について
 防衛については、「㉒中国人民はこれまで他国の人民をいじめ、抑圧し、奴隷のようにしたことはない」「㉓中国の人民は、いかなる外部勢力が私たちをいじめ、抑圧し、奴隷のようにすることも決して許さず、故意に(圧力を)かけようとすれば、14億人を超える中国人民の血肉で築かれた『鋼鉄の長城』の前に打ちのめされるだろう」等と述べられた。

 このうち㉒については、TV放送で聞いた時すぐに、「そうかな?」と疑問に思った。他国の人民を積極的に奴隷にしたことはないかもしれないが、自分のことを「中華民族」と呼んでいる反面、周辺の民族のことは東夷(とうい)・南蛮(なんばん)・西戎(せいじゅう)・北狄(ほくてき)という蔑んだ呼び方をしていた歴史的事実がある。

 また、日本に倭国(わこく)・奴国(なこく)などという失礼な文字をあて、朝貢してきた国の女王に卑弥呼(ひみこ)という卑しさを現す文字をあてている。文字のなかった日本について記載してあるのは有難いものの、発音にあてられた文字には敬意が感じられない。

 なお、㉓は自衛権としては尤もであるものの、領土については、武力ではなく国際法にのっとって主張してもらいたい。

2)それでは、日本の「骨太の方針」に国家何年の計があるか
                  ← 対応が遅すぎる上、タイムスケジュールも不明
 「骨太の方針」が、*1-2のように、①新型コロナ対策の強化に加え ②デジタル化 ③脱炭素化 ④地方創生 ⑤少子化対策の4分野を成長の原動力と位置づけて決まったそうだ。

 このうち、①については、かなり述べたので簡略に書くと、ワクチン接種完了を「10~11月にかけて」としているのは、「解散」「解散」と騒ぎ立てるメディアや野党を、新型コロナ禍を建前として黙らせるのが目的のように見える。

 しかし、何回衆議院が解散されようと、政権が変わろうと、背後の官僚機構が政策を決めている限り、政策は変わらない。さらに、議員が官僚機構よりよい政策を作れなければ、政権は官僚機構に頼らざるを得ないということを、与野党・メディアともに認識すべきだ。そして、それを認識すれば、やるべきことはわかる筈である。

 ②③④⑤については、1990~2000年代から始めたものなので、今後のスケジュールを示さなければ意味がない。総花的かと言えば、日本では人口の中で割合が増えている高齢者のニーズを無視しており、高齢者の人権を軽く見ていると同時に、今後は世界で同じことが起こるので、経済における深慮遠謀にも欠ける。

 「どの政策を、(財源を含めて)どうやって実現していくか」については、これまで何度も述べてきたように、単にきりつめるだけでなく、正攻法で財源を増やすことや無駄遣いをなくして効率の良い使い方をすることを考えるべきだ。しかし、役所や官僚機構は、税外収入を増やすことは苦手で、古い仕事を既得権として維持しながら、ポジション増加のために新しい省庁を作ることには熱心だ。そのため、「デジタル庁」「こども庁」は、これまでの担当部署を廃して作るのでなければ、無駄遣いと調整すべき相手が増えるだけであろう。

 「最低賃金の引き上げ」については、*1-5はじめ、多くの人が言っているが、「賃金を上げれば、生産性が上がる」のではなく、「生産性を上げれば、賃金を上げることができる」のである。そうでなければ、経営が成り立たないので、日本企業は雇用を減らすか、工場を人件費コストの安い海外に移転するかして、日本では雇用が失われる。

 にもかかわらず、東大の渡辺教授が、「⑥日銀の異次元緩和で円安が進み、政策目的は円安だけでなく物価と賃金も上げることだったが、円安なのに物価も賃金も上がらなかった」と書いておられる。しかし、金融緩和は円の価値を下げるだけで、金融資産を持ち人口に占める割合の高い高齢者の実質所得や実質年金は減ったため、高いものは買えなくなり、日本製ではなく海外製の安いものに需要が向いたのであり、それは当然の結果だった。

 つまり、現在は鎖国をしている時代ではないため、中国・東南アジアなどの海外で安くてよいものができれば、高いだけで値段ほどには品質の違いがない日本製は売れなくなる。従って、「⑦日本は安い国になった」ということ自体は、国民を批判することではなく、政策によって起こった経済現象にすぎないのである。

 また、「⑧海外で物価上昇が進めば、現地の競合製品が値上がりするので日本企業も値上げできるが、日本では値上げできないという二極化が既に起きている」というのは、現在の日本は中国・東南アジア等と比較してむしろ共産主義化が進み、顧客ニーズに合ったものを作っていないという面も大きい。そのため競争に負けているのであり、これも自然な経済現象であるため、本質を改めない限り改善しない。

 *1-2は、そのほか「⑨持続可能な財政の姿が見えない」「⑩コロナ禍に伴う経済対策で2020年度の一般会計歳出総額は175兆円超、国債は112兆円が新規発行された」「⑪2021年度予算もコロナ対策予備費に5兆円積み、過去最大規模の106兆円に膨らみ、追加支出の恐れもある」「⑫内閣府は、日本経済が高成長したとしてもPBは2025年度に7兆3千億円程度の赤字」「⑬EUは復興財源として国境炭素税などを検討」なども記載している。

 ⑩⑪⑫は、コロナ禍というより、五輪の無観客開催も含めてコロナ政策禍であるため、このような政策しかできなかった根本的な問題を解決すべきである。また、コロナ政策禍によって生じた膨大な歳出増・財政赤字と失業は、*1-4のように、無駄遣いの景気対策をするのではなく、今後を見通して炭素税か環境税を導入して再エネ投資を進めることによって解決すべきだ。

 なお、五輪の無観客開催については、*1-7のように、政府の新型コロナ感染症対策分科会の尾身会長ら“専門家有志”が「無観客が望ましい」との提言を公表し、これが多くのメディアで主張されて国民の不安を煽っていたが、その根拠は「i)競技場内での感染はないと思うが、人流を抑制したい」「ii)市中と矛盾したメッセージを発しない」「iii)一般市民との公平性」などだそうで、科学とは全く関係のないものだった。

 しかし、その影響で五輪が無観客化されたことによって五輪の経済効果がなくなったマイナスは大きく、五輪のために投資した企業は損失を出し、無観客なら五輪の魅力も半減如何になる。さらに、「自国の検査で陰性だったのに、日本で感染が判明した選手団員が出た」「デルタ株の感染力が強い」などを大きく報道しているが、その根拠や解決法について“専門家”の理路整然とした説明はなかったし、「日本のPCR検査のカットオフが厳しいのだ」という説もある。その上、「デルタ株だからワクチンが効かない」とか「デルタ株だから中等症・重傷になる人の割合が増える」ということはない。なお、無観客なら国立競技場を建て替える必要もなかったため、五輪が終わったら民間に売却し、それで五輪開催にまつわる損失を穴埋めすればよい。何故なら、国民は、国民を幸福にしない誤った政策の尻拭いのために税金を負担したくはないからだ。

 このような中、*1-3には、「⑭新型コロナ禍で2020年春から積み増した予算73兆円のうち、約30兆円が使い残し」「⑮家計・企業への支払いを確認できたのは約35兆円とGDPの7%程度で、13%を支出した米国と比べて財政出動の効果が限られる」「⑯財政ニーズが強い時に予算枠の4割を使い残す事態は、日本のコロナ対応の機能不全を映し出している」「⑰翌年度への予算繰り越しが30兆円程度出る2020年度は極めて異例」「⑱ワクチン接種の遅れが消費や投資を制約させた影響が大きい」「⑲欧米や中国はコロナ後の成長基盤づくりをにらんでグリーン関連政策やデジタル化など戦略分野へ中長期的財政出動を競う」と書かれている。

 このうち、⑱は深刻である上、ワクチンを接種しても「差別」などと言ってワクチンパスポートを出さず、リスクの低い人の経済活動まで止め、⑭⑮の国に補助されなければならない人を増やした。さらに、ワクチンや薬剤の開発・承認も進めず、⑲にも不熱心で、産業の付加価値を上げたり、コストを下げて利益を得たりする機会を逸している。

 その上、⑯⑰のように、予算枠を使い残して翌年度に繰り越すこと自体が悪いかのように言うため、ゆとりを持って予算を設定し、不必要になったら使わないという当然のことができない。そして、これは、国に複式簿記による公会計制度を導入して財産管理を徹底しつつ、考え方を変えなければ解決できないものである。

 さらに、⑮で「家計・企業への支払いが日本はGDPの7%程度、米国は13%なので、日本の財政出動の効果が限られる」としていることについては、新型コロナ感染者の状況が異なる他国と同じ政策をとる必要はなく、日本の財政には無駄遣いするゆとりはない。

 なお、*1-6にも、「⑯後発薬原材料調達は6割が海外で、供給リスクが指摘される」「⑰塩野義は抗菌剤の原料生産設備を今年末までに岩手県に設ける」「⑱日本での原材料製造コストは中国の5倍以上との試算」「⑲国内回帰は薬のコスト上昇に繋がりかねない」などが記載されているが、同じ製品を日本で作ると製造コストが5倍以上になるのが問題なのである。そのため、理由を分析して問題解決すべきであり、そうしなければ他産業も日本には戻って来ず、それと同時に技術も日本から失われるのだ。

(2)客観的根拠に基づく軌道修正が不得意な国、日本


  2020.12.21   2021.6.24     2021.2.20      2021.6.26 
  Net IB News   東京新聞      毎日新聞       日経新聞

(図の説明:1番左の図のように、使用済核燃料の貯蔵割合が100%に近い原発は多く、それは稼働すれば増えるものである。また、左から2番目の図のように、40年を超える関電美浜原発3号機が再稼働したが、その30キロ圏内には28万人弱が暮らしている。さらに、右から2番目の図のように、長期停止の後に再稼働した原発も多い。なお、1番右の図の地下に埋める形式の小型原発が問題解決できるかのような記述があるが、結局のところ何も解決してはいない)

1)それでもまだ、原発の建て替えをしたい人がいるのは何故か?
 日経新聞は、*2-1-1のように、「①60年に達する原発が今後出てくるのに、経産省はエネルギー基本計画に原発の建て替えを盛り込まない方向」「②政府は2030年度までに、温暖化ガス排出量を2013年度比で46%以上削減し、2050年には実質ゼロをめざすと決めた」「③原発はCO2を排出しない電源で、これにより2050年の脱炭素社会実現に向けた道筋が描きにくくなった」「④地球環境産業技術研究機構によると、原発活用は電力コストの上昇を和らげる効果もある」「⑤2050年に再生エネで電力すべてを賄うと、送電網の整備などに大きな費用がかかると見込まれるため、電力コストは今の4倍程度に増える」などと、記載している。

 ②については、よいと思うが、遅すぎるくらいだ。また、①③については、脱炭素は地球温暖化や公害をなくす一手段にすぎず、それ自体が目的ではないため、普段から温排水や放射性物質を排出し、事故が起こると手が付けられなくなる原発は既に失格であり、早く卒業すべきだ。

 具体的には、*2-1-2のように、フクイチ事故を起こした原発処理水を海洋放出して漁業に迷惑をかけようとしており、フクイチ事故自体も広い範囲の農林漁業と地域住民に多大な迷惑をかけた。その上、難しい原状回復のために支払う電気代や税金は莫大で、それがコストに上乗せされている。さらに、*2-4のように、原発建設当時からわかっていた筈の放射性物質を含む使用済核燃料の廃棄場所は未だになく、これにも税金と電気代を使うことになりそうなのだ。

 それにもかかわらず、④の「原発活用は電力コストの上昇を和らげる効果もある」などと言っている地球環境産業技術研究機構は、いかにも地球環境を護るような名前の組織だが、理事長の山地憲治氏は原子力の専門家で(https://www.rite.or.jp/about/outline/pdf/yamaji_cv.pdf 参照)、経産省の有識者会合と同様、原発推進派の下請機関である。さらに、⑤については、高度化した送電網の整備は喫緊の課題であるため、この際、送電に参入する組織がインフラ投資を行い、装置が簡単で燃料代0の再エネ電力を普及させた方が賢いに決まっている。

2)耐用年数を過ぎた原発を再稼働させる無神経
イ)仮に避難できれば、原発を再稼働してもよいのか
 運転開始から40年を超える関西電力美浜原発3号機が、*2-2-1のように、2021年6月23日、10年ぶりに再稼働したが、重大事故の際に避難対象となる30キロ圏内には28万人弱が暮らしており、避難の実効性には疑問符が付いている。

 しかし、原発事故で土地や住居を捨てて避難し、何年~何十年もどこで暮らすつもりか?「国策だったから」として、また国が除染したり公営住宅を建設したりすることを期待しているのなら、既に国策として原発を使う必要はなく、むしろ地域が補助金目当てに原発を再稼働したのだから、復興費用を全国民に負担させる理屈は通らなくなっている。つまり、避難する用意があったとしても、原発を再稼働してよいという理屈は既に破綻しているのだ。

 なお、水戸地裁は、30キロ圏に国内最多の94万人を抱える日本原子力発電東海第二原発の運転を禁じる判決を出したが、その根拠も、「市町村で避難計画の策定が遅れており、実現可能な避難計画がなければ運転を認めない」と言うに留まっており、避難した後、どうするかについての考察はない。

ロ)40年超の老朽原発を再稼働する非常識
 そのような中、*2-2-2には、「①関西電力が44年を経た福井県の老朽原発を再稼働させ、40年ルールから外れたケースが初めて現実となった」「②関西電力は、同様に老朽化した高浜1、2号機の再稼働も進める方針」「③福井県の再稼働同意は、それを条件とする巨額の交付金を経産省が県に提示したから」「④経産省と大手電力は今回の再稼働を原発復権に向けた足掛かりの一つと捉えている」「⑤例外として最長20年の延長を認める規定がある」「⑥40年の寿命を迎えた原発から順次廃炉して脱原発を着実に進める予定だった」と記載している。

 国税庁が示している耐用年数は、単なる建物・建物付属設備でも鉄骨鉄筋コンクリート造・鉄筋コンクリート造の場合は、工場・倉庫用:38年、公衆浴場用:31年で、金属造の場合は、工場・倉庫用:最長31年、公衆浴場用:最長27年である。また、電気設備・給排水・衛生設備、ガス設備は15年しかなく、機械・装置の耐用年数は、6~13年だ。(https://www.keisan.nta.go.jp/h30yokuaru/aoiroshinkoku/hitsuyokeihi/genkashokyakuhi/taiyonensuhyo.html 、https://www.keisan.nta.go.jp/h30yokuaru/aoiroshinkoku/hitsuyokeihi/genkashokyakuhi/taiyonensutatemono.html 、https://www.keisan.nta.go.jp/h30yokuaru/aoiroshinkoku/hitsuyokeihi/genkashokyakuhi/taiyonensukikai.html 参照)。
 
 つまり、放射性物質が飛び交うような過酷な環境でない普通の建物や建物付属設備の耐用年数でも、工場・倉庫用38年で、使用済核燃料プールのように常に水を貯めている建物付属設備なら、公衆浴場用31年である。さらに、電気設備・給排水・衛生設備、ガス設備の耐用年数は古典的で単純なものでも15年しかなく、機械・装置は6~13年で精密になるほど短いのである。

 そのため、日頃から周辺機器の点検や交換を行っていたとしても、40年の耐用年数は長い方で、⑤のように、40年ルールから外れる例外を作ることこそ緩くて甘いのだ。そして、それを存分に利用しようと、③のように、国が巨額の交付金を提示し、それにつられて①②④のように、なし崩し的に40年ルールを無視し、⑥の脱原発を闇に葬るやり方は、水際対策をザルにして先端技術も使わず、新型コロナを何度も蔓延させて国民に大損害を与えたのと同じ構図である。

3)日本における想定の甘さ
イ)地震の想定と活断層
 原子力規制委員会は、*2-3-1のように、九電が玄海原発で想定する地震の最大の揺れを引き上げる必要があるとの見解を示したそうだ。基準地震動とは、原発の耐震設計で基準とする地震動で、周辺の地質・地震学・地震工学等の見地から極めてまれでも発生する可能性があり、大きな影響を及ぼす恐れもあると想定されて、原発の地震対策の前提になるものだそうだ。

 規制委は、原発周辺の活断層などによる地震に加えて、過去に国内で発生した地震データを使って揺れを想定する方法を導入し、電力各社に最大の揺れの想定を見直す必要があるかどうか回答するよう要請したそうだが、電力会社が想定を作り直せばお手盛りになるし、耐震補強の追加工事費用も電力料金に加算される。

 さらに、活断層も、*2-3-2の「未知の活断層」だけでなく、プレートが強い力で押しあえば新しい活断層ができる可能性もあるため、過去にできた活断層だけを問題にしていることの方がむしろ不思議なくらいである。

 そのため、再エネの豊富な九州は、早々に原発を卒業し、大手電力も装置が簡単で燃料費0の再エネ発電に転換した方がよいと考える。その方が、玄海原発周辺の安全性が増し、他産業の誘致がしやすくなるメリットがある。

ロ)使用済核燃料の処分
 原発稼働で発生する使用済核燃料は、*2-4のように、再処理工場を経て最終処分場やMOX燃料加工施設に運ばれることになっている。そして、現在、日本国内で貯蔵されている使用済核燃料は約1万8,000tに上り、約5年後には、福島第二で88%、柏崎刈羽で100%、浜岡原発で90%、美浜原発で89%、高浜原発で98%、大飯原発で93%、川内原発で93%、東海第二原発で96%と、一時保管場所の9割が埋まると試算されている。

 また、九電玄海原発ではトラッキングで290t、乾式貯蔵施設の設置で440t、四電伊方原発では乾式貯蔵施設の設置で500t、中電浜岡原発では乾式貯蔵施設の設置で400tの追加保管が見込まれるが、これらは原発敷地内に放射性廃棄物が増えることにかわりない。また、東電と日本原電が出資した青森県むつ市の中間貯蔵施設は3,000tの保管を最長50年予定しているが、再処理後の高レベル放射性廃棄物最終処分場の選定はできていない。

 なお、使用済核燃料も恐ろしく危険なもので、フクイチのような自然災害による自爆もあり得るが、戦争なら原爆を運んで落とすよりも、原発を攻撃すれば原爆の何十倍もの威力でその国を自爆させることができるものである。そのため、使用済核燃料の処分は、これらのリスクも考慮したものでなければならないのだ。

ハ)小型原発の開発
 原発の是非を巡る議論が続いているのに、*2-5は、「①出力30万kwの小型原発を開発する動きがある」「②小型化して建設費を抑え、安全性も高めた」「③脱炭素に繋がる電源として実用化への取り組みは欧米が先行」「④三菱重工は国内の電力大手と小型炉の初期的設計の協議に入った」「⑤建設費は1基2,000億円台で5,000億円規模の大型炉の半分以下」「⑥小型炉は蒸気発生器を原子炉内に内蔵し、ポンプなしで冷却水が循環」「⑦小型炉は地下に設置できるので、航空機等による衝突事故への備えが高まる」「⑧密閉性が高まり放射性物質の飛散も防げる」「⑨米国ではプールにまるごと沈め、非常用電源なしでも冷却でき事故が起きにくい小型炉を開発」などと記載している。

 このうち③は、(2)1)に記載したとおり、脱炭素は地球温暖化や公害をなくす一手段にすぎず、それ自体が目的ではないのに、原発を推進するために目的を矮小化して記載している点で悪意であるし、パリ協定も原発は推進しないことを明らかにしている。また、①②⑤については、小型化したから安全になったというのは新たな安全神話にすぎず、出力30万kwが2,000億円台なら出力100万kwが5,000億円台よりも割高なので建設費を抑えたとは言えない。そして、その2000億円には地元懐柔費・事故時の現状復旧費・最終処分場建設費等は入っているのか?

 さらに、⑥⑨は、ポンプなしで冷却水が循環したとしても、冷却して回収した熱はどこかに逃がさなければならないため、それが海か空気を温めることは避けられず、温暖化防止に貢献することはない。その上、⑧のように、放射性物質の飛散は防げても発生は防げないし、使用済核燃料をどこかに処分しなければならないことに変わりはない。

 なお、⑦のように、地下に置いて航空機が突っ込む事故への備えが高まったとしても、サイバー攻撃やミサイル攻撃に対抗できない点は同じであるため、このような危険を犯し、地域住民の犠牲と大金を払って、④のように、国内電力大手が燃料費無料の再エネ(水力・地熱も含む)より原発を選択するには、また何かのからくりがありそうだ。

(3)外交・防衛にも計画性のない国、日本 ← それで勝てるわけはない
1)日本の外交について ← 台湾有事と尖閣諸島問題から
 日本は、1972年9月29日に北京で締結した「日本国政府と中華人民共和国政府の共同声明(https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/china/nc_seimei.html 参照)」の2条で、「日本国政府は、中華人民共和国政府が中国の唯一の合法政府であることを承認する」としているため、中華民国(台湾)の独立性について曖昧で消極的な態度をとっている。

 しかし、中華民国(台湾)は独立国であり、中華人民共和国との合併を望んではいないため、7条の「日中両国間の国交正常化は、第三国に対するものではない」に該当し、日本政府と中華人民共和国政府の共同声明に基づいて、中華民国(台湾)の独立性が左右されるのはおかしい。

 このような中、*3-1のように、麻生氏は「①中国が台湾に侵攻した場合、安保関連法が定める『存立危機事態』に認定し、限定的な集団的自衛権を行使することもあり得る」「②台湾有事は、日本の存立危機事態に関係してもおかしくない」「そのため、日米で一緒に台湾を防衛しなければいけない」との認識を示された。

 ①②③の繋がりについては、もう少し詳しい説明を要するが、尖閣諸島問題を見ると中華人民共和国政府の国内法優先による横暴は目に余り、それは国際法にのっとった話し合いでは長期間解決することができていないのである。これは、日本の外交が情けないことも理由の1つだろうが、それだけが理由ではないと思われる。

2)日本の防衛について ← 今さら原子力潜水艦が必要か
 このような中、*3-2は、「①自由で開かれたインド太平洋を海洋安全保障戦略の基本としている4カ国の専門家が原子力潜水艦の必要性を指摘した」「②今後米中関係がさらに悪化して行く中で、台湾有事も想定せざるを得ない」「③燃料の補充が長期にわたって不要なので、潜水艦、砕氷船、発電バージに小型軽水炉は最適」「④長期間潜ったまま航行できる原潜が中国海軍の動きを抑えるのに役に立つ」等を記載している。

 また、*3-3は、「⑤ディーゼルエンジンと蓄電池で駆動する潜水艦と違い、原潜は半永久的に潜水可能」「⑥高濃度の核燃料は数十年にわたって原子炉を稼働させることができる」「⑦燃料を気にすることなく原子炉からエネルギーを得て海水を蒸発させて真水を生み出し、それを電気分解して酸素供給も可能」「⑧船員の酸素確保のために浮上する必要もないため、連続潜航距離を伸ばせる」「⑨米国が、1958年に原潜で北極点の下を潜航通過し、当時、原子力は人間が制御でき、平和利用すれば人々の生活を豊かにするという考えが大勢だった」「⑩その後、原子力潜水艦や原発がいくつも大事故を起こした」等を記載している。

 ⑤⑥⑦⑧は事実だろうが、狭い原潜の中に原子炉を積んでいれば、原潜内で放射能が上がることは確実で、放射性廃棄物は海中に捨てており、撃沈された時は燃料もろとも海中投機されるため、原潜の数が増えて実戦で使われれば海洋汚染が進む。そのため、⑨のように、1950年代に原潜を作ったのはわかるが、⑩のように、原発事故や放射能による被害が明らかになった後に、原潜を作ろうというのは時代錯誤も甚だしい。

 にもかかわらず、②④を論拠として、日本が原潜を作ろうすれば台湾も迷惑だろう。何故なら、台湾付近で原潜が戦闘を行い、そこで何隻も撃沈されれば、付近の環境や漁業に悪影響を与えるからで、①もまた、時代錯誤の日本主導でこのような指摘になったのではないかと思う。さらに、③に「燃料の補充が長期にわたって不要」と書かれている原潜のメリットは、再エネでも潮流発電を使えば海中でひっそり充電して水素と酸素を作ることが可能だ。

 また、④の「長期間潜ったまま航行できる原潜が中国海軍の動きを抑えるのに役立つ」という主張については、そんなことはないだろうし、人間が乗って運転する時代も既に去り、戦争は無人で行う時代になりつつあって、海中や空中はそれに適しているように見える。

(4)人を大切にしない国、日本 ← 医療・介護はじめ社会保障と人権を粗末にしすぎ 
1)医療・福祉について
イ)過疎地の医療について
 日経新聞は、*4-1-1で、「①2050年の人口が2015年比で半数未満となる市町村が3割に上り」「②829市町村(66%)で病院存続が困難になる」「③公共交通サービス維持も難しくなり、銀行・コンビニが撤退するなど生活に不可欠なサービスの提供もできなくなる」「④地域で医療・福祉・買い物・教育機能を維持するには、一定の人口規模と公共交通ネットワークが欠かせない」と記載している。

 交通ネットワークが整っていれば、少し広い範囲を医療・教育・福祉・買い物圏にすることができるため、必ずしも1市町村に1つ以上の基幹病院が必要ではないが、病院なら何があっても車で30分以内で専門医にアクセスできるネットワークが必要だし、小中学校はスクールバスで15分以内、保育所・介護事業所は車で5~10分以内にアクセスできる必要があるだろう。

 従って、「⑤医療圏内で20人以上の入院患者に対応した病院を維持できる境目となる人口規模は1万7500人で、これを下回ると存続確率が50%以下」というのはかなり大雑把な言い方で、病気によって専門医は異なるため、もう少し広い範囲を視野に入れ、それぞれの病気や事故時には専門医に30分以内でアクセスできる必要がある。そのため、新型コロナ禍でバス事業者が経営難に拍車をかけられたのであれば、小中学校を合併してスクールバスを走らせたり、診療・健診バスや送迎バスを走らせたりなど、これまでなかったバスの使い方を考えるのも一案だ。

 また、「⑥基準を満たせない市町村の割合は2015年の53%から2050年には66%まで増える」というのも、病院をネットワーク化してそれぞれに専門の重点を変え、距離が遠くなる地域は診療・健診バスを走らせてカバーするなど、サービスを向上させながら効率化する方法もある。そのため、固定観念ではなく、問題解決重視で改善を重ねることが重要だ。

 なお、「⑦2050年に銀行の本支店・営業所は42%、コンビニは20%の市町村で0になるリスクがある」というのは、集落が消滅する前にそういうものがなくなって不便になり、集落の消滅に拍車をかけるので、集落が消滅しないよう、仕事を作り、移住者を増やす必要がある。現在は、農林業・再エネ・製造業の国産化や地方分散が進められている時期であるため、その気になれば仕事や移住者を増やせる筈である。

ロ)全体としての医療の課題
 公共経済学の専門家が、*4-1-2のように、「①新型コロナの感染拡大を巡っては、変異株の脅威のほか、五輪開催という重大なリスク要因が存在する」と記載しておられるが、ワクチンは変異株にも有効で、かつ五輪関係者はワクチンパスポートか陰性証明を持ってくる人であるため、検査もワクチン接種もしていない日本人よりよほど安全なのである。

 そして、*4-1-2は「②ワクチン接種の大幅加速という好材料も出てきた」とも書いているが、*4-3-1のように、せっかく民間企業が職場接種を始めたら「接種に使われる米モデルナ製ワクチンの供給が追いつかなくなった」として、政府が職場接種の申請受け付けを急遽停止することにした。しかし、職場接種はモデルナ製でなければならないと決まっているわけではなく、「打ち手」が足りないわけでもないため、現役世代の接種を加速させて全体を感染から守るためには、政府は必要な場所に速やかにワクチンを供給することを考えるべきだ。

 *4-1-2には、「③ポストコロナの医療供給体制にとっても重要な課題が浮き彫りになった」とも書かれているが、日本の医療供給体制の不合理は新型コロナで初めてわかったのではなく、時代の先端を行く科学の導入や地域医療計画に合わせた医療圏の設定・病院間の分業などの継続的改善を行うことが必要だったのにやっていなかったのだ。そして、厚労省・財務省の著しく単純化された合理化案で改悪されてきたというのが実情である。

 また、このほか、*4-1-2には、「④ワクチン接種が加速している欧米諸国は死者数が大幅に減少した」「⑤欧米は死者数で第3波は到来していないが、日本には過去のピークを上回る第4波が到来している」「⑥欧米は景気もV字型の回復軌道に乗ったが、日本は経済効果があり景気回復のチャンスでもある五輪さえ無観客にして逃している」「⑦本格的な市中感染の到来を予期せず、全国レベルのワクチン接種に大きく出遅れたのが、その違いを生んだ主因である」等も書かれており、これは事実だ。

 ただ、日本の場合は、地方自治体や国民にある程度の衛生意識があるため、政府による全国一律の強制的ロックダウン等は不要だったのだが、おかしな論調のメディアに引きずられた政府のコロナ対策や医療政策が悪すぎたのである。

 また、「⑧急性期医療へのシフトなど構造改革急げ」「⑨利用者の受診抑制の要因や影響探る必要」とも書かれているが、日本の人口当たりベッド数は世界トップクラス、コロナ感染の規模は諸外国より限定的だったにもかかわらず、「医療現場が逼迫する」と言われ続けてまともな医療も受けられない人が続出した。何故か? その原因を一つ一つ解決し、患者のQOL(Quality of Life)を高めながら医療システムを良い意味で合理化することが、医療制度の改善に繋がるし、それはできるのである。

2)教育について
イ)教員の質と教員免許更新制
 *4-2-1は、「①文科省が、2009年度に導入された教員免許更新制廃止の方向で検討しているが、遅きに失した」「②免許期限を10年とし、30時間以上の講習を自費で受けると更新が認められる」「③数万円の講習費用と交通費を負担して夏休み等に講習に通うことに、教員の大多数が負担感を示し、役に立っていると答えたのは1/3だった」「④更新制は教員不足の一因にもなった」「⑤文科省は、教員の資質確保が目的で、不適格教員を排除する趣旨ではないとする」「⑥教員の多忙さが増し、学校現場の疲弊が深いのに、なぜ免許更新が必要か」「⑦いじめはじめ、子どもたちが抱える問題への対応が追いついていない」「⑧教員が子どもとじっくり向き合って力量を高め、それぞれが直面する課題を持ち寄って自主的に学び合う時間と余裕を生むことが肝心だ」と記載している。

 このうち②③については、資格を維持して業務を続けるには、公認会計士(年間40単位)・税理士(年間36単位)も、毎年度に一定以上の研修を受けることが必要で、長い夏休みなどない勤務体系でも時間を作って研修を受けている。その効果は、i)刻々と更新される実務の標準をキャッチアップし ii)知識を深く整理し iii)自分が担当していない業務にも視野を広げる などであり、大学教授の講義の中に実務から離れた役立たないものもあるが、全体としては役立つものが多い。費用は、有料・無料の両方があり、昨年からはリモートでの無料の講義が増えている。

 つまり、研修を受けることを負担に感じる人は、もともと勉強好きでないのだと思うが、勉強嫌いな教員に習った子どもが勉強の面白さを教えてもらって勉強好きになるわけがない上、⑥⑦⑧のように、何十年も「忙しさ」を勉強しない口実にして根本的な問題解決をしない人たちに習った子どもに問題解決能力が身につくわけもなく、お粗末な教育の結果は既に出ている。そのため、そういう人が教員を続けていること自体が子どもや国家にとってマイナスであるため、⑤も必要であり、研修内容は毎年改善してよいが、①の教員免許更新制は残した方がよいと思う。

 なお、④の免許更新制が教員不足の一因になったという点は、これからの日本を背負う子どもを教育する教員の給料を銀行員・会社員よりも高くし、博士など専門性があり優秀な人が教員になりやすい環境を整えるべきである。

ロ)「才能を持つ子ども」の定義と誤った評価
 *4-2-2は、「①芸術・数学などで抜きんでているが、学年毎のカリキュラムや周囲にうまく適合できず、不登校になるケースもある」「②文科省によると、米国では同年齢より特に高い知能や創造性・芸術的才能などを発揮する子どもを「ギフテッド」と呼び、早期入学や飛び級といった特別な教育プログラムが用意されている」「③中にはこだわりが強すぎたり、集団行動が苦手だったりする子もいるとされ、どう支援するかも課題」「④日本では、単純な課題は苦手だが複雑で高度な活動は得意など多様な児童生徒が一定割合存在する」「⑤同質性の高い学校文化そのものを見直すべきとの意見」「⑥松村教授は「『トップ人材を輩出する目標でなく、困っている才能児のニーズに対応する視点で議論すべき』と指摘」「⑦発達障害を抱える子もいるとして特別支援教育や生徒指導との連携も必要とした」などと記載している。

 日本では、①の文脈で語られる時、「抜きんでている」という言葉の意味が低いレベルであることが多い。②の米国における「ギフテッド(神から才能を与えられた者という意味)」呼ばれる子どもは、音楽ならモーツァルト、体操ならコマネチ、男子100mならカール・ルイス、科学ならアインシュタインのような本物の「ギフテッド」であり、そういう人やその卵を探して特別な教育プログラムで育てているのである。従って、本人の自然な欲求としてこだわりが強く、努力もしており、だからこそ他人ができない何かを成し遂げることができるのだ。

 そのため、③のように、こだわりが強いことを悪いことであるかのように言ったり、集団行動をしないから性格がおかしいかのように言ったりするのは、凡人の歪んだ劣等感の裏返しにすぎない。もし、⑥⑦のように、才能児が困っている点があるとすれば、凡人の誤った評価で発達障害扱いされたり、成長を妨げられたりすることだろう。つまり、⑤のように、いつも集団行動や同質性を強制し、それを疑問にすら思わない大人の方が問題なのである。

 なお、④のように、「複雑で高度な活動が得意など多様な児童生徒が一定割合存在する」というのは、よいことでこそあれ悪いことではない。そして、通常は、複雑で高度な活動ができる人は単純な課題はすぐできるが、単純なことを繰り返すのが嫌いなだけである。いずれにしても、これからは、単純作業や体力勝負の仕事はコンピューターやロボットにとられ、人間は複雑で高度な作業で出番が多くなるため、教員の考え方も変える必要がある。

3)間違いだらけの新型コロナ対策
イ)新型コロナと五輪
 新型コロナが拡大している中、「五輪を開催しても国民は安全なのか」という論は、*4-3-5をはじめ多い。しかし、「菅首相が何より優先しなくてはならないのは、五輪を予定通り終わらせることではなく、国民の命を守るためコロナ感染を一日も早く収束に向かわせることだ」とし、五輪を開催すると国民の命が守れないかのように記載しているのは変だ。

 これは、「子どもの安全のため、放課後は子どもを学校に残さない」と言いつつ、かぎっ子を街に放り出してきたのと同様、安全を建前として使ったより悪い選択への強制である。さらに、五輪の開催を政争の具に使うのは、今後の日本外交に悪影響を及ぼすため許すべきではない。

 具体的には、*4-3-5は「①五輪開催都市である東京で新型コロナ感染者が急増している」「②1,000人/日超の新規感染者数の報告が続き、5月の第4波ピーク時を上回っている」「③専門家は現在の増加ペースで推移すれば五輪閉会後には2,400人程度に上るとの試算を公表した」としているが、私も英国と同様、今後は新型コロナによる死者数だけを開示すればよいと考える。理由は、ワクチン接種が進むにつれて重症化する人が減るからで、治療薬やワクチンの準備もできずに天気予報のようなことしか言わない日本の“専門家”会議は既に失格なのである。

 また、「④東京など首都圏の感染者数は全国のおよそ2/3を占めている」「⑤感染力の強いデルタ株への置き換わりが進み、感染再拡大が首都圏から全国に波及する可能性もある」のであれば、ワクチンはデルタ株にも有効であるため、感染者数の多い首都圏にワクチンを先に配布すれば、感染者数が減って他地域への波及も減る。ここで、誤った「公平」を持ち出すのは科学的ではなく、おかしな平等教育の結果である。

 さらに、「⑥選手約1万人、大会関係者約4万1千人の来日が見込まれる」「⑦五輪は選手らと外部の接触を遮断する“バブル方式”で運営される」「⑧種目の大半は無観客で行われる」「⑨選手らの多くがワクチン接種を済ませ、厳格な検査と行動制限でウイルスの国内流入を防ぐとする」「⑩事前合宿先で感染が判明した例もあり、水際対策は万全ではあるまい」「⑪管理の緩さが露呈した関係者の行動も問題視されている」「⑫『バブル方式により、日本国民がコロナ感染を恐れる必要はない』『感染状況が改善した場合、有観客を検討してほしい』としたバッハ会長の現状認識にも疑問が湧く」とも書かれている。

 しかし、⑨のようなワクチン接種済の人が、⑥のように4万1千人来ても伝染するリスクは低いため、⑦⑧⑪は、外国人に対するヒステリックな対応で差別的でもある。また、⑩については、PCR検査のカットオフの問題で、日本のPCR検査は長時間増幅させているという報告もあり、水際対策はビジネス目的で入国している内外の人に対する方が甘いため、私は、⑫のバッハ会長の見解に賛成だ。

 なお、「⑬選手村には、2回目の接種を終えていない日本人スタッフらが出入りする」というのは、出入りする関係者は五輪関連者として早くワクチンを接種すればよい。そのため、「⑭五輪を発生源としたクラスターを認知した場合、大会を続行するかどうかを検討しておく必要がある」のように、ワクチン接種済の軽症者ばかりのクラスターが発生したからといって大会を中止するようなことがあれば、五輪は世界中で報道されるため、世界の笑い者になるだろう。

 「⑮生活や事業がコロナ前に戻るのはいつかを国民は一番知りたい」については、*4-3-3のように、東京五輪の原則無観客開催で多くの企業が肩すかしを食らい、スポンサー企業も製品や技術を売り込む好機の筈が人々の目に触れる機会が大幅に減っている状況なので、必要な場所に早期にワクチン接種を済ませ、この1年間で経営状況が悪くなった日本企業に五輪でさらに追い打ちをかけるのをやめた時、生活や事業は少しずつコロナ前に戻ると言える。

ロ)誤った新型コロナ対策とそれによる破綻
 政府は、*4-3-4のように、7月12日、東京都に4度目の新型コロナ緊急事態宣言を出し、蔓延防止重点措置を含む6都府県の住民に県境をまたぐ不要不急の外出自粛を要請した。そして、「接種の有無による不当な差別は適切でない」として、ワクチン接種証明書は海外渡航用に限り、ワクチン接種済者も同じく移動を止めて経済を停滞させている。しかし、感染リスクが低くなり、移動を止める理由のなくなった特定地域のワクチン接種済者の移動の自由を侵害するのは憲法違反であると同時に、それこそ差別である。

 国内の観光地も政府から僅かな補助金をもらうより、感染リスクの低いワクチン接種済者からでも営業を始めた方が助かり、納税者も同じだ。また、「都道府県間の移動は控えよ」というのは理由不明で、知事の権限範囲が異なることくらいしか理由を思いつかない。そのため、私は経団連の「接種証明書を早く活用し、国内旅行などの要件を緩和すべき」という提言に賛成だ。

 さらに、「学校は、新型コロナで運動会も中止になった」と聞くが、延期すればよく、中止にまでする必要はない。そのため、「何故、ここまで融通が効かないのか」と不思議に思う。

 なお、*4-3-2のように、東京商工リサーチによると、負債1,000万円未満を含めた新型コロナ関連破綻が累計で1,661件になったそうだ。ここでおかしいのは、夜に飲食店を利用することや酒を飲むこと自体が悪いかのように、飲食店の酒類提供や営業時間制限を設備の状況に関わらず一律に行っていることである。破綻すれば、事業主は負債を負って失業し、従業員も失業するが、これを助けるのに、生活保護や「Go To Eat」による血税のバラマキばかりしている体質なら、日本も破綻寸前でお先真っ暗なのだ。

4)難民と留学生
 サッカー・ワールドカップ予選のため来日していたミャンマー代表選手のピエ・リヤン・アウンさんが、*4-4-1のように、クーデターを起こした国軍に抗議の意志を示して帰国を拒否し、日本に難民認定を申請されたそうだ。

 日本政府は、日本への在留継続を望むミャンマー人に対し、緊急避難措置として在留延長や就労を認める方針を示したそうだが、ピエ・リヤン・アウンさんが母国の家族やチームメートの身を案じながら下した苦渋の決断にも応える必要がある。

 難民条約は、人種・宗教・政治的意見などを理由に母国で迫害される恐れがある人を難民と定義して各国に保護するよう求めているが、日本は他の先進国と比較して難民認定数が極端に少ない。そのため、本来、保護されるべき人が保護されずに送還されている可能性が高く、外国人の人権保護という視点から、難民認定制度については見直すべきである。

 また、*4-4-2のように、合宿期間中に世界ランキングが下がって五輪に出場できなくなり、コーチとともに近く成田空港から帰国する予定だったウガンダの重量挙げ男子選手が、「日本で仕事がしたい。生活が厳しい国には戻らない」という趣旨の書き置きを残して名古屋行き新幹線の切符を購入したそうだ。こういう人は、希望があればスポンサー企業がついて中京大学に留学させ、次のオリンピックを目指せるようにするか、何かいい方法がありそうだ。

 なお、ウガンダは、英語が通じ、キリスト教が6割を占める国で、現在の主要産業は農林水産業・製造・建設業・サービス業で、自動車・医療機器・医薬品などは輸入しており、日本企業のアフリカ進出の拠点になれそうな国である(https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/uganda/data.html 参照)。

(5)先端科学で証明する日本人のルーツと古代史

  
    2010.5.7朝日新聞       2021.6.23日経新聞    2021.7.8日経新聞
                     *5-1より       *5-2より

(図の説明:左図は、ホモサピエンス《現生人類》がアフリカで発祥し、ネアンデルタール人などと交雑しながら世界に広がり、それぞれの地域に適した姿に進化してきたことを示す図だ。中央の図は、日本における都道府県毎の50人のゲノム情報をもとに違いを可視化し、縄文人由来のゲノムが多い県は青色、渡来人由来のゲノムが多い府県はオレンジ色で表示したもので、沖縄県は縄文人由来のゲノム比率が他県と比べて極めて高いが地図に含まれていない。右図は、東北大学と製薬大手5社が創薬目的で作るバイオバンク構想だ)

 東北大学と製薬大手5社が、*5-2のように、10万人分のゲノムを解析するためのコンソーシアムを設立し、本格的にゲノムデータを創薬や診断技術開発等に利用できるようにし、日本も、ようやくゲノムをもとに新薬を探す「ゲノム創薬」の基盤整備が進むのだそうだ。

 年齢・性別・生活習慣・病歴などのデータも合わせて蓄積するそうだが、正しいデータ分析のできない人はゲノム・年齢・性別などによる固定観念で人を差別するようにもなりがちであるため、注意してもらいたい。しかし、人間のDNAを短時間で読むことができ、ゲノムを解析することが可能になったのは、著しい進歩だ。

 新型コロナウイルスを通して誰もが容易に理解できるようになったことは、DNAが分裂する時にはコピーミスも発生し、これによって変異が起こり、より有利な変異をした個体が生き残って、次の進化をしていくということだ。有性生殖をする生物は、次世代を残すのに少し時間を要するが、DNAのコピーミスだけでなく、交配によって両親から両方のDNAを受け継ぐことによっても、より生き残りやすい個体がより多くの子孫を残す形で進化できる。

 人間も有性生殖をする生物の一つであるため、上の左図のように、ホモサピエンスがアフリカで発祥し、ネアンデルタール人などと交配しながら世界に広がり、それぞれの地域に適した形に進化してきたが、これは各地域に住む人のDNA分析をするという先端科学を使って証明されたことだ。診療や健診の際に、それぞれの国で人口の10%程度のDNA分析ができれば、どの地域が強い繋がりを持ち、どういう経路を辿ってホモサピエンスが現在の分布になったのかを、より正確に知ることができるだろう。

 また、上の中央の図は、*5-1のように、日本における都道府県毎の50人のゲノム情報をもとに違いを可視化し、縄文人由来のゲノムが多い県は青色、渡来人由来のゲノムが多い府県はオレンジ色で表示したもので、沖縄県は縄文人由来のゲノム比率が他県と比べて極めて高いが、地図には含まれていないそうだ。

 この研究の結果、日本人は、縄文人の子孫が大陸から来た渡来人と混血することで生まれ、47都道府県で縄文人由来と渡来人由来のゲノム比率は異なることがわかり、渡来人由来のゲノム比率が高かったのは滋賀県・近畿・北陸・四国で、沖縄県はじめ九州・東北(多分、北海道も)で縄文人由来のゲノム比率が高かったとのことである。

 この結果は、渡来人が朝鮮半島経由で九州北部に上陸したとする考え方とは一見食い違うが、私は、渡来人は環日本海を自由に航海できたため、九州北部や日本海沿岸だけでなく、海路で繋がる瀬戸内海沿岸にも上陸し、縄文人の子孫と1000年以上かけて混血したのだと思う。どのような過程で混血が進んだかについては、沖縄などのように、さほど混血しなかった地域もあり、一様ではないだろう。

 ただし、使った器で進化や文化の程度を図れるものではない。例えば、有田焼を使っている人が唐津焼を使っている人よりも進んでいるわけではなく、それぞれの場所にある材料を使い、その時代にあった技術を使って、必要なものを作ったにすぎないだろう。そのため、考古学は、生物学的・科学的知見も合わせて、首尾一貫性のある納得いく歴史を示してもらいたい。

・・参考資料・・
<中華民族と東夷・南蛮・西戎・北狄、倭国・奴国・卑弥呼>
*1-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20210702&ng=DGKKZO73480930R00C21A7M11500 (日経新聞 2021.7.2) 共産党100年 習氏演説要旨、中国が大股で時代に追いついた
 中国共産党の習近平(シー・ジンピン)総書記(国家主席)は1日、北京市の天安門広場で党創立100年記念式典の演説に臨んだ。「(中国は)後進的な状態から世界第2位の経済大国へと歴史的な躍進を達成した」と述べ、党主導で経済成長などを実現させたと強調した。演説の要旨は次の通り。
     ◇
 同志と友人のみなさん。今日は中国共産党の歴史と、中華民族の歴史において、非常に重大で荘厳な日である。私たちはここに盛大に集まり、全党、全国各民族とともに中国共産党創立100周年を祝い、中国共産党の100年にわたる奮闘の輝かしい経過を振り返り、中華民族の偉大な復興の明るい未来を展望する。まずはじめに、党中央を代表し、全ての中国共産党員に、熱烈な祝意を表す。ここで党と人民を代表し、全党と全国各民族の人民による持続的な奮闘を経て、私たちは最初の(党創立)100年で掲げた目標を実現し、この地に(大衆の生活にややゆとりのある)「小康社会」を全面的に築き上げ、絶対的な貧困問題を歴史的に解決し、社会主義現代化強国の全面的な実現という次の(中華人民共和国成立から)100年の奮闘目標に向けて意気盛んにまい進していることを厳かに宣言する。これこそが中華民族の偉大な栄光である。これこそが中国人の偉大な栄光である。これこそが中国共産党の偉大な栄光である。中国共産党は誕生当初から、中国人民に幸福をもたらし、中華民族の復興をもたらすことを初心と使命と決めている。この100年来、中国共産党が中国人民を束ね率いて行った全ての奮闘、全ての犠牲、全ての創造はひとつのテーマに帰結する。それは中華民族の偉大な復興を実現するということだ。中国共産党と中国人民の勇敢で強固な奮闘をもって中国人民は立ち上がり、中華民族が搾取され、辱めを受けていた時代は過ぎ去ったことを世界に厳かに宣言する。中華民族の偉大な復興を実現するため、中国共産党は中国人民を束ねて率い、自力更生し、発奮し、社会主義革命と(社会主義現代化)建設という偉大な成果を生んだ。私たちは社会主義革命を進め、中国で数千年にわたり続いていた封建的な搾取と圧迫の制度を消滅させ、社会主義の基本制度を確立し、社会主義の建設を推進し、帝国主義や覇権主義による転覆と破壊、武装挑発に打ち勝ち、中華民族の有史以来、最も広く深い社会変革を実現した。経済的文化的に遅れた人口の多い東方の大国(だった中国)が社会主義の社会に大きく進んだという偉大な飛躍を実現し、中華民族の偉大な復興の実現に向けた根本的な政治前提と制度の基礎を築き上げた。中国共産党と中国人民は勇敢で強固な奮闘をもって世界に厳かに宣言する。中国人民は古い世界を打ち破ることに優れているだけでなく、新しい世界を建設することにも優れている。中国を救えるのは社会主義だけであり、中国を発展させられるのは中国の特色ある社会主義だけである。揺るぎなく改革開放を推進し、各方面からのリスクや挑戦に打ち勝ち、中国の特色ある社会主義を創り、堅持し、守り、発展させ、高度に集中した計画経済体制から活力に満ちた社会主義市場経済体制への歴史的転換を実現した。閉鎖や半閉鎖から全方位開放への歴史的転換を、生産力が相対的に遅れていた状況から経済の総量で世界第2位に躍り出る歴史的突破を、人民の生活で衣食が不足していた状況から総体としてはややゆとりがある社会を、さらに全面的にややゆとりがある社会に向かう歴史的な飛躍をそれぞれ実現した。中華民族の偉大な復興の実現のため、新しい活力にあふれた体制上の保障と急速発展の物質的条件を提供した。中国共産党と中国人民は勇敢で強固な奮闘をもって世界に厳かに宣言する。改革開放こそが現代中国の前途と運命を決める鍵となる一手であり、中国が大股で時代に追いついたのだ。(2012年の)第18回党大会以降、中国の特色ある社会主義は新しい時代に入り、我々は党の全面的指導を堅持・強化し、(経済一辺倒でなく政治や文化、社会、環境保護の一体的な発展を重視する)「五位一体」の体制を全体を見据えて推進し、(小康社会の建設や厳格な党統治など4項目を推進する)「四つの全面」の戦略的体制を協調して推進し、中国の特色ある社会主義制度を堅持し改善した。国家のガバナンス体制とガバナンス能力における現代化を推進し、規範に基づいた党の運営を堅持し、比較的整った党内の法規体系を形成し、一連の重大なリスクと挑戦に打ち勝った。第1の100年における奮闘の目標を実現し、第2の100年では奮闘の目標の戦略的計画を明確に実現し、党と国家の事業は歴史的成果をあげ、歴史的変革を起こし、中華民族の偉大な復興を実現するため、より整った制度保障と、より堅実な物質的基礎と、より自発的な精神力を与えた。同志と友人のみなさん。100年前、中国共産党の先駆者たちが中国共産党をつくり、真理を堅持し、理想を守り、初心を実行し、使命を担い、犠牲を恐れず、勇敢に戦い、党に忠誠心を持ち、人民に背かない、偉大な建党精神をつくり上げた。これが中国共産党の精神の源である。同志と友人のみなさん。この100年、我々が得た全ての成果は中国共産党人、中国人民、中華民族が団結し奮闘した結果である。毛沢東同志、鄧小平同志、江沢民(ジアン・ズォーミン)同志、胡錦濤(フー・ジンタオ)同志を主要な代表とする中国共産党人は、中華民族の偉大な復興のために、歴史書を光り輝かせる偉大な功績をあげた。私たちは彼らに崇高なる敬意を表する。今このとき、私たちは中国の革命、建設、改革、中国共産党の創立と強化、発展のために大いに貢献した毛沢東、周恩来、劉少奇、朱徳、鄧小平、陳雲といった同志ら上の世代の革命家を深くしのぶ。新中国を創立し、守り、建設するにあたって勇敢に犠牲となった革命烈士を深くしのぶ。香港特別行政区の同胞、マカオ特別行政区の同胞、台湾の同胞と多くの華僑に心からあいさつする。中国人民と友好に付き合い、中国の革命と建設、改革事業に関心と支持を寄せる各国の人民と友人に心から謝意を表する。同志と友人のみなさん。初心を得るのは易しく、終始守るのは難しい。歴史を鑑(かがみ)として、盛衰を知ることができる。私たちは歴史で現実を映し、未来を長い目で見通す。中国共産党の100年の奮闘の中から過去に私たちがなぜ成功できたかをはっきりと見て、未来に私たちがどうやって成功を続けられるか明らかにし、それによって新しい道のりで揺るぎなく、自覚的に初心の使命を心に刻み、美しい未来を切り開いていかねばならない。
●党は国に不可欠
 歴史を鑑として、未来を切り開くには、中国共産党の強固な指導を堅持しなければならない。中国のことをうまくやるために、カギとなるのは党だ。中華民族の近代以来180年余りの歴史、中国共産党の成立以来100年の歴史、中華人民共和国の成立以来70年余りの歴史が、すべて十分に証明している。中国共産党がなければ、新中国はなく、中華民族の偉大な復興もない。歴史と人民は中国共産党を選んだ。中国共産党の指導は、中国の特色ある社会主義の最も本質的な特長であり、中国の特色のある社会主義制度の最大の優位性であり、党と国家の根本的な所在、命脈の所在、全国の各民族の人民の利益と運命にかかわっている。新しい道のりでは、私たちは党の全面的な指導を堅持し、党の指導を絶えず充実させ、「四つの意識」を強め、「四つの自信」を固め、「二つの擁護」を徹底し、「国の大者」を銘記し、党の科学的な執政、民主的な執政、法に基づく執政の水準を絶えず向上させ、大局をまとめ、各方面を調整する核心となる党の役割を十分に発揮しなければならない。中国共産党は常に最も広範な人民の根本的な利益を代表し、人民と苦楽をともにして一致団結し、生死を共にし、自らのいかなる特殊な利益もなく、いかなる利害集団、いかなる利権団体、いかなる特権階級の利益も代表しない。中国共産党と国民を分割して対立させようとするいかなる企ても、絶対に思いのままにならない。9500万人以上の中国共産党員も、14億人余りの中国人民も許さない。歴史を鑑として、未来を切り開くには、マルクス主義の中国化を引き続き推進しなければならない。マルクス主義は私たちの立党と立国の根本的な指導思想であり、私たちの党の魂と旗印である。中国共産党はマルクス主義の基本原理を堅持し、事実に基づいて真実を求めることを堅持し、中国の実際から出発し、時代の大勢を洞察し、歴史の主導権を握り、苦難の探究を行う。絶えずマルクス主義の中国化と時代化を推し進め、中国人民が絶えず偉大な社会革命を推し進めるよう指導する。中国共産党はなぜできるのか、中国の特色のある社会主義はなぜ良いのか、それはマルクス主義によるものだ。新たな道のりでは、私たちはマルクス主義、レーニン主義、毛沢東思想、鄧小平理論、(2代前の総書記である江沢民氏の)「『3つの代表』の重要思想」、(前総書記である胡錦濤氏の)「科学的発展観」を堅持する。新時代の中国の特色ある社会主義思想を全面的に支持し、マルクス主義の基本原理と実際の中国の現状、中国の優れた伝統文化を組み合わせ、マルクス主義を用いて時代を見つめ、把握し、先導し、現代中国のマルクス主義と、21世紀のマルクス主義の発展を継続していく。歴史を教訓とし、未来を切り開くには中国の特色ある社会主義を堅持し、発展させる必要がある。独自の道を歩むのは、党の全ての理論と実践の足がかりであり、さらにこれは党の100年の闘争により得た歴史的結論だ。中国の特色ある社会主義は、党と人民が多大な苦しみと大きな代償を払ったことによる成果であり、これは中華民族が偉大な復興を実現する正しい道のりである。私たちは中国の特色ある社会主義を堅持し、発展させ、物質文明、政治文明、精神文明、社会文明、生態文明を一体的に発展し、促進する。中国式の近代化への新たな道を創造し、人類文明の新たな形態を作り出した。新たな道のりでは、党の基本理論、基本路線、基本戦略を堅持し、「五位一体」と「四つの全面」を一体的に推進する。改革開放を全面的に深化させる。新たな発展段階を足がかりとし、新しい発展理念を完全で正確かつ包括的に実行する。新しい発展パターンを構築し、高品質な発展を促進し、科学技術の自立を進める。人民自らが主であることを保障し、法の支配に従って国を統治し、社会主義の核心的価値体系を堅持する。発展中の人々の生活を保障し改善し、人と自然の調和と共生を堅持し、人民の繁栄、国家の強盛、美しい中国を共に推し進めていく。中華民族は、5000年以上の歴史の中で形成された輝かしい文明を持ち、中国共産党は100年の闘争と70年以上の統治経験があり、我々は積極的に人類文明の全ての有益な成果から学び、すべての有益な提案と善意の批判を歓迎する。ただ、私たちは決して「教師」のような偉そうな説教を受け入れることはできない。中国共産党と中国人民は、中国の発展していく運命を自らの手中に収め、自らの選択した道を歩む。歴史を教訓とし、未来を切り開くには、国防と軍隊の近代化を加速しなければならない。強国には強軍が必要で、軍は国を安定させなければならない。党が銃(軍)を指揮し、自ら人民の軍隊を建設することは血と火の闘争のなかで党が作り出し、破られない真理だ。人民解放軍は、党と人民のために不滅の功績を築き、(共産党によって守られた世の中である)「紅色江山」を守り、民族の尊厳を守る強力な柱であり、地域と世界平和を守る強力な力である。新しい道のりでは、新時代の党の強大な軍隊の思想を全面的に貫く。新時代の軍事戦略の指針を堅持し、人民解放軍に対する党の絶対的な指導力を維持し、中国の特色ある強大な軍隊の道を歩み続ける。政治建軍、改革強軍、科技(科学技術)強軍、人材強軍、法に基づき統治された軍隊を全面的に推進、人民解放軍を世界一流の軍隊へと建設する。より強力な能力と防御するための信頼性の高い手段で人民解放軍を建設すれば、国家主権、安全、発展の利益を守ることができる。
●「一帯一路」発展促す
 歴史を教訓とし、未来を切り開くには、人類運命共同体の構築を絶えず推進しなければならない。中華民族は平和、和睦、調和を5000年以上にわたって追求し、継承してきた。中華民族の血には、他人を侵略し、覇権を追求する遺伝子はない。中国共産党は人類の将来の運命に心を配り、世界のすべての先進的な力と協力して前進する。中国は常に世界平和の建設者であり、世界の発展の貢献者であり、国際秩序の擁護者である。新たな道のりでは、平和、開発、協力、互恵の旗印を高く掲げ、独立した外交政策を追求し、平和的発展の道を守り、新しい形の国際関係の構築を促進しなければならない。人類の運命共同体の道を守り、(中国の広域経済圏構想)「一帯一路」の質の高い発展を促し、世界に新たな機会を提供しなければならない。中国共産党は平和、開発、公正、正義、民主、自由という全人類共通の価値観を守る。協力を堅持し、対立をやめ、開放を守る。封鎖をやめ、互恵を守り、ゼロサムゲームをやめ、覇権主義と強権政治に反対する。歴史の車輪を明るい目標に向かって前進させる。中国人民は正義を重んじ、暴力を恐れない人々である。中華民族は強く、誇りと自信を持つ民族である。中国人民はこれまで他国の人民をいじめ、抑圧し、奴隷のようにしたことはない。過去にも現在にも、将来においてもありえない。同時に、中国の人民は、いかなる外部勢力が私たちをいじめ、抑圧し、奴隷のようにすることも決して許さない。故意に(圧力を)かけようとすれば、14億人を超える中国人民の血肉で築かれた「鋼鉄の長城」の前に打ちのめされることになるだろう。歴史を教訓とし、未来を切り開くには、多くの新しい歴史的特徴を持つ偉大な闘争が必要となる。戦い、勝利することは、中国共産党の無敵で強力な精神力である。偉大な夢を実現するには、粘り強く、たえまない戦闘が必要だ。今日、私たちは、歴史上のどの時代よりも中華民族の偉大な復興という目標に近づいている。これを実現するための自信と能力があり、同時にさらに大変な努力をする必要がある。新しい道のりでは、私たちは、危機意識を高め、常に安全な時も危険な状況を考え、総体国家安全観を貫き、開発と安全を統一的に計画する。中華民族の偉大な復興戦略と世界でこの100年なかった大変革の両方を統一的に計画する。我が国の社会の主要な矛盾の変化によってもたらされた新しい特徴と新しい要求を深く理解する。複雑な国際情勢がもたらす新たな矛盾と新たな課題を深く理解し、あえて戦い、闘争を得意とし、山があれば切り開き、水があれば橋をかけ、あらゆるリスクと挑戦を克服する。歴史を教訓とし、未来を切り開くには、中国人民がより大きな団結を強化しなければならない。100年の闘争の道のりで、中国共産党は統一戦線を重要な位置づけとし、常に最も広範な統一戦線を統合し発展させ、団結できるすべての力を結集し、動員できるすべての肯定的な要因を動員し、闘争の力を最大化する。愛国統一戦線は、中国共産党が中華民族の偉大な復興を達成するために、国内外のすべての中国人民を結集するための重要な武器である。新しい道のりでは、私たちは政治思想の誘導を強化し、共通認識を広く結集し、世界の英雄と人材を結集し、最大の公約数を探し続け、最大同心円を描き、国内外のすべての中国人民の力と心を一つの場所に集約する。民族の復興を達成するために力を結集しなければならない。歴史を教訓とし、未来を切り開くには、党が建設する新たな偉大な工程を継続的に推進しなければならない。自己革命への勇気は、中国共産党が他の政党と区別する顕著な兆候である。私たちの党は試練と苦難があったが、今も活発だ。その一つの重要な理由は、私たちは常に党が党を管理し、厳重に統治し、あらゆる歴史のなかで自らのリスクに絶えず対処し、世界情勢の深い変化の歴史的過程において、私たちの党が時代の先頭を走ってきた。歴史的過程において、国内外の様々なリスクと課題に直面するとき、常に国民のよりどころとなることを保証する。クリーンな政府を構築し腐敗との戦いを揺るぎなく促進し、党の高度な性質と純粋さを損なう全ての要因を断固排除する。健全な党を侵食するすべての病毒を除去し、党の質、色、味が変わることを防ぐ。新しい時代の中国の特色ある社会主義の歴史的過程において、党が常に強い指導的核心となるよう努力する。同志と友人のみなさん。私たちは「一国二制度」「香港人による香港の統治」「マカオ人によるマカオの統治」、高度な自治の方針を全面的かつ正確に徹底し、香港、マカオ特別行政区に対する中央の全面的な管轄権を実行する。特別行政区が国家の安全を守る法律制度と執行体制を実施し、国家主権と安全、発展の利益を守り、特別行政区の社会の大局的な安定を維持し、香港とマカオの長期的な繁栄と安定を保たねばならない。台湾問題を解決し、祖国の完全な統一を実現することは、中国共産党の変わらぬ歴史的任務であり、中華の人々全体の共通の願いだ。「一つの中国」の原則と(それを認め合ったとする)「92年コンセンサス」を堅持し、祖国の平和統一プロセスを推進する。両岸の同胞を含むすべての中華の人々は、心と心を一つにし、団結して前進し、いかなる「台湾独立」のたくらみも断固として粉砕し、民族復興の美しい未来を創造しなければならない。いかなる人も中国人民が国家主権と領土を完全に守るという強い決心、意志、強大な能力を見くびってはならない。同志と友人のみなさん。100年前、中国共産党が成立した時は50人強の党員しかいなかったが、今では9500万人以上の党員を擁し、14億人余りの人口大国を指導し、世界的で重大な影響力を持つ世界最大の政権政党になった。100年前、中華民族が世界の前に示したのは一種の落ちぶれた姿だった。今日、中華民族は世界に向けて活気に満ちた姿を見せ、偉大な復興に向けて阻むことのできない歩みを進めている。同志と友人のみなさん。中国共産党は中華民族の不滅の偉業を志し、100年はまさに風采も文才も盛りだ。過去を振り返り、未来を展望し、中国共産党の強い指導があり、全国の各民族の人民の緊密な団結があれば、社会主義現代化強国を全面的に建設する目標は必ず実現でき、中華民族の偉大な復興という中国の夢は必ず実現できる。偉大で、光栄で、正しい中国共産党万歳!偉大で、光栄で、英雄である中国人民万歳!

*1-2:https://www.chugoku-np.co.jp/column/article/article.php?comment_id=770962&comment_sub_id=0&category_id=142 (中国新聞 2021/7/8) 骨太の方針 財政の裏付け見通せず
 菅義偉政権初となる「骨太の方針」が決まった。政府の経済財政運営の基本的な方向性を示す指針で、新型コロナウイルス対策の強化に加え、デジタル化、脱炭素化、地方創生、少子化対策の4分野をコロナ後の成長の原動力と位置づけた。いずれも日本が以前から直面している課題であるが、政権が当然取り組むべき政策を寄せ集めたように映る。総花的で新鮮味に欠ける。テーマや目標を並べても、確実に実行できなければ意味がない。にもかかわらず、どの政策を優先し、財源を含めてどうやって実現していくのかも判然としない。踏み込み不足と言わざるを得ない。コロナ対策では、ワクチン接種の見通しを「10月から11月にかけて終える」と明記した。ワクチン接種の加速で、感染収束の機運を高め、支持率回復につなげたい狙いがあるのだろう。さらに、首相が肩入れする「こども庁」の創設検討や最低賃金の引き上げなども盛り込んでいる。秋までに行われる衆院選に向けて、国民の関心を引きたい思惑も透ける。骨太の方針が政権・与党のアピールの場になりつつあるのではないか。存在感を失い、今のような形骸化が進めば、もはや役割を終えたと言われても仕方あるまい。とりわけ看過できないのは、一連の政策を裏付ける持続可能な財政の姿が見えてこない点である。国と地方の政策経費を税収などで賄えているかを示す基礎的財政収支(プライマリーバランス=PB)について、政府は2025年度に黒字化する財政健全化の目標を掲げている。コロナ禍を受けて昨年は明記しなかったが、今回は黒字化目標を「堅持する」との言葉が復活した。同時に新型コロナが経済と財政に及ぼす影響などを21年度中に検証し、「目標年度を再確認する」とした。目標の見直しや先延ばしに含みを持たせた形だ。財政健全化への道筋を曖昧にしては、骨太の方針の意義自体が問われる。コロナ禍に伴う経済対策で、国の20年度の一般会計の歳出総額は175兆円を超え、借金に当たる国債は112兆円を新規に発行した。21年度予算もコロナ対策の予備費に5兆円を積むなど、過去最大規模の106兆円に膨らんだ。感染の収束はまだ見通せず、追加の支出が必要になる恐れもある。内閣府が今年1月にまとめた中長期の経済財政の試算では、日本経済がたとえ高成長を果たしたとしても、PBは25年度には7兆3千億円程度の赤字となる見通しだ。目標達成は絶望的なことは明らかである。それでも目標の「堅持」を修正しなかったのは、こちらも衆院選を意識し、財政健全化の議論を先送りにしたのではないか。欧米の政府は、財政出動とともに財源確保策も打ち出している。米国は経済対策の財源を企業や富裕者層の増税などで調達する方針で、欧州連合(EU)も復興基金の財源として国境炭素税などを検討している。年度内に行われる検証作業では、安易な目標の先送りに終わらせず、歳出・歳入両面で具体的な財政健全化策の検討を急ぐ必要がある。 

*1-3:https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA11A0I011062021000000/ (日経新聞 2021年6月24日) コロナ予算、30兆円使い残し 消化はGDP比7%、米13%に見劣り 成長へ財政回らず
 新型コロナウイルス禍を受けて2020年春から積み増してきた国の予算73兆円のうち、約30兆円を使い残していることが判明した。家計や企業への支払いを確認できたのは約35兆円と名目国内総生産(GDP)の7%程度にとどまった。GDPの13%を支出した米国と比べ財政出動の効果が限られる展開となっている。危機脱却へ財政ニーズが強い時にもかかわらず予算枠の4割を使い残す異例の事態は、日本のコロナ対応の機能不全ぶりを映し出している。脱炭素関連の投資やデジタル化の推進、人材教育など戦略分野のコロナ禍後の成長を押し上げる財政資金ニーズは大きい。にもかかわらず予算の規模を大きくみせるために枠の確保ありきで政策の中身が置き去りになっており、成長分野へ予算が行き届いていない。脱炭素へ2兆円を投じた基金は、支援の中身が詰まっていないなかで枠の大きさの議論が先行して3次補正に盛り込まれた。経済産業省が基金の支援対象となる分野を公表したのは4月に入ってからで、ようやく企業の公募が始まった段階だ。使い残しが多いのは約21兆円の追加歳出を盛り込んだ20年度3次補正が21年1月に成立したことに加え、コロナ禍の長期化が原因だ。翌年度への予算の繰り越しが「30兆円程度」(菅義偉首相)出る20年度は極めて異例だ。東日本大震災後に多額の予算を積んだ11~12年度でも繰越額と不用額を合わせても年10兆円を超えた程度だった。コロナ対策では20年6月に当時の安倍晋三首相が記者会見で「GDPの4割に上る世界最大」規模の「230兆円」の経済対策で「日本経済を守り抜く」と打ち出した。約1年を経て実際に家計や企業に出回った国費は資金繰り支援策を除くベースでGDP比7%程度。4月末までに同13%の2.8兆ドル(約307兆円)を消化した米国と比べて遅れが目立つ。4割と安倍前首相が打ち出したのは財政支出に民間資金も加えた事業規模ベースの経済対策の金額だった。財政投融資を活用した100兆円規模の資金繰り支援策が大きい。資金繰り支援の比率がコロナ対策の9%にとどまる米国と対照的だ。予算の執行状況は20年4月以降に打ち出した経済対策などについて、内閣府が21年5月にまとめた調査を基に日本経済新聞が資金繰り支援策を除いて集計。100億円以上の事業が対象で、国費ベースで9割以上をカバーしている。1人10万円の給付金など緊急を要した家計支援策は予算の9割強がすでに支払われるなど執行が進む。一方、GoToトラベルなど消費活性化の予算は進捗率が35%にとどまった。ワクチン接種の遅れが消費や投資を制約させた影響が大きい。米欧や中国はコロナ後の成長基盤づくりをにらんでグリーン関連政策やデジタル化などの戦略分野へ中長期的な財政出動を競う。日本では政府・与党内で21年度補正予算を求める声が強まりつつあるが、規模を大きくみせる枠の確保競争に終始せずに、成長につなげる政策の中身を詰める作業が欠かせない。

*1-4:https://www.nikkei.com/article/DGXZQODK0794K0X00C21A7000000/ (日経新聞社説 2021年7月7日) 成長促進と財政規律を両立できる予算に
 政府は7日の閣議で、2022年度予算の概算要求基準を了解した。これに沿った各省庁の概算要求を8月末に締め切り、年末に予算案を編成する運びだ。財政の規律を保ちつつ、新型コロナウイルス対策や成長基盤の強化に国費を重点配分する必要がある。不要不急の支出で予算をいたずらに膨らませてはならない。21年度予算の編成は、コロナ禍で異例の対応を迫られた。感染症の収束を予見できないという理由で明確な概算要求基準の設定を見送り、各省庁の概算要求の締め切りも1カ月延ばした。コロナ対策については、金額を明記しない「事項要求」を今回も認める。ただ成長戦略を推進するための「特別枠」を設け、高齢化の進展に伴う社会保障費の「自然増」を抑える目安を示すなど、例年の手法に近い形に戻した。コロナ禍の克服はいまも最優先の課題だ。とはいえワクチンの接種率が上がり、経済社会活動の正常化が進むにつれて、この先の成長基盤の強化や財政の健全化をより強く意識せざるを得ない。緊急時でも投入できる国費には限りがある。政府が「青天井」の概算要求を見直し、一定の基準を復活させたのは妥当だろう。重要なのは無駄やばらまきを排し「賢い支出」に徹する姿勢だ。20~21年度の国の一般会計総額は当初予算と補正予算の合計で280兆円を超えたが、使い残しや繰り越しも目立つという。その検証を怠ったまま、むやみに予算を積み上げていいはずがない。コロナ対応の名目で経済対策を繰り返しても、困窮者の救済や病床の確保といった問題はなかなか解消しない。背景には様々な要因があろうが、予算配分の優先順位も正しいとは言い難い。成長戦略にも同じことが言える。デジタル化やグリーン化などの推進に予算を重点配分するのは当然だが、緊急性や必要性の高い事業を選別しなければ、絵に描いた餅になりかねない。各省庁は節度とメリハリのある概算要求を心がけるべきだ。景気の回復で税収が堅調なのを幸いに、コロナ対策の不透明な事項要求を連発したり、成長戦略の名目で不要な公共事業や施設整備を強要したりするのは許されない。コロナ対策はもちろん、成長の促進や財源の確保に心を砕くのは米欧も同じだ。日本も責任ある予算編成を心がけたい。

*1-5:https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA24DN70U1A620C2000000/ (日経新聞 2021年6月25日) 渡辺努・東大教授「賃金上がらぬ問題、まず認識を」、安いニッポン・ガラパゴスの転機 経営者・識者に聞く
国内では安定した生活を送っているのに、海外から見れば安く、貧しくなる日本。気づかないうちに深刻度を増すこの病理から、どうしたら抜け出せるのか。渡辺努・東大教授に聞いた。
――なぜ日本は安い国になったのでしょうか。
 「2012年末からの安倍晋三政権下では黒田東彦総裁が就任した日銀の異次元緩和もあって円安が進んだ。政策の目的は円安だけでなく物価も賃金も上げることだったが、読みが違った。円安なのに物価も賃金も上がらなかった。海外からみれば日本のサービスは安くなる」
――日本人からみると海外では高くて買えないものが増えます。日本のモノやサービスの質は国際的に見て相対的に低下していくのでしょうか。
 「たとえばパスタやラーメンをつくるときに材料になる小麦は輸入価格が高くなる。企業は最終製品を値上げできていないので、消費者は痛くもかゆくもない。企業はどうしているか。コスト削減をして、値段を据え置いて頑張る。あるいは商品のサイズが小さくなる。この場合は質が落ちている。消費者の満足度が落ちている。そして賃金は上がらない」
――訪日外国人(インバウンド)向けのホテルでは外国人用の高級価格が設定されています。こうした価格の二極化は広がっていくのでしょうか。
 「不動産ではそういうことが起きている。ある規格のマンションが、シドニーと日本で比較され、まるで貿易ができるかのように裁定が働いている。海外の人が投機的に家を持つと、日本人の給料では買えなくなってくる」。「同じ商品やサービスなのに2つの価格があるという意味での二重価格は国内では発生しにくいと思う。だが日本企業の製品価格は国内向けと海外向けで違ってくる。海外で物価上昇が進めば、現地の競合製品が値上がりするので日本企業も値上げできる。だが日本ではできない。こうした二極化は既に起きている」
――この状況を打開する政策はあるのでしょうか。
 「もともとは企業が賃金や価格を上げられないことに原因がある。これは企業行動にインプットされてしまっている。これまでも製品やサービスの値段を上げようとした企業はあるが、値上げすると客が逃げていく。そういうことから企業は学習していく。悪循環だ。日本の消費者が特別だということだ。海外の消費者は理由のある値上げについては仕方ないと受け入れる。日本人は一円たりとも値上げはだめだと反応する。アベノミクスが本格化した13年は一部の企業が値上げしたが、結局売り上げが落ちてしまった」。「この問題が解決していない理由は、みんな気がついていないからだ。値段が上がらないのはいいことだとポジティブに考える人がいる。賃金は上がらないので、値段は低い方が良いという。まず賃金が上がっていない問題を認識することが大事だ」

*1-6:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20210702&ng=DGKKZO73481460R00C21A7TB2000 (日経新聞 2021.7.2) 医薬原料調達で「脱中国」 塩野義など生産国内回帰へ、依存度下げ安定確保、コスト5倍の試算も
 医薬品原材料の生産を巡り、国内製薬業界で海外依存を見直す動きが出てきた。抗菌剤など欠品すると医療に大きな支障が出る品目で、各社が国内回帰に乗り出す。塩野義製薬は2022年にも手術用抗菌剤の原料の生産を岩手県で始める。医薬品原料は中国の生産シェアが高く供給リスクが指摘されてきた。安定調達へ「脱中国」が進むが、国内回帰にはコスト面で課題が残る。医薬品原材料とは医薬品の有効成分が含まれる原薬やそのもとになる化学物質。国内回帰の動きがあるのは主に後発薬の原材料だ。後発薬は公定価格が安く抑えられており、製造原価を下げる目的で原材料生産の海外移転が進んできた。塩野義は医薬品製造子会社のシオノギファーマ(大阪府摂津市)を通じ、「セファゾリン」など「セフェム系」と呼ぶ抗菌剤の原料を生産する設備を21年末までに金ケ崎工場(岩手県金ケ崎町)に設ける。年産能力37トンで稼働し、5年後に50トンに引き上げる。生産した原料は抗菌剤を手がける国内後発薬メーカーに売る見込み。塩野義は初期投資としてまず20億円強を投じる。後発薬メーカーは従来、セフェム系原料のほぼ全てを輸入に頼ってきた。特に中国依存度が約3割と高い。抗菌剤は手術後の感染症などを防ぐために投与する。欠品すると手術が難しくなり医療体制の維持に影響が出かねない、重要な薬だ。厚生労働省は医療現場に重要な医薬品として抗菌剤や血栓予防剤など約500品目を定め、安定確保を製薬会社に呼びかけている。最重要と指定するセフェム系原料は19年に国内で50トン使われ、塩野義の拠点がフル稼働すれば全量をまかなえる計算だ。抗菌剤市場全体でみても約1割をカバーできる見通しだ。抗菌剤では19年、中国当局が環境規制を理由に現地メーカーにセファゾリン原料の生産を停止するよう命令。調達難によってセファゾリンで国内シェア6割の日医工が供給停止に追い込まれ、医療現場に影響が出た。国内調達できればこうしたリスクを低減できる。明治ホールディングス傘下のMeiji Seikaファルマも22年3月期中に岐阜工場(岐阜県北方町)で「ペニシリン系」と呼ぶ抗菌剤の原料の試験生産を始める。現在は海外調達しており中国などへの依存度が高い。同社は「試験生産を経て、生産ノウハウを再度蓄積する」とする。ニプロも滋賀県内にペニシリン系の原材料の生産施設を設ける予定。投資額は数十億円になるとみられる。厚労省によると後発薬原材料を調達する製造所の6割が海外で、中国が約14%、インドが約12%と高い。一方で、各国の保護主義政策に供給が左右されかねない状況だ。政府がまとめた21年版の通商白書では、4月時点で50強の国が医療品を輸出制限している。インド政府は4月、国内メーカーがライセンス生産している新型コロナウイルス治療薬の輸出を当面禁止とし、国内使用を優先した。米国では政府主導で生産の国内回帰の動きが進む。バイデン米大統領は2月、サプライチェーン(供給網)の見直しに関する大統領令を出した。半導体が注目されたが、医薬品も対象とする。米食品医薬品局(FDA)は同月、新型コロナ禍により中国から原薬調達が難しくなり、一部の医薬品が供給不足に陥ったと明らかにした。ただ、原薬生産の国内回帰には課題が残る。製薬会社によると日本での原材料製造コストは中国の5倍以上との試算もある。日本製薬工業協会の中山譲治前会長(第一三共常勤顧問)は「国内回帰は薬のコスト上昇につながりかねない」と話す。薬価が定まっているなか、メーカーがコスト上昇分を転嫁し、流通業者への納入価格を上げるのは容易ではない。厚労省の中では「安定確保が必要な医薬品の薬価算定で『例外』を設けるべきか否かの議論も必要」(幹部)との声もある。

*1-7:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/704218 (佐賀新聞 2021年7月10日) 無観客五輪、開催意義を実感させよ
 政府が東京都に4度目の新型コロナウイルス緊急事態宣言を発令し、埼玉、千葉、神奈川3県に対するまん延防止等重点措置を延長することを決定した。これを受け、政府と大会組織委員会、東京都、国際オリンピック委員会(IOC)など5者が協議し、東京五輪は首都圏全ての会場を無観客とすることを決めた。近代五輪が無観客で開催されるのは初めてのことだ。パンデミック(世界的大流行)の中、異例の大会となる。首都圏での感染はさらに拡大を続けるとの予測もある。組織委は選手村を中心に、感染対策の手を緩めることなく万全を期すとともに、無観客であっても五輪の開催意義を市民が実感できるよう「舞台」を整えなければならない。既に多くの選手団が事前合宿のため入国し、各自治体で練習に励んでいる。自国の検査で陰性証明を受けていたにもかかわらず、感染力の強いデルタ株による感染が判明した選手団員が出たのは組織委にとって驚きだった。入念な検査が入国時も大会中も欠かせないことを思い知ることになった。海外に目を向ければ、大規模広域大会の欧州サッカー選手権で英国やフィンランドのファンから多くの感染者が出た。競技場や街の広場、あるいはパブでマスクをせずに肩を組み、歓声を上げるなどしたのが原因とされる。注目度の高いスポーツ大会、とりわけ国の代表選手が出場する大会では、喜びを爆発させるファンが多数出る傾向がある。世界保健機関(WHO)はこれに教訓にして、IOCと組織委に助言を続けていくとした。だが、国内では、政府の新型コロナ感染症対策分科会の尾身茂会長ら専門家有志が「無観客が望ましい」との提言を公表していた。政府はすぐには耳を傾けず、会場定員の50%以内で、最大1万人とする観客基準で突き進もうとした。独善的な姿勢を真摯に反省すべきである。6月下旬の共同通信の電話世論調査では、五輪とパラリンピックの開催による感染再拡大の可能性について「不安を感じている」と回答した人が86・7%に達していた。今回の無観客決断はいかにも遅かった。首都圏の会場が無観客と決まったことで、ボランティアと警備担当要員の規模は大規模な見直しが必要になった。主に観客が熱中症になった場合の対応に当たる予定だった医療従事者も規模が見直され、大幅な人員縮小が見込まれる。医療現場の負担が軽減され、最優先で取り組まなければならないコロナ感染対応で、人的な余裕が生まれるメリットも期待できそうだ。しかし、安倍晋三前首相が大会の1年延期を決定したときに語った「完全な形での開催」は実現しなかった。菅義偉首相が何度となく強調してきた「ウイルスに打ち勝った証し」としての五輪の実現も難しくなった。バッハIOC会長が言う「誰もが犠牲を強いられる大会」になるのは明らかだ。観客と喜びを共にしたいと望んでいた選手、会場で観戦できるはずだった市民はさぞかし残念だろう。それでも開催に懐疑的な人、開催を持ちわびている人が共に意義深く感じる大会にしなくてはならない。菅首相らにはその責務がある。

<客観的根拠に基づく軌道修正が不得意な国、日本>
*2-1-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20210630&ng=DGKKZO73407630Q1A630C2MM8000 (日経新聞 2021.6.30) エネ基本計画、「原発建て替え」盛らず 脱炭素の道筋、不透明に
 経済産業省は今夏をメドに策定するエネルギー基本計画に、将来的な原子力発電所の建て替えを盛り込まない方向で調整に入った。東京電力柏崎刈羽原発で不祥事が相次ぐなど原発への信頼回復ができていないと判断した。原発建て替えの明記を見送ることで、2050年の脱炭素社会の実現に向けた道筋が描きにくくなる。国の中長期のエネルギー政策の方向性を示すエネルギー基本計画はおおむね3年に1度見直しており、作業が大詰めを迎えている。二酸化炭素(CO2)の排出抑制につながる原発の建て替えを明記するかどうかは、エネ基本計画見直しの最大の焦点となっていた。法律上の稼働期間の上限である60年に達する原発が今後出てくることから、政府として建て替えを進めていく方針を明記し、将来にわたって原発を活用する姿勢を示せるかに注目が集まっていた。東電福島第1原発の事故後の14年に策定したエネ基本計画で、原発建て替えの表現を削除して以来、建て替えの記載は消えたままだった。7月にも原案を示す新たな計画では建て替えを明記しない方向だ。判断を先送りし、3年後に計画を見直す際にあらためて判断する。国内の原発は建設中の3基を含め36基ある。東電福島第1原発の事故後、再稼働できたのはこのうち10基にとどまる。直近では東電柏崎刈羽原発でテロ対策の不備など不祥事が相次ぎ、信頼回復が遠のいている。原発はCO2を排出しない脱炭素電源だ。政府は30年度までに温暖化ガスの排出量を13年度比で46%以上削減し、50年には実質ゼロをめざすと決めた。エネ計画について議論する経産省の有識者会合でも「最大限活用すべきだ」との指摘が出ていた。地球環境産業技術研究機構(京都府木津川市)が5月にまとめた脱炭素のシナリオ分析によると、原発の活用は電力コストの上昇を和らげる効果もある。50年に再生エネで電力すべてを賄うと電力コストは今の4倍程度に増える。送電網の整備などに大きな費用がかかると見込まれるためだ。一方、再生エネで5割、原発で1割を賄うケースでは2倍程度に上昇を抑えられると試算する。

*2-1-2:https://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-1212256.html (琉球新報社説 2020年10月23日) 原発処理水海洋放出 地元の不安を押し切るな
 東京電力福島第1原発で増え続ける処理水の問題で、政府は海洋放出の方針を月内に決定する。地元は漁業者を中心に反対の声を上げており、影響を受ける人々と向き合わないまま方針決定に突き進むことになってしまう。処理水には放射性物質トリチウムが含まれる。環境や人体に与える影響を巡る検証は十分ではなく、復興に取り組む地場産業に及ぶ風評被害にも懸念が尽きない。放射性物質の除去技術や安全性が確立するまでの間の新たな保管場所の確保など、海洋放出を回避する方策を探るべきだ。第1原発では溶融核燃料(デブリ)を冷やすための注水などで、現在も1日に170トン程度の汚染水が増え続けている。東電は多核種除去設備(ALPS)を使って汚染水から放射性物質を取り除く処理をしているが、水に似た性質があるトリチウムは除去することができない。東電は処理水を保管する原発敷地内のタンク容量が、2022年夏に限界に達するとしている。政府も処分方法の決定を急ぐ姿勢を強めており、菅義偉首相は21日に「いつまでも先送りできない」と語った。背景には、海洋への放出を始めるには設備工事や原子力規制委員会の審査などで2年程度の準備を要するため、現状が決定のタイムリミットだとする判断がある。だが、時間切れを理由に地元の反対を押し切ることなど許されるはずがない。炉心溶融(メルトダウン)した原発から出る処理水を海に流し続けることによる環境影響は簡単に予見できるものではなく、問題視するのは当然だ。処理水の保管を東電の敷地内に限定せず、政府としても別の保管先の確保を検討する対応などがとれるのではないか。トリチウムの除去技術開発に注力することも、原発事故を起こした東電や国の責任であるはずだ。また、震災の津波でさらわれた漂着物が沖縄で見つかることがあるように、海洋放出の影響は原発沿岸だけにとどまらない。周辺諸国からの非難は避けられないだろう。19年には、韓国による水産物の輸入規制を巡って世界貿易機関(WTO)の紛争処理手続きで日本が敗訴した。国際社会は福島の原発事故を終わったと見なしていないことを自覚する必要がある。処理水の扱いに関する議論は13年に始まった。この間には、17年に東電の川村隆会長(当時)が海洋放出について「判断はもうしている」と発言し、地元の反発を招いた。18年には、国民の意見を聞く公聴会の直前に、本来除去されているべきトリチウム以外の放射性物質が処理水に残留しているのが発覚した。東電、政府の結論ありきの姿勢やデータに対する不信も、処理水の処分方法が長年決まらない要因の一つにとなってきた。地元や国民の不安の払拭を第一とした、誠実で慎重な対応が必要だ。

