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2016.9.17 豊洲市場・首都圏の生鮮食料品と産地の対応 (2016/9/19、20、21、22、24、27、2016/10/1、15に追加あり)
   
  2016.9.11   豊洲市場の位置      2016.9.17          豊洲市場の状況
   Yahoo                      日経新聞

  
                 豊洲市場の欠点  上         2016.9.17   豊洲の海面との差
(魚を冷やす氷も、浄化した海水で創った方がいいのでは?)   日経新聞

(1)首都圏の食品が集積する豊洲市場の現状を、驚きを持って見た 
 小池百合子氏が東京都知事になられてから、豊洲市場への移転について立ち止まって検証してみたら、*1-1のように、豊洲市場の主要3施設の地下空洞が公開されたら、床一面に水がたまっており、完成から4カ月で深さが20cmに達した場所もあったそうだ。

 深さが最大で20cmある豊洲市場の地下空間の水たまりは、*1-2のように、日本の環境基準以下だそうで、東京都によると、*1-4のように、建設業者から施設を引き渡された2016年5月末の時点では地下の空洞に水はなく、水たまりは6月以降にできたと書かれている。しかし、これほど短期間に大きな瑕疵が現れる工法をとったことは、設計者や建設業者など建設を受託したプロ集団にも責任がある。

 しかし、*1-4では、水が酸性かアルカリ性かということしか調べていない上、*1-3のように、日数をかけてもヒ素と六価クロムしか検出できなかったというのは水質検査のレベルが低すぎ、水俣病の原因物質が有機水銀であることをつきとめた東大薬学部に委託すれば、その水に含まれる成分と濃度のリストは数日で作れる筈だ。また、海水の可能性もある上、現在は、フクイチから漏れたセシウムやストロンチウムが川から東京湾に注ぎ込んでいるため、放射性物質等の測定も必要だ。

 私が、ここまですべきだと書くのは、*1-6のように、豊洲はもともと海だった所にゴミを埋めて陸地を造った海抜1m~2mの場所だからである。その前提で6月以降に水たまりができた理由を考えれば、横にだけコンクリートの護岸を造っても、圧力差で地下から水が上がってくるため、2m掘って海抜0m近くになっていた場所が大潮・高潮で海抜以下となり、水圧によって深い所で20cmの水が溜まったのだと考えられる。そうすると、この水は、もともとゴミだった土壌を通ってきた海水であり、何が含まれているかわからず、危険であるため、地下空間を造るのなら徹底して防水すべきだったのだ。

 しかし、平時は、徹底して防水した地下空間にすれば何とかなるにしても、4.5mの盛り土をしたところでも、5mの津波が来ればマンホールから水が噴きあがってアウトになる。そのため、そこにいる人たちが、どう避難する計画なのかは疑問だ。

(2)豊洲市場の安全性を「再評価する」という都の専門家会議
 都の専門家会議は、*1-5のように、2008年に土壌汚染対策として盛り土を提言した当時のメンバーで、豊洲市場の盛り土をめぐり、前提条件が変わったことを受けて、現状を再評価するそうだ。「今から盛り土をするのは難しいため、盛り土がない中でどうするのかを議論する」とされているが、その費用及び豊洲市場移転の遅延損害金は、どこが負担するのだろうか。

 また、国の環境基準以下なら何が出ても安全なわけではないため、私も、小池知事同様、豊洲市場の問題は徹底して経緯と安全性を明確にしてもらいたい。そして、これは、単に東京だけでなく、豊洲市場を利用する地域全体の問題だ。

(3)産地の安全を保つ努力を知るべき
i)安全と衛生
 *2-1のように、EUは漁船から水揚げされてから流通に至る段階まで厳しい基準を満たした水産物しか域内への輸入を認めておらず、アジアの新興国でも衛生意識が高まり、輸出促進には衛生基準の引き上げが不可欠になっているそうだ。しかし、輸出のために衛生基準を引き上げなければならないほど、日本国内の衛生基準(安全基準)は低かったのだ・・。

 なお、現在、「におわない魚」が人気だそうだが、産地ではもともと生臭さを感じるほど死んでから時間の経過した魚は食べないし、魚臭さは魚の味のうちだと私は思っている。しかし、*2-2のように、みかんやレモンの香りをつけたり、エサに大豆カスなどの植物性たんぱく質を増やしたり、うまみを補うチキンミールや脱臭効果のある茶の粉末を大量に加えたりした養殖魚も出荷され始めているそうだ。

ii)魚は新鮮さが命
 日本全国で害獣と言われたクラゲだが、*2-3のように、中国では高級食材として需要があり、(私の提案で)輸出量が増えて高値を付けていた有明海のビゼンクラゲは、一時は有明海の“救世主”となったが、中国景気の失速による価格下落で現在はピンチだそうだ。しかし、簡単に調理できるように(例えば「野菜や蒸し鳥と一緒にたれをかけるだけ」など)加工してセットにすれば(6次産業化)、日本の家庭でも前菜として人気が出るだろう。

 つまり、共働きが増え専業主婦の割合が減っている現在では、女性は魚をおろせたり、美味しいだしをとれたりすることに誇りを持つのではなく、ゴミや洗い物を少なくしながら手軽に美味しいものを食べたいという価値観に変化しているため、魚は水揚げしたらすぐに産地で加工し、獲れたての美味しさを閉じ込めた製品にして送った方が喜ばれると考える。

 また、豊洲市場がこういう具合であれば、豊洲市場を通していない食品の方が安全ブランドの価値が高くなるため、産地で細胞を壊さない冷凍にしたり、半調理したりして、消費者が選択できるように獲れた海域を明示したラベルを貼って送った方がよい。

<豊洲市場の現状に驚き>
*1-1:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20160917&ng=DGKKASFB16HFG_W6A910C1EA1000 (日経新聞 2016.9.17) 一面に水、漂う臭気 豊洲地下空洞公開、青果棟、砕石層むき出し
 豊洲市場(東京都江東区)の主要3施設の地下空洞が16日、報道陣に初めて公開された。床一面に水がたまっており、完成から4カ月で、深さが20センチに達した場所もあった。共産党都議団の発表によると、水に含まれる化学物質は環境基準以下だったが、地下空洞がつくられた経緯が不透明で、安全対策の検証は長期化も予想される。階段を下りていくと泥の臭いがしてきた。「地下ピットに入る場合は原則2名以上とする」。酸欠や閉じ込めへの注意を促す触れ書きを横目にドアをくぐると、青果棟の地下に広大な暗闇が目の前に広がった。室内に明かりはなく、懐中電灯を手に慎重に歩を進めると、一面水浸しの床が眼前に飛び込んできた。空間の高さは5メートルほどの場所もあれば、かがまないと歩けない狭い地点もあった。都は同市場の施設の地下には盛り土だけでなくコンクリート床も計画していなかった。今回、公開されたのは水産卸売場棟、水産仲卸売場棟など3施設。このうち青果棟では床のかなりの部分で、砕石層がむき出しになっていた。暗く、奥まで見渡せない室内は、20~30人は優に入れる広さがある。じめじめと湿気が多く天井も結露し、泥やカビのような臭いが全体に充満。人が通るとすぐににごる水たまりの側には、大気の成分を調べるためとみられる機器も置かれていた。水産卸売場棟や水産仲卸売場棟の地下でも、深さ数センチの水たまりが一面にできていた。いずれの建物の地下にも配管が縦横無尽に張り巡らされており、その上に土ぼこりなどがたまっていた。地下空間の水について都は「8月の大雨でたまった。外構工事が半ばで地下の側壁から水が浸透した」とみている。13日以降の都の水質調査で16日までに回収できた分は、関係者によると、ベンゼンやシアンなどの有害物質の濃度は環境基準値以下だったという。

*1-2:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20160917&ng=DGKKZO07373620X10C16A9MM8000 (日経新聞 2016.9.17) 豊洲の地下空洞 水たまり、深さ最大20センチ
 築地市場(東京・中央)の移転予定先である豊洲市場(同・江東)の建物の地下が空洞となっている問題で、東京都は16日、主要3施設の地下部分を報道陣に公開した。床には深い所で20センチの水がたまっていた。雨水か地下水かは不明という。都によると5月に建設会社が引き渡した時には水はなかった。共産党都議団は16日、青果棟の水からヒ素が検出されたが、環境基準以下だったと発表した。

*1-3:http://digital.asahi.com/articles/ASJ9K3GLYJ9KUTIL00R.html?iref=comtop_8_03 (朝日新聞 2016年9月17日) 建物地下の水、微量のヒ素と六価クロム検出 豊洲市場
 豊洲市場(東京都江東区)の建物の地下にたまっていた水について、都は17日、水質調査結果を発表した。環境基準を下回る微量のヒ素と六価クロムが検出されたが、ベンゼンやシアン化合物などは検出されなかった。13日に主な3棟の地下で採った水を検査したという。専門家会議座長の平田健正(たてまさ)氏は会見で「(検出された数値は)全然問題ない」と話し、ヒ素が検出されたことから「地下水の影響が出ている可能性がある」と指摘した。結果によると、ヒ素は環境基準(1リットルあたり0・01ミリグラム)に対し最大で0・003ミリグラム、六価クロムは基準(1リットルあたり0・05ミリグラム)に対し0・005ミリグラムがそれぞれ検出された。

