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2017.3.7 ふるさと納税とその返礼品・使途について (2017.3.9に追加あり)
    
  2015年の     2017.2.20佐賀新聞   戦後の出生率・出生数の推移 2010年都道府県別
ふるさと納税額  ふるさと納税の返礼品と使途                      合計特殊出生率

(図の説明:2015年のふるさと納税における勝者は、新鮮で美味しい農水産物を返礼品にした地域が殆どで、返礼品に対する批判も出ている。しかし、返礼品による産業振興効果も大きく、使途も真面目で、税収が多ければ本来は税収でやるべきことも散見される。保育所や子育て支援制度の整備については、出生率で成果が表れるが、出生率は戦後ずっと低下し続け、2005年の1.26を最低に、その後は政策効果もあって少し上がっている。県別出生率は、いつも東京が最低だ)

(1)ふるさと納税は、所得再分配を妨げる制度ではないこと
 *1-1のような「ふるさと納税は、返礼品より使途で競え」という論調が、最近、しばしば見られる。その根拠として「①返礼品ばかりが注目される」「②2千円の負担で欲しい商品やサービスが手に入るため、見返りがないか乏しい民間団体への寄付が不利になる」「③高所得者ほど限度額が膨らみ、多くの返礼品を得られるため、所得再分配を妨げる」「④本来の目的からはずれ、寄付のあり方や税制を歪める」などとして具体的な上限規制を求めているが、それでは国民の主体性を奪う護送船団方式になる。

 実際には、ふるさと納税は、*1-2のように「使い道でチョイス」することもでき、その中身には「自然保護、NPO・各種団体の支援、農林漁業・水産業・商工業、医療・福祉」などの多くの使途が示されており、寄付時に選択することになっているため、①は事実ではない。また、使途を指定できることは納税者にとっては画期的なことであり、自分が住んでいる町に使途を指定してふるさと納税を行うこともできる。

 また、*1-5のように、ふるさと納税の大手仲介サイトが、寄付額に比べて高額すぎる品や地域振興に繋がりにくい商品は掲載せず、寄付額の半分以上を自治体の手元に残すよう要請するそうで、これらは、本来はそれぞれの自治体が考えるべきことだが、変な返礼品競争は改善されることとなった。

 さらに、②は、ふるさと納税で民間NPOなどへの支援が行われることもある上、ふるさと納税しない人は民間団体に寄付するというわけでもないので根拠にならず、(私が最初に提案してできた)ふるさと納税制度に対する誹謗中傷になっている。その上、③④については、ふるさと納税は、人口が集中している都市に集まる税収を、それらの人材を育てた地域に再配分する手段であるため、「所得分布=税収分布」という状況に対して、まさに税収の再分配を行う機能を果たしているのであり、税の仕組みを知らない人が高額所得者を目の敵にしさえすればよいと考えるのは稚拙な批判である。

(2)「東京の産物に勝ち目がない」というのは、単なる努力不足であること
 東京は、*1-3のように、今でも保育園や学童保育の待機児童が多く、それは、戦後に社会進出した女性が出産適齢期にさしかかった50~60年前からずっと言い続けてきたが、20世紀の殆どの期間で「少数の変わった人たち(★)」として無視され続けてきたのである。そのため、東京は、日本全国から元気で優秀な若者を集めながら出生率が日本一低く、これは現内閣の責任というよりは、「子育てや介護は女性にしわ寄せさえすればよい」と考えてきたこれまでの日本の価値感に問題があったのである。
 (★しかし、そもそも先進的なことをする人は最初は少数であり、一世代か二世代後に一般的になる
   ため、先進的な少数の人をピックアップできなければ先見の明ある政策はできない)

 また、東京などの大都市では、メディアが論点を正確に報道せず、サラリーマンが多くて自ら政治に働きかけることが少ないため、首長や議員を選ぶ際に地方よりも意識が低い場合が多く、主権者である有権者が政治や行政を適切にチェックしなかったのも問題なのだ。そして、少数の人がそれらの問題を指摘しても、大多数の有権者の行動に結びつかなかったもので、問題の未解決は政治のせいだけではない。

 そのような状況であるため、東京こそ使途を指定してふるさと納税を募ればよく、東京は特産品も首都であるゆえの有利性が働いている上、小笠原諸島・八丈島などの離島や山間部もあるため、*1-4のように、「東京の産物は勝ち目がない」などとしているのは、実は本気で工夫していないだけである。
 
 なお、行政も加わって地域の産物を発掘し世に出すことは、ふるさと納税のもう一つの有意義な役割となった。そのため、競争は重要で、工夫している地域を納税者が選んで納税(寄付)できるのは、ふるさと納税の長所だ。従って、メディアは、どんな使途や返礼品があるかを正確に報道することの方が重要で、規制で競争を制限して護送船団方式にすれば、これまでと同じ失敗を繰り返すことになる。

(3)ふるさと納税の活用
1)教育・子育てへの活用
 一方、*2-1のように、ふるさと納税で2016年4月以降に集めた金は、「教育」「子育て支援」に充てられる例が多く、納税(寄付)した人に返礼品を贈ることで、地元特産品の販売が増えるなどの産業振興に効果があったとする回答も多数を占めたことが、共同通信の自治体アンケートで分かった。

 ここでも返礼品競争の過熱として問題視されているが、何割を返礼品に充てるかを総務省が規制するよりも、それぞれの自治体が最適な割合を自主的に選択する方が、自治体毎に異なる政策の重点が現れてよいと私は考える。それを監督するのは、総務省ではなく、主権者たる有権者であるべきだ。

 「ふるさと納税の勝ち組」は、*2-2のように、ふるさと納税額を見越して前年度に比べ予算を19.7%増の47億9,800万円にしたそうだ。ただ、工夫を重ねての勝ちと言っても、東京都や国のずさんな契約による誤差の範囲内であることを忘れてはならない。

2)エネルギー供給での活用
 群馬県中之条町は、*2-3のように、ふるさと納税した人への返礼品リストに太陽光発電による家庭用電力を加え、町は、太陽光のほか水力やバイオマス発電にも力を入れており、「再生可能エネルギーによる町づくりにご支援を」とし、温泉旅館で使える感謝券も人気で、今年既に約7億4千万円の申し込みがあったそうだが、そこには時流に合った工夫が感じられる。

 それならば、*2-4の大分県の地熱バイナリー発電所の電力も、ふるさと納税した人への返礼品リストに加えれば、環境意識の高い納税者から支持を得られると考える。

3)福祉への活用
 佐賀市大和町川上校区のNPO法人は、*3-1のように、高齢者の交通事故や運転免許返納後の代替手段が課題となる中で、ガソリン代のみの負担で高齢者が利用できる会員制送迎サービスに取り組み、佐賀県の「ふるさと納税NPO支援枠」に登録して2016年度は640万円の寄付があったそうだが、地道で感心な取り組みだ。しかし、自動車は、近い将来、高齢者・外国人・持病を持つ人などが運転しても安全なものにすべきだ。また、運転の担い手は、適正な報酬を支払えば、プロの運転手だった人を雇用することも可能だろう。

 (1995年頃に私が提案して)最初に介護制度を作った日本で、政府が高齢者の介護保険料負担を引き上げ、介護サービスを削減し続けている中、中国は、*3-2のように、介護サービスの産業としての発展を推進するそうで、私は、こちらの方が先見の明があると考える。

 つまり、中国では、民政部(省)・国家発展改革委員会・公安部(省)・財政部(省)・国土資源部(省)、全国高齢者事業委員会弁公室など13部門が共同で、「介護サービス産業の放管服改革の加速的推進に関する通達」を発表し、行政のスリム化と権限委譲、監督管理能力の強化、サービス水準の向上を通じて、介護サービス産業の発展に関わる社会的パワーを喚起し、起業や業界参入への制度的コストを引き下げ、公平で規範化された発展環境を創出する方針を明らかにしたそうなのだ。

 その通達では、居住地コミュニティの総合的サービス情報プラットフォームの構築を加速し、食事、衛生、外出、入浴、医療などでの訪問介助サービスを提供することを打ち出し、小規模の高齢者施設を設立して自宅近くで介護サービスを受けたい高齢者のニーズに対応することを奨励するそうで、自立してきた一人暮らしの高齢者が自立できなくなる時期を迎える中、これらは日本でも本当に必要なサービスであり、ふるさと納税の使途としても人気を集めると考えられる。

<負け組の泣きごと>
*1-1:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12816236.html (朝日新聞社説 2017年2月27日) ふるさと納税 返礼品より使途で競え
 返礼品ばかりが注目されるようでは、本来の目的からはずれ、寄付のあり方や税制をゆがめるばかりだ。自治体がもっと使い道を競うように改めていくべきではないか。自治体に寄付すると、国への所得税や住まいがある自治体への住民税が軽くなる「ふるさと納税」の勢いが止まらない。寄付総額は2015年度に前年度から4倍の1600億円余に増えた後、16年度はさらに倍増の3千億円程度になりそうだ。安倍政権が地方創生の目玉として制度を拡充したこともあるが、最大の要因は自治体が寄付者に贈る返礼品である。高級牛肉をはじめとする特産品や、立地する工場で作られる家電や情報機器、さらには地元の店や施設で使える商品券まで、ネット上の関連サイトはさながら通販の様相だ。ふるさと納税では、所得に応じて決まる限度額までの寄付なら、寄付額から2千円を引いた金額が手元に戻る。つまり、2千円の負担で欲しい商品やサービスが手に入る。見返りがないか乏しい民間団体への寄付が不利になる。高所得者ほど限度額も膨らみ、多くの返礼品を得られるため、所得再分配を妨げる。そんな批判が強いのに改善が進まないのは、自治体に一定のメリットがあるからだろう。地元の産業が潤って雇用が守られ、知名度も上がる。寄付金を返礼品につぎ込んでもおつりが来る――。過疎化と財政難に苦しむ地域から漏れる本音は、わからなくはない。しかし、NPOや公益法人など民間団体への寄付や、急速に広がるネットを使った資金集めの「クラウドファンディング」を見ても、具体的な事業の目的や内容を示した上でお金を募るのが原則だ。地元の農林漁業や商工業を支えたいのなら、まずは行政としての取り組みを示すのが筋ではないか。ここ数年、過度な返礼の自粛を求めてきた総務省はこの春、改善策をまとめる。あまりに高額な商品や換金しやすい金券類の見直しや、寄付額に対する返礼品額の比率の制限を求めることが考えられるが、具体的な線引きをどうするか。ここは寄付の原則を思い起こすことだ。まずは使い道を示す。いくら集まり、どう使ったかの報告も怠らない。昨年の総務省の調査では、寄付額と活用状況をともに公開する自治体は全体の半数にとどまる。政策や事業への共感でお金が集まる、そんなふるさと納税を目指すべきだ。

*1-2:https://www.furusato-tax.jp/use_category.html ふるさとチョイス
「使い道でチョイス」を抜粋
・自然保護等 ・高齢者 ・子供、青少年 ・伝統を守るなど ・NPO、各種団体支援 ・文化、教育、生涯学習 ・公共設備など ・祭事など ・農林漁業、水産業、商工業 ・医療・福祉 ・観光 ・スポーツ ・音楽 ・環境、景観 ・おまかせ ・国際交流 ・その他 ・震災復興

*1-3:http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2017022702000136.html (東京新聞社説 2017年2月27日) 保育園落ちた いつになれば解消する
 四月の保育所入所をめぐり、今年も「保育園落ちた」の悲痛な声が相次ぐ。首相は新年度末までの「待機児童ゼロ」の目標達成は困難との見方を示した。対症療法でなく抜本的に政策転換すべきだ。積年の待機児童問題はいつになったら解消するのか。子どもが四月から認可保育所に入所できるのか、二月は自治体から可否通知が届く。「妊娠中から保活に走り回ったが入所できなかった」「入所先が見つからず退職」「会社の託児所に一歳児を預かってもらうことになったが、子連れで満員電車に揺られることになる」。国会内で開かれた集会では、認可保育所に入れなかった母親たちの怒りの声があふれた。「保育園落ちた」と窮状を訴える匿名ブログが話題を集めて一年たつが、問題はさらに深刻化している。厚生労働省によると、待機児童数は二〇一六年四月で約二万三千人で前年より増えた。背景には非正規雇用の増加で世帯収入が減り、幼い子を持つ母親の就業率が高まったことなどがある。国や自治体は保育施設を新設するなどして定員を増やすものの、入所希望者がそれを上回る勢いで増えるために追いつかない。国はどう責任を持つのか。一三年に発表した「待機児童解消加速化プラン」は、五年間に保育の受け皿を五十万人分整備し、待機児童をゼロにする計画だった。だが目標達成について安倍晋三首相は「厳しい」と国会で答弁。この間の対策には応急策が目立った。保育士配置や施設面で基準を緩和し、狭いスペースに子どもを詰め込もうとする。二歳児までの小規模保育所を増やしたが、それも三歳になれば行き場を失い、また保活を迫られる。企業主導型保育所も保育士の配置基準が緩く、親たちの心配は尽きない。もっと政策の優先度を上げて予算を投じ、国の基準を満たした保育所を増やす。保育士の給与引き上げも一部でなく全体の処遇改善につながる政策が必要だ。国はいまだに正確な待機児童数を把握していない。自治体によっては認可保育所に入れずに育休を延長したり、認可外施設などに入った場合は待機児童に数えていない。こうした「隠れ待機児童」を含めて九万人規模とも。都会の問題だとみられてきた待機児童は地方にも広がっている。子どもの数は減っても保育の需要はこの先も増える。今こそこうした社会構造の変化に向き合った抜本的な政策転換を図るべきだ。

*1-4:http://mainichi.jp/articles/20170218/dde/001/010/058000c (毎日新聞 2017年2月18日) ふるさと納税 .魅惑の返礼品、過熱 23区、208億円減収 17年度予想 「東京産物、勝ち目ない」
 高級肉などの「返礼品競争」が問題となっている「ふるさと納税」の影響で、東京23区が2017年度、少なくとも208億円の税収減を見込んでいることが各区への取材で分かった。16年度の129億円から1・6倍になる見通し。地方の自治体が特産品を用意して寄付を呼び込み合う中、目を引く産物に乏しい23区は、止まらない税流出に頭を抱えている。税収減の見込みは、多い区で▽世田谷区30億円=16年度比1・8倍▽港区23億4100万円=同1・5倍▽渋谷区14億6000万円=同2倍--など。ほぼ全ての区が、16年度より多くなると予測している。ふるさと納税は、出身地など応援したい自治体に寄付すると、居住地の税が軽減される仕組み。都市部と地方の税収格差を埋める目的で08年度に導入された。手続きの簡略化や軽減の上限額の引き上げによって15年中に利用者が急増、16年度の23区への影響は前年度の5・4倍に跳ね上がった。高市早苗総務相は「競争過熱や、制度の趣旨に沿わない返礼品は問題」として、対策に乗り出す考えを示している。各区は減収拡大に危機感を募らせる。世田谷区の保坂展人区長は2日の記者会見で「学校一つ分の減収だ」と述べ、不快感をあらわにした。30億円の税収減は学校1校の改修費に相当するという。一番人気の伊賀牛。中でもすき焼き用が最も多く選ばれた  杉並区の田中良区長は、仲介サイトで人気上位の返礼品を高級肉が占めていることに「税制度が『肉食欲』にじゅうりんされている。古里を応援しようという思いで税金の一部を納めるはずなのに、モラルハザードだ」と恨み節を述べた。地元で返礼品を探す区担当者は「地方と比べられたら勝ち目がない」とため息を漏らす。中野区は昨年10月から、交流のある青森県や北海道の特産品を返礼品にして寄付を募っている。これまでに約4500万円の寄付を受けたが、来年度の減収見込みは7億円を超え、遠く及ばない。しかも、寄付の半分は返礼品や送料などの経費で消えてしまうという。杉並区も17年度から、仲介サイトを利用して寄付を募る方針だ。ただ、直接的な返礼品は用意せず、被災地支援や福祉の充実に活用する方法を検討している。

*1-5:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/410350 (佐賀新聞 2017年3月1日) 高額返礼品は掲載せず ふるさと納税で大手仲介サイト、基準見直しへ
 ふるさと納税の寄付金集めを巡る自治体間の競争過熱を受けて、インターネットで寄付を仲介する大手ポータルサイト「ふるさとチョイス」の運営会社トラストバンク(東京)が、4月から返礼品の掲載基準を見直すことが28日、分かった。寄付額に比べ高額な品や、地域振興につながりにくい大企業の商品などを掲載しない方針だ。総務省は商品券などお金に換えやすい返礼品を問題視し、春に是正策をまとめる。他のポータル運営会社にも影響する可能性がある。トラストバンクは自治体に対し、返礼品の高額化などで「制度の存続が危うくなるかもしれない」と説明。新基準として、寄付額の半分以上を自治体の手元に残すよう要請し、中小企業を支援するため、資本金5億円以上の企業の商品は掲載しない考えを示した。さらに自転車やゴルフクラブ、貴金属もやめる方向だ。各自治体とは2月から協議しており、合意に至らなければ「契約を解除し、仲介をやめることもあり得る」としている。昨年7月には転売しやすい家電製品の掲載を中止した。一方、ソフトバンクグループの「さとふる」(東京)は「制度の趣旨に沿う返礼品であるか確認して掲載している」と説明。品目などで一律に線引きはしておらず、地元にある工場で製造した大手メーカーのビールや家電製品なども掲載することがある。「わが街ふるさと納税」を運営するサイネックス(大阪市)は、家電や商品券を贈らないよう求めた総務省の方針を説明するが、最終的には自治体側の判断を尊重するとしている。
■ふるさと納税の返礼品競争 ふるさと納税の返礼品競争 ふるさと納税で多くの寄付を集めるため、多くの自治体が返礼品の豪華さを競っている。返礼品の購入費が膨らむ分、自治体が独自の事業に使えるお金が減少、返礼品目当ての寄付は、地域を応援する制度の趣旨にそぐわないとの声もある。総務省は昨年4月、お金に換えやすい商品券や家電を贈らないよう自治体に要請したが、競争の過熱に歯止めがかからないため、新たな是正策を検討している。

<ふるさと納税のエネルギーへの活用>
*2-1:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/407274 (佐賀新聞 2017年2月20日) ふるさと納税の収入 教育、子育てに活用、返礼品、産業振興に効果
 ふるさと納税で2016年4月以降に集めたお金は、小学校の教員配置といった「教育」や、保育料免除などの「子育て支援」に充てる例が多いことが19日、共同通信の自治体アンケートで分かった。寄付した人に返礼品を贈ることで、特産品の販売が増えるなど産業振興に効果があるとする回答も多数を占めた。ただ、多くの寄付金を集めるための返礼品競争が過熱しており、自治体側には一定のルールを望む声が強い。お金に換えやすい商品券などを返礼品にするケースもあり、高市早苗総務相は是正策の検討を急ぐ考えだ。全国の自治体に寄付金の主な使い道を一つ聞いたところ、トップの「教育」が12%(202自治体)、次いで「子育て支援」11%(192)だった。茨城県美浦村は、きめ細かい指導のため小学校に非常勤講師を多く配置。長崎県雲仙市は第2子以降の保育料免除に活用する。「地域・産業振興」「まちづくり・市民活動」はいずれも6%(それぞれ105と102)。北海道池田町は寒冷地用ブドウの研究開発、宮崎県三股町は市民マラソン開催に充てる。このほか北海道栗山町の救急医療態勢の確保といった「健康・医療・福祉」が5%(90)、京都府宇治市のスタンプラリー開催など「観光・交流」は4%(66)だった。多くの自治体は、ふるさと納税をする人がお金の使い道を選べるようにしている。従来の税収、地方交付税や補助金だけではできない新たな施策や事業も実現できるため、地域の取り組みをより身近に感じてもらおうとする狙いがある。一方、返礼品による産業振興は、54%の自治体が「効果があった」と答えた。具体的には「衰退しかけていた伝統の八幡靴が復活の兆し」(滋賀県近江八幡市)などの例があり、地元生産者の販路拡大や新商品開発につながっているという。寄付総額に占める返礼品代は15年度の37%から16年度は43%へ膨らむ見通し。その分、独自政策に充てる額は減る。ただ返礼品自体が地元の活性化に役立つ面もあるため、これが競争過熱の一因となっているようだ。調査は16年11月~17年1月に全国1788自治体(都道府県、市町村、東京23区)を対象に実施し、96・2%の1720自治体が回答した。

*2-2:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/411091
(佐賀新聞 2017年3月4日) 江北町、48億円弱に ふるさと納税見越し19%増
 杵島郡江北町は3日、2017年度の一般会計当初予算案を発表した。昨年9月からオンライン決済を導入し返礼品も充実させて好調なふるさと納税の伸びを見越し、骨格予算だった前年度に比べ19・7%増の47億9800万円となった。7日開会予定の定例町議会に提案する。ふるさと納税推進事業費は3億6573万円。ポータルサイト委託料のほか、受け付けが集中する11~1月に臨時職員を雇う。町社会福祉協議会に開設する小規模保育所の運営委託事業は2000万6千円、小学校の教材用のデスクトップパソコンをタブレット端末に更新するリース料に331万3千円など。歳入は町税が9億4288万円(前年度比5・9%増)、町債は1億7750万円(9・8%減)。前年度1万3千円としていた寄付金は5億1014万円と大幅増を見込む。自主財源比率も41・2%(12・5ポイント増)と伸び、町債依存度は3・7%(9ポイント減)。

*2-3:http://digital.asahi.com/articles/ASK2M3VD1K2MUHNB001.html (朝日新聞 2017年2月20日) ふるさと納税、返礼に太陽光家庭用電力 群馬・中之条町
 群馬県中之条町は3月から、ふるさと納税(寄付)をした人への返礼品リストに家庭用電力を加える。町内にある大規模太陽光発電施設(メガソーラー)で発電し、送配電事業者を介して届ける。昨年4月の電力小売り全面自由化で可能になった。同町は県北西部の山間地にあり、四万(しま)、沢渡(さわたり)などの温泉地で知られる。寄付の返礼に贈っている感謝券が温泉旅館などで使えることから人気で、今年度は約8600件、約7億4千万円(1月末現在)の申し込みがあった。今春から、一口15万円以上の寄付をした人は家庭で使う電力を選択できるようになる。町内には町営と民間の計3カ所のメガソーラーがあり、年間発電量は計約650万キロワット時。町主導で設立した電力小売会社「中之条パワー」が全量を買い取り、市場調達分と合わせて町内の公共施設や一部家庭に供給している。返礼用は余剰分から振り向ける。関東など東京電力管内の家庭が対象で、当面は50戸限定で始める。希望者は、中之条パワーと電気の購入契約を結ぶ必要がある。一口15万円の寄付で、平均的な家庭の約半年分に当たる約2500キロワット時が届けられる。返礼用は使用量管理などを外部委託する分、「東電並み」の通常向け料金より割高になる。基本料金は本人持ちで、受け付けは3月1日から。町は、太陽光のほか水力やバイオマス発電にも力を入れており、「再生可能エネルギーによる町づくりにご支援を」。問い合わせは町企画政策課(0279・75・8802)へ。

