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2025.7.17~ 日本における低成長の第1の理由は、教育を疎かにしたことである
・・工事中・・


  出入国在留管理庁      Connect Job       2025.7.16NHK  

(図の説明:左図は、就労が認められる在留資格で、*1の特定技能は2018年に閣議決定され、2019年4月から*2の特定産業分野のみで施行されていた。中央の図は、在留資格別外国人労働者数の推移で、2024年には230万人超になっているが、それでも全就業者の3.4%にすぎない。また、右図は、外国人の犯罪率は外国人の数が増えるに従って低下して現在は日本人と変わらず、「外国人はルールを守らず犯罪が多い」と言うのは偏見にすぎないことがわかる。なお、ルールにも憲法違反と思われるものがあるため、ルールもまた時代に合わせて変えるべきである)


            厚労省              2025.7.17日経新聞

(図の説明:左図は、就労目的で日本に来た外国人の状況で、出身国はベトナム・中国・フィリピンの順に多く、現在はインドネシア・ミャンマー・ネパールが増加中である。また、右図のように、これまで少なかった南アジアや中央アジアの国々を開拓する動きも官民で広がっている)

(1)運輸業・建設業等の人手不足と人材獲得
1)運輸業のケース
 *1-1-1は、①2030年度には運転手の数が2020年度比で27%減り、36%の物流が滞る恐れがあって、物流業界は人手不足が深刻 ②政府は自動車運送業を特定技能に追加して外国人就労枠は上限24,500人 ③SBSホールディングスは、インドネシアに自動車学校を設立して講師を現地派遣し、全寮制で半年間教育して日本の交通ルールや日本語を教え、2026年から年間100人程度のペースで採用して1800人の外国人運転手を採用し、10年で運転手の約3割を外国人にする予定 ③外国人が最長5年間働ける「特定技能」の制度を活用 ④多くがイスラム教徒であると想定して礼拝・食事等に配慮し、働きやすい環境を整備 ⑤賃金は日本人より低い見通し ⑥船井総研ホールディングスも傘下の物流コンサルティング会社、船井総研ロジが外国人運転手を中小企業に仲介するサービスを始め、主にバングラデシュやベトナムからの採用を想定 ⑦ヤマト運輸・佐川急便・福山通運等も外国人採用に乗り出しており、ヤマト運輸・佐川急便は決まったルート配送中心のため日本語が苦手でも働きやすい職種 ⑧特定技能による外国人運転手はバス・タクシー・引っ越し等の運転手も含む ⑨自動運転の実現が見通せない中、地方のバス運行会社等も外国人運転手の確保に動く ⑩物流に限らず、公共交通・介護まで様々なサービスで外国人なしに成り立たない としている。

 このうち①⑩は現実であるため、⑧⑨のように、自動運転の実現が見通せなければ外国人運転手は必要である。また、⑦のように、決まったルートを配送するのなら必要な日本語は限られているため、働き易いと思われる。そのため、より簡単な仕事を任せる分だけ、⑤のように賃金が安いのには合理性があるだろう。

 しかし、現在、雨が降ったり、暑かったりすればタクシーも来ない状況なので、②のように、政府が自動車運送業を特定技能に追加したのは合理性があるが、外国人就労枠の上限が24,500人で足りるか否かは心配だ。

 そのため、③⑥のように、SBSホールディングスがインドネシアに自動車学校を設立して講師を派遣し、教育した上で資質のある人を採用したり、船井総研ロジが外国人運転手を中小企業に仲介するサービスを始めてバングラデシュやベトナムから採用したりしているのは、さすが民間企業の工夫だと思った。

 しかし、このように教育費をかけて外国人を採用し、③のように、「特定技能」の制度を使ってもなお外国人の就労機関が最長5年では、採用する企業はロスが多い上に、日本社会は熟練労働者の割合が少なく、結果として働く外国人は意欲を失い、日本人は不便なままになりそうだ。そのため、④の働き易い環境というのは、日本で安心して長く働くことができ、頑張れば昇進して賃金で報われる環境であって、④のようなイスラム教徒向けの礼拝・食事の配慮が第1ではないと思われる。

 また、*1-1-2は、運輸業に限らない外国人労働者就労の歴史を述べており、⑪2024年10月時点で外国人就労者数は230万2587人・就業者全体の3.4% ⑫人手不足の深刻化で10年前の2.9倍に増加 ⑬在留資格は、技術・人文知識・国際業務18%、特定技能・技能実習30%、留学生アルバイト14% ⑭1989年に「定住者」資格で中南米の日系人を受け入れ、1993年に表向き技術移転目的として「技能実習制度」を創設したが、低賃金の人手不足対策としての使用が広がった ⑮2019年に「特定技能制度」を導入し、「1号」は最長5年・「2号」は熟練者向けで在留期間の制限はなく、明確に人手不足対策として位置づけた ⑯来日・定住・永住の増加を懸念する声もあり、参院選で与野党が外国人規制強化の是非を議論している としている。

 まず、日本国憲法は、前文で「われらは、いづれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならない」とし、第17条で「何人も、公務員の不法行為により、損害を受けたときは、法律の定めるところにより、国又は公共団体に、その賠償を求めることができる」、第18条で「何人も、いかなる奴隷的拘束も受けない。又、犯罪に因る処罰の場合を除いては、その意に反する苦役に服させられない」と定めている。

 そのような中、⑪⑫⑬のように、人口構造の変化に伴い、2024年10月時点では外国人就労者数は230万2587人となっているが、未だに人手不足の状態が続いているため、⑯のように、来日・定住・永住の増加を懸念したり、公務員である衆議院議員や参議院議員候補者がヘイトスピーチをするなどは、「何を考えているのか!」と思われる。

 なお、⑭のように、少しずつ門戸を開いた在留資格のうちの技能実習制度は滞在期間が1号1年、2号2年、3号2年で、3号への移行は実習生の受入れ企業や監理団体が優良だと認めた場合のみ可能だそうだが、このようにいやいや延長していること丸出しの細切れで低賃金の労働条件では、働く意欲を保つ方が困難であろう。

 そのため、⑮のように、2019年に「特定技能制度」が導入されたのだが、これも「1号」は最長5年が上限で狭い産業分野に限られる上、在留期間の制限のない特定技能2号を取得するには、i) 特定技能2号評価試験に合格するか、技能検定1級に合格する ii) 監督・指導者として一定の実務経験を積むの2つを満たす必要があって、日本語が母国語であるため比較優位性がある筈の日本人よりも難しく、「2号には進ませたくないぞ」と言わんばかりのハードルなのである。

2)建設業のケース ← 日本人が減った産業を外国人が支えている現実がある
 *1-2-1・*1-2-2は、働き方改革による残業時間の上限規制(2024年4月から月45時間・年360時間)と高齢化の進行による慢性的な人手不足や生産性の低さが原因で、未完了工事額が約15.4兆円(2025年3月時点、国交省建設総合統計)にも達し、この状況が、i)商業施設や工場建設の遅延 ii)建設費の高騰 iii)設備投資の停滞 などを通じて日本経済に成長力低下をもたらしており、2023年末の建設業における外国人労働者数は約17.8万人(全体の約7.7%)・有効求人倍率は5.22倍(全産業平均の約4倍)となって、建設業界では外国人労働者の受け入れが進んでいる としている。

 具体的には、①建設就業者数が2010年比で6%減少し、477万人になった(総務省の労働力調査) ②65歳以上の高齢化率が約2割(80万人)で、10年間で高齢化率が5%上昇した ③加齢で体力が衰えれば若い頃のようには働けない ④かねてから深刻だった人手不足に2024年4月から始まった時間外労働の上限規制で、建設業は月45時間・年360時間までしか残業できなくなり、総労働時間/人が前年比32.3時間減少した(全産業平均14.3時間の2倍以上) ⑤生産性向上を急がなければ民間企業の設備投資や公共投資の制約となり、日本の成長力が一段と下振れする恐れがある ⑥建設作業員が集まらず工事が計画通り進まなかったため、イオンモールは福島県伊達市の店舗オープンを2024年末から2026年下期に延期した ⑦建設業界全体で供給力が縮んでいる ⑧民間の産業用建築物1m²あたり着工単価は2024年に約30万円と前年より18%上昇した ⑨大手建設会社は採算性・工期を重視し、利益率の高い案件を優先している ⑩人材確保で後手に回って採算の良い案件に参入できなかった中小建設会社は廃業が増加している ⑪建設従事者が使える省人化等のソフトウエアの導入量/人は、フランス・英国の1/5である ⑫生産性向上にはデジタル化による効率化が不可欠 としている。

 このうち、①②はデータであるため事実だが、老年学会は75歳までは問題なく働けるとしているので、③のように、「65歳以上は加齢で働けない高齢者である」と認識して高齢化率を計算したり、65歳定年制によって退職させたりすることの方に、むしろ人権侵害の問題があるだろう。

 また、④の「人手不足の原因には時間外労働の上限規制があるが、これは働かせない改革になっている」「残業しないため、仕事が中途半端にならないよう早めに終わらなければならない」「もっと働いて稼ぎたい」と言う人も少なからずいるため、上限規制ではなく、働いた分だけ支払う規制にしてはどうかと思う。

 さらに、⑤⑪⑫のデジタル化による効率化や省人化による生産性向上は必要不可欠で、それがなければ民間企業の設備投資や公共投資の制約となって日本の成長力が一段と下振れする恐れがるが、これらをすべてやったとしても、建設業に進む日本人の若者が著しく減る以上、外国人労働者を積極的に入れなければ、⑥⑦⑧⑨のように、建設作業員が集まらずに工事の遅延が起こったり、建設業界全体で供給力が縮んで着工単価が上がったり、人材確保のできない中小建設会社の廃業が増加したりする。

