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2016.4.24 エネルギー変換の必要性と九州大地震←“熊本地震”という名は、今回の地震を過小評価するため使用しません(2016年4月24、25、26、27、28、29、30日、5月1、2、3、4、6日追加)
 
 2016.4.22   中央構造線     1596年の伊予・  宇宙から見える     2016.4.24
  日経新聞    と震度分布      豊後・伏見地震    中央構造線      西日本新聞


2016.4.24   太陽光発電      2016.4.22      ローン0でできる    2016.4.22
 高知新聞     普及率         日経新聞   上  太陽光発電住宅     日経新聞
                            (太陽光発電は、もう屋根に置く 
                             のではなく、屋根や建材として 
                             デザインよく建物に組み込む時)
(1)中央構造線(断層)に沿った地震の発生
 熊本、大分を中心とする今回の地震は、上の左図のように中央構造線に沿って起こったが、これに似た地震が今から420年前の1596年に起こった伊予・豊後・伏見地震だ。中央構造線は日本列島の成り立ちからできた断層で、この断層に沿って河川や湾(白川・緑川・球磨川・八代海、臼杵川・大野川・大分川・別府湾、吉野川、紀ノ川)があり、川沿いに平野・道路・市街地ができていて木が少ないため宇宙からも見える。

 そのため、*1-1、*1-2、*1-3のように、今回の地震は断層に沿って熊本県南西部及び大分県北東部に繋がると考えるのが自然であり、「これ以上は広がらない」と考える科学的根拠はなく、伊予・豊後・伏見地震のような大地震は1000年に一度しか起こらないと証明されているわけでもない。

(2)JR九州の可能性
 本年度中の株式上場を目指しているJR九州は、*1-4のように、地震で新幹線の脱線事故を起こし、今後は安全投資を迫られるそうだが、他方では、今回の地震で家を失った人や建て替えを検討する人は多く、不動産子会社が新幹線や在来線の駅近くで大規模な街づくりを進めることが可能だろう。

 その際には、上の図のように、日照時間が長くて土地の価格が比較的安い九州では、屋根全体を太陽光発電にすれば、オール電化しても住宅ローンが0で済むような住宅を作ることもでき、進歩した21世紀型の住宅団地を作ることが可能であるため、ここで使うべきは頭脳である。

 *3-1のように、純粋な民間会社であるヤマダ電機は、この電力自由化のチャンスに家庭向け電力小売市場に参入し、省エネ性能の高いスマートハウスと合わせて提案していくそうで、楽しみだ。

(2)地震の被害について
 地震は、*2-1のように、トマト、スイカなど全国有数の生産量を誇る熊本県内の農業にも打撃を与え、野菜の選果機などが損傷し、出荷に影響が出始めたそうだ。しかし、別の調達先を探されて売上を逃すよりも、近くの別の選果場で選果を行ってもらえばいいのではないだろうか?

 また、*2-2の熊本城や阿蘇神社は、前よりも文化的価値や観光的価値の増す形で復旧したい。これは、世界の名所・旧跡・城の活用方法を調査して、九州の観光のためにも速やかに行うべきである。

(3)農業の電動化
 *3-2のように、ため池は全国約20万カ所あるが、7割が江戸時代以前に整備されたもので、集中豪雨や南海トラフ地震などによって決壊して周辺に被害をもたらす可能性が指摘されているそうだ。そのため、使わなくなった池の廃止も検討すべきではあろうが、ため池でも発電して農業に安定して安い電力を供給し、いつまでも燃油価格高騰などの外部要因で振り回されることなく、農業におけるエネルギーの自給率向上とコストダウンを計るべきである。

 なお、*3-3のように、北海道のJA士幌町は、酪農家が取り組むバイオガス発電を活用し、4月からJA施設の電力地産地消を始めると発表している。酪農も、バイオガスだけでなく広い畜舎の屋根を利用した太陽光発電や牧場を利用した風力発電など、電力を作るのに適している。

 そのような中、*3-4のように、電気モーターを動力としてガソリンを使わない電気自動車が農村でじわりと浸透し、エコである上に経費節減にも寄与しているそうだ。今後は、農業機械も電動化して、農村でのエコと経費節減を両立すべきだ。

(4)原発停止へ
 *4-1、*4-2のように、2016年7月下旬頃に見込まれる四電伊方原発3号機(愛媛県伊方町、中央構造線の真上)の再稼働に反対する集会が4月23日に松山市の城山公園で開かれ、中四国だけでなく九州の原発立地先の住民ら約2800人(主催者発表)が参加したそうだ。

 熊本で大地震が起きて、いつ南西に広がるかわからなくても川内原発を止めないのは規制委も含めて問題が多い上、その活断層の北東部真上付近にある伊方原発を早急に廃炉として使用済核燃料を別の場所に移さないのも危険極まりない。これは、一回の地震動が570ガルを超えたか650ガル以下だったかという単純で小さな問題ではなく、繰り返し地震に襲われたり、隆起や陥没が起こったりすることも考慮しなければならないということなのだ。

 なお、*4-3のように、大間原発訴訟で、函館市は、「(原発の審査基準となる新規制基準について)欧州諸国と比べて緩やかであり、世界で最も厳しい基準だと強調する政府は新たな安全神話を流布している」と批判したそうである。

 さらに呆れるのは、*4-4のような原発の「40年ルール」の骨抜きだ。狭い国土に多くの人が住み、地震などの自然災害も多い日本で、多くの原発を抱えていくリスクは大きすぎる。福島での事故を経て、そこが原子力行政見直しの出発点だったはずだし、原発を維持する国民的コストは膨大すぎる。

 また、世界でも、エネルギー自給率は再生可能エネルギーの育成で高めようというのが大勢である。そして、再エネ施設が事故を起こしたとしても原発事故のような長期間の大きな被害にはならない上、*4-5のように、太陽光、風力、地熱などの九州の再エネ施設は無事だったそうだ。

*1-1:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/304092
(佐賀新聞 2016年4月22日) 地震活動終息見えず 熊本南西部ひずみ警戒
 震度7が連続して起きた熊本県の地震活動は、阿蘇山や大分県に余波が及んだまま1週間が過ぎた。地震回数は2004年の新潟県中越地震を超えて最多となり、活動がいつ終息するのか見通せない状況が続く。専門家は熊本県の南西部にたまった地殻のひずみの大きさを指摘。今後の地震に警戒を呼び掛ける。「過去に例のない状況で(終息の)見通しはない。期限を明示することは難しい」。21日の気象庁の記者会見。青木元・地震津波監視課長は硬い表情で語った。
◆異例
 海溝型の大地震が連続する例がないわけではないが、震度7の直下型地震の連発は「想定外」。余震の数はその分多い。また震源となった「布田川(ふたがわ)断層帯」「日奈久(ひなぐ)断層帯」の北東延長部でも地震が誘発された。熊本県の中心部と、活火山の阿蘇山を越えた大分県境、大分県内の計3カ所。異例の同時活動だ。遠田晋次・東北大教授(地震地質学)は「大分などの地震は16日の地震とほぼ同時に起きている。南西から北東に向けて断層破壊が起こり、地殻のひずみが直ちに伝わった」と指摘。だが、ひずみがより大きくなったのは大分県側ではなく、日奈久断層帯の南側に近い熊本県南西部だ。「もともと地震が起こりやすいと考えられていた部分。いつとは言えないが、大きな地震がまた起きるだろう」
◆飛び火
 地殻のひずみに詳しい西村卓也・京都大准教授(地殻変動学)は「震源周辺はブロック状の地殻の固まり同士の境界に当たり、年約1センチのひずみをためている」と話す。東日本大震災を起こした日本海溝の年8~9センチ、巨大地震が懸念される南海トラフの年5~6センチよりは小さいが、地震が起きやすい地域だ。西村氏によると、今回の地震で変化したひずみの影響は震源に近いほど強まる。震源に近い熊本県南西部は引き続き注意が必要だ。一方、大分の地震活動が、対岸の四国を横断する巨大断層「中央構造線断層帯」に飛び火すると考える専門家は少ない。鷺谷威・名古屋大教授(地殻変動学)は「大分は陸域の地震で、徐々に活動は静まってきている。地震が海域に及んで活発にならない限り心配はないと思う」と話している。【共同】

*1-2:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20160422&ng=DGKKZO99945210R20C16A4M12800 (日経新聞 2016.4.22) 特集熊本地震 未知の連鎖、「断層の巣」震源北東へ 南西も拡大警戒
 熊本地震の発生から21日で1週間を迎えた。16日未明にはより大規模な「本震」が起き、距離の離れた阿蘇地方や大分県でも大きな地震を誘発する異例の事態に発展した。建物の倒壊や土砂災害による被害は広域に及び、多発する余震や震源域の一段の拡大への警戒が続く。住民の生活を再建し、地域の復興を遂げるには時間がかかりそうだ。熊本県熊本地方が激しい揺れに見舞われたのは14日午後9時26分ごろ。地震の規模を示すマグニチュード(M)は6.5で、同県益城町では震度7を記録した。気象庁によると南北方向に引っ張られる力で地盤が水平に動く「横ずれ型」と呼ぶタイプの地震だった。震源の深さが11キロメートルと浅く、揺れが大きくなった。国内で震度7を観測するのは2011年の東日本大震災以来で、住宅の倒壊で犠牲者が出るなど大きな被害につながった。地震活動は過去に例のない展開を見せる。16日午前1時25分ごろ、熊本地方を再び強い揺れが襲う。1995年の阪神大震災と同じM7.3。14日夜の地震を上回る規模だった。気象庁は後に震度計のデータを解析し、益城町などで震度7だったと発表した。気象庁は14日の地震が起きた時点で、さらに大きな地震が来るとは考えていなかった。経験則から、大きな地震の後に続く余震の多発に警戒を呼びかけていた。もはや従来の常識は通用しなかった。16日未明から朝にかけ、阿蘇地方や大分県中部でも大きな地震を観測した。地震の連鎖はなぜ起きたのか。日本列島は地震を繰り返す2000以上の活断層がある。政府の地震調査委員会によると、最初の震度7は長さ約81キロメートルの日奈久(ひなぐ)断層帯の北端がずれたことが原因だった。次の16日は同断層帯の北側を走る布田川(ふたがわ)断層帯で発生した。大分県から熊本県に至る別府―島原地溝帯付近は、両断層帯を含め多くの活断層が集まる「地震の巣」だ。大分県側にも別府―万年山(はねやま)断層帯がある。日本列島の下には海底のプレート(岩板)が沈み込み、陸地に力が加わる。「もともと地盤にひずみがたまっていた」(東京大学の古村孝志教授)地域で大きな地震が起き、誘発されるように北東方向に拡大した。1つの活断層がずれると周辺へかかる力が変わり、次の大地震の引き金になるとの考えはある。だがM7級の地震をきっかけに九州を横切るほどの規模で震源域が広がるのは「見たことがない現象」(京都大学の飯尾能久教授)で、詳しい仕組みは不明だ。日奈久断層帯の南西側などでさらに大地震が起きる懸念も指摘されている。

*1-3:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20160422&ng=DGKKZO99946320R20C16A4TJN000 (日経新聞 2016.4.22) 「中央構造線」列島横切る巨大断層、熊本地震の延長上 九州~近畿で400年前に連続発生
 熊本県から大分県にかけて強い地震が連続して発生、大きな被害を出した。内陸で起きる地震の常識を超えて100キロメートルもの範囲に震源が広がり、さらに東の愛媛県などに拡大するのではないかと懸念する声が出ている。一連の地震の震源の延長上に西日本を縦断する「中央構造線」と呼ばれる大規模な断層帯が存在するためだ。西日本を背骨のように貫く中央構造線とはどのようなものなのだろうか。「一番の懸念は、(一連の地震が)中央構造線につながっているということだ」。18日に開いた緊急記者会見で、日本地震学会会長の加藤照之さんはこう語った。14日の夜に熊本市近郊で最初の地震が発生。16日未明にそれをはるかに上回る規模の本震が起き、これをきっかけに阿蘇山周辺から大分県へと、マグニチュード(M)5級の地震が広がっていった。今回のような直下型地震は、地下の断層がずれることで起きる。地震を起こした活断層の延長上で別の地震が起きることはしばしばあるが、これほど大きな地震が100キロ以上も進んでいくのは「かなり特徴的」(加藤さん)だという。
●全長1000キロ以上
 地震は、九州を横切る「別府―島原地溝帯」を東に進んだ。地溝帯というのは、両側を断層で挟まれた幅の広い谷のことだ。別府―島原地溝帯は、西日本を横切る長大な断層の連なり「中央構造線」の西端に当たる。中央構造線の周辺には並行して多くの活断層があり、地震の連鎖が広がるのではと懸念された。中央構造線は、全長1000キロメートル以上に及ぶ。九州から四国北部を経て紀伊半島を横断。伊勢湾を横切り、天竜川に沿って北上して、長野県諏訪湖付近で本州の中央部を横切るフォッサマグナとよばれる巨大な地溝帯にぶつかる。このフォッサマグナの西の縁が、中央構造線と並ぶ巨大な断層帯として知られる糸魚川―静岡構造線だ。異なる断層に由来する大きな地震が連動するのは、近代的な観測が行われるようになってからはあまり例がない。だが、過去の時代の文献からは、そうした事例があったことが見て取れる。安土桃山時代末期の1596年9月1日、中央構造線沿いの愛媛県でM7級の慶長伊予地震が起きた。その3日後に、およそ200キロメートル離れた大分県で、同程度の慶長豊後地震が起きている。その翌日に兵庫県で発生した慶長伏見地震も、これらの地震と関連するとみる研究者もいる。
●分かれる意見
 今回の地震が、大分県を越えてさらに東へと強い地震が広がる可能性はあるのか。研究者の見方は様々だ。九州大学准教授の松島健さんは「1995年に中央構造線近くで阪神大震災が起きた。今回も中央構造線に沿って他の地震が起きる可能性は否定できない」と見る。一方、京都大学防災研究所教授の岩田知孝さんは「慶長伏見地震などから約400年しかたっていない。ひずみはたまっておらず、すぐには動かないのでは」と話す。中央構造線の元になった断層は、今から1億年以上前、日本列島がアジア大陸の一部だったころに誕生した。恐竜がいた白亜紀に、海洋プレートが運んできた陸地が大陸にぶつかった。その後、大陸の端が大きく横ずれして巨大な断層ができたと考えられている。これが中央構造線だ。日本列島は、中央構造線の一部を含んだ形で、2500万年くらい前に大陸から離れはじめた。海底にできた裂け目が広がり、日本海ができたことで太平洋側へと押し出された格好だ。この過程でさらに断層がずれ、現在の日本列島の形ができた。中央構造線にはひずみが集中しており、その周辺には活断層帯が多い。別府―島原地溝帯には、熊本地震を引き起こした日奈久(ひなぐ)断層帯や布田川(ふたがわ)断層帯、大分の地震との関連が疑われる別府―万年山(はねやま)断層帯などの活断層がある。中央には巨大な阿蘇山が存在し、雲仙岳がある島原半島から熊本県八代市沖までは活断層の密集地帯だ。今回の地震は、遠く離れた断層が連動して動く可能性を印象づけた。地下の断層の動きはいまだ予測がつかず、対策は警戒を怠らないことしかないようだ。

*1-4:http://qbiz.jp/article/85534/1/
(西日本新聞 2016年4月24日) 上場目指すJR九州、「収益」と「安全」の両立はできるのか
 熊本地震で影響を受けた九州新幹線を28日にも全線再開させる方針を明らかにしたJR九州。九州の大動脈の早期復旧は、公共交通機関を担う事業者の使命であり、震災からの復興に大きく貢献することになる。だが「想定外」の震災で、事業の根幹に関わる安全性は大きく揺らいだ。本年度中の株式上場を目指すJR九州は「収益」と「安全」をともに向上させるという重い経営課題に向き合う。九州新幹線は14日以降の地震で、約150カ所の損傷を受けた。大都市を結ぶ新幹線の運休長期化は経営上も重大な打撃となることから、JR九州幹部は早期再開を「大きな一歩」と語る。しかし、損傷箇所の多くは応急的な補修どまり。通常ダイヤへの復帰を可能にする本格修復は遠い。14日夜の地震では「本来あってはならない」(JR九州関係者)はずの新幹線車両の脱線事故が起きた。脱線を食い止める線路の「脱線防止ガード」が設置されているのは、全257キロのうち24キロ。地震による全体被害額も、まだ把握できていない状況だが「今後、追加的な安全対策が必要になるのは間違いない」(同)。今後、巨額の安全投資を迫られる。鉄道はJR九州の基幹事業だ。最大の経営課題である在来線の赤字を、新幹線収益や他事業で補い、上場へ向けて歩を進めてきた同社。安定的に収益を生み出すと期待された新幹線の損傷は、本年度を目標とする上場にも影響しかねない。青柳俊彦社長は23日、上場への影響について「精査をした上での判断になる」と述べるにとどめた。安全を確保しながら早期の完全復旧を実現させ、さらに悲願の上場を遂げる。政府の手を完全に離れ、純粋民間企業としての独り立ちを目指す同社。その力量が問われている。

<被害>
*2-1:http://www.saga-s.co.jp/column/economy/22901/304099
(佐賀新聞 2016年4月22日) 地震、農業県・熊本に打撃、出荷施設損傷、価格高騰も
 熊本県を中心に相次ぐ地震はトマト、スイカなど全国有数の生産量を誇る県内農業に打撃を与えている。野菜の選果機などが損傷し、出荷に影響が出始めた。被災農家も日々の生活対応に追われて本格的な農作業の再開が遅れている。品薄感から今後、価格が値上がりする可能性がある。熊本県の2014年の農業産出額は3283億円と全国6位。トマト、スイカの生産額は全国トップで、メロンやナス、キャベツなども上位に入る。県によると、野菜を色や大きさなどで選別する機械やハウス施設が壊れるなどの被害が約50件あり、畜舎が倒壊し牛が圧死する事例もあった。多数の犠牲者を出すなど大きな被害があった熊本県益城町はスイカが主力品だ。4~5月に出荷がピークを迎えるが、JAかみましきでは、1カ所しかない選果場の設備が壊れ、手作業で箱詰めをしている。農家約80軒のうち、3分の1は自宅が全半壊しているとみられ、JAかみましきの担当者は「人手が足りず負担が増えている」と話した。九州各地から生鮮品が集まる福岡市中央卸売市場では、熊本県産の野菜の流通量が減少。5月はスイカとメロンの8割以上を熊本県産が占めるため、このままでは値上がりが懸念される。市場関係者は「トマトなどの野菜は別の調達先を探し、全体的な出荷量を維持したい」としている。

*2-2:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/304103
(佐賀新聞 2016年4月22日) 専門家、熊本城復旧に「10年以上」、文化財に深刻被害
 熊本県を中心に相次ぐ地震は、熊本城(熊本市中央区)など貴重な文化財にも深刻な被害をもたらした。大きな余震が続き、損傷状況の調査もままならない。熊本城の復旧には「10年以上かかるかもしれない」との見方すら出ている。大型連休を前に観光面の打撃は避けられず、関係者からは不安の声が漏れる。「築城の名手」とされる武将加藤清正が1607年に築いた熊本城。国の重要文化財13カ所のうち、長塀(ながべい)、東十八間櫓(ひがしじゅうはちけんやぐら)など5カ所が倒壊した。城内最古の宇土櫓(うとやぐら)を含む他の8カ所も、ひび割れ、しっくいのはげ落ちが確認された。高くなるにつれ勾配がきつくなる「武者返し」で知られる石垣もあちこちで崩壊し、熊本城総合事務所の担当者は「余震で詳細な調査に入れない」と話す。外国人観光客が増加し、昨年度に訪れた人は約177万人に上るが、当面は入場禁止だ。熊本藩主細川家の菩提(ぼだい)寺跡がある立田自然公園と北岡自然公園(同市中央区)も、計100基以上の石灯籠や墓石が倒れ、江戸時代初期創建の唐門(からもん)が全壊した。余震でさらに崩れる可能性もあり、修復の見通しは立たない。江戸時代から続く地主の屋敷で、現在も第11代当主江藤武紀さん(76)と家族が暮らす江藤家住宅(熊本県大津町)では、国の重要文化財に指定された建物の大半が、16日未明の本震で半壊した。1830年に建てられた主屋は2階の床の間が落ち、1階に寝ていた江藤さんは避難生活を余儀なくされた。江藤さんは「何代にもわたり地域と一緒に守ってきたという責任と愛着がある。難しいのは承知だが、また住めるように修復したい」。阿蘇市の観光名所、阿蘇神社も1850年落成の楼門が倒壊、境内最古の「一の神殿」も大きく傾いた。佐伯紀行事務官は「歴史もあり、地域の人々の支えになってきた神社。いつまでかかるか分からないが、必ず再興したい」と話した。

*2-3:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20160422&ng=DGKKZO99945300R20C16A4M12800 (日経新聞 2016.4.22) 生活再建・復興、なお見えず
 14日夜に発生した最初の地震から1週間が過ぎた。同じ場所で震度7が2回起きる前例のない災害が住宅などに与えたダメージは大きい。震度5クラス以上の余震も続き、被災者の生活再建や復興に向けた道筋は見えないままだ。一連の地震で損壊した建物は、熊本県を中心に九州の5県で1万棟を超えた。震度7を観測した益城町では住宅の1割強が全壊したとみられる。揺れが大きかった地域ほど調査は進んでおらず、被害戸数は増える可能性が高い。住宅が損壊し、避難所に駆け込む人は14日夜に発生した地震で約4万4千人に上った。「大きな余震はないだろう」と思い、同日午後には1万人を割り込んだが、16日夜に「本震」に襲われたこともあり、熊本県を中心に600以上の避難所に約9万人が身を寄せる。熊本県と熊本市は自宅が全半壊した人を対象に県営住宅、市営住宅の空き部屋を無償で提供する方針だが、大量の避難者の受け入れはメドは立っていない。ライフラインでは電気が早い段階で復旧したものの、熊本市の中心部を含めて断水。飲用やトイレ用など生活用水が大幅に不足した。都市ガスもガス管などの開栓作業に時間がかかっている。市内中心部のホテルなどは営業を再開できないでいる。鉄道は断続的に運休していたJR鹿児島線が18日午後に荒尾―熊本間が運転を再開し、福岡方面との行き来ができるようになった。しかし直後に熊本駅舎の被害が判明し、約4時間ストップするなど混乱した。同線熊本―八代間も21日午後に運転再開にこぎ着け、福岡と鹿児島を結ぶ幹線は1週間ぶりに全線復旧した。当面は本数を減らして運行する。九州新幹線は大雨の影響もあり復旧作業が進まず、博多―新水俣間は復旧のめどが立っていない。空路は閉鎖していた熊本空港で19日に到着便の運航を再開。続いて出発便も再開したが、ターミナルビルの機能が完全ではなく、運航は一部にとどまる。

<自家発電システムと農業の電力化>
*3-1:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20160422&ng=DGKKZO99945850R20C16A4TI1000 (日経新聞 2016.4.22) ヤマダが電力小売り、スマートハウスと合わせ提案、住宅子会社と連携
 家電量販店最大手のヤマダ電機は家庭向けの電力小売市場に参入する。地域ごとに大手電力会社や新電力と提携し、ヤマダが販売代理店となって消費者に販売する。住宅子会社とも連携し、省エネ性能の高い「スマートハウス」と合わせて提案していく。主力の家電販売は人口減を背景に長期的に横ばいとみており、スマートハウスの関連商材を成長事業に育てる。電力小売り「ヤマダのでんき」は沖縄県を除く全国で6月からサービスを提供する。郊外などで全国に約1千店を展開するヤマダが参入することで、地方を中心に従来の電力会社からの切り替えが進みそうだ。サービスの詳細はこれから詰めるが、電力料金は大手電力会社より割安に設定する。ヤマダの店舗で使えるポイントも付与する方針だ。5月中旬から申し込みを受け付け、5年間で50万件の契約獲得を目指す。全国に約1千店あるグループの家電量販店で申し込みを受け付けるほか、注文住宅のヤマダ・エスバイエルホーム、低価格住宅のヤマダ・ウッドハウス(群馬県高崎市)の購入者向けにも電力を販売する。子会社コスモス・ベリーズ(名古屋市)のボランタリーチェーンに加盟する中小の電器店など全国1万店も販路として活用する。ヤマダは顧客獲得競争が激しい電力小売りだけを展開するのでは利幅が薄いと判断、スマートハウス事業の拡大で利益を上げる。同社は住宅子会社で家庭向けエネルギー管理システム(HEMS)や太陽光発電設備、蓄電池などを備えたスマートハウスを提供している。「電気料金のデータを分析すれば、新たなスマートハウスやHEMSのアイデアも生み出せる」(ヤマダの山田昇会長)との期待もあり、新事業の創出にも結び付ける。ポイント付与で家電販売の上積みも目指す。電力小売りは4月に全面自由化された。同社は本格的な普及はこれからと予測している。グループの事業基盤を生かして顧客を開拓する。同社は20年3月期の連結売上高を15年3月期比1割増の1兆8550億円に増やす計画。主力の家電販売は同期間によくて横ばいとみており、2千億円弱の増収分はスマートハウスを中心とした新規事業で稼ぐ考えだ。電力小売りの自由化を受け、家電量販店の間では新規参入の動きが広がっている。ビックカメラが東京電力と、エディオンが中部電力と組んで電力小売りを始めている。

*3-2:http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=37124
(日本農業新聞 2016/4/22) 予算確保万全に ため池 防災対策急げ 自民議連が小委設置
 自民党の農村基盤整備議員連盟(会長=二階俊博党総務会長)が「ため池小委員会」(宮腰光寛委員長)を設置し、21日に初会合を開いた。地震や豪雨による決壊被害の防止が急務となる中、必要な予算は不足しているのが現状。十分な額の予算を確保するとともに、今後のため池整備に関する政府の方針に議論を反映させる考えだ。ため池は、大きな河川が少ない西日本を中心に全国約20万カ所あるが、7割が江戸時代以前に整備されたもの。一方で、近年増えている集中豪雨や、近い将来に予想される南海トラフ地震などによって決壊し、周辺に多大な被害をもたらす可能性が指摘されている。宮腰委員長は会合冒頭で「東日本大震災や熊本地震でもため池が被害を受けている。どうしっかり対応していくかを議論していきたい」と述べた。また8月に閣議決定する新たな土地改良長期計画や、秋までに取りまとめる土地改良制度の在り方の見直しにも意見を反映させたい意向を示した。会合で農水省は、ため池の決壊を防ぐための整備などを含む「農村地域防災減災事業」の予算が、2016年度は前年度比81%増の508億円になったと報告。ただ、ため池の数が多い上位3県の兵庫、広島、香川の各県や土地改良区の担当者からは、県の要望額と国の割当額に開きがあるなど、予算不足で「計画的に事業が進まない」といった意見が相次いだ。こうした状況を踏まえて二階会長は「財務省に宣戦布告はしてある」、宮腰委員長も「何しろ予算が足りない」と述べ、予算の確保に意欲を示した。出席議員からは、使わなくなったため池の廃止や、受益農家が減る中での負担軽減策も検討すべきとの意見が出た。

*3-3:http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=36779 (日本農業新聞 2016/3/29) 「酪農発」新電力地域循環めざす 関連会社が購入、供給へ 北海道・JA士幌町
 北海道のJA士幌町は28日、酪農家が取り組むバイオガス発電を活用し、4月からJA施設の電力の“地産地消”を始めると発表した。JAの関連会社(株)エーコープサービスが、バイオガス発電所から電力を購入、18施設に供給する。農家やJAが主体となり、農業から出るエネルギーを活用・循環する手法として注目を浴びそうだ。バイオガス発電は、家畜ふん尿をメタン発酵させて出るガスで発電する。酪農・畜産農家の悩みの種であるふん尿処理の解決策となる。残さとして出る副産物も牛舎や畑地に還元できる。多額の投資が伴うが、固定価格買取制度で1キロワット時当たり39円(税別)で売電できるようになり、設備の普及が加速している。同JAはバイオガス発電に積極的で、町内の酪農家8戸がそれぞれ導入している。北海道電力に売電していたが、地元が購入する仕組みをつくり、電力の“地産地消”に踏み出す。電力はエーコープサービスが購入し、JAの事務所やAコープなど18施設に供給。契約電力は計約700キロワットを見込む。JAでは今後2基のバイオガス施設の稼働を控えている。同社の社長を務めるJAの七條光寛常務は「発電量に見合ってどのように供給できるかを考え、地産地消を進めていきたい」としている。

*3-4:http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=36898 (日本農業新聞 2016/4/8) 電気自動車 農村を快走 充電環境ぐんと充実 エコ 経費節減も もちろん 
 電気モーターを動力源とし、ガソリンを使わない電気自動車(EV)が農村で、じわりと浸透してきた。JAの店舗や農産物直売所でも急速充電ができるようになるなど環境が整備されたことから、EVを所有する農家が年々増加。初期投資はガソリン車以上にかかるものの、乗り換えた農家は、環境に優しいだけでなく経費節減につながると効果を実感している。車を利用して4年。ブルーべリーのプリンなど農産加工品の配達で、1日に150キロ近く走行することもある。環境への配慮が購入のきっかけだが、今では「大幅な経費節減になった」と実感する。充電は主に道の駅や購入先のメーカー、家などで済ませる。電気代など維持費は推定で年間3万~4万円。燃料代で年間約40万~50万円が浮いた計算だ。オイル交換の必要がなく、車検費用も半分以下だ。初期費用は約380万円と、ガソリン車に比べて高いが「元は取れた」とみる。しかも近隣の給油所は近年減っていることから「電気自動車は便利だ」と痛感する。心配だったのは走行距離だが、最近は道の駅やサービスエリアに充電器の設置が進み、途中で急速充電しながら約470キロ先の札幌市まで高速道路を使って行けるようになった。横田さんは「小まめに充電すればよく、不自由さは感じない。賢く使って経費を抑えられた」と喜ぶ。公用車に電気自動車を導入したり、急速充電器を設置したりするJAも増えている。東京都JAマインズ、静岡県JAおおいがわ、滋賀県JA草津市、JA鳥取中央などでは直売所や本店に急速充電器を設置。買い物や食事、JAで用事を済ませる間に充電できる体制を整えた。佐賀県JAからつが運営する直売所「唐津うまかもん市場」も急速充電器を設置。事務担当の坂本輝憲さん(39)は「充電を目的に来てくれるお客さんもいて、直売所のPRになっている」と歓迎する。
●JA店舗や直売所でも
 次世代自動車振興センターによると、EVの保有台数は2009年度末(9000台)以降、年々増えて、14年度末には全国で7万台を超えた。1回フル充電した時の走行距離は100~300キロ、30分の急速充電ができる車種が一般的だ。200ボルトの家庭用電源を使うと8時間前後でフル充電できる。購入への補助事業もあるが、初期投資がかかるため、誰もが「お得」というわけではない。同センター次世代自動車部の荻野法一課長によると「車を多用し、小まめに充電できる環境がある」農家にお薦めという。充電器の普及状況を調べる「GOGOEV」によると、充電器の設置場所は急速・普通合わせて約1万7800カ所と、年々増加している。一方、給油所は14年度末で3万3510カ所(経済産業省調べ)。ここ20年間で、半数近くの約2万7000もの給油所が消えた。それだけに荻野課長は「充電環境が整ってきた電気自動車は、農村部でさらに広がる可能性がある」と見通す。

<原発停止からエネルギーの変換へ>
*4-1:http://www.kochinews.co.jp/article/17519/
(高知新聞 2016.4.24) 地震続発で伊方原発に危機感 松山市で再稼働反対集会
 7月下旬ごろに見込まれる四国電力伊方原発3号機(愛媛県伊方町)の再稼働に反対する集会が4月23日、松山市の城山公園で開かれ、中四国のほか九州の原発立地先の住民ら約2800人(主催者発表)が参加した。熊本、大分両県で相次ぐ地震を受け、中央構造線断層帯に近接する伊方原発の過酷事故に対する危機感を訴えた。松山市の市民団体「伊方原発をとめる会」の主催。「熊本で地震が起きても(鹿児島県の九州電力)川内原発を止めない。悔しい」。松山城近くの公園。福島県いわき市出身の講談師、神田香織さんが訴えた。「事故から5年たっても福島はのたうち回っている。私たちの経験が生かされていない」。14日以降、九州地方で大型地震が連続している中、川内原発1、2号機は「安全上の問題はない」として運転を続けている。川内原発が立地する鹿児島県薩摩川内市の村山智さん(68)は「これだけ地震が続いているのだから、安全と言われても信用できない。原発をいったん止め、専門家の意見を聞きながら本当に大丈夫か検証すべきだ」。上原正利さん(68)の自宅は川内原発から約8キロ。「九州では大地震は起きないと言われていた。前例のないことも実際に起きる。いったん動きだしたら止めるのは難しい。いま伊方の再稼働を止めないと」。大分県津久見市の池見耕治さん(75)は、16日深夜の地震で跳び起きたという。「まず心配したのは伊方と川内。活断層の範囲が熊本から伊方の方向に広がっているから」。伊方原発は佐田岬半島に位置し、その北側の沖合6~8キロの海底には日本最大の中央構造線を構成する断層帯が東西に走る。豊後水道を挟み、津久見市の一部は伊方から50キロ圏内。余震が続く中で集会に参加した池見さんは「地震が起こると道路は寸断され、避難などできない。活断層だらけの日本に原発など造ってはいけない」と強調した。集会後、参加者は四電原子力本部前などをデモ行進した。高知県からは約70人が駆け付けた。高知市の女性(52)は九州の地震のニュースを見るたび、伊方近くの中央構造線が気になって仕方がないとし、「廃炉にするしかない。福島のように想定以上のことが起こってからでは遅い」と語気を強めた。

*4-2:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/302719 (佐賀新聞 2016年4月19日) 活断層と原発 広がる震源域、不安増す、川内原発で規制委「問題ない」
 熊本の地震を引き起こした活断層を巡り、原子力規制委員会は18日、全国で唯一稼働中の九州電力川内原発1、2号機(鹿児島県)は「安全上の問題はない」として、停止は不要との考えを示した。7月下旬の再稼働が予定される四国電力伊方原発3号機(愛媛県)の近くにも活断層があり、住民の不安が広がっている。
■活発化懸念
 14日以降の一連の地震を引き起こしたとされるのは「布田川(ふたがわ)断層帯」「日奈久(ひなぐ)断層帯」。14日夜の前震では震度7、マグニチュード(M)6・5、16日未明の本震では震度6強(M7・3)が観測された。断層帯の北東部に加えて、川内原発に近づく南西部の活発化が懸念されている。川内1、2号機は2014年9月に新規制基準の審査に合格したが、審査で断層帯について議論済みだ。九電は二つの断層帯が全域の長さ92・7キロにわたって一度に動き、M8・1になるとの想定で川内原発への影響を評価したところ、原発での最大加速度は150ガル程度にとどまった。震源の直上から敷地への距離が約90キロと遠いためだ。九電は、直下に未知の震源があることも想定し基準地震動(耐震設計で目安とする揺れの想定)を最大加速度620ガルと設定しており、規制委は施設への影響はないとしている。
■中央構造線
 一方、今回の地震では大分県側にも震源域が広がったことで新たな懸念が生まれている。「別府-万年山(はねやま)断層帯」と、その延長線上に位置する「中央構造線断層帯」だ。中央構造線は四国の北部を通り近畿地方まで延びる長大な活断層で、伊方3号機の審査で最大の焦点となった。四国電は当初、基準地震動を570ガルと設定していたが、別府-万年山と中央構造線が計480キロにわたって連動するとの想定を加えて最大650ガルに引き上げた。愛媛県がさらに対策を求めたため、四国電は施設がおおむね千ガルにも耐えられるよう工事をした。田中俊一委員長は「中央構造線は審査で十分検討した」としている。ただ伊方原発は南海トラフ巨大地震の震源域にある。広島の被爆者を中心とする約65人は今年3月、地震や津波による被害が強く懸念されるとして、伊方原発の運転差し止めを求め広島地裁に提訴。同時に差し止めの仮処分も申請しており、地裁の判断が注目される。原告団長で被爆者の堀江壮さん(75)は原発事故への不安を口にする人が増えたとして「原爆も原発事故も同じ放射線の被害者を出した。四国電は再稼働を絶対にやめてほしい。政府も国民の不安を取り除くために賢明な判断をしてほしい」と訴えた。

