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2014.10.5 地球温暖化と農業の可能性
    
        現在、日本で作られている                   *1-1シベリアの農業
    レモン       オリーブ       パパイア      バニラ 

(1)地球温暖化が寒冷地の農業に与える影響について
1)シベリアの農業について
 *1-1に書かれているように、北海道の農業専門家たちは、シベリアのブラゴベシチェンスクで、チギリンスキー農産業施設建設への投資について協議しており、農業分野における日本とロシア間の協力のメリットは、日本の食料需要増加と極東のインフラ整備に集約されそうだ。

 私は、オランダに行く途中、シベリアの上空を飛び、地球温暖化の影響で耕作可能地が増えていると感じた。極東は、①現在使用されていない広大な土地がある ②気候条件が良く、周辺地域の食料需要が高い ③地の利が良く、ヨーロッパやアジアへの輸送に便利 という好条件が揃っている。しかし、課題として労働力と最新の農業技術の不足があるため、ロシアは、かなり前から農業分野における積極的な協力を呼びかけ、中国と韓国は先行してロシアの呼びかけに応えているとのことだ。

 ロシアは、宗教色を出させずにイスラム教を信仰する民族を包含してきた国であるため、ヨーロッパで教育を受けても仕事がなく「イスラム国」に入りそうな若者や難民となって行き場を失った人などを、労働力としてここで雇用するのはいかがかと思う。そのための農業施設は、日本はじめここの農業に関心のある国が準備すればよい。

2)北海道の農業について
 *1-2は、地球温暖化に対して悲観的な書き方ではあるが、北海道は食料自給率が200%で、日本の食料生産基地であると書かれている。そのため、北海道が米や大豆の生産適地になることは、日本の食料自給率にとって大きな意味がある。そして、地球温暖化が進行している現在(2010年時点)、北海道の気温は平年より2.2℃高く、1946年の統計開始以来最も高い気温であり、2010年から2013年までの7 、8 月の気温は4 年連続で平年より0.8℃以上高くなっているとのことである。

 そして、21世紀以降は秋の平均気温が上昇し、近年は秋には霜害がないと言われ、水稲(米)や大豆は温暖化による増収が期待されている。また、近年の水稲の品種は品質が上がり、気温の上昇によって食味も全国トップクラス(ゆめぴりか、おぼろづき等)となっているわけである。

 一方、これまで北海道の涼しい気候に適合していた小麦やじゃがいもは、現行品種では温暖化による収量や品質の低下が懸念されるため、高温・多湿にも強い新しい品種や栽培技術の開発が必要であり、北海道への暖地からの新作物導入は、さつまいもの栽培事例があるそうだ。

(2)地球温暖化の日本南部農業への影響 ← トロピカルフルーツもできやすくなった
1)バニラの生産、九州・沖縄
 日本南部の農業は、*2-1に書かれているように、バニラを自給しようと九州・沖縄で挑戦が始まり、生産者らが連携して果実を生産し、バニラビーンズに加工、商品化しているそうだ。「国産で安心できる、輸入品と香りが違う、輸入品の代替ではない新たな日本の香りを創出したい」というのは、なるほどと思われアッパレだ。

2)ライチの生産、宮崎県
 *2-2のように、宮崎県がポストマンゴーとしてライチ(レイシ)の産地化を始めそうだ。宮崎県はマンゴーに続くブランド果樹を探して2005年から5年間海外を調査し、地球温暖化を逆手に取って熱帯果樹を選び、候補をライチとインドナツメに絞って、ジューシーさとみずみずしさが輸入物と全然違い高級菓子店のニーズの高いものを作り上げた。産地化し、県のブランドとして特産化するためには、JAで共選して厳選されたものを出荷することが不可欠であり、それによる付加価値は大きい。

3)パパイアの生産、茨城県
 *2-3のように、茨城県では樹高のそろったパパイア園が広がり、未熟果を生産して健康機能性野菜として新たな食文化を提案・普及することを目指しているそうだ。未熟果は、たんぱく質、脂肪、糖分を分解したり、免疫力を高めたりする酵素を含み、ビタミンやミネラルなどの栄養素も多いため、人間の健康維持に役立つ上、そもそも美味しそうであるため、是非、食文化として取り入れたい。

