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2018.5.14 経済と環境の必然性から見た自動車、エネルギー、医療・介護の進路 (2018年5月15、16、19、20、21日に追加あり)
     
        2018.5.12日経新聞     2018.5.10、2018.5.13日経新聞  

(図の説明:日産とルノーはどちらがグループの利益に貢献しているかという論調になっているが、経営方針を間違わずに必要な投資を行うことが最も重要である。そして、日産・ルノー組の成功は、日本人でないゴーン社長の経営方針決定による成功によるため、今後とも日産の経営陣がイニシアティブをとらないのが成功への道だろう。しかし、再生医療に関しては、多くのヒト幹細胞候補があって次々と応用に供せられているため、集中と選択をするのはまだ早すぎる)

    
        2018.5.13東京新聞           2018.5.10日経新聞

(図の説明:経産省の次期エネルギー基本計画骨子案は、再エネの普及が世界より大きく遅れ、世界では手終い始めている原発に20%以上も依存をしようとしており、経産省の思考停止が明らかだ。そのため、経産省に任せておいては、中国はじめアジア諸国にも遅れることになる)

(1)自動車の進路は明確であること
1)競争ルールの変化とライバルの増加
 自動車の競争ルールは明らかで、「①地球環境の維持目的から、アジアだけでなくアフリカ大陸まで自動車が普及しても環境を汚さないこと」「②少子高齢化の進行から、自動運転や高度な運転支援を行えること」が、必要条件になる。

 そのような中、2018年3月期に過去最高益を更新したトヨタ自動車の豊田社長は、*1-1のように、「ライバルも競争ルールも変わり、生死をかけた闘いであり、テクノロジーカンパニーは我々の数倍のスピード、豊富な資金で新技術に投資を続けている」としているが、これは日本では20年前から予測できたことであるため、最初からEVとFCVに集中投資していれば、遅れることはなかった筈だ。

 また、コストには、コスト削減と原価低減があり、コスト削減は既にある技術を改善して地道にコストを減らすことで、これはトヨタはじめ日本企業のお家芸だ。一方、原価低減は、スキームを変えて劇的にコストを減らすことで、例えばガソリンエンジンをやめてEVにしたり、原発や化石燃料をやめて再エネに替えたりすることなどであり、コスト削減効果がずっと大きい。

 しかし、日本政府や日本企業は、自らスキームを変えて原価低減する判断をすることができず、他国がやって初めてあわてて追いつこうとする(これは、日本における文系への理数教育の不十分さによるだろう)。EVのケースでも、私が1995年頃にEVの提案をした後、すぐEVの開発・販売を行う決断をしたのはゴーン氏率いるルノー・日産組であり、日本人を社長とする他の自動車大手は、燃費の改善やハイブリッド車でお茶を濁した。

 そして、現在は、*1-4のように、「日産・ルノーはどちらが牽引役か」という問いになっているが、先見の明ある判断こそが無駄な開発コストをかけずに収益力を上げる重要な要素であるため、ルノーの方が牽引役としてふさわしく、ゴーン氏の任期が切れる時期を視野にしているのなら、再度、フランスから優秀なCEOを招くのが、双方が納得できる有効な方法になろう。
 
 なお、EV・FCV・自動運転・再エネによる自家発電などの技術を確立すれば、*1-3のような鉄道も含め、移動手段全体をもっと合理的にできる筈だ。そのため、このエネルギー変革は、自動車会社・JR・地域にとって、大きなチャンスにすることが可能である。

2)世界の市場へ
 *1-2のように、トヨタが総力戦でアフリカ大陸の開拓を始めたのは面白い。アジアの次はアフリカであるため、アフリカの豊かな自然を壊さないように、アフリカでハイウェイや高速鉄道を整備しながら、EV・FCVやそれらの電車を走らせ、太陽光・地熱などの再エネ発電で経済を進めればよいと考える。つまり、日本で行った途中の試行錯誤は省略してよいのだ。

 また、自動運転には地図が不可欠だが、日本にはパイオニアなどのナビを作る会社やゼンリンなどの正確な地図を作る会社もあり、自動運転車の必需品となる地図は、世界をグーグルに独占させなくても、現在ある地図を世界地図に変えれば、既存の技術で世界市場が視野に入る。

(2)研究開発の遅れと武田薬品のシャイアー買収
1)先進技術を獲得することの重要性
 日本は、*1-5のように、再生医療分野の応用研究に関する特許出願で、欧米・中国・韓国の後じんを拝しているそうだが、再生医療の応用研究を始めたのは1995年頃であり、経産省・厚労省・文科省が協力して本格的に始めたのは、私が衆議院議員をしていた2007年頃のことであり、どちらもそれを言い出したのは私であり、世界の先を行っていた。

 にもかかわらず、現在、日本の特許出願や論文が欧米中韓を下回っているのは、①iPS細胞以外の再生医療を排除したので、iPS細胞以外の研究者は国内で研究しにくくなり、外国に脱出して研究している人もいること ②常識や多数を善とする先端科学とは反する価値観を浸透させたこと ③日本のメディアが、科学とは無関係の自らの基準で論文を叩きすぎたこと ④勉強しないことや理数系に弱いことをファッションにする傾向があり、理数系の勉強を疎かにしたこと などが原因だ。

 しかし、ルノーが日産と合併したいと考えるのは、日産・三菱がEVやFCVの技術を持っているからであり、武田薬品のシャイアー買収のように、遅れたから低金利の金にモノを言わせて買収し、技術を獲得しようという試みは、相手会社に歓迎されないのでうまくいかない。つまり、自らが得意分野を持っていない提携や買収は相手会社に歓迎されず、高い買い物になって買収価格も回収できないケースが多いのである。

2)武田薬品のシャイアー買収について
 武田薬品が、*1-6のように、アイルランドのシャイアーを総額7兆円弱の過去最大金額で買収したとして新聞が大騒ぎしていたが、やはり裏に投資銀行の暗躍があり、この案件は、関係者の利益が最大の目的で成立したのではないかと思われた。

 何故なら、シャイアーが開発して特許を持っているのは難病薬であるため、利益率がいいと言っても大量に売れるわけではなく、それが総額7兆円もの買収価格に相当するかどうか不明だからである。

 日本企業は、金融緩和で低金利の金にモノを言わせ、持たぬ技術を獲得するために敵対的M&Aを行って得意になっていることがあるが、そのようにして失敗した事例に、東芝のウェスティングハウス買収がある。そのため、せっかくよい製品を持っている武田薬品が似た運命を辿らないことを、私は希望している。

(3)日中韓首脳会談
 安倍首相と李克強首相が、*2-1のように、経済を軸とした実務レベルの合意を行って日中両国の雪解けを演出したのはよかったのだが、尖閣諸島問題は棚上げにしてそのままだった。

 また、会談後の共同記者発表で、安倍首相は「日本と中国が力を合わせてアジアの旺盛なインフラ需要に応えていく」と述べられ、李首相も「中日は世界の主要経済大国だ。共に国際貿易の自由化を守り、経済グローバル化の発展を推進することで合意した」と語られ、よいことだ。

 しかし、*2-2のように、中国の李克強首相は、日本の経済界が東京都内で開いた歓迎レセプションで、「日中両国は世界の主要経済国として、保護主義に反対し自由貿易を守る責任がある」と述べられたそうで、それは尤もなことではあるが、既に中国が食品・EV・太陽光発電などで対日輸出の方が多くなる状況であることを考えると、油断していた日本は、米国と同様、自由貿易を喜んでばかりいる立場ではない。

 なお、李首相が、「日中が連携して世界経済の発展に貢献すべきだ」「『一帯一路(現代版シルクロード)』と日本を繋ぎたい」と述べられたのにも、私は賛成だ。

(4)エネルギーの転換
 *4-1、*4-2のとおり、現在は、再生可能エネルギー(再エネ)を拡大するエネルギー計画の方針転換に踏み込むべき時だが、経産省は、次期エネルギー基本計画の骨子案で、「原発依存度を下げる」としながら「原発は重要なベースロード電源」と位置付けて2030年度の原発の発電割合を20〜22%としており、自己矛盾だらけで本気度が感じられない。

 世界は、既に再エネへのシフトに舵を切っており、やっぱり日本は遅れた。しかし、私は、フクイチ事故後、速やかにこのブログにその解決策を記載しており、それは、全体から見て唯一の解決策であるため、世界は「パリ協定」でその解決策を速やかに取り入れ、再生エネの普及と価格低下を実現して、論理ではなく感情で突っ走った日本は時代遅れになったわけである。

 また、技術進歩により再エネの普及割合は経産省の予想を超えるスピードで進んでいるため、経産省が長期的な電源毎の発電割合を決めるのは、むしろ再エネの普及を妨げる。そのため、できるだけ、再エネを推進する方針で原発の再稼働を控えればよいのだ。そのために必要な原発地元への支援も、フクイチ事故後すぐにこのブログに記載している。

 なお、*4-3のように、小泉元首相も「原発支援のカネを自然エネルギーに向ければ、原発が供給していた30%程度の電力は、10年で自然エネルギーによって供給でき、将来、全電源を自然エネルギーにできる」と言っておられるが、まさにそのとおりで、電源こそ選択と集中を行うべき時期なのである。

(5)医療・介護の一部産業化
 介護制度についても、*3-1のように、「2025年には未曽有の超寿社会になるため、医療や介護サービスの需要が急増して費用も大幅に膨らむ」というような報道が多い。しかし、70代後半になると足腰が弱って介護を必要とする機会が増えるのは、65歳前後で定年を迎えて運動量・緊張感ともに減るからで、退職年齢を70歳以上に上げるか、定年を無くすかすれば医療・介護費は減るだろう。

 また、①1人暮らし ②高齢者数の増加 ③医療・介護費の増大 も課題とされることが多いが、これを問題としか捉えない点が、厚労省はじめ政府リーダーの頭の悪さだ。何故なら、人口の年齢構成が変われば市場のニーズが変わるのは当然であり、日本はこの意味で中流階級の多い課題先進国であるため、必要とされるサービスを的確に供給すれば、上記の中国はじめ世界で歓迎される新しい産業を作ることができるからである。

