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2014.5.26 大飯原発再稼働差止判決の意義と新規制基準、原発再稼働について (2014.5.27、29に追加あり)
          
     2014.5.21西日本新聞より  2014.5.22日経新聞より *3-6より

(1)隠されている真実
 *1-1のようなことが書かれている吉田調書を、*1-2のとおり、政府事故調等をふまえて新規制基準を決め、再稼働の審査をしている筈の規制委委員長は、「読んでいない、知らない」と答えた。それで「全部考慮してやっている」と言われても、「それは不可能だ」としか言いようがない。原発には、このような変なことが多いが、それは、真実を語れば、誰も原発の再稼働を認めなくなるからである。

(2)福井地裁による大飯原発再稼働差止判決の格調高さとそれに対する関係者の反応
 *2-1及び*4(大飯原発差止判決要旨全文、長いため最後に掲載)に書かれているように、福井地裁は、「大飯原発の安全技術と設備は脆弱なものと認めざるを得ない」として運転の差し止めを命じた。大飯原発は、新規制基準に基づく原子力規制委員会の再稼働に向けた審査を受けたとはいえ、その新規制基準は(1)のようなものであるため、福井地裁が、福島第一原発事故を踏まえて、「生存を基礎とする人格権は憲法上の権利であり、法分野において最高の価値を持つ」「差止の判断基準は新規制基準への適否ではなく、福島事故のような事態を招く具体的な危険性があるか否かである」としたのは、的を射ている。

 また、大飯原発再稼働差止判決は、使用済核燃料貯蔵プールについて、「使用済核燃料も原子炉格納容器と同様、堅固な施設で囲われて初めて万全の措置と言えるが、むき出しに近い状態になっている」としており、実情はそのとおりである。関電が「原発の稼動が電力供給の安定性、コストの低減に繋がる」と主張した点については、「多数の人の生存権と電気代の高低の問題等とを並べて論じること自体、法的に許されない」「国富の流出や喪失の議論があるが、たとえ本件原発の運転停止によって多額の貿易赤字が出るとしても、これを国富の流出や喪失というべきではなく、豊かな国土とそこに国民が根を下ろして生活していることが国富であり、これを取り戻すことができなくなることが国富の喪失である」としたのも全くそのとおりで、これまでの原発に関する議論と比較して格調高い。

 さらに、大飯原発再稼働差止判決は、「原子力発電所の稼動がCO2排出削減に資するもので、環境面で優れていると主張するが、原子力発電所でひとたび深刻事故が起こった場合の環境汚染はすさまじいもので、福島原発事故は我が国始まって以来最大の公害、環境汚染であることに照らすと、環境問題を原子力発電所の運転継続の根拠とすることは甚だしい筋違いである」と述べており、そのとおりである。それにもかかわらず、昨日、一昨日のNHKスペシャルでは、「ドイツは脱原発で電気代が高くなり、企業が電気代の安い近くの国に移動した(←企業は主に電気代で立地を決めるわけではない)」「再生可能エネルギーの普及で、原発電気の需要増加という話もある(←不確実で根拠がないのに、無理に言っている)」「原発は石炭に比べて環境によいエネルギー(←この二者択一にするのがおかしい)」などとしていたが、原発を語るメディアの記者や編集者は、少なくとも大飯原発再稼働差止判決を読んで、内容を理解しておくべきである。

 この判決が画期的だったため、日弁連は、*2-2のように即座に会長声明を出し、「本判決は、技術の危険性の性質やそのもたらす被害の大きさが判明している場合には、その性質と大きさに応じた安全性が認められるべきとの理に基づき、原子力発電所の特性、大飯原発の冷却機能の維持、閉じ込めるという構造の細部に検討を加え、大飯原発に係る安全技術及び設備は、確たる根拠のない楽観的な見通しの下に成り立ちうる脆弱なものとして運転差止めを認めた」「福島第一原発事故の深い反省の下に、国民の生存を基礎とする人格権に基づき、国民を放射性物質の危険から守るという観点から、司法の果たすべき役割を見据えてなされた画期的判決であり、他の原子力発電所にもあてはまる」と、福井地裁判決を評価している。

 また、日弁連会長声明は、「政府に対しては、本判決を受けて、従来のエネルギー・原子力政策を改め、速やかに原子力発電所を廃止して、再生可能エネルギーを飛躍的に普及させるとともに、原子力発電所の立地地域が原子力発電所に依存することなく自律的発展ができるよう、必要な支援を行うことを強く求める」とも述べている。

 一方、この判決を受けても、菅官房長官が「原子力規制委員会が新規制基準への適合を認めた原発の再稼働を進めるという従来の政府方針について全く変わりない」としているのは、勉強不足に過ぎる。

 関電は、*2-3のように、「当社の主張が理解いただけなかった」として、判決の翌日、名古屋高裁金沢支部に控訴したが、事の重大性を理解していないのは関電の方だ。

 さらに、日経新聞も、*2-4のように、電力会社の主張を繰り返し、「原発に100%の安全性を求め、絶対安全という根拠がなければ運転は認められないと主張しているのに等しい判決は疑問が多い」「上級審ではそれらを考慮した審理を求めたい」としているが、原発は、一旦事故が起これば取り返しのつかない大きな被害をもたらすため、原発には100%の安全性が求められる。

(3)他の原発の地元では・・
 佐賀地裁で玄海原発の運転差し止めを求める訴訟を争う玄海訴訟原告団は、*3-1のように、福井地裁判決に対し、「画期的」「衝撃」と評価し、「もう原発を再稼働すべきではない」としている。全国最大8千人近い原告が、佐賀地裁で玄海原発の操業停止を求めている訴訟の原告団長を務める長谷川照・元佐賀大学長(京都大学大学院理学系研究科出身)は、「安全神話から決別し、原発事故後の今とマッチしたすばらしい判決」としてこの判決を高く評価されたそうで、私も全く同感である。
 
 福井地裁の大飯原発再稼働差止判決が、「地震大国日本で基準地震動を超える地震が来ないというのは楽観的過ぎる」「地震という自然の前に、人間の限界を示しており、信頼できる根拠は見いだせない」としている点について、長谷川団長は「基準をクリアするかどうかで原発の安全を判断する規制委員会の考え方を否定した」とその意義を強調されたそうだが、新基準は(1)のようなものであるため、これは重要なポイントだ。弁護団共同代表の板井弁護士も、「二度と事故を繰り返さない立場に立った、すべての原発に通じる判断。玄海原発の訴訟にもいい影響を与える」としている。

 さらに、判決が、「憲法上、最高の価値ある人格権を広範に奪うのは、大きな自然災害、戦争以外では原発事故しかない」と断じたことについて、「玄海原発プルサーマルと全基をみんなで止める裁判の会」の石丸初美代表は、「命や健康が最優先という我々の主張と重なり、勇気づけられた」「九電も再稼働すべきではない」と語ったそうだ。

 九電は、川内原発(鹿児島県)の再稼働に向けた国の審査が最優先で行われており、今回の判決に対して、「具体的な内容を把握しておらず、コメントは差し控える」としているが、川内原発も同じである。

 関西電力大飯原発の運転差し止めを命じた福井地裁判決に対し、玄海原発が立地する佐賀県内の首長からは「衝撃的」と驚きの声が上がる一方で、「住民の不安を認めた結果」と理解を示す声もあり、再稼働をめぐるそれぞれの立場で反応が分かれた。しかし、下級審の判決であっても、この判決は論拠が明快で的を得ているため、上級審でも支持されて全国の原発に影響を与えてもらいたい。

 なお、*3-2のように、「脱原発をめざす首長会議」は、「いのちを守る避難計画はできるのか」と題する原発事故に備えた防災計画の勉強会を京都市内で開いたそうだが、30キロ圏内だけでも避難は困難を極めるのに、日本で250キロ圏内の人の避難などできるはずがない。

 さらに、*3-5、*3-6に書かれているように、原発再稼動第一号を目指している川内原発のケースでは、安全神話に乗った上で工事目的の対応をしており、これは、従来と全く変わっていない。

