■CALENDAR■
  1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30     
<<前月 2024年04月 次月>>
■NEW ENTRIES■
■CATEGORIES■
■ARCHIVES■
■OTHER■
左のCATEGORIES欄の該当部分をクリックすると、カテゴリー毎に、広津もと子の見解を見ることができます。また、ARCHIVESの見たい月をクリックすると、その月のカレンダーが一番上に出てきますので、その日付をクリックすると、見たい日の記録が出てきます。ただし、投稿のなかった日付は、クリックすることができないようになっています。

2014.10.6 再生可能エネルギーと原発の比較 – 高レベル放射性廃棄物の処分とその危険性を中心として (2014/10/6、9に追加あり)
    
   *2より       *3-4より     *3-3より   *3-1より    

(1)電源構成比率は、自由主義経済では人為的に決めるべきではない
 *1-1に書かれているように、4月に閣議決定された政府の「エネルギー基本計画」で、原発は「重要なベースロード電源」と位置づけられ、小渕経産相は「欠点のないエネルギーはないため、将来の電源構成比率をできるだけ早期に設定したい」とたびたび答弁しているが、初動時のインフラとして送電線を整え終えれば、その後はどれかの電源に多額の補助金をつけて推進するのは不公正であると同時に、よりよいものを残していくための市場を失敗させることになる。そのため、環境の見地から公害を出さないエネルギーに補助し、公害を出すエネルギーからは税金を取って、外部不経済を内部化すること以外は、本来、政府がやるべきではない。

(2)火山群近くにある川内原発が安全だとするのは、科学的に無理がある
      
日本の火山と温泉 日本の活火山  プレートと火山   火山ができる仕組み
(火山は、プレートに押されて上がってくるマグマによるため、東日本大震災前後に活発化したようだ)

 *1-2に書かれているとおり、火山は、いつ、どこで、どんな噴火を起こすか分からないにもかかわらず、巨大噴火は予知できるとして火山群の近くにある川内原発を再稼働するのは、新規制基準を通っていても危険だ。「万が一事故が起きた場合は関係法令に基づき、政府が責任を持って対処する」と言っても、個人的に責任をとる人はいないため、結局は国民への付けになる。

 また、原発の専門家を中心とする原子力規制委員会は、御嶽の噴火後、「巨大噴火は平均9万年に一度。今回より大規模な噴火に遭っても原発に影響はない。噴火の予兆は監視しており対処できる」との考えを示しているが、火山の専門家は「巨大噴火の予知は今の研究レベルでは不可能」としており、「巨大噴火は平均9万年に一度」という根拠もない。現に、新燃岳、桜島、阿蘇山は、噴火し続けている。

 このような中、*1-3のように、原子力規制委員会の田中委員長が、「規制基準は安全を守る最低レベル。安全性向上は事業者が自らの責任で取り組む必要があり、その考えを共有したい」として原発の安全対策について電力会社トップの心構えを確認する意見交換会を行うとのことだ。原子力規制庁は「意見交換は審査とは直接関係ない」と位置付けているが、九電の川内原発1、2号機は再稼働の前提となる審査が最終段階に入っており、瓜生社長の発言が注目される。そして、ここでの火山対策と関連する「保安規定」に関する開示は、注目に値する。

(3)再生可能エネルギーと原発は、同じくらいの欠点がある電源なのか
 *1-1で、小渕経産相は、経産省が準備した原稿どおりの答弁で、「欠点のないエネルギーはないため、バランスが大切」と繰り返し、「将来の原発依存度を決める必要があるが、いまの段階で何%かを示すことはできない」としている。しかし、100%国産で燃料費がかからず公害も出ない再生可能エネルギーと、このブログの2014.10.3の(1)にも記載しているとおり、事故を起こせば大変な環境汚染を起こす原発が、同じくらいの欠点があるとは言えない。そのため、それぞれの欠点を列挙し、ありうる解決法を示した上で、環境負荷や財政負担の大きすぎるエネルギーは除外するのが当たり前である。

 なお、2014.10.3付のこのブログの*2-1に記載されているとおり、原発を再稼働させたい電力会社は、「太陽光発電は天候によって発電量が大きく左右され、受給バランスが崩れると大規模停電が起きる可能性がある」と繰り返し、小渕経産相も、答弁でそれを何度も繰り返した。しかし、*2のように、気象衛星で太陽光量を把握して発電量・太陽熱利用・農作物の収穫量の予測を可能にする方法を東大が開発しており、欧米では、日射量や風量などの気象予測を利用して問題を克服し、国内の総発電量の50%以上を再生可能エネルギーが占めても安定供給に問題は起きていないのだ。

 つまり、政治家がやるべきことは、電力会社や行政が言いたてるネックをオウム返しに繰り返すことではなく、よりよい解決策を政策にすることなのである。

(4)高レベル放射性廃棄物の処分について
 *3-1に書かれているとおり、九電川内原発1、2号機(鹿児島県薩摩川内市)の再稼働の前提となる原子力規制委員会の審査が最終盤に入り、9日から地元説明会が始まるそうだが、再稼働させればまた増える高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の処分問題は解決のめどがまったく立っていない。

 これに対して、経済産業省の地層処分技術ワーキンググループが、処分場の選定をめぐって避けるべき条件を「①火山から15キロ以内」「②過去10万年の隆起量が300メートル超」とまとめたが、とてもそれで十分とは思えないため検証が必要である。さらに、*3-2に書かれているように、原発を使った分だけ生じる高レベル放射性廃棄物は、10万年程度は閉じ込めておく必要があるが、その処分地選びは行き詰まっているのだ。

