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2014.5.18 検証:メディアは真実にどう対応したか? (総括:情報の真実性は民主主義のKeyであり、正確な情報がなければ国民が意思決定を誤るにもかかわらず、多くの日本メディアは、肝心なところでは志がなかった。)
   
                     *2より
(1)「被曝で鼻血」は、「根拠のない風評」ではない
 *1で、安倍首相が、「根拠のない風評に対して国として全力を挙げて対応する」と述べられたそうだが、「被曝で鼻血を出した」という事実は、*3に書かれているように、参議院東日本大震災復興特別委員会等で参議院議員(宍戸隆子議員、熊谷大議員、山谷えり子議員、森まさこ議員)が質問しており、根拠のない風評ではない。当時は、民主党政権だったため、自民党議員が積極的に質問しているが、政権側になったら態度を変えるのではおかしい。

 また、*2には、福島で50年以上、米作りに励む太田さん(72)が、「福島は危ないと言われると、何のために苦労して米作りしているのかと情けなくなる」と言ったこと等が書かれているが、これはまさに、*4に書かれている「原発事故の実害を風評被害にすり替え、加害者に責任を負わせず被害者同士を分断する行為」である。

 そもそも、「風評被害」とは「根拠のない噂のために受ける被害」だが、「被曝で鼻血を出した」等は事実であり、消費者が「食の安心・安全」を重視し、内部被曝を警戒して原発立地周辺地域の農林水産物を避けたり、わざわざそこに観光に行ったりしないのは、基本的人権の行使だ。それによって起こる農林水産業・観光業の被害は、「風評被害」ではなく原発事故による「実害」であり、その責任は国と東京電力にある。そのため、被害者である農林水産業者・観光業者は救済される権利を有するが、補償する主体は消費者ではなく、国と東京電力でなければならない。

(2)水俣病のケースでも、同じことが起こった
 *2には、医療関係者の意見として、日本大学歯学部の野口邦和准教授の「被曝による鼻血が考えられるのは全身に500~1千ミリシーベルトを超える被曝をした場合」、東北大の細井義夫教授の「大量の被曝で鼻血が出るのは、血液を固める血小板が減るためで、その場合は歯茎などからも出血しやすくなる」等の意見が掲載されているが、いずれも外部被曝しか考慮していない。私は、岡山大の津田敏秀教授(疫学)の「因果関係がないという証明がない以上、被曝による鼻血はありうる」というのが本当に科学的な姿勢であり、因果関係はあるに違いないと思っている。

 なお、水俣病のケースでも、最初に原因究明のきっかけを作ったのは疫学調査であり、疫学調査によって目星をつけた後に原因物質(有機水銀)を特定したが、国とチッソは長くそれを認めず、被害者の救済も限定的で時間がかかった。この顛末は、多くの人の記憶に新しいだろうから、まず、自らの身は自ら守るという意識が不可欠である。

(3)憲法では、虚偽や名誉棄損などの不法行為でない限り、「言論の自由」や「表現の自由」が保障されているが、どこが虚偽や不法行為だったのか?
 *1のように、小学館の編集部は、12日発売号のゲラ(校正刷り)を、発売11日前に環境省にメールで送っていたそうだ。確認をするのは自由だと思うが、「多くの方々が不快な思いをしたことについて編集長として責任を痛感」「ご批判、お叱りは真摯に受け止め、表現のあり方について今一度見直していく」というのは、かえってわからない。このようなケースで、行きすぎた自主規制が始まらないことを望みたい。

