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2017.2.18 辺野古新基地建設とオスプレイについて (2017年2月19、23、26日に追加あり)
    
    オスプレイ      みさご(鷹の一種)        ワシ           ツバメ

     
  2016.12.16産経新聞      フグ          トビウオ     マンタ(エイ)
 墜落したオスプレイの処理

(図の説明:「オスプレイ」は鷹の一種である「みさご」の名前をとったものだが、墜落の報告が多く、顔・形が鷹よりもフグに似ており、素人目に見ても威嚇効果はあるが流体中での抵抗が大きくて飛びにくそうだ。私は、生物に学ぶのなら、鳥はツバメ、魚はトビウオがスピードが出そうで、機体全体で浮力(揚力)を作りたければマンタではないかと考える)

(1)日米両首脳の合意について
1)日米安全保障条約第5条の尖閣諸島に適用
 安倍首相が、2月10日、*1-1のように、ワシントンのホワイトハウスでトランプ米大統領と初の首脳会談を行い、日米安全保障条約第5条が沖縄県の尖閣諸島に適用されることを確認したのは、日本が望むように進んでよかった。

2)米軍普天間飛行場の辺野古移設
 両首脳が、「米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古への移設が、唯一の解決策」としたのも、日本政府が望む方向に話を進めたようだが、実際には唯一ではなく、他にもっと安価で賢いやり方があるため、「唯一」という根拠は「ガラス細工のような」という感傷的な言葉以外では一度も説明されたことがない。そのため、観光資源にもなる美しい自然を破壊しつつ、そのために多額の税金を無駄遣いしていることについては、沖縄県民以外の国民も納得できない人が多い。

 全国紙の毎日新聞も、*1-2のように、「辺野古移設で沖縄の美しい海がまた埋め立てられていく」「海上工事に政府が着手し、移設反対派に怒りと焦燥感が交錯している」としており、私も同感だ。そして、キャンプ・シュワブゲート前に集結して抗議の声をあげた移設反対派や翁長知事・稲嶺名護市長に感謝するとともに、*1-3のように、沖縄の民意が日本政府の意志で置き去りにされそうなことで、日本の民主主義や三権分立に絶望感を感じる。

3)経済分野
 自由で公正な貿易ルールに基づき日米間や地域の経済関係を強化するそうだが、アジア太平洋地域など一定の地域だけでまとまるのは、本当は公正ではないだろう。また、日米貿易摩擦と言えば必ず自動車を取り上げているが、現在、日本の自動車市場の関税率は0%で完全に開放している上、*4-1のように、トヨタの工場はインディアナ州に立地しており、その問題はかなり前に解決している。

 その上、次世代自動車は、*4-2のように、電気自動車(EV)では「テスラ」の方が進んでおり、自動運転車でも、*4-3のように、「テスラ」の方が進んだため、いつまでも自動車は日本の方が強いと考えるのは、アメリカ政府も日本政府もおかしい。しかし、トランプ大統領は、*4-4のように、環境長官に温暖化懐疑派を据え、「パリ協定」の離脱にも言及しており、アメリカ大統領の政策によって、せっかくアメリカで発展した次世代自動車の普及が遅れる可能性もある。つまり、トランプ大統領の産業政策は、20~30年遅れているのだ。

 なお、トランプ大統領は、日本の金融政策を「円安誘導」としており、確かに日本は金融緩和したため円の価値が下がって円安になってはいるが、私は、この程度が円の実力だと考える。また、円など通貨の為替レートは、「貿易収支+金融収支」が黒字なら上がり、赤字なら下がるものであるため、日本も無理せずに復興用の建築資材や外国人労働力を輸入すれば、もっと円安になった筈である。

(2)「辺野古が唯一」ではない理由
 日米防衛相は、*3-1、*3-2のように、「米軍普天間飛行場の移設に伴う名護市辺野古への新基地建設は『“唯一”の解決策』との認識で一致した」とのことだが、“唯一”である理由を説明されたことは一度もない。そして、既に空港のある人口の少ない離島の使用などの他の代替案と比較検討された結果ではないため、これは、米国の要請ではなく、日本の要請だと、私は考える。

 また、*3-2に書かれているように、在日米軍駐留経費の日本側負担は、2015年度で約1,910億円、負担率86.4%、韓国は負担率4割、ドイツは負担率3割程度で、日本は米軍駐留や防衛に関して、現在では、経済も含めて米国に譲歩ばかりを強いられるほどの負い目は負っていない。

 なお、沖縄県の翁長知事は2014年11月の知事選で辺野古移設反対を公約に掲げて圧勝し、その後、沖縄県内では2014年1月の名護市長選、2014年12月の衆院選全選挙区、2016年7月の参院選のいずれも新基地建設を拒否する候補が当選し、2016年1月の宜野湾市長選は現職が勝利したものの選挙戦で辺野古移設の賛否を明言しておらず、2016年6月の県議選では翁長県政与党が圧勝しているため、沖縄県民の民意は明らかだ。そのため、翁長沖縄県知事があらゆる権限を使って建設を阻止するのは正しい。

 そのため、日本政府は「基地で潤わせている沖縄」というような僭越な先入観は捨て、観光も含む沖縄県の産業政策を真面目に検討すべきだ。そして、これによって、辺野古埋め立ての膨大な予算や基地の補償金を節約できる上、既にスタートしている沖縄のエンジンに火をつけることができる。

(3)オスプレイについて
 政府は、*2-1のように、数回にわたる選挙結果や世論調査で示された辺野古新基地建設反対の圧倒的多数の民意を踏みにじり、大規模な海域を埋め立てる海上工事に着手したそうだが、その地域は、世界でも貴重な自然が息づく海域で、日本国民や沖縄県民の財産だ。そのため、「宝の自然を破壊すること」「沖縄県民の基地負担が増えること」「国民の無駄な歳出が増えること」などの理由で、私も辺野古新基地建設に反対だ。

 また、オスプレイとは、タカ科の鳥「ミサゴ」の英語名だそうだが、欠陥機と言われるオスプレイは、垂直離着陸が可能な飛行機であるという点で画期的ではあるものの、確かに流体の中での抵抗が大きく、飛びにくそうな機体なのである。そのため、空中を飛ぶ鳥に学ぶのならタカよりツバメの方がスピードが出て飛びやすそうであるし、同じ流体である水中を泳ぐ魚に学ぶのならフグに似た体形のオスプレイよりも、スピード重視ではトビウオ、浮力重視ではマンタ(エイ)を参考にした方が機能的にできると思われる。

 その上、オスプレイは、神業のような空中給油をしているのだから事故が起こるのは当然で、空中で給油しなくてもよいように水素燃料を使うなど、安全で長距離飛行が可能な次世代燃料に変更すべきだ。なお、運んでいる荷物の中に放射性物質や毒物が含まれる可能性があるなど、とんでもない話だ。

 さらに、*2-2のように、目的は不明だが、米軍は200フィート(約60メートル)での飛行もあり得るとしており、オスプレイの飛行訓練ルートは東北から九州まで六つあるため、沖縄だけの問題ではない。

*1-1:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12793443.html (朝日新聞 2017年2月12日) 尖閣に安保、共同声明 経済対話、枠組み新設 日米首脳、同盟強化を確認
 安倍晋三首相は10日午後(日本時間11日未明)、ワシントンのホワイトハウスでトランプ米大統領と初の首脳会談を行った。両首脳は日米同盟の強化で一致し、米国の日本防衛義務を定めた日米安全保障条約第5条が沖縄県の尖閣諸島に適用されることを確認した。また、麻生太郎副総理兼財務相とペンス副大統領による日米経済対話の枠組み新設で合意した。日米両政府は、首脳会談の成果をまとめた共同声明を文書で発表した。会談は約40分間行われ、終了後に両首脳が共同で記者会見。その後、経済分野を中心に約1時間のワーキングランチが開かれた。会見で、首相は「日米同盟の絆は揺るぎないものであり、私とトランプ大統領の手でさらなる強化を進めていくという強い決意を共有した」と強調。トランプ氏は「同盟関係にさらなる投資を行い、私たちの防衛力をさらに高めていくことが大切だ」などと語った。トランプ氏は大統領選の期間中、在日米軍の撤退や、駐留経費の負担増を日本政府に求めることを示唆していたが、会見では「私たちの軍を受け入れてくれている日本国民に感謝したい」と表明。日本側の説明によると、首脳会談でも取り上げなかったという。両首脳は、米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の同県名護市辺野古への移設計画について、「普天間飛行場の継続的な使用を回避するための唯一の解決策」と位置づけた。北朝鮮には核・ミサイル開発の放棄を求め、東シナ海や南シナ海で海洋進出を強める中国を念頭に、地域の緊張を高める行動は抑制すべきだとの認識で一致した。また、経済分野では、自由で公正な貿易のルールに基づき、日米二国間の枠組みも排除せず、アジア太平洋地域の経済関係を強化していくことを確認した。新設する経済対話では、(1)財政・金融政策(2)インフラやエネルギーなどの協力プロジェクト(3)二国間の貿易枠組みの3分野を包括的に議論することにした。一方、米国へのインフラ投資や雇用創出などを盛り込んだ日本政府の経済協力案「日米成長雇用イニシアチブ」は首脳会談では示さず、日米間で今後、検討していくことにした。トランプ氏が問題視していた日本の自動車貿易や為替政策も取り上げられなかった。トランプ氏が難民や中東・アフリカ7カ国からの入国を一時禁止した問題についても、会談では議題にならなかったという。終了後の会見で、この問題を問われた首相は「難民政策、移民政策はその国の内政問題であり、コメントは差し控えたい」と述べた。(ワシントン=高橋福子)
■日米両首脳の合意事項(骨子)
▼日米同盟はアジア太平洋地域における平和、繁栄及び自由の礎
▼日米安全保障条約第5条は尖閣諸島に適用
▼米軍普天間飛行場の辺野古移設は唯一の解決策
▼自由で公正な貿易のルールに基づき、日米間や地域の経済関係を強化
▼麻生太郎副総理とペンス副大統領による日米経済対話の新設
▼安倍晋三首相はトランプ大統領の年内訪日を招請、ペンス氏の早期の東京訪問を歓迎し、トランプ氏は招待を受け入れ

*1-2:http://mainichi.jp/articles/20170206/k00/00e/040/212000c (毎日新聞 2017年2月6日) 辺野古移設 沖縄の美しい海、また埋め立てられていく
●海上工事に政府が着手 移設反対派に怒りと焦燥感が交錯
 沖縄の美しい海を埋め立てて巨大な米軍基地を造るための工事がまた一歩、前へと進んだ。米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古への県内移設に向け、政府が6日、初めて海上工事に着手。辺野古の米軍キャンプ・シュワブのゲート前では、移設反対派が作業に向かう車両を阻止し、排除する機動隊と衝突した。埋め立てへのカウントダウンが始まり、反対派には怒りと焦燥感が交錯した。まだ真っ暗な午前6時前、前夜の雨もあり肌寒いキャンプ・シュワブゲート前に続々と移設反対派が集結。「これ以上工事を進めないためには、作業員を中に入れないという抵抗をせざるを得ない」。約150人が「辺野古新基地NO」「辺野古埋立阻止」などと書かれたプラカードを掲げるなどして抗議の声をあげた。同県南風原町の稲福次義さん(63)は「市民の意思をきょう示さなければ、政府の意向を沖縄が黙認したことになる。民意を無視しようとも、県民の意思は揺るがない」と語気を強めた。  午前8時15分、作業員が乗った乗用車が到着。作業現場に向かうためキャンプ内へ進入しようとしたが、反対派は入り口前に座り込んだ。すると沖縄県警の機動隊が隊列を組んで阻みながら、隣接する出口の方から工事車両を通した。反対派からは「きちんと手順を踏め」と怒号が飛んだ。その後も続々と大型トラックやクレーン付き車両などが到着。「帰れ、帰れ」。反対派はゲート前で腕を組んで壁を作り声を張り上げた。一進一退のせめぎ合いの末、午前10時半ごろ、足止めとなっていた車両がキャンプの方へ。機動隊は約80人を次々に排除。腕をつかまれた高齢の男性は「県警は県民とアメリカとどっちが大事なんだ」と叫んだ。ゲート前には、辺野古への移設阻止を訴えるため翁長雄志(おなが・たけし)知事と訪米し帰国したばかりの稲嶺進・名護市長も駆けつけた。「アメリカでも、沖縄の置かれている状況はよく聞いてもらえたと思っている。全く無視し続けるのは日本政府だ。訪米中に防衛大臣が『辺野古が唯一の解決策』との見解を示すなど、恥も外聞もない」と怒りをあらわにしていた。

*1-3:http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2017020702000134.html (東京新聞社説 2017年2月7日) 辺野古海上工事 民意は置き去りなのか
 日本は法治国家だが民主主義国家でもある。安全保障は国の専管事項でも、選挙に表れた沖縄県民の民意を置き去りにしては、日米安全保障条約で課せられた基地提供の義務は円滑には果たせまい。政府がきのう、沖縄県宜野湾市の米軍普天間飛行場の「移設」に向けて、名護市辺野古の海上で代替施設の本体工事に着手した。海水の汚濁拡散を防ぐ防止膜の設置を経て、五月にも埋め立て区域の護岸造成を始める、という。沖縄県や名護市など、地元自治体が強く反対する中での工事の着手である。到底、容認できない。政府が海上での工事に着手したのは、沖縄県と国とが争っていた裁判で昨年十二月、県側の敗訴が最高裁で確定したためでもある。菅義偉官房長官は会見で「わが国は法治国家だ。最高裁判決や和解の趣旨に従い、国と県が協力して誠実に対応し、埋め立て工事を進める」と工事を正当化した。確定判決に従うのは当然だが、日本は民主主義国家でもある。安倍内閣は自由、民主主義、人権、法の支配という基本的価値を重んじると言いながら、翁長雄志県知事や稲嶺進名護市長に託された「県内移設」反対の民意をなぜないがしろにできるのか。訓練に伴う騒音や事故、米兵らによる事件など、米軍基地の存在に伴う地元住民の負担は重い。昨年、米軍北部訓練場が部分返還されたが、それでも沖縄県内には在日米軍専用施設の七割が集中する。日米安保体制を支えるため沖縄県民がより多くの基地負担を強いられる実態は変わらない。北部訓練場返還はヘリパッドの新設が条件だった。普天間返還も代替施設建設が条件だ。県内で基地を「たらい回し」しても県民の負担は抜本的には軽減されない。国外・県外移設こそ負担を抜本的に軽減する解決策ではないのか。安倍内閣はマティス米国防長官と、辺野古移設が唯一の解決策と確認したが、硬直的な発想は問題解決を遠のかせる。政府は工事強行ではなく、いま一度、沖縄県民を代表する翁長氏と話し合いのテーブルに着いたらどうか。稲嶺氏は、海上での工事着手を「異常事態だ。日本政府はわれわれを国民として見ているのか」と批判した。怒りの矛先は、法治国家と言いながら、憲法に定められた基本的人権を沖縄県民には認めようとしない政府に向けられている。本土に住む私たちも、そのことを自覚しなければならない。

<オスプレイ>
*2-1:http://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-440112.html (琉球新報社説 2017年2月7日) 辺野古海上工事強行 海域破壊取り返せない 県は提訴し対抗策尽くせ
 政府は大規模な海域埋め立てに向けた辺野古新基地の海上工事に着手した。幾たびの選挙結果や世論調査で示された建設反対の圧倒的な民意を踏みにじる暴挙に強い怒りを禁じえない。着手を前に県は詳細な説明を求めていたが、政府は一方的に打ち切った。地方自治を無視する政府の横暴に強く抗議する。新基地は危険なオスプレイの配備など在沖基地をさらに強化し、県民の財産であり、世界にとっても貴重な自然が息づく海域を決定的に破壊する。改めて政府に工事の即時中止を要求し、県には工事阻止の手段を尽くすよう求めたい。
●オスプレイ欠陥明らかに
 辺野古新基地建設は「県民の基地負担増」「大規模な自然破壊」の大きな二つの理由で到底、容認できない。辺野古新基地はヘリ基地と船舶の港湾機能を併せ持つ施設である。オスプレイほか最新鋭のF35戦闘機の配備、運用で沖縄の基地負担は確実に増す。その欠陥機オスプレイの配備計画を政府は長く隠蔽(いんぺい)し、県民を欺き続けてきた。オスプレイは昨年末墜落し、県民の不安は的中した。空中給油訓練中の事故が、機体構造と訓練態様の欠陥を浮き彫りにした。琉球新報が報道した米軍資料は「空中給油のホースや装備がオスプレイにぶつかることがあり得る」と機体構造の欠陥を認め、「プロペラにぶつかれば大惨事を起こしかねない」と墜落事故を予想していた。その通りの墜落事故が今回、起きた。「ホースがプロペラにぶつかる」構造欠陥が根本的に改善されない限り、またも「大惨事」が起きるのは必然だ。オスプレイの安全運用を否定する極めて重大な新事実の報道にも米軍、政府は口をつぐんでいる。そして海上工事を強行した。県民の命を犠牲に米軍基地建設を優先しているのである。埋め立てられる海域は、本島周辺に残された最後の優良な自然海域の一つだ。日本自然保護協会が大浦湾で行った調査で、海底のサンゴ被度は40%を超し、「健全な状態」と評価された。228個もの大型ブロック投入はサンゴを傷つけ、固有の自然体系に影響を及ぼそう。国際自然保護連合は何度もジュゴン保護を勧告したが、政府は無視した。浮具設置でジュゴンは姿を消した。埋め立てにより大浦湾の自然は壊滅的なダメージを避けられない。海域の豊かな自然は、大切な観光資源でもある。貴重生物の命と県民の観光資源が、今まさに奪われようとしているのである。
●国際連帯の情報戦略を
 来日した米国防長官は首相、防衛相と会談し、辺野古新基地推進を確認した。県民や県の異議申し立てを一顧だにしない姿勢だ。日米同盟が政府の権力を駆使して沖縄の民意を圧殺しようとしているのである。しかし県民は屈しない。日米の犠牲に甘んずることを県民は決して許容しない。日米両政府の強固な圧力に屈せず、県は法的、行政的なあらゆる対抗措置を講じてもらいたい。政府は矢継ぎ早に既成事実を積み上げ、ブロック投下後に汚濁防止膜を設置し、護岸設置の埋め立て工事に進む計画とされる。3月末に期限が切れる岩礁破砕許可の更新手続きをも一方的に「不要」と主張し、回避する方針だ。海域埋め立てで失われる自然は回復できない。県は一刻の猶予も置かず、前知事による埋め立て承認の撤回や、不当な岩礁破砕に対する提訴に踏み切るべきだ。日米両政府の抑圧を受けながらも県民は孤立してはいない。国内外に建設反対の世論を広げ、両政府に突き付けねばならない。政府の「地元住民は承認している」「オスプレイは安全」などの情報操作に対抗する必要がある。軍事、法律、行政の専門家や環境保護団体を巻き込み、国際連帯を強める情報戦略が重要になる

*2-2:http://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-444661.html (琉球新報社説 2017年2月15日) オスプレイ危険高度 直ちに飛行停止せよ 「欠陥と低空」二重の不安
 米海兵隊の垂直離着陸輸送機MV22オスプレイに関する日本政府の二重基準が明らかになった。オスプレイは米軍普天間飛行場代替施設の辺野古新基地への配備が既定路線でありながら、日本政府の意向で公文書から配備に関する表記が削除された経緯がある。日本政府が国民世論の反発を避けるための方策であり、当初からその配備には疑問符が付いた。今回明らかになった事実も深刻だ。日本政府は安全策として最低安全高度を500フィート(約150メートル)以上と県民に説明したが、米軍の運用上は200フィート(約60メートル)での飛行もあり得るとの内容だ。
●米軍の運用優先
 航空法施行規則によると、最低安全高度とはエンジンが停止した際に地上や水上の人、物に危険を及ぼすことなく着陸できる高度のことだ。人家密集地域で最も高い障害物から300メートル、水上などでは150メートルなどと定めている。2013年には操縦士が共同通信の取材に「低空飛行訓練は200フィートまで下げて飛ぶ」と答えている。オスプレイの飛行訓練ルートは東北から九州まで六つある。県外各地では実際に低空飛行訓練がこれまで実施されてきた。沖縄だけ低空飛行がないと言われても信じ難い。危険は沖縄だけにとどまらないのだ。オスプレイの配備に当たって、日米両政府の合意に「安全性を確保するため、その高度(500フィート)を下回る飛行をせざるを得ない場合もある」とのただし書きがあった。例外を設けることで国民の安全より、米軍の運用を優先したと言われても仕方がない。オスプレイの低空飛行が危険なのは、機体の構造に不備があり、緊急時に対応が困難だからだ。専門家によると、エンジン停止時に気流をプロペラに受けて回転させ、軟着陸する自動回転(オートローテーション)機能がオスプレイには欠けている。防衛省は自動回転機能を有するとしているが、それでも従来のヘリに比べて機体が重く、プロペラが小さいことから1分間に機体が落下する降下率は約5千フィート(1525メートル)とされる。既存のヘリの降下率は1分間に1600フィート(約487メートル)であり、オスプレイの落下速度は3倍にもなる。一方、オスプレイがヘリモードから固定翼モードに転換するには約12秒かかる。固定翼で滑空するにしろ、自動回転機能を使うにしても60メートルでは危険回避の手順を踏む前に機体は地面に激突する。
●拭えぬ疑念
 問題なのは日本政府がこれまで二重基準を容認してきたことだ。配備の事実隠し、最低安全高度の設定など国民への説明を避け、密室で米国と合意を重ねてきた。欠陥機との指摘があるオスプレイを配備する必然性が見当たらない。その上に危険な低空飛行を容認するならば、いつ頭上に落ちてくるか不安でならない。国民・県民を安心させるには運用改善といった小手先の対処では不十分だ。オスプレイの即時飛行停止しか解決策はない。ハワイでは15年に、低高度で空中制止したオスプレイが自らのエンジンで巻き上げた砂やちりによってエンジンが停止し、墜落した。米軍の報告書によれば、10~12米会計年度にアフガニスタンで起きたオスプレイの事故は約90時間に1件で、全航空機の約3746時間に1件と比べ突出している。そもそもオスプレイは軍用機として適当なのか。名護での墜落につながった空中給油をはじめ、荒れ地での離着陸などといった特殊な作戦行動に向かない構造的な欠陥があるとの疑念が拭えない。日本政府が米軍の顔色をうかがい、国民に二枚舌を使うような状況では、対策を取ることなど考えられない。沖縄をはじめ、全国各地の住民が危険な低空飛行、さらにはオスプレイ配備に反対の声を上げるしか道はない。

<“唯一”の根拠>
*3-1:http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201702/CK2017020502000124.html (東京新聞 2017年2月5日) 【政治】「辺野古が唯一」日米防衛相一致 翁長氏、反対へ決意新た
 訪米中の沖縄県の翁長雄志(おながたけし)知事は三日、マティス米国防長官と安倍晋三首相ら日本側が米軍普天間(ふてんま)飛行場(宜野湾(ぎのわん)市)の移設に伴う名護市辺野古(へのこ)への新基地建設を「唯一の解決策」と確認したことについて「私の決意はかえって強くなっている」と反対の思いを新たにした。今後もあらゆる権限を使って建設阻止を目指し、沖縄の民意を世界に発信し続ける方針だ。知事として三度目となる首都ワシントン訪問は、トランプ米大統領の就任直後で、米国のアジア太平洋政策が固まっていない時期を選んだ。米下院議員十二人との面会や講演を通し、国土面積の0・6%にすぎない沖縄県に、在日米軍専用施設の七割が集中する過重負担の軽減や、新基地計画の見直しを訴えた。その最中に、日米両政府が沖縄の民意を顧みず、辺野古新基地の建設推進で一致したことに、翁長氏は「沖縄県民に対して大変失礼なやり方」と反発。「県民の感情的な高まりが米軍全体への抗議に変わり、基地の安定運用に影響しかねない。日米安保体制に大きな禍根を残す」と指摘した。安倍政権は六日に海上での本体工事に着手する方針で、翁長氏はあらゆる権限を使って建設を阻止すると主張。沖縄県が工事主体の防衛省沖縄防衛局に対し三月末で期限切れを迎える県の「岩礁破砕許可」の更新が必要であると通知するなど、本体工事の続行に抵抗する構えを見せる。翁長氏は「沖縄県民の圧倒的多数が反対していることを、トランプ政権の関係者に粘り強く訴えていきたい」と今後も働き掛けを続ける考えだ。

