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2018.7.26 日本経済と外国人労働者 (2018年7月27、28、30日に追加あり)
    
2018.7.26西日本新聞  外国人労働者推移(国籍別)  中間管理職の月給比較

(1)外国人労働者の受入拡大について
 政府は、*1-1のように、特に人手不足が深刻な農業・介護・建設・宿泊・造船で外国人の就労を認める新たな在留資格の創設について、2019年4月を目指して準備を進めていたが、他業界からも外国人労働者受入を求める声が上がっていることを受けて、*1-3のように、水産・食品加工・外食・製造業など、さらに約10分野を対象に加える方針だそうだ。

 日本には、既に外国人労働者に支えられている産業も多く、外国人労働者を使うという選択肢があれば、これまでに海外に出ていってしまった産業のうち、国内で製造できるようになるものも多いため、生産年齢人口が減少して人手不足になる局面で規制緩和を行うのは良いと思う。

 また、介護は、*1-2のように、1万人の受入をベトナム政府と合意し、数値目標方式をインドネシア・カンボジア・ラオスなどにも広げて人材を確保するそうだが、こうなると、日本では、介護や生活支援を、①出産時 ②病児 ③退院直後 などを含む全世代に広げることが可能になる。また、他の国でも介護保険制度を作り、条約で相互に同様のサービスを受けられるようにすると、助かる人が多いだろう。

 もちろん、外国人労働者も生活者でもあるため、受入拡大のためには、環境づくりが必要だ。しかし、「来日後1年内に日本語で日常会話ができる『N3』の能力を得なければ帰国」というのは厳しすぎ、私は介護に日本語は不可欠でないため、「N3」のレベルに達しなかった人でもチーム介護の1員として働けば、帰国しなければならないほどではないと考える。

 なお、*1-3に書かれている「入国管理庁」の新設については、最近、「○○庁」の新設が多いが、これは行政改革の趣旨に反する。そのため、本当に「庁」を作る必要があるか否かについては、検証を要する。

(2)おかしな反対論
 日経新聞が、2018年7月26日、*2-1に、「政府が外国人の受け入れ拡大を表明しているので、①安い賃金で働く外国人が増え ②物価の下押し圧力になりかねない」としている。

 しかし、①のような外国人を日本に受け入れなければ、その企業は賃金の安い外国に移転するか、廃業するかして、日本の産業はますます空洞化する。また、②のように、「物価を上げることが目的」というのは、日本国民や日本経済のためになる政策ではない。何故なら、日本が自由貿易をする限り、高コスト構造の日本製品ではなく、安い賃金の国の安価な製品が売れるグローバルな時代になっているからである。その時、技術は生産している場所で発達するため、輸出国の製品が次第に良くなり、日本からは技術が消える。

 そのため、*2-2のように、「人手不足はバブル時代以来の水準だが、当時と大きく違うのは消費も国内総生産(GDP)もほとんど増えていない」というのは、年金生活者も含めて収入が増えない以上、物価を上げれば購入数量が減るからで、当然のことである。

 従って、少子高齢化で日本の産業や総人口を支える労働力が不足するのなら、外国人労働者を受け入れればよく、働く能力も意欲もある高齢者や女性に雇用を保障するためには、年齢や性別による差別を禁止をすればよい。つまり、「物価上昇」や「インフレ率の目標達成」こそ、変な目標なのである。

(3)外交と経済
 日経新聞が実施した2018年度の「研究開発活動に関する調査」で、*3-1のように、回答企業の43.9%が日本の科学技術力が低下していると指摘したそうだ。その理由は、中国やインドなど新興国の台頭で、10年後の研究開発力はインドや中国が日本を抜くと予想されているそうだが、どちらも人口が多く、熱心に教育を行い、開発された技術の採用判断に無駄がない。それが、油断して無駄遣いばかりしている日本との違いである。

 また、「企業は研究分野の選択と集中が必要だ」としているが、誤った選択と集中は大きな発見を見過ごす場合がある。そのため、的確な判断と予算付けが必要なのだが、これは官僚がやるのではなく、意識の高い専門家の助言を得る必要がある。

 なお、日本で外国人労働者の受け入れに反対している人が、*3-2のトランプ大統領の ①米国第一主義 ②保護主義 ③雇用の確保 ④国境管理の厳格化 をのべつまくなく批判し続けてきたのは自己矛盾である上、我が国の外交にも悪影響を与えてきた。私は、どの国にも産業政策はあり、その国に必要な産業は育てなくてはならず、既にいる国民の雇用も守らなければならないため、「日本は特別な国」という発想は甘えだと考える。また、雇用の確保や国境管理は日本の方がずっと厳しく、かなり制限された外国人労働者の受け入れでさえ、*2-1、*2-2のような反論が出ているということを忘れてはならない。

