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2016.2.2 後始末のできないこれだけの事故を見ても、原発を推進したがるのは何故か? (2016/2/4、8、10、12、16、17に追加あり)
     
      2015.12.29       2016.1.1     2015.12.20     2015.12.21
      西日本新聞        西日本新聞      日経新聞        東京新聞

  
         2016.2.1             2016.2.1          日本の社会保障費  
         愛媛新聞              日経新聞         (スペード社会保障は必要経費で
                                             あるため、国庫負担分から 
                                             資源収入で賄うようにしよう)    
(1)国連気候変動枠組み条約第21回締約国会議(COP21)と世界の動向
 COP21は、*1-1のように、途上国を含む全世界が「今世紀後半までに排出と吸収を均衡させる」という目標を掲げる「パリ協定」を採択し、化石燃料に頼らない社会を目指すことを宣言した。これを、CO2の排出削減を痛みを分かち合う制度と捉えれば発展性はないが、より快適なエネルギーを使うための産業革命と捉えればエネルギー関連の投資を拡大して、コストダウンすることができる。

 そして、日本でも自然エネルギーが普及し、*1-2のように、四国電力伊方原発(愛媛県伊方町)が全基停止して記録的な寒波に見舞われても、電力供給力に占める需要の割合は90%に達した平日は昨年12月以降、3日間だけで、電力の安定供給に影響はなかったそうだ。そして、*1-3のように、四国電力は企業や家庭から買い取る太陽光発電の発電量が上限に達したため、電力供給が過剰となった場合には、買い取り制限するとしているくらいだ。

 それにもかかわらず、日経新聞は、*1-4のように、パリ協定を受けて長期戦略を描く時だとしながら、理由も書かずに突然、「①原子力は今後も維持していく必要がある」「②安全性の高い設備に更新するのが望ましい」「③原子力の信頼回復を急げ」「④中国電力の島根原発3号機など建設半ばで足踏みする原発も稼働への道筋をつけるべき」「⑤放射性廃棄物の最終処分について政府や電力会社は具体的な道筋を示す責任がある」と記載している。しかし、世界銀行は、すでに原発には融資しない方針を定め、世界は既に脱原発に舵をきっているのだ。

 *1-4の記事は、①②の結論が先にあって、③のように、「フクシマの事実を隠しても原子力の信頼回復を急げ」としていることが明らかだ。また、④は現在でも多くの証拠で否定されている上、今後は自然エネルギーのコストがどんどん下がると予想される。その上、⑤のように個別の企業が使った危険性の高い産業廃棄物を原発稼働から40年経った今でも原発の近くの使用済核燃料プールに大量に保管し続け、最終処分の目途すら立たずに政府に頼っている電力会社は、他の産業ではあり得ない怠惰な状況なのである。

(2)電力自由化について
 電力会社が他産業ではあり得ない怠惰な状況でもやってこられたのは、地域独占体制に守られていたからである。そのため、電力自由化で電力の供給に競争原理を導入すれば、*2-1のように、より便利で安く公害の出ない電力供給へと電力の需要側から圧力をかけることができる。電力自由化に対する反対意見もあったが、荷物を送る手段が鉄道のチッキしかなかった頃と比較すれば、宅急便の参入で荷物を送るのが簡単で便利になった結果、市場が拡大したり、これまでできなかったことができるようになって新市場ができたりしたのと同じ成果が現れる筈だ。

 そのため、*2-2のように、九州でも26社が電力小売りに参入する予定で、このうち地場が11社あるというのは、喜ばしいことである。電気エネルギーを地元で作れれば、エネルギー代金が外に奪われることなく地元で還流するため、財政が豊かになることは確実であり、これは、国の規模でも同じだ。

 また、*2-3のように、一般企業も、これまで自家発電を行ってきたため発電能力のある企業が多く、新しい事業者として有望である。そして、*2-4のように、九州では既に九電から特定規模電気事業者(新電力)に切り替えた九州内の企業や自治体が7628件あり、九電離れが原発1基分超あるそうだ。

(3)送配電システム
 *1-3のように、四国電力は「企業や家庭から買い取る太陽光発電の発電量が上限に達したため、今後は電力供給が過剰となれば金銭的な補償なく買い取りを制限する」としており、これは九州電力はじめ大手電力会社で同じである。

 しかし、これでは再生可能エネルギーの足を引っ張る。そのため、*3の電線地中化を行う際に、地方自治体が、上下水道と電力供給のインフラを一緒に設置すれば、①簡単に送配電設備を設置して公平中立な送配電を低価格で行うことができ ②地方自治体に送配電料という収入が入り ③安い電気料金を提案できる自治体は地場産業や新たな企業の誘致に有利となる。

(4)原発事故と後始末
 NHKは、2015年12月18日になって、*4-1のように、「東京電力は、フクシマ3号機からの放射性物質の放出は格納容器が機能を失い、直接外部に放出されたとした」と放送している。しかし、3号機爆発の真実は爆発直後から映像でわかっていた筈で、爆発直後の公表と現在の公表では住民の予防の徹底度が異なるため、病気の発症割合が異なる。そのため、住民の命を最も大切にはしない判断が行われたということだ。

 さらに、*4-2-1のように、フクシマ原発事故に伴って自治体が受けた損害に対する賠償は、事故から4年8カ月近くたっても、福島県内56市町村が請求した553億3900万円に対し、東電が支払ったのは11.4%にすぎないとのことである。

 また、*4-2-2のように、岡山大大学院の津田敏秀教授(生命環境学)が6日付の国際環境疫学会の医学専門誌「エピデミオロジー(疫学)」に論文を発表し、「福島県が福島原発事故当時に18歳以下だった県民を対象に実施している健康調査の結果を分析したところ、甲状腺癌の発生率が国内平均の20~50倍だった」「福島県では甲状腺がんの過剰発生がすでに検出されており、多発は避けがたい」として、今後、患者数が爆発的に増える可能性を示唆したそうだ。このように、次第に出てくる結果を見れば、フクシマの爆発状況は推定されるのである。

 また、*4-2-3のように、福島県は、フクシマ原発事故当時18歳以下だった約38万人を対象に実施している甲状腺検査で、2915年7月から9月末までの3カ月間に新たに11人が癌と診断されたと発表したが、甲状腺癌のリスクは、当時18歳以下だった人のみにあるのではなく、県境でリスクが変わるわけでもないため、この検査範囲では不十分だ。さらに、フクシマ原発事故による病気のリスクは、甲状腺癌だけでなく、いろいろと弁解は多いものの、*4-2-4のような白血病や心臓病もあるのである。

 さらに、*4-3-1、*4-3-2のように、「Nature(ネイチャー)」などが日本政府の福島第一原発への対応を批判しており、①漏れた汚染水の放射線量が最初に報道されていた状況よりも18倍も高かったこと ②報道が遅れたこと ③監視体制の甘さなどを挙げている。また、汚染水が海洋生物にどのように影響があるかを調べる専門家もおり、日本が他国から多くの専門家を呼び込むべきだとしている。

 なお、*4-4のように、南相馬市除染推進委員会の委員長を務める児玉東大教授(医師)は、2013年の同市産米から国の基準(1キロ当たり100ベクレル)を超える放射性物質が検出された問題で、現地の水源や水田の調査をせず、科学的検討も行わずに「福島第1原発のがれき処理が原因でない」と因果関係を否定した原子力規制委員会の田中俊一委員長の発言を強く批判した。私は、児玉教授の見解がもっともだと考える。

 さらに、多くの日本人は、「風評被害」と信じ込まされているが、*4-5のように、EUは2016年1月9日から食品の輸入規制を一部緩和したのである。そして、これは、低線量の外部被曝を受け続けたり、呼吸による内部被曝を受けたりしておらず、他の食品は全く汚染されていない、人体にとっては日本よりずっと好条件の国の話なのだ。

(5)原発のコスト
 従って、*5-1のように、原子力発電は高くつくため、原発ゼロに向かって再考すべきであることは、フクシマ原発事故以来、誰の目にも明らかになった。さらに、汚染水一つ後始末できず、病人を増やし、国土を狭め、農林漁業も不能になることが明白になった。そして、*5-3のように、原発事故後5年たっても故郷に戻れぬ原発避難者は、2015年末で6900件が移住を余儀なくされている。そのため、持続可能で豊かな社会に向けて、そろばんを弾き直すことに、私も賛成である。

 そのような中、*5-2のように、経団連会長は、「原発停止は国の損失」「全国で停止中の原発を再稼働させるべき」などとしているが、第一線の経済人が、このようなそろばんのはじき方をしているようでは、日本経済や日本企業が本質的に回復することなどあり得ない。そのため、いつまでも、カンフル剤にしかならない財政支出をして国民に迷惑をかけ続けるしかないだろう。

<COP21と世界の動向>
*1-1:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12116852.html  (朝日新聞 2015年12月15日) <視点>実質排出ゼロ社会、新技術が導く 温暖化対策、パリ協定採択
 国連気候変動枠組み条約第21回締約国会議(COP21)は12日夜(日本時間13日未明)、2020年以降の地球温暖化対策の国際枠組みを定めた「パリ協定」を採択した。先進国だけに温室効果ガスの削減を義務づけた京都議定書に代わり、途上国を含むすべての国が削減に加わる。開幕には約150カ国・地域の首脳が集まったこの会議で「今世紀後半までに排出と吸収を均衡させる」という目標も掲げた。排出を実質ゼロにすることであり、石炭や石油など化石燃料に頼らない社会を目指すことを宣言したに等しい。1997年のCOP3で採択された京都議定書は、世界が科学の声を聞き入れ、温暖化を招いた先進国が率先し、欲望を抑える「痛みを分かち合う」制度と受け止められていた。経済活動で増える排出量を抑えるのが、政府の役割と考えられていた。今回のパリ協定は、違う文脈でとらえられている。米ホワイトハウスは、ただちに「合意は、ここ数年のエネルギー関連の投資を相当拡大することになるだろう」との声明を発表。欧米の経済界からは歓迎のツイートが相次いだ。風力発電は18年前の50倍に、太陽光発電は原発の設備容量の半分までに成長した。爆発的な普及に伴ってコストは急激に下がり、途上国でも火力発電を下回るようになってきた。低炭素経済への移行は、温暖化対策に後ろ向きとみられた新興国でも進む。中国は世界一の自然エネルギー大国であり、インドも22年までに風力を6千万キロワット、太陽光を1億キロワットにする計画を掲げる。多くの国で経済成長と二酸化炭素(CO2)排出は連動しなくなり始めた。昨年、世界経済は3%成長したのに、CO2排出量は横ばいだった。今年の排出量は下がると見られている。196カ国・地域の意思が詰まったパリ協定は、こうした経済の動きを伸ばそうとしている。削減目標の達成までは義務化されていないので、実効性に疑問を持つ声もある。ただ、目標の作成と報告は義務づけられ、世界が見ているなかで5年ごとに点検する。さぼることは難しいだろう。世界初の量産ハイブリッド車「プリウス」はCOP3に合わせて発売された。パリ協定が生まれた今日、より多くの低炭素技術が生まれている。日本は50年に80%削減の目標を持ちながら、実現への政策手段を持ち合わせていないままだ。日本がまずやるべきは、いまある削減技術への投資と普及、次に新たな技術の開発と新しいライフスタイルの確立だ。