*2-2-1:https://www.tokyo-np.co.jp/article/112551 (東京新聞 2021年6月24日) 「混乱するのが見えている」30キロ圏に28万人 広域避難不安拭えず 老朽・美浜原発3号機再稼働
 運転開始から40年を超える関西電力美浜原発3号機(福井県美浜町)が6月23日、10年ぶりに再稼働した。重大事故が起きた場合、避難対象となる30キロ圏内には再稼働した原発では最多の28万人弱が暮らす。県内外へ避難が計画されているが、避難先の確保など実効性に疑問符が付いたままだ。中心市街地が30キロ圏内にある福井県越前市は人口約8万人。2019年8月に初の広域避難訓練が行われ、今年1月には国の避難計画がまとまった。美浜3号機で重大事故が発生すれば、北に位置する同県坂井市やあわら市、石川県小松市や能美市へ避難する。県や市の計画では、地区ごとに避難先の小中学校や公民館が細かく設定され、病院の入院患者や高齢者福祉施設の入所者などの搬送先も決められた。しかし、福祉施設からは懸念の声が上がる。障害者施設で入所者の避難を担当する40代女性は「施設で毎年訓練をしているが、実際の避難では手伝う人も車両も足りず混乱するのが目に見えている。着の身着のまま逃げたとしても、布団などの物資はどうなるのか」と表情を曇らせた。
◆実効性ない計画なら…水戸地裁は運転禁じる判決
 広域避難を巡っては、30キロ圏に国内最多の94万人を抱える日本原子力発電東海第二原発(茨城県東海村)について、水戸地裁は3月、運転を禁じる判決を出した。市町村で避難計画の策定が遅れており、実現可能な避難計画がなければ運転を認めないという基準が示された形だ。福井県の担当者は美浜原発について「東海第二とは状況が違う。避難に使用するバスや避難先などをしっかり確保できる計画になっている」と強調する。ただ、美浜原発周辺の避難人口は、既に再稼働した福井県内にある2原発よりも多い。住民を避難させる場合に県内にあるバスの3分の1にあたる278台が必要となるなど、一段とハードルが高い。新型コロナウイルスの感染拡大で避難の難しさはさらに増した。人が密になるのを避けるためにバスの台数を増やし、避難所で避難者が間隔を空けることを避難計画に盛り込んだ。だが、昨年8月に関電大飯原発(福井県おおい町)などで行った訓練では、避難所の収容人数が減り、新たな避難場所の確保が必要になるという課題も浮かんだ。今年1月には福井県内の記録的大雪で、避難で使う国道8号や北陸自動車道で車の立ち往生が発生し、長時間通行できなくなった。福祉施設の責任者を務める50代男性は「計画で避難先が決まっていても実際に役に立つのか分からない。いざとなったら入所者は計画とは別の県外施設へ避難させる」と話した。

*2-2-2:https://www.shinmai.co.jp/news/article/CNTS2021062700079 (信濃毎日新聞社説 2021/6/27) 40年超原発稼働 例外が常態化する懸念
 関西電力が、福井県にある美浜原発3号機を再稼働させた。運転開始から44年を経た老朽原発だ。原発の運転には、2011年の東京電力福島第1原発事故を踏まえ「原則40年」とするルールが導入されている。原則から外れたケースが、初めて現実となった。「例外中の例外」として、最長20年の延長を認める規定もある。40年の寿命を迎えた原発から順次廃炉にし、脱原発を着実に進める―。事故を機に多くの国民が原発の危険性に気付くなか、そう考え導入されたルールだった。関西電力は、同様に老朽化した高浜1、2号機の再稼働も進める方針だ。他の電力会社にも再稼働を目指す40年超原発がある。今後、例外が常態化していく恐れがある。老朽原発は建材の劣化など安全性に課題があり、地域住民には不安が募っている。国民の理解を得ずに原発推進の既成事実を積み重ねるような対応は、看過できない。事故の教訓に立ち戻り、40年ルールの重要性を再確認する必要がある。安倍晋三前政権以降、政府は、脱原発を求める世論をよそに実質的な原発回帰を進めてきた。経済産業省と大手電力は、今回の再稼働を原発復権に向けた足掛かりの一つと捉えているようだ。美浜3号機は、設置が義務付けられたテロ対策の施設が未完成のため、今年10月の設置期限までに再び停止となる。わずかな期間の再稼働にこだわったのも、40年超原発の再稼働に道を開くことを重視したからではないか。福井県が再稼働に同意したのは今年4月。同意を条件とする巨額の交付金を経産省が県に提示するなど、国が積極的な役割を果たしたことが分かっている。菅義偉政権は、世界的な脱炭素化の加速を受け温室効果ガスの大幅削減を打ち出した。最近は、温室ガスを排出しないことを名目に原発推進を求める議員連盟が自民党にできるなど、政府・与党に表だった動きも目立つ。原発政策がこれまで、ごまかしの連続だったことを忘れてはならない。典型は使用済み核燃料の問題だろう。今回も、再稼働で増えていくのは分かっているのに、一時保管する関電の原発の燃料プールは約8割が埋まったままだ。行き場は決まっていない。原発にいつまで頼るのか、使用済み核燃料はどうするのか。数々の問題を放置して目先の経営や業界の利益を優先する姿勢は、到底認めることができない。

*2-3-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20210707&ng=DGKKZO73642330X00C21A7MM0000 (日経新聞 2021.7.7) 玄海原発 地震想定見直し 規制委、九電に求める
 原子力規制委員会は7日、九州電力が玄海原子力発電所(佐賀県玄海町)で想定する地震の最大の揺れを引き上げる必要があるとの見解を示した。4月に厳しくした地震の揺れの想定方法に基づき電力会社に見直しを求めるのは初めて。九電は3年以内に想定を見直して規制委の再審査に合格する必要がある。想定する揺れの大きさは基準地震動と呼ばれ地震対策の前提になる。規制委は4月、原発周辺の活断層などによる地震に加え、過去に国内で発生した90件ほどの地震データを使って揺れを想定する方法を導入した。電力各社に対し、最大の揺れの想定を見直す必要があるかどうか9カ月以内に回答するよう要請した。九電は4月、新たな方法でも玄海原発の揺れの想定は変わらないと規制委に伝えたが、規制委は7日、この主張を却下した。九電は想定を作り直し、規制委の再審査を受けることになる。耐震補強の追加工事が必要になれば費用が膨らむ可能性がある。玄海原発3、4号機は2018年に再稼働している。九電の川内原発(鹿児島県薩摩川内市)と日本原子力発電の東海第2原発(茨城県東海村)は従来の揺れの想定を変える方針を規制委にすでに報告済みだ。

*2-3-2:https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGG201GK0Q1A120C2000000/?n_cid=SPTMG002 (日経新聞 2021年1月20日) 原発「未知の活断層」対策強化 規制委が規則改正案了承
 原子力規制委員会は20日の定例会で、原子力発電所などで「未知の活断層」への備えを強化するため、新しい評価手法を盛り込んだ関連規則の改正案を了承した。電力会社は原発を襲う揺れを再評価し、現行想定を上回った場合、追加工事などの対策を迫られる可能性がある。一般からの意見公募を経て、3月をメドに決定、施行する。従来より多くの地震データを反映した評価手法を用いて、原発ごとに未知の活断層による揺れの再評価を電力会社に求める。再評価の結果が現在想定している揺れ(基準地震動)を上回る場合、改正規則の施行後9カ月以内に原子炉設置変更許可を申請し、施行後3年以内に審査に合格して許可を得る必要がある。影響を受けるのは原発周辺に目立った活断層がなく、未知の活断層の影響を重視している原発で、九州電力の玄海原発(佐賀県玄海町)や川内原発(鹿児島県薩摩川内市)などだ。再評価結果が今の想定を上回り、現在の施設では耐震性が不十分だと判断されれば、追加工事などが必要になる可能性もある。追加工事の猶予期間については工事規模などを踏まえて、規制委があらためて設定する。

*2-4:https://www.data-max.co.jp/article/39260 (Net IB News 2020年12月21日) 行き場を失う原発の使用済み核燃料~5年後に9原発で容量9割が埋まると試算
 原発を稼働していると毎年発生する、放射能を含む使用済み核燃料が行き場を失っている。原子力発電所で発生した使用済みの核燃料は、再処理工場を経て最終処分場やMOX燃料加工施設に運ばれるが、再処理を行うまでの間は、原子力発電所内の「燃料プール(貯蔵施設)」や中間貯蔵施設などで一時保管される。現在、日本国内で貯蔵されている使用済み核燃料は約1万8,000t。使用済み核燃料は原発を稼働すると増え続けるため、その一時保管場所が課題になってきた。そのため、九州電力の玄海原子力発電所の使用済燃料貯蔵設備の貯蔵能力の増強(290t)、同敷地内の乾式貯蔵施設(440t)の設置、四国電力の伊方発電所敷地内の乾式貯蔵施設(500t)の設置、中部電力の浜岡原発敷地内の乾式貯蔵施設(400t)の設置などが見込まれている。また、東京電力ホールディングス(株)と日本原子力発電(株)が出資し、リサイクル燃料貯蔵(株)が運営する青森県むつ市の中間貯蔵施設が2021年度に操業開始を目指すとされ、ここでは最長で50年、3,000tの保管が予定されている。このように約4,600t相当の使用済み燃料貯蔵施設の拡大に向けて取り組みがなされている一方で、表のように電気事業(連)の試算値では、約5年後に東京電力の福島第二で88%、柏崎刈羽で100%、中部電力の浜岡原発で90%、関西電力の美浜原発で89%、高浜原発で98%、大飯原発で93%、九州電力の川内原発で93%、日本原子力発電の東海第二原発で96%などと9つの原発で一時保管場所(管理容量)のおよそ9割が埋まってしまうと試算されている。さらに、使用済み核燃料を再処理工場で処理した後の高レベル放射性廃棄物を地層に埋める最終処分場の選定問題も難航している。原発はCO2排出量の削減に役立つとされるものの、発電後の放射性廃棄物の問題を含めて真摯に見つめたうえで、今後の方針を再度見直すべきではないか。

*2-5:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20210626&ng=DGKKZO73297070V20C21A6TB0000 (日経新聞 2021.6.26) 小型原発の開発、日本勢動く 脱炭素へ実用化探る、三菱重、建設費半額に/日立、カナダで商談
 原子力発電所の是非を巡る議論が続く日本でも小型原発を開発する動きが出てきた。三菱重工業は出力が従来の3分の1の原子炉を開発する。小型化して建設費を抑え、安全性も高めた。小型原発にはIHIなども米新興企業に出資して参画する。脱炭素につながる電源としての実用化への取り組みは欧米が先行していた。三菱重工は国内の電力大手と小型炉の初期的な設計の協議に入った。出力は30万キロワットと、従来の100万~130万キロワットの3分の1以下だ。工場で複数の部品で構成するモジュールをつくり、現地で据え付ける。設備も簡素化し、現地での作業量を減らせる。電力需要にあわせ設置数を変えられ、将来は海外での受注も視野に入れる。建設費は1基2000億円台と、東日本大震災前に5000億円規模とされた大型炉の半分以下にする。同社の小型炉は蒸気発生器を原子炉内に内蔵し、ポンプなしで冷却水が循環する。非常用電源が災害などで失われた際の安全性を高めたという。東日本大震災では東京電力福島第1原子力発電所で非常用電源が機能しなくなり、冷却できなくなった。小型炉は地下に設置でき、航空機などによる衝突事故への備えが高まる。密閉性が高まり放射性物質の飛散も防げる。商用運転の事例は欧米でもないが、複数の建設計画が進んでいる。米国では新興企業のニュースケール・パワーが小型炉を開発し、米規制当局の技術審査を終えた。出力は約7万7000キロワットで、複数を組み合わせて使う。プールにまるごと沈め、非常用電源なしでも冷却でき事故が起きにくいという。これまで5年から7年かかっていた工期も約3年に短くできる。「2040年代までに400~1000基の受注をめざす」(チーフ・コマーシャル・オフィサーのトム・ムンディ氏)としており、世界各国で11の新設計画についてそれぞれ電力会社などと覚書を交わした。ニュースケールには日揮ホールディングスとIHIも出資した。日立製作所と米ゼネラル・エレクトリック(GE)は海外市場を開拓する。受注を重ねて作業の習熟度を高めれば、建設費を700億~800億円台に下げられるとみる。カナダのオンタリオ電力と出力30万キロワットの小型炉の納入を巡り商談しているほか、エストニアやチェコなどでも営業している。小型炉への注目が高まっているのは、先進国で従来型の大型炉の建設が停滞しているからだ。大型炉は安全対策費が膨らみ、投資回収が難しくなっている。日立・GE連合は英国で大型炉を使う電力事業を計画したが、1基1兆円規模の投資に見合う経済性がないとみて撤退した。三菱重工もフランスの旧アレバ(現フラマトム)と開発していた100万キロワット級の「アトメア」の開発を凍結した。国際エネルギー機関(IEA)は、50年にカーボンゼロを達成するには化石燃料への投資を止め、30年までに毎年1700万キロワット分、31年以降は毎年2400万キロワット分の原発稼働が必要と試算する。関西電力と九州電力も小型炉などの活用を長期計画に明記した。国内の主要企業では約1万人が原発事業に従事し、三菱重工で約4000人、日立でも約1600人が働く。メーカーには小型炉の開発・建設を通じ、関連する雇用や技術を維持したいとの思惑もある。課題も多い。ひとつは発電コストだ。三菱重工の場合、1キロワット時あたり10円強のいまの大型炉より高くなる見込み。国内では原発管理の不備も続き、地元住民の反発もある。いま策定中のエネルギー基本計画でも、原発の建て替え・新増設を明記するのか議論が割れている。国内での新設の原発は09年に稼働したのを最後に、青森県や島根県で着工済みの工事は進んでいない。

<防衛にも計画性のない国、日本←それでは勝てるわけがない>
*3-1:https://www.jiji.com/jc/article?k=2021070500799&g=pol (時事 2021年7月5日) 台湾有事で集団的自衛権行使も 麻生氏
 麻生太郎副総理兼財務相は5日、東京都内で講演し、中国が台湾に侵攻した場合、安全保障関連法が定める「存立危機事態」に認定し、限定的な集団的自衛権を行使することもあり得るとの認識を示した。存立危機事態は、日本と密接な関係にある他国が攻撃され日本の存立が脅かされる明白な危険がある事態で、集団的自衛権を行使する際の要件の一つ。麻生氏は「(台湾で)大きな問題が起きると、存立危機事態に関係してきても全くおかしくない。そうなると、日米で一緒に台湾を防衛しなければいけない」と述べた。

*3-2:https://newswitch.jp/p/23594 (ニュースイッチ 2020年8月29日) 「むつ」以来のタブーを破り、日本が原子力潜水艦を造るべき深い理由、元IEA事務局長・田中伸男氏「まずは米国から1隻購入し技術移転を」
 現在、世界で使われている商業用原子炉はそのほとんどが大型軽水炉である。この炉型は大型かつベースロードで運用し、電力線網で広範囲に送電するという集中型電力システムで低コストを実現してきた。しかし東京電力福島第一原子力発電所事故でリスクの高さを露呈し、安全対策の強化で建設コストが上昇、新設では太陽光風力発電に対して競争力を喪失しつつある。今後は既存原発の運転期間を延長することでコスト上昇を抑えるしかない。大型軽水炉は将来的には小型モジュラー炉にとって代わられるだろう。軽水炉の弱みは、冷却水の供給が何らかの理由で途絶えることで燃料のメルトダウンを招く点にある。逆に船舶用の動力として使えば、万が一の場合、海中投棄でメルトダウンは防げる。燃料の補充が長期にわたって不要な点で潜水艦、砕氷船、発電バージなどで小型軽水炉は最適である。日本も原子力船「むつ」を建造し、自前の舶用小型軽水炉を実証したが、放射線漏れを起こし、残念ながら建造路線は放棄された。まずは、むつの失敗を総括するところから始めなければならない。笹川平和財団では北極海航路用砕氷船を前提として勉強会を始めたところである。関係者の話を伺ったが、むつ建造に関わった複数企業の設計インターフェースの悪さ、海外専門家から放射線漏れの可能性を指摘されながらも十分に検討しなかった建造体制の不備などが問題だったようだ。笹川平和財団では2017年から18年にかけて、インド洋地域における海洋安全保障に関する日米豪印4カ国専門家会議を開き、政策提言を取りまとめた。記者会見で配られた提言は報道されなかったが、その中に「日本政府はシーレーン防衛のため原子力推進の潜水艦保有を検討すべきではないか」という項目があった。自由で開かれたインド太平洋を海洋安全保障戦略の基本としている4カ国の専門家が一致して原子力潜水艦の必要性を指摘したのは重い。ポストコロナの中国が南シナ海や東シナ海での軍事活動強化に走り、香港の一国二制度を否定したのは、狙いが台湾併合にあることは明らかだ。今後米中関係がさらに悪化して行く中で、台湾有事も想定せざるを得ない。長期間潜ったまま航行できる原潜が中国海軍の動きを抑えるのに役に立つ。日本の持つディーゼルとリチウムイオン電池の潜水艦は静音性などに大変優れるが、毎日浮上する必要があり、秘匿性能と航続距離に課題がある。最近、北朝鮮のミサイルを撃ち落とす新型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」計画が放棄された。敵国領内での基地攻撃の可否が議論されているが、そもそも攻撃を受けた場合、通常型巡航ミサイルでの反撃は攻撃ではなく防御だ。非核巡航ミサイルを装備した原潜による敵の核攻撃抑止も、米国の核の拡大抑止の補完として検討されるべきであろう。まずは1隻、米国から購入し技術移転、乗員の訓練などのための日米原子力安全保障協力が必要だ。日本に核装備は不要で核兵器禁止条約にも加盟すべきだが、緊張の高まる北東アジアの状況を考えれば、むつ以来のタブーを破り原子力推進の潜水艦建造を検討する必要があると考える。
【略歴】田中伸男(たなか・のぶお)東大経卒、通商産業省(現経済産業省)入省。通商政策局総務課長、経済協力開発機構(OECD)科学技術産業局長などを経て07年に欧州出身者以外で国際エネルギー機関(IEA)事務局長に就任。16年笹川平和財団会長、20年顧問。70歳。

*3-3:https://gendai.ismedia.jp/articles/-/77734 (現代 2021.1.21) なぜ原子力潜水艦は長い潜航が可能なのか? 推進力、水、酸素すべてを賄う原子の力
●原子力潜水艦が長く潜水を続けられる理由とは?
 1954年の今日、世界初の原子力潜水艦であるアメリカの潜水艦「ノーチラス号」の進水式が執り行われました。原子力潜水艦は、その名前の通り原子力を動力として駆動する潜水艦のことをいいます。ディーゼルエンジンと蓄電池によって駆動する通常の潜水艦と違い、原子力潜水艦は半永久的に潜水可能というメリットがあります。なぜなら、高濃度の核燃料は数十年にわたって原子炉を稼働させることが可能であり、燃料補給がほぼ不要だからです。燃料を気にすることなく原子炉からエネルギーを得られるため、海水を蒸発させて真水を生み出すこともでき、それを電気分解することによって酸素を供給することもできます。これにより、船員の酸素確保のために浮上する必要もなく、連続潜航距離をさらに伸ばすことができるのです。そういった理由から、原子力潜水艦の実現を強く望んだのが、アメリカの海軍大佐ハイマン・リッコーヴァー(Hyman George Rickover、1900-1986)です。第二次世界大戦で潜水艦の重要性を実感した彼は、戦後上官から新しい任務を受け取りました。それが、核エネルギーによる潜水艦の現実性についての研究だったのです。リッコーヴァーが赴いたのは、テネシー州のオークリッジにある国立研究所でした。そこでは、アルヴィン・ワインバーグ(Alvin M. Weinberg、1915-2006)などの研究者が核エネルギーの平和的利用について模索していました。リッコーヴァーは彼ら研究者たちを、ついで軍の上層部を説得し、原子力潜水艦の実現に動き出します。そして、時間と競争しているかのような凄まじいペースで工事を完了させ、戦後10年も立っていない1954年に進水式に至ったのです。ワインバーグによって水の蒸気を利用するコンパクトな原子炉が提案されたことがターニングポイントだったようです。翌年には本格的に稼働し、1958年には北極点の下を潜航通過しています。当時は、原子力は人間が制御でき、平和に利用すれば人々の生活を豊かにするという考えが大勢を占めていた時代です。それに基づき、原子力の商用が強く推進されました。元アメリカ大統領・アイゼンハワー(Dwight David Eisenhower、1890-1969)による1953年の「平和のためのアトム」演説などが代表例です。しかしその後、原子力潜水艦や原子力発電所がいくつもの大事故を起こすことになるのは皆さんもご存じのとおりです。ワインバーグも、当時は安全性より経済面を重視するきらいがあったことを認めています。

<人を大切にしない国、日本 ←社会保障と人権を粗末にしすぎ>
*4-1-1:https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA2390A0T20C21A6000000/ (日経新聞 2021年6月25日) 市町村66%、病院存続困難に 人口減少巡り国交白書
 政府は25日、2021年の国土交通白書を閣議決定した。人口減少により2050年に829市町村(全市町村の66%)で病院の存続が困難になる可能性があるとの試算を示した。公共交通サービスの維持が難しくなり、銀行やコンビニエンスストアが撤退するなど、生活に不可欠なサービスを提供できなくなる懸念が高まる。地域で医療・福祉や買い物、教育などの機能を維持するには一定の人口規模と公共交通ネットワークが欠かせない。人口推計では50年人口が15年比で半数未満となる市町村が中山間地域を中心に約3割に上る。試算によると、地域内で20人以上の入院患者に対応した病院を維持できる境目となる人口規模は1万7500人で、これを下回ると存続確率が50%以下となる。基準を満たせない市町村の割合は15年の53%から50年には66%まで増える。同様に50年時点で銀行の本支店・営業所は42%、コンビニは20%の市町村でゼロになるリスクがある。新型コロナウイルス禍は公共交通の核となるバス事業者の経営難に拍車をかけた。20年5月の乗り合いバス利用者はコロナ前の19年同月比で50%減少し、足元でも低迷が続く。白書は交通基盤を支えられないと「地域の存続自体も危うくなる」と警鐘を鳴らす。

*4-1-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20210702&ng=DGKKZO73459090R00C21A7KE8000 (日経新聞 2021.7.2) コロナが示した医療の課題(上) 逼迫時の役割分担 明確に 小塩隆士・一橋大学教授(1960年生まれ。東京大教養卒、大阪大博士(国際公共政策)。専門は公共経済学)
<ポイント>
○政策の微調整での対応は信認弱める恐れ
○急性期医療へのシフトなど構造改革急げ
○利用者の受診抑制の要因や影響探る必要
 新型コロナウイルスの感染拡大を巡っては、変異株の脅威のほか、五輪開催という重大なリスク要因が存在する。一方で、ワクチン接種の大幅加速という好材料も出てきた。感染拡大の発生から1年半近くが経過し、ポストコロナの医療供給体制にとっても重要な課題が浮き彫りになった。まず新型コロナが日本人の健康に及ぼした影響を大まかにみてみよう。感染者数・死者数ともに、日本はほかの先進国と比べ著しく少なく、影響はかなり限定的だというのが一般的な受け止め方だろう。果たしてその理解でよいか。コロナ対策の評価にも影響する。図は、新型コロナを原因とする100万人当たり新規死者数(7日間合計)の推移を国際比較したものだ。図の上段は英米独日の比較、下段は日韓の比較だ(上段の目盛りは下段の20倍)。日本での影響はこれまで欧米諸国に比べ極めて軽微だった。しかし2つの点に注意が必要だ。まず図の上段の右端、つまり直近の数字をみると日本と英米独との差はほとんどなくなっている。ワクチン接種が加速している欧米諸国で死者数が大幅に減少してきたからだ。その結果、コロナの影響は「瞬間風速」としては、今では欧米とほぼ同じレベルになっている。変異株の影響もあり先行きは不透明だが、足元のこの状況は押さえておいたほうがよい。さらに重要なのは、図の上下を比較すれば明らかなように、死者数が形成してきた「波」の違いだ。欧米の死者数は2つの大きな波を形成してきたが、第2波が2021年1月ごろにピークを越えた後は、何とか収束に向かいつつある。日本では20年春に第1波が発生し、現在の波は通常、第4波と呼ばれる。欧米の第2波、日本の第3波には規制の解除・緩和を受けたリバウンド(感染再拡大)という共通点がある。だが欧米には死者数でみる限り第3波は明確な形では到来していない。景気もV字型の回復軌道に乗った。一方、日本には過去のピークを上回る第4波が到来し、対応に苦慮している。韓国でも、日本の第4波のような大きな波は発生していない。こうした波の違いは、日本政府によるコロナ対応の問題点を示唆している。本格的な市中感染の到来を予期せず、全国レベルのワクチン接種に大きく出遅れたのが、違いを生んだ主因だというのが筆者の判断だ。欧米諸国はワクチン接種と厳格な移動規制の合わせ技で、コロナ感染を力ずくでねじ伏せつつある。これに対し、日本がとってきたアプローチは経済活動に目配りをしつつ、感染者数などの動きをみながら、緊急事態宣言の発令と解除を繰り返し、さらに地域別に規制の濃淡をつけるなど、微調整で対処するものだ。本格的なロックダウン(都市封鎖)を許容する法制度がなく、ワクチン接種を急がなかったという制約条件、しかも五輪開催も予定される状況の下では、この方針は最適解だったかもしれない。だがそれはあくまでも制約条件を所与とした場合の机上の話だ。ロックダウンは難しいとしても、ワクチン接種なしで移動抑制だけで感染を抑え込もうとしても無理が出てくる。政策の微調整はそれだけを取り出してみれば合理的だとしても、方針を分かりにくくし、政策への信認を弱めてきた可能性がある。規制とリバウンドのいたちごっこを生み、政策の調整が感染の波を増幅させ、収束をむしろ遅らせてこなかったか。また入国管理や検疫に漏れはなかったか。経済への影響も含め、詳細な検証が必要になる。そうした対応の問題点を考慮に入れても、日本のコロナ感染の健康面へのショックは国際的にみれば軽微だったとの見方はできる。だが医療システムが余裕を持って感染拡大に対処できたかと問われると、答えは残念ながら「ノー」だ。日本の人口当たりベッド数は世界でトップクラスだ。しかも感染拡大の規模は諸外国より限定的だった。にもかかわらず、コロナ対応の最前線に立つ医療現場は逼迫し、崩壊寸前、あるいは事実上の崩壊に至ったところも少なくない。日本のベッド数は確かに多いが、精神病床や療養病床の比重も大きい。コロナ対応が可能な一般病床は全体の6割弱だが、すべてが急性期医療に特化しているわけではない。厚生労働省の「地域医療構想に関するワーキンググループ」の会合(20年10月21日)に提出された資料によると、全医療機関のうち、新型コロナ患者の受け入れ可能な機関は23%、受け入れ実績がある機関は19%にとどまる。しかも受け入れ実績のある機関でも、人工呼吸器、体外式膜型人工肺(ECMO=エクモ)またはその両方を使用した患者を受け入れていた機関に限ると全体の4%どまりだ。民間医療機関に患者の受け入れを要請する法制度も未整備だ。現場レベルでの調整は徐々に進んでいるが、感染再拡大をみてからの対応であり、後手に回ったといわざるを得ない。医療システムにかかる負荷は全体としてみれば小さくても、局所的には耐え難いほど高くなる。それを認識せず、その仕組みも改めずに経済活動を優先すると大変なことになる。日本の医療供給体制はもともと新型コロナのようなパンデミック(世界的流行)を想定した仕組みにはなっていない。公的介護保険の導入後も、日本の医療供給は平均在院日数の長い患者の療養を念頭に置いた面が色濃く残っている。社会全体の医療資源の使い方として非効率な面はないか。この問題がコロナ禍で改めて浮き彫りになった。医療供給体制にとって最低限必要なのは、医療逼迫時における地域医療機関の役割分担を明確にしておくことだ。長期的には、医療資源を急性期医療に一層シフトさせるとともに、地域医療機関間のネットワーク化を推進するなど、構造的な改革が求められる。最後に、日本の医療供給体制にとっての潜在的な問題点を指摘しておきたい。コロナ禍の下で利用者の受診抑制の動きがみられることだ。厚労省の研究でも明らかなように、コロナ禍の下で健康診断や各種のがん検診、人間ドック受診を抑制する傾向もみられる。問題は利用者の抑制行動が何を意味するかだ。抑制した人とそうでない人を比較して、コロナ発生前からの健康状態の変化に差がなければ、医療サービスの供給に過剰な部分があったことになる。逆に抑制した結果、健康状態が悪化していれば、必要な医療サービスがコロナ禍で受けられなかったことになる。この判定は極めて難しい。感染収束後も長期の追跡調査が必要だ。所得や就業状態など他の要因にも左右される。だがコロナ禍は医療を巡る利用者の行動変容をもたらしている可能性が高い。だとすれば、医療給付費の長期予測にも大きな影響が出てくる。まさしく統計的なエビデンス(証拠)に基づく政策評価・立案が必要となるテーマだ。コロナ禍は日本の医療供給体制の効率性や持続可能性にもかなりの影響を及ぼしている。

*4-2-1:https://www.shinmai.co.jp/news/article/CNTS2021071400125 (信濃毎日新聞社説 2021/7/14) 教員免許更新制 廃止の判断遅きに失した
 遅きに失したと言うべきだろう。文部科学省が、教員免許の更新制を廃止する方向で検討を進めている。更新には30時間以上の講習を自費で受ける必要があり、負担を訴える現場の声は導入当初から強かった。10年以上にわたって半ば漫然と存続させてきたことが問われなければならない。廃止で事を済まさず、文科省は経過を検証すべきだ。萩生田光一文科相が、制度の抜本的な見直しを中央教育審議会に諮問している。廃止の結論を得て、来年の国会への教員免許法の改定案提出を目指す。免許の期限を10年とし、大学などで講習を期限内に修了すると更新が認められる。お金と時間を負担するのは教員だ。数万円の講習費用と交通費を出し、夏休みの期間などに通わざるを得ない。教員を対象にした文科省の調査で、大多数が負担感を示す一方、講習が役に立っていると答えたのは3分の1にとどまった。自由記述では、制度を廃止すべきだとの回答が最も多かったという。更新制は教員不足の一因にもなってきた。定年前に期限を迎える教員が早期退職する動機になるほか、産休・育休取得者の代替教員の確保を難しくしている。更新を忘れて免許が失効していることが分かり、引き続き教壇に立てなくなった事例もある。2000年代初めころ、自民党の議員らから上がった「不適格教員の排除」の掛け声が制度化の発端だ。管理の強化があらわな主張に現場の反発は強く、いったんは見送られたが、第1次安倍政権下、政治主導で免許法が改定され、09年度から導入された。文科省は、教員の資質確保が目的で、不適格教員を排除する趣旨ではないと説明している。そもそもなぜ免許の更新は必要なのか。制度化の根拠は曖昧だ。その後、民主党政権が廃止の方針を打ち出したものの、参院で過半数を失って法改定を断念。自民党の政権復帰で立ち消えになっていた。教員の多忙さは増し、学校現場の疲弊は深い。いじめをはじめ子どもたちが抱える問題への対応が追いついていない現状がある。そこへ官製の研修が詰め込まれ、現場をさらに追い立てている。その状況をどう改めるか。教員が日々、子どもとじっくり向き合って力量を高める。それぞれが直面する課題を持ち寄って自主的に学び合う。そのための時間や余裕を生むことが肝心だ。文科省は現場を下支えすることにこそ力を傾けなくてはならない。

*4-2-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20210715&ng=DGKKZO73895020V10C21A7CE0000 (日経新聞 2021.7.15) 芸術や数学で突出でも不登校 「ギフテッド」の子に支援策 文科省会議、指導法など議論
 特定分野で突出した才能を持つ子どもへの支援について話し合う文部科学省の有識者会議は15日までに、初会合を開き、具体策の検討を始めた。芸術性や数学力などの面で抜きんでているものの、学年ごとのカリキュラムや周囲にうまく適合できず、不登校になるケースも。こうした子どもの状況に応じた指導の在り方、大学、民間団体との連携などを議論し、年内にも論点をまとめる。文科省などによると、米国では、同年齢よりも特に高い知能や創造性、芸術的才能などを発揮する子どもを「ギフテッド」と呼び、早期入学や飛び級といった特別な教育プログラムが用意されている。中にはこだわりが強すぎたり、集団行動が苦手だったりする子もいるとされ、どう支援するかも課題となっている。一方、日本では「単純な課題は苦手だが複雑で高度な活動は得意など、多様な特徴の児童生徒が一定割合存在する」(1月の中教審答申)とされるものの、十分に議論されてこなかった。このため、教育関係者や保護者らの間でも認識や対応にばらつきがあるのが現状だ。会合では、実際にこうした子どもが不登校となっている事例が報告されたほか、「同質性の高い学校文化そのものを見直すべきだ」との意見が出た。委員の松村暢隆関西大名誉教授は「『トップ人材を輩出する』といった目標から出発するのではなく、困っている才能児のニーズに対応するとの視点で議論していくべきだ」と指摘。発達障害を抱える子どももいるとして、特別支援教育や生徒指導との連携も必要とした。

*4-3-1:https://www.kobe-np.co.jp/column/shasetsu/202107/0014461592.shtml (神戸新聞 2021/7/1) 職場接種停止/国は態勢立て直しを急げ
 政府は、新型コロナウイルスワクチンの企業や大学などでの職場接種の申請受け付けを急きょ停止した。想定を超える申請が殺到し、接種に使われる米モデルナ製ワクチンの供給が追いつかなくなったためだ。与党からは、国と自治体による大規模接種分を回すなどして早期再開を求める声が出ているが、見通しは立っていない。このまま打ち切られる可能性もあるという。開始から間もない方針転換で、準備を進めていた企業などの混乱は計り知れない。政府は見通しの甘さを猛省し、停止の経緯と再開の可否についてきちんと説明するべきだ。混乱は自治体の現場でも起きている。7月後半以降のワクチン配分量が政府から示されないなどで、兵庫県内の複数市町で64歳以下の接種予約が滞っていることが分かった。米ファイザー製を含めたワクチン供給量は全国民分を確保していると政府は強調するが、実際に大きな混乱が生じているのはなぜか。菅義偉首相は「1日100万回」「11月末までに希望者全員に」などの数値目標を掲げた。これを達成するため、準備不足にもかかわらず、スピード重視で進めようとした無理がたたったのは明らかだろう。政府は態勢を早急に立て直し、今後のワクチン供給量と配分計画を明確に示すべきだ。職場接種は、現役世代の接種を加速させ、社会全体を感染から守る効果への期待が大きい。だが課題も多い。1カ所で最低千人程度に接種するのが要件とされ、医師や会場は自前で確保しなければならない。すぐ対応できる大企業が先行する一方、国内企業の大半を占める中小企業にはハードルが高く、不公平感は否めない。温泉地や業界団体が同業各社を集めて共同実施にこぎつけた例もあるが、医師や会場が確保できず断念した企業もある。政府は小規模でも接種が可能な仕組みや、負担軽減に向けた支援拡充を検討するべきだ。一方、「打ち手」の争奪戦が起きれば、軌道に乗りつつある自治体の接種に影響しかねない。国と自治体、医師会などが連携して接種体制の再点検に努めねばならない。接種の本格化に伴う同調圧力にも注意が必要となる。持病や医学的な理由で接種を受けられない人や、副反応への不安などから接種を望まない人もいる。接種の強要や、打たない人が不利益を被るような対応があってはならない。今後、接種対象となる若い世代には高齢者と比べて副反応が出やすいとの報告もある。政府や自治体は、丁寧な情報開示と相談窓口の充実に取り組んでもらいたい。

*4-3-2:https://www.tsr-net.co.jp/news/analysis/20210622_03.html (東京商工リサーチ 2021.6.22) 「新型コロナウイルス」関連破たん 1,661件
 6月22日は16時時点で「新型コロナ」関連の経営破たん(負債1,000万円以上)が7件判明、全国で累計1,580件(倒産1,482件、弁護士一任・準備中98件)となった。月別では2月(122件)、3月(139件)、4月(154件)と、3カ月連続で最多件数を更新した。5月は124件と、2021年1月以来4カ月ぶりに前月を下回ったが、過去3番目の件数と高水準だった。6月は22日までに105件が判明し5カ月連続で100件を超え、前月を上回るペースで推移している。なお、倒産集計の対象外となる負債1,000万円未満の小規模倒産は累計81件判明。この結果、負債1,000万円未満を含めた新型コロナウイルス関連破たんは累計で1,661件となった。3度目の緊急事態宣言は沖縄県を除き6月20日をもって解除された。ただし、一部地域はまん延防止等重点措置に移行し、飲食店の酒類提供や営業時間の制限は継続する。当面は流動的な状況で、消費関連企業にとって厳しい環境が続きそうだ。ダメージを受けた企業への金融支援策は継続するが、事業環境が回復しないままコロナ融資の返済がスタートする過剰債務の問題も浮上している。息切れや事業継続をあきらめて破たんに至るケースも目立ち始め、コロナ関連破たんは引き続き高水準で推移する可能性が高い。
【都道府県別】(負債1,000万円以上) ~ 30件以上は12都道府県 ~
 都道府県別では、東京都が372件(倒産351件、準備中21件)に達し、全体の約4分の1(構成比23.5%)を占め、突出している。以下、大阪府159件(倒産151件、準備中8件)、神奈川県80件(倒産73件、準備中7件)、愛知県74件(倒産74件、準備中0件)、北海道64件(倒産63件、準備中1件)と続く。22日は北海道、山形県、茨城県、東京都、石川県、大阪府、兵庫県でそれぞれ1件判明した。10~20件未満が17県、20~30件未満が8府県、30件以上は12都道府県に広がっている。
【業種別】(負債1,000万円以上)~飲食が最多284件、建設153件、アパレル135件、宿泊83件 ~
 業種別では、来店客の減少、休業要請などで打撃を受けた飲食業が最多の284件。一部地域では休業や時短の要請が継続し、営業制限が続く飲食業の新型コロナ破たんがさらに増加する可能性が強まっている。次いで、工事計画の見直しなどの影響を受けた建設業が153件、小売店の休業が影響したアパレル関連(製造、販売)の135件。このほか、インバウンドの需要消失や旅行・出張の自粛が影響したホテル,旅館の宿泊業が83件と続く。
また、飲食業などの不振に引きずられている飲食料品卸売業が75件、食品製造業も49件と目立 ち、飲食業界の不振が関連業種に波及している。
【負債額別】(負債1,000万円以上)
 負債額が判明した1,551件の負債額別では、1千万円以上5千万円未満が最多の557件(構成比35.9%)、次いで1億円以上5億円未満が527件(同33.9%)、5千万円以上1億円未満が272件(同17.5%)、5億円以上10億円未満が98件(同6.3%)、 10億円以上が97件(同6.2%)の順。負債1億円未満が829件(同53.4%)と半数を占める。一方、100億円以上の大型倒産も6件発生しており、小・零細企業から大企業まで経営破たんが広がっている。
【形態別】(負債1,000万円以上)
 「新型コロナ」関連破たんのうち、倒産した1,482件の形態別では、破産が1,309件(構成比88.3%)で最多。次いで民事再生法が80件(同5.3%)、取引停止処分が73件(同4.9%)、特別清算が12件、内整理が7件、会社更生法が1件と続く。「新型コロナ」関連倒産の約9割を消滅型の破産が占め、再建型の会社更生法と民事再生法の合計は1割未満にとどまる。業績不振が続いていたところに新型コロナのダメージがとどめを刺すかたちで脱落するケースが大半。
先行きのめどが立たず、再建型の選択が難しいことが浮き彫りとなっている。
【従業員数別】(負債1,000万円以上)
「新型コロナ」関連破たんのうち、従業員数(正社員)が判明した1,466件の従業員数の合計は1万8,143人にのぼった。1,466件の内訳では従業員5人未満が783件(構成比53.4%)と、半数を占めた。次いで、5人以上10人未満が294件(同20.0%)、10人以上20人未満が206件(同14.0%)と続き、従業員数が少ない小規模事業者に、新型コロナ破たんが集中している。また、従業員50名以上の破たんは2021年1-3月で11件発生し、4月は1件発生した。
※ 企業倒産は、負債1,000万円以上の法的整理、私的整理を対象に集計している。
※ 原則として、「新型コロナ」関連の経営破たんは、担当弁護士、当事者から要因の言質が取れたものなどを集計している。
※ 東京商工リサーチの取材で、経営破たんが判明した日を基準に集計、分析した。

*4-3-3:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20210710&ng=DGKKZO73760110Q1A710C2EA2000 (日経新聞 2021年7月9日) 企業落胆、商機失う 観光業など、打撃大きく
 東京五輪の原則無観客開催で多くの企業が肩すかしを食らっている。宿泊を見込んでいた観光業界は収益への打撃が避けられない。スポンサー企業も製品や技術を売り込む好機のはずが、人々の目に触れる機会が大幅に減る。「朝からキャンセルが止まらない」。東武ホテルレバント東京(東京・墨田)では、9日午前だけで十数件の予約キャンセルが入った。期間中は稼働率約7割を見込んでいたが下がることは必至。大会期間中は通常より数割高い価格で設定していたが、緊急事態宣言の影響もあり「値下げは避けられない」と話す。京王プラザホテルも予約キャンセルが入り始めている。都内の高級ホテルでは大会関係者らの予約が多く入り、無観客でも一定の需要が見込まれる一方で、中堅・中小のホテルのダメージは大手より大きい。JTBなど旅行3社は9日、1都3県での観戦チケット付きの全ツアーを払い戻すと発表した。3社はスポンサーでもあり、このうち1社の幹部は「数十億円のスポンサー料や人件費などをかけてきたが、全て水の泡だ」とため息をつく。グッズ販売も苦戦が避けられない。アシックスは当初、約200億円の売り上げを見込んでいた。同社は9日「無観客シナリオは業績予想に織り込み済み」と発表し、業績下振れ懸念の払拭を図った。大会を「技術のショーケース」と期待していたスポンサーも思惑が外れた。NTTは高速通信規格「5G」を活用。セーリングでは観客席から沖合の船を間近で観戦できるように映像を映し出し、ゴルフでは専用端末を観客に配る計画だった。だが楽しめるのは大会関係者のみになる。セコムは警備ロボット、NECは入退場を管理する顔認証システムを導入するが、PR効果は薄れる。トヨタ自動車は燃料電池車(FCV)や電気自動車(EV)など1000台以上を提供する計画だったが、修正を検討する。大和総研は無観客の場合、大会期間中の経済効果が3500億円程度と、通常開催より4500億円縮小すると予測する。五輪は世界中で視聴される。映像演出など画面を通じて技術をアピールする機会はなお残る。

*4-3-4:https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA124F40S1A710C2000000/ (日経新聞 2021年7月12日) 県境またぐ移動自粛、接種者も対象 戸惑う観光地
 政府は12日、東京都に4度目となる新型コロナウイルス対策の緊急事態宣言を適用した。まん延防止の重点措置を含む6都府県の住民には県境をまたぐ不要不急の外出自粛を要請する。ワクチン接種者も一律に対象とする。26日から申請を受け付ける接種証明書も海外渡航用だ。夏のかき入れ時に期待していた国内観光地には戸惑いが広がる。東京の宣言は8月22日まで。宣言を延長する沖縄県、宣言に準じる重点措置を延長する埼玉・千葉・神奈川・大阪の4府県も期限は同じだ。夏休みやお盆に人の移動が活発になるのをにらんだ。政府が8日に改定した基本的対処方針は特に東京や沖縄について「帰省や旅行など都道府県間の移動は極力控えるよう促す」と明記した。国内でも高齢者を中心に増えつつある接種済みの人も扱いに差をつけなかった。首相官邸によると11日時点で65歳以上の76%、2700万人がワクチンを少なくとも1回打っている。ほとんどがファイザー製で3週間後に2回目を打つため、7月中に多くが接種を完了する。ワクチンの普及に期待していた観光地は今回、冷や水を浴びせられた。首都圏からの観光客が多い京都市。八坂神社近くの旅館「ギオン福住」の山田周蔵社長は「東京が動かないと話にならない」と肩を落とす。「予約は4月以降、修学旅行以外はほとんど入っていない。8月中旬までも期待できなくなった」。温泉地の群馬県草津町の旅館「ホテル一井」の市川薫女将も「(8月以降の)予約の入り方が鈍ってきた」と話す。クラブツーリズムは12日以降、東京や沖縄が発着地となる添乗員付きツアーを中止とする。日本旅行の小谷野悦光社長は「夏休みの旅行需要も見込めず、去年より厳しい状況。この夏をどう乗り越えるか、正念場だ」と話す。日本旅行業協会(JATA)の菊間潤吾副会長は「我々にいつまで我慢しろというのか」と憤りを隠さない。政府は感染力の強いインド型(デルタ型)の拡大を警戒している。内閣府幹部は「(接種者であっても)ウイルスを運ぶリスクがある。特にインド型は侮れない」と語る。海外では接種証明書を経済再生に生かす取り組みが進む。欧州連合(EU)は夏のバカンスシーズンを前に、1日から本格運用を始めた。加盟国やスイスなど約30カ国で使える。QRコードを示せば出入国時の検査や自主隔離が免除される。発行数は2億件を超えた。シンガポールは人口の半数が2回目を接種する見込みの7月末以降、制限緩和を進める方針だ。現在は5人までの飲食店の利用を接種者グループは8人まで認めることなどを検討している。日本も26日、証明書の申請受け付けを始める。加藤勝信官房長官は12日の記者会見で「海外に渡航する際に防疫措置の緩和を受けるのを目的とする」と述べた。イタリアなど十数カ国に要請している。国内での活用は現時点で想定していない。「接種の有無による不当な差別は適切ではない」と説明した。チグハグにも映る対応に経済界は異を唱える。経団連は接種証明書を早期に活用し、国内旅行などの要件を緩和すべきだと提言している。病床確保などの対策を進めつつ、経済をいかに回すかはコロナの感染拡大当初からの課題だ。ワクチンの普及など状況の変化を踏まえた柔軟な対応も求められる。

*4-3-5:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/707944 (佐賀新聞 2021.7.17) コロナ拡大と五輪、国民は「安全」なのか
 国民の「安全」を守り、暮らしに「安心」をもたらす。一国のリーダーにとって最大の責務であることは言うまでもない。世界が注目する東京五輪・パラリンピックの開幕が迫った日本で、菅義偉首相はその使命を果たしているのか。五輪開催都市である東京で新型コロナウイルスの感染者が急増している。1日当たり千人を超す新規感染者数の報告が続き、5月の「第4波」ピーク時を上回っている。4度目になる緊急事態宣言が発令中だが、その効果は表れていない。専門家は現在の増加ペースで推移すれば、五輪閉会後には2400人程度に上るとの試算を公表した。年末年始の「第3波」さえ超える水準だ。東京など首都圏の感染者数は全国のおよそ3分の2を占めている。今後、インドに由来する感染力が強いデルタ株への置き換わりが進み、感染再拡大が首都圏から全国に波及する可能性もある。感染を収束させられないのは、政府対策の不備や迷走が第1の要因だろう。それでも五輪は23日に開幕する。21日には一部競技が先行して始まる。菅首相が「安全、安心な大会を実現する」と主張し、開催に突き進んできたためだ。1964年以来、日本では2度目となる夏の五輪には選手約1万人、大会関係者約4万1千人の来日が見込まれ、入国は本格化している。五輪は選手らと外部の接触を遮断する「バブル」方式で運営され、10都道県での広域実施となる33競技・339種目の大半は無観客の会場で行われる。菅首相は選手らの多くがワクチン接種を済ませている上、厳格な検査と行動制限を課すことで、ウイルスの国内流入を防ぐと強調する。だが事前合宿先で感染が判明した例もあり、水際対策は万全ではあるまい。選手村には、2回目の接種を終えていない日本人スタッフらが出入りする。管理の緩さが露呈した関係者の行動も問題視されている。バブルに穴がないか常時点検するとともに、五輪を発生源としたクラスター(感染者集団)を認知した場合、大会を続行するかどうかを検討しておく必要がある。菅首相はコロナ禍で行われる東京五輪の開催意義を巡って「世界が一つになり、難局を乗り越えていけることを発信したい」と繰り返している。さすがに「コロナに打ち勝った証し」との言い回しは封印したようだ。だが、生活や事業がコロナ前に戻るのはいつかという国民が一番知りたいことに答えていないのに、無責任な意義付けだと指摘せざるを得ない。主催者である国際オリンピック委員会(IOC)のバッハ会長の現状認識にも疑問が湧く。バブル方式によりコロナ感染を「日本国民が恐れる必要はない」と断言。首相と会談した際には、感染状況が改善した場合「有観客」を検討してほしいと伝えたという。首相と同じく「五輪ありき」の姿勢がうかがえ、国民感情を軽視していると批判されても仕方あるまい。菅首相が何より優先しなくてはならないのは、五輪を予定通り終わらせることではない。国民の命を守るためコロナ感染を一日も早く収束に向かわせることだ。憲法に基づく野党の臨時国会召集要求に応え、コロナ対策を充実させる論議に臨むべきだ。首相に値するか問われている。

*4-4-1:https://www.at-s.com/news/article/shizuoka/929053.html (静岡新聞社説 2021年7月14日) 来日選手難民申請 認定制度見直す機会に
 サッカー・ワールドカップ予選のため来日していたミャンマー代表選手のピエ・リヤン・アウンさんが、クーデターを起こした国軍に抗議の意志を示して帰国を拒否し、日本に難民認定を申請した。本国の家族や帰国したチームメートの身を案じながら、自らが帰国した場合、生命の危機にさらされると考えて下した苦渋の決断だった。クーデター後のミャンマー情勢には世界の目が注がれている。日本政府は5月、日本在留の継続を望むミャンマー人に対して緊急避難措置として在留延長や就労を認める方針を示した。ピエ・リヤン・アウンさんは在留延長が認められ、難民認定も出入国在留管理庁は迅速に手続きを進めるという。日本は他の先進国と比べて難民認定の判断基準が厳しく、認定数が極端に少ないと指摘されている。ここ数年、ミャンマー人は一人も認定されていなかった。人道上の見地から安心して帰国できる治安情勢になるまで保護するのは当然で、国際社会の視線を気にした例外的な対応であってはならない。認定のハードルが高いため、これまで本来、保護されるべき人が保護されていないまま本国へ送り返されるようなことはなかったのか。難民認定の在り方について見直す機会にしたい。難民条約は人種、宗教や政治的意見を理由に母国で迫害される恐れがある人を難民と定義し、各国が保護するよう求めている。日本は条約に加入した1981年以降、計約840人を難民として認定してきた。だが、他国と比べると、難民の受け入れに消極的なのは一目瞭然で、条約加入国の義務を十分果たしているとはいえない。2019年の1年間だけでも、難民認定はドイツ約5万3千人、米国約4万4千人、フランス約3万人に上る。認定率も18~30%と高い。日本の認定者は44人で、認定率は0・4%だった。他国なら難民と認められても当然な状況ながら日本で認定されなかったため、本国に帰ることもできず難民申請を繰り返さざるを得ない外国人も多いのではないか。先の国会で難民申請の回数を制限する入管難民法の改正案が提出されたが、入管施設収容中のスリランカ女性の死を巡って野党の強い反発もあり、与党は成立を断念した。難民認定は人命に関わる重要な手続きだ。申請者の出身国の情勢をしっかり見極めた上で認定の是非を判断しなければならない。国会での政治的駆け引きではなく、外国人の人権保護という原点に立ち戻って認定制度について真剣に議論する必要がある。

*4-4-2:https://www.jiji.com/jc/article?k=2021071601004&g=spo (時事 2021年7月16日) ウガンダ選手が所在不明 事前合宿地の大阪府泉佐野市〔五輪〕
 大阪府泉佐野市は16日、東京五輪の事前合宿で受け入れているウガンダ選手団の男子選手の所在が分からなくなっていると発表した。この選手は重量挙げのジュリアス・セチトレコさん(20)で、市は警察に届け出た上で行方を捜している。16日正午すぎに、セチトレコ選手の新型コロナウイルスのPCR検査が行われていないことに気付いた市職員が、ホテルの部屋を確認したところ不在だった。部屋には「日本で仕事がしたい。生活が厳しい国には戻らない」という趣旨の書き置きが残されていた。市はJR西日本に問い合わせ、同選手が名古屋行き新幹線の切符を購入したことも確認したという。市によると、セチトレコ選手は合宿期間中に世界ランキングが下がって五輪に出場できなくなり、コーチとともに近く成田空港から帰国する予定だった。選手団9人は6月19日、成田空港に到着。入国時の検査で1人が陽性判定を受けた。一行が泉佐野市に移ってから残りの8人全員が濃厚接触者と特定され、さらに別の1人の感染が判明。その後、基準を満たしたため練習を再開していた。

<先端科学で証明しよう、日本人のルーツと古代史>
*5-1:https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC18CCA0Y1A610C2000000/ (日経新聞 2021年6月23日) 渡来人は四国に多かった? ゲノムが明かす日本人ルーツ
 私たち日本人は、縄文人の子孫が大陸から来た渡来人と混血することで生まれた。現代人のゲノム(全遺伝情報)を解析したところ、47都道府県で縄文人由来と渡来人由来のゲノム比率が異なることがわかった。弥生時代に起こった混血の痕跡は今も残っているようだ。東京大学の大橋順教授らは、ヤフーが2020年まで実施していた遺伝子検査サービスに集まったデータのうち、許諾の得られたものを解析した。1都道府県あたり50人のデータを解析したところ、沖縄県で縄文人由来のゲノム成分比率が非常に高く、逆に渡来人由来のゲノム成分が最も高かったのは滋賀県だった。沖縄県の次に縄文人由来のゲノム成分が高かったのは九州や東北だ。一方、渡来人由来のゲノム成分が高かったのは近畿と北陸、四国だった。特に四国は島全体で渡来人由来の比率が高い。なお、北海道は今回のデータにアイヌの人々が含まれておらず、関東の各県と近い比率だった。以上の結果は、渡来人が朝鮮半島経由で九州北部に上陸したとする一般的な考え方とは一見食い違うように思える。上陸地点である九州北部よりも、列島中央部の近畿などの方が渡来人由来の成分が高いからだ。大橋教授は「九州北部では上陸後も渡来人の人口があまり増えず、むしろ四国や近畿などの地域で人口が拡大したのではないか」と話す。近年の遺伝学や考古学の成果から、縄文人の子孫と渡来人の混血は数百~1000年ほどかけてゆっくりと進んだとみられている。弥生時代を通じて縄文人と渡来人が長い期間共存していたことが愛知県の遺跡の調査などで判明している。どのような過程で混血が進んだのかはまだ不明で、弥生時代の謎は深まる一方だ。今回の解析で見えた現代の日本列島に残る都道府県ごとの違いは、弥生時代の混血の過程で起こったまだ誰も知らない出来事を反映している可能性がある。書物にも残されていない日本人の歴史の序章は、ほかならぬ私たち自身のゲノムに刻まれているのだ。

*5-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20210708&ng=DGKKZO73668690X00C21A7TB2000 (日経新聞 2021.7.8) 10万人のゲノム解析 東北大・武田など5社連携 創薬に利用、欧米を追う
 東北大学は7日、武田薬品工業やエーザイなど製薬大手5社と、10万人分のゲノムを解析するためのコンソーシアムを設立したと発表した。製薬会社が従来の10倍以上のゲノムデータを創薬や診断技術の開発などに利用できるようにする。欧米には数十万人規模のバイオバンクがすでにあり、ようやく日本もゲノムをもとに新薬を探す「ゲノム創薬」の基盤整備が進む。バイオバンクは健康な人や患者から、血液や尿などの試料、そのゲノムを解析したデータを収集する。年齢・性別、生活習慣や病気の履歴などのデータも合わせて蓄積し、これらを創薬研究する企業や大学などに提供する。データを活用すれば、新薬の開発やそれぞれの患者に適した治療をする「個別化医療」の実現に役立つ。東北大が運営する東北メディカル・メガバンク機構は2012年に設置。宮城県、岩手県の15.7万人超のデータや試料をもつが、ゲノム解析に時間や費用がかかり、企業が利用できるデータは約8300人分にとどまっていた。コンソーシアムは文部科学省の予算約40億円と企業の資金をもとに、24年までに10万人分のゲノム解析を目指す。21年度中に6万人分の初期的な解析を終える予定だ。参加するのはエーザイ、小野薬品工業、武田、第一三共、米ジョンソン・エンド・ジョンソン傘下のヤンセンファーマ。5社は10万人分のゲノムデータを優先的に利用できる。記者会見した東北メディカル・メガバンク機構の山本雅之機構長は「10万人のゲノムデータがあれば、日本人で見つかる遺伝子変異を網羅的に探せるだろう」と話した。製薬会社は治療薬や診断法の開発につなげる狙いだ。武田は国内でも先駆けてゲノム創薬に取り組んできた。19年には英国の「UKバイオバンク」に参加。一定の使用料を支払い、50万人規模のゲノムデータを活用している。20年には東北メディカル・メガバンク機構と共同研究を開始。認知機能の低下など精神・神経疾患を引き起こす要因を中心に調べ、新薬や治療法の確立を目指している。エーザイも21年5月に国立がん研究センターが持つがん組織のゲノムデータをもとに、希少がんの治療薬の開発に乗り出している。もっとも、ゲノムデータ収集で先行するのは欧米だ。武田が参画する英国の「UKバイオバンク」は06年から健康な50万人を追跡。米ファイザーや英アストラゼネカなど世界のメガファーマも参画する。ゲノムデータをはじめとして、生活習慣や既往歴などの情報が利用でき、創薬に利用しやすいという。英国にはがんや希少疾患の患者を対象とした政府系機関によるバイオバンクもあり、18年12月に10万人のゲノム解析を終えた。米国では100万人分を目標に約49万人分を集めた取り組みなどがある。ゲノム解析などに詳しいアーサー・ディ・リトル・ジャパンの小林美保シニアコンサルタントは「UKバイオバンクは英政府が支援しており、データが集まってくる仕組みがある」と指摘する。日本も国の支援のもとデータを集める仕組み作りが必要だ。

<感染者・濃厚接触者も検査で陰性になれば出場させるのが適切>
PS(2021年7月20、21日追加):*6-1のように、「①東京五輪に出場する選手が新型コロナ感染者の濃厚接触者でも、試合開始6時間前に実施するPCR検査で陰性なら出場を認める」「②国内の濃厚接触者は14日間の自宅待機等が求められ、五輪選手への特例的対応」「③プレーブックでは、濃厚接触者は個室に移動し、1人での食事などが求められ、試合出場に国際競技団体の同意が必要とされていた」「④南アフリカのラグビーチームで選手ら18人が大会での濃厚接触者の取り扱いが課題となっていた」と書かれている。
 しかし、濃厚接触者は感染を疑われる者でしかなく、PCR検査で陰性ならその疑いは晴れている。また、PCR検査を数回やって陰性ならなおさら安心で、14日間の自宅待機・個室への移動・1人での食事も不要であり、プレーブックの方が間違いだ。もちろん、国民も同じである。そのため、南アフリカの選手が1人であれ複数であれ、不要な出場禁止や幽閉は、権利の侵害にあたる。また、*6-2の米女子体操選手と濃厚接触者になった選手も、PCR検査で陰性なら何の問題もなく出場を認めてよい筈だ。
 さらに、*6-3のように、「①私立米子松蔭高は、7月16日に学校関係者に新型コロナ感染が判明し、第103回全国高校野球選手権鳥取大会への出場を一度は辞退した」「②ベンチ入りした全野球部員の陰性を確認したが、7月17日の試合直前に辞退を決めた」とのことだが、選手本人が陰性なら辞退する必要はない。にもかかわらず、学校関係者に新型コロナ感染が判明したことを罰するかのように、出場を辞退させるのは非科学的すぎる。また、学校関係者に感染者がいたことが全体の責任ででもあるかのような対応をとれば、悪くもない感染者を窮地に追い詰め、差別やいじめに繋がって教育上も悪影響がある。そのため、「鳥取県高野連が世論の高まりを受けて出場を容認したからよい」のではなく、こういう理不尽な判断が教育現場でまかり通った理由を追及すべきである。

*6-1:ttps://digital.asahi.com/articles/ASP7J3V8MP7JUTQP005.html (朝日新聞 2021年7月16日) 五輪選手、濃厚接触者でも検査陰性なら出場へ 特例対応
 東京オリンピック(五輪)・パラリンピックに出場する選手が新型コロナウイルス感染者の濃厚接触者と判定されても、試合前のPCR検査で陰性となれば出場を認める方向で、政府と大会組織委員会が調整していることがわかった。通常、国内の濃厚接触者は14日間の自宅待機などが求められており、五輪、パラリンピック選手への特例的な対応となる。政府と組織委の対応方針では、濃厚接触者と判定されても、試合開始の6時間前をめどに実施するPCR検査で陰性となれば、出場を認めるという。コロナ対策のルールをまとめた「プレーブック(行動規範)」では、濃厚接触者と認定されると、個室への移動や1人での食事などが求められており、試合出場については国際競技団体の同意などが必要とされていた。今月13日に来日した南アフリカのラグビーチームで選手ら18人が濃厚接触の調査対象者と判定され、事前キャンプ地入りを一時的に見送るなどしており、大会での濃厚接触者の取り扱いが課題となっていた。テニスの4大大会、ウィンブルドン選手権では、濃厚接触者となった選手は自動的に10日間の隔離を強いられ、棄権扱いになっていた。

*6-2:https://www.tokyo-np.co.jp/article/117784 (東京新聞 2021年7月19日) 米女子体操選手が陽性 事前合宿中、1人濃厚接触
 千葉県印西市は19日、同市で事前キャンプをしていた東京五輪の米女子体操選手団のうち、10代選手1人が新型コロナウイルス検査で陽性になったと発表した。別の選手1人が濃厚接触者として宿泊先のホテルで待機している。市によると、選手団は15日の入国後、毎朝スクリーニング検査を実施。10代選手は18日に陽性疑いが出て、19日未明に病院の検査で確定した。選手団はトレーニング以外での外出はしておらず、移動は貸し切りのバスを利用していた。感染した選手と濃厚接触者を除く選手団は19日午後、東京五輪の選手村に移動した。

*6-3:https://ryukyushimpo.jp/kyodo/entry-1359293.html (琉球新報 2021年7月21日) 米子松蔭高、鳥取大会初戦を制す コロナで辞退から一転
 学校関係者に新型コロナウイルスの感染者が出たため、第103回全国高校野球選手権鳥取大会への出場を一度は辞退しながら、一転して出場が決まった私立米子松蔭高の再試合が21日、米子市内で開かれた。17日に行われるはずだった境高との初戦(2回戦)で、米子松蔭高は0対2でリードされていた九回裏に3点を入れ、逆転サヨナラ勝ちした。米子松蔭高は春季鳥取大会を制した強豪校。16日に学校関係者の陽性が判明。ベンチ入りした全野球部員の陰性を確認したが、17日の試合直前に辞退を決めた。世論の高まりを受け、県高野連は19日に不戦敗の記録を取り消し、出場を容認した。

| 経済・雇用::2021.4~ | 11:46 PM | comments (x) | trackback (x) |
2021.6.12~23 差別は人権侵害を生み出し、憲法違反でもあること (2021年6月24、25、28、30日、7月1、3、4、6、7日に追加あり)

    2021.3.31Huffintonpost       2021.5.10日経新聞  2021.5.31東京新聞

(図の説明:左図のように、2021年のジェンダーギャップ指数は156ヶ国中120位で、政治・経済は3桁代、教育は辛うじて2桁代、医療も65位と新興国以下だった。また、中央の図のように、日本は、女性の就業率が上がってM字カーブの底は浅くなったが、出産・育児後は労働法で護られない非正規労働者の割合が高くなるため、正規雇用率はL字カーブだ。そして、非正規労働者は専門職の公務員女性にも多いとのことである)

(1)女性差別による人権侵害
 差別によって不平等な条件を突きつけたり、人生の可能性を狭めさせたりすることは、そもそも人権侵害である。

1)ジェンダーギャップ指数が156か国中120位の理由と日本の現状
 世界経済フォーラムの「ジェンダーギャップ指数」の発表によれば、*1-1-1のように、日本は156か国中120位でG7では最下位、アジアの主要国よりも下位で、順位を下げる要因となったのは、経済分野117位、政治分野147位と経済・政治分野の順位の低さだそうだ。

 経済分野は、男女間の賃金格差、管理職の男女差、専門職・技術職の男女比が、いずれも100位以下で、中でも管理職の男女差は139位と前年の131位から順位を下げた。日本政府は女性活躍促進を政策に掲げていたのだが、政治分野は世界のワースト10に入り、政治分野のジェンダー不平等は、多様な視点を欠いた政策に繋がっている。

 私も、政治分野のジェンダー平等は、個人を尊重し、多様性の確保された社会を実現し、民主主義を発展させ、あらゆる分野で女性の地位を向上させるための必須条件だと思う。しかし、今なお日本社会に厳然と存在する女性に対する偏見・差別・不平等な取扱いによって起こる男性より高いハードルによって、男性より実力がある人でも選挙で公認されにくかったり、公認されて立候補しても当選しにくかったりすることは多いため、その不利を帳消しにするためクオータ制を法制化することは「逆差別」にはならないと考える。

 このような中、*1-1-2のように、政治分野の女性参画拡大を目指すためとして男女共同参画推進法が改正され、女性議員の増加のため女性の立候補を妨げる要因であるセクハラ・マタハラ防止策を国や地方自治体に求める条文が新設されたそうだ。2018年に制定された男女共同参画推進法は、地方選挙や国政選挙の候補者数を「できる限り男女均等」にするよう各政党に促したが、努力義務だったため既得権のある男性候補者に阻まれて進まなかった。これにセクハラ、マタハラ防止の規定を入れたら政治分野の女性参画が進むかと言えば、もともとセクハラ・マタハラくらいは跳ね除けられる人しか議員になろうとは思わないため、影響は小さそうだ。

2)女性に多い非正規雇用
 *1-1-3・*1-1-4のとおり、女性活躍の機運の高まりを背景に「M字カーブ」は解消が進んだが、子育て後に再就職するには非正規雇用が主な受け皿で、女性の正規雇用率は20代後半をピークに右肩下がりで減っていく「L字カーブ」が新たな課題として浮上している。

 そして、内閣府の有識者懇談会が「①正社員に加えて短時間勤務の限定正社員等の選択肢を拡大し、出産後の継続就業率を高める必要がある」と指摘しているように、「②正規雇用以外の働き方が『仕事と育児を両立できる働き方』であり、本人の希望だ」と説明されることが多い。

 しかし、「③都内の公立学校の図書館で司書として働く女性も非正規」「④自治体の非正規公務員の大半は女性」「⑤1年毎の採用で気持ちを安定させて働けない」「⑥全国の自治体で働く非正規公務員は約69.4万人で、9割を会計年度任用職員が占め、その3/4以上が女性」「⑦専門性があっても給与は手取りで月約16万円」「⑧契約更新で理由も分からず職場を去らざるを得なかった人もいた」「⑧声をあげにくい人が多く、問題が覆い隠されている」等の現状がある。

 非正規雇用労働者が増えたのは、1997 年に男女雇用機会均等法が改正され、1999 年に施行された後であり、「女子差別撤廃条約(黒船)」批准のために国内法を整備するために1985 年に成立した旧均等法が「パート・女性のみ」「一般職・女性のみ」というようなコース別の募集・採用することを均等法違反ではないとしていたのを、改正法は違反としたからである。

 つまり、旧均等法ではパートや一般職として女性のみを募集することが許されており、1997 年改正でそれをできなくしたため、「非正規雇用」という労働法で護られない労働者を作って年改正法をザル法化したのだ。そのため、もともと「非正規雇用」は女性に照準を当てており、このように、日本は女性差別を禁止する度にザル法化してきた経緯があるのだ。

 なお、1997 年の主な改正点は、「募集・採用・配置・昇進等の雇用におけるすべての場面で直接差別を禁止」「積極的な差別是正措置に対する国の援助を規定」「セクシャルハラスメント防止のための事業主の配慮義務を規定」「均等法違反企業の企業名公表など一定の制裁措置を講じた」などであり、それまではこれらが堂々と行われていたのだ(https://core.ac.uk/download/pdf/229188692.pdf 参照)。

3)女性の自立を応援しなかった日本社会
 *1-1-5のように、日本国憲法は「個人の尊重と幸福追求権を定める13条」「法の下の平等に基づき性差別を禁じる14条」「両性の本質的平等を保障する24条」を持っているが、それに反して、正規労働者を護るために、解雇しても支障の出ない労働契約になっている非正規労働者を容易に解雇する。そして、非正規労働者に女性をあてていることが多いため、日本は働く女性を応援せず犠牲にしている社会なのである。

 つまり、「非正規労働」は合法的に差別される労働契約であるため、決して自ら好んで選ぶべきではないが、日本政府は出産後の継続就業率を高められる選択肢として推奨しているのだ。

 なお、私自身は、差別される側の労働力になるつもりはなかったため、キャリアを積み男性と同じく働いた上で言うべきことは言い、「仕事は自分で選ぶ」「それができるためのキャリアを積む」「空気は読むのではなく作る」ということをやっているのだが、それについて「女のくせに生意気だ(←女性蔑視)」「性格が悪い(←女性差別)」「変わっている(←女性差別)」「夫婦仲は悪いに違いない(←憶測にすぎず、大きなお世話)」等と言われることがあり、要するに「活躍する女性が幸福な姿は見たくない」と思う差別意識の強い人がいるのだ。

4)女性差別によって享受させられた女性の不利益
 東京都立高校の普通科一般入試は、*1-2-1のように、募集定員を男女に分けて設定しているため性別によって合格ラインが異なり、対象校の約8割で女子の合格ラインが最終的に高かったそうだ。都立高は全国の都道府県立高校で唯一男女別定員があるためこのようなことが起こるが、埼玉県の場合は男女別定員ではなく受験できる公立高校自体が男女で異なるため、どちらも憲法違反であり、ひどい。

 また、合否を中学校が提出する内申点と筆記試験の合計で決めるのも、中学教諭の偏見や先入観が内申点に出やすく、教諭の判断基準は教諭の時代の常識であったとしても(それも疑わしいが)、生徒たちが活躍する時代や場所の常識であるとは限らず、公平・中立にもなりにくいため、私は、内申点を(参考に留めるのではなく)筆記試験と合計することに反対である。

 このように、意図的な選抜を繰り返していると、より優秀な人、より努力する人を合格者にすることができないため、時間が経つにつれて選抜の誤謬が結果として現れる。そして、それが、日本の現在の状況を作っているのではないかと思う。

 しかし、*1-2-2のように、マイケル・サンデルのように「①成功は努力の結果ではない」「②入学を手助けした親や教師、そもそもの才能や素質があるので本人の功績とは言い切れない」と言ったり、上野千鶴子氏のように「③自分が頑張ったから報われたと思えること自体、環境のおかげだ」として、能力や努力に問題提起する人もいる。

 女性に関しては、米国は日本より男女にかかわらず能力を基準として公正に評価する傾向が強いため、日本ほどの女性差別はない。それでもマイノリティーが上昇して成功するには、成功を助ける力より成功を妨げる力の方が大きく、成功にはかなりの努力を要するため、①②は当たらないと思う。さらに、日本は、女性は強い意志と努力がなければ成功できないほど女性が成功するのを妨げる力の大きな環境であるため、環境と才能だけで成功できた女性はいないだろう。

5)結果として変な政策が決まる
イ)少子化自体を問題とする政策の誤り

  
 主要国の人口推移と人口     地域別世界人口     人口ピラミッドの形状

(図の説明:左図は、主要国の人口推移と現在の人口で、日本は1960年代後半に1億人を超えたのであり、ドイツは今でも8千万人代であるため、経済成長率には人口以外の要素が大きく関わっていることを示している。中央の図は、地域別世界人口の推移で、中国・インドが属するアジア地域で人口増加率が大きく、世界人口に占める割合も大きい。右図は、人口ピラミッドの形状で多産多死型から少産少死型に替わる時に釣鐘型からツボ型となり、多産多死型の間はピラミッド型をしているのだ)

 *1-3-1のように、日本では、男性が育児休業をとりやすくする改正育児・介護休業法が成立し、①男性は子の誕生後8週間まで最大4週間の育児休業を取れる ②業務を理由に育休取得に二の足を踏む男性も多いので労使の合意があれば育休中もスポットで就労可 ③休業の申し出は2週間前までに短縮 などが加わったそうだ。しかし、私は、男性がちょっと育児を手伝うには至れり尽くせりだと思った。

 何故なら、②の業務が理由で育休取得が困難であるのは女性も同じであるため、出産後に(1)2)の女性の「M字カーブ」ができるのであり、「M字カーブ」の底が浅くなったとしても出産後の女性の就職は非正規雇用が多いため、女性の正規雇用率は20代後半をピークに「L字カーブ」になっているのである。そのため、女性の多くに「『出産しなければ正規雇用として得られた筈の報酬+社会保障』-『出産したため非正規雇用として得られる報酬+社会保障』」という出産・育児による生涯所得の損失があり、非正規になるため労働法による保護もなくなる上、莫大な子育て費用がかかるのである。

 このような中、第一生命経済研究所の試算では「③出生率の低下は将来の労働力の減少等を通じて中長期の経済成長力を押し下げる」「④2030年代後半に日本は潜在成長率が0.2%程度のマイナスになる」としているが、③④については、女性・高齢者を含めた労働力を100%利用しているわけではなく、日本の成長率が低いのは成長分野に投資しないからなので、少子化のせいでないことは明らかだ。

 ニッセイ基礎研究所の調査では、「⑤持ちたい子どもの数が減った理由で多かったのは、子育てへの経済的な不安」だそうだが、実際には経済的不安・仕事の安定に関する不安・子育てに対する不安・自己実現に対する不安がある。そのため、3・4歳児の教育や大学生向けの奨学金拡充で子育てや教育に対する親の過重負担を軽減するのも大切だが、女性が出産・子育てをしても仕事や研究で自己実現でき、経済的不利益を被らない社会にしなければ出生率は上がらない。

 また、*1-3-2も、「⑥新型コロナの影響で、2020年の合計特殊出生率が1.34で5年連続の低下」「⑦2005年の1.26を底に緩やかに上昇し、2015年に1.45となったが、その後は低下基調」「⑧女性の年代別では20代以下の低下が目立ち、30~34歳で最も高く、40歳以上の出生率も少し上がったが、全体として20代以下の落ち込みを補えなかった」「⑨2021年の出生数は80万人割れの可能性が高い」などと出産競争を促す書きぶりだが、文明の進歩によって女性も高学歴化し、出産・子育てによる自己実現の犠牲を嫌って、晩婚化や生涯未婚化したのが最も大きな理由だと思う。

 さらに、*1-3-3は、「⑪出生数が最少の84万人になったため、急減の流れを止めたい」「⑫このままだと将来の働き手が減少し、社会保障の担い手不足がさらに深刻になる」「⑬雇用情勢悪化による解雇や給料カットで経済的余裕を失ったカップルが多いことも出生数減少に響いた」「⑭政府は結婚や出産を後押しする観点での新たな支援に乗り出すべきではないか」「⑮出生数最多は第1次ベビーブームの1949年の269万人超で、2019年に90万人を割り込んで第1次ブームの1/3に落ち込んだ」「⑯近代以降、乳児死亡率が下がって子どもを多く産む動機が薄れた」「⑰文明の発展に連れて『多産多死』から『少産少死』へ変化する大きな流れに抗えない」「⑰出生数急減を何とか乗り越えたい」等と記載している。

 しかし、現在は⑬の状態なのであり、特に非正規労働者に皺寄せが行っているので、⑫は、まず男女とも正規労働者として100%近い本物の雇用を達成し、本当に人手不足になって初めて移民などの外国人労働者の活用も含めて考えればよいと思う。何故なら、⑭は支援の内容にも依るが、景気対策のバラマキや支援でやっと生活できる人ばかりになると国が潰れるからである。

 また、⑮については、このように出生数が1/3に落ち込み、学校や職場は増えているにもかかわらず、第1次ベビーブーム世代と同じく教育や仕事で不利な状況を与えて女性を活躍させず、競争を著しく減らしたことが、日本の働き手の質を落としたのだ。

 さらに、⑯⑰は、多く産んでも大人になるまで育つ子が少かった不幸な時代から、殆ど全員が大人になるまで育つため少し産めばよい時代になっても、一般の人がその変化を認識して出産数を減らすという生物的行動をとるまでに1~2世代かかることを意味している。そのため、増えすぎる人口を調整するための出生率低下を超える出生率低下は止めるべきだが、⑰のように、「とにかく出生数急減を乗り越えよう」と呼びかけると、地球が人口を支え切れなくなるのだ。

 つまり、日本は、食料・エネルギーを100%以上自給し、これから人口爆発するアフリカ諸国にも輸出できるようにしながら、100%近い本物の雇用を達成し、それでも人手不足があればいろいろと考えるべきである。そのため、教育は、重度障害者でもないのに働くことのできない大人を作らないようにすべきだ。

ロ)遅すぎる対応←「骨太の方針」から
 政府は、*1-3-4のように、経済財政諮問会議で今年の「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)」原案を公表し、グリーン(脱炭素)、デジタル、地方創生、子育て支援の4分野に予算を重点配分する方針を明記したそうだ。

 このうち、2025年度に国・地方の基礎的財政収支の黒字化をめざすとする財政再建目標は、現在は国の財政が現金主義であるため、目標を守ったとしても公正ではなく問題解決もしない。そのため、財政改革の1丁目1番地は、国・地方の財政(年間収支と資産・負債)を複式簿記で把握して発生主義で物を考えられるようにすることで、これをやられると困る人がいるのか、一向に進まないのが現状だ。そして、財政再建と言えば高齢者に対する社会保障費が無駄だから抑えるというのは、今でも社会保障は不十分であるため、高齢者いじめの歪んだ政策である。

 また、脱炭素化に向けて、基金や優遇税制で企業の投資を後押しし、炭素を出さないEV・FCVの普及を進め、「再エネの主力電源化に最優先して最大限の導入を促す」としたのはよいが、もともとトップランナーだった日本のEV・FCV・再エネを、環境を軽視して主要国が軌道に乗せ終わるまで応援せず、ここまで遅れさせたのはまずい政策だった。

 さらに、デジタル化については、マイナンバーカードの健康保険証や運転免許証との一体化等でカードの普及を加速させる意図があるとのことだが、①個人情報を商業目的で売ることに違和感を感じない ②個人情報もビッグデータなら流通させてかまわないと考える ③民間委託を繰り返すことによってデータ保護に責任を持たない体制を作る など、国民の福利を主にして物を考えない姿勢であるため、マイナンバーカードに多くの情報を連結させるのは危険である。

 なお、子育ての良いインフラとなるべき幼保一体化は進まず、2006年10 月1日に施行された認定こども園は、未だ幼稚園と保育所が温存されているため3制度併存となっている。そのため、「子ども庁」を作っても、せっかく省庁再編で減らした省庁をまた増やして予算を増加させ、幼稚園・保育所はそのままにして役所のポストを増やすだけになりそうなので、期待薄だ。

 最低賃金の引き上げについては、地域によって異なる物価水準や人によって異なる生産性に見合わなければ、賃金引き上げは改悪になってしまうため、全国加重平均を1000円以上にする必要はないと思う。

 最後に、コロナ対策で失敗したのは厚労省はじめ政府であり、その無思慮・無能力を補うため、日本の国民は強制力なしでも自粛したのだ。そのため、「④感染症有事の体制強化で、法的措置を速やかに検討」「⑤緊急時対応のより強力な体制と司令塔を持つ」などというのは本末転倒であり、能力も資格もない所に強力な権限を与えて国民の私権を制限できるようにすれば、基本的人権の尊重や主権在民(民主主義)から外れ、日本国憲法違反になる。

ハ)遅すぎた再エネと地熱発電開発


              2021.6.10日経新聞より
(図の説明:1番左の図のように、日本は火山帯の上にある国なので、地熱資源が多い。また、左から2番目の図のように、2015年で日本企業が作る地熱発電設備は世界シェアの6割をしめ、日本企業が関わる海外プロジェクトも、右から2番目の図のように多い。それにもかかわらず、1番右の図のように、日本国内の発電量にしめる地熱のシェアが著しく小さいのは、無尽蔵に近い豊富な資源を使わずにいるということだ)

 「世界でホットな地熱発電 出遅れ日本も『地殻変動』」とする*1-3-5の見出しは面白いが、発電の安定性に優れ、燃料費は無料で、資源量の豊富な地熱を使用した発電を、日本政府は世界で評価され機運が盛り上がって始めて2030年に発電所を倍増させる方針を掲げたのだから、これも無思慮・無能力の一例である。それどころか、天文学的高コストの原子力発電を安価だと強弁して優先してきたため、これによる財政の損失は著しく大きかった。

 これは、地熱資源量で世界第3位の日本の発電量が2020年時点で55万kwに留まり、日本企業のタービンの世界シェアは6割強に達するという対照的な結果を産んでいる。つまり、「政府は、環境も考慮しながら、4の5の言わずに10ットとやれよ」と言いたいのである。

 このような中、*1-3-6のように、全国知事会議によって「デジタル化を進める」「5G移動通信システムに対応する通信網を基礎的インフラとして全国に普及させる」「脱炭素社会の実現を再エネ豊富な地方への分散型国土創出のチャンスとする」などの提言がなされたのは注目に値する。

二)非科学的なコロナ対応
 政府(特に厚労省とその専門家会議)は、検査・ワクチン・治療薬などのコロナ対応で失敗したことは言うまでもないが、限られたワクチン接種の優先順位でもおかしなことが続いた。そもそも、接種会場に行けないような寝たきりに近い高齢者にワクチンを接種するのは、ワクチン接種による健康リスクが高い上、そういう高齢者が新型コロナを他人に感染させるリスクは低いため、そういう人に接する人(介護士や家族)にワクチンを接種した方が効果的なのだ。

 また、ワクチンが十分に供給された後も、*1-3-7のように、64歳以下の接種に優先順位をつけ、無駄に煩雑化して時間の浪費をしている。そのため、市区町村ごとに独自に優先対象枠を設定するのはよいが、なるべく多くの人に素早く接種することが感染を広げないためには最も重要なので、20~30代を優先するというのもおかしいのである。

 さらに、五輪は「中止だ」「無観客だ」と騒いでいるメディアが多いが、免疫パスポートを持っている人と直近の陰性証明書を持っている人だけが入場できるようにすれば何の問題もないし、日本なのだから、客席の下に航空機レベルの強力な換気扇を設置しておけば、観客の中に少し陽性者が混ざっていたとしても感染リスクはかなり軽減されるのである。

 にもかかわらず、「ワクチン接種が進めば、何となく政権に好感が持たれる」「10~11月にかけて、すべての接種を終える」などのボヤっとした政治的意見が出るのには呆れる。そのため、企業・学校などの職域接種をできるだけ早く始め、終わったところは一般の人にも開放した方がよいと思う。このような場合に、「五輪は特別か」「自治体毎に差が生じるではないか」「免疫パスポートの提示は差別に繋がる」などの悪平等を奨める議論をするのは筋が悪すぎる。

(2)年齢差別による人権侵害


  *2-3(図表1)     *2-3(図表2)     *2-3(図表3)

(図の説明:左図のように、65歳の健康余命は、男14.43年・女16.71年であり、75歳でも男7.96年・女9.24年である。また、中央の図のように、平均余命も健康余命も、男女とも伸びている。さらに、右図のように、健康上の理由で日常生活に影響のある人は、85歳未満では50%以下で、85歳くらいから増え始めている)

1)“高齢者”に定年は必要か
 “高齢”になった時、頭脳や身体の機能がどのくらい衰えるかは、生物年齢によって一律に決まるのではなく、個人差が大きい。そのため、一定年齢になると全員を退職させる「定年」というシステムは、余剰人員があって若い世代の出番がなかなか回ってこないような企業には便利かもしれないが、人材不足の企業にはむしろ不都合なのである。また、年齢を理由に解雇される被用者にとっては、これまでより悪い条件の職場に移動して勤務しなければならず、年齢による差別であると同時に人権侵害でもある。

 さらに、65歳以下の従業員しかいない会社は高齢者のニーズを把握できず、ここでも多様性のなさが利益機会を逃す結果となっている。

 そのため、健康状態に合わせて負荷を軽くしながら、健康で働ける限りは働いた方が経済的にも健康維持にもプラスであり、同じ生活を続けられた方が被用者にとって精神的負荷が少い。

イ)定年の廃止
 現在の一般的定年年齢である65歳は、*2-3のように、仕事、家事、学業などが制限されない健康余命が男性14.43年、女性16.71年(80歳前後まで)残っており、75歳でも男性7.96年、女性9.24年残っているそうだ。

 そのため、*2-1-1ように、YKKが正社員の定年を廃止して、本人が希望すれば何歳までも正社員として働けるようにし、生涯現役時代に備え始めたのは妥当である。しかし、これらがうまく機能するためには、役割に応じて給与が決まる役割給(≒能力給・成果給)を採用し、同じ能力・成果なら年齢に関係なく同じ給与になる仕組みが必要だ。そして、「年齢だけを理由に処遇を変えたり、退職させたりするのは公正でない」というのは正しい。

 三菱ケミカルは2022年4月に現在60歳の定年を65歳に引き上げ、将来は定年廃止も検討しているそうだが、給与制度は能力・経験に基づく職能給と、仕事の成果・役割に基づく職務給で構成していたのを、2021年4月から職務給に一本化したそうだ。

 三谷産業の場合は、2021年4月から再雇用の年齢上限をなくして65歳以上は1年ごとの更新制としたそうだが、これは年齢だけを理由に雇用条件を変えており、公正とは言えない。

ロ)70歳定年制
 ダイキン工業は、*2-1-1のように、希望者全員が70歳まで働き続けられる制度を始め、少子高齢化で人手不足が続く中、企業がシニアの意欲と生産性を高める人事制度の整備に本格的に乗り出したそうだ。しかし、これまで定年が60歳で65歳まで希望者を再雇用していたのは、やはり年齢だけを理由に処遇を変えたり、退職させたりしており、公正ではなかった。

 各社が対応を急ぐ背景には、年金の支給開始年齢が段階的に引き上げられ、所得の空白期間をなくすため、2021年4月に施行された改正高年齢者雇用安定法があり、従来、企業は従業員が希望する限り65歳まで雇用を継続する義務があったが、法改正で70歳まで就業機会確保の努力義務が課されたからだそうだ。

 大半の企業は再雇用期間の単純延長などで対応し、多くは現役時代に比べて2~5割程度給与が下がってシニアのやる気と生産性の低下が課題になっているため、定年を廃止する企業は成果に応じた賃金制度を導入したりして給与の減少を一定程度に留めるそうだ。私は、成果や能力に応じた賃金制度を導入した方が、年齢に関わらず誰にとっても公平でやる気が出ると思う。

 世界では定年制は一般的でなく、米国・英国は年齢を理由とする解雇を禁止・制限しているが、日本は定年のない企業の方が2.7%に留まる。その理由は、正社員に対して年功序列型賃金体系を採用し解雇規制も厳しいため、定年を延長・廃止しただけでは生産性に見合わない人への人件費が増加するからだ。ただ、職務を十分に果たせない理由は年齢ではないため、公正な雇用環境とは、成果主義・能力主義による賃金体系にほかならない。