*2-4:http://qbiz.jp/article/104722/1/
(西日本新聞 2017年3月2日) 余った熱水を使った全国初の地熱発電所が運転開始
 大分県九重町に出光興産が建設した地熱バイナリー発電所「滝上バイナリー発電所」(出力5050キロワット)が1日、商業運転を始めた。低温の熱水で発電するバイナリー方式として日本最大級。グループ会社や九州電力に売電する。発電所は、子会社の出光大分地熱が運営する滝上事業所の敷地内に建設。同事業所は、九電滝上発電所に地熱発電用の高温の蒸気を供給している。同発電所で使わずに地下に戻していた130度の熱水を利用するため、出光が新たに発電所を建設した。既設の地熱発電所に併設し、未利用の熱水を使う地熱バイナリー発電所の稼働は国内で初めてという。出光大分地熱の竹中照雄社長は記者会見で「エネルギーを効率的に利用でき、地熱発電の拡大にもつながる」と語った。

<ふるさと納税の福祉への活用>
*3-1:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/409473 (佐賀新聞 2017年2月27日) 住民発の高齢者送迎、軌道に 免許返納代替で、大和町川上のNPO
 高齢者による交通事故や運転免許返納後の代替手段が課題となる中、佐賀市大和町川上校区のNPO法人「かわかみ・絆の会」(松崎逸夫理事長)がガソリン代の負担で高齢者が利用できる会員制送迎サービスに取り組み、2015年10月の開始から1年5カ月で利用者が5倍超に増えている。懸案だった資金繰りはふるさと納税を利用するアイデアで解決の糸口を見いだし、地域住民による「生活の足」確保策は軌道に乗り始めた。利用できるのは65歳以上の川上校区住民。入会費2000円と年会費1000円で会員になる。1キロ当たり15円のガソリンチケットを購入し、移動した距離に応じてチケットを支払う。利用できるのは月・水・金・土曜の午前8時半から午後4時まで。利用者が前日までに予約する。病院や買い物など目的地は問わない。
▽利用5倍超 
 サービスに取り組む絆の会は、地区内の民生委員全13人と地元自治会長で運営する。松崎理事長(74)は民生委員で、高齢でマイカーを手放すことと、移動手段を失うことの板挟みに悩むお年寄りと接してきた経験から会を設立した。佐賀市によると、川上校区の住民は5735人(1月末現在)で、65歳以上の高齢者が3割を占める。地区内では10年ほど前にコミュニティバスが試験運行されたが、事前アンケートに反して利用が少なく廃止になった経緯がある。「生活の足」の確保は地区の高齢者にとって切実な問題となっていた。当初15人だった利用者は現在、78~93歳の83人に増えた。体制も普通乗用車1台から、譲り受けた軽乗用車を加えた2台体制に強化した。月140~150件の利用がある。運営には、保険や自動車整備など年間150万円ほどかかる。賛助会員を含めた会費や自治会からの助成を運営費に充てていたが、行政の補助金は受けていない。ただ、賛助会費は設立時ほど集まらなくなり、運営を安定させるため、県のふるさと納税NPO支援枠に登録した。2016年度は640万円の寄付があった。返礼品の経費を差し引きし、「なんとか本年度分の運営費を賄えた」(松崎理事長)。
▽課題は担い手 
 病院や買い物などで月に2、3回利用するという中島ケサエさん(84)は、10年ほど前に車の運転をやめた。「バス停までも行けないので、とても助かっている。パーマをかけるために美容室にも行けるんですよ」と語り、運転しない生活を以前ほど不自由と感じなくなった。NPOを運営するメンバーも64~74歳。松崎理事長は「この地区は公共交通の空白区。必要なサービスを続けるため、ふるさと納税してもらえるのはありがたい」と善意に感謝しながら、「運営側も高齢というのが現実で、自分たちもいずれサービスを利用する側に回ります」と憂える。資金繰りの次は担い手をどうするか。新たな課題も感じている。

*3-2:http://qbiz.jp/article/104854/1/
(西日本新聞 2017年3月3日) 中国は「放管服改革」加速、介護サービス産業発展を推進
 2016年10月8日、中国の伝統的祝休日「重陽節」を翌日に控えて、山東省青島市の介護サービスセンターで、駐屯軍の兵士が高齢者と一緒に餃子を作ったり、京劇を鑑賞したりした。民政部(省)、国家発展改革委員会、公安部(省)、財政部(省)、国土資源部(省)、全国高齢者事業委員会弁公室など13部門がこのほど共同で、「介護サービス産業の放管服改革の加速的推進に関する通達」を発表し、行政のスリム化と権限委譲、監督管理能力の強化、サービス水準の向上を通じて、介護サービス産業の発展に関わる社会的パワーの積極性をさらにかき立て、起業や業界参入にあたっての制度的コストを引き下げ、公平で規範化された発展環境を創出するとの方針を明らかにした。中国はすでに高齢化社会に足を踏み入れており、介護サービスへの需要は非常に大きい。2015年には60歳以上の人が2億2千万人に達し、総人口の16.1%を占めた。介護サービスの質は2億人を超える高齢者に関わる問題であり、特に4千万人を超える障害をもった高齢者の老後の幸福に直結する。だが日々増大する介護サービスのニーズとは裏腹に、中国の介護サービスは供給量も質も大幅に不足している。都市部と農村部で公共施設に大きな開きがあり、高齢者向け商品の製造・供給の遅れという問題も幅広く存在する。介護サービス産業は億単位の人々の福祉に関わる民生事業であり、また巨大な発展の潜在力を秘めた成長産業でもある。国務院が昨年末に下達した「介護サービス市場を全面開放して介護サービスの質を高めることに関する若干の意見」では、介護では居住地のコミュニティのサービスに力を入れ、農村に力を入れ、障害をもった高齢者に力を入れることや、ケア型サービス資源をさらに拡充し、小規模の、チェーン化された、専門的なサービス機関の育成発展に力を入れることが提起された。今ある介護サービスの弱点を見据えて、「意見」は、居住地のコミュニティの介護サービスについては、コミュニティレベルの総合的サービス情報プラットフォームの構築を加速し、食事、衛生、外出、入浴、医療などでの訪問介助サービスを提供することを打ち出す。また小規模のコミュニティレベルの高齢者施設を設立して、自宅近くで介護サービスを受けたいという高齢者のニーズに対応することを奨励する。


PS(2017.3.9追加):自然再生可能エネルギーを使って電力や水素燃料を作れば、*4-1のEVや*4-2の燃料電池列車や*4-3のゼロ・エミッション住宅など、自然再生可能エネルギーだけで生活するするツールが既に人々に与えられている。また、自然は請求書をよこさないため、安価に環境を汚さない生活をすることができ、地域で作った付加価値の多くを燃料費として海外に支払わなくて済む街づくりとビジネスモデルができる。そのため、国や地方自治体は、新築住宅にパッシブハウスであることを義務付けたり、環境規制を強めたり、補助したりして応援するのがよいと考える。
 それにもかかわらず、*5-1のように、九州電力はゴールデンウィークに太陽光発電の稼働を止める出力抑制する可能性があるそうで、その理由を、*5-2のように「①太陽光発電は日中しか動かないため設備利用率が低く、天候で出力が大きく変わる」「②大量に普及すると、日中の大きな出力変動で需給バランスが一気に崩れ、最悪の場合は広域大停電が起こるリスクがある」などと説明している。
 しかし、①②は蓄電池で対応することができ、電力をあまり使わない夜も大量に発電し続ける原発よりは太陽光発電の方がずっと需要と供給が近く、*5-2の「③太陽光発電は初期投資費用が高い」というのも、原発の初期投資や事後処理費用に比べればかわいすぎるくらいの金額である。
 そのため、九州で既に出力682万キロワット(大型原発約7基分)の太陽光発電による電力が接続され原発再稼働の理由がなくなった現在、九電などが太陽光発電の出力抑制を指示する本当の理由は、i)原発を再稼働させたいこと ii)再生可能エネルギー電力の供給に原発・火力などの発電設備を持っている大手電力会社の送電線を利用していること iii)再生可能エネルギー電力をその大手電力会社に買い取らせていること などの政治的なものである。
 従って、地方自治体が「ふるさと納税の資金を使って上下水道の近くに電線を埋設し、自然再生可能エネルギーによる電力を返礼品にする」という案も、環境意識の高い住民に人気が出ると考える。

   
                  2017.3.9西日本新聞(*5-1、*5-2)より

(図の説明:一番左のグラフのように、九州の太陽光発電は既に出力682万キロワット(大型原発約7基分)が接続されている。このような時代に、電力が余った時には、一番右の図のように、バイオマス・太陽光・風力発電を原発より先に止め、原発を「ベースロード電源《長期固定電源》」とするのは時代錯誤だ)

<自然再生可能エネルギー、エコカー、ゼロ・エミッション住宅>
*4-1:http://qbiz.jp/article/103491/1/ (西日本新聞 2017年2月11日) テスラ充電施設 九州で初の設置  福岡・須恵町
 米国の電気自動車(EV)メーカー「テスラ」の日本法人が10日、福岡県須恵町に、テスラ車専用の急速充電施設を開設した。同様の施設は国内14カ所目で、九州では初めて。本州から九州にテスラ車でドライブする人などの利用を想定している。30分の充電で270キロ走行できるという。施設は、九州自動車道のインターチェンジ近くのホームセンター駐車場にあり、充電器6台を置く。24時間利用できる。また、ヒルトン福岡シーホーク(福岡市)の駐車場にも普通充電器4台を設置した。テスラの日本法人は「今後も専用充電施設のネットワークを拡大したい」としている。

*4-2:http://www.tokyo-np.co.jp/article/economics/list/201610/CK2016100902000115.html (東京新聞 2016年10月9日) 【経済】エコな未来へ夢乗せて 世界初の燃料電池列車
 トヨタ自動車が先駆けて市販した燃料電池車の「列車版」が来年末、世界で初めてドイツで営業運行を始める。屋根に積んだタンクに入る水素と、空気中の酸素を反応させて発生させた電気で走り、二酸化炭素(CO2)などの温室効果ガスを出さないエコ列車だ。電気を供給する架線がないローカル区間を走ってきたディーゼル車の代役として期待されており、ドイツ政府も開発と普及を後押ししている。
■来年末から運行
 六十カ国から約三千の鉄道関連会社が出展し、ベルリンで九月に開かれた国際鉄道技術見本市。来場者の話題をさらったのは、フランスの重電大手、アルストムの燃料電池列車「コラディア・アイリント」だった。開幕初日にはドイツのドブリント運輸相も駆けつけ、「ローカル線に架線を設置するのは不経済。燃料電池列車なら排ガスゼロでエネルギー効率が高く、コストパフォーマンスもいい」と絶賛した。燃料電池列車は水素満タン時の連続走行距離が六百~八百キロで、最高速度は時速百四十キロ。乗客定員は最大三百人だ。アルストムのプロダクトマネジャー、シュランク氏(53)は「ディーゼル車に比べ、遜色ない性能」と胸を張った。新列車はまずドイツ北部のニーダーザクセン州内で二台が導入され、二〇年までに十四台が配備される。車両は同州内にある工場で製造。ドイツ政府は開発費の一部の八百万ユーロ(九億円)を支援した。
■水素燃料に発電
 ドイツでは、線路の総延長距離約三万八千キロのうち46%が未電化。燃料電池列車の潜在的な需要は大きいとみられている。オーストリアから見本市に見学に来た鉄道電気設備会社員のツィマーさん(34)は「古い線路に電線を設置するのは技術的に困難で、コストも高い。その点、新列車は見事なアイデアだ」と語った。日本の鉄道車両製造会社の技術者の男性(27)も「車体に設置する水素の配管は自動車より長く、設計が難しい。安全性を確保しながら、二年で開発したのはすごいこと」と評価した。燃料電池車は水素を燃料とし発電時にCO2を排出しないが、普及には水素を供給する水素ステーションの建設が不可欠という課題がある。これに対し燃料電池列車は、列車の車両基地内で水素を貯蔵。車両に注入する設備や水素を配送するシステムは列車とセットで販売するため、燃料供給面の不安はないという。ただ、水素をつくる過程では温室効果ガスが排出され、「環境に負担がかかっている」との指摘もある。これについてアルストムのシュランク氏は「塩素を製造する際の水素を活用しており、列車を走らせるために新たな環境への負荷は発生していない」と説明。将来は、風力発電で得た電気を利用してつくる水素を燃料にすることも検討し「環境負荷ゼロ」に近づける考えも示した。

*4-3:http://www.newsdigest.de/newsde/regions/reporter/hannover/5560-966.html (2015 November 2013 田口理穂) 欧州最大のゼロ・エミッション住宅地
 「パッシブハウス(Passive House)」という言葉をご存知ですか。これは、太陽光発電などを利用し、屋内の暖房や電気の使用量を極力抑えるよう造られた建物のことです。パッシブハウスの基準では、例えば160㎡の一軒家の暖房エネルギーは1年で1㎡当たり15キロワット時以下と定められています。ハノーファーはハイデルベルク、フランクフルトと並んで国内でもパッシブハウスを積極的に取り入れている町として知られ、昨年は国際パッシブハウス会議も開かれました。2006年頃からパッシブハウスの需要が増え、現在では新築住宅の3割はパッシブハウスだそうです。現在、市内南西部のヴェットベルゲン(Wettbergen)地区で、欧州最大のゼロ・エミッション(環境に負荷を掛けるCO2などの排出量をゼロにすること)住宅地「ゼロ・エー・パーク(Zero:E Park)」の建設が進められています。ここに建てられる住宅はパッシブハウスのみ。26万㎡の敷地に計330世帯の住宅が建てられる予定で、土地購入後2年以内に建設、3年以内に入居しなければなりません。すでに第1区画の59軒が完成し、入居が始まっています。先日公募があった第3区画は販売開始後、数時間で完売したそうです。昨年12月、この住宅地に国内初のパッシブハウス・スーパーマーケット「レーヴェ(REWE)」がオープンしました。見た目は普通のスーパーですが、屋内では主にLED電球を使用しているほか、冷蔵庫には3重ガラスを使用。外気がマイナス7度になるまで暖房は不要というエコな造りで、既存のスーパーよりもCO2の排出量を3割抑えられているのだとか。パッシブハウスには、環境に配慮した様々な工夫が施されています。例えば、太陽光を最大限に取り入れるため、全住宅の南側に大きな窓を設置。熱を逃がさないよう壁や天井には断熱材を用いて、窓はあまり開かず、熱交換ができる空気調整器で換気するようになっています。また、家の南側に掛かる影が最小限になるよう、隣の建物との間に十分な距離が取られています。雨水は下水道に流れるのではなく、ため池に集められます。建物と道との距離が近いところでは、道との間にスペースを設けて壁づたいに伸びるつる性の植物を植えるなど、緑化が義務付けられています。さらに、ソーラーパネルや太陽光温水器を屋根に載せている住宅も見られます。近年、エネルギー費用の高騰が著しく、暖房費を大幅に節約できるパッシブハウスの人気は右肩上がり。省エネを実践するパッシブハウスは、エネルギー政策の転換にも大きく寄与しています。

<九電の太陽光出力抑制指示>
*5-1:http://qbiz.jp/article/105151/1/# (西日本新聞 2017年3月9日) 九電が太陽光の「出力抑制」を指示へ GWにも、離島外では全国初
 九州電力が今春、太陽光発電の稼働を止める「出力抑制」を九州本土で指示する可能性があることが分かった。太陽光発電の急増を受け、天候が比較的良く電気の使用量が少ない春と秋に、需給バランスが崩れて広域的停電が起きないようにするのが狙い。ゴールデンウイーク(GW)中の出力抑制を想定し、対象となる発電事業者に対する事前説明の手続きをほぼ終了。出力抑制の順番を定めた国の「優先給電ルール」を運用する準備を整えた。経済産業省資源エネルギー庁などによると、固定価格買い取り制度(FIT)が始まった2012年7月以降、九電は15年5月に初めて、系統が孤立している鹿児島県の離島、種子島で出力抑制を実施した。本土で出力抑制されれば全国で初めてという。FITは11年3月の東京電力福島第1原発事故後、脱原発を打ち出した当時の民主党政権時代に始まった。建設が簡単で買い取り価格が高額な太陽光は、参入業者が予想以上に増加。日照量が多い九電管内では、太陽光接続容量817万キロワットに対し、接続は682万キロワットに達する。この容量は、各発電所に年間30日間の出力抑制を指示できる前提で設定している。西日本新聞の取材に対し、九電電力輸送本部の深川文博副部長は「早ければ年内に九州本土で出力制御しなければならない。特に今年のGWの可能性が高まっている」と述べた。GWは企業が休業することに加え、晴天なら太陽光の出力が増すため、供給が需要を大幅に上回りやすい。火力発電などの出力の調整だけでは需給バランスが保てなくなるため、太陽光の出力抑制を求めるという。出力抑制の対象は、事業者が運営する約3100発電所で、出力が小さい一般家庭は対象外。出力抑制の頻度などを公平にするため、交代制で各発電所に指示する。今年のGW期間中は、各発電所で最大2回の出力抑制を想定している。優先給電ルールに基づいた出力抑制を円滑に進めるため、九電は昨年7月に全国で初めて細かな運用指針を公表した。前日午後5時までに対象事業者に電話やメールなどで連絡。当日に日中の稼働を止めてもらうよう求める。ルールや運用方針への理解と協力を得るため、九電は昨年7月末までに、約2千事業者にダイレクトメールを送信。希望のあった約900事業者を個別に訪問した。3月中に残り30事業者を訪問する。深川副部長は「今まで再生エネルギーを積極的に受け入れてきたが、需要と供給のバランス調整には限界がある」と理解を求めている。

*5-2:http://qbiz.jp/article/105152/1/ (西日本新聞 2017年3月9日) 電力新時代、出力抑制の背景は太陽光の爆発的な普及
 九州電力が今春、九州本土での太陽光発電の出力抑制に向けて準備を進める背景には、2011年3月の東京電力福島第1原発事故後に太陽光が爆発的に普及したことがある。今後も太陽光は増えると見られ、出力抑制が常態化することになりそうだ。電力会社に対し、国が決めた価格で再生可能エネルギーの買い取りを義務づける固定価格買い取り制度は、12年7月に始まった。初期投資費用が高い太陽光も、一般の事業者や家庭に拡大。日照時間が長い九州は、出力682万キロワット分が接続された。単純計算で大型原発約7基分に相当する。ただ太陽光の弱点は、日中しか動かないため設備利用率が低く、天候で出力が大きく変わることにある。大量に普及すると、日中の大きな出力の変動で需給バランスが一気に崩れ、最悪の場合は広域大停電が起こるリスクがある。もともと買い取り制度は、各発電所で30日間の出力抑制を前提としていた。その後、15年1月以降に接続を申し込んだ事業者には、無制限の出力抑制を指示できるようになった。太陽光は、投資目的に増えた側面も大きい。九電が昨年8月以降、出力抑制を説明するために個別に事業者を訪問した際、「制度を知らない」「仲介業者から聞いていない」と戸惑いの声が一部で上がった。九電の接続は、容量の817万キロワットに対し、残り135万キロワットと迫り、現在も月6万〜7万キロワットのペースで増える。接続容量に達したら「年間の90日間はどこかの太陽光発電所が止まっている状態になる」(九電)。承諾済み分を合わせると、いずれ1100万キロワットまでは接続される見込みで、出力抑制の日数は増加し続ける。国と電力会社には、出力抑制による混乱が起きないように、丁寧な説明が求められる。
■優先給電ルール 電力供給が需要を上回る場合、稼働中の発電所を出力抑制する順番や条件を定めた指針。天候で発電出力が左右される太陽光発電をより多く受け入れるため、電力広域的運営推進機関が昨年4月に現在の内容とした。大手電力会社は火力の出力抑制から着手し、余剰電力を使って水力発電用のダムに水をくみ上げる揚水発電の運転、バイオマスの調整などでも供給の余剰が続く場合、太陽光や風力の出力を落とす対応を求められる。

| まちづくりと地域振興::2015.5~ | 10:48 AM | comments (x) | trackback (x) |
2016.11.20 2015年度のふるさと納税と東京都の予算の使い方について (2016年12月12、16日、2017年2月4日に追加あり)
   
ふるさと納税受入額・受入件数 ふるさと納税額推移   2015年ふるさと納税額   2016.12.12  
                                      上位20自治体       日経新聞
(1)地方の努力
 ふるさと納税による地方自治体への寄付額は、*1-1のように、2015年度に約1,653億円で前年度の4.3倍となり、件数は726万件で3.8倍になったそうだ。その理由は、①昨年4月から減税対象となる寄付額の上限が約2倍に引き上げられたこと ②各地の自治体が返礼品を充実させたこと ③「ワンストップ特例」を導入して確定申告不要とし利便性が高くなったこと などである。

 また、2015年度のふるさと納税額トップ20に九州の9自治体が入り、宮崎県都城市が返礼品の地元産肉や焼酎により人気を集めて42億3,100万円で1位だったのは、2005年に九州から衆議院議員になってすぐ「ふるさと納税」を提案して実現にこぎつけた私にとって満足いく結果だった。そのほか、都道府県別の集計では、北海道が150億3,600万円で1位、山形県が139億800万円で2位、長野県が104億5,600万で3位だったのも頷ける。

 さらに、*1-2のように、ふるさと納税の返礼品を扱って売り上げを伸ばす農産物直売所も出ているのは、地元では当然のようにある農産物が他地域では高く評価されることがわかるため、このように全国の消費者と結ばれた生産物の販売を行えば、農業者も消費者が何に価値を見出しているかを肌で感じることができ、次の生産を行うにあたって励みになると考える。