 そのためには、政府の社会保障だけでなく、*3-3のセコムの見守りサービス・ホームサービスや、*3-4の東急グループが知識とノウハウを結集して作る誇りをもって住める上質なシニアレジデンスのように、民間企業の知見と実行力がモノを言うため、政府・自治体は、これらを後押しするのもよいと思われる。

 なお、「若者が足りない」という発言もよく聞くが、*3-2のように、広い視野で外国人の受け入れを一般的に行えば、国民負担増なく、世界と日本の問題を同時に解決できるのである。

<自動車の進路>
*1-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180510&ng=DGKKZO30285370Z00C18A5EA2000 (日経新聞 2018年5月10日) トヨタ、異業種と生存競争 社長「ルール変わった」 研究開発、今期も1兆円超
 トヨタ自動車は2018年3月期に過去最高益を更新し、19年3月期も底堅い業績が続く見通しだ。それでも豊田章男社長は9日、「ライバルも競争のルールも変わり、生死をかけた闘い」などと事業環境の厳しさを強調した。今期の研究開発費と設備投資の合計額は2兆4500億円と、11年ぶりに過去最高を更新する。自動運転など新たな領域で、海外IT大手など異業種の巨人との競争に備える意味合いがある。「テクノロジーカンパニーは我々の数倍のスピード、豊富な資金で新技術に投資を続けている」。東京本社(東京・文京)での決算説明会で、豊田社長の論点は「未知の世界」という競争環境、「お家芸」である原価低減、トヨタ生産方式の徹底など多岐にわたった。成果が出るまで時間のかかる自動運転や電動化、コネクテッドカー(つながる車)への投資が増え、経営方針を正確に理解してもらう必要があるためで、説明会は2時間超と異例の長さになった。19年3月期の研究開発費は1兆800億円と2年連続で過去最高で、次世代技術には35%を費やす。設備投資額との合計は5年前と比べて3割増やす。3月にはデンソー、アイシン精機と自動運転を開発する新会社を設立。元グーグル幹部をトップに据え、数年で3000億円以上を投じる。6月には主力車を刷新し、コネクテッドカーの市販車を公開することも明らかにした。トヨタの視線の先にあるのは海外IT大手の姿だ。米グーグルは米国で地球200周分の公道テストを終え、年内に世界初の無人輸送サービスを始める計画。中国の百度(バイドゥ)も、独ダイムラーなど世界企業約50社と組んで、自動運転開発「アポロ計画」を進める。自動運転などの新領域が主戦場となり、研究開発にどれだけの金額を投入できるかが今後の競争力を左右する。企業財務のデータベース、QUICKファクトセットでみると直近1年間のトヨタの研究開発費は約94億ドル。ダイムラーや独BMWを上回り、自動車業界では高い水準にある。ただ、海外IT大手との比較では安心はできない。米アップルは約127億ドルと自動車業界で研究開発費が最大の独フォルクスワーゲン(VW)に迫り、グーグルは約177億ドルとトヨタの2倍近い規模だ。研究開発費などの原資となる現金創出力(営業キャッシュフロー)でも差がある。トヨタは365億ドルとVW(約29億ドル)などを突き放し、自動車業界では抜きんでている。しかし、グーグル(約391億ドル)にはとどかず、アップル(約674億ドル)ははるか先を行く。「トヨタの真骨頂はトヨタ生産方式と原価低減の2つ。未来を生き抜くために徹底的に磨く」。研究開発費や投資の拡大が避けられないだけに、既存車種の開発や生産の方法の見直しには今まで以上に力を入れる。トヨタ生産方式をさらに徹底するため、提携したスズキやマツダのノウハウも吸収していく。4月には子会社の日野自動車がVWの商用車部門と次世代技術などで提携。「まさか乗用車のライバルと合意するとは」(トヨタ系部品首脳)と衝撃が走った。大きな転換期を「100年に一度の大チャンスととらえ、これまでにない発想でチャレンジする」(豊田社長)という。

*1-2:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO29917750X20C18A4940M00/ (日経新聞 2018/5/7) 最後の「辺境」 総力戦でアフリカ開拓(トヨタの未来)
 南アフリカ共和国のダーバンにあるホテル。アフリカの約40カ国をカバーするトヨタ自動車の販売代理店の代表者が3月に集まった。「顧客に近づいて強みを伸ばしていこう」。アフリカ本部トップの今井斗志光常務役員は代表者会議で檄(げき)を飛ばした。今井氏は1月、豊田通商からトヨタに役員として招かれた異色の経歴を持つ。豊田通商でアフリカ事業に約30年関わってきた。「中長期でトヨタをさらにアフリカで強くして欲しい」。今井氏が昨年11月、トヨタの豊田章男社長から言い渡されたミッションの一つがアフリカ攻略だ。アフリカの人口は2050年に25億人と中国を抜く規模に拡大する見込み。新車市場はまだ年間約120万台だが、人口増と経済発展で将来は巨大市場に育つと予測される。トヨタの販売台数はアフリカでまだ約20万台と、グローバルの約2%にとどまるが存在感は大きい。これから本格的に車の普及期に入る地域でマーケットリーダーの地位を守っていけるかはトヨタの未来の成長力を左右する。「フリートデー」と呼ぶイベントが数回に分けて南アフリカで昨年開かれた。アフリカの一般消費者にとって車は高根の花で、新車を買うのは政府や企業、非政府組織(NGO)が中心。こうした顧客を50団体ほど招き、工場やテストコースを見てもらう。フリートデーはトヨタや豊田通商など「オールトヨタ」で実施した初のイベントで優良顧客にトヨタをより身近に感じてもらい、ブランド力を高めるのが狙いだ。トヨタがアフリカで事業を始めたのは1950年代後半と早い。南アフリカなどに多目的スポーツ車(SUV)「ランドクルーザー」を輸出したのが始まりだ。62年には南アフリカで工場を稼働させ、地道にアフリカ各地に販売、サービス拠点も整備していった。自然が豊かなアフリカでは車の故障が命に関わるアクシデントになる。「頑丈で壊れにくい」といった評判が広がり人気となった。今井氏は「アフリカでは多くの人がトヨタ車を買いたいと言い、それを裏切ってこなかった。信頼の『残高』が高いと思う」という。ただアフリカでは中国や韓国勢の参入も相次ぎ、競争は激化している。車のシェアなど新サービスの浸透も予測され、従来の延長線ではない戦略も必要だ。「ウーバーのドライバーになるなら、トヨタ車はどうだい」。米ウーバーテクノロジーズがケニアに設けた拠点。ここでウーバーに新規登録する運転手に試験的に中古車を売り込んでいるのは豊田通商グループのトヨツウオートマートケニアだ。アフリカでは固定電話を飛び越え、スマートフォンが普及した。先回りしてニーズを取り込む。トヨタの新興国での存在感は東南アジアを除けば十分ではない。巨大市場に育った中国やインドでは出遅れが目立ち、巻き返しを急ぐ。そうした中、アフリカは長い年月をかけて市場を切り開き、開拓者としての強さを残す地域。試行錯誤を重ねながら「最後の辺境」で勝ち抜けるか。オールトヨタの総力戦が続く。

*1-3:http://qbiz.jp/article/133601/1/ (西日本新聞 2018年5月11日) JR九州が過去最高益 鉄道の収益も改善 3月期連結
 JR九州が10日発表した2018年3月期連結決算は、訪日外国人客の増加を受け鉄道旅客運輸収入が増えたことなどで、売上高が前期比8・0%増の4133億7100万円だった。経常利益が10・7%増の670億4500万円、純利益が12・6%増の504億1千万円となり、売上高、利益ともに過去最高だった。
新幹線利用客の増加や熊本地震の反動などで鉄道旅客運輸収入が46億円増加したほか、キャタピラー九州の連結子会社化などにより増収となった。九州豪雨や台風18号の災害による特別損失を38億円計上したものの、熊本地震があった前期より特別損益は改善した。単体の鉄道事業は282億円の営業利益を確保。株式上場に伴う経営安定基金の取り崩しなどによる利益押し上げ効果を除くと、実質的には約20億円の赤字だったが、増収や効率化で前期より大幅に改善した。青柳俊彦社長は記者会見で「ローカル線の赤字はさらに拡大している」とし、地方路線はなお厳しい状況にあると説明。自治体などの理解を得るため「鉄道事業の収支構造をある程度、お話しすることになるのではないか」と述べ、路線別の収支などを公表する可能性を示唆した。時期は未定としている。次期は、鉄道事業の減価償却費増加などにより、増収減益を見込む。

*1-4:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO30433100S8A510C1EA5000/?nf=1 (日経新聞 2018/5/12) ルノー・日産、主従は? 資本の論理か「実力」か
 仏ルノーが資本提携先の日産自動車からの利益を支えに業績を回復させている。ルノーの連結純利益に占める日産からの貢献分は5割を超えた。両社には資本関係を見直す構想も浮上しているが、どちらが連合のけん引役なのか考え方に相違がある。資本の論理か企業の実力か――。巨大自動車連合が新たな経営形態を模索する上で亀裂が生じる可能性がある。「あらゆる選択肢を排除しない」。両社の会長を務めるカルロス・ゴーン氏は、ルノーの最高経営責任者(CEO)としての任期が切れる2022年までに連合の新しい枠組みを築く意向を示す。背景には「日産をルノー傘下にしっかり組み込み、両社の関係を不可逆的なものにする」という仏政府の意向がある。ルノーと日産は99年に資本提携し、三菱自動車を加えた3社で連合を組んでいる。ルノーは日産に43%、日産もルノーに15%それぞれ出資しており、日産は三菱自株式の34%を保有する。ルノーは欧州債務危機などで業績が低迷した時期があったが、14年12月期以降は4期連続で連結純利益が増えた。株価も上昇し、13年末に約2兆2000億円だった時価総額は足元で約3兆4千億円と、一時は2倍近い開きがあった日産に近づきつつある。一見、ルノー本体の快走による好循環に見えるが、実は業績拡大を陰で支えているのは日産への出資から得た「持ち分法投資利益」だ。ルノーの純利益に占める日産からの利益の割合を有価証券報告書などをもとに計算(一部日経推定含む)すると、17年12月期のルノーの純利益51億ユーロ(約6600億円)のうち、約5割を日産からの利益が占める。13年12月期からの5カ年でみても、毎年5割以上を日産分が占め、多い年では純利益の全てを日産から得ている年もあった。日産株から受け取る配当金も巨額だ。日産は17年3月期に900億円近くをルノーに支払った。ルノーにとって日産は自動車産業のパートナーという立場を超え、「経営上もはや欠くことのできない存在」(外資系証券アナリスト)といえる。そのため、資本の論理でいえば43%を出資するルノーが企業連合の盟主になるが、日産からしてみると、ルノーの業績を支えている稼ぎ頭の「我こそが主役」という意識が強い。17年の販売台数も日産の581万台に対しルノーは376万台。ある日産幹部は「企業としての力は当社の方が上だ」と言い切る。日産とルノーが資本関係を見直す検討をしている背景には、ルノーに15%を出資する筆頭株主の仏政府からの圧力があるとされる。仏政府からすれば、時価総額が日産に近づきつつある今こそ、経営統合などルノー主導での日産の取り込みに絶好のタイミングと見ていてもおかしくない。日産の西川広人社長兼CEOは「会社ごと一体化することにメリットは見えない」と合併などの経営統合には慎重姿勢だ。新たな経営形態の骨格が固まるには水面下での綱引きがしばらく続きそうだ。