*1-1:http://digital.asahi.com/articles/ASG5N5JY6G5NUUPI004.html?ref=nmail
(朝日新聞 2014年5月21日) 発表要請「絶対にだめだ」 原子炉危機、周知に壁
 住民が知らないうちに大量被曝の恐れのあるドライベントが実施されていたかもしれない――。東京電力福島第一原発で事故直後に実際に起きたことは、原発再稼働の前提となる住民の避難計画づくりの重要な教訓となるはずだ。東電がドライベントを検討していたのは、情報規制の最中だった。「いまプレスをとめてるそうです」。2011年3月14日午前7時49分。福島第一原発には東電のテレビ会議システムを通して本店の官庁連絡班からそんな報告が届いた。3号機の原子炉圧力が急上昇している事態について、当時の原子力安全・保安院が報道機関に発表してはならないという情報統制を敷いているというのだ。政府事故調の報告書などによると、その数分後、原子炉の圧力が設計上の最高使用圧力を超えたとの連絡があった。原子炉の危機が高まっていた。東電は報道発表について首相官邸の了解を得るため、官邸に派遣されていた本店社員が保安院の担当者を探し回り、手間取っていた。また、福島県も住民へ周知するため報道発表をしたいと要請していたが、保安院は「絶対にだめだ」と返事をした。保安院は圧力が下がり原子炉に冷却水が注入できるようになることを期待していた。住民に危機を知らせるより、原子炉の暴走を止めることを優先したのだ。原子炉の状況が自治体や住民に的確に伝わらないなかで、住民が安全に避難することは難しい。企業統治に詳しい久保利英明弁護士は「ドライベントのような重大な決断は検討段階から住民に知らされるべきだ。深刻な事態では、企業は住民に対する安全保護義務を負っている。3年以上たっても東電も国も責任を明確にしない中で再稼働の議論には入れない」と語った。
■ベント判断は各社任せ
 原発事故当時、国にはどのような状況でベントの実施が許されるのかというルールがなく、電力会社に任せていた。東電の事故時操作手順書では「格納容器圧力が最高使用圧力の2倍」または「温度200度」に達した場合に、緊急時対策本部長(発電所長)の最終判断でベントをすることになっていた。福島第一原発で最終判断をする吉田昌郎(まさお)所長は、圧力が2倍に達しなくてもドライベントをするべきだという趣旨の発言をテレビ会議でしていた。ベントの際には周辺住民の避難情報を確認することが必要で、東電は「国や自治体等の関係機関と最大限に情報を共有しながら、実施について調整していく」としていた。しかし東電の資料によると、実際には1、2、3号機のウエットベント実施の際に「通信手段の不調」で連絡できなかった自治体もあった。原発事故を受け、原子力規制委員会は13年、原発を運転する前提となる新しい規制基準を作った。新たにフィルター付きベント設備の設置が義務づけられるなど設備面の強化策は打ち出された。しかし、どのような状況でベントの実施が許されるかという運用については相変わらず、自治体と電力会社が結ぶ「安全協定」という法律に基づかない協定に委ねられたままだ。このため、福島第一原発の事故のように一刻を争う中で緊急避難的に実施される場合は、住民が避難する時間的余裕がなくなってしまうことが今後も起きうる。東電柏崎刈羽原発の再稼働に慎重な新潟県の泉田裕彦知事は「(ベントに)どういう性能を持たせるかは避難計画とセット」として、ベントは避難する地元住民に影響がないことを保証しない限り実施しないこと、避難について自治体と協議することを東電に求めている。

*1-2:http://digital.asahi.com/articles/ASG5N0Q5VG5MULBJ01G.html
(朝日新聞 2014年5月20日) 原子力規制委員長「吉田調書読んでいない、知らない」
 東京電力福島第一原発で事故対応の責任者だった吉田昌郎氏(故人)が政府事故調査・検証委員会に答えた「聴取結果書」(吉田調書)について、原子力規制委員会の田中俊一委員長は19日の朝日新聞の取材に「読んでいない。知らない」と答えた。規制委は政府事故調などをふまえ、原発の新しい規制基準を決めた経緯がある。田中氏は「全部考慮してやっている。(調書が表に)出れば読ませていただきたい」と語った。これに関連して菅義偉官房長官は20日の会見で調書を開示しない方針を示したうえで、「吉田氏は外部への開示を望んでいない。本人からは書面での申し出もある」と説明した。菅氏の説明によると、吉田氏は政府事故調の聴取後に体調を崩し、その後の国会事故調による聴取の求めに応じられなかった。このため国会事故調が政府事故調にヒアリング記録の提出を要求。政府は①第三者に向けて公表しない②国会事故調でヒアリング記録を厳重管理する③調査終了後は政府事故調へ返却する――ことを条件に、吉田氏から国会事故調への提出の許可を得たという。自民党の石破茂幹事長は会見で「極限の事案の時にどう対応するかは危機管理だ。生命の危険があると逃げた時に、法的にどう裏打ちされたものなのか政府で検証されるものだ」と注文した。新潟県の泉田裕彦知事は、会見で「事故の検証のためにも公表すべきだ」と語った。小野寺五典防衛相も会見で「内容が事実であれば明らかにしなければならない」と述べた。小野寺氏は福島第一原発の所員が吉田氏の命令に違反して撤退したことについて「そのようなことがもしあったなら大変残念だ。内容に問題があるなら、担当大臣がしっかりした対応を取られると思う」と語った。

*2-1:http://digital.asahi.com/articles/DA3S11148418.html (朝日新聞 2014年5月22日) 大飯原発再稼働認めず 福島事故後初の判決 地震対策の不備認定 福井地裁
 関西電力大飯原発3、4号機(福井県おおい町)をめぐり、住民らが関電に運転の差し止めを求めた訴訟の判決が21日、福井地裁であった。樋口英明裁判長は「大飯原発の安全技術と設備は脆弱なものと認めざるを得ない」と地震対策の不備を認定し、運転差し止めを命じた。関電は22日にも控訴する方針。2011年3月の東京電力福島第一原発の事故後、原発の運転差し止めを求めた訴訟の判決は初めて。大飯原発は13年9月に定期検査のため運転を停止し、新規制基準に基づく原子力規制委員会の再稼働に向けた審査を受けている。この判決が確定しない限り基準に適合すれば大飯原発の運転は可能だが、世論の大きな反発も予想される。福島第一原発事故を踏まえ、まず樋口裁判長は「生存を基礎とする人格権は憲法上の権利であり、法分野において最高の価値を持つ」と述べ、差し止めの判断基準として「新規制基準への適否ではなく、福島事故のような事態を招く具体的な危険性があるか」を挙げた。そのうえで大地震が来た時に原発の冷却機能が維持できるかどうかについて検討。05年以降、安全対策の基準となる「基準地震動」を超える大きさの地震が東日本大震災を含めて5回原発を襲ったことを指摘し、大飯原発の基準地震動を700ガル(ガルは揺れの勢いを示す加速度の単位)とした関電の想定を「信頼に値する根拠はない」とした。関電は、基準地震動の1・8倍にあたる1260ガルに達しない限りメルトダウンには至らないと主張したが、判決は「その規模の内陸地殻内地震は大飯原発で起きる危険がある」と退けた。次に、使用済み核燃料を貯蔵するプールについても、樋口裁判長は福島第一原発事故で建屋の壁が吹き飛ぶなどして、周辺住民の避難が計画されたことを指摘。「使用済み核燃料も原子炉格納容器と同様に堅固な施設によって囲われてこそ初めて万全の措置と言える」と、関電の対応の不十分さを批判。「関電は、原発の稼働が電力供給の安定性につながるというが、極めて多数の人の生存そのものに関わる権利と電気代の高い低いの問題とを並べた議論の当否を判断すること自体、法的には許されないと考える」と結論づけた。裁判は、福井県民ら計189人が原告となっていた。判決は、福島第一原発の使用済み核燃料プールをめぐるトラブルで250キロ圏内の住民の避難が検討されたことを踏まえ、大飯原発から同じ距離圏内に住む原告166人について差し止め請求を認めた。(太田航)
■政府方針「不変」
 判決を受け、菅義偉官房長官は21日の記者会見で、原子力規制委員会が新規制基準への適合を認めた原発の再稼働を進めるという従来の政府方針について「全く変わりません」と述べた。
■コスト論より人格権優先
 《解説》この訴訟で示された判決は、大飯原発の運転の是非にとどまらず、地震国で原発を持つことができるのかという本質的な問いを突きつけた。判決では、大飯原発を襲う最大の地震の揺れを想定することはできず、住民の安全を確保できないとした。阪神大震災をきっかけに、国は2006年に耐震指針を見直し、地震の揺れを見積もるやり方を厳しくした。しかし、その後も想定を上回る地震の揺れが各地の原発を襲った。判決では大事故ほど混乱で思うような収束は難しいと指摘。政府の福島原発事故調による「吉田調書」でもその事実が裏付けられた。さらに、原発のあり方についても論を展開している。優先すべきは「生存にかかわる人格権」で、発電の一手段でしかない原発はそれよりも優先度を低く置くべきだとしている。「原発の稼働がコストの低減につながる」といった、電気代と住民の安全を同列で考えるべきではないと指摘。安全性を確保できなければ、原発を運転すべきではないと判断した。原発の再稼働に向けた準備が大詰めを迎えている。しかし、判決は福島事故で厳しくなった原発の規制基準の是非を論ずる以前に、原発の安全性に対する考え方を根本から見直すべきだとした。これは再稼働に向けた国の審査に影響を与えることになる。福島事故を起こした日本が原発を持つ意味とは何か、その資格はあるのか。判決は、私たちに改めて考えるよう求めている。