*1-4:http://headlines.yahoo.co.jp/videonews/fnn?a=20160915-00000370-fnn-soci (フジテレビ系FNN 2016年9月15日) 豊洲新市場地下空洞に水たまり 小池都知事、専門家会議再招集へ
東京・築地市場の移転先となる豊洲市場の土壌汚染対策をめぐる問題で、市場の建物の地下にある空洞にたまった水は、2016年6月以降にたまったとみられることがわかった。都は、早急に水質調査を行う考え。豊洲市場の主要施設の地下が、都の独断で盛り土(もりど)がされず、空洞になっていた問題で、14日、公明党や共産党の都議団が現場を視察し、水産卸売場棟や青果棟など3つの施設で、多いところでは、20cm近くの深さの水がたまっていることがわかった。東京都によると、建設業者から施設を引き渡された2016年5月末の時点では、空洞に水はなく、水たまりは、6月以降にできたものとみられる。14日、水を採取した共産党都議団が調べたところ、水は、強アルカリ性だったということで、専門家からは、人体への影響も懸念されるとの指摘が出ている。日本環境学会元会長の畑 明郎氏は、「弱アルカリ温泉では、pH8~9くらいですね。それよりも、もっと強いので、皮膚は表面が溶けますから、痛くなるし、飲むとまずいですね。魚なんかは死んじゃいますね」と話した。一方、小池都知事は15日、専門家会議を再招集することを明らかにしたほか、地下の空洞について、さらにくわしく調べる必要性を強調した。小池知事は、「水質だけでなくてですね、地下の大気などもよく調べていかないと、正しい分析にはならない」と述べた。東京都は、すでに水の調査を行っており、小池知事は、空気の調査についても、早急に行う考え。

*1-5:http://digital.asahi.com/articles/ASJ9K36LJJ9KUTIL00L.html
(朝日新聞 2016年9月17日) 豊洲市場の安全性「再評価する」 都の専門家会議が会見
 東京都の築地市場(中央区)が移転を予定する豊洲市場(江東区)の「盛り土」をめぐる問題で、都の「専門家会議」の委員らが17日に会見し、「前提条件が変わった。現状を見て再評価する」と述べた。2008年に土壌汚染対策として「盛り土」を提言した当時のメンバーで、当時の想定と異なる地下空間の安全性を検証する。08年当時の座長だった平田健正(たてまさ)・放送大学和歌山学習センター所長らが会見した。「(今から)盛り土をするのは難しい。盛り土がない中でどうするのかを議論する」などと話し、必要な改善策も検討する考えを示した。結論を出す時期については、「いつまでというのは、予想がつかない」と述べるにとどめた。会議は平田氏のほかに、いずれも当時の委員だった駒井武・東北大院教授と内山巌雄・京都大名誉教授も参加する。当時、環境基準を大きく上回る有害物質が検出されたため、「敷地全体で汚染の可能性がある土を入れ替えて盛り土をする」と提言。しかし、都は提言を無視する形で施設を設計し、建設を進めた。盛り土がなかった問題を小池百合子都知事が10日に公表し、「提言からの変更について、都が専門家会議に意見を求める手続きを怠った」と指摘。都の要請で会議を再開し、盛り土がない現状での安全性を検証することになった。危険性が認められる場合、改修策も検討する。都はこれまでの経緯や市場の移転について検証する有識者のプロジェクトチームも今月発足させており、専門家会議には、チームの座長を務める小島敏郎・青山学院大教授もオブザーバーとして加わる。小島氏も会見に出席し、豊洲への移転時期について「少し(時間が)かかりそう」と長期化を示唆した。小池百合子知事は16日(日本時間17日)、パラリンピック閉会式出席のために出張中のリオデジャネイロで取材に応じ、豊洲市場の問題について「徹底して客観的に、これまでなにがあったのかを明確にしたい。それを踏まえたうえで、それぞれのご専門の方々からの意見を待ちたい」と述べた。

*1-6:http://blogs.yahoo.co.jp/konchanni/54595284.html
(Yahooブログ 2014/7/30) 豊洲で、海抜の話しするのは、禁句です。
豊洲のららぽーとに買い物に、先日行きました。どこの道にも、案内板にも、海抜何メートルという表示がありません。私の住む東京都港区は、どこの電柱にも案内板にも、ここは海抜何メートルですとあります。しかし、ここ、江東区豊洲町には、高層マンション、学校もたくさんできているのに、その開示がありません。これは、危険ですね。防災上も。なぜ、開示が示されないのか? 考えられることは、住民が馬鹿なんですね。この地域に5000万円のローンを銀行から組んで暮らしている人たちからすれば、資産価値が下がりますから。しかし、事実は、知らさなければなりません。他の地域から買い物しに来た客たちの命を守るためにもです。ここ、豊洲は今は道路も幅広く、綺麗な個装マンションが建ち並んでいる地域で、一部の会社員、主婦層=私はバカたちと思います(環境問題に疎い、見かけにこだわる人達)が、ここの街のアスファルトの下は、ヘドロとゴミの有害物質の土壌?です。もともとは、海でした。今、築地市場移転問題で揺れていますが、これは、豊洲などのこの地の土壌が有害物質で汚染れているから、口の中に入る築地市場の移転に反対する市場関係者も少なくないわけです。また、この豊洲地域の海抜は、0mから2mです。ここの自治体に代わって、示しておきます。ここに、あんぜんに暮らす価値が本当にあるのか?疑問です。高い価格のマンションを買って・・・・・。

<生鮮食品の安全性>
*2-1:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20160515&ng=DGKKASFS13H64_U6A510C1NN1000 (日経新聞 2016.5.15) 水産物輸出へ拠点港 水産庁方針 20年度までに80カ所
 水産庁は2020年度までに水産物の欧米やアジアへの輸出を担う強化漁港を全国で70~80カ所整備する。欧州連合(EU)などの厳しい輸入基準を満たせるように、水揚げから出荷までを衛生的に管理できる設備の導入を急ぐ。海外での日本食ブームや健康志向を追い風に、20年の水産物輸出額を15年比3割増の3500億円に引き上げることを目指す。16年度末までに閣議決定する漁港整備の長期計画にこうした方向性を盛り込む。水産庁は16年度から(1)水産物の取扱量が原則5000トン以上(2)ホタテやサケなど養殖用水産物の取扱量が原則1000トン以上――のいずれかを満たす漁港を「流通・輸出拠点漁港」とする方針を打ち出した。だが該当する約150カ所のうち、高度な衛生管理体制で出荷できる漁港は八戸港(青森県)や枕崎港(鹿児島県)など2割にとどまっている。これを20年度までに5割に引き上げる。具体的にはアジア向けのホタテ輸出が期待できる北海道北東部の漁港などが対象になる見通し。東日本大震災で甚大な被害を受けた女川港(宮城県)なども含まれる可能性がある。EUは漁船から水揚げされてから流通に至る段階まで厳しい基準を満たした水産物しか域内への輸入を認めていない。水産需要が膨らむアジアの新興国でも衛生意識が高まり、輸出促進には衛生基準の引き上げが不可欠になっている。15年度の農林水産物・食品の輸出額は前年比2割増の7452億円と、3年連続で過去最高を更新した。世界的な日本食ブームや健康志向の高まりを背景に、海外の富裕層から水産物の引き合いが増えている。

*2-2:http://digital.asahi.com/articles/ASJ5M43L5J5MUTIL017.html?iref=com_alist_8_01 (朝日新聞 2016年6月19日) におわない魚、食卓で人気 エサ工夫、フルーツの香りも
 魚臭さを抑えた「におわない魚」が人気だ。みかんやレモンの香りをつけた「フルーツ魚」を売り出す地域も増えている。魚離れが進むなか、新しい需要の掘り起こしにつながるのか。総合スーパー「イトーヨーカドー大森店」(東京都大田区)の鮮魚売り場。「におわない」のシールが貼られたブリの切り身を買った近所の主婦原早知子さん(32)は「くせがなくて最初食べたときは驚きました。お肉みたいにジューシーで気に入っています」。一般的なブリより1割ほど高いが、月に3回ほど買うという。開発したのは、クロマグロなどの養殖に力を入れる近畿大学の有路昌彦教授(41)。食べても魚臭さはほとんど感じさせない一方で、脂の乗りは中トロ並みの平均20%以上。濃厚な味が口に広がる。5年がかりで商品化し、大学が支援する「食縁」(本社・和歌山県新宮市)が今年1月から関西や関東の一部の店に卸し始めた。「におわない」理由は主にエサにある。一般的なエサの配合飼料には、成長に不可欠なたんぱく質として魚粉が4~6割ほど含まれるが、魚臭さの元になるため、配合を28%に削減。一方で大豆カスなどの植物性たんぱく質を増やし、うまみを補うチキンミール、脱臭効果のある茶の粉末を大量に加えたという。「内臓と接して本来、エサのにおいがつきやすいはずの腹身もほぼ無臭にできた」と有路教授は言う。開発の背景にあるのが、魚臭さや調理の手間を敬遠する消費者の魚離れだ。農林水産省の調べでは、1人当たりの魚介類消費量は2011年度に肉類に逆転され、14年度は約27キロと、ピークの01年度から約13キロ減った。有路教授は国内で養殖が最も盛んなブリに着目。エサとともに、においの元となる体表の酸化を防ぐ真空パックも民間企業と開発した。「ブリ特有のにおいを好む人も多いが、消費拡大のためには苦手な人の市場開拓が大事。よりにおいに敏感な海外への輸出増にもつなげたい」と期待する。
■みかん香るブリも
 「フルーツ魚」もエサに柑橘(かんきつ)などを混ぜて魚臭さを抑え、香りをつける。養殖業が盛んな西日本で次々と商品化されている。回転ずし「無添くら寿司」を展開するくらコーポレーション(本社・堺市)は12年、みかんの皮と果汁をエサに混ぜた愛媛県の「みかんブリ」のにぎりの提供を始めた。食べると、みかんの風味が口に残る。担当者は「さっぱりした後味が人気で、魚嫌いの子どもも食べてくれる。通常の養殖ブリの1・5倍の売れ行きです」。今では「みかんサーモン」や「すだちしまあじ」など10種類のネタを、フェアや月替わり商品として出しているという。フルーツ魚の生みの親は高知大学の深田陽久准教授(魚類栄養生理学)。柚子(ゆず)に含まれるポリフェノールの抗酸化作用に注目し、エサに加えたところ、身の変色が抑えられるだけでなく、香りもつくことを発見した。07年に鹿児島県の地元漁協が深田准教授の協力を得て「柚子鰤(ぶり)王」の販売を開始。果皮と果汁をエサに10%ほど加えて20~30回魚に与え、柑橘の香気成分「リモネン」を人間の感知できる最低量の約20倍、身に蓄積させているという。全国海水養魚協会の調べでは、少なくとも8県に23種類のフルーツ魚がある(昨年12月時点)。消費者にも浸透し始め、大分県の「かぼすブリ」の15年度の出荷量は512トンで、販売を始めた10年度の90トンから急増している。とはいえ、フルーツ魚のシェアは養殖魚全体でみればわずかなもの。「におい」のある本来の魚の販売が安定経営には大事なため、大々的にPRするのは難しい。深田准教授は「養殖でしか作れないおいしい魚が増えることで、養殖魚の評価が高まり、業界の活性化につながる。魚を好きになるきっかけになってほしい」と期待する。

