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2015.7.31 原発再稼働と環境意識の低い日本のリーダーの判断ミス (2015年8月1日、2日、3日、5日、8日、10日に追加あり)
      
   フクイチ汚染地図      宝島より      川内原発事故時の汚染地図 
            
       
      川内原発を囲む市町村       原発立地交付金   川内原発付近の火山

(1)論理的・総合的にモノを考えられず、臨機応変な意思決定ができない日本のリーダー
 *1-1に書かれているように、4年前の福島第一原発事故(以下、フクイチ)は、国家存亡の危機(まさに存立危機事態)を招いて今でも収束できておらず、汚染範囲は東北から関東まで及ぶ広い範囲であるため、世論調査では半数以上の人が再稼働に反対しているが、経産省は新たな交付金を作ってまで原発再稼働に回帰しようとしており、いずれは日本の電源の2割以上を原発でまかなう目標を立てている。

 しかし、日本が目指すべきは、国内に存在する豊富な再生可能エネルギーを使うクリーンな社会であり、そのツールは既に出揃っているため、安定した投資環境を作って機器を洗練させることが重要なのだ。具体的には、分散型の新しい電力システムに切り替える方向(新送電網の設置、原発は廃炉して核廃棄物は最終処分)に投資を集中させ、収益源だった原発を失う立地自治体には普通の自治体になるための支援を行い、予定外の原発廃止で生ずる電力会社の特別損失には補償が必要である。

 「原発依存度を可能な限り低減する」としながら政権に復帰した自民党は、「原子力規制委員会がOKした原発はすべて動かす」と変化し、規制委は発電所内に限った物理的安全性を見ているにすぎず、立地自治体は国に責任を転嫁しているが、本当はどちらも責任を持っておらず、フクイチの後、栃木県、茨城県、埼玉県、東京都、神奈川県、千葉県は、全く除染されていない。

 それにもかかわらず、経産省は、*1-2のように、自民党の原子力政策・需給問題等調査会で原発立地地域への新しい交付金案を示し、再稼働した原発がある自治体に交付金を重点配分して原発の再稼働を促している。そして、これは、首相を安倍首相から他の人に変えたら変わるというものではない。

(2)原発に依る健康被害の例
 東京電力福島第1原発事故と甲状腺がんの因果関係について、*1-3のように、福島県の検討委は「現時点で事故の影響は考えにくい」とし国も追認しているが、その根拠は科学的ではないため、原爆被爆者の治療に長年携わってきた東神戸診療所の郷地所長が、「不都合な5つの事実」と題した論考を7月25日に、福岡県久留米市で開かれる日本社会医学会で発表して反論するとのことである。

 郷地所長は、「事故の影響は考えにくい」とする福島県と国の根拠を、①甲状腺がんの発生率は、県が比較した「避難区域」「浜通り」「中通り」「会津地方」の4地域から市町村別に変えると、福島県の西側3分の1では発生がないなど明らかな差がある ②国の測定方法は、本来個人のリスク評価には使わない方法を採用しており不確実性が高い等々、国の根拠のすべてを否定しているそうだ。つまり、福島県と国は何を護ろうとしているのかと言えば、それは国民・県民ではなく国体・県体なのだ。

(3)再稼働ありきで猪突猛進する薩摩川内原発 (ダッシュ
 このような中、*2-1のように、九電は7月24日、薩摩川内原子力発電所1号機(鹿児島県)の再稼働に向けた最終検査を原子力規制委員会に申請し、順調に手続きが進めば、8月10日に再稼働させるそうで、「九電は7月27日から重大事故を想定した大規模な訓練も計画している」とも書かれているが、これは慰め程度にしかならない。そして、日経新聞はこれを、「国内の原発がすべて止まっている状況が約2年ぶりに解消する」と喜んでいるのだ。

 一方、*2-2のように、鹿児島、熊本、宮崎の3県10市町議会は、再稼働前に九電主催の住民説明会を開くよう求める陳情や請願、決議を採択・可決しているが、九電は、これに応じない方針だそうだ。例えば、原発事故時に鹿児島県出水市の避難者約6600人の受け入れ先となっている熊本県水俣市では、「住民への十分な説明がないまま再稼働に踏み切ることは電力事業者として責任ある態度と思えない」などとする決議を全会一致で可決し、市が九電に要望書を提出している。西日本新聞は、東京電機大の寿楽助教(科学技術社会学:文系)の「再稼働は公共性が高い。もっと積極的に説明すべきだ」という言葉で閉めているが、実際の公共性は大きなマイナスだ。

 同じ西日本新聞は、*2-3のように、「どんなに訴えても、再稼働は止まらないのか」「避難計画の不備が相次ぎ指摘され反対世論も根強い中、国や九電は原発再稼働へ進んでいる」「いまだに尾を引く水俣病もフクイチも、国も企業も責任を取らないという意味で同じ構造」「再稼働は住民の命を無視することにつながり、もはや非人道的行為としか言いようがない」などの住民の声を載せながら、薩摩川内市議が原発視察して「安全対策は十分取られていたが、免震重要棟を完成させるべき」という原発へのさらなる投資を導いている。資源を集中して無駄遣いを排除しなければならない時に、情けない話だ。

(4)ドイツ・フランスの原発削減
 ロビンス博士が、*3-1のように、日本とドイツのエネルギー政策について「日本は自らを小エネルギー国と思い込んでいるが、この考えは言葉の意味の混乱によって生まれたものだ」「日本は(天然ガスを除く)化石燃料には乏しいが、太陽・風力・地熱といった自然エネルギーは主要工業国の中で最も豊富」「日本は、ドイツの9倍もの自然エネルギー資源を有しているが、自然エネルギー電力の導入量はドイツの9分の1に過ぎない」「これは、政界との結びつきが強い地域独占の電力会社が競争を拒んで自分たちの利益を守る構造を日本政府が認めてきた結果だ」などと直言しているが、全くそのとおりだ。

 ドイツ政府は、フクイチ後4カ月のうちに、2001年から2002年にかけて産業界と合意した脱原発スケジュールを復活させ、さらに1年早めて実行することを決め、ドイツの原発17基のうち、発電容量の41%にあたる8基を直ちに停止し、残りの9基の原発は、2015年から2022年の間に停止される予定とのことだ。恣意的な数値を示してドイツのこの政策を間違っていたとする日本の報道記事は多いが、私は、このブログに書かれていることが正しいと考える。

 また、原発依存度の高いフランスも、*3-2のように、2025年までに原発依存度を75%から50%に下げることを柱とするエネルギー移行法案を可決し、原発削減に踏み切るそうだ。今回可決した法案は、代替エネルギーとして風力や太陽光などの再生可能エネルギーや廃棄物のリサイクルなどを進め、3年間で10万の雇用創出も盛り込まれており、原発削減と再生可能エネルギーへの転換は正しい。