*2-2:http://www.nichibenren.or.jp/activity/document/statement/year/2014/140521_2.html (日本弁護士連合会会長 村越進 2014年5月21日) 福井地裁大飯原発3、4号機差止訴訟判決に関する会長声明
 福井地方裁判所は、2014年5月21日、関西電力株式会社に対し、大飯原子力発電所(以下「大飯原発」という。)から半径250km圏内の住民の人格権に基づき、同原子力発電所3号機及び4号機の原子炉について、運転の差止めを命じる判決を言い渡した。本判決は、仮処分決定を除くと、2011年3月の福島第一原発事故以降に言い渡された原発訴訟の判決としては初めてのものである。従来の原子力発電所をめぐる行政訴訟及び民事訴訟において、裁判所は、規制基準への適合性や適合性審査の適否の視点から、行政庁や事業者の提出する資料を慎重に評価せず、行政庁の科学技術的裁量を広く認めてきた。また、行政庁や事業者の原子力発電所の安全性についての主張・立証を緩やかに認めた上で、安全性の欠如について住民側に過度の立証責任を課したため、行政庁や事業者の主張を追認する結果となり、適切な判断がなされたとは言い難かった。これに対し本判決は、このような原子力発電所に関する従来の司法判断の枠組みからではなく、技術の危険性の性質やそのもたらす被害の大きさが判明している場合には、その性質と大きさに応じた安全性が認められるべきとの理に基づき、裁判所の判断が及ぼされるべきとしたものである。その上で、原子力発電所の特性、大飯原発の冷却機能の維持、閉じ込めるという構造の細部に検討を加え、大飯原発に係る安全技術及び設備は、万全ではないのではないかという疑いが残るというにとどまらず、むしろ、確たる根拠のない楽観的な見通しの下に初めて成り立ちうる脆弱なものとし、運転差止めを認めたものである。本判決は、福島第一原発事故の深い反省の下に、国民の生存を基礎とする人格権に基づき、国民を放射性物質の危険から守るという観点から、司法の果たすべき役割を見据えてなされた、画期的判決であり、ここで示された判断の多くは、他の原子力発電所にもあてはまるものである。当連合会は、昨年の人権擁護大会において、いまだに福島第一原発事故の原因が解明されておらず、同事故のような事態の再発を防止する目処が立っていないこと等から、原子力発電所の再稼働を認めず、速やかに廃止すること等を内容とする決議を採択したところである。本判決は、この当連合会の見解と基本的認識を共通にするものであり、高く評価する。政府に対しては、本判決を受けて、従来のエネルギー・原子力政策を改め、速やかに原子力発電所を廃止して、再生可能エネルギーを飛躍的に普及させるとともに、原子力発電所の立地地域が原子力発電所に依存することなく自律的発展ができるよう、必要な支援を行うことを強く求めるものである。

*2-3:http://www.saga-s.co.jp/news/national/10201/66092
(佐賀新聞 2014年5月22日) 大飯原発差し止め、関電が控訴、「安全性主張していく」
 関西電力は22日、大飯原発(福井県おおい町)3、4号機の運転差し止めを命じた福井地裁判決を不服として、名古屋高裁金沢支部に控訴したことを明らかにした。関電は「当社の主張が理解いただけなかった。控訴審で安全性について主張していく」と説明している。福井地裁の判決をめぐっては、原告団のメンバーらが22日午前、関電本店(大阪市北区)を訪れ、控訴をせず判決内容に従うよう申し入れていた。

*2-4:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20140523&ng=DGKDZO71644930T20C14A5EA1000 (日経新聞社説 2014.5.23) 大飯差し止め判決への疑問
 関西電力大飯原子力発電所3、4号機について、福井地裁が運転再開の差し止めを命じた。東京電力福島第1原発の事故後、同様の差し止め訴訟が相次いでいるなかで初めての判決だ。裁判では、関電が想定する地震の揺れの強さが妥当か、事故時に原子炉を冷やす機能を維持できるのかなどが争点になった。判決は「(関電の対策は)確たる根拠のない楽観的な見通しのもとに成り立つ脆弱なもの」と断じた。疑問の多い判決である。とくに想定すべき地震や冷却機能の維持などの科学的判断について、過去の判例から大きく踏み込み、独自の判断を示した点だ。判決は関電の想定を下回る揺れでも電源や給水が断たれ、重大事故が生じうるとした。地震国日本では、どんなに大きな地震を想定しても「それを超える地震が来ない根拠はない」とも指摘した。これは原発に100%の安全性を求め、絶対安全という根拠がなければ運転は認められないと主張しているのに等しい。国の原子力規制委員会が昨年定めた新たな規制基準は、事故が起こりうることを前提に、それを食い止めるため何段階もの対策を義務づけた。「多重防護」と呼ばれ、電源や水が断たれても別系統で補い、重大事故を防ぐとした。判決はこれらを十分考慮したのか。大飯原発は規制委が新基準に照らし、安全審査を進めている。その結論を待たずに差し止め判決を下したのには違和感がある。関電は判決を不服として控訴した。原発の安全性をめぐる科学的判断に司法はどこまで踏み込むのか、電力の安定供給についてどう考えるのか。上級審ではそれらを考慮した審理を求めたい。一方で、判決が住民の安全を最優先したことなど、国や電力会社が受け止めるべき点もある。安全審査が進むなか、住民の避難計画づくりが遅れている。安全な避難は多重防護の重要な柱だ。自治体の計画づくりを国が支援し、電力会社も説明を尽くすべきだ。