*2-3:http://qbiz.jp/article/92489/1/ (西日本新聞 2016年8月17日) ビゼンクラゲの価格が急落 中国景気失速で有明海の“救世主”がピンチ
 有明海漁業の救世主的存在だったビゼンクラゲの取引価格が大幅に下落している。中国で高級食材として需要があり、輸出量が増えて高値を付けていたが、中国経済の失速で需要が落ち込んだとみられる。有明海では取れなくなったタイラギなどに代わる貴重な収入源で、県内の漁業者から心配する声が出ている。ビゼンクラゲは傘の直径50〜70センチで、大物は重さ約30キロ。昔は引っ掛かると漁網が破れる厄介者とされていたが、ここ10年は中華料理の前菜や酢の物の食材として、国内外の業者による取引が活発化。乱獲を防ぐため、福岡、佐賀両県の有明海区漁業調整委員会は昨年、7〜10月だけ漁を解禁する規制を始めた。ところが、県有明海漁協大浦支所によると、今年の取引額は1キロ230円前後で低迷。14年の500円、15年の350円と比べ半値近くになっている。今夏の水揚げ量は昨年と同水準でだぶついているわけではなく、クラゲ専門商社くら研(神奈川県茅ケ崎市)の福田金男社長は「中国の景気失速が原因。ぜいたく品の消費は落ち込み、安物を求める傾向が価格を押し下げている」とみる。ノリ養殖も営む太良町の漁業渋谷浩之さん(45)は「クラゲ漁は重くて肉体的にきついが、不作気味のノリ養殖を補う大切な仕事。このまま低価格が続けば、燃料費も割に合わなくなる」と気をもむ。九州農政局佐賀支局によると、クラゲを主に示す「その他の水産動物類」の県内の水揚げ量は11年まで年間30〜100トン前後だったが、取引の活発化や個体数の増加で12年は3500トンと爆発的に拡大、13年は5488トン、14年も3230トンで推移してきた。一方、タイラギは有明海の環境異変で戦後最長の4季連続休漁が続いている。


PS(2016/9/19追加):*3-1、*3-2で、東京都は生鮮食料品を扱う市場開設者としての食品安全性に関する責任感や金銭感覚が欠けていることがわかった。しかし、「①この建物に約5,900億円もの建設費を支払わされた被害者としての都民」「②市場を機能させている民間企業の卸・仲卸」だけでなく、「③東京都が承認しなければ小売店や食品企業はせりに参加できないという時代遅れの市場制度」「④生産者の利益」「⑤消費者の利益」も考えられるべきである。つまり、第一次産業の生産者は、市場を通すことで自由な価格付けができず、卸・仲卸に手数料を支払う分だけ消費者がその製品に対して支払った金額から受け取る収入が減らされる。そのため、間に立っている卸・仲卸・小売は、よほど役立つ仕事をしているのでなければ第一次産業の寄生虫となり、役立つ仕事をしているか否かはニーズによって決まるため、取引の自由を認めた上で卸・仲卸数の調整がなされるべきである。
 私は、衆議院議員をしていた2005~2009年の間、地元の全農協・漁協を廻って話を聞き、第一次産業は利益率が低いため大規模化・機械化・機械価格の低減・燃費削減等によるコスト削減が必要だと理解したが、同時に、市場を通さず直接消費者に販売することで生産者の利益が増え工夫も生まれるので、生産者が道の駅や小売店と直接取引することが重要だと考え、これを進めてきた。そして、道の駅に出された生鮮食料品は、新鮮さ・安さ・品質などで市場を通した規格品よりも人気があり、道の駅や小売店による生産者からの直接仕入れは増加しているのである。
 従って、地方の市場はそれぞれ存在理由があるのでその地方で考えればよいが、東京都は確かに11ある市場の整理統合が不可避だろう。そこであぶれた仲卸の人材は、知識・経験・ネットワークを持っているため、大規模小売店や食品企業の生鮮食料品仕入れのプロ、もしくは生産者のアドバイザーとして働けばよいと思う。

    
2016.9.18日経新聞   2016.9.18日経新聞    第一次産業製品の  2016.9.18日経新聞
 市場開設者の責任       豊洲市場          卸売市場経由率    仲卸業者数の推移

*3-1:http://www.nikkei.com/article/DGXMZO07231360U6A910C1000000/?dg=1 (日経新聞 2016/9/18) 豊洲騒動にみる市場開設者の怠慢  編集委員 志田富雄
 東京都の小池百合子知事は8月末、11月2日に予定していた築地市場の閉鎖と同7日の豊洲市場開業を当面延期すると発表しました。2011年の決定から曲折を繰り返した豊洲市場への移転は、最後の最後で「待った」がかかったのです。さらに、ここにきて汚染土壌対策として専門家が求めた「盛り土」工事が主要な建物の地下で実施されていなかった事実が共産党都議団の調査で明らかになりました。これまでの東京都の説明は事実上、嘘だったことになります。こうした築地移転をめぐる一連の騒動は、卸売市場の役割や仕組み、現在の卸売市場が直面する課題に目を向けることで理解が深まります。マグロの初セリや場外市場での買い物を通じて築地の名前は国内外に浸透し、外国人観光客も多く訪れます。ただ、その役割をきちんと説明できる人は少ないかもしれません。今回はそこを解説してみましょう。
■全国64の中央卸売市場、東京都に11開設
 築地市場などの卸売市場には、中央卸売市場と地方卸売市場があります。14年度時点で全国に1092ある地方卸売市場の開設は企業や農業協同組合でも可能ですが、食品流通の根幹を担う中央卸売市場の開設者は卸売市場法によって自治体と決められています。とりわけ東京都は15年度で全国に64ある中央卸売市場のうち、11の市場を開設しています。そこには取引金額で全国最大の築地市場のほか、野菜や果物、花の取引を主力とする大田市場、芝浦の食肉市場があります。これらの市場は設置場所や開設者が東京都とはいえ、卸売市場としての役割は全国区です。市場開設者としての東京都の責任は自治体の中でも突出して重いのです。今回の騒動をみると、東京都には市場開設者としての責任感が欠けているとしか思えません。建設資金の税金を払った都民も被害者ですが、直接的な影響を受けるのは市場に参加する卸や仲卸会社の人たちです。卸売市場を開設し、適切に運営するのは東京都です。ただ、市場を機能させるのはそこに参加する民間企業の卸や仲卸です。卸売市場では卸が仕入れてきた食品を仲卸が買い付け、それを小売店や外食店に売ります。その過程で、卸と仲卸の間でマグロなどのせりが行われるのです。東京都が承認すれば小売りや食品企業なども買い手としてせりに参加することができます。卸売市場には全国の食品を集めて分配し、公正な価格を決める役割があります。開設者である東京都が「築地は老朽化したので、豊洲に引っ越します」と決めれば“店子(たなこ)”である卸や仲卸はそれに従うか、豊洲での営業をあきらめる(多くの仲卸の場合は廃業)しかありません。ところが、引っ越しの準備をほぼ終え、新居の冷蔵庫のスイッチも入れた(家庭の冷蔵庫と違い、冷やし込みには長い時間がかかります)と思いきや今度は「新居の安全チェックがまだなので引っ越しはしばらく延期。新たな引っ越し時期は年明けに決めます」と言われたのです。これだけでも上から目線で、店子はかちんときます。追い打ちをかけるように「新居の安全対策がこれまでの説明と違ってました」と言われれば、移転を推進してきた企業の幹部さえ怒り心頭なのは当然のことです。市場関係者の話では、年末に向けて取引量が増える11月の引っ越しを提案したのも東京都です。築地市場の跡地では20年の東京五輪で幹線道路として使う「環状2号」の工事をしなければならず、道路の建設計画から逆算して移転時期を決めたとみられています。しかし、豊洲市場の安全性の最終確認が間に合わないとして、小池知事は移転延期の根拠としました。築地市場の移転をめぐっては、これまでも曲折がありました。開設は1935年ですから、すでに80年代には老朽化や場内の狭さなどが問題になり、大井への移転や築地での再整備計画などが持ち上がりました。築地での再整備は工事に着手したのですが、市場の営業を続けながらの工事という同時並行が困難なことが分かり、工事は中断。東京都は01年に豊洲への移転を決めました。ところが、東京ガスの工場があった移転先の土壌から高濃度の有害物質が見つかり、都は汚染対策工事にとりかかりました。土壌をきれいな土と入れ替える対策で、これが都の説明と違うと問題になっているものです。その間、店子も「豊洲移転派」と「築地派」に分かれて激しい議論が続きました。とりわけ、豊洲への移転に難色を示す企業が多かったのは仲卸です。築地市場に参加する卸会社には大都魚類、東都水産、中央魚類、築地魚市場といった上場企業もあります。一方、仲卸は零細な中小企業がほとんどです。東京都の調べで中央卸売市場の仲卸は14年末時点で1164社と89年から35%減少。存続する仲卸も3期連続で経常損失となるなど東京都の決めた財務基準に抵触する比率が6割に及びます。仲卸には1000万円ほどかかるとされる引っ越し費用を捻出できないところも多く、これが移転反対の一因になっています。
■仲卸の経営改善へ役割果たせず
 卸売市場法では市場開設者の自治体や卸会社の許可権限は政府(農林水産大臣)が持ち、仲卸の許可権限は自治体にあります。東京都は仲卸各社の経営状況をチェックし、市場の円滑な運営に努めなければならないのです。多くの仲卸の経営が揺らいでいる現状も、東京都は十分に責任を果たしていないといえます。12年には仲卸の団体の間で、移転派の組合員が移転に慎重な理事長に解職請求を突きつけた騒動もありました。今回の移転延期と土壌汚染対策の不備発覚により、時計の針が逆戻りし、移転をめぐり市場が再び割れる懸念があるのです。ただし、このまま築地市場を存続させることは本質的な問題解決につながりません。築地市場の老朽化は目に余るものがあります。大規模な地震などが起きなくても、天井の崩落などによって働く人たちに被害が及ぶ危険性もあります。手狭な場内でターレーと呼ばれる運搬車による人身事故も後を絶ちません。今回の騒動では、築地市場もアスベストなどの問題を抱えている事実に焦点が当たりました。少なくとも東京都は市場開設者として築地など11市場についても豊洲と同様、有害物質を厳しくチェックして情報を公開する必要があるでしょう。築地市場を見学したことのある読者なら分かると思いますが、築地は間仕切りの少ない開放型の施設です。もちろん卸や仲卸はそれぞれ冷蔵庫を持っていますが、市場全体として厳格な温度管理は不可能です。政府は卸売市場の整備方針として温度管理を徹底するコールドチェーンをつくることをめざしています。現状維持では、こうした市場の近代化も足踏みしてしまいます。移転の前途には暗雲が広がりましたが、かといって振り出しに戻ることもできないです。
■進む地盤沈下、11市場の整理統合は不可避
 そもそも東京都は長い間、老朽化した市場の改善を放置していたのです。移転延期の期間がどれくらいになるかは分かりません。しかし、長期化するだけ食品流通は築地(卸売市場)を離れ、地盤沈下が進むのです。宿題はそれだけではありません。東京都には11、全国では64の中央卸売市場があると説明しましたが、数が多すぎるのです。交通網が整備されていなかった時代と違い、今では青森県でとれた「大間のマグロ」や大分県でとれた「関さば」もすぐに築地市場にトラックで運ばれるようになりました。買い手では大規模なスーパーや外食チェーンが台頭し、卸売市場を通さない産地との直接取引も増えています。水産物の卸売市場経由率は98年度の71%台から13年度には54%台まで低下しています。卸や仲卸は扱う商品の金額の中から収入を得ますから、卸売市場の取扱金額が減れば収入は減り、経営は苦しくなります。先に指摘した仲卸の経営問題です。東京都は11市場の整理統合にまったく手を付けていません。これも責任の放棄です。東京都などの自治体は政府と連携し、卸売市場の整理統合を加速しながら、市場の近代化を進める必要があります。それには施設だけでなく、取引制度を食品流通の変化に合わせる規制緩和も必要です。これを契機に、中央卸売市場の民営化推進も検討してほしいと思います。