(5)嫌われる核廃棄物
 再稼働に積極的な薩摩川内市は、*4-1のように、「使用済核燃料で施設内に貯蔵できるのは再稼働10年間で、国は10年の間に最終処分場を建設すべきだ」「薩摩川内市内に最終処分場を受け入れる考えはない」としている。

 福井県知事も、*4-2のように、「福井県は、発電は引き受けたが、処分まで引き受ける義務はなく、県外で処分すべきだ」としている。敦賀市の渕上市長も、最終処分について「原発に協力してきた自治体に最終処分場まで求めるのはいかがなものか」と否定的な考えを示した。

 北海道では、*4-3のように、放射性廃棄物を持ち込まない「核抜き」条例を設けていることから、経産省の資源エネルギー庁が札幌市内で道内市町村を対象とする処分場選定に関する説明会を開催すること自体に反発が出ている。

 長野市でも最終処分地に関する自治体説明会が開かれ、*4-4のように、出席した自治体職員は「(説明会を)非公開にする内容とは思えなかったし、そうするべきだとも思わない」と述べ、別の自治体職員は「説明会に出席するかどうか悩んだ」「具体的な処分候補地の名前などが挙がると困ると思った」「(説明会に)来たくなかったというのが、どの自治体も本音ではないか」とした職員もいたそうだ。

(6)経営を危うくする企業トップの経営判断ミス
 *5-1のように、東芝の不正会計は社長の独断と組織が原因とされているが、もっと奥深い問題は、①リーマン・ショックで利益が順調に伸びなくなり ②フクイチで原発部門が打撃を受け ③米WHの買収のために米企業の出資で買収資金不足をカバーしていた東芝が、その出資株の買い戻しで隠していた損失が明るみに出そうになって ④それらを正直に財務諸表に反映せず、粉飾してカムフラージュしていたこと が根本的な原因だろう。しかし、①②は、東芝だけに起こった問題ではないため、事実を財務諸表に反映して理由を説明すれば済んだ話だ。しかし、東芝は、原発事業については、この上さらに、フィンランドでの原発交渉権も獲得しており、この事業の筆頭出資社である独イーオン社は、既に撤退を表明しているそうで、トップの経営判断にミスがある。

 しかし、原発事業に関する経営判断ミスは東芝だけにあるわけではなく、*5-2のように、日立も英国の原発事業会社ホライズンを買収して海外展開を強化させようとした。これらは、経産省の原発推進の方が世界に通用すると信じた日本企業のトップが、日本国内では原発新設が難しいから海外で事業拡大しようと海外の原発企業を買収し、機を見て原発から撤退しようと原発事業部の売却先を探していた海外企業から高値で原発事業部をつかまされたということであり、いずれも自国でフクイチのような過酷事故を経験した我が国の経営者の環境意識の低さと洞察力に欠ける不明に依る。

 一方、これから利用価値が高くなるため中国が行っているガス田の開発については、日本政府には、*5-3のように、「中国側が一方的な開発を進めていることに対して、我が国から繰り返し抗議をすると同時に、作業の中止を求めている」と言っているだけで、国境線を明確にすることも、共同開発の合意を解消することも、自ら採掘することも、何もしていないという不作為がある。そして、中国がガス田の天然ガス掘削施設を完成させたことを、「一方的だ」として非難しているだけなのだ。

 ここまで政府や経営者が愚鈍で、技術者が、1ミリ、1ミリ進めて必死で稼いでいるものを、バックアップするどころか何メートルも後退させて罪悪感を感じない国はないだろう。そして、これ以上の無駄は許されないため、この愚鈍の根源は徹底して追求し、二度と起こらないようにしなければならない。

<時流を見誤る日本>
*1-1:http://www.asahi.com/paper/editorial.html
(朝日新聞社説 2015年7月30日) 原発再稼働を考える―稼働ゼロの実績を土台に
 東日本大震災後、すべての原発が止まって、まもなく2年がたつ。冷暖房に電気を多く使う夏も冬も、大規模な停電を引き起こすことなく乗り切った。4年前の福島第一原発事故は国家存亡の危機を招き、今も収束していない。原発の怖さを知ったからこそ、不便はあっても原発は止まったままにしたい。各種の世論調査で、半数以上が再稼働に反対しているのは、そんな思いの表れだろう。だが、安倍政権は原発に回帰しようとしている。8月には九州電力川内原発(鹿児島県)を再稼働させて、いずれは日本の電源の2割以上を原発でまかなうことを目指している。なし崩しの原発回帰に、反対する。国民生活に負担がかかりすぎないよう配慮しつつ、再稼働しない努力を最大限、するべきだ。目指すべきエネルギー社会は、再生可能エネルギーが主軸であり、原発が基本的な電源となる社会ではない。
■避けられた電力不足
 朝日新聞は11年7月に社説で「原発ゼロ社会」を提言した。
◆古い原発や危険度の高い原発から閉め、20~30年後をめどにすべてを廃炉にする。稼働させる原発は安全第一で選び、需給からみて必要なものに限る
◆節電・省エネ対策を進めつつ、再エネの開発・普及に全力をあげる。当面は火力発電を強化しても、長期的には脱原発と温暖化防止を両立させる
◆多様な事業者の新規参入を促す電力改革を進め、消費者側の知恵や選択が生きる分権型のエネルギー社会に転換する
 基本的な考え方は、今も変わらない。しかし、この4年間で状況は変わった。最も劇的だったのは、原発による発電がゼロになったことだ。4年前は、全国で原発が動いていた。その後、定期点検のため次々に休止し、一時的に関西電力大飯原発(福井県)が動いたものの、13年9月以降、一つの原発も稼働していない。この間、心配された電力不足は起きなかった。緊急電源をかき集めてしのぐ局面もあったが、節電の定着をはじめ、火力の能力を高めたり電力会社の垣根を越えて電力を融通しあったりすることで、まかなえた。ただし、原発稼働をゼロのまま定着させる環境が盤石になったとは、まだ言えない。大規模発電所から遠方の大消費地に電気を送る集中立地型の供給態勢は、原発事故後もそのまま残る。システムの脆弱(ぜいじゃく)さは克服されていない。電力使用量のピーク時に大きな火力発電所が故障すれば、不測の事態が起きる可能性も消えてはいない。
■システムはなお脆弱
 電力の9割を火力に頼っている現状が持続可能とも言えないだろう。エネルギー源を輸入に頼る以上、為替や価格の変動リスクに常にさらされる。電気料金にしても、国民や日本経済が値上げをどの程度まで許容できるのか。詳細な調査もないままに、値上げが生活や経済活動に深刻な影響を与えることは避けなければならない。国民生活に深刻な影響を与えるリスクはゼロとなっていない。そう考えれば、最後の手段としての再稼働という選択肢を完全に否定するのは難しい。それでも、個々の原発に対する判断は、きわめて慎重でなければならない。「この原発を動かすことで、どんな不利益を回避できるのか」「電力を広域的に融通して電力需要に応えてもなお、再稼働は必要なのか」といった観点から納得のいく説明ができなければならない。原発の安全性が立地条件から見ても十分に確保されていることや、周辺の住民が避難できる手段が整っていることは、当然の前提になる。稼働ゼロの実績は、それだけ再稼働へのハードルを高くしている。こうした状況のもとで、できるだけ早く再エネを育て、分散型の電力システムへと切り替えていく。そのためには、新たな方向へと誘導する政策努力が欠かせない。政府は改革の道筋を立て、送電網の充実、原発のゴミ処分などに資源を集中させる。廃炉を進める態勢づくりや、収益源だった原発を失う立地自治体への支援、原発関連の事業者への経過措置も必要になる。
■原点は福島第一原発
 ところが、安倍政権は逆を行こうとしている。「原発依存度を可能な限り低減する」としながら、原発を維持する方向へ転じて「原子力規制委員会がOKした原発はすべて動かす」と判断を丸投げした。規制委は、発電所に限って物理的な安全性を見るにすぎず、政策全体に責任を負うものではない。立地自治体には「国が責任を持つ」といいながら、具体的な中身はない。川内原発の場合でも住民の安全確保や、火山噴火の問題は積み残したままだ。原発を考える原点は、福島第一原発の事故にある。今、原発は動いていない。この実績を生かすことを考えるべきである。