*3-1:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/65965
(佐賀新聞 2014年5月22日) 「画期的」「衝撃」評価と驚き 玄海訴訟原告団
 大飯原発3、4号機の再稼働にノーを突きつけた21日の福井地裁判決。福島第1原発事故を教訓に「原発の危険性と被害の大きさは十分明らかになった」とする司法判断に、佐賀地裁で玄海原発の運転差し止めを求める訴訟を争う原告からは「画期的な判決。もう原発を再稼働すべきではない」との声が上がった。「安全神話から決別し、原発事故後の今とマッチしたすばらしい判決」。全国最大の8千人近い原告が、佐賀地裁で玄海原発の操業停止を求めている訴訟の原告団長を務める長谷川照・元佐賀大学長は、判決を高く評価した。「3・11」以前から、全国の原発周辺の住民らが数々の運転差し止め訴訟を起こしてきた。しかし、住民側が勝訴したのは2006年に金沢地裁が志賀原発2号機について「想定を超える地震で被ばくする可能性がある」とした1例だけ。この判決も上級審で逆転敗訴し、司法は国の原発政策を追認してきたのが実情だ。福井地裁の判決では、国が再稼働を審査する上で大前提となる基準地震動の設定について「地震という自然の前に、人間の限界を示しており、信頼できる根拠は見いだせない」とした。長谷川団長は「基準をクリアするかどうかで原発の安全を判断する規制委員会の考え方を否定した」とその意義を強調した。判決はまた、「地震大国日本で基準地震動を超える地震が来ないというのは楽観的過ぎる」「使用済み核燃料プールに、原子炉格納容器のような堅固な設備がない」など、原発そのものの危険性を指摘。弁護団共同代表の板井優弁護士は「二度と事故を繰り返さない立場に立った、すべての原発に通じる判断。玄海原発の訴訟にもいい影響を与える」と分析する。さらに判決は「憲法上、最高の価値がある人格権を広範に奪うのは、大きな自然災害、戦争以外で原発事故しかない」と断じた。約780人が原告となり、玄海原発の運転差し止めなどを求めた訴訟を起こしている「玄海原発プルサーマルと全基をみんなで止める裁判の会」の石丸初美代表は「命や健康が最優先という我々の主張と重なり、勇気づけられた。九電も判決を見習って再稼働すべきではない」と語気を強めた。九電が抱えるもう一つの原発の川内原発(鹿児島県)は再稼働に向けた国の審査が最優先されている。九電は今回の判決に「訴訟の具体的な内容を把握しておらず、コメントは差し控える」とした。
■県内首長 受け止めさまざま
 関西電力大飯原発の運転差し止めを命じた21日の福井地裁判決に対し、玄海原発が立地する佐賀県内の首長からは「衝撃的」と驚きの声が上がる一方、「住民の不安を認めた結果」と理解を示す声もあり、再稼働をめぐるそれぞれの立場で反応が分かれた。夕方、佐賀市内で記者団の取材に応じた古川康知事は「これまで下級審では(差し止めを)認める判決もあった。裁判官が独自の審理で出された判決だと思う」と淡々と受け止めた。電力会社の主張をことごとく退けた判決内容には「驚いた」とした上で、玄海原発訴訟への影響には「独立して審理されている。参考にされるだろうが、それについて述べるのは控えたい」と言及を避けた。政府の原子力政策に対しても「下級審の判決を見て、再稼働などの是非を判断することにはならないだろう」との認識を示した。玄海原発の再稼働は「原子力規制委員会に国民の信頼に足る審査を行ってもらうことに尽きる。(再稼働などは)その後の判断になる」と従来の考えを強調した。玄海原発が立地する東松浦郡玄海町の岸本英雄町長は東京都内で原発立地自治体の首長らが参加する会議に出席していた。「司法の判断なのでコメントする立場にない」としつつ、「判決が玄海原発の再稼働にどのように影響するのか現時点では未知数。規制委には粛々と審査を進めてもらうしかない」と話した。玄海原発に隣接する唐津市の坂井俊之市長は「衝撃的な判決だ。判決内容の詳細はまだ把握しておらず、福井地裁が(原発の)どういう部分を否定したのか、しっかり分析したい」と述べた。九州電力に立地自治体並みの安全協定締結を求めている伊万里市の塚部芳和市長は「原発250キロ圏内の住民の不安を司法が認めた結果であり、国には重く受け止めてもらいたい」と国に注文。「周辺地域住民の原発に対する不安は非常に大きい。国は再稼働を進めるのであれば、住民が安心できるような防災対策への支援とともに、電力事業者との立地自治体並みの安全協定の締結にも配慮してもらいたい」とコメントした。

*3-2:http://qbiz.jp/article/38455/1/
(佐賀新聞 2014年5月25日) 「複合災害の避難計画遅れ」 脱原発首長会議が勉強会
 全国の市町村長などでつくる「脱原発をめざす首長会議」(95人)は24日、「いのちを守る避難計画はできるのか」と題する、原発事故に備えた防災計画の勉強会を京都市内で開いた。愛媛県や京都府などの、原発周辺自治体の4市長が避難計画の策定状況などを報告。地震などとの複合災害が想定されておらず、避難先の確保が難しいなど、十分な計画にはほど遠い現状を明らかにした。「計画は作ったが、機能するのかと言われれば難しく、矛盾を抱えている」。四国電力伊方原発(愛媛県伊方町)から南東に最短約13キロに位置する同県西予市。三好幹二市長は、勉強会で「地震が発生すれば道路が使えない恐れがあるが、複合災害はまだ想定できていない」と話した。同県宇和島市も30キロ圏内の緊急防護措置区域(UPZ)に含まれるが、石橋寛久市長は「避難計画は問題だらけ。再稼働には慎重にならざるを得ない」と指摘した。一方、関西電力高浜原発(福井県高浜町)から最短30.9キロという京都府京丹後市。中山泰市長は「30キロをわずかに超えるため独自に避難計画を策定中。30キロ圏を外れると、予算で国の支援も得られず、避難先の確保も進まない」とUPZの線引きに疑問を呈した。勉強会ではこのほか、避難計画に詳しい専門家からも課題の指摘があった。


PS(2014.5.27追加):*3-3のように、原子力規制委員会の優先審査で再稼働に最も近いとされる川内原発に関し、鹿児島県と薩摩川内市が開催した住民説明会で、参加者から、関西電力大飯原発運転差止を命じた福井地裁判決を引き合いに、「再稼働より人命が大事だ」との声が上がったとのことである。鹿児島県は農業、漁業が盛んで、最近は九州新幹線により「福岡⇔薩摩川内」間が1.5時間程度で結ばれ、薩摩川内市は、原発が無い方が地域振興できる場所になったため、再稼働は不要だ。

*3-3:http://qbiz.jp/article/38545/1/
(西日本新聞 2014年5月27日) 「再稼働より人命」住民から不満の声 川内原発避難説明会
 鹿児島県は26日夜、九州電力川内原発が立地する同県薩摩川内市で、原発事故時の避難計画などについて、市とともに住民説明会を開催した。川内原発は原子力規制委員会の優先審査で、再稼働に最も近い原発とされる。参加者からは、関西電力大飯原発3、4号機の運転差し止めを命じた福井地裁判決を引き合いに、「再稼働より人命が大事だ」との声も上がった。県は原発から半径30キロ以内(緊急防護措置区域=UPZ)で、現地の市町とともに順次、説明会を開いている。この日は原発から東へ約23キロの入来文化ホール(同市入来町)であり、対象地区の住民約2万1千人に対し約70人が参加した。市と県は避難指示が出た後の行動の手順などを説明。これに対し、参加者からは「避難計画は夜間を想定しておらず、机上の空論だ」「再稼働ありきの説明会だ」などの反論が出た。市は「計画を立てて住民の安全確保を図ろうとしている」などと理解を求めた。県はUPZ圏内の全9市町で、6月中をめどに説明会を終える予定。


PS(2014.5.27追加):*3-4のように、津軽海峡を挟んで大間原発の対岸30キロ圏内にある函館市は、事業者であるJパワーと国を相手取って、大間原発建設差止訴訟を東京地裁に起こした。函館市は、五稜郭などの歴史遺産がある場所で、農水産資源と観光資源がその地域の富であり、原発事故が起こればそのすべてを失う。そのため、自治体に原告適格があるかというような論点に終始せず、また、眼先の発電能力や根拠なき“安全性”に依拠することなく、原発の建設差止が認められるべきである。