*1-2:http://www.ehime-np.co.jp/news/local/20160131/news20160131227.html
(愛媛新聞 2016年1月31日) 伊方原発全停止、4回目の冬 安定供給に影響なし
 四国電力伊方原発(愛媛県伊方町)が全3基停止した状態で迎えた4回目の冬。県内は1月、記録的な寒波に見舞われたが、電力需給に関しては供給力に占める需要の割合を示す使用率が90%に達した平日は昨年12月以降、3日間だけ。おおむね80%台で推移し安定供給に影響は出ていない。使用率が90%と「やや厳しい需給状況」になったのは松山で最高気温が10度を下回り7.2度だった1月13日に加え、県内で大雪を伴う氷点下の地点が続いた25、26日の3日間。最大需要の記録は松山で最高気温が3.3度までしか上がらなかった1月19日の481万キロワットだった。一方、昨年12月の使用率は78~88%で推移。四電によると、四国4県の県庁所在地の平均気温は平年比プラス2.0度、前年比プラス3.6度と暖かく、需要減につながった。四電によると例年、冬季の最大需要が発生するのは2月が多い。一般的に、寒い日が連続すると需給状況が厳しくなる傾向があるといい、安定供給へ「気は抜けない」としている。

*1-3:http://www3.nhk.or.jp/lnews/takamatsu/8035461111.html
(NHK 2016.2.1) 四電、太陽光が制限枠に到達
 四国電力は企業や家庭から買い取る太陽光発電の発電量が上限に達したと発表しました。
今後も買い取りの契約は受け付けますが、電力の供給が過剰となった場合、金銭的な補償なく買い取りを制限することになります。再生可能エネルギーで発電した電力を電力会社が買い取るよう義務づけた国の制度では、太陽光発電を中心に申し込みが急増したため、去年、電力会社が買い取る発電量に制限が設けられました。四国電力の発表によりますと、発電事業者や家庭などからの買い取り量は、すでに契約済みの分と申し込みが来ている分の合計が、先月22日に、上限の257万キロワットに達したということです。四国電力は今後も買い取り契約の申し込みは受け付けるものの、上限を超えた分については、発電量が電力の需要を上回るなど供給が過剰になる場合、買い取りを制限することなります。また、買い取りを制限した場合も電力会社側からの金銭的な補償はないということです。太陽光発電の受け入れが上限に達したのは、大手電力会社の中では北海道電力などに続いて4社目です。四国電力では、「無制限に買い取り続けた場合、逆に安定供給に支障が起きることもある。ぜひご理解いただきたい」と話しています。

*1-4:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20160201&ng=DGKKZO96762260R00C16A2PE8000 (日経新聞 2016.2.1) パリ協定受け長期戦略を描くとき
 21世紀後半までを見通す息の長い日本のエネルギー戦略について国をあげて議論を始めるときだ。昨年12月に開いた国連の会議で地球温暖化の抑止を目指す「パリ協定」が採択された。国民世論を二分する原子力発電の扱いをはじめ難しい問題はあるが、政府は腰を据え長期の戦略づくりに取り組む覚悟を固めてもらいたい。
●見え始めた低炭素社会
 パリ協定は人間の活動による二酸化炭素(CO2)排出を今世紀後半にゼロにするよう世界各国に求めている。化石燃料の消費を世界全体で大きく減らし、「低炭素社会」へと向かう潮流がはっきり見えてきた。日本はCO2の排出量を2030年時点で13年に比べ26%減らす目標を掲げているが、その先は明確でない。パリ協定を誠実に履行するには、30年以降の長期のエネルギー政策の方向性をはっきりさせ、日本社会や産業をどこまで「低炭素化」できるか具体策を考える必要がある。発電所や送電線などエネルギー関連の設備投資や技術開発には時間がかかる。30年は遠い未来ではない。今から手立てを尽くしておかねばならない。まず目指すべきは、エネルギーを効率よく使う社会の実現だ。現在の原油の安値は消費者にはとりあえず恩恵といえるが、省エネには逆風となる。ここで省エネの手綱を緩めるのは望ましくない。燃料価格が再び高騰することもあるだろう。化石燃料の価格がどうあれ、工場や住宅の省エネ努力や、バイオや水素など化石燃料に代わる新エネルギーの普及の足取りを滞らせてはいけない。省エネは化石燃料の輸入を減らし、エネルギー安全保障の観点からも意義が大きい。化石燃料の消費を継続的に減らすには、CO2排出をコストとして経済活動に取り込む仕組みも有効だ。例えば化石燃料の消費に課税する炭素税がある。既存の地球温暖化対策税は炭素税の体裁をとっているものの、消費抑制の効果が薄い。補助金の財源になっているだけだ。見直してはどうか。再生可能エネルギーは果たす役割が大きくなる。再生エネの電気を電力会社が買い取る制度によって太陽光発電などの導入が進んでいる。問題は設置が容易な太陽光が先行し、風力や地熱発電の拡大が遅れバランスを欠く点だ。買い取り制度を維持するため消費者が電気料金の一部として払う賦課金の額も膨らむ。制度は見直しを迫られている。ただし太陽光の発電コストは着実に下がり、賦課金の負担もやがては減る。風力や地熱も立地を妨げる規制を緩和し、普及を後押ししてもらいたい。電力会社間の連系線を柔軟に運用して電力を融通し合えば、再生エネを受け入れる余地は広がる。再生エネを電力供給を支える基幹電源の一つに育てていくべきだ。原子力は今後も維持していく必要がある。東京電力福島第1原発の事故後、政府は原発依存度を下げるとしてきたが、ゼロにするのは現実的でない。活断層などの不安を抱え、老朽化して採算性の良くない原子炉を電力会社は積極的に廃止し、安全性が高い設備に更新するのが望ましい。中国電力の島根原発3号機など建設半ばで足踏みする原発も稼働への道筋をつけるべきだ。
●原子力の信頼回復急げ
 原子力維持の最大の課題は国民の信頼をいかに回復するかだ。事故から5年近くになるが、なお道遠しと言わざるを得ない。原子力規制委員会の厳格な審査に加え、電力会社自身が規制基準を上回るまでに安全性を高めることが極めて大事だ。だがその努力は十分とはいえない。放射性廃棄物の最終処分についても政府や電力会社は具体的な道筋を示す責任がある。火力発電は設備の新陳代謝を急ぐ必要がある。再生エネの出力変動を機敏に補うため火力発電は要るが、発電効率が悪くCO2排出が多い設備をそのままにはできない。発電量あたりのCO2排出が少ない最新鋭設備への置き換えを進めてほしい。一方で電力の自由化が進みコスト競争が激しくなる。再生エネや原子力を必要なだけ維持するにはどうすればいいか、知恵を絞る必要がある。なすべきことは多い。

<電力自由化>
*2-1:http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201512/CK2015122002000132.html (東京新聞 2015年12月20日) 
都民6割「東電以外」検討 電力自由化 より安く/原発の電気いや
 来年四月に始まる電力の小売り自由化で、電気の購入先を東京電力から新しい電力販売業者に代えようと考えている東京都民が六割に上ることが、本紙と新潟日報の合同世論調査で分かった。料金がより安いところがあれば代えたいという理由が最も多いが、「原発でつくられた電気を使いたくない」を理由に挙げた人は二番目に多かった。また東京、新潟とも七割が将来的には原発をゼロにし、再生可能エネルギーを軸に取り組むべきだとの意思を示した。調査は、東電福島第一原発事故から五年を前に、原発に関する意識を調べるために実施。今月十二日から十六日までの五日間、十八歳以上を対象に、東京と新潟でそれぞれ一千人、計二千人から有効回答を得た。電力の小売りが自由化されると、これまでは地域の大手電力会社に限られていた電気の購入先が、一般家庭でも自由に選べるようになる。購入先を切り替えるかどうか尋ねたところ、東京では6%が「切り替える」、56%が「すぐではないが検討する」と答えた。合わせて六割超の人が、東電から別の事業者に購入先を切り替えようと考えているとの結果が出た。「切り替えない」「当面は切り替えない」は計約三割にとどまった。切り替えを考えている人たちにその理由を聞いたところ、うち35・3%の人が「より安い電気を使いたい」と答え、二番目は「原発を保有しない電力会社の電気を使いたい」(28・2%)だった。東北電力管内の新潟では「切り替える」「検討する」が計四割弱、「切り替えない」「当面は切り替えない」が計五割弱だった。原発に対する考え方では東京、新潟とも「すぐゼロにするべきだ」「徐々に減らし将来はゼロ」が合わせて七割に上り、脱原発を望む声の大きさがあらためて明らかになった。逆に「今まで通り活用」「徐々に減らすが、一定数は活用」はともに三割弱にとどまっている。今後、力を入れるべきエネルギーを二つ選んでもらう問いでは、東京、新潟とも太陽光や風力、バイオマスなどの再生エネを軸に、水力や火力、原子力との組み合わせを挙げる人が八割いた。原発推進の考え方を持つ人に絞っても、六割超の人が再生エネを軸にすべきだと答えた。
<電力の小売り自由化> 来年4月からは、地域の電力会社の独占が崩れ、消費者は、国に「小売電気事業者」として登録したさまざまな業者から電気を購入できるようになる。契約先を切り替える際、メーターを新型のスマートメーターに取り換える必要があるが、原則費用負担はない。12月7日現在、登録業者は全国で73。ガス会社、石油会社、リース会社、商社などが参入するほか、再生可能エネルギーを中心にする業者、地域限定の業者もあり、選択肢は大幅に広がる。

*2-2:http://qbiz.jp/article/79739/1/
(西日本新聞 2016年1月31日) 電力小売り、九州26社が参入予定 地場は4割11社
 一般家庭でも電気の購入先を選べるようになる4月1日の電力小売り全面自由化後、九州では26社が電力小売り事業への参入を予定していることが分かった。参入業者は今後さらに増える可能性もある。26社のうち地場企業は約4割の11社。九州都市ガス最大手の西部ガス(福岡市)や石油販売大手の新出光(同)などは、ガスや石油などと合わせて電力を販売。ケーブルテレビ最大手ジュピターテレコム(JCOM)の子会社ジェイコム九州(福岡市)はインターネットなどとのセット割引で顧客獲得を狙う。九州外の企業では、KDDI(au)やソフトバンクなどが参入を予定している。すでに料金プランを発表したのは6社。新規参入業者が料金設定の目安とする九州電力が新プランを発表したことを受け、残る各社も今後相次いでプランを公表するとみられる。ただ準備に時間がかかることなどから、4月時点で電力供給を始めるのは15社前後にとどまる見通しだ。

