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2018.11.5 日本の女性差別と世界の状況 (2018年11月6、7、8、9、10、11、28日、12月1、3日に追加あり)
   
  2018.10.29BBC   2018.3.3     2017.10.12      2018.1.4   
             西日本新聞     中日新聞       東京新聞

(図の説明:女性議員割合は、2017年に日本は世界の中で158位と非常に低い。また、候補者のうち当選した人の割合が1/5程度と少ない理由は、与党であり当選者数の多い自民党の女性候補者が7.5%しかいないことが大きいだろう)

(1)女性政治家への評価と日本メディア独特の女性蔑視
1)メルケル独首相について
 10月28日のドイツ地方選挙で大敗したCDUを率いるメルケル独首相は、*1-1のように、首相としての地位を当面は維持するものの、2021年の任期満了で首相の職を退くと記者会見で発表されたそうだ。選挙で大敗した理由は、*1-2のように、移民・難民受入政策について政権内でも対立したり、ドイツの移民・難民流入抑制に対してEU加盟各国から反発の声が上がったりなど、多くの移民・難民を受け入れた後で困難な状況に遭遇したからで、人道的に対応したのに気の毒である。

 ただ、EUの場合は、移民・難民を労働力として活かさず施設で養い続ける政策を選択したため、移民・難民が国民負担になってしまった点が不幸だ。私は、移民・難民を施設で養うのではなく、人手が足りない分野に労働力として振り向ければ、移民・難民も生産するため国民の反発が少なかったと思う。例えば、移民・難民に施設での生活費を支給するよりヨーロッパの街を再生する事業に支出して、移民・難民にそこで働いてもらうような方法である。

 そのほか、メルケル独首相は、フクイチ事故を見てドイツを脱原発・自然エネルギーに導くなど、彼女にしかできない意思決定を速やかに行った。私は、このような人は滅多に出ないため、メルケル独首相の2021年引退宣言は本当に残念だと思う。

 しかし、メルケル独首相の場合は、女性だからといってその人格に独特のいちゃもんをつけられたのではなく、政策の相違が選挙結果に繋がったのであるため、これは女性政治家に対する評価に女性差別があったのではないと言える。

2)日本メディアの女性政治家に対する「いちゃもん」は女性蔑視を含むこと
 片山参議院議員が地方創生大臣になった途端に、*1-3のように、週刊文春が『口利き疑惑』を報道した。これは安倍首相のモリカケ問題と同じ路線だが、どちらも政治家の政策ではなく、細かいことで人格を否定する記事になっている点が同じであり、メディアがこれでは、日本に本当の民主主義は育たない。

 また、国会議員事務所は一般企業とは異なり、秘書や後援会員が必ず議員の承認を受けて行動しているわけではないため、議員が責任をとらないからと言って「トカゲの尻尾きり」と決めつけることはできない。にもかかわらず、「上が辞めなければならない」とするのは、組織における権限と責任の関係を無視した日本独特の誤った論理だ。私の場合は、公認会計士・税理士としての経験が長かったため、重要性のあるもの(細かいものまで見る暇などはない)には必ず目を通すようにしていたが、それでも秘書等には「うるさい」と不評だった。

 さらに、週刊新潮も、*1-4のように、「片山大臣は、むしゃくしゃすると秘書に怒号を浴びせかけ、それと同時にペットボトル・ノート・ハサミまで投げつけ、事務所に置いてある段ボールを腹立ちまぎれにハイヒールで蹴りつけるために穴だらけなど、数々のパワハラ伝説を持つ」と書いているが、これらは伝説にすぎない上、男性議員だったらいちいち取り上げないことではないのか? また、「口利き疑惑」も、片山大臣は、最初は聞いていなかったが、金属加工会社の社長に言われて、あわててフォローしたように見える。

 なお、*1-5のように、片山大臣は「セクシュアルハラスメントを根絶すべく、私の今の立場から全面的に発信をしてまいりたい」と宣言されたそうで、それはよいと思う。あまりおしゃれでないロングドレスをあわてて買う必要はなく、スーツや着物でよかったとは思うが、“セクシュアルハラスメント”には、物理的に触る行為だけではなく、相手が嫌がることを繰り返し言う行為も入る。

 そのような中、キャリアのある女性がそれなりの地位につくと、「性格が悪い」「パワハラ」などと決まり文句で腐すのもセクシュアルハラスメントだ。「秘書の出入りが激しい」というのも、(私も言われたことがあるが)理由が雇用者である議員にあるとは限らない。さらに、本当に馬鹿ではないかと思われるようなミスをしながら、「バカ」と言われて怒るのは逆切れというものだ。日本のメディアは、「女性は何をされても、『よよ』と泣くだけでいなければ傲慢だ」とでも言うのだろうか。それでは、(私も含めて)メルケル首相のような政治家やリーダーは、日本では出ることができない。

 片山大臣は、財務省出身であるためか生活保護者等への給付などを切ることを主張することが多いので厚労大臣には適さないと思うが、自民党の再生可能エネルギー普及拡大委員会委員長を勤めたり、衆議院議員時代は静岡県が地元で農漁業にも理解があったりするため、地方創成大臣には向いているのではないかというのが、私の正直な感想だ。

(2)あからさまな差別があるのが、現在の日本のレベルであること

     
   日本と世界のジェンダー比較       日本のジェンダーギャップ指数推移

(図の説明:日本では、世界と比較して上に行くほど女性の割合が低くなり、採用・昇進において女性差別があることは明らかだ。また、医師に女性が占める割合も日本は世界と比較して低いが、女性が多くなればそれなりの手法が開発されるので問題ないのではないかと思われる。ただ、日本では、診療報酬の引下げ圧力が強いためスタッフ数を増やせず、医師の私生活の犠牲の上に診療が成り立っている側面もある)

 「3人以上出産を」と新婚夫婦に呼び掛けていた自民党長崎県連の会長に抗議した長崎県の女性県議が、*2-1のように、県連の広報副委員長と政務調査副会長から外されたそうだ。女性が女性差別について抗議すると不利益を蒙るのはよくあることだが、このようなことこそ、一般市民はメディアを通して監視しておかなければならない。

 また、文科省が全国81大学の過去6年間の平均を調査したところ、女性は出産などの家庭責任が大きいため、*2-2のように、男子の医学部合格率が女子の1.2倍だったそうだ。受験する時に既に成績で絞られているため、*2-3のように、医学部の合格率に男女差があるのはむしろ不自然だが、大学は「成績の差」として調整を否定しており、「女性差別ではなく、実力の差だ」と主張するのもよくあることである。

 しかし、受験時にさえ女性差別する大学に入ると就労後の女性差別はさらに大きいため、女性の受験者は、*2-3の一覧表の1前後もしくはそれ以下の大学を選んだらよいのではないか?何故なら、それらの大学のレベルが低いわけでは決してないことがわかるからである。

 なお、大学入試ではなく、役所や一般企業への就職・昇進でも男女雇用機会均等法が定められ、女性差別は禁止されている。しかし、現在は、あからさまな差別しか問題にしない傾向があり、議員選挙も同じだが、女性に対しては男性なら問題にしないような変な批判を行って人望を落とす巧妙に隠された頑固な女性差別がある。そのため、ここもしっかり調査すべきだ。
 
<日本メディアの女性蔑視>
*1-1:https://www.bbc.com/japanese/46018679 (BBC 2018年10月29日) メルケル独首相、2021年に首相退任と表明 地方選連敗で
 28日の独地方選で大敗を喫したキリスト教民主同盟(CDU)を率いるアンゲラ・メルケル独首相が29日、2021年の任期満了をもって首相の職を退くと記者会見で発表した。今年12月の党首選に出馬しない意向も明らかにした。「任期を終えた後は、いかなる政治ポストも求めない」と、メルケル首相は記者会見で言明した。さらに、ヘッセン州やバイエルン州でCDUや提携政党が連敗したことについて、「全面的な責任」を負うと述べた。記者会見に先立ち独メディアは、首相が党首再選を目指さない意向を党指導部に伝えたと報道していた。メルケル氏は2000年にCDU党首となり、2005年以降、ドイツ首相を務めてきた。CDUは28日、中部ヘッセン州の州議会選挙で、連立与党を形成する社会民主党(SPD)と共に得票率を大きく落とした。14日に行われた南部バイエルン州の州議会選挙でも、メ連立与党を組むキリスト教社会同盟(CSU)が大敗した。相次ぐ地方選での敗北に、連立は崩壊目前とされている。独報道や消息筋によると、メルケル首相はCDU党首は再選を目指さない方針ながら、独首相には留まる意向で、これまで与党党首と首相の職は一対と主張してきた自分の主張と異なる。BBCのベルリン特派員、ジェニー・ヒル記者は、連立与党にとって危機的な状況が今年は続いているが、政治家メルケル氏はこれまでも多くの政治的難局を生き延びてきたと指摘。それだけに、ひとまずは党首の座を降りることでCDU内の批判の声を鎮め、首相としての地位を当面は維持することになるかもしれないという。ドイツでは、中道派の主要党がいずれも有権者の支持を失い、反移民を掲げる極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)」と、左派「緑の党」がそれぞれ全国的に支持を伸ばしている。

