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2021.5.5 日本は人を大切にしない(人権侵害の多い)国だが、正しい意思決定には知識に基づいた判断力が必要なのである
・・工事中ですが・・

(1)日本国憲法変更の危険性
1)憲法記念日における与党幹部のメッセージから
 憲法記念日の5月3日、菅首相は、*1-1のように、ビデオメッセージで「①憲法9条への自衛隊明記」「②新型コロナ感染拡大や大災害時に内閣が国民の権利を一時的に制限する『緊急事態条項の創設』は極めて大切」「③参院選の合区解消」「④教育無償化」など、「⑤現行憲法も制定から70年余り経過し、時代にそぐわない部分、不足している部分は改正していくべき」等を語られたそうだ。

 このうち、①は、前にこのブログで詳しく記載したため省略するが、②も、このような厚労省の故意又は重過失による感染症の蔓延を国民のせいにし、それを理由として「国民の権利を制限する緊急事態条項の創設が重要」と結論づける政府であるからこそ、決して緊急事態条項を創設してはならないし、③は、憲法を変更しなくても下位の法律を改正すればできるのである。

 さらに、④は、憲法第26条に「第1項:すべて国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する」「第2項:すべて国民は、法律の定めるところにより、その保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負ふ。 義務教育は、これを無償とする(http://law.main.jp/kenpou/k0026.html 参照)」と定められているため、既に憲法で義務教育は無償化されており、義務教育以外についても給付型奨学金を支払ってはいけないなどとは憲法に記載されていないため、憲法変更は不要なのである。

 それにもかかわらず、「仕方がない」として緊急事態条項の創設を許せば、政府の放漫経営によって財政破綻するにもかかわらず、さらなる年金カットや医療・介護サービスの削減など国民との契約で政府が保険料を徴収した社会保障の受給権(私権)を制限することも、政府が憲法に基づいて行うだろう。日本政府が前から熱心な「税と社会保障の一体改革」や「マイナンバーカードの創設」はその準備作業だが、それに感染症の蔓延を利用するなどもってのほかである。

 これを裏付けるように、与党系の幹部が、*1-2のように、「この憲法で国家の危機を乗り越えられるのか!-感染症・大地震・尖閣-」と述べているが、感染症・大地震・尖閣を乗り越えられないのは、日本国憲法に「緊急事態条項」がないからではなく、感染症に対する基本的理解の不足、都合の悪いことを想定外にする危機意識の低さ、領土保全の努力のなさという運用上の問題である。そのため、憲法9条に自衛隊を明記し、緊急事態条項を創設したからといって、これらの問題が解決するわけではない。

 また、⑤のように、憲法制定から70年余り経過して時代にそぐわない部分・不足している部分があると言うのも、それなら、イ)どこが ロ)どうして改正によってしか解決できないのか を論理的に説明すべきで、憲法変更という結論ありきで、とってつけたような理由を並べるのは国民を馬鹿にしすぎている。

2)憲法学者と弁護士会の見解
 *1-3の憲法学者で東京都立大学教授木村草太氏が、①現行憲法下でも規制の目的が自由の制限を正当化できるほど重要で ②規制の方法が合理的かつ必要不可欠なら法律に根拠のある規制は合憲だが ③感染症対策だからどんな制約でも我慢しろという論理は通用せず ④その感染症の抑制が社会にとって重要性があり、科学的・法的根拠に照らして手段が適切であれば重要だが ⑤目標がないままの場当たり的規制が多かったし ⑥自由を制約する政策は法律の正しい解釈に基づく細かな検討こそ必要だが、この1年以上にわたるコロナ禍で政府にはこうした意識が決定的に欠けていることが明らかになり ⑦政府が法の解釈や整合性を気にしなくなったことのマイナス面がわかりやすく示された 等と述べておられ、私も全く賛成だ。

 また、*1-4のように、日本弁護士連合会会長の荒中氏も、2021年5月3日、憲法記念日を迎えるに当たっての会長談話として、⑧緊急事態宣言等の下で市民や企業等には外出・移動の自粛や休業・時短等が要請されているが、そのような感染拡大防止策を講ずる場合であっても個人の権利は最大限尊重される必要がある ⑨新型コロナの感染拡大を受けて憲法を改正して緊急事態条項の新設を求める声も与野党の一部にあるが、感染拡大防止は市民の協力を得ての法律上の対応で十分可能で ⑩憲法に緊急事態条項を新設することは、立法事実を欠くだけでなく、個人の権利の侵害に繋がる恐れがある ⑪新型コロナ感染拡大の下でも、立憲主義を堅持し、国民主権に基づく政治を実現することにより個人の人権を守る立場から、引き続き、人権擁護のための活動を積極的に行っていく と書かれており、法律家としての論理性が感じられて納得できた。 

(2)新型コロナのワクチン・検査・治療薬について

   
 2020.6.19毎日新聞   2021.4.17時事

(図の説明:1番左の図のように、G7やAPECの中では日本の人口100万人当たり新型コロナウイルスによる死亡率は低いが、東南アジア・東アジアの中では最も高い。これを見て、先進国は新型コロナウイルスによる死亡率が高いのだと理解した人は愚かであり、実際には地理的所在地によって人間側の遺伝的形質や免疫履歴が異なるのである。そのため、日本の成績は悪い方に属する。また、左から2番目の図のように、日本国内で確認された新型コロナ変異ウイルスの中に『由来不明』があるが、これは非科学的であると同時に日本由来ではないかと思う。右から2番目の図は、日本国内で新型コロナに使われる主な薬だが、承認済みは2つだけで厚労省の能力のなさがあらわれている。そして、1番右の図のように、日本は科学技術にかける予算が少なく、今後の産業構造に悪影響を与えそうだ)

1)新型コロナワクチンの開発と普及について
 河野規制改革相が、*2-1-1のように、5月10日からの2週間で自治体に届ける高齢者向けの新型コロナワクチンの供給量が自治体の要望量に約400万回分足りないと陳謝したそうだが、まず、誰かが陳謝すれば喜ぶというメディアをはじめとする日本人全般の感じ方はおかしい。何故なら、陳謝されても亡くなった人の人生は戻ってこないため、陳謝などしなくてよい政策を採ることの方がずっと重要だからである。

 そして、65歳以上の高齢者向けワクチン接種が4月に始まったそうだが、新型コロナウイルスに暴露される機会が多く、決して患者にうつしてはならない医療・介護従事者に高齢者より先にワクチンを接種するのは当然だ。その後に、高齢者・基礎疾患のある人・不特定多数の客に接せざるを得ない勤労者への接種となる筈だが、そもそも製造業が得意な世界第三位の経済大国と豪語しながら、必要な時に間に合わせてワクチンすら作れず、米ファイザー社からの輸入に頼りながら、公正な判断もできずにロシア製や中国製を馬鹿にしているのは滑稽ですらある。

 なお、*2-1-2のように、米製薬大手ファイザーは、2021年の新型コロナウイルスワクチン売上高が260億ドル(約2兆8千億円)、モデルナも、2021年のコロナワクチンの売上高が184億ドル(約2兆円)になる見込みだそうだ。このように、ワクチンも、感染症が蔓延し必要とされる時に1番・2番で完成することが重要なのであり、日本でよく言われるように「時間をかけたからよい」というものでは決してない。そのため、厚労省の非科学的な承認遅れや治験妨害は、経済的にもチャンスを逃す重大な原因になっているのである。

 このような中、*2-4-1のように、ワクチンの足りない途上国のWTOへの要請として、バイデン米政権が新型コロナワクチンの国際的な供給を増やすために、特許権の一時放棄を支持すると表明したそうだ。しかし、*2-4-2のように、製薬会社は強く反発しており、ドイツのメルケル政権は「知的財産の保護はイノベーションの源泉で、将来もそうでなければならない」と反対している。リスクが大きく金がかかる研究開発を行う動機づけを失わせないためには、メルケル政権の見解の方が正しい。そのため、新型コロナワクチンを途上国に供給する目的なら、開発した製薬会社の負担ではなく、国が製薬会社から特許権を購入して開発途上国の製薬会社に供与する方法を採るべきだ。メダルその他の報酬がなければ、いろいろなことを犠牲にしてオリンピック等のスポーツで頑張る人はいないのと同じ理屈である。

2)治療薬の治験と承認
イ)アビガンのケース
 細胞に入ったウイルスの増殖を抑える薬であるアビガンは、*2-1-3のように、2014年に新型インフルエンザ薬として承認され、製造元の富士フイルム富山化学が2020年3月に新型コロナ向けの治験を始め、2020年9月23日に治験の結果を発表して2020年10月16日に厚労省に製造販売の承認申請をしたが、2020年12月21日の厚労省専門部会で審査を担うPMDAが「エビデンス(科学的根拠)がない」「解析計画やデータの取り扱いに信頼性がない」「新型コロナへの有効性を現時点で明確に判断することは困難」と判断したそうだ。

 その科学的根拠がないという理由の1つは、20~74歳の重症でない新型コロナの患者156人が参加し、偽薬とアビガンをのんだ患者の経過を比べ、アビガンをのんだ患者はPCR検査で陰性になるまでの期間の中央値が偽薬をのんだ患者より2.8日短かったが、医師が知っている「単盲検」だったからだそうだが、陰性になるまでの期間が2.8日短かければ、それだけ入院日数が減り、患者や病院の負担も減るのである。

 さらに、単盲検だから本当に科学的根拠がないかと言えば、国民への移動の自粛要請や飲食店の時短営業要請よりはずっと明確な科学的根拠があり、「動物実験で胎児に奇形が出る恐れがわかり、副作用の懸念」というのも使う対象を絞ればよいため、厚労省は新型コロナの蔓延を防ぎたくない理由でもあるのかと思うのである。

ロ)イベルメクチンのケース
 北里大学の大村智特別栄誉教授が発見し、2015年にノーベル医学・生理学賞を受賞した微生物が生産する天然有機化合物アベルメクチン由来のイベルメクチンを、*2-1-5のように、北里大学大村智記念研究所感染制御研究センターが、新型コロナウイルス感染症の治療薬として、2021年3月に臨床試験を終了して製造元の米製薬大手MSDに試験結果を提供し、MSDは効果を検証しながら承認申請を検討する見通しだそうだった。

 米ブロワードヘルスメディカルセンターの研究では、イベルメクチン投与で新型コロナ重症患者の致死率は80.7%から38.8%に改善し、イベルメクチンは駆虫薬として2019年には世界で4億人以上に投与されているが、大きな副作用は確認されていないそうだ。ちなみに、ペニシリンはじめ抗生物質は、生物が他の微生物を排して自らを守るために合成する化合物由来が多い。

 その治験結果がどうなったかは不明だが、*2-1-4のように、東京都医師会会長の尾崎治夫氏が「海外で重症化を防ぐ効果が示されているため、抗寄生虫薬イベルメクチンも自宅療養中のコロナ感染者に重症化を防ぐ狙いで投与すべき」「副作用が少ないので、かかりつけ医が治療ができるよう国に検討してほしい」と言っておられ、軽症から重症まで効果があると思われるので、厚労省は新型コロナの治療をしたければ治験を助けて早々に承認すればよかったのだ。

3)変異型について
 変異は、生物が遺伝子をコピーする際のコピーミスで起きるため、ランダムに起き、生存により適した変異のみが選択されて残っていく仕組みになっている。そして、地球上に広がった人間が、住む地域に適応して異なる進化を遂げ、さまざまな人種が存在するのと同様、ウイルスも住む地域に適応して異なる進化を遂げ、さまざまな変異が存在するのは当たり前だ。また、人種間の違いも小さなものはあるが、大きくなると生物としての種が変わるわけである。

 一方、新型コロナウイルスにとっての住む地域は、宿主である人間の体の中であるため、人間の体の中で早く増殖して次々と感染する能力の高いウイルスほど生き残る確率が高い。従って、日本のように、検査数を絞って原型となる新型コロナウイルスを大量に残したのは、変異を生み出す確率も増え、大失敗だったのである。しかし、治療薬やワクチンに対する新型コロナウイルスの抵抗力は、変異で小さな差は出るだろうが、大きな差は出ないと思う。

 そのため、変異型が首都圏で急拡大して5月前半に8~9割を占めるようになるのなら、その理由こそが重要なのだが、*2-2-1は、「①国内の変異型は、英国・南アフリカ型・ブラジル型・由来不明型の4種類がある」「②英国型はウイルスが細胞に侵入する際に用いるスパイクタンパクに細胞と結び付く力を強めるN501Y変異がある」「③由来不明型は関東・東北で拡大し、ワクチンの効果低減が懸念されるE484K変異がある」「④南ア型とブラジル型は両方の変異を併せ持つ」「⑤東京でもN501Y変異に置き換わってきているが、プラスアルファの変異が出る恐れもある」と記載しているだけだ。

 しかし、ウイルスがいる限り変異型は発生し、それは国名に意味があるのではなく、宿主である人間側の免疫履歴や生活様式・インフラの違いが変異型ウイルスの生存確率の違いになる。ここで、由来不明型としているのは“日本型”ではないのか?それらの変異型について、厚労省専門家組織のメンバーは、「ゲノム解析を通じて変異型を追い掛けることが重要だ」と話しているそうだが、国民に自粛を促して人の流れを止めるのではなく、数多く検査やゲノム解析を行い、感染経路を分析して、科学的に対処法を考えるのが厚労省の仕事の筈である。

 しかし、*2-2-2のように、厚労省の助言機関の集計によると、国内で4月に発生した新型コロナのクラスターは463件に上り、場所別では学校・高齢者施設を含む職場(96件)が最多で、会議で使うデスク・電話機・コピー機などの共用備品を通して感染が拡大した可能性があるとされている。私は、共用トイレもそうで、トイレを清潔に保つための改修は経済の停滞している今がやりどきだと思う。

 そして、第4波は日常生活全般で感染が懸念される事態となり、対応策として国立感染症研究所の脇田所長は、「大型連休に向けて1人1人が不要不急の外出を減らし、マスク着用などの感染防止対策を徹底してほしい」と話されているそうだが、ウイルスがものを介して感染する理由はマスクの着用を怠ったからではなく、石鹸をつけて流水でよく手を洗うのではなく、アルコールを吹きかけたり擦り込んだりすればよいという指導をしたからだろう。日本で生き残るウイルスは、そういう日本の弱点を突いたものになると思う。