*1-2:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20150731&ng=DGKKASFS30H8T_Q5A730C1PP8000 (日経新聞 2015.7.31) 
再稼働自治体を交付金で優遇 経産省、立地地域の配分見直し
 経済産業省は30日の自民党の原子力政策・需給問題等調査会で、原発立地地域への支援策の案を示した。九州電力川内原発1号機(鹿児島県)の再稼働を控え、原発がある自治体に一律に配っている今の交付金の配分方式を見直す。再稼働した原発がある自治体に重点配分し稼働停止が続く場合は交付金を減らす。新方式では、老朽化で原発が廃炉となる自治体は交付金が無くなる見通しだ。経産省はこの日、「エネルギー構造転換に向けた地域の取り組みに一定の支援を行う」として交付金に代わる財政支援を継続する方針を示した。ただ、金額自体は減る可能性が高いとみられる。政府は、原発がある立地自治体に「電源立地地域対策交付金」を原発の発電量に応じて支払っていた。東京電力福島第1原発事故以降は、原発の停止中も発電量を最大供給力の81%とみなして、自治体に一律で交付金を支払ってきた。使用済み核燃料を保管する中間貯蔵施設の立地自治体も支援する。経産省は同日、日本原子力発電と東京電力が青森県むつ市に建設した中間貯蔵施設について「環境変化が立地地域に与える影響を緩和する」として、財政支援策などを検討していると明らかにした。さらに、関西電力などが中間貯蔵施設建設の検討を進めていることを念頭に「使用済み燃料を安全に保管するため、使用済み燃料の貯蔵能力拡大のインセンティブとなる措置を講じる」との方針を示した。貯蔵施設の建設などを予算措置などで後押しするとみられる。

*1-3:http://www.kobe-np.co.jp/news/iryou/201507/0008241533.shtml
(神戸新聞 2015.7.26) 福島原発事故「がん無関係」に反論 神戸の医師が論考発表
 地域別甲状腺がんの発生数と市町村別甲状腺がんの発生数  原爆被爆者の治療に長年携わる東神戸診療所(神戸市中央区)の郷地(ごうち)秀夫所長が、東京電力福島第1原発事故と甲状腺がんの因果関係は「現時点では考えにくい」とする国の姿勢に対し、「不都合な5つの事実」と題した論考を25日、福岡県久留米市で開かれる日本社会医学会で発表する。福島県民健康調査によると、検査対象となる事故当時18歳以下の約38万5千人のうち、今年3月までに103人の甲状腺がんが確定している。福島県の検討委は「現時点で事故の影響は考えにくい」とし、国も追認している。郷地所長は、事故の影響は考えにくいとする国側の根拠を(1)放射線汚染度の異なる福島県内の4地域で甲状腺がんの発生率が変わらない(2)チェルノブイリの甲状腺がんは4歳以下に多発したが、福島で5歳以下はいない(3)福島の子どもの等価被ばく線量は10~30ミリシーベルトと低い-など五つに整理した。その上で、国側の主張と矛盾する複数の研究報告を検討。その結果、(1)甲状腺がんの発生率を、県が比較した「避難区域」「浜通り」「中通り」「会津地方」の4地域から市町村別に変えると、福島県の西側3分の1では発生がないなど、明らかに差異がある(図)(2)国連科学委員会の報告では、チェルノブイリ事故で4歳以下の甲状腺がんが多発したのは5年目以降(3)国の測定方法は、本来個人のリスク評価には使わない方法を採用しており、不確実性が高い-など五つの根拠すべてに疑問を投げ掛けている。郷地所長は「福島原発事故は日本人初の経験。先入観や政治的影響を受けず、白紙から研究していくのが科学的姿勢だ」と指摘している。

<川内原発>
*2-1:http://www.nikkei.com/article/DGXLASFB24HBS_U5A720C1MM8000/
(日経新聞 2015/7/25) 川内原発、8月10日にも再稼働 九電が最終検査申請
 九州電力は24日、川内原子力発電所1号機(鹿児島県)の再稼働に向けた最終検査を原子力規制委員会に申請した。順調に手続きが進めば、8月10日にも再稼働させる。東京電力福島第1原発事故を教訓とする新規制基準が導入されて以降、初めての原発再稼働になる。国内の原発がすべて止まっている状況が約2年ぶりに解消する。申請したのは、原子炉を起動させるための最終段階となる保安検査で、8月3日に開始する。原子炉周辺の温度と圧力を運転時に近い状態にし、安全機器に異常がないことなどを、1週間程度かけて確認する。九電は7月27日から重大事故を想定した大規模な訓練も計画。最終検査と合わせて問題がなければ、予定通り再稼働が可能になる。川内原発は昨秋に新規制基準に基づく規制委の安全審査に全国の原発で初めて合格している。