(2)返礼品は寄付の理念に反するか? ← 可能性を狭めるべきではないこと
 *1-1には、「①換金性の高い商品券の提供があり、地域活性化という趣旨に外れる」とか、*2には、「②所得が多い人ほど恩恵が増えるため、ふるさと納税は富裕層の節税策か」「③自治体が寄付を募るため返礼品をめぐる過剰な競争に走る動きが収まらない」「④寄付を通じてふるさとなどを応援するという本来の趣旨を見失ってはならない」などが書かれている。

 確かに、①の商品券のような換金性の高いものを返礼品として、その町の商店街で買い物をするように自治体が誘導するのは、使い方によっては問題が生じ、その町の生産物を売ったり有名にしたりすることもないため経済効果も限られるが、商店街の売り上げには貢献する。

 また、②は、所得の多い人ほど支払税金額が大きいため、そのうちの一部であるふるさと納税の限度額が大きくなるのは当たり前であり、それを「ふるさと納税は富裕層(定義も曖昧)の節税策か」とまで書くと、比較的所得の多い人に対する偏見に満ちた差別となる。

 ③については、自治体が寄付を募るために返礼品を工夫することによって地域の生産物を育て、それに自信を持って全国に発信する効果があるため、私はよいことだと考えている。さらに、④の寄付を通じてふるさとを応援する趣旨は、返礼品をもらうから失われるわけではない。そして、寄付金額から2千円差し引いた分しか所得税・住民税から軽減されないのが、ふるさと納税を受けたい地方自治体が返礼品という案を編み出した理由であるため、「減税で返礼品の取得を助けている」と言うのも正しくない。

 私は、*2の「ふるさと納税が地方創生に繋がる」というのは本当だと考えており、「税収が減る都市部の自治体では保育所整備などへの影響を心配する」などと言うのは、「ふるさと納税制度の開始前には保育所や学童保育の整備を進めきたが、ふるさと納税制度のためにそれができなくなった」という嘘の言いがかりである。例えば、ふるさと納税制度で独り負けしている東京都の例では、豊洲市場や東京オリンピックの建物だけでも数千億~数兆円規模の無駄遣いをしているのに、ふるさと納税に返礼品を付けて10~50億円を一生懸命集めている地方自治体(それが、その町の1年分の予算に匹敵する地域もある)に文句を言う必要はないだろう。

 確かに、東日本大震災や熊本地震では被災地の自治体に見返りを求めない寄付が集まっているが、このように甚大で明らかに目に見える被害を受けている時だけでなく、企業が都会に偏在するため予算を使って教育した人材を都会に送り出して老親の世話をし続けている自治体が、その自治体への感謝や応援の意味で、ふるさと納税を受け易くするのは、むしろ公平・公正だと考える。

(3)東京都の予算の使い方について
1)豊洲市場建設費の場合

    
  豊洲市場概観図            豊洲市場建設費用の推移         天下りした都のOB

 *3-1のように、東京都の豊洲新市場の主要建物3棟の建設工事では、都当局が入札予定の大手ゼネコン側にヒアリングを行った後、予算が400億円増えていたそうだが、2015年の建設費(2,752億円)は、2011年の建設費(990億円)と比較して約2.8倍、差額が1,762億円もある。この間に東日本大震災や東京オリンピックの誘致で建設コストが上がったとしても、新市場の建設コストに関する誤差が1,000億円以上あっても、東京都は今まで問題にしなかったくらいなのである。

 豊洲市場問題について、私自身は、築地市場の機能の大部分を大田市場に集め、豊洲の施設はアマゾン・楽天等のネット販売か、ヤマト運輸等の宅配会社に売却するのが現代のニーズに合っていると考える。何故なら、豊洲の問題は、そこで海産物を処理するから起こるのであり、既に包装された商品を短期間在庫するだけなら、さほど大きな問題にはならないからだ。

2)東京五輪(オリンピック・パラリンピック)会場建設費の場合

   
  *3-2より        主な五輪競技場の整備費など     諸外国・国内の事例 国内建設費

 東京五輪会場については、*3-2のように、当初7300億円程度とされていた総費用が現在では3兆円になり、そのうちオリンピック・パラリンピック終了後には壊される仮設にも2,800億円が投入される。その状況は、費用対効果を責任を持って考える人がおらず、「社長と財務部長がいない会社」と同じだ。

 また、メーンスタジアムの建設費も、他国と比較して1,500~2,000億円高く、国内の他のスタジアムの建設費と比較しても著しく高い。そのため、*3-3のように、世論調査は、「できるだけ今ある施設を利用して費用を抑えるべきだ」との回答が74%を占め、「小池百合子知事を支持する」が70%を占め、「(オリンピックの)費用は抑えるべきだ」が82%に上っている。

 私も仮設のような資産にならない建設費を使うのは止め、復興五輪の趣旨から国が宮城県(又は福島県)に新競技場を整備し、首都圏には既に多くの競技場が存在するためそれを改修し、分散して競技するのが現存の資産を有効に使って最も安価にできる方法だと考える。これに対して、スポーツ団体から反対があるが、民間で完全に五輪の収支に責任を持てるならともかく、そうでなければ贅沢を言うべきではない。また、宮城県等の方が自然が美しく、世界に放映した時に背景が絵になる競技も多い。

 ただ、東京都も、五輪の人気種目・開会式・閉会式で特別席を準備して、そのチケットを返礼品にしたり、使い道を選択させたりすれば、多額のふるさと納税を集められるかもしれない。そして、このようにして東京都で余った予算は、環境や福祉を織り込んだ新しい街づくり、道路や下水道の更新などに効率よく投入していかなければ、近い将来、東京都も破綻してしまうだろう。

 全体としては、現在の東京都が、本当に必要なことを最小限の費用で行うのではなく、数千億~数兆円規模で無駄な予算の使い方をしていることは間違いない。

*1-1:http://qbiz.jp/article/88726/1/
(西日本新聞 2016年6月14日) 2015ふるさと納税、トップ10に九州5自治体 都城市が1位
 総務省は14日、応援したい自治体に寄付すると税が軽減される「ふるさと納税」による2015年度の地方自治体への寄付額が計1652億9102万円となり、前年度の4・3倍に増えたと発表した。件数は3・8倍の726万件となった。昨年4月から減税対象となる寄付額の上限が約2倍に引き上げられ、各地の自治体がお礼の特典を充実させたことで急増。その一方で、お金に換えやすい商品券の提供など競争の過熱も指摘され「地域活性化という趣旨に外れる」との声も上がっている。最も多くの寄付金を受け取ったのは宮崎県都城市の42億3100万円。特典となる地元産の肉や焼酎が人気を集めた。2位は静岡県焼津市の38億2600万円、3位は山形県天童市の32億2800万円と続いた。都道府県別の集計では、トップが北海道の150億3600万円、2位は山形県の139億800万円、3位が長野県の104億5600万円だった。15年度に導入した、寄付する自治体が5団体までなら確定申告なしで済む「ワンストップ特例」を利用した寄付は286億7402万円、147万件だった。

*1-2:https://www.agrinews.co.jp/p38596.html
(日本農業新聞 2016年9月3日) ふるさと納税で沸く 返礼品扱い JAグループ直売所
 ふるさと納税の返礼品を扱い、売り上げを伸ばすJAグループの農産物直売所が出てきている。ふるさと納税によるものだけで年間1億円を稼ぎ出す直売所や、受け付け開始後まもなく品切れとなる人気商品を取り扱う店もある。一時的な売り上げ増にとどめず、直売所のリピーター獲得にもつなげていく戦略だ。
●売り上げ年1億円も
 山形県JAさくらんぼひがしねの直売所「よってけポポラ」は2015年、直売所全体の売上高の約10分の1に当たる約1億円をふるさと納税の返礼品が占めた。主力のサクランボ「佐藤錦」を中心に注文が相次ぐ。2~6月には、「佐藤錦」700グラム入り9000円コースを2450件受け付けた。4月に1キロの1万円コースを追加投入したところ、2900件の注文が寄せられた。桃「川中島白桃」5キロ入り1万円コースも3月に800件、4月に200件の申し込みがあった。同直売所は東根市からの依頼を受け、14年からふるさと納税の返礼品の取り扱いを始めた。入荷、梱包(こんぽう)、発送作業などを担っている。後藤隼一店長は「果実の人気の高さを実感する。市場出荷より高い価格で提供でき、農家にも還元できている」と歓迎する。
●リピーター獲得期待
 宮崎県JA都城の子会社で直売所「ATOM」を運営する(株)協同商事も都城市の依頼を受け、地元産畜産物を中心にそろえる。ふるさと納税の返礼品を紹介するサイトに掲載後、わずか数分で「品切れ」になる人気商品もあるという。8月入荷分では、都城産の黒豚切り落とし4キロ(1万円)が200件、宮崎牛ステーキ(サーロイン400グラム、ヒレ200グラム、2万円)が70件、宮崎牛ローススライス4キロ(5万円)が40件など、次々に完売した。ATOMの浜川紘行店長は「売れ行きが好調で、直売所の売り上げにも貢献している」と話す。福岡県JAふくおか八女が展開し、筑後市に構える直売所「よらん野」は6月、1万円のブドウ「シャインマスカット」限定150ケース(1ケース350グラム入り4パック)が、約10日間で品切れになった。1万円の特産の梨「豊水」は限定100ケース(1ケース10~12玉入り)で期間中に全て注文を受け付けた。市の依頼を受けてふるさと納税の返礼品を取り扱うが、売り上げは15年と比べて上昇。同直売所は寄付者に直売所を知ってもらい、通販や宅配を通じた新たなリピーター開拓に期待をかける。

<可能性を狭めるべきでないこと>
*2:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12360430.html
(朝日新聞社説 2016年5月17日) ふるさと納税 富裕層の節税策なのか
 自治体が寄付を募ろうとするあまり、返礼品をめぐる過剰な競争に走る動きが収まらない。そのうえ新たな弊害も浮上している。所得が多い人ほど恩恵が増えるため、富裕層の節税に利用されているのだ。「寄付を通じてふるさとなどを応援する」という本来の趣旨を見失ってはなるまい。制度を拡充してきた安倍政権は責任をもって改善すべきだ。制度は第1次安倍政権が打ち出して08年度に始まり、ここ数年返礼品への注目が高まった。寄付額は14年度に前年度の3倍近い389億円になり、15年度はさらに1300億~1400億円に達したようだ。寄付の上限額引き上げなど制度拡充の効果も大きかったとみられる。とりわけ、富裕層にとっては上限額が増えた分、節税策として使い勝手がよくなった。寄付額から2千円を引いた分だけ所得税と住民税が軽くなるのが制度の基本だ。上限は所得が多いほど高い。世帯の家族構成にもよるが、給与年収が400万円だと上限額が2万~4万円程度に対し、2500万円の人は80万円に達する。例えば、その人が80万円を寄付しても、79万8千円が減税されて戻ってくる。寄付先の自治体からもらえる返礼品分が得となる。その金額にもよるが、減税で返礼品の取得を助けている構図だ。返礼品は高価な牛肉や魚介類が話題になることが多いが、商品券や家電・電子機器などに広がり、地元との結びつきがあいまいな例も少なくない。そうした返礼品を控えるように、総務省は自治体に通知を出したが、強制力はなく、根本的な対策になっていない。安倍政権は「地方と都市部の税収格差を縮める」「寄付集めが地方創生につながる」と利点を強調する。確かにその効果もあるが、自治体同士が税金を奪い合い、結局、国と地方に入る税収の総額を減らしている。税収が減る都市部の自治体では、保育所整備などへの影響を心配する声も出始めている。自治体間や、国と地方の財政力の格差を縮めるには、税制や予算の仕組みを見直すのが筋だ。熊本地震では被災地の自治体に見返りを求めない寄付が集まっている。こうした本来のあり方をどう広げていくか。必要な改革から逃げず、制度の弊害を是正する。そうした真摯(しんし)な姿勢を政権に望む。

<東京都の予算の使い方>
*3-1:http://www.huffingtonpost.jp/2016/09/15/toyosu-general-contractor_n_12034616.html (朝日新聞 2016年9月16日) 豊洲市場3棟の予定価格 ゼネコンに聴取後、予算が400億円増えていた
●豊洲市場3棟予定価格、ゼネコンに聴取後400億円増
 東京都の築地市場(中央区)が移転する予定の豊洲市場(江東区)の主要建物3棟の建設工事で、1回目の入札不調後、都当局が入札予定の大手ゼネコン側にヒアリングを行い、積算を事実上聞いていたことが、都幹部や受注ゼネコン幹部の証言で分かった。その後の再入札で3棟工事の予定価格が計407億円増額され、いずれも予定価格の99%超で落札された。また、受注ゼネコン幹部は「再入札前に予定価格を引き上げるから落札してほしいと都側からヒアリングとは別ルートで要請があり受け入れた、と社内で説明を受けた」とも証言した。都幹部はこうした要請を否定している。都とゼネコン側のなれ合いの中で建設費がつり上がっていた可能性が浮かび、小池百合子都知事が発足させた「市場問題プロジェクトチーム」の調査でも解明のポイントとなりそうだ。

*3-2:http://www.nikkei.com/article/DGXLASDG29H25_Z20C16A9000000/
(日経新聞 2016/9/29) 東京五輪・パラ、総費用3兆円超の恐れ 都調査チーム
 東京五輪・パラリンピックの推進体制や費用をチェックする東京都の「都政改革本部」(本部長・小池百合子知事)の調査チームは29日、大会の総費用が3兆円超となる可能性があると明らかにした。五輪の推進体制の現状について「あたかも社長と財務部長がいない会社と同じ」と指摘。ガバナンスに問題があるとして、都や組織委、日本オリンピック委員会(JOC)などを統括するトップの新設を提言した。都が整備を担当する競技施設で、ボート・カヌー会場の「海の森水上競技場」、バレーボール会場の「有明アリーナ」、水泳会場の「オリンピックアクアティクスセンター」について、過剰な座席数や大会後の活用計画の甘さを言及。コスト削減のため、整備計画の見直しを訴えた。小池知事は今後、整備計画の変更に踏み込むか、判断を迫られる。現在の計画は既に国際オリンピック委員会(IOC)の承認を得ており、大きな見直しは困難が予想される。

*3-3:http://mainichi.jp/sportsspecial/articles/20161107/k00/00m/040/142000c (毎日新聞 2016年11月7日) 世論調査:「既存施設で五輪」74% 「都知事支持」7割
 毎日新聞は5、6両日、全国世論調査を実施した。2020年東京五輪・パラリンピックの施設計画について「できるだけ今ある施設を利用して費用を抑えるべきだ」との回答が74%を占めた。「大会後のスポーツ振興のため計画通りつくるべきだ」は16%で、見直しを求める意見が強い。東京都の小池百合子知事を「支持する」は70%、「支持しない」は7%。小池氏支持層では「費用を抑えるべきだ」が82%に上った。国際オリンピック委員会(IOC)、大会組織委員会、政府、東京都の4者は月内にも、ボート・カヌー(スプリント)とバレーボールの会場見直しや開催費用削減策に結論を出すことになっている。9月に就任した民進党の蓮舫代表に関しては、「支持する」26%▽「支持しない」36%▽「関心がない」32%--と評価が分かれた。民進支持層では支持が7割弱に達したが、支持政党はないと答えた無党派層は「関心がない」が42%で最も多く、支持20%、不支持31%だった。対照的に、小池氏は民進支持層の8割強が支持するなど与野党を問わず支持率が高く、無党派層も59%が支持している。「小池人気」は、来年夏の都議選や次期衆院選に向けた民進党の選挙戦術に影響しそうだ。天皇陛下の生前退位について「将来の天皇も生前退位できるように制度を変えるべきだ」は66%で、「今の陛下に限り生前退位できるようにすべきだ」の18%を上回った。「制度を見直す必要はない」は5%だった。安倍内閣の支持率は9月の前回調査から2ポイント増の48%、不支持率は4ポイント減の31%。主な政党支持率は自民32%▽民進9%▽公明4%▽共産4%▽維新4%--などで、無党派層は34%だった。

<ふるさと納税の経済効果>
PS(2016.12.12追加):*4-1に、「ふるさと納税した人に自治体が贈る返礼品となって、地元の生産者や加工業者の認知度が上がり、リピーターの獲得に繋がって地元を潤している」という記事があるが、これがふるさと納税の経済効果だ。また、自治体と地元産業が知恵を寄せ合って地元の魅力を探せば、地元産品の長所を再発見することになる。なお、自治体の返礼品に選ばれるか否かは地元生産者の岐路になってしまうかもしれないが、その点は次の工夫をすればよいだろう。また、ふるさと納税で得た資金の使途が教育の充実や介護、21世紀型の街づくりなら、寄付した人も満足だ。このように、ふるさと納税は使途を指定できることも魅力だ。
 一方で、*4-2は、「①久留米市の『ふるさと納税』が好調で、2015年度は全国の自治体で13番目に多い17億5942万円の寄付を集め、本年度も15年度を上回るペースで推移している」「②急増した理由はふるさと納税のやりやすさに加え返礼品の充実」「③市は中古市場に出回る恐れがあるゴルフクラブや高価な久留米絣の反物などを取りやめた」「④市総務課は『応援より返礼品目当ての人もいるのでは』とみている」「⑤返礼品は、もつ鍋セットやブリヂストンのゴルフボールなどが人気」「⑥久留米大経済学部の大矢野栄次教授は『勝ち残る自治体は良いが、それ以外は見捨てられる。地方交付税を減らしたい国が地方を切り捨てる政策』と指摘し、急増する寄付についても寄付が続くとは限らない。不安定な財源が増えても喜べない」と話したとしている。
 このうち、①②は尤もだが、③⑤は、特産品が農林漁業製品ではなく工業製品の地域もあるため、久留米絣(私も持っているが、とてもよい)やゴルフクラブを応援する人がいてもよいし、もつ鍋セットやブリヂストンのゴルフボールが欲しい人がいてもよい。それを、④のように言うようでは、久留米市にふるさと納税してくれた人に対して感謝の気持ちが足りず失礼であるため、すぐ負け組に移動することになるだろう。さらに、⑥については、私がふるさと納税制度を提案した人なので明確に言えるのだが、地方交付税を減らしたい国が地方を切り捨てるために創った制度ではなく地方を応援するために創った制度であり、地方交付税の増減とは関係ない。なお、久留米大学がある久留米市なら、使途に「久留米大学生命科学研究所の充実」「久留米大学がんセンターや救急医療センターの充実」などを加えたり、その返礼品に「家族の久留米大学医学部付属病院への優先入院券」を加えたりすれば、周辺地域からのふるさと納税も増えるだろう。そして、地方も、ふるさと納税にかかわらず、財源の関係で次第に減らされるであろう地方交付税を待っているだけではなく、小さくてもそれぞれのエンジンを持つようにしてもらいたいのだ。

*4-1:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20161210&ng=DGKKASDJ01H1L_Q6A211C1MM0000 (日経新聞 2016.12.10) ふるさと納税 潤い第2幕、返礼品目的→自ら購入 特産品に新たな顧客
 ふるさと納税が地元の生産者や加工業者を潤している。寄付をした人に自治体が贈る返礼品として認知度が上がり、リピーターの獲得につながっている。返礼品は自治体がまとめて買い取るため、経営も安定しやすい。確定申告の関係で寄付の申し込みが増える年末に向けて、産地は準備に追われている。宮崎県都城市で食肉加工卸売を手がける野上食品は、ブランド牛の宮崎牛で作ったローストビーフなどを返礼品として市に提供している。同社のインターネット通販の売上高は、返礼品採用前に比べて5割増えた。「返礼品に選んだ人がリピーターとして買っている」(野上幸平代表取締役)。畜産が盛んな都城市は宮崎牛や地元産鶏肉の加工品を返礼品にそろえる。2015年度は全国で最も多い42億円の寄付を集めた。市によると、市内の畜産農家が年間に出荷する宮崎牛約4000頭のうち、返礼品向けは1割に達する。農家や加工業者にとって大きな収入源となっている。ふるさと納税制度は08年度に始まった。好きな自治体を選んで寄付すると、所得税と住民税の控除を受けられる。寄付金を集めたい自治体が返礼品の豪華さを競い合った結果、15年度に全国の自治体が受け入れた寄付金は1653億円と10年度の16倍に膨らんだ。ふるさと納税はいつでも申し込めるが、確定申告の関係で年末に申し込みが増える傾向にある。売れる時期が春や夏に限られやすい商品は、自治体による返礼品用の買い取りが出荷量の安定につながっている。養殖ウナギの産地、鹿児島県大崎町のおおさき町鰻(うなぎ)加工組合はウナギかば焼きの製造を手がける。横田信久社長は返礼品に採用されたことで「土用の丑(うし)の日前後だけでなく、冬にも売れるようになって助かる」と話す。受け入れ額3位の山形県天童市はモモやラ・フランス、サクランボといった果物が返礼品。15年度は前年度比4倍の32億円の寄付額を集めた。同市の15年度の一般会計は243億円で、ふるさと納税の存在感は大きい。自治体の返礼品競争が激しさを増し、受け入れ額の半分以上を返礼品に使う自治体もある。受け入れ額2位の静岡県焼津市は「特産品の認知度向上を地元の産業振興につなげることが重要」と話す。ふるさと納税のポータルサイトを運営するトラストバンク(東京・渋谷)は「寄付金活用に明確な計画がある自治体は寄付額が多い」と指摘する。