4)新型コロナとオリンピック
 「感染拡大が続いているのに五輪中止を決定できないのは、戦時中に無謀な作戦を強行して多くの犠牲者を出したのに責任回避した旧日本軍のようだ」と、*2-3のように、菅首相に批判が殺到しているが、先進国ではワクチン接種が進み移動制限が解除されつつあるのに、厚労省が対応を誤った日本は未だ制限解除もできない状況なので、旧日本軍と同じなのは厚労省である。

 そもそも、世界第三位の経済大国になっているのに、「国家の威信のため」などとして1965年当時と同じスローガンを振りかざし、東京という同じ場所にオリンピックを誘致し、大金を使って新国立競技場を建て替えたのには、私は全く賛成できなかったが、誘致した以上は万難を排して完全な形で遂行するのが先進国のやることである。

 また、オリンピック選手はオリンピックに出場するために多くを犠牲にして努力してきたのに、4年に1度の機会を逃せば年齢が進んで次のチャンスはない人が多い。そのため、IOCが東京五輪を開催すると各国のオリンピック委員会とともに決めたのなら、オリンピックの開催判断に政治が介入することは控え、誘致した責任として完全な形で開催できるようにあらゆる努力をするのが当たり前である。私には、東京五輪中止派の人の方が、オリンピックを政治利用しているのではないかと思われるので、オリンピックを中止した場合の損害や影響を明確にすべきだ。

 なお、「①五輪開催の最も大きな障害は医療陣の確保」「②五輪組織委員会は五輪期間中に1日に医師300人、看護士400人ずつの医療陣が必要と予想」「③医療界は『テレビで五輪を見る時間もない』として難色」「④新型コロナ感染再拡大で昼夜なく働いているのに、5月からはワクチンの大規模接種も始まり、人材派遣は不可能」「⑤日本政府の感染症対策分科会を率いる尾身会長は、組織委員会など関係者が感染レベルや医療の逼迫状況を踏まえて五輪開催の議論をしっかりやるべきとした」などと言って、五輪を開催できない理由を医療に押し付けるのは妥当ではない。その理由は、新型コロナの治療をする医師とオリンピックで働くスポーツドクターは別の診療科であり、医療関係者全員が新型コロナの治療に専念しているわけではないからだ。

 さらに、「⑥五輪に参加する選手と大会関係者は出国時点を基準として96時間以内に2回の新型コロナウイルス検査を受けて陰性証明書を提出」「⑦入国時に日本の空港の検査で陰性判定を受ければ14日間の隔離が免除され、入国初日から練習できる」「⑧入国後は毎日1回ずつ新型コロナウイルス検査を受ける」「⑨活動範囲は宿泊施設、練習会場、競技場に制限される」「⑩ここまで制限しながら五輪をやるべきか」とも書かれている。

 このうち⑥⑦で十分であり、⑧は、観客を入れて大会を行うなら必要だが、無観客なら毎日1回ずつ検査を受ける必要はないかもしれないが、検査しても毒にはならない。また、⑨⑩は、オリンピックに出場するために多くを犠牲にして努力してきたオリンピック選手は、日本に遊びに来るわけではなく競技で勝つためにくるのであるため、万難を排して参加したいだろう。それは、当然のことである。

(3)・・以下、工事中・・


・・参考資料・・
<改憲の危険性>
*1-1:https://digital.asahi.com/articles/ASP535S6SP53UTFK009.html (朝日新聞 2021年5月3日) 緊急事態条項や「改憲4項目」実現を 首相がメッセージ
 菅義偉首相は憲法記念日の3日、改憲派の集会に自民党総裁としてビデオメッセージを寄せた。新型コロナウイルスの感染拡大に触れ、大災害などの時に内閣が国民の権利を一時的に制限する「緊急事態条項」に関し、「極めて重く大切な課題」と語った。その上で、同条項や、憲法9条への自衛隊明記を含む自民党「改憲4項目」の実現をめざす考えを示した。この集会には安倍晋三氏も首相当時にメッセージを寄せており、菅首相も同じ形をとった。首相は「現行憲法も制定から70年余り経過し、時代にそぐわない部分、不足している部分は改正していくべきではないか」と述べた。続けて「新型コロナ対応で緊急事態への備えに関心が高まっている」とし、「大地震等の緊急時に国民の命と安全を守るため、国家や国民がどのような役割を果たすか、憲法にどう位置づけるかは極めて重く、大切な課題だ」と訴えた。さらに「自衛隊は大規模災害や新型コロナへの対応で国民の多くから感謝されているが、自衛隊を違憲とする声がある」とも主張。その上で、自民党が掲げる「自衛隊明記」「緊急事態条項創設」「参院選の合区解消」「教育無償化」の「改憲4項目」について、「自民党は、(国会の)憲法審査会で活発に議論を行っていただくため、憲法改正のたたき台を取りまとめている」と強調した。また、与党が6日にも衆院憲法審査会で採決をめざす、憲法改正の手続き法である国民投票法改正案に関し、「憲法改正議論を進める最初の一歩として、成立を目指さなければならない」と意欲を示した。菅首相は改憲について、昨年9月の就任以来、国会演説やメディアのインタビューなどで、国会での議論への期待を述べるにとどめてきた。「先頭に立って責任を果たしていく」と訴えた安倍氏に比べ、改憲への意欲は低いとされる。先月の訪米時にも、米誌ニューズウィークのインタビューで、首相は「(改憲は)現状では非常に難しいと認めなければならない」と話している。ただ、今秋までに衆院選や自民党総裁選が予定されることから、自民党の支持基盤である保守層に向けてアピールする狙いがあるとみられる。一方、立憲民主党の枝野幸男代表は3日、護憲派の市民団体が開いたイベントにオンラインで参加。コロナ対策を理由に「緊急事態条項」創設のための改憲を自民党などが訴えている点について、「公共の福祉にかなう私権制限は現行憲法でも許されている」とした上で、「必要な対策が打てていないのは、根拠なく楽観論に基づき、命や暮らしを守ることを最優先しない政策判断にある。まったく関係ない憲法のせいにしている」と批判した。ただ、枝野氏は、国民投票法改正案については触れなかった。同じイベントに参加した、共産党の志位和夫委員長は同法案について「憲法改定に向けた地ならしが狙いだ。採決を断固として止めよう」と訴えた。

*1-2:https://www.sankei.com/politics/news/210503/plt2105030026-n1.html (産経新聞 2021.5.3) 改憲派集会に参加した与野党幹部・有識者らの主な発言
 3日にオンライン形式で行われた憲法改正を訴える公開憲法フォーラム「この憲法で国家の危機を乗り越えられるのか!-感染症・大地震・尖閣-」(民間憲法臨調、美しい日本の憲法をつくる国民の会共催)では、与野党幹部や有識者らが講演などを行った。主な発言は次の通り。
■自民党・下村博文政調会長
 南海トラフ巨大地震のような大災害がこれから30年以内に70~80%の確率で発生する。そのときに感染症などがもし重なっていたとしたらこの国はどうなるのか。そのときの対応として世界では常識の緊急事態条項を入れなければならない。
■日本維新の会・足立康史氏
 憲法改正の中身の議論を進めるためにも、国民投票法改正案についてはただちに採決し、速やかに可決・成立を図るべきだ。立憲民主党が改正案に対する修正案を提示してきた。付則に3年の期限を切り、CM規制や資金規正に関する検討規定を設けるというもので、常識的な範囲だが、立民や共産党に常識は通用しない。3年間は手続きに関する議論を優先し、憲法改正を拒むカードにさえしかねないと危惧している。
■国民民主党・山尾志桜里氏
 (国の交戦権を否定した)憲法9条にしっかり自衛権を位置付け、それを戦力であることをきちんと認めた上で、国民の意志で枠づけをしていくことをこれからも皆さんの知恵を借りながら訴えたい。国家が危機を乗り越えるために必要不可欠な力を、憲法で無視し続けることでその力を抑制しようというのは、日本の「法の支配」にとっては有害だ。
■日本経団連・井上隆常務理事
 緊急事態条項を持たない憲法は世界でもまれだ。「オールハザード型」の危機対応にはなっていないことは気がかりで、複合型の災害や国家の危機を乗り越えられるのか、法治国家としての制度的な備えは十分なのか、今こそ再考する必要がある。わが国最高法規である憲法も社会の変化や時代に即し、国民的な議論が行われることは当然であり、決して不磨の大典ではない。国民一人一人が議論をし、次の世代に引き継いでいく作業が必要だ。
■日本青年会議所・佐藤友哉副会頭
 今の憲法には住民自治を明確に示す言葉がない。新型コロナウイルス禍では感染対策は地域によってさまざまだ。地域の実情にあった対策が打てるように国と自治体の権限のあり方を考えるべきだ。これからの地域発展を考える上でも、地方自治に関する憲法のあり方が今後大いに議論されることを心から期待する。
■国士舘大・百地章特任教授
 国家的な緊急時においても、国会の機能を維持し、国民の生活を守る必要がある。例えば、感染症の拡大によって全国から国会議員が集まれず、定足数が満たせない場合、どうするのか。来週に国会で感染症が発生し、定足数を満たせなかったら、すぐに起きる問題だ。国会の機能を維持するためにも憲法に根拠規定を置く必要がある。