*4-3:http://dd.hokkaido-np.co.jp/news/society/society/1-0261718.html
(北海道新聞 2016年4月21日) 「政府は安全神話流布」 大間原発訴訟、函館市が批判
 函館市が国と電源開発(東京)に大間原発(青森県大間町)の建設差し止めなどを求めた訴訟の第8回口頭弁論が20日、東京地裁(林俊之裁判長)であった。函館市側は、原発の審査基準となる新規制基準について「欧州諸国と比べて緩やかであり、世界で最も厳しい基準だと強調する政府は新たな安全神話を流布している」と批判した。函館市側は新規制基準の問題点として、耐震設計の目安となる地震の揺れ(基準地震動)を挙げた。2005~11年の約6年間に、基準地震動を超える揺れが全国の原発立地地域で5回観測されていることを指摘。欧州では基準地震動は1万年に1回未満の発生確率で設定されているとして「日本の発生頻度は異常だ」として基準を見直すべきだと強調した。大間原発は、ウランと原発の使用済み燃料から取り出したプルトニウムを混ぜて作る混合酸化物(MOX)燃料だけを使う、世界初のフルMOX商業炉だ。函館市側は「ウラン燃料の原子炉より危険性が高いのに、新規制基準にはフルMOXに特化した規則がない」とも批判した。また、九州電力川内原発1、2号機(鹿児島県薩摩川内市)の運転差し止めを認めなかった今月6日の福岡高裁宮崎支部決定については「論理矛盾が複数ある不当な決定」と述べた。国と電源開発の主張はなかった。次回期日は7月14日。

*4-4:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12320288.html
(朝日新聞社説 2016年4月21日) 原発40年規制 早くも骨抜きなのか
 原子力規制委員会は、運転開始から40年を超えた関西電力高浜原発1、2号機(福井県)について、新規制基準を満たしていると正式に決めた。新基準のもとで40年超の老朽原発の運転延長が認められるのは初めてだ。残る細かい審査を7月の期限までに終えれば、あと20年、運転が続く公算が大きい。「40年ルール」は福島での事故後、法律を改正して導入された。「1回だけ、最長20年間」と定められた運転延長は「極めて例外的」と位置づけられた。あえて例外を設けたのは電力不足に備えるためだったが、節電や省エネの定着で懸念は解消していると言っていい。おりしも熊本県を中心に「今までの経験則からはずれている」(気象庁)という地震が続く。隣の鹿児島県で運転中の九州電力川内原発に影響が及ばないか、不安を感じている国民は少なくない。いきなり例外を認め、規制のたがを緩めるような対応は、原発行政への不信を高めるだけではないか。安倍政権は個別原発の可否の判断を規制委に丸投げしつつ、運転延長を前提にしたエネルギー計画を立てた。「原発依存度を可能な限り低減する」と繰り返していた首相は、なしくずしに方針を転換してきた。規制委は、あくまで科学的見地から原発の安全性を高めることが役割だが、今回の審査では耐震性の試験を後回しにすることを関電に認めるなど、手順に疑問が残る。7月の審査期限をにらんだスケジュールありきだったとすれば、まさに本末転倒である。結局、廃炉にするかどうかの実質的な判断は電力会社に委ねられ、運転延長が採算に合うかどうかという観点から決まるという状況になりつつある。狭い国土に多くの人が住み、地震など自然災害も多い日本で、多くの原発を抱えていくリスクは大きい。福島での事故を経て、そこが原子力行政見直しの出発点だったはずだ。原発を維持する政策をとり続ければ、廃棄物の処理などで長期的には国民負担も増えかねない。エネルギー自給率は再生エネルギーの育成で高めようというのが世界の大勢だ。移行期間は必要だとしても、着実に原発を閉じていく政策にこそ合理性があろう。40年規制はそのための柱の一つである。そのことを思い起こすべきだ。

*4-5:http://qbiz.jp/article/85491/1/
(西日本新聞 2016年4月23日) 九州の再エネ施設は大半無事だった 太陽光、風力、地熱…
 地震でライフラインに被害が出た熊本や大分に多く立地する、太陽光などの再生可能エネルギー発電設備はどうだったのか。経済産業省九州産業保安監督部(福岡市)が行った調査の結果、一部設備に損傷があったものの大半に異常がないことが分かった。同監督部は「地震の規模からみて相応の被害が懸念されたが、ほとんど無事だったことは評価できる」としている。事業者への18日時点の聞き取りによると、所管する熊本、大分両県内の太陽光発電設備(出力2千キロワット以上)は計23カ所あり、九州電力の送電網停止が原因と思われる停止が1カ所あった以外は稼働しており、設備自体に損傷はなかった。風力発電設備(同500キロワット以上)計11カ所のうち、熊本県内の4カ所が停止したが、3カ所は九電の送電網停止が理由。1カ所だけ地下ケーブルが土砂崩れのために損傷した可能性があるが、風車の倒壊や羽根の脱落はないという。地熱でも設備に異常はなく、大分県九重町の九電八丁原発電所1号機が地震で自動停止したが、点検が完了し、運転を再開した。水力は熊本県内55カ所のうち3カ所で導水管の損傷などのため停止。大分県内49カ所はほぼ異常がないとしている。


<原発再稼働関係の追加>
PS(2016年4月26日追加):*7-1~*7-4のように、これまで対処済と言われていた原発事故時の避難は、(もともと大して検討されていないことはわかっていたが)今回の地震で机上の空論であることが明らかになった。また、日本のようなプレート銀座・断層銀座では、安全に原発を立地できるような場所はなく、原発の温排水が漁業に悪影響を与える上、原発があると他産業を誘致できない(他産業は、わざわざ危険な場所には行かない)など、百害あって一利なしなのである。そのため、それぞれの原発地元は早急に廃炉にすべきで、「本当に原発がなくなっていいの?」と聞く人もいるが、私は逆に「そこまでして何のために原発を残さなければならないの?」と問いたい。そして、これは、“特定秘密”にするのではなく、主権者である国民に明確に説明すべきことだ。

*7-1:http://news.mixi.jp/view_news.pl?id=3965113&media_id=173&from=twitter&share_from=view_news (mixiニュース 2016年4月26日) 国際基準では「動かしてはいけない」はずが…稼働続ける川内原発21
 地震が頻発する中、震源域から80キロほどにある川内原発が、運転を続けている。活断層による直下型地震に、日本の原発は耐えられるのか。熊本や大分で4月14日以降続いている地震は、震源域が南西側、北東側に拡大した。南西側の延長線上には、付近に国内で唯一稼働中の九州電力川内原発1、2号機(鹿児島県)がある。「放射線モニターの指示値に変化はなく、外部環境への影響はありません」。九電は、大きな地震が起きるたびにこのような発表を繰り返し、2基を停止する考えがないことを示す。原子力規制委員会の田中俊一委員長も4月18日の会見で「今は安全上の問題はない」と強調。理由として、近くの活断層がマグニチュード(M)8.1の地震を起こしても、安全が保たれることを確かめてある、と説明した。しかし地震後、川内原発は国際原子力機関(IAEA)が定める安全基準を満たせない状況になっている。基準では第5の防護層として、緊急時の避難計画を求めている。ところが、川内であてにされている高速道路や九州新幹線は、地震で不通区間が残る。熊本県にも避難者を受け入れてもらう予定だが、そもそも川内原発から熊本県境までは40キロ弱しか離れていない。福島原発事故で、約50キロ離れた地点まで居住制限区域レベルに汚染されたことを考えると、熊本県民も迅速に避難する必要が出てくる。何より、今それどころでないのも明らかだ。国際基準に照らせば、少なくとも周辺地域が平常状態に戻るまで、原発を動かしてはいけないのだ。一方、震源域の北東の先には、四国電力伊方原発(愛媛県)がある。実は四電は、伊方への立地を決めた40年以上前、中央構造線は1万年前以降は地震を起こしていないと軽視。1、2号機とも300ガル(地下の基盤面での数値、以下同)の想定で設計している。ところが1990年代に入って、岡村眞・高知大学特任教授らの調査で、敷地前面の中央構造線断層帯が、1万年前以降もたびたび大地震を起こしていることがわかった。住民が伊方原発2号機の設置許可取り消しを求めた訴訟の判決(2000年)でも、松山地裁は住民の訴えを棄却したものの、中央構造線について国の安全審査が「結果的に誤りであったことは否定できない」と指摘した。四電はその後、研究の進展にあわせて何度も揺れの想定を見直し、福島原発事故後は650ガルになっている。しかし岡村特任教授は「古い原発でも使える範囲でしか、想定を変えていない。最近のデータに照らせばまだ過小評価。中央構造線が動けばこんなものでは済まない」と話す。四電は3月、1号機を廃炉にすると発表した。福島原発事故後に策定された新規制基準に適合するように補強するには費用がかかりすぎるからだ。一方、同じレベルで設計した2号機と、3号機(473ガルで設計)は使い続ける。規制委は4月19日、3号機の再稼働の前提となる審査を全て終えたと発表した。四電は今年7月下旬の再稼働を目指している。何事もなかったかのように、着々と進む原発再稼働。本当に大丈夫なのか。(

*7-2:http://www.chunichi.co.jp/article/mie/20160426/CK2016042602000103.html (中日新聞三重 2016年4月26日) 川内原発の即時停止を 熊本地震受け県保険医協会が声明
 多くの被害をもたらし、大勢の避難者が出ている熊本地震を受け、県内の開業医、勤務医ら約二千人でつくる県保険医協会(渡部泰和会長)は二十五日、新規制基準の審査に適合とされた原発として、全国で唯一稼働中の九州電力川内原発(鹿児島県薩摩川内市)の即時停止を求める会長名の声明を首相や地元選出国会議員、県議らに送ったと発表した。声明は、地震の強い振動が原発にどんな損傷をもたらし、その蓄積がどのような影響を及ぼすかが未調査だとした上で、原発直下に最大震度の地震が発生する可能性を指摘。避難計画が不十分で、免震棟もないまま再稼働したことにも触れ、福島第一原発事故の経験を踏まえて「異常があってからでは遅い」と指弾した。

*7-3:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/305156
(佐賀新聞 2016年4月26日) 市民団体、規制委に川内原発の停止要請、「住民不安」
 佐賀県内外の反原発市民団体は25日、熊本地震で住民の不安が高まっているとして、九州電力川内原発1、2号機(鹿児島県)を直ちに停止させるよう、国会の参議院会館で原子力規制委員会に要請した。「玄海原発プルサーマルと全基を止める裁判の会」らが原子力規制庁の担当者に要請書を手渡した。川内や玄海原発について全ての配管や建屋を点検、結果を公表することに加え、国主導での避難計画策定も求めた。裁判の会の石丸初美代表は「今回の地震で屋内退避を想定した避難計画が不可能なことだと分かった。被災者は余震が怖くて外で過ごしている」と訴えた。規制庁との意見交換では「今回のような繰り返し襲う地震を想定した耐震安全基準になっているのか」という質問が出た。担当者は、重要な機器に関しては何度揺れても変異せず元に戻る「弾性設計」の範囲内に収まるよう基準を設けていることを説明した。

*7-4:http://qbiz.jp/article/85614/1/
(西日本新聞 2016年4月26日) 脱原発へ「肥薩ネット」 地震対応、懸念相次ぐ 
 全国で唯一稼働中の九州電力川内原発(鹿児島県薩摩川内市)から30〜40キロ圏にある鹿児島、熊本両県の脱原発市民団体などが連携する「川内原発を考える肥薩ネットワーク」の設立総会が24日、鹿児島県出水市で開かれた。熊本地震で断層帯の危険性があらためて注目されたこともあり、川内原発への影響を懸念する意見が相次いだ。鹿児島市の反原発市民団体の向原祥隆代表が記念講演。川内原発で地震による重大事故が起きた際の避難計画について「熊本地震の被害で屋内退避はできないとはっきりした」と実効性に疑問を呈した。さらに同原発付近では危険性がないとされる活断層についても「原発付近まで延びる可能性を専門家が指摘している」と話した。出水市の市民団体代表は「地震の終息や発生は予測できない。命を守るには原発を止めることだ」と訴えた。「肥薩ネット」に参加するのは熊本県水俣市と、鹿児島の出水、阿久根、伊佐各市の市民団体や市議ら。今後も情報を共有し、現在の避難計画の見直しなどで連携を図るという。


PS(2016年4月26日追加):このように、2016年4月14日、16日に中央構造線上で激しい地震が起こり、その後920回以上の余震が続いている中で、*9のように、伊方原発3号機の審査が終了し、原子力規制委員会は保安規定を認可したそうだが、それでは審査の意味がないだろう。

*9:http://digital.asahi.com/articles/ASJ4M4RC4J4MULBJ00V.html
(朝日新聞 2016年4月19日) 伊方原発3号機、審査終了 規制委、保安規定を認可
 四電は19日、「今後も検査に丁寧に対応し、再稼働に向けたステップを安全最優先で確実に進めます」とのコメントを発表した。規制委は、設備が計画通りに設置されているかや、正常に動くかといった検査を今月から現地で始めている。検査は再稼働まで続く。伊方原発は、使用済み燃料から取り出したプルトニウムをウランに混ぜた燃料(MOX燃料)を使うプルサーマル発電を計画。四電は2013年7月に審査を申請した。規制委は昨夏、安全対策の基本方針が新規制基準を満たすと認める審査書を決定。設備の詳細設計を記した「工事計画」も今年3月に認可した。すべての許認可を受けたのは、九州電力川内原発1、2号機(鹿児島県)と関西電力高浜原発3、4号機(福井県)に続き3例目となる。愛媛県や伊方町は、昨年10月に再稼働に同意した。伊方原発は瀬戸内海に面する佐田岬半島の付け根にあり、半島に住む住民は重大事故時に対岸の大分県などに避難する計画だ。


PS(2016年4月27日追加):「フクイチ事故で被害者は出なかった」と今でも主張し、原発事故の被害はなかったことにしようとしている人がいるが、それは、現実から逃避した放射能安全神話にすぎない。また、私も、「チェルノブイリ事故は旧ソ連だから起きたので、日本では起こらない」と日本の原発関係者や経産省の担当者から何度も聞かされたが、これこそ日本人が陥りやすい根拠なきプライドであり、傲慢なのだ。そして、(このブログに何度も記載したため、長くは書かないが)*11からもわかるように、国民負担から見て最も高くつくのが原発なのである。

*11:http://www.tokyo-np.co.jp/article/world/list/201604/CK2016042602000130.html (東京新聞 2016年4月26日) 「科学技術進んでも原発事故は起き得る」 ベラルーシのノーベル賞作家が警告
 旧ソ連ウクライナ共和国で起きたチェルノブイリ原発事故から二十六日で三十年。最大の被害を受けた隣国ベラルーシ共和国の作家で、昨年ノーベル文学賞を受賞したスベトラーナ・アレクシエービッチさん(67)=写真、共同=が共同通信のインタビューに応じ、「科学技術が進んでも原発事故はまた起こり得る」と、福島第一原発事故を念頭に警告した。チェルノブイリ事故で被害に遭った人々の証言を集めたノンフィクション作品などで知られるアレクシエービッチさんは、ベラルーシの首都ミンスクの自宅で「原発事故とは何か。三十年たってもその本質を理解している人はいない。私たちは今もこの問題の蚊帳の外にいる」と述べた。ベラルーシは事故で放出された放射性物質の約六割が降下したとされ、約二十万平方キロの国土の13%が今も汚染されている。汚染地域には人口の一割超の約百十万人が住んでいる。「政権はチェルノブイリという言葉を使うのを事実上禁止している。事故を克服するのではなく、風化させて無かったことにしようとしている」。一方で「私の本は、国内で出版できないが、ロシアから持ち込まれ少しずつでも読まれている。この流れは止めることはできない」とも。同じ原子力災害の第一原発事故に思いをはせる時、忘れられない言葉が頭をよぎる。二〇〇三年に講演で日本を訪れた時のことだ。日本の原発関係者から「チェルノブイリ事故は旧ソ連の人が怠惰だったから起きた。技術大国の日本ではあり得ない」と言われた。その八年後に第一原発事故が起きた。「二つの事故で分かったのは科学技術が進んでいても、真摯(しんし)な態度で管理していても原発事故は起こり得るということ。むしろ技術が進むほど、大きな事故につながるのではないか。人間が自然に勝つことはできないのだから」。原発事故の被災国であるベラルーシでは今、初めての原発建設が進んでいる。建設中の二基のうち1号機は一八年に完成、稼働する計画だ。国民は反対しないのか、と尋ねると「反原発運動も環境保護運動も禁止されていて、大統領の独断に国民は反対できない。それに、経済的に困窮した国民は原発問題よりも、明日の仕事のことを心配している」との答えが返ってきた。第一原発事故に強い関心を持ち、年内にも福島を訪れたい、という。「三十年たっても、私たちが原発事故について理解しているのは、薬や治療が必要だということだけ。原発事故を哲学的に、人類学的に考え、理解することこそ必要。フクシマで何が起きているのか、日本の人々がどう考えているのかを聞きたい」と話した。
<スベトラーナ・アレクシエービッチさん> 1948年5月、旧ソ連ウクライナ共和国生まれ。父はベラルーシ人、母はウクライナ人。ジャーナリスト、作家として活動し、多数の市民から聞き取った話を一人称の独白形式で表現する手法が特徴。邦訳された「チェルノブイリの祈り」は86年のチェルノブイリ原発事故の処理に当たった人や地元住民らの証言を記録。2015年、ノーベル文学賞受賞。


PS(2016年4月28日追加):断層地震により、これだけの心配と迷惑をかけても川内原発を停止させないのは、国民のためでも産業のためでも国のためでもなく、九電の利益のためだということが、*14-1で、さらに明確になった。九州が最小のコストで素早く効果的に復興できるか否かは、原発事故のあるなしで大きく左右されるのにである。しかし、*14-2の、田代九経調常務理事が「地震がないことが魅力的な企業進出先や観光地としての強みを支えていただけに、九州は危ないというイメージを持たれ続けると九州経済全体にとって長期的な打撃になると懸念している」と言っていることについては、企業の進出先として最もリスクが高いのは原発事故であるし、この地震によって阿蘇山を含む中央構造線の存在が有名になり、真実は隠しても限界があるため、隠すよりも日本列島の成り立ちまで考察しながら日本の自然を見る観光に活用する方が賢明だと考える。

*14-1:http://qbiz.jp/article/85868/1/
(西日本新聞 2016年4月28日) 九電が4年ぶり復配 1株5円、川内原発再稼働が寄与
 九州電力が4年ぶりに株主配当を復活する方針を固めたことが27日分かった。配当額は1株5円で最終調整している。28日の取締役会で正式決定する。川内原発(鹿児島県薩摩川内市)の再稼働による収支改善などで、2016年3月期連結決算が5年ぶりの最終黒字になることなどを踏まえて判断した。九電は管内の全原発停止により燃料費がかさみ、15年3月期まで4年連続の最終赤字を計上。株主配当は12年3月期を最後に途絶えていた。原油安による燃料費の低減に加え、昨年の川内原発再稼働で収支が改善。福岡高裁宮崎支部が今月、川内原発の運転差し止めを求める仮処分申請を棄却したことで当面の収支悪化リスクを回避できる見込みとなったこともあり、復配に踏み切る。

*14-2:http://qbiz.jp/article/85874/1/ (西日本新聞 2016年4月28日) 地震のイメージ払拭を 田代雅彦・九経調常務理事に聞く 西日本景気トレンド
 熊本地震発生から約2週間。九州新幹線の全線再開など復旧の動きが本格化しているが、九州経済への影響は広範囲に及び、被害の規模も計り知れない。九州経済調査協会(福岡市)の田代雅彦・常務理事調査研究部長に現状と今後の見通しを聞いた。今回の地震は、ものづくりと観光、1次産業という九州の強みが集積する熊本と大分で起きてしまった。「地震がない」ことが、魅力的な企業進出先や観光地としての強みを支えていただけに、「九州は危ない」というイメージを持たれ続けると、九州経済全体にとって長期的な打撃になると懸念している。その意味では、九州新幹線の全線再開や高速道路の再開など、インフラが予想以上に早期に復旧している姿を示せていることは大きい。国内外に影響を与えている自動車や半導体大手の関連工場も復旧しつつあるようだ。東日本大震災のときほど影響は長期化しないのではないか。むしろ、人材と資金が不足しがちな中小企業や零細企業の被害と復旧の度合いが心配。早めの実態把握が必要だ。観光分野では国内外の宿泊キャンセルが相次いでおり、復旧が進んだ後も風評と闘う状況になるだろう。九州の官民が一体となって正確な情報を発信し続けることが欠かせない。忘れてはならないのは、被災された方々への生活支援の強化。当協会は昨年末、九州経済の2016年度実質成長率をプラス1・8%と予想した。地震による下押しリスクは当然あるが、復旧に伴う公共工事や設備投資など数字上はプラスに働く面もある。数字には表れない被災者の生活支援や防災計画の見直しなど「災害に強い九州」に官民で取り組み、対外発信することが、マイナスイメージの払拭(ふっしょく)にもつながると考える。


PS(2016年4月28日追加):*15のとおり、ルールさえ作ってそれを守ればよいのでないことは明らかで、そのルールの内容(適切性)が最も重要である。何故なら、「放射性セシウム濃度が1kg当たり8千ベクレル以下なら指定を解除して一般ごみと同様に処分を認める」というのは、分量が多ければ濃度が低くても有害物質の総量が非常に大きくなるからだ。従って、この基準は、原発事故処理を早く終えたいためだけの住民を置き去りにした棄民政策であり、どこに処分するか、どこで焼却するか(放射性物質は焼却しても残り、焼却時に周囲の広い範囲に拡散する)は、明確に開示すべきである。

*15:http://www.saga-s.co.jp/news/national/10201/306101
(佐賀新聞 2016年4月28日) 指定廃棄物で新ルール、環境省、濃度下回れば一般ごみに
 環境省は28日、東京電力福島第1原発事故で発生した指定廃棄物に関し、放射性セシウム濃度が1キログラム当たり8千ベクレル超の基準を下回った場合は指定を解除し、一般ごみと同様の処分を認める新ルールを正式決定した。解除は国と自治体が協議して決める。解除後の処分費用は指定廃棄物と同様、国が負担する。放射性物質汚染対処特別措置法の省令を改正し、同日付で施行した。


PS(2016年4月29日追加):*16のように、原子力規制委は、「現状はすべて想定内で、我々が納得できる稼働を止めるべき科学的根拠はなく、川内原発で想定外の事故が起きるとは判断していない」とのことだが、原発の安全性は自動車のように実験して計ったものではなく、コンピューターでシミュレーションしたものにすぎない。そのため、シミュレーション時に想定していなかった事象は考慮されておらず、どこが破損するかわからないため、「安全だ」と言う科学的根拠こそないのである。

*16:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12334057.html (朝日新聞 2016年4月29日) (時時刻刻)地震、原発止めず大丈夫? 川内停止要望、約5000件
 熊本県などでの地震が続くなか、九州電力川内原発(鹿児島県)は「安全性に問題ない」と運転を続けている。気象庁は今後も強い揺れに警戒するよう呼びかけているが、原子力規制委員会は運転に「お墨付き」を与える。活断層が動くことによる地震はわからないことが多い。想定外の事態が起きた時、原発は大丈夫なのか。川内原発は全国で唯一、稼働中の原発で、熊本地震を経ても変わらない。九州電力の瓜生道明社長は5年ぶりの黒字決算を発表した28日の会見でこう語った。「原子力は国の基本計画でも必要なエネルギー。安全を確認し、問題ないと判断して運転している」。16日未明のマグニチュード(M)7・3の本震時、川内原発で観測した揺れは最大で8・6ガル(ガルは揺れの勢いを示す加速度の単位)。緊急停止させる設定値(160ガル)を下回った。それでも「想定外」に備え停止を求める声が広がった。九電には15日からの1週間に、停止の要望がメールや電話などで約5千件寄せられた。九電の予想では今夏に2013年並みの猛暑になっても、電力需要に対する供給の余力(予備率)は14・1%。川内原発の供給力を単純に引くと、最低必要とされる3%を下回るが、昨年の計画並みに他社から融通を受ければ、余力は計算上6%を超える。九電幹部も「川内が動かなくても、安定供給は当面は維持できる」と明かす。ではなぜ原発にこだわるのか。当面の発電コストが火力などより安く、経営面でうまみが大きいからだ。九電は東日本大震災前の原発依存度が全国でもトップレベルで、発電量の4割近くをまかなってきた。原発の停止で経営は悪化したが、「切り札」(幹部)の川内原発が再稼働し、月100億~130億円ほど収支が改善した。九電の瓜生社長は会見で、次は「玄海原発の早期再稼働を目指したい」と語った。
■規制委「想定外、起きない」
 「我々が納得できる科学的な根拠はない。止めるべきだとの声があるから、政治家に言われたからと言って止めるつもりはない。現状はすべて想定内。今の川内原発で想定外の事故が起きるとは判断していない」。熊本県などで一連の地震が続くなか、原子力規制委員会の田中俊一委員長は18日、川内1、2号機などの状況報告を受けた臨時委員会の後でそう語った。東京電力福島第一原発事故の教訓を受け、新規制基準では地震対策が強化された。原子炉建屋などの直下に活断層があると再稼働できず、北陸電力志賀1号機(石川県)や日本原子力発電敦賀2号機(福井県)は廃炉を迫られている。今回地震を起こした布田川(ふたがわ)・日奈久(ひなぐ)断層帯の活動も、川内原発の審査で、阿蘇から八代海の海底まで全長約90キロが連動してM8・1の地震が起こるケースを想定。川内原発の揺れを約150ガルと試算していた。原発の揺れは原子炉建屋地下の固い地盤でみる。地表では増幅され、揺れが大きくなることが多い。審査では未知の活断層なども想定。地表で最大1127ガルを記録したM6・1のモデル地震が川内原発の直下で起きたと仮定して、原発の揺れは最大620ガルと算出された。この値が、川内で耐震設計のもととなる最大の揺れ(基準地震動)になっている。仮に基準地震動を上回る揺れで設備が壊れても、消防車や電源車などを使って原子炉を冷やす過酷事故対策で放射性物質の放出を食い止める、というのが規制委の論理だ。ただ、今回は震度7が約28時間の間隔で連続するという専門家の想定を超える事態だった。熊本県益城町では復旧作業にあたっていた電源車が転倒し、道路や鉄道は広域で寸断され、余震を恐れて屋外や車で寝泊まりする人が相次いだ。過酷事故対策の作業中に激震の追い打ちを受けたらどうなるのか。5~30キロ圏の住民に指示される屋内退避は成り立つのか。27日の会見で問われた田中委員長は言い切った。「川内原発に活断層はない。耐震設計もしており、そういう心配はしなくていい」「丈夫な建物や遠くに避難することになると思う。5~30キロ圏の建物が全部だめになることは考える必要もない」
■事故恐れ止めた例も
 危険な状態がおさまるまで、原発を一時的に止めることはできないのか。前例はある。東日本大震災直後の2011年5月6日、当時の菅直人首相は中部電力に、浜岡原発(静岡県)の停止を要請した。巨大地震の想定震源域の真上にあり、被災して福島のような大事故が起きれば、東海道新幹線や東名高速などが断たれ、日本が壊滅的な打撃を受ける心配があったからだ。中部電内には「法的権限に基づかない要請に従う必要は無い」との反対論もあったが、政権トップの「政治決断」は受け入れるしかなかった。自民党政権だった1979年には、米スリーマイル島原発の事故を受け、当時の日本の規制当局である原子力安全委員会が、同タイプの関西電力大飯原発1号機(福井県)について、事故の原因となった装置に問題がないと確認できるまで停止するよう求めた。これを受け、当時の通商産業省(現経済産業省)は一時停止を求め、関電は約2カ月間の停止に応じた。米国でも、巨大ハリケーンなどが予測された際、緊急事態を想定して原発を停止した例がある。19日の衆院環境委員会。菅氏は浜岡の例を挙げて「予防的な観点から、しばらくは(川内原発を)停止するといったことを安倍総理に進言したらどうか」と規制委を所管する丸川珠代環境相に求めた。だが、丸川氏は「規制委の判断を尊重する」と答弁し、政府が責任を負うことに慎重な構えを崩さなかった。事故の教訓を踏まえて改正された原子炉等規制法では、「災害発生の急迫した危険」があれば規制委に停止を命じる権限はある。ただ、どんな想定が「急迫した危険」にあたるかは具体的に決まっていない。


PS(2016年4月30日追加):*18のように、4月29日に大分県由布市北部が震度5強の「最大余震」に見舞われた。これまでは日奈久断層帯、布田川断層帯が中心だったが、今回は別府−万年山断層帯が震源で、この断層帯は大分県東部の鶴見岳や別府湾の海底にも連なり「地下深くでつながっている」と指摘する専門家もおり、「本格的に動けば、M7級の地震を引き起こす恐れもある」とのことである。そのため、伊方原発と川内原発がリスクの高い危険な状態になっていることは間違いない。

    
  2016.4.30        中央構造線と       2016.4.16     2016.4.19
  西日本新聞         原発の位置        西日本新聞     西日本新聞

*18:http://qbiz.jp/article/86034/1/
(西日本新聞 2016年4月30日) 2016熊本地震、「本格活動でM7も」と識者 断層帯、連鎖やまず
 「最大余震」に大分県が見舞われた。29日に由布市北部を震源として発生した震度5強の地震。これまで熊本地震の余震は、熊本県内の日奈久断層帯や布田川(ふたがわ)断層帯が中心だったが、今回は大分県中部地方を走る別府−万年山(はねやま)断層帯が震源とみられ、熊本地震の影響が広範囲に及んでいることをあらためて示した。複数の断層帯がひしめく九州。専門家は「連鎖はしばらく続く」との見方を強めている。気象庁によると、熊本地震で千回を超える余震(震度1以上)の震源は、これまで熊本地方と阿蘇地方が中心で、大分県中部地方は比較的少なく、規模も小さかった。ただ、このエリアには阿蘇地方と隣接する別府−万年山断層帯があり、16日の本震後、大分県中部地方を震源とする震度3以上の余震が36回観測されている。今回の地震についても、九州大地震火山観測研究センターの清水洋センター長(地震火山学)は「熊本地震の前震や本震から誘発されて起きた」と指摘する。別府−万年山断層帯の特徴は、多くの断層がひしめき合っている点。一つ一つの断層は短いが、福岡管区気象台の石原和彦地震情報官は「今回は震源の深さが7キロと非常に浅い地震だったため、大きな揺れとなった」とみている。一方、同断層帯は大分県東部の鶴見岳や別府湾の海底にも連なり「地下深くでつながっている」と指摘する専門家もいる。今回の地震の規模はマグニチュード(M)4・5だったが、清水センター長は「本格的に動けば、M7級の地震を引き起こす恐れもある」として警戒を呼び掛けている。


PS(2016年5月2日追加):*20にも書いてある通り、原発はシミュレーションしかしないため、シミュレーション時に予想しなかった要素は考慮していない。それでもまだ、①地震が原発にどう影響するかを研究すれば原発は安全になり ②原油開発の投資を拡大し ③再生可能エネルギーや水素などのクリーンエネルギーは経済と環境の両立という位置づけでしかない としていることに呆れた。何故なら、環境保全、エネルギー安全保障、エネルギー自給率の向上はいつでも不可欠の要素であり、①②は環境保持にもエネルギー自給率にもエネルギー安全保障にも適合しないため税金の無駄遣いにすぎず、③のみが無駄のない将来性のある投資だからである。

*20:http://qbiz.jp/article/86063/1/
(西日本新聞 2016年5月2日) G7エネ相会合開幕 日米、原発地震対策研究へ 北九州市
 先進7カ国(G7)エネルギー相会合が1日、北九州市で開幕した。世界経済の成長に不可欠なエネルギーの安定供給に向けた対応策を議論し、2日に共同声明「北九州宣言」を取りまとめる。全体会合に先だって行われた個別会談では、日米が原発の地震対策で共同研究を進めることで合意した。会合には、議長を務める林幹雄経済産業相をはじめ、日米欧の担当閣僚や副大臣らが出席。1日夜に始まった全体会合では、エネルギーを安定的に確保するための協調策について意見交換し、原油価格の下落で減少している原油や天然ガスなどの資源開発について、投資を維持拡大していく必要性を確認した。また経済と環境の両立に向けて、再生可能エネルギーや水素などクリーンエネルギーの技術開発の重要性についても議論を深めた。林氏は全体会合の前に、米国のアーネスト・モニーツエネルギー長官やカナダのジェームズ・カー天然資源相など各国の代表ら5人と個別に会談。米国とは、地震が原発にどう影響するかのシミュレーションの研究開発で、日米の専門家が協力することを確認した。個別の会談では各国の代表らから熊本地震についての発言も相次ぎ、モニーツ氏は「米国から物資などの支援ができうれしく思う。できることがあればいつでも対応する用意がある」と述べた。


PS(2016年5月3日追加):フクイチ事故前後から現在まで、何かと安全神話を作って自己満足に浸っているのは日本であり、それは現在も改善されていないため、*23-1のように、日本が原発の安全対策を主導することなどはできないと、私は判断している。また、ドイツとイタリアが速やかに脱原発を決めたのは賢明な選択だったと思う。なお、*23-2のように、大学教員・弁護士・学術研究者などでつくる日本科学者会議滋賀支部も、5月2日、九電川内原発の即時運転停止と四電伊方原発の再稼働中止を求める声明を出し、原子力規制委員会や電力会社などに送付するそうだ。

*23-1:http://qbiz.jp/article/86103/1/
(西日本新聞 2016年5月3日) 原発の安全対策、日本が主導 新興国の増設意識
 G7エネルギー相会合声明では、原発に関する記載に「過去にない分量」(資源エネルギー庁関係者)が割かれた。福島第1原発事故後、新興国で新増設の動きが再び強まっていることを受け、国際的な原発の安全確保の必要性について文言に盛り込むことを日本が主導した形だ。G7では福島の事故後、ドイツとイタリアが脱原発を決め、維持・推進を続ける他国との違いが表面化。2014、15年のエネルギー相会合声明では、原発を基幹電源の選択肢として1行触れているにとどまる。これに対し、今回は会合終盤まで文言の調整を続け、4項目計25行を使って「いかなる国においても安全について自己満足に浸る根拠はない」などと明記し、情報公開と安全対策の徹底を求めることで一致した。中国やインド、中東各国などが原発新増設にかじを切る中、日本としても高い安全基準の導入をアピールし、原発技術の輸出につなげる狙いもありそうだ。

*23-2:http://www.kyoto-np.co.jp/environment/article/20160503000018 (京都新聞2016年5月3日) 熊本地震受け「川内原発停止を」 科学者会議滋賀支部が声明印刷用画面を開く
 大学教員や弁護士、学術研究者らでつくる日本科学者会議滋賀支部は2日、熊本地震発生後も稼働を続ける九州電力川内原発(鹿児島県)の即時運転停止と、震源となった断層帯の延長線上にある四国電力伊方原発(愛媛県)の再稼働中止を求める声明を出した。国の原子力規制委員会や両電力会社などに送付する。声明では、川内原発は熊本地震の震源域となった日奈久断層帯の南方にあり、同断層帯が活発化すれば原発への影響は無視できないと指摘。地震で新幹線や高速道路などが寸断され、「避難計画が非現実的であることも立証された」と強調した。伊方原発は今回の地震で連鎖的に動いた可能性がある別府-万年山断層帯の東にあり、四国電が7月下旬に計画する3号機の再稼働も中止すべきとした。


PS(2016年5月6日追加):太陽光発電住宅なら、そもそも停電はしない。また、日本は自然エネルギーやLNGの豊富な国である。それにもかかわらず、まだ、①原発を止めれば電気料金が高くなる ②日本は資源に乏しい国で、原発に依存するしかない ③原発を止めれば昔のように電気のない生活をしなければならない ④どうすればフクシマの教訓が生かされるのか5年たっても答えは見えない などというとぼけたことを、西日本新聞のエネルギー・金融を担当して経済部にいる記者が言っているわけだ。この記者は、確かに計算に弱くて原価計算はできず、科学や経済学にも弱すぎて、これでは西日本新聞の記者のレベルと報道の姿勢が問われるわけである。