*3-2:http://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-439193.html (琉球新報社説 2017年2月5日) 日米「辺野古唯一」 民意踏みにじる愚論だ
 稲田朋美防衛相とマティス米国防長官が初めて会談した。マティス氏は前日に安倍晋三首相とも会談した。これらの会談では日米同盟の一層の強化に取り組む方針を確認した。さらに米軍普天間飛行場の移設に伴う名護市辺野古への新基地建設について「唯一の解決策」との認識で一致したという。県民世論調査では7~8割が辺野古移設反対を示している。「唯一の解決策」との認識には断じて同意できない。訪米中の翁長雄志知事は「辺野古に固執すると日米安保体制に大きな禍根を残す」と批判した。当然だ。翁長氏は2014年11月の知事選で、辺野古移設反対を公約に掲げて圧勝して当選した。県内では14年1月の名護市長選、12月の衆院選全選挙区、16年7月の参院選のいずれも新基地建設を拒否する候補が当選した。16年1月の宜野湾市長選は現職が勝利したが、選挙戦で辺野古移設の賛否を明言していない。6月の県議選では翁長県政与党が圧勝した。これらの選挙結果を見ても、沖縄の大多数の民意は「新基地建設拒否」であることは明らかだ。それにもかかわらず、日米両政府は辺野古移設で強硬姿勢を取り続けている。沖縄の自己決定権を踏みにじる行為が民主主義社会でまかり通っていいはずがない。トランプ大統領が選挙中に増額要求を示唆した在日米軍の駐留経費負担に関しては、一連の会談で議題にならなかったようだ。15年度の日本側負担は約1910億円で、負担率は86・4%だ。これに対して韓国は4割、ドイツは3割程度だ。マティス氏も会見で「日本は負担の共有モデル」と評価しており、負担増など応じられるはずがない。増額要求がなかったからと喜ぶわけにはいかない。なぜならば、日本は16年度から5年間の経費を削減するよう米側に要求していたからだ。今後は減額要求すら困難な情勢になってしまった。すでにトランプ流の「取引」に引き込まれているではないか。外務省によるとマティス氏は普天間移設について、こう述べたという。「プランは二つしかない。一つは辺野古。二つ目も辺野古だ」。民意無視の愚論だ。沖縄からマティス氏に、言葉を投げ返したい。「プランは二つしかない。一つは県外。二つ目は国外だ」

<次世代の自動車>
*4-1:http://mainichi.jp/articles/20170212/ddm/008/010/109000c (毎日新聞 2017年2月12日) 日米首脳会談 懸念薄れ、市場好感 経済対話、楽観と警戒
 日米首脳会談で、トランプ氏が円安や自動車輸出への批判を控えたことについて、市場関係者の間に「期待した以上の内容」と好感する声が広がった。最近の市場の重しになっていた日米摩擦への懸念が薄れたことで、週明け以降の株価にも好影響を与えるとの見方が出ている。「正直驚いた。日本側の思い描いた形ではないか」(ニッセイ基礎研究所の矢嶋康次チーフエコノミスト)。「日本の外交チームが相当周到に準備した印象」(大和総研の熊谷亮丸チーフエコノミスト)--。首脳会談について「前向きのサプライズ」との声が相次いだ。市場では、トランプ氏が首脳会談で対日貿易赤字を問題視し、是正策を要求するとの見方が強かった。日銀の金融政策を「円安誘導」とけん制することへの懸念もあり、7日の外国為替市場で一時、2カ月ぶりの円高・ドル安水準をつけた。三菱UFJモルガン・スタンレー証券の藤戸則弘投資情報部長は「市場は身構えていたが、杞憂(きゆう)に終わった。最大の懸念が薄れたことで、日経平均株価は1月の高値の1万9600円台を超えてくる」と株価上昇に弾みが付くと予測する。今後の展開で市場関係者が注視するのが、ペンス副大統領と麻生太郎副総理による経済対話の行方だ。ペンス氏がトヨタの工場が立地するインディアナ州知事を務めた穏健派だけに、熊谷氏は「日本ペースで交渉できる可能性がある」と期待する。一方で、矢嶋氏は「トランプ政権の副大統領なので、雇用創出や貿易収支改善が進まなければ(批判の)発言を始める。楽観はできない」と警戒が必要との立場だ。通貨安批判への懸念も依然強い。大規模減税やインフラ投資を掲げるトランプ氏の政策は、海外からの資金流入を招く一方、日本は大規模金融緩和で長期金利を低く抑えており、円安・ドル高が進みやすい。BNPパリバ証券の河野龍太郎チーフエコノミストは「米国の経済環境を考えるとドル高は続く。いずれ日銀の金融政策が円安誘導をしているとの批判が再燃するリスクはある」と指摘している。

*4-2:http://qbiz.jp/article/103491/1/ (西日本新聞 2017年2月11日) テスラ充電施設 九州で初の設置  福岡・須恵町
 米国の電気自動車(EV)メーカー「テスラ」の日本法人が10日、福岡県須恵町に、テスラ車専用の急速充電施設を開設した=写真。同様の施設は国内14カ所目で、九州では初めて。本州から九州にテスラ車でドライブする人などの利用を想定している。30分の充電で270キロ走行できるという。施設は、九州自動車道のインターチェンジ近くのホームセンター駐車場にあり、充電器6台を置く。24時間利用できる。また、ヒルトン福岡シーホーク(福岡市)の駐車場にも普通充電器4台を設置した。テスラの日本法人は「今後も専用充電施設のネットワークを拡大したい」としている。

*4-3:http://www.nikkei.com/article/DGXMZO98310220R10C16A3000000/?n_cid=NMAIL002 (日経新聞 2016/4/11) 「渋滞苦」から解放 自動運転、簡易版でまずお試し
 「やっちゃえNISSAN」。歌手の矢沢永吉がハンドルから手を離してニヤリと笑う日産自動車のテレビCMが示すように、「自動運転車」の実用化が近づいている。2020年に市販化が期待されるのは、国内で「レベル3」と定義される自動運転車だ。加減速や制御のすべてをクルマが行い、緊急時のブレーキ操作だけをドライバーが担うものだ。自動運転車では、ドライバーの認知、判断、操作をサポートする要素技術が重要なカギを握るのだが、実は人間の目(認知)や手足(操作)を代替する技術の大半は、かなり熟成されている。「特に操作については、すでにクルマ側は人間の100倍の能力を発揮することが可能」(日産自動車ADAS&AD開発部の飯島徹也部長)というほどだ。例えば、ここ数年で普及した「自動ブレーキ」は、高精細のカメラやミリ波レーダー、超音波センサーを駆使して前方衝突を防ぐ。他にも、走行車線からクルマが出ないようにハンドルを自動制御する「レーンキープ技術」や、後方カメラ、センサーを使って駐車スペースを把握し、ハンドル操作をせずに済む「自動駐車システム」など、AI(人工知能)による複雑な判断を必要としない限られたシーンでは、すでに自動運転の要素技術が生きている。
■簡易版でテスラ先行
 これらを組み合わせて、簡易な自動運転機能を市販車でいち早く搭載したのが、テスラモーターズジャパンだ。同社の電気自動車「モデルS」は、ソフトウエアを2016年1月にアップデート。前方のミリ波レーダーや単眼カメラ、車体の周囲360度を感知する12個の超音波センサーを使って、「オートパイロット」「オートレーンチェンジ」「オートパーク」の3つが機能する。このうちオートパイロットは、前方車両の追従や自動ブレーキに加えて、ハンドルを制御して同じ車線を維持する機能だ。速度標識をカメラで認識しながら、規制速度のプラス10km/hを上限として加減速を行い、信号で完全停止した後も前方のクルマの発進を検知して自動で走り出す。この間、ドライバーはハンドルに手を添えておくだけだ。実際に試乗すると、最初はブレーキペダルをすぐ踏めるよう身構えていたが、モデルSは悠然とカーブを曲がり、前のクルマに対して適度な車間距離を保ちつつ実に滑らかに走る。発進、停止を繰り返す渋滞時のストレスもなくなり、簡易版ながら満足度は高い。
■普及車まで拡大の兆し
 ただ、安全確認までは自動化されていない。例えば、試乗時に前のクルマが赤信号に変わるタイミングで交差点に進入したのだが、モデルSは追従をやめず、一瞬ヒヤリとさせられた。また、白線がかすれている道路でオートパイロットは機能しないため、実際は高速道路が主な利用シーンになる。一方、オートレーンチェンジは、オートパイロット利用時にウインカーを出すと、クルマが自動でハンドルを動かして隣の車線に移動する機能。ウインカー操作からほとんど迷いなく車線変更できるが、モデルSの超音波センサーで検知できるのは約5mの範囲。後方からクルマが迫っていないか、人間がミラーで十分確認する必要はある。こうした簡易な自動運転機能は2016年、高級車から普及車まで一気に広がりそうだ。アウディ ジャパンが2月に発売した新型「アウディA4」は、アクセル、ブレーキに加えてハンドル操作もクルマが行う「トラフィックジャムアシスト」を標準装備。日産も混雑した高速道路の単一車線で自動運転を行う技術「パイロットドライブ1.0」の搭載車を2016年中に発売するとしており、フルモデルチェンジを控える人気のミニバン「セレナ」が対象車として有力視されている。
■限定地域なら“無人タクシー”も
 各社が簡易的な自動運転車を導入する一方で、その先に進むには、まだ課題が多い。日産は2018年に高速道路での車線変更を自動的に行う技術、さらに2020年までに一般道の交差点を通過できる技術を導入する計画だが、「一般道に出ると、自動運転のハードルは格段に上がる」(飯島氏)と話す。というのも、一般道は“道しるべ”となる白線が消えかかっている場合があり、交差点内はそもそも白線すらない。そのため、画像を含む高精度の地図などと照らし合わせて走行ルートを判断する必要がある。また、信号のない交差点で歩行者やバイクなどのイレギュラーな動きを見定めたり、混雑した車線に半ば強引に合流する判断をクルマに任せるには、まだ荷が重い。緊急時以外でも人間の介入が必要なケースが残り、米グーグルが目指すような、ボタン一つでクルマのAIがどこへでも運んでくれる「完全自動運転車(レベル4)」の実用化はかなり先の話だ。ただ、走行エリアやルートを限定した形なら、ドライバーを必要としない完全自動運転車にも光明が見えてくる。国内で目指すのはクルマ開発ベンチャーのZMPと、DeNAがタッグを組んで設立したロボットタクシーだ。同社は2016年2月末から神奈川県藤沢市で実証実験を開始。今回は走行ルートが3kmほどの単純な一本道で、緊急時の安全確保のため乗員が同乗する。今後は走行ルートに右左折を組み込んだり、無人営業を想定した車内サービスを試したりと、実験を繰り返す計画だ。そして2020年までに、あらかじめ設定したルート上の複数のポイントで乗り降りできる“無人タクシー”の営業を、千葉市の幕張周辺や東京・台場エリアで始める構え。「こうした限定エリアを複数つくったうえで、いずれは整備が行き届いた幹線道路や高速道路を使って各エリア間を無人タクシーで結ぶことを目指している」(ロボットタクシーの中島宏社長)と話す。他にも、乗務員の人件費がかからない無人タクシーは、人手不足や不採算で廃止された地方の路線バスなどに代わる移動手段として期待を集めており、自治体の後押しを受けて普及するかもしれない。

*4-4:http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2017021801001024.html (東京新聞 2017年2月18日) 米環境長官に温暖化懐疑派 上院承認、大統領令で規制緩和も
 米上院は17日、トランプ大統領が環境保護局(EPA)長官に指名した地球温暖化懐疑派のスコット・プルイット氏(48)の人事を承認した。民主党の大半が反対したが、多数派の共和党が支持し、賛成52で反対46だった。プルイット氏は同日、宣誓の上、就任した。産業重視のトランプ氏は、新たな温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」離脱に言及するなど環境保護に消極的な姿勢を示しており、プルイット氏就任に合わせ、環境規制を大幅に緩和する大統領令を準備しているもようだ。オバマ前政権が推進した地球温暖化対策が一気に後退する懸念が強まっている。


PS(2017年2月19日追加):与野党を問わず、またメディアも含めて、女性の大臣・国会議員・リーダーが言うと、正しいことを言っていても「わかっていない」「資質がない」など「女性は知識も実社会での経験もない」という女性蔑視の先入観を利用した批判をされることが多い。しかし、*5の稲田防衛相(弁護士)の場合は、「日報は私が出させた」「憲法九条上の問題になる言葉を使うべきでないから、戦闘ではなく武力衝突という言葉を使った」としており、政府が前防衛相時代に派遣した南スーダンでの自衛隊活動について、憲法や安全保障法制を熟知した上で、言葉の定義を使って正当化したものだ。
 そのため、この問題の本質は、稲田防衛相の資質ではなく、①南スーダンで戦闘(もしくは武力衝突)が起こったこと ②反政府勢力が国に準じる組織と評価できる支配系統、支配領域を有していなければ戦闘ではなく憲法九条違反にならないと解釈していいのか(レジスタンス活動もあるだろう) ③戦闘であれ武力衝突であれ、それが起こる場所に日本の自衛隊を派遣してどちらかの側につくのは日本国憲法違反ではないのか ということである。しかし、行ってしまった軍隊が「戦闘が起こったから」と言って引きあげるのは、他国にとっては予想外であり、難しいのではないかと思う。
 
 
                                   2017.2.9中日新聞(*5)より

*5:http://www.chunichi.co.jp/article/front/list/CK2017020902000076.html 中日新聞 2017年2月9日) 防衛相「戦闘」を言い換え 9条抵触避け「衝突」
 稲田朋美防衛相は八日の衆院予算委員会で、南スーダン国連平和維持活動(PKO)に参加している陸上自衛隊部隊の日報に現地での「戦闘」が明記されていた問題を巡り、「法的な意味における戦闘行為ではない。国会答弁する場合、憲法九条上の問題になる言葉を使うべきではないから、一般的な意味で武力衝突という言葉を使っている」と述べた。海外での武力行使を禁じた憲法九条にPKO参加部隊が違反しないよう定めた参加五原則に触れないよう、「戦闘」を「武力衝突」に置き換えたとも取られかねない発言だ。民進党の小山展弘氏が、日報にある戦闘と武力衝突の違いについて質問。稲田氏は「国際的な武力紛争の一環として、人を殺傷する行為が行われていたら、憲法九条上の問題になる。憲法九条に関わるのかという意味において、戦闘行為ではない」と主張。「日報に書かれているのは一般的な戦闘の意味だ」と強調した。稲田氏は、反政府勢力が「国に準じる組織と評価できる支配系統、支配領域を有していなかった」としてPKO参加五原則は維持されていたとの従来の政府見解を繰り返した。防衛省は当初廃棄したと説明していた日報の一部を七日に開示。陸自が活動する首都・ジュバ市内で昨年七月に大統領派と反政府勢力の「戦闘が生起した」と明記していた。
◆歯止め形骸化懸念
 <解説> 憲法九条は「国際紛争を解決する手段」としての武力行使を禁じている。政府は、武力行使の意味を「国際的な武力紛争の一環としての戦闘行為」だと解釈している。自衛隊がこうした戦闘行為に巻き込まれる恐れがある場合は、PKOから部隊を撤退させなければならない。PKO参加五原則が「紛争当事者間の停戦合意」や「自衛隊の中立的立場の厳守」などを条件としているのも、自衛隊の活動が九条の解釈に基づく戦闘行為に該当するのを避けるためだ。
 しかし、防衛省が一部黒塗りで開示した陸上自衛隊の南スーダンPKOの日報は、陸自が活動する首都ジュバで「戦闘が生起した」と明記。戦車や迫撃砲を使った激しい戦闘が発生したことも報告した。稲田朋美防衛相は、日報に書かれた「戦闘」について、現地の反政府勢力が安定した支配地域を持たないことを理由に「国際的な武力紛争の一環として行われたものではない」と説明。戦闘でなく「武力衝突」という言葉を使う理由を「憲法九条上の問題」になるのを避けるためと説明した。こうした説明が許されれば、自衛隊が戦闘に巻き込まれるのを防ぐための九条の歯止めが、言葉の置き換えによって形骸化しかねない。南スーダン情勢を巡っては、国連事務総長特別顧問が七日に「大虐殺が起きる恐れが常に存在する」と指摘し、国内で戦闘が継続していると批判した。政府も南スーダンの厳しい現状を直視し、自衛隊の活動継続の是非を判断すべきだ。


PS(2017年2月23日追加):*6-1のように、夜間・早朝の米軍機飛行差し止めや騒音被害に損害賠償を求める訴訟で那覇地裁沖縄支部は騒音被害の損害賠償だけを認めた。そして、辺野古新基地についても、自然破壊や危険性などの理由で多くの市民が反対しているのに、*6-2のように、米軍運用のための刑事特別法を目的外に使用して刑罰を示すことによって報道の抑制をしようとしており、抵抗する市民が逮捕された。さらに、*6-3のように、基地建設に反対する市民団体が工事車両を止めようと座り込みを決めると、捜査機関が拡大解釈して裁量で組織的威力業務妨害が目的の組織的犯罪集団と判断して仲間への連絡を準備行為と認定して逮捕することもできるようにする法律を、「共謀罪→テロ等準備罪(名称変更)」として制定しようとしているのである。しかし、日本のTVは、ぼやけたような報道番組や金正男氏殺人事件ばかりを長時間報道しており、このような日本の民主主義の岐路になる法律の審議については隠しているかのように報道しない。
 そのため、このように日本人全体に日本国憲法の民主主義や人権尊重の精神が根付いていない中で、*6-4のように、自民党が2017年運動方針案として「改憲原案の発議に向けて具体的な歩みを進める」としているのは、憲法を変更すること自体が自己目的化している上、変更の内容に戦前回帰志向があるため改悪になる危険性が大きく、手をつけない方がよほどよいというのが私の結論である。

*6-1:http://ryukyushimpo.jp/news/entry-449470.html (琉球新報 2017年2月23日) 差し止め認めず、損害賠償のみ命じる 第3次嘉手納爆音訴訟判決
 米軍嘉手納飛行場の周辺住民2万2048人が国を相手に、夜間・早朝の米軍機飛行差し止めや騒音被害に損害賠償を求めた第3次嘉手納爆音訴訟の判決が23日午前、那覇地裁沖縄支部(藤倉徹也裁判長)で言い渡された。藤倉裁判長は差し止めの訴えを退け、過去分の損害賠償の支払いのみを命じた。

*6-2:http://mainichi.jp/articles/20170220/org/00m/070/003000c (毎日新聞 2017年2月20日) <在日米軍再編>辺野古工事、立ち入り禁止文書 「報道への脅し」批判の声
 米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)移設のための名護市辺野古(へのこ)沿岸部埋め立てに向けた作業を前に、防衛省沖縄防衛局は先月、沖縄県政記者クラブ加盟各社に海上の臨時立ち入り制限区域に許可なく入らないよう求める文書を出した。日米地位協定の実施に伴う刑事特別法の条文を示し、入った場合は刑罰に処されると警告する内容で、地元の記者らから「報道への脅しだ」と反発の声が出ている。  文書は「正当な理由なく立ち入った場合には、刑事特別法2条の規定に基づき、1年以下の懲役または2000円以下の罰金もしくは科料に処される」と明記。さらに「先般、報道関係者と思われる方が乗船した船舶が、臨時制限区域に許可なく立ち入り、当局の警備業務受注者の警告にも従わない事案が発生した」と記している。防衛局の児玉達哉報道室長は毎日新聞の取材に「威嚇するつもりはなく、あくまで立ち入りへの警告だ」と説明した。「先般」の出来事の内容を尋ねたが「警備上の観点から具体的な内容は差し控える」と答えなかった。制限区域は防衛省が2014年に辺野古の米軍キャンプ・シュワブ沖約562ヘクタールに拡大して設定し、常時立ち入りを禁止している。地元紙の琉球新報は1月20日朝刊の社説で「刑特法適用をちらつかせた取材妨害であり、報道各社に対する許し難い脅しだ」「危惧することは報道の監視が広大な海域に行き届かなくなることだ」と批判した。防衛省は今月、海上工事を本格化させた。制限区域外から工事現場は数百メートル離れ、ブロックの投下で海底のサンゴにどのような影響が出ているかをチェックできないという。元沖縄弁護士会会長の加藤裕弁護士は「制限区域の設定自体が法の乱用だ。刑事特別法は米軍の運用のためのもので、日本政府の公共工事に適用するのは法の目的外使用にあたる。さらに、工事に実質的な支障がないのに刑罰を示すのは、報道を事前に抑制しようとするものだ」と厳しく指摘した。

*6-3:http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201702/CK2017022202000131.html (東京新聞 2017年2月22日) 「共謀罪」拡大解釈の懸念 準備行為、条文に「その他」
 「共謀罪」と趣旨が同じ「テロ等準備罪」を創設する組織犯罪処罰法改正案を巡り、政府は、犯罪の合意に加えて処罰に必要な要素として検討している「準備行為」について、条文で「資金または物品の手配、関係場所の下見その他」と規定する方針を固めた。「その他」の文言が盛り込まれることで拡大解釈が際限なく広がり、準備行為が歯止めとならないことが懸念される。共謀罪法案は、犯罪に合意しただけで罰するのは内心の処罰につながるといった批判を受け、過去三度も廃案になってきた。安倍晋三首相や金田勝年法相らは今回、新たな共謀罪法案について「準備行為があって初めて処罰の対象とする」と過去の法案よりも適用範囲を限定する方針を説明。一方でハイジャックテロや化学薬品テロでは、現行法の準備罪や予備罪よりも前段階での処罰が可能になるとして、テロ対策での必要性を強調してきた。新たに明らかになった条文では「犯罪を行うことを計画をした者のいずれか」によって「計画に基づき資金または物品の手配、関係場所の下見その他」の準備行為が行われた場合、処罰対象となる。ただ、準備行為はそれ自体が犯罪である必要がない。例えば、基地建設に反対する市民団体が工事車両を止めようと座り込みを決めた場合、捜査機関が裁量で組織的威力業務妨害が目的の組織的犯罪集団だと判断し、仲間への連絡が準備行為と認定される可能性がある。また、政府への抗議活動をしている労組が「社長の譲歩が得られるまで徹夜も辞さない」と決めれば、組織的強要を目的とする組織的犯罪集団と認定され、誰か一人が弁当の買い出しに行けば、それが準備行為とされる可能性がある。米国の共謀罪に詳しい小早川義則・名城大名誉教授(刑事訴訟法)は「米国では、顕示行為(準備行為)は非常に曖昧で、ほんのわずかな行為や状況証拠からの推認で共謀が立証される」と説明。「日本の法体系と全くの異質のものを取り入れる必要性があるのか」と疑問を呈した。また、「その他」は無制限に解釈が広がる恐れがある。新屋(しんや)達之・福岡大教授(刑事法)は「何でも当てはめることができ、限定にはならない。結局、犯罪計画と関係ある準備行為かどうかは、捜査側の判断になる」と述べた。

*6-4:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/408022 (佐賀新聞 2017年2月22日) 「改憲発議へ歩み進める」 自民、審査会の論議促進、2017年運動方針案
 自民党は21日、2017年運動方針案を発表した。安倍晋三首相の憲法改正への強い意欲を踏まえ「改憲原案の発議に向けて具体的な歩みを進める」と明記。衆参両院の憲法審査会での論議を促進するとした上で「改憲に向けた道筋を国民に鮮明に示す」と強調した。小池百合子東京都知事との対立で苦戦が予想される7月の都議選での勝利を目指すとし、次期衆院選にも「常在戦場」で臨むとアピールした。党関係者によると、改憲原案の「発議」との文言は首相の指示で急きょ盛り込まれた。同党は運動方針案を3月5日の党大会で採択する予定。与党が衆参両院で改憲発議に必要な3分の2の議席を確保している状況を受け、国会での改憲論議を進めたい考えだ。運動方針案のタイトルは「日本の未来を切り拓く」。山口泰明・党運動方針案起草委員長は記者会見で「今年は憲法施行から70年であり、新時代を切り開く決意を示した」と説明した。改憲を巡り、民進党など野党の協力を念頭に「憲法審査会で幅広い合意形成を図る」と表明。世論喚起のため「改憲賛同者の拡大運動を推進する」と言及した。地方選挙に関し「県連など地方組織を積極的に支援する」と宣言。都議選については「全国的に注目されている」と位置付けた。次期衆院選を巡り、当選1、2回の約120人の選挙基盤強化が重要だと指摘した。外交面では、世界で保護主義や内向き傾向が強まっているとして、トランプ米政権発足などに触れ「不透明感と変化の兆しが漂う一年となる」と予測。首相による「地球儀俯瞰外交」を支える姿勢を明確にした。


PS(2017年2月26日追加):*7のように、政府の政策や権力に反対する人を弾圧する目的で逮捕して長期に勾留するのは、人権侵害であるとともに民主主義にも反し、日本ならどの時代の話か、現在ならどこの国の話かと思われる。

*7:http://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-450615.html
(琉球新報社説 2017年2月25日) 山城議長保釈棄却 「政治弾圧」批判に背く
 最高裁は長期勾留が続く山城博治沖縄平和運動センター議長の保釈申し立てを退けた。不当な人権侵害を容認する決定であり「人権の砦(とりで)」としての司法の役割を自ら放棄したのに等しい。山城議長はがんの病状悪化が危惧されながら家族の面会も禁止されている。拘置所で「家族に会いたい」と訴える言葉に胸が痛む。当初の逮捕容疑はヘリパッド建設現場で有刺鉄線を切断した器物損壊の微罪であり、逮捕の必要性すら疑わしい。その後、防衛省職員にけがを負わせた傷害容疑、威力業務妨害容疑が加わり、勾留は4カ月を超す長期に及んでいる。いずれも防衛省職員や警察官が目撃しており、客観的な証拠は十分なはずだ。那覇地裁は「証拠隠滅の恐れ」を保釈を認めない理由としているが、説得力はない。山城議長の長期勾留がヘリパッドや辺野古新基地建設反対の運動に与えるダメージは大きい。国内の刑法研究者が「正当な理由のない拘禁」「勾留は表現行為への萎縮効果を持つ」と釈放を求める異例の声明を出し、「政治弾圧」の批判が高まっている。国際人権団体アムネスティー・インターナショナルも釈放を求め、批判は国際社会に広がっている。保釈を認めない最高裁の決定は国際世論に背くものだ。最高裁が長期勾留を容認したことで、基地に反対する市民活動への不当な捜査、逮捕・勾留、政治弾圧が強まることを危惧する。元東京高裁裁判長の木谷明弁護士は「裁判官は、検察官の主張に乗せられてしまいがちだ」と実情を明かし、山城議長の長期勾留を「厳しすぎる。精神的な支援を遮断して自白を迫る『人質司法』の手法」と批判する。最高裁によると2015年の勾留請求却下率はわずか3・36%にとどまる。勾留申請に対する裁判官の審査が形骸化し、検察の求めるままに拘留を認める検察主導が実態ではないか。この間、平和運動センター、ヘリ基地反対協議会など活動拠点が家宅捜索され、パソコンやUSBメモリーが押収された。基地反対運動の事務所に捜索が及ぶのは異例で、関係者や活動の情報を得る狙いがなかったか疑わしい。関係者はなお早期保釈に尽力してほしい。同時に「共謀罪」を先取りするような警察、検察の捜査活動にも注意を払う必要がある。

| 辺野古・普天間基地問題::2015.4~ | 05:39 PM | comments (x) | trackback (x) |
2016.7.25 辺野古移設問題も、“安定”と称する日本政府の思考停止がネックなのである (2016年7月26日、27日《写真》、28日に追加あり)