 そのため、「日本人が減った産業を外国人労働者が支えている」というのは事実であり、外国人労働者をまるで邪魔者ででもあるかのように在留資格の交付を小刻みで厳しくするのではなく、家族帯同を容易にしたり、日本人と同様、家族もまた働いたり学んだりできるようにしたりして、日本で働くことのハードルを下げる必要があるのだ。

3)今後、さらに増えるニーズ

・・工事中・・

<運輸業・建設業等の人手不足>
*1-1-1:https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC209UK0Q5A520C2000000/ (日経新聞 2025.7.2)物流大手SBS、運転手の3割1800人を外国人に インドネシアで養成
 物流大手のSBSホールディングス(HD)は10年以内にトラック運転手の3割を外国人にする。外国人が最長5年働ける「特定技能」の制度を活用し、主にインドネシアから1800人を採用する。ヤマト運輸など業界大手も採用に乗り出しており、人手不足が深刻な物流業界において外国人頼みが強まっている。SBSHDはまず年内にインドネシアに自動車学校を設ける。講師を現地に派遣し、日本の交通ルールや日本語を教える。全寮制で半年間学んだうえで来日してもらう。2026年からは年間100人程度のペースで採用を始める。現在は特定技能の外国人運転手はおらず、10年以内に全体の3割に当たる1800人程度にする。多くがイスラム教徒であると想定し、来日後も礼拝や食事などに配慮して働きやすい環境を整備する。賃金は日本人より低くなる見通しだ。政府は24年に外国人在留資格について最長で5年就労できる特定技能1号に自動車運送業を新たに加えた。上限は2万4500人。物流業界ではこの制度を通じ、外国人運転手を採用する動きが広がる。船井総研ホールディングス(HD)も傘下の物流コンサルティング会社、船井総研ロジが中小企業に仲介するサービスを始めた。主にバングラデシュからの採用を想定する。顧客である中小企業の要望に応じ、現地の送り出し機関と連携して面接による資質の見極めや入社前後の研修、採用後のマニュアル整備などを支援する。25年からの3年間で510人を計画し、その後も年200人ペースで仲介する。既に28人の採用が内定したという。このほか、福山通運も今秋にベトナム人を運転手として初めて約15人採用する予定。センコーグループホールディングスは32年度までに100人を採用する。背景には業界の人手不足がある。野村総合研究所は30年度に運転手の数が20年度比で27%減り、36%分の荷物が運べなくなると試算する。少子高齢化に伴う人口減に加え、24年度からは運転手の残業規制が年間960時間までに制限されたことで人手不足に拍車がかかっている。SBSHDといった主に企業向け配送を担う企業だけではなく、個人向けが中心の宅配大手も外国人の採用に乗り出す。ヤマト運輸を傘下に持つヤマトホールディングスでは今秋にも、長距離の幹線輸送やルート配送といった中長距離の拠点間を担う運転手として勤務が始まる予定。佐川急便も長距離や店舗間の輸送で採用を検討している。決まったルートを行き来するため、日本語が不慣れな外国人でも働きやすいとみる。特定技能による外国人運転手はバスやタクシー、引っ越しなどの運転手も含む。船井総研ロジはこのうち、トラック運転手が8割を占めるとみる。自動運転の実現が見通せないなか、地方のバス運行会社なども外国人運転手の確保に動いている。物流に限らず、公共交通、介護まで、様々なサービスは外国人なしには成り立たないのが現実だ。受け入れる企業は外国人が働きやすい仕組みづくりだけでなく、サービスを利用する消費者に受け入れられる環境整備も求められる。

*1-1-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20250717&ng=DGKKZO90077840W5A710C2EA2000 (2025,7,17) 外国人材 特定技能・技能実習が3割
▽…厚生労働省によると、日本で働く外国人は2024年10月時点で230万2587人と就業者全体の3.4%を占める。人手不足の深刻化によって10年前の2.9倍に増えた。高度人材向けの在留資格「技術・人文知識・国際業務」は全体の18%で、製造・建設などの現場で働く特定技能や技能実習が約3割を占める。留学生のアルバイトも14%に上る。
▽…受け入れが本格化したのは1990年代だ。89年の出入国管理法改正で中南米の日系人を主な対象とする在留資格「定住者」を設けた。93年には、技術移転を通して途上国の経済成長に貢献するとして技能実習を創設した。労働力需給の調整手段ではないとされたが、実際には人手不足の穴埋めとして広がった。
▽…2019年に導入された特定技能は正面から人手不足対策とうたう。最長5年の「1号」のほか、熟練者向けに在留期間の制限がない「2号」がある。来日や定住・永住の増加を懸念する声もあり、20日投開票の参院選で与野党が外国人規制の強化の是非を議論している。

*1-2-1:https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA091TP0Z00C25A2000000/ (日経新聞 2025年6月8日) 縮む建設業、工事さばけず 未完了が15兆円超え過去最大
【この記事のポイント】
・未完了の建設工事が過去最大級15兆円超
・建設就業者が10年で6%減、高齢化率2割
・生産性向上課題、IT活用は英仏の5分の1
 国内で商業施設や工場などの建設が停滞している。建設会社が手元に抱える工事は金額にして15兆円を超え、過去最大に膨らんだ。かねて深刻な人手不足に2024年からの残業規制が拍車をかけている。生産性の向上を急がなければ、民間企業の設備投資や公共投資の制約となり、日本の成長力が一段と下振れする恐れがある。イオンモールは福島県伊達市の店舗のオープンを当初予定の24年末から26年下期に延期した。建設作業員が集まらず、工事が計画通りに進まなかった。「東北地方は人手がもともと少ないうえに各地に散らばっている。確保が難しい」と説明する。こうしたケースは各地で相次いでいる。国土交通省の建設総合統計によると、建設会社が契約したうち完了できていない工事は25年3月に15兆3792億円(12カ月移動平均)に達した。物価上昇も影響し、業界全体のデータを遡れる11年4月以降で最も高い水準で推移する。1990年代初めごろも今と同じように手持ち工事高が積み上がっていた。当時はバブルの崩壊で経済が長い低迷期に入る前で、建設需要の増加が大きかった。対照的に目下の大きな問題は業界全体で供給力が縮んでいることだ。総務省の労働力調査によると、24年の建設関連の就業者数は10年前に比べて6%減り、477万人となった。このうち65歳以上が80万人と2割近くを占めた。高齢化率は10年間で5ポイント上がった。加齢で体力が衰えれば若いころのようには働けなくなる懸念がある。社会全体での働き方改革の不可逆な流れも、こと労働力の確保という部分では足かせになる。24年4月に始まった時間外労働の上限規制で、建設業は原則として月45時間、年360時間までしか残業できなくなった。結果として24年の一人あたりの総労働時間は前年から32.3時間減った。マイナス幅は全産業平均の14.3時間を上回る。限りある人手の争奪戦は激しくなっている。先端半導体の量産を狙うラピダスの工場建設が進む北海道は、従業員10人以上の企業で働く建設労働者数が23年におよそ13万人と前年比23%増えた。所定内給与は月平均32万6000円程度と3万円以上増えた。伸びは全国平均の約1万4000円を上回る。建設会社が利益率の高い工事を優先する傾向も強まる。民間の産業用建築物の1平方メートルあたりの着工単価は、24年におよそ30万円と前年から18%も上がった。ある大手のトップは「採算や工期を十分に確保できるかによって厳格に選別している」と語る。近年は中小の建設会社の廃業も目立つ。人手の確保で後手に回り、好採算の案件にあぶれて生き残りが難しくなっているとみられる。労働集約型の産業構造の改革という古くからの課題も改めて浮上する。大和総研の末吉孝行氏は「日本の建設業は中小が多くIT(情報技術)の導入が遅れている」と説く。建設従事者が使える省人化などのソフトウエアの一人あたり導入量はフランスや英国の5分の1にとどまるというのが現状の試算だ。業界全体で工事をさばく能力が低下した状態が続く弊害は大きい。働き手の確保が難しいのなら、デジタル化などによって生産性を高めるしか道はない。建設業は日本の国内総生産(GDP)の5%程度を占める。内需の柱である設備投資の3分の1ほどにあたる。たとえば工場の建設が停滞すれば、備え付ける機械の投資の遅れなどにも波及する。ただでさえ低成長が続く日本経済のボトルネックになりかねない。

*1-2-2:https://www.nikkei.com/ask (日経新聞 ASK) 建設業の労働力不足の背景
 建設業界では、かねてからの人手不足に加えて、時間外労働の上限規制が導入されたことなどが要因となり、労働力不足が深刻化しています G。
⚙️ 人手不足と高齢化
就業者数の減少: 2024年の建設関連の就業者数は477万人と、10年前に比べて6%減少しています。高齢化の進行: 建設業の就業者に占める65歳以上の割合は2割近くに達し、高齢化率は10年間で5ポイント上昇しています 。高齢化により、体力の低下から若い頃のように働けなくなる懸念があります。
⏱️ 労働時間の上限規制
残業規制の導入: 2024年4月から時間外労働の上限規制が建設業にも適用され、原則として月45時間、年360時間までしか残業できなくなりました。労働時間の減少: 結果として、2024年の1人当たりの総労働時間は前年から32.3時間減少し、全産業平均の14.3時間を上回る減少幅となっています。
💰 給与水準と待遇
給与の伸び悩み: 建設業では待遇の低さから若者の就業が進まないことが課題となっています。待遇改善の動き: 一部の企業では、初任給の引き上げやリーダー職の待遇改善など、人材確保に向けた動きも見られます 。積水ハウス建設HDでは、特に評価の高い30〜40歳代のリーダーの年収を前年比40%以上増の約850万円に引き上げました。
🏢 中小企業の状況
廃業の増加: 近年、中小の建設会社の廃業が目立っています 。人手確保が難しく、好採算の案件にあぶれて生き残りが難しくなっているとみられます。IT導入の遅れ: 中小企業ではIT(情報技術)の導入が遅れており、省人化などのソフトウェアの導入量が少ないのが現状です。
🔨 その他の要因
建設需要の増加: 国内各地で再開発事業や工場建設などが行われており、工事需要が高い傾向が続いています。技能者の不足: 技能実習制度に代わる育成就労制度や特定技能制度を通じて外国人の受け入れを進めていますが、韓国やオーストラリアも建設分野の外国人材の受け入れに熱心であり、待遇面での競争も激しくなっています。これらの要因が複合的に影響し、建設業界における労働力不足が深刻化しています。

