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2017.7.23 自民党・民進党都議選敗退、共産党都議選躍進の理由と加計学園問題・政策に関するメディアの報道について (2017年7月24、25、31日に追加あり)
   
   2017.7.17日経新聞    2017.5.18朝日新聞  2017.5.26  2017.5.31 
世界の政党が問われているのは何故か?          毎日新聞   朝日新聞 

(図の説明:アメリカ・イギリスでは過度の地域一体化が嫌われて、イギリス国民は国民投票でEU離脱を決め、アメリカ国民はトランプ氏を大統領に選出した。また、フランスでは、既成政党に属さないマクロン氏が大統領になった。この背景には、既成政党が主張してきた国民に不利益を強いるだけの日本発の“改革もどき”がある)

(1)加計学園獣医学部新設問題に関する事実と本質
1)獣医師は、不足ではなく偏在だということ
 加計学園について、日本農業新聞は、*1-1のように、「①加計学園誘致の“口実”になった獣医師は地域偏在であり、偏在の解消に向けた施策が必要なのである」「②獣医師が少ない地域、足りない職種を賄うことが喫緊の課題である」「③獣医師は全体で見れば、診療対象の動物が減る中で、毎年1000人近くが免許を取るため、農水省は獣医師不足ではないと判断していた」「④そこで文科省は、これまで獣医学部の新設を認めなかった」としており、これが事実であり、問題の本質だろう。

 このうち、①②は、獣医師が大都市に比べて地方で少なく、小動物に比べて産業動物に少ないため、その偏在を無くすには、③のように全体数を増やすのではなく、地方で産業動物を担当する獣医師になることの魅力(畜産の将来性、遣り甲斐、報酬、社会的評価、社会的地位など)を発信して産業動物を担当する獣医師希望者を増やすことが必要なのであって、学部のない地域に獣医師の専門職大学を新設すれば獣医師の偏在が解消できるわけではない。

 また、新設の大学を作っても、獣医学だけでなく、その基礎となる生物・化学・物理など他学科のよい教授も揃え、資質を持った学生を集めなければライフサイエンスを含む高度な新領域を創出できる優れた獣医師を育てることはできないため、新設の単科大学でそれを行うのは不可能に近い。にもかかわらず、一連の議論は、この最も言いにくい点を避けて通っているため、本質的な議論になっておらず、私自身は、どうしても愛媛県に獣医学部を作りたいのならば、既に医学部、理学部、工学部を持つ愛媛大学農学部に獣医学科を作るのがよいと考える。

2)初めから加計学園ありきだったか
 野党側の参考人として出席した文科省の前川前事務次官は、*1-3のように、「初めから加計学園と決まっていた」と述べ、確かに、*1-2のように、政府が2016年11月、「広域的に獣医学部のない地域」を新設条件としたため、近隣の大阪府に獣医学部のある京都産業大は新設を断念した。

 また、*1-6のように、愛媛県今治市への獣医学部誘致をスタートさせた加戸前愛媛県知事は、「①私は、加計ありきではありません。獣医師の養成が進まない中、たまたま今治選出の議員と加計学園の事務局長がお友達だったから、この話が繋がって飛びついた」「②鳥インフルエンザやBSE(牛海綿状脳症)といった感染症対策の充実を大きな目的に獣医学部の誘致に取り組んだが、強烈な岩盤規制のために、10年間我慢させられた」「③岩盤にドリルで国家戦略特区が穴を開けてくれたというのが正しい」としており、愛媛県今治市に獣医学部を誘致したいため、それに関心を示した加計学園に絞ったというのが正しそうだ。

 しかし、私は、(1)1)に書いた理由で、どうしても愛媛県に獣医学部を作りたいのなら、愛媛県松山市にある愛媛大学に農学部獣医学科を作り、今治市に実習農場を作るのが効果的な予算の使い方だと考える。又は、手狭になった愛媛大学の教養学部と文系学部を松山市に残して、理系学部は広い土地を使える今治市に移転し、最新の設備を整える方法もある。そのため、*1-5のように、前川氏が「既存の大学の定員を増やすという他の方法もあった」と言っておられるのは、むしろそうした方がよいだろう。

3)民主主義は、政策を議論して競うべきであること
 加計学園問題は、*1-4のように、安倍政権の支持率を下げるのが目的で報道されており、官邸が動いたか否かが焦点となって、官邸をかばった山本地方創生相の発言が真実だったか否かも問題視され、*1-7のように、メディアでは安倍政権打倒を目的とする論陣が張られている。しかし、これは、政策を議論して競うべき民主主義社会では三流の議論だ。

 私自身は、既に合理性のなくなった岩盤規制に穴をあけるのは良いと思うが、合理性のある規制まで壊し、他によい方法があるにもかかわらず、「岩盤規制」に穴をあけること自体を目的にして不合理な選択をし、国民の血税をつぎ込むのはやめて欲しいと考える。何故なら、日本は、予算と人材が余って困っているような国ではないからだ。

(2)既成政党への失望理由は何か
 東京都議選では、*2-1に書かれているように、安倍首相率いる自民党が歴史的惨敗を喫し、東京都議会は57議席から23議席に減った。しかし、*2-3のように、民進党も、今回の都議選で15議席から5議席に大幅に減らした。一方で、自民党の政策に一貫して反対してきた共産党は、*2-2のように、17議席から19議席に増やしたのだが、民進党の都議選総括会議では「共産との共闘路線を見直すべきだ」との声が相次いだそうだ。民進党は、自民党やメディアの論調に惑わされ、正確な原因分析ができていないのではないか?政党間で連合する場合にそれぞれの党の政策が完全に一致する必要はなく、自民党と公明党もかなり異なる。

 また、私は、自民党の惨敗を「一強のおごり、高ぶりが原因」と評するのは嫉妬に裏打ちされたような感情論で、主権者である国民を馬鹿にした議論だと考える。何故なら、自民党惨敗の本当の理由は、①公約違反のTPP推進 ②インフレ政策 ③消費税増税 ④社会保障の改悪 ⑤原発再稼働の推進 ⑥戦争に進みそうな安全保障法制定 ⑦人権侵害の特定秘密保護法制定 ⑧冤罪社会、監視社会、盗聴・盗撮社会に導く共謀罪の制定 ⑨国民主権をないがしろにする憲法改悪案など、国民の利益を無視した官製の政策強行に対する批判であり、国民はそれを正確に見ていると思うからだ。

 そして、官製政策の部分は、政権を担ったことのある民進党も賛成したものが多く、これを政権の責任とばかり言い立てるのは権限の範囲と責任を無視している。そして、(ここには書かないが)問題は、もっと深刻なものなのだ。

<加計学園問題>
*1-1:https://www.agrinews.co.jp/p41128.html (日本農業新聞論説 2017年6月15日) 獣医師の偏在 解消に向けた施策必要
 国家戦略特区で愛媛県今治市に獣医学部を新設する計画を巡ってさまざまな疑惑が浮上し、国会論議の焦点になっている。まず、誘致の“口実”になった獣医師の偏在の問題を整理する必要がある。偏在とは地域ごとの偏りであり、職域別による就業者数の差でもある。獣医学部がない地域に学部を新設する計画だが、学部の偏在と獣医師の偏在は問題が違う。獣医師が少ない地域、足りない職種を賄うことこそが喫緊の課題だ。獣医師は総体で見れば足りないとは言えない。高齢化社会の進展でペットの飼育頭数は犬を中心に減少に転じ、家畜の飼養頭数、飼養戸数も減っている。診療対象の動物が減る中、毎年1000人近くが新たに獣医師の免許を取る。獣医師不足の状況ではないとの農水省などの判断を踏まえ、文部科学省はこれまで獣医学部の新設を認めず、定員管理を厳格にしてきた。今回の論議で見えてきたのは、同じ政府内の農水省や文科省が決めたことであっても、特区を所管する内閣府には岩盤規制と映ったことだ。獣医師の偏在が解消できていなかった点に、獣医事行政に付け込まれる隙があったのではないか。獣医師は大都市に比べて地方に少なく、しかも小動物に比べ産業動物に就業する人は少ない。今回の計画は、学部のない地域に新設すれば、獣医師を地域に供給して偏在を解消できるという理屈が前面に押し出された。山本有二農相は6月上旬の参院農林水産委員会で、獣医師の需給について「農水省の所管ではない」と明言した。しかし、同省は獣医師の需給の調整に責任を果たしてきたはずだ。獣医療法では、農相は獣医療提供の体制整備のための基本方針を策定し、獣医師の確保に関する目標設定をすると定めている。さらに都道府県は国の基本方針に沿って獣医療を提供する体制の整備を図るための計画書をまとめることになっており、これまで国・都道府県を挙げて獣医師の需給を調整してきた。かつて獣医大学卒業生の半分はペット関係に進んだが、最近は産業動物分野も伸びている。同省は産業動物分野の獣医療提供体制を整備しようと、高校生や獣医学生に修学資金を貸与する制度を設け、産休などで現場を離れた女性獣医師の職場復帰を支援する取り組みなども進めている。ただ、まだ道半ばで結果が十分ではない。そこを内閣府に岩盤規制と見なされ、付け込まれたように見える。今回は獣医学部の設置権限を持つ文科省の施策に穴を開けたもので、直接、農水省の獣医事行政に向かってはいない。しかし、新設には優れた獣医師育成の視点が欠かせない。160人という国内最大定員の新獣医学部構想の妥当性、ライフサイエンスなど新領域の需要創出と人材育成、などの検証が必要だ。獣医学と獣医療の発展にどうつながるのか。獣医師偏在の問題と併せて論議するべきだ。

*1-2:http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201707/CK2017070502000134.html (東京新聞201.7.7) 【政治】加計学園獣医学部新設 京都案と比較の記録なし
 安倍晋三首相の友人が理事長を務める「加計(かけ)学園」(岡山市)による獣医学部構想を持つ愛媛県今治市での新設に政府が絞り込んだ際、競合する京都府の提案と比較した議事録などの記録を残していないことが四日分かった。東京都議選での自民党大敗を受け、首相は「国民の信頼を回復していきたい」と発言したが、政権は加計問題について依然として明確な説明ができていない。政府は昨年十一月、「広域的に」獣医学部のない地域を新設条件とする方針を決定。新設を提案しながら、近隣の大阪府に獣医学部がある京都府と京都産業大が断念した。「加計ありき」の条件だったのではないかとの批判を政府は否定し、「十一月以降に今治市と京都府の提案を比較し決定した」と説明。山本幸三地方創生担当相は四日の記者会見で、専任教員の確保、鳥インフルエンザなどの水際対策、自治体との連携の「三つの審査基準」で検討し、今治市に決めたと主張した。だが、山本氏は選定過程について「内部の打ち合わせだから記録は取っていない」と説明。「三つの審査基準」を誰が、どのような議論で決めたのか明らかにせず、基準の根拠も示さなかった。三日の民進党会合では、内閣府の担当者が同様の説明を繰り返し、議事録や資料などの記録も示さなかった。民進党議員は「本当に議論したのなら議事録や比較表があるはずだ」「正当性のあるルールが決まっていなければ、恣意(しい)的な選定だ」と追及。内閣府側は「事務方と大臣が相談して決めた」などと答えるにとどまった。

*1-3:http://qbiz.jp/article/113903/1/ (西日本新聞 2017年7月10日) 前川氏「初めから加計学園」 官邸関与を強調
 政府の国家戦略特区制度を活用した学校法人「加計(かけ)学園」の獣医学部新設計画を巡り、衆院文部科学、内閣両委員会の連合による閉会中審査が10日、開かれた。野党側の参考人として出席した文部科学省の前川喜平前事務次官は「特区担当は内閣府だが、背景に官邸の動きがあった。和泉洋人首相補佐官がさまざまな動きをしていた」と述べ、首相官邸の関与があったと強調した。獣医学部新設にも「(選定の)プロセスが不透明で不公正だと思っている。初めから加計学園と決まっていた」と主張した。前川氏は文科省の調査で確認されなかった文書「10/7萩生田副長官ご発言概要」が存在したと明かし、「担当課から説明を受けた際に受け取った文書に間違いない」と話した。文書には「四国には獣医学部がないので、その点では必要性に説明がつくのか」などと、加計学園の予定地・愛媛県今治市を前提としたような表現もある。萩生田光一官房副長官は昨年10月7日に文科省幹部と面会したのを認めたが、「発言した記憶はない」と答えた。新設計画についても「この件で能動的に関わった事実はない」と説明した。前川氏は獣医学部新設の4条件を示した2015年の「日本再興戦略」と、加計学園の計画の整合性についても批判。「(条件に)合致するか十分な議論がされていない。不公平で、国民から見えないところで決定された」と述べた。一方、山本幸三地方創生担当相は「(条件を満たすと)最終的に私が確認した」と強調した。与党側の参考人として招致された国家戦略特区ワーキンググループの委員原英史氏は、特区による獣医学部の新設が「加計ありき」で進められたとの批判について「全くの虚構」と話した。閉会中審査は、国会会期終了後に委員会を開催できる仕組み。午後も参院で実施するが、安倍晋三首相は欧州歴訪中のため出席しない。