<外国人労働者の受入拡大>
*1-1:https://www.agrinews.co.jp/p44690.html (日本農業新聞 2018年7月25日) 外国人就労新在留資格 来年4月に創設へ 受け入れ業種拡大も 首相指示
 政府は24日、外国人労働者の受け入れ拡大に向けた初の関係閣僚会議を首相官邸で開いた。安倍晋三首相は、人手不足が深刻な業種で外国人の就労を認める新たな在留資格の創設ついて、「来年4月を目指して準備を進めたい」と述べ、検討を加速するよう指示。今後、外国人の受け入れ対象業種について、従来検討してきた農業や介護など5業種以外にも広げることや、外国人の在留管理を一元的に担う官庁の立ち上げも検討する。政府は6月に決めた経済財政運営の基本方針「骨太の方針」に新たな在留資格の創設を盛り込んだ。一定の技能、日本語能力を問う試験に合格した外国人を対象に、通算5年を上限に就労を認める。3年間の技能実習の修了者は試験を免除する。秋の臨時国会に関連法案を提出する方針だ。閣僚会議には安倍首相の他、上川陽子法相、斎藤健農相らが出席。安倍首相は「法案の早期提出、受け入れ業種の選定などの準備を速やかに進めてもらうようお願いする」と述べた。法務省には、増加が見込まれる在留外国人の管理を行うため、組織の抜本見直しを指示した。受け入れ業種の選定では、政府は、特に人手不足が深刻な農業、介護、建設、宿泊、造船を念頭に検討を進めてきた。一方、水産業や食品関連業など他の業界からも受け入れを求める声が上がっていることを受け、業種の追加も検討。政府は関連法の成立後に決める受け入れの基本方針で、具体的な基準を示し、年内にも受け入れ業種を正式決定する見通しだ。

*1-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180725&ng=DGKKZO33346320U8A720C1MM8000 (日経新聞 2018年7月25日) 介護人材1万人受け入れ ベトナムと合意、政府20年目標、インドネシアにも打診
 政府はベトナム政府と同国からの介護人材の受け入れ拡大で合意した。政府は1年以内に3000人、2020年夏までに1万人の数値目標を設け、ベトナム側もこれに協力する。期限と受け入れ数を掲げ、環境整備を急ぐ。介護分野の人手不足は深刻で、今回の数値目標方式をインドネシアなど他国にも広げ、介護人材を確保する。政府の健康・医療戦略推進本部(本部長・安倍晋三首相)がベトナムの労働・傷病兵・社会問題省と6月に日本への介護の人材受け入れ促進で合意したことが判明した。首相は24日、外国人労働者の受け入れ拡大への環境づくりを関係閣僚に指示した。日越首脳は年内にも介護・医療で日本とアジア各国が協力を進める「アジア健康構想」で覚書を結ぶ見通し。介護人材の受け入れ強化も柱の一つにする。政府はインドネシアやカンボジア、ラオスなどからも受け入れ拡大を進める。ベトナムからの人材の受け入れは昨年11月から介護分野でも始まった外国人技能実習制度を活用する。日本語試験で、ある程度日常会話ができる「N4」の能力を持つ人を対象に最長5年の滞在を認める。技能実習を修了した人はさらに最長5年の就労資格を得られる新制度も創設する。介護の技能実習制度の利用者はまだ数人しかいない。来日後1年内に、日本語で日常会話ができる「N3」の能力を得なければ帰国しなければいけない。学習費用の自己負担が重荷になり、来日に二の足を踏むためだ。政府はベトナム人の学習費用を支援し、高齢者の「自立支援」の手法も学べる優良法人を選ぶ。日本人と同様の給与水準も保証。第1弾で12業者を選定した。12業者で3千人を受け入れられる。ベトナム政府もまず6つの優良業者を人材を送り出す機関として認定する。現在、介護人材は経済連携協定(EPA)を通じて来日している。08年~17年の累計で約3500人で、新たに3千人来日すれば、海外の人材はほぼ倍になる。政府の予算で実施するEPAによる受け入れ拡大には限界があり、政府は今後、技能実習制度を活用する。経済産業省によると15年に日本の介護人材は4万人足りなかった。外国から1万人来ても3万人超足りない。35年には人材不足は79万人に達するという。人手が足りないことを主因に15~17年度に全国で整備された特別養護老人ホームは計画の7割にとどまる。国際的な人材獲得競争は激しい。韓国は外国人労働者の人数の枠を決めて受け入れを進める。日本も数値目標を定めて受け入れ拡大を目指すものの、外国人技能実習制度で一定の条件を定めているため、簡単に人数が伸びるかはわからない。

