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2014.6.6 林業を利益の出る多面的な産業にするためには、どうするか?(2014.6.7最終更新)
     

(1)森林の役割と保全
 森林は、木材の生産、生物多様性・地球環境の保全、土壌の保全、水源、海への養分補給など、多くの役割を果たしているため、これまで木材の生産だけでは採算があわずに放置されてきた民有林にも、*1のように、農林中金が森林再生へ基金を創設して、荒廃した民有林の再生や森林の多面的機能の維持を後押しすることになった。これに先立ち、森林のある地方では、地方自治体が森林環境税を集めて、民有林を含む荒廃した森林の手入れをしているところが多い。

(2)国土の7割もある森林は、林業で有意義に使うべきである
 わが国の国土の7割もある森林は、資源として有意義に使いたいところで、*2のように、中山間地で農業や林業などの多様なルートから収入を得ている人の報告もある。そして、多くの若者が地域おこし協力隊をきっかけに農村に移住しており、都会から農村に移住した人も、「縁をつなげて自ら動いていけば、新しい道が開ける」そうだ。これは、地域の産業を興し、経済や雇用に資するため、地方自治体も、後押ししてもらいたい。

(3)林業を、日本らしく強い産業にするには・・
 林業を、日本らしく強い産業にするには、*3-1、*3-2のように、林業も6次産業化して輸出するのがよいだろう。住友林業は、2016年度をめどに、米国とオーストラリアで年6000棟の木造住宅を販売するそうだが、日本産の木材を高度な技術でカットし、建設現場では材木を組み立てるだけで目的の家ができるようにして輸出すれば、日本の林業は、高付加価値になると考える。

 家のデザインは、輸入国の人が好むものにすべきで、日本文化の押し付けではいけない。しかし、環境技術や自家発電技術など、日本が得意とする分野の製品を組み込めば、人気が出ることは間違いない。また、家具も、世界で人気が出るような現代的な木(竹)製家具を作って輸出することを考えたい。それなら、現代の若者も、林業に大きな魅力を感じるのではないだろうか。

*1:http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=27502
(日本農業新聞 2014年5月3日) 森林再生へ基金創設 農林中金
 農林中央金庫は2日、公益信託農林中金森林再生基金(農中森力=もりぢから=基金)を創設したと発表した。荒廃した民有林の再生や森林の多面的機能の維持を後押しする。地域の中核を担う林業事業体が取り組む先進事例に助成する。同基金は間伐などの整備を地域で一括して行いコストを削減する「施業集約化」や、間伐した木材を森林の外に運び出して木質バイオマス(生物由来資源)や木材加工品などの材料に利用する「搬出間伐」などを加速する取り組みを支援する。6月から募集して助成先を決めた後、2015年4月から助成事業を始める予定。対象は非営利法人の林業事業体で、森林組合や特定非営利活動法人(NPO法人)に加えJAや漁協なども含む。期間は5年で、総額は10億円。1件当たりの助成限度額は3000万円としている。農林中金が全森連や農中信託銀行と連携して運営する。農林中金はこれまで、公益信託農林中金80周年森林再生基金(FRONT80。期間10年、総額10億円)で全国の林業事業体を支援してきた。この基金は14年度の助成事業で終了する。実績は52件、助成決定額は9億4200万円となった。この後続として農中森力基金を創設した。引き続き国内の森林再生や国土保全をサポートする。