4)ドラゴンフルーツ・バナナの生産、岐阜県(温泉利用)
 *2-4のように、冬の早朝は氷点下15度にもなる岐阜県で、70度の源泉を利用してハウスを暖房し、ドラゴンフルーツやバナナなどの熱帯果樹を生産しているそうだ。まだ、商業的に大量生産するには至っていないようだが、地熱や温泉を利用すれば低コストで暖房できるため、この技術は、多くの地域の多様な作物に応用できると考える。

(3)将来のための理工系教育では、生物学・農学も重要
1)農業技術の進歩について
 *3-2のように、佐賀県野菜花き技術者協議会などが、世界トップクラスのオランダの施設園芸技術を学び始め、JAや県の技術指導者らがイチゴのハウス栽培の環境整備技術について研究して、佐賀県にも導入できるノウハウを身につけるそうだ。また、研修では、収量アップにつながる光合成を促す条件について理解を深め、ハウス内の日射量や二酸化炭素濃度、水分、湿度の調整などを学び、今後はイチゴのハウスで実施するそうで、よく頑張っている。

 佐賀県園芸課の担当者は「オランダの施設園芸は、日本とは環境が異なるが、トマトの反収は佐賀の6倍もあり、しっかり学べば収量を倍にすることも不可能ではないはず。佐賀版の技術を確立し、来年度は別の作物にも応用していければ」としている。

2)理工系には農学・生物学も入れるべき
 *3-1のように、産業界から技術者の人材不足を訴える声が高まっていることを受け、文部科学省が理工系人材の育成に本格的に乗り出すのは賛成だが、対象とする専攻は、石油精製のプラントを設計する化学工学の技術や高齢者の生活を支える機器を開発する福祉工学の知見が豊富な人材の育成を目指すとしている。

 しかし、このうち石油精製プラントの設計や原子力が将来においても最先端技術であると考えるのは、企画している人が知識がなく時代をリードできていない上、これから必ず需要が増加する農学、生物学が、ものづくりを支える基盤技術や成長産業に結びつく分野として想定されていないのは問題だ。

 また、現在、生物学は暗記科目ではなく物理・化学を基礎にした理論的な基礎学問であり、農学はその応用であるため、文科省は、世界最先端の学術研究を進める中で、生物学や生態学を重視すべきであると同時に、産業界で活躍する職業人の育成の中には、生物学・生態学・工学・経営学などを含んだ学際的な農学の研究を入れるべきである。

<地球温暖化の日本北部農業への影響>
*1-1:http://jp.rbth.com/articles/2012/07/31/38265.html
(ロシアNOW 2012年7月31日) ロシア極東に大規模な総合農産業施設が誕生
 北海道の農業専門家たちの代表団は、シベリアのブラゴベシチェンスクで、チギリンスキー農産業施設建設への投資について協議した。この施設は、アムール州の最近のプロジェクトのなかでは最大規模になる予定で、農産物の加工、保存、販売に使用される。ほぼ同時期、アムール州では、東京の農業大学や工業大学の学者たちと愛知県の農業ビジネスの代表者たちによって共同で、農工業施設に関する大規模プロジェクトのプレゼンテーションが行われた。また日本の他の県も、ロシア極東における共同農業プロジェクトの実現に関心を持っているという。
●投資して生産物は自国へ
 「デイリーニュース誌」編集長で、農業の専門家であるミシェンコ氏は、農業分野における露日間の協力の展望について、次のように語っている。「極東は日本、中国、韓国の投資家にとって魅力的でしょう。これらの国では、食料需要が常に増加しているため、豆やトウモロコシ、ジャガイモなどの輸入が増加傾向にあります。これらの国は、ロシアの農業に資金をつぎ込み、生産物を自国に送ることを考えていると思います。その際、ロシア側にとって重要なのは、極東のインフラ整備が不可欠であることを考慮することですね」。
●極東の農業の可能性
 ロシア極東の農業には、大きな可能性がある。①現在使用されていないか、有効利用されていない厖大な土地がある、②気候条件も良く、周辺地域の食料需要は常に高い、③地の利が良く、ロシア国内およびアジア太平洋地域へ輸送に便利。主な問題は、労働力と最新の農業技術の不足だ。ロシアはアジア太平洋地域のパートナー国に対して、かなり前から農業分野における積極的な協力を呼びかけている。中国と韓国はロシアの呼びかけに応え、極東では、両国の直接参加のもとですでに一連の農産業施設が活動している。それらの施設では、最新の生産性の高い技術が活用されているほか、ロシア人の雇用も保証している。
●先行する中、韓
 13億の人口を抱え、ロシア極東と境を接する中国は、早くも4年前には、アムール州などで計5千ヘクタールをレンタルするなど(レンタル料は1ヘクタール=10ドル=800円!)、主に極東、シベリアを中心にロシア全土で様々な規模の農場を経営している。さらに、昨年プーチン首相が訪中した際に、中国側は最大40億ドル(約3200億円)規模の投資ファンドを中露共同で創設することを提案、合意をみた。ロシア国営の開発対外経済銀行(VEB)のドミトリエフ会長は、「農業プロジェクト」を投資対象候補の一つに挙げている。韓国では、韓国造船最大手の現代重工業が昨年9月下旬、沿海地方ウラジオストクの150キロ北方に農業法人を設立したと発表した。広さは6700ヘクタールで、今年から豆、小麦などを年間7千トン生産する計画。同社はすでに2009年に、ウラジオストク近郊の農地1万ヘクタールを6億円で買収済みで、農地を5万ヘクタールまで拡大する予定。いかに国益とバランスさせるか。ロシア極東の自治体は、農業プロジェクトに日本が参加することを望んでいる。これは、最近数年間で中国側からの投資があまりにも増えたことに対する警戒心とも関連している。食料安全保障は、9月に極東のウラジオストクで開かれるアジア太平洋経済協力(APEC)サミットでも焦眉のテーマの一つとなる。サミットでは、世界の食料供給や流通に関する問題に関する討論も行われる。