*1-5:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180513&ng=DGKKZO30433300S8A510C1EA1000 (日経新聞 2018年5月13日) 再生医療 応用で見劣り 日本の特許出願・論文、欧米中韓下回る
 iPS細胞をはじめとする再生医療分野で、応用研究に関連する特許出願では日本が欧米や中国、韓国の後じんを拝していることが、特許庁による調査で分かった。再生医療の国内市場規模は2030年には1兆8000億円になるとの試算もある。知的財産をおさえられると、将来的に市場を奪われかねない実態が浮き彫りになった。同庁は新産業につながる注目技術について、特許出願や学術論文の状況を調べる技術動向調査を毎年実施。今回は再生医療につながる「ヒト幹細胞」関連技術や電気自動車(EV)に使う蓄電池「リチウム2次電池」など12テーマを調べた。調査結果は14日発表する。ヒト幹細胞は様々な細胞に分化し、傷ついた組織や臓器の機能を戻す。07~15年では、幹細胞の分離精製・増殖など基礎技術の出願数は日本は米中と拮抗したが、細胞移植など応用に関する「再生医療・細胞治療」は米国は日本の約5倍、中国が約2倍に達し、欧州と韓国も日本を上回った。米中はiPS細胞より実用化で先行する胚性幹細胞(ES細胞)で応用技術を開発。同庁は「iPS細胞による再生医療産業の発展に影響する可能性がある」と分析する。論文数では出願者のランキング(07~15年)はトップは米カリフォルニア大学。仏国立保健医学研究機構、韓国のソウル大学校が続き、iPS細胞を発明した山中伸弥教授が所属する京都大学は8位だった。特許取得が現状の研究開発力を示すなら、学術論文は5~10年先の中長期の研究開発力を占う指標。日本の競争力に陰りが出ている。EVの走行距離を高める次世代電池として期待される「リチウム2次電池」の調査でも、日本の遅れが懸念された。リチウムイオン電池より性能が高い全固体電池は顕著だ。中核となる電解質材料に関する特許出願で酸化物系や硫化物系などを含めると日本は09~15年で1243件と222件で2位の韓国の6倍近く特許を出願するなど他国を圧倒した。トヨタ自動車は硫化物系、酸化物系ともに世界の主要企業を上回った。ただ中長期の研究力を測る論文数では日本は米や欧州、中国より少なかった。酸化物系は12~13年こそ日本の論文数は多いが、14年に米や中国、韓国とほぼ同じ水準。16年は米と欧州の論文数の半分。硫化物系は日本勢が16年も1位だが、米や欧州、中国、韓国との差は縮んできている。リチウム2次電池全体で見ても、出願者ではトヨタが2位、パナソニックが3位など日本が健闘するが、論文になると状況は変わる。12~16年の論文では1位の中国科学院から4位の清華大学まで中国勢が上位を独占。10位以内に中国籍の機関が8つ入る一方、日本は1つも入っていない。

*1-6:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180510&ng=DGKKZO30251050Z00C18A5EE9000 (日経新聞 2018.5.10) 武田メガ買収 投資銀が陰の主役、助言役、有力日米6社が獲得 野村とゴールドマン主導
 武田薬品工業によるアイルランド製薬大手シャイアーの買収は、日本のM&A(合併・買収)史を塗り替える案件になる。買収総額は7兆円弱と日本企業のM&Aで過去最大。舞台裏では案件獲得を狙う投資銀行の攻防があった。最終的に助言役に名を連ねたのは「オールスター」とも呼ぶべき日米の有力6社。欧州勢は苦杯をなめ、明暗をわけた。グローバルな再編を繰り返してきた製薬業界。日本勢は蚊帳の外に置かれてきたが、武田がついに社運を懸けて動いた。水面下で案件を主導したのが、国内証券最大手の野村ホールディングスだ。主幹事として築いた武田との長年の関わりを武器に、新株発行と現金を組み合わせた買収の仕組みを整えた。野村は昨年度のM&A助言の国内ランキングで首位だった。今回の1件だけで、野村が昨年度手がけたM&A総額(6兆7千億円)に並んだ。この巨額買収に関われたかどうか。投資銀行業界に与える影響は甚大だ。武田側には米JPモルガン・チェースも付いた。外貨調達など資金面でも支援する。フランス出身の武田のクリストフ・ウェバー社長が信頼を置くフランス人バンカーが在籍する米エバコアも助言役に入った。買収交渉はシャイアーが米国本社を置く米ボストン近郊、アイルランド、英国ロンドンなどを舞台に行われた。投資銀行が仲介し頻繁に国際電話をつないで詳細を詰めていったようだ。シャイアー側に付いたのはゴールドマン・サックス、シティグループ、モルガン・スタンレーの米大手3社。中でもゴールドマンが交渉を主導した。M&A助言業務は「売り手」の会社に付くのが鉄則。交渉が頓挫しない限り、確実に案件をものにできるからだ。投資銀6社が受け取る報酬総額は空前の200億円規模になる可能性もある。シャイアー買収を巡って武田と争ったアイルランド製薬大手アラガンは、買収検討を表明後に株価が急落。わずか数時間後に提案を取り下げた。米国勢で漏れたバンクオブアメリカ・メリルリンチはアラガンに助言していた。UBSやドイツ銀行といった欧州勢も苦杯をなめた。製薬業界では対抗提案が出ることも少なくない。ただ今回は日米6社が武田案件に関与し、競合他社が即座に対抗案を出すのが難しくなっている面もある。武田の買収がもたらす恩恵は助言業務以外にも広がる。約3兆円のつなぎ融資の後に想定される社債などの引き受けを巡り、すでに投資銀各社の動きが激しい。ただ、先行きは予断を許さない。巨額買収の負担を嫌気し武田株は年初来高値の1月中旬から3割強下げた。株主の支持を得られるかは不透明。今回は買収成立時に得られる成功報酬の比率が高いとされているのも難しい案件の証しだろう。日本企業では珍しい株式交換を活用し、巨額の買収に乗り出した武田。ある投資銀の幹部は「無事に成立すれば、成長を加速させる日本企業の大型M&Aへの道を開く」と期待を寄せる。

<日中韓首脳会談>
*2-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180510&ng=DGKKZO30285630Z00C18A5PP8000 (日経新聞 2018年5月10日) 日中、急速に「雪解け」 トランプ氏への危機感 後押し、自由貿易で連携強調 元建て債券の投資緩和
 安倍晋三首相と中国の李克強(リー・クォーチャン)首相は9日の会談で、経済を軸とした実務レベルの合意を成果として並べ、日中両国の雪解けを演出した。保護主義を強めるトランプ米大統領への危機感が、結果的に日中の関係改善を加速した形だ。ただ、両首相は、沖縄県・尖閣諸島をめぐる問題や歴史問題など両国間に横たわる火種は素通りした。安倍首相と李首相は9日の会談で、経済分野での連携姿勢を強調した。日本の金融機関が人民元建てで中国の株式や債券に投資する際の規制緩和や、日本産食品の輸入規制緩和に向けた協議体設立など合意事項をずらりとそろえた。2012年に日本政府が踏み切った尖閣諸島の国有化を機に、日中関係は「戦後最悪の状況」(日中外交関係者)に陥った。今回の合意は、関係が実務協力を進める段階まで回復したことを示す。急速な関係改善を後押ししたのはトランプ米大統領の「米国第一」の姿勢だ。中国は貿易問題などでの緊張を受け、日本を含む近隣国との関係修復を急いでいる。安倍首相には秋の自民党総裁選をにらみ外交成果を打ち出したい思惑があり、両国の利害が一致した。両首相がアピールしたのが経済協力だ。安倍首相は会談で「戦略的互恵関係の下、全面的な関係改善を進め、日中関係を新たな段階へ押し上げていきたい」と表明。会談後の共同記者発表では「日本と中国が力を合わせてアジアの旺盛なインフラ需要に応えていく」と述べた。李首相も「中日は世界の主要経済大国だ。共に国際貿易の自由化を守り、経済グローバル化の発展を推進することで合意した」と語った。 日中間で停滞していた金融協力で踏み込んだ。中国には機関投資家を対象に、元建てでの中国の株式や債券への投資を認める人民元適格外国人機関投資家(RQFII)の投資枠がある。取得しているのはアジアや欧米など10以上の国・地域で、日本の金融機関は政治情勢などを理由に与えられていない。今回の首相会談で2千億元(3.4兆円)の投資枠の付与で合意した。中国は外資の投資に規制をかけているが、RQFIIの枠を得た金融機関は新規株式公開(IPO)などに参加できる。枠を得ようとするメガバンクや証券会社などの動きが活発になる見通しだ。両国の通貨交換(スワップ)協定の再開に向けた協議入りでも合意。同協定は金融危機時などに互いに通貨を融通しあう仕組みだ。市場の混乱などで元の調達が難しくなった際、日銀を通じて調達できるようになる。第三国へのインフラ輸出でも協力。アジア開発銀行(ADB)の試算によると、アジアのインフラ需要は年1.7兆ドル(約185兆円)。両国は電力や交通、デジタル分野の輸出拡大に向け、企業経営者や関係閣僚による新たな枠組みをつくることで合意した。ただ、自由貿易の推進も、各論に入れば温度差がある。中国が震源とされる鉄鋼の過剰生産について、世耕弘成経済産業相は9日午前、中国の鍾山商務相に「市場歪曲(わいきょく)的な措置の除去が重要」と是正を求めた。知的財産の侵害問題でも、中国が外資企業に事実上、強制的な技術移転を求める制度などを温存している。