*2-3:http://qbiz.jp/article/77862/1/
(西日本新聞 2016年1月1) 電力、消費から供給へ 鉄鋼や製紙大手、発電事業を強化
 2016年4月の電力小売り全面自由化を前に、大規模工場で電力を大量消費する鉄鋼や製紙大手が、電力供給事業を強化している。自家発電の運営経験を生かせるほか、本業の需要低迷による生産縮小で生じた遊休地を活用する狙いもある。「阪神大震災後の電力インフラ強化に貢献したかった」。神戸製鋼所の北川二朗執行役員は参入の経緯を振り返る。震災と同じ1995年に電気事業法が改正され、一般企業も電力事業に参入できるようになった。神戸製鋼所は総工費2千億円を投じ、神戸中心街に近い神戸製鉄所に計140万キロワットの石炭火力発電所を建設した。鋼材の製造過程で大量の電力を使う鉄鋼業は、電気代節約のため自家発電機などを備え、大半の電力を自前で確保。11年の東日本大震災後の電力不足では、余剰分を供給に回してきた。
   ■    ■
 神戸製鋼所は、神戸市の電力需要の約7割に当たる電力を関西電力に販売しており、年間150億円前後の経常利益を安定的に生み出す。さらに神戸製鉄所の高炉跡地に計130万キロワットの石炭火力、栃木県真岡市に計120万キロワットのガス火力の発電所を建設する計画で「電力は屋台骨を支える事業」(幹部)との認識だ。新日鉄住金やJFEスチールも遊休地を活用する。鉄鋼需要の減少で高炉の休止など合理化を迫られており、発電施設を設置できる広い土地が各地にある。東京電力が募集した火力発電の電力卸供給は、15年8月末に新日鉄住金が他との共同案件を含む2案件を落札した。製鉄所は燃料を直接荷揚げできる港湾施設などが充実。発電施設の運営ノウハウもあり「競争力がある」(関係者)という。ただ石炭火力は二酸化炭素(CO2)の排出が伴い、温室効果ガス削減への対応が課題になる。
   ■    ■
 売上高500億円へ−。日本製紙は15年5月に発表した17年度までの経営計画で、電力事業を新たな経営の柱に据えた。紙の国内需要も縮小しており、生産縮小による遊休地の活用を進める。徳島県小松島市で太陽光、熊本県八代市でバイオマスの発電施設を稼働させたほか、宮城県石巻市に石炭とバイオマスによる13万5千キロワットの発電設備を建設する計画だ。王子ホールディングスは、宮崎県日南市や北海道江別市でバイオマス発電の運転を順次開始。北海道や静岡県の水力発電所の発電効率も高める。バイオマス発電は、成長の過程でCO2を吸収する木を使うため、発電による温室効果ガスはゼロとみなされる。製紙大手は間伐材の調達ルートを持っており「有力な発電事業者になる」(関係者)とみられている。

*2-4:http://373news.com/modules/pickup/index.php?storyid=72451
(南日本新聞 2016 /1/17) 「九電離れ」原発1基分超 新電力へ企業・自治体7628件
 九州電力から特定規模電気事業者(新電力)へ切り替えた九州内の企業や自治体が、7628件(2015年11月1日時点)に上ることが16日分かった。新電力が割安な料金で顧客を奪っている構図で、4月からは一般家庭向けを含めた電力小売りが全面自由化となり、“九電離れ”はさらに広がりそうだ。電力小売りの自由化は、安価な電力供給を目指す国の電力システム改革の一環として、00年から段階的に開始。現在は需要が一定規模以上の工場やスーパーなどが対象で、自由に電力会社を選べる。九電からの切り替えは、11年3月1日時点では1508件(31万3000キロワット)だったが、15年3月には5321件(77万キロワット)と3倍以上に膨らんだ。ここ数年は前年比1.5倍ほどのペースで、東京など各地の新電力への移行が進んでいる。契約電力ベースでみると、昨年再稼働した薩摩川内市の川内原発(出力89万キロワット)の1.2基分の約109万5000キロワットが移った格好だ。

<送配電>
*3:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20151225&ng=DGKKZO95528320V21C15A2MM0000 (日経新聞 2015.12.25) 電線地中化、減税で促す 政府・与党方針、固定資産税3分の2 災害対策や景観維持
 政府・与党は2016年度から無電柱化を税制面で後押しする。16~18年度の間に、新たに地中に埋めた電線やケーブルにかかる固定資産税を4年間にわたって3分の2にする。道路法で道路上に電柱を立てることを禁じた地域では2分の1にまで減らす。来年1月4日召集の通常国会に提出する税制改正関連法案に盛り込み、今年度中の成立をめざす。政府は、地震で倒れた電柱が緊急車両の通行の妨げになることを防いだり、景観を維持したりするため電線の地中化を進める。予算面では16年度予算案に1兆円強を計上した地方自治体向けの防災・安全交付金で無電柱化を促す。13年6月には道路法を改正し、道路を管理する国や自治体の判断で道路上に電柱などを立てられない区域を指定できるようにもした。税制面での後押しをめぐっては、1986~05年度の間にも電線の地中化を促す固定資産税の減税措置があった。20年の東京五輪に向け、無電柱化の機運が高まったことから税制優遇を復活させた。国土交通省によると、今回の減税規模は約10億円だという。日本の無電柱化は諸外国に比べて遅れが目立つ。ロンドンやパリなど主要都市で電線の地中化が完了する一方で、東京23区は14年度末時点で7%にとどまる。大阪市内は5%。全国ベースでは1%にすぎない。政府は市街地を中心とした全国の主な幹線道路2万4000キロメートルでの無電柱化を急いでおり、14年度末に16%だった地中化率を20年度までに20%にまで引き上げたいとしている。

<原発事故と後始末>
*4-1:http://www3.nhk.or.jp/news/html/20151218/k10010345211000.html
(NHK 2015年12月18日) 福島第一原発 格納容器機能失い放射性物質放出か
 東京電力福島第一原子力発電所の事故で環境を汚染した原因の1つである3号機からの放射性物質の放出について、東京電力は放射性物質を閉じ込める「格納容器」と呼ばれる設備が機能を失い、直接外部に放出されたと考えられるとする見方を示しました。東京電力は福島第一原発の事故で起きた放射性物質の放出の原因などについて、新たにまとまった検証結果を公表しました。核燃料が溶け落ちた福島第一原発3号機では放射性物質を閉じ込めるため、原子炉を覆っている「格納容器」内の圧力が上がり、破損するおそれがあったため、水蒸気などを放出する「ベント」と呼ばれる操作を繰り返し行いました。これについて、東京電力はデータを改めて確認した結果、3月13日の午後9時に行った3回目のベント以降は圧力の下がり方が緩やかなことなどから、ベントは成功していないという見方を示しました。このため、14日の夜から16日にかけて引き起こされた環境への汚染は核燃料の熱で3号機の格納容器が放射性物質を閉じ込める機能を失い、直接放出されたのが原因と考えられるとしています。これについては、ベントの状況によっては圧力が緩やかに下がることもありうるほか、操作の前後で圧力が変動しているのはベントによる可能性があるという指摘が専門家の間から出ていて、現在も検証が続いています。 .

*4-2-1:http://www.minpo.jp/news/detail/2015110126389
(福島民報 2015/11/1) 支払い依然1割 財政運営に影響 自治体賠償
 東京電力福島第一原発事故に伴う自治体賠償で、県内56市町村が請求した553億3900万円に対し、東電が支払ったのは11・4%の62億8900万円にとどまる。事故から4年8カ月近くがたっても東電との交渉は進まず、自治体の財政運営に影響を与えている。福島民報社の調査で分かった。30日までに全59市町村から回答を得た。各市町村の請求総額と、東電からの支払総額は【表】の通り。請求総額の平均は9億8820万円で、10億円を超えたのは11市町。双葉町の192億5335万円が最も多く、次いで郡山市71億8933万円、福島市59億970万円、いわき市35億1508万円となっている。一方、請求総額に対する東電の支払総額の割合は11・4%。平成25年8月の前回調査7・0%(請求総額342億3000万円、支払総額24億1000万円)を4・4ポイント上回るが依然として低率だ。請求額の多くは人口減に伴う住民税や固定資産税の減収分、原発事故対応の職員増に伴う人件費など。東電は支払いが進まない理由を「請求額が膨大で精査に時間がかかっているため」としている。「賠償金の未払いが市町村の財政運営に影響を与えているか」との質問では、10市町村が「大きな影響を受けている」、26市町村が「影響を受けている」と回答した。「大きな影響がある」と回答した桑折町は請求総額に対して支払いが23・1%。「未払い分は一般財源を充てており、他の事業も抑制を余儀なくされている」として、このままなら事業の遅滞や町民サービスの低下を招きかねないとみる。富岡町は「帰町に向けて施設の復旧に取り組むところだが、賠償が決まらず、財源確保に苦慮している」と訴えた。このような状況を踏まえ、15市町村は裁判外紛争解決手続き(ADR)による原子力損害賠償紛争解決センターへの和解申し立ての検討に入った。請求額の多い市部や避難区域が設けられた町村に目立つ。福島市と桑折町は既に申し立てを行い、水道事業などの賠償で東電と和解合意している。残る39市町村は「予定なし」としているが、須賀川市は「他市町村の動向を見ながら対応する」としており、今後、検討する自治体は増える可能性がある。東京電力は「具体的な算定基準が策定できた項目から賠償金請求を受け付け、早期支払いに取り組んでいる。それ以外の項目も請求を受けた場合は事情を聴きながら適切に対応している」と説明している。
※支払総額と請求総額、合計は1000円以下切り捨て。下郷、柳津、三島の各町は賠償請求の手続き準備中。ADRの○は既に申し立てを行い、和解合意した。●は申し立てを検討している