*1-3:https://digital.asahi.com/articles/ASP515JTYP4XUPQJ008.html?iref=comtop_7_01 (朝日新聞 2021年5月3日) 制限と補償の前に、問いたい法解釈と統治 木村草太さん
 いま、日本の統治機構の憲法原則が脅かされている――。憲法学者の木村草太さん(東京都立大学教授)は言う。長引くコロナ禍で、移動や営業の自由が制限される生活が続き、十分な補償がない「制約」には、反発の声が繰り返し上がる。そんななか、統治のあり方にこそ、日本社会の危機の本質がある、という指摘だ。どういう意味なのかを聞いた。
●必要なのは正しい解釈に基づく検討
――東京や大阪、京都、兵庫で緊急事態宣言が出されています。「感染拡大を抑えるため」「人の流れを止めるため」という理由です。結果、移動や営業の自由に制約がかかっている。そもそもこの状況は、日本国憲法が保障する自由の侵害には当たらないのでしょうか。
 「結論からいうと、二つの条件が満たされれば、私権の制限は可能です。①規制の目的が自由の制限を正当化できるほど重要で、②規制の方法が合理的かつ、必要不可欠であれば、法律に根拠のある規制は合憲とされます。コロナ禍に当てはめれば、毒性の強い感染症のまん延を防ぐという『目的』の重要度は高い。感染症の専門家が合理的で必要だと考え、かつ法律に即した『手段』であれば、自由の制約は正当化され得るということになります。日本に限らず、欧米など立憲的憲法を持つ国々では、このような論理でコロナ禍における自由の制約がなされてきました」
――意外にハードルが低いように聞こえます。
 「いや、違います。むしろ『感染症対策なのだから、どんな制約でも我慢しろ』という論理は通用しないことを意味しています。その感染症を抑制することが社会にとってどれほどの重要性を持つのか、そして制約の内容、すなわち手段が科学的・法的根拠に照らして適切なのかという視点が重要です。そして法的根拠も伴わなければなりません。米国では、制約の度合いが適切な範囲を超えているから違憲だ、という判決も出ています」
――「やりすぎ」はいけない、ということですね。
 「感染症の拡大を止めるという目的に対して、その対策は役に立っているといえるのか。もっと緩やかな制約で効果的なものはないのか。こうした細やかな検討が不可欠です。具体的にいえば、人が集まってもほとんど会話しない映画館や、個人が黙々と打つパチンコ店の営業を制約する必要があるのか。営業自粛を要請するとして、それに従わない場合の罰則はどの程度にするのか」
●ユカちゃん店主、首相答弁に衝撃 コロナ禍の自由とは?
 「言い換えれば、自由を制約する政策には、こうした法律の正しい解釈に基づいた細かな検討こそが必要です。ですが、この1年以上にわたるコロナ禍でこうした意識が今の政府には決定的に欠けていることが明らかになりました」「自由と補償をめぐる議論が繰り返されてきましたが、憲法上の問題という意味では、法の支配や政府の国民への説明責任といった、日本の統治機構の憲法原則が危機にさらされていることがより深刻だと考えています」
[記事後半で木村さんは、コロナ対策に関する国の目標設定のあいまいさや、不十分な説明について論じます。そのうえで、近年の政権の憲法や法解釈に対する向き合い方についても鋭い指摘をします。]
●目標ないまま場当たり規制
――どういうことですか。
 「まず、先ほど示した条件の一つ目、『規制の目的』について考えてみましょう。政府は、これを具体的に設定できていないし、国民に十分な説明もしていない。今回のウイルスをどの程度封じ込めるべきかという問題です。例えば、完全な『ゼロコロナ』を目標にするなら、行動抑制は広範で強いものになります。一方、1日千人くらいの陽性者は許容するということにするなら抑制の程度は弱まります」「感染拡大から1年以上が経った現在も、目的・目標を明確に示せずにいる。これがないと、第2の条件に当たる規制の正当性は評価できません。規制の方法が合理的かつ必要不可欠かは、目標によります。それがなければ国民からすれば場当たり的にしか映らない規制がまかり通ることになります」
――他国も感染は拡大しました。
 「もちろん日本と同じように当初混乱しました。ただヨーロッパの多くの国では、感染者数・死者数の規模が大きかった。そのため、コロナの毒性への評価や恐怖について、社会的に合意形成がしやすかった。日本では、人によってウイルスの毒性に対する評価が違うので、必要だと考える規制の範囲や強度にも食い違いが顕著に生じたように見えます。新型コロナウイルスは、より致死性の高いエボラ出血熱などと比較すると、社会的な意思決定がしにくい特徴を持っているともいえます。しかしここは、政治が率先してリーダーシップを取るべきでした」
――「営業自粛を求めるならば、その分の補償を」という議論が繰り返されてきました。十分な額とはいくらかという議論はあるとしても、一部の業種にだけ制約が偏るならば憲法14条が定める法の下の平等、あるいは29条の営業の自由の侵害にならないのですか。補償がない、あるいは十分ではない、というのは憲法違反と言えませんか。
 「それは難しい。憲法29条3項は『私有財産は、正当な補償の下に、これを公共のために用いることができる』と定めていますが、公平性の観点からの議論です。つまり、ある人だけが不公平に財産権を制約されてはいけない。でも制約される人に理由があれば別なのです。例えば、食中毒を出した店への営業停止命令が出た際に、補償はされませんよね。その店に『内在するリスク』があるからです」「コロナ禍のスタート時点では、憲法の観点からすると、飲食店には社会を脅かすウイルスの感染を拡大させるリスクが内在するから補償はできない、という論理だった。ただ、私は今は状況が変わったと考えています」
――どういうことでしょう。
 「緊急対応を余儀なくされた当初と比較すれば、ウイルスについてわかってきた情報も多く、各飲食店もさまざまな対策を講じている。一方で、営業自粛要請は非常に長期間に及んでいる。感染症対策をしていようがいまいが一律に規制する手法が、『内在するリスク』への対応として正当なのかどうか、疑問が生まれます。映画館や書店に関しても同様です」
●揺らぐ立憲主義の根幹
――リスクの評価の基準はどうすれば?
 「このリスクの評価は、政府が掲げる目標との関係で決まります。コロナ・ゼロを目標にするならば、もちろん制約は広範囲に強く、そして長くなります。その場合は『3密』産業には業種転換支援を政策として打たないといけません。『人の流れを止めるため』という漠然とした理由で、ある業種だけが狙い撃ちになるのは正当化できません」
――政府が目標を設定し、説明責任を果たせていないのが問題だということですね。 「明確な目標を設定し、それを法令に明記して国民に説明し、理解を得ようとする。それをしないまま政策を打ち続けるということは、『法律による行政』を軽んじていることになる。立憲主義の根幹を揺るがしかねない問題です」「思い返すと、昨年2月に当時の安倍晋三首相が法的根拠もないまま、全国一斉休校宣言をしました。当時は新型コロナウイルスには新型インフルエンザ特別措置法は適用できませんでしたから、法の外からの『要請』でした」「翌月にはこの特措法を適用できるよう法改正をしました。少しテクニカルな話ですが、新型インフルエンザ対策であるこの法律では、市中感染が広がっている状況では、緊急事態宣言は継続する、となっていた。これだと新型コロナの場合、宣言は解除できない。ですがそうなりませんでした。そして昨年4月の緊急事態宣言の理由として、医療体制の崩壊が語られました。これも法律に書かれていない。何となく数字が下がってきたので解除し、増えると宣言を出す。一貫して法的根拠という視点が軽視されてきました」
――当初は想定されていなくて対応が遅れた、ということではありませんか。
 「今も変わっていないと思います。まん延防止等重点措置をめぐる混乱がその一例です。この措置とは、法律で定められた内容をみると、『医療崩壊寸前に行われる強力な措置』です。でも、『まん延防止』と表現してしまうと、一般的には医療崩壊寸前というより『まだまん延していない』というニュアンスで受け取られます」「官僚がこういう名称を提案してきても、政治家は、果たしてこの名称で、自分が日頃から付き合っている地元の支援者たちに法律の内容が伝わるだろうかと考えないといけない。政治家が政府と国民をつなぐ仕事ができていない。政治家が想像力を働かせて主張するべきところでしたが、機能しませんでした」
●問われる統治のあり方
――こうした事例から言えることは何でしょうか。
 「政府が法の解釈や整合性などを気にしなくなってしまったことのマイナス面がわかりやすく示されてしまった。コロナ禍によってと言うよりも、もう少し長いタイムスパンで起きてきました。2015年の安保法制時の憲法解釈の変更、そして最近では日本学術会議の問題でも従来の法解釈をないがしろにしてきた」「法文言の正しい解釈を尊重しながら、必要な目標設定をしてそれを国民に向けて説明する。こうした統治や民主主義の根幹を揺るがすことに慣れてしまっているように見える。国民の命や暮らしをおびやかす形で、露呈したのがコロナ禍といえます」
――行政に権力が集中していなかったから感染症対策で後手に回って、東京などでは3度の緊急事態宣言を出さないといけなくなった、ではなくて……。
 「その反対でしたね。法の支配や説明責任を軽んじてきたから、様々な法改正や宣言の意味を国民と共有できていない。権力があるだけでは、統治機構はきちんと機能しない。実際に法を超えて、権力行使して実現したのが、首相による『一斉休校』とマスクの配布だったことを思い出すと、いかに憲法に基づいた法の支配が重要かがわかります」「自由と補償の前提、統治のあり方の問題です。自由と補償の議論は重要なんですが、むしろそうした議論ばかりになってしまうと、それが今の危機を見失うごまかしの手段になってしまうことを懸念しています」(聞き手・高久潤)
     ◇
1980年生まれ。専門は憲法。著書に「憲法学者の思考法」「平等なき平等条項論」など。
 
*1-4:https://www.nichibenren.or.jp/document/statement/year/2021/210503.html (日本弁護士連合会会長 荒 中 2021年5月3日) 憲法記念日を迎えるに当たっての会長談話
 本日は、日本国憲法が施行されてから74年目の憲法記念日です。昨年から続く、新型コロナウイルスの感染拡大については、引き続き予断を許さない状況にあり、本年も新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づく緊急事態宣言やまん延防止等重点措置(以下「緊急事態宣言等」といいます。)の下で憲法記念日を迎えることになりました。緊急事態宣言等の下で、市民や企業等には、外出・移動の自粛や休業・時短等が要請されている状況にあります。しかし、そのような感染拡大防止策を講ずる場合であっても、個人の権利は最大限尊重される必要があります。規制により生活が脅かされたり、事業活動が著しく制約されたりする場合には、速やかに適切な措置を講ずる必要があるとともに、その補償も課題となります。また、感染者やその家族、医療従事者等への偏見や差別は決して許されないことに留意する必要があります。加えて、ワクチン接種に伴い発生する様々な問題についても、きめ細やかに対応していく必要があります。報道によると、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、憲法を改正して緊急事態条項の新設を求める声も、与野党の一部にあるようです。しかしながら、感染拡大防止は市民の協力を得ての法律上の対応で十分可能です。憲法に緊急事態条項を新設することは、立法事実を欠くだけでなく、これにより個人の権利の侵害につながるおそれがあります。また、現在、衆議院の憲法審査会では、日本国憲法の改正手続に関する法律(以下「憲法改正手続法」といいます。)の一部を改正する法律案の審議が行われており、本年5月6日に開催予定の同審査会において採決される可能性も報道されています。当連合会の2018年6月27日付け「憲法改正手続法改正案の国会提出に当たり、憲法改正手続法の抜本的な改正を求める会長声明」で指摘しているとおり、現在審議されている改正法案で取り上げられている事項以外にも、テレビ・ラジオの有料意見広告規制や最低投票率制度等、検討や見直しを行うべき重要な課題があります。当連合会は、今後もこれらの重要な課題の検討や見直しを含む憲法改正手続法の抜本的な改正を求めていきます。さらに、昨年は、検察官の定年後勤務延長問題や日本学術会議会員の任命拒否問題が発生しましたが、当連合会は各問題について意見表明を重ね、憲法の基本原則を脅かすような問題があることを指摘しました。当連合会は、新型コロナウイルスの感染拡大という状況の下においても、立憲主義を堅持し、国民主権に基づく政治を実現することにより個人の人権を守る立場から、引き続き、人権擁護のための活動を積極的に行ってまいります。

<コロナのワクチン・検査・治療>
*2-1-1:https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA2291I0S1A420C2000000/ (日経新聞 2021年4月22日) ワクチン、自治体要望に400万回分不足 GW後の供給分
 河野太郎規制改革相は22日の記者会見で、5月10日からの2週間で自治体に届ける高齢者向けの新型コロナウイルスのワクチンを巡り都道府県別の配分量を発表した。自治体の要望する量に供給が約400万回分足りないといい、河野氏は「申し訳ない」と陳謝した。政府は2週間で1万6千箱(約1900万回分)を配送する計画にしている。自治体に希望量を聞いたところ1万9571箱(約2300万回分)で、供給量を約400万回分超えた。そのため希望量に応じて傾斜配分し、供給量を決めた。東京都が2064箱(約240万回分)と最も多く、埼玉県1095箱(約130万回分)、大阪府1058箱(約120万回分)と続いた。河野氏は「最初だからまだ手元に在庫がなく、予約を取るときに若干の不安があるということも入った数字だと思う」と述べ、自治体が在庫分も含めて発注した可能性を指摘した。その後の供給については、各自治体の希望と接種実績を踏まえて決めていくという。65歳以上の高齢者向けワクチン接種は4月12日に始まった。当初は供給量が限られ、大型連休前後から米ファイザーからの輸入量が増加する。政府は6月末までに高齢者全員が2回分の接種を受けられる量を供給できるとしている。

*2-1-2:https://digital.asahi.com/articles/ASP546WW5P54ULFA009.html?iref=comtop_7_05 (朝日新聞 2021年5月4日) ファイザーワクチン、売上高2兆8千億円の見込み
 米製薬大手ファイザーは4日、今年の新型コロナウイルスワクチンの売上高が260億ドル(約2兆8千億円)になる見込みだと発表した。年内に供給する予定の16億回分の売上高にあたる。2月時点の予想(150億ドル)から大幅に増えており、今後契約数が増えればさらに金額が増えるという。ワクチンの売上高が上積みされ、会社全体の売上高は705億~725億ドルと、前年の419億ドルから大幅に増える見込みだ。4日発表した1~3月期決算で明らかにした。1~3月期のコロナワクチンの売上高は34・6億ドル(約3800億円)。会社全体の売上高は、前年同期比45%増の145・8億ドル、純利益も同45%増の48・7億ドルで、ともにワクチンの販売が大きく貢献した。ワクチンは、ファイザーとドイツのバイオ企業ビオンテックが共同で開発した。日本政府が契約しているモデルナも2月、今年のコロナワクチンの売上高が184億ドル(約2兆円)になる見込みだと明らかにしている。

*2-1-3:https://digital.asahi.com/articles/DA3S14894139.html (朝日新聞 2021年5月5日) コロナ薬にアビガン、実現は 安倍前首相「承認めざす」発言、1年
 新型コロナウイルス治療薬の候補として、注目を集めた抗インフルエンザ薬「アビガン」について、安倍晋三・前首相が「今月中の承認をめざしたい」と異例の発言をして1年が経つ。承認申請はされたが継続審議となり、新たな臨床試験(治験)が始まった。この間に何がわかったのか。今後どうなるのか。
■申請→有効性「判断困難」→再治験
 アビガンは2014年、従来の薬が効かない新型インフルエンザ向けに承認された。細胞に入ったウイルスの増殖を抑える薬だ。製造元の富士フイルム富山化学が20年3月に新型コロナ向けの治験を始めた。有効性を示すデータがまだ出ていない昨年5月4日、安倍氏は会見で、「一般の企業治験とは違う形の承認の道もある」などと述べ、月内の承認をめざすとした。この直後に厚生労働省は、「治験データは後でも可」と早期承認が可能となる特例を設けた。だが患者が減り参加者が集まらず、治験と別の特定臨床研究では、統計的な有効性は示せなかった。同社は9月23日、治験の結果を発表。特例は使われず、10月16日に厚労省に製造販売の承認申請をした。12月21日、厚労省専門部会での審議は荒れた。審査を担う医薬品医療機器総合機構(PMDA)側は新型コロナへの有効性について、「現時点で明確に判断することは困難」としながら、流行が広がる緊急的な状況に備えるため、「使用可能な状況にすることも検討は可能」と説明した。朝日新聞が入手した議事録によると、委員からは厳しい意見が相次いだ。「ちゃんとしたエビデンス(科学的根拠)がない」「解析計画とかデータの取り扱いに信頼性がない」「有事だからこそ正当な科学的手続きは通すべきだ」。論点の一つは治験の手法だ。20~74歳の重症ではない新型コロナの患者156人が参加し、偽薬とアビガンをのんだ患者の経過を比べた。どの患者がアビガンをのんだか、医師が知っている「単盲検」という手法だった。アビガンをのんだ患者は、PCR検査で陰性になるまでの中央値が11・9日。偽薬をのんだ患者より2・8日短かった。客観的な効果の評価には、薬か偽薬かを医師も患者も知らない「二重盲検」という手法が通常は使われる。単盲検にした理由は、急変時の患者の安全の確保のためなどという。どの患者が薬をのんだか医師が知っていると、薬が効いたのだろうとの思いこみが生じうる。PCR検査や肺のCT画像撮影のタイミングに客観性がない可能性も指摘された。結果の解析方法の不備も指摘され、承認は先送りとなった。同社は審議結果について「治験のプロトコル(実施計画書)は適正プロセスにのっとって、PMDAに提示し、合意を得た」とのコメントを出した。
■専門家「治験、根本的見直しを」
 継続審議となったアビガンは今も、患者の希望と医師の判断による「観察研究」の枠組みで使われている。クウェートや米国での二重盲検の治験の結果が待たれていた。クウェートでは1月に治験を終え、結果を発表。中等症と重症の計353人の患者では、アビガンをのんだ方が、偽薬よりも回復期間が1日早かったが、有意差はなかった。ただ、軽症者ら181人ではアビガンの方が3日早く退院できた。米国では昨年から軽症、中等症の826人での治験を続ける。そんな中、富士フイルム富山化学は4月21日、国内で二重盲検による治験を新たに始めたと発表した。対象は50歳以上の男女316人。発熱などの症状が出たばかりの軽症者で、基礎疾患があるなど重症化リスクがある患者に絞り、薬の効果が出やすいようにした。10月末まで有効性や安全性を調べる。データを基に、部会で再審議される。ただし予定通り終わるかや、審査にかかる期間は見通せない。アビガンはのみ薬で使いやすいが、動物実験で胎児に奇形が出る恐れがわかり、副作用も懸念されている。承認前の薬だが、備蓄のための追加購入もあった。元々新型インフルのために約70万人分を備蓄していたが、厚労省は昨年度、新型コロナ治療のため、約134万人分を購入した。予算案では139億円を計上した。臨床現場からは「ハイリスクの患者がのみ、重症化が防げるならばブレークスルー(突破口)になりうる」という声が上がる。一方、「効かないという前提をつくりたくないだけではないか。ほかの感染症が次に流行した時にアビガンを使いにくくなるから」との声も漏れる。臨床試験に詳しい日本医科大学武蔵小杉病院の勝俣範之教授(腫瘍〈しゅよう〉内科)は言う。「科学的に有効性が示されて初めて薬は承認される。これが基本。ヒトを対象にした試験が成功する可能性は低く、結果が出る前に承認への言及があることそのものがおかしい」。日本では製薬企業主導の試験が多く、米国のように研究者によるものが少ないことも問題視する。「コロナ禍を機に、臨床試験を推進し、正しい情報発信をする機関を作るなど根本的な見直しをすべきだ。政治から独立した機関を設け、質の高い臨床試験ができる環境を整えてほしい」と話す。