*1-3:http://qbiz.jp/article/138036/1/ (西日本新聞 2018年7月25日) 「外国人就労」10分野追加 新在留資格で外食、製造、漁業 政府方針 「入国管理庁」新設も検討
 人手不足を補うために外国人の就労を認める新たな在留資格に関し、政府が、これまで想定していた介護など5分野だけでなく、外食産業や製造業などさらに約10分野を対象に加える方針であることが分かった。実質的に単純労働の分野にも門戸を広げる。安倍晋三首相は24日の関係閣僚会議で、来年4月からの制度開始に向け、準備を加速するよう指示。上川陽子法相は同日の記者会見で、法務省の組織改編で「入国管理庁」のような新たな官庁を設置する検討に入ったことを明らかにした。新資格の受け入れ業種で想定していた5分野は、建設、介護、農業、宿泊、造船。政府関係者によると、これに加え、製造業では金属プレスや鋳造などの金属加工業を追加する方針。非製造業でも、食品加工業や漁業などを追加し、10分野ほど増やす方向で検討しているという。いずれも重労働で人手不足が深刻な分野。各省庁が業界の要望も聴き、受け入れ業種の詳細を詰める。閣僚会議で首相は「法案の早期提出、受け入れ業種の選定などの準備を速やかに進めてほしい」と指示。「外国人を社会の一員として受け入れ、円滑に生活できる環境整備をすることが重要な課題だ」と述べた。新たな在留資格創設により、国内で暮らす外国人は大幅な増加が見込まれる。政府が「入国管理庁」の新設を検討するのは、外国人に対する日本語教育や医療面などでの支援のほか、出入国管理の体制強化が必要になるからだ。この日の閣議では、法務省に受け入れ体制整備に向けた総合調整権限を与えることを決めた。上川氏は会見で「(法務省の)入国管理局を抜本的に組織改編し、入国管理庁のような外局を設けることも含め、検討を進める」と述べた。新たな在留資格では、在留期間は最長5年とし、家族の帯同は認めない。日本語能力や技能に関する試験を実施する一方、技能実習の修了者は試験を免除する。政府は来年4月の制度開始に向け、今秋に想定される臨時国会に入管難民法改正案を提出する方針。
   ◇   ◇
●人手確保へ見切り発車 体制、支援策 これから
 政府は、新たな在留資格による外国人労働者の受け入れを、当初想定の5分野からさらに10分野ほど増やし、一気に拡大する。2025年ごろに約50万人の受け入れが必要と試算してきたが、さらに数十万人単位での受け入れが見込まれる。人手不足の解消が期待される半面、来年4月に迫る制度開始に向けた政府の受け入れ体制や外国人への支援策は検討が始まったばかり。外国人政策は国の在り方を大きく変えるだけに、“見切り発車”への不安は拭えない。「既に外国人なしに成り立たない業種は多い。少子高齢化を見据えれば、今やるしかないんだ」。30年までに700万人超の働き手が減るとされる中、政府関係者は、受け入れ拡大を急ぐ理由をこう強調した。政府が受け入れ方針に転じた外食産業などのサービス業は現在、日本語学校などで学ぶ多くの外国人留学生が支えている。製造業でも、技術習得を名目にした技能実習生が重労働を担っている。いずれのケースも就労時間などに制約があるため、政府は就労を目的とした新資格で正面から外国人を受け入れ、より効率的に長時間、働いてもらいたいという狙いがある。人手不足に悩むのは、地方の中小企業や農家など自民党を支えてきた層とも重なる。新制度の開始を急ぐ背景には、来年の統一地方選や参院選を控える政権の思惑もにじむ。政府は24日、外国人との共生を目指し、日本語教育の充実や相談窓口の整備などを盛り込んだ「総合的対応策」の案を示したが、法務省関係者は「正直に言うと、これまでと同じ言葉を並べただけ」と漏らす。新設を検討する「入国管理庁」も、大掛かりな組織改編が必要になる。政府内には、建設業など実質的な単純労働の分野で多くの外国人を受け入れれば、景気悪化時に職を失った日本人とのあつれきが生まれるとの懸念も根強い。現行の技能実習制度を巡っても、人手不足の解消を求める業界団体の要望を受ける形で、制度が始まった1993年の17業種から、17年12月時点で77業種へとなし崩し的に対象を拡大。低賃金で長時間労働を強いるなどの問題が指摘されてきた。支援団体などからは「外国人がモノ扱いされることがないよう、丁寧な制度設計をしてほしい」と求める声が上がっている。