*1-4:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20170711&ng=DGKKZO18701470R10C17A7EA2000 (日経新聞 2017.7.11) 加計問題、食い違い 衆参両院で閉会中審査、前川氏「官邸は動いた」/地方創生相「指示あり得ぬ」 首相の関与は
 衆参両院は10日、学校法人「加計学園」の愛媛県今治市への獣医学部新設などを巡る閉会中審査を開いた。国家戦略特区の枠組みで加計学園のみ新設が認められた経緯に関し、参考人として初めて出席した前川喜平前文部科学次官と政府側の説明は大きく食い違った。官邸関与の有無や、獣医学部新設の妥当性に関し、真相は浮かび上がらなかった。加計学園の問題を巡っては、国家戦略特区の枠組みで1校に限り獣医学部の新設が認められた妥当性が問われている。野党は学園理事長の長年の友人である安倍晋三首相らの意向が影響した可能性を指摘している。前川氏は10日の閉会中審査で、規制改革の是非と事業者選定の2つの問題があると指摘。「穴を開けるかより、穴の開け方に不公平で不透明な部分がある」と語った。「初めから加計学園に決まるようプロセスを進めてきたようにみえる」とも語り「背景に官邸の動きがあったと思う」と結論付けた。一方で山本幸三地方創生相は「個別にどこでやるか首相が指示することはあり得ない」と、官邸の関与を否定した。与党の求めで参考人となった政府の国家戦略特区ワーキンググループの原英史委員は「従来の行政のゆがみを正した」と判断の正当性を強調。最初から加計学園ありきだったとの指摘は「全くの虚構」と否定した。

*1-5:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20170711&ng=DGKKZO18701570R10C17A7EA2000 (日経新聞 2017.7.11) 地方創生相「岩盤規制の突破」/前川氏「他の方法あった」 新設は妥当か
 50年以上認めてこなかった獣医学部の新設を認めた妥当性も問われた。四国には獣医学部がなく、参院で参考人として出席した加戸守行前愛媛県知事は獣医学部の新設は地元の悲願だったと説明。「岩盤規制で我慢させられてきた。ゆがめられた行政が正されたというのが正しい」と訴えた。山本地方創生相は「岩盤規制の突破にはまず地域を限定してやるしかない」と述べ、規制改革の意義を強調した。一方で前川氏は「獣医師の定員を増やすなら、既存の大学の定員を増やすというやり方もある」と指摘。昨年9、10月に和泉洋人首相補佐官に呼ばれ、獣医学部の新設について「対応を早く進めるように」と督促されたと証言。「総理は自分の口からは言えないから言う」などと伝えられたとも語った。新設について、萩生田氏が「総理は『平成30(2018)年4月開学』とおしりを切っていた」などと発言したとする昨年10月21日付の文書は「在職中に見たことはないが、内容の信ぴょう性は高い」と述べた。萩生田氏は計画について、和泉氏から詳しい説明を受けたことはないとし、文書の内容も否定した。

*1-6:https://www.j-cast.com/2017/07/11302992.html?p=all (Jcast 2017/7/11) 加計問題、なぜか報道されない「当事者」前愛媛県知事の発言全容
 2017年7月10日に行われた学校法人「加計学園」をめぐる閉会中審査で、インターネット上の注目を集めたのは、一連の疑惑を告発した前川喜平・前文科次官の発言ではなく、愛媛県今治市への獣医学部誘致を進めた加戸守行・前愛媛県知事の約20分間にわたる訴えだった。 前川氏の「行政がゆがめられた」発言に対し、加戸氏は「岩盤規制に国家戦略特区が穴を開け、『ゆがめられた行政が正された』というのが正しい」と反論。さらには、今回の加計問題を報じるメディアへの批判も展開するなど、踏み込んだ発言の内容が賛否を広げている。
●「獣医師が確保できない」
 加戸氏は旧文部省OBで、愛媛県知事を1999年から2010年まで3期12年務めた。今治市への獣医学部誘致をスタートさせた「当事者」で、今回の閉会中審査では与党側の求めに応じて参院での審議に参考人として出席した。自民党の青山繁晴議員の質問で答弁に立った加戸氏はまず、“「10年前に愛媛県知事として今治市に獣医学部の誘致を申請した当時のことを思い出して、はなもひっかけて貰えなかった問題が、こんなに多くの関心を持って頂いていること、不思議な感じがいたします」と皮肉の効いた一言。続けて、鳥インフルエンザやBSE(牛海綿状脳症)といった感染症対策の充実を大きな目的に獣医学部の誘致に取り組んだが、文科省への申請は一向に通らなかったとして、“「(前川氏の)『行政がゆがめられた』という発言は、私に言わせますと、少なくとも獣医学部の問題で強烈な岩盤規制のために10年間、我慢させられてきた岩盤にドリルで国家戦略特区が穴を開けて頂いたということで、『ゆがめられた行政が正された』というのが正しい発言ではないのかなと思います」と述べた。さらに加戸氏は、四国では「獣医師が確保できない」現状もあったとして、国や専門団体が獣医学部誘致に反対することは「あまりにも酷い」と感じていたと説明。その上で、“「私の知事の任期の終わりの方に、民主党(当時)政権が誕生して『自民党じゃできない、自分たちがやる』と頑張ってくれた。(中略)ところが、自民党政権に返り咲いても何も動いていない。何もしないで、ただ今治だけにブレーキをかける。それが、既得権益の擁護団体なのかと、悔しい思いを抱えてきた」
と声を震わせて訴えた。
●YouTubeが「すべてを語り尽くしている」
 このように獣医学部新設をめぐる経過を説明した上で、加戸氏は、自身が訴えてきた獣医師の養成が進まない中で、現在「今治は駄目、今治は駄目、加計ありき」と言われることについて「何でかなと思ってしまう」との不満を漏らした。そして、“「私は、加計ありきではありません。たまたま、今治選出の議員と加計学園の事務局長がお友達だったからこの話が繋がってきて、飛びついた。これもダメなんでしょうか。お友達であれば、全てがダメなのか」と主張。続く質問の答弁では、「本質の議論がされないまま、こんな形で獣医学部がおもちゃになっていることを甚だ残念に思う」とも述べた。さらに加戸氏は、加計学園問題をめぐるメディア報道にも不満を漏らした。これまでに受けた取材について、「都合のいいことはカットされて、私の申し上げたいことを取り上げて頂いたメディアは極めて少なかったことは残念」だと指摘。その上で、国家戦略特区諮問会議の民間議員が6月13日に開いた記者会見で、加計学園の獣医学部新設のプロセスについて「正当」と結論付けたことを、加戸氏はYouTubeの動画で見たとして、“「これが国民に知ってもらうべき重要なことなんだなと思いました。(中略)あのYouTubeが全てを語り尽くしているのではないかな、と思います」とも話していた。
●三原じゅん子氏「加戸氏も大事な事話してるのに、、、」
 こうした加戸氏の答弁は、主にインターネット上で大きな注目を集めており、その踏み込んだ訴えの内容に賛否の大きく分かれた意見が出ている。加戸氏の答弁を支持するユーザーからは、“「加戸さんの話は響くものがあった。地方は何か打って出なくてはいけないのに、野党も前川さんも規制で閉めだすことばかり」。「加戸元知事の切実な訴え聞くとこの問題の本質って既得権益を持つ獣医学会との戦いなんだな・・・・て思う」。といった意見が出る一方、今回の発言内容について、“「県議と加計の事務局長がお友達で話が進んだと公平でないことを自分で言ってんだ」。「今治市に獣医学部の大学を誘致したいという彼の熱い思いと今回の政策プロセスの不透明性の間には何の関係もない」。と否定的にみる意見もみられた。そのほか、前川氏をはじめとした計3人の参考人の答弁のうち、加戸氏の発言がメディアの報道で取り上げられるケースが少ないという指摘も目立った。実際、自民党の三原じゅん子参院議員は7月11日14時過ぎに更新したツイッターで、“「昨日の閉会中審査の模様が報じられていますが、どの番組も平井卓也議員と青山繁晴議員の質疑はスルー。加戸元愛媛県知事も大事な事話してるのに、、、」。との不満を漏らしている。
●「安倍総理が好きか嫌いかだけで...」
 また、閉会中審査が行われた10日夜に放送された情報番組「ユアタイム」(フジテレビ系)で、番組MCを務めるタレントの市川紗椰さん(30)は、加戸氏の答弁について、“「私が印象的だったのは、加戸前愛媛県知事です。なんか、それがすべてだったのかなって気もした。経緯を丁寧に説明していて、辻褄が合うんですよね、議事録とかを見ると。なんか、いいのかなって、納得しちゃいました」。と好意的に捉えていた。また、同番組では、国際ジャーナリストのモーリー・ロバートソン氏が、加計学園をめぐる問題を報じるメディアへの「苦言」を漏らす場面も。モーリー氏は「(加計学園問題は)そもそも様々な観点があるし、メディアは、それを能動的に一番初めに取材できたと思う」とした上で、“「ただどうしても、野党による内閣への追及ということで、ショーアップに加担して尻馬に乗ってしまったように思います。だから下手をすると、今回信頼を失うのは自民党というよりも、メディアが敗者になる可能性があります」と指摘。続けて、「(メディアは)本来の機能を果たしてこなかったんじゃないか、エンターテインメントと報道を混同してまったのではないか。そう自戒を込めて思います」とも話した。こうした発言を受け、市川さんは「この問題について話す人は、目の前にある材料というよりも、安倍総理が好きか嫌いかだけでポジションを取っているような...」との感想を漏らしていた。

*1-7:http://www.nikkei.com/article/DGXLZO19079410Q7A720C1EA1000/?dg=1 (日経新聞 2017/7/21) 安倍政権に疑惑次々 日報・加計…支持率低下に拍車
 内閣支持率の急落にあえぐ安倍政権に、2閣僚の疑惑が追い打ちをかけている。南スーダン国連平和維持活動(PKO)の日報を巡る問題は、稲田朋美防衛相が非公表の方針を「了承」したかどうかが焦点に浮上。学校法人「加計学園」の獣医学部新設に関しては、国家戦略特区担当の山本幸三地方創生相が認定2カ月前に新設方針に言及した記録が明らかになった。
■日報問題、稲田氏の了承が焦点
 南スーダンPKO部隊が作成した日報を陸上自衛隊が「廃棄した」と説明しながらデータを保管していた問題を巡り、特別防衛監察は、これまで調査の対象となっていなかった稲田朋美防衛相を含め、疑惑解明に向けた調査を急ぐ。焦点は稲田氏がどの時点で陸自データの保管を把握していたかだ。関係者によると、稲田氏は2月15日に黒江哲郎防衛次官、岡部俊哉陸上幕僚長との会議でデータ残存の報告を受けていた。稲田氏は2月15日に岡部氏と会ったことは認めたものの、そうした報告はなかったと否定している。今後は特別監察による稲田氏への聴取が行われる見通し。稲田氏がその場でデータ残存の報告を受け、了承していたと認定すれば、組織的な隠蔽工作をトップが了承していたことになる。稲田氏は3月に国会で「(陸自から)報告は受けていない」と答弁している。防衛省幹部が稲田氏にデータ残存を報告せず、稲田氏が非公表の了承もしていないと特別監察が結論づければ、この問題の疑念がさらに深まる可能性もある。2月15日には稲田氏を交えた会議とは別に、黒江氏、岡部氏、統合幕僚監部の辰己昌良総括官による別の会議で非公表の方針が決まっている。最高幹部が集まり、非公表を決めたのにもかかわらず稲田氏に報告しなかったのか、という不自然さは否めない。民進党の蓮舫代表は20日の記者会見で「日報の非公表、隠蔽に加担したなら政府の信頼が根底から覆される」と厳しく批判した。特別監察については同党内から「稲田氏だけが責任逃れをして、防衛省や自衛隊の幹部に責任を負わせることがあってはならない」(山井和則国会対策委員長)と調査の徹底を求める声も上がった。
■加計問題、山本氏巡る文書が波紋
 昨年11月に日本獣医師会の役員と会った山本幸三地方創生相が「(獣医学部の新設は)四国に決まった」と伝えたとされる記録文書が獣医師会側に残っていた。山本氏は「四国に決まったという発言はしていない」と発言を否定したものの、野党側は「加計ありきの証拠」として徹底追及する構えだ。この発言に関し、内閣府に議事録が存在しないため、山本氏は自らの反論を裏付ける「物証」を示せていない。真相は不明だが、安倍政権による「加計ありき」の疑念は拭えない。獣医師会によると、学校法人「加計学園」(岡山市)が愛媛県今治市の国家戦略特区に獣医学部を新設する計画を巡り、山本氏は同学園が事業者に決まる2カ月前の昨年11月に獣医師会の役員と協議した。獣医師会側は、山本氏は加計学園の名前を挙げ、新設に伴う愛媛県や同県今治市と学園の費用負担割合を説明したとしている。これに対し、山本氏は20日、内閣府で記者団に、加計学園の名前を挙げたことは一切ないと強調。その上で「私から京都(での新設)もあり得るという旨を述べたところ、獣医師会側からは、進めるのなら愛媛県今治市のみと明記してほしいとの発言もあった」と述べた。獣医師会側は「(京都の話などは)議事録にはない」と反論しており、双方の主張は真っ向から食い違っている。加計学園と同様、獣医学部新設を目指していた京都産業大は教員確保のめどが立たないとして14日に計画断念を発表した。安倍晋三首相は24、25両日の衆参予算委員会の閉会中審査で自ら選定プロセスを説明し、理解を得たい考えだ。獣医師会の記録が明らかになり、これまでの説明との整合性が改めて問われることになりそうだ。