*4-2-2:http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/165762
(日刊ゲンダイ 2015年10月9日) 福島の甲状腺がん発生率50倍…岡山大・津田教授が警告会見
 岡山大大学院の津田敏秀教授(生命環境学)が6日付の国際環境疫学会の医学専門誌「エピデミオロジー(疫学)」に発表した論文に衝撃が広がっている。福島県が福島原発事故当時に18歳以下だった県民を対象に実施している健康調査の結果を分析したところ、甲状腺がんの発生率がナント! 国内平均の「50~20倍」に達していた――という内容だ。8日、都内の外国特派員協会で会見した津田教授は「福島県では小児や青少年の甲状腺がんの過剰発生がすでに検出されている。多発は避けがたい」と強調した。福島県で原発事故と子どもの甲状腺がんの因果関係を指摘する声は多いが、権威ある医学専門誌に論文が掲載された意味は重い。国際的な専門家も事態を深刻に受け止めた証しだからだ。津田教授は会見であらためて論文の詳細を説明。原発事故から2014年末までに県が調査した約37万人を分析した結果、「二本松市」「本宮市」「三春町」「大玉村」の「福島中通り中部」で甲状腺がんの発生率が国内平均と比較して50倍に達したほか、「郡山市」で39倍などとなった。津田教授は、86年のチェルノブイリ原発事故では5~6年後から甲状腺がんの患者数が増えたことや、WHO(世界保健機関)が13年にまとめた福島のがん発生予測をすでに上回っている――として、今後、患者数が爆発的に増える可能性を示唆した。その上で、「チェルノブイリ原発事故の経験が生かされなかった」「事故直後に安定ヨウ素剤を飲ませておけば、これから起きる発生は半分くらいに防げた」と言い、当時の政府・自治体の対応を批判。チェルノブイリ事故と比べて放射性物質の放出量が「10分の1」と公表されたことについても「もっと大きな放出、被曝があったと考えざるを得ない」と指摘した。一方、公表した論文について「時期尚早」や「過剰診断の結果」との指摘が出ていることに対しては「やりとりしている海外の研究者で時期尚早と言う人は誰もいない。むしろ早く論文にしろという声が圧倒的だ」「過剰診断で増える発生率はどの程度なのか。(証拠の)論文を示してほしい」と真っ向から反論。「日本では(論文が)理解されず、何の準備もされていない。対策を早く考えるべき」と訴えた。「原発事故と甲状腺がんの因果関係は不明」とトボケ続けている政府と福島県の責任は重い。

*4-2-3:http://digital.asahi.com/articles/ASHCZ61VFHCZUGTB00P.html
(朝日新聞 2015年11月30日) 福島の11人、新たに甲状腺がんと診断 合計115人に
 福島県は30日、東京電力福島第一原発事故当時18歳以下だった約38万人を対象に実施している甲状腺検査で、今年7月から9月末までの3カ月間に11人が新たにがんと診断されたと発表した。甲状腺がんが確定したのは合計115人になった。昨年3月末までの1巡目検査でがんの疑いがあると診断され、手術を受けた2人と、昨年4月以降の2巡目検査でがんの疑いが見つかり手術を受けた9人が新たにがんと確定した。1巡目検査の2人は、本人の都合で確定診断に必要な手術がこの時期になった。これで、がんが確定したか疑いがあるとされた人は1巡目114人、2巡目39人で計153人になった。2巡目でがんや疑いがあると診断された39人のうち、2人は、1巡目検査で一定の大きさ以上のしこり(結節)があり、それががん化したとみられるという。19人は1巡目検査では「何もない」とされており、新たにがんが発生したと考えられるという。県検討委員会の星北斗座長は「分かる範囲では、推定される福島県民の甲状腺の内部被曝(ひばく)線量はチェルノブイリの住民より低く、放射線の影響を受けやすい乳幼児にがんが発生していないことから、今見つかっている甲状腺がんは放射線の影響とは考えにくい」と述べた。

*4-2-4:http://digital.asahi.com/articles/ASHBJ7DNSHBJULBJ014.html
(朝日新聞 2015年10月20日) 原発事故後の被曝、初の労災認定 白血病の元作業員男性
 労災が認められたのは北九州市在住の男性(41)。男性によると、2012年から13年まで、東京電力の協力企業の作業員として、3号機や4号機周辺で、構造物の設置や溶接の作業に当たり、14年1月に急性骨髄性白血病と診断された。累積の被曝線量は福島第一原発で約16ミリシーベルト、定期点検の工事で12年に約3カ月間働いた九州電力玄海原発で約4ミリだった。男性の労災申請を受けた富岡労働基準監督署(福島県)が業務内容や被曝実態を確認し、被曝の専門家らで構成する厚労省の検討会で被曝と白血病の因果関係を検討、「業務上(業務由来)」と結論づけた。これを受け同労基署が20日付で労災と認定した。医療費と休業補償が支払われる。1976年に定められた国の放射線業務従事者の労災認定基準では白血病の場合、年5ミリシーベルト以上被曝し、最初の被曝を伴う作業から1年超経って発症した人は、白血病を引き起こす他の要因の影響が排除できれば労災が認められる。厚労省は20日の会見で、「今回の認定により科学的に被曝と健康影響の関係が証明されたものではない。『年5ミリ以上の被曝』は白血病を発症する境界ではない」とした。白血病の認定基準については「労災保険の精神に基づき、労働者への補償に欠けることがないよう配慮し、また、76年当時の一般公衆(住民)の被曝限度が年5ミリだった点も考慮して決まった」と説明した。福島第一原発事故の対応にあたった後、被曝と関係する病気になった人の労災申請は今回を含め8件。3件は不支給、1件は本人が取り下げ、3件は調査中で、がんの種類など詳細は明らかにされていない。東京電力によると、事故から今年8月末までに福島第一原発で働いた約4万5千人のうち、約2万1千人は累積被曝量が5ミリを超え、20ミリ以上も9千人を上回る。今年4月から8月末までの5カ月間に働いた約1万5千人でみても、約2200人が5ミリ超の被曝をした。現場では被曝を伴う作業が長期にわたって続き、労災申請が増える可能性がある。

*4-3-1:http://www.huffingtonpost.jp/2013/09/07/nuclear_error_nature_n_3884364.html?utm_hp_ref=tw (The Huffington Post 2013年9月7日) 汚染水漏れ 「Nature(ネイチャー)」が日本政府の福島第一原発の対応を批判
 ネイチャーの指摘する内容はどのぐらい厳しいものなのか。記事は「Nuclear error」と題され、「日本はもっと世界に助けを求めるべきだ」という副題がついている。福島第一原発事故の事故は東京電力の手に負えないほどのものとした上で、政府が先頭に立って対応するということを決めた時期が遅すぎると非難している。また、漏れた汚染水の放射線量が、最初に報道されていた状況よりも18倍も高かったことや、報道が遅れたこと、監視体制の甘さなどを挙げ、情報に精通した海外の専門家に助けを求めるべきと助言している。日本が海外の力を借りるべきとする意見を出しているのは、ネイチャーだけではない。ドイツ出身のエネルギーコンサルタント、マイケル・シュナイダー氏は、ハフィントン・ポストUK版の取材について、「現在の課題は、彼ら(日本政府)の現実逃避的な姿勢を崩すことだ。これは組織的な現実逃避だ。ここでは日本の持つプライドが問題になっているが、プライドが現実逃避の態度へと変わってしまうと、このような問題は本当に危険なものとなる。彼らは人々を、高まり続けるリスクにさらしている」と述べている。アメリカの科学者、チャールズ・ファーガソン氏も、ロシアやノルウェーには、汚染水が海洋生物にどのように影響があるかを調べる専門家がいることなどを挙げ、日本が他の国から多くの専門家を呼び込むべきだということに同意している。また、ロシアの国営原子力発電所操業会社ロスエネルゴアトムの第一副社長、ウラジミール・アスモロフ氏は、「原子力業界はグローバル化しており、事故が国内でとどまることはない。国際的な問題だ」と述べ、ロシアとしても支援する用意があると述べたという。ネイチャーは、福島沖の海洋汚染の問題を挙げ、安倍首相が掲げる科学振興に言及して次のように述べている。安倍首相と政権は、科学振興を推進すると述べている。世界中の研究者が、(汚染された海洋データを)調査しシェアしていくことを支援するべきではないか。チェルノブイリの事故後にはこのような機会がなかった。しかし、福島ではまだ遅くはない。東京電力は、相澤善吾副社長が8月21日の記者会見において、海外を含む国内外の叡智を結集して汚染水の対応にあたると話している。一刻も早い対応が期待される。