*3-4:http://digital.asahi.com/articles/ASG4341HTG43UTIL021.html
(朝日新聞 2014年4月3日) 函館市、大間原発建設差し止め提訴 自治体、初の原告
 北海道函館市は3日、青森県大間町で建設中の大間原発について、事業者のJパワー(電源開発)と国を相手取り、建設差し止めを求める訴訟を東京地裁に起こした。原発差し止め訴訟で自治体が原告になるのは初めて。訴状を提出した工藤寿樹市長は「危険だけを押しつけられて、(建設の同意手続きの対象外のため)発言権がない理不尽さを訴えたい」と語った。函館市は津軽海峡を挟んで大間原発の対岸にあり、市域の一部は原発事故に備えた避難の準備などが必要な30キロ圏の防災対策の重点区域(UPZ)に入る。東京電力福島第一原発事故では深刻な被害が30キロ圏に及んだ。函館市は「大間原発で過酷事故が起きれば、27万人超の市民の迅速な避難は不可能。市が壊滅状態になる事態も予想される」と訴え、「市民の生活を守り、生活支援の役割を担う自治体を維持する権利がある」と主張する。その上で、立地市町村とその都道府県にある建設の同意手続きが、周辺自治体にはないことを問題視。同意手続きの対象に30キロ圏の自治体を含めるべきで、国が2008年4月に出した大間原発の原子炉設置許可は、福島原発事故前の基準で不備があり、許可も無効と指摘する。今回の提訴は、函館市議会が今年3月に全会一致で認めた。弁護団の河合弘之弁護士は「市長が議会の承認を得て起こした裁判で、その重さは裁判官にも伝わるだろう」と語った。弁護団は「3年で判決を得たい」とした。函館市は訴訟費用を年間約400万円と見込んでおり、それを賄うため全国に募金を呼びかけ、2日までに109件514万円が集まった。大間原発の建設は提訴後も続く見通しだ。Jパワーは「裁判を通じて計画の意義や安全対策の考えを主張していく。函館市に丁寧に情報提供や説明をしながら計画を推進していきたい」とのコメントを出した。大間町の金沢満春町長は「他の自治体が決めたことにコメントはできない。町は今まで通り『推進』ということで地域一丸になって頑張る」とコメントした。菅義偉官房長官は記者会見で「自治体などの理解を得るために事業者が丁寧に説明を行うことはもちろん、国としても安全性を説明していきたい」と述べた。
    ◇
〈大間原発〉津軽海峡に面する青森県・下北半島の北端で建設が進む。使用済み核燃料から取り出したプルトニウムとウランを混ぜた燃料(MOX燃料)を100%使う世界初の「フルMOX原発」として2008年5月に着工。建設工事は東日本大震災で中断したが、12年10月に再開した。工事の進捗(しんちょく)率は37・6%、完成予定は未定。完成すれば出力は約138万キロワット。

PS(2014年5月29日追加):*3-5のように、公害を出しながらその処理費用を支払わない民間企業に対して、国がシェルター整備のために税金から補助金311億円を交付し、「原発のコストは安い」などと言うのは筋が通らない。何故なら、原発のコストとは、これらすべての費用を含むものだからである。また、事故時は、住民がしばらく避難していれば、戻ってきて住居・田畑・里山・海が元どおり使えると考えているのも、原発公害を過小評価しすぎている。

*3-5:http://qbiz.jp/article/38738/1/
(西日本新聞 2014年5月29日) 原発シェルター、「川内」5キロ圏内5カ所整備へ
 原発事故が起きても、30キロ圏外にすぐには逃げられない高齢者や障害者らが被ばくを避ける場所として、全国の原発周辺でシェルター(一時的屋内退避施設)が整備されている。国はこれまでに整備の補助金311億円を交付。九州電力川内、玄海両原発を抱える九州では本年度中に計24施設が整備される。シェルターを訪ね、課題を探った。壁や天井はコンクリートと鉛の板で覆われ、窓もすべてふさがれている。中に入ると、圧迫感を感じる。九州電力川内原発(鹿児島県薩摩川内市)から南に2・9キロの寄田小学校跡にシェルターの一つがある。体育館だった建物の舞台部分を取り払い、床面積は約90平方メートル。52人を収容できる。放射性物質除去フィルター付きの換気装置に加え、放射性物質の侵入を遮断するため屋内の空気の圧力を屋外より高くする機能も備える。非常用発電機は、給油しなくても4日間連続して使用できるという。東京電力福島第1原発事故では、周辺の病院の入院患者が避難の途上で48人亡くなったとの報告もある。薩摩川内市防災安全課の角島栄課長は「高齢者や障害者はすぐに逃げられない。しばらくはとどまらざるを得ない」と話す。事故時は即時避難が求められている5キロ圏の4地区(寄田、滄浪(そうろう)、水引、峰山)には在宅の要援護者91人が暮らす。4地区には要援護者と付添人が一時退避できるよう、旧寄田小跡を含めシェルターが本年度中に計5カ所整備される予定だ。1施設の建設費は2億円。国が全額を補助する。川内原発から1・4キロにある、認知症の84〜99歳の男女18人が暮らすグループホーム「お多麻(たま)さんの家」は、寄田小跡のシェルターへの一時退避を決めた。最終的には30キロ圏外の鹿児島市の施設に車で避難する計画にしているが、管理者の瀬戸口眞知子さん(62)は「急激な環境変化や長距離移動は高齢者には大変な負担になる」と判断した。30キロ圏に拡大すれば、要援護者の数は急増する。5〜30キロ圏にもシェルターを求める声は多い。原発から約12キロに住む同市東郷町斧淵の片平和代さん(62)は自力では動けない要介護5の母(90)と暮らす。「行政は『バスが集合先の小学校に来る』と言うが、着の身着のままの避難は母には無理」と訴える。だが、地元行政で5〜30キロ圏内に整備する議論は今のところない。鹿児島県は「シェルター整備の条件が5キロ圏内、および30キロ圏内の離島、半島などとなっている」と説明している。

PS(2014年5月29日追加):また、*3-6のように、避難経路も放射性物質の拡散の仕方を考えておらず、「過酷事故は起こらない」という安全神話の上に成り立っている。

*3-6:http://373news.com/modules/pickup/index.php?storyid=57160
(南日本新聞 2014 5/28) 原発事故時避難計画 放射性物質拡散考えず
 九州電力川内原発1、2号機(薩摩川内市久見崎町)の重大事故を想定し、原発から30キロ圏の9市町が策定した住民避難計画は、放射性物質の広がり方や方向を左右する風を考慮しておらず、避難先は1カ所しか指定していない。県や当該市町は「事故の状況を踏まえて対応する」としているが、住民の不安を払拭(ふっしょく)するには程遠い。住民の不安は避難先や経路が風下に当たる恐れがあるのに、複数の避難先が確保されていないからだ。避難は自治会・地域単位が基本。避難先の自治体は複数であっても、自治会に割り当てられた避難所は1カ所なのが現状だ。

*4:http://www.news-pj.net/diary/1001
(NPJ 2014年5月21日) 【速報:大飯原発運転差止請求事件判決要旨全文】を掲載していますが、長いので、下の「続き▽」をクリックすれば出てくるようしています。