*25:http://qbiz.jp/article/86081/1/ (西日本新聞 2016年5月6日) 南阿蘇で考えた停電と原発 *川崎弘(西日本新聞社経済部所属。エネルギー担当を経て現在は金融担当。社内で「経済部にいるけど、足し算できるの?」と質問されることが多く、原因を鋭意分析中。佐賀市出身。)
 日ごとに増える夜の明かりに、多くの村民が希望を託していたように感じられた。熊本地震の本震が起きた4月16日。夜明け前に福岡市をレンタカーで出発。下道で7時間かけて、熊本県南阿蘇村に入った。役場は大混乱で、行方不明者の情報や搬送を待つ透析患者の名字、宿泊客が孤立したホテルの名称などが生々しく飛び交っていた。村内全域は停電。家族や知人の安否を確認するうちに電池が切れたのだろう。役場のロビーには、数十人の住民が集まり、非常用発電機から携帯電話に充電をしていた。待ち時間の間は情報交換の場になっていて、平成版井戸端会議のようだった。日が暮れると、村は闇に包まれた。家の被害は軽微で済んだという住民も「余震が怖いから」と避難所に戻ってきた。言葉の裏には、電気が来ない自宅で夜を迎える心細さがにじんでいた。九州電力の復旧工事は深夜まで続いていた。現認した限り、村に電気が戻ったのは18日。19日になると、信号や街頭にも明かりが戻り、夜の住宅街に光の点線ができた。「電気が戻れば、夜も避難所に行かずに済む」という村民もいて、小さな明かりが被災者に安心感や勇気を与えることが見て取れた。
  ◇   ◇
 さて、少し理屈っぽくなるが、今回の復旧を通じて考えなくてはいけないのは、その電気の一部が国内の原発で唯一稼働している川内原発(鹿児島県薩摩川内市)からもたらされていることだ。もちろん、電気に色はついていないので、火力や太陽光などの発電方法ごとに分けることはできないが、九州全体の電力需給でみれば、被災地にも原発の電気が供給されていることになる。熊本地震の震源域と近いことから「川内原発を止めるべき」という意見もあったが、南阿蘇村にいると「とにかく早く電気がほしい」というのが多くの住民の本音だと思った。仮に川内原発を止めても、当面の電力需給はどうにかなるかもしれない。しかし、電気料金が高くなる可能性はある。4月に始まった電力の小売り自由化が浸透すれば、状況が変わるかもしれないが、今の段階での影響は限定的だと思う。東日本大震災から5年。災害と原発の関係は、今後も日本全体を覆う大きな問題であり続ける。原発をなくすのが理想だが、資源に乏しい国で空気のように電気を使える生活を維持するには、原発に依存するしかないのが現実だと思う。逆に言えば、停電を許容するタフさがあれば、原発をなくせる気がする。昔は電気がない生活が当たり前だったことを考えれば、不可能ではないはずだ。ただ、停電の村に身を置いてみて、悲しいかな、それがいかに困難かを思い知らされた。どうすればフクシマの教訓が生かされるのだろう。5年たっても答えは見えない。


<復旧・サポート情報の追加>
PS(2016年4月24日追加):*5のように、感染症を防ぐ予防として、「消毒液」や「アルコール製剤による手洗い」などと報道するメディアが多いが、消毒液やアルコールで拭くことを「手洗い」とは言わない。清潔は、石鹸をつけて流水で洗い流すのが重要で、消毒液やアルコールをつけて手洗いが終わったと考えるのは不衛生この上ないため、こんなこともわかっていないメディアの誤った(無知にも程がある)報道が多いのには呆れている。また、栄養状態が悪いと抵抗力(免疫力)が落ちるため、白米の握り飯やカップラーメンのようなものだけを食べていてはならず、これらは精神的な問題ではなく実質的・基本的な問題なので、農業をやっていて手が離せないなどの特別の理由がない人は、問題を解決するため被害の少なかった周囲の自治体に速やかに避難すべきである。

*5:http://mainichi.jp/articles/20160424/k00/00m/040/041000c
(毎日新聞 2016年4月23日) 避難所、感染症警戒 南阿蘇村ノロウイルス検出
 熊本地震被災者の避難所になっている熊本県南阿蘇村立南阿蘇中学校で、避難者の男女25人が下痢や吐き気などの症状を訴え、一部の人からノロウイルスが検出されたことが23日、分かった。ノロウイルスの感染は他の避難所でも確認されているほか、インフルエンザ患者も出ている。衛生状態の悪化で感染症流行の恐れが高まっており、県は「手洗いを徹底してほしい」と注意を呼びかけている。日本医師会から南阿蘇村に派遣された松本久医師によると、断水で水が出ないため、避難者らはトイレで、くみ置きの水を使って手を洗ったりしていた。この水を介して感染が広がった可能性があるという。村はトイレを消毒した。熊本県などによると、避難所のノロウイルスの感染者は南阿蘇村のほか、菊池・阿蘇・御船の三つの保健所管内の4避難所で8人、熊本市の7避難所で7人が確認されている。いずれもトイレが感染源になっている可能性が高いという。自治体の管理が行き届かず、避難所のトイレの清掃が十分でなかったり、トイレと避難スペースを土足で行き来したりするケースもある。一方、インフルエンザ患者は菊池、御船、宇城の三つの保健所管内の4避難所と、熊本市の6避難所で計16人の患者が確認されている。蒲島郁夫知事は記者団に「市町村と一緒に予防と対応、治療に取り組む」と述べた。避難所で感染症が流行しかねない状況に、南阿蘇村の避難者から不安の声が漏れた。同村河陽の古沢五年生(いねお)さん(74)は「疲れもたまり、ここで病気になってしまうと長引かないか心配だ」。同村長野の渡辺茂子さん(72)は「避難所は人が多く、すぐに感染してしまわないか不安。しっかり予防して、自分の身は自分で守りたい」と話した。14日の地震発生から9日を過ぎても熊本県内では6万7000人以上が避難生活を余儀なくされている。
●感染症を防ぐ主な予防や対策
◆ノロウイルス
・消毒液で扉の取っ手や水道の蛇口、トイレの便座、ふた、吐しゃ物で汚れたところを消毒
・消毒液がなければ水500ミリリットルに対しペットボトルのキャップ2杯分の家庭用塩素系漂白剤を混ぜて作る
・吐しゃ物、汚物はマスクや手袋を着用してペーパータオルなどで拭き取りビニール袋に入れ、封をして廃棄
◆インフルエンザ
・アルコール製剤による手洗い
・せきやくしゃみが出るときはマスクを着用
・十分な休養とバランスの取れた栄養摂取
※厚生労働省などの資料を基に作成


PS(2016/4/25追加):*6のように、JA女性部のおかげで、益城町の避難所は、栄養のある美味しい食事で一息つけてよかったですね。 カレー

*6:http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=37172
(日本農業新聞 2016/4/25) JA熊本県女性協が炊き出し 被災者に温か豚汁
 「平成28年熊本地震」の避難者を支援しようと22~24日、JA熊本県女性組織協議会が益城町で計3000食のおにぎりや豚汁、カレーライスの炊き出しを実施した。余震が続く中、「温かい食べ物を届けたい」と、女性部員40人が結集。今後は各JA女性部に呼び掛け、小規模な避難所への炊き出しなども計画する。豚汁に使う材料はJA菊池の直売所「きくちのまんま」で調達、みそもJA菊池女性部が仕込んだ手作りだ。JA熊本市がミニトマト、JAあまくさ女性部が手作りのタケノコの酢漬け、高菜の油炒めも持ち込んだ。作業にはJA熊本中央会や連合会の職員が加わった。おにぎりに使う米は、農機具メーカーのサタケ(広島県東広島市)が2トンを提供。緊急用として140キロの米を一度に炊ける炊飯器も持参した。22日は約350人が避難する益城中央小学校で約400食を配った。熊本女性協会長の寺本眞理子さんは「テレビや新聞を見るたび、つらかった。なんとかしてあげたい思った」と目を潤ませた。「多くの女性部員が余震の続く中でも、手を挙げて集まってくれた。これから長い戦いになるが、支援を続けていきたい」と力を込めた。


PS(2016年4月26日追加):*8-1、*8-2のように、九州新幹線や自動車道は、殆ど月内に開通する。それにもかかわらず、*8-3に仮設住宅を建設すると書かれているが、100%近くの人が自家用車を持ち、新幹線も通じているのに、*8-4のような近隣地域のホテルやアパートの空室を使わず、断熱効果が低くて居住性の悪いプレハブの仮設住宅を2900戸も建てるのは、選挙目当ての無駄遣いのように見える。土地から離れられないのは農林業関係者だけであるため、一般市民は、現在あるホテルやアパートの空室を優先して利用することを考えた方がよいと思う。

*8-1:http://qbiz.jp/article/85635/1/
(西日本新聞 2016年4月26日) 九州新幹線全通 4月27日夕に前倒し
 熊本地震の影響を受けて運休が続いている九州新幹線の熊本−新水俣について、JR九州が27日夕にも営業運転を再開させる方針であることが分かった。25日、同社関係者が明らかにした。再開はこれまで28日を目指していたが、復旧作業が順調に進んだため、1日前倒しが可能になったという。27日午後に試験運転を実施し、問題がなければ営業運転に踏み切る。ただ、今後の作業の進捗次第では遅れる可能性もある。

*8-2:http://qbiz.jp/article/85666/1/
(西日本新聞 2016年4月26日) 嘉島−八代、26日中に復旧へ 九州道
 石井啓一国土交通相は26日の閣議後会見で、熊本地震の影響で通行止めが続く九州自動車道の嘉島ジャンクション(JCT)―八代インターチェンジ(IC)、九州中央道の嘉島JCT―小池高山ICが同日中に復旧、一般車も含め走行可能になると明らかにした。復旧は午後の見通し。残る通行止め区間のうち、九州道の植木IC―嘉島JCTは月内に復旧の見通しだが、大分道の湯布院IC―日出JCTはめどが立っていない。

*8-3:http://digital.asahi.com/articles/ASJ4Q5TGXJ4QUTIL04D.html (朝日新聞 2016年4月22日) 熊本県、仮設住宅建設へ 被災者に公営住宅貸し出しも
 熊本県などでの一連の地震で、熊本県は22日、被災者向けに仮設住宅を建てる方針を発表した。同県西原村にまず約50戸を建てる。また県と熊本市は、公営住宅320戸前後を無償で被災者に貸し出すことを決めた。住まいを失った被災者への仮住まいに関する具体的な計画が決まったのは初めて。西原村の仮設は木造で、5月中に着工、6月中の完成をめざす。村は約200戸の建設を希望している。他の市町村については今後、入居希望者の把握や住宅の損壊の程度などをもとに、方針を決める。県は5月中に土地の選定を終えることをめざす。また公営住宅のうち、県営住宅約70戸は住宅が全半壊した熊本市以外の人向け。入居期間は原則6カ月間、最大1年間で、5月3日に抽選して入居者を決める。熊本市民向けには、同市が市営住宅250戸程度を無償で貸し出す予定。23日から受け付ける。県は22日、災害時の仮設住宅建設の協力協定を結ぶプレハブ建築協会が約2900戸分の仮設住宅を建てる準備があることを確認したと発表。熊本県優良住宅協会も同様に約100戸分の準備があるという。熊本県と大分県によると、22日時点で住宅の被害が約1万1千棟にのぼる。約8万人が避難生活を余儀なくされている。熊本県によると、地震による死者は22日現在48人。災害関連死の疑いは22日に同県阿蘇市で新たに1人が判明し、11人となった。亡くなったのは同市の70代女性。同市によると、女性は16日未明の本震後、家族と自宅敷地内の車中に避難後、近くの高校に移動。同日午前4時ごろに「胸が痛い」と訴え病院で治療を受けたが、正午ごろに亡くなった。高血圧で通院中だったという。一方、同県南阿蘇村は22日、地震で自宅の下敷きになった同村の女性(69)が、21日に入院先の病院で死亡したと発表した。2人が安否不明となっている南阿蘇村では、雨の影響で中断していた捜索が22日午後に再開された。JR九州は22日、運転を見合わせている九州新幹線の博多―熊本間で23日正午前から運転を再開することを正式に発表した。

*8-4:http://mainichi.jp/articles/20160425/ddl/k41/040/259000c
(毎日新聞 2016年4月25日) サポート情報 県内 /佐賀
 県内約150の宿泊業者が加盟する「県旅館ホテル生活衛生同業組合」(小原健史理事長)が、熊本地震による熊本県の被災者の受け入れを始めた。無料で宿泊と食事を提供する。24日午前11時半時点で55件200人以上の予約を受け付けた。組合は、車中泊によるエコノミークラス症候群の続発などを受け、各施設に受け入れ可能人数を調査。1日200〜1200人程度の受け入れが可能とまとまった。県の公費支援も受け、空室を最大2カ月程度、無償で提供する。小原理事長は「熊本県のお客様にはこれまで大変お世話になっており、恩返しがしたい。心と体を休めてほしい」と話した。事前予約が必須。問い合わせは同組合0954・42・0240。


PS(2016年4月27日追加):*10のように、九州新幹線は27日に全通し、九州道の植木IC−嘉島JCTは月内に復旧の見通しだそうだ。しかし、熊本よりも被害が小さかったとされる大分道の湯布院IC−日出JCTでめどが立っていないのは変である。

*10:http://qbiz.jp/article/85705/1/
(西日本新聞 2016年4月27日) 九州新幹線27日全通 九州道、嘉島−八代も復旧
 JR九州は26日、熊本地震の影響で運休が続いている九州新幹線熊本−新水俣の営業運転を27日午後に再開し、博多−鹿児島中央の全線が復旧すると発表した。高速道路では九州自動車道の嘉島ジャンクション(JCT)−八代インターチェンジ(IC)、九州中央道の嘉島JCT−小池高山ICが26日午後、復旧した。新幹線の運行ダイヤは、27日午前に公表する。同日の運行本数は通常より大幅に減便。各駅停車で、全て自由席扱いになる。山陽新幹線との直通運転もしない見通し。一部区間で徐行運転をするため、博多−鹿児島中央は通常なら各駅停車で約1時間50分だが、数十分程度長くなる見通し。JR九州は当初、全線再開時期を28日と設定したが、復旧作業を加速させて1日前倒しを実現した。27日朝、熊本−新水俣を中心に試験運転を実施し、安全を確認した上で再開する。同社は、14日の前震で回送中の車両が熊本駅近くで脱線した問題を重視。安全対策強化のため今後、レールに取り付ける「脱線防止ガード」の設置対象範囲を拡大する方向で検討する。九州の高速道で残る通行止め区間のうち、九州道の植木IC−嘉島JCTは月内に復旧の見通し。大分道の湯布院IC−日出JCTはめどが立っていない。


PS(2016年4月27日追加):*12-1のように、焼却できないごみが復興の妨げとなっているが、福岡市、佐賀市、北九州市などが受け入れている。しかし、福岡県や鹿児島県などの近場にも、受け入れ可能な自治体があるのではないだろうか?なお、私は、九州のゴミの分別は緩やかで、資源化するゴミが少なく燃やすゴミが多くなっているため、今後はゴミの分別をしっかりやった方がよいと考える。
 また、*12-2のように、被災地応援の「ふるさと納税」を、「ふるさとチョイス」と他の自治体が受付代行しており感心したが、このうち特に石川県輪島市は目を引いた。唐津市、伊万里市、有田町などは、「熊本城、熊本神社、阿蘇神社などの修復費」と使い道を指定して受付代行し、修復された暁には、その中の雰囲気の合う場所に展示させてもらってはどうだろうか?


受付を代行       熊本城              熊本神社       阿蘇神社    古伊万里
する自治体                                                

*12-1:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/305664
(佐賀新聞 2016年4月27日) 佐賀市清掃工場 熊本のごみ受け入れ、1日50トン
 佐賀市は26日、熊本市の家庭ごみを1日50トンまで受け入れると発表した。熊本市内にある二つの焼却施設のうち1施設が地震の影響で焼却炉が停止し、焼却できないごみが復興の妨げとなっている。熊本市側の運搬準備が整い次第、佐賀市高木瀬町の市清掃工場で受け入れを始める。熊本市では現在、焼却施設の停止で処理能力が不足し、東区内の仮置き場に運んで保管している。佐賀市によると、停止中の焼却炉は1日600トンの処理能力がある。既に福岡市が1日100トンを受け入れており、北九州市も1日50トンの受け入れを表明している。佐賀市には、25日に環境省所管の公益社団法人「全国都市清掃会議」を通じて熊本市から要請があった。期間は被災地の復興状況を見ながら判断する。佐賀県が復興を支援している西原村にも、佐賀市は26日からごみ収集車2台と職員4人を派遣した。避難所や家庭から出るごみの収集が一部で滞っており、市職員がごみを収集、益城町の仮置き場に運ぶ。派遣は30日まで5日間。今回の支援により、村の住民が出せるごみは、生ごみから可燃ごみに拡大したという。市環境部は「被災地のごみを少しでも減らすことで、復興に貢献したい」としている。

*12-2:http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=37219 (日本農業新聞 2016/4/27) 被災地応援へ ふるさと納税活用 他自治体が業務代行 返礼品なし 熊本、大分に
 地震で大きな被害を受けた熊本県を応援しようと、「ふるさと納税」=メモ=の制度を活用し、被災した自治体に返礼品なしで寄付金を送る取り組みが急速に広がっている。インターネットの専用サイトでは「頑張れ熊本」「地震に負けるな」といったメッセージとともに、既に5億円を超える寄付金が集まった。被災自治体の負担を軽減しようと、過去に災害を経験した自治体などが受け付け業務を代行しているのも支持を集める理由だ。ふるさと納税を通して、熊本地震への支援を呼び掛けているのは、全国自治体のふるさと納税を仲介するサイト「ふるさとチョイス」。地震が発生した14日の翌日から「災害支援でチョイス」の中で熊本支援ページを立ち上げた。1県16市町村が益城町などの被災自治体に代わって、ふるさと納税による寄付金を受け付けている。同制度は通常、当該の自治体が入金確認や確定申告に必要な受領証明書の発行業務を伴うが、「肩代わりすれば、震災対応に注力してもらえる」と他の自治体が代行支援を買って出た。寄付金は甚大な被害があった益城町や阿蘇市、西原村、熊本県などに全額送られ、農畜産物などの返礼品はない。昨年9月の関東・東北豪雨被害からの復興に、ふるさと納税による寄付金を当てた茨城県境町も名乗りを上げた。16日から熊本県に代わって、寄付金を受け付ける。26日現在、同町には5000件、計1億1000万円の寄付金が集まった。同町では「寄付をしても被災地に負担を掛けてしまうからと、ためらっていた人からも好評。豪雨被害で全国から応援してもらった恩を返したい」(まちづくり推進課)と意義を強調する。2007年3月の能登半島地震で被災した石川県輪島市も23日、阿蘇市や西原村などの代行受け付けを始めた。震災時の業務の大変さを経験したからこそ、「力になりたい」(地方創生室)と話す。熊本県に加え、同県宇土市、小国町、嘉島町、熊本市、八代市、山都町、菊池市、宇城市、大分県は、ふるさと納税による直接支援を受け付けている。100人以上が避難所生活を送る菊池市では25日現在、「数千件の寄付の申し込みがある」(企画振興課)という。「避難者が多く、どれだけ被害が広がるか調査中だが、復興のため大切に使わせてもらいたい」(同)と感謝する。
〈メモ〉 ふるさと納税
 応援したい自治体に2000円を超える寄付をすると、一定額が所得税と住民税から控除される仕組み。14年度寄付実績は389億円と前年度(145億円)を大幅に上回った。寄付先の自治体から米や牛肉、果物といった返礼品を目当てにした利用者は多いが、熊本地震をきっかけに返礼品なしの寄付も根付き始めている。


PS(2016年4月27日追加):*13のように、修学旅行などの団体客4万5493人、個人客2万7924人のキャンセルがあり、「旅館やホテルの経営に影響を来す可能性もあるので支援措置を検討している」のなら、自分のことだけを考えずに熊本県の避難者を受け入れればよいだろう。そのくらいの社会貢献を思いつかない旅館やホテルが修学旅行生を受け入れても、よい教育はできないのではないか?

*13:http://qbiz.jp/article/85801/1/ (西日本新聞 2016年4月27日) 長崎県宿泊 地震の余波 予約取り消し7万人超 知事「安全を発信する」
 長崎県の中村法道知事は26日の記者会見で、熊本地震後にあった県内の宿泊施設へのキャンセルが7万3417人分に上っていることを明らかにした。中村知事は「県内の観光施設や宿泊施設は通常通り営業を行っている。観光ホームページなどでは伝えているが、時期をみて安全という情報を発信していきたい」と述べた。宿泊施設へのキャンセルは、県観光連盟が113施設に調査をかけ、26日午前9時時点で回答があった100施設の結果をまとめた。内訳は修学旅行などの団体客が4万5493人、個人客が2万7924人。中村知事は「旅館やホテルの経営に影響を来す可能性もあるので、支援措置を検討している」と語った。県緊急支援室によると、県内へ一時避難を求める被災者からの相談は26日午後3時までに125件あり、うち40件が旅館などの宿泊施設へ、23件が県営住宅などへの入居手続きに入っている。中村知事は「県民の協力をいただきながら、県全体で被災地の復興支援に努めたい」と発言。県内にも活断層があることから、防災対策を計画的に進める考えも示した。


PS(2016年4月29日追加):今後、高齢者が増える中、*17-1のように、熊本市やその周辺地域もサービス付集合住宅、デイサービス、特別養護老人ホームが足りなくなると思われるため、家を新築することのできない高齢者等のためには、これらを街に近い安全な場所に建設して被災者を受け入れればよいと考える。そして、*17-2のプレハブ仮設住宅のような作っては壊すようなものに税金を使うのではなく、まっすぐ最終形の街づくりをした方が、その後に生産性が上がり、税金の節約にもなる。さらに現在は、*17-3のように、金融緩和・マイナス金利で資金調達が容易である上、広い屋根に太陽光発電を付ければそれによる収益を建設費の返済に充てることもできるため、今、熊本県がやるべきことは、この地震を踏まえ住民が満足して生活できる新しい都市計画を速やかに作って実行することだ。それが完成するまで、被災者は、他県も含め被災していない地域の福祉施設や住宅を利用していればよいと思う。

*17-1:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12334116.html
(朝日新聞 2016年4月29日) 高齢者続々、もう限界 熊本地震、入居断る福祉施設も
 28日夕、熊本市南区の複合型老人福祉施設「ケアタウンかわしり」は約130のベッドがすべて埋まっていた。さらに会議室などに300人余りが段ボールや毛布を敷いて避難していた。「困った人を助けたいが能力的に限界。共倒れになりかねない」。中村幸子施設長は訴えた。18日ごろから1日20件前後、避難所の閉鎖や家の倒壊で居場所を失った要介護者の入居希望が相次ぐ。しかし、要介護度の低い人は断らざるを得ない。「職員も被災し、疲労がたまっている。毎日厳しい判断を迫られている」。「今はまだ頑張れているが、長期になったら心が折れてしまう」。益城町で最大規模の特別養護老人ホーム「ひろやす荘」の永田恭子施設長も悲鳴をあげる。運営主体が同じ介護老人保健施設で被災した入居者約60人を受け入れ始めた。定員155人に対して200人以上。周辺施設はどこも人であふれ、移転先を探すのは至難の業だ。避難を続けながら出勤したり、自宅に倒壊の恐れがあったりする職員も多い。「これから長期にわたり、職員の確保が必要になります」と課題を口にした。デイサービスなどを手がける熊本市東区の小規模多機能施設「健軍くらしささえ愛工房」は益城町に近く、職員約20人には被災した人も多い。通常、宿泊と通所の利用者は計30人ほど。まだライフラインや設備が復旧しておらず、これまでは他の施設や県の担当窓口を紹介してきた。宮川いつ子施設長は「復旧に伴い、利用者が増えれば人手が不足しそう」。すでに同種施設の連絡協議会を通じて2日間、新潟県と千葉県から2人の介護職が支援に入ったという。一方、同じグループの特別養護老人ホームは地域の高齢者ら約60人の避難を受け入れた。小笠原嘉祐理事長は「職員と利用者の配置など関係なくとにかく受け入れた。パニックになった利用者を家に帰すわけにはいかない」と話す。小笠原さんは、さらに利用者の増加が続くことを予想し、被災した職員の疲労が蓄積して適切なサービスを提供できなくなる恐れを指摘した。

*17-2:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20160429&ng=DGKKZO00265210Z20C16A4EA1000 (日経新聞社説 2016.4.29) 被災者向け住宅の確保急げ
 熊本県などで発生した地震から2週間余りが過ぎ、避難者はなお3万人を超す。水道などの完全復旧を急ぐと同時に、避難所の生活環境の改善が必要だ。被災者の生活再建にも乗り出したい。まず、400カ所を超す避難所の衛生を保ち、被災者の不便や不安を減らすことが急務だ。一部の避難所ではノロウイルスによる感染症も発生している。巡回する医師や看護師らが目配りし、被災者が気楽に相談できる体制を整えたい。車中泊を続ける人にエコノミークラス症候群への注意を促すことも欠かせない。避難生活の長期化を避けるためには仮設住宅の早期整備が要る。プレハブ住宅の建設が基本になるが、民間などの賃貸住宅を借り上げる「みなし仮設」も積極的に確保すべきだろう。熊本県は全体で4200戸を整備する方針だ。県外の自治体が公営住宅を提供する動きもある。県内の物件で足りなければ、県外に一時的に移ってもらい、仮設住宅が完成した後に戻ってもらうような柔軟な対応も考えるべきだ。仮設住宅への入居では高齢者や障害者への配慮が欠かせない。阪神大震災では独り暮らしの高齢者が仮設住宅で孤立し、孤独死に至るケースもあった。できるだけこれまでの集落単位や隣近所の関係を保てるような入居を働きかける必要があるだろう。熊本県によると、被災した住宅は一部破損を含めて3万棟を超す。国土交通省の集計では建物の応急危険度判定で「危険」とされた物件は8400棟に上る。最終的にどれだけの住宅が必要かまだ判然としない。仮設住宅に入るためには住宅の被害の程度を示す罹災(りさい)証明書が要る。しかし、庁舎が被災した市町村を中心に証明書の発行作業は遅れている。他の自治体職員の応援が必要だ。避難所生活から脱することは生活再建の第一歩になる。政府と自治体、民間が協力して被災者への住宅提供に全力を挙げたい。

*17-3:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20160429&ng=DGKKASGF28H1A_Y6A420C1MM8000(日経新聞 2016.4.29) マイナス金利「効果見極め」 日銀総裁「変化表れにくい」 金融政策を維持
 日銀の黒田東彦総裁は28日、金融政策決定会合後の記者会見で、2月に導入したマイナス金利政策について「(経済や物価に対する)効果の浸透度合いを見極めていくことが適当だ」との考えを示した。日銀は同日、金融政策の現状維持を決めた。黒田総裁は「経済や物価の下振れリスクは引き続き大きい」と語り、必要と判断すれば追加的に金融を緩和する考えを重ねて表明した。マイナス金利政策を受けて国債利回りに低下圧力がかかり、企業向けの貸出金利や住宅ローン金利が一段と下がっている。黒田総裁は実体経済や物価を押し上げる効果を指摘しながらも「市場で新興国や資源国経済の先行き不透明感が続くなかで前向きな変化が表れにくい状況」と語り、現段階では政策効果を見極めたいとの姿勢を示した。日銀は28日の決定会合で、政策目標とする2%の物価上昇の達成時期をこれまでの「2017年度前半ごろ」から「17年度中」に再び先送りした。4月公表の企業短期経済観測調査(短観)などの統計で企業や家計の物価上昇期待が後退していることを映した。黒田総裁は「直近のデータを分析して最も適切な見通しをつくった。2%の物価目標は十分達成できる」と述べた。そのために「必要と判断した場合には、ちゅうちょなく追加的な金融緩和措置を講じる」と強調した。日銀は景気の現状判断について、前月の「基調としては緩やかな回復を続けている」を据え置いた。消費は前月に続き「底堅く推移している」としながらも「一部に弱めの動きもみられる」との表現を加えた。熊本地震の被災地の金融機関を対象とする総額3000億円の貸し出し支援も決めた。


PS(2016年5月1日追加):今回の地震は、原発事故を併発しておらず、阪神大震災の経験も活きたため、*19-1、*19-2のように、道路・電気・ガスの復旧が迅速で火事も出なかった。そのため、全国から応援に来られた方を含め、24時間体制で工事に携わった方々には敬意を表する。なお、「自由化以降は、非常時の閉栓・開栓作業に問題が生じる」というのは、他産業は自由市場で競争していても非常時には協力しているため、問題ないだろう。
 このような中、*19-3のように、厚生労働省が中心となって残業制限への法改正を検討しているが、形ばかりで本物の仕事をしていない労働基準監督署をはじめとする暇な役所と異なり、国会議員も含めて、9時~5時の勤務時間では責任を果たせない仕事は多いため、「女性の活躍のためには残業規制が必要だ」などと主張して一般的に残業規制を強めるのは、均等な雇用機会を失わせて女性にとってもマイナスになるため迷惑だ。そのため、特に悪質で不合理なことをしていれば摘発したり改善したりすればよいのであって、残業規制の強化として一般に敷衍する必要はないと考える。

*19-1:http://qbiz.jp/article/86054/1/ (西日本新聞 2016年5月1日) 都市ガス復旧完了、4600人が24時間突貫作業 当初見込みより8日早く
 西部ガス(福岡市)は30日、熊本県内での都市ガスの復旧作業を完了。被災者が待ち望んでいた自宅での入浴や自炊がほぼ可能な状態になった。電気などに比べると全面復旧に時間を要したものの、当初見込みよりも8日早い完了は、他の都市ガス各社の応援も得た24時間態勢の作業によって成し遂げられた。26日、熊本市西区の住宅街。道路に掘った深さ約1・3メートルの穴の周りに西部ガスと協力会社の社員6人が集まっていた。地震の激しい揺れで金属製のガス管の接合部が緩み、水が混入したようだ。担当者は交代で、長さ約80メートルの区画を丸1日かけて調査。水抜き対策を行い、ガスが使える状態に戻した。西部ガス福岡支社供給管理センターの吉野英夫さんは「こうした場所が点在する。一つ一つ、つぶすしかない」と話した。西部ガスは、同県の熊本市や合志市など7市町の約11万2千戸にガスを供給。16日の本震で約9割の供給を止めた。過去最大の被害だった長崎大水害(約4万2千戸)の2倍超に上る。都市ガス復旧には、多くの手順が必要だ。供給停止後、二次被害を防ぐため各家庭を訪ねて閉栓。次に地区を細分化してガス管を調査し、損傷があれば修繕。異常がなければ順次、供給再開する。復旧に時間を要するのはこのためだ。導管の多くは地中。県内の総延長は1375キロに及ぶ。同社は業界団体の日本ガス協会に協力を要請し、22社が最大約2600人を派遣。計約4600人による人海戦術を展開した。阪神大震災後、柔軟性に優れ震災に強いポリエチレン製のガス管の導入を進めていたことも奏功し、復旧は想定より早く進んだ。しかし、顧客先での開栓作業は約2割が残っており、作業はなおしばらく続く。震災は、来年4月の都市ガス小売り自由化にも課題を残した。自由化以降は供給エリアを越えた顧客争奪が予想されるが、非常時の閉栓・開栓作業を誰が担うかはまだ決まっていない。「今後も災害時に他社から協力を得られるかどうかも、十分議論しておく必要がある」。一橋大の山内弘隆教授(公共経済学)は指摘する。

*19-2:http://www.yomiuri.co.jp/national/20160424-OYT1T50034.html
(読売新聞 2016年4月24日) 九州自動車道、今月中に全線復旧見通し…国交省
 熊本地震の影響で一部区間が通行止めとなっている九州自動車道について、国土交通省は24日、今月中に全線で復旧するとの見通しを明らかにした。石井国交相は「九州を南北に連絡する大動脈が回復する」と述べた。JR九州は24日、熊本駅付近で脱線した九州新幹線の回送列車について6両全ての撤去を終えた。運休中の熊本―新水俣で線路の修復などを急ぎ、28日にも全線で運行を再開する予定。2人が安否不明となっている熊本県南阿蘇村では24日、捜索が再開された。県警などによると、土砂崩れが起きた河陽(かわよう)地区で、安否不明の男性の携帯電話が見つかった。阿蘇大橋付近では無人重機も投入して捜索が続いた。

*19-3:http://www.saga-s.co.jp/news/national/10201/293313
(佐賀新聞 2016年3月25日) 首相、残業制限へ法改正検討、働き過ぎ是正指示
●首相、残業制限へ法改正検討
 安倍晋三首相は25日、長時間労働を是正するため、残業規制を見直すよう指示した。労働基準法の改正などで残業時間を制限し、違反した際の罰則を設けることを検討する。仕事と育児の両立や女性の活躍推進、過労死の防止が狙い。残業時間の上限設定の検討に加え、残業が月80時間超の企業には労働基準監督署が立ち入り調査をする。安倍首相は官邸で開かれた1億総活躍国民会議で「時間外労働(残業)規制の在り方を再検討する」と述べた。労基法は労働時間を1日8時間、週40時間までと定めているが、「三六協定」と呼ばれる労使協定を結べば、法定時間を超えて働く「残業」が可能になる。


PS(2016年5月2日追加):今回の地震で5市町の庁舎が損壊したというニュースは驚きだったが、よく見ると熊本県の市町は合併が進んでいないため、規模が小さく数が多い。それにより、財政力・行政力が小さくなりがちで財政効率も悪いため、この際、合併して市を増やせばよいと考える。合併した後の名前は、人口規模より歴史に残る名前を残して歴史探訪をしやすくし、これまでの名前は町名として下につければ、どの人も納得できるだろう。なお、「合併すると住民のニーズに合ったきめ細かな行政サービスができなくなる」という声が郡部からよく聞かれるが、専用線で繋いでおけば窓口でどんなサービスでもできるので、これまでの庁舎近くに小さな窓口(支所)を残してニーズを汲んだ業務をすればよいと思う。

*21:http://mainichi.jp/articles/20160502/k00/00e/040/161000c
(毎日新聞 2016年5月2日) 5庁舎損壊使用できず 人吉市など機能分散移転
 熊本地震で庁舎が損壊した熊本県人吉市が2日、庁舎での業務を終え、役場機能を分散移転させる。地震で庁舎が使えなくなるのは同県で5市町目。地震発生から間もなく3週間となるが、庁舎に倒壊の恐れがあったり、庁舎に戻れても行政機能の完全復旧にはまだ日数を要したりするとみられ、市民生活への影響の長期化が懸念されている。
●4庁舎は旧耐震基準
 2日午前、人吉市の市役所には連休のはざまを使って市民が訪れ、窓口で必要な手続きを済ませていた。一方で壁にいくつものひびが走った庁舎の中で、職員らは通常業務の合間に急ピッチで引っ越し作業を進め、荷物を詰め込んだ段ボールを積み上げていた。市民向けの主な窓口業務は約600メートル南西の別館に移し、9日から業務を開始する。さらに総務や教育、経済関係の部署は別館から約2キロの体育施設や文化施設に入る。この日、住民票を取りに来た会社員の中神康行さん(30)は「庁舎が危ないのなら移すのは仕方ないが、しばらく部署ごとに別々の場所で対応するらしいので少し不便になる」と心配そう。総務課職員係長の熊部哲也さん(49)は「長年親しんできた庁舎を離れるのは寂しいが、市民や職員の安全を考えると仕方ない。市民に不便をかけるが、ご理解とご協力をお願いしたい」と話した。地震で庁舎が使えなくなったのは人吉市の他、宇土市、八代市、大津町、益城町の4市町で、いずれも役場機能を移転させた。16日未明の本震で震度6強を記録した宇土市。本庁舎は4階部分が完全に押しつぶされて倒壊寸前となり、立ち入り禁止となっている。機能は分散移転され、市民は罹災(りさい)証明書を申請するなら本庁舎から約600メートル離れた市民体育館に、生活保護などの手続きは体育館から約520メートル南の保健センターに行く必要がある。市幹部は「本庁舎隣の別館に住民のデータが入ったシステム機器があるが、別館も立ち入り禁止だ。本庁舎が倒壊して機器が損傷すれば数カ月は業務に支障が出る」と話す。八代市の庁舎も多数のひびが入り、使えなくなった。市は各部署を市内の5支所など14カ所に分散。住民票や罹災証明書などは支所で対応しているが、市営住宅関係は庁舎から約5キロの水処理センターのみで受け付ける。大津町は庁舎の壁に亀裂が入り、天井の一部が落下。庁舎近くの町民交流施設で窓口業務をしている。益城町庁舎は2012年度に耐震工事を終え、耐震基準は満たしていた。しかし、震度7に2度も襲われ、壁に亀裂が入り、災害対策本部を庁舎から約1.5キロ西の保健福祉センターに移した。町のほとんどの機能が停止したままだったが、罹災証明書の申請受け付けを1日から開始。庁舎の安全も確認され、対策本部は2日に庁舎に戻る。しかし、行政機能は庁舎に戻らず、9日以降に分散移転で順次再開していく。市民サービスが地震前の状態に戻るには時間がかかりそうだ。庁舎が損壊した5市町の庁舎のうち、4庁舎が1960〜70年代の建設で、いずれも現行の耐震基準を満たしていなかった。自治体庁舎の耐震化や建て替えには多額の費用がかかるが、総務省などによると、学校などと違って国の補助制度はなく、自治体は積み立てた基金などを充てている。八代市では新庁舎建設計画が本格化していたが、担当者は「小中学校の耐震化工事などを優先させたため、庁舎の建設計画が遅れてしまった」と話す。