*3-2:http://www.sankei.com/life/news/160830/lif1608300029-n1.html (産経新聞 2016.8.30) 総事業費1・5倍 維持費1日700万円 延期で都民にさらなる負担の可能性
 11月7日に計画されている東京都の築地市場(中央区)の豊洲市場(江東区)への移転について、小池百合子知事が疑問視するのは、移転先の豊洲市場の総事業費が平成23年度の約3900億円から約1・5倍となる約5900億円に膨れ上がった点だ。だが、移転を延期しても豊洲市場の空調などに維持費がかかる上、11月移転に向け準備を進めてきた関連業者から補償も求められかねない。財政負担はさらに拡大の可能性が高く、小池氏は難しいかじ取りを迫られそうだ。都の説明によると、豊洲市場の建設費は、資材・人件費の高騰などで、23年度に行った試算時の約2・8倍の2747億円に増加したほか、土壌汚染対策費も約1・5倍の858億円に膨張するなど、最終的な総事業費は約5884億円に及ぶと見込まれている。膨らんだ事業費について小池氏は今月16日、「こんなに天井知らずに高くなっていいのか。非常に疑問に思う」と不信感をあらわにし、自身が設置する都政改革本部で検証する考えを示していた。


PS(2016.9.20追加):*4-1のように、毎日新聞は、2016年9月18日、「『建物下の空洞は土壌汚染が再び見つかった場合に備えて、パワーショベルが作業できる場所とする目的でつくられた』と都幹部が毎日新聞の取材に証言した」と報じている。しかし、最初、東京都の担当部局は「配管などのために空洞を設けた」と説明していた。次に、*4-2のように、日経新聞が、2016年9月20日、「都は2008年、有識者会議に『建物下に汚染地下水浄化の作業空間を確保する』と説明しつつ、詳細な内容は伝えていなかった」と報じている。しかし、汚染された地下水を浄化して何に使うのだろうか。市場で使用するのなら、汚染されていない海水を管で遠くから採取してきて浄化するか、水道水を使うべきで、ここの土壌から出た地下水を使用するなどもってのほかである。そして、こういうことを言われなければわからないような人が給料をもらって担当しているのがおかしく、都民はじめ市場利用者に多大な迷惑をかけている。

 
      2016.9.11東京新聞     2016.9.18  2016.9.20    豊洲市場の地下水
                          毎日新聞    日経新聞
*4-1:http://mainichi.jp/articles/20160918/k00/00m/040/105000c
(毎日新聞 2016年9月18日) 豊洲市場、空洞は汚染対処用…「再発時、重機搬入」
●都幹部が証言
 東京都の築地市場(中央区)からの移転が延期された豊洲市場(江東区)の主要建物下に土壌汚染対策の盛り土がされなかった問題で、建物下の空洞は土壌汚染が再び見つかった場合に備え、パワーショベルが作業できる場所とする目的でつくられたことが分かった。都幹部が毎日新聞の取材に証言した。担当部局の都中央卸売市場は問題発覚後、配管などのために空洞を設けたと説明しており、本当の理由が隠されていた疑いが強くなった。豊洲市場では2007〜09年、地下水や土壌などから環境基準値を大幅に上回るベンゼンが検出された。土壌汚染対策を検討する外部有識者の「専門家会議」と、専門家会議が対策として提言した敷地全体の盛り土の工法を検討する「技術会議」が相次いで開かれ、都議会でも豊洲移転の可否が議論されていた。都幹部によると、都中央卸売市場内には「対策は十分だが、万が一、土壌汚染問題が再発した場合のリスクヘッジ(危険回避)を講じておく必要があるのではないか」との声が根強くあった。「有害物質が出たら、土を掘り起こして作業をしなければならない」との指摘もあり、パワーショベルが入れる空間を確保することになったという。建物下に盛り土がなかった事実の発覚以降、都中央卸売市場は床下の高さ4.5メートルの空洞は配管や電気設備の敷設のためだったと繰り返し説明してきた。しかし、この都幹部は「配管などのためなら高さ1メートルもあればいい。4.5メートルという高さは、建築の常識ではあり得ない」と指摘した。別の元局長級幹部は、都中央卸売市場が事実を公表しなかった背景について「『パワーショベルを入れるため』と明かせば、『土壌汚染対策は万全ではないのか』という話になる。問題が広がらないようにと考えるのは、事務方特有の発想だ」と説明した。一方で「盛り土よりコストが高いとも考えられ、手抜き工事とかコスト削減目的とかではなく、真剣に検討した結果だったのではないか」と述べた。

*4-2:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20160920&ng=DGKKASDG19H27_Z10C16A9CR8000 (日経新聞 2016.9.20) 都「地下水浄化の作業空間」 豊洲市場、有識者に詳細伝えず
 豊洲市場(東京・江東)の建物地下が空洞になっている問題で都が2008年、有識者会議に「(建物下に)地下水浄化の作業空間を確保する」と説明しつつ、詳細な内容は伝えていなかったことが19日分かった。会議の議事録によると、その後の質疑でも都側の回答はあいまいで、有識者との間で認識が食い違ったままだった。小池百合子知事が設置したプロジェクトチーム座長の小島敏郎青山学院大教授は17日の記者会見で、「(議事録に)不思議なやりとりがある」と指摘していた。同市場の土壌汚染対策を巡っては08年7月、「専門家会議」が全敷地に4.5メートルの盛り土をするよう提言。ただ都は地下利用を検討、同年12月に具体的な工法についての「技術会議」で初めて説明した。都は「地下水管理について」の文書で将来的に土壌汚染対策法が改正され、同市場が同法の指定区域になるケースを想定。「汚染地下水の浄化が可能となるよう、建物下に作業空間を確保するなどの措置」を講じる方針を示した。ただ作業空間の大きさや配置など詳細は説明されないまま、有識者側は了承した。土壌汚染対策工事を終えた14年11月の技術会議で都は断面図のイメージを提出。だが建物下はグレーに塗られただけで注釈はなかった。盛り土用の購入土の少なさに気付いた有識者が理由を尋ねると、都の担当者は「建築敷地以外のところを盛り土した」と答弁した。答弁の趣旨は伝わらず、有識者が「4.5メートルは土が積んであるのか」と改めて問うたが、担当者は「はい」と回答。そのまま質疑は終わった。


PS(2016.9.21追加):*5-1に「①日本の正社員の長時間労働は法規制の緩さだけが原因ではない→従って、残業や休日労働が認められる現行制度を見直せ」「②労働生産性が低いことも大きな理由→従って、政府は働く人の生産性向上の支援にも力を入れるべきで、就業者の1時間あたり付加価値は日本は米国の6割強であるため、脱時間給や裁量労働制が有効」「③転職が簡単ではないため、過重労働を我慢している人もいる→従って、転職しやすい柔軟な労働市場を整備すべき」「④長時間労働の是正は女性の就業や男性の子育て参加を促す上でも重要」と書かれている。
 しかし、①②は産業によって大きく異なり、豊洲市場の事例のように、最も生産性・付加価値が低いのは中央省庁を含む役所であって、低いのみならずマイナスのことさえある。さらに、「時間をかけるのがよい」という価値観もあって、1週間で結論が出る話に1年かけたり、③のような1~2年で解決できる事象を25~30年も議論していたりする。次に生産性が低いのは景気対策のカンフル剤として支出される公共事業で、生産性・付加価値が低いだけでなくマイナスのこともある。つまり、生産性の向上や長時間労働の是正を強く主張しているのは経営などしたことも考えたこともない役所であり、生産性や付加価値の低い行動を長く続けられるのは、実は税金で賄われる組織と独占企業・寡占企業だけなのである。
 なお、付加価値は、小売業・飲食業・観光業・病院(特に救急医療)のように、休日や夜も営業していることにより高まるものも多いため、①をどの産業にも当てはめるのは役所の横暴であり、そもそも共働きの女性が増えている現在、役所も8時~17時ではなく、少なくとも窓口は20時くらいまで空いていて欲しい。そして、これは、組織内の長すぎる文書の簡略化や人材のローテーションで問題なく行い得る。
 また、*5-2のように、出産・育児で離職しがちな医師を支援しようと、九大病院がフルタイムで働くことが難しくなった女性医師らを年収100万円程度で非常勤として雇用し(この制度がないよりはよいが、可哀想な境遇だ)、診察や研修に携わって将来復職しやすくする制度を行っているとのことだが、他の専門職と同様、一人前になるため一生懸命に修行すべき期間と子育て期間は重なるため、国が「子育ても仕事も自分で行うべき」という方針でいる限り、本来は難しい仕事をこなせる優秀な女性ほど遣り甲斐をなくして離職する結果となる。従って、家事や子育てを夫婦の仕事と決めつけず、外国と同様、ハウスキーパーや外部サービスを容易に使えるシステムを作る方が、働く男女を助けることになる。