 ちなみに、年功序列型賃金や解雇規制によって護られた正規雇用を維持するため、出産後の女性(もしくは多くの女性)に非正規雇用の職しかないのは、雇用の調整弁にされているからである。そのため、女性は、もともと、非正規雇用の職を押し付けられるよりは、(年功序列よりは厳しいかもしれないが)能力主義・成果主義賃金体系の中、正社員として企業間移動も容易である方がずっと公平・公正になるという環境下にあるのである。

ハ)中小企業の対応
 *2-1-2のように、70歳まで働く機会の確保を企業の努力義務と定める改正高年齢者雇用安定法が4月に施行されたのを受けて、日本商工会議所が中小企業に対応を聞いたところ、必要な対応を講じているのは約3割に留まることがわかったそうだ。

 新型コロナで企業の業績が悪化し、余剰人員が増えて人件費の負担増に繋がる施策の導入は難しそうだが、中小企業に熟練労働者は貴重であるため、もともと定年のない企業も多い。そのためか、必要な対応を講じている企業の具体策は、70歳までの継続雇用制度の導入(65.8%)、定年制の廃止(20.2%)と定年制の廃止も少くない。

2)高齢者医療←“公平”とは何か
 *2-3に書かれているとおり、平均寿命は0歳の人の平均余命で、64歳以下でなくなる人の死亡時年齢も加えた平均であるため、65歳まで生きた人の平均余命は平均寿命より長い。

 そのため、平均寿命を目安にして老後生活のための資産形成をしたのでは不十分な上、健康寿命を過ぎた後は医療・介護の世話になることになる。これは、若い世代が医療・介護保険料を支払っても殆ど医療・介護の世話にならないのと対照的だが、このサイクルはすべての人に起こるものである。

 従って、人口構成が変わる国は、若い時代に支払った医療保険料・介護保険料を発生主義で積み立てておかなければ、国民が高齢になった時に医療・介護費を負担できず、まさに現在の日本のような状態になる。しかし、このライフ・サイクルは、今になって初めてわかったことではなく、保険制度を作った時からわかっていたことであるため、適切な対応をしなかった管理者に全責任がある。

 そのような中、*2-2-1・*2-2-2は、「①高齢化に対応するため、全ての世代に公平で持続可能な医療保険制度の構築を急ぐべき」「②75歳以上の後期高齢者で一定以上の所得がある人の医療費窓口負担を1割から2割に引き上げる医療制度改革関連法が成立」「③一定収入とは年収が単身で200万円・夫婦世帯で計320万円以上」「④後期高齢者医療費のうち自己負担分を除く約4割は現役世代の保険料で賄っている」「⑤政府はこの改正が現役世代の負担増を抑える一歩にすぎないことを認識し、さらなる改革を急ぐべき」「⑥厚労省は負担引き上げによる受診減で75歳以上の医療費が年約900億円減少するとみる」「⑦実際の負担は、高額療養費制度の活用で軽減を図れる」「⑧政府の説明は『受診行動の変化のみで健康への影響を分析するのは困難』と繰り返すだけ」「⑨健康診断受診率を高め、疾病を早期発見する環境整備も必要」「⑩今後は資産に着目した制度設計が不可欠なので、高齢者の収入・資産状況を把握するマイナンバーを使った改革を急ぐべき」などを記載している。

 このうち、①については、ライフ・サイクルを考慮した時、i) 殆ど医療・介護のニーズがない若い世代が入る保険 と、ii) 医療・介護のニーズが高くなる定年後に入る保険 を分けたことが、保険の原理に反しており、不公平を作っているのだ。その不公平の一部を解消するため、④のように、自己負担分を除く約4割を現役世代の保険料で賄うという恣意的割合での補助を行っているのだが、若い時代に支払った保険で定年後も面倒を見るのが本来の保険の姿である。従って、現在の仕組みなら、若い世代だけが入っている医療保険は大きな黒字になっている筈だ。

 また、②③の一定以上の所得を単身で200万円・夫婦世帯で計320万円以上と定めたのは、医療費が0の生活保護家庭と同レベルの所得でも、後期高齢者は医療費窓口負担2割としている点で不公平だ。何故なら、健康寿命を過ぎると、医療・介護を継続的に利用し続けなければならなくなるため、医療・介護費、水光熱費を除いた可処分所得が少なくとも食費・住居費・交際費を支払える程度に残らなければ、最低生活ができないからである。そのため、⑦は最低生活を保障できる金額でなければならないのである。

 なお、⑥⑧は、科学的根拠はないが、とにかく高齢者は邪魔だと考える行政の言いそうなことだ。⑨に反対する人はいないと思うが、いくら健康診断をしても最後は誰しも健康寿命が尽きて亡くなるため、かかる医療費・介護費は変わらないと思う。違いは、それが早いか遅いかだけであろう。

 ⑤⑩については、高齢者の資産はその人が働いて所得税を引かれた後の税引後所得から貯めたものであるため、ここに課税すれば二重課税になる。また、多くの資産を子孫に残す人は相続税で課税されるため公平性が保たれており、マイナンバーを使って高齢者の資産に手を突っ込もうなどと考えるから、政府に信用がなくなって、マイナンバーカードも普及しないのである。

 なお、*2-2-3に、「⑪負担能力を判断する収入に、貯金などの金融資産を含める意見もあるが、稼働所得が少ない高齢者に負担増を求めるのは極力避けなければならない」と書かれているのは本当で、「⑫高齢化がピークに近づく2040年に向け、抜本的な社会保障制度改革は避けて通れない」というのは、私が上に書いた変更を行い、積立金の不足する分は、バラマキの無駄遣いをやめ、日本に豊富に存在する資源の開発を行ってその収益を充てたり、それこそ国債で賄ったりすべきなのである。

(3)外国人差別による人権侵害
1)日本の難民受け入れと「入管法改正案」
 *3-1・*3-2のように、政府・与党は、「①現行の出入国管理法では、外国人が難民としての認定を日本政府に申請している間は強制送還できず」「②その結果、施設収容が長期化している」として、「③難民認定申請を2回までに制限して退去命令に従わない際の罰則を設け」「④繰り返し申請する人を送還可能にする規定を盛り込んだ」改正案を、入管施設に長期収容されていたスリランカ人女性が死亡したのをきっかけに、今国会での成立を断念した。しかし、筋の悪いこの改正案は廃案にすべきである。

 何故なら、この改正案は、迫害から逃れてきて帰国できない事情のある人への配慮に欠け、国連難民高等弁務官事務所や国連人権部門から懸念を示されていたものであるため、国際水準に沿った入管法改正を行うことが必要なのだ。例えば、日本の2019年難民認定率は0.4%で、米国29.6%やドイツ25.9%より著しく少なく、外国人労働者は労働力の調整弁として受け入れてきた経緯があるため、人権を尊重した抜本的な制度改正が必要なのである。

 さらに、出入国在留管理庁は、「退去回避や就労目的が相当数含まれていた」と主張するなど、(母国にいるため外国人より優位な立場にある筈の)日本人労働者の職を護るため外国人の就労を著しく厳しく制限しており、外国人は悪人であるかのような偏見を持って管理している。この行為は、祖国で迫害されて脱出し、日本で保護されるべき外国人を送還して危険にさらす恐れがあるため、人権侵害であるとともに、日本国憲法にも違反している。

 しかし、紛争や差別、迫害から逃れてきた難民申請者には高学歴の人も多く、2つの祖国を持つ人は両方の文化を理解して懸け橋になったり、日本企業のグローバル展開に貢献できたりしやすい。さらに、従業員の出身国もまた、多様性があった方が、新しい製品やサービスを開発する機会が増えるので、外国人も排除するより認定基準を変えて活用した方が、双方にってプラスなのである。

2)自分が差別される側だったら、看過できないにもかかわらず・・
 日本で、「差別はいけない」と言って男性はじめ多くの人に賛成してもらうには、人種差別を例に出すのが最もピンとくるらしくて早いというのが、私の経験だ。

 そのような中、*3-3は、「新型コロナが中国から世界に広がったことがきっかけで、米国でアジア系の人を標的にしたヘイトクライムが目立つようになり、日本人まで巻き込まれているので差別解消に向けて日本から声を上げるべきだ」という抗議をしているが、アジア出身の人への差別は、(3)1)のように、日本人も行っている。にもかかわらず、多くの米国民に中国人・韓国人・日本人が同じに見えて出自が中国でないアジア系移民まで襲撃対象にされていることを不満に思うのは自分勝手すぎる。

 欧米人には、中国・韓国・日本の人は同じに見えるようで、私は台湾の人と米国人の家を訪問した時に「貴女たちは、お互いに言葉が通じるの?」と聞かれて、2人同時に「No!」と答えたことがある。その人は、標準語と関西弁くらいの違いだと思っていたらしい。

 もちろん、外交・安全保障で近隣国に毅然として言うべきことは言わなければならないが、それとは別に、アジア人であれ、アフリカ人であれ、人を差別すべきではない。幸運が重なることによって、日本の経済力が長い歴史から見れば瞬間的により進んでいたからといって、日本に住む1人1人が、より優れているわけではないことを心すべきだ。

(4)雇用形態について
 正規雇用と非正規雇用の社員間にある“不合理”な格差の解消を目指す「同一労働同一賃金」のルールが、*4-1のように、2021年4月から中小企業にも適用されたそうだが、合理的な待遇差は認められている。しかし、①厚労省は、基本給では能力・経験、業績・成果、勤続年数に応じて支給する場合は同一の支給、違いがあればその違いに応じた支給を求め ②最高裁は、賞与と退職金などについて格差を認める判断を示し 何が合理的な待遇差の範囲かは曖昧だ。

 しかし、①の能力・経験の違いについては、日本は年功序列(勤続年数による評価)の企業が多かったため、能力・経験、業績・成果などを公正かつ正確に評価して報酬に結び付ける文化がなく、合理的な待遇差か否かが客観的ではなく恣意的な説明になるのが問題なのである。

 また、②は、企業が非正規雇用を使う目的から、「賞与・退職金・福利厚生に違いがあるのは当然だ」ということになる。また、非正規雇用は短期の雇用になりがちで、労働生産性を高める研修も受けにくく、これは職務を限定せずジョブローテーションを繰り返して専門性の高い人材を育てない正規雇用と相まって、日本の労働生産性を低くする原因となっている。

 私も、欧米型の「ジョブ型」雇用の方が労働生産性を高めるとは思うが、ジョブ型雇用は、そのジョブで必要がなくなれば、正規か非正規かに拘らず配置転換ではなくクビにするものだ。そのため、日本のように、社員を正規と非正規に分ける必要はなく、正社員でも成果さえあがれば短時間勤務でもOKで、休職した後でも不利なく復職することができる反面、これらがうまく機能するためには、辞めた従業員の能力・経験を評価して労働者に不利益を与えることなく受け入れる企業の多い労働市場が必要なのである。

 日本は、ジョブ型雇用、能力や実績を報酬と結び付けるための評価システム、辞めた従業員の能力や経験を評価して不利益なく受け入れる労働市場に乏しいため、*4-2のように、パート・派遣などの有期労働契約が5年を超えて繰り返し更新され本人が希望すれば、無期雇用契約に切り替えられる「無期転換ルール」ができたわけだ。

 しかし、無期契約は昇給制度を作る必要がなくても人件費が重荷になるため、対応にあたって、③契約更新の回数に上限を設けて5年を超えない運用にする ④無期転換した人材は、特定の仕事には力を発揮するが配置換えをすると能力不足を感じることが多い とする企業もある。

 ③は、ザル法化で、④は、*4-3のように、正規雇用の労働者でも専門外の仕事に配置換えすればやる気も生産性も落ち、度重なる配置換えによって専門性も育たなくなるという悪影響がある。そのため、有期労働者の不安定な状況を改善するには、長期の雇用保障や年功賃金で正社員が手厚く保護され、コスト抑制策として非正規雇用が活用されている労働市場の構造を変える必要があるのだ。

 そのためには、労働者を犠牲にするのではなく、転職しやすいジョブ型雇用の労働市場を作り、解雇規制の緩和とセットにする金銭補償は会社都合退職金を自己都合退職金の3倍にするなどを行う必要がある。この「会社都合退職金を自己都合退職金の3倍にする」というのは、事業縮小のために希望退職を募っていたオランダ銀行日本支店が行っていたことで、監査に伺っていた私は、その筋の通った徹底ぶりに感心した次第だ。

(5)不合理な政策が通る理由は何か
1)新型コロナワクチンについて
 加藤官房長官は、*5-1-1のように、6月17日の閣議後会見で、①新型コロナワクチンの接種を公的に証明する「ワクチン証明書」の交付を市区町村が7月中下旬から始める ②まず書面で交付し、電子交付も見据えて検討を進める ③ワクチン接種の有無による国内での差別を防ぐため、同証明書は海外との往来を主な目的とする という方針を明らかにした。

 しかし、①②は、接種券に「新型コロナワクチン予防接種済証」が付いており、接種時にワクチンの種類・接種日・接種場所が記録されるため、ワクチン接種後はすぐに書面による交付ができている。そのため、電子証明は、接種済証を所定の場所に持っていけばできるようにすればよいのである。また、③は、「糖尿病や肥満の人に食事制限するのは差別にあたるので、家族全員が食事制限すべきだ」と言うのと同じくらい不合理で馬鹿げている。

 そのため、ワクチン接種済証か直近の陰性証明書の提示を条件にすれば、*5-1-2のような入場者制限・飲食店の時短・酒類の提供制限も不要であり、恩着せがましく少しずつ緩和していただく必要はない。にもかかわらず、「五輪は、中止か、無観客で」などと言っていた新型コロナ対策分科会の“専門家”が、五輪の開催方法については「人の流れを止める」以外の助言もできず、役割を果たしていない。これは、「“専門家”の選び方が悪い」というほかないのである。

 さらに、*5-1-3のように、ファイザー製ワクチンの接種対象が12~15歳に広がっているのを受け、小児科学会等が、「③(かかりつけ医による)個別接種が望ましい」「④感染予防策としてワクチン接種は意義があるが、副反応の説明や接種前後の健康観察を入念にするように求める」「⑤基礎疾患がある子どもは、健康状態をよく把握している主治医との相談が望ましい」という見解を発表したそうだ。

 しかし、④⑤については同意するものの、③については、健康な子どもは学校で集団接種して問題ないだろう(私たちの世代は普通に集団接種していたが、近年はしないのか?)。それより、日本の場合は、体重に比例してワクチン接種量を加減しないため、体重45kgの痩せた女性が体重90kgの米国人男性と同じ分量のワクチンを接種すれば副反応が強く出るのは当たり前だ。まして、体重30kgの子どもなら分量は1/3程度でよい筈だが、それこそ日本の“専門家”は何も調べておらず、意思決定権者もそれを求めていない点で、勉強不足である。

 なお、東京五輪・パラリンピックに合わせて来日する外国メディアの行動を、*5-1-4ように、スマートフォンのGPSを使って管理する方針は、確かに、⑥ジャーナリストのプライバシー権を完全に無視しており ⑦報道の自由を制限するもの であるため、国際ジャーナリスト連盟(IFJ)が強く反発するのは当然で、このような規制をしようと思つくこと自体が恥である。安全を維持するためなら、ジャーナリストはじめ関係者の入国時に免疫パスポートの提示を義務付ければよく、性犯罪者ででもあるかのようにGPSで追いかける必要はない。

 最後に、五輪で入場者数の制限・飲食店の時短・酒類の提供制限等をして世界のお祭りに水をかけたりせず、来られた方を「おもてなし」できるためには、*5-1-5の職域接種を五輪までに関係者全員(の希望者)に完了するための経済界の活躍が期待される。新型コロナで損害が大きく、世界標準も知っている航空会社が前倒しでワクチン接種を始めたのは尤もだが、ほかにも政府が職域接種の目安とする従業員千人に満たない中小企業が素早くワクチンを接種できる工夫はあった。そのため、顧客企業が素早く立ち直ることこそが貸付金の返済に繋がる都市銀行・地方銀行・信用金庫等も、顧客企業の従業員や家族まで対象にしたワクチンの集団接種を行い、地域の安全・安心を作り出すのがよいと思う。

2)社会保障について
 一定所得(単身:200万円以上、複数世帯:320万円以上)以上の75歳以上の後期高齢者医療費窓口負担を、1割から2割に引き上げる医療制度改革関連法が、*5-2-1のように、自民・公明両党などの賛成多数で成立した。田村厚労大臣は、その目的を「①若い人の負担の伸びを抑える目的だ」と述べられ、持続可能な医療保険制度に向けて税制(消費税)も含めた総合的な議論に着手することも明記しているそうだ。ちなみに、現役並所得(単身:年収383万円、複数世帯:520万円以上)とされる人は、雇用の不安定さにかかわらず現在も3割負担である。

 これについては、厚労省の杜撰な資金管理を改善することもなく、国民の負担増・給付減ばかりを決めており、日本国憲法25条の「1項:すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。2項:国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない」に違反している(https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_annai.nsf/html/statics/shiryo/dl-constitution.htm 参照)。そして、これは人口構成とは関係のない問題だ。

 さらに、全世代型社会保障はよいし、若い世代も介護保険制度に加入して負担すると同時に給付も受けられるようにすべきだと思うが、保険制度はリスクの高い人と低い人が混ざっていて初めて成立するものなので、高齢者を労働していた現役時代とは別の保険制度に入れ、「②財源は窓口負担を除いて5割を公費で負担し、残り4割は現役世代からの支援金、1割を高齢者の保険料で賄う」「③75歳以上の人口が増えて医療費が膨らめば現役世代の負担も重くなる」などと言うのは恩着せがましいし、これまで制度の基盤を固めてきた人に対して恩知らずで失礼でもある。

 なお、*5-2-2のように、「④高齢者の中には、所得が少なくても金融資産を多く持っている人もいるので、資産も合わせて判断するようにすべきだ」などと、課税済所得から蓄積した金融資産まで考慮して給付を減らすべきだという不公正な理論を展開している人もおり、「高齢者は日本国憲法で護るべき国民のうちに入らないから、理屈はともかく犠牲を払ってもらいたいし、資産だけはもらいたい」という考えが丸見えで、どういう教育をするとこういう利己的な考え方をする人間ができるのか、親の顔を見て苦情を言いたいくらいである。

3)まとめ
 私は、東大医学部保健学科卒なので、医療システム・疫学・地球環境・公衆衛生学・母子保健・栄養学・解剖学・人体の健康維持システム・精神衛生・成人病等について大学で習った。しかし、仕事のために公認会計士資格(経済学・経営学・会計学・原価計算・財務諸表論・商法・監査論等が必須だった)をとり、監査で外資系の薬剤会社・医療機器メーカー・銀行・保険会社などを担当し、税理士としては税務申告や金融商品にまつわる税務コンサルティングを行った。そして、国会議員時代は、社会調査を兼ねて佐賀県の地元を1件1件挨拶廻りしながら話を聞き、地方の課題を洗い出して解決法を考えた。

 その結果として得た総合力でこのブログを書いているのだが、その目で日本で専門家として意見を述べている人たち(殆ど男性)を見ると、専門の範囲が狭く、丸暗記型で、他分野のことに疎く、小さな範囲の部分最適しか述べていない。それにもかかわらず、女性が意見を言うと、「非科学的」「感情論」等の女性に対する偏見に満ちた理解をするため、始末が悪いのだ。

 そのような中、(5)1)の新型コロナについては、下の指摘ができる。
  ①中国は当初から「無症状者にも感染力のある人がいる」と指摘していたため、厚労省は
   クラスターだけを追いかけて武漢ウイルスと呼ぶのではなく、万難を排してPCR検査を
   徹底し、蔓延を防止すべきだったのに、それをしなかった。
  ②検疫もいい加減だったため、島国であるにもかかわらず水際で止められなかった。
  ③医療システムに感染症対応が抜けており、治療すらまともにできないという、日本では
   考えられない事態を起こして、日本医療の評価を著しく下げた。
  ④政府が治療薬やワクチンの開発・承認を遅らせたため、膨大な金額の支援金で国費を
   無駄遣いしたのみならず、新薬や新ワクチンで得られる筈の利益機会も逸した。
  ⑤ロックダウンやまん延防止措置など、中学校の校則のように杓子定規な規制を一斉に
   かけ、それを乱発して、国民の私権を制限した。そして、行政は、これを「断固とした
   対応」などと言っている点で質が悪い。
  ⑥さらに、日本国憲法に「緊急事態宣言を入れ、大っぴらに国民の私権を制限できるよう
   にせよ」と言っているのは、憲法改悪の第一である。

 また、(5)2)の社会保障については、下の指摘ができる。
  ①「社会保障が高齢者に手厚すぎる」などと呪文のように唱え、高齢者への負担増・
   給付減をやり続けて生活を脅かしているのは、家計の分析すらできない人のする
   ことで、憲法25条違反である。
  ②介護保険制度を軽視し続けているのは、自らは家事や介護にあたらないと思って
   いる男性が大多数の政治だからである。
  ③人口減自体を問題視する愚かな論調が多いのも、「子育ては女性の仕事」と信じ、
   自らは家計すら考えたことのない男性が大多数の政治だからであろう。
  ④「課税済所得から蓄積した金融資産まで考慮して給付を減らすべきだ」などという
   理論を展開している人が少くないのは、二重課税の弊害もわからずに政策提言を
   しているからであり、不公正を招いている。

 しかし、国民にも責任はある。何故なら、主権在民の国である日本で議員や首長を選んでいるのは国民だからで、メディアが変な論調を続けてもまともな批判ができず、それに引きずられた意見形成をしているのも国民だからである。

(6)教育と人材

   
2019.8.1福井新聞  2019.8.1西日本新聞 2020.4.25毎日新聞    Resemom

(図の説明:1番左の図のように、小学6年生と中学3年生の全国学力テストは、福井・秋田など北陸・東北の平均が高く、東高西低になっている。また、左から2番目の図のように、九州7県は全国平均以下の地域が殆どで、公立は私立より低いため、何故こうなるかの原因分析が必要だ。また、右から2番目の図のように、教育用PCの普及は2人に1台《これでも自由には使えない》の佐賀県が最も多く、1番右の図のように、電子黒板整備率は佐賀県が突出して高いが、これには、ふるさと納税制度も利用した県を挙げての努力が見える)

 先端技術の開発や生産、サービスの提供など、どんな仕事をするにも教育を受けた質の高い人材が行えば、質の高い仕事ができる。ここでいう“質の高い”にはいろいろな要素があり、知識・思考力・体力だけでなく倫理観・勤勉・真面目などの性格を備えていることが必要だが、話を複雑化させないため、以下では、知識と思考力に絞って記述する。

イ)大学入試について
 国立大学協会入試委員会が、これまでの「国語」「地歴・公民」「数学」「理科」「外国語」の5教科7科目に「情報」を上乗せして、*6-1-1のように、2025年の大学入学共通テストから、国立大学の受験生に原則として「6教科8科目」を課す案を検討しているそうだ。

 プログラミング等を学ぶ情報Ⅰもデータサイエンスによる分析を学ぶ情報Ⅱも大切ではあろうが、私たちの世代は、理系の人でも、プログラミングは大学の教養で、データサイエンスは大学の専門や大学院で学んだため、大学入試で必須科目として高校までの履修を不可欠にするのなら、義務教育を3~18歳にしてゆとりを持って学べるようにしなければ消化不良になりそうだ。それでも、分析するには影響しそうなファクターをあらかじめ予想しなければならないため、知識と経験が必要であり、学校での限られた経験しか持たない生徒には難しそうだ。

 また、「義務教育終了段階での高い理数能力を、文系・理系を問わず大学入学以降も伸ばしていく」ことも重要だが、それには、高校では文系も数Ⅲを履修しておく必要がある。何故なら、大学で学ぶ経済学やデータ解析には、個の行動を統計的に集計して全体の行動にする過程があり、それには数Ⅲの微分・積分の理解が必要だからである。

 なお、情報を教える態勢は地域によって差があって、教員の確保が急務となっており、文科省の調査では、情報担当教員の2割が「情報免許状保有教員」ではない「免許外教科担任」や「臨時免許状」を持つ教員で、今のままでは新指導要領の内容をきちんと教えることができない学校が出るそうだ。ただし、教育用PCの普及は、むしろ地方の方が進んでおり、電子黒板整備率は佐賀県が突出して高い。さらに、私立と公立のPC整備率を比較すると私立の方が高いので、公立も頑張ってPCを整備し、教えられる人材を教員に採用しなければ教育格差は広がるだろう。

ロ)全国学力テストについて
 2019年4月に行われた全国学力テストの結果は、*6-1-3のように、福井県は「①中3は、英語で東京都等と並んで1位、数学も1位、国語は2位」「②小6は、国語2位、算数4位」「③小中とも調査開始以来12年連続で全国トップクラスを維持」「④県教委は授業や家庭学習に熱心に取り組む子どもと教員らの努力の成果と評価」「⑤目的や意図に応じて自分の考えを明確に書いたり、複数の資料から必要な情報を読み取って判断したりするのが苦手な傾向は変わらなかった」「⑥文科省は、学力の底上げ傾向は続いていると指摘した」とのことである。

 ①②③は立派な成績で、まさに④のとおりだろう。⑤は、日本人は大人も、自分の考えを明確に述べることを嫌ったり、分析が苦手だったりする人が多い上、TVもまともな意見を出し合って議論する設定の番組が少ないため、子どもも訓練される機会がないのだと思う。そのため、全体の底上げは重要で、⑥は正しい。

 一方、全国学力テストについて、*6-1-2は、「⑥全国学力テストの結果をより重視する学校もある」「⑦過去問を解くなどの事前準備が常態化し、本来の調査目的から逸脱している状況もある」「⑧研究者は『学力の一部しか測れないにもかかわらず、現場だけが結果責任を問われ、追い詰められている』と訴える」「⑨学校側が意識するのは県教育委員会が各公立小中に作成を求める学力向上プランで、全国学力テストの目標点を示した上で、課題の分析や授業の改善を促している」「⑩とにかく結果を優先せざるを得ない状況になっている」等と記載している。

 私は、⑨は全体の底上げのために正しいと思う。そのため、⑥⑦⑧の弱点は改善すればよく、⑥⑦については、生徒が初めて受ける形式の試験で何を答えればよいのかわからなければテストする意味がないため、少しは過去問を解く練習も必要だ。また、⑧は、確かに英語・数学・国語しかテストしていないので学力の一部しか測っていないが、それなら科目数を増やせばよい。そのため、「現場だけが結果責任を問われ、追い詰められている」というのは、責任のある人が責任を果たさず、言い訳しているように見える。現場以外に責任があるのなら、それもまた明確にして改善していくべきで、⑩については、結果が出なければやる意味はないと心得るべきだ。

 なお、子どもの実力を正しく把握する上で、学校内や狭い地域内だけでなく、全国規模で比較し検討する意味は大きい。また、公立校のレベルが低ければ、親の資金力が子どもの学力を決め、貧困の連鎖が生まれる。その上、外国人労働者を差別したり、景気対策と称するバラマキをしたりしなければ日本人労働者の雇用を守れず、国際競争に勝てない大人を大量に作り出したりもする。そのため、学力テストを使って子どもの学力を伸ばそうとしていることは重要で、これは、世界でも日本だけではないことに留意すべきだ。

ハ)私立と公立の差
 新型コロナの緊急事態宣言中、都立高校は、*6-2-1のように、校内の生徒数を3分の2以下に抑える分散登校を続け、登校しない生徒はオンラインを活用した自宅学習としているが、学校の通信環境や取り組みに差があって出欠確認だけの都立高もあり、生徒や保護者からは「学習が遅れていないか」と不安の声が漏れているそうで、当たり前である。

 また、*6-2-2のように、IT・ネット分野専門のミック経済研究所が学校の無線LAN普及率を調査し、「①2015年5月の無線LAN平均普及率は、私立59.3%(中学56.3%・高校61.2%)・公立42.6%(中学40.2%・高校35.0%)だった」「教室数等単位では、私立17.8%・公立16.4%で、特に公立高等学校が2.6%と低い」と発表した。

 PC・タブレットを使う時間が長いと、物事を理解したり覚えたりする時間はむしろ短くなり、深く思索することも少なくなるため、成績がよくなるとは限らない。しかし、辞書・参考書・筆記用具・電話と同じ文房具として使いこなせば、今までできなかったことができるし、今はそれをやるべき時代であろう。そのため、私は、教育に使うPC・タブレットは、ゲーム等の無駄な機能を搭載しない教育用の機種を1人1台支給して、通常の授業で使いこなすのがよいと思う。

 使いこなし方は、①英語の練習として英語圏のニュースを見る ②地学や歴史に関する映像を見る ③理科の内容を動画で見る ④音楽で本物の演奏を視聴する ⑤美術で国内外の美術館・博物館をリモートで訪れる ⑥体育でダンス等の動画を見ながら練習する など、紙の教科書と担任だけでは不十分になりがちな内容を視聴したり、国内外の同学年の生徒とリモートでディスカッションしたりなど、さまざまに考えられる。そのため、これらに沿う動画を紙の教科書以外に副読本として作成する必要はあるが、一度作成すれば国内外の多くの生徒が使うことができるため、決して高価なものにはならないと思う。重要なのは、本物を見せることだ。

 なお、最近、私は中国政府が国家の威信をかけて作ったという「三国志(完全版)、全5巻、日本語字幕付」のDVDを買って、まだ1巻の始めだけだが見た。すると、高校時代に漢文で習った内容が多く入っており、中国の有名な俳優が当時の服装で出ているため中国の歴史が目に見え、中国語の美しさにも触れることができた。これは、日本や欧米の歴史についても行っておけば、世界の人がその国の言葉を感じながら、その国の歴史や文化の由来を理解できると思う。

二)誤った教育をいつまで続けるのか


           2021.6.22日経新聞            2021.5.24日経新聞

(図の説明:年代別の接種方針は、1番左の図のようになっている。大学は、左から2番目の図のように、2021年6月21日に集団接種を開始した。また、ワクチン接種の注意点は、右から2番目の図のようになっているが、「注意すべき人」の範囲を広く取りすぎており、誤解や差別を生む。さらに、ワクチンの副作用を、1番右の図のようにしており、大げさだ)

 文科省は、*6-3-1のように、高校での「①集団接種を現時点では推奨しない」とする指針をまとめて全国の自治体に通知し、中高生は個別接種を基本とすることになった。その理由を、「②学校で集団接種をすれば、接種への同調圧力を生む恐れがある」「③副作用が出た場合に対応できる医療従事者の確保が困難」とし、「④集団接種する場合は、いじめ・差別を避ける配慮を要請する」「⑤接種を学校行事への参加条件としない」としている。

 しかし、①は、子どもを個別に医者に連れて行かなければならない保護者の負担が大きい。また、③で言われている“副作用”のうち、「注射部位の痛み」などは副作用のうちに入らないし、その他も十分な栄養と睡眠をとって1日程度休めば治るものである。さらに、持病があってかかりつけ医のいる人は、かかりつけ医に相談するか、そこで接種すればよいし、②④については、「同調圧力をかけてはならない」「接種できない事情のある人を、いじめたり差別したりしてはならない」と、きちんと生徒に教えるのが学校の役目であり、そのためのよい機会でもあろう。

 そして、⑤については、陰性証明書か免疫パスポートを学校行事への参加条件とするのは、教育を継続するために必要なことであり、全く差別には当たらない。

 配慮が必要な持病については、*6-3-2のように、厚労省はワクチンを接種できない人に「⑥明らかな発熱」「⑦重い急性疾患」「⑧ワクチン成分に対するアナフィラキシーなどの重度の過敏症の経験」などを挙げているが、⑥⑦は当然だが治ってから接種すればよいし、⑧は、米疾病対策センターが、ポリエチレングリコールに重いアレルギー反応を起こした人への接種を推奨していないだけで、そのアナフィラキシーも接種100万回あたり13件が確認されているのみだ。そのため、根拠もなくワクチンにアナフィラキシーを起こしているのは厚労省の方である。

 なお、他に注意が必要な人として、「⑨過去に免疫不全の診断を受けた人」「⑩過去に痙攣を起こした人」「⑪心臓、腎臓、肝臓などに疾患がある人」などを挙げているが、⑨⑩は過去にそうでも現在そうでなければ問題ないし、⑪も疾患の重症度によって異なるため、「注意が必要な人」として指定することでむしろ科学的根拠に基づかない差別を生んでおり、国民のワクチンへのアナフィラキシーを増加させてもいる。そのため、国民に無駄な心配をさせぬよう、(あるのなら)科学的根拠となるデータを速やかに開示すべきだ。

 大学の方は、*6-3-3のように、慶応大学などの全国17大学が、ワクチン接種を職場接種として本格的に始め、今後、大学を拠点とした接種がさらに広がりそうとのことである。対面で授業を受けるにも、イベントを行うにも、帰省するにも必要なことなのだ。それにもかかわらず、「中高生には集団接種を推奨しない」というのは、おかしな話である。

・・参考資料・・
<女性差別>
*1-1-1:https://www.nichibenren.or.jp/document/statement/year/2021/210422.html (日本弁護士連合会会長 荒 中 2021年4月22日) 世界経済フォーラムのジェンダーギャップ指数に対する会長談話
 2021年3月31日、世界経済フォーラム(WEF、本部・ジュネーブ)は、世界各国の男女平等の度合いを指数化した「ジェンダーギャップ指数」を発表した。日本は前回よりも1つ順位を上げたものの156か国中120位と過去2番目に低い順位であり、主要7か国(G7)中最下位で、アジアの主要な国々よりも下位であった。ジェンダーギャップ指数は、女性の地位を、経済、政治、教育、健康の4分野で分析し、ランク付けをしている。例年、経済分野と政治分野が日本の全体順位を下げる要因となっているが、今回、経済分野は117位、政治分野は147位となり、前回から更に順位を下げた。経済分野は、男女間の賃金格差、管理職の男女差、専門職・技術職の男女比のスコアが、前回と同様、いずれも100位以下である。中でも管理職の男女差は139位と前年の131位から順位を下げた。日本政府は女性活躍促進を政策に掲げているが、経済分野でのジェンダー不平等は一向に解消されていない。そして、前回に引き続き、最も深刻な状況にあるのが政治分野である。前回、その前年から19も順位を下げて世界のワースト10に入ったが、今回は更に順位を3つ下げた。国会議員の男女比は140位、閣僚の男女比は126位と低位のままである。このような政治におけるジェンダー不平等は、ジェンダーの視点を欠いた政策につながり、いまだに社会的・経済的に弱者である女性にとって日々の生活に直結する悪影響を及ぼしている。例えば、新型コロナウイルス感染症の拡大による混乱は、雇用環境の悪化、DV(ドメスティックバイオレンス)や児童虐待の増大、母子家庭の一層の貧困化、女性自殺者の急増などをもたらしたが、これらに対する適切な施策がなされず、むしろ、全国の小中学校に対する突然の臨時休校の要請により、事実上育児の大半を担う女性が就業困難な状況に陥ったり、特別給付金の受給権者が世帯主とされたことにより、DV被害者の受給が困難となったりした。また、国連女性差別撤廃委員会からの勧告や国民意識の変化にもかかわらず、選択的夫婦別姓制の導入は遅々として進まない。女性の政治参画は、あらゆる分野における女性の地位向上のための必須条件である。女性の政治参画なくして、個人が尊重され、多様性が確保された社会の実現や、日本の民主主義を発展させることは不可能であり、女性議員数、女性閣僚数を増加させることは喫緊の課題である。日本の現状は、もはや一刻の猶予も許される状況になく、クオータ制の法制化も含めた具体的取組は急務である。当連合会は、日本の置かれている状況を懸念し、ジェンダーギャップ指数に対し毎年談話を発表しているが、状況は依然として改善されない。2021年2月の公益財団法人東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会の会長(当時)の発言と、同会長を擁護するかのごとき同組織委員会や公益財団法人日本オリンピック委員会(JOC)の対応は、今なお日本社会に厳然と存在する性に基づく偏見、差別、不平等な取扱いを露呈した。日本社会の男女不平等状態は、国際的な信用さえ失墜させ得るレベルであり、社会の閉塞感にもつながっている。当連合会は、日本政府に対し、日本社会の現状を直視し、個人が性別にかかわらず閉塞感なく生き生きと暮らせる社会を実現するため、職場における男女格差を解消し、女性活躍を更に促進する施策を実施するとともに、女性の政治参画の推進を喫緊の重点課題と位置付け、より実効性ある具体的措置、施策を直ちに講じるよう強く要請する。

*1-1-2:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/689591 (佐賀新聞 2021.6.10) 女性の政治参画拡大、改正法成立
 政治分野の女性参画拡大を目指す改正推進法は10日の衆院本会議で可決、成立した。女性議員の増加に向けて、セクハラやマタニティーハラスメント(マタハラ)の防止策を国や地方自治体に求める条文を新設。政党や衆参両院に加え、地方議会を新たに男女共同参画の推進主体として明記し、積極的な取り組みを求めた。2018年に制定された推進法は、地方選挙や国政選挙の候補者数を「できる限り男女均等」にするよう各政党に促している。改正法には、女性の立候補を妨げる要因とされるセクハラ、マタハラへの対応が盛り込まれた。国と自治体の責務として、問題発生を防ぐための研修実施や相談体制整備を新たに規定。防止策や問題の「適切な解決」に関し、自主的な取り組みを政党の努力義務として課す。基本原則にも1項を加え、地方議会を含めて推進主体を列挙した。議会を欠席する要件として妊娠や育児を例示し、国や自治体に両立支援の環境整備も求めた。制定当時の付帯決議を踏まえ、超党派で改正案をまとめた。

*1-1-3:https://www.tokyo-np.co.jp/article/107671?rct=life (東京新聞 2021年5月31日) 非正規公務員 新制度から1年 女性たち、苦境改善へ連携 「公共サービスの危機」懸念
 DVや児童虐待の相談業務といった仕事の増加に伴い、増える自治体の非正規公務員。大半は女性で、非正規の地位を安定させようと昨年四月に導入された会計年度任用職員制度によって一層つらい立場に追いやられている。期末手当(ボーナス)の支給対象にはなったが、一年ごとの採用が厳格になったためだ。そうした中、苦境に立つ女性たちが、自ら現状を発信、改善を求めていこうと動き始めた。「気持ちを安定させて働きたいけれど、来年のことを考えると…」。都内の公立学校の図書館で非正規の司書として働く女性(44)は不安げだ。現在働く自治体に採用されたのは十二年前。契約を更新しながら、購入図書の選択や本の整理にとどまらず、子ども一人一人の個性や状況に配慮して接し、図書館が安心できる場になるよう心掛けてきた。若手の教員から授業のテーマに沿った本の相談をされることも。新型コロナウイルス禍の今は、本や館内の消毒が新たな仕事として加わった。図書館の使い方などの指導も、密を避けるため、子どもを少人数に分けて何度も繰り返す必要がある。総務省の二〇二〇年の調査によると、全国の自治体で働く非正規公務員は約六九・四万人。うち九割を会計年度任用職員が占め、さらにその四分の三以上が女性だ。期末手当の支給で、女性の年収は百九十万円から二百三十万円に増えた。一方で、更新はあるが、年度ごとの採用が基本となり、雇用の不安定さは増した。「教員と違う立場で子どもと接し、本を手渡すには経験の積み重ねや継続した関係が大事なのに」。専門性を生かせ、やりがいはあるが、給与は手取りで月約十六万円。「夫と共働きで何とか子育てできるが、司書仲間にはダブルワークをするひとり親もいる」と話す。年度ごとの契約で賃金は低く、昇格もない。三月下旬、当事者がSNSなどで参加を募って開いたオンラインの緊急集会「官製ワーキングプアの女性たち」では、さまざまな仕事に携わる非正規職員が窮状を訴えた。DV対応などに当たる婦人相談員の「コロナ禍で相談が増え、やる気だけでは無理」、ハローワーク職員の「コロナで混乱する中で契約更新があり、理由も分からないまま職場を去らざるを得なかった同僚がいた」など内容は多岐にわたった。「住民サービスに不可欠なエッセンシャルワーカーが、こうした状態にあることを、社会全体が課題としてとらえるべきだ」。非正規公務員の問題に詳しいジャーナリストで和光大名誉教授の竹信三恵子さんは訴える。最近はさらなる経費削減のため、官が担ってきた仕事を民間に委託する例も増加。自治体の非正規職員ではないが、そこにも低待遇の働き手がいる。竹信さんは「相談業務などは、従事する側も利用する側も経済的、精神的に余裕がなく、声をあげにくい人が多い。そのため問題が覆い隠されてきた」と指摘する。こうした流れを変えようと、集会の企画者や参加者らは四月、「公務非正規女性全国ネットワーク(はむねっと)」を結成した。今後は、問題解決に向けた調査や提言に加え、当事者同士の交流や学習会などを進める予定だ。中心メンバーの瀬山紀子さん(46)は「このままでは公共サービスが崩れてしまう。私たち女性がまとまって動くことで、非正規公務員全体の問題を解決したい」と話す。まずは六月四日まで、当事者から現状を聞きとるアンケートをネット上で実施中。既に八百件以上の声が寄せられているという。回答は、ホームページ=「はむねっと 非正規」で検索=から。集計結果は同月中に公表する予定だ。

*1-1-4:https://www.nikkei.com/article/DGKKZO71693340Z00C21A5CT0000/ (日経新聞 2021年5月10日) 女性の雇用、「L字」課題、出産後、正社員比率低く
 出産や育児で仕事を辞めることで30代を中心に就業率が下がる「M字カーブ」は長年、女性の労働参加が進んでいない象徴とされてきたが、近年は解消が進んでいる。女性活躍の機運の高まりを背景に仕事と育児を両立できる働き方が広がった結果とみられ、2019年には就業者数が初めて3000万人を突破した。新たな課題として浮上したのが「L字カーブ」だ。子育てが一段落した後に再就職しやすくなったとはいえ、非正規雇用が主な受け皿で、女性の正規雇用率は20代後半をピークに右肩下がりで減っていく。最近はコロナの影響も大きい。内閣府の有識者懇談会「選択する未来2.0」は「正社員に加え、短時間勤務の限定正社員など、選択肢を拡大し、出産後の継続就業率を高めることが求められる」と指摘している。

*1-1-5:https://digital.asahi.com/articles/DA3S14891821.html (朝日新聞 2021年5月3日) (憲法を考える)男女平等の理念、遠い日本 「女性の自立、応援しなかった社会」
 日本国憲法は、「男女平等」を完全に保障した条文をもつ。しかし、新型コロナウイルス禍のもと、制度や社会におけるジェンダー格差が改めて浮き彫りになっている。施行から74年経った今なお、憲法がめざす理念に日本社会が近づけていないのはなぜなのか。緊急事態宣言下の3月半ば。どしゃ降りの雨の中、東京・新宿の区立公園にたてられたテントに女性たちが吸い込まれていく。弁護士や労組関係者らが開いた「女性による女性のための相談会」。コロナで生活に困る女性を対象としたところ、2日間で20~70代の125人が訪れた。
■コロナ禍で顕著
 関東地方に住む40代の女性は、野菜やお菓子、生理用品を受け取った。昨年6月、新型コロナの影響で仕事を失った。派遣で2年近くコールセンターに勤めてきたが、突然契約を打ち切られた。コロナ対策の1人10万円の特別定額給付金は、支給先は世帯主で、別居する親に配られた。中高生の頃から暴力を受けて疎遠になっていた。年末に失業給付が切れ、何も食べられない日もあった。所持金は1万3千円だった。「立場の弱い女性のほうが安定した仕事がなかったり、支援が届かなかったり。コロナはそんな現実を浮き彫りにした」。個人の尊重と幸福追求の権利を定める13条。法の下の平等をうたい性差別を禁じる14条。そして、両性の本質的平等を保障する24条――。憲法は三つの条文によって男女平等を保障する。しかし、雇用における差別は残り、支援制度も世帯単位で作られ、個人に重きが置かれていない。総務省発表では昨年、非正規雇用の働き手は75万人減ったが、うち女性は男性の倍を占めた。厚生労働省によると、昨年の女性の自殺者は7026人。前年より男性の数は減少したが、女性は935人(前年比15・4%)も増えた。
■選んでいいの?
 相談会スタッフ、吉祥(よしざき)真佐緒さんは「相談を受けて痛感したのは、夫婦間や職場で、空気を読んで口答えせず、自分のことは後回しにする生き方を強いられてきた女性が、本当に多いということだった」と話す。吉祥さんは、DV(家庭内暴力)被害者の相談も受けるが、昨春以降に件数は急増した。「自分が好きなものを飲んで」。相談に来た女性にはまず、日本茶やコーヒー、紅茶を選んでもらう。多くの女性が「え、私が選んでいいの?」と戸惑うという。だから、吉祥さんはこう問いかける。「私たちが持つ当たり前の権利ってなんだろう」と。「彼女たちは家の中で娘として妻として嫁として役割を背負わされてきた。自分にも権利があると考えられる人が多くないのは、女性の自立を応援してこなかった国の、社会の責任ではないか」

*1-2-1:https://news.yahoo.co.jp/articles/aa55ec861ba9ef03e6ad714d3df5127d3b1dd3cb (Yahoo、毎日新聞 2021/5/26) 都立高入試、男女の合格ラインで最大243点差 8割で女子が高く
 東京都立高校の普通科の一般入試は、募集定員を男女に分けて設定しているため性別によって合格ラインが異なる。都教委は毎年30~40校を対象に是正措置を講じているものの、2015~20年に実施した入試では、対象校の約8割で女子の合格ラインが最終的に高かったことが、都教委の内部資料で判明した。1000点満点で最大243点上回るケースや、男子の合格最低点を上回った女子20人が不合格とされた事例もあった。毎日新聞の調べでは、都立高は全国の都道府県立高校で唯一、男女別の定員があり、各校とも都内の公立中学の卒業生の男女比に応じて決まる。合否は中学校が提出する内申点(300点満点)と、国数英理社の筆記試験(700点満点)の合計で決めるが、合格ラインは男女で異なる。著しい格差を防ぐため、都教委は1998年の入試から、特に差が大きい傾向にある高校を対象に是正措置を行っている。定員の9割までは男女別に合否を判定し、残り1割は男女合同の順位で合格者を決めるもので、近年は普通科高校(約110校)のうち30~40校程度で実施している。都教委はその効果を確認するため合格ラインの変化を毎年調査している。毎日新聞が調査結果の資料などの情報公開を求めたところ、都教委は今年3月、15~20年入試の是正措置の対象校(延べ199校)の回答用紙について、校名の特定につながる情報を伏せる形で開示した。このうち無回答や明らかに誤記と考えられるものを除く184校の男女差を毎日新聞が分析した。是正前は約9割の170校で女子の合格最低点が高く、男子との差は、①100点以上=27校②50~99点=41校③40~49点=31校④30~39点=27校⑤20~29点=26校⑥10~19点=8校⑦9点以下=10校。最大で女子の方が426点高い学校もあった。残り1割は男女が同水準か、男子の合格最低点の方が高かった。是正後も約8割の153校で女子が上回った。男子との差は、①5校②14校③5校④13校⑤34校⑥36校⑦46校と全体的に縮小したものの、それでも最大で243点の差がみられるなど是正につながっていないケースもあった。毎日新聞は、是正措置を講じていない高校の男女別の合格最低点についても情報公開請求したが、都教委は「学校の順位付けが可能となり、競争が助長される」などとして不開示にした。男女で合格ラインに差がある現状について、都教委の担当者は「入試が男女別であることは周知しているので、受験生は合格ラインが異なることを理解した上で受けているはずだ」と制度自体に問題はないとの認識だが、「現在の是正措置が完璧ではないことは認識している。世の中の情勢に合わせて改善策を考えていきたい」と話した。文部科学省は「一般論としては、合理的な理由なく性別によって異なる扱いを受けるのは望ましくない」としつつ、「男女別定員制は東京都が『合理的』と判断して採用しているものと考えている」と静観する。
   ◇
 今回明らかになった東京都立高校の合格ラインの男女差を含め、入試を巡るジェンダー問題について、ご意見を募集します。毎日新聞東京社会部(t.shakaibu@mainichi.co.jp)まで。

*1-2-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20210605&ng=DGKKZO72585360U1A600C2MY5000 (日経新聞 2021.6.5) 実力も運のうち 能力主義は正義か? マイケル・サンデル著 成功は努力の結果ではない 《評》東京大学教授 宇野重規
 『これからの「正義」の話をしよう』や『ハーバード白熱教室』で知られるマイケル・サンデルの新著である。現代社会に広がる能力主義の支配に対して問題を提起し、「機会の平等」を超えた共通善の実現を目指すサンデルの議論は、そこであげられている数々の事例の豊富さもあって読むものを飽きさせない。読んでいて、思い起こしたのは一昨年の東京大学入学式における、上野千鶴子名誉教授による祝辞である。その祝辞はいささか型破りのものであった。入学者に対する単なる祝辞にとどまらず、入学者における女性比率の低さや、女子学生の入りにくさに対する厳しい指摘を含むものであった。さらに入学者が、自分ががんばったから報われたと思っているとすれば、そう思えること自体が、「あなたがたの努力の成果ではなく、環境のおかげだった」という発言は大きな波紋を呼んだ。入学者の努力自体は否定していない上野氏に対し、サンデルはよりストレートである。ハーバードの学生における「自分の成功は、自分の手柄、努力の当然の結果」とする能力主義的な信念の拡大に警鐘を鳴らすサンデルは、入学を手助けした親や教師の存在を指摘し、さらにはそもそもの才能や素質すら本人の功績とは言い切れないと強調する。大切なのは感謝と謙虚さであり、社会の共通善に対する貢献であると説く。それでも現実には、能力主義の信念に歯止めがかからない。格差が拡大する中、成功者はどうしてもそれを自分の努力の結果と思いたがるし、貧困に苦しむものは、単なる経済的苦境のみならず、道徳的な屈辱と怒りに苛(さいな)まれる。難しいのは左派やリベラル派にも、この信念が見られることである。米国のオバマ元大統領もまた、「努力が報われるのが米国」と繰り返した。逆にトランプ大統領は、「才能と努力の許すかぎり出世できる」とはあまり言わなかったという対比は面白い。現実の米国の社会的流動性は低く、金持ちやエリートの世襲の貴族社会が能力主義の名の下に固定化しているとサンデルは指摘する。その批判の鋭さを思うと、処方箋があまり明確ではないことが惜しまれるが、それだけ問題が難しいということだろう。

*1-3-1:https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA034E00T00C21A6000000/ (日経新聞 2021年6月3日) 迫る少子化危機、育児支援急ぐ世界 持続成長のカギ
 世界各国・地域が少子化対策・育児支援策の拡充を急いでいる。日本では3日、衆院本会議で男性が育児休業をとりやすくする改正育児・介護休業法が可決、成立した。米国でもバイデン政権が10年間で1.8兆㌦規模(約198兆円)を投じる対策を打ち出した。背景には新型コロナウイルス危機が加速させた世界的な出生数の減少がある。子育て環境の整備に加えて、出産への経済的な不安を和らげる対策が肝となる。3日に成立した改正育児・介護休業法は従来の育児休業制度に加えて、男性は子の誕生後8週間まで、最大4週間の育児休業を取れるようにする。業務を理由に育休取得に二の足を踏む男性も多いため、改正法では労使の合意があれば育休中もスポットで就労できる仕組みも盛り込んだ。休業の申し出も従来は1カ月前までに必要だったが、2週間前までに短縮した。機動的に取得できる仕組みに目を配った。厚生労働省がまとめている妊娠届などを基に推計すると、21年の出生数は80万人を割り込む可能性が高い。16年に100万人を割り込んでから約5年で年間20万人程度も新生児が減る。出生率の低下は将来の労働力の減少などを通じて中長期の経済成長力を押し下げる。第一生命経済研究所の星野卓也氏が人口の推移などを基に試算したところ、30年代後半に日本は潜在成長率が0.2%程度のマイナスになる。「出生数の急減が続いて少子高齢化が加速すれば、40年代以降も成長率が低迷を続ける可能性がある」と指摘する。今回成立した改正法はあくまで男性の育児参加を促す環境づくりがメーンで、財政支援なども繰り出して国を挙げて支援する海外の各国・地域との差は大きい。バイデン政権が打ち出した少子化対策「米国家族計画」に盛り込まれた対策は幅広い。子育て世帯の生活を支援するため、最長で12週間取れる有給の家族・医療休暇などを提供。低中所得層の家庭へのチャイルドケアの公的支援も増やす。子育て世帯への税額控除を使った実質手当の給付も拡大する。21年に限って導入した同制度では子ども1人につき年最大3000ドル(6~17歳の場合)を給付するとしていたが、これを5年間延長する。教育ではすべての3・4歳児への無償の幼児教育の提供や2年間のコミュニティーカレッジの無償化、中低所得者向けの児童保育の補助やマイノリティー向け奨学金の拡大などをメニューに並べた。米疾病対策センター(CDC)によると20年の米国の出生数は前年比4%減の約360万5000人だった。早めの対策で少子化が少子化を招く負の連鎖を防ぐ。フランスも少子化対策を強化する。7月から男性の育児休暇を従来の14日から28日に延ばす。会社側は最低でも7日分の取得を認める必要がある。男性の育休は子どもの生後4カ月以内に1度で取る必要があったが、生誕後6カ月で2回に分けて取得できるようにもする。日本以上に少子化が深刻な韓国も22年度からは出産時に200万ウォン(約20万円)のバウチャー(サービス利用券)を支給する計画など、財政出動もからめた支援強化を急ぐ。産児制限を40年以上続けてきた中国も少子化から目を背けられなくなっている。5月末には1組の夫婦に3人目の出産を認める方針を示した。出産にからむ休暇や保険も整える。ニッセイ基礎研究所の調査で、コロナ禍で将来的に持ちたい子どもの数が減った40歳以下の回答者が挙げた理由で最も多かったのは「子育てへの経済的な不安」だった。少子化に対抗するには、育児休暇をとりやすくするなど今回の改正法のような子育て環境の支援に加えて、出産や結婚をちゅうちょさせるような経済不安を和らげる必要もある。政府の子育て関連支出を国内総生産(GDP)比でみると日本は1%台で、欧州諸国の3%台を下回る。省庁横断で取り組む「子ども庁」創設論議が本格化するが、財政支援も含めた少子化対策に各国・地域が本腰を入れるなか、後手に回ればコロナ後の世界経済で存在感を失うリスクをはらむ。

*1-3-2:https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA043NS0U1A600C2000000/?n_cid=BMSR3P001_202106041436 (日経新聞 2021年6月4日) 20年出生率1.34、5年連続低下 13年ぶり低水準
 厚生労働省が4日発表した2020年の人口動態統計によると、1人の女性が生涯に産む子どもの数を示す合計特殊出生率は1.34だった。前年から0.02ポイント下がり、5年連続の低下となった。07年(1.34)以来の低水準となっており、新型コロナウイルス禍の影響も重なり21年には一段と低下する可能性が高い。出生率は団塊ジュニア世代が出産適齢期に入ったことを背景に、05年の1.26を底に緩やかに上昇し15年には1.45となった。その後、晩婚化や育児と仕事の両立の難しさなどが影響し、再び低下基調にある。20年の出生率を女性の年代別にみると20代以下の低下が目立つ。最も出生率が高かったのは30~34歳で、0.0002ポイント前年を上回った。40歳以上の出生率もわずかに伸びたものの、全体として20代以下の落ち込みを補うことはできなかった。20年に生まれた子どもの数(出生数)は過去最少の84万832人で、前年から2.8%減った。婚姻件数は12%減の52万5490件となり、戦後最少を更新。コロナ禍による経済不安や出会いの機会の減少などで、若い世代が結婚に踏み切りにくくなっている。厚労省がまとめている妊娠届の減少などをもとに日本総合研究所の藤波匠・上席主任研究員が試算したところ「21年の出生数は80万人割れの可能性が高い」という。20年の死亡者数は137万2648人となり、前年から8445人少なくなった。高齢化で死亡者数は増加基調が続いていたが、前年の水準を割り込むのは11年ぶり。死因別ではコロナで3466人が亡くなる一方、肺炎で亡くなる人が前年より1万7073人少なくなった。手洗いやマスク着用、接触機会の減少などコロナの感染対策が他の感染症などによる死者数を減らしたとみられる。死亡者数から出生数を引いた自然減は53万1816人と過去最大の減少となった。

*1-3-3:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/689885 (佐賀新聞 2021年6月11日) 出生数最少84万人、急減の流れを止めたい
 2020年生まれの赤ちゃんは統計開始以降最少の84万832人となった。女性1人が生涯に産む子どもの推定人数「合計特殊出生率」は1・34。婚姻件数も52万5490組と戦後最少だった。新型コロナウイルス流行で結婚、妊娠を避ける男女が増え少子化が加速。21年の出生数は従来推計より10年早く70万人台に落ちることが濃厚だ。このままだと将来の働き手減少、社会保障の担い手不足がさらに深刻となる。近隣アジア諸国も同じ状況に危機感を強める。この流れを止めるため、政府、自治体は子どもを産み育てやすい環境を早急に整える政策を具体化しなければならない。コロナ禍で母子への感染不安が高まり、立ち会い出産、里帰り出産も難しくなった。行政側は相談態勢強化、里帰りできない人の育児支援、さらには妊婦が感染の不安なく通院でき、感染した場合でも十分なケアの下で出産できる医療体制整備に一層力を注ぐべきだ。雇用情勢悪化による解雇や給料カットで経済的余裕を失ったカップルが多いことも出生数減少に響いている。今彼らを支えなければワクチン接種が進んでも出生数回復が難しくなる。政府は困窮世帯に3カ月で最大30万円の支給などを行うが、結婚や出産を後押しする観点での新たな支援に乗り出すべきではないか。父親の家事育児参加を促すため、子どもが生まれて8週間以内に計4週分休みを取れるようにする「男性版産休」を盛り込んだ改正育児・介護休業法が成立した。こうした基本的な子育て環境の整備も官民一体で引き続き推進する必要がある。出生数最多は第1次ベビーブームの1949年の269万人超。71~74年の第2次ブームも年200万人を超えた。その後減少し2019年に初めて90万人を割り込み、第1次ブーム当時の3分の1程度に落ち込んだ。移民など国境を越えた人の移動を除けば国の人口増減は出生数と死亡数で決まる。近代以降、母子の栄養、健康状態が改善し乳児死亡率が下がった。そうなれば昔のように子どもを多く産む動機が薄れる。医学の進歩で平均寿命は大きく延びた。感染症流行という突発要因がなくても、こうした「文明の発展」に連れ人口構造が「多産多死」から「少産少死」へ変化する大きな流れにはあらがえない。が、何とかその進行速度は抑えたい。一足早く人口減少期に入った日本のみならず中国、韓国も思いは同じだろう。コロナ禍に見舞われた20年の中国の合計特殊出生率は1・3と日本を下回り、共産党は16年の「一人っ子政策」廃止に続き第3子まで容認する方針を決めた。韓国も20年の出生数が前年比10%減で初めて人口が自然減になった。出生率は0・84と極端に低い。少子化は東アジア全域で加速している。少子高齢化がピークに近づく40年ごろの日本は、ただでさえ不足する就業者の5人に1人が医療・福祉の仕事に取られる社会となることが予想される。それに向け日本政府は、国内の介護事業の要員にアジア諸国からの技能実習生を呼び込む。一方、アジアの高齢化をビジネスの好機と捉え日本式介護事業を輸出する構想も進む。各国の少子化は東南アジア諸国も巻き込む人材争奪を呼び日本の高齢者介護を揺るがしかねない。出生数急減を何とか乗り越えたい。

*1-3-4:https://digital.asahi.com/articles/ASP697453P69ULFA010.html?iref=comtop_7_06 (朝日新聞 2021年6月9日) 脱炭素など4分野重視、財政目標見直しに含み 骨太原案
 政府は9日の経済財政諮問会議で、今年の「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)」の原案を公表した。グリーン(脱炭素)、デジタル化、地方創生、子育て支援の4分野に予算を重点配分する方針を明記。2025年度に国と地方の基礎的財政収支(プライマリーバランス=PB)の黒字化をめざす財政再建目標は、今年度内にコロナ禍の影響を踏まえて検証するとし、目標時期の見直しに含みを持たせた。骨太の方針は、政府の経済財政運営や来年度予算案の基本となる。昨年9月に発足した菅政権としては初めての方針で、与党などとの調整を経て、6月中旬に閣議決定する予定だ。原案によると、重点4分野のうち、政権がめざす脱炭素化に向けては、2兆円規模の基金や優遇税制などで企業の投資を後押し。炭素を出さない電気自動車や燃料電池車の普及を進める。再生可能エネルギーの主力電源化にも「最優先の原則」で取り組むとした。デジタル化では、9月に発足するデジタル庁を中心に行政手続きのオンライン化を5年以内に進める一方、マイナンバーカードの健康保険証や運転免許証との一体化などでカードの普及を加速させるとした。子育て支援では、児童手当などの既存の施策を総点検し、具体的な評価指標を定めた「包括的な政策パッケージ」を年内につくるとした。与党内で浮上する「子ども庁」については、子どもの問題に対応する行政組織を創設するため、「早急に検討に着手する」と記すにとどめた。地方関連では、都市との賃金格差を埋めるため、菅首相がこだわる最低賃金の引き上げについて、「より早期に全国加重平均1千円とすることを目指し、本年の引き上げに取り組む」と書き込んだ。財政再建については、25年度のPB黒字化をめざす目標を「堅持する」と記し、22~24年度も、社会保障費の伸びをその年の高齢化による範囲におさえるなどの歳出抑制を続けるとした。しかし、目標については、コロナ禍による経済や財政への影響を今年度内に検証し、その結果を踏まえて「目標年度を再確認する」としている。巨額のコロナ対策で財政悪化は加速しており、検証の結果次第では、目標時期が先送りされる可能性もある。
●「骨太の方針」原案の主なポイント
〈グリーン〉
・再生可能エネルギーを最優先し、最大限の導入を促す
・成長に資するカーボンプライシングはちゅうちょなく取り組む
・電気自動車や燃料電池車の普及を促進
〈デジタル化〉
・行政手続きの大部分を5年以内にオンライン化
・22年度末までにマイナンバーカードをほぼ全国民に
〈地方創生〉
・都市部と地方の二地域居住・多拠点居住を促進
・最低賃金はより早期に全国加重平均千円を目指し、本年の引き上げに取り組む
〈子育て支援〉
・包括的な政策パッケージを年内に策定
・子どもの課題に対応する行政組織創設の検討に着手
〈コロナ対策〉
・緊急時対応はより強力な体制と司令塔の下で推進
・感染症有事の体制強化で、法的措置を速やかに検討
〈財政〉
・25年度の基礎的財政収支黒字化目標を堅持。年度内にコロナ禍の影響を検証し、目標年度を再確認
・社会保障費の伸びをおさえる歳出抑制策などを22~24年度も続ける
・歳入面での応能負担を強化する
〈その他〉
・経済安全保障の取り組みを強化

*1-3-5:https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC06D5C0W1A400C2000000/ (日経新聞 2021年6月10日) 世界でホットな地熱発電 出遅れ日本も「地殻変動」
 脱炭素の流れを受け、世界で地熱発電が盛り上がっている。再生可能エネルギーの中でも、太陽光や風力のように天候に左右されない安定性が評価され、発電容量は10年で4割増えた。世界3位の潜在量を持ちながら原子力優先で出遅れた日本も、政府が2030年に発電所を倍増させる方針を掲げ、にわかに「地殻変動」が起きている。
●地熱発電所、2030年に倍増
「地熱は稼働までの期間が長いが(温暖化ガスの排出量を13年度比で46%減らす30年度に)間に合わせたい。環境省も自ら率先して行動する」。小泉進次郎環境相が4月下旬に開発加速を宣言した地熱発電。6月1日には、河野太郎規制改革相が30年に地熱発電施設を倍増する目標を掲げ、脱炭素電源の有力な選択肢として浮上してきた。地熱発電は地下から150度を超す蒸気や熱水を取り出してタービンを回し発電する。昼夜ほぼ一定の出力で発電でき、再生エネ電源の中で安定性は群を抜く。設備利用率は70%強と太陽光、風力の10~20%程度をはるかに上回る。国際再生可能エネルギー機関(IRENA)によると、20年末の発電容量は1400万キロワットを超え、10年で約4割増えた。直近5年で伸びが著しいのがトルコだ。00年代から政府系の地質調査所が資源量の調査を進め、国策として事業者の参入を促した。英BPなどによると、10年時点で9万キロワットだった発電容量は20年に154万キロワットへ急増した。東アフリカのケニアでも、発電容量が119万キロワットと過去10年で6倍に増えた。国際エネルギー機関(IEA)統計などによると同国の発電容量の半分近くを占める。干ばつで発電量が安定しづらい水力発電所の代替手段として地熱発電が盛んだ。地熱のエネルギー源は地下のマグマの熱で、資源量が多いのは環太平洋火山帯に位置する地域と、アフリカの一部地域やアイスランドなどとなっている。潜在する資源量は米国が3000万キロワットと首位に立ち、インドネシア、日本が続く。世界3位の日本は潜在する資源量2340万キロワットに対し、実際の発電導入量は20年時点で55万キロワットにとどまる。10年前からほぼ横ばいだ。米国やインドネシアが事業者への税制優遇や政府支援などで、20年の導入量をそれぞれ10年比12%増の370万キロワット、同92%増の228万キロワットまで伸ばしたのとは対照的だ。
●日本の開発コスト高く
 日本市場が低調な理由はいくつかある。まず、開発コストの高さが挙げられる。西日本技術開発(福岡市)の金子正彦・特別参与が経済協力開発機構(OECD)の資料などで調べたところ、日本は地熱発電所を建設してから稼働を終えるまでに1キロワット時当たり税抜き10~18円の費用がかかる。これに対し米国は5~9円、ニュージーランドは3~5円と低い。山間部が多い日本は平地主体の海外と比べ工事費が膨らみがちだ。掘削技術や大型の重機をもつ企業も限られる。地熱開発は油田と同じで掘ってみないと正確な資源量が分からない。国内では資源量の調査から稼働まで、平均15年近くかかる。実際の成功率は3割程度といわれ、1本に5億円強かかる井戸を当てるまで複数、掘り続ける必要がある。こうした事業リスクをのんで長期投資できるような民間企業はごく一部に限られる。石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)の安川香澄・特命審議役は「ある程度まで地熱開発が進んで民間任せになった途端、開発が止まるのはよくあるケース」と指摘する。地熱開発には国の後押しが不可欠なのだ。国内ではオイルショックの起きた1970年代から地熱開発の機運が盛り上がったが、90年代に入ると原発政策に押されて勢いを失った。これが2つ目の理由だ。出力1万キロワットを超す地熱発電所の新設は96年稼働の滝上発電所(大分県九重町)を最後に冬の時代に突入。19年の山葵沢発電所(秋田県湯沢市)まで23年間なかった。業界関係者からは「塩漬けの20年」などと呼ばれる。
●タービンの世界シェア6割
 国内市場が低調な半面、日本企業の技術は世界で求められている。地熱発電用タービンでは、東芝や三菱重工業など日本勢の世界シェアが6割強に達する。「この数年でインドネシアや東アフリカからの引き合いが強まった」と話すのは東芝エネルギーシステムズ海外営業戦略部の川崎博久氏。同社は建設中の発電所を含めて米国やケニアなど11カ国でタービンを納入した。海外メーカーと比べ出力が低下しづらく、長期の使用にも耐えられる点が特長だ。低い温度でも1000キロワットから発電できる小型地熱発電を商品化するなど、この分野では世界の先頭を走る。三菱重工も13カ国にタービンを納入し、特にアイスランドではシェアが55%に達している。同国は地熱発電所の温排水を利用した温泉リゾート「ブルーラグーン」で知られ、自国の電力を全て再生エネでまかなう。三菱重工は地熱開発の初期段階で国営電力と取引が生まれ、その後の連続受注に繫がった。設備の設計や調達、建設まで一括で請け負う点も評価されている。商社も海外企業とEPC(設計・調達・建設)契約を結び、海外でノウハウをためる。豊田通商は現代エンジニアリングと共同で世界最大規模のケニア・オルカリア地熱発電所(最大出力28万キロワット)を受注した。伊藤忠商事と九州電力はインドネシア・サルーラ地区の地熱プロジェクトに開発段階から参加。18年までに3基が稼働し、総出力は33万キロワットにのぼる。脱炭素の流れを受け、日本でも地熱発電は見直されつつある。北海道では環境省が15年に国立・国定公園の「第1種特別地域」の地下で域外から斜めに穴を掘って開発できるよう規制を緩和し、企業の進出構想が相次ぐ。22年に北海道函館市でオリックスが道内40年ぶりとなる大型地熱発電所を稼働。出光興産がINPEXと組んで北海道赤井川村で計画中の地熱発電所は、国内最大級の出力との観測もある。小泉環境相は関係法令の運用見直しなどで、地熱発電の稼働にかかる時間を最短8年まで縮める方針も明らかにした。技術もポテンシャルもあるのに、導入量は低調――。そんな状況を覆す素地が整いつつある。

*1-3-6:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/690450 (佐賀新聞 2021年6月12日) 全国知事会議、コロナ後の地方像を
 今後1年の活動方針を決める全国知事会議が新型コロナウイルス感染症の流行のため2年連続オンライン方式で開かれた。「新型コロナ感染抑制に向けた行動宣言」「ポストコロナに向けた日本再生宣言」などがまとめられたように、コロナ対策が議論の柱となった。会議では多くの知事が、10月から11月にかけ必要な国民のワクチン接種を全て終えるとの菅義偉首相の目標に対し意見を述べている。いつどの種類のワクチンが自治体に供給されるのか早急にスケジュールを示すべきだと強く求めた。さらに千人以上の大企業などから始める職場接種には、地方の中小企業が置き去りにされるとの批判もあった。迅速な接種には、自治体が発送する接種券の有無をどうするかも含めて、地元に接種体制を任せる柔軟な対応が必要ではないか。第5波の可能性、特に感染力が強いデルタ株(インドで確認された変異株の一つ)流行への懸念も強く示された。国の検査体制の充実を求める声が出たのも当然と言える。知事らもワクチンがコロナとの闘い方を大きく変える「ゲームチェンジャー」と認識する。だが、国からのワクチン供給の見通しが立ちにくく、都道府県や市区町村は、態勢づくりに苦労してきた。菅氏が4月に高齢者の接種を「7月末をめどに終了」と表明してからは、達成するよう国から強い圧力を受けている。国と地方の関係は対等ではなく、昔の上意下達に戻った雰囲気である。会議では「まん延防止等重点措置」の適用を知事が要請して政府が決定するまで時間がかかり過ぎるとして、手続きの簡素化を求める意見もあった。緊急事態宣言の対策では、自治体が選べるよう求める声もあった。感染の状況を分かっている自治体が、自ら対策を組み立てられるよう自由度を上げるべきである。病床の逼迫(ひっぱく)に備えて、都道府県境を越え広域搬送する仕組みをつくるべきだとの提案もあった。これらの実現に関係法の改正が必要であれば、今国会を延長してでも国は迅速に対応してほしい。本来なら昨年のうちにコロナ対策や迅速な接種の在り方を広く議論し、必要な態勢を整えておくべきだった。それを政府は怠った。対策に国の戦略性が乏しいのもそのためだ。感染症と最前線で向き合う医療関係者や自治体が、つけを払わされていると指摘できる。コロナ禍は、給付金の支給やワクチン接種での「行政のデジタル化の遅れ」を浮き彫りにし、地域経済を支える飲食や観光、交通などの事業者に大きく影響した。今後の地方活性化の方向性として知事会は、デジタル化を進めるとともに、第5世代(5G)移動通信システムに対応する通信網を基礎的なインフラとして全国普及させるよう提言した。オンラインでの診療や遠隔手術も可能となり都市との医療格差も縮小する。リモートワークの普及にもつながると期待したい。2050年に脱炭素社会を実現するには、再生可能エネルギーの普及が不可欠である。土地や風、バイオマスなどが多い地方には有利だ。知事会が提案する「新次元の分散型国土」を創出するチャンスである。国の地方創生策に手詰まり感があるだけに、コロナ後の国土の在り方、地方重視の国土政策を地方から打ち出すべきである。

*1-3-7:https://digital.asahi.com/articles/DA3S14937001.html (朝日新聞 2021年6月12日) 64歳以下の接種、誰を優先 各自治体、独自で判断 高齢から順番・20~30代・職種別 コロナワクチン
 新型コロナウイルスワクチンについて、1回目の接種を終えた65歳以上の高齢者らが3割となる中、「64歳以下」への接種に乗り出す市区町村が目立ち始めた。感染拡大を防ぎ、接種ペースを加速させるため、市区町村ごとに独自に優先対象枠を設定する動きも広がっている。ワクチン接種について、政府は当初、供給量が限られることなどから、(1)医療従事者ら(2)高齢者(3)基礎疾患のある人、高齢者施設などで働く人、60~64歳の人などと順番を決めていた。だが、ワクチン供給が本格化した5月以降、方針を修正。64歳以下の接種は各市区町村に判断を委ねることとした。各市区町村がこれまで明らかにしている方針をみると、政府が当初示した通りの60~64歳や、教育関係者を対象とするところが目立つ。一方で、独自の優先対象枠を設けるところも。大まかに分類すると、「年代」と「職種」に分かれている。例えば東京都新宿区では、59歳以下の集団接種については20~30代の予約を優先するとしている。都内では7日までの1週間の新規感染者のうち、20~30代が5割近くを占める。こうした状況を踏まえ、新宿区は行動範囲が広く比較的症状が出にくいとされる20~30代にいち早く接種することで、他の世代への感染を防ぐ狙いだ。一方、夏の観光シーズンを前に、沖縄県では観光業界に携わる人を対象とする動きも。沖縄本島北の2島からなる伊平屋(いへや)村では、宿泊業やダイビングショップ、飲食店従業員、島外との唯一の交通手段であるフェリーの船員らの優先接種を始めた。村の担当者は「小さな島の中でも行動範囲が広く、多くの人に触れあう可能性がある人に先に接種してもらうことにした」と説明する。
■1日100万回、急ぐ政権
 政府が64歳以下にも対象を拡大するのは、菅義偉首相が掲げる「1日100万回接種」を、できるだけ早く実現させたいからだ。官邸幹部の一人は「ワクチン接種が進めば、なんとなく政権に好感が持たれる。五輪への雰囲気も徐々に変わってくる」と期待する。「7月末までに高齢者接種を終わらせる」「10月から11月にかけて、必要な国民、希望する方、すべて(の接種)を終える」。首相自らがこうした具体的な目標を掲げることで、コロナ対策が進んでいることを国民にアピールするとともに、自治体などの接種現場を動かす「圧力」とする狙いがある。さらに一般の人も対象にした企業や学校などでの「職域接種」は21日からで、先に準備が整った企業では来週にも始まる。予約に空きの目立つ自衛隊による大規模接種センターについては、対象年齢を64歳以下に引き下げることを検討する。接種機会の公平性をどう担保するかなどの課題も多いなか、政府関係者はこう説明する。「自治体ごとに差が生じるとの意見はあるが、できるだけ早く接種を進めるということこそが、一番大事だ」

<年齢差別>
*2-1-1:https://www.nikkei.com/article/DGXZQODZ202BP0Q1A320C2000000/?n_cid=NMAIL006_20210419_Y (日経新聞 2021年4月19日) YKK、正社員の定年廃止 生涯現役時代に企業が備え
 日本企業が「生涯現役時代」への備えを急いでいる。YKKグループは正社員の定年を廃止。ダイキン工業は希望者全員が70歳まで働き続けられる制度を始めた。企業は4月から、70歳までのシニア雇用の確保が求められるようになった。少子高齢化に歯止めがかからず人手不足が続く中、企業がシニアの意欲と生産性を高める人事制度の整備に本格的に乗り出した。YKKは4月、国内事業会社で従来の65歳定年制を廃止し、本人が希望すれば何歳までも正社員として働けるようにした。同社は職場での役割に応じて給与が決まる役割給を採用している。今後は会社が同じ役割を果たせると判断すれば、65歳以上でも以前の給与水準を維持できるようにした。「従来も年齢だけを理由に処遇を変えたり、退職させたりするのは公正でないという考えが強かった」と同社幹部は説明する。同社は今後5年間で約800人が従来定年の65歳に到達する見通しだった。その大半が正社員としての雇用継続を希望するとみられる。定年廃止による新規の採用抑制はしない。人件費が増える可能性があるが、人手不足の中、熟練技能者などシニア活用のメリットは大きいと判断した。三谷産業も21年4月から再雇用の年齢上限をなくし、65歳以上は1年ごとの更新制とした。再雇用者になかった昇給制度も設ける。専門知識や人脈を生かし、社内外の技術指導や営業先の開拓など本業以外の仕事で貢献した場合、別途報酬を支払う「出来高払いオプション制度」も新設した。実力あるシニアが現役に近い報酬を得られるようにする。ダイキンの定年は60歳で従来は65歳まで希望者を再雇用していた。今回、再雇用の期間を5年延長した。原則一律だった再雇用者の賞与も成果に応じて4つの段階を設け、最大1.6倍の差がつくようにした。シニアの働く意欲を引き出す。三菱ケミカルも22年4月、現在60歳の定年を65歳に引き上げる。将来の定年廃止も検討している。給与制度は能力・経験に基づく職能給と、仕事の成果・役割に基づく職務給で構成していたが、21年4月から職務給に一本化した。各社が対応を急ぐ背景には21年4月に施行された改正高年齢者雇用安定法がある。従来制度で企業は従業員が希望する限り65歳まで雇用を継続する義務があるが、法改正で70歳まで就業機会確保の努力義務が課された。年金の支給開始年齢が段階的に引き上げられるなか、所得の空白期間をなくすための措置だ。大半の企業は再雇用期間の単純延長などで対応するが、多くは現役時代に比べて2~5割程度給与が下がる。シニアのやる気と生産性の低下が課題だ。定年を廃止する企業は、成果に応じた賃金制度を導入するなどして給与の減少を一定程度にとどめる。企業がシニアに期待する役割はさまざまだ。20年10月に60歳定年を廃止したシステム開発のサイオスグループは、IT(情報技術)人材が不足するなか、案件遂行で経験豊富な中高年の技術者取り込みを狙う。成果に応じた評価をシニアでも徹底する。製造業では生産管理部門などでベテラン技術者のニーズがある。一方、専門性のない一般管理職などはシニアのニーズは少ない。三谷産業などは、新たな再雇用制度の開始に合わせ、全社員にキャリア面談を義務付け、定年後を見据えたスキル習得を支援する。定年は世界では一般的でない。米国や英国などは年齢を理由とする解雇は禁止・制限されている。一方、厚生労働省の20年の調査では国内で定年のない企業は2.7%にとどまる。日本の賃金は年功色が強く解雇規制も厳格なため、単純に定年を延長・廃止すれば、人件費増加に歯止めがかからなくなる。みずほリサーチ&テクノロジーズが再雇用などで70歳まで働く人が増えた場合の影響額を20年に試算したところ、65~69歳の従業員にかかる企業の人件費は30年時点で19年比6%増の5.5兆円に、40年時点で同29%増の6.7兆円に増える。定年を廃止する場合、高齢になり職務を十分に果たせなくなったシニアを解雇する仕組みも必要になる。話し合いを通じた双方の合意で契約を終える形を想定している企業が多いが、合意に至らないケースも考えられるからだ。金銭補償などを伴う解雇ルールの策定も求められる。

*2-1-2:https://digital.asahi.com/articles/DA3S14894047.html (朝日新聞 2021年5月5日) 70歳まで働く機会、中小の対応まだ3割 コロナ禍、人件費増も重荷
 70歳まで働く機会の確保を企業の努力義務と定める改正高年齢者雇用安定法が4月に施行されたのを受けて、日本商工会議所が中小企業に対応を聞いたところ、必要な対応を講じているのは約3割にとどまることがわかった。新型コロナウイルスの感染拡大で企業の業績悪化が目立つ中、人件費の負担増につながる施策の導入は難しい。中小企業にとって、法改正への対応はハードルが高いことがうかがえる。日商が4月14~20日に全国の会員企業2752社を対象に調査し、76.2%から回答を得た。4月30日に発表した調査結果によると、「必要な対応を講じている」企業が32.6%あった一方、「具体的な対応はできていない」は31.9%。「具体的な対応を準備・検討中」は10.6%だった。日商は「就業規則や労働環境の整備も必要で、コロナ禍で対応が遅れた面もあるのでは」(産業政策第二部)とみている。必要な対応を講じている企業の具体策(複数回答)は、70歳までの継続雇用制度の導入(65.8%)、定年制の廃止(20.2%)の順に多かった。「対象の社員がいない」「対象の社員はいるが、努力義務である」ことを理由に「対応予定はない」と答えた企業も計24.9%にのぼった。「専門職の技術者の再雇用には同一労働同一賃金の対応が課題で、なかなか検討が進まない」との声もあったという。日商は30日、4月から中小企業に適用された「同一労働同一賃金」への対応について、適用直前の2月に実施した調査結果も発表した。回答のあった全国の中小企業約3千社のうち、「対象になりそうな非正規社員がいる」のは445社。このうち「対応のめどがついている」のは56.2%にとどまった。昨年2~3月の前回調査より9.5ポイント増えたが、対応が遅れている企業も多い。

*2-2-1:https://www.nishinippon.co.jp/item/n/747686/ (西日本新聞社説 2021/6/1) 高齢医療負担増 公平で持続可能な制度に 急速に進む社会の高齢化に対応するため、全ての世代に公平で、持続可能な医療保険制度の構築を急がねばならない。75歳以上の後期高齢者で一定収入がある人を対象に、医療費の窓口負担を1割から2割に引き上げる医療制度改革関連法案の参院審議が大詰めを迎えている。今国会で成立の見通しだ。年収が単身で200万円、夫婦世帯で計320万円以上の約370万人に、2022年度後半から新たな負担が加わる。現役世代並みの所得がある人は既に3割負担になっている。年収には年金も含まれ、負担増は後期高齢者の約2割に当たる。改革の眼目は現役世代の負担軽減だ。後期高齢者の医療費のうち自己負担分を除く約4割は現役世代の保険料から支援金という形で賄われている。本年度は総額6兆8千億円(1人当たり6万4千円)に上る。このままでは団塊の世代が全て後期高齢者となる25年度の支援金は8兆1千億円(同8万円)に達すると厚生労働省は試算する。法案審議でも現役世代の負担軽減に異論はなく、論点は対象の線引きと受診控えによる健康悪化の懸念にほぼ絞られた。厚労省の試算は負担引き上げに伴う受診減を織り込み、75歳以上の医療費が年約900億円減少するとみる。一方、実際の負担については、当初の3年間は外来受診の負担増を月3千円以内に抑える経過措置を設けるほか、高額療養費制度の活用でも軽減を図れるとしている。医療費の膨張を考えると、本来必要がない受診の抑制は重要だ。ただし、本当に必要な受診を我慢した結果、健康が悪化してしまうことがあってはならない。政府の説明は「受診行動の変化のみで健康への影響を分析するのは困難」と繰り返すばかりで、不安は拭い切れない。高齢者側にとって、所得は同程度でも貯蓄の有無や必要な支出の多寡などで経済事情はさまざまだろう。所得ごとの受診記録などを基に健康の悪化につながっていないか、検証を続けることが必要だ。現在3割弱にとどまる健康診断受診率を高めるといった疾病を早期に発見する環境整備も求められる。今回の改革でも、現役世代の負担軽減効果は25年度で1人当たり800円程度にすぎない。法案の付則には、速やかに社会保障制度改革と少子化対策の総合的な検討に着手するよう書き込まれた。大きな宿題だ。後期高齢者医療制度の導入から既に13年になる。来年から団塊の世代が75歳に達し始めることは自明の理だったはずだ。必要な負担を国民に説くことは政治の責務である。改革本丸の先送りはもう許されない。

*2-2-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20210607&ng=DGKKZO72637810W1A600C2PE8000 (日経新聞社説 2021.6.7) 高齢者医療の見直し続けよ
75歳以上の後期高齢者で一定以上の所得がある人の医療費窓口負担を2割に引き上げる医療制度改革関連法が成立した。政府はこの改正が現役世代の負担増を抑える小さな一歩にすぎないことを認識し、さらなる改革を急ぐべきだ。75歳以上の窓口負担は原則1割だが、今回の改正で単身世帯で年収が200万円以上、夫婦とも75歳以上の世帯では年収が320万円以上あると2割に上がる。約1870万人いる後期高齢者の2割が対象となる。実施日は2022年10月から23年3月までの間で政令で今後定められる。ただ現役世代が背負う荷を軽くする効果はごくわずかだ。後期高齢者の医療費を支えるために、現役世代は20年度に1人あたり6万3000円の支援金を労使で支払った。少子高齢化の進展で10年で1.4倍に増えている。25年度時点では1人あたり7万9700円まで増える見込みで、今改正の抑制効果は年800円程度しかない。新型コロナウイルス禍を理由に法改正を見送らなかったことは評価できるが、これで改革を打ち止めにしては困る。まずは2割負担の対象をもっと拡大し、これを原則とすべきだ。今回の改正だけでは、2割以上を負担する後期高齢者は、現役世代並みの所得があって3割負担になっている約7%の人を含めても全体の約27%にとどまる。22~25年には「団塊の世代」が75歳以上に到達し、現役世代の荷はさらに重くなる。高齢者を一律に弱者と位置づけて手厚く支える従来型の社会保障制度でこの難所を乗り切ることはできない。窓口負担は年齢と所得で線引きしているが、今後は資産に着目した制度設計が不可欠だ。高齢者のなかには所得は少なくても金融資産を持っている人もいる。収入・資産状況を把握するマイナンバーを使った改革を急ぐべきだ。若くても生活に困っている人は支えなければならない。年齢に関係なく、余裕がある人は支える側に回る制度にしたほうがいい。

*2-2-3:https://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-1334324.html (琉球新報社説 2021年6月7日) 75歳医療費2割負担 社会保障の在り方改革を
 一定の収入がある75歳以上の医療費窓口負担を1割から2割に引き上げる医療制度改革関連法が、参院本会議で成立した。人口の多い団塊の世代が2022年から75歳以上になり始め医療費が急増するため、高齢者に手厚い給付を見直し財源を賄う現役世代の保険料負担を抑える狙いがある。しかし、現役世代の負担軽減効果は限定的だ。逆に高齢者への負担増によって経済的理由から受診控えを招き、健康を損なうことになりかねない。小手先の見直しでなく、社会保障制度の在り方について、徹底的に論議する時期に来ている。21年度の75歳以上の医療費総額は18兆円(予算ベース)で、うち6兆8千億円を現役世代が「支援金」という形で負担している。22年度に高齢者の負担引き上げを1年間実施したと仮定すると、現役世代の支援金は720億円抑制されるが、1人当たりでは年700円、企業負担分を除くと月額約30円にすぎない。一方、2割負担の対象は、単身では年金を含む年収が200万円以上の人か、夫婦の場合は年収が合計320万円以上の世帯の約370万人。都道府県別にみると、沖縄県は15・2%が2割負担の対象になる。厚生労働省の試算によると、3年間の緩和措置を講じても窓口負担の年間平均額が約8万3千円から約10万9千円となり、2万6千円増える見込みだ。負担増による受診控えなどの影響について田村憲久厚労相は「受診行動はさまざまな要因で変わる。分析できない」と述べ、調査予定はないと国会答弁した。想定される影響を試算せず、所得基準を設定して負担増を求めるやり方は不誠実だ。実施後に受診控えの影響を調査すべきだ。日本福祉大の二木立名誉教授(医療経済・政策学)は「能力に応じて負担する考え方は保険料を徴収する時に用いるべきで、医療が必要となった段階では所得にかかわらず平等に給付を受けるのが社会保険の原則だ」と指摘し2割引き上げを批判している。それでは、どういう解決策があるのか。立憲民主党は、2割枠を新設せず窓口負担を原則1割のままとし、代わりに75歳以上の高所得者の保険料上限を引き上げることで、政府案と同等の財政効果を得られると主張する。負担能力を判断する「収入」に、貯金などの金融資産を含める意見もある。しかし、稼働所得が少ない高齢者に負担増を求めるのは極力避けなければならない。高齢化がピークに近づく40年に向け、抜本的な社会保障制度改革は避けて通れない。保険料や税の負担の在り方を議論する必要がある。同時に、結婚したくてもできない若者の貧困解消、子育てしやすい労働環境の改善、先進国の中で最低水準の教育支出の増額など少子化対策に一層力を入れなければならない。