PS(2016年5月3日追加):田植えの時期を前にして、*22のように、農地、用排水路、ハウスなどの農業基盤を中心とする農業被害額が熊本県だけで767億円に達するため、スピーディに復旧・復興することが重要だが、TPPに入るか否かにかかわらず、農業における生産性の向上は重要であるため、大型の機械が入りやすい区割りにするなど、これを機会に単なる復旧ではなく改良もした方がよいと考える。また、被害で廃業したくなったような農家は、農業生産法人の設立、パートナーシップの設立、集落営農など、個人の力のみに頼るのではない農業への移行も選択肢として考えられる。

*22:http://digital.asahi.com/articles/ASJ525GG3J52TIPE020.html?iref=comtop_urgent (朝日新聞 2016年5月3日) 熊本県、農業被害767億円 用排水路・ハウスなど打撃
 熊本県などでの一連の地震で、熊本県内の農業被害額が767億円に達することが県のまとめでわかった。このうち756億円(約99%)を農地や用排水路、ハウスなど農業基盤の被害が占めた。森山裕農林水産相は2日、被災地を視察後、報道陣の取材に「できる限りの努力をする。農家のみなさんに負担の少ない形で復旧復興の制度をフル活用したい。前例にとらわれず、スピード感を持ってやることが大事だ」と述べた。被害額の大きさを踏まえて、今後、再度の補正予算編成も必要になるとの見方も示した。県の推計では、一連の地震による被害(1日現在)は、林業や水産業を加えた農林水産関係で1022億円。911億円の被害額となった阪神・淡路大震災の被害額を超え、2012年に熊本、大分、福岡3県を襲った九州北部豪雨の1265億円に迫った。農業被害では、農地のひび割れや用排水路の損傷、ハウスや選果場などの施設損壊など、生産の前提となる農業基盤への損害が目立った。地域的には震源に近い熊本市や上益城郡、阿蘇地域などに集中。田の被害は1574カ所、畑は1147カ所だった。JA熊本中央会の梅田穰会長らは2日、県庁で森山農水相と蒲島郁夫知事に面会。復旧へ向けた財政措置や、農地や農業用水、選果場などの共同利用施設といった農業基盤の早期復旧などを求めた。農業基盤への打撃により、梅雨時期の田植えなど営農の先行きが見通せない状態で、梅田会長は「TPP(環太平洋経済連携協定)をはじめ、将来に不安を抱いている農家が今回の被害で廃業に向かうのではと心配している。スピード感をもって対応してほしい」と訴えた。気象庁によると、一連の地震で震度1以上の地震回数は1150回を超えた。熊本県や大分県では3日に大雨が予想されている。熊本県によると、2日午後現在、県内391カ所に計2万2人が避難している。


PS(2016年5月4日追加):海外市場で円相場が一時「1ドル=105円台半ば」に急伸したことについて、麻生財務相が「投機的動きが強まっていることを憂慮している」との認識を示されたそうだが、私は「1ドル=105円」は実力程度ではないかと思った。円安が続くと、輸出企業の業績はよくなり輸入企業の業績は悪くなるが、為替相場は輸出超過で円高になるので、これだけの災害が起こっても円高というのは国民が自らの消費を控えて輸出ばかりしている姿を反映している。そのため、この際、価格が安くて質も悪くない住宅・太陽光発電設備・労働力などを海外から輸入して、迅速に復興すればよいと考える。

    
  イギリスの住宅街     フランスの住宅街     アメリカの住宅街  日本の太陽光発電住宅
     <どの国も高級住宅街は緑が多くて敷地が広いが、熊本なら作れるのでは?>

*24:http://qbiz.jp/article/86158/1/
(西日本新聞 2016年5月4日) 円急伸「憂慮している」 財務相、再び市場けん制
麻生太郎財務相は3日、ドイツのフランクフルトで記者会見し、海外市場で円相場が一時1ドル=105円台半ばに急伸したことについて「一方的で偏った投機的な動きがさらに強まっていることを憂慮している」との認識を示した。その上で「投機的な動きが継続しないよう、これまで以上に注視し、必要な時にはしっかり対応する」と述べ、改めて市場をけん制した。会見に同席した日銀の黒田東彦総裁は「為替などの変動が経済、物価の動向に与える影響を十分注視し、物価安定目標の達成に必要ならちゅうちょなく追加の金融緩和を講じる」と強調した。中国主導で設立されたアジアインフラ投資銀行(AIIB)への日本の参加について、麻生氏は「これまでのスタンスは変わらない。運営方法などを引き続き注目していきたい」と述べ、慎重な姿勢を示した。麻生氏と黒田氏は東南アジア諸国連合と日中韓(ASEANプラス3)の財務相・中央銀行総裁会議などに出席するため、フランクフルトを訪問している。

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2016.4.17 火山、地震の脅威から原発ゼロへ (2016年4月18、19、20、21、22、23、24日に追加あり)
 避難を余儀なくされていらっしゃる方には、心からお見舞い申し上げます。しかし、九州は、旅館の空室や空き家も多いので、大人数で体育館などにいるのではなく、地震の影響をあまり受けていない近隣の自治体が、落ち着くまでの間、避難の受け入れをした方がよいと思います。その理由は、食料が乏しく、栄養管理や衛生管理ができない場所に医師や保健師が行ってもできることが限られるため、栄養のある食品を食べてゆっくり休むことのできる場所を提供するのが一番だからです。

    
    2016.4.17西日本新聞           地震と原発     2016.4.16  日本の断層 
                                           日経新聞
      
                       2016.4.16西日本新聞
(1)九州大震災
 *1-1、*1-2、*1-3のように、2016年4月14日午後9時26分に発生したマグニチュード(M)6.5の地震に続き、4月16日午前1時25分頃にはM7.3の地震があり、その後、大分県も震源域となり、震源は上図のように中央構造線付近を移動しており、これは、九州内陸部過去100年の地震で最大規模だそうだ。

 気象庁は、「①このような規模の地震が広域的に続発するのは記憶にない」「②震源3つは前例がない」と述べているが、地殻変動の周期は長いため、①は、どの範囲の記憶のことを言っているのか不明で、②は、前例のあることしか起こらず既存の断層帯以外は決して断層にならないという保証はないため、現在は断層がないからといって安心はできない。

 また、地震は、本震とその他に分けて名前をつけることにあまり意味はなく、それより重要なのは、どういう理由でこれらの地震が起こったかである。何故なら、それがわかれば、さらに大きな地震がくるのか、火山噴火の可能性は高いのか、九州で歪(ひずみ)を解消すれば一連の地震が終わるのかがわかるからだが、それを解説した報道は今までにない。

 そして、気象庁火山課は、*1-4のように、「熊本県阿蘇中岳で噴煙が第1火口から約100メートルまで上がった小規模な噴火があったが、地震との関連を明確に示すデータはない」とし、火山噴火予知連絡会副会長の石原京大名誉教授も「阿蘇山は地震前から噴火活動が続いており、このところの火山性微動のデータを見ても活発化する要因が見当たらない。今のところは、たまたま同じ地域で地震と噴火が重なったと見ていい」としている。しかし、本当に活発化する要因はないと言えるのだろうか?

 日本の火山は、(簡単に書けば)下図のように、太平洋プレートやフィリピン海プレートがマントルの動きによって北米プレートやユーラシアプレートの下に押し込まれ、流体のマグマが地上近くに上がってきて起こるものだ。これは、プレートの境界と火山帯の分布、日本列島の地形を見ればわかることで、ユーラシアプレート・フィリピン海プレート・北米プレート・太平洋プレートが押し合っている日本アルプス付近は、飛行機から見ると山脈がまさに地殻の皺のような形をしており、他の山脈も似たようなものである。

 この現象を、GPSで証明したのが下の右図で、九州では中央構造線付近で力の向きが変わり、フィリピン海プレートがユーラシアプレートの下に押し込まれる力の影響を受けているのがわかる。そして、東日本大震災後の太平洋プレートの沈み込みは海山などの障害が取れたらしくて速くなり、太平洋プレートがフィリピン海プレートを押す力が増して、それに連動して火山の噴火や地震が増えたのだと思われる。

    
        マントルの動き・造山運動・日本を取り巻くプレート            GPSによる 
                                                  移動距離の測定 
   
      プレートの沈み込みとマグマ             GPSによる移動距離の測定

 なお、この地震で、*1-5のように、いつもは慎重な九州JRで新幹線が脱線し、その場所は想定外の区間だったそうだが、災害はどういう形でやってくるかわからないため、「想定外」はよくない。また、*1-6のように、この地震によって、南阿蘇村で大規模な土砂崩れがあり、阿蘇大橋や俵山トンネルが崩落し、国道57号線やJR豊肥線が寸断され、熊本城や熊本神社も被害を受けているそうである。

(2)稼働を止めない川内原発
 交通系が念のため運航停止して確認したのに対し、*2-1、*2-2のように、川内原発は設備損傷などの異常は確認されていないとして、通常運転を継続している。しかし、誰がどの程度の確認をして「異常なし」と言っているのか、運転中に配管のひび割れまで確認できるのかについては疑問がある。

 また、「異常は確認されていない」というのも、確認しなかっただけでなかったと言えるわけではなく、施設内の装置で自動停止基準内だったという程度であるため、原発を扱う事業者としての慎重さに欠ける。

 そして、*2-3、*2-4、*2-5のように、熊本県を中心に震度7の地震に襲われ、最大震度6強の余震が140回を超える中、九電は全国で唯一稼働する川内原発1、2号機の運転を継続しており、原子力規制庁は「安全上、問題はない」との認識を示し、政府もそれを容認しているが、「より大きな地震の発生もあり得る」と指摘する地震学者もおり、一つ一つの揺れが自動停止基準の震度5を超えていなくても、揺れる回数が多ければ配管等の部品が痛んでくるため、安全という保証はなく、運転継続は危険だと考える。そのため、フォトジャーナリストの広河隆一さんら文化人6人が4月16日に、川内原発の即時停止を求める要請文を九電に送ったそうだ。

(3)地震と原発
 日本は、*3-1のように、プレートの重なりの上にできた国であり、地震が多い。仮に、私たちが、生まれてから今まで経験したことのない揺れだったとしても、日本の成り立ちから考えれば年中起こっていることが起こったにすぎないだろう。

 福岡高裁宮崎支部は、対策上想定される基準地震動を極めて合理的と判断したが、現在は、いつ阿蘇山が噴火してもおかしくない上、震源地を熊本県・大分県とする大地震が起こり、道路や新幹線が寸断されているわけである。国会の福島第一原発事故調査委員会は、原因は津波だけではなく地震による損傷の可能性も否定できないと指摘しており、小手先の対策を集積しても根本的な問題は解決しない。

 そのような中、電力会社、原子力規制委員会、政府、一部の地元住民は、地震の揺れや断層を甘く見すぎている。地震・津波は、既に「想定外」ではなく「想定内」である。私も、「いつでも、どこでも、強大な地震は起こりうる」というのが、日本では社会通念であり、一般常識だと考える。

 そのため、*3-2のように、今回の参議院議員選挙は、憲法改正・安保法制・辺野古移設の是非・TPP・消費税だけでなく、原発ゼロとエネルギー変換も重要な争点にすべきだと考える。

<九州大震災>
*1-1:http://qbiz.jp/article/85019/1/ (西日本新聞 2016年4月16日) 6強続発、新たに20人死亡 死者は計29人に 最大M7・3、阪神大震災級
 16日午前1時25分ごろ、熊本県熊本地方を震源とする最大震度6強の地震が発生した。震源は深さ12キロ、地震の規模を示すマグニチュード(M)は7・3と推定される。その後も大分県を含め震度6弱以上の地震が断続的に続いた。熊本県や各自治体によると、同県南阿蘇村で建物の下敷きになるなど、午後1時時点で20人が死亡し、14日の熊本地震以降の死者は計29人となった。九州で少なくとも948人が負傷し、16日午後1時現在、7万5469人が避難している。橋や道路の崩落、列車の脱線など交通網は各地で寸断。菅義偉官房長官は記者会見で「甚大な被害が発生した。復旧のため全力で取り組んでいる」と述べた。16日発生したM7・3の地震は、熊本地震のM6・5を上回り、1995年の阪神大震災と同規模。気象庁は「14日以降の地震は前震で(今回が)本震と考えられる」との見方を示した。九州の内陸部での地震では過去100年で最大規模。同庁は「このような規模の地震が広域的に続発するのは記憶にない」としている。各自治体の発表や遺族によると、死亡者は熊本市で2人、同県益城町で5人、嘉島町で3人、西原村で5人。八代市では火災が発生し、1人死亡した。県警によると南阿蘇村でも2人が死亡。また、同村の東海大近くのアパートでは1階部分が倒壊し14人を救出したが、うち男女計2人の死亡を確認した。このほか熊本市消防本部によると、市内で4人が心肺停止。政府によると、少なくとも約80人が重傷という。南阿蘇村では阿蘇大橋が崩落したほか、阿蘇市では国指定重要文化財の阿蘇神社の楼門が倒壊。宇土市、大津町の庁舎が一部損壊した。熊本市の熊本城では、国重要文化財の宇土櫓などが一部損壊している。各所で道路が寸断されており、南阿蘇村ではペンションや飲食店の従業員ら約120人が8カ所で孤立。山あいの温泉地が孤立状態にあるとの情報が相次いだ。大分県内でも家屋倒壊や土砂崩れが発生。同県別府市では別府港の一部が液状化した。14日の地震で最も大きな被害を受けた熊本県益城町は、再び大きな地震に見舞われ、減少傾向にあった避難者が再び増加。16日は7千〜8千人が、町総合体育館などで不安な朝を迎えた。(以下略)

*1-2:http://qbiz.jp/article/85018/1/
(西日本新聞 2016年4月16日) 阿蘇、大分も震源域に 九州横断の「溝」にずれ
 14日の熊本地震を上回るマグニチュード(M)7・3を観測した16日未明の地震は、強い揺れを引き起こし、九州に甚大な被害をもたらした。熊本地震について政府は15日、日奈久(ひなぐ)断層帯(約81キロ)の北端付近が引き起こしたと判断。ところが16日の地震は、熊本県の阿蘇外輪山から宇土半島付近に延びる布田川(ふたがわ)断層帯(約64キロ)のずれだと専門家はみている。その後、震源域は北東側に大きく移動してきており、地震が次の地震を呼ぶ連鎖が懸念されている。気象庁は、マグニチュードが大きい16日午前1時25分の地震を「本震」と位置づけ、熊本地震をその「前震」に格下げした。本震をもたらした今回の震源は、日奈久断層帯北端の北側、布田川断層帯に乗っている。東京大地震研究所の古村孝志教授(地震学)は「16日の地震は、熊本地震をきっかけに布田川断層帯が約30キロにわたってずれたことによる地震だ」と指摘する。震源の深さは約12キロと浅い。マグニチュードも「九州の内陸部地震では、この100年で最大だった」(福岡管区気象台)ことが、各地の被害を大きくした。さらに、その後の地震が特徴的な動きを見せている。14日までは熊本地震で震度7を記録した熊本県益城町が余震の主な震源域だったが、16日未明の地震以降、北東の同県阿蘇地方、大分県方面に移動し始めている。もともと、大分県の別府湾から阿蘇山などを経て長崎県の雲仙に至る区間は、地盤間の溝(別府−島原地溝帯)が走っているとされる。溝を境に南北方向に引っ張る力が岩板(プレート)にかかり、この地域にある活断層が「横ずれ」と呼ばれる動きを見せるのはこのためだ=イラスト参照。古村教授は「地溝近辺ではこれまで、大きな揺れがなくエネルギーがたまっているエリアが多い。地震が次の地震のきっかけになる連鎖が起きる可能性は否定できない」と注意を促す。「本震の後に余震が続き、やがて収束していく『本震余震型』の地震のパターンだけではない」と指摘するのは、鹿児島大の井村隆介准教授(地質学)。2日前から前震が確認されていた東日本大震災(2011年)がまさに「前震本震型」だったという。井村准教授は「今回の地震が本震なのかどうか、まだ分からない。これ以上の本震が今後あるかもしれず、余震が数カ月続くことも考えられる」という。

*1-3:http://www.nikkei.com/article/DGXLASGG16H4L_W6A410C1EA2000/?dg=1
(日経新聞 2016/4/16) 断層の巣、地震連鎖 気象庁「震源3つは前例なし」
 九州地方で14日夜から相次ぐ地震は、熊本から阿蘇、大分へと震源域が広がった。内陸の地震では異例だ。100キロメートル規模で地震活動が活発になったのは断層が集中する地域特有の地盤が影響している。今後どこまで広がるのかについては専門家でも意見が分かれている。飯尾能久・京都大学教授は「今回の地震はよくわからない、見たことのない現象が続いている」と話す。これまでも内陸で断層を原因とする地震はいくつも起きているが、広域でマグニチュード(M)6級の地震が続くのは珍しいからだ。気象庁も「離れた3カ所で大きな地震が起こるのは前例がない」と言う。地震活動が活発になっている地域の地盤には、南北方向に引っ張る力が働いている。このため、断層が水平方向にずれる「横ずれ型」の地震などが起こりやすい。大分県から熊本県にかけては、九州地方を東西に横断する「別府―島原地溝帯」と呼ばれる多数の断層を伴う地形がある。断層が集中すると、地震の群発につながりやすい。1つの断層が動いて地震が起こると、ほかの断層周辺にひずみがたまり、新たな地震を引き起こすという流れが考えられるからだ。政府の地震調査研究推進本部は14日夜に熊本県益城町で震度7の揺れを観測した地震について「日奈久(ひなぐ)断層帯」と呼ぶ活断層の北側がずれることで起きたとする。国土地理院は16日未明に発生したM7.3の本震に関し、日奈久断層帯の北側にある「布田川(ふたがわ)断層帯」で起きたと発表した。断層のうち約27キロメートルが約3.5メートル滑ったという。気象庁によると、熊本地方の地震発生回数は2004年の新潟県中越地震に次ぎ、過去2番目のペースで推移している。本震の後は熊本地方、阿蘇地方、大分県の3地域を中心に地震が相次いだ。国土地理院地理地殻活動研究センター・矢来博司地殻変動研究室長は「(本震が)周辺の断層に影響を与えた可能性がある」と指摘する。布田川断層帯の延長方向にある別府―万年山(はねやま)断層帯に飛び火したようにみえるからだ。別府―万年山断層帯を東に延ばすと、四国や紀伊半島など西日本を横断する巨大な断層構造「中央構造線」につながる。豊後水道を越えて四国地方にまで影響が及ぶ可能性もあるが、気象庁は「中央構造線が活発化しているというようにはみえない」との見解だ。名古屋大学の鈴木康弘教授も「四国地方は北西から南東の向きに圧縮する力が働いており、九州地方と根本的に地震のメカニズムが違う」と説明する。九州大学の松島健准教授は「今後、四国に延びるのか、反対側の長崎に延びるのかは分からない」と話す。地震が多い地域では今後も警戒が必要だ。熊本大学の松田博貴教授は「布田川断層帯の中の空白域や日奈久断層帯の南側のエリアで地震が起こる可能性が高い」と注意を呼びかける。日奈久断層帯の中央部や南西部では今後1カ月程度は注意が必要との指摘もある。

*1-4:http://mainichi.jp/articles/20160416/dde/041/040/038000c
(毎日新聞 2016年4月16日) 小規模噴火 地震と関連のデータなし 気象庁
 気象庁によると、16日午前8時半ごろ、熊本県の阿蘇山・中岳第1火口で小規模な噴火があり、噴煙が火口から約100メートルまで上がった。同庁は噴火警戒レベル2(火口周辺規制)を維持している。気象庁火山課は「(16日未明に同県で起こったマグニチュード7・3の)地震との関連を明確に示すデータは得られていない」としている。火山噴火予知連絡会副会長の石原和弘・京都大名誉教授(火山物理学)は「阿蘇山は地震前から噴火活動が続いており、このところの火山性微動のデータを見ていても、活発化する要因が見当たらない。今のところは、たまたま同じ地域で地震と噴火が重なったと見ていいと思う」と話した。

*1-5:http://qbiz.jp/article/84968/1/
(西日本新聞 2016年4月16日) 新幹線脱線の理由、その場は対象外だった
 JR熊本駅近くで起きた九州新幹線の脱線事故から一夜明けた15日、運輸安全委員会は鉄道事故調査官3人を派遣し、原因を調査した。JR九州が地震による脱線を想定しなかった区間で起こった九州新幹線初の事故。原因究明にも時間がかかりそうだ。JR九州によると、14日午後9時26分ごろ、熊本駅から約8キロ離れた熊本総合車両所に向けて回送中の列車が左側に脱線した。現場は、営業車両と回送の共用区間。通常通り時速80キロ程度で走っていた。運輸安全委の長田実・調査官は「(6両編成)すべての車両が脱線していた」と言う。現場は急カーブで、走行中の列車の傾きも大きい。運転士は同社の聞き取りに「強い揺れを感じて手動で列車を非常停止させた」と証言。同時に、地震を感知したら自動的に非常停止する装置が作動したことも確認したという。直下型で震源が近く、非常停止が間に合わなかった可能性がある。同社は2004年の新潟県中越地震時の新幹線脱線を受け、国やJR他社と対策を協議。この結果を踏まえ、活断層の活動が確実とみられる区間計27・5キロに車輪が引っかかる出っ張りをレールにつける「脱線防止ガード」や、脱線しても車両が線路を大きく外れないようにする「逸脱防止ストッパー」を設置するなど対策を進めていた。だが、事故の起きた区間は対象外だった。兵藤公顕新幹線部長は「これだけ強い地震は想定していなかった」と話す。大惨事を招きかねない新幹線の脱線は全国で4件目。この日、現場を視察した青柳俊彦社長は「(車両は)すさまじい状態だった。早い復旧に取り組みたい」と硬い表情で話した。

*1-6:http://qbiz.jp/article/85017/1/ (西日本新聞 2016年4月16日) 阿蘇大橋、俵山トンネルも崩落 国道57号やJR豊肥線が寸断
 16日未明から相次いだ地震により、熊本県を中心に交通網などに大きな影響が出た。橋やトンネルが崩落し、道路の寸断で被害確認が進まない地域も。熊本空港の発着便は全便欠航となり、JR九州も多くの路線で運転を見合わせた。国土交通省によると、南阿蘇村では大規模な土砂崩れがあり、国道57号やJR豊肥線が寸断、阿蘇大橋が崩落した。熊本市から阿蘇市方面に向かう主要な交通手段が断たれ、救助活動などに支障が出る恐れがある。熊本県によると、南阿蘇村と西原村にまたがる俵山トンネルも崩落した。

<川内原発>
*2-1:http://qbiz.jp/article/84932/1/
(西日本新聞 2016年4月16日) 川内原発は運転継続
 九州電力によると、稼働中の川内原発1、2号機(鹿児島県薩摩川内市)では設備損傷などの異常はなく、15日も通常運転を継続している。停止中の玄海原発(佐賀県玄海町)では、核燃料を保管している貯蔵プールなども含め異常は確認されていないという。  大分県から最短距離で約45キロに位置する四国電力伊方原発(愛媛県伊方町)は、施設内の装置では地震の揺れを感知しておらず「影響はない」としている。

*2-2:http://qbiz.jp/article/84967/1/
(西日本新聞 2016年4月16日) 川内、玄海「異常ない」 九電
 九州電力によると、稼働中の川内原発1、2号機(鹿児島県薩摩川内市)では原子炉や配管など設備に損傷などの異常はなく、15日も通常運転を継続した。停止中の玄海原発(佐賀県玄海町)では、核燃料を保管している貯蔵プールなども含め、異常は確認されていないという。大分県から最短距離で約45キロに位置する四国電力伊方原発(愛媛県伊方町)は、施設内の装置では地震の揺れを感知しておらず「影響はない」としている。

*2-3:http://qbiz.jp/article/84966/1/
(西日本新聞 2016年4月16日) 余震警戒の中、運転継続 川内原発 住民ら、安全性に不安の声
 熊本県を中心に震度7の地震に襲われ、最大震度6強の余震が140回を超える中、九州電力は全国で唯一稼働する川内原発1、2号機(鹿児島県薩摩川内市)の運転を継続している。政府も容認、原子力規制庁は「安全上、問題はない」との認識を示すが「より大きな地震の発生もあり得る」と指摘する地震学者もおり、地元住民からは不安の声が上がる。九電は15日、川内原発と玄海原発(佐賀県玄海町)敷地内の震度や揺れの最大加速度をホームページで公表した。最大で川内、玄海とも震度2、川内の加速度は11・8ガルだった。川内原発は水平方向に160ガルか、垂直方向に80ガルを超える勢いの揺れが発生した場合、原子炉が自動停止するように設定されており、九電は「自動停止の基準を超えておらず異常とは判断していない」と説明する。だが大地震に直面し、原発の安全性に不安を覚える住民は少なくない。薩摩川内市の女性(67)は「余震が何回も続くようなら原発の運転を止めてほしい」と話す。鹿児島県の市民団体「ストップ川内原発!3・11鹿児島実行委員会」は18日、九電と同県に対し川内原発を止めた上での総点検を申し入れる方針だ。熊本地震は原発の安全に関する国の情報発信の課題も浮き彫りにした。規制庁が原発に異常がないことを、ツイッターなどで一般向けに発信したのは地震発生から約12時間後の15日朝。一般向けに情報発信するのは、原発立地自治体で震度5弱以上の地震が発生した場合という内規があり、薩摩川内市は震度4だった。菅義偉官房長官の改善指示を受け、規制庁の松浦克巳総務課長は15日の記者会見で「反省する点が多い。一般国民に分かりやすい情報発信が大事。態勢整備も含めて工夫したい」と情報発信の在り方を見直す方針を示した。

*2-4:http://www.jiji.com/jc/article?k=2016041600197&g=pol
(時事ドットコム 2016年4月16比) 川内原発「停止の必要なし」=丸川担当相-熊本地震
 丸川珠代原子力防災担当相は16日午前、熊本地震の非常災害対策本部で、運転中の九州電力川内原発(鹿児島県)について、観測された地震動が自動停止させる基準値を下回っているとして「現在のところ、原子力規制委員会は停止させる必要はないと判断している」と報告した。

*2-5:http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201604/CK2016041702000107.html (東京新聞 2016年4月17日) 「川内」運転 住民ら不安 政府、地震域拡大でも静観
 熊本地震発生後も、新規制基準の審査に適合とされた原発として全国で唯一稼働中の九州電力川内(せんだい)原発(鹿児島県)は運転を続けている。政府は「止める必要はない」と静観の構えだが、地震活動が広がり、周辺の住民からは不安の声も上がる。九電などによると、通常は原発の半径五十キロ以内で震度4以上の揺れが観測された場合、国に状況を報告。原子力規制庁が原発に関する情報発信を強化した十五日以降は、距離にかかわらず震度5弱以上の全ての地震が報告対象となり、川内原発でも運転員が原子炉の状態をその都度確認し、現場パトロールも実施しながら運転を続けている。規制庁の担当者は「再稼働前の審査で、地震の揺れや外部電源の喪失、火山噴火に対する事業者の備えを確かめた。一連の地震で、その前提が崩れたとは考えていない」との立場だ。地震が拡大した大分県と豊後水道を挟んで四国電力伊方原発(愛媛県)がある。県と四国電は十六日未明、県庁で記者会見を開き、伊方1~3号機に異常はないと説明。四国電担当者は、再稼働前の最終的な手続きである3号機の使用前検査に「影響は出ないと思う」と強調、七月下旬の再稼働を目指す姿勢を変えていない。熊本地震でも原発の地元や周辺には動揺が広がる。川内原発のある鹿児島県薩摩川内市で飲食店を営む女性(71)は「運転は続けてほしいが、予測の付かない地震がこれだけ起こると心配がないわけではない」と話す。川内原発建設反対連絡協議会の鳥原良子会長は「川内原発周辺にも活断層があり、いつ南九州で大きな地震があるか分からない。とにかく運転を止めてもらわなければ」と語気を強めた。松山市の市民団体「伊方原発をとめる会」の和田宰(つかさ)事務局次長(63)は「再稼働の方針を考え直してもらいたい」と訴えた。
◆「異常あってからでは…」即時停止を 文化人6人要請
 九州で相次ぐ地震を受け、フォトジャーナリストの広河隆一さんら文化人六人が十六日、川内原発の即時停止を求める要請文を、九電に送ったと明らかにした。要請したのは他に、作家の落合恵子さん、沢地久枝さん、広瀬隆さん、ジャーナリストの鎌田慧さんと、若者のグループSEALDs(シールズ)の山田和花(のどか)さん。要請文では「異常があってからでは遅いということは、東京電力福島第一原発事故の経験から、誰の目にも明らか。人々は、次の大地震が川内原発を襲うのではないかという恐怖にさいなまれている」と記した。

<地震と原発>
*3-1:http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2016041602000142.html?ref=rank (東京新聞社説 2016年4月16日) 地震と原発 やっぱり原点に戻ろう
 日本はやはり地震国。九州を襲った「震度7」に再び思い知らされた。福島第一原発事故のそもそもの原因は、地震である。その原点に立ち戻り、原発の安全対策の在り方を再点検するべきだ。「今までに経験したことのない揺れだった」と、強い余震が繰り返される中、住民は不安に戦(おのの)く。「断層帯全体が動いたにしては規模が小さい」と専門家。さらに大きな地震の恐れがあった、ということなのか。あらためて思い知らされた。「いつでも、どこでも、強大な地震は起こりうる」。今月六日、福岡高裁宮崎支部は、今回の震源地からもさほど遠くない九州電力川内原発の運転差し止めを求める住民の訴えを退けた。高裁は、対策上想定される基準地震動(最大の揺れの強さ)を「極めて合理的」と判断した。住民側は「国内の原発ではそれを超える揺れが、二〇〇五年以降だけで五回観測されている」と観測地の過去の平均値から基準を割り出す手法に異議を唱えていた。瓦や石垣が無残に崩れ落ちた熊本城の姿を見ても、同じ判断ができただろうか。国会の福島第一原発事故調査委員会は、原因は津波だけでなく「地震による損傷の可能性も否定できない」と指摘。「小手先の対策を集積しても、根本的な問題は解決しない」と結論づけた。ところが、電力会社も原子力規制委員会も、地震の揺れを甘く見すぎてはいないだろうか。その象徴がくしくも九電だ。九電は、川内原発の再稼働がかなうやいなや、事故対策の指揮所になる免震施設の建設をあっさりと引っ込めた。それでも原子炉は止められない。原発は無数の機器と複雑な配管の固まりだ。見かけは正常に動いていても、強い震動がどの部位にどんなダメージをもたらすか。その積み重ねがどんな結果につながるか、未解明のままなのだ。断層のずれは、想定外の地震を起こす-。熊本地震の教訓だ。規制委の審査を終えて次回再稼働候補とされる四国電力伊方原発の近くには、日本最大の断層である中央構造線が走っている。今回の被害を教訓に、起こり得る地震の規模や影響をじっくりと検討し直すべきではないか。「いつでも、どこでも、強大な地震は起こる」。地震国日本では、これこそ社会通念であり、一般常識だからである。

*3-2:http://www.jiji.com/jc/article?k=2016041100766&g=pol
(時事ドットコム 2016.4.11) 原発ゼロを参院選争点に=小泉元首相
 小泉純一郎元首相は11日、仙台市内で記者会見し、「選挙が間近に迫って、野党第1党が(即時)原発ゼロを言い出せないのが不思議だ。争点にして戦う価値のある問題だ」と述べ、民進党に対して夏の参院選では脱原発を掲げて戦うよう注文を付けた。小泉氏は、「原発ゼロを宣言すれば、多くの国民は賛同する。首相だったら、なぜこのチャンスを生かさないのか歯がゆい」と語り、安倍晋三首相の原発政策に疑問を呈した。 また、衆参同日選が取り沙汰されていることについては、「結局は首相の判断で決まってくるから、(是非は)言わないようにしている」と語るにとどめた。


PS(2016年4月18日追加):*4-1、*4-2のように、九州新幹線は100ヵ所で地震による被害を受け、電気は阿蘇市、南阿蘇村、益城町などの約3万5400戸で停電し、ガスは西部ガスは熊本市など2市5町の約10万5千戸への供給を停止しているが、プロパンガスは約7割で復旧作業を終えたそうだ。ここでわかることは、エネルギーは分散型にした方が災害時の供給停止リスクも軽減されるということだ。
 また、いくらなんでも阿蘇山の近くや断層の上に住宅を建てるのはリスク管理に不備がある上、人口減少の時代でもあるため、復興時の街づくりでは、高齢者や一般市民は熊本市の近くなどにコンパクトに集め、阿蘇山の近くは農業(畜産、オリーブ、アーモンド等々)を中心とする徹底して美しい田園地帯に変えた方がよいと考える。なお、*4-3のように、熊本県の入院患者を県外に移送しているのは妥当で、既にドクターヘリが普及しているため、これを使えばよいだろう。

 
 2016.4.18西日本新聞  2016.4.16西日本新聞     2016.4.18日経新聞        

*4-1:http://qbiz.jp/article/85057/1/
(西日本新聞 2016年4月18日) 九州新幹線100ヵ所被害 停電3万、ガス停止10万戸超 
 電気やガスなどのライフラインや九州各地を結ぶ交通網は、17日も地震の影響が続き、各社は対応に追われた。18日からは九州新幹線で脱線した車両の撤去が始まる予定だが、運行再開時期のめどは立っていない。九州電力によると、17日午後11時現在、熊本県で地震の揺れが大きかった阿蘇市や南阿蘇村、益城町などを中心に約3万5400戸が停電中。九電からの要請を受け、大手電力8社は復旧作業員の派遣を決めた。西部ガス(福岡市)は、熊本市など2市5町の約10万5千戸への供給停止を継続している。熊本県LPガス協会(熊本市)によると、17日午前までに同県内のプロパンガス世帯の約7割で復旧作業を終えたという。国土交通省によると、九州新幹線は高架橋の亀裂など約100カ所に被害が見つかっており、18日以降も全線で運休。JR九州の在来線は鹿児島線の一部などで運転を見合わせる。高速道路は、土砂が流入するなどした熊本県や大分県の一部区間で17日も通行止めが続いた。高速バスは福岡と九州各地を結ぶ路線などで終日運休。西日本鉄道(福岡市)は18日の高速バスの運行について、同日早朝に判断するという。ターミナルビルの壁面にひび割れなどが見つかった熊本空港(熊本県益城町)は17日、全便を欠航。「施設の安全確認が終わっていない」として18日も全76便を欠航する。

*4-2:http://qbiz.jp/article/85054/1/ (西日本新聞 2016年4月18日) 地震連鎖南西にも 日奈久、布田川2断層の延長上 八代で多発、四国に波及も
 熊本県にある日奈久(ひなぐ)、布田川(ふたがわ)両断層帯が14日と16日に相次いで大きく破壊され、震度6強を超える地震を引き起こしたのを発端に、もともとエネルギーをためている周辺断層への「連鎖」が懸念されている。両断層帯でひずみが残っている区間や、既に地震が多発する大分県から海峡を経て四国方面の断層などに影響は出ないのか。14日に震度7の揺れを記録した日奈久断層帯について気象庁と政府の地震調査委員会は17日、「南にも活動が広がっている」との見解を示した。熊本県八代市などで微小地震が発生しているためだ。政府はもともと、同断層帯を三つに区分。14日に地震をもたらした北部の「高野−白旗」区間より南、八代市などを通る「日奈久」「八代海」両区間の地震発生確率は全国の主要断層で上位だ。東京大地震研究所の古村孝志教授(地震学)は「日奈久断層帯の南側では、地震発生に注意が必要だ」と警戒を呼び掛ける。日奈久断層帯の南部で大規模地震があった場合、心配されるのが九州電力川内原発(鹿児島県薩摩川内市)への影響。調査委メンバーの一人は「影響は分からない。だが、原発を慎重に運転すべきだとの考えは、一つの見識として否定しない」と言葉を選んだ。古村教授は、16日未明の地震で動かなかった布田川断層帯の西側区間や、日奈久断層帯の南東方面にある緑川断層帯での「連鎖」の可能性も指摘する。懸念はさらに広い地域に及ぶ。大分県では17日も由布市を中心に地震が続いた。同市には、別府湾内から同県西部まで東西に別府−万年山(はねやま)断層帯が走っており、16日の布田川断層帯の影響を受けているとされる。この断層帯から東には、愛媛県から四国電力伊方原発(愛媛県)付近を経て奈良県まで続く中央構造線断層帯も控える。1596年の慶長地震では、関西や中央構造線、別府湾での地震が連動していたとの見方もある。このため、九州大地震火山観測研究センターの松島健准教授(地震学)らは、愛媛県などに新たな観測点を設けることを検討中。松島准教授は「プレート(岩板)内の地震の連鎖がいつ止まるのか、見極める必要がある」と話す。さらに、プレート間の南海トラフ地震を誘発する可能性はないのか。京都大地震予知研究センター宮崎観測所の寺石真弘助教(測地学)は、日向灘の海上地震計のデータを注視する。「今のところ大きな変化はみられないが、引き続き警戒していく」としている。