*1-2:http://www.afpbb.com/articles/-/3181103 (AFP 2018年7月4日) ドイツの移民政策転換、国内外から批判 EU諸国に連鎖の可能性
 ドイツのアンゲラ・メルケル(Angela Merkel)首相が、脆弱(ぜいじゃく)な連立政権を救うための窮地の策として、移民の国内流入抑制に同意したことを受け、欧州連合(EU)加盟各国は3日、相次いで反発の声を上げた。ドイツの方針転換により、欧州諸国が難民の受け入れを次々と拒否するドミノ現象が起きる可能性がある。メルケル首相は、移民問題をめぐり反旗を翻したホルスト・ゼーホーファー(Horst Seehofer)内相と前夜に緊急協議に臨み、国境管理の強化と、対オーストリア国境に移民を一時的に収容する施設「トランジット・センター」を設置することで合意。自身のリベラルな難民政策を事実上撤回することで、ゼーホーファー内相の反乱を抑え込んだ。だが、この合意に対しては、近隣諸国からの批判に加え、メルケル氏のキリスト教民主同盟(CDU)とゼーホーファー氏のキリスト教社会同盟(CSU)と共に連立政権を構成する社会民主党(SPD)も直ちに反発した。オーストリアは、南側の対イタリアおよびスロベニア国境を「守る措置を講じる構えがある」との方針を表明。イタリアは、「解決につながらない誤った態度」を選んだとしてドイツを批判するとともに、EU全体で連携を図り移民の流入に歯止めをかけるとした先週の合意に逆行する恐れがあると警鐘を鳴らした。EU加盟国に課された移民受け入れの割り当てを真っ向から拒否してきたチェコのアンドレイ・バビシュ(Andrej Babis)首相は、これを好機とばかりに、移民の流入が続くイタリアやギリシャは国境を閉鎖すべきだと呼び掛けた。またSPDのラルフ・シュテグナー(Ralf Stegner)副党首はトランジット・センターに異議を唱え、「難民の家族らを防護フェンスの中に入れたくはない」とツイッター(Twitter)に投稿。さらに他の党も、今回の合意はドイツの難民歓迎姿勢への裏切りだと指摘している。

*1-3:https://news.nifty.com/article/domestic/government/12104-114908/ (Niftynews 2018年10月30日) 片山さつき地方創生相の『口利き疑惑』を週刊文春が報道 秘書が全責任をとる可能性
①安倍改造内閣の目玉である片山さつき地方創生相の『口利き疑惑』を週刊文春が報じた
②片山さつき氏は疑惑を否定し、発行元の文藝春秋に1100万円の損害賠償を求めて提訴した
③片山さつき氏の秘書が全責任をとる公算らしく、トカゲの尻尾きりとの声もでている
 安倍改造内閣の目玉人事と目された片山さつき地方創生相。ところがフタをあければいきなりの「口利き疑惑」が発覚したのだ!キッカケは10月18日発売の週刊文春で、国税庁への口利き疑惑が報じられたこと。政治部記者が解説する。「2015年に片山氏の私設秘書が会社経営者から確定申告を巡る相談をされ、100万円を受け取った後に片山氏が国税庁関係者に電話を掛けたというのが記事の内容。報道後、片山氏は記者団に『口利きしたことはなく、100万円を受け取ったことも全くない』と話し、秘書に責任を押しつけて幕引きをはかろうとしています」。口利き疑惑報道を否定した片山氏は、名誉を傷つけられたとして、発行元の文藝春秋に1100万円の損害賠償を求めて提訴。このまま時間の引き延ばしで、初入閣で得たポストにしがみつく作戦だ。しかも秘書は、このまま全責任をとる公算が高い。つまり「トカゲの尻尾きり」で政治家は知らぬ存ぜぬを貫こうとしているのである。だがこれは永田町ではごくごく日常的な光景だ。そうした実態に秘書たちが立ち上がり「ブラック業務」ぶりを10月30日発売のアサヒ芸能11月8日号でぶちまけている。ブラック企業も真っ青のあくどい実態の全貌とは──。

*1-4:https://www.dailyshincho.jp/article/2018/10310558/?all=1 (週刊新潮 2018年11月1日)片山さつき地方創生相にもう一つの財務省「口利き疑惑」 パチンコ業者めぐり
 「紅一点」が「汚点」になってしまいそうである。安倍改造内閣で、ただ1人抜擢された女性閣僚が、片山さつき地方創生大臣(59)だった。ところが、パワハラ伝説に続き、「口利き疑惑」が浮上。早くも、「辞任第1号」になるのではないかともっぱらなのだ。むしゃくしゃすると、秘書に怒号を浴びせかけ、それと同時に、手元にあるペットボトルやノートばかりか、ハサミまで投げつけてくる。そのうえ、事務所に置いてある段ボールは腹立ちまぎれにハイヒールで蹴りつけるために穴だらけ。数々のパワハラ伝説を持つ片山大臣だが、ここに来て、あらたな問題が取り沙汰されている。政治部デスクによれば、「週刊文春の報道によって、片山さんの国税当局への“口利き疑惑”が発覚しました。2015年、長野市の金属加工会社に税務調査が入り、青色申告の承認が取り消されそうになった。記事ではX氏となっている、そこの社長が片山事務所に助けを求めたのです。そして、税理士でもある南村博二(なむらひろじ)という私設秘書を紹介されたのが、そもそもの始まりでした」。金属加工会社の社長は南村氏に言われるまま、着手金として100万円を支払った。しかし、それ以降、何の音沙汰もなかったという。「そのため、社長は振り込みから2カ月後、片山事務所を直接訪ねました。片山さんは最初、“南村から何も聞いてない”と憤然とした様子。でも、最終的には、社長の目の前で、管轄する関東信越国税局の局長に“口利き”電話をかけたというのです。そのときは、相手が電話に出なかったものの、のちに社長が税務署に行くと、同行した南村秘書に職員が“片山先生へ渡してほしい”と書類を手渡していたため、“口利き”を確信したそうです」(同)。しかしながら、結局、青色申告は取り消される結果に終わったのである。その一方、片山大臣は“口利き疑惑”を完全否定。「週刊文春」を名誉毀損で提訴し、あくまでも強気の構えだ。

*1-5:https://www.asagei.com/excerpt/113538 (朝日芸能 2018年10月7日) 「初入閣」片山さつき、早くも囁かれる“パワハラ失脚”の可能性!
 10月2日に発表された、第4次安倍改造内閣と自民党役員人事で、地方創生担当相として念願の初入閣を果たした片山さつき参院議員。翌3日の会見では「セクシュアルハラスメントを根絶すべく、私の今の立場から全面的に発信をしてまいりたい」と宣言した。今回、入閣できた女性議員は片山氏ただ1人。密着の記者に対し「慌ててロングドレス買ったわよ。女は私1人だから目立っちゃうわね」と発言。嬉々とした様子が伝わる。だが、有権者は冷ややかだった。ネット上では、3日の会見を受けて「セクシュアルハラスメントの根絶って地方創生の仕事なの?」と疑問を投げかける人や「内閣府職員はいつ片山大臣の本性が出てくるのかみんな戦々恐々。そのうちパワハラが炸裂しそう」「性的ハラスメントはもちろんだけど、パワハラも根絶を! あなたのパワハラも容易に想像できるから、それを十分踏まえてね」などという声が飛ぶなど、皮肉たっぷりだ。「東大法学部を卒業後、1982年に旧大蔵省に入省。在職中にフランス国立行政学院に留学し、女性初となる主計局主査。その後、主計局主計官などを歴任。05年の衆院選に自民党から出馬し初当選した片山氏はエリート意識が高い。秘書の出入りが激しいのも有名です。他人のミスに対し口から出るのは“あんたバカ?”だとか。政治部記者の間では、早くも失言で失脚の可能性もささやかれています」(社会部記者)。片山氏の場合、女性1人だから目立つのではなく、失言で悪目立ちせぬよう注意するべきだろう。

<あからさまな差別>
*2-1:http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201809/CK2018092302000125.html (東京新聞 2018年9月23日) 自民長崎「3人以上出産を」県連会長発言巡り 抗議の女性県議、役職再任されず
 自民党長崎県連は二十二日、長崎市内で常任総務会を開き、同党の江真奈美県議が五月に共産党県議らと一緒に記者会見を開いたことを問題視し、県連の広報副委員長と政務調査副会長に再任しないことを決めた。江氏は会見で、新婚夫婦に三人以上の出産を呼び掛けているとの発言をした県連会長の加藤寛治衆院議員(長崎2区)に苦言を呈していた。県連関係者によると、県連内部では「加藤会長に苦言を呈した江氏への事実上の処分」との声が出ているという。江氏は記者会見で、当時の民進と共産両党の女性県議と「結婚・出産は個人の自由意思」などとする抗議声明を出した。

*2-2:https://digital.asahi.com/articles/DA3S13664893.html (朝日新聞 2018年9月5日) 男子合格率、女子の1.2倍 医学部、文科省が81大学調査 過去6年平均
 文部科学省は4日、医学部医学科がある全国81大学の入学者選抜を調べた結果、過去6年間の平均で男子受験生の医学科合格率が女子の約1・2倍だったと発表した。毎年、約6~7割の大学で男子の合格率が女子を上回っていた。文科省は今後、男女の合格率の違いの理由などについて大学側に説明を求めるという。調査は、文科省幹部が起訴された汚職事件に関連して、東京医科大が一部の受験生の点数を加算したり、女子や3浪以上の男子を一律に不利に扱っていたりしていたことが明らかになったことを受けて行われた。文科省がこうした調査をするのは初めてで、10月中に最終結果を公表する方針。文科省によると2013~18年度の入学者選抜で受験者に対する合格者の割合を調べたところ、男子は11・25%で、女子の9・55%の1・18倍だった。毎年、46~57大学で男子の合格率が女子より高く、全体の合格率で男子が女子を上回る傾向も毎年同じだった。文科省は今回、一般入試と推薦入試の内訳などは調べていない。東京女子医科大は調査に含んだが、防衛省が所管する防衛医科大は調査対象外だった。6年間すべてで入学者選抜を行った大学別にみると、女子と比べて男子の合格率が最も高かったのは順天堂大の1・67倍で、昭和大1・54倍、日本大1・49倍、九州大1・43倍と続いた。開学3年目の東北医科薬科大は1・54倍、東京医科大は1・29倍だった。一方、17大学は6年間の平均で女子の合格率が男子より高く、弘前大は女子の方が男子の1・34倍だった。年齢別では主に1浪が多い19歳の合格率が最も高く、20歳以上になると合格率が下がる傾向にあった。東京医科大を除く大学からいずれの点についても「不当に扱いの差をつけた」との回答はなかったという。17年度の学校基本調査で、志願者に対する入学者の割合を全学部学科でみると、女子は入学率が15・87%で、男子の13・15%の約1・21倍だった。理学系や工学系の多くの学部でも女子の入学率は男子より高いが、医学系は男子が女子の約1・11倍で、今回の調査結果と似た数値だった。

