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2016.7.8 日本国憲法を変えたい勢力は、①何のために ②何を改正しようとしているのか ③改正した場合の効果 について正面からの説明が必要である - 日本国憲法、自民党改正草案の「前文」「天皇」「憲法改正要件」「緊急事態条項」「道州制」について (2016年7月11、13日に追加あり)
       
2016.7.8西日本新聞 憲法改正必要論の理由 憲法改正要件国際比較 日本国憲法に署名した人 

    
  憲法改正   自民党憲法 自民党憲法改正案    日本国憲法は     憲法改正世論調査
   手続き  改正案のポイント 緊急事態条項  今でも最先端であること

(1)「自民党憲法改正草案」は、改正ではなく改悪である
1)敗戦後の占領下で作られたから悪いわけではないこと
 今回の参議院議員選挙では、上の一番左の表のように「日本のこころ(自民党の中でも右だった人の分派)」が、「占領下で制定された日本国憲法をまるごと変えて自主憲法を制定したい」という憲法改正理由を書いており、これが憲法改正を強く主張する勢力の本音だ。この発想は自民党も同じであるため、上の左から2番目の表のように憲法改正理由の第一に、「敗戦後の占領下で作られ、日本国民の自由な意思を反映していないので、国民の手によって憲法を制定する」というのがあがっているわけだ。

 そして、自民党が、平成24年4月27日に総務会を通して党として決定した憲法改正草案(https://jimin.ncss.nifty.com/pdf/news/policy/130250_1.pdf 参照)は、結論から言ってひどい改悪だと考える。分量が多いため、今日は国の形を現す最も重要な部分である「前文」と「天皇の地位」を中心に記載するが、他の部分にも戦前への郷愁が散見される。

2)前文について
 日本国憲法の前文は、*1-1のように、「①日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し、・・主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する」「②国政は、国民の厳粛な信託によるもので、その権威は国民に由来し、その権力は国民の代表者がこれを行使し、その福利は国民がこれを享受する」「③日本国民は、恒久の平和を念願し、・・平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した」「④われらは平和を維持し、・・国際社会において名誉ある地位を占めたいと思ふ」「⑤われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する」としており、現在でも通用する立派なものである。

 この文章中にある「公正と信義に信頼して」という文章はテニヲハの使い方が誤りだと言う人もいるが、私は、文語調で訳した法律用語であるため、違和感を感じない。

 そして、ここで重要なのは、「国政は国民の信託によるもので、その権威は国民に由来し、その権力は国民の代表者がこれを行使し、その結果生じる福利は国民が享受する」というように、国民を主人公とする徹底した国民主権が述べられていることである。つまり、国民が主であり、国という組織を主として国民が国という組織のために尽くすのではない民主主義の発想が明確に記されており、日本国憲法は、第二次世界大戦とその敗戦で多くのものを失ったが、唯一得ることができた資産だと私は考える。*1-2の日本国憲法原文(The Constitution Of Japan)が、「We, the Japanese people, 」や「We」を主語としているのを見れば、一人一人の国民が主体であることがさらに明確になる。

 一方、自民党憲法改正草案は、*1-3のように、「①日本国は、長い歴史と固有の文化を持ち、国民統合の象徴である天皇を戴く国家である」「②日本国民は、国と郷土を誇りと気概を持って自ら守り」「③基本的人権を尊重するとともに、和を尊び、家族や社会全体が互いに助け合って国家を形成する」「④自由と規律を重んじ、美しい国土と自然環境を守りつつ、教育や科学技術を振興し、活力ある経済活動を通じて国を成長させる」「⑤日本国民は、良き伝統と我々の国家を末永く子孫に継承するため、ここに、この憲法を制定する」としている。

 しかし、①は国を主体とする国家の成り立ちに関する自慢話が多すぎ、これについては科学的・文化的に正確な歴史書で述べるべきである。また、②で国民は国と郷土(いずれも組織)を守るための存在になり下がり、③は基本的人権を尊重するとさらっと書いてはいるものの、和を尊び家族や社会全体が互いに助け合って国家を形成することこそ大切だとして個人の人権に制限を加え、④は国民の福利より国を成長させることが重要だというメッセージを発している。そして、⑤では、国民を国家存続のための道具と位置付けている。つまり、自民党憲法改正草案は、国が主であり、国の存続のためとして国民の福利をないがしろにし、「国民の国民による国民のための政治」という資産がなくなっているのである。