*2-2:http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2018051001001290.html (東京新聞 2018年5月10日) 【経済】日中両国で保護主義反対を 李首相が連携呼び掛け
 中国の李克強首相は10日、日本の経済界などが東京都内で開いた歓迎レセプションで「日中両国は世界の主要経済国として、保護主義に反対し、自由貿易を守る責任がある」と述べ、日中が連携して世界経済の発展に貢献すべきだと強調した。李氏は「(中国の現代版シルクロード構想)『一帯一路』と日本の成長戦略をつなぎ合わせたい」とも述べた。中国は、保護主義色を強めるトランプ米政権との間で貿易摩擦が激化する中、貿易や投資の面で日本との連携を強化したいとの思惑がある。「一帯一路」の日本への協力呼び掛けは、インフラ建設などで両国間の協力を深め、同構想を推進させたい考えがある。

<医療・介護の一部産業化>
*3-1:http://qbiz.jp/article/133273/1/ (西日本新聞 2018年5月7日) 2025年、未曽有の「超寿社会」 団塊の世代は全員75歳以上に 医療、介護費10年で膨脹
 今から7年後の2025年。人口に占める65歳以上の割合が3分の1に近づき、お年寄りの10人に6人は後期高齢者という未曽有の局面を迎える。「超寿社会」とでも呼ぶべき新たな時代だ。膨張する医療や介護の費用。急がれる認知症や孤独死への対策。18年度は政府のさまざまな取り組みが動きだす重要な節目だ。日本が直面する「2025年問題」を考える。
Q 「2025年問題」とは。
A 2025年は戦後の1947〜49年に生まれた「団塊の世代」全員が75歳以上に
  なる年です。第1次ベビーブーム世代とも呼ばれ、2015年の国勢調査によると
  約638万人。突出して人口の多いこの世代の高齢化が進むため、医療や介護サー
  ビスの需要が急増し、費用も大幅に膨らむと懸念されています。
Q なぜ75歳に着目するのでしょう。
A 個人差はあるものの、一般的には70代後半になると病気がちになり、足腰が
  弱って介護を必要とする機会が増えます。75歳以上は「後期高齢者」と位置付
  けられ、国の医療保険制度も別立ての仕組みになっています。高齢者の定義は
  65歳以上とされていますが、14年のデータによると65〜74歳の1人当たり
  年間医療費は平均で55万4千円なのに対し、75歳以上では90万7千円と1・6
  倍に。介護費も5万5千円から53万2千円と、10倍近くに跳ね上がります。
Q 1人暮らしや認知症の高齢者の増加も課題になりそうです。
A 未婚のまま老後を迎える人も増え、25年には65歳以上の5分の1は1人暮らし
  になります。認知症の高齢者は6年前のデータでは全国に462万人でしたが、
  25年には700万人程度まで増えるとみられています。1人暮らしだと家族が
  介護するのは難しいですし、認知症の人の介護には多くのマンパワーが必要で
  す。独居と認知症の増加により、高齢者人口の伸び以上に必要とされるサービス
  の量が増える可能性があります。
Q 医療や介護の費用はどこまで膨らむのでしょうか。
A 政府の推計では、25年度に年金や子育て費用も含め、社会保障給付費は
  148兆9千億円に上ります。このうち、医療には54兆円、介護に19兆8千億円
  を要します。15年度と比べると、医療は1・4倍、介護は1・9倍に膨らむ計算で、
  医療と介護がいかに社会保障費を押し上げるかが分かります。
Q 少子化も進んでいますし、社会保障の費用を誰が負担するのか難しい時代になりますね。
A はい。25年の高齢化率(総人口に占める65歳以上の割合)は30%。75歳
  以上だけでも2180万人で18%に上ります。「高齢者の高齢化」が進み、現役
  世代の負担の重さに拍車がかかります。1人の高齢者を税金や保険料で支える
  のに、1960年代は20〜64歳が9・1人の「胴上げ型」だったのが、2025年には
  1・8人で支える形となり、50年代には支え手が1・2人しかいない「肩車型」に
  なると説明されることがあります。そこで政府は、支え手を増やそうと女性の就労
  や高齢者の長期雇用を促しています。一部には外国人労働者の活用拡大を
  主張する声もあります。
    ◇   ◇
●人材確保へ待遇改善を 清家篤・慶応大客員教授
 2025年問題が深刻なのは、高齢者の増加で医療や介護の費用が加速度的に膨らむ点だ。年金の給付は受給者数に比例して伸びていくだけだが、医療・介護分野では、病気や要介護になりやすい75歳以上の後期高齢者の増加によって、給付は高齢者全体の増加率を上回るペースで増える。医療や介護は単なるお金の問題だけでなく、医師や看護師、介護福祉士といった人材を確保しなければならない点で、年金よりもずっと難しい。彼らが気持ちよく働いてもらう上で必要な人材育成や待遇改善を抜きにサービスの充実はあり得ず、そのための財源の確保は欠かせない。「介護離職」への対応も強化していく必要がある。自分の親や配偶者の親、あるいは配偶者の介護は切実な問題。仕事を続けたくても、介護サービスの供給が追いつかなければ、離職を余儀なくされる。労働者本人はもちろん、企業にとっても痛手だし、何よりも働き手が減るのは大きな社会的損失だ。何も手を打たなければ、これから30年までに800万人もの労働力人口が減少するとの推計もある。働く意思と能力のある人たちが、年齢にかかわりなく能力を発揮できる生涯現役社会をつくる。これが、豊かさと活力を維持していく鍵になる。高齢者や女性の就労を促進すると同時に、外国人雇用を広げることも視野に入ってくるだろう。
    ×   ×
*清家篤(せいけ・あつし) 慶応大商学部客員教授、日本私立学校振興・共済事業団理事長。専門は労働経済。2009〜17年、慶応義塾長。政府の社会保障制度改革国民会議で会長を務めた。1954年生まれ。東京都出身。

*3-2:https://www.agrinews.co.jp/p43816.html (日本農業新聞 2018年4月16日) 外国人受け入れ 労働環境 他産業並みに
 愛知県、新潟市、京都府は国家戦略特区制度を活用し、外国人労働者の受け入れを始める。より良い人材の確保と雇用後の混乱を避けるためには、農業も他産業並みの労働環境・条件にしていく必要がある。全国に先駆けた取り組みで、内閣府や自治体などで構成する「適正受入管理協議会」が設置され次第、受け入れが始まる見通しだ。懸念されるのは、特区の仕組みとこれまでの技能実習生とは、割増賃金、休日などの労働条件が違うことだ。認識不足のまま受け入れた場合、現場での混乱が心配される。国内の労力不足が深刻化する中、外国人に産業を支えてもらおうと各地で受け入れが進んでいる。法務省が発表した2017年末の在留外国人の数は前年比7・5%増の256万人で過去最多を更新した。農業分野も、今や大規模な産地ほど外国人の力なしに成立しない状況になっている。国家戦略特区制度を活用して外国人労働者の受け入れを表明した愛知県は、18年度予算に農業支援外国人受入事業308万円を計上。出身地の母国語に対応できる電話相談窓口を設け、長期雇用できる環境を整えることで“強い農業”の実現につなげたい考えだ。留意すべきは、特区制度を利用して農業現場で働く外国人労働者と技能実習生とは労働条件に違いがあることだ。労働基準法では、休憩時間を除き1日8時間、1週40時間までと法定労働時間を設けている。だが、農業は気象条件に左右されやすく、悪天候の日や農閑期に休みが取れるため、この規定の適用除外となっている。つまり、1日8時間を超えて働かせてよいなど、労働時間や休日、休憩を自由に設定できる。所定の労働時間を超えた場合は超過分の賃金を払う必要はあるが、法律で定めた「割増賃金」を払う必要はない。一方、技能実習生は「労働生産性の向上のために、適切な時間労働管理を行い、他産業並みの労働環境を目指していくことが必要」(農水省就農・女性課)との観点から、法に準拠した労働時間や休憩、休日などが求められ、残業した場合も割増賃金を支払う必要がある。特区雇用の外国人と外国人実習生の間に、割増賃金の支払いをはじめとする労働条件の差を持ち込んだ場合、現場が混乱する恐れがある。農業法人などで働く日本人の労働者も同様だ。農業の労務管理に詳しい特定社会保険労務士の入来院重宏氏は「雇用確保に向け、最近では農業でも1日8時間を超えて労働させた場合などは割増賃金を支給するケースが増えている」と指摘する。農水省で農業の働き方改革について検討が始まり、他産業並みの労働条件に見直す動きも相次いでいる。農産物を購入する消費者を含めて「安ければいい」という考えを根本的に改める時にきているのではないか。

*3-3:https://www.secom.co.jp/lp/hs/s14/?utm_source=yahoo&utm_medium=cpc&utm_campaign=AG502yss&wapr=5adf286e セコム見守りサービス、セコムホームサービス 

*3-4:http://www.tokyu-welina.jp/ 東急ウェリナ、東急電鉄のシニアレジデンス
シニア世代の皆さまに安心で心豊かな人生を過ごしていただきたい。東急ウェリナは、東急電鉄の100%子会社である東急ウェルネスが運営するシニアレジデンスです。東急電鉄は、これまで街づくりを事業の根幹に置き、長年にわたって沿線に暮らす人々の生活に密着した様々なサービスを提供してきました。そんな東急電鉄が街づくりの集大成として掲げた事業がシニアのための住まい、生活区間の提供です。「この国の発展を担ってこられたシニア世代の皆さまに安心で心豊かな人生を過ごしていただきたい。『終のすみかとしてここを選んでよかった』と思っていただける住まいとしたい」。それが私たち東急ウェリナの使命と捉え、東急グループの知識とノウハウを結集し、住む方が誇りをもってお住まいいただける上質な住環境をお届けいたします。

