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2013.4.11 日本国憲法の改正について (2013年5月24日最終更新)
(1)誰が作ったかが重要なのか
 「占領軍が作った憲法なので自主憲法を制定する。それが自民党の結党理由だ」というのは、自民党内でも一部の人が強く言っていたにすぎないことであり、戦後生まれの多くの自民党議員が同じ考えというわけではない。私は、憲法は内容が大切であり、どこをどう変えたいから国民投票したいのかを議論すべき時だと思っている。
 私は、中学生の時、教科書に日本国憲法が添付されてきたので、何故か自分でそうしようと思って、憲法全文を一年間毎日、声を出して読んだ。そのため、日本国憲法の考え方はすべて素直に頭に入っているが、これは、憲法学者が建前と現実を調整するために、こねくりまわして解釈した憲法論より、日本国憲法の本質だろう。そして、日本国憲法は、自由、平和主義、国民主権を徹底したもので、全体として素晴らしいものであり、変えるより、まず徹底して実践すべきだと思っている。これだけの民主主義憲法が国民の内部から一挙に生まれることは難しい。それは、太平洋戦争に負けなければできなかったことであり、この憲法が、太平洋戦争の唯一の遺産ではないかとさえ思っている。

(2)目指すのは、どういう国家観なのか
 日本国憲法(http://www.h3.dion.ne.jp/~urutora/kenpoupeji.htm 参照)は、前文で、自由・平和主義・国民主権について述べた後、1条~8条で天皇の地位と行為の範囲を述べているが、これはよいと思う。9条で、以下のように戦争放棄を述べ、2項で「陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない」としているのが自衛隊の存在と矛盾しており、そのため、今まで超解釈がまかり通ってきたが、他国に侵略することはなくても、他国の侵略から防衛する必要はあるので、ここを事実に即して改正するのには、私も賛成である。
 第9条 [戦争の放棄、軍備及び交戦権の否認] 
  ①日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力に
    よる威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
  ②前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを
    認めない。
 10条以降の条文の基本的人権、法の下の平等などについては、私は非常にいい憲法だと思っている。しかし、*2のように、自民党政調会長の高市氏は、「私は憲法改正のために国会議員になった。憲法は国家観に関わる。常に選挙の争点になるべきで、国家観による政界再編が最後の正しい姿だ」と述べられている。それならば、現憲法のどの国家観が納得できず、どういう国家観に変えようとして憲法改正を発議しているのか、その内容を具体的に説明し、総選挙で国民に問うべきだ。民主党ができたか、できなかったかは、国民にとってはどうでもよい話だ。

(3)具体的に憲法のどの条文をどう改正するのか、及び、その理由を開示すべきだ
 自民党の憲法改正案(http://www.dan.co.jp/~dankogai/blog/constitution-jimin.html の比較表参照)は、多くのことを変更しようとしている。そのため、どういう趣旨で、どういう条文に変えたいのか、国民に説明すべきだ。自民党内の総務会を通ったとは言っても、他の仕事で忙しい人、憲法に関心の薄い人、反対の人は次第に出なくなる会合を重ねて、党内の意見を集約したにすぎない。小選挙区で有権者の意志とは異なる与党議員数が実現し、その中の一部の議員の主張で憲法を改正すれば、国民全体から見れば、非常に少数の意見によって憲法が変えられることになる。そのため、憲法改正の趣旨は、その内容を逐条解説し、一つ一つ、個別に国民に問うべきである。そうしなければ、なし崩し的改憲になるのは目に見えている。

(4)96条の改正から始めるのは適切か
 日本国憲法は、96条で改正要件として、1)国会が衆参両院のすべての議員の3分の2以上の賛成を得て発議する 2)国民投票での過半数の賛成で承認する ということを定めており、通常の法律より改正が難しい。そして、殆どの国の憲法がそうであり、それが世界標準だ(http://blog.goo.ne.jp/raymiyatake/e/b55b9146bbd00daeb3402cf21d1a4ee6 参照)。憲法改正が一般の法律改正よりやりにくくなっているのは、憲法が一般の法律より上位にある国の基本方針で、その時々の為政者による人権侵害などの津波に負けないようにするためで、変えにくいこと自体に意味がある。そのため、私も、*3、*4と同様、まず96条を改正するというのは邪道であり、改正したい条文とその理由を国民に説明し、96条に従って改正すべきだと思う。