 そのため、*3-2のように、学術会議の報告書は、「地上施設で30年間暫定保管し、それは各電力会社の管内ごとに設けることを議論の出発点にするのが望ましい」としたそうだが、地上の場合は、地震・津波などの自然災害だけでなく、テロや戦争による攻撃についても原発と同様の考慮が求められる。また、空冷ではむき出しで保管することになるため、周囲への放射能の影響をどうするのか、まず明確にすべきだ。

 また、*3-3のように、国内の原発では行き場のない使用済核燃料が溜まり続け、電力各社は主に原発建屋内の水を張ったプールに一時貯蔵しているが、日本原子力発電を含む電力会社10社の貯蔵容量2万810トンに対し、貯蔵量は1万4330トンと7割近くに達している。九電玄海原発の場合は、既に8割以上埋まっており、ここに対する災害やテロ・戦争による攻撃があれば西日本は壊滅する。そして、これを、特定秘密にすれば解決する問題だと考えるのは論外であり、使用済核燃料の問題は地下300メートル以上の地下水の来ない最終処分場に処分しなければ解決しないのだ。

 なお、*3-4、*3-5に書かれているとおり、使用済核燃料のプールでの保管は、不測の事態に対して非常に弱く甚大な放射線被害が起きる危険性が高いことが福島第一原発事故で浮き彫りになった。また、政府は、「核燃料サイクル事業」で原発燃料として再利用することを前提としていたが、それも、実際には高速増殖炉「もんじゅ」と「プルサーマル計画」で、技術面及び採算面で行き詰まっている。

(5)中間貯蔵の安全性について
 *4-1のように、福島県内汚染土壌を中間貯蔵する法案が閣議決定され、その内容は「①同施設の安全確保など国の責務を明記」「②使用開始後30年以内に県外での最終処分を完了させる」との内容だそうだが、中間貯蔵施設の構造で①の安全確保は守られるのか、最も危険な時期の最初30年を中間貯蔵して30年以内に県外で最終処分する②は合理的か について、国会は十分に検討すべきだ。

 *4-2に書かれているように、保管する土壌は放射性セシウム濃度に応じて、1型、2型、それ以上という分類があるそうで、内容は以下の通りだが、これではとても安全とは言えず、どこが駄目かは、私は既にこのブログで記載している。
1)1型:放射性セシウム濃度が1キログラムあたり8000ベクレル以下
  放射性物質の濃度が比較的低く、地下水を汚染する恐れがないため、低地に埋める。汚染土を
 埋めた後、上面に汚染されていない土で覆うことによって放射性物質が外に飛び散る外部被曝を
 防ぐ。草木などの可燃物は減容化施設で焼却して灰にして量を減らす。
2)2型:放射性セシウム濃度が1キログラムあたり、8000ベクレル以上、10万ベクレル以下
  底面に遮水シートや水を通しにくい地層などを備えて丘陵地や台地に置く。雨水などは排水管を
 通じて水処理施設に集め、放射性物質を取り除いてから河川に放出する。汚染土を埋めた後、
 上面に汚染されていない土で覆うことによって放射性物質が外に飛び散る外部被曝を防ぐ。草木
 などの可燃物は減容化施設で焼却して灰にして量を減らす。
3)放射性セシウム濃度が1キログラムあたり10万ベクレルを超えるもの
  専用のドラム缶に入れ、鉄筋コンクリート構造等の遮蔽効果がある廃棄物貯蔵施設で保管する。

(6)女性大臣にのみ女性目線の素晴らしいアイデアや信念を求めるのも女性の昇進差別に繋がる
 女性初の経産相となった小渕氏は、「何が女性目線、男性目線なのかわからない」と答えるなど“気負いがない”そうだが、この原発政策や放射性廃棄物の処分政策に賛同しているのであれば、周囲の空気に合わせているだけであるため、特に女性目線の主張はしておらず、経産省という男社会で作られた政策をしゃべっているだけである。

 そのため、周囲の人から見れば抵抗がないためやりやすく、それが経産相に抜擢された理由だろうが、男性にもそのような人は多いため、女性大臣にのみ女性目線の素晴らしいアイデアや信念の貫徹を求めると、女性にだけ高いハードルを課すことになり、女性の昇進差別に繋がる。本当は、政治家が行政の書いたシナリオに沿ってしか政策を語れないのが、日本の民主主義にとって致命的なのである。