*2-3:https://digital.asahi.com/articles/DA3S13664877.html (朝日新聞 2018年9月5日) 医学部合格率、男女差「不自然」 大学側は調整否定「成績の差」
 全国の医学部医学科で、男子の合格率が女子の約1・2倍だったことが明らかになった。大学側は調整を否定するが、「不自然」との声は根強い。男女の合格率に差が生まれる背景には、男性を重視する医療現場の実態があると指摘する人もいる。文部科学省の調査結果の公表を受けて、各大学は口をそろえて調整を否定した。「1次試験(筆記)の合格者を見ると男性が女性より学力が高く、この傾向は2次試験(適性検査・小論文・面接)においても引き続きあらわれている」。6年間の平均で男子の合格率が女子の1・49倍だった日本大学の担当者はこのようにコメントし、男子受験生の方が学力が高いため、との立場を取った。大阪市立大の入試室の担当者も男女差が生じる理由の一つとして「数学と理科の配点が比較的高いことが考えられる」と話し、女子はこうした科目が不得意であることが影響していると示唆した。同大は6年間の平均で男子の合格率が女子の1・36倍で、年度によっては2倍だったが、「性別による調整はしていないので、入試の成績による差」という。国立大でも、男女差は出た。九州大は6年間の平均合格率は男子33・51%、女子23・48%で、各年度をみても3~16ポイント差があった。同大広報室は「男女の区分なく選抜しているため、特に男女別の分析はしていない」と話した。ただ専門家の間からは、大学側の説明に疑念の声が上がる。日本女性医療者連合理事の種部恭子医師が2016、17年度の全国の入試を調べたところ、医学部以外の学部では合格率に男女差がないか、女子の合格率の方が高かった。理学部や工学部なども同様で、種部医師は「数学や物理などの配点が高いのは同じで、医学部だけ女子の合格率が低いのはおかしい。不正の可能性を強くうかがわせる調査結果だ」と指摘する。文科省は今後、大学側に対してもさらに説明を求める方針。6年間の男子の合格率が女子の1・67倍で、最も差が大きかった順天堂大は「最終的な調査結果を待ってコメントする」としている。
■「面接で点数を低めに」 出産理由に敬遠か
 なぜ、女子のほうが合格率が低いのか。多くの関係者が指摘するのは、医学部の入試が、病院の勤務と密接に関連していることだ。公立大医学部で長年、入試を担当してきた男性はこれまで、私立大の入試担当者から「面接での点数を低めにするなどの方法で、意図的に女性の合格者をしぼっている」という話を何度も聞いた。多くの場合は「医師になってから出産などで休まれると、当直などを周りがカバーすることになり、ただでさえ忙しいのにさらに激務になる」などが理由だったという。入試で女子に不利な得点調整をしたことが明らかになった東京医科大の調査委員会は報告書で「女性は年齢を重ねると医師としてのアクティビティー(活動性)が下がるとの認識だった」と指摘している。別の私立大学病院に勤める40代の女性医師も、今回の調査結果に驚きはない。自分が大学に入学した時も、男子より女子の入学者は少なかった。職場では当直や呼び出しを男性医師が中心に担っており「女性の数を制限するのも仕方がない」と感じる。ただ、医学界にも変化は起きている。かつては医学部の卒業生の多くはそのまま大学の医局で臨床研修を受け、関連病院に派遣されるなどしており、入試は「就職試験」の意味合いもあった。しかし、2004年に始まった新医師臨床研修制度で、研修先が自由に選べるようになり、現在は別の大学病院などに移る例も少なくない。長崎大病院医療教育開発センターの長谷敦子教授は現在の医学部入試について「点数操作のような不正ではなくても、『男子を多く採りたい』と考える世代が面接で調整をすることはできる」と話しつつ、「こうした古い世代は、数年で減るだろう」と指摘する。そもそも地方では医師不足の状態が続く。長谷さんは「男性医師も含め、結婚や出産、何らかの理由で現場を離れた医師が戻れる道を作ることが重要だ」と強調する。
        ■大学の医学部医学科入試の男女別合格率
              男子        女子       男子÷女子
順天堂大         9.16%     5.50%     1.67
東北医科薬科大     14.69%     9.51%     1.54
昭和大          6.54%     4.25%     1.54
日本大          6.50%     4.36%     1.49
九州大         33.51%    23.48%     1.43
慶応義塾大       12.54%     9.18%     1.37
大阪市立大       32.63%    24.01%     1.36
埼玉医科大        5.04%     3.74%     1.35
新潟大         30.96%    23.23%     1.33
筑波大         25.46%    19.28%     1.32
岡山大         31.38%    23.79%     1.32
高知大         23.75%    18.06%     1.32
大阪医科大       11.28%     8.65%     1.30
山形大         28.67%    22.28%     1.29
東京医科大        6.79%     5.27%     1.29
京都大         36.88%    28.98%     1.27
奈良県立医科大     14.02%    11.07%     1.27
名古屋大        44.62%    35.29%     1.26
国際医療福祉大      9.84%     7.92%     1.24
近畿大          7.46%     6.12%     1.22
熊本大         23.00%    19.00%     1.21
横浜市立大       38.81%    32.12%     1.21
名古屋市立大      19.89%    16.42%     1.21
京都府立医科大     32.91%    27.29%     1.21
北海道大        32.40%    26.95%     1.20
金沢大         36.10%    30.26%     1.19
山口大         19.63%    16.53%     1.19
岩手医科大        7.02%     5.98%     1.17
群馬大         35.40%    30.74%     1.15
千葉大         35.47%    30.82%     1.15
滋賀医科大       20.27%    17.67%     1.15
富山大         21.60%    18.90%     1.14
東北大         37.85%    33.41%     1.13
山梨大         32.94%    29.09%     1.13
信州大         17.96%    15.90%     1.13
大阪大         41.85%    36.88%     1.13
東邦大          8.80%     7.77%     1.13
自治医科大        5.51%     4.93%     1.12
東京医科歯科大     31.92%    28.87%     1.11
福島県立医科大     29.13%    26.29%     1.11
日本医科大       13.16%    11.91%     1.10
兵庫医科大        8.32%     7.58%     1.10
宮崎大         26.21%    24.04%     1.09
広島大         16.78%    15.57%     1.08
帝京大          3.21%     2.98%     1.08
聖マリアンナ医科大    7.68%     7.09%     1.08
秋田大         30.90%    28.79%     1.07
関西医科大        7.89%     7.38%     1.07
浜松医科大       22.38%    21.16%     1.06
東京慈恵会医科大    14.76%    13.87%     1.06
北里大         11.69%    11.07%     1.06
香川大         21.75%    20.66%     1.05
長崎大         29.24%    27.89%     1.05
神戸大         35.31%    33.83%     1.04
杏林大          9.15%     8.80%     1.04
藤田保健衛生大      8.24%     7.93%     1.04
久留米大         9.68%     9.29%     1.04
東京大         25.89%    25.25%     1.03
東海大          3.55%     3.44%     1.03
鹿児島大        18.70%    18.27%     1.02
佐賀大         28.20%    28.00%     1.01
札幌医科大       28.93%    28.76%     1.01
和歌山県立医科大    39.56%    39.11%     1.01
鳥取大         15.88%    15.89%     1.00
島根大         18.72%    19.33%     0.97
獨協医科大        6.87%     7.15%     0.96
大分大         40.79%    43.54%     0.94
金沢医科大        6.41%     6.81%     0.94
愛知医科大       10.69%    11.42%     0.94
川崎医科大       11.85%    12.60%     0.94
福岡大          7.06%     7.47%     0.94
琉球大         22.83%    24.48%     0.93
旭川医科大       15.16%    16.49%     0.92
福井大         30.47%    33.05%     0.92
愛媛大         15.87%    17.51%     0.91
産業医科大        6.20%     6.93%     0.89
三重大         30.07%    34.25%     0.88
徳島大         35.12%    40.22%     0.87
岐阜大         13.04%    15.60%     0.84
弘前大         12.67%    16.93%     0.75
東京女子医科大       -       11.76%      -
  合計        11.25%     9.55%     1.18
(2013~18年度の合格者数を受験者数で割った値。東北医科薬科大は16~18年度、国際医療福祉大は17~18年度。文部科学省まとめ)

