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2014.6.28 「産めないのか」というやじが飛び、うやむやにされる背景には、国のセクハラ政策がある。女性管理職の割合を増やすのは、その解決策の一つだ。(2014.6.30、7.2、7.5に追加あり)
(1)「少子化=先細り」というキャンペーンの中で、そのヤジは起こった
 *1-1に、「①政府は多子世帯の育児支援や、地方を見据えた結婚、妊娠、出産支援に本腰を入れ、予算拡充を掲げた」「②50年後に1億人程度の人口を維持する」などと書かれており、現在、「少子化=国の先細り」というキャンペーンが激しい。そのような中で、*2-1に書かれているように、東京都議会で「早く結婚しろ」「産めないのか」というヤジが飛び出したのであり、このセクハラは、本当は都議のみの問題ではない。

 しかし、②の根拠となっている「1億人の人口を維持しなければ経済が縮小し、国として成り立たない」というのは合理性がなく、世界の国の人口順位と経済規模は一致しない上、日本より人口が少なくても一人当たりの暮らしぶりが日本より豊かな国は多い。つまり、その時代に必要とされる財・サービスを賢く開発して提供すれば経済はよくなるのに、産めよ増やせよ論をやっているから、「早く結婚しろ」「産めないのか」などというヤジが飛び出すのである。つまり、これは、日本という国が、セクハラ政策を推し進めようとした結果なのだ。

 そして、このようなセクハラ政策が進められる背景には、*1-2で61歳の主婦が述べているとおり、議会や“有識者”会議が超男性社会で、そこに入っている少数の女性は、議長をはじめ多数を占める男性の意見に反対する力がなく、①のように、「少子化対策=結婚、出産の奨励」となるという状況があるのだ。そして、これまでは、こういうヤジに毅然とした態度で臨むと、「そんな冗談に目くじらを立てて・・」などと、かえって批判された。

(2)この機会に変えるべきである
 *2-1には、「都内には出産や不妊に悩む女性が多い」と書かれているが、不妊にはいろいろな原因があり、生理的に無理であるため妊娠しない場合も多い。それでも無理やり人工授精までして妊娠したがる人が出る背景には、人生や結婚の幸福には子を産み育てることだけではない自己実現があるにもかかわらず、「産めないのか」というヤジに代表されるような社会の圧力があるからだ。

 本当は個人が自己実現をやりやすく支援すべきで、それができれば個人にゆとりができて、自然と人口が増えるのは歴史上の真実である。また、「私たちの心の内に同じような意識が潜んでいないか考えたい」とも書かれているが、(1)の①②にひっかかりを感じない人は、そのような意識なのだから、この機会に変えるべきだ。

(3)セクハラ都議の隠蔽はやめよう
 *2-2のように、朝日新聞記者が取った録音と都議会が庁内放送で流した都議会中継の音を朝日新聞とテレビ朝日が分析したところ、「早く結婚した方がいい」「自分が産んでから」「がんばれよ」「やる気があればできる」とのヤジが続いたそうだが、都議会最大会派の自民党幹事長は、所属議員全員の聞き取りをし、鈴木都議のヤジ以外は「聞いていない」と説明していた。これは、これまでの“常識的”な幕引き方法だが、この機会に言った人を特定し、どういう考えでそう言ったのか、釈明させるべきである。

 何故なら、東京都議会でさえそうなら、女性議員が極端に少ない地方議会では、「議員なんかやるより、早く結婚し家庭に入って子供を産むことこそ女の幸せであり、(裏から夫を支えるのではなく)表に出たがる女は性格が悪い」と言うレベルだと思われるからである。

(4)遅くとも2020年には、指導的地位に占める女性の割合を30%にすべきである
 *3のように、安倍政権が、女性の活用を成長戦略の柱の一つとして、女性登用の目標を定め、それを達成する計画をつくることを国、自治体、企業に義務付ける方針を固め、2020年に指導的地位に占める女性の割合を30%にする目標を掲げているのはよいし、それだけの能力のある女性は多くなった。

 議員・公務員・一般企業の管理職に女性が増えれば、「少子化対策=産めよ増やせよ論」というようなめちゃくちゃな政策には疑問を持って意見し、意思決定もできる立場の人が増えるだろう。つまり、(長くは書かないが)いろいろな分野に女性の数が増えれば、解決することも多いのである。

<産めよ増やせよと言う少子化対策>
*1-1:http://qbiz.jp/article/40606/1/
(西日本新聞 2014年6月26日) 地方、止まらぬ先細り 少子化対策は財源なく、人口動態調査
 25日に発表された総務省の人口動態調査では、少子化傾向にブレーキがかかっていないことが明らかになった。政府は多子世帯の育児支援や、地方を見据えた結婚、妊娠、出産支援に本腰を入れ、予算拡充を掲げたが、財源確保のめどは立っていないのが実情だ。政府は24日に閣議決定した経済財政運営の指針「骨太方針」で、50年後に1億人程度の人口を維持する目標を掲げた。特に第3子以降の出産、育児、教育を重点的に支援する。ただ、若い世代を中心に「経済的な理由で結婚や出産をためらう人の支援を優先するべきだ」との声も上がる。有識者らでつくる「日本創成会議」の分科会は5月、地方で暮らす20〜39歳の女性が今後30年間で大幅に減るとの試算を発表した。政府は2013年度の補正予算で、結婚から育児まで幅広い事業に使える「地域少子化対策強化交付金」を創設。都道府県には4千万円、市区町村には800万円を上限に交付する仕組みで、6月現在、全47都道府県の自治体から申請があった。一方、少子化対策から切り離せないのが財源確保の問題だ。骨太方針では少子化対策への予算配分を「大胆に拡充」するとしたが、具体策は明らかになっていない。安蔵伸治明治大教授(人口学)は「夫婦共働きで安定した収入を得られるように、若者の正規雇用化などの環境整備が必要だ。今後は、高齢者から子どもへの予算配分の見直しも検討しなければならない」としている。
◆三大都市圏の人口、過去最多
 東京、名古屋、関西の三大都市圏に住む日本人の人口は、2014年1月時点の人口動態調査で6439万人となり、統計を取り始めた1975年以降で最多を記録した。全体に占める割合は50・93%。名古屋、関西の両圏は前年から減っており、東京圏の増加が総数を押し上げた。内訳は東京圏が過去最多の3506万人で、名古屋圏1117万人、関西圏1817万人。出生数が死者数を上回る「自然増」ではなく、転入者が転出者を上回る「社会増」が要因で、総務省は「雇用機会の多い東京圏への集中が進んでいる」と分析している。社会増を都道府県別でみると、東京が最多の6万9117人で、共に東京圏を構成する埼玉、神奈川、千葉でも増えた。名古屋圏では愛知、関西圏では大阪のみの増加にとどまり、圏域単位では微減。三大都市圏以外の地方圏で増えたのは宮城と福岡だけだった。転出者が転入者を上回る「社会減」は、北海道が最多の8428人で、静岡、青森、長崎などが続いた。福島は5144人だったが、東日本大震災後の12年3月末時点で前年から3万人以上減ったのに比べれば落ち着いており、総務省は「ほぼ震災前の水準に戻った」とみている。

*1-2:http://digital.asahi.com/articles/DA3S11207617.html?ref=reca
(朝日新聞 2014年6月25日) (声:主婦 小河原初子 61) 男性社会の議会が生んだ傲慢さ
 国会でも全国の地方議会でも、男性議員に比べて女性議員の数は少ないのが一般的だ。東京都議会でも女性都議の割合は約20%にすぎない。鈴木章浩都議のヤジ問題で、女性議員が少ないことによる弊害に合点がいった。多数を占める男性議員が、いかに傲慢になっているか分かったのだ。「早く結婚した方がいいんじゃないか」「産めないのか」などというヤジが、国内外でこれほど騒ぎになったことに驚いたのは男性議員たちだろう。これまで同じようなことがあっても表沙汰にならなかったのに今回は違ったため、戸惑っているようだ。鈴木都議は謝罪して反省の弁を述べ、会派からの離脱で決着をつけようとしているが、人の性根がそう簡単に変わるとは思えない。大きな問題は、都議会の品性のなさがあらわになったことだ。公の場では言ってはいけない男性の本音を言うがままにさせ、笑って同調した議員が複数いた。ヤジを受けた女性都議が発言者の特定と処分を申し入れた際、議長が不受理としたのにはがっかりした。議長は逃げずに、毅然とした態度で臨んでほしい。そうでなければ何も変わらないと思う。

<セクハラ都議への対応>
*2-1:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20140624&ng=DGKDZO73210050U4A620C1EA1000 (日経新聞社説 2014.6.24) セクハラ都議会は猛省せよ
 こんな女性をさげすむ発言を許すわけにはいかない。都議会で少子化対策について質問した女性議員に向けられたヤジだ。23日になって自民党の鈴木章浩議員が名乗り出たが、卑劣なヤジを飛ばしたのは鈴木議員だけではない。「早く結婚しろ」「産めないのか」などというヤジは、18日の都議会で塩村文夏議員が妊娠や出産に対する都の支援策を質問しているさなかに飛び出した。ヤジにたじろぐ塩村議員に笑い声が広がるなど、ひどいありさまだった。今回のヤジは女性の社会での活躍に冷水を浴びせ、政府の成長戦略にも逆行する。政府は50年後にも1億人程度の人口を維持する目標を成長戦略に盛り込む方針だ。なかでも、合計特殊出生率が全国で最も低い東京都にとって、少子化対策は最大の課題になっている。塩村議員が質問したように晩婚化や晩産化に伴い、都内には出産や不妊に悩む女性が多くいる。結婚や子育てへの支援は女性だけでなく、男性にも必要だ。都議会自民党の対応もお粗末極まりない。吉原修幹事長は当初、「会派で不規則発言は慎むように話す」などと述べるだけだった。その後、各方面から批判が続出し、鈴木議員だと明らかにした。昨年6月の都議選で自民の候補者全員が当選し、都議会では自民主導の議会運営が続いている。今回の発言やその後の対応は、選挙で大勝した自民党のおごりから出た問題でもあるのだろう。鈴木議員は自民党の会派を離脱すると表明した。問題が発覚した直後に同議員は自ら発言したことを否定しており、議員辞職にすら値する言動ではないか。「産めないのか」などとヤジを飛ばした議員も自ら名乗り出るべきだ。海外でも報じられ、日本の国際的なイメージも損なっている。そもそも、私たちの心の内に同じような意識が潜んでいないか、考えたい。そうした偏見を許さず、出産や子育てと仕事が両立できる社会をつくりたい。

*2-2:http://digital.asahi.com/articles/DA3S11213784.html
(朝日新聞 2014年6月28日) 複数都議がヤジ、録音精査し判明
 東京都議会で晩婚化対策を質問した塩村文夏都議(35)が女性蔑視のヤジを浴びた問題で、複数の議員が立て続けにヤジを飛ばしていたことが分かった。都議会は発言者の特定を1人にとどめて幕引きを図ろうとしているが、事実解明は避けられなくなった。都議会の記者席で朝日新聞記者が取った録音と、都議会が庁内放送で流した都議会中継の音を朝日新聞とテレビ朝日が分析した。鈴木章浩都議(51)が「早く結婚した方がいいんじゃないか」とヤジを飛ばした直後、たたみかけるように男性の声で「自分が産んでから」「がんばれよ」とのヤジが続いた。塩村都議が女性の不妊に関して質問した際には「やる気があればできる」との暴言も聞かれた。音声分析に協力した日本音響研究所の鈴木創所長は「口調や声の調子からヤジを飛ばした人は複数いる。たくさんの人が同時に話している」と分析した。都議会最大会派の自民の吉原修幹事長は、所属議員全員の聞き取りをし、鈴木都議のヤジ以外は「聞いていない」と説明していた。

<女性管理職割合拡大の必要性>
*3:http://digital.asahi.com/articles/DA3S11173576.html?ref=nmail_20140605mo&ref=pcviewpage
(朝日新聞 2014年6月5日) 女性登用の目標義務化へ 国・自治体・企業に 成長戦略
 安倍政権は、女性登用の目標を定め、それを達成するための計画をつくることを国、自治体、企業に義務付ける方針を固めた。女性の活用は成長戦略の柱の一つで、月内にまとめる成長戦略の改訂版に盛り込む。政府は2020年に指導的地位に占める女性の割合を30%にする目標を掲げている。少子高齢化で減る労働力人口を維持するためにも、官民で管理職や役員に積極的に女性を登用し、社会進出を促すために一定の強制力をもった仕組みづくりが必要と判断した。役所ごとの目標や計画は、全府省の次官級で構成する新設の「女性活躍・仕事と家庭の調和推進協議会」でつくる。5月末に新設した内閣人事局が中心となって働き方や人事も見直し、女性の採用や管理職への登用を中心に進めることを明記する。企業については、有価証券報告書に役員の女性比率を記載するよう義務づける。また、女性の就労の「壁」とされている所得税の配偶者控除や社会保障制度の見直しについては、政府の経済財政諮問会議の下に設ける新たな会議で「年末までに見直しの方向性について、一定の結論を得る」とした。企業や役所から給与の一部として支給される配偶者の扶養手当も「壁」の一つとされており、これも見直しの対象に含める。国家公務員の扶養手当も「人事院の協力を得ながら検討する」としている。
■成長戦略に盛り込まれる主な女性の活躍支援策
 ・国や自治体、民間事業者に対し、女性登用の「自主行動計画」をつくって情報開示するよう義務
  づけることを検討
 ・育児経験豊かな主婦らを「子育て支援員」(仮称)と認定する制度を創設
 ・有価証券報告書への女性役員比率の記載を義務づけ
 ・内閣人事局が中核となり、国家公務員の女性採用、登用を拡大。全府省の次官級でつくる協議
  会を設置
 ・配偶者手当や税制などについて新たな議論の場を設置し、年末までに見直しの方向性を出す


PS(2014.6.30追加):*4のように、佐賀県議会は女性議員1人(議員38人中)であり、女性議員が3人いるところは2市、2人いるところは6市、1人しかいないところは5市2町、1人もいないところが5町あり、そのうち自民党系は少ない。なお、首長は全員男性である。
 女性議員が少ない理由は、「女になんができるか」「力のなかごたっとが議員になってもなんもならん」という言葉に代表されると思うが、私が国会議員として及びそれ以前からやってきたことを、「私がやった」と言っても「嘘だ、謙虚でない」などと言って実績を認められなかった上、左のカテゴリーの週刊文春名誉棄損記事、強引な理屈付けによる運動員の逮捕、Googleの検索機能をはじめとするインターネットの嘘による名誉棄損など、女性蔑視を利用した数々のネガティブ・キャンペーンが行われている。
 つまり、「女性は何もできず、力がない」というのも、NHKのヒロインが女性の朝ドラ等における、とんまでくだらなくリーダーシップのかけらもない女性の描き方に代表されるように、メディアをはじめ社会全体が作り出した虚像なのである。

<佐賀県の議員>
*4:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/79142
(佐賀新聞 2014年6月30日) 抱きつきや交際迫られ… セクハラやじで県内女性議員
 東京都議会で質問中の女性に「早く結婚した方がいいんじゃないか」などのやじが飛んだ問題を受け、佐賀新聞社が佐賀県内の女性議員にセクハラ被害について聞いたところ、過去に県外視察の夕食時に男性議員に抱きつかれたり、交際を迫られたケースがあることが分かった。選挙中に女性蔑視の発言を受けた議員もおり、議会内だけではなく、社会全体の問題として意識改革を求める声も上がった。「憤りを禁じ得なかった」。ある女性議員が打ち明けた。7、8年前、視察先で夕食が宴席になり、男性議員にカラオケに合わせて「踊ろう」と誘われ、抱きつかれた。さらにその場面を別の議員が写真に撮っていたという。女性議員は「場の雰囲気を壊したと周りの議員から言われるのを恐れ、怒らずあしらうのが精いっぱいだった」と抵抗できず、追い詰められた心境を語った。別の女性議員はかつて男性議員に「俺の女になれ」と交際を迫られ、拒絶すると嫌がらせを受けたという。「研修後の懇親会になると、複数の男性議員から女性蔑視の発言を聞くことが多い。セクハラと指摘したら、飛びかかってこられたこともある」と被害の深刻さを漏らす。今回の取材では議場内での直接的な被害はなかったが、過去にはセクハラ発言が問題になった事例もある。2002年3月、旧川副町議会で役場職員の育休に関する条例案をめぐり、男性議員が「(女性は)賞味期限の切れた人も該当するのか」と発言した。当時町議だった白倉和子佐賀市議は、女性の人権を軽視していると訂正を申し入れ、男性議員が「不適切な発言」として本会議で陳謝した。女性議員へのセクハラは、議会内だけでなく選挙運動など日々の活動のなかで被害を受けるケースがあった。武雄市の山口裕子議員は、選挙中に「女になんができるか」「力のなかごたっとが議員になってもなんもならん」といった女性蔑視発言を今でも言われるという。「議会に女性が入るのは難しい。難しくても頑張って女性が切り開いていくことで社会が変わっていくと信じている」と話す。三養基郡基山町の牧園綾子議員も、宴席で中高年の男性から肩や腰に手を回された経験がある。「私はやめてもらうように言ったり、うまく逃げることができたが、他の女性議員のなかには不愉快でも我慢している人がいるかもしれない」と、泣き寝入りすることを危惧する。議会内だけにとどまらない問題に対し、鳥栖市の飛松妙子議員は「社会全体の認識が変わらなければ同じようなことが続くのではないか」と指摘する。
   ◇   ◇ 
 佐賀県内の女性の議員数は現在26人で、全議員397人に占める割合は6・5%。全国平均(2013年12月31日現在)の都道府県議会議員8・8%、市区町村議会議員11・8%より下回っている。


PS(2014.7.2追加):*5のように、西日本新聞が、九州の地方議会における女性議員の割合を調べたところ、30%は女性議員数が0など、女性議員の割合が全国より低いことが明らかになった。しかし、議会で決めるべき政策には女性の方が得意なものも多いため、私も「2020年までに30%は女性にする」という方針を議員にも当てはめるのがよいと考える。「2020年に30%」の適切な人材はいる筈だ。

<九州の議員>
*5:http://www.nishinippon.co.jp/nnp/national/article/98262
(西日本新聞 2014年6月30日) 九州の地方議会30%女性ゼロ 合併 定数減響く
 九州の地方議会のうち、女性議員がゼロの議会は全体の30%。特に町村議会では45%に達する。郡部ほど「政治は男の世界」との風潮がいまだ根強いことや、「平成の大合併」が女性の議会進出を難しくしていることがうかがえる。地方議員に占める女性の割合が6%と全国最低だった長崎県。周辺6町を2010年までに順次吸収合併した佐世保市では、旧市町時代には計8人いた女性議員が、1人だけになった。唯一の早稲田矩子市議(71)によると、旧町の代表を確実に送り出すため、元町長ら知名度のある男性に候補者を一本化したり、旧町では数百票だった当選ラインが新市では2千票以上に上がって旧町議の女性が届かなかったりしたという。総務省によると、平成の大合併で全国の市町村が45%減ったのに対し、九州は長崎の71%を筆頭に、大分69%、佐賀59%など福岡、宮崎を除く5県で半分以下に。一方、13年末の女性地方議員数を10年前と比べると、佐賀県では52人が24人に、大分県は42人が29人に、長崎県は52人が28人に激減するなど、合併が進んだ県ほど、女性議員の減少が目立つ傾向が見られた。日本は国会議員(衆議院)の女性の割合も約8%と、先進国最低レベル。国連女子差別撤廃委員会は日本政府に対し、政治への女性参画を拡大する措置を講じるよう繰り返し要請している。女性に一定の議席を割り当て、半強制的に比率を高める「クオータ制」導入を検討する超党派国会議員らの勉強会が3月に開かれたが、慎重論も根強く大きなうねりとなっていない。


PS(2014.7.5):国会でもこのようなセクハラが横行しており、注意すると「冗談を解しない奴だ」とか「人の気持ちのわからない奴だ」などと逆ギレする輩も多いので、この際、徹底して究明し撲滅すべきだ。しかし、そういう人は、役所や企業にも多いのではないだろうか。

<国会議員>
*6:http://www.saga-s.co.jp/news/national/10202/80726
(佐賀新聞 2014年7月4日) 国会セクハラやじも自民
 4月の衆院総務委員会で日本維新の会の上西小百合衆院議員(31)=比例近畿=がセクハラやじを受けた問題で、自民党の大西英男衆院議員(67)=東京16区=が4日、発言を認め、上西氏に「申し訳なかった」と電話で謝罪した。大西氏は同日夕、自身のホームページ(HP)に「親しみから不用意な発言をし、上西議員に迷惑をかけたことを反省している」との談話を掲載、記者会見は開かなかった。自民所属だった東京都議=会派離脱=に続き、国会でも自民議員のセクハラやじが発覚、国内外の批判が再び高まるのは必至だ。

| 男女平等::2013.12~2014.6 | 07:47 PM | comments (x) | trackback (x) |
2014.6.26 成長戦略の要はエネルギーの国産化と輸出であり、原発は税金で支えられている不良資産であるため、早く処分すべきである。
    
*4-1:川内原発、玄海原発で過酷事故が     *5より
    起こった場合の放射線物質の飛散

(1)原発には税金が使われている
 *1のように、九電の株主総会で、瓜生社長が株主への無配を陳謝し、「①川内原発1、2号機と、玄海原発3、4号機の早期再稼働に向けて全力を挙げて対応する」「②自主的な安全性向上に取り組み、安全対策工事に三千数百億円をかけるが、その費用を加えても他の電源より安い」などと述べたそうだ。

 しかし、①②について、過酷事故が起こった場合には、上図、*4-1、*4-2のように、30キロ圏内だけが汚染されるわけではないのに、30キロ圏内でさえ有効な避難計画は作れず、避難費用、除染費用、賠償費用などは殆ど税金から支払うことになる。つまり、電力会社と電力需要者はフリーライダー(公害を出して他の人に後始末の費用を出させること)をしているのであり、通常の会社なら株主や債権者が事故の保障をすることになるため、「三千数百億円の安全対策工事の方が安いから、株主に配当するために原発を再稼動させる」という判断には絶対ならないところなのだ。

 また、*5のように、川内原発は火山リスクの高い立地であるにもかかわらず、火山のモニタリングをすれば安全という新たな「安全神話」を作り、規制委も火山リスクに目をつぶろうとしている。人間の工学は、地球の営みに比べれば取るに足りないほど微小であることを知っておくべきだ。

(2)本来、日本は資源の豊かな国である
 *1にある「日本は資源がないので、原発を再稼働することは仕方ない」とする主張は少なくないが、実際には、*2のように、日本近海には原油と成分の似たメタンハイドレートが埋蔵されており、*3-1、*3-2、*3-3のような自然エネルギーも豊富で、これらは今まで未利用だった。しかし、今後は、原発ほど多額の税金を投入しなくても開発できる有望なものである。

 従って、成長戦略の1丁目1番地は、国産資源を開発し、それにあわせた技術のイノベーションを遂行して、資源の輸入国から輸出国になることである。これによって、無駄遣いさえしなければ、足りないと言われてきた福祉の資金も容易に捻出できるだろう。

<原発に対する九電の姿勢>
*1:http://qbiz.jp/article/40651/1/
(西日本新聞 2014年6月26日) 九電社長、株主総会で「再稼働へ全力」 2年連続の無配陳謝
 沖縄電力を除く大手電力9社の株主総会が26日、各地で一斉に開かれた。福岡市であった九州電力の総会では、原発停止に伴う赤字継続で年間配当を2年連続で見送ることについて、瓜生道明社長が「深くおわび申し上げます」と陳謝。原子力規制委員会の優先審査を受け、全国で最も早く再稼働する可能性が高い川内原発1、2号機(鹿児島県薩摩川内市)と、玄海原発3、4号機(佐賀県玄海町)の早期再稼働に向けて「国の審査に全力を挙げて対応してまいります」と強調し、理解を求めた。会社側は2013年度事業報告で、昨年4月以降に電気料金を値上げしたものの、原発再稼働が想定より遅れ火力発電燃料費の増大で連結純損益が960億円の赤字となったことを説明。経営安定化に向け、議決権がない「優先株」を日本政策投資銀行に発行し1千億円の資本増強を行うことを報告。関連の定款変更議案を提出、承認された。質疑では、株主から原発に依存する経営姿勢や、無配が続くことへの批判があった。株主からは、原発再稼働について「実効性ある避難計画が策定されたと判断されるまでしない」とする定款変更案など5議案が事前に提出されたが、いずれも取締役会が反対しており、否決。総会は閉会した。総会には午前11時現在、昨年の同時刻より102人少ない573人が出席。会場のホテル周辺では、脱原発を訴える市民団体などがデモ行進するなどし、再稼働阻止などを呼び掛けた。大手電力9社の株主総会には、過去に一度も株主提案がなかった北陸電力を含め、全社で脱原発を求める株主提案が出された。事前の株主提案は9社で計69件に達し、原発再稼働に向けて原子力規制委員会の審査が進む中、脱原発の声が根強いことを示した形となった。 
●電気料金下がる 安全、保証ない 株主ら
 福島第1原発事故発生から4度目となる電力会社の株主総会。九電は、原発再稼働に向け「全力を挙げる」と強調したが、会場内外では賛否双方の声が上がった。総会には事前に原発に関連する質問が多く寄せられた。再稼働を急ぐよう促す注文に加え、目立ったのが安全性を問う質問で、役員らが順に答弁した。「自主的な安全性向上に取り組む。安全対策工事に三千数百億円をかけるが、その費用を加えても他の電源より安い」。 原発担当の山元春義副社長は、原発のコスト面での優位性を強調。国内第1号の再稼働に向けて国の審査が進む川内原発(鹿児島県薩摩川内市)が、火山被害を指摘されている点についても、「大規模噴火は、数十年前から兆候を確認できる」などとした。だが、会場からは「根拠は何か」などの声が飛んだ。出席した株主は、再稼働を望む人が多数を占めたようだ。福岡県朝倉市の男性(68)は「原子力は5年、10年は使わないと社会が回らない。再稼働すれば電気料金も安くなる」と指摘。同県春日市の男性(75)も「日本は資源がない。安全性に配慮しつつ再稼働することは仕方ない」と話した。ただ「安全が確認されれば再稼働してもいいが、将来的には原発に頼らない経営を望みたい」(福岡市南区の64歳男性)との意見もあった。一方、会場となった福岡市中央区のホテル前には、約100人(主催者発表)の市民団体関係者が集まり「再稼働反対」などとアピール、同市天神地区をデモ行進した。九電消費者株主の会、深江守事務局長(57)は「福島事故以降も九電の体質は変わっていない。川内原発近くの鹿児島県いちき串木野市では、再稼働反対の署名が市民の半数を超えた。九電はその声を誠実に受け止めるべきだ」と話した。福岡市東区の保育士、浜崎織絵(おりえ)さん(43)は「子どもたちに原発の危険なツケを回してはいけない。保護者も不安がっている。九州には火山もあるし、絶対安全という保証はない」。佐賀県唐津市の農業、田口常幸さん(62)は「事故時の避難計画が不十分。住民を被ばくさせない責任の所在が曖昧だ」と訴えた。

<メタンハイドレートの存在>
*2:http://www.saga-s.co.jp/news/national/10208/77370
(佐賀新聞 2014年6月24日) 和歌山県沖に次世代資源、有望、メタンハイドレート調査
 和歌山県は24日、同県潮岬沖約18キロの海域に、次世代資源と期待される「メタンハイドレート」が存在する可能性が高いことが判明したと明らかにした。県は今後、詳細な調査を国に要望していく方針。メタンハイドレートは、天然ガスの主成分であるメタンと水が結合した物質で、氷のような状態で海底に眠っている。県によると、昨年11月から今年2月にかけて、魚群探知機を使って調査したところ、複数の箇所で数百メートルにわたって柱状に湧き上がる気泡が観測された。分析したところ、メタンガスの気泡を含むとみられることが分かり、海底にメタンハイドレートが存在する可能性が明らかになった。県は、調査した潮岬海底谷は地層がむき出しになっており、メタンハイドレートが水に溶け出した際にできる地形の特徴が見られるとしている。和歌山県の出口博之企業政策局長は、今後も詳細な成分分析などが必要になるとしながら、「自主的なエネルギーの確保は日本にとって重要な問題。和歌山県沖で採掘できるようになれば、県民にとって夢のある話だ」と期待を寄せた。和歌山県では2013年から、研究や資源開発の誘致を目的に、メタンハイドレートの分布を把握するため独自の調査をしていた。