*1:http://digital.asahi.com/articles/DA3S11141650.html (朝日新聞 2014年5月18日) (時時刻刻)美味しんぼ、苦い後味 編集部見解「表現のあり方見直す」
 「表現のあり方について今一度見直します」―。人気漫画「美味しんぼ」(小学館)の東京電力福島第一原発事故の描写をめぐり、週刊ビッグコミックスピリッツ編集部は19日発売号で見解を示す。鼻血と被曝を関連づけた描写は、放射線リスクや表現の自由をめぐる議論に発展。地元にも波紋が広がっている。
■「被曝で鼻血」両論併記
 「根拠のない風評に対し、国として全力を挙げて対応する」。安倍晋三首相は17日、訪問先の福島市で記者団に述べた。「風評」とされる内容の一つに、被曝の影響とした鼻血の描写がある。同誌の特集では、放射線との因果関係について否定と肯定の双方の意見が掲載された。日本大学歯学部の野口邦和准教授(放射線防護学)は、被曝による鼻血が考えられるのは「全身に500~1千ミリシーベルトを超える被曝をした場合」とし、福島県民の被曝はそこまでではないとした。被曝の専門家には同様の意見が多い。東北大の細井義夫教授(放射線医学)によると、大量の被曝で鼻血が出るのは、血液を固める血小板が減るためで、その場合は歯茎などからも出血しやすくなるという。一方、岡山大の津田敏秀教授(疫学)は特集の中で「因果関係がないという証明はない」とし、被曝による鼻血はありうるとした。また、ストレスなどによって健康影響が生じるとする意見も複数あった。避難者らの相談会を開く小児科医の山田真氏は「不安の中で生きている人が、『放射線のせいじゃないか』と思うのも当然」と指摘。「低線量被曝の影響はわからないことが多い。将来のためにいろいろな症状を記録していく必要がある」と朝日新聞の取材に語った。いわき市の木田光一医師は「健康状態を被曝と被曝以外の影響に分けて考えるのは難しい。被曝との関係は問わず、医療支援を充実させるべきだ」と話す。
■「表現に国介入」不安も
 最新号で完結した「福島の真実」編は、作者の雁屋哲さんが福島県の人々を取材して描かれた。前半は福島の食の安全を訴え、風評被害を憂えた。後半は、なお続く現地での不安を取り上げながら、自主避難者への支援を訴えて終わる。今回の特集で、作家の玄侑宗久さんは、「登場する『四人の鼻血の一致』は信じますが、それだけで福島県全域を危険と見做(な)し、出て行くことも支援するという考え方は、福島の複雑な状況を更に混乱させるもの」と意見を寄せている。元・東電福島原発国会事故調査委員の蜂須賀礼子さんは、主人公の被曝量では鼻血は出ないとして、セリフのやりとりを「医師が放射線と鼻血とを故意に関連づけないようにしている印象を与えます」と記した。閣僚らからの懸念の声に対しては疑問の声もある。漫画文化にくわしい藤本由香里明治大教授は今回の騒動について、「地元からの抗議は当然だが、閣僚らが一斉に遺憾の意を示したことに不安を覚える。国が漫画表現に対して介入する余地を残したのでは」と話す。漫画によるルポ作品は珍しくなく、論の運びも突出してはいないという。ジャーナリストの佐々木俊尚さんは「科学的には、(低線量被曝による鼻血は)あり得ないという知見が積み重ねられている。だが、子供が鼻血を出す経験をしたお母さんは不安だ。社会は不安に思う人がいることを引き受けなければ。作品を『非科学的』と断罪しても不安は消えない。政府などは、不安を和らげる努力を延々と続けるべきだ」と話している。「美味しんぼ」は次号から一時休載に入る。小学館広報によると「以前から決まっていたこと」という。
■発売前、環境省にゲラ 編集部、被曝の影響質問
 編集部が12日発売号のゲラ(校正刷り)を、発売11日前に環境省にメールで送っていたことが同省への取材で分かった。環境省によると、1日に編集部から「被曝が原因で鼻血が出ることがあるか」といった質問が電話とメールであった。その際、12日発売号の全ページが添付されたメールも担当者に送られてきた。同省は「こちらは求めていない。具体的な内容の訂正要求もしていない」としている。7日深夜にメールで回答したという。環境省は「他省庁にも関係する」として、復興庁や内閣府などに12日発売号の内容や編集部の質問内容を伝えたが、ゲラは「未発表の内容」として転送しなかったとしている。また、12日発売号には「大阪府と大阪市が受け入れたがれき処理で焼却場周辺住民が健康被害を訴えている」という内容もあり、環境省は2日に府と市に伝えた。府市は8日、編集部に内容を見せるよう要求。9日に訂正と削除を申し入れ、発売日の12日に抗議した。小学館広報室は「関係者の声を集めた『特集』を組むために関係各所に送った。環境省もそのうちの一つ。12日発売号が出た段階で送ったら、19日発売号の編集作業に間に合わない。検閲ということではない」としている。
■福島、反応は様々
 福島県内の反応は様々だ。福島市の旅館で働く男性(60)は「あれを読めば福島の温泉に行こうと思わなくなる」と影響を心配。県漁業協同組合連合会の野崎哲会長も「福島で生計を立てる我々はどうすればいいのか」と憤る。一方、批判に走る国や自治体に違和感を訴える人も。福島県いわき市で子育て中の女性(45)は「行政は『大丈夫だ』と説得するばかり。それに反することを言うと邪魔だと言われる状況が悲しい」。飯舘村の菅野典雄村長は「ちょっと衝撃的だったが、日本全体で勉強する機会になれば」と話す。
    ◇
 19日発売号に掲載される「編集部の見解」の骨子は以下の通り。
 ◆多くの方々が不快な思いをしたことについて編集長として責任を痛感
 ◆残留放射性物質や低線量被曝の影響についての議論や報道が激減しているなか、あらためて
   問題提起をしたいという思いもあった
 ◆ご批判、お叱りは真摯に受け止め、表現のあり方について今一度見直していく
   ◇
 誌面では「見解」のほかに、有識者13人による賛否の意見や自治体からの抗議文を紹介する特集も掲載している。