大飯原発3、4号機運転差止請求事件判決要旨
主文
1  被告は、別紙原告目録1記載の各原告(大飯原発から250キロメートル圏内に居住する166名)に対する関係で、福井県大飯郡おおい町大島1字吉見1-1において、大飯発電所3号機及び4号機の原子炉を運転してはならない。
2  別紙原告目録2記載の各原告(大飯原発から250キロメートル圏外に居住する23名)の請求をいずれも棄却する。
3  訴訟費用は、第2項の各原告について生じたものを同原告らの負担とし、その余を被告の負担とする。
理由
1 はじめに
 ひとたび深刻な事故が起これば多くの人の生命、身体やその生活基盤に重大な被害を及ぼす事業に関わる組織には、その被害の大きさ、程度に応じた安全性と高度の信頼性が求められて然るべきである。このことは、当然の社会的要請であるとともに、生存を基礎とする人格権が公法、私法を間わず、すべての法分野において、最高の価値を持つとされている以上、本件訴訟においてもよって立つべき解釈上の指針である。
 個人の生命、身体、精神及び生活に関する利益は、各人の人格に本質的なものであって、その総体が人格権であるということができる。人格権は憲法上の権利であり(13条、25条)、また人の生命を基礎とするものであるがゆえに、我が国の法制下においてはこれを超える価値を他に見出すことはできない。したがって、この人格権とりわけ生命を守り生活を維持するという人格権の根幹部分に対する具体的侵害のおそれがあるときは、人格権そのものに基づいて侵害行為の差止めを請求できることになる。人格権は各個人に由来するものであるが、その侵害形態が多数人の人格権を同時に侵害する性質を有するとき、その差止めの要請が強く働くのは理の当然である。
2 福島原発事故について
 福島原発事故においては、15万人もの住民が避難生活を余儀なくされ、この避難の過程で少なくとも入院患者等60名がその命を失っている。家族の離散という状況や劣悪な避難生活の中でこの人数を遥かに超える人が命を縮めたことは想像に難くない。さらに、原子力委員会委員長が福島第一原発から250キロメートル圏内に居住する住民に避難を勧告する可能性を検討したのであって、チェルノブイリ事故の場合の住民の避難区域も同様の規模に及んでいる。
 年間何ミリシーベルト以上の放射線がどの程度の健康被害を及ぼすかについてはさまざまな見解があり、どの見解に立つかによってあるべき避難区域の広さも変わってくることになるが、既に20年以上にわたりこの問題に直面し続けてきたウクライナ共和国、ベラルーシ共和国は、今なお広範囲にわたって避難区域を定めている。両共和国の政府とも住民の早期の帰還を図ろうと考え、住民においても帰還の強い願いを持つことにおいて我が国となんら変わりはないはずである。それにもかかわらず、両共和国が上記の対応をとらざるを得ないという事実は、放射性物質のもたらす健康被害について楽観的な見方をした上で避難区域は最小限のもので足りるとする見解の正当性に重大な疑問を投げかけるものである。上記250キロメートルという数字は緊急時に想定された数字にしかすぎないが、だからといってこの数字が直ちに過大であると判断す’ることはできないというべきである。
3 本件原発に求められるべき安全性
(1)  原子力発電所に求められるべき安全性
 1、2に摘示したところによれば、原子力発電所に求められるべき安全性、信頼性は極めて高度なものでなければならず、万一の場合にも放射性物質の危険から国民を守るべく万全の措置がとられなければならない。
 原子力発電所は、電気の生産という社会的には重要な機能を営むものではあるが、原子力の利用は平和目的に限られているから(原子力基本法2条)、原子力発電所の稼動は法的には電気を生み出すための一手段たる経済活動の自由(憲法22条1項)に属するものであって、憲法上は人格権の中核部分よりも劣位に置かれるべきものである。しかるところ、大きな自然災害や戦争以外で、この根源的な権利が極めて広汎に奪われるという事態を招く可能性があるのは原子力発電所の事故のほかは想定し難い。かような危険を抽象的にでもはらむ経済活動は、その存在自体が憲法上容認できないというのが極論にすぎるとしても、少なくともかような事態を招く具体的危険性が万が一でもあれば、その差止めが認められるのは当然である。このことは、土地所有権に基づく妨害排除請求権や妨害予防請求権においてすら、侵害の事実や侵害の具体的危険性が認められれば、侵害者の過失の有無や請求が認容されることによって受ける侵害者の不利益の大きさという侵害者側の事情を問うことなく請求が認められていることと対比しても明らかである。
 新しい技術が潜在的に有する危険性を許さないとすれば社会の発展はなくなるから、新しい技術の有する危険性の性質やもたらす被害の大きさが明確でない場合には、その技術の実施の差止めの可否を裁判所において判断することは困難を極める。しかし、技術の危険性の性質やそのもたらす被害の大きさが判明している場合には、技術の実施に当たっては危険の性質と被害の大きさに応じた安全性が求められることになるから、この安全性が保持されているかの判断をすればよいだけであり、危険性を一定程度容認しないと社会の発展が妨げられるのではないかといった葛藤が生じることはない。原子力発電技術の危険性の本質及びそのもたらす被害の大きさは、福島原発事故を通じて十分に明らかになったといえる。本件訴訟においては、本件原発において、かような事態を招く具体的危険性が万が一でもあるのかが判断の対象とされるべきであり、福島原発事故の後において、この判断を避けることは裁判所に課された最も重要な責務を放棄するに等しいものと考えられる。
(2)  原子炉規制法に基づく審査との関係
 (1)の理は、上記のように人格権の我が国の法制における地位や条理等によって導かれるものであって、原子炉規制法をはじめとする行政法規の在り方、内容によって左右されるものではない。したがって、改正原子炉規制法に基づく新規制基準が原子力発電所の安全性に関わる問題のうちいくつかを電力会社の自主的判断に委ねていたとしても、その事項についても裁判所の判断が及ぼされるべきであるし、新規制基準の対象となっている事項に関しても新規制基準への適合性や原子力規制委員会による新規制基準への適合性の審査の適否という観点からではなく、(1)の理に基づく裁判所の判断が及ぼされるべきこととなる。