*2:http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=27497 (日本農業新聞 2014年5月3日) [根を張る若者たち 地域おこし協力隊のその後 3] 林業再生にアイデア 島根県吉賀町
 中国山地に囲まれた島根県吉賀町。山を見詰めながら「町の人にもう一度、山に関心を持ってもらいたい。その仕組みを根付かせたい」と夢を描くのは小林健吾さん(36)。シイタケや山菜などが豊富に採れる山は、かつて町民の暮らしの一部だったが、現在は間伐が行き届かず、荒れていた。
●山村の収入源 多様に
 そこで小林さんは、地域おこし協力隊を“卒業”した2011年から町の助成金を得ながら「木の駅プロジェクト」に取り組む。プロジェクトは、山から間伐した木材などを「木の駅」に出荷すれば、町内の商店などで活用できる地域通貨がもらえ、山の手入れをすればするほど地域経済が潤う仕組み。通貨は市場価格より高めに設定するのがみそだ。岐阜県で発祥し、現在、山村を抱える全国の自治体で導入が進む。小林さんは、この仕掛けを町に根付かせようと奔走する。現在、小林さんは「木の駅プロジェクト」の他、米作り、林業の技術伝承、記事の執筆や養蜂など多様なルートから収入を得ている。小中学校での講師も引き受け、将来的には農林産物の加工販売も手掛ける考えだ。「一つのことで大きくもうけなくても、農林業を中心にさまざまな仕事を仕掛け、自分のできることをたくさん増やしていく。そんな生活が中山間地域には合っている」と小林さん。農業や林業の専業は厳しいが、地域にある素材を生かして仕事の枠を少しずつ広げながら、年間通して暮らしていける今のスタイルに行き着いた。そんな姿は、町の若者にも刺激を与える。同町産業課の田渕晋平さん(30)は「いろいろな情報にアンテナを張る姿はとても勉強になる」と林業振興に励む日々だ。きっかけは、首都圏でサラリーマンをしていた時、人づてに同町が地域おこし協力隊を募集していることを知ったこと。今後の自分の人生を模索した結果、思い切って入隊を決断した。定住に踏み切れたのは、地域おこし協力隊時代に、山奥の集落で有機農業を営む人たちとの出会いが大きい。条件不利地を嘆くわけではなく、農業に志を抱き、生活している人たちばかりだった。「この縁を大切にし、この町で生きていきたい」。町の人や農村に移住した先駆者を見ながら、定住可能な方法を編み出した。都会から農村に移住した人たちとの交流にも力を注ぐ。「多くの人たちは、農村への定住は収入面などでハードルが高いと言う。でも、縁をつなげて自ら動いていけば、新しい道が開けるんじゃないかな」。小林さんはそう感じている。
メモ:若者が中心 総務省によると、2013年6月までに任期を終了した隊員366人の8割以上が20、30代。多くの若者が地域おこし協力隊をきっかけに農村に移住している。移住者の65%を男性が占める。

*3-1:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20140605&ng=DGKDZO72286390U4A600C1TJ1000
(日経新聞 2014.6.5) 住友林業、米豪で年6000棟、木造住宅 海外販売、16年度1.7倍
 住友林業は2016年度をめどに、米国とオーストラリアで年6000棟の木造住宅を販売する。米子会社などを通じた現在の海外販売は年3600棟と、日本の住宅メーカーでは海外戸建て販売の最大手だが、さらに7割近く増やす。独自技術を取り入れた住宅を加える。海外での分譲用地取得費も現状比で約7割増の年300億円程度に引き上げる。住友林業は米テキサス州の中堅住宅販売会社ギーエン・ホームズを5月に買収するなど、昨年から今年にかけて米豪の住宅販売会社を傘下に収めた。買収先の販路を生かして事業を拡大する。米国では販売計画を今年度の1700棟から3000棟に引き上げる。買収企業を含む米グループ3社で、土地価格の変動が小さい南部のテキサス州を中心に分譲用地を取得し、需要を開拓する。西部のワシントン州が地盤で高価格帯を強みとする子会社ヘンリーUSAが今夏テキサス州に進出。中価格帯のギーエンなどとすみ分ける。テキサス州は比較的平地が多く、土地開発費が少なくてすむという。人口も増えており、住宅需要は引き続き高いとみている。豪州ではビクトリア州の子会社が1900棟を3000棟にする。分譲住宅だけだったニューサウスウェールズ州でも注文住宅を受注する。住友林業の国内販売は約9000棟。効率の良い動線など日本の住宅事業で培ったノウハウを積極導入する。日本の購入者のニーズを工事図面に描く作業を中国子会社で実施しており、米豪でも活用する見込み。世界で木造住宅の市場が大きい国は日米豪の3カ国。ただ、国内は今後、少子高齢化で戸建ての購入が落ち込むと見込まれるため、海外に経営資源を振り向ける。米商務省がまとめた4月の米住宅着工件数(季節調整済み、年率換算)は前月比13%増の107万2000戸で、市場予想(97万5000戸)を上回り好調に推移している。同社はカナダから木材を調達。米国だけで5000棟規模の販売を目指し地場の住宅メーカー買収によるもう一段の規模拡大も視野に入れる。