<自然エネルギー>
*3-1:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20140622&ng=DGKDZO73119010R20C14A6MZ9000
(日経新聞 2014.6.22) 海流や潮で発電 急浮上 、再生エネ、天候問わぬ新顔
 プロペラのような翼を海中に沈め、海流や潮の満ち引きを利用して発電する「海の風力発電所」が注目を集めている。日本の領海と排他的経済水域(EEZ)の広さは世界6位で、発電に適した場所も多い。太陽光や風力と違い、天候に左右されずに発電できる利点もある。政府も開発を後押ししており、再生可能エネルギーの新顔は主役になる可能性を秘めている。日本の太平洋側を流れる黒潮。水産資源など豊かな恵みをもたらす海流をエネルギー源として使う「海流発電所」を2030年ごろに実現する。そんな壮大な計画に、IHIと東芝、東京大学、三井物産戦略研究所(東京・千代田)が取り組んでいる。直径40メートルの翼を2つつけた発電装置をワイヤで海底に固定。凧(たこ)のように浮遊させながら黒潮の流れを受けて回り発電する。10キロメートル四方に発電装置を400基設け、80万キロワットと小規模な原子力発電所並みの電力を生み出す。海流発電の原理は風力発電と同じだが、風力にはない利点がある。海流は年間を通じて流れるため、安定して発電できる。黒潮の幅は100キロメートルあり、設置できる場所は広い。流れは平均で毎秒1.5メートル前後と比較的遅いが、水の密度は空気の800倍あり、エネルギーは十分に得られる。こうした条件から、海流発電の稼働率を60~70%と見積もった。これに対し、天候に左右される太陽光は10%台、洋上も含む風力は30~40%にとどまるという。IHI技術開発本部海洋技術グループの長屋茂樹課長は「発電コストは1キロワット時当たり20円を目標にしている」と話し、風力発電並みを狙う。海の流れを利用した発電は他にもある。潮の満ち引きで起こる速い流れを使う「潮流発電」だ。明石海峡や鳴門海峡をはじめとする瀬戸内海近海、有明海や八代海を抱える九州西部、津軽海峡などで潮の流れが秒速2~5メートルある。陸上の風力発電のように水車を海底に太い柱で固定するタイプのほか、ワイヤで海底につなぎとめるタイプなどアイデアはさまざまだ。三井海洋開発は潮流発電と風力発電を組み合わせて出力を高めた装置を開発した。今秋には佐賀県唐津市沖で実証試験を始める。ハイブリッド発電装置は海に浮かべるタイプで、全長約70メートルある。海中部分には、丸く曲げた板を組み合わせた特殊な水車を設置。あらゆる方向から来る潮流をとらえて発電する。海上の風力発電も含めると、1基あたりの出力は500~1000キロワット。「設置面積当たりで最高の出力を目指した」と中村拓樹事業開発部長は話す。16年にも実用化する計画だ。海の流れを活用する次世代発電は、船舶や潜水艦で培った技術を生かせる。IHIのほか、川崎重工業など重工メーカーが相次いで参入し、技術開発を競っている。国も環境省などが装置の耐久性や発電効率を確かめる実証試験に助成、開発を後押ししている。だが、課題もある。例えば、海洋発電は陸地から離れた場所に設置するため、発電した電気を送る専用の海底ケーブルは十キロメートルから数十キロメートル必要になる。IHIなどの発電装置はケーブル代も含めると1基あたり10億~20億円かかるという。黒潮が大きく蛇行するおそれもあり、影響の少ない適地を選ぶ必要がある。巨大な水車を水中に設置する影響も不透明だ。専門家は良い影響と悪い影響が両方出る可能性があると指摘する。三井海洋開発は水車が潮流以上の速さで回らないように設計、生態系に影響しないよう配慮する。徳島県が徳島大学に委託した調査によると、鳴門海峡の潮流発電の潜在能力は400万キロワットの電力に相当するが、観光の目玉となっている渦潮が小さくなるおそれがあるという。沿岸域には漁業権が設定されており、漁協との協議も欠かせない。政府は50年までに温暖化ガスの排出量を80%減らす目標を掲げる。4月には「30年に約2割」という参考値のもと、再生可能エネルギーを最大限導入するとした「エネルギー基本計画」も閣議決定した。海流発電や潮流発電は潮目をとらえ、新たな切り札となりうるか、期待が集まっている。

*3-2:http://www.nikkei.com/paper/related-article/tc/?
(日経新聞 2014.6.22) 潮流発電、18年度から 環境省実用化、新エネ開拓 地熱並み可能性
 日本近海を流れる潮の巨大な力で電気を作る潮流発電が、2018年度の実用化に向けて動き出す。環境省が14年度から企業を募り、海峡などの速い流れを使う発電施設の開発を始める。東京電力福島第1原子力発電所の事故で、火力発電への依存度が高まっている。温暖化ガスの削減やエネルギーの安全保障へ新たなエネルギー源の開拓を急ぐ。潮流発電は海中に並べた水車で潮の流れを受け止め、発電機を回して電気を生む。川崎重工業などに技術力がある。日本が強みとする機械や造船の技術を生かし、英国やインドネシア、韓国をはじめ世界の需要も開拓したい考えだ。政府は太陽光や風力に続く自然エネルギーの拡大に力を入れている。海洋エネルギーのなかで、潜在能力は2200万キロワットと世界3位の地熱発電並みの可能性があり、天候に左右されない潮流発電を有力候補とする。環境省は企業などに研究開発を委託し、漁業に配慮した環境影響が少ない1メガ(メガは100万)ワット級の商用規模の潮流発電システムを確立する方針。14年度予算案の概算要求で関連費用として6億円を盛り込んだ。18年度までに30億円を超える予算を投じる見込みだ。14年度は潮のエネルギーを効率良く電気にかえる構造や耐久性の向上を研究する。15年度以降は実際の海で技術を試し、周辺環境への影響も調べる。17年度からは採算が合う事業の検討に入る。日本は明石海峡や鳴門海峡をはじめとした瀬戸内海近海、有明海や八代海を抱える九州西部、津軽海峡などで潮の流れが秒速2~5メートルと、潮流発電に向く海域が多い。日本の領海と排他的経済水域(EEZ)の広さは世界6位。潮流や波の力、海水の温度差や遠い海流を使う発電への期待は大きい。政府が4月に国家戦略としてまとめた海洋基本計画は、1キロワット時当たり40円の発電コストを目標に掲げた。太陽光(30~40円)や風力(10~20円)に比べて割高だが、実用化までにコスト低減を図る。潮流は、太陽光や風力と違って年間を通じて安定した発電ができる。沖合の海流と違って潮の流れは沿岸に近く、電源ケーブルの敷設にかかる投資負担も少ないことなどから有望視されている。
▼潮流発電 海峡などを通る潮の流れのエネルギーを使って、大きさ数メートル以上の水車を回して電気を生み出す仕組み。水車を海底に固定するタイプや、ワイヤで係留し凧(たこ)のように流れに任せるタイプまでアイデアは様々だ。ただ、技術の確立はこれからで、国内では実用化の例がない。海外では欧州が実用化で先行する。英国は2020年までに潮流発電など300メガ(メガは100万)ワットの海洋エネルギーの導入を目指す。オークニー諸島に潮流発電に関する大規模な実験施設を持ち、実証研究を進めている。

*3-3:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20140625&ng=DGKDASDZ240AU_U4A620C1TJ1000
(日経新聞 2014.6.25) 日立、風力発電用一括サービス 資金調達や機材運用・保守
 日立製作所は日立キャピタルと連携し、風力発電事業者に資金調達から発電機の運用・保守までを一括して提供するサービスを始める。風力発電で日本市場に再参入を決めた米ゼネラル・エレクトリック(GE)が製品と金融をセットで売り込んでおり、これに対抗する。2015年度までに共同事業の規模を6万キロワット(大型風車30基分に相当)にする計画だ。日立キャピタルは発電事業者に15~17年間の発電機リースを提供。事業者の要望に応じ資金の一部を融資したり、複数の金融機関による融資(プロジェクトファイナンス)をまとめたりする。日立製作所は発電機を納めるだけでなく、運用や保守も手がけるため安定した収入を見込める。両社は共同出資で「日立ウィンドパワー」を設立し、グループ会社内に風力発電機を設置して発電・売電事業も始めた。今後、小規模な風力発電所を15年夏にも東北で2カ所建設する。

<過酷事故時の避難計画>
*4-1:http://qbiz.jp/article/40345/1/
(西日本新聞 2014年6月23日) 30キロ圏外でも高放射線量 原発事故時の飛散状況を試算
 東京電力福島第1原発事故と同規模の過酷事故が、九州電力川内原発(鹿児島県薩摩川内市)と玄海原発(佐賀県玄海町)で起きた場合、避難が必要とされる高線量の放射性物質が原発から半径30キロ圏外にも飛散する可能性があることが、民間調査会社「環境総合研究所」(東京)の試算で分かった。風向きによっては、国が事前の避難準備を求めるおおむね30キロ圏の緊急防護措置区域(UPZ)を越えて鹿児島市や福岡市の一部にも及ぶ計算となり、国に対策の見直しを求める声が強まりそうだ。同研究所は福島原発事故後、最も放射性物質の飛散が多かった2011年3月15日の福島県飯舘村や福島市などの放射性セシウム、ヨウ素の観測データから飛散総量を推定。推定した放射性物質の飛散総量が放射性プルーム(放射性雲)となって移動し、降雨で九州各地に落下した場合の、1時間平均の空間線量率をレベル別に地図に示した。原子力規制庁が12年に公表したのと違い、山や谷などの地形を考慮し、より正確な試算になっているという。それによると、原発周辺で軒並み高線量を算出。風速毎秒2メートル(市街地で日常的に吹いている風)で西南西の風が吹いた場合、川内原発から東に約6キロの医療機関では事故直後、1時間当たり294マイクロシーベルト。国が1週間以内の避難を求める基準値(同20マイクロシーベルト)の15倍に相当する高い値だ。原発周辺で年30日程度観測される北西の風だと、原発から30キロ超の鹿児島市内でも最大24マイクロシーベルトに達した。薩摩川内市、いちき串木野市などの約5万7千人が鹿児島市を避難先に指定されているが、風向き次第で避難が困難となる可能性がある。
 玄海原発では、北風が吹けばプルームが30キロ圏の佐賀県伊万里市を越え、約31キロの同県有田町に達し、同町内で線量は43マイクロシーベルトに上る場所があった。西風は年間を通じ少ないものの、建物などがない海上を通ると飛散距離が伸び、福岡市にまで到達。線量は西区内では最大56マイクロシーベルト、早良区32マイクロシーベルト、城南区30マイクロシーベルト、南区29マイクロシーベルトに達した。UPZ内ではない有田町は今のところ、避難計画を独自に策定する予定はない。福岡市は「30キロを越える自治体がどうすべきか、国は早く指針を示してほしい」(防災・危機管理課)と強調する。原子力規制庁は、プルーム通過時の被ばくを避けるための防護措置地域(PPA)をおおむね50キロ圏内とする考えは示しているが、「具体的な対策は今後の検討課題」としている。
■放射性プルーム 原発事故で、気体や粒子状の放射性物質が環境中に放出され、大気とともに雲のように流れる状態。「放射性雲」とも言われる。飛来方向は風向や地形の影響を大きく受け、地表への沈着は降雨や積雪に左右される。プルーム通過時に体面に付着する外部被ばくと、地表への沈着後に食べ物や呼吸などで体内に取り込む内部被ばくが懸念される。

*4-2:http://qbiz.jp/article/40349/1/
(西日本新聞 2014年6月23日) 圏外自治体、独自の避難計画も 原発事故試算
 原発の半径30キロ圏より外側にある自治体に、原発事故への備えを懸念する声が広がっている。国は、防災対策を重点的に進める緊急防護措置区域(UPZ)を「おおむね30キロ」圏内としているが、自治体や民間機関の事故試算で、これを越えて放射性物質が拡散する可能性があることがあらためて分かってきたためだ。住民の不安を払拭するため、独自に避難計画を作ったり、内部被ばくを防ぐ安定ヨウ素剤を用意したりする圏外の自治体も出てきた。「30キロ圏から来た人の避難先が優先され、市民がどこに逃げるかはまだ決まっていない」。5月末、京都市であった「脱原発をめざす首長会議」の勉強会で、京都府京丹後市の中山泰市長は訴えた。かつて関西電力の原発の候補地にもなった京丹後市は、関電高浜原発(福井県高浜町)から西へ最短で30・9キロ。わずかに30キロを超えるため、府の地域防災計画から除外された。昨年、市独自の防災計画を策定したものの、避難先は関西広域連合との調整が必要で、決められないままだ。一方、府からはより原発に近い2市町の避難先に割り振られた。自分たちの避難と避難者受け入れを両立できるのか、自治体担当者から疑問の声が出ている。高浜原発から最短約45キロの兵庫県篠山市。県が実施した事故試算で高線量の放射性物質の飛来が予測され、2月、独自に全市民4万4千人分のヨウ素剤を市内5カ所に備蓄した。市民安全課の西牧成道課長は「ヨウ素剤備蓄について他の自治体から問い合わせも多い。住民向けの使用説明会を進めていきたい」と話す。福岡市は九州電力玄海原発(佐賀県玄海町)から最短で約37キロ。京丹後市と同様に、福岡県の地域防災計画からは外れているが、独自に50キロ圏に入る市民の避難計画(暫定版)を4月に策定した。50キロ圏の人口は約56万人。市は半分近い約27万人分のヨウ素剤を確保しており、残りは3年かけて用意するという。同川内原発(鹿児島県薩摩川内市)北部にある熊本県水俣市も最短約37キロにある。環境総合研究所(東京)の試算で、風向きによっては高線量の放射性物質が及ぶとの結果だった。同市は、30キロ圏の鹿児島県出水市からの避難先となっているが、一部市民から、独自の避難計画の策定を求める声が強まっている。国は2012年、原発事故時の住民避難区域を8〜10キロ圏から30キロ圏に拡大した。それでも網羅できない「備え」の負担は、自治体に重くのしかかる。「原子力防災」の著書がある元四国電力社員の松野元さん(69)は「風向きによって50キロ圏でも避難が必要になるというのは、福島事故の教訓として当たり前のこと。それに備えた準備が必要で、国が早期に対処方針を示すべきだ」と指摘する。事故時の放射性物質の拡散予測は、原子力規制庁が12年10月に全国16カ所の原発を対象に公表したことがある。ただ、この時は山や谷などの地形を反映していなかった。環境総合研究所の青山貞一顧問は「山間部よりも谷間に放射性物質が流れやすいなど地形で経路は大きく左右される」とし、規制庁の試算は不十分だとみる。地形を考慮すると、試算の計算量が数十万〜数百万倍違うという。同研究所は、国土地理院の地形情報も踏まえて試算。風速が毎秒2メートルだと、放射性プルーム(放射性雲)となった放射性物質は1時間で約7・2キロ移動し、4時間強で30キロ先に到達する計算。行政の試算によると、川内、玄海両原発では30キロ圏内の住民が圏外に避難するまでに24時間前後かかるとされ、一定量の被ばくは避けられそうにない。

<原発に対する火山リスク>
*5:http://mainichi.jp/select/news/20140626k0000e040260000c.html
(毎日新聞 2014年6月26日) 川内原発:火山対策、予知頼みの無謀 専門家警告
 ◇火砕流で原子炉爆発の恐れ
 原子力規制委員会による九州電力川内(せんだい)原発(鹿児島県薩摩川内市)1、2号機の適合性審査が、大詰めを迎えている。安倍政権は「再稼働1号」と期待するが、周辺は巨大噴火が繰り返されてきた地域だ。このまま通して大丈夫なのか。他にも同様のリスクを抱える原発がある。東大地震研究所火山噴火予知研究センターの中田節也教授(火山岩石学)に聞いた。規制委が川内原発の審査を優先したのは、九電による地震や津波の想定を「妥当」と評価したからだ。火山については「稼働期間中に巨大噴火が起こる可能性は十分低い」という九電の説明を、大筋で了承した。だが、川内原発のある南九州は、図のように巨大噴火による陥没地形「カルデラ」の集中帯だ。「カルデラ噴火は日本では1万年から数万年に1回起きており、同じ場所で繰り返すのが特徴です。姶良(あいら)カルデラは前の噴火から約3万年、阿多カルデラも約10万年が経過しており、両カルデラのある錦江湾の地下にマグマがたまっているというのは火山学者の常識。そろそろ何かの兆候があっても不思議はありません」。中田教授はそう警告する。昨年7月に施行された新規制基準では、原発の半径160キロ以内にある火山の火砕流や火山灰が到達する可能性を調べ、対応できないと判断されれば「立地は不適」として廃炉になる。こうした火山リスクは、福島第1原発事故の前にはほとんど議論されなかった。その理由を中田教授は「近年の日本の火山は異常に静かだから」と言う。「日本ではカルデラ噴火どころか、1707年の富士山、1914年の桜島、1929年の北海道駒ケ岳の後は大きな噴火は起きていません。原発が日本に導入されたのは1950年代なので、真剣に考慮されることはなかったのです」
 もし今、カルデラ噴火が起きたらどうなるのか。
 「軽石や火山灰が火山ガスと一緒に火山の斜面から流れ下る火砕流に巻き込まれれば、原子炉建屋は破壊されます。炉自体の破壊は免れても、火砕流内の温度は推定400度以上と高熱ですから炉内の冷却水は蒸発してしまい、暴走して結局は爆発する。いずれにしろ大量の放射性物質が大気中に放出されるのは避けられないでしょう。実際、川内原発と玄海原発の近くでは火砕流堆積(たいせき)物が見つかっています」と中田教授。姶良カルデラ噴火を上回る規模だったとされる阿蘇カルデラ噴火(約9万年前)の火砕流は、四国西端の伊方原発がある場所近くまで到達したと考えられているのだ。洞爺カルデラに近い北海道・泊原発などにも同じリスクがある。九電は当初、過去の巨大噴火で川内原発に火砕流は到達していないとしていたが、3月の審査会合で約3万年前の姶良カルデラ噴火による火砕流が川内原発に到達していた可能性を初めて認めた。火砕流が到達しなかったとしても、火山灰のリスクがある。九電は桜島の大噴火で火山灰が敷地内に最大15センチ積もると想定。電源や食料を確保するほか、換気設備や発電機のフィルターは交換、除灰で対応するとしている。「施設から火山灰を取り除く対策は工学的には正しい。しかし火山灰が数センチ積もれば車が動かなくなります。灰が降り積もる中で、除灰する人の確保や物資の運搬をどうするのか」。昨年2月、週刊誌に中田教授を含む火山学者らが巨大噴火を警告する記事が掲載された。その直後、中田教授は規制委の事務局である原子力規制庁に呼ばれた。「私は『GPS(全地球測位システム)で地殻変動などを観測していれば噴火の前兆はつかめる。ただ、噴火がいつ来るのか、どの程度の規模になるかは分からない』と説明しました。しかし、規制庁は『前兆はつかめる』という点に救いを見いだしたのでしょう。いくら時期も規模も分からないと繰り返しても『モニタリング(監視)さえすれば大丈夫』との姿勢を崩さなかった」。九電は巨大噴火の前兆を把握した場合、社外の専門家を含めて本当に噴火するのかを検討し、原子炉を止めて核燃料を別の場所に運び出すとの方針を打ち出した。規制委は「搬出先や搬出方法は電力会社が決める」との立場を取っている。米原発メーカーで原発技術者を18年間務めた佐藤暁さんは「稼働中の原子炉から取り出した使用済み核燃料を搬出する前に、まず原子炉建屋内の冷却プールで5年以上貯蔵しなければならない。さらに搬出作業にも輸送用容器の手配などが必要で、とても数カ月では完了しない。搬出中に噴火が起これば貯蔵中よりも危険。噴火が迫ってからやるべきことではない」。中田教授が「安全に核燃料を運搬するために数年前に噴火の予兆を把握することなど無理だし、保管場所も決まっていない。詰めるべき点はたくさんある」と批判するように、机上の空論なのだ。国際原子力機関(IAEA)で原発立地と火山に関する安全指針の作成に関わった経験を持つ中田教授は、規制委が「火山影響評価ガイド」をまとめる際にも意見を求められた。ガイドは、火山活動の影響で原発の安全性が損なわれない設計であることを確認するものだ。だが策定まで約3カ月しかなく、既に方向は決まっていた。「火砕流などが原発に到達しないことを学問的に厳密に詰めなくても、モニタリングに頼って審査を通そうというガイドになってしまった。原発を動かしたい人の習性が反映された内容」と手厳しい。そして、こう懸念するのだ。「噴火で原発に被害が出れば責任は火山学者に押し付けられるだろう。東日本大震災で地震学者の責任が追及されたのと同じ構図になるかもしれない」。九電は24日、川内原発の原子炉設置変更許可申請の再補正書を規制委に提出した。記載漏れなどの不備があったためで、審査が通り地元の同意が得られれば再稼働は9月以降となる見通しだ。「川内原発はあの場所に造るべきではなかった。今も不安材料があるのだから、再稼働には慎重になるべきだ。どうしても動かしたいなら、政府は核燃料の搬出先の確保など安全対策に積極的に関与しなければ。モニタリングを重視するなら火山研究者を増やしたり、財政的な支援をしたりしなければならない。そこまで政府は腹をくくっていますか?」。火山のモニタリングをすれば安全という新たな「安全神話」が誕生している。
◇東大地震研究所火山噴火予知研究センター・中田節也教授(火山岩石学)
 なかだ・せつや 1952年、富山県出身。金沢大大学院理学研究科修了。九州大に助手として雲仙普賢岳の噴火研究を最前線で続けた。これまでに三宅島、新燃岳など国内外の火山を研究。国際火山学・地球内部化学協会会長も務めた。

| 原発::2014.5~8 | 04:41 PM | comments (x) | trackback (x) |
2014.6.25 外国人労働者の雇用について
    
                  外国人労働者が働く分野
(1)外国人労働者の必要性
 *1に、旧経済企画庁出身の小峰氏が、「①日本経済は、『ある日突然』という感じで人手不足状態になった」「②これは景気拡大による短期的な現象ではなく、人口減少を背景とした長期的・構造的なものなので、これから人手不足はますます強まる」「③日本経済は2012年11月を景気の谷として拡大を続けており、アベノミクス景気だ」「④これを構造改革の契機とし、政府も企業も、長期的視野から対処していくことが必要だ」と記載している。

 しかし、①②で言われている生産年齢人口の減少による人手不足は、その年に生まれた人数が確定すれば新しい人口ピラミッドができるので、『ある日突然』わかるのではなく、ずっと前からわかっていた筈だ。また、③④は“大胆な”金融緩和と東日本大震災の復興、国土強靭化計画、東京オリンピックに関する財政支出によって起こっているため、旧経済企画庁出身でありながら、これらを想定外の結果とするのは無責任すぎる。

 また、「建設労働者の不足」「外食チェーン店の人手不足」「日本の生産年齢人口減少」「労働人口減少」は事実だが、「経済にとっての労働力の天井が低くなった」のは、この40年間、経済成長率、株価、失業率だけを指標として短期的な景気対策のみを行い、長期的な労働力需給や産業のイノベーション、出生率などを考慮した政策立案をしてこなかった旧経済企画庁(現内閣府)の失政のつけである。そして、これは、旧経済企画庁が、女性は成績が良くても職業能力はないという考えから、男子学生に下駄をはかせて男子を優先して採用してきた結果である。

 このように、途中の論理はおかしいが、「女性・高齢者・外国人の活用によって労働力不足を解消していくことが重要」とする結論だけは合っている。ただ、どの人材も、人権侵害なき労働力であるべきで、国際協力や人手不足の名の下に差別して使っていると、(長くは書かないが)決して日本のためにならない。

(2)労働者への差別はなくすべき
 *2-1に書かれているとおり、現在は、外国人労働者の受け入れを真剣に考えるべき時だ。しかし、「外国人技能実習制度は、途上国の人材が働きながら技能を学ぶ制度」「建設業を対象に20年に限って、現在は最長3年の受け入れ期間を5年に延ばす」などとしているが、この制度は、技術を教え、覚えたら追い出す制度であるため、外国人を雇う企業側にもメリットが少なく、技能実習に来た外国人も、労働法違反が問題となるような働き方をさせられて、たまったものではない。また、多くの技能実習生が帰国した後に、日本をどういう国だと吹聴するかは、長い目で見れば、外交上、重要な問題である。

 なお、*2-1には、「永住を前提とした移民の本格的な受け入れについては、国民の間に合意ができていない」「まずは受け入れる期間や職種を限るかたちで増やしていくべき」とも書かれている。しかし、世界には、問題なく外国人労働者を受け入れて労働力として活用している国も多いため、それらの国の制度を調べて前向きに進めるべきである。また、介護福祉士、看護師、家事使用人は、女性が働く時には不可欠であるため、地域を限らず受け入れるべきだ。

 *2-2に、2014年4月3日、日弁連会長の村越氏が「技能実習制度は人権侵害が横行しているため、制度の抜本的見直しを行うべき」「国際的にも、米国国務省人身取引報告書が、日本政府は技能実習制度における強制労働の存在を正式に認知していない」等と書かれており、私も賛成である。

(3)外国人労働者の受入分野拡大について
 *3のように、政府は、専門的な技術や経営のノウハウを持つ「高度人材」の受け入れを広げ、単純労働者の受け入れに繋がる移民は認めず、技能実習の形での受け入れを拡大するそうだ。

 拡大内容は、1)技能実習期間を最長3年から5年程度に延ばす 2)新たな対象に「介護」や「林業」のほか、「自動車整備」、「店舗運営管理」、「総菜製造」を加えるそうだが、現在では日本人労働者の方が真面目で質が高いとは限らないため、特区で地域を限るのではなく、需要のある場所では選別しながら外国人労働者も雇えばよいと考える。ただし、技能実習制度については、(2)に書いた問題があるため、契約更新可能な期間労働者や正規雇用にするなど、労働者として人権侵害がないようにすべきだ。

<労働力不足>
*1:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20140624&ng=DGKDZO73174010T20C14A6KE8000 (日経新聞 2014.6.24)人口減の負荷 影響直視を、小峰隆夫 法政大学教授
 日本経済は、「ある日突然」という感じで人手不足状態となった。これは景気拡大による短期的な現象ではなく、人口減少を背景とした長期的・構造的なものである。これから人手不足はますます強まることを認識したうえで、これを構造改革の契機とし、政府も企業も、長期的視野から対処していくことが必要だ。日本経済は2012年11月を景気の谷として拡大を続けている。いわゆるアベノミクス景気である。特徴は雇用情勢の改善テンポの速さだ。通常の拡大局面は「外的要因(輸出、財政・金融政策など)による生産増」→「企業収益の拡大と設備投資の増加」→「雇用の改善と家計の所得・消費の増大」という順番をたどる。雇用の改善は景気全体の動きに遅れるのが普通だ。政府の景気動向指数でも失業率は遅行指数に位置づけられる。ところが、今回は雇用関係指標が急速に改善してきた。12年11月には0.82倍だった有効求人倍率は、今年4月には1.08倍となり、失業率もこの間、4.1%から3.6%に低下している。もはや「悪い状態が良くなってきてうれしい」というレベルを超え、「足りなくて困った」という状態に入りつつある。1倍超の求人倍率は全体としての労働需要が供給を上回ったことを意味し、現在の失業率は、ほぼミスマッチ(希望や条件のずれ)によるだけとなっている。実態的にも建設労働者の不足が公共投資の円滑な試行を阻害しているし、アルバイトに頼っていた外食チェーン店で事業展開が難しくなるといった事態が生じている。改めて考えてみれば、雇用機会をいかに確保するかに腐心していたのは、つい最近である。それが突然、労働力不足状態に突入したのはなぜだろうか。筆者は、もともと潜在的に存在していた労働力不足が、景気の拡大で一気に顕在化したからだと考えている。単なる景気の上昇による一時的なものはなく、長期的・構造的な現象なのである。筆者はかねて生産年齢人口が減少し、人口に占める働く人の割合が低下するという「人口オーナス(負荷)」こそが人口問題の最重要課題だと考えてきた。人口動態からみて、日本はこれからますますその度合いが強まり、やがては世界有数の人口オーナス国になることが確実だ。人口オーナスが強まれば、労働力不足になるのはこれまた必然である。世界有数になるのだから、その不足ぶりも半端なものでは済まないはずだ。日本の生産年齢人口(15~64歳)は1995年をピークに一貫して減少を続けており、全人口に占める比率は95年の69.5%から13年に62.1%に低下した。労働力人口も98年の6793万人をピークに減少し続け、13年は6577万人となった。しかし現実には労働力不足問題は発生せず、逆に雇用情勢の悪化の方が懸念されてきた。人口面から労働力の供給は減っていたものの、経済実態面から労働力の需要がもっと減ったからである。つまり、表面化はしなかったものの、潜在的な労働力不足の要因は常に底流として、次第に勢いを増しながら流れ続けており、経済にとっての労働力の天井はどんどん低くなっていたのだ。景気が好転して労働需要が拡大し始めると、日本経済はたちまち低下しつつあった天井にぶつかった。これが突然やってきた労働力不足の理由である。今後、生産年齢人口はさらに減少する。高齢者や女性の労働参加がある程度は進んだとしても、労働力人口の減少もまた、避けられない。図は労働政策研究・研修機構の30年までの推計などを基に、日本経済研究センターの桑原進主任研究員が将来の労働力人口を推計したものである。ある程度の労働力率の上昇や政策効果を織り込んでも、30年に5954万人、60年には4017万人に減る。減少率も13~30年で年率0.6%、30~60年で同1.3%と加速していく。経済財政諮問会議の有識者委員会「選択する未来」は中間とりまとめで、60年の労働力人口を5522万人とする試算を示している。30~60年の減少率は年率0.3%程度にとどまる。これは出生率が30年までに人口維持に必要とされる2.07に回復し、女性の労働力率がスウェーデン並みに上昇するなど、思い切り背伸びをした推計であることに注意する必要がある。以上の推計から、経済が停滞して労働需要が極度に低迷しない限りは、長期的に労働力不足はますます強まると考えるのが自然である。
 こうして労働制約(労働力不足)が強まることに対し、我々はどう対応すべきか。基本的な生産要素の一つである労働力人口が大幅に減少することは、日本経済全体では潜在成長力のかなりの低下要因となる。長期的な国民福祉のレベルを決めるのは供給力なのだから、潜在成長率が大きく低下すれば、国民の福祉は損なわれる。他方、労働力不足が強まれば、労働者はより貴重な資源になる。労働条件は改善するはずだし、ブラック企業など労働者を大事にしない企業は規制などしなくても自然に淘汰されていくはずだ。ワーキングプアや若年層の雇用不安も改善が期待される。どちらの影響が強く出るのか。鍵を握るのは政策的な構造改革と企業行動の変化だ。労働力不足が強まれば、働く人々は高い収入を求め、より付加価値を生み出しやすい(生産性の高い)分野に集まってくるはずだ。それが経済全体の生産性を引き上げ、結果的に労働制約を緩和することになる。これまでのように個々の企業が雇用者を抱え込んでいたのでは、生産性上昇の効果は期待できなくなる。つまり、労働制約が強まるほど、政策的には労働市場の流動化を促進することがより重要になるのだ。貴重な労働資源が、より高い付加価値を生み出せる分野にシフトしやすくなるように環境の整備を急ぐべきだろう。企業は労働力過剰型から不足型へのモデルチェンジが必要となる。労働力不足時代には、人的資源としての価値の高い雇用者を育てていく必要があるから、アルバイト、派遣などの非正規、長時間労働に頼った事業展開は限界に達するだろう。企業が労働者を選ぶのではなく、労働者が企業を選ぶ時代になるのだから、働きやすい勤務条件を整備しないと企業を支える人材を確保できなくなるだろう。
 女性・高齢者・外国人の活用により労働力不足そのものを解消していくことも、より重要になる。既に対応は図られてはいるが、高齢者の再雇用は同一企業内での雇用継続が基本となっているため、生産性がかなり低い状態での雇用継続となっている。建設分野などの外国人の活用も、国際協力を主眼とした研修制度を使い続けるなど、建前と現実とのギャップが大きい。労働力不足の長期化を見すえた制度の再設計が必要だ。
 人口オーナスという流れは、地下を流れるマグマのようなもので、その勢いは今後ますます強まっていく。そのマグマによって、日本の経済社会は、地層の弱い部分から噴火を繰り返すことになるだろう。今回はそれが労働力不足という形で噴火した。今後、人口オーナスへの備えを怠り続ければ、更に、貯蓄率の低下による経常収支赤字と財政危機、社会保障制度の破綻、地域の崩壊という形で次々に噴火が起きるだろう。将来を展望した上での腰をすえた対応が望まれる。
○景気回復に伴い労働力不足が一気に顕在化
○短期的な現象ではなく長期で構造的な問題
○人口負荷は社会保障や地域崩壊に飛び火も
こみね・たかお 47年生まれ。東大経済卒、旧経済企画庁へ。専門は経済政策論