*2:http://qbiz.jp/article/37955/1/ (西日本新聞 2014年5月18日) 
美味しんぼ・鼻血描写 「健康事故前と変わらず」 福島県民「行政の情報に不信」
 週刊ビッグコミックスピリッツ(小学館)の漫画「美味(おい)しんぼ」で、登場人物が東京電力福島第1原発訪問後に鼻血を出す場面や、「福島に住んではいけない」などの発言に、福島県や閣僚から批判が相次ぐ。原作者の雁屋哲氏はブログで「真実には目をつぶり、都合の良いうそを書けというのだろうか」と真っ向から反論するが、小学館は19日発売の最新号で「批判を真摯(しんし)に受け止め、表現のあり方について見直す」との見解を掲載する。風評被害を助長する行き過ぎた表現か、真実の告発か−。この問題をどう受け止めればいいのか、福島で考えた。第1原発から北へ約30キロの相馬市赤木地区。一面に広がる水田は田植えの最盛期だ。この地で50年以上、米作りに励む太田定身さん(72)は、美味しんぼに憤りを覚えた一人だ。「福島は危ないと言われると、何のために苦労して米作りしているのかと情けなくなる」。米は全て検査した上で出荷しているが、「今でさえ風評被害がひどいのに、さらにその傾向が強まる」と心配する。さらに原発に近い南相馬市で農業を営む米倉一二さん(61)も「事故前と同じ生活をしている。健康面も以前と変わりない」と戸惑う。漫画では、第1原発がある双葉町の井戸川克隆前町長が「福島に鼻血が出る人や、ひどい疲労感で苦しむ人が大勢いるのは被ばくしたからですよ」と発言する。しかし、両市や福島市内で10人以上に話を聞いたが、事故後に鼻血の症状が出たという人はいなかった。福島県も「鼻血が出る人が増えているという情報は把握していない」(県民健康調査課)。福島市内の医療関係者も「医療現場でそういう話は聞いたことがない」と否定した。風評被害対策を担当する県広報課の吾妻嘉博主幹は「原作者にはいろんな人の意見を取材してほしかった」と語る。
   §    §
 一方で、国や県が放射線被害について「安全だ」とPRすることに、県民は複雑な感情を抱く。国が、震災直後の放射線量のデータを震災から10日以上たってようやく公表したことなどが今も影を落としている。放射線量が高い飯舘村から福島市に避難を余儀なくされている女性(57)は漫画に憤りながらも、「原発事故に関して行政が出す情報にははっきり言って不信感がある」と言い切る。「私はほぼ毎日鼻血が出る。この事実が被ばくと関係ないと立証できるのか」。双葉町の井戸川前町長は自身の体験を訴えた。同町から埼玉県加須市に避難した60代の女性は「井戸川さんは誰よりも放射線の被害について勉強している。うそを言っているとは思わない」と支持する。福島市で花店を営む女性(56)は訴えた。「福島に住む以上、福島産の農産物を食べても健康被害はないと信じるしかない。その覚悟がないと暮らしていけない。それが福島の真実なのよ」