<外国の問題について>
PS(2018年11月6日追加): *3-1のイタリアやギリシャの場合は、今は廃墟のような歴史的建造物や古い街並みを再生すれば世界から観光客を集められるため、財政を切り詰めるだけが解決法ではないだろう。その労働力として、外国人労働者や女性・高齢者を活用すればよいのは日本と同じであり、そういう方針を決定すれば、他国からの援助や投資資金も得られると考える。
 なお、日本の場合は、*3-2のように、太平洋戦争中に日本が徴用した韓国の「徴用工」に関して、韓国の最高裁が新日鉄住金に損害賠償を命じる判決を言い渡した。しかし、これについては、日韓国交正常化時に「日本政府が韓国に経済協力を行い、徴用工個人の補償や賠償責任は韓国政府が持つ」と取り決めているため、徴用工個人には韓国政府が保障すべきだった筈だ。そのため、現在まで保障が行われていなかったとすれば、それは韓国政府の問題だろう。
 さらに、*3-3のように、2015年の日韓慰安婦合意をめぐって元慰安婦らが基本的人権を侵害されたとして憲法裁判所に違憲判断を求めた訴訟については、日本とは既に「最終的かつ不可逆的な解決」をうたう合意がなされているので、慰安婦とは無関係の世代にいつまでもひきずってもらいたくない。元慰安婦にとっても、名前を出して日本から金を引き出すダシに使われたり、銅像で思い出されたりするのは不幸であり、元慰安婦が、これまで誇りをもって生きられるようにしてこなかったのは韓国国内の問題ではないか?日本人にもそういう人はいたと思うが、いつまでも差別はしておらず、今では誰がそうだったかもわからないくらいなのだから。

*3-1:http://qbiz.jp/article/143649/1/ (西日本新聞 2018年11月6日) イタリア予算案の見直しを要求 ユーロ圏財務相会合
 ユーロ圏財務相会合は5日、イタリアの2019年予算案の見直しを求めた。巨額の財政赤字を計上し公的債務を増やしかねないためだ。イタリア側は変更する考えがないとしており、折り合えない状況が続いている。財務相会合のセンテーノ議長(ポルトガル財務相)は5日、会合後の記者会見で「EU欧州委員会と緊密に連携し、見直し案を準備するようイタリアに勧めた」と表明した。一方、ロイター通信によると、イタリアのトリア経済財務相は会合後、記者団に「予算案は変わらない」と強調した。イタリア政府は13日までに予算案を再提出する。欧州委は21日ごろに意見を出す見通しという。イタリア政府は19年予算案で貧困層対策などの実施のため多額の費用を計上。財政赤字が国内総生産(GDP)比で2・4%になるとした。欧州委はGDP比で130%超の公的債務がさらに膨らみかねないなどとして修正を要求している。

*3-2:https://www3.nhk.or.jp/news/html/20181104/k10011698331000.html (NHK 2018年11月4日) 「徴用工」判決 「国際社会への挑戦」と批判 河野外相
 韓国の最高裁判所が太平洋戦争中の徴用をめぐる裁判で日本企業に賠償を命じた判決について、河野外務大臣は講演で「国際社会への挑戦だ」と批判しました。韓国の最高裁判所は先月30日、太平洋戦争中の徴用をめぐる裁判で、新日鉄住金に損害賠償を命じる判決を言い渡しました。河野外務大臣は4日夜、群馬県高崎市で講演し「日韓の国交正常化に伴って補償や賠償は、日本政府が韓国に経済協力を行い、韓国政府が国内での補償について責任を持つと取り決めた」と指摘しました。そのうえで「判決は日韓の基本的な関係を根本からひっくり返すと同時に、国際法に基づいて秩序が成り立つ国際社会への挑戦で、考えられない」と批判しました。また、河野大臣は北朝鮮が求める朝鮮戦争の終戦宣言に関連して「戦争が終わったら『在韓米軍はいらない』『共同訓練なんて必要ない』という話になるのは目に見えている。拉致・核・ミサイルの問題を解決してから制裁を解除するという順番を間違えてはいけない」と述べました。

*3-3:https://digital.asahi.com/articles/DA3S13756449.html (朝日新聞 2018年11月6日) 日韓合意「法的拘束力ない」 韓国外交省、元慰安婦訴訟で答弁書
 2015年の日韓慰安婦合意をめぐり元慰安婦らが基本的な人権を侵害されたとして憲法裁判所に違憲判断を求めた訴訟について、韓国外交省は5日、元慰安婦らの訴えを却下するよう求める答弁書を提出していたと明らかにした。同日、韓国紙「韓国日報」が1面で報じたのを受け、同省が明らかにした。提出は6月だったという。元慰安婦らは、当事者の意見を聞かないまま「最終的かつ不可逆的な解決」をうたう合意がなされたことで日本から損害賠償を受ける権利が遮られたなどと主張。外交省は答弁書で「合意は法的拘束力のない政治的合意で、公権力の行使とまで見ることはできない」として憲法上の権利は侵害しないと主張したという。合意の法的性格について日本外務省は「両国の首脳が深く関与した政治合意であり、条約などに近い重みがある」としてきた。韓国外交省の答弁書は訴訟が日韓の火種になるのを回避する狙いもあったとみられるが、合意の重みをめぐる両政府の違いが浮き彫りになった形だ。

<片山大臣の収支報告書記載漏れ>
PS(2018年11月7日追加):メディアが、女性である片山大臣に照準を当てて荒さがしをしているせいか、*4のような収支報告書への寄付金の記載漏れが多いと思った。ただ、昔の国会議員の寄付金と異なり、金額は2桁くらい小さい。また、男性議員は、奥さんがしっかり見ているのでこのようなミスはなかったり、世襲議員は、さらに秘書も慣れているのでミスが少なくフォローの仕方も心得ていたりする場合が多いため、1代目の女性議員はハンディがある。

*4:https://digital.asahi.com/articles/DA3S13750913.html (朝日新聞 2018年11月2日) 片山氏、325万円分訂正 寄付「記載漏れた」 収支報告書
 片山さつき地方創生相は、自身が代表を務める政治団体「山桜会」と「自民党東京都参院比例区第25支部」の2016年分の政治資金収支報告書に記載漏れがあったとして、31日付で報告書を訂正した。片山氏の事務所は「作成した秘書が誤認し、記載が漏れた」と説明している。事務所によると、片山氏が立候補した16年参院選で、複数の団体から寄付があったが、報告書の収入欄に記載しなかったという。訂正の結果、寄付による収入は、山桜会が50万円、第25支部が275万円増え、寄付による収入は、両団体で計325万円増えた。

<人材の多様化と能力主義の必要性>
PS(2018年11月8日追加):人材が多様化して女性や外国人の働き手が増えれば、職場を移っても損にならない雇用形態が必要であり、それは、*5-1のような能力主義に基づく個別の雇用契約である。これは米国だけでなく世界標準だが、日本では、これを個人主義(何故か「我儘」と同義に用いる)として嫌い、一部企業の(男性)社員や公務員でしか保証されていない長期雇用を前提にした終身雇用・年功序列制度もどきを採用している組織が多い。そして、そういう前提の社会では、自分のキャリアや能力を磨こうとすることを「我儘」、自分のキャリアや能力を正確に述べることを「謙虚でない」などとするが、職場を移る時は、キャリアや能力を持ち、それを相手先に正確に示して認められなければ、能力主義に基づく雇用契約で損をするのである。
 さらに、*5-2には、「女性教員の管理職志望は7%で男性の4分の1だが、それには家事との両立がネックになっている」と記載されている。しかし、家事との両立は管理職になる前からネックになっており、それをクリアして管理職候補になっている女性教員に管理職志望が少ないとすれば、①夫婦で教員をしている場合、「妻が辞めなければ夫を管理職にしない」と言われる(間接差別) ②管理職になると定年が早くなる(不利益) などの理由があるからではないのか? それらの不利益がなくて初めて、個人の問題にできるのである。

*5-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20181108&ng=DGKKZO37462400X01C18A1KE8000 (日経新聞 2018年11月8日) 働き方の多様化と心理的契約(8)米国式が必要な時代に 神戸大学准教授 服部泰宏
 これまで述べてきたように、人材の多様化が要求するのは、一人一人が抱える制約や生き方に寄り添うという意味で「個別的」で、それを言葉にするという意味で「明確」で、しかも制約の変化によって変わりうるという意味で「動的」な心理的契約です。これは経済学でいう「契約の束」の考え方に近いと思います。個人主義と契約思想が定着している米国のような社会では、複数の個人が関わりを持つ際、当事者同士の自由意思に基づき、任意に契約を結ぶことで集まりが形成されることが前提となっています。企業もまた同様で、このようにして形成される企業を経済学では契約の束と捉えるのです。契約という考え方が浸透していない日本にはなじみの薄い言葉ですが、人材の多様化はまさに契約の束という考え方を私たちに求めているのではないでしょうか。契約とは私たちが描く未来のプロジェクション(投影)です。心理的なものであれ、法的なものであれ、契約を明確化する作業とは、会社と個人が一緒になって、お互いが相手から何を得られるのか、得られないのかということを具体的な言葉として紡ぎ出していくこと、つまり、共に未来を構想していくことにほかなりません。長期雇用を中核としたかつての日本企業の契約は、「数十年にわたる社員のキャリアを通じて、企業と個人が親密な関わりを持ち続ける」という、遠い未来に関わる壮大なプロジェクションだったと言えるでしょう。一方、いま日本企業が迫られている新しい契約は個別的で明確な未来を投影するものです。「数十年」先の未来を映し出すスケール感はなく、会社と個人が現実的で明確な近未来について、合意とメンテナンスを地道に繰り返していくイメージに近いでしょう。とはいえ、そこで「長期雇用」が消滅したわけではなく、会社側と個人側がお互いに相手の期待に応え続けることで、雇用関係が長期に及ぶことは十分にありえます。ただしそれは、かつてのような「目的としての長期雇用」ではなく、いわば「結果としての長期雇用」になるのでしょう。