<外国人労働者>
*2-1:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20140421&ng=DGKDZO70160100R20C14A4PE8000 (日経新聞社説 2014.4.21) 外国人の活用に「国家百年の計」を
 企業の生産や販売活動が活発になり、様々な分野で人手が足りなくなっている。将来も人口減少で労働力不足は大きな問題になる。外国人の労働力の活用を真剣に考えるときだ。足元の人手不足、中長期的な労働力不足のそれぞれについて、戦略的に外国人受け入れ政策を練る必要がある。現在、人手不足が特に深刻なのは建設や土木の分野だ。東日本大震災の復興工事に加えて景気対策の公共工事も増えているためだ。2020年に開く東京五輪関連のインフラ整備もあり、建設労働者の需要は今後も増大する。
●見直したい技能実習
 このため政府は緊急措置として、途上国の人材に日本で働きながら技能を学んでもらう外国人技能実習制度の拡充を決めた。建設業を対象に20年までに限って、現在は最長3年の受け入れ期間を5年に延ばすなどの内容だ。技能実習制度をめぐってはかねて、最低賃金に満たない賃金で働かせたり、長時間の残業を強いたりするなどの違法行為が問題になっている。ただ目の前の人手不足への対応は急務だ。建設職人が足りず、保育所が予定通りに開設できない例もある。政府の緊急措置では、実習生を受け入れる企業が過去に不正行為を働かなかったかをチェックすることにしており、当座の対策としてやむを得まい。並行して、中長期的な視野に立った外国人受け入れの政策づくりを急がなければならない。高齢化で介護に携わる人材は25年に約100万人足りなくなると見込まれている。国立社会保障・人口問題研究所の推計では、日本の15歳から64歳までの生産年齢人口は、13年の約7900万人から39年には6000万人を割る。女性や高齢者の就業促進により力を入れなければならないのはもちろんだ。だが、それで労働力不足を賄えるかどうかは不安がある。これまで外国人の単純労働力は国内の雇用に影響をおよぼさないよう受け入れを抑制してきたが、この姿勢は改める必要がある。ただし、永住を前提とした移民の本格的な受け入れについては、国民の間に合意ができていない。このため外国人は、まずは受け入れる期間や職種を限るかたちで増やしていくべきだろう。どのように外国人の受け入れを拡大していけばいいか。いくつかポイントがある。まず、技能実習制度についてだ。実習生を安い労働力ととらえる雇用主が少なくない。現行制度は抜本的に見直して、受け入れの新たな器になる制度を考えたい。逆に、もっと機能させるべき制度がある。経済連携協定(EPA)に基づきインドネシアやフィリピンから介護福祉士や看護師の候補者を受け入れている。これをさらに増やせるはずだ。受け入れにあたって現在は厳しい資格要件が設けられており、日本で働き続けるには一定期間内に日本語による国家試験に合格しなければならない。もっと柔軟に考えるべきだ。また、いまも「特定活動」という在留資格を法相の指定で外国人に与えることができる。11年のタイの洪水の際は、操業できなくなった日系企業の工場のタイ人従業員に、この在留資格で日本の工場で働いてもらった。この仕組みを活用する余地も大きい。
●生活環境の整備急げ
 大事なのは安定的に外国人労働力を招き入れるために、その経路を多面的につくることだ。受け入れ拡大には注意も必要だ。競争力を回復させるのが難しい労働集約型の産業で、外国人労働者を増やして受注増に対応するようだと、日本の産業構造の高度化を妨げる。受け入れる外国人の数には、業種別に上限を設けることなども考えられる。情報分野の技術者や大学の研究者など専門性の高い「高度人材」は、より積極的に受け入れを拡大したい。親や家事使用人を呼べる優遇措置があるが、年収などの要件が厳しい。緩和を検討すべきだ。単純労働力と高度人材の両面で、総合的な外国人受け入れ政策が求められる。加えて重要なのは外国人の生活インフラの整備だ。彼らが日本の社会になじみ、暮らしていくためには、行政や自治体、ボランティアらによる支援が欠かせない。まずは日常の生活や教育、医療など、さまざまな分野での困りごとを一括して受け付け、対応にあたるワンストップ型の相談窓口を充実させていかなければならない。外国人の家族らが日本語や日本の社会制度などを学ぶ場の整備にも力を入れていく必要がある。

*2-2:http://www.nichibenren.or.jp/activity/document/statement/year/2014/140403.html  2014年(平成26年)4月3日 日本弁護士連合会会長 村越 進
外国人の非熟練労働者受入れにおいて、外国人技能実習制度を利用することに反対する会長声明
 政府は、東日本大震災後の復興及び東京オリンピック関連施設を建設するための建設労働者が不足しているとして、建設関係業種での外国人労働者の受入れのため、「年度内を目途に当面の時限的な緊急的措置にかかる結論を得る」意向を明らかにし(2014年1月24日の関係閣僚会議後の菅官房長官の定例記者会見)、その具体策として、技能実習制度を前提に、建設分野において、現行の「技能実習」の在留資格から「特定活動」の在留資格に変更してさらに2年間の在留を可能とし、また、一度、技能実習を終えて帰国した者についても現行制度で許可されていない再入国を許可して特定活動の在留資格で日本で働けるものとするよう、告示を定める案などが報じられている。技能実習制度については、実習生による日本の技術の海外移転という国際貢献が制度目的として掲げられながら、その実態は非熟練労働力供給のための制度として運用されており、その名目上の目的ゆえに受入れ先である雇用主の変更が想定されておらず、受入れ先を告発すれば自らも帰国せざるを得ないという結果を生んでしまうことにより、受入れ先との間で支配従属的な関係が生じやすい。また、送り出し機関による保証金の徴収などの人権侵害が横行していることなどから、衆参両院も、2009年の入管法改正にあたっての附帯決議で、制度の抜本的見直しを行うべきこととしていた。当連合会も、これらの構造上の問題点を指摘し、技能実習制度の廃止を強く訴えてきたところである(「外国人技能実習制度の廃止に向けての提言」2011年4月15日、「外国人技能実習制度の早急な廃止を求める意見書」2013年6月20日)。国際的にも、米国国務省人身取引報告書(2013年6月19日)が、日本政府は技能実習制度における強制労働の存在を正式に認知していないと指摘するなどしている。したがって、政府は、東京オリンピック開催の準備等を理由とした一時的な建設労働者の受入れを行うとしても、技能実習制度の存続を前提とした制度構築をするべきではない。また、建設業分野で一時的な外国人労働者の受入れを行うとしても、技能実習制度で指摘された構造上の問題点を再度発生させないよう、労働者受入れ制度であることを前提とした制度構築を行い、雇用主変更の自由を認め、受入れのプロセスにおいて二国間協定の締結や公的機関の関与を強めるなどして対等な労使関係を実現する制度の在り方を検討し、国会で法改正を行うべきである。さらに近時、建設業だけでなく、農林水産業などにおける労働者不足を理由に、技能実習制度についても、現行で最長3年間の技能実習期間を延長すること、再度技能実習生としての入国を許可することなどの意見が関係業界団体などを中心に提案されている。しかし、技能実習制度の構造上の問題点、現実の人権侵害の事例があるにもかかわらず、技能実習制度を維持・拡大し、受入れ期間の延長や再技能実習を認めることは、人権侵害の温床を拡大する結果となるものであるから、当連合会は、強く反対し、速やかな技能実習制度の廃止を改めて求めるものである。

<外国人労働者の受入分野・方法>
*3:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20140611&ng=DGKDASFS10037_Q4A610C1MM8000 (日経新聞 2014.6.11)
介護・自動車整備に外国人 成長へ働き手確保、政府が技能実習拡充 家事支援も特区で
 政府は「働き手」としての外国人の受け入れを広げる。外国人が日本で技能を学びながら働く技能実習制度を拡充し、介護や販売関連の業務も対象にする。高度な技術を持つ専門家や、日本企業の海外子会社で働く外国人が国内でも働きやすくする方向だ。家事を手伝う外国人も地域を限って受け入れる。人口減に伴う働き手の不足を外国人も活用して補い、経済成長を目指す。産業競争力会議(議長・安倍晋三首相)は10日、6月中に作る成長戦略の骨子案をまとめた。外国から人材を受け入れる手立てとして、技能実習制度の抜本的な見直しと、高度専門家が日本で働く環境の整備を明記した。外国人活用は3つの段階で取り組む。まず足元の景気回復で広がる人手不足対策だ。谷垣禎一法相の私的懇談会は10日まとめた報告書で(1)実習期間を現在の最長3年から5年程度に延ばす(2)新たな対象に「介護」や「林業」のほか、「自動車整備業」、従業員や在庫の管理を手がける「店舗運営管理業」、食材を加工する「総菜製造業」を加える――などの方針を示した。実習生が劣悪な環境で働かされることがないように、不正に対する罰則を強化する。法務省はこれを受け、法改正の準備に入る。新たに実習の対象にする分野はいずれも人手不足が目立つ。首都圏を中心に訪問介護を展開するメッセージ子会社のJICC(東京・中央)は土日祝日の夜間帯に働くパートを最大で時給2800円で募集しているが、なかなか集まりにくい。介護福祉士は経済連携協定(EPA)に基づいてインドネシアとフィリピン人の就業者を認めたが、3年間の国家試験合格者は計242人にとどまる。技能実習制度とは別に、EPAの対象でない国の留学生でも、日本で介護の資格を取れば国内で働くことを認めることも検討する。日系企業の外国子会社で働く人が日本に転勤して働くため新たな在留資格を作る方針も成長戦略に盛り込む。専門的な技術や経営のノウハウを持つ「高度人材」の受け入れを広げる。政府はこれまで、年収や学歴が高いと認めた外国人は家事を手伝う人を連れてきてもよいなどとする制度改正を実施した。さらに受け入れを増やす施策を2014年度中に検討すると成長戦略に明記する方向だ。単純労働者の受け入れにつながる移民は認めない。ただ、家事を手伝う人については、東京や大阪など全国6地域を指定した「国家戦略特区」での先行受け入れを目指す。地域を限って受け入れて社会制度への大きな影響を避けつつ、外国人の受け入れ拡大に向けた課題などを探る構えだ。政府は成長戦略と並行してまとめる経済財政運営と改革の基本方針「骨太の方針」で、人口を1億人に保つ目標を掲げる。少子化に歯止めをかけても日本の人口は2千万人以上減るため、働き手の確保や自治体の維持には外国人の受け入れを増やすといった対策が避けられなくなってきている。

| 経済・雇用::2014.6~2015.10 | 12:38 PM | comments (x) | trackback (x) |
2014.6.21 女性の労働市場への参入促進に伴って起こった「産めよ増やせよ論」の稚拙さ (2014年6月24日追加あり)
   
        世界の出生率              日本の県別出生率

(1)「産めよ増やせよ」論が出てくる理由
 *1のように、新しい成長戦略に女性の活用が入ったのはよかったのだが、女性が働きやすい社会を作るため保育所や学童保育の受入拡充に取り組もうとして少子化を理由としたら、*3-1のように「16道府県が出生率・数で目標値を設定し、独自の少子化対策を作った」とか、*3-2のように「佐賀県が『企業子宝率』を調査し、従業員が育てる子どもの割合が高い事業所を『モデル企業』に認定する」など、「産めよ増やせよ」論が多くなり、最初に意図したのとは全く異なる政策になった。

 このような雰囲気の中で出たのが、*4-1の東京都議会で晩婚化・晩産化対策について質問した女性都議に対し、「お前が早く結婚すればいいじゃないか」「産めないのか」という男性都議からのヤジである。少し前に、柳沢厚労大臣が「女性は産む機械」と述べて批判を浴びたが、このような価値観が横行ししている限り、労働市場で女性が気持よく働き、男性と同様に管理職に昇進していくことはできない。そのため、これは、なくすべき女性差別の価値観であり、*4-3に書かれているとおり、うやむやにせず徹底して再発防止を行うべきである。

 なお、*4-2の西日本新聞の女性記者の記事には、「働く母親を増やしたいなら、乳幼児の急病やけがにも対応できる保育所を増やして、保育料も無料にすればいい。新聞社でも働くママが増えた。急に発熱した子どもを預ける先に苦労する先輩。保育所に入れず、母親に毎日赤ちゃんを預けて出勤する先輩。定期的に遠方の両親に泊まり込みの手伝いに来てもらう先輩。何とか家族や職場の協力を得て、必死に働いても、多額の保育料が家計を圧迫する」という事実が書かれており、そのとおりだ。

 しかし、「国や自治体は『それでも働け』というのなら、女性や家族、職場の努力に報いる何らかのメリットを提示すべきだ」としているのは、少し前までは「それがいやなら、さっさとやめろ」という態度だったので、国や自治体が「何とかするから、頑張って働け」と言う態度になったのは、相当の進歩なのである。

(2)リプロダクティブ・ヘルス・ライツは世界女性会議で採択された人権である
 *5-1に書かれているように、すべてのカップルや個人は、子どもを持つか持たないか、また子どもの数、出産間隔、出産時期を自由に決定できる権利を有し、これは、1995年に北京で開催された世界女性会議で、リプロダクティブ・ヘルス・ライツとして採択された。

 現在、*5-2のように、世界の国・地域別の合計特殊出生率(2005-2010年)を見ると、ニジェール 7.15人を1位として、46位のコモロ 4.00人までが、4人以上である。ここは、アフリカ、イスラム圏など、乳児死亡率が高く、女性の識字率や社会における地位が低く、女性には、安全で満ち足りた性生活を営み、子どもを持つか持たないか、何人持つかを決める選択権が与えられていない地域だ。日本で言えば、戦前・戦中の状況である。

 また、47位のサモア3.99人から100位のバングラデシュ 2.36人までの間も、女性の学歴や識字率が低く、子どもを持つか持たないか、また何人持つかを自分で決められる選択肢が与えられていない地域が多い。日本で言えば、戦後すぐくらいの状況だ。

 それ以降は、123位に先進国であるアメリカ合衆国 2.09人が現われるが、アメリカの出生率が高いのは移民の出生率が高いからだと言われている。そして、129位 ニュージーランド2.02人 、137位ノルウェー1.89人、138位フランス 1.89人、140位スウェーデン1.87人、144位イギリス1.84人、145位デンマーク 1.84人、146位オーストラリア1.83人と2人前後の先進国が出てくる。日本も、戦後しばらく、家族計画における産児制限で、子どもは2人を標準としていた。

 さらに下がって、179位イタリア1.38人、180位ロシア1.37人、184位ドイツ 1.32人がくる。そして、196カ国中の190位に日本1.27人、193位に韓国1.22人がある。つまり、女性の教育レベルが上がり、女性がいろいろな選択肢を持つようになったにもかかわらず、育児サポートが乏しく、選択肢を持つ女性に昔ながらの家事・育児を押し付ければ、婚姻率が下がったり、DINKSが増えたりして、少子化するということなのである。

(3)2020年までに女性管理職の比率を2倍にと言う世界企業アクセンチュアと女性課長30%で日本は滅ぶとする日本の経営者向け雑誌記事の違いがすべてを物語っている
 *2-1のように、多様性が大切だとして、世界企業のアクセンチュアは、2020年までに日本における女性管理職の比率を2倍にするとともに、女性従業員の比率を35%程度にまで上昇させるそうだ。日本は国際的にみて管理職従事者に占める女性の比率が低く、同社では、ジェンダー(性別)で区別する発想を排し、多様性を受容した組織作りを標榜する考え方をとるが、それでも日本は世界の他地域と比較して最下位だそうだ。そして、これは、ビッグ4で働いていた私の経験と一致している。

 一方、*2-2のPRESIDENTでは、安倍首相が「2020年までに、指導的地位にいる人の3割を、女性にする」と発言したが、ある住宅設備メーカーでは「①女性管理職30%を達成しようにも、女性社員が全体で2割もいない」とか、金融業で「②昇進審査では『女性枠』というものが存在しており、逆差別ではないか」「③現在、女性管理職の約7割に子どもがいない」「④子どもを産み育てる環境が不備なまま、性急に登用を促進すれば、少子化にますます拍車がかかる」等々、できない理由を列挙している。

 しかし、①については、そもそも住宅設備メーカーに女性社員が全体で2割もいないのがおかしく、これまで男性本位で男性に下駄を履かせた採用をしてきたことがわかるため、その突破口として「2020年までに指導的地位にいる人の3割を女性にする」という目標は有用だと考える。

 また、②についても、金融業で女性管理職が少ないのは、雇用で女性差別をしてきたからで、「2020年までに指導的地位にいる人の3割を女性にする」という目標は、その突破口になるため、これまでのやり方すべてを見直し、2020年までに指導的地位にいる人の3割を女性にすることを目標にすれば、多様性を維持して本当のニーズを把握し、本物の成長率や利益率を上げるためのKeyになると思われる。

 さらに、③については、だからこそ速やかに保育所や学童保育を整備すべきなのであり、④については、(2)に書いた理由で歴史を逆に回そうとする本末転倒の主張だ。

<成長戦略に入った女性労働力の活用>
*1:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20140611&ng=DGKDZO72561700R10C14A6EA2000 (日経新聞 2014.6.11)女性や技術、生かす成長戦略 首相「日本経済を一変」
 政府の産業競争力会議(議長・安倍晋三首相)は10日、新しい成長戦略の骨子案を発表した。重点を置いたのは、日本がまだ生かし切れていない潜在力の活用だ。重要な働き手として期待する女性が仕事しやすくなる環境を整えるほか、日本が強みを持つ技術開発をさらに促す仕組みをつくることなどを柱に据えた。政府は月末のとりまとめに向け最終調整に入る。女性が働きやすい仕組みづくりでは、育児の負担を軽くするため、放課後に学校などに児童を預けられる学童保育の受け入れ枠の拡充に取り組む。現在の受け入れ枠は全国で約90万人だが、2019年度末までに30万人分を増やす計画だ。女性が働く意欲をそぐと批判がある配偶者控除など、税・社会保障制度の見直しの検討も進める。首相は同会議のしめくくりで「日本経済が一変するとのメッセージを強力に打ち出していくためにも、骨太な政策に絞り込んでまとめていただきたい」と指示した。法人税の実効税率の引き下げなどを念頭に「残された論点は難しいものばかりが残っているが、大胆に決断し、実行に移していきたい」とも力説した。

<労働市場における女性差別>
*2-1:http://japan.zdnet.com/cio/analysis/35045076/ (ZDNet Japan 大川淳 2014年3月11日) 多様性が大事--アクセンチュア、2020年までに女性管理職の比率を2倍に
 アクセンチュアは3月10日、“ジェンダー・ダイバーシティ”への取り組みを発表、2020年までに女性管理職の比率を現在の2倍にするとともに、将来は女性従業員の比率を35%程度にまで上昇させる。日本は国際的にみて管理的職業従事者に占める女性の比率が低く、同社では、この問題を日本社会全体の課題ととらえ、社内で積極的に女性が活躍する場を広げるとともに、対外的にもさまざまな提言や活動をしていく方針だ。ジェンダー・ダイバーシティは、ジェンダー(性別)で区別するという発想を排し、多様性を受容した組織作りを標榜する考え方であり、企業などでの女性従業員の数を増やし、管理職や役員にも女性を登用することなどを求めている。アクセンチュアの場合、女性従業員は約1000人であり、この10年ほどで2.5倍になったという。同社によれば、2007年の時点で既婚の女性従業員は約2割、子どもがいる女性従業員は10%未満、時短勤務利用者は6人、女性マネジングディレクター(部長相当職)は2人だったが、2014年には既婚の女性従業員は約4割、子どもがいる女性従業員は20%以上、時短勤務利用者は80人以上、女性のマネジングディレクターは10人以上になっている。同社は世界規模で事業展開しているが、日本オフィスの女性比率は年々増加しているとはいえ、他の地域と比較すると最下位という。1位は中国、2位は東南アジア諸国連合(ASEAN)、3位はカナダで、いずれも40%以上だ。ワースト3は、13位のドイツ、オーストリア、スイス、14位の韓国、20%で15位の日本となっており、全世界での平均は36%だった。管理的職業従事者に占める女性比率(出典:データブック国際労働比較2012)は、フィリピンが52.7%、米国が43%、フランスが38.7%、オーストラリアが36.7%、英国が35.7%などである一方、日本は11.9%、韓国は9.4%だ。アクセンチュアは2006年に「Japan Women's Initiatives」を立ち上げ、女性が働きやすい環境の構築に取り組んできた。代表取締役社長の程近智氏は「女性が活躍できる場を広げ深めるため、さまざま支援策を講じており、女性向けプロフェッショナル研修、子育てと仕事の両立を支援する制度などを設けている。この7年間ほどでかなり進化していると考えている。実際、女性従業員の数が増えているが、世界的にみれば当社でも日本は(女性進出の水準が)最下位という状況であり、早くワースト3から脱したい」と話す。同社は、ジェンダー・ダイバーシティ推進のため、日本を含む世界32カ国のビジネスパーソン4100人に2013年11月に独自に調査した(男女の比率は50%ずつで、日本人の回答者は100人)。その結果、日本は世界で最もダイバーシティについての意識が低いことが浮き彫りになった。「自分のキャリアを構築する上で最も重要なものは何か」との問いへの回答では、グローバルと日本とも「特定の職域で専門性や知識を深めること」(グローバル67%、日本52%)だったが、これに次ぐのは、グローバルでは「組織内でのネットワーキング」であったのに対し、日本では「政治的な調整・擦り合わせ」の41%だった(グローバルでは19%)。「2020年までに女性取締役メンバーの比率は増えると思うか減ると思うか」との問いに「増える」との回答は日本では35%で、米国の65%、ドイツの64%、中国の62%などに比べ極めて低い。「2020年までに女性のCEO(最高経営責任者)は増えると思うか減ると思うか」との質問に「増える」と回答したのは日本では29%。米国では66%、ドイツは64%、中国は62%だった。全従業員に占める女性の比率をみると日本は42.2%であり、フランスの47.5%、米国の47.2%、英国の46.5%、ドイツの46.1%、シンガポールの43.6%などと比較して、それほど大きな差があるわけではない。この状況について同社執行役員 インクルージョン&ダイバーシティ統括 兼 金融サービス本部マネジングディレクターの堀江章子氏は「女性の活用を積極化しようとの掛け声があっても、日本では単に人数だけ増えれば良しとするような風潮があるのでは。女性だけが従事するような仕事を作るのではなく、男性と同じ仕事を女性も担うようにしなければならない」と述べ、女性と仕事に対する旧弊の意識を変えるべきではないかと主張する。今回、女性の社会進出について日本は後進国であるとの実態を物語る数値を明らかにしたアクセンチュア自体、同社の世界各国の拠点と比べ女性従業員の比率は最下位であり、国内状況の一つの縮図ということになったわけだ。この問題で日本全体が諸外国の水準に近づくのには、相当の時間がかかりそうだ。

*2-2:http://president.jp/articles/-/12707
(PRESIDENT Online  2014年6月3日) 
●2020年、女性課長30%達成で日本は滅ぶのか
 女性社員を役員や管理職に登用する動きが企業に広がっている。三井住友銀行やみずほ銀行で初の女性執行役員が誕生したほか、野村信託銀行では初の女性社長、大和証券グループ本社でも生え抜きの女性取締役が誕生した。役員だけではない。イオングループは現在10%の女性管理職比率を2016年までに30%、2020年までに50%にする計画を発表。NKSJホールディングスもグループで3.4%の比率を2015年度末に10%、2020年度末に30%にする目標を掲げている。こうした女性登用ラッシュの背景にあるのは昨年4月、安倍首相が経済界に対して行った以下の要請だ。<「2020年30%」の政府目標の達成に向けて、全上場企業において積極的に役員・管理職に女性を登用する。まずは役員に1人は女性を登用する>つまり、2020年までに課長職以上の女性比率を30%にしなさいというものだ。そしてこの数値目標は昨年6月に閣議決定した成長戦略にも盛り込まれ、いわば国家目標になった。その趣旨は少子高齢化による労働力人口が減少する中で潜在的資源である女性の力を、経済成長を支える原動力にしようというものだ。それはそれで結構なことであるが、果たして30%達成は可能なのか。2013年の民間企業の課長相当職以上の女性比率は7.5%にすぎない。20年までの7年間に2.5倍以上に引き上げなければならない。客観的に見ても無理筋な数値としか思えない。それでも安倍首相はやる気なのだろう。今年1月の世界経済フォーラム会議(ダボス会議)でも「2020年までに、指導的地位にいる人の3割を、女性にします」と発言。世界に大見得を切った。そして昨年から今年にかけて全省庁を挙げて目標達成に向けた政策の実施や企業への働きかけを強化している。
●今春入社の女性が6年後、"全員"課長になれる会社
 それを受けて経団連や各企業はこぞって女性比率の計画数値を公表し、登用に力を入れている。だが、無理矢理、数合わせのために目標を達成しても必ず弊害が発生する。すでに企業の現場では問題も発生している。ある住宅設備メーカーの人事課長は「経営トップは女性管理職を増やせと言っているが、30%を達成しようにも女性社員が全体で2割もいない。課長手前の係長も5%しかおらず、全員を課長に上げても足りない。すでに女性の課長候補者のほとんどは昇進させたために、課長手前の女性社員の空洞化も発生している」と語る。また、職場では不穏な空気も流れていると語るのは金融業の人事課長だ。「昇進審査では『女性枠』というものが存在している。本来は課長にふさわしい経験と能力があるかを審査するが、女性に関しては『女性の割には優秀だよね』といった視点で昇進させる。本来なら選ばれないのに、下駄を履かせて昇進させていることが職場にも伝わり、逆差別ではないかという声もある」。これでは女性もいい迷惑である。本来、課長になるべき女性が昇進しても、同僚や部下から色眼鏡で見られることになり、仕事もやりにくいだろう。もともと女性社員が少ない建設業はもっと深刻だ。人事課長は「トップの意向で史上最年少の女性課長を誕生させたが、2段跳びの昇格だった。といっても部下を率いる課長ではなく、部下なしの専門職課長だ。正直言ってマネジメント能力はないが、部下なし課長に上げている女性は多い」と語る。このまま行けば今年入社した女性を2020年には課長にしなければ間に合わないという嘆く人事担当者もいる。経営トップの意向で数値目標が目的化した昇進が続くと上司と部下の信頼関係が崩れ、当然、業務に支障を来し、生産性が低下することになりかねない。現在、多くの企業は「名プレイヤーイコール名監督ならず」の考えのもとで、管理職にふさわしいリーダーシップや部下の育成など経験と能力を持つ「マネジメントのプロ」の育成に注力している最中だ。そんな矢先にたいした基準も設けず、促成で女性管理職を無理矢理増やすようなことをやっていると、企業の発展どころか成長を阻害することになってしまう。
●女性管理職“促成”で周囲のやる気↓少子化↑
 もう一つ、女性は男性に比べて課長以上に昇進したい人が少ないという事実も忘れてはならない。一般従業員に課長以上の昇進希望があるかを聞いたところ、男性は59.8%があると答えたが、女性は10.9%にすぎない(独立行政法人労働政策研究・研修機構調査)。その理由で最も多かったのは「仕事と家庭の両立が困難になる」というものだ。これに関して大手事務機器メーカーの女性人事課長は「女性社員は男性と同じようにバリバリ仕事をしたいという上昇志向の女性もいるが、給与があがらなくてもいいからほどほどの仕事をしたい人、管理職になりたいが出産・育児の両立は無理と諦めている3タイプがいる。管理職と育児の両立が無理と考えている女性に前を向いてもらうには、長時間労働慣行や男性社員の理解がないと進まない」と指摘する。女性の登用の前に企業が取り組むべき課題は、出産・子育てを機に辞めさせない環境整備と子育てによるキャリアのブランクをフォローすることだ。たとえば在宅勤務などの制度面の改善や多様な働き方ができる働く場のインフラの整備。そして最後に何より大事なことは、女性はもちろん男性の意識を含めたカルチャーを変えていくことが必要だ。こうした仕組みを地道に改善していくことなく、性急に女性登用を進めてしまうと、単に企業の生産性の低下だけではすまない事態になる可能性もある。現在、女性管理職の約7割に子どもがいないという事実をご存知だろうか。その理由は未婚であるとか、結婚しても子どもを産み育てにくいといった様々な事情もあるだろう。仕事か子どもかの選択を迫られて子どもを諦めた人も多いのではないか。子どもを産み育てる環境が不備なまま、性急に登用を促進すれば、少子化にますます拍車がかかることになりかねない。もちろん、安倍首相は仕事と子育ての両立支援の拡充も要請しているが、2つが同時に功を奏するかどうかはわからない。それにしても企業や経営者が一斉に女性登用に血道を上げている姿を見ると、お上の意向に逆らえない体質や業界横並びの行動が依然として続いていることに驚かざるを得ない。仮に2020年に女性の管理職比率30%を達成したとしても、経済成長どころか、促成登用のひずみや少子化の影響で取り返しのつかない事態になっていなければいいのだが。日本銀行の異次元緩和によるインフレ政策の帰結と同様に“女性管理職インフレ”政策もアベノミクスの帰趨に大きく影響することは間違いない。