*2-2:http://qbiz.jp/article/67522/1/
(西日本新聞 2015年7月27日) 川内再稼働の説明会要求、3県10市町議会に 九電応じない方針
 九州電力川内原発(鹿児島県薩摩川内市)の再稼働を来月に控え、鹿児島、熊本、宮崎3県の10市町の議会が、再稼働前に九電主催の住民説明会を開くよう求める陳情や請願、決議を採択、可決していることが、西日本新聞のまとめで分かった。こうした動きは3月議会時点では鹿児島県内の5市町だけだったのに対し、6月議会で県外にも拡大。背景には再稼働に対する住民の根強い不安感があるが、九電は応じない方針だ。川内原発30キロ圏では昨年10月、計6回の住民説明会が鹿児島県と各市町の主催で開かれた。当初、説明者が県と原子力規制庁の担当者に限られたことに住民側から批判も出て、追加開催となった最後の日置市だけ九電幹部が出席、説明した。九電が主催する説明会は開かれていない。原発事故時の避難計画で鹿児島県出水市の避難者約6600人の受け入れ先となっている熊本県水俣市では、6月議会で「住民への十分な説明がないままに再稼働に踏み切ることは電力事業者として責任ある態度と思えない」などとする決議を全会一致で可決した。これを受けて、市は九電に要望書を提出している。川内原発から約130キロ離れた熊本県荒尾市議会は全会一致で陳情を採択した。陳情を提出した「原発の再稼働を考える荒尾市民の会」共同代表の浦田修行さん(71)は「放射線に距離や県境は関係ない。川内の次は玄海(の再稼働)もある。九電は誠意を持って対応してほしい」と訴える。これらの要望に対し、九電は「以前から原発の周辺地域に限らず、社員ができる限り対面で説明する活動を続けている。現時点で、当社主催の大規模な説明会を開く考えはない」としている。社員による説明は、公民館などで数人から数十人規模で行い、2014年度は約12万8千人を対象に行ったという。東京電機大の寿楽浩太助教(科学技術社会学)は「九電は反対派と討論する形になる説明会は得策でないと考えたのだろう」と指摘。「再稼働は公共性が高い。再稼働後を含め、もっと積極的に説明すべきだ」と求めた。

*2-3:http://qbiz.jp/article/66269/1/
(西日本新聞 2015年7月8日) 川内原発「再稼働、止まらないのか」 反対住民に漂う悲愴感
 どんなに訴えても、再稼働は止まらないのか−。九州電力が全国の原発のトップを切って始めた川内原発の核燃料装填(そうてん)に抗議しようと7日朝、鹿児島県内の反原発団体が原発前で抗議集会を開いた。避難計画の不備が相次ぎ指摘され、反対の世論も根強い中で、国や九電は原発再稼働へ着々と駒を進めている。住民の訴えには、悲愴感さえ漂った。集会では、参加者が次々にマイクを握った。いちき串木野市でデイサービス施設を運営する江藤卓朗さん(58)は「うちの通所者は事故が起きても逃げられない。再稼働はやめて」と声を張り上げた。施設は原発から15キロ。通所者が長時間の避難や避難所生活に耐えられるとは思えない。排せつの世話やボンベによる酸素吸入が必要な人もいる。「施設の70〜90代の通所者22人はほとんどが認知症だ。事故が起こった場合、どう避難させればいいのか」と日々悩んでいるという。熊本県水俣市の「原発避難計画を考える水俣の会」の永野隆文代表(60)は「いまだに尾を引く水俣病も福島第1原発事故も、国も企業も責任を取らないという意味で構造は同じだ」と述べ、「公害の原点」といわれる水俣病と福島事故の共通点を強調した。120人の参加者からも反対のさまざまな思いが聞かれた。薩摩川内市の自営業川畑清明さん(59)は「再稼働は住民の命を無視することにつながる。もはや非人道的行為としか言いようがない」と語気を強めた。九電鹿児島支社前で毎週金曜日、脱原発の街頭アピールをしている鹿児島市のフィットネスインストラクター白澤葉月さん(50)は七夕にちなみ「原発やめて」などと書いた短冊を結んだササで抗議の意思を表現した。「避難計画は穴だらけで、使用済み核燃料の処分方法も確立していない。たくさんの市民が反対しているのに、何で止められないの」と声を詰まらせた。
◆「安全性は十分確保」薩摩川内市議が原発視察
 九州電力川内原発に核燃料が装填(そうてん)された7日、地元の鹿児島県薩摩川内市議16人が使用前検査を受けている川内原発の安全対策状況を視察した。市議の多くは「安全対策が十分取られていた」として、再稼働に肯定的な感想を述べた。市議会の川内原発対策調査特別委員会による視察で、昨年7月以来、福島第1原発事故後は7回目になる。この日は委員9人に希望する市議7人が加わり、6月末までにほぼ完了した安全対策工事の完工状況などを見て回った。昨年7月時点では未完成だった海水ポンプを津波から守る防護壁や、今年6月に設置した電源車やポンプ車を竜巻で飛ばされないように電動チェーンで固定する装置などを約2時間かけて見学した。16人中13人は昨年10月の臨時議会で早期再稼働を求める陳情に賛成、2人は反対、1人は退席した経緯がある。賛成した森満晃市議は「津波や竜巻などに対し過剰ともいえる安全対策を取っており、一安心した」と評価。川添公貴市議は「何度も原発内を見てきたが、安全性は十分確保されており、当然、再稼働すべきだ。そうした中、核燃料装填までこぎ着けたことは喜ばしい」と歓迎した。一方、再稼働に反対する井上勝博市議は「福島の事故を教訓にするなら、事故時の指揮所になる免震重要棟が未完成なのは決定的な問題だ」と批判した。