*2-3:https://www.nli-research.co.jp/report/detail/id=66966?pno=2&site=nli (ニッセイ基礎研究所 2021年2月16日) 2019年における65歳時点での“健康余命”は延伸~余命との差は短縮傾向、保険研究部 准主任研究員・ヘルスケアリサーチセンター兼任 村松 容子
(1)65歳時点の健康余命も延伸
1)65歳の男性/女性の健康余命は14.43/16.71年
 現在、一般的に使われている「健康寿命」は厚生労働省の基準によるもので、“健康”とは、「健康上の問題で日常生活に影響がない」ことを言う1。「日常生活」とは、たとえば「日常生活の動作(起床、衣服着脱、食事、入浴など)」、「外出(時間や作業量などが制限される)」、「仕事、家事、学業(時間や作業量などが制限される)」、「運動(スポーツを含む)」等、幅広い。この定義による2019年の健康寿命は、前稿2で示したとおり男性/女性それぞれ72.68/75.38年だった(筆者による概算)。65歳以上の各年齢の健康余命は、65歳時点で14.43/16.71年、75歳時点で7.96/9.24年だった(図表1)。平均余命は、65歳時点で19.83/24.63年なので、余命から健康余命を差し引いて、不健康な期間は男女それぞれ5.40/7.92年となる計算だ。「65歳時点の余命」は「寿命 – 年齢(65)」より長い。これは、平均寿命(=0歳児の余命)が65歳未満で亡くなる人の寿命を含んだ平均であるのに対し、65歳の平均余命は65歳まで生きた人のみで計算した余命だからだ。では、「65歳時点の健康余命」は?というと、やはり「健康寿命-年齢(65))」ではない。これは、健康寿命(=0歳児の健康余命)が65歳未満の不健康な期間も差し引いて計算しているのに対し、65歳の平均健康余命は65歳以降の不健康な期間のみを差し引いているからだ。
2)65歳の健康余命は延伸。平均余命との差は短縮の傾向
 2001年以降の65歳時点の平均余命と健康余命の推移を見ると、いずれも延伸している(図表2)。その差は、調査年による差が大きいものの、平均余命と健康余命の差(65歳以上の不健康期間)は、男女ともどちらかと言えば縮小している。2019年は、2004年(15年前)と比べると、男女それぞれ平均余命は1.62年/1.35年、健康余命は96年/2.13年延びており、平均余命と健康余命の差は、それぞれ0.34年/0.78年短縮していた。
(2)健康上の問題で日常生活に影響がある割合は12年間で5ポイント程度低下
 では、健康度状態はどの程度改善しているのだろうか。健康寿命の計算に使われているのは、「国民生活基礎調査」の「あなたは現在、健康上の問題で日常生活に何か影響がありますか」という設問である。2019 年の結果は、全体の13.4%(男性12.0%、女性14.6%)が「健康上の問題で日常生活に影響がある」と回答していた。65歳以上の健康上の問題で日常生活に影響がある割合を年齢階層別にみると、男女とも年齢が高いほど健康上の問題で日常生活への影響がある割合が高い(図表3)。この割合は、時系列でみると、男女とも各年齢層で低下しており、2007年と2019年を比較すると、70~84歳で男女ともそれぞれ日常生活に影響がある割合は5ポイント程度低下している。こういった健康状態の改善が、平均余命の延伸を上回る健康余命の延伸につながっている。
(3)国全体では改善傾向。加齢や健康上の問題があっても制限なく日常生活を送ることができる社会の構築も重要
 「健康寿命」という言葉は、高齢期における健康や生活に不安を感じている中、広く使われるようになった。2019年の健康寿命は男女それぞれ72.68/75.38年、65歳時点での健康余命は14.43/16.71年であり、いずれも延伸している。健康上の問題で日常生活に影響がある割合が、近年減少していることから、65歳以上では余命の延伸を上回って健康余命が延伸している。こういった健康状態の改善は、喜ばしいことである。しかし、この計算は、もともとは都道府県による健康格差を縮小することを目的として、保健医療に関する取り組みの計画や評価のために行われた。したがって、ある集団において同様の条件で計算し、諸外国や都道府県、時系列で比較するのに適している。一方で、その集団を構成する個人の健康状態は様々な状況にある。概算結果を、個人の生涯設計に適用するとすれば、寿命も健康寿命も「寿命 ‐ 年齢」よりも「ある年齢における余命」の方が長い傾向があること、および、今後、各種健康政策によって健康寿命を延伸したとしても日常生活に影響がある期間は一定期間生じるということだろう。65歳まで生きている人は、平均寿命より長生きすることが予想されるため、平均寿命を目安に老後の生活のための資産形成をするのでは不十分である可能性がある。また、健康上の問題で日常生活に影響がない期間も、健康寿命より長いことが予想される。また、国の政策としては、健康状態の改善と同時に、加齢や健康上の問題があっても、なるべく自立して日常生活を送ることができる社会を構築することも、重要となるだろう。

<外国人差別>
*3-1:https://mainichi.jp/articles/20210519/ddm/005/070/039000c (毎日新聞社説 2021/5/19) 入管法の改正見送り 人権重視の制度が必要だ
 非正規滞在となった外国人の帰国を徹底させる入管法改正案について、政府・与党が今国会での成立を断念した。各種世論調査で菅内閣の支持率が下がる中、採決を強行するのは困難だと判断した。廃案となる見通しだ。当然の対応である。改正案には人権上の問題が多く、国内外から批判の声が上がっていた。政府は、国外退去処分を受けた人が帰国を拒み、入管施設に長期間収容される状況の解消が法改正の目的だと説明していた。しかし、難民認定申請を事実上2回までに制限し、退去命令に従わない際の罰則を設ける内容だ。帰国できない事情がある人への配慮に欠けていた。政府は、国際水準に沿った形で入管法の改正案をつくり直す必要がある。日本の入管制度には、問題点が多い。昨年6月末時点で入管施設に527人が収容され、うち232人は半年以上が経過している。収容は入管当局だけで決められる。期間の制限もなく、国連の人権部門などが繰り返し懸念を表明してきた。金銭的に困窮したり、労働環境が劣悪だったりして在留資格を失うケースもある。非正規滞在になっても一定の条件の下、社会で生活できる仕組みが欠かせない。世界的に見て厳しい難民認定も見直すべきだ。審査基準が明確に示されていないことが問題だ。野党は、難民認定の権限を法相から独立組織に移し、収容に裁判所の許可を義務づける対案を出していた。参考にすべきだろう。国会審議では、名古屋市の入管施設に半年あまり収容されていたスリランカ人女性が死亡した経緯が問題視された。施設内で体調が悪化したにもかかわらず、必要な医療を受けられなかった疑いが出ている。入管当局の対応が適切だったかどうか検証することは、入管制度を考えるうえで重要だ。政府には真相を解明する責任がある。非正規滞在者が生まれる背景には、外国人を労働力の調整弁として受け入れてきた政策がある。人権を尊重した抜本的な制度改正が求められる。

*3-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20210603&ng=DGKKZO72533050T00C21A6EA1000+ (日経新聞 2021.6.3) 難民受け入れ、なお慎重 「入管法改正案」成立を断念、送還強化に海外から懸念
 政府・与党は出入国管理法改正案の今国会での成立を断念した。現行法では、来日した外国人が難民としての認定を日本政府に申請している間は強制送還ができない。結果的に施設収容が長期化しているとして、改正案は繰り返し申請する人を送還可能にする規定を盛り込んだが、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)などは懸念を示していた。難民申請者らは安堵するものの、認定率が低い「難民鎖国」を脱する道筋は依然見えない。5月18日、政府が改正案を取り下げたと聞き、埼玉県川口市在住のトルコ国籍のクルド人男性(23)は「よかった」と目を潤ませた。9歳で家族と来日し、4回目の難民申請中。改正案が成立すれば送還の恐れがあった。就労は許されず、県外に出るにも入管の許可が必要だ。「それでも日本に残りたい。クルド人が迫害されるトルコに戻ればどんな目に遭うか分からない」と訴える。
●一時2万人申請
 難民申請中は強制送還されない現行制度について、改正案は3回目以上の申請なら効力を停止できるとの見直しを予定していた。出入国在留管理庁には、申請が乱用されているとの思いがある。申請から6カ月後に一律に就労を認める運用を始めた2010年に約1200人だったのが17年には2万人近くに達した。一方、運用を厳格化すると18年は半減。同庁は「退去回避や就労目的が相当数含まれていたことを示す」と主張する。ただ送還の強化で、本来保護すべき外国人を危険にさらす恐れもある。「非常に重大な懸念を生じさせる」。UNHCRは4月、改正案に強い表現で警鐘を鳴らした。生命や自由が脅かされかねない人の入国拒否や追放を禁止する国際法上の「ノン・ルフールマン原則」を損なうリスクがあるとの主張だ。弁護士らが「監理人」となり、その監督下で入管施設外で生活できる「監理措置」の新設にも批判が相次いだ。300万円以下の保証金支払いを条件に認める仕組みだが、逃亡の恐れがある場合などに監理人が入管側に届け出る義務を課しており、日本弁護士連合会などが「弁護士として依頼者の秘密を守る義務と両立しない」と反対した。日本は難民受け入れに後ろ向きだとして批判されてきた。NPO法人「難民支援協会」(東京)がUNHCRや法務省のデータに基づき作成した資料では、19年に日本で難民認定を受けたのは44人で認定率は0.4%。ドイツ(約5万3千人、25.9%)、米国(約4万4千人、29.6%)などと大きな開きがある。元UNHCR駐日代表の滝澤三郎・東洋英和女学院大名誉教授は「日本では難民に否定的なイメージが強く、政治家も難民問題に消極的だ」と話す。国は認定基準を厳格に運用してきた。中東やアフリカの紛争地から遠く現地の政治情勢などの情報が乏しいことも背景にあると滝澤氏はいう。
●企業に活躍の場
 一方で、紛争や差別、迫害から逃れてきた人を活用する動きもある。
ヤマハ発動機に、アフリカと日本を行き来する西アフリカ出身の30代の男性社員がいる。政治的迫害から逃れるため来日。難民認定を申請中だった19年に、中国留学中の起業経験などが評価され嘱託社員として採用された。今は別の在留資格に切り替えアフリカでの新規事業を担う。「文化や国民性の違いを越えてチームを束ねられる」。同社の白石章二フェローは高く評価する。男性と同社を仲介したNPO法人「WELgee」(東京)によると、16年の設立以来関わった難民申請者ら170人の53%が大学・大学院卒。医師や弁護士の経験者もいる。担当者は「日本企業のグローバル展開に貢献できる人材は少なくない」と説明する。出入国在留管理庁は法改正と別に、海外事例やUNHCRの立場を参考に難民認定のあり方を見直す方針だったが、送還強化を先行しようとし「排除より認定基準を変えるのが先だ」(難民申請に詳しい渡辺彰悟弁護士)と反発を受けた。難民政策の全体像を巡る議論は仕切り直しとなる。

*3-3:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20210502&ng=DGKKZO71562630R00C21A5EA1000 (日経新聞社説 2021.5.2) アジア系差別は看過できない
 米国でアジア系の人々を標的にしたヘイトクライム(人種差別によって起きる犯罪)が目立っている。新型コロナウイルスが中国から広がったことへの反感がきっかけだが、現地の日本人まで事件に巻き込まれており、海の向こうの話では済まされない。差別解消に向けて、日本から、もっと声を上げるべきだ。3月にジョージア州であったマッサージ店銃撃事件では、アジア系女性6人が亡くなった。米世論調査会社ピュー・リサーチ・センターによると、コロナ感染が広がった昨年初め以降、アジア系住民の81%が危害を加えられる機会が増えたと感じているという。中国からの移民への差別は前からあったが、コロナに加え、米中関係の悪化も影響し、あつれきに拍車がかかった。多くの米国民には中国人も韓国人も日本人も同じに見えるため、出自が中国でないアジア系移民まで襲撃対象にされている。在米邦人を守る最良の方法は「よく見分けてくれ」ではなく、「ヘイトクライムはよくない」と広く自制を促すことだ。移民問題でよく話題になるヒスパニック(中南米系)の米国流入はこの20年間で70%増えた。実はアジア系は81%伸びている。米国民の中国嫌いを放置すれば、いずれアジア系全般への敵対心を助長しかねない。これは、外交・安全保障政策において、中国に毅然と対峙するのと別の話である。4月の日米首脳会談で、菅義偉首相がバイデン大統領にアジア系差別への懸念を伝えたことは評価できる。内政干渉と受け止められるのではないかと心配する声があったそうだが、菅首相は共同記者会見で「人種による差別はいかなる社会でも許容されないとの認識を共有した」と明言した。米国にもの申したからには、日本における人種差別にも厳しい目を向ける必要がある。すべての人が暮らしやすい世界をつくる一翼を担う気概を持って取り組んでもらいたい。

<雇用形態>
*4-1:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/679481 (佐賀新聞論説 2021年5月21日) 同一労働同一賃金
 正社員と非正規社員との間にある不合理な格差の解消を目指す「同一労働同一賃金」のルールが、4月から中小企業にも適用された。新型コロナウイルスの感染拡大の影響は企業経営に暗い影を落としており、中小企業の対応は決して万全とは言えないのが現状だ。日本商工会議所が2月に全国の中小企業約6千社を対象に実施した調査では、同一労働同一賃金について「対応のめどがついている」としたのは56・2%。前年同期に比べ9・5ポイント上昇したものの、4割強の企業がルール適用開始直前の時期に対応の見通しが立っていないとした。制度は不合理な格差の解消を求めているが、「不合理ではない」と具体的に説明できれば待遇差が認められる。ここに対応の難しさがある。厚生労働省が示すガイドラインは、通勤手当や出張旅費、慶弔休暇などでは正社員と同一の対応を求めている。一方で基本給では、能力や経験、業績・成果、勤続年数に応じて支給する場合は同一の支給を求めているが、「一定の違いがあった場合、その相違に応じた支給」を求める。こうした記述は賞与などでも見られ、あいまいな表現が目につく。さらに昨年10月には、非正規労働者と正社員の待遇格差を巡る訴訟で、最高裁が賞与と退職金などについて格差を認める判断を示しており、こうした事情も関係者を戸惑わせている。企業からは「何が不合理な待遇格差に当たるのか分からない」との声も聞こえる。厚労省は「働き方改革推進支援センター」を各地に設けて企業の相談に対応しており、県内にも佐賀市に設置されている。さらに、佐賀労働局では、昨年6月から同一労働同一賃金特別相談窓口を開設しており、本年度も継続している。相談窓口では、企業が対応の見通しを立てやすいよう細やかで具体的な助言、指導が必要だ。一方、企業側にも人事、賃金、福利厚生など各種制度の見直しへの本気度が問い掛けられている。そもそも同一労働同一賃金は働き方改革の看板政策と位置づけられ、労働人口が減少する中、労働生産性の向上と労働者の生活の質向上を両立させる狙いがある。2019年の日本の時間当たりの労働生産性は47・9ドルと経済協力開発機構(OECD)加盟37カ国中21位で、先進7カ国では最下位。低い労働生産性の要因の一つとして挙げられるのが、「メンバーシップ型」と呼ばれる日本特有の雇用形態だ。職務を限定せずジョブローテーションを繰り返しながら企業に貢献する人材を育成する。年功序列型賃金、終身雇用もこの特徴だ。報酬が勤続年数や労働時間に依存する側面がある、専門性が高い人材が育ちにくい、などの課題が指摘される。労働生産性向上の手だての一つとして注目されているのが、欧米型の「ジョブ型」雇用だ。正社員か非正規かにかかわらず、職務ごとに賃金を規定するスタイルで、メンバーシップ型を「就社」とするなら、業務内容に人を当てはめるジョブ型は「就職」といえる。「ジョブ型」は欧米でも各国で形態が異なるとされる。企業が今抱える課題を踏まえた上で、どのような形態が適しているのか。検討を重ねながら、改善への歩みを着実に進めたい。

*4-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20210609&ng=DGKKZO72695450Y1A600C2TCR000 (日経新聞 2021.6.9) 「無期転換」より正社員改革を 上級論説委員 水野裕司
 労働法の目的は、企業との力関係で弱い立場にある個人を保護することだ。賃金や労働時間など労働条件の決定を企業と個人の自由な交渉にゆだねた場合に、個人は不利な条件を強いられることがある。そこに歯止めをかけるのが労働法の役割だ。労働基準法は残業の制限や時間外労働への割増賃金などの規定を設ける。最低賃金法はこの額は下回れないという賃金の基準を定める。働き手が健康を維持し、生活していけるだけの収入を得られるよう、労働条件決定に程度の差はあれ干渉する側面が労働法にはある。そのなかで介入の度合いの強さが際立つのが、2013年4月施行の改正労働契約法で新設された「無期転換ルール」だ。パート、派遣などの有期労働契約が5年を超えて繰り返し更新された場合、本人が希望すれば期間の定めのない無期雇用契約に切り替えられるようになった。有期から無期へという労働契約の枠組み自体を変更する権利を、一定の条件のもとで有期契約労働者に与えた点が特徴だ。契約の内容は当事者の自由な意思で決まり、国家は干渉しないという「契約自由の原則」を、正面から修正したものといえる。改正労契法には成立時、施行から8年後に無期転換ルールの利用状況を踏まえて必要な措置を講じるとの規定がおかれた。厚生労働省は今年3月、学識者による検討会を設置。有期労働者への周知や無期転換を申し込む機会の確保など、ルールの普及策を今秋以降まとめる予定だ。気になるのは、企業からみれば強引に無期契約の締結を迫られることの影響だ。労働政策研究・研修機構が企業に無期転換ルールへの対応を聞いたところ、通算5年を超える前も含め、何らかの形で無期契約に切り替えるという企業が6割を占めた。一方、契約更新の回数に上限を設けるなどで、「5年を超えないよう運用」という企業も1割近くあった。無期契約は昇給制度を必ずしもつくる必要がないが、正社員と同様に長期雇用なので人件費が重荷になり得る。人手不足を背景に無期契約に抵抗のない企業が多い半面、コスト増を嫌い、契約更新しない「雇い止め」を辞さない企業もあるのが実態だ。雇用を不安定にする要因になる。無期転換した人材の活用が壁にぶつかる例もある。「特定の仕事には力を発揮するが、配置換えをすると能力不足を感じることが多い」(建設会社)。有期のときと違い、長期雇用が前提になれば職務の柔軟な変更も珍しくなくなる。雇用する側もされる側も負担になる可能性がある。有期労働者は契約更新が企業の裁量による面があり、労働条件の交渉力がとりわけ弱い。その不安定な立場を改善するという無期転換ルールの考え方自体は理解できる。だが、負の影響が少なくないなかでルールの普及を図ることに無理はないのか。無期転換ルールは企業の「採用の自由」の制限にあたる。労働市場の需給調整機能もゆがめる。有期契約で雇用しようと考えている企業を萎縮させることは大きな問題だ。有期労働者の不安定な状況を改善するには、その根本原因に目を向ける必要がある。長期の雇用保障や年功賃金で正社員が手厚く保護され、コスト抑制策として非正規雇用が活用されている構造だ。企業は正社員に転勤や職種転換などを命令できる半面、採用後は解雇が厳しく制限される。正社員の雇用や賃金を雇われて働く人全体の4割近い非正規従業員が支えている。正規・非正規の格差是正には世界でも特殊な正社員システムの改革が不可欠だ。現実には長期雇用は縮小する方向にある。デジタル化の進展で企業はイノベーション力のある人材を外部からも集めなければならない。人材の新陳代謝が求められる。金銭補償とセットにした解雇規制の緩和や転職支援などの政策で、雇用の流動化を推し進めるときに来ている。無期転換ルールも特権的な正社員のあり方も、行き過ぎた労働者保護という点が共通する。日本の労働法制の問題点を象徴している。

*4-3:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20210505&ng=DGKKZO71581610U1A500C2CC1000 (日経新聞 2021.5.5) 職歴尊重の判決 「ジョブ型」映す、高裁、専門外への配転「無効」 一般職種も保護の流れ
 運送会社で運行管理などを任されていた社員に倉庫勤務を命じた人事異動を無効とする司法判断が注目されている。名古屋高裁が1月、保護するキャリアの対象を高度なIT技術者や医師など専門職から一般的な職務にまで広げた。労働者が積み重ねた職歴と本人の意向を重視した雇用のあり方を後押しするのではないか――。働く人々の期待は大きい。「職種=事務職員(運行管理業務)、職務内容=事務所内での配車など」。東海地方に住む50代の男性は2015年、ハローワークで愛知県内の運送会社の求人を見つけて応募した。男性は「運行管理者」の国家資格を持ち、運転手への乗務の割り振りや疲労度を把握するといった経験を複数の会社で重ねていた。採用面接の際、以前の勤務先を辞めた理由について「運行管理などをしたかったが、夜間の点呼業務に異動させられたから」と説明すると、会社側は「夜間点呼への異動はない」と応じ、男性を採用した。入社後は運行管理や配車を任され、3カ月もたたない16年1月、運行管理者の統括役に任命された。しかし、程なくして「配車方法に偏りがある」という運転手の苦情や高速道路料金の増加などを会社側が問題視するようになる。男性は17年5月、「業務の必要により社員の配置転換を行う」との就業規則に基づき倉庫部門の勤務を命じられた。納得できない男性は「採用時に職種を限る合意があった」として会社を提訴。会社側は訴訟で「職種を限る合意はなかった」とした上で「会社が業界で生き残るために拡大していた倉庫業務の新たな担当者として適性を検討した結果だった」と合理性を主張した。意に沿わない配置転換は多くの働き手にとって避けては通れない。配転命令の合理性については、最高裁が1986年の判決で▽業務上の必要性▽動機や目的の正当性▽労働者が被る著しい不利益――といった判断枠組みを示している。19年11月の一審・名古屋地裁判決は、職種を限定する合意はなかったとしながらも、配転先の業務内容は「運行管理者として培ってきた能力や経験が生かせるという(男性側の)期待に大きく反する」と指摘。業務上の必要性が高かったとは言えず、不慣れな肉体労働を命じられる可能性なども踏まえて「通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせた」として配転命令を無効と認めた。二審・名古屋高裁判決も一審判決を支持し「能力や経験を生かせない業務に漫然と配転した。権利の乱用に当たる」と言及。会社側は上告を見送り、判決は確定した。培ったキャリアなどを考慮して配転無効を認める司法判断は、ここ10年ほどで広がってきた。大手企業から転職しプロジェクトリーダーを務めた後に倉庫係への配転を命じられたIT技術者や、外科医が臨床の現場から外された例がある。ただ、これまで法的保護の対象は高度な技能を持った労働者に限られており、名古屋高裁判決は、より一般的な業務も保護すべきキャリアと明確に判断した。この間、人口減少を前提に、限られた人材でいかに成長力を高めていくか、雇用を巡る企業の模索が続いてきた。経団連は20年の春季労使交渉で、職務と職責を明示する「ジョブ型雇用」を高度人材の確保に「効果的な手法」だと指摘。今年1月に公表した調査では、回答した会員企業の25.2%が、正社員に職務・仕事別の雇用区分を設け、このうち35%がジョブ型を導入していた。東京大の水町勇一郎教授(労働法)は「判決はジョブ型雇用など専門性を生かした働き方が浸透する社会情勢を反映している」と評価する。「法的に保護される可能性がある労働者の幅を大きく広げたといえ、個人のキャリア形成の意向を尊重する流れが加速しそうだ」と話している。

<不合理な政策が通る理由は何か>
*5-1-1:https://digital.asahi.com/articles/ASP6K3VS4P6KULFA00W.html?iref=comtop_7_03 (朝日新聞 2021年6月17日) 「ワクチン証明書」を発行へ 7月から、交付は市区町村
 加藤勝信官房長官は17日の閣議後会見で、新型コロナウイルスワクチンの接種を公的に証明する「ワクチン証明書」の発行を7月中下旬から始める方針を明らかにした。当面は、日本からの海外渡航者向けに発行するという。加藤氏は「予防接種法に基づくワクチン接種を実施し、記録を管理している市区町村において、発行していただく」と説明。そのうえで「まずは書面での交付とし、電子での交付も見据えて検討を進める」と述べ、早ければ来週にも自治体に対しての説明を始める考えを示した。政府は、加藤氏のもとに検討組織を設置していた。海外で入国時にワクチン接種の証明を求める動きがあることを踏まえたもので、ワクチン接種の有無による国内での差別を防ぐため、証明書は海外との往来を主な目的とする方針。

*5-1-2:https://www.yomiuri.co.jp/politics/20210616-OYT1T50211/ (読売新聞 2021/6/16) 「まん延防止」解除後、イベント制限を「1万人以下」に緩和へ…五輪観客数に適用も
 政府は16日、新型コロナウイルス対策の緊急事態宣言と「まん延防止等重点措置」を解除した地域で、大規模イベントの参加人数制限を段階的に緩和する方針を固めた。これまで「5000人以下」としていた基準を「1万人以下」とする考えだ。宣言と重点措置の対象地域では、イベントの参加人数は「5000人以下」かつ「収容定員の50%以内」に限られている。今回の緩和は、宣言や重点措置を解除した日から約1か月間の「経過措置」となる予定だ。その後、問題がなければ、さらに人数制限を緩和する見通し。一方、宣言から重点措置に移行した地域では、これまで通り「5000人以下」の制限を続ける。政府は16日、専門家でつくる新型コロナ対策分科会に緩和基準案を示し、了承を得た。会合後、西村経済再生相は記者団に「東京五輪・パラリンピックの観客の上限のあり方を決めたわけではない」と述べた。ただ、7月23日に開幕する東京五輪の観客数上限にも適用される見通しだ。

*5-1-3:https://digital.asahi.com/articles/DA3S14941581.html (朝日新聞 2021年6月17日) 子どもへ「個別接種が望ましい」 説明・健康観察「入念に」 小児科学会など コロナワクチン
 子どもに対する新型コロナウイルスのワクチン接種について、日本小児科学会は16日、保護者や子ども本人に丁寧な対応が必要だとして、「できれば(かかりつけ医による)個別接種が望ましい」との見解を発表した。感染予防策としてワクチン接種は「意義がある」としたうえで、副反応の説明や接種前後の健康観察を入念にするように求めている。学会の見解ではほかに、子どもに関わる仕事をしている人へのワクチン接種を終えることが重要だと指摘。基礎疾患がある子どもは、健康状態をよく把握している主治医との相談が望ましいとした。海外では、接種後の10代がごくまれに心臓の筋肉が炎症を起こす心筋炎や心膜炎を起こした例が報告されている。理事の森内浩幸・長崎大教授は「世界でも10代への接種は始まったばかり。データを継続的に集め解析したい」と話した。日本小児科医会も同日、同様の提言を発表した。集団接種、個別接種でそれぞれ配慮すべき点を挙げ、神川晃会長は、「痛みや発熱、だるさなどの反応は高齢者に比べ若い人に出やすい。接種時の緊張も含めてワクチンの成分とは関係の薄い、年齢特有の反応もある」と指摘した。また、個人の意思や健康上の理由から接種をしない子どもが差別を受けないように配慮すべきだとしている。当初16歳以上とされたファイザー製のワクチンの接種対象は、6月から12~15歳へも広がっている。高齢者らへの接種が進んだ一部の自治体では、子どもに対する接種券の配布など、手続きが始まっている。

*5-1-4:https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2021-06-16/QUSDK0T1UM1301 (Bloomberg 2021年6月16日) 東京五輪のGPS使った行動管理、外国メディアが非難-撤回を要求
●「プライバシーの完全な無視」-国際ジャーナリスト連盟
●安全を維持するための別の方法を議論するよう促す
 東京五輪・パラリンピックに合わせて来日する外国メディアの行動をスマートフォンの衛星利用測位システム(GPS)機能を使って管理する大会組織委員会の方針に、国際ジャーナリスト連盟(IFJ)が強く反発している。NHKによると、組織委の橋本聖子会長は先週、来日する外国メディアについて入国後14日間を念頭に厳格に行動管理をすると言明。菅義偉首相は、新型コロナウイルス対策のルールに違反した外国人記者を国外退去とすることも検討すると5月に述べていた。これに対し世界中のジャーナリスト60万人を代表するIFJは発表文で、「プライバシーの完全な無視」だとして組織委を非難。この規則を撤回し、安全を維持するための別の方法を議論するよう促した。IFJは「このような予防措置の導入はジャーナリストのプライバシー権を否定し、報道の自由を制限するものだ」と主張するとともに、この制約が課せられるのは来日するメディアに対してだけで、日本のメディアには適用されない点も指摘した。15日には組織委と国際オリンピック委員会(IOC)、国際パラリンピック委員会(IPC)が選手および関係者向けの新型コロナウイルス対策指針をまとめた「プレーブック」の最新版を発表し、ルールに従わない場合の罰則なども打ち出した。ただ、メディア向けのガイドラインはまだ示されていない。

*5-1-5:https://digital.asahi.com/articles/DA3S14940351.html?iref=mor_articlelink02 (朝日新聞 2021年6月16日)職域接種、工夫する経済界 コロナワクチン
 航空会社などが前倒しで始めた新型コロナウイルスワクチンの職域接種をめぐり、15日も経済界の動きが続いた。地域の医療従事者への接種から始めたソフトバンクグループが、2回打ち終えればプロ野球の主催試合を半額で観戦OKにする方針を示すなど、自社以外にも接種を広げようとする取り組みも増えている。
■接種者、半額でプロ野球観戦OK ソフトバンク
 ソフトバンクグループは15日、東京都内に大規模接種会場を立ち上げ、首都圏の医療従事者への接種を始めた。その会場で孫正義会長兼社長は、職域接種などを含めてワクチンの接種を2回終えて2週間以上たった人は、福岡ソフトバンクホークスの試合を半額で観戦できるようにする計画を明らかにした。若い世代の接種率を高めるきっかけをつくり、経済活動の正常化につなげる狙いだ。同社は詳細は今後詰めるとしている。孫氏は今回の取り組みを機に、他社にも若者の接種を後押しする取り組みが広がることに期待を示した。職域接種の会場は全国15カ所に設け、1日1万人が接種できる体制を整える方針。対象人数は従来の計画より5万人多い15万人に広げ、地域住民10万人も受け入れるという。人数は、さらに追加で増やすことも検討する。
■ノウハウを系列企業に提供 トヨタ自動車
 伊藤忠商事の東京本社には15日、職域接種に使うワクチン1200回分が到着し、本社内に設置された冷凍庫に保管された。同社は21日から、東京と大阪の両本社で接種を始める予定。事業所内保育所の委託先「ポピンズ」の保育士約1500人も含め、約7500人への接種を見込む。接種会場の様子は22日以降、見学希望の企業に公開して参考にしてもらう予定という。ワクチン到着を見守った岡藤正広会長CEO(最高経営責任者)は「多くの人に接種し、早く明るい世の中にしたい」と話した。トヨタ自動車は15日、仕入れ先企業を含めた約8万人を対象に、21日から職域接種を始めることを明らかにした。ピーク時は一日8千人以上に接種し、9月10日までに2回の接種を終える計画。トヨタは車づくりで培った「トヨタ生産方式」を活用して、地元自治体の接種の効率を高めるサポートもしてきた。その成果を職域接種にも生かし、系列企業にもノウハウを提供するという。
■中小企業対象に集団接種へ 経済同友会
 経済同友会は15日、貸会議室大手のティーケーピー(TKP)の協力を得て、会員の所属企業の従業員と家族を対象に、21日から集団での職域接種を始めると発表した。スタートアップなど、従業員1千人未満の企業が対象。まずは希望があった118社の約4万3千人を対象に順次、接種を始める。政府が職域接種の目安とする従業員1千人に満たない、小規模の企業にも接種を広げる狙いだ。同友会の幹事を務めるTKPの河野貴輝(かわのたかてる)社長が、接種会場の無償提供を申し出た。河野氏は記者会見で「中小企業の方々への接種促進に貢献していきたい」と話した。

*5-2-1:https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA03C310T00C21A6000000/?n_cid=NMAIL006_20210604_Y (日経新聞 2021年6月4日) 75歳以上医療費2割負担、関連法成立 年収200万円から
 一定の所得がある75歳以上の後期高齢者の医療費窓口負担を1割から2割に引き上げる医療制度改革関連法が4日の参院本会議で、自民・公明両党などの賛成多数で可決、成立した。単身世帯は年金を含めて年収200万円以上、複数世帯では合計320万円以上が対象になる。高齢者に収入に応じた支払いを求めて現役世代の負担を抑制する狙いだが効果は限定的だ。現在、75歳以上の大半は窓口負担が1割だ。現役並みの所得(単身で年収383万円、複数世帯で520万円以上)の人は3割を負担するが全体の7%にすぎない。2割負担の層をつくり、3段階とする。2割負担となるのは75歳以上の約20%で約370万人が該当する。田村憲久厚生労働相は4日の閣議後の記者会見で「若い人々の負担の伸びを抑えていく目的だ。法律の趣旨、意図を国民に理解してもらいながら周知に努めたい」と述べた。導入時期は2022年10月から23年3月の間で、今後政令で定める。外来患者は導入から3年間、1カ月の負担増を3千円以内に抑える激変緩和措置もある。関連法では育児休業中に社会保険料を免除する対象を22年10月から広げることや、国民健康保険に加入する未就学児を対象に22年4月から保険料を軽減する措置も盛り込んだ。3日の参院厚生労働委員会では付帯決議も採択した。窓口負担の見直しが後期高齢者の受診に与える影響を把握すること、持続可能な医療保険制度に向けて税制も含めた総合的な議論に着手することなどを明記した。高齢者に負担増を求める背景には人口の多い団塊の世代が22年から75歳以上になり始めることがある。医療費の急増が見込まれ、政府の全世代型社会保障検討会議が20年12月、改革案をまとめた。後期高齢者医療制度の財源は窓口負担を除いて5割を公費で負担し、残り4割は現役世代からの支援金、1割を高齢者の保険料でまかなう。75歳以上の人口が増えて医療費が膨らめば現役世代の負担も重くなる。厚労省の試算によると21年度の支援金総額は6.8兆円で、現状のままだと22年度に7.1兆円、25年度に8.1兆円と急速に膨らむ。2割負担を導入しても支援金の軽減効果は25年度で830億円にとどまる。現役世代の負担を1人あたり年800円軽減するにすぎない。事業主との折半などもあり、本人の軽減効果は月30円程度と試算される。今後も給付と負担の議論は避けて通れない。

*5-2-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20210605&ng=DGKKZO72615300U1A600C2M10800 (日経新聞 2021.6.5) 所得のみで区別、見直しを 一橋大学教授 小塩隆士氏
 全世代型社会保障改革は支え手を増やし、年齢に関係なく能力のある人には負担してもらうという2本柱だ。後期高齢者医療制度の窓口2割負担導入はこれに沿っている。ただ、これだけで社会保障の抱える問題が解決できるわけではない。医療機関での窓口負担は所得のみで判断する。高齢者のなかには所得は少なくても金融資産を多く持っている人もいる。能力に応じた負担に向け、資産も合わせて判断するようにすべきだ。少子高齢化で医療費の伸びが続くなか、2割負担の人を限ったままでは別の方策が必要になる。例えば医療機関のネットワーク化を進めて効率化するなどが検討課題だ。負担引き上げの議論では、高齢者が受診を抑制して重症化し、医療費が膨らむという議論がある。今回の見直しで高齢者の受診行動が変化し、健康に影響を及ぼしたかデータを蓄積し、確認する必要がある。受診抑制の影響は深刻か限定的かはっきりしない。社会保障の支え手を増やすのに少子化対策は欠かせないが、大人になって財政面で貢献するのは時間がかかる。働く意欲のある高齢者の就労環境を整えていくべきだ。働く高齢者の年金を減らす「在職老齢年金制度」は65~69歳の減額基準を引き上げてはどうか。65歳から一律で支えられる側という区切りは非合理的だ。若くても生活に困っている人は支えないといけない。年齢に関係なく、余裕がある人は支える側に回るといった形にした方がいい。

<教育と人材>
*6-1-1:https://digital.asahi.com/articles/ASP5R4CQQP5KUTIL069.html?iref=comtop_7_01 (朝日新聞 2021年5月23日) 国立大受験生に「6教科8科目」案 「情報」を追加検討
 2025年の大学入学共通テストから、国立大学の受験生には原則として「6教科8科目」を課す――。国立大学協会の入試委員会(委員長=岡正朗・山口大学長)が、そんな案の検討を進めていることがわかった。従来の「5教科7科目」に、プログラミングなどを学ぶ教科「情報」を上乗せする案だ。各国立大は大学入試センター試験時代の04年から、国語▽地歴・公民▽数学▽理科▽外国語の5教科から7科目を課すことを原則としてきた。これに情報を加えた6教科8科目を原則とすることが決まれば、21年ぶりの科目増となる。情報は03年度から高校で全員が必ず履修する教科となり、22年度の高1から導入される新学習指導要領では情報Ⅰと情報Ⅱの2科目に再編される。プログラミングなどを学ぶ情報Ⅰが必ず履修する科目で、データサイエンスの手法を使った分析も学ぶ発展的な情報Ⅱは選択科目となっている。政府は18年に公表した成長戦略のなかで「義務教育終了段階での高い理数能力を、文系・理系を問わず大学入学以降も伸ばしていけるよう、大学入学共通テストで基礎的な科目として情報Ⅰを追加する」との方向性を打ち出した。今年3月には、共通テストの問題作成を担う大学入試センターが、25年実施の共通テストから出題教科に情報を追加する方針を発表。出題範囲は情報Ⅰの内容とした。国大協入試委の議論は、こうした流れのなかでスタートした。一連の議論は非公開で行われており、関係者によると、共通テストで情報を使いたい大学も不要だとする大学も、それぞれ一定数あるという。今月18日のオンライン会議では、25年から6教科8科目にすることについて「生徒の学習環境がまだ整っていない」と反対する声も出た。だが、「国を挙げてデジタルと言っている時に入試に入れないのは違うという意見が多く、引き続き議論することになった」(関係者)という。国大協事務局は取材に「入試委の内容は非公開」と回答した。大学入試をめぐっては、「教科・科目の変更が大きな影響を及ぼす場合には、2年程度前には予告・公表する」という文部科学省の定めた「2年前ルール」がある。国大協入試委が「25年の共通テストから6教科8科目を原則とする」と決めた場合、各大学はそれを踏まえ、遅くとも22年度にはそれぞれの大学の方針を正式に決めることになりそうだ。
●「『第三の失敗』にならないよう」
 情報を教える態勢は地域によって差があり、各地で教員の確保が急務となっている。文科省が47都道府県と、高校を設置していない神奈川県相模原市を除く19政令指定都市を対象に実施した調査では、昨年5月1日時点で、情報担当教員5072人のうち2割以上の1233人が、情報免許状保有教員ではなく、校内の他教科の教員が1年以内に限り教えられる「免許外教科担任」や「臨時免許状」を持つ教員だった。これまで情報は、「情報の科学」「社会と情報」のうち1科目を必ず履修する形で、プログラミングを学ぶ「情報の科学」を選ぶ生徒は約2割だった。だが新指導要領のもとでは、全員が情報Ⅰでプログラミングを学ぶことになる。ある公立高校の教員は「いまのままだと教員が不足し、新指導要領の内容をきちんと教えることができない学校が出る恐れがある」と話す。それだけに、そもそも共通テストで情報Ⅰの内容を出題すること自体に慎重な検討を求める声も根強い。全国高等学校長協会は昨年11月、大学入試センターに「出題科目とするには解決すべき事項が多い」として「課題を解決した上での実施」を要望した。大学関係者の間でも意見は一様ではない。情報処理学会の理事で、情報教育に力を入れてきた中山泰一・電気通信大教授は「情報Ⅰは文理問わず身につけるべき内容。国立大はぜひ課すべきだ」。一方、国立大教員の一人は「学習環境が整わず地域間格差も大きい現状のまま、国立大受験生に課すのは難しい」と語る。大学入試をめぐっては近年、目玉改革が相次いで頓挫した。共通テストでの英語民間試験の活用が19年11月、受験生の住む地域や家庭の経済状況による格差の問題から見送りに。さらに共通テストの国語と数学での記述式導入も翌月、採点の質の確保などの課題が解消し切れず見送られ、受験生や高校を混乱させた。ある県立高校の教員は「6教科8科目への移行が『第3の失敗』にならないよう、受験生の立場に立って検討してほしい」と話す。
    ◇
〈教科「情報」〉2022年度の高1から適用される新学習指導要領では、プログラミングも行う情報Ⅰ(必ず全員が履修する科目)、発展的な情報Ⅱ(選択科目)に再編された。情報Ⅰは、「情報社会の問題解決」「コミュニケーションと情報デザイン」「コンピュータとプログラミング」「情報通信ネットワークとデータの活用」の4領域からなる。すべての生徒がプログラミング、ネットワーク(情報セキュリティを含む)やデータベース(データ活用)の基礎などを学ぶことになる。
【大学入学共通テストへの「情報」導入をめぐる主な動き】
2018年3月   文部科学省、22年度からの高校の新学習指導要領を告示。教科「情報」は
         情報Ⅰと情報Ⅱの2科目に再編
    6月  政府が「未来投資戦略2018」を公表。「大学入学共通テストで基礎的な科目
         として情報Ⅰを追加」
2019年11月  共通テストでの英語民間試験の活用見送り
    12月  共通テストの国語と数学での記述式問題導入も見送り
2020年4月   小学校でプログラミング教育開始
2021年1月  第1回共通テスト
    3月   大学入試センター、25年の共通テストから情報を出題する方針を表明
2022年4月   高校の新学習指導要領スタート
2025年    新学習指導要領に基づく共通テスト実施(国立大受験生は6教科8科目受験が
         原則に?)

*6-1-2:https://www.nishinippon.co.jp/item/n/745124/ (西日本新聞 2021/5/27) 全国学テ「結果」に追われる学校 「目的逸脱」事前準備が常態化
 小学6年と中学3年を対象とした全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)が27日に行われる。新型コロナウイルスの感染拡大で昨年は中止されたため、2年ぶりの実施。導入から丸14年が経過し、テスト結果をより重視する学校もみられる。過去問を解くなど事前準備が常態化し、本来の調査目的から逸脱している状況も。研究者は「学力の一部しか測れないにもかかわらず、現場だけが結果責任を問われ、追い詰められている」と訴える。「事前練習は当たり前。目標点を掲げて達成を要求する校長もいる」。福岡県内の公立小に勤める30代の女性教員はため息をつく。勤務校では歴代の小6の得点から「弱点」を分析し、市販の教材で何度も事前練習する。前任校では過去問が使われていた。学校側が意識するのは、県教育委員会が各公立小中に作成を求める「学力向上プラン」。2017年度から全国学力テストの目標点を示した上で、課題の分析や授業の改善を促す。計画的な改善につなげるのが目的だが、女性教員は「とにかく結果を優先せざるを得ない状況になっている」。佐賀県内の公立小中では毎年、全教員参加の校内研修で自校の得点を分析し改善点を話し合う。50代の男性教員が勤める公立小では週3日、1時限前の20分間をドリルやプリント学習に充てる。男性教員は「子どもの朝の様子を観察し、ケアする時間も大切なのに」と釈然としない。学校現場が対策に追われる現状を踏まえ、全国学力テストの在り方に疑問を呈する研究者は少なくない。国の専門家委員会委員で、福岡教育大の川口俊明准教授は「そもそも目的と手法にずれがある」と強調する。国は(1)学校現場の指導改善(2)国の政策に反映-という二つの目的を掲げる。川口准教授は「指導のためなら、学校で行う普段のテストで十分。政策に生かすためなら、子どもの実態を正しく把握する必要がある。事前準備などの対策を取る学校がある中で、全員対象の現行調査は結果が偏る可能性が高い」と説明する。世界各国の学力テストの状況を編著にまとめた福岡大の佐藤仁教授によると、日本では実施から約3カ月後に結果が学校現場に通知されるが、ドイツでは授業改善に特化したテストの結果が2~3週間後には教員に伝わる。ノルウェーでは学校ごとの得点を公表するが、子どもの家庭環境など数ある情報と一緒に示されるという。佐藤教授は「『学力』の一部しか測れないにもかかわらず、日本にはテスト結果に敏感に反応する文化があり、責任は学校が問われる。行政、保護者、地域が一緒に改善点を考えることが大切だ」と提起する。子どもへの評価がテストに偏る中、居場所を失う子どもたちもいる。熊本県の公立小で特別支援学級を担任する50代男性教員は、問題用紙をくしゃくしゃにした子を目の当たりにした。「解けない子には嫌な時間でしかない。学力の意味がテストに矮小(わいしょう)化されていることは分かっていても、学校では学力を問い直す議論はない」
*全国学力テスト:2007年、小6と中3の全員を対象に国語と算数(数学)の2教科でスタート。民主党政権が10年に抽出調査に切り替えたが、自民党政権下で13年に全員対象に戻った。現在は理科と英語(中3)も3年に1度行っている。18年8月には大阪市長が学力テストの成績を教員らの給与に反映させる意向を表明(後に撤回)し、学校現場への圧力や負担が問題となった。

*6-1-3:https://www.fukuishimbun.co.jp/articles/-/905866 (福井新聞 2019年8月1日) 全国学力テスト福井は中3英語1位、2019年度、トップ級の順位維持
 文部科学省は7月31日、小学6年と中学3年の全員を対象に4月に行った2019年度全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)の結果を公表した。公立校の平均正答率を都道府県別に見ると、福井県は、初めて実施された中3英語で東京都などと並び1位、数学も1位、国語は2位だった。小6は国語2位、算数4位。小中ともに調査開始以来12年連続で全国トップクラスを維持した。国語と算数・数学の2教科は、これまでの基礎知識を問うA問題、知識の活用力をみるB問題が統合され、知識活用力が一体的に問われた。中3の英語は「読む、聞く、書く、話す」の4技能をみる試験が行われ、機器がそろっていない一部の学校で未実施となった「話す」を除く3技能の結果が公表された。福井県は国公私立270校の1万3727人が参加。公立の平均正答率は中3の英語が59%(全国平均56・0%)、数学は66%(同59・8%)、国語は77%(同72・8%)だった。小6は国語が72%(同63・8%)、算数が69%(同66・6%)。県教委はテストや学習状況調査の結果を受け「授業や家庭学習に熱心に取り組む子どもと、熱心に指導する教員らの努力の成果」と評価。一方で、各教科で課題もあるとし、8月上旬に開く教員対象の研修会で結果の分析と授業改善策を伝えるとした。県内の市町別の結果は公表せず、各市町教委に判断や対応を委ねている。文科省は全国の小6、中3の計201万7876人分を集計。中3英語の4技能のうち「書く」では、2枚の図を比較して25語以上で考えを記す問題で正答率が1・9%にとどまり、基本的な語や文法を活用した表現ができていなかった。国語と算数・数学は小中とも、目的や意図に応じて自分の考えを明確に書いたり、複数の資料から必要な情報を読み取って判断したりするのが苦手な傾向は変わらなかった。平均正答率は従来と同様に秋田や石川、福井などが上位を占める状況が継続。ただ、下位も全国平均とは正答数で1問程度の差で、文科省は「学力の底上げ傾向は続いている」と指摘している。

*6-2-1:https://www.tokyo-np.co.jp/article/105934 (東京新聞 2021年5月23日) Wi-Fi未整備168校も…格差くっきり、都立高のオンライン授業 学習遅れ懸念の声
 新型コロナウイルス対策の緊急事態宣言中、東京都立高校は、校内の生徒数を3分の2以下に抑える分散登校を続けている。登校しない生徒はオンラインを活用した自宅学習としているが、学校側の通信環境や取り組みに差があり、生徒や保護者から「学習が遅れていないか」と不安が漏れる。 (土門哲雄、松尾博史)
◆無人の教室からスマホで授業
 都教育委員会は4月29日~5月9日の大型連休中、授業のある日も全ての高校生を登校させず、自宅学習の「全面オンライン」とした。連休後の分散登校は、登校日や時間帯を学年ごとに分け、自宅学習ではオンラインの活用を促している。連休中の7日には、都立向丘むこうがおか高校(文京区)でオンライン授業が報道公開された。生徒がいない教室で、飯塚大貴だいき教諭(27)がスマートフォンを使って化学基礎の授業を配信し、1年生のクラス40人が自宅からタブレットなどで参加。同時双方向のライブ形式で行われ、生徒からも画面越しに質問が飛んだ。滝本秀人校長は「通信回線が命綱。オンライン授業は学校全体で取り組むことが大切」と強調。同校は連休後も自宅学習で同時双方向のオンライン授業を続けている。
◆未整備校では出欠確認だけ
 ただ、こうした学校ばかりではない。都教委の教育政策課によると、高校のほか特別支援学校なども含めた都立校のうち、無線LANのWi―Fiが全教室に整備されているのは2020年度末時点で87校で、全体の約3分の1にとどまる。通信環境が不十分な残りの168校は、当初の計画を1年前倒しして本年度中にWi―Fiを整備するという。未整備のある都立高は、大型連休中に同時双方向で各学年一斉に行ったのはホームルーム(HR)の出欠確認だけだった。生徒は事前に用意された授業動画を見たり、課題学習に取り組んだりした。副校長は「同時双方向のオンライン授業は通信環境が厳しく、できない」と打ち明ける。この高校は感染者が確認された昨年末以降、6限までの通常授業は行わず、4限で終え、感染リスクが高まる昼食前に生徒を帰宅させている。電車の混雑を避ける時差通学で始業も遅らせ、通常の50分授業を40分に短縮している。連休後は午前と午後で4限ずつに分け、学年ごとに分散登校を続けている。
◆都教委「本年度中に全校に」
 同校の3年の女子生徒は「本当なら授業がもっと進んでいるはずなのに。他の学校より遅れてないか」と不安を隠せない様子。母親も「感染拡大から1年以上たち、私立は通信環境も充実しているのに」と残念がる。こうした声に、都教委の担当者は「オンラインを活用した学習は同時双方向のライブ形式に限らず、繰り返し見られる動画配信のニーズも高い。本年度中にWi―Fiを全校に整備し、環境を改善する」と理解を求めている。

*6-2-2:https://resemom.jp/article/2015/09/25/27046.html (Resemom 2015/9/25) 学校の無線LAN普及率、私立と公立に差…MIC調査
 IT・ネット分野専門の市場調査機関であるミック経済研究所は、学校の無線LAN普及率などのアンケート調査結果を発表。無線LANの平均普及率(平成27年5月時点)は、私立学校が59.3%、公立学校が42.6%。アクセスポイントのメーカーシェアでは、バッファローがトップだった。ミック経済研究所の同調査は、2015年5~6月にアンケート調査で実施。無線LANの現在の普及率や導入無線LANアクセスポイントメーカーの掲出回数・シェアなどについて、私立中・高等学校の186法人、公立の小・中・高等学校を管轄する全国教育委員会229団体から回答を得た。また、遅れている無線LANの導入促進に役立つ調査レポートとして回答者にフィードバックしている。平成27年5月時点の無線LANの平均普及率(学校数単位)は、私立学校が59.3%(中学校56.3%、高校61.2%)であるのに対し、公立学校が42.6%(中学校40.2%、公立高校35.0%)。教室数等単位での平均普及率は、私立学校17.8%、公立学校16.4%。特に、公立の高等学校は2.6%と低い割合となっている。公立学校の中では小学校の普及率が比較的高く、学校数単位では45.8%、教室数等単位では17.7%だった。同社では、「無線LAN普及の決め手はタブレット端末で、私立学校の普及率の方が高いのはタブレット端末の活用がより進んでいるから」と分析している。平成29年度までの導入予定を調査しており、私立学校で73.6%、公立学校で53.1%と、文部科学省が平成29年度の目標数値に掲げる「普及率100%(教室等数ベース)」に及ばない状態となっている。無線LANのアクセスポイントのメーカーシェアのトップは、50.8%を占めるメルコグループのバッファロー。ついで、アライドテレシス9.8%、シスコシステムズ7.5%、富士通4.2%が続いた。同社では、各社を学校が選択した理由と各社の特長を解説。バッファローの選択理由では、バッファロの強みである「手頃な価格(予算の範囲)」が多くあがっており、私立学校では「システム開発・導入会社の推薦」も多かったという。2位のアライドテレシスの選択理由では、公立学校が「手頃な価格」、私立学校が「ICT関連製品の取引業者の推薦」をあげていた。

<行き過ぎた規制で台無しの五輪>
PS(2021年6月24、25日、7月7日追加):東京五輪の観客向けガイドラインは、*7-1のように、新型コロナを理由に「①祝祭感のあふれる会場にしてはならない」として、「②飲酒禁止(会場内販売・持ち込みの禁止)」「③直行直帰」「④接触・飛沫感染を防ぐため、観戦中もマスク着用・大声を出すなどの応援禁止」「⑤ハイタッチや肩を組んでの応援も禁止」などの多くのルール順守を観客に求め、守らなければ退場などの厳しい措置をとるそうだ。
 しかし、②③④⑤は、まるでイスラム教のラマダンのようで、①では、オリ・パラを行う意味がない。また、そのようなルールを作った理由が国内の飲食店などに合わせることだというのだから、馬鹿げている。しかし、ワクチン接種した人と陰性証明のある人しか会場に入れなければ、混雑したからといって感染するリスクは殆どない。また、国内の飲食店も従業員がワクチン接種を済ませ、「こういう時期ですから」と断って、ワクチン接種した人と陰性証明のある人しか入れないようにすれば普通に営業できるため、「飲酒規制」や「時短要請」などを行う必要がなくなり、五輪を稼ぎ時にしながら「おもてなし」することもできるのだ。
 そのため、*7-2のように、埼玉県は、「新型コロナ蔓延防止等重点措置が継続中で解除後も何らかの制限を設ける可能性があるから、さいたま市で実施される五輪のバスケットボールとサッカーの夜遅い競技を無観客とするよう大会組織委員会に要請された」とのことだが、大野知事が「考えにくい」からといって科学的根拠があるわけではないため、埼玉県民としては変なことをして世界に医療後進国であることを発信しないで欲しいと思う。そして、「自分は健康でないから危ない」と思う人は、その間、家でTVを見ていれば良いのである。
 一方、英政府と欧州サッカー連盟は、*7-3のように、観客が入場時に新型コロナの陰性証明かワクチンの接種証明を提示するルールを残し、7月にロンドンで開催するサッカー欧州選手権の準決勝と決勝に6万人超の観客入場を決めたそうだ。ドイツのメルケル首相はこれに反対しておられるようだが、この点については、私は英国政府に賛成だ。
 23日に公表されたデータによると、新型コロナワクチンの接種回数は、*7-4のように、累計3,438万回を超え、2回接種を終えた人も1,037万人になったそうだが、「⑥高齢者の1回目接種率が67%と最も高い佐賀県は、重症者の病床使用率が2%まで抑えられた」等の効果が明らかであるのに、「⑦希望する人への接種を10~11月までに完了させる目標」というのは遅すぎる。さらに、「⑧厚労省内で『接種率と新規感染者数減少との因果関係は証明が難しい』」という声がある」というのは呆れるほかなく、河野規制改革相が、「⑨申請が殺到して、1日に可能な配送量が上限に達し、モデルナ製ワクチンを供給できる量の上限にも達しそうなので、企業での職場接種の新規受け付けを一時休止する」と発表したのも驚きで、むしろ佐川急便等の民間にワクチンの入荷・保存・管理・配送までを一括して任せた方が、厚労省よりスムーズに行ったのではないかと思った。
 *7-5のように、政府が、7月12日~8月22日の間、東京都に4度目の新型コロナ緊急事態宣言を発令し、東京五輪の都内会場は無観客にすると伝えられている。これには、五輪を政治利用した政党やメディアも悪いが、ワクチンや治療薬の開発・承認・接種が遅く、五輪を中止か無観客にするという非科学的な選択しかできないのに、「東京の感染増を万全の態勢をとって抑えていく」などと述べている点で、政府も情けない。私自身は、スカスカの会場で行われる感動の伝わらない五輪など見たくもないし、五輪の主役は選手だけでなく観客も含まれるため、仮に私が五輪の会長だったら「今後は絶対に日本で開催しないように」と言い残すだろう。

  
 2021.6.24日経新聞       2021.5.12News24      2021.6.5日経新聞

(図の説明:左図のように、観客に直行直帰・飲酒禁止などを求めているのは小中学校の校則のようだし、「37.5度以上は入場不可」としているのは、無症状感染者のいることがわかっているため「ワクチン接種証明書か陰性証明書の提示」に変更するのが正しい。また、ワクチンは変異株に効きが悪いという弁解もよく聞くが、有効性が中央の図に示されており、これを否定するには同レベルの調査に基づく科学的根拠が必要である。さらに、ワクチン接種は、右図のように、職場でSpeedyに行われているため、政府は、これに全面協力すべきだ)

*7-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20210624&ng=DGKKZO73197860U1A620C2EA1000 (日経新聞 2021.6.24) 五輪観戦、違反なら退場も 酒禁止決定・ハイタッチNG・応援は拍手
 東京五輪・パラリンピックの観客向けガイドラインが23日公表された。新型コロナウイルス禍で飲酒の禁止や「直行直帰」など過去大会と比べ観客に多くのルール順守を求め、守らなければ退場などの厳しい措置もとる。大会組織委員会の橋本聖子会長は「祝祭感のあふれる会場にはならない」と話す。東京大会では酒類を会場内で販売せず、持ち込みによる飲酒も禁止した。飲料大手が大会スポンサーで当初は同社の酒類を販売する計画だったが、酒類提供の検討が明らかになるとSNS(交流サイト)などを中心に反発が広がった。組織委は専門家の意見を踏まえスポンサーとも協議。橋本氏は23日、記者会見で「少しでも国民に不安があるようなことがあれば、断念しなければいけない。スポンサーからも同意を得た」と説明する。接触や飛沫感染を防ぐため、コロナ禍五輪の観戦方法は大きく変わる。ガイドラインは観戦中もマスクを着用し、大声を出したりタオルを振り回したりする応援は行わないよう明記した。周囲の観客とハイタッチや、肩を組んでの応援も禁止となる。好プレーには声援ではなく拍手を促す。他の観客と距離を確保し、会場内を不必要に移動しないことなどで協力を求める。組織委は一部の競技会場について、トイレや売店の混雑状況をスマートフォンで確認できる仕組みを導入する。競技が終われば密を回避するために分散退場し、どこにも立ち寄らず自宅や宿泊先に直帰するよう求める。座席番号が分かるようにチケットの半券やデータは最低14日間保管することも要請する。観戦後に陽性が確認されれば保健所に観戦日時や座席位置を申告できるようにする。組織委は、ガイドラインの実効性を高めるために、順守しない観客に入場拒否や退場措置をとることもあるという。

*7-2:https://news.yahoo.co.jp/articles/3cb34625693b1917401ccdaad767cf944db9afcf (Yahoo 2021/6/22) 夜遅い競技、埼玉県「無観客で」 バスケとサッカー、組織委に要請
 埼玉県は22日、さいたま市で実施される東京五輪のバスケットボールとサッカーに関し、夜遅い試合を無観客とするよう大会組織委員会に要請したと明らかにした。同市では新型コロナウイルスまん延防止等重点措置が継続中で、解除後も何らかの制限を設ける可能性があり、大野元裕知事は記者団に「観客有りは考えにくい」と述べた。県によると、さいたまスーパーアリーナで実施予定のバスケットボールは一部の試合が午後9時~11時。埼玉スタジアムでのサッカーも午後11時終了の試合がある。特例で無観客とするよう大野知事が組織委の橋本聖子会長に要請し「検討する」と回答があったという。

*7-3:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20210624&ng=DGKKZO73190060T20C21A6FFJ000 (日経新聞 2021.6.24) 英、観客6万人超に拡大 サッカー欧州選手権、インド型流行で感染増、独伊首相が懸念
 英政府と欧州サッカー連盟(UEFA)は7月にロンドンで開催するサッカー欧州選手権の準決勝と決勝について、6万人超の観客入場を決めた。世界が注目する試合をテコに、新型コロナウイルスからの復活をアピールする。足元では感染力の強いインド型(デルタ株)が流行し、欧州では懸念も広がる。東京五輪の開幕を控え、コロナ禍での大規模イベント開催に関心が集まる。UEFAが22日に発表した。準決勝は7月6、7日、決勝は11日に「サッカーの聖地」とされるウェンブリー競技場で開催する。収容可能人数(9万人)の75%まで入場させる計画だ。UEFAのチェフェリン会長は「この大会は、人々の暮らしが通常に戻りつつあることを確信させるための希望の光だ」とした。同競技場で開催中の予選では収容可能人数の25%に絞っており、準決勝と決勝では一気に3倍に増やす。観客は入場時に新型コロナの陰性証明か、ワクチンの接種証明を提示するルールは残す。米国では大リーグやフットボールで観客の収容数を緩和する動きが広がるが、欧州でこの規模で入場させるのは珍しい。これに対し、欧州首脳は相次いで懸念を表明した。ドイツのメルケル首相は22日、「スタジアムを埋めることが、良いことだとは思わない」と述べたと公共放送ZDFが伝えた。イタリアのドラギ首相も21日の記者会見で「感染リスクが非常に高い国で開催しないことを支持する」と語り、決勝をローマで代替開催することを示唆した。念頭にあるのが、英国で流行するデルタ株だ。感染力が従来型よりも40~80%強いとされる。足元ではデルタ株の影響で感染者数が再び拡大し、1日に1万人を超える日が続く。政府はワクチン接種を急ぐことで重症者や死者を抑える考えだが、大勢が集まるイベントでの感染増への懸念はぬぐえない。主要7カ国首脳会議(G7サミット)が開かれた英南西部コーンウォールでは、開催中に感染者が増えていたことが分かった。英紙ガーディアンによると、コーンウォール地方の10万人当たりの感染者数は3日時点で約5人だったが、16日には約131人に急増した。G7サミットでは小さなリゾート地に要人警備などで6500人の警察官が集まった。ブラジルで開催中のサッカー南米選手権では各国の選手やスタッフらの感染も確認された。AP通信によると、22日までに140人が感染した。感染対策を徹底しないと、新型コロナの収束が遠のく可能性もある。東京五輪では、競技会場の収容人数を最大1万人とすることが決まっている。大会組織委員会などによると、1日あたりの観客数は、最も多い日で約20万人を見込む。欧州選手権は五輪の直前に開かれるだけに、収容人数の論議は当面注目を集めそうだ。

*7-4:https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA2351H0T20C21A6000000/ (日経新聞 2021年6月23日) ワクチン2回完了、1000万人超 職場接種は受け付け休止
 政府は23日、新型コロナウイルスワクチンに関し、2回の接種を終えた人が1037万人になったと発表した。累計の接種回数も3438万回を超えた。65歳以上の高齢者のうち1回目を終えた割合も5割に迫る。接種率の高い一部地域で新規感染や重症化を抑えられている事例が出ている。1日あたりの接種回数も政府目標の100万回に近づく。23日公表のデータによると、9日が99万回で最多だった。14日は101万回だったが、同日は月曜日で、集計の仕組み上、土日に接種した医療従事者分を一度に計上している。政府は希望するすべての人への接種を10~11月までに完了させる目標を掲げる。まずは重症化しやすいとされる高齢者からワクチンを普及させ、感染拡大防止の効果を期待する。国のワクチン接種記録システム(VRS)への入力の集計によると、22日時点で1回目の接種は高齢者向けで1748万9340回となり、全体の49.2%に達した。2回目まで終わったのは566万5012回と15.9%だった。米ファイザー製は3週間、米モデルナ製は4週間の間隔を空けて2回目を打つため、7月中旬には半数を超す高齢者が2回の接種を終える見込みだ。菅義偉首相は23日、首相官邸で開いた新型コロナ対策の進捗に関する閣僚会議で「1回接種した高齢者の人口は半数程度となっている」と説明した。「新規陽性者に占める高齢者の割合は、先月末の17%台から直近では11%台まで低下した」とも語った。接種が先行する地域で感染状況が落ち着いてきた例が出ている。高齢者1回目が67%と最も接種率が高い佐賀県は重症者の病床使用率が2%まで抑えられ、新規感染者は4日以降で5人以下を維持している。高齢者の1回目接種率が59.7%の和歌山県は接種の進捗と並行して新規感染者は減り、2ケタとなったのは5月29日の17人が最後だった。6月22日には県民向けに1万円を上限に県内での旅行代金を割り引くキャンペーンを始めるなど、経済活動の正常化をめざす。厚生労働省の専門家組織「アドバイザリーボード」も23日の会合でワクチンの効果を分析した。同会合の資料によると2月から先行して医療従事者への接種を始めたのに伴い、クラスター(感染者集団)の発生場所のうち医療機関が占める割合は2月15日で3割ほどだったのが、6月21日時点で3%まで下がった。感染状況は緊急事態宣言や飲食店の時短営業、クラスター対策など複合的な要因があり、ワクチンの効果がどの程度かが分析されているわけではない。厚労省内でも各種のデータを分析し「接種率と新規感染者数の減少との因果関係は証明が難しい」との声はある。全国で多くの人が免疫を持って感染しにくくなる「集団免疫」を得るには課題がある。なかでも懸念されるのはより感染力が強いインド型(デルタ株)の拡大だ。インド型が新規感染者の9割ほどを占める英国は21日時点で成人の1回目接種が82%、2回目は60%に上ったものの、感染は再び広がっている。京大の西浦博教授がアドバイザリーボードで示した試算では、日本でも東京五輪が開幕する7月23日時点でインド型が新型コロナの68.9%を占める。世界保健機関(WHO)の研究者は昨年8月に新型コロナの感染を断ち切るには少なくとも60~70%の人が免疫を持つ必要があるとの見方を示した。感染力が強い変異ウイルスの広がりで、こうした割合の想定も上がるとの指摘が出ている。アドバイザリーボードは23日の会合で、ワクチン接種で高齢者の重症化抑制に期待を示す一方で「今後リバウンドが懸念される」との見解も示した。感染拡大を急速に招けば「結果的に重症者数も増加し、医療の逼迫につながる」と指摘した。ワクチン接種に関連し、河野太郎規制改革相は23日の記者会見で、企業での職場接種の新規受け付けを25日午後5時で一時休止すると発表した。申請が殺到し、モデルナ製ワクチンを供給できる量の上限に達しそうだと判断した。「相当な勢いで申請をいただいている。1日に可能な配送量は上限に達しているので一度ここで申請を休止したい。このままいくと供給できる総量を超えてしまう」と述べた。同じくモデルナ製を使う自治体の大規模接種会場向けも23日で新規の受け付けを止めた。すでに1回目を接種した人の2回目分は確保している。モデルナ製を使う自衛隊の大規模接種センターや大学での接種分は別枠で確保しており運用に支障はないという。厚労省はモデルナ社からワクチンを6月末までに4000万回分、9月末までにさらに1000万回分の供給を受ける契約を結んでいる。河野氏によるとこれまでの申請で、企業と大学と合わせて3300万回分、自治体の大規模接種会場で1200万回分をそれぞれ超えた。当面の対応は「若干、綱渡りのようなオペレーションになるかと思う」と話した。

*7-5:https://www.tokyo-np.co.jp/article/115172 (東京新聞 2021年7月7日) 東京に緊急事態宣言を発令へ、8月22日まで 東京五輪、都内は無観客で調整 
 政府は7日、東京都に4度目の新型コロナウイルス緊急事態宣言を12日から発令する方針を固めた。まん延防止等重点措置を延長する当初方針から転換した。23日に開会式を迎える東京五輪の都内の会場を無観客とする方向で調整する。沖縄県の緊急事態宣言は延長する。埼玉、神奈川、千葉、大阪の各府県のまん延防止等重点措置は延長する見通しだ。いずれも8月22日が期限。政府対策本部を8日に開いて正式決定する。緊急事態宣言下で開催される異例の五輪となる。東京都に宣言を発令すれば6月20日に解除して以来。北海道と愛知、京都、兵庫、福岡各府県に適用中の重点措置は期限の11日までで解除する方向だ。政府は宣言の対象地域では酒類を提供する飲食店への休業要請を引き続き行う。条件付きで午後7時まで容認していた重点措置の地域での酒類提供は原則停止とする。ただ知事の判断で緩和措置も可能とする。菅義偉首相は7日、10都道府県に発令している重点措置を巡り、西村康稔経済再生担当相や田村憲久厚生労働相ら関係閣僚と協議した。その後、東京の感染増を「万全の態勢をとって抑えていく」と記者団に述べた。五輪観客数の扱いについては、東京などの重点措置の対応を決定した上で、東京都、大会組織委員会、国際オリンピック委員会(IOC)などの代表による5者協議で決まると強調。「地方においては全体的に下げ止まりの傾向だ」とも語った。

<非科学的な政策(その1:新型コロナ対策)>
PS(2021年6月28日、7月1日追加): 公衆衛生学が専門で英国キングス・カレッジ・ロンドンの教授だった渋谷さんが、*8-1のように、「感染症対策の基本は、①感染経路の遮断(マスク・手洗い・三密回避) ②検査による感染者の把握と隔離 ③ワクチン」だが、「日本では①がメインで、国民の自主的努力に頼ってきた」「②の検査は抑制された」「③のワクチン承認プロセスが何カ月も遅れた」と言っておられるのに、私は全く賛成だ。つまり、政府(特に厚労省)は、国民の努力のみに頼り、邪魔こそすれ応援しなかったのである。
 その上、ワクチンを接種していない日本の一般人の方がずっとリスクは高いにもかかわらず、*8-2のように、来日前にワクチン接種し陰性証明を持っているウガンダ選手団の2人に「デルタ株」の感染があり、空港検疫を「すり抜けた」として、練習もさせずにホテルで待機させ、市の職員4人を濃厚接触者に認定しているのは非科学的だ。何故なら、選手は健康な人であり、「デルタ株」であってもワクチン接種で本人の重症化は防がれており、短期間で陰性に戻ることができる筈で、他人への感染力は小さいので、関係した人にPCR検査を行って陰性であることを確かめればすむからだ。そして、このような簡単な理屈もわからない人は、愚鈍であると同時に国籍による差別をしている。
 また、*8-3のように、東京五輪のプレーブックは、「④2回の陰性証明」「⑤大会期間中、検査を毎日選手に受けてもらう」「⑥日本の一般市民との接点を極力減らし、社会へのリスクを減らす」「⑦特定の場所の間を公共交通を使わずに移動」「⑧食事は競技・練習会場、宿泊施設レストラン・ルームサービス等の限定された形」「⑨五輪期間中の選手村での滞在は、各選手の競技開始5日前から終了2日後まで」というルールを決めたそうだが、④⑤はまあよいとしても、⑥⑦は、現在のワクチン接種率なら「日本の一般市民との接点を極力減らし、選手の感染リスクを減らす」と書き替えるべきである。さらに、⑧は、検査で陰性同士の人が接しても全く問題ないため、世界から集う選手の交歓という五輪の核となる特性を感染症対策を理由に過度に制限しており、⑨は、「競技が済んだらさっさと国に帰れ」という規定で、それでは選手も日本に来た意味が半減するだろう。そのため、私は、日本に来た選手に専用バスかはとバスを使ったオプションを企画し、日本の工場や観光地を巡るコースを準備したらよいと思う。この時、「おもてなし」をする日本人が全員ワクチン接種済であることが必要なのは言うまでもない。
 なお、*8-4のように、「五輪を無観客にすべき」というメディア等の大合唱で与党政治家も無観客開催の方向になびいているそうだが、感染者数だけ発表して「命が一番大切」などと粋がっていても意味がない。それより重要なことは、①中等症・重症の人が何人いるか ②それが首都圏や全国の医療をひっ迫させる数か ③その数で医療が逼迫するとすれば、その理由は何か ④ワクチン接種を全力で行って感染者数を減らす などである。「国民一丸となって」「総力戦で」など、まるで太平洋戦争中のように、非科学的で無責任な政策の責任を国民に押し付けるのは止めてもらいたい。

   
 2021.4.26毎日新聞      2020.10.29東京新聞      2021.6.23日経新聞

(図の説明:左図のように、日本全体の重症者数は最も多かった1月でも1000人程度であり、中央の図のように、重症化率は高齢者ほど大きい。また、右図のように、ワクチン接種率が高い地域ほど重症者の病床使用率は小さい。そのため、健康で若いワクチン接種済のオリンピック選手や関係者に重症者が出る確率は非常に低く、病床逼迫の理由とはならないだろう)

*8-1:https://digital.asahi.com/articles/DA3S14953444.html (朝日新聞 2021年6月28日) (新型コロナ)現場から 日本の感染対策、国民の努力頼み 渋谷健司さんに聞く
 公衆衛生学が専門で、英国キングス・カレッジ・ロンドンの教授だった渋谷健司さんは5月に帰国し、福島県相馬市で新型コロナウイルスワクチンの接種事業を支援しています。日本のコロナ対策をどうみるか。オンラインで話を聞きました。
―日本の対策はどうですか。
 感染症対策の基本は三つです。一つ目が感染経路の遮断、つまりマスクや手洗い、三密を避けること。二つ目が検査をして感染者を見つけ隔離する。三つ目が免疫をつけるワクチン。日本では一つ目がメインで、国民の自主的努力に頼ってきました。敬服するほど皆さん努力してきたと思います。二つ目の検査は、ずっと抑制されてきた。社会経済を回すための検査がもっと必要だと私は主張してきましたが、なかなか増えません。多くの人が安心を求めて民間検査をしているのも日本の特徴だと思います。
―三つ目のワクチンは?
 ワクチンの承認プロセスは何カ月も遅れました。日本人での治験をせずに緊急承認する選択もあったのに、そうしなかった。緊急時ではない平時のプロセスでやっているようにみえます。
―福島県相馬市の新型コロナウイルスワクチン接種メディカルセンター長に就任しました。
 今は国難の時期で、ワクチンは最も優先順位が高い医療問題。貢献したいという思いで来ました。英国ではワクチン接種が進むにつれ感染者が減り、日に日に社会が明るくなってきました。日本でもワクチンの効果が数字に表れてくると、どんどんよい方向に変わっていくと思います。ただし集団免疫がつくには時間がかかります。接種したからといって安心せず、感染症対策の基本を継続していく必要があります。
―相馬モデルと呼ばれる方法の特徴は?
 接種する日時を地区ごとに決めた集団接種を基本としています。予約は不要で、その日に会場にくればいい。7月中旬には、16歳以上の希望者への接種がほぼ終了する見込みです。新型コロナに打ち勝つにはスピード勝負で、総力戦になります。会場設営の仕方や、どうやって滞在時間を短くするかなど、ノウハウをほかの自治体とも共有できたらいいと思います。

*8-2:https://news.yahoo.co.jp/articles/96d397fe797163dfa4349f7bb0ca9c997b3a4cef (Yahoo 2021/6/26) 検疫「すり抜け」感染発覚……来日前にワクチン接種のウガンダ選手団、「デルタ株」に感染
 東京オリンピックへの出場で来日したウガンダ選手団で新型コロナウイルス感染が確認された2人について、デルタ株(インド型)だったことが分かりました。選手らは来日前にワクチンを接種していましたが、2人目は検疫をすり抜ける形で発覚しました。
■空港検疫「すり抜け」対策は
 東京オリンピックのため来日したウガンダ選手団の1人が、成田空港の検疫で新型コロナウイルス陽性が確認されましたが、感染していたのはインドで確認された「デルタ株」だったことが25日、分かりました。他の選手らはホストタウンの大阪府泉佐野市に移動した後、ホテルで待機していましたが、そのうちの1人も23日に陽性が判明しました。市の職員4人も濃厚接触者に認定されました。選手らは全員、来日前にワクチンを接種していました。大阪府の吉村知事は25日、「空港で陽性がもうすでに分かったのであれば、周りの一緒に行動している選手団に広がっている可能性は十分あるわけだから、その段階で止めておかないと、より広がってくる可能性が高いのではないか」と述べました。吉村知事は、ホテルで待機していた1人についても、スクリーニング検査でデルタ株(インド型)だったことを明らかにしました。空港検疫をすり抜け、感染が発覚したケースとなりました。厚生労働省は、検疫で選手らの感染が判明した場合、濃厚接触の疑いがある人を別の専用バスで合宿先まで運ぶことを検討しているといいます。
■ホストタウン「計画」変更で…
 25日夜、セルビア選手団のホストタウンになっている埼玉県富士見市では、ボランティアへの説明会が行われ、遵守事項や、「おもてなしの心」をいつも意識することの大切さが伝えられました。市のオリパラ担当課長が案内してくれた体育館では、7月20日からセルビアのレスリング選手の合宿が行われる予定で、国際基準のレスリングマットを(今後)2面ほど用意するということです。「当初はレスリングの実際の競技の体験を、(市民が)一緒に選手と交わってやろうということも企画はしていたのですが、残念ながらそういう状況がつくれなくて」と残念がります。選手には毎日のPCR検査や、移動の制限が求められます。市民は選手たちと距離を取った観覧席からのみ練習を見学できるよう、計画しているといいます。
*担当課長
「『市民に(感染の)影響が出るのか』と心配されている市民の方も多いですが、セルビア共和国の方もしっかりとした心構えで来ていただけるということで、無事最後まで成功できるような形を取りたいとは思っています」

*8-3:https://www.yomiuri.co.jp/column/henshu/20210511-OYT8T50056/ (読売新聞 2021/5/14) 「プレーブック」が語る「安心・安全」な東京五輪の開催とは
 新型コロナウイルス感染症は収束する気配が見えず、今夏の東京五輪・パラリンピック開催に向けた世論の懸念が高まっている。大会組織委員会、国際オリンピック委員会(IOC)などは4月28日以降、大会期間中の感染症対策指針をまとめた「プレーブック」第2版を公表したが、「安心・安全」な大会開催に、どこまで迫れるのだろう。
●変異型ウイルスの拡大受け、対策レベルを向上
 2月に初版が公表された「プレーブック」は、日本政府や国内外の感染症専門家などの知見を得て、選手、役員、報道関係などの対象ごとに、コロナ対策の指針をまとめたものだ。6月に最終版を出す予定という。第2版の特徴は、変異型ウイルスという新たな課題を意識し、対策のレベルが上がったことだ。選手や関係者が日本入国時に提出を義務づけられる「陰性証明」は、各国で受ける検査が1回から2回に増やされた。入国直後のフォローも厳格化。大会期間中選手に受けてもらう検査も、4日に1度程度としていたものが、原則毎日に引きあげられた。より感染が広がりやすいとされる変異型ウイルス。検査の網の目を細かくして早期に捉え、リスクを抑える狙いだろう。検査頻度を上げて大会参加者の安心を確保するだけではなく、日本の一般市民との接点を極力減らす「バブル」と呼ばれる考え方も徹底、社会へのリスクも減らす方針だ。選手・関係者は入国後、14日間の自己隔離を免除される代わりに、事前に提出・承認を受ける「行動計画」に従い、宿泊施設と練習・競技会場など特定の場所の間を、公共交通を使わずに移動することを求められる。感染リスクが高まりやすい食事についても、競技・練習会場、宿泊施設のレストランやルームサービスなど、限定された形で取ってもらうという。「バブル」は各国で開催されてきた国際競技大会でも採用された手法で、状況によっては参加者に、かなりの負担をかけることになり得る。五輪期間中の選手村での滞在は、各選手の競技開始5日前から終了2日後までと、世界から集う選手の交歓という五輪の核となる特性も、感染症対策が最優先される中ではお預けだ。ただ、選手は「コロナ陽性」となれば大会参加の夢を絶たれてしまうため、バブルの中で行動することが自分やチームを守るための方策ともなる。IOCのクリストフ・ドゥビ五輪執行局長は、選手団によるプレーブックの順守に自信を見せる。

*8-4:https://www.tokyo-np.co.jp/article/113820 (東京新聞 2021年6月30日) 4都県まん延防止延長検討 五輪無観客の可能性浮上
 政府は、新型コロナウイルス対応のまん延防止等重点措置を7月11日までの期限で適用している10都道府県のうち、東京など首都圏4都県について延長も視野に検討に入った。政府関係者が30日、明らかにした。感染再拡大(リバウンド)が続いており、感染状況を注視した上で来週中に判断する。政府内には緊急事態宣言発令に言及する声もある。重点措置延長や宣言発令がされれば、7月23日に開幕する東京五輪と重なり、無観客開催の可能性も浮上している。先週末に「東京が下げ止まるかが重点措置の延長の可否に影響する」と指摘していた首相周辺は「厳しい状況になってきた」と述べた。

<非科学的な政策(その2:開発を妨害するのはよくない規制と過去の常識)>
PS(2021年6月30日追加):*9-1に、富士フイルムHDが、「①900億円投じてバイオ医薬品の開発製造受託拠点を増強」「②ワクチン原薬の生産能力を米国で2倍に増強し、英国でも遺伝子治療薬の原薬の生産能力を高める」「③富士フイルムはバイオ薬のCDMOに注力して事業買収や設備増強を積極的に進めてきた」「④富士フイルムは、CDMO分野でデンマーク工場の設備を増強し、米ノースカロライナ州に新工場の稼働計画がある」「⑤写真フィルムで培った技術を活用してバイオ薬のCDMO事業に参入した」「⑥AGCは英製薬大手アストラゼネカから米国工場を約100億円で買収し、デンマーク工場は約200億円投じて生産能力を増強」と書かれている。
 このように、今まで培ってきた技術を活かして日本企業がバイオ医薬品産業に力を入れているのだが、投資先は欧米であって日本ではなく、その理由は、i)日本国内では承認を得にくいため、医薬品開発をすれば外国に負けること ii)希望者に治験を行うことすらメディアの批判に晒されること iii)そのため実用化や普及に絶望的時間を要すること iv)開発後の知的所有権もままならないこと v)従って、欧米で承認されたものを輸入した方が早いという判断になること 等が挙げられる。つまり、今の日本のやり方では、医薬関係のハイテク化に遅れるのである。
 それでも、*9-2は、「⑦苦い教訓から政府はワクチン開発・生産体制強化戦略を閣議決定」「⑧国家としてのワクチン戦略が不在だった」「⑨モデルナには米政府の手厚い支援があり、米政府は感染症を重大な安全保障の問題と位置付けている」「⑩ワクチン市場は米欧メーカーが席巻している」「⑪癌・高血圧・糖尿病等の薬は安定した需要が見込めるが、感染症は事前に分からない」「⑫そのため、民間企業だけでワクチン開発に取り組むのは経済合理性に乏しく、政府との二人三脚が欠かせない」「⑬先立つものはカネで、ワクチン敗戦を語る識者は費用負担の構えができているだろうか」などと記載している。しかし、⑪のような「ワクチンのニーズが事前にわからない」会社にワクチンの企画・開発は無理であるため、⑫⑬のように政府が予算をつぎ込んでも公共事業化するだけである。そのため、日本人の科学力を上げ、よいアイデアを持つ人に資金的バックアップをすることが必要なのであり、その際には、i)、ii)、iii)、iv)、v)をまず解決して、関係する周囲からの妨害がないようにすべきなのだ。
 このような中、立憲民主党の議員が、*9-4のように、「⑭東京オリ・パラの選手が新型コロナに感染して重症化したらベッド不足にならないか」「⑮選手・関係者に多数の感染者が出れば、東京都民のベッドが不足し、医療が逼迫するのではないか」と質問し、内閣官房のオリパラ推進本部事務局の担当者が、「⑯毎日検査をして行動管理・健康管理も行うし、選手から陽性者が発生した場合でも殆どは無症状か軽症であることが想定されている」「⑰一般の集団に比べ、選手は若い人が多いため、重症化して入院病床が埋まることは考えにくい」としたそうだ。
 しかし、⑭⑮は医療の逼迫を盾にして五輪中止か無観客に追い込むための批判のように思う。何故なら、EUでは、*9-5のように、2021年7月1日からワクチン接種完了と新型コロナからの回復データを空港等で提示すれば、事前の検査や隔離期間が免除され、こちらの方が科学的だからである。その上、五輪の選手はワクチン接種証明か陰性証明を持って来るとりわけ健康な人で、(日本政府の想定だから信じられないという不幸はあるものの)⑯⑰は妥当な判断と言えるからだ。それでも、「医療逼迫」を心配する人がいるのなら、選手村を租界のように扱って、可能な国には選手団に医師を随行させればよいだろう。その理由は、随行してくるドクターも健康管理や感染症の初期治療はでき、日本の医療に負担をかけることが著しく減るからである。

*9-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20210630&ng=DGKKZO73398500Z20C21A6TB1000 (日経新聞 2021.6.30) 富士フイルム、バイオ薬900億円追加投資 米英拠点に、ワクチン原薬を増産
 富士フイルムホールディングスは900億円を投じ、バイオ医薬品の開発製造受託(CDMO)の拠点を増強する。米国でワクチン原薬の生産能力を2倍に引き上げ、英国でも遺伝子治療薬の原薬の生産能力を高める。新型コロナウイルスの感染拡大を受けワクチンなどの需要は伸びている。同社はCDMO向けの投資を積み増し、この分野のシェア拡大を目指す。バイオ薬は細胞培養や遺伝子組み換えなどのバイオ技術を使ってつくる。バイオ薬の製造設備は投資負担が重く、高い生産技術が求められるため、製薬会社が外部の企業に製造を委託する動きが広がっている。富士フイルムはこのバイオ薬のCDMOに注力している。事業買収や設備増強を積極的に進めており、今回の900億円の投資により、この分野への累計投資額は6000億円程度にのぼることになる。富士フイルムは29日、900億円の投資を発表した。三菱商事との共同出資会社、フジフイルム・ダイオシンス・バイオテクノロジーズが米国に持つ生産拠点に細胞培養タンクなどを導入する。「遺伝子組み換えタンパク質ワクチン」の原薬の生産能力が約2倍に増える。このワクチンは遺伝子組み換え技術を使ってウイルスのタンパク質をつくり、これを投与して免疫反応を引き出すもので、新型コロナ向けの利用も見込まれている。英国工場でも、遺伝子を体内に入れて病気を治す遺伝子治療薬の生産開発棟を新設し、同拠点での原薬生産能力を10倍以上に拡大する。バイオ薬の一種である抗体医薬品向けでも中小型の培養タンクを追加し、生産能力を3倍に増やす。今回の投資に先立ち、富士フイルムはCDMO分野で、デンマークの工場の設備増強や、米ノースカロライナ州に新工場を稼働させる計画を打ち出してきた。さらなる積極投資に踏み込む。富士フイルムは写真フィルムで培った技術を活用し、2011年にバイオ薬のCDMO事業に参入した。世界で十数%のシェアを持つとみられ、ロンザ(スイス)に次ぐ2位グループに入る。バイオ薬のCDMO市場は年平均10%程度で成長している。足元ではコロナ用ワクチンや治療薬の生産で、市場の需給も逼迫している。富士フイルムのバイオ薬のCDMO事業は米バイオ医薬品大手バイオジェンから事業を買収した効果もあり、21年3月期の売上高が1000億円超と前の期から7割増えた。25年3月期には売上高を2000億円に引き上げ、その後も年率20%の成長を目指している。バイオ薬のCDMOは投資競争の様相だ。2位グループの一角、韓国サムスンバイオロジクスは20年に約1550億円を投じる新工場の建設を決めた。AGCは英製薬大手アストラゼネカから米国工場を約100億円で買収し、デンマーク工場では約200億円を投じて生産能力を増強する。