<出生数目標から「産めよ増やせよ論」へ>
*3-1:http://www.saga-s.co.jp/news/national/10201/67037 (佐賀新聞 2014年5月24日) 16道府県が出生率・数で目標値、16道府県が出生率・数で目標値、独自の少子化対策
 47都道府県のうち宮城、兵庫など約3分の1の16道府県が独自の少子化対策として、合計特殊出生率(1人の女性が生涯に産む子どもの数)や出生数の数値目標を設定していることが24日、共同通信の調べで分かった。いずれも期限を決め、少子化への危機感や取り組み効果を理由に挙げた。政府は「個人への押し付け」との世論の反発を懸念し、出生に関する数値目標の設定を見送っており、都道府県との温度差が浮かび上がった。目標達成のため婚活支援や若者向けセミナーなどの事業も行われている。このほか福島、新潟、富山は数値の上昇を目指すとしているが、具体的な値は示していない。三重は「何かしらの目標が必要」として夏にも県民を交え、数値目標の是非を検討する。16道府県のうち、出生率のみの目標を示しているのは山形(2016年度までに1・70)、静岡(17年度に2・0)、佐賀(17年に1・71)など12道県。このうち大分は「14年度中に全国5位以内」を掲げる。年間の出生数のみを目標にしたのは京都(14年から5年で2千人増加)など3府県。秋田は「17年に1・45、年間6100人」と出生率と出生数の両方だ。16道府県は、目標を設定した当時に判明していた実績を基準に、それを維持するか、あるいは上回る数値としている。設定の理由は「危機感から」(兵庫)、「取り組むなら今。数字には効果がある」(佐賀)、「緊張感を持てる」(宮崎)、「知事の選挙公約だった」(山形)など。一方、設定していない都府県は「結婚・出産は一人一人の価値観や人生観。社会が強制するものではない」(東京)、「施策の内容こそ深く議論すべきだ。『産めよ増やせよ』というメッセージにもつながりかねない」(和歌山)などの見解だった。調査は5月中旬、都道府県の少子化対策の担当課に電話で実施した。

*3-2:http://qbiz.jp/article/40135/1/
(佐賀新聞 2014年6月19日) 佐賀県が「企業子宝率」調査へ 従業員が育てる子どもの平均数
 佐賀県は本年度、従業員やその配偶者が、在職中に恵まれる子宝の数を示す「企業子宝率」の調査に乗り出す。子どもの割合が高い事業所を「モデル企業」に認定し、子育て支援の取り組みを紹介する。子育て環境の改善を促すのが目的で、識者からは「民間の支援充実を後押しする」と評価する声や「出産への圧力になる」と危ぶむ意見など、賛否両論が上がっている。こども未来課によると、企業子宝率は、男女を問わず、従業員が在職中に育てる子どもの平均数。1人の女性が生涯に産む子どもの平均数「合計特殊出生率」とほぼ同じ計算方法を使い、事業所ごとに割り出す。従業員の年齢と子どもの人数、年齢を尋ね、5歳刻みの年齢構成を基に将来の子ども数も見込む。内閣府男女共同参画会議の前専門委員の渥美由喜氏が考案し、福井県が渥美氏と2011年度に調査を始めた際に「企業子宝率」と打ち出した。その後、静岡県も採用、三重県や鳥取県も導入予定という。佐賀県は本年度の一般会計予算案に関連経費648万円を盛り込み、開会中の6月県議会に提案。県の子育て施策などに関わった経験がある事業所を中心に、従業員10人以上の約1200事業所に9月にもアンケート用紙を郵送し、任意で回答を求める。子宝率が高かった企業には子育て支援の取り組みをさらに調査し、県の広報誌で紹介する。ただ、支援制度が充実している事業所に子どもが多いとは限らず、出産を望まない家庭や、望んでも子どもを授からない家庭もある。和田光平・中央大教授(人口学)は「企業の社会的責任を問う指標ではあるが、人権の観点で『出産の押し付けになる』という批判は免れない。支援制度の充実度を数値化した方がいいのでは」と指摘。増田雅暢・岡山県立大教授(社会保障論)は「企業の子育て支援へのインセンティブ(動機づけ)になる」と一定の評価をしつつも「子育て環境は、両親の協力があるかや保育所が整備されているかなど幅広く測る必要があり、企業の取り組みだけで評価するのは一面的だ」と疑問視する。県の事業は少子化対策「418(しあわせいっぱい)プロジェクト」の一環。17年の出生見込み数が418人増えれば、県内の合計特殊出生率(12年は1・61)が0・1上がるという。

<東京都議会での「産めないのか」発言>
*4-1:http://digital.asahi.com/articles/DA3S11199494.html
(朝日新聞 2014年6月20日) 都議会に批判1000件超 女性議員へ「産めないのか」発言
 東京都議会で晩婚化や晩産化の対策について質問した塩村文夏(あやか)都議(35)が、「自分が早く結婚すればいい」と男性都議からヤジを飛ばされた。ウェブ上で「セクハラだ」と議論が高まり、都議会には1千件を超す批判が殺到した。最大会派の自民は、発言者を特定せず幕引きを図ろうとしている。
■ヤジの議場、知事も笑み
 「議会の品位をおとしめるヤジは無いよう注意して欲しい」。各会派の全女性都議25人は19日、吉野利明議長に申し入れた。塩村氏が所属するみんなの党は19日、発言者の処分を求める申入書を議長あてに出す方針を決定。発言者が不明のままの場合、録画映像の音声から声紋分析する準備も進めている。問題のヤジがあったのは18日の都議会。晩産化について質問した塩村氏に「お前が早く結婚すればいいじゃないか」「産めないのか」とヤジが相次いだ。議場に笑い声が広がるなか、働く女性の支援を掲げる舛添要一知事も笑みを浮かべ、塩村氏は議席に戻ってハンカチで涙をぬぐった。塩村氏は自身のツイッターに「心ない野次の連続」と投稿。翌19日までに約2万回のリツイート(転載)が広がり、「企業なら懲戒処分だ」「都議会は、女性の社会進出と言っているが、結局は建前だけ」などの声が相次いだ。19日、塩村氏は「同調するように面白おかしく取る方たちがいた。不妊で悩む人の顔も浮かんだ」と声を落とした。みんなの党は、ヤジが「自民の席から聞こえた」と抗議。自民の吉原修幹事長は「自民の議員が述べた確証はない。会派で不規則発言は慎むように話す」と述べるにとどまり、発言者を特定しない意向を明らかにした。ツイッターで「うやむやにするつもりか」と批判した都教育委員で作家の乙武洋匡さんは「今回のヤジはおもてなしと正反対。本当にこの街で五輪を開催できるのか」と述べた。
■女性蔑視発言で国政選挙落選も
 都議会での議員の発言については、会議規則で「騒ぎその他議事の妨害となる言動をしてはならない」と定めているが、セクハラ発言については「罰則はない」(議会事務局)という。一方、傍聴人がヤジを飛ばすことは規則で禁じられ、違反すれば議長の命令で議場外に連れ出される。政治家の女性蔑視発言では、2003年に太田誠一衆院議員が早大サークルの強姦(ごうかん)事件で「集団レイプする人は元気があるからいい」と発言し、07年には柳沢伯夫厚生労働相が「女性は産む機械」と述べて批判を浴びた。いずれも次の国政選挙で落選した。
■18日の一般質問の経緯
 塩村氏は18日の一般質問で、割り当てられた時間の半分を出産や不妊に悩む女性の問題にあてた。「不妊治療を受ける女性のサポートを都は手厚くすべきだ」。そう訴えると、左前方の自民都議らが座る一角から、「お前が早く結婚すればいいじゃないか」「産めないのか」などとヤジが相次いだ。塩村氏が声を詰まらせながら質問を続けると、「おい、動揺しちゃったじゃねえか」と別のヤジも飛んだ。

*4-2:http://qbiz.jp/article/40199/1/
(西日本新聞 2014年6月20日) 産めよ増やせよ預けよ働けよ納税せよ
 ついでに「年金はあてにするな」というところか。注文の多い国だなあ、とつくづく思う。政府が配偶者控除の廃止・縮小を議論している。働く女性を増やして労働力を確保し、経済活性化につなげようという狙いだが、一緒に法人税減税なども推し進めているものだから、違和感がぬぐえない。経済成長は確かに重要だろうが、その恩恵が国民に等しく降り注ぐのは、一体いつになるのか。そもそも恩恵自体あるのか。分かりやすい成果や規制緩和を求めて急ぎすぎているのではないか。そもそも働く母親を増やしたいなら、乳幼児の急病やけがにも対応できる保育所を増やして、保育料も無料にすればいい。新聞社でも働くママが増えた。急に発熱した子どもを預ける先に苦労する先輩。保育所に入れず、母親に毎日赤ちゃんを預けて出勤する先輩。定期的に遠方の両親に泊まり込みの手伝いに来てもらう先輩。何とか家族や職場の協力を得て、必死に働いても、多額の保育料が家計を圧迫する。お金がすべてを解決するわけではないが、国や自治体は「それでも働け」というのならば、女性や家族、職場の努力に報いる何らかのメリットを提示すべきだ。18日の東京都議会で、女性議員が妊娠、出産や妊娠、不妊治療への支援について一般質問をしていた際に、男性議員から「早く結婚しろ」「子供もいないのに」などのヤジが飛んだとしてニュースになった。少子化問題をちゃかすだけの議員がいて、子どもを抱えて働く女性がいる。未婚で子どももいない私が言うとまたヤジが飛ぶのかもしれないが、それでもまだ、女性にもっと努力しろって言うんですかね?

*4-3:http://digital.asahi.com/articles/DA3S11201315.html
(朝日新聞社説 2014年6月21日) 都議会の暴言 うやむやは許されぬ
 議場が公の場であることをわきまえず、汚いヤジを飛ばして恥じることがない。名乗り出る潔さすら、持ち合わせない。そんな人が首都の議会にいるとは情けない。東京都議会の本会議。塩村文夏(あやか)議員が、東京は全国でとびぬけて晩婚晩産だと指摘し、妊娠・出産・育児に悩む女性への支援の充実を訴えていた。そこへ、男の声で「早く結婚した方がいいんじゃないか」などとヤジが飛んだ。塩村氏が絶句すると、議場に冷笑が広がった。暴言の出どころと疑われた会派の幹部は「臆測で言われても困る」と、発言者を特定せずに幕を引こうとしている。発言そのものも、事後の対応も、二重三重に罪深い。まず、少子化は、子どもを産み育てることを難しくしている社会構造の問題だ。それを、ヤジの主は「あなたが産めば解決する」と個人の問題にすりかえた。世の女性ひとりひとりに「あなたが産まないのが悪い」とメッセージを送ったに等しい。晩婚や晩産は男女双方の問題であるのは当然だが、そういう認識もまるで感じられない。この無理解こそ、既婚の女性に仕事か子どもかの二者択一を迫り、未婚の女性に結婚をためらわせる元凶ではないか。このまま発言者を特定もせずにうやむやにすれば、議会として暴言を許容したことになる。不心得な議員が一部にいたという話にとどまらなくなる。議員たちは選挙を通じて住民らに選ばれた代表である。その姿勢は、世の中の空気を映していると受け取られる。妊娠や出産の悩みを語ったり支援を求めたりすると、こんな仕打ちにあうのか――。職場や家庭で悩みを抱えている女性たちを、そんなふうに萎縮させる。そして、社会の難題の解決をますます遅れさせる。それがなにより罪深い。猪瀬直樹前知事のカネの疑惑の際は、あれほど厳しく「都民をなめるな」「自らえりをただせ」と迫った都議会である。自浄作用を働かせることを強く求めたい。塩村氏のツイッターへの投稿は、1日のうちに約2万回もリツイート(転載)され、全国に怒りが燃え広がった。ふつうの生活者の怒りが目に見える時代になった。あっという間に議員たちを取り囲んだ。救いはそこにある。これを教訓に、公に発言する責任の重さを全国の一人でも多くの議員にかみしめてもらいたい。

<出生率と文化度>
*5-1:http://fathering.jp/repro/about_repro.html
<要点のみ>
 リプロダクティブ・ヘルスは、安全で満ち足りた性生活を営み、子どもを持つか持たないか、いつ持つか、何人持つかを決める自由を持つことである。また、リプロダクティブ・ライツとは、すべてのカップルや個人が、自分たちの子どもの数、出産間隔、出産時期を自由に決定でき、そのための情報と手段を得ることができる人権であり、1995年、北京で開催された第4回世界女性会議で採択文章に明記された。

*5-2:http://ja.wikipedia.org/wiki/ (国及び地域別合計特殊出生率順位 2005-2010年)
順位 国及び地域 特殊出生率   世界の平均 2.56
1 ニジェール 7.15 、2 アフガニスタン 6.63 、3 東ティモール 6.53 、4 ソマリア 6.40 、5 ウガンダ 6.38 、6 チャド 6.20 、7 コンゴ民主共和国 6.07 、8 ブルキナファソ 5.94 、9 ザンビア 5.87 、10 アンゴラ 5.79 、11 ギニアビサウ 5.73 、12 マラウイ 5.59 、13 タンザニア 5.58 、14 マリ 5.49 、15 ベナン 5.48 、16 ギニア 5.45 、17 ルワンダ 5.43 、18 エチオピア 5.38 、19 赤道ギニア 5.36 、20 ナイジェリア 5.32 、21 イエメン 5.30 、22 シエラレオネ 5.22 、23 リベリア 5.14 、24 モザンビーク 5.11 、25 ガンビア 5.10 、26 パレスチナ 5.09 、27 セネガル 5.04 、28 ケニア 4.96 、29 中央アフリカ 4.85 、30 マダガスカル 4.78 、31 エリトリア 4.68 、32 カメルーン 4.67 、33 ブルンジ 4.66 、34 コートジボワール 4.65 、35 モーリタニア 4.52 、36 コンゴ共和国 4.41 、37 ガーナ 4.31 、38 トーゴ 4.30 、39 スーダン 4.23 、40 グアテマラ 4.15 、41 イラク 4.11 、42 パプアニューギニア 4.10 、43 トンガ 4.05 、44 パキスタン 4.00 、45 バヌアツ 4.00 、46 コモロ 4.00 、
47 サモア 3.99 、48 ジブチ 3.95 、49 ソロモン諸島 3.92 、50 サントメ・プリンシペ 3.85 、51 ミクロネシア連邦 3.62 、52 スワジランド 3.57 、53 ハイチ 3.55 、54 ラオス 3.54 、55 ボリビア 3.50 、56 ジンバブエ 3.47 、57 タジキスタン 3.45 、58 ナミビア 3.40 、59 レソト 3.37 、60 ガボン 3.35 、61 ホンジュラス 3.31 、62 シリア 3.29 、63 フランス領ギアナ 3.27 、64 サウジアラビア 3.17 、65 マヨット(フランス) 3.15 、66 ヨルダン 3.13 、67 フィリピン 3.11 、68 オマーン 3.09 、69 パラグアイ 3.08 、70 カンボジア 2.96 、71 ネパール 2.94 、72 ベリーズ 2.94 、73 ボツワナ 2.90 、74 エジプト 2.89 、75 イスラエル 2.81 、76 カーボベルデ 2.76 、77 インド 2.76 、78 ニカラグア 2.76 、79 フィジー 2.75 、80 リビア 2.72 、81 西サハラ 2.70 、82 ブータン 2.68 、83 ドミニカ共和国 2.67 、84 ペルー 2.60 、85 マレーシア 2.58 、86 エクアドル 2.58 、87 キルギス 2.56 、88 パナマ 2.56 、89 南アフリカ共和国 2.55 、90 ベネズエラ 2.55 、91 グアム 2.54 、92 トルクメニスタン 2.50 、93 コロンビア 2.45 、94 レユニオン(フランス) 2.44 、95 カタール 2.43 、96 スリナム 2.42 、97 ジャマイカ 2.40 、98 アルジェリア 2.38 、99 モロッコ 2.38 、100 バングラデシュ 2.36 、
101 エルサルバドル 2.35 、102 ガイアナ 2.33 、103 スリランカ 2.33 、104 ミャンマー 2.32 、105 カザフスタン 2.31 、106 グレナダ 2.30 、107 バーレーン 2.29 、108 ウズベキスタン 2.29 、109 アルゼンチン 2.25 、110 メキシコ 2.21 、111 フランス領ポリネシア 2.21 、112 インドネシア 2.19 、113 クウェート 2.18 、114 アゼルバイジャン 2.16 、115 アメリカ領ヴァージン諸島 2.15 、116 セントビンセント・グレナディーン 2.13 117 トルコ 2.13 、118 ウルグアイ 2.12 、119 グアドループ(フランス) 2.11 、120 ブルネイ 2.11 、121 アイスランド 2.10 、122 ニューカレドニア(フランス) 2.10 、123 アメリカ合衆国 2.09 、124 ベトナム 2.08 、125 モルディブ 2.06 、126 セントルシア 2.05 、127 バハマ 2.02 、128、 モンゴル 2.02 、129 ニュージーランド 2.02 、130 アンティル 1.98 、131 コスタリカ 1.96 、132 アイルランド 1.96 、133 アラブ首長国連邦 1.95 134 チリ 1.94 、135 マルティニーク(フランス) 1.91 、136 ブラジル 1.90 、137 ノルウェー 1.89 、138 フランス 1.89 、139 アルバニア 1.87 、140 スウェーデン 1.87 、141 北朝鮮 1.86 、142 レバノン 1.86 、143 チュニジア 1.86 、144 イギリス 1.84 、145 デンマーク 1.84 、146 オーストラリア 1.83 、147 イラン 1.83 、148 プエルトリコ(アメリカ) 1.83 、149 フィンランド 1.83 、150 タイ 1.81 、151 モーリシャス 1.78 、152 ベルギー 1.77 、153 中華人民共和国 1.77 、154 アルバ(オランダ) 1.74 155 オランダ 1.74 、156 アルメニア 1.74 、157 ルクセンブルク 1.66 、158 エストニア 1.64 、159 モンテネグロ 1.64 、160 トリニダード・トバゴ 1.64 、161 セルビア 1.62 、162 グルジア 1.58 、163 カナダ 1.57 、164 バルバドス 1.53 、165 キプロス 1.52 、166 モルドバ 1.50 、167 キューバ 1.50 、168 スイス 1.45 、169 マケドニア 1.44 、170 スペイン 1.43 、171 クロアチア 1.42 、172 チャンネル諸島[3](英王室領) 1.42 、173 チェコ 1.41 、174 ブルガリア 1.40 、175 ラトビア 1.40 、176 オーストリア 1.38 、177 ポルトガル 1.38 、178 ギリシャ 1.38 、179 イタリア 1.38 、180 ロシア 1.37 、181 スロベニア 1.36 、182 ハンガリー 1.35 、183 リトアニア 1.34 、184 ドイツ 1.32 、185 ルーマニア 1.32 、186 ウクライナ 1.31 、187 ベラルーシ 1.28 、188 スロバキア 1.28 、189 シンガポール 1.27 、190 日本 1.27 、191 ポーランド 1.27 、192 マルタ 1.26 、193 大韓民国 1.22 、194 ボスニア・ヘルツェゴビナ 1.21 、195 香港(中華人民共和国) 1.02 、196 マカオ(中華人民共和国) 0.95


PS(2014年6月24日追加):東京都議会のセクハラやじのうち、「早く結婚した方がいい」と言った鈴木都議は、「結婚できない人への配慮が足りなかった」と謝罪しているが、結婚するか否か、また、いつするかは個人の自由であるため謝罪の仕方が不十分だ。つまり、大きなお世話なのである。独身の国会議員は防衛大臣、環境大臣などを歴任された小池百合子さんはじめ、自民党の女性国会議員にも多い。
 また、「まずは自分が産めよ」「子どもを産めないのか」「子どももいないのに」というやじには、誰も名乗り出ていないが、該当するのは、安倍首相夫妻はじめ、自民党政調会長の高市早苗さんなど多数おり、総務会長の野田聖子さんも少しひっかかる。つまり、「子どもがいない」「子どもを産めない」から半人前などということはないのに、頬かむりしていればそれで通ると考えているところが始末が悪いのである。

*6:http://www.saga-s.co.jp/news/national/10202/77098
(佐賀新聞 2014年6月24日) 都議のやじ声紋分析、音源精査へ、別の発言者、特定難航も
 東京都議会のセクハラやじ問題で、被害に遭った塩村文夏都議(35)が所属するみんなの党の会派は24日までに、鈴木章浩都議(51)以外のやじ発言者を声紋分析で特定するため、業者と相談しながら音源を精査する意向を固めた。ただ、発言に不明瞭なところもあり、分析には難航も予想されるという。同会派の両角穣幹事長は「自ら名乗り出てほしいと思う。それが難しいなら各会派がしっかり調査してほしい」と話している。同会派によると、議会局から提供を受けた一般質問の映像・音声データには、鈴木都議の「早く結婚した方がいい」という声は明瞭に残っていたが、ほかの「産めないのか」などのやじは、一部だけ聞こえたり、ほかの音でかき消されたりしていた。塩村都議が20日に議長宛てに提出を試み、不受理になった処分要求書では、鈴木都議が発言した結婚に関するやじのほか「まずは自分が産めよ」「子どもを産めないのか」「子どももいないのに」といった言葉もあったという。

| 男女平等::2013.12~2014.6 | 06:37 PM | comments (x) | trackback (x) |
2014.6.20 コンピューター・ウイルスをばら撒く犯罪を放置し、個人情報を本人の同意なく利用する権利を保障するような社会にしてはならない
       
    ウイルス       個人データ利用    通信傍受     ハッカー

(1)「ウィンドウズXP」のサポート終了と特需の性格
 *1-1のように、米マイクロソフトの基本ソフト「ウィンドウズXP」のサポートが、2014年4月9日に終了し、その後は安全上の欠陥を修正するソフトの配布がなくなるため、ウイルス感染の危険性が格段に高まるそうだ。私もXPを使っているので被害甚大だが、文書や写真は外部メモリーに保存しているためパソコンにはあまり入っていないにもかかわらず、サポート終了前でも、パソコンのメモリー残高が減り、パソコンの動きが遅くなっていた。これは、使う度に「修正ソフト」を配布され続けたのが原因だろう。

 さらに、*1-2の「サポート終了の買い替え特需でパソコン業界が沸いた」というように、買換えでユーザーを不便にし、人を幸福にしない売り方をする商品は、*3のように「自治体担当者が『ウィンドウズを使う限り、振り回され続けるのか』とため息をつく」ように、代替品が見つかり次第、売れなくなるだろう。

(2)野放しになっている「ウイルス」という名の人的犯罪
 *1-2のように、サポート終了で情報を盗むウイルスなど安全性を脅かすリスクへの対応を終了し、*2のように「Windows XPのサポートが終了すると、XPを狙った攻撃が増加する恐れがある」そうだ。

 また、「脆弱性を狙った攻撃が行われる可能性がある」とも言われているが、それを行っている「ウイルス」は、自然界に存在するウイルスではなく人が作ったものである。ノートンなどの対策ソフトはあるが、そもそもパソコンのウイルスをばら撒くのはれっきとした犯罪であるため、ウイルスを作ったりばら撒いたりした者はしっかり見つけて重罰に処すべきだし、もう、それもできる筈だ。現在は、パソコンが「ウイルス」でやられても器物損壊にしかあたらず賠償額が少ないが、重要な資産はパソコンの中に保存されているデータであり、重要で回復不能なデータが詰まっている人も多いのである。

 さらに、「ウイルス対策ソフトを利用していないパソコンのウイルス感染率は、利用しているパソコンの5.5倍」などと言っているが、パソコンやウイルス対策ソフトの販売者がウイルスの制作者に支えられているような構造では困る。

(3)システム・エンジニアとユーザーは価値評価に違いがある
 *3のように、九州7県の自治体が保有するパソコンの16%に当たる約2万7400台はOSの更新が間に合わず、XP搭載パソコンの4割近くが更新できないそうだ。使い続ければウイルス感染や不正アクセスの危険性が高まると言われているが、このような無駄遣いをさせられるのでは、納税者もたまらない。

 なお、私もXPの方が使いやすいと思っており、使い慣れた動作を他の機種に変更させられるのは迷惑だ。その理由は、ユーザーにとってのパソコンは新ソフトになったから価値があるのではなく、使い慣れて早く書け、それまでの蓄積を使える方が価値があるからだ。そして、ここが、新しいソフトを開発すること自体が業績になるシステム・エンジニアやパソコンを売れば儲かる販売店とユーザーのパソコンに対する価値評価の違いである。

(4)通信傍受、ビッグデータ利用、本人の同意なき個人データ利用は許されない
 *4-1に書かれているように、通信傍受の対象となる犯罪種類を拡大し、現在の4種を大幅に緩める案が浮上したそうだが、通信傍受は憲法で保障された「通信の秘密」に反し、人権侵害や監視社会に繋がるものだ。これまで、ITはできたばかりのツールであるため、ルールが無いのは仕方がないとしてきたが、ITも「通信の秘密」を侵さないものに変えなければ、これ以上の発展はないだろう。

 試案は捜査当局が電話、電子メールを傍受できる対象を広げ、組織性が疑われる殺人、放火、詐欺、窃盗などを新たに追加し、運用面では通信事業者の立ち会いは不要としているが、判断するのは捜査側だから、恣意的な解釈がまかり通る恐れは多分にあり、通信事業者の立会がなくなれば、この傾向に拍車が掛かるのは必至である。

 また、*4-2に書かれているように、インターネットイニシアティブ(IIJ)や富士通総研などが連携して、個人の買い物履歴などのビッグデータを他社と互いに活用しあう専門組織を5月に設立するそうだ。しかし、個人関連データはれっきとした個人情報であり、「政府が検討しているガイドライン」といっても、通信傍受法と同様、いつ対象を拡大されるかわからない。また、個人の「通信の秘密」や「人権」に配慮されるとも限らないため、注目しておくべきだ。

 さらに、*4-3では、政府のIT総合戦略本部の検討会が、2014年6月19日に、インターネット上などに蓄積されている個人関連データの取り扱いルールをまとめた大綱案を示し、本人の同意がなくても匿名化を条件に企業の利用を認めることを明記したそうだが、本人の同意が不要で、企業でも利用できるのであれば、対象がどう拡大されてもわからないため、本人の同意なく勝手に個人情報を利用される恐れが大きい。これは、日本国憲法に反する行為であり、ITだからといって例外にすべきではない。

*1-1:http://www.saga-s.co.jp/news/global/corenews.0.2643897.article.html
(佐賀新聞 2014年3月8日) XP、新OS移行に遅れ / 来月サポート終了
 米マイクロソフトの基本ソフト(OS)「ウィンドウズXP」は、4月9日にサポートが終了する。だが、中小企業では新OSへの移行の遅れが目立ち、個人はそもそもサポート終了を知らない場合も多い。終了時点でも、国内には少なくとも約750万台のXP搭載パソコンが残る見通しだ。サポート終了後は安全上の欠陥を修正するソフトの配布がなくなり、ウイルス感染の危険性が格段に高まる。残り1カ月となり、日本マイクロソフト(東京)は少しでもXPパソコンを減らそうと追い込みに入った。化粧品に使う香料のメーカー(同)は、約70台あるXPパソコンを今後3年かけて更新するという。