<既成政党への失望理由>
*2-1:http://www.the-miyanichi.co.jp/shasetsu/_26751.html (宮崎日日新聞 2017年7月5日) 都議選で自民惨敗
◆政権の過ち厳しく総括せよ◆
 安倍晋三首相が、自民党が歴史的惨敗を喫した東京都議選の結果を受けて記者団に、「自民党に対する厳しい叱咤(しった)と深刻に受け止め深く反省しなければならない」と述べた。現有57議席から23議席に減らし、過去最低だった38議席を大きく下回った結果は、安倍政治への「不信任」に等しい。首相自身、「政権が発足して5年近くが経過する。その中で、政権に緩みがあるのではないかという厳しい批判があったと思う」とも述べている。
●1強のおごり高ぶり
 従来のように反省ポーズで終わらせ、先に進むことは許されない。まず官邸への「忖度(そんたく)」や首相の「ご意向」で便宜が図られたと指摘されている森友・加計学園問題への対応、委員会採決を飛ばす奇策を使った「共謀罪」の趣旨を盛り込んだ改正組織犯罪処罰法の成立過程など、この事態を招いた政権の誤り、過ちを自ら厳しく総括することが必要だ。森友・加計学園などの問題で、東京都民はじめ国民の目に映し出されたのは、首相が言うような政権の「緩み」ではない。首相を頂点とする「1強」が常態化したことによる「おごり高ぶり」だ。公開を求められた公文書や公的資料の提出を拒む、あるいは存在しないことにする。出す時は読ませたくない部分を黒塗りにする。加計学園問題では官僚が作成した文書を官房長官が「怪文書」と切り捨てる。内部調査が始まると文部科学省の副大臣が国家公務員法の守秘義務違反を持ち出して官僚を威嚇、存在が確認されると今度は名指しされた官房副長官らが記載内容を全面否定する。さらには、それを国会内外で追及する野党やメディアを「印象操作」と非難する。極めつきは稲田朋美防衛相による都議選での自衛隊の政治利用発言だ。
●抑制のない強権志向
 一連の言動の背景にうかがえるのは、都合の悪いことにはふたをしろ、逆らう官僚はけなしたり脅したりして黙らせればいい、彼らは自分たちに従うのが当然なのだという傲慢(ごうまん)さと抑制のない強権志向である。
加えて「魔の2回生」とやゆされる当選2回の衆院議員による数々の不祥事だ。失言、暴言のみならず不倫や交際トラブルなど女性問題、秘書への暴行疑惑。そして、もろもろの問題の当事者が首相の夫人や側近、安倍チルドレンと呼ばれる若手議員である。都議選最終日、街頭演説に立った首相はやじを浴びた。極めて異例の出来事ではあったが、首相はその原因に目を向けるべきだ。首相は今後、内閣改造や自民党幹部人事で態勢の立て直しを図るつもりだろう。しかし、常々、安倍首相が言うように政治は「結果」責任である。それは、評価される実績を残せばいいということではない。政権を巡るさまざまな問題を最高責任者として引き受けることでもある。

*2-2:http://digital.asahi.com/articles/DA3S13045133.html (朝日新聞 2017年7月20日) 共産、都議選結果に自信 結党95周年、不破氏講演
 共産党が今月、創立95周年を迎えた。野党第1党の民進党が低迷にあえぐ中、大型選挙での勝利をテコに第2党として存在感を示している。次期衆院選に向け、野党共闘路線に否定的な議員を抱える民進との連携をどう図るかが課題だ。1922年7月結党の同党は19日、95周年の記念講演会を東京都内で開催。不破哲三・前議長(87)は「安倍政治の暴走は、自民党政治が没落の段階に入ったことを示す末期現象。都議選での自民の敗北が実証した」と指摘した。同党は、2009年に旧民主党が政権奪取するまでは2大政党のはざまに埋没しがちだった。しかし民主が下野して以降は、13年参院選で改選前から5議席増やし、14年衆院選で13増と躍進。2日の都議選でも、民進が2減の5議席と退潮する一方、2増の19議席を獲得した。次期衆院選に向けては、志位和夫委員長が「憲法を平気で壊す、傲慢(ごうまん)な政治を続けさせない」として、民進など野党の選挙協力の必要性を訴えた。ただ民進との競合区は依然200を超える。民進の都議選総括の会議では「共産との共闘路線を見直すべきだ」との声が相次いでおり、険しい道のりが予想される。

*2-3:http://digital.asahi.com/articles/DA3S13033443.html (朝日新聞社説 2017年7月13日) 民進党 勘違いしていませんか
 民進党は大きな勘違いをしているのではないか。東京都議選の敗因分析に向けた党内議論を見ていると、そんな疑問を抱かざるをえない。国会議員の会合では「解党的出直し」を求める声に加え、蓮舫代表の「二重国籍問題」に矛先が向いた。蓮舫氏は「いつでも戸籍開示の用意がある」と、戸籍謄本を公開する意向を示したという。民進党の議員たちに問う。蓮舫氏が戸籍を公開すれば、党勢は上向く。そう本気で思っているのか。旧民主党政権の挫折から4年半。民進党が民意を受け止められない大きな原因は、そうした的外れな議員たちの言動にこそあると思えてならない。今回の都議選で民進党は、前回の15議席から5議席に獲得議席を大幅に減らした。国政での野党第1党の存在意義が問われる危機的な敗北である。さらに安倍内閣の支持率が急落する中、民進党の支持率は本紙の世論調査では5%にとどまっている。「共謀罪」法や加計、森友学園の問題などで、民進党が安倍政権を問いただす役割を担ってきたのは確かだ。なのになぜ、野党第1党の民進党が、政権の受け皿として認知されないのか。都議選では小池百合子知事率いる都民ファーストの会の躍進があった。しかしそれだけではない。政党にとって何よりも大事な政策の軸が、定まらないことが大きい。象徴的なのは原発政策だ。なし崩しの原発回帰を進める安倍政権に対し、民進党が脱原発依存の旗を高く掲げれば、鮮明な対立軸を示せるはずだ。そのことが分かっていながら、電力会社労組などへの配慮を優先し、政策をあいまいにする。大きな民意を見失っていることが、党勢低迷の根本的な要因である。「二重国籍」問題で、蓮舫氏の説明が二転三転したことは、公党のリーダーとして不適切だった。だが、主な敗因とは思えない「二重国籍」問題に議員たちがこだわるようなら、国民はどう受け止めるだろう。もう一つ懸念されるのは、蓮舫氏が戸籍謄本を公開することが社会に及ぼす影響だ。本人の政治判断とはいえ、プライバシーである戸籍を迫られて公開すれば、例えば外国籍の親を持つ人々らにとって、あしき前例にならないか。民進党と蓮舫氏はいま一度、慎重に考えるべきだ。


<反論すべき政策>
PS(2017年7月24、25日追加):*3-1のように、政府(経産省)は、40年超の原発に合計27億円加算した電源立地地域対策交付金を支払っており、廃炉を促すべき時に逆行している。しかし、経産省の資源エネルギー庁は「なぜ、このような制度になったか把握していない」として責任をとらない態度であり、後ろ向きでマイナスの政策に多額の国民の血税が支払われるのは明らかだ。また、*3-2のように、代替案はいくらでもあるのに、「これしかない」として“粛々と”辺野古の埋め立てを行っているのも、宝の自然を壊すために無駄な工事費を国民の血税から支払っている馬鹿な行為であるため、これこそ正面から追究すべきである。
 そこで、*3-3のように、国が知事の岩礁破砕許可を得ずに工事を進めるのは違法だとして、2017年7月24日、沖縄県は岩礁破砕差し止め訴訟を那覇地裁に提起したのはよいのだが、理由が「①政府の進め方の拙速さ」「②漁業権の一部放棄が変更に該当するので知事免許が必要」というだけでは手続き上の瑕疵しか言っておらず理念がない。そのため、*3-4の環境基本法や海洋基本法(http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H19/H19HO033.html)の理念を参考にされたい。これらは、私が衆議院議員だった時、環境保護のために強化したり、海洋資源利用のために新設したりしたもので、罰則はないが基本理念を述べているからだ。なお、基本理念にも足らざるところがあると思われるので、それぞれの自治体で、これを基にして自然や景観を含む多様な資源を保護するための条例を作ればよいだろう。 

   
  2017.7.25琉球新報               辺野古の工事開始

  (図の説明;穏やかで美しいサンゴ礁の海に、醜いテトラポットを積むところも馬鹿だ)

*3-1:https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170724-00000004-jij-soci (Yahoo、時事通信 2017.7.24) 40年超原発、計27億円加算=老朽8基の5市町に―交付金、原則に「逆行」
 運転開始から40年超の老朽原発を抱える福井県美浜町など5市町に、電源立地地域対策交付金の加算分として2016年度までに計27億円が交付されたことが23日、立地自治体などへの取材で分かった。交付金は40年を超えた原発の立地市町村に年1億円上乗せされるが、老朽原発の存続を事実上後押しする仕組みに専門家からは、「廃炉を促すべきなのに逆行している」と批判が出ている。原子炉等規制法は、原発の運転期間を原則40年に制限している。これまでに国内で40年を超えたのは東京電力福島第1原発1号機(福島県大熊町)、日本原子力発電敦賀原発1号機(福井県敦賀市)、関西電力美浜原発1~3号機(同県美浜町)、同高浜原発1、2号機(同県高浜町)、中国電力島根原発1号機(松江市)の計8基。このうち美浜3号機と高浜1、2号機を除いた5基は廃炉となった。5基は40年を超えてから廃炉となるまで、交付金が年1億円加算された。福島第1原発1号機が立地する大熊町は計2億円▽敦賀1号機がある敦賀市は計6億円▽美浜原発がある美浜町は廃炉の1、2号機と存続する3号機で計11億円▽高浜1、2号機がある高浜町には計5億円▽島根1号機がある松江市は計3億円―が上乗せされた。美浜3号機と高浜1、2号機は、原子力規制委員会の審査で20年間の運転延長が認められている。3基が期限まで存続すれば加算額は累計で60億円となる。40年超の原発について交付金が加算される仕組みは10年度から始まった。経済産業省資源エネルギー庁は「なぜ、このような制度になったか把握はしていない」としている。原発と自治体の関係に詳しい朴勝俊・関西学院大教授は「原発は古くなるほど危険なのに、交付金を加算するのはいやらしい。廃炉が地元のメリットになる制度に変えるべきだ」と話している。 

*3-2:http://www.saga-s.co.jp/news/national/10201/449061 (佐賀新聞 2017年7月24日) 辺野古、沖縄県が再提訴、政府と改めて法廷闘争
 沖縄県は24日、米軍普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古への移設工事差し止めを求め、那覇地裁に提訴した。政府が県規則に定められた翁長雄志知事の許可を得ずに「岩礁破砕」を行うのは違法と主張。判決まで工事を中断させる仮処分も併せて申し立てた。政府は判例から県の訴えは不適法で、許可も不要として全面的に争う方針だ。辺野古移設を巡っては、2015年10月に現場海域の埋め立て承認を取り消した翁長氏の処分に関し政府と沖縄県が訴訟で争った結果、昨年12月に県側敗訴判決が確定した。双方の対立は再び法廷闘争に発展した。