<ドイツ・フランスの原発削減>
*3-1:http://jref.or.jp/column/column_20140904.php (自然エネルギー財団 2014年9月4日) 連載コラム 自然エネルギー・アップデート、日本とドイツのエネルギー政策:福島原発事故後の明暗を分けた正反対の対応
<この記事は、ロッキーマウンテン研究所のウェブサイトに2014年7月8日に掲載されたエイモリー・ロビンス博士による“How Opposite Energy Policies Turned The Fukushima Disaster Into A Loss For Japan And A Win For Germany”の日本語訳である>
日本は自らを小エネルギー国だと思い込んでいるが、この国民的な考えは、言葉の意味の混濁によって生まれたものである。日本は、化石「燃料」には乏しいが、太陽、風力、地熱といった自然「エネルギー」については、主要工業国のなかでも最も豊富な国である。たとえば、日本は、ドイツの9倍もの自然エネルギー資源を有している。しかし、自然エネルギー電力の導入量はドイツの9分の1(大型水力発電を除く)に過ぎない。これは、日本の技術力が劣悪だったり、産業界が脆弱だったりするせいではない。政界との結びつきが強い地域独占の電力会社が、競争を拒んで自分たちの利益を守るという構造を、日本政府が認めてきたからだ。日本では、強制的な卸電力市場がないため、約1%の電力しか取引されていない。電力会社はほぼすべての送電線と発電所を所有しているので、自分たちの資産の競争相手となる事業者を、好きなように決めることができる。そのせいで、本当の競争市場なら市場の大半を占めるだろう活力ある新しい電力事業者たちのシェアも、2.3%に留まっている。こうした状況が、日本とドイツの電力事情に大きな違いをもたらしている。2011年3月の東京電力福島第一原子力発電所の事故の前は、ドイツも日本も、電力の3割近くを原発で発電していた。事故後4カ月のうちに、ドイツ政府は、2001年から2002年にかけて産業界と合意した脱原発スケジュールを復活させ、さらに1年早めて実行することを決めた。全政党の賛成を得て、ドイツの原発17基のうち、発電容量の41%にあたる8基を直ちに停止した(そのうち5基が福島原発と同タイプのもので、7基が1970年代から稼働していた)。残りの9基の原発は、2015年から2022年の間に停止される予定だ。2010年、この8基の原子炉による発電量は、ドイツの電力の22.8%を占めていたが、ドイツ政府は、同時に、エネルギー効率化や自然エネルギーやその他の包括的7つの法案を成立させて、脱原発への移行中も完了後も、安定的な、低炭素なエネルギー供給を確実なものとした。ドイツの原発停止は決然と行われたが、これは長年にわたって熟慮された政策展開に基づくもので、福島原発事故の前や後に、周辺7カ国で決められた原発の建設中止や段階的な稼働停止とも整合性を持つものだ。さらに、1980年より前に「エナギーヴェンデ(エネルギー大転換)」という言葉と概念が使われ始めたドイツでは、福島原発事故の20年も前の1991年に自然エネルギーへの移行が正式に始まり、2000年の固定価格買取制度でその動きに拍車がかかった。今では、自然エネルギーの導入量は7000万キロワットをはるかに上回る。この買取制度は、補助金ではなく、自然エネルギーという社会資産に対して、利用者が購入し、事業者が出資・開発するための手段であり、売り手は投資額に応じた相応の利益を期待できる。自然エネルギーのコスト低下とともに固定価格が下落している今は、自然エネルギー事業者が固定価格より高い市場価格から利益を得るのが一般的となっている。こうした統合的な政策枠組みとそれを裏づける確実な分析によって、2011年に原子炉8基が停止し失われた発電量は、その年のうちに、59%の成長率をみせた自然エネルギー、6%のエネルギー使用の効率化、36%の電力輸出の一時的な削減によって完全に補うことができた。2010年と比べた原発発電量の減少分は、2012年までには94%、2013年までには108%が、自然エネルギーの増加で補われている。この調子で自然エネルギーが成長していけば、2016年までに、福島原発事故以前のドイツの全原発発電量を置き換えることができるだろう。間違った報道が拡がっているのとは正反対に、8基の原子炉が停止しても、化石燃料の燃焼量は増加していない。ドイツで自然エネルギー資源が利用される場合は、法的にも経済的にも、常にそれよりコストの高いエネルギー源に取って代わることが求められているため、自然エネルギーによる発電の増加は、常に火力発電の稼働を減少させることになるが、実際のパターンはもっと複雑である。データによれば、2010年から2013年の間に、ドイツの原発による発電量は43.3 TWh(433億kWh)減少し、自然エネルギーによる発電量は46.9 TWh(469億kWh)増加した。その間、発電部門では石炭と亜炭の燃焼量が増加した分だけ、よりコストの高いガスや石油の燃焼量が減少した。エネルギー転換に否定的だったドイツの電力会社の戦略は失敗に終わった。今になって、彼らは、自分たちが長年投資を怠ってきた自然エネルギーのせいで、火力発電所の採算性が悪化し、稼働できなくなったと不平を言っている。大手電力会社が自ら招いたこうした苦難をよそに、ドイツは、効率化・自然エネルギー化を推進し、完全に公正な競争を保障するために、首尾一貫した効果的な戦略をとった。一方日本では、大幅に失われた原発の発電量のほぼすべてを、高価な化石燃料の輸入増加により補った。こうした正反対の政策が、正反対の結果をもたらした。2011年の夏、日本人は見事な団結力で電力不足を乗り切った。うだるような暑さの中、多くの人々が個人的な犠牲を払った。そして、東京では、都の政策により、最大電力需要が1070万キロワット、なんと18%も削減され(大企業では異例の30%減を達成)、東京電力の最大電力需要における原発発電の減少分をほぼ補った。都市部では、東京電力の販売電力量は11%減少した。しかし、ここまでの事例が日本全体で起こったわけではなく、結果として発電所の燃料使用量は増加している。対照的に、電力供給に余裕があるドイツは、電力輸出が輸入を上回る電力輸出国の立場を保ち、原子力が発電の多くを占めるフランスにも輸出を続けている。ドイツによる電力の純輸出は、ここ2年連続して過去最高を記録している。経済においても、日本が低迷するなか、ドイツは活気づいた。エネルギー転換によるマクロ経済的効果の一環として、数十万もの自然エネルギー関連の雇用が生まれた。日本では電気料金が上昇したが、ドイツでは卸電力価格が60%以上下落した。2013年だけでも13%下がり、年間予測価格は8年ぶりの最安値となった。そのために、フランスのエネルギー多消費型企業は、電力価格が4分の1も安いドイツの競合企業には勝てないと文句を言っている。最近流布している「ドイツの産業空洞化」という捏造神話は、まったく皮肉たっぷりの内容だ。というのも、ドイツの大企業が支払っているのは下がり続ける安い卸電力価格であって、その安い卸電力価格を生み出している自然エネルギーへの支払いや、送電網料金の支払いは免除されているからだ。その分の負担は一般家庭にのしかかっているが(電気料金の半分が税金)、供給業者の古い契約が更新されるにつれて、卸電力価格の低下も反映されるようになり、今では一般家庭向けの電力価格も安定してきた。日本による温室効果ガスの排出量は増えたが、ドイツの発電所や産業では、温室効果ガスの増加を抑制している(ドイツでは2013年の発電部門の排出量がわずかに減少した。