*1-2:http://www.hkk.or.jp/kouhou/file/no604_shiten.pdf#search='
地球温暖化と北海道農業 (廣田知良:(独)農業・食品産業技術総合研究機構北海道農業研究センター生産環境領域上席研究員、農林水産省北海道農業試験場研究員、カナダ・サスカチュワン大学客員教授、(独)農業・食品産業技術総合研究機構北海道農業研究センター寒地温暖化研究チーム長を経て2011年から現職。北海道大学連携大学院客員准教授を兼任)
 北海道の食料自給率は200%であり、日本を代表する食料生産基地である。この北海道農業の特徴は、冬季積雪寒冷の限られた生育期間の下で、冷涼で梅雨がない夏季の気候を最大限に活用した大規模農業の栽培体系を確立したところにある。寒冷な気候が食料生産上の制限要因となる面は今でも完全には克服されておらず、しばしば低温による冷害を被ってきた。一方で2013年9 月に公表されたIPCC※1第5 次報告書で述べられているように、地球の気候は温暖化が確実に進行している状況にある。冷害の被害をしばしば受けた北海道では、温暖化すると農業にはプラスになるとの楽観的な声もある。しかし、北海道農業は2010年、高温が原因の農作物の深刻な不作を、明治の開拓以来、初めて経験した。したがって、北海道農業への単純な温暖化楽観論を必ずしも全面的には肯定できない。そこで、近年の北海道の気候変動の状況を踏まえて、温暖化が北海道農業に及ぼす影響と対応方向を解説する。
●北海道の近年の気候変動傾向
 まず、北海道農業に影響を与える気候がどのように変化しているか述べる。作物の生育に大きな影響を与える夏季( 6 - 8 月)気温は、1950~1970年代は年々変動が比較的小さく比較的冷涼な夏が多い状態であったが、1980年代以降から年々変動が大きく、冷夏年、暑夏年を多発する傾向になった。そして、2010年は平年より+2.2℃高く、1946年の統計開始以来の最も高い気温となった。この2010年以来、今年の2013年まで、7 、8 月の両月では気温は4 年連続で平年より0.8℃以上高く、1946年の統計開始以来、初めての両月の4年連続の高温となった。一方で、農業にとっては4 -5 月の春先の播は種しゅ時期の天候も重要であるが、夏の高温とは異なり、4 年連続で春先の播種時期の天候は低温や多雨で安定していない。つまり、夏の気温が高くても、春先の播種時期を早めて、北海道の短い作物の生育期間の延長を図ることができてない。特に4 月の気温が低い(高い)ときは、8 月の気温が高い(低い)傾向が1990年代の後半から現在まで続いている。北海道の気温の上昇傾向は、秋、冬に顕著である。21世紀以降、秋( 9 - 11月)の平均気温は顕著な上昇傾向で、近年は農業現場では秋に霜の害なしと言われだしている。かつて凍霜害による深刻な被害を受けていた北海道農業の歴史からすると、想像もできなかった変化である。冬は、道東地方で初冬における積雪深増加時期の前進により1990年以降に土壌凍結深の顕著な減少傾向を生じている。これらの秋・冬の顕著な気候変動は、小麦や牧草等の越冬作物の対凍性の獲得や冬の越冬環境に影響を与える。十勝地方では土壌凍結深の減少に伴い、野良イモ※2が大発生する被害が現れている。
●温暖化が北海道農業に与える影響
 水稲や大豆は、温暖化により増収が期待される。特に、水稲は、近年の品種は品質も著しく向上し、食味も「ゆめぴりか」や「おぼろづき」に代表されるように全国トップクラスとなり、気温の上昇により食味の向上がさらに期待できる。ただし、2010年のように夏季の気温が2 ℃以上に上昇した場合では、北海道品種の収量は必ずしも増収せず、不作ではないが、高温で初めて平年を下回る作況指数98となった。一方で、札幌市羊ヶ丘にある農研機構※3北海道農業研究センターでの栽培事例では、東北で広く栽培されている「ひとめぼれ」が北海道で初めて十分に実り、しかも北海道品種の「きらら397」よりも収量が高かった。大豆以外の畑作物は、夏季の日射量や降水量の変動にも大きく左右されるが、これまでの北海道の涼しい気候条件に適合していた小麦やじゃがいもでは、現行の品種では温暖化による悪影響(収量・品質低下)が懸念される。小麦については、夏季の6 、7 月に高温になると、実(種子)を充実させる登熟期間は短くなり、この結果、実が小さくなって収量を低下させる傾向にある。特に2010年と2011年ではこの傾向が顕著であり、2010年では小麦の収量は平年と比べて3 割以上減となった。北海道を代表する畑作物のじゃがいもは夏季気温が高いと生育期間が短縮して、収量も低下する傾向にある。さらに、気温以外の気象要因では、夏季に多雨傾向になると晴天日は少なくなり光合成に必要な日射量が減少する悪影響とともに、湿害による病害虫の被害を拡大させる。2010年は多雨による病害虫発生により畑作物は大きく被害を受けた。特に、砂糖の原料となるてんさいは、褐かっ班ぱん病※4など高温多湿による病害による被害と糖分含量の低下は、深刻な問題である。
●技術対応の方向性
 北海道の作物は、これまで寒い気候帯の短い栽培期間に適合するように技術開発を進めて問題を克服してきた。また、逆に冷涼な気候条件により病害虫の発生が少ないことが利点となり、農薬を減らした栽培による農産物のブランド化(クリーン農業)を高めた。しかし、近年の気候の変化は、農業技術開発の方向に対しても転換を迫っている。気象の年々の変動は大きく、冷害対応も必要であることを考えると、北海道ですでに栽培されている水稲や麦、イモ、豆等の主要畑作物や野菜は、道外での暖地向けの南方の品種を直ちに導入することは考えにくく、道内で近年の気象条件の下で選抜され、特に低温ばかりでなく高温や多湿に強い新しい品種や栽培技術の開発が望まれる。すでに水稲、じゃがいも、てんさい等では、高温や病害に強い品種が開発され始めており、今後も農業研究機関で様々な新品種開発が進むであろう。一方、北海道への暖地からの新作物の導入では、例えば、さつまいものように栽培事例が見られ始めた。当面は、春先の天候不安定へ対応して、初期生育を確保し、かつ秋の気温上昇による栽培可能期間の延長を活かせる技術対応が一案である。冬季の土壌凍結深減少に対して生じた野良イモ対策は、気象情報の活用による雪割り―土壌凍結深制御での野良イモ対策技術が開発され、すでに北海道の十勝農業は気候変動に対する適応策を独自の創意工夫をして作り上げている。このように、気候変動に対しては、気象情報を有効に活用する対策技術、さらには長期予測も含めた予測精度の向上とこれを踏まえた対策技術をセットとした技術開発の重要性も高まっている。
※1 IPCC(Intergovernmental Panel on Climate Change) 気候変動に関する政府間パネル。国際的な専門家でつくる、地球温暖化についての科学的な研究の収集・整理のための政府間機構。
※2 野良イモ:収穫後、畑に残ったじゃがいもが越冬して翌年に雑草化する現象。
※3 農研機構:(独)農業・食品産業技術総合研究機構の略称。
※4 褐班病:農作物の主に葉に褐色の斑点のできる病害。