*1-2-3:https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA01BVM0R00C25A7000000/ (日経新聞 2025年7月2日) 老朽水道管、更新資金足りない 財務省研究所「平均8割値上げ必要」
 全国の上水道事業の99%が、水道管など設備の更新に必要な資金を確保できていない恐れがあることが財務省所管の研究所の調査で分かった。更新費用を水道使用料だけで賄おうとする場合、料金を平均で8割引き上げる必要があることも明らかになった。近隣自治体との業務共同化などコスト削減策が急務となる。上水道事業は原則として、必要な経費を住民が支払う使用料で賄う。もっとも、将来の収支見通しが甘く、費用を料金に十分に反映できていない自治体が多いとの見方がある。単年度の損益は黒字を確保できていても、実は手元資金が少なく、老朽化した水道管を更新する資金までは準備できていない例もある。そんな状況でも水道料金を上げると住民の反発が予想される。物価高対策として逆に水道料金を割り引く場合もある。東京都は検針の時期によって今年6月から9月、または7月から10月の4カ月間、都内すべての一般家庭の水道の基本料金を無償にする。
●月額水道料金は全国平均で3332円
上水道は主に市町村の公営企業が運営している。上水道事業の資金繰りを把握するため、財務総合政策研究所の研究班が全国1241事業者を分析した。財務省が保有する公営企業の2013〜22年度の会計データを活用し、給水人口が5000人を超える事業者を対象とした。年間使用料によって経費を賄えているかどうか、どれだけ現金を手元に残せるかという2つの観点から評価した。全体の99%にあたる1228事業者が事業継続に必要な金額を使用料で賄えておらず、安定的に設備投資に回せるほどの現金を生み出せていなかった。各事業者が現在の設備を維持したまま、必要な内部留保を確保するには、平均で83.2%の料金上げが必要になることも分かった。国土交通省によると、22年度末時点で一般家庭の月額水道料金は全国平均で3332円。単純計算でこれが同6100円程度に上昇することになる。総務省などによると、全国の上水道は1975年ごろに整備が進んだため、足元で法定耐用年数の40年を過ぎた水道管が全体の2割を超える。各事業者は手元の現金が少なければ、日常的な保守だけでなく、漏水など緊急時の対応にも支障が出かねない。実際、老朽化した水道管の漏水事故も全国で起きている。京都市では4月、市内の幹線道路の地下を走る水道管が破損し、広範囲に冠水した。神奈川県鎌倉市でも6月、水道管が破裂して市内の約1万世帯が断水した。各自治体は必要経費を料金に反映するとともに、近隣自治体との業務の共同化などのコスト削減策が必要になる。事業統合や経営一体化も有力な手段で、すでに大阪府内の自治体などが取り組んでいる。人口減少をふまえると、市街地の集約による水道インフラの縮小も重要な選択肢となる。財務省は調査結果を自治体や総務省、国交省などと共有し、毎年の実地監査などに活用する。

*1-3:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20250717&ng=DGKKZO90079440X10C25A7EA1000 (日経新聞 2025/7/17) アジア人材獲得、西へ拡大、東南アの成長織り込む ルート多様化、バングラは1.5倍
 外国人材の来日が少なかった南アジアや中央アジアの国々を開拓する動きが官民で広がっている。厚生労働省は年度内に日本での就労ニーズなどを現地調査する。日本語教育プログラムなどを始める企業も相次ぐ。東南アジアの経済成長で来日が頭打ちとなるのを見据え、他地域に獲得ルートを広げる。厚労省は民間団体に委託して、南アジアや中央アジアの「送り出し機関」(人材会社)などに聞き取りをする。日本での就労ニーズや制度面の障害を調査する。インドやスリランカ、ウズベキスタンなどを想定する。高級すし店などを手掛けるオノデラグループで特定技能人材の育成と紹介を担うオノデラユーザーラン(東京・千代田)は6月11日、ウズベキスタン移民庁と連携協定を結んだ。早ければ今秋から、日本で働きたい若者に半年ほど日本語を教え、特定技能の試験に合格したうえで来日させるプログラムを始める。外食や介護など向けに年200人ほどの育成から始め同500人に拡大する計画だ。日本に留学を希望する学生を支援する日中亜細亜教育医療文化交流機構(東京・港)も4月、ウズベキスタンの3カ所に日本語教育の拠点を設けた。特定技能として日本での就労を目指す。ワタミは特定技能人材を育成する研修センターをバングラデシュに設立する。同国政府機関の施設で教育プログラムなどを提供する。年間で約3000人を特定技能人材などとして日本に送り出す目標を掲げる。製造・建設・介護などの現場で外国人を雇用できる技能実習や特定技能は2024年12月時点で計74万人が働く。国別ではベトナムが34万5619人と半数近くを占めるものの伸び率が鈍っている。かつて技能実習で10万人超が働いていた中国は1人あたり名目国内総生産(GDP)が7000ドルを超えた13年から来日が減り、24年12月は2万5960人となった。ベトナムは24年に約4500ドルと10年で1.8倍になった。厚労省の担当者は東南アジア各国も近い将来、他国で働く必要性が薄れ獲得が難しくなる可能性があると分析する。韓国や台湾との人材獲得競争も激しくなっている。韓国は外国人労働者を対象にする「雇用許可制」について、21年に5万人程度だった年間の受け入れ上限を3年で3倍に拡大した。時給換算の最低賃金はすでに日本の全国平均に並ぶ。台湾も製造業や建設業などで外国人労働者の賃金が上昇している。南・中央アジアからの来日はまだ少ない。特定技能と技能実習の合計人数はインドが24年12月時点で1427人、スリランカ4623人、ウズベキスタン346人にとどまる。人材送り出しの潜在力は高そうだ。厚労省によると、インドは23年の労働力人口が4億9243万人に上り、毎年1000万人以上増えている。15~24歳の失業率は15.8%に達する。バングラデシュは24年12月時点で特定技能・技能実習の合計が2177人で前年同月比1.5倍になった。急速な来日拡大には慎重意見もある。単純労働者の受け入れ制限などを求める声があり、20日投開票の参院選で外国人規制が争点に急浮上している。

<参議院議員選挙で主張されている外国人政策>
*2-1:https://www.tokyo-np.co.jp/article/416128 (東京新聞 2025年7月1日) 「違法外国人問題」の公約ではりあう自民・国民・参政党…見え透いた「狙い」と危ぶまれる「ヘイト演説」
 自民党の参院選公約に盛り込まれた「違法外国人ゼロ」を巡って「こちら特報部」は疑問を呈してきたが、外国人に照準を定めた公約を掲げる政党は他にも出てきている。彼らは「優遇の見直しを」「迷惑外国人を排除」と訴える。危ぶまれるのが、論戦の名を借りた排外主義の喧伝。「違法ゼロ」を訴えるなら、むしろあの問題に目を向けるべきでは。
◆「外国人の規制で生活苦は解決しないのに」
 「『違法外国人ゼロ』に向けた取り組みを加速化します」。自民党の小野寺五典政調会長は6月19日、参院選の公約発表で宣言した。外国人による運転免許切り替えや不動産所有の際に起き得る問題への対応を徹底するという。外国人に照準を定めた公約は、最近耳目を集める他党にも広がっている。一例が国民民主党。昨秋の衆院選で「手取りを増やす」と身近な政策を訴えて議席を4倍に増やし、先の東京都議選は議席数をゼロから9に。参院選公約で差別解消を掲げつつ「外国人に対する過度な優遇を見直す」とし、玉木雄一郎代表はX(旧ツイッター)で「国の財政が厳しい状況にあるなら、税金はまず自国民に使うのが当然」と記す。政治ジャーナリストの角谷浩一氏は「外国人に照準」が広まる背景について「ひと言で言えば受け狙いだろう」と語る。「国民は『生活が苦しいのに、自分たちは政治にないがしろにされている』といった不安を持っている。外国人の規制で生活苦は解決しないのに、外国人に問題があるとあおることで、人気を得ようとしているように見える」。
◆「選挙になれば、選挙運動としてあちこちで主張される可能性」 
 目を引くのは参政党も。議席ゼロで迎えた都議選で3議席を獲得。共同通信の6月28、29日の世論調査では、参院選比例代表の投票先として同党を選んだのは5.8%。全党のうち4番手で、国民民主の6.4%に迫る勢い。参院選公約では外国人労働者の受け入れ制限や入国管理の強化により「望ましくない迷惑外国人などを排除」とうたう。その参政党は、これまでどう支持を得てきたか。保守派の言論に詳しい作家の古谷経衡氏は「支持者を取材すると、40〜50代の女性が多い。一度も選挙に行ったことがなかったような『無関心層』が目立つのが特徴」と指摘する。参政党は食品添加物などを否定し、有機農法や自然食品の意義を説いてきた。古谷氏は「『自然食品を徹底すれば健康になり、社会も改良される』というオーガニック信仰は、先進国の比較的富裕な層に受け入れられてきた。政治的な知識がなくても理解しやすい。それが無関心層を引きつけた」とみる。「オーガニック信仰は突き詰めると、体に不純物を入れてはならないという発想」で、コロナ禍で同党が訴えた反ワクチンも同じ考えの上にあるという。ただ「コロナ禍が終わり、反ワクチンが受けなくなったのか、代わりに従来主張していた保守的な政策を再び強く訴えるようになった」。強い危惧もある。反人種差別の政策に詳しい師岡康子弁護士は「『外国人が優遇されている』といった主張は日本人と外国人を分断させ、差別をあおる。選挙になれば、選挙運動としてあちこちで主張される可能性がある」と話す。「税金でいわば公的ヘイトスピーチがなされるが、公職選挙法に守られて市民が止めるのは限界がある。人種差別撤廃条約とヘイトスピーチ解消法に基づき、公的機関は選挙運動におけるヘイトスピーチを批判すべきだ」
◆外国人優遇?「優遇されているとして挙げるなら米軍人だ」
 排外主義に陥りかねない参院選公約。「違法外国人ゼロ」「優遇許さず」に反応するのが、ジャーナリストの布施祐仁氏だ。「『日本で優越的な権利を有した外国人住民がいる』という主張は事実ではない」と述べた上で「優遇されているとして挙げるなら米軍人だ」と語る。「『外国人が増えると治安が悪くなる』との言説も根拠はないが、米兵による事件事故は現に多発している」。沖縄県警がまとめた犯罪統計書によると、1972〜2022年の日本復帰後50年間で、県内での米軍関係者(米軍人や軍属ら)の刑法犯の検挙件数は6163件。昨年は73件で、過去20年で最多だった。