<エネルギーの転換>
*4-1:http://www.shinmai.co.jp/news/nagano/20180430/KT180428ETI090006000.php (信濃毎日新聞 2018年4月30日) エネルギー計画 方針転換に踏み込む時
 方針転換を先送りにした計画では、エネルギー安定供給の要請に応えられない。
経済産業省が有識者会議に示した次期エネルギー基本計画の骨子案である。国の中長期的なエネルギー政策の指針となる。原発依存度をどう下げるか。再生可能エネルギーをどう拡大するか。道筋を示していない。計画は3年ごとに見直される。いまの計画は、2030年度の原発の発電割合を20〜22%、再生エネを22〜24%としている。骨子案は、これを据え置いている。原発は12年の原子炉等規制法の改正で、運転開始後40年の廃炉が原則になった。現在ある原発は老朽化が進む。ルールを徹底すると、30年の原発比率は2割を大きく下回ると指摘されている。据え置かれた原発の割合を達成するには、新増設や運転延長が前提となる。福島第1原発事故を踏まえれば、安全面からも認められない。世論の批判が強い原発を温存するのに加え、「重要なベースロード電源」との位置付けも踏襲している。原発が低コストとする根拠も揺らいでいる。事故後に厳しくなった国の新規制基準に対応するには、大規模な安全対策が必要だ。仮に20年の運転延長が認められても、最長60年で廃炉になる。出力が小さい原発ほど採算は合わない。四国電力伊方2号機など、採算面から廃炉を選ぶ事例も増えている。骨子案は原発の「再構築」を提言しているが、具体的内容がはっきりしない。これではエネルギー政策の指針の役目は果たせない。新増設は経済面からも厳しくなっている現実を直視すべきだ。次期計画は、2050年に温室効果ガスを8割削減する国際公約に対応する必要がある。このため、30年に加え、50年に向けた長期戦略を含む内容となる。骨子案は太陽光や風力などの再生エネについて、主力電源化を進めると明記した。一方、50年の発電割合目標を示すことは見送った。本気度が疑われる。原発が実質的に高コスト化する一方で、再生エネへのシフトは世界的な潮流となっている。日本は立ち遅れている。再生エネの普及に向けた課題解決には、公正な競争を促す電力市場の整備や、送電網の適正な運用といった取り組みが欠かせない。原発依存から脱却して再生エネに比重を移す―。政府は、転換方針を計画でより具体的に打ち出していくべきだ。

*4-2:http://www.kyoto-np.co.jp/info/syasetsu/20180429_3.html (京都新聞社説  2018年4月29日) 再生エネ転換  主力電源化へ具体策示せ
 経済産業省が新しいエネルギー基本計画の骨子案を策定した。再生可能エネルギーの「主力電源化」を初めて盛り込む一方、原子力や火力発電も温存し、時代遅れの感は否めない。太陽光や風力といった再生エネへの転換を急ぐ世界的な潮流に日本だけが取り残されてはなるまい。経産省の有識者会議がまとめた2050年を見据えたエネルギー長期戦略の提言を踏まえ、30年に向けた指針に加え、50年への戦略を示した。新計画は今夏にも閣議決定される。温暖化対策の国際枠組みである「パリ協定」に基づき、日本は50年に温室効果ガスの排出量を8割削減する目標を掲げている。脱炭素化に向けて、これまで軽視されがちだった再生エネ転換に本腰を入れる姿勢は一歩前進であり、評価できる。だが長期的な電源ごとの発電割合や具体的な道筋は示さなかった。技術革新の進展の予想は難しいとはいえ物足りない。日本は原子力や火力を重視してきたため、再生エネの発電比率は15年で14・6%にとどまり、イタリア39・8%、スペイン35・3%、ドイツ30・6%などに比べ遅れが際立つ。コスト面でも16年に欧州平均で1キロワット時当たり10円の太陽光発電費用が日本では20円と割高だ。再生エネ転換の遅れを取り戻すには、価格引き下げや安定供給への技術開発が鍵となる。発電効率の向上に加え、発電量が天候に左右されやすいため需給の調整技術や高性能な蓄電池の開発、電力需要の大きい都市部への送電網の増強-といった課題を一つずつ着実に解決していかねばならない。最も疑問符が付くのは原発の将来像だ。東京電力福島第1原発事故後、脱原発を求める世論は根強く、「原子力政策の再構築」を掲げた。「可能な限り依存度を低減する」という現行の政府方針を維持して原発の新増設にも言及しなかったものの、安全性の高い原子炉の開発や核燃料サイクル政策を進めるという。原発のあり方が曖昧な状況が今後も続きそうだ。国内産業は発電コストの安い原発抜きに海外と勝負できないとの経済界の意向が透ける。だが福島事故後、安全対策費用がかさむ原発は割安な電源と言い難い。脱原発を鮮明にしてこそ、原発に頼らない新技術の開発や投資も強い動きとなろう。「化石燃料の効率的・安定的利用」にも固執した。効率の悪い石炭火力を廃止してCO2の排出が比較的少ないガス火力への移行は当然だが、火力発電の温存は脱炭素化に逆行する。これとは別に政府は先日、本年度から5年間程度で取り組む第5次環境基本計画を閣議決定した。環境省主導で再生エネ活用を推進する方針だが、経済活動への影響を懸念する経産省の戦略とは相いれない。双方の整合性が欠かせない。新計画でも再生エネの発電割合を30年度に22~24%という目標は据え置くが、原子力や火力に過度に依存していては再生エネへの転換は進まない。国際水準に比べて遜色なく、国民の理解を得られる再生エネ戦略の道筋を明確に示すべきだ。

*4-3:http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201805/CK2018051302000140.html (東京新聞 2018年5月13日) 【政治】<原発のない国へ>全電源、自然エネにできる 小泉純一郎元首相インタビュー
 小泉純一郎元首相(76)が本紙のインタビューに応じ、原発事故後も原発稼働を前提とする安倍政権のエネルギー政策を「反省がない」と批判するとともに、「原発支援のカネを自然エネルギーに向ければ、原発が供給していた30%程度の電力は10年で自然エネルギーで供給でき、将来、全電源を自然エネルギーでできる国になる」と、原発稼働を直ちにやめ、自然エネルギーへの転換を促進すべきだとの考えを強調した。小泉氏は「首相の権限は強い。もし首相が(原発ゼロを)決断すれば、自民党はそんなに反対しない」と政治決断を求めるが、安倍晋三首相では「やめられない」とも述べ、原発ゼロの実現には首相交代が必要だとの考えを強調した。原発ゼロの実現を期待できる政治家として河野太郎外相の名を挙げた。自らが進める原発ゼロに向けた運動と野党との連携については「自民党の首相がそういう(原発ゼロの)決断をすれば、野党は黙っていても喜んで協力する」と否定した。小泉氏は福島第一原発事故後、「安全で、コストが一番安く、永遠のクリーンエネルギーだという原発推進論者の三つの大義名分がうそだと分かった」と指摘。「(原発事故後の)七年間(事実上の)原発なしで一日も(大きな)停電がない。原発ゼロでやっていけることを証明している」と、原発ゼロは即時可能だと強調した。また、使用済み核燃料の最終処分場建設の見通しが立っていないことに関し、「処分場を見つけられない原発を政府が認めることが不思議で仕方がない」と厳しく批判した。使用済み燃料を再処理して、燃料として再利用する核燃料サイクル事業は「破綻している。永遠の夢の原子炉と言われたもんじゅは故障で幻の原子炉になった。まさに無駄遣いだ」と撤退を提唱した。安倍政権が進める原発輸出政策については「危険性があり、自分の国で(原発建設が)できないから外国に売り込もうとする発想が分からない」と批判。潜在的な核抑止力になるとして原発を推進する意見には「なんで抑止力というのか分からない。日本が核兵器を持てるわけがない。そういうことを言う人の理論が分からない」とした。このインタビューは十一日午後、東京都品川区の城南信用金庫本店で行われた。
<こいずみ・じゅんいちろう> 1972年の衆院選で初当選、連続12期務める。厚相、郵政相を歴任し、2001年に首相就任。戦後4位となる5年5カ月の長期政権を築いた。09年に政界引退。東京電力福島第一原発事故後、原発ゼロを訴えて講演活動を続ける。近著に「決断のとき-トモダチ作戦と涙の基金」。76歳。
◆世界2040年に再生エネ66%予測
 2011年の東京電力福島第一原発事故後、国内の全ての原発が運転を停止した。しかし政府は再稼働を急いでおり、現在は関西電力大飯原発(福井県おおい町)など5基が稼働中。発電に占める原発の割合は16年度には1.7%に低下したが、政府はこの数値を30年度には20~22%に高める目標をエネルギー基本計画で示している。政府は来月下旬にも決める新たな基本計画でも、この数値を維持する方針だ。一方、海外では福島の原発事故後、ドイツ、韓国が原発ゼロ政策に転換。依存度引き下げを目標に掲げる国も相次ぐ。米情報会社ブルームバーグ・グループによると、40年時点で世界全体の発電に占める原発の割合は3.5%に低下。逆に、再生可能エネルギーは66.3%に上がる見通し。

<対馬・沖縄の開発について>
PS(2018年5月15日追加):*5-1には、人手不足で新たに福岡から2人を雇い、近くに従業員用アパートを建てる計画だと書かれているが、韓国語のできる日本人より日本語のできる韓国人の方が多いため、日本語のできる韓国人を雇用した方が早いし、韓国人のニーズを把握しやすいのではないだろうか。さらに、対馬に来れば日本のものは何でも買えたり、日本の最先端医療・リハビリ・介護などを利用できたりするようにしておけば、中国・韓国などから買物や治療目的で定期的に来る人も増えるだろう。
 なお、*5-2の沖縄は、観光客は増えたものの在日米軍専用施設がまだ約70%も存在し、県民本位の経済開発になっていない。そのため、どうすれば長所を伸ばして県民本位の発展ができるかについて、内閣府特命担当大臣(沖縄及び北方対策、海洋政策)の福井氏を交えて沖縄開発総合計画を作り、実行すればよいと考える。福井氏は、国土交通省出身で沖縄担当大臣になる前に海洋基本法を中心となって作られ、地盤の高知県でも同じように地域振興の問題を解決しようとしておられるので、こちらから行った方が話が速いと考える。

