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2012.9.2 国民が負担する原発の本当のコストは、決して安くなく、実は膨大であるということ
(1)原発の本当のコスト
 よく出される発電方式別発電コストの比較は信用できない。何故なら、水力、石油火力、LNG火力、石炭火力、原子力、太陽光、風力のコスト比較は、経済産業省のエネルギー白書から抜粋されることが多いが、これは実績値ではなく、モデルプラントを想定して費用を集計したもので、恣意性の入る余地が大きく検証可能性がないからである。そして、原発の発電コストは、実際には他の電源の発電コストより高いという研究結果が、立命館大学の大島堅一教授によって出されており、これによれば、1970年度から2007年度までの実績値で10.68円/kWhであり、それは当時の火力や水力よりも高い。この違いが出た理由は、経済産業省の数字が原発のモデルプラントを想定して発電に要する費用を集計したものであるのに対し、大島教授の推計は、電力各社が公表している『有価証券報告書』に基づいた実績値を使ったためということだが、コストとは、普通、実績値を言うものである。さらに、『有価証券報告書』に基づくこの実績値は、福島原発事故処理費用、損害賠償費、今後の原発の安全対策費等を含んでいないのだ。

 これに加えて、原子力発電のコストは、電力会社が支出しているコストだけでなく、東電福島第一原子力発電所事故に伴う費用を除いても、平時に、下の①の金額を国から支払っている。そして、この費用には、今後必ず必要になる原発の廃炉費用、中間処理施設・最終処分場の建設のための費用を含んでおらず、これらは、現在、手つかずの状態であるため、今後、いくらかかるかもわからない。
①平成24年度の一般会計原子力関係経費政府予算案(http://www.aec.go.jp/jicst/NC/iinkai/teirei/siryo2012/siryo06/siryo2.pdf#search='平成24年度原子力関係予算案')より
 一般会計から1,065億円、エネルギー対策特別会計電源開発促進勘定から2,829億円(内訳:電源立地対策1,448億円、電源利用対策1,034億円、原子力安全規制対策347億円)の合計3,864億円を支出している。そして、電源立地対策1,448億円には、電源立地地域対策交付金1,059億円、電源立地等推進対策交付金163億円、電源立地等推進対策補助金92億円、原子力施設等防災対策等交付金87億円、その他47億円が含まれている。また、電源利用対策1,034億円には、(独立行政法人)日本原子力研究開発機構運営費837億円、軽水炉等改良技術確証試験等委託費85億円、放射性廃棄物処分基準調査等委託費41億円、原子力発電関連技術開発費等補助金24億円、使用済燃料再処理技術確立費等補助金21億円、その他26億円が含まれる。さらに、原子力安全規制対策347億円には、(独立行政法人)原子力安全基盤機構運営費206億円、原子力施設等防災対策等交付金62億円、原子力施設等防災対策等委託費55億円、その他24億円が含まれている。
②東電福島原子力発電所事故に伴う費用-平成24年度原子力関係経費政府予算案(1)より
 内閣府2億円、警察庁4億円、外務省3億円、文部科学省264億円、厚生労働省14億円、農林水産省37億円、経済産業省26億円、環境省本省(放射性物質除染、汚染廃棄物処理等)4,513億円、環境省原子力規制庁80億円、その他2億円の合計4,945億円である。
③ 東電福島原子力発電所事故に伴う費用-平成24年度原子力関係経費政府予算案(2)より
 そのほか、他の予算の内数として入っているものは以下のとおりである。農林水産省29億円、環境省26億円、消費者庁4億円、内閣官房0.03億円の合計59億円である。

 上記①の3,864億円は、原発事故とは関係なく、原発が立地し、原発を運転するだけで、平時に、毎年、国が支払っている原発のコストだ。これは、原発が危険施設であるため、立地自治体に国から支払っているものであり、原発がなければいらない歳出なのである。この金額の一部を回せば、再生可能エネルギーの推進や新しい電力ネットワークの構築は必ずできる。また、②③の合計5,004億円は、東電福島第一原子力発電所事故に伴うコストであり、平成24年度政府予算案に計上されている分のみである。従って、平成23年度分及びこれからかかる分は入っていない。今後、廃炉、除染、人や農林漁業に対する損害賠償、健診、関連疾患の治療費も合わせれば、全体としてはこの10~20倍(5~10兆円)の金額がかかると予想されるが、これも原発がなければ不要な歳出だったのである。