*5-1:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20160921&ng=DGKKZO07470560R20C16A9EA1000 (日経新聞社説 2016.9.21) 多面的な政策で正したい長時間労働
 問題を解決するときは最初に原因を洗い出し、ひとつひとつ手を打っていく必要がある。長時間労働の是正も同じだ。政府は残業時間に上限を設けることを考えているが、日本の正社員の長時間労働は法規制の緩さだけが原因ではない。労働生産性が低いことも大きな理由だ。転職が簡単ではないため、過重労働を我慢している人もいるだろう。長時間労働の是正は女性の就業や男性の子育て参加を促すうえでも重要だ。労働時間規制以外の点にも目を向け、多面的な対策で効果をあげるよう政府に求めたい。日本の正社員の年間労働時間は2000時間超で高止まりしている。厚生労働省は残業時間の上限規制について、有識者による検討会を発足させて議論を始めた。企業の労使が協定を結べば、残業や休日労働が認められる現行制度を見直す。今は協定に特別条項を付ければ事実上、青天井で残業時間を延ばせる。政府はこの仕組みを改め、一定の制限を設ける方向という。これは妥当だろう。併せて政府は働く人の生産性向上の支援にも力を入れるべきだ。就業者が1時間あたりに生み出す付加価値は、日本生産性本部によると日本は2014年に41.3ドルで、米国の6割強にとどまる。主要7カ国のなかでは最も低い。生産性を上げれば労働時間を短縮しやすくなる。労働時間ではなく成果に対して賃金を払う「脱時間給」の導入や、働く時間の配分を本人にゆだねる裁量労働制の拡大は、メリハリをつけた働き方を広げる効果が見込める。それらを盛り込んだ労働基準法改正案を26日召集の臨時国会でぜひ成立させるべきだ。ロボット、ドローン(小型無人機)や人工知能は生産性向上の強力な武器になる。普及には規制のあり方の見直しも課題になろう。会社から命じられる仕事の量が多すぎるなら、それを拒否できるように、転職がしやすい柔軟な労働市場を整備する必要もある。求人企業と求職者の橋渡しをする職業紹介業務をもっと民間企業が担えるようにする規制の見直しなどが求められる。長時間労働の是正には一人ひとりの職務の明確化や仕事の進め方の見直しなど、企業の取り組みが重要になるが、政策面でもやるべきことは多い。政府は必要な政策を総動員すべきだ。

*5-2:http://qbiz.jp/article/94327/1/%E4%B9%9D%E5%A4%A7%20%E5%A5%B3%E6%80%A7%E5%8C%BB%E5%B8%AB/ (西日本新聞 2016年9月20日) 育児や出産 医師の復職支援10年 九大病院プロジェクト 20日記念講演会
 出産、育児で離職しがちな医師を支援しようと、九州大学病院(福岡市東区)が取り組む「きらめきプロジェクト」が今年で10年目を迎えた。フルタイムで働くことが難しくなった女性医師らを非常勤として雇用し、診察や研修に携わってもらい、将来的に復職しやすくする取り組み。多くが職場復帰を果たしており、初年度からサポートする樗木(ちしゃき)晶子九大教授(62)は「今後も精力的に続けたい」と意気込んでいる。プロジェクトは2007年から、国の大学改革推進事業の一環としてスタートし、事業終了後も九大が独自に継続している。毎年、男女を問わず、非常勤を希望する医師や歯科医師を募集。雇われたスタッフは週に1回程度、同病院で診察や研究に携わるほか、月1回のミーティングで情報交換をしたり、年度末の発表会などを行ったりしている。年収は100万円程度。15年度までに約40人(延べ92人)を雇用。うち約20人がフルタイムで職場に復帰し、同病院や国立病院で管理職(部長)を務める女性もいるという。プロジェクトの発足当時、九大病院でも離職する女性が増えていた。出産などで休職した場合、「定員に枠がある医局に迷惑を掛ける」との理由で離職を選択するケースが多かったという。全国的に医者不足が叫ばれている中で、一度離職すると、それまで研究してきた専門分野への復帰が難しく「せっかくの優秀な人材が戻ってこられなかった」と樗木氏は振り返る。非常勤スタッフとして働く医師たちは「年収は少なくても、働ける喜び、名誉をみな感じている」という。10年を記念し、20日午後1時から、九大医学部の百年講堂で講演会も開催。活動報告のほか、水田祥代福岡学園理事長らの講演もある。一般参加可。入場無料。プロジェクト事務局=092(642)5203。


PS(2016.9.22追加):メディアは政治家には大したことのない事象まで騒ぐが、役人の責任となると、*6-1のように、あらゆる手法で曖昧にされ、メディアも追及の手を緩める。しかし、2007年以降に中央卸売市場長が5人いるとしても、「盛り土がなかったとの認識はなかった」というのは、食の安全に関する認識がなかったということであり、卸売市場長の役目を果たしていない。また、2年毎に異動させて担当者を変え、ど素人を担当者にして時間の無駄遣いをさせた上、質の低い仕事になるのも役所人事の問題点である。そのため、部課長級で判断して市場長や知事に説明していなかったことも問題だが、契約書を作ったり、それにサインしたり、稟議書にハンコを押したりして多額の予算をつけながら、建設内容のポイントを掴んでおらず、建設現場に何度も行かなかったというのなら、それ自体も問われるべきである。
 なお、*6-2のように、共産党都議団が、21日に豊洲市場の主要建物付近の地上部に地下空洞に通じる重機の搬入口を見つけ、都議会公明党も同様の搬入口を確認したそうだ。共産党・公明党の都議はよくやっているが、これまで都議でさえ地下空間の存在を知らず、推理小説のように探しているのは全くおかしい。私は、この地下空間は、厚いコンクリートで密閉すれば、水素燃料による自家発電装置や蓄電池などの機械・備品を置いたり、地下鉄と同様に水を一時的に溜めるプールとして使用したりなど、有効活用することも可能だと考えるが、都はまず正確な開示を行うべきだ。

*6-1:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20160922&ng=DGKKASFB21HDY_R20C16A9EA2000 (日経新聞 2016.9.22) 都知事、豊洲問題の追加調査を指示
 豊洲市場(東京・江東)で盛り土をしていなかった問題で、東京都の小池百合子知事は21日、都幹部から経緯の検証結果の報告を受け、追加調査を指示した。責任の所在が不明確などの理由から不十分と判断した。28日の都議会開会をめどに最終結果をまとめるように求めた。都は盛り土を同市場の土壌汚染対策の目玉としてきた。にもかかわらず、建物の地下が空洞に変更になった経緯が明らかでなく、副知事を中心に調査してきた。小池知事は21日夜、記者団に、「(同日受けた報告は)時系列的に歴史年表みたいな形でまとめてある。その時、誰が関わって何を決めたのかについて今まとめてもらっている」と語った。さらに「仲間でずっとやってきたので厳しいことが聞きにくいのだろう。都庁でアマアマで調査結果を出したのではかえってマイナスになる」と話した。検証結果は公表されていないが、日本経済新聞の取材でも不透明な点が多い。誰が判断したのか? 豊洲の土壌汚染が大きな問題になった2007年以降、豊洲問題の都の責任者である中央卸売市場長は5人いるが、いずれも「盛り土がなかったとの認識はなかった」と語る。重要政策の変更にもかかわらず、責任者に十分説明せず、部課長級で判断した可能性がある。いつ変更した? 都は11年8月、豊洲市場の土壌対策の工事契約を結んでいる。石原慎太郎知事(当時)の押印があり、建物の下に盛り土はしないという内容だった。地下を空間にする案は出ては消えた。08年11月、土壌汚染対策の工法を検討する「技術会議」に都は地下空間を整備する案を示していた。ただ、11年3月、都議会の委員会で当時の担当部長は「敷地全体にわたり、きれいな土で盛り土を行う」と答弁している。なぜ変更した? 地下が空洞になっている理由について、現在の都の担当者は「配管の整備や修繕作業のためのスペースが必要」と説明する。比留間英人・元中央卸売市場長は「(在任中)地下水をモニタリングするスペースは必要と考えられていた」と語る。盛り土をしなかったこととコストの関連も焦点だ。

*6-2:http://mainichi.jp/articles/20160922/k00/00m/040/075000c (毎日新聞 2016年9月21日) 豊洲市場、.空洞に通じる重機搬入口が見つかる
 共産党都議団は21日、豊洲市場の主要建物付近の地上部に、地下の空洞に通じる重機の搬入口が見つかったと発表した。市場担当者から説明を受け、21日に敷地外から目視で確認したという。都議会公明党も21日に同様の搬入口を確認した。共産党によると、水産仲卸売場棟の搬入口の大きさは縦約3メートル、横約6メートルで、コンクリート製のふたでふさがれている。都の担当者は「建物下の空洞に分解した重機を降ろすために設置した」とし、大がかりな工事を想定していることを明らかにしたという。青果棟、水産卸売場棟にも同規模の搬入口があった。共産党は「汚染が見つかった場合に掘り返すためだとすれば、これまでの『世界一安全な土』という説明はどうなるのか。地下空間に関わることが隠されていたことは重大で、都は全面的に公表すべきだ」としている。