<電源構成について>
*1-1:http://jp.reuters.com/article/domesticJPNews/idJPKBN0GZ16520140904?pageNumber=1&virtualBrandChannel=0 (ロイター 2014年 9月 4日) 将来の原発依存度、「できるだけ早期に設定したい」=小渕経産相
 4月に閣議決定した政府の「エネルギー基本計画」では、原発について「重要なベースロード電源」と位置づける一方で、「可能な限り依存度を低減させる」としており、矛盾した内容との批判がある。小渕氏は、将来の原発依存度は3割を下回る水準が基本方針かとの質問に対して、「30%を切るのか切らないのか、いまの段階で何%かを示すことほはできない」と述べた。
<初の女性経産相、原子力で試される力量>
 第2次安倍改造内閣の最年少閣僚で、女性初の経産相となった小渕氏。内閣改造で話題となった女性の積極登用について聞かれると、「何が女性目線、男性目線なのかわからない」と答えるなど、気負いはみせない。とはいえ、課題の先送りを長年続けたことで、東京電力福島第1原発で最悪の事故を招く温床となった原子力政策にメスを入れ、質的向上に本気で取り組むことは、老練なベテラン政治家にも容易ではない。特に、原発から出る放射性廃棄物の最終処分場のめどが立っていない実態は、長年、「トイレなきマンション」と揶揄され、原子力政策の先送り体質の象徴だ。小渕経産相は、最終処分場の確保について、「いまの時代を生きる世代の責任として解決していかなければいけない課題。国が主体的にかかわる」と述べた。原子力賠償制度の見直しについても、「国の責任のあり方については、関係省庁が参加して原子力賠償制度の見直しに関する副大臣等の会議で検討がされている」と語った。最終処分場と賠償制度の見直しに関する小渕氏の言及は、すでに政府が方向性としては示している内容にとどまる。これらの課題をどう具体化させるのか。小渕経産相の在任中の課題となりそうだ。

*1-2:http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2014100602000139.html (東京新聞 2014年10月6日) 原発再稼働 御嶽噴火は新たな教訓
 火山は、いつ、どこで、どんな噴火を起こすか分からない-。御嶽山は教えている。巨大噴火は予知できると、火山群近くにある川内原発の再稼働を急ぐのは、科学的に正しいことなのだろうか。九州電力川内原発が新たな規制基準に「適合」と判断された後、地元の薩摩川内市長と鹿児島県知事は、政府から経済産業相名の文書をそれぞれ受け取った。「万が一事故が起きた場合は関係法令に基づき、政府が責任を持って対処する-」。だが、どのような事故を想定し、具体的に何ができるのかは定かでない。むろん原発事故は、電力会社や自治体の手に負えるものではない。だが、政府の力も到底及ばないことを福島の事故は教えている。原状回復や補償はおろか、後始末さえままならない。原発事故の責任を負える者など、この世には存在しない。万が一にも、あってはならない事故なのである。川内原発再稼働のハードルは、地元合意を残すのみだとされている。周辺住民へ安心をアピールするためとしか思えない。ところが地元や周辺住民は、白煙を上げる御嶽山と、噴火被害の甚大さを知って、新たな不安を募らせているのではないか。川内原発は火山の群れの中にある。九電も原発の半径百六十キロ以内に、将来、噴火活動の可能性が否定できない火山が十四あると認めている。原子力規制委員会は御嶽の噴火後も「巨大噴火は平均九万年に一度。今回より大規模な噴火に遭っても原発に影響はない。噴火の予兆は監視しており、対処はできる」との考えを変えてはいない。「巨大噴火の予知は今の研究レベルでは不可能」とする火山噴火予知連絡会の見解と食い違う。かつて御嶽は活動を終えた死火山と考えられていた。有史以来の噴火が起きたのは一九七九年。つい最近と言っていい。今回も新しいタイプの水蒸気爆発という。三年前に噴火した霧島連山・新燃岳の場合、前兆はあったが正確には予知できなかった。地震同様、火山や噴火の正体を、科学はまだまだとらえてはいない。安倍晋三首相は先日の所信表明で「(規制委の)科学的・技術的な判断を尊重し再稼働を進めます」と、原発回帰を宣言した。規制委の判定は十分科学的だと言えるのか。川内原発の適合をより多くの見地から見直す方が、科学的だと言えるのではないか。

*1-3:http://qbiz.jp/article/47170/1/
(西日本新聞 2014年10月5日) 九電社長の心構えを確認 規制委、29日にも意見交換会
 原子力規制委員会が、原発の安全対策について電力会社トップの心構えを確認する意見交換会の第1弾として、29日にも九州電力の瓜生道明社長を招く方針を固めた。九電の川内原発1、2号機(鹿児島県薩摩川内市)は再稼働の前提となる審査が最終盤に入っており、瓜生社長の発言が注目される。規制委は8月、意見交換会を今秋から順次実施する方針を決定。田中俊一委員長は「規制基準は安全を守る最低レベル。安全性向上は事業者が自らの責任で取り組む必要があり、その考えを共有したい」と、その狙いを説明していた。川内原発は、原発の基本的な設計方針や安全対策を記した「設置変更」の申請書が9月に承認されるなど、全国の原発で最も審査が進んでいる。意見交換は「審査とは直接関係ない」(原子力規制庁)位置付けだが、火山対策と関連のある「保安規定」や機器の耐震設計を記した「工事計画」が残っており、今後の審査に影響を及ぼす可能性もある。意見交換には規制委の委員5人が参加。九電からは瓜生社長のほか、原子力担当の山元春義副社長が出席する見通しだ。