*3-3:https://ryukyushimpo.jp/movie/entry-541319.html (琉球新報 2017年7月25日) 政治:辺野古差し止めを提訴 県「国の工事は違法」 漁業権存否が争点に 「新基地は理不尽」と知事
 沖縄県名護市辺野古の新基地建設で県は、国が岩礁破砕許可を得ずに工事を進めるのは違法だとして24日午後、国を相手にした岩礁破砕の差し止め訴訟を那覇地裁に提起した。差し止め訴訟と併せて判決が出るまで工事を止めるよう求める仮処分も申し立てた。新基地建設を巡り、国と県は5度目の法廷闘争に入る。翁長雄志知事は午後5時から県庁で記者会見し「国は辺野古案件のために漁業権運用の見解を恣意(しい)的に変えた。法治国家の在り方からは程遠い」と国の姿勢を批判した。その上で「(今回の裁判は)新基地建設の是非そのものを問うものではないが、県民の思いを置き去りにしたまま基地建設に突き進む国の姿勢が問われている」と述べ、裁判を通して国の強権的な姿勢を浮かび上がらせることができると、訴訟の意義を強調した。記者の質問に答える形で、「漁業権の問題などを県民や国民に知らせながら、辺野古新基地を造ることの理不尽さと、政府の進め方の拙速さを訴えていく」と語った。今回の訴訟で県は、工事海域には漁業権が存在し、工事を実施するには県による岩礁破砕許可が必要だと主張する。一方国はこれまで、名護漁業協同組合の決議により漁業権はすでに消滅しており、県から岩礁破砕許可を得る必要はないと主張している。県は訴状で、漁業法第11条や22条を根拠に、名護漁協が総会で決議した漁業権の「一部放棄」は、漁場の「縮小」を意味し、「漁場の縮小が『変更』に該当するということは明治漁業法以来、当然のこととされ、現行法下の水産行政も一貫してこの立場をとってきた」と主張。漁業権を変更するには知事免許が必要だとした。さらに、県が国に岩礁破砕許可申請を請求することができる理由として県は「水産資源を保護培養する公益保護の主体者」であるとし、岩礁破砕許可申請という「義務」の履行請求権を有すると主張している。

*3-4:http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H05/H05HO091.html 環境基本法(要点)
第一章 総則
(目的)
第一条  この法律は、環境の保全について、基本理念を定め、並びに国、地方公共団体、事業者及び国民の責務を明らかにするとともに、環境の保全に関する施策の基本となる事項を定めることにより、環境の保全に関する施策を総合的かつ計画的に推進し、もって現在及び将来の国民の健康で文化的な生活の確保に寄与するとともに人類の福祉に貢献することを目的とする。
第三条  環境の保全は、環境を健全で恵み豊かなものとして維持することが人間の健康で文化的な生活に欠くことのできないものであること及び生態系が微妙な均衡を保つことによって成り立っており人類の存続の基盤である限りある環境が、人間の活動による環境への負荷によって損なわれるおそれが生じてきていることにかんがみ、現在及び将来の世代の人間が健全で恵み豊かな環境の恵沢を享受するとともに人類の存続の基盤である環境が将来にわたって維持されるように適切に行われなければならない。
(国の責務)
第六条  国は、前三条に定める環境の保全についての基本理念にのっとり、環境の保全に関する基本的かつ総合的な施策を策定し、及び実施する責務を有する。
(地方公共団体の責務)
第七条  地方公共団体は、基本理念にのっとり、環境の保全に関し、国の施策に準じた施策及びその他のその地方公共団体の区域の自然的社会的条件に応じた施策を策定し、及び実施する責務を有する。

<メディアの質>
PS(2017年7月31日追加):日本のメディアは、上記のように、頻繁に首相交代・解散・政権交代等のイニシアティブをとるが、その理由としては、男性政治家なら①政治と金 ②女性関係のゴシップ を使うことが多く、女性なら③仕事の経験及び実力の不足 ④不倫 などだ。しかし、①は、昔と違って政治資金規正法による開示を厳しくし、国会議員の政治資金団体には監査を義務づけているため、個人の政治家が大きな癒着を犯せる余地はなく時代遅れだ。また、③は、「女性は仕事の能力・経験が乏しい」「真剣に仕事をしない」「統率力がない」など、女性は仕事に未熟で不熱心であるという先入観を利用しており、女性蔑視そのものである。さらに、②④は、ないに越したことはないが、政策や仕事とは一線を画すべきプライバシーである。
 メディアがこういう批判の仕方をする理由は、1)「政治家のゴシップの方が国民が理解しやすく、視聴率が上がる」という国民を馬鹿にした態度があること 2)政策内容を正しく分析し、説明できる人材がメディアの中にいないこと 3)それでも権力を批判しているというポーズをとっていること などが考えられる。そして、この状態は、今までいくら言っても変わらず、放送は国民の文化を作るため大きな問題なのだが、*5のように、テレビ番組をインターネット放送する時代になれば状況が変わるだろう。
 何故なら、インターネット放送は、電波の制限がないため総務省の規制を受けず、いろいろなメディアが放送することが可能になり、内容がくだらなかったりぼやけたりしている番組は淘汰されるからだ。また、インターネット放送なら他国の放送も完全に受信できるため、放送の比較が可能であり、放送を通じて言語を習得することもできる。私は、スペインに行った時、日本のように馬鹿な内容の放送ばかりしている国はなかったが、中でもロシア国営放送(英語版)が、最も内容のあるポイントをついた放送をしていたのには、正直言って驚いた。
 なお、広告料金に頼ると、メディアにとっては報道したい内容を報道できず、視聴者にとっては情報価値が下がる上、番組の途中で頻繁にコマーシャルが入るのは不快であるため、受信料を望む局はNHKに限らず、その番組の単位時間あたり受信料を表示した上で、受信時間に比例して通信会社を通じて受信料を徴収すればよいと思われる。

*5:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20170731&ng=DGKKZO19440840R30C17A7PE8000 (日経新聞社説 2017.7.31) 受信料より先に議論すべきことがある
 テレビ番組を放送と同時にインターネットで流す際の料金について話し合ってきたNHKの検討委員会が答申をまとめた。スマートフォン(スマホ)などのネット接続機器のみで番組を見る世帯からも、テレビと同じ水準の受信料を徴収する方向性を示した。若年層を中心にテレビ離れが進んでおり、「常時同時配信」で新たな視聴者を獲得したいという考え方は理解できる。だが、料金の議論だけが先行する現状に違和感も覚える。同時配信の背景にあるのは、放送と通信の間の垣根が低くなっているという事情だ。スマホを通じた動画の視聴が普及し、速度が大幅に向上した次世代の無線通信で拍車がかかるのは確実だ。海外に目を向けると、英国や韓国などで公共放送が同時配信を始めている。日本では「同時配信のニーズは乏しい」との見方もあるが、海外の事例をみればそうとは言い切れない。優良なコンテンツの制作を続け、激しさを増す海外での販売競争に勝つためにも、時代の変化に合わせて収益を確保する努力は必要だ。だが、健全な競争環境を維持するという観点では課題がある。NHKの2016年度の受信料収入は6769億円に達し、既に民放の最大手である日本テレビホールディングスの放送関連収入の2倍近い。「ネット受信料」を新設すると年間200億~300億円の増収になるとの見方もあり、地方の民放の売上高を上回る。受信料制度に支えられたNHKがネット事業に本格的に参入すると、この分野の既存企業にも脅威となる。多様なコンテンツやサービスを利用者に提供するため、民間企業が投資を続けられる環境を整えることが重要だ。ネットは生活に深く入り込み、NHKの報道が力を発揮する災害時も、交流サイトのフェイスブックやツイッターなどが情報を伝える事例が増えている。NHKの上田良一会長は現在の公共放送から、ネットも含めた「公共メディア」を目指す意向を示している。まず必要なことは、ネット時代の公共メディアに必要な役割を定義し、適正な業務の範囲について議論を深めることだ。本質的な議論を避けて同時配信を手っ取り早い収入拡大の手段とするようなことがあれば、理解を得るのは難しいだろう。

| 民主主義・選挙・その他::2014.12~2020.9 | 04:26 PM | comments (x) | trackback (x) |
2017.7.14 ふるさと納税と返礼品・使途・地域振興・街づくりなど (2017年7月15、17、18、19、20、29、30日、8月3日追加)
 
      2017.7.4西日本新聞     2017.4.24日経新聞  2017.7.9
                                西日本新聞 

(図の説明:ふるさと納税でいつも上位にくる地方自治体には、その努力に敬意を表する。それに対し、努力もせずに無駄遣いばかりしている負け組の地域が、勝ち組の返礼品等に文句をつけているのは、正々堂々と競争しておらず見苦しい。また、使途による寄付は、東日本大震災や熊本地震などの大災害で著しく増加したが、そのようにわかりやすい使途だけが重要なのではないため、主体である地方自治体に自由に決めさせるべきである。そのため、総務省は、地方自治体の箸の上げ下げにまで指示するのは控えるべきだ)

(1)災害支援とふるさと納税
 九州北部の激しい豪雨で、福岡・大分両県の被災地では、*1-1のように、自衛隊や警察などによる捜索や救助が続き、有明海に5遺体が流れ着くなど、その被害の大きさを物語っている。また、熊本地震と重ね合わせてみると、どのようにして日本の山・川・扇状地・平野・干潟ができたのかが、映像で記録された体験として理解できる。

 福岡県朝倉市、大分県日田市付近は、大宰府・吉野ヶ里遺跡・神崎・耶馬渓・高千穂に近く、まさに日本の古代史の現場である。そして、そこから中継されてくる映像を見ると、近年、もともと川だった場所に道を作ったり、堤防を過信して川の近くや三角州に住宅を建てたりしており、これならちょっと激しい雨が降れば危険になるのは当然だと思われる。また、その山に作ったコンクリートのちゃちな砂防ダムで、山崩れが防げるわけがない。

 そのため、少子高齢化で人口減少時代の現在であれば、復旧ではなく、住居は安全性と高齢者等のケアを考えて街づくりを行い、危険になりやすい地域は農業や林業を行う形で復興するのがよいと思われる。たくさん流れてきた木材も、製材すれば使えそうな立派なものが多いようだ。

 そのような中、政府が激甚災害の指定を行い、災害復興のために要する地元負担が小さくなったのは助かるとともに、*1-2のように、福岡県朝倉市と大分県日田市への「ふるさと納税」が急増しており、感謝されている。ただ、今回は、熊本地震の時とは異なり、他の自治体がふるさと納税事務の代替をしているわけではなく、災害の対応と両方を行っている役場の人手は足りているのだろうか? また、被害を受けた地域は、福岡県朝倉市と大分県日田市だけではないので、正確に報道すべきだ。

(2)ふるさと納税の実績
 ふるさと納税制度は、2005~2009年の間に衆議院議員をした私の提案で、2008年4月30日に公布された「地方税法等の一部を改正する法律」により開始され、手続きの簡易化や上限の引き上げにより、2016年度の寄付総額は、*2-1のように、約2844億円に上った。そして、その制度の導入が決まった時の自民党税調会長は、青森県選出の津島雄二衆議院議員だった。

 これに対し、*2-2、*2-3のように、全自治体を合計した返礼品の調達費約1091億円に送料、広報、事務費などを加えた総経費が1485億1千万円に達して寄付総額の半分を超えた等々の批判があったため、総務省は2017年4月の通知で寄付の30%を超える品物や換金性の高い商品券や家電などを贈る自治体に見直しを求めた。

 しかし、私は、今回被害を受けた久留米市の久留米絣や大川市の家具、その他中小企業の工場がある地域など、応援したい産業のある地域もあり、国が一律に地方の箸の上げ下ろしにまで口を出して護送船団方式にするのはよくないと考える。つまり、良識の範囲のことをしていればよいのであり、仮にふるさと納税の大部分を返礼品に使ってしまえば、その地方自治体はふるさと納税の事務費はかかるが、ふるさと納税収入で事業を行うことができなくなり、これはその自治体自身の経営の問題だからである。

(3)地域振興と街づくり、教育と福祉
 地域振興・街づくり・教育・福祉などは、地方自治体が賢い基本計画を作って実現していくべきもので、その成否がその後の地域の発展や住みやすさに繋がる。その原資には、地方交付税交付金、地方税、地方消費税、ふるさと納税などがあり、産業を振興し、居心地のよい安全な街を作り、教育・福祉を充実させることが、その後のその地域の振興に繋がる。

1)地域振興と街づくりに関する地方自治体の総合基本計画
 野村総合研究所(東京)がまとめた国内100都市対象の「成長可能性都市ランキング」では、*3-1のように、九州は福岡市が2位、鹿児島市が5位に、福岡県久留米市が9位、長崎県佐世保市が10位と、上位10都市中、九州が4市を占めたそうだ。しかし、調査は九州の10市を含む人口10万人以上の主な都市を対象にしたものだそうで、人口10万人以上の主な都市しか対象にしなかった点で、調査者は自らは気付いていない先入観を持っている。それは、*3-2の沖縄の例をはじめとして、地方都市は、その命運をかけて地域の基本計画を作りつつある所が多く、住みやすい街は人口10万人以上の主な都市とは限らないことである。