 つまり、占領下だったからこそ国民同士が争うことなく大きな改革をして国民主権にできた日本国憲法を、100%とまでは言わないにしても、国を主にしてかなり戦前回帰させているため、自民党憲法改正草案は改悪なのである。

3)天皇について
 日本国憲法における天皇の地位は、*2-1のように「日本国の象徴であり、日本国民統合の象徴」とされているが、自民党憲法改正草案における天皇の地位は、*2-2のように「日本国の元首であり、日本国及び日本国民統合の象徴」とされ、「元首」という言葉が加わっている。

 国家元首(英訳:head of state)とは、対外的に代表権を持つ存在であり、大日本帝国憲法では第4条で天皇を元首と規定していたが、日本国憲法には天皇を元首とする規定はなく、国事行為に関する規定があるのみだ。国民主権の国で世襲による天皇を対外的代表権を持つ存在である“元首”と位置づけるのは矛盾であり、これも自民党憲法改正草案の戦前回帰であるため、とても賛成できない。

(2)改憲論議は、現在の憲法をしっかり護り、その考え方が国民に浸透してからにすべきである
 東京新聞によると、*3のように、安倍首相は「ニコニコ動画」の党首討論会で、「参院選の結果を受け、どの条文を変えていくか、条文の中身をどのように変えていくかについて議論を進めたい。次の国会から、自民党総裁として憲法審査会をぜひ動かしたい」と述べられたそうだ。憲法改正は自民党にとっては結党以来の党是であり、自民党憲法改正草案は安倍首相が作ったものではなく、自民党憲法改正推進本部(本部長・保利耕輔衆院議員《当時》)が作ったものである。

 私は「いくらなんでも天皇が元首とは・・」と思ったので、地元の離島関係の会合で保利浩輔氏にお会いした時に、「天皇が元首というあの憲法改正草案は、いくらなんでも駄目ですよ」と言ったところ、保利耕輔衆院議員(当時)は「今までと同じことをするんだし、(自民党の)総務会も通ったもん」と言っておられたので、この憲法改正草案には憲法改正に執着する自民党議員の考え方が多く含まれていると考える。

 従って、野党の「安部政権の下での憲法改正に反対する」という批判は、感情論に終始して問題を矮小化している。私は、日本人が日本国憲法を本当に遵守し、そのよさを理解した上で、それよりもよい方向に改正できる時がくるまで、憲法改正は止めるべきだと考える。

<憲法前文の比較>
*1-1:http://www.houko.com/00/01/S21/000.HTM (日本国憲法)
前文 日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し、われらとわれらの子孫のために、諸国民との協和による成果と、わが国全土にわたつて自由のもたらす恵沢を確保し、政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意し、ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する。そもそも国政は、国民の厳粛な信託によるものてあつて、その権威は国民に由来し、その権力は国民の代表者がこれを行使し、その福利は国民がこれを享受する。これは人類普遍の原理であり、この憲法は、かかる原理に基くものである。われらは、これに反する一切の憲法、法令及び詔勅を排除する。日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであつて、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めてゐる国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ。われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する。われらは、いづれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならないのであつて、政治道徳の法則は、普遍的なものであり、この法則に従ふことは、自国の主権を維持し、他国と対等関係に立たうとする各国の責務であると信ずる。日本国民は、国家の名誉にかけ、全力をあげてこの崇高な理想と目的を達成することを誓ふ。

*1-2:http://japan.kantei.go.jp/constitution_and_government/frame_01.html (THE CONSTITUTION OF JAPAN)
 We, the Japanese people, acting through our duly elected representatives in the National Diet, determined that we shall secure for ourselves and our posterity the fruits of peaceful cooperation with all nations and the blessings of liberty throughout this land, and resolved that never again shall we be visited with the horrors of war through the action of government, do proclaim that sovereign power resides with the people and do firmly establish this Constitution. Government is a sacred trust of the people, the authority for which is derived from the people, the powers of which are exercised by the representatives of the people, and the benefits of which are enjoyed by the people. This is a universal principle of mankind upon which this Constitution is founded. We reject and revoke all constitutions, laws, ordinances, and rescripts in conflict herewith.
 We, the Japanese people, desire peace for all time and are deeply conscious of the high ideals controlling human relationship, and we have determined to preserve our security and existence, trusting in the justice and faith of the peace-loving peoples of the world. We desire to occupy an honored place in an international society striving for the preservation of peace, and the banishment of tyranny and slavery, oppression and intolerance for all time from the earth. We recognize that all peoples of the world have the right to live in peace, free from fear and want.
 We believe that no nation is responsible to itself alone, but that laws of political morality are universal; and that obedience to such laws is incumbent upon all nations who would sustain their own sovereignty and justify their sovereign relationship with other nations.
 We, the Japanese people, pledge our national honor to accomplish these high ideals and purposes with all our resources.