<地球温暖化の日本南部農業への影響 - 広がるトロピカルフルーツ>
*2-1:http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=30119
(日本農業新聞 2014/10/3) バニラ 独自の香りを創出へ 沖縄県糸満市
 アイスクリームの香りとしてなじみ深い香料のバニラを自給しようと、九州・沖縄で挑戦が始まった。生産者らが連携、果実を生産しバニラビーンズに加工、商品化している。沖縄県糸満市の洋ラン生産者、仲里園芸はハウスで垣根仕立てにし、栽培、果実生産を始めた。
●連携して加工・商品化
 バニラは中米・西インド諸島原産のラン科のつる性植物で、細長いさや状の果実がなる。生果に香りはない。乾燥と発酵を繰り返すキュアリング技術でバニラビーンズに仕上げ、香りが生まれる。広く熱帯地方で生産、世界全体で年1000万トン程度の生産量がある。食品業界では、多くは主成分バニリンの合成香料を使うが、天然バニラは日本に年間100トン超輸入されている。仲里園芸は福岡県久留米市のラン生産者、金子植物苑の呼び掛けで生産を始めた。日本にはバニラ果実の生産技術もキュアリング技術もないが、社長の金子茂さん(46)はラン展の企画に参画してバニラに関心を持ち、事業化を決意。農商工連携事業を活用し、産地化に取り組んでいる。日本の気候風土に適したキュアリング技術が必要で、「天然バニラ香料の製造方法」(特許)を開発した。現在、仲里園芸の他、福岡県で5、熊本県で1、合計7経営体が果実生産を目指している。仲里園芸以外はようやく初なりを迎えた段階だという。仲里園芸はバニラを観葉植物として出荷していたことから、果実生産に取り組むことになった。ランなどのハウスの一角に約60鉢、10アールのハウス1棟に200鉢入れた。13号鉢に、水はけを考えヤシの実チップと樹皮の培土で定植。株間は1.5メートル程度とし、高さ1.75メートルのアーチ状のパイプを支柱にして垣根に仕立てた。ぶら下がる気根を受け止めるため、畝にヤシの実チップを敷いた。葉の上から夏は2日に1回かん水する。果実生産には授粉が必要だ。バニラの花は、花弁が雌しべをふた状に覆い、自家受粉しない構造になっている。担当の仲里美裕紀さん(29)は「1花10秒以内でできる。ランを交配する農家には難しくない」という。開花は5月で期間が限られ、午前中しか開花しない。その他の手間は掛からないので、大規模栽培できそうだが、授粉労力が課題といえそうだ。収量について社長の仲里清さん(58)は「まだ評価できない。初結実は早ければ3年というが、4年かかった。沖縄では無加温で栽培できるのがいい」という。成園になっておらず、昨年の収穫量は700果程度。夏は暑さで生理落果した。果実は10月に収穫し金子植物苑に送る。金子植物苑は製品をアイスクリーム店、ホテル、パン店に、12月から輸入品の2、3倍の価格で販売する。「天然物は合成香料にはない深みがあり、後味が残る」と金子さん。今年の収穫量は数十キロの見込みだ。「国産で安心できる、輸入品と香りが違う、連携の取り組みに賛同する、などと評価してもらっている。輸入品の代替ではなく、新たな日本の香りを創出したい」と話している。