*3-2:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20140504&ng=DGKDZO70775520U4A500C1PE8000 (日経新聞社説 2014.5.4) 林業再生へ国産材を生かす技術開発を
 日本の国土の3分の2を占める森林には、山崩れを防いで雨水をため、温暖化ガスを吸収するなど様々な機能がある。森林浴をすれば気分がさわやかになるだろう。今日は「みどりの日」。私たちにとって森が大切な資源であることを改めて確認したい。森林が本来の役割を果たすには、下刈りや間伐をして適切に管理することが欠かせない。しかし、林業の担い手は5万人に満たず、高齢化も著しい。適切に手を入れるどころか、放置されている森が増えているのが実情だ。一方では、戦後に植林した人工林が伐採に適した時期を迎えている。すでに合板では輸入材に代わって国産材を使う動きが広がっている。林業を立て直す好機だ。国産材の需要をさらに増やす必要がある。林野庁は木造住宅を建設した場合などに、最大で60万円相当の特産品などに交換できる「木材利用ポイント事業」を実施し、一定の効果をあげている。だが、政府が補助金を出して消費を喚起する政策には、おのずと限界がある。大切なのは戸建て住宅以外でも国産材を広く使えるよう技術開発を進めることだ。たとえば今、板の繊維の方向が交差するように重ね合わせてつくる新型の集成材パネル「CLT(クロス・ラミネイティド・ティンバー)」が、注目されている。これまでの木材パネルに比べて耐火性や強度に優れ、鉄筋コンクリートよりも軽いので施工もしやすい。オーストリアなど欧州ではすでにCLTを使った10階建て程度の中層ビルが建設されている。国内でも、岡山県真庭市が市営住宅にCLTを使う計画だ。本格的に普及させるには建築関連の法整備が要る。林野庁や関係団体は実証実験を積極的に進め、木造ビルの建設が可能かどうか早期に判断してほしい。木質バイオマスを使った発電所の建設も全国各地で進んでいる。CLTなどの新型材で木造建築物を増やし、木くずや樹皮なども発電所で有効活用できるようになれば、木材の利用価値が高まり林業の採算性は向上するだろう。1964年に木材輸入が完全に自由化されて、今年で半世紀になる。その後、輸入材に押されて国産材価格は低迷し、林業は長い冬の時代が続いてきた。その林業が再生すれば、地域に雇用が生まれ、山もよみがえる。

   
      白樺林         *4より           *5より

PS(2014.6.6追加):私は、燃やすのは最も付加価値が低く、木材のもったいない使い方だと思うが、廃材や他に用途のない間伐材なら、このような使い方も仕方がないだろう。