<再生可能エネルギー>
*2:http://qbiz.jp/article/47183/1/
(西日本新聞 2014年10月6日) 気象衛星で太陽光量把握 東大開発 発電量の予測可能に
 気象衛星「ひまわり」の観測データから、雲やちりによる太陽光の反射、散乱を想定し、地上に届く太陽光の量を高い精度で把握する技術を、東京大学大気海洋研究所の中島映至教授らのチームが5日までに開発した。天候に左右されやすい太陽光発電を大規模に導入する場合に不可欠とされる発電量の予測に活用できる技術で、電力の安定供給に役立つ可能性がある。同研究所の竹中栄晶特任研究員は、ひまわりのデータから太陽光の反射や散乱の影響を分析し、日本や周辺の地上や海に届く太陽光の量を、1キロ四方ごとに短時間で計算するモデルを開発した。千葉県の太陽光発電施設で、モデルによる推定発電量と実際の発電量がほぼ一致すると確かめた。太陽熱利用や農作物の収穫量の予測に関する実証実験も進めている。また雲の動きや、太陽光の量の変化を分析することによって、6時間程度先の発電量の予測が可能になると見込めるという。太陽光発電は固定価格買い取り制度の導入によって国内で急増。安定供給に支障があるなどとして、電力買い取り中断を発表する電力会社が相次いだ。だが発電量の変化が予測できれば、火力発電の運用を小刻みに変えるなどし、太陽エネルギーを最大限利用することができるとみられる。7日に打ち上げ予定のひまわり8号による観測が始まると、データの更新間隔が短くなり予測精度が増すという。チームは「電力の分野でも気象情報を活用する時代だ。結果的に化石燃料代を減らし、二酸化炭素排出量の削減にも役立つだろう」としている。
●欧米活用 再生エネ拡大
 再生可能エネルギーを利用した発電は天候により出力が変動しやすく、電力供給網への大量導入は難しいとの指摘がある。だが欧米では、日射量や風量などの気象の予測を利用して問題を克服しており、国内でも積極的な活用を求める声が強まっている。世界自然保護基金(WWF)ジャパンなどによると、再生可能エネルギー導入の先進国のドイツやスペインでは、短時間とはいえ、国内の総発電量の50%以上を再生可能エネルギーが占めることがあるが、安定供給に問題は起きていない。気象情報を活用し、発電量の変動をかなり正確に予測しているためで、再生可能エネルギーによる電力が不足すると見込まれる場合は、火力発電を準備して補うといった運用をしているという。仮に供給能力が需要量を上回ったとしても、今回、東京大のチームが開発したような太陽光発電量を把握するシステムを活用すれば、いつ、どの程度の電力が供給過剰になるかを予測し、一時的に太陽光発電を電力供給網から切り離すといった方法で対応できる可能性がある。

<放射性廃棄物の処分について>
*3-1:http://qbiz.jp/article/47202/1/
(西日本新聞 2014年10月6日) 「核のごみ」現状と課題は 最終処分場
 九州電力川内原発1、2号機(鹿児島県薩摩川内市)の再稼働の前提となる原子力規制委員会の審査が最終盤に入り、9日からは地元説明会も始まる。審査がすべて終了し、地元同意が得られれば政府は再稼働させる方針だ。東京電力福島第1原発事故を踏まえて策定された新規制基準下では初となるが、高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の処分問題は解決のめどがまったく立っていない。「トイレのないマンション」と批判される原発の課題を検証する。 
◆最終処分場
 核のごみの最終処分関係閣僚会議が昨年12月、処分場探しの「前面に立つ」との方針を掲げてから9カ月半たったいまも、国は具体的な選定方法を示せずにいる。同会議は9月末に開いた会合で、有識者の作業部会によってさらなる選定条件の検討に入ることを確認したが、「いつまでにまとまるかは、議論次第」(資源エネルギー庁)という状況で、見通しは立っていない。「政治の責任として、処分地選定を最大限前進させるべく一丸となって取り組んでほしい」。9月30日、首相官邸で開かれた関係閣僚会議の第2回会合。冒頭にあいさつした菅義偉官房長官の言葉には、川内原発の再稼働が迫りながら、核のごみ対策が進んでいない現実への危機感がにじんでいた。処分場の選定をめぐっては、経済産業省の地層処分技術ワーキンググループが今年5月までに避けるべき条件を議論。「火山から15キロ以内」「過去10万年の隆起量が300メートル超」などの条件をまとめた。それに沿う適地は実に国土の7割に及ぶ。このため、国は、核のごみの輸送ルートや人口密度、現在の土地利用の状況など新たな条件を早急に設定。有望地を数カ所に絞り込んで、選ばれた地域に対して処分場建設の検討を申し入れたい考えだ。作業部会は今月中にも検討作業に入る。ワーキンググループの委員長を務めた原子力安全研究協会の杤山(とちやま)修氏(処分システム安全研究所長)は「絞り込みの過程で不公平さを指摘されるなど、困難な作業になる」と懸念する。ただ、いつまでも悠長には構えていられない。使用済み核燃料を再処理する日本原燃(原燃)は、工場が立地する青森県と同県六ケ所村と「最長50年間の管理期間終了時点で(高レベル放射性廃棄物を)搬出する」とする協定を結んでいる。原燃は1995年に高レベル放射性廃棄物の受け入れを開始。期限(2045年)までは31年ある。ただ、核のごみの処分事業を担う原子力発電環境整備機構(NUMO)は、処分場建設に「調査開始から30年必要」としており、実は残された時間はほとんどない。原発を動かす上での最大の懸案をいつまでも決めきれない政府に六ケ所村幹部はこうくぎを刺す。「すぐにでも調査に入らないと処分場建設は間に合わない。協定の見直しは許されない」