*4-3:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20160418&ng=DGKKZO99760980X10C16A4CR8000 (日経新聞 2016.4.18) 患者 相次ぎ県外搬送 断水・停電、病院余力なく
 16日未明以降、最大震度6強の本震などで被害地域が広がったことを受け、入院患者を県外に移送する医療機関が相次いでいる。広範囲で断水や停電が続く中、新たな入院患者を受け入れる余力が県内の医療機関から失われつつあることが背景にある。熊本市中央区の「くまもと森都総合病院」では17日昼すぎから、入院患者が次々とストレッチャーなどに乗せられ、他の医療機関に搬送された。同病院は震度7を観測した14日夜の地震後、入院病棟の壁にひび割れや水漏れが見つかった。16日未明の地震でさらにひび割れが拡大。「患者の安全を確保できない」と判断し、移送を決めた。当初は移送先として近隣の医療機関とも交渉したが、受け入れ先を見つけることは難しかった。山中剛副院長は「熊本市内の病院は断水などで受け入れ余力がない。県外への搬送を進めざるを得ない」と話す。同病院のように16日未明の地震で建物に深刻な被害を受けた医療機関は少なくない。さらに県内の医療機関は断水や停電の影響で十分な医療を提供できなくなっている。被災地に入った災害派遣医療チーム(DMAT)には16日以降、県内の医療機関が受け入れられないことから、負傷者などの県外搬送の依頼が急増。県災害対策本部によると、16~17日の2日間だけで、ドクターヘリなども使って700人以上を福岡、佐賀、宮崎、鹿児島の4県に運んだ。


PS(2016年4月17日追加):熊本城は地震で大きな被害を受け、天守閣の屋根や石垣が壊れ、国の重要文化財である東十八間櫓、不開門、長塀なども崩壊したため、*5-1のように修復を要する。そこで、せっかくなら(耐震構造でありながらも)歴史に忠実に復元し、パリのルーブル美術館やオーストリアのシェ―ンブルン宮殿のように、安土桃山時代・江戸時代の美術品(絵画、屏風、襖絵、着物、焼き物、漆器など)を展示したり、内部で茶会や能などの催しを行ったりすれば、日本中世の生きた歴史館となって観光上の価値も上がると考える。

  
被災後の熊本城             被災前の熊本城、外部と内部
 *5-1より   
*5-1:http://mainichi.jp/articles/20160418/k00/00m/040/034000c
(毎日新聞 2016年4月17日) 熊本地震、熊本城「修復に10年以上」…事務所見通し
 熊本城総合事務所は17日、熊本地震で大きな被害に遭った熊本城について、「修復に10年以上を要する可能性がある」との見通しを明らかにした。総合事務所によると、天守閣は石垣が崩落し、建物全体が傾いている状態になっている。他にも、1600年初頭の築造当初の建造物で、国の重要文化財に指定されている▽東十八間櫓(ひがしじゅうはちけんやぐら)▽不開門(あかずのもん)▽長塀(ながべい)−−などの五つが崩壊。周囲の道路にも地割れの被害が出ている。河田日出男所長は「予想だにしない事態でショックを通り過ぎて言葉が出ない。被害状況が詳細に把握できていないが、年単位の修復は間違いない」と話し、今後、文化庁とともに詳細な調査にあたるという。大西一史市長は「県民のシンボルが損傷しているのはつらい状況だ」と語った。

*5-2:http://www.manyou-kumamoto.jp/contents.cfm?id=471
■熊本城のあゆみ
<熊本城歴史年表>
1496年(明応5年)鹿子木親員、茶臼山西南麓(現在の古城)に築城
1550年(天文19年)大友宗麟が城主を鹿子木氏から城親冬にかえる 
1587年(天正15年)豊臣秀吉が佐々成政を肥後の領主とする
1588年(天正16年)加藤清正、隈本城に入城
1601年(慶長6年)茶臼山に築城着手
1607年(慶長12年)新城完成、隈本城を熊本城に改称
1611年(慶長16年)清正死去、加藤忠広が相続
1632年(寛永9年)細川忠利肥後54万石領主として熊本城入城
1871年(明治4年)廃藩置県により肥後藩が熊本県となる鎮西鎮台を熊本城内に設置
1877年(明治10年)西南戦争、熊本城炎上
1927年(昭和2年)宇土櫓解体修理、長塀改築
1933年(昭和8年)熊本城全域を史跡に、建造物を国宝に指定
1950年(昭和25年)国宝建造物が重要文化財に指定(文化財保護法改正)
1955年(昭和30年)史跡熊本城跡が特別史跡に指定
1960年(昭和35年)熊本城天守閣が復元落成
1989年(平成元年)数寄屋丸二階御広間復元
1991年(平成3年)9月の台風19号で甚大な被害を受けたため、天守閣を大改修
1993年(平成5年)旧細川刑部邸を東子飼町から三の丸に移築復元
2002年(平成14年)南大手門復元
2003年(平成15年)戌亥櫓、未申櫓、元太鼓櫓復元
2005年(平成17年)飯田丸五階櫓復元
2008年(平成20年)本丸御殿大広間復元
2009年(平成21年)第Ⅱ期復元整備事業着手


PS(2016/4/19追加):*6-1、*6-2のように、阿蘇の草地を利用した畜産は、放牧することで脂肪が少なく蛋白質の多い牛肉ができるため、ヘルシーという付加価値がつき、さらに草地を利用することによってコスト削減もできる。そのため、私は、阿蘇は畜産や酪農によい場所だと考える。さらに、オリーブやアーモンドは山間地でも作りやすく、阿蘇九重(くじゅう)国立公園の景色をさらによくするだろう。
 また、*6-3、*6-4のイベリコ豚は味の良いことで有名だが、どんぐりの林と牧草地が必要で、これらは中山間地の耕作放棄地でも容易に作れる。そのほか、地熱を利用した施設園芸も有利で、農林中央金庫は、本来は、このようなことをリサーチして融資や投資を行うべきなのである。


                阿蘇九重(くじゅう)国立公園の阿蘇山
     
     阿蘇の放牧      桜に似た花の咲く   トスカーナのオリーブ畑   イベリコ豚の放牧
                    アーモンド畑               
*6-1:http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=37027 (日本農業新聞 2016/4/19) 酪農、繁殖を優先 畜産経営継承支援 生産基盤強化急ぐ JA全国機関
 JA全国機関は畜産・酪農で中止した経営を新たな担い手に引き渡す「JA畜産経営継承支援事業」で、2016年度は酪農と肉用牛繁殖経営を優先して実施する。戸数の減少が続いており、生産基盤の強化が急務だと判断した。引き継ぐ経営体の規模が大規模化していることに対応するため、1案件当たりの支援額の上限も引き上げた。事業は全中と全農、共済連、農林中央金庫の資金助成で01年度に創設した。中止した経営を引き受け、組合員やJA出資法人などに引き渡すJAの取り組みを支援する。経営中止者の施設を補修する費用や、継承先に貸し付ける家畜を導入する費用、経営継承のための部署の設置といった体制整備にかかる費用などを助成する。予算は総額5億円で、1県域当たりの助成額の上限は従来通り原則6000万円とした。一方で1継承案件当たりの助成額の上限はこれまでの原則2000万円を3000万円に引き上げた。経営の大規模化で引き継ぐ施設も大型化するなど、継承にかかる費用が膨らんでいることに対応する狙いだ。各県域で中央会・連合会でつくる協議会が、JAからの申請を6月末まで受け付ける。全国機関の協議会の審査を経て、10月に結果を通知する流れ。肉用牛は繁殖農家の減少に伴い、子牛の頭数減と価格高騰が問題化している他、酪農家も戸数の減少が止まらない。こうしたことから、16年度は肉用牛繁殖、酪農経営を優先的に支援する方針だ。事業を未活用の県域への推進も図る。同事業は15年度までに16県域の60JAを支援。助成総額は18億3900万円で、支援した経営形態は酪農が144件、肉牛が46件、養豚が18件、採卵鶏が3件となった。

*6-2:http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=36751 (日本農業新聞 2016/3/26) 粗飼料 不足時に供給めざす 草地27ヘクタール管理 JAおきなわ八重山地区畜産振興センター
 JAおきなわ八重山地区畜産振興センターは2016年度から、草地を管理して牧草を畜産農家に供給する事業を本格的に始める。計27ヘクタールの草地で牧草を収穫し保存、主に粗飼料が不足しがちな冬季に安く供給する。価格は輸入粗飼料の3分の1程度と格安だ。JAは「コスト削減と増頭に貢献する」と強調する。JAは、20年ほど前から草地13ヘクタールを管理。主に家畜市場で、週に1度の船便の到着を待つ牛に与える粗飼料を賄ってきた。ここに、新たに国の特定地域振興生産基盤整備事業で整備した草地14ヘクタールが加わった。計27ヘクタールと東京ドーム6個分の広さとなり、生産者への販売を本格化できると判断した。施肥や収穫、乾燥、ロールラッピングなどはJA利用課が担う。栽培するのは、嗜好(しこう)性が高いとされる暖地型牧草の「ローズグラス」や「トランスバーラー」。天候にもよるが、年1700ロール(1ロール300キロ)の収穫を見込む。うち800ロールが家畜市場に回り、残りを約700戸の畜産農家に販売する。
●価格 輸入の3分の1
 肥料などのコスト負担もJAが請け負うが、販売価格は1ロール6500円に抑える。JAによると、輸入粗飼料は1キロ60~70円ほどなので、JAの販売価格は3分の1ほどになる計算だ。刈り取った草の一部はトラクターの格納庫などで保管し、粗飼料が不足する冬季に販売。50トン程度を輸入粗飼料から置き換えられるとみる。既にJAが粗飼料を販売している畜産農家からは「自前の草が足りなくなる時期に安く買えるので助かる」などの声が上がる。JA畜産部の幸喜英信課長は「価格メリットは大きいはず。JAが粗飼料生産を手掛けることで、増頭を後押ししたい」と強調する。

*6-3:http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=37026
(日本農業新聞 2016/4/19) スペイン産豚、輸入量3倍に 現地の相場安が要因
 スペイン産豚肉の輸入量が5年間で約3倍に伸びている。現地の生産量が増え、相場が下がったことが要因。多くは加工原料用に回っている。輸入の動きは今後も活発な見込みで、一部のスーパーでは「イベリコ豚」など、国産と競合する高級品の扱いを増やす例も出始めている。東京都内の大手食肉加工業者は2015年度、同国産の輸入量を前年度より2割近く増やした。主にハムやソーセージの原料として使う。バイヤーは「価格が下がり、冷凍品は米国産より買いやすい」と強調する。今年度も増やす計画だ。スペイン産の輸入量は15年度(16年2月まで)、7万3758トン。前年度実績を既に4.8%上回っている。前年度超えは6年連続。年度累計では、冷凍品の国別輸入量で米国を初めて抜き、デンマークに次ぐ2位になったとみられる。欧州委員会の統計によると、同国産の15年の枝肉価格は、前年より2割ほど安かった。生産量が増えたのが要因。15年は前年比7.6%増の約390万トンだった。豚飼養頭数が欧州連合(EU)で最多になるほど、増産が目立っている。ロシアがEU域内産の輸入を禁じたことも日本への輸出意欲を高めた。生産量はイベリコやデュロック種といった上位の銘柄を含めて「全般的に伸びている」(スペイン大使館)もようだ。スーパーでは「黒豚」など国産銘柄豚と売り場を奪い合う場面も目立つようになってきた。首都圏で展開するいなげや(東京都立川市)は今年度、さしが細かく入る「霜降り」が特徴のデュロック種の精肉販売を増やす。前年度の売れ行きが好調だったためだ。バラ肉は100グラム258円(税別)と、鹿児島産「黒豚」と大差ない価格だが、「お客からの評価は良い」(広報担当)という。別のスーパーでは15年度、「イベリコ豚」の売り上げが前年度と比べ55%伸びたと明かす。

*6-4:http://www.pedronieto.com/jp/crianza.asp (イベリコ豚の飼育)
 最近になって、牧畜業者の経験から、豚に更にバランスの良い食餌を与えることになりました。現在、イベリコ豚は遅くとも生後10ヶ月目からどんぐりを食べ始めます。それ以前は、骨格がよく発達しバランスよく成長するように、離乳後、まだ子豚のうちは高品質の選び抜かれた飼料を与えます。この方法によってのみ、理想的な体重、状態で山の放牧地に移る、優れた豚が育てられるのです。イベリコ豚の食餌は大変重要で、肉の質に決定的に影響します。当然生ハムや他の製品の質にもです。どんぐり(樫の一種アルコルノケの実)のタイプと質、どんぐりと草のバランス、一定に決められた牧草地の中で餌を食べる豚の数なども関係があります。これによってそれぞれの豚のグループが独自の特徴を持つようになり、つまり製品の質に影響するようになるのです。全ての豚のグループは唯一であり、そこから生ハムの不一定性が生じると言えます。豚の屠殺は、祭礼儀式のようなものであり、お祭りのようなものでした。主に冬場の、自然界が人に食物をあまり供給してくれない時期に行われ、一年分の肉を備えるために行われるものでした。自給自足を基本としていた経済社会においてマタンサ、またはモンドンゴとも呼ばれた豚の屠殺の行われる日は「冬場の貧人の満腹」を意味していました。マタンサの歴史をたどればそれは人類の始まりにまで遡らなければならないでしょう。人は食べるために動物を常に犠牲にしてきたのです。
●放牧場
 豚はエンシーナ、アルコルノケ、ケヒーゴといった木々から自然に落ちるどんぐりを利用する形で食べます。これらの木々の茂った放牧地の存在なくしてはイベリコ豚は育ちません。ここでイベリコ豚はどんぐりだけではなく、草や、野生の木の実、小動物、爬虫類、かたつむりやなめくじ、その他の昆虫などを食べ、これが、生ハムに素晴らしい自然の香りと味を与えるのです。さらにこの生息環境では、豚は歩き回ることによって運動し、それによって、より柔らかな、過剰な水分のない、その結果グリコーゲンが豊富な肉となるのです。
●放草地
 当社の放草地はカセレスに位置するエル・プンタル・デ・アリーバと言う名のものとアンダルシア地方のものがあります。エンシーナやアルコルノケの木々に囲まれて、豚はその適切な成長に欠かせない、どんぐりを食べて育つのです。


PS(2016.4.20追加):*7-1のように、被災地は、耐震基準強化前に建築された古い家が多く、益城町では、5400棟が損壊し、そのうち750棟が全壊したそうだ。しかし、*7-2のように、国民もふるさと納税で応援し始めており、*7-3のように、政府も予算を付けている。九州は、これまで感覚的に地震は他人事のようなところがあり、下の表のように、1981年建築基準の耐震基準を満たしている住宅の割合も低いが、今回はとりあえず原発事故は起きていないため、すぐ復興に取りかかれる。そのため、この際、決してつぎはぎだらけで元に戻す“復旧”をすることなく、(それこそ頭を柔らかくして)人口減少や高齢化を見据え、災害に強くてコンパクトな環境配慮型の美しい街づくりをして欲しい。なお、家に戻れず避難している被災者には、*7-4のように、周囲の自治体や民間業者が空き室を提供するのが無駄がないため、国はこれに対して住居費・家電などの支援を行い、最終的な復興を急いだ方がよいと考える。

     
      2016.4.20日経新聞             2016.4.19、20佐賀新聞    2016.4.20
                                                      西日本新聞
*7-1:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20160420&ng=DGKKZO99858240Q6A420C1CR8000 (日経新聞 2016.4.20) 
旧耐震基準の全壊目立つ 益城町 新基準、熊本76%どまり
 熊本地震による被災地で、家屋被害の状況が分かってきた。最大震度7を観測した熊本県益城町では700棟以上が全壊だった。建築基準法で耐震基準が強化された1981年以前に建てられた古い家屋の被害が目立つという。住宅の耐震化率の向上は全国的な課題になっている。同町などによると、これまでに5400棟の損壊を確認しており、うち750棟が全壊だった。調査が進むにつれ、被害は拡大するとみられる。この地域には古い家屋が多い。調査にあたった同町の杉浦信正都市計画課長は「全壊した家屋には旧耐震基準のものが相当数含まれていた」と話す。基礎部分がコンクリートではなく石に木の柱を立てた簡易な構造だったり、現行基準より重い屋根瓦が使われたりしていた。同町では14日に震度7を観測して以降、16日未明の本震を含め大きな揺れに何度も見舞われた。杉浦課長は「最初の地震で柱が土台の石からずれるなど構造にダメージが生じ、その後に重い屋根が揺さぶられて倒壊したケースが多いのではないか」とみている。81年の建築基準法改正で、住宅の耐震基準は引き上げられた。それまでの「震度5強で損傷しない」に加え、震度6強~7でも倒壊しない耐震性を求められるようになった。国の調査では、全国の住宅約5200万戸のうち新基準を満たす住宅は約82%。熊本県は76%にとどまる。県は講演会などで補強工事の必要性を訴えてきたが、建築課の担当者は「南海トラフなど地震の予測がある他県に比べ、危機感が薄い面は否めない」と認める。ただ耐震化の遅れは全国的な課題だ。首都直下地震が想定される東京都は、約663万戸の耐震化率の推計値は約83%(昨年3月時点)。政府が昨年度までの目標とした90%に届かない。建て替えや補強には費用がかかるほか、マンションでは住民の合意形成が必要なケースもあるためだ。名古屋大学減災連携研究センターの福和伸夫教授(耐震工学)は「都市部も補強工事に積極的とはいえない」と指摘。国が安価で効果的な工法を認定して補助金を出すなど「市民が震災を『我が事』として捉えやすい環境をつくる必要がある」としている。

*7-2:http://qbiz.jp/article/85214/1/ 
(西日本新聞 2016年04月20日) ふるさと納税急増 4日で1億円、熊本県と南阿蘇村
 熊本地震で大きな被害を受けた熊本県と同県南阿蘇村に対する「ふるさと納税」が急増している。民間サイト集計によると16日以降、5300件、1億円に迫る。東日本大震災では、日本赤十字社などを通じた義援金の被災地への分配が遅れたり、使い道が見えにくかったりしたことが、寄付者たちの不満となった。ふるさと納税は出身地だけでなく、寄付する自治体を自由に選べる点が評価されており、被災地を支える新たな手法として全国に広がりつつあるようだ。
     ◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎
 「何もできませんが、九州・熊本を応援しています!」「復興に少しでもお役に立てれば幸いです」−。
 ふるさと納税をインターネット上で募る民間サイトの運営者によると、寄付とともに被災地を励ますメッセージも寄せられているという。全国からの寄付の総額はわずか4日で熊本県に約4620万円(約2千件)、南阿蘇村に約4850万円(約3300件)に上る。民間サイトと連携し、被災自治体への納税手続きを、他地域の自治体が支援する新たな仕組みも生まれている。茨城県境町(さかいまち)は、震災対応に追われる熊本県への寄付を同県の代わりに受け付け、寄付者に「受領証明書」を発行するなどの事務を代行している。境町が遠い九州の被災地支援を買って出たのには、理由がある。昨年9月、鬼怒川が決壊するなど町に甚大な被害をもたらした豪雨災害。町に約1800万円のふるさと納税が集まり「被災者支援や復興に活用できた」(町担当者)との思いがあるからだ。民間サイトには「境町さんのすばらしいご協力に感謝」などの称賛も相次ぐ。ふるさと納税は、税額控除や寄付先からの特産品の返礼など、寄付者側のメリットにばかり注目が集まりがち。被災地支援を目的に募った今回の寄付は全て、寄付者に対する“見返り”はなく、被災地への純粋な支援金となる。民間サイトも今回は、手数料なしで代行業務を請け負っている。被災者支援などの業務に追われる南阿蘇村の幹部職員は「村を支援したいと思ってくれる人たちが全国にいることは、本当にうれしいし、励みになる。感謝したい」と話す。
*ふるさと納税 個人が出身地だけでなく、応援したい地方自治体に寄付をすると、2千円の自己負担を除いた金額が、所得税や居住地の住民税から軽減される制度。地域間格差の是正を目的に、2008年に創設された。高級な牛肉や海産物など、自治体がお礼に贈る特典が好評で、寄付額は増加傾向。2015年度上半期は総額453億5500万円だった。一方、寄付獲得のため特典の豪華さを競う動きを懸念する声もある。

*7-3:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/302800 
(佐賀新聞 2016年4月19日) 熊本地震で政府、復旧へ補正予算検討、がれき処理や橋再建
 政府は18日、熊本、大分両県を中心に相次ぐ地震の復旧・復興事業を進めるための2016年度補正予算案を編成する方向で検討に入った。がれき処理や土砂崩れの復旧工事、崩落した阿蘇大橋(熊本県南阿蘇村)など公共施設の再建を念頭に置く。緊急的に必要な支援の経費は、成立済みの16年度当初予算を振り替えたり3500億円の予備費を活用したりして優先的に確保する。住宅やインフラなどの被害の程度を見極めて予算額を詰める。夏の参院選後に開く臨時国会へ経済対策の補正予算案提出を検討しており、震災復旧費をそれに上乗せする想定だが、復旧予算の確保を急ぐ必要が出てきた場合は地震関連を先行させる可能性がある。安倍晋三首相は18日の衆院環太平洋連携協定(TPP)特別委員会で、今回の地震を復旧事業への国の補助率を引き上げる激甚災害に早期指定する意向を表明した。補正予算編成の可能性を問われ「必要なあらゆる手段を講じていきたい」と強調。予備費の活用などと合わせ、復旧費を「国がちゃんと負担していく」と述べた。

*7-4:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/303083 (佐賀新聞 2016年4月20日) 空き室184戸、県内公営住宅被災者に、受け入れ準備急ぐ みやき町は1世帯入居
 強い余震が続く熊本地震を受け、佐賀県内の自治体は空き室の公営住宅を活用して被災者を受け入れる準備を進めている。県のまとめでは、14市町の128戸、県営56戸の計184戸が受け入れ可能で、運用ルール作りを急ぐ。既に避難者が入居した自治体も出ている。県建築住宅課によると、公営住宅での受け入れは東日本大震災時に準じた運用ルールになる見込み。使用料や敷金、保証人は不要で入居期間は6カ月程度とし、状況に応じて更新する。罹災証明も必要になるが、建築住宅課は「被災地の状況次第で証明はなかなかすぐに発行されないため、『後日提出』も検討したい」と柔軟に対応する。東日本大震災では雇用促進住宅の活用なども含めて対応し、10県から計196世帯512人を受け入れた。今回の地震でどこまで対応するかは避難状況を見ながら判断する。既に受け入れを決めた自治体もある。三養基郡みやき町は19日、熊本県からの1世帯3人を町営住宅に受け入れた。末安伸之町長は「『一週間ほど車上生活でもいいから滞在したい』と相談があった。せっかく町を頼ってこられた方にそんな不自由はさせらない」と語る。このほか、武雄市が市営住宅「久保田住宅」の12戸とたけお競輪場の選手宿舎30室を家賃無償で貸し出す。


PS(2016.4.21追加):今回の九州大地震では、*8のように、熊本県の阿蘇や大分県の温泉街を周遊するツアー客はキャンセルが多く、その影響は熊本・大分に留まらず、福岡・佐賀・長崎・宮崎・鹿児島まで広がってホテルや旅館に空き室が増えている。そのため、どうせ短期間で壊してしまう仮設住宅を建てるより、国の負担で借り上げして家をなくした被災者をしばらく滞在させるのがよいと思う。

    
   地層の縦ずれ                2016.4.21西日本新聞(被害状況)

*8:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20160421&ng=DGKKASDC20H04_Q6A420C1EA1000 (日経新聞 2016.4.21) 熊本地震の影響懸念 九州、ツアー中止相次ぐ
 政府がたてた2020年の訪日客数の目標は4000万人。15年度の約2倍で、実現への道のりはまだ遠い。熊本地震も先行きに影を落とす。九州は韓国や中国と近く、訪日客は4年続けて過去最高を更新した。福岡から入り、熊本県の阿蘇や大分県の温泉街を周遊するツアー客も多い。大分県別府市の観光名所、地獄めぐり。近くの飲食店街では、いつもなら屋外まで並べられているテーブルといすが片付けられ温泉蒸気だけが勢い良く噴き出している。「地震後はキャンセルの電話ばかり」。JR別府駅近くの大手ホテル社長は嘆く。観光庁によると、中国政府は九州への渡航に注意喚起を出した。韓国でもツアーの中止やルート変更を決める会社が出ている。余震の不安に加え、九州新幹線や高速道路の復旧の見通しが立たず、福岡や鹿児島にも影響が広がっている。城山観光ホテル(鹿児島市)は5月末までの宿泊で2割弱のキャンセルが出ているという。観光庁の田村明比古長官は「地震の影響は少なからずある。最小限に抑えるために正確な情報発信に努める」と話す。


PS(2016年4月21日追加):*9の「①おにぎりじゃ戦はできない」「②物資配送の滞りは自治体の責任」と内閣副大臣が言ったと非難しているが、私もTVを見ていて白米のおにぎりしか配っていないのには呆れた。何故なら、白米のおにぎりだけでは戦ができないどころか被災者の健康維持ができないからで、どうせ持って行くなら弁当を作っておかずも一緒に持って行けばよく、それは周囲の自治体がやる気を出せばできた筈だ。そして、その請求書を国にまわすべく前もって話をしておけば問題はないため、中学校程度の栄養学の知識とやる気があったか否かが問題なのだ。②については、「90万食・・」というのが早くから言われていたので、届けることが仕事の人が被災者に届けなかったのが問題なのである。 

*9:http://qbiz.jp/article/85364/1/
(西日本新聞 2016年4月21日) 政府現地本部長交代 暴言続き地元がNO、事実上の更迭
○食事におにぎり→「こんな食事じゃ戦はできない」
○物資配送の滞り→「あんたら(地元自治体)の責任。政府に文句言うな」
 政府は20日、熊本地震の政府現地対策本部長を松本文明内閣府副大臣から酒井庸行内閣府政務官に交代したと発表した。松本氏は15日から、熊本県庁内の対策本部で政府と被災地の連絡調整を担っていたが、言動を熊本県や被災自治体から批判されており、事実上の更迭との指摘がある。菅義偉官房長官は交代理由を「昼夜たがわず食料支援などで指揮をした。体力面を考慮した」と説明。河野太郎防災担当相は「交代は予定通り」と強調した。一方、政府関係者は西日本新聞の取材に「(松本氏は)県との連携がうまくいっていなかった」と認めた。別の関係者も、松本氏が本部長を続ければ「政権に大打撃となる。早め早めに手を打った」と話した。関係者によると、松本氏は食事におにぎりが配られたときに「こんな食事じゃ戦はできない」と不満を口にした。避難所への支援物資配布を巡って「物資は十分に持ってきている。被災者に行き届かないのは、あんたらの責任だ。政府に文句は言うな」と、地元の自治体職員に声を荒らげたこともあったという。県や被災自治体は「松本氏が震災対応の邪魔になっている」と不信感を募らせていた。松本氏は政権幹部に電話で「怒鳴ってしまいました」と謝ったという。松本氏は20日、官邸で安倍晋三首相に報告した後、記者団に「びしびしと言い過ぎたことが批判につながっているなら、甘んじて受ける」と語り、おにぎりの件について「そういう事実はない」と否定した。


PS(2016年4月22日追加):*10-1のように、「佐賀県有明海漁協が県産のり発送」「佐賀熱気球パイロット協会が救援物資輸送」というのは、普通の人が気づかない能力を活かした支援で感心した。また、「浜玉町の旅館が使用していない部屋7室(各8畳程度)と温浴施設を無償提供」などというのも助かるだろう。なお、寒い中で募金活動をしている人も見かけて感心するが、募金では大した金額が集まらないので、力自慢の人や高校生は、茫然としている人のところへ、休みの日に後片付けや整理の手伝いに行ってはどうだろうか?さらに、JR九州も余力のある弁当屋のつてが多いのではないかと思う。
 また、*10-2のように、他県で公営住宅やホテルの受け入れが始まったが、まだ数が足りないので公務員宿舎や民間アパートの空室も探したらどうかと考える。なお、近くに顔なじみがいない不安や孤独は、週に一度、元の居住地に集まって復興方法に関する話し合いをしたり、インターネットで情報交換したりすれば解決できる。何故なら、この場合のストレスは、人に悩みを話せば解消する性質のものではなく、安心して生活でき、前向きの活動が始まって希望が持てれば解決する性質のものだからだ。
 なお、*10-3のように、4月22日、韓国からも空軍C130輸送機2機で、レトルト米、毛布、テントなどの支援物資を熊本地震の被災者に向けて熊本空港に運んでいただいている。

*10-1:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/303902
(佐賀新聞 2016年4月22日) 募金、物資発送情報、=熊本地震 支援の輪=
◆ボランティア募る 公益財団法人「佐賀未来創造基金」は、大型テント設置や物資の仕分けなどを行う被災者支援ボランティアを募集。問い合わせは電話0952(26)2228。
◆県有明海漁協は県産のり発送 県有明海漁協は県産焼きのり8000パック(おにぎり12万食相当)を佐賀市を通じ避難所などに届ける。
◆浜玉町の旅館が部屋提供 唐津市浜玉町の旅館「唐津 網元の宿 汐湯凪の音」は、被災者の緊急宿泊場所として、使用していない部屋7室(各8畳程度)と温浴施設を無償提供する。事前に受け付けが必要。問い合わせは電話0955(56)7007。
◆生徒が募金呼び掛け 神村学園高等部武雄校舎の生徒は22日午後1時半~同3時、武雄市図書館で募金を呼び掛ける。
◆24日に街頭募金 鹿島市社協と市ボランティア連絡協議会は24日午後4~5時まで市内の商業施設や肥前鹿島駅など6カ所で募金を呼び掛ける。
◆佐賀市社協が街頭募金 佐賀市社協は27日午後5時からJR佐賀駅とバスセンターで街頭募金を行う。4月28日~5月6日にボランティア運営スタッフとして職員2人を派遣する。
◆佐賀熱気球パイロット協会が救援物資 佐賀熱気球パイロット協会(笹川和朗会長)は24日、阿蘇市に救援物資を輸送する。
◆子育て支援の物資も 佐賀市諸富町の子育て支援センターは24日、被災地の乳幼児とその母親を支援するため、紙おむつや水など物資を送る。
◆小城市は救援物資受け付け 小城市は飲料水とカップ麺など保存食に限定し救援物資を22日まで小城保健福祉センター「桜楽館」で受け付け、23日に菊陽町に送る。
◆江北町はロールマット送る 江北町はB&G財団を通じて熊本県玉名市のB&G海洋センターへ、備蓄品の銀キャンプ用のロールマット100枚を送った。
◆多久市が被災支援本部 多久市は被災地支援本部を設置した。熊本・大分両県の必要とする支援の情報収集と迅速な対策を取る。
◆外国人支援で職員派遣 佐賀県国際交流協会は20日、熊本県にいる外国人被災者支援のため職員1人を現地派遣した。避難所を巡回し、通訳・翻訳などのニーズなどを把握する。

*10-2:http://qbiz.jp/article/85406/1/ (西日本新聞 2016年4月22日) 九州で2700戸、公営住宅入居に被災者から希望殺到 大分ではホテルが受け入れ
 熊本地震の被災者の一時入居先として九州各県が21日までに公営住宅約2700戸を確保、受け付けを開始した窓口に問い合わせや申し込みが相次いでいる。福岡県は初日だけで問い合わせが200件超。福岡市では40戸に対し100件超の申し込みがあり、新たな部屋が確保できるまで受け付けを見合わせる。各県内の内訳は、福岡約530戸▽佐賀約150戸▽長崎約500戸▽熊本約170戸▽大分約210戸▽宮崎約600戸▽鹿児島約540戸。福岡県は、住宅が一部損壊以上の被害を受けた人が対象で最長12カ月入居できる。敷金や家賃は免除し、寝具も提供。21日までに21世帯が入居した。担当者は「提供できる場所と希望のマッチングなどの難しさもあるが、早期入居の態勢を整えたい」と話す。熊本地震から1週間。被災者の一部は、自治体が提供する公営住宅などへの入居を始めている。住み慣れない地域での暮らしには、どんなサポートが必要なのか−。体験者に聞くと、孤立を防ぐ行政や周辺の目配りや、被災者同士の交流が支えになるという。「知り合いもほとんどおらず、不安だった」。福島県南相馬市の八巻(やまき)美知子さん(42)は、2011年3月の東日本大震災直後、同市から福岡市内の県営住宅へ引っ越した。地元に残った夫と離れ、小学生の娘2人との生活。長女が学校になじめず、わずか8カ月で南相馬市へ戻った。「団地は住民同士の交流が希薄になりがち。孤立しないようなサポートがあれば」と振り返る。05年の福岡沖地震。福岡市西区玄界島の住民約700人の多くは、島外での避難所生活を体験した。玄界島保育園の松田ゆかり園長(56)は過酷な日々について「それでも、住民が一緒の避難所にまとまって生活できたことは心強かった」と語る。当時、避難所を出ていったん市内の親類や知人宅に身を寄せていた住民が、再び避難所に戻る現象もみられた。公営住宅などに転居すれば、住環境は劇的に改善する。安倍晋三首相は21日、熊本地震を受けて首相官邸で開かれた非常災害対策本部会議で「最も大切なのは、安心して過ごせる住まいに移っていただくこと」と強調した。避難所を出れば心身の大きなストレスから解放される。一方で、近くに顔なじみがいなくなる不安や孤独を感じる人もいる。福岡県の馬場順子保健師は、避難所を離れる被災者のサポートについて「県や市町村の保健師が連携し、地域とつないでいくことが必要」とアドバイスする。つらい体験をした人同士の交流も大切だ。福島原発事故後、群馬県館林市に夫を残し、4歳だった長男と福岡県福津市に移った芝野章子さん(50)は「被災者仲間とグループを結成し、体験を語り合うことで勇気が出た」と言う。
   ◇   ◇
■熊本の被災者1500人受け入れ 大分県旅館ホテル組合
 熊本地震の被災者を支援しようと、大分県旅館ホテル生活衛生同業組合(400軒)は21日、家屋を失うなどした熊本県の約1500人を会員ホテルなどで受け入れる方針を明らかにした。大分県内でも余震が続き、一部施設で建物の損傷や予約キャンセルも相次いでいるが、「災害時は助け合いが大切」としている。仮設住宅などの住環境が整うまで1泊3食付きで部屋を無料提供する。災害救助法の「避難所」扱いとなり、高齢者や障害者など要支援者の受け入れを想定。熊本県知事から大分県知事に要請があり次第、組合が各施設に割り振る。堀精治専務理事は「大分の旅館やホテルも大変な状況だが、九州が復興へ向かうための一助となりたい」と話している。
   ◇   ◇
■所在不明者、熊本県が電話相談
 熊本県は22日、熊本地震以降、家族や知人の所在が確認できない人を対象にした電話相談を始める。地震発生時に1人で旅行中の人などと連絡がついていないケースなどを想定。庁舎が被災して対応が難しい市町村もあることから、県災害対策本部に相談専用電話を置く。相談内容は警察署や市町村につなぐなどして支援する。「熊本地震所在不明者相談ダイヤル」=096(333)2815。月−金曜日の午前9時〜午後5時。当面は休日も開設する。
   ◇   ◇
■被災者生活支援情報
●佐賀県採用試験に代替日
▽佐賀県は24日の県職員採用試験(行政特別枠)の受験が困難な被災者を対象に5月15日の代替試験日を設ける。4月24日の試験は行う。罹災(りさい)証明書や事前連絡は不要。受験票を紛失した場合は代替日に再発行する。人事委員会事務局=0952(25)7295。
●保険料の払い込み猶予
▽日本損害保険協会と加盟26社は熊本県内の被災者を対象に、各種損保の保険料払い込みや継続手続きを最長6カ月(10月末まで)猶予する。自動車損害賠償責任保険は期間と対象が異なる。協会は当面、土日祝日も相談を受け付ける。そんぽADRセンター=(0570)022808。契約先などが分からない場合は照会センター=(0570)001830。
●公営住宅受け入れ
▽各自治体の受け入れ戸数(一部民間など含む)と連絡先は次の通り。福岡県飯塚市(13戸)=0948(22)5500。同県田川市(11戸)=0947(44)2000。佐賀県唐津市(19戸)=0955(72)9218。
●部屋を無償提供
▽佐賀県唐津市浜玉町の旅館「汐湯凪の音(しおゆなぎのと)」は8畳の部屋7室と温浴施設を被災者に無償提供する。無期限。同旅館=0955(56)7007。
●欠陥住宅相談会
▽欠陥住宅ふくおかネットは23日午前11時〜午後4時、倒壊・損壊した建物についての電話相談会を開く。所有または居住する建物が被災した人を対象に、熊本県内に限らず受け付ける。阪神大震災や東日本大震災では、設計ミスや手抜き工事が疑われる事例が多数あったという。無料。専用電話=092(721)1208。