<おかしな反対論>
*2-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180726&ng=DGKKZO33417090V20C18A7EE8000 (日経新聞 2018年7月26日) 上がらぬ物価を探る(3)外国人増、賃金伸び鈍化 高収入の人材少なく
 6月半ば、大阪府東大阪市の工場ではベトナム人やインドネシア人らが朝から金属部品を熱心に磨いていた。京セラに燃料電池、マツダに自動車の部品などを納める従業員約110人の三共製作所。製造にかかわる働き手は実に約6割が外国人の技能実習生だ。
●人件費の調整弁
 「人手不足を解消し固定費を下げるには外国人を増やすしかなかった」。同社の松本輝雅社長はこう語る。「技術を学んで母国でいかしたい」。こう話す23歳のネパール人実習生、シグデル・ススマさんの月収は15万円ほどだ。厚生労働省の調べでは日本で働く外国人は2017年に128万人だった。日本の就業者全体の2%。この5年で人数も割合も倍増した。BNPパリバ証券によると12年から17年にかけては外国人の留学生と技能実習生は合計で30万人弱増えた。一方専門的な資格をもつ人材は10万人強しか増えていない。同社の河野龍太郎氏は「留学生や技能実習生が人手不足を背景にコンビニや工場などで安い賃金で働いている。日本の労働需給が逼迫しても賃金が上がらないのはこうした外国人労働者が増えたことが一因だ」と指摘する。
●平均月収13万円
 大和総研によると、日本の常用雇用者4926万人の平均月収は35万4855円なのに対し、外国人の技能実習生は同13万円ほどだという。日銀の簡易な推計でも、技能実習生の時給は約800円にすぎず、日本人のパート時給などよりも安いとみている。5月の完全失業率は2.2%と25年ぶりの低さだったが賃金の足取りは鈍い。政府は外国人の受け入れ拡大を表明している。政府関係者は「官邸が介護の人手不足に業を煮やして決めた。将来は年間20万人規模の受け入れが目安」と明かす。安い賃金で働く外国人は確実に増える。物価の下押し圧力になりかねない。

*2-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180726&ng=DGKKZO33414870V20C18A7EN2000 (日経新聞 2018年7月26日) 外国人労働者受け入れの是非
 政府は外国人労働者の在留資格の基準を緩め、就労を促進しようとしている。人手不足が特に深刻な農業や建設に外国人労働者で対応しようという意図だ。本当のところ、日本は人手不足なのか。データをみると、実際に雇用数は拡大し、労働市場が逼迫して完全失業率も低下している。人手不足はバブル時代以来の水準という声さえある。しかし、当時と大きく違うのは、消費も国内総生産(GDP)もほとんど増えていないということだ。完全失業率とは、労働人口のうち全く働いていない者の割合だ。1時間でも働いていれば完全失業者にはならない。つまり、数字上の失業率が減っても、雇用の中身が劣化していれば、生産は増えない。実際、GDPが増えていない以上、実労働時間は増えていないはずだ。もし増えているなら、効率が低下しているということだ。望ましいことではない。そもそも消費が増えていない以上、生産量を増やしても意味がない。こうした状況で利益を確保するなら、賃金を抑えるしかない。そのための外国人労働者導入だ。そんな目先の話ではなく、少子高齢化によって、総人口を支えるための労働力が不足するから、外国人労働者の導入は絶対に必要だという見方もある。実際、総人口当たりの64歳までの労働人口の比率をみると、減少傾向にある。ところが、同じ比率を65歳以上まで含めて計算すると増えている。これは寿命が延び、働く能力も意欲もある高齢者が増えているからだ。高齢者は支えられるだけでなく、支える側にもなる。雇用と景気の健全な回復は需要が伸び、必要な生産量が増えてはじめて可能だ。それが賃金の上昇につながり、物価も上昇して、ようやくインフレ率の目標達成が視野に入る。ところが需要は回復していない。限られた需要で利益を確保しようと、低賃金で働かせることを考える企業もある。手っ取り早いのは外国人労働者だ。実際、外国人労働者の劣悪な雇用状態が問題になっている。経済停滞の原因は需要の伸び悩みにある。低賃金の維持ばかり考え、雇用の質を落として労働者を確保しても、数字上の雇用が改善するだけだ。需要が伸びなければ景気の本格回復はない。

<外交と経済>
*3-1:https://www.nikkei.com/article/DGKKZO33416300V20C18A7TJ2000/ (日経新聞 2018/7/26) 「日本の技術力低下」43% 本社調査 10年後、中印と逆転も
 日本経済新聞社が実施した2018年度の「研究開発活動に関する調査」では、回答企業の43.9%が日本の科学技術力が低下していると指摘した。上がったとの見方は289社中10社にとどまった。中国やインドなど新興国の台頭が理由で、10年後の研究開発力ではインドや中国が日本を抜くと予想する。現状と10年後の研究開発力を、国別に5点満点で評価してもらった。現状について、インドは平均3.0、中国は3.5と日本の3.8より低い。だが、10年後にはインドは3.8、中国は4.3で日本の3.7を上回った。業界別でみると自動車・自動車部品では、中国が日本や米国を上回り、欧州に次ぐ実力になるという結果だった。日本の科学技術力の低下を指摘しているのはITや機械・エンジニアリング・造船、素材で多く、いずれも50%を超えた。文部科学省科学技術・学術政策研究所によると、研究の質の高い研究論文数は2013~15年平均で日本は世界9位。10年前の4位から急落した。10年前には6位の中国が米に次ぐ2位に上昇した。論文は5~10年後の国の科学技術力を映す先行指標といわれており企業も危機感を強めている様子がうかがえる。こうした状況への対策として各企業が挙げたのは研究分野の選択と集中、企業と大学が共同で研究を進める産学官連携だ。国内での連携については47.1%、海外での連携については36.7%の企業が増やす方針を示した。徹底できるかが今後のカギを握りそうだ。だが国内大学との連携について、企業の44.6%は「迅速な成果を期待できない」などと問題点を指摘した。政府は大学改革をてこにイノベーション創出を目指すが、学問の自由が失われることに大学側の反発も強くどこまで進むか不透明だ。このままでは、米中との差が広がりかねない。