      埋立予定地        立入禁止区域              市民の反対運動

   
首相と知事           工事                 ジュゴン     ジュゴンのえさ場の海藻
 の意見                           2010.6.18朝日新聞  2015.10.20朝日新聞

(1)日本政府が沖縄県を提訴したことについて
 *1-1、*1-2、*1-4のように、福岡高裁那覇支部は和解勧告で、政府と県が「円満解決」を目指すことを求めたが、菅官房長官は新たな訴訟を7月22日に起こす方針を翁長雄志知事に伝えた。政府によるこの提訴は、福岡高裁那覇支部などの要請に明らかに反し、和解条項をも踏みにじるものだ。

 最初の辺野古埋め立てと辺野古新基地建設の承認は、仲井真前沖縄県知事が何かに脅迫されたかのように、2013年12月27日、突然、県民の意志に反し県外移設の公約を翻して承認印を押した不自然なものだった。そのため、次の知事選で沖縄県民は辺野古埋め立てと辺野古新基地建設に反対の翁長知事を選び、先日の参院選でも島尻沖縄・北方担当相が大差で敗れて、現在、衆参両院を通じて沖縄選挙区で当選した自民党議員は一人もいなくなったのである。つまり、沖縄県民は辺野古移設反対の民意を民主主義で表現したのであり、翁長知事の承認取り消しに違法性はないだろう。

 そして、翁長知事が辺野古埋め立てと辺野古新基地建設の承認を取り消し、沖縄が選挙のたびに民主主義のルールに従って民意を示し、司法でも和解勧告が出て「オールジャパンで最善の解決策を合意して、米国に協力を求めるべきだ」と記載されているにもかかわらず、菅官房長官はじめ日本政府が、「辺野古が唯一の選択肢だ」という思考停止した発言を繰り返していることこそ不自然である。

 この様子は、*1-3で翁長沖縄知事が「国の強硬な態度は異常だ」と述べているとおりで、*1-4のように、あまりにも不合理な強引さがある。そして、これら一連の沖縄に対する仕打ちは異常であるため、沖縄県民に対する差別としか思えず、沖縄県民は政府と喧嘩はしたくないが、寄り添われたくもないのではなかろうか。

(2)ヘリ離着陸帯の移設着工について
 *2のように、日本政府が沖縄県を相手取り、地方自治法に基づく違法確認訴訟を福岡高裁那覇支部に起こしたのと同時に、防衛省沖縄防衛局は7月22日午前、米軍北部訓練場(沖縄県東村、国頭村)の一部返還の条件となっているヘリコプター離着陸帯(ヘリパッド)の移設工事に着手したそうだ。そもそも基地の多い沖縄で、一部返還の条件としてヘリパッドを県内移設するという条件も、本当は他に代替案があると考える。

(3)代替案
 *3-1で翁長知事が鹿児島県西之表市馬毛島(種子島の西約12キロにある無人島)を視察したように、馬毛島は一人の男性によって所有され、「米軍基地として十二分にやっていける」そうだ。そのため、私は自然を壊して米軍普天間飛行場を作り、5年以内に運用停止するよりも、直接、馬毛島に移転する方が合理的だと考える。このように、政府が「唯一の解決策」とする名護市辺野古以外にも移設候補地は国内にある。

 それでも、政府が「辺野古が唯一」と繰り返すのなら、その根拠を明確に説明する必要があるが、それは「地理的優位性」ではなく、本土の反発を回避する目的だそうだ。西之表市は翁長知事の突然の訪問に不快感を示しているとのことだが、無人島なら基地の危険に遭遇したり立ち退きで損害が発生したりしない。その上、原発よりは無人島に作った基地の方が安全であるため、鹿児島県にとっては、*3-2のように、川内原発を停止し廃炉にした後、基地からの交付金収入、そこに住む人のからの税収、食料調達などは有り難いのではないだろうか。

(4)沖縄の価値

     
                 八重山諸島の位置と風景(陸上・海・海中)

 *4のように、菅官房長官は2016年5月11日の記者会見で、大阪市の米映画テーマパーク、ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)の運営会社が沖縄県に計画していた新パーク建設を最終的に撤回したことを明らかにし、「見送りは極めて残念だ」と語られたそうだが、沖縄の自然は本物の美しさで日本の宝石であるため、ユニバーサル・スタジオが作るようなイミテーションはいらない。沖縄は、本島だけでなく離島もよいし、海は表面だけでなく海中や海底がすごい。そして、それを見るには、グラスボート、シュノーケリング、スキューバダイビングなどの方法がある。

 その上、近年は、地質学的価値や人類拡散の歴史的価値も高くなっており、史跡としても重要だ。

      
                          与那国島の海底遺跡
       (http://www.okinawainfo.net/iseki.htm「沖縄の海底遺跡について」参照)

<政府の沖縄県提訴>
*1-1:http://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-320915.html
(琉球新報社説 2016年7月22日) 政府が県提訴へ 和解条項の曲解許されない
 話し合いで解決する考えなど、はなからなかったのだろう。安倍政権は選挙を念頭に、県民の気持ちに「寄り添う」姿勢を装っていたにすぎない。米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設を巡る訴訟の和解に基づく協議会で、菅義偉官房長官は新たな訴訟を22日に起こす方針を翁長雄志知事に伝えた。福岡高裁那覇支部は和解勧告で、政府と県が「円満解決」を目指すことを求めた。国地方係争処理委員会も、双方が「真摯(しんし)に協議」することで解決することを促した。政府による提訴は福岡高裁那覇支部などの要請に明らかに反する。和解条項をも踏みにじるものであり、断じて容認できない。新たな訴訟は、埋め立て承認の取り消し撤回を求めた国土交通相の是正指示に、翁長知事が従わないのは違法だとの確認を求める内容である。政府は、訴訟と協議は「車の両輪」とし、提訴した上で協議することは可能との見解を示している。それが「和解協議のもともとの精神」(定塚誠法務省訟務局長)とも強弁している。「もともとの精神」とは、福岡高裁那覇支部が和解勧告で提示した「原告と被告は違法確認訴訟判決まで円満解決に向けた協議を行う」との和解案を指すのだろう。だがその後、政府と県が合意した和解条項には政府による「違法確認訴訟」は含まれていない。政府の和解破りは明らかである。和解条項に明記された訴訟は、是正指示の取り消し訴訟のやり直しだけである。再訴訟についても、あくまで「折り合いがつかなければ」との条件が付されている。そもそも訴訟と協議を同時並行で行うことが、円満解決につながるはずがない。和解が成立した3月は6月の県議選、7月の参院選を控えた時期である。安倍政権が選挙を強く意識して和解に応じたことは容易に想像がつく。それまでの強権姿勢を隠し、話し合うことで県に歩み寄ったとアピールすることが狙いだったと断じざるを得ない。沖縄全戦没者追悼式参列のため、6月に来県した安倍晋三首相は「和解条項に従って誠実に対応していく」と述べていた。安倍首相が言葉に責任を持つならば、新たな提訴はやめるべきだ。和解条項の曲解は許されない。

*1-2:http://mainichi.jp/articles/20160722/ddm/005/070/024000c
(毎日新聞社説  2016年7月22日) 国の辺野古提訴 和解の精神に反する
 米軍普天間飛行場の沖縄県名護市辺野古移設をめぐる国と県の対立は、再び法廷に持ち込まれることになった。国は県を相手取って地方自治法にもとづく違法確認訴訟をきょう福岡高裁那覇支部に起こす。国と県が互いを訴えた3件の裁判について、和解が成立してわずか4カ月余り。問題解決に向けた話し合いは深まらず、司法に判断をゆだねることになったのは残念だ。和解条項には、国と県の双方が裁判を取り下げ、国が埋め立て工事を中止するとともに、今後の手続きが次のように定められていた。知事に埋め立て承認取り消しの撤回を求めた国の是正指示について、総務省の第三者機関「国地方係争処理委員会」が適否を判断する。そして、係争委が是正指示を認めて県がそれに不服な場合や、係争委が是正指示を認めず国がそれに従わない場合は、県が国を提訴する−−。しかし、係争委は先月、是正指示の適否を判断しないという予想外の結論を出した。それを受けて、県は提訴を見送る方針を表明した。困ったのは国だ。国は和解条項に沿って県に再び提訴してもらい、早期に裁判を決着させ、工事を再開したいと考えていた。係争委の判断回避と県の提訴見送りは、誤算だった。そこで国は、係争委が是正指示を否定していない以上、是正指示はまだ有効だと主張し、埋め立て承認取り消し処分を撤回しない県に対し、不作為の違法確認訴訟を起こすというのが、今回の経緯だ。しかし、裁判所の和解勧告の考え方をもう一度、思い起こしてみるべきだ。勧告文には「本来あるべき姿としては、沖縄を含めオールジャパンで最善の解決策を合意して、米国に協力を求めるべきだ」とある。係争委の小早川光郎委員長も「肯定、否定のいずれの判断をしても、国と地方のあるべき関係を構築することに資するとは考えられない」と語っていた。国が辺野古移設を強引に進めてもうまくはいかないだろう。仮に国が違法確認訴訟で勝ったとしても問題解決にはなるまい。和解勧告でも指摘されていたように、設計変更のたびに変更承認が必要になり、延々と法廷闘争が続くことも考えられる。結局、国と県が問題解決を目指して真摯(しんし)に話し合うしかない。沖縄では、先の参院選で島尻安伊子沖縄・北方担当相が大差で敗れ、衆参両院を通じて選挙区で当選した自民党議員が一人もいない事態になった。辺野古移設反対の民意は明白だ。米軍による事件・事故も相次ぎ、反発はさらに高まっている。政府はこれ以上、民意に背を向けるべきではない。

*1-3:http://mainichi.jp/articles/20160722/k00/00e/010/242000c
(毎日新聞 2016年7月22日) 沖縄知事、「国の強硬な態度は異常だ」辺野古提訴
 沖縄県の翁長雄志知事は22日、米軍普天間飛行場(同県宜野湾市)の名護市辺野古への移設に関し、政府が県を相手取り違法確認訴訟を起こしたことについて、「真摯な協議を求めてきたため、(提訴は)非常に残念だ。国の強硬な態度は異常だ」と強く批判した。そのうえで、第1回口頭弁論に「出廷して自ら意見を述べたい」と述べた。東京都内で記者団に語った。また、政府が米軍北部訓練場(同県東村、国頭村)の約半分の返還に伴うヘリコプター離着陸帯(ヘリパッド)の移設工事を再開したことについて、「県民に大きな衝撃と不安を与えるものであり、大変残念だ。国は住民に対して説明すべきだ」と述べた。

*1-4:http://www.kobe-np.co.jp/column/shasetsu/201607/0009311251.shtml
(神戸新聞 2016/7/23) 国が沖縄県提訴/あまりに強引ではないか
 米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設を巡り、政府が沖縄県を相手取り新たな訴訟を起こした。政府と県が福岡高裁那覇支部の和解を受け入れて4カ月余りで、対立は再び法廷へと持ち込まれた。和解を促した裁判所の勧告には、「この問題をどちらが良い悪いという形にしてはいけない。沖縄を含めオールジャパンで最善の解決策を合意し、米国に協力を求めるべきだ」とある。しかし、この考え方に沿って協議が深まることはなかった。政府は提訴が和解条項に基づいたものだと強調している。だがこの間、問題の解決に向けてどこまで真摯な話し合いが重ねられてきたのか、はなはだ疑問だ。特に政府は当初から提訴ありきの姿勢が目立った。今後、法廷闘争で亀裂が深まるような事態は避けねばならない。今回の提訴は、埋め立て承認の取り消し処分を撤回しない県に対し、国土交通相の是正指示に従わないのは違法との確認を求めるものだ。是正指示では、県が第三者機関の「国地方係争処理委員会」に審査を申し出た。委員会は判断を示さず、改めて話し合いによる解決を促した。県はこれに従って協議を優先したが、政府は司法判断による早期決着を図る道を選んだ。同じ日、政府は沖縄県北部の東村高江で米軍のヘリコプター離着陸帯の建設工事に着手した。この問題では、前日に沖縄県議会が建設中止を求める意見書を可決している。さらに政府は、辺野古移設の和解受け入れで中断していた陸上部分の工事を再開する意向を県側に示した。一方で概算要求に向けて沖縄振興予算の減額をほのめかす。沖縄では6月の県議選で辺野古移設反対派が6割以上を占め、参院選では現職閣僚が落選、与党の沖縄県の選挙区選出議員がゼロになった。その民意に配慮するどころか、気持ちを逆なでするような政府の姿勢である。あまりに強引ではないか。安倍晋三首相は沖縄県民に寄り添う姿勢を打ち出し、6月の沖縄全戦没者追悼式の際は「和解条項に従って誠実に対応していく」と述べた。だが県民が一連の対応を「誠実」と受け止めることはできないだろう。「延々と法廷闘争が続けば国が勝ち続ける保証はない」。和解勧告の指摘を踏まえ、いま一度、話し合いで解決策を探るべきだ。

<ヘリ離着陸帯の移設着工>
*2:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20160722&ng=DGKKASFS22H0K_S6A720C1EAF000 (日経新聞 2016.7.22) 辺野古、政府が再び県提訴 北部訓練場、ヘリ離着陸帯の移設着工
 政府は22日午前、沖縄県の米軍普天間基地(宜野湾市)の名護市辺野古移設を巡り、翁長雄志知事が埋め立て承認取り消しの是正指示に従わないのは違法だとして、県を相手取り、地方自治法に基づく違法確認訴訟を福岡高裁那覇支部に起こした。3月に和解した政府と県は再び法廷闘争に入る。第1回口頭弁論は8月5日に那覇支部で開かれ、高裁判決は今秋にも出る見通し。いずれかが上告した場合、最高裁の判断は来春に出るとみられる。政府と県による代執行訴訟の和解条項は、総務省の第三者機関「国地方係争処理委員会」の審査を踏まえ、県に不服がある場合、改めて国を提訴し、司法判断を仰ぐ段取りだった。承認取り消しをめぐる違法性の適否について同委は判断を回避し、双方に問題解決に向けた協議を促した。翁長氏ら県側は、政府との話し合い解決を重視する立場から提訴を見送ったため、政府は辺野古移設に向けた作業を加速する狙いから、再び訴訟に踏み切った。一方、防衛省沖縄防衛局は22日午前、米軍北部訓練場(沖縄県東村、国頭村)の一部返還の条件となっているヘリコプター離着陸帯(ヘリパッド)の移設工事に着手した。

<代替案>
*3-1:http://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-319544.html
(琉球新報社説 2016年7月20日) 知事の馬毛島視察 普天間問題考える契機に
 翁長雄志知事が鹿児島県西之表市の馬毛島を視察した。島のほぼ全域を所有する男性は、翁長知事に「米軍基地としては十二分にやっていける」と説明したという。馬毛島は、おおさか維新の会が米軍普天間飛行場の5年以内の運用停止に向けた訓練の移転先として提案している。だが知事の視察目的は、馬毛島に訓練を移転したいとか、普天間飛行場自体を移設してほしいということではない。政府が「唯一の解決策」とする名護市辺野古以外にも、移設候補地は国内にあるとの問題提起である。辺野古が「唯一」ではないことを政府に突き付け、撤回させる手段の一つとみるべきだ。それでも、安倍政権は沖縄の「地理的優位性」などを挙げて「辺野古が唯一」と繰り返すだろう。だが「地理的優位性」は専門家が否定している。本土の反発を回避したいことが真の理由だ。普天間飛行場返還合意時の官房長官だった梶山静六氏は「必ず本土の反対勢力が組織的に住民投票運動を起こす」と本土側の反発を恐れ、辺野古が普天間飛行場の移設先になったと理由を書簡に記していた。馬毛島は種子島の西約12キロにある無人島である。東京・硫黄島で暫定的に実施している米軍空母艦載機の陸上空母離着陸訓練の移転候補地に挙がっている。だが観光への影響や事故の懸念から反対の声が出ている。そのような中での翁長知事の視察に対し、辺野古移設への反対運動などに共感してきた地元の市民団体関係者らは「大変遺憾」とする声明を発表した。西之表市も、沖縄県から事前の説明などがなかったことに不快感を示している。丁寧に説明し、理解を得ることを県には求めたい。戦後71年が経過しても、沖縄には在日米軍専用施設の74・46%が集中し、圧倒的反対にもかかわらず辺野古新基地まで押し付けられようとしている。沖縄県民は命の危険にさらされ続けていることも、国民全体で共有してほしい。翁長知事の視察への反発によって、米軍基地は国内のどこでも歓迎されない迷惑施設であることが改めてはっきりした。普天間飛行場の危険性除去は移設でいいのか、移設を条件としない閉鎖・撤去がいいのか。知事視察を国民が普天間問題を深く考える契機としたい。

*3-2:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20160725&ng=DGKKZO05206880V20C16A7NN1000 (日経新聞 2016.7.25) 川内原発停止要請 来月にも 鹿児島新知事「県民の不安解消」
 鹿児島県知事に28日に就任する三反園訓氏(58)は24日、九州電力に川内原子力発電所(同県薩摩川内市)の一時停止を8月中にも要請する考えを明らかにした。熊本地震を受けた県民の不安に応えるため、関連施設や活断層などの再点検・再検証を求める。川内1号機は10月6日ごろに定期検査に入る予定だが、これを待たず要請する。日本経済新聞の取材に応じた。川内原発の停止と点検は三反園氏の知事選での公約。三反園氏は「県民が不安に思っていたら解消するのがトップの役目だ」と強調。一時停止の要請は「原発周辺を視察し、県庁職員の説明も聞くなどして、8月下旬か9月上旬を目指したい」と語った。知事に原発を止める法的権限はない。ただ九電との安全協定で鹿児島県は安全確保のために原発に立ち入り調査し、必要と認められれば適切な措置を求められる。九電は「実際に要請を受けておらずコメントする立場にない」としている。三反園氏は原発の避難計画見直しも公約に盛り込んだ。三反園氏は「周辺住民の安心・安全のために一番いい方法を取りたい」と言明。原発問題に関する検討委員会を設け、専門家らに検証してもらう意向を示した。

<沖縄の自然の価値>
*4:http://qbiz.jp/article/86537/1/%E8%BE%BA%E9%87%8E%E5%8F%A4/
(西日本新聞 2016年5月12日) USJが沖縄進出を撤回 菅氏「極めて残念だ」
 菅義偉官房長官は11日の記者会見で、大阪市の米映画テーマパーク、ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)の運営会社が沖縄県に計画していた新パーク建設を最終的に撤回したことを明らかにした。政府が新たな振興策として沖縄進出を後押ししてきており「見送りは極めて残念だ」と語った。政府はUSJ進出をてこに米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古移設に理解を求める考えだった。菅氏は「移設と振興は別だ」と述べ、今後も「沖縄の振興にできることは全てやる」と強調した。菅氏によると、USJ運営会社のジャン・ルイ・ボニエ最高経営責任者(CEO)が官邸幹部を訪問して計画撤回を伝えた。ボニエ氏は大阪のUSJに投資を集中させるため沖縄進出を見送ると説明した。ボニエ氏は運営会社を昨年買収した米メディア大手コムキャストから送り込まれた。買収される前の運営会社のCEOは計画に積極的だったが、新たに親会社となったコムキャストが採算性の観点から今回の計画に慎重な姿勢を示していた。政府は2016年度予算に沖縄振興策の一環として、USJ誘致に向けた1億2千万円を盛り込んだ。菅氏は「そういうことになったので、USJに使うことはない」と説明した。


PS(2016年7月28日追加):*6のように、沖縄のやんばる地域は、山、川、海がおりなす貴重な自然があり、森林にもヤンバルクイナ、ノグチゲラなど多くの固有種を含む森林性の鳥類が生息しているそうだ。そのため、現在のこの地域は、自然保護の対象ではあっても自然破壊の対象ではない。


   ノグチゲラ     ヤンバルクイナ    リュウキュウ    リュウキュウ   エリグロアジサシ
                           アカショウビン     ヨシゴイ
       http://www.ufugi-yambaru.com/yanbaru/yanbaru_tyourui.html 
         (やんばる野生生物保護センター) やんばるの生き物たち 参照

*6:http://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-324054.html
(琉球新報社説 2016年7月27日) ノグチゲラ営巣 米軍優先で森を壊すな
 国の天然記念物ノグチゲラは非常に特異な鳥だ。沖縄本島北部やんばるの森にしかいない。世界で最も分布域の狭いキツツキの一種だ。キツツキの仲間は、名の通り丈夫なくちばしで木をつつき、樹皮下に潜む虫を食べる。だが、ノグチゲラは木だけでなく、地上に降りて土をつつき、セミの幼虫やクモなどを掘り出す。約200種のキツツキの中で、土中から餌を得るのが報告されているのはノグチゲラだけだという。さらに毎年同じ雄雌でつがいをつくる「一夫一婦制」で、雌は木をつついて餌を採る一方、雄は地中の虫を掘り出す。餌を食べ分けることで狭いやんばるの森で争わずに生き延び、種を維持したとみられる。いわば、やんばるの森の象徴だ。米軍北部訓練場のヘリコプター着陸帯(ヘリパッド)新設計画で、候補地のG、H両地区周辺でノグチゲラの巣穴が少なくとも計29カ所確認されていた。ヘリパッド建設に伴い、那覇防衛施設局(当時)が2007年にまとめた環境影響評価(アセスメント)図書に記されていた。同じ調査で、既存のヘリパッドがあったN4地区は巣穴は1カ所だけだった。ヘリパッドの造られていないG、H地区は自然豊かな森の証左になるだろう。しかし北部訓練場の部分返還に伴うヘリパッド6カ所の移設先を決めた時、日米両政府は自然保護を優先しなかった。優先されたのは、米軍が強く要望したG地区に近い宇嘉川を使った水域訓練と兵士の救助支援訓練ができる場所だった。米海兵隊が「戦略展望2025」で記すように多様な訓練のできる「土地を最大限に活用する訓練場を開発」するための選定だった。ノグチゲラは国際自然保護連合や環境省が指定する絶滅危惧種で、保護は急務だ。地元の東村は生息域への無断立ち入りを禁止するノグチゲラ保護条例を制定した。種の保存が必要とされているからこそ、ヘリパッドを建設する沖縄防衛局は3~6月の営巣期間は音の出る工事を休止するとしてきたはずだ。県鳥でもあるノグチゲラを残すには、貴重なやんばるの森を維持することである。軍事機能強化を優先して、森を切り開き、オスプレイの音や排気熱で環境を破壊することではないはずだ。


<有明海の価値>
PS(2016年7月26日追加):左図のように、有明海産の海苔は日本全体の40%以上を占めており、特に佐賀県は、*5のように、「有明海1番」などブランド化して稼いでいる。また、他にも有明海の漁獲高は大きいため、自衛隊と言えども、どの空港でも使ってもよいわけではなく、他の産業に影響のない場所を利用してもらいたい。

  
                      海苔の養殖

*5:http://digital.asahi.com/articles/ASJ7T4D11J7TTTHB017.html?iref=comtop_list_pol_n05 (朝日新聞 2016年7月25日) オスプレイ「ノリに影響」 佐賀の漁協、防衛局に反発
 佐賀空港(佐賀市)への自衛隊オスプレイ配備計画をめぐり、九州防衛局は25日、地元の佐賀県有明海漁協に対し、駐屯地の施設配置案や配備に伴う環境対策などを説明した。漁協側からは反対意見が続出した。有明海漁協には、配備に伴い整備される駐機場など計画地の地権者が多く所属。ノリ漁への影響などを心配する声も根強く、漁協の対応が配備受け入れのカギを握るとされる。この日、九州防衛局幹部が佐賀市の漁協を訪れ、県の担当者らも同席した。漁協側からは、諫早湾干拓事業など過去の公共事業を念頭に「国の言うことは信用できない」「万が一のことがあれば、風評被害で(県産の)ノリが売れなくなる」といった反対意見が噴出。説明会後、漁協の徳永重昭組合長は「(オスプレイに)来て欲しくないのが漁協の本音だ」と話した。一方、防衛局の市川道夫企画部長は「引き続き丁寧に説明をしていきたい」と語った。

| 辺野古・普天間基地問題::2015.4~ | 04:55 PM | comments (x) | trackback (x) |
2016.1.26 辺野古工事強行と宜野湾市長選挙で示された宜野湾市民の民意 ← ご都合主義の曲解は許されない (2016年1月27、29、31日、2月5日に追加あり)
    
   *1-1より                 <辺野古の工事計画と工事>

     
     <東シナ海周辺で増強を予定されている自衛隊>           石垣島  

(1)宜野湾市長選での佐喜真氏の再選について
 宜野湾市長選での佐喜真氏の再選について、沖縄タイムスは、*1-1のように、宜野湾市長選挙における出口調査により、「宜野湾市の民意は、普天間飛行場の速やかな撤去であって、辺野古を造成して新基地を作って移設することではない」と分析している。