*2-2:http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=29958 (日本農業新聞 2014/9/24) ライチ 隔年結果、裂果を克服 宮崎県新富町
 宮崎県がポストマンゴーとしてライチ(レイシ)の産地化を始めた。7月中旬、新富町の森泰男さん(72)の園地に、色鮮やかな果実がたわわに実っていた。咲き誇る真っ赤な花のようだった。小売店の店先でもこの赤い果皮が国産の証しだ。果肉はぷるんとしてジューシー、しかも大玉。いずれも輸入品にない特徴だ。マンゴーの栽培技術を活用し、安定的に結実させることに成功した。
●マンゴーの技術応用
 原産地の中国では150万トンも生産される。ミカンコミバエの防疫対策でアジアからは生鮮での輸入が禁じられ、凍結か蒸熱処理が必要だ。そのためほとんどの輸入品は取れたての赤色を保てず、茶褐色に変わっている。県はマンゴーに続くブランド果樹を探して2005年から5年間海外を調査した。地球温暖化を逆手に取って熱帯果樹を選び、候補をライチとインドナツメに絞った。10年4月、JA宮崎経済連を事務局にライチ・インドナツメ研究会を設立、技術確立を進めた。森さんが会長を務める。ライチの世界的な課題は年ごとの収量差が大きく収量が低いこと。新芽だけ伸びて花が咲かない、生理落果して実が留まらない、直径4センチ以上、1果40グラム以上を目指しており大玉品種ほど裂果するなどの問題がある。同研究会や県総合農業試験場が栽培法を研究。マンゴーの、樹勢を見ながら枝先を剪定(せんてい)し樹体管理する連年安定結実技術や樹勢制御技術を生かし克服した。裂果も葉面散布剤やハウス栽培による温度管理で克服しつつある。品種は当面、果皮が深い赤色で、糖度が15程度の「チャカパット」を主体に進める。大木になるので防根シートを土に埋め根域制限し、剪定でハウスに収まる樹高に抑えた。室温5度以下で花芽分化させ、その後は16~20度で管理する。県は、10アール当たりの燃油は6キロリットル程度とする。営農支援課の山口和典主幹は「おおむね課題を解決し、出荷できた。まだ木が小さいので収量は10アール当たり1トン程度だが、中国の大木と同じくらいの1.6トンは取りたい」と話す。15人の研究会員の内、ライチは11人が1ヘクタールで作る。今年同経済連は6月5日から8月上旬に1.5トン出荷。平均1キロ約4500円で販売した。「ジューシーでみずみずしさが輸入物と全然違う。高級菓子店のニーズも多かった」という。森さんは30アール作る。10年生の木もある。いち早く取り組み、技術開発をリードしてきた。収穫後の液肥散布で隔年結果を解消。裂果も降雨時にハウスの側面を開けると減少することを発見した。燃油使用量もマンゴーの半分という。木が太り収量が増えるまで6年かかるので複合経営を勧める。30グラム未満の果実はJA児湯の直売所で販売した。飛ぶような売れ行きで、ニーズに手応えを感じた。「ライチブームが来たように感じた。産地化しJAで共選し、県の特産にしたい」と意気込む。