4 原子力発電所の特性
 原子力発電技術は次のような特性を持つ。すなわち、原子力発電においてはそこで発出されるエネルギーは極めて膨大であるため、運転停止後においても電気と水で原子炉の冷却を継続しなければならず、その間に何時間か電源が失われるだけで事故につながり、いったん発生した事故は時の経過に従って拡大して行くという性質を持つ。このことは、他の技術の多くが運転の停止という単純な操作によって、その被害の拡大の要因の多くが除去されるのとは異なる原子力発電に内在する本質的な危険である。
 したがって、施設の損傷に結びつき得る地震が起きた場合、速やかに運転を停止し、運転停止後も電気を利用して水によって核燃料を冷却し続け、万が一に異常が発生したときも放射性物質が発電所敷地外部に漏れ出すことのないようにしなければならず、この止める、冷やす、閉じ込めるという要請はこの3つがそろって初めて原子力発電所の安全性が保たれることとなる。仮に、止めることに失敗するとわずかな地震による損傷や故障でも破滅的な事故を招く可能性がある。福島原発事故では、止めることには成功したが、冷やすことができなかったために放射性物質が外部に放出されることになった。また、我が国においては核燃料は、五重の壁に閉じ込められているという構造によって初めてその安全性が担保されているとされ、その中でも重要な壁が堅固な構造を持つ原子炉格納容器であるとされている。しかるに、本件原発には地震の際の冷やすという機能と閉じ込めるという構造において次のような欠陥がある。
5 冷却機能の維持にっいて
(1) 1260ガルを超える地震について
 原子力発電所は地震による緊急停止後の冷却機能について外部からの交流電流によって水を循環させるという基本的なシステムをとっている。1260ガルを超える地震によってこのシステムは崩壊し、非常用設備ないし予備的手段による補完もほぼ不可能となり、メルトダウンに結びつく。この規模の地震が起きた場合には打つべき有効な手段がほとんどないことは被告において自認しているところである。
 しかるに、我が国の地震学会においてこのような規模の地震の発生を一度も予知できていないことは公知の事実である。地震は地下深くで起こる現象であるから、その発生の機序の分析は仮説や推測に依拠せざるを得ないのであって、仮説の立論や検証も実験という手法がとれない以上過去のデータに頼らざるを得ない。確かに地震は太古の昔から存在し、繰り返し発生している現象ではあるがその発生頻度は必ずしも高いものではない上に、正確な記録は近時のものに限られることからすると、頼るべき過去のデータは極めて限られたものにならざるをえない。したがって、大飯原発には1260ガルを超える地震は来ないとの確実な科学的根拠に基づく想定は本来的に不可能である。むしろ、①我が国において記録された既往最大の震度は岩手宮城内陸地震における4022ガルであり、1260ガルという数値はこれをはるかに下回るものであること、②岩手宮城内陸地震は大飯でも発生する可能性があるとされる内陸地殻内地震であること、③この地震が起きた東北地方と大飯原発の位置する北陸地方ないし隣接する近畿地方とでは地震の発生頻度において有意的な違いは認められず、若狭地方の既知の活断層に限っても陸海を問わず多数存在すること、④この既往最大という概念自体が、有史以来世界最大というものではなく近時の我が国において最大というものにすぎないことからすると、1260ガルを超える地震は大飯原発に到来する危険がある。
(2) 700ガルを超えるが1260ガルに至らない地震について
ア 被告の主張するイベントツリーについて
 被告は、700ガルを超える地震が到来した場合の事象を想定し、それに応じた対応策があると主張し、これらの事象と対策を記載したイベントツリーを策定し、これらに記載された対策を順次とっていけば、1260ガルを超える地震が来ない限り、炉心損傷には至らず、大事故に至ることはないと主張する。
 しかし、これらのイベントツリー記載の対策が真に有効な対策であるためには、第1に地震や津波のもたらす事故原因につながる事象を余すことなくとりあげること、第2にこれらの事象に対して技術的に有効な対策を講じること、第3にこれらの技術的に有効な対策を地震や津波の際に実施できるという3つがそろわなければならない。
イ イベントツリー記載の事象について
 深刻な事故においては発生した事象が新たな事象を招いたり、事象が重なって起きたりするものであるから、第1の事故原因につながる事象のすべてを取り上げること自体が極めて困難であるといえる。
ウ イベントツリー記載の対策の実効性について
 また、事象に対するイベントツリー記載の対策が技術的に有効な措置であるかどうかはさておくとしても、いったんことが起きれば、事態が深刻であればあるほど、それがもたらす混乱と焦燥の中で適切かつ迅速にこれらの措置をとることを原子力発電所の従業員に求めることはできない。特に、次の各事実に照らすとその困難性は一層明らかである。
 第1に地震はその性質上従業員が少なくなる夜間も昼間と同じ確率で起こる。突発的な危機的状況に直ちに対応できる人員がいかほどか、あるいは現場において指揮命令系統の中心となる所長が不在か否かは、実際上は、大きな意味を持つことは明らかである。
 第2に上記イベントツリーにおける対応策をとるためにはいかなる事象が起きているのかを把握できていることが前提になるが、この把握自体が極めて困難である。福島原発事故の原因について国会事故調査委員会は地震の解析にカを注ぎ、地震の到来時刻と津波の到来時刻の分析や従業員への聴取調査等を経て津波の到来前に外部電源の他にも地震によって事故と直結する損傷が生じていた疑いがある旨指摘しているものの、地震がいかなる箇所にどのような損傷をもたらしそれがいかなる事象をもたらしたかの確定には至っていない。一般的には事故が起きれば事故原因の解明、確定を行いその結果を踏まえて技術の安全性を高めていくという側面があるが、原子力発電技術においてはいったん大事故が起これば、その事故現場に立ち入ることができないため事故原因を確定できないままになってしまう可能性が極めて高く、福島原発事故においてもその原因を将来確定できるという保証はない。それと同様又はそれ以上に、原子力発電所における事故の進行中にいかなる箇所にどのような損傷が起きておりそれがいかなる事象をもたらしているのかを把握することは困難である。
 第3に、仮に、いかなる事象が起きているかを把握できたとしても、地震により外部電源が断たれると同時に多数箇所に損傷が生じるなど対処すべき事柄は極めて多いことが想定できるのに対し、全交流電源喪失から炉心損傷開始までの時間は5時間余であり、炉心損傷の開始からメルトダウンの開始に至るまでの時間も2時間もないなど残された時間は限られている。
 第4にとるべきとされる手段のうちいくつかはその性質上、緊急時にやむを得ずとる手段であって普段からの訓練や試運転にはなじまない。運転停止中の原子炉の冷却は外部電源が担い、非常事態に備えて水冷式非常用ディーゼル発電機のほか空冷式非常用発電装置、電源車が備えられているとされるが、たとえば空冷式非常用発電装置だけで実際に原子炉を冷却できるかどうかをテストするというようなことは危険すぎてできようはずがない。
 第5にとるべきとされる防御手段に係るシステム自体が地震によって破損されることも予想できる。大飯原発の何百メートルにも及ぶ非常用取水路が一部でも700ガルを超える地震によって破損されれば、非常用取水路にその機能を依存しているすべての水冷式の非常用ディーゼル発電機が稼動できなくなることが想定できるといえる。また、埋戻土部分において地震によって段差ができ、最終の冷却手段ともいうべき電源車を動かすことが不可能又は著しく困難となることも想定できる。上記に摘示したことを一例として地震によって複数の設備が同時にあるいは相前後して使えなくなったり故障したりすることは機械というものの性質上当然考えられることであって、防御のための設備が複数備えられていることは地震の際の安全性を大きく高めるものではないといえる。
 第6に実際に放射性物質が一部でも漏れればその場所には近寄ることさえできなくなる。
 第7に、大飯原発に通ずる道路は限られており施設外部からの支援も期待できない。
エ 基準地震動の信頼性について
 被告は、大飯原発の周辺の活断層の調査結果に基づき活断層の状況等を勘案した場合の地震学の理論上導かれるガル数の最大数値が700であり、そもそも、700ガルを超える地震が到来することはまず考えられないと主張する。しかし、この理論上の数値計算の正当性、正確性について論じるより、現に、全国で20箇所にも満たない原発のうち4つの原発に5回にわたり想定した地震動を超える地震が平成17年以後10年足らずの問に到来しているという事実を重視すべきは当然である。地震の想定に関しこのような誤りが重ねられてしまった理由については、今後学術的に解決すべきものであって、当裁判所が立ち入って判断する必要のない事柄である。これらの事例はいずれも地震という自然の前における人間の能力の限界を示すものというしかない。本件原発の地震想定が基本的には上記4つの原発におけるのと同様、過去における地震の記録と周辺の活断層の調査分析という手法に基づきなされたにもかかわらず、被告の本件原発の地震想定だけが信頼に値するという根拠は見い出せない。
オ 安全余裕について
 被告は本件5例の地震によって原発の安全上重要な施設に損傷が生じなかったことを前提に、原発の施設には安全余裕ないし安全裕度があり、たとえ基準地震動を超える地震が到来しても直ちに安全上重要な施設の損傷の危険性が生じることはないと主張している。
 弁論の全趣旨によると、一般的に設備の設計に当たって、様々な構造物の材質のばらつき、溶接や保守管理の良否等の不確定要素が絡むから、求められるべき基準をぎりぎり満たすのではなく同基準値の何倍かの余裕を持たせた設計がなされることが認められる。このように設計した場合でも、基準を超えれば設備の安全は確保できない。この基準を超える負荷がかかっても設備が損傷しないことも当然あるが、それは単に上記の不確定要素が比較的安定していたことを意味するにすぎないのであって、安全が確保されていたからではない。したがって、たとえ、過去において、原発施設が基準地震動を超える地震に耐えられたという事実が認められたとしても、同事実は、今後、基準地震動を超える地震が大飯原発に到来しても施設が損傷しないということをなんら根拠づけるものではない。