*4-3-2:http://www.nature.com/news/fukushima-leaks-18-times-worse-than-first-thought-1.13626 (nature 29 August 2013 ) Fukushima leaks 18 times worse than first thought 、New revelations from stricken plant’s operator add to claims that it cannot cope with clean-up operation.
 Pressure continued to mount on the owner of Japan’s crippled Fukushima Daiichi nuclear plant on 1 September after it admitted that recent leaks of contaminated cooling water contained 18 times the levels of radiation previously reported.The Tokyo Electric Power Company (TEPCO) said that one hot spot was found to be giving off 1,800 millisieverts per hour — much more than the 100mSv initially quoted and enough gamma radiation to kill a human within four hours. It also emerged that the pipe from which the water was leaking had been sealed with plastic tape.The company vowed to launch an investigation of the leak and “take any appropriate countermeasures immediately”, adding that only 1mSv of the radiation was made up of gamma rays, with the rest being less penetrating beta radiation.But the new revelations will heap pressure on the Japanese government to intervene in the clean-up of Fukushima after experts voiced fears that TEPCO is unable to cope with the operation, which has seen hundreds of tonnes of radioactive water escape into the Pacific Ocean. Analysts warned that if the government fails to act, prime minister Shinzo Abe’s pro-nuclear stance may be jeopardized.“It’s clear that TEPCO is unable to solve the problems on its own,” said Tsutomu Toichi, managing director and chief economist at the Institute of Energy Economics in Tokyo. “The government has to step in to ensure these problems are solved quickly. It is going to have to provide funds, as well as a plan for moving forward, and explain this to the public in a way that is easy to understand.”Wiktor Frid, a nuclear expert with the Swedish Radiation Safety Authority in Stockholm, added, “That water leaked from a tank unnoticed for several days is alarming and extremely embarrassing for TEPCO”.The leaks have also led to renewed concerns over ocean contamination and food safety, with local fishing cooperatives suspending trial catches and one oceanographer saying that further leaks would have “severe” consequences for marine life.
●Incident upgrade
 The leak of some 300 tonnes of partially treated water that had been used to cool melted nuclear rods from the destroyed reactors was reported by TEPCO on 19 August. The radioactivity of the water stands at about 80 megabecquerels per litre, about 1% of what it was before treatment by an on-site purification system. Japan’s Nuclear Regulation Authority initially labelled the incident a level 1 event (known as an ‘anomaly’) on the International Nuclear Event Scale, but on 28 August upgraded it to level 3 (‘serious incident’), citing the large amount of contaminated water leaked and the fact that a safety buffer was not available for the water tank in question.At present, TEPCO is storing more than 300,000 tonnes of radioactive water on the site of the destroyed Fukushima Daiichi plant. Radioactive caesium isotopes are being removed from the water by an advanced liquid-processing system built after the accident, but a facility for removing strontium isotopes is not yet ready. Tritium, another harmful radionuclide, cannot be safely removed by any known purification system because it is incorporated within water molecules.The leaked water is thought to have seeped into the ground and will eventually reach the sea adjacent to the plant. The storage site near Fukushima’s reactor 4, where the leak was discovered, lies some 50 metres above sea level and is just a few hundred metres from the coast.Measures proposed so far to prevent the polluted water from flowing into the sea — such as freezing or excavating the soil surrounding the storage site — seem to be either very expensive or technically unfeasible, says Joachim Knebel, a nuclear expert and chief science officer at the Karlsruhe Institute of Technology in Germany.“We can’t really assess the situation from far away,” he says. “But it appears to me that none of the proposed measures would work. TEPCO would be well advised to seek international expertise in coping with the problems.”Several countries, including Russia, have offered to assist with the company’s clean-up efforts, and TEPCO said last week that it will consider accepting outside help. On Monday, it also announced a series of measures, including the installation of a new central control system, to mitigate the risk of future leaks.
“Some tanks have automatic monitoring equipment and some don’t,” says Yo Koshimizu, a TEPCO spokesman. “We are currently determining whether to add such equipment to all of the tanks.”
●Storage situation
 Some 400 tonnes of cooling water are being collected in tanks each day. The growing fleet of storage tanks — which currently stands at about 1,000 — is a source of alarm for experts, who fear that huge amounts of contaminated water will eventually have to be dumped into the ocean. Worse still, some 300 tonnes of groundwater highly contaminated with caesium-137, which has a 30-year half-life, are thought to be flowing from beneath the destroyed reactors into the sea every day.The potential for harm is huge, says Jota Kanda, an oceanographer at the Tokyo University of Marine Science and Technology who monitors radionuclide distribution in sediments and biota off Fukushima1.“The effects of one relatively small leak may be insignificant,” he says. “But there are huge amounts of radionuclides in these tanks and the water may have to be stored for a long time to come. If more leaks were to occur the consequences might be severe.”The Fukushima nuclear accident resulted in the largest ever accidental release of radioactivity to the oceans. Some 80% of all the radionuclides released from Fukushima ended up in the Pacific2. In some local fish, high residual levels of radioactivity were measured two years after the accident. Commercial fishing in the area is still banned.But it is unclear how much residual radioactive contamination is still entering the sea from leaks around the Fukushima plant, says Scott Fowler, a marine ecologist at Stony Brook University in New York who has been involved in previous assessments of contamination levels in the ocean near Fukushima.To track changes in coastal waters and predict when seafood species in the region may be safe to consume, it will be necessary to establish a ‘temporal data set’ — that is, to measure the levels and distributions of contaminant radionuclides at a given location over time, he says.“Even if one assumes that leaks from the plant into the sea will eventually be stopped, residual contamination would continue to be present in the adjacent marine ecosystem for many years,” he says. “So the contamination of long-lived radionuclides in different organisms in the local marine food webs needs to be monitored continually.”

*4-4:http://mainichi.jp/articles/20151225/ddl/k07/040/190000c (毎日新聞 2015年12月25日) 福島第1原発事故 南相馬・汚染米問題 除染推進委員長、規制委員長発言を批判 「現地を調査せず」 /福島
 南相馬市除染推進委員会の委員長を務める児玉龍彦・東大教授は24日、2013年の同市産米から国の基準(1キロ当たり100ベクレル)を超える放射性物質が検出された問題で、福島第1原発のがれき処理が原因でないと因果関係を否定している原子力規制委員会の田中俊一委員長の発言を強く批判する見解を発表した。児玉教授は、田中氏が除染していない山林から流れたセシウムが原因の可能性があるとの見方を南相馬市の桜井勝延市長と10月に会談した際に示したことについて、「田中氏は現地の水源や水田の調査をしておらず、科学的検討を行った発言ではない」と批判。(1)汚染は複数の水源を持つ複数の水田で確認された(2)前年収穫されたコメに汚染はなく14年以降も国の基準値を下回っている(3)発言の根拠とする放射性物質飛散の実験値は実測値との乖離(かいり)が指摘されている−−などと反論した。さらに児玉教授は、「規制委は放射性物質の飛散防止に全力を挙げる責任があることを深く自覚」するよう求めた。田中氏は桜井市長と会談した際、汚染とがれき処理との因果関係を否定したうえで「除染が終わっていない山から流れてくる水に(放射性)セシウムが溶け込んでいる場合があると思う。今後もそういう事例が出てくる可能性は否定できない」と発言。国が1キロ当たり100ベクレル以下を基準としていることについても、「何で100にしたのか。500でよかった。それでも国際基準より厳しい」として政府の対応を批判していた。

*4-5:http://mainichi.jp/articles/20160108/k00/00m/020/135000c
(毎日新聞 2016年1月7日) 福島原発事故、EUが9日から食品の輸入規制一部緩和
 農林水産省は7日、欧州連合(EU)が東京電力福島第1原発事故を受けて実施している日本産食品の輸入規制のうち、福島県産の野菜や牛肉などが9日に緩和されることになったと発表した。福島産はこれまで酒類を除く全品目が規制対象だった。EUは昨年11月に緩和の方針を示しており、手続きが完了した。EUは現在、規制対象に対して放射性物質の検査証明書の添付を義務付けている。今回、野菜や牛肉などの畜産品のほか、柿を除く果実、そば、茶などを規制対象から外す。コメやキノコ、大豆などは引き続き規制の対象となる。また青森、埼玉両県を規制対象の地域から外し、全ての品目で検査証明書を不要とする。これでEUによる規制対象が残るのは、福島を含めて13県となる。このほかに岩手、宮城、茨城、栃木、群馬、千葉の6県のコメや大豆、そばなど一部を規制対象から除外する。一方で、これまで規制対象外だった秋田や山形、長野のゼンマイなどを新たに対象に加える。

<原発のコスト>
*5-1:http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2015111902000128.html (東京新聞 2015年11月19日) 原発ゼロへ再考を 原子力は高くつく
 きょうは原発推進の人たちにとくに読んでいただきたい。原子力発電は結局、高くつく。そろばんを弾(はじ)き直し、原発ゼロへと考え直してみませんか。やっぱり金食い虫でした。原子力規制委員会が日本原子力研究開発機構に示した、高速増殖原型炉「もんじゅ」の運営を「ほかの誰かと交代せよ」との退場勧告は、その操りにくさ、もろさ、危険さを、あらためて浮かび上がらせた。そして、本紙がまとめた「核燃料サイクル事業の費用一覧」(十七日朝刊)からは、もんじゅを核とする核燃料サイクルという国策が、半世紀にわたって費やした血税の大きさを実感させられる。
◆巨費12兆円を投じて
 原発で使用済みの核燃料からプルトニウムを抽出(再処理)し、ウランと混ぜ合わせてつくったMOX燃料を、特殊な原子炉で繰り返し利用する-。それが核燃料サイクルだ。その上もんじゅは、発電しながら燃料のプルトニウムを増やしてくれる。だから増殖炉。資源小国日本には準国産エネルギーをという触れ込みだった。それへ少なくとも十二兆円以上-。もんじゅの開発、再処理工場(青森県六ケ所村)建設など、核燃サイクルに費やされた事業費だ。国産ジェット機MRJの開発費が約千八百億円、小惑星探査機「はやぶさ2」は打ち上げ費用を含めて二百九十億円、膨らみ上がって撤回された新国立競技場の建設費が二千五百二十億円…。十二兆円とはフィンランドの国家予算並みである。
◆1日5500万円も
 ところが、もんじゅは事故や不祥事、不手際続きで、この二十年間、ほとんど稼働していない。止まったままでも一日五千五百万円という高い維持管理費がかかる。もんじゅは冷却に水ではなく、大量の液体ナトリウムを使う仕組みになっている。ナトリウムの融点は九八度。固まらないように電熱線で常時温めておく必要がある。千七百トンのナトリウム。年間の電力消費量は一般家庭約二万五千世帯分にも上り、電気代だけで月一億円にもなるという。発電できない原子炉が、膨大な電力を必要とするという、皮肉な存在なのである。もんじゅ以外の施設にも、トラブルがつきまとう。さらなる安全対策のため、再処理工場は三年先、MOX燃料工場は四年先まで、完成時期が延期になった。MOX燃料工場は五回目、再処理工場に至っては、二十三回目の延期である。研究や開発は否定しないが、事ここに至っては、もはや成否は明らかだ。これ以上お金をつぎ込むことは是とはされまい。核燃料サイクルが、日本の原子力政策の根幹ならば、それはコストの面からも、根本的な見直しを迫られていると言えそうだ。欧米で原発の新増設が進まないのは、3・11以降、原発の安全性のハードルが高くなったからである。対策を講ずるほど費用はかかる。原発は結局高くつく。風力や太陽光など再生可能エネルギーにかかる費用は普及、量産によって急速に低くなってきた。国際エネルギー機関(IEA)の最新の報告では、太陽光の発電コストは、五年前より六割も安くなったという。ドイツの脱原発政策も、哲学だけでは語れない。冷静に利益を弾いた上での大転換だ。原子力や輸入の化石燃料に頼り続けていくよりも、再生エネを増やした方が、将来的には電力の値段が下がり、雇用も増やすことができるという展望があるからだ。
◆そろばん弾き直そう
 核燃料サイクル事業には、毎年千六百億円もの維持費がかかる。その予算を再エネ事業に振り向けて、エネルギー自給の新たな夢を開くべきではないか。電力会社は政府の強い後押しを得て、核のごみを安全に処理するあてもまだないままに、原発再稼働をひたすら急ぐ。金食い虫の原発にこのまま依存し続けていくことが、本当に私たち自身や子どもたちの将来、地域の利益や国益にもかなうのか。政治は、その是非を国民に問うたらいい。持続可能で豊かな社会へ向けて、そろばんをいま一度弾き直してみるべきだ。