*5-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20181107&ng=DGKKZO37460960X01C18A1CR0000 (日経新聞 2018年11月7日) 女性教員 管理職志望7% 男性の4分の1 家事両立ネック
 公立小中学校の教員約2万4千人を対象にしたアンケートで「管理職になりたい」という人の割合が女性は7.0%と、男性の4分の1だったことが7日までに分かった。調査をした独立行政法人「国立女性教育会館」の飯島絵理研究員は「教頭になると長時間労働が際立ち、家事や育児との両立が難しいと二の足を踏んでいるのではないか」と分析する。アンケートは1~2月にインターネットで実施。小学校教員約1万1600人、中学校教員約1万2200人の回答を集計した。「管理職にぜひなりたい」「できればなりたい」との回答は女性が7.0%、男性が29.0%。管理職になりたくない理由を複数回答で聞いたところ、「担任を持ち、子どもに接していたい」などのほかに、女性の半数は労働時間が増えたり、責任が重くなったりすると「育児や介護との両立が難しい」と答えた。1日当たりの職場での滞在時間は、副校長・教頭の76.7%が12時間以上と回答しており、他の教員に比べて長時間労働が際立っていた。家事・育児の「半分以上」を担うとしたのは、女性教員が79.4%だったのに対し、男性教員は3.5%だった。

<知識や教育の大切さに、男女別も文系・理系もないこと>
PS(2018年11月9、11日、12月3日追加):馬力のあるEVと自動車用蓄電池を実用化して最初に市場投入したのは日本で、それを行ったのはゴーン氏率いる日産だが、今度はアフリカで、*6-1のように、需要拡大を見込んで新工場を立ち上げ、現地生産を進めるそうだ。これからのアフリカの発展を考える時に、初めから自然エネルギーによる分散発電とEVを組み合わせるのは、誠に的確な判断である。一方、トヨタなど他の日本の自動車会社は、*6-2のように、中国・欧州の環境規制に合わせる形でEVを中国・欧州に投入するそうで、他国に引きずられてやっと始めた点が後進国の発想だ。しかし、どちらも、次はフランスや中国の企業と一緒にアフリカでEVを展開すれば良いことは明らかで、頭の切り替えができない日本企業には出る幕がない。 
 太陽光発電も最初は(私が提案して)日本で開発されたのだが、*6-3のように、電力会社を通じない電力売買を法律で認めないなど、頭の遅れた経産省と大手電力会社が結託して再エネの優先順位を原子力発電より低くしたため、日本では太陽光発電の技術進歩がなくなった。その規制をすり抜けて、イオンがEVに貯めた電力とイオンの買い物ポイントを交換する仕組みを作るそうだが、これは、再エネを主電源にするというよりは、おまけのような傍流の仕組みである。
 さらに、*6-5のように、日本では、既に大容量太陽光発電システム付住宅の販売が本格化しており、住宅産業の波及効果は大きい。また、住宅も自動車と同様に工場生産の時代であり、住宅・マンション・ビルの部材等も、これから建設が本格化するアフリカはじめ諸外国に輸出して現地で組み立てることも現地生産することも可能であり、先駆的な製品になると思われる。
 つまり、日本では最新技術を評価できずに腐らせて技術進歩をなくし、他国で成功して初めてあわてて後を追いかけるという情けない状態が続いている。このような中、*6-4のように、日本の若手研究者らの海外離れが深刻で、それが科学技術力低下の大きな要因となり、その理由として「①日本の大学で正規の研究職枠が限られ、任期付きの不安定な雇用形態が増えた」「②帰国後、よいポストが得られない」「③大学も法人化で海外に人材を送り出す余裕がない」等が記載されている。しかし、①②③に加えて日本の後進性について述べると、EVや分散発電だけでなく再生医療や免疫療法等のバイオテクノロジーも、実は日本は進んだ国で海外から研究者が来たがるくらいであったのに、欧米より遅れていると思い込み、実用化時点で経産省や厚労省が愚かな規制で邪魔をして、技術開発が止まったのだということを付け加えておく。
 「何故、そうなるのか」と言えば、日本では知識や教育を馬鹿にして知識の幅の狭い人間を育てたため、特に文系が新技術の実用化時点で邪魔をするという教育の問題があるからだ。
 なお、2018/11/11、日経新聞が、*6-6のように、「①日本企業の品質検査不正が止まらないのは、設備の老朽化と人手不足で工場が衰えたから」「②品質を最大の強みにしてきた日本のものづくりと離れた実像がある」「③稼ぎ頭の海外に投資を振り向け、国内工場は改修に改修を重ねて運用した」「④日産はゴーン現会長の下でリストラを断行し、国内技術員が人手不足に陥って納期に間に合わせるため不正を行った」「⑤日産は各国の工場の生産能力や労務コストなどを比較して生産拠点を決めるので、労働コストの安い新興国に最新鋭工場ができると国内競争力が低下し、国内生産が消える危機感が芽生えた」「⑥ドイツでは生産から検査までロボット技術を使った最先端工場で、本国に生産回帰する動きが始まった」と書いている。
 しかし、(日産だけでなく)どのグローバル企業にも共通する原則は、⑤のように、「工場や販売拠点は、地球上で最も生産性や販売力(潜在力も含む)が高く、利益(社会的責任を果たすことも含む)の出る配置にする」ということである。そのため、何かと日産を叩いて協力しなかった日本は、投資や生産を最小にして、③のように新規投資は海外に振り向けたいと思われる国になっても仕方ない。また、④のゴーン現会長の下でリストラを断行されたのは、新しい日産に生まれ変わるにあたって抵抗勢力になる人材だったと記憶しており、これは世界標準のやり方だ。さらに、人手不足だから納期に間に合わせるため不正を行うというのは、(不必要な検査規制をしているのでなければ)これまでの日本人にはなかった不真面目で不誠実な態度なので不要な人材になる。そのため、②の品質を最大の強みにしてきた日本のものづくりとかけ離れた実像の源は、i)何でも時間をかけたり適当なところで妥協したりするのがよいとする日本社会に充満したおかしな雰囲気 ii)全体を見て物事の重要性の優先順位を判断できないような知識の乏しい人材を育てた教育の劣化 iii)熟練技術者を軽視する風潮 iv)働かない改革への大々的な掛け声 v)前からある高コスト構造とさらなる高賃金 などだと考える。
 もちろん、⑥のように、ドイツで生産から検査までロボット技術を使った最先端工場で本国に生産回帰する動きが始まったのはよいことだが、その最先端工場も、以前は東ドイツ出身、今は移民などの比較的安価で勤勉な労働力によって動かされていることを忘れてはならない。
 なお、*6-7のように、世界はCOP24で「運輸部門の排出ゼロ」を明記するそうで、これがあるべき姿なのだが、日本では政府やメディアが、最初にEVを市場投入したニッサンの足を引っ張ったり、EVの功労者であるゴーン氏の報酬が高すぎるなどと騒いだり逮捕したりして、ニッサンが2位を引き離してトップランナーになれる政策はとらず、いつものように他を見てあわてて追いかけている状態なのである。これをドアホと言わずに、何と言うのだろう。

*6-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20181108&ng=DGKKZO37503040Y8A101C1EA2000 (日経新聞 2018年11月8日) 日産、アフリカで新工場 需要拡大、現地生産進める
 日産自動車がアフリカ事業を拡大する。アルジェリアで新工場を建設する方針を固め、ガーナでも生産拠点の新設へ地元当局と協議に入った。所得水準の伸びを背景に西アフリカ地域などで乗用車の需要が伸びており、投資を本格化する。アフリカでは中国が国を挙げて投資を積極化しているが、日本企業の間でも成長を取り込む動きが広がりそうだ。日産はこれまで主に南アフリカや日欧の生産拠点からアフリカ諸国へ出荷していた。需要地での現地生産を進め競争力を高める。北アフリカで最も市場成長が期待されるアルジェリアでは新工場を建設し、部材などを輸入して最終的な組み立てを行う「ノックダウン生産」が有力だ。西アフリカのガーナは産業の基盤が整っておらず、より簡易な部品の取り付けを中心とした生産拠点となりそうだ。西アフリカ地域での生産拠点の開設は日本勢として初となる。両工場の生産車種や投資額など詳細は今後詰めるが、2020年代初頭の建設が見込まれる。日産はすでに南アフリカとエジプトで小型トラックや小型セダン「サニー」などを生産する完成車工場を持つ。17年度には両国で販売が7万4千台、生産はおよそ5万台だった。中近東やインドとともにアフリカを新たな収益源に育て、先進国市場の成長鈍化に備える。調査会社のフロスト&サリバンによるとアフリカ地域の新車販売台数は25年までに16年比で2倍の326万台と、世界で5番目に大きいドイツに匹敵する規模になると試算する。南アフリカが年40万台規模と最大の市場で、今後はナイジェリアが年率5%を超えて成長するとされるなど、西アフリカで需要が急増する見通しだ。アフリカは地理的・歴史的な背景から欧州勢が強い。日産と提携する仏ルノーはモロッコなどに工場を持ち競争力が高い。英コンサルティング会社PwCによると、中東とアフリカ地域の合算で、17年にルノー・日産・三菱自動車の3社連合は約68万台を生産した。日本勢ではトヨタ自動車が南アフリカなどに工場を持つ。エジプトに工場を持つスズキとの提携も強化しており、5月にはスズキが開発する車を両社でアフリカに供給し、物流やサービスで協業しながら販売する方針を発表した。完成車メーカーの進出が広がると、部品メーカーなどすそ野産業の現地進出を後押しする。国際通貨基金(IMF)はサハラ砂漠以南のサブサハラ地域で、経済成長率が17年の2.8%から19年には3.8%に高まると推計する。20年には人口も11年から2億人増の10億人を超えそうだ。資源に依存した経済構造から脱すべく、各国は産業振興に力を入れている。有望市場を巡る争いも激しい。中国は広域経済圏構想「一帯一路」を背景にアフリカ進出を加速しており、9月には今後3年で計600億ドル(約6兆8千億円)の資金拠出を表明した。日本も16年に民間も合わせて3年で300億ドルの支援を表明したが、豊富な中国マネーに後れをとっている。