*2-1-4:https://www.nikkei.com/article/DGXZQOFB25AAL0V20C21A1000000/ (日経新聞 2021年2月9日) 東京都医師会、イベルメクチン投与を提言 重症化予防で
 東京都医師会の尾崎治夫会長は9日の記者会見で、新型コロナウイルスの感染拡大に対応するため、主に自宅療養者の重症化を防ぐ狙いで薬剤の緊急使用を提言した。海外で重症化を防ぐ効果が示されているとして、抗寄生虫薬「イベルメクチン」などをコロナ感染者らに投与すべきだと強調した。イベルメクチンのほか、ステロイド系の抗炎症薬「デキサメタゾン」の使用を国が承認するよう求めた。尾崎氏は「(いずれも)副作用が少ない。かかりつけ医のレベルで治療ができるよう、国に検討してほしい」と述べた。イベルメクチンもデキサメタゾンも国内で処方されている。ただ、コロナの治療薬としては承認されていない。8日時点で都内には自宅療養者が約1600人、入院先などが決まらず「調整中」になっている感染者も約1600人いる。軽症や無症状の多い自宅療養者の容体急変にどう対応するかも課題になっている。尾崎氏は都内の1日当たり新規感染者数について「100人ぐらいまでに抑えることが4~6月の状況を良くする道だ」と強調した。都内では9日、412人の新規感染者が確認された。

*2-1-5:https://newswitch.jp/p/25238 (Newswitch 2020年12月27日) 来年3月に臨床試験終了へ、抗寄生虫薬「イベルメクチン」はコロナに効くか
 北里大学大村智記念研究所感染制御研究センターは、抗寄生虫薬「イベルメクチン」について、新型コロナウイルス感染症の治療薬としての臨床試験を2021年3月にも終了し、製造元の米製薬大手MSDに試験結果を提供する。MSDは効果を検証しながら、承認申請を検討する見通しで、新型コロナの治療薬として認められれば、抗ウイルス薬「レムデシビル」とステロイド薬「デキソメタゾン」に続き、3例目となる。臨床試験を取りまとめている花木秀明センター長が方針を明らかにした。イベルメクチンは寄生虫感染症の治療薬だが、エイズウイルス(HIV)やデングウイルスへの効果が報告されている。ウイルスの遺伝子であるリボ核酸(RNA)の複製やたんぱく質生成を阻害するほか、サイトカインストーム(免疫暴走)を抑制する作用が期待される。米ブロワードヘルスメディカルセンターの研究では、イベルメクチンの投与により、新型コロナ重症患者の致死率が80・7%から38・8%に改善した。イベルメクチンは駆虫薬として、19年には世界で4億人以上に投与され、大きな副作用は確認されていない。新型コロナへの治療薬としては、インドやペルーなど29カ国で研究が続けられている。花木センター長は「日本ではイベルメクチンの知名度が低いが世界では駆虫薬として知られ、新型コロナの治療効果の検証が進んでいる」と説明。「日本でも新型コロナ治療薬としての可能性を広く知ってもらい、試験を進めたい」と述べた。イベルメクチンは、寄生虫によって引き起こされる「オンコセルカ症」の治療に使われる。オンコセルカ症は目のかゆみや発疹などが生じ、失明に至ることもある。イベルメクチンのもととなる化合物アベルメクチンの発見により、北里大学の大村智特別栄誉教授は15年、ノーベル生理学・医学賞を受賞した。

*2-2-1:https://www.jiji.com/jc/article?k=2021041700411&g=soc (時事 2021.4.17) 変異型、首都圏で急拡大 「5月前半に8~9割」―全国は1カ月で4倍
 新型コロナウイルス感染拡大の「第4波」が鮮明になる中、関西圏で急拡大する変異ウイルスが首都圏でも猛威を振るう恐れが強まっている。国立感染症研究所は、首都圏での新規感染者に占める変異型の割合が5月前半に8~9割に達する恐れもあるとみて、警戒を強める。厚生労働省によると、全遺伝情報(ゲノム)解析で確定した変異型の国内感染者は、3月9日時点では21都府県の271人だった。今月13日時点で42都道府県の1141人となり、1カ月で4倍超に激増した。国内の変異型は大きく分けて、英国型、南アフリカ型、ブラジル型、由来不明型の4種類。国内感染者の94%超を占める英国型は、ウイルスが細胞に侵入する際に用いるスパイクタンパクに細胞と結び付く力を強める「N501Y」変異がある。厚労省の集計に含まれない由来不明型は関東や東北で拡大し、ワクチンの効果低減が懸念される「E484K」変異が特徴。南ア型とブラジル型は両方の変異を併せ持つ。フィリピン、米国に由来する変異型も確認されたが広がりはない。変異は、ウイルスが細胞に入り込み、遺伝物質RNAをコピーして増殖する際のコピーミスで起きる。N501Yは、スパイクタンパクの501番目のアミノ酸がN(アスパラギン)からY(チロシン)に変わったことを意味する。E484Kは484番目のアミノ酸がE(グルタミン酸)からK(リシン)に変化している。特に急拡大が懸念されるのが、感染力が強いN501Y変異だ。東京で拡大した由来不明型は、英国型に取って代わられつつある。感染研によると、首都圏(東京、神奈川、千葉、埼玉)での感染者に占めるN501Y変異の割合は、現在の約5割から、5月前半には8~9割になると推定される。東海圏(静岡、愛知、岐阜、三重)、関西圏(大阪、京都、兵庫)、沖縄では5月前半までに9割台後半になる見通しだ。厚労省専門家組織のメンバーは「東京でもN501Y変異に置き換わってきているが、プラスアルファの変異が出る恐れもある。ゲノム解析を通じ変異型を追い掛けることが重要だ」と話す。

*2-2-2:https://www.yomiuri.co.jp/national/20210428-OYT1T50275/ (読売新聞 2021/4/28) 変異ウイルス猛威の「第4波」、クラスター発生場所が多様化
 国内で4月に発生した新型コロナウイルスのクラスター(感染集団)が463件に上り、場所別では初めて職場(96件)が最多となったことが、厚生労働省の助言機関の集計でわかった。昨年末以降の第3波では飲食店を「急所」とみて対策が強化されたが、変異ウイルスが猛威をふるう今の「第4波」では、学校や高齢者施設なども含めて、発生場所が多様化している。助言機関によると、把握が難しい家庭内を除いて、昨年1月以降に発生した5人以上のクラスターは計4631件。昨年春の第1波では医療機関で、続く夏の第2波では接待を伴う飲食店を中心とした「夜の街」での感染事例が目立った。年末から年始にかけて感染者が急増した第3波では、会食のリスクが注目され、各地で飲食店への営業時間短縮要請などが行われた。だが現在の第4波では、日常生活全般で感染が懸念される事態となっている。今年4月1日~23日の暫定値463件の内訳をみると、最多の職場(96件)に続いて、学校・児童福祉施設(90件)、高齢者施設(86件)、飲食店・会食(82件)などが多かった。職場感染は2月は49件だったが、4月に入り拡大した。厚労省の職員らが3月下旬、深夜まで23人が参加する送別会を開催したケースでは、参加者12人を含む同じ部局の29人の感染が判明。送別会との因果関係は不明のままだが、会議で使うデスクや電話機、コピー機など共用の備品を通して感染が拡大した可能性があるという。一方、助言機関は小中学校や大学、学習塾などで昨年1月以降に起きた489件のクラスターも分析。その結果、部活やサークル活動が要因とみられる事例が2割(100件)に上り、大学では4割(58件)を占めた。横浜市では、慶応大ラグビー部員ら78人(28日現在)の感染が確認された。寮生活などが原因の可能性があるという。政府は、こうした部活やサークル活動の自粛を呼びかけている。東京、大阪など4都府県への緊急事態宣言による飲食店の休業などで、「路上飲み」による集団感染も新たな課題となっている。国立感染症研究所の脇田隆字所長は「大型連休に向けて一人一人が不要不急の外出を減らし、マスク着用など感染防止対策を徹底してほしい」と話している。

*2-3:https://news.yahoo.co.jp/articles/23b1e6bf4c3850bde326210845eca8900e01a7b3 (Yahoo 2021/4/29) 「戦時中に責任回避した旧日本軍のようだ」…五輪中止決定できないという菅首相に批判殺到
 「感染拡大が続いているのに自ら五輪中止を決定できないとは、戦時中に無謀な作戦を強行し多くの犠牲者を出した旧日本軍と全く同じだ」。日本の医療関係者がある日本メディアで新型コロナウイルスの感染が拡大する中でも「五輪開催決定は国際オリンピック委員会(IOC)がすること」としながら責任を転嫁した日本の菅義偉首相をこのように批判した。東京五輪開幕を85日後に控え、日本政府は「五輪強行」を叫んでいるが、責任者の間では内紛が起きる雰囲気だ。五輪開催と進行案をめぐり日本の首相はIOCに、担当大臣は主催都市である東京都に、互いに決定と責任を転嫁しようとする。こうした中、日本政府の新型コロナウイルス分科会会長は28日、五輪開催の是非について「そろそろしっかり議論すべき時期にきている」と警告した。
◇「安倍首相は『五輪延期』を直接決定」
 菅首相は23日、東京都や大阪府など4都府県に3度目の緊急事態宣言を発令する席で、五輪中止の可能性と関連した質問を受け「五輪の開催権限はIOCにある」と話した。感染者がさらに増加しても、緊急事態宣言が続いても、自身には五輪中止を決める権限がないという「責任回避」だ。菅首相は続けて「IOCがすでに東京五輪を開催するということを各国のオリンピック委員会とともに決めた」とも述べた。現在日本の新型コロナウイルスの状況は深刻だ。緊急事態宣言にもかかわらず、28日の1日だけで日本全国で5791人の感染者が確認された。五輪開催都市である東京では29日に1027人の感染者が確認され、3カ月ぶりに1日の感染者数が1000人を超えた。楽観を難しくするのは変異ウイルスだ。28日に開かれた東京都のモニタリング会議では現在の東京都内の感染者の59.6%が感染力の高い「N501Y」型の変異ウイルス感染者とされ、「こうした状況が続く場合、2週後には東京都の1日の新規感染者は2000人になるだろう」という予測も出てきた。だが、緊急事態宣言が延長される場合に五輪はどのようにするのかなどに対してはだれもが明言を避けている。特に菅首相の無責任な態度に対する批判が激しい。東京新聞は、五輪で感染が全世界に広がっても(IOC委員長の)バッハさんがやれと言ったとして責任を転嫁するのだろうかと皮肉った。昨年安倍晋三首相(当時)は五輪を1年延期することを直接決め、こうした意向をIOCに伝えた。
◇医療陣確保問題、政府と都知事、互いに「相手のせい」
 現在五輪開催の最も大きな障害に挙げられるのは医療陣の確保だ。五輪組織委員会は五輪期間中に1日に医師300人、看護士400人ずつ、大会期間中に延べ1万人以上の医療陣が必要なものと予想している。だが、医療界は「テレビで五輪を見る時間もない」として難色を示している。新型コロナウイルスの感染再拡大でそうでなくとも昼夜なく働いているところに、5月からはワクチンの大規模接種も始まるだけに、人材派遣は不可能だという立場だ。丸川珠代五輪担当相は27日の記者会見で、これを確認する質問に「(責任を持っている)東京都がどのように取り組んでいくのか、具体的なことがまだ示されていない」としながら東京都に苦言を呈した。これを受け東京都の小池百合子知事は「実務的には詰めている。コミュニケーションをしっかりとっていく必要がある」と受け返した。日本政府と東京都が医療陣の確保をめぐり舌戦を行った格好だ。こうした中、日本政府の感染症対策分科会を率いる尾身茂会長は28日の国会で「組織委員会など関係者が感染のレベルや医療の逼迫状況を踏まえて(五輪開催の)議論をしっかりやるべき時期に来ている」と話した。政策決定に深く関与してきた尾身会長が五輪中止の可能性に公式に言及したのは今回が初めてだ。彼は五輪開催の可否判断には、感染の状況と医療の逼迫状況が最も重要な要素だと説明した。
◇五輪参加選手は毎日コロナ検査
 一方、五輪組織委員会が28日に公開した東京五輪の感染防止に必要なルールをまとめた「プレーブック」の内容についても論議が起きている。このルールによると、五輪に参加する選手とすべての大会関係者は各国から出国する時点を基準として96時間(4日)以内に2回の新型コロナウイルス検査を受けた後に陰性証明書を提出することを明記した。入国時に日本の空港での検査で陰性判定を受けた選手は14日間の隔離が免除され、入国初日から練習できる。だが、入国後は毎日1回ずつ新型コロナウイルス検査を受けなければならず、活動範囲は宿泊施設、練習会場、競技場に制限される。また、選手を含むすべての関係者は原則的に一般市民とは接触できず、公共交通機関も利用できない。五輪による感染拡大を防ごうとする措置だが、行き過ぎた制限という反発も出てくる可能性が大きい。ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)などには「ここまでしながら五輪をやるべきなのか」という懐疑的な反応が続いている。上智大学の中野晃一教授は東京新聞に、さまざまな国の選手たちと観衆の交流という五輪の意義そのものがすでに失われた状況で、海外から不参加通知が続いてやむを得ず五輪中止に追い込まれる前に日本の政治家が責任を持って決定を下さなければならないと話した。