*4-2::http://qbiz.jp/article/99827/1/ (西日本新聞 2016年12月11日) 前年度の52倍! 福岡・久留米市のふるさと納税、15年度は17億円で全国13番目に浮上した理由
 福岡県久留米市の「ふるさと納税」が好調だ。2015年度は全国の自治体で13番目に多い17億5942万円の寄付を集め、本年度も15年度を上回るペースで推移している。ふるさと納税を後押しする国の税制改正に合わせ、市が寄付者の利便性を高めたことが奏功しているようだが、故郷や地方を応援しようという本来の趣旨とは外れた状況もうかがえる。市への寄付は、ふるさと納税が始まった08年度以降、しばらく横ばいだったが、15年度は前年度の約52倍に急増した。市は15年度当初、年1億円の寄付を想定していたが、4月の受け付け開始から半月で達成。返礼品の購入や発送にかかる費用を追加するため、補正予算を3回組んで対応した。15年度の全国の寄付額は、前年度比4・3倍の1653億円で、市は全国平均の伸びを大幅に超えた。なぜ15年度に急増したのか。国の税制改正で税控除が受けられる寄付の上限額が2倍に増えたことや、給与所得者の確定申告が不要になったことが背景にある。さらに市独自に(1)ポイント制(2千円ごとに1ポイント)を導入して年1回だった返礼品の受け取りがポイントの範囲内なら何度でも可能になった(2)ふるさと納税の大手サイトと提携して数日かかっていたクレジットカード決済が即日可能になった(3)14年度に28点だった返礼品を104点(今年11月時点で320点)まで充実させた−といった利便性向上やサービス拡充に取り組み、税制改正と相乗効果を生んだ。ただ、ふるさと納税は自治体間の返礼品競争の様相だ。総務省は、具体例を示して換金性や資産性が高い返礼品の自粛を求めており、市は、中古市場に出回る恐れがあるゴルフクラブや100ポイント(20万円相当)以上が必要な久留米絣(がすり)の反物など十数点を今年8月で取りやめた。市が15年度の寄付者に市との関わりを聞いたところ、ふるさと納税がきっかけで知った人が最多の35・2%に上った。市出身者(2・7%)、親族・知人がいる(6・4%)などの割合は低く、市総務課は「応援より返礼品目当ての人もいるのでは」とみている。本年度の寄付は、11月20日時点で前年同期比1・1倍に当たる10億9747万円。返礼品は、もつ鍋セットやブリヂストンのゴルフボールなどが人気という。年明けの確定申告に向けて、11、12月に寄付が集中する傾向にあり、市は本年度の寄付を15年度並みの18億円と想定している。総務省の集計によると、筑後地区12市町の15年度の寄付は大きな開きがある=表。久留米大経済学部の大矢野栄次教授は「勝ち残る自治体は良いが、それ以外は見捨てられる。地方交付税を減らしたい国が地方を切り捨てる政策」と指摘し、急増する寄付についても「寄付が続くとは限らない。不安定な財源が増えても喜べない」と話した。


PS(2016年12月16日追加):*5-1の上峰町の2015年ふるさと納税受入額は、上の表では全国9位、佐賀県1位の19億円以上であるため、そのために努力した人の実績は評価され、ボーナスに加算されるべきだろう。なお、地方議員の政務活動費が全国的に問題になっているが、これは架空の政務活動費を計上したのが問題なのであり、実際に政務で使った出張費や調査費は請求できるシステムにしておかなければ議員のまともな活動も阻害される。そのため、費用として計上する基準とその真偽が重要なのだ。そこで、地方議員の収支報告書や使途報告書も、国会議員と同様、監査を義務付けるのがよい。
 また、*5-2のように、多久市、嬉野市、白石町の議会が、12月15日、地方議員の厚生年金制度への加入を求める意見書を全会一致で可決し、太良、大町、基山町議会も既に可決していて、佐賀市を除く他の市町や県議会でも12月議会で採決する動きがあるそうだ。私は、「議員はボランティアでやる仕事だ」などとして他の職業より待遇を悪くしていれば、普通の仕事を辞めて議員になる人はいなくなり、議員は金持ちや特殊な家系の人ばかりになるため、少なくとも他と同レベルの待遇にすべきだと考える。私が考える議員の他と同レベルの待遇とは、その不安定性をカバーする高さの報酬と厚生年金への加入だ。

*5-1:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/386911 (佐賀新聞 2016年12月16日) 上峰町にふるさと納税寄付者から非難相次ぐ、議員が手当復活議案を提出
 佐賀県三養基郡上峰町議会で、町の財政改善を理由に議員への費用弁償支給を再開させる議案を議員が提出したことに対し、ふるさと納税で町に寄付した人たちから「全国の善意を(議員が)自分の懐に入れるのは納得できない」などと苦情が相次いでいる。寄付が増える12月の繁忙期に生じた思わぬ事態に、武広勇平町長は15日、急きょ記者会見を開き、「ふるさと納税が費用弁償に充当されることはない」と“火消し”に躍起になっている。町によると、15日午後1時現在でメールや電話、町公式フェイスブックを通じ批判的な内容が計39件寄せられた。「ふるさと納税が高額集まったことで、議員の手当復活の議題が出ていることに心底驚きと嫌悪感を感じた」「寄付を返還してほしい」「議案が可決されるようであれば、納税したことを後悔する」などだった。寄付取り下げも2件計2万5千円あった。武広町長は会見で「ふるさと納税は使途が決まった寄付。寄付者の意向を尊重すべきで、それを背景にした費用弁償の復活ということであれば、町の長として予算措置は一切しない」と強調した。その上で「改正案も議員の方々の良心に基づいて、賢明な判断がなされると思う」と述べた。提出議員は「ふるさと納税を受けての提案ではない」と説明している。ふるさと納税による寄付は昨年度9万1531件、20億6178万円。本年度も11月末現在、12万3764件、20億2743万円に上る。費用弁償に関する条例改正案は16日に採決されるが、取り下げも視野に議員間で協議が進んでいる。

*5-2:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/386955
(佐賀新聞 2016年12月16日) 「地方議員を厚生年金に」3市町、意見書可決
 多久市、嬉野市、白石町の各議会は15日、地方議員の厚生年金制度への加入を求める意見書を全会一致で可決した。首相ら関係閣僚や衆参両院議長宛てに送付する。同様の意見書は太良、大町、基山町議会も既に可決、佐賀市を除く他市町や県議会でも12月議会で採決する動きがある。意見書は、市町村議員選への立候補者が減少し、無投票当選が増加するなど、住民の関心の低下や地方議員のなり手不足の問題を指摘。議員の年金制度を時代にふさわしいものにすることが、新たな人材確保につながるとして、厚生年金加入の法整備を早急に実現するよう求めている。地方議員の年金制度は、市町村の「平成の大合併」で地方議会の議員数が激減し、積立金不足が顕著になったため2011年6月に廃止された。国民年金になり、若手ら議員の中には「将来が不安」という声もある。


PS(2017年2月4日追加):*6のように、佐賀県三養基郡上峰町が、ふるさと納税効果で総額109億2,669万円に上る2017年度一般会計当初予算案を発表できたのは、町全体の努力の賜物だ。これに対して、東京などの負け組からふるさと納税の返礼品に対する苦情があるのは、ありあまるほどの人材と資源があるのに努力もせず、無駄遣いばかりしてきた地域のやっかみであるため、気にする必要はない。何故なら、機会は均等に与えられ、本来は、人材や資源の多い地域の方が有利だからである。
 しかし、寄付をいったん基金に積む際と、返礼品の経費や寄付者の意向に沿った事業の経費を基金から繰り入れる際の2度にわたって歳入に計上するとわかりにくくなるため、ふるさと納税が基金に積まれるのであれば、それに関連する支出も基金から行う方がよいと考える。そうすれば、返礼品も含めたふるさと納税の収支が明らかになるとともに、ふるさと納税収入によって新たに支出できるようになった金額(教育・社会保障・その他)が、一見して明らかになるからだ。

*6:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/402127
(佐賀新聞 2017年2月4日) 上峰町、ふるさと納税 当初予算、初の100億円超
■2年前の3倍近く
 三養基郡上峰町は3日、ふるさと納税の好調を受け総額109億2669万円に上る2017年度一般会計当初予算案を発表した。3月に町長選を控えた骨格予算ながら前年度と比べ24億円、28・4%伸び、当初予算では初めて100億円を超えた。町は「全国からの善意はありがたい。財政健全化や住民サービスの向上につなげたい」と話す。上峰町のふるさと納税は15年9月に返礼品を拡充後、寄付者が急増した。16年度は昨年末現在で24万7600件、41億8586万円と全国の自治体でも上位に入る。16年度の歳入決算は137億円に達する予定。17年度も約40億円を見込んでおり、町長選後の補正で百数十億円になる見通し。ふるさと納税に「本格参入」する前の15年度当初予算は37億1660万円で、2年前に比べ約3倍の予算規模になる。予算の膨脹は寄付の会計処理に伴う部分もある。寄付をいったん基金に積む際と、返礼品の経費や寄付者の意向に沿った事業の経費を基金から繰り入れる際の2度、歳入に計上されるため。当初予算案には、12月補正予算案で否決された学校給食費を無料化する経費4200万円を新規事業で盛り込んだ。町税は前年度比1%増の13億6683万円、自主財源比率は8・2ポイント増の81・6%と予測する。地方交付税は1・2%減の8億8904万円、国庫支出金は26・6%減の4億5425万円。町債発行は11・7%増の1億7087万円、公債費は前年度並みの4億1319万円。17年度末の町債残高は34億3300万円、16年度末の基金残高は5億5400万円を見込む。定例議会は10日に開会し、ふるさと納税関連経費や米多浮立会場周辺用地購入費などを含む35億2984万円の補正予算案も提案する。県内10町のうち100億円を超える予算規模(16年度当初)は人口2万人以上の白石、みやきの2町。上峰町は人口約9600人。

| まちづくりと地域振興::2015.5~ | 10:20 PM | comments (x) | trackback (x) |
2016.3.8 地方への移住、子育て、仕事

  ヒラメの放流(*1-5)   サケの放流(*1-6) 県別大学進学率       日本ジカ


  小学生の田植え   小学生の玉ねぎ収穫    小学生の大根収穫      日本イノシシ

(1)子育てから見た地方移住の長所と短所
 *1-1、*1-2のように、九州7県の全233市町村のうち、4分の1に当たる60市町村が、移住相談窓口や東京相談員を置いて移住を推進しており、2010~14年度の5年間で、移住者は3900人を超えるそうだ。移住前の居住地は東京都が66人、福岡県が81人、大阪府が51人で、5年間の移住者数のトップは鹿児島県霧島市の336人、次いで長崎県松浦市と大分県豊後高田市がともに331人、鹿児島県出水市が248人だったとのことである。

 都会では、狭い保育園すら落とされる中で、地方では、*1-4のように、シベリア帰行中のマナヅルが羽を休める自然環境が周囲にあったり、*1-3のように、保育園が裸足で走りまわれる木造で、スギの色目の違いを生かしたグラデーションを壁に取り入れた、園庭の広い保育園に入れたりする。

 また、*1-5のように、唐津市の保育園児や小学生はヒラメの稚魚約500匹をふるさとの海に放流して泳いでいく姿を観察し、*1-6のように、富山県小矢部市の津沢小学校の児童は、小矢部川漁協が提供したサケの稚魚3万匹を放流して帰ってくるのを楽しみにし、これらは、生物、川、海、山、田畑、食、自然の法則などに関するよい教育になっている。

 さらに、*1-7のように、小学生が農業体験でタマネギを収穫して喜び、これらの体験は、都会でコンクリートの建物や人工の公園に囲まれていては決して得ることのできない多くの情報を、子どもたちに楽しみながら暗黙知として習得させる。そのため、(ここが重要なのだが)学校教育のレベルや親の仕事などの条件が整えば、地方は子育てに適している。

(2)地方にある仕事
 子育て環境がよくても、親の仕事がなければ地方移住を進めることはできない。そのため、現在では、*1-2のように、子育て世代などの地方移住志向の高まりを受け、首都圏から移住希望者を呼び込むための専門相談員を置く自治体が増えている。地方には、都会にいては考えつかない面白い仕事もあるため、市町村や企業も積極的に取り組めばよいと考える。

 元システムエンジニアの藤本さんは、海の美しさに魅かれて壱岐に移住するそうだが、システムエンジニアの経験は、漁業をやっても農業をやっても役に立つ。しかし、そもそもシステム設計などの仕事も、都会のビルの中よりも現場に近い閑静な場所の方が向くのではないだろうか。

(3)地方でできる新産業と雇用創出
 都会の製造業やサービス業で経験した経営効率化や生産性向上のノウハウは、農林漁業でも応用でき、それができる人材は地方には少ない。そのため、地方では、既存産業の維持や新産業の創出について、都会からの移住者に期待するところは大きい。

1)林業の例
 近年は日本の森林資源も増えてきたため、*2-1のように、九州の森林組合は、規模拡大でコストを削減し国際競争力を高めるために、木材輸出の広域連携を行い、木材産業が有望になりつつある。

 また、*2-2のように、鹿児島県薩摩川内市と中越パルプ工業(富山県)は、地域資源の竹の調達や製品開発の連携協定を結び、市が放置竹林を活用した新産業の育成を加速させ、中越パルプ工業が開発した竹製新素材の普及を後押して、竹を資源として活用し、高機能材料や製品を開発する計画だ。私は、スーパーの食品トレイや漁網なども、竹由来の製品を使った方がプラスチックを使うよりも環境親和性が高くて賢いものができると考える。

 さらに、*2-3のように、放置竹林を活用して、竹の堅い繊維質を生かした住宅用建材等に加工する事業も、熊本県内の建設業者の呼び掛けで始まり、これも新しい仕事となって雇用が創出されそうであるため、それに関する知識・経験のある人材は有用だろう。

 
    竹製タオル            竹製小物         竹製家具       竹製建具 

2)ジビエの例
 *3-1のように、害獣対策に一役買うジビエは野生獣の肉で、下のように蛋白質・鉄分が豊富で脂質・エネルギーが少ないため健康食品だ。また、ジビエは、もともと貴族が自分の領地で狩った獲物を食材にしたのがルーツで、伝統・格式とも申し分なく、ステータスシンボルともなっていた食材なのである。
   100グラムあたりの成分比較     シカ赤肉    乳牛モモ肉
    エネルギー(キロカロリー)       110        140
    タンパク質(グラム)           22.3       21.9
    脂質(グラム)               1.5        4.9
    鉄(ミリグラム)               3.1        2.7

 そのため、石川県も、*3-2のように、「いしかわジビエ」ブランドを確立して新幹線開業後の誘客につなげるため、猟師や料理関係者らとともに「いしかわジビエ利用促進研究会」を発足させ、メニューやレシピ作りを進めている。そのため、ジビエは、農林漁業とともに人材を必要としている分野だろう。

3)畜産の例
 日本の畜産物は脂肪が多く、霜降りになっているため、肉を食べると脂肪を多く食べさせられ、健康によくない。そのため、*4-1、*4-2の畜産クラスター事業は、大区画化した草地を整備して飼料を増産するだけではなく、放牧した脂肪の少ない家畜をコストダウンしながら生産することも重要だと考える。なお、中山間地であることをむしろ利用したスイスのような畜産もよいと思う。

4)6次産業化の例
 高齢化社会、共働き社会では、*5-1のように、女性農業者や管理栄養士でつくる地元野菜を使った日替わり弁当などは有り難いものである。農業・漁業の産地だからこそできる新鮮な食材を使って栄養を考慮した高付加価値の加工品を作る事業は、女性が働く場所もつくっている。

<地方移住>
*1-1:http://qbiz.jp/article/76319/1/
(西日本新聞 2015年12月6日) 九州への移住者3900人超 60市町村、5年で2.4倍
 人口減少が指摘される中、西日本新聞社は九州7県の全233市町村に対し、移住者政策に関するアンケートを実施した。4分の1に当たる60市町村が、相談窓口などを通して県外からの移住者を詳細に把握しており、2010〜14年度の5年間では約2・4倍に増え、計3900人を超えることが分かった。移住前の居住地は福岡、東京、大阪など大都市部が目立つ。市町村が移住促進に力を入れていることに加え、少子高齢時代の「生き方」として移住が有力な選択肢となっている実態がうかがえる。各市町村は定期的に転入者数を調査・公表しているが転勤者を含むため、九州で移住自体を目的に県外から越してくる人の規模はこれまで明らかではなかった。市町村の4分の3は把握しておらず、行政の窓口を経由せずに移り住む人も少なくなく、実際の数はさらに多いとみられる。アンケートは今秋、九州の全市町村に文書を送付、今月上旬までにすべて回答を得た。うち60市町村が、相談窓口のほか空き家バンクや奨励金など各種制度の利用者をカウントするなど、県外からの移住者を「把握している」とした。県別では福岡1、佐賀6、長崎11、熊本5、大分9、宮崎10、鹿児島18−市町村。移住者は10年度が計464人で、11年度は715人、12年度746人、13年度920人。14年度は1107人に上り、5年間の総計は3952人に達した。14年度、移住前の居住地で最も多かった都道府県を聞いたところ、東京都との回答が最多の11市町村(計66人)。福岡県が9市町村(計81人)、大阪府が8市(計51人)−と続く。5年間の移住者数のトップは鹿児島県霧島市の336人。市内の中山間地に住宅を新築・増改築した場合などに最高100万円を支給し、農業体験や住宅物件の見学を組み合わせたツアーなどで移住を促す。担当者は「05年の1市6町合併後、横ばいだった人口は減少局面に入った。移住者の受け入れは人口維持政策の大きな柱だ」と話す。次いで長崎県松浦市と大分県豊後高田市がともに331人、鹿児島県出水市が248人−だった。一方、全市町村の6割を超える150市町村が本年度、移住関連予算を計上した。98市町村が東京などで移住相談のセミナーやフェアを開催(予定を含む)。33市町村は短期間の「お試し滞在」などの移住体験ツアーを実施している。

*1-2:http://qbiz.jp/article/77332/1/
(西日本新聞 2015年12月21日) 移住相談員、東京に次々 長崎、熊本など九州5県は常駐
 子育て世代などの地方移住志向の高まりを受け、首都圏から移住希望者を呼び込むための専門相談員を置く自治体が増えている。東京・有楽町のNPO法人「ふるさと回帰支援センター」に相談員を置く自治体は、2014年度の5県から15年度には29県に増加。九州も長崎や熊本など5県が初めて配置し、残る福岡、佐賀両県も検討中だ。移住希望者の“争奪戦”に向け住宅事情の詳細な説明や地域の魅力発信に懸命で、人口減に直面する市町村の再生につなげたい考えだ。「知り合いがいない場所で不安だったけど、親身に相談に乗ってもらった。九州での暮らしが楽しみ」。来年1月、神奈川県から長崎県壱岐市への引っ越しを予定する元システムエンジニア、藤本彩子さん(30)は声を弾ませた。テレビ番組で見た海女の仕事に憧れ、海の近くへの移住を決意。千葉県や三重県も候補地に挙がったが、9月に初めて訪れた壱岐の海の美しさが決め手になった。藤本さんが頼りにしたのが長崎県の移住相談員、久永倫世さん(44)。都内在住の久永さんは幼少期、長崎県内で暮らしたことがあり、今年5月から県の非常勤職員としてセンター内で働く。藤本さんには住まいなど生活情報をはじめ、観光名所や豊かな自然環境も説明。海女として働けるよう漁業に関する各種制度を紹介し、市や地元漁協との橋渡し役を担った。センターは02年、地方移住の情報発信や支援を目的に発足。九州では本年度、長崎、熊本のほか大分、宮崎、鹿児島各県が相談員を常駐させるようになった。このうち宮崎県は就職相談員も置き、子育て支援や住宅補助の仕組みなど「なんでも聞ける窓口」を目指している。相談件数は4月の開設から11月末までに265件に上り、少なくとも4世帯7人が宮崎、小林市などに移り住んだという。センターには今後、九州の2県も含む10県以上が相談員配置などを検討中。宮崎県中山間・地域政策課は「人口減対策として他県も移住に力を入れており、競争は激しくなっている。市町村と連携し、県の魅力を発信していきたい」と意気込む。

*1-3:http://qbiz.jp/article/80554/1/
(西日本新聞 2016年2月12日) 森のおうち保育園と嘉穂小に大賞 福岡県木造・木質化建築賞
 「第2回福岡県木造・木質化建築賞」の受賞建築物が決まり、木造の部は「森のおうち保育園」(福岡市中央区)、木質化の部は「嘉麻市立嘉穂小学校」(嘉麻市)が、最高賞の大賞に選ばれた。同賞は昨年度、国産材利用の普及、拡大を図るため県が創設。今回は、昨年6月までの10年間に県内で竣工(増改築や修繕を含む)された建物が対象で、柱やはり、桁に木材を利用した「木造の部」に18件、建築物の天井や床、外壁に木材を利用した「木質化の部」に22件の応募があった。森のおうち保育園は、床や腰壁を木材にこだわった園児に優しい構造で、園内のクスノキを伐採せずに生かした設計も評価された。嘉穂小学校は、スギの色目の違いを生かしたグラデーションを壁に取り入れ、地元材を多く使用した点も評価された。5月に粕屋町で開かれる県植樹祭で表彰式が行われる。大賞以外の受賞建築物は以下の通り。
【優秀賞】木造の部=妙泉寺門徒会館・庫裏(福岡市城南区)▽木質化の部=八女市子育て支援総合施設(八女市)
【奨励賞】筑紫保育園分園(太宰府市)、風ひかり作業所(福岡市早良区)、海物山物(同市博多区)、耳納の家(久留米市)、日豊本線城野駅(北九州市小倉南区)

*1-4:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10105/277937
(佐賀新聞 2016年2月11日) 鎮西町 マナヅル100羽「羽休め」、シベリア北帰行の途中
 佐賀県唐津市鎮西町打上地区にマナヅルの群れが飛来した。鹿児島県の出水平野で冬を越し、シベリアへ「北帰行」中に羽休めしているとみられる。近くに住む農業の松本幹男さん(75)が8日朝、打上ダム近くの田んぼに100羽以上の大群がいるのを見つけた。9日午前にも約50羽が田んぼで餌をついばむ姿が見られ、午前10時半ごろ一斉に飛び立った。県内のマナヅルの飛来地は伊万里市の長浜干拓が有名だが、松本さんは「このあたりにも毎年数羽は来るが、今年のように数が多いのは初めて」と話している。

*1-5:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10105/194301
(佐賀新聞 2015年6月5日) 「さがっ子リレー放流」開始 ヒラメ稚魚500匹放流
 唐津市湊町の北浜海水浴場で2日、子どもたちに海の生き物を身近に感じてもらう「さがっ子リレー放流」が始まった。地元の小学生や保育園児がヒラメの稚魚約500匹を放流し、ふるさとの海に親しんだ。湊小3年児童17人と湊保育園児22人が、近くの小川島の育成施設で約8センチに育った稚魚を放流した。子どもたちは波打ち際で稚魚が入ったバケツをそっと傾け、「大きく育ってね」と呼び掛けた。稚魚は唐津湾内で育ち、1年後には約30センチに成長するという。参加した同小3年の江口凛さん(9)は「ヒラメの赤ちゃんがひらひらと泳いでいてかわいかった。元気に育ってほしい」と話していた。放流は県が主催し、7月までに唐津市や伊万里市の海岸など7カ所で行われる。