*6-2:http://qbiz.jp/article/141561/1/ (西日本新聞 2018年9月29日) レクサス初のEV、九州で生産 20年にも中国、欧州投入 トヨタ
 トヨタ自動車は、高級ブランド「レクサス」としては初となる電気自動車(EV)の生産を、子会社のトヨタ自動車九州(福岡県宮若市)で始める方針を固めた。2020年にも中国と欧州に先行投入する。新型の小型スポーツタイプ多目的車(SUV)「UX」をベースに開発し、当初は年間計1万5千台前後を輸出する。UXのEVは20年春ごろにも中国への輸出を開始し、同年夏ごろからは欧州でも販売する。UXは車高が比較的高く、蓄電池などを搭載するスペースが確保しやすいほか、車体がコンパクトで1回の充電による航続距離を伸ばしやすい利点もある。生産を手掛けるトヨタ九州は、国内外のレクサス工場の中でも高い技術力を誇る。永田理社長は従業員をトヨタ本体の設計開発部門に派遣し、EVを含む新分野への対応に向けた準備を進めていることを明らかにしていた。中国では19年以降、自動車メーカーにEVやプラグインハイブリッド車(PHV)など新エネルギー車の一定割合の販売が義務付けられる。トヨタは20年春ごろ、小型SUV「C−HR」をベースにしたEVの現地生産にも乗り出す。一方、トヨタの欧州向けEVの量産計画が明らかになるのはUXが初めて。現地ではコンパクトタイプのSUVが人気で、EVの投入でレクサスの競争力の強化を図る。トヨタは20年代前半に、全世界で10車種以上のEVの販売を計画。国内向けでは20年の東京五輪に合わせて小型EVの市販も検討している。レクサスは富裕層が台頭する中国と欧州で販売が好調で、UXは世界的に人気が高まるSUVの小型タイプ。今年11月末の日本での発売を皮切りに海外でも順次、エンジン車とハイブリッド車(HV)を販売することが決まっている。

*6-3:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20181109&ng=DGKKZO37532630Y8A101C1TJ2000 (日経新聞 2018年11月9日) 家庭の太陽光、EVでイオンへ、関電と協力、固定価格後の受け皿に
 イオンと関西電力は2019年度にも家庭の太陽光発電で作った電力を店舗で使う仕組み作りに乗り出す。消費者は電気自動車(EV)に電力をためてイオンの店舗に運び、買い物ポイントと交換する。太陽光の電力を高く買い取る仕組みは19年から10年間の期限が切れ始める。再生可能エネルギーを地域で無駄なく活用して事業に生かす動きが広がってきた。太陽光発電普及のために国が導入した固定価格買い取り制度(FIT)は19年11月から徐々に終了し、電力大手は買い取り義務がなくなる。19年中に約50万戸、23年までに約160万戸の家庭の余剰電力が売り先を失う恐れがあり「2019年問題」といわれる。約700万キロワットと大型の原子力発電所7基分の電力が宙に浮く計算だ。イオンと関電の実験はまずショッピングセンター、イオンモール幕張新都心(千葉市)を候補とする。同店にはEV充電器が39台あるが、蓄電池やEVから電気を受け取る設備を新たに導入する方向だ。調達した電力は店舗の照明や空調に使う。太陽光発電由来の電力だと証明するために国内で初めてブロックチェーン(分散型台帳)技術を活用する。関電は司令塔となり、協力してくれる来店客にスマートフォン(スマホ)のアプリを通じて放電を要請する。地域で電力が余ったときは消費者のEVに蓄電してもらうことで需給を調整できる。関電は需給調整への協力の見返りとしてイオンに報酬を支払う予定だ。一連の仕組みは「仮想発電所(VPP)」と呼ばれる。EVの蓄電池など分散している設備を包括的に制御して無駄なく使う。地域での電力需給の調整がしやすくなる。実験結果を踏まえて全国への拡大を検討する。消費者には電力量に応じてイオンの「ワオンポイント」を付与する。電力会社などを通じない電力の売買は法で認められていないためポイント付与は電力の対価ではなく協力への謝礼として支払う。一般的なEV一台にためられる電力は数百円分だ。ポイントへの交換レートは検討中。電力大手の電力を使うより安く調達できる可能性があるが、あまりに低いレートだと消費者にとっての魅力が少ない。イオンはバランスをどう取るかが課題となる。イオンは事業活動に必要な電力をすべて再生可能エネルギーで調達することを目指す「RE100」に参加している。ブランド向上を図るほか、集客や非常用の電源確保にもつなげる。消費者にとっては、FITが終わった後に余剰電力を使う選択肢が広がるメリットがある。関電は電力需給の調整能力が向上し、石油火力などコストが高い発電手段への依存度を引き下げやすくなる。2019年問題をにらんだ動きは関電とイオン以外にも出始めている。東京電力ホールディングスは11月から新プランを始めた。太陽光発電パネルを設置している一般家庭を対象に、伊藤忠商事の人工知能(AI)を使った電力利用の最適化サービスと蓄電池を組み合わせ、電気代を抑える仕組みだ。

*6-4:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20181109&ng=DGKKZO37558490Z01C18A1MM8000 (日経新聞 2018年11月9日) 海外で研究、減少深刻 20年で4割減、助成拡充、若手後押し
 日本の若手研究者らの「海外離れ」が深刻だ。中長期にわたり海外に渡航する研究者数は過去20年ほどで4割減った。グローバルに活躍する研究者の減少は、深刻化する日本の科学技術力低下の大きな要因になっている。政府は若手研究者が海外で研さんを積む機会を増やすため、日本の科学研究費(総合2面きょうのことば)の助成制度を改善し、テコ入れに乗り出す。文部科学省の調査によると、中長期(1カ月超)にわたり海外に派遣される研究者数は1990年代後半から2000年にかけ7000人を超えていたが、直近では4300人に減った。背景にあるのが、帰国後にポストが得られないことへの不安だ。日本の大学などでは正規の研究職の枠が限られ、任期付きの不安定な雇用形態が増えて若手研究者などが海外に渡航することをためらわせている。国立大学の法人化後、運営費交付金の減少などで大学の経営環境は厳しさを増し、大学も海外に人材を送り出す余裕に乏しい。18年のノーベル生理学・医学賞を受賞する京都大学の本庶佑特別教授を含め、多くの歴代ノーベル賞受賞者は米国などに渡り研究してきた。海外での研究は最先端の知識を吸収し人脈を広げることにつながり、その機会の減少は研究の幅を狭めて日本の科学力低下の理由の一つになっている。文科省科学技術・学術政策研究所が引用数が上位1%に入る優れた研究論文を分析したところ、日本の研究者が携わる研究領域数は米国だけでなく、英国、ドイツ、中国を大きく下回る。日本では新しい分野に挑戦する研究者が少なく、独創性や多様性に欠ける実態を物語る。国境を越え瞬く間に成果が共有され技術革新のスピードが増す中、日本は海外の研究者との「国際共著論文」の数で見劣りする。グローバルに活躍する研究者の不足が鮮明だ。こうした状況をテコ入れするため、政府は若手研究者が海外で長期の研究に参加できるよう環境を整える。研究費の助成制度を改善するのが柱。文科省が、多くの研究者の活動の基盤となっている科学研究費補助金(科研費)の運用を19年度から改める。現在は研究費を受給する間に海外の研究機関で1年以上過ごすと受給資格を失うが、2年以内に戻れば資格を継続し未使用分を受け取れるようにする。政府は若手研究者の育成を成長戦略の一環と位置づけている。日本の研究現場は人材の流動性の低さや新陳代謝の少ない体質が問題視されてきた。将来のイノベーション創出のカギを握る若手研究者の育成にどこまで力を入れるのか、政府や大学の本気度が問われている。

*6-5:https://www.nikkei.com/article/DGXNASFK17058_X10C14A1000000/ (日経新聞 2014/1/17) 大容量太陽光発電システム付き住宅、販売が本格化
 茨城セキスイハイム(水戸市)は2014年1月16日、出力10kW以上の大容量太陽光発電システムを搭載した住宅「スマート・パワーステーション」シリーズを茨城県内で販売すると発表した。「スマート・パワーステーション」は、太陽光発電システムのほか、HEMS(住宅エネルギー管理システム)「スマートハイム・ナビ」、定置型大容量リチウムイオン蓄電池「e‐Pocket(イーポケット)」を搭載し、標準的な住宅規模でエネルギーの自給自足を可能にした。積水化学の鉄骨系住宅「ハイムシリーズ」の主力商品は、フラットルーフであり、屋根全体に太陽光パネルを搭載しやすい。これまでも大容量のパネル設置が可能だったが、40坪程度(約130平方メートル~)の住宅規模で、6.8kW搭載(実邸平均:4.64kW)が最大だった。「スマート・パワーステーション」シリーズでは、新たに開発した「パネル一体型屋根」「ロング庇」により、30坪台(114平方メートル~)からでも10kWの搭載が可能となった。また、木質系住宅「ツーユーホームシリーズ」でも、南面の屋根面積を増やす3.5寸片流れ屋根を開発し、こちらも住宅規模108平方メートルから10kW以上のパネルを搭載できるという。10kW以上のパネルを設置した場合、固定価格買取制度では、「余剰電力売電」と「全量電力売電」が選択でき、20年の長期にわたり、安定した売電収入が期待できる。積水化学の鉄骨系住宅用の太陽光パネルでは、フラット屋根に隙間なくパネルを設置する。その状態で最大発電量が得られ、かつ、相対的に低コストであるCIS型太陽電池を採用した。10kW以上の太陽光発電システムを搭載した住宅では、2013年4月にパナホームが太陽光発電パネルそのもので屋根を構成した戸建住宅「エコ・コルディス」を発売している。太陽光発電パネルに、業界トップレベルの発電効率を持つパナソニック製太陽電池「HIT」を採用することで実現した。同社によると、固定価格買取制度による売電収入は、条件により年間約51.5万円、20年間で約1000万円以上の収入になるという。