*1:http://mainichi.jp/select/news/20130406k0000m010135000c.html
(毎日新聞 2013年4月6日) 安倍首相:予算委で持論「占領軍が作った憲法」
 「占領軍が作った憲法だったことは間違いない。形式的にはそうではないが、占領下に行われたのは事実だ」。安倍晋三首相は5日午前の衆院予算委員会で、現行憲法に関する持論をぶった。首相は7月の参院選後をにらみ、憲法96条の定める改憲の発議要件を衆参各院の「3分の2以上」から「過半数」に緩和する方針を示しているが、もともとは「自主憲法制定」が悲願。「(占領下の)7年間に憲法や教育基本法、国の形を決める基本的な枠組みができた。(独立時に)真の独立国家をつくる気概を持つべきではなかったか」と冗舌だった。質問したのは民主党の細野豪志幹事長。サンフランシスコ講和条約締結から61年となる今月28日に政府が「主権回復の日」の式典を開くことに絡め「私は憲法を前向きに評価する。戦後の認識が自民と民主で違う」と憲法観の違いを強調した。式典には、主権回復後も占領下に置かれた沖縄から反発も出ている。首相は「昨年が60年の節目だったが(民主党政権下で)できなかった。毎年やる式典ではない」と来年以降の開催には慎重な考えを表明。沖縄が返還された5月15日の式典開催も「考えていかなければならない」と沖縄への配慮を示した。

*2:http://sankei.jp.msn.com/politics/news/130406/stt13040611310004-n1.htm
(MSN産経ニュース 2013.4.6) 高市氏「国家観で政界再編」 改憲めぐり公明との連立解消示唆
 自民党の高市早苗政調会長は6日の読売テレビ番組で、憲法改正に関し「憲法は国家観に関わる。常に選挙の争点になるべきで、国家観による政界再編が最後の正しい姿だ」と述べた。さらに「私は憲法改正のために国会議員になった。私たちは絶対何が何でもこれをやり抜く」と訴え、夏の参院選で憲法改正を前面に掲げる考えを強調。憲法改正に慎重な公明党との連立解消もあり得るとの認識を示した格好だ。一方、高市氏は、憲法改正を掲げる日本維新の会の綱領については「国の歴史と文化への誇りなど、価値観が一致するところが結構ある」と賛同。同じ番組に出演した維新共同代表の橋下徹大阪市長は重ねて改憲の必要性を強調した。

*3:http://www.ehime-np.co.jp/rensai/shasetsu/ren017201303217214.html
(愛媛新聞社説 2013年3月21日) 憲法改正の発議 「3分の2」緩和は邪道の極み
 衆参両院が憲法審査会を再開した。ひときわ目を引くのが憲法96条改正論だ。まずは憲法改正のルールから変えようという動きが政界で急速に広がっている。安倍晋三首相はあえて国会答弁で踏み込んだ発言をする。96条は、衆参両院でそれぞれ総議員の「3分の2以上」の賛成があれば改正を発議できるとする。その後の国民投票で「過半数」が賛成すれば承認されると定めている。首相らは発議要件の「3分の2以上」を「過半数」にしたいという。平和条項の9条などと比べ、イデオロギー色の薄い手続き論ならば、議論と合意がしやすいと踏んだのだろう。実際、制度改正に思い入れのある日本維新の会、みんなの党が同調している。
 ただ、改正発議のハードルを通常の法案可決と同じ過半数に下げると、憲法は極端に軟性化しかねない。与党本位の憲法改正に道を開いたとしても、実はもろ刃の剣だ。与党の地位とて不変ではない。96条改正に反対だった政治勢力が政権に就いた場合、今度は過半数の賛成によって再び3分の2へと戻す発議がなされる局面もありうる。国民投票が控えるとはいえ、無用な政治の浪費を繰り返すことになりかねない。スポーツの試合で片方に有利なルールがまかり通るのであれば観客はしらけよう。集団的自衛権の扱いや二院制のあり方といった憲法をめぐる核心の議論よりも、手続き論を優先するのは邪道の極みというよりほかない。
 憲法は時の政権の都合で憲法秩序をゆるがせない。96条は権力者を縛る憲法の本質であり、最高法規性のあらわれである。どんな理由があっても96条の改正は許されないとする学説さえあるほどだ。日本の憲法は改正されたことがない。ただ、それは自民党が問題視するハードルの高さが原因でないのは明白だ。憲法改正を試みた米国や欧州の国々は、ハードルが低いわけではない。硬性の程度は日本とさほど変わらず、多くは二院の3分の2要件を乗り越えて改正を成している。
 憲法改正は国会や国民の納得を得るために、どれだけ政治的な努力が注がれてきたかが問われる。欧米の国々は幅広い合意を得る過程を怠らなかったということだ。発議要件の緩和は、改憲のハードルを下げるというよりも、むしろ国民投票へのハードルを下げる。国のかたちを直接民主制のように描いていく覚悟が、どれだけ今の政治家にあるのかと問いたい。憲法公布直後の一時期を除けば、96条のあり方はほとんど議論されていない。立憲政治を見つめ直すための論戦は大いに結構だ。そして「3分の2」が意味する重さに気づく機会になればいい。