 そして、*3-2のように、沖縄総合事務局と沖縄観光コンベンションビューロー(OCVB)が観光客を迎える視点で道路の景観を考える「沖縄における観光の推進と道路緑化シンポジウム」を那覇市のテンブスホールで開いたところ、東京都市大学環境学部の涌井特別教授が「玄関口である道路で、沖縄らしさをどう表現するかを練らないといけない」と基調講演で強調され、沖縄総合事務局南部国道事務所の小幡所長は「都市や海岸、山あいなど地域の特性に応じて植樹すべきだ」と述べられたそうで、その地域らしい美しさや魅力を演出するのが最も効果的なのは、北海道から沖縄まで同じだろう。

2)教育と福祉
 東京の大学は、*3-3のように、画一化を脱するため、地方出身者用の奨学金や学生寮の充実を行い、多様な学生を全国から集めようとしている。そして、これをやらなければ、東大、東工大などは、東京近郊にある受験高出身の男子学生が大半を占め、その人たちが大挙してエンジニアになったり官庁に就職したりする結果、自然を知らない人、教育・福祉・環境を軽んじる人ばかりがリーダーとなって、視野が一面的で狭くなる。

 私も、地方出身者や理系女子学生数が少ないことで、多くの分野で考え方が悪い意味で画一化されているため、母集団の多様性こそが幅広い思考の原点になるという大学の思いに賛成だ。

 さらに、*3-4のように、東大は女子学生に限定して家賃補助を行い、それが逆差別との批判もあるが、もともと男子学生寮は充実している上、家族やそれを取り巻く社会は東大志望の女子生徒には「無理しなくても」と言い、男子生徒には「何が何でも頑張れ」と言う傾向にあることから、女性の高学歴に反対する社会や親へのよいメッセージになると考える。

 確かに、佐賀県も東京の県人寮に入居できるのは男子学生だけであり、女子には高学歴は不要だと言わんばかりのように見える(それどころか、はっきりそう言う人もいる)。しかし、管理職やリーダーの母集団になる女性は、男性と同等以上の実力・能力を要求されるため、東大方式はジェンダー(社会的性差)の公平を狙った策であり、不平等にはあたらないだろう。

 そして、地方では、ふるさと納税収入から、これらの教育・福祉にかかる経費を支払ったり、卒業後にふるさとで就職した学生に奨学金返済を肩代わりしたりすることも可能だ。

<災害とふるさと納税>
*1-1:http://qbiz.jp/article/113836/1/ (西日本新聞 2017年7月9日) 豪雨死者18人に 被災者か、有明海に5遺体 福岡・大分
 九州豪雨による福岡、大分両県の被災地では8日も自衛隊や警察などによる捜索や救助が続いた。福岡県朝倉市では新たに女性の3遺体が見つかり、犠牲者は両県で計18人になった。福岡、佐賀両県沖の有明海では豪雨で流されたとみられる男女5人の遺体が見つかった。生存率が急速に下がるとされる発生から「72時間」が経過する中、大分県日田市では安否不明者全員の無事が確認されたが、福岡県では依然として27人と連絡が取れていない。犠牲者の内訳は、朝倉市13人、同県東峰村2人、日田市3人。朝倉市黒川で見つかった3遺体は、渕上麗子さん(63)と娘の江藤由香理さん(26)、江藤さんの長男友哉ちゃん(1)▽同市杷木林田の遺体は岩下ひとみさん(36)=杷木池田▽東峰村宝珠山の2遺体は熊谷国茂さん(81)と妻千鶴代さん(81)と判明した。また、日田市の田代川近くで発見された遺体は矢野知子さん(70)=鶴河内=と確認された。福岡県などによると8日午前、朝倉市杷木を捜索していた消防隊が川の上流で女性の遺体を発見。その後も杷木の竹やぶなどから女性の2遺体が見つかった。被災地の川から数十キロ下流にある有明海やその沿岸でも女性3人、男性2人の遺体が相次いで見つかった。福岡、佐賀両県警によると、周辺に大量の流木があったことなどから豪雨で流された可能性があるという。安否不明の26人がいる朝倉市では、果樹園の様子を見に行ったまま行方不明となっている男性などの捜索が続いた。1人の行方が分かっていない東峰村宝珠山でも捜索が行われたが、二次災害の危険があることから日没で打ち切られた。同日夕現在、孤立しているのは朝倉市で1人、東峰村で28人、日田市で545人。避難所には朝倉市1142人、東峰村429人、大分県378人が避難している。朝倉市と東峰村では計2170戸が断水し、計1200戸が停電。日田市では410戸が断水している。交通では、大雨の影響で不通となっていたJR佐世保線の肥前山口−早岐で運転が再開されたほか、東九州自動車道や九州道も8日までに通行止めが全線で解除された。九州北部は8日も、朝倉市や福岡県嘉麻市で局地的に非常に激しい雨が降った。今後も大気の不安定な状態が続くといい、気象庁は土砂災害などへの厳重な警戒を呼び掛けている。9日午後6時までの24時間予想雨量は多いところで熊本200ミリ、福岡150ミリ、佐賀、長崎、大分120ミリ。

*1-2:http://qbiz.jp/article/114256/1/ (西日本新聞 2017年7月14日) 2017九州豪雨:被災地のふるさと納税急増 朝倉、日田両市
 九州豪雨で被災した福岡県朝倉市と大分県日田市への「ふるさと納税」が急増していることが13日、分かった。朝倉市によると5〜12日の8日間だけで計4888万370円(2485件)。「応援しています」など、被災者へのメッセージも添えられているという。朝倉市へのふるさと納税は、昨年7月の1カ月間では計2051万9000円(1388件)だった。同市は6日から返礼品をストップしているが、勢いは止まっていない。日田市でも今月5〜12日、少なくとも1605件、計2802万3600円(1605件)が集まった。直前の6月27日〜7月4日は計409万円(305件、いずれも暫定値)で、約6.9倍に増えた計算だ。同市は「『一日も早く復興に向かうよう祈っています』などコメントを付けて納税してくれる方が多く、本当にありがたい」と感謝しきりだ。

<ふるさと納税の実績>
*2-1:http://qbiz.jp/article/113473/1/ (西日本新聞 2017年7月4日) ふるさと納税が過去最高の2844億円 首位は2年連続で宮崎・都城市
 総務省は4日、ふるさと納税による2016年度の寄付総額が過去最高の2844億887万5千円に上ったと発表した。15年度より1200億円近く増え、伸びは1・7倍。返礼品の充実に加え、インターネットでの簡易な手続きが定着したことも追い風になったが、住民税や所得税の減税が受けられる寄付額上限が約2倍に引き上げられた15年度の伸び(4・3倍)には及ばなかった。件数は1・8倍の1271万件だった。寄付額は宮崎県都城市が73億3300万円で2年連続のトップ。昨年4月に大規模な地震があった熊本市は復興支援の寄付が急増して36億8600万円で6位に入った。寄付額の上位には、高額な商品や多彩な特産物を返礼品とする自治体が並んだ。2位以下は長野県伊那市の72億500万円、静岡県焼津市の51億2100万円、宮崎県都農町の50億900万円、佐賀県上峰町の45億7300万円と続いた。都道府県別の寄付額は、北海道271億2400万円、山形225億3300万円、宮崎206億200万円の順だった。総務省は4月以降、返礼品競争の過熱を抑えるため、寄付の3割を超える金額の品物や、換金性の高い商品券や家電などを贈る自治体に見直しを要請した。その結果、寄付額上位の約200自治体のうち9割程度が見直す意向を示したという。15年度の寄付総額は1652億9102万円。17年度に入ってからは総務省が高額な返礼品の自粛を全国の自治体に求めており、伸びが落ち込む可能性もありそうだ。

*2-2:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/443653 (佐賀新聞 2017年7月5日) ふるさと納税2844億円 16年度過去最高、返礼品が追い風
 総務省は4日、ふるさと納税による2016年度の自治体への寄付総額が過去最高の2844億887万5千円になったと発表した。15年度の1・7倍で、返礼品の充実やインターネットでの簡易な手続きが定着したことが追い風になった。ただ住民税や所得税の減税が受けられる寄付額の上限が約2倍に引き上げられた15年度の伸び(4・3倍)には及ばなかった。件数は1・8倍の1271万件だった。寄付額は宮崎県都城市が73億3300万円で2年連続のトップ。長野県伊那市の72億500万円、静岡県焼津市の51億2100万円と続き、上位には高額な商品や多彩な特産物を返礼品とする自治体が並んだ。昨年4月に大規模な地震があった熊本市は復興支援の寄付が急増し、36億8600万円で6位だった。都道府県別の合計は、北海道271億2400万円、山形225億3300万円、宮崎206億200万円の順だった。寄付額に占める返礼品調達費の割合は全国平均で38%。15年度から横ばいだった。全自治体を合計した調達費1090億8千万円に、返礼品の送料や広報、事務費などを加えた総経費は1485億1千万円に達し、寄付総額の半分を超えた。高額な返礼品で寄付を集める自治体間の競争が過熱したことから、総務省は4月の通知で寄付の30%を超える金額の品物や、換金性の高い商品券や家電などを贈る自治体に見直しを求めた。ただ寄付額の上位約200自治体のうち10%ほどは受け入れておらず、今後も働きかけを続ける。15年度の寄付総額は1652億9102万円だった。17年度に入ってからは総務省の要請に応じた返礼品の見直しが広がっており、寄付の伸びが鈍化する可能性もありそうだ。

*2-3:https://www.agrinews.co.jp/p41343.html (日本農業新聞 2017年7月11日) 再考 ふるさと納税 返礼品競争に終止符を
 2016年度のふるさと納税の寄付総額が過去最高を更新した。地方支援の広がりは歓迎するが、豪華な品物で寄付を集める「返礼品競争」が過熱し、本来の趣旨を逸脱する面もみられる。行き過ぎた競争は早期に是正する必要がある。ふるさと納税は、出身地や応援したい自治体に寄付をすると税金が軽減される制度。08年度に始まった。寄付金額から2000円を引いた額が所得税や住民税から控除される。寄付した自治体からは、特産品などの返礼品が届く。15年度からは、減税される寄付額の上限が2倍に引き上げられ、寄付先が5自治体までなら確定申告のいらない「ワンストップ特例」が導入された。この結果、全国の自治体が受け入れた寄付額は1653億円と前年度の4.3倍にも増えた。16年度は前年度比1.7倍の2844億円で過去最高となった。一方で、返礼品調達費は16年度で1091億円にも上り、寄付額に占める割合が全国平均で38.4%にも達した。負担になり始めている。総務省は4月に、寄付額の3割以下に抑えるように自治体に通知し、6月からは100団体に改善を求めているが、対応が遅れている。自治体の中には、寄付金で財政が潤い、特産品の消費拡大にもつながるとして、見直しには消極的なところもある。見直し根拠が曖昧なことへの戸惑いも見える。しかしこのまま高額の返礼品が続けば、対価を求めない寄付文化をゆがめたり、特産品の廉売につながったりする。総務省は説得に努めるべきだ。とりわけ農畜産物は、農業関係者の間に「将来的に安売りや投げ売りにつながり、自らの首を絞めることになりかねない」との懸念が強まっている。返礼品に「上限」を設けたり、品目を制限したりする明確なルールを考えるべきだ。寄付の集まらない自治体の不公平感や、住民が他市町村の特産品を目当てに寄付し「税金が逃げる」という弊害、多額の寄付ができる富裕層ほど税の控除が多くなる問題も指摘されている。政府はこうした問題の是正も急ぐ必要がある。寄付する側の意識改革も必要だ。商品を探すように、ネットでの返礼品人気ランキングを見ながら寄付先を選ぶような行為は制度本来の姿ではない。返礼品を得ることが目的ではないはずだ。制度の趣旨を理解した上での冷静な行動が求められる。制度創設時から過剰な返礼品を規制すべきだとの議論はあった。その対策を怠って混乱させた政府の責任は重い。このまま過熱し続けると、制度の存亡に関わる。全国市長会など地方6団体が中心になって返礼品の是正に取り組むことも重要だ。都市と地方との関わりの契機となり、寄付した人が実際に産地を訪れたりする。そうした真のふるさと創生につながる制度となるよう抜本改革も含め再設計する必要がある。