*6-6:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20181111&ng=DGKKZO37628350Q8A111C1MM8000 (日経新聞 2018年11月11日) 「衰える工場」品質不正招く、設備・人材へ投資後回し 海外優先、現場にしわ寄せ
 日本企業の品質検査不正(総合2面きょうのことば)が止まらない。鉄鋼、自動車に続き、油圧機器メーカーのKYBが免震装置で検査不正を公表した。なぜ品質の根幹である検査データを偽るのか。SUBARU(スバル)や日産自動車などの調査報告書を読み解くと、一つの共通点が浮かび上がる。設備の老朽化と人手不足で「衰える工場」という現実だ。「建屋や空調機の老朽化で燃費・排ガス検査の際に湿度の基準を満たせず、検査員がドアに目張りし、電気ポットの蒸気で湿度調整していた」(スバル)。「アルミの検査不適合品を合格と偽って出荷したのは、再検査のための保管スペースが1日で埋まってしまうため」(三菱マテリアルグループ)――。弁護士らが調査した各社の報告書だ。「品質」を最大の強みにしてきた日本のものづくりのイメージとはかけ離れた実像が表面化した。各社は老朽化した設備で検査を続けていた。約10万台のリコールに発展したスバルの群馬製作所(群馬県太田市)の検査建屋は1960年代に建てられた。日産の栃木工場(栃木県上三川町)の排ガス試験室の空調機も77年に設置されていた。
●改修に改修重ね
 日産は連結売上高のうち6割、スバルは7割を海外で稼ぐ。稼ぎ頭の海外を中心に新規投資を振り向ける一方、国内工場は改修に改修を重ねて運用してきた。経済産業省によれば、新設からの経過年数である「設備年齢」は大企業で90年度と比べて1.5倍に増えた。人への投資もおろそかになっていた。日産は経営危機に陥った99年以降、カルロス・ゴーン現会長の指揮下でリストラを断行し、「国内技術員が人手不足に陥った」(報告書)。人手が足りず、納期に間に合わせるために不正を繰り返す。KYBの検査員は延べ8人、一時は1人で作業にあたっていた。「基準に満たない製品を分解して正しくするのに5時間かかる」(カヤバシステムマシナリーの広門茂喜社長)が、人的な余裕がなく改ざんに走った。日本の製造業は国内工場を「マザー工場」と位置づけ、現場の“カイゼン"で生産効率を徹底的に高めて海外工場にノウハウを移転してきた。だが、労働コストが安い新興国に最新鋭工場ができると国内の競争力が低下。ベンチマークの海外工場と比べられ、国内生産が消える危機感が現場に芽生え始めた。
●納期守るために
 日産は各国の工場の生産能力や労務コストなどを比較し、生産拠点を決める。「マーチ」の製造を追浜工場(神奈川県横須賀市)からタイ工場に移した際は、余剰となった技術者の多くが海外に派遣された。17年10月にアルミ製部材のデータ改ざんが発覚した神戸製鋼所も同様だ。ある従業員は「売り上げが低下すると工場が操業停止に追い込まれる恐れがあった」と証言している。海外でも15年に独フォルクスワーゲン(VW)で排ガスデータの大規模改ざんが発覚した。だが、「欧米では経営層が不正を指示するケースが多いが、日本企業は現場が忖度(そんたく)した結果、不正に発展することが多い」(デロイトトーマツファイナンシャルアドバイザリーのプリボスト真由美氏)。カイゼンの名の下、問題の解決を現場に任せてきた日本企業。各社の報告書でもコストや納期を守るために、現場の判断で不正に手を染めたケースが目立つ。もちろんそれが経営陣の言い訳にはならない。コスト削減を掲げるだけで現場のひずみに目をつぶり、不正に追い込んだ経営の責任は重い。日産は6年間で測定装置などに1800億円を投じ、検査部門に670人を採用する。スバルも5年間で1500億円を設備更新に充てる。しかし局地的な対応策で「ものづくり力」が回復するかは未知数だ。製造業のデジタル化を目指す「インダストリー4.0」を掲げるドイツでは、生産から検査までロボット技術を使った最先端工場で本国に生産回帰する動きが始まった。独アディダスは17年にロボットが靴を自動生産するラインを導入し、24年ぶりに生産を自国に戻した。膨大な情報を自動で分析する技術は、検査工程や品質向上にも活用できる。生産年齢人口が減少するなか、現場の感覚や頑張りだけに頼ったものづくりは限界を迎える。日本のものづくりの復権のためには、抜本的な生産の革新が必要になる。

*6-7:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20181203&ng=DGKKZO38445170S8A201C1MM0000 (日経新聞 2018年12月3日) 「運輸部門の排出ゼロ」 COP24、明記へ
 ポーランドで2日開幕した第24回国連気候変動枠組み条約締約国会合(COP24)で、参加国が3種類の政治文書をとりまとめる調整に入った。電気自動車(EV)を推進する「Eモビリティー」では「運輸部門の温暖化ガスの排出ゼロ」の実現を明記する見通し。同部門で二酸化炭素(CO2)排出の多くを占める自動車を巡り、各国が官民で連携してEV普及の方向性を明確にする。COP24は190近くの国・地域が参加してポーランドのカトヴィツェで開幕した。14日の閉幕までに国際的な温暖化防止の枠組み「パリ協定」の詳細なルールとなる実施指針の合意をめざす。

<エネルギーの変遷と新事業>
PS(2018年11月10日、12月1日追加):エネルギーも変遷するので、*7-1のように、三井松島が脱炭素社会で石炭生産事業から撤退するのは仕方のないことだが、エネルギーにシナジー効果のある慣れた事業を行いたいとすれば、①日本政府と協力して日本のEEZ内で蓄電池材料となるレアメタルを採掘する ②所有する離島から入る海底の坑道を核廃棄物の保管場所として再生し、しっかりした管理を行う などの新たな事業が考えられる。
 なお、*7-2のように、長崎県・佐賀県の7市町が新しい電力会社を作り、来年度から公共施設などに電力を供給するのはよいと思う。その理由は、①再エネはクリーンであること ②エネルギーも地産地消した方が地域から資金が流出しないこと である。
 日本農業新聞は、2018年12月1日、*7-3のように、農林中金とみずほ銀行が11月30日にJAバンクで個人型確定拠出年金「iDeCo(イデコ)」を取り扱う業務提携をしたと記載している。年金はもちろん必要だが、農林中金やみずほ銀行は、地方の人から集めたなけなしの金を米国でサブプライム・ローン(貧乏人からむさぼるローン)として貸し出し、2008年のリーマンショックで大きな貸倒損失を出して、米国の住宅しか残らなかった。そのため、個人型確定拠出年金もよいが、全国的な銀行に集めるのはどうかと思われ、九州で集めた年金資金は九州の街づくり・再エネ・その他産業等に投資して利益を出すような選択肢を作って、年金資金で将来の街づくりの一端を担うのがよいと考える。魅力的な街に人々は集まるのだから。

  
    *7-2より    エネルギー自給率国際比較    日本の再エネの伸び

(図の説明:中央の図のように、日本のエネルギー自給率はずば抜けて低いにもかかわらず、右図のように、再エネによる国産エネルギーの開発は固定価格買取制度に頼っており鈍い。そのような中、左図のように、地方自治体が新電力を作って再エネ普及を心がけているのは頼もしく、再エネによる電力とEVを組み合わせれば、資金流出は最小になる)

*7-1:http://qbiz.jp/article/143946/1/ (西日本新聞 2018年11月10日) 三井松島が海外採掘撤退へ 九州支えた石炭生産事業に幕 「脱炭素社会」で逆風
 三井松島ホールディングス(HD)=福岡市=は9日、祖業の石炭生産事業から2040年代までに撤退すると発表した。地球温暖化への懸念から国際的に脱炭素社会に向けた動きが広がる中、将来的に事業収益が見込めなくなると判断した。1913年の創業時から100年以上続いた事業に幕を下ろす。同社は現在、オーストラリアとインドネシアの計3カ所の炭鉱で生産や開発探査を展開。9日発表した24年3月期までの中期経営計画に、今後は新たな石炭関連事業への権益投資を行わず、現在の採掘計画が終了する40年代をめどに完全撤退する方針を盛り込んだ。石炭販売事業については継続する見通し。撤退について同社幹部は「過去にない石炭事業への逆風を感じるようになった」と強調する。地球温暖化防止の国際的枠組み「パリ協定」が15年に採択され、環境保護など企業の社会的責任を重視する「ESG投資」が世界的に拡大。地球温暖化につながる石炭需要の先細りは避けられないとして、石炭生産事業に依存しない収益構造への転換を決断した。同社の18年3月期の連結売上高は663億円で、うち石炭生産事業は118億円。12年以降、企業の合併・買収(M&A)を進めており、ストロー製造やスーツ製造会社を買収した。今後5年間は、新規M&Aを加速させる期間と位置づけ、計300億円を投じる方針。18年3月期の連結営業利益15億円を、24年3月期までに55億円に引き上げる。同社の前身は1913年、松島炭鉱(長崎県)開発のため三井鉱山などが出資して設立。2001年に九州最後の池島炭鉱(同)を閉山し、国内生産から撤退した。