*2-3:http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=29882 
(日本農業新聞 2014/9/19) パパイア 育苗工夫し露地栽培 茨城県那珂市
 茨城県那珂市の混住化が進む農業地帯の一画に樹高のそろったパパイア園が広がる。栁沼正一さん(62)は未熟果を生産し、健康機能性野菜として新たな食文化を提案、普及を目指す。半年で収量を確保する育苗法と徹底した土づくりで露地栽培に成功した。政府開発援助コンサルタント会社に勤め、パパイアに出合った。海外では未熟果を食べ、果物で食べるのは台湾だけだった。農業資材会社を興し九州で活動、JAに有望品目を問われ、思い付くままパパイアを提案した。しかし、自分で栽培してみなければと農家に依頼、2006年ごろから試作し手応えをつかんだ。販路の開拓は人口が多い首都圏が有利と考え、同市に拠点を移した。10年に10アール試験栽培し、徐々に増やし今年は2ヘクタール作る。
●加工品で機能性PR
 寒さに弱く生育限界温度は13度とされる。日本では露地で暖候期は育つが、霜が降ると枯れて実は熟さない。しかし、経費が掛かるハウスではなく露地栽培を選んだ。秋に収穫する未熟果は、たんぱく質、脂肪、糖分を分解したり、免疫力を高めたりする酵素を含む。熟すと消える。ビタミンやミネラルなどの栄養素も多く、人間の健康維持に役立つと知ったからだ。苗は業者から種を購入し育てた。半年の栽培で収量を確保できる品種を選び独自の育苗方法を考案。特許を申請する予定だ。1樹当たり20キロ収穫でき「普通の苗では半分以下だと思う」と栁沼さんはみる。2月に堆肥(10アール6~10トン)、米ぬか(同600キロ)、油かす(同200キロ以上)、自らが販売する微生物資材(菌の恵)を投入する。植栽本数は10アール当たり100本。4月末に定植し苗帽子(キャップ)で1カ月強覆う。保温し水分を保ち風をよけ病害虫を防ぐ。苗は病害虫に弱いが、帽子のおかげで無農薬で栽培できた。草生栽培し草刈り後、米ぬかと同資材を散布する。7月末から花が咲き、9月中旬から600グラム~1キロの果実を収穫する。霜が降る11月末まで収穫できる。昨年は1.2ヘクタールで16トン収穫した。台風の影響を受けた。今年は20トンが目標だ。収穫物は農園に併設した直売所で加工品や総菜と販売する。大口取引先も開拓している。生果は再生産価格の1キロ1000円と決めている。健康に関心を持つ消費者などが買い求めに来る。1樹1万円でオーナー制も行う。苗を1本1600円で300人に販売。生産者が茨城、長崎、和歌山、広島、静岡にできた。栽培方法を統一し品質をそろえ「那珂パパイヤ」の商標で販売する。来年は生産組合をつくる。パパイアを食べる食文化を普及し販路を拡大するために、約30品目の加工品を開発。同市在住の料理研究家と連携、約50品の総菜(レシピ)も開発、PRに力を入れる。13年に那珂パパイヤ普及推進協議会を設立した。栁沼さんは「作付け希望農家は多く、販路が確保できれば50~100ヘクタールはすぐ栽培できる。パパイアの食生活を普及し、医療費が掛からない健康な地域社会をつくりたい」と訴える。