*3-2:https://www.nikkei.com/article/DGXLASGM21H33_R20C17A1EB1000/ (日経新聞 2017/1/21) 各国メディア、トランプ氏の政策疑問視
 米国の第45代大統領にドナルド・トランプ氏が20日就任したことを受け、米国や世界のメディアは就任式の模様や今後の国際情勢の展望を詳報した。米メディアはトランプ氏の就任演説が既存の政治・社会の批判に終始した点を疑問視した。国外では欧州やメキシコのメディアが「米国第一」の姿勢を不安視する一方、ロシアメディアは米国との関係改善への期待を報じた。米紙ニューヨーク・タイムズ(電子版)が注目したのは「エスタブリッシュメント(支配階級)の拒絶を続けるトランプ氏の姿勢」だった。これまでの米大統領は改革を主張しつつ、ある程度、そうした層と付き合ってきたことを指摘。「トランプ氏はどうやって彼らと協力して国を治めるつもりなのだろうか」と、就任演説で示された政策方針に疑問を呈した。一方、ワシントン・ポスト(電子版)はトランプ氏の演説内容が、都市犯罪や雇用の流出など米国の現状に対する非難に終始したと指摘。「オバマ前大統領の民主党政権から共和党政権への移行というより、新しい形の独立した権力や政治を作ると話しているようだった」と評した。英紙ガーディアン(電子版)はトランプ氏が言及した「米国第一」について「オバマ政権の多国間主義に代わる、外交・安全保障政策の中核になることがはっきりした」と述べた。その上で「米国の核兵器や通常戦力を強化するが、他国の防衛や海外の紛争解決のために使う意志は薄いということだ」と読み解いた。仏紙ルモンド(電子版)は就任演説を冷静に報じつつも、米国だけでなくフィリピン、ドイツ、英国でも反トランプのデモがあったことを「世界中でデモ」との見出しで紹介。警戒感が米国外にも広く高まっていることを指摘した。トランプ氏を批判的に報じてきた独紙フランクフルター・アルゲマイネは米欧関係が「複雑になる」と断じた。独誌シュピーゲルはトランプ氏が就任演説で「反対派との闘争を宣言した。世界に不安が広がった」などと指摘した。メキシコの主要各紙の電子版は、新政権の写真や記事で埋め尽くされた。「トランプ氏、環太平洋経済連携協定(TPP)からの離脱、北米自由貿易協定(NAFTA)の再交渉、壁建設を繰り返す」(フィナンシエロ紙)のように関心の高い通商・移民政策に関しての記事が大半を占めた。中国の国営新華社などは就任を速報し、関心の高さを示した。新華社は「米国第一主義を主とし、保護主義を基調とする就任演説」だと指摘。雇用の確保や国境管理の厳格化に関する発言を伝えた。米大統領就任の際の反対派デモ活動がこれまでにない規模だったことにも触れた。ただ、中国国営中央テレビは就任式の様子を中継しなかった。就任演説で中国への批判が出る可能性を懸念した可能性がある。ロシアの国営テレビ「ロシア1」は1時間半のニュース番組枠で40分以上を割いて就任式を伝えた。「(ロシアとの関係改善を主張する)トランプ氏は大統領選での勝利以来、圧力にさらされてきた」「米メディアはロシアとの関係を巡る疑惑を執拗に取り上げ、式典を台無しにしようとした」などと批判の矛先を米メディアに向けた。韓国・聯合ニュースは米韓関係について「(トランプ政権が)防衛費負担の引き上げや、米韓自由貿易協定(FTA)の見直しを要求すれば、同盟が揺れる可能性がある」と分析。中国製品に高い関税をかければ米中の対立が深まって「朝鮮半島に影響が及ぶ可能性が非常に大きい」との見方も示した。