*3:http://takedanet.com/2014/05/post_ae67.html 
(武田邦彦 平成26年5月16日) 自治体の首長は国会議員が怖い?・・・鼻血の記録
 福島県知事、大阪市長などが「美味しんぼ」に被ばくによる鼻血のことが書いてあるということで、猛烈に抗議をしましたが、下の資料の通り、原発事故の後、多くの鼻血がみられるということが国会で4人の議員が質問しています。その時に自治体の首長(福島県など)は異議を申し立てていません。(中略)マスコミも報道する場合、「首長だから」というのではなく、もちろん国会での発言は聞いているのですから、放送や記事を書くときに「被曝と鼻血のことはすでに国会で4人の議員が追及している」とか、そのことに関する取材をして放送法第4条の規定を守らなければならないと思います。NHKも殿様ではないのです。法律に基づいた放送をしなければ受信料は払うことができません。また私へのバッシングも来ましたが、ネットでも「自由に発言できる」という権利とともに、「ウソを言ってはいけない」という義務もあります。ネットでの発言も良く事実を調べて発言しなければならないのは当然です。特に匿名と言う権利をさらに使う場合は、名前を出して発言するより高い道徳が必要とされます。
<資料>
●参議院・東日本大震災復興特別委員会8号(平成23年12月02日)
宍戸隆子議員
 北海道に避難している方たちといろいろ話をしまして、その中で、例えば鼻血なんですけれども、そういうような症状を訴えていたお子さんが非常に多かったです。国は安全だと言う。これぐらいの低線量では身体的な影響は出ないと言います。私も初めはそう思っていました。自分の娘も鼻血を出したりしたんですが、それでもそれを被曝のせいだと私は初め考えておりませんでしたし、今でも疑っているのも事実です。目の前で今まで出したことのないような鼻血を出している子供たちがいたら、皆さんどうしますか。偉い学者さんがどんなに安全だと言っても今起きているその事象を優先しませんか。本当に、お手元に資料配られていると思うんですが、みんな目の前で起こったことを、それを見て避難を決めている方もたくさんいらっしゃいます。
●参議員予算委員会8号 (平成24年03月14日)
熊谷大議員(自民党)
 ある小学校の、県南の小学校の保健便りです。四月から七月二十二日現在の保健室利用状況では、内科的症状で延べ人数四百六十九名。内科的症状では、頭痛、腹痛、鼻出血、これ鼻血ですね、順に多くということ、これ結果で出ているんですね。
●参議員文教科学委員会3号(平成24年03月22日)
熊谷大議員(自民党)
 四月から七月二十日現在の保健室利用状況では、内科的症状で延べ人数四百六十九名が利用しました。内科的症状では、頭痛、腹痛、鼻出血の順に多く、鼻出血というのはこれ鼻血のことですね、外科症状では擦り傷、打撲、虫刺されが順に多かったということで書いてありますが、平野大臣、この事実もう一度、どのようにお考えになりますでしょうか。
●参議員憲法審査会4号(平成24年04月25日)
山谷えり子議員(自民党)
 井戸川町長が雑誌のインタビューでこんなことを言っていらっしゃいます。
放射能のために学校も病院も職場も全て奪われて崩壊しているのです。私は脱毛していますし、毎日鼻血が出ています。この前、東京のある病院に被曝しているので血液検査をしてもらえますかとお願いしたら、いや、調べられないと断られましたよ。我々は被曝までさせられているが、その対策もないし、明確な検査もないという。本当に重い発言だと思います。フランスの原発関係のジャーナリストに聞きましたら、こんなに情報公開がなくて、しかもいろいろな、沃素剤一つ取っても国、県の指示があって初めて服用できるというような、非常に不十分なままほったらかされていたと、この十三条と二十五条、幸福追求権と生存権が妨げられているのではないか。
●参議員東日本大震災復興特別委員会8号(平成24年06月14日)
森まさこ議員(自民党)
 例えば、具体的にこんな心配の声をお寄せいただいています。子どもが鼻血を出した、これは被ばくによる影響じゃないかと心配なんだけれども、それを診察してもらった、検査してもらった、そのお金はどうなるんですかということです。
(国会の記録は読者からご提供いただいたものです)