*7-2:http://qbiz.jp/article/143923/1/ (西日本新聞 2018年11月10日) 長崎・佐賀7市町が県境越え新電力 佐世保、伊万里など、来年度から公共施設などに供給
 長崎県佐世保市は佐賀県伊万里市など近隣6市町と協力して、新電力会社を2019年度に設立する。佐世保市を含む7市町の主に公共施設と契約し、収益を公益性の高いまちづくり団体の活動費に充てることを目的としている。市によると、自治体が県境を越えて新電力会社を設立するのは全国で初めて。佐世保市以外の6市町は長崎県平戸市、松浦市、西海市、東彼杵町、新上五島町と佐賀県伊万里市。19年度に発足する連携中枢都市圏「西九州させぼ広域都市圏」(12市町)の一部で、新電力会社を45の共同事業の重点と位置づけている。計画によると、新電力会社は企業や金融機関の出資を想定した第三セクター。7市町内で企業などが行っている太陽光や風力、ごみ焼却、バイオマス発電から電気を仕入れ、自治体庁舎や体育館などの公共施設、民間事業者へ供給する。20年度から年間13億円程度の売り上げを見込む。佐世保市は新電力会社をつくる目的として「都市圏域の経済循環」を挙げる。現在の電気料金のほとんどは九州電力(福岡市)の収入になっているため、その一部を圏域内にとどめ、民間の公益活動資金として循環させたい考えだ。自治体が新電力会社に出資する例は北九州市、福岡県田川市などがある。佐世保市は福岡県みやま市が中心になって設立した「みやまスマートエネルギー」を参考にした。連携中枢都市圏は、中心都市と周辺市町村が協力して住民サービスや都市機能を高め、圏域住民の流出を抑えるために形成する。九州の7地域を含む全国28地域にあり、国は地方交付税で共同事業を支援する。

*7-3:https://www.agrinews.co.jp/p45984.html (日本農業新聞 2018年12月1日) 個人型確定拠出年金 JA窓口で扱いへ 農林中金みずほ銀
 農林中央金庫とみずほ銀行は30日、JAバンクで個人型確定拠出年金「iDeCo(イデコ)」を取り扱うための業務提携を発表した。2019年4月から、取り扱いを希望するJAの窓口で、みずほ銀のイデコ商品を申し込めるようにする。組合員・利用者の資産形成ニーズに対応する。JAには長期の取引につながるメリットがある。「JAバンクのiDeCo(みずほプラン)」として取り扱いを始める。JAが商品の提案や加入申し込みの受け付けをし、掛け金の引き落としや年金の受け取りはJAの口座を使う。みずほ銀は運営管理機関として、加入者に運用状況の情報提供などを行う。農林中金は、取り扱いを希望するJAを募り、JA職員向けの説明会も行う。JAバンクは02年に個人型の確定拠出年金に参入したが撤退し、現在はイデコを扱っていない。だが農林中金は、長寿命化や公的年金への不安感からイデコへのニーズがあるとみる。一方で自前の商品開発などは非効率と判断し、みずほ銀に提携を呼び掛けたという。イデコは掛け金の拠出や年金の受給で長期の取引をするため、JAにとっては若い世代の組合員や利用者との結び付きの強化につながる。イデコを扱うかどうかはJAの判断だが、取り扱い登録は不要のため、農林中金は「投資信託を取り扱うJAの数(約200)より多くなるのではないか」とみる。農林中金はイデコを、JAや組合員・利用者が投資信託などの資産形成を始めるきっかけにしたい考えだ。イデコを巡っては大手の保険会社や銀行、証券会社が地方銀行や信用金庫などと提携し、加入者数を競っている。みずほ銀はJAバンクとの連携で、農村部での加入者を増やしたい考え。提携金融機関数は国内首位となる見込みだという。
<ことば> iDeCo
 個人が任意で加入する私的年金制度。毎月、一定額の掛け金を支払い、自らが選んだ金融商品で運用。運用結果で将来の受け取り額が決まる。原則60歳になるまで途中の引き出しや脱退はできないが、掛け金全額が所得控除となるなど税制上のメリットがある。

<若者が地方を離れる理由には封建的な価値観もあること>
PS(2018年11月28日追加): 故郷を離れ、都会の家賃は高いのにニューヨークのハーレムより狭い団地の一室で核家族で暮らした団塊世代以降の若者は、故郷によい仕事がなかったこと以外に、*8-1のような封建的なムラ社会から出て自分の価値観で生きたいという気持ちも大きかったと思う。しかし、現在では、農村も戦後世代が舅・姑で教育レベルが高くなったため、封建性や女性の地位の低さは次第にほぐれてきている。2005~2009年の間、私が衆議院議員として毎週末に帰ったふるさとである地元(佐賀県)で感じたことは、「一般には、女性の地位が私が大学に進学するためふるさとを出てきた時とあまり変わっておらず、東京より30年以上も遅れているのではないか」と思われるような女性差別・女性蔑視・女性に対する過小評価があったことだ。これは、すべての人が有権者である選挙では、女性にマイナスに働く。
 また、*8-2のように、鳥取県知事が「母の慈愛の心を持って云々」と独身の小池都知事をちゃかす発言をしたことにも女性差別が表れており、この発言にまともに反論すれば、①この発言はセクハラである ②母でない女性は価値がないかのようで、女性の自己決定権や人権を無視している ③女性は慈愛に満ちていつもやさしくなければならないなどとしているが、それでは交渉も指導・監督もできない である。しかし、そうまともに反論すると、何故か「生意気」「傲慢」「謙虚でない」等々の批判を受けるので、小池都知事はじめ多くの女性は「母になれなかった」「結婚できなかった」などと哀れみを誘う説明をしているわけで、本当は「自己規制」などしたくはないのだということに、メディアはじめ人々はそろそろ気付くべきだ。

*8-1:https://www.agrinews.co.jp/p45930.html (日本農業新聞 2018年11月27日) 農家女性の歩み 性別役割分業の壁破れ
 戦後、農家のお母さんたちはどう生き抜いたのか。女性から見た戦後史が反響を呼んでいる。時を経ても変わらないのは、強固に存在する「性別役割分業」。国には家事・育児・介護などを正当に評価する仕組みを求める。家庭や地域では労働分担の知恵を出し合い、変えるべきことは変えていこう。『農家女性の戦後史──日本農業新聞「女の階段」の五十年』(こぶし書房)の著者で、駒沢大学経済学部教授の姉歯曉さんは、書籍化まで5年かかったという。「投稿や手記のレベルが高く、読み解くには膨大な分析が必要だった」と振り返る。時代背景を知るために、模造紙を何枚も貼り合わせた分野別年表を作った。本著は、農村を内側から見たリアルな女性史であるだけでなく、農政や経済、生活と多方面から分析、「女の階段」投稿者の女性8人のインタビューも収めた。朝日新聞では10月、音楽家でエッセイストの寺尾紗穂さんが「農村史を眺めるだけでは浮かび上がらない女たちの切実な声が溢(あふ)れている」と書いた。週刊文春誌上で11月に紹介したエッセイストの酒井順子さんは「農家の女性達が置かれた状況も、戦後の農業の変遷も、全く知らなかったということを知らされる一冊」とした。姉歯さん自身も、10月に開かれた2018年度経済理論学会で著書について発表。「研究者仲間から、今まで聞いたことのない自分の母親や『嫁』としての苦悩の話が聞かれた。70、80代の男性研究者からは自分が目にしてきた母の姿だ、と電話があった」と話す。学会に参加した同書の編集担当者は、「本が“自分語り”のきっかけになった。自分の問題を考えるための懸け橋になるのではないか」と期待を込める。本紙が、くらし面に投稿欄「女の階段」を設けたのは1967年。この50年で経営者として参画する女性は増え、発言力や行動力は高まった。8月には相続分野を40年ぶりに見直した改正民法が成立。介護に尽力した「嫁」は無権利状態を脱し、その貢献度を請求できる仕組みとなった。この変化の背景に「女の階段」世代の踏ん張りがあることを忘れてはならない。一方、農水省の調査(18年)で、経営参画に必要なこととして女性自身が「家事・育児・介護などの負担軽減」(28%)、「家事、育児などは女性の仕事という固定的役割分担の意識の打破」(16%)を求めていることが分かった。与党内では、いまだに女性は家事を担うものといった旧態依然の「家族観」を持つ議員の発言が後を絶たない。女性も年代を問わず、この意識が刷り込まれ、「自己規制」と「世間体」のはざまで苦しんでいる。群馬県の塚越アサさん(18年5月逝去)は、「女の階段」にこう書いた。「正しい怒りを正しく表現したい」と。今こそ声を上げ、壁を破ろう。

*8-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20181116&ng=DGKKZO37835610W8A111C1CC0000 (日経新聞 2018年11月16日) 「ちゃかす発言、大変傷ついた」小池都知事
 東京都の小池百合子知事は16日の定例記者会見で、9日の全国知事会議に関し「(小池氏を)ちゃかすような発言があって、非常に困惑した。安易な発言に大変傷ついた」と述べた。「母としてどうのこうのと言われたが、私は母になれなかった」などと説明した。会議では、国による税財源の偏在是正措置への対応などが議題となった。鳥取県の平井伸治知事が「母の慈愛の心を持って、大都市と地方が折り合える案を考えていただければ」などと発言した。

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