*2-4-1:https://www.nikkei.com/paper/related-article/?R_FLG=1&b=20210507&be=NDSKDBDK・・ (日経新聞 2021.5.6) 米、ワクチン特許放棄を支持 途上国の供給後押し
 バイデン米政権は5日、新型コロナウイルスワクチンの国際的な供給を増やすため、特許権の一時放棄を支持すると表明した。ワクチンが足りない途上国が世界貿易機関(WTO)で要請していた。製薬会社は反対しており、交渉の先行きは不透明だ。米通商代表部(USTR)のタイ代表は声明で、WTO加盟国がワクチンの特許権を保護する規定を適用除外とする案を支持すると表明した。「コロナのパンデミック(世界的な大流行)という特別な状況では特別な政策が必要だ」と指摘した。各種特許はWTOの「知的財産権の貿易関連の側面に関する協定(TRIPS協定)」で保護が定められている。インドや南アフリカは自国でワクチンの生産を増やすため、ワクチンを同協定から一時的に適用除外とするよう求めていた。ワクチンを開発した製薬会社を抱える米国のほか、欧州連合(EU)など先進国は特許権の放棄に反対してきた。米国が支持に回ったことで、WTOで具体的な条件を詰める。USTRは問題が複雑で「交渉には時間がかかる」と指摘した。バイデン政権は自国民へのワクチン接種を優先するため、他国への供給に消極的な姿勢を貫いてきた。国内外から「ワクチンを独り占めにしている」との批判が高まっていた。世界保健機関(WHO)のテドロス事務局長は5日、「新型コロナとの闘いで、記念すべき瞬間だ。特許の放棄の支持は、世界の健康問題に取り組む米国のリーダーシップの強力な例だ」との声明を出し、米国の決定を称賛した。

*2-4-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20210507&ng=DGKKZO71628670X00C21A5MM0000 (日経新聞 2021.5.7) 独、ワクチン特許放棄に反対の構え EU首脳が議論へ
 欧州連合(EU)は7日から始まる首脳会議で、新型コロナウイルスのワクチン供給拡大に向けて、特許権を一時的に放棄する考え方を支持するかどうかを討議する。バイデン米政権が前向きな姿勢を示したためだが、ドイツのメルケル政権は反対する構えだ。特許権を持つ製薬会社が本拠地を置く国・地域での議論が本格化する。EUは7~8日、ポルトガルのポルトで首脳会議を開く。フォンデアライエン欧州委員長は6日の講演で、ワクチンの供給増という目的の達成に向けて「バイデン米大統領の提案を議論する用意がある」と語り、27カ国の首脳間で話し合う考えを表明した。ドイツメディアによると、独政府の報道官は「知的財産の保護はイノベーションの源泉で、将来もそうでなければならない」などと述べ、特許権の一時放棄に否定的な考えを示した。ワクチンの普及を妨げているのは生産能力や品質管理の問題であって、知的財産の保護が原因ではないというのがドイツ政府の主張だ。ドイツにはワクチン開発にいち早く成功したビオンテックが本拠を置く。急浮上した特許の一時放棄という考え方への反発を強めている。ただ、欧州内でも考え方は分かれている。フランスのマクロン大統領は6日、「完全に賛成する」との考えを示した。首脳会議で結論が出るかどうかは見通せない。バイデン米政権は5日、ワクチンの特許権の一時放棄について、従来の慎重姿勢を一転させ、支持する姿勢を打ち出した。ワクチンの供給が遅れている途上国向けの生産を増やすためだ。だが製薬会社は強く反発している。

<環境軽視は生存権の侵害>
*3-1:https://digital.asahi.com/articles/DA3S14883435.html?iref=comtop_Opinion_04 (朝日新聞社説 2021年4月25日) 温室ガス削減 具体策示して変革促せ
 菅首相が、米国主催の気候変動サミットで、2030年度の温室効果ガスの排出量を13年度より46%削減する目標を掲げ、「さらに50%の高みに向けて挑戦を続けていく」と表明した。従来を大幅に上回る目標を世界に約束したことは評価できる。しかし実現へのハードルは高い。乗り越える道筋を早期に描く責務が、首相にはある。地球温暖化対策の枠組みであるパリ協定からトランプ政権の際に離脱した米国は、バイデン大統領になって復帰すると、サミット開催を呼びかけた。すでに昨年新たな目標を掲げた欧州連合に続いて今回、米国や英国も野心的な目標を提示。中国も参加し、気候変動では協調する姿勢を示した。世界で脱炭素の動きが強まるなか、日本は昨春、30年度の削減目標を13年度比で26%と、5年前のまま据え置いて国連に提出し、国際的に批判された。その後の昨年10月、菅首相が、森林などの吸収量を差し引いた実質的な排出量を「50年までにゼロにする」と表明したことから、30年度目標の引き上げ幅が注目されていた。首相が掲げた「50年実質ゼロ」は、気候変動の影響を減らすため、パリ協定が努力目標とする「産業革命前からの世界の平均気温の上昇を1・5度までに抑える」のに必要とされる。達成には、50年までの段階での二酸化炭素(CO2)排出削減も欠かせない。排出量1位の中国などの動きを促すためにも、5位の日本のさらなる目標上乗せを期待したい。今回の目標は議論を積み上げた結果ではなく、首相主導の政治判断で示された。世界は脱炭素に向けた産業構造の転換や技術開発を加速させており、取り残されれば日本経済の競争力を損なう。政府も産業界も対策を怠ってきた末、追い詰められて決断したともいえる。首相が強調する再生可能エネルギーの活用拡大を始め、CO2排出削減に向けた産業の構造変革を考えると、残された時間は短い。本気で「1・5度」を目指すなら、分野別の目標を示し、社会の理解を得る必要がある。そのうえで排出規制や税制改正、補助金などの誘導策を練り上げることが求められる。ただ、発電時にCO2を出さないことを理由に原発に頼るべきではない。日本社会は事故による甚大な被害を経験した。原発はリスクが極めて大きく、「ゼロ」を目指すべきだ。新目標の達成には、産業界も国民の生活も大きな変化を迫られる。それでも進めるべき意義を、政府は真摯(しんし)に説明し、新しい社会構造をつくる変革を促さなければならない。

*3-2:https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCD271T10X20C21A4000000/ (日経新聞 2021年5月2日) 「グリーン成長」の野心と下心 各国の覇権争いの舞台に
 削減率は米国が50~52%、欧州連合(EU)は55%、英国は78%、日本も46%へ。4月22~23日に開いた気候変動サミット。各国首脳は温暖化ガス削減の目標を競い合った。その舞台裏では「グリーンの土俵」の囲い込みを狙う各国の下心がのぞく。まず主催国である米国。「何百万もの高給な、中間層の、労働組合員の雇用を創出する」。バイデン政権は温暖化対策の訴えを、大規模な雇用創出と結びつけている。3月31日にはインフラ投資が柱の総額2兆2510億ドル(約240兆円)の「米国雇用計画」を発表済み。電気自動車(EV)支援の1740億ドルや電力網整備の1000億ドルが、環境対策の目玉だ。 2030年までに50万カ所にEV充電施設を設け、35年までに発電による温暖化ガスをなくす。今回のサミットは雇用計画の売り込みの場だ。最も野心的な目標を掲げたのは英国。昨年11月に「グリーン産業革命」を表明している。政府による総額120億ポンド(約1.8兆円)の投資で、25万人の雇用創出を狙う。なかでも切り札とする洋上風力は、30年までに発電量を4000万キロワットと現在の4倍に増やす。北海の強い風と遠浅の海を大きな武器とする。英国は今年6月に主要7カ国首脳会議(G7サミット)、11月に第26回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP26)を議長国として開催する。EU離脱による孤立から抜け出し、温暖化対策の晴れ舞台で世界の主導権を握ろうとする意図は明らかだろう。そしてEU。いち早く19年12月に「グリーンディール」を打ち出した。その投資計画では、EU自身が30年までの10年間に1兆ユーロ(約130兆円)の投資に踏み切るとともに、民間から1兆9500億ユーロのグリーン投資を促す。産業の方向を示し、雇用を創るばかりでない。国際的な環境基準づくりで主導権をとろうとする意図を隠さない。例えば、環境にかなった「グリーン投資」とは何なのかの線引き。タクソノミー(分類)と呼ばれるが、EUは自らの基準を国際基準にしようと狙う。グリーンボンド(環境債)の発行額は年4000億ドルに達するとみられるが、そうした環境投資がEU基準となれば、投資家のマネーを吸い寄せることができる。環境規制によるコスト増で域外との競争で不利にならないためにも、EUは周到な用意をしている。「国境炭素税」だ。21年に原案を提示し、23年には導入の予定である。環境規制が手ぬるい国々からの輸入に関税を上乗せし、税収は欧州復興基金に充てる。輸入相手国に「最高レベルの環境基準」を求め、輸入品の製品価格を引き上げることでEUの産業競争力を維持する。しかも環境基準を満たすためにEUの脱炭素技術を導入したら、と売り込みを図る。あわよくば日本などから生産拠点をEU域内に移させようとも企てる。世界の温暖化ガスの4分の1を排出する中国はどうか。気候変動サミットでは、より高い目標は見事にやり過ごした。温暖化ガスの排出ピークの時期は従来の30年を変更せず、排出ゼロの目標年も60年と先進国より10年先のまま。これだと先進国が50年の排出ゼロの目標達成に失敗した場合にも、自国の経済活動が制約を被らずに済む。中国は20年にも原子力発電所30基に相当する3000万キロワットの石炭火力発電所の建設を続けた。その傍らで世界のEV市場を低価格車で席巻しようとする。今回のサミットは中国の参加を最優先したためか、そんないいとこ取りに目をつむる結果となった。翻って日本。議論を主導する米欧が投資や雇用、市場拡大を目指すのと同様、菅義偉首相はグリーン成長を掲げる。政府は脱炭素の研究開発を支援する2兆円の基金を用意したが、実際にどれだけの投資と雇用を創出できるのか。内外の市場は広がるのか。知りたいのはこの点である。広大な米国、平地主体のEU、風と浅瀬が強みの英国。再生可能エネルギーに有利なこれらの条件を日本は欠く。もともと高い電力料金が温暖化対策で一段と上昇すれば、グリーン成長どころか産業空洞化を加速させかねない。菅政権が活路を探るのは、米国との提携かもしれない。4月16日の日米首脳会談の後で発表された共同声明には「日米気候パートナーシップ」と題した付属文書がある。温暖化対策の枠組み(パリ協定)の「未決定要素の策定」で日米が協力する。付属文書はそう記す。温暖化対策の勝負は基準づくりだが、そこで「日米が連携しEUに対抗する」と経済財政諮問会議の新浪剛史氏は明言する。付属文書のもうひとつの注目点は、環境技術での日米協力。再エネ、蓄電池、次世代送電網と並び「革新原子力」なる耳慣れない言葉に言及している。米、英、カナダをはじめ各国が開発を競う「小型モジュール炉」のことだ。大規模な原子力施設を建てる代わりに、小型原子炉をコンパクトな格納容器に納め、設計の複雑さを解消したのが特徴。原子炉をプールのなかに沈めることで、緊急時にも外部電源に頼らずに済む、次世代の原発とされる。実用化は20年代末とみられる。福島の原発事故を経験した日本では役割を終えたように見られる原発。その間にも世界では急速な技術革新が進んでいる。温暖化対策で高い目標を掲げるには、エネルギー源の問題は避けて通れない。

*3-3:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20210504&ng=DGKKZO71577370U1A500C2MM8000 (日経新聞 2021.5.4) Hを制する(2)水素都市へ走る中韓 見えてきた新・生態系
 中国南部の広東省仏山市高明区。経済発展に伴って立ち並ぶ高層マンションの間を縫うように路面電車が静かに走る。よく見ると給電に必要な架線がない。燃料電池を載せて水素(元素記号H)で走る「高明有軌電車」だ。
15分間の水素充填で100キロメートル走り料金は路線バス並みの2元(30円強)。地元に住む徐さんは「子どもと公園に行くのに使う。音が静かで快適だよ」と話す。2019年11月から運行を始め、20年の1日当たりの乗客数は1千人を超えた。
●国家主導で需要
 仏山市では水素で走るバスやトラックが約1500台運行し、中国全土の普及台数の約2割を占める。広東省には製造業が集積し材料となる樹脂製品工場も多く、副産物で水素が出る。市は18年から本格的に関連産業を振興し、数十の燃料電池関連企業が集まる。世界最大の水素生産国である中国。現状は工業用が大勢を占める。そこでいくつかの都市を仏山のような「水素都市」に選定。インフラを整えやすい商用車や鉄道に投資を集中し、国家主導で需要を作り出す。新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)によると、19年9月時点で中国を走る水素燃料車の99%超が商用車だった。現在は生成過程で二酸化炭素(CO2)が出る「グレー水素」が主流だが、再生可能エネルギー由来の「グリーン水素」でも手を打つ。北京市に隣接する河北省張家口市の農村地帯。小高い山に数百メートルの間隔で風車が幾重にも並ぶ、風力発電が盛んな場所だ。同省の国有企業は、この電力を使って水を分解し水素を生成する世界最大級の装置をつくった。欧州で固体水素の貯蔵技術を誇るマクフィーなどの技術協力を得て、設備やパイプラインの整備を進め、年間約1500トンの水素生産を見込む。調査会社の米ブルームバーグNEF(BNEF)のアナリスト、テングレル・マルティン氏は「水素を生成する水電解装置は半分以上が中国市場で売れる」と指摘する。強引にも映る市場創出で水素大国をめざすのは中国だけではない。韓国南東部の蔚山(ウルサン)。現代自動車が旗艦工場を置く人口115万人の工業都市を、韓国国土交通省は19年12月「水素モデル都市」に指定した。石油精製の過程で年間82万トン出る水素を使い、生産から消費までの生態系を整える。蔚山市の燃料電池車(FCV)の登録数は2000台と韓国全体の約2割を占める。購入時に半額が補助され、現代自のネッソ(NEXO)なら3400万ウォン(約330万円)で買うことができる。水素ステーションの設備費に至っては全額を公的補助。市によると一部では黒字化した。翻って日本はどうか。09年、世界に先駆けて家庭用燃料電池(エネファーム)を実用化し、14年にはトヨタ自動車が世界初の量産型FCV「ミライ」を発売した。水素大国を目指し技術では先頭を走っていたのに、市場の育成で中韓の後じんを拝す。
●供給網生かせず
 官営八幡製鉄所が整備され日本の近代産業発祥の地である福岡県北九州市の八幡東区。街中を長さ1.2キロメートルの水素パイプラインが走る。日本製鉄が製鉄過程で生まれる水素を供給し、岩谷産業が世界でも珍しい「街中パイプライン」を管理。実証住宅などに置かれた燃料電池に供給する。このプロジェクト、世界に先駆け10年度にパイプラインによる水素供給実験を始めたが、5年で一度打ち切った。18年度に再開したが来春にまた一部実験が終わる。官民一体で中韓のような「水素生態系」をつくり上げているとは言いがたい。せっかくの供給網を生かさなければ、日本だけ置いてきぼりだ。