<上海のリニアモーターカーと蘇州刺繍>
PS(2018年7月27、30日追加):公認会計士協会埼玉会の親睦兼視察旅行で、3日間、上海に行ってきた。帰路に、龍陽路から浦東空港まで*4-1のリニアモーターカーに乗り、最高時速は300 km/hだったが、10分程度で空港に到着した。確かに、横幅が広く座席配置は6列で新幹線より1列多く、日本のように地下を走るのではなく、地上を走る設計なので景色がよかった。シートの青色カバーは、モノレール程度の感覚だった。中国は、2001年 3月1日に、このリニアモーターカーの建設を開始し、2004年1月1日には商業運行を開始しているのだから迅速だ。そのほか、上海近郊の道路は6~8車線となっており、高層ビルが立ち並び、長期の街づくり計画もよいと思われた。「百聞は一見に如かず」と言うため、見聞に行かれるとよいと思う。「羽田空港⇔上海浦東空港」は3時間、「福岡空港or九州佐賀国際空港⇔上海浦東空港」なら2時間弱の飛行距離である。
 なお、*4-2のように、九州佐賀国際空港から台湾の格安航空会社LCCが運航し始め、「佐賀⇔台北」での搭乗利用が2018年7月29日にスタートしたそうだ。九州は、これから中産階級の人口が20億人に達するアジア諸国に東京より近いため、他も含めてアジアの航空会社が乗り入れると、次の展開が見えてくるだろう。


     上海のリニアモーターカー           蘇州刺繍

(図の説明:上海のリニアモーターカーと蘇州刺繍の写真。蘇州刺繍は薄い絹地に裏と表で別の図案を刺繍したものや、日本の帯や着物地があったのは驚きだった。日本の光る絹糸をここに輸出すると、面白い製品ができそうだ)

*4-1:http://flyfromrjgg.hatenablog.com/entry/shanghai_linear_maglev (イケてる航空総合研究所 2016.9.11) 上海に行ったらリニアモーターカーに乗れ!
 上海浦東から上海市内に出る最速の方法はリニアモーターカーです。おおっと、リニアモーターカーは和製英語でしたね。英語では「マグレブ」って言うんでした。さぁ、マグレブに乗って上海の街へと繰り出しましょう。ん~やっぱり「マグレブ」って日本語で呼ぶことに違和感があります。「リニア」って呼んだ方が日本語ではしっくりきます。ということで、自分で「マグレブ」が正しいと言っておきながら「マグレブ」は使わずに「リニア」を使うことにします。日本にリニアが開業したあかつきには、きっと「リニア」が世界標準になりますので…。
●片道50元で龍陽路まで
 リニアに乗るには発券カウンターで「往復(Round Trip)」か「片道(One Way)」かを伝えるだけです。片道は50元(750円)。往復で買うと片道40元となり往復で80元(1,200円)となります。乗車時間は7~8分なのに片道750円は高い気がしてしまいますが、速いんだから仕方ありません。距離で考えれば結構長い距離を走っていますので、合理的な値段と言えば合理的な値段です。切符はここで買いましょう。リニアの終点は龍陽路(ロンヤンルー)。上海市内と言ってもあまり中心部には近くないです。上海の中心部に行きたい場合は、龍陽路から地下鉄かタクシーに乗らなければいけません。龍陽路から延伸する計画があったようですが、上手く話が進まずに開業から12年経った今でも開業区間は空港から龍陽路までです。もう少し中心部まで言ってくれたら随分と便利になると思うんですけどね。ホームは待合室の下にあり、時間まではホームに入れません。僕が乗った朝9時台は20分間隔の運行で、たまたま前の列車が出た直後とあり、20分も待たされることになりました。いくら速いと言っても20分も待たされるとせっかくの高速移動が無駄になっちゃいますよね。運行間隔がもう少し短かかったらなぁと思います。
●未来鉄道リニアらしからぬ車内
 リニアが入線してきました。地下鉄並の大きさを想像していると意外と横幅が広くて焦ります。1両の長さも結構長く、地下鉄並の長さを想定しているとかなり長く感じます。車内に足を踏み入れると、豪華なのか質素なのか分からない雰囲気にやや違和感を覚えます。照明や壁などの内装はそこそこなんですが、シートがダサ過ぎるんです。「何?この青色のカバー被ったシート?」ってな感じでお世辞にも格好いいシートとは言えません。座席配置は3-3で新幹線よりも1列多いです。シートは回転させることはできず、前向きの座席と後ろ向きの座席がちょうど真ん中で向かい合う方式を採っています。グループで座る場合はここが一番快適でしょう。シートピッチは意外と狭いです。基本的にガラガラですので、もう少しシートピッチを広くして欲しいと思います。本当に窮屈なんですよ。未来鉄道のリニアのはずなのにシートピッチはLCC並。何回乗ってもシートピッチだけは大きな違和感を覚えます。
●最高時速は430km/h
 浦東空港から龍陽路までの所要時間は約8分。最高時速は430km/hです。ただ、430km/hと言っても最高時速が出ている時間は30秒程度で、残りの時間は加減速に使われておしまいです。しかしやはり加速していくのは気持ちが良いもので、僕は最初の加速フェーズがたまらなく好きです。そして430km/hに達するとかなり速いと感じます。また減速していくのも面白くて200km/hくらいになると異常に遅く感じるんです。加速していく過程の200km/hと減速していく過程の200km/hは、まるで速さの感覚が違うんですよ。相対的な感覚ってホント不思議ですよねぇ。龍陽路に到着しました。わずか8分の高速移動体験でした。「もう終わりかよ」ってな感じです。降りるとこんな風。リニアの龍陽路駅は地下鉄の龍陽路駅と繋がっており、ガラスの向こう側は地下鉄からの人波です。5月1日に行った時の1日目の上海滞在は時刻表上で約6時間半。9時に着いて15時半には次の目的地へ出発します。上海市内で観光できる時間はそんなに長くはありません。それで急いでリニアに乗ったというわけです。
●最高時速300km/hのときもある
 そして空港に戻る時にもリニアに乗ることにしました。20分間隔の運行ではタイミングって非常に重要ですね。8分の所要時間で20分待つのは何だか不合理な気がします。こいつ、結構可愛いヤツなんです。この時の最高時速は301km/h。理由は分かりませんが、たまにこういうことがあるみたいですね。300km/hでも十分に速いんですが、行きの430km/hと比べたらうんと遅いです。300km/hですと中国新幹線よりも遅いことになりますから…。行きよりも遅い300km/hで走った割には、そんなに所要時間が変わることもなく空港に到着。430km/h出してる時間が短いですので影響も少ないんです。
●リニアは一種の観光スポット
 最後に。最高時速430km/hのリニアモーターカー。ここまで速い地上鉄道に乗れるのも世界で上海くらいなもんです。上海リニアは一種の観光スポットだと思って下さい。現地ではあんまり人気のないところが、観光スポット的な感じがします。僕は何度上海に来てもこれに乗りたくなってしまうんです。速い乗り物って無性に乗りたくなりません?何だか鉄道の速度で430km/hと聞くと未体験ゾーンな気がして何だかウズウズしちゃうわけです。そんなわけで、上海に行ったのなら乗ったことがあってもなくてもリニアに乗りましょう。