*1-2:http://www.nikkei.com/article/DGXNASDD240KX_U4A220C1EA2000/?dg=1
(日経新聞 2014/2/24)特需に沸くパソコン XP・消費増税後の反動は…、1月出荷台数63.8%増
 国内のパソコン商戦が活況を呈している。1月の出荷台数は106万台で前年同月比63.8%増と大幅に伸びた。消費増税前の駆け込み需要に加え、4月に米マイクロソフトが基本ソフト(OS)「ウィンドウズXP」のサポートを終了するため買い替えが急増した。ただ、2つの特需が一巡すれば販売の苦戦は避けられない見通しで、この春が「最後の大商戦」になるとの懸念もある。電子情報技術産業協会(JEITA)が24日に発表した1月のパソコン出荷台数は現在の集計方式になった2007年度以降で1月単月としては最高。前年実績を上回るのは4カ月連続となった。パソコンはタブレット(多機能携帯端末)やスマートフォン(スマホ)に需要を奪われ、12年から出荷台数の前年実績割れが目立っていた。需要急回復の背景にあるのは消費増税とXPのサポート終了。マイクロソフトは4月9日を最後にパソコンOSのXPのサポートをやめる。パソコンが動かなくなるわけではないが、情報を盗むウイルスなど安全性を脅かすリスクへの対応を終了する。このため、昨年後半あたりから法人需要が先行する形で出荷が増えてきた。家電量販店では2月も販売が堅調。関東甲信地方を中心に降った2度の大雪が週末に重なったにもかかわらず、ビックカメラの販売額は前年同月比で2割増のペースだという。同社の売れ筋は10万~15万円のA4サイズのノート型。「XPサポート終了を知らない消費者はまだ多く、3月はさらに需要が伸びる」(ビックカメラ)と見る。需要増を受け、国内最大手のNECパーソナルコンピュータは米沢事業場(山形県米沢市)で2~3割の増産体制を敷く。富士通も島根県の工場などがフル生産。出荷見通しを2度にわたって上方修正した。一方「XP特需」後の見通しは厳しい。タブレットなどに押される構図は変わっておらず、再び苦戦に転じるとの見方が多い。MM総研の中村成希アナリストは「個人向けは4~6月から反動減が始まり、その後、再び増える要素はない。ピーク時の3割減程度で推移する」と予測する。

*2:http://www.nikkei.com/article/DGXNASFK1602B_W3A410C1000000/?uda=DGXZZO0630724025042010000000 (日経新聞 2013/4/17) マイクロソフト、「サポート終了後のWinXPは狙われる」
 「Windows XPのサポートが終了すると、XPを狙った攻撃が増加する恐れがある」。米マイクロソフトにおいて製品や開発プロセスのセキュリティを統括する、Trustworthy Computingチームの責任者ティム・レインズ氏は2013年4月15日、日本マイクロソフトが開催したセミナーにおいて、セキュリティの現状などについて解説した。マイクロソフトでは、セキュリティの最新動向をまとめた「セキュリティ インテリジェンス レポート(SIR)」を半年ごとに公開している。同レポートでは、全世界の6億台以上のコンピューターや同社サービスなどから収集したデータを基に、脆弱性やマルウエア(ウイルス)、迷惑メール、フィッシング詐欺などの動向をまとめている。2012年下半期(7月から12月)のデータをまとめた「セキュリティ インテリジェンス レポート第14版」(英語版)は4月17日に公開予定。その公開に先駆けてレインズ氏は、同レポートの内容を一部紹介した。例えば、同社のウイルスチェックサービス(「悪意のあるソフトウエアの削除ツール」など)を利用したパソコンのうち、ウイルス対策ソフトを利用していないパソコンの割合は24%。台数では2億7000万台に上るとしている。また、ウイルス対策ソフトを利用していないパソコンのウイルス感染率は、利用しているパソコンの5.5倍だという。2014年にサポートが切れるWindows XPのセキュリティについても言及した。レインズ氏によれば、XPのサポートが切れると、XPを狙ったウイルス攻撃は増加する恐れがあるという。現在サポート対象になっているXPは、サービスパック3(SP3)を適用したXP SP3のみ。「XP SP2のサポートが切れた際に、XP SP2のウイルス感染率が上昇したことがあった」(レインズ氏)ため、XP SP3でも同様の傾向が見られる可能性があるとする。また、現時点でもXPを狙ったウイルスが多数存在するので、サポート終了後も、それらが流通し続ける可能性は高いという。今後、Windows Vista以降に向けたフィックス(セキュリティ更新プログラム)が公開された際、攻撃者はフィックスから脆弱性の詳細を調べ、同じ脆弱性がXPにあるようなら、「その脆弱性を狙った攻撃が行われる可能性がある」(レインズ氏)という。

*3:http://qbiz.jp/article/32288/1/
(西日本新聞 2014年2月17日) 九州の自治体、2.7万台更新できず ウィンドウズXP
 米マイクロソフトの基本ソフト(OS)「ウィンドウズXP」の製品サポートが終了する4月9日までに、九州7県の自治体が保有するパソコンの16%に当たる約2万7400台はOSの更新が間に合わないことが分かった。XP搭載パソコンの4割近くが更新できない見通し。使い続ければウイルス感染や不正アクセスの危険性が高まるが、予算不足などで対応が追いつかない自治体もある。製品サポート期間中は、セキュリティー対策の新機能が随時更新されているが、終了するとパソコンがウイルスなどの侵入に対して無防備な状態になる。九州7県の県庁で最も対応が遅れているのは長崎県で、保有するパソコン約6100台のうち、XP搭載の約1070台全ての更新が間に合わない。宮崎県は約350台、熊本県は約200台、大分県は約20台でXPを継続使用する。福岡、佐賀、鹿児島各県はサポート期間中に更新を終える。一方、総務省の調査によると、福岡、熊本、宮崎、鹿児島各県内の市町村(政令市を除く)は、XP搭載パソコンの半分以上で更新が間に合わないという。パソコンの入れ替えには1台数万円かかる。サポート終了を見越して計画的に更新している自治体がある一方で、予算措置が間に合わない自治体も。納税や住民情報のシステムがXP対応で、システムの作り替えが必要な自治体からは「こんなに大変な問題とは思わなかった」との声も上がっている。
  ◇   ◇
◆更新費用が重く、無防備に
 米マイクロソフトの基本ソフト(OS)「ウィンドウズXP」の製品サポート終了まで2カ月を切ったにもかかわらず、九州の自治体では対応の遅れが目立つ。古いパソコンでも動作が速いXPは行政のシステムに広く浸透し、一気に切り替えるのが難しい側面はあるが、自治体側の見通しの甘さもうかがえる。総務省は2013年から、都道府県を通じて全市町村にXPのサポート終了期限を周知。OSを更新するか、パソコンをインターネットに接続しないよう注意喚起している。製品サポートが終了すると、マイクロソフトが行っていた安全対策がなくなるため、ウイルス感染や、外部からの攻撃による情報流出などの恐れがあるためだ。しかし、ほとんどの自治体のパソコンは3〜5年間のリース契約。契約期限が切れる前に入れ替えると余分な支出を強いられる。宮崎県西都市は保有するパソコン約470台のうち140台がXPを搭載しているが、リース期限前に全てを入れ替えると300万円以上の出費となるため断念。50万円で済む安価なウイルス対策ソフトを追加することで約1年間をしのぐことにした。担当者は「安全性と予算の両方を考えた結果」と説明する。同県日南市では、庁内の窓口で使うパソコン約200台の事務システムがXP対応。システム自体を作り替えるめどが立っていないため、パソコンの入れ替えは4月以降になる。担当者は「ネットに接続せずに使うので危険性はないはず」という。
●甘い見通し
 01年に発売されたXPは、古い型のパソコンでも動作が速いなど、機能性が高いことから、行政機関で長く愛用されてきた。マイクロソフトは2〜3年に1度のペースで新OSを発売しているが、後継OSの「ウィンドウズVista」の発売は06年と間隔が空いた。さらにVistaの動作が不評だったこともあり、XPの切り替えは進まなかった。Vista搭載機を導入した後、再び使い勝手の良いXPにバージョンを下げる自治体もあったという。長崎県はXP搭載パソコンのリース契約が切れた09年、後継のVistaを避けて、あえてXP搭載機を再び導入。大半はリース契約が9月まで続くため、XP搭載の約1070台は全てサポート終了後もそのまま使い続ける予定だ。担当者は「大量に普及した製品なのでサポート期間の延長もあり得ると期待していた」と話すが、計画的にパソコンを更新してきた自治体に比べると、見通しの甘さは否めない。
●企業も課題
 XPの更新が必要なのは企業や個人も同じ。日本マイクロソフトはサポート期間終了に向け、全国の商工会議所と連携してセミナーを開き、企業にOSの移行を促している。自治体と同様に、会計システムなどをXPで構築しているケースが多く、大きな費用負担が掛かることから中小零細企業で対応が遅れがちだ。XPのサポート終了に合わせ、多くの自治体や企業は後継の「ウィンドウズ7」に切り替えている。ただ、7は20年1月、さらに新しい「ウィンドウズ8」も23年1月にはサポートが終了する。サポート期限を見越したセキュリティー対策は今後も必要とみられる。「ウィンドウズを使う限り、振り回され続けるのか」。自治体担当者からはため息が漏れた。

*4-1:http://www.kochinews.co.jp/?&nwSrl=319509&nwIW=1&nwVt=knd
(高知新聞 2014年5月2日) 【通信傍受】こんな拡大は許されるか
 取り調べ可視化の在り方を議論している法制審議会の特別部会で、見過ごせない問題が扱われている。通信傍受の対象となる犯罪の種類の拡大で、現在の4種を大幅に緩める案が浮上している。通信傍受の対象を限定し、運用も厳格化したのは、根拠となる通信傍受法が、憲法の保障する「通信の秘密」を侵しかねないからだ。国民生活に関わる問題だけに、議論の行方を注視する必要がある。1999年成立の通信傍受法は、法案段階から賛否の論議を呼んだ。通信の秘密のほかにも人権侵害や監視社会への懸念が消えなかった。その少し前には神奈川県警による共産党幹部宅の電話盗聴事件が起きている。こうした懸念を考慮し、通信傍受法は一定、抑制した内容となった。その一つは傍受対象で、傍受できるのは組織犯罪に限った。具体的には薬物犯罪、銃器犯罪、組織的殺人、集団密航の4種とする。もう一つは運用の厳格化だ。傍受の際は通信事業者(電話会社の職員)が立ち会い、傍受した通信はすべて媒体に記録し、その都度、裁判官に提出すると定めた。捜査側からは法の使い勝手に対する不満もあったが、憲法との整合性、国民の懸念を考え、ぎりぎりの線で折り合った内容とも言える。それから15年、特別部会に示された法務省の法改正試案は、もろもろの懸念を忘れたかのようだ。試案は捜査当局が電話、電子メールを傍受できる対象を広げ、組織性が疑われる殺人、放火、詐欺、窃盗などを新たに追加する。運用面では通信事業者の立ち会いは不要、としている。「組織性が疑われる」と判断するのは捜査側だから、恣意(しい)的な解釈がまかり通る恐れは多分にある。立会人がいなくなると、この傾向に拍車が掛かるのは必至だろう。元職員の告発で明るみに出た米国家安全保障局(NSA)の通信傍受疑惑は、他の国々にも広がっている。傍受の対象は国家首脳ばかりではない。大量の個人情報も狙われている。通信傍受をいったん認めると、歯止めをかけるのは容易ではない。今、世界が直面しているのはその現実だ。法制審議会の論議も、通信傍受の負の側面と無関係ではないはずだ。

*4-2:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20140417&ng=DGKDASDZ160FS_W4A410C1MM8000
(日経新聞 2014.4.17) ビッグデータ300社連携、相互利用へシステム共有 開発・販売に活用
 インターネットイニシアティブ(IIJ)や富士通総研などが連携し、個人の買い物履歴などのビッグデータを他社と互いに活用しあう専門組織を5月に設立する。自社と他社のデータを組み合わせ、製品開発や販売促進などに生かせる。設立時には約30社が参加し、2017年に300社への拡大を目指す。ビッグデータのビジネス利用に弾みがつきそうだ。ビッグデータの活用には分析のシステムや専門家が必要だが、日本ではすべてを備えている企業は少ない。専門組織はこれらも提供し、各社が活用しきれていないデータの真価を引き出す手助けをする。ビッグデータを交換する専門組織は日本で初めて。精密機器や食品などの大手メーカー、広告、放送、印刷などが参加する。各社は年間30万円を払って組織に加わり、他社が持つビッグデータのリストを見ることができる。これを踏まえて他社にデータ利用を申し込んだり、自社データの提供を持ち掛けたりする。複数のビッグデータを組み合わせると新たなサービスが生まれる。例えば食品メーカーが新製品の評判をアンケートで把握しようとすると時間がかかる。メーカーが持つ出荷データと、IT(情報技術)企業が持つツイッターの分析結果、小売店の販売状況を突き合わせれば、リアルタイムで消費者の反応を知ることができる。これを販促などに生かす。企業間だけではなく、国や自治体が持つ公開データも活用する。専門組織の名称は「データエクスチェンジ・コンソーシアム」。ビッグデータ分析のデータセクション(東京・渋谷)と、ネットを使ったマーケティングを手掛けるデジタルインテリジェンス(同)が母体を設立。IIJや富士通総研など参加企業が運営する。IIJはビッグデータの分析などに使うクラウド環境を構築する。富士通総研はブログなどから収集した24万人分の消費者行動データを参加企業に提供する。データセクションもツイッターなどの分析データを出す。コンソーシアムは設立後も参加企業を広く募る。業種や事業規模などの条件は付けない。弁護士も参加しており、個人の情報を守る共通ルールを設ける。政府が検討しているガイドラインにも準拠する。ビッグデータ活用が盛んな米国では複数の企業がデータ交換を手掛け、顧客企業の間で新たなビジネスやサービスが生まれている。これまでは企業が自社のビッグデータを他社に売却し、消費者の反発を招いたこともあった。専門組織では消費者の疑念を呼ばない仕組みづくりも進め、ビッグデータを事業に生かす。

*4-3:http://www.saga-s.co.jp/news/national/10202/75759
(佐賀新聞 2014年6月19日) 個人データ同意なしで利用可能に、匿名条件、大綱案策定
 政府のIT総合戦略本部の検討会は19日、インターネット上などに蓄積されている個人関連データの取り扱いルールをまとめた大綱案を示した。商品の購買履歴など一部のデータは、本人の同意がなくても匿名化を条件に企業の利用を認めることを明記した。個人情報を保護する観点から、不正利用を監視する第三者機関の設置も盛り込んだ。政府は月内にも大綱を正式に決め、個人情報保護法の改正案を来年の通常国会に提出する予定。「ビッグデータ」と呼ばれる膨大なデータを有効活用することで、ビジネスチャンスを広げる狙いがある。ただ、プライバシーをきちんと保護できるかどうかなど、慎重な対応を求める声も上がりそうだ。現行法は、氏名や住所といった個人の特定につながる情報に関し、企業が第三者に提供したり目的外で利用したりする場合は本人の同意を義務付けている。IT技術の進展に伴い、現行法で想定していなかった種類の個人関連データやその活用法が広がっており、ルールを明確化する必要性が指摘されていた。大綱案は、購買やネットの閲覧履歴、スマートフォンで把握できる位置情報などは、個人が特定されないようにデータを加工すれば本人の同意がなくても第三者に提供できるとした。一方、人種や信条といった機微に触れる情報は、第三者への提供禁止を含め、慎重な取り扱いを求めた。また、企業への指導や立ち入り検査の権限を持つ第三者機関を新設し、監督を強化する仕組みづくりを提案した。

| 民主主義・選挙・その他::2013.12~2014.11 | 01:27 PM | comments (x) | trackback (x) |
2014.6.19 街づくりと電力自由化、電線地中化、カジノなど
   
2014.6.11産経新聞より       *2より

(1)2016年から家庭向電力が自由化されること
 *1に書かれているとおり、改正電気事業法が2014年6月11日に成立し、2016年から家庭向電力も自由化されて、電力の本格的な市場競争が始まることになった。電力自由化は、2000年に大口利用者向け、2004年に中規模利用者向けが行われており、今回、コンビニや家庭向けも行われて完成する。

 この際、地域独占を排して地域間の電力供給も可能にするため、電力会社間の相互乗り入れや、ガス会社、通信会社、IT企業、その他企業の新規参入も見込まれ、電力供給の方法も進歩することが期待される。これを、原子力や火力のように環境に負荷をかける発電方法を止め、送電ロスの少ない送電方法を普及させる機会にしたいものである。

 なお、「電力会社には離島などでも都市部と同じ程度の料金を維持するよう義務づける」としているが、離島は風力、太陽光、汐潮発電の適地であるため、それら自然エネルギーの発電所を作るために補助してもらう方が有難いだろう。船も電動になれば、漁船や連絡船への充電が安価にできて便利になる。

(2)電線の地中化について
 *2のように、政府・自民党は電線の地中化を促す新法を制定する検討に入り、道路や住宅地を新たに整備する際には電柱の設置を認めず、既存の電柱も低コストの工法を普及させて地下に埋めるよう促すそうだが、ロンドン、パリ100%、ニューヨーク83%と地中化率は高いのだから、素早くやればよい。

 ただ、地中化の方法は、すでに上下水道管を埋設している市町村やガス管を埋設しているガス会社に頼んで近くに埋設させてもらえば、比較的安価で素早く電線の地中化ができると思われる。そうすれば、2020年の東京五輪に間に合わせられる地域も少なくないだろう。

(3)カジノを中心とした統合型リゾートとは・・
 *3-1のように、カジノ(日本語:ばくち、賭博)を中心とした統合型リゾートを作りたいと考える人がいるが、人を不幸にして金もうけを行い、それにより治安の悪化や風俗の乱れを起こす社会的コストは馬鹿にならない。そのため、これは、一種の公害だと、私は考える。

 その例は、*3-2のように、誰より早く出社して従業員の話に耳を傾け、幹部と酒を酌み交わして会社の将来を語りあい、会長の時代がくれば会社は変わると期待されていた大王製紙前会長の井川被告が、「遊ぶスリルがあったのと、大きく負けると深みにはまり、取り返しがつかなくなった」と語っていることからも明らかである。損失の規模は違っても、このようなことは競馬や競艇でも起こっており、高い社会的コストを支払って、無駄なエネルギーを使わせる品の悪い街づくりをすることに、私は反対だ。

 「アメリカにもラスベガスがある」と言う人もいるが、ラスベガスは首都ワシントンやニューヨーク(日本では東京・大阪に匹敵)にあるのではなく、ネバダ州の田舎の大自然の中に作られたものだ。日本なら、無人島をラスベガスのような街にして、外貨を稼ぐようなものである。

<電力自由化>
*1:http://digital.asahi.com/articles/ASG6C4SK3G6CULFA01K.html
(朝日新聞 2014年6月11日) 家庭向け電力、16年から自由化 サービス競争本格化
 家庭が電気料金やサービスを比べて電力会社を選べるようになる改正電気事業法が11日、成立した。いまは東京電力など電力10社が家庭に電気を売っているが、2016年からはいろいろな企業が家庭向けに電気を売る「電力小売り」に参入できる。競争が本格的に始まると、くらしはどう変わるのか。
■参入に期待、料金値下げにつながるか
 電力小売りは東京電力などの電力会社が地域ごとに独占してきた。これを自由化するため、00年に大きな工場など産業用の大口利用者向けに新規参入が認められ、04年に百貨店など商業用の中規模利用者向けに広げられた。今回の改正は、企業向けに加え、コンビニエンスストアや家庭向けでも16年から新規参入を認める「全面自由化」だ。たとえば関東の家庭では、東電ではなく、中部電力や新規参入の会社から電気を買えるようになる。ガス会社や通信会社などいろいろな業種の企業が参入するとみられ、電気料金は「昼は高いが、夜は安い」というプランや、ガス代や携帯電話代との「セット割引プラン」などの選択肢が増えそうだ。今は円安などで火力発電に使う燃料が高くなり、電気料金は値上がりしている。家庭向けの電気を売る企業が増えれば、サービスや価格の競争が激しくなり、料金を抑える効果も期待できる。経済産業省は、自由化される家庭向け電力の市場を7・5兆円と試算している。これをねらい、東京ガスや石油元売り大手のJXホールディングスは今年4月に電力専門の部署を立ち上げた。東京ガスの山上伸常務執行役員は「電力とガス両方を提供できるサービスを考えたい」と話す。太陽光発電に熱心なソフトバンクのような通信会社なども名乗りを上げる。IT企業の楽天も昨年、エネルギー部門を立ち上げた。最近では電力会社が火力発電所をつくる際にも、ほかの電力会社やいろいろな企業が建設に加わろうと入札に参加するようになった。電力業界にくわしいATカーニーの笹俣弘志パートナーは「発電と小売りがセットで自由化されることで、新規参入が進むだろう」とみている。ただ、これまでの企業向け小売りでは、新規参入企業のシェアは13年度で約4%にとどまっている。16年から家庭向けを自由化しても、本格的な競争がすぐに始まるとは限らない。このため、電力会社が家庭向け料金を値上げする場合は国が審査したうえで認可するという今の仕組みを当面残す。電力会社に料金水準を決める主導権を握らせないためで、新規参入の広がりを見極めたうえでこの仕組みをなくす。また、電力会社には離島などでも都市部と同じ程度の料金を維持するよう義務づける。政府は今後、18年をめどに電力会社から送電部門を切り離す「発送電分離」も検討している。こうした自由化で電力会社の「地域独占」が崩れて競争が激しくなれば、電力会社の再編や淘汰(とうた)につながる可能性もある。電力の安定供給を続けながらサービスや料金をどう競い合うか。電力会社も経営改革が求められる。(藤崎麻里、大津智義)
■改正電気事業法のポイント
 ・新規参入企業の家庭向け電力販売が可能に
 ・販売量に応じた電力の確保を義務化
 ・契約内容の書面による丁寧な説明を義務化
 ・いまの電力大手の料金規制は当面維持
 ・電力大手に離島でも都市部と同程度の料金維持を義務化

<電線地中化>
*2:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20140619&ng=DGKDASFS1802Q_Y4A610C1MM8000
(日経新聞 2014.6.19) 電柱新設を禁止 地中化へ新法検討 政府・自民、五輪へ景観・防災改善
 政府・自民党は電線の地中化を促す新法を制定する検討に入った。道路や住宅地を新たに整備する際、電力会社などに電柱の設置を認めず、電線を地中に埋めるよう求める。既存の電柱も低コストの工法を普及させて地下に直接埋めるよう促す。2015年にも法案を提出し、20年の東京五輪を見据えて都市の景観や防災機能を改善する。自民党が19日開く専門委員会で方針を示す。同党は来年の通常国会に、地中化の基本方針を示した「無電柱化基本法(仮称)」を議員立法で提出する考えだ。国土交通省も具体策の検討に入る。政府・自民党案ではまず電柱の新設を規制する。住宅建設などで電柱は年7万本のペースで増えている。道路管理者である国や自治体は電柱の新設を法令などで原則禁止し、電線は地下に埋める工事のみ認めるようにする。まずは道路の新設や拡張工事、歩道の設置、住宅地の開発時に限って禁止する方向だ。全国に約3500万本ある既存の電柱の電線地中化も促す。都市の景観を改善して訪日観光客を増やす。地震などの災害時に倒壊した電柱が避難や物資輸送を妨げるリスクを抑える狙いもある。課題は財源だ。地中化は道路の地下に管路を設けて収容する「電線共同溝方式」が主流だが、費用は1キロメートルあたり3億5千万円かかる。このため政府・自民党は共同溝をつくらず低コストで電線を直接地下に埋める方式の普及に乗り出す。国交省の試算では整備費が同8千万円と4分の1以下に下がるという。ただそれでも電柱7万本分の電線を地中化した場合、国・地方に単純計算で2400億円規模の財源が必要になる。電線地中化では変圧器や電線の工事で、電力会社にも1キロメートルあたり1億8千万円の負担が発生する。国交省は公的負担の割合を増やすなど、企業の負担軽減策も検討する。電柱を街中からなくす取り組みで日本は世界の都市に出遅れている。ロンドンやパリの地中化率は100%で、ニューヨークも83%と高い。

<カジノ法案>
*3-1:http://www.nikkei.com/article/DGXNASFS18014_Y4A610C1PP8000/
(日経新聞 2014/6/18) 「カジノ法案」、今国会の採決見送り 継続審議へ
 カジノを中心とした統合型リゾートを推進する「特定複合観光施設(IR)区域整備推進法案」が18日、衆院内閣委員会で審議入りした。治安悪化を懸念する公明党内に配慮し、審議開始が遅れていた。22日の今国会会期末が迫っており、自民党は採決を見送り継続審議とし、秋の臨時国会での成立を目指す。共同提出者の細田博之自民党幹事長代行は18日の同委で「国民不安も大きく、丁寧に議論を深めていくことが大事だ」と述べた。同法案は昨年12月、自民党、日本維新の会、生活の党の3党が共同提出した。施設整備への政府の支援を明記し、施設関係者を規制する「カジノ管理委員会」を内閣府の外局に置くことを盛りこんだ。安倍晋三首相は5月末、シンガポールのカジノ施設を視察し、政府は月末にまとめる成長戦略にもIR設置の検討を盛りこむ方向だ。

*3-2:ttp://sankei.jp.msn.com/affairs/news/120721/trl12072112010000-n1.htm (産経ニュース 2012.7.21) 「私はギャンブル依存症」 大王製紙の東大卒御曹司が初めて語ったギャンブラーの心理と論理
 カジノ費用に充てるため子会社から計55億3千万円を無担保で借り入れ損害を与えたとして、会社法違反(特別背任)罪に問われた大王製紙前会長、井川意高(もとたか)被告(47)の公判が18日、東京地裁で開かれた。(中略) 22年には年間33回海外に渡航、カジノに興じた被告。軍資金の借り入れに窮し、依頼先はファミリー企業や連結子会社に移っていく。弁護側の被告人質問では、借金について当時の心境を問われ、こう答えた。 「ギャンブルで10億円勝ち、返済できた経験もあった。どうにか返せないかと考えてしまいました」。(中略) 被告人質問に先立って行われた証人尋問では、かつて直属の部下だった現在の大王製紙専務が、井川被告の仕事ぶりについてこう話していた。「誰より早く出社して従業員の話に耳を傾け、われわれ幹部とは酒を酌み交わして会社の将来を語りあった。会長(井川被告)の時代がくれば、会社は変わる。期待を持って仕事をしていた」。ワンマンオーナーだった父親とは対照的な仕事ぶりで、部下の絶大な信頼を勝ち取り、実績を積み上げていた井川被告。左陪席の裁判官は腑に落ちない表情で質問した。
裁判官「みんながあなたの仕事を評価しています。本来極めて合理的な考えを持っているのに、なぜギャンブルで損失を取り戻そうと考えたんですか。子供でもわかることでしょう。そのギャップが埋められません」。被告「遊ぶスリルがあったのと、大きく負けると深みにはまり、取り返しがつかなくなりました。ギャンブルに勝手な期待値を描いてしまいました」。検察官から「苦労のない人生を送ってきたのか」と問われた際、「人の考え方によります。…恵まれていたと思います」と言葉を選ぶように話す姿が印象に残った。起訴状によると、井川被告は昨年3~9月、大王製紙の子会社7社から計55億3千万円を本人名義などの銀行口座に無担保で入金させ、損害を与えたとされる。東京地検特捜部の調べでは、そのほかの関連会社などを含めた借入総額は約165億円と判明。今年3月の初公判で、井川被告は「間違いございません」と起訴内容を認めている。(以下略)

| まちづくりと地域振興::2014.4~2015.4 | 05:50 PM | comments (x) | trackback (x) |
2014.6.18 原発事故時に被害を受ける原発周辺地域は、半径30キロ圏内よりずっと広いこと
 
          2014.6.14東京新聞より          *4-1より   

(1)フクイチ事故では首都圏も放射能汚染されているが、報道されていない
 *1に書かれているとおり、埼玉県西部にある秩父市内で捕獲されたシカに含まれる放射性セシウム濃度は、捕獲場所付近の空間放射線量が毎時0.05~0.07マイクロシーベルトだったにもかかわらず、モモ肉からは1キログラム当たり189.4ベクレル、肺からは54.9ベクレル検出された。その理由は、セシウム濃度の高い地面の土が風で巻き上げられて吸い込んだもので、住宅地の放射性セシウムが山林より低いとしても、人間も同じ傾向にあるだろう。

 なお、*1だけではなく、このブログの2014.6.16の*4-2の西東京市の農場にあるモモの樹も汚染されていたことで、首都圏の放射能汚染も確実だが、これはTVでは報道されず、サッカー、お天気、殺人事件などの報道ばかりがなされており、TVは、「民は依らしむべし、知らしむべからず」という民主主義以前の姿勢を維持しているようだ。成人の日本国民は全員1票持っているため、これでは、選挙しても候補者が正当に評価されて当選しないのは当然である。

(2)原発攻撃への備えと最終処分場
 *2-1のように、外務省は、1984年、日本国内の原発が攻撃を受けた場合の被害予測を研究し、原子炉や格納容器が破壊された場合と東電福島第一原発事故と同じ全電源喪失を想定し、大量の放射性物質が流出して最大1万8千人が急性死亡するという報告書を作成したが、反原発運動の拡大を恐れて部外秘扱いにして公表しなかったそうだ。「依らしむべし、知らしむべからず」では、こうなるのである。

 なお、テロ・攻撃・天災なども過酷事故の発生リスクとして認めれば、現在、原発の使用済核燃料プールいっぱいに保存されている使用済核燃料も、早々に処分しなければ危険である。しかし、*2-2に書かれているとおり、2007年に高知県東洋町が候補地として名乗りをあげた時は反対が多く、それを言いだした町長は出直し町長選で負け、反対派が2倍以上の得票で当選したため、候補地への応募を撤回し、現在も最終処分場の建設候補地選定はできていないという経緯があるのだ。

(3)原発事故時に被害を受ける範囲は30キロ圏内だけではない
 福井地裁大飯原発3、4号機差止訴訟判決では、原発事故時に被害を受ける範囲を250キロ圏内とし、それは、上の(1)でも証明されている。このように、原発事故時に被害を受ける範囲は、30キロ圏内よりもかなり広い範囲だ。

 *3-1では、玄海原発の操業停止を九州電力と国に求めている「原発なくそう!九州玄海訴訟」の原告団が、原発事故で放射性物質がどこまで拡散するかについて風船を飛ばして実験し、冬は強い偏西風の影響で、玄海原発から554キロ離れた奈良県まで飛んだそうである。