<地域振興と街づくり>
*3-1:http://qbiz.jp/article/113834/1/ (西日本新聞 2017年7月9日) 福岡市が「成長可能性都市」2位 鹿児島など九州4市もトップ10入り
 野村総合研究所(東京)がまとめた国内100都市対象の「成長可能性都市ランキング」で、福岡市が2位、鹿児島市が5位になった。他に福岡県久留米市が9位、長崎県佐世保市が10位と、上位10都市中、九州が4市を占めた。1位は東京23区だった。野村総研は「九州の地方都市は、大都市に頼らない『ローカルハブ』(地方拠点)になる可能性を秘めている。自らの強みを生かし、地域経済をけん引してほしい」としている。調査は九州の10市を含む人口10万人以上の主な都市が対象。人口、事業所数、地価、財政力、地方交付税への依存度、創業支援策、産学連携など計131の指標に加え、各自治体100〜300人の住民アンケートを点数化し、合計のスコアから順位を算出した。その結果、2位の福岡市は空港、新幹線駅へのアクセスや起業支援策が充実し、市民の幸福度も高いことなどから「“支店経済”の街を脱し新たなビジネスを創出するなど、三大都市圏に次ぐ第4の都市として成長している」。鹿児島市は「外部人材の受け入れに寛容でビジネス集積の伸びしろが大きい」とした。一方、久留米市や佐世保市については「一見、産業創出力が乏しいイメージだが、多様性があり、企業、人材の誘致につながる潜在力は高い」としている。分析した小林庸至上級研究員は「多様なローカルハブを育てていくことは、地方創生だけでなく、首都直下型地震の危機に備えた、災害に強い国づくりにもつながる」と述べた。

*3-2:https://ryukyushimpo.jp/news/entry-531155.html (琉球新報 2017年7月9日) 経済:「道路に沖縄らしさを」 戦略的緑化を議論
 沖縄総合事務局と沖縄観光コンベンションビューロー(OCVB)は4日、観光客を迎え入れる視点で県内道路の景観を考える「沖縄における観光の推進と道路緑化シンポジウム」を那覇市のテンブスホールで開いた。観光、道路緑化などに携わる関係者による討論では、維持管理費の公共予算が減額される中、緑化保全にも優先順位を付ける必要性が確認された。沖縄海洋博覧会の基本計画やハウステンボス、全日空などのリゾート計画に関わった東京都市大学環境学部の涌井史郎特別教授が基調講演し「玄関口である道路で、沖縄らしさをどう表現するか。そのことを戦略的に練らないといけない」と強調した。討論では、OCVBの前田光幸専務理事がシンガポールやハワイなど観光と道路緑化を戦略的に実践している国々の事例を紹介した。沖縄総合事務局南部国道事務所の小幡宏所長は「観光客の訪問頻度や、都市や海岸、山あいなど地域の特性に応じて植樹するべきだ」と述べた。和歌山大学システム工学部の山田和司非常勤講師は、亜熱帯気候のため他県より3倍の早さで成長する沖縄の植物管理頻度の高さを指摘した。沖縄国際大学の宮城邦治名誉教授は「観光客が抱く『日本の中の異国感』という印象を植樹でも想起させるべきだ」と提案した。

*3-3:http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201702/CK2017020202000130.html (東京新聞 2017年2月2日) 【社会】来れ地方の学生よ 東京の大学、脱「画一化」に挑戦
 入学試験に「地域の課題」、地方出身者用の奨学金、学生寮の充実-。多様な学生を全国から集めようと、東京の大学が試行錯誤している。親の世帯の収入の減少などで地方出身者が減少し、理系を目指す女子学生数も伸び悩む。放っておけば画一化が進みかねない中で、多様性こそが、幅広い思考の原点になるという大学側の思いが込められている。早稲田大は二〇一七年度、「地域に貢献する人材育成」をうたう「新思考入学試験(地域連携型)」という入試を文学部や商学部など五学部で始める。リポートなどで、自分の暮らす地域の課題と解決のために大学で学びたいことなどを示してもらうという。入学センターの担当者は「広く日本各地の受験生に挑戦してもらいたい」と期待する。全国から学生が集まることを特色の一つとしてきた早大でも、地方出身者は年々減少し、現在は全学部生のうち首都圏出身者が約七割を占める。仕送りの負担から、東京への進学をあきらめている地方の若者を後押しするため、〇九年度に首都圏以外の受験生を対象にした「めざせ!都の西北奨学金」も導入。年間約四十万円を給付してきたが、一七年度からは半期分の授業料(約五十万~七十万円)を免除する制度に拡大する。他の私立大でも地方出身者対象の奨学金導入は広がっている。一二年度から「学問のすゝめ奨学金」を設けた慶応義塾大は、首都圏以外の道府県をブロックに分け、給付人数を振り分けて地域が偏らないようにしているという。同大でも一九九五年の入試では43・8%を占めていた首都圏以外の合格者の割合が二〇一五年には28・9%に減少している。女子学生を増やすため、住まいの確保を重視する大学もある。東京工業大は二年前に老朽化で閉鎖した女子寮を建て替え、設備を充実させた上で今年四月にオープンする。キャンパスまで徒歩十五分と便利だ。東京工業大の女子の学部生は12%にとどまり、このうち九割近くは首都圏から通学している。留学生は女子の割合が増えてきており、担当者は、「留学生も含め、安心できる環境を整備して女子学生を増やしたい」と話す。同じく女子学部生の割合が19%と低い東京大は今春、地方出身の女子学生に月三万円の家賃を補助する制度を導入する。安全性を重視した住居百室を用意し、最長で二年間支給する。制度を公表すると、「男子学生との不平等になる」との意見も出たが、同大は「学生の多様性を拡大するため」と説明している。

*3-4:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12723358.html (朝日新聞 2016年12月26日) 東大の家賃補助、女子限定のワケ 家族、志望に「無理しなくても」 安全重視、高め物件
 東京大が来年度から設ける女子学生向けの家賃補助制度にさまざまな声があがっている。女子学生を増やす狙いだが、「なぜ女子だけ?」といった批判の一方、女子の高学歴への偏見や自宅外通学を理由に受験を反対された人たちの間では歓迎の声が上がる。年明けからは本格的な受験シーズン。東大だけでなく各地の大学も、女子学生増へ手探りの試みを続ける。歓迎の声の一つは、家賃補助制度が、東大をはじめ、女子の志望先に反対する親へのメッセージになることへの期待だ。「女の子が無理して頑張らなくてもいいのに」「なぜ東京に行くの?」……。東海地方出身の東大4年の女子学生(23)は、家族の言葉が忘れられない。当時、東大に毎年10人以上が進学する県立高に通っていた。先生の勧めで高校2年の1月、志望校に決めた。だが、80代の祖母と50代の母が反対した。祖母の兄弟姉妹で大学に行けたのは男の子だけだったといい、母も短大卒。今では「それが影響したのかも」と思う。現役で受験に失敗すると、「女の子が浪人なんて」と言われた。結局は父が賛成で、東大に挑戦できたという。東大の女子学生の割合は2割未満。この女子学生は「東大が地方の女子学生を増やす手段を採ったことには好感がもてる。送り出す親の意識も変わるだろう」と期待する。家賃補助を歓迎する側のもう一つの理由は、女子が安全に暮らせる住居へのニーズが切実なことだ。東大によると、大学の説明会などで、女子の安全な住まいの確保を心配する保護者の声があったという。「遠くの大学は危ないからダメだ」。神奈川県の30代の女性会社員は湘南地方の高校に通っていた時、父からこう反対されたのをよく覚えている。「一橋大か京都大を目指す」と家族に宣言。模擬試験の成績では十分にめざせる判定だったが、受験を認めてもらえず、自宅から約1時間の私立大に進学した。東大は今回の家賃補助の対象を「自宅から90分以上かかる女子学生」とし、安全や耐震性にも配慮することも強調している。女性は「東大は女子学生がなぜ来ないのか、その理由を調べたのだろう。こうした制度があれば、一人暮らしに反対する親を説得する材料になる」と期待する。東海地方の女子学生も合格後、住居で苦労した。「東京の県人寮に入居しているのは男子学生だけ。女子学生には、安くて安全な住居の選択肢が少ない」。東京で民間の女子専用学生会館に住んだが、干していた下着を盗まれたこともある。3年で一人暮らしを始めたが、安全面から家賃を高めにするしかなかった。一方、東大によると、この制度に約80件の意見が寄せられ、「(男性への)差別だ」という声が多かった。ネット上では「女性限定ではなく、(男女関係なく)貧困の学生に補助すべきだ」という声のほか、まず女子に高学歴は必要ないなどとする一部の風潮に対処すべきだとして「家賃は根本的な問題ではない」などの意見もあった。
■男女平等とは、他大学も模索
 女子教育に詳しいNPO法人サルタック理事の畠山勝太さん(31)は「安全性が高い住まいという女子のニーズへの対応は、ジェンダー(社会的性差)の公平を狙った策で不平等にはあたらない」とみる。「日本の女子の学力は国際的にもトップレベルで、大学進学率の低さは能力の問題ではない」と指摘。東大の家賃補助制度を「国際的には当然のことだ」と話す。男子学生だけでなく、優秀な女子学生を増やすことで研究の多様性を向上させようと大学も様々な試みを続けるが、手探りの段階だ。金沢工業大(石川県野々市市)はバイオ・化学部を新設した2008年度から2年間、女子の特別選抜制度を設けたが、志願者は12~13人と少なく中止した。「特別選抜が敬遠され、AO入試など別の試験が受験しやすかったようだ」(同大)という。大阪電気通信大(大阪府寝屋川市)は十数年前から、公募推薦入試の優遇制度の一つに「女子への点の加算」を設けるが、「女子の志願者は増えていない」という。九州大(福岡市)は12年度の理学部数学科の入試で「将来の女性研究者を増やすため」として、女性枠を設けようとした。だが、「『法の下の平等』の点から問題があるのではないかとの意見があり、社会的影響や入学した学生の精神的負担などを総合的に判断して取りやめた」(同大)という。辻村みよ子・明治大教授(憲法)は「東大の家賃補助は女子寮に代わる学生支援の特別措置ならば、男女共同参画社会基本法上のポジティブ・アクション(積極的改善措置)と認めることができ、法の下の平等を定めた憲法にも違反しない」と指摘。そのうえで「入試では(特例で入学したという)女子学生への烙印(らくいん)にならないよう、男女ともに合格最低点を設けるなどの方が有効だ。こうしたポジティブ・アクションは社会的合意が大切で、大学が丁寧に説明する必要もある」と話す。
◆キーワード
 <女子学生への家賃補助> 東大が2017年度から、駒場キャンパス(東京都目黒区)周辺に安全性や耐震性の高い部屋を100室ほど確保し、入居した女子学生に月3万円の家賃を補助する。自宅から90分以上かかる女子学生が対象で最長2年間支給。保護者の所得制限はつけない。


<地方の選択に中央政府の指示は不要である>
PS(2017.7.15追加):日経新聞は、*4-1のように、都市寄り・省庁寄りの見解が多いが、これまでに多くの投資がなされて資源や人材の多い都市部自治体の税収減は努力と工夫不足の結果にすぎないため、言い訳無用で自助努力させるべきである。そして、三重県の鳥羽、志摩両市が真珠の返礼品を認めるよう総務省に要望したのは同感で、(高いものから安いものまである)真珠が返礼品になるのは面白く、「返礼品は農産品に限る」などとするのは、論理とは関係なく反対したいだけの狭い発想である。
 なお、*4-2のように、西日本地区の18の経済同友会が、観光推進で地域活性化するため西日本全体が広域で連携すべきだとし、四国新幹線を含む交通網に言及したのには賛成だが、広域の方がよいのは西日本だけではないだろう。ただ、カジノを中心とした統合型リゾート施設(IR)を起点にするという発想は情けなく、九州を起点として四国を通り、伊勢志摩から奈良・京都に至った方が余程面白い。さらに、2025年に万博を大阪に誘致するというのは、日本が開発途上国で威信を示さなければならない時代ではないため古くさい戦略で、既に有名な陶磁器・織物・染色・真珠養殖・漆器・機械などの生産現場を案内した方がよほど面白くて買ってもらえるだろう。つまり、誰にとっても、ゲームより本物の方が見ごたえがあるということだ。