PS(2016年9月24日追加):*7-1のように、豊洲市場の土壌汚染対策を検討する「専門家会議」の平田座長が、9月24日、「豊洲市場の空洞に溜まった水は雨水ではなく地下水」と判断し、「地下水管理システムで地下水位および水質を管理し始めれば問題ない」と言っておられるが、*7-2、*7-3に書かれている井戸で、この埋立地の地下水の水位・水質を管理できると考えるのは甘い。何故なら、湧き出ている地下水は雨水以外にはあり得ないと断定しているが、下図に書かれている不透水層は岩盤やコンクリートででもなければ不透とは言えず、本当は下から海水が上がってきている可能性が高いからだ。もし地下水管理システムで地下水位および水質を管理できると言うのなら、今、やってみればよいだろう。また、下図で、海水の水位が砕石層より下に描かれているのは、豊洲の標高から考えて嘘である。
 さらに、*7-1のように、都議会公明党が実施した水質調査でシアン化合物が検出されたことについては、「直ちに人体に影響を与えるものではない」とされているが、食の安全確保には、環境基準以下で直ちに人体に影響を与えないという程度では不十分だ。

  
  人工島にある豊洲市場     豊洲市場の地下水概念図(×)    井戸による地下水管理(×
                            *7-3より
*7-1:http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160924-00000036-mai-soci (毎日新聞 2016年9月24日) <豊洲市場>平田座長「空洞の水は雨水でなく地下水と判断」
◇水産卸売場棟の建物下の空洞を視察
 東京都の豊洲市場の土壌汚染対策を検討する外部有識者の「専門家会議」の平田座長は24日に水産卸売場棟の建物下の空洞を視察し、豊洲市場の空洞にたまった水は雨水ではなく、「地下水であると判断される」との見解を示した。都議会公明党が14日に採取し実施した水質調査でシアン化合物が検出されたことについては、「直ちに人体に影響を与えるものではないと考えられる」とした。

*7-2:http://www.shijou.metro.tokyo.jp/toyosu/dojou/taisaku/outline/step/step08/
(東京都中央卸売市場) 盛土と井戸の設置
 調査により安全性を確認した盛土等を使って、計画地盤の高さまで盛土します。(このことにより、A.P.+2mより上は、全てきれいな土となります。) 盛土した後、地下水管理用の井戸を設置します。
●地下水管理用井戸
 市場施設完成後は、地下水管理システムにより、敷地全域の地下水位および水質を管理します。今回の工事では井戸の設置まで行います。
●地下水管理システムの概要
 敷地全域の地下水位および水質を管理します。観測井戸で測定したデータをもとに、自動で揚水ポンプを稼働させるなど、地下水位をリアルタイムに監視・制御します。常時は管理推移より0.2m低く地下水位を維持することで、大雨、集中豪雨時の雨水貯留機能も備えます。