 また、*3-2のように、茨城県は、「30キロ圏外でも原子力事故による被災地となることを体験をもって明らかにしている」として30キロ圏にとらわれない原子力災害対策等を要望している。

 さらに、*3-3のように、北大名誉教授の小野氏は、講演で、「泊原発が事故を起こしたら、北海道はすべてを失う」「上空にはいつも西風が吹いており、放射性物質が流れてくる。日高山脈も越えるのは容易で、釧路にも影響を及ぼすだろう」としている。

(4)有効な避難計画はできているのか
 *4-1に書かれているように、福岡、佐賀、長崎3県が示した周辺住民の避難時間推計において、試算の前提条件に、現実性に乏しい甘い前提の項目が多く含まれていることが分かったそうだ。こういう前提にした理由を、三菱重工業は「佐賀県と協議して決めた」「米国では避難シミュレーションに不確定要素を取り込まないのが通例」と説明しているが、30キロ圏内に限っても行政の自己満足程度の避難計画しかできていないのである。
 
 また、*4-2のように、再稼働に向けた審査が全国の原発の中で最も早く進んでいる九電川内原発では、鹿児島県が発表した重大事故時の避難時間推計が、渋滞やガス欠、病院や施設入所者などについて全く考慮しておらず、「お粗末すぎる」との専門家の批判が相次いでいる。しかし、そもそも30キロ圏内の人が一時的に避難すれば、帰って元どおりの生活に戻れるという前提は甘すぎるのである。

 さらに、*4-3には、「地元市長がJR九州に打診し、川内原発の避難に新幹線の活用を探っている」と書かれているが、原発の過酷事故が起これば、せっかく開通した新幹線も高線量で運行できなくなる可能性が高い。

(5)原発再稼働の推進団体と阻止団体
 *5-1のように、原子力推進を訴える「(社)原子力国民会議」の第1回九州集会が福岡市のホテルで開かれ、九州の経済界、大学、自治体からの出席者が、「原発停止に端を発する電気料金値上げで産業や生活が圧迫され、経済の重大な懸念材料になっている」として、集まった約500人に原発の必要性を訴えたそうだ。

 しかし、これについては、このブログの2014.5.26に掲載している大飯原発再稼働差止判決が、「個人の生命、身体、精神及び生活に関する利益は、人の生命を基礎とする憲法上の権利であるため(13条、25条)、我が国の法制下ではこれを超える価値を他に見出すことはできない」「被告は、原発の稼動が電力供給の安定性、コストの低減につながると主張するが、当裁判所は、極めて多数の人の生存そのものに関わる権利と電気代の高い低いの問題等とを並べて論じるようなこと自体、法的には許されないと考えている」「原発から250キロメートル圏内に居住する者は、原発の運転によって直接的にその人格権が侵害される具体的な危険があると認められる」と明快に結論付けており、そのとおりだ。

 さらに、フクイチでは、原発では絶対に起こらないとされていた過酷事故が起こり、その原因も影響範囲も未だ明らかにされていない。そのため、当然、解決もされておらず、「一度失敗したらだめ」というよりは、大きな事故で、「これまでの楽観論では駄目」ということが明白になったと考えるべきである。

 そのため、*5-2のように、北海道や九州で原発廃炉訴訟などを起こしている原告団が、東京都内で記者会見して、全国の原発関連訴訟の原告団が連携する「脱原発原告団全国連絡会」の結成を表明し、全国の弁護団も「連絡会」を結成して、お互いに知識のブラッシュアップや裁判期日が入った裁判所における傍聴などで協力するそうだ。

 また、*5-3のように、鹿児島県内では、九電川内原発の再稼働について、「いのちの会」が再稼働の是非を問うアンケートをとったところ、回答した1001人のうち85%が再稼働反対だったそうである。 

<フクイチで汚染された範囲>
*1:http://radiation7.blog.fc2.com/blog-entry-3265.html (東京新聞 2014.2.2) 報道されない首都圏の放射能汚染、秩父のシカのモモ肉189.4ベクレル、肺54.9ベクレル、汚染物質を吸い込んだ証拠
 東京電力福島第一原発事故後、食品に含まれる放射性物質の濃度などを調べている「みんなの測定所in秩父」(秩父市黒谷)を運営する市民団体が、市内で捕獲された野生シカ二頭の部位ごとの放射性物質量を調べた結果をまとめた。福島県内では家畜で同様の調査が行われた例はあるが、県内でのデータは珍しいという。同団体は「今後の対策を考える資料にしてほしい」と話している。秩父市内の野生シカからは一般食品の基準値(一キログラム当たり一〇〇ベクレル)を超える放射性セシウムが昨年も検出されており、県内全域で捕獲されたシカの肉の出荷・販売の自粛が続いている。市民団体が調査したのは、昨年十一~十二月に秩父市大滝で捕獲された三歳前後のメス(体重四八キロ)と、七~八カ月のオス(同三〇キロ)。捕獲場所付近の空間放射線量は、毎時〇・〇五~〇・〇七マイクロシーベルトだった。モモ肉や内臓など約三十の部位のセシウム濃度を調べたところ、モモ肉から一キログラム当たり一八九・四ベクレルが検出された。他の家畜調査の結果と同じく、骨格筋にセシウムがたまりやすい性質が確認できたという。また、メスの肺からは比較的高い五四・九ベクレルが検出された。市民団体の関根一昭代表は「セシウム濃度が高い腐葉土が風などで巻き上げられ、シカが吸い込んだ可能性がある」と分析している。

<原発攻撃への備え、最終処分場>
*2-1:http://www.asahi.com/special/10005/TKY201107300615.html (朝日新聞 2011年7月31日) 原発への攻撃、極秘に被害予測 1984年に外務省関連トピックス東京電力 原子力発電所
 外務省が1984年、日本国内の原発が攻撃を受けた場合の被害予測を極秘に研究していたことがわかった。原子炉や格納容器が破壊された場合に加え、東京電力福島第一原発の事故と同じ全電源喪失も想定。大量の放射性物質が流出して最大1万8千人が急性死亡するという報告書を作成したが、反原発運動の拡大を恐れて公表しなかった。欧米諸国は原発テロを想定した研究や訓練を実施しているが、日本政府による原発攻撃シナリオの研究が判明したのは初めて。1981年にイスラエルがイラクの研究用原子炉施設を爆撃した事件を受け、外務省が財団法人日本国際問題研究所(当時の理事長・中川融元国連大使)に想定される原発への攻撃や被害予測の研究を委託。84年2月にまとめたB5判63ページの報告書を朝日新聞が入手した。報告書は(1)送電線や原発内の電気系統を破壊され、全電源を喪失(2)格納容器が大型爆弾で爆撃され、全電源や冷却機能を喪失(3)命中精度の高い誘導型爆弾で格納容器だけでなく原子炉自体が破壊――の3段階に分けて研究。特定の原発は想定せず、日本の原発周辺の人口分布とよく似た米国の原発安全性評価リポートを参考に、(2)のケースについて放射性物質の放出量を今回の事故の100倍以上大きく想定。様々な気象条件のもとで死者や患者数などの被害予測を算出した。緊急避難しなければ平均3600人、最大1万8千人が急性死亡すると予測。住めなくなる地域は平均で周囲30キロ圏内、最大で87キロ圏内とした。(3)の場合は「さらに過酷な事態になる恐れが大きい」と記した。ところが、外務省の担当課長は報告書に「反原発運動への影響を勘案」するとして部外秘扱いにすると明記。50部限定で省内のみに配り、首相官邸や原子力委員会にも提出せず、原発施設の改善や警備の強化に活用されることはなかった。当時、外務省国際連合局審議官としてかかわった遠藤哲也氏は「報告書はあくまで外務省として参考にしたもので、原子力施設に何か対策を講じたわけではなかった」と話す。外務省軍備管理軍縮課は「調査は委託したが、すでに関連資料はなく、詳しい事情は分からない」としている。二ノ方寿・東工大教授(原子炉安全工学)は「日本では反対運動につながることを恐れ、テロで過酷事故が起こることはあり得ないとされた。攻撃もリスクの一つとして認め、危険性や対策について国民に説明すべきだ」と話す。

*2-2:http://www.yomiuri.co.jp/economy/20140607-OYT1T50099.html
(読売新聞 2014年6月7日) 「核ごみ」機構、トップ更迭…処分場選び加速へ
 政府は、原子力発電所から出る「核のごみ」の最終処分場の選定や建設を担う「原子力発電環境整備機構」の山路亨理事長(65)を、任期途中で退任させる方針を固めた。後任には前原子力委員会委員長の近藤駿介氏(71)が起用される見通しだ。トップ交代により、最終処分場の候補地選びを加速させるのがねらいだ。近藤氏は7月にも就任する見込みだ。機構は2000年に設立された。これまで、高知県東洋町が候補地として名乗りをあげたが、その後取り下げ、選定作業は難航している。政府は昨年12月、地方自治体側の立候補を待つ従来の方針を、国主導で処分場を選定する方向に転換させた。機構に対しては「待ちの姿勢で組織としての危機感が欠如している」(政府関係者)などと批判を強めていた。東京電力出身の山路理事長は06年12月に就任し、現在、8年目。16年まで約2年の任期を残して退任することになる。

<原発事故時に被害を受ける範囲>
*3-1:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/73331
(佐賀新聞 2014年6月12日)  風船調査まとめ出版 脱原発団体がブックレット
 玄海原発の操業停止を九州電力と国に求めている「原発なくそう!九州玄海訴訟」の原告団が、原発事故で放射性物質がどこまで拡散するか風船を飛ばして調べた活動をブックレットにまとめ出版した。調査は2012年12月から1年間、季節別に計4回実施。原発が立地する東松浦郡玄海町から毎回、風船を1千個程度飛ばした。140~430キロ離れた地点まで飛来が確認され、特に冬場は強い偏西風の影響で、玄海原発から554キロ離れた奈良県で見つかった。ブックレットには調査結果のほか、全国から訴訟に参加している作家らが文章を寄せた。プロジェクトリーダーの柳原憲文さん(43)は「過酷事故が玄海原発で起きた場合の恐ろしさを実感できる。二度と繰り返さないために、本を通して脱原発が必要なことを伝えていきたい」と話す。A5判125ページ。1部千円(税別)。問い合わせは佐賀中央法律事務所、電話0952(25)3121。

*3-2:http://ibarakinews.jp/news/newsdetail.php?f_jun=14029276486184
茨城新聞 2014年6月17日) 原発30キロ圏外も対策を 県南6首長、県に要望へ
 東京電力福島第1原発事故に伴う放射性物質の汚染状況重点調査地域に指定されている県南地域の6市町村は16日、県の原子力災害対策について、国に安全審査を申請した日本原子力発電東海第2原発(東海村)の30キロ圏内にとどまらず、全県に拡大すべきとする要請書をまとめ、橋本昌知事に提出することを決めた。要請書をまとめたのは牛久、稲敷、龍ケ崎市と阿見、利根町、美浦村で構成する「稲敷地区6市町村放射能対策協議会」(会長・池辺勝幸牛久市長)。いずれも国から汚染状況重点調査地域に指定され、除染や食品などの放射性物質検査に追われている。同日夕、牛久市役所で協議会を開き、代理人出席を含めて全首長が要請書に合意した。福島第1原発事故で6市町村の放射線量が高くなったことから、要請書は「30キロ圏外でも原子力事故による被災地となることを体験をもって明らかにしている」「30キロ圏内のみを対象としている県の原子力災害対策は事故の教訓を軽視していると言わざるを得ない」と指摘。その上で、(1)30キロ圏にとらわれない原子力災害対策(2)事故発生の通報体制や安定ヨウ素剤の整備(3)原子力安全協定にかかわる重大問題についての情報提供と意見表明の機会-を県内全域を対象に求めた。要請は原電と東海第2の立地・周辺11市町村で進められている原子力安全協定の見直しを念頭に置いており、16日の協議会後の会見では首長らから「住民に説明責任がある中、県からは東海第2原発の安全審査などの情報が入らない」「30キロ圏内外にかかわらず、県全域で対応すべき」などと、不満の声が上がった。

*3-3:http://www.news-kushiro.jp/news/20140615/201406155.html
(釧路新聞 2014年6月15日)  泊原発「釧路にも影響」/釧路集会でリスク語る
  脱原発への思いを広げようと「さようなら原発1000万人アクション」IN釧路集会が14日、釧路市内で開かれ、泊原発の廃炉をめざす会代表の小野有五さん(北大名誉教授)が原発のリスクや事故の問題点などについて語った。釧路集会は平和運動フォーラム釧根地域協議会、いのちとくらしを守る釧路市民会議、脱原発ネット釧路による実行委員会の主催。講演の中で小野さんは「泊原発が事故を起こしたら北海道はすべてを失う」とし、「上空にはいつも西風が吹いており放射性物質が流れてくる。日高山脈も越えるのは容易で、釧路にも影響を及ぼすだろう」と述べた。

<避難計画>
*4-1:http://www.nishinippon.co.jp/nnp/f_sougou/article/95034
(西日本新聞 2014年6月15日) 玄海原発事故時の3県推計 「避難時間」甘い前提で試算 [福岡県]
 「避難車両の交通事故やガス欠は想定しない」「避難行動は原発から半径30キロ圏内でのみ発生する」-。九州電力玄海原発(佐賀県玄海町)での重大事故を想定し、福岡、佐賀、長崎3県が示した周辺住民の避難時間推計で、試算の前提条件に、現実性に乏しい項目が数多く含まれていることが分かった。3県は試算で半径30キロ圏の住民約27万3千人が避難するには約17~43時間が必要と発表したが、防災の専門家からは「最悪の条件によるシナリオに基づかなければ十分な備えはできない」と有用性を疑問視する声も出ている。西日本新聞は3県から試算業務を請け負った三菱重工業(東京)が佐賀県に提出した報告書を、情報公開請求して入手した。それによると、三菱重工業は自社開発のプログラムを用い、約2600万円をかけて5キロ圏の住民を優先的に避難させるケースなど52パターンを検討した。避難時間を算出するため設定した前提条件は27項目。東京電力福島第1原発事故が発生した際の避難実態に照らすと、現実的な避難者や緊急車両の動きを反映していない設定がある。福島県原子力安全対策課によると、地震と津波の複合災害となった福島事故では、道路や橋にできた亀裂で避難車両がパンクして動けない事例が続出。避難指示区域となった原発から20キロ圏の大半が停電し、信号機が停止したり、ガソリンスタンドで給油できずに車がガス欠したりした。50~60キロ圏でも県外に自主避難する人が相次いだという。しかし、福岡、佐賀、長崎3県の避難時間推計の前提条件は「避難行動は30キロ圏内でのみ発生する」と設定。事故の収束作業のため原発に向かう緊急車両があるのは確実だが、「新たな30キロ圏外からの車両の流入はない」とした。避難道路の状況も、信号機は「平日日中の信号管制が継続する」とみなし、通行止めなどの発生は「避難開始前に住民に周知され、規制誘導は必要ない」と設定した。こうした前提条件にした理由を三菱重工業広報グループは「佐賀県と協議して決めており回答できない。ただ、米国では避難シミュレーションに不確定要素を取り込まないのが通例」と説明。佐賀県消防防災課は「27万人の動きを予測するにはある程度、設定を単純化しなければならない。これまでに避難時間の指標となる推計はなかったので、一つの目安として考えている」としている。
■行政の自己満足
 河田恵昭関西大学教授(防災・減災学)の話 避難時間を推計する際は、最悪の被災シナリオを考慮することが重要だ。今回の前提条件は福島原発事故の教訓を反映しておらず、行政の自己満足にすぎない。住民の命にかかわるリスクを厳しく捉えなければ、推計の意味が問われる。現実の事故はさまざまな事象が重なり、複雑。せめて原発から放射性物質がどう分布し、この地域は何時間以内に退避しなければ危ないといった情報が必要だ。

*4-2:http://qbiz.jp/article/38828/1/ (西日本新聞 2014年5月30日) 「具体性ない」住民不信、川内原発の避難時間推計 鹿児島県、市町別の試算せず
 「想定が甘すぎる」「再稼働ありきの机上の空論だ」−。鹿児島県が29日発表した九州電力川内原発(同県薩摩川内市)の重大事故時の避難時間推計。市町別の時間を試算しないなど、推計方法や想定の在り方に、住民や自治体関係者から批判や疑問が相次いだ。「最も厳しい想定をした」と県の担当者は胸を張るが、再稼働に向けた審査が全国の原発の中で最も早く進む中、住民の原発不信を深める推計となった。市の全域が30キロ圏に入る同県阿久根市。原発避難計画の周知を図ろうと、市は6月9日まで5回の説明会を予定する。同市の花木俊宗さん(82)は地元であった説明会で、避難先となっている熊本県芦北町までの渋滞時の所要時間を尋ねたが、市の回答は「県の推計が出たら説明する」。花木さんは「住民が一番知りたい市町別の避難時間がないとは。推計の意味がない」と憤る。市の担当者も「今後開く3回の説明会では県の推計も説明するが、住民は納得しない」とこぼした。鹿児島県出水市の説明会に出席した主婦福島直子さん(61)は、推計発表後に再度説明会を開くよう求めた。市が推計を参考に避難計画を見直すと答えたからだが、「この推計で計画を改善できるのか」と疑問を口にする。渋谷俊彦市長は「住民の疑問に答える内容になっていない。今後、避難先までの所要時間をさまざまな具体的パターンで算定するよう県に要望したい」と推計の不備を強調した。推計は、病院や施設入所者の避難時間も示さなかった。原発から5キロ圏にある薩摩川内市高江町の高齢者福祉施設「わかまつ園」は、入居者や利用者が約70人いる。浜田時久園長(63)は「推計を施設の避難計画の改善に役立てようと思っていたが、具体性がなく期待はずれ」と不満を語った。推計結果に不安を訴える声も上がった。原発から23キロの同市入来町で自治会長を務める石塚政揮さん(76)は、最長29時間近くかかるとの結果に「県はおおむね妥当と言うが、地域にはお年寄りが多い。長時間、緊張感を強いられるのはこたえるはずだ」と懸念する。
◆「お粗末すぎる」専門家が相次ぎ批判
 鹿児島県による九州電力川内原発の重大事故時の避難時間推計には、専門家からも批判が相次いでいる。佐賀県が4月末に発表した九電玄海原発(同県玄海町)の避難時間推計は、川内原発の推計の4倍に上る52パターンを想定。市町別の避難時間や圏内住民全員の退去完了時間も推計したほか、最もひどい渋滞が予想される圏内の住民全員が行政の指示を待たずに避難を始めるケースや、5キロ圏の施設入所者や入院患者の避難も想定に入れた。佐賀県消防防災課の川内野修参事は「県によって事情は違う」とした上で「住民に分かりやすいように、国が基準として示す想定より踏み込んだ」と振り返る。鹿児島県は「国の基準に沿った」と説明している。東京女子大の広瀬弘忠名誉教授(災害・リスク心理学)は、川内原発の想定を「お粗末すぎる」と酷評。特に、5キロ圏の避難が優先的に進むとの想定を「あり得ない」と指摘し、「30キロ圏はおろか、広い範囲で住民が避難を始め、推計よりはるかに激しい渋滞が発生するのは目に見えている」と話す。「行政の避難指示から最大2時間で住民が避難を開始する」との県の想定も「訓練を受けた軍隊でなければ不可能。情報をすぐ受け取れない住民も多くいるはずだ」と批判する。避難計画に詳しい環境経済研究所(東京)の上岡直見代表も「他の原発の推計と比べ著しくレベルが低い。再稼働を前提とした都合のいい想定しかしていない」としている。

*4-3:http://qbiz.jp/article/39020/1/
(西日本新聞 2014年6月3日)  川内原発、避難に新幹線の活用探る 地元市長がJR九州に打診
 鹿児島県薩摩川内市の岩切秀雄市長は2日の記者会見で、九州電力川内原発での過酷事故に備え、九州新幹線での住民避難への協力をJR九州に打診したことを明らかにした。避難計画では現在、新幹線の活用は想定されていないが、同社は「可能な限り協力していきたい」(鉄道事業本部)との立場。ただ、原発事故時の運行についての具体的マニュアルはない上、高線量下では運行そのものができなくなるとみられ、実効性は不透明だ。JR川内駅は同原発から12キロ弱にあり、新幹線駅としては全国で最も原発に近い。九州新幹線(6〜8両編成)は、一度に450〜650人規模を運ぶことが可能。岩切市長によると、5月19日に同社の唐池恒二社長を訪ねた際、避難時の協力の可能性を尋ねた。唐池社長も「(正式に)要請があればいつでも受ける。ただ、課題もあるので研究する」と応じたという。国土交通省も昨年12月、交通事業者に対し、原発事故時に自治体側から避難の支援要請があった場合は協力するよう内閣府と連名の文書で依頼。国の原子力災害対策指針では、空間線量がそれほど高くない場合、原発から5〜30キロ圏の住民は屋内退避後1週間ほどかけて避難することになっており、こうしたケースなどでの利用が想定される。ただ、JR九州は現在、空間線量がどの程度上昇すると新幹線の運行を止めるのかなど、大雨や地震時のようなマニュアルを策定していない。また、自前の線量計測装置を持たず、データは行政に頼るしかないほか、車両の汚染検査や除染の態勢を独力で事前に整えておくことも難しいなど、原発事故時の安定運行には課題が山積している。JR九州は今後、原発事故を想定した運行マニュアルを整備するというが、時期は未定。「空間線量が高く即時避難となれば、社員の安全確保の観点からも新幹線の運行はできないだろう」(鉄道事業本部)との見通しを示した。鹿児島県も「新幹線を使った避難については今後の課題」(原子力安全対策課)としている。中部電力浜岡原発(静岡県御前崎市)から20キロ圏に新幹線駅を持つJR東海は「運転停止の数値基準はないが、危険な地域には新幹線を進入させられない」と慎重な構えだ。

<再稼働推進の動き>
*5-1:http://qbiz.jp/article/38952/1/
(西日本新聞 2014年6月2日) 原子力推進訴え「九州集会」 経済界や識者ら500人
 原子力推進を訴える一般社団法人「原子力国民会議」(東京)の第1回九州集会が1日、福岡市のホテルであり、九州の経済界や大学、自治体からの出席者が、集まった約500人に原発の必要性を訴えた。集会では、国民会議の石原進共同代表(九州経済同友会代表委員)が原発停止に端を発する電気料金値上げに触れ「産業や生活を圧迫し、経済の重大な懸念材料になっている」と主張。福岡大の永野芳宣客員教授は「技術は進歩しているのに、原発反対の動きは一度失敗したらだめという日本の悪い風潮の表れだ」と訴えた。東日本大震災で自動停止した宮城県の東北電力女川原発の幹部が、事故対応を語る講演もあった。国民会議は4月に発足し、6月2日までに東京や北海道など4カ所で集会を初開催。終了後、安倍晋三首相に早期の原発再稼働を促す要望書を提出する。

*5-2:http://mainichi.jp/select/news/20140603k0000m040061000c.html
(毎日新聞 2014年6月2日) 原発訴訟原告団:全国組織を設立へ 10月に全国大会
 北海道や九州で原発廃炉訴訟などを起こしている原告らが2日、東京都内で記者会見し、全国の原発関連訴訟の原告団が連携する「脱原発原告団全国連絡会」の結成を表明した。原告団の全国組織設立は初めてで、10月に最初の全国大会を開く。現時点で約10訴訟の原告ら約3万人が参加予定という。住民らが国や電力会社などを相手取った原発訴訟では、2011年7月に全国の弁護団が「連絡会」を結成しているが、原告団の全国組織はなかった。記者会見では、呼びかけ人の一人で「原発なくそう!九州玄海訴訟原告団」の蔦川正義・久留米原告団団長(76)が「人数の多い原告団も少ない原告団もあるが、創意工夫を学び合っていきたい」と抱負を語った。「脱原発弁護団全国連絡会」共同代表の河合弘之弁護士は「弁護団の全国的な連携が、運転差し止めを命じた大飯原発訴訟の福井地裁判決に結実した。原告団も連携することで闘いの輪を広げよう」と訴えた。今後は、原発訴訟の裁判期日が入った裁判所に全国の原告団が駆けつけて支援するなど協力を図る。

*5-3:http://qbiz.jp/article/40028/1/
(西日本新聞 2014年6月17日) 「85%が再稼働反対」 川内原発 市民団体がアンケ結果報告
 九州電力川内原発(鹿児島県薩摩川内市)の重大事故に備えた入院患者や福祉施設入所者(要援護者)の避難計画策定について、同県内で反原発を主張する三つの市民団体は17日、伊藤祐一郎知事が「(県地域防災計画に明記された)原発30キロ圏までの策定は不可能。作らない」と発言したことに抗議する知事宛ての申し入れ書を県に提出した。団体は、原発ゼロをめざす県民の会(井上森雄筆頭代表委員)▽さよなら原発いのちの会(堀切時子代表)▽川内原発建設反対連絡協議会(鳥原良子会長)。申し入れ書では、知事発言を「人命軽視もはなはだしい暴言」と批判し「策定が不可能と認識するなら、川内原発の再稼働は認めないでほしい」と求めた。「いのちの会」は、薩摩川内市の街頭や郵送で5月中旬から募った再稼働の是非を問うアンケートで、回答した1001人の85%が「反対」とした結果も示した。応対した県保健医療福祉課の鎮寺裕人課長は、取材に「策定が非常に困難なのは事実」とする一方、「知事から策定の必要はないとの指示はなく、県として地域防災計画通りに作る方針に変わりはない」と述べ、知事発言に困惑していた。

| 原発::2014.5~8 | 12:20 PM | comments (x) | trackback (x) |
2014.6.16 フクイチの真実と原発の本当のコストを隠したまま、再稼動させよという主張は、無理がある
   
              日本の脱原発集会     台湾の脱原発デモ

(1)福井地裁大飯原発3、4号機差止訴訟判決と
         環境白書の原発事故は最大の環境汚染という記述は重要である
 *1-1で日弁連会長が解説しているように、福井地裁は関西電力に対し、大飯原発から半径250km圏内の住民の生存権・人格権に基づき、3、4号機運転差止を命じる判決を言い渡した。この判決は、福島原発事故の反省の上に立って、国民を放射性物質の危険から守るという視点からなされた画期的判決で、他の原発にもあてはまるということで、私も賛成である。

 また、*1-2のように、今年の環境白書が、原発事故による放射性物質の放出を最大の環境問題と位置づけ、除染や被災者の健康管理を迅速に進めていく必要があることを指摘したのは、行政が原発事故を最大の公害であると認めた点で重要だ。さらに、*1-2には、福島県内の除染土などを保管するため、中間貯蔵施設を設置することが除染の加速化や復興の推進に必要不可欠とも書かれている。

(2)福島第一原発事故爆発の真実とまだ続いている放射性物質の放出
 *2-1に書かれているように、細野氏の証言で、東電福島第一原発事故で格納容器の圧力が異常に上昇した2011年3月15日午前2~3時頃、東電の人たちは「原子炉はもはや制御不能」と語り、作業員の撤退もやむを得ないという雰囲気が官邸内に広がって、原子力安全委員会の班目委員長ら専門家たちも一様に「打つ手無しの状態」だったそうで、最後は菅首相の判断で撤退は認めない方針が決まったとのことである。

 この原発爆発の結果、*2-2のように、事故直後、原発20キロ圏内に住む121世帯380人が国の指示で避難し、3年後の2014年4月、国は避難指示を解除したが、家の裏山側に線量計をかざすと毎時0.73マイクロシーベルト(0.73x24時間x365日=年間6.4ミリシーベルト)の放射線量があり、一般人の被曝限度である年間1ミリシーベルト(1000マイクロシーベルト/365日/24時間=0.114マイクロシーベルト/時)と比較して、かなり高い。そのため、若い夫婦が子どもを連れて戻るわけにはいかず、本当は大人も危険である。
    
 また、原発爆発の結果、東京電力は、*3-1のように、「地下水バイパス」計画で3回目の海洋放出を実施したが、5月26日には基準値(1リットル当たり1500ベクレル)を上回る1700ベクレルのトリチウムが検出され、くみ上げを停止している専用井戸の1カ所で、29日に採取した水からも同じ濃度が検出され、現在は残る11カ所の井戸で地下水のくみ上げを続けているとのことである。しかし、流れ出す分量は、濃度ではなく総量で計るべきなので、全体では膨大な量になると思われ、アルプスが故障続きであるため、トリチウム以外は取り除かれているかどうかも不明だ。

 さらに、*3-2のように、長野県林務部が、2014年5月16日、長野市で採取したコシアブラから国基準値の1キロ当たり100ベクレルを超える340ベクレルの放射性セシウムを検出したと発表し、長野県は長野市全域をコシアブラ採取の自粛対象とした。このように、原発爆発で大きく広がったまま除染されていない放射性物質の影響を、長野県のコシアブラ、コゴミ、タラノメなどの山菜が示しているのだ。

(3)放射性物質が農業に与える影響に関する科学的研究
1)放射性物質汚染地域の屋内で飼育された豚と放射性物質に関する調査研究
 *4-1のように、東大大学院農学生命科学研究科助教が、福島第一原発20キロ圏内の警戒区域で約3か月間飼育された原種豚を、東京大学の附属牧場に移送して調査研究し、空気中の放射性セシウムによって汚染されて、①救済してきた豚26頭のうち11頭が病死 ②排卵をしていない、繁殖周期が正常ではない、黄体ホルモンが正常に出ていないなどの生殖異常があった ③奇形の子が4頭 ④救済された豚で赤血球が少なかった などの結果が出ており、空気からの被曝で豚が影響を受けたことが明らかになった。これは、人間にも類似して当てはまるだろう。