(2)電力産業の問題点と今後必要な政策
1)総括原価方式から通常の会計基準への変更
 総括原価方式は、公共料金を決める際に用いる方法の一つで、商品やサービスを提供するために必要な原価に、一定の利益を上乗せして料金を設定するものである。この方式を用いると、公共料金を決定する際の根拠が明確になり、事業者・消費者双方が過大な損失・負担を強いられることが無いと言われているが、本当だろうか?電力会社は、これまで、総括原価方式により、発電所、送電線、変電所などへの長期的な設備投資がやりやすかったというメリットがあった。しかし一方で、地域独占の企業が総括原価方式で料金を決める限り、コストを削減する誘因は働かず、むしろコストがかかった方が事業者の利益が上がるというディメリットがある。つまり、総括原価方式は、電力インフラの創造期には有用な方法であったかも知れないが、現在は、原子力発電設備などの多額の設備投資を行ったり、燃料を高く仕入れたりすることによって、むしろ利益が多くなる逆のインセンティブが働いているのである。そのため、早急に通常の会計基準を適用するように変更することが必要である。そして、超電導電線や次世代送配電網などの新しい電力インフラは、鉄道・道路・ガスなどのインフラと合わせ、電力会社とは全く別の組織が作って運営することが、電力会社の地域独占を排し、他産業の発電事業への参入障壁を低くして、電力自由化を完全なものにする上で不可欠である。

2)地域独占の排除と電力自由化の必要性
 電力会社は、地域独占により消費者不在の経営体質になっている。東京電力を例に挙げれば、以下のとおりである。
①東京電力の電気料金
 日本経済新聞2012年5月24日付記事の「東電、いびつな収益構造 家庭向け、利益出しやすく」に書かれているように、経済産業省の「電気料金審査専門委員会」に出された資料によると、2006~2010年度平均で、東電は電気事業の利益の91%を家庭や中小商店向けで稼いだ。これは、家庭や中小商店向けは電力会社が独占的に電力を供給しており、自由化が進んでいる企業部門は、大口需要家に電気を小売りする新電力の参入が相次いで、値下げ圧力が働いているからである。
②燃料の高値買い
 朝日新聞2012年3月13日社説には,震災前から電力会社を中心とした日本勢がLNGを高値買いし続けていると書かれている。現在、天然ガス市場は大転換期を迎え、シェールガスという岩層に豊富なガスが各地で採掘可能になって、アメリカでは劇的に値段が下がり、現在、日本の輸入価格の6分の1ほどで流通している。それに伴い,世界のガス市場価格も低落傾向にある。しかし、日本勢は原油価格に連動した値決め方式で買い続けているため,LNGをガス市場の実勢からかけ離れた高値で買っている。欧州勢は産出国と粘り強く交渉し、市場を使いやすくする努力を続けて日本の70%前後の価格で仕入れており、韓国勢も2012年1月に米国とシェールガス売買契約を締結し、船賃などを加えても調達コストが大きく下がった。しかし、日本の電力会社は、高値で仕入れても、料金に転嫁してより大きな利益を出せるため燃料の調達原価を下げる交渉をせず、高値で買ってコスト削減努力は行っていない。これが、現在の電力会社の行動様式になっているのである。東電に限らず、日本の電力会社による「LNGの高値買い」は、「総括原価方式」で守られて醸成された経営体質であり、電力会社が取引先全般にとって「よい顧客」である理由はこれなのである。そして、こうした取引関係を通じて、電力会社は、日本の産業社会全体を縦横に支配する力を持っているのであるが、その資金は、総括原価方式で計算される電気料金という形で、顧客から集めたものである。
③料金の設定における地域独占企業の横暴
 東電は、自由化が進んだ産業用電力は安く提供しているのに対し、家庭や中小商店向け電力の価格は高く設定しており、家庭や中小商店向けから全利益の9割を上げているが、これができるのは、家庭や中小商店向けが地域独占だからである。さらに、東電は、福島第1原発事故を起こした後、電気料金値上げの申請について「電気事業法にもとづく事業者の義務というか権利だ」と言ったり、事故に関する情報を正確に出さずに東北・関東の住民を危険に晒したりしたが、これも、それでも通る地域独占企業に醸成された行動様式であるため、地域独占を速やかに排することが必要である。