*4:http://uekusak.cocolog-nifty.com/blog/2014/05/post-9431.html
(植草一秀の『知られざる真実』 2014年5月17)  原発事故実害を「風評被害」にすり替える工作
 「風評被害」の意味を「goo辞書」は次のように記述する。「http://dictionary.goo.ne.jp/leaf/jn2/190458/m0u/」根拠のない噂のために受ける被害。特に、事件や事故が発生した際、不適切な報道がなされたために、本来は無関係であるはずの人々や団体までもが損害を受けること。例えば、ある会社の食品が原因で食中毒が発生した場合、その食品そのものが危険であるかのような報道のために、他社の売れ行きにも影響が及ぶことなど。
 『美味しんぼ』が休載になる。言論弾圧の色彩が濃厚である。「福島で鼻血が出た」との描写、作中に登場する井戸川克隆元双葉町長が、「福島に鼻血が出たり、ひどい疲労感で苦しむ人が大勢いるのは、被曝(ひばく)したからですよ」と語る場面が描写された。この描写に対して激しい攻撃が展開され、国や福島県が「風評被害」を引き起こすとして批判した。この攻撃を受けての休載発表である。出版社が権力の圧力に屈したというなら、言論活動を行う資格はないというべきである。福島県双葉町の元町長である井戸川克隆氏は、騒動が起きてから取材に対しても、正々堂々と持論を展開している。発言の正当性を強く訴えている。
 『美味しんぼ』原作者の雁屋哲氏は自身のブログに、「私は自分が福島を2年かけて取材をして、しっかりとすくい取った真実をありのままに書くことがどうして批判されなければならないのか分からない。真実には目をつぶり、誰かさんたちに都合の良い嘘を書けというのだろうか。「福島は安全」「福島は大丈夫」「福島の復興は前進している」などと書けばみんな喜んだのかも知れない。今度の「美味しんぼ」の副題は「福島の真実」である。私は真実しか書けない。」「今の日本の社会は「自分たちに不都合な真実を嫌い」「心地の良い嘘を求める」空気に包まれている。」と記述した。『福島の真実』は、23、24まで続くとあり、5月19日発売号が24にあたるから、予定通り発行を続けて、一段落したところで休載となるということなら当初の予定通りなのかも知れない。しかし、民間人の真摯な言論活動に対して、国家権力、公権力が圧力をかけて、その情報発信を封じようとし、出版社がその圧力に屈して休載を決定したということなら出版社の姿勢が糾弾されるべきである。根拠のないこと、ウソ、でっち上げた情報を流布して、人に迷惑をかけたのなら、その行為は糾弾されるべきだ。
 しかし、「鼻血が出た」「疲労した」「鼻血を出す人が多数いる」との発言があったことは事実であり、捏造でもでっち上げでもない。井戸川氏は鼻血が出ることをネット上でも写真入りで伝えており、ウソを言っているとは思われない。政府や福島県は現在の原発周辺の放射能汚染の現状を「安全だ」としているが、反論を唱える者は専門家のなかにも少なくない。低線量被ばくの健康への影響についても見解は割れている。「安全だ」とする見解だけを流布させて、「危険だ」とする見解を流布させないというのは、言論弾圧であり、人権尊重、民主主義の大原則に反するものだ。
 消費者が放射線による内部被ばくを警戒して、原発立地周辺地域産出の農林水産物を忌避する行動を取ることは、基本的人権の正当な行使である。これを「風評被害」とは言わない。「消費者主権」に属する行為である。消費者が「食の安心・安全」を重視して、原発立地周辺地域産の農林水産物を忌避すれば、当該地域の農林水産業者は被害を受ける。これは「風評被害」ではなく、原発事故による「実害」である。農林水産業者に罪はなく、罪があるのは国と東京電力である。被害者である農林水産業者は救済される権利を有する。その補償を行うべき主体は、消費者ではなく国と東京電力なのである。「風評被害」という言葉は、農林水産業者、あるいは観光事業従事者が被害者で、消費者が加害者とする図式をもたらす言い回しだが、これは、「責任のすり替え」なのだ。国と東京電力が負うべき損害賠償責任を消滅させるために、原発周辺地域を忌避する消費者が悪者であるとの「責任転嫁」を目論む表現なのだ。

| 内部被曝・低線量被曝::2014.4~ | 04:50 PM | comments (x) | trackback (x) |

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