*9-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20210622&ng=DGKKZO73109490R20C21A6EN8000 (日経新聞 2021.6.22) ワクチン開発、カネの覚悟を
 新型コロナウイルスのワクチン開発で米英に後れを取った日本は、ワクチンを入手するために涙ぐましい努力を払った。日本への帰国直前の杉山晋輔駐米大使(当時)が、米ファイザーのブーラ最高経営責任者(CEO)と直談判で供給を確保するなど、異例の交渉を余儀なくされた。苦い教訓を基に政府は6月1日、ワクチン開発・生産体制強化戦略を閣議決定した。文書には従来の開発・製造体制の問題点が率直につづられている。一読して明らかなのは、国家としてのワクチン戦略が不在だったことである。日本でファイザー製と並んで接種されている米モデルナ製。モデルナはバイオベンチャーと紹介されることが多いが、日ごろから開発には米政府の手厚い支援がある。同社は2013年から米国防総省の国防高等研究計画局(DARPA)から2500万ドル(約27億5000万円)の支援を受けている。保健省からは16年に最大1億2500万ドルの研究資金を得た。緊急時である今回のコロナ禍に際し、ワクチン開発のために追加で9億5500万ドルの政府資金が注ぎ込まれた。米政府が感染症を重大な安全保障の問題と位置付けていることがハッキリする。モデルナの創業時に遡ると、マサチューセッツ州のベンチャーキャピタルから資金と人材が提供されている。日ごろからの力の入れようの差が、コロナ禍で浮き彫りになったといえる。次の感染症に備えて日本も開発を強化すべし。外野席から説教するのは簡単だが、経済的条件を直視する必要がある。国内のワクチンの市場規模は、コロナ前の19年で3200億円。10兆円の医薬品全体の3%あまりにすぎない。世界のワクチン市場4兆円の約8%を占めるが、市場は米欧メーカーが席巻している。しかもワクチンは製薬会社にとり経営リスクが大きい。がんや高血圧、糖尿病などの薬は安定した需要が見込めるが、感染症はいつ、どれだけ発生するか事前には分からない。民間だけでワクチン開発に取り組むのは経済的な合理性に乏しい。モデルナの例が物語る政府と企業の二人三脚が欠かせないのである。日本政府はその方向を模索しようとしているが、先立つものはカネ。ワクチン敗戦を語る識者は費用負担の構えができているのだろうか。

*9-3:https://www.nikkei.com/article/DGKKZO73398810Z20C21A6TB1000/ (日経新聞 2021年6月30日) 東芝、再生医療で新会社、独立し意思決定を迅速化
 東芝は、再生医療向けの装置・ソフトウエア事業を新会社として独立させる。研究開発を主導していた研究者2人が新会社に出資し、代表取締役となる。2人が議決権の過半を握り、東芝の出資比率は2割未満に抑える。東芝から独立した企業となることで、意思決定のスピードを速め、拡大が見込まれる再生医療の市場を取り込む。新会社のサイトロニクス(川崎市)は細胞を培養する際の管理を効率化できる機器とシステムを提供する。資本金(資本準備金含む)は1億9000万円で、7月1日から営業を始める。東芝のほか、ベンチャーキャピタル(VC)のビヨンドネクストベンチャーズ(東京・中央)が出資する。東芝は同事業に関わる知的財産を譲渡する。再生医療は、やけどの治療として皮膚の細胞を培養して患者に投与するなどする。サイトロニクスが開発する装置は、再生医療向けに培養する細胞が入った容器を設置するだけで微細な画像を自動で取得し解析できる。従来品に比べて5分の1程度に小型化し、無線通信を活用できる。機器を置く装置内部の温度や湿度を一定に保てる。研究機関や医療関連企業など向けに売り込み、2030年をメドに年間の売上高100億円を目指す。早期の新規株式公開(IPO)も検討する。

*9-4:https://digital.asahi.com/articles/ASP6Z6FQBP6ZUTFK01D.html?iref=comtop_7_03 (朝日新聞 2021年6月30日) 五輪選手、陽性でもほぼ無症状か軽症? 政府が想定説明
 東京五輪・パラリンピックの選手が新型コロナに感染して重症化したらベッド不足にならないかという疑問に対する政府側の答えは、「選手に陽性者が出てもほとんど無症状か軽症」だった。30日にあった立憲民主党の会合でのやりとり。出席した国会議員からは「希望的観測だ」と懸念する声が上がった。立憲議員が「選手・関係者に多数の感染者が出れば、東京都民のベッドが不足し、医療が逼迫(ひっぱく)するのではないか」と質問。内閣官房のオリパラ推進本部事務局の担当者は「日々、検査をし、行動管理も健康管理も行う。仮に選手から陽性者が発生した場合でも、ほとんどは無症状、あるいは軽症であることが想定されている」と説明。「地域医療に支障を生じさせないよう対応する」と述べた。これに対し、議員からは「命の選別が起きる事態をどう想定するのか」といった厳しい意見も出た。この担当者は会合後、朝日新聞の取材に、大会組織委員会の医療の専門家から、管理が行き届いた選手について「仮に陽性者が出ても、症状が出る前に陽性と分かるだろう」との見解を得ていると語った。そのうえで「一般の集団に比べ、選手は若い人が多い。重症化し、入院病床が埋まるということは考えにくい」との認識を示した。

*9-5:https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR25EXU0V20C21A6000000/ (日経新聞 2021年6月30日) EUがワクチン証明本格稼働へ 1日から、感染増リスクも
 欧州連合(EU)で新型コロナウイルスのワクチン接種を証明するシステムが7月1日から本格稼働する。夏のバカンス期に観光などを目的とした多くの人の移動にお墨付きを与え、景気浮揚につなげる考えだ。EUでも変異ウイルスの感染が広がりつつあり、人の移動の正常化と感染抑制の両立の取り組みが成功するか注目を集めている。EUが導入する「デジタルCOVID証明書」には、ワクチン接種完了や新型コロナ感染からの回復といったデータが記録され、QRコードのついた形でデジタルや紙で発行される。空港などで提示することで、事前の検査や隔離期間が免除される。EUの欧州委員会の提案に基づいて、加盟27カ国が5月までに証明書の共通書式や技術面の仕様で合意した。6月からギリシャやドイツなど7カ国が先行導入して以降、準備が整った加盟国からシステムに接続してきた。30日時点で27加盟国中21カ国が導入済み。EU非加盟のノルウェーやアイスランドなども加わっている。証明書の狙いは、人の移動を活発にし、新型コロナで打撃を受けた経済の再生につなげることだ。EU統計局によると、外国人による宿泊回数は2020年で約4億回と前年から7割減った。なかでもギリシャ(77%減)やスペイン(79%減)、キプロス(83%減)など南欧諸国の落ち込みが目立つ。EUでは、新型コロナを機に加盟国が相次ぎ国境管理などの制限措置を導入した。域内の移動を自由化した長年の欧州統合の成果が長期間損なわれれば「EUの結束に悪影響が出る」(EU高官)との懸念も強い。20年はEU全体でマイナス成長になったが、観光業への経済依存度が大きい南欧諸国が受けた打撃はとりわけ大きい。観光立国のギリシャはEU規模の証明書の導入を当初から主張してきた。同国のホテル協会の関係者は「観光客は戻り始めたが、まだとても不安定な状況だ。本格的な観光復活には証明書が不可欠だ」と語る。加盟国は移動規制や店舗の営業制限の緩和に動き出している。スペインなど南欧の一部では屋外でのマスクの着用義務も解除され、市民生活は平時に戻りつつある。EU復興基金の資金も7月には加盟国への分配が始まる見通しで、景気には好材料が多い。ユーロ圏の成長率が20年の6.6%減から21年は4.5%増に改善すると予測する独コメルツ銀行は「21年末には景気はコロナ危機前の水準に戻る」と分析する。「絶えず警戒し続けねばならない。変異ウイルスが急速に広がっている」。フォンデアライエン欧州委員長は6月25日の記者会見で油断を戒めた。足元では感染力の強いインド型(デルタ株)の感染が広がっている。EUの専門機関、欧州疾病予防管理センター(ECDC)は23日、8月末までにデルタ株の感染が全体の9割に達するとの予測を公表した。当初遅れていたワクチン接種の速度は上がっている。ECDCによると、少なくとも1回の接種を終えた成人は28日時点で59%に上る。だが、より高い効果を得られる2回目の接種を終えた人は36%にとどまる。このまま多くの人が移動する夏のバカンスシーズンを迎えることへの不安はくすぶっている。

<非科学的な政策(その3:不要な規制・外国人に対する差別と人権軽視)>
PS(2021年7月3、6日追加):*10-1のように、大会組織委員会が国立競技場で実施する開閉会式を無観客とする方向で検討しているそうだが、「接種を受けていない人への不公平な扱いや不当な差別に繋がる」などという馬鹿なことを言わずに、*10-3のワクチンパスポートを活用すれば、「50%以内で1万人が上限」「50%以内で5千人が上限」「無観客」などの科学的根拠のない規制を行って経済に迷惑をかけず、五輪も有観客で行うことができたのだ。
 また、*10-2のように、五輪の取材のために来日するワクチン接種済の記者に、「①GPSで行動確認」「②水際対策アプリのダウンロード要求」「③観客への取材制限」等の行動制限を設けたことに対し、アメリカの有力紙12社が「④個人のプライバシーと技術上の安全面を軽視している」「⑤制限が来日する記者に限られることは不公平」「⑥報道の自由を侵害しないよう再検討を求める」と連名で大会組織委員会に抗議文を送ったのは全く尤もであり、私も外国人差別が過ぎると思って呆れていたところだった。
 さらに、そのワクチンの職場接種は、*10-4のように、「ワクチン供給が追いつかなくなったため」として政府が新規申請受付を停止しているが、職場接種した人は自治体で接種する必要がないため、年齢を問わず接種券を素早く発行し、既接種者を自治体が直ちに把握できるようにして、1人の人にワクチンを二重に準備することがないようにすればよかったのだ。その理由は、接種券なしで職場接種を行えば接種済の入力に手作業の時間を要するため、既接種者をすぐ把握することができないからだ。そして、合理的にやってもワクチンが足りないのであれば、英アストラゼネカ製や米ジョンソン&ジョンソン製を使えばよいのである。
 なお、*10-5の「⑦政府が自治体等の接種実態を正確に把握できずにいる」というのは、(申し訳ないが)デジタル庁を作ると言いながら、どこまでアホかと呆れさせられる。何故なら、「⑧どこで」「⑨誰に」「⑩どれだけの数量を接種したか」「⑪それぞれの場所の在庫と不足数量はどれだけか」は、ポスシステム(1980年代からスーパーやコンビニで使っているシステム)を使えば、何カ所で接種してもすぐ把握できるからだ。しかし、行政による代理登録はしてよいものの、手作業を入れずに集計できるよう、接種券を発行して番号管理をする必要はあった。そのため、「国がどんどん打てと急がせた」などと文句を言うのは、まるで自治体はやりたくなかったのにやっているようで感心しない。実際には、必要以上に年齢制限をして接種券を発行しなかった自治体にも責任があるだろう。

*10-1:https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUE025TZ0S1A700C2000000/ (日経新聞 2021年7月2日) 五輪開閉会式、無観客で検討 8日にも5者協議
 東京五輪の観客数を巡り、新型コロナウイルス対策で東京都などに発令中の「まん延防止等重点措置」が延長される場合、大会組織委員会が国立競技場(東京・新宿)で実施する開閉会式を無観客とする方向で検討していることが2日、関係者への取材で分かった。収容定員の「50%以内で最大1万人」としていた観客上限を見直す。その他の大規模会場や夜間の一部試合を無観客にする案も浮上している。組織委は8日にも政府や都、国際オリンピック委員会(IOC)、国際パラリンピック委員会(IPC)と5者協議を開き、観客上限の見直しについて検討する。前回6月21日の協議で五輪の観客を最大1万人などに決める一方、都などへの重点措置が今月12日以降も続くなどした場合、無観客も含め対応を検討するとしていた。現在の政府基準では、重点措置下でのイベントの観客は「50%以内で5千人」が上限となっている。過労で一時静養していた小池百合子東京都知事は2日、都庁で公務復帰後初めての記者会見に臨み、都内で新型コロナ感染が再び広がっていることから「無観客も軸に考えていく必要がある」との認識を示した。組織委の橋本聖子会長は同日の定例記者会見で「政府が示す基準にのっとって5者協議を行いたい。無観客も覚悟しながら対応できるようにしていきたい」と述べた。組織委は観客上限を超過した販売済みチケットの再抽選を行い、6日に結果を公表する予定だった。上限の見直しが必要になる公算が大きく、延期を検討している。

*10-2:https://news.goo.ne.jp/article/fnn/world/fnn-204309.html (Goo 2021/7/2) 米有力紙が組織委に抗議文 来日記者の取材制限に
 東京オリンピック・パラリンピックの取材で来日する記者らに設けられた行動制限に対して、アメリカの有力紙12社が、連名で大会組織委員会に抗議文を送ったことがわかった。来日する記者は、GPS(衛星利用測位システム)での行動確認が設けられるほか、水際対策アプリのダウンロードが求められ、観客への取材も制限される。これに対し、6月28日、ニューヨーク・タイムズ紙など有力紙12社が、連名で「個人のプライバシーと技術上の安全面を軽視している」と、大会組織委員会に抗議文を送った。制限が、来日する記者に限られることは不公平だとし、報道の自由を侵害しないよう再検討を求めている。

*10-3:https://www.tokyo-np.co.jp/article/114256?rct=politics (東京新聞 2021年7月2日) ワクチンパスポートを今月下旬に発行 経済活性化への期待の半面、接種受けない人への差別招く恐れも
 政府は、新型コロナウイルスワクチンの接種歴を公的に証明する「ワクチンパスポート」を7月下旬に書面で発行する。外国への渡航時だけでなく、国内でもコロナの感染拡大で落ち込んだ経済効果への期待も高いが、接種を受けない人への差別を招く恐れもある。政府は当面、国外での利用のみを想定している。欧州連合(EU)では夏休みの時期を前に、1日から域内共通のコロナワクチン接種のデジタル証明書の運用を本格的に開始した。日本での発行について、加藤勝信官房長官は1日の記者会見で「システムの試行などを行った上で、具体的な発行を開始したい」と説明。デジタル化は「検討を進めている」と話した。
◆申請、発行は市区町村
 ワクチンパスポートは、仕事や留学で外国へ入国する際、隔離や検査などの措置が緩和されることが期待される。正式名称は「新型コロナウイルスワクチン接種証明書」となる予定で、氏名や旅券番号、ワクチンの種類や接種日などを日本語と英語で記載する。当面は国外での利用に限定し、日本への入国時で活用するかは今後検討する。早期に交付するため、まずは紙による申請・交付を行い、A4サイズの偽造防止用紙に印刷する。費用は国が負担する。申請先、発行主体は市区町村になる。
◆経団連は早期活用を提言
 経団連は6月24日、ワクチンパスポートの早期活用を求める提言を政府へ提出。国内での活用として(1)飲食店などでの各種割引、特典の付与(2)国内移動、ツアーでの活用(3)イベント会場での優先入場(4)介護施設や医療機関での面会制限の緩和ーなどを挙げた。
◆国内での活用は「検討が必要」と官房長官
 ワクチン接種については、持病など健康上の理由などから受けられない人や副反応を心配して希望しない人もいる。パスポートの活用は、接種を受けていない人への不公平な扱いや偏見が生じるとの指摘もある。加藤氏は2日の記者会見で「国内での接種の事実は、接種済証で証明できる」とした上で、ワクチンパスポートの国内での活用に関しては「接種の有無で不当な差別的扱いを行うことは適当でなく、検討が必要」と話した。

*10-4:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/700570 (佐賀新聞論説 2021.7.3) 職場接種申請停止、ワクチン供給に全力を
 企業、大学を対象とする新型コロナウイルスワクチンの職場接種は、ワクチン供給が追いつかなくなったため本格開始の2日後に政府が新規申請受け付け停止を発表した。再開の見通しはつかず、このまま打ち切りになる可能性もある。自治体や自衛隊による接種を補う職場接種は、菅義偉首相が掲げた10~11月までに全希望者へ打ち終える目標に向け、作業加速化の切り札だった。しかしスピードを優先するあまり、需要見通しを甘く見た上、過大な量の申請をチェックする態勢なども未整備だった。大企業は早く申請して接種が進む一方、医療従事者確保など準備に時間を要した未申請の中小企業は、はしごを外された形だ。前例のない大規模ミッションとはいえ、やみくもな「強行軍」では国民の命と健康を守り切れない。市区町村による接種向けのワクチンも滞り始めた。政府はワクチン供給を軌道に戻すことに全力を挙げてほしい。政府は、若者を含む現役世代の接種率を一気に上げようと、同一会場で最低千人程度に2回打つことを基本に職場接種を開始した。使うのは5千万回分の供給契約を結んだ米モデルナ製ワクチンで、うち3300万回分を職場接種に割り当てた。だが早々に申請が供給を上回るペースとなり受け付けを止めざるを得なくなった。現場を混乱させる朝令暮改の対応だと言わざるを得ない。河野太郎行政改革担当相は原因に関し、従業員約千人の企業がワクチン5千回分を求めるなど過大な申請が散見されると述べた。実際に多すぎた例もあるだろうが、家族や取引先、近隣住民まで接種対象を広げるよう求めたのは政府だ。民間のやる気を駆り立てながら、過大請求を指摘するのはちぐはぐな対応と言わざるを得ない。企業や大学には反発、戸惑いが広がる。受け付け停止直前に駆け込み申請したが、予定する複数会場のうち一部にワクチンが回らない企業もある。経済同友会は地方で計画していた中小企業対象の集団接種を取りやめた。打ち手や会場を確保しながら申請できなかった企業は、それまでの手間やコストが無駄になる。この混乱の責任は重い。政府はモデルナ製の逼迫ひっぱくを受け、都道府県などが新たに開設する大規模接種会場向けをモデルナ製から米ファイザー製に切り替え、余ったモデルナ製500万回分を職場接種に回す方針だ。異なるワクチンのすみ分けがきちんと管理できるなら、こうした融通を利かせて危機を乗り切りたい。ただ、市区町村による個別・集団接種に従来使用されてきたファイザー製も現場に十分届かなくなっている。大阪市は、医療機関からの申請に追いつかないとして7月から個別接種向けのファイザー製供給を制限した。自治体や医療機関の一部に在庫が滞留し、必要な地域に回らないのが原因とされる。政府は自治体と連携し、早急に在庫の実態を調べて配分先を再調整してほしい。また政府は英アストラゼネカ製1億2千万回分も調達契約済みだが、まれに血栓症の副反応があるため使用を見送っている。だが海外では十分な接種実績と効果が報告されている。ワクチン供給の逼迫解消には、リスクを慎重に見極めた上、比較的安全とされる60歳以上に限定して使う選択肢もあり得るのではないか。

*10-5:https://digital.asahi.com/articles/ASP757H8DP75ULFA024.html?iref=comtop_AcsRank_05 (朝日新聞 2021年7月6日) 「どんどん打て」急かされた結果…接種記録遅れ現場混乱
 新型コロナウイルスのワクチン接種をめぐり、政府が自治体などの接種実態を正確に把握できずにいる。接種回数や自治体の在庫量は、国のワクチン接種記録システム(VRS)で一元的に管理するが、接種の入力が煩雑で遅れるケースが相次ぐ。ワクチン不足を訴える自治体が出ているなか、今後の配送計画にも影響を及ぼしかねない。
「VRSの作業は煩雑で負担になる。接種に注力させてほしい」。大阪市はこうした大阪府医師会からの要請を受け、診療所などから個別接種がすんだ人の接種券を回収し、登録作業を代行している。国は接種券の情報を瞬時に読み取る専用端末を全国に配布。医療機関や自治体が接種の際に登録する仕組みだが、個別接種を行う市内約1800の診療所などのうち、9割がVRSの端末の利用を希望しなかった。このため、接種日から登録まで平均1カ月のタイムラグが発生。市の集団接種会場では、当日のうちにVRSの登録を済ませるのとは対照的だ。松井一郎市長は、「VRSの作業に手間がかかり、(診療所などでの)接種人数が抑えられるなら本末転倒」と、登録より接種を優先してきた事情を強調する。ただ、市の人口は大阪府内の3割を占め、府全体の接種率に大きく影響する。吉村洋文知事からの要請もあり、7月以降は接種券をこまめに回収するなどして登録遅れを1週間に縮める対応を取っている。行政による代理登録は、大阪市だけでなく、東京都世田谷区でも行われている。VRSの入力遅れは、地域ごとにさまざまな事情で生じており、政府が掲げた「1日100万回接種」の目標達成も実際の達成と発表まで最大15日間の遅れがあった。そもそも、VRSは国がリアルタイムに接種記録を管理するためにつくり、ワクチンの在庫把握にも利用される。ところが、「国がどんどん打てと急がせた」(官邸関係者)ことで、自治体の入力が追いつかず現実とシステム上の数字にギャップが生まれた。こうした状況に、政府内の調整を担う河野太郎行政改革相は、7月からVRSへの登録実績に応じてワクチンの一部を傾斜配分する方針を表明。接種登録の作業が遅れている自治体は、システム上は接種が進んでおらずワクチンが余っていると見立てた。自治体側からは反発が出ており、7月の自治体へのワクチン配送量が6月より約3割減になるところにこの傾斜配分が加わったことで、全国の自治体に「ワクチンが足りなくなる」との懸念が広がった要因の一つとなった。さらに接種状況の把握を難しくさせたのが、6月から始まった企業や大学の職域接種だった。自治体での接種と異なり、接種券がなくても従業員名簿や学生簿で管理することで接種を可能にした。後日、自治体から本人に接種券が届けば企業や大学に提出して、VRSに登録してもらう。このため、自治体からすれば、住民の誰が職域接種を済ませたのかすぐに分からず、接種計画が立てづらくなった。官邸関係者は「職域接種により、自治体全体での接種が早いのか遅いのか見えなくなる。ブラックボックスになってしまった」と説明する。自治体接種で使われる米ファイザー製と、職域接種で使われる米モデルナ製は、年内に計2億4400万回分(1億2200万人分)が供給される見通し。接種対象となる約1億1千万人分のワクチンは確保されているが、7月以降は自治体への配送量が減る。今後、ワクチンの配分を「最適化」させるには、正確な接種状況や迅速な在庫量の把握が欠かせない。河野氏は6月23日の記者会見で、今後のワクチンの配送計画について「目をつぶって綱渡りをするようなオペレーションにならざるを得ない」と漏らした。そのうえで、在庫を減らして必要なものを必要な時につくるトヨタ自動車の生産方式を引き合いに見通しを語った。「自動車工場のようにジャスト・イン・タイムというわけにもいかない。すぐにVRSで(職域の)数字が見えないので、正直ちょっと厳しいと思っている」

<不合理な政策(外国人への不公平・不公正な規制と人権侵害)>
PS(2021年7月4日追加):*11-1のように、米国務省が世界各国の人身売買に関する2021年版報告書で日本の外国人技能実習制度の悪用を問題視した。具体的には、「①手取り13万5000円と聞いていた給与は8万円ほどだった」「②社長の従業員に対する暴力や嫌がらせがあった」「③実習制度は劣悪な職場でも仕事を変えられない職場移動の自由がない仕組み」「④多くの実習生が劣悪な環境でも働き続けるしかない」「⑤2019年に7割以上で労働時間や残業代支払いなどでの違反があった」などで、技能実習の建前の下で、搾取・パワハラ・人権侵害が横行しているため、私も技能実習制度を廃止して人権を守る受け入れ制度をつくるべきだと思う。
 また、*11-2の上毛新聞(群馬県の地方紙)によると、「⑥2020年に県警が摘発した在日外国人は、433人と過去10年で2番目に多かった」「⑦日本人を含めた全摘発数に占める割合は前年比0.5ポイント上昇の10.9%で2年連続全国最高だった」「⑧新型コロナの影響で失職した外国人がコミュニティーを頼って群馬県に集まっていることが影響した」「⑨罪は、窃盗95人、傷害・暴行66人、詐欺8人、薬物事犯26人、入管難民法違反187人(過去10年最多)」「⑩国籍別では、ベトナム212人、ブラジル41人、中国34人、フィリピン33人、ペルー18人でベトナム人増加に伴って摘発も増えた」とのことだ。しかし、このうち、⑨の入管難民法違反は、日本人にはない罪で不合理なほど厳しい上、窃盗は⑧の新型コロナの影響で失職した外国人が生きるための最後の手段として行ったものと考えられる。そのため、この2つを除けば、県警が摘発した在日外国人は151人(=433-95-187)・4.1%(151/《433/0.109-95-187》)となって、日本人の犯罪率と変わらないのではないかと思う。つまり、いかにも外国人が悪いことをする人であるようなイメージを作っているが、その罪の多くは外国人に課された不公平・不公正な待遇に起因するものと言える。
 また、*11-3の難民保護でも、相手の立場に立って考えない人権侵害が多く、具体的には「⑪10年代には紛争激化で世界の難民数が増え」「⑫紛争や人権侵害のため母国に住めず、日本に難民申請する人が増加した」にもかかわらず、「⑬法務省は申請増に歯止めをかけようと、2018年に難民に当てはまらない申請者の在留や就労の制限を強化し」「⑭2020年の難民認定率を0.4%に留めたため先進国の中で極めて低い水準になった(カナダ56%、英国46%)」。さらに、「⑮在留期限が切れて不法残留者となった人は2021年1月時点で8万2868人に達して、摘発され帰国するまで入管施設に留めおかれ」「⑯名古屋出入国在留管理局で死亡したスリランカ人女性は半年以上施設に収容され、仮放免を求めてハンガーストライキを起こし体調を崩した収容者も多い」という状況だ。つまり、日本が好きで日本に来てくれた人をひどい目に合わせて追い返すことによって、その一族を根っこからの日本嫌いにするという愚策を行っているわけだ。

    
     2021.2.7上毛新聞      2021.5.28日経新聞   2021.5.28日経新聞

(図の説明:左図のように、群馬県警における在日外国人の摘発数が上がったそうだが、その内訳は、外国人に課された不公平・不公正な待遇に起因するものが半分以上である。また、中央の図のように、日本への難民申請者の数は高水準が続いているのに、日本は難民認定を厳格化して認定割合を0.4%に留めている。そのため、右図のように、第三者機関による審査制度は必要だが、そもそも先進国並みの認定水準にして人材鎖国をやめることが必要不可欠だ)

*11-1:https://www.tokyo-np.co.jp/article/114281 (東京新聞 2021年7月2日) 「搾取」の汚名負った外国人技能実習制度 米国務省の人身売買報告書が指摘
 米国務省が1日発表した世界各国の人身売買に関する2021年版の報告書で日本の外国人技能実習制度の悪用が問題視されたのは、多くの実習生が劣悪な環境でも働き続けるしかない状況に追い込まれているからだ。日本の技術を母国に持ち帰ってもらう「国際貢献」の理念は色あせ、逆に「搾取」の汚名を負った。
◆「手取り月13万5千円」、実際は8万円
 「稼げないし、職場のいじめが怖くて逃げ出すしかなかった」。元実習生のベトナム人男性(30)は2日、本紙に2018年の実習先での経験を明かした。125万円を借金して来日したが、手取り13万5000円と聞いていた給与はわずか8万円ほど。社長の従業員に対する暴力や嫌がらせから、「次は自分かも」と不安に陥り、半年ほどで逃げ出した。
◆7割以上の事業所で労働時間などの違反
 いったんは入管施設に収容され、今は仮放免中。働くことは認められない。コロナ禍で航空便がないため帰国もできず、生活に窮して支援団体に保護された。そもそも実習制度は劣悪な職場であっても簡単に仕事を変えられない仕組みだ。この男性のような失踪者は19年、9000人近くに上り、その後も後を絶たない。厚生労働省によると、技能実習生は毎年増え、昨年10月で40万2356人。外国人労働者の23・3%を占める。賃金は月平均16万1700円で、外国人労働者全体の同21万8100円を大きく下回る。19年に実習先約1万事業所を調べると、7割以上で労働時間や残業代の支払いなどで違反があった。
◆指宿弁護士は「制度廃止を」
 人身売買と闘うヒーローに選ばれた指宿昭一弁護士は2日、「実習生はブローカーへの手数料などで多額の借金を背負い、職場移動の自由はなく、低賃金やパワハラなどがあっても働き続けなければならない。実習制度はまさに人身取引的な労働の根源だ」と指摘。「制度を廃止し、中間搾取されず、人権も守られる受け入れ制度をつくるべきだ」と話す。

*11-2:https://www.jomo-news.co.jp/news/gunma/society/272265 (上毛新聞 2021/2/7) 在日外国人の摘発数 2020年は433人 群馬県警 半数がベトナム人
 2020年に県警が摘発した在日外国人(永住者、特別永住者などを除く)は433人と過去10年で2番目に多かったことが6日、群馬県警のまとめで分かった。このうちベトナム人が212人と国籍別で最多。日本人を含めた全摘発数に占める割合は前年比0.5ポイント上昇の10.9%となり、2年連続で全国最高となった。新型コロナウイルスの影響で失職した外国人がコミュニティーを頼って群馬県に集まっていることなどが影響したとみられる。国籍別では、ベトナムがほぼ半数を占めたのをはじめ、ブラジル41人、中国34人、フィリピン33人、ペルー18人と続いた。刑法による摘発は196人(前年比15人減)で、このうち窃盗が半数近い95人に上った。次いで、傷害や暴行などの粗暴犯が66人、詐欺などの知能犯が8人。特別法での摘発は237人(11人増)。入管難民法違反が187人で過去10年で最多となり、覚醒剤取締法違反などの薬物事犯は26人などだった。昨年9月に発生した前橋市のホテルで女性経営者が刺殺された強盗殺人事件で県警はベトナム人の男を逮捕。10月には、北関東で家畜や果物が相次いで盗まれた事件に絡み、入管難民法違反容疑でベトナム人の男女13人を逮捕した。群馬県によると、県内の外国人住民は昨年12月末時点で6万1461人で、県人口の約3%。県警組織犯罪対策課によると、在日外国人の摘発は16年256人、17年338人、18年368人、19年437人と増加傾向にある。県警による全摘発人数に占める割合も16年5.2%、17年7.4%、18年8.4%、19年10.4%と上昇が続いている。同課は、県内に住むベトナム人の増加に伴い、摘発も増えていると指摘。「犯罪が減るよう適切に取り締まるとともに、多文化共生への対策にも取り組む」とした。

*11-3:https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA2334E0T20C21A5000000/ (日経新聞 2021年5月28日) 難民保護、政策手薄の10年 日本の認定率は0.4%
 オーバーステイ(超過滞在)などの理由で在留資格のない外国人の保護のあり方が注目を集める。政府・与党は入管施設での長期収容を防ごうと出入国管理法の改正を目指したが野党が反発し今国会での成立を見送った。難民認定をはじめ入管行政は効果的な政策が打たれないままだ。「きょう食べるものにも困っている」。NPO法人の難民支援協会(東京・千代田)には、生活や就労などの支援を求める外国人からの連絡が年間4000件近く寄せられる。最近は新型コロナウイルス禍で困窮した人からの相談が急増しているという。紛争や人権侵害のため母国に住めず日本に難民申請する人は増加傾向にある。申請者数はピークの2017年に1万9629人となり10年に比べ16倍に達した。協会は「難民は仲介人らを通じ国を探す。入国できそうな国の航空券を取り入管などで保護を求めることが多い」と指摘する。難民が日本を訪れるのは多くの場合「偶然、査証(ビザ)が発給された」ためだ。日本に来る難民はもともと、ベトナム、ラオス、カンボジア人が中心だった。ベトナム戦争の「ボート・ピープル」が典型例として知られる。02年に中国の日本総領事館に北朝鮮の脱北者が駆け込む事件が発生。それを機に、難民の申請要件を緩和し、認定前の仮滞在を可能にした改正入管法が04年に成立し申請がしやすくなった。政府は10年、申請者の就労も一律で認めた。年間1000人程度だった申請者数は14年には5000人に。入管の人手不足もあり「就労目的で申請を悪用したとみられる事例が増え審査期間も長くなった」(出入国在留管理庁)。10年代には紛争の激化で世界の難民の数も増えた。日本は観光客の誘致へビザの発給要件を緩和したこともあり難民が来日する事例も増えた。法務省は申請増に歯止めをかけようと、18年、明らかに難民に当てはまらない申請者の在留や就労の制限を強化した。支援団体は日本の認定率を問題視する。19年は1万375人の申請に対し認定は44人と、0.4%にとどまった。56%のカナダ、46%の英国に比べ低水準が際立つ。在留期限が切れて日本に残る不法残留者は今年1月時点で17年に比べ3割多い8万2868人に達する。そうした人は摘発され帰国するまで原則として入管施設にとどまる。3月に名古屋出入国在留管理局で死亡したスリランカ人女性は半年以上施設に収容されていた。仮放免を求めハンガーストライキを起こし体調を崩す収容者も多い。難民申請を繰り返す人が多く入管施設は逼迫する。「送還忌避者」は20年12月時点で3100人にのぼる。「入管法改正の背景には送還忌避があとをたたない状況がある。迅速な送還の実施に支障が出て収容が長期になることの要因となっていた」(上川陽子法相)。法務省は入管法改正案で長期収容の問題解決を目指した。3回目以降の申請は強制送還の対象になるとの規定を設けた。現在は認定申請すると回数や理由に関係なく送還できない。強制送還が可能になると収容者は減るが帰国先で迫害を受けかねない。野党は「人権侵害のスリーアウトルール」と呼び反対の論拠にした。法務省は外国人の受け入れを広げるため難民に準じた新資格「補完的保護対象者」を提案した。母国が紛争中の人を念頭に難民と同じように定住者の資格で在留を認める。筑波大の明石純一准教授は法改正の必要を強調する。それだけでは長期収容の問題は解決せず「難民認定などを審査する入管の体制強化が必要だ」と話す。支援団体などは難民認定を入管当局ではなく専門性の高い独立機関がすべきだと主張する。日本の入管行政はこの10年間、申請の急増に対応する政策が手薄だった。改正案の成立は見送りになったが長期収容の問題は残る。入管法改正案の今国会成立が見送られた背景には、スリランカ人女性の死亡事案がある。死亡の経緯を巡り野党が法務省の説明不足を指摘し、事実関係の提示がなければ採決に応じない姿勢を示した。法務省は遺族が求めた女性の映像の公開に消極的だ。遺族は「真実で公正な答えが欲しかった」と訴えた。出入国在留管理庁によると、収容中の外国人が施設で死亡した例は2007年以降17件起きている。現在の入管行政は難民申請者の増加に追いついていない。生活が苦しく就労も不安定で、申請にいたるケースも多い。外国人の人権保障を巡り、世界から日本に向けられる視線は厳しい。スリランカ人女性の死亡事案についても世界が納得する説明がないと、日本への不信感は高まるだろう。

| 男女平等::2019.3~ | 04:56 PM | comments (x) | trackback (x) |
2021.5.5~15 日本は人を大切にしない(人権侵害の多い)国だが、正しい意思決定には知識に基づいた判断力が必要なのである (2021年5月17、20、22、25、26、27、28、30、31日、6月2、3、4《図》、5、6、7、8、9、10、11日に追加あり)
(1)日本国憲法変更の危険性

  
 2021.5.7中日新聞   2018.5.3産経新聞          IWJ

(図の説明:左図のように、2021年5月6日に国民投票法改正案が衆議院憲法審査会で可決して今国会で成立する予定となった。その後の『改憲4項目』として自民党が示しているのが中央の図で、このうち、右図の緊急事態条項は、国会決議を通さずに基本的人権を制限したり、法律と同じ効果を持つ政令指定を可能にしたりできるようにするもので、問題が多い。)

1)憲法記念日における与党幹部のメッセージから
 憲法記念日の5月3日、菅首相は、*1-1のように、ビデオメッセージで「①憲法9条への自衛隊明記」「②新型コロナ感染拡大や大災害時に内閣が国民の権利を一時的に制限する『緊急事態条項の創設』は極めて大切」「③参院選の合区解消」「④教育無償化」など、「⑤現行憲法も制定から70年余り経過し、時代にそぐわない部分、不足している部分は改正していくべき」等を語られたそうだ。

 このうち、①は、前にこのブログで詳しく記載したため省略するが、②も、このような厚労省の故意又は重過失による感染症の蔓延を国民のせいにし、それを理由として「国民の権利を制限する緊急事態条項の創設が重要」と結論づける政府であるからこそ、決して緊急事態条項を創設してはならないし、③は、憲法を変更しなくても下位の法律を改正すればできるのである。

 さらに、④は、憲法第26条に「第1項:すべて国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する」「第2項:すべて国民は、法律の定めるところにより、その保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負ふ。 義務教育は、これを無償とする(http://law.main.jp/kenpou/k0026.html 参照)」と定められているため、既に憲法で義務教育は無償化されており、義務教育以外についても給付型奨学金を支払ってはいけないなどとは憲法に記載されていないため、憲法変更は不要なのである。

 それにもかかわらず、「仕方がない」として緊急事態条項の創設を許せば、政府の放漫経営によって財政破綻するにもかかわらず、さらなる年金カットや医療・介護サービスの削減など国民との契約で政府が保険料を徴収した社会保障の受給権(私権)を制限することも、政府が憲法に基づいて行うだろう。日本政府が前から熱心な「税と社会保障の一体改革」や「マイナンバーカードの創設」はその準備作業だが、それに感染症の蔓延を利用するなどもってのほかである。

 これを裏付けるように、与党系の幹部が、*1-2のように、「この憲法で国家の危機を乗り越えられるのか!-感染症・大地震・尖閣-」と述べているが、感染症・大地震・尖閣を乗り越えられないのは、日本国憲法に「緊急事態条項」がないからではなく、感染症に対する基本的理解の不足、都合の悪いことを想定外にする危機意識の低さ、領土保全の努力のなさという運用上の問題である。そのため、憲法9条に自衛隊を明記し、緊急事態条項を創設したからといって、これらの問題が解決するわけではない。

 また、⑤のように、憲法制定から70年余り経過して時代にそぐわない部分・不足している部分があると言うのも、それなら、イ)どこが ロ)どうして改正によってしか解決できないのか を論理的に説明すべきで、憲法変更という結論ありきで、とってつけたような理由を並べるのは国民を馬鹿にしすぎている。

2)憲法学者と弁護士会の見解
 *1-3の憲法学者で東京都立大学教授木村草太氏が、①現行憲法下でも規制の目的が自由の制限を正当化できるほど重要で ②規制の方法が合理的かつ必要不可欠なら法律に根拠のある規制は合憲だが ③感染症対策だからどんな制約でも我慢しろという論理は通用せず ④その感染症の抑制が社会にとって重要性があり、科学的・法的根拠に照らして手段が適切であれば重要だが ⑤目標がないままの場当たり的規制が多かったし ⑥自由を制約する政策は法律の正しい解釈に基づく細かな検討こそ必要だが、この1年以上にわたるコロナ禍で政府にはこうした意識が決定的に欠けていることが明らかになり ⑦政府が法の解釈や整合性を気にしなくなったことのマイナス面がわかりやすく示された 等と述べておられ、私も全く賛成だ。

 また、*1-4のように、日本弁護士連合会会長の荒中氏も、2021年5月3日、憲法記念日を迎えるに当たっての会長談話として、⑧緊急事態宣言等の下で市民や企業等には外出・移動の自粛や休業・時短等が要請されているが、そのような感染拡大防止策を講ずる場合であっても個人の権利は最大限尊重される必要がある ⑨新型コロナの感染拡大を受けて憲法を改正して緊急事態条項の新設を求める声も与野党の一部にあるが、感染拡大防止は市民の協力を得ての法律上の対応で十分可能で ⑩憲法に緊急事態条項を新設することは、立法事実を欠くだけでなく、個人の権利の侵害に繋がる恐れがある ⑪新型コロナ感染拡大の下でも、立憲主義を堅持し、国民主権に基づく政治を実現することにより個人の人権を守る立場から、引き続き、人権擁護のための活動を積極的に行っていく と書かれており、法律家としての論理性が感じられて納得できた。 

(2)新型コロナのワクチン・検査・治療薬について

   
 2020.6.19毎日新聞   2021.4.17時事

(図の説明:1番左の図のように、G7やAPECの中では日本の人口100万人当たり新型コロナウイルスによる死亡率は低いが、東南アジア・東アジアの中では最も高い。これを見て、先進国は新型コロナウイルスによる死亡率が高いのだと理解した人は愚かであり、実際には地理的所在地によって人間側の遺伝的形質や免疫履歴が異なるのである。そのため、日本の成績は悪い方に属する。また、左から2番目の図のように、日本国内で確認された新型コロナ変異ウイルスの中に『由来不明』があるが、これは非科学的であると同時に日本由来ではないかと思う。右から2番目の図は、日本国内で新型コロナに使われる主な薬だが、承認済みは2つだけで厚労省の能力のなさがあらわれている。そして、1番右の図のように、日本は科学技術にかける予算が少なく、今後の産業構造に悪影響を与えそうだ)

1)新型コロナワクチンの開発と普及について
 河野規制改革相が、*2-1-1のように、5月10日からの2週間で自治体に届ける高齢者向けの新型コロナワクチンの供給量が自治体の要望量に約400万回分足りないと陳謝したそうだが、まず、誰かが陳謝すれば喜ぶというメディアをはじめとする日本人全般の感じ方はおかしい。何故なら、陳謝されても亡くなった人の人生は戻ってこないため、陳謝などしなくてよい政策を採ることの方がずっと重要だからである。

 そして、65歳以上の高齢者向けワクチン接種が4月に始まったそうだが、新型コロナウイルスに暴露される機会が多く、決して患者にうつしてはならない医療・介護従事者に高齢者より先にワクチンを接種するのは当然だ。その後に、高齢者・基礎疾患のある人・不特定多数の客に接せざるを得ない勤労者への接種となる筈だが、そもそも製造業が得意な世界第三位の経済大国と豪語しながら、必要な時に間に合わせてワクチンすら作れず、米ファイザー社からの輸入に頼りながら、公正な判断もできずにロシア製や中国製を馬鹿にしているのは滑稽ですらある。

 なお、*2-1-2のように、米製薬大手ファイザーは、2021年の新型コロナウイルスワクチン売上高が260億ドル(約2兆8千億円)、モデルナも、2021年のコロナワクチンの売上高が184億ドル(約2兆円)になる見込みだそうだ。このように、ワクチンも、感染症が蔓延し必要とされる時に1番・2番で完成することが重要なのであり、日本でよく言われるように「時間をかけたからよい」というものでは決してない。そのため、厚労省の非科学的な承認遅れや治験妨害は、経済的にもチャンスを逃す重大な原因になっているのである。

 このような中、*2-4-1のように、ワクチンの足りない途上国のWTOへの要請として、バイデン米政権が新型コロナワクチンの国際的な供給を増やすために、特許権の一時放棄を支持すると表明したそうだ。しかし、*2-4-2のように、製薬会社は強く反発しており、ドイツのメルケル政権は「知的財産の保護はイノベーションの源泉で、将来もそうでなければならない」と反対している。リスクが大きく金がかかる研究開発を行う動機づけを失わせないためには、メルケル政権の見解の方が正しい。そのため、新型コロナワクチンを途上国に供給する目的なら、開発した製薬会社の負担ではなく、国が製薬会社から特許権を購入して開発途上国の製薬会社に供与する方法を採るべきだ。メダルその他の報酬がなければ、いろいろなことを犠牲にしてオリンピック等のスポーツで頑張る人はいないのと同じ理屈である。

2)治療薬の治験と承認
イ)アビガンのケース
 細胞に入ったウイルスの増殖を抑える薬であるアビガンは、*2-1-3のように、2014年に新型インフルエンザ薬として承認され、製造元の富士フイルム富山化学が2020年3月に新型コロナ向けの治験を始め、2020年9月23日に治験の結果を発表して2020年10月16日に厚労省に製造販売の承認申請をしたが、2020年12月21日の厚労省専門部会で審査を担うPMDAが「エビデンス(科学的根拠)がない」「解析計画やデータの取り扱いに信頼性がない」「新型コロナへの有効性を現時点で明確に判断することは困難」と判断したそうだ。

 その科学的根拠がないという理由の1つは、20~74歳の重症でない新型コロナの患者156人が参加し、偽薬とアビガンをのんだ患者の経過を比べ、アビガンをのんだ患者はPCR検査で陰性になるまでの期間の中央値が偽薬をのんだ患者より2.8日短かったが、医師が知っている「単盲検」だったからだそうだが、陰性になるまでの期間が2.8日短かければ、それだけ入院日数が減り、患者や病院の負担も減るのである。

 さらに、単盲検だから本当に科学的根拠がないかと言えば、国民への移動の自粛要請や飲食店の時短営業要請よりはずっと明確な科学的根拠があり、「動物実験で胎児に奇形が出る恐れがわかり、副作用の懸念」というのも使う対象を絞ればよいため、厚労省は新型コロナの蔓延を防ぎたくない理由でもあるのかと思うのである。

ロ)イベルメクチンのケース
 北里大学の大村智特別栄誉教授が発見し、2015年にノーベル医学・生理学賞を受賞した微生物が生産する天然有機化合物アベルメクチン由来のイベルメクチンを、*2-1-5のように、北里大学大村智記念研究所感染制御研究センターが、新型コロナウイルス感染症の治療薬として、2021年3月に臨床試験を終了して製造元の米製薬大手MSDに試験結果を提供し、MSDは効果を検証しながら承認申請を検討する見通しだそうだった。

 米ブロワードヘルスメディカルセンターの研究では、イベルメクチン投与で新型コロナ重症患者の致死率は80.7%から38.8%に改善し、イベルメクチンは駆虫薬として2019年には世界で4億人以上に投与されているが、大きな副作用は確認されていないそうだ。ちなみに、ペニシリンはじめ抗生物質は、生物が他の微生物を排して自らを守るために合成する化合物由来が多い。

 その治験結果がどうなったかは不明だが、*2-1-4のように、東京都医師会会長の尾崎治夫氏が「海外で重症化を防ぐ効果が示されているため、抗寄生虫薬イベルメクチンも自宅療養中のコロナ感染者に重症化を防ぐ狙いで投与すべき」「副作用が少ないので、かかりつけ医が治療ができるよう国に検討してほしい」と言っておられ、軽症から重症まで効果があると思われるので、厚労省は新型コロナの治療をしたければ治験を助けて早々に承認すればよかったのだ。

3)変異型について
 変異は、生物が遺伝子をコピーする際のコピーミスで起きるため、ランダムに起き、生存により適した変異のみが選択されて残っていく仕組みになっている。そして、地球上に広がった人間が、住む地域に適応して異なる進化を遂げ、さまざまな人種が存在するのと同様、ウイルスも住む地域に適応して異なる進化を遂げ、さまざまな変異が存在するのは当たり前だ。また、人種間の違いも小さなものはあるが、大きくなると生物としての種が変わるわけである。

 一方、新型コロナウイルスにとっての住む地域は、宿主である人間の体の中であるため、人間の体の中で早く増殖して次々と感染する能力の高いウイルスほど生き残る確率が高い。従って、日本のように、検査数を絞って原型となる新型コロナウイルスを大量に残したのは、変異を生み出す確率も増え、大失敗だったのである。しかし、治療薬やワクチンに対する新型コロナウイルスの抵抗力は、変異で小さな差は出るだろうが、大きな差は出ないと思う。

 そのため、変異型が首都圏で急拡大して5月前半に8~9割を占めるようになるのなら、その理由こそが重要なのだが、*2-2-1は、「①国内の変異型は、英国・南アフリカ型・ブラジル型・由来不明型の4種類がある」「②英国型はウイルスが細胞に侵入する際に用いるスパイクタンパクに細胞と結び付く力を強めるN501Y変異がある」「③由来不明型は関東・東北で拡大し、ワクチンの効果低減が懸念されるE484K変異がある」「④南ア型とブラジル型は両方の変異を併せ持つ」「⑤東京でもN501Y変異に置き換わってきているが、プラスアルファの変異が出る恐れもある」と記載しているだけだ。

 しかし、ウイルスがいる限り変異型は発生し、それは国名に意味があるのではなく、宿主である人間側の免疫履歴や生活様式・インフラの違いが変異型ウイルスの生存確率の違いになる。ここで、由来不明型としているのは“日本型”ではないのか?それらの変異型について、厚労省専門家組織のメンバーは、「ゲノム解析を通じて変異型を追い掛けることが重要だ」と話しているそうだが、国民に自粛を促して人の流れを止めるのではなく、数多く検査やゲノム解析を行い、感染経路を分析して、科学的に対処法を考えるのが厚労省の仕事の筈である。

 なお、*2-2-2のように、厚労省の助言機関の集計によると、国内で4月に発生した新型コロナのクラスターは463件に上り、場所別では学校・高齢者施設を含む職場(96件)が最多で、会議で使うデスク・電話機・コピー機などの共用備品を通して感染が拡大した可能性があるとされている。私は、共用トイレもそうで、トイレを清潔に保つための改修は経済の停滞している今がやりどきだと思う。

 そして、第4波は日常生活全般で感染が懸念される事態となり、対応策として国立感染症研究所の脇田所長は、「大型連休に向けて1人1人が不要不急の外出を減らし、マスク着用などの感染防止対策を徹底してほしい」と話されているそうだが、ウイルスがものを介して感染する理由はマスクの着用を怠ったからではなく、石鹸をつけて流水でよく手を洗うのではなく、アルコールを吹きかけたり擦り込んだりすればよいという指導をしたからだろう。日本で生き残るウイルスは、そういう日本の弱点を突いたものになると思う。

4)新型コロナとオリンピック
 「感染拡大が続いているのに五輪中止を決定できないのは、戦時中に無謀な作戦を強行して多くの犠牲者を出したのに責任回避した旧日本軍のようだ」と、*2-3のように、菅首相に批判が殺到しているが、先進国ではワクチン接種が進み移動制限が解除されつつあるのに、厚労省が対応を誤った日本は未だ制限解除もできない状況なので、旧日本軍と同じなのは厚労省である。

 そもそも、世界第三位の経済大国になっているのに、「国家の威信のため」などとして1965年当時と同じスローガンを振りかざし、東京という同じ場所にオリンピックを誘致し、大金を使って新国立競技場を建て替えたのには、私は全く賛成できなかったが、誘致した以上は万難を排して完全な形で遂行するのが先進国のやることである。

 また、オリンピック選手はオリンピックに出場するために多くを犠牲にして努力してきたのに、4年に1度の機会を逃せば年齢が進んで次のチャンスはない人が多い。そのため、IOCが東京五輪を開催すると各国のオリンピック委員会とともに決めたのなら、オリンピックの開催判断に政治が介入することは控え、誘致した責任として完全な形で開催できるようにあらゆる努力をするのが当たり前である。私には、東京五輪中止派の人の方が、オリンピックを政治利用しているのではないかと思われるので、オリンピックを中止した場合の損害や影響を明確にすべきだ。

 なお、「①五輪開催の最も大きな障害は医療陣の確保」「②五輪組織委員会は五輪期間中に1日に医師300人、看護士400人ずつの医療陣が必要と予想」「③医療界は『テレビで五輪を見る時間もない』として難色」「④新型コロナ感染再拡大で昼夜なく働いているのに、5月からはワクチンの大規模接種も始まり、人材派遣は不可能」「⑤日本政府の感染症対策分科会を率いる尾身会長は、組織委員会など関係者が感染レベルや医療の逼迫状況を踏まえて五輪開催の議論をしっかりやるべきとした」などと言って、五輪を開催できない理由を医療に押し付けるのは妥当ではない。その理由は、新型コロナの治療をする医師とオリンピックで働くスポーツドクターは別の診療科であり、医療関係者全員が新型コロナの治療に専念しているわけではないからだ。

 さらに、「⑥五輪に参加する選手と大会関係者は出国時点を基準として96時間以内に2回の新型コロナウイルス検査を受けて陰性証明書を提出」「⑦入国時に日本の空港の検査で陰性判定を受ければ14日間の隔離が免除され、入国初日から練習できる」「⑧入国後は毎日1回ずつ新型コロナウイルス検査を受ける」「⑨活動範囲は宿泊施設、練習会場、競技場に制限される」「⑩ここまで制限しながら五輪をやるべきか」とも書かれている。

 このうち⑥⑦で十分であり、⑧は、観客を入れて大会を行うなら必要だが、無観客なら毎日1回ずつ検査を受ける必要はないかもしれないが、検査しても毒にはならない。また、⑨⑩は、オリンピックに出場するために多くを犠牲にして努力してきたオリンピック選手は、日本に遊びに来るわけではなく競技で勝つためにくるのであるため、万難を排して参加したいだろう。それは、当然のことである。

(3)環境軽視は生存権の侵害である

 
 2021.4.22東京新聞               JCCCA

(図の説明:1番左の図のように、政府はCO₂排出量を2030年までに2013年度比で46%削減するように目標を変更したが、これでも甘いという声が大きい。世界のCO₂排出量に占める日本の割合は、左から2番目の図のように3.4%で小さいという主張があるが、右から2番目の図のように、1人当たりCO₂排出量は、米国・韓国・ロシアに続いて日本は4番目と大きい。日本の部門別CO₂排出量は、1番右の図のように、産業部門と運輸部門が著しく大きい)

1)日本国憲法から見た環境の重要性
 日本国憲法は、生存権及び国民生活の社会的進歩向上に努める国の義務として、第25条「1項:すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。2項:国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない」と規定している。

 この25条の意味は、国民は健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有するので、国は生活面のすべてで、社会福祉・社会保障・公衆衛生の増進に努めなければならないということだ。そのため、今回の新型コロナのように、他国の1/100程度の感染者数・重症者数で医療崩壊を起こしたり、原発による放射能汚染リスクを国民に甘受させたりする政策は採ってはならないということで、この条文は多くの事柄に適用できるので覚えておくべきだ。

 このうち、温室効果ガス削減については、*3-1のように、菅首相が2030年度の排出量を13年度より46%削減する目標を掲げて50%の高みを目指すと表明されたのはよかったが、2015年のパリ協定から5年、1997年の京都議定書からは23年も経過しているため、遅いと言わざるを得ない。この間に世界の先進国は、脱炭素に向けて産業構造の転換や技術開発の加速を進める政策を行い、日本は遅れれば競争力を損なう状況となっているのである。

2)日本人の歪んだ心
 日経新聞は、*3-2のように、「①グリーン成長の野心と下心」というように、グリーン戦略は悪いことででもあるかのように書く点で歪んでいるが、これは少なからぬ日本人が持っている感性だ。ここで言う「野心」とは、「aggressive」の翻訳のつもりかもしれないが、欧米人が使う「aggressive」は「積極的」という意味で、素直な「positive」に近い。逆に、グリーン戦略を下心があるなどとして否定する人こそ、環境改善に「negative」な下心を持つ歪んだ人であり、本当はグリーン戦略で大規模に雇用創出できれば一石二鳥で言うことがない筈だ。

 また、「②最も野心的な目標を掲げたのは英国で、グリーン産業革命を表明して総額120億ポンド(約1.8兆円)の政府投資で25万人の雇用創出を狙い、切り札は北海の強い風と遠浅の海を武器とする洋上風力」などと書いているが、得意分野を探して伸ばすのは当然であり、それは野心でも下心でもない。それより、「日本は再エネに有利な条件を欠き、日本には資源もエネルギーもない」などという虚偽を書き、「資源・エネルギーは外国から高い価格で買えばよい」などとして国民や産業に迷惑をかけるのを「馬鹿の一つ覚え」と言う。

 さらに、「③EUはいち早くグリーンディールを打ち出し10年間で1兆ユーロ(約130兆円)の投資に踏み切り、民間からも1兆9500億ユーロのグリーン投資を促して雇用を創った」というのは立派なことであり、私も、こういう国がリードして欲しいと思う。それにもかかわらず、「④それだけでなく国際的な環境基準づくりで主導権をとろうとする意図を隠さない」とまたまた歪んだ意見を披露しているが、本当によいものは日本発でも国際基準になるし、歪んだものを無理に押し込もうとしても国際基準にはならず、筋の通った正論が主導権をとるというのが私の経験だ。また、「⑤EUは環境規制が手ぬるい国々からの輸入に関税を上乗せする国境炭素税を導入予定」というのは尤もなことであり、「やはりEUがリードして欲しい」と感じざるを得ない。

 このように、それこそ下心ある歪んだ主張を重ねて、「小型モジュール炉は、原子炉をプールのなかに沈めることで緊急時にも外部電源に頼らずに済む」などとして原発の推奨を結論づけているが、冷やした熱は水中に発散されることを無視している上、放射能汚染の問題も解決しておらず、憲法25条違反の政策を国民に押し付けているのである。

3)水素エネルギーで動く都市とEV・FCV
 水素を作ったり運んだりするのに原発や化石燃料を使うのは論外だが、*3-3のように、中国や韓国が水素エネルギーを中核として都市を作り始め、交通機関をEVやFCVにするのは歓迎だ。今後は、日本はじめインド・インドネシア・フィリピンなどの人口の多い国は特に続いて欲しいが、人口が少なくてもエベレストなどの自然を観光資源にする国は、まずその付近を水素エネルギーで動く都市にすると観光との相乗効果が図れると思う。

 しかし、「生態系」という言葉は、食物連鎖を中心とした生物システムに対して使う言葉であるため、*3-3のように人間の文化や工業に使うのは誤りだ。また、「DNA」も生物の遺伝子を表す言葉であり、インターネットやAI関係 の会社が「DeNA(発音が同じ)」という社名にしているのは、国民(特に子ども)を混乱させ、正確な理解を困難にする。そのため、冗談のつもりでも、社会に悪影響を与える。

 運送手段である路面電車・バス・トラックがFCVで静かに走るのは、環境にも景観にも配慮しておりスマートだが、製造業の副産物である水素を使うのは賢いし、再エネ由来の水素にも手を打ち、まずインフラを整えやすい商用車や鉄道に投資を集中して国家主導で需要を作り出しているのは偉い。

 これを「強引にも映る市場創出」と感じる記者は、エネルギーイノベーションに「negative」なようだが、これらは「日本の文系人(エリートまで含む)が、生物・物理・化学・数学に著しく弱く、丸暗記の勉強しかしていないのが原因」というのが、理由を長くは書かないが私の結論だ。そして、この文系の暗愚さこそが、水素大国を目指して技術で先頭を走っても、市場の育成をすることすらできずに、日本だけが置いてきぼりになる原因なのである。

 なお、*3-4に、「①水素(元素記号H)の普及を阻むのはコストや技術だけではなく、規制も高いハードル」「②ガソリン車やEVは通常の車検のみで利用できるが、FCVは水素貯蔵タンクが車検対象外であるため、国交省とは別に経産省所管の検査が必要で空白期間が生まれる」「③日本では、水素は危険物扱いでガソリンより危険というイメージがある」「④海外では安全に配慮しつつ水素を利用する動きが広がる」と書かれている。

 このうち①については、水素は、元素記号で書くならHでは存在しないのでH₂と書く方が正しく、②のように、車検という規制でFCVを使いにくくしているのなら論外だ。③については、ロケットが燃料の水素とそれを燃やすための酸素の両方を積んで地球の重力から抜け出して行くように、水素のエネルギーは大きく、使い方に注意すれば安全だ。そして、今後は、航空機・船・作業機械にも水素燃料を応用して燃料電池の関連産業を育てることが必要であるため、航海を始める前に座礁していたのでは話にならない。

 また、英国はじめEUのように、既存のガス管を活用して、ガスへの水素混入を広げるのもよいと思う。なお、日本人には「技術で勝って普及で負ける」などと言う人が多いが、製品として普及していく過程で開発される技術が多いため、普及で負ければ技術でも負けるのである。

(4)医療・介護について

  

(図の説明:左図のように、日本の人口1000人あたり病床数は13.1で、他の先進国と比較して著しく高い。また、中央の図のように、急性期病床数も人口1000人あたり7.79で、他の先進国と比較して著しく高いが、右図のように、精神科病床数が多く、精神科の入院日数も他国と比べて長いため、急性期や感染症に当てることのできる病床数が他国と比べて多いとは言えない)

  

(図の説明:左図のように、公立病院の71%、公的病院の83%が新型コロナ患者を受け入れたが、民間病院は21%しか受け入れておらず、これは、院内感染を起こすと診療と病院経営に支障が出るからだろう。また、中央の図のように、日本の人口1000人あたり医師数・看護師数・病院数・病床数・CT台数・MRI台数の国際比較があるが、病院数・病床数が多い割には医師数・看護師数が少なく、急性期に対応できる病院は少ないと推測できる。なお、右図のように、医療施設に勤務する人口10万対医師数は、東京及び関西以西で多い)

1)医療制度について
イ)“非効率な医療供給体制”とは何か?
 日経新聞は、*4-1-1のように、「①団塊の世代が75歳以上になり医療費が急膨張する2022年の壁を乗り越えるには非効率な医療供給体制の改革が必要」「②都道府県別1人当たり医療費は、病床数が全国最多の高知県は病床数最少の神奈川県の3倍」「③1人当たりの医療費は人口当たりの病床数と関係が強く、供給が需要を作り出しており、病床数が危機時の力を左右するとは限らない」「④神奈川県はコロナ患者を症状ごとに重点医療機関やホテル療養で柔軟に対応する神奈川モデルを導入して、病床数最少でも県主導で効率的な体制を作り、その手法は全国に広がった」と記載している。

 医療制度改革は、①のように、団塊の世代が75歳以上になって医療費が急膨張するのを止めるという財政的見地のみで主張する人が多く、これが重大な問題を引き起こしている。何故なら、75歳以上になった人が医療のお世話になる機会が増えるのは当然であり、医療費が増えるのも当たり前であるため、これを抑えれば日本国憲法第25条「1項:すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。2項:国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない」に反するからである。

 また、②については、高知県と神奈川県は人口の年齢構成が異なるため、高知県の方が病床数が多く、医療費が高くなるのは理解できる。その年齢構成の違い以上に高知県の病床数が多いとすれば、介護制度が整っていないため高齢者を社会的入院させ、Quality of Life(生活の質、以下QOL)の低い生活を強いている状態ではないかと思われ、このままなら、その状態は次第に全国に広がるだろう。

 さらに、③は、「医療従事者が儲けのために病床数を増やして不要な供給を作り出し、危機時には役立たない」と言っているのだが、慢性期の高齢者が多く入院している病床を感染症病床に併用することはできないため、急性期の感染症に対応できる病院を効率化と称して減らした政策ミスが問題なので、それを医療従事者の強欲のせいとして責任転嫁することは許されない。

 なお、④の神奈川県の対応は、重点医療機関ですべてのコロナ患者を最後までケアできる医療体制になっていなかったため、移動制限によって空室が増えたホテルを療養病棟のように使ったもので、それが全国に広がったのは同じ理由からだ。しかし、数週間程度の療養期間しかない患者のケアを症状毎に異なる病院で行えば、転院先の病院では患者の病態を把握しにくく、短期間で転院させられる患者も落ち着いて療養できない。

 その上、*4-1-1は、「⑤日本の千人あたり病床数は先進国最高水準で英国・米国の約5倍だが、感染爆発時は小さな医療機関を中心にコロナ患者をたらい回しにし、医療供給体制に無駄のあることがコロナで浮き彫りになった」「⑥自民党財政再建推進本部小委員会は、地域に応じた医療体制構築と医療費適正化の計画作りで都道府県のガバナンス強化を求めたが、都道府県は民間病院に病床機能の転換を促すことをためらっている」「⑦現行制度で医療体制整備の権限は都道府県にあり、国は都道府県毎に『地域医療構想』を作るよう求めて過剰な急性期病床の削減等を進め在宅医療への転換を促してきた」「⑧全国知事会は医療提供体制の議論について、地域医療の混乱を理由にコロナ収束後に先送りしたい意向」「⑨医療行政は責任を負いたくない地方自治体と、本音では権限を失いたくない厚労省の利害がもつれあう」と記載している。

 ⑤の「日本の千人あたり病床数は先進国最高水準で英国・米国の約5倍」というのは間違っていないが、日本の病床数の内訳は精神科病床や慢性期病床が多いため、感染症に対応できる病院か否かを正確に把握しなければ比較しても意味がない。また、小さな医療機関が感染症患者を受け入れるのは、院内感染のリスクから困難であるため、総合的な医療計画が妥当であったか否かを検証すべきなのだ。

 さらに、⑥⑦のように、政治・行政は、地域に応じた医療体制構築と医療費適正化と称して都道府県に民間病院への病床機能転換を促し、急性期病床の削減を進めて在宅医療への転換を促してきたが、民間病院は収支の合わない診療科に長期に医療資源を割くことはできない上、急性期病床で対応すべき病気を在宅医療で対応することも不可能であるため、*4-1-3のように、感染症の中等症・重症には公的病院や大規模基幹病院の役割が大きかったのである。

 そのため、⑧のように、全国知事会が医療提供体制の議論を先送りしたのは正解で、これを⑨のように、利害関係のみに結び付けるのは質の悪い議論だ。

ロ)日本の医療の弱点は、コロナで浮き彫りになったのか?
 日経新聞は、*4-1-2で「①感染者を受け入れる病床が足りなくなる事態を医療崩壊と呼ぶなら、日本では2020年9月13日時点で医療崩壊は起きていない」「②OECDの調査で、人口千人当たり病床数は日本が13.1と突出して多く、OECD加盟国平均の4.7を大きく上回る」「③その病床は、一般病床・療養病床・感染症病床・結核病床・精神病床のうち感染症病床は1886で、152万を超える病床全体に占める割合は0.1%程度」「④厚労省は緊急時には感染症病床以外の病床に入院が可能との見解を示したが、それでも病床数に入院者数が近づいている地方がある」「⑤厚労省は地域医療構想の下で、病床数を削減する方向を打ち出していたが、コロナ対応で病床不足が問題となった」「⑥慶応大学の土居教授は『地域医療構想で打ち出したのは一般病床と療養病床の再編で、新型コロナの病床不足は、病床が足りないのではなく機能分化と連携が進んでいなかったことが問題』と強調」「⑦みずほ情報総研の村井チーフコンサルタントは『病床をとにかく増やすというのは現実的でなく、どんな機能の病床を増やすのかを明確にすることが必要で、これは地域医療構想の考え方とも一致する』と述べた」と記載している。

 2021年5月10日現在では、①の感染者を受け入れる病床が足りなくなる医療崩壊が大阪府で起こっているそうだが、検疫はザルである上に、他県との医療における広域連携ができていないため、やはり人災だ。②③については、イ)で述べたとおり、病床数ではなく全体を総合的に考えて、地域に少なくとも1つは頼れる基幹病院を持っておく必要があるということだ。④の緊急時に感染症病床以外の病床に感染症患者を受け入れるのは、今回は仕方がなかったとしても、今後は感染症も軽視しないゆとりある医療計画を立てておくべきである。

 ⑤については、医療費削減目的ありきのケチな医療制度改革が、経済を止めて大出費を招いた事例であり、⑥の土居教授の発言は言い訳がましいが、⑦の村井チーフコンサルタントの「どんな機能の病床を増やすかを明確にする医療計画が必要」というのは、そこまで考えた地域医療計画を立てなければならないという意味で正しい。

ハ)本当に必要な医療体制は何か?



(図の説明:日本における新型コロナによる死者数は、左図のように、欧米の1/50~1/100だが、医療崩壊・医療崩壊と騒がれている。一方、世界の専門医の平均年収を比較すると、日本は欧米の1/2~1/3であり、先進国の中では著しく低い。さらに、右図のように、米国の専門医は診療科で年収が2倍以上の開きがあり、3Kで重労働になりやすいため人材が集まりにくいと思われる科ほど高給となっており、これは合理的だと思う)

 結論から言って、どの地域にも当てはまる最適解はないが、日本国憲法第25条の「1項:すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。2項:国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない」という規定は、国民のために護られなければならない。

 具体的には、どの地域に住んでいても、人種・年齢・性別・社会的身分等にかかわらず、必要な場合は最新の医療を受けられ、平時も気軽に受診でき、健康管理しやすい医療・介護システムが必要で、これは国や地方自治体が普段から心がけて作っておくべきインフラの一つである。

 また、日本国憲法は14条で、「すべて国民は法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において差別されない」と規定しており、ここに年齢による差別が記載されていないのは、憲法制定当時は当然のこととして高齢者を大切にしていたため、わざわざ書く必要がなかったからである。

 このような中、*4-1-3は「①日本の医療機関は自由開業制で、政府・都道府県は民間病院に患者の受け入れを命令する権限はない」「②税金で医療を運営する国には、感染症等の緊急時に医療機関や医療従事者を国や地方政府が動員する仕組みもあるので、社会保険方式の日本も医療機関や医師には医療体制を確保する責務がある」「③菅首相は緊急事態の際の病床確保に関する特別措置が必要とした」「④非常時に医療機関の経営の自由を制限し、強制力を持って医療機関に病床を確保させることができる仕組みを早急に整えるべき」としている。

 この①②③④をまとめると、「非常時(緊急事態)には、医療機関の経営の自由を制限して病床を確保させることができるよう、政府や都道府県が民間病院に患者の受け入れを命令する権限を有するようにすべきで、その根拠は医療は社会保険方式だから」ということだが、これまで述べてきたように、政府や一部都道府県は自らの不作為や失政によって生じた事態を「緊急事態だ」「非常時だ」「変異種だ」と主張しているのであり、新型コロナ以外の病気は眼中にない状況であるため、政治・行政に強い強制力を持たせれば状況が改善するとは思えない。

 それどころか、政府や都道府県が民間医療機関の経営の自由度を下げて医療機関への強制を増やせば、短期的には通常の医療に弊害を及ぼし、長期的には医師の志望者が減って優秀な人材を医療に送り込めなくなることにより、むしろ国民の命を危険に晒しそうである。

 また、*4-1-3は「⑤小規模医療の源流は1961年の国民皆保険制度の創設で公的病院に病床規制が導入され、診療所の一部が規模拡大して入院機能を持つ病院に衣替えした」「⑥民間開業医を中心とする医療体制はこうして形成され、経営の自由が確保された病院が増加の一途をたどった」「⑦世界一とされる医療へのアクセスの良さは日本が誇る長寿社会を実現する大きな支えになったが、非常事態に対応できない致命的な欠陥が露呈したので、改革をためらうべきではない」「⑧医療機関の徹底した役割分担の必要性はコロナ前から指摘されており、軽い病気なのに大病院で受診する人が多く、患者に追われて数十時間も寝ずに手術をする外科医がいる一方、急性期病床を名乗りながら重篤ではない患者で病床を埋める病院がある」「⑨これでは医療人材の確保が年々難しくなる今後の人口減少社会で医療の質を維持できないため、改革は喫緊の課題だ」とも記載している。

 このうち⑤については、普段は収支の合わない診療科や病床を持つには公的病院が最適であるため、数合わせで公的病院の病床規制を行ったのは失敗だった。⑥については、経営の自由度が大きい民間病院の方が、最新の医療設備や快適な闘病空間を備えていることも多いため、診療所の一部が規模拡大して入院機能を持つ病院になったのも時代の流れとして必要だった。⑦については、「緊急」「非常事態」とさえ言えば何でもありではなく、その定義を限定すべきであり、本当に非常事態なら公的病院だけでなく自衛隊病院を使うのも選択肢の一つである。

 ⑧の医療機関の徹底した役割分担については、軽い病気か重い病気かを患者が判定することはできないため、まず大病院でしっかり検査して病名を明らかにしてから、その後の対応を決めるべきである。そのため、「紹介状のない人は大病院で受診するな」とか「37.5°C以上の熱が4日以上続かなければ病院には行くな」等の誤った強制が多く、PCR検査までケチったことが問題なのであり、これは、政府が⑦の医療へのアクセスを阻害した重大な事例である。

 なお、⑧の「患者に追われて数十時間も寝ずに手術をする外科医がいる」というのは、技術・設備・スタッフ等の揃った病院で手術するのが合理的だからで、そういう病院の医師はじめスタッフ不足の方が問題なのだ。また、⑨の「医療人材確保が年々難しくなり、今後の医療の質を維持できない」というのは、政府や都道府県が医療スタッフに不合理な強制や負担を押しつけず、医師などの医療スタッフの年収を先進国並みに引き上げ、女性差別をやめて働く人の母集団を2倍にすれば、解決すると思う。

 また、*4-1-4の家庭医は、*4-1-3で悪いかのように書いた民間開業医が主として担うため、病床を持たない民間開業医も一定数は必要で、初期診療や慢性期対応を任せられることが重要なのである。家庭医がおり、介護体制が充実していれば、自宅療養をしやすくなるため、QOLを下げてまで社会的入院をする必要はなくなる。

 しかし、病院の機能を低下させ、介護制度を充実するどころかその逆にしてきたため、「世界に冠たる国民皆保険は幻想にすぎず」「介護制度も未だに充実していない」ということとなった。また、薬やワクチンの開発にも行政のネックが浮き彫りになった。

 そのため、私は、総合診療を担える家庭医がいることには賛成だが、医療の主役である患者第一を貫けば、どの病院・診療所にもかかれる「フリーアクセス」の原則は保つべきであり、総合診療を担える家庭医の実力が認められれば、強制しなくてもその重要性は自然と高まると思う。日本の行政は、財政削減と効率性だけを求めて、国民の権利を制限し、強制しさえすればうまくいくなどと考えているため、かつての共産主義の失敗と同じことを繰り返し、「世界に冠たる」という名を返上する結果となってしまったのだ。

二)ザルになっている検疫と厚労省の言い訳について
 日本の水際対策について、*4-1-5のように、自民党の佐藤外交部会長が政府の対策の甘さを指摘し、自民党外交部会が入国者の管理を強化するよう政府に要求したところ、田村厚労相は「①憲法の制約上、移動の自由がある」「②我が国は私権の制限に対しての法律がないため、強制するのは難しい」と述べ、「③厚労省は、過去にハンセン病患者を強制隔離し批判を浴びた歴史がある」としている。

 しかし、①②については、日本国憲法22条は「何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する」と定めており、ワクチン接種証明や陰性証明を持たない人に対する原則14日間のホテル待機が本人に与えるディメリットは、「公共の福祉」のメリットと比較して著しく小さいため、憲法違反にならない。

 また、③のハンセン病患者の強制隔離は、1947年に特効薬ができて「公共の福祉」のメリットがなくなった後まで続き、それから約50年後の1996年にやっと「らい予防法」が廃止されたが、それまで無意味にハンセン病患者に対して人権侵害や家族まで含む差別を続けて人生を台無しにしてきたので、深刻さの質が全く異なる。にもかかわらず、厚労省がこの事例を引き合いに出すとすれば、その違いもわからないほどの馬鹿でなければ意図的であり、こういうことをする人は厚生労働担当にふさわしくないと言わざるを得ない。

2)介護制度について
 *4-1-4には、「①高齢コロナ患者が回復期も病院にとどまり、医療職が介護を提供する例がみられる」「②都道府県が域内の医療機関に、コロナ患者の重症度に応じて機能分担・連携してもらうのは難しいので、医療の公定価格である診療報酬の一定範囲を県独自に設定できるようにすれば、病床誘導がしやすく医療費抑制への動機づけになる」「③地域ごとに医療機関と介護施設が円滑な連携策を探ってほしい」とも書かれている。

 しかし、①③については、脳卒中等の患者が急性期を終えて慢性期に入った時に自宅療養するのに介護は不可欠だが、感染症は慢性疾患ではない上、患者を自宅に帰せば家族に感染する。その上、介護士は感染症防護を徹底しているわけではないため、介護士や介護用器具から感染する可能性もあり、介護を通じて別の患者に感染する可能性が高くなる。さらに、感染症は比較的短期間で治癒するため、重症度に応じて病室を変更することはあっても同じ病院で完治するまで治療するのが、患者の安心感に繋がる。

 このように慢性疾患と感染症の違いすら理解していない人が、②のように、医療の診療報酬に踏み込んで変な病床誘導を推進し医療費抑制に繋げようとすることが、感染拡大を助長してより大きな惨事を引き起こしていることを忘れてはならない。まさか、「高齢者はコロナで早く死んでもらった方が、年金給付や医療・介護サービスが不要になって助かる」などと思っているのではないだろうが、仮にそうだとすれば日本国憲法25条違反だ。

 このような中、*4-2-1に、「④介護保険料が4月から改定され、65歳以上の高齢者が支払う介護保険料は、2000年の介護保険制度開始時の2倍の月額6,000円程度になる」「⑤年金で暮らす高齢者の負担は限界に近づいた」「⑥介護保険サービスの費用は、利用者が払う自己負担分を除いて加入者の保険料と税から半分ずつ賄う」「⑦介護保険料は40~64歳については毎年改定され、加入する公的医療保険を通じて納付する」「⑧65歳以上の保険料は市区町村や広域連合毎に3年に1度見直され公的年金からの天引きが原則」と書かれている。

 この④⑤⑥⑦⑧は事実だが、介護保険制度創設に尽力した私は、年金生活の高齢者に集中して重い介護保険料負担を課している点で全く不本意だ。また、65歳以上の人は、要介護状態や要支援状態である場合はすべて介護保険適用の対象となるのに、40~64歳の人は、受けられる介護サービスに「老化に起因する指定の16疾病で介護認定を受けた場合に限る」という限定があるのも非科学的で不合理だと思っている。

 さらに、「⑨高齢化で介護が必要なお年寄りが増え、人手不足の介護職員の処遇改善のために、介護報酬が4月から全体で0.7%引き上げられた」「⑩保険料アップに繋がったが、公的年金給付額は賃金水準下落を受けて4月分から0.1%引き下げられた」「⑪保険料は高齢化率や要介護認定率が高い自治体ほど高く、大阪市は8,094円まで上がった」「⑫このままでは高齢者の生活費が圧迫され、介護サービス利用時の原則1割負担が払えず、介護保険に加入しながら利用できない」というのも事実だが、このうち⑩⑪⑫は、明らかに邪魔者ででもあるかのように高齢者いじめをしており、憲法25条違反だ。

 また、⑨については、介護保険制度はサービスの担い手の仕事を確保するために作った制度ではなく、介護サービスを受けるべきユーザーのために作った制度であるため、日本人の潜在看護師や看護師資格を持つ外国人労働者など比較的安価で介護に志を持つ質の高い労働力の導入を検討したり、車椅子などの介護用品に高すぎる価格をつけたり不要な人に支給したりしていないかなど、支出の妥当性も検証すべきだ。

 最後に、「⑬日本の高齢化は2040年頃にピークを迎え、そこに向けて介護人材を確保してサービスを充実させることは避けて通れない」「⑭それを抜本改革抜きに実現しようとすれば、財源捻出のため保険料は天井知らずになり『介護を社会全体で担う』という介護保険制度の理念は破綻しかねない」「⑮介護保険料は40歳以上が支払っているが、支え手を増やすために20歳以上に広げる案も検討せざるを得ない」というのも事実だ。

 しかし、私は、介護サービスの提供に関する負担と給付の不公平是正のため、働く人すべてが介護保険制度に加入して保険料を引き下げ、出産・療養などの老化に起因しない介護ニーズにも応えられるよう単純明快にするのが第一だと考える。介護サービスが充実すれば自宅療養しやすくなるため、社会的入院の必要性が低くなって医療費は下がるだろう。

 なお、*4-2-2は、「⑯一定の収入がある75歳以上の医療費窓口負担を1割から2割に引き上げる医療制度改革関連法案が衆院厚生労働委員会の賛成多数で可決し」「⑰単身なら年金を含み年収200万円以上、夫婦世帯なら合計年収320万円以上の収入ある高齢者を2割負担として現役世代の負担増を抑える」としているが、年収限度が著しく低いため、月額医療費に上限を設けることが必要不可欠だ。この時、どうせ戻ってくる医療費なら、窓口負担は避けた方がよい。

(5)日本は、本当に領土・領海・排他的経済水域を保全する意志があるのか?


       朝日新聞                       海上保安庁

(図の説明:尖閣諸島に対する日中の領有権の主張は左図のようになっている。また、尖閣諸島は、中央の図のように、日本の石垣島と台湾からともに170kmの距離にあるが、李登輝総統は「尖閣諸島が台湾領だったことはない」と言っておられた。そして、中国が尖閣諸島の領有権を主張し始めたのは、右図のように、排他的経済水域境界付近の海底で原油が発見されて以降のことであるため、中国の方に恣意性があるだろう)

   
    ameblo            canpan            goo

(図の説明:日本は四方を海に囲まれた島国であるため、左図のように、排他的経済水域が世界で6番目に広い。さらに、中央の図のように、日中中間線付近に石油・ガス田があり、そのほかレアアース・コバルトリッチクラフト・メタンハイドレート等も多く埋蔵されているため、現在では「資源のない国」ではなく、単なる「掘る気のない国」になっている。さらに、右図のように、メタンハイドレートは領海内にも多く存在し、交通機関に使わなくても化学製品の原料として使えるため、今後は資源を買う国ではなく資源を売って税外収入を得る国になるべきだ)

 中国全人代が、2021年4月29日、「①海上交通安全法を改正して外国船が領海に入った場合は中国の判断で退去を命じたり罰金を科したりできるようにし」「②中国は尖閣を『固有の領土』と主張しており」「③海警局に武器使用を認めた海警法も2021年2月に施行していたため」「④尖閣周辺で操業する日本漁船にとってはさらなる脅威となり」「⑤領海や接続水域より広い『管轄海域』で中国の実効支配が進む懸念がある」と*5-1に書かれている。

 これに対し、日本政府は、前から「⑥尖閣に領土問題はない」「⑦一方的な現状変更に反対する」「⑧自由で開かれたインド太平洋の航行の自由」という対応をしてきたため、現状に意義はないから変更せずに誰でも自由に航行できるようにしようと主張して中国の行動を容認していることになる。これが世界の率直な受け取り方であり、メディアでよく言っている「大人の対応」というよりは、不作為に近い対応だ。

 また、*5-2のように、中国が2021年4月に空母を沖縄本島・宮古島間の海域に航行させ、尖閣諸島周辺で中国海警局の船が領海侵入を繰り返している中で、同年4月の日米首脳会談を受けて、4月30日に日米制服組トップ会談が行われ、台湾海峡の平和と安定の重要性を確認し、日本と米国は共同で抑止力と対処力を強化すると申し合わせたそうだ。

 日本は米国と日米安全保障条約5条に基づく「米国の揺るぎないコミットメント」を再確認し、多国間協力を進めていく方針でも合意して、これに基づいて英国は空母「クイーン・エリザベス」を日本に派遣すると決め、フランスも日米と離島防衛訓練を実施するそうだが、尖閣諸島の領有権と中国海警局の船の領海侵入については、どう話し合われたのだろうか?