*1-6:http://www.chunichi.co.jp/article/toyama/20160209/CK2016020902000029.html (中日新聞 2016年2月9日) サケ稚魚放流 帰ってこいよ! 小矢部・津沢小児童
 小矢部市の小矢部川左岸にある津沢大堰公園で八日、サケの稚魚三万匹が放流された。地元の津沢小学校の五年生四十三人が「帰ってこいよ」と、大海へ向けて送り出した。稚魚は小矢部川漁協小矢部地区が提供。昨秋、遡上(そじょう)したサケから採卵し、流域の人工孵化(ふか)場でかえして、体長二~三センチに育てた。役山隆地区長が「小矢部川にもサケが上がってくるようになった。関心を持ってきれいに保つようにしてください」とあいさつ。組合員らから稚魚を入れたバケツを受け取った子どもたちは、川べりで順番に中身を空けていった。順調なら、サケは体長四〇~五〇センチに育ち、三、四年後に戻る。地区の放流は二〇〇八年に始まり、今年で九回目。

*1-7:http://www1.saga-s.co.jp/news/saga.0.1915897.article.html
(佐賀新聞 2011年5月25日) 小学生が農業体験 予想以上のタマネギ収穫ににんまり
 神埼市千代田町の千代田中部小(永渕由利校長)で24日、農業体験があった。5、6年生約80人が校内の畑で育てたタマネギを収穫し、「おっきくて重い」と歓声を上げた。収穫を指導したのは、三神地区の若手農業者でつくる4Hクラブ神埼地区のメンバー5人。「収穫したタマネギは上の葉と下の根を切って」と説明すると、子どもたちは早速畑に入り、収穫と運ぶ作業を繰り返した。メンバーたちは「持ってきたコンテナ20個じゃ足りない」と大玉ばかりの収穫に驚(おどろ)き、予想の300キロを大幅に上回る約730キロを収穫した。5年の森山由貴さん(10)は「収穫には結構力がいるけど、大きなタマネギでうれしかった」と話した。

<新資源の開発、林業>
*2-1:http://qbiz.jp/article/75957/1/
(西日本新聞 2015年12月1日) 木材輸出で広域連携 九州の森林組合など
 スギやヒノキなど国産木材の輸出で広域連携の動きが進んでいる。規模拡大でコストを削減し、国際競争力を高めるのが狙い。中国での木材需要増加や円安を追い風に、今後も県レベルの連携が活発化しそうだ。財務省によると、2014年の木材の輸出額は前年比45%増の178億円となり、2年連続で過去最高を記録した。政府は20年までに輸出額を250億円にまで伸ばす計画だ。鳥取港(鳥取市)ではことし10月、中国山東省に向け住宅用建材のスギの丸太約1万5千本を輸出した。鳥取港から木材を輸出するのは初めて。建築資材の卸売業者「エコ開発」(鳥取市)が、兵庫、鳥取、岡山の3県の業者などと手を組み、実現した。今後も定期的に船を出すという。荒川正臣相談役(77)は「日本産の木材は形が整っていて、中国でも人気が高い。地方の林業と鳥取港の活性化につなげたい」と話した。鹿児島と宮崎の両県では11年に、複数の森林組合などからなる「木材輸出戦略協議会」を結成し、スギの丸太を中国と韓国向けに輸出。14年度は11年度に比べて約7倍の約30万本を輸出するなど、成果を上げている。長崎県森林組合連合会(諫早市)は14年度、伊万里港(佐賀県伊万里市)から中国に約5万本のスギやヒノキの丸太を輸出しているが、本年度中に福岡、佐賀の両県の森林組合連合会と連携し、輸出拡大を図る。四国では徳島、高知両県の木材関係の組織などが協力し、甲浦港(高知県東洋町)からスギの丸太を輸出する計画がある。

*2-2:http://qbiz.jp/article/76601/1/
(西日本新聞 2015年12月10日) 放置の竹で新産業育成 薩摩川内市と中越パルプ協定
 鹿児島県薩摩川内市と中越パルプ工業(富山県)は9日、地域資源の竹の調達や製品開発に関する連携協定を結んだ。市が目指す放置竹林を活用した新産業育成を加速させ、同社が開発した竹製の新素材の普及も後押しする狙いだ。林野庁の統計によると、県内の竹林面積は全国トップの1万6千ヘクタール。特に同市など県北部に多いとされ、所有者の高齢化による放置竹林の拡大が問題となっている。市は7月、竹資源の活用を目的に市内外の企業など57団体による協議会を設立。竹製の高機能材料や製品開発を進めている。市内に製紙工場が立地する中越パルプは1998年から竹を使った製品研究に着手。県内農家など2千人から年2万トンの竹を集め、竹紙を製造している。竹の繊維を細かくした新素材も開発。鉄より軽く強度がありガラスの代用品や自動車ボディー素材への利用が期待されるが、製品化は進んでいない。中越パルプも協議会メンバーで、協定は協議会の参加企業に対する竹の供給や新素材などを使った製品開発のノウハウ提供を盛り込んだ。薩摩川内市の岩切秀雄市長は「困りものの竹資源のさまざまな展開が期待できる」と歓迎。中越パルプの加藤明美社長は「竹資源の活用が進めば、雇用拡大にもつながる」と話した。

*2-3:http://qbiz.jp/article/77884/1/ (西日本新聞 2016年1月3日) 放置の竹、余さず資源化 住宅用建材、燃料、消毒剤 熊本に工場建設へ
 放置竹林を活用し、竹の堅い繊維質を生かした住宅用建材などに加工する事業が、熊本県内の建設業者の呼び掛けで始まる。拠点となる敷地面積約4万平方メートルの工場を熊本県南関町に建設。建材に使われない部位も、バイオマス発電や消毒剤に活用する計画だ。伐採には、熊本県北部と福岡県南部の関係自治体が協力する。竹を余すことなく資源として使い切る試みは全国でも珍しく、竹林の拡大を抑えるモデルケースとして注目されそうだ。呼び掛けたのは、熊本県玉名市の建設業山田浩之さん(48)。山田さんは、熊本城周辺を手作りの竹灯籠で彩るイベント「みずあかり」(10月)に携わっており、イベントの賛同企業などから出資を募って運営会社を設立した。1月末にも工場の建設に着工する。林野庁によると、竹は繁殖力が強く放置された竹林の拡大が社会問題化。特に九州は竹林面積が広く、福岡、熊本両県はともに1万ヘクタールを超え、全国でもトップクラスになっている。山田さんはこれまでに、熊本県の玉名市や山鹿市、和水町、福岡県みやま市などと連携協定を締結し、伐採に向けた竹林の調査を進めてきた。今後、関係自治体と伐採用の作業道整備などで連携を深める考え。事業では、伐採した竹を幹と枝葉、表皮の三つに分類し、幹の部分をチップ化して住宅用建材に加工する。杉の樹皮を加えた「ナンカンボード」など、独自製品も開発した。建材の加工工場に隣接してバイオマス発電施設も建設。加工の際に生じるくずや枝葉を燃料として使用する。殺菌力のある表皮の部分は消毒剤などに活用する。また、竹の安定確保に向け、福岡、熊本両県の各所に1次加工施設を設置。地元の事業者などが伐採した竹を1本300〜400円程度で買い取る。南関町の工場は2016年末に完成予定。ナンカンボードなどの販売は17年に始める。山田さんは「森林を侵食する厄介者を資源化する『バンブーフロンティア(竹活用の新天地)』を九州に築きたい。将来的には、九州産の建材を台湾やインドネシアなど海外にも売り込んでいく」と話している。

<新資源の開発、ジビエ>
*3-1:http://www.nikkei.com/article/DGXMZO79856470Y4A111C1000000/ (日経新聞 2014/11/21)珍味ではなくなった 野性味あふれるジビエの魅力、国産普及、害獣対策にも一役
 先日、駅ナカのハンバーガーショップ「ベッカーズ」に入ったところ、カウンターのメニューの「ベッカーズ別格」が目に飛び込んできた。「信州ジビエ鹿肉バーガー 690円」。通常のハンバーガーより300円も高い。迷わずにジビエバーガーを選んだ。
■クセ・生臭さなし 驚くほど淡い味
 「焼くのに10分ほどお時間をいただきます」。「別格」を名乗るだけあり、ファストフードには珍しい重厚感がある。あるいは頼む人が珍しく、作り置きでは廃棄のリスクが高すぎるのかもしれない。ハンバーガーが到着する。外観だけでは普通の牛肉ハンバーガーと大きな違いはない。パンと肉の合間から顔をのぞかせた大ぶりな信州あわび茸(たけ)がいかにも秋の風情を醸し出している。ガブリとかじりつく。ジビエ(野生動物)から連想されるクセの強さ、生臭さは感じられない。むしろ驚くほど淡い。玉ネギの甘みの方がよほど自己主張が強い。それでも味覚を研ぎ澄まし、何とか「鹿肉らしい滋味」を感じようと集中する。時たま、独特の野性味が口内をよぎる。少なくともそんな気がする。情報社会において、人はモノ自体を享受しているのではなく、情報を消費しているというのが定説だ。「モノではなくコト(ストーリー)を売る」といったマーケティング手法も情報による付加価値アップを説いたものだ。大切なのは「自分が食べているのは信州の鹿肉なんだ」という情報である。そこに通常のハンバーガーとの差額300円の価値がある。
■普及へ行政も後押し
 「ベッカーズ」と「ベックスコーヒーショップ」を展開するJR東日本フードサービス(東京・北)が長野県産鹿肉を使ったメニューを提供し始めたのは2011年。当初は3店舗だけだった取扱店舗が100店にまで拡大したのは、こうした価値観を共有する人が多いからに違いない。JRにジビエの活用を提案したのは長野県蓼科高原で「オーベルジュ エスポワール」を経営する藤木徳彦シェフだ。観光客が減る冬の集客対策として10年前から地元の鹿肉などを使った料理を出し始めた。やがて県から料理店向けにジビエの調理法を教えるセミナー依頼などが入るようになる。行政も曖昧だった衛生管理のガイドライン策定などで後押しし、「信州ジビエ」が広がった。現在はNPO法人「日本ジビエ振興協議会」(埼玉県三郷市)の代表も務め、ジビエ普及のために全国各地を行脚する。「ジビエ」とはフランス語で狩猟の対象となる野生の鳥獣類を意味し、牛や豚、鶏、羊など家畜類と区別される。貴族が自らの領地で狩った獲物を食材にしたのがルーツで伝統、格式ともに申し分ない。貴族にとっては豊かな土地と腕の良い料理人を持つ証しでもあり、ステータスシンボルとなっていたようだ。
■背景に天敵オオカミの絶滅や猟師の高齢化
 ところが最近、珍味とみなされがちだったジビエ料理が日本でも広がりつつある。最大の理由は野生動物が増えていることだ。温暖化で冬が過ごしやすくなったこと、天敵であるニホンオオカミの絶滅、猟師の高齢化などが原因といわれる。シカやイノシシを中心とした12年の捕獲頭数は約80万頭で10年前から2倍以上に増えた。「猟師さんが獣肉処理施設に売るシカの値段は15年前には1頭10万円ぐらいした。今は1万円しかしない」(藤木さん)。一方、鳥獣類による14年度の農作物の被害は全国で70万トンと10年前の1.8倍に増えた。従来、ジビエ食材は輸入に頼ることが多かったが、捕獲した国産ジビエを活用すれば「害獣」が「食材」に変わる。長野県、岡山県、和歌山県、鳥取県などは地域ぐるみでジビエ振興に取り組んでいる。運動量が多いジビエは高たんぱく低カロリー、鉄分も多い。美肌効果もあるとかで、女性誌が取り上げることもある。最近の赤身肉ブームも追い風だ。
●100グラムあたりの成分比較   シカ赤肉  乳牛モモ肉
    エネルギー(キロカロリー)     110      140
    タンパク質(グラム)         22.3     21.9
    脂質(グラム)             1.5      4.9
    鉄(ミリグラム)             3.1      2.7
■皿全体で動物の住環境を表現
 「料理人にとってもジビエは楽しい」と藤木さんは言う。「品質が一定の牛や豚に対し、ジビエはサイズも肉質も個体差が大きい。モノを見て、どう料理すれば一番良さが引き出せるかを考え、工夫する面白みがある。無駄なくすべてを使い切り、盛り付けなど皿全体でその動物が住んでいた環境を表現するのがジビエ料理の哲学。そういう部分も含めて楽しんでほしい」。濃厚な味わいの赤身が印象的なシカ肉、対照的に甘みのある脂身が魅力の猪肉は年間を通して提供している。狩猟が解禁される11~2月は最盛期だ。仕入れの状況次第では「ジビエの王様」とされるヤマシギ、コジュケイ、マガモ、スズメ、ハトなどもある。
■「カンガルーは鹿より筋肉質」
 ジビエ料理を楽しめる店は都心でも盛況だ。スパイスワークス(東京・港)が東京と大阪で4店を展開する「炉とマタギ」は「初心者のためのジビエ料理」がコンセプト。北海道十勝地方のトムラウシで捕獲して太らせた蝦夷鹿(えぞしか)のほか、猪などを盛り合わせた「マタギの三獣奏」や「蝦夷鹿モモ肉の串焼き」が定番だ。他店ではなかなか食べられないのはオーストラリア産カンガルー。鹿肉以上に筋肉質で、繊維が太い印象だ。「カンガルーはぴょんぴょん跳びはねてるからね。鹿よりも筋肉があるんでしょう」と大将の福本渡さん。かなりアバウトだが妙に説得力のある解説だ。市場が確立している牛や豚と違い、流通経路が定まっていないジビエは、猟師の仕留め方や直後の処理によって味が大きく左右される。漁獲手法や締め方により価値が変わる鮮魚と同じ理屈だ。「適切に処理されず、生臭くなったジビエを食べて悪い印象を持ってしまう人も残念ながら多い」と藤木さんは話す。水産の世界では天然魚を養殖魚よりも格上とする「天然信仰」が根強く残っている。それは味や身質の問題だけでなく、春夏秋冬で旬が変わる季節感や大海原を回遊するロマン、全国各地や遠洋まで及ぶ産地への旅情のようなものが混然一体となった価値だろう。ジビエにも似たような楽しさがある。

*3-2:http://www.yomiuri.co.jp/hokuriku/feature/CO006633/20150220-OYTAT50029.html (読売新聞 2015年2月20日) 県産ジビエブランドに
●斬新メニュー、誘客狙う
 北陸新幹線金沢開業を機に、石川県などは、県内の豊かな食文化をPRする一環として野生鳥獣の肉「ジビエ」の活用を進めている。19日には、県内で捕獲されたイノシシやシカの獣肉を使ったローストやお茶漬けなど斬新なメニューの試食会が金沢市のホテルで開かれた。関係者は「いしかわジビエ」ブランドを確立し、新幹線開業後の誘客につなげたい考えだ。県内では近年、イノシシによる被害が目立ち、水稲やジャガイモなどの食害のほか、田畑を転げ回る「ぬたうち」の被害もある。農作物被害金額は2007年の1191万円から14年は9145万円に急増。捕獲数も07年の655頭から13年の2684頭に増えた。県は昨年7月、有害鳥獣の駆除を進めながら「ジビエ料理」を普及させる狙いで、猟師や料理関係者らとともに「いしかわジビエ利用促進研究会」を発足させ、メニューやレシピ作りを進めてきた。県内では、ジビエ料理をブランド化して町おこしにつなげようとする動きもある。白山市商工会青年部は、イノシシの肉を「白山麓猪(いのしし)」と名付け、白山麓旧5村にあるホテルや旅館、レストラン計12施設で、イノシシを使った料理の提供を始めたほか、生肉、薫製など加工品の販売、牙や皮などを生かしたグッズの販売などを行っている。白山市の旧5村の観光協会で作る「白山ふもと会」は、イノシシやクマを食肉として加工する解体場を12年に建設。白山猪は、白山の清涼な水や木の実を食べて育つため、肉は柔らかく、甘みがあるという。同青年部部長の山本隆俊さんは「多くの人がイノシシを食べることが駆除につながり、農業被害の減少になれば」と期待する。加賀市の伝統のジビエ「坂網鴨(さかあみがも)」も注目される。国内有数のカモの飛来地で、ラムサール条約登録湿地でもある片野鴨池に飛来するカモをY字型の坂網で捕獲する伝統猟法は、江戸時代から続く。鉄砲と違って身が傷つかないため、同市出身の料理人・道場六三郎さんは「最高の食材」として激賞する。市は、地元や東京で食談会を開くなどし、「坂網鴨」のブランド化を進めている。

<畜産>
*4-1:http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=36534 (日本農業新聞 2016/3/7) TPPで“守り”重視 畜産、中山間に独自支援 16年度都道府県予算案
 47都道府県の2016年度予算案が出そろった。農林水産予算は、日本農業新聞の調べで、29都道府県が前年度より増額となった。環太平洋連携協定(TPP)合意を受け、大きな影響が懸念される畜産や中山間地域などへの独自支援が目立つ。“攻め”の対策が目立つ国に対し、“守り”を重視しているのも特徴だ。米の主産県では、18年に迫った生産調整の見直しを念頭に、園芸産地の育成支援に力を入れているところが多い。15年度補正にTPP対策を盛り込んだ県もある。農林水産予算が増えたのは、国のTPP対策の畜産クラスター事業や園芸パワーアップ事業を県予算で計上したことも大きな理由とみられる。TPPでは、肉用牛・酪農の繁殖基盤対策に取り組む県が目立つ。兵庫県は「但馬牛」2万頭増頭へ、大規模畜舎の整備などに1億5000万円を計上。滋賀県は「キャトルステーション整備支援事業」(7900万円)で増頭を支援する。畜産クラスターが担い手に軸足を置く一方、鳥取県は6500万円を確保し小規模家族経営に独自支援するなど、対象を柔軟にする動きもある。北海道は、放牧酪農の推進へ15年度補正で7600万円を確保した。効率化・規模拡大が難しい中山間地域への目配せもみられる。岩手県は5000万円を確保し、同地域の基盤整備を進める。山形県も農地保全や新規作物の導入に合計7200万円を計上した。果樹の改植支援で福岡県は、極早生ミカンの優良品種にも使えるよう独自事業を仕組む。柔軟に使える基金を造成した県もある。徳島県は「農林水産業未来創造基金」に5億円を計上し、16年度は3億円取り崩す。愛媛県は「農林水産業体質強化緊急対策基金」に25億円を積み、5億円を16年度使う。地域資源に着目した動きも強まっている。長野県は、県産品のブランドを高め外国産と置き換えていく。観光など地域経済の活性化につなげる考えだ。地方創生で農業の役割を重視し、6次産業化を支援する県も多い。一方で“攻め”の対策を打ち出す県もある。新潟県は、水田フル活用、農地中間管理機構(農地集積バンク)を通じた集積を加速し、出し手農家には野菜・果樹への転換を促す。3億円を計上した。愛知県は「あいち型植物工場」を県内50カ所に設置する計画で1億2000万円を確保。石川県は、製造業のノウハウを農業に取り入れ、成長産業化を目指す。6700万円を計上した。米政策でも主産県の独自事業が目立っている。秋田県は園芸品目の拡大へ団地のネットワークをつくる。6200万円を計上した。富山県は県内JAが水稲以外の戦略作物を定めるのを、970万円確保し支援する。岡山県は飼料用米の1割増収など低コスト化多収技術の開発を進める。

*4-2:http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=36015 (日本農業新聞 2016/1/19) 草地整備で飼料増産 大区画化など164億円 クラスター推進へ農水省
 農水省は飼料作物の収量を増やし、地域一体で畜産の収益拡大を目指す「畜産クラスター」を後押ししようと、草地の基盤整備へ重点支援に乗り出す。大区画化で作業効率を高め、適期収穫もしやすくすることで、単位収量を25%以上増やすのが目標。環太平洋連携協定(TPP)の発効後を見据え、自給飼料の安定生産体制を整えることで、畜産経営の体質強化を目指す。畜産物はTPPで関税の大幅削減が決まり、国際競争力の強化が重要課題となっている。同省は飼料生産基盤を強化し、足腰の強い畜産経営を実現しようと、2015年度補正予算案の農業農村整備(土地改良)事業に草地整備関連費として164億円を計上した。補正予算案にTPP対策の目玉として盛り込んだ畜産クラスター事業(畜産・酪農収益力強化整備等特別対策事業)と連携し、収益向上に向けた畜産クラスター計画を策定した地域が対象。生産コストの低減へ飼料の増産を目指す地域に、草地や畑の区画整理や暗きょ排水などを施す。柱の一つが、大型機械による作業に対応できる基盤整備だ。①草地と畑の一体的整備②草地の大区画化③排水不良の改善――などを支援し、生産性の大幅な向上につなげる。同省はコントラクター(農作業受託組織)や担い手を耕作者と想定する。これらの工事の補助率は原則、事業主体が国の場合は3分の2、それ以外は2分の1。同省は「圃場(ほじょう)が点在し生産効率が悪い地域がある。大区画化を進め、収量向上に結び付けたい」(飼料課)と説明する。この他、北海道向けの支援として、水はけが悪い泥炭地帯にある草地への排水施設の整備や、家畜ふん尿からスラリー(液状きゅう肥)を作る「肥培かんがい施設」の整備にも助成する。

<6次産業化>
*5:http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=35976 (日本農業新聞 2016/1/15) 宅配弁当で地域守る 年間通じ働く場も 栃木県下野市の女性グループ
 栃木県下野市の女性農業者や管理栄養士の女性11人でつくる企業組合「らんどまあむ」が作る、地元野菜を使った日替わり弁当が人気だ。健康に配慮し塩分は2.7グラム以下に抑え、高齢者宅に配達し、体調に変化はないか見守り活動も担っている。母ちゃんたちの試みは口コミで評判となり、当初は1日に数十食だった注文も、多い時で700食を超えるほど。食を通して自分たちが年間通して働ける場をつくり、地域の健康を支えている。「らんどまあむ」は地元農業をPRしようと、2011年に発足。中心となるのは、女性農業士の大越歌子さん(60)と大高京子さん(58)、管理栄養士の大沼スミエさん(60)。農閑期は女性が働ける場所がなく、市外にパートに出掛ける状況に危機感を抱いた大越さんと大沼さんが、道の駅しもつけのオープンを機に立ち上がった。日替わり弁当の14日のメニューは、「豚のしょうが焼きとゴボウサラダ」。ゴボウは地元農家から仕入れ、ご飯は大越さんが栽培した米を使った。価格は宅配料込みで1食520円。宅配と同時に「体調はどうですか」などと声を掛けて、健康状態を気遣っている。市から弁当代の補助が出るため週3回、毎回40人ほどの高齢者が利用している。最近では口コミで弁当の良さが広がり、保育園や子どもらが集まるイベントなどでの注文も増えているという。加工品も開発した。ニンジンとゴボウを鶏肉と特産のカンピョウで巻いた八幡巻きや、ゴボウをしょうゆなどで漬け込んだ「ごぼうのたまり」など20種類ほどを道の駅で販売する。大越さんは「食で地域の人々の健康を支えていきたい。今後は、若い女性の働く場所もつくっていきたい」と抱負を語る。