*4-1:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20170705&ng=DGKKASFS04H64_U7A700C1EA2000 (日経新聞 2017.7.5) ふるさと納税、自粛・継続で割れる自治体
 ふるさと納税の人気上昇とともに制度のひずみが鮮明になっている。2016年度の寄付額は2844億円。4年連続で過去最高を更新した。特色ある返礼品で納税者の関心を引き付け、地元農産品の活用や被災地支援など地方振興で成果をあげている。その一方で高額の返礼品や都市自治体の税収減といった問題も浮上。自治体には適正な競争が求められている。ふるさと納税は自治体への寄付額から2千円を引いた額が国の所得税、地方の住民税から一定額控除される仕組み。自治体は寄付を増やそうと返礼品を充実させている。16年度に最も多くの寄付を得たのは宮崎県都城市。2年連続の首位で、返礼品の宮崎牛や焼酎の人気が高く73億円を集めた。2位の長野県伊那市は家電の返礼をあてにした寄付を集めた。ふるさと納税を通じ、被災地を支援する動きも目立つ。6位の熊本市は昨年の震災を機に寄付額が増え、前の年度の86倍に膨らんだ。使途として熊本城の修復を指定したものが多かった。
■総務省の要請に難色
 ただ寄付獲得へ向けた自治体間の競争は過熱気味だ。寄付の趣旨から外れ「2千円で返礼品がもらえる」とあおる自治体もある。総務省は4月、寄付額に対する返礼品の割合を3割以下に下げるよう全国の自治体に要請した。都城市は6月に約6割あった割合を下げると表明。佐賀県上峰町も約5割だった返礼割合の引き下げを目指す。一方、難色を示す自治体もある。ふるさと納税を特産品などのPRに使う自治体には不満がくすぶる。総務省によると、寄付額の上位200自治体のうち、20弱が指摘を受けた返礼品を見直さない意向を示した。三重県の鳥羽、志摩両市は真珠の返礼品を認めるよう総務省に逆に要望した。
■都市は税収減を懸念
 都市と地方のあつれきも表面化している。都市部は地方の自治体に税収を奪われると反発。ふるさと納税による減収額は東京23区で16年度129億円、17年度207億円の見込み。17年度の減収額を30億円とする世田谷区は「30億円といえば学校1校の改築費にあたる規模。税収減が累積すると行政サービスに影響が出る」(財政課)と危機感を強める。地方に対抗しようと、中野区は16年10月から返礼品を設けた。区内レストランの食事券や交流のある他県の日本酒など特産品もそろえる。品川区も競馬場の指定席を返礼品に加えるなどした。
■使途の明確化が必要
 ふるさと納税の運用を巡っては、専門家からも異論が出始めている。とりわけ問題視するのは、集めた寄付の使い方。関西大の橋本恭之教授は「4割の自治体が寄付金の使途を明らかにしていない。公表しない場合は特例控除の適用外にすべきだ」と指摘、使途の明確化を求める。一橋大の佐藤主光教授は「財源を必要とする地域に寄付金が渡っていない。返礼品は農産品などに限り、調達の情報公開を進めるべきだ。過剰競争で利用者も返礼品以外に無関心になっている」と警鐘を鳴らしている。

*4-2:http://qbiz.jp/article/114338/1/ (西日本新聞 2017年7月15日) 九州など18同友会が声明 観光推進へ広域連携を
 関西や中部、九州など西日本地区の18の経済同友会は14日、大阪市内で開いた会議後に、観光推進による地域活性化を実現するため、カジノを中心とした統合型リゾート施設(IR)などの観光資源を起点にし、西日本全体が広域で連携するべきだとする声明を発表した。声明では、増加を続ける訪日観光客の受け入れ態勢を整える必要があると強調。国に対し、空港・港湾の整備や、四国新幹線などの整備計画を早急に検討するよう要望した。北陸新幹線の大阪までの早期延伸も求めた。会議後に記者会見した関西経済同友会の黒田章裕代表幹事(コクヨ会長)は、2025年の大阪誘致を目指す国際博覧会(万博)やIRを西日本全体の観光推進につなげるため、「大阪からそれぞれの観光地にお連れするには、交通網をどうすれば良いのかなどの検討が必要だ」と述べた。

<災害支援法と街づくりのあり方について>
PS(2017年7月17、18日追加):*5-1については、①災害額を確定するためには被災状況の調査や被害額の算定は必要だが、それに時間がかかることが問題であり、②災害補償は復旧を後押しするだけなので、より災害に強い街へ都市計画を変更できないという欠点がある。
 そのため、①については、必要な書類と被災状況を証明する写真を標準化しておき、それに従って提出された書類をコンピューター処理すれば固定資産税評価額等と照合して概略の被災額・補償額を直ちに計算して支払い、後で確認して調整する仕組みにすればよいだろう。また、②については、川の三角州やもともと川だった場所を埋め立てて洪水リスクの高い場所に住宅を作っているようなので、人口減少社会で何度も同じ被害が起こらないよう、安全で便利な街づくりに変更するために、復旧だけではなく積極的な復興も対象にすべきである。
 なお、溶岩の上に火山灰や有機物が積もってできた九州の地形では、*5-2のような表層崩壊が起こるのは想定内になるため、それに耐える土地利用や街づくりをすべきだ。
 

              2017年7月九州北部豪雨被害

 
                    2017.7.16西日本新聞

*5-1:http://www.shinmai.co.jp/news/world/article.php?date=20170716&id=2017071601001513 (信濃毎日新聞 2017.7.16) 二階氏、激甚災害法の改正検討 豪雨被害受け、手続き迅速化
 自民党の二階俊博幹事長は16日、福岡、大分両県で大きな被害が出た九州北部の豪雨を受け、激甚災害指定の手続きを迅速化するため、激甚災害法の改正を進める考えを表明した。視察先の福岡県朝倉市で「災害発生後、(政府が)直ちに指定の準備に当たれるよう、法改正を検討したい」と記者団に述べた。秋に想定される臨時国会での成立を目指す考えも明らかにした。激甚災害法は、地震や豪雨など大規模災害で被災した自治体の財政負担を軽くすることで、復旧を後押しする。ただ被災状況の調査や被害額の算定に時間がかかり、1~2カ月後になるのが一般的だ。

*5-2:http://qbiz.jp/article/114370/1/ (西日本新聞 2017年7月16日) 土砂崩れ300ヵ所超 雨で進行の懸念も 農水省調査
 九州豪雨により発生した土砂崩れが、福岡県朝倉市と東峰村、大分県日田市で少なくとも300カ所に上ることが農林水産省九州森林管理局の調査で明らかになった。ほとんどは、深い岩盤までは崩れず、表土層と樹木が滑り落ちる「表層崩壊」とみられるという。識者は、斜面に残った土砂や樹木が今後の強い雨や台風で流れ落ちる恐れがあるとして、警戒を呼び掛けている。九州森林管理局は8、10日に上空から被災地を調査した。土砂崩れは朝倉市と東峰村に集中し、その多くは長さ数メートルから数十メートルと比較的小規模だった。調査に加わった森林総合研究所九州支所の黒川潮・山地防災研究グループ長は、山の谷筋に雨水が集中して斜面が削られ、同時多発的に土砂崩れが起きたとみている。熊本大学の北園芳人名誉教授(地盤工学)によると、上空から見た限り、朝倉市や東峰村の土砂崩れでは深い岩盤は崩れておらず、多くが浅い表土層が崩れた「表層崩壊」だった。猛烈な雨が斜面の表面を勢いよくそぎ落とし、深く根を張らないスギなどの針葉樹も流れたとみられるという。表層崩壊は、雨水が深くまで染み込み、岩盤部分から崩れ落ちる「深層崩壊」と比べると、流出する土砂は少ないが、今回は表層崩壊が多発したことで、流れ出た土砂や樹木が膨大になったとみられる。日田市の土砂崩れは数十カ所と比較的少なかった。ただ、朝倉市などの土砂崩れと異なり、川の流れをせき止める“土砂ダム”ができた日田市小野地区の土砂崩れについて、北園名誉教授は、深層崩壊に近いとみている。豪雨翌日の6日朝に発生したことから、雨が時間をかけて斜面深くに染み込み、地下水位が上がって土が浮き上がり、崩れたと考えられるという。福岡大の村上哲教授(地盤工学)の調査では、小野地区の一部斜面では岩盤が露出。山はなお大量の水を含んでいる可能性もある。朝倉市や東峰村も含め、さらに土砂崩れが進む恐れがあると指摘している。

<木材の利用法>
PS(2017年7月19日):国交省は、*6-1のように、九州豪雨で土砂・流木が堆積している福岡県朝倉市の県管理河川について、国が権限代行して緊急に大量の土砂・流木の撤去を始めたそうで、福岡県も少しほっとしただろうが、*6-2のように、①20万トン超の流木があり ②寺内ダムは水面を覆うように大量の大木が漂い ③具体的な処理方法は決まっておらず ④1次仮置き場に収集運搬した後で2次仮置き場に移し、 ⑤▽木材として利活用▽破砕して焼却▽バイオマス燃料のチップや建築資材として売却するなどの方法を検討しているそうだ。
 しかし、①②③から、所有者がいるのならその人に引き取ってもらえばよいし、所有者がわからず廃棄物となっている木材なら、焼却して無駄にした上、余分なCO2を出すよりも、利活用できる人に無償で渡した方がよいと考える。また、⑤については、写真から、1)建材・家具材として使える大木 2)バイオマス燃料のチップにはできそうな枝・古材 3)焼却して発電できる木材 などがあるため、引き取り手が受け取りやすいように、④の2次置き場は分類して置くのがよいだろう。なお、木材は、一昔前は、水に浮かせて貯蔵したり運んだりしていたため、泥が付いたから価値が低いということはない。 

 
                     (2017.7.17、19西日本新聞)

*6-1:http://qbiz.jp/article/114430/1/ (西日本新聞 2017年7月18日) 2017九州豪雨:国が土砂や流木の除去代行 朝倉市の3河川、新制度で全国初
 国土交通省は18日、九州豪雨で大量の土砂や流木が堆積している福岡県朝倉市の赤谷川など県管理3河川について、国が権限代行で緊急的に土砂や流木を除去すると発表した。国による代行は今年6月に施行した改正河川法に基づく新制度で、全国初の適用となる。対象となる河川は、いずれも朝倉市を流れる筑後川水系の赤谷川、大山川、乙石川の計15・5キロ。上流の山腹で多数の土砂崩れが発生したため、大量の土砂や流木が河道をふさいで氾濫の要因になっていた。権限代行は14日に福岡県が要請。二次災害の恐れが高いほか、撤去には高度な技術を要することもあり、国が18日から緊急的に撤去を始めることになった。作業の終了する時期は未定で、国交省は「軟弱になった地質の状況なども勘案する必要があるが、なるべく早く終えたい」としている。

*6-2:http://qbiz.jp/article/114459/1/ (西日本新聞 2017年7月19日) 2017九州豪雨:流木20万トン処理に苦慮 仮置き場足りず 材木転用にも難題
 九州豪雨により、被災地の福岡県朝倉市などで発生し、有明海まで広がった流木の処理に行政側が頭を悩ませている。福岡県の推計によると、流木は少なくとも20万トン超。5年前の九州北部豪雨時に比べて3倍を超える。現段階では、回収して一時的に保管する仮置き場の確保もままならず、復旧は見通せない。山あいになみなみと水をたたえる同市の寺内ダム。水面を覆うように漂う大量の大木を見つめ、管理する独立行政法人水資源機構の担当者は声を落とした。「具体的な処理方法は決まっていない」。船や重機を使って回収する方針だが、本格的な作業は手付かずだ。豪雨で山腹が崩壊し、大量の木々や土砂が河川や道路、海にまで散らばった。県の推計は市内を流れる二つの川の航空写真から目視で算出したもので、有明海の流木は含んでいない。流木や土砂の処理は筑後川や有明海などは国、ダムは水資源機構、県管理の河川や道路などは県、農地や民有地などは市町村が担う。いったん1次仮置き場に収集運搬した後、より広い2次仮置き場に移す。1次仮置き場は現在、朝倉市と東峰村の駐車場や広場など計7カ所。福岡県は近隣自治体を含め、民有地など約20カ所を候補地として、1次、2次仮置き場の確保を目指す。だが「廃棄物」だけに地域の反発も予想され、「地権者や周辺住民に対し、丁寧に説明している」(廃棄物対策課)段階という。保管した流木はその後、木材として利活用▽破砕して焼却▽バイオマス燃料のチップや建築資材として売却−する方法を検討しているものの、「売却は交渉次第であり、泥が付いた流木は買ってくれない」と県の担当者。二次利用も容易ではなさそうだ。家屋やがれきなども含む災害廃棄物は九州北部豪雨では約6万5千トン。被災自治体だけでなく、福岡市や北九州市で広域処理した。今回も既に両市のほか久留米市が受け入れを始めたが、その総量も不透明だ。