*2-4:http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=30102 (日本農業新聞 2014/10/2) ドラゴンフルーツ・バナナ 温泉利用し経費節減 岐阜県高山市
 日本アルプスの麓、岐阜県高山市の奥飛騨温泉郷栃尾温泉は冬、早朝は氷点下15度にもなる。ここで二つの経営体が70度の源泉を利用し、熱交換方式による床暖房と、掛け流し方式の、それぞれ異なる方式でハウスを暖房し、熱帯果樹を生産している。栽培品目は違うが、暖房費を抑えることで有利な経営を展開、経営面積を増やしたいと意欲を燃やす。フルージック(FRUSIC)は2007年9月、1080平方メートルのハウスを建て、黄色種など30品種のドラゴンフルーツを栽培する。社長の渡辺祥二さん(44)は同県美濃加茂市で04年、農業に新規参入し、アセロラ、ドラゴンフルーツの苗を米国から輸入し栽培している。飛騨ブランドを生かし温泉を活用した産業を起こし、観光業と連携して地域に役立ちたいと考え、栃尾にも農場を構えた。寒冷地の方が果実品質が高まるとの考えもあった。ハウスに隣接する喫茶店で果実を観光客に販売する他、ジャムやジュースに加工している。ハウス暖房は、熱交換機によって温泉の熱で真水を30~35度に温め、ハウス内の通路(幅1.2メートル)のコンクリート床(深さ15センチ)の下に通した全長約6キロのパイプ(直径13ミリ)に流す。温泉成分がパイプの内側に付く恐れがあるため、熱交換方式を採用した。温泉を利用する単位は「口」で表し、1口は毎分15リットル。このハウスの場合、秋は2口、10月中旬から3月は4口使う。温泉の費用は年間約50万円だという。外気温が氷点下15度でも、室温は10度に保てる。設備投資に1500万円掛かった。渡辺さんは「費用が掛かったが、元は取れる。条件が整えばハウスを増やしたい」と話す。
●床暖房、掛け流しで
 奥飛騨ファーム社長の滋野亮太さん(31)は315平方メートルのハウス2棟の暖房に、掛け流し方式で温泉を利用する。石垣島にも農場を持ち、リレー栽培する。温泉旅館の後継者で植物が好きだった。旅館の浴場にバナナの鉢植えを置いたら結実。渡辺さんのフルージックの取り組みなどを刺激に、小ハウスで試験し、08年に本格的に就農した。糖度26のバナナ果実、寒さに強いバナナ品種の苗、実付きバナナの鉢植えなどをインターネットで販売する。ハウス暖房は直径17センチのパイプを半分に切り、とい状に して水口で約62度の温泉を、11~4月は24時間、それ以外の期間は夜間だけ流す。氷点下15度でも27度に保てる。ただし湿度は高く栽培できる作物は限られる。「植物の葉はべたべたになる。マンゴーや野菜は栽培できない」と滋野さん。
 ハウスではバナナの他にカカオ、観葉植物などを育てている。使う温泉は2口で、年間費用は28万8000円。「ボイラーで暖房するなら、やらなかった。温泉とインターネットがあったから農業ができた。栃尾温泉は硫黄分を含まず温度が高い。日射量も多いので取り組めた」と分析する。来年はハウスを1棟増やす計画だ。