*5-1:http://qbiz.jp/article/132240/1/ (西日本新聞 2018年4月20日) 韓国人客26万人に焦る過疎の町 「商機」でも…店、人手不足 対馬の玄関口・比田勝港
 近年、観光地として韓国人に人気の長崎県対馬市で、急増する旅行者の受け入れ態勢づくりが追い付かないでいる。特に北部の玄関口、比田勝(ひたかつ)港周辺では観光客向け施設や店舗が足りず、働き手不足にも悩む。地元の商工会は「韓国人観光客を照準にした創業相談も増えているが、十分なサービスを提供するには程遠い状況」と、過疎の町に訪れた商機を生かせない現状に気をもむ。比田勝から韓国・釜山までは直線距離で50キロ余り。日韓の5社が高速船を運航し、最短1時間10分で結ぶ。韓国人観光客が増える契機となったのが2011年3月の東日本大震災。韓国で日本への観光旅行が敬遠される中、同年10月にJR九州高速船(福岡市)が比田勝−釜山に「ビートル」の定期航路を開設すると、韓国人に「近場の対馬なら」という機運が広がり、手頃で自然豊かな海外旅行先として人気となった。11年まで年間2万人前後だった比田勝港への入国者数は、12年に約8万人と激増。その後も年々増え続け、17年は26万人余りが比田勝港から入国し、対馬市への総入国者の72%が利用、対馬中心部の厳原港より約16万人も多かった。だが、比田勝地区周辺は人口1500人程度の過疎の町。そこに出国者も含めると、多い日で3千人前後の韓国人が行き来するため、既存の店舗や施設ではとてもさばききれない。韓国人観光客向けの新規店舗を開業しても、地元には働き手がなく、韓国語を話せる人材も皆無に等しい。港近くにある創業70年のすし店「みなと寿し」では毎日、昼時に行列ができる。客の急増を受け、昨年春に20代の職人を福岡市から呼び寄せた。「まだ人手は足りないが、地元に雇える人もいない」と3代目店主の武末智彦(のりひこ)さん(42)。5月までに新たに福岡から2人を雇い、近くに従業員用アパートを建てる計画だ。今月27日には、比田勝港国際ターミナル前に、地域初のコンビニ「ポプラ」が開店予定。フランチャイズ契約するJTC(福岡市)によると「当初、求人への反応は鈍かったが、何とか開店できる形を整えた」と、従業員5人を確保した。ただ、年中無休の店舗を運営するには「ぎりぎり」で、求人を継続するという。対馬市商工会上対馬支所ではハングル講座も開かれている。4月に支所長となった山岡審司さん(55)は比田勝出身。子どもの頃から過疎化が進む故郷を見てきただけに「町の変化には驚くばかり。このチャンスを逃さないよう、対応策をしっかりと考えたい」と話している。

*5-2:https://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-718771.html (琉球新報社説 2018年5月15日) 日本復帰46年 沖縄振興の根本的転換を
 1972年の5月15日、沖縄は日本に復帰した。その前年の71年11月、沖縄国会と言われた第67臨時国会に、琉球政府の屋良朝苗行政主席は復帰措置に関する建議書を提出した。建議書は「はじめに」の項で「基地のない平和の島としての復帰」を望んだ。復帰後も改善されない最も大きな障害は米軍基地の存在だ。在日米軍専用施設の集中度は復帰時の約75%から約70%に減るにとどまり、整理縮小は進んでいない。2016年の米軍属女性暴行殺人事件、米軍普天間飛行場所属の垂直離着陸輸送機MV22オスプレイの名護市安部墜落、17年の普天間第二小学校への米軍ヘリ窓落下事故など事件事故が頻発し、県民の命が脅かされている。しかし基地の負担を軽減するどころか、安倍政権は普天間飛行場の名護市辺野古への新基地建設を強行している。沖縄県知事が明確に反対し、新基地建設の賛否が争点となった全県選挙ではほぼ反対の候補者が当選した。建議書が掲げた「地方自治の確立」は、新基地建設を強行する政府によって妨げられている。建議書は「県民本位の経済開発」も掲げた。本土に比べて大きく立ち遅れた沖縄の振興策として、約10兆円の「振興開発費」が投下された。確かに道路や港湾などインフラは大きく進んだ。しかし県民所得は全国平均の約7割、失業率は全国ワーストといった貧しさの部分は解消していない。子どもの貧困率は全国平均の2倍に上る。保育サービスが貧弱で、待機児童が多く、保育料は高い。離島の過疎化も深刻だ。過去の沖縄振興は社会資本整備に偏り、教育福祉施策を充実させる努力を怠ってきた。沖縄振興の仕組みを根本から見直す必要がある。12年に始まった沖縄振興一括交付金は、地域主権に基づいた沖縄の裁量による予算との当初の意義付けは失われ、基地政策の見返りで予算の多寡が決まる、国にとって都合のよいものとなってしまった。それが沖縄振興のゆがみを増幅している。復帰と同時に始まった沖縄振興開発特別措置法に基づく沖縄振興計画は第5次の折り返し点を過ぎた。私たちは第5次の終わりと、次の沖縄振興の仕組みを真剣に論議し、真の「県民本位の経済開発」を考えねばならない時期に来ている。建議書が挙げた新生沖縄像は、国家に押し付けられるのではなく、自らの未来を自らが決めるという姿だ。苛(か)烈(れつ)な沖縄戦と米国統治による圧政を経験した呻吟(しんぎん)の中から生み出された県民全体の願いと言えよう。自立と自律。これを実現することこそ、次世代に対する私たち世代の責任だ。沖縄自治構想会議は「沖縄エンパワーメント」と題した構想を発表し、沖縄振興と自治の在り方の根本的転換を提唱している。沖縄の将来について考える日としたい。

<経産省の阿保ぶり>
PS(2018年5月16日追加):経産省は、*6のように、2030年に向けて中長期的エネルギー政策の方向性を示す「第五次エネルギー基本計画」の素案を公表したが、その内容は、①再生可能エネルギーの主力電源化を打ちだし ②原発への依存度を可能な限り低減するとしながら ③原発を「重要なベースロード電源(?)」と位置付けて ④2030年度に目指す電力量のうち20~22%を原発で賄うとする電源比率の目標を維持する(??) というものだ。しかし、2030年度に20~22%なら現在よりもずっと高い比率であるため、原発への依存度を可能な限り低減するという内容と、完全に矛盾する。つまり、環境・エネルギー政策・地域経済のいずれも、経産省を当てにしてはならないということになる。

*6:http://www.tokyo-np.co.jp/article/economics/list/201805/CK2018051602000255.html (東京新聞 2018年5月16日) 【経済】原発のない国 機運高まる中 エネ計画 原発推進鮮明
 経済産業省は十六日、二〇三〇年に向けた中長期的なエネルギー政策の方向性を示す「第五次エネルギー基本計画」の素案を公表、審議会に示した。原発については「重要なベースロード(基幹)電源」と位置付けるとともに、「原子力政策の再構築」を掲げ、再稼働や核燃料サイクル、原発輸出などの推進姿勢を明示した。基本計画は三~四年に一回、見直す。三〇年度に目指す電力量のうち、原発で20~22%をまかなうとする電源比率の目標は維持する。目標達成には、原子力規制委員会で審査中の全原発でも足りない三十基程度が必要とされ、実現性を疑問視する声は根強い。素案は原発に関し「可能な限り依存度を低減」としつつも、再稼働を進めるという従来の方針を踏襲。今回は新たに、五〇年までに温室効果ガスを大幅に削減するための「実用段階にある選択肢」との位置付けも加えた。高速増殖原型炉もんじゅ(福井県敦賀市)の廃炉などで実現が見通せない核燃料サイクルも、推進姿勢を変えなかった。新増設は明記しなかったが「安全性・経済性・機動性に優れた炉の追求」を掲げ、その余地を残した。一方、再生可能エネルギーは主力電源化を打ちだし、送電網への受け入れ強化や不安定さを補う技術などの課題解決を進める。ただ、委員から「主力電源にするなら目標も変えるべきだ」との意見が出ていた三〇年度時点の目標は、従来の22~24%に据え置いた。経産省は素案を取りまとめ、与党と調整した上でパブリックコメント(意見公募)を実施し、六月末にも閣議決定したい考えだ。
◆4年の変化反映せず
 経済産業省のエネルギー基本計画の素案は、二〇一四年以来四年ぶりの見直しをうたいながら、この間の情勢変化に正面から向き合ったとは言えない内容となっている。東京電力福島第一原発事故以降、再稼働した原発は八基で、一六年度の電力量に占める原発の割合は1・7%。三〇年度の目標の20~22%を実現するには、稼働から四十年たった古い原発を十数基、運転延長したり、原発を新設したりすることが必要となる。どちらも実現性に乏しい。福島の事故以降、原発の安全対策規制が強化され建設費用は増加。工期の遅れも常態化している。米原発大手ウェスチングハウス・エレクトリックは、米国で原発新設の工期遅れを繰り返し一七年三月に破綻。三菱重工業などがトルコで進める原発計画は、総事業費が当初想定の二倍の四兆円以上に膨らむとみられ、伊藤忠商事が三月に撤退した。日立製作所が進める英国の原発新設も総事業費が三兆円規模に膨らむことから、支援を巡る英政府との協議が難航している。一方、再生可能エネルギーはコスト低下と導入拡大が進む。一七年の太陽光発電の平均入札価格は一〇年の三分の一以下の十一円に低下。一五年には累積設備容量で風力発電が原発を超え、一七年には太陽光発電も原発を追い抜いた。この四年の変化を踏まえれば原発の目標を下げ、再生エネの目標を引き上げるのが自然だ。だが、両方とも変えずに据え置くという経産省の姿勢からは、原発の存続を目指す意図が透けてみえる。

<風力発電機の改良>
PS(2018年5月19日追加):*7-1のように2重羽根にするよりも、扇風機のような6枚羽にした方が、安価で風をエネルギーに変える力が強いのではないだろうか。また、①鳥を巻き込まない ②音や低周波を出さない などの環境に配慮したスマートな構造にすることは必要不可欠で、それには、農協などの身近に需要のあるところと組んで農家の要望を取り入れて改良し、よいものができれば、これも日本だけでなく世界で売れる製品になると考える。
 なお、風力発電機に監視カメラを付けて見張り役も兼ねさせ、*7-2、*7-3のように人間が相手の場合は警察やセコムなどが駆けつけて逮捕し、*7-4のように、有害鳥獣が相手の場合は捕獲するか、DNAに嫌だと刻みこまれた天敵の鳴き声を発して追い払うかするシステムにすればよいのではないだろうか。