 しかし、このような時に、「米中対立に巻き込まれないよう・・」「中国とは経済で切っても切れないから・・」と言ったり、聞く方がくだらないような同盟国首長の批判のための批判をしたりしているのは、どこの国のためにこういうことをしているのかを忘れているようで、日本のメディアに眉をひそめさせられた。

 また、台湾の独立性について無関心で「寄らば大樹の陰」を決め込んでいるのも、節操がない上に日本国憲法前文の中の「いずれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならないのであつて、政治道徳の法則は普遍的なものであり、この法則に従うことは自国の主権を維持し他国と対等関係に立とうとする各国の責務であると信ずる。日本国民は、国家の名誉にかけ、全力をあげてこの崇高な理想と目的を達成することを誓う(https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=321CONSTITUTION 日本国憲法 参照)」に反している。

(6)知識と判断力を得られる教育にするには・・

 

(図の説明:左図のように、英国は、4歳から初等教育を始め、15歳までの11年間が義務教育である。日本は、右図のように、3歳時点で90%近くが幼稚園か保育園に通っており、せっかく預かるのならいろいろ教えた方がよいし、教育格差はこの時代から始まっているため、3歳から義務教育を始めてはどうかというのが、私の意見だ)

 

(図の説明:左図のように、高校進学率は全世帯では既に99%に達しているが、生活保護世帯は93%であり、大学進学率はさらに大きな差があるため、保護者の所得格差は次世代の教育に影響している。また、関東以北では公立高校でも男女別学の地域があり、中央の図のように、私立進学校は多くが男女別学であるため、ジェンダーは初等教育から始まっている。国立大学では文理融合型の学部ができているが、大学教養程度の基礎知識は、文系・理系を問わずすべての人が持っていた方がよいと思われる)

 日本では、*6-2のように、「課題解決力」を育成するとして文系・理系の枠組みを超えた文理融合型学部の創設が国立大学で広がり、高校で文系のクラスにいた東京都内私立高校の女子生徒が「文理融合型」の学部に勧められたそうだ。しかし、率直に言って文系・理系のどちらに進むか決めかねている場合は、理系クラスにいなければ理系には進めない。

 その理由は、日本の高校では、理系クラスは数IIIまで教えるが、文系クラスは数IIまでしか教えないため、文系クラスから大学の理系学部に進学するのは困難だからで、逆に理系クラスが文系に比べて文系科目の勉強量が少ないわけではないため、理系クラスからは大学のどの学部に進学することも可能だからである。

 しかし、東京周辺やそれより北の地域は、公立高校でも未だ男女別学で、女子高には理系コースのないところもあるそうで、さらに、私立の進学校は男女別学ばかりと言っても過言ではないため、ジェンダーは初等・中等教育から始まっているのである。

 なお、九大が文理融合型の「共創学部」を設けたのは、異なる視点や学問的知見を持つ人が連携して新たなものを創造する課題解決力の獲得をめざすことが目的だそうだが、これは現在の初等・中等教育を前提として大学内でできることをしたのだろう。私は、大学の教養くらいまでの基礎知識は、共通言語として理系・文系にかかわらず誰でも身に着けておくことが必要で、そうでなければ仕事等で他の専門分野の人と話をした時に、お互いの話を理解して次のアクションに結び付けることができないと思う。

 それでは、大学の教養くらいまでの知識を、現在は95%の人が進学している高校の卒業時までに習得させる方法があるかと言えば、幼稚園と小中高の就学年齢を3年前倒しすればできる。

 *6-1の私立玉川学園のケースでは、秋入学を導入して小学校教育の開始を半年繰り上げ、高校まで学ぶ「初等中等一貫教育学校」を作り、幼稚園年長児(5歳)の9月から小1の学習を始めて翌年6月で1学年を修了することを構想しており、こうすると、高校までの教育課程全体を半年前倒しして、海外の大学に進学したり、ゆとりを持って国内の大学に進学したりできる。

 しかし、諸外国には、4~5歳児から小学校に就学させる国も少なくないため、学校教育法の義務教育開始時期を「満6歳に達した日の翌日以降の最初の学年の初め」ではなく、「(今では90%以上の子が幼稚園か保育園に通う)満3歳に達した日の翌日以降の最初の学年の初め」に変更して小学校教育を始め、義務養育期間を12年か15年に伸ばせばよいと、私は思う。

 何故なら、義務教育期間を中学校までとすれば3年伸びて12年となり、高校までとすれば15年となって、現在の大学の教養くらいの知識までを、高校でゆとりを持って教えることができ、大学教育はもっと専門性の高いものにできるからだ。そして、中等学校以上は、義務教育であっても受験して、合格すればその学校に入学できる制度にすればよいだろう。

・・参考資料・・
<改憲の危険性>
*1-1:https://digital.asahi.com/articles/ASP535S6SP53UTFK009.html (朝日新聞 2021年5月3日) 緊急事態条項や「改憲4項目」実現を 首相がメッセージ
 菅義偉首相は憲法記念日の3日、改憲派の集会に自民党総裁としてビデオメッセージを寄せた。新型コロナウイルスの感染拡大に触れ、大災害などの時に内閣が国民の権利を一時的に制限する「緊急事態条項」に関し、「極めて重く大切な課題」と語った。その上で、同条項や、憲法9条への自衛隊明記を含む自民党「改憲4項目」の実現をめざす考えを示した。この集会には安倍晋三氏も首相当時にメッセージを寄せており、菅首相も同じ形をとった。首相は「現行憲法も制定から70年余り経過し、時代にそぐわない部分、不足している部分は改正していくべきではないか」と述べた。続けて「新型コロナ対応で緊急事態への備えに関心が高まっている」とし、「大地震等の緊急時に国民の命と安全を守るため、国家や国民がどのような役割を果たすか、憲法にどう位置づけるかは極めて重く、大切な課題だ」と訴えた。さらに「自衛隊は大規模災害や新型コロナへの対応で国民の多くから感謝されているが、自衛隊を違憲とする声がある」とも主張。その上で、自民党が掲げる「自衛隊明記」「緊急事態条項創設」「参院選の合区解消」「教育無償化」の「改憲4項目」について、「自民党は、(国会の)憲法審査会で活発に議論を行っていただくため、憲法改正のたたき台を取りまとめている」と強調した。また、与党が6日にも衆院憲法審査会で採決をめざす、憲法改正の手続き法である国民投票法改正案に関し、「憲法改正議論を進める最初の一歩として、成立を目指さなければならない」と意欲を示した。菅首相は改憲について、昨年9月の就任以来、国会演説やメディアのインタビューなどで、国会での議論への期待を述べるにとどめてきた。「先頭に立って責任を果たしていく」と訴えた安倍氏に比べ、改憲への意欲は低いとされる。先月の訪米時にも、米誌ニューズウィークのインタビューで、首相は「(改憲は)現状では非常に難しいと認めなければならない」と話している。ただ、今秋までに衆院選や自民党総裁選が予定されることから、自民党の支持基盤である保守層に向けてアピールする狙いがあるとみられる。一方、立憲民主党の枝野幸男代表は3日、護憲派の市民団体が開いたイベントにオンラインで参加。コロナ対策を理由に「緊急事態条項」創設のための改憲を自民党などが訴えている点について、「公共の福祉にかなう私権制限は現行憲法でも許されている」とした上で、「必要な対策が打てていないのは、根拠なく楽観論に基づき、命や暮らしを守ることを最優先しない政策判断にある。まったく関係ない憲法のせいにしている」と批判した。ただ、枝野氏は、国民投票法改正案については触れなかった。同じイベントに参加した、共産党の志位和夫委員長は同法案について「憲法改定に向けた地ならしが狙いだ。採決を断固として止めよう」と訴えた。

*1-2:https://www.sankei.com/politics/news/210503/plt2105030026-n1.html (産経新聞 2021.5.3) 改憲派集会に参加した与野党幹部・有識者らの主な発言
 3日にオンライン形式で行われた憲法改正を訴える公開憲法フォーラム「この憲法で国家の危機を乗り越えられるのか!-感染症・大地震・尖閣-」(民間憲法臨調、美しい日本の憲法をつくる国民の会共催)では、与野党幹部や有識者らが講演などを行った。主な発言は次の通り。
■自民党・下村博文政調会長
 南海トラフ巨大地震のような大災害がこれから30年以内に70~80%の確率で発生する。そのときに感染症などがもし重なっていたとしたらこの国はどうなるのか。そのときの対応として世界では常識の緊急事態条項を入れなければならない。
■日本維新の会・足立康史氏
 憲法改正の中身の議論を進めるためにも、国民投票法改正案についてはただちに採決し、速やかに可決・成立を図るべきだ。立憲民主党が改正案に対する修正案を提示してきた。付則に3年の期限を切り、CM規制や資金規正に関する検討規定を設けるというもので、常識的な範囲だが、立民や共産党に常識は通用しない。3年間は手続きに関する議論を優先し、憲法改正を拒むカードにさえしかねないと危惧している。
■国民民主党・山尾志桜里氏
 (国の交戦権を否定した)憲法9条にしっかり自衛権を位置付け、それを戦力であることをきちんと認めた上で、国民の意志で枠づけをしていくことをこれからも皆さんの知恵を借りながら訴えたい。国家が危機を乗り越えるために必要不可欠な力を、憲法で無視し続けることでその力を抑制しようというのは、日本の「法の支配」にとっては有害だ。
■日本経団連・井上隆常務理事
 緊急事態条項を持たない憲法は世界でもまれだ。「オールハザード型」の危機対応にはなっていないことは気がかりで、複合型の災害や国家の危機を乗り越えられるのか、法治国家としての制度的な備えは十分なのか、今こそ再考する必要がある。わが国最高法規である憲法も社会の変化や時代に即し、国民的な議論が行われることは当然であり、決して不磨の大典ではない。国民一人一人が議論をし、次の世代に引き継いでいく作業が必要だ。
■日本青年会議所・佐藤友哉副会頭
 今の憲法には住民自治を明確に示す言葉がない。新型コロナウイルス禍では感染対策は地域によってさまざまだ。地域の実情にあった対策が打てるように国と自治体の権限のあり方を考えるべきだ。これからの地域発展を考える上でも、地方自治に関する憲法のあり方が今後大いに議論されることを心から期待する。
■国士舘大・百地章特任教授
 国家的な緊急時においても、国会の機能を維持し、国民の生活を守る必要がある。例えば、感染症の拡大によって全国から国会議員が集まれず、定足数が満たせない場合、どうするのか。来週に国会で感染症が発生し、定足数を満たせなかったら、すぐに起きる問題だ。国会の機能を維持するためにも憲法に根拠規定を置く必要がある。

*1-3:https://digital.asahi.com/articles/ASP515JTYP4XUPQJ008.html?iref=comtop_7_01 (朝日新聞 2021年5月3日) 制限と補償の前に、問いたい法解釈と統治 木村草太さん
 いま、日本の統治機構の憲法原則が脅かされている――。憲法学者の木村草太さん(東京都立大学教授)は言う。長引くコロナ禍で、移動や営業の自由が制限される生活が続き、十分な補償がない「制約」には、反発の声が繰り返し上がる。そんななか、統治のあり方にこそ、日本社会の危機の本質がある、という指摘だ。どういう意味なのかを聞いた。
●必要なのは正しい解釈に基づく検討
――東京や大阪、京都、兵庫で緊急事態宣言が出されています。「感染拡大を抑えるため」「人の流れを止めるため」という理由です。結果、移動や営業の自由に制約がかかっている。そもそもこの状況は、日本国憲法が保障する自由の侵害には当たらないのでしょうか。
 「結論からいうと、二つの条件が満たされれば、私権の制限は可能です。①規制の目的が自由の制限を正当化できるほど重要で、②規制の方法が合理的かつ、必要不可欠であれば、法律に根拠のある規制は合憲とされます。コロナ禍に当てはめれば、毒性の強い感染症のまん延を防ぐという『目的』の重要度は高い。感染症の専門家が合理的で必要だと考え、かつ法律に即した『手段』であれば、自由の制約は正当化され得るということになります。日本に限らず、欧米など立憲的憲法を持つ国々では、このような論理でコロナ禍における自由の制約がなされてきました」
――意外にハードルが低いように聞こえます。
 「いや、違います。むしろ『感染症対策なのだから、どんな制約でも我慢しろ』という論理は通用しないことを意味しています。その感染症を抑制することが社会にとってどれほどの重要性を持つのか、そして制約の内容、すなわち手段が科学的・法的根拠に照らして適切なのかという視点が重要です。そして法的根拠も伴わなければなりません。米国では、制約の度合いが適切な範囲を超えているから違憲だ、という判決も出ています」
――「やりすぎ」はいけない、ということですね。
 「感染症の拡大を止めるという目的に対して、その対策は役に立っているといえるのか。もっと緩やかな制約で効果的なものはないのか。こうした細やかな検討が不可欠です。具体的にいえば、人が集まってもほとんど会話しない映画館や、個人が黙々と打つパチンコ店の営業を制約する必要があるのか。営業自粛を要請するとして、それに従わない場合の罰則はどの程度にするのか」
●ユカちゃん店主、首相答弁に衝撃 コロナ禍の自由とは?
 「言い換えれば、自由を制約する政策には、こうした法律の正しい解釈に基づいた細かな検討こそが必要です。ですが、この1年以上にわたるコロナ禍でこうした意識が今の政府には決定的に欠けていることが明らかになりました」「自由と補償をめぐる議論が繰り返されてきましたが、憲法上の問題という意味では、法の支配や政府の国民への説明責任といった、日本の統治機構の憲法原則が危機にさらされていることがより深刻だと考えています」
[記事後半で木村さんは、コロナ対策に関する国の目標設定のあいまいさや、不十分な説明について論じます。そのうえで、近年の政権の憲法や法解釈に対する向き合い方についても鋭い指摘をします。]
●目標ないまま場当たり規制
――どういうことですか。
 「まず、先ほど示した条件の一つ目、『規制の目的』について考えてみましょう。政府は、これを具体的に設定できていないし、国民に十分な説明もしていない。今回のウイルスをどの程度封じ込めるべきかという問題です。例えば、完全な『ゼロコロナ』を目標にするなら、行動抑制は広範で強いものになります。一方、1日千人くらいの陽性者は許容するということにするなら抑制の程度は弱まります」「感染拡大から1年以上が経った現在も、目的・目標を明確に示せずにいる。これがないと、第2の条件に当たる規制の正当性は評価できません。規制の方法が合理的かつ必要不可欠かは、目標によります。それがなければ国民からすれば場当たり的にしか映らない規制がまかり通ることになります」
――他国も感染は拡大しました。
 「もちろん日本と同じように当初混乱しました。ただヨーロッパの多くの国では、感染者数・死者数の規模が大きかった。そのため、コロナの毒性への評価や恐怖について、社会的に合意形成がしやすかった。日本では、人によってウイルスの毒性に対する評価が違うので、必要だと考える規制の範囲や強度にも食い違いが顕著に生じたように見えます。新型コロナウイルスは、より致死性の高いエボラ出血熱などと比較すると、社会的な意思決定がしにくい特徴を持っているともいえます。しかしここは、政治が率先してリーダーシップを取るべきでした」
――「営業自粛を求めるならば、その分の補償を」という議論が繰り返されてきました。十分な額とはいくらかという議論はあるとしても、一部の業種にだけ制約が偏るならば憲法14条が定める法の下の平等、あるいは29条の営業の自由の侵害にならないのですか。補償がない、あるいは十分ではない、というのは憲法違反と言えませんか。
 「それは難しい。憲法29条3項は『私有財産は、正当な補償の下に、これを公共のために用いることができる』と定めていますが、公平性の観点からの議論です。つまり、ある人だけが不公平に財産権を制約されてはいけない。でも制約される人に理由があれば別なのです。例えば、食中毒を出した店への営業停止命令が出た際に、補償はされませんよね。その店に『内在するリスク』があるからです」「コロナ禍のスタート時点では、憲法の観点からすると、飲食店には社会を脅かすウイルスの感染を拡大させるリスクが内在するから補償はできない、という論理だった。ただ、私は今は状況が変わったと考えています」
――どういうことでしょう。
 「緊急対応を余儀なくされた当初と比較すれば、ウイルスについてわかってきた情報も多く、各飲食店もさまざまな対策を講じている。一方で、営業自粛要請は非常に長期間に及んでいる。感染症対策をしていようがいまいが一律に規制する手法が、『内在するリスク』への対応として正当なのかどうか、疑問が生まれます。映画館や書店に関しても同様です」
●揺らぐ立憲主義の根幹
――リスクの評価の基準はどうすれば?
 「このリスクの評価は、政府が掲げる目標との関係で決まります。コロナ・ゼロを目標にするならば、もちろん制約は広範囲に強く、そして長くなります。その場合は『3密』産業には業種転換支援を政策として打たないといけません。『人の流れを止めるため』という漠然とした理由で、ある業種だけが狙い撃ちになるのは正当化できません」
――政府が目標を設定し、説明責任を果たせていないのが問題だということですね。 「明確な目標を設定し、それを法令に明記して国民に説明し、理解を得ようとする。それをしないまま政策を打ち続けるということは、『法律による行政』を軽んじていることになる。立憲主義の根幹を揺るがしかねない問題です」「思い返すと、昨年2月に当時の安倍晋三首相が法的根拠もないまま、全国一斉休校宣言をしました。当時は新型コロナウイルスには新型インフルエンザ特別措置法は適用できませんでしたから、法の外からの『要請』でした」「翌月にはこの特措法を適用できるよう法改正をしました。少しテクニカルな話ですが、新型インフルエンザ対策であるこの法律では、市中感染が広がっている状況では、緊急事態宣言は継続する、となっていた。これだと新型コロナの場合、宣言は解除できない。ですがそうなりませんでした。そして昨年4月の緊急事態宣言の理由として、医療体制の崩壊が語られました。これも法律に書かれていない。何となく数字が下がってきたので解除し、増えると宣言を出す。一貫して法的根拠という視点が軽視されてきました」
――当初は想定されていなくて対応が遅れた、ということではありませんか。
 「今も変わっていないと思います。まん延防止等重点措置をめぐる混乱がその一例です。この措置とは、法律で定められた内容をみると、『医療崩壊寸前に行われる強力な措置』です。でも、『まん延防止』と表現してしまうと、一般的には医療崩壊寸前というより『まだまん延していない』というニュアンスで受け取られます」「官僚がこういう名称を提案してきても、政治家は、果たしてこの名称で、自分が日頃から付き合っている地元の支援者たちに法律の内容が伝わるだろうかと考えないといけない。政治家が政府と国民をつなぐ仕事ができていない。政治家が想像力を働かせて主張するべきところでしたが、機能しませんでした」
●問われる統治のあり方
――こうした事例から言えることは何でしょうか。
 「政府が法の解釈や整合性などを気にしなくなってしまったことのマイナス面がわかりやすく示されてしまった。コロナ禍によってと言うよりも、もう少し長いタイムスパンで起きてきました。2015年の安保法制時の憲法解釈の変更、そして最近では日本学術会議の問題でも従来の法解釈をないがしろにしてきた」「法文言の正しい解釈を尊重しながら、必要な目標設定をしてそれを国民に向けて説明する。こうした統治や民主主義の根幹を揺るがすことに慣れてしまっているように見える。国民の命や暮らしをおびやかす形で、露呈したのがコロナ禍といえます」
――行政に権力が集中していなかったから感染症対策で後手に回って、東京などでは3度の緊急事態宣言を出さないといけなくなった、ではなくて……。
 「その反対でしたね。法の支配や説明責任を軽んじてきたから、様々な法改正や宣言の意味を国民と共有できていない。権力があるだけでは、統治機構はきちんと機能しない。実際に法を超えて、権力行使して実現したのが、首相による『一斉休校』とマスクの配布だったことを思い出すと、いかに憲法に基づいた法の支配が重要かがわかります」「自由と補償の前提、統治のあり方の問題です。自由と補償の議論は重要なんですが、むしろそうした議論ばかりになってしまうと、それが今の危機を見失うごまかしの手段になってしまうことを懸念しています」(聞き手・高久潤)
     ◇
1980年生まれ。専門は憲法。著書に「憲法学者の思考法」「平等なき平等条項論」など。
 
*1-4:https://www.nichibenren.or.jp/document/statement/year/2021/210503.html (日本弁護士連合会会長 荒 中 2021年5月3日) 憲法記念日を迎えるに当たっての会長談話
 本日は、日本国憲法が施行されてから74年目の憲法記念日です。昨年から続く、新型コロナウイルスの感染拡大については、引き続き予断を許さない状況にあり、本年も新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づく緊急事態宣言やまん延防止等重点措置(以下「緊急事態宣言等」といいます。)の下で憲法記念日を迎えることになりました。緊急事態宣言等の下で、市民や企業等には、外出・移動の自粛や休業・時短等が要請されている状況にあります。しかし、そのような感染拡大防止策を講ずる場合であっても、個人の権利は最大限尊重される必要があります。規制により生活が脅かされたり、事業活動が著しく制約されたりする場合には、速やかに適切な措置を講ずる必要があるとともに、その補償も課題となります。また、感染者やその家族、医療従事者等への偏見や差別は決して許されないことに留意する必要があります。加えて、ワクチン接種に伴い発生する様々な問題についても、きめ細やかに対応していく必要があります。報道によると、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、憲法を改正して緊急事態条項の新設を求める声も、与野党の一部にあるようです。しかしながら、感染拡大防止は市民の協力を得ての法律上の対応で十分可能です。憲法に緊急事態条項を新設することは、立法事実を欠くだけでなく、これにより個人の権利の侵害につながるおそれがあります。また、現在、衆議院の憲法審査会では、日本国憲法の改正手続に関する法律(以下「憲法改正手続法」といいます。)の一部を改正する法律案の審議が行われており、本年5月6日に開催予定の同審査会において採決される可能性も報道されています。当連合会の2018年6月27日付け「憲法改正手続法改正案の国会提出に当たり、憲法改正手続法の抜本的な改正を求める会長声明」で指摘しているとおり、現在審議されている改正法案で取り上げられている事項以外にも、テレビ・ラジオの有料意見広告規制や最低投票率制度等、検討や見直しを行うべき重要な課題があります。当連合会は、今後もこれらの重要な課題の検討や見直しを含む憲法改正手続法の抜本的な改正を求めていきます。さらに、昨年は、検察官の定年後勤務延長問題や日本学術会議会員の任命拒否問題が発生しましたが、当連合会は各問題について意見表明を重ね、憲法の基本原則を脅かすような問題があることを指摘しました。当連合会は、新型コロナウイルスの感染拡大という状況の下においても、立憲主義を堅持し、国民主権に基づく政治を実現することにより個人の人権を守る立場から、引き続き、人権擁護のための活動を積極的に行ってまいります。

<コロナのワクチン・検査・治療>
*2-1-1:https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA2291I0S1A420C2000000/ (日経新聞 2021年4月22日) ワクチン、自治体要望に400万回分不足 GW後の供給分
 河野太郎規制改革相は22日の記者会見で、5月10日からの2週間で自治体に届ける高齢者向けの新型コロナウイルスのワクチンを巡り都道府県別の配分量を発表した。自治体の要望する量に供給が約400万回分足りないといい、河野氏は「申し訳ない」と陳謝した。政府は2週間で1万6千箱(約1900万回分)を配送する計画にしている。自治体に希望量を聞いたところ1万9571箱(約2300万回分)で、供給量を約400万回分超えた。そのため希望量に応じて傾斜配分し、供給量を決めた。東京都が2064箱(約240万回分)と最も多く、埼玉県1095箱(約130万回分)、大阪府1058箱(約120万回分)と続いた。河野氏は「最初だからまだ手元に在庫がなく、予約を取るときに若干の不安があるということも入った数字だと思う」と述べ、自治体が在庫分も含めて発注した可能性を指摘した。その後の供給については、各自治体の希望と接種実績を踏まえて決めていくという。65歳以上の高齢者向けワクチン接種は4月12日に始まった。当初は供給量が限られ、大型連休前後から米ファイザーからの輸入量が増加する。政府は6月末までに高齢者全員が2回分の接種を受けられる量を供給できるとしている。

*2-1-2:https://digital.asahi.com/articles/ASP546WW5P54ULFA009.html?iref=comtop_7_05 (朝日新聞 2021年5月4日) ファイザーワクチン、売上高2兆8千億円の見込み
 米製薬大手ファイザーは4日、今年の新型コロナウイルスワクチンの売上高が260億ドル(約2兆8千億円)になる見込みだと発表した。年内に供給する予定の16億回分の売上高にあたる。2月時点の予想(150億ドル)から大幅に増えており、今後契約数が増えればさらに金額が増えるという。ワクチンの売上高が上積みされ、会社全体の売上高は705億~725億ドルと、前年の419億ドルから大幅に増える見込みだ。4日発表した1~3月期決算で明らかにした。1~3月期のコロナワクチンの売上高は34・6億ドル(約3800億円)。会社全体の売上高は、前年同期比45%増の145・8億ドル、純利益も同45%増の48・7億ドルで、ともにワクチンの販売が大きく貢献した。ワクチンは、ファイザーとドイツのバイオ企業ビオンテックが共同で開発した。日本政府が契約しているモデルナも2月、今年のコロナワクチンの売上高が184億ドル(約2兆円)になる見込みだと明らかにしている。

*2-1-3:https://digital.asahi.com/articles/DA3S14894139.html (朝日新聞 2021年5月5日) コロナ薬にアビガン、実現は 安倍前首相「承認めざす」発言、1年
 新型コロナウイルス治療薬の候補として、注目を集めた抗インフルエンザ薬「アビガン」について、安倍晋三・前首相が「今月中の承認をめざしたい」と異例の発言をして1年が経つ。承認申請はされたが継続審議となり、新たな臨床試験(治験)が始まった。この間に何がわかったのか。今後どうなるのか。
■申請→有効性「判断困難」→再治験
 アビガンは2014年、従来の薬が効かない新型インフルエンザ向けに承認された。細胞に入ったウイルスの増殖を抑える薬だ。製造元の富士フイルム富山化学が20年3月に新型コロナ向けの治験を始めた。有効性を示すデータがまだ出ていない昨年5月4日、安倍氏は会見で、「一般の企業治験とは違う形の承認の道もある」などと述べ、月内の承認をめざすとした。この直後に厚生労働省は、「治験データは後でも可」と早期承認が可能となる特例を設けた。だが患者が減り参加者が集まらず、治験と別の特定臨床研究では、統計的な有効性は示せなかった。同社は9月23日、治験の結果を発表。特例は使われず、10月16日に厚労省に製造販売の承認申請をした。12月21日、厚労省専門部会での審議は荒れた。審査を担う医薬品医療機器総合機構(PMDA)側は新型コロナへの有効性について、「現時点で明確に判断することは困難」としながら、流行が広がる緊急的な状況に備えるため、「使用可能な状況にすることも検討は可能」と説明した。朝日新聞が入手した議事録によると、委員からは厳しい意見が相次いだ。「ちゃんとしたエビデンス(科学的根拠)がない」「解析計画とかデータの取り扱いに信頼性がない」「有事だからこそ正当な科学的手続きは通すべきだ」。論点の一つは治験の手法だ。20~74歳の重症ではない新型コロナの患者156人が参加し、偽薬とアビガンをのんだ患者の経過を比べた。どの患者がアビガンをのんだか、医師が知っている「単盲検」という手法だった。アビガンをのんだ患者は、PCR検査で陰性になるまでの中央値が11・9日。偽薬をのんだ患者より2・8日短かった。客観的な効果の評価には、薬か偽薬かを医師も患者も知らない「二重盲検」という手法が通常は使われる。単盲検にした理由は、急変時の患者の安全の確保のためなどという。どの患者が薬をのんだか医師が知っていると、薬が効いたのだろうとの思いこみが生じうる。PCR検査や肺のCT画像撮影のタイミングに客観性がない可能性も指摘された。結果の解析方法の不備も指摘され、承認は先送りとなった。同社は審議結果について「治験のプロトコル(実施計画書)は適正プロセスにのっとって、PMDAに提示し、合意を得た」とのコメントを出した。
■専門家「治験、根本的見直しを」
 継続審議となったアビガンは今も、患者の希望と医師の判断による「観察研究」の枠組みで使われている。クウェートや米国での二重盲検の治験の結果が待たれていた。クウェートでは1月に治験を終え、結果を発表。中等症と重症の計353人の患者では、アビガンをのんだ方が、偽薬よりも回復期間が1日早かったが、有意差はなかった。ただ、軽症者ら181人ではアビガンの方が3日早く退院できた。米国では昨年から軽症、中等症の826人での治験を続ける。そんな中、富士フイルム富山化学は4月21日、国内で二重盲検による治験を新たに始めたと発表した。対象は50歳以上の男女316人。発熱などの症状が出たばかりの軽症者で、基礎疾患があるなど重症化リスクがある患者に絞り、薬の効果が出やすいようにした。10月末まで有効性や安全性を調べる。データを基に、部会で再審議される。ただし予定通り終わるかや、審査にかかる期間は見通せない。アビガンはのみ薬で使いやすいが、動物実験で胎児に奇形が出る恐れがわかり、副作用も懸念されている。承認前の薬だが、備蓄のための追加購入もあった。元々新型インフルのために約70万人分を備蓄していたが、厚労省は昨年度、新型コロナ治療のため、約134万人分を購入した。予算案では139億円を計上した。臨床現場からは「ハイリスクの患者がのみ、重症化が防げるならばブレークスルー(突破口)になりうる」という声が上がる。一方、「効かないという前提をつくりたくないだけではないか。ほかの感染症が次に流行した時にアビガンを使いにくくなるから」との声も漏れる。臨床試験に詳しい日本医科大学武蔵小杉病院の勝俣範之教授(腫瘍〈しゅよう〉内科)は言う。「科学的に有効性が示されて初めて薬は承認される。これが基本。ヒトを対象にした試験が成功する可能性は低く、結果が出る前に承認への言及があることそのものがおかしい」。日本では製薬企業主導の試験が多く、米国のように研究者によるものが少ないことも問題視する。「コロナ禍を機に、臨床試験を推進し、正しい情報発信をする機関を作るなど根本的な見直しをすべきだ。政治から独立した機関を設け、質の高い臨床試験ができる環境を整えてほしい」と話す。

*2-1-4:https://www.nikkei.com/article/DGXZQOFB25AAL0V20C21A1000000/ (日経新聞 2021年2月9日) 東京都医師会、イベルメクチン投与を提言 重症化予防で
 東京都医師会の尾崎治夫会長は9日の記者会見で、新型コロナウイルスの感染拡大に対応するため、主に自宅療養者の重症化を防ぐ狙いで薬剤の緊急使用を提言した。海外で重症化を防ぐ効果が示されているとして、抗寄生虫薬「イベルメクチン」などをコロナ感染者らに投与すべきだと強調した。イベルメクチンのほか、ステロイド系の抗炎症薬「デキサメタゾン」の使用を国が承認するよう求めた。尾崎氏は「(いずれも)副作用が少ない。かかりつけ医のレベルで治療ができるよう、国に検討してほしい」と述べた。イベルメクチンもデキサメタゾンも国内で処方されている。ただ、コロナの治療薬としては承認されていない。8日時点で都内には自宅療養者が約1600人、入院先などが決まらず「調整中」になっている感染者も約1600人いる。軽症や無症状の多い自宅療養者の容体急変にどう対応するかも課題になっている。尾崎氏は都内の1日当たり新規感染者数について「100人ぐらいまでに抑えることが4~6月の状況を良くする道だ」と強調した。都内では9日、412人の新規感染者が確認された。

*2-1-5:https://newswitch.jp/p/25238 (Newswitch 2020年12月27日) 来年3月に臨床試験終了へ、抗寄生虫薬「イベルメクチン」はコロナに効くか
 北里大学大村智記念研究所感染制御研究センターは、抗寄生虫薬「イベルメクチン」について、新型コロナウイルス感染症の治療薬としての臨床試験を2021年3月にも終了し、製造元の米製薬大手MSDに試験結果を提供する。MSDは効果を検証しながら、承認申請を検討する見通しで、新型コロナの治療薬として認められれば、抗ウイルス薬「レムデシビル」とステロイド薬「デキソメタゾン」に続き、3例目となる。臨床試験を取りまとめている花木秀明センター長が方針を明らかにした。イベルメクチンは寄生虫感染症の治療薬だが、エイズウイルス(HIV)やデングウイルスへの効果が報告されている。ウイルスの遺伝子であるリボ核酸(RNA)の複製やたんぱく質生成を阻害するほか、サイトカインストーム(免疫暴走)を抑制する作用が期待される。米ブロワードヘルスメディカルセンターの研究では、イベルメクチンの投与により、新型コロナ重症患者の致死率が80・7%から38・8%に改善した。イベルメクチンは駆虫薬として、19年には世界で4億人以上に投与され、大きな副作用は確認されていない。新型コロナへの治療薬としては、インドやペルーなど29カ国で研究が続けられている。花木センター長は「日本ではイベルメクチンの知名度が低いが世界では駆虫薬として知られ、新型コロナの治療効果の検証が進んでいる」と説明。「日本でも新型コロナ治療薬としての可能性を広く知ってもらい、試験を進めたい」と述べた。イベルメクチンは、寄生虫によって引き起こされる「オンコセルカ症」の治療に使われる。オンコセルカ症は目のかゆみや発疹などが生じ、失明に至ることもある。イベルメクチンのもととなる化合物アベルメクチンの発見により、北里大学の大村智特別栄誉教授は15年、ノーベル生理学・医学賞を受賞した。

*2-2-1:https://www.jiji.com/jc/article?k=2021041700411&g=soc (時事 2021.4.17) 変異型、首都圏で急拡大 「5月前半に8~9割」―全国は1カ月で4倍
 新型コロナウイルス感染拡大の「第4波」が鮮明になる中、関西圏で急拡大する変異ウイルスが首都圏でも猛威を振るう恐れが強まっている。国立感染症研究所は、首都圏での新規感染者に占める変異型の割合が5月前半に8~9割に達する恐れもあるとみて、警戒を強める。厚生労働省によると、全遺伝情報(ゲノム)解析で確定した変異型の国内感染者は、3月9日時点では21都府県の271人だった。今月13日時点で42都道府県の1141人となり、1カ月で4倍超に激増した。国内の変異型は大きく分けて、英国型、南アフリカ型、ブラジル型、由来不明型の4種類。国内感染者の94%超を占める英国型は、ウイルスが細胞に侵入する際に用いるスパイクタンパクに細胞と結び付く力を強める「N501Y」変異がある。厚労省の集計に含まれない由来不明型は関東や東北で拡大し、ワクチンの効果低減が懸念される「E484K」変異が特徴。南ア型とブラジル型は両方の変異を併せ持つ。フィリピン、米国に由来する変異型も確認されたが広がりはない。変異は、ウイルスが細胞に入り込み、遺伝物質RNAをコピーして増殖する際のコピーミスで起きる。N501Yは、スパイクタンパクの501番目のアミノ酸がN(アスパラギン)からY(チロシン)に変わったことを意味する。E484Kは484番目のアミノ酸がE(グルタミン酸)からK(リシン)に変化している。特に急拡大が懸念されるのが、感染力が強いN501Y変異だ。東京で拡大した由来不明型は、英国型に取って代わられつつある。感染研によると、首都圏(東京、神奈川、千葉、埼玉)での感染者に占めるN501Y変異の割合は、現在の約5割から、5月前半には8~9割になると推定される。東海圏(静岡、愛知、岐阜、三重)、関西圏(大阪、京都、兵庫)、沖縄では5月前半までに9割台後半になる見通しだ。厚労省専門家組織のメンバーは「東京でもN501Y変異に置き換わってきているが、プラスアルファの変異が出る恐れもある。ゲノム解析を通じ変異型を追い掛けることが重要だ」と話す。

*2-2-2:https://www.yomiuri.co.jp/national/20210428-OYT1T50275/ (読売新聞 2021/4/28) 変異ウイルス猛威の「第4波」、クラスター発生場所が多様化
 国内で4月に発生した新型コロナウイルスのクラスター(感染集団)が463件に上り、場所別では初めて職場(96件)が最多となったことが、厚生労働省の助言機関の集計でわかった。昨年末以降の第3波では飲食店を「急所」とみて対策が強化されたが、変異ウイルスが猛威をふるう今の「第4波」では、学校や高齢者施設なども含めて、発生場所が多様化している。助言機関によると、把握が難しい家庭内を除いて、昨年1月以降に発生した5人以上のクラスターは計4631件。昨年春の第1波では医療機関で、続く夏の第2波では接待を伴う飲食店を中心とした「夜の街」での感染事例が目立った。年末から年始にかけて感染者が急増した第3波では、会食のリスクが注目され、各地で飲食店への営業時間短縮要請などが行われた。だが現在の第4波では、日常生活全般で感染が懸念される事態となっている。今年4月1日~23日の暫定値463件の内訳をみると、最多の職場(96件)に続いて、学校・児童福祉施設(90件)、高齢者施設(86件)、飲食店・会食(82件)などが多かった。職場感染は2月は49件だったが、4月に入り拡大した。厚労省の職員らが3月下旬、深夜まで23人が参加する送別会を開催したケースでは、参加者12人を含む同じ部局の29人の感染が判明。送別会との因果関係は不明のままだが、会議で使うデスクや電話機、コピー機など共用の備品を通して感染が拡大した可能性があるという。一方、助言機関は小中学校や大学、学習塾などで昨年1月以降に起きた489件のクラスターも分析。その結果、部活やサークル活動が要因とみられる事例が2割(100件)に上り、大学では4割(58件)を占めた。横浜市では、慶応大ラグビー部員ら78人(28日現在)の感染が確認された。寮生活などが原因の可能性があるという。政府は、こうした部活やサークル活動の自粛を呼びかけている。東京、大阪など4都府県への緊急事態宣言による飲食店の休業などで、「路上飲み」による集団感染も新たな課題となっている。国立感染症研究所の脇田隆字所長は「大型連休に向けて一人一人が不要不急の外出を減らし、マスク着用など感染防止対策を徹底してほしい」と話している。

*2-3:https://news.yahoo.co.jp/articles/23b1e6bf4c3850bde326210845eca8900e01a7b3 (Yahoo 2021/4/29) 「戦時中に責任回避した旧日本軍のようだ」…五輪中止決定できないという菅首相に批判殺到
 「感染拡大が続いているのに自ら五輪中止を決定できないとは、戦時中に無謀な作戦を強行し多くの犠牲者を出した旧日本軍と全く同じだ」。日本の医療関係者がある日本メディアで新型コロナウイルスの感染が拡大する中でも「五輪開催決定は国際オリンピック委員会(IOC)がすること」としながら責任を転嫁した日本の菅義偉首相をこのように批判した。東京五輪開幕を85日後に控え、日本政府は「五輪強行」を叫んでいるが、責任者の間では内紛が起きる雰囲気だ。五輪開催と進行案をめぐり日本の首相はIOCに、担当大臣は主催都市である東京都に、互いに決定と責任を転嫁しようとする。こうした中、日本政府の新型コロナウイルス分科会会長は28日、五輪開催の是非について「そろそろしっかり議論すべき時期にきている」と警告した。
◇「安倍首相は『五輪延期』を直接決定」
 菅首相は23日、東京都や大阪府など4都府県に3度目の緊急事態宣言を発令する席で、五輪中止の可能性と関連した質問を受け「五輪の開催権限はIOCにある」と話した。感染者がさらに増加しても、緊急事態宣言が続いても、自身には五輪中止を決める権限がないという「責任回避」だ。菅首相は続けて「IOCがすでに東京五輪を開催するということを各国のオリンピック委員会とともに決めた」とも述べた。現在日本の新型コロナウイルスの状況は深刻だ。緊急事態宣言にもかかわらず、28日の1日だけで日本全国で5791人の感染者が確認された。五輪開催都市である東京では29日に1027人の感染者が確認され、3カ月ぶりに1日の感染者数が1000人を超えた。楽観を難しくするのは変異ウイルスだ。28日に開かれた東京都のモニタリング会議では現在の東京都内の感染者の59.6%が感染力の高い「N501Y」型の変異ウイルス感染者とされ、「こうした状況が続く場合、2週後には東京都の1日の新規感染者は2000人になるだろう」という予測も出てきた。だが、緊急事態宣言が延長される場合に五輪はどのようにするのかなどに対してはだれもが明言を避けている。特に菅首相の無責任な態度に対する批判が激しい。東京新聞は、五輪で感染が全世界に広がっても(IOC委員長の)バッハさんがやれと言ったとして責任を転嫁するのだろうかと皮肉った。昨年安倍晋三首相(当時)は五輪を1年延期することを直接決め、こうした意向をIOCに伝えた。
◇医療陣確保問題、政府と都知事、互いに「相手のせい」
 現在五輪開催の最も大きな障害に挙げられるのは医療陣の確保だ。五輪組織委員会は五輪期間中に1日に医師300人、看護士400人ずつ、大会期間中に延べ1万人以上の医療陣が必要なものと予想している。だが、医療界は「テレビで五輪を見る時間もない」として難色を示している。新型コロナウイルスの感染再拡大でそうでなくとも昼夜なく働いているところに、5月からはワクチンの大規模接種も始まるだけに、人材派遣は不可能だという立場だ。丸川珠代五輪担当相は27日の記者会見で、これを確認する質問に「(責任を持っている)東京都がどのように取り組んでいくのか、具体的なことがまだ示されていない」としながら東京都に苦言を呈した。これを受け東京都の小池百合子知事は「実務的には詰めている。コミュニケーションをしっかりとっていく必要がある」と受け返した。日本政府と東京都が医療陣の確保をめぐり舌戦を行った格好だ。こうした中、日本政府の感染症対策分科会を率いる尾身茂会長は28日の国会で「組織委員会など関係者が感染のレベルや医療の逼迫状況を踏まえて(五輪開催の)議論をしっかりやるべき時期に来ている」と話した。政策決定に深く関与してきた尾身会長が五輪中止の可能性に公式に言及したのは今回が初めてだ。彼は五輪開催の可否判断には、感染の状況と医療の逼迫状況が最も重要な要素だと説明した。
◇五輪参加選手は毎日コロナ検査
 一方、五輪組織委員会が28日に公開した東京五輪の感染防止に必要なルールをまとめた「プレーブック」の内容についても論議が起きている。このルールによると、五輪に参加する選手とすべての大会関係者は各国から出国する時点を基準として96時間(4日)以内に2回の新型コロナウイルス検査を受けた後に陰性証明書を提出することを明記した。入国時に日本の空港での検査で陰性判定を受けた選手は14日間の隔離が免除され、入国初日から練習できる。だが、入国後は毎日1回ずつ新型コロナウイルス検査を受けなければならず、活動範囲は宿泊施設、練習会場、競技場に制限される。また、選手を含むすべての関係者は原則的に一般市民とは接触できず、公共交通機関も利用できない。五輪による感染拡大を防ごうとする措置だが、行き過ぎた制限という反発も出てくる可能性が大きい。ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)などには「ここまでしながら五輪をやるべきなのか」という懐疑的な反応が続いている。上智大学の中野晃一教授は東京新聞に、さまざまな国の選手たちと観衆の交流という五輪の意義そのものがすでに失われた状況で、海外から不参加通知が続いてやむを得ず五輪中止に追い込まれる前に日本の政治家が責任を持って決定を下さなければならないと話した。

*2-4-1:https://www.nikkei.com/paper/related-article/?R_FLG=1&b=20210507&be=NDSKDBDK・・ (日経新聞 2021.5.6) 米、ワクチン特許放棄を支持 途上国の供給後押し
 バイデン米政権は5日、新型コロナウイルスワクチンの国際的な供給を増やすため、特許権の一時放棄を支持すると表明した。ワクチンが足りない途上国が世界貿易機関(WTO)で要請していた。製薬会社は反対しており、交渉の先行きは不透明だ。米通商代表部(USTR)のタイ代表は声明で、WTO加盟国がワクチンの特許権を保護する規定を適用除外とする案を支持すると表明した。「コロナのパンデミック(世界的な大流行)という特別な状況では特別な政策が必要だ」と指摘した。各種特許はWTOの「知的財産権の貿易関連の側面に関する協定(TRIPS協定)」で保護が定められている。インドや南アフリカは自国でワクチンの生産を増やすため、ワクチンを同協定から一時的に適用除外とするよう求めていた。ワクチンを開発した製薬会社を抱える米国のほか、欧州連合(EU)など先進国は特許権の放棄に反対してきた。米国が支持に回ったことで、WTOで具体的な条件を詰める。USTRは問題が複雑で「交渉には時間がかかる」と指摘した。バイデン政権は自国民へのワクチン接種を優先するため、他国への供給に消極的な姿勢を貫いてきた。国内外から「ワクチンを独り占めにしている」との批判が高まっていた。世界保健機関(WHO)のテドロス事務局長は5日、「新型コロナとの闘いで、記念すべき瞬間だ。特許の放棄の支持は、世界の健康問題に取り組む米国のリーダーシップの強力な例だ」との声明を出し、米国の決定を称賛した。

*2-4-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20210507&ng=DGKKZO71628670X00C21A5MM0000 (日経新聞 2021.5.7) 独、ワクチン特許放棄に反対の構え EU首脳が議論へ
 欧州連合(EU)は7日から始まる首脳会議で、新型コロナウイルスのワクチン供給拡大に向けて、特許権を一時的に放棄する考え方を支持するかどうかを討議する。バイデン米政権が前向きな姿勢を示したためだが、ドイツのメルケル政権は反対する構えだ。特許権を持つ製薬会社が本拠地を置く国・地域での議論が本格化する。EUは7~8日、ポルトガルのポルトで首脳会議を開く。フォンデアライエン欧州委員長は6日の講演で、ワクチンの供給増という目的の達成に向けて「バイデン米大統領の提案を議論する用意がある」と語り、27カ国の首脳間で話し合う考えを表明した。ドイツメディアによると、独政府の報道官は「知的財産の保護はイノベーションの源泉で、将来もそうでなければならない」などと述べ、特許権の一時放棄に否定的な考えを示した。ワクチンの普及を妨げているのは生産能力や品質管理の問題であって、知的財産の保護が原因ではないというのがドイツ政府の主張だ。ドイツにはワクチン開発にいち早く成功したビオンテックが本拠を置く。急浮上した特許の一時放棄という考え方への反発を強めている。ただ、欧州内でも考え方は分かれている。フランスのマクロン大統領は6日、「完全に賛成する」との考えを示した。首脳会議で結論が出るかどうかは見通せない。バイデン米政権は5日、ワクチンの特許権の一時放棄について、従来の慎重姿勢を一転させ、支持する姿勢を打ち出した。ワクチンの供給が遅れている途上国向けの生産を増やすためだ。だが製薬会社は強く反発している。

<環境軽視は生存権の侵害>
*3-1:https://digital.asahi.com/articles/DA3S14883435.html?iref=comtop_Opinion_04 (朝日新聞社説 2021年4月25日) 温室ガス削減 具体策示して変革促せ
 菅首相が、米国主催の気候変動サミットで、2030年度の温室効果ガスの排出量を13年度より46%削減する目標を掲げ、「さらに50%の高みに向けて挑戦を続けていく」と表明した。従来を大幅に上回る目標を世界に約束したことは評価できる。しかし実現へのハードルは高い。乗り越える道筋を早期に描く責務が、首相にはある。地球温暖化対策の枠組みであるパリ協定からトランプ政権の際に離脱した米国は、バイデン大統領になって復帰すると、サミット開催を呼びかけた。すでに昨年新たな目標を掲げた欧州連合に続いて今回、米国や英国も野心的な目標を提示。中国も参加し、気候変動では協調する姿勢を示した。世界で脱炭素の動きが強まるなか、日本は昨春、30年度の削減目標を13年度比で26%と、5年前のまま据え置いて国連に提出し、国際的に批判された。その後の昨年10月、菅首相が、森林などの吸収量を差し引いた実質的な排出量を「50年までにゼロにする」と表明したことから、30年度目標の引き上げ幅が注目されていた。首相が掲げた「50年実質ゼロ」は、気候変動の影響を減らすため、パリ協定が努力目標とする「産業革命前からの世界の平均気温の上昇を1・5度までに抑える」のに必要とされる。達成には、50年までの段階での二酸化炭素(CO2)排出削減も欠かせない。排出量1位の中国などの動きを促すためにも、5位の日本のさらなる目標上乗せを期待したい。今回の目標は議論を積み上げた結果ではなく、首相主導の政治判断で示された。世界は脱炭素に向けた産業構造の転換や技術開発を加速させており、取り残されれば日本経済の競争力を損なう。政府も産業界も対策を怠ってきた末、追い詰められて決断したともいえる。首相が強調する再生可能エネルギーの活用拡大を始め、CO2排出削減に向けた産業の構造変革を考えると、残された時間は短い。本気で「1・5度」を目指すなら、分野別の目標を示し、社会の理解を得る必要がある。そのうえで排出規制や税制改正、補助金などの誘導策を練り上げることが求められる。ただ、発電時にCO2を出さないことを理由に原発に頼るべきではない。日本社会は事故による甚大な被害を経験した。原発はリスクが極めて大きく、「ゼロ」を目指すべきだ。新目標の達成には、産業界も国民の生活も大きな変化を迫られる。それでも進めるべき意義を、政府は真摯(しんし)に説明し、新しい社会構造をつくる変革を促さなければならない。

*3-2:https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCD271T10X20C21A4000000/ (日経新聞 2021年5月2日) 「グリーン成長」の野心と下心 各国の覇権争いの舞台に
 削減率は米国が50~52%、欧州連合(EU)は55%、英国は78%、日本も46%へ。4月22~23日に開いた気候変動サミット。各国首脳は温暖化ガス削減の目標を競い合った。その舞台裏では「グリーンの土俵」の囲い込みを狙う各国の下心がのぞく。まず主催国である米国。「何百万もの高給な、中間層の、労働組合員の雇用を創出する」。バイデン政権は温暖化対策の訴えを、大規模な雇用創出と結びつけている。3月31日にはインフラ投資が柱の総額2兆2510億ドル(約240兆円)の「米国雇用計画」を発表済み。電気自動車(EV)支援の1740億ドルや電力網整備の1000億ドルが、環境対策の目玉だ。 2030年までに50万カ所にEV充電施設を設け、35年までに発電による温暖化ガスをなくす。今回のサミットは雇用計画の売り込みの場だ。最も野心的な目標を掲げたのは英国。昨年11月に「グリーン産業革命」を表明している。政府による総額120億ポンド(約1.8兆円)の投資で、25万人の雇用創出を狙う。なかでも切り札とする洋上風力は、30年までに発電量を4000万キロワットと現在の4倍に増やす。北海の強い風と遠浅の海を大きな武器とする。英国は今年6月に主要7カ国首脳会議(G7サミット)、11月に第26回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP26)を議長国として開催する。EU離脱による孤立から抜け出し、温暖化対策の晴れ舞台で世界の主導権を握ろうとする意図は明らかだろう。そしてEU。いち早く19年12月に「グリーンディール」を打ち出した。その投資計画では、EU自身が30年までの10年間に1兆ユーロ(約130兆円)の投資に踏み切るとともに、民間から1兆9500億ユーロのグリーン投資を促す。産業の方向を示し、雇用を創るばかりでない。国際的な環境基準づくりで主導権をとろうとする意図を隠さない。例えば、環境にかなった「グリーン投資」とは何なのかの線引き。タクソノミー(分類)と呼ばれるが、EUは自らの基準を国際基準にしようと狙う。グリーンボンド(環境債)の発行額は年4000億ドルに達するとみられるが、そうした環境投資がEU基準となれば、投資家のマネーを吸い寄せることができる。環境規制によるコスト増で域外との競争で不利にならないためにも、EUは周到な用意をしている。「国境炭素税」だ。21年に原案を提示し、23年には導入の予定である。環境規制が手ぬるい国々からの輸入に関税を上乗せし、税収は欧州復興基金に充てる。輸入相手国に「最高レベルの環境基準」を求め、輸入品の製品価格を引き上げることでEUの産業競争力を維持する。しかも環境基準を満たすためにEUの脱炭素技術を導入したら、と売り込みを図る。あわよくば日本などから生産拠点をEU域内に移させようとも企てる。世界の温暖化ガスの4分の1を排出する中国はどうか。気候変動サミットでは、より高い目標は見事にやり過ごした。温暖化ガスの排出ピークの時期は従来の30年を変更せず、排出ゼロの目標年も60年と先進国より10年先のまま。これだと先進国が50年の排出ゼロの目標達成に失敗した場合にも、自国の経済活動が制約を被らずに済む。中国は20年にも原子力発電所30基に相当する3000万キロワットの石炭火力発電所の建設を続けた。その傍らで世界のEV市場を低価格車で席巻しようとする。今回のサミットは中国の参加を最優先したためか、そんないいとこ取りに目をつむる結果となった。翻って日本。議論を主導する米欧が投資や雇用、市場拡大を目指すのと同様、菅義偉首相はグリーン成長を掲げる。政府は脱炭素の研究開発を支援する2兆円の基金を用意したが、実際にどれだけの投資と雇用を創出できるのか。内外の市場は広がるのか。知りたいのはこの点である。広大な米国、平地主体のEU、風と浅瀬が強みの英国。再生可能エネルギーに有利なこれらの条件を日本は欠く。もともと高い電力料金が温暖化対策で一段と上昇すれば、グリーン成長どころか産業空洞化を加速させかねない。菅政権が活路を探るのは、米国との提携かもしれない。4月16日の日米首脳会談の後で発表された共同声明には「日米気候パートナーシップ」と題した付属文書がある。温暖化対策の枠組み(パリ協定)の「未決定要素の策定」で日米が協力する。付属文書はそう記す。温暖化対策の勝負は基準づくりだが、そこで「日米が連携しEUに対抗する」と経済財政諮問会議の新浪剛史氏は明言する。付属文書のもうひとつの注目点は、環境技術での日米協力。再エネ、蓄電池、次世代送電網と並び「革新原子力」なる耳慣れない言葉に言及している。米、英、カナダをはじめ各国が開発を競う「小型モジュール炉」のことだ。大規模な原子力施設を建てる代わりに、小型原子炉をコンパクトな格納容器に納め、設計の複雑さを解消したのが特徴。原子炉をプールのなかに沈めることで、緊急時にも外部電源に頼らずに済む、次世代の原発とされる。実用化は20年代末とみられる。福島の原発事故を経験した日本では役割を終えたように見られる原発。その間にも世界では急速な技術革新が進んでいる。温暖化対策で高い目標を掲げるには、エネルギー源の問題は避けて通れない。

*3-3:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20210504&ng=DGKKZO71577370U1A500C2MM8000 (日経新聞 2021.5.4) Hを制する(2)水素都市へ走る中韓 見えてきた新・生態系
 中国南部の広東省仏山市高明区。経済発展に伴って立ち並ぶ高層マンションの間を縫うように路面電車が静かに走る。よく見ると給電に必要な架線がない。燃料電池を載せて水素(元素記号H)で走る「高明有軌電車」だ。
15分間の水素充填で100キロメートル走り料金は路線バス並みの2元(30円強)。地元に住む徐さんは「子どもと公園に行くのに使う。音が静かで快適だよ」と話す。2019年11月から運行を始め、20年の1日当たりの乗客数は1千人を超えた。
●国家主導で需要
 仏山市では水素で走るバスやトラックが約1500台運行し、中国全土の普及台数の約2割を占める。広東省には製造業が集積し材料となる樹脂製品工場も多く、副産物で水素が出る。市は18年から本格的に関連産業を振興し、数十の燃料電池関連企業が集まる。世界最大の水素生産国である中国。現状は工業用が大勢を占める。そこでいくつかの都市を仏山のような「水素都市」に選定。インフラを整えやすい商用車や鉄道に投資を集中し、国家主導で需要を作り出す。新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)によると、19年9月時点で中国を走る水素燃料車の99%超が商用車だった。現在は生成過程で二酸化炭素(CO2)が出る「グレー水素」が主流だが、再生可能エネルギー由来の「グリーン水素」でも手を打つ。北京市に隣接する河北省張家口市の農村地帯。小高い山に数百メートルの間隔で風車が幾重にも並ぶ、風力発電が盛んな場所だ。同省の国有企業は、この電力を使って水を分解し水素を生成する世界最大級の装置をつくった。欧州で固体水素の貯蔵技術を誇るマクフィーなどの技術協力を得て、設備やパイプラインの整備を進め、年間約1500トンの水素生産を見込む。調査会社の米ブルームバーグNEF(BNEF)のアナリスト、テングレル・マルティン氏は「水素を生成する水電解装置は半分以上が中国市場で売れる」と指摘する。強引にも映る市場創出で水素大国をめざすのは中国だけではない。韓国南東部の蔚山(ウルサン)。現代自動車が旗艦工場を置く人口115万人の工業都市を、韓国国土交通省は19年12月「水素モデル都市」に指定した。石油精製の過程で年間82万トン出る水素を使い、生産から消費までの生態系を整える。蔚山市の燃料電池車(FCV)の登録数は2000台と韓国全体の約2割を占める。購入時に半額が補助され、現代自のネッソ(NEXO)なら3400万ウォン(約330万円)で買うことができる。水素ステーションの設備費に至っては全額を公的補助。市によると一部では黒字化した。翻って日本はどうか。09年、世界に先駆けて家庭用燃料電池(エネファーム)を実用化し、14年にはトヨタ自動車が世界初の量産型FCV「ミライ」を発売した。水素大国を目指し技術では先頭を走っていたのに、市場の育成で中韓の後じんを拝す。
●供給網生かせず
 官営八幡製鉄所が整備され日本の近代産業発祥の地である福岡県北九州市の八幡東区。街中を長さ1.2キロメートルの水素パイプラインが走る。日本製鉄が製鉄過程で生まれる水素を供給し、岩谷産業が世界でも珍しい「街中パイプライン」を管理。実証住宅などに置かれた燃料電池に供給する。このプロジェクト、世界に先駆け10年度にパイプラインによる水素供給実験を始めたが、5年で一度打ち切った。18年度に再開したが来春にまた一部実験が終わる。官民一体で中韓のような「水素生態系」をつくり上げているとは言いがたい。せっかくの供給網を生かさなければ、日本だけ置いてきぼりだ。

*3-4:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20210505&ng=DGKKZO71582530V00C21A5MM8000 (日経新聞 2021.5.5) Hを制する(3)新ルールで市場創造 水素阻む縦割り規制
 水素(元素記号H)の普及を阻むのはコストや技術だけではない。規制も高いハードルとなる。「車検を通ったのに水素を充填できない」。奇妙な出来事が日本の燃料電池車(FCV)で起きている。ガソリン車や電気自動車(EV)は通常の車検のみで利用できる。FCVの水素を貯蔵するタンクは車検の対象外だ。国土交通省とは別に経済産業省所管の検査が要る。車検との間隔があわない場合があり、空白期間が生まれる。「タンクの横に貼ったシールで検査の期限が分かる。期限切れの場合はお客様に説明して帰ってもらう」と水素ステーションの運営者は話す。
●FCV活用に影
 全国に約100台あるFCバスは大型の燃料電池を載せ、地震や台風による停電時の非常用電源としても期待される。もっとも、学校などの防災拠点にFCバスから電気を送るには20日前までに自治体に届けておく必要がある。いつ起こるかわからない停電の備えとしては使いにくい。日本で水素は危険物扱い。たしかに水素は滞留すると爆発しやすく、漏れれば空気中に逃がす必要がある。2012~13年のアンケート調査では2割強が「水素はガソリンより危険」と答えた。水素の製造装置を開発する英ITMパワーのグラハム・クーリー最高経営責任者(CEO)は「水素はとても軽く、もし漏れても数秒で消える。ガスや燃料よりも危険度が低い」と話す。海外では安全に配慮しつつ水素を利用する動きが広がる。韓国政府は19年、南東部の工業都市、蔚山(ウルサン)を水素特区に指定した。韓国では動力源としての燃料電池は乗用車とバスに限るが、特区の蔚山はフォークリフト、船、ドローンにも応用できる。燃料電池の関連産業を育てる思惑だ。同年には国会敷地内に水素ステーションも開いた。規制の特例を活用したもので「水素は危ない」という不安を払拭する宣伝効果を期待する。FCVに力を入れる現代自動車は日本市場もねらう。英国北東部では今春、ガス管に20%の水素を混ぜる実験が本格化する。水素の混入分だけ温暖化ガスを減らせる。19年にキール大学で始まった実験の第1段階は成功し、規模を広げる。実験に参加するITMパワーによると、英国では1969年までガス管に60%の水素が混ざっており、北海ガス田の発見後にガス100%になった。クーリーCEOは「50年までにガス管を通る水素を100%にしたい」と話す。英国では水素はガス管に0.1%しか混ぜられないが、特別に規制を緩めて実験する。欧州のエネルギー企業など90社超も3月、欧州連合(EU)の欧州委員会にガス管への水素混入を広げるように求める要望書を出した。既存インフラを使えるガス管混入は、短距離では水素の最も安い輸送手段とされ、需要を押し上げる効果も大きい。
●韓国は専用の法
 日本は混合規制そのものがなく、ガス事業者に対応が委ねられる。日本ガス協会の広瀬道明会長(当時)は3月に「既存のガス管を活用する発想が大事」と語っており、統一のルール作りを急ぐ必要がある。日本で水素は化学プラントなどを対象にした高圧ガス保安法で主に規制される。韓国は水素の活用や安全規制をまとめた「水素経済法」を制定した。日本の企業関係者は「水素を推進したいならば、水素専用の法律が必要だ」と指摘する。国が安全性を担保するのは当然としても、水素利用を想定しない古い枠組みで縛れば規制もちぐはぐになる。水素社会という新市場を創造するには新しい枠組みを用意するのが近道だ。このままでは他の脱炭素技術と同様、水素も技術で勝って普及で負けかねない。

<医療・介護>
*4-1-1:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO66372040Y0A111C2EE8000/ (日経新聞 2020年11月20日) 地域医療、浮かぶ非効率 改革の重責に自治体及び腰、コロナ禍に迫る2022年の壁(下)
 団塊の世代が75歳以上になり始め、医療費が急膨張する2022年の壁を乗り越えるには、非効率な医療供給体制の改革も必要だ。新型コロナウイルス危機は地域の医療体制の権限を持つ都道府県の力量を試した。都道府県別の1人当たりの医療費は最大4割近くの差が出る。千人当たりの病床数で全国最多の高知県は1人当たりの医療費が66万5294円と2位。病床数は最少の神奈川県の3倍だ。大和総研の鈴木準執行役員は「1人当たり医療費は人口当たり病床数と関係が強く、供給が需要を作り出している」と指摘する。病床数が危機時の力を左右するとは限らない。3月、神奈川県はコロナ患者を症状ごとに重点医療機関やホテル療養で柔軟に対応する「神奈川モデル」を導入した。病床数は最少でも県主導で効率的な体制を作り、その手法は全国に広がった。日本の千人あたりの病床数は先進国で最高水準で英国や米国の約5倍になる。それでも春先の感染爆発時は小さな医療機関を中心にコロナ患者をたらい回しした。「医療供給体制に無駄があることがコロナで浮き彫りになった」(鈴木氏)。「新型コロナとの戦いで都道府県の体制整備の責任に焦点が当たっている」。自民党の財政再建推進本部の小委員会は10月末、都道府県の医療体制へのガバナンス強化を求めた。地域に応じた医療体制の構築と医療費適正化の計画作りに関し、都道府県の責任を法律で明確にする内容だ。現行制度で医療体制整備の権限は都道府県にある。国は都道府県ごとに「地域医療構想」を作るよう求め、過剰な急性期病床の削減などを進め在宅医療への転換を促してきた。だが都道府県は民間病院に病床機能の転換を促すことをためらう。独自策を探る都道府県もある。「収入増には地域別の診療報酬が活用できる」。7月、奈良県の荒井正吾知事は新型コロナによる受診控えで収入減に悩む医療機関を支援するアイデアを示した。診療報酬は全国一律がこれまでの通例。高齢者医療確保法は都道府県が地域別の報酬を決めることを可能としているが、適用例はない。奈良県は医療機関の動向に影響を与えるには収入である診療報酬を使うのが効果的とみる。今夏に厚生労働省に提言したが、奈良県の医師会や厚労省は反対の方針だ。全国知事会は医療提供体制の議論について、地域医療の混乱を理由にコロナ収束後に先送りしたい意向を示す。医療行政は責任を負いたくない地方自治体と、本音では権限を失いたくない厚労省の利害がもつれあう。コロナ禍で医療制度に迫る22年の壁は高く厚い。

*4-1-2:https://style.nikkei.com/article/DGXMZO63622860Z00C20A9EAC000 (日経新聞 2020/9/13) 日本の医療、コロナで弱点浮き彫り 回復期病床少なく
 新型コロナウイルスの感染拡大で、日本の医療が崩壊するのではないか、との懸念が広がっています。感染者を受け入れる病床が足りなくなる事態を医療崩壊と呼ぶなら、日本では現時点では医療崩壊は起きていません。経済協力開発機構(OECD)の調査によると(各国のデータはおおむね2017年時点)、人口千人当たりの病床数が日本は13.1と突出して多く、OECD加盟国平均の4.7を大きく上回っています。入院後の治療も含め、日本の医療体制を評価する声は少なくありません。しかし、病床を種類別にみると、決して十分とはいえません。日本の医療法では、病床を一般病床、療養病床、感染症病床、結核病床、精神病床の5種類に分類しています。厚生労働省の調べでは、3月末の病院全体の感染症病床は1886で、152万を超える病床全体に占める割合は0.1%あまりにとどまっています。そこで同省は2月、緊急時には感染症病床以外の病床への入院が可能であるとの見解を示しました。一般病床を転用する動きが広がり、コロナの入院患者受け入れが可能な病床数は全国で2万を超えています。ただ、受け入れ可能な病床数と、現在の入院者数の比率には都道府県によって大きな差があり、病床数に入院者数が近づいている地方は特に注意が必要です。同省はこれまで「地域医療構想」のもとで、病床の総数を削減する方向性を打ち出していました。しかし、コロナ対応で病床不足が問題になり、構想を批判する声も聞かれます。これに対し慶応大学の土居丈朗教授は「地域医療構想で打ち出したのは、一般病床と療養病床の再編であり批判は的外れ。コロナの病床不足は、病床そのものが足りないのではなく、機能分化と連携が進んでいなかったことが問題だ」と強調します。みずほ情報総研の村井昂志チーフコンサルタントは「病床をとにかく増やすというのは現実的ではない。どんな機能の病床を増やすのかを明確にすることが必要であり、これは地域医療構想の考え方とも一致する」と指摘します。

*4-1-3:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20210504&ng=DGKKZO71577210U1A500C2PE8000 (日経新聞社説 2021.5.4) 医療体制を問い直す(上) 非常時の病床確保に強力な措置を
 新型コロナウイルスの感染拡大は、日本の医療提供体制のもろさを浮き彫りにした。人口あたり患者数が米英の10分の1でも病床が足りなくなり、緊急事態宣言を三たび出す事態に追い込まれた。パンデミック(感染大流行)という非常時の対応力を高めるためだけでなく、今後の人口減少社会で医療の質を維持するためにも、日本の医療体制に早急にメスを入れる必要がある。
●小規模分散で余力なく
 日本に急性期病床は約88万9千床ある。人口千人あたりでは7.8床と、経済協力開発機構(OECD)加盟国の中で最も多い。しかし、重症患者に対応するはずの急性期病床でコロナ患者を受け入れたのは、わずか3%にすぎない。それも公立・公的病院が大半だ。全病院の8割を占める民間病院の受け入れは少ない。コロナ患者に対応するには、院内感染を防ぐために、感染リスクがある場所と安全な場所を施設改修で分ける必要がある。そのうえで感染症に対応できる専門医を確保し、一般病床の何倍もの看護師を配置しなければならない。患者を数人受け入れるだけで、他の入院患者を数十人規模で転院させたりすることも必要になる。ところが民間病院の7割強は200床未満と規模が小さく、人材も手薄で余力が乏しい。小規模に分散した医療資源でコロナ病床を増やすには、医療機関の役割分担を徹底するしかない。1月末時点で全国自治体病院協議会が実施した調査では、400床以上の公立病院に入院するコロナ患者の3分の1が軽症で、重症者は1割に満たなかった。大規模な公立病院や大学病院は、重症者を中心とした受け入れに特化した方がいい。集中治療室(ICU)や体外式膜型人工肺(ECMO、エクモ)など重症者向けの治療設備や、これを使いこなす人材を集中的に配置すべきだ。重症者に対応できない中規模以下の病院は、中等症を中心にコロナ患者を受け入れてほしい。患者が重症化したら速やかに重症者向け病院に転院させるなど、地域の医療機関が密接に連携して一体的な医療を提供する。回復期の患者は療養型病院や高齢者施設に受け渡す。こうした階層型にして医療資源を有効に使えば、受け入れ能力は増えるはずだ。問題はこうした医療体制をどうやって構築するかだ。日本の医療機関は自由開業制で、政府や都道府県には民間病院に患者の受け入れを命令する権限はない。税金で医療を運営する国々には、感染症などの緊急時に医療機関や医療従事者を国や地方政府が動員する仕組みもある。社会保険方式の日本でも医療従事者の育成には公費が投じられ、病院の収入は保険料と税金で支えられている。医療機関や医師には医療体制を確保する責務があるはずだ。菅義偉首相は4月23日の記者会見で病床確保に関して「緊急事態の際の特別措置をつくらなければならない」と述べた。非常時には医療機関の「経営の自由」を制限し、強制力を持って医療機関に病床を確保させることができる仕組みを早急に整えるべきだ。
●病院の自由経営に限界
 小規模医療の源流は、1961年の国民皆保険制度の創設にさかのぼる。皆保険で急増した医療ニーズを引き受ける形で民間の診療所が増えた。公的病院に病床規制が導入される一方、診療所の一部は規模を拡大し、入院機能を持つ病院に衣替えしていった。民間開業医を中心とする医療体制はこうして形成され、結果として「経営の自由」が確保された病院が増加の一途をたどった。世界一とされる医療へのアクセスの良さは、日本が誇る長寿社会を実現する大きな支えになった。しかし、非常事態に対応できない致命的な欠陥が露呈した今、改革をためらうべきではない。医療機関の徹底した役割分担の必要性は、コロナ前から指摘されていた。軽い病気なのに大病院で受診する人が多く、患者に追われて数十時間も寝ずに手術をする外科医がいる。一方で急性期病床を名乗りながら、重篤ではない患者で病床を埋める病院がある。これでは医療人材の確保が年々難しくなる今後の人口減少社会で、医療の質を維持できない。勤務医の働き方改革の観点からも、改革は喫緊の課題だ。

*4-1-4:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20210505&ng=DGKKZO71583880V00C21A5PE8000 (日経新聞社説 2021.5.5) 医療体制を問い直す(下)初期診療をこなす家庭医を増やせ
「世界に冠たる」は、国民皆保険に代表される日本の医療制度の枕ことばとして医師会や与野党の関係議員、厚生労働官僚、また一部の学者らが多用してきた。それが幻想にすぎなかった現実をあぶり出したのがコロナ禍である。欧州主要国や米国より感染者が桁違いに少ない一方、人口あたりの病床数は格段に多いにもかかわらず、治療体制のゆき詰まりが露見した。特効薬とワクチンの開発にも大きく後れをとった。
●医師の働き方改革も
 ワクチン接種は遅々として進んでおらず、当面はコロナとの共存を覚悟せざるを得ない。その間にも将来をにらんで医療体制を根本的に再構築する必要性は、論を俟(ま)たない。医療の主役である患者第一を貫きつつ、効果が高くコストが低い医療体制に向けた再構築のカギを握るのは、欧州などで一般化している家庭医制度の普及である。さまざまな病をひと通り診る力を備えた医師だ。総合診療医などとも呼ばれる。健康保険証があれば、どの病院・診療所にもかかれる「フリーアクセス」が日本の医療制度の特徴だ。これは患者の安心につながる面があるが、体調を少々崩しただけでも建物や設備が整った病院に行けばいいという思い込みを生む要因にもなっていた。そこで、患者はまず家庭医にかかるのを原則とし、診断・治療・処方を受ける。複数の診療科をこなし初期診療に責任をもつ家庭医は、慢性期の持病をいくつか抱えた高齢患者の診察にも適任だ。ただし、その過程で専門的な治療や手術が必要と判断すれば、遅滞なく病院の専門医につなぐのが家庭医の重要な役割になる。「まず家庭医へ」が浸透すれば、病院の勤務医や看護職に過重な負担がかかる事態は緩和されよう。家庭医制度が浸透している国のひとつが英国だ。税財源で運営する同国の医療制度NHSは、原則として患者に医療費の負担を求めない。その代わりに患者はGPと呼ばれる資格を持つ家庭医に登録し、病院ではなく登録GPにかかるのを基本とする。GPは担当患者の健康管理にも携わる。病院での専門治療や手術が必要な患者にとっては一定期間、待たされるリスクがある。半面、コスト意識が強いGPが初期診療をこなすので必要度が低い検査や処方を省き医療費を抑えやすくなる。日本は一般に、開業医に比べ勤務医の労働環境が過酷だ。最近は減ったが、夜勤明けの外科医がメスを握ることもある。働き方改革を推し進めるためにも大学医学部は家庭医養成を急いでほしい。家庭医制度は患者の医療機関へのアクセス制限につながるので医療界に根強い反対論があるが、風向きは変わりつつある。慢性期治療の専門病院で組織する日本慢性期医療協会は、医師の卒後臨床研修を見直し、後期研修のうち2年を総合診療機能の習得に充てるよう求める要望書を4月に出した。医師不足の懸念に対し、政府・医療界はこれまで医学部の定員増などで対応してきたが、人口高齢化に即した研修強化をはじめ、医学教育の質拡充へカジを切るときだ。次の感染症パンデミックへの備えとしてもそれは有用である。
●介護との連携必要
 患者の特性や高齢化の度合いにみられる地域差への対応も、課題に浮上している。とくにコロナ禍で浮き彫りになったのは、患者の重症度に応じて都道府県当局が域内の医療機関に機能分担・連携してもらう難しさだ。
医療の公定価格である診療報酬は全国一律だが、一定範囲で県独自に設定できるようにすれば、病床誘導がしやすくなろう。医療費抑制への動機づけにもなる。医療サービス価格に大きな地域差がつくのは好ましくないが、一定の裁量を認める手法は検討に値する。不可欠なのが介護サービスとの連携だ。高齢コロナ患者が回復期も病院にとどまり、医療職が介護を提供する例がみられる。地域ごとに医療機関と介護施設が円滑な連携策を探ってほしい。団塊世代の後期高齢化が迫り介護需給は逼迫の度を増す。海外人材の受け入れ拡大やロボット介護の保険適用なども急ぐべきだ。コロナによって日本の医療の弱みが誰の目にもみえてきた。「世界に冠たる」の復活へ向け、多面的改革を推し進めるときである。

*4-1-5:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20210513&ng=DGKKZO71815760S1A510C2EA1000 (日経新聞 2021.5.13) 入国後待機「管理強化を」 自民要求、要請の実効性低く、厚労省慎重「憲法の制約」
 変異型の新型コロナウイルスを巡る日本の水際対策が課題に浮上してきた。自民党の外交部会は12日、入国者の管理を強化するよう政府に要求した。自宅での待機要請などに従わない人は1日300人に及ぶ。厚生労働省は「移動の自由」を記す憲法の制約を理由に厳しい措置に慎重だ。「(水際対策が)強化されていないのはゆゆしき問題だ。菅義偉首相に恥をかかせたと言わざるを得ない」。佐藤正久外交部会長は会合で政府の対策の甘さを指摘した。「入国した300人と連絡がつかない状況は水漏れだけでなく水道管が破裂して水浸しとの批判も出かねない」と語った。感染者数が減らないのは入国者を完全に捕捉できていないのも一因になっているとの危機感だ。田村憲久厚生労働相は10日の衆院予算委員会で「憲法の制約上、移動の自由がある。判例でも出ている」と言及した。「我が国は私権の制限に対しての法律がない」とも述べ、強制するのは難しいとの認識を示した。憲法22条は「何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する」と定める。過去に厚労省が「公共の福祉」を理由にハンセン病患者を強制隔離し批判を浴びた歴史がある。私権制限の措置に消極的になる背景だ。政府は入国者に国籍を問わず、原則14日間の自宅・ホテル待機と健康状態の報告を促す。厚労省によると1日2万人超いる報告が必要な入国者のうち報告がない人が200~300人いる。位置情報を把握できなかったり指定した場所などから離れたところにいたりするケースも多い。政府の「要請」に従う義務がないのが要因だ。政府は入国後の居場所や健康状態を把握するため警告メールや自宅訪問による本人確認などの対策を講じているが、義務化は私権制限になりかねないと懸念する。憲法学者の中には入国した邦人や外国人に一時的な待機を義務づける措置は憲法上、認められると指摘する声がある。慶大教授の横大道聡氏は「邦人と外国人を問わず、合理的な根拠と明確な法律に基づく条件を満たせば移動の自由を制約できる」と話す。「待機期間が科学的に必要かどうか検証がいる。そのうえで期間や要件などを定めた法律を整備すれば憲法上許される余地がある」とも唱える。元三重中京大教授の浜谷英博氏は「違憲とは考えないが、移動を制約した法律に対する違憲訴訟になる恐れはある。憲法に緊急事態条項の創設が必要だ」と訴える。日本は海外に比べ外国人の入国規制が緩いとの批判もある。150を超える国・地域からの入国を原則拒否しているものの、希望する外国人に「特段の事情」があると認めた場合は許可する。例えば、重篤な状態の家族への見舞いや、死亡した家族の葬儀のためといったケースだ。4月は1万7557人の外国人が入国した。変異ウイルスが広がるインドだけで1900人ほどいた。米国や台湾などはインドからの自国民以外の入国を禁止している。

*4-2-1:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/662531 (佐賀新聞 2021年4月17日) 65歳以上の介護保険料、高齢者負担は限界に近い
 介護保険料が4月から改定された。65歳以上の高齢者が払う保険料は多くの市区町村で引き上げられ全国平均は月額6千円程度になりそうだ。2000年の介護保険制度開始時の2倍であり、年金で暮らす高齢者の負担は限界に近づいている。介護保険のサービス費用は、利用者が払う自己負担分を除き、加入者の保険料と税からの公費で半分ずつ賄う。介護保険料は、40~64歳については毎年改定されて、加入する公的医療保険を通じて納付。65歳以上の保険料は、市区町村や広域連合ごとに3年に1度見直されて、原則的に公的年金から天引きされる。高齢化の進行で介護が必要なお年寄りが増える一方、人手不足が深刻な介護職員の処遇改善などのため、介護サービス事業者に支払う介護報酬は4月から全体で0・7%引き上げられた。これらが保険料アップにつながった一方、公的年金給付額は賃金水準下落を受け4月分から0・1%引き下げられた。高齢者の暮らしには厳しい逆風の春だと言わざるを得ない。共同通信の調査では、65歳以上の介護保険料は、都道府県庁所在地と政令指定都市の計52市区の60%で引き上げられ、81%が6千円以上となった。かつて「5千円が負担の限界」とも言われたが、高齢化が加速する25年度には20超の市区が7千円を上回るとの推計もあり、負担増への歯止めは待ったなしの課題だ。保険料は高齢化率や要介護認定率が高い自治体ほど高くなる。家族のケアがない単身高齢者の割合が高く、1人当たりの介護費用がかさむ大阪市は8094円まで上がった。このままでは高齢者の生活費が圧迫され、介護サービス利用時の原則1割負担が払えず、介護保険に加入しながら、利用したくてもできないという矛盾が現実化する。介護保険料滞納で18年度に資産差し押さえ処分を受けた高齢者は、全国で1万9221人と前年度より3千人超増えて過去最多を更新している。65歳以上で働いて賃金を得ている人は約900万人、うち約400万人はパートなど非正規雇用だ。新型コロナウイルス流行拡大による景気低迷が重なって収入減になり、高齢者の家計はさらに苦しくなるとみるべきだ。日本の高齢化は、団塊の世代が全員75歳以上となる25年を経て40年ごろピークを迎える。そこへ向け介護人材を確保し、サービスを充実させることは避けて通れない課題だ。だがそれを抜本改革抜きに実現しようとすれば、財源捻出のため保険料は天井知らずになり「介護を社会全体で担う」という介護保険制度の理念が破綻しかねない。改革は「給付と負担」の見直し以外にない。介護保険料は40歳以上が払っているが、支え手を増やすため「20歳以上」に対象年齢を広げる案も検討せざるを得ない段階に来ている。一定所得がある高齢者が介護サービス利用時に払う2割負担の対象拡大も焦点だろう。給付の伸びを抑えるため、要介護度が低い人の掃除、洗濯など生活援助を介護保険から外し市区町村事業に移すことなども課題になる。介護保険料引き上げが限界となれば、残る財源の柱は税しかない。そして社会保障に充てる税とされるのは消費税だ。菅義偉首相は消費税10%超への引き上げを「10年は考えない」とするが、いずれ議論は避けられまい。

*4-2-2:https://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-1318009.html (琉球新報社説 2021年5月9日) 75歳以上2割負担 窓口負担増避ける議論を
 一定の収入がある75歳以上の医療費窓口負担を1割から2割に引き上げる医療制度改革関連法案について衆院厚生労働委員会が賛成多数で可決した。自民、公明両党と日本維新の会、国民民主党が賛成し、立憲民主、共産両党は、高齢者が受診を控え体調を損ねるとの理由で反対した。医療制度改革は、収入のある高齢者に窓口負担を求めることで、医療費を保険料で支える現役世代の負担増を抑える狙いがある。団塊世代が2022年から75歳以上になり始め、医療費が膨張することが背景にある。法案は今週にも衆院を通過し参院に送られる見通しだ。今国会で成立する可能性が高まっているが、国会で審議入りしてまだわずか1カ月。議論は不十分だ。高齢者の経済的事情にどれだけ配慮しても、受診控えを招かないという保証はない。この点を十分に認識し、窓口負担増を避ける方策を探るべきである。75歳以上の高齢者の窓口負担は現在、原則1割で、現役並みの収入がある場合は3割だ。それ以外の財源は、5割が公費、4割が現役世代の保険料で賄われている。法案は、この現役世代の負担を抑えるため、単身だと年金を含む年収200万円以上、夫婦世帯では計年収320万円以上を対象に2割負担にする内容だ。22年度からの実施を目指す。厚生労働省によると、全国で後期高齢者医療制度に加入する75歳以上の人約1815万人のうち、2割負担の対象は約370万人に上る。自己負担の増加幅が月最大3千円とする上限額があるものの、窓口負担が2倍になる人もいる。このため立民、共産両党は「経済的な理由から受診を控え、病気が重症化する可能性がある」と懸念する。立民は75歳以上の高所得者の保険料上限を引き上げて財源を捻出する対案を出した。共産は高齢者医療の国庫負担を35%から、少なくとも従来の45%に戻し国が公的役割を果たすことで若い世代の負担軽減を図るべきだと主張する。誰でも高齢になれば体が弱る。受診する機会が増えるのはやむを得ない。しかし受診を控えると、命や健康を損ねるリスクが高まる。政府の試算では、負担引き上げに伴い、75歳以上の外来受診回数は1人当たり年平均で33回から32・2回に減るとの見通しだ。さらに収束が見通せないコロナ禍にある。ただでさえ受診を控えている高齢者に拍車を掛けて受診をためらわせないか。そのリスクに配慮すべきだ。受診控えを招く窓口負担増以外に財源を捻出する方策を、あらゆる観点から探る必要がある。高齢者は長期にわたり社会に貢献した敬うべき存在である。なおかつ現在は社会的弱者だ。憲法25条が国に義務付けている生存権の保障にも関わる。これらの点を重視し、高齢者に負担を強いることは極力避ける方向で議論を進めるべきだ。

<領土保全の意志>
*5-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20210430&ng=DGKKZO71487210Z20C21A4FF8000 (日経新聞 2021.4.30) 中国、外国船「領海侵入」に罰金 関連法を改正
 中国の全国人民代表大会(全人代)常務委員会は29日、改正海上交通安全法を可決した。外国船が中国の「領海」に入った場合、中国当局の判断で退去を命じたり罰金を科したりできるようになる。沖縄県・尖閣諸島の周辺海域で緊張が高まる懸念がある。9月1日に施行する。中国国営の新華社通信は改正法の狙いを「海上の交通条件を向上させて、安全保障の水準を高める」と解説した。交通運輸省の傘下の海事局の権限を強める。中国が主張する領海で「海上交通の安全に危害を及ぼす恐れ」のある外国籍の船舶に事前報告を義務づけた。違反すれば退去を命じたり、船舶の管理者に5万元(約83万円)以上50万元以下の罰金を科したりできる。中国は尖閣を「固有の領土」と主張しており、周辺海域も領海とみなしている。中国当局が危害を及ぼす恐れのある船舶について幅広い解釈権を持つとみられる。尖閣周辺で操業する日本漁船にとって脅威になる。中国は海上警備を担う海警局に武器使用を認めた海警法を2月に施行した。海警局が管理する中国公船と海事局の巡視船が連携し、尖閣周辺の海域での監視活動を増やす可能性がある。領海やその周辺の接続水域より広い「管轄海域」にも海事局の監督権限が及ぶとしている。管轄海域で海事局が任意に「航行禁止区域」を設定できる権限も盛り込んだ。中国の民間船への管理も強める。中国版全地球測位システム(GPS)「北斗」の設置や航行データの保全の徹底を求めた。益尾知佐子・九州大准教授は「管轄海域で中国の実効支配が進む懸念がある」と指摘する。海事局は大型の巡視船の建造を進めている。中国メディアは年内に初の1万トン級の巡視船「海巡09」が広東省広州で就役すると伝えた。中国共産党の機関紙、人民日報は「世界中で巡視、救援が可能」と強調している。

*5-2:https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA021DY0S1A500C2000000/ (日経新聞 2021年5月2日) 東シナ海の現状変更反対 日米制服トップ会談、中国念頭
 防衛省は2日までに、山崎幸二統合幕僚長が米ハワイで米軍のミリー統合参謀本部議長と会談したと発表した。中国が海洋進出を強める東シナ海に関し、一方的な現状変更の試みに「断固として反対する」と一致した。日米制服組トップの会談は2019年11月以来、1年半ぶり。4月30日(日本時間5月1日)に実施した。台湾海峡の平和と安定の重要性を確認した4月の日米首脳会談を受け、自衛隊と米軍の連携策について意見を交わした。中国は4月に空母「遼寧」を沖縄本島と宮古島の間の海域に航行させるなど、緊張を高める行動を続ける。沖縄県尖閣諸島周辺では海警局の船が領海侵入を繰り返す。両氏はこうした状況を念頭に、日本と米国が共同で抑止力と対処力を一層強化すると申し合わせた。米国の日本防衛義務を定める日米安全保障条約5条に基づき「米国の揺るぎないコミットメント」を再確認した。「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向け、多国間協力を進めていく方針でも合意した。英国は空母「クイーン・エリザベス」を日本に派遣すると決め、フランスも今月、日米と離島防衛訓練を実施する。軍備を増強する中国に対峙するため、欧州各国との協調をめざす。山崎氏は米インド太平洋軍司令官の交代式に出席するためハワイを訪れた。アキリーノ新司令官とも会い、日本やインド太平洋地域の情勢について認識をすり合わせた。日米の会談に先立ち、韓国軍の元仁哲(ウォン・インチョル)合同参謀本部議長を交えて日米韓3カ国の会談も実施した。北朝鮮の核・弾道ミサイル計画に対する懸念を共有した。山崎氏から国連安全保障理事会決議の完全な履行が重要だと伝えた。

<教育>
*6-1:https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGH308QR0Q1A430C2000000/ (日経新聞 2021年5月2日) 幼小中高一貫校で初の秋入学 玉川学園、23年度にも
 私立学校の玉川学園(東京都町田市、小原芳明理事長)が秋入学(9月始業)を導入する方向で文部科学省と協議していることが分かった。小学校教育の開始を半年繰り上げ、高校まで学ぶ「初等中等一貫教育学校」構想だ。国際標準の9月始業・6月終業とし、高校は6月卒業とする。2023年度にも発足させたい意向だ。構想が実現すれば日本初となり、秋入学や早期就学を巡る国の議論にも影響を与える。「K-12」と呼ぶ構想では、幼稚園年長児(5歳)は9月から小1の学習を始め、翌年6月で1学年を修了する。9月から2学年に上がり、高校までの教育課程全体を半年前倒しする。高校卒業が6月だと夏休み明けに海外大学に進め、国内大学に入る場合は入学前の時間をギャップタームとして多様な活動に使える。幼稚園以降の学費総額も軽減できる。秋入学・9月始業の国や、4歳児、5歳児から小学校に就学させる国は少なくない。日本でも東京大学が秋入学の導入を模索した。20年には新型コロナウイルスの感染拡大への対応策として首長らから秋入学と就学年齢見直しを求める声が上がったが、課題が多いとして議論は棚上げとなった。学校教育法は義務教育の開始を「満6歳に達した日の翌日以降の最初の学年の初め」とし、同法施行規則は小学校の学年の始業は4月1日とする。構想実現には同法との兼ね合いが課題になる。文科省幹部は「運用上の対応なら問題ない。秋入学を制度的に認めるには法改正が必要」と指摘するが、「研究開発校などの既存制度をうまく使えば実現可能ではないか。私学が秋入学などに実験的に取り組むのは意義がある」という声もある。小原理事長は「戦後間もなくできた学校制度を守り続ける必要があるのか。文科省と相談しながら実験的な取り組みに挑戦したい」と話している。1929年創立の同学園は幼稚園から大学院まで擁し、幼小中高の総定員は2480人に上る。

*6-2:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO63028960V20C20A8TCN000/ (日経新聞 2020年8月26日) 文理融合学部、国立大で広がる 「課題解決力」を育成
 文系と理系の枠組みを超えた文理融合型学部の創設が国立大で広がっている。幅広い分野を学べる環境をつくり、社会での活躍に必要な「課題解決力」を育てる狙いがある。受験生の人気も高いが、就職などを見据えて専門分野も学びやすい仕組みを合わせて整えられるかなど課題もある。「文系と理系のどちらの学部を志望するのか聞かれ、すぐに答えられなかった」。東京都内の私立高校3年の女子生徒が振り返る。高校は文系クラスだが、文系学部に進むのは迷いがあった。7月の進路相談で教員に「興味ある分野を探しながら学びを深めたい」と伝えると、勧められたのが「文理融合型」の学部だった。文理融合型の学部新設の代表例は2018年4月、「共創学部」を設けた九州大だ。共創を「異なる観点や学問的な知見の融合を図り、ともに構想し、連携して新たなものを創造すること」と定義。課題構想力や国際コミュニケーション力などを育て、「共創的課題解決力」の獲得をめざすという。所属する学生は「データサイエンス基礎」「共創デザイン思考発想法」「フィールド調査法」など必修7科目に加え、生命科学や歴史などの分野から好きな科目が選べる。文理どちらかだけの科目を選ぶことはできない。英語力の育成にも力を入れる。1年生から、他学部よりも英語に触れる機会を多くし、3年生の討論、4年生の卒業研究発表は全て英語で行う。鏑木政彦学部長は「社会の課題をベースに学問の切り口を考えるために、文系・理系の枠を超え自由に学んでいこうという考えが核心にある」と語る。初年度の志望倍率は4倍以上。19、20年度も3倍超で、予備校関係者は「新設学部としては異例の人気」と話す。従来、国立大の多くが学部を文理に分けてきた。だが、社会のグローバル化やデジタル化が急速に進むなか、幅広い視野を持った人材を輩出できるようにすべきだとの認識が高等教育の専門家らの間で広がった。文部科学省も15年に国立大の組織見直しに関する通知を出した。教育・研究の質の向上には学問分野を超えた総合性や融合性、国際性などが必要とし、人文社会科学系学部などには廃止を含めて組織改編を迫る内容だった。通知には批判も集まったが、結果的に文理融合型の学部やカリキュラムをつくる動きが活発になった。九州大の鏑木学部長は「色々な立場の感覚を持ち、世界でも司令塔としての役割を果たせる人材が必要だという社会の要請に国立大として応える責任がある」と語る。地域社会の課題解決を目指す文理融合型の学部も増えている。新潟大は17年に「創生学部」を創設した。地元の企業や自治体に出向き、課題を見つけて議論する実践型の授業を実施。他学部の22科目から関心がある分野を学べる。宮崎大の地域資源創成学部も地域資源を生かす経営学・マネジメントを身につける実習などに加え、生物学や食品学などを選べるようにしている。ただ、法学部や工学部などに比べると、文理融合型の学部は卒業後のキャリアを明確に示しにくい面がある。広島大高等教育研究開発センターの大膳司副センター長は「視野の広い人材が求められているのは事実だが、最終的には大学院などで専門性を身につけた方が将来有利になる可能性は高い」と指摘。「専門分野を少しでも深く学べるプログラムを組み、学生がこだわって勉強した経験をつくれる環境が必要だ」と語る。
*情報系学部が人気、専門性獲得に期待か
 文系と理系の垣根が低い学部への志願者数は増加傾向にある。2020年度入試を巡る河合塾の調査によると、国公立大の13学部系統のうち、志願者数が19年度より増えたのは文理両方から入れる「総合・環境・情報・人間」のみだった。特に人気があるのが情報系学部だ。河合塾担当者は「全てのものがインターネットでつながる『IoT』や人工知能(AI)などの情報技術の発展に伴い、専門分野を学べる期待感がある」と指摘する。滋賀大データサイエンス学部は情報や統計関連の理系科目に加え、データを生かすための経済や経営などを開講する。一橋大は「ソーシャル・データサイエンス学部」の設立準備委員会を設置。両大学を含めた6校は20日に「データサイエンス系大学教育組織連絡会」を立ち上げた。今後は規模を拡大し人材育成や研究などで連携を進める。