PS(2016年3月10日追加):上のほか、*6のグリーン水素ネットワークモデルは、自然エネルギーが豊富な地方の新しい収入源になりそうだし、下の写真や*7のようなロボット・農機の開発は、今後有望で海外展開も期待できそうな分野だ。

*6:http://www.pref.fukuoka.lg.jp/contents/hydrogen-network.html (福岡市HP 2015年6月12日更新)「地産地消型グリーン水素ネットワークモデル」構築に着手!~全国に先駆け、再エネ導入拡大に向けて「水素エネルギーによる電力貯蔵システム」のビジネスモデル構築を目指します~
 福岡県では、「福岡水素エネルギー戦略会議」(※2)を設立し、他の地域に先駆けて水素エネルギー社会実現に向け取り組んできました。 水素エネルギーは、電力を大規模かつ長期間にわたって貯蔵できるポテンシャルがあることから、出力変動が大きい再生可能エネルギーの導入拡大に資するものとして有望視されています。本県では、平成25年2月に有識者による「地域エネルギー政策研究会」(※3)を設置し、分散型電源や高効率発電の普及、エネルギーの効率的利用の促進などにおける地方の役割や取組みを幅広く研究してきました。今年3月に取りまとめられた報告書では、「水素エネルギー分野で世界を先導する福岡県において、産学官連携の下、水素エネルギーによる電力貯蔵システムの開発・普及を積極的に進めるべきである。」という提言がなされたところです。このような状況のもと、この度、福岡県では、経済産業省の支援を受けて、豊田通商株式会社、九電テクノシステムズ株式会社、九電みらいエナジー株式会社、西日本環境エネルギー株式会社、国立大学法人九州大学とともに、再生可能エネルギーの導入拡大に向け、水素エネルギーによる電力貯蔵システムのビジネスモデル構築に着手することとしました。今年度は事業計画を策定し、来年度以降、県内の工場等に水素製造装置や水素利用機器を設置し、電力のピークカットや変動する再生可能エネルギーの出力の平準化するための水素利活用モデルの構築を目指します。
※1:地産地消型再生可能エネルギー面的利用等促進事業費補助金(構想普及支援事業)
 経済産業省平成26年度補正予算事業(1事業当たり、定額3,000万円)。民間事業者や地方公共団体等が、地域の実情に根ざした地産地消型のエネルギーシステムの構築を進めるために実施する事業化可能性調査及び事業計画策定を支援し、地産地消型のエネルギーシステムの加速的な導入・普及につなげることにより、システム構築に関するノウハウの共有化及び他地域への展開を図ることを目的として、事業計画策定を支援するもの。
※2:福岡水素エネルギー戦略会議
 水素の製造、輸送・貯蔵から利用までの一貫した研究開発や社会実証、全国唯一の人材育成などに取り組む全国最大の産学官連携組織(2004年8月発足)。2015年6月1日現在、757企業・機関が会員として参加。会長は、新日鐵住金株式会社 柳川 欽也(やながわきんや)代表取締役副社長
※3:福岡県地域エネルギー政策研究会
 平成25年2月23日に設置。座長は、東京大学公共政策大学院日下 一正 客員教授。報告書では、福岡県において新たなエネルギー社会を先導して実現するため、   
  (1)エネルギーを無駄なく最大限効率的に利用する社会の実現
  (2)環境にも配慮したエネルギーが安価かつ安定的に供給される社会の実現   
  (3)水素を本格的に利活用する水素エネルギー社会の実現
  (4)新たなエネルギー関連産業の育成・集積による地域振興・雇用創出
を目指した課題が整理されるとともに、その課題を解決するための取組みに関し幅広い提言が行われている。

   
 芝刈りロボット(ホンダ)              農業用草刈り機(オ―レック)

*7:http://qbiz.jp/article/76368/1/ 
(西日本新聞 2016年3月10日) 【ロボットの波(上)】マンパワーの“聖域”にも
 ロボット化に「第3の波」が来ている。注目すべきは、マンパワーに頼ってきた「組み立て工程」だ。「関東より人件費が安い」(大手自動車メーカー)ため、九州には大手の組立工場が集まり、雇用の受け皿となってきた。だが、インターネットを駆使する欧米の動向や、将来の労働力不足懸念に背を押され、機械に置き換わりつつある。デジタルカメラ生産の「完全自動化」を掲げるキヤノン(東京)に続く動きが九州で広がる。
■生産の質を向上
 2人の作業員が、鉄製のギアとチェーンを金属ケースにはめ込んでいた。四輪駆動の草刈り機の組み立て工程の一部だ。ここは、オーレック(福岡県広川町)本社工場。国内有数の草刈り機メーカーの同社は2016年2月、車輪の駆動に必要な「チェーンケースカバー」の組み立てを自動化する。ロボット導入は25年ほど前から進めてきたが、溶接や塗装といった「前工程」と呼ばれる部品製造ばかり。作業が複雑で、製造する製品の切り替えなど、人の判断を伴う「後工程」と呼ばれる組み立てでは、「初めて」という。目的は「生産性の向上」。農家の高齢化が進む中、草刈り機の需要は高まり、生産が追いつかない。第2工場を本社敷地につくり、製造ラインを現在の二つから三つに増設。来年3月をメドに生産能力を1・5倍に引き上げ、「量」を拡大するとともに、ロボット導入で生産の「質」も向上させる。
■普及のモデルに
 計画では、人間の両腕のような「双腕ロボット」と、関節が六つある片腕の「六軸ロボット」を導入する。数千万円かかるが、作業のほとんどを自動化でき、工程管理上の作業員は現在の「2人」から、「0・5人」に省力化。生産能力は20%増えるという。ロボットの低価格化と性能向上で、これまで人手に頼ってきた組み立て工程も、自動化が可能になりつつあるという。約100種類の草刈り機を製造する同社。今回の自動化は、傾斜地向けの主力機種「スパイダーモアー」だけだが、同社はこれを普及の「モデル」として、他の機種や、別の組み立て工程にも導入していきたい考えだ。人口減で将来、労働力不足が懸念され、安定生産の地盤を固める必要もある。「もうここしかない」。同社幹部は人の姿が目立つ組み立て工程を見渡した。
■キヤノンに続く
 今年1月、政府は今後5年の成長戦略となる「ロボット新戦略」を策定した。産業面では、中小企業の「組み立て工程」や「食品加工」を「労働集約的製造業」と位置づけ、ロボット導入を進める構え。マンパワーに頼ることが多く、雇用の受け皿となる“聖域”と呼ばれる分野だ。背を押すのは、欧米の動向だ。ドイツが国家プロジェクトとして仕掛ける「インダストリー4・0」。「第4次産業革命」と呼ばれ、センサーやネットワークを駆使し、工場の完全自動化を進める。部品の在庫がなくなりかけると、センサーが感知し、ネットを通じて部品を発注。生産を絶やさない。トヨタ生産方式の「ジャスト・イン・タイム」(カンバン方式)のネット版と言える。米国も、こうしたモノをインターネットでつないだ「IoT」技術の導入で先行する。日本では、キヤノンが2018年をメドに、大分キヤノン(大分県国東市)など九州の子会社3社で生産するデジタルカメラの組み立てを完全自動化する。人工知能(AI)やIoTをフル活用し、成長力を押し上げる狙いだ。「波」は、中小企業にもじわりと広がる。今夏、経済産業省が中小企業を主な対象にロボット導入の助成事業を行ったところ、九州から6社が手を挙げた。オーレックもその1社だった。

| まちづくりと地域振興::2015.5~ | 03:35 PM | comments (x) | trackback (x) |
2015.8.8 間違いなく次のステップに進もう (2015年8月9日、11日、9月30日に追加あり)
        
  2015.7.30日経新聞   三越受付ロボット   電通受付ロボット   会話ロボット
  ハウステンボスフロントロボット    (*ロボットなら、数カ国語対応も容易)

   
               諸富家具の製品                  2015.8.5西日本新聞
     (*一番良いものを選んで掲載したとは限りません)         燃料電池船

(1)1000億円超の新型地方創生交付金で、本当のところ何が不便なのか?
 *1-1のように、政府が地方創生の柱として2016年度に創設する新型交付金を1000億円規模にする基本方針を決定し、地方からは「小粒」との不満の声があがっているそうだ。確かに、これまで地方は、インフラの整備が十分ではなく、産業にも伸びしろが多い。

 そのため地方は、ここで是非、国の財政出動頼みではない、将来自立型の先駆的なグランドデザインを作って欲しいものである。

(2)佐賀市の挑戦
 佐賀市は、*1-2のように、2060年の推計人口が、現在の約23万人から9万人少ない14万人に減少すると試算し、20万人を維持するために雇用、子育て、観光客誘致、まちづくりなどの戦略を示して、本年度から5年間は、雇用創出、定住促進、出産・子育て環境の充実、まちづくりの4分野の施策を重点的に行うそうだ。

 また、*1-3のように、支所の再編で佐賀市の職員数を3年かけて半減する計画だそうだが、これは、*2-1-1、*2-1-2のように、キャノンが九州の全拠点工場で、カメラの生産を完全自動化し、三菱重工が広島県の航空機胴体生産工場で人工知能を活用した自動化生産ラインを新設し、三井造船が船の部材を切断する機械を導入し、キユーピーも工場の自動化を進め、ハウステンボスでは、*2-2-1のように、フロントやポーターにロボットを導入し、日本橋三越では、*2-2-2のように、受付嬢にロボットを採用し、電通は、*2-2-3のように受付に柏木由紀そっくりのロボットを採用していることから可能だろう。

 しかし、この時代に必要となる人材は、それらの機械を作ったり、操作したり、生産技術を改善したりすることができる人材であり、ルーチンな仕事のみをこなす人材ではなくなるため、そのつもりで教育や企業誘致・産業振興の戦略を立てる必要がある。

(3)地場産業の進化
 *3-1のように、佐賀市の諸富家具5社が、現地デザイナーとの開発も視野に、シンガポールに市場調査に行くそうで、その挑戦は大変面白いが、日本で制作する以上、デザインだけでなく、日本の木や竹を使用し、家具や玩具にロボット技術を組み込んで付加価値を上げ、シンガポールで開かれる世界最大規模の見本市に出展して話題をさらい、キャノン・三菱重工・三井造船のように生産ラインをなるべく自動化して生産性を上げなければ、世界市場で勝つのは難しい。そのため、あちこちから技術を集めて、そういう製品を開発するのがよいと考える。

 また、*3-2のように、環境省が、長崎県五島市の椛島沖で水素を燃料とする国内初の燃料電池船の実証事業を始め、その水素は、同省が椛島沖で進める「浮体式洋上風力発電実証事業」の余剰電力を利用して製造するそうだ。自動車だけでなく船も燃料電池船になると、CO2のみならず有機物を海に捨てないため、東京湾のように通行量の多い港でもクリーンにすることができる。また、化石燃料を外国から購入しなくてよくなるため、大幅なコストダウンが可能だ。

 なお、*3-3のように、伊万里市内の学校では強化磁器の食器を使っており、給食食器に焼きものを使う小中学校は、文部科学省の2006年調査で、佐賀県が67.4%、全国では32.6%だそうだが、食文化は、食品だけでなく食器の使い方も含むため、これは全国に広がることが望まれる。また、私は、それぞれの児童・生徒が書いた絵やデザインを染めつけた器を作って使うようにすれば、磁器が身近で面白いものになるとともに、才能を早く発見して磨くことも可能だと考える。

*1-1:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20150805&ng=DGKKASFS04H78_U5A800C1PP8000 (日経新聞 2015.8.5) 地方創生「目玉」は小粒、16年度、新型交付金1000億円超 「看板なのに」地方は不満
 政府のまち・ひと・しごと創生本部(本部長・安倍晋三首相)は4日、地方創生の柱として2016年度に創設する新型交付金を1000億円規模にする基本方針を決定した。規模は14年度補正予算で先行計上した1700億円を下回る。財政事情の厳しさを理由にあげているが、地方からは「看板政策にしては小粒だ」と、担当の石破茂地方創生相らに不満の声があがっている。8月末の概算要求で、内閣府と関係省庁が新型交付金向けに1000億円超を計上する。地方創生は首相の経済政策「アベノミクス」の中の重要分野。新型交付金は「地方の先駆的な取り組みを後押しする」という名目だ。政府は今年1月にまとめた14年度補正予算で試行的に「先行型交付金」1700億円を計上。全国知事会は16年度予算では「14年度補正を大幅に上回る規模」を要請していた。概算要求を前に出てきたのは6割程度の規模。「大きければ大きいに越したことはないが、厳しい財政事情の中で予算を組んでいかないといけない」。石破氏は4日の記者会見でこう説明した。額を積み増せないのは、財源を既存の補助金や交付金の見直しで捻出するためだ。石破氏が所管する内閣府は地方向けの2つの交付金を衣替えして約580億円を確保する。残りの約500億円は他省庁の予算から切り出す。地方創生以外の分野で企業や独立行政法人向けの補助金などを減らして振り向ける。各省の既得権とみなされる予算を削る調整は難しく、閣僚の協力も得にくい。1000億円超を生み出すのが「ギリギリの水準だった」(内閣府幹部)という。全国の自治体は都道府県と市区町村を合わせて約1800。単純にいえば、1自治体あたり1億円にも満たない計算だ。全国知事会の山田啓二会長(京都府知事)は「国の全面支援を期待していた地方側としては非常に不満だ」と訴える。新型交付金を利用する事業は、半額が地方負担となる仕組みだ。石破氏は「(地方の負担も合わせた)事業費ベースでの2000億円は、14年度の補正規模を上回っている」と強調するが、地方側の関心事は国から拠出される金額だ。「(国が配分する)地方交付税で補う措置を確実に講じてほしい」(全国市長会の森民夫会長)。地方側からは早速、こうした声も上がり始めた。与党内では当初から「財政が苦しいのに財政出動頼みの地方創生は厳しい」(閣僚経験者)との声があった。一方で中途半端な施策ではアベノミクスの「看板倒れ」との批判を招きかねない。首相官邸や石破氏は年末まで財務省や各省、地方との難しい調整を迫られる。

*1-2:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/216015 (佐賀新聞 2015年8月6日) 2060年の佐賀市人口、20万人維持へ素案提示、産学官会議で疑問の声も
 佐賀市は5日、2060年の推計人口が現在の約23万人から9万人少ない約14万人に減少するとの試算を明らかにした。人口減対策の総合戦略素案も示し、60年に約20万人を維持する目標を掲げた。雇用、子育て、観光客誘致、まちづくりなど多様な施策で人口減に歯止めをかける。素案について協議した経済関係者らからは「予算規模に対して事業が多すぎるのでは」などの意見が上がった。市は、市の総合計画や国、県の人口推計、合計特殊出生率の見通しなどを基に推計した。人口は毎年減少し、35年には19万6千人と20万人を割り込み、55年には約15万人となる。60年の人口目標値は、合計特殊出生率で県の仮定値を用い、2040年以降は2・07を維持、転出抑制と転入促進は、県の目標を前倒しで実現する計算。これらの条件がそろえば、推計値より5万7千人多い19万7千人になると展望した。実現の足掛かりとなる総合戦略素案は本年度から5年間、雇用創出や定住促進、出産・子育て環境充実、まちづくり-の4分野を軸に施策を展開する。例えば、企業誘致による新規雇用者1250人、バイオマス関連企業3社誘致、観光客増などによる経済波及効果を330億円、外国人宿泊客数3万人、保育所の待機児童数ゼロを掲げている。市は、初年度の関連予算として2億2千万円を見込んでいる。人口展望と戦略素案は商工会議所、佐賀銀行、佐賀大、佐賀市など産学官の15人でつくる「まち・ひと・しごと」創世推進会議で提示された。委員からは「予算を考えると、絵に描いたもちになるのでは」「事業の選択と集中が必要」「20万人を目指す根拠を示してほしい」などの意見が出た。市は9月に総合戦略を策定する。

*1-3:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/215635
(佐賀新聞 2015年8月5日) 佐賀市、支所再編で職員半減 3年かけ270人から128人に
 来年度の支所再編に伴い、佐賀市は4日、7支所に配置する職員数を本年度の270人から半数以下となる128人に減らす方針を明らかにした。3年ほどかけて段階的に減らす。一部の支所業務を本庁に集約するため本庁職員は増員となるが、具体的な職員数は示していない。支所再編を調査する市議会特別委員会で説明した。7支所のうち、職員が最も多い大和は48人から25人に、最少の三瀬は26人から13人に減る。減員数が一番多い川副は47人が23人になる。初年度は支所窓口の混乱を想定し、各支所に1、2人を上乗せして配置する。業務の本庁集約に伴い、本庁職員数は増えるが、行政管理課は「最終的な人数は調整中」としている。支所再編は行財政改革の一環で、人件費削減による支出減が目的の一つ。1人減員による削減額は年700万円程度とみており、今回の再編で100人削減した場合、7億円の支出減になるとみている。ただ、地方交付税は将来的に14億円削減される見通しで、行政管理課は「行財政改革を緩めることはできない」と強調した。定員管理計画をまとめ、今後は採用調整で本庁職員も減らしていく。議員からは、「いきなり半数近く減って業務に問題はないのか」「減らしすぎではないか」など懸念の声が相次いだ。市側は「支所職員の業務実績を踏まえ、各支所と協議した。病欠や休暇、災害時にも対応できる」と主張し、譲らなかった。

<生産性の向上とICT>
*2-1-1:http://qbiz.jp/article/68262/1/
(西日本新聞 2015年8月5日) キヤノン、カメラ生産完全自動化 18年めどに九州全4拠点
 キヤノンは4日、2018年をめどに国内デジタルカメラ生産を完全自動化する方針を明らかにした。同社のカメラは全て、大分キヤノン(大分県国東市)など九州の子会社3社が生産している。新たな自動生産装置の研究開発拠点を16年内に大分キヤノン内に新設、熟練技術者の高度技能も機械化したい考え。人口減が進む中で国内生産を維持する狙いがあり、生産経費も最大2割程度削減できる見通しだ。完全自動化を目指すのは大分キヤノンの安岐事業所(同)と大分事業所(大分市)のほか、長崎キヤノン(長崎県波佐見町)と宮崎ダイシンキヤノン(宮崎県木城町)の4カ所。人手に頼る工程をロボットや人工知能を活用した装置に置き換え、主力機種では15人程度必要な工程が監視要員の2〜3人で済むようになると見込んでいる。新たな自動生産装置の研究開発拠点は「総合技術棟」(仮称)=3階建て、延べ床面積1万9700平方メートル=で、133億円を投じて安岐事業所に建設する計画。大分キヤノン内の配置転換などで約500人の人員を確保するとしている。各社の従業員数(14年末時点)は▽大分3130人▽長崎1170人▽宮崎840人。生産自動化による直接の人員削減は行わない。4日に大分県庁で記者会見した大分キヤノンの増子律夫社長は「狙いは人員削減ではなく、生産性の向上にある。人員削減はせず、今後も必要な時に必要な人材は採用していく方針だ」と強調した。

*2-1-2:http://qbiz.jp/article/68258/1/
(西日本新聞 2015年8月5日) キヤノン生産自動化 人手不足備え、競争力維持が理由
 キヤノンが国内のデジタルカメラ生産の完全自動化に踏み切るのは、少子高齢化で労働人口の縮小が見込まれる中、国内生産を維持するのが狙いだ。生産拠点が集中する九州では地元雇用が先細りすることへの懸念はあるものの、国内製造業の生産自動化への動きが加速しつつある。主力製品であるデジカメの約6割を国内で生産しているキヤノン。国内製造業は将来的に人口減などで労働力確保が難しくなることも想定されるが、生産の完全自動化により、人手不足に備えることができる。スマートフォンの普及などで競争が厳しいデジカメ市場にあって、生産コストも今より1〜2割削減できる見込み。円安基調も追い風に、キヤノンは今後、国内生産比率を7割程度まで高める方針という。生産の自動化で競争力と人材確保を狙う動きは、さまざまな製造業で相次いでいる。三菱重工業は広島県の航空機胴体生産工場で、人工知能を活用した自動化生産ラインを新設、生産コストの削減を目指す。三井造船も5年間で約150億円を投じ、船の部材を切断する機械などを導入、生産効率を3割引き上げる計画を進めている。キユーピーも工場の自動化を徐々に進めているという。一方で、自動化による人手に頼らない生産の実現は、地方経済を支える雇用の受け皿を縮小することにつながりかねない。キヤノンは「自動化は『無人化』とは違う。機械を運転したり、生産技術を改善したりするための人員が必要になる」「従業員の終身雇用は守る」と説明する。ただ、生産子会社の人員規模が中長期的に縮小する可能性は否定できない。国内製造業の現場では既に人手不足感が顕在化しており、機械化が進んでも地域経済にとって大きな問題にはならないとの見方もある。ただ九州経済調査協会調査研究部の小柳真二研究員は「雇用の増減は、地域経済にとって影響が大きい。企業経営にとって良いことが、地域にとって良いこととは限らない」と指摘している。