*4-2:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/252338 (佐賀新聞 2018年7月30日) 佐賀空港の台北線、佐賀からの搭乗スタート
 台湾の格安航空会社(LCC)タイガーエア台湾が運航する佐賀-台北線で、佐賀空港からの搭乗利用が29日、スタートした。従来、台湾からのツアー客を対象に運航していたが、佐賀空港から出発する人も利用できるようになった。カウンター前では、第1便となる午後12時30分発の搭乗手続きのため、日本国内での観光を終えた台湾の家族連れらでごった返した。佐賀空港での記念式典で山口祥義知事は「佐賀からの利用が可能になり、台湾の人は佐賀と近くなったと実感しているのでは」と歓迎の言葉を述べた。タイガーエア台湾の張鴻鐘董事長は、昨年6月から始まったツアー客限定のチャーター便の就航に至る経緯を振り返り「台北-佐賀間の定期便就航の手続きは最終段階にある。台北への第1便には当然、山口知事に乗ってもらうつもり」と話し、関係者の笑いを誘った。佐賀を中心に4日間、家族4人で観光地を巡った台北市の林芊彣さん(15)は「唐津城と祐徳稲荷神社が印象に残った」と話した。日本には数え切れないほど訪れたといい「佐賀を含め、日本と台湾を結ぶ拠点が多くなるのは喜ばしい」と笑みを浮かべた。台北便は週2往復で、木曜と日曜に運航している。

<豪雨被害から将来を見据えた安全な街づくりへ>
PS(2018/7/28追加):*5-1のように、記録的豪雨を含む大雨被害があった西日本地域に「激甚災害の指定」を行って復旧事業の補助率を上げるそうで、大災害が発生した地域が激甚災害の指定を受けて補助率を上げてもらえるのは有難いものの、激甚災害の指定は、「復旧事業」に限られているのが問題だ。何故なら、例えば、広島県倉敷市のように、住宅地が天井川の底より低い場所にあり、堤防だけが頼りなどというセキュリティーを無視した街づくりをしている場所に、年中復旧費用を出しているほど我が国の財政はゆとりがないため、少子高齢化して人口が減少している現在、住宅地には高い安全な場所だけを選び、災害リスクのある地域は農漁業地帯にするなど、激甚災害の指定は「復旧」に限らず「街づくり」をも応援しなければならないからだ。具体的には、住宅地は高所に作って一戸建てやマンションを分譲し、これまでの住宅と等価交換できるようにすればよく、高齢世帯は介護サービス等を受けやすい便利なマンションに移るのがよいと思われる。
 なお、*5-2のように、農業も甚大な被害は受けるのだが、住宅と比較すればやり直しが効く被害だと言える。そのため、専門家のアドバイスを受けながら、その土地にあった農産物の再配置を考えるのがよいだろう。