*2-2:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/1509850 (佐賀新聞 2025/7/15) 外国人「制度見直し重要な課題」、首相、在留管理の適正化を指示
 政府は15日、外国人に関連する施策を担う事務局組織「外国人との秩序ある共生社会推進室」の発足式を首相官邸で開いた。石破茂首相は「ルールを守らない人への厳格な対応や外国人を巡る現下の情勢に十分に対応できていない制度の見直しは政府として取り組むべき重要な課題だ」と指摘。出入国在留管理の適正化や社会保険料などの未納防止、土地などの取得を含む国土の適切な利用管理に対処するよう指示した。参院選では外国人政策を巡り、与野党が規制強化や共生の重視を掲げ、争点の一つに浮上している。新組織発足は政府を挙げて施策を推進する姿勢をアピールする狙いがあるが、過度な規制強化や権利制限につながりかねない懸念がある。首相は発足式で「外国人の懸念すべき活動の実態把握や国・自治体における情報基盤の整備、各種制度運用の点検、見直しなどに取り組んでもらいたい」と求めた。林芳正官房長官は記者会見で、新組織発足は参院選対策ではないかと問われ「選挙対策との批判は当たらない」と述べた。新組織は内閣官房に設置。入国や在留資格の審査を担当する出入国在留管理庁、社会保障制度を所管する厚生労働省、納税管理を受け持つ財務省などの担当者で構成する。参院選では自民、国民民主、参政各党が規制の強化を訴え、立憲民主党は外国人の人権保護を掲げている。

*2-3:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/1505097 (佐賀新聞 2025/7/9) 【外国人政策】保守に訴え、差別助長も、石破政権、伸長の参政警戒
 石破茂首相が、外国人政策に関する新組織の設置を決めた。受け入れ制度の厳格化や犯罪への断固とした姿勢を示すことで、自民党支持の保守層をつなぎ留めたいとの狙いがにじむ。背景には「日本人ファースト」を掲げ、勢力を伸ばしている参政党への警戒感もありそうだ。急速な人口減が進む日本で、国家の持続的成長の鍵を握る「外国人材活用」。ただ過度な規制強化は差別助長や排外主義につながりかねず、有識者からは慎重な議論を望む声が上がる。
▽司令塔
 「司令塔を中心に、外国人との秩序ある共生社会の実現に向けたさまざまな施策を総合的に推進する」。首相は8日、官邸で居並ぶ閣僚に対し、内閣官房に事務局組織を創設し、政府一丸となって対応すると宣言した。新組織は、自民が参院選公約で打ち出した政策の一つ。公約では「違法外国人ゼロ」に向けた取り組みを加速し、外国の運転免許証を日本の免許証に切り替える制度や不動産所有の対応を厳格化すると明記した。新組織では、こうした諸問題への対応策をまず話し合うことになりそうだ。外国人政策を巡っては、日本維新の会が外国人比率の上昇抑制などの人口戦略策定を主張。国民民主党も外国人土地取得規制法やスパイ防止法を制定するとした。与野党が張り合うように打ち出しを強める裏には、参政への危機感がある。参政は、行き過ぎた外国人受け入れに反対し「日本は日本人で支える国に」と訴える。東京都議選で3議席を獲得し、報道各社の参院選序盤情勢調査でも勢いがみられる。ある閣僚は、参政が全45選挙区に候補を擁立している点に触れ「間違いなく自民にとって脅威だ」とうめいた。
▽共生重視
 一方、立憲民主党は外国人との「共生」を重視する。公約で「多文化共生社会基本法」制定を約束した。野田佳彦代表は「日本に住み学びたい、働きたいという人が増えるのは良いことだ。そういう国をつくりたい」と札幌市で記者団に語った。共産党も外国人労働者に日本人と同等の労働者としての権利を保障するとした。れいわ新選組は外国人労働力を低賃金で受け入れてきた「移民政策」に反対する。
▽排外主義
 移民政策に詳しい明治学院大の加藤丈太郎准教授は、参政の主張が受け入れられている要因を「インターネットを通じて自分に近い言説に繰り返し触れる中で、実際には外国人と接していないにもかかわらず、外国人を敵視する人が増えている」と分析する。一方、政府の動きを「参政の伸長を受け、政府も『しっかり対応している』と示さなければいけないと拙速に動いているのではないか」とみる。排外主義に陥らないよう回避する動きも実際に出ている。国民民主の玉木雄一郎代表は公示日の3日、公約の一部修正を発表した。「外国人に対する過度な優遇を見直す」とした文言を「外国人に対して適用される諸制度の運用の適正化を行う」に改めた。玉木氏は「排外主義的」との指摘を受けた措置だと説明した。加藤氏は「外国人をたたいても課題は解決しない。日本として外国人とどう向き合うのかを考えるきっかけにすべきだ」と冷静な議論を求めた。

*2-4:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/1510360 (佐賀新聞 2025/7/16) 参院選・外国人政策 差別と排外主義を許すな
 参院選で在留外国人への向き合い方が主要争点の一つに急浮上した。参政党などの新興勢力が規制を求めて支持を伸ばしているのに対し、保守票を競う自民党など既成政党側も対応策を打ち出さざるを得ない立場に追い込まれているためだ。各党の公約自体は抑え気味ではあるが、候補者の街頭演説ではヘイトスピーチのような極論も飛び交う。交流サイト(SNS)で拡散されるうちに過激な論調に転化しかねない危うさをはらむ。選挙における「政治活動の自由」を盾に、差別と排外主義をあおる行為は許されない。欧米で先行し日本に波及しつつある右派ポピュリズムは、貧困や犯罪など社会不安のはけ口を外国人に求めがちだ。急速に少子高齢化の進む日本が、人口減を克服し持続的成長を維持するには外国人材が欠かせない。有権者は事実誤認や偏見に惑わされず、幅広い意見に耳を傾けて投票に臨んでほしい。選挙戦で参政党は「日本人ファースト」を掲げ、外国人労働者の受け入れ制限を主張。自民党は外国人の運転免許取得や不動産所有の問題に厳格対応すると公約した。国民民主党はスパイ防止法の制定を目指し、日本維新の会は外国人比率の上昇抑制を掲げる。一方、立憲民主党は「多文化共生社会」を訴え、外国人の人権保護の重要性を唱えている。参政党などの主張に呼応するようにSNSでは「外国人の犯罪が増えている」「医療費不払いが横行」といった差別的な投稿が広がる。根拠に乏しく憂慮すべき事態だ。警察庁などによると、日本人を含む摘発人数に占める外国人の割合は10年ほど前から2%前後で大きな変化はない。厚生労働省の調査では、訪日外国人患者のうち医療費を払わなかったのは0・8%にとどまる。一部の事例を大げさに言い募る傾向が見受けられる。引っかかるのは、本来は排外主義に警鐘を鳴らすべき政府までが外国人規制に、前のめりになっている点だ。石破茂首相は参院選のさなかに、外国人政策を扱う省庁横断の事務局を発足させた。推進室の名称に「秩序ある共生社会」と盛り込み、対応を指示した。選挙戦で保守層の支持を切り崩され、浮足立っているようだ。しかし拙速な規制強化に走ってはならない。まず日本語研修などの定住支援を充実させるのが筋であろう。有権者の間に物価高や格差社会への不満があるのは間違いない。だが矛先を外国人に向けるのは正しい処方箋と言えない。効果的な経済・雇用対策を打つことが先決だ。安倍政権は入管難民法を改正し人手不足を補うため外国人の受け入れを本格化させた。2024年末の在留外国人は過去最多の376万人で総人口の3%。24年のインバウンド(訪日客)数は最多の3687万人。もはや外国人との共生は、避けられない現実である。他方、近年はクルド人排斥を訴えるデモやインターネット上の誹謗(ひぼう)中傷など外国人差別が後を絶たない。歴代自民党政権は保守層に配慮し「移民政策は取らない」と説明してきた。その曖昧戦略が破綻したツケが今、回ってきたのではないか。票目当てに反感を利用すれば民主主義はゆがむ。与野党は、選挙結果にかかわらず協力して社会の分断を埋める外国人政策を実現してもらいたい。