*4:http://mainichi.jp/feature/news/20130409dde012010003000c.html
(毎日新聞 2013年4月9日) 特集ワイド:憲法96条改正に異論あり 9条を変えるための前段、改憲派からも「正道じゃない」
 もしかしたら憲法9条改正よりも、こちらの方が「国家の大転換」ではないのか。憲法改正のルールを定めた96条の改正問題。改憲派が目の敵にし、安倍晋三首相が実現に意欲を燃やすが、どこかうさんくささが漂う。実は「改憲派」の大物からも異論が出ているのだ。【吉井理記】
 「憲法議論は低調だ。なぜなら結局、(改憲発議に要する)国会議員数が3分の2だから。2分の1ならすぐに国民投票に直面する。そこで初めて、憲法問題を議論する状況をつくり出すことができるのではないか」。先月11日の衆院予算委員会。民主党の議員から改憲への考えをただされた安倍首相は96条を改正するメリットをそう強調し、改正への意欲をにじませた。
 96条は改憲に(1)衆参両院のそれぞれ3分の2以上の議員の賛成で国会が改正を発議し、国民に提案する(2)国民投票で過半数が賛成する−−の2段階が必要と規定している。(2)の手続きを定めた国民投票法は第1次安倍内閣の07年に成立、10年に施行された。
 焦点は(1)だ。安倍首相は「3分の2以上」から「過半数」への緩和を目指す。今年に入り民主党、日本維新の会、みんなの党の有志が96条改正に向けた超党派の勉強会を発足させた。既に改憲派は衆院で圧倒的多数を占めており、今夏の参院選で定数242の3分の2、162議席以上になれば条件は整う。昨年8〜9月の毎日新聞の世論調査では96条改正賛成は51%、反対は43%だった。
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 「絶対ダメだよ。邪道。憲法の何たるかをまるで分かっちゃいない」
 安倍首相らの動きを一刀両断にするのは憲法学が専門の慶応大教授、小林節さん(64)だ。護憲派ではない。今も昔も改憲派。戦争放棄と戦力不保持を定めた9条は「空想的だ」と切り捨て、自衛戦争や軍隊の存在を認めるべきだと訴える。改憲派の理論的支柱として古くから自民党の勉強会の指南役を務め、テレビの討論番組でも保守派の論客として紹介されている。その人がなぜ?
 「権力者も人間、神様じゃない。堕落し、時のムードに乗っかって勝手なことをやり始める恐れは常にある。その歯止めになるのが憲法。つまり国民が権力者を縛るための道具なんだよ。それが立憲主義、近代国家の原則。だからこそモノの弾みのような多数決で変えられないよう、96条であえてがっちり固めているんだ。それなのに……」。静かな大学研究室で、小林さんの頭から今にも湯気が噴き出る音が聞こえそうだ。

PS(2013年5月24日追加):一流の学者たちが頑張ってくれており、心強いです。ただし、強めるのは、政治家の権力だけでなく、官僚の権力もでしょう。
*5:http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2013052301001904.html
(東京新聞 2013年5月23日) 96条改正「憲法への挑戦」 主張超え学者結集
 改憲の発議要件を緩和する憲法96条改正に反対の学者が「96条の会」を発足し、代表の樋口陽一東大名誉教授らが23日、東京・永田町で記者会見して「96条改正は憲法の存在理由そのものへの挑戦だ」とする声明を発表した。発起人は憲法学者や政治学者ら36人。護憲派だけでなく9条改正を唱える改憲論者も含まれており、主張の違いを超えて大同団結した。声明は「96条を守れるかどうかは権力を制限するという立憲主義にかかわる重大な問題。(改正は)政治家の権力を不当に強めるだけだ」と訴えた。自民党などは発議要件を衆参両院の3分の2以上の賛成から過半数にすることを主張している。

| 日本国憲法::2013.4~2016.5 | 05:21 PM | comments (x) | trackback (x) |

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