*3-4:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20210505&ng=DGKKZO71582530V00C21A5MM8000 (日経新聞 2021.5.5) Hを制する(3)新ルールで市場創造 水素阻む縦割り規制
 水素(元素記号H)の普及を阻むのはコストや技術だけではない。規制も高いハードルとなる。「車検を通ったのに水素を充填できない」。奇妙な出来事が日本の燃料電池車(FCV)で起きている。ガソリン車や電気自動車(EV)は通常の車検のみで利用できる。FCVの水素を貯蔵するタンクは車検の対象外だ。国土交通省とは別に経済産業省所管の検査が要る。車検との間隔があわない場合があり、空白期間が生まれる。「タンクの横に貼ったシールで検査の期限が分かる。期限切れの場合はお客様に説明して帰ってもらう」と水素ステーションの運営者は話す。
●FCV活用に影
 全国に約100台あるFCバスは大型の燃料電池を載せ、地震や台風による停電時の非常用電源としても期待される。もっとも、学校などの防災拠点にFCバスから電気を送るには20日前までに自治体に届けておく必要がある。いつ起こるかわからない停電の備えとしては使いにくい。日本で水素は危険物扱い。たしかに水素は滞留すると爆発しやすく、漏れれば空気中に逃がす必要がある。2012~13年のアンケート調査では2割強が「水素はガソリンより危険」と答えた。水素の製造装置を開発する英ITMパワーのグラハム・クーリー最高経営責任者(CEO)は「水素はとても軽く、もし漏れても数秒で消える。ガスや燃料よりも危険度が低い」と話す。海外では安全に配慮しつつ水素を利用する動きが広がる。韓国政府は19年、南東部の工業都市、蔚山(ウルサン)を水素特区に指定した。韓国では動力源としての燃料電池は乗用車とバスに限るが、特区の蔚山はフォークリフト、船、ドローンにも応用できる。燃料電池の関連産業を育てる思惑だ。同年には国会敷地内に水素ステーションも開いた。規制の特例を活用したもので「水素は危ない」という不安を払拭する宣伝効果を期待する。FCVに力を入れる現代自動車は日本市場もねらう。英国北東部では今春、ガス管に20%の水素を混ぜる実験が本格化する。水素の混入分だけ温暖化ガスを減らせる。19年にキール大学で始まった実験の第1段階は成功し、規模を広げる。実験に参加するITMパワーによると、英国では1969年までガス管に60%の水素が混ざっており、北海ガス田の発見後にガス100%になった。クーリーCEOは「50年までにガス管を通る水素を100%にしたい」と話す。英国では水素はガス管に0.1%しか混ぜられないが、特別に規制を緩めて実験する。欧州のエネルギー企業など90社超も3月、欧州連合(EU)の欧州委員会にガス管への水素混入を広げるように求める要望書を出した。既存インフラを使えるガス管混入は、短距離では水素の最も安い輸送手段とされ、需要を押し上げる効果も大きい。
●韓国は専用の法
 日本は混合規制そのものがなく、ガス事業者に対応が委ねられる。日本ガス協会の広瀬道明会長(当時)は3月に「既存のガス管を活用する発想が大事」と語っており、統一のルール作りを急ぐ必要がある。日本で水素は化学プラントなどを対象にした高圧ガス保安法で主に規制される。韓国は水素の活用や安全規制をまとめた「水素経済法」を制定した。日本の企業関係者は「水素を推進したいならば、水素専用の法律が必要だ」と指摘する。国が安全性を担保するのは当然としても、水素利用を想定しない古い枠組みで縛れば規制もちぐはぐになる。水素社会という新市場を創造するには新しい枠組みを用意するのが近道だ。このままでは他の脱炭素技術と同様、水素も技術で勝って普及で負けかねない。

<医療・介護>
*4-1-1:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO66372040Y0A111C2EE8000/ (日経新聞 2020年11月20日) 地域医療、浮かぶ非効率 改革の重責に自治体及び腰、コロナ禍に迫る2022年の壁(下)
 団塊の世代が75歳以上になり始め、医療費が急膨張する2022年の壁を乗り越えるには、非効率な医療供給体制の改革も必要だ。新型コロナウイルス危機は地域の医療体制の権限を持つ都道府県の力量を試した。都道府県別の1人当たりの医療費は最大4割近くの差が出る。千人当たりの病床数で全国最多の高知県は1人当たりの医療費が66万5294円と2位。病床数は最少の神奈川県の3倍だ。大和総研の鈴木準執行役員は「1人当たり医療費は人口当たり病床数と関係が強く、供給が需要を作り出している」と指摘する。病床数が危機時の力を左右するとは限らない。3月、神奈川県はコロナ患者を症状ごとに重点医療機関やホテル療養で柔軟に対応する「神奈川モデル」を導入した。病床数は最少でも県主導で効率的な体制を作り、その手法は全国に広がった。日本の千人あたりの病床数は先進国で最高水準で英国や米国の約5倍になる。それでも春先の感染爆発時は小さな医療機関を中心にコロナ患者をたらい回しした。「医療供給体制に無駄があることがコロナで浮き彫りになった」(鈴木氏)。「新型コロナとの戦いで都道府県の体制整備の責任に焦点が当たっている」。自民党の財政再建推進本部の小委員会は10月末、都道府県の医療体制へのガバナンス強化を求めた。地域に応じた医療体制の構築と医療費適正化の計画作りに関し、都道府県の責任を法律で明確にする内容だ。現行制度で医療体制整備の権限は都道府県にある。国は都道府県ごとに「地域医療構想」を作るよう求め、過剰な急性期病床の削減などを進め在宅医療への転換を促してきた。だが都道府県は民間病院に病床機能の転換を促すことをためらう。独自策を探る都道府県もある。「収入増には地域別の診療報酬が活用できる」。7月、奈良県の荒井正吾知事は新型コロナによる受診控えで収入減に悩む医療機関を支援するアイデアを示した。診療報酬は全国一律がこれまでの通例。高齢者医療確保法は都道府県が地域別の報酬を決めることを可能としているが、適用例はない。奈良県は医療機関の動向に影響を与えるには収入である診療報酬を使うのが効果的とみる。今夏に厚生労働省に提言したが、奈良県の医師会や厚労省は反対の方針だ。全国知事会は医療提供体制の議論について、地域医療の混乱を理由にコロナ収束後に先送りしたい意向を示す。医療行政は責任を負いたくない地方自治体と、本音では権限を失いたくない厚労省の利害がもつれあう。コロナ禍で医療制度に迫る22年の壁は高く厚い。

*4-1-2:https://style.nikkei.com/article/DGXMZO63622860Z00C20A9EAC000 (日経新聞 2020/9/13) 日本の医療、コロナで弱点浮き彫り 回復期病床少なく
 新型コロナウイルスの感染拡大で、日本の医療が崩壊するのではないか、との懸念が広がっています。
感染者を受け入れる病床が足りなくなる事態を医療崩壊と呼ぶなら、日本では現時点では医療崩壊は起きていません。経済協力開発機構(OECD)の調査によると(各国のデータはおおむね2017年時点)、人口千人当たりの病床数が日本は13.1と突出して多く、OECD加盟国平均の4.7を大きく上回っています。入院後の治療も含め、日本の医療体制を評価する声は少なくありません。しかし、病床を種類別にみると、決して十分とはいえません。日本の医療法では、病床を一般病床、療養病床、感染症病床、結核病床、精神病床の5種類に分類しています。厚生労働省の調べでは、3月末の病院全体の感染症病床は1886で、152万を超える病床全体に占める割合は0.1%あまりにとどまっています。そこで同省は2月、緊急時には感染症病床以外の病床への入院が可能であるとの見解を示しました。一般病床を転用する動きが広がり、コロナの入院患者受け入れが可能な病床数は全国で2万を超えています。ただ、受け入れ可能な病床数と、現在の入院者数の比率には都道府県によって大きな差があり、病床数に入院者数が近づいている地方は特に注意が必要です。同省はこれまで「地域医療構想」のもとで、病床の総数を削減する方向性を打ち出していました。しかし、コロナ対応で病床不足が問題になり、構想を批判する声も聞かれます。これに対し慶応大学の土居丈朗教授は「地域医療構想で打ち出したのは、一般病床と療養病床の再編であり批判は的外れ。コロナの病床不足は、病床そのものが足りないのではなく、機能分化と連携が進んでいなかったことが問題だ」と強調します。みずほ情報総研の村井昂志チーフコンサルタントは「病床をとにかく増やすというのは現実的ではない。どんな機能の病床を増やすのかを明確にすることが必要であり、これは地域医療構想の考え方とも一致する」と指摘します。

*4-1-3:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20210504&ng=DGKKZO71577210U1A500C2PE8000 (日経新聞社説 2021.5.4) 医療体制を問い直す(上) 非常時の病床確保に強力な措置を
 新型コロナウイルスの感染拡大は、日本の医療提供体制のもろさを浮き彫りにした。人口あたり患者数が米英の10分の1でも病床が足りなくなり、緊急事態宣言を三たび出す事態に追い込まれた。パンデミック(感染大流行)という非常時の対応力を高めるためだけでなく、今後の人口減少社会で医療の質を維持するためにも、日本の医療体制に早急にメスを入れる必要がある。
●小規模分散で余力なく
 日本に急性期病床は約88万9千床ある。人口千人あたりでは7.8床と、経済協力開発機構(OECD)加盟国の中で最も多い。しかし、重症患者に対応するはずの急性期病床でコロナ患者を受け入れたのは、わずか3%にすぎない。それも公立・公的病院が大半だ。全病院の8割を占める民間病院の受け入れは少ない。コロナ患者に対応するには、院内感染を防ぐために、感染リスクがある場所と安全な場所を施設改修で分ける必要がある。そのうえで感染症に対応できる専門医を確保し、一般病床の何倍もの看護師を配置しなければならない。患者を数人受け入れるだけで、他の入院患者を数十人規模で転院させたりすることも必要になる。ところが民間病院の7割強は200床未満と規模が小さく、人材も手薄で余力が乏しい。小規模に分散した医療資源でコロナ病床を増やすには、医療機関の役割分担を徹底するしかない。1月末時点で全国自治体病院協議会が実施した調査では、400床以上の公立病院に入院するコロナ患者の3分の1が軽症で、重症者は1割に満たなかった。大規模な公立病院や大学病院は、重症者を中心とした受け入れに特化した方がいい。集中治療室(ICU)や体外式膜型人工肺(ECMO、エクモ)など重症者向けの治療設備や、これを使いこなす人材を集中的に配置すべきだ。重症者に対応できない中規模以下の病院は、中等症を中心にコロナ患者を受け入れてほしい。患者が重症化したら速やかに重症者向け病院に転院させるなど、地域の医療機関が密接に連携して一体的な医療を提供する。回復期の患者は療養型病院や高齢者施設に受け渡す。こうした階層型にして医療資源を有効に使えば、受け入れ能力は増えるはずだ。問題はこうした医療体制をどうやって構築するかだ。日本の医療機関は自由開業制で、政府や都道府県には民間病院に患者の受け入れを命令する権限はない。税金で医療を運営する国々には、感染症などの緊急時に医療機関や医療従事者を国や地方政府が動員する仕組みもある。社会保険方式の日本でも医療従事者の育成には公費が投じられ、病院の収入は保険料と税金で支えられている。医療機関や医師には医療体制を確保する責務があるはずだ。菅義偉首相は4月23日の記者会見で病床確保に関して「緊急事態の際の特別措置をつくらなければならない」と述べた。非常時には医療機関の「経営の自由」を制限し、強制力を持って医療機関に病床を確保させることができる仕組みを早急に整えるべきだ。
●病院の自由経営に限界
 小規模医療の源流は、1961年の国民皆保険制度の創設にさかのぼる。皆保険で急増した医療ニーズを引き受ける形で民間の診療所が増えた。公的病院に病床規制が導入される一方、診療所の一部は規模を拡大し、入院機能を持つ病院に衣替えしていった。民間開業医を中心とする医療体制はこうして形成され、結果として「経営の自由」が確保された病院が増加の一途をたどった。世界一とされる医療へのアクセスの良さは、日本が誇る長寿社会を実現する大きな支えになった。しかし、非常事態に対応できない致命的な欠陥が露呈した今、改革をためらうべきではない。医療機関の徹底した役割分担の必要性は、コロナ前から指摘されていた。軽い病気なのに大病院で受診する人が多く、患者に追われて数十時間も寝ずに手術をする外科医がいる。一方で急性期病床を名乗りながら、重篤ではない患者で病床を埋める病院がある。これでは医療人材の確保が年々難しくなる今後の人口減少社会で、医療の質を維持できない。勤務医の働き方改革の観点からも、改革は喫緊の課題だ。