<その他の憲法違反と人権侵害>
PS(2021年5月17日追加):*7-1のように、アイルランドの高等裁判所は、米国には連邦政府レベルのプライバシー保護法がないため、欧州から米国への個人データ移管を禁じた仮命令に対してフェイスブックが申し立てた異議を棄却した。また、欧州司法裁判所は2020年にプライバシー・シールドも無効と判断している。これに対し、日経新聞は、「①個人データの移管禁止が確定すれば、他の米国企業も欧州の個人データを米国に送れず、ターゲティング広告やマーケティング分析などが制約を受ける」「②そのため、ネット企業の国際展開の足かせになり、迅速に対応できない中小が大手との競争で不利になる可能性がある」などと記載している。
 しかし、①は、個人のプライバシー保護よりもターゲティング広告やマーケティング分析の方が重要だという本末転倒の考え方を明示している。また、②は、個人のプライバシー保護のために割くことができる人材や資金が大企業より限られる中小企業が競争で不利になることを問題にしているのである。これが、個人情報を勝手に使うことを許し、それが漏れた時には人権侵害になる可能性もあることを気にかけない日本ではなく、欧州が国際基準づくりのリーダーになって欲しい理由の1つだ。
 なお、日本における個人のプライバシー保護は、*7-2のように、「③日本政府と与党が自己情報のコントロール権を保障せずに個人情報保護を後退させるデジタル改革関連6法を可決・成立させ」「④国民の利便性向上のみを強調して、現行制度を抜本的に変更するのに法案を60本以上束ねて提出して国会の熟議なしで成立させ」「⑤行政手続きのオンライン化を進めてマイナンバーの利用拡大等を行っており」「⑥民間・行政機関・独立行政法人に分かれていた個人情報保護法を一本化して最も規制の緩い国のルールに合わせさせ」「⑧中央省庁が持つ個人情報を匿名加工して民間に提供する現行制度を自治体にも広げて、目的外使用や漏洩の可能性を拡大させ」「⑨個人情報保護に関する監視体制は不適切な個人情報の取り扱いに対して命令ができない」という状況なのである。
 このうち③④は、新型コロナ騒動で国民の目から隠しながら、議会で情報を開示した議論をしなかった点で、日本国憲法(https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_annai.nsf/html/statics/shiryo/dl-constitution.htm 参照)前文の「日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し、ここに主権が国民に存することを宣言する」等の主権在民に反している。また、⑥⑦⑧のように、このような粗雑な議論をした結果、国民にとって不利益な法案を可決し、決して国民の福利を増加させる変更にはなっていない。
 さらに、⑤⑨は、個人情報を使った国による国民への監視体制強化の意図を含んでおり、「19条:思想及び良心の自由は、これを侵してはならない」「21条1項:集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する」「21条2項:検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない」に次第に反していく可能性があるのだが、この法案の内容や問題点を報道しなかった日本のメディアは、日頃から主張している「言論の自由」「表現の自由」が本物ではないことを露呈させた。また、日本国憲法は「12条:この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によつて、これを保持しなければならない」と定めているが、報道もされずにこそこそと遂行され蚊帳の外に置かれて事実を知らされなかったことがあれば、(いくら選挙をしても)国民は主権者としての権利行使ができないのである。

*7-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20210516&ng=DGKKZO71936610V10C21A5EA2000 (日経新聞 2021.5.16) フェイスブックの異議棄却、欧米間データ移管に逆風、ネット事業拡大に制約も
 欧州から米国への個人データ移管に対する逆風が強まっている。米フェイスブックが欧州統括拠点を置くアイルランドの高等裁判所は14日、データ移管を禁じた仮命令に対する同社の異議を棄却した。プライバシー保護の観点から歓迎の声が上がる一方、ネット企業の国際展開の足かせになる恐れもある。「フェイスブックの完敗だ」。オーストリアの弁護士でプライバシー保護活動家のマックス・シュレムス氏は14日、コメントを出した。2013年にフェイスブックによる欧州から米国へのデータ移管が違法だとアイルランドのデータ保護当局に申し立てた人物だ。米国には連邦政府レベルのプライバシー保護法がない。さらに13年に発覚したスノーデン事件で米国家安全保障局(NSA)による情報収集が明るみに出て、欧州は米国のデータ保護体制に懸念を強めた。欧州連合(EU)は18年、一般データ保護規則(GDPR)を施行し個人データの域外移管を厳しく制限。一方で例外を残し、欧米間では「プライバシー・シールド」という独自のデータ移転の枠組みや、「標準契約条項(SCC)」というデータ移転契約のひな型が利用されていた。ただEUの最高裁判所にあたる欧州司法裁判所は20年、プライバシー・シールドを「無効」と判断。SCCについては有効としたが、米当局が企業の持つ個人データを監視しかねないという問題意識が強く示された。この判断などを受けてアイルランドのデータ保護当局はフェイスブックへの調査を始め、20年8月にデータ移管を禁止する仮命令を出した。同社は「壊滅的な結果をもたらす」などと異議を申し立てたが、高裁は今回、同社の主張を退けた。フェイスブックは14日の声明で「仮命令は当社だけでなく利用者やほかの企業に損害を与える可能性がある」と指摘。移管禁止が確定すれば売上高の約4分の1を占める欧州向けサービスが一時中断を余儀なくされるとの見方もある。ほかの米国企業も欧州の個人データを米国に送れなくなり、ターゲティング広告やマーケティング分析などデータを活用した事業展開が制約を受けかねない。アイルランド当局によるフェイスブックへの個人データ移転の禁止については他のEU加盟国当局も精査する。異議がなかったり、異議が退けられたりすれば事実上、EU全体でアイルランドを支持したことになる。フェイスブック側が追加の法的手段に訴えるとの観測もあり、判断が確定するまでには時間がかかるとの見方も多い。米国では20年に当時のトランプ大統領が中国発の動画投稿アプリ「TikTok(ティックトック)」の運営会社に米国の利用者の個人データを国内に保管するように求めた。各地でデータの国内・域内保管を求める動きが強まっている。EUがGDPRを施行した際、フェイスブックのような資金や技術者が豊富な大手は迅速に対応し、影響を軽微にとどめた。一方、中堅・中小企業の一部は欧州向けサービスの一時中断に追い込まれた。データ移管を巡っても、結果として中小が大手との競争で不利になる可能性もある。

*7-2:https://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-1320217.html (琉球新報社説 2021年5月13日) デジタル法成立 個人情報保護 後退させた
 デジタル庁設置を柱とするデジタル改革関連6法が参院本会議で与党などの賛成多数で可決、成立した。
国民の利便性向上を強調するが、実態は自己情報コントロール権を保障せず個人情報保護を後退させる内容だ。現行制度を抜本的に変更するにもかかわらず、法案を60本以上束ねて提出した政府の国会軽視と、熟議せず成立させた国会の責任は重大だ。デジタル改革関連法成立によって、改革の司令塔で首相をトップとするデジタル庁を9月1日に発足させる。デジタル庁に権限を集中させ他省庁に業務見直しなどを勧告する。行政手続きのオンライン化を進め、マイナンバーの利用拡大や押印を求める手続きの削減などデジタル社会に向けた環境を整備する。関連法の柱の一つが個人情報保護制度の見直しだ。民間、行政機関、独立行政法人の三つに分かれている個人情報保護法を一本化し、共通のルールを導入する。内実は規制が緩い国のルールに合わせるということだ。その上で中央省庁が持つ個人情報を匿名加工して民間に提供する現行制度を、自治体にも広げる。これまで個人情報の保護は、住民に近い自治体がそれぞれ条例を制定し、思想信条や病歴・犯歴などの要配慮情報の収集は禁じるなど慎重に運用してきた。住民本人の合意を得た上で、個人情報を取り扱うことが自治体では原則となっている。制度の見直しで個人情報保護の原則はなし崩しになり、目的外に使われ、漏えいする恐れがある。実際に現行制度でも、防衛省が米軍横田基地の夜間飛行差し止め訴訟や、航空自衛隊小松基地の騒音訴訟の原告名簿などを民間への提供対象にしていたことが発覚した。関連6法の中で基本理念を定めた「デジタル社会形成基本法」に、個人の権利を担保する自己情報コントロール権が明記されていない。専修大学の山田健太教授(言論法)は「情報を有する側の縛りを一貫して緩めてきたのが日本の法制度であって、一方で自己情報コントロール権も含め、個人の権利化は進捗(しんちょく)がない。その結果、両者のバランスはますます崩れる一方」と警鐘を鳴らす。個人情報の保護について監視する仕組みにも問題がある。全体の監督は個人情報保護委員会に委ねられる。しかし、捜査情報は個人情報保護委員会の監視対象から外されている。不適切な個人情報の取り扱いに対して勧告はできるが、命令はできない。権限が不十分だ。日本弁護士連合会は、官民で管理する個人情報全般の取り扱いを監視・監督する独立した第三者機関を創設し、専門的な能力を備えた職員をそろえるための定員と予算を担保するよう求めている。政府は日弁連の提言を真摯(しんし)に受け止め、デジタル庁設置までに、監視・監督の権限を強化する手立てを講じるべきだ。

<生物的性差と社会的性差>
PS(2021年5月20、27日追加):*8-1のように、山谷えり子氏が「①LGBTの問題で大きな議論が必要」と言われたそうで、*8-2には「②就活で『らしさ』を押しつけないで」という声が性的少数者を中心に上がっている」「③就活で身につける衣類や振舞方が男女で分けられ、LGBTの存在が取り残されている気になった」「④服装やマナーでつまずいて、どんな仕事がしたいのかまでたどり着けない」「⑤極端に二元化した男女別スタイルやマナーの押しつけをやめ多様性のある装いのスタイルを提案すべき」等が書かれている。
 まず①については、「多様性・ダイバーシティー=LGBT」という記事が多すぎるのには、私も辟易している。何故なら、“多様性”はLGBTだけでなくすべてに存在し、日本国憲法は75年も前の公布時から「14条:すべて国民は法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において差別されない」と規定して属性による差別を認めておらず、LGBTはそのごく一部にすぎないからだ。また、日本はLGBTの割合が高いと言われているが、その理由は、男女共学校なら中学・高校・大学の同窓生・同級生間で恋愛結婚して一般的ケースになるものが、男女別学校の場合はLGBTとなり、男女別学校が多いからだと思われる。そのため、LGBTにも生物的違いのあるものだけではなく、社会的に作られたものが多いのではないか?
 次に、②③④⑤については、求められる人柄や服装は職種によって異なり、就活指導として一律に男らしさ・女らしさを押し付けるのは不適切だが、求人する会社が求める人柄は一律ではないため、求職者は会社が求める人材を知った上で就活した方がよいと思う。そうすれば、就活時に不合理な条件を出す会社は、有用な人材を採用できなくなって次第に変わらざるを得なくなる。つまり、就活する人は、会社に選ばれる人材であるための何かを身に着けた上で、実績を示して変な慣習をなくしていくのが正攻法であり、門前払いされて実績を示すことすら妨げられたり、実績を示しても不合理が改善されない場合に差別に当たるのだと考える。
 なお、*8-2に、「⑥大手アパレルは、女性用のリクルートスーツの紹介で『女性らしさを引き立たせて、第一印象から美しく』の言葉が目立つ」「⑦別のアパレル企業のサイトでは、ファンデーションで肌を明るく均一に整え、ポイントメイクはいつもよりもしっかりめに」等を書いているそうだが、⑥は士業・研究者・学校の先生・記者・看護師などの実務型職種の採用試験ならむしろマイナスで、⑦は肌のきれいな若者なら濃くファンデーションを塗るより薄化粧で素肌を見せた方が長所を強調できる。つまり、自分の長所は強調し短所はカバーしつつ、採用側が求める人材像が合理的なら合わせ、不合理なら次第に変えるようにした方がよいと思う。
 性同一性障害の原告が、*8-3のように、経産省トイレ制限訴訟で逆転敗訴されたのは気の毒だが、経産省も性別不問の障害者用トイレくらいは各階に複数作ったらどうか?私は、狭い公共女子トイレでコートやかばんがばさっと下に落ちて不潔な思いをしたのに懲りて障害者用トイレを使うようにしているが、「障害者優先」と書いてあるので罪悪感を感じなければならないのにも参っている。公共トイレも、使いやすくて手洗いの水くらいはふんだんに出る清潔なものであって欲しい。

*8-1:https://digital.asahi.com/articles/DA3S14909980.html (朝日新聞 2021年5月20日) 「ばかげたこと起きている」 性自認めぐり自民・山谷氏
 自民党の山谷えり子元拉致問題担当相は19日、党内の会議で、自分の性別をどのように認識しているかを意味する「性自認」をめぐり、「体は男だけど自分は女だから女子トイレに入れろとか、アメリカなんかでは女子陸上競技に参加してしまってダーッとメダルを取るとか、ばかげたことはいろいろ起きている」と発言した。性自認をめぐっては、戸籍上は男性だが女性として生きる性同一性障害の経済産業省職員が、女性トイレの使用を制限される差別を受けたなどとして国を訴えた。2019年12月の東京地裁では、経産省の対応は違法として国に132万円の賠償を命じた。判決は「トランスジェンダーが働きやすい職場環境を整える重要性が日本でも強く意識されるようになっている」と指摘した。その後、敗訴した国と勝訴した職員の双方が東京高裁に控訴している。LGBTなど性的少数者に関し、超党派の議員連盟が、「理解増進」法案の今国会での成立を目指しており、20日に自民党内で法案審査を予定している。これに対し、山谷氏は、法案の目的と基本理念で「性自認を理由とする差別は許されない」とされている点を問題視。「このまま自民党として認めるにはやっぱり大きな議論が必要。しっかりと議論することが保守政党としての責任だ」と語った。

*8-2:https://digital.asahi.com/articles/ASP5F5Q8BP56ULFA00N.html (朝日新聞 2021年5月16日) 就活で「らしさ」を押しつけないで 性的少数者たちの声
 「女性らしさ」が強調されたリクルートスーツ、面接時には必須とする「ちょうどいい化粧」――。就職活動する学生に対して、こうした押しつけをやめてほしいという声が性的少数者を中心に上がっています。履歴書の性別欄のあり方にも変化が起きるなど、就活におけるジェンダーのあり方を問う動きが広がっています。
●「おかしいと思われる」
 フリーで翻訳の仕事をする水野優望(ゆみ)さん(31)は大学生だった10年前、就職活動に臨んだ。ゆったりめのパンツスーツにネクタイを締め、面接会場に向かった。その途中で怖くなった。「面接担当者におかしいと思われる」
駅のトイレに駆け込んだ。ネクタイをはずし、化粧をした。ヒールのある靴に履き替え、靴下はストッキングに。それでも、かばんが男性用だと気づかれたらどうしよう、と不安は消えなかった。戸籍上は女性だが、性自認は、女性にも男性にも当てはまらないと考える「Xジェンダー」。就職活動で身につける衣類や振る舞い方は、どれも「男性用」か「女性用」に分けられていると感じ、自身の存在が取り残されている気持ちになった。「服装やマナーでつまずき、どんな仕事がしたいのかまでたどり着けなかった」。就職活動を断念。体調を崩し、大学卒業前後の3カ月ほど自宅から出ることができなくなった。職場でパンプスを強制することに疑問の声を上げる「#KuToo」運動を立ち上げた俳優の石川優実さんに数年前に出会い、就職活動での「らしさ」の押しつけも抑圧や差別だと気がついた。昨年11月、インターネット上で「#就活セクシズムをやめて就職活動のスタイルに多様性を保証してください!」という署名活動を立ち上げた。メンバーは会社員や就職活動中の学生、マナー講師ら約10人だ。「極端に二元化した男女別スタイルやマナーの押しつけをやめて、多様性のある装いのスタイルを提案して」「女性はこうすべき、男性はこうすべきという偏った表現は差別や抑圧につながるため見直しを」と求める。集まった1万5千筆強を、マイナビやリクルートキャリアといった就職支援企業や、青山商事やAOKIなどの大手アパレル企業、大学などに提出する予定だ。
●体の曲線美を強調する表現
 どういった表現が「ジェンダーの押しつけ」に当たる恐れがあるのか。署名活動のメンバーに聞いた。例えば大手アパレルのホームページでは、女性用のリクルートスーツの紹介で「女性らしさを引き立たせて、第一印象から美しく」の言葉が目立つ。「女性らしい美しさと清潔感を引き立たせる、カービーシルエットを採用」と体の曲線美を強調する表現もある。化粧をすることを「マナー」として求める記述も。「オンライン就活での好印象の与え方」を助言する別のアパレル企業などのサイトでは、ノーメイクの女性のイラストを提示し、「ファンデーションで肌を明るく均一に整え、ポイントメイクはいつもよりもしっかりめに」と求める。メンバーの調べでは、合同企業説明会の情報を掲載するサイトで「オジサマ受けの良いシンプルでさわやかなスーツで身を包み、清楚(せいそ)な子を演じればいい」との表現も一時期見られた。書籍では、「一次面接こそスカートで勝負を」「女性は面接官の息子の嫁にしたいタイプがベスト」などと記載されたものもあった。こうした表現について、水野さんは「就職活動で学生にリスクをとらせないために生み出されたものだろうが、『美しさ』『清楚さ』など仕事の能力とは無関係の要素を女性に求めるのはセクハラにあたる」と指摘。「就活関連企業は、学生が自分らしく働くための第一歩となるよう多様なスタイルを提案してほしい。そして学生を採用する企業は、その人らしい服装や振る舞いを受け入れると積極的にアナウンスして」と求める。
●「困難感じる」 トランスジェンダーの8割以上
 性的少数者たちは就職活動中に、どのようなことに難しさを感じているのか。NPO法人「ReBit(リビット)」によるLGBTを対象にした調査(2018年、有効回答241人)では、生まれた時の体の性と異なる性で生きるトランスジェンダーの当事者(95人)のうち、性のあり方で困難やハラスメントを経験した人は87・4%にのぼった。具体的な困りごとでは、半数弱が「エントリーシートや履歴書に性別記載が必須だった」と回答。「男女別のスーツやバッグなどの購入」「人事や面接官から、性的マイノリティでないことを前提とした質問や発言」などが続いた。「性自認と異なるスーツ・服装、髪型、化粧をしなくてはならなかった」も3割いた。事務局長の中島潤さんは「服装をきっかけに、企業側に対して本人が望まないカミングアウトにつながる恐れもある」と懸念する。困難を感じる当事者は多いとみられるのに、支援機関などに相談できていない現状もあるようだ。別の調査で、性的指向や性自認からくる悩みを学校の就職課やハローワークなどの就労支援窓口に相談したかどうかを聞いたところ、「していない」が95・9%にのぼった。理由は「どこに相談していいかわからなかった」「相談しても解決してもらえない」がそれぞれ3割強だった。ReBitではこうした状況を受け、キャリアコンサルタントらを対象に、LGBT当事者への支援方法を伝える研修プログラムを20年に始めた。知識を学ぶ講義や、ロールプレイング、当事者へのカウンセリングなどが中心だ。

*8-3:https://mainichi.jp/articles/20210527/k00/00m/040/127000c?cx_fm=mailsokuho&cx_ml=article (2021.5.27) 経産省トイレ制限訴訟 性同一性障害の原告が逆転敗訴 東京高裁
 戸籍上は男性で、女性として生きる性同一性障害の経済産業省の50代職員が、女性トイレの利用を不当に制限されたとして、国に処遇改善などを求めた訴訟の控訴審判決で、東京高裁(北沢純一裁判長)は27日、利用制限を違法とした1審・東京地裁判決(2019年12月)を変更し、制限の撤廃を求めた原告側の請求を棄却した。北沢裁判長は「国の対応は不合理とは言えない」と述べた。原告側の逆転敗訴となった。

<ワクチン頼みで、どうしていけないのか?>
PS(2021年5月22日追加):*9-1のように、コーツ副会長が「①(五輪)選手村に居住予定の75%が既にワクチンを接種もしくは確保し、大会時には80%を超える」「②選手と接触が多い人についても協力する用意がある」「③できるだけ多くの大会参加者がワクチンを接種したうえで来日することになるよう、IOCは努力する」と言っておられるため、開催国の日本は選手村に居住予定の残り20%とボランティアや来日する関係者にワクチンを接種する方法を考えればよいのである。にもかかわらず、「④ボランティア8万人への優先接種は想定していない」「⑤来日する約8万人の関係者やメディアの行動をどう制限し、感染拡大を防ぐのか」などと言っているのは愚かにも程があり、「⑥IOCと米製薬大手ファイザー社が、各国・地域の選手団向けに無償提供を受けることで合意してから、ワクチン頼みの姿勢が強まっている」などと、協力してくれているIOCやファイザー社に感謝もせずに、ワクチンに依存することを批判しているのだから、その無責任さ・無礼さに世界が呆れ、IOCが怒ったとしても文句は言えまい。
 さらに、「⑦欧米ではワクチン接種が進み、新型コロナに対する状況が明らかに変わった」そうだが、ワクチン接種が進めば集団免疫を獲得するため欧米に限らず普通に暮らせるようになるのが当然で、行動ルールをまとめたプレーブックが「⑧大会関係者やメディアはワクチン接種の有無に関わらず、原則3日間の待機を経る必要がある」「⑨14日間、外出先は競技会場などだけで移動は専用車。食事も会場内やホテル内か宅配に原則限られる」などと決めていることが非科学的なのである。また、「⑩入国から14日間が過ぎれば公共交通機関を使えるようになり、活動の範囲を広げることができる」というのも、(PCR検査ができないわけではないのに)検査に基づいた判断をしないのは非科学的で、ワクチンを打った人と打っていない人、PCR検査で陰性の人とそうでない人を同じ扱いにしなければならない理由は全くない。そのため、「⑪1万5千人の選手のほか、7万8千人の大会関係者が世界中から来日予定と明らかになり、選手村などで徹底隔離される選手と違って条件を満たせば市中に出られる大会関係者やメディアの感染対策が課題」というのは、航空機に搭乗する前にワクチン接種証明書か陰性証明書を提示してもらい、ワクチン接種証明書を提示できなかった関係者には、日本政府が成田空港でワクチン接種することを申し出てもよいくらいだ。そのため、「⑫メディアはコロナ下の東京を取材したいのではないか。行動管理が本当にできるのか」については、非科学的な行動管理を続けていれば、それが世界に報道され、呆れられて、日本の医療への信頼が地に落ちるということである。
 また、*9-2のように、迅速にワクチンを接種して行動制限を無くすのが経済回復への道であるのに、非常に狭い了見で医療費やPCR検査をケチり、ワクチンや治療薬の開発・承認を遅らせた結果、この分野において日本は先進国ではなく後進国になっていることを心に銘記すべきだ。そして、日本のワクチン接種の遅れは先進国の中で際立っており、行動制限により所得が減って個人消費は回復せず、1~3月期のGDPはマイナス成長となって、経済は感染を抑えた国への外需頼みになっているのである。

  
         President               2021.5.19日経新聞

(図の説明:左図は、各国の新型コロナ感染者数と死者数の推移だが、日本以外の国は頭打ちになっているのに対し、日本だけが不名誉な右肩上がりだ。そして、その理由は、専門家会議を含む厚労省はじめ行政・政治の誤った政策である。中央の図は、PCR検査を徹底して感染を抑え、新しい検査法・ワクチン・治療薬の開発や承認を行う正攻法をとった国の経済回復状況で、その効果は、右図の2021年3月期経済成長率に明確に現れている。日本は、医薬品や医療機器の開発・普及がやりにくい国で、①治験のやりにくさ ②厚労省の承認遅れ ③メディアの誤った批判 などが、その理由になっているため、よい結果を出している国のやり方を研究すべきだ)

*9-1:https://digital.asahi.com/articles/ASP5P73Z8P5PUTQP00N.html?iref=comtop_7_03 (朝日新聞 2021年5月21日)東京五輪、強まるワクチン頼み 大会関係者へ接種も
 海外で新型コロナウイルスのワクチン接種が広がるなか、東京五輪に参加する選手や関係者にも接種を促す動きが加速している。開幕まで約2カ月。来日する約8万人の関係者やメディアの行動をどう制限し、感染拡大を防ぐのか。議論は大詰めを迎えている。国際オリンピック委員会(IOC)で東京大会の準備状況を監督する責任者のジョン・コーツ副会長がこの日、「緊急事態宣言下でも大会を開ける」との認識を示したことについて、大会組織委員会の幹部は「本当に宣言中にできるのかは、国民も疑問に思うし、慎重にやっていかないといけないが、宣言下でもテスト大会はやっていたので、安全性を担保していくということだろう」と話した。コーツ副会長はこの日、「ワクチンに関する議論もできた」とも述べた。新型コロナウイルスへの対策をめぐっては、IOCと日本側はともに「ワクチン接種を前提とせずに、安全で安心な大会を開く」と繰り返してきた。だが、IOCと米製薬大手ファイザー社などが今月6日、各国・地域の選手団向けに無償提供を受けることで合意してからは、ワクチン頼みの姿勢が強まっている。コーツ副会長はこの日の総括会見で「選手村(ベッド数は五輪で1万8千台)に居住予定の75%がすでにワクチン接種をしているか、ワクチンを確保している。大会時には80%を超えるだろう」と述べた。また、「選手との接触が多い人についても協力する用意がある」と述べ、日本の大会関係者に対するワクチン確保の可能性に言及した。IOCのトーマス・バッハ会長は19日、中止や延期を求める日本国内の世論を意識し「日本人を守ることが重要」と強調。「できるだけ多くの大会参加者がワクチンを接種したうえで来日することになるよう、IOCは努力する」とした。国内では高齢者のワクチン接種を7月末までに終わらせるという政府目標がある。五輪関係者について、丸川珠代五輪相は6日時点ではボランティア8万人への優先接種は想定していなかったが「打たないとIOCも心配するだろう」と話す官邸幹部もいる。さらに丸川五輪相は21日の閣議後会見で、報道関係者についても「調整委での議論を踏まえ、どう対応すべきかは話を詰めたい」と言及した。ある大会関係者は「欧米ではワクチン接種が進んでおり、新型コロナに対する状況が明らかに変わっている」と話す。6月に最終版を発行する大会時の選手や関係者の行動に関するルールブック(プレーブック)について「ワクチンを打っている人と、打っていない人が同じ扱いでいいのか議論がある」と明かす。この日の調整委員会では1万5千人の選手のほか、7万8千人の大会関係者が世界中から来日予定と明らかになった。選手村などで徹底隔離される選手と違い、条件を満たせば市中に出られる大会関係者やメディアの感染対策が課題だ。五輪に向けた飛び込みのテスト大会があった今月、東京イーストサイドホテル櫂会(かいえ)(東京都江東区)には、約30カ国から審判や国際水泳連盟役員らがピーク時は80人滞在した。一般客と接触しないよう全9階のうち6、7階を専用フロアとし、食事は各部屋で。出入りも警備員常駐の業者用を使ってもらった。関係者は競技会場へ行く以外、部屋にこもっていたという。本番も関係者を受け入れる予定で、多田敬一営業部長は「大会関係者は毎日の検査で陰性を確認し、行動管理も徹底していた。ホテルも従業員の健康をしっかり管理して臨みたい」と話す。行動ルールをまとめたプレーブックによると、大会関係者やメディアはワクチン接種の有無に関わらず、原則3日間の待機を経て活動可能になる。ただ14日間、外出先は競技会場などだけで移動は専用車。食事も会場内やホテル内、宅配に原則限られる。違反すれば大会に関わる権利が失われたり、14日間の隔離や強制退去の対象になったりする可能性がある。だが、入国から14日間が過ぎれば公共交通機関を使えるようになり、活動の範囲を広げることができる。選手村や多くのホテルがある東京都中央区の保健所の担当者は、特に村外に宿泊する人たちの行動に気をもむ。「メディアはコロナ下の東京を取材したいのではないか。行動の管理が本当にできるのか」と話す。来日15日目以降に規制が緩むことに複雑な思いを抱く海外メディアもいる。南ドイツ新聞からは記者4人が来日予定。東京特派員のトーマス・ハーンさんは自宅から通っての取材となる。「私は一般の人と一緒に電車に乗るわけで、市中感染し、プレスセンターにウイルスを持ち込むリスクは消えない」と話す。来日する各国や団体に違反がないよう管理・監督する責任者が各団体に置かれるが、専門家は「プレーブックは性善説に基づいており、実効性をどう担保するのか」と不安視する。

*9-2:https://www.nikkei.com/article/DGXZQODK184780Y1A510C2000000/?n_cid=SPTMG002 (日経新聞社説 2021年5月18日) 迅速なワクチン接種が経済回復の前提だ
 1~3月期の実質国内総生産(GDP)が3四半期ぶりのマイナス成長となり、年明け以降の日本経済の足踏みが鮮明になった。新型コロナウイルスの感染拡大で緊急事態宣言が再発令され個人消費が大きく減ったのが響いた。先進国で際立つ日本のワクチン接種の遅れは、経済の正常化をさらに後ずれさせかねない。景気の一段の下押しを避けるためにも、迅速な接種を進めたい。内閣府が18日発表した1~3月期の実質GDPは前期比1.3%、年率換算で5.1%減った。20年度の実質GDPは前年度比4.6%減と2年連続で減り、マイナス幅も戦後最大となった。直近で目立つのは内需の不振だ。年初から3月下旬にかけての2度目の緊急事態宣言で外食や宿泊の消費が低迷し個人消費は3四半期ぶりに減った。企業の売り上げ不振を背景に設備投資も2四半期ぶりのマイナスとなった。中国などへの輸出が回復し、経済の下振れをある程度は食い止めた。足元の経済は外需頼みだ。先行きは予断を許さない。変異型も含めた感染の再拡大で主要都市では4月下旬に3度目の緊急事態宣言が発動された。対象地域は広がり、4~6月期のマイナス成長を予想する声も多い。再び正念場を迎えた経済に政府・日銀は抜かりなく対応してほしい。気になるのは内外経済の回復度合いの違いだ。米国では1~3月期の実質GDPが前期比年率で6.4%増え、GDPの規模もコロナ危機前をほぼ回復した。ユーロ圏の同期間の実質GDPは2.5%減だったが、ここへきて21年の成長率見通しを大幅に引き上げるなど明るさを増す。ワクチンの接種が進み経済正常化への動きが加速しているためだ。この点、日本では厳しい状況が続く。少なくとも1度目のワクチン接種を終えた人の割合は3%未満。全人口の半数が1度目の接種を終えた英米、3割前後のドイツやフランスに大きく遅れる。菅義偉首相は7月末までに高齢者への接種を終えると述べたが、予約などの手続きをめぐり混乱が続く。問題を一つずつ解消し、円滑な接種につなげてほしい。今後も外出規制が繰り返されるような事態になれば経済の正常化はさらに遠のく。人びとが安心して生活できる環境を取り戻すことが経済回復の前提になることをあらためて認識すべきだ。

<日本は役に立つ新産業の育成・普及が遅れる国である(その1)>
PS(2021年5月25日追加):*10-1のように、IEAが2050年までに世界で温暖化ガス排出量を実質0にするための工程表を公表し、①化石燃料への新規投資を即時停止 ②2035年までにガソリン車の新車販売停止 ③2050年にエネルギー供給に占める再エネ割合を約7割に引き上げる必要 ④原子力割合を11%に増やし、石炭は2050年までに2020年比で9割減らす そうだ。
 しかし、①②はよいが、「パリ協定」は化石燃料だけではなく、原発の使用も禁止している。具体的には、③④は、原発は放射性物質だけでなく温排水も出しており、「産業革命からの気温上昇を1.5度以内に抑える」という目標には合致しないため、再エネ100%にするしかない。日本は、最初に脱化石燃料を言いはじめた再エネに恵まれた国であるのに、EVも再エネも遅れた原因は、このように従来型の高コストエネルギーを残そうとしてきたことである。また、2035年までに全車をEV・FCVにすることも、人口の多い他の国がモータリゼーション化する時代には必要不可欠であり、1997年に京都議定書が決められる頃からそのつもりだった。そのため、ハイブリッド車に時間とカネをかけすぎたのは無駄遣いで、従来型の雇用が減っても代替分野で新規雇用が発生するのは歴史を見れば明白なのである。
 また、*10-2のように、発電所を新設した場合に一番安い電源を国・地域ごとに調べれば、再エネが最も安い国が多数だったのは当然である。その理由は、電力は装置産業であり、原価の殆どが「(i)発電装置の建設費(固定費)+(ii)燃料代(変動費)+(iii)公害対策費(変動費)」だからだ。従って、(i)は、発電所を新設する場合なら原子力・火力より仕組みが簡単な再エネの方が安いに決まっており、(ii)の燃料代は、原子力・火力ともに高いが再エネは無料であるため、これほど安いものはない。また、(iii)の公害対策費も再エネが最も安いため、「日本で最も安い電源は石炭火力で、太陽光・風力の方が高い」というのがおかしいのである。なお、送電網の問題は人為的で、総括原価方式で作った既存の装置を使いたい大手電力会社の要請で経産省が故意に行ったものであり、電力市場を歪めているものでもある。
 このように、「再エネ電力は高コスト」などとできない理由を並べている間に、*10-3のように、車載電池では日本のチャレンジャーメーカーがはじき出されて脱落し、米国は韓国メーカー等と連携を深めている。一方、従来型に固執して既得権益を守るメーカーと新規事業にチャレンジするメーカーのどちらが次の時代に必要であるかは明白であるのに、政府が誤った選択をする日本は、新規のベンチャー企業などが育ちにくい。他国がやったのを見てあわてて追随するのは、文明開化時代の後進国ならともかく、既に経済発展をしてリーダーの立場になっていた日本としてはあまりにお粗末で、これでは今までの取引を失ってもやむを得まい。
 その上、*10-4のように、経産省が40年以上経過しても原発の使用済核燃料の貯蔵や処分、プルサーマル発電の推進のために自治体に支援策として血税を大量投入し、市場に誤った勝敗をもたらしているのは、国民にとっては「百害あって一利なし」であり、税と高額な電気料金の二重負担になっているのである。

*10-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?ng=DGKKZO72030850Z10C21A5MM8000 (日経新聞 2021.5.19) 化石燃料へ新規投資停止 50年脱炭素、IEAが工程表
 国際エネルギー機関(IEA)は18日、2050年までに世界で温暖化ガス排出量を実質ゼロにするための工程表を公表した。化石燃料への新規投資をすぐに停止し、35年までにガソリン車の新車販売をやめる。50年にはエネルギー供給に占める再生可能エネルギーの割合を約7割に引き上げる必要があり、脱炭素へ具体的な取り組みが求められる。50年までに温暖化ガス排出量を実質ゼロにするのは、地球温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」が定める「産業革命からの気温上昇を1.5度以内に抑える」目標と合致する。主要国が相次ぎ「排出量ゼロ」を表明したことを踏まえ、11月に英国で開かれる第26回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP26)を前にIEAが具体的な道筋を示した。代表的な温暖化ガスである二酸化炭素(CO2)でみると、燃料燃焼や産業工程からの排出量は20年で340億トンだった。50年の温暖化ガス排出実質ゼロを宣言した日米EU(欧州連合)や、60年のCO2排出実質ゼロを宣言した中国など各国・地域の目標を集計すると、CO2排出量は30年に300億トンになる。50年に温暖化ガス排出量を実質ゼロにするには、30年にCO2排出量を20年比で約4割減の210億トンにする必要がある。IEAのビロル事務局長は「(実質排出ゼロは)難しいが、達成可能だ」との声明を発表。各国政府が強力な対策をとるよう求めた。化石燃料への新規投資を即時にやめ、エネルギー供給に占める再生可能エネルギーの比率を30年時点で3割、50年時点で約7割にする必要も指摘した。原子力の割合を11%に増やす一方、石炭は50年までに20年比で9割減らす。電気自動車(EV)への移行や新興国の成長で発電量は50年までに2倍強に増える。先進国は35年、世界全体も40年までに再生エネ導入などで電力部門の排出を実質ゼロにする必要がある。輸送部門ではEV普及がカギだ。新車販売でEVとプラグインハイブリッド車(PHV)などの割合は足元で4.6%だが、30年に6割、35年までにほぼ全車がEVと燃料電池車(FCV)になることが必要だ。ハイブリッド車は含まれない。スウェーデンのボルボは30年、米ゼネラル・モーターズ(GM)は35年に新車をすべてEVにすると決めた。ホンダは40年までに全ての新車をEVかFCVに切り替える。30年以降の排出減には新技術の活用が不可欠だ。代表例が水素活用や、CO2を地中に埋めたり再利用したりするCCUSと呼ばれる技術だ。IEAの50年排出量実質ゼロの筋書きではCCUSを使い76億トンのCO2を取り込むと試算する。エネルギー投資は20年までの5年間は年平均2.3兆ドル(約250兆円)で推移しているが、30年までに年5兆ドルに引き上げる必要がある。脱炭素の取り組みで化石燃料部門で500万人の雇用が減る一方、30年に向けて1400万人の新規雇用が生まれ、世界の経済成長率を0.4ポイント押し上げるとみている。

*10-2:https://www.nikkei.com/article/DGXZQOFK282N90Y1A220C2000000/?n_cid=SPTMG002 (日経新聞 2021年3月1日) 日本の再生エネ発電費用が高い理由は?
 2021年3月1日の日本経済新聞朝刊1面に「緑の世界と黒い日本(カーボンゼロ)」という記事がありました。1000㌔㍗時の電気をつくる場合、日本の太陽光発電にかかる費用は中国の約4倍になります。なぜ日本は再生可能エネルギーの発電にかかる費用が高いのでしょうか。
●ここが気になる
 発電所を新設した場合どの電源が一番安いかを国・地域ごとに調べたところ、再生エネが最も安い国が多数でした。1世帯が4カ月間に使う1000㌔㍗時の電気をつくる場合、中国は太陽光(33㌦)、米国は風力(36㌦)が最安でした。一方、日本で最も安い電源は石炭火力(74㌦)で、太陽光は124㌦、風力は113㌦かかります。日本で再生エネの発電費用が高止まりしている背景には不十分な送電網があります。地域をまたいで送電できる量が限られているうえ、送電網の運用は電力会社から独立しておらず、電力会社の自前の火力発電所や原子力発電所でつくった電力を優先的に接続します。この仕組みが再生エネの大量導入を阻み、コスト削減につながりにくい一因となっています。英国では送電線の利用に新たなルールを導入したことで再生エネが送電線を使いやすくなり、普及率が高まりました。日本も似た制度を21年に導入するものの、再生エネ事業者にとって不利な状況は変わりません。現在ほとんどない洋上風力が再生エネ拡大の切り札とされていますが、送電網の強化に加え、発電した電気を貯めておく蓄電池の整備も必要で、課題は山積しています。

*10-3:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20210522&ng=DGKKZO72162700R20C21A5TB0000 (日経新聞 2021.5.22) EV電池、相次ぐ米韓連合 供給網で中国に対抗
 車載電池で米韓メーカーの連携が広がっている。米フォード・モーターは20日、韓国のSKイノベーションと米国に電気自動車(EV)電池の合弁工場を建設すると発表した。EVの基幹部品である電池で韓国メーカーの存在感が増せば、日本の部品や素材メーカーがサプライチェーン(供給網)からはじき出される可能性がある。フォードとSKは約6000億円を投じて米国に新工場を建設する。建設地は未定だが、2020年代半ばをめどにピックアップトラックのEV60万台分に相当する60ギガワット時の生産能力を確保し、能力増強も視野に入れる。フォードは19日に主力ピックアップトラックのEVモデル「F-150ライトニング」を公開した。「F-150」は米国で最も売れている人気車で、新型コロナウイルス危機下の20年も78万台を売り上げ、フォードの米国販売の4割を占めた。SKとの合弁で電池の調達にめどをつけ、看板車種のEV化で量産に弾みをつける。米ゼネラル・モーターズ(GM)は19年に韓国のLG化学と提携。22~23年にオハイオ州とテネシー州に合弁の電池工場を完成させ、合計70ギガワット時の電池を生産する。米自動車2強のEVシフトを、韓国の電池大手が支える構図だ。米韓2陣営の投資計画はバイデン米大統領の意向とも合致する。バイデン氏は2月に「半導体」「医薬品」「レアアース(希土類)」とともに「EV電池」を主要4品目と位置づけ、中国に依存しない調達体制の構築を指示した。車載電池は中国の寧徳時代新能源科技(CATL)や比亜迪(BYD)が大手だが、両社は米国への輸出や投資が難しい。18日にフォードのEV工場を見学したバイデン氏は「EVの競争で中国に勝たせるわけにはいかない」と強調した。韓国勢は米中の緊張関係が続く状況を米国開拓の好機ととらえ、投資を加速する。SKの金俊(キム・ジュン)社長は20日、「フォードとの合弁事業は米政府が推進するEV産業のバリューチェーンの構築と育成において核心的な役割を担う」と米国への貢献をアピールした。SKとLGはEV専業の米テスラとの契約こそパナソニックに譲ったものの、米2大メーカーを押さえて一気にシェア拡大を狙う。フォードとGMはEV事業で独フォルクスワーゲン(VW)、ホンダとそれぞれ提携しており、合弁事業を通じて提携先への供給拡大にも道筋がつく。同じ韓国のサムスンSDIも、旧クライスラーを引き継いだ欧州ステランティスに電池を供給している。一方、日本企業では日産自動車と組んでいたNECが車載電池事業から撤退。ジーエス・ユアサコーポレーションも独ボッシュとの電池の合弁事業を解消した。本格的な電池供給を手掛けるのはテスラやトヨタ自動車と組むパナソニックのみだ。完成車メーカーも日産が米テネシー州でEV「リーフ」を生産しているものの、年間1万~2万台と規模は小さい。バイデン大統領は電池だけでなくEVそのものも米国内で生産するよう求めており、生産設備をもたない日本や欧州メーカーは追加投資の判断を迫られる。EVシフトが進むにつれ、自動車のサプライチェーンは電池とモーターを中心としたかたちへと組み替えが進む。基幹部品である電池を中国や韓国メーカーに押さえられれば、日本の部品や素材メーカーは従来の取引を失いかねない。

*10-4:https://this.kiji.is/769847994391150592 (共同通信 2021/5/25) プルサーマル発電で支援策、自治体向けに検討、経産相
 原発の使用済み核燃料の貯蔵や処分に関する対策推進協議会が25日、経済産業省で開かれ、梶山弘志経産相が、プルトニウム・ウラン混合酸化物(MOX)燃料を通常の原発で使うプルサーマル発電の推進に向け、自治体の支援策を検討する考えを表明した。原発を持つ電力各社はオンラインで会合に参加した。梶山氏は、プルサーマル発電を拡大するため事業者間の連携強化を要望し、自治体支援にも触れ「地元の理解確保に向けて、事業者と一体となって取り組む」と述べた。電気事業連合会の池辺和弘会長(九州電力社長)は「支援は大変ありがたい」と答えた。

<日本は役に立つ新産業の育成・普及が遅れる国である(その2)>
PS(2021年5月26日追加): 新型コロナワクチンについては、*11-1のように、「①複数のワクチンを仕分けして適正配分する仕組みが欲しい」「②自衛隊のセンターについては、自治体接種との『二重予約』が防げない等の問題点も判明した」「③打ち手確保のため医師・看護師・歯科医師だけでなく、薬剤師・救急救命士に広げたい」「④大学病院や産業医がいる事業所の診療所などの活用も進めたい」等々、打つ段階になっても問題の指摘が多い。
 しかし、①については、持病のある高齢者など高リスクの人は、かかりつけ医と相談した上で、かかりつけ医か紹介された大病院で安全にワクチンを接種した方がよいため、市区町村が日本で実績を積んだファイザー製を使うのは理にかなっている。また、大規模接種センターは、高齢者や一般人の中でも比較的低リスクの人が素早く接種するために行くので、承認されたばかりのモデルナ製を使ってよいだろう。さらに、②の二重予約は、二重にワクチンを打つ必要はないため遅い方をキャンセルすればよく、どれも普通の大人が考えてわかることである。
 また、③については、日本は人口当たりの医療従事者数が少ないわけではなく、注射するにもリスクがあるため、「緊急だから何でもあり」では困る。従って、④のように、大学病院・産業医のいる事業所・校医のいる学校・大規模スーパーなどで適切なワクチンを選んで接種すれば素早く終了できるだろう。また、ワクチンを打てずに旅行しようとする人等のためには、一度の接種ですむJ&Jのワクチンを、航空会社が空港で有料接種すれば良いと思う。
 なお、日本は新型コロナウイルスのワクチン開発や承認が遅れており、*11-2のように、「⑤科学的エビデンスに基づいて実用化するための国内治験に壁がある」「⑥実用化されたワクチンが既に存在するのに、国産ワクチン候補の治験に参加者を集めるのは難しい」「⑦比較のための『偽薬』を接種する通常の手法が倫理的に許されない」などの課題がある。しかし、⑤⑥については、ワクチンや治療薬の開発を行うには、最初は必ず希望者を募って治験しなければ科学的エビデンスはできないのに、日本では希望者を募っての治験すらやりにくいのが問題なのである。また、⑦については、新型コロナのような重篤にもなりうる感染症で偽薬を使われた人はたまったものではないため、iPS細胞を使った臨床試験など他の方法を開発すべきだ。さらに、いくら難病になってもいい加減に承認された薬剤を使われては困るが、患者が希望しても日本の厚労省が承認していない薬は使えないのも、治験が進まず新薬を世に出せない理由となっている。そして、メディアも、批判のための批判が多すぎて、「君子危うきに近寄らず」という環境を作ってしまっているのは改めるべきだ。

*11-1:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/681276 (佐賀新聞 2021.5.25) 国、地方は連携強化を
 米モデルナ製と英アストラゼネカ製の新型コロナウイルスワクチン承認に続き、東京と大阪で自衛隊運営の大規模接種センターが始動した。都道府県や政令指定都市による独自の大規模会場設置も拡大する見通しだ。10都道府県で緊急事態宣言が発令される中、東京五輪開幕まで2カ月を切った。菅政権は7月末を目標とする高齢者への接種完了に向け大規模接種で局面転換を狙う。ただ複数のワクチンをきちんと仕分けして適正配分する仕組みや、打ち手確保など効率的な接種態勢整備にはなお課題がある。国と地方自治体は連携を最大限に強化しこの難局を乗り切ってほしい。自衛隊運営のセンターは首都圏1都3県と関西3府県の高齢者それぞれ900万人、470万人が対象だ。最大で1日当たり東京1万人、大阪5千人に接種する想定だが、3カ月間フル稼働したとしても対象者の1割程度にしか接種できない。全国の高齢者3600万人に対応するには市区町村が実施する集団、個別接種がフル回転してもなお不足だ。政府の要請で宮城、群馬、愛知各県が開設し、今後は計約30自治体に広がる見通しの自治体独自の大規模会場を早く軌道に乗せたい。それには医師、看護師、歯科医師で注射の打ち手が十分確保できるのか、薬剤師などに広げることが可能なのか、政府は早急に検討し対処すべきだ。自衛隊のセンターについては、自治体接種との「二重予約」が防げないなどの問題点も判明した。予約の際に高齢者に注意喚起するほかない現状であり、政府と自治体の情報共有、連携が従来になく重要とみるべきだ。一方、都道府県と政令市は、7月末完了を目指す政府から尻をたたかれ、市区町村の力不足を補う大規模接種に乗り出す形だ。会場確保・設営、接種や問診に当たる要員確保などの準備は突貫作業を迫られている。自治体同士の人材争奪を避けるためにも大学病院や産業医がいる事業所の診療所などの活用も進めたい。政府が主導して地方への支援を強めてほしい。政府は複数のワクチン活用で接種加速化を図る方針だ。いずれのワクチンも2回接種が必要だが、自衛隊や自治体独自の大規模接種ではモデルナ製、市区町村が先に開始した接種はファイザー製を使う。1回目と2回目で別のワクチンを打つと短期的な副反応が多いとされるため、配送経路も含めてすみ分けを明確にし、現場の混乱を防ぐ。ただ大規模会場がある地域では、どこに予約するかで高齢者が二つのワクチンを選択できてしまう実態がある。別ワクチンを打つことがないよう防止策徹底を求めたい。アストラゼネカ製は、まれに接種後に血栓が生じる例が海外で報告されているため、政府は当面公費接種の対象から外す方針だ。ただ英国などで接種実績があって効果も確認されている上、6千万人分の供給契約が済んでいる同社製を完全に排除するのもどうか。リスクと利益の兼ね合いで接種年齢を絞るなど対策を講じた上で使用する道も探るべきではないか。内閣支持率がジリ貧の菅義偉首相は「ゲームチェンジャー」と位置付けるワクチン接種に起死回生を懸ける。だが集団免疫の獲得には国民8~9割の接種が必要ともされ、すぐに以前の日常が戻るわけではない。過度な期待もまた禁物だ。

*11-2:https://digital.asahi.com/articles/DA3S14916621.html (朝日新聞 2021年5月25日) 国内治験に壁、政府が承認過程見直し議論 国産ワクチン、科学的検証は必須 野口憲太
 「有効性と安全性について、みんなが納得できる科学的なエビデンスがなければならない」。新型コロナウイルスのワクチンについて取材したときの専門家の言葉だ。「周回遅れ」とされ、実用化が待望される国産ワクチンだが、スピードありきではない、科学に基づいた実用化を求めたい。国内企業による「後発」のワクチン開発は大きな壁に直面している。十分な有効性と安全性があるかをみる、最終段階の臨床試験(治験)を国内でやることが難しいのだ。ファイザー製など実用化されているワクチンがすでに存在するなかで、国産ワクチン候補の治験のために未接種の参加者を大勢集めるのは難しい。比較のための「偽薬」を接種する通常の手法が倫理的に許容されるのか、という論点もある。ワクチン候補を使って体内の免疫反応を確認し、有効性を評価する方法もある。だが、「どんな免疫反応が起きれば、感染や発症を防げるのか?」の知見は確立していない。海外での治験も模索されるが、世界でワクチン分配がすすめば、同じ壁にぶつかる。政府は今後、承認過程の見直しの議論をすすめる。難病の治療薬開発で使われる「条件付き早期承認制度」の適用を求める声があるが、大勢の健康な人が接種するワクチンへの適用は慎重になるべきだ、という意見は重い。さまざまな制約を克服するためには、厚生労働省など規制をかける側にもある程度の柔軟さが必要だろう。ただ、壁を乗り越えることや迅速さが目的となって、科学的な検証がないがしろにされてはならない。そもそもなぜ治験をするのか? ワクチン候補の有効性と安全性を確かめるための、科学的な証拠を得るためだ。柔軟さが必要でも、それは科学に基づいた検証に耐えうるものでなければならず、世論の期待感や政治的な思惑とは距離を置く必要がある。たとえ「後発」でも、使えるワクチンが増えることは望ましい。使われる技術は次の危機への備えにもなる。「みんなが納得できる」ワクチンを、この国がしっかり生み出すことができるのか、これからも注目したい。

<日本は役に立つ新産業の育成・普及が遅れる国である(その3)>
PA(2021年5月28、31、6月4《図》日追加):*12-1のとおり、自宅療養に必要な介護サービスを支える介護保険料は、現在は主として65歳以上の高齢者に支払わせている。そのため、所得の少ない年金生活者に月額6千円を超える負担を強い、現在の制度のままでは高齢者人口がピークの2040年度には高齢者の介護保険料負担が8千円を超えるという試算もある。その上、年収200万円(月収16.7万円)以上の高齢者は医療費の窓口負担が1割から2割に引き上げられ、収入源である年金の方は減らされて、高齢者の暮らしが成り立たなくなった。これら一連の政府(特に厚労省)の政策は、「高齢者はお荷物だから、早く死んでくれ」と言わんばかりだ。
 しかし、戦後の働き手は、制度ができて以降は制度に従って社会保険料を支払ってきたため、受給段階になって積立金が足りないのなら、それは100%管理者の責任だ。さらに、日本は高齢化先進国であるため、高齢者の需要を満たす製品は今後の世界の売れ筋商品になり、これは政治や行政が勝手に決めた供給政策よりずっと利益獲得機会が確実なのである。
 その一例として、*12-2のセコムのセンサー技術等を使った見守りサービスがあり、今後、サービス内容を充実させたり、1人あたりの生産性を高めたりすれば、便利でニーズの高い第三次産業になる。また、*12-3の食事の準備が難しくなった高齢者の自宅に美味しくて栄養バランスのよい食事を届ける配食サービスも、自活や自宅療養をやりやすくして社会的入院を減らすことに貢献する。そのため、医療や介護と連携して自治体が協働するのもアリだが、実需なので民間の工夫で第一次産業・第二次産業・第三次産業を包含しながら発展することも可能なのだ。それにもかかわらず、政府は高齢者の可処分所得を減らすことに専念して、高齢者がそのニーズにあった消費を選択できないようにしているのである。
 なお、*12-4のように、公表されているだけで全国の介護施設で9,490人が感染して486人が死亡し、46自治体で入院が必要なのに施設にとめおかれた高齢者がおり、介護現場はコロナ療養まで担って負担が激増するというあってはならない事態が起こった。しかし、介護施設に入所している高齢者は出歩かないため、介護担当者や出入業者などの関係者から感染したことは明らかで、検疫をザルにし、介護関係者のPCR検査やワクチン接種をケチった厚労省(含:専門家会議)の責任は重い。

   
    2021hitoshia          2021njg        2021nliresearch
 
(図の説明:左図が介護保険制度の仕組みだが、主として65歳以上の高齢者しか対象にしていないため、負担に無理があると同時に給付内容に不足がある。また、中央の図のように、負担に上限が設けられているのは良いが、介護は医療と同時に行われ、長期に渡るため、医療費と合計した上限にすべきだ。なお、右図のように、介護保険制度は、2003年から2019年まで改正を重ねてきたが、その度に介護保険料が上がり、高齢者の保険料負担が上限を超えている)

   
2021.5.30琉球新報   2021nliresearchi

(図の説明:左図は、2020年5月と2021年5月で介護施設の新型コロナ感染者数と死者数を比較したものだが、病態がわかってきたのに感染者数が20倍にもなっているのは自然でない。また、中央の図は、厚労省の介護保険部会で論じられている検討事項だが、介護予防や健康作りのために介護保険料を支払っているのではないため、これは目的外支出だろう。さらに、自宅療養を可能にするためには、右図の地域包括ケアの充実が必要不可欠だが、現在は介護としての生活支援が不足しており、ケアマネジメントやケアプランは最低コストで最大効果を出して患者を護るための介護計画であるため、介護費用に含まれるべきであって有料にするのはおかしい)

*12-1:https://www.nishinippon.co.jp/item/n/743038/ (西日本新聞社説 2021/5/23) 介護保険料上昇 制度改革へ国民的議論を
 生活がだんだん苦しくなる。そんな実感から不安を募らせる高齢者も少なくないだろう。65歳以上の高齢者が支払う介護保険料が全国平均で初めて月額6千円を超え、6014円となった。制度が始まった2000年度から2倍に膨らんだ。高齢者の保険料は市区町村や広域連合が3年に1度見直す仕組みで、今年4月の改定ではおおよそ半数が引き上げた。九州でも高齢化が進む市町村などの多くで保険料が上昇した。高齢化が進むと、要介護や要支援と認定される人は増え続ける。高齢者が払う保険料は、団塊の世代がすべて75歳以上になる25年度には7千円に迫り、高齢者人口がほぼピークに達する40年度は8千円を超えるという推計もある。このままでは、負担の増大は避けられない。一定の収入がある高齢者は医療費の窓口負担を1割から2割へ引き上げる法案が今国会で成立の見通しだ。その一方で高齢者の主な収入である年金は減っている。介護保険料を滞納し、資産を差し押さえられる人も増え、18年度は全国で約2万人に達した。困窮する高齢世帯の支援は待ったなしの課題だ。介護保険制度はこれまで保険料の引き上げと利用時の自己負担増、サービスの縮小で維持されてきた。その結果、高齢者全体の暮らしは徐々に厳しさを増している。介護報酬体系の複雑化を問題視する声もある。日本の高齢化率は40年以降も上昇するだろう。慢性的な介護人材不足の解消には待遇改善は不可避だ。介護保険制度の持続には「負担と給付」の在り方を抜本的に見直す必要がある。現役世代の過度な負担増には配慮が欠かせないとはいえ、保険料を支払う年齢を現行の40歳以上から引き下げることも検討対象とすべきだ。サービス利用時に2割、3割を自己負担する高齢者の範囲を広げることについても議論の余地があろう。介護保険の財源の半分は国や自治体の公費で賄われている。保険料や自己負担の引き上げだけでなく、税制全体に踏み込んだ議論も避けるべきではない。必要なサービスが過不足なく提供されているか。無駄なサービスがないか。チェックが欠かせない。自治体による介護予防の効果も検証を急ぎたい。高齢になった子が老いた親を介護する老老介護や介護離職に続き、介護などの負担にあえぐ若年層を意味する「ヤングケアラー」が社会問題化している。このまま手をこまねいていては、介護保険制度の柱である「介護を社会全体で担う」との理念が損なわれてしまう。政府は早急に制度の見直しに着手し、国民的議論を喚起すべきだ。

*12-2:https://digital.asahi.com/articles/ASNCW5DBQNCTULFA02G.html (朝日新聞 2020年12月2日) 会えない、だけど見守りたい セコム社長語るコロナ需要
 コロナ禍の猛威が続くなか、企業に広がったテレワークや時短営業。その影響は警備業にも及んでいるという。どんな状況なのか、セコムの尾関一郎社長に聞いた。私たちの売上高(連結)の5割以上はセキュリティーサービス事業で、主力はオンラインによる機械警備です。会社に出勤する人がいなくなったり、店が24時間営業を取りやめたりすれば、無人の時間帯が発生し、警備の需要が発生します。4、5月の緊急事態宣言期間は経済活動が止まった一方、サービス解約の動きはあまり出ませんでした。国内のグループ合計のセキュリティー契約件数(事業所や家庭など)は9月時点で約250万件で、3月時点から約3万件増えました。コロナ対応でオフィスが集約されると、需要が減る面はありますが、世の中の動きとしてはあまり出ていないと思います。今後の感染状況にも左右される外食やアパレル業界などの店舗の統廃合は心配ですが、現状は新規の契約でカバーしています。一方、コロナ禍で家庭向けのサービスでは、当初の想定とは違う形でニーズが出てきました。離れて暮らす高齢の家族に「会いたいけど会えない」状況でも、健康状態を見守りたいというニーズです。当社は以前から見守りのサービスに力を入れてきましたが、センサー技術を使った新たなサービス導入に向けて準備しています。事業者向け、家庭向けともに需要が高まると、異状があれば現場に急行する警備員にとっては、担当件数も増えます。1人あたりの生産性を高める必要があります。コロナの影響で雇用が流動化して比較的人材が採りやすい環境になり、いっそう中途採用に力を入れています。とはいえ、ただでさえ夜勤があるような厳しい職場。社員の負担を軽くすることは取り組むべき課題です。

*12-3:https://www.nikkei.com/article/DGKKZO63735200R10C20A9KNTP00/ (日経新聞 2020年9月14日) 高齢者に配食サービス、自治体が支援、安否確認も
 食事の準備が難しくなった高齢者の自宅に弁当を運んでくれる配食サービスが広がっている。住む地域によっては、ひとり暮らしやお年寄りだけの世帯向けに自治体が料金を一部負担したり、安否確認を兼ねたりするサービスもある。栄養バランスのとれた食事の活用も考えてみてはどうだろう。東京都東村山市に住む80代のひとり暮らしの男性は、夕方に弁当が届くたびに配達員との会話を楽しみにしているという。玄関で弁当を手渡すと男性は事前に購入した複数枚つづりの配食チケットを1枚(550円)を切り取って交換。その日にあった出来事などを軽く雑談するという。「栄養バランスもあり、季節ごとのメニューも良い」と満足した様子だ。東村山市の助成は、原則65歳以上のひとり暮らしか70歳以上の高齢者のみの世帯が対象。心身の障害や傷病などで調理が困難だと認められる場合、月曜から金曜日に夕食の配食サービスを利用できる。1食あたりの料金の一部を市が負担する。7月末時点で約120人が利用している。配食時に見守りサービスを組み合わせる自治体は多い。京都府長岡京市は配食事業者へ安否確認を委託。見守り費用として1日につき1回320円を助成、市が事業者に支払う。事業者は高齢者に食事を手渡し「今日もお変わりないですか?」といった声かけもする。利用者から毎回、サインやなつ印をもらう。玄関の呼び鈴を押しても反応がないなど異変を発見した場合は市役所や家族、介護などの窓口になる地域包括支援センターなど事前に登録してもらった場所に速やかに連絡する。「孤独死防止や生活不安の解消が狙いだ」(同市)。現在、市内で約280人の高齢者が利用している。愛知県西尾市は2018年から昼食か夕食かを選択できるようにした。19年度の利用者は375人になった。市は1日1食あたり250円を負担する。「利用者も増え、高齢者の安否確認を充実させることにつながっている」(同市)。福岡県直方市では高血圧や糖尿病の高齢者向けに減塩食のメニューが選択できる。1食の塩分使用量が2.3グラム以下の弁当を用意し、市が1食209円を支援する。減塩食の利用者負担は520円と普通食の370円より高いが「配食利用者約220人のうち39人が頼んでいる」(直方市)。東京都台東区では社会福祉協議会が業者に依頼し、普通食のほか糖尿病や腎臓病などで食事制限がある人向けにカロリーやたんぱく質を調整する特別食(600円から730円)を昼と夕食のメニューに加えている。健康管理に役立てている。配食支援は各地の自治体などが手がけているが意外と知らない人も多い。申し込む場合は高齢者の居住地によって心身の衰えや疾病の状況、家族の支援の有無の条件などが異なる。高齢者と離れた場所で暮らす親族が敬老の日を前に、自治体の公式ウェブサイトや役所に電話で確認してみるのもいいかもしれない。

*12-4:https://ryukyushimpo.jp/kyodo/entry-1330404.html (琉球新報 2021年5月30日) 全国の介護施設で感染9490人 486人死亡、共同通信調査
 高齢者が入所する介護施設で、新型コロナウイルスに感染した入所者が全国で少なくとも累計9490人おり、このうち486人が亡くなっていたことが30日、共同通信の調査で分かった。46自治体が、入院が必要にもかかわらず施設にとどまった高齢者がいたと回答した。昨年5月に共同通信が実施した同様の調査では、感染した入所者は474人、死者79人。感染者は1年で約20倍となった。非公表とする自治体もあり、実際の数はさらに多いとみられる。介護現場では本来の業務に加え、感染防止策、コロナ療養も担うなど負担が激増。感染弱者の高齢者に病床逼迫のしわ寄せが及んでいる恐れもある。

<日本は役に立つ新産業の育成・普及が遅れる国である(その4)>
PA(2021年5月30日追加): 日本政府は、*13-1のように、2021年版「ものづくり白書」で、経済安保の観点から国内の製造業にサプライチェーンを強化し、リスクを把握するよう求めたそうだ。私も、*13-2のように、尖閣諸島沖の中国漁船衝突事件の後にレアアースが輸出制限されたこともあり、日本も国内供給網を充実させておくことは必要不可欠で、自由貿易だからといって「石油は中東」「レアアースは中国」「家電も中国」「食料も中国ほか外国」「繊維製品も中国ほか外国」など何でも輸入に頼っているようでは、そのうち売る物がなくなり、言うべきことも言えなくなると思う。さらに、レアアース・メタンハードレート・原油などが、上の(5)で述べたとおり、日本の排他的経済水域に大量に埋蔵されていることは既に発見されており、現在は日本が資源国になっていることに外国は気付いているのに、日本の行政・政治・メディア・国民だけがそれに気付いていないという情けない状況なのだ。
 資源があれば、それを巡っての争いも起きやすくなる。そのため、日本は、論理的に筋を通した上で自衛する必要もあり、*13-3のように、米軍が国外兵員配置を欧州・中東から東アジア・太平洋に移しているのも必然だ。しかし、日本では「石油供給の9割を中東に依存するため、米国が中東から手を引く影響を最も受ける」などと馬鹿なことを言っているのであり、資源所在の変化に気付いていないのである。また、*13-4のように、英空母群もインド太平洋に出航し、米国やオランダの艦船も加わって日本での共同訓練を調整しているのは頼もしいが、ジョンソン首相が外交安保の新戦略で「経済、地政学上の中心」としてインド太平洋地域への「傾斜」を表明したのは、香港・台湾の自由と民主主義のためだけではない筈だ。

*13-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20210528&ng=DGKKZO72359120Y1A520C2EAF000 (日経新聞 2021.5.28) 「供給網リスク把握を」 ものづくり白書、経済安保を重視
 政府は28日、2021年版の「ものづくり白書」を閣議決定した。経済安全保障の観点で米国や中国、欧州が輸出入の管理を強めていることを踏まえ、国内製造業に自社のサプライチェーン(供給網)を強化し、リスクを精緻に把握するよう求めた。脱炭素化とデジタル化の推進も不可欠とした。新型コロナウイルスの感染拡大や米中の貿易摩擦を背景に国際的な供給網の再構築が課題となっている。デジタル化や脱炭素化が加速するなか、半導体や蓄電池といった重要部品で強固な供給網をつくることが国際競争力の向上に直結すると強調した。コロナ禍で物資供給に支障が出たことを受け、「世界で同時多発的に発生する寸断リスクへの対応に取り組まねばならない」と指摘し、事業継続計画(BCP)では自社被害だけでなく供給網全体で備えることを求めた。

*13-2:https://news.yahoo.co.jp/byline/nishiokashoji/20210223-00224079/ (Yahoo 2021/2/23) アメリカに「レアアース輸出制限」をちらつかせながらも踏み切れない――中国に根深い “対日トラウマ”
 レアアース(希土類)の主要産出国である中国が「仮に輸出制限に踏み切れば、米欧の防衛産業にどれだけの打撃を与えられるか」という値踏みを始めた――と、英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)が最近報じた。米国に対するレアアース規制という中国の“報復”措置はたびたび俎上に載せられるが、いつの間にか、立ち消えになっている。中国側が踏み切れない事情とは……。
◇「輸出制限で米防衛産業にどれぐらいの影響?」
 FTは今月16日、「米中対立の際、中国がレアアースの輸出を制限した場合、防衛請負業者を含む米国や欧州の企業にどのぐらい影響が及ぶかと、中国政府当局者が業界幹部に質問した」と伝えた。中国がレアアースの輸出規制というカードで米側に揺さぶりをかけるというポーズをちらつかせた形だ。レアアース規制は2019年に米中関係が悪化した時にも注目された。当時のトランプ政権が中国通信機器大手・華為技術(ファーウェイ)に対し、米製品輸出や米国由来の技術移転を規制するなど強硬姿勢を見せた。この際にも、中国側が報復措置としてレアアース輸出規制に踏み切るかどうか、国際社会の関心を集めていた。中国共産党機関紙・人民日報系「環球時報」の胡錫進編集長は中国版ツイッター「微博(ウェイボー)」で、FT報道を「米中対立の機運をさらに盛り上げて、これを喜んでいる」と批判しつつも「中国が米国に『レアアース戦争』を仕掛けなければならないほどの対立には至っていない」と火消しに回った。同時にバイデン現政権に向けて「理性を取り戻し、米中を深刻な関係断絶の方向に推し進めないよう願う」と求めた。
◇「中東に石油、中国にレアアース」
 レアアースとは、希少金属(レアメタル)の一種。磁力を強めるネオジムや、高温でも磁力が落ちないジスプロシウムなど、17種の元素の総称だ。スマートフォン、パソコン、省エネ家電、ハイブリッド車、電気自動車(EV)、最新鋭ステルス戦闘機F35、対戦車ミサイル「ジャベリン」、レーザーなど、幅広い分野で不可欠な材料であり、「産業のビタミン」などとも呼ばれる。そのレアアースの埋蔵量は中国が世界の30%以上を占める。中国では1950年代から周恩来首相(当時)らがレアアース産業に注目し、発展計画を立ててきた。92年には当時の最高指導者、鄧小平氏が南方視察の際、「中東に石油あり、中国にレアアースあり。どうあろうとも、レアアースの仕事をうまく処理していくべきだ」と積極展開を指示してきた。中国は安い採掘コストを背景に生産を急拡大させ、それに押された米国などは産業を縮小せざるを得なくなった。その結果、中国は2007年、世界の生産量の96.8%を握る「一人勝ち」状態になった。一方で、中国のレアアース産業には多様な問題点が浮き彫りになった。需要が高まる中で生産統制が甘くなり、不法採掘や密輸が横行▽生産過程で土壌・地下水・大気の汚染が深刻化▽中国の急速な経済成長に伴いレアアースの国内需要の大幅増――などから、そもそも輸出に慎重にならざるを得ない状況にはある。
◇尖閣事件のダメージ
 中国は「一人勝ち」を背景に、外交関係が悪化した国に対し、輸出規制というカードをちらつかせてきた。それがはっきり示されたのが、2010年9月7日に起きた沖縄県・尖閣諸島沖での中国漁船衝突事件だった。日本領海内で違法操業した中国漁船が海上保安庁の巡視船に体当たりしたため、海保が船長を逮捕。すると中国側が反発し、日本向けのレアアース輸出の通関手続きを滞らせる事実上の「禁輸」措置に打って出て、日本側に動揺が広がった。ただ、レアアースの戦略的活用が相手国に打撃を与える一方で、多くの「副作用」も露呈した。日本は事件後、「中国に頼らない供給の仕組みをつくるべきだ」として新たな供給網の構築を進めるとともに、代替技術の開発も促進した。このため輸入全体に占める中国の割合は09年の85%から18年には58%にまで引き下げられた。さらに、中国産レアアースの相対的な価値が低下した▽中国が国際的な信頼を失い、海外で別の資源を採掘するのが困難になった▽不法採掘や密輸が一段と深刻化した――などの逆風が吹き、中国のレアアース産業もダメージを受ける形となった。対米規制が実施された場合にも、同様の事態が予想される。中国にとってレアアース規制は「もろ刃の剣」でもあるようだ。

*13-3:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20210523&ng=DGKKZO72176310T20C21A5MM8000 (日経新聞 2021.5.23) 軍事の重心、西から東へ、対中シフト、在外米兵5割がアジア
 世界の軍事力の重心が西から東へ移ってきた。米軍の国外の兵員配置は20年間で、欧州や中東に代わり東アジア・太平洋が最も多くなった。世界全体の兵力もアジア太平洋の比重が高まる。冷戦期の東西対立から対テロ戦争を経て、中国が安全保障上の脅威になった変化を映す。米国の対外戦略が転換点を迎えている。バイデン米大統領はアフガニスタンの駐留軍を9月までに撤収する方針を打ち出した。4月には日米首脳の共同声明で台湾海峡に触れた。中国抑止を重視する姿勢が前面に出る。米国防総省のデータから米軍の在外兵力の配置の変遷をみた。2000年の駐留先は6.9万人のドイツが最多だった。01年の米同時テロ以降は中東に軸足を移し、ピーク時はアフガニスタン、イラクに各10万人超を投じた。13年に当時のオバマ米大統領は「もはや世界の警察官ではない」と語った。20年までの10年間で在外兵力は全体で5割程度減った。一方で東アジアの同盟国の日本や韓国では規模を保っている。米国以外の動向はどうか。英国のシンクタンク、国際戦略研究所(IISS)が発行する「ミリタリー・バランス」のデータで世界の兵力分布や装備の変化を調べた。世界全体の兵力は縮小が進む。冷戦期に東西対立の前線だった欧州・旧ソ連諸国は30年間で半分以下に減らした。対照的に中国周辺の新興国などが増加した。インドネシアは30年間で4割、フィリピンは3割、国境紛争を抱えるインドは15%伸びた。アジアの比重が顕著に高まった。中国は兵員数を減らしたものの装備の充実が目覚ましい。1990年にゼロだった中国の近代型戦闘機の保有数は30年間で米国に次ぐ規模に膨らみ、自衛隊や在日米軍を上回る。日韓台も新型装備の導入に力を注ぐ。中国が競争を招く構図が浮かび上がる。中国はミサイルや潜水艦も大幅に増強した。米国防総省などの分析によると、台湾を射程に収める短距離弾道ミサイルは95年の50発から19年時点で750~1500発に増えた。中距離弾道ミサイルも950発以上と推計される。「多くの人が考えるよりもずっと近いと思う」。4月末に就任したアキリーノ米インド太平洋軍司令官は3月、上院の公聴会で中国の台湾侵攻への危機感を訴えた。オースティン米国防長官は3月の来日時、記者会見で「中国などへの競争優位性を持つ必要がある」と強調した。同氏は中東を管轄する米中央軍司令官だった。いまは「この20年、我々は中東に関心を払ってきた。その間に中国は軍の近代化を進め、威圧的な行動をとるようになった」と警鐘を鳴らす。防衛研究所の塚本勝也社会・経済研究室長は「米国にとって地域の軍事バランス回復は急務だ」と話す。「前方展開能力を高め、中国のさらなる台頭を抑え込もうとしている」と分析する。米国のプレゼンスだけで中国に対峙するのは難しく、同盟国の責任も増す。日米首脳の共同声明は日本の防衛力強化の決意を盛り込んだ。岸信夫防衛相は国内総生産(GDP)比1%の枠にこだわらず防衛費を増やす方針を示す。変化の影響は中東にも及ぶ。三菱総合研究所の中川浩一主席研究員は最近のイスラエルとパレスチナの衝突激化を「バイデン政権の脱中東、対中国シフトの外交戦略による面が大きい」とみる。日本は石油供給の9割を中東に依存する。中川氏は「米国が中東から手を引く影響を最も受ける」と警戒する。世界の軍事バランスの変動は日本に新たな安保上の難題をもたらしている。

*13-4:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/680768 (佐賀新聞 2021年5月23日) 英空母群、インド太平洋へ出航、日本で共同訓練調整
 英軍の最新鋭空母「クイーン・エリザベス」を中核とする空母打撃群が22日、初のインド太平洋地域への展開に向けて英国を出航した。英メディアが23日報じた。同地域を重視するジョンソン政権の安全保障戦略の象徴として、日本やインドなど約40カ国に寄港。台頭する中国をけん制する狙いもあるとみられる。艦隊は7カ月をかけて地中海やインド洋、太平洋に展開。日本では自衛隊との共同訓練も調整されている。シンガポールや韓国にも寄港する。クイーン・エリザベスは2017年に就役した英最大級の艦艇で、排水量6万5千トン、全長280メートル。英政府によると、今回の派遣では駆逐艦やフリゲート艦、潜水艦を従え、最新鋭ステルス戦闘機F35Bなども配備する。米国やオランダの艦船も加わる。出航前の22日にはエリザベス女王が司令官らの激励に訪れた。ジョンソン首相は「インド太平洋地域の平和と安全への関与を行動で示し、われわれの影響力を示す」と意義を強調している。ジョンソン政権は3月に公表した外交安保の新戦略で「経済、地政学上の中心」としてインド太平洋地域への「傾斜」を表明した。

<日本は役に立つ新産業の育成・普及が遅れる国である(その5)>
PS(2021年5月31日追加): 医療が逼迫してパルスオキシメーターも足りなくなり、自宅療養中に死亡者が出たという沖縄県で、*14-1のように、治療が必要な自宅療養者を対象として訪問看護が開始されたそうだ。訪問看護も介護と同時期に始まった自宅療養に必要な制度であるため、これまで表に出なかったのが不思議なくらいだ。しかし、沖縄は島なのに、新型コロナ感染者が増えた理由は、空港での検査がザルだったからではないのか?理由を明らかにしてそれを止めなければ、現象のみに対応しても「焼石に水」である。また、家族がいるのに感染者が自宅療養すれば、マスクを着けたり消毒したりしても家庭内感染を止めることはできないため、軽症ならホテル療養することになっていたではないか?
 また、*14-2には、「①診療所には内科でも発熱患者を拒むところが多い」「②発熱・体調不良の患者が最初に相談する窓口は住民に身近な診療所であるべき」「③日本ではその役割を保健所が引き受け、業務逼迫でパンクした」「④通常の診察を大きく減らして地域の高齢者に幅広く接種する開業医は少数」「⑤コロナ禍は診療所の存在意義も問いかけている」「⑥小規模な民間病院の再編・統合を促す政策を打ち出すことが必要」と書かれている。
 しかし、①②は、一般の患者と動線を分けられない診療所は、新型コロナの疑いのある患者を避けて院内感染を防ぐ必要があるので仕方がない。また、④は、病気は新型コロナだけではないため、通常の診察を大きく減らすわけにもいかない。しかし、③のように、保健所が間に入ったことで、医師以外の慣れない人に相談して埒があかなかったり、無駄な時間を費やしたりするケースが多かったのだ。従って、⑤については、自宅療養するためには適切な数の診療所は必要であり、⑥のように、小規模な民間病院を再編・統合すればうまくいくとは限らない。
 それでは何が必要かと言えば、*14-3のように、都道府県が地域の事情に合わせて「地域医療構想」を作り、病院間の役割分担・訪問看護・介護の計画や広域医療計画を立てることが必要なのだ。ただし、重症者や救急患者に対応する急性期を治療するのが病院なので、病院の急性期病床を減らすのは誤りだ。それ以外にリハビリ病床は必要だが、生活習慣病などの慢性期は病床を増やすよりも自宅療養を可能にする方が重要だろう。つまり、「急性期病床を減らせ」「症状が軽くなったら主治医を変えよ」などという誤った指示をするから話が進まないのであり、それらの総合的結果として「新型コロナ患者受入拒否」や「医療崩壊」に繋がったのだと思う。

*14-1:https://ryukyushimpo.jp/news/entry-1330606.html (琉球新報 2021年5月31日) 自宅療養1000人超す これまで2人死亡 沖縄県は訪問看護開始
 沖縄県の糸数公医療技監は30日、これまでに県内で自宅療養中に亡くなったのは、今月15日に発表した那覇市の70代女性と、4月30日に発表した那覇市の40代男性も新たに含まれることを明らかにした。新規感染者の急増で医療がひっ迫し、病床占有率は30日現在、95・7%に上る。自宅療養者は1088人となり、高齢者や持病がある人も自宅療養せざるを得ない状況となっている。血中の酸素飽和度を測るパルスオキシメーターも全ての自宅療養者に配布されておらず、県の配布対象は高齢者や基礎疾患がある人などに限られている。急増する自宅療養者への対応強化は必至だ。県によると、自宅療養者にはパルスオキシメーター300個を高齢者と基礎疾患がある人に優先的に配布した。500個を追加で購入する予定だが、不足が想定されるため、全員に行き届いていない。療養期間が終了した人は返却するよう返信用封筒も渡しているものの、返却状況が好ましくないという。糸数技監は「感染者が増える中で、パルスオキシメーターは貴重な医療機材だ。返却の協力をお願いしたい」と訴えた。県は投薬などの治療が必要な自宅療養者を選定し、県看護協会に委託して訪問看護を始めている。30日現在、これまでに実施したのは6件。今後、投薬が必要な自宅療養者の増加が想定され、調整を進めている。酸素投与や薬の投与などの医療行為は訪問看護がなければ受けることはできず、解熱剤のアセトアミノフェンなど一般の市販薬を常備し、自身で服用するしかないのが現状だ。糸数技監は「体調が変化したときは近くにいる人に速やかに伝え、県に連絡をいただきたい。家庭ではマスクの着用、触ったところの消毒など家庭内の感染対策にも注意が必要だ」と述べた。

*14-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20210531&ng=DGKKZO72396640Y1A520C2TL5000 (日経新聞 2021/5/31) 開業医、問われる役割
日本の医学部定員は9330人と過去最多の水準にある。2016年には37年ぶりに医学部を新設した。厚労省は医師数が現在の33万人弱から36万人台まで増える29~32年ごろに需給が均衡するとしている。だが政府が医師数を増やす方針に転じたのは08年から。1980年代から医療の質を高める改革を始めたことを考えると、後手に回ったのは明らかだ。80年代前半に8280人だった医学部定員はその後縮小され、90年代以降は7600人程度に据え置かれた。医師が増えると医療機関の開業も増え、既存の診療所や病院に患者が集まらなくなる。こう懸念した日本医師会が医師を増やすことに反対したためだ。小規模な民間病院の再編・統合を促す政策も打ち出せず、病院勤務医の業務が増えるにつれて日本の医療は機動力を失っていった。医師会が守ってきた診療所には、内科でも今なお発熱患者を拒むところが少なくない。コロナとの闘いの「外側」にいる医師がかなりいる。ワクチン接種には多くの診療所が手を挙げたが、接種対象者を日ごろの患者に限っている例が多い。通常の診察を大きく減らし、地域の高齢者に幅広く接種するという開業医は少数だ。発熱や体調不良の患者が最初に相談する窓口は本来、住民に身近な診療所であるべきだ。日本ではその役割を保健所が引き受け、そして業務逼迫でパンクした。コロナ禍は診療所の存在意義も問いかけている。

*14-3:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20210531&ng=DGKKZO72385760Y1A520C2TCS000 (日経新聞 2021/5/31) 病状・緊急性で役割分担 全日本病院協会会長 猪口雄二氏
 国は都道府県に「地域医療構想」を策定させ、2025年に向けて病院の再編・統合や病床の転換を促してきた。団塊の世代がすべて75歳以上になって長期療養の病床が必要になるとともに、人口減少で医療需要が大きく変わるためだ。国は全国の病院に対し、病床を(1)高度急性期(2)急性期(3)回復期(4)慢性期――の4つに分類して現状と25年の見通しを報告させた。急性期病床を少なくし、リハビリを中心とする回復期病床や生活習慣病などに対応する慢性期病床を増やす推計を基本とした。18年から都道府県ごとの調整会議で検討してきたが、25年の推計病床数を達成できないのはほぼ間違いない。調整会議で病院団体や地元医師会の代表が議論しても、個々の病院が経営判断として急性期病床の転換に踏み切れなかった。日本は重症者や救急患者に対応する急性期だけでなく、回復期や慢性期病床を併せ持つケアミックス(混合型)病院が多い。こうした病院は高齢者が多く、職員配置も薄いため、院内感染のリスクが高いコロナ患者を受け入れにくい。国内に一般病床は90万床近くあるが、人手を要するコロナ患者に対応できる急性期病床は40万床程度ではないか。ただ、人口が減少する地域では急性期の需要が減ることは変わりがない。地域に最適な機能分化が必要だろう。欧米の病院では急性期の入院患者に特化している。日本では東京都でさえ、医療スタッフが分散し、夜間に心筋梗塞などの救急患者に緊急手術できる病院は限られる。病院単位で機能分化して再構築を進める必要があるだろう。難易度が高い緊急手術のような高度急性期の患者は大学病院など大病院に集約する。通常の救急患者は地域医療支援病院など中核病院が対応する。急性期に至らない「亜急性期」の患者を受け入れる地域に密着した病院も必要だ。外来は地域密着型病院や診療所で総合診療医などが担当する。このような再構築の実現には身近な地域単位で病院自身が加わって議論する必要がある。

<日本は役に立つ新産業の育成・普及が遅れる国である(その6)>
PS(2021年6月2日追加):*15-1のように、2020年度森林・林業白書は、2050年にCO₂排出量を実質ゼロに減らす政府目標に向け、温暖化ガス吸収源の森林整備が重要だと明記したそうだ。林業の経営強化には、省力化に繋がる技術開発も重要だが、林業地域は住居費が安く自然環境もよいため、343万円という年間平均給与は、再造林の意欲をしぼませて造林面積を伐採面積の3~4割程度に留まらせるほど低くはない。つまり、「環境として、資源として、森林を護る」という意識の欠如が問題なのだと思う。
 このような中、*15-4のように、日本は、在留資格のない外国人を大した罪もないのに入管施設に収容して送還し、難民認定率は僅か0.4%などと難民保護に消極的な国だが、これをやめて条件を明示し、日本で働きたい外国人(難民を含む)を募れば、人件費で物価を高騰させて国際競争力を失うことなく、多くの産業を再開できる。
 しかし、*15-3のように、日本で働く外国人が172万人にも達するという労働力の実需があり、移民の子に日本で教育を行えば生産年齢人口減少時代に良質な労働力となり、多言語・多文化の背景を持って日本社会の多様性を支えていく存在になって社会的コスト以上の見返りがあるにもかかわらず、「技能実習」「特定技能」の外国人労働者に家族帯同を認めないことで、日本政府は人権侵害と日本国憲法違反を犯しているわけである。
 また、農業白書も、*15-2のように、食料供給リスクの高まりを指摘する内容だが、日本の食料自給率は4割以下となり、多くを海外依存したまま具体的解決策が示されていないそうだ。人口が減るなら輸入どころか輸出できてもおかしくないが、国内の農業生産は高めず輸出規制回避のため国際協調を進めるなど外国依存を増やそうという呑気な政策のままなのである。今では、興味を抱いて都市部から就農を目指す若者が増え、生産現場を支えている外国人も多いため、外国人労働者に「技能実習」等の劣悪な労働条件を押し付けるのではなく、労働法に沿った安定した人材確保を行うべきである。

*15-1:https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA288S60Y1A520C2000000/ (日経新聞 2021年6月1日) 脱炭素へ林業経営の支援強化 20年度林業白書
 政府は1日、2020年度の森林・林業白書(森林・林業の動向)を閣議決定した。50年に二酸化炭素(CO2)の排出量を実質ゼロに減らす政府目標に向け、温暖化ガスの吸収源である森林の整備が重要だと明記した。林業経営の支援強化策として省力化につながる技術開発などを盛り込んだ。白書は伐採面積に比べて人工造林された面積が3~4割程度にとどまり、林業に適した場所でも再造林が進まないとの事例を示した。林業従事者の所得水準が低く、再造林の意欲がわかないことが一因だと指摘した。17年の林業従事者の年間平均給与が343万円と4年前から38万円増えたものの、全産業平均(432万円、17年)に比べると低いことに触れた。人材の定着も長期的な課題として挙げた。再造林の担い手である林業従事者数は15年時点で10年前から1割強減ったとの調査結果をもとに、定着率を高めるために林業の収益性向上が重要だと強調した。経営改善に向けた具体策として、自動化を進める機械の導入や成長速度が早い品種の投入などを例示した。