 また、*1-2のように、宜野湾市長選挙を前に琉球新報社が2016年1月に実施した世論調査では、「県外移設」「国外移設」「無条件の閉鎖撤去」が計74.4%に達し、国が進める「辺野古移設」を支持する意見は、12.9%しかないそうだ。この結果からも、宜野湾市長選での佐喜真氏の再選により、辺野古への移設が賛同を得たという曲解は許されない。
 
 沖縄では、*1-3のように、一昨年の名護市長選以来、知事選、衆院選と普天間飛行場の名護市辺野古への移設反対を訴えた候補が勝ってきたが、今回、自民党・公明党の応援で当選した佐喜真市長は、宜野湾市長選挙で「普天間の一日も早い閉鎖・撤去」は主張したが、辺野古移設への賛否は明言しておらず、移設問題を争点化させない戦略をとっていたため、危険な普天間飛行場の閉鎖と撤去のみが宜野湾市民の民意と受け止めるべきである。

 しかし、*1-4のように、日経新聞は社説で、「宜野湾市長選で与党が推した現職が勝利したため、安倍政権は同基地の県内移設に向けた作業を加速する方針だ」とし、「普天間移設は2013年に沖縄県の当時の知事が工事に必要な埋め立てを承認した」ということも振りかざしているが、知事が承認できることは知事が撤回できるため、これを争点とした直後の知事選で選ばれた翁長知事の承認取り消しは有効だと考えるのが筋である。そのため、このように歪曲したご都合主義の国の主張を最高裁が認めるようなら、日本国憲法で定められた司法の独立性を信じる人はいなくなる。

(2)政府のこれまでの対応
 沖縄県が県を挙げて反対している中で、*2-1のように、防衛省は2015年10月29日に、埋め立てに向けた本体工事に着手し、周辺海域では移設に抗議する人たちのカヌーや警戒に当たる海上保安庁の船などが確認され、シュワブのゲート前でも抗議する多くの県民と警察官がもみ合いになった。

 そして、*2-2のように、遅ればせながら一部全国紙も、「埋め立て強行は許されぬ」「民意に耳を傾けよ」と報道している。私も、米国が、在沖海兵隊のグアム移転や、ハワイ、豪州などへの巡回配備で対応を進めており、日本は人権を大切にする民主主義国家である以上、「辺野古移設が唯一の解決策」などという変な固定観念は排除して、日米地位協定と同時に解決できる「第三の道」を考えるべきである。

 なお、*2-3のように、辺野古の埋め立ては生態系保護上も欠点が多いため、名護市辺野古の新基地建設など公有水面の埋め立てに使う県外からの土砂や石材の搬入を規制する条例が沖縄県によって制定され、2015年11月1日から施行されている。辺野古の新基地建設で、防衛局は県内外からダンプカー約250万台分に当たる約1644万立方メートルの土砂(岩ズリ)を買い取り、辺野古沿岸部を埋め立てる計画だったそうだが、生態系を含む環境に対して無頓着にも程がある。

(3)米国について
 翁長雄志知事が名護市辺野古の新基地建設に伴う沿岸部の埋め立て承認を取り消したことを受けて、*3-2のように、沖縄タイムスと琉球放送(RBC)が、2015年10月16~18日の3日間、電話による緊急世論調査を合同で実施したところ、知事の取り消し判断を「支持する」と答えた人が79.3%に上り、県民の幅広い層が理解を示しているという結果が出たそうだ。

 そのような中、*3-1のように、菅官房長官は2015年10月29日、沖縄に駐留する米海兵隊の一部の移転先とする米領グアムを訪問し、グアム選出の米下院議員と会談して埋め立ての本体工事に着手したことを伝え、普天間移設を推進する安倍政権の姿勢を米側にアピールしたそうだが、国内で大きく意見が分かれ、地元では大多数が反対していることについて、先に米国と約束して、「米国と約束したから」という理由をつけて国内で強制することは許されない。

(4)代替案
 *4のように、宮古島に陸上自衛隊のミサイル基地候補地があるそうだ。そのほか、尖閣諸島の警備を目的として、上の図のように、奄美大島、石垣島、与那国島等にも自衛隊のミサイル基地や沿岸監視部隊ができるそうで、辺野古に新基地を造った上、これらの離島にも自衛隊を置くのは、悪乗りのやりすぎだ。辺野古の代替案は、人口が少なく、既に滑走路があってあまり工事がいらず、環境に悪影響を与えない離島を一つ探すべきで、環境という沖縄の財産を壊す予算の無駄遣いは許されない。なお、その人口の少ない離島住民のうち望む人には、近くの島や沖縄本島への移住を保障すればよいと考える。

 また、尖閣諸島周辺に接近する中国軍にどう対処するかについて、安倍政権は安保法制で(ただし、この安保法制や自民党憲法改正草案を作ったのは安倍首相ではないため、首相が別の人であれば異なる政策になっていたとは思わない)、武装漁民による離島占拠など武力攻撃には至らないが警察力では対応できない「グレーゾーン事態」に対応する法整備は見送ったが、それなら何の為の米軍基地や自衛隊基地なのかわからない。このように、その場限りのちぐはぐな対応で国益を損ねるのは、太平洋戦争勃発時からあまり変わっていないようなのだ。

*1-1:http://www.okinawatimes.co.jp/article.php?id=151185&f=ap
(沖縄タイムス 2016年1月25日) 出口調査で浮き彫りになった宜野湾市の民意
■辺野古移設「反対」57% 「賛成」34%
 24日に投開票された宜野湾市長選で沖縄タイムス社と朝日新聞社、琉球朝日放送(QAB)が実施した同日の出口調査で「投票する人を選ぶとき、何を一番重視したか」を聞いたところ、「普天間飛行場の移設問題」が48%で最多となった。米軍普天間飛行場の返還をめぐる問題が最大の関心事だったことが裏付けられた。次いで「候補者の経歴や実績」「経済や福祉政策」がそれぞれ19%となった。普天間問題を重視した人のうち、佐喜真淳氏に投票したのは30%、志村恵一郎氏は70%だった。候補者の経歴・実績と答えた人では佐喜真氏90%、志村氏10%。経済・福祉政策は佐喜真氏71%、志村氏29%となった。普天間飛行場の名護市辺野古への移設については、「賛成」と答えたのが34%、「反対」と答えたのが57%、「無回答」は10%だった。辺野古移設に賛成と答えた人のうち、佐喜真氏に投票したのは93%、志村氏は7%。辺野古移設に反対とした人は、佐喜真氏に24%、志村氏に76%。佐喜真氏は、辺野古移設に反対する人の一部の支持も得た。支持政党は自民党が29%で最も多く、民主党9%、社民党6%、共産党3%、公明党3%の順となった。無党派層と答えたのは41%だった。調査では1263人から回答を得た。
■投票率68.72% 4.82ポイント増
 宜野湾市長選の最終投票率は68・72%(同市選管発表)となり、前回選挙の63・90%を4・82ポイント上回った。米軍普天間飛行場の移設問題をめぐり、安倍政権が推す佐喜真淳氏と、翁長雄志知事をはじめとする「オール沖縄」勢力が支援する志村恵一郎氏が一騎打ちで激しい選挙戦を繰り広げ、関心が高まった。投票当日の有権者数は前回より2600人多い、7万2526人(男性3万4721人、女性3万7805人)。投票者総数は5153人多い、4万9839人だった。期日前投票は前回の2・2倍の1万4256人と過去最多となった。期日前投票が当日有権者数に占める割合は10・3ポイント上昇し19・7%だった。投票者総数に占める割合は14ポイント上昇の28・6%となった。

*1-2:http://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-209783.html
(琉球新報社説 2016年1月25日) 佐喜真氏再選 新基地容認ではない 国に「5年以内」閉鎖責任
 宜野湾市長選で佐喜真淳氏が再選を果たした。佐喜真氏の1期4年の実績を市民が評価し、今後の市政運営に期待した結果である。ただし佐喜真氏再選で沖縄の民意が米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設容認に変わったわけではない。佐喜真氏は選挙戦で辺野古移設の賛否を明言せず、市民が容認したことにはならないからだ。重視すべきは、佐喜真氏が公約した普天間飛行場の5年以内運用停止を、市民が国に突き付けたことだ。佐喜真氏を支援した安倍政権には5年以内の期限である2019年2月までに運用停止を実現する責任がある。
●曲解は許されない
 安倍晋三首相は市長選を前に「安全保障に関わることは国全体で決めることだ。一地域の選挙で決定するものではない」と述べた。民意をないがしろにする許されない発言だが、翁長県政与党が支援した志村恵一郎氏が落選したことを捉えて、辺野古移設が支持されたとする可能性がある。曲解は許されない。厳に慎むべきだ。宜野湾市長選を前に琉球新報社などが昨年12月末に実施した世論調査で「県外移設」「国外移設」「無条件の閉鎖撤去」は計71・1%に上った。1月調査でもその割合は計74・4%に達した。国が推し進める「辺野古移設」支持は12月調査11・1%、1月調査12・9%でしかない。この結果からしても市民が普天間飛行場の閉鎖と引き換えに、辺野古新基地建設を望んでないことは明らかだ。佐喜真氏は「普天間飛行場の固定化は許さない」と訴えて当選した。選挙結果が示すことは、普天間飛行場によって市民が危険にさらされている状況を、1996年の返還合意後20年も放置する国に対する市民の強い怒りである。佐喜真氏には5年以内運用停止を実現する責任がある。だが、たなざらしにされる可能性は否定できない。中谷元・防衛相は昨年、5年以内運用停止の定義を「飛行機が飛ばないこと」と明言した。菅義偉官房長官が(1)空中給油機能(2)緊急時着陸機能(3)オスプレイの運用機能-の3要件停止だとの見解を示すと、防衛相は「幻想を与えるようなことは言うべきでない」と前言を撤回した。市民が求める運用停止は、飛行機などが飛ばないことである。佐喜真氏も「一日も早い閉鎖、返還を求める」と訴えた。安倍政権が支援したのは佐喜真氏の政策と合致したからだろう。ならば、その実現に全力を尽くすのが筋である。裏切りは許されない。
●分断策克服を
 沖縄は、基地をめぐる対立をうんざりするほど抱え込まされてきた。なぜ沖縄ばかりが市民を分断されねばならないのか。市民の一体感が損なわれれば政策効果が上がらないことは、ロバート・パットナムのソーシャルキャピタル(社会関係資本)をめぐる研究で実証済みだ。沖縄の社会を分断してきた国の罪は大きい。もう分断はたくさんだ。佐喜真氏にはその克服も求めたい。市民の一体感回復へ包容力を持って進んでもらいたい。今、子どもの貧困が可視化されつつある。宜野湾市も例外ではない。子ども全ての生活、学びを保障するのは喫緊の課題だ。親の経済格差を次世代に引き継いではならない。佐喜真氏は有効な手だてを講じてほしい。今選挙では両候補に共通する政策も目立った。学校給食費の無料化、子どもの医療費無料化などがそれだ。子どもをめぐる環境を意識しての政策だろう。これらの実現はいわば最大公約数だ。佐喜真氏は公約を早期に実現してもらいたい。「公約は破るもの」という昨今のあしき常識を、佐喜真氏には打ち破り、政治は信頼できるものだと実感できる結果を示してほしい。18歳選挙権が実現する年の最初の主要選挙の結果として、望まれるのはそのことだ。

*1-3:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12177493.html
(朝日新聞社説 2016年1月26日) 宜野湾市長選 「辺野古」容認と言えぬ
 沖縄では一昨年の名護市長選以来、知事選、衆院選と普天間飛行場の名護市辺野古への移設反対を訴えた候補が勝ってきた。今回も、移設をめざす政権と、反対する翁長知事の対立構図が持ち込まれたものの、連勝の流れは止まった。翁長知事は、選挙で示された民意を最大の盾として辺野古移設阻止を訴えてきた。それだけに、知事にとって大きな痛手となることは間違いない。とはいえ、「これで辺野古移設が容認された」と政権側がとらえるとしたら、早計である。当選した佐喜真淳市長は「普天間の一日も早い閉鎖・撤去」を主張しつつ、辺野古移設への賛否は明言せず、移設問題を争点化させない戦略をとった。朝日新聞社の出口調査では辺野古移設に賛成の有権者が34%だったのに対し、反対は57%いた。本紙の取材でも、佐喜真氏に投票した人にも「県外に移してほしい」「市民としては普天間固定化阻止、県民としては辺野古移設反対」などの声があった。佐喜真氏を推した公明党県本部幹部も「あくまで辺野古移設には反対」と言う。宜野湾市民の基地負担は重い。市の面積の4分の1を占める普天間飛行場は、市中心部にある。12年前には滑走路そばの沖縄国際大に米軍ヘリが墜落。オスプレイが24機配備され、騒音被害は絶えない。市の「基地被害110番」へ寄せられる苦情は昨年10月、月間で過去最多の100件を数えた。だからこそ普天間の閉鎖・撤去は市民共通の悲願なのだ。辺野古移設に触れず、「一日も早い閉鎖・撤去」を訴えた佐喜真氏への市民の期待を、そのまま辺野古移設支持と受け取ることはできまい。むしろ、身近で危険な普天間飛行場の閉鎖と撤去を願う、市民の意思と受け止めるべきではないか。日米両政府が返還に合意してから今年で20年。本来は生活に密着した諸課題が問われるべき市長選で、米軍基地の県内移設の是非までが問われる沖縄県民の重荷を、一日も早く取り除く責任は日米両政府にある。そのためには、政権はまず「辺野古移設か、普天間固定化か」と県民に二者択一を迫るやり方を改める必要がある。そのうえで、県外移設など早期の普天間閉鎖・撤去の方法がないか、米政府と改めて協議を始めるべきだ。

*1-4:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20160126&ng=DGKKZO96537570W6A120C1EA1000 (日経新聞社説 2016.1.26) 国と沖縄は対話を閉ざすな
 米軍普天間基地がある沖縄県宜野湾市の市長選で与党が推した現職が勝利した。安倍政権は同基地の県内移設に向けた作業を加速する方針だ。もっとも、沖縄県は反対姿勢を崩しておらず、移設実現のハードルはなお高い。国と県は対話の扉を閉ざすことなく、問題解決に努めてもらいたい。普天間移設は2013年に沖縄県の当時の知事が工事に必要な埋め立てを承認した。14年の知事選で当選した翁長雄志氏は昨年、承認の取り消しを発表したが、国は「行政には継続性がある」として工事を続行している。日米両政府が普天間返還で合意して今年ですでに20年になる。県内に代替施設を設けることへの沖縄県民の抵抗感は理解できるが、合意を白紙に戻せば返還はさらに遠のきかねない。市街地にある普天間の危険性を一刻も早く除去するには、県内移設が現状における最も現実的な打開策である。埋め立て承認の可否は国と県の間で訴訟になっており、司法の裁きに委ねるしかない。最高裁で国の主張が認められれば、翁長知事は判決に従うべきである。ただ、先の大戦において沖縄県民が被った惨禍や現在に至る過重な米軍基地負担を考慮すると、法理論を唱えるだけでは県民世論を和らげることはできない。代替施設が完成したとしても、周辺住民の協力がなければ円満な運用は望めない。国は県との溝を埋めるため、何ができるかを改めてよく考えるべきだ。沖縄本島南部にある米軍基地の返還の促進は最重要課題である。民主主義は有権者の意向を選挙を通じて行政に反映させるのが基本ルールだが、選挙には衆参両院選もあれば、知事選や市長選もある。政策課題も1つではない。移設反対派が知事選や衆院選の沖縄の4小選挙区での勝利を根拠に「県内移設は否定された」と主張し、賛成派が今回の市長選で「流れが変わった」と反論する。そんな不毛な言い合いをしても双方の感情的な対立を深めるだけだ。

<政府のこれまでの対応>
*2-1:http://mainichi.jp/shimen/news/20151029dde001010074000c.html (毎日新聞 2015年10月29日) 在日米軍再編:辺野古埋め立て着工 沖縄と対立、政府強行 知事「強権極まれり」
 米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古沿岸部への県内移設計画で、防衛省は29日朝、埋め立てに向けた本体工事に着手した。辺野古の海に隣接する米軍キャンプ・シュワブ内の陸上部分での仮設資材置き場の整備を始めた。今後準備が整い次第、海への土砂投入など埋め立てを開始する見通し。移設に反対する翁長雄志(おながたけし)知事をはじめとする沖縄の反対を振り切って政府が本体工事を強行。日米両政府が1996年に普天間返還で合意してから19年、移設計画は重大な局面を迎えた。沖縄防衛局によると、29日午前8時ごろ、護岸工事に必要な仮設資材置き場の整備作業などを開始。中断していた残り5地点の海底地盤のボーリング調査に向けた準備作業も再開させた。周辺海域では移設に抗議する人たちのカヌーや警戒に当たる海上保安庁の船などが確認された。シュワブのゲート前でも抗議する多くの県民らと警察官がもみ合いとなった。翁長知事は登庁時に記者団の取材に応じ、「強権極まれりという感じで大変残念だ。国に余裕がなく、浮足立っている感じがする。これからしっかりと対峙(たいじ)していきたい」と述べた。移設計画を巡っては翁長知事が13日に埋め立て承認を取り消したのに対し、防衛局は14日に行政不服審査法に基づく審査請求と取り消し処分の執行停止を石井啓一国土交通相に申し立てた。石井国交相は28日に取り消し処分の執行停止の決定を通知。防衛局は28日に県環境影響評価条例に基づいて埋め立て本体工事着手届け出書を県に提出した。防衛局はボーリング調査が終わった計19地点から埋め立て本体工事を進める方針。残り5地点の調査は来春までに完了させる。届け出書によると、工事は2020年10月31日に完了し、約160ヘクタールを埋め立てる。一方で県は13年12月に前知事が埋め立てを承認した際、本体工事着手前の事前協議を留意事項としていたことから、承認取り消しで中断した協議の再開を28日に防衛局に通知。だが、防衛局は同じ28日に「協議は終了した」との文書を県に提出し、再開に応じない姿勢を示した。承認取り消しが執行停止とされたことに対抗し、県は近く、総務省の第三者機関「国地方係争処理委員会」に審査を申し出る。また、翁長知事による埋め立て承認取り消しに対し、政府は代執行の手続きに入ることも閣議で了解。政府が出した承認取り消し処分を撤回するよう勧告する文書が29日に県に届いた。翁長知事は「恒久的な基地を何が何でも沖縄に押しつけるという政府の最後通牒(つうちょう)だ」と批判するなど是正勧告には応じない姿勢を示しており、その場合には政府は知事に代わって承認する代執行を求めて高裁に提訴する方針。
◇政府理解求める
 世耕弘成官房副長官は29日の記者会見で、本体工事着手について、「事故の危険感や騒音などの被害をなくし、基地の整理縮小を目に見える形でしっかりと進めていきたい」と述べ、理解を求めた。

*2-2:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12041917.html
(朝日新聞社説 2015年10月30日) 辺野古、本体工事着手 埋め立て強行は許されぬ
 米軍普天間飛行場の移設先、名護市辺野古で政府は、埋め立ての本体工事に着手した。新基地建設に「NO」という多くの沖縄県民の声に耳を傾けようとせず、一連の手続きを強行する安倍政権の姿勢に、深刻な疑問を感じざるを得ない。沖縄県民の人権と民意がないがしろにされている。同時に、沖縄という一地域に過度の負担を押しつける、この国のあり方が問われている。
■沖縄の「NO」の理由
 政府に改めて求める。工事を速やかに中止し、県と話し合いの場をもつべきだ。いま一度、沖縄県民の心情に寄り添ってみたい。太平洋戦争末期、沖縄は県民の4人に1人が犠牲になる痛ましい地上戦を経験した。本土防衛の「捨て石」とされたのだ。その沖縄は戦後、平和主義や基本的人権を保障した日本国憲法から隔絶された。米軍統治のもと、「銃剣とブルドーザー」で土地を奪われ、強権的な支配のなかで米軍基地が広がる。念願の本土復帰から43年。今なお、国土の0・6%の沖縄に全国の73・8%もの米軍専用施設を抱えている。戦後70年たつのに、これほど他国軍の基地が集中する地域が世界のどこにあろうか。度重なる事故や犯罪、騒音などの基地被害に脅かされ続けてもいる。それが沖縄の現実である。それでも、翁長雄志知事は日米同盟の重要性を否定していない。抑止力で重要な米空軍嘉手納基地の返還も求めていない。こうした歴史をたどってきた沖縄に、さらに「新たな基地建設」を押し付けようとする。そんな政府の姿勢に「NO」の声を上げているのだ。辺野古に最新鋭の基地が造られれば、撤去は難しい。恒久的な基地になりかねない。
■民意に耳を傾けよ
 それに「NO」を告げる沖縄の民意は、昨年の名護市長選、県知事選、総選挙の四つの小選挙区で反対派が相次いで勝利したことで明らかである。政府にとって沖縄の民意は、耳を傾ける対象ではないのか。着工に向けた一連の手続きにも、強い疑問を禁じ得ない。翁長知事による埋め立て承認の取り消しに対し、沖縄防衛局は行政不服審査制度を使い、同じ政府内の国土交通相が取り消し処分の執行停止を認めた。この制度はそもそも、行政機関から不利益処分を受けた「私人」の救済が趣旨である。防衛局は「私人」なのか。政府と県の対立を、政府内の国土交通相が裁くのが妥当なのか。公正性に大きな疑問符がつく。政府は同時に、地方自治法に基づく代執行手続きにも着手し、知事の権限を奪おうとしている。その対決姿勢からは、県と接点を探ろうという意思が感じられない。埋め立て承認の留意事項として本体着工前に行うことになっている事前協議についても、政府は「協議は終わった」と繰り返し、「終わっていない」という県の主張を聞こうとしない。さらに政府は名護市の久志、辺野古、豊原の「久辺3区」に対し、県や市の頭越しに振興費を直接支出するという。辺野古移設に反対する県や市は無視すればいい、そういうことなのか。自らの意向に沿う地域だけが、安倍政権にとっての「日本」なのか。この夏に行われた1カ月の政府と県の集中協議も、結局は、県の主張を聞き置くだけに終わった。その後、政府が強硬姿勢に一変したことを見れば、やはり安保関連法を通すための時間稼ぎにすぎなかったと言わざるを得ない。
■日本が問われている
 「普天間飛行場の危険性を除去する」。政府はいつもそう繰り返す。しかし、かつて米国で在沖米海兵隊などの整理・縮小案が浮上した際、慎重姿勢を示したのは日本政府だった。96年の普天間返還の日米合意から19年。本来の目的は、沖縄の負担軽減のためだった。そのために、まず政府がなすべきは、安倍首相が仲井真弘多(ひろかず)・前知事に約束した「5年以内の運用停止」の実現に向けて全力を傾けることではないか。米国は、在沖海兵隊のグアム移転や、ハワイ、豪州などへの巡回配備で対応を進めている。その現状を見れば、「辺野古移設が唯一の解決策」という固定観念をまずリセットし、地域全体の戦略を再考するなかで、代替施設の必要性も含めて「第三の道」を模索すべきだ。ひとつの県の民意が無視され続けている。民主主義国として、この現実を見過ごすことはできない。日本は人権を重んじる国なのか。地域の将来に、自分たちの意思を反映させられる国なのか――。私たちの日本が、普遍的な価値観を大事にする国であるのかどうか。そこが問われている。

*2-3:http://www.okinawatimes.co.jp/article.php?id=139619
(沖縄タイムス 2015年11月1日) 辺野古新基地に生態系保護で壁 埋め立て土砂規制条例が施行
 名護市辺野古の新基地建設など、公有水面の埋め立てに使う県外からの土砂や石材の搬入を規制する県条例が1日、施行された。特定外来生物の混入を確認できれば、翁長雄志知事が搬入中止を勧告できる。政府は来年秋にも辺野古沿岸部に土砂を投入する計画だが、条例施行で進ちょくに遅れの出る可能性もある。「あらゆる手段で新基地阻止」を掲げる翁長知事を側面支援する狙いで県議会与党が提案し、7月に成立した。新基地建設に歯止めをかける知事権限の一つとして期待する声がある。条例は「アルゼンチンアリ」などの特定外来生物が県外産の埋め立て資材に紛れて県内に侵入するのを防ぎ、沖縄固有の生態系を守るのが目的。辺野古新基地建設、沖縄総合事務局による那覇空港第2滑走路増設が直近の対象になる。1日から、埋め立て事業者は県外から土砂などを搬入する90日前までに、採取地ごとに特定外来生物の有無や防除策を県に届け出なければならない。県は外来生物混入の恐れがあれば現地で立ち入り調査、必要に応じて搬入中止の勧告もできる。従わない事業者名は公表されるが、勧告に強制力はない。新基地建設で、防衛局は県内外からダンプカー約250万台分に当たる約1644万立方メートルの土砂(岩ズリ)を買い取り、辺野古沿岸部を埋め立てる計画だ。この大半を県外から搬入する予定で、沖縄の生態系を破壊しかねない特定外来生物などが紛れ込む懸念が指摘されていた。防衛局の埋め立て申請書では、外来生物の混入を防ぐ具体的な対策が示されていなかった。