*10-3:http://mainichi.jp/articles/20160423/k00/00m/040/022000c
(毎日新聞 2016年4月22日) 支援物資載せた韓国軍機が到着…熊本空港
 熊本地震の被災者への支援物資を載せた韓国空軍のC130輸送機2機が22日、熊本空港(熊本県益城町)に到着した。韓国軍による物資輸送は東日本大震災以来。韓国政府が日本側に支援の意向を伝えていた。韓国軍が提供した物資はレトルト米2000パック▽2リットル入りと500ミリリットル入りの水のボトル各1000本▽毛布6000枚▽テント1700張り。自衛隊が同空港から避難所に届ける。菅義偉官房長官は22日の記者会見で「心温まる支援に感謝申し上げたい」と述べた。


PS(2016年4月23日追加):*11のように、全国からボランティアが来てくれているそうで、私も、山のような瓦礫の撤去も人が多ければ早く終わると思う。しかし、片付けの際には、家の人が仕分けして、ボランティアに段ボールに詰めたり廃棄したりしてもらい、引越しの際に持って行くものは、表面に名前や中身を書いてまとめて置く必要があるため、運送会社の段ボールやマジック、ガムテープなどが大量にあると便利だろう。なお、地震学・火山学はもちろん、建築・土木・都市計画・工学などの分野を志している学生も、こういう場所でボランティアをすると、都市や建物や家電はどうあるべきかを実体験して考えることができ、世界でも注目される論文が書けたり、学業の役に立ったりすると考える。

 
              2016.4.21~23西日本新聞              2016.4.22毎日新聞 

*11:http://mainichi.jp/articles/20160423/k00/00e/040/173000c
(毎日新聞 2016年4月23日) 広がる助け合いの輪、全国から続々ボランティア
 熊本地震で自治体によるボランティアの受け入れが始まって初めての週末になる23日、被災地には全国各地から多くの人たちが駆けつけ、復興支援に汗を流した。昨秋の関東・東北豪雨の被災地から「恩返しに」と参加した人もいて、約8万人が避難生活を続ける被災地に助け合いの輪が広がった。
■熊本市
 約4万6000人が避難を続けている熊本市。市中心部に設置された災害ボランティアセンターには、午前9時の受け付け前からボランティアの長い列ができた。会社員の海沼陽一さん(43)は昨年秋の関東・東北豪雨で大きな被害を受けた栃木県鹿沼市から駆け付けた。「水浸しになった家屋の片付けなどで熊本のボランティアや行政の方々に助けてもらった。余震が続いているので精神的ストレスは大きいと思う。恩返しになるか分からないけれど、少しでも自分にできることをしたい」と意気込んだ。東日本大震災でボランティアをしたという熊本県八代市の神職、浦口政弘さん(43)は「山のようながれきの撤去も、人がたくさん集まればあっという間に終わる」と語った。高校生や大学生の姿も。城北高校(熊本県山鹿市)バレーボール部3年の川口憂哉さん(17)は「全国から救助隊などが来てくれていることをテレビで知った。県民の一人として力を合わせて助け合いたい」と話した。熊本市では受け付け初日の22日、想定の2倍にあたる約1000人が駆けつけ、約半数には作業を割り当てることができなかった。避難者には「家の片付けをしてほしい」との要望が多いが、危険度未判定の家屋が多く安全を確保できないため派遣できないという。一方、ボランティアの到着を心待ちにしている住民は多い。同市東区の中学校に母、兄と身を寄せている会社員の久富良房さん(57)は「食事は菓子パンが多い。炊き出しがあればうれしい」。
■益城町
 5000棟以上の住宅が損壊し、7000人以上が避難生活を送る益城町にも大勢のボランティアが詰めかけた。福岡県からきた安部江美さん(51)と娘の志織さん(20)はかつて熊本市に住んでいた。「避難所や車で生活している友人らの話を聞いて、いても立ってもいられなくなった。できることは何でもしたい」。東京からきた男性6人は「休みなので来た。力仕事もできる」と笑顔を見せた。町内の中学1年、亀谷未希さん(12)は仲が良かった同級生や知り合いの家が全壊した。「うちは大丈夫だったから、他の人を手伝いたい」。だが、混乱が続き、町災害ボランティアセンターもニーズを把握しきれていない。22日にはボランティア自身で被災者のニーズを掘り起こしてもらおうと被災者に「何をしてほしいか」と聞く調査をしてもらった。運営する町社会福祉協議会の国元秀利事務局長(59)は「被災者にとってはボランティアがしっかり話を聞いてくれるだけで心が救われるはず」と話した。


PS(2016年4月24日追加):*12-1のように、佐賀県の旅館ホテル組合が、県全体で被災者1200人を受け入れる準備をしている。他県もこうすると、被災者が、まず不衛生でストレスの多い環境から脱することができ、次の段階に進めるのではないだろうか。なお、*12-2のように、被災者を受け入れる地域は、保育園や学校などの受入準備をする必要もありそうだ。

*12-1:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/304607
(佐賀新聞 2016年4月24日) 県旅館ホテル組合、被災者1200人受け入れ方針
 佐賀県旅館ホテル生活衛生同業組合(小原健史理事長)は、熊本地震の被災者を県内の旅館・ホテルに受け入れる方針を決めた。県全体で一日最大1200人分の部屋を確保する。宿泊にかかる費用は公費負担となるように、県や国と協議している。同組合に利用を希望した被災者を県内の旅館やホテルに振り分ける。運転免許証などの身分証明書で被災地の住民と確認できれば、宿泊できるようにする。どこまでを被災地とみなすかは「柔軟に対処したい」としている。受け入れ期間は仮設住宅が完成するまでの1~2カ月を見込む。組合は県内15支部を通して、空室状況を随時確認。地震の影響で予約のキャンセルが相次いでいる一方、新たな宿泊予約も入ってきており、空室数は流動的という。小原理事長は「これまで熊本や大分から来ていただいていたお客さまへの恩返し。一日も早く県内の旅館やホテルに入り、心と体を休めてもらいたい」と話す。利用申し込みは同組合、電話0954(42)0240へ。

*12-2:http://mainichi.jp/articles/20160424/k00/00m/040/087000c?fm=mnm
(毎日新聞 2016年4月24日) 熊本地震、15万人授業受けられず 県内小中高生の75%
 熊本地震で学校が休校し、授業を受けられなくなった熊本県内の小中高校などの児童生徒が、22日現在で404校の約15万人に上ることが県教委などへの取材で分かった。県内の児童生徒約20万人の約75%に当たる。壁や天井など耐震化が不十分な部材を中心に被害が出た学校が少なくとも351校あり、避難所として使われている学校も多い。24日で地震発生から10日となるが、被害の大きかった自治体では授業再開のめども立っておらず、子供たちへの影響も懸念される。
●校舎被害や避難所利用
 県教委や熊本市教委などによると、22日段階で休校している学校は、国公立が小学校224校▽中学校102校▽高校38校▽特別支援学校13校、私立が中学・高校27校。国公私合わせ県内655校の約6割に当たる。昨年度の児童生徒数などから推計すると、公立の小学生約7万4000人▽中学生約3万6000人▽高校生約2万3000人▽特別支援学校生約1300人−−と私立の約1万7000人に影響している。文部科学省や県教委によると、県内の公立小中学校は98.5%で柱やはりなどの構造部材を補強する耐震化を完了しており、倒壊などの大規模な被害はなかった。ただ、耐震化の期限が定められていない、壁の崩落防止や棚の固定など構造部分以外の耐震対策を終えたのは60.1%にとどまり、公立の小中学校293校▽高校43校▽特別支援学校15校−−で壁や天井、校舎接合部の破損などが相次いだという。このうち熊本市では、小中学校137校が被災。24校で体育館の壁や筋交いなどが破損し、地震後に避難してきた住民を校舎に移した。嘉島(かしま)町や宇城(うき)市などでも体育館の屋根や壁などが破損し、避難所に使用できなくなっている。被害は軽微でも、多数の避難者が寝泊まりしているため、授業を再開できない学校も多い。市内の小中学校すべてが休校している熊本市は22日の授業再開を目指していたが、「学校が避難所となっており、余震も続いている」(市教委)として、一部を除き来月10日ごろまで延期した。多数の犠牲者が出た益城(ましき)町教委も「4月末までは休校し、5月以降は状況を見て決める」とし、来月9日ごろの再開を目指す西原村教委は「小さな村で避難者を移せる施設も少ない。来月初めの避難状況を見て、最終的な再開時期を判断したい」と述べた。文科省の担当者は「壁や照明の落下、本棚の転倒などの対策はまだ進んでいるとは言い難い。今回は夜間の地震だったが、平日昼間なら子供の命にも関わりかねない。被災した学校の安全確保を進め早期の再開を目指すと同時に、非構造部材の耐震対策もさらに進めたい」と話している。

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2016.4.14 ふるさと納税に関する批判及び公会計制度について (2016年4月14、15日追加あり)
   
  ふるさと納税の仕組み      上 寄付額の推移     2014年度の上位  2015年度の状況
             (2011年は東日本大震災で増加)     2016.4.12     2016.4.13   
                                         朝日新聞       日経新聞
   
 人口一人当たり税収の偏在    国と地方の財政収支        世界の公会計制度

(1)頑張った地方が多くのふるさと納税(寄付金)を集めるのは当然で、機会は均等だったこと
 朝日新聞が、*1-1、*1-2のように、「2014年度のふるさと納税で地方自治体の純収支を集計すると、上位の10自治体に『黒字』の約24%、100自治体に黒字の7割が集中し、全国1741自治体のうち黒字は1271自治体で計約330億円だった」と記載している。

 また、「①長崎県平戸市の約14億6千万円をはじめ、佐賀県玄海町、北海道上士幌町など地元の肉や魚介類の返礼品を贈る自治体が黒字の上位だった」「②赤字の自治体は都市部に多く、横浜市が約5億2千万円で首位、東京都世田谷区、港区、名古屋、大阪、福岡各市が上位だった」「③地方でも、返礼品競争に慎重な自治体は赤字となり、宮崎市は約90万円しか寄付が集まらず、約2千万円の赤字」「④高所得者ほど寄付の上限が高く、実質2千円の負担で豪華な返礼品がもらえる仕組みになっている」と批判している。

 しかし、私が、このブログの2016年2月14日に記載したとおり、①のように、地域の産品をアピールしつつふるさと寄付金を集めるよう努力した自治体に多くの寄付金が集まるのは自然なことであり、②のように、働き盛りの成人を集めている都市部に赤字が出るのはふるさと納税制度の本来の趣旨であって、③のように、積極的にしなかった地域に寄付金が少ないのも当然であるため、この結果は批判的にではなく、頑張った地域を素直に祝福して記載すべきだと私は考える。

 また、④は、高所得者ほど多くの所得税・住民税を支払うため、控除限度額の計算を行えば所得が多い人ほど上限額が高くなるのは当然で、私は、この限度額計算は細かく言えば欠点もあるが比較的合理的だと考えている。しかし、その欠点については論評できず、「高所得者ほど寄付の上限が高い」などという妬みを煽るような批判は、無知でもできる国益にならないものであり、記事のレベルが低い。

 なお、黒字で上位の自治体は、ネットやテレビでも積極的に宣伝して寄付を集めたそうだが、民間企業と同様、それも努力のうちだろう。さらに「⑤2014年度の赤字が全国2位の約3億円だった東京都世田谷区は、2015年度には赤字が約6億円に倍増し、保育所の新設が妨げられた」などとしているが、東京都世田谷区は2014年度の一般税収が1,239億円、2015年度は1,332億円あり、これに対する⑤の6億円は誤差のうちほどに小さく、これと保育園の待ち行列を結びつけるのは言いがかりにすぎない。

 その一方で、例えば長崎県平戸市は2013年の一般税収が約27億円であり、この規模の自治体への14億円のふるさと納税の効果は絶大だ。また、地方の自治体で税収が小さいのは、企業の本社や職場の都市集中とそれに伴う生産年齢人口の都市集中が原因で、その生産年齢人口にあたる人材を教育してきた地方に、本人の意志で地方税の一部をふるさとに還元できるようしたふるさと納税制度は、見事にその目的を果たしたと言える。

 そのため、日本の国土計画の歪みまで考慮すれば、「⑥お金を出しても見返りを求めないのが本来の寄付文化で、今のふるさと納税制度ではそうした文化が根付かない」とか「⑦本来は住民サービスに回るはずの都市部の財源が目減りした」などとして、頑張った地方自治体を批判するのは、機会均等で差別はないのに頑張らなかった都市のエゴと言える。

 なお、次のように、2014年度の収支が赤字の自治体が記載されているが、東京都世田谷区と同じような大都市で、ふるさと納税によるマイナス額などは誤差のうちに入り、これは、ふるさと納税の意図しているところであって問題はない。
  1 横浜市          ▼5億1966万円
  2 東京都世田谷区    ▼3億 959万円
  3 東京都港区       ▼2億8380万円
  4 名古屋市         ▼2億5231万円
  5 さいたま市        ▼1億5756万円
  6 大阪市          ▼1億2424万円
  7 福岡市          ▼1億2001万円
  8 東京都杉並区      ▼1億1992万円
  9 東京都練馬区      ▼1億1830万円
  10 東京都江東区     ▼1億1734万円

 そのため、私は、*1-3のように、「ふるさと納税で、10町村の2015年度の寄付総額が2014年度の地方税収を上回り、高知県奈半利町では税収に対する寄付額の倍率が4.93倍もあったというのは、「よく頑張った」と素直に祝福すべきだと考える。そして、地方で水揚げされた魚や生産されたコメが、それだけ価値あるものと評価されたことを喜ばしく思っている。

(2)地方自治体への複式簿記による公会計制度の導入と国への導入の必要性
 *2のように、地方自治体には統一的な公会計基準による複式簿記の会計制度が導入され、平成27年度から平成29年度までの3年間で全ての地方自治体がこの基準による財務書類等を作成することとなり、地方自治体の財政は比較可能になった。しかし、この準備は、(私も提唱して)1995年前後から行われており、部分的には既に実施されていたため、上図のように、地方自治体の財政収支は改善してきており、複式簿記による統一会計基準の実施は遅すぎたくらいなのである。

 複式簿記による会計制度では、網羅性・検証可能性が担保されるので都合の悪い取引を隠すことはできない。また、資産・負債が、収入・支出の結果として網羅的に金額で表示されるので、債務だけを見て大騒ぎする必要はなくなる。また、資産の効果的な使い方を工夫し、税収が足りなければ税収を増やす工夫や税外収入を得る工夫をする基礎資料となる。さらに、正確な会計情報が開示され、正規の公認会計士監査が行われるようになれば、公債を発行して市場で資金を集めることも可能だ。

 そのため、今後は、価値の低い支出が多すぎる国の会計に、複式簿記による公会計制度を導入することが必要であり、上図のように、世界では多くの国が既に導入済である。

*1-1:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12307236.html
(朝日新聞 2016年4月13日) ふるさと納税、偏る恩恵 「黒字」の24%、上位10市町に
 自治体に寄付すると大半が減税される上に特産品などを受け取れる「ふるさと納税」で、寄付の受け入れ額から減税額を差し引いた地方自治体の収支を集計したところ、2014年度分は上位の10自治体に「黒字」の約24%、100自治体に黒字の7割が集中した。「地方を応援する」ねらいで導入されたが、赤字だった地方都市もある。朝日新聞が情報公開請求で、14年のふるさと納税に伴う自治体ごとの住民税の減税額を入手。総務省が昨年秋に公表した自治体ごとの14年度の寄付受け入れ額から差し引いて、収支を集計した。返礼品にかかる費用は含めていない。全国1741自治体のうち黒字は1271自治体で計約330億円。1位は魚介類の返礼品が人気の長崎県平戸市で約14億6千万円。佐賀県玄海町、北海道上士幌町など地元の肉や魚を贈る自治体が続いた。「赤字」の自治体は都市部に多く、横浜市が約5億2千万円で首位。東京都世田谷区、港区や名古屋、大阪、福岡各市が上位に入った。地方でも、返礼品競争に慎重な自治体が赤字となり、宮崎市は約90万円しか寄付が集まらず、約2千万円の赤字。平戸市のある長崎県では、県内の3割にあたる6市町が赤字だった。ふるさと納税は、寄付額の2千円を超える分を国の所得税と居住する自治体の住民税から減税する。高所得者ほど寄付の上限が高く、実質2千円の負担で豪華な返礼品がもらえる仕組みになっている。

*1-2:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12307210.html
(朝日新聞 2016年4月13日) ふるさと納税、ゆがむ理念 高所得者と一部自治体、もうけ大きく
 生まれ故郷や好きなまちを応援しようと始まったふるさと納税。多くの地方自治体が「まちおこし」に生かそうと熱心に取り組むが、寄付者への返礼品競争が過熱。競争の先頭を行く一部の自治体と高所得者ほど「もうけ」が大きくなる状況になっている。「うまい話にはご注意ください。ここだけの話、本日18:00に再入荷することが決定しました。うまさが話題の『肉と焼酎』がなくなる前にお申し込み頂きますようご注意ください」。3月下旬、宮崎県都城市はそんな新聞広告を出した。紹介された返礼品は「宮崎牛サーロインブロック」や地元でつくる芋焼酎「1年分365本(1本1・8リットル)」など。特集サイトでは、通販のカタログ感覚で豪華商品を選べる。焼酎1年分は、100万円以上を寄付した人が対象だ。この金額が減税対象となるのは、年間の給与収入が3千万円を超え、高額の所得税と住民税を納めている高所得者。100万円を寄付すると、2千円の自己負担を除いた99万8千円が減税され、小売価格で60万円超の焼酎1年分がもらえる。同市によると、「忘年会でふるまいたい」などと、経営者や医師らがこの返礼品を選んだという。朝日新聞の分析では、都城市は2014年度のふるさと納税の「黒字」額で全国9位。黒字上位の自治体は、ネットやテレビでも積極的に宣伝し、寄付を集める。安倍政権は減税される寄付額の上限を15年度の税制改正で倍増させており、寄付受け入れ額と減税額は大幅に増えている可能性が高い。総務省によると15年度の寄付受け入れ額は上半期で約450億円と、14年度の年間より2割多かった。収支が赤字なのは、人口が多く、高所得者が集まる都市部が中心だ。こうした自治体では、不十分な行政サービスが問題にもなっている。14年度の赤字が全国2位の約3億円だった東京都世田谷区は、15年度には赤字が約6億円に倍増した。世田谷区は待機児童数が全国で最も多く、区によると、6億円あれば120人規模の保育所を新設し、1年運営できるという。
■「見返りないのが本来の姿」
 14年度のふるさと納税の黒字は、上位1割に満たない100自治体に約7割が集まる。豪華な返礼品競争はさらに過熱しつつある。千葉県大多喜町は14年末から地元で使える「ふるさと感謝券」を導入した。ネットオークションで換金されており、こうした事例を問題視した総務省は今年4月、商品券や家電などを返礼品としないよう求めた。だが、大多喜町は感謝券の発行を続ける。「すぐにはやめられない」(担当者)。15年度は12億円超の感謝券を発行。町の家電店や旅館など約100店は感謝券で商品を売り、町が換金する。町はネット通販でブランド品を売る業者にも事実上、利用を認めた。こうした動きを見て、となりの千葉県勝浦市も4月から、市内で使える「かつうら七福感謝券」を返礼品に導入。「大多喜町が寄付を集めていたのを参考にした」(担当者)という。今年に入って、14年度の収支が赤字だった宮崎市はノートパソコン、鹿児島市は豚肉、焼酎などの返礼品を拡充した。となりの都城市と黒字額に約50倍の「格差」が生じた宮崎県日南市は今年3月から、60万円以上の寄付者に豪華クルーズ船の旅で「返礼」することにした。ただ、寄付者の「もうけ」部分の財源は、実質的に所得税と住民税という税金で賄われており、高所得者優遇との批判は強い。佐藤主光・一橋大教授(財政学)は「お金を出しても見返りを求めないのが、本来の寄付の文化。いまのふるさと納税の仕組みでは、そうした文化が根付かなくなってしまう」と指摘する。
2014年度に収支が赤字の自治体
 1 横浜市         ▼5億1966万円
 2 東京都世田谷区   ▼3億 959万円
 3 東京都港区      ▼2億8380万円
 4 名古屋市        ▼2億5231万円
 5 さいたま市       ▼1億5756万円
 6 大阪市         ▼1億2424万円
 7 福岡市         ▼1億2001万円
 8 東京都杉並区    ▼1億1992万円
 9 東京都練馬区    ▼1億1830万円
10 東京都江東区    ▼1億1734万円

*1-3:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20160413&ng=DGKKASFB08HCH_T10C16A4MM0000 (日経新聞 2016年4月13日) ふるさと納税額、全国10町村で地方税収超す、返礼品優先、地域還元半ば
 出身地や応援したい自治体に寄付すると居住地での税金が軽減される「ふるさと納税」で、2015年度の寄付総額が少なくとも全国10町村で年間の地方税収を上回った。自治体間では寄付を呼び込もうと返礼品の競争に拍車がかかっており、本来は住民サービスに回るはずの財源が目減りする課題も浮上している。日本経済新聞社が全国の自治体の15年度のふるさと納税の寄付額と、14年度の地方税収(決算ベース)を比較した。税収を上回った10町村のうち、税収に対する寄付額の倍率が最も高かったのは高知県奈半利町の4.93倍(寄付額は13億5400万円)だった。次いで、宮崎県綾町の2.44倍(同13億8000万円)、北海道上士幌町の2.23倍(同15億3700万円)が続いた。15年度から減税対象の寄付額上限が2倍になった影響もあり、15年度上期のふるさと納税総額は前年同期の3.9倍に膨らんだ。自主財源の乏しい小さな自治体には貴重な財源だ。奈半利町は農産物の加工販売所などを建設した。津波対策のため幼稚園や保育園の高台移転も今年度中に完了する予定だ。ただ、多くの自治体は寄付額の半分以上を住民サービスではなく返礼品の購入に充てている。カニ、牛肉など豪華な返礼品で寄付を集める競争が過熱しているためだ。奈半利町の返礼品は地元で水揚げした魚やコメで、購入費総額(約8億6000万円)は地方税収の3倍強となった。地元産豚肉が人気を集めている綾町も返礼品の購入費総額(約7億円)が地方税収を2割上回った。こうした実態を踏まえ、総務省は今月1日、商品券やパソコンなど換金しやすいものや豪華すぎるものを返礼品にしないよう総務相名で全国の自治体に通知。過度な返礼品競争を改めたい考え。総務省によると、14年のふるさと納税は東京、大阪、名古屋の三大都市圏の住民からの寄付額が全体の7割を占めた。財政規模の大きい都市部の自治体にとっては、他の自治体へのふるさと納税によって住民税の税収が減る課題が浮上している。「待機児童や高齢者介護への対応などに使うべき財源が失われ、住民サービスに与える影響は無視できない」(東京都世田谷区)との指摘がある。地方財政に詳しい関西学院大学の小西砂千夫教授(財政学)はふるさと納税について「都市部と地方の税源の偏在を是正する効果はある」と評価。ただ「返礼品競争の過熱など制度のひずみが顕著になれば、制度の存廃問題にも発展しかねない」と指摘する。

<地方自治体への複式簿記による公会計制度の導入>
*2:http://sennich.hatenablog.com/entry/2015/06/17/194708
(千日のブログ 2015/6/17) 【新地方公会計制度1】公会計の複式簿記とストック情報への期待
✱統一的な基準による地方公会計のポイント
 平成27年度から平成29年度までのわずか3年間で全ての地方公共団体が統一的な基準による財務書類等を作成することとされています。
その統一的な基準による財務書類等とは民間企業と同じ複式簿記によるものとされています。
✱統一的な基準による地方公会計マニュアル
 総務省は平成27年1月に『統一的な基準による地方公会計マニュアル』総務省|今後の新地方公会計の推進に関する実務研究会|統一的な基準による地方公会計マニュアルを公開してます。前回の記事では『上手くいくのかな?』という所で終わってました。是非とも上手くいって欲しいです。
  •少子高齢化
  •インフラの老朽化
 今後確実に働き手が減って税収は減り、老人の医療費、インフラを維持するためのコストは増加していきます。先細りとなる税収でインフラを維持していくことが喫緊の課題になっているんです。今後、シリーズとして『統一的な基準による地方公会計マニュアル』の中から制度の重要な部分を中心に記事を書いてみたいと思います。まずはマニュアルの財務書類作成にあたっての基礎知識より、1.単式簿記と複式簿記からです。
✱公会計の複式簿記=ストック情報の蓄積です
  •単式簿記では取引の記帳を現金の収支として一面的に行う=官庁会計
  •複式簿記では取引の記帳を借方と貸方に分けて二面的に行う=企業会計
 従来の地方公共団体の会計は単式簿記でした。その年度の納税額を何に幾ら使ったのかという公金の適正な出納がなによりも優先されたからです。
<1億円を使って建物を増築した>
 単式簿記では現金△1億円という記録になります。建物増築によって建物の価値が増えたことは帳簿上無視されるんです。複式簿記では現金△1億円と建物+1億円という記録になります。取引には常に表裏二つの面があるという考え方です。原因と結果でも良いです。複式簿記によって税金を1億円使ったというフロー情報だけでなく、建物が1億円増えたというストック情報も記録出来ます。
  •フロー情報=税金を1億円使った
  •ストック情報=建物が1億円増えた
 フロー情報はその年度の現金出納です。フローとは流れです。翌年にはまた新たな現金の出納があるのでゼロスタートです。これが今までの官庁会計です。ストック情報は建物の+1億円です。ストックとは蓄積です。これは翌年はゼロになりませんよね。複式簿記ではストック情報も記録出来るのです。
✱新公会計制度の複式簿記は大きな変革です
 ここ迄の説明で従来の官庁会計からとても大きな変革がされるんだということがお分かり頂けたでしょうか。複式簿記によるストック情報。これが大きなポイントで、ストック情報の為にやっているようなものです。
✱ストック情報の把握=固定資産台帳
 例として挙げた建物は『固定資産』です。地方公共団体では道路や水道管などのインフラが大部分を占めるでしょう。先に挙げたインフラの老朽化に対して適切な時期に適切な金額でメンテナンスをしていく為に、
  •何を(固定資産の種類)
  •どこに(住所や位置)
  •いつ(年月日)
  •いくら(金額)
使ったのかという情報を蓄積していく必要があるのです。この機能を有する情報が『固定資産台帳』というものです。
✱ストック情報による検証機能
 また、複式簿記によって作成される財務書類等の一つに貸借対照表があります。貸借対照表は会計年度末の資産、負債及び純資産の一覧表です。例えば、貸借対照表の建物の金額と固定資産台帳の建物の合計額は一致するはずですよね。このように相互を照合することでどちらかの誤りを発見して修正するという検証機能も期待されているんです。従来は公有財産台帳等と現物を照合していたのですが、公有財産台帳には金額情報が無かった。一方、固定資産台帳には金額情報があるので、現物の照合に加えて金額の照合も行えるんです。
✱住民として理解しておきたい部分
 このような取り組みを読者様のお住まいの地方公共団体(都道府県、市町村)で平成29年度までに行うことと決まってます。複式簿記によって蓄積されるストック情報を上手く活用出来るか、無用の長物となってしまうか……なにぶん初めてのことですので誰にもわかりません。しかし、私達の住んでいる地域の今後10年後、20年後の街並みを、良くも悪くも変えて行くかもしれない動きの一つです。大阪市の梅田地下道拡幅工事によって退去の決定した串カツ『松葉』。昭和17年の地下道開通後60年を超す歴史に幕を閉じた。あまり一般ウケするテーマではありませんが、誰にも無関係ではないのでボチボチ更新して行こうと思います。


PS(2016年4月14日追加):*3のように、ふるさと納税が企業まで拡大されると寄付金は増えるだろうが、6割しか税金から引かれなければ、残り4割が寄付者の負担となりおかしい。また、対象事業の選定は、総務省ではなく地方自治体が主体的に行うべきだが、事業を選定するのなら将来性ある事業でなければ共感を呼ばないだろう。その1つには、下の写真のように鉄道や高速道路を高架にし、高架下に商店街を配置して、街の再編を早める方法がある。共働き時代は時間の節約と利便性が一番で、駅の近くで用事が全部済むと助かるからだ。そして、下の写真のうち、パリの高架下は雰囲気がおしゃれで、道が広く、緑が多くて、電線もないのが素敵だ。また、他の目的で建設されたため発電していなかったダムで発電できるようにして再生可能エネルギーを増やしたり、医療・介護システムを構築したり、森林整備や環境維持活動を行ったりなど、共感を得られるような事業は多いだろう。

   
2016.4.14佐賀新聞     パリの高架下      浅草橋の高架下      その他イメージ

*3:http://www.saga-s.co.jp/news/national/10201/299978
(佐賀新聞 2016年4月14日) ふるさと納税、企業に拡大、夏ごろ対象事業決定
 改正地域再生法が14日成立し、ふるさと納税の企業版が本年度からスタートする。企業が社会貢献の一環として、応援したい地方自治体の地域活性化事業に寄付すると寄付額の約6割分が税金から引かれる仕組み。対象事業の第1弾が夏ごろに決まる見通しだ。企業が多い東京都などに偏る税収を地方に移すことで地方創生を後押しするのが狙い。国は、自治体への企業寄付の総額が現状の年間約200億円から2倍の約400億円に増えると見込む。個人のふるさと納税のように広がるかは未知数で、自治体の取り組みが課題となる。


PS(2016年4月15日追加):奨学金の必要額は地域によって異なり、例えば、東京都内に住宅があって東京の大学に行く人は、寮に入ったりアパートを借りたりせずにすむため住居費はかからないが、北海道や九州から東京の大学に行く人は、住居費がかかる上に、東京は地方より物価水準が高いので、親は余計に苦労するのである。そのため、地方自治体が企業から寄付を集めて、給付型奨学金を作ったり学生寮を整備したりなど、教育関係の事業をするのもよいだろう。

*4:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12310786.html
(朝日新聞社説 2016年4月15日) 奨学金制度 格差是正へ改善急げ
 大学生らを対象にした、返済の要らない「給付型奨学金」の仕組みをつくろうという動きが与野党で相次いでいる。共産、民進党などが打ち出し、自民、公明党も安倍首相に提言を渡した。政府も、5月にまとめる「1億総活躍プラン」に支援策を盛り込む方向だ。ぜひ実現へ向けて知恵を絞ってほしい。奨学金はいまや2人に1人の学生が借りている。授業料が増え、親も収入が減ったせいだ。奨学金は出身による格差を改善し、教育の機会均等を実現するためにある。返す必要のない給付型はあって当然のものだ。だが日本の場合、国の奨学金制度は貸与型しかない。先進国の中では異例だ。特に、借りた額に利子を払うものが人数枠の6割を超える。これでは奨学金とは名ばかりの「学生ローン」にすぎない。返済を延滞する人は2014年度末で約33万人に上る。年功賃金と終身雇用の日本型システムが崩れ、非正規労働が広がっていることが背景にある。未来を広げるはずの奨学金が逆に追い詰める結果になっている。これでは家庭が豊かではない子どもが「返す自信がない」と進学をあきらめかねない。無利子の枠を増やすとともに給付型の検討を急ぐべきだ。給付型実現への壁になるのは財源だ。対象となる学生の範囲や給付内容だけでなく、財源の確保についても、各党は具体案を明らかにしてほしい。検討すべきは、給付型だけではない。卒業後の収入に応じて毎月返す額を決める「所得連動返還型」の奨学金制度もだ。文科省の有識者会議が先月、一次まとめを公表している。決まった額を返さねばならない仕組みは、低所得の人にとって厳しい。それだけに、新しい制度が期待されていた。だが今回は、収入がゼロでも、猶予期間から外れると月2千円払わねばならないなど課題を抱えている。よりよい仕組みにするために議論が必要だ。学びを支える制度は何も大学の奨学金に限らない。現在でも「幼児教育の段階的な無償化」や、経済的に苦しい家庭の小中学生が対象の「就学援助」、高校生向けの「奨学給付金」などの政策がある。貧しさが世代間で連鎖し、格差が広がる事態は避けねばならない。幼児から大学生まで切れ目ない支援の仕組みをどう設計するか。検討を進めたい。


PS(2016年4月15日追加):唐津線の40~50年も走っているディーゼル車両は、もう取り替えの時期だと考える。今度は、すっきりした涼しげな色の蓄電池電車に換え、線路は次第に高架にして、市街地では店舗・公園・駐車場、農業地帯では農業用倉庫などに一階部分を貸し出して、そこからも収入を得ればよいと思う。そして、このような面白い事業であれば、賛同してふるさと納税してくれる人も多いだろう。

   
  上 現在の唐津線    日本の蓄電池電車     ロンドンの蓄電池電車   2012.3.22  
(いくら赤字でも色の合わない                                西日本新聞
 車両を繋ぐのは、センス悪
 すぎで見る人にストレス×

*5:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10102/300713
(佐賀新聞 2016年4月15日) JR唐津線 普通列車故障で走行できず
 15日午前8時40分ごろ、佐賀県唐津市のJR唐津線鬼塚駅で、下りの普通列車(1両)が故障で走行できなくなった。乗客6人は下車し、車両は別の列車に結合し移動させた。この影響で普通列車6本が運休、3本が最大2時間以上遅れるなどして200人に影響が出た。JR九州によると、車両内に空気を送り込む装置に不具合が生じたという。

| 経済・雇用::2015.11~2016.8 | 11:15 AM | comments (x) | trackback (x) |
2016.4.11 ドローンの危険性について
    
     <ドローンの回転するプロペラは凶器になり、小型カメラは覗きを可能にする>

(1)ドローンのリスクはテロだけではないこと
 *1のように、テロ対策のため、重要施設上空を小型無人機「ドローン」が飛行することを禁じる規制法が成立したそうだ。これは、首相官邸、皇居、外国要人がいる施設などとその周辺の上空飛行を禁止する法律だが、(2)で述べるように、ドローンの危険性はテロに使われるだけではない。

(2)ドローンのプロペラが人に接したらどうなるか考えるべき
 *2のように、ドローンでマンションに荷物を宅配する実証実験が千葉市で始まり、風が吹きすさぶ中、荷物を積んだドローンがマンションや大型商業施設の屋上と隣接する公園を往復して成功し、数年以内の実用化が目標だそうだ。

 しかし、荷物を積んでも飛べるほどの力を出すドローンのプロペラが人に当たれば、殺傷事故を起こすことは間違いなく、そのような事故が起きてから「想定外でした」とか「“信頼”していたのに」などと言うのは止めてもらいたい。従って、実用化にあたっては、①当たっても決して人を殺傷しない構造にすること ②カメラを搭載して、他人の家を勝手に覗いたり盗撮したりできないようにすること ③墜落すれば被害の出やすい人口密集地では飛ばさないことが、必要条件である。

(3)ドローンの落下も危険
 また、荷物を積んだ重量の大きなドローンが高いところから落下してくれば、人間に当たれば100%死亡し、家屋に当たれば破壊される。国は、「ドローン管制官」まで作ってドローンを飛ばすつもりのようだが、首相官邸、皇居、外国要人がいる施設やその周辺を飛行禁止にしても、高層マンションのベランダにドローンの離着陸場を設置することを義務付けるなどというのは、「一般市民の危険はどうでもいい」と言わんばかりで呆れた。