*3-2:http://digital.asahi.com/articles/DA3S11367784.html (朝日新聞 2014年9月25日) 原発ごみ、宙に浮く提言 学術会議「最終処分見直し、暫定保管を」 政策反映めどなし
 原発を使った分だけ生じる高レベル放射性廃棄物。10万年程度は閉じ込めておく必要があるが、処分地選びは行き詰まっている。日本学術会議は2年前、従来の政策を白紙に戻して見直すよう提言。近く具体策をまとめた報告書を公表する。だが、提言が政策に反映される見通しは立っていない。これまでの政策方針や制度を原点に立ち返って考え直す――。2012年9月、学術会議は、原発から出る「核のごみ」をめぐる方針の大幅な方向転換を求める提言をまとめた。国は、使用済み核燃料で生じる高レベル放射性廃棄物は、地下300メートル以深に10万年程度閉じ込める「地層処分」の方針で、02年に最終処分場選びに向けた調査地の公募が始まった。しかし応募は広がらず、国の原子力委員会が10年、打開策を探るための検討を学術会議に依頼していた。提言は、翌年に起きた東京電力福島第一原発事故も踏まえてまとめられた。処分をめぐる科学や技術の限界を認め、原発のあり方も含めて広く国民が問題意識を共有する必要があると指摘。社会の合意が得られるまで処分を進めない「暫定保管」と、廃棄物を一定以上増やさない「総量管理」の考え方を打ち出した。
■地上施設で30年
 学術会議はその後、技術、社会の2分科会で具体化を検討。今夏、報告書案がほぼまとまった。暫定保管は地上施設で30年間。施設は最終処分地とは別に、各電力会社の管内ごとに設けることを議論の出発点にするのが望ましいとした。分科会は、最大300年までの期間と、地上施設と地下施設のメリット、デメリットを検討した。地上の場合は、地震や津波などの自然災害について原発と同様の考慮が求められる。保管が50年を大幅に超えると、建て替え工事や地元との協議も必要になる。一方、地下は最終処分に準ずる地盤や地質の確認が必要で、時間や費用が増える。その場所が最終処分場になる懸念が出て設置が進まないおそれもある。報告書案では、福島第一原発でも津波や地震の被害を免れた空冷式の地上施設を選んだ。期間を30年としたのは、将来に負担を先送りせず、原発を使ってきた現世代で責任を持って方向性を決めるためという。「現世代の責任を果たす観点で、全員が当事者として考え直さなければ」「事業主体は電力会社が適切。これまで原発が55基できたのは、良くも悪くも電力会社ががんばったからだ」。社会の分科会では、こんな意見が交わされた。各地に施設を設けるのも、現世代の責任と、廃棄物を生み出してきた電力会社の「発生者責任」を重視したためだ。さらに原発の再稼働は暫定保管施設の確保を条件にすべきだと踏み込み、中立的な委員会で合意形成を主導するよう提案する。「行き当たりばったりではなく、責任を持って考えるべきだ。倫理や負担の公平性の問題を考えないと、打開できない」(分科会委員長だった舩橋晴俊・法政大教授=8月死去)というのが報告書案の趣旨だ。
■政権は冷ややか
 だが、現実の政策に反映される見通しは立っていない。学術会議の提言後に政権が交代、原子力委員会も役割が変わった。安倍政権が今年4月に閣議決定した「エネルギー基本計画」も暫定保管に触れず、自民党小委員会による6月の提言も「これ以上、最終処分を先送りすべきではない」として暫定保管を否定した。暫定保管を数十年から数百年とした2年前の提言に比べて報告書案の期間は大幅に短く、経済産業省からも「そもそも30年では、現政策の使用済み燃料の中間貯蔵と変わらない」と冷ややかな声が出ている。

*3-3:http://qbiz.jp/article/47205/1/
(西日本新聞 2014年10月6日) 貯蔵率、玄海は8割超す 使用済み燃料
 国内の原発では、行き場のない使用済み核燃料がたまり続けている。電力各社は主に原発建屋内の水を張ったプールに一時貯蔵しているが、日本原子力発電を含む電力会社10社の貯蔵容量2万810トンに対し、貯蔵量は1万4330トンと7割近くに達する。九州電力玄海原発(佐賀県玄海町)のように既に8割以上埋まっている原発もある。国の見立てでは、使用済み核燃料は貯蔵プールで一定程度冷やした後、日本原燃の工場(青森県六ケ所村)に運んで再処理。取り出したウランとプルトニウムをMOX燃料として加工して、原発で再利用する。再処理の後に残る廃液はガラスと混ぜて固め、高レベル放射性廃棄物(核のごみ)として300メートル以下の地中に埋設する。いわゆる「核燃料サイクル」の流れだが、その鍵の一つである再処理工場が操業のめどが立たず、サイクルは回っていない。使用済み核燃料がたまり続けているのは、そのせいだ。原発が再稼働すれば、使用済み核燃料はまた増える。仮に玄海原発が再稼働した場合、約1年ごとの定期検査で使用済み核燃料は1基につき20トン前後発生する。満杯になれば原発に新たな核燃料を入れられず、運転を止めざるをえない。九電は急場をしのぐため、2010年に玄海原発3号機のプールの容量を2倍にする拡張工事を国に申請した。しかし、認可直前で東京電力福島第1原発事故が発生し、審査はストップしたままだ。電力各社は、使用済み核燃料を一時的に保管する「中間貯蔵施設」を新たに建設して、時間を稼ぐ作戦に出ようとしているが、これも抜本的な解決策とはいえない。