<米国について>
*3-1:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12042048.html
(朝日新聞 2015年10月30日) 辺野古着工、米を重視 約束履行の姿勢、グアムで菅長官強調
 日本政府は米政府と1996年に普天間飛行場返還に合意して以来、初めて移設先とする辺野古で埋め立ての本体工事に着手した。安倍晋三首相は2012年暮れに政権に復帰して以来、民主党政権時代に冷え込んだ対米関係の改善を重視。翌年2月の日米首脳会談で、オバマ大統領とは普天間移設を早期に進めることで一致した。今回、辺野古で埋め立ての本体工事に踏み込んだのは、米国に対して約束の履行を訴える狙いがうかがえる。菅義偉官房長官は29日、沖縄に駐留する米海兵隊の一部の移転先とする米領グアムを訪問した。工事着手について、菅氏は「前の仲井真(弘多〈ひろかず〉)知事から埋め立て承認をいただいた。行政判断はもう下っているわけだから、その継続という形で進めている」と記者団に強調した。この日は、グアム選出の米下院議員と会談して埋め立ての本体工事に着手したことを伝えるなど、普天間移設を推進する安倍政権の姿勢を米側にアピールした。一方、翁長氏は批判を強める。29日午後、県庁で記者会見を開き、「法律的に最終的な判断が示されないまま工事が強行された。激しい憤りを禁じ得ない」と非難した。また埋め立て承認取り消しの効力を国土交通相に止められたことを不服とし、国地方係争処理委員会への審査申し出を表明。地方自治体による申し出は全国3例目となる。翁長氏は「基地建設に反対する多くの県民を代弁する知事として、あらゆる手法を駆使する」と訴えた。

*3-2:http://www.okinawatimes.co.jp/article.php?id=137794 (沖縄タイムス 2015年10月20日) 辺野古承認取り消し、支持79% タイムス・RBC世論調査
 沖縄タイムスと琉球放送(RBC)は、翁長雄志知事が名護市辺野古の新基地建設に伴う沿岸部の埋め立て承認を取り消したことを受け、16~18日の3日間、電話による緊急世論調査を合同で実施した。知事の取り消し判断を「支持する」と答えた人が79・3%に上り、県民の幅広い層が理解を示している結果が出た。知事の取り消しを「支持しない」と答えた人は16・1%。「どちらでもない」は4・5%だった。国が取り消しを無効化する対抗措置を経て移設作業を再開しようとしていることには、72・3%が「妥当ではない」と答え、国の方針に県民の反発が強い現状も浮き彫りになった。知事は昨年12月に就任以降、約10カ月が経過している。知事のこれまでの県政運営を「支持する」と答えた人は78・6%で、取り消しを支持する層とほぼ同様の割合だった。「支持しない」とした人は15・5%。国の作業再開方針を「妥当だと思う」とした人は20・8%。「どちらでもない」は6・9%だった。一方、裁判で沖縄側の主張が認められることへの期待は「期待できる」が50・1%にとどまり、「期待できない」が33・9%となった。「どちらでもない」は16・0%。調査は16~18日の3日間、県内全域の世帯を対象に、無作為に抽出した番号に電話をかけて、考えを聞いた。有効回答数は793人。有効回答率は9・9%。回答した人の地域別比率は北部11%、中部34%、南部・先島が55%。

<代替案>
*4:http://digital.asahi.com/articles/DA3S11842452.html (朝日新聞 2015年7月5日) (現場から考える 安全保障法制)宮古島の牧場「ここに基地が」 自衛隊増強の方針
 東京から南西に約2千キロ、沖縄本島からも約300キロ離れた宮古島(沖縄県宮古島市)。北部の海岸近くにある「大福牧場」の牛舎では、名産の黒毛牛が数十頭、草をはんでいた。この牧場周辺の大草原が陸上自衛隊のミサイル基地の候補地だ。防衛省の担当者は「海沿いの高台にあって、ミサイルを置くのに最適地だ」と話す。防衛省は、2018年度末までに宮古島に約800人の陸自ミサイル部隊などを配備する方針だ。宮古島などに配備する部隊は、警備部隊に加え、地対空ミサイル部隊、地対艦ミサイル部隊など本格的な戦闘部隊だ。沖縄の離島に、高い攻撃力を持った自衛隊の部隊が戦後初めて配備されることになる。「部隊が入ってきて訓練でも始めたら、この静かな土地はどうなってしまうのか」。牧場の従業員は不安を隠さなかった。一方、過疎化対策などで部隊配備を歓迎する声も少なくない。安倍政権は宮古島など南西諸島の自衛隊強化を加速する。那覇基地には昨年、「空飛ぶレーダー」といわれる早期警戒機の部隊を三沢から移した。F15の戦闘機部隊も新たに福岡から約20機を移し、約40機態勢に増強する。離島占拠に備え、離島奪還のための「水陸機動団」を新設する。オスプレイや水陸両用車など装備の強化も急ぐ。安倍政権が意識するのは、海洋進出を加速する中国の脅威だ。
■中、船の派遣常態化 米、主体的防衛期待
 中国は2013年11月、自国の防空目的で設ける空域「防空識別圏」を尖閣諸島を含む形で設定した。中国軍は日本列島から台湾、フィリピンなどを結ぶラインを「第1列島線」と呼び、その内側を中国の艦船が自由に往来できる「内海化」する戦略を立てる。習近平(シーチンピン)指導部は、尖閣諸島では公船派遣を常態化させ、南シナ海では埋め立てを進めることで、この戦略を着々と実行に移している。この中国の戦略は、米国の「リバランス(アジア回帰)」政策とぶつかる。米国は、南シナ海では中国の海洋活動を牽制(けんせい)するために沿岸国を支援している。これに対し、東シナ海では、尖閣を含めた日本の離島防衛は、日本が独自に担えるよう能力を向上させようとの狙いが透ける。今年4月に改定された日米防衛協力の指針(ガイドライン)でも、離島防衛は自衛隊が「主体的に実施する」とされ、米軍の関与は「自衛隊を支援し補完する」とした。水陸両用車両を売り、自衛隊の「水陸両用戦」の能力を高めようと支援している。日米中のにらみ合いが続く中で、各国にとって「悪夢」は、自衛隊と中国軍の偶発的な衝突だ。日中は衝突を避けるための仕組み「海空連絡メカニズム」の早期運用開始で合意している。戦闘機や艦艇が直接無線交信するために周波数を決めたり、自衛隊と中国軍の幹部どうしを結ぶホットラインを設けたりするものだ。しかし、尖閣問題の対立先鋭化を避けるため、日中両国の領海、領空は対象にしない方針だ。日本は尖閣諸島に領土問題は存在しないという立場で、「中国に尖閣諸島の周辺で連絡メカニズムを使われ、領有権を主張されると困る」(防衛省幹部)。ただ、そうした地域ほど衝突の可能性は大きく、十分な連絡体制になるか疑問視されている。
■離島防衛「ちぐはぐ」 野党が対案「一番心配なのに」
 尖閣諸島周辺に接近する中国軍にどう対処するか。安倍政権は安保法制で、武装漁民による離島占拠など、日本に対する武力攻撃には至らないが警察力では対応できない「グレーゾーン事態(準有事)」に対応する法整備を見送った。公明党が自衛隊の権限拡大に慎重だったのに加えて、警察や海上保安庁が権限縮小をいやがったようだ。この結果、グレーゾーン事態では、電話閣議を導入して自衛隊出動の判断を迅速化するなど、運用の改善で済ますことにした。「切れ目のない法整備というのに、一番の切れ目に手当てをしない。対応がちぐはぐだ」。自民党の防衛相経験者は疑問を呈する。一方、維新の党は今月2日、安保関連法案の対案を決定した。この中で、グレーゾーン事態で自衛隊が海上保安庁に協力する「領域警備法案」をまとめた。民主党も同法案を共同提出する方向だ。同法案は、警察や海上保安庁と自衛隊の関係を強化し、グレーゾーン事態の際に自衛隊が出動する手続きを簡略化するものだ。尖閣諸島周辺を念頭に、国会承認で「領域警備区域」を指定。平時から自衛隊が海上保安庁の警備に協力する。グレーゾーン事態では、閣議決定なしに自衛隊が「海上警備行動」や「治安出動」をできるようにする。ただ、それがかえって軍事衝突を誘発しないか、という議論もある。維新の党の柿沢未途幹事長は3日の衆院特別委員会で「国民が一番心配しているのは尖閣諸島をはじめ離島防衛だ。法整備を政府はなぜ置き去りにするのか」と指摘。中谷元・防衛相は「平時から自衛隊が海上保安庁と警察権を行使することは、日本側が事態をミリタリー(軍事)対ミリタリーにエスカレートさせたとの口実を相手に与える恐れがある」と答弁した。


PS(2016.1.27追加):*5-1のように、現在、日本の外務省は尖閣諸島が日本固有の領土であることは歴史的にも国際法上も明らかだとして根拠を示している。また、太平洋戦争後27年目の1972年日中国交正常化時点で合意された周首相(中国)と田中首相(日本)との間で交わされた尖閣問題棚上げ(一時的に問題を未解決のままにしておくこと)合意は、*5-2のように、「日中国交正常化という大同のために尖閣諸島の領有権問題という小異を次世代に繰り延べる」というものだ。そのため、それから40年以上過ぎた現在でも棚上げを主張するのは日本側の不作為に過ぎず、周首相や田中首相が現在のリーダーであれば、別の対応をすると考える。

*5-1:http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/senkaku/qa_1010.html#q5 
尖閣諸島に関する日本外務省の見解
Q1:尖閣諸島についての日本政府の基本的な立場はどのようなものですか。
A1:尖閣諸島が日本固有の領土であることは歴史的にも国際法上も明らかであり,現に我が国はこれを有効に支配しています。したがって,尖閣諸島をめぐって解決しなければならない領有権の問題はそもそも存在しません。
Q2:尖閣諸島に対する日本政府の領有権の根拠は何ですか。
A2:第二次世界大戦後,日本の領土を法的に確定した1951年のサンフランシスコ平和条約において,尖閣諸島は,同条約第2条に基づいて日本が放棄した領土には含まれず,同条約第3条に基づいて,南西諸島の一部としてアメリカ合衆国の施政下に置かれました。1972年発効の沖縄返還協定によって日本に施政権が返還された地域にも含まれています。尖閣諸島は,歴史的にも一貫して日本の領土である南西諸島の一部を構成しています。即ち,尖閣諸島は,1885年から日本政府が沖縄県当局を通ずる等の方法により再三にわたり現地調査を行い,単に尖閣諸島が無人島であるだけでなく,清国の支配が及んでいる痕跡がないことを慎重に確認した上で,1895年1月14日に現地に標杭を建設する旨の閣議決定を行って,正式に日本の領土に編入しました。この行為は,国際法上,正当に領有権を取得するためのやり方に合致しています(先占の法理)。尖閣諸島は,1895年4月締結の下関条約第2条に基づき,日本が清国から割譲を受けた台湾及び澎湖諸島には含まれません。
【参考:サンフランシスコ平和条約第2条】
(b)日本国は,台湾及び澎湖諸島に対するすべての権利,権原及び請求権を放棄する。 (以下略)

*5-2:http://vergil.hateblo.jp/entry/20130623/1371997158
[文書名] 田中総理・周恩来総理会談記録
[場所] 北京
[年月日] 1972年9月25日〜28日
第一回首脳会談(9月25日)
周総理: 田中総理の言うとおり、国交正常化は一気呵成にやりたい。国交正常化の基礎の上に、日中両国は世々代々、友好・平和関係をもつべきである。日中国交回復は両国民の利益であるばかりか、アジアの緊張緩和、世界平和に寄与するものである。また、日中関係改善は排他的なものであってはならない。田中・大平両首脳は、中国側の提示した「三原則」を十分理解できると言った。これは友好的な態度である。今回の日中首脳会談の後、共同声明で国交正常化を行い、条約の形をとらぬという方式に賛成する。平和友好条約は国交樹立の後に締結したい。これには、平和五原則に基づく長期の平和友好関係、相互不可侵、相互の信義を尊重する項目を入れたい。日中友好は排他的でないようにやりたい。日中は大同を求め小異を克服すべきであり、共通点をコミュニケにもりたい。
第二回首脳会談(9月26日)
田中総理: 大筋において周総理の話はよく理解できる。日本側においては、国交正常化にあたり、現実問題として処理しなければならぬ問題が沢山ある。しかし、訪中の第一目的は国交正常化を実現し、新しい友好のスタートを切ることである。従って、これにすべての重点をおいて考えるべきだと思う。自民党のなかにも、国民のなかにも、現在ある問題を具体的に解決することを、国交正常化の条件とする向きもあるが、私も大平外相も、すべてに優先して国交正常化をはかるべきであると国民に説いている。具体的問題については小異を捨てて、大同につくという周総理の考えに同調する。

第三回首脳会談(9月27日)
田中総理: 尖閣諸島についてどう思うか?私のところに、いろいろ言ってくる人がいる。
周総理: 尖閣諸島問題については、今回は話したくない。今、これを話すのはよくない。石油が出るから、これが問題になった。石油が出なければ、台湾も米国も問題にしない。国交正常化後、何カ月で大使(館)を交換するか?
大平大臣: できるだけ早く必要な措置を講じていくが、共同声明のなかに、何カ月以内にとは書けない。もし1日でもたがえたらよくないことだからだ。総理と私とが中国を訪問した以上、2人を信用してもらって、できるだけ早く大使の交換をやるということで御了承願いたい。

 会談全体の流れを見れば、日中国交正常化にあたって、尖閣問題を棚上げとすることで両国首脳の合意があったことは明白だ。


<憲法改正について>
PS(2016年1月29日追加):*6のように、「憲法“改正”は立党以来の自民党の党是であり、夏の参院選で争点にする」とのことだが、「自主憲法を作る」というだけでは憲法を改正する理由にはならない。何故なら、日本国憲法は、当時の日本人が自主的に変えたものではないからこそ、国民主権、基本的人権の尊重、平和主義などの三大原則や法の下の平等、男女平等、言論の自由など、明治憲法から見れば革命的な国民の権利が定められたものだからである。そのため、自民党は憲法改正を包括的に一括して公約するのではなく、自民党の憲法改正草案を逐条で、①改正したいと考える条項 ②その理由 ③改正したら変化する法的効果 などについて説明すべきであり、野党やメディアも、議員の信頼を落とすようなチクリばかりでなく、正面から自民党の憲法改正草案を逐条で取り上げて質問すべきだ。日本国民は、既にそのレベルに達しており、まともな報道をすれば判断できるのだから・・。

*6:http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201601/CK2016012802000133.html (東京新聞 2016年1月28日) 「改憲、参院選の公約に」 首相、代表質問で明言
 安倍晋三首相は二十七日、衆参両院の本会議で行われた各党代表質問で、夏の参院選で争点にする考えを示している改憲について「自民党は党是として、立党以来ずっと憲法改正を掲げており、今後とも公約に掲げ、しっかりと訴える」と表明した。改憲について、おおさか維新の会の馬場伸幸幹事長は「地方自治体が国の意思決定に関与できる仕組みを創設する」として、統治機構改革のために改憲する必要があると訴えた。首相は「御党が具体的な改正項目を検討していることに敬意を表する」と理解を示したが、安倍政権が目指す具体的な改憲項目については「国会や国民的な議論と理解の深まりの中で定まる」とし明確にしなかった。首相は、環太平洋連携協定(TPP)について「署名後、速やかに協定の承認案と関連法案を国会に提出し、承認を求める」と説明した。交渉参加十二カ国による署名式は二月四日にニュージーランドで行われる。米軍普天間(ふてんま)飛行場(沖縄県宜野湾(ぎのわん)市)の移設に伴う名護市辺野古の新基地建設については「普天間の全面返還を日米で合意してから二十年たった。もはや先送りは許されない」と指摘。沖縄県との法廷闘争に関しては「やむを得ない措置だ。対話の窓を閉ざすことは決してない」との考えを示した。二十八日は参院本会議で代表質問が行われる。

<金を使って害になることばかりする理由は何か>
PS(2016年1月31日追加): *7-1、*7-2のように、ホタテ養殖などで知られた宮城県石巻市雄勝町では、130億円かけて、高さ9.7メートル、延長3.5キロの防潮堤を築く計画が進んでいるそうだが、高台の集団移転地が完成し、町の従来の中心部に住むのは約80世帯くらいで、住民は「景観を破壊する」と防潮堤の建設には反対しているそうだ。宮城県は道路や再建された水産加工場など保全すべき施設があると主張しているそうだが、その場所は津波の際には水につかることを前提として建設すべきで、それよりも海と陸が切り離され森から海への栄養塩のルートが断たれてホタテの養殖に悪影響を与えたり、景観の悪化で観光客も呼べなくなったりする方が、生活権を侵害される重要な問題だ。
 そのため、環境を壊すので地元住民も望まないような防潮堤を造ることは、所得税の2.1%分を復興特別所得税として支払って東北を応援している国民も望むところではなく、環境への親和性が高くて無駄なコストをかけない対応をしてもらいたいのである。なお、この間、国費を使って毎週のように東北に通った国会議員は、何を聞いてきたのかと思われるが、行って話を聞いたというアピールをするだけでは意味がない。私自身は、住居、幹線道路、重要施設は高台に移転し、下は放牧地、田畑、公園などを、津波の際には浸水することを前提として、緑の防潮堤とともに配置するのがよいと考える。
 それにもかかわらず、金を使ってこのように害になることばかりしている理由は、政策担当者が、自然、生態系、生物、物理に疎く、何が何でもコンクリート造りの人工物がBestだと考えているからだろう。

      
 *7-1より      問題になっている巨大防潮堤       震災瓦礫を基礎にした緑の防潮堤
                      (どちらがよいふるさとになるかは、書くまでもない)
 
*7-1:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12186991.html?_requesturl=articles%2FDA3S12186991.html&rm=149 (朝日新聞 2016年1月31日) (東日本大震災5年 現場から考える:上)巨大防潮堤、何守る 宮城・雄勝
■高台移転、住民戻らず
 いったい何を守るためなのか。硯(すずり)の生産やホタテ養殖で知られた宮城県石巻市雄勝(おがつ)町。津波で壊滅した町中心部にいま、130億円をかけ高さ9・7メートル、延長3・5キロの防潮堤を築く計画が進む。津波をかぶったまちの跡は、災害危険区域に指定され、もう人は住まない。高台の集団移転地が完成し、町外で仮住まいを続ける人が戻っても、中心部に住むのは震災前の620世帯から約80世帯にまで減る。更地にぽつんと立つ仮設商店街の一室で昨年12月25日、防潮堤計画をめぐり、宮城県と「持続可能な雄勝をつくる住民の会」の話し合いが持たれた。「景観を破壊する」と建設に反対する住民。道路や再建された水産加工場など、保全すべき施設があると主張する県。平行線が続いた。「海と陸が切り離された雄勝では、観光客も呼べない。10年以内に町は衰退する」。硯職人の3代目、高橋頼雄さん(48)は語気を強める。自宅を流されながら、この5年近く、町のホタテ祭りなどを引っ張ってきた。「何とかこの地で皆でやっていけないかと、考えてきたんです」。県の担当者は「まちづくりの様々な会合で説明し、住民合意はなされたと判断した」という。だが決議などをとったわけではない。住民の会事務局の徳水博志さん(62)は「いま一度、地域住民を集めて採決すべきだ」と反論した。地元の市役所も、壁のような防潮堤を望んだわけではなかった。石巻市雄勝総合支所は震災の年、住民団体の議論もふまえ、海沿いを走る県道や国道を20メートルの高さまで移し、道沿いに山をきりひらいて住宅地をつくる復興案をまとめた。それなら防潮堤は、もとの4メートル程度に復旧すればいい。ところが県は、数十年から百数十年に一度の津波に対応する「L(レベル)1」の高さにこだわった。「道路移転は必要ない。費用もかかる」との考えが示され、9・7メートルの計画が動きだしたという。「防潮堤の上げ下げを議論していても、まちづくりは進まない。のまざるを得なかった」と三浦裕総合支所長は振り返る。県は2018年春の防潮堤完成を目標に、年度内の着工をめざす。工事が始まれば、硯職人の高橋さんは雄勝を離れるつもりだ。
     *
 東日本大震災からまもなく5年。人口が激減する三つのまちから「復興」を考える。

*7-2:http://onion21.cocolog-nifty.com/onion21_kyodo_news_blog/2014/06/post-1460.html(河北新報2014年6月13日)東日本大震災 巨大防潮堤/合意なき「壁」で何を守るのか
 沿岸被災地で完成間もない防潮堤に登ってみた。そこでは高さ10メートルを超える「壁」が海と陸をきっぱりと隔てていた。被災3県で整備予定の防潮堤は総延長386キロに及ぶ。既に46キロ分が完成し、各地で工事が本格化している。宮古市田老地区では、巨大防潮堤への過信が被害を大きくしたとの指摘もあった。それでも岩手県は、現況から4.7メートルをかさ上げする。気仙沼市本吉町の小泉海岸に造る防潮堤は14.7メートル。ここから海に流れ込む津谷川の河口堤を含めた完成予想図は、土木工学の専門家が今から難工事を予見するほどのスケールだ。既存の防潮堤は各県横並びでおおむね1メートルのかさ上げが決まった。「既存高プラス1メートル」までなら災害復旧事業の枠内として全額国に負担してもらえるためだ。国の基準を出発点に各県は、防潮堤の整備方針を決定。その後、背後地を土盛りしてインフラを敷設。最後に住民に諮ってまちづくり計画を固める。行政による復興は概略この順序で進められてきた。だが、復興に寄せる被災住民の思いは、行政の手法と逆のプロセスをたどるのが普通だろう。住民はまず「こんなまちで暮らしたい」という理想から対話を始める。次に願いを形にして街並みや施設の配置を考える。そして最後に防潮堤は必要か、必要だとしたら許容できる高さはどれくらいかを決める。防潮堤の建設を復興の入り口とする行政と出口に置く住民では、議論がかみ合うはずもなかった。単なる復旧事業である以上、住民合意も必要としない。結果、復興の加速化を重視する行政の対応は相当、荒っぽいものとなった。岩手県の説明会では職員が膨大な資料を駆け足で説明し、住民は熟慮する時間を与えられないまま、その場で拍手を求められたという。宮城県の村井嘉浩知事は「私の責任で決断する」との言説を曲げようとしない。仮に、それが住民の命を守る手だてだとの信念で復興事業を推し進めたとしよう。しかし、住民の理解と納得を軽視する形で造った防潮堤によって土地の魅力が減じてしまえば、やがて人々はその土地から去っていく。そうなったとき、巨大防潮堤は一体何を守ろうというのか。防潮堤整備の復旧事業扱いには、自然環境を保全する観点からも問題点が指摘されている。原状回復のレベルを逸脱する工事にもかかわらず、環境影響調査の対象外となるためだ。波打ち際をコンクリート壁で固めることによる生態系や、そこからの恩恵で成り立つ漁業への影響が真剣に検討されてきた形跡は、残念ながらない。過去、幾度となく津波被害に遭ってきた三陸の住民は、しなやかに、あるいはある種の諦観をもって海と向き合い、生きてきた。足元の防潮堤は、そんな精神性までも押しつぶそうとしているように見える。


PS(2016年2月5日追加): 辺野古新基地建設に伴う埋め立て承認取り消しをめぐる代執行訴訟で、福岡高裁那覇支部は、*8のように2つの和解案を示したそうだ。これまでの経緯を見れば、沖縄県地元紙の論調の方が正しいと考える。そのため、国は、ここで環境と財政の両方を考慮した案に変更すべきだ。

*8:http://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-215658.html
(琉球新報社説 2016年2月4日) 辺野古和解勧告 問題の本質を見極めよ
 辺野古新基地建設に伴う埋め立て承認取り消しをめぐる代執行訴訟で、福岡高裁那覇支部(多見谷寿郎裁判長)が示した和解案2案が判明した。このうち「根本的な解決案」は、県が承認取り消しを撤回する代わりに、国は新基地の「30年使用期限」か「軍民共用」を米側と交渉するという内容だ。これのどこが「根本的」か、理解に苦しむ。沖縄への米軍基地の圧倒的な偏在の上に、なおも新基地を押し付けることに県民は反発している。本土の民意は大事にするのに、沖縄の民意は簡単に踏みにじることの差別性も問うているのである。和解案の通りなら結局、民意を無視して新基地が押し付けられることになる。基地の偏在は微動だにしない。貴重な環境も破壊される。民主主義と地方自治の否定、構造的差別という根源的な問題は放置されるのだ。論外である。使用期限も全くの空念仏だ。1999年当時の移設案の「15年使用期限」に対して政府は「尊重」を閣議決定したが、米側にまともに要求すらせず、2006年には沖縄の頭越しに一方的に廃止した。信用できるはずがない。しかも和解案は米側と「交渉する」だけである。米側が拒めばそれで終わりだ。30年後の返還を裁判所が保証できるわけがなく、いったんできてしまった新基地は半永久的に続くのである。県側は受け入れに否定的だが、当然だろう。半面、「暫定的」な案の方は興味深い。国が代執行訴訟を取り下げて工事を停止し、県と協議する。折り合わなければ、強制力の弱い違法確認訴訟で争うという内容だ。法定受託事務の処理をめぐって国と県が折り合わない場合、取り得る手段はいくつかある。このうち代執行は最も重く、強制的な処分だ。地方自治法は「是正勧告」や「指示」などを経てもなお「是正が困難」な場合に、初めて代執行が可能と規定しているのだ。 一挙に代執行訴訟を提起したことについて、国は緊急性を理由にしているが、選挙期間中は作業を中断するのだから説得力は乏しい。裁判長もそう判断しているのだろう。いずれにせよ裁判所は問題の本質を見極めてもらいたい。この国が法の前に誰もが平等な「法治国家」なのか、それとも政府の恣意(しい)的な法解釈を許し、民意も地方自治も踏みにじっていい国なのか。問われているのはそのことである。

| 辺野古・普天間基地問題::2015.4~ | 03:19 PM | comments (x) | trackback (x) |
2015.10.13 普天間基地の閉鎖と辺野古の基地建設問題について (2015年10月14日、15日、28日、11月1日、27日に追加あり)
    