2)果樹におけるセシウム汚染の経路に関する調査研究
 *4-2のように、東大大学院農学生命科学研究科助教が、果樹の古い組織に蓄積した放射性物質が新しい組織に移行したり、土壌から新しく入ってきたりする果樹内での放射性セシウムの移行を調査した結果、福島県内と西東京市の農場にあるモモの樹で、事故当時には出ていなかった組織(果実、葉、新梢)からも放射性セシウムが検出され、内側の材よりも樹皮で濃度が高く、圧倒的に最も外側の表皮で高いことが分かったということだ。非汚染の樹(モモ、ブドウ)を福島県に持って行き、汚染された土壌で栽培すると、事故以降でも土壌から放射性物質が移行し、土壌に被覆をすることで土壌中の濃度は1/7~1/6まで抑えられるものの、果実の濃度はほぼ同じで、土壌からの移行は空気に依る移行と比べて、ごくわずかだと考えられるそうだ。

 従って、基準内であっても汚染された食物を食べ続け、空気からの被曝も受けている人間は、健康でなくても不思議ではなく、不安をなくす目的ではなく、病気を予防したり、早期発見したりすることが目的の情報公開や健康管理を行うべきであり、医学もしっかりした調査をしてもらいたい。

参考資料:
<福井地裁大飯原発3、4号機差止訴訟判決について>
*1-1:http://www.nichibenren.or.jp/activity/document/statement/year/2014/140521_2.html (日本弁護士連合会 会長 村越進 2014年5月21日) 福井地裁大飯原発3、4号機差止訴訟判決に関する会長声明
 福井地方裁判所は、2014年5月21日、関西電力株式会社に対し、大飯原子力発電所(以下「大飯原発」という。)から半径250km圏内の住民の人格権に基づき、同原子力発電所3号機及び4号機の原子炉について、運転の差止めを命じる判決を言い渡した。本判決は、仮処分決定を除くと、2011年3月の福島第一原発事故以降に言い渡された原発訴訟の判決としては初めてのものである。従来の原子力発電所をめぐる行政訴訟及び民事訴訟において、裁判所は、規制基準への適合性や適合性審査の適否の視点から、行政庁や事業者の提出する資料を慎重に評価せず、行政庁の科学技術的裁量を広く認めてきた。また、行政庁や事業者の原子力発電所の安全性についての主張・立証を緩やかに認めた上で、安全性の欠如について住民側に過度の立証責任を課したため、行政庁や事業者の主張を追認する結果となり、適切な判断がなされたとは言い難かった。これに対し本判決は、このような原子力発電所に関する従来の司法判断の枠組みからではなく、技術の危険性の性質やそのもたらす被害の大きさが判明している場合には、その性質と大きさに応じた安全性が認められるべきとの理に基づき、裁判所の判断が及ぼされるべきとしたものである。その上で、原子力発電所の特性、大飯原発の冷却機能の維持、閉じ込めるという構造の細部に検討を加え、大飯原発に係る安全技術及び設備は、万全ではないのではないかという疑いが残るというにとどまらず、むしろ、確たる根拠のない楽観的な見通しの下に初めて成り立ちうる脆弱なものとし、運転差止めを認めたものである。本判決は、福島第一原発事故の深い反省の下に、国民の生存を基礎とする人格権に基づき、国民を放射性物質の危険から守るという観点から、司法の果たすべき役割を見据えてなされた、画期的判決であり、ここで示された判断の多くは、他の原子力発電所にもあてはまるものである。当連合会は、昨年の人権擁護大会において、いまだに福島第一原発事故の原因が解明されておらず、同事故のような事態の再発を防止する目処が立っていないこと等から、原子力発電所の再稼働を認めず、速やかに廃止すること等を内容とする決議を採択したところである。本判決は、この当連合会の見解と基本的認識を共通にするものであり、高く評価する。政府に対しては、本判決を受けて、従来のエネルギー・原子力政策を改め、速やかに原子力発電所を廃止して、再生可能エネルギーを飛躍的に普及させるとともに、原子力発電所の立地地域が原子力発電所に依存することなく自律的発展ができるよう、必要な支援を行うことを強く求めるものである。

*1-2:http://www3.nhk.or.jp/news/html/20140606/t10015018491000.html
(NHK 2014年6月6日) 環境白書 原発事故は最大の環境問題
 今年の環境白書は、原発事故による放射性物質の放出を最大の環境問題と位置づけ、除染などを迅速に進めていく必要があると指摘しています。6日の閣議で決まったことしの環境白書は、東京電力福島第一原子力発電所の事故で大量の放射性物質が放出されたことについて、今なお、最大の環境問題になっていると位置づけています。そのうえで、除染や被災者の健康管理などを迅速に進めていく必要があると指摘しています。このうち除染では、福島県内で取り除いた土などを保管するために、政府が建設を計画している中間貯蔵施設について初めて触れ、この施設を設置することが、除染の加速化や復興の推進に必要不可欠だとしています。また、被災者の健康管理では、被ばく線量の把握が重要で、不安に応える情報の充実が求められているとして、福島県が行っている健康調査や相談に応じるための人材育成の取り組みなどを紹介しています。
このほか、白書では、被災地で進められている、環境への負荷を低減した「グリーン復興」という取り組みが今後の地域づくりの1つの目指すべき方向だとして、福島県が進めている県民参加型の太陽光発電事業や、福島県飯舘村が打ち出している、再生可能エネルギー施設の整備を柱とした復興計画などを紹介し、このような動きを加速させていく必要があるとしています。

<福島第一原発事故の真実について>
*2-1:http://digital.asahi.com/articles/ASG5Z520RG5ZUUPI004.html
(朝日新聞 2014年6月2日) 「原発もはや制御不能」 東電、震災4日後に 細野証言
 東京電力福島第一原発の事故に首相補佐官として対処した細野豪志氏が朝日新聞のインタビューで、2号機の原子炉格納容器が壊れる危機に直面した2011年3月15日未明、首相官邸に詰めていた東電の人たちが「原子炉はもはや制御不能」と語り、作業員の撤退もやむを得ないという雰囲気が官邸内に広がったことを明らかにした。当時の官邸が公式記録や報道で伝えられてきた以上に緊迫していたことを示す証言だ。
●細野証言の詳細 「もはや東電では制御不能なんだと」
 東電の「制御不能」発言が出たのは、原子炉格納容器の圧力が異常に上昇していた15日午前2~3時ごろ。東電本店からは武黒一郎フェロー、川俣晋原子力品質・安全部長ら数人が官邸に派遣されていた。細野氏は発言者は明かさず、「誰かというより、官邸に来ていた東電チームとしての発言だった」と語った。細野氏は「東電から制御不能という言葉があったのは衝撃的だった。原子力の専門家が制御不能と言っているものを『制御しろ』とは言えない」と語った。さらに「ここで専門家が何も言えないのはいかん、意気消沈して肩を落としている場合ではない、と東電に言った」「何とかしなきゃならないんで、とにかく手を考えてくれと強めに言った」と振り返った。しかし具体案は出なかった。東電に加え、その場にいた原子力安全委員会の班目春樹委員長ら専門家たちは一様に「打つ手無しの状態」だったという。細野氏は「何もできなかったことへの強烈な無力感みたいなものがあった」と語った。作業員の撤退は原子炉の制御を完全にあきらめることを意味する。細野氏は前日夜に現場責任者の吉田昌郎・福島第一原発所長との電話で「頑張ります」「踏ん張れる」という強い言葉を聞いていたが、東電の「制御不能」発言後、官邸に撤退やむなしの雰囲気が広がったという。細野氏は「全体の雰囲気として撤退を絶対に止めないといけないと思いながらもその根拠というか、どうやったらいいか……。手がないという話だから、そういう雰囲気があった」と話した。結局、撤退について意見はまとまらなかった。細野氏は撤退に傾く東電本店より、現場にとどまる吉田氏の判断を尊重するよう進言。最後は菅直人首相の判断で撤退は認めない方針が決まった。

*2-2:http://digital.asahi.com/articles/DA3S11154340.html
(朝日新聞 2014年5月25日) (プロメテウスの罠)帰還の現実:1 別れるしかなかった
 新緑の山々に囲まれた福島県田村市の都路地区。東京電力福島第一原発の西にある農村地域だ。事故の直後、原発20キロ圏に住む121世帯380人は国の指示で避難した。それから3年。政府は4月1日、都路20キロ圏への避難指示を解除した。曲がりくねった林道の先に家がある坪井幸一(65)は仮設住宅を離れ、妻(65)と2人で帰ってきた。ちょうどひと月たった5月1日、杉の木が茂る家の裏山側に線量計をかざし、記者に示して見せた。「ほら、まだこんなにある」。毎時0・73マイクロシーベルトの放射線量。一般人の被曝限度は年間1ミリシーベルトが平常時の基準だ。毎時にすれば0・23マイクロ。それを上回る地点が、まだあちこちに残っている。国による地域の除染は昨年6月までに一通りすんだ。仮設住宅に残る息子の秀幸(36)はあきれ顔だ。「とてもじゃないが、子どもたちを連れて戻るわけにはいかない」。秀幸には10歳の長女、3歳の次女、1歳になったばかりの三女がいる。線量の高い地点が残っていては安心して子育てできないという。幸一は息子の言葉にうなずく。「そのほうがいい。若い夫婦や子どもにとっては体が心配だ」。親子は原発で配電設備の仕事に長く携わってきた。だから、放射線の危険性は身をもって知っている。一家が離ればなれになるのはつらいが、そう決断するしかなかった。昨年12月20日。住民が望むレベルの除染が実現されないまま、安倍内閣は福島の「復興加速化」を掲げて新たな指針を閣議決定した。早く帰還する住民には1人90万円の賠償金上乗せを検討する。被曝線量は従来の空間線量による推計から、住民が個人線量計で自ら測る方式に見直す、と伝えられた。息子の秀幸は首を振る。「原発作業員でもない一般の住民が、線量計をぶら下げながら生活するなんて……」。結局、カネを積んで住民を早く帰還させ、かたちばかりの復興を急ごうということじゃないのか――。避難指示の解除準備区域は第一原発周辺の11市町村に広がっていた。都路地区は解除の第1号になる。父の幸一は眉をひそめた。「なし崩しの解除では、あとに続く地域にも響きかねないのだが」。
    ◇
 【プロメテウス】人類に火を与えたギリシャ神話の神族:避難指示の解除をめぐり、翻弄(ほんろう)された住民たちの姿を伝えます。

<現在も続いている放射性物質の放出について>
*3-1:http://www.minpo.jp/news/detail/2014060316072
(福島民報 2014/6/3) 3回目の海洋放出833トン 福島第一原発地下水バイパス
 東京電力は2日、福島第一原発の「地下水バイパス」計画で、3回目の海洋放出を実施したと発表した。排水量は833トン。同日午前10時19分に開始し、午後1時42分に完了した。放射性物質濃度が東電の排出基準を下回ったため、一時貯留タンクから放出した。これまで、5月21日と27日に、それぞれ561トンと641トンを放出した。26日に基準値(1リットル当たり1500ベクレル)を上回る1700ベクレルのトリチウムが検出され、くみ上げを停止している専用井戸の1カ所で、29日に採取した水からも同じ濃度が検出された。現在は残る11カ所の井戸で地下水のくみ上げを続けている。

*3-2:http://www.shinmai.co.jp/news/20140521/KT140520FTI090022000.php
(信濃毎日新聞 2014年5月21日) 「市全域が対象」戸惑い 長野でコシアブラ採取の自粛要請
 長野市の山林で採取されたコシアブラから国基準値を超える放射性セシウムが検出され、県が市全域をコシアブラ採取の自粛対象としたことに、地元飲食店などから「市内全域が危険と思われかねない」と戸惑う声が出ている。県は市町村単位での対応を求める国の方針に沿ったとするが、合併で市域が広がっていることもあり、消費者からは「どこで採れた物なのか、判断材料がほしい」との声が上がる。自主的に検査機関で検査して安全性をPRしようとする農産物直売所も出ている。「長野市といっても広い。コシアブラ以外の山菜でも客に出して大丈夫か」。大型連休に市内で採ったコシアブラやコゴミ、タラノメなどを冷凍保存する同市の飲食店の女性店員は戸惑う。県林務部は16日、長野市で同日採取したコシアブラから国基準値1キロ当たり100ベクレルを超える同340ベクレルの放射性セシウムを検出したと発表。東京電力福島第1原発事故の影響とみており、同市のコシアブラの採取や出荷、摂取の自粛を呼び掛けた。県内産の山菜から国基準値を超える放射性セシウムが検出されたのは、北佐久郡軽井沢町でいずれも昨年6月に採取したコシアブラ1検体、タラノメ2検体に続き4検体目。長野市内の野草を食材に使う菓子店の店主は、採取の自粛範囲を市内全域としたことに対し「市内の農林産物全てが避けられかねない」と主張。上水内郡信濃町で放射性物質を検査する「黒姫駅前みんなの測定所」を開く住民有志の1人、吉村まきさん(43)は「県は持っている情報をきちんと知らせてほしい」と話す。20日までに県長野保健福祉事務所や長野市保健所などに市民らから寄せられた問い合わせは計20件以上。採取場所の問い合わせが多いという。県林務部は、基準値を超える検査結果が相次いだ場合、政府の原子力災害対策本部による出荷制限の指示が市町村単位で行われるため、「自粛要請も市町村単位でなければ食い違いが生じる」とする。林野庁は「指示は行政の最小単位として市町村に出すことになる。狭い範囲で指示を出しては、『その範囲で大丈夫か』と消費者の不安も招きかねない」と説明する。放射性物質の分析装置がある民間の「科学技術開発センター」(長野市)は県の16日の発表以降、長野市外の農産物直売所や個人からタラノメなど数件の検査依頼を受けた。毎週月曜日に開いている「黒姫駅前みんなの測定所」にも、19日は個人などからコシアブラなどが持ち込まれた。長野市信州新町の道の駅は、今週中に全ての山菜のサンプル検査を市薬剤師会に依頼すると決めた。コシアブラの受け入れは17日に中止。既にコシアブラ入荷のピークは過ぎ、現在はワラビやフキなどが並ぶ。運営する第三セクターの土田剛弘社長(65)は「信州新町の山菜は安全とアピールしたい」としている。

<放射性物質が農業に与える影響に関する科学的研究>
*4-1:http://www.frc.a.u-tokyo.ac.jp/information/news/140216_report.html
放射性物質汚染地域の屋内で飼育された豚と放射性物質に関する調査研究
   李俊佑、東京大学大学院農学生命科学研究科附属牧場助教
●背景
 福島第一原発20キロ圏内の警戒区域で約3か月間飼育された原種豚を、東京大学の附属牧場に移送して調査研究しました。豚の居た区域の土壌中放射性セシウム濃度は1kg当たり2万から5万ベクレルで、空間線量は一時間当たり1マイクロから2マイクロシーベルトであったと推測されています。東大附属牧場は福島第一原発から西南約130キロのところにあり、移送時の空間線量は一時間当たり0.1マイクロから0.2マイクロシーベルトでした。豚は屋内で飼育しており、餌は牧草ではなく、トウモロコシやダイズ、ミネラル等を混合した濃厚飼料を使います。しかも、飲水は地下水なので、豚は飼料と飲水による放射性物質と接する機会はあまりない環境で育てられたことになります。
●東大附属牧場に移送した豚にはどのくらいの放射性セシウムが含まれていたか
 移送した豚は五種類で、デュロック種(雄3頭雌8頭)、大ヨークシャー種(雄4頭雌2頭)、中ヨークシャー種(雄2頭雌4頭)、ランドレース種(雄1頭雌1頭)、バークシャー種(雌1頭)、合計26頭です。豚は爪が弱いという特徴があります。移送して73日目の9/9に、割れた爪から菌が入り病気になってしまった豚を解剖し、臓器中の放射性セシウム濃度を調べました。すると、生殖器から約160ベクレル/kgの放射性セシウムが検出されました。個体は異なりますが、その後に調べた豚の生殖器中の放射性セシウム濃度は、時間が経つほど低くなっていきました。同様に、脾臓や肝臓、腎臓、筋肉、尿、血液中の濃度も低くなっていました(脾臓と肝臓では9/9より9/30の計測で高濃度だったが個体差と思われる)。部位ごとでは、最も高濃度が検出されたのは筋肉で、低いのは尿と血液でした。屋内で飼育され、濃厚飼料を与えていたのになぜこのように汚染されていたのかというと、豚舎に設置されている換気扇を通して空気中の放射性セシウムが豚舎内に入ったからではないかと考えています。
●警戒区域内で殺処分された豚ではどうだったか
 警戒区域内で殺処分された家畜の中に含まれる放射性物質について調べました。南相馬市で調べた豚では、各部位から1kg当たり千単位の濃度の放射性セシウムが検出されました。附属牧場に救済した豚では百単位の濃度だったので、その10~20倍の濃度ということです。
●移送した豚の繁殖能力・子孫への影響等について
 附属牧場に移送した豚を使って、繁殖性を含む健康状態等の調査研究を行いました。ひとつ注意してもらいたいのは、この研究は周到に準備して行ったものではないということです。比較できる対象動物が居ない中で調べたので、この研究から得たデータから「放射線の影響だからこういうことになった」とは必ずしも言えないということになります。事故後の水不足や餌不足の影響、長い距離を移動したというストレスもあるかと思います。従って、このデータは参考として提供したいと思います。移送して3か月後には、体重は元通りになり、最も重いもので270kgになりました。発情した豚については種付けし子供を産んでもらいました。16頭のうち7頭が合計13回分娩しました。中には2回、3回、4回分娩した豚もいました。生まれた子供は雄が72頭、雌が73頭でした。奇形は4頭でした。平均でどのくらいの頻度で奇形が出るのかデータがなかったので比較はできませんが、今第2世代についても調べ始めています。第2世代は今のところ2頭が分娩し、雄が13頭で雌が10頭生まれました。奇形は出ていません。移送してきた雌16頭のうち9頭がなぜ分娩しなかったのかについて調べました。そうした豚の卵巣機能を調べたところ、排卵をしていない、繁殖周期が正常ではない、黄体ホルモンが正常に出ていない等の原因があることが明らかになりました。血液検査については、近隣の農家で育てられていた豚のデータと当牧場で生まれ育てられた第2世代のデータと比較したところ、赤血球等で有意な差がありました。赤血球は救済された豚の方で少ない傾向がありました。
●結果のまとめ
 警戒区域内から東大附属牧場に救済してきた豚26頭のうち11頭が病死しました。救済された豚は南相馬市での累積外部被ばくは2.2ミリシーベルトであると推測されました。東京とニューヨークの往復フライトは約0.2ミリシーベルトで、自然放射線量の世界平均が2.4ミリシーベルトということを考え合わせると、この放射線量の値は安全域であると言えます。ただし、救済された豚が事故後にどの程度の放射性ヨウ素の被曝を受けたかは分かりません。豚は人間への臓器の異種移植の研究が盛んに行われていたことからも分かるように、人間のモデル動物としても幅広く活躍しています。今回は極めて不幸な事態から生じた調査用豚であるが放射線の人間への影響を知るに当たって極めて貴重なデータを与えてくれるのではないかと思い、引き続き研究を続けていきます。

*4-2:http://www.frc.a.u-tokyo.ac.jp/information/news/140216_report.html
果樹におけるセシウム汚染の経路
   高田大輔、東京大学大学院農学生命科学研究科附属生態調和農学機構助教
背景
 福島県は果物の生産が盛んで、モモは全国2位、カキは4位、リンゴは6位の生産量です。果樹のような永年性植物は、単年性植物とは異なり、事故後一年だけでなくその翌年も、古い組織に蓄積した放射性物質が新しい組織に移行する、土壌から新しく入ってくることを考えなければなりません。果樹内での放射性セシウムの動きについては何も分かっていないという状況でした。
●放射性セシウムはモモの樹のどこに移行しているか
 福島県内と西東京市の農場にあるモモの樹について、モモを収穫した後に、葉、枝、幹、根を部位ごとに採取し、放射性セシウム濃度を測定しました。各部位での放射性セシウムの相対的な濃度は、福島県と西東京市でほぼ同じでした。事故当時には出ていなかった組織(果実、葉、新梢)でも放射性セシウムは検出されました。最も多く検出されたのは古い枝(旧枝)です。根からはほとんど検出されませんでした。本試験のモモの樹の重量比は、果実:葉:枝・幹:根で1:1:4:4になっています。濃度に重量を掛けると、各部位の放射性セシウムの含量を求めることができます。すると、枝と幹で含量がとても多いことが分かりました。さらに、枝のどの部分に放射性セシウム濃度が高いのかを層ごとに調べたところ、内側の材よりも樹皮で濃度が高く、圧倒的に最も外側の表皮で高いことが分かりました。この調査は事故後の8月に行ったものですが、最近の調査では材からも検出されるようになっています。材の放射性セシウム濃度は高くありませんが、重量は大きいので、含量としては辺材で最も大きくなりました。
●モモの樹の中に残った放射性セシウムはどのように再分配されるか
 2012年1月に福島県内の果樹園で栽培されていたモモの樹を掘り起こし、土と細根を取り除き洗浄し、汚染されていない土に植え替えました。そうして栽培した後、先ほどと同じように部位ごとに採取し、各部位に含まれる放射性セシウム濃度を計測しました。汚染されていない土で育てたので、各部位に含まれる放射性セシウムは元々樹の中に含まれていたものと考えることができます。結果としては、濃度は葉と新根で多くなりました。含量は果実と葉で多くなりました。樹全体に5000の放射性セシウムが含まれているとすると、新生器官(果実、葉、新梢)にはその約2%である106が、旧器官には4849が、土壌には45が再分配されました。
●土壌からの移行はどの程度あるか
 フォールアウトを受けていない非汚染の樹(モモ、ブドウ)を福島県に持っていき、汚染された土壌で栽培しました。その結果、モモの移行係数は3.6~5.4×10^-4で、ブドウは2.0×10^-3でした。これらの値は野菜やイネと比べると低いですが、事故以降も土壌から放射性物質が移行しているので決して無視はできないということになります。事故時に土壌を被覆して栽培していたモモの樹と被覆せず栽培していたモモの樹を比べました。被覆をすることで土壌中の濃度は1/7~1/6まで抑えられましたが、果実の濃度はほぼ同じでした。従って、土壌にフォールアウトしたものからの移行は、直接樹にフォールアウトしたものと比べて、ごくわずかであると考えられます。植物の根の深さによる傾向を考えました。根の浅いイチジクは根の上の方から根が出やすく、根が浅くない(モモと同じくらいの)ブドウは全面から根が出ます。イチジクとブドウについて、二種類の土壌の汚染状況を作り、栽培しました。一つは表層が汚染されていて、下層は汚染されていない状況。もう一つは、表層は汚染されていなく、下層が汚染されている状況です。ブドウについては、下層が汚染されている方が果実中の放射性セシウム濃度は高くなりました。移行係数は表層汚染では0.00168で、下層汚染では0.00397で、下層汚染で約2倍となりました。イチジクについては、表層が汚染されている方が果実中の濃度は高くなりました。移行係数は表層汚染では0.0266、下層汚染では0.0071でした。ブドウとイチジクで全く逆の結果になりましたが、それは根の存在する位置が違うためであると考えられます。結果として、根の浅くない樹種では土壌表層の放射性セシウムを吸収しにくく、根の浅い樹種では土壌表層の放射性セシウムを吸収しやすい傾向がありました。モモは根が表層から10~20cmのところに多く発生しますので、土壌からの移行はそこまで多くないと考えられます。
●モモ果実中の放射性セシウム濃度は予測できるか
 果樹内での放射性セシウムの動きはこの3年間の研究で大分明らかになった部分もありますが、放射性セシウムの動きを一つ一つ明らかにし、濃度予測をするまでの道のりはまだ遠いと言えます。しかし、大切なのは、濃度予測ではなく、国が決めた基準値等の濃度を確実に下回るか判別することです。そのためには、果実の発育期間中の放射性セシウム濃度の変化を把握し、こうした変化が毎年同じかどうかを明らかにすることが必要です。残念ながらチェルノブイリ事故時には初年度のデータが不足しており、二年目以降のデータと比較することが不可能です。一緒に研究をしている福島県果樹研究所の2011年のデータによると、満開後30日からモモ果実中濃度を調べたところ、満開後30日が最も高濃度で、50日で激減し、その後は緩やかに低くなっていきました。2012年と2013年のデータも同様の傾向を示し、満開後50~60日で大体濃度は下がりきっていました。この時期は、果実発育第二期に当たり、果実の肥大が一旦止まる時期でもあります。果実肥大は年ごとの様々な条件に左右されやすいので、この時期に濃度を計測することで、肥大の年次間差の影響を避けやすくなります。また、果実を選別する摘果作業を行う時期でもあるので、濃度を測定するための果実を採取することの影響が少なくなります。そこで、果実発育第二期に採取した果実を使って、成熟果の濃度を予測できるか確かめました。
●満開後60日の果実を使って、成熟果の濃度は予測できるか
 JA伊達みらい管内をはじめとした26の果樹園で、あかつきというモモの品種を3樹ずつ選び、満開後60日の果実と、成熟果の濃度を測りました。その結果、満開後60日の果実と成熟果の濃度の相関係数はこの分野としては非常に高く0.9近くとなりました。これほど高い相関係数であっても、外れ値は存在します。そこで、満開後60日の果実と成熟果の濃度のグラフに1:1の線を引いて考えることにしました。この線は、満開後60日の果実が30ベクレルであれば成熟果は30ベクレルであることを示します。グラフ上でこの線よりデータが下にあれば、成熟果の濃度は満開後60日の果実の濃度より低いことになります。1:1の線より上にも(成熟果の濃度が満開後60日の果実の濃度より高い)ぽつぽつとデータがありました。そこで、仮に規制値の10%である10ベクレルを安全側にとり、Y=X+10という線を引くと、全てのデータが線の下に収まりました。安全係数をいくつにするのかという問題はありますが、こうした手法を使えば、放射性物質濃度の高い樹体をピックアップし、そうした樹体の満開後60日果実の濃度を計測することで、成熟果濃度の予測が可能になり、労力の分散に繋がります。

| 原発::2014.5~8 | 09:46 PM | comments (x) | trackback (x) |
2014.6.15 シーレーンの機雷掃海を集団的自衛権の中に入れると、日本国憲法違反になる可能性が高いということ
    
      シーレーン               *3より       2015.6.15日経新聞

(1)シーレーンの機雷掃海は、日本国民の生命、自由、幸福追求に不可欠か?
 *1に書かれている、自民党が集団的自衛権を行使するのに必要とする自衛権発動の「新3要件」の(1)の中で、我が国に対する武力攻撃が発生し、他に適当な手段がないため、必要最小限の武力行使をした際に、それを応援した国への武力攻撃に対して自衛隊が反撃するのは当然で、これは個別的自衛権では説明できず、集団的自衛権の限定的行使と言えるだろう。 

 また、*1では、「他国に対して武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される恐れがある場合も、集団的自衛権の行使が認められる」としており、*2によれば、「①それは、中東のホルムズ海峡を念頭にしたシーレーンの機雷掃海を含む」「②理由は、石油の輸入が困難に直面すれば石油も物価も高騰し、株価も大きな影響を受けるため、わが国の存立が脅かされ、国民の生命、自由および幸福追求の権利が根底から覆される恐れがあるから」としている。
 
 しかし、相手が海賊やテロリストではなく国の場合に①を行えば戦争となり、日本国憲法9条に違反する。また、その理由とされる②は、わが国本位の利己的な都合にすぎない上、「わが国は資源が乏しい」「中東の石油輸入が困難になれば存立が脅かされる」などというのは、50年1日の如く、念仏のように同じことを唱えているものだ。実際には、わが国は排他的経済水域に天然ガスを埋蔵し、自然エネルギーを使って電気や水素を作れる国であるにも関わらず、政府の不作為で、それらを行わなかったのである。そのため、日本は、シーレーンの機雷掃海のために武力行使をするよりも、むしろ天然ガスや水素の輸出国になるべきで、その方が、環境と両立でき、国民の幸福追求の権利は、より達成される。

 なお、中東から日本に原油を運び、日本で石油化学工業を行って工業製品を輸出するというスキームは、現在では古い上、運搬時の環境負荷が大きい。鉱業も6次産業化すれば、不要なものまで運搬しなくてすむため、石油化学工業は産油国で行うようにすれば、中東にも雇用ができ、民衆の教育・文化レベルが上がって、*3のような宗教戦争は収まるだろう。日本は、植物や天然ガスから工業製品を作り、水素をエネルギーとして使う技術を開発すればよいのであり、これが、日本にできる地球貢献である。

(2)「テロリスト」は、何故テロリストになったのか?
 *3のように、イスラム過激派「イラク・シリアのイスラム国」というテロリストが、イラクの首都バグダッドへの進撃を目指しているため、イラクのマリキ首相が掃討作戦開始の声明を出し、隣国イランのロウハニ大統領もイラクから要請があれば支援する用意があると表明したそうだ。日本で集団的自衛権の論議をしている時に、タイミングが良すぎると思うが、中東地域はこのような争いが多い。

 これを根本的に解決するには、先に工業化した国と産油国の一部の為政者が原油争奪戦を繰り返すのではなく、産油国である中東に上質の雇用を作って文化・教育のレベルを上げ、民衆の暮らしを豊かにして、古い宗教に救いを求めて争う気持ちを無くさせるのがよいと考える。将来の地球人口を思えば、中東では、石油化学工業だけでなく、砂漠での農地開発も行うべきであるし、イスラム教の下での異常なまでの女性差別に対する内部からの抗議は命をかけたものにならざるを得ないため、その環境を変えるべきなのである。