*4-1-4:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20210505&ng=DGKKZO71583880V00C21A5PE8000 (日経新聞社説 2021.5.5) 医療体制を問い直す(下)初期診療をこなす家庭医を増やせ
「世界に冠たる」は、国民皆保険に代表される日本の医療制度の枕ことばとして医師会や与野党の関係議員、厚生労働官僚、また一部の学者らが多用してきた。それが幻想にすぎなかった現実をあぶり出したのがコロナ禍である。欧州主要国や米国より感染者が桁違いに少ない一方、人口あたりの病床数は格段に多いにもかかわらず、治療体制のゆき詰まりが露見した。特効薬とワクチンの開発にも大きく後れをとった。
●医師の働き方改革も
 ワクチン接種は遅々として進んでおらず、当面はコロナとの共存を覚悟せざるを得ない。その間にも将来をにらんで医療体制を根本的に再構築する必要性は、論を俟(ま)たない。医療の主役である患者第一を貫きつつ、効果が高くコストが低い医療体制に向けた再構築のカギを握るのは、欧州などで一般化している家庭医制度の普及である。さまざまな病をひと通り診る力を備えた医師だ。総合診療医などとも呼ばれる。健康保険証があれば、どの病院・診療所にもかかれる「フリーアクセス」が日本の医療制度の特徴だ。これは患者の安心につながる面があるが、体調を少々崩しただけでも建物や設備が整った病院に行けばいいという思い込みを生む要因にもなっていた。そこで、患者はまず家庭医にかかるのを原則とし、診断・治療・処方を受ける。複数の診療科をこなし初期診療に責任をもつ家庭医は、慢性期の持病をいくつか抱えた高齢患者の診察にも適任だ。ただし、その過程で専門的な治療や手術が必要と判断すれば、遅滞なく病院の専門医につなぐのが家庭医の重要な役割になる。「まず家庭医へ」が浸透すれば、病院の勤務医や看護職に過重な負担がかかる事態は緩和されよう。家庭医制度が浸透している国のひとつが英国だ。税財源で運営する同国の医療制度NHSは、原則として患者に医療費の負担を求めない。その代わりに患者はGPと呼ばれる資格を持つ家庭医に登録し、病院ではなく登録GPにかかるのを基本とする。GPは担当患者の健康管理にも携わる。病院での専門治療や手術が必要な患者にとっては一定期間、待たされるリスクがある。半面、コスト意識が強いGPが初期診療をこなすので必要度が低い検査や処方を省き医療費を抑えやすくなる。日本は一般に、開業医に比べ勤務医の労働環境が過酷だ。最近は減ったが、夜勤明けの外科医がメスを握ることもある。働き方改革を推し進めるためにも大学医学部は家庭医養成を急いでほしい。家庭医制度は患者の医療機関へのアクセス制限につながるので医療界に根強い反対論があるが、風向きは変わりつつある。慢性期治療の専門病院で組織する日本慢性期医療協会は、医師の卒後臨床研修を見直し、後期研修のうち2年を総合診療機能の習得に充てるよう求める要望書を4月に出した。医師不足の懸念に対し、政府・医療界はこれまで医学部の定員増などで対応してきたが、人口高齢化に即した研修強化をはじめ、医学教育の質拡充へカジを切るときだ。次の感染症パンデミックへの備えとしてもそれは有用である。
●介護との連携必要
 患者の特性や高齢化の度合いにみられる地域差への対応も、課題に浮上している。とくにコロナ禍で浮き彫りになったのは、患者の重症度に応じて都道府県当局が域内の医療機関に機能分担・連携してもらう難しさだ。
医療の公定価格である診療報酬は全国一律だが、一定範囲で県独自に設定できるようにすれば、病床誘導がしやすくなろう。医療費抑制への動機づけにもなる。医療サービス価格に大きな地域差がつくのは好ましくないが、一定の裁量を認める手法は検討に値する。不可欠なのが介護サービスとの連携だ。高齢コロナ患者が回復期も病院にとどまり、医療職が介護を提供する例がみられる。地域ごとに医療機関と介護施設が円滑な連携策を探ってほしい。団塊世代の後期高齢化が迫り介護需給は逼迫の度を増す。海外人材の受け入れ拡大やロボット介護の保険適用なども急ぐべきだ。コロナによって日本の医療の弱みが誰の目にもみえてきた。「世界に冠たる」の復活へ向け、多面的改革を推し進めるときである。

*4-1-5:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/662531 (佐賀新聞 2021年4月17日) 65歳以上の介護保険料、高齢者負担は限界に近い
 介護保険料が4月から改定された。65歳以上の高齢者が払う保険料は多くの市区町村で引き上げられ全国平均は月額6千円程度になりそうだ。2000年の介護保険制度開始時の2倍であり、年金で暮らす高齢者の負担は限界に近づいている。介護保険のサービス費用は、利用者が払う自己負担分を除き、加入者の保険料と税からの公費で半分ずつ賄う。介護保険料は、40~64歳については毎年改定されて、加入する公的医療保険を通じて納付。65歳以上の保険料は、市区町村や広域連合ごとに3年に1度見直されて、原則的に公的年金から天引きされる。高齢化の進行で介護が必要なお年寄りが増える一方、人手不足が深刻な介護職員の処遇改善などのため、介護サービス事業者に支払う介護報酬は4月から全体で0・7%引き上げられた。これらが保険料アップにつながった一方、公的年金給付額は賃金水準下落を受け4月分から0・1%引き下げられた。高齢者の暮らしには厳しい逆風の春だと言わざるを得ない。共同通信の調査では、65歳以上の介護保険料は、都道府県庁所在地と政令指定都市の計52市区の60%で引き上げられ、81%が6千円以上となった。かつて「5千円が負担の限界」とも言われたが、高齢化が加速する25年度には20超の市区が7千円を上回るとの推計もあり、負担増への歯止めは待ったなしの課題だ。保険料は高齢化率や要介護認定率が高い自治体ほど高くなる。家族のケアがない単身高齢者の割合が高く、1人当たりの介護費用がかさむ大阪市は8094円まで上がった。このままでは高齢者の生活費が圧迫され、介護サービス利用時の原則1割負担が払えず、介護保険に加入しながら、利用したくてもできないという矛盾が現実化する。介護保険料滞納で18年度に資産差し押さえ処分を受けた高齢者は、全国で1万9221人と前年度より3千人超増えて過去最多を更新している。65歳以上で働いて賃金を得ている人は約900万人、うち約400万人はパートなど非正規雇用だ。新型コロナウイルス流行拡大による景気低迷が重なって収入減になり、高齢者の家計はさらに苦しくなるとみるべきだ。日本の高齢化は、団塊の世代が全員75歳以上となる25年を経て40年ごろピークを迎える。そこへ向け介護人材を確保し、サービスを充実させることは避けて通れない課題だ。だがそれを抜本改革抜きに実現しようとすれば、財源捻出のため保険料は天井知らずになり「介護を社会全体で担う」という介護保険制度の理念が破綻しかねない。改革は「給付と負担」の見直し以外にない。介護保険料は40歳以上が払っているが、支え手を増やすため「20歳以上」に対象年齢を広げる案も検討せざるを得ない段階に来ている。一定所得がある高齢者が介護サービス利用時に払う2割負担の対象拡大も焦点だろう。給付の伸びを抑えるため、要介護度が低い人の掃除、洗濯など生活援助を介護保険から外し市区町村事業に移すことなども課題になる。介護保険料引き上げが限界となれば、残る財源の柱は税しかない。そして社会保障に充てる税とされるのは消費税だ。菅義偉首相は消費税10%超への引き上げを「10年は考えない」とするが、いずれ議論は避けられまい。

<領土保全の意志>
*5-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20210430&ng=DGKKZO71487210Z20C21A4FF8000 (日経新聞 2021.4.30) 中国、外国船「領海侵入」に罰金 関連法を改正
 中国の全国人民代表大会(全人代)常務委員会は29日、改正海上交通安全法を可決した。外国船が中国の「領海」に入った場合、中国当局の判断で退去を命じたり罰金を科したりできるようになる。沖縄県・尖閣諸島の周辺海域で緊張が高まる懸念がある。9月1日に施行する。中国国営の新華社通信は改正法の狙いを「海上の交通条件を向上させて、安全保障の水準を高める」と解説した。交通運輸省の傘下の海事局の権限を強める。中国が主張する領海で「海上交通の安全に危害を及ぼす恐れ」のある外国籍の船舶に事前報告を義務づけた。違反すれば退去を命じたり、船舶の管理者に5万元(約83万円)以上50万元以下の罰金を科したりできる。中国は尖閣を「固有の領土」と主張しており、周辺海域も領海とみなしている。中国当局が危害を及ぼす恐れのある船舶について幅広い解釈権を持つとみられる。尖閣周辺で操業する日本漁船にとって脅威になる。中国は海上警備を担う海警局に武器使用を認めた海警法を2月に施行した。海警局が管理する中国公船と海事局の巡視船が連携し、尖閣周辺の海域での監視活動を増やす可能性がある。領海やその周辺の接続水域より広い「管轄海域」にも海事局の監督権限が及ぶとしている。管轄海域で海事局が任意に「航行禁止区域」を設定できる権限も盛り込んだ。中国の民間船への管理も強める。中国版全地球測位システム(GPS)「北斗」の設置や航行データの保全の徹底を求めた。益尾知佐子・九州大准教授は「管轄海域で中国の実効支配が進む懸念がある」と指摘する。海事局は大型の巡視船の建造を進めている。中国メディアは年内に初の1万トン級の巡視船「海巡09」が広東省広州で就役すると伝えた。中国共産党の機関紙、人民日報は「世界中で巡視、救援が可能」と強調している。

*5-2:https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA021DY0S1A500C2000000/ (日経新聞 2021年5月2日) 東シナ海の現状変更反対 日米制服トップ会談、中国念頭
 防衛省は2日までに、山崎幸二統合幕僚長が米ハワイで米軍のミリー統合参謀本部議長と会談したと発表した。中国が海洋進出を強める東シナ海に関し、一方的な現状変更の試みに「断固として反対する」と一致した。日米制服組トップの会談は2019年11月以来、1年半ぶり。4月30日(日本時間5月1日)に実施した。台湾海峡の平和と安定の重要性を確認した4月の日米首脳会談を受け、自衛隊と米軍の連携策について意見を交わした。中国は4月に空母「遼寧」を沖縄本島と宮古島の間の海域に航行させるなど、緊張を高める行動を続ける。沖縄県尖閣諸島周辺では海警局の船が領海侵入を繰り返す。両氏はこうした状況を念頭に、日本と米国が共同で抑止力と対処力を一層強化すると申し合わせた。米国の日本防衛義務を定める日米安全保障条約5条に基づき「米国の揺るぎないコミットメント」を再確認した。「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向け、多国間協力を進めていく方針でも合意した。英国は空母「クイーン・エリザベス」を日本に派遣すると決め、フランスも今月、日米と離島防衛訓練を実施する。軍備を増強する中国に対峙するため、欧州各国との協調をめざす。山崎氏は米インド太平洋軍司令官の交代式に出席するためハワイを訪れた。アキリーノ新司令官とも会い、日本やインド太平洋地域の情勢について認識をすり合わせた。日米の会談に先立ち、韓国軍の元仁哲(ウォン・インチョル)合同参謀本部議長を交えて日米韓3カ国の会談も実施した。北朝鮮の核・弾道ミサイル計画に対する懸念を共有した。山崎氏から国連安全保障理事会決議の完全な履行が重要だと伝えた。

<女性差別>
*6-1:https://www.nichibenren.or.jp/document/statement/year/2021/210422.html (日本弁護士連合会会長 荒 中 2021年4月22日) 世界経済フォーラムのジェンダーギャップ指数に対する会長談話
 2021年3月31日、世界経済フォーラム(WEF、本部・ジュネーブ)は、世界各国の男女平等の度合いを指数化した「ジェンダーギャップ指数」を発表した。日本は前回よりも1つ順位を上げたものの156か国中120位と過去2番目に低い順位であり、主要7か国(G7)中最下位で、アジアの主要な国々よりも下位であった。ジェンダーギャップ指数は、女性の地位を、経済、政治、教育、健康の4分野で分析し、ランク付けをしている。例年、経済分野と政治分野が日本の全体順位を下げる要因となっているが、今回、経済分野は117位、政治分野は147位となり、前回から更に順位を下げた。経済分野は、男女間の賃金格差、管理職の男女差、専門職・技術職の男女比のスコアが、前回と同様、いずれも100位以下である。中でも管理職の男女差は139位と前年の131位から順位を下げた。日本政府は女性活躍促進を政策に掲げているが、経済分野でのジェンダー不平等は一向に解消されていない。そして、前回に引き続き、最も深刻な状況にあるのが政治分野である。前回、その前年から19も順位を下げて世界のワースト10に入ったが、今回は更に順位を3つ下げた。国会議員の男女比は140位、閣僚の男女比は126位と低位のままである。このような政治におけるジェンダー不平等は、ジェンダーの視点を欠いた政策につながり、いまだに社会的・経済的に弱者である女性にとって日々の生活に直結する悪影響を及ぼしている。例えば、新型コロナウイルス感染症の拡大による混乱は、雇用環境の悪化、DV(ドメスティックバイオレンス)や児童虐待の増大、母子家庭の一層の貧困化、女性自殺者の急増などをもたらしたが、これらに対する適切な施策がなされず、むしろ、全国の小中学校に対する突然の臨時休校の要請により、事実上育児の大半を担う女性が就業困難な状況に陥ったり、特別給付金の受給権者が世帯主とされたことにより、DV被害者の受給が困難となったりした。また、国連女性差別撤廃委員会からの勧告や国民意識の変化にもかかわらず、選択的夫婦別姓制の導入は遅々として進まない。女性の政治参画は、あらゆる分野における女性の地位向上のための必須条件である。女性の政治参画なくして、個人が尊重され、多様性が確保された社会の実現や、日本の民主主義を発展させることは不可能であり、女性議員数、女性閣僚数を増加させることは喫緊の課題である。日本の現状は、もはや一刻の猶予も許される状況になく、クオータ制の法制化も含めた具体的取組は急務である。当連合会は、日本の置かれている状況を懸念し、ジェンダーギャップ指数に対し毎年談話を発表しているが、状況は依然として改善されない。2021年2月の公益財団法人東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会の会長(当時)の発言と、同会長を擁護するかのごとき同組織委員会や公益財団法人日本オリンピック委員会(JOC)の対応は、今なお日本社会に厳然と存在する性に基づく偏見、差別、不平等な取扱いを露呈した。日本社会の男女不平等状態は、国際的な信用さえ失墜させ得るレベルであり、社会の閉塞感にもつながっている。当連合会は、日本政府に対し、日本社会の現状を直視し、個人が性別にかかわらず閉塞感なく生き生きと暮らせる社会を実現するため、職場における男女格差を解消し、女性活躍を更に促進する施策を実施するとともに、女性の政治参画の推進を喫緊の重点課題と位置付け、より実効性ある具体的措置、施策を直ちに講じるよう強く要請する。