*15-2:https://www.shinmai.co.jp/news/article/CNTS2021053100121 (信濃毎日新聞社説 2021/5/31) 農業白書 見通せぬリスクへの備え
 政府が先日閣議決定した農業白書は、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大を踏まえ食料供給のリスクの高まりを指摘する内容となった。日本の食料自給率は4割を切っており、多くを海外からの調達に依存する。途絶えるようなことがあれば大きな混乱が生じる。供給不足には至らなかったものの、ロシアやウクライナなど19カ国が昨年、小麦やソバの一時的な輸出規制に踏み切った。都市部を中心に不足への懸念が広がり、長期保存できるパスタや冷凍食品がスーパーで品薄になる事態も昨年、一部で発生した。白書は、自然災害や家畜伝染病の多発に加え、感染症の拡大も食料供給に影響を及ぼすリスクになるとし、不測の事態に備えていく必要があると強調した。もっともな指摘である。では具体的にどう備えを進めていくかとなると、説得力は乏しい。安定供給への道筋が見えてこない。輸出規制回避などのため、国際協調を進める、とある。当該国が深刻な不足に陥った場合にも輸入を継続できるだろうか。小麦やトウモロコシの備蓄を挙げている。リスクを踏まえ備蓄水準を見直していく必要はある。だが対応には限界がある。国際市場で食料が逼迫(ひっぱく)する恐れが中長期的に増すのが避けられない以上、重要度が高まるのは国内の農業生産だろう。何をどれだけ維持・拡大していくか。腰を据えた議論が必要ではないか。農業の生産基盤は長期間、弱体化が止まっていない。担い手が減り、高齢化している。農地の減少と荒廃も進んでいる。白書によると、2020年の基幹的農業従事者数は136万3千人。10年前から34%減少した。平均年齢は67・8歳で、この10年で2歳ほど高齢化している。一方、興味を抱いて都市部から就農を目指す若者も少なくない。農協や自治体による就農支援の強化など、長い目で人材育成の取り組みに力を入れたい。コロナ下では、農業の外国人材に関する問題も顕在化した。農繁期の労働力を東南アジアなどから来る技能実習生に頼る構造が定着し、コロナの影響で来日できなくなった途端、人手不足に陥った。県内では高原野菜産地が深刻な状況になっている。厳しい労働環境に失踪する技能実習生もいる。生産現場を外国人が支えている現実に改めて目を向けつつ、安定的な人材確保策を考えていく必要がある。

*15-3:https://digital.asahi.com/articles/DA3S14905817.html (朝日新聞 2021年5月17日) 子どもと来日、閉ざす日本 「家族分離生む政策」批判も
 日本で働く外国人は昨年172万人に達し、5年でほぼ倍増した。その一方で、政府から家族の帯同を認められず、母国に子どもを残してくる外国人労働者も多い。日本の政策が、家族の分離を生み出していると批判の声があがる。二国間の経済連携協定(EPA)に基づく介護福祉士の候補者は、インドネシア(2008年~)、フィリピン(09年~)、ベトナム(14年~)から受け入れ、これまでに約5500人が来日した。原則として来日4年目に介護福祉士試験に合格すれば、その後も日本で働き、配偶者や子どもを呼び寄せることもできるが、合格率は約5割にとどまる。日本で働く外国人のうち、在留資格別で最多の40万人を占める「技能実習」では、家族の帯同が認められていない。人手不足の14業種で外国人労働者を受け入れるため、19年に新設された「特定技能」(約7千人)でも、家族帯同の道は、ほぼ閉ざされている。フィリピンからの移民労働者を研究する小ケ谷(おがや)千穂・フェリス女学院大教授(国際社会学)は「家族が分離されることなく一緒に暮らすことは基本的な権利。それを国が認めないのは大きな問題だ」と言う。特定技能の新設をめぐる18年の国会審議でも、野党側から「深刻な権利侵害に問われる」との批判があった。しかし、安倍晋三前首相は国会答弁で「受け入れれば、家族に対する支援も検討する必要があり、幅広い観点から国民的なコンセンサスを得る必要がある」と、家族の生活支援にかかる社会的コストを理由に、否定的な認識を示した。出入国在留管理庁の担当者は取材に、技能実習や特定技能について「制度上、日本で一定期間、働いた後は帰国することになっている。家族帯同を認める必要性は低い」と説明する。働き手自身が日本語や生活上の支援を必要としていることや、家族と一緒に暮らすために十分な賃金を得られないケースが多いことも、帯同を認めない理由に挙げた。小ケ谷教授はこうした日本の外国人労働者政策について「政府は短期的な労働力だけを求め、家族にかかるコストの負担を拒否している」と指摘する。「移民の子どもは多言語や多文化の背景をもち、日本社会の多様性を支えていく存在にもなり得る。長期的視野をもって、受け入れていくべきだ」と話す。
■残された子、精神面に課題
 フィリピンの人材を日本企業に紹介するN.T.グループ(大阪市)は06年以降、約2千人を日本へ送り出した。家族や親戚に子どもを預けて来日する人も多く、高橋信行会長(72)は「国際電話しかなかった十数年前に比べ、スマートフォンの普及で親子の連絡が簡単になり、出稼ぎへの心理的な壁は低くなった」と話す。送金が重要な外貨収入であるフィリピンでは、政府が移民労働者の子ども向けに奨学金を設け、出稼ぎを後押しする。親が海外に働きに出ることの子どもへの影響は、評価が割れている。フィリピンなどの移民送り出し国での調査でも、子の精神面や学習面に悪影響が「ある」「ない」という両方の結果が出ている。ユニセフは昨年9月に出した「残された子どもたち」に関する報告書で、「親からの送金によって子が学校に長く通えるようになる」一方、「親と長期間離れることでうつ病や不安症といった精神面のリスクを高めかねない」と指摘した。「健全な発達のために、コミュニティーの支援や親子の頻繁な連絡が必要」としている。

*15-4:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20210528&ng=DGKKZO72356160Y1A520C2EAC000 (日経新聞 2021.5.28) 難民保護、政策手薄の10年、日本の認定率わずか0.4%
 オーバーステイ(超過滞在)などの理由で在留資格のない外国人の保護のあり方が注目を集める。政府・与党は入管施設での長期収容を防ごうと出入国管理法の改正を目指したが野党が反発し今国会での成立を見送った。難民認定をはじめ入管行政は効果的な政策が打たれないままだ。「きょう食べるものにも困っている」。NPO法人の難民支援協会(東京・千代田)には、生活や就労などの支援を求める外国人からの連絡が年間4000件近く寄せられる。最近は新型コロナウイルス禍で困窮した人からの相談が急増しているという。紛争や人権侵害のため母国に住めず日本に難民申請する人は増加傾向にある。申請者数はピークの2017年に1万9629人となり10年に比べ16倍に達した。協会は「難民は仲介人らを通じ国を探す。入国できそうな国の航空券を取り入管などで保護を求めることが多い」と指摘する。難民が日本を訪れるのは多くの場合「偶然、査証(ビザ)が発給された」ためだ。日本に来る難民はもともと、ベトナム、ラオス、カンボジア人が中心だった。ベトナム戦争の「ボート・ピープル」が典型例として知られる。02年に中国の日本総領事館に北朝鮮の脱北者が駆け込む事件が発生。それを機に、難民の申請要件を緩和し、認定前の仮滞在を可能にした改正入管法が04年に成立し申請がしやすくなった。政府は10年、申請者の就労も一律で認めた。年間1000人程度だった申請者数は14年には5000人に。入管の人手不足もあり「就労目的で申請を悪用したとみられる事例が増え審査期間も長くなった」(出入国在留管理庁)。10年代には紛争の激化で世界の難民の数も増えた。日本は観光客の誘致へビザの発給要件を緩和したこともあり難民が来日する事例も増えた。法務省は申請増に歯止めをかけようと、18年、明らかに難民に当てはまらない申請者の在留や就労の制限を強化した。支援団体は日本の認定率を問題視する。19年は1万375人の申請に対し認定は44人と、0.4%にとどまった。56%のカナダ、46%の英国に比べ低水準が際立つ。認定されず在留期限が切れて日本に残る不法残留者は今年1月時点で17年に比べ3割多い8万2868人に達する。そうした人は摘発され帰国するまで原則として入管施設にとどまる。3月に名古屋出入国在留管理局で死亡したスリランカ人女性は半年以上施設に収容されていた。仮放免を求めハンガーストライキを起こし体調を崩す収容者も多い。難民申請を繰り返す人が多く入管施設は逼迫する。「送還忌避者」は20年12月時点で3100人にのぼる。「入管法改正の背景には送還忌避があとをたたない状況がある。迅速な送還の実施に支障が出て収容が長期になることの要因となっていた」(上川陽子法相)。法務省は入管法改正案で長期収容の問題解決を目指した。3回目以降の申請は強制送還の対象になるとの規定を設けた。現在は認定申請すると回数や理由に関係なく送還できない。強制送還が可能になると収容者は減るが帰国先で迫害を受けかねない。野党は「人権侵害のスリーアウトルール」と呼び反対の論拠にした。法務省は外国人の受け入れを広げるため難民に準じた新資格「補完的保護対象者」を提案した。母国が紛争中の人を念頭に難民と同じように定住者の資格で在留を認める。筑波大の明石純一准教授は法改正の必要を強調する。それだけでは長期収容の問題は解決せず「難民認定などを審査する入管の体制強化が必要だ」と話す。支援団体などは難民認定を入管当局ではなく専門性の高い独立機関がすべきだと主張する。日本の入管行政はこの10年間、申請の急増に対応する政策が手薄だった。改正案の成立は見送りになったが長期収容の問題は残る。

<日本は役に立つ新産業の育成・普及が遅れる国である(その7)―生物由来の薬>
PS(2021年6月3日追加): *16-1のように、ヘルペスウイルスの遺伝子を組み換えて癌細胞だけで増殖するようにした「癌治療薬」が初めて実用化され、5年生存率10%の難病患者の1年後の生存率が92.3%で、これは他の抗癌剤治験で示された34.5%より高いそうだ。また、*16-2のように、新型コロナウイルスは武漢研究所で遺伝子操作によって造られたという法医学的学術論文が、英国とノルウェーの学者によって発表された。最初の状況から見て中国政府が意図的にばら撒いたとは考えにくいが、遺伝子操作が容易にできるようになり、構造の単純な人工ウイルスを作り出すのは簡単だというのが現在の常識になっている。
 また、「ウイルスには免疫とワクチン」というのが私が学生の頃から常識であるため、*16-3のように、厚労省新型コロナ感染症対策分科会の尾身会長が、徹底的な検査をしたり、ワクチン・治療薬の開発・承認を急がせたりすることなく、検疫もザルにしたまま「人の流れを止めよ」と言って緊急事態宣言を出させて経済に大損失を与えた上、ワクチン接種が始まっても「五輪開催は普通はない」「規模をできるだけ小さくして管理体制を強化するのが主催する人の義務」などと言っているのは、とても医学の専門家とは思えない。さらに、「オリンピックを開く際は、何のためにやるのか、しっかり明言することが重要」などと指摘するのは、行政にいた人とは思えない無知であるため、これらの必要な対応をしなかった日本の厚労省の方に、新型コロナ感染症を広げる意図があったように、私には見える。
 なお、*16-4のミドリムシ(藻類)は、動物と植物に分化する前の生物なので、動物が持つ栄養素と植物が持つ栄養素の両方を持っており、それを食べると野菜と肉を同時に食べたのと同じ効果があるのだそうだ。、佐賀市は、そのミドリムシを下水の廃液やごみ処理場のCO2を活用して増やし、鶏の餌や肥料にして賢く効果を出している。私は、ミドリムシもウイルスに対する抗体を作れる筈なので、抗体薬を作るのに使えそうだと思っている。

*16-1:https://www.yomiuri.co.jp/medical/20210525-OYT1T50156/ (読売新聞 2021/5/25) ウイルス使った「がん治療薬」初の実用化へ…5年生存率10%の難病患者、1年後で92・3%生存
 厚生労働省の薬事・食品衛生審議会の部会は、がん細胞だけで増殖する特殊なウイルスを使った悪性脳腫瘍の治療薬「テセルパツレブ」の条件付き承認を了承した。近く厚労省が承認し、第一三共が製造販売する。ウイルスを使ったがん治療薬の実用化は初めて。この薬は東京大医科学研究所と同社が共同開発した。ヘルペスウイルスの遺伝子を組み換え、がん細胞だけで増えるように加工。増殖の過程でがん細胞の破壊を狙う。治療の対象は、脳腫瘍の中でも特に悪性度が高い膠芽腫こうがしゅ。年間の新規患者数は約2400人で、5年生存率は10%程度と治療が難しい。東大医科研の治験では、手術、放射線治療、抗がん剤の標準治療を行った後の患者13人に投与したところ、1年後の生存率は92・3%だった。同じ状況で投与された他の抗がん剤の治験で示された34・5%より高い。ただし、治験対象者が少数のため、7年かけて有効性と安全性を確認する条件が付いた。

*16-2:https://news.yahoo.co.jp/articles/8b36470ee15dcbe2899f76571ee3d820aa9bb39c (Yahoo 、FNNプライムオンライン 2021/5/31) 「コロナウイルスは武漢研究所で人工的に変造された」英研究者らが法医学的学術論文発表へ 
●「ウイルスは中国研究所で人工的に変造された」
 新型コロナウイルスの武漢研究所流出説が再燃する中、英国の研究者らがウイルスが中国の同研究所で人工的に変造されたことを法医学的に突き止めたと、近刊の学術誌で論文を発表する。英国の日刊紙デイリー・メイル電子版28日の特種報道で、近く発行される生物物理学の季刊誌Quarterly Review of Biophysics Discoveryに掲載される学術論文を事前に入手し「中国がコロナウイルスを造った」と伝えた。論文の筆者は、ロンドンのセント・ジョージ大学で腫瘍学専科のアンガス・ダルグライシュ教授とノルウェーの製薬会社イミュノール社の会長で生物学者でもあるビルゲール・ソレンセン博士の二人で、研究の発端はイミュノール社で新型コロナウイルスのワクチンを開発するために、ウイルスを調べ始めたところ、ウイルスが人工的に改ざんされた痕跡(フィンガープリント)を発見したことだったという。そこで二人は、武漢ウイルス研究所を疑って2002年から2019まで同研究所で行われた実験にかかわる研究論文やデータから、その根源を探る「レトロ・エンジニアリング」という手法で分析した。その結果二人は、中国の研究者が、その中には米国の大学と協調して研究していた者もいたが、コロナウイルスを「製造する術」を手にしたらしいことが分かった。彼らの研究のほとんどは、米国では禁止されている遺伝子操作で性質の異なるウイルスを作り出すことだった。
●コウモリのウイルスを遺伝子操作で変造
 二人は、中国の研究者が中国の洞窟で捕らえたコウモリからそのウイルスの「バックボーン」と呼ばれる部分を別のスパイクに接着させ、より致死性が高く感染力の強いウイルスを造ったと考える。そのウイルスのスパイクからは4種のアミノ酸の列が見つかったが、こうした構造は自然界のウイルスには見られないことで、人工的なウイルスであることを裏付けるものだとソレンセン博士は言う。コロナウイルスの発生源については、世界保健機関 (WHO)の調査団が中国で調査した結果「コウモリから別の生物を介してヒトに感染した可能性が高い」と報告し、中国のキャンペーンもあって自然界での変異説が有力視されてきた。
●「軍事利用」が目的だったのか?
 しかし、ここへきて武漢ウイルス研究所の研究員3人が2019年秋にコロナと似た症状で入院していたという米情報当局の情報がマスコミに流されたり、英国の情報部もウイルスが武漢研究所から流出したものと判断したと伝えられ「研究所流出原説」が再燃。バイデン米大統領も26日コロナウイルスの発生源再調査を命じ、90日以内に報告するよう求めた。そうしたタイミングで出てきた今回の研究論文は、単なる噂話ではなくウイルスを法医学的に分析した学術研究なので説得力があり、今後このウイルス変造が「軍事利用」を目的としていたのかどうかなどの論議に火をつけることになりそうだ。

*16-3:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20210603&ng=DGKKZO72534310T00C21A6PD0000 (日経新聞 2021.6.3) 尾身会長、五輪開催「普通はない」 規模最小化訴え
 政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会の尾身茂会長は2日の衆院厚生労働委員会で東京五輪・パラリンピックに言及した。開催に関し「いまの状況でやるというのは普通はない」と述べた。「規模をできるだけ小さくして管理体制を強化するのは、主催する人の義務だ」とも強調した。五輪実施が人流の増加などにつながらないよう政府や大会組織委員会などが一体となった取り組みを促した。大会を開く際は「いったい何のためにやるのか、しっかりと明言するのが重要だ」と指摘した。十分な説明がなければ「なかなか一般の人は協力しようと思わない」との考えを示した。加藤勝信官房長官は11~13日の主要7カ国首脳会議(G7サミット)で菅義偉首相から各国首脳に開催への理解を求める方針を示した。2日の記者会見で「感染対策を徹底し、安全・安心な大会を実現すると各国に説明する」と話した。

*16-4:https://news.yahoo.co.jp/articles/b3c6863a0c84d9cee87cacd0c6f7d741f126111b (Yahoo 2021/5/29) 藻・ミドリムシ循環担う 下水の廃液・CO2活用 鶏の餌や肥料に 佐賀で実証
ミドリムシなど藻類を野菜の肥料や鶏の餌にする試みが、佐賀市で加速している。藻類は下水や、ごみ処理場の二酸化炭素(CO2)で培養可能だ。未利用資源の有効活用となる。藻類を原料とした餌を食べた鶏の卵は、黄身が濃く機能性も増す。市は企業と連携して藻類の利用を促進。低炭素社会の実現を後押しする。養鶏業やパン製造販売を手掛ける「むーらん・るーじゅ」は、卵かけご飯専門店を市内にオープンした。使う卵は藻類「ヘマトコッカス」を混ぜた餌を与えた鶏が産んだものだ。卵は免疫力を高める効果がある赤い色素「アスタキサンチン」を含み、抗酸化成分は通常の250倍とされる。石井利英社長は「黄身が熟した柿のような濃い色でお客さんが驚く」と話す。原料のヘマトコッカスはCO2を吸収して光合成して増える。市のごみ焼却場から排出されるCO2を買い取り、(株)アルビータが培養を担う。市と同社が2014年に結んだバイオマス(生物由来資源)資源利活用協定に基づく。市は「一般社団法人さが藻類バイオマス協議会」の事務局を務める。資源活用の旗振り役だ。賛同する(株)ユーグレナは4月、市内に試験農場を開設した。藻類・ミドリムシを肥料に混ぜてホウレンソウなどを栽培。肥料効果を実証する。ミドリムシは、市下水浄化センターの汚泥処理で出る廃液とCO2で培養する。同社によると、年間130トンのCO2で75トンのミドリムシを生産できるという。廃液には窒素やリンなどが多く、ミドリムシの栄養源となる。ただこれまで悪臭などの問題で、廃液のままでは農業利用が難しかった。廃液の成分をミドリムシが吸収し、下水処理場の負荷軽減にもつながる。ミドリムシの肥料で育てた作物は収穫後の鮮度を保てるとされる。小松菜を収穫後に低温保管したところ、1週間後に失われる水分が慣行の肥料のものより3割少なかった。市バイオマス産業推進課は「廃棄物を安価に資源化でき、無理のない形で資源循環が実現できる」と説明する。
<ことば> 藻類
主に水中に生息し、光合成を行う生物のこと。ミドリムシなど微細なものから、コンブなど大型の海藻も含む。バイオマス利用には微細藻類が中心に使われている。

<「できない」「できない」ではなく、やる方法を考えるべき(その1)>
PS(2021年6月5日追加):*17-1は「①47都道府県庁所在地のある市区のうち、51%に当たる24市で64歳以下のワクチン接種開始時期が決まっていない」「②自治体は高齢者接種の7月末完了に追われている」としているが、ワクチンが足りないわけではなく接種するか否かの問題であるため、「できない、できない」と言うのではなく、やる方法を考えたらどうかと思う。私が住んでいる埼玉県の場合は、市町村以外に埼玉県浦和合同庁舎に集団接種会場を設けてモデルナのワクチンを接種しており、市町村よりそちらの方が予約しやすかった。沖縄県の場合は、市町村が接種券さえ発効すれば、国際通りの前の県庁近くに会場を設けて感染確率の高い人たちに大量に接種することが可能だろう。
 また、*17-2のように、小規模離島の首長から「③できるだけ一斉接種ができる体制が作れないか」という要望があったのなら、沖縄県の場合は自衛隊の病院船に離島を廻って集団接種してもらってもよいくらいだ。基礎疾患のある人は、あらかじめかかりつけ医に相談しておいたり、かかりつけ医で接種したりすればよい。
 なお、*17-3のように、遅くとも6月21日から職場・大学でモデルナのワクチン接種を始めるため、一般向けの接種券も早く配布した方がよい。また、*17-4のように、トヨタ・日航・住友生命・楽天などは職場での接種を検討しているそうだが、タクシー業界や宅配など不特定多数の人に接する職種も会社や組合で早く接種した方がよいと思う。農業者は、家族まで含めてJA全厚連がやればよいだろう。
 しかし、*17-5のように、「④沖縄県は出発地で検査と陰性確認を求めてきたが、事情があって出発地で検査を受けられない場合は県内で到着時に検査を受けるよう呼び掛けている」「⑤宮古空港と下地島空港(ともに宮古島市)、石垣空港(石垣市)でのPCR検査は有料で義務ではない」という水際は、やはりザルだ。何故なら、陰性証明でもワクチン接種証明でもよいが、要求するからには完全に要求しなければ漏れが生じ、⑤のように希望者だけがPCR検査をして検査結果の通知は翌日しか来ないのであれば、その漏れも完全には捕まらないからだ。これでは「感染を予防する気があるのか!?」と言いたいわけである。

*17-1:https://ryukyushimpo.jp/kyodo/entry-1333949.html (琉球新報 2021年6月5日) 一般接種、51%時期未定 高齢者対応で追い付かず
 新型コロナウイルスワクチンを巡り、47都道府県庁所在地のある市区のうち、51%に当たる24市は64歳以下の一般接種の開始時期が決まっていないことが5日、共同通信の調査で分かった。接種券を国の方針通り6月発送としたのは28%(13市区)にとどまった。政府は自治体に対し、高齢者接種に一定のめどが立てば、基礎疾患のある人を含めた64歳以下にも広げるよう要請した。しかし、自治体は高齢者接種の7月末完了に追われており、政府の思惑通りに自治体の事業が加速するかどうかは不透明だ。調査は5月31日~6月4日、47都道府県庁所在地の市区(東京は新宿)に実施した。

*17-2:https://ryukyushimpo.jp/news/entry-1333571.html?utm_source=ryukyushinpo&utm_medium=referral&utm_campaign=top_kennai (琉球新報 2021年6月5日) 「一斉接種体制を作って」離島首長ら要望 沖縄コロナ意見交換会
 県は4日、新型コロナウイルス感染症対策に向けて、県内41市町村の首長らとインターネットのビデオ会議システムを通じて意見交換会を開催した。県内で感染が急拡大した5月は、医療提供体制が脆弱(ぜいじゃく)な小規模離島でも感染が相次いで報告されている。小規模離島の首長からは「できるだけ一斉接種ができる体制が作れないか。役場職員が急患対応するため非常にリスクが高い」(座間味村)などの要望が上がった。また県が7日から県立学校の休校を決めたことで、「学校が休校になると本島から学生が島に帰ってくる可能性がある」(伊平屋村)として、事前のPCR検査の徹底などを求めた。(以下略)

*17-3:https://www.nikkei.com/article/DGXZQODE010PD0R00C21A6000000/ (日経新聞 2021年6月1日) ワクチン接種、職場・大学で21日から 一般接種券も送付
 加藤勝信官房長官は1日の閣議後の記者会見で、新型コロナウイルスワクチンの職場や大学での接種を21日から始めると発表した。準備が整えば21日より前に始める。米モデルナ製を使う。6月中旬には一般向け接種券の配布を始めるよう自治体に要請した。職場での接種は社員、大学は学生と職員が対象になる。企業や大学、地方自治体の判断で、対象者の家族や周辺の住民への接種も認める。職場の接種は産業医や委託機関が企業内の診療所や会議室で実施する。提携先の医療機関で受けることもできる。中小企業には商工会議所を通じた共同接種を呼びかける。従業員の住所と職場がある市区町村が異なる場合が多いため、自治体が発行する接種券がなくても受けられる仕組みを検討する。いまは自治体からの接種券が届き次第、接種の予約ができる。新たに導入するのは後日、自治体の接種券が届けば接種が済んだと登録できる仕組みだ。加藤氏は企業や大学へのワクチン供給について「かなりモデルナのワクチンを持っている。峻別しなくても、要望があればそれに応じて発送していくことは十分可能だ」と述べた。供給先の順位付けはしない意向を示した。政府は65歳以上の高齢者の次に基礎疾患を持つ人や一般の人への接種を認める。加藤氏は「6月中旬をめどに一般接種の対象者全体に接種券を送付できるよう、各自治体で準備を進めてほしい」と強調した。政府はこれまで医療従事者と高齢者の接種を優先してきた。7月末に高齢者への2回目の接種を終える目標を掲げる。職場での接種はモデルナ製を使い、ファイザー製を用いる高齢者接種に支障がでないよう配慮する。首相は5月31日の自民党役員会で「高齢者接種にめどをつけたい。6月中には基礎疾患のある人を含め一般の接種を開始する」と述べた。政府発表によると5月30日時点での総接種回数は1234万回に達した。

*17-4:ttps://ryukyushimpo.jp/kyodo/entry-1331423.html (琉球新報 2021年6月1日) トヨタ、職場での接種を検討 日航や住友生命、楽天も
 トヨタ自動車は1日、新型コロナのワクチンの職場接種を検討していると明らかにした。21日から企業での接種を可能にするとの政府方針に対応した。日本航空や住友生命保険、楽天グループなども実施方針を表明。時期や対象者が未定の企業は多いが、コロナ収束に協力する動きが早速出てきている。トヨタはワクチン接種を巡り、地域支援の一環として本社がある愛知県豊田市などに産業医を派遣している。この取り組みと並行し、職場接種の方法を詰める。日本最大のメーカーで、子会社を含む従業員が約36万人(2020年3月末時点)に上るトヨタが実施に踏み切れば、追随する企業も出てきそうだ。

*17-5:ttps://ryukyushimpo.jp/news/entry-1331157.html (琉球新報 2021年6月1日) 沖縄・宮古島と石垣島の空港でPCR検査 3日から開始、専用サイトで予約受付も
 沖縄県は31日、新型コロナウイルス感染症対策として、宮古空港と下地島空港(ともに宮古島市)、石垣空港(石垣市)でのPCR検査の予約受け付けを専用サイトで開始した。6月3日から実際の検査が始まる。離島での水際対策として整備を求める声が上がっていた。検査は義務ではなく、対象空港の発着便利用者のうち、希望者が有料で検査を受けられる。検査料金は県内在住者は3千円、県外在住者は5千円。利用できる時間は午前9時から午後8時(下地島のみ同6時)まで。空港で提出した唾液を那覇の検査場に送るため、結果の通知は原則翌日。航空便の都合によっては翌々日以降になる可能性もある。県は1日当たりの検査数を宮古と新石垣で100件程度、下地島で50件程度と想定している。検査事業者は、那覇市松山で沖縄PCR検査センターを運営するミタカトレード沖縄支社。県は基本的に出発地での検査と陰性確認を求めてきたが、事情があって出発地で検査を受けられない場合は県内で到着時に検査を受けるよう呼び掛けている。離島空港PCR検査プロジェクトに関する問い合わせは沖縄PCR検査センター(電話)050(8880)2391。

<「できない」「できない」ではなく、やる方法を考えるべき(その2)>
PS(2021年6月6、7日追加):*18-1のように、東京五輪組織委員会・政府・東京都・IOC・IPCの代表が選手向け新型コロナ対策をまとめたプレーブックの変異株に対応した改訂版を確認し、その内容は、「①入国時に陰性証明を求め、空港でも検査する」「②全ての大会関係者は、出発前に2回検査する」「③出場するアスリートとチーム役員は、原則毎日検査する」「④滞在中は、公共交通機関の使用禁止」「⑤行動計画に反した場合は、資格剥奪も検討」だそうだ。
 しかし、①②の陰性証明書かワクチンの接種証明書を提示させれば、その人が新型コロナの感染者である確率は、どちらもない日本人よりずっと低いため、③④は、日本人よりアスリートとチームの役員を護るための対策だ。従って、⑤は「自分をリスクに晒さないため」という説明をすればよく、資格剥奪までは不要だろう。このような中、「ワクチンを接種した人と接種していない人の間に差別が生まれる」などと言う人がいるのは、“差別”の意味すらわかっていない。また、大会期間中に医療スタッフとして看護師500人を確保しても、地域医療に影響がないようにすることは可能であるため、証拠に基づかない感情的な反対は止めるべきである。
 さらに、*18-2のように、「⑥何百、何千の命と天秤にかける『平和の祭典』などあり得ない」等として五輪の中止を求める声が大きいが、「五輪を開催すると感染拡大して何百・何千の命が失われる」という科学的根拠はないため、あると言う人はその根拠を明示すべきだ。さらに、今から五輪の開催を中止しても既に費やした金とエネルギーは埋没原価となっていて戻らず、新たに多くの損害や信用棄損が生じるため、⑦徹底した検疫 ⑧ワクチン接種による国民の集団免疫形成 ⑨出入りする観客や関係者への陰性証明書かワクチン接種証明書の提示義務化 などで、無観客や時間短縮はせずに感染の制御と五輪を両立させた方が合理的である。
 このような中、*18-3のように、「⑩息子は運動会を楽しみにしていて、徒競走で『1等賞を取る』と張り切っていたけど中止が決まって家で泣いていた」という親がいたそうだが、運動会を断念する必要はなく、緊急事態宣言中になったのなら雨天と同じく順延にするか、文科相が言うように秋にすればよいだろう。にもかかわらず、小学生の息子に「運動会はやらないのに、なんで五輪はやるの?」と聞かれて答えに窮するのは、(答え方は沢山あるため)保護者の教育力に欠ける。また、「⑪死人が出てまで行われることではないから、1人もコロナの患者が出ない時に五輪はやるべき」「⑫コロナ禍で国民が様々な我慢を強いられる中、東京五輪だけが開催されることに違和感を持つ」というのも、必要な予防を徹底すれば五輪開催と新型コロナによる死者数の相関関係はなくなるため、感情論にすぎない。
 さらに、*18-4は、「⑬日本では9都道府県に発令中の緊急事態宣言が6月20日まで延長され、酒類を提供する飲食店、カラオケを使用する飲食店、遊興施設に引き続き休業を要請している」「⑭東京五輪に出場する選手らが宿泊する選手村に、アルコール類の持ち込みが許可される」として「アスリートだけ特別扱い」という不公平論が囁かれるのもおかしい。何故なら、①~⑤のように、アスリートには必要以上の感染防止策を講じているので規制は不要だからで、批判すべきは、厚労省が「⑮国民へのPCR検と検疫をいい加減にして新型コロナを国内で蔓延させ」「⑯酒や外食をターゲットにして休業・時短を要請し」「⑰ワクチン・治療薬の開発・承認をせずに国民に迷惑をかけたこと」だからである。それにもかかわらず、これらを不公平やモヤモヤとしか表現できないのは、スポーツ偏重にして勉強を疎かにした教育の結果だろう。
 *18-5のように、移動解禁に向けて7月から運用を始めるEUはじめ世界で新型コロナワクチンの接種証明書を発行し活用する動きが広がり、遅すぎるものの日本政府もEUの「デジタルCOVID証明書」をモデルとしてワクチン接種者とコロナからの回復者を対象に発行することにしたのはよいことだ。これについて、「接種は任意なのに、証明書の導入で未接種者への差別を招く」とする意見もあるようだが、任意で行う自由な意思決定がメリットとディメリットを受容することになるのは当然であるため、これと病気にかかった人への差別とを混同するのは、あまりに見識が低いと言わざるを得ない。

*18-1:https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2021-04-28/QS7MWWT0AFB501 (Bloomberg 2021年4月28日) アスリートは原則毎日検査、出発前に検査2回を要請-東京五輪
 東京五輪・パラリンピック組織委員会と政府、東京都、国際オリンピック委員会(IOC)、国際パラリンピック委員会(IPC)の代表者は28日、選手向けの新型コロナウイルス対策をまとめた「プレーブック」の改訂版について確認した。発表資料によると、東京五輪・パラリンピック大会に出場するアスリートとチーム役員は原則毎日検査するほか、全ての大会関係者には出発前に2回の検査を求める。滞在中の公共交通機関の使用は禁止する。また、組織委の武藤敏郎事務総長は記者会見で、行動計画に反した場合には資格のはく奪も検討すると述べた。五者協議後に発表された改訂版では、入国時に陰性証明が必要とした上で、空港でも検査をすることを明記。到着後の3日間は自室で隔離が必要としながらも、アスリートとチーム役員については、期間内の検査が陰性であれば、組織委の監督下で活動はできる。組織委はIOC、IPCと共に医療専門家らの助言を受けながら選手や大会関係者らの感染対策をまとめたプレーブックの第1版を今年2月に公表。大会参加者に日本到着時にコロナ検査の陰性証明を提示することや、少なくとも4日ごとに検査を受けることとしていた。その後、変異株の感染拡大など状況の変化に対応するため大幅に更新をした第2版を策定した。開催都市である東京都では、3度目となる緊急事態宣言が出され感染収束のめどが立っていない。組織委の武藤敏郎総長は26日の会見で、日本看護協会に大会期間中の医療スタッフとして看護師500人の確保を要請したことを認めた上で、「地域医療に影響がないよう勤務時間やシフトで対応して折り合う」と述べた。一方で、28日に開かれた政府の新型コロナ感染症対策調整会議では、組織委の感染症対策センターや大会保健衛生支援東京拠点を6月に開設する方針が示された。大会開催中は選手村に設置する診療所発熱外来などを24時間態勢で運営する。大会期間中にアスリートらへの医療提供を行う大会指定病院には、組織委員会が協力金を支払う予定としている。7月に予定されている大会は海外からの一般客の受け入れを断念して行われることになったが、アスリートやコーチ、競技団体の関係者やメディアなどが200カ国余りから東京に集まる。組織委は入国する大会関係者の削減についても精査している。

*18-2:https://news.yahoo.co.jp/articles/90e6e4f42e5c603cea15ea5a06f7b75f7b785221 (Yahoo 2021/5/10) 東京五輪「無観客開催」にさえ消極的なIOCと政府 小池知事は四面楚歌
 何百、何千の命と天秤にかける「平和の祭典」などあり得ない。5月5日に札幌で行なわれたマラソンの五輪テスト大会では、沿道に「五輪ムリ 現実見よ」とプラカードを掲げる市民が見られ、「オリンピック反対!」と叫ぶ声が中継にも流れた。日本政府、組織委員会、そしてIOC(国際オリンピック委員会)も強行開催に突っ走っているが、いよいよ病床確保が怪しくなってきた東京都の小池百合子知事は、1300万都民の命とオリンピックの板挟みに苦悩している。都庁幹部の1人は、「小池知事は四面楚歌の状態」と指摘する。「都民の命を預かる小池さんは五輪開催と感染拡大の危険との板挟みになっている。IOCも政府も組織委員会も五輪強行すれば都民にどれだけの犠牲を強いることになるかを考慮せずに開催に走っており、都民の安全は小池知事の判断にかかっているが、IOC側からは“もし、ここまで来て東京が中止を言い出すなら、全損害を負担できるのか”という強いプレッシャーを感じる」。五輪が1年延期されて以来、「簡素な大会」への見直しを掲げた小池氏はカネの問題でIOCの意向に振り回されてきた。その1つが世界で高い視聴率が期待される開会式の見直しだ。各国の選手団1万人以上が入場行進することから数時間の待ち時間に「3密」が発生し、感染リスクが懸念されている。東京都や組織委員会は規模や時間短縮を検討してきたが、IOCから“待った”がかかったのだという。組織委の森喜朗・前会長が交渉の舞台裏をこう明かしている。「(開会式は)個人的には半分の2時間で良いと思っている。しかしIOCが反対。テレビ局が枠を買っている。時間を短縮すると契約違反で違約金が発生する。それを日本が払ってくれとなる恐れがある。それ以上の議論をすると深みにはまるから、私はそこは引っ込めて、他の案を考えようと言った」(日刊スポーツ1月1日付インタビュー)。五輪の放映権は米国3大ネットワークのNBCが取得しており、五十音順の選手団入場の順番も、先頭に近いアメリカを米国内での視聴率を考慮するIOCの意向で最後尾近くに登場する順番にしたと報じられている。IOCは放映権の収入を守るためにそこまで口を出している。五輪中止となれば、IOCは放映権料だけで約1300億円の損失が出る。さらに組織委員会が集めた公式スポンサー料が約3700億円にのぼる。合わせて5000億円だ。そんな巨額の賠償金を「東京が払え」と言われれば、小池氏もよほどの覚悟がなければ中止を言い出しにくい。

*18-3:https://news.yahoo.co.jp/articles/d6c0c7628dbfbd0c3f9ddb24b1f72dc56e892426 (Yahoo 2021/5/18) 「運動会はやらないのに、なんで五輪はやるの?」 小3の息子が泣きながら口にした一言
 新型コロナウイルスの感染拡大が収束しない中、感染のリスクを抑えるため、全国各地の小・中学校が運動会の中止、延期を決めている。「息子は運動会を楽しみにしていました。徒競走で『1等賞を取る』と張り切っていたけど中止が決まり、家で泣いていました」――。こう複雑な胸中を口にしたのは、北海道在住で小3の男児を持つ父親だ。
■「子供でも不思議に思うことなのに」
 政府は東京、大阪、兵庫、京都の4都府県に発令している緊急事態宣言の期限を2021年5月31日まで延長。愛知、福岡を新たに対象地域に加えた。「まん延防止等重点措置」の対象地域だった北海道、岐阜県、三重県も感染拡大の勢いが止まらないため、政府は方針変更して14日に3道県に緊急事態宣言を出した。宣言地域を中心に、運動会を断念する小・中学校は少なくない。先述した北海道在住の父親は、運動会中止に泣いた息子の話について、こう続ける。「東京五輪は開催すると政府が発言しているニュースを見て、息子に『運動会はやらないのに、なんで五輪はやるの?』と聞かれて...。答えに窮しましたがその通りですよね。海外の何十カ国から選手たちが日本に集まる五輪の方が運動会よりもコロナの感染リスクがはるかに高い。子供でも不思議に思うことなのに、政府は矛盾を感じないのでしょうか」
●萩生田文科相も「運動会問題」にコメント
 海外のトップアスリートが東京五輪の出場辞退を発表する中、男子テニスの日本のエース・錦織圭も5月10日に開催されたイタリア国際1回戦の試合後の会見で、「死人が出てまでも行われることではないと思うので。究極的には1人もコロナの患者が出ない時にやるべきかなとは思います」と五輪の開催を疑問視。この発言は海外メディアでも大きく取り上げられた。「コロナ禍で国民が様々な我慢を強いられる中、東京五輪だけが開催されることに違和感を持つ人たちは多い。アスリートも今は五輪での目標を言えない状況になっている。気になるのは政府の対応です。菅首相は『安全、安心の大会実現は可能』と発言していますが、その根拠を何も示していない。これでは国民が不信感を抱くのは当然です」(一般紙の政治部記者)。運動会が中止になり、東京五輪は開催される。この現実に違和感を抱くのは決して不思議ではないだろう。なお、萩生田光一文部科学相は5月18日の閣議後会見で、緊急事態宣言下における小中学校などの運動会について、中止するのではなく、感染対策などを工夫して実施する可能性を探ってほしい、と話している。

*18-4:https://news.yahoo.co.jp/articles/1f32624898ede99e09fbe5697c20d91622b7e85c (Yahoo 2021/5/29) 選手村での飲酒はOK 国民の不満爆発「アスリートだけ特別扱い」
 東京五輪の開幕まで残り2か月を切ったが、国民の怒りが噴火間近となっている。米国などでは新型コロナウイルスのワクチン接種が進み、一部地域では規制が緩和がされつつある。一方で、日本では9都道府県に発令中の緊急事態宣言が6月20日まで延長。東京都の小池百合子知事(68)は、酒類を提供する飲食店、カラオケを使用する飲食店、遊興施設に引き続き休業を要請しており「居酒屋に行きたい」との声が多方面から聞かれる。そんな中、関係者によると、東京五輪に出場する選手らが宿泊する「選手村」に、アルコール類の持ち込みが許可される見込みだという。この判断にネット上では「国は五輪のことしか考えてない」「居酒屋でも節度をもって飲酒すればOKですよね!」「アスリートだけ特別扱いはおかしいな?」などのコメントがあふれている。東京五輪の開催を巡ってさまざまな声が上がっているが、国際オリンピック委員会(IOC)のジョン・コーツ副会長(71)による「緊急事態宣言下での開催? 答えはイエスだ」との爆弾発言や、今回の選手村でのアルコール解禁などで、国民の不満は日に日に上昇。ある組織委関係者は「街の飲食店がこんなに苦しんでいるからね…」と頭を抱えた。先の見えないコロナ禍の現状。国民の行き場のないモヤモヤはたまる一方だ。

*18-5:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20210607&ng=DGKKZO72641020X00C21A6MM8000 (日経新聞 2021.6.7) 「ワクチン証明」今夏に 渡航者用、経済正常化後押し EUは来月から
 新型コロナウイルスワクチンの接種証明書を発行・活用する動きが世界で広がってきた。感染のリスクを抑えながら経済活動を正常化する狙いがあり、企業からも期待の声が上がっている。日本はまず海外渡航者用に今夏にも発行し、ビジネス往来などを後押しする。欧州連合(EU)は域内の移動解禁に向けて7月から運用を始める。既に一部の政府高官らは非公式の証明書を作成し、海外に持参している。欧米などで接種履歴を聞かれるケースが増えているためだという。一般のビジネス利用も想定した公的な制度は、加藤勝信官房長官をトップとする省庁横断のチームで検討を急いでいる。まずは紙の公式証明書を今夏に利用できるようにする想定だ。年内にはスマートフォンのアプリなどでデジタル化する段取りを描く。国内でもファイザー製やモデルナ製の調達・供給量が増えていることが背景にある。21日には企業の職場での接種も始まる。接種を証明することで渡航者と受け入れ国側の双方のリスクが低減すれば、海外での商談などのハードルが下がる。証明書は住民情報を持ち、接種の実務を担う自治体が出す。氏名やワクチンメーカー、打った時期などを記載する。接種履歴を一元的に管理する国の「ワクチン接種記録システム(VRS)」と連動させ、内容を国が保証する仕組みとする方針だ。飛行機への搭乗時や海外での入国審査時などに提示する。ビジネスや留学で渡航する日本人、日本に滞在中で母国に戻る外国人らの利用を見込む。日本貿易会の小林健会長(三菱商事会長)は「経済人の立場からいえばワクチンパスポート(証明書)で自由に行き来できるようになるのが理想だ」と話す。エイチ・アイ・エス(HIS)は「帰国後の14日間の隔離期間が海外旅行の最大のハードル。ワクチンパスポート制度により措置が緩和されると風向きは変わる」と期待を寄せる。政府がモデルとするのはEUが7月から運用する「デジタルCOVID証明書」だ。接種経験者やコロナからの回復者が対象で、自主隔離や検査を免除する。ドイツなど7カ国は6月から先行運用している。レインデルス欧州委員(司法担当)は「自由で安全な移動を取り戻す」と力説する。欧州委員会は5月31日、証明書の活用を念頭に、加盟国に移動制限を緩和するよう提言した。米国や日本など域外からも、EUが認めるワクチンを打った人は入域できるようにする方向だ。接種は任意なのに、証明書の導入で未接種者への差別を招くとの懸念もある。米国は州によって対応が割れる。東部ニューヨーク州は3月、接種歴を示すスマホアプリ「エクセルシオール・パス」を導入した。発行数は既に100万を超える。一方、南部ジョージア州は公的機関による証明書要求を禁止している。「接種は個人的な決定」(ケンプ知事)との考えからだ。州が保有する接種データは民間企業などに提供しない。住民への接種は引き続き奨励する。米メディアによると、少なくとも10州が禁止・制限している。日本も国内向けの導入は慎重に検討している。経済再開を急ぐ自治体や企業の独自ルールが乱立する恐れもあるため、政府が統一指針をつくることも視野に入れる。ワクチン証明書は国際協調も必要になる。主要7カ国(G7)は3~4日、英南部オックスフォードで開いた保健相会合で連携の必要性を確認した。世界保健機関(WHO)を中心に相互承認の仕組みづくりを進める。

<ワクチン接種で、五輪の観客も数や行動の制限が不要になる>
PS(2021年6月8、9、10日追加):*19-1のように、米ファイザー製の新型コロナウイルスワクチンの対象年齢は12~15歳に広げることができ、日本政府が無料で打つ対象に追加したそうだ。しかし、京都府伊根町が12~15歳に新型コロナワクチンの接種を始めたところ、*19-2のように、「①人殺しに加担している」「②殺すぞ」「③子どもへの接種はリスクがある」「④若い女性が接種すると不妊につながる」などという町職員を問い詰める電話が相次いだそうである。が、③④は科学的根拠がなく(科学的根拠があると主張する人はそれを明示すべき)、①②は脅迫であるため、相手を特定して警察に届けるべきである。
 なお、日本政府は、*19-3のように、新型コロナワクチン接種済を証明する「ワクチンパスポート」を今夏にも発行するそうだが、各国の水際対策に対応するだけでなく、国内での感染対策にも使うべきである。具体的には、「⑤新型コロナワクチン接種済証を持つ外国人は通常の検疫のみで入国させる」「⑥オリンピックはじめ多くの観客が集うイベントの入場にあたっては、ワクチン接種済証を提示させる」などだ。
 こうすると、*19-4のように、東京五輪の観客もワクチン接種済証があれば陰性証明を求める必要はなく、会場や入り口での健康チェック・マスクの常時着用・応援禁止・分散退場なども不要になる。また、ワクチン接種が間に合わなかったがチケットを持っている人は、「⑦観戦日の前1週間以内の陰性証明書を提示する」という緩い規制では感染が広がるため、会場の入り口で10分で結果が出る抗原検査・抗体検査をして陰性を証明するか、ワクチン接種済証を提示できる人に譲るかの2者択一にすべきだ。それによって空席になる観客席があるようなら、スポンサー企業の社員や学校でその競技を練習している生徒のうちワクチン接種済の人に譲れば、観客席が寂しくないだけでなく、プラスの効果も出るだろう。
 新型コロナ感染症対策分科会の尾身会長が、*20-1のように、「⑧観戦に行かず感染対策を求められる人に不公平感や不満が生じない対応が必要」「⑨(そのためには)スタジアムの中の景色が大事」「⑩やるのであればかなり注意してやる必要がある」と言われたそうだが、⑧⑨は、「幸福な人がいると(それを見て)不幸を感じる人が多いため、国民全員を不幸にすれば文句が出ない」という中央省庁がよくやる狭くて国民を馬鹿にした発想である。現在は、国内外の情報が自由に手に入るため、国民全員を不幸にすれば外国政府と比較して日本政府の能力不足を見定める。また、⑩については、何をすれば注意したことになるのか列挙されればよいが、医療・介護の不備、治療の遅れ、ザルの検疫、積極的疫学調査と称する疫学の名に値しない消極的検査と陽性者に対する不当な差別、ワクチン・治療薬の開発・承認の消極性など厚労省の失敗ばかりが多く、それによって無駄遣いした血税が数十兆円にも昇るのである。その上、無観客のオリンピックで大きな損失を出して血税を投入しようというのか。国民はそれらに不満を持っているのであって、観戦に行く人がいるのに自分が行かないから不満を持っているのではない。つまり、考えることの視野が狭くて次元が低いのである。
 私は、党首討論を全て見たが、*20-2のうち、「⑪感染ルートの徹底的遮断」「⑫ワクチンが切り札」というのは正しいと思う。また、1964年の東京五輪の時、私は小学5年生でオリンピックのために両親が買ったカラーテレビで、開会式から閉会式まで殆どを見て感動したため、菅首相が語られたことは重要だと思う。“東洋の魔女”と呼ばれた日本女子バレーは日本女性の頑張りを見せ、マラソンのアベベ選手は裸足で走ってマラソンが終わってから体操をするゆとりがあり、体操のチャスラフスカは優美でキレがあり、世界は広いことを実感させた。また、オランダのへーシング選手が柔道で日本選手を破って金メダルをとった時は心から拍手を送った。そのため、菅首相が東京五輪を「⑬子どもたちに見てほしい」と言われたのはよくわかるのだが、立憲民主党の枝野代表はじめ現役のメディア記者など1964年の東京オリンピックを見ていない世代には無駄話に聞こえたようで、これだから若い人だけで意思決定をすると偏るのである。なお、新型コロナについては、緊急事態宣言等で人流を止めて一時的に下火になったとしても、集団免疫ができていなければ人が動き始めれば何度でもリバウンドする。それだからこそ、ワクチンと治療薬が重要なのであり、厚労省のやり方は100年前のスペイン風邪の時代から進歩していないばかりか、ワクチンを軽視している点で私が子どもの頃より遅れているのだ。

  
 2021.5.1日経新聞      2021.6.1琉球新報      2021.5.13日経新聞 

(図の説明:左図がメッセンジャーRNAを使ったワクチンの仕組みだ。中央の図は、職場接種の方針を示している企業で、これが増えるとワクチンの接種が飛躍的に進む。右図が日本の水際対策だが、ワクチン接種済証を持つ人は通常の検疫だけで通してよいと思う)

*19-1:https://www.tokyo-np.co.jp/article/107205 (東京新聞 2021年5月28日) 12~15歳にも接種拡大 ファイザー製ワクチン 厚労省部会が了承
 厚生労働省の専門部会は28日、現在16歳以上となっている米ファイザー製の新型コロナウイルスワクチンの対象年齢について、12~15歳にも広げることを了承した。31日に別の専門分科会で12~15歳を予防接種法に基づき無料で打てる対象に追加することを決める。2~8度の冷蔵庫での保存期間を5日間から最長1カ月間とすることも認めた。管理がさらに容易になると期待される。ファイザーは、対象年齢の拡大や保存期間の延長に向けて、国の審査機関「医薬品医療機器総合機構(PMDA)」に添付文書の改訂を相談していた。米国では既に認められている。同社が12~15歳の2260人を対象に実施した臨床研究(治験)の結果によると、ワクチンを投与したグループでは100%の発症予防効果が確認された。政府はファイザー社との間で、9700万人分の供給を受ける契約を交わしている。米モデルナも、18歳以上が対象となっている同社製ワクチンについて、12~17歳も有効とする臨床研究結果を発表しており、各国で接種年齢拡大に向けて準備を進めている。

*19-2:https://www.tokyo-np.co.jp/article/109215 (東京新聞 2021年6月7日) 子どもへのワクチン接種やめろ 抗議の電話殺到 「殺すぞ」と脅迫も
 京都府伊根町が6日から始めた12~15歳への新型コロナウイルスワクチン接種を巡り、町へ抗議の電話が殺到していたことが7日、分かった。「人殺しに加担している」「殺すぞ」と脅迫するような内容もあり、町は問い合わせ窓口のコールセンターを停止。京都府警に相談した。町によると、7日朝から「子どもへの接種はリスクがある」「若い女性が接種すると不妊につながる」などと職員を問い詰める電話が相次いだ。センターは回線がパンクし、午前9時の開始から約30分で停止した。その後は代表番号にかかってくるようになり、午後5時までに計約100件に及んだ。全て町外で、異なる番号が多かったという。抗議文はメールで20件以上、ファクスでも8件あった。

*19-3:https://news.yahoo.co.jp/articles/b06fa652a4d0a40a0f8cb4eb228a3b2304006566 (Yahoo 2021/6/7) ワクチン接種証明、今夏にも発行 渡航者向け、往来円滑化図る 政府
 政府は、新型コロナウイルスワクチンの接種歴を証明する「ワクチンパスポート」を今夏にも発行する方向で調整に入った。複数の政府関係者が7日、明らかにした。各国の水際対策で接種履歴の確認を行う動きが広がっていることを受けた対応。海外渡航者向けに発行し、主にビジネス往来の円滑化を図る。ワクチンパスポートに関しては、加藤勝信官房長官をトップに、外務省や厚生労働省でつくるチームで検討を進めている。接種時期やワクチンのメーカーを明記する方向で、まずは紙の証明書を発行。将来的にスマートフォンのアプリで管理することを視野に入れる。日本がワクチンパスポートを交付した場合、入国後の待機免除などの措置を相手国で受けられるかや、相手国のワクチンパスポート保持者をどのような条件で受け入れるかについて、今後、各国と交渉を行う。ただ、一部の国では「未接種者への差別につながる」との懸念も出ている。加藤氏は7日の記者会見で「海外の動きにしっかりと対応できるように検討を進めていきたい」と語った。

*19-4:https://www.yomiuri.co.jp/olympic/2020/20210530-OYT1T50102/ (読売新聞 2021/5/31) 【独自】東京五輪観客に「陰性証明」求める、1週間以内の取得条件…政府原案
 夏の東京五輪・パラリンピックの観客の新型コロナウイルス対策について、政府が検討している原案が判明した。入場時にPCR検査などの陰性証明書提示を求めることや、会場内での食事や飲酒の禁止などが柱となっている。厳しい対策により、大会期間中の感染拡大防止を図る。複数の政府関係者が明らかにした。政府と東京都、大会組織委員会は会場の観客数上限を6月中に判断する方針だ。一定の観客を入れる場合を想定し、原案を基に3者で感染対策の具体化を急ぐ。原案によると、観客全員に事前にPCR検査などを求め、入り口で観戦日の前1週間以内の陰性証明書を提示することを条件に入場を認める。ワクチンを接種した人は接種証明書があれば陰性証明書は求めない。検査費は自己負担で、政府は検査数は1日最大約40万件と試算しており、今後、検査態勢の拡充も図る。会場では、入り口での健康チェックやマスクの常時着用、分散退場などを徹底する。観戦中の食事や飲酒、大声での応援、ハイタッチは禁止の方向だ。警備員を配置し、違反に対しては入場拒否や退場などの措置も想定している。

*20-1:https://www.tokyo-np.co.jp/article/109698 (東京新聞 2021年6月9日) 尾身会長、五輪開催の場合は「観客以外の納得感が大事」
 政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会の尾身茂会長は9日、衆院厚生労働委員会で、東京五輪・パラリンピック期間中の感染対策に関し「大事なのは人々の納得感だ」と指摘し、開催する場合も、観戦に行かずに感染対策を求められる人たちに不公平感や不満が生じないような対応を求めた。尾身氏は「ほとんどの人は観戦に行かない。そういう人たちに一定の感染対策をお願いすると思うので、そういう人たちに納得してもらえるようなスタジアムの中の景色が大事だ」と語った。競技場内の観客と、観戦に行かない住民の双方への感染対策が「矛盾しない形での五輪の在り方が求められる」とも話した。五輪開催による感染拡大への影響については「さらに感染の機会が増加するということなので、本当にやるのであればかなり注意をしてやる必要がある」と重ねて慎重な検討を求めた。尾身氏ら専門家は近く、五輪開催に伴う感染拡大リスクの評価をまとめ、独自に提言する方針。

*20-2:https://www.tokyo-np.co.jp/article/109592 (東京新聞 2021年6月9日) 初の党首討論 菅首相、東京五輪「子どもたちに見てほしい」6分45秒とうとうと…
 菅義偉首相と立憲民主など野党4党の代表が1対1で論戦を交わす党首討論が9日午後4時から開かれた。菅政権発足後初めて。持ち時間は立民の枝野幸男代表が30分、日本維新の会の片山虎之助共同代表と国民民主党の玉木雄一郎代表、共産党の志位和夫委員長が各5分で東京五輪・パラリンピック開催の是非や新型コロナウイルス対策などをテーマに論戦を繰り広げた。
◆討論開始「ワクチンは切り札」
 菅義偉首相と枝野幸男代表の党首討論が始まった。枝野氏は、政府のコロナ対策から口火を切った。今年1月から2度の緊急事態宣言の発令があり、法令に基づく自粛などがなかったのは3週間だと指摘。「リバウンドを防ぐためには十分な補償がセットでないといけない。第5波を防ぐためにも、3月の解除が早すぎたという反省を明確にした上で、私たちのような厳しい基準を明確にすべきだ」と問いただした。菅首相は「緊急事態宣言やまん延防止等重点措置は専門家の委員にかけて決定している。世界どこでもロックダウンをした国でも簡単におさまっていない」と答えた。ワクチン接種が始まり1日100万回に達成していることを挙げ、「国民のみなさんの接種に必要なワクチンは既に確保している。ワクチン接種こそが切り札だと思っている」と成果を強調した。さらに枝野氏は、ニュージーランドやオーストラリア、台湾が感染防止に成功したことを例に挙げ「感染者を1日50人に抑えるために感染ルートを徹底的に遮断することが必要だ」と強調。また、首相が東京五輪開催をめぐって「国民の命と健康を守る」と発言していることについて、「開催を契機に国内で感染が広がるといった、国民の命と健康を脅かす事態を招かないことも意味するのか」と迫った。首相は「私権制限の強い国などと比較するのはいかがなものか」と反論。大会関係者の訪日数を半分以下に抑え、参加選手の8割以上にワクチン接種を行う方針をアピールした。
◆菅氏独演「子どもに見てほしい」
 続けて、菅首相は「57年前の東京五輪の時、私は高校生だったが、『東洋の魔女』の回転レシーブ、マラソンのアベベ選手、敗者に敬意を払ったオランダ柔道のへーシング選手など今も鮮明に覚えている。こうしたことを子どもたちにも見てほしい」と力説。さらに、前回の東京大会で初めてパラリンピックと名付けられたことを挙げ、「パラリンピックの開催が共生社会の1つの契機になった。素晴らしい大会をぜひ、今の子どもや若者に希望や勇気を伝えたい。さらに心のバリアフリーこうしたものもしっかり、大きな学習にもなるのではないか。世界の人たちに東日本大震災からの復興もみてもらいたい」と訴えた。菅首相は五輪の質問に対して、約6分45秒にわたって、とうとうと述べ続けた。枝野氏は「2年ぶりの党首討論。後半はここにはふさわしくない話だった」と話した。

<新型コロナワクチンに関する優先順位の不合理と接種予約のやりにくさ>
PS(2021年6月11日追加):*21-1のように、新型コロナワクチンの接種加速のために国・地方自治体が大規模会場の利用促進を急いでおり、自衛隊の大規模会場は予約を受け付ける高齢者の居住地を全国に拡大するそうだが、ワクチンを接種するためにリスクの高い高齢者がわざわざ感染多発地帯に公共交通機関を使って出ていくのは不合理だ。そのため、年齢制限を廃してオリンピック関係者や東京・大阪・周辺地域の人に接種した方が効果的に集団免疫を獲得できる。また、対象者の設定が悪く、高齢者施設のスタッフで未だにワクチン接種していない人がいるというのには呆れるが、厚労省の専門家会議はどういう目的で何をアドバイスしたのか?
 なお、*21-2のように、「①ワクチンの職場接種を着実に進めたい」としながらも、「②冷凍庫の関係で1000人以上に実施する場合に限る」「③1000人規模の接種を進めるだけの医療従事者を抱える企業は少ない」などと言い、「④職域接種では65歳未満で市区町村から接種券が届いていない人も対象になるため、後日届いた接種券を国の記録システムに登録する必要がある」「⑤政府は職域接種の対象を取引先企業の社員や地域住民にも広げるよう企業に呼びかけているが、対象を広げると事務は複雑になる」「⑥ワクチンを接種するかどうかは本人の意思に委ねなければならず、接種を強制したり、働き手に強制と受け止められたりすることはあってはならない」と記載している。
 しかし、②③は、冷凍庫を有料のレンタルにすれば国の無料配給を待つ必要はなく、ネックの出ない規模で接種を行うことができる。また、④⑤は、年齢制限を廃して市区町村の接種券を速やかに送付すれば解決する。さらに、⑥は、若い人でも免疫をつけて他人に感染させない必要があるため、多くの集客をする場所の入り口で、また人と接する職業の人には、免疫パスポートか頻繁な陰性証明書の提示を求めればよいのだ。
 このような中、*21-3のように、加藤官房長官が新型コロナ感染拡大を踏まえ、「⑦未曽有の事態を全国民が経験して緊急事態の備えに関心が高まっているので、今が緊急事態条項の創設を進める絶好の契機だ」と言われたそうだが、まさに⑦が、厚労省が新型コロナ感染拡大にあたっていい加減な対策を繰り返して全力を尽くさなかった理由だろう。しかし、自民党内の少なからぬ人が緊急事態条項創設の必要性を主張しているため、野党のように、その時点の首相を貶めて責任追及ばかりしても何も変わらない。そのため、国民は国政選挙の時には、「誰が緊急事態条項の創設に賛成しているか」を確認した上で、政党にかかわらず投票するのがよい。

*21-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20210611&ng=DGKKZO72793360R10C21A6EA2000 (日経新聞 2021.6.11) 接種加速へ対象拡大 国・自治体の大規模接種、予約の空き活用 国は10日から全国予約
 新型コロナウイルスワクチンの接種加速を目指し、国や自治体は大規模会場の利用促進を急ぐ。自衛隊の大規模会場は予約を受け付ける高齢者の居住地を10日から全国に拡大。自治体の会場も対象年齢・地域を広げる。空きの目立つ予約枠を埋め、大規模会場の接種能力を最大限生かす。防衛省は10日、自衛隊が東京と大阪で運営する大規模接種センターについて、同日以降は全国の高齢者から予約を受け付けると発表した。従来は首都圏と関西の7都府県としてきた居住地の制限をなくした。防衛省によると、14~27日の枠は東阪合計で10日午後5時時点で76%が埋まっていない。東京会場は14万人の枠のうち11万2000人、大阪会場も7万人のうち4万7000人の空きがある。インターネットに加え、12日午前7時から電話での予約受け付けを新たに始める。ネットに不慣れな高齢者の利用を促す。対象地域拡大と合わせて予約率アップにつなげ、接種を加速する。当面は65歳以上の高齢者が対象だが、64歳以下で基礎疾患を持つ人や高齢者施設のスタッフへの拡大も検討する。各自治体による接種券の発行状況をみて、拡大時期を判断する。28日以降は1回目を終えた人の2回目接種が始まり、予約枠の空きは少なくなる見通しだ。中山泰秀防衛副大臣は10日の記者会見で「1回目の接種を希望する人は27日までの枠を確保するよう、早めの予約をお願いする」と呼びかけた。地方でも予約が伸び悩むケースが出ている。広島県は福山市内の会場で7日に接種を始めたが、17日までの枠は9日午前の時点で3%しか埋まらなかった。アクセスの不便さや周知不足に加え、対象年齢の設定が影響したもようだ。福山市内の高齢者について80歳以上を受け付け対象としたところ、遠方の会場を敬遠し、近くのかかりつけ医での個別接種を選ぶ人が多かったという。県は10日から対象を65歳以上に拡大し、予約率は同日午後3時時点で32%に上がった。徳島県は徳島市内の大規模会場で予約率が5割程度にとどまっているのを受け、同市以外からの予約を受け付ける。1回目の接種期間である5~24日のうち、22.23日に阿南市、24日は小松島市の高齢者にも開放する。大規模会場の空いた予約枠を活用し、64歳以下への接種を検討しているのが大阪市だ。14日以降の枠に空きがあった場合は市立学校の教職員や消防局職員らに接種するほか、接種券が届いた市民の予約も受ける。市の大規模会場は14~20日の予約枠の7割が空いている。64歳以下にも16日から接種券を順次発送し、早い人は18日にも届く見通し。その時点で空きがあれば、64歳以下の予約を認める考えだ。松井一郎市長は「例えば月~木曜は高齢者だけ、金土日は64歳以下も予約できるような方式を考えている」と話す。高齢者の予約伸び悩みは個別接種が進んだ裏返しとの見方もある。札幌市は個別接種が集団接種の2~3倍の規模で進んでいるという。集団接種の予約枠は3割近く残っているが「個別接種を補完する位置づけであり、あるべき姿に落ち着いてきた」(ワクチン接種担当部)とみる。

*21-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20210611&ng=DGKKZO72792160Q1A610C2EA1000 (日経新聞社説 2021.6.11)ワクチンの職場接種を着実に進めたい
 新型コロナウイルスのワクチン接種が、職場や大学で21日から始まる。すでに多くの企業が申請しており、接種のスピードアップが期待できる。こうした職域接種は65歳未満の人も対象となり、1000人以上に実施する場合に認められる。大企業による単独実施だけでなく、商工会議所などを通じた中小企業の共同実施も可能だ。労働安全衛生法は企業に産業医の選任を求めている。1000人以上が働く事業所で1人、3000人超なら2人以上の専属医を置く必要があり、オフィスや工場に診療所を持つ企業も多い。日ごろから健康を管理している企業内診療所でワクチンを打てるのなら、労働者は安心だ。業務の性質上、在宅では仕事ができない人たちが早く接種できれば、感染防止と企業活動の安定の両面で大きなメリットがある。ただ1000人規模の接種を速やかに進めるだけの医療従事者を抱える企業は少なく、外部の医療機関の助けが必要だ。政府は企業や大学に自力で医療従事者を確保することを求めている。医療機関はぜひ協力してほしい。事務負担も気がかりだ。職域接種では65歳未満で市区町村から接種券が届いていない人なども対象になる。企業や医療機関は接種記録を管理しつつ、後日届いた接種券を本人から回収し、国の記録システムに登録する必要がある。さらに予診票や接種券の写しを5年間保管しなければならない。政府は職域接種の対象を取引先企業の社員や地域住民などにも広げるよう企業に呼びかけている。しかし、対象を広げると事務は一段と複雑になる。対象者の範囲は企業の判断に任せるべきだ。ワクチンを接種するかどうかは本人の意思に委ねなければならない。職域接種ではこの点を特に注意すべきだ。接種を強制したり、働き手に強制と受け止められたりすることはあってはならない。会社員は職場、学生は大学など生活スタイルに合った接種拠点はワクチンの浸透に有効だろう。一方、自衛隊が東京と大阪で運営する大規模接種会場で予約が埋まらなくなったのは、都心オフィス街という立地が高齢者の日常生活から遠いのが一因だ。高齢者に身近な診療所での接種を強化し、大規模会場は勤め人を主な対象にするなど、立地の特性にあった運用を考えたい。

*21-3:https://www.jiji.com/jc/article?k=2021061101031&g=pol (時事 2021年6月11日) コロナ禍は改憲の好機 加藤官房長官
 加藤勝信官房長官は11日の記者会見で、自民党が憲法改正案に盛り込んだ緊急事態条項の創設について、新型コロナウイルス感染拡大を踏まえ「未曽有の事態を全国民が経験し、緊急事態の備えに関心が高まっている。議論を提起し、進めるには絶好の契機だ」と発言した。国難と言える状況を「絶好」と形容した真意を問われると、加藤氏は「この状況が良い状況だとは全く思っていない。申し上げたいのは、緊急事態というものに大変高い関心を持っているということだ」と釈明した。

| 日本国憲法::2019.3~ | 11:04 AM | comments (x) | trackback (x) |
2021.4.3~12 日本は無駄遣いの許されない財政状態だが、何が無駄遣いに当たるのか? (2021年4月15、17、18、19《図》、24、25、26、30日に追加あり)
   
   MOF        2021.1.29北海道新聞        2020.12.21時事  

(図の説明:左図が、2020年度二次補正予算まで入れた日本の歳出・歳入・国債残高で、新型コロナによる散財でわにの口が上に折れた。これに、中央の図の第三次補正予算も加わり、2020年度の総歳出額は170兆5,512億円となる。そして、2021年度も、106兆6,097億円の歳出と43億5,970円の新規国債発行を見込んでいる)


   President図1、図2      President図3    President図4  President図5

(図の説明:Presidentの図1、図2のように、日本における新型コロナの感染者数・死者数は欧米の1/100だが、発生数は世界中で頭打ちになっているのに、日本だけ漸増している。そして、Presidentの図3、4、5のように、日本では大都市圏に感染者数が多く、いずれも頭打ちではなく右肩上がりという特殊な動きをしているのである)

(1)日本の財政
1)2021年度予算について
 2020年度の本予算は102兆6,580億円で9兆2,047億円の債務純増だったが、さらに、コロナ禍の克服対策として第1次補正予算16兆8,057億円(うち9兆5,000億円あまりが自粛で困った企業の救済資金)、第2次補正予算31兆9,114億円(すべて自粛による倒産危機に備える支出)だった。さらに、2021年になってから第3次補正予算19兆1,761億円が組まれ、2020年度分の支出合計は170兆5,512億円になった。

 しかし、新型コロナの検査と隔離を徹底し、新型コロナ関係の機器・治療薬・ワクチンの開発と承認を速やかに行えば、ずっと少ない支出で新型コロナを止めて国民の命と生活を守り、産業の高度化にも繋がって、経済効果はよほど大きかった。にもかかわらず、検査をケチり、検疫や隔離も不完全にして、国民に自粛を促したり、緊急事態宣言を出したりした結果、その後のバラマキが多すぎて賢い支出とは言えない状況になった。

 2021年度予算(106兆6,097億円)は、*1-1のように成立し、グリーン化・脱炭素社会の実現・デジタル化とそれらを支える大学の研究を促す基金への支出をするのはよいが、新型コロナで大学への立入を禁止したのは、大教室で行う文系の講義とその遠隔化(デジタル化)しか眼中になく、理系の実証的な教育研究を妨害することになって教育・研究を疎かにすることとなった。そして、この1年間の遅れは大きい。

 また、「“災害”と名がつけば、いくら予算を付けてもよい」とばかりに、効果の薄い公共工事に減災・防災と称して多額すぎる資金を投じるのは無駄遣いである。国民の血税を投じる公共工事は、少子高齢化で人手不足となっている日本では、雇用の確保やバラマキのために行うのではなく、最小費用で最大効果を出すように設計にすべきだ。

 なお、環境に適応してヒトの人種が次第に変わっていくのと同様、ウイルスの変異もウイルスがいる限りどこででもアット・ランダムに起き、環境に適合してより生存しやすくなったものの割合が次第に増えていく。しかし、種が変わるほどの大きな変異でなければワクチンが効かなくなるわけではないのに、「外国由来の変異型」を口実に愚策を正当化しているのは見苦しい。

2)日本の借金について
 このように、農業でやってきたのと同様、働くことを禁止して働かなかった人に補助金を出したため、国と地方が抱える長期債務残高は著しく膨らんで、今ではGDPの2倍に当たる1200兆円にのぼり、年60兆円前後の税収ではとうてい賄えない金額になった。

 しかし、日本のように、インフレ目標を立ててインフレで借金を目減りさせるのは、法律によらずに全国民に見えざる負担を押し付け、支出の割合が大きい貧しい人から土地・株式を持つ富む人へ財産の移転が行われる所得の逆再配分であり、本末転倒のやり方である。

 また、*1-2のように、単純に「将来世代につけを回してはいけない」とするのも正しくない。何故なら、公共事業の中にも将来世代にとっても役立つ資本的支出(投資)に当たるものが多く、この資本的支出部分と無駄遣いのバラマキ部分をしっかり区別することが大切なのだが、国はこれをやらずにバラマキを多くしているのが問題だからである。

 なお、新型コロナ対策を例にとれば、関係する機器や治療薬・ワクチンの開発は資本的支出にあたる投資部分が大きく、国民に自粛を促したり、緊急事態宣言を出したりして企業が立ち行かなくなったため出す補助金は、無駄遣いのバラマキ部分が殆どである。しかし、米国のように、失業した人を雇用吸収するために行うグリーンニューディールは、適正な価格で行う範囲において資本的支出の部分が大きい。

 社会保障については、4)の消費税に関する項目で同時に記載する。

3)飲食店への営業時間短縮協力金、雇用調整助成金、GoToトラベルは賢い支出か?
 政府は、*1-3-1のように、新型コロナ感染収束と経済正常化に向けると称して、2021年度も巨額の財政出動を続けることとした。

 このうち、①自治体が営業時間短縮に応じた飲食店に1日4万円配る協力金の財源 ②広く経済活動を止めたために必要となった雇用調整助成金 ③自粛を要請して必要になった消費喚起策 などを、いずれも○兆円単位で支出しているが、これらは国が検疫・検査・隔離などの予防的処置と治療行為をしっかり行っていれば不要だったものである。

 また、日本の感染者は、*1-3-2のように、欧米の1/100程度だったが、それでも医療が対応しきれないとされ続けたのは、これまでの政治・行政のミスと言わざるを得ない。さらに、対数グラフで各国の感染者数・死者数の推移を比較すると、中国・韓国などの東アジアでは早期に横ばいになり、欧米でも次第に横ばいになっているのに、日本だけが右肩上がりなのである。

 ドイツは、感染者数は他の欧米諸国と殆ど同じパターンだが、死亡者数はかなり早い段階で拡大テンポが落ち、他の欧米諸国より良好なパターンを示した。その理由は、感染拡大の地域的偏りが小さく、医療体制が充実し、PCR検査の充実等により感染者が高齢者に偏らなかったこと等が指摘されている。そのため、今後、あるべき医療・介護制度を整備したい地方自治体は、自治体の担当者・医師会・介護担当者が、ドイツ・スウェーデン・イギリスなどのヨーロッパ諸国を視察して、よいところは参考にし、国に要望しながら整備していくのがよいと思う。

 つまり、医療システムや検疫システムの充実は将来世代のためにもなる資本的支出だが、単なる景気刺激策は賢くないバラマキであり、特定地域の飲食店全店に科学的な理由の説明もなく営業時間の短縮を求めたのは、政治・行政の不作為のツケを国民に皺寄せする不公平・不公正なやり方だったのである。

 なお、脱炭素は研究開発ではなく実用化の時代であり、今は公共に環境関連のインフラ整備が求められている時なので、肝心な時に「財政に余力がない」と言うのは、日本の愚かさだ。

4)消費税と社会保障がセットである必要はないこと

      
2021.3.31日経新聞

(図の説明:左図のように、高齢者の70歳までの雇用を努力義務化することによって年金支給を減らし、同一労働同一賃金によって低賃金労働者を減らそうとしているのは理に適っているが、高齢者の健康状態を考えれば75歳定年制でもよいと思う。しかし、公立小学校で2年生までをやっと35人学級にするというのは、教育が大切な割には小出しである。なお、公的年金引き下げや介護報酬引き上げは、低所得の高齢者を直撃するため賛成できない。そのため、国や地方自治体は、税収だけでなく税外収入を増やす努力もすべきだ。また、下に書いたように、価格を総額表示しただけでは買い手の購入判断や会計処理に不便であるため、中央の図のインボイス制度開始時には、ヨーロッパ型の適格請求書を義務化し、これからはそれに沿った設備投資をした方がよいと思う。中小企業者でも、右図のように、領収書様式に明細欄をつければすむことだ)

イ)消費税について
 2021年4月1日から、*1-4-1のように、消費税の総額表示が義務化された。支払金額が分かりやすいように、2004年に税込価格の総額表示が義務化されていたが、2014年の税率アップ前に税抜価格表示が認められていたのだそうで、「消費税額を書かなければ、消費税の痛みを感じないだろう」と思ったとは、あまりに国民を馬鹿にしている。また、値札の表示と実際の支払金額が異なるのは詐欺だし、買い手に暗算で真の支払金額を計算させるのは不親切だ。

 そのため、領収書は、前にもこのブログに記載したとおり、商品毎に税抜価格・消費税率・消費税額・税込価格を記載し、総合計欄に税抜価格合計・消費税率・消費税額合計・税込価格合計を記載すべきだ。そうしなければ、売り手に手を省かせて優しくしたつもりでも、買い手が領収書を見て会計処理する際に総額から消費税額を割り戻して計算した上、端数処理まで気にしなければならず、いたずらに煩雑化させ無駄な時間をとらせて生産性を下げる。

 しかし、支払総額だけを表示したからといって消費者が値上げと錯覚して、さらに個人消費(売上)が落ち込むことはない。何故なら、どんぶり勘定の人でも、値札が税込表示か税抜表示かにかかわらず、支払後の残額は同じで(ここが重要)、消費税分だけ値上げされたのと効果が同じであることは変わらないからである。

 *1-4-2も、総額表示が義務化され、値上げの印象に懸念を示しており、農業系は殆どの商品が税率8%かもしれないが、今後のインボイス制度導入も視野に入れ、商品毎に税抜価格・消費税率・消費税額・税込価格を記載し、総合計に税抜価格合計・消費税額合計・税込価格合計を記載するのが、買い手が会計処理するのに親切でよいと思う。

 現在の消費税法は、簡便さを目的として推定や割り戻し計算を多く採用しており、かえって複雑で不正確になっている。そのため、複数税率にも難なく対応できるヨーロッパと同じ形式のインボイス制度(https://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/consumption/110.htm 財務省:主要国の付加価値税におけるインボイス制度の概要 参照)を早急に取り入れ、公正・中立・簡素な制度にしながら、標準化した領収書を使うことによって、正確で素早い自動会計処理ができるようにした方がよいと思う。

ロ)社会保障について
 *1-4-1に書かれているとおり、消費税法1条2項に「消費税の収入は、制度として確立された年金・医療・介護の社会保障給付及び少子化に対処するための施策に要する経費に充てるものとする」と明記されている(https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=363AC0000000108 消費税法 参照)。

 これに対する疑問は、「①消費税は、本当に目的通り社会保障のみに使われているのか」だけでなく、「②何故、社会保障給付には、消費税を充てなければならないのか」の2つがあり、①については、社会保障だけに使われているのではないと言われている。また、②については、そもそも社会保障も国の重要な支出であるため、所得税・法人税・相続税等の他の国税収入から充当しても差し支えない筈なのだ。

 さらに、公的医療保険はリスクの低い人と高い人が混在して支える保険制度なのだが、リスクの低い期間(被用者として就業している期間)に入る健康保険・船員保険・共済組合には退職してリスクが高くなった後は入らないため、健康保険・船員保険・共済組合は黒字になるのが当然ということになる。その反面、被用者としての就業が終わった退職者や自営業者・農業従事者・フリーターが入る国民健康保険は、所得の低い人やリスクの高い人の割合が高くなるため、当然のことながら赤字となり、これに税金で補助している。しかし、被用者としての就業期間が終わった退職者は、元の健康保険に入り続けるのが保険の理論にあっているのだ。

 また、介護保険制度は、40歳以上の人の加入が義務付けられ、被用者は健康保険料と一緒に介護保険料を徴収されて事業主が保険料の半分を負担する。被用者でない国民健康保険加入者は、自治体が計算して介護保険料を徴収し、65歳以上の人は原則として年金から天引きして市区町村が徴収する。

 ここで不自然なのは、65歳以上の人だけが介護サービスの対象者で、40歳以下の人は介護保険料を徴収されないが介護サービスも受けられないこと、40~64歳の人は介護保険料の支払義務はあるが、老化に起因するとされた特定疾病により介護認定を受けた場合しか介護サービスを受けられないことだ(https://kaigo.homes.co.jp/manual/insurance/about/ 参照)。しかし、65歳未満の人でも、出産や自宅療養時には介護を受ける必要があるため、医療保険に入った時から介護保険にも加入することを義務付けて、介護サービスの対象者にするのがよいと思う。

 このような不合理を包含しながら、「社会保障に投入されることになる税金は、景気に左右されない安定財源だから消費税から賄う」としているが、これは、消費税が所得に関係なく税を徴収していることの裏返しであり、さらに消費支出割合の大きな低所得者の方が消費支出割合の小さな高所得者よりも税負担率が高くなるという逆進性を持つ負担力主義に反する税であるということなのだ。そのため、消費税に頼る姿勢は、小さければ小さいほどよいのである。

(2)人口を分散した方が、ゆとりある暮らしができること

   

(図の説明:左図のように、日本の人口密度は、東京・大阪・神奈川・埼玉・愛知・千葉・福岡で高く、中央の図のように、人口密度と新型コロナの人口当たり患者数は相関関係がある。つまり、大都市は、一人当たり専有面積が狭く、混み合っているということで、右図のように、公園における1人当たりの占有面積にも大きな違いがあり、自宅・保育園・学校・列車における一人当たり専有面積も同じだ。つまり、人口の集中しすぎは、住環境の悪化を招くことがわかる)

 一番上の下段・中央の図のように、新型コロナの感染者数が多かったのは、東京・大阪・神奈川・埼玉等の大都市圏と北海道・北陸などの特定地域で、これらは人口の密集や観光地であるなどの条件から納得できる。しかし、日本には、鉄道・上下水道等の基礎的インフラすら維持管理しにくくなっている過疎地も存在し、*2-1のように、過疎地域には日本の全人口の1割しか住んでいないのに、その面積は国土の約6割を占めるのである。

 そのため、*2-3のように、2021年3月26日に、議員立法で「過疎地域の持続的発展の支援に関する特別措置法」が成立し、「東京一極集中の是正」と「地方の活性化」を国づくりの車の両輪としながら、国土全体を活かし切って日本の持続可能性を徹底的に追求し、国民の安全安心を確固としたものにするための法律ができたのは歓迎だ。

 確かに、過疎地は人口減少・少子高齢化をはじめ課題先進地であるため、これを解決することは、これから日本に起こるさまざまな課題を解決するためのヒントになる。また、一極集中しないことは、国全体として災害に強く、ゆとりある住環境を提供できる上、国内で食料・エネルギーを作ることにも資する。さらに、自然の近くで生物や環境に関する感受性を育てることによって、地球温暖化の防止や水源の涵養に資する人材を育てることにもなるのである。

 そのため、私も、*2-1に書かれている分散型社会は必要で、その分散型社会への受け皿となる過疎地域の持続的な発展も重要であり、成立した新過疎法で地域公共交通網・医療機関・介護施設・教育施設・デジタル社会向けのインフラ整備などを行い、農林漁業はじめ地場産業を振興して雇用を創出し、人口密度が低く十分な生活空間を提供できる過疎地域を、環境がよくて住みやすい地域にすることは、将来の国民の利益に繋がると考える。従って、これらは決して無駄遣いではなく、資本的支出(≒投資)になるように計画しなければならない。

 なお、一極集中している大都会は、エネルギーも食料も水も作れない。国連は、2020年9月に食料システムサミットを開き、貧困・飢餓の撲滅・気候変動対策等の持続可能な開発目標(SDGs)達成に向けた方策を議論し、各国に食料の生産、加工、輸送、消費の一連の活動を変革する取り組みを示すよう求めたそうだ。また、EUは既に新戦略「農場から食卓へ」で、2030年を期限に化学農薬使用量の半減・有機農業面積の25%への拡大などの目標を設定し、米国のバイデン政権も、農業での温室効果ガス排出量を実質ゼロにすると宣言している。

 日本は、*2-2のように、農水省が2021年3月中に、温室効果ガスの削減などを目指す農業の政策方針「みどりの食料システム戦略」の中間取りまとめを行い、2050年までに、①化学農薬使用量を半減 ②化学肥料3割減 ③有機農業を全農地の25%に拡大 ④化石燃料を使用しない園芸施設に完全移行 などを目標に掲げたそうだが、それならEUと同様、2030年までには行うべきだし、そうすることによって新しい方法への研究と実用化が進む。

 *2-2に書かれているとおり、確かに、日本の政策は、機械・施設の開発に力点を置く技術革新を重視しており、生態系の機能を回復・向上させる技術開発が手薄だ。そして、環境負荷を軽減する農業を点から面に広げる地域ぐるみの後押し政策も貧弱な場所が多いが、これらは、教育において生物系の勉強を疎かにしていることが原因だろう。

(3)エネルギーの自給率を上げて、豊かな国になろう
1)環境税(炭素税)
 *3-1のように、温暖化対策が不十分な国からの輸入品に国境炭素税を課す多国間協議が始まるそうだ。私は、炭素(or排気ガス)排出量に応じて環境税を課すべきだと思っていたが、これまで経産省と産業団体の反対で導入できず、またまたEUなどの外圧に頼ることになった。

 それでも、この環境税(炭素税)を、「事実上の関税になる」「対立の少ない制度づくりができるか」などと言っているようでは、環境分野での日本のリーダーシップや信用は壊滅する。何故なら、これは自由貿易以前の地球環境を護る取組だからで、各国は歩調を合わせて環境税(炭素税)を導入するようにし、環境税(炭素税)を導入しない環境軽視国に対しては、地球環境を護る国が損をしないように国境調整するしかないのである。

 もちろん、温暖化ガス排出量の計算と炭素への価格付けは、環境税(炭素税)によって化石燃料から再エネへの移行に資するものにしなければならない。また、データは客観性の持てる集め方をして、第三者の検証を可能にしておかなければならない。さらに、集めた税収は、再エネ普及のためのインフラ整備に使うのがよいと思う。

 「日本は脱炭素への寄与度が高い製品の輸入にかかる関税を引き下げる案も各国に提案する方向だ」とも書かれているが、環境税(炭素税)は化石燃料から再エネへの移行が進む単価にしなければならないし、そうすれば回り道をせずに優れた再エネ製品に移行するため、日本政府のこういう意図的な取引はむしろ邪魔になる。また、関係国で対話をし、回り道をさせることによって、日本が再エネ機器でも自動車と同じ轍を踏まないようにしてもらいたい。

2)再エネ



(図の説明:水素は再エネ由来でなければ意味がなく、左図のように、水を電気分解して水素を作るさまざまなシステムができている。できた水素は、中央の図のように、移動手段用・産業用・家庭用の燃料電池として使うことができ、右図のように、水素を使わずに効率良く蓄電する全固体電池もできているため、後は、これらを安価で速やかに普及することが重要なのだ)

イ)国産・再エネ由来の電力を使おう
 米アップルが、*3-2-1のように、2021年3月31日、アップルに納める製品の生産に使う電力を全て再エネで賄うと表明したサプライヤーが110社を超えたと発表し、日本企業は村田製作所・ツジデン・日本電産・ソニーセミコンダクタソリューションズなどが、アップル向け製品生産で消費する電力を全て再エネに切り替えると約束している。

 アップルは2030年までに自社の全製品の生産から利用を通じて排出するCO₂を実質0に抑える方針を2020年7月に表明し、アップルの呼びかけに応じた取引先数は2020年7月の約70社から8カ月間で1.6倍に増えたのだそうだ。影響力は、このように、世界をリードする方向で使いたいものである。

ロ)水素も国産・再エネ由来にすべき
 *3-2-2のように、政府は国内の水素利用量を、2030年時点で国内電力の1割分にあたる1000万トン規模とする目標を設ける調整に入ったそうだ。

 その内容は、発電や燃料電池車(FCV)向けの燃料として利用を増やしてコストを引き下げ普及に繋げるとのことだが、移動手段のエネルギーは燃料電池か電気に変え、ビルや住宅の電力自給率をスマートな機器で引き上げた上、再エネで発電した電力を送電すれば、水素を発電所の燃料に使ってエネルギー変換を繰り返し、エネルギーロスを出すよりずっと効率的だ。そのための送電線敷設費用や充電設備設置費用などを、環境税収入から支出すればよいと、私は思う。

 前から、「①太陽光や風力等の再エネは天候に左右される」「②再エネ