*7-1より             その他の工夫型風力発電機

*7-1:http://qbiz.jp/article/134170/1/ (西日本新聞 2018年5月19日) 電力新時代:2重羽根で発電に新風 元九大生起業のベンチャーが実用化 小型「風洞」も今夏販売
 風力発電機の羽根を前後2重にして発電効率を高める装置を開発したベンチャー企業「日本風洞製作所」(福岡県久留米市)が、第1号の製品を納品した。開発の過程で生まれた小型の風洞試験装置も商品化のめどがついて今夏に販売開始予定。新しい発想の製品で“風”を巻き起こすか注目される。同社は、九州大で風車の研究をしていたローン・ジョシュアさん(23)=長崎市出身=が在学中の2016年に起業した。羽根を2重にすると風を受け止めやすく有効に使える一方、前後の羽根の回転数が異なり、エネルギーを発電機にうまく伝えにくい課題が生じる。ローンさんは動力を統合して効率よく伝える装置を考案、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の助成を受けて実証試験をした後、17年から受注生産を始めた。第1号は高さ4メートル、羽根の直径2・2メートル、出力1キロワットの風力発電機を2基。2月末、福岡市東区の原看護専門学校の屋上に取り付けた。年間の総発電量は同等サイズの発電機の約2倍を見込み、駐車場の照明などに利用する。風車は強風による故障が課題だが、風速25メートル以上になると自動で風車を倒して保護する最新のシステムも取り入れた。今後は出力5キロワットや20キロワットなど製品の大型化を進める。既に西日本シティ銀行などが設立したファンドや一般企業から開発資金を調達。汎用(はんよう)の部品も活用し、導入経費を抑え「通常よりコストパフォーマンスが50%高い風車を売りにする」とローンさんは意気込む。風車研究の一環で造った風洞試験装置も注目されている。人工的に風を起こして空気抵抗を測る装置で、高さ、幅ともに1・5メートルほどに小型化したのが特徴。大学や大手企業が持っているこれまでの風洞装置は一戸建て住宅ほどの大きさがあったという。空気抵抗が重要な自転車産業の見本市に17年に出展したところ、約100社から問い合わせがあり、受注にもつながった。「研究開発に使いたいという需要が多い」とローンさん。風洞と風力発電機の相乗効果にも期待する。

*7-2:https://www.agrinews.co.jp/p43677.html (日本農業新聞 2018年3月31日) 果樹盗難 感知、警告 山梨・JAこま野と富士通がシステム 市内全域に導入
 JAこま野と富士通、富士通アイ・ネットワークは、4月から果樹盗難抑止システムの運用を始める。JAが管轄する南アルプス市内全域で導入。ここまで広範囲の導入は全国初の試みだ。果樹園への不審者の侵入を感知し、サイレンなどで警告することで果樹の盗難被害を減らす狙い。電源は太陽光発電を利用により、低コストで稼働できる。JAの依頼で富士通などが3年前から開発に取り組んできた。遠赤外線センサーで直径30メートルの範囲を360度監視、侵入者を感知すると威嚇音と赤色灯で警告し、園主にはメールで通知する。小動物などによる誤作動を防ぐため、水平方向と下方向に向けた二つの遠赤外線センサーを組み合わせて対応する。JAは30台を用意し、希望する農家に月額のリース契約で貸し出す予定。農家は盗難の危険がある収穫期だけ契約できるため、費用負担の軽減につながる。JAの小池通義組合長は「多くの農家に利用してもらい、防犯センサーがあるという情報が広まることで、盗難防止につなげたい」と期待を込める。JAは組合員向けの説明会を開き、順次農家へのリースを開始する。園地での使用を考えて電源はソーラーパネルで発電、消費電力の少ない無線方式を導入。太陽光がなくても4日間は稼働できる。設置や移動が簡単なため、収穫時期に合わせて、園地を移動させて使うこともできる。オプションで気温や湿度を計るセンサーの取り付けも可能で、さまざまなデータ管理ができる。28日には、JA本所で「果樹盗難抑止サービス導入に関する協定」の調印式を開いた。

*7-3:https://www.agrinews.co.jp/p44091.html (日本農業新聞 2018年5月17日) 野菜盗難相次ぐ 被害者落胆 「栽培やめる」 宮崎県延岡市
 宮崎県延岡市で、野菜の盗難が相次いでいる。収穫直前の野菜を、時期を見計らったかのように盗む手口だ。被害に遭った農家は「悔しい。苦労を踏みにじる行為で許せない」と口をそろえる。「栽培をやめる」と意欲をなくす人も出ており、野菜泥棒が地域農業の大きな問題になっている。同市大貫町の富山重利さん(82)は11日、JA延岡の直売所「ふるさと市場」に出荷する直前だったニンニク30本以上を盗まれた。午前7時ごろに畑に行き、ニンニクがごっそりなくなっている光景にがくぜんとした。富山さんは50アールの畑でブロッコリーやエダマメ、レタスなどを通年栽培する。以前から盗難に遭っていたが、今年に入り度重なる盗難に悩まされるようになった。富山さんは「自転車で周辺を見回っているような不審な人物を見掛けた。近所の人たちも知っている。証拠がないので何とも言えないが」と、やるせない表情だ。すぐに警察に相談し、「自分でも看板を設置するなど対策をしてほしい」とのアドバイスを受けた。畑の周囲にネットを張ったが、「無駄な労力と経費。今後も続くようなことがあれば、被害届を出す」と話す。また、出荷前の野菜を何度も盗まれた同市片田町の70代の女性は「1、2個程度なら諦めもつくが、大量に持って行かれるとやる気がなくなる」と話す。軽トラックなどを使った大胆な手口という。「もう気力もなえた。栽培中の野菜もあるので年内は農業を続けるが、その後はやめようと思う」と肩を落とす。野菜だけでなく、肥料を入れるバケツや、トラクターなどを圃場(ほじょう)に入れる際に使う農機ブリッジなどの資材を盗まれる被害もある。

*7-4:http://www.saga-s.co.jp/articles/-/213180 (佐賀新聞 2018年5月19日) 有害鳥獣の駆除学ぶ 行政、農業関係者ら、上峰町で11人
 上峰町の有害鳥獣対策講習会が1日、野生獣類捕獲技術研修センター(みやき町)であった。行政関係者や農業者、地域住民、狩猟免許所持者ら11人が、狩猟と有害鳥獣駆除の違いやわなの構造などについて知識を深めた。上峰町は昨年11月、狩猟免許取得費用に補助金を出すなど、有害鳥獣駆除に力を入れている。講習会は有害鳥獣の「捕獲駆除隊」発足に向け、関係者の知識や技術の向上を目指そうと開き、今後も月1回程度実施する予定。同町と連携協定を結ぶ捕獲用品開発製造の「三生」(鳥栖市)の和田三生社長が講師を務めた。講習会では、和田社長が狩猟と有害鳥獣駆除の違いについて、「有害駆除は農業や林業に被害があった場合の緊急避難的な捕獲で、短期間で終息させるのが大事」などと説明。わなの性能に加え、それを使う人の技術力が重要だと強調した。また、同社が開発・製造したイノシシや小動物用の箱わなを見学。参加者はわなの構造や、動物がかかった時の器具の動きなどを興味深く観察した。自ら狩猟免許を取得し、講習にも参加した武広勇平町長は「箱わなの種類が数多くあるなど知らないことばかり。有害鳥獣の被害軽減に向け、駆除のICT化などにも取り組みたい」と話した。上峰町内の狩猟免許所持者は現在5人。イノシシやカラスによる農作物への被害が増加しているほか、水路や法面の破壊も問題となっており、町によると被害額は年間数百万円に上るという。

<中国の壮大な都市計画と日本>
PS(2018年5月20、21日追加):中国は、*8-1のように、「1000年の大計画」として次世代の先端技術を活用した自動運転のスマートシティーを北京の南西約100kmの農村に作るそうで、計画性なく掘ったり埋めたりして無駄遣いしながら進歩していない日本と違い、計画が壮大で羨ましい。ただ、道路や鉄道などの交通インフラを地下に作ると、走りながら街を見て暗黙知の情報を得たり、景色を見たりする楽しみがなくなるのは残念だ。日本の場合は、定期的に地震・津波が来るため地下は危険であり、3階建ての道路網・鉄道網を作った方がよいと思う。
 なお、こうなると、産業だけでなく街づくりや環境も中国の方がよくなり、*8-2のように、「日本語を勉強して日本で技術を学んだのは損だった」という結果になる。そのため、これからも外国人に来てもらえる国であるためには、外国人差別を止め、労働者として働く資格を与え、技能の資格取得者には高度な専門性を持つ人材と同様に永住資格を認めるべきである。
 また、*8-3のように、トラックのドライバーが不足し、情報誌で求人しても反応がなく、廃業や事業売却を余儀なくされる業者もあるそうだが、ニューヨークでタクシーに乗るとインドやバングラデシュ出身の運転手が多い。トラックは、(和英両用の)ナビと運転技術があれば、日本語がうまくなくても運転できるため、運転手にも外国人を採用したらどうかと考える。


  *8-1より                        *8-2より

(図の説明:中国は、北京市近郊に2035年に1000年の大計画で未来都市を作り上げるそうで、全体としては魅力的だが、自動車道や鉄道が地下に埋設されて風景を楽しむことができなくなるのは残念だ。日本の場合は、地震・津波の多い国であるため、地下は危険であり3階建くらいの道路・鉄道網がよい。どちらにしても、世界では人口ボーナスがあるうちに外国人労働者を入れなければ、それぞれの国が少子高齢化社会になってからでは外国人労働者も来ないだろう)