固形燃料の燃焼量は増えたが、エネルギー効率化が進んだため、発電量の上昇分と比べてわずかに排出を抑制できた)。ただし、正確を期すならば、2012年のドイツ全体の温室効果ガス排出量は厳冬のためにわずかに上昇し、2013年も、ガス価格の急騰、米国市場の縮小による安価な石炭の流入、欧州の温室効果ガス排出取引市場における過当な割り当てという3つの要因によって、石炭火力による電力の輸出が記録的に増加したため、わずかに上昇した。しかし、2014年の第1四半期には、ドイツにおける石炭の燃焼量と温室効果ガスの排出量は再び縮小に転じ、今後もこの傾向が続く見込みである。ドイツの温室効果ガス削減の取り組みは、京都議定書で定められた目標をはるかに超えるレベルで進められており、欧州のなかでもひときわ厳しい条件を達成している。つまり、ドイツの政策は、自然エネルギーに対して公平な送電網へのアクセスを保証し、競争を促し、独占状態を排し、自然エネルギー容量の半分を市民や地域社会が所有できるように支えてきたのだ。2013年、ドイツの原発発電量はこの30年で最小となる一方で、自然エネルギーによる発電量は56%増加し過去最大となった。2014年の第1四半期には自然エネルギーの国内での電力消費に占める割合が平均27%に達し、5月11日には過去最高となる74%の発電を記録した。日本はドイツと比べて、国土が5%広く、人口は68%多く、GDPは74%高く、太陽も風もはるかに優れた資源量がある。しかし、2014年2月に導入された太陽光発電量はドイツの約5分の1に留まり、風力発電に至ってはほとんど導入されていない。2012年、日本の電力のうち、こうした自然エネルギーによる発電が占めた割合は、わずか0.97%(インドの3分の1、世界では29位)で、2013年は1.5%だった。受注パイプラインにあるおよそ4100万kWの電力(その95%が太陽光発電)の大半は、電力会社の形式主義と非協力的な態度によって、合法的に放置されているのだ。日本の政治家は、その日の丸の国旗に示された神聖な太陽以上に、世界市場を支配しつつあるエネルギー源の普及を阻害する旧態依然とした政策を尊重しているようだ。2008年以降、世界で新しく導入された発電容量の半分は自然エネルギーだ。主に風力と太陽光からなる水力以外の自然エネルギーには、2500億ドル(約25兆円)の民間投資が行われ、その導入量は過去3年間で毎年8000万kW以上増加した。世界の4大経済大国のうちの3カ国、中国、日本、ドイツに加え、インドにおいては、今では原発より水力以外の自然エネルギーによる電力量が多くなっている。ここに日本が含まれているのは原発の発電量がほぼゼロだからであり、自然エネルギーに出遅れた先進国であることに変わりはない。ただ、2014年5月に行われた大飯原発の再稼働をめぐる裁判で、安全性を理由に再稼働を禁止する判決が下されたのは意外だった。電力会社の利益より市民の安全が優先された初めての判決である。もしかしたら、これをきっかけに新しい動きが起こり、行政および立法部門によるうわべだけの改革――2016年に実施予定の名ばかりの「自由化」――をしのぐ変化が生まれるかもしれない。世界で最も積極的な原発計画を打ち出している中国でさえ、2012年から2013年にかけて、すでに風力の発電量が原発を上回るものとなった。中国が2013年に導入した太陽光発電量は、太陽光発電の開発国である米国がこれまでに導入してきた全容量よりも多い。しかし、日本は逆の方向へ進んでいる。2012年7月に自然エネルギーの固定価格買取制度が導入され、その後わずか20カ月間で8 GW(800万kW)の自然エネルギーが運転を開始したが、そのうち太陽光が97.5%を占め、風力はわずか1%という状況だ。風力発電、特に最もコストが安い陸上のものは、昔は承認手続きが面倒で時間のかかる独特なものであったために、今では自分たちの地域の送電網に競合企業を入れたくない独占的な電力会社に徹底的に反対されているために、普及が進んでいないのだ。日本風力発電協会は、2050年における陸上風力の市場シェアの目標値として、スペインが3年前に達成したものと同じ数値を掲げている(※2014年6月に新しい目標が発表され、2500万kWから3500万kWへと若干上方修正されている)。こうした事態を生み出した原因を理解するのは難しくない。太陽光発電は、発電コストの高い日中のピーク電力を補うことができるが、その固定価格買取制度の仕組みは、電力会社が得をするようになっている。一方、夜間にも稼働する安価な風力発電が石炭や原子力の代わりに使われるのは、電力会社にとって損となる。電力会社が旧来の「ベースロード」発電所に置き換わるような自然エネルギーの電力を拒否できる権利は、日本の最新の規則でも繰り返し述べられている。電力会社がコストの高い火力発電を使い、運転コストがほぼゼロの風力発電を拒絶しているせいで、世界のなかでも高い日本の電気代がさらに高くなっている。このことを日本の産業界のリーダーたちが知ったら、憤慨するのではないだろうか。2013年後半(ドイツの改革開始から23年後)に日本の衆議院を通過した電力システム改革法案でも、電力会社が安価な自然エネルギーによる電力を拒否することが、理由を問わず認められている。自然エネルギーは送電網の安定性を阻害する可能性があるという人も多い。それでは、2013年の自然エネルギーのシェアが25%を占めるドイツや、47%以上を占めるデンマークの電力が、欧州で最も信頼性が高く、米国と比べても約10倍の信頼性を誇るのはなぜだろうか?この2カ国に加え、2013年の電力の約半分を自然エネルギーで発電したスペイン(45%)、スコットランド(46%)、ポルトガル(58%)の欧州3カ国(どの国も水力発電は多くない)で求められているのは、公平な送電網へのアクセスと公平な競争だけだ。これを必要としていないのは、主要工業国のなかで日本だけである。ドイツではエネルギー利用の効率化も進んでいる。過去3年間、ドイツではGDPが伸びる一方で電力消費量は減少している。1991年から2013年の間、つまり東西ドイツ統一後、ドイツの実質GDPは33%成長したが、一次エネルギーは4%、電力使用量は2%減少し、温室効果ガス排出量も21%減少した。今後、さらに野心的な省エネ計画も用意されている。一方、日本のエネルギー効率化は1970年代には世界トップレベルだったが、その後停滞してしまった。日本の産業は改善を続け、今も11の主要工業国のなかで最も高い効率性を誇る。しかし、産業用コージェネレーション(熱電併給)の導入や商業ビルのエネルギー効率化では10位、トラック輸送分野では8位、自動車では最後から2番目(米国と同位)に甘んじている。実は、日本ではエネルギー価格が非常に高いため、効率化はとても収益性があり、とりわけ、ほとんどの建築物で大きな効果がある。たとえば、京都駅前にある半導体企業「ローム」の本社ビルでは、エネルギー消費量を46%削減、コストは2年で回収した。しかし、東京都の効率化への取り組みなど、いくつかの例外はあるものの、長い間日本の産業を特徴づけてきた「カイゼン」(継続的な改善)が行われている日本のビルはほとんどない。日本の経済と政治の復興には、古い体制を保護するかわりに、新しいエネルギー経済を生み出す自然エネルギー導入とエネルギー効率化への新たな飛躍が必要だ。松尾芭蕉の有名な俳句「古池やかわず飛び込む水の音」に詠まれているように、日本の蛙も飛躍することはできる。だが、いまだ水の音は聞こえてこない。