<地方創成について>
*3-1:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/1486172 (佐賀新聞 2025/6/17) 「地方創生2・0」国は東京問題と向き合え
 政府は地方創生の今後10年の指針となる基本構想を閣議決定した。「地方創生2・0」と銘打つ石破政権の看板政策だ。安倍政権が打ち出した地方創生は、文化庁の京都移転など数えるほどの成果しかない。急速な少子高齢化への対応、人口減少への歯止め、東京圏への人口の過度な集中の是正は不十分なままだ。失われた10年とも言われる状況の打破が政府に求められている。東京圏は進学や就職を契機に全国から若者を集める。2014年に始まった地方創生では、東京圏への転入と転出を20年に均衡させる目標を設定。27年度に先延ばししたが達成は不可能だろう。基本構想は東京への転入を止めるのは難しいとして、地方の魅力を高め、地方へ転出する若者の流れを倍にする目標を掲げた。これで均衡にできる保証はない。地方には若者、特に若い女性が働きたくなるような場所が少ない。転出増には、若者らが仕事を通じ自己実現できる魅力的な職場を地方に増やすことが大前提となる。石破政権が東京一極集中の是正を掲げ続けるなら、まず中央省庁の一部や関係機関を地方に移転させるべきだ。次にこれまで以上に大胆な税制優遇策を導入する。これによって企業の本社移転をさらに促す。地方の居住者でも、リモートワークによって東京の企業でもっと働けるようにするのである。基本構想の目玉が、仕事や趣味を通じて居住地以外の地域に継続的に関わる人を「ふるさと住民」として登録する制度の創設という。目標は10年で登録者1千万人。二地域居住者や「ふるさと納税」する人らを登録すれば、数字は膨らみ「やっている感」は出せる。だが、新制度は地方のにぎわいや人口増に直結しないだろう。登録先に住民税を分割して納付できる制度を提案する声もあるが、総務省は検討しておらず実質は伴わない。このままでは、地方創生2・0も石破政権の政治的なアピールの道具に終わる恐れがある。地方税収に占める東京都と東京23区の割合は近年、上昇傾向が続く。豊かな財政を生かし手厚い子育て支援、高校授業料の実質無償化などを進める。これらの施策は周りの県からの移住も促す。東京都の独り勝ちは、首都直下地震といった災害への脆弱(ぜいじゃく)性を高める。同時に地方の持続可能性も損なう。都には首都として地方にも配慮した自治体経営を求めたい。それをしないのなら、国土の均衡ある発展のため、東京都の豊かな税収の一部を他の自治体にさらに回すことなども議論すべきだ。これら東京の問題に国は正面から向き合い調整すべきである。専門人材の不足によって道路や上下水道の管理・更新、介護、保険などの行政サービスを一つの市町村だけで実施できなくなってきた。今後は複数の市町村が共同で実施するか、都道府県が市町村を支援する仕組みの整備が不可欠となる。地方自治の充実のため、住民に一番近い市町村に権限を移す地方分権が進められてきた。今後も職員不足が深刻化する状況では、市町村から都道府県に権限を移すことも考えざるを得ない。人口減少が著しい市町村では、住民の生活維持が最優先である。都道府県、国が一定の責任を負いもっと前面に出なければ地域は守れない。

*3-2:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/1507655 (佐賀新聞 2025/7/12) 参院選・人口減少と地方 地域維持の戦略をつくれ
 「地方創生」は安倍政権が2014年に打ち出した。年末に行われた衆院選の自民党の公約は「景気回復、この道しかない」とある。公約の柱の一つに「地方が主役の『地方創生』」を明示し、「人口減少に歯止めをかける」と訴えた。自民は選挙のたびに「地方創生」を掲げ、地域の活性化という夢を軸に支持を集めてきた。政権浮揚には一定の効果があったと言えるだろう。しかし、その成果は全く見えない。2024年に生まれた日本人の子どもの数は、統計開始以降で初めて70万人を割り込み、女性1人が生涯に産む子どもの推定人数は過去最低を更新した。少子化は政府推計より15年も早く進んでいる。多死の時代に入り、24年だけで人口は約92万人も減った。与党政権が地方創生、人口減に歯止めといくら連呼しても、反転の兆しすらないのが現実だ。地方の人口減少は加速し、ヒト・モノ・カネの東京一極集中が進む。これらを止めるのは難しいとされていたにもかかわらず、安倍政権は掲げ続けた。結果から見て、選挙対策だったと疑われても仕方あるまい。立憲民主党が公約で「『地方創生』政策の検証」としたのはうなずける。さらに、少子化や人口減少、東京一極集中の流れを食い止め、国に人口戦略を総合的に推進する体制を整えると主張する。体制の必要性は理解できるが、食い止めることはもはや不可能だと指摘せざるを得ない。この参院選では、人口減を前提に行政サービスをどう維持するか、地域社会をどう守るかをもっと議論すべきだろう。石破政権は「地方創生2・0」の実現を掲げる。関係人口、交流人口を拡大させ若者・女性にも選ばれる地域づくりを進めるのが目玉だ。これまでの創生策で評価が少し高い施策を強調しているだけで、新味に欠ける。自民の公約、総合政策集を見ても、地方創生の失敗への反省はなく、人口減社会への対応策を羅列するにとどまった。政権与党として骨太の地方政策を示す責任があるのではないか。国民民主党が、大都市圏への人口集中の是正策として「移住促進・UIJターン促進税制」の創設、リモート勤務者支援など、地方への移住、企業の移転を促す税制を提案したのは注目したい。東京の独り勝ちは地域社会の存立にも影響する。人や企業が地方に移る方が、東京にいるより支払う税金が少なくて済むといった打開策をさらに検討すべきではないか。東京への集中は災害時のリスクも高める。石破政権は防災庁の設置などで「災害に強い日本」を実現すると言うなら、一極集中の是正に当然、本気で取り組むべきだ。日本維新の会は公約で、災害発生時に首都中枢機能を代替できる「副首都」をつくり、多極型社会への移行を目指すと提案した。維新発祥の地である大阪に副首都を誘致する考えだけに、党勢維持案としての面もあるだろう。それでも多極的な国土構造は社会の維持のためには不可欠だ。もはや自治体間で人口を奪い合うような余裕はない。人口や産業、行政サービスの適正な配置について、国民的な議論を始めるのである。そして、地域の持続可能性を維持する観点から、中小都市を核として地域を守る戦略を急いでつくらねばならない。

*3-3:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/1509477 (佐賀新聞 2025/7/15) 参院選・コメと農政 増産と所得安定の両立探れ
 コメを巡る政策が改革を迫られている。随意契約による政府備蓄米の放出で、コメの流通はようやく落ち着く兆しが見えてきたが、対症療法にとどまっている。コメ政策の見直しは避けて通れず、農家と消費者の双方が安心できる政策が必要だ。転作奨励金などを見直して増産に転換する道筋を描き、農家の所得安定と両立させることが焦点になる。昨年からの米価高騰は「コメの生産量が足りないのではないか」という疑念を生じさせた。インバウンド(訪日客)によって外食産業で需要が拡大し、消費量は思ったほど減っていないとの指摘もある。卸売業者が何重にも関与する複雑な流通の過程で、コメがどんな価格水準で取引されているのか、はっきりしない面もある。生産者の自家消費や、知人らに配る縁故米の把握もできていない。石破茂首相はコメ輸出の拡大を念頭に「増産にかじを切る」と繰り返し強調しているが、生産調整見直しの具体策はまだこれからだ。コメ不足と価格高騰が消費者に大きな不安を与えたことを考えれば、生産や流通の実情把握を急ぐべきだろう。これまでの農政は生産量を抑え、価格を維持する手法を続けてきた。減反政策が終了してからも、人口減によるコメ消費の減少を見越して、主食用から飼料米や加工米への転換を促す政策がとられてきた。増産路線に転じるなら、米価が下落した場合に備え、生産者の支援策が必要だろう。立憲民主党は水田10アール当たり2万3千円を農家に支給する「食農支払」の創設を唱えている。国民民主党は稲作農家に10アール当たり1万5千円を交付する「食料安全保障基礎支払」を提案している。農家への所得補償は丁寧に制度を考えねばならない。営農の規模や形態によって、収入保険と直接支払いを組み合わせる工夫があってもいい。ただ、資金支援が農地の集約や大規模化の動きを妨げるのは避けたい。農業の担い手は急ピッチで高齢化している。担い手不足が深刻化するのに歯止めをかける対策も必要だ。自民党は土地改良や農地集約、デジタル技術導入のため今後5年間、思い切った予算を確保すると公約した。立民は就農支援の資金を10倍に拡充し、都市部からの移住を後押ししようとしている。国民は若者の新規参入を促すため、直接支払制度に「青年農業者加算」を設けるとしている。兼業農家も地域の実態を踏まえて支援対象にするという。コメの増産や農家の所得を支える財源も課題になる。転作奨励金などを振り替えれば足りるのだろうか。農政改革に伴い、農業予算の組み替えや洗い直しを検討しなければならない。コメ不足の対策として、日本維新の会は「ミニマムアクセス(最低輸入量)」の枠外で輸入するコメの関税を時限的に引き下げると訴えている。政府はコメの輸出拡大を目標にしてきた。だが農産物の海外販路の開拓はそう簡単ではない。良い品質のコメを決められた時期に、契約通り出荷することを輸出先から求められるのは当然だ。生産拡大につなげるには、冷凍おにぎりや酒類など加工品の輸出も考える必要がある。コメ政策は国内の農業の行方を左右する。選挙戦の渦中でも深さと広がりのある議論を求めたい。