*7-3:http://ameblo.jp/kazue-fgeewara/entry-12201552847.html (マスメディア報道のメソドロジー 2016.9.19) 洲市場の地下空間問題の最大の問題点/マスメディアの悪意報道
 実は私、地盤内の物質移動現象に関する専門知識をちょっぴり有している(笑)のであえて言わせていただきます。豊洲市場の「地下空間問題」の最大の問題点は何かといえば、物質の移動現象のイロハも知らずに安全性を判定することなど到底できない素人の皆さん(例えば建築エコノミストやら経済評論家やら弁護士やら元政治家やら元競馬評論家やら自称ジャーナリストやら司会者やら)が、ワイドショーなどのマスメディアで、まるで物質移動分野の権威のように安全だとか危険だとか根も葉もない結論をアテズッポで語っていることであると私は考えます(笑)。根拠薄弱な言説や非論理的な言説をもって東京都を理不尽に締め上げるような態度は既に常軌を逸している悪意報道であると思います。今回の問題で東京都が正当に批判されるのは当然であると考えますが、不当な批判をするのは厳に慎むべきです。これらの人物は、テレビの視聴者が専門知識を持っていないことをよいことにして、かなり浅くいい加減な言説を連発してミスリードを続けています。この記事では、このようなマスメディアや運動家がほとんど理解していない【地盤内浸透流 groundwater flow】による【物質移動 mass transfer】についてエレメンタリーな知識を紹介した上で豊洲市場の地下空間における【浸出水(たまり水)seepage】の発生メカニズムについて考察してみたいと思います。
●豊洲市場の地下水環境
 まず、物質移動について紹介する前に豊洲市場における地下水環境について簡単に紹介しておきたいと思います。豊洲市場の【地下水環境 groundwater conditions】を概念的に示すと次の図のようになります。都が発行している[工事概要パンフレット] [豊洲新市場の土壌汚染対策工事の概要資料] [専門家会議の提言]も理解に役立つものと考えます。非常に簡潔に言えば、豊洲市場では、不透水層よりも上部にある層のうち2mを掘削除去すると同時に2m以深の地盤についても高濃度の部分を除去し、下部の砕石層を含む4.5m高さの【盛土(もりど) Embankment】を行ったと言えます。地下水のモニタリングは7回実施されていますが、その[結果]を見れば、いずれの汚染物質も基準値以下に抑えられており、土壌汚染対策が有効に機能していることがわかります。過去7回の調査の結果に観測値のトレンド(時間平均)の変化は認められず、8回目の観測結果の確認を理由にした小池都知事の移転延期には工学的な有意性はほとんどないものと考えます。ちなみに、調査サイトに仮想のメッシュを設定して調査を実施する方法をグリッドシステムと言います。これにより、調査を系統的に行うとともに調査の偏りを除去して見落としを防止することができます。豊洲のような大規模なサイトにおいて10mメッシュで詳細調査するのは極めて異例なものであり、極めて丁寧な調査が実施されていると言えます。このような形で安全性が確認されれば、[地下水制御システム]によって地下水面の位置が制御され、汚染物質の地表への到達が抑止されることになります。
●汚染物質の移動現象と豊洲市場への影響
 自然界において、地下水に溶存(溶けている)あるいは混在(溶けていない)する気体・液体・固体を移動させているのは、基本的に【移流 advection】【分散 dispersion】【拡散 diffusion】という現象です。それぞれの現象が豊洲市場における汚染物質の移動にあたってどのような影響を与えるか考えてみたいと思います。
●移流
 移流とは地下水の流れに乗って物質が移動する現象です。したがって、その移動は地下水が流れる速さである【流速 flow velocity】に影響を受けることになります。地盤内の地下水が流れる空隙を【水みち water pathway】と言います。土の場合は土の粒子の間の空隙が主な水みちであり、岩やコンクリートの場合には亀裂の空隙が主な水みちとなります(岩やコンクリートは空隙が存在する率が低いため粒子間を通る流れに対して亀裂内を通る流れが卓越します)。この空隙の大きさによって【ダルシーの法則 Darcy's law】における【透水係数 hydraulic conductivity】(水の通りやすさ)が決まりますが、盛土材料の場合、透水係数はどんなに大きくても0.001cm/秒程度であるといえます。この数値に、【動水勾配 hydraulic gradient】(ある場所とある場所の水位換算された水圧の差をある場所とある場所の距離で割った値)をかけると【平均流速 averaged flow velocity】を求めることができます。移流による汚染物質の移動速度はこの平均流速あるいはそれ以下の値であると言えます。ここで、重要なのは豊洲の地下水は埋立地を取り囲むように設置された遮水壁によって水平方向の流速が生じない地下水環境である【不透水境界 impermeable boundary】となっていることです。豊洲の【地下水位 GWL】は【涵養(かんよう) Cultivation】(雨水などによる外部からの水の供給)によって鉛直方向に上昇することになりますが、この場合、涵養は敷地全体にわたって一様に生じるため、水平方向の動水勾配は極めて小さい値になります。もし仮にエリアを囲んでいる遮水壁に沿って水位が瞬間的に5m上昇するという絶対にありえない最悪の地下水圧分布が生じたとしても埋立地中心までの最短距離は200mあるので動水勾配は5/200=0.025であり、このときの地下水流速は0.00025cm/秒という速度になります。これは1時間にすると約1mm、1日にするとたった2cmという流速です。こんなにあり得ないような地下水圧分布が仮に1年間続いたとしても年間の水平移動量は約8mであるといえます。豊洲の汚染評価のグリッドシステムの幅は10mですので、隣り合う観測井戸でも変化が検出されないことになります。なお、透水性が高い砕石層部においては流速は大きくなります。仮に1cm/秒と仮定すると、上述の地下水圧分布の場合、1時間に1mの流速で水平方向に進むことになります。ただし、この場合水の鉛直方向の移動は下方に進むため、未掘削部の帯水層に存在する可能性がある汚染物質が砕石層部を移動する可能性はありません。砕石層部を移動する水はすべてクリーンな水であると言えます。このように、移流現象によって汚染物質が短期間に水平方向に大きく移動する可能性は極めて低いと言えます。通常の地下水環境を考えれば、100年にわたる長期間であっても移流現象に起因する汚染物質の顕著な水平移動は考え難いと言えます。一方で鉛直方向における地下水の移動は水位の変動によって確実に生じます。しかしながら、豊洲市場においては、揚水井戸(地下水をくみ上げる井戸)を利用して地下水位がA.P.1.8mの標高よりも高くならないように【地下水制御 groundwater control】されることになります。したがって、地下水制御が正常に機能している場合には、移流による鉛直方向への汚染物質の移動も発生することはないと言えます。ところで、移流現象としてもう一つ考えておかなければならないことがあります。それは、土粒子間の間隙における表面張力の作用によって液体が吸い上げられる【毛細管現象 capillary action】という物理現象です。この現象は粒子径が大きい場合には発生しないので、豊洲市場では未掘削部の上部に粒子径が大きい砕石層を設置して現象の発生を防止しています。常識的には、この砕石層の存在によって毛細管現象による水位上昇が発生することはないと考えられます。
●分散
 地下水の通り道である地盤内の水みちは必ずしも直線状ではなく、複雑な形をしています。このため、地下水の流れはこれらの間隙を回り道をしながら一定の方位に進んでいくことになります。このときの回り道の広がり(水みちのばらつき度合)を分散と言い、物質の濃度が場所によってはらつくことになります。この分散の広がりを示す係数としては、流れの進行方向に定義される【縦分散長 longitudinal dispersion coefficient】と進行に垂直な方向に定義される【横分散長 lateral dispersion coefficient】があります。豊洲のような土質地盤において、縦分散長は移動距離の1/10程度、横分散長は縦分散長の1/10程度であることが知られています。つまり、分散が汚染物の移動に影響を与える程度は移流の影響の1/10程度であり、今回の場合はほぼ無視できるものと考えられます。
●拡散
 拡散は流体の分子の運動によって物質が移動して拡がっていく現象です。例えば水にインクを静かに入れたときに徐々に広がっていく現象がこの拡散にあたります。拡散現象は、【濃度勾配】(異なる場所の濃度の違いをその距離で割った量)が【流束 flux】(流量)に比例するという【フィックの法則 Fick's laws of diffusion】に従います。このときの比例定数は【拡散係数 diffusion coefficient】と呼ばれますが、豊洲で検討の対象となっているヒ素や六価クロムの水中における拡散係数は約10-9m2/秒という値です。この値が具体的にどの程度のものかと言えば、10cm離れた場所の濃度が変化するのに4ヶ月近くかかる値です(フィックの第2法則)。このように、豊洲サイトにおいて、拡散現象によって汚染物質が短期間に大きく移動する可能性は極めて低いと言えます。地下水位を制御する地下水環境を考えれば、拡散現象に起因して汚染物質が地表に到達することは考え難いと言えます。一方、揮発性のベンゼンは気体であるため、その水中の拡散速度は非常に速いと言えます。しかしながら、土の粒子の間に存在するベンゼンが自由に水中を上昇してくるかと言えば答えはノーです。土粒子内では【毛管圧 capillary pressure】が作用するために鉛直方向の動水勾配が1以上の時には漏気が発生しないことが知られています。これは、[Aberg]の研究によるものであり、地下水制御の実務ではすでにこの現象が利用されています。また、JOGMECが波方と倉敷に建設した水封式LPG地下貯蔵タンクの建設事例では、鉛直方向の動水勾配が0.5でもプロパンの漏気が発生しないことが実証されています。ベンゼンの蒸気圧は20℃で10kPa程度あるので、1m程度の水深を確保すればそれだけでベンゼンを封じ込めることが可能であると言えます。以上、移流・分散・拡散という物質移動の各観点から豊洲市場の地下水環境を考察した場合、豊洲市場の地下水制御の考え方は妥当なものであり、地下水制御システムが妥当にオペレーションされた場合には、汚染物質が短期間に急激に移動して市場に影響を与える可能性は極めて低いと言えます。移流・分散・拡散の数値解析手法としては【オイラリアン=ラグランジアン法 Eulerian-Lagrangian method】による飽和不飽和浸透流解析がありますが、この問題はこのような数値解析を実施する必要がないほどの自明な問題であると言えます。
●豊洲市場の地下空間における「たまり水」の水文学的考察
 ここでは、ここまでに示してきた基本的状況を踏まえた上で、豊洲市場の地下空間における浸出水(たまり水)について水文学的に考察してみたいと思います。豊洲市場の地下空間に水が浸入したシナリオとしては、地表水浸透説と地下水浸透説の2つの可能性があります。
●地表水浸透説
 豊洲市場建屋の地下空間内のたまり水の原因として、雨水等の地表水が地盤内を浸透して地下空間に浸出した可能性があります。基本的に豊洲市場建屋の地下空間は地下水位よりも上にあると考えられます。一般に、地下水位よりも下の部分の地盤は【飽和帯 saturated zone】、地下水よりも上の部分の地盤は【不飽和帯 unsaturated zone / vadose zone】と呼ばれますが、この説では、大気圧よりも低い不飽和帯の水が地下空間に浸入したと考えるものです。この説が真である場合、豊洲市場の地下水環境は保持されていると言えますが、逆に地下空間部における建物の構造に問題があったということになります(笑)。建物内に浸出している水の量は少なくなく、盛土と地下空間を結ぶ明瞭な水路がない限りこのような状況が生じる可能性は極めて低いと言えます。さて、その水路が具体的に何かということですが、コンクリートの接合部の欠陥といった企業体の施工不良である可能性は極めて低いと言えます。この現象は各棟で生じていますが、各棟の企業体(清水JV、大成JV、鹿島JV)がそろいもそろって信じられないような施工不良を起こす確率は極めて低いと考えられるからです。この場合、水路となる可能性があるのが未掘削土と盛土の間にある高透水性の砕石層です。報道において、この砕石層が地下空間内で露出していたことが確認されています。透水係数が0.001cm/秒程度の未掘削土の上部に高透水性の砕石層が存在する条件下において、多量の降雨などで一時的に大きな涵養が生じた場合、もう一つの地下水面が形成されることが十分に考えられます。これは「二重地下水面」と呼ばれます。私が考えるに、8月中旬の積算約300mm(30cm)の雨によって未掘削土の地下水面の上部に砕石層を含む飽和帯が一時的に形成され、その地下水面が空洞の底面よりも高くなったため、砕石層から地下空間内に水が浸入し、たまり水が生じた可能性があると考えています。この場合、たまり水から検出された微量なヒ素・六価クロムは砕石層下面に存在したものが移流によって運搬されてきたものと考えられます。このケースが真である場合には東京都としての対応は、地下空間の下面に遮水製のシートを設置した上でコンクリートを底面に打設すればよいと考えられます。また、この際には、二重地下水面が生じないように砕石層から揚水できるポンプを取り付けることが重要です。もちろん既存の地下水制御システムで対処可能であれば、ポンプは不要となります。
●地下水浸透説
 豊洲市場建屋の地下空間内のたまり水の原因として、雨水等の地表水が地盤内を浸透して地下水の水位を押し上げて、最終的に地下空間の底面よりも高い位置となったため、地下水が地下空間に浸入したと考えるものです。この説が真である場合、良い知らせと悪い知らせがあります。まずは精神衛生上、悪い知らせの方から説明しますと(笑)、今回の降雨において地下水制御システムが有効に機能していなかったということです。情報によれば、最近まで地下水制御システムは運用していなかったということです。この場合、揚水ができずに地下水面が上昇するのは当然起こり得る状況であり、今回それが起こってしまったということです。もしも、今回仮に基準値を上回る汚染物質が検出されていたとしたら、その時点で大金をかけて設置した盛土にも同様の汚染物質が到達したと考えられ、不飽和帯の毛細管現象によって地表に汚染物質が将来到達するシナリオを検討する必要もあったと考えらえます。東京都は、盛土の存在を一瞬で無意味にする可能性もあったこのような杜撰なオペレ―ションを猛省すべきであると考えられます。次に、良い知らせの方ですが、今回たまり水から検出されたヒ素・六価クロムは基準値を下回る微量なものであり、おおむねこれまでに実施されてきたモニタリング調査結果と整合するものでした。これが何を意味するかと言えば、豊洲の地下水は広範囲にわたって、十分に浄化されているということです。地下水制御システムを運用していなかった東京都は盛土という高額なアセットを一気に無意味化するリスクを冒すという恐ろしいほど大きな失策を演じましたが、その結果、逆に豊洲市場の地下が安全であることが判明したということになります(笑)。このケースが真である場合には東京都としての対応は簡単です。地下空間の下面に遮水製のシートを設置した上でコンクリートを底面に打設すればよいと考えられます。ポンプは基本的に不要です。
なお、コンクリートで下面処理を行うことを前提とした場合、地下空間の存在自体は水文学的に問題があるものではありません。専門家会議で問題視されたベンゼンについて、基本的に現在の地下水位1m以浅のベンゼンは既に大気中に放出されているものと考えられ、1m以深のベンゼンはAbergの理論に従って水封されていると考えられるからです。当時の専門家会議でこのgas entry pressureの議論がなされなかったことは専門家の資質としてかなり問題があると私は思います。さらに言えば、東京都は専門家会議の提案を厳守する必要はありません。専門家会議の提案はあくまでも参考意見であり、最終的な意思決定は科学的根拠に基づいて東京都が行い、政治家が責任を持てばよいことです。建設の実務において、専門委員会の提案が却下されるのはごく普通のことであり、これを金科玉条のような拘束力があるものと考えているマスメディアはあまりにもナイーヴな「超」がつくほど世間知らずであると考えます。
●おわりに
 東京都は今回の原因が地表水浸透なのか地下水浸透なのかを科学的に判定し、対策工を迅速に行う必要があると考えます。地表水浸透なのか地下水浸透なのかを判定するには、過去半年程度の地下水位の時系列の観測データが重要になるものと考えられます。オイラリアン=ラグランジアン法による飽和不飽和浸透流による移流・分散・拡散解析を実施すれば、自ずと答えは出るはずです。
いずれにしても、「羽鳥慎一モーニングショー」や「新報道2001」のようなド素人の皆さんが科学的な内容を評価して国民を過度に不安視させる有害なおバカ番組(笑)は国民の批判の対象となるべきであると考えます。都民を中心に国民は今こそ冷静で科学的な議論を行うことが必要であると考えます。
東京都が基本的情報を公表しないことは民主主義社会にとって問題があると考えられます。ただし、なぜ東京都が情報を公開しないかということについても考える必要があると思います。東京都が情報を公開しない理由としては次の2つが考えられます。
(1) 自らの行動が招いた不都合な状況が明らかとなって社会から正当な批判を受けることを回避するため。
(2) 自らの行動がマスメディアや反対運動家の不当な宣伝により社会から不当な批判を受けることを回避するため。
このうち(1)は自明なことですが、(2)はあまり指摘されていません。例えば、原子力関連の事業者(例えば電力会社やJAEA)が何かの安全対策を実施すると、マスメディアや反対運動家は「何か問題があるから安全対策が必要なのであろう」として現状を常に否定してきました。今回も「羽鳥慎一モーニングショー」でテレビ朝日のコメンテイターがまったく同じことを言っていました。これはバックフィットの考え方まで否定するものであり、このような権力者の発言によって事業者は萎縮し、必要な安全対策もとれなくなる事例が過去に何例もあるとされています。私たち国民にとって重要なことは、今回の東京都の運営について批判することが必要であると同時に、マスメディアや運動家の非論理的な言説についても厳しく批判することが必要であると考える次第です。