*5-2:http://www.nikkei.com/article/DGXLASFS15H2R_V10C16A1EE8000/
(日経新聞 2016/1/15) 経団連会長「原発停止は国の損失」 柏崎刈羽の再稼働要請
 経団連の榊原定征会長は15日、新潟県の東京電力柏崎刈羽原子力発電所を視察した。柏崎刈羽6、7号機を含めた全国で停止中の原発を再稼働させる必要性を改めて訴えたうえで「原発が止まっているのは国として損失だ。早期に動かして(企業と家計の)電力コスト削減につなげてほしい」と強調した。榊原氏は安倍晋三政権になってから円高など経済の「6重苦」は解消しつつあるが、「最も対応が必要なのはエネルギー問題だ」と指摘。東日本大震災後、電気料金は家庭用で2割、産業用で4割上がったとして「もともと世界で電力コストが一番高い日本でさらに高くなった。成長と投資、発展の大きな障害になっている」と強調し、時期への言及は避けつつも再稼働を重ねて訴えた。視察には東電の広瀬直己社長も同席。榊原氏は東電が取り組む安全対策に対して「中越沖地震と福島の事故の教訓を受け、考えられる限りの対策をしていると感じた」などと評価した。九州電力の川内原発(鹿児島県)など西日本が先行する形で、震災以降に止まっていた原発に再開の動きが少しずつ出てきた。ただ東日本の原発は柏崎刈羽原発を含めて東電福島第一原発と同型の沸騰水型軽水炉が多く、先行きを見通しにくい面が多い。

*5-3:http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201601/CK2016013102000111.html (東京新聞 2016年1月31日) 震災5年 故郷戻れぬまま 原発避難者 移住6900件
 東京電力福島第一原発事故で住まいを追われた福島県の避難住民が、二〇一一年三月の事故後、政府の制度を利用し県内や首都圏などに新たに土地や住宅を買って移住するケースが、毎年増え続けていることが本紙の独自調査で分かった。累計の移住件数は、一五年末現在で約七千件。元の住まいに戻れる見通しが立たず、避難先などで生活再建を図ろうとしている実態が浮かんだ。移住しても、住民票はそのままにしている避難住民が多いため、どれくらいの人が移住したのか実態はつかみにくい。本紙は、避難指示区域の住民が移住先で不動産を買うと不動産取得税が軽減される特例がある点に着目。福島県のほか、避難者の多い十一都道県に適用件数を聞き取りし、主な状況を調べた。その結果、一一年度末では六十六件だったが、一二年度末には累計で七百四十五件に増え、一三年度末は二千百九十件、一四年度末には四千七百九十一件にまで増えた。一五年度は昨年末時点ながら、六千九百九件にまで増えた=グラフ。このほか、他の府県での制度の適用例や特例を使わないケースもあるとみられる。移住用に家や土地を購入した先は、全体の約九割が福島県内(六千八件)。次いで多いのが、隣接する茨城(二百八十五件)や栃木(百五十六件)、宮城(百十五件)の各県だった。いずれの都道県でも毎年増えている。政府は帰還困難区域を除く避難指示区域を一六年度中に解除する方針を示しているが、福島第一周辺はいまだに広く汚染されている。仮に避難指示が解除される状況になっても、放射線の影響への不安があるほか、商店や病院、学校など暮らしの基盤がどこまで元のような姿になるのか見通すのは非常に難しい。五年近い避難の中で、新たな仕事や通学の関係から、避難先に根づき、生活再建しようとする住民も多い。福島県の担当者は「避難先での基盤が固まってきた一方、故郷に戻ろうにも生活の厳しさがある。事故後五年を迎え、帰る、帰らないの判断をする時期に来ており、今後も移住が増えていくのでは」と分析している。大阪市立大の除本理史(よけもとまさふみ)教授(環境政策論)は「元通りの暮らしを期待して故郷に戻りたい住民、人口減を何とか食い止めたい避難元の自治体、避難者の数を少しでも減らしたい政府、と三者で思惑にずれがある。避難者のニーズにそったきめ細かい施策が必要だ」と強調している。
<福島県からの避難住民> 政府の統計では、福島第一原発事故の避難者数は2016年1月14日現在、自主避難含め9万9000人とされる。このうち、県外への避難者は4万3000人に上り、北は北海道から南は沖縄まで全都道府県に及ぶ。特に多いのが東京都(6000人)などの首都圏と、福島県に隣接する山形、宮城、新潟県。ピーク時の16万4000人(12年5月)から減っているが、数多くの人が先行きの見えない暮らしを送っている。


PS(2016/2/4追加):*6-1のように、政府は、原発再稼働を進めるため、「電源立地地域対策交付金」を原発を再稼働させた自治体に手厚く払うようにして再稼働への同意を促した。その結果、再稼働した原発地元の道県・市町村は、新たに原発1基当たり年間最大5億円を支払われるそうだ。また、*6-2のように林経済産業大臣は、「原子力の問題や事故が起きたら、政府が責任をもって対応する」としている。このように、原発には電力会社が発電コストに入れていない多額の税金が投入されている。
 なお、*7のように、原油先物相場が下落したとして、原油が出ない国の日本人が中東など産油国の財政を心配しているのはおかしい。何故なら、サウジアラビアなど富裕な産油国は、日本のような税はない上、公共料金・医療・福祉が原油代金で賄われて無料というめぐまれた状態で、「増税しても年金・医療・介護・福祉を削減しなければやっていけない」などと言っている日本とは雲泥の差だからだ。しかし、日本も自然再生可能エネルギーにエネルギーを転換したり、LNGを掘り出したりすれば、油田を発見したのと同じ効果がある。

<原発への政府の支出と推進>
*6-1:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/268020
(佐賀新聞 2016年1月13日) 原発再稼働で交付金手厚く 来年度から、政府が配分見直し
 政府が原発の再稼働を進めるため、立地自治体に対する財政面からの誘導を強めている。交付金の分配の在り方を見直し、2016年度分から再稼働した原発の立地自治体に手厚く支払うようにするなど、「アメとムチ」で再稼働への同意を促す狙いだ。立地道県や市町村に支払う「電源立地地域対策交付金」は原発で発電した電力量に所定の単価を掛けるなどして算出する。従来は定期点検などで原発が停止中でも自治体の財政が維持できるよう稼働率を一律81%とみなして支払われてきた。16年度からは、再稼働した原発は実際の稼働率で計算する。停止中の原発は、福島事故前10年間の平均稼働率を採用するが、同期間の全国平均稼働率(68%)以上は認めない。再稼働した場合は、原発1基当たり年間最大5億円を立地自治体に支払うインセンティブを与える。一方、再稼働を進める上で国民の間に不安が根強い老朽原発の廃炉を進めるため、交付金の激減緩和措置を用意した。「みなし稼働率」は03年に導入され、当初は100%に設定されていた。しかし実態に比べ高すぎると見直しが入り、10年に81%に引き下げられた。翌年、東京電力福島第1原発事故が発生。その後、全国の原発が停止した中でも、このみなし稼働率で交付金が払われてきたが、政府は再稼働の進捗を踏まえ、みなし稼働率の在り方をあらためて見直した。地元の原発の再稼働が見通せない自治体では大幅減収になる可能性が高い。政府は16年度の当初予算案で立地交付金を15年度当初比4・8%減の868億円に抑えた。東電柏崎刈羽原発の地元、新潟県柏崎市によると、震災前10年間の同原発の平均稼働率は47%。市は今回の見直しで、15年度約26億5千万円あった交付金が16年度は3億円程度減ると試算する。市担当者は「稼働率が低かったのは東電のトラブル隠しや中越沖地震が原因で、自治体のせいではない」と指摘。「見直しの影響は大きい」と訴えている。

*6-2:http://www3.nhk.or.jp/lnews/fukui/3054441721.html
(NHK福井 2015年12月20日) 西川知事と林経産大臣が会談
 関西電力・高浜原子力発電所3号機と4号機について林経済産業大臣が西川知事と会談し、「原子力のさまざまな問題や事故が起きた際には政府が責任をもって対応する」と述べ、高浜原発の再稼働に理解を求めました。高浜原発3号機と4号機は、現在、再稼働に向けて最終段階の検査を受けているほか今月(12月)に入って、高浜町長と県議会が再稼働に同意するなど、再稼働へ向けた手続きは知事の判断が焦点となっています。こうしたなか林経済産業大臣が20日、西川知事と会談しました。このなかで林大臣は、西川知事が政府に求めていた再稼働を判断するための5つの条件について▼原子力に対する国民理解を促進するため、全ての都道府県でシンポジウムを開くことや▼福島の原発事故を教訓とした事故の制圧体制の強化のため、政府として訓練や改善に取り組むなどと応えました。そのうえで林大臣は、「原子力のさまざまな問題や事故が起きた際には政府が責任をもって対応します」と述べ、高浜原発の再稼働に理解を求めました。これに対して西川知事は「国が責任をもって進めていきたいという方針が示され、評価させて頂きたい」と述べ、国からの説明に一定の理解を示しました。知事との面談を終えた林経済産業大臣は高浜原発の再稼働について「ある程度の理解が得られたのではないか」と述べ、今後、原発の重要性、必要性について国民に丁寧に説明していく考えを示しました。

<原油高騰に日本が懸念 ?!>
*7:http://mainichi.jp/articles/20160103/k00/00e/020/113000c
(毎日新聞 2016.1.3) 昨年3割下落 中東諸国の財政に打撃
 2015年のニューヨーク原油先物相場は年間で約30%下落し、46%下げた前年に続く大幅下落となった。原油価格の長期低迷で中東などの産油国の財政は急激に悪化しており、各国は政府支出や海外投資の圧縮に懸命だ。オイルマネーの縮小が世界の金融市場を不安定化させる懸念も出ている。12月31日のニューヨーク市場で、指標の米国産標準油種(WTI)2月渡しは前日比0.44ドル高の1バレル=37.04ドルで取引を終えた。14年末の53.27ドルから約30%の下落。米国のシェールオイル増産や中国経済の減速による需要減で、供給過剰に陥っているのが原因だ。この影響で、中東・北アフリカの11産油国の原油輸出総額は、15年の1年間で3600億ドル(約43兆2000億円)も激減した。歳入の大半を占める原油収入の落ち込みで、財政収支は、サウジアラビアが国内総生産(GDP)比15%の赤字に落ち込むなど、15年は11カ国平均で同10%前後の赤字となる見通しだ。過去の原油収入の積み立てで、直ちに財政危機に陥る懸念は低いが、今後、米国の原油輸出の解禁などで一段の価格下落の可能性もあり、国際通貨基金(IMF)は「包括的な財政調整が不可欠」と警告している。サウジアラビアは12月28日、公務員給与の削減などで16年の歳出を前年比14%削減すると発表。クウェートも軽油価格を値上げしたほか、バーレーンもガス料金や医療保険料を値上げするなど、各国は相次いで財政引き締め策を導入した。ただ、サウジなどの富裕な湾岸産油国は、11年に始まった民主化要求運動「アラブの春」の波及を食い止めるため、公共料金無料化や公務員増員などのバラマキ政策を実施してきた。「国内の不安定化につながりかねない大胆な緊縮策は取りにくい」(英調査会社)のが実情だ。産油国は原油収益を先進国の株式や土地などに投資しているが、英紙フィナンシャル・タイムズによると7〜9月期に少なくとも190億ドル(約2兆2800億円)が産油国に引き揚げられた。IMF中東・中央アジア局のマザレイ次長は「資金の撤退が市場の大きな変動をもたらす可能性がある」としている。