(3) 700ガルに至らない地震について
ア 施設損壊の危険
 本件原発においては基準地震動である700ガルを下回る地震によって外部電源が断たれ、かつ主給水ポンプが破損し主給水が断たれるおそれがあると認められる。
イ 施設損壊の影響
 外部電源は緊急停止後の冷却機能を保持するための第1の砦であり、外部電源が断たれれば非常用ディーゼル発電機に頼らざるを得なくなるのであり、その名が示すとおりこれが非常事態であることは明らかである。福島原発事故においても外部電源が健全であれば非常用ディーゼル発電機の津波による被害が事故に直結することはなかったと考えられる。主給水は冷却機能維持のための命綱であり、これが断たれた場合にはその名が示すとおり補助的な手段にすぎない補助給水設備に頼らざるを得ない。前記のとおり、原子炉の冷却機能は電気によって水を循環させることによって維持されるのであって、電気と水のいずれかが一定時間断たれれば大事故になるのは必至である。原子炉の緊急停止の際、この冷却機能の主たる役割を担うべき外部電源と主給水の双方がともに700ガルを下回る地震によっても同時に失われるおそれがある。そして、その場合には(2)で摘示したように実際にはとるのが困難であろう限られた手段が効を奏さない限り大事故となる。
ウ 補助給水設備の限界
 このことを、上記の補助給水設備についてみると次の点が指摘できる。緊急停止後において非常用ディーゼル発電機が正常に機能し、補助給水設備による蒸気発生器への給水が行われたとしても、①主蒸気逃がし弁による熱放出、②充てん系によるほう酸の添加、③余熱除去系による冷却のうち、いずれか一つに失敗しただけで、補助給水設備による蒸気発生器への給水ができないのと同様の事態に進展することが認められるのであって、補助給水設備の実効性は補助的手毅にすぎないことに伴う不安定なものといわざるを得ない。また、上記事態の回避措置として、イベントツリーも用意されてはいるが、各手順のいずれか一つに失敗しただけでも、加速度的に深刻な事態に進展し、未経験の手作業による手順が増えていき、不確実性も増していく。事態の把握の困難性や時間的な制約のなかでその実現に困難が伴うことは(2)において摘示したとおりである。
エ 被告の主張について
 被告は、主給水ポンプは安全上重要な設備ではないから基準地震動に対する耐震安全性の確認は行われていないと主張するが、主給水ポンプの役割は主給水の供給にあり、主給水によって冷却機能を維持するのが原子炉の本来の姿であって、そのことは被告も認めているところである。安全確保の上で不可欠な役割を第1次的に担う設備はこれを安全上重要な設備であるとして、それにふさわしい耐震性を求めるのが健全な社会通念であると考えられる。このような設備を安全上重要な設備ではないとするのは理解に苦しむ主張であるといわざるを得ない。
(4) 小括
 日本列島は太平洋プレート、オホーツクプレート、ユーラシアプレート及びフィリピンプレートの4つのプレートの境目に位置しており、全世界の地震の1割が狭い我が国の国土で発生する。この地震大国日本において、基準地震動を超える地震が大飯原発に到来しないというのは根拠のない楽観的見通しにしかすぎない上、基準地震動に満たない地震によっても冷却機能喪失による重大な事故が生じ得るというのであれば、そこでの危険は、万が一の危険という領域をはるかに超える現実的で切迫した危険と評価できる。このような施設のあり方は原子力発電所が有する前記の本質的な危険性についてあまりにも楽観的といわざるを得ない。
6 閉じ込めるという構造について(使用済み核燃料の危険性)
(1) 使用済み核燃料の現在の保管状況
 原子力発電所は、いったん内部で事故があったとしても放射性物質が原子力発電所敷地外部に出ることのないようにする必要があることから、その構造は堅固なものでなければならない。
 そのため、本件原発においても核燃料部分は堅固な構造をもつ原子炉格納容器の中に存する。他方、使用済み核燃料は本件原発においては原子炉格納容器の外の建屋内の使用済み核燃料プールと呼ばれる水槽内に置かれており、その本数は1000本を超えるが、使用済み核燃料プールから放射性物質が漏れたときこれが原子力発電所敷地外部に放出されることを防御する原子炉格納容器のような堅固な設備は存在しない。
(2) 使用済み核燃料の危険性
 福島原発事故においては、4号機の使用済み核燃料プールに納められた使用済み核燃料が危機的状況に陥り、この危険性ゆえに前記の避難計画が検討された。原子力委員会委員長が想定した被害想定のうち、最も重大な被害を及ぼすと想定されたのは使用済み核燃料プールからの放射能汚染であり、他の号機の使用済み核燃料プールからの汚染も考えると、強制移転を求めるべき地域が170キロメートル以遠にも生じる可能性や、住民が移転を希望する場合にこれを認めるべき地域が東京都のほぼ全域や横浜市の一部を含む250キロメートル以遠にも発生する可能性があり、これらの範囲は自然に任せておくならば、数十年は続くとされた。
(3) 被告の主張について
 被告は、使用済み核燃料は通常40度以下に保たれた水により冠水状態で貯蔵されているので冠水状態を保てばよいだけであるから堅固な施設で囲い込む必要はないとするが、以下のとおり失当である。
ア 冷却水喪失事故について
 使用済み核燃料においても破損により冷却水が失われれば被告のいう冠水状態が保てなくなるのであり、その場合の危険性は原子炉格納容器の一次冷却水の配管破断の場合と大きな違いはない。福島原発事故において原子炉格納容器のような堅固な施設に囲まれていなかったにもかかわらず4号機の使用済み核燃料プールが建屋内の水素爆発に耐えて破断等による冷却水喪失に至らなかったこと、あるいは瓦礫がなだれ込むなどによって使用済み核燃料が大きな損傷を被ることがなかったことは誠に幸運と言うしかない。使用済み核燃料も原子炉格納容器の中の炉心部分と同様に外部からの不測の事態に対して堅固な施設によって防御を固められてこそ初めて万全の措置をとられているということができる。
イ 電源喪失事故について
 本件使用済み核燃料プールにおいては全交流電源喪失から3日を経ずして冠水状態が維持できなくなる。我が国の存続に関わるほどの被害を及ぼすにもかかわらず、全交流電源喪失から3日を経ずして危機的状態に陥いる。そのようなものが、堅固な設備によって閉じ込められていないままいわばむき出しに近い状態になっているのである。
(4) 小括
 使用済み核燃料は本件原発の稼動によって日々生み出されていくものであるところ、使用済み核燃料を閉じ込めておくための堅固な設備を設けるためには膨大な費用を要するということに加え、国民の安全が何よりも優先されるべきであるとの見識に立つのではなく、深刻な事故はめったに起きないだろうという見通しのもとにかような対応が成り立っているといわざるを得ない。
7 本件原発の現在の安全性
 以上にみたように、国民の生存を基礎とする人格権を放射性物質の危険から守るという観点からみると、本件原発に係る安全技術及び設備は、万全ではないのではないかという疑いが残るというにとどまらず、むしろ、確たる根拠のない楽観的な見通しのもとに初めて成り立ち得る脆弱なものであると認めざるを得ない。
8 原告らのその余の主張について
 原告らは、地震が起きた場合において止めるという機能においても本件原発には欠陥があると主張する等さまざまな要因による危険性を主張している。しかし、これらの危険性の主張は選択的な主張と解されるので、その判断の必要はないし、環境権に基づく請求も選択的なものであるから同請求の可否についても判断する必要はない。
 原告らは、上記各諸点に加え、高レベル核廃棄物の処分先が決まっておらず、同廃棄物の危険性が極めて高い上、その危険性が消えるまでに数万年もの年月を要することからすると、この処分の問題が将来の世代に重いつけを負わせることを差止めの理由としている。幾世代にもわたる後の人々に対する我々世代の責任という道義的にはこれ以上ない重い問題について、現在の国民の法的権利に基づく差止訴訟を担当する裁判所に、この問題を判断する資格が与えられているかについては疑問があるが、7に説示したところによるとこの判断の必要もないこととなる。
9 被告のその余の主張について
 他方、被告は本件原発の稼動が電力供給の安定性、コストの低減につながると主張するが、当裁判所は、極めて多数の人の生存そのものに関わる権利と電気代の高い低いの問題等とを並べて論じるような議論に加わったり、その議論の当否を判断すること自体、法的には許されないことであると考えている。このコストの問題に関連して国富の流出や喪失の議論があるが、たとえ本件原発の運転停止によって多額の貿易赤字が出るとしても、これを国富の流出や喪失というべきではなく、豊かな国土とそこに国民が根を下ろして生活していることが国富であり、これを取り戻すことができなくなることが国富の喪失であると当裁判所は考えている。
 また、被告は、原子力発電所の稼動がCO2排出削減に資するもので環境面で優れている旨主張するが、原子力発電所でひとたび深刻事故が起こった場合の環境汚染はすさまじいものであって、福島原発事故は我が国始まって以来最大の公害、環境汚染であることに照らすと、環境問題を原子力発電所の運転継続の根拠とすることは甚だしい筋違いである。
10 結論
 以上の次第であり、原告らのうち、大飯原発から250キロメートル圏内に居住する者(別紙原告目録1記載の各原告)は、本件原発の運転によって直接的にその人格権が侵害される具体的な危険があると認められるから、これらの原告らの請求を認容すべきである。
                   福井地方裁判所民事第2部
                    裁判長裁判官 樋口英明
                        裁判官 石田明彦
                        裁判官 三宅由子
| 原発::2014.5~8 | 12:03 PM | comments (x) | trackback (x) |

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