*1-3:http://www.saga-s.co.jp/senkyo/sanin/30402/320758 (佐賀新聞 2016年6月9日) 自民党憲法改正草案全文(抜粋)
自民党が2012年に発表した憲法改正草案は11章、102条から成る。前文など、日本国憲法を大幅に手直しした部分が少なくない。日本国憲法とともに、その全文を紹介する。
■自民党憲法改正草案全文
 (前文)
 日本国は、長い歴史と固有の文化を持ち、国民統合の象徴である天皇を戴く国家であって、国民主権の下、立法、行政及び司法の三権分立に基づいて統治される。我が国は、先の大戦による荒廃や幾多の大災害を乗り越えて発展し、今や国際社会において重要な地位を占めており、平和主義の下、諸外国との友好関係を増進し、世界の平和と繁栄に貢献する。日本国民は、国と郷土を誇りと気概を持って自ら守り、基本的人権を尊重するとともに、和を尊び、家族や社会全体が互いに助け合って国家を形成する。我々は、自由と規律を重んじ、美しい国土と自然環境を守りつつ、教育や科学技術を振興し、活力ある経済活動を通じて国を成長させる。日本国民は、良き伝統と我々の国家を末永く子孫に継承するため、ここに、この憲法を制定する。

<天皇についての比較>
*2-1:http://www.saga-s.co.jp/senkyo/sanin/30402/320757 (佐賀新聞 2016年6月9日) 日本国憲法(抜粋)
  第一章 天皇
第一条 天皇は、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であつて、この地位は、主権の存する
      日本国民の総意に基く。
第二条 皇位は世襲のものであつて、国会の議決した皇室典範の定めるところにより、これを継承する。
第三条 天皇の国事に関するすべての行為には内閣の助言と承認を必要とし、内閣がその責任を負ふ。
第四条 天皇は、この憲法の定める国事に関する行為のみを行ひ、国政に関する権能を有しない。
      天皇は、法律の定めるところにより、その国事に関する行為を委任することができる。
第五条 皇室典範の定めるところにより摂政を置くときは、摂政は、天皇の名でその国事に関する行為を
      行ふ。この場合には、前条第一項の規定を準用する。
第六条 天皇は、国会の指名に基いて、内閣総理大臣を任命する。
      天皇は、内閣の指名に基いて、最高裁判所の長たる裁判官を任命する。
第七条 天皇は、内閣の助言と承認により、国民のために、左の国事に関する行為を行ふ。
 一 憲法改正、法律、政令及び条約を公布すること。
 二 国会を召集すること。
 三 衆議院を解散すること。
 四 国会議員の総選挙の施行を公示すること。
 五 国務大臣及び法律の定めるその他の官吏の任免並びに全権委任状及び大使及び公使の信任状
   を認証すること。
 六 大赦、特赦、減刑、刑の執行の免除及び復権を認証すること。
 七 栄典を授与すること。
 八 批准書及び法律の定めるその他の外交文書を認証すること。
 九 外国の大使及び公使を接受すること。
 十 儀式を行ふこと。
第八条 皇室に財産を譲り渡し、又は皇室が、財産を譲り受け、若しくは賜与することは、国会の議決に
      基かなければならない。