PS(2016/2/8追加):*8のように、汚染された木くずを日本全国にばら撒き、堆肥を製造して農産物を作れば日本全体の農産物が汚染されるが、これを「風評被害」と呼ぶのは日本だけである。なお、汚染木材を家の新築にも使うそうだが、ここまでくると呆れてものが言えない。

<放射性廃棄物の処理>
*8:http://www.chibanippo.co.jp/news/national/302919
(千葉日報 2016年2月7日) 汚染木くず千葉県にも 大津地検が捜査資料開示
 東京電力福島第1原発事故で放出された放射性セシウムに汚染された木くずが滋賀県高島市などに不法投棄された事件で、木くずは滋賀のほかに茨城、栃木、千葉、山梨、鹿児島の各県にも搬出されていたことが6日、大津地検が部分開示した捜査資料で明らかになった。開示は5日付。開示資料によると、木くずは2012年12月~13年9月、計約5千トンが計12ルートで6県に運ばれた。運搬には栃木、埼玉、千葉、山梨各県の業者が関わっていた。京都市の無職男性(75)が昨年2月に捜査資料の閲覧を地検に請求したが、3月に不許可とされたため、大津地裁に準抗告。地裁は7月、自治体名を含めた閲覧を認め、地検に開示を命じる決定を出した。地検は特別抗告し、最高裁は12月14日に「搬出先が特定され、風評被害などで経済損害が発生する恐れがある」として地裁の決定を一部取り消し、市町村名などを除いて閲覧を認める決定を出した。これを受け、地検が今月5日に資料を男性に部分開示した。高島市の木くずはその後、前橋市の産業廃棄物処理業者の施設で破砕され、中間処理された。不法投棄をめぐっては、東京のコンサルタント会社社長(当時)の男性が、高島市に木くずを持ち込んだとして産業廃棄物処理法違反の罪で14年12月に大津地裁で有罪が確定。男性は各地の搬出先には汚染について伝えず「堆肥製造のため」などと説明し、木くずは野ざらしの状態だった。


PS(2016.2.9追加):*9-1のように、丸川珠代環境大臣が、長野県松本市で、「『反放射能派』で、どれだけ下げても心配だという人は世の中にいるが、そういう人たちがわあわあ騒いだ中で何の科学的根拠もなく、時の環境相が1ミリシーベルトまで下げると急に言った」と述べたのは、単に無知であるだけでなく、環境大臣になったから環境に詳しいという本末転倒の自負がある。その上、「そういう言い回しをした記憶はない」「誤解を与えたなら言葉足らずだった」としているのは誠実さに欠ける。
 また、*9-2に、「年間1~20ミリシーベルトの幅で適切な防護をしながら長期的に1ミリシーベルトを目指すという国際放射線防護委員会(ICRP)の考え方に基づく」という専門家の指摘があるが、人間の体にとって長期的とはどのくらいの期間かという問題が未だ棚上げされている。私は、「短期的とは、速やかに脱しはしたが事故で仕方なく陥った状態の最短期間」であり、癌が発症し始める5年は十二分に長期であり、短期的・長期的という言葉を使って放射線安全神話を作ってはならないと考えている。
 なお、*9-3のように、丸川環境大臣がその発言をした松本市は、信州大学医学部助教授などを経てチェルノブイリ原発事故後、ベラルーシの放射性物質汚染地域で医療支援活動にあたった菅谷氏を市長に選んでいる地域で、講演を聞きに来た一般市民には丸川環境大臣よりも放射線防護に詳しい人も多かったと思われるため、よりによって松本市でそういう発言をしたのは喜劇の部類に入る。

*9-1:http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201602/CK2016020902000243.html (東京新聞 2016.2.9) 丸川環境相「被ばく上限、根拠ない」 国会追及で陳謝
 丸川珠代環境相が、東京電力福島第一原発事故後に国が定めた年間被ばく線量の長期目標一ミリシーベルト以下について「何の根拠もない」と発言したと、九日の衆院予算委員会で指摘された。丸川氏は発言の記憶がないとしながら「誤解を与えたなら、言葉足らずだったことはおわびする」と述べた。丸川氏は七日、長野県松本市であった自民党の若林健太参院議員の集会で講演した際に「『反放射能派』というと変だが、どれだけ下げても心配だという人は世の中にいる。そういう人たちがわあわあ騒いだ中で何の科学的根拠もなく、時の環境相が一ミリシーベルトまで下げると急に言った」と発言した。民主党の緒方林太郎氏が九日の衆院予算委で問題だと追及。丸川氏は「記録を取っていないし、そういう言い回しをした記憶はない」と釈明した上で陳謝。「数字の性質を十分に説明し切れていなかったのではないかという趣旨のことを申し上げた」と述べた。福島第一原発の事故後、当時の民主党政権は、自然放射線などを除いた一般人の通常時の年間被ばく線量限度を一ミリシーベルトとした国際放射線防護委員会(ICRP)の勧告に基づき、長期的な目標を一ミリシーベルトとした。

*9-2:http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2016020901002341.html
(東京新聞 2016年2月9日) 専門家からいぶかる声 丸川環境相の線量発言
 東京電力福島第1原発事故後、国が「年間被ばく線量1ミリシーベルト」と定めた除染の長期目標をめぐり、丸川珠代環境相が講演で「何の根拠もなく時の環境大臣が決めた」などと発言した問題で、放射線の専門家からは9日、「根拠はある。発言の真意がよく分からない」といぶかる声が上がった。鈴木元国際医療福祉大教授(放射線疫学)は、1ミリシーベルトの目標は「事故で出た放射性物質と共存する状況にあって、年間1~20ミリシーベルトの幅で適切な防護をしながら長期的に1ミリシーベルトを目指すという国際放射線防護委員会(ICRP)の考え方に基づく」と指摘。

*9-3:http://mainichi.jp/articles/20151217/ddl/k20/010/150000c
(毎日新聞 2015年12月17日) 松本市長選 菅谷氏が出馬表明 4選目指し /長野
 任期満了に伴う松本市長選(来年3月6日告示、13日投開票)で、現職の菅谷昭氏(72)は16日、4選を目指し立候補すると表明した。同日閉会の12月市議会で「引き続き市長の使命を果たすべきだと決断した」と述べた。信州大医学部助教授、県衛生部長などを歴任。2004年に初当選し3期目。チェルノブイリ原発事故後、ベラルーシの放射性物質汚染地域で医療支援活動にあたった。「健康寿命延伸都市宣言などの施策は道半ばだと、市民から続投の強い要請を受けた。私を育んだ松本のまちづくりを引き続き担うのも道である」と語った。市長選には、いずれも新人で、団体役員の鈴木満雄氏(65)、前市議の増田博志氏(63)が立候補を表明。前市教育委員の小林磨史(まふみ)氏(61)、元NHK解説委員の臥雲義尚氏(52)が立候補の意思を示しており、過去最多の5人による争いとなる可能性がある。

      
2016.2.10東京新聞    2016.2.12NHK     2015.10.12、2015.11.20佐賀新聞 
                                     (http://no-genpatsu.main.jp/上参照)

PS(2016年2月12日追加): *10-1で、原発由来の物質であるセシウム137が多いほど、人間以外の生物も白血病の傾向があることがわかる。しかし、NHKは、*10-2のように、原発から遠い地域に住んでいる人も含めた3600人ばかりのアンケート調査により、①電気料金が安い ②地球温暖化など環境への影響が少ない ③安定して十分供給できる ④安全に発電できる などとするフクシマ原発事故前の“常識”を理由に、原子力発電所を「増やすべき」「現状を維持すべき」が合わせて29%だったと強調し、「すべて廃止すべきだ」だけでも22%あるにもかかわらず、これについては表題に記載せず重視もしていない。そして、「不安の程度はやや和らいだものの、まだほとんどの人が不安を感じている」などと、原発による公害や原発のコストには言及せず、「不安」という情緒論に終始している。この分析力と報道力が、NHKの能力だとしても企業文化だとしても、どちらにしても問題だ。

*10-1:http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2016021101001336.html
(東京新聞 2016年2月11日) 福島のヤマメに貧血傾向 放射性物質多いほど
 東京電力福島第1原発事故で影響を受けた家畜や野生動物をテーマにしたシンポジウムが11日、東京都文京区の東京大で開かれた。東北大大学院の中嶋正道准教授(水産遺伝育種学)は、福島県内の河川で採取した魚の調査で、筋肉中に含まれる放射性物質の量が多いヤマメに貧血傾向がみられると報告した。中嶋氏によると、同県浪江町を流れる請戸川など県内の三つの河川で2012年末~14年にヤマメを採取し、血液などを調べた結果、筋肉中のセシウム137の量が多いほど、赤血球1個当たりのヘモグロビン量が減少するなど貧血傾向にあることが確認された。

*10-2:http://www3.nhk.or.jp/news/html/20160211/k10010405331000.html
(NHK 2016年2月11日) 原発「現状維持」26% 「減らすべき」49% NHK調査
 東日本大震災の発生から5年になるのを前にNHKが行った調査で、今後、原子力発電所をどうすべきだと思うか尋ねたところ、「増やすべきだ」と「現状を維持すべきだ」が合わせて29%だった一方、「減らすべきだ」が49%、「すべて廃止すべきだ」が22%でした。NHKは、去年12月、全国の16歳以上の男女3600人を対象に、調査員が訪問して調査用紙を配る「配付回収法」による世論調査を行い、調査の対象になった人の71%に当たる2549人から回答を得ました。この中で発電について最も重要だと思うことを尋ねたところ、「電気料金が安いこと」が13%、「地球温暖化など環境への影響が少ないこと」が30%、「安定して十分供給できること」が28%、「安全に発電できること」が29%でした。原発事故が起きた2011年の12月に行われた調査と比べると、「安全に発電できること」が13ポイント減った一方、「地球温暖化など環境への影響が少ないこと」が11ポイント増えました。「今後、原発をどうすべきだと思うか」という質問に対しては、「増やすべきだ」が3%、「現状を維持すべきだ」が26%、「減らすべきだ」が49%、「すべて廃止すべきだ」が22%でした。過去の調査との比較では、「増やすべきだ」と「現状を維持すべきだ」と答えた人は、前回2013年より6ポイント増え、2011年と同じ水準でした。「減らすべきだ」は、前回より3ポイント増え、2011年より2ポイント減りました。「すべて廃止すべきだ」は、前回より8ポイント減りましたが、2011年より2ポイント増えました。原発から出る高レベル放射性廃棄物、いわゆる「核のゴミ」の最終処分場の問題について、今後原発をどうすべきかを考えるにあたって、どの程度考慮するかという質問に対しては、「大いに考慮する」が52%、「ある程度考慮する」が35%と考慮するという答えが87%を占め、「あまり考慮しない」が10%、「全く考慮しない」が2%でした。今回の調査では、福島県と宮城県それに岩手県の3県でも同時に16歳以上の1368人を対象に同様の方法で調査を行い、72%に当たる987人から回答を得ました。この中で、廃炉作業が進められている福島第一原発の現状について尋ねたところ、「不安だ」が50%、「どちらかといえば、不安だ」が42%で、合わせて92%の人が不安に感じていると答え、「どちらかといえば、不安ではない」が6%、「不安ではない」が1%でした。2013年の調査と比べると、「不安だ」が12ポイント減って「どちらかといえば、不安だ」が10ポイント増え、不安の程度はやや和らいでいるものの、まだほとんどの人が不安を感じていることがうかがえます。