*3-2:http://www.yomiuri.co.jp/world/20150723-OYT1T50031.html
(読売新聞 2015.7.23) 原発削減法案、仏で可決…依存度50%に
 フランス議会下院は22日、2025年までに原発依存度を75%から50%に下げることを柱とするエネルギー移行法案を可決した。上院は既に通過しており、これで約1年間の審議は終結。世界有数の原発大国は、原発の削減に踏み切ることになる。原発依存度の引き下げは、オランド大統領が12年大統領選で選挙公約として打ち出していた。今回、可決した法案には、代替エネルギーとして、風力や太陽光の再生可能エネルギーや廃棄物のリサイクルなどを進め、3年間で10万の雇用を創出することも盛り込まれた。

<原発地元と核のゴミ処分>
*4-1:http://qbiz.jp/article/65122/1/
(西日本新聞 2015年6月23日)薩摩川内市長、核のごみ「施設内貯蔵は10年間だ」
 再稼働が近づく川内原発が立地する鹿児島県薩摩川内市の岩切秀雄市長は23日の市議会で、川内原発1、2号機の使用済み核燃料の処分をめぐり、「施設内に貯蔵できるのは再稼働後10年間だ。(国内にまだゼロの)最終処分場を国は10年の間に建設すべきだ」と早期建設を促した。市内に最終処分場を受け入れることについては「その考えはない」と明確に否定した。原発から出る高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の最終処分場について、政府は5月、従来の公募方式から国主導で「科学的有望地」を示すように方針を転換した。川内原発の使用済み核燃料の貯蔵率は現在60・4%。岩切市長は処分場の建設は「国が前面に立って取り組むべき国策だ」と強調し、中間貯蔵施設の建設も促す考えを示した。鹿児島県の伊藤祐一郎知事も11日の県議会で「県内に(最終処分場を)立地する意思はない」との考えを示している。

*4-2:http://www.fukuishimbun.co.jp/localnews/politics/74558.html
(福井新聞 2015年7月3日) 「核のごみ処分、受ける義務ない」 知事「福井県は発電」と考え強調
 原発から出る核のごみ(高レベル放射性廃棄物)の最終処分に関し、福井県の西川一誠知事は2日の県議会一般質問で「福井県は発電は引き受けてきたが、処分まで引き受ける義務はない」と述べ、県外で処分すべきだとの考えを強調した。国主導で処分場を選定する政府の新方針については一定の評価をしつつも「政府が道筋を明確に示す姿勢は見えない」と苦言を呈した。山本正雄議員(民主・みらい)の質問に対する答弁。処分場選定はこれまで自治体からの応募に頼っていたが進まず、政府は5月、国主導で「科学的有望地」を提示するなどの新たな基本方針を決定した。知事は昨年4月まで、処分場選定のあり方を検討する経済産業省の作業部会の委員を務め、基本方針のたたき台の議論にかかわった。知事は答弁で、新方針を決めた後の国の動きに関し「全国9都市での公開シンポジウムや自治体向けの説明会を開いているが、内容は今回の改定の経緯や趣旨の説明にとどまっている」と指摘。「政府が実行体制を強化し、いつまでに何を行うのか、道筋をはっきり示すなどの積極的な姿勢が見えない」と批判した。最終処分に関しては、敦賀市の渕上隆信市長も6月の定例会見で「原発に協力してきた自治体に最終処分場まで求めるのはいかがなものか」と述べ、否定的な考えを示している。経産省は処分事業を担う原子力発電環境整備機構(NUMO)と共同で5月下旬から、自治体向けの説明会を各都道府県で開いている。経産省は開催日程や出席自治体などは公表していない。福井県では6月26日に福井市の県自治会館であり、12市町の担当者が参加した。福井市、小浜市、永平寺町、池田町、若狭町の5市町は、議会開会中であることなどを理由に参加を見送った。

*4-3:http://mainichi.jp/select/news/20150527k0000m040157000c.html
(毎日新聞 2015年5月27日) 核のごみ最終処分場:持ち込まない北海道条例 国に反発
 原発から出る高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の最終処分場を巡り、経済産業省資源エネルギー庁が6月1、2の両日、札幌市内で道内市町村を対象とする説明会を開催することが26日、同庁などへの取材で分かった。政府は22日、国主導で処分場選定を行う新しい基本方針を閣議決定しており、説明会でこの方針を説明する。道は、放射性廃棄物を持ち込まない「核抜き」条例を設けていることから、説明会の開催自体に反発の声も出ている。自治体向け説明会は日時や会場、出席自治体名などがいずれも非公表のまま開かれる。既に大阪や神奈川など全国で始まっている。同庁は22日付で参加を呼び掛ける依頼文を道内の市町村に送付した。非公表の理由について、同庁放射性廃棄物等対策室は「出席したり、発言したりしただけで、処分場立地に関心があると誤解される恐れがある」と説明している。国内で唯一、処分技術を研究開発している日本原子力研究開発機構幌延深地層研究センターがある北海道幌延町は、情報収集のため職員を派遣する方針。同町は道条例と同じ「核抜き」条例を定めており、町幹部は「立地に動くことはありえない」と話している。同じく出席予定の道環境・エネルギー室も「情報収集のためであり、条例の方針は変わらない」と説明する。これに対し、処分場建設に反対する同町の鷲見悟町議は「条例で処分場が建設できない道内で説明会を開く必要があるのか。道や町の情報収集も必要ない」と国などの動きを批判している。最終処分場を巡っては、政府は従来、地方自治体が受け入れを表明する「公募方式」を取っていたが、選定方式に変更した。

*4-4:http://www.shinmai.co.jp/news/20150630/KT150629ATI090019000.php
(信濃毎日新聞 2015年6月30日) 核のごみの最終処分地 長野で自治体説明会
 経済産業省資源エネルギー庁は29日、原発から出る高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の最終処分地選定についての県内自治体向け説明会を長野市内で開いた。会合は非公開。出席した自治体によると、処分地を地中深くに設ける「地層処分」を予定していることなどの説明があった。自治体側からは説明の内容の確認以外に目立った質問や意見は出なかったという。政府は5月、最終処分地について、自治体の応募を基に選ぶ従来方針を転換し、「科学的有望地」を国主導で示すことを閣議決定。同庁は同月から、処分事業を担う原子力発電環境整備機構と共同で各地で説明会を開いている。詳しい日程などは非公表。この日も出席した自治体名は「処分地の受け入れに前向きだとの誤解を与えかねない」などとして明らかにしなかった。主催者側によると、県内77市町村の半数ほどが出席した。説明会に出席した同庁放射性廃棄物等対策室の渡辺琢也室長補佐は取材に、「放射性廃棄物の処分の必要性や、最終処分の方向性などを説明した」と述べた。科学的有望地については現在、審議会で基準を検討中で、具体的な地域などは固まっていないとしている。出席したある自治体職員は「(説明会を)非公開にする内容とは思えなかったし、そうするべきだとも思わない」と述べた。別の自治体職員は説明会に出席するかどうか悩んだとし、「具体的な処分候補地の名前などが挙がると困ると思った。(説明会に)来たくなかったというのが、どの自治体も本音ではないか」と話していた。