*6-2:https://digital.asahi.com/articles/DA3S14891821.html (朝日新聞 2021年5月3日) (憲法を考える)男女平等の理念、遠い日本 「女性の自立、応援しなかった社会」
 日本国憲法は、「男女平等」を完全に保障した条文をもつ。しかし、新型コロナウイルス禍のもと、制度や社会におけるジェンダー格差が改めて浮き彫りになっている。施行から74年経った今なお、憲法がめざす理念に日本社会が近づけていないのはなぜなのか。緊急事態宣言下の3月半ば。どしゃ降りの雨の中、東京・新宿の区立公園にたてられたテントに女性たちが吸い込まれていく。弁護士や労組関係者らが開いた「女性による女性のための相談会」。コロナで生活に困る女性を対象としたところ、2日間で20~70代の125人が訪れた。
■コロナ禍で顕著
 関東地方に住む40代の女性は、野菜やお菓子、生理用品を受け取った。昨年6月、新型コロナの影響で仕事を失った。派遣で2年近くコールセンターに勤めてきたが、突然契約を打ち切られた。コロナ対策の1人10万円の特別定額給付金は、支給先は世帯主で、別居する親に配られた。中高生の頃から暴力を受けて疎遠になっていた。年末に失業給付が切れ、何も食べられない日もあった。所持金は1万3千円だった。「立場の弱い女性のほうが安定した仕事がなかったり、支援が届かなかったり。コロナはそんな現実を浮き彫りにした」。個人の尊重と幸福追求の権利を定める13条。法の下の平等をうたい性差別を禁じる14条。そして、両性の本質的平等を保障する24条――。憲法は三つの条文によって男女平等を保障する。しかし、雇用における差別は残り、支援制度も世帯単位で作られ、個人に重きが置かれていない。総務省発表では昨年、非正規雇用の働き手は75万人減ったが、うち女性は男性の倍を占めた。厚生労働省によると、昨年の女性の自殺者は7026人。前年より男性の数は減少したが、女性は935人(前年比15・4%)も増えた。
■選んでいいの?
 相談会スタッフ、吉祥(よしざき)真佐緒さんは「相談を受けて痛感したのは、夫婦間や職場で、空気を読んで口答えせず、自分のことは後回しにする生き方を強いられてきた女性が、本当に多いということだった」と話す。吉祥さんは、DV(家庭内暴力)被害者の相談も受けるが、昨春以降に件数は急増した。「自分が好きなものを飲んで」。相談に来た女性にはまず、日本茶やコーヒー、紅茶を選んでもらう。多くの女性が「え、私が選んでいいの?」と戸惑うという。だから、吉祥さんはこう問いかける。「私たちが持つ当たり前の権利ってなんだろう」と。「彼女たちは家の中で娘として妻として嫁として役割を背負わされてきた。自分にも権利があると考えられる人が多くないのは、女性の自立を応援してこなかった国の、社会の責任ではないか」

<教育>
*7-1:https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGH308QR0Q1A430C2000000/ (日経新聞 2021年5月2日) 幼小中高一貫校で初の秋入学 玉川学園、23年度にも
 私立学校の玉川学園(東京都町田市、小原芳明理事長)が秋入学(9月始業)を導入する方向で文部科学省と協議していることが分かった。小学校教育の開始を半年繰り上げ、高校まで学ぶ「初等中等一貫教育学校」構想だ。国際標準の9月始業・6月終業とし、高校は6月卒業とする。2023年度にも発足させたい意向だ。構想が実現すれば日本初となり、秋入学や早期就学を巡る国の議論にも影響を与える。「K-12」と呼ぶ構想では、幼稚園年長児(5歳)は9月から小1の学習を始め、翌年6月で1学年を修了する。9月から2学年に上がり、高校までの教育課程全体を半年前倒しする。高校卒業が6月だと夏休み明けに海外大学に進め、国内大学に入る場合は入学前の時間をギャップタームとして多様な活動に使える。幼稚園以降の学費総額も軽減できる。秋入学・9月始業の国や、4歳児、5歳児から小学校に就学させる国は少なくない。日本でも東京大学が秋入学の導入を模索した。20年には新型コロナウイルスの感染拡大への対応策として首長らから秋入学と就学年齢見直しを求める声が上がったが、課題が多いとして議論は棚上げとなった。学校教育法は義務教育の開始を「満6歳に達した日の翌日以降の最初の学年の初め」とし、同法施行規則は小学校の学年の始業は4月1日とする。構想実現には同法との兼ね合いが課題になる。文科省幹部は「運用上の対応なら問題ない。秋入学を制度的に認めるには法改正が必要」と指摘するが、「研究開発校などの既存制度をうまく使えば実現可能ではないか。私学が秋入学などに実験的に取り組むのは意義がある」という声もある。小原理事長は「戦後間もなくできた学校制度を守り続ける必要があるのか。文科省と相談しながら実験的な取り組みに挑戦したい」と話している。1929年創立の同学園は幼稚園から大学院まで擁し、幼小中高の総定員は2480人に上る。

*7-2:https://www.nikkei.com/article/DGXZQODZ202BP0Q1A320C2000000/?n_cid=NMAIL006_20210419_Y (日経新聞 2021年4月19日) YKK、正社員の定年廃止 生涯現役時代に企業が備え
 日本企業が「生涯現役時代」への備えを急いでいる。YKKグループは正社員の定年を廃止。ダイキン工業は希望者全員が70歳まで働き続けられる制度を始めた。企業は4月から、70歳までのシニア雇用の確保が求められるようになった。少子高齢化に歯止めがかからず人手不足が続く中、企業がシニアの意欲と生産性を高める人事制度の整備に本格的に乗り出した。YKKは4月、国内事業会社で従来の65歳定年制を廃止し、本人が希望すれば何歳までも正社員として働けるようにした。同社は職場での役割に応じて給与が決まる役割給を採用している。今後は会社が同じ役割を果たせると判断すれば、65歳以上でも以前の給与水準を維持できるようにした。「従来も年齢だけを理由に処遇を変えたり、退職させたりするのは公正でないという考えが強かった」と同社幹部は説明する。同社は今後5年間で約800人が従来定年の65歳に到達する見通しだった。その大半が正社員としての雇用継続を希望するとみられる。定年廃止による新規の採用抑制はしない。人件費が増える可能性があるが、人手不足の中、熟練技能者などシニア活用のメリットは大きいと判断した。三谷産業も21年4月から再雇用の年齢上限をなくし、65歳以上は1年ごとの更新制とした。再雇用者になかった昇給制度も設ける。専門知識や人脈を生かし、社内外の技術指導や営業先の開拓など本業以外の仕事で貢献した場合、別途報酬を支払う「出来高払いオプション制度」も新設した。実力あるシニアが現役に近い報酬を得られるようにする。ダイキンの定年は60歳で従来は65歳まで希望者を再雇用していた。今回、再雇用の期間を5年延長した。原則一律だった再雇用者の賞与も成果に応じて4つの段階を設け、最大1.6倍の差がつくようにした。シニアの働く意欲を引き出す。三菱ケミカルも22年4月、現在60歳の定年を65歳に引き上げる。将来の定年廃止も検討している。給与制度は能力・経験に基づく職能給と、仕事の成果・役割に基づく職務給で構成していたが、21年4月から職務給に一本化した。各社が対応を急ぐ背景には21年4月に施行された改正高年齢者雇用安定法がある。従来制度で企業は従業員が希望する限り65歳まで雇用を継続する義務があるが、法改正で70歳まで就業機会確保の努力義務が課された。年金の支給開始年齢が段階的に引き上げられるなか、所得の空白期間をなくすための措置だ。大半の企業は再雇用期間の単純延長などで対応するが、多くは現役時代に比べて2~5割程度給与が下がる。シニアのやる気と生産性の低下が課題だ。定年を廃止する企業は、成果に応じた賃金制度を導入するなどして給与の減少を一定程度にとどめる。企業がシニアに期待する役割はさまざまだ。20年10月に60歳定年を廃止したシステム開発のサイオスグループは、IT(情報技術)人材が不足するなか、案件遂行で経験豊富な中高年の技術者取り込みを狙う。成果に応じた評価をシニアでも徹底する。製造業では生産管理部門などでベテラン技術者のニーズがある。一方、専門性のない一般管理職などはシニアのニーズは少ない。三谷産業などは、新たな再雇用制度の開始に合わせ、全社員にキャリア面談を義務付け、定年後を見据えたスキル習得を支援する。定年は世界では一般的でない。米国や英国などは年齢を理由とする解雇は禁止・制限されている。一方、厚生労働省の20年の調査では国内で定年のない企業は2.7%にとどまる。日本の賃金は年功色が強く解雇規制も厳格なため、単純に定年を延長・廃止すれば、人件費増加に歯止めがかからなくなる。みずほリサーチ&テクノロジーズが再雇用などで70歳まで働く人が増えた場合の影響額を20年に試算したところ、65~69歳の従業員にかかる企業の人件費は30年時点で19年比6%増の5.5兆円に、40年時点で同29%増の6.7兆円に増える。定年を廃止する場合、高齢になり職務を十分に果たせなくなったシニアを解雇する仕組みも必要になる。話し合いを通じた双方の合意で契約を終える形を想定している企業が多いが、合意に至らないケースも考えられるからだ。金銭補償などを伴う解雇ルールの策定も求められる。

*7-3:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20210505&ng=DGKKZO71581610U1A500C2CC1000 (日経新聞 2021.5.5) 職歴尊重の判決 「ジョブ型」映す、高裁、専門外への配転「無効」 一般職種も保護の流れ
 運送会社で運行管理などを任されていた社員に倉庫勤務を命じた人事異動を無効とする司法判断が注目されている。名古屋高裁が1月、保護するキャリアの対象を高度なIT技術者や医師など専門職から一般的な職務にまで広げた。労働者が積み重ねた職歴と本人の意向を重視した雇用のあり方を後押しするのではないか――。働く人々の期待は大きい。「職種=事務職員(運行管理業務)、職務内容=事務所内での配車など」。東海地方に住む50代の男性は2015年、ハローワークで愛知県内の運送会社の求人を見つけて応募した。男性は「運行管理者」の国家資格を持ち、運転手への乗務の割り振りや疲労度を把握するといった経験を複数の会社で重ねていた。採用面接の際、以前の勤務先を辞めた理由について「運行管理などをしたかったが、夜間の点呼業務に異動させられたから」と説明すると、会社側は「夜間点呼への異動はない」と応じ、男性を採用した。入社後は運行管理や配車を任され、3カ月もたたない16年1月、運行管理者の統括役に任命された。しかし、程なくして「配車方法に偏りがある」という運転手の苦情や高速道路料金の増加などを会社側が問題視するようになる。男性は17年5月、「業務の必要により社員の配置転換を行う」との就業規則に基づき倉庫部門の勤務を命じられた。納得できない男性は「採用時に職種を限る合意があった」として会社を提訴。会社側は訴訟で「職種を限る合意はなかった」とした上で「会社が業界で生き残るために拡大していた倉庫業務の新たな担当者として適性を検討した結果だった」と合理性を主張した。意に沿わない配置転換は多くの働き手にとって避けては通れない。配転命令の合理性については、最高裁が1986年の判決で▽業務上の必要性▽動機や目的の正当性▽労働者が被る著しい不利益――といった判断枠組みを示している。19年11月の一審・名古屋地裁判決は、職種を限定する合意はなかったとしながらも、配転先の業務内容は「運行管理者として培ってきた能力や経験が生かせるという(男性側の)期待に大きく反する」と指摘。業務上の必要性が高かったとは言えず、不慣れな肉体労働を命じられる可能性なども踏まえて「通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせた」として配転命令を無効と認めた。二審・名古屋高裁判決も一審判決を支持し「能力や経験を生かせない業務に漫然と配転した。権利の乱用に当たる」と言及。会社側は上告を見送り、判決は確定した。培ったキャリアなどを考慮して配転無効を認める司法判断は、ここ10年ほどで広がってきた。大手企業から転職しプロジェクトリーダーを務めた後に倉庫係への配転を命じられたIT技術者や、外科医が臨床の現場から外された例がある。ただ、これまで法的保護の対象は高度な技能を持った労働者に限られており、名古屋高裁判決は、より一般的な業務も保護すべきキャリアと明確に判断した。この間、人口減少を前提に、限られた人材でいかに成長力を高めていくか、雇用を巡る企業の模索が続いてきた。経団連は20年の春季労使交渉で、職務と職責を明示する「ジョブ型雇用」を高度人材の確保に「効果的な手法」だと指摘。今年1月に公表した調査では、回答した会員企業の25.2%が、正社員に職務・仕事別の雇用区分を設け、このうち35%がジョブ型を導入していた。東京大の水町勇一郎教授(労働法)は「判決はジョブ型雇用など専門性を生かした働き方が浸透する社会情勢を反映している」と評価する。「法的に保護される可能性がある労働者の幅を大きく広げたといえ、個人のキャリア形成の意向を尊重する流れが加速しそうだ」と話している。

| 日本国憲法::2019.3~ | 11:04 AM | comments (x) | trackback (x) |

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