*2-2-1:http://www.nikkei.com/article/DGXMZO89644340T20C15A7000000/
ロボットだらけのホテル、ハウステンボスで近未来体験
 ハウステンボスが2015年7月17日に開業した「変なホテル」。快適性と世界最高水準の生産性を両立させるため、様々な技術を駆使した革新的なホテルだ。特に面白いのは、人件費を通常の4分の1に抑えるため、フロントやポーターなどの業務にロボットを導入していること。とはいえ、“ロボットホテル”などこれまでなかっただけに、ピンとこないだろう。一体どのようなホテルなのか。開業前の7月15日に開かれた、完成お披露目記者会見に参加した記者が体験レポートを2回にわたってお届けする。「変なホテル」は、長崎県佐世保市にあるハウステンボスの敷地内に建設された、72部屋(第1期)を有する宿泊施設。人件費、建設費、光熱費の三つを抑制する工夫を凝らした「世界初のローコストホテル」(ハウステンボスの澤田秀雄社長)である。2階建てのその外観は、特段変わったところはない(写真1)。だが、中に入ると他のホテルにはない、様々な工夫を目にすることになる。ホテルに入って目を奪われるのが、左手にあるフロントだ。そこには3台のロボットが宿泊者を出迎える。カウンターをはさんで対話する相手は、女性型ロボットや恐竜型ロボットだ。「女性型はまだしも、なぜ恐竜のロボットがフロントに?」。外見がリアルな恐竜が帽子と蝶ネクタイをしてフロントに立っている様子に、ここが「変なホテル」であることに改めて気付かされる。まずはチェックイン。女性型ロボットの前に立つと、センサーでそのことを感知し、女性型ロボットが話し始める。「いらっしゃいませ。変なホテルにようこそ。チェックインをご希望のお客様は1のボタンを押してください」。お辞儀をしたり、口やまぶたを動かしたりしながら話す女性型ロボット。その動きは、思っていたよりもスムーズで、ほとんど違和感はなかった。
■女性型ロボットとはボタンで会話
 フロントのカウンターの上には、1~3と番号が振られたボタン付きの装置がある。ロボットの案内に従ってボタンを押す(写真3)。すると、ロボットは「宿泊者名簿に氏名などを記載してください」「右手にある端末でお客様の名前を入力してください」などと案内してくれる。

*2-2-2:http://ryutsuu.biz/it/h042002.html
(流通ニュース 2015年4月20日) 日本橋三越/受付嬢ロボットを公開
 日本橋三越本店と東芝は4月20日、21日、本館1階室町口に東芝のコミュニケーションロボット「地平アイコ」を受付嬢として登場させる。地平アイコは、人間らしい容姿や表情が特徴で、デジタルサイネージの横に立ち、身振りや手ぶりを加えながら、表情豊かに、館内のイベントなどをお客に説明する。中陽次三越日本橋本店長は「常に最新の新しい物事を紹介するのが百貨店であり、新しい最新の科学技術を紹介する取り組みだ。接客は百貨店の要であり、機械化することはできないが、デジタルサイネージを活用した接客は、今後、発展する可能性がある」と語る。東芝、研究開発統括部の徳田均マーケティング戦略室参事は、「現状では、双方向のコミュニケーションには対応できないが、技術的には双方向コミュニケーションも可能になりつつある。1日に何百回と同じ説明をする業務は人間では不可能だが、地平アイコならば笑顔を絶やすことなく、正確な説明ができる。イベントを中心に、さまざまな場面で、地平アイコを登場させたい」と語る。今回は、来店客数が多い店頭での設置のため、一方通行の情報伝達を採用したが、技術的にはカメラと連動させ、来店客毎に応じた接客もできる。現状では、プロトタイプ一体のみで、一体で数千万円の価格だが、量産化ができれば、一体あたり1000万円を切る価格で生産ができる見込みだ。今期中に4体の生産が決定しており、接客業務のほか、展示会の案内、イベントの告知など、活躍の場を拡大する予定だ。音声での対話は難しいものの、デジタルサイネージやタブレット端末と連動した形であれば、百貨店のフロア案内など、顧客の要望に応えるコミュニケーションは可能だという。人間では不可能な、何千、何万という情報量を駆使した店内案内なども想定できる。徳田氏は「単なるデジタルサイネージだけの情報提供では、お客の記憶に残りにくい課題があった。人は表情を含めてコミュニケーションするもので、何か情報を記憶する時に表情は重要な要素だ。表情が豊かな地平アイコが解説することで、より記憶に情報が残りやすい面があると思う」「多言語対応も技術的には可能であり、今後は観光案内など、さまざまなシーンで笑顔を絶やさない接客が提供できるかもしれない」と語った。

*2-2-3:http://www.rbbtoday.com/article/2015/07/28/133793.html
(RBBTODAY 2015年7月28日) 誰もがぎょっとする!……電通受付にあのアイドル?
 「ほんとに柏木由紀そっくり。気持ち悪いくらい目が合う」。広告代理店大手の電通。東京汐留の本社受付にやってきた人は、受付スタッフの異変に気付き、声をあげる。ゲイズロイド「ロボリン」の名前を持つこのロボットは、首を傾けながら、来訪者と目を合わせたりしている。ロボットは胸にセンサーが組み込まれており、対面者の目の位置を認識する。製作はメディアアーティストの藤堂高行氏。この展示は、電通のイベントスペースデザイン局が、自ら取り扱うテクノロジーを社内にアピールするために、不定期に開催している「電通人ほぼ未体験展」だ。その「エクスペリエンス・テクノロジー・エントランス」に藤堂氏が協力した。今回は3Dスキャニング技術などが社内スペースに展示されているが、「ロボリン」はせっかくなので受け付けに配置されたという。展示は31日まで。

<地場産業の進化>
*3-1:http://www.saga-s.co.jp/column/economy/22901/215657
(佐賀新聞 2015年8月5日) 諸富家具5社、シンガポールへ市場調査
■現地デザイナーと開発も視野
 海外進出の足掛かりを探っている諸富家具メーカー5社が8月下旬、シンガポールを訪問する。現地の小売業者や商社と面談し、ニーズや住宅事情を調べる。来春には、同国で開かれる世界最大規模の見本市への出展も計画。国産家具は大量生産の海外製品に比べて価格が高く、輸出の実績は少ないが、現地デザイナーとの製品開発も視野に商機をうかがう。3月にシンガポールで開かれた見本市に出展したレグナテックなど、佐賀市諸富町の5社が現地を訪ねる。昨年、同国の商社を通じて一部商品を販売した平田椅子製作所も参加、本格的な展開を見据えて需要を探る。「ヒト、モノの中継拠点として発展し、関税もかからない。海外進出の足掛かりになる」。諸富家具振興協同組合理事長を務めるレグナテックの樺島雄大社長は、シンガポールに注目する理由を語る。人口減で国内市場が縮小する中、県や市の協力を受けて同国の商社やデザイナー、見本市の運営会社を佐賀に招き、販売戦略や商品開発の研修も重ねてきた。ただ、輸出のハードルは高い。業界団体の2013年統計によると、海外からの家具輸入額約3600億円に対し、輸出額は80億円。国内メーカーの海外進出は一部にとどまる。国産家具は海外製品よりも割高で、価格競争で大きく水を空けられている。輸送コストも、輸出の大きなネック。台湾への輸出準備も進める樺島社長は「インターネットで日本国内での販売価格を調べ、割高感を持つ人は多い」と海外展開の難しさを語る。今月上旬の研修会で、欧州など20カ国以上と取引しているシンガポールの商社は「日本のやり方が海外で通用するとは限らない」と指摘。大量生産で台頭してきた中国の生産技術も向上しており、従来の手法にとらわれず、現地のニーズに対応する柔軟性を持つよう注文した。メーカー5社は訪問後、来年3月の見本市に向け、現地デザイナーと連携した海外向けブランドの構築も目指す。解消すべき課題は多いが、樺島社長は「立ち止まっていては、販路は広がらない。挑戦する意欲を大切にしたい」と話す。

*3-2:http://qbiz.jp/article/68321/1/
(西日本新聞 2015年8月5日) 五島で国内初の燃料電池船、環境省が実証開始
 環境省は5日、長崎県五島市の椛島(かばしま)沖で水素を燃料とする国内初の燃料電池船(10トン級)の実証事業を始めた。水素は、同省が椛島沖で進める「浮体式洋上風力発電実証事業」の余剰電力を利用して製造。二酸化炭素(CO2)の排出削減効果が期待される。船の開発は、戸田建設(東京)、長崎総合科学大、日本海事協会(同)の3者でつくるグループに委託した。船内のタンクに詰めた水素を、外気の酸素と反応させて発電し、モーターを動かして走らせる仕組み。全長12・5メートルで、最大速力は20ノット。450リットル(350気圧)の水素を補充すれば2時間運航できる。当面は、同風力発電機の維持管理用などとして使用し、本年度内は船の加速度などを調べる。戸田建設の開発担当者は「安心安全に運転できるよう完成度を高め、実用化につなげたい」と話した。

*3-3:http://www1.saga-s.co.jp/danran/feature.0.1492133.article.html
●焼きもの食器、地域の“ぬくもり”感じ
 白磁に染付の藍、そして上絵は赤、黄、緑色だけを使い、松やツバキなどを描く伝統の「色鍋島」様式。碗や皿の裏底には窯元の銘も入る。伊万里市内の学校で使う焼きもの食器。「何でもおいしそうに見える」「熱くないから持ちやすい」。子どもたちは毎日、給食を楽しみにする。伊万里市は2006年9月、新しい学校給食センターの稼働に合わせて焼きもの食器を導入した。きっかけはその3年前。子ども議会で市執行部に対し、小学6年生がした問いかけだった。「伊万里は焼きものの里なのに、どうして給食食器はアルマイト製なんですか」。食器は伊万里陶磁器工業協同組合(10窯元)と連携、開発した強化磁器。飯碗、汁碗、大皿、中皿の4種類で、大皿は小中学生から募った絵柄をあしらう。現在、幼稚園と小中学校の計26カ所、毎日約6000人が伝統の器に親しむ。かつては全国的に主流だったアルマイト製食器。熱くて持てず、食器に顔を近づけて食べる「犬食い」の原因と言われてきた。焼きもの食器は糸底に手を添えて持ち、姿勢を正しくして食べられ、同給食センターは「手に持つ食べ方は文化の一つ。割れ物だから丁寧に扱う気持ちにもつながる」と話す。毎月第1、3水曜日には、野菜など地元の旬の恵みをふんだんに使った「ふるさと食材・伊万里の日」も行い、食器をはじめ「子どもたちに身近に感じてもらい、昔からある食の文化、産業を知ってほしい」。24時間、いつでも何でも手軽に食べられる時代。先人から受け継がれ、郷土の多くの人が手をかけた給食に囲まれる。鍋島藩窯があった大川内山の地元、大川内小学校の吉村清美校長は「肩ひじ張って伝統を学ぶとかではなく、それで食べるのが当たり前になった」という。アルマイト製に比べて重たく、当初は給食準備の持ち運びの手間や破損を心配したが「みんな大事に扱っている」。学校にある窯で陶芸教室を開いたり、もち米を育てて収穫し、もちをつく「田んぼの学校」、大豆を栽培して豆腐やみそ、きな粉を作るなど、「食」に関するさまざまな取り組みを地域と一緒に進める。「出来上がりだけでなく、その過程がどうなのか」。子どもたちは肌で感じ、感謝の心や「命をいただく」気持ちをはぐくむ。今、新型インフルエンザ対策で、給食の時間は、授業と同じように黒板に向かって机が並ぶ。班ごとに顔を向かい合わせて食べられないが、楽しいおしゃべり、教室いっぱいの笑顔はいつも通り。ぬくもりのある器を前に、「いただきます」「ごちそうさま」と元気のいい声も変わらない。
●「ズームアップ」、県内導入率77.9%に
 給食食器に焼きものを使う小中学校が増える中、佐賀県は全国に比べて抜きん出ている。文部科学省の2006年調査によると、導入率は佐賀県が67.4%、全国は32.6%。「焼きものの里」として全国の倍以上となっている。県内の08年は77.9%にアップ。焼きもの食器は他の材質食器に比べて費用がかかり、破損率も高いほか、調理場自体の改修も必要だが「県の産業を知り、マナーも身につく」(県体育保健課)と県は1999年度から購入経費の2分の1を補助している。プラスチック食器の有害化学物質問題などもあり、「安全・安心」が強く求められる学校給食。06年の全国の導入状況は、ポリプロピレン32.8%、陶磁器32.6%、ポリエチレンナフタレート16.8%、メラミン11.8%などとなっている。


PS(2015年8月9日追加): 男女平等と出生率低下の関係
 *4のように、九州各県は強気の将来人口想定をしているが、私は、①食料・エネルギーの自給率が低いにもかかわらず適正人口も考えずに人口増加だけを目標にしている ②人口推移における将来の人口減少推定が誇張されすぎている ③出生率が下がった理由を正確に把握せず「産めよ増やせよ論」になっている 等の理由で、そもそも国の分析に違和感を感じている。
 そして、下の2・3番目のグラフのように、文明が進歩し教育が普及して人間開発指数が高まるにつれ(=先進国になるにつれ)、どの国も合計特殊出生率が下がっているが、標準以上に下がっているのは韓国と日本で、どちらも儒教の影響で女性蔑視が強く、出産や子育ての責任を過重に女性に負わせている国だ。また、日本では、下の段の一番左のグラフのように、女性労働のM字カーブが激しく、出産後の女性は働く意思があっても非正規労働の職しかない場合が多い。さらに、下の段の左から2番目のグラフのように、男性の非正規労働者は有配偶率が低くなっており(=結婚しにくくなっており)、このように人生設計をして子どもの数を決めるのは、教育が普及して人間開発指数が高まった結果なのである。
 なお、九州各県は保育の待ち行列がないため物理的にはM字カーブは解消しやすいものの、男女の性的役割分担意識が強いため女性に負わせる家事育児負担が重く、非正規社員の割合も他地域より高くなっているのがネックであり、そこを変えるべきなのである。

      
過去1000年間の       過去70年の   世界各国の人間開発指数   日本の出生率と
 日本の人口        先進国の出生率     と合計特殊出生率     合計特殊出生率 

   
  女性の年齢別     年齢別・雇用形態別      *4より     2013.11.15朝日新聞   
    労働力率      の男性の有配偶率                   世界の男女格差

*4:http://qbiz.jp/article/68538/1/ (2015年8月9日) 九州各県強気の人口想定 出生率大幅上昇 県外流出はゼロ 国機関の推計上回る
 政府が掲げる地方創生に関連し、人口の将来推計を盛り込んだ人口ビジョン策定を求められた九州各県が“強気”の青写真を描いている。女性が生涯に産む子どもの数を推計した合計特殊出生率を現状より高く設定し、いずれも国の機関の推計人口を上回っているのが特徴だ。実現は並大抵ではなく、施策の実効性が問われる。昨年1・64だった出生率が2030年に2・0、40年には2・1まで上昇する−。熊本県がビジョン素案を公表した6日の会議。その根拠を県議に問われた県幹部は「希望と理想」と認めた上で「政策を総動員し、何とか達成したい」と強調した。既婚者が予定する子どもの数や未婚者の結婚希望などの各種データを基に算出したという。昨年の県人口は179万4千人。国立社会保障・人口問題研究所の推計に準拠すれば、60年に117万6千人となるが、県の素案では26万8千人多い144万4千人。実現に向け、結婚や子育ての支援や、企業の研究開発部門の誘致による雇用創出などを掲げる。昨年は3千人近かった県外への転出超過についても、20年以降はゼロと見込む。「希望と理想」に彩られた数字に、会議では「どの政策を最優先するか示してほしい」と注文が付いた。ビジョン(素案段階なども含む)をまとめたのは鹿児島を除く6県。福岡、佐賀、熊本、宮崎各県は60年、大分は2100年、長崎は2110年までの人口を推計した。佐賀を除く5県は政府の長期ビジョンより前倒しの出生率向上を想定しており、上昇幅も政府想定より最大0・28ポイント高く見込んでいる。「人口は75年ごろまでは減少するが、その後上昇に転じる」とした大分県の担当者は「高めの設定かもしれないが、突拍子もない数字とは思っていない」。磯田則彦福岡大教授(人口移動論)は「自治体は既に出産や子育て支援に取り組んでおり、出生率を劇的に上昇させるには相当な困難が伴う。東京五輪を控え東京圏への人材流出も予想される」と指摘。「期限を細かく切り、政策の検証と修正を繰り返す作業が不可欠だ」としている。
*地方人口ビジョン:政府は昨年12月、人口減対策の「まち・ひと・しごと創生総合戦略」と人口の将来展望を示す長期ビジョンを決定。都道府県と市町村に対し、(1)2016年度から5カ年の地方版総合戦略(2)人口の見通しなどを盛り込んだ人口ビジョン−の策定を求めている。政府の長期ビジョンは、出生率が30年に1・8、40年に2・07程度に上昇すれば、60年に「人口1億人程度」を確保できるとしている。


PS(2015年8月11日追加): みやき町の挑戦
 *5-1のように、佐賀県三養基郡みやき町は2017年度から10年間のまちづくり指針となる第2次総合計画を策定するために審議会を発足させ、国の地方創生に呼応した人口ビジョンや総合戦略を策定中だそうだ。久留米市、鳥栖市、佐賀市、大宰府市に近い立地と豊かな自然を活かして教育や福祉の行きとどいた街を作れば、住環境がよくなり、良好なベッドダウンとして空き家や空き地も資源にできる。そのため、*5-2でみやき町長が語っている「みやき町総合計画」は大変よいと思うが、住所に郡がつかない方が都会のベッドタウンとして選ばれやすく、地区の名前も工夫した方がよいかも知れない。

   
                     みやき町の位置と風景               古墳
*5-1:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/217705
(佐賀新聞 2015年8月10日) 町の将来像を論議 みやき町、第2次総合計画審議会を発足
 三養基郡みやき町は10日、2017年度から10年間のまちづくりの指針となる第2次総合計画を策定するための審議会を発足させた。町民アンケートの結果なども踏まえ、町の将来像を論議する。委員は各種団体の代表や学識経験者ら20人。中原庁舎で開かれた初会合では、末安伸之町長が「合併当初で旧3町の平準化に重きを置いた第1次総合計画は、その目的を十分達しつつある。国の地方創生の流れの中で、新たな総合計画には町独自のアイデアが必要になる」と協力を呼び掛けた。会長に北茂安校区の行武薫区長会長を選出した。事務局は、国の地方創生に呼応した人口ビジョンや総合戦略を策定中で、新たな総合計画と整合性を保つ必要性などを説明した。委員からは「現実的な人口予測を反映させた計画にすべき」「空き家の増加を踏まえた定住対策を」といった意見が出た。年3、4回のペースで審議会を開いて答申をまとめ、17年3月までに末安町長に提出する。

*5-2:http://www.town.miyaki.lg.jp/_2003/_1210.html
(平成27年4月1日 みやき町HP) みやき町長 末安 伸之 平成27年度 新年度のごあいさつ
 陽春の候、皆様におかれましては、ますますご清栄のこととお喜び申し上げます。また、日頃より町政にお寄せいただいております温かいご支援とご協力に対しまして、厚くお礼申し上げます。
 みやき町は、平成17年3月の合併から10周年の記念の年を迎えます。これまで、町民の皆様の融和を大切に、誰もがいきいきと生活し、安全で安心して暮らせるまちづくりに全力で取り組んでまいりました。特に、平成24年度より取り組んでおります「定住総合対策事業」として、官民連携によるPFI事業の「住宅支援」、児童館建設や出生祝金などの「子育て支援」、 学校ICT機器整備やアスリートによる「夢先生」の授業などの「教育支援」、そして、「安全安心まちづくり支援」では、防犯パトロール活動や防災行政無線の整備などを行いました。昨年、国において、人口急減・超高齢化という我が国が直面する大きな課題に対して、政府一体となって取り組み、各地域がそれぞれの特徴を活かした、自立的で持続的な社会を創生することを目指した「まち・ひと・しごと創生本部」が発足いたしました。この創生本部は、国民が誇りを持ち、将来に夢や希望を持てる誰もが安心して暮らすことができる地域づくりを進めるため、魅力あふれる地方を創生し、地方への人の流れを作っていくこととしております。現在、みやき町において取り組んでおります「定住総合対策事業」は、国の創生本部が打ち出している基本理念に合致しており、これからは、この地方創生事業に基づき、官民連携による住宅環境整備や学校教育施設の整備・構築を目的とした「ユニバーサルタウン構想」や今年度の主要事項であります「健康のまちづくり」に取り組む中でも、治療としての医療だけではなく、予防医療領域の両面から対処療法・原因療法を相互発展・連携させていく「統合医療」の推進を行っていく必要があると思っております。自分たちの生活習慣に対する意識を見直し、一人ひとりが健康づくりに取り組み、健康を維持増進することができる環境整備を図るため、官民連携による「予防医療」及び「チーム医療」の推進を研究してまいりたいと思っているところでございます。「すべての人が快適に暮らせるまち」「心と体が元気なまち」が構築できるよう目指していく所存であります。本年も「住んでよかったみやき町」の実現に向け、これまでの取り組みを着実に進めるとともに、新たなプロジェクト計画の推進に努めていきたいと思っております。町民の皆様が、こよなくみやき町を愛し、次世代の子どもたちが健やかに成長できる「安全で安心なまちづくり」を目指して、決意を新たにしているところです。今後とも、なお一層のご理解とご協力をお願いしたしますとともに、皆様のご健勝とご多幸を祈念いたしましてご挨拶とさせていただきます。


PS(2015年9月29日追加):先日、夫の学会に同伴して、唐時代まで“長安”と呼ばれて中国の首都だった(兵馬俑で有名な)西安のゴールデン・フラワーホテル(シャングリラ系列、http://www.shangri-la.com/jp/xian/goldenflower/)に泊まったところ、下の写真のように、中に置いてある木製の家具が素敵で、街には高層マンションが次々と建設されていた。そのため、中国は日本製家具の大輸出地になり得ると考える。そこで、家具業界の人や関係者は視察に行き、需要のありそうな付加価値の高い家具を開発したり、地域で協力してブランドを作ったりして、世界に打って出ればよいだろう。