*2-2:http://www.saga-s.co.jp/senkyo/sanin/30402/320758 (佐賀新聞 2016年6月9日) 自民党憲法改正草案(天皇) 
第一章 天皇
 (天皇)
第一条 天皇は、日本国の元首であり、日本国及び日本国民統合の象徴であって、その地位は、
      主権の存する日本国民の総意に基づく。
 (皇位の継承)
第二条 皇位は世襲のものであって、国会の議決した皇室典範の定めるところにより、これを継承する。
 (国旗及び国歌)
第三条 国旗は日章旗とし、国歌は君が代とする。
 2 日本国民は、国旗及び国歌を尊重しなければならない。
 (元号)
第四条 元号は、法律の定めるところにより、皇位の継承があったときに制定する。
 (天皇の権能)
第五条 天皇は、この憲法に定める国事に関する行為を行い、国政に関する権能を有しない。
 (天皇の国事行為等)
第六条 天皇は、国民のために、国会の指名に基づいて内閣総理大臣を任命し、内閣の指名に基づいて
     最高裁判所の長である裁判官を任命する。
 2 天皇は、国民のために、次に掲げる国事に関する行為を行う。
 一 憲法改正、法律、政令及び条約を公布すること。
 二 国会を召集すること。
 三 衆議院を解散すること。
 四 衆議院議員の総選挙及び参議院議員の通常選挙の施行を公示すること。
 五 国務大臣及び法律の定めるその他の国の公務員の任免を認証すること。
 六 大赦、特赦、減刑、刑の執行の免除及び復権を認証すること。
 七 栄典を授与すること。
 八 全権委任状並びに大使及び公使の信任状並びに批准書及び法律の定めるその他の外交文書を
    認証すること。
 九 外国の大使及び公使を接受すること。
 十 儀式を行うこと。
 3 天皇は、法律の定めるところにより、前二項の行為を委任することができる。
 4 天皇の国事に関する全ての行為には、内閣の進言を必要とし、内閣がその責任を負う。ただし、
    衆議院の解散については、内閣総理大臣の進言による。
 5 第一項及び第二項に掲げるもののほか、天皇は、国又は地方自治体その他の公共団体が
    主催する式典への出席その他の公的な行為を行う。
 (摂政)
第七条 皇室典範の定めるところにより摂政を置くときは、摂政は、天皇の名で、その国事に
    関する行為を行う。
 2 第五条及び前条第四項の規定は、摂政について準用する。
 (皇室への財産の譲渡等の制限)
第八条 皇室に財産を譲り渡し、又は皇室が財産を譲り受け、若しくは賜与するには、法律で
     定める場合を除き、国会の承認を経なければならない。

<憲法改正手続き>
*3:http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201606/CK2016062002000120.html (東京新聞2016年6月20日)安倍首相「次の国会から改憲議論」 参院選後 具体的に条文審査
 安倍晋三首相は十九日、インターネット動画中継サイト「ニコニコ動画」の党首討論会で、改憲について「参院選の結果を受け、どの条文を変えていくか、条文の中身をどのように変えていくかについて、議論を進めていきたい。次の国会から憲法審査会を動かしていきたい。自民党の総裁としてぜひ動かしたい」と秋の臨時国会から、衆参両院に設置されている憲法審査会で、具体的な改憲項目の議論を与野党で進めたい考えを示した。首相は在任中の改憲に意欲を示している。首相の自民党総裁としての任期が切れる二〇一八年九月までに改憲の国民投票を終えるためには、来年秋の臨時国会で原案を審議し、発議する必要がある。そのためには、今年後半から国会で議論を始め、来年前半の通常国会までに原案をまとめる必要がある。参院選で与党が改憲の争点化を避けていると野党側が批判したのに対し、首相は「(改憲は)自民党結党の精神。選挙で争点とすることは必ずしも必要はない」と反論。「私たちは党草案を示しており、何も隠していない」と強調した。一方、公明党の山口那津男代表は「改憲について、国民に問いかけるほど議論が成熟していない。議論を深めて国民の理解を伴うようにしなければならない」と慎重な議論を求めた。民進党の岡田克也代表は「立憲主義を理解している首相でないと、非常に危ない。(首相は)最後は力で押し切る。改憲はよほど慎重でなければならない」と首相をけん制した。改憲には原案を衆院百人以上、参院五十人以上の賛同で提案。その後、両院の憲法審査会で審査した後、衆参の本会議でともに三分の二以上の賛成で可決し、国民に発議しなければならない。発議後、六十~百八十日以内に国民投票が行われ、承認には過半数の賛成が必要となる。討論会には、首相を含む与野党九党の党首が参加した。


<憲法の改正要件について>
PS(2016年7月11日追加):参院選の結果、*4-1のように、参議院でも改憲勢力が3分の2を超えた。「改憲項目が異なるので3分の2を超えても問題ない」とする勢力もあるが、両院で3分の2を超えると、*4-2の憲法改正要件を緩和するという姑息な改正を行うことも可能となり、上の図のようにこれを改正項目の一つとする人もいるため要注意だ。なお、我が国の憲法改正回数は0だが、それは国民が憲法改正の必要性を感じなかったからで我が国の憲法改正要件が世界の中で特に厳しいからではない。