<日本人のレベルと日本の低成長の理由>
*4-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20250705&ng=DGKKZO89832400U5A700C2EA5000 (日経新聞 2025.7.5) 太陽パネル導入に壁、来年度から工場や店設置目標義務 新型、効率・供給に課題
 企業の工場や店舗の屋根に置く太陽光パネルの導入目標策定が国内1万以上の事業者に義務化される。多くの工場は重いものを屋根に置く設計はされておらず、導入拡大へは屋根や壁面に設置しやすい軽量薄型の新型太陽電池「ペロブスカイト」が有力な選択肢となる。性能や価格面など企業が導入を急拡大するには課題が山積する。化石燃料の利用の多い工場や店舗は2026年度から屋根置き太陽光パネルの導入目標を国に報告する必要がある。定期的に計画を更新する必要はあるが、3~5年後をめどに掲げる導入目標が達成できなくとも虚偽の目標設定や報告でなければ罰則はない。目標未達でも罰則を設けないのは太陽光発電の量を増やすことだけが目的ではないためだ。経済産業省幹部は「日本に技術的強みのある次世代型太陽電池の普及を促す目的もある」と明かす。積水化学工業が量産にめどをつけるなど、今後市場への本格導入が始まるペロブスカイトの普及促進を念頭に置く。経産省はこれまでも積水化学の研究開発や生産ラインの整備費用やカネカの研究開発費用などを支援してきた。国内に大規模な工場や店舗を持つ企業は脱炭素に向けて太陽光パネルの導入を進めてきた。例えばイオングループは2月までに1469カ所の店舗・施設に導入済みだ。キユーピーも設置可能な既存工場への導入をほぼ終えた。キリンホールディングス(HD)はグループ全体で約7割の工場で導入した。各社が導入を進めるのはシリコン製の太陽電池がほとんど。軽量薄型のペロブスカイトでは設置場所が広がる。イオングループも「軽量かつ移設が容易にできるのであれば施設の壁や窓、屋内への導入を検討する」と関心を示す。ユニ・チャームも「建物の側面にも設置でき、倉庫などへの展開も期待できる」とする。太陽光パネルの国産化再興の一手としての期待もかかる。1963年、シャープの量産などを皮切りに国産品の製造が広がったが、価格に優れた中国製との競争に苦しんだ。パナソニックホールディングスや出光興産子会社のソーラーフロンティア(東京・港)が国内自社製造から手を引いた。太陽光発電協会(東京・港)によると、25年1~3月に国内出荷された太陽光パネルのうち国内で生産されたものは約5%にとどまる。ペロブスカイトはヨウ素など主要な原料を国内調達でき、国内の積水化学やシャープが技術開発を進める。ただ足元ではペロブスカイトの導入拡大へは懐疑的な声もある。建設業者などからは「安価なパネルと比べると投資に対して発電効率が低い」といった声も漏れる。耐久性も課題を残す。耐用年数は10~15年程度とされ、建設大手の関係者は「50年以上運用する工場などでの採用は現状難しい」と話す。設置条件などが定められておらず、「軽さを生かした設置が難しい」(パネルメーカー)といい、ルール整備も必要だ。SOMPOリスクマネジメントの堀内悟上席コンサルタントは「設置方法で(火災や事故の)リスクは変わり、分析が必要だ」とする。供給体制も未熟だ。積水化学は「現状の生産ペースでは設置目標義務を賄えない恐れがある」と懸念を示す。シャープやカネカも製品化を急ぐが、企業が求める量を確保できるか不透明だ。「湿気に弱い点や鉛使用による環境リスクなどの課題がある」(ユニ・チャーム)。「価格面から補助金など資金面での支援の充実が必要だ」(キリンHD)。中国勢も一部で量産を始めている。「安価な中国勢に流れてしまう懸念もある」(パネルメーカー)。ユーザーとメーカー両サイドの不安はつきない。太陽光発電は設備の多くを輸入に頼る。日本が先行したシリコン製は国内産業としては衰退した。ペロブスカイトも中国勢が勢いを増す。技術や環境整備の壁を乗り越えるには官民の目線を合わせた連携が不可欠になる。

*4-2-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20250717&ng=DGKKZO90077710W5A710C2EA2000 (日経新聞 2025.7.17) 〈参院選2025 選択の夏〉原発再稼働の是非は、積極派は電源に「最大限活用」 慎重派、将来は再エネ100%に
 参院選では、暮らしや企業活動に欠かせないエネルギーをどうまかなうかも争点になる。原子力発電所と再生可能エネルギーをどこまで活用するかで各党の立場は大きく分かれた。自民党は安全性を確認した原発の再稼働を積極的に認める方針で政策集には「原子力などの電源を最大限活用する」と記した。公明党も「最大限活用」で足並みをそろえ、2024年衆院選の公約にあった「可能な限り原発依存度を低減」との文言も削除した。自公両党は政府が2月にまとめたエネルギー基本計画を意識する。同計画は「原子力など、脱炭素効果の高い電源を最大限活用する」と明記。4年前の前回計画にあった「可能な限り原発依存度を低減する」との文言を削り、原発推進にカジを切った。
●国民民主は新設
 原発活用に最も積極的なのは国民民主党だ。再稼働のみならず、建て替えや新増設も進める。日本維新の会も早期の再稼働や次世代原発への建て替えを認める立場だ。参政党は再稼働を巡るスタンスを明らかにしていないが、次世代原発の研究に積極投資する考えだ。原発に慎重姿勢を取る野党も多い。立憲民主党は再稼働を容認する構えだが、実効性のある避難計画と地元合意を前提にしている。新増設には反対するほか、「すべての原子力発電所の速やかな停止と廃炉決定を目指す」と将来の原発ゼロ方針も維持する。れいわ新選組は「即時使用禁止」、共産党は「速やかに原発ゼロ」をうたう。エネルギーを巡るもう一つの論点が、太陽光や風力など再エネの推進だ。積極的なのは立民、共産、れいわ。いずれも将来の電源構成の100%を再エネでまかなうと主張する。温暖化ガス排出量を実質ゼロにする「カーボンニュートラル」は再エネ拡大を進めて達成するとの立場だ。自公両党は「最大限の導入」とする表現にとどめ、具体的な数値目標は設けなかった。日本は国土が狭く、平地が少ない。再エネの適地が限られるため、海外に比べて導入コストが高くなりがちだ。また天候に応じて出力が変わる再エネをどう制御し、安定的に電力を供給するかも大きな課題になる。再エネの急速な拡大に慎重な党もある。国民民主は再エネ普及のため電気料金に上乗せされている賦課金の徴収停止を訴える。同党は「手取りを増やす」ことにこだわっており、「賦課金が増大し国民に大きな負担になっている」ことを問題視している。
●家計負担が増大
 太陽光発電などの拡大に伴って、25年度の再エネ賦課金は標準家庭で月1500円余り。年換算では1万9000円ほどに増えており、家計にとって無視できない負担になっている。参政党は再エネ賦課金を廃止するとともに「高コストの再エネを縮小」と明記。温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」から離脱し、カーボンニュートラルの是非そのものを検証すると主張する。日本政府は「50年までのカーボンニュートラル達成」を20年に宣言した。実現には温暖化ガスを排出しない再エネ拡大が不可欠で、導入費用を国民が広く薄く負担するのが賦課金だ。その停止・廃止は「日本が脱炭素に背を向けた」と国際社会から批判されかねない。経済産業省は再エネ賦課金を停止・廃止した場合「発電事業者から訴訟を受けるリスクがある」(幹部)とみる。政府は再エネ電力を火力などよりも高く買い取る固定価格買い取り制度(FIT)を12年度に始めた。企業や家庭が再エネで発電した電気を電力会社が10~20年間買い取る仕組みで、電気料金に上乗せする賦課金を原資とする。国は一定額での買い取りを約束しており、財源がなくなって買い取りを中止すれば訴訟問題になりうる。再エネ賦課金の総額は年3兆円規模。消費税で約1%分にあたる規模で、代替財源を見つけるハードルは高い。電力需要は今後、人工知能(AI)普及やデータセンター拡大によって増えると政府は見込む。エネルギー基本計画によると40年度の発電電力量は1.1兆~1.2兆キロワット時と、22年度実績より1~2割増える。安定的で安価なエネルギーの確保は、国民の暮らしと企業の国際競争力にも直結する課題だ。安全性を大前提としたうえで、安定性や経済性、脱炭素といった要素をどう組み合わせていくかについて国民的な議論が求められる。