 2015.10.13                辺野古の位置と地形            2015.5.31 
 沖縄タイムス                                          朝日新聞
 
(1)沖縄県の辺野古埋め立て承認取り消し
 普天間基地の辺野古移設については、*2-1のように、2013年12月に仲井真前知事が政府による辺野古沿岸部埋め立て申請を承認し、2014年11月の沖縄県知事選では、辺野古移設反対を公約に掲げた翁長氏が仲井真氏を破って、新知事に当選した。

 しかし、*1-1のように、仲井真前知事は、翁長新知事(前那覇市長)が知事に就任する直前に工法変更の承認まで行っていたため、翁長新知事が、*2-3のように、承認過程を検証する第三者委員会にかけた上で、「承認の手続きに瑕疵がある」として承認を取り消した。私は、2013年12月の仲井真前知事の誰かに脅されたかのような突然の翻意や2014年12月の知事交代直前の工法一部変更承認には疑問が多いため、仲井真知事の判断や承認手続きには、本質的な瑕疵が潜んでいそうだと考える。

 そして、*1-2のように、①普天間基地の移設先が名護市辺野古である必要性は乏しい ②米軍基地が沖縄県に集中し、基地負担が固定化する ③周辺の自然環境に悪影響がある 等の理由を挙げて、翁長知事が埋め立て承認を取り消したのに対し、菅官房長官や中谷防衛大臣は、「承認に法的瑕疵はない」「辺野古が唯一の選択肢だ」「粛々と進める」等の思考停止したような観念的で短い返事を繰り返すのみである。そして、国交相に行政不服審査法に基づく不服審査と取り消し措置の効力の一時停止を申し立てる考えを示したそうだが、何が大切かについての考察がなく、誰かから言われたフレーズを繰り返し、権力を振りかざすだけでは、官房長官や防衛大臣として不足である。

(2)これまでの経緯
 そのような中、*2-2のように、沖縄タイムスは、2015年4月6日付の「翁長・菅会談」における翁長知事の冒頭発言が、民意を過不足なく代弁し、ウチナンチュの心の琴線に触れる内容だったため、年配の読者が感動し興奮したと伝えている。確かに、有権者を馬鹿にし、大した根拠もないのに自分たちの判断が唯一無二だとする一部ヤマトンチュの態度は、同じヤマトンチュから見ても見苦しい。

 そして、沖縄県の第三者委員会は、*2-3のように、①沖縄防衛局は普天間の危険性除去・早期移設を挙げたが、他の場所ではなく辺野古だけが適切だとする理由を説明しておらず、論理の飛躍がある ②普天間の早期閉鎖手法が辺野古移設であるべき根拠はない ③辺野古移設の不利益は、沖縄に米軍基地の固定化を招き、格差や過重負担を固定化することである ④こうした状態は法の下の平等を定めた憲法14条の精神に反する ⑤埋め立て地域の一部は県の「琉球諸島沿岸海岸保全基本計画」で開発行為に規制が掛かっているが、防衛局は必要な規制解除の手続きを取らなかったため承認に瑕疵があった などを指摘しており、もっともである。さらに、上の右端の図のように、日本各地の土砂を沖縄に運び込むなど、生態系を壊す可能性のあるとんでもない話だ。

 しかし、*2-4のように、沖縄県の辺野古協議書取り下げ要求を、菅官房長官は拒否した。また、*2-5のように、2015年8月11日から辺野古移設工事を全面的に中断し、9月9日まで約1カ月の集中協議を行ったが、これは結論ありきの形式で、*2-6のように、9月13日には工事が再開された。これは、沖縄の民主主義で示された民意を踏みにじる行為にほかならない。

 そのため、*2-7のように、2015年9月21日に、翁長知事がスイスで開かれた国連人権理事会で「沖縄の人々の人権はないがしろにされている」という演説をしなければならなくなった。私は2012年2月からこのブログで普天間基地問題に関しても注視して記述していたため知っているのだが、確かに最初、ヤマトンチュのメディアは、沖縄問題は他人ごとで放っておけばよいという態度だった。そのために、ヤマトンチュの政治家や国民の認識が遅れたので、私は、沖縄の基地問題は、安全保障の問題であるのみならず、民族差別や人権問題も含んでいると考える。

(3)島尻参議院議員(自民党、沖縄選出)の沖縄担当相就任について
 *3-1のように、朝日新聞が、2015年4月18日、19日に、全国世論調査と沖縄県民意識調査を電話で行ったところ、米軍普天間飛行場の辺野古移設については、全国で「評価しない(55%)」が「評価する(25%)」を上回り、沖縄では「評価しない(73%)」が「評価する(18%)」を圧倒したそうだ。また、翁長知事の「辺野古に基地をつくることに反対し、移設のための作業を停止するよう指示した」という対応に、全国では「評価する(54%)」が「評価しない(28%)」を上回り、沖縄では「評価する(70%)」が「評価しない(19%)」を引き離したとのことである。

 さらに、*3-2のように、辺野古の埋め立て工事を阻止しようとする抗議市民と警官がもみ合いになる事態も起こっており、沖縄防衛局は移設に向けた準備作業を進め、市民らは関係車両がゲートに入るのを阻止しようと集まって、必死の抵抗をしているわけだ。

 これに対し、*3-3、*3-4のように、自民党沖縄県連会長に就任した島尻参院議員は、2015年4月4日、自民党の県連大会挨拶で、「名護市辺野古の新基地建設をめぐる市民の反対運動は責任のない市民運動で、私たちは政治として対峙する」「反対運動の声の大きさに恐れおののかず、毅然と冷静に物事を進めないといけない」と発言したそうだ。これは、国会議員が国民によって選ばれ、国民に委託されて政治を行っていることを考えていない発言で、島尻氏が「その発言は市民運動を否定するものではない。運動と私たちの立場である政治は違うという意味だ。現実を見据えて物事を進めるのが政治の使命だ」と説明しているのは、その説明自体がおかしい。

 このような島尻参議院議員が、*3-5のように、2015年10月7日に沖縄担当相として入閣した。安倍首相の女性枠だろうが、米軍普天間飛行場の返還問題では、2010年7月に「県外移設」を訴えて沖縄選挙区で再選を果たした参議院議員だ。その後、*3-3、*3-4のような発言をしていたため、どうするのか見ものである。

<沖縄県の辺野古埋め立て承認取り消し>
*1-1:http://www.okinawatimes.co.jp/article.php?id=136905 (沖縄タイムス 2015年10月13日) 【号外】辺野古埋め立て根拠失う 翁長知事が承認取り消し 
 翁長雄志知事は13日午前、県庁で記者会見し名護市辺野古沿岸部の埋め立て承認を取り消したと発表した。前県政の承認の手続きに「瑕疵(かし)がある」と判断した。翁長知事は「承認は取り消すべき瑕疵があると判断した。今後も辺野古に新基地は造らせないという公約実現に向け、全力で取り組む」と述べ、新基地建設を阻止すると強調した。承認取り消しで、沖縄防衛局は埋め立ての根拠を失い、辺野古沖での作業ができなくなる。県は、承認の過程を検証した第三者委員会の「瑕疵あり」の結論を踏まえ、埋め立て承認申請では普天間飛行場の代替施設を県内に建設する根拠が乏しく、環境保全策が不十分な点などを指摘。埋め立ての必要性を認めることができないと判断した。取り消しを受けて、防衛局は公有水面埋立法を所管する国土交通相に対し、県の取り消しの効力を止める執行停止と、無効化を求める審査請求をする見通し。翁長知事は知事就任前から「あらゆる手段で新基地建設を阻止する」と公約に掲げてきた。ことし7月に第三者委員会が承認に「瑕疵がある」と翁長知事に報告後、8月10日から1カ月かけた政府との集中協議が決裂。処分される防衛局側の意見を聞く「意見聴取」と「聴聞」の手続きを終えて、取り消しが決まった。防衛局は県に出した陳述書で「承認手続きに瑕疵はなく、取り消しは違法」と主張している。

*1-2:http://www.nikkei.com/article/DGXLASFK13H0P_T11C15A0I00000/
(日経新聞 2015/10/13) 沖縄知事、辺野古埋め立て承認取り消し発表 菅氏「瑕疵ない」
 沖縄県の翁長雄志知事は13日午前、県庁で記者会見し、米軍普天間基地(同県宜野湾市)の移設先、名護市辺野古沿岸部の埋め立て承認に関し、正式に取り消したと発表した。防衛省沖縄防衛局は移設工事を進める法的権限を失う。中谷元・防衛相は工事を続けるため、直ちに承認取り消しの執行停止と無効を求める申し立てをする方針を示した。県によると、13日付で沖縄防衛局に文書を送付し、埋め立て承認を取り消したことを通知した。理由について(1)普天間基地の移設先が名護市辺野古である必要性が乏しい(2)沖縄に集中する米軍基地負担が固定化する(3)周辺の自然環境への影響――などをあげた。翁長氏は記者会見で、仲井真弘多前知事が埋め立てを承認したことについて「到底容認できない」と主張。政府と県による1カ月間の集中協議で「沖縄の考え方や思いが理解いただけなかった」と政府を批判した。政府が対抗措置をとれば「法律的にも政治的にもしっかり沖縄の主張をしていく」と強調した。菅義偉官房長官は13日の閣議後の記者会見で「承認に法的瑕疵(かし)はない」と強調。埋め立て工事を進める考えを示した。「公有水面埋立法を所管する国土交通相に、審査請求および執行停止の申し立てすることを含め、対応を検討する」と述べた。中谷氏も記者会見で、国土交通相に行政不服審査法に基づく不服審査と、取り消し措置の効力の一時停止を速やかに申し立てる考えを示した。取り消しの効力が一時的になくなれば、移設工事を再開できる。政府は今秋以降に本体工事に着手する方針だ。ただ、工事を再開すれば今度は県が工事を阻止するための対抗措置を取る方針で、最終的に法的闘争に発展する可能性が高い。普天間基地の移設問題を巡っては、2013年12月に仲井真前知事が政府による辺野古沿岸部の埋め立て申請を承認した。14年11月の知事選で翁長氏が辺野古移設反対を公約に掲げて仲井真氏を破った後、15年1月に承認過程を検証する第三者委員会を置いた。第三者委が手続きに関し「法的な瑕疵がある」との報告書をまとめたのを受け、翁長氏は9月に承認を取り消す方針を表明していた。

<これまでの経緯>
*2-1:http://digital.asahi.com/articles/ASGD55RDCGD5TPOB002.html
(朝日新聞 2014年12月5日) 沖縄・仲井真知事、辺野古の工法変更を承認 退任直前に
 米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古への移設計画を巡り、仲井真弘多知事は5日、工法の一部を変更したいとする沖縄防衛局からの申請を承認した。移設阻止を掲げる翁長雄志(たけし)・前那覇市長の知事就任を10日に控え、任期切れ目前の仲井真氏が昨年末の辺野古の埋め立て承認に続き、国に「お墨付き」を与えたことに、県内では反発の声が上がった。沖縄防衛局は9月、仮設道路の設置や護岸の追加など4項目の変更を県に申請。うち2項目について県は5日までに審査を終え、仲井真氏が承認した。仲井真氏は「標準的な処理期間を大幅超過しており、判断すべき時期と考えた」とするコメントを発表。しかし、移設反対派の市民団体は同日、県土木建築部長を訪ね、「(承認の公印の)押し逃げだ」と批判した。新たに知事に就く翁長氏は変更申請について、「私に判断をお任せ願いたい」と述べていた。移設工事を巡る国の変更申請は今後も繰り返し出される見通しで、知事就任後の翁長氏の対応が焦点となる。

*2-2:http://www.okinawatimes.co.jp/article.php?id=110598
(沖縄タイムス社説 2015年4月7日) [知事不退転の決意]支援の大きなうねりを
 感動のあまり心が打ち震えることをウチナーグチで「ふとぅふとぅー」と表現する。6日付本紙に掲載された「翁長・菅会談」の翁長雄志知事の冒頭発言を読んで、年配の読者は「ふとぅふとぅーしてきた」と興奮気味に伝えてきた。このような感想が出てくるのは、翁長知事の発言が名護市長選、知事選、衆院選で示された民意を過不足なく代弁しているだけでなく、ウチナーンチュの心の琴線に触れる内容だったからだ。テレビで連日のように流れる菅義偉官房長官の「粛々と」という発言に対しては、復帰前、「自治は神話である」と言い放ったキャラウェー高等弁務官の金門クラブ演説(1963年)を持ち出し、「問答無用の姿勢が感じられる」と厳しく批判した。名護市長選で移設反対候補が再選されても「全く影響ない」と無視し、県知事選が近づくと「(移設問題は)争点にならない。過去の問題」だと言い放ち、知事選の結果についても、移設反対の民意が示されたことを否定し、都合のいいように解釈する。有権者を小ばかにしたような菅氏の態度が、公開の場で厳しい批判にさらされたのである。安倍政権の強権的な手法は、沖縄戦で戦場となり米軍支配の下で自治・人権を脅かされ続けた沖縄では、通用しない。それを浮き彫りにしたのが翁長・菅会談だった。「辺野古の新基地は絶対に建設できないと確信を持っている」という知事の不退転の言明は今後、大きな意味を持ってくるはずだ。
    ■    ■
 翁長氏だけではない。大田昌秀、稲嶺恵一、仲井真弘多の3知事も在任中、辺野古移設は不可能という趣旨の見解を明らかにしてきた。「どの県の知事も安保は大事と言いながら、自分の所に基地が来ては困ると言い、自分が困ることを沖縄に押しつけ平然としている」と会見で語ったのは大田氏。稲嶺氏はラムズフェルド米国防長官と県庁で会った際、基地に対する県民感情をマグマにたとえ、「一度、穴が開くと大きく噴出する」と指摘した。仲井真氏だって2013年11月の会見では「固定化という言葉が出てくること自体、一種の堕落だ」と指摘しているのである。菅氏は、1999年、稲嶺知事と故岸本建男名護市長の受け入れ表明を受け、閣議決定がなされたことを強調するが、稲嶺県政が打ち出した構想を県の相談もなく廃棄し、閣議決定を一方的にほごにしたのは国である。稲嶺県政は現行案(V字案)には合意していない。
    ■    ■
 これら一連の経過の全体を菅氏は知っているのか。本紙が3日から5日まで実施したオートコール方式による緊急世論調査(サンプル数610)によると、約76%が新基地建設に反対し、翁長知事の姿勢を支持すると答えた人は83%に達した。民意を無視して建設を強行しようとすれば、むき出しの国家暴力が表面化し、辺野古移設の正当性は失われる。日米関係そのものが大きな痛手を受けるのだ。

*2-3:http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-246497-storytopic-3.html
(琉球新報 2015年7月30日) 第三者委報告書、県が公開 辺野古の根拠示されず 
 沖縄県は29日、名護市辺野古の新基地建設計画に伴い前知事が行った埋め立て承認に「瑕疵があった」と翁長雄志知事に答申した第三者委員会の報告書と議事録を公開した。報告は米海兵隊が新基地に配備予定の垂直離着陸輸送機MV22オスプレイについて、環境影響評価(アセスメント)手続きの最終段階に当たる評価書で初めて配備を記載したことに触れ「極めて重要な配備の情報は方法書および準備書段階で記載されるべき」だったと指摘した。辺野古に移設予定の普天間飛行場では、夜間飛行やオスプレイの飛行形態に関する日米合意違反が常態化し、県の審査担当者もこの状況を認識していたと聞き取りを基に断定した。埋め立ての必要性について沖縄防衛局が「普天間の危険性除去、早期移設」を挙げたことに対し、「他の場所ではなく、なぜ辺野古が適切なのか、何ら説明していない」とし、「論理の飛躍(審査の欠落)」があったと指摘した。報告書は埋め立ての利益と不利益を比較考量すべきだとした上で、利益について、普天間飛行場の早期閉鎖を挙げた。ただその手法が辺野古移設であることは「合理性が不明で、根拠も十分とは言えない」とした。一方、不利益について、沖縄の過重な基地負担に触れ、辺野古移設は「米軍基地の固定化を招く契機となり、格差や過重負担を固定化する」と指摘した。こうした状態は法の下の平等を定めた憲法14条の精神にも反するとも指摘した。報告書はジュゴンやウミガメなどの保護策、県外からの埋め立て土砂搬入に伴う外来種侵入防止策など各分野の環境対策も網羅した。埋め立て申請内容は、県自身が知事意見や環境生活部長意見で示した環境対策の問題点に「対応できていない」と結論付けた。埋め立て地域の一部は県の「琉球諸島沿岸海岸保全基本計画」で開発行為に規制が掛かっているが、防衛局は必要な規制解除の手続きを取らなかったとして、承認に瑕疵があったと指摘した。

*2-4:http://www.okinawatimes.co.jp/article.php?id=126367
(沖縄タイムス 2015年7月30日) 沖縄県、辺野古協議書取り下げ要求 菅氏は拒否
 米軍普天間飛行場返還に伴う名護市辺野古の新基地建設で、沖縄県は29日、埋め立て本体工事に向けた実施設計と環境保全対策に関する協議書を受理した上で、沖縄防衛局に対し、取り下げと再提出を求める文書を出した。翁長雄志知事は同日午前、那覇空港で記者団の質問に答え、「事前協議はボーリング調査終了後、全体の詳細設計に基づき、実施すべきだ」と述べ、全体の設計がまとまっていない段階での協議開始に否定的な考えを示した。菅義偉官房長官は同日の記者会見で、「政府として取り下げる考えはなく、県側と丁寧に協議していきたい」との考えを示した。県土木建築部の伊禮年男土木整備統括監らが嘉手納町の防衛局を訪れ、協議書を取り下げ、実施設計の終了後に再提出するよう要求する文書を提出。8月10日までの回答と、取り下げない場合にはその理由や一部の協議から始める理由などを質問している。伊禮統括監によると、防衛局調達部の福島邦彦次長が文書を受け取り、「内容を精査して答えたい」と語ったという。防衛局は24日に協議書を提出。「協議は始まった」との認識を示し、8月14日までに協議書に関する質問を出すよう、県に求めた。翁長知事は質問への回答について「取り下げるか、しないかという(防衛局の)判断を待って、こちらも判断したい」と話した。県は一方的に質問期限を設けた理由も防衛局に問い合わせている。防衛局は辺野古沿岸の海上ボーリング調査24地点のうち、深場の5地点で調査を終了していないが、調査を終えた地点の護岸などの実施設計と環境保全対策の協議書を、一部先行する形で提出していた。協議書の取り下げを求める県の文書では「工事中の環境保全対策は一部だけではなく、護岸全体の環境影響評価を連続的に検討すべきだ」と指摘している。菅官房長官は会見で、「工事は段階的に実施されるものであり、段階的に協議するのは問題ないと思っている」と話した。協議で県側の合意が得られない場合でも着工可能との認識を示した。

*2-5:http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2015081001001228.html
(東京新聞 2015年8月10日)辺野古移設工事を全面的に中断 政府と県11日から集中協議
 政府と沖縄県は10日、米軍普天間飛行場(同県宜野湾市)の名護市辺野古移設をめぐり、9月9日まで1カ月の集中協議期間に入った。辺野古沿岸部の埋め立て関連工事は全面的に中断。政府は辺野古移設を推進する姿勢を崩していないが、県は移設計画の撤回を求める構えで、協議で一致点を見いだせるかどうかは不透明だ。菅義偉官房長官は11日に沖縄入りし、県庁で翁長雄志知事や安慶田光男副知事らと集中協議の初会合を開く。沖縄防衛局は期間入りに先立ち、9日までに海底ボーリング調査に使う台船など工事資機材の撤去を終え、資材を運ぶ車両の運行も停止した。

*2-6:http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-248816-storytopic-11.html
(琉球新報社説 2015年9月13日) 辺野古工事再開 民主主義踏みにじる愚行
 政府は、米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設に向け、県との集中協議のため1カ月中断していた新基地建設へ向けた関連工事を再開した。県が新基地建設の中止を求め続ける中、政府は工事再開を強行した。極めて遺憾だ。安倍政権は沖縄の民意を一貫して無視し、民主主義を踏みにじる愚行をいつまで重ねるのか。怒りを禁じ得ない。沖縄防衛局は「政府と県の集中協議期間が終了し、県の調査も終了したため、再開した」と説明しているが、工事を加速し、新基地建設の既成事実化を図るのが狙いだろう。来週にも埋め立て工事の前段となる海底ボーリング調査を再開する予定だ。新基地建設をめぐる県と安倍政権の集中協議は、完全な平行線をたどり、安倍晋三首相が出席した5回目で決裂した。政府側は、前知事による埋め立て承認に固執するばかりで、その後の名護市長選、同市議選、県知事選、衆院選で新基地建設拒否の候補者が圧勝し、沖縄の民意が何度も示されたことについて言及はなかった。本来なら政府は県と真摯(しんし)に向き合い、民意を直視すべきだったはずだ。協議は最初から結論ありきで、翁長雄志知事に理解を得る努力をした形跡を残すアリバイづくりだったと言われても仕方あるまい。翁長知事は、前知事による辺野古沿岸部の埋め立て承認の取り消しを14日にも表明、必要な手続きに着手する方針だ。弁護士や環境学者ら有識者の第三者委員会は既に、手続きに「瑕疵(かし)あり」との報告書を提出している。政府の強硬姿勢に対抗するため、翁長知事はそれに基づき、埋め立て承認の取り消しを速やかに行えばよい。妥協や取引することなく、普天間飛行場の即時無条件全面返還を政府に要求すべきだ。政府は「辺野古が唯一の選択肢」とかたくなな姿勢を取り続けている。だが新基地建設の反対運動は県内ばかりでなく、国内、海外でも草の根レベルで盛り上がっている。12日午後に行われた国会包囲行動には2万2千人(主催者発表)が参加し「辺野古新基地ノー」の声を上げた。世界の識者109人も新基地阻止に賛同している。翁長知事は21、22の両日に国連人権理事会で演説する。そこで沖縄の民主主義的正当性を強く訴え、民意を無視する日本政府の理不尽さを内外に示してほしい。

*2-7:http://www.huffingtonpost.jp/2015/09/21/takeshi-onaga-okinawa-un-human-rights-council_n_8173918.html (The Huffington Post 2015年9月22日) 翁長雄志知事が国連で演説「沖縄の人々は、人権をないがしろにされている」(日本語訳全文)
 沖縄県の翁長雄志知事(64)は9月21日、スイスで開かれている国連人権理事会で約2分にわたって英語で演説し、アメリカ軍普天間基地の移設計画について、沖縄に米軍基地が集中する実態を紹介し「沖縄の人々は、自己決定権や人権をないがしろにされている」などと訴えた。翁長知事の国連演説は、国連人権理事会の場で発言機会を持つNGO「市民外交センター」が、持ち時間を提供して実現。国連での演説の意義について、同NGOの上村英明代表は琉球新報に、「沖縄の基地問題は安全保障、平和の問題ではなく、人権問題だということを国際社会にアピールする機会となる」と説明した。以下に、翁長知事による国連での演説の、日本語訳全文を掲載する。
−−−−
 ありがとうございます、議長。私は、日本の沖縄県の知事、翁長雄志です。私は世界中の皆さんに、辺野古への関心を持っていただきたいと思います。そこでは、沖縄の人々の自己決定権が、ないがしろにされています。第2次大戦のあと、アメリカ軍は私たちの土地を力によって接収し、そして、沖縄にアメリカ軍基地を作りました。私たちが自ら望んで、土地を提供したことは一切ありません。沖縄は、日本の国土の0.6%の面積しかありません。しかしながら、在日アメリカ軍専用施設の73.8%が、沖縄に存在しています。70年間で、アメリカ軍基地に関連する多くの事件・事故、環境問題が沖縄では起こってきました。私たちは自己決定権や人権を、ないがしろにされています。自国民の自由、平等、人権、民主主義すら守れない国が、どうして世界の国々とそれらの価値観を、共有することなどできるでしょうか。今、日本政府は、美しい海を埋め立てて、辺野古に新しい基地を建設しようと強行しています。彼らは、昨年沖縄で行われた選挙で示された民意を、無視しているのです。私は、あらゆる手段、合法的な手段を使って、新しい基地の建設を止める覚悟です。今日はこのようなスピーチの機会が頂けたことを感謝します。ありがとうございました。
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 なお、この日の国連人権理事会では、翁長知事の演説のあと、日本政府が答弁する機会もあった。日本政府側は翁長知事に反論。「日本政府は、沖縄の基地負担軽減に最大限取り組んでいる。普天間基地の辺野古への移設は、アメリカ軍の抑止力の維持と、危険性の除去を実現する、唯一の解決策だ。日本政府は、おととし、仲井真前知事から埋め立ての承認を得て、関係法令に基づき移設を進めている。沖縄県には、引き続き説明をしながら理解を得ていきたい」と述べた。