*4:http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=28114
(日本農業新聞 2014/6/6) [木質ペレット 最新事情 6] 燃料自給 森林資源フル活用
 高知県には“枯れない油田”が眠っているという。県内の約8割が森林に覆われる同県。高知工科大学地域活性化研究室の永野正展特任教授によると、県の年間の森林成長量は最大600万立方メートル。これを燃料と見立て、原油換算すると150万キロリットル分になるという。重油1リットル80円で計算すると1200億円。毎年県外から買っているエネルギー900億円分を十分賄える額になる。しかも、適切な管理をすれば森林は毎年成長し続ける。これが“枯れない油田”の正体だ。
●利用増には確かな情報
 同県では、この森林資源をフルに活用するための仕組みが動きだしている。その一つが、木質バイオマス(生物由来資源)による発電と、木質ペレットの生産をする(株)グリーン・エネルギー研究所の設立だ。ハウス加温での木質ペレットボイラー利用が増えていることを踏まえ、JAグループ高知や県内の農家も同社に出資している。国内のペレット工場の多くは、販路が少なく製造能力を生かしきれないところも多い。一方同県では農業分野での利用を広げようと、民間レベルで市場開拓をしてきた経過がある。「供給体制が完全ではなかったのに、ここまでの市場ができた」と永野特任教授。「供給体制も整ったので、これからは加速度的にペレット利用は進んでいくだろう」と市場開拓の効果を見通す。ペレットの安定的な供給を考えた場合、林業の発展を切り離して考えることはできない。ペレットの原料は木材加工の過程で出る端材やおが粉などだ。いわば副産物。しかし国内には大規模な製材所が少ない。丸太そのものからペレットを作っている例も多い。この場合、切断や乾燥などに余分なコストが掛かる。欧州などに比べ日本のペレット価格が高いのはここからきている。高知県では、ペレットを含む木質バイオマスの利用拡大に向け、まずはその原料を生み出す建築用材の増産を図っていく方針だ。鉄骨などに代わる材として、加工分野では、木材を組み合わせて高い耐震性や耐火性を持たせ、大規模建築にも活用できる「直交集成板(CLT)」の生産に力を入れるという。CLTは、加工途中で出る端材も多い。「増産できればペレットの原料も多くできることになる」(木材利用推進課)という。資源エネルギー庁によると、国内のエネルギー自給率は約4%。農業分野でも輸入燃料に頼っている限り、海外情勢などに影響を受けるのは避けられない。ただ、農家にとってエネルギーを替える決断は簡単ではない。長所と短所の見極めが必要になる。静岡県温室農業協同組合では、2008年の重油高騰以降、重油ボイラーから木質ペレットボイラーやヒートポンプに替えた組合員が1割を超えた。これまでは実態がよく分からなかった木質ペレット燃料の実力が、ここに来て身近に見えるようになってきた。「事例を見た上で安心して導入できるものを判断していきたい」と安田昌敏組合長。燃料の選択肢の実態が、徐々に明らかになってきた。

PS(2014.6.7追加):*5のように、佐賀市富士町に大規模な木材センターができ、6月9日から稼働するそうだ。新たに植林する木や木材の加工技術に最新のテクノロジーを導入すれば、林業もハイテク産業になる。

*5:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10103/71784
(佐賀新聞 2014年6月7日) 木材センター9日稼働 佐賀市富士町
 富士大和森林組合(杉山利則組合長)は、佐賀市富士町栗並に木材供給センターを開設した。原木の選別と皮はぎを行い、県のクリーク防災工事のくいや住宅用木材の販売を目指す。9日から稼働、初年度の取扱量は1万2千立方メートルを見込む。県内2カ所目の選別・加工の一体型施設になる。伐採適期を迎える森林が増え、これまでは切り捨てたままにしていた間伐が利用できるようになっていることから開設した。総事業費は2億5285万円で、国が半額を補助、残りは佐賀市と組合が負担した。敷地面積は約2万3千ヘクタールで、組合職員4人が業務に携わる。選木機は「3Dスキャナー」で原木を計測し、直径や曲がり具合、長さなどで選別する。7時間で3600本を処理できるという。皮はぎ機は直径6センチ~47センチ、長さ2~6メートルの原木の表皮をはぐことができる。処理能力は7時間で1680本。販売は県森林組合連合会が担い、仲卸業者との交渉を行う。杉山組合長は「公共事業、家造りに県産の間伐材が使われるように貢献していきたい。将来的にはバイオマス発電の需要も出るのではないか」と期待する。落成式は7日、同センターで開く。

| 農林漁業::2014.2~7 | 04:55 PM | comments (x) | trackback (x) |

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