PS(2016年9月27日):下の写真のうち公明新聞のものは地下水にさざ波がたっており、これは人が入った時にできる報知新聞の波とは異なっている。そして、この波は、汽水域で潮が満ちる際、海水が川に上がってくる時に見かけるのと同じ形だ。つまり、公明新聞の写真は、潮が満ちる時に水が波の元の方向から流れ込んでいることを示し、その他の波のない写真は潮が引く時に水面が静かに下がって行く際のものと考えられる。そのため、水の成分と時間による深さの違いを確認すれば、これが潮の満ち引きと関係していることが分かるはずだ。なお、これを繰り返せば、東京湾の水で土壌が洗われるかも知れないので、水の成分検査を続けながらしばらく変化をみるのがよいと思う。


 2016.9.17朝日新聞  地下空間のある場所  2016.9.15報知新聞   2016.9.24公明新聞 

*8:https://www.komei.or.jp/news/detail/20160924_21429
(公明新聞 2016年9月24日) 豊洲市場 新たに1棟で水たまり
 東京都議会公明党「豊洲市場整備問題対策プロジェクトチーム(PT)」の上野和彦座長らは23日、豊洲市場(都内江東区)を訪れ、生鮮食品などを扱う加工パッケージ棟と管理施設棟の地下空間を調査したほか、両施設の地下に重機などを入れるための搬入口なども視察した。同PTの緊急調査は今回で3回目。都は土壌汚染対策として盛り土を行うと説明しながら、実際には行っていなかった主要建物のうち、加工パッケージ棟と管理施設棟の地下空間を初めて公開した。加工パッケージ棟地下の床は、厚さ10~20センチのコンクリートが敷設されている。一行は、広範囲に水がたまり、深いところで最大23センチほどの水位になっていることを確認し、その水を採取した。管理施設棟の地下は、水のたまりがなく照明も完備されていた。調査を終えた同PTは都議会内で記者会見を行い、上野座長は、加工パッケージ棟地下のたまった水について、「降雨で地下水が上昇してきたもの」と指摘。その上で「採取した水は成分の分析を専門機関に依頼した」と述べた。


PS(2016年10月1日追加):*9のように、東京都庁は、豊洲市場の問題で、①食品安全の意識が薄い ②多額の予算を使いながら費用対効果を考えていない ③2年毎に担当者が交代し、責任を持って全うできていない ④ポストを増やすために細かく部署を分け、全貌を見えなくすると同時に、無責任体制を助長している などの決して言い訳できないガバナンスの欠如が明るみに出た。そのうち、②③④は、税金で運営する中央省庁や他の地方自治体にも多かれ少なかれあることで、これをなくさなければ税金の無駄遣いや役所の生産性の低さを変えることはできない。そして、このように大きな無駄使いをしながら、教育や保育・医療・介護などの福祉には消費税を上げなければ財源がないと言うのである。
 また、①は、役所に男性が多く女性がいても発言権がなかったり、食品の安全性や環境について同時に考えることのできる知識を教育課程で身につけさせず、「空気」を読んでそれに流されることを良しとする人間を育てたことが原因だと考える。

*9:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12586085.html (朝日新聞 2016年10月1日) 「都のガバナンス欠如」 豊洲盛り土なし、知事「流れの中で」 調査、責任者特定できず
 東京都の築地市場(中央区)が移転する予定の豊洲市場(江東区)の主要施設の下に土壌汚染対策の盛り土がない問題で、小池百合子知事は30日の記者会見で、「責任者を特定することは難しい」とする調査結果を発表した。「今回の事態を招いたのはガバナンス(内部統制)と責任感の欠如」と厳しく批判。巨大組織に構造的な問題があるとして、縦割り打破などの組織改革に取り組む方針を示した。会見では、都の調査チームがまとめた自己検証報告書の内容を小池氏が説明。いつ、どの時点で誰が盛り土をしないことを決めたのか▽なぜ、都議会や都民への説明責任を果たせなかったか、の2点を最重要ポイントとして挙げた。盛り土なしの決定については、2008年の技術部門での内部検討から、13年2月の実施設計完了にかけ、五つの段階で決まった過程を示したが、責任者は特定できなかった。都民への説明責任の欠如は、土壌汚染対策の土木担当と建物の建築担当の縦割りによる連携不足や、ずさんな引き継ぎなど、組織運営に不備があったとした。この結論に小池氏は「いつ誰が、という点は、ピンポイントで指し示すのは難しい。流れの中で、空気の中で進んでいった。それぞれの段階で責務が生じる」と述べた。敷地全体に盛り土をしたとの説明を続けたことは「誰も気づかず、チェックさえなかったという恥ずかしい状況」とした。小池氏に続き、地下空間を設ける設計を進めた11~12年当時の中央卸売市場長だった中西充現副知事や岸本良一・現中央卸売市場長らが会見し、謝罪。2人は「盛り土の上に建物があると思っていた。理解が足りなかった」と述べ、部門トップとして「責任を痛感している」と繰り返した。今回の調査結果について小池氏は「一定の評価はするが不十分」として、ヒアリングを続ける考えを示した。都政改革本部内の情報公開調査チームが今後、内部告発を受け付ける公益通報制度を充実させ、調査を続ける。また、部門間の縦割りや形だけの決裁で責任の所在があいまいだったことが原因だとして、重要な課題を部門をまたいで共有する「都庁マネジメント本部」も設置する。


PS(2016年10月15日):私も、近くに同じような建造物を次から次に造る東京オリンピックの無制限な金の使い方に呆れて、他にやるべきことがあるだろうと思っていた。そのため、*10のように、宮城県で復興五輪として施設を整備するのなら、地震・津波で失われた施設や前にはなかった施設を整備する予算になるため、国の復興予算を使ってよいと考える。なお、選手村が分かれるため、ボートの選手が他国や他競技の選手と交流できなくなるという苦情があるようだが、それなら復興五輪なのだから、ヨット、陸上、体操などいくつかの競技を宮城県で行えばよいだろう。

*10:http://digital.asahi.com/articles/ASJBH5FPXJBHUTIL00Y.html?iref=comtop_list_nat_n01 (朝日新聞 2016年10月15日) ボート会場経費「宮城なら3~4割に抑制」 県が試算
 宮城県の村井嘉浩知事は15日、2020年東京五輪・パラリンピックのボート・カヌー会場を現行案の東京都内から同県内に変えた場合、経費を約3~4割に抑えられるとの試算を示した。小池百合子・東京都知事も同日に現地を視察し、「復興五輪」の意義を強調。両知事が足並みをそろえて宮城開催へ加速しているが、競技団体などの反発も強まっている。村井氏によると、長沼ボート場(宮城県登米市)を会場とした場合、経費は「150億~200億円」と試算。借金や国の補助、復興のために寄せられた寄付などを充てる考えを示した。都が491億円かけて東京湾岸に新設する「海の森水上競技場」を会場とする今の計画より割安と訴えており、「小池氏に(判断を)任せたい」とした。村井氏はこの日、長沼開催を疑問視する大会組織委員会に反論。組織委が12日に挙げた、選手村が分かれてしまう▽会場への輸送手段が乏しい▽宿泊施設が不足――などの「九つの問題点」に対し、「仮設住宅の再利用で選手村を確保」「新幹線利用などで移動の負担軽減」「隣接する町の大規模ホテルを利用」などと全てについて回答を示した。また、組織委が14日、小池氏が他県知事と会談したことを「水面下で話し合うのは極めて不透明」と批判したことに、村井氏は「『長沼ありき』ではなかった。いちゃもんをつけている」と反論した。小池氏は先月13日に村井氏と会い、長沼開催について意見交換したことを明かしている。小池氏は15日午後、登米市を訪ね、村井氏の案内でリフォーム済みの仮設住宅や長沼ボート場などを視察。「『復興五輪』はパワフルなメッセージ」と話し、長沼開催に前向きな姿勢をみせた。五輪開催に関する村井氏との会談は、先月以降、この日で少なくとも3回目だ。ただ、長沼開催について、視察に同行した日本ボート協会側からは「環境アセスメントなどの手続きに時間がかかり、間に合わない」など否定的な声があがった。また、小池氏は同日、変更先の別候補となっている彩湖(埼玉県)での開催をめぐって、同県の上田清司知事と認識が食い違ったことについて「(自身の)就任直後のお祝いの席で聞いた」と発言。上田氏が誘致しない意向を示していたと、改めて説明した。(桑原紀彦、末崎毅、野村周平)
■大会組織委員会が示した宮城・長沼会場の九つの問題点と宮城県の反論
①分村には五輪だけで1300人以上の宿泊機能などが必要→仮設住宅の再利用などで対応
②パラリンピックへのバリアフリー対応→会場内にバリアフリー対応道路などを整備
③輸送に難あり→長沼では毎春、2万人が来場するマラソン大会の開催実績あり
④会場に斜面が多く、整備が困難→標高の高い部分は切り土して平地を確保
⑤電力・通信系のインフラが未整備→会場近隣にNTTの光回線が引かれており、整備可能
⑥観客らの宿泊施設不足→隣接する南三陸町や仙台市内のホテル利用可
⑦選手の移動などに負担大→成田空港からの乗り継ぎ便や新幹線を使えば、過度の負担とはいえない
⑧費用増大の可能性→東京都の試算(351億円)より低く抑えられる見込み
⑨レガシー(遺産)が残らない→恒久施設中心に整備。五輪後は高校総体などに活用。仮設費用は組織委が負担すべきだ

| 農林漁業::2015.10~2019.7 | 08:54 PM | comments (x) | trackback (x) |

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