<理工系教育充実における農業の無視>
*3-1:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20141004&ng=DGKDASDG16H0O_T01C14A0CR8000
(日経新聞 2014.10.4) 理工系 即戦力を育成、50大学選び集中支援 文科省が50億円計画 自治体など独自策も
 文部科学省は理工系人材の育成に本格的に乗り出す。産業界から技術者の人材不足を訴える声が高まっていることを受け、2015年度予算で新たに50億円を要求。高い技術開発力を持ち企業の即戦力となる人材を育てる大学を集中的に支援する。理工系の教育・研究に力を入れる自治体や大学も目立ってきた。文科省によると、学部と修士課程の計6年間を通じて高い職業能力を持った人材を輩出する大学を50校選び、年間1億円の財政支援を7年続ける。各校は企業の技術者を教員として招くなどして、即戦力育成のためのカリキュラムを新たに策定。16年度から1校あたり数十人規模の学生を募集する。対象とする専攻は、ものづくりを支える基盤技術や、成長産業に結びつく分野を想定。例えば、石油精製のプラントを設計する化学工学の技術や、高齢者の生活を支える機器を開発する福祉工学の知見が豊富な人材の育成を目指す。より多様な学生を集めるため、高等専門学校からの編入や社会人の入学も促す。理系への進学を志望する高校生は近年増えているが、医・薬学に比べ、地道な基礎研究が中心の理工系の人気は低調だ。今春の理・工学部の入学者数(速報値)は計10万9539人で、10年前と比べ1割減った。こうした状況を受け、理工系の人材不足に悩む地方を中心に、自治体や大学が独自に人材育成を図る動きも出てきた。福井県は11年度から、全国の理工系大学院生を対象に、修了後に県内の製造企業で7年間勤務すれば返還が免除される奨学金を設けている。秋田大は7月、理工学部などが、出荷額が増えている秋田県内の医療・健康機器関連の企業と研究開発で連携することを発表。埼玉大は3月、大学院理工学研究科の修士課程の定員を、18年度までに段階的に計200人増やす計画を明らかにした。富山大も16年度に、100~200人規模の理工系の学部を新設する方向で検討している。文科省は「大学では世界最先端の学術研究を進める一方で、産業界で活躍する職業人の育成も急ぎたい」としている。

*3-2:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10103/111294
(佐賀新聞 2014年10月4日) オランダの施設園芸学ぶ 県の技術指導者が研修
ハウス内の環境制御技術について講演した麻生英文さん=佐賀市川副町の県農業試験研究センター
■イチゴ栽培にノウハウ導入
 佐賀県野菜花き技術者協議会などは3日、世界トップクラスのオランダの施設園芸技術を学ぶ研修を始めた。JAや県の技術指導者らがイチゴのハウス栽培の環境整備技術について研究し、佐賀にも導入できるノウハウを身につける。研修は4回開き、収量アップにつながる光合成を促す条件について理解を深める。ハウス内の日射量や二酸化炭素濃度、水分、湿度の調整などを学ぶ。県農業試験研究センター(佐賀市川副町)で開かれた初回の研修には約90人が参加。オランダ園芸技術のコンサルタント会社「GreenQ Japan」(栃木県)の麻生英文取締役ら3人が講演し、二酸化炭素や日射データを見ながら一定量を保つ重要性を強調した。研修は3月までで、今後はイチゴのハウスで実施。生育過程に合わせた細やかな対応など、実践的なノウハウを学ぶ。オランダの施設園芸は、北海油田から産出される安価な天然ガスを使える利点がある。県園芸課の担当者は「日本とは環境が異なるが、トマトの反収は佐賀の6倍。しっかり学べば、収量を倍にすることも不可能ではないはず。佐賀版の技術を確立し、来年度は別の作物にも応用していければ」と期待をかけている。

| 教育・研究開発::2014.8~2016.11 | 12:11 PM | comments (x) | trackback (x) |

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