3)発送電分離の必要性
 読売新聞2012年7月13日付の記事に、「発送電分離を明記、小売り全面自由化…経産委案」として、経済産業省の有識者会議である「電力システム改革専門委員会」が、電力会社の発電事業と送配電事業を分ける「発送電分離」や、電力小売りの全面自由化、電力卸市場の強化などを、2012年7月13日に発表する取りまとめ案に盛り込んだと書かれている。この発送電分離案では、広域的な送配電網を管理する全国機関を創設した上で、①電力9社の営業区域ごとに独立系統運用機関(ISO)を設置し、送配電設備の運用や設備投資計画を委託する「機能分離」案、②9社が送配電部門を分社化し、各地域の送配電網を運用する「法的分離」案の2案を併記し、どちらの案を採用するかは年内に結論を出すとも書かれている。
 しかし、私は、地熱発電、汐潮発電、太陽光発電、風力発電、小水力発電、天然ガス発電などの発電方法を使えば、今や電力は、クリーンで国内自給できる安価なエネルギーとなりうるため、沖縄電力も含めて10社ある電力会社が、それぞれ一つの発電事業者として、他の発電事業者と対等の競争を行い、コスト削減に凌ぎを削る状況にすることが、我が国の他産業を支え、豊かな暮らしを作る基礎になると考えているため、機能分離、法的分離だけでお茶を濁すことなく、既存の電力会社とは資本関係等の完全に独立した会社が送電会社になることにより、特定の発電会社に有利にならないようにすべきだと思っている。

4)その他
 この原稿は、2012年8月28日に、公認会計士集団のプロトコルに掲載するために書いた原稿であるため、原発のコストや、電力会社の組織、経営を重点として書いた。しかし、エネルギー政策決定のポイントは、コストのみではなく下のような要素があるため、それについては別の機会に詳述したい。
①エネルギー・資源の自給率向上
 軍事上のみならず経済上の安全保障のためにも、エネルギー・資源の自給率は高ければ高いほどよい。そして、再生可能エネルギーは100%国内資源であり、輸入資源によって創られるエネルギーは国内資源でないことは言うまでもない。そのため、できるだけ再生可能エネルギーを大きな割合で利用すべきであるし、また、我が国にはその技術がある。さらに、我が国の領海は世界で6番目に広く、天然ガスは領海内に多く存在する資源であるため、いつまでも輸入に頼ることなく、むしろ輸出するくらいにしたいものである。
②安全性
 原発は、事故が起きた際の被害が莫大であり、事故の影響が広域かつ長期に及ぶエネルギーである。そして、核は、多くの人間の生命を危うくする危険性をはらむ上、技術に100%安全ということはないので、使うべきではない。
③地球環境への影響
 火力発電はCO2を出すので地球温暖化に繋がり、地球環境によくないと言われる。しかし、地球環境によくないものはCO2だけではないため、火力の代替として原子力というのは間違っている。何故なら、原発による被曝の影響は、平時でも原発労働者や付近の住民に出ており、事故時には広く放射性物質を散乱させるからである。そして、放射性物質が散乱した地域は、長期に人が住めなくなるばかりでなく、農林漁業もできなくなり、生態系に悪影響を与える。つまり、核は生物と共存できない、もっとも地球環境に悪い物質なのである。
④発電コスト
 電力などの光熱費は、他の全ての産業に響く基礎的コストであるから、コストが安いということは重要である。車も電気自動車となり、ゼロエミッション住宅が標準となり、超電導電線(電気抵抗0の電線)やスマートグリッドを使った新電力網構想もできているので、後は、再生可能な自然エネルギーで如何に安く発電できるかに我が国の命運がかかっている。その時、あらゆる産業が知恵を出して賢い発電方法を編み出し、発電コストを下げるための規制改革は、早ければ早いほどよい。