*4-1:http://www.saga-s.co.jp/news/national/10201/332433
(佐賀新聞 2016年7月11日) 議席確定、改憲勢力で3分の2超、野党共闘及ばず
 第24回参院選は11日午前、全121議席が確定した。安倍晋三首相(自民党総裁)が目指す憲法改正に賛同する改憲勢力は、非改選議席と合わせ165議席となり、国会発議に必要な全議席の3分の2(162議席)を超えた。自民党は55議席、公明党は14議席へ伸ばし、与党で改選過半数(61議席)を上回り、勝利した。民進党は32議席。民進、共産、社民、生活の野党4党は32の改選1人区で候補を一本化し、3分の2阻止へ共闘したが及ばなかった。おおさか維新の会は7議席、共産党は6議席で伸長した。自民党は無所属1人を追加公認したが27年ぶりとなる単独過半数に届かなかった。

*4-2:http://www.saga-s.co.jp/senkyo/sanin/30402/320757
(佐賀新聞 2016年6月9日) 日本国憲法全文(抜粋)
 第九十六条 この憲法の改正は、各議院の総議員の三分の二以上の賛成で、国会が、これを発議し、
          国民に提案してその承認を経なければならない。この承認には、特別の国民投票又は
          国会の定める選挙の際行はれる投票において、その過半数の賛成を必要とする。
          憲法改正について前項の承認を経たときは、天皇は、国民の名で、この憲法と一体を
          成すものとして、直ちにこれを公布する。


<緊急事態条項と道州制について>
PS(2016年7月13日追加):上の下の段の左から3番目の表、*5-1、*5-2のように、自民党憲法改正草案は「緊急事態条項」を新設し、①武力攻撃 ②内乱 ③大災害 の時に、内閣総理大臣は国会の事後承認で緊急事態を宣言でき、緊急事態が宣言された時は、基本的人権を最大限尊重はするものの何人も国や公的機関の指示に従わなければならないとのことである。しかし、最も賛同を得やすい③でさえ、内閣総理大臣が緊急事態を宣言するより地方自治体が最前線で救援を行い、国は最前線から必要と言われるものを援助した方が効果的だという意見が多い。まして、①の武力攻撃はどういう理由で起こり、その時に何をすることが想定されているのか、②はどういう状態を内乱(犯罪とは異なる)と定義して国が鎮圧するのか について説明する必要がある。全体から見ると、「緊急事態条項」は、民主主義・基本的人権の尊重・平和主義という日本国憲法の三大原則から離れており、戦前の戒厳令や国家総動員法を思わせるため、決して入れるべきではないと私は考える。
 さらに、*5-2で触れられている道州制については、地方自治法を改正して県が合併すればよいため、憲法改正はいらない。しかし、北海道、九州、四国については道州の区切りに異論が出にくいものの、他地域については堺目をどこにするかについても異論が出やすい。そのため、まとまりになれる県が先に合併していくのがよいだろうが、県が合併したくない場合は道州制は成立しない。