*1:http://qbiz.jp/article/82942/1/
(西日本新聞  2016年3月17日) ドローン規制法が成立 テロ対策を強化
 テロ対策強化のため、重要施設上空の小型無人機「ドローン」の飛行を禁じる規制法が17日午後の衆院本会議で可決、成立した。5月の主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)に向けた関係閣僚会合の皮切りで4月10、11日に広島市で予定されている外相会合までに施行される見込みだ。閣僚会合が迫る中、与党が成立を急いでいた。規制法は首相官邸や皇居、外国要人がいる施設などと周辺の上空飛行を禁止する。必要に応じて警察当局に不審なドローンの破壊も認める。ドローン規制では、改正航空法が昨年9月に成立したが、強制排除を認める規定がなく、テロ対策上の不備が指摘されていた。

*2:http://qbiz.jp/article/84548/1/
(西日本新聞 2016年4月11日) ドローン 千葉で宅配実験 戦略特区の産学官連携
●都市部初、マンションなど
 小型無人機「ドローン」でマンションに荷物を宅配する実証実験が11日、千葉市美浜区の幕張新都心で始まった。風が吹きすさぶ中、荷物を積んだドローンがマンションや大型商業施設の屋上と隣接する公園を往復した。国家戦略特区の規制緩和を活用した事業で、国と千葉市、楽天などの大手企業、研究機関が共同で実施。同種の実験は、過疎地の買い物難民対策として徳島県那賀町で2月に実施されたが、都市部では初めて。数年以内の実用化が目標で、今後、約10キロ離れた東京湾沿いの倉庫から海上を飛行して幕張地区まで荷物を運ぶといった、より高度な実験にも取り組む。この日は、ワインボトル1本を積んだドローンが「イオンモール幕張新都心」の屋上(高さ23メートル)から安定した飛行で公園に着陸。マンション屋上(同31メートル)からの運航も無事成功した。実験を基に、雨天や強風時でも安定飛行できる技術の確立や管制システムの設計を目指す。実験に使ったドローンを開発した千葉大の野波健蔵特別教授は「実用化に向けた課題を一つ一つクリアしていき、物流に革命を起こしたい」と話した。
●管制官資格 創設構想も
 高層マンションの立ち並ぶ千葉市・幕張地区で11日、ドローン宅配の実証実験がスタート。市は衝突事故を防ぐため、航空機の管制官をモデルにした「ドローン管制官」の資格を独自につくることも構想している。先進技術を活用して街の魅力を高め、関連産業の誘致にも取り組む。市は2020年の東京五輪・パラリンピックまでに事業化を狙う。同地区で高層マンションを建設予定の不動産業者に、各戸のベランダにドローンの離着陸場を設置するよう協力を求める方針。市内に進出したドローン関連企業に補助金を出す制度も本年度から始め、既に問い合わせが寄せられたという。3月下旬、同地区の幕張メッセで開かれたドローンの国際展示会で、熊谷俊人市長は「先駆的なアイデアと技術を集め、他にない町づくりを目指す」と強調した。

| 環境::2015.5~ | 04:55 PM | comments (x) | trackback (x) |
2016.4.4 電力自由化からクリーンエネルギーの選択へ ← 放射能公害を考慮できない人は、エネルギーや環境を語る資格がないこと (2016年4月4、6、7、9、11、12日に追加あり)
 
    電力自由化     世界の自由化状況   上      2016.3.31西日本新聞  上  
                          (原発より再生可能    (まだ電力自由化の仕組みがわか
                           エネルギーの方が     っていないのは、スポーツ・犯罪・
                           高いとしているのは、   天気をはじめ、馬鹿な番組しか
                           意図的で変である)    放送できないメディアの責任だ)

(1)「パリ協定」がなければ、温暖化対策もできなかった我が国の環境意識の低さ
1)イノベーションによる経済成長があるのに・・・
 国連の会議で2020年以降の温暖化対策国際的枠組み「パリ協定」が採択され、「今世紀後半に世界全体で温暖化ガスの排出量をゼロにする」とされた。そこで、イノベーションによって経済成長を達成し、より住みやすい国にするためには、*1-1のように、省エネや炭素税も重要だが、①発電の分散化 ②電力の地産地消 ③水素の利用 ④蓄電池の進歩と自然再生可能エネルギーの利用によって、すべての産業で使用するエネルギーを、安くて公害(当然、放射性物質やNOx、SOxなどの排出による公害も含む)の出ない方法で創ることが必要である。

 このうち、④の蓄電池は、*1-3のように、現在の100倍以上高速に充電できるリチウムイオン電池が開発され、これは、携帯端末、ウエアラブル機器、電気自動車のコスト削減と加速性能の向上に繋がるため、5年以内の実用化を目指すそうだ。「5年以内の実用化」というのは相当のんびりしているが、経産省も最近は、遅ればせながら2020年における世界の蓄電池市場は20兆円で、そのうち車載用蓄電池は8兆円に達すると推定しているとのことである。

2)環境の快適化もできるのに・・・
 環境を快適化するには、温室効果ガス(CO2)を削減して地球の気温上昇幅を2度以内に抑えるだけでよいわけではないが、*1-2のように、政府の「エネルギー・環境イノベーション戦略」案では、2050年の実用化を目指して重点的に開発を進める分野として、システム、省エネ、エネルギー貯蔵、自然エネルギー、二酸化炭素固定化の五つと人工知能を挙げたそうである。

 本当は、①どの公害も出さない ②自然の緑に囲まれた便利で居心地のよい街づくり など、必要なことは温室効果ガスの削減に限らず、いくらでもある。

(2)電力自由化のスタート
1)電力自由化の不完全性について
 (私が提案して始まった)電力小売りの全面自由化が、*2-1のように、2016年4月1日に始まり、大手電力会社10社の地域独占は廃止されて、8兆円規模の市場に新電力約260社が参入したそうだ。しかし、電力料が安くなれば、他のエネルギーから電力への切り替えが進むため、電力市場が8兆円に留まることはない上、発電方法を選べばクリーンなエネルギーを純国産で供給できるため、電力自由化とそれに伴う再生可能エネルギーへの転換は、日本にとって100点満点の解決になる。

 そのため、*2-2、*2-3に書かれているように、この電力小売り全面自由化は再生可能エネルギーを伸ばす契機にしたく、間違っても原発依存に逆戻りさせたくないため、新電力には脱原発の原動力になって欲しいわけである。そして、それができるためには、消費者が電源を選択できるよう電力会社の発電方法開示は義務化すべきで、新電力が大手電力会社に支払う送電料に原発の使用済核燃料再処理費が算入されるなどの制度上の問題点も解消されるべきだ。つまり、政府は、原発ありきの不公平な姿勢を改めるべきなのである。

 *2-3に、信濃毎日新聞が、電力自由化で社会を変える市民の選択が可能になると題して、課題はいくつも残されており、送配電網の恣意的運用や不適正な使用料金を挙げている。大手電力の発電部門と送配電部門の分離が4年後に先送りされたことで、その間に新電力が破産してはせっかくの電力自由化も無意味になるため、公正な競争が不可欠なのである。しかし、他の産業と同様に公正取引委員会ではなく電力取引監視等委員会が監視する役割を担うのは、既に公正とは言えない。

2)九州では
 九州では、*2-4のように、九電の入社式で、瓜生社長が「原発の早期再稼働で収支改善目指す」と述べたそうだ。九電は、昨年、川内原発1、2号機(鹿児島県)を再稼働させ、2016年3月期の連結決算は5年ぶりに黒字転換する見込で、九電の社長は「抜本的な収支改善に向け、玄海3、4号機(東松浦郡玄海町)の早期再稼働を目指す」と強調したそうだが、原発にはリスクと多額の税金と未解決の多くの問題が残されており、それを明るみに出すには、金額で示すのがよいだろう。

 さらに、*2-5は「安い電気、消えぬ不安 過当競争、寡占再来も」と題しており、「①電力小売りが全面自由化され、100社を超す企業が家庭向け市場に参入した」「②競争が激化する中、新電力大手が撤退や収益悪化を余儀なくされるなど早くも厳しい選別にさらされている」「③電気を自由に選ぶ時代は何を意味するのか。競争相手が増え、営業現場では激しい値下げ合戦が繰り広げられている」「④先行して自由化を進めた欧米では新電力の倒産や発電設備への投資抑制が続出し、大手の寡占が進んで逆に料金が上がった例もある」「⑤電気はつくれば売れるものではなくなった」など、西日本新聞は後ろ向きの発言が多い。

 しかし、①③⑤は、どの市場でも普通に起こっていることで、これまでは電力についてのみこのような市場競争がなく地域独占であったため、総括原価方式が通用して料金が高止まりし、あらゆる産業の足を引っ張っていたのだ(こんなことも知らないで記事を書いた?)。さらに、②は、電力会社の発電方法の開示を義務化して消費者が電源を選択できるようにし、新電力が大手電力会社に支払う送電料の問題点も解消して、送配電網の恣意的運用を不可能にして初めて、公正な市場競争ができるものである。また、④のヨーロッパの事例は、仮にそれが本当であったとしても、日本でもそれを繰り返す必要はない。

 そして、これらを速やかに解決する手段として、上下水道を持っている地方自治体が送配電設備を作って公正中立で安価な送配電料で送配電を行えば、電線の地中化も同時に行われてよいと考える。

(3)原発回帰はありえない
 *3-1のように、安倍首相が、核物質や核施設の防護・管理強化を話し合う「核安全保障サミット」で演説して、フクイチ事故を踏まえ「日本は二度とあのような事故を起こさないとの決意の下、原子力の平和的利用を再びリードすべく歩み始めた」と原発の再稼働推進を宣言されたそうだ。

 しかし、いくら決意しても、原発事故発生の確率が0でなく低いとも言えないことは、フクイチ後の日本の対応を見れば誰にでもわかることだ。そのため、事故の教訓を活かすなら、原発は止めてエネルギーの転換を行うべく、イノベーションを進めるべきである。

 なお、*3-2のように、ブリュッセルで起きた連続テロを受けて、仏エネルギー大手エンジーは、ベルギー当局の要請を受け、同社が運営するベルギー南部ティアンジュ原発の稼働中の原発の大半の作業員を避難させたそうだ。

 また、*3-3のように、福島県下の多くの小中学校周辺の土壌で、「放射線管理区域」を上回る高濃度のセシウムが検出されるという驚愕の事実が「女性自身」に続き「週刊プレイボーイ」の調査でも判明したが、原発村広告漬けの「週刊新潮」は影響を否定しているそうだ。住民を被爆させながら県や村を維持するのは守るべきものを間違えているため、他の原発地元も為政者のこの発想を忘れてはならない。

 さらに、*3-4のように、フクイチ事故を受けて茨城や千葉の市民団体が1800人余りの子どもの甲状腺を検査したところ、「小さなしこりやのう胞と呼ばれる液体がたまった部分があるものの、特に心配はなく経過観察」とされた子どもが1139人、「一定以上の大きさのしこりなどがあり、さらに詳しい検査が必要」とされた子どもが7人で、担当医師は原発事故の影響とは判定できないとしているそうだが、それは疫学調査をすればすぐわかることである。そして、原発事故の影響を受けるのは子どもだけではない。

 *3-5のように、フクイチ事故に伴って福島県の避難指示区域外から千葉県に自主避難した6世帯20人は、国と東電に計2億2千万円の損害賠償を求め、国と東電側は請求棄却を求めているそうだ。

 このような中、*3-6のように、九電川内原発(鹿児島県薩摩川内市)から30〜40キロ圏の鹿児島県出水市、阿久根市、伊佐市と熊本県水俣市の複数の脱原発市民団体や市議が、2016年4月24日、新組織「川内原発を考える肥薩ネットワーク」を設立するそうだ。新組織の会員は200人規模で、4市の市議5人も加わる予定であり、「互いの地域の課題を持ち寄り、協力して活動したい」とのことである。

*1-1:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20160325&ng=DGKKZO98811600U6A320C1KE8000 イノベーションを考える 第5章 成長に果たす役割(6) 「パリ協定」が電力後押し 東京大学教授 大橋弘
 昨年末に、国連の会議で2020年以降の温暖化対策の国際的枠組み「パリ協定」が採択されました。今世紀後半に世界全体で温暖化ガスの排出量をゼロにすると定めています。パリ協定を踏まえ、わが国は「地球温暖化対策計画案」をまとめ、省エネルギーと再生可能エネルギーで野心的な目標を設定しました。省エネでは2%程度の経済成長を前提にしながら、30年度に向け、12年比で35%のエネルギー効率改善を目指しています。過去20年間の効率改善は約10%ですので、極めて高い目標です。1970年代は石油価格の高騰が省エネ技術を発展させました。石油価格が低迷する現在では、それに代わる省エネのインセンティブ(誘因)が必要です。炭素税はその候補になりえます。家庭や運輸部門など各部門間でバランスの良い省エネ技術の開発が求められます。再生エネでは現状の2倍の導入量が目標ですが、低廉・大容量で長寿命の蓄電池の開発が有効です。日が沈むと発電しない太陽光発電も、蓄電池が登場すれば夜でも太陽光で発電した電気を使えます。蓄電池の普及は再生エネの分散型電源としての価値を高め、地域で発電した電気をその地域で消費できるようになります。電力の地産地消が進むと電気を他地域から送る必要が減り、送電に伴う損失も減少します。一方で地産地消を超えて再生エネを大量導入する施策も取られており、政策の整合性が必要です。また、余った電気を水素に変換して利用すれば、水素を使った燃料電池車の普及を後押しする可能性があります。人口減などを背景に国内の電力需要は今後低減していきます。電力分野の技術開発は海外展開を視野に入れる必要があります。送配電系統が脆弱な新興国地域では、電力システムの分散化に向けたイノベーションは特に重要です。技術的に旧態依然といわれる電力システムですが、分散化を推し進めれば、イノベーションが起こる日はそう遠くないかもしれません。

*1-2:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12275353.html
(朝日新聞 2016年3月25日) 温室ガス削減へ技術戦略 人工知能活用・700キロ走れる蓄電池
 内閣府の有識者会合は24日、革新的な技術を開発して温室効果ガスの排出を大幅に減らすことを目指す「エネルギー・環境イノベーション戦略」の案をまとめた。日本発の技術を実現、普及させることで、世界全体の排出量を最大で年100億トンほど減らす効果を期待するという。昨年末の国連気候変動会議(COP21)に合わせ安倍晋三首相が策定を指示していた。政府の総合科学技術・イノベーション会議で4月中にも正式決定する。戦略案では、2050年の実用化を目指し重点的に開発を進める分野として、システム、省エネ、エネルギー貯蔵、自然エネルギー、二酸化炭素固定化の五つを挙げた。発電量が変動する自然エネルギーを増やすため、人工知能などを活用して電力システム全体を効率化させる技術などを盛り込んだ。内閣府によると、世界全体の排出量は30年に約570億トンと見込まれている。気温上昇幅を国際社会が目指す2度以内に抑えるには、50年までに300億トン以上減らす必要がある。戦略案に掲げた技術を普及させることができれば、数十から100億トンほどの削減につながるという。今後、産業界とも連携して開発を進める。島尻安伊子科学技術担当相は「2度目標を実現するためにはイノベーション(技術革新)なくしては不可能」と述べた。

*1-3:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20160404&ng=DGKKZO99229380T00C16A4TJM000 (日経新聞2016.4.4)充電100倍速い電池 カネカと愛知工大、リチウムイオンで
 カネカと愛知工業大学の森田靖教授らは、100倍以上高速に充電できるリチウムイオン電池を開発した。電極に独自開発の有機材料を使っており、携帯電話なら10分で充電できるとみられる。携帯端末やウエアラブル機器、電気自動車などの用途に向けて、5年以内の実用化を目指す。開発したリチウムイオン電池は、正極の材料として、TOTと呼ぶ有機分子にカーボンナノチューブを混ぜたものを用いた。体積あたりにため込める電子の数が多く電気伝導度も高いため、効率よく充放電できる。試作した体積1立方センチメートルのコイン型リチウムイオン電池は36秒で充電でき、5000回充放電をしても性能が落ちなかった。携帯電話用の大きさなら10分ほどで充電が完了する見通し。大容量の電池が必要な電気自動車でも、充電時間を大幅に短縮できる。現在のリチウムイオン電池は正極に希少金属であるコバルトの酸化物を用いており、同じ大きさのコイン型電池の充電に数時間かかる。大電流を得るのも困難で、電気自動車では加速時などに備え、電気をため込んで一気に流すキャパシタという装置を搭載している。新開発の電池は大電流を流せるのでキャパシタが不要になる。コスト削減と加速性能の向上につながると期待される。開発した電極は有機物材料なので、曲げたり伸ばしたりしても壊れない。丸めて運べる電子ペーパーや、体に付けて使う生体センサーなどのウエアラブル機器などの用途にも向く。有機ELなど曲げられるディスプレーはすでにあるが、これまで曲げられる電池がなかったため、用途が限定されていた。現在のリチウムイオン電池は充放電しすぎると発火することがあり、何重もの安全策が講じられている。新開発の電池は過充電しても発火などの事故は起きておらず、安全性も高いとみられる。今後は電気自動車向けに大型化した電池で性能と安全性を確かめる。充電可能な蓄電池の市場は、今後大きく成長する見通し。経済産業省は2020年に世界の蓄電池市場は20兆円、うち車載用蓄電池は8兆円に達すると推定しており、メーカーや研究機関が競って開発を進めている。

<電力自由化>
*2-1:http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2016033101001886.html
(東京新聞 2016年4月1日) 電力小売り自由化がスタート 8兆円市場に異業種参入
 家庭が電力会社を選べるようになる電力小売りの全面自由化が1日、始まった。東京電力や関西電力など大手電力10社の地域独占が崩れ、約8兆円の市場が開放される。ガス会社や石油元売り、通信など異業種が参入し顧客獲得を競う。政府は料金の低下やサービスの向上を狙い、エネルギー分野の規制緩和をさらに進める。新規参入の電力小売り会社として政府に登録したのは266社(3月25日時点)。東京ガスや大阪ガスなど大手都市ガス、地域のガス会社、JXエネルギーなど石油元売り系、KDDIなどの通信会社や私鉄の東京急行電鉄が加わった。

*2-2:http://dd.hokkaido-np.co.jp/news/opinion/editorial/2-0052982.html
(北海道新聞 2016年4月1日) 電力自由化 再生エネ伸ばす契機に
 家庭などを対象に、電力小売りがきょう全面自由化した。東京電力、北海道電力など大手10社の地域独占が崩れ、8兆円規模の市場に新電力約260社が参入する。消費者が電力会社を自由に選べる大きな転換点を迎えた。自由化の歩みは欧米諸国と比べて20年近く遅れている。政府は公正な競争を通じて、料金の引き下げを促さねばならない。全面自由化は原発、火力発電など大規模電源に依存する構造を変えるきっかけになる。再生可能エネルギーを活用する新電力には、脱原発の原動力になってほしい。ただ、再生エネの電源は不足している。民間企業の拡大に向けた取り組みに加え、政府の支援が欠かせない。自由化は、大手電力の発電と送配電部門を切り離す2020年の発送電分離が総仕上げとなる。小売り全面自由化では、全国でガス、石油や通信関連など異業種が参入し、道内では北海道ガス、流通関連企業など十数社がサービスを始める。北海道は太陽光、風力、バイオマスなど再生エネの宝庫だ。その特性を十分に生かすべきだ。国内の再生エネの現状の発電量は水力を除けば数%にすぎない。道内を含む風力発電基地の計画をはじめ、国境を越えて再生エネによる電気を融通する民間の構想もある。着実に再生エネの電源を増やすことが大切だ。さらに、天候などで出力が不安定になる再生エネの欠点の克服に向け、送電網の拡充や蓄電池の開発で政府の後押しが求められる。気になるのは、火力、原発、再生エネなど電源の構成の情報開示に、再生エネを重視したり自社電源を持つ企業を除き、多くの新電力が消極的な点だ。経済産業省の電力取引監視等委員会が、開示を努力義務にとどめたことが背景にある。環境にやさしい電源かどうかは、消費者にとって大切な判断材料だ。一層の開示に期待したい。大手電力と比べた新電力の電気料金の割引率は、標準的な家庭で数%にとどまる例が多い。電気以外の商品とのセット割引を含め、価格設定で一層の工夫が必要だ。見過ごせない制度上の問題もある。新電力が大手に支払う電気の託送料金には、原発の使用済み燃料の再処理費が算入されている。再生エネを扱う新電力も原発関連費用を間接的に負担する矛盾が生じてしまう。政府は原発ありきの姿勢を改めるべきだ。

*2-3:http://www.shinmai.co.jp/news/nagano/20160401/KT160331ETI090008000.php (信濃毎日新聞 2016.4.1) 電力自由化 社会を変える市民の選択
 電力小売りの全面自由化がきょうから始まった。家庭が契約する電力会社を選べるようになった。必要な登録を得た企業は200社を超える。大手電力会社が独占していた8兆円の市場をめぐり、新たな競争がスタートした。県内でも通信やガス会社などが新規参入し、本業の商品とのセット割引や、各種のポイントサービスとの連携を打ち出している。どの電力会社を選べばいいのか、悩んでいる人も多いだろう。各社のサービスをじっくりと比較して選択したい。
<恣意的運用の懸念>
 課題はいくつも残されている。まず必要なのは公正な競争環境の確保である。今回参入した新電力は、現時点では大手電力会社の送配電網を使って電力を供給する。大手電力が特定業者を優先したり、新電力の送電を受けつけなかったりすれば競争が成り立たない。大手電力の発電部門と送配電部門の分離は4年後に先送りされた。現状では、大手電力が競争力確保のため、恣意的運用する懸念が残る。送配電網の使用料金も適正にする必要がある。自社電源を持たない多くの新電力が電力を調達する市場に、余剰電力が十分に供給されることも必要だ。経営基盤が強くない新電力も多い。自治体や電力会社から電力を仕入れ、公共施設などに供給してきた新電力大手の日本ロジテック協同組合(東京)が、破産申請手続きの準備に入ったことも判明している。公正な競争は電力の自由化に不可欠だ。鍵を握るのは、電力取引監視等委員会である。電力取引が適切に行われているかチェックする。立ち入り検査や業務改善勧告をする権限も持つ。問題は、委員会が経済産業相の直属機関であることだ。公正取引委員会などに比べ独立性が弱い。経済産業省は大手電力と一体になって原発政策を進めてきた。委員会が同省の影響を受ける心配はないのか。消費者の信頼を得るため、組織の位置付けを見直す必要がある。
<少ない情報開示>
 情報の開示も欠かせない。日本生活協同組合連合会の調査では、原発や火力、再生可能エネルギーといった電源構成を電力会社の選択に「必要な情報」とする回答が8割以上に上った。それなのに経産省も電力会社に対し、自主的な開示を要請するにとどまる。発電方法を開示している事業者も少ない。原発が含まれている電源を拒否し、価格が多少高くても再生可能エネルギーに積極的に取り組んでいる企業を応援したい消費者もいる。地産地消のエネルギーを選択したい人や、地球温暖化防止に向けて二酸化炭素(CO2)の排出がない電源を選びたいという考え方もあるだろう。消費者は自らの選択の結果として、電力業界や社会を変えることもできる。情報が不足すれば自由化の意義が大きく損なわれる。消費者が電源を主体的に選ぶ権利を確保しなくてはならない。電力会社は積極的に情報を明らかにするべきだ。
<大手電力の抵抗>
 自由化を進める取り組みは1990年代からあった。割高な電気料金が経済の足かせになっているという理由だった。企業向けの小売り自由化が実現したのは2000年3月。その先は、経営環境の悪化を懸念する大手電力や政界の安定供給を掲げた強い抵抗に阻まれた。事態が変わったのは、東日本大震災と東京電力福島第1原発事故だった。地域間の電力融通がうまくいかず、東電管内が計画停電に追い込まれるなど供給体制のもろさが露呈。電気料金も高騰した。競争環境で災害に強い供給体制をつくり、料金を抑制することが求められ、民主党政権当時の12年7月に自由化方針が決まった。大手電力の抵抗は続いている。4年後の「発送電分離」実施を定めた改正電気事業法の付則には、実施前に電力の需給改善の進み具合を検証し「必要な措置を講ずる」と盛り込まれた。大手電力の主張を取り入れたとされ、「原発再稼働が遅れる場合は分離を延期する」という解釈が、電力会社や政界の一部に広がっている。安全性が確保できず再稼働できない原発は、膨大な維持費だけがかかる。自由化が進んで競争が激しくなれば、大手電力の経営の足かせとなる。だからといって自由化阻止に動くのは筋違いだ。原発が経済的に見合わないのなら、廃炉を進めるしかない。原発なしでも電力供給に支障が出ないことは、震災後の原発停止で明らかになっている。自由化を止める理由にはならない。新電力が送配電網を大手と公平な条件で利用できる「発送電分離」は自由化の成否を握る。抵抗は消費者の利益を損なう。

*2-4:http://www.saga-s.co.jp/column/economy/22901/296208
(佐賀新聞 2016年4月2日) 九電入社式で社長、早期再稼働で収支改善目指す
 九州電力はは1日、福岡市で入社式を開いた。瓜生道明社長は新入社員約200人を前に、この日から始まった電力自由化に触れ「エネルギー業界は本格的な競争時代を迎える。九州域内外や海外の事業に積極的に取り組みたい」と訓示した。九電は昨年に川内原発1、2号機(鹿児島県)が再稼働し、2016年3月期連結決算は5年ぶりに黒字転換する見込みだ。瓜生社長は「抜本的な収支改善に向け、玄海3、4号機(東松浦郡玄海町)の早期再稼働を目指す」と強調した。新入社員の縄田由香利さん(23)は式典で「電力自由化を飛躍のチャンスと捉え、九州のためにできることは何かを考えて行動したい」と述べた。

*2-5:http://qbiz.jp/article/83843/1/
(西日本新聞 2016年3月31日) 安い電気、消えぬ不安 過当競争、寡占再来も
 4月1日、電力小売りが全面自由化され、100社を超す企業が家庭向け市場に参入する。競争が激化する中、新電力大手が撤退や収益悪化を余儀なくされるなど、早くも厳しい選別にさらされる。消費者もリスクと恩恵の見極めに戸惑う。「電気を自由に選ぶ時代」は何を意味するのか。「こっちが年間600万円の値下げ効果があると提案したら、ライバル会社は1千万円を示した。そんなに下げられるはずがない」。企業向けに電力を売る新電力大手の九州にある代理店関係者はこう嘆く。競争相手が増え、各社が販売量の確保を優先するため、営業現場では激しい値下げ合戦が繰り広げられている。この関係者は警鐘を鳴らす。「名だたる大手も安売りしている。省エネの助言やアフターケアなど、今までと違うサービスで本来は競うべきなのに」。だが懸念は表面化した。新電力5位の日本ロジテック協同組合(東京)の経営破綻だ。自前の発電所を持たず、自治体などから余剰電力を仕入れ、公共施設などに販売。事業拡大を続けたが資金繰りが行き詰まったとみられる。家庭向けにも参入を予定したが、今月末で事業から撤退する。先行して自由化を進めた欧米では、新電力の倒産や発電設備への投資抑制が続出。大手の寡占が進み、逆に料金が上がった例もある。日本もその予兆なのか。コスト低減が鍵。電力自由化に詳しい日本総合研究所創発戦略センターの瀧口信一郎シニアマネジャーは「自前の電源を持つなどコストを抑えられなければ、体力のない企業は淘汰(とうた)される」と指摘する。だが、自前の電源を保有しても巨額投資に見合う利益が得られるかは不透明だ。大手電力が市場を独占してきたこれまでと違い、電気は「つくれば売れる」ものではなくなった。「大規模でなく、少ない量での卸販売の交渉を進めている。九電ばかりに頼ってはいられない」。西部ガス(福岡市)の幹部はこう明かす。同社は最大出力160万キロワットの液化天然ガス(LNG)火力発電所を北九州市に計画。九電に電気を販売する方向で長期交渉してきたが、九電も原発再稼働の時期や需要動向が読めず、宙に浮いたままだ。このままでは先に進めない−。西部ガスは投資リスクの小さい発電所の小規模化と「九電以外」への販売を視野に動き始めた。切り替えは0.1%。九州の家庭向け市場への参入は三十数社。どこも「九電よりお得」を掲げ、九電も「億単位」(幹部)を投じ、テレビCMなどで新料金をPRする。“序盤戦”は九電の強さが目立つ。九電から他社に流れたのは23日時点で約9千件と、九電の小口顧客の0・1%どまり。九電幹部が「予想より少ない」と言うほど、関東や関西に比べて動きがない。「数百件の申し込みがあり、まずまずの数字。今後は伸びる」(鹿児島市のナンワエナジー)と強気な企業もあるが、消費者の視線は甘くない。西日本新聞が行った九州7県の100人アンケートでは、35人が九電の現行料金を「高い」と感じている。一方、95人が契約先を他社に「切り替えない」「未定」とした。「制度の仕組みや料金の違いが分からない」との理由が最多だが、切り替えに対する潜在的な不安が根強いのも事実だ。だが消極的な「様子見」は、結局は既存の大手電力が圧倒的なシェアを持ち続け、料金低減につながらない恐れもある。電力中央研究所の筒井美樹主任研究員は「供給余力の状況や原油価格次第で、容易に値下げ競争が終わる」と指摘。健全な競争や価格を維持するためにも「消費者も企業を選ぶ目が必要となる」としている。

<原発回帰はありえない>
*3-1:http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201604/CK2016040202000142.html (東京新聞 2016年4月2日) 「原子力利用再びリードする」 首相、原発推進を宣言
 安倍晋三首相は一日午前(日本時間二日未明)、核物質や核施設の防護・管理強化を話し合う「核安全保障サミット」で演説し、東京電力福島第一原発の事故を踏まえ「日本は二度とあのような事故を起こさないとの決意の下、原子力の平和的利用を再びリードすべく歩み始めた」と原発の再稼働推進を宣言した。事故から五年を経ても収束の道筋が見えない福島第一原発の現状には言及しなかった。首相は演説で「事故の教訓を原発を導入するすべての国と共有し、安全性や事故対策についての知見を世界に広げることが日本の使命だ」と強調。各国への支援、安全基準に関する国際協力などを積極的に行っていく考えを表明した。福島第一原発では、現在も放射能汚染水の対策に追われる。福島県では十万人近くが避難生活を送り、放射性物質を含む汚染土を処分するめどもついていない。東電や国から十分な賠償が得られていないとして集団訴訟も相次いでいる。首相は、こうした状況に関する説明は避けた。一方で、原発の再稼働に関しては「世界で最も厳しいレベルの新規制基準をつくった」と主張。新規制基準をめぐっては、大津地裁が三月、新規制基準を疑問視し、稼働中の関西電力高浜3、4号機(福井県高浜町)の運転差し止めを決定したばかりだ。さらに、首相は、日本は国際原子力機関(IAEA)の下、高水準の透明性を保ってプルトニウムを厳格に管理していると説明。「利用目的のないプルトニウムは持たない」との方針で核物質の最小化、適正管理に取り組んでいると強調した。各国が原子力の平和利用を将来も続けるには「完全な透明性の確保が必要だ」と訴え、日本が支援していく考えも示した。日米両政府は核安保サミットに合わせ、京都大の研究用原子炉から高濃縮ウランを撤去するとの合意を盛り込んだ共同声明を発表した。首相は演説で「世界の核セキュリティー強化への大きな貢献だ」と述べた。

*3-2:http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160322-00000166-jij-eurp
(時事通信  2016年3月22日) 原発作業員の大半避難=ベルギー南部
 ロイター通信によると、仏エネルギー大手エンジーは22日、ベルギー当局の要請を受け、同社が運営するベルギー南部にあるティアンジュ原発の大半の作業員を避難させたことを明らかにした。原発は稼働中で、稼働に必要な作業員は残しているという。ブリュッセルで起きた連続テロを受けた措置とみられるが、何らかの異変があったかどうかは不明。 

*3-3:http://lite-ra.com/2016/03/post-2116.html (LITERA 2016年月31日号) 福島の高濃度放射能汚染が「女性自身」に続き「週プレ」の調査でも判明! 影響否定の「週刊新潮」は原発村の広告漬け
 先日、「女性自身」(光文社)3月22日号が福島県下の多くの小中学校周辺の土壌で、「放射線管理区域」を上回る高濃度のセシウムが検出されるという驚愕の事実を報道したことを取り上げたが、今度は「週刊プレイボーイ」(集英社)が「県や村を維持するために住民を被爆させる“棄民”政策がさらに進んでいた!!」(3月14日号)、「原発事故から5年たっても、福島の汚染地域は住んでいいレベルではない!!」(3月21日号)と連続して福島県の各地の放射線土壌汚染と行政の欺瞞の実態をレポートしている。同誌の調査によればやはり「女性自身」の調査同様、多くの場所で信じられない数値が出ていた。例えば2014年に「特定避難奨励地点」が解除された南相馬市原町区馬場にある民家の裏庭では毎時1μSv(マイクロシーベルト)を超える空間線量があったという。これは一般の被爆限度である年間1mSv、毎時に計算すると0.23μSvを遥かに上回る数字だ。また来年3月に避難者指示区域解除を目指す飯館市の中学校では、雪に覆われているにも関わらず空間線量が0.7μSvを超える場所が何カ所もあり、雨水を測定すると80Bq(ベクレル)/kgだった。これは飲料水基準の8倍もの数値だという。また、早期の居住制限解除を目指し住民から猛反発にあった南相馬市小高地区の小学校でも1平方m当たり30万Bqもの土壌汚染が見つかっている。これはなんと事故前の3000倍もの汚染だ。
「一般の人が立ち入りできない放射線管理区域は4万Bq/㎡。それよりも7倍近い場所を『安全』と言い、子供たちを遊ばせようとしているのが今の政策だ」(14日号記事より)。まだまだある。南相馬市高倉にある通学路の土からは400万Bq/㎡、飯館村の学校からは1000万Bq/㎡を超える汚染土も見つかっているが、同誌が測定した放射能プルームから外れた新潟の土壌に比べ、なんと100〜2400倍もの数値だという。こうしたホットスポットが点在する場所に住民や子供たちを帰還させる。同誌ではこれを“棄民”と表現しているが、まさにその通りだろう。記事には今年1月に飯館村中学校の校内を測定した市民団体の小澤洋一氏のこんなコメントを寄せている。「私が今年1月に校内を測定したときには、毎時20μSvの場所がありました。村はまずこの小中学校を再開して、小中学校の授業を始めると聞いています。子供たちが避難する福島市や川俣町からスクールバスでここまで送迎するようです。ですが、これではわざわざ被爆せるために通学するようなもの」。同誌では学校だけでなく様々な場所で土壌を測っているが、その結果も驚くべきものだった。「そもそも法律では、4万Bq/㎡以上に汚染された場所は『放射線管理区域』に指定され、区域内には一般人は入れないようにしている。18歳以下の就労も禁止だ。理由は、それたけの放射線を浴び続ければ人体に悪影響があるから。しかし、福島の土壌を検査すると、多くの場所でこの基準をいとも簡単に上回ってしまうことがわかっている」(集英社「週刊プレイボーイ」 2016年月21日号記事より)。しかも、行政や自治体には「住民を守る」という発想はなく、頭にあるのは「自治体の維持」ばかりで恫喝まがいのことまで行っている。それが避難区域解除に伴う賠償金の打ち切りだ。「除染して線量が下がったから帰ってきても安全と宣伝し、帰ってこられるようにインフラも整えた。だから元の自治体に戻ってこない住民には補助を打ち切る。これでは、体裁を整えるためだけに無駄金だけが突っ込まれ、住民は命の危険に晒されることになる」(同14日号記事より)。子供の被爆を恐れる親が元の場所に戻らなければ、補助金は打ち切られ全ては自己責任というわけだ。既に福島県の166人もの子供たちが甲状腺がんに侵されているというのに、子供たちをさらなる被爆に晒し、欺瞞に満ちた“安全神話”で帰還を強制する。避難地区に指定された人々は福島第一原発事故直後、激烈な放射線に晒された。そして5年経った今、今度は根拠のない“安全宣言”と賠償金打ち切りという脅迫で、“第二の被爆”に晒されようとしている。さらに問題なのは、こうした調査や報道が「女性自身」や「週刊プレイボーイ」、テレビでは「報道ステーション」といったごく一部でしか報じられないことだろう。しかも電力会社や電力団体が、またぞろメディアに対しての原発広告というバラマキ工作を再開させている。このままでは再び、電力会社のメディア支配、そして原発の安全神話が復活しかねない。実際、毎号のように電事連の原発広告を掲載している「週刊新潮」(新潮社)は、3月24日号で、福島での「甲状腺がん」増加を報道した「報道ステーション」にかみつき、まったくデタラメな根拠を並べて、甲状腺がん増加を「過剰診断」だと断定した。そうした中、事故から5年経った現在でも一貫して放射線や健康問題を報じ続けている「週刊プレイボーイ」や「女性自身」には、圧力や懐柔に屈することなく、これからもぜひ告発を続けてもらいたい。