<島尻氏の沖縄担当相就任>
*3-1:http://digital.asahi.com/articles/DA3S11715605.html (朝日新聞 2015年4月21日) 辺野古めぐる政権対応、評価せず55%・評価25% 朝日新聞社世論調査
 朝日新聞社は18、19の両日、全国定例世論調査(電話)と、沖縄県民意識調査(同)を同時に実施した。沖縄県宜野湾市にある米軍普天間飛行場の同県名護市辺野古への移設問題に対する安倍政権の対応については、全国で「評価しない」が55%と、「評価する」25%を上回った。沖縄でも「評価しない」73%が「評価する」18%を圧倒した。辺野古移設問題については、全国調査と沖縄県の調査でいくつか同じ質問をして、全国と沖縄県内との調査結果を比較した。沖縄県の翁長雄志知事は辺野古に基地をつくることに反対し、移設のための作業を停止するよう指示した。全国ではこの対応を「評価する」が54%で、「評価しない」28%を上回り、沖縄では「評価する」70%が「評価しない」19%を引き離した。辺野古移設の賛否では、全国では「賛成」は30%で、「反対」は41%。「その他・答えない」は29%だった。沖縄では「反対」が63%と、「賛成」22%の3倍近かった。普天間飛行場の移設問題をどのように解決するのが最も望ましいか3択で聞くと、全国、沖縄ともに「国外に移設する」が最も多く、全国では45%、沖縄では59%を占めた。「沖縄県内に移設する」は全国で27%、沖縄で15%。「本土に移設する」が全国で15%、沖縄で20%だった。移設問題をめぐり、安倍晋三首相と翁長知事が17日に初めて会談したことに関しては、全国、沖縄ともに7割が「評価する」と答えた。安倍内閣の全国の支持率は44%(前回3月全国調査46%)、不支持率は35%(同33%)だった。

*3-2:http://www.saga-s.co.jp/news/national/10201/231807
(佐賀新聞 2015年9月21日) 辺野古で抗議市民と警官もみ合い、怒声飛び一時騒然
 米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の移設予定地である名護市辺野古近くの米軍キャンプ・シュワブ前で21日午前、移設に抗議する市民ら数十人が道路に横たわったり、工事用車両が出入りするゲート前で隊列を組んだりし、これを強制排除しようとした警察官約100人ともみ合いになった。怒声が飛び交うなど周辺は一時騒然とした。沖縄防衛局は移設に向けた準備作業を進めており、市民らは関係車両がゲートに入るのを阻止しようと集まっていた。名護市の高校生(18)は「警察官のやり方は強引」と批判。国連で演説予定の翁長雄志知事に「沖縄の現状を世界に伝えてほしい」と期待した。

*3-3:http://www.okinawatimes.co.jp/article.php?id=110372&f=ap
(沖縄タイムス 2015年4月5日) 「責任のない市民運動」辺野古行動に島尻議員
 自民党沖縄県連の会長に就任した島尻安伊子参院議員は4日、那覇市内の自治会館で開かれた県連大会のあいさつで、名護市辺野古の新基地建設をめぐる市民の反対運動について「責任のない市民運動だと思っている。私たちは政治として対峙(たいじ)する」と発言した。さらに、米軍普天間飛行場の危険性除去のため辺野古移設を容認する立場から「反対運動の声の大きさに恐れおののかず、毅然(きぜん)と冷静に物事を進めないといけない。今日より明日がよくなるよう、真剣に議論し実行する」とも述べた。島尻氏は大会後、沖縄タイムスの取材に対し「発言は市民運動を否定するものではない。そういった(反対する)方々の声にも耳を傾けたいが、運動と私たちの立場である政治は違うという意味だ。現実を見据えて物事を進めるのが政治の使命だ」と説明した。

*3-4:http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-241545-storytopic-11.html
(琉球新報社説 2015年4月8日) 島尻氏発言 移設反対の民意と向き合え
 市民の側ではなく、権力側に立つ人なのだと再認識させられる。自民党県連の新会長に選出された島尻安伊子参院議員のことだ。県連大会での就任のあいさつで、米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設に反対する市民運動に関し「反対運動は責任のない市民運動だと思っている。私たちは政治としてここに対峙(たいじ)していく」と言い放った。にわかに信じられない発言だ。移設に反対するのが無責任だというが、そもそも自身が2010年の参院選で、普天間飛行場の県外移設を公約して再選されたことを忘れたわけではあるまい。島尻氏は県外移設公約を翻し、13年4月に辺野古移設容認を表明した。全ての県関係自民党国会議員が辺野古容認に転じ、その後に仲井真弘多前知事が辺野古埋め立てを承認するよりも、半年以上早い公約の撤回だった。新基地を後世に残したくないと反対運動をする市民に対し、公約を破棄した政治家が「無責任」と批判するのは、筋違いも甚だしい。島尻氏は「移設に反対すれば普天間が固定化する」といった政権幹部同様の論理を振りかざしている。辺野古移設反対と普天間の危険性除去は二者択一のテーマではなく、また移設問題の解決策をめぐっては米国でも多様な意見があることは何度も指摘した通りだ。仮に島尻氏の立場に立ったとして、昨年の知事選や名護市長選、衆院選などで示された通り、移設反対が世論であることは紛れもない事実だ。政治家であるなら、その民意に耳を傾け、利害を調整するのが最低限の責務ではないのか。発言について島尻氏は「言論の自由はあり、反対運動を否定するものではない」と釈明した。だが過去の言動を見ると、今回も本音ではないのかと思わざるを得ない。島尻氏は昨年2月の国会質問で辺野古の市民運動に対し「危険な行為に先んじて対策を打つことが必要だ」と述べ、反対運動を弾圧するかのような「対策」を求めた。13年11月には辺野古移設について「待望の子どもが生まれた時にはみんなでお祝い」と述べ、物議を醸した。「台所から政治を変える」を掲げて国政進出した島尻氏だが、為政者に忠実であることが政治家だとはき違えてはいないか。民意を無視する政権と歩調を合わせて市民と「対峙」する態度を改め、移設反対の世論と向き合うべきだ。

*3-5:http://www.okinawatimes.co.jp/article.php?id=136107
(沖縄タイムス 2015年10月7日) 島尻安伊子氏、沖縄担当相で入閣へ きょう内閣改造
 安倍晋三首相は7日に行う内閣改造で、県選出で自民党県連会長の島尻安伊子参院議員(50)を沖縄担当相に据えることを固めた。県選出・出身国会議員の入閣は1991年に沖縄開発庁長官に就任した伊江朝雄氏、93年に同長官に就任した上原康助氏、2012年に郵政民営化担当相に就いた下地幹郎氏以来、4人目となる。女性では初めて。島尻氏は那覇市議などを経て、07年4月の参院補選で初当選し、現在2期目。第2次安倍内閣発足時に内閣兼復興政務官を務めた。自民党沖縄振興調査会事務局長として、米軍キャンプ瑞慶覧・西普天間住宅地区の返還や改正跡地法の成立などに尽力。4月から同党県連会長を務める。米軍普天間飛行場の返還問題では、10年7月の自らの選挙で「県外移設」を訴えて再選を果たしたが、政務官就任後の13年4月に「辺野古容認」を表明し、公約を破棄。ことし4月の県連会長就任時のあいさつでは、名護市辺野古の新基地建設に反対する市民運動を「責任のない市民運動」と発言し、物議を醸した。


PS(2015年10月14日追加): *4-1、*4-3のように、菅官房長官は、沖縄県の埋立承認取り消しについて「①承認に法的な瑕疵はない」「②承認取り消しは沖縄や政府が重ねてきた普天間飛行場の危険性除去の努力を無にするものだ「③(ジュネーブでの知事演説には)強い違和感を受ける。国際社会では理解されない」などとし、国交相に不服審査請求を行うそうだ。しかし、②は既に事件から20年も経過して何ら進展していない普天間の危険除去を辺野古の埋め立てと交換条件にしている点が不誠実で、③は鈍感かつ融通が効かない。が、*4-2のように、名護市長はじめ沖縄県民には知事を評価し支持する声が強く、*4-3のように、社説で「沖縄の苦悩を理解し、人権や自己決定権に十分配慮する姿勢で、まず計画を白紙に戻せ」とする大手メディアも出てきたため、日本国民全体の認識も進むだろう。

*4-1:http://mainichi.jp/select/news/20151013k0000e010074000c.html?fm=mnm
(毎日新聞 2015年10月13日) 辺野古承認取り消し:菅官房長官「法的瑕疵ない」
 菅義偉官房長官は13日午前の記者会見で、沖縄県が埋め立て承認を取り消したことについて「(前知事時代の)承認に法的な瑕疵はない。従来の判断に基づいて進めていくのは自然なことだ」と述べた。政府は14日以降に行政不服審査法に基づき国土交通相に不服審査請求を行う。県内移設を進める方針に変わりはないが、県との対話は継続する姿勢だ。菅氏は「承認取り消しは沖縄や政府が重ねてきた普天間飛行場の危険性除去の努力を無にするものだ。危険性をどうするか、現職の知事として極めて大事なことだ」と翁長雄志知事を批判した。

*4-2:http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2015101301001367.html
(東京新聞 2015年10月13日) 辺野古抱える名護市長、知事評価 「全面的に支持」
 沖縄県名護市の稲嶺進市長は13日、翁長雄志県知事による同市辺野古沿岸部の埋め立て承認取り消しについて「県民が期待していた日がとうとうきた。全面的に知事の行動を支持していく」と述べ、評価した。市役所で記者団の取材に応じた。稲嶺市長は、県との連携を今後も密にすると強調。政府に対しては「取り消し手続きは大きな効力を持つ。法治国家というなら従うべきだ」とけん制した。さらに「本体工事に着手するのは地方自治を無視し、違法。そんなことが許される国ではないはずだ」とくぎを刺した。

*4-3:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12013757.html
(朝日新聞社説 2015年10月14日) 辺野古移設 沖縄の苦悩に向き合え
 これに対し、政府は直ちに行政不服審査請求などを行う方針だ。政府と県が行政手続き上、司法上の対抗策を打ち合うなかで、民意に反した基地建設が進む。そんな異常事態は、何としても避けなければならない。政府は埋め立ての法的根拠を失った以上、計画は白紙に戻し改めて県と話し合うべきだ。前知事による承認から1年10カ月。翁長知事は取り消しに向けて周到に準備を重ねてきた。「承認手続きに瑕疵(かし)がある」との結論は、第三者委員会が半年かけて導き出した。第三者委は移設の必要性について「実質的な根拠が乏しい」と指摘。「米軍の沖縄配備の優位性」などの政府の主張にも具体的な説明がないとした。翁長知事は政府との集中協議でもこれらの点を問いただしたが、政府は「辺野古移設が唯一の解決策」と繰り返すばかり。説得力ある説明はなかった。翁長知事は先月、ジュネーブでの国連人権理事会の演説で、「沖縄の人々は自己決定権や人権がないがしろにされている」と訴えた。基地問題を人権問題ととらえての主張である。戦後、米軍に土地を強制接収され、次々と米軍基地が造られた歴史。戦後70年、米軍による犯罪や事故に巻き込まれる危険、航空機の騒音などの「基地被害」と隣り合わせの生活を余儀なくされてきた歴史。そして、いまなお全国の米軍専用施設面積の73・8%が、国土の0・6%にすぎない沖縄県に集中している現実。これはまさに、沖縄に対する「差別」ではないのか。日米安保条約を支持する政府も国民も、そうした沖縄の現実に無関心でいることによって、結果として「差別」に加担してこなかったか――。翁長知事による埋め立て承認取り消しは、政府に、国民に、そこを問いかけるメッセージだと受けとめるべきだ。残念なのは、ジュネーブでの知事の演説に対し、菅官房長官が「強い違和感を受ける。国際社会では理解されない」と冷淡な対応に終始したことだ。行政手続きや司法判断の結果がどうあれ、政府と沖縄の亀裂がこれ以上深まれば米軍基地の安定運用も危うくなるだろう。政府に求められるのは、沖縄の苦悩を理解し、人権や自己決定権に十分配慮する姿勢だ。まず計画を白紙に戻すことが、そのための第一歩になる。


PS(2015年9月15日追加):*5-1、*5-2のように、翁長沖縄県知事の辺野古埋め立て承認取り消しについて、政府(工事主体の防衛局)は行政不服審査法に基づき、審査請求と取り消し処分の効力停止を石井国土交通相に申し立てるそうだ。そして、同じ政府内であるため、国交相は政府寄りの判断をしそうだと懸念する人が多い。確かにそうかもしれないが、国交相は公明党である上、観光庁は国交省に所属しており、*5-3、*5-4で日弁連が会長声明や意見書で完璧に記載しているとおり、沖縄の自然や文化は価値が高く、日本の観光にとって有望な資産だ。そのため、国交相が沖縄側に立った適切な判断をしてくれればよいと願っている。

*5-1:http://www.ehime-np.co.jp/rensai/shasetsu/ren017201510148682.html (愛媛新聞 2015年10月14日) 辺野古承認取り消し 泥沼の闘争に政府は終止符打て
 ついに国と沖縄県の全面対決に至ってしまった。沖縄県の翁長雄志知事は、米軍普天間飛行場(宜野湾市)の移設先、名護市辺野古沿岸部の埋め立て承認を取り消した。対して政府側は、工事主体の防衛局が行政不服審査法に基づき、審査請求と取り消し処分の効力停止を石井啓一国土交通相に申し立てると表明した。国交相が効力停止を認めれば防衛局は審査請求の審査期間中も移設作業を続け、本体工事に着手することができる、と政府は読む。そうなれば、県側は効力停止の取り消しや差し止めを求めて提訴する方針だ。泥沼の法廷闘争は避けねばならない。ここまで対立を先鋭化させたのは、基地問題に関して「辺野古移設が唯一の解決策」との一点張りで、民意を一顧だにしない政府の強権的な態度にほかならない。抗議する市民への警察官や海上保安官らによる取り締まりが厳しさを増す現在、さらに力ずくで本体工事に突入すれば、流血の事態さえ現実のものとなりかねない。暴挙は断じて許されない。政府には、事態を重く受け止め工事を中止するよう強く求める。県民の声を聞き、苦難の歴史と向き合い、基地負担軽減策を練り直して米国との協議のやり直しへかじを切るべきだ。普天間返還の合意を主導したジョセフ・ナイ元国防次官補は辺野古移設について「沖縄の人々の支持が得られないなら、米政府はおそらく再検討しなければならないだろう」と沖縄の地元紙に述べている。住民の反発下では米国側も基地の安定的持続が見通せないに違いない。ナイ氏は以前、沖縄が中国の弾道ミサイルの射程内にあることを踏まえ、沖縄への基地集中を変えるべきだとも指摘している。実際、米国はリスク軽減のためハワイやグアムなどへの兵力分散を加速させている。沖縄での最大の兵力である海兵隊については、機動力や抑止力、訓練の環境などの観点から沖縄での存在意義や戦略的価値を疑問視する声が米国内や日本の専門家らから上がっている。これらの状況を鑑みれば、辺野古移設が基地問題の唯一の解決策であると主張する根拠は揺らぐ。国民の強い懸念と反発を米国に伝え、別の解決策を探ることこそ政府が取るべき道だ。米国への協力をアピールするために、政府が主導して辺野古への新基地建設を強行することは決して認められない。国民より米国との約束を優先する姿勢は安全保障関連法の強行成立と共通しており、深く憂慮する。翁長知事は先月、国連人権理事会で「自国民の自由、平等、人権、民主主義を守れない国がどうして世界の国々と価値観を共有できるか」と訴えた。県民の怒りはもっともだ。本土からの賛同や支援も拡大している。民意を力で抑え続ければ国際的信頼を失うことを政府は肝に銘じ、計画見直しと対立解消へ力を尽くさなければならない。

*5-2:http://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-153618.html (琉球新報社説 2015年10月14日) 承認取り消し 民意実現の出発点に 政府は新基地断念すべきだ
 米軍普天間飛行場の移設に伴う名護市辺野古沿岸部への新基地建設をめぐり、翁長雄志知事が前知事の埋め立て承認を取り消した。沖縄の将来を見据え、新基地建設阻止への決意を示す意義ある一歩として高く評価したい。裁判などで問題解決までには長い道のりが予想される。だが、新基地建設反対の民意は圧倒的であり、土地を同意なく奪って建設した普天間飛行場の形成過程からしても、理は知事にある。阻止運動を県外、国外に広げ、新基地建設断念と普天間飛行場の閉鎖を勝ち取る新たな出発点に、承認取り消しを位置付けたい。
●犯罪的な行為
 知事は埋め立て承認取り消し後の会見で、普天間飛行場は戦後、県民が収容所に入れられている間に、強制接収されて建設されたことをあらためて強調した。その上で「辺野古に移すということは、土地を奪っておきながら代わりのものも沖縄に差し出せという理不尽な話」と批判した。普天間飛行場が国際法に反して建設されたことは明らかである。知事の批判は当然だ。ところが、菅義偉官房長官は知事の承認取り消しを「沖縄や政府が重ねてきた普天間飛行場の危険性除去の努力を無にするものだ」と批判した。「政治の堕落」を指摘されたことから何ら学んでいないと言わざるを得ない。車の窃盗犯が持ち主である被害者に「古くなった車を返すから新車をよこせ」と開き直るような姿勢は改めるべきである。政府はそんな犯罪的な行為を国民の面前で恥ずかしげもなく行っているのである。これで法治国家と言えるだろうか。官房長官が知事を批判するなど、筋違いも甚だしい。官房長官が言うように、政府はこれまで普天間飛行場の危険性の除去に努力してきただろうか。新基地は完成までに10年かかるとされる。危険性を除去し、固定化させないための辺野古移設としながら、10年間は固定化し、危険性もその間放置されるのである。政府が真剣に危険性除去を考えるならば、直ちに普天間飛行場を閉鎖すべきだ。そうしないのは県民軽視以外の何物でもない。普天間飛行場の危険性除去や固定化回避を持ち出せば、新基地建設に対する県民の理解が得やすいといった程度の認識しかないのではないか。前知事の埋め立て承認の条件ともいえる普天間飛行場の5年以内の運用停止の約束も、ほごにしている。政府の言う「努力」はこの程度のものでしかない。
●普遍的な問題
 本来ならば、知事の承認取り消しを政府は重く受け止め、新基地建設の作業を直ちに停止すべきである。しかしそのような常識が通用する政府ではないようだ。中谷元・防衛相は「知事による埋め立て承認の取り消しは違法」と述べ、国交相に知事の承認取り消しの効力取り消しを求める不服審査請求と執行停止申し立てを速やかに行うとしている。同じ政府機関が裁決して公正を保つことはできない。政府側に有利になる可能性は極めて高い。これが官房長官の言う「わが国は法治国家」の実態である。新基地建設は沖縄だけの問題ではない。普遍的な問題を包含している。新基地建設に反対する圧倒的な民意を、政府は踏みにじろうとしている。日本の民主主義が問われているのである。日米同盟を重視し、民意は一顧だにしない政府を認めていいのかが突き付けられているのである。優れて国民的問題だ。知事は「これから節目節目でいろんなことが起きると思う」と述べている。新基地建設問題の本質をしっかり見極めてほしいということだ。そのことを深く自覚し、声を上げ続けることが今を生きる私たちの将来世代に対する責任である。

*5-3:http://www.nichibenren.or.jp/activity/document/statement/year/2015/151013.html (日本弁護士連合会会長 村越 進 2015年10月13日) 普天間飛行場代替施設建設事業に係る公有水面埋立ての承認の取消しに関する会長声明
 本日、沖縄県知事は、前知事が2013年12月27日に行った普天間飛行場代替施設建設事業(以下「本事業」という。)に係る公有水面埋立ての承認(以下「本件承認」という。)を、公有水面埋立法第4条第1項の承認要件を充足していない瑕疵があるとともに、取消しの公益的必要性が高いことを理由として、取り消した。本事業で埋立ての対象となっていた辺野古崎・大浦湾は、環境省レッドリスト絶滅危惧ⅠA類かつ天然記念物であるジュゴンや絶滅危惧種を含む多数の貴重な水生生物や渡り鳥の生息地として、豊かな自然環境・生態系を保持してきた。当連合会は、2000年7月14日、「ジュゴン保護に関する要望書」を発表し、国などに対し、ジュゴンの絶滅の危機を回避するに足る有効適切な保護措置を早急に策定、実施するよう求めた。また、当連合会は、2013年11月21日に、「普天間飛行場代替施設建設事業に基づく公有水面埋立てに関する意見書」を発表し、国に対し「普天間飛行場代替施設建設事業」に係る公有水面埋立ての承認申請の撤回を、沖縄県知事に対し同申請に対して承認すべきでないことをそれぞれ求めるなどした。その理由は、この海域は沖縄県により策定された「自然環境の保全に関する指針」において自然環境を厳正に保全すべき場所に当たり、この海域を埋め立てることは国土利用上適正合理的とはいえず(公有水面埋立法第4条第1項第1号)、環境影響評価書で示された環境保全措置等では自然環境の保全を図ることは不可能であるなど(同第2号)、同法に定める要件を欠いているというものである。そして、沖縄県知事が2015年1月26日に設けた「普天間飛行場代替施設建設事業に係る公有水面埋立承認手続に関する第三者委員会」(以下「第三者委員会」という。)においても、本件承認について、公有水面埋立法第4条第1項第1号及び同条第2号の要件などを欠き、法律的な瑕疵があるとの報告が出されるに至った(2015年7月16日付け検証結果報告書)。以上のとおり、本件承認には、法律的な瑕疵が存在し、瑕疵の程度も重大であることから、瑕疵のない法的状態を回復する必要性が高く、他方、本件承認から本件承認の取消しまでの期間が2年足らずであり、国がいまだ本体工事に着手していない状況であることからすれば、本日の沖縄県知事による本件承認の取消しは、法的に許容されるものである。当連合会は、国に対し、沖縄県知事の承認取消しという判断を尊重するよう求める。