*3-4:http://digital.asahi.com/articles/DA3S11357420.html?_requesturl=articles%2FDA3S11357420.html&iref=comkiji_txt_end_s_kjid_DA3S11357420 (朝日新聞社説 2014年9月19日) 核燃サイクル 限界が迫っている
 現在、日本には使用済み核燃料が全国18カ所の原子力発電所などに保管されている。合計で1万7千トン、大半が使用済み燃料プールに入っている。プールでの保管は、災害やテロなど不測の事態に対しては非常に弱く、甚大な放射線被害が起きる危険が高い。福島第一原発の事故は、この問題も浮き彫りにした。ところが、使用済み燃料の保管や処分をめぐる論議は進んでいない。16日に開かれた経済産業省の原子力小委員会も「使用済み燃料問題」を議題に据えていたのに、議論は深まらなかった。なぜなのか。一番大きな原因は、政府が「核燃料サイクル事業」の継続方針を変えないことにある。確かに、この計画は使用済み燃料を全量、高速増殖炉や既存の原発の燃料として再利用することが前提なので、実現すればプール保管の問題は解消する。しかし、実際には高速増殖炉「もんじゅ」にしろ、既存原発で再処理した燃料を使う「プルサーマル計画」にしろ、技術面でも採算面でも行き詰まりは明白になっている。一方で震災後、内閣府の原子力委員会は、再処理より直接処分するほうが安上がりであるとの試算を示している。さらに、当面の間、使用済み燃料を安全な容器に入れて地上保管する「乾式貯蔵」についても、燃料プール保管の危険を回避する手段として有効なことが日本学術会議などで指摘されている。こうした処理方法を具体化するためには、現行の核燃サイクル事業の見直しに着手する必要がある。これまで再処理施設を受け入れてきた青森県との関係も見直しとなるが、そこに着手しないかぎり、プール保管の危うさは解決の糸口が見えてこない。現在、使用済み核燃料は財務上「資産」として扱われているが、廃棄物となれば「負債」として会計処理する必要がある。こうした課題を含めて、政府はまず、核燃サイクル事業の客観データを示して、政策転換を打ち出すべきだ。このまま原発再稼働が進めば、原発内のプールは一番早いところで、3年で容量の限界に達する(経産省試算)。さらに、16年には電力小売りが全面自由化され、規制料金制度の撤廃も予定されている。プルサーマル計画は、原発をもつ電力会社が財務的に支える形となっており、自由化の重荷になることは明らかだ。政府の持ち時間は限られている。

*3-5:http://qbiz.jp/article/47204/1/
(西日本新聞 2014年10月6日) トラブル連続、後引けず もんじゅ
 約1万点の機器の点検漏れが発覚し、昨年5月に原子力規制委員会から事実上の運転禁止命令が出された高速増殖炉原型炉「もんじゅ」(福井県敦賀市)。運転再開は見通せず、核燃料サイクルの中核という位置づけも揺らいでいる。もんじゅを運営する日本原子力研究開発機構は2014年度内の命令解除を目指し、今年11月に規制委に保安規定変更などを申請する予定。だが、運転禁止命令を解除する審査には先例がなく、「審査にどのくらい時間を要するか分からない」(原子力規制庁)のが現状だ。消費した以上の燃料を生み出すため「夢の原子炉」と言われたもんじゅだが、1994年の初臨界以降、ナトリウム漏れ事故などトラブルの連続だった。約1兆円の事業費を投じながら稼働はわずか250日。稼働しなくても維持管理費や人件費など約240億円が毎年かかっている。政府が今年4月に閣議決定したエネルギー基本計画では、高レベル放射性廃棄物の量を減らす「減容化」などの国際的な研究拠点化と位置づけられ存続を容認。運転再開も位置づけも不透明なままだが、もんじゅに代わる施設はなく、後に引けない状況になっている。

<中間貯蔵の安全性について>
*4-1:http://www.nikkei.com/article/DGXLASGG03002_T01C14A0EAF000/?n_cid=TPRN0006 (日経新聞 2014/10/3) 福島県内汚染土壌の中間貯蔵法案を閣議決定
 政府は3日、福島県内の汚染土壌を保管する中間貯蔵施設の関連法案を閣議決定した。同施設の安全確保など国の責務を明記したうえで、使用開始後30年以内に県外での最終処分を完了させるとの内容。政府は来年1月に施設の使用を始める計画で、今国会での成立を目指す。法案は、ポリ塩化ビフェニール(PCB)を無害化する処理施設を全国で運営する国の全額出資会社「日本環境安全事業」の関連法を改正する。社名を「中間貯蔵・環境安全事業」に変え、中間貯蔵施設の整備や運営管理を担う。同社の全株式を政府が保有するよう義務付ける。県外での最終処分の法制化は地元が受け入れ条件として求めている。望月義夫環境相は同日の閣議後の記者会見で「(県外処分を)法律で規定することで、しっかりとやっていく」と述べた。中間貯蔵施設の建設を巡っては、建設予定地の福島県大熊、双葉両町で「最終処分場になるのでは」との懸念が根強い。法制化で県外での最終処分を明確に打ち出す。