*4-2-2:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/1511189 (佐賀新聞 2025/7/17) 参院選 原発・エネルギー/福島事故の教訓忘れずに
 政府が原発推進にかじを切る中、参院選で原発とエネルギーについての議論は低調と言わざるを得ない。だが14年前に東京電力福島第1原発事故を経験した私たちにとっては、常に考えなければならないテーマだ。政府は2月、新しいエネルギー基本計画と地球温暖化対策計画をまとめた。福島事故の反省から掲げてきた「可能な限り原発依存度を低減する」の文言を削除し、原発推進を明確にした。電源構成に占める原発の割合を8・5%(2023年度実績)から40年度に2割程度に上げる。また再生可能エネルギーを最大電源として位置づけ、40年度に4~5割にする目標も掲げた。現在動いている原発は14基。基本計画が示す2割にするためには30基を超える既存原発をほぼ全て動かさなければならない。電力需要を賄うためにはいくつもの方法を組み合わせていく必要がある。これが政府・与党の考えだ。基本計画は古い原発を建て替える要件を緩和し、新たな建設に道を開いた。自民党は既存原発より安全性が高いとする「次世代型」の具体化を掲げ、公明党も「総基数は増えない」として容認した。野党はさまざまだ。立憲民主党は「新増設は認めない」とする。日本維新の会や国民民主党は再稼働を推進する姿勢だ。参政党や日本保守党も前向きだ。一方で共産党やれいわ新選組、社民党は原発反対を訴えている。各党の立場の幅は広い。再稼働を巡る現在の最大の課題は、東電柏崎刈羽原発だ。6号機と7号機は既に原子力規制委員会の審査に合格し、技術的には動かすことが可能になっており、東電は6号機を優先する方針を表明している。だが大きなハードルが残っている。再稼働に必要な地元同意である。新潟県の花角英世知事は県民の意見を聞き是非を判断するとしており、市町村長との懇談会や、県民の公聴会を開いている。県民意識調査も9月末までに結果がまとまる。知事の判断時期は近づいているとみられる。重要なのは、福島で事故を起こした東電にとって初めての再稼働になるということだ。技術的にクリアされても、東電に原発を動かす資格がそもそもあるのか。そのことが問われる。柏崎刈羽原発は新潟県や東電だけの問題ではないという意識で注視したい。福島第1原発では今も過酷な廃炉作業が続いている。取り出した溶融核燃料(デブリ)は昨年11月が0・7グラム、今年4月も0・2グラム。全体で880トンと推定されているのに比べ、ごくわずかだ。東電は今後大規模な取り出しをする考えだが、その方法は決まっていない。「事故から30~40年で廃炉」という目標の達成は厳しい状況に追い込まれている。周辺住民の避難も続いている。福島第1原発だけではない。完成延期を繰り返している青森県六ケ所村の核燃料サイクル施設や、核のごみの最終処分場など重要な課題は解決できていない。地球温暖化対策や、二酸化炭素(CO2)の排出を減らす脱炭素の取り組みは喫緊の課題だ。ウクライナや中東の情勢もあり、資源に乏しい日本にとってエネルギー確保に不安な状況が続く。ただ、まだ終わらない福島事故の教訓を忘れてはならない。

*4-3:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20250705&ng=DGKKZO89837470V00C25A7MM8000 (日経新聞 2025.7.5) 日産、中国をEV拠点に 来年から 東南アや中東に輸出
 日産自動車は2026年に中国から電気自動車(EV)の輸出を始める。輸出先は東南アジアや中東、中南米を想定している。日産は業績低迷を受けて世界で生産体制を見直している。価格と性能の両面で競争力のある中国製EVを幅広い地域に出荷し、経営の立て直しを急ぐ。日産は4月に中国で発売し、売れ行きが好調なEVセダン「N7」などを中国から輸出する。N7はデザインや開発、部品の選定まで日本の本社ではなく中国の合弁会社が担った初めてのEVだ。中国での価格は11万9900元(約240万円)から。現地のEV大手、比亜迪(BYD)の競合製品と比べても同水準の安さだ。広東省広州市の工場で生産している。N7のソフトウエア機能には中国企業の人工知能(AI)技術を採用している。国によっては利用が制限されている。日産は4月に中国のEV開発大手、阿爾特汽車技術(IAT)に出資した。同社の協力を得て中国市場向けのソフトなどを輸出仕様車に変える。日産の現地子会社が中国の国有自動車大手、東風汽車集団と通関などの実務を担う合弁会社を設立することでも合意した。新会社には日産子会社が6割を出資する。中国は世界に先駆けて車の電動化が進んだことで、EVの航続距離や車室の快適性、エンターテインメント機能などの性能が高い。日産は中国製の低価格EVの需要は国外でも高いとみる。

<日本の規制が促すサービス業の質低下>
*5-1:https://mainichi.jp/articles/20250701/k00/00m/020/251000c (毎日新聞 2025/7/1) アマゾン、配送拠点を6カ所新設 年内に全国翌日配送も可能に
 インターネット通販大手のアマゾンジャパンは1日、指定住所までの「ラストワンマイル」の起点となる配送拠点を国内6カ所に新設し、当日配送専用の拠点も全国16カ所で展開すると発表した。2025年内に翌日配送を全国で可能にし、当日配送できる地域も順次拡大させるとしている。新たな配送拠点は、岡山、千葉、福岡、石川、北海道、東京の6都道県に設ける。さらに入荷から保管、梱包(こんぽう)、仕分け、配送までできる拠点も年内に16カ所整備し、午後1時までに注文した商品を当日の夜間帯に届ける当日配送を数万点の商品で可能にするという。アマゾンの物流施設では、自走式ロボットが商品棚を持ち運び、大量の荷物を効率よく発送する「アマゾンロボティクス」と呼ぶ仕組みを採用。ロボットは世界300カ所以上の拠点で計100万台導入されている。今回、より効率的な動きを実現するため、新たな生成AI(人工知能)「ディープフリート」を取り入れることで、従来より効率を10%高めるという。東京都内で1日開かれた記者会見で、開発子会社の技術責任者タイ・ブレイディ氏は生成AIの技術について「サービスにかかるコストを削減し、顧客からの信頼性も向上できる。まだ始まり。(生成AIは)多くのデータから学び、さらに賢くなる」と期待した。日本での事業開始から25年。アマゾンジャパンのジャスパー・チャン社長は「最新技術でネットワークを築いてきた。今後もより良い暮らしに貢献できるよう取り組む」と話した。また、名古屋市に8月、新たな物流拠点を稼働させると発表した。三菱地所が設計し、延べ床面積は12万5000平方メートルで、「西日本最大」の拠点となる。温室効果ガスの排出削減にこだわり、壁面にも太陽光発電設備を導入。発電設備容量は5500キロワットで、米国外では最大規模だという。

*5-2:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/1493859 (佐賀新聞 2025/6/27) 「置き配」標準化検討、国交省、物流業者負担軽減、秋にも方向性
 国土交通省は26日、宅配ボックスや玄関前に荷物を届ける「置き配」を、宅配便の標準サービスとする検討に入った。業界で人手不足が深刻化する中、再配達を減らし、負担削減につなげるのが目的。物流業界関係者も交えた検討会の初会合を同日開いた。秋までに方向性をまとめる。置き配は、配達時間を気にすることなく、荷物を受け取れるという利点がある一方、盗難や汚損などのトラブルへの懸念から利用をためらう人もいる。トラブル防止など課題の解消が焦点となりそうだ。検討会は有識者や自治体関係者らで構成。会合は非公開で、国交省によると、出席者からは、受取人が不在時、業者が敷地内に立ち入ることを念頭に、セキュリティーやプライバシー面での対策を求める意見が出た。トラブル防止のため宅配ボックス設置をどのように推進するかといった課題を指摘する声もあったという。会合に出席した国交省の幹部は「地域で不可欠な物流サービスを持続可能なものにするため、既成概念にとらわれず、今の時代に合った合理的なやり方を生み出したい」と説明した。物流各社は、国交省が作った基本ルールを参考に、荷主との契約条件などを盛り込んだ「運送約款」を策定している。現行の基本ルールは対面での受け取りを前提としており、置き配は、荷物を受け取る側が選択する追加サービスとなっているケースが多い。国交省は、ルールを改定し、対面での受け取りに加え、置き配も標準と位置付けることを視野に入れている。物流の輸送力低下 低賃金や高齢化などで物流業界の人手不足が深刻化する中、トラック運転手の時間外労働の上限を年960時間とする規制が2024年4月から始まった。労働環境が改善するとの期待の一方、運べる荷物の量が減り、輸送力の衰えがさらに進むとの指摘がある。インターネット通販の浸透で荷物の量が増えていることも背景にある。

<その規制は意味があるのか>
*6-1:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/1498093 (佐賀新聞 2025/7/2) 日本郵便処分 規律不在の原因を究明せよ
 安全をないがしろにする法令違反がなぜ放置されてきたのか。日本郵便が国土交通省の行政処分を受けた。集配業務を手がける郵便局の約75%に上る2391局で酒気帯びの有無などを確認する法定点呼がルール通り実施されていなかったためだ。飲酒運転も発覚しており、規律不在としか言いようがない。各地の郵便局にあるトラックやバン約2500台が使えなくなった。異例の重い処分だ。経営陣や管理職の指示を現場が軽んじる体質があるのではないか。現場で起きている問題を上層部が把握できていないこともはっきりした。問題の根は深い。当たり前の規律が社内に浸透していないのは明らかだ。社長だった千田哲也氏は「会社全体の構造問題だ」と述べたことがある。限られた地域や部門だけで起きた不祥事ではないのだ。点呼を法令で決まった通り実施するのは当然だ。しかしそれだけで解決するわけではない。本来あるべき規律が確立していなかったのか、どこかで緩んでしまったのか。17万人の従業員を抱える巨大組織をいつまでも迷走させてはならない。郵便局の法定点呼は配達員を対象に、アルコール検知器を使って確認する。これまでの調査では、繁忙時には手順に沿った点呼が実施されなかったり、管理者がいる時だけ実施したりしていた事例が判明している。「適切に実施した」と虚偽の報告をしていたケースもあったという。日本郵便によると、2024年度に飲酒運転は4件あった。ワインをペットボトルに入れ、配達員が業務中に飲んでいたり、飲酒した配達員が車を塀に衝突させる事故が起きたりした。郵政民営化によって郵便、貯金、簡易保険は日本郵政を持ち株会社とする民間企業に生まれ変わった。民間のガバナンス(企業統治)を受け入れ、誠実に働いてきた従業員が大半だろう。だが民営化以前の古い組織や体質が温存されている面も否定できない。法令順守よりも旧来の慣習が優先されることはなかったか。郵便局の現場でなれ合いのような関係が残っていないだろうか。取締役会を軸に企業統治を徹底することが欠かせない。不祥事隠しを許さず、直ちに取締役に報告し是正する。こうした経験を重ねることが社内に緊張感を生む。持ち株会社の日本郵政による監督も必要だ。郵便物が減少し、日本郵便の25年3月期決算は42億円の赤字だった。今回の行政処分によって、ライバルの物流会社に業務委託せざるを得なくなり、収益に打撃が生じるのは避けられない。安全確認をないがしろにしてきたツケは重く、26年3月期決算にも影響が生じる可能性がある。日本郵便は昨年、下請け企業からの値上げ要請を拒否し公正取引委員会から行政指導を受け、ゆうちょ銀行の顧客情報の不正利用も発覚した。日本郵政、日本郵便ともトップが交代し、旧郵政官僚が社長に就いた。法令順守と企業統治を最優先する布陣だろうが、業務効率化と過疎地を含むサービス維持という基本を忘れてはならない。郵政民営化は国民の選択によって実現した。不祥事によって郵便事業や人事が官業に回帰することはあってはならない。新経営陣の覚悟と知恵が問われている。