   
      2018.7.14朝日新聞          土砂と災害ゴミ

(図の説明:災害に遭われた方々にはお見舞い申し上げるが、自然条件から考えて災害に遭いやすい地域で、今後も同じことが起こり易い場所が多いように見える。そのため、必要な場所は災害ゴミと土砂を使って埋め立てたり、住宅は高台に移転したりするなど、国民の努力と血税が「賽の河原の石積み」にならないような復興計画を立てるべきだ)

*5-1:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO33321010U8A720C1EAF000/ (日経新聞 2018/7/24) 西日本豪雨を激甚災害指定 政府、復旧事業の補助率上げ
 政府は24日、西日本を襲った記録的豪雨を含む大雨被害の激甚災害指定を閣議決定した。指定は27日付。国から被災自治体の復旧事業に対する補助率を1~2割程度引き上げる。自治体の財政負担を軽くし、道路や河川、農地などの復旧事業を後押しする。指定対象は梅雨前線の停滞などに伴う被害。地域は限定せず、西日本豪雨より前に発生した北海道の大雨被害も含む。公民館や学校といった公共施設の復旧事業も支援する。被災した中小企業の借り入れを債務保証する「災害関係保証」を適用し、資金繰りを支える。激甚指定は従来、数カ月かかることもあった。政府は昨年12月に運用を見直し、最速1週間程度で指定見込みを公表できるよう改めた。安倍晋三首相は15日、運用改善後初となる指定見込みを公表。21日に広島県を視察した際、24日の閣議決定を表明した。激甚災害は政府の中央防災会議が定めた基準に基づき指定する。復旧に必要となりそうな費用の額などを踏まえ、判定する仕組み。近年では、2017年6~7月にかけての九州北部豪雨や16年の熊本地震を指定した。

*5-2:https://www.agrinews.co.jp/p44709.html (日本農業新聞 2018年7月27日) 西日本豪雨 ミカン島の被害甚大 若手 逆境に再興誓う 松山市
 西日本豪雨は、新規就農者や若い後継者の田畑を直撃した。若手農家とともにブランド化を進めてきた矢先の大被害に、産地は苦境に立たされている。松山市の興居島では、通行止めの解消など生活環境の復旧に伴い、農業被害が次々と明るみになっていく厳しい現実の中、若手らは消防団の活動に励む。つらい気持ちを抑え「ミカンの島を必ず復興する」と誓う。
●園地復旧 「一歩ずつ」
 「甘平」「紅まどんな」「せとか」など愛媛県が誇る中晩かんの木が根こそぎになる土砂崩れが各地で発生した松山市泊町。研修を経て4月に就農したばかりの川根勝弘さん(45)の園地も半分が被害に遭った。同町には30、40代の若手農家が毎年増えていた。JA松山市に出荷する仲間とともに、安定収入が見込める「紅まどんな」で勝負をかけようとしていた矢先の大打撃だった。川根さんは水槽まで流される豪雨の猛威を目の当たりにした。「まだ生きている木もあるが、パイプも水源も被害に遭い、防除も摘果もできない。どうすればいいのか」と落ち込む。川根さんら若い農家は連日、消防団活動に出向く。あまりの打撃に離農を口にする高齢者もいるという。園地の面積が小さく高齢化が進む同町では、規模拡大が難しい。かんきつは木を植えて収入が見込めるまで年数を要し、並大抵の努力では復旧できないことは川根さん自身が痛感している。それでも「ここまでブランドをつくってきた。一人じゃない。一歩ずつ頑張れば5年、10年と時間はかかっても復活できる」と園地に向かう。
●先輩農家と手携えて
 松山市由良町は代々、急傾斜地を切り開いてミカンを作ってきた。近年は、JAえひめ中央と農家が団結して「紅まどんな」などを地域ぐるみで栽培。そんな、小さくても光る産地を豪雨が襲った。同JA経営支援課の林諭さん(40)は「後継者が多く、産地を挙げて高級かんきつを生産する目標に向けて盛り上がっていた」と肩を落とす。1・5ヘクタールを栽培する坂本和久さん(35)は、伊予カンの園地が崩れ、水源の池が流され、「紅まどんな」のハウスも被害に遭った。島の至る所が被害に見舞われ「これから帰ろうとする若者の足止めになるのが心配。農業には自然災害のリスクがあると教訓にするしかない」と冷静に語る。坂本さんら若手農家は連日、消防団活動や復旧に泥まみれで作業する。そんな若者の姿に、地域の年配者らも「若い後継者のためにも踏ん張ろう」と考えている。「島の若い農家が重機で道路の土砂を取り除き、行けるようになった園地もある。泣いてばかりはいられない」と農家の石田六一郎さん(75)。農家の山岡建夫さん(66)は「後継者世代の被害も深刻。だが、若者のためにも水や防除を何とかしたい」と繰り返す。JAの林さんは「農業がないと地域は成り立たない。水害前、地域は活気に満ちていた。若者と先輩農家が手を携え復旧する」と力を込める。

| 経済・雇用::2018.1~2018.11 | 07:48 PM | comments (x) | trackback (x) |

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