 このような中、日経新聞は、2012年8月31日に、下記の社説を掲載している。皆さまは、嘘を並べて何とかかんとか言い、要するに原発を推進しているこの新聞の情報を、今後とも信用しますか?
* http://www.nikkei.com/article/DGXDZO45577540R30C12A8EA1000/ (日経新聞 2012/8/31) 原発ゼロを性急に選んでいいのか
 政府は2030年に向けたエネルギー・環境戦略を決めるにあたり、原子力発電の全廃を選択すべきではない。私たちは福島第1原発事故を契機にエネルギー・環境政策を大きく変える必要があると主張してきた。原発の新設は難しくなり、原子力への依存は下がる。
■エネルギー自給率4%
 その代わり自然エネルギーを可能な限り増やし、環境影響に配慮しつつ化石燃料を賢く利用する必要がある。エネルギーの利用効率を高め、ムダをなくすことで総使用量を減らす努力も重要だ。
しかし原子力を選択肢からはずすのは賢明ではない。日本のエネルギー自給率は約4%(原子力除く)。国産は自然エネ以外にわずかな石油と天然ガスだけだ。1970年代の2度の石油危機を通じ、ひとつのエネルギー源に依存しすぎる危うさを学んだ。政府が原発ゼロを選べば資源国が日本の足元をみるのは避けがたい。多様なエネルギーの選択肢を手中にとどめおくことこそ、広い意味で国の安全保障にほかならない。地球温暖化への対処もある。原子力は温暖化ガスの排出削減に有効だ。世界第3の経済国である日本が世界共通の課題解決に背を向けることはできない。
 自然エネルギーの実力は未知数だ。発電コストは下がるのか。電力の安定供給に支障はないか。当面は自然エネ拡大に全力を投じるにしても、普及に伴う利害得失を常に点検し、もし限界が見えたら戦略を見直す柔軟さが要る。そのためにも選択肢は多い方がいい。石炭資源を有しエネルギーのおよそ3割を自給するドイツも昨年に脱原発を決めるまで長く曲折した議論を経た。スウェーデンは逆に80年代に決めた原発全廃の方針を今は凍結している。様々な試行錯誤がある。
 原発をすべて止め火力発電で代替したと仮定すると、石油や天然ガスの輸入額が年間約3兆円余分にかかる。これは東日本大震災前の10年度に国内の全製造業が稼ぎ出した経常利益(約16兆円)のおよそ5分の1に相当する。化石燃料の輸入が増え続ければ、19年度にも日本の経常収支が赤字に転じる可能性があると、日本経済研究センターは試算する。燃料調達費の増大と電力不足は日本経済に多くの面でマイナスの影響を与える。企業の生産能力の低下やコスト上昇につながり工場の海外移転を加速する恐れが大きい。雇用や所得の減少をもたらし国民生活を圧迫するのが心配だ。
 家計は電気料金があがっても節約で支払いを減らし、賄えるかもしれない。しかし製造業、とりわけ円高などでぎりぎりの経営を強いられてきた中小・零細の工場にとりエネルギーコストの上昇は死活問題だ。電力は暮らしや産業の基盤であり電気は現代社会の「血液」といえる。万が一にも途絶すれば、経済や社会がまわらなくなる。原子力利用は安全確保が大前提だ。従来の安全規制に問題があったのは間違いなく、国民の多くが憤りを感じている。原子力規制委員会の発足を制度刷新の機会とし信頼回復を急がねばならない。
■廃棄物問題に道筋を
 政府や国会の福島事故調査委員会は、安全神話と決別し「事故は起きうる」との認識にたち規制を厳正にするよう求めた。政府や電力会社は原発に多重の安全対策を施したうえ、「事故」を「災害」に拡大させない防災面での対策を充実させる重い責任を負う。使用済み核燃料や廃棄物の処分について政府は早期に道筋を示さねばならない。明確な方策がないまま、長く原子力を使い続けることに抵抗感を抱く人は多い。世界では427基の原発が稼働し75基が建設中だ。多くは電力需要が増える新興国などに建つ。世界は原子力を必要としており、安全の向上に日本の技術と経験を役立てられるはずだ。政府が主催した意見聴取会などには原発ゼロを求める声が多く寄せられた。原発ゼロに慎重とされる30代以下の意見が少なく、世代間の偏りも指摘される。いずれにしても意見集約の結果は政策決定にあたって踏まえるべき材料の一つにすぎない。最後は政治の判断だ。何が本当に国民の安全・安心につながるのか。政府は大局的な観点から責任ある判断を下してもらいたい。

| 原発::2012.8~9 | 01:55 PM | comments (x) | trackback (x) |

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