*6-2:https://www3.nhk.or.jp/news/html/20250625/k10014844061000.html (NHK 2025年6月25日) 国交省 日本郵便のトラックなど使った運送事業の許可取り消し
 日本郵便が配達員の点呼を適切に行っていなかった問題で、国土交通省は25日、トラックなどおよそ2500台の車両を使った運送事業の許可を取り消しました。また3万台余りの軽自動車を使った事業については早急な対策を求める安全確保命令を出しました。日本郵便では、全国の郵便局3188か所のうち75%にあたる2391か所で配達員に対して飲酒の有無などを確認する点呼を適切に行っていなかったことがことし4月、会社の調査で明らかになっています。この問題について国土交通省は監査の結果、虚偽の点呼の記録を作成するなどの違反行為が確認されたとして、25日、日本郵便の千田哲也社長に対し、トラックなどを使った運送事業の許可の取り消しを伝える文書を手渡しました。この処分によって、トラックやバンタイプの車両、およそ2500台が5年間、配送に使用できなくなります。文書を受け取った千田社長は「多大なるご心配、ご不安をおかけしていることを改めておわびします。この処分を厳粛に受け止め、経営陣が先頭にたって再発防止に取り組みます」と述べました。また、国土交通省は、日本郵便が国に届け出て行っている3万台余りの軽自動車を使った事業について、監査の結果が出るまでに時間がかかるとして、早急な安全対策を求める安全確保命令を出しました。国では今後、監査の結果を踏まえて、車両の使用停止などの行政処分を検討する方針です。
●日本郵便 “代替手段を確保し利用者への影響 最小限に”
 国土交通省が、トラックなどおよそ2500台の車両を使う運送事業の許可を取り消したことを受けて、日本郵便は、代替手段を確保して利用者への影響を最小限に抑えようとしています。
日本郵便は、
▽およそ2500台のトラックやバンタイプの車両で「ゆうパック」の集荷や郵便局の間の輸送を行っているほか
▽およそ3万2000台の軽自動車や、
▽およそ8万3000台のバイクで郵便物の配送を行っています。
このうち、今回、許可が取り消されたのは、およそ2500台のトラックなどを使った事業です。
会社では、当面、
▽自社の軽自動車を活用するほか
▽大手宅配会社などに業務を委託する
といった代替手段を確保して、利用者への影響を最小限に抑えようとしています。日本郵便が使用できなくなる、およそ2500台の車両と同じタイプのものは、大手宅配会社2社も合わせて6万台使用していることから、国土交通省は、業務委託などを進めることで影響は抑えられるとみています。一方、国土交通省は、郵便物の配送を担う、およそ3万2000台の軽自動車を使う事業についても、点呼が適切に行われていなかった疑いがあるとして、監査を進めています。この事業について国土交通省は一定の期間、車両の使用を停止させるなどの行政処分を検討する方針です。処分の内容によっては、郵便物の配達などに支障が出るおそれもあることから、日本郵便は、利用者への影響が最小限となるよう対応を検討することにしています。国土交通省と総務省は、日本郵便に対して、コンプライアンスの強化や再発防止の徹底に加え、物流に影響が出ないよう十分な対策をとるよう求めています。
●総務省 日本郵便に最も重い行政処分「監督上の命令」
 総務省は25日、日本郵便が全国の郵便局の配達員に対して法令で定める飲酒の有無などを確認する点呼を適切に行っていなかったとして、会社に対して法律に基づく行政処分「監督上の命令」を出しました。これは、日本郵便に対する処分では最も重いもので、総務省は25日、日本郵便の千田哲也社長に対し、処分を伝える文書を手渡しました。命令では、国土交通省の行政処分でトラックなどの車両が使用できなくなる中でも郵便サービスを維持することや、再発防止策の着実な実施や見直しなどを求めています。文書を受け取った千田社長は「心よりおわび申し上げる。処分を厳粛に受け止め再発防止策に取り組みたい。ユニバーサルサービスを担うものとして、お客様にご迷惑をおかけしないようにしたい」と述べました。
●日本郵政の株主総会 増田社長が一連の不祥事を陳謝
 日本郵政は、郵便局の配達員に対して法令で定める点呼を適切に行っていなかった問題などグループで不祥事が相次ぐ中、株主総会を開きました。この中で増田寛也社長は極めて深刻な事態だとして、一連の不祥事を陳謝しました。日本郵政では、郵便局の配達員に飲酒の有無などを確認する点呼を適切に行っていなかったことや、日本郵便が金融商品の勧誘のため、ゆうちょ銀行の顧客情報を不正にリスト化していたことなど、グループ内での不祥事が相次いで明らかになりました。こうした中、会社は都内で株主総会を開き、冒頭、増田寛也社長は、一連の不祥事について、「極めて深刻な事態であり、この場をお借りして多大なご迷惑と心配をおかけしたことを深くおわび申し上げる」と陳謝しました。株主からは、法令順守の意識が不足しているので、再発防止に向けた組織づくりを徹底してほしいとか、現場の管理職が指導を徹底する体制が不十分だといった意見が相次ぎました。会社側は総会で、不適切な点呼の問題により25日、国土交通省からトラックなどおよそ2500台を使った運送事業許可の取り消しの処分を受ける見通しとなっていることを明らかにしました。処分による事業への影響について会社の担当者は、他社への配送の委託に加え、処分の対象となっていない軽トラックを効率的に運用し、配送業務に支障が出ないよう対応すると説明しました。このあと、増田氏の後任の社長に内定している根岸一行常務ら13人を取締役に選任する議案が可決されました。郵便・物流事業の赤字が続き、処分による業績へのさらなる影響も懸念される中、グループ全体のガバナンスや経営の立て直しが今後の課題となります。

*6-3:https://digital.asahi.com/articles/AST6T2SJFT6TULFA01JM.html?iref=comtop_7_01 (朝日新聞 2025年6月25日) 郵便・ゆうパックに影響は 日本郵便、一部運送を佐川などに委託開始
 日本郵便で集配時の点呼がまともにされていなかった問題は、25日に国土交通省の処分を受け、大口顧客の集荷などに使うトラックが使えなくなる事態に発展した。物流や業績への影響は、どこにどう出てくるのか。25日に都内であった日本郵政の株主総会は、株主の質問が点呼問題に集中した。この日で退任する増田寛也社長は国交省の処分について「極めて深刻な事態」だとし、「再発防止策に取り組み、オペレーション確保に万全を期す」と述べた。業績への影響は「精査中だ」とした。それでも株主の怒りは収まらない。ある株主は「(民営化前の)治外法権の意識が残り、法律を守る意識がないのではないか」と批判。会社側が公表した原因分析や再発防止策を疑問視し、「管理職の能力の問題ではないか」「危機管理能力が経営陣も現場もないのでは」との指摘も出た。
●ゆうパック値上げ「今の時点では…」
 日本郵便によると、今回の処分を見据え、約2500台ある1トン以上のトラックなどは24日までに使用を停止した。これらはおもに、大口顧客からの集荷や近距離の集配局間の運送に使われ、月に約12万便が行き来していた。そのうち4割強は自社の軽四輪で運び、6割弱は社外に委託する方針で、切り替えは19日から順次進めてきた。佐川急便や西濃運輸など多くの同業者に協力を仰いでおり、一部では代替の集荷や運送がすでに始まっている。日本郵便は「郵便やゆうパックのサービスは維持する」と強調している。個人が差し出す郵便やゆうパックの多くは軽ワゴンや原付きバイクで運ばれており、直接的な影響はなさそうだ。ただ、点呼を省いたり偽ったりする不正は、約3万2千台を保有する軽四輪での集配にも同様に及んでいる。日本郵便は今後、軽四輪にも一定の処分が出ると身構えており、委託範囲の拡大を迫られる可能性がある。外部委託の拡大や再発防止の対策でコストが膨らむ見込みで、それが郵便・物流事業の収益を押し下げるのは必至。千田哲也社長は17日の会見で「ゆうパックの値上げは今の時点で一切考えていない」と言い切ったが、大規模な不祥事が業績に影響を及ぼすのは時間の問題だ。

| 経済・雇用::2023.3~ | 01:38 PM | comments (x) | trackback (x) |

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