*3-4:http://kodomozenkoku-news.blogspot.jp/2014/11/blog-post_9.html (情報ブログ 2014/11/9) 関東子ども健康調査支援基金による甲状腺エコー検査の結果が報道されました。
 11月9日 6時04分東京電力福島第一原子力発電所の事故を受けて茨城や千葉の保護者などで作る市民団体が1800人余りの子どもたちの甲状腺を検査したところ、このうち7人が「一定以上の大きさのしこりなどがあり、さらに詳しい検査が必要」とされましたが、担当の医師は原発事故の影響とは判定できないとしています。団体では今後も検査を続けることにしています。茨城や千葉の保護者などで作る市民団体「関東子ども健康調査支援基金」は、原発事故で放出された放射性物質が子どもたちの健康に影響していないか調べようと去年10月から希望者を対象に医師の協力を受けて甲状腺の検査を行ってきました。検査は茨城、千葉、埼玉、神奈川、栃木の5つの県で行われ、ことし9月までに検査を受けた18歳以下の子どもたち1818人の結果がまとまりました。それによりますと「正常」と診断された子どもが672人、「小さなしこりやのう胞と呼ばれる液体がたまった部分があるものの、特に心配はなく経過を観察」とされた子どもが1139人、「一定以上の大きさのしこりなどがあり、さらに詳しい検査が必要」とされた子どもが7人でした。今回の結果について検査に当たった島根大学医学部の野宗義博教授は「チェルノブイリ事故の例から見て原発事故から3年余りで甲状腺がんが発生するとは考えにくく、詳しい検査が必要とされた子どもについても被ばくによる影響とは判定できない。今後も定期的に検査をしていくことが大切だ」と話しています。市民団体では今後も希望者を対象に検査を続けることにしています。
*2014年11月9日 NHKニュース(下記サイトに動画あり。数日で削除されると思いますが)
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20141109/k10013058381000.html

*3-5:http://this.kiji.is/88115145579562493
(共同通信 2016/3/31) 原発事故自主避難者が訴訟で陳述、「極限状態」、千葉
 東京電力福島第1原発事故に伴い、福島県の避難指示区域外から千葉県に自主避難した6世帯20人が、国と東電に計2億2千万円の損害賠償を求めた訴訟の第1回口頭弁論が31日、千葉地裁(鹿子木康裁判長)で開かれ、原告が「体力的、精神的に極限状態になった」と意見陳述した。
 原告の一人で、福島県南相馬市原町区から千葉県四街道市に家族で避難した女性(37)は「国が一方的に線引きした避難区域外から逃げたため、損害賠償がまともに受けられていない」と声を震わせた。国と東電側は請求棄却を求めた。

*3-6:http://qbiz.jp/article/83127/1/
(西日本新聞 2016年3月21日) 脱原発を訴える広域組織設立へ 鹿児島、熊本の市民ら
 九州電力川内原発(鹿児島県薩摩川内市)から30〜40キロ圏の同県出水市、阿久根市、伊佐市と熊本県水俣市の複数の脱原発市民団体や市議が4月24日、新組織「川内原発を考える肥薩ネットワーク」を設立する。原発近接地に比べ、九電などからの情報が少ないため、広域連携して過酷事故時の避難計画などの問題点を探る狙いがある。参加する水俣市の「原発避難計画を考える水俣の会」(永野隆文代表)によると、新組織の会員は200人規模で、4市の市議5人も加わる予定。「互いの地域の課題を持ち寄り、協力して活動したい」としている。


PS(2016年4月4日追加):使用済核燃料貯蔵量は、下図のように日本全体で17,315tにもなっており、これを貯蔵していること自体に大きなリスクがあることは、フクイチ原発事故で明確になった。そのため、そのように大きなリスクがあるものを無料で保管することを、保管する自治体はじめ事故を起こした時に影響を受ける範囲の自治体が容認すべき理由はなく、(課税する自治体の範囲や使い方には異議があるものの)使用済核燃料の貯蔵に課税することはリスク負担料として合理的である。また、保管し続ければ無限にかかる使用済核燃料の保管費や使用済核燃料税は原子力発電を行った電力会社が全額支払うべきで、その費用は原発による発電コストとして発電時に引当金を積むのが正しい会計処理だ。
 しかし、こうすると継続できる大手電力会社はなくなり、国民負担も莫大になるため、現在ある使用済核燃料に限って多重バリアで包み、1000年しかもたないステンレス製や金属製の容器ではなく、10万年以上もつセラミック製の容器に入れて、(地層処分はどこも引き受けないため)地層処分ではなく日本海溝の流れのない窪地に正確に沈めるのがよいと考える。

      
 使用済核燃料貯蔵量    使用済核燃料への課税額と課税方法    多重バリアによる最終処分  
                                    *4より上
*4:http://digital.asahi.com/articles/ASJ4143D3J41UUPI004.html
(朝日新聞 2016年4月4日) 使用済み核燃料への課税拡大 8市町村で毎年29億円
 東京電力福島第一原発事故後、原発から出る使用済み核燃料に対して立地自治体が独自の課税を強め、原発や関連施設がある全国の8市町村に2017年度以降、少なくとも毎年計約29億円が入るようになることが朝日新聞の調べで分かった。この税金分は大手電力会社の電気料金に影響する。原発の使用済み核燃料を再処理して再び燃料に使う核燃料サイクルが進まない中、再処理できずにたまり続ける使用済み燃料を新たな収入源にする動きが広がったことになる。原発再稼働も進まず、減少する電源三法交付金などの穴埋めの意味が強く、新たな原発マネー依存との指摘もある。使用済み燃料への課税では、立地の市町村が課す場合と、立地の道県が課税して税収の一部を立地市町村に交付する場合がある。いずれも自治体が条例をつくって課す法定外税。設置には総務相の同意が必要だが、不同意となったのはこれまで1件だけだ。使用済み核燃料税は、使用済み燃料の重量などにかかる税金で、03年、東電柏崎刈羽原発がある新潟県柏崎市と九州電力川内原発がある鹿児島県薩摩川内市が始めた。税収は14年度実績でそれぞれ5億7千万円、3億9千万円だった。朝日新聞は、原発や再処理施設が立地する全12道県、全20市町村の検討状況を調べた(福島県内を除く)。九電玄海原発がある佐賀県玄海町の岸本英雄町長は3月10日、使用済み核燃料税を17年度から導入することを町議会で表明した。九電には1月に正式に伝えており、税収は年間約4億円を想定しているという。東北電力女川原発がある宮城県女川町は取材に「検討中」と答えた。茨城県は14年4月、日本原子力研究開発機構の再処理施設(茨城県東海村)に関し、使用済み燃料の保管への課税を始めた。年間約6千万円を東海村に交付する。青森県は12年4月、日本原燃再処理工場(青森県六ケ所村)などへの課税で得た一部を立地周辺の市町村に配る交付金制度を始めた。青森県大間町、むつ市、東通村、六ケ所村の立地4市町村へは最大で計10億円だったが、14年4月には計15億円に引き上げた。全国最多の原発11基を抱える福井県の西川一誠知事は今年3月11日、11月から使用済み燃料への課税を始める方針を表明した。六ケ所村の再処理工場は完成が遅れ、燃料プールはほぼ満杯。また電気事業連合会によると、全国の原発にある使用済み燃料は1万4700トンウラン。各地の原発が再稼働すると5年後には、全国の17原発のうち12原発で燃料プールの貯蔵割合が8割を超える。これまでは原発で燃料が使われる際の課税が主だった。使用済み燃料へ課税を始めることについて、各自治体は「使用後には危険性が高まり、安全対策などに充てるため」とする。福井県は燃料の搬出を促すという理由も挙げるが、搬出先が決まるめどはない。一方で佐賀県玄海町は、減っていく交付金などの穴埋めが目的と認める。資源エネルギー庁が示すモデルでは、原発周辺にもたらされる電源三法交付金は、運転が始まると建設中のピーク時の4分の1に減少。また旧国家戦略室が11年に示したモデルでは、固定資産税は運転から20年で20分の1になる。廃炉で交付金は対象外となり、固定資産税もなくなる。税収の使途では、漁業支援など安全対策とは直接関係ない事業が目立つほか、人件費やゴミ処理などの義務的経費も増えている。これまで使用済み核燃料税などは、電気料金算定の基礎となる経費「原価」に上乗せされており、負担するのは実質的に電気利用者だった。六ケ所村の再処理工場を中心に予定されてきた再処理事業には、原発を持つ全国の大手9電力会社が電気料金から資金を拠出してきた。今年4月の小売り自由化後も、原発を持つ大手電力会社は使用済み核燃料税などの分を電気料金で回収することになる。
■利権構造が継続
 〈福島原発事故の政府事故調査・検証委員会で委員を務めた吉岡斉・九州大教授(科学技術史)の話〉 使用済み燃料を半永久的にカネを取るための材料にしたい立地自治体、置いておくしかないから支払って電気料金転嫁を狙う大手電力会社、それらを受け入れる政府。原発を巡る利益配分の構造は変わっていない。福島の事故で原子力に関するあらゆるハードルは上がったはずだが、一定程度再稼働は進む流れで、配られる分け前は減るものの原発を巡る利権構造は維持されようとしている。国民は、電力と税金を巡る関係にもより関心を持つ必要がある。


PS(2016年4月6日追加):*5に、「①九電川内原発1、2号機の運転差し止めを求めた即時抗告審で、福岡高裁宮崎支部は九電の主張を丸のみして、鹿児島地裁と同様に住民側の申し立てを退けた」「②鹿児島県は道路整備が進んでおらず、事故が起きた場合、どれだけの人が避難できるのかについて決定は全く配慮していない」「③薩摩川内市で飲食店を営む男性は、経済的に一番底の状態で再稼働差し止めとなると大変だと話した」などと記載されている。
 しかし、①については、福岡高裁はどんな時でも地裁判断を丸のみするので三審制の存在意義が問われる印象があり、②については、仮に道路整備が進んでいて避難できたとしてもすぐ帰れるわけでないのはフクイチ原発事故でわかっていることであり、③の「再稼働が差し止めになると経済的に大変という飲食店がある」というのは、生産年齢人口にあたる人が国民の無駄な拠出でやっと生活しているということで、誠にもったいなく情けない話なのである。つまり、薩摩川内市は、海岸に海ガメが産卵に訪れ、近くに鶴の越冬地があり、温泉も出て、食べ物が美味しく、新幹線が停車するようになったのだから、もっとポジティブで役に立つビジネスができるよう、公害のないきれいな街づくりをしてはどうかと思われる。

         
 鹿児島地裁判決 風船が飛ぶ範囲 偏西風の影響     汚染水と海流    火山の噴火
   <つまり、川内原発の事故時には、遠い地域の人も無関係ではいられないということ> 

*5:http://mainichi.jp/articles/20160406/k00/00e/040/224000c
(毎日新聞 2016年4月6日) 割れた司法判断「なぜ」 住民、落胆と怒り
 またも訴えは司法に届かなかった。九州電力川内原発1、2号機(鹿児島県薩摩川内市)の運転差し止めを求めた即時抗告審で、福岡高裁宮崎支部は6日、昨年4月の鹿児島地裁と同様、住民側の申し立てを退けた。関西電力高浜原発(福井県高浜町)の運転差し止めを命じた1カ月前の大津地裁に続く決定を期待した住民は「なぜ認められないのか」と不満をあらわにした。一方、経済効果に期待する地元からは安堵の声も聞かれた。「不当決定」「私達は屈しない」。午前10時半過ぎ、宮崎市の福岡高裁宮崎支部前で住民側弁護団が垂れ幕を掲げると、集まった住民や支援者から憤りの声が上がった。森雅美弁護団長は「非常に残念な結果。鹿児島地裁の焼き直しのようだ」と厳しい表情で語った。続いて宮崎市のビルの一室で開かれた記者会見。森弁護団長は「九電の主張を丸のみした決定。司法の後退を意味している」と強い口調で批判し、「棄却決定は法解釈を誤ったもので東京電力福島第1原発事故の重大性を認識していない」とする声明文を読み上げた。仮処分を申し立てた一人、鹿児島大名誉教授、荒川譲さん(82)は「鹿児島県は道路整備が進んでおらず、事故が起きた場合、どれだけの人が避難できるのか。決定はまったく配慮していない」と疑問を投げかけた。仮処分申請に参加した会社員の塚田ともみさん(45)=同県姶良(あいら)市=は「残念だがまだ本訴(運転差し止め訴訟)もある。本来ならば政治の力で変えるのがあるべき姿だ」と語った。他の住民らは、抗告審で火山の専門家らが原子力規制委員会を明確に批判したことなどを念頭に「今までの審理の過程を考えると勝って当然なのに……」と言葉を詰まらせた。一方、薩摩川内市で飲食店を営む男性(43)は「ほっとした。再稼働してこれから街が元気になると期待していた。今、経済的には一番底の状態で、差し止めとなると大変」と話した。
●今回の決定は妥当
 宮崎慶次・大阪大名誉教授(原子力工学)の話 高浜原発3、4号機の運転差し止めを命じた大津地裁の仮処分決定では、福島第1原発事故で起きたようなことが高浜でも起きるような論調になっていた。新規制基準は福島事故の反省を踏まえ厳格に作られた。今回の決定はそれが正当であるとしており、妥当な決定と言える。
●規制委に説明責任
 諸葛宗男・元東京大公共政策大学院特任教授(原子力安全規制法制)の話 専門的な内容の判断については原子力規制委員会に委ねたということだろう。評価が裁判所によって分かれたのは、規制委が「規制基準に適合している」としか言っていないことにある。規制委は国民に丁寧に説明すべきだ。
*解説 国と電力会社は国民不安直視を
 関西電力高浜原発3、4号機の運転停止を命じた大津地裁決定から1カ月。福岡高裁宮崎支部が、国の新規制基準に基づいて昨夏再稼働した九州電力川内原発の運転を追認し、またも司法の判断は分かれた。3月の大津地裁は、新基準について「十二分の余裕をもつべきだ」と指摘。これに対し、高裁宮崎支部は社会通念上、「絶対的な安全性に準じる安全性の確保」までは求められていないとして、原子力規制委員会が策定した新基準は合理的と結論づけた。東京電力福島第1原発事故以前、原発を巡る訴訟の判断基準となった四国電力伊方原発訴訟の最高裁判決(1992年)は、旧原子力安全委員会などによる審査の目的を「災害が万が一にも起こらないようにするため」とした。当時、行政庁の審査に通りさえすれば「事故は万が一にもない」とする考えが、司法を含む社会全般に通底していた。事故後、原発の運転差し止めを巡る判決や仮処分決定は今回で9件目だが、うち3件で運転差し止めの判断が出ている。運転は止めなかったものの、高裁宮崎支部も規制委がまとめた火山影響評価ガイドを批判し、「過去の最大規模の噴火で設計対応不可能な事象を起こす火山が地理的領域にある場合は、立地不適とすべき」と踏み込んだ。全国で唯一運転している川内原発が止まれば、国内の稼働原発が再びゼロに戻るところだった。再稼働を進める国も電力各社も今回の決定に安堵(あんど)したに違いない。だが、その前に司法も揺れているという事実を直視し、国民の不安に真摯(しんし)に向き合うべきだ。


PS(2016年4月7日追加):福岡高裁が「破局的噴火は無視しうる」「避難計画は実効性がなくても人格権を侵害しない」として新基準は合理的という結論を導き出したのは、私もおかしいと思った。また、「日本全体の破局的噴火は約1万年に1回程度」とする専門家もいるが、それなら、①噴火は約1万年に1回しかないという根拠を示すべきであり ②その1万年に1回というのは、東日本大震災が起こった後の現在でも無視できるほど遠い将来のことと言えるのか について、原発を立地して「安全だから稼働する」としている九電が根拠を持って示すべきで、立証責任の所在が逆だと考える。
 また、福岡高裁が「一般の建築規則では破局的噴火を無視できるとする社会通念があり、原発だけ特別に安全対策を考える根拠はない」としている点については、原発が事故を起こせば建物の所有者に限らず被害甚大になるため一般の建築規則では判断できず、静岡大の小山教授(火山学)の「そんな社会通念はないと思う。破局的噴火は一般社会に知られていないだけで、むしろ今後はそのようなリスクと原発の利点を比較し、どちらをとるかの社会通念を形成していくべきだ」という意見に賛成だ。

*6:http://qbiz.jp/article/84322/1/ (西日本新聞 2016年4月7日) 「社会通念」が判断の基準 安全評価「ピント外れ」「妥当」…識者評価割れる 川内差し止め棄却
 「破局的噴火は無視しうる」「避難計画は実効性がなくても人格権を侵害しない」。川内原発(鹿児島県薩摩川内市)の運転差し止めを求めた仮処分申し立ての即時抗告審で、福岡高裁宮崎支部は6日、新規制基準の一部や自治体が定めた避難計画の問題点を指摘しながら、社会通念を用いて「新基準は合理的」との結論を導き出した。住民側弁護団は「問題があるのに差し止めを認めないのでは、司法の役割を果たしていない」と強く批判する。「即時抗告審で主張した火山評価の問題点は、ほぼ認められた」。抗告審の決定後に宮崎市内で会見した住民側の海渡雄一弁護士はこう説明した。弁護団は抗告審で、破局的噴火を予測できるとした新規制基準の安全対策指針(火山ガイド)などの問題点を、火山学者の協力を得ながら集中的に反論。高裁は同指針を「不合理」と判断した。日本大の高橋正樹教授(火山地質学)は「できないことをできないと言ったのは妥当だ」と評価している。ところが、運転差し止めには「破局的噴火の発生可能性が、根拠を持って示される必要がある」と高いハードルを課した。鹿児島大の井村隆介准教授(地質学)は「『噴火は予測できない』と認めながら、住民側に根拠を求めるのは明らかに矛盾している。指針に問題があったわけだから、1度原発を止め、破局的噴火の発生可能性について議論を尽くすよう決定を出すべきだった」と批判した。伊方原発の設置許可を認めた1992年の最高裁判決は、専門的な行政判断を尊重するべきだとしつつ、「裁判所は審査基準に不合理な点がないかを審理する」と判示。ただ、今回は指針を不合理としながら、運転差し止めに踏み込まなかった。海渡弁護士は「伊方判決を骨抜きにする判断だ」と憤り、最高裁への抗告を検討している。さらに、弁護団の反論を認めた高裁が「(一般の)建築規則で考慮していないのは、破局的噴火を無視できると容認する社会通念の反映」とし、「原発だけ特別に安全対策を考える根拠はない」と断じた。これに対し、静岡大の小山真人教授(火山学)は「そんな社会通念はないと思う。破局的噴火は一般社会に知られていないだけで、むしろ今後はそのようなリスクと原発の利点を比較し、どちらをとるかの社会通念を形成していくべきだ」と話す。避難計画について、昨年4月の鹿児島地裁の決定は「一応の合理性、実効性を備えている」と評価していた。ところが、今回の高裁決定は「(政府方針に従って計画さえ作れば)合理性や実効性を欠いても、違法ではない」とし、避難計画の重要性を引き下げた。東京大の金井利之教授(自治体行政学)は「避難計画が不十分だと裁判所が実質的に認めており、ある意味で画期的だ。計画の合理性、実効性を点検する仕組みも現行法制では不在だと指摘したのと同じ。関係自治体と電力会社が責任をもって計画の実効性を高めるべきだ」と注文を付けた。
◆リスク軽視 荒い判断
 吉岡斉九州大教授(科学史)の話 裁判官は原発の過酷事故のリスク認識が甘く、安全を非常に軽視した決定だ。原子力規制委員会の新規制基準とその運用を丸ごと認め、火山噴火の危険性も原発が存在する間に無事であれば良いと受け取れる。避難計画についても、3月の大津地裁の仮処分決定は、国主導の計画策定と規制委による審査を求めたが、今回は「基本的に市町村の責務」とした。「計画の問題点を指摘できるとしても、計画が存在しないのと同視できない」というくだりは「ないよりはましだ」とも受け取れ、荒っぽい判断だ。
◆安全評価ピント外れ
 勝田忠広明治大准教授(原子力政策)の話 福岡高裁宮崎支部の決定は新規制基準や原子力規制委員会の審査の合理性を認めたが、無批判すぎる。優先審査の対象だった川内原発1、2号機の審査は先を急いでいた印象がある。住民側は安全の問題を見落としていると訴えているのに、決定は書類の手続きしか見ておらず、ピント外れだ。また安全性の判断基準に「社会通念」を用いているが、東京電力福島第1原発事故以降、どこまで安全性を求めるかの社会通念が定まっていないことが原発問題の根幹。裁判長は「社会通念はこれだ」と明確にすべきだった。
◆地震動想定甘い恐れ
 高知大の岡村真特任教授(地震地質学)の話 川内原発周辺の断層は海底部分でさらに延びている可能性がある。即時抗告審で住民側がそれを訴えたが、認められなかった。断層が長くなれば、現在想定している基準地震動が過小評価となる。最近の直下型地震をみても九電の想定地震動の2〜3倍に達するものもあり、その点を考慮してこそ、福島原発事故の教訓を踏まえたことになる。
◆法に沿った妥当な決定
 奈良林直・北海道大特任教授(原子炉工学)の話 法律に準拠した妥当な決定だ。法の下で策定された新規制基準と審査に合理性があることを認め、火山や自然災害も含めた九州電力の安全対策が新基準に合致していることを理路整然と評価した。電力会社には、安定した価格で電力を供給する義務があり、国民の利益につながる。関西電力高浜原発3、4号機の運転差し止めの仮処分決定を出した大津地裁や福井地裁の判断に見られた事実誤認もなかった。
   ◇   ◇
◆川内原発差し止め棄却 高裁宮崎決定要旨
 九州電力川内原発1、2号機の再稼働差し止めを認めなかった6日の福岡高裁宮崎支部の決定要旨は次の通り。
▼司法審査の在り方  
 どのような事象でも原子炉施設から放射性物質が放出されることのない安全性を確保することは、少なくとも現在の科学技術水準では不可能だ。わが国の社会がどの程度の危険性であれば容認するかの社会通念を基準として判断するほかない。
▼新規制基準の合理性  
 基準地震動(耐震設計の目安となる揺れ)の策定、耐震安全性確保や重大事故対策に関する新規制基準に不合理な点はなく、施設が新基準に適合するとした原子力規制委員会の判断も不合理とは言えない。九電は相当の根拠、資料に基づく説明を尽くした。基準地震動を上回る地震のリスクはゼロではないが、耐震安全性の確保の観点から新基準は極めて高度の合理性を有する。住民に直接的かつ重大な被害が生じる具体的な危険が存在するとは言えない。
▼火山の危険性   
 火山の噴火時期や規模を的確に予測できるとする規制委の前提は不合理だが、日本全体で見れば破局的噴火は約1万年に1回程度だ。極めて低頻度で経験したことがない規模の自然災害の危険性については、安全性確保の上で考慮されないのが実情であり、無視できるという社会通念がある。このような危険性を自然災害として想定するかは政策判断に帰するが、現行法制度では想定すべきだとの立法政策は取られていると解釈できない。立地不適とは言えない。
▼その他の危険性   
 竜巻による飛来物が使用済み燃料ピットに衝突し重大な被害が生じる具体的な危険があるとは言えない。テロリズム対策も新基準に適合するとした規制委の判断は不合理ではない。戦争による武力攻撃対策は国の防衛政策に位置づけられ、危険性を検討する余地があるとしても、九電による人格権侵害の恐れがあるとは言えない。
▼避難計画の実効性  
 避難計画は、施設からの距離に応じた対応策が合理的かつ具体的に定められていることを確認したとして原子力防災会議で了承されている。段階的避難の実効性や避難経路の確保などの問題点を指摘することができるとしても、避難計画が存在しないのと同視することはできない。原発の運転で、直ちに九電による人格権侵害の恐れがあるとは言えない。


PS(2016年4月9日追加):*7-1のように、みやま市の再生エネのみを使って電力を供給するモデルが東京都に採用されたのは、大変よかった。埼玉県、千葉県、神奈川県など関東の他県でも再生エネ由来の電力を供給し、関東で容易にスマートエネルギーの電力が手に入るようにして欲しい。また、*7-2のように、下水道汚泥から発生するバイオガスから水素を作り、燃料電池自動車の燃料にしたり発電に使ったりするのも、邪魔物から価値ある物を作っており、賢い。

*7-1:http://qbiz.jp/article/84490/1/
(西日本新聞 2016年4月9日) みやま市が東京都に技術協力 再生エネルギーモデル事業
 東京都は8日、電力小売り事業に参入すると発表した。福岡県みやま市などでつくる電力会社「みやまスマートエネルギー」が、技術やノウハウ面で協力する。都の公益財団法人「東京都環境公社」を通じて、7月から都内の公共施設2カ所への電力供給を始める。都は都内の電力消費量に占める再生可能エネルギーの割合を2030年までに30%程度に高める目標を掲げているが、再生エネのみを使って電力を供給する事業者が都内には少ないのが現状。都がモデル事業として小売りに乗り出すことで、再生エネの利用拡大を図る。公社は今回、バイオマスや太陽光に由来する再生エネの電力を宮城県と都内の2事業者から調達する。みやま社は、昨年11月から公共施設などに電力を供給してきたノウハウや技術を提供。電力の需給調整のほか、再生エネ由来の電力の共同調達などで公社と連携する。公社が調達した電力をみやま市に融通する計画もある。みやま社は業務を受託することで、事業規模の拡大を図る。「電力の地産地消」を掲げるみやま社は、10月にも新電力会社の設立を目指す鹿児島県肝付町なども支援。さらに、九州大と共同で電力小売り事業に参入する自治体向けのソフトウエアの開発を始めており、今後も全国の市町村との連携を広げていく考えだ。この日、記者会見した舛添要一都知事は「今回の取り組みでノウハウを蓄積し、再生エネ由来の電気を供給する事業者を育てていきたい」と述べた。

*7-2:http://mainichi.jp/articles/20160409/dde/041/040/048000c (毎日新聞 2016年4月9日) 下水汚泥 、.発生するバイオガスから水素生成、発電 自動車燃料に 国交省試み
●汚れた水を利用、再生 新たな技術
 国土交通省が、下水道の汚泥から発生するバイオガスから水素を作り、燃料電池自動車(FCV)の燃料にする取り組みを進めている。水素と酸素の化学反応で発電する電気で動き、水しか出さない「究極のエコカー」と呼ばれるFCV。そのエネルギーに、廃棄物である下水汚泥を有効活用できれば、FCVの普及につながるとして、全国の自治体も注目している。バイオガスは、下水汚泥を微生物の働きで処理する過程で発生する。既に発電などにも利用されているが、小規模な施設では発電の設備が設置できないなどの理由で、国内で発生するバイオガスの全体量のうち3分の1は焼却する形で廃棄されているという。国交省によると、廃棄されているバイオガスの量は8900万立方メートルで、仮に有効活用できれば年間1・3億立方メートルの水素が生成できると試算している。FCV1台の1回当たりの水素充填(じゅうてん)量を50立方メートルとすると、約270万回分に上る。国交省は2014〜15年度に、福岡市中部水処理センター(福岡市中央区)で実証実験を実施。(1)下水汚泥を発酵させて発生したバイオガスから二酸化炭素を除去し、高濃度メタンガスを回収(2)メタンガスと水蒸気を反応させ水素を作る(3)吸着剤で残っている二酸化炭素をさらに除去する−−という手順で、高純度の水素を生成。1日にFCV65台前後の燃料になる3300立方メートルの水素を作り出した。こうした取り組みに着目した埼玉県、横浜市、青森県弘前市が事業化に向けた検討を始めており、それ以外の複数の自治体も関心を寄せているという。下水汚泥の活用は、他の分野でも始まっている。佐賀市は汚泥を高温発酵して堆肥(たいひ)として活用している。汚泥から発生したバイオガスを燃料に発電する「バイオガス発電」は北海道や横浜市、広島県など55カ所が実施(13年度現在)しており、国交省下水道企画課の担当者は「下水汚泥は重要な国産エネルギー源。活用を加速させたい」としている。


PS(2016年4月11日追加):森林資源は戦後の努力でやっと豊富になってきた状況であるにもかかわらず、*8のように、「太陽光発電偏重は悪いことで、木質バイオマス発電が必要であり、木材の利用と言えば発電のために燃やす木材チップの加工設備を新増設することしか合点が行かない」というのは、物理学・化学・生物学・経営学・経済学のわかっていない人が書いた記事であり、問題が多い。
 何故なら、物理学・化学・生物学的には、木材を燃やす発電方法は太陽光発電よりCO2を出す上、木材は燃やせば次第に枯渇するため持続可能性もなく、経営学的・経済学的には、長期間かかって育てた木材を最も低い付加価値で使用しており、記者はそれを多面的に批判することができていないからである。つまり、燃やして発電するのは、使い道のないゴミだけで十分なのだ。
 しかし、これは、(文科系・理科系を含む)教育において知識と論理的思考力を軽視しすぎた結果であり、これでは正しい判断をする主権者や将来性のある事業を選別できる人材は育たない。

    
           中国家具              イギリス家具       イタリア家具
 <世界に輸出できる家具を作るためには、家具会社やデザイナ―を誘致してくる方法もある>

    
          <木材の使い方は進歩し、環境に優しい用途が増えている>

*8:http://qbiz.jp/article/84439/1/ (西日本新聞 2016年4月11日) 【工場立地、木材が26業種中4位】食品、車、半導体に続く「常連」に?
 九州経済産業局がまとめた2015年の工場立地動向調査によると、九州7県の立地件数(電気業を除く)は106件となり、7年ぶりに100件を突破した。26の業種別でみると、最多は食料品20件、次いで金属製品19件、輸送用機械器具9件で、ここまでは九州経済のイメージ通りだ。業種別4位に入ったのは木材・木製品の8件。九州は森林資源が豊富だが、木材と「工場立地」はあまり結びつかないのではないだろうか。九州経産局によると、木材・木製品の工場立地で目立つのは「木質バイオマス発電の燃料となる木材チップ加工設備の進出や増設」とのことで、ようやく合点が行った。九州では、大分県などで既に国内屈指の発電規模を持つ木質バイオマス発電所がある。太陽光偏重だった固定価格買い取り制度の見直しもあり、他にも複数の大規模建設計画が浮上している。当然、発電燃料の木質チップを安く、安定的に調達することが必要。森林資源が多く、質も高いとされる九州に木質チップ設備の立地や増設が相次ぐのも自然な流れだ。実際、立地8件のうち大分県内が半分の4件を占めている。業界では、木材チップの供給不足が懸念される一方、あまりに供給が増えすぎると木材市況への影響も出かねない。さらに、固定買い取り価格の変動など国のエネルギー政策にも左右される側面があり、今後も右肩上がりで普及が進むかどうかは不透明だ。九州の木材・木製品業種の工場立地は例年1〜3件程度が続いていたが、13年5件、14年8件と増加。業種別の上位に入るようになっている。食品や自動車、半導体関連に続く、九州の「常連」業種となるだろうか。


PS(2016.4.12追加):*9のように、日経新聞が、一億総活躍社会で女性の活躍は重点になっているが、「①2013年以降を見ると、就業者数が伸びているのにGDPは横ばいで1人当たりの生産性が下がっている」「②女性は働くことを余儀なくされているだけ」「③女性の活躍の真の目的は、女性が男性の仕事を取ることではなく、男女ともに活躍して総生産を増やすこと」「④現在のような需要不足の状況では、総需要を増やさなければ生産を増やしようがない」「⑤それをせずに企業に女性の受け入ればかりを強要すれば男性との仕事の取り合いになるのは自然のこと」「⑥最終需要の拡大は、民間に任せるだけでは無理なことは、過去20年を振り返っても政府が財政を投入してつくるしかない」「⑦女性進出を目指すなら、大企業は必ず中小は複数の企業で保育室を作ることを義務づけるくらいの思い切った方策が必要」などとしている。
 しかし、日本国憲法27条に「すべて国民は勤労の権利を有し義務を負う」と規定されており、男性が優先的に職を得るとは書かれていない(男女平等なのだから当然)。そのため、③⑤の主張は、憲法違反かつ男女雇用機会均等法違反で誤りだ。そもそも、「女性が男性の仕事を取ることではない」などと書く以上、何が男性固有の仕事かをリストアップしてみせるべきだが、戦闘機にも女性が乗っている現在、男性固有の仕事はあまりない上、これまで勤労者が男性に偏っていたためわからなかった本当の需要は多く、保育や介護はその一部にすぎない。また、人によって働く目的や動機は異なり、私(純然たる女性)は、仕事を通じて自己実現するために、勉強し、仕事上の経験を積み、目的に沿った仕事をしてきたので、②を全女性に当てはめるのは失礼だ。そして、こういうことを書く女性を「謙虚でない」「自分を知らない」「女らしくない」などと論評する人がいるが、それはジェンダーによる間接差別であるため、そう言う人は、「謙虚さ」「自分を知ること」「女らしさ」に関する自分の定義とその定義を誰にでも押しつけることの正しさについて見直すべきである。なお、⑦の「女性進出を目指すなら企業で保育室を作ることを義務づけることが必要」というのも、「保育=母親の仕事」という固定観念によっているため間違いで、日経新聞がここまでの差別記事を掲載するとは呆れた。
 さらに、①の「就業者数が伸びたのにGDPが横ばい」というのは、⑥のように、政府が税金を投入して必要性が小さく付加価値の低い(もしくは、付加価値のない)最終需要を作り、多くの労働力がそういう仕事についているからで、そのために政府が税金を上げると、また消費者は本物の需要を節約し、④の需要不足が促進され、GDPも落ちるという負のスパイラルになっているのである。家計という消費の60%を占める実物経済の重要な部分を知らない人には想像すらできないようだが、日経新聞の記者が経済学に弱くて本質を突けず、官のマイクロホンと化しているのでは役に立たない。

*9:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20160412&ng=DGKKZO99530030R10C16A4EN2000 (日経新聞 2016.4.12) 女性活躍の必須条件
 安倍晋三政権は一億総活躍社会を目指し、なかでも女性の活躍は重点課題になっている。実際、2013年以降を見ると、就業者数は伸び、その推進役は女性の就業者数の増大で、男性就業者数はほとんど変わっていない。これから見ると、政策は成功しているように見える。一方、この間の実質国内総生産(GDP)はほぼ横ばいで、マイナス成長すら起こっている。就業者数が伸びているのにGDPが横ばいなのは、1人当たりの生産性が下がっているということだ。その結果、1人当たりの所得が減り、家計の平均所得は変わらない。これは、従来、夫1人の働きで成り立っていた家計が、夫婦共働きでなければ成り立たなくなっていることを意味する。つまり、生活はまったく楽にならず、女性は働くことを余儀なくされているだけだ。子供を持つ家庭では、事態はさらに深刻だ。女性が働こうとすれば、その前に保育園探しに奔走しなければならないからだ。運良く仕事に就いても、保育園の入園はすでに職のある人が優遇される。最近話題の「保育園落ちた……」というブログが引き起こした波紋は、子育て家庭を取り巻く切実な状況が背景にある。女性の活躍の真の目的とは、女性が男性の仕事を取ることではなく、男女ともに活躍して、総生産を増やすことだ。だが、現在のような需要不足の状況では、総需要を増やさなければ生産を増やしようがない。それをせずに、企業に女性の受け入ればかりを強要すれば、男性との仕事の取り合いになるのは自然のことだ。その結果が非正規雇用と低賃金労働の拡大となって、子育て家庭は、子供を保育園に入れる資金さえ足りなくなってしまう。最終需要の拡大こそが、一億総活躍社会の必要条件であり、それができれば、活躍の場は自然に広がる。最終需要の拡大は、民間に任せるだけでは無理なことは、過去20年を振り返ってもわかる。政府が財政を投入してつくるしかない。その上で、特に女性進出を目指すなら、大企業は必ず、中小は複数の企業で保育室を作ることを義務づけるくらいの、思い切った方策が必要であろう。そうでなければ、たとえ仕事が増えても保育園探しがますます深刻化し、働くことが難しくなる。

| 資源・エネルギー::2015.5~2016.12 | 03:23 PM | comments (x) | trackback (x) |

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