*1:http://digital.asahi.com/articles/DA3S11189040.html?_requesturl=articles%2FDA3S11189040.htmlamp (朝日新聞 2014年6月14日) 自民案、9条を逸脱 武力行使3条件、閣議決定案の柱 集団的自衛権
 自民党は13日、集団的自衛権を使えるようにするため、自衛権発動の新しい前提条件(新3要件)を公明党に示した。安倍晋三首相がめざす集団的自衛権行使を認める閣議決定案の柱となる。公明の山口那津男代表も同日、「合意をめざしたい」と述べ、限定的に行使を容認する方向で党内調整を始めた。憲法9条の下で専守防衛に徹してきた日本だが、この枠組みが外れることになる。これまで自衛権は、憲法9条のもと日本が直接攻撃を受けた時にだけ反撃できる「個別的自衛権」に限られ、その発動の3要件の一つが「我が国に対する急迫不正の侵害がある」ことだった。だが、自民党の高村正彦副総裁が13日の与党協議で示した「新3要件」では、「他国に対する武力攻撃が発生し」た時も自衛権を発動できるとし、集団的自衛権の行使容認を明確にした。加えて自民は新3要件の一つに、1972年の政府見解で示された「我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆されるおそれがあること」との文言も盛り込んだ。公明がこの72年見解を踏まえ、集団的自衛権を狭く限定する形での容認を検討していることから、公明の理解を得やすくする狙いがある。しかし、72年見解は「集団的自衛権の行使は憲法上認められない」と結論づけており、都合のよい部分だけを切り取ったに過ぎない。政府は13日、新3要件を内閣法制局に示し、細かな文言調整をするよう審査を指示した。公明党と合意に至れば、集団的自衛権の行使を認める閣議決定案に盛り込む考えだ。ただ、新3要件には、ときの政権の判断で自衛隊の活動範囲を拡大できるようなあいまいな表現がある。公明党は朝鮮半島有事での対応など極めて狭い範囲に限って認めることを想定しており、早速、「自衛隊の活動が際限なく広がりかねない」(党幹部)との批判が出ている。今後の協議で文言をめぐる攻防が予想される。
■参戦の道、歯止めきかぬ
 《解説》自民党が提示した新3要件は、日本を守る場合に限って武力を使うことを認める「専守防衛」という、戦後日本が長年にわたって守ってきた基本方針を事実上放棄するものだ。新3要件が適用されれば、日本は自分の国への攻撃がなくても、ときの政権の政治判断によって、他国どうしの戦争に参戦できるようになる。日本は先の大戦の反省を踏まえ、これまでの3要件では、日本を防衛する目的であっても自衛隊の出動を厳格に抑制してきた。武力行使が可能となるのは、自国が直接攻撃される「急迫不正の侵害」という明確な基準を設けた。さらに、政府は武力行使が可能となる具体的な場面を国会答弁などで例示してきた。例えば、北朝鮮を念頭に置いた弾道ミサイル攻撃への対応については、相手国から「東京を火の海にしてやる」という表明があり、発射態勢になった場合などと、具体的に答えている。一方、今回の発動要件は「我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆されるおそれ」としており、極めてあいまいだ。ときの政権が「我が国の存立が脅かされるおそれがある」と判断すれば、「地球の裏側」での戦争でも、参戦できるようになる。自民党の提案は集団的自衛権の行使を認めているうえ、その歯止めにもならない。行使に慎重姿勢を示してきた公明党は、これにどう向き合うつもりか。「平和の党」を自任する公明党の存在意義が問われている。
◆自民党が集団的自衛権を行使するのに必要とする自衛権発動の「新3要件」
 憲法第9条の下において認められる「武力の行使」については、
 (1)我が国に対する武力攻撃が発生したこと、又は他国に対する武力攻撃が発生し、これにより
    我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される
    おそれがあること
 (2)これを排除し、国民の権利を守るために他に適当な手段がないこと
 (3)必要最小限度の実力行使にとどまるべきこと
という三要件に該当する場合に限られると解する。

*2:http://www.saga-s.co.jp/news/national/10202/74157
(佐賀新聞 2014年6月14日) 与党協議、機雷掃海も視野に議論、自衛権3要件で首相
 安倍晋三首相は14日、自衛隊による国際的な機雷掃海活動について、日本への攻撃がなくても他国に対する武力攻撃が発生した場合に自衛権発動を認める新たな3要件の対象とすることも視野に議論する考えを表明した。公明党は集団的自衛権行使を可能とする憲法解釈変更を容認する方向だが、対象事例を限定的に捉えており、与党協議の焦点になりそうだ。首相は、視察先の鳥取県境港市で記者団に「正面から向き合っていく必要がある。当然、機雷掃海も視野に入れて議論したい」と述べた。同時に「資源の少ない日本にとって、海外からの石油や食料は死活的に重要だ。日本がなすべきことはやらなければならない」と強調した。これに関連し、自民党の石破茂幹事長は、新3要件の下でも、集団的自衛権行使を容認すべき事例として政府が示した国際的な機雷掃海活動など全8事例への対処は可能と明言した。「できると思っている。国民生活を根底から覆す蓋然性が高いと評価されれば認められる」と広島市内で記者団に語った。石破氏は、輸入原油の多くが通過する中東のホルムズ海峡を念頭にしたシーレーン(海上交通路)の機雷掃海に関し「石油の輸入が困難に直面すれば石油も物価も高騰する。株価も大きな影響を受ける」と指摘した。3要件は、自民党の高村正彦副総裁が13日の与党協議会で「たたき台」として提示。自衛権行使の要件の一つとして「わが国の存立が脅かされ、国民の生命、自由および幸福追求の権利が根底から覆される恐れがある」場合を挙げた。

*3:http://www.saga-s.co.jp/news/national/10201/74194
(佐賀新聞 2014年6月14日)  イラク軍、過激派に反撃準備、掃討作戦の開始宣言
 イラクのマリキ首相は13日、首都バグダッドへの進撃を目指すイスラム過激派「イラク・シリアのイスラム国」に対する掃討作戦の開始を宣言する声明を出した。イラク軍高官は14日、攻防戦の焦点となっている中部サマラに援軍が到着、反撃の準備を整えたと語った。フランス公共ラジオが伝えた。隣国イランのロウハニ大統領は14日の記者会見で、イラクから要請があれば支援する用意があると表明した。ただし、まだ要請は受けておらず、軍部隊の派遣については「していないし、しないと思う」と語った。シーア派のイランは同派主導のマリキ政権と緊密な協力関係にあるが、米国などの反発が必至である直接的な軍事介入には慎重とみられる。マリキ政権はバグダッドの北方約100キロ前後に位置する中核都市サマラ、バクバを首都防衛ラインとして死守する構えだ。同ラジオによると、治安部隊と政府支持派の住民は13日、両市の間に位置するドルイヤ周辺で武装勢力を撃退した。バグダッドやイラク南部では、シーア派最高権威シスタニ師の「テロリストとの戦い」への参加呼び掛けに応じ、多数の住民が志願を登録した。

| 外交・防衛::2013.1~2014.8 | 09:25 AM | comments (x) | trackback (x) |
2014.6.13 “改革”の名に値しない邪魔者排除目的の提言を繰り返していては、(バブルではない)本当の経済成長率上昇や利益率上昇はできない
   
    2014.6.11日経新聞より               2014.6.13日経新聞より

(1)“農協改革”提言の裏側
 *1-1に書かれているように、「組合員を動員してTPPに反対したり、原発再稼動を阻止したり、気に入らないことをするから、その組織を廃止する」というのが、農協改革提言の裏側らしい。しかし、私がこのブログで何度も書いたとおり、TPP反対や原発再稼動阻止は、農協の方が的を得た指摘をしており、食料を生産する者として当然の態度であるとともに、他のTPP関連産業、食料の消費者、原発周辺住民にとっては心強い味方だった。

 また、*1-1の「旧食管制度のもとで政府に高値でコメを買いとらせるため米価闘争で圧力をかけた」というのは、2005年以前の農水省や国会議員が、それしか思いつかず、選挙にも利用していたためだ。そう言える理由は、①農地の集約 ②転作 ③農産物のブランド化 ④農産物の加工販売 などを骨子とする2007年改革は、私が最初の提案者であり、衆議院議員に当選した2005年から佐賀県の農協を廻ってそういう話をし、佐賀県では農協を中心として先頭きってそういう改革を進めていたが、自民党内の西川公也氏を始めとする旧来型の農林族に押し戻され、佐賀県内では「猫の目行政」と言われた経緯があるからだ。つまり、リーダーであるべき農水省や国会議員が、旧来型の延長ではなく、実態に即し時代に合った有意な農業政策を作ってアドバイスできていれば、農業が停滞することはなかったのだ。

 なお、*1-1には、「高齢化と農業就業人口減少で、日本の政治を揺さぶる農村票も、自民党の票田としてかつての勢いはなく、すでに虚像だ」とも書かれているが、このような見方は浅薄で冷酷である。規模を拡大する方法で豊かな農家や農業を作るためには、一定の農業就業人口の減少は必要であり、今は高齢化してこれまで農業に従事していた人がリタイアし、次世代の担い手に農地を集約していくチャンスであるため、それをやっているのだ。

 つまり、今回の“農協改革”の提言の裏側には、農業の産業としての発展やそれに伴う農家の幸せ、農業の発展によるわが国の振興を願うのとは異なる下心があるため、改革の名に値しない提言になっているのである。それについては、*1-2のように、実情に詳しい農業新聞がかなり正確な報道をしており、自民党内でも森山裕氏が誠実な対応をされて、軟着陸となった。ゲーム感覚の無責任で冷たい改革もどきに対応するのは、実業を行っている人にとって時間とエネルギーの無駄遣いになるため、“改革”もどきはもう終焉にすべきだ。

(2)あら探しをされたSTAP研究の“改革”提言の異常さ
 *2-1、*2-3のように、これからSTAP細胞の存在を証明しようという疑義の段階で、外部“識者”による“改革”委員会が、STAP研究の舞台である理研の再生医療拠点を廃止し(!)、小保方氏の指導役である笹井芳樹副センター長の辞任も必要だという提言をし、*2-2には、「不正が起きた主因に、iPS細胞研究を凌ぐ画期的な成果を獲得したいとの強い動機があった」と書かれているが、研究者は誰でも、よりよいものを作るために研究しているのであり、そうでなければその研究をする動機はない。これが、過去の判例や外国の模倣、他との同一性ばかりを重視する日本の文系人材と異なり、新しいものを作ってきた理系人材の力の源泉なのである。

 また、理研の再生医療拠点の廃止というのも極端で、*2-1には、「理研の発生・再生科学総合研究センターの廃止後は、理研の発生・再生科学総合研究センターに京都大学iPS細胞研究所と連携するよう求める」と書かれているが、これは、日本の再生医療はiPS細胞を中心とし、その他の方法はiPS細胞の劣後に置くという宣言になり、多くの独立した組織で自由に多様な研究を行うことにより、新技術開発の機会を増やすという理念に反する。(発電における原発に似てきたが、何故だろう)

 確かに、小保方氏が発見したSTAP細胞と笹井氏が作ったES細胞は、遺伝子を挿入していない分だけ、iPS細胞より優れた万能細胞である。そのため、提言の内容から見て、これだけあら探しをした目的は、iPS細胞より優れた万能細胞の開発を遅らせるかやめさせるという結論ありきだったのではないかと思う。しかし、このようなことをしていれば、せっかく世界の中でも進んでいた日本の再生医療分野で、有望な研究をつぶし、日本が遅れることは明らかだ。そのため、これも、“改革”の名を借りた利己主義の追及であり、このようなことに優秀な研究者の時間とエネルギーを空費させるのは、日本の損失にほかならず、これで(本物の)高い経済成長率や高い利益率など望めるわけがないのである。

(3)頑張った人にペナルティーを与える国は、発展しない
 *3の「年収1000万円以上を対象に労働時間の規制を外し、それも専門職に限定」「職種は職務の範囲が明確で高度な職業能力を有する労働者」というのは、日本を、頑張る人にはペナルティーを課す国にしてしまい、国を発展させない。

 ホワイトカラーの場合は、流れ作業で組み立てを行う工場労働者と異なり、労働時間と成果が比例しない。極端な例では、知識と経験が豊富なベテラン税理士が、顧客の質問に対して5分もかからずにその場で解答できることを、新人税理士が、税法や過去の税務調査事例を調べて税務署に確認し、途中でお茶も飲んで、5時間かかって解答したとすると、労働基準法により時間で残業手当をつければ、ベテラン税理士の答えの方が確かで喜ばれるにもかかわらず、新人税理士の方が60倍も報酬が高くなるというパラドックスが起こる。これは、営業職や一般事務職でも、程度の差こそあれ、起こっていることだ。

 そのため、このようなホワイトカラーの仕事における問題の解決策は、年収の下限を決めて「ホワイトカラー・エグゼンプション」を導入することではなく、工場労働者を念頭に作られた労働基準法を改正し、「残業代の請求の仕方は会社が決め、適切な残業代の請求を行うよう社員を指導することを就業規則に記載すれば、その就業規則が合理的で違法でない限り認める」とする条項を入れることである。なお、「少なくとも1000万円以上の収入」という下限は、1000万円以上の収入を得ている人は、管理職や裁量度の高い職種であって、今でも残業手当はもらっていないため、あまり意味がない。

*1-1:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20140612&ng=DGKDASFS0401R_Z00C14A6EA1000 (日経新聞 2014.6.12) JA全中、衰える「政治力」 、政府・与党、権限縮小を決定 TPP反対で政権と溝
 政府・与党が検討している農協改革で、全国農業協同組合中央会(JA全中)の見直しが焦点になっている。この組織にメスを入れることで、農業はどう変わるのか。コメや野菜を売り、農家に肥料を提供する現場の農協は全国に約700ある。こうした農協の経営を指導する役割を担っているのが中央会だ。県ごとの組織と、全国団体のJA全中がある。政府・与党はJA全中の役割を縮小するが、組織を残す方針は固めている。新たな組織の役割をどうするかは未定だ。これに先立ち、規制改革会議は中央会制度の廃止を提言していた。農協が独自性を発揮できるようにするのが目的だ。その背景には「画一的に指導している」とのイメージがある。結論から言えばこれは“虚像”だ。「飼料米を大幅に増産するよう各農協に頼んだが、ダメだった」。関東地方のある県の中央会の担当者はため息をつく。主食用のコメの生産を減らして米価を維持しようとしたが、まともに協力する農協はなかった。こうした状況はほかの地域でもほぼ共通だ。
●組合員を動員
 ではなぜ、規制改革会議は「中央会が現場の独自性を抑えている」と思ったのか。JA全中の幹部は「政策要求のために組合員を大量に動員する姿が、実態以上に力を強く見せているのではないか」と話す。ここに問題の核心がある。農協経営に強引に口出しする力はない。だが数を頼りに政治に働きかけるときは力をふるう。その象徴が、旧食糧管理制度のもとで政府に高値でコメを買いとらせるために圧力をかけた「米価闘争」。最近では安倍政権が重要課題とする環太平洋経済連携協定(TPP)への反対運動だ。5月18日、羽田空港。「JAは文句ばかりで礼の一つも言えないのか」。シンガポールでのTPP閣僚会合に向かう自民党の西川公也TPP対策委員長は、偶然会ったJA全中の万歳章会長に怒りをぶつけた。市場開放と農業保護のはざまでぎりぎりの交渉を続ける政府・与党に、反対ばかりを唱えるJA全中へのいら立ちが広がった。そして出した答えが「TPP交渉と農協改革をセットで進める」。標的となったのが、TPP反対の旗をふり続けるJA全中だった。この対立の構図をさかのぼると、コメ市場の部分開放を決めた1993年のガット・ウルグアイ・ラウンドにたどり着く。「あのころから農政と農協の方針がずれるようになった」。JA全中からこんな声が漏れる。ウルグアイ・ラウンドをきっかけに政府がつくったのが、有望な農家に政策の助成を集中する制度だ。国際競争力のある農家を育てるのが目的だったが、規模の小さい兼業農家を組合員に抱える農協は抵抗し続けた。
●高齢化など響く
 両者の対立はときに激しい形で表面化する。農林水産省は小規模農家を助成対象から外す制度を2007年に始めた。だが農協と農林関係議員の猛烈な巻き返しで、規模で選別する仕組みはすぐに姿を消した。零細農家を守るあまり、農業の衰退を招く皮肉な結果だ。一方、綱引きのカゲで政治と農協の関係も変化した。その転機は1996年の小選挙区制の導入だ。同じ選挙区に複数の議員がいた中選挙区制とは違い、農協の後押しだけで当選することは難しくなった。民主党政権下では農家の戸別所得補償になびき、自民党との関係はさらに悪化した。高齢化による農家の引退も影響した。農業就業人口は240万人と、ピークの6分の1。自民党の票田としてかつての勢いはない。「日本の政治を揺さぶる農村票」も、すでに虚像だ。中央会の見直しが、ついに論議の対象になった背景にはこうした事情がある。政府・与党の方針により、JA全中は役割を変えて存続はできる。だが政治を動かす力は今後ますます弱まるだろう。自民党ベテラン議員は「これから農相を務めるひとは楽になる」と話す。

*1-2:http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=28194
(日本農業新聞 2014/6/11) JA、農委、農業生産法人 与党改革案を決定
 自民党と公明党は10日、JAや農業委員会、農業生産法人の改革案「農協・農業委員会等に関する改革の推進について」を決めた。自民党案に公明党の考えを盛り込んだ。11日の政府の規制改革会議農業ワーキンググループ(WG)に与党案として示し、同会議が13日にまとめる答申に反映させる。自民党は10日、「新農政における農協の役割に関する検討プロジェクトチーム(PT)」(森山裕座長)と「農業委員会・農業生産法人に関する検討PT」(西川公也座長)の合同会議を9日に引き続いて開き、改革案を検討した。全議員が参加できる議論の機会が少なかったことなどから「反対」の声も上がったが、齋藤健農林部会長が「明日のWGでわれわれの意見をぶつけないと、(WGの)提案がそのまま答申になる」として了承を求め、農林幹部への対応一任を取り付けた。これを受け、森山、西川両PT座長は公明党の石田祝稔農林水産部会長、稲津久同部会長代理と協議。改革案について与党間で合意した。与党のJA改革案は、規制改革会議が求めた急進的な案に対し、JAグループの自主的な判断を尊重したことが特徴。最大の焦点だった農協法上の中央会制度については「新たな制度に移行する」としたが、具体的な在り方はJAグループ内の組織討議も踏まえて結論を得ることにした。ただ森山氏は10日の会合後、新たな組織について「農協法上で位置付けていく」との考えを記者団にあらためて示した。同会議は、与党案を踏まえて13日にJAなどの改革を含む規制改革案を決め、安倍晋三首相に答申。政府が月内にまとめる新たな成長戦略にも盛り込む段取りだ。
[解説] 自主的な判断尊重
 自民・公明両党が決めたJA改革案は、規制改革会議の急進的な案を押し戻し、JAグループの自主的な判断を尊重したのが最大の特徴だ。それだけに、JAグループにはこれまで以上に踏み込んだ抜本的な自主改革が求められる。また改革案には「玉虫色」(自民党農林幹部)の部分もある。農協法の改正案提出に向け、中央会制度の廃止などの議論が再燃する可能性もあり、予断を許さない状況が続く。与党の改革案は、規制改革会議が廃止を求めた農協法上の中央会制度について、JAグループの組織討議も踏まえて「新たな制度に移行する」とした。JAが民間団体であることを考慮し、自ら改革を進めるよう促した格好だ。同会議が提起した「農林中金への信用事業の移管」については、各JAで判断できる「選択制」とした。JA全農の株式会社化や、JA厚生連の病院の社会医療法人への転換なども「可能」としたが、あくまで自主的に判断する。ここが、画一的・強制的な同会議の案と大きく異なる点だ。JAグループは3月に自己改革案「営農・経済革新プラン」を発表したが、政府・与党内には「踏み込み不足」「具体性に欠ける」との指摘がある。「今回の与党案はJAにとってラストチャンス。これでも自己改革できなければ、強制するしかない」(別の自民党農林幹部)との声もある。与党案は、来年1月の次期通常国会に関連法案を提出する考えも明記した。現行の農協法上の中央会制度から移行する「新たな制度」の具体的な在り方を含め、JAグループは組織討議を急ぐことも求められる。ただ今回の与党案には「いかようにも読める」(政府関係者)曖昧な部分がある。安倍晋三首相は9日の参院決算委員会でJA改革について「抜本的見直しを図っていく」と語るなど強い意欲を見せる。農協法改正に向けた議論の中では、あらためて急進的なJA改革を求める声が高まる可能性もある。政府には、実態を踏まえてまとめた与党案を尊重し、与党と一体で改革を進めることが求められる。自民党内には、少数の農林幹部だけで改革案を決めたとの批判がくすぶる。改革案の実効性を確保するには、今後の丁寧な説明で幅広い理解を得る必要もある。
●女性や青年積極登用を 公明党
 公明党は10日、与党としてまとめた改革案を政調全体会議で報告し、党内の了承を得た。最終的な案には、同党が求めた農業委員会への女性や青年の積極的な登用を盛り込んだ。政府の規制改革会議が13日に行う答申の素案が示された段階で、自民・公明両党は再び対応を協議する方針だ。
●変更なく政府案に 自民農林幹部 農相に要請
 自民党農林幹部は10日、東京・霞が関の農水省で林芳正農相に対し、農業改革に関する要請を行った。同日取りまとめた与党案に沿った内容で、政府が農業改革を決定するよう求めた。要請に訪れたのは、同党の中谷元農林水産戦略調査会長、齋藤健農林部会長、農業基本政策検討PTの宮腰光寛座長、新農政における農協の役割に関する検討PTの森山裕座長の4人。与党の改革案「農協・農業委員会等に関する改革の推進について」を林農相に手渡した。森山座長らは「(与党案から)変更がないように、その精神がきちんと生かされる形に、政府でまとめてほしい」と要請した。林農相は、与党案を踏まえ農業の成長産業化に対応していく意向を示したという。中谷会長は「農協も時代の流れに対応していかなければならない」と指摘。与党案について「今の時代に必要な変革という観点で非常に良い提言」と語り、政府の最終決定への反映を求めた。
●自己改革まとめ急ぐ 全中会長
 JA全中は10日、与党がJAなどの改革案をまとめたことを受け「組合員・組織の自らの意思に基づく農協改革の考え方を早急に取りまとめ、責任を持って事業を展開していく覚悟である」とする萬歳章会長の談話を発表した。萬歳会長は改革案について、JAグループの要請を踏まえ与党議員らが取りまとめたものとして評価。自己改革を後押しするものと受け止め、営農・経済事業の革新や新たな中央会制度の在り方などを検討、実行する考えを示した。

*2-1:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20140612&ng=DGKDASGG1101H_R10C14A6MM8000
(日経新聞 2014.6.12) 理研の再生医療拠点を廃止、提言へ 改革委 STAP研究の舞台
 STAP細胞の論文を巡る問題で、理化学研究所が設置した外部識者による改革委員会(岸輝雄委員長)が、小保方晴子研究ユニットリーダーの所属する理研発生・再生科学総合研究センター(神戸市、CDB)の廃止を提言に盛り込むことが11日、分かった。研究内容を一新し、再生医療の研究を続ける場合は京都大学iPS細胞研究所(山中伸弥所長)と連携するよう求める。提言は12日午後発表する。提言を受け、理研は同センターの廃止を含めた組織改革を検討する。同センターは2000年に設立。所属する研究者らは約500人で、あらゆる臓器になる万能細胞など再生医療の研究を主に手がける。研究者の多くが任期付きで雇用され、小保方氏は11年4月から所属している。STAP細胞の研究は小保方氏ら同センターが中心となって進めた。改革委は論文の不正が起きた原因について、小保方氏だけの責任ではなく同センターの組織的な問題があると指摘。廃止を含めた組織の大幅な見直しが欠かせないと結論付けた。廃止に伴って、竹市雅俊センター長や小保方氏の指導役である笹井芳樹副センター長の辞任も必要だとした。同センターの廃止後は研究内容を見直したうえで、新しいセンターの設立を求める。新センターが再生医療を続ける場合は、名称の変更や理研の他のセンターと合併することなどが欠かせないとした。ただし、世界初のiPS細胞による臨床研究を進める同センターの高橋政代プロジェクトリーダーらが研究を継続できるよう雇用の維持を提言する。提言では理研本部の責任も指摘。現在、研究やコンプライアンスを担当する理事を交代するなど責任を明確にするよう要求する。

*2-2:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20140613&ng=DGKDASGG1201Z_S4A610C1EA2000
(日経新聞 2014.6.13) STAP拠点、年内解体 理研改革委提言、 笹井氏ら4人辞任を
 STAP細胞論文の研究不正を受け、外部有識者による理化学研究所の改革委員会(岸輝雄委員長)は12日、再発防止策を盛り込んだ提言を発表した。STAP研究の舞台になった理研発生・再生科学総合研究センター(神戸市、CDB)を遅くとも年内までに解体するよう求めた。竹市雅俊センター長、笹井芳樹副センター長、西川伸一顧問、相沢慎一顧問の4人の辞任も促した。小保方晴子研究ユニットリーダーについては、「研究不正行為は重大で極めて厳しい処分がなされるべきだ」と批判したが、理研の懲戒委員会が現在協議しており、処分内容まで踏み込まなかった。野依良治理事長の責任問題には触れなかったが、岸委員長は12日の記者会見で「理事長は(進退について)十分考えるだろう」と語った。今回の提言では理研に「構造的な欠陥」があり、STAP論文の不正を誘発して抑止できなかったと指摘した。不正が起きた主因に「iPS細胞研究をしのぐ画期的な成果を獲得したいとの強い動機があった」をあげた。京都大学の山中伸弥教授が世界で初めてiPS細胞を作製して以降、再生医療を巡る予算の獲得競争は激しい。日本の再生医療を引っ張ってきたCDBは「組織ぐるみ」で未熟な研究者の成果に疑いの目を向けず、論文として世に送り出したとみている。改革委の責任追及はCDBだけにとどまらない。科学技術立国のもとに加速器やスーパーコンピューター、遺伝子解析装置などあらゆる最新鋭機器を備え「肥大化した」理研本体にも向けられた。改革委は「責任の自覚の欠如と、希薄さがうかがえる」として、理研の管理体制の変更を求めた。今後は企業経営者らで構成する経営会議を理研内に立ち上げ、予算の執行や教育で理事会に助言をしていくべきだと提言。理事の人選にも関与させることを求めた。STAP細胞の有無を明らかにする再現実験にも注文をつけた。理研が4月から実施している検証手法ではなく、小保方氏の作製法に沿って実験をすべきだとしている。改革委は論文不正認定後の4月、理研の野依理事長の指示で発足した。研究不正の専門家や弁護士ら6人で構成し、不正再発防止策を計11回にわたって議論してきた。改革委の提言をどこまで理研が早急に実行していくかが今後の焦点になる。野依理事長は12日、「研究不正を抑止するために実効性あるアクションプランを策定し、具体的な実行に移していく」とのコメントを発表した。

*2-3:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20140612&ng=DGKDASDG1104R_R10C14A6CR8000 (日経新聞 2014.6.12) ES細胞の遺伝子か STAP論文、新たな疑義
 理化学研究所が発表したSTAP細胞の論文で、新たな疑義が生じていることが11日、分かった。論文に掲載されたSTAP細胞の遺伝子情報を理研に所属する別の研究者が調べたところ、胚性幹細胞(ES細胞)という別の万能細胞の遺伝子である可能性が高いという。論文自体は撤回される見込みだが、STAP細胞の存在を疑う新たな結果といえそうだ。調べたのは、理研統合生命医科学研究センター(横浜市)の遠藤高帆上級研究員ら。インターネット上に公開しているSTAP細胞の遺伝子情報を分析したところ、細胞に含まれる8番目の染色体が通常は2本のはずだが、「トリソミー」という3本になる異常な状態だった。トリソミーになると、受精卵が成長してマウスの子として生まれてくるのは難しい。論文ではSTAP細胞は生後間もないマウスから作製したとしている。トリソミーはES細胞を長期間培養すると起きやすく、ES細胞をSTAP細胞と間違えた可能性もあるという。理研広報室は「把握していない。今後についても(調査するかどうか)コメントできない」としている。

*3:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20140612&ng=DGKDASDF1100V_R10C14A6MM8000 (日経新聞 2014.6.12) 年収 最低1000万円以上を対象に 労働時間の規制外す 専門職限定、関係閣僚が合意
 政府は11日、労働時間規制の適用を外し、働いた時間ではなく成果に応じた給与をもらう働き方の対象者について、年収基準を「少なくとも1000万円以上」とし、専門職に限定することを決めた。改革が進まなかった労働規制に風穴があくが、今後の具体策しだいで対象者が極めて限られる可能性もある。甘利明経済財政・再生相や田村憲久厚生労働相ら関係4閣僚が月末にまとめる成長戦略に明記することで合意した。2015年の通常国会に労働基準法の改正案を提出。16年春の施行を目指す。1日8時間、週40時間という労働時間規制を外す「ホワイトカラー・エグゼンプション」と呼ぶ仕組みを導入する。長時間働いても給与は変わらないので効率的に働く効果を期待している。4閣僚の協議では対象を高収入の専門職に限ることで一致したが、年収の下限は「少なくとも1000万円以上」という表現にとどめ、具体的な金額設定は先送りした。職種は「職務の範囲が明確で高度な職業能力を有する労働者」とした。年収額を含む具体的な制度設計は労働政策審議会(厚労相の諮問機関)に委ねる。

| 経済・雇用::2013.7~2014.6 | 12:16 PM | comments (x) | trackback (x) |

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