*8-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180520&ng=DGKKZO30735500Z10C18A5MM8000 (日経新聞 2018年5月20日) 中国、自動運転の新都市 2035年にも、新・開発独裁 米と覇権争い
 中国が自動運転のアクセルを踏み込む。北京市近郊に2035年につくり上げる習近平(シー・ジンピン)国家主席肝煎りの未来都市で、個人の乗用車を世界で初めて全て自動運転にする。共産党がすべてを取り仕切り、インフラや法制度を整え技術も磨く。経済大国になってもなお国家主導で産業振興を進めようとする中国。企業の自由競争を前提にイノベーションで世界をリードしてきた米国に、「新・開発独裁」で中国が挑む構図が鮮明になってきた。新しい都市「雄安新区」は「千年の大計画」として昨年発表した壮大なプロジェクトだ。北京から南西約100キロメートルの河北省の農村につくり、次世代の先端技術を活用したスマートシティー(環境配慮型都市)にする。22年に基礎インフラを整え、最終的な面積は東京都に匹敵する2千平方キロメートル規模。将来の人口は200万人以上を見込む。総投資額は2兆元(約35兆円)との試算もある。
●個人用の全車に
 政府が4月に発表した新区の計画概要などによると、人工知能(AI)を駆使して自動運転を実現するモデル地区を設けて関連産業を振興する。計画の草案づくりに参加した徐匡迪・元上海市長は「道路や鉄道などの大部分の交通インフラは地下に構築する」と語る。その道路では「公共交通を中心に据え、個人が使う車は自動運転車で補完的役割を担う」と新区の建設計画のトップを務める陳剛・同区党工委書記は明らかにした。まっさらな土地に自動運転車を前提に設計する新しい都市は、非自動運転車や歩行者が入り交じる既存インフラとの調和という課題と無縁だ。未来都市のモデルとして世界への誇示をもくろむ。米アリゾナ州では3月に公道で実験中だったウーバーテクノロジーズの自動運転車が歩行者をはねて死亡させる事故が発生し、想定外の条件への対応の難しさを浮き彫りにした。世界各国ではドライバーの注意や監視を前提とするジュネーブ条約やウィーン条約が足かせになり、自動レベルの高い車を実用化する法制度の整備がままならない。中国は両条約とも批准しておらず、共産党がこうと決めれば法規制などの環境は一気に整う。現在の中国の自動運転技術の水準は、中国長安汽車集団が4月に公開した新車に搭載した加減速などを支援する「レベル2」程度とみられる。17年秋に「レベル3」の機能がある高級セダンを発売した独アウディなど日米欧勢に遅れており、政府主導で開発の速度も上げる。国家プロジェクトの認定を与えたネット大手、百度(バイドゥ)は、雄安新区ができる河北省政府とAIなどを取り入れた運転技術の研究を開始。交通インフラと自動運転を一体で開発するのが特徴で、3月には中国国有通信大手、中国電信集団(チャイナテレコム)などと共同で次世代高速通信規格「5G」を使う実証試験を始めている。国家総動員ともいえる体制で開発する自動運転車と関連インフラを世界に広める構想を掲げる中国に、米国は警戒をあらわにしている。通商政策担当のナバロ大統領補佐官は「中国はAIや自動運転など未来の産業の支配をもくろんでいる」と指摘。中国との貿易摩擦の主題を赤字削減からハイテク分野での覇権抑え込みに移している。米国は知的財産侵害のほか、補助金などの政府の政策も激しく批判。両国の対峙は「自由主義対国家主義」の様相だ。
●群がる海外大手
 経済発展の途上にある国家が国民の民主的な政治参加を制限して急速な成長と近代化を実現する開発独裁は、1960年代からアジアや南米にみられた。多くは発展とともに民主主義国家に移行したが、中国は例外だ。世界第2位の経済大国になりながら一党独裁の共産党の号令で国有、民間を問わずに企業が目標実現へ一斉に動く新・開発独裁は、自由主義陣営からは異質に映る。それでも海外の自動車・IT(情報技術)大手は中国に群がる。百度が主導する開発プロジェクトには米フォード・モーター、独ダイムラーに加え、米インテル、米エヌビディア、米マイクロソフトなどが並ぶ。中国も先端技術導入や海外展開をにらみ外国企業の参加を呼び掛けている。中国の17年の新車販売台数は世界首位の2887万台。2位の米国の1.7倍、日本の5.5倍に達する。知財侵害への警戒はあっても「政府の強い後押しで自動運転の実現に向けて進む世界最大市場を無視できない」。ある海外自動車大手の幹部は打ち明けた。

*8-2:http://qbiz.jp/article/134211/1/ (西日本新聞 2018年5月20日) 外国人就労受け入れ拡大に政府転換 新資格の創設着手 骨太に明記へ
 政府は、人手不足が深刻な分野の労働力を補うため、外国人の受け入れ拡大へ大きくかじを切る。最長5年間の技能実習を終えた外国人が、さらに5年間働ける新たな在留資格「特定技能(仮称)」の創設に着手。高い専門性があると認められれば、その後の長期雇用を可能とすることも検討している。従来の技能取得という名目から、就労を目的とした受け入れ施策に転換する。6月に決定する「骨太方針」に外国人との「共生」を初めて盛り込み、日本語学習教育の支援などにも取り組む方針だ。現行制度では、高度な専門性を持つ人材を除き、外国人労働者を積極的に受け入れていない。農業やサービス業などの分野で、技術取得を名目とした技能実習生や留学生がアルバイトで対応しているのが現状だ。政府が検討する新たな在留資格「特定技能(仮称)」は就労を目的とする制度。農業、介護、建設、造船などの分野が対象となる。現行の技能実習の修了者だけでなく、各業界団体が実施する日本語能力や専門技能に関する試験に合格すれば資格が与えられる。政府は新たな在留資格の導入を前提に、目標とする外国人労働者数を試算。介護分野は毎年1万人増、農業分野では2017年の約2万7千人が23年には最大10万3千人に大幅に拡大すると試算。建設分野で17年の約5万5千人を25年時点で30万人以上に拡大、造船分野は25年までに2万1千人を確保することが必要としている。外国人観光客の急増により、地方の旅館やホテルを中心に人手不足が深刻化している宿泊業も技能実習の対象に追加する方針。今年3月時点で、留学生のアルバイトなど約3万8千人が働いているが、30年までにさらに8万5千人を確保したい考えだ。また、大学や専門学校を卒業した留学生が就労できる分野の拡大や、在留資格手続きの簡素化なども検討している。外国人が増加することで、地域での孤立やトラブルも予想される。政府は、外国人の仕事や生活が充実するよう、相談体制強化や日本人との交流促進などにも力を入れる。
   ◇   ◇
●「開国」に欠かせぬ共生 
 【解説】 政府が「労働開国」に踏み切る背景には「外国人をどれだけ受け入れるかではなく、どうすれば来てもらえるかという時代になってきた」(官邸筋)との危機感がある。人口減と少子高齢化が進む日本だけでなく世界各国で人手不足が深刻化し、人材の争奪戦が過熱しているためだ。これまで安倍晋三首相は「いわゆる移民政策は取らない」と繰り返してきた。現実は「裏口からそっと入れて人手不足を補うのが国策」(与党議員)だった。外国人労働者は昨年10月までの1年で約20万人も増え、約128万人と過去最多を記録した。うち4割は途上国からの留学生のアルバイトと、技術の海外移転が目的の技能実習生だ。いずれも建前上は「学びたい人」で、留学生に就労時間の制限があるなど労働者の権利が制限されている。こうした建前と現実のひずみが、不法就労や過酷労働の温床となってきた。実習生の就労や長期雇用を可能にする制度の創設、大学や専門学校を卒業した留学生の就労拡大…。学びたい人から働きたい人へ、スムーズに転換できるよう制度を整備しつつ、徐々に「開国」していく狙いだ。一方で外国人に「来てもらえる国」となるには、労働者としてだけでなく、生活者として受け入れる施策が車の両輪となる。実習生は職場移転の自由や家族帯同が認められていない。長期就労に道を開くなら許可すべきだ。日本語教育や多言語対応の相談窓口の充実も欠かせない。出入国管理を含む政策を一元的に担う「外国人庁」創設、課題を地域で把握して対応する自治体の部署の整備も求められる。他人の不幸の上に自分の幸福を築くような「移民ネグレクト(放置)」に終止符を打ち、共生の施策を政府が打ち出せるか、注視したい。

*8-3:http://qbiz.jp/article/133881/1/ (西日本新聞 2018年5月21日) ドライバー不足深刻 福岡・筑後地区で県トラック協会 人材確保へ初の合同説明会
 運輸、物流業界を支えるドライバー不足が全国的に深刻さを増している。福岡県筑後地区でも同様の悩みを抱えており、県トラック協会久留米分会は20日午後1〜4時、久留米市東合川の「地場産くるめ」で、初の「求人転職合同説明会」を開く。未経験者にも対象を広げて人材確保を図る。
●情報誌に求人、反応なし、廃業、事業売却の業者も
 説明会には、久留米市や小郡市、うきは市などに事業所がある22社が参加予定。求人する職種はドライバーに限らず、整備、クレーン作業、倉庫内作業、一般事務など幅広い。対象は、20〜60代の正社員採用やアルバイトを希望する男女。普通免許しか持っていない場合でも、採用後に中型や大型免許などを取得できる助成制度があるという。北野運輸(久留米市)の堀江藤樹社長は「ハローワークや情報誌に求人を出しても、電話一本来ない。状況は深刻。5年後はどうなるか…」と語り、業界全体の行方に危機感を募らせる。40人いるドライバーの平均年齢は48歳で、年々、高齢化が進む。将来への不安や後継者不足から、廃業や事業売却に踏み切る同業者も増えているという。ブリヂストンの工業製品を主に扱う「チクホー」(同)では、高校新卒者の採用を始めた。以前は経験者の中途採用が中心だったが、それでは人が集まらず、大型免許が取得できる21歳まで、働きながら免許取得にかかる費用を補助している。「今は免許がないのが当たり前。高卒の新人を4年かけて育てています」(村田潤一郎社長)という。新たに車両を増やそうとしてもドライバーを確保できるめどが立たず二の足を踏んだり、長距離の運送の人繰りが難しくなったりと、経営への影響も出ているという。特に若い世代のドライバーの層が薄く、村田社長は「本人よりも、親の世代に3K(きつい、汚い、危険)や、(映画の)トラック野郎のイメージがあって、いい顔をされない」と明かす。帝国データバンク福岡支店の今年1月の調査によると、九州・沖縄の企業で、正社員の従業員が不足していると回答した割合は52・8%で、過去最高を更新した。業種別の「運輸・倉庫」では56・8%だった。説明会は参加無料。事前予約や履歴書は不要。問い合わせは久留米分会=0942(40)8701。

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