*4-2:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20140926&ng=DGKDASGG22H0Y_U4A920C1TJN000 (日経新聞 2014.9.26) 保管30年、土壌浄化探る、福島の中間貯蔵施設建設へ 地層生かし汚染防ぐ
 政府は福島県内の除染で出た汚染土壌などを最長30年にわたって保管する中間貯蔵施設の建設に乗り出す。総事業費が1兆円規模に達する大型プロジェクトで、2015年1月からの搬入開始を目指す。30年後には県外での最終処分を約束しており、汚染土の量や放射性物質の濃度を大幅に減らす技術開発も進めていく。中間貯蔵施設は双葉、大熊両町にある東京電力福島第1原子力発電所周辺の用地に整備する。施設の総面積は16平方キロと羽田空港を上回る広さだ。今月1日に県が建設を容認する意向を政府に伝えた。政府は3千人規模とされる地権者を確定し、補償額などを伝える説明会を29日から順次、開く予定だ。
●1日トラック数千台
 県内43市町村にある800カ所以上の仮置き場や、5万を超える庭先などの現場に置かれる除染に伴う汚染土や側溝の汚泥、草木、落ち葉などを保管する。環境省の推計だと総量は1600万~2200万立方メートルで、羽田空港D滑走路の埋め立てに使った千葉県の山から運び出した砂の量とほぼ同規模だ。運搬には1日数千台のトラックを使う。中間貯蔵施設に運び込まれた汚染土などはまず受け入れ・分別施設に搬入、重量や放射線量を測定し分別する。土壌は土壌貯蔵施設に貯蔵する。保管する土壌の放射性セシウム濃度に応じて1型と2型がある。1型は低地に設置、1キログラムあたり8000ベクレル以下と放射性物質の濃度が比較的低く、地下水を汚染する恐れがない土壌を埋める。2型は丘陵地や台地に置き、底面には遮水シートや水を通しにくい地層などを備える。雨水などは排水管を通じて水処理施設に集め、放射性物質を取り除いてから河川に放出する。1型、2型とも汚染土を埋めたのち、上面に汚染されていない土で覆うことによって放射性物質が外に飛び散る外部被曝(ひばく)を防ぐ。草木などの可燃物は減容化施設で焼却して灰にし量を減らす。このうち、放射性セシウム濃度が1キログラムあたり10万ベクレルを超えるものは専用のドラム缶に入れ、鉄筋コンクリート構造などで遮蔽効果がある廃棄物貯蔵施設で保管する。中間貯蔵施設内には、このほかに研究棟や管理棟、情報公開センターなどもある。敷地の境界には緩衝緑地を設け、周辺の安全に配慮する。候補地付近は「大年寺層」と呼ぶ主に泥岩からなる硬い地層が分布し、施設の建設が可能と判断した。地下水については、水面よりも上位に施設を置くことなどで影響が回避できるとした。谷や台地などの地形を最大限活用し、環境負荷の低減や工期の短縮を目指す。用地取得や施設の着工を進める一方で、県外での最終処分に向けた準備にも着手しなければならない。環境省は29日から始まる臨時国会で関連法の改正案を提出する。ただ、実現に向けては法整備以上に技術開発の進展が課題となりそうだ。
●8割の除染が可能
 放射性セシウムの濃度は放っておいても「自然減衰」と呼ぶ現象によって30年後には4割まで減る。これに技術開発が加われば、相当の量の放射性物質を減らすことができ、県外処分も決して不可能ではない、というのが環境省の見立てだ。まず、国内外の研究動向を把握し、放射性物質の効果的な分離技術や、土壌を土木資材として再資源化する技術、施設からの取り出し技術などの開発を進めていく。すでにいくつかの技術が候補として実証されている。セシウムが粒度の小さい粘土に付着しやすいという特性をいかし、土壌をふるいにかけて研磨や洗浄をし、小さな粘土だけを分離する方法がある。シュウ酸と熱で土壌の有機分を分解したのちにセシウムを分離させ、それを吸着材で回収する化学処理もある。反応促進剤を使いながら土壌を熱し、セシウムを昇華させてフィルターで分離する熱処理もある。いずれの技術も除染効果は8割以上。ただ、それぞれの技術には使用条件などに制限がある。コスト面でも実用化を阻む。小規模な実証段階では1立方メートル処理するのに数万から数十万円かかっている。福島県内には今回建設する中間貯蔵施設が「中間」ではなく「最終」の施設になってしまうのではないかという不安の声が大きい。中間貯蔵施設を巡る国と福島県との交渉でキーパーソンになった自民党の大島理森東日本大震災復興加速化本部長は「30年以内で完了するのかという疑念を払拭するには、(政府が)今後のスケジュールをきちんと示すべきだ」と話している。


PS(2014/10/6追加):*5については、国民は、そうまでして原発を継続して欲しいとは思っていないし、原発が稼働し始めてから40年も経ちながら想定外が多すぎ、廃炉準備引当金も十分に引き当てていないなど、普通の企業では考えられない甘えが多い。そして、メディアも、くだらないことは熱心に報道するが、このような事実は十分に報道しない体質なのが民主主義の問題である。