*5-1:http://qbiz.jp/article/90492/1/
(西日本新聞 2016年7月11日) 改憲 まず9条以外 緊急事態条項 参院改革 環境権
●抵抗少ない項目から議論
 憲法改正論議の対象項目として、大規模自然災害時の国会議員任期延長を含む「緊急事態条項」新設や、参院選の合区解消に向けた参院改革などが浮上している。自民党は「本丸」の9条改正について、憲法の基本原則である平和主義に関わるため野党や国民の抵抗感が強いと判断。最初の改憲対象にはせず、比較的理解を得やすいと思われる項目で改憲の「実績」をつくりたい考えだ。自民党は昨年5月の衆院憲法審査会で緊急事態条項以外に、良好な自然環境を享受する権利の「環境権」、野放図な国の借金拡大を防いで財政の健全性を確保する「財政規律条項」の新設を提示した。首相が今秋の臨時国会から開始したい意向を示した衆参両院憲法審査会の議論でも、引き続き候補になるとみられる。自民党改憲草案の緊急事態条項は、国会議員任期延長以外に(1)首相による緊急事態宣言発出(2)内閣への権限集中(3)国民に国の指示に従うよう義務付け−などを規定。自然災害以外に他国からの武力攻撃、内乱時も列挙した。野党や弁護士会からは、過度な人権制限や政府による乱用の危険性が指摘されている。合区解消は、「1票の格差」に関係なく、改選ごとに各都道府県から参院議員を選出する趣旨の条文を盛り込むべきだとの主張だ。今回の参院選から鳥取・島根、徳島・高知の二つの合区が導入され、自民党参院議員や地方自治体が「地方切り捨てにつながる」と強く批判している。おおさか維新の会が改憲項目として参院選で公約した道州制導入を含む「統治機構改革」なども、議論の対象になる可能性がある。
 ◇  ◇
●壁高き改憲 世界では実現、ドイツ60回 米国27回 フランス24回
 世界の多くの国は日本と同様、憲法改正に一般の法律よりも厳格な手続きを定めている。高いハードルを乗り越えて改正にこぎ着けた回数や具体例は、国によってさまざまだ。ドイツでは、旧西ドイツで1949年に制定された憲法を「基本法」と呼ぶ。議会事務局によると、改正は旧西ドイツ時代に36回、東西統一後に24回の計60回に上る。「文化財の国外流出防止」を国の義務とするといった、日本では一般の法律で規定するような内容も基本法に盛り込まれていることが、改正が多い理由の一つ。ナチス時代の反省から、人権尊重などを定めた条文は改正できない。世界最初の近代的成文憲法である米合衆国憲法は、1787年に制定された。これまで27回修正され、奴隷解放や婦人参政権のほか、銃所持の権利を保障するとされる「武装の権利」などを明文化した。修正には連邦議会で上下両院の出席議員の3分の2以上が賛成した上で、全米50州の州議会のうち、4分の3以上の賛成が必要。超党派の幅広い支持が最低条件となるため、容易ではない。1958年に制定されたフランス現行憲法の改正は24回。これによって大統領直接選挙制などが実現した。

*5-2:http://www.saga-s.co.jp/senkyo/sanin/30402/320758 (佐賀新聞 2016年6月9日) 自民党憲法改正草案全文 (第九章 緊急事態 《抜粋》)
(緊急事態の宣言)
第九十八条 内閣総理大臣は、我が国に対する外部からの武力攻撃、内乱等による社会秩序の混乱、
        地震等による大規模な自然災害その他の法律で定める緊急事態において、特に必要が
        あると認めるときは、法律の定めるところにより、閣議にかけて、緊急事態の宣言を発す
        ることができる。
      2 緊急事態の宣言は、法律の定めるところにより、事前又は事後に国会の承認を得なけれ
        ばならない。
      3 内閣総理大臣は、前項の場合において不承認の議決があったとき、国会が緊急事態の
        宣言を解除すべき旨を議決したとき、又は事態の推移により当該宣言を継続する必要が
        ないと認めるときは、法律の定めるところにより、閣議にかけて、当該宣言を速やかに
        解除しなければならない。また、百日を超えて緊急事態の宣言を継続しようとするときは、
        百日を超えるごとに、事前に国会の承認を得なければならない。
      4 第二項及び前項後段の国会の承認については、第六十条第二項の規定を準用する。こ
        の場合において、同項中「三十日以内」とあるのは、「五日以内」と読み替えるものとする。
(緊急事態の宣言の効果)
第九十九条 緊急事態の宣言が発せられたときは、法律の定めるところにより、内閣は法律と同一の
        効力を有する政令を制定することができるほか、内閣総理大臣は財政上必要な支出その
        他の処分を行い、地方自治体の長に対して必要な指示をすることができる。
      2 前項の政令の制定及び処分については、法律の定めるところにより、事後に国会の承認
        を得なければならない。
      3 緊急事態の宣言が発せられた場合には、何人も、法律の定めるところにより、当該宣言
        に係る事態において国民の生命、身体及び財産を守るために行われる措置に関して発
        せられる国その他公の機関の指示に従わなければならない。この場合においても、
        第十四条、第十八条、第十九条、第二十一条その他の基本的人権に関する規定は、
        最大限に尊重されなければならない。
      4 緊急事態の宣言が発せられた場合においては、法律の定めるところにより、その宣言が
        効力を有する期間、衆議院は解散されないものとし、両議院の議員の任期及びその選挙
        期日の特例を設けることができる。

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