<無電柱化と街づくり>
PS(2017年7月20日):東京都は、*7-1のように、小池知事が公約を実現して無電柱化条例を成立させたが、無電柱化は防災・景観の両方の視点から重要なことである。また、無電柱化はコストが高くつくという主張もあるが、やる気があれば、市町村・事業者との連携やコスト削減技術の開発で可能で、既に先進国だけでなくアジア諸国も高い割合で無電柱化しており、日本の無電柱化率が異常なくらい低いのである。
 しかし、日本の地方自治体も、*7-2のように、福岡県田川市は電力自由化を受けて民間5社と新電力を設立し、電気料金削減とその収益の地域への還元で地域活性化を図るそうだ。また、佐賀県伊万里市は、*7-3のように、佐賀県西部4市5町の広域ごみ処理施設「さが西部クリーンセンター」を完成し、溶融処理で発生する熱を利用した発電や溶融物の再資源化を図っており、これは循環型社会のKeyになりながら収益を挙げる点で先進的な例だ。
 さらに、*7-4のように、地方交付税が不要な不交付団体は76自治体で、2017年度は5年ぶりに減少したそうだが、地域電力供給や電線地中化で水道管に電線を併設し、電気料金や配電料金を税外収入として収益源にすればよいと思われる。


 世界の無電柱化率 日本の無電柱化率   災害時の電柱   景観への電柱と電線の影響

*7-1:http://www.sankei.com/politics/news/170608/plt1706080018-n1.html(産経新聞 2017.6.8 11)東京都が全国初の無電柱化条例成立 小池知事の公約実現、9月施行
 都道上への電柱新設を原則禁止することを柱とした「無電柱化推進条例」が7日、東京都議会本会議で全会一致により可決、成立した。都によると、都道府県での条例化は全国で初めて。9月1日から施行する。無電柱化は、災害時に電柱が倒壊して道路をふさぐことなどを防止する防災面の機能強化と、景観の確保が狙い。小池百合子知事が昨夏の知事選で公約に掲げていた。都は条例に基づき、無電柱化を推進する計画を策定。区市町村や事業者と連携を図るほか、無電柱化を進めるために必要なコスト削減方法の調査や技術開発に取り組む。国会では昨年末、国や自治体、事業者に無電柱化を促す法律が議員立法で成立している。

*7-2:http://qbiz.jp/article/111921/1/ (西日本新聞 2017年6月14日) 電力新時代:田川市が民間5社と新電力を設立 料金削減と収益還元で地域浮揚狙う
 福岡県田川市は13日、民間企業5社と共同出資する筑豊地区で初の地域新電力会社「Cocoテラスたがわ株式会社」を設立した。同社は九州電力などの発電事業者から卸値で電力を調達して安価で供給。電気料金削減と収益の還元で地域活性化を図る。12月からまず市の公共施設へ電力供給を開始。2020年度以降は民間企業や一般家庭にも広げる予定だ。「Cocoテラスたがわ」によると、同社からの電力供給により、市公共施設の電気料金は年間約470万円削減されると試算。同社は18、19年度に約600万円、民間への供給を始める20年度以降は年間1千万円前後の収益を見込んでいる。収益はまちづくりなどの地域振興事業などに活用する。資本金は870万円。市と小売・卸売電気事業「パシフィックパワー」(東京)、「NECキャピタルソリューション」(同)が各250万円、福岡銀行、西日本シティ銀行、田川信用金庫の3金融機関が各40万円を出資する。設立記者会見で、二場公人市長は「電力小売自由化を背景に新たなビジネスに挑戦する。公共施設の電気料金削減とともに、新会社を核に収益を地域に還元する地域活性化の新たな手法と確信している」と語った。

*7-3:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/263515 (佐賀新聞 2015年12月26日) 「さが西部クリーンセンター」が完成、循環型社会のモデルに
■溶融熱で発電、再資源化
 伊万里市松浦町に建設していた県西部4市5町の広域ごみ処理施設「さが西部クリーンセンター」が完成し25日、竣工(しゅんこう)式があった。溶融処理で発生する熱を利用した発電や溶融物の再資源化も図り、運営する県西部広域環境組合(管理者・塚部芳和伊万里市長)は「循環型社会形成の拠点」と位置付ける。1月4日から正式稼働する。県ごみ処理広域化計画に基づき、老朽化の進む伊万里市環境センター、杵藤クリーンセンター(武雄市)、有田町クリーンセンターの3施設を統合した。伊万里、武雄、鹿島、嬉野の4市と有田、大町、江北、白石、太良の5町の計24万人のごみを処理する。総事業費は約174億円で施設建設工事は約143億円。総事業費のうち国の交付金や地方債を除く約25億円が市町の負担となる。高温でごみを溶かすガス化溶融炉は計2炉で1日最大205トンを処理できる。溶融物のスラグとメタルを分離回収し、それぞれ道路舗装用材や建設機械のおもりに再利用する。溶融処理の熱で発電する蒸気タービン(3900キロワット)で施設内の電力を賄い、余剰分は売電する。不燃ごみや粗大ごみを処理する「マテリアルリサイクル推進施設」では、鉄やアルミを再資源化する。竣工式で塚部市長は「一部事務組合の設立から8年余りで竣工を迎えられたのは、地元の理解と協力のおかげ。4市5町が団結し、施設運営に取り組みたい」と述べた。

*7-4:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/447960 (佐賀新聞 2017年7月20日) 交付税不要は76自治体 17年度、5年ぶり減、税収伸び悩みが要因
 独自の税収が豊かで国から地方交付税(普通交付税)を受け取らなくても財政運営できる2017年度の自治体は、宮城県女川町など76団体の見通しであることが分かった。全体の4%に当たる。前年度より1団体少なく、減少は5年ぶり。地方税収の伸び悩みに加え、社会保障費の支出が膨らんでいることが要因。総務省が近く閣議で報告する。不交付団体の数は、景気回復により12年度の48から増え続け、16年度は77だった。17年度はこのうち栃木県上三川町、東京都羽村市、静岡県富士市、佐賀県玄海町の4市町が交付税を受け取るようになる一方、新たに宮城県女川町、埼玉県八潮市、大阪府摂津市の3市町が不交付となる。不交付の都道府県、政令指定都市は16年度に引き続き東京都、川崎市だけとなる。総務省は毎年度、自治体ごとに地方税などの収入と、事業や住民サービスにかかる支出の見込み額を比較。収入が支出を上回っている場合は不交付団体として普通交付税を配分しない。同省は、交付税を必要としない自立した自治体の拡大を目指している。しかし大企業などが立地する一部の地域を除き、大幅な増加は難しい状況だ。17年度の交付税は総額16兆3300億円。災害対応などに充てる特別交付税を除く15兆3500億円が普通交付税として配られる。

<木材のプレカット工場>
PS(2017年7月29、30日追加):唐津市佐志浜町の埋立地が空き地になっていたので、*8-1のように、「木材プレカット」事業の最大手「ポラスグループ」が新工場を完成させたのは喜ばしいことだ。伊万里市にも中国木材(http://www.chugokumokuzai.co.jp/home.html 参照)があり、2005年に国産のスギとベイマツを組み合わせた異樹種集成材「ハイブリッド・ビーム」の生産を開始し、原木集荷などに広いネットワークを持つ伊万里木材市場株式会社と、原木集荷・製材・乾燥・集成・プレカット・流通を一貫して行える木材コンビナートを形成している。そして、今回の北部九州豪雨を見ればわかるとおり、九州には良質の木材資源が多く、これを高度な技術で自動的にプレカットして付加価値をつければ、復興に使用できるだけでなく、アジアの木材の少ない地域へ輸出も可能だろう。
 また、*8-2のように、市内産材を利用して雪や風に負けない木造ハウスができたそうだ。木造といっても全体を木造にする必要はなく、上部は軽い素材の方が丈夫になるのではないかと私は思うが、専門家がしっかりと設計して標準化し、プレカットして組み立てて、安価で災害に強く、生産性の上がるハウスを作るのがよいと考える。



(図の説明:一番左のような骨組みにビニールをかぶせた農業用ハウスが作られ始めているが、災害の度に壊れるのではなく丈夫で作業が快適なハウス作りをした方がよいため、専門家の設計を標準化して自動プレカットし、左から二番目、三番目のような温室を安価に作る方法を考えた方がよいだろう。また、一番右の図のように、リビングの先を温室にすると、共働き家庭が、テラスやベランダよりも安心して洗濯物・布団を干したり、植物を育てたりできる)

*8-1:http://qbiz.jp/article/115253/1/ (西日本新聞 2017年7月29日) 唐津市に新工場完成 住宅建材加工のポラスグループ
 住宅建材加工「木材プレカット」事業の国内最大手「ポラスグループ」(埼玉県越谷市)は、佐賀県唐津市佐志浜町の埋め立て地「虹の松原ファクトリーパーク」に、新工場「レインボーフィールド(佐賀工場)」を完成させ、21日に見学会を開いた。県有地約3・8ヘクタールを購入し、鉄骨平屋の工場(床面積約1・5ヘクタール)と事務所棟を建設。コンピューター制御で建材の継ぎ手を成形するなどの機械を導入し、木造在来工法を中心とした住宅の月約300棟の生産能力を備えた。初期投資額は約20億円。社員数は33人で、うち22人を地元雇用した。九州一円の工務店や住宅建築会社に販路を求め、2018年5月までにフル稼働を目指す。さらに3〜4年内に隣接地で第2工場を建設し、生産能力を月約500棟に増強する計画。新工場は国内5カ所目で、九州では初めて。同グループは、耐震性向上に向けた構造計算サービスが強み。16年4月の熊本地震を受け、復興需要に応えようと、誘致を受けた唐津市への進出を決めた。21日は市内のホテルで完成披露パーティーも開かれ、中内晃次郎社長が「住宅事業は地域密着に徹する必要がある。地域の発展に役立つ工場になるよう考えていく」とあいさつした。

*8-2:https://www.agrinews.co.jp/p41470.html (日本農業新聞 2017年7月28日) 雪や風に負けない 木造ハウス実証 広島県廿日市市
 広島県廿日市市に木造構造のビニールハウスが登場した。市内産材を活用して大雪、台風などの影響を受けずに農業生産ができるかを実証しようと、市の事業で3月に設置。地元のJA佐伯中央が実証試験に協力し、効果を確かめる。同市が2016年度の「市産材活用モデル事業」として取り組んだ。幅6メートル、長さ25メートルで、主に市内産の杉を使う。施工費や材料費などで520万円かかった。同市飯山のJA研修農場に設置。50センチほど雪が積もる場所で、パイプハウスでは雪の重みに耐えられないこともある。JA職員が管理し、7月上旬に小ネギの種をまいた。使い勝手は通常のパイプハウスと変わらないという。費用対効果が課題だが、市は「農業の振興とともに木材の新たな需要を作っていきたい」(産業振興課)としている。

<循環型社会に捨てるものはないこと>
PS(2017年8月3日追加):大分県と同県日田市が、九州豪雨で大量に発生した流木を木材チップにして、木質バイオマス発電の燃料として活用することを決めたのはよかった。しかし、「流木の表面に付いた泥や中に含まれる水分は、細かいチップに加工する作業の支障になる可能性があるため、水分が抜きにくい根や泥は、流木を回収して搬送する過程で取り除く」というのは、都会のコンクリートの中で育って掃除すらしたことのない人の発言ではないかと思われる。何故なら、泥は水で洗い流せば落ち、水分は屋外に放置しておけば乾くからだ。しかし、チップとして燃やすには少し泥が残っていても機械に不具合を生じさせるというのなら、細かく粉砕して有機肥料にする方法もある。

*9:http://qbiz.jp/article/115641/1/ (西日本新聞 2017年8月3日) 2017九州豪雨:流木を発電燃料に 大分県と日田市 福岡からも受け入れ検討
 大分県と同県日田市は2日、九州豪雨で大量に発生した流木を木質バイオマス発電の燃料として活用することを決めた。流木は河川の復旧工事や農業の足かせになっており、順調に進めば、福岡県内の流木も受け入れる方針だ。国土交通省の推計によると、大分県内の流木は日田市の大肥川や花月川の流域で約2万立方メートル。県や日田市は県建設業協会などの協力を得て流木を回収し、木質バイオマス発電の燃料となる木材チップを加工する「日本フォレスト」(日田市)に処理を委託する。同社は1年間に大分県の流木量以上の処理が可能で、木材チップは県内や九州一円の発電事業者に販売する。流木の表面に付いた泥や中に含まれる水分は、細かいチップに加工する作業の支障になる可能性がある。このため水分が抜きにくい根や泥は、流木を回収し、搬送する過程で取り除く。福岡県内の流木は朝倉市を中心に約19万立方メートルと推計(国交省)され、県などが処分後の活用策を検討している。大分県循環社会推進課の担当者は「日田市で発生した流木の処理を優先するが、隣県としてできるだけの協力をしたい」と話した。

| 経済・雇用::2016.8~2017.12 | 02:45 PM | comments (x) | trackback (x) |

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