*5:http://newsbiz.yahoo.co.jp/detail?a=20141002-00049348-toyo-nb
(東洋経済オンライン 2014/10/2) 原発優遇策をねだる、電力業界の本末転倒
 「競争環境下で原子力発電をこれまで通り民間が担っていくには、予見性を持って事業に取り組める環境整備が大事。費用が確実に回収されることが大事だ。そのための官の支援を是非ともお願いしたい」。9月19日の定例記者会見で、電気事業連合会の八木誠会長(関西電力社長)はそう訴えた。国に求める支援策として八木会長は、「廃炉に絡む財務・会計リスク緩和措置」、「原子力燃料サイクル事業における新たな官民の役割分担」、「規制や政策の変更、電力システム改革による競争の進展といった環境変化を踏まえた措置」を挙げた。
■英国の“原発版FIT”が議論の俎上に
 一方、経済産業省はすでに、総合資源エネルギー調査会の原子力小委員会において新たな原発支援案の議論を始めている。8月21日に開かれた第5回の原子力小委では、「競争環境下における原子力事業の在り方」が議論された。この会議では、英国において導入が決まった「差額決済契約(CfD=Contract for Difference)」と呼ばれる原子力支援制度が、英国エネルギー・気候変動省の担当者からかなりの時間を割いて説明された。CfD(FIT-CfDとも呼ぶ)という制度は、電気の値段を固定価格で一定期間、保証するという点で、日本でも再生可能エネルギーを対象に導入されている固定価格買取制度(FIT=Feed in Tariff)に似ている。英国では、これを再エネ発電だけでなく、原子力発電にも導入することが昨年決まった。具体的な仕組みは、廃炉や使用済み燃料の処分費用も含めた原子力のコスト回収に必要な電気料金水準として「基準価格」を決め、その基準価格がマーケット価格を元に算定される「市場価格」を上回っている場合、その差額を全需要家から回収し、原発事業者に対して補填する。逆に、基準価格が市場価格を下回った場合には、原発事業者が差額を全需要家に支払う。そうすることで、原発事業者の損益を平準化させ、財務・会計面でのリスク軽減を図るものだ。英国政府はこのCfDを、フランス電力公社(EDF)がイングランド南西部のヒンクリー・ポイント原子力発電所で進めている新増設計画(160万キロワット×2基、2023年に竣工予定)に導入することを昨年10月に決めた。基準価格は1キロワット時当たり15.7円(1ポンド=170円換算)。これは、火力発電などを含めた現在の市場価格の約2倍に相当する。陸上風力の基準価格である15.3円を上回り、大規模太陽光の17円と比べても大差ない。また、保証期間は35年間と、再エネの15年間を大幅に上回る。これでEDFは、ヒンクリー・ポイントCという新設原発の運営において、長期にわたってコストを確実に回収することが見込める。まさに、原発を維持推進するための国家保護策といっていいだろう。
■経産省は既設原発への適用も検討
 このCfDを議論の俎上に載せるということは、経産省は明らかに日本への導入を視野に入れているはずだ。しかし、日本政府は現状、「原発の新増設、リプレース(老朽原発の建て替え)はまったく想定していない」というのが正式見解だ。その方針を変えるのか。経産省資源エネルギー庁原子力政策課の担当者は「英国政府の担当者とアポイントが取れたので、諸外国における例示の1つとしてプレゼンテーションをしてもらっただけ。日本での原発新増設を念頭においたものではない」と説明する。ただ、「既設の原発を対象として、日本に合った形でモディファイ(部分的に修正)して導入することも含め、今後の検討課題」とも話す。年内にも専門家によるワーキンググループを作って具体的に議論していく方針という。


PS(2014.10.9追加):*6の最終処分場候補地は、名水の里だ。つまり、その地の長所を台無しにする選択を国が地方に押し付けているのであり、環境省がこういう選択をするのは、農業、漁業、自然の軽視が甚だしく、呆れてものが言えない。国会では、①選定理由 ②選定方法 ③適地か否か について、しっかり検証すべきである。

*6:http://www.kahoku.co.jp/tohokunews/201410/20141009_13013.html
(河北新報 2014.10.2) 最終処分場候補地調査に「不意打ち」と猛反発
 指定廃棄物の最終処分場をめぐり、環境省が候補地での現地調査に入った8日、栗原市、加美町、大和町の住民から怒りの声が挙がった。現地調査を拒否する構えを示してきた加美町は「不意打ち」と猛反発した。猪股洋文加美町長は町役場で記者会見し「調査開始の事前連絡がなかった。強引で姑息(こそく)なやり方に憤りを感じる。まさに暴挙」と批判した。「強引に調査を行うなら法廷闘争に持ち込まざるを得ない。ずさんな候補地選定過程と国の不正を明らかにする」と、法的手段を検討する考えをあらためて示した。加美よつば農協など地元42団体による反対グループの高橋福継会長(72)は8日朝に調査開始を知り候補地に駆け付けた。「加美町に事前連絡せずに調査に入るのはまさに不意打ち。汚いやり方だ」と怒りをぶつけた。栗原市と大和町には7日に事前連絡があったが、反対運動を避けるため加美町にはなかったとみられる。「ルールを守って運動してきた。住民の切なる訴えを正面から受け止めないのは許し難い」と批判した。栗原市でも反発の声が挙がる。栗駒文字地区住民グループの菅原敏允会長(81)は「不愉快な話だ。どう進展していくか気がかり。対応を早急に話し合う」と不安げ。市民グループ「放射能から子どもたちを守る栗原ネットワーク」の鈴木健三代表(71)は「市民に公開し、堂々と調査入りすべきだった」と語った。佐藤勇栗原市長は「3市町同時に調査が実施されたことは、前進するために意義のあること。深山嶽がいかに自然災害の恐れがあり不適地であるか、候補地内外をしっかりと踏査してほしい」とのコメントを発表した。浅野元・大和町長は「いよいよかという感じ。調査実施はやむを得ないが、下原が建設地に適さないことを続けて訴えたい。今後の調査でも事前連絡があってしかるべきだ」と環境省に注文した。浅野町長は8日、町役場で町議会と行政区長に現地調査開始を報告。区長からは「通告翌日の調査入りは急すぎる」と苦言が挙がった。

| 原発::2014.8~10 | 04:24 PM | comments (x) | trackback (x) |

PAGE TOP ↑