*5-4:http://www.nichibenren.or.jp/library/ja/opinion/report/data/2013/opinion_131121.pdf (日本弁護士連合会意見書 2013年11月21日) 普天間飛行場代替施設建設事業に基づく公有水面埋立てに関する意見書
<意見の趣旨>
1 国は,沖縄県知事に対する「普天間飛行場代替施設建設事業」に基づく公有水面埋立ての承認申請を直ちに撤回すべきである。
2 国が上記承認申請を撤回しない場合,沖縄県知事は,本事業について公有水面埋立法に基づく承認をすべきではない。
3 国と沖縄県とは,協議の上,辺野古崎付近の海域及び大浦湾につき,自然公園法に基づく国立公園に指定する等の保全措置を講じ,ラムサール条約上の湿地登録手続を行うべきである。
<意見の理由>
第1 本意見書提出の経緯
1 事業計画の概要
 沖縄県名護市東部に位置する辺野古崎周辺及び大浦湾の一部の海域の埋立計画は,国(沖縄防衛局)が,沖縄県宜野湾市に存する普天間飛行場の代替施設を建設する目的で進めている公有水面埋立法に基づく海水面の埋立計画である。1997年には90ヘクタールの埋立てが,2000年には184ヘクタールの埋立てが計画されるなど,これまでに2度の計画変更がなされ,現在は米軍キャンプ・シュワブ基地沿岸部205ヘクタールを埋め立てるという計画となっている(添付図面参照)。現在の計画について,国は,①2007年8月に環境影響評価の方法書の公告・縦覧,②2009年4月に同準備書の公告・縦覧,③2011年12月に環境影響評価書の提出という環境影響評価法に基づく手続を行った。沖縄県知事は,2012年3月に知事意見を述べた(後述のとおり,このままでは「生活環境及び自然環境の保全を図ることは不可能と考える」というもの)。これを受けて,国は2012年12月に補正後の環境影響評価書を提出し,2013年3月,上記環境影響評価書を添付の上,公有水面埋立承認申請を行った。現在までに,環境影響評価書の告示・縦覧の手続は既に完了している。今後は,沖縄県知事により地元市町村である名護市からの意見聴取が行われ,年内あるいは年明けにも沖縄県知事によって公有水面埋立ての承認の可否の判断が下される見込みである。
2 当連合会の湿地保全に対するこれまでの取組
 当連合会は,1977年に大阪で開催された第20回人権擁護大会において,「海岸地帯保全法」の制定,「瀬戸内海環境保全法」の制定,両保全法の内容に沿うように公有水面埋立法を全面的に見直すこと等の提言を行った。この提言は,1978年の瀬戸内海環境保全特別措置法の改正につながった。また,2002年に福島県郡山市で開催された第45回人権擁護大会においては,湿地保全・再生法の制定や,重要湿地の開発計画中止の提言を行った。さらに,2012年に佐賀県佐賀市で開催された第55回人権擁護大会においては,①沿岸域環境を保全するために,現状の海岸線を保全し,原則的に開発・改変をしないこと,②生物多様性の保全・持続可能な漁業資源の利用などの基本原則を踏まえ,沿岸域を再生するための妨げとなる,開発を推進する方向となっている法制度を見直すなど,再生に向けたより実効的な法制度の整備を行うことなどを求める提言を行った。他方,沖縄県の希少な自然環境の保全についても,当連合会は,沖縄県の干潟の保全について,2001年6月に泡瀬干潟の現地調査を行って以降,調査や研究を積み重ねて,必要に応じて意見を述べてきた。例えば,泡瀬干潟に関しては,2002年3月15日に,「泡瀬干潟埋立事業に関する意見書」を公表して中城湾港(泡瀬地区)公有水面埋立事業の中止と泡瀬干潟のラムサール条約登録を求め,さらに同趣旨の意見書と会長談話をそれぞれ2回ずつ公表しているところである。また,ジュゴンの保護については,種の保全のため即時に実効性のある保護措置を求めて2000年7月14日に水産庁等に要望書を提出し,その中で辺野古崎周辺に基地移設計画を策定する場合はジュゴンの生息に関する影響を回避するために策定作業の初期の段階での環境影響評価手続の実施を求めている。
3 当連合会は,上述のとおり1977年以来,沿岸域の保護に取り組み,2012年には現状の海岸線を保全し原則的に開発・改変をしないこと,つまり新たな埋立てを禁止すべきことを提言している。とりわけ,辺野古崎周辺海域・大浦湾についてはジュゴンの餌場であることを含む貴重な生態系が残された自然環境であることから,意見の趣旨のとおり,①国に対し埋立ての承認申請の撤回を,②国の撤回がない場合には沖縄県知事に対し埋立てを承認しないこと
第2 辺野古崎・大浦湾の重要性
1 地理的特徴
 辺野古崎・大浦湾は,沖縄県のうち沖縄本島名護市東海岸にあり,太平洋に面する地区に位置する。同地域は,サンゴ礁が広がる辺野古崎周辺と外洋的環境から内湾的環境の特徴を持つ大浦湾が一体となって存在するという極めてまれな地理的特徴を有する。そして,辺野古崎周辺のサンゴ礁には,準絶滅危惧種に指定されているリュウキュウスガモ,ベニアマモなど7種の海草の藻場が安定的に広がっている。辺野古崎に隣接する大浦湾は,全体的に水深が深くなっているが,湾奥は,海底が砂れきから泥へと移り変わり,水深が深くなるスロープラインに沿ってユビエダハマサンゴの大群集が分布する。2007年9月には,大浦湾の東部に高さ12m,幅30m,長さ50mの広範囲にわたる絶滅危惧種のアオサンゴ群落(チリビシの青サンゴ群集)が発見された。湾奥の大浦川や汀間川の河口付近には,オヒルギやメヒルギといった大規模なマングローブ林や干潟が広がっている。さらに,辺野古崎と大浦湾の接点である大浦湾西部の深部には,琉球列島では特異な砂泥地が広がっている。
2 生態系の特徴
 辺野古崎・大浦湾は,環境省レッドリスト絶滅危惧IA類(CR)に指定されているジュゴンの生息域のほぼ中心に位置し,海草のみを餌とするジュゴンの生息には欠かせない餌場となっている。同地域のサンゴ礁には,沖縄に生息するカクレクマノミなど6種のクマノミ全てが観察されるなど魚類が豊富に生息し,絶滅危惧Ⅱ類(VU)のエリグロアジサシなど渡り鳥の生息地ともなっている。公益財団法人世界自然保護基金ジャパン(WWFジャパン)が2009年に行った調査では,大浦湾においてわずか1週間の調査で36種の新種及び国内初記録の25種の十脚甲殻類(エビ・カニ類)などの生息が確認されるなど,生物学的にも貴重な地域である。河口部のマングローブ・干潟には,トカゲハゼなどの魚類のほか,ミナミコメツキガニといった甲殻類,シマカノコ,マングローブアマガイなどの底生生物などレッドリスト掲載の生物が多数生息している。さらに,大浦湾西深部の砂泥地は,詳細な生息地が知られていなかったオキナワハナムシロや新種の甲殻類など特異的な生物群と希少種が分布するなど,サンゴ礁の発達する琉球列島の中にあって極めて特異な生物相を有する。
3 辺野古崎・大浦湾が重要な自然環境として評価されてきたこと
 豊かな自然環境を有する辺野古崎・大浦湾は,沖縄県の「自然環境の保全に関する指針(1998年)によ」り,沿岸地域の大部分が,評価ランクⅠとして,自然環境の厳格な保護を図る地域とされてきた。また,同地域は,レッドリスト掲載種を多数育むなど生物多様性の見地から保全上の配慮をすべき地域として2001年に環境省により「日本の重要湿地500」に選定されている(№449及び№453)。さらに,海洋生物多様性保全戦略(環境省;2011年)の「海域の特性を踏まえた対策の推進」の記述においては,「藻場,干潟,サンゴ礁などの浅海域の湿地は,規模にかかわらず貝類や甲殻類の幼生,仔稚魚などが移動分散する際に重要な役割を果たしている場合があり,科学的知見を踏まえ,このような湿地間の相互のつながりの仕組みや関係性を認識し,残された藻場,干潟やサンゴ礁の保全,相互のつながりを補強する生物の住み場所の再生・修復・創造を図っていくことが必要である」とされ,その重要性が強調されている。生物多様性国家戦略2012-2020においては,ジュゴンについて,「引き続き,生息環境・生態等の調査や漁業者との共生に向けた取組を進めるとともに,種の保存法の国内希少野生動植物種の指定も視野に入れ,情報の収集等に努めます」とされ,その保全が急務となっている。ジュゴンの保護は国際的な関心事となっており,国際自然保護連合(IUCN)においては,2000年,2004年に次いで2008年のバルセロナ総会でも「2010年国連国際生物多様性年におけるジュゴン保護の推進」が決議されている。
4 ラムサール条約登録湿地の要件を満たすこと
 ラムサール条約(「特に水鳥の生息地として国際的に重要な湿地に関する条約」)は,干潟をはじめとする湿地保全の重要性が国際的に認識されたことから,1971年に採択され,以後,湿地の保全は国際的な課題となっている。日本は1980年にラムサール条約を批准し,現在の日本における同条約登録湿地の数は,46か所となっている。ラムサール条約は,その名が示すとおり,かつては水鳥の保護を中心とした条約であったが,現在では広く湿地の保護を目的とするものとなっている。登録湿地の基準については,現在は9の基準が示されており,そのいずれかに該当すれば登録湿地の要件を充たすものと評価される。我が国においては,「国際的に重要な湿地であること(国際的な基準のうちいずれかに該当すること)」,「国の法律(自然公園法,鳥獣保護法など)により,将来にわたって,自然環境の保全が図られること」,「地元住民などから登録への賛意が得られること」が登録基準とされており,「国際的に重要な湿地であること」の要件については,環境省が2001年12月に選定した「日本の重要湿地500」から登録湿地がほぼ選定されるという方法が採られている。辺野古崎・大浦湾については,上記のとおり重要湿地500選に含まれている。また,ラムサール条約登録湿地の国際的な基準に照らしても,環境省レッドリストにおいて絶滅危惧種IA類(CR)のジュゴンの生息地となっていること(基準1 ,アマモ類の大き) な群落による藻場が形成されていること(基準8),大浦湾についても,「日本の重要湿地500」への選定理由とされている,危急種である底生生物が多く生息することやマングローブ林の前後に存する水溜まりに止水性昆虫の種の多様性が高いこと(基準2,基準3)から,優に「国際的に重要な湿地」の要件は充たしていることとなる。なお,埋立予定地である大浦湾に注ぎ込む大浦川及び河口域は2010年9月30日時点で環境省によりラムサール条約湿地潜在候補地として選定されている。このように,辺野古崎周辺の海域は,ラムサール条約締結のための基準を優に充たしているものであり,国際的に重要な湿地であることは明らかである。
第3 辺野古崎周辺海域・大浦湾埋立ての問題点
1 はじめに
 都道府県知事は,公有水面埋立法4条に限定列挙する一定の要件に適合する場合を除いて「埋立ノ免許ヲナスコトヲ得ズ」(同法4条1項柱書)とされる。なお,本件のように国が埋立免許の申請をする場合の都道府県知事の「承認」(同法42条)についても,同法4条は準用される。そして,本件埋立てについては,公有水面埋立法上の埋立承認の要件は次のとおり全く満たされていない。
2 国土利用の要件について
(1) 公用水面埋立法4条1項1号の趣旨
 公有水面埋立法上,埋立ての免許には「国土利用上適正且合理的ナルコト」という要件に適合することが必要である(同法4条1項1号)。この要件は,埋立ての可否の判断基準の基本である。
ちなみに,旧建設省河川局が監修した1995年発行の「公有水面埋立実務ハンドブック」においても,同条項については「よくいわれるのは,日本三景等の古来からの景勝地における埋立,環境保全上重要な地域等における埋立,良好な住宅地の前面の工業用地造成目的の埋立等である。こうした一般な基準からしても認め難いものは,本号により,免許拒否される。」(同ハンドブック41頁)としている。
(2) 本件における検討
 埋立予定地である辺野古崎周辺・大浦湾は,既に述べたとおり,生物多様性に富んだ環境的価値が高く評価されている。すなわち,開発行為等に対する配慮を促すために2001年に環境省によって選定された「日本の重要湿地500」の2つのエリアに関係している。また,開発事業による生態系への影響や貴重な野生生物の減少を憂慮して環境を保全するために1998年に沖縄県により策定された「自然環境の保全に関する指針」でも,藻場,干潟,サンゴ層が発達するなど健全で多様な生態系が維持されている沿岸域で,厳正な保護を図る必要のある区域(評価ランクⅠ)とされている。さらに,国際的な観点からみても,上述のとおりラムサール条約登録湿地のクライテリアを優に充足しており,周辺の大浦川及び河口域は環境省により2010年にラムサール条約の潜在的候補地にまで選定されている。特筆すべきは,埋立予定地は,環境省レッドリストにおいても絶滅危惧種ⅠA類(CR)に指定されているジュゴンの餌場の藻場としてかけがえのない海域であることである。
したがって,埋立予定地は,国土の利用に関する様々な位置付けからも自然環境を厳正に保全すべき場所にあたり,この海域を埋め立てることは,そもそも「国土利用上適正合理的」とはいえない。
3 環境配慮要件について
(1) 公用水面埋立法4条1項2号の趣旨
 次に,公有水面埋立法上,埋立ての免許には「其ノ埋立ガ環境保全・・・ニ付十分配慮セラレタルモノナルコト」が要求される(同法4条1項2号)。これは,水面を変じて陸地となすという埋立行為は,環境に与える影響が多大で不可逆的であることから1973年改正により同法に特に付加されたものである。「十分配慮」とは,問題の状況及び影響を把握した上で,これに対する措置が適正に講じられていることであり,その程度において十分と認められることをいう。しかしながら,本埋立ては環境に十分配慮されたものとは到底いえない。
(2) ジュゴンについて
 まず,国の調査でもわずか3頭しか確認されていない絶滅危惧種(かつ,文化財保護法上の天然記念物)であるジュゴンに対する影響評価を大きく誤っている。埋立承認申請書添付の環境影響評価書では海草藻場でのジュゴンの食跡は「辺野古地区では確認されませんでした。」(同評価書要約書「6.16ジュゴンに係る環境影響評価の結果の概要(1)」)と記載されているが,申請書提出直後の2013年4月から6月にかけての調査で,埋立てにより消失する辺野古地区(大浦湾西部)において,合計12本の食跡が発見されており,このことは国も確認していた(2013年9月22日共同通信)。この新たな調査結果を踏まえなかったため,環境影響評価書はジュゴンの生息域に関して「施設等の存在に伴う海面消失によりジュゴンの生息域が減少することはほとんどないと考えられます。」(同評価書要約書「6.16ジュゴンに係る影響評価の結果の概要(2)」)と全く誤った予測をしており,訂正もされていない。なお,日本のNGOも関与して2003年に米国カリフォルニアの連邦地方裁判所に提起された訴訟(ジュゴンvsラムズフェルドケース)において,2008年1月24日の判決は,米国国防総省が本件海域の埋立てにあたり沖縄に生息するジュゴンへの影響等を評価・検討していないことは米国の国家史跡保存法(NHPA)に違反している状態にあると判示し,国防総省にジュゴンの保護手続の在り方を示すように指示をしている。今回,国(沖縄防衛局)が提出する環境影響評価書は,上記判決において指示されたアメリカ国家環境影響評価法(NEPA)で求められる評価・検討ともいえないことは明らかである。
(3) サンゴ・海藻草類について
 埋立区域内のサンゴに対する環境影響については,施設の存在により大浦湾側のサンゴの生息域が一部消失することを認め,その消失面積(被度5%以上)は6.9ヘクタールと予測しながら,確立された技術とはいえないサンゴ類の移植をもって環境保全措置としている点は極めて不十分である。また,埋立区域内の海藻草類に対する環境影響について,施設の存在により辺野古前面海域及び大浦湾の西側海域における海草藻場の一部(約78ヘクタール)が消失すると予測しながらも,具体的な環境保全措置についての言及はない(同評価書要約書「6.15海藻草類に係る環境影響評価の結果の概要(2)」)。
(4) まとめ
 そもそも,沖縄県知事は,2012年3月27日に,環境影響評価書に対して,「当該事業は,環境の保全上重大な問題があると考える。また,当該評価書で示された環境保全措置等では,事業実施区域周辺域の生活環境及び自然環境の保全を図ることは不可能と考える」と,およそ環境配慮がなされていないとの意見を述べていた。今回の埋立承認申請に当たり添付された環境影響評価書は若干の補正はされているものの,上記の点も含めその補正は全く不十分であり,当連合会としても,沖縄県知事意見と同様,「埋立予定地の自然環境の保全を図ることは不可能」と評価する以外ない。
4 以上のとおり,本件事業は,公有水面埋立法の埋立「承認」の要件も満たしていない。
第4 結論
 以上の検討結果に鑑み,本埋立ては公有水面埋立法により「承認」される要件が欠けているため,当連合会は,国に対し,本公有水面埋立ての承認申請を直ちに撤回することを求める。また,国が承認申請を撤回しない場合は,処分庁である沖縄県知事は,公有水面埋立法上の適正な解釈に従って本埋立ての承認申請を承認しないことを求める。むしろ,国と沖縄県は,協議の上,本沿岸域一体について自然公園法の国立公園に指定するなど,法律により自然環境を保護する手続を進め,次回に開催される締約国会議においてラムサール条約登録湿地に指定をされるように,積極的に保全手続をとるべきことを提言するものである。
                                                            以上

PS(2015年10月29日追加):知事に代わって取り消しを撤回する「代執行」の手続きをする強硬姿勢とは、環境についての意識の低さと沖縄県民の意志をないがしろにする態度が出ている。そして、気にしているのが来年夏の参院選のみで、どんな方法をとっても既成事実化してしまえば反対運動が沈静化するというのは、いくらなんでも考えが甘すぎるだろう。

*6:http://www.saga-s.co.jp/news/national/10201/244128
(佐賀新聞 2015年10月28日) 辺野古、29日に本体着工、政府、移設に強硬姿勢
 政府は米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の移設先、名護市辺野古沿岸部の本体工事に29日朝、着手する。翁長雄志知事による埋め立て承認取り消しの効力を石井啓一国土交通相が停止したのに続き、知事に代わって取り消しを撤回する「代執行」へ手続きを始めるなど強硬姿勢を鮮明にした。沖縄県側は、取り消しの撤回を求める政府の是正措置に応じない方針を固め、反発を強めた。政府は、市街地に囲まれた普天間飛行場の早期閉鎖を目指している。本体工事を急ぐのは、移設を既成事実化して反対運動の沈静化を図り、来年夏の参院選への影響を最小限に抑える思惑もあるとみられる。


PS(2015年11月1日追加):私は、*7-1、*7-2の意見に賛成だ。そして、国が名護市の久辺3区に直接振興費を出すことを約束し、3区長が公民館や道路建設で納得したことについては、地方自治や主権在民(民主主義)を無視しているとともに、これからの久辺3区の可能性の大きさと公民館・道路・防災備蓄倉庫の整備等は基地と引き換えにしなくてもまちづくりの一環として整備すべきものであることを考えると、久辺3区にとっても割に合わない取引であり、ここで沖縄が分断されるべきではないと思う。
 また、*7-3のように、防衛省は、宮古島・与那国島・石垣島に陸上自衛隊の警備部隊を配備し、離島防衛を専門とする部隊や地対空ミサイル等を配備して、尖閣諸島を含む東シナ海の守りを固めるそうだが、尖閣諸島の守りを固めるのに「3つの島の自衛隊基地+辺野古米軍基地」の新設はやりすぎであり、予算の使い過ぎでもあるため、既に飛行場のあるどれか一つの島にすべく、配備する部隊の合目的性と費用対効果を検証して必要最小限にすべきだと考える。

<国のやり方>
*7-1:http://www.y-mainichi.co.jp/news/28642/ (八重山毎日新聞社説 2015年10月31日) 許せぬ民意無視の暴挙、辺野古新基地、国が本体工事強行
■国と県の対立極限に
 辺野古新基地建設の埋め立て本体工事が強行され、国と県の対立が極限に達している。27日、石井国交相は翁長知事の埋め立て承認取り消しについて「書面を審査した結果承認取り消しの効力を停止する」と発表。さらに菅官房長官は「普天間飛行場の危険性の除去が困難となり、外交、防衛に重大な損害が生じ著しく公益を害するとの結論に至った」として、国は県に代わり代執行の手続きを開始すると述べた。安倍総理は閣議で翁長沖縄県知事による承認取り消しを「違法」だとの立場から政府内のみならず司法の判断を仰ぐ必要があると代執行について語った。国は翁長県知事への承認取り消しの是正を勧告、従わない場合は高等裁判所へ提訴となる。翁長知事は取り消しの執行停止を決めたことに強い憤りを表明し「国が地方自治法に基づく代執行の手続きを行うとの発表があった。国も司法判断を問うのであれば、第三者機関である裁判所の判決が出るまで辺野古基地建設作業は開始すべきでない」と述べた。
■今後流血の事態も
 県は国地方係争委員会に不服審査を申し出る予定だ。防衛局は翁長知事の意向や民意を全く無視し、29日から本格的な工事を開始した。早くも現場では混乱が続いている。今後、流血騒ぎが起きてもおかしくない緊迫した状況だ。国交相による県知事の承認取り消しを無効にした「行政不服審査法」は本来、公権力(国)に対し個人が不服審査を訴える制度であるはずだ。今回、沖縄防衛局も一般私人としての立場で処分を受ける場合国は申し立ての資格を有するとの判断を初めて示した。防衛局は国の機関である。国の機関が提訴し国の機関が判断すること自体、公平さに欠けることは言うまでもない。国の勝手な解釈だ。県の提出した資料を国はどれだけ精査したか疑問が残る。防衛局、政府側に立たなければこのような「即判断」などできるはずはない。審査を国は公表すべきだ。国のなりふり構わぬ「ムチとアメ」政策も問題だ。国が名護市の久辺3区に名護市を通さず直接、振興費を出すことは地方自治への露骨な介入である。さらに、辺野古の海周辺の環境影響を監視する国の「環境監視委員会」のメンバー3人が監視委員会の運営や移設関連事業を請け負った業者から寄付を受けていたことが判明した。委員会は仲井真前知事が辺野古承認を決定した際、承認条件の一つとして政府に設置させたものだ。委員は発言や判断に影響はないと述べ、菅官房長官は「法的にも運営上にも問題はない」との認識を示した。しかし、委員や監視委員会に疑惑と不信の目が向けられるのは当然だ。28日、沖縄防衛局は世論に押され、移設と運営を同一関連業者が受注していたのを見直し、業者を新たに選定し契約すると発表。問題ありと認めたのだ。
■沖縄は重大な岐路に
 市内では28日、「翁長知事の埋め立て承認取り消しを支援し辺野古新基地を許さない」八重山郡民総決起大会が開かれ、「自らが選んだ誇りある翁長知事を最後まで支え、辺野古には絶対に新基地を造らせない」と決議した。国は県民の分断、懐柔攻勢を強めるだろう。沖縄は重大な岐路に立たされている。5月の県民大会で翁長知事が「ウチナーンチュ、ウセーテーナイビランドー」(沖縄の人をなめてはいけませんよ)の発言をいま一度かみしめ、揺るぎない視座を再確認したい。

*7-2:http://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-164124.html
(琉球新報社説 2015年11月1日) 久辺3区の振興費 新基地計画と絡めるな
 新基地建設に向けた政府の姿勢は常軌を逸している。その強引な手法は地方自治をも破壊しかねないものであり、極めて問題だ。政府は米軍普天間飛行場の代替となる名護市辺野古の新基地建設をめぐり、同市の辺野古、豊原、久志の「久辺3区」が進める地域振興の事業費を直接交付する方針を3区の区長らに伝えた。建設予定地に隣接する3区は、名護市に計55ある行政区の一部だ。国が自治体を通さず、財政支援するのは異例であり、地方自治への介入にほかならない。札束で地域の分断を図るような手法に憤りを覚える。政府としては、新基地建設に反対している名護市の頭越しに3区を支援することで稲嶺進市長らをけん制するとともに、国民に普天間の移設事業が進展しているとアピールする狙いがあろう。防衛省は本年度予算から3区にそれぞれ1千万円ずつ支出する方向で調整している。基地所在市町村に支給する「特定防衛施設周辺整備調整交付金(9条交付金)」などをモデルに、交付対象を行政区に拡大する方向だが、その法的な根拠ははっきりしない。9条交付金に基づく事業は自治体を介して行うのが通例だ。交付対象の拡大には財政規律上、疑問が大きい。国会での審議もないまま、政府内の手続きだけで制度が見直されていいはずがなかろう。交付金の原資は国民の税金だ。そもそも国の施策に反対した自治体を無視して、地域住民への交付金を恣意(しい)的に動かせるような仕組みは地方自治の精神を否定するものだ。復帰前、米統治下で住民の懐柔策に利用された高等弁務官資金と何ら変わらない。これで「法治国家」(菅義偉官房長官)と言われても、噴飯ものだ。久辺3区から振興事業として要望が挙がったのは、防災備蓄倉庫の整備や放送設備の修繕、芝刈り機の購入などだった。いずれも通常の地域振興事業として支援すべきものではないのか。仮に3区だけ、移設の諾否でその実施が左右されるとしたら差別以外の何物でもない。政府は翁長雄志知事による埋め立て承認取り消しの効力を停止させ、新基地の本体工事に着手するなど強権色を鮮明にしている。振興策を盾にさらに地域を揺さぶるようなまねは許されない。基地と振興はリンクしないと繰り返してきたことの責任を負うべきだ。

<沖縄の他の新基地>
*7-3:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20150411&ng=DGKKASFS10H6V_Q5A410C1PP8000 (日経新聞 2015.4.11) 
宮古島に陸自部隊 防衛省、18年度末までに 550人、ミサイル配備
 防衛省は南西諸島の守りを固めるため、沖縄県の宮古島に陸上自衛隊の警備部隊を配備する方針だ。離島防衛などを専門とする550人規模の部隊のほか、航空機を撃ち落とす地対空ミサイル(SAM)を配備する。沖縄県・尖閣諸島を含む東シナ海への進出を拡大している中国をにらむ。左藤章副大臣を夏までに宮古島へ派遣し、下地敏彦宮古島市長らに配備計画を説明する。8月末に締め切る2016年度予算案の概算要求に用地取得費などを盛りこみ、18年度末までに配備することをめざす。新設するのは離島への上陸を阻んだり、大規模な災害に対処したりする警備部隊。航空機や艦船による武力侵攻に備え、SAMのほか、地対地ミサイル(SSM)などの配備も計画する。警備部隊は約350人、ミサイル部隊は約200人をそれぞれ想定している。現在、沖縄本島以南には陸上部隊がなく「力の空白」(陸自幹部)が生じている。中国の艦船や航空機が東シナ海で活動を活発にしていることを踏まえ、14~18年度の中期防衛力整備計画では南西地域の防衛強化を打ち出した。防衛省は15年度末までに日本最西端の沖縄県・与那国島に尖閣周辺の艦船や航空機の動きを監視する部隊を新設する。鹿児島県の奄美大島には18年度末までに警備部隊をつくる計画だ。宮古島に関しては昨年6月に当時の武田良太副大臣が下地市長と会い警備部隊配備先として「有力な候補地」と伝えていた。防衛省は沖縄県の石垣島も、警備部隊の配備先として検討している。


PS(2015年11月27日追加):米軍は、離島の自衛隊基地を利用すればよく、*8のように、第一級の食品生産を行っている海近くの民間空港を利用する必要はないだろう。防衛省が佐賀空港の米海兵隊利用の要請を取り下げたのに、あらためて確認するのは、まるで誘致しているかのようだが、このような産業間の矛盾や国費の無駄遣いはやめるべきである。また、玄海原発の再稼働については、伊方原発や国の対応を確認しなくても、佐賀は、汚染されていない高品質の食品を生産し、再生可能エネルギーほかクリーンな産業で勝負する決意をし、それと矛盾のない方針を出せば、他もついて来ると考える。

*8:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/253915
(佐賀新聞 2015年11月27日) 山口知事、米軍空港利用「確認する」、11月定例県議会開会
 11月定例佐賀県議会は26日開会し、86億6300万円の一般会計補正予算案や知事ら特別職の期末手当(ボーナス)を引き上げる給与条例改正案など27議案を提出した。山口祥義知事は提案理由説明で、防衛省が佐賀空港の米海兵隊利用の要請を取り下げたことに対し、「あらためて確認する必要があり、説明内容を精査すると(防衛省に)申し上げた」と述べた。その上で「国防の重要性は十分認識しているつもりだが、今回の要請は本県の将来を左右する大きな課題で、慎重には慎重を重ねて対応していく」と強調した。環太平洋連携協定(TPP)については「農相や政府の担当政務官に万全の対策を講じるよう要請した。県内の関係団体の意見を聞きながら、適宜必要な対応をしていく」とした。玄海原発の再稼働では、3、4号機の規制基準の適合性審査が進んだ段階で、「伊方など先行事例の関係者の対応状況や国の考えを確認した上で、県としての考え方を整理する」と説明した。1号機の廃炉に関し安全協定で廃止措置を事前了解の対象に含める改定をしたことに触れ、「安全第一の姿勢で対応する」と語った。補正予算案は、知的障害のある児童生徒の教室不足解消を図るため、県立大和特別支援学校の校舎整備の基本設計に761万円などを計上した。議会改革検討委員会も開かれ、政務活動費の在り方について意見を交わした。再び各会派で持ち帰り、検討を続ける。会期は12月18日までの23日間で、一般質問は2~4日の3日間、常任委員会は9、10日の2日間。14日はさが創生対策、16日は佐賀空港問題等特別委員会を開く。

| 辺野古・普天間基地問題::2015.4~ | 04:24 PM | comments (x) | trackback (x) |

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