PS(2016年2月13日追加): *11のように、丸川環境大臣が1ミリシーベルトの除染基準について、「何の科学的根拠もない」などと根拠もなく発言し、2月12日に「福島をはじめ、被災者に改めて心からおわびしたい」と謝罪したそうだが、詫びの内容はまだ矮小化されている。何故なら、「何の科学的根拠もない」という発言は、被災者だけでなく、科学的根拠を持って行動している人の人格権を傷つけた上、無知なのは丸川大臣本人だからだ。そのため、「無知で思考力がなかったため、科学的根拠を持って行動している人を逆に根拠もなく誹謗中傷して、大変申し訳なかった」と明確に詫びたとしても、許すか否かは人格権を傷つけられた側が決めるものだ。
 なお、原発労働者の白血病労災認定基準は「年間5ミリシーベルト以上」で、チェルノブイリ原発事故によるウクライナの移住権利区域も「年間5ミリシーベルト以上」であるのに、「日本の一般住民の被曝限度は、年間1~20ミリシーベルトでよい」と主張する人もいるが、それでは甘すぎるため、そう主張する人は、被災者の立場になって物事を考えられるよう、家族を連れてこのような場所に移住すべきで、それには原発推進派の議員、経産省・厚生労働省、NHKをはじめとするメディア、電力会社・原発推進企業の本社機能などが該当するだろう。

*11:http://mainichi.jp/articles/20160213/k00/00m/040/113000c
(毎日新聞 2016年2月12日) 被ばく線量発言を撤回 被災者におわび
 丸川珠代環境相は12日の記者会見で、東京電力福島第1原発事故後に定めた除染などの長期目標について「何の科学的根拠もない」などとした発言を撤回した。これまで「記憶がない」と発言を事実上否定していたが、5日後になってやっと自分の発言と認め、「福島をはじめ、被災者に改めて心からおわびしたい」と謝罪した。閣僚の辞任は否定した。丸川氏は「福島の皆さんと信頼関係を保つ上で、撤回すべきだと判断した。福島の思いに応えるのが私の責任だ」と述べた。これ以上、発言を否定し続ければ、福島県など被災自治体との関係がさらに悪化するうえ、野党も国会で追及を強める構えを見せており、発言撤回で事態を収拾させる思惑がある。丸川氏は7日、長野県松本市内で開かれた自民党参院議員の会合で講演し、除染の長期目標について「科学的根拠もなく、時の環境大臣が決めた」と述べたことが報じられ、発覚した。当時の環境相は民主党の細野豪志政調会長で、民主党が閣僚辞任を求めていた。国会答弁などでは「そういう言い回しを使ったか記憶にない。伝えようとした趣旨が伝わらず、言葉足らずで申し訳ない」と述べていたが、12日になって発言を記録したメモを点検し、会合出席者の証言から「自らの発言」と確認をしたという。福島県知事にも電話で謝罪した。長期目標は民主党政権時に定められ、自然放射線などを除いた一般人の通常時の年間被ばく線量を1ミリシーベルト以下にすることを目指して除染などを進めるとしている。丸川氏は「1ミリシーベルト」について「達成に向けて政府一丸で取り組む」と述べ、引き続き長期目標として維持する方針を強調した。


PS(2016年2月16日追加): *12-2のように、国際放射線防護委員会(ICRP)勧告は、公衆被曝線量限度を、1977年勧告で年間5ミリシーベルト以下としているが、1985年勧告では数年間は5ミリシーベルト以下を許容しその後は年間1ミリシーベルト以下とし、1990、2007、2012年勧告では数年間の5ミリシーベルト以下という文言もなくなって年間1ミリシーベルト以下としている(http://www.rri.kyoto-u.ac.jp/NSRG/etc/13-10-3Nitiben.pdf#search='WHO+%E5%B9%B4%E9%96%93%E5%85%AC%E8%A1%86%E8%A2%AB%E6%9B%9D%E7%B7%9A%E9%87%8F%E9%99%90%E5%BA%A6 参照)。従って、ICRPの公衆被曝線量限度は年間1ミリシーベルト以下であるにもかかわらず、「追加被曝線量の長期目標を年間1ミリシーベルト」とするのも国際基準より甘く、丸川大臣の言葉はもちろん軽すぎるため、どういう志を持って環境大臣をしているのか聞きたい。
 また、*12-1のように、島尻沖縄北方大臣が北方領土の一部である歯舞群島の「歯舞」を読めなかったというのは、北方領土交渉の重要なKey Wordであって単なる固有名詞の読み方の問題ではないため、どういう意思を持って北方領土交渉を行っているのか(もしくは何もやっていないのか)を聞きたいところだ。そして、この傾向は、女性大臣だけでなく、男性大臣にもある。

*12-1:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12210350.html
(朝日新聞社説 2016年2月16日) 丸川環境相 撤回しても残る「軽さ」
 国が追加被曝線量の長期目標として示した年間1ミリシーベルトについて、7日の講演で「『反放射能派』と言うと変ですが、どれだけ下げても心配だという人は世の中にいる。そういう人たちが騒いだ中で、何の科学的根拠もなく時の環境大臣が決めた」などと発言した。翌日の信濃毎日新聞が報じた。放射性物質の除染や、追加被曝の抑制などは、安倍内閣の最重要課題の一つである。原発事故からまもなく5年。除染だけでは長期目標の達成が難しい地域がまだ残り、住民の帰還が進まない現状がある。長期目標は、国際放射線防護委員会が原発事故から復旧する際の参考値とする「年1~20ミリシーベルト」の最も厳しい水準だ。1ミリシーベルトに決まった背景には、安全や安心を求める地元福島の要望もあった。一日も早い帰還を願う住民の思いと、長期目標をどう整合させるか。さまざまな複雑な要素を考慮して決められ、いまなお試行錯誤が続く難題である。丸川氏がそうした経緯を知らなかったとすれば、不勉強と言われても仕方がない。それとも、経緯を知ったうえで、決定当時の民主党政権をおとしめるための発言だったのか。さらに深刻なのは発言が報じられて以降の二転三転ぶりだ。国会質問や取材に「こういう言い回しをした記憶は持っていない」などと答え続け、一転して「言ったと思う」と認めたのは12日朝、発言を撤回したのはその日夕方になってからだ。本当に発言内容を忘れたのか。記憶がないと言っていれば、いずれ国民が忘れてくれると思ったのか。いずれにせよ、閣僚としての適格性が疑われる発言というほかない。丸川氏だけではない。安倍内閣の言動の「軽さ」を印象づける場面は他にもある。島尻沖縄北方相は記者会見で、北方領土の一部である歯舞(はぼまい)群島の「歯舞」を読めず、秘書官に問う場面があった。安倍首相も、自民党のインターネット番組で、2014年に北朝鮮が拉致被害者らの再調査を約束した「ストックホルム合意」を、中東和平の「オスロ合意」と間違えた。確かに、言い間違いや思い違いは誰にでもある。ただ、原発事故対応や北方領土、拉致問題はいずれも安倍内閣が重要課題に掲げるテーマだ。閣僚の資質とともに、内閣としての姿勢が問われかねない。

*12-2:http://www.rist.or.jp/atomica/data/dat_detail.php?Title_No=09-04-01-08
<概要>ICRP(国際放射線防護委員会)による線量限度は、個人が様々な線源から受ける実効線量を総量で制限するための基準として設定されている。線量限度の具体的数値は、確定的影響を防止するとともに、確率的影響を合理的に達成できる限り小さくするという考え方に沿って設定されている。水晶体、皮膚等の特定の組織については、確定的影響の防止の観点から、それぞれのしきい値を基準にして線量限度が決められている。がん、遺伝的疾患の誘発等の確率的影響に関しては、放射線作業者の場合、容認できないリスクレベルの下限値に相当する線量限度と年あたり20mSv(生涯線量1Sv)と見積もっている。公衆に関しては、低線量生涯被ばくによる年齢別死亡リスクの推定結果、並びにラドン被ばくを除く自然放射線による年間の被ばく線量1mSvを考慮し、実効線量1mSv/年を線量限度として勧告している。


PS(2016年2月17日追加):*13の「みやまスマートエネルギー」は、環境負荷が少なく、好意が持てる。今後は、見守り・その他のサービスもセットにできるだろう。

*13:http://qbiz.jp/article/80823/1/ (西日本新聞 2016年2月17日) 電力の半分は地元太陽光 みやまスマートエネルギー 水道とのセット割プランも
 福岡県みやま市などでつくる電力会社「みやまスマートエネルギー」は16日、4月から開始する家庭向け電力販売の料金プランを発表した。調達する電力のうち約半分を地元の太陽光発電分が占めるのが特徴で、離島を除く九州全域に販売する。一般的なプランでは、使用量の多い家庭ほど料金が割安になる。17日から予約を受け付ける。一般的なプランは、契約容量30アンペア以上が対象。月間の基本料金を九州電力よりも低く抑え、300キロワット時を超える分の単価を割安にした。みやま市内約2千世帯の電力使用データを基にしたモデル家庭(契約容量60アンペア、年間使用量6472キロワット時)では、九電の現行プラン「従量電灯B」に比べ、年間約4千円お得になると試算。休日の電気料金が割安になるプランとオール電化向けプランもある。親子間など親族との一括契約で基本料金を割り引くほか、市内世帯向けに水道と電力とのセット割引も設けた。また、電気料金の支払額に応じて独自ポイントを付与。たまったポイントで、インターネット上の仮想商店街にある約100店舗から地元の農産物などを購入できる。みやまスマートエネルギーは九州全域での契約目標を掲げていないが、みやま市内では3年後に約1万4千世帯のうち約7割への供給を目指す。磯部達社長は「『地産地消』電力を多くの人たちに勧めていく。太陽光だけでなく、水力や風力など再生可能エネルギーの比率を高めたい」と述べた。

| 原発::2015.11~ | 01:23 PM | comments (x) | trackback (x) |

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