   
                   ゴールデン・フラワーホテルのHPより

*6:http://www.saga-s.co.jp/column/economy/22901/234243
(佐賀新聞 2015年9月29日) 諸富誘客、異業種タッグ サイト設立、見学者回遊策も
 佐賀市諸富町の家具メーカーと販売店、飲食店がタッグを組み、町全体で客を呼び込む取り組みを始める。業界の垣根を越え、地域の情報を発信するポータルサイトやイベントを立ち上げ、家具の購入を促すとともに、飲食店や観光地への回遊も目指す。町内の国道208号沿いにある家具メーカー5社とショールームを持つ販売店3社が中心となり、地方創生事業として取り組む。県の補助約500万円を活用する。諸富家具メーカーは、たんすなどの収納家具やテーブル、椅子など、それぞれの得意分野で独自ブランドを展開している。連携によって自社にない商品を互いに紹介し合い、顧客の要望に応える。町内に事業所を構える味の素とも連携する。同社は団体や個人向けに工場見学を実施しており、家具メーカーや販売店にも回遊してもらう仕組みをつくる。町内での滞在時間を増やすことで、地元の飲食店に立ち寄る客を増やす。ポータルサイトは10月下旬にも開設する予定で、外出先から閲覧できるように、スマートフォンの規格に合わせる。業種ごとの検索機能も設けて見やすくする。配布用の地図も作り、随時、協力店を増やして情報を更新していく。リーダーの平田尚士・平田椅子製作所社長(48)は「これまでは横のつながりが薄く、客が欲しい商品も『うちにはありません』と答え、みすみす客を逃していた」と振り返る。「競合を恐れず、補完し合う関係に」と町内の工場やショールームを見学して、顧客に説明できるように商品の知識を身に付ける。今後は収益を生み出すイベントを計画し、補助に頼らない運営を目指す。平田社長は「異業種の連携によって、今まで気づかなかった地域資源も掘り起こしたい」と意気込みを語る。

| まちづくりと地域振興::2015.5~ | 04:45 PM | comments (x) | trackback (x) |
2015.6.12 唐津焼・武雄焼から、地場産業の高度化について(2015/6/12、13、15に追加あり)
    
         唐津焼の皿             唐津焼茶器         唐津焼花瓶

   
 唐津焼一輪ざし    唐津焼焼き締め   唐津焼素焼き     武雄の唐津焼

 今日は、地場産業を高度化し発展させることによる産業振興の話です。なお、上は、Bestの画像を掲載したとは限りません。

(1)現在の唐津焼と武雄焼
 *1-1のように、4月29日から~5月5日に「唐津やきもん祭り」を開いて、多彩なイベントや陶芸家との交流を促したり、唐津市民会館で有名人のディスカッションをしたり、*1-2のように、外国人観光客に焼き物の魅力を伝えるための唐津焼英語版ホームページ(HP)を制作したりと、唐津市も唐津焼を売り出す努力をし始めた。日本人(特に地元の人)は、既に唐津焼を持っている人も多いが、韓国人や中国人を含む外国人はまだフロンティアの領域であるため、作品や作陶風景を写真で紹介し、買いたい人はHPを通しても買えるようにすれば、反響がある筈だ。また、梅干しや味噌漬けがおしゃれな唐津焼の入れ物に入っているのも、高級感があってよいかもしれない。

 私は、佐賀三区から衆議院議員になって地元廻りをしていた時、武雄市でも唐津焼を作っているのを知って意外に思ったが、武雄市で作られている焼物は、唐津焼の定番でも有田焼の定番でもなく、唐津焼風の陶器に少し有田焼風の色付けがしてあって、新鮮さがあった。まさに、*2のように、陶器か磁器かにこだわらない、双方の面白さを取り入れた器になっていて、驚くほどだったのである。

(2)工業製品への展開
 しかし、食器を作っている限り、強度を強くしてフロンティア市場を開拓しても需要と利益率には限界がある。そのため、唐津焼も芸術品や食器のジャンルとは別に工業製品のジャンルも開拓すべきだと思う。

 例えば、現在の舗装道路は水を通さないので、雨が降ると水が側溝に集まってすぐに川を氾濫させ、晴れるとあっという間に乾燥してしまうが、歩道に強化して砂を混ぜた唐津焼の素焼きを使えば、雨が降れば地中に浸み込み、晴れると水分が蒸発して道路の温度が上がらずにすむ上、植物にやさしい。また、焼き締めは、有機物がすべて焼き除かれて鉄を中心とする金属成分が多くなっているが、これを応用して大量生産すれば、道路で太陽光発電を行うのも安価になるだろう。そして、これらを東京オリンピックの国立競技場に採用してもらえれば、世界に対して宣伝効果が大きいと思われる。

 つまり、唐津焼も、地場産業のセラミックスに研究開発を加え、次世代の工業製品として大量に作ることを考えると、地域振興に繋がると考える。

*1-1:http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150419-00010004-nishinp-l41
(西日本新聞 4月19日)‎ 唐津やきもん祭り、29日開幕
 唐津市の市街地で29日~5月5日に開かれる「第4回唐津やきもん祭り」は、展示会から食事会、音楽会まで多彩なイベントが催される。食と器の縁結びがテーマで、坂本直樹実行委員長は「風情のある町をゆっくりと歩きながら、陶芸家と触れ合い、お気に入りの器を見つけてみませんか」と話している。唐津観光協会=0955(74)3355。100の唐津焼展 5月5日まで、市近代図書館。400年前の古唐津を中心に御用窯で焼かれた献上唐津、人間国宝・中里無庵の名品を展示。無料。唐津の祭と囃子(はやし) 5月3日午後3時、唐津市民会館。唐津の伝統文化に触れてもらおうと唐津ケーブルテレビジョンが開く。篠(しの)笛奏者の佐藤和哉さんのミニライブや唐津くんちの曳山(やま)囃子、小川島鯨骨切り唄などを実演する。無料。テーマ展「食と器の縁結び」 期間中、旧唐津銀行。酒器をテーマに新作を展示。無料。唐津焼シンポジウム 5月5日午後3時、唐津市民会館。「古陶のある暮らし 日常の贅沢(ぜいたく)」と題して脳科学者の茂木健一郎さん、古美術月刊誌編集長の白洲信哉さん、骨董(こっとう)店店主の勝見充男さんらが意見を交わす。無料。まちなか展示即売 期間中、唐津中央商店街など。空き店舗や町屋で人気作家、若手の焼き物を販売。日本酒やワイン、ビールを唐津焼の器で味わうイベントもある。唐津焼・料理のコラボ 期間中、老舗旅館やレストラン、カフェなどが窯元、作家とタイアップし、唐津焼の器で料理を提供する。要予約の店も。4日午後0時半から唐津シーサイドホテルで篠笛奏者、佐藤和哉さんのランチショー。春のお呈(てい)茶席 29日~5月6日、唐津城(有料)。5月3日~5日、埋門ノ館(同)。やきもんバス 5月3日~5日、唐津-有田(有田陶器市)を結ぶ臨時バスを運行する。大人千円、子ども500円。

*1-2:http://qbiz.jp/article/64223/1/
(西日本新聞 2015年6月11日) 唐津焼を英語で紹介 外国人客増に対応、市がHP作成へ
 佐賀県唐津市は、外国人観光客に焼き物の魅力を伝えようと唐津焼の英語版ホームページ(HP)を初めて制作する。市内70の窯元に協力を依頼し、賛同を得られた窯元を特集する。作家のこだわりや作陶風景を写真を用いて紹介する。市文化振興課によると、唐津を訪れる外国人観光客は近年、増加傾向にあり、伝統工芸品の唐津焼への関心も高い。観光協会や旅館には、外国人が見学できる窯元に関する問い合わせも寄せられているという。そこで「外国人にも唐津焼を分かりやすく紹介しよう」と英語版の制作を決めた。HPへの掲載を承諾した窯元の紹介文を、2013年度に制作した日本語の唐津焼HPを参考にしながら英語に翻訳する。制作はデザイナーやHP制作業者に発注する予定で事業費は98万円。来年3月の完成を目指す。同課の担当者は「海外では有田焼が有名だが、欧州などで唐津焼にも注目が集まっている。外国人観光客にも窯元に足を運んでもらい、日本の美を感じてほしい」と話している。

*2:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10105/196718
(佐賀新聞 2015年6月12日) 磁器と陶器競演 12日から、凌山窯で窯開き
 武雄市若木町川古の凌山窯で12日から3日間、窯開き展がある。磁器の松尾重利さん(80)=日展会友=、陶器の松尾潤さん(54)=日本工芸会正会員=親子が約300点を展示する。重利さんは「食と器の大切さを見直してほしい」という気持ちで、大きさや文様などに気を配った使いやすいカップや皿などを提案する。染付、青白磁、釉裏紅(ゆうりこう)の花器やつぼ、茶道具なども並ぶ。潤さんは赤い焼締作品に力を入れた。灰がかからない部分に生まれる赤にこだわった茶わんや湯飲み、鉢などのほか、塩釉の花器、唐津や粉引の食器など多彩だ。「カップや湯飲みなど、自分のものにこだわっている人も多い」と、普段使いの作品も多い。窯は若木小近く。抹茶の接待もあり、周辺のアジサイも見ごろになっている。同窯の電話は、0954(26)2422。


PS(2015/6/12追加):*3の国土形成計画は、地域間の人、物、金、情報が双方向に流れる「対流促進型国土」を形成し、「コンパクト化」と「ネットワーク化」を進め、再生可能エネルギーや農林水産業等の地域資源を活用して雇用・所得の創出を目指すという点で賛成だが、地場産業を高度化して自立できる地域を増やすことも加えたい。なお、政府は今後、この計画に対する国民からの意見を募集するそうだ。

*3:http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=33565
(日本農業新聞 2015/6/6) 「小さな拠点」推進 国土形成計画 国交省が最終案
 国土交通省は5日、国土審議会計画部会に今後10年の国づくりの指針となる新たな「国土形成計画」の最終案を提示した。人口減少に対応するため「個性あふれる地域づくり」を目指し、地域間の対流を促す。農山村では「小さな拠点」を広げ地方移住を活発にする。一方、住宅や施設などを中核都市に集約する「コンパクトシティー」の推進も盛り込んだ。最終案では(1)安全で豊かさを実感できる国(2)経済成長を続ける活力ある国(3)国際社会の中で存在感を発揮する国――を目標として提示。国土の基本構想に地域間の人、物、金、情報が双方向に流れる「対流促進型国土」の形成を掲げた。生活に必要な各種機能を一定の地域に集約する「コンパクト化」と各地域をつなげる「ネットワーク化」を進める。農山村では、小学校区など複数の集落が集まる地域に買い物や医療、福祉などのサービスを集め、各集落を結ぶ交通手段を確保する「小さな拠点」づくりに取り組む。再生可能エネルギーなど地域資源を活用した雇用と所得の創出を目指す。農林水産業では輸出や農業経営の法人化、農家を主体とした6次産業化の推進を明記。担い手への農地集積も進める。都市部では中核都市の人口を増やし、生活サービスを集約化するコンパクトシティーを広げる。同計画にはこの他、文化、観光、交通体系、情報通信、防災、環境保全、共助社会づくりの実現に関する各種基本的施策も記した。座長を務めた中京大学の奥野信宏教授は「農山村の切り捨てではなく、人口減少の中で知恵を絞り、切り開いていく必要性を計画に打ち出した」と述べた。政府は今後、同計画に対する国民からの意見を募集。8月上旬までに閣議決定したい考えだ。閣議決定を受け、各省庁や都道府県、市町村は同計画に基づき、具体的な支援策を講じる。


PS(2015/6/13追加):*5-2のように、後期高齢者が急増する東京圏で医療・介護施設や人材不足が危機的状況になるため、(医療・介護に余力のあることのみを魅力として??)高齢者の地方移住を推進するというのは東京圏の身勝手である。そのため、*5-1のように、佐賀県知事が、「せっかく全国で地方が素晴らしいという雰囲気が盛り上がっている中で高齢者は地方移住となると、押しつけと受けとめられる」として否定的な見解を示したのはもっともだ。また、都市部にいる高齢者は、多様な地域から出て来た人が婚姻関係を結んでいるため、そのうち一人のふるさとに移住すればよいというものでもない。

 しかし、*4のように、地場産業を高度化したり農林漁業を6次産業化して国内外に販路を開拓したりするには、都市部で食品会社や商社等に勤務していた高齢者や熟年層が必要な能力・経験・人的ネットワーク等を持っているため、同窓会や県人会などを使って必要な人材を探すのがよいと考える。

 
              *4より                    *5-2より
*4:http://qbiz.jp/article/64422/1/
(西日本新聞 2015年6月13日) 【点検・佐賀県予算】(下)産業振興 農業「磨き上げ」図る
 地域の活力に欠かせない産業振興をどう図るか。山口祥義知事は県政運営の軸に「佐賀らしさを磨く視点」を掲げており、補正予算案でも農林水産業や地場製造業の振興策が並んだ。農林漁業者が生産、加工、販売などを一体的に手掛ける「6次産業化」はビジネスチャンスを広げる可能性があるとして県が取り組みを進めるが、新たに食品加工業者などに向けた支援事業(1億1474万円)を打ち出した。これまで生産者への支援策は行ってきたが、なかなか6次産業化に結びついていない。国の支援が得られる事業計画を策定した事業者は18件(5月29日現在)と、九州で最も少ない。「6次産業化は販路開拓や加工技術が鍵で、生産者がノウハウを持たずに二の足を踏む例もある。『2次』や『3次』の事業者との連携を後押ししたい」(県新産業・基礎科学課)。設備投資に対する補助や、企業と生産者と引き合わせる場を提供していく。生産者向けの新たな支援策も設ける。“農の夢”応援プロジェクト(1976万円)は4カ年事業で、農業者が先進的な知識や経営を学ぶ目的の研修や、新規就農希望者が地域の農家に実地訓練を受ける研修場「トレーニングファーム」の整備に取り組む。ものづくり産業支援では、人材育成の基金創設(10億円)が目玉だ。県内には機械製造や金属加工、窯業など製造業が多いが、県内の工業高卒業生の約4割が県外に就職するという。ものづくりの魅力を教育現場に伝えることや、技術の磨き上げに取り組む企業を支援していく。知事は「かつてものづくり、人づくりで世界をリードした佐賀を再興したい」と強調する。基金事業は4年間の予定で、産学官の研究会を立ち上げてさらに施策を練る方針。地場産業を再評価する機運を高める「種」はまかれるが、従事者が増える「芽」につなげるための実効性ある政策も問われてくる。

*5-1:http://qbiz.jp/article/64413/1/
(西日本新聞 2015年6月13日) 佐賀知事、高齢者地方移住の「押しつけ」懸念
 民間の政策提言機関「日本創成会議」(座長・増田寛也元総務相)が提言した東京圏の高齢者の地方移住について、佐賀県の山口祥義知事は12日の定例会見で「あまりその話には乗りたくない」と否定的な見解を示した。九州の知事で明確に異を唱えたのは初めてとみられる。山口知事は提言について、「せっかく全国で地方が素晴らしいという雰囲気が盛り上がっている中で、唐突に高齢者は地方移住で、となると、地方への押しつけと受けとめられるのではないか」と懸念を表明。財政上の負担の問題も挙げ「施設はどうなるのか。財源は国がしっかり持ってくるのか」と疑問を示し、佐賀県では子どもから高齢者まで快く暮らせるような施設を整えたいとして、「高齢者に絞って議論されない方がいい」と述べた。

*5-2:http://qbiz.jp/article/63809/1/
(西日本新聞 2015年6月5日) 東京圏高齢者の地方移住を提言 医療・介護「深刻化」
 有識者でつくる日本創成会議(座長・増田寛也元総務相)は4日、後期高齢者が急増する東京圏で医療・介護の施設や人材の不足が危機的状況になるとして、高齢者の地方移住の推進などを国や自治体に求める提言を発表した。医療・介護に余力のある「2次医療圏」として、北九州市や大分県別府市など全国41地域を示した。東京都内で記者会見した増田氏は、東京圏(東京、埼玉、千葉、神奈川の4都県)で2025年までの10年間に、75歳以上の後期高齢者が推計175万人増えると説明。その結果、介護施設の収容能力は全国平均を下回り、「高齢者が施設を奪い合う事態になる」と述べた。医療・介護に携わる人材不足も深刻になる。25年時点で介護職や看護職などを80万〜90万人増やす必要に迫られる。東京圏外から人材が大量に流入すれば、地方の人口減少が加速すると警鐘を鳴らした。具体的な対策として挙げたのは、東京圏の高齢者の地方移住、外国人介護人材の受け入れ推進、4都県の政策連携など。地方移住に関連して、会議メンバーの高橋泰国際医療福祉大大学院教授は、緊急な重病に対応できる病院の近さ、75歳以上の介護ベッド数などを基に「医療・介護に余力のある41地域」を紹介した。九州は8地域で、関東と東海はゼロ。高橋氏は「自治体は魅力に気付いて、積極的に動いてほしい」と移住者の受け入れを促した。増田氏は「東京一極集中のリスクは地震だといわれていたが、膨大な高齢者が集積することの方が脅威になる」と話し、日本全体の問題ととらえるべきだと強調した。
◆医療・介護に余力のある地域(九州分)
 福岡県北九州市、福岡県大牟田市、佐賀県鳥栖市、長崎市、熊本市、熊本県八代市、大分県別府市、鹿児島市
■日本創成会議 中央省庁の事務次官経験者、産業界の代表者、大学教授らで構成し、2011年に発足。昨年5月、40年時点で20〜39歳の若年女性が10年と比べ半分以下になる自治体が全体の約5割に当たる896市区町村に上るとの試算を公表。「将来的に消滅の可能性がある」と指摘、人口減少問題への関心を集めた。


PS(2015/6/15追加):*6の解決法は、道路整備にかかる時間と費用を削減し、整備の効果を最大限に発揮させることだ。そこで、道路を作るのに時間と金がかかっている土地の収用と建設を省力化するため、JR唐津線を高架にして一階を道路にすれば、鉄道の複線化と道路建設の両方の問題が一度に解決する。国は、現在の交通量を調べて必要性を検討したいとしているが、鉄道や道路は、それが先に整備されてから周囲に住宅や工場ができるものであり、工場や住宅ができてから鉄道や道路を整備すべきものではない(東京の地下鉄も、建設当初は大赤字だったそうだ)。そのため、最近はまちづくりにも進出している九州JRと協力しながら、21世紀の緑あふれる都市計画を作り、全体としては低コストで鉄道と道路のインフラを同時に作って佐賀空港まで繋げるのがよいと考える。ただし、これには国土交通省が都市局、道路局・鉄道局・航空局と分かれているのがややこしくなりそうであるため(http://www.mlit.go.jp/page/kanbo01_hy_002577.html 参照、本来はインフラ整備をまとめて政策の総合性とコスト削減を考えた方がよいと思う)、地方自治体が総合企画をする必要がある。

     
     *6より      (参考)福岡空港周辺の3階建道路  杜の都、仙台の街並み
*6:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/197421
(佐賀新聞 2015年6月14日) 佐賀唐津道路 計画指定20年 開通4割 完成いつ
■国は西九州道、有明海沿岸道優先 沿線自治体「福岡へ流出続く」
 佐賀市と唐津市を結び、南北の大動脈として期待される「国道203号佐賀唐津道路」が地域高規格道路の指定を受けて20年が過ぎた。昨春、厳木バイパスが全線開通し、多久市から唐津市相知町まで16キロの整備を終えたが、全長約40キロのうち、開通区間は4割ほど。西九州自動車道や有明海沿岸道路の整備が着々と進む中、沿線自治体からは「早く佐賀と唐津を結ばないと福岡への流出が続くばかり」と不満も出ている。唐津市役所で5月18日に開かれた整備促進期成会総会には沿線5市町の首長や議長らが顔をそろえた。多久以南は工事未着手で、小城市の江里口秀次市長は「市内が整備区間指定を受けて、もう12年目。早期の着手を心待ちにしている」と事業主体である国や県に求めた。県内の幹線道路は長崎自動車道(1990年に県内全線開通)に加え、北は西九州自動車道、南は有明海沿岸道路の整備が進む。この東西を貫く3本の道路を南北に結ぶのが佐賀唐津道路で、沿線自治体関係者は「ネットワーク効果は非常に大きい」と訴える。
■アピール弱い
 ただ、整備する国交省としては、西九州、有明海沿岸に続く“第三の道路”の位置付け。福岡や長崎につながる二つの道路と比べれば優先順位は低い。佐賀国道事務所の柳田誠二所長も総会で「県内の主要都市を結び、時間短縮になるというだけでは国へのアピールは弱い」と指摘し、「たくさんの事業を抱えるなか、佐賀唐津道路にどうやってお金を回すか、大変厳しい」と現状を説明した。未着工区間は相知から西九州自動車道唐津インターまでの約10キロと、多久市から佐賀市嘉瀬周辺に予定されている沿岸道路ジャンクションまでの約15キロ。県は佐賀空港への波及効果や渋滞状況も踏まえ、多久-佐賀間を優先する方針。2023年には佐賀国体を控えており、国道34号以南については県が事業主体となり、整備を急ぐ考えだ。
■早期整備求め
 多久-佐賀間は本年度中に環境影響調査の評価書をまとめ、都市計画を策定し、来年度にも具体的な設計や用地買収に向けた準備に入る。一方、昨年3月に厳木バイパスは完成したものの、相知-唐津の延伸は白紙状態。国は「まず、現在の交通量を調べ、必要性を検討したい」と述べるにとどめており、唐津市側は「後回しにされれば、いつ完成するか分からなくなる」と危機感を募らせる。隣接する東松浦郡玄海町も原発事故時の避難道路として佐賀唐津道路の早期整備を求めている。岸本英雄町長は「西九州自動車道の整備が進んでいる今、避難だけでなく、買い物も産業もみんな福岡に行った方がいいとなる。佐賀との結び付きを強めるためにも間髪入れずやった方がいい」と唐松地区の思いを代弁した。94年10月の国の指定から20年。この間、財政難に伴う公共事業費の大幅カットなどで大きく遅れてきた。残り区間の工事も巨額の支出が予想されるだけに完成は遠い道のりだ。道路網の整備でいかに地域活力を生むか、説得力ある提案が求められている。
■佐賀唐津道路
 佐賀市と唐津市を結ぶ地域高規格道路で、1973年に事業が始まり、94年に有明海沿岸道路とともに計画路線に指定された。西九州自動車道と長崎自動車道、有明海沿岸道路を結ぶ南北約40キロ。全線開通すれば、唐津市から佐賀空港までが1時間圏に入る。多久-佐賀の15キロは本年度中の都市計画策定を目指しており、来年度以降、設計や用地買収に向けた準備に入る。唐津-相知10キロは環境影響調査もまだで、整備のめどは立っていない。

| まちづくりと地域振興::2015.5~ | 11:29 AM | comments (x) | trackback (x) |

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