<企業トップの判断ミス>
*5-1:http://blog.goo.ne.jp/thinklive/e/20d7243b72342850a1310991646be684 (THINKING LIVE シンキングライブ 2013年2月27日)東芝の社長交代の異常、赤字業態を黒字にした社長が退任、会長は残る?
 ボクは今回の東芝の人事は、オカシイナーと思っていたが、世間も可笑しいと思っていることが分かった、特に西田会長の交代原因の説明には、ムリがある。この記事は、PC部門が赤字で減収であり、原発事故が原発部門の打撃となったことに触れていない。この記事そのものも、逃げている感じ。原発買収の際に、米企業の出資で買収資金の不足をカバ-、昨年その出資株の買い戻しに応じたことなど、東芝のWH買収にともなう、大ムリの資金繰りの推移についても記者は詳細をご存知のはず、今朝の、日経は東芝がフィンランドの原発交渉権獲得と報じているが、この事業の筆頭出資社の独、イーオン社は既に撤退を表明、160万kwの大型炉から、中型炉に変更も報じられている、さも原発が決定しそうに報道されているが、5000億円が3~4000億円に縮小しても、この資金調達は今のEUでは出来そうもない?
*東洋経済、13/2/27、
 東芝は2月26日、佐々木則夫(63)社長が新設する副会長に就き、後任に田中久雄副社長(62)が昇格する人事を発表した。6月下旬に開催する定時株主総会を経て就任する。西田厚聰(69)会長は留任する。東芝は4年サイクルでの社長交代が恒例となっており、佐々木社長も「自分の社長就任会見の時、4年間で結果を出せるようにしたいと答えた覚えがある」とコメントしたほど。今回の社長交代は既定路線だが、意外な点が2つある。1つ目は、新社長となる田中氏の経歴だ。パソコンの資材調達や生産を担当し、英国、米国、フィリピンと、海外駐在経験は延べ14年と歴代社長の中でもっとも長い。従業員20万人のうち半分が外国で働いている東芝にとって、田中氏の豊富な海外経験が高く評価されたことは納得できる。副社長に就任後は、戦略企画を担当しグループ全体を見てきた経験もある。一方で、花形部門であるPC畑?の西田会長や原発畑?を歩んできた佐々木社長など歴代社長に比べると、田中氏は資材部出身。西田会長は「東芝は34の事業を抱えており、このうち1事業しか経験していない人が経営するのは大変。経営は総合力なので、様々な分野の経験を持つ田中さんを社長に選んだ」とベタ褒めだが、地味な印象がある。西田会長発言、「利益が出ていても売上高が落ちてはダメ」。
*人事についての質問に、答えるのは全て会長、
 しかし、東芝は、09年3月期に3435億円という過去最悪の最終赤字を計上して最大の苦難に直面していた。火中の栗を拾う形となった佐々木社長は、大規模なコスト構造改革で4300億円の固定費を削って事業立て直しに奔走。11年3月期には過去最高益を計上し、黒字体質を定着させている。減収となった背景には、携帯電話や中小型液晶の事業売却や円高も影響している。それでも会見後、記者団に囲まれた西田会長は「利益が出ていても売上高が落ちていてはダメだ。企業は成長しないといけない」と漏らした。副会長の仕事内容は「会長からの特命事項を担当する」であり、具体的なイメージが湧いてこない。*これは全くオカシナ話だ、副会長は会長の、お傍用人?西田会長は1年後、会長を退いて相談役に就くと明言している。東芝には70歳で役員を退くという不文律があり、これに沿う意向だ。副会長ポストはあくまで過渡的なポジションであることを認めた格好だが、西田氏が会長職にとどまる必要性は最後まで判然としなかった。西田会長は経団連の副会長退任後について、「財界活動が減る分、現場を回って社長をサポートしたい」と意欲を語ったが、財界活動を続ける可能性も十分に考えられる。来年5月には、経団連の米倉弘昌会長(住友化学会長、75)が任期満了となる。3年前に西田会長は経団連会長の候補の1人だったが、東芝の岡村正相談役が日本商工会議所の会長を務めていたことから、2つの経済団体のトップを東芝が努めることにトヨタ自動車が異議を唱えたことで見送られた経緯がある。ただし西田氏は経団連の副会長を退任後、佐々木社長へバトンタッチすることで経団連会長就任の芽がなくなったという見方もある。今回の東芝のトップ人事には、さまざまな思惑が絡み合っているようだ

*5-2:http://jp.reuters.com/article/2012/10/30/tk0541891-hitachi-aquisition-idJPTJE89T00B20121030 (ロイター 2012/10/30) 
日立が英の原発事業会社ホライズン買収、海外展開強化
10月30日、日立製作所は、英国で原子力発電所建設を計画している事業会社ホライズン・ニュークリア・パワーを買収すると正式に発表した。写真は日立のロゴマーク。都内で2009年2月撮影(2012年 ロイター/Yuriko Nakao)[東京/ベルリン 30日 ロイター] 日立製作所(6501.T)は30日、英国で原子力発電所建設を計画している事業会社ホライズン・ニュークリア・パワーを買収すると正式に発表した。買収額は6億7000万ポンド(約854億円)。東京電力(9501.T)福島第一原発事故の影響で国内での原発新設が難しいなか、日立は買収により海外での事業拡大を図る。日立は、ホライズンの株式を保有する独電力・エネルギー大手RWE(RWEG.DE)と同業エーオン(EONGn.DE)から全株式を取得し、11月中に買収を完了する予定。RWEとエーオンは買収額を6億9600万ポンドと発表したが、日立の羽生正治執行役常務によると、その金額にはホライズンが保有する現金が含まれており、現金が両社に戻されるため、日立が拠出する買収費用は2600万ポンド下回る。都内で会見した羽生常務は、買収目的について「発電所を建設する場が欲しかった」と説明。また、当初は出資比率が100%となるが、5年ほどかかると想定している許認可取得後の原発建設時には出資パートナーを募る予定で、最終的には過半数の株式を売却したい意向を示した。高額になる原発建設費用を抑えるとともに、日立が現状では事業として関われない電力会社などのパートナーを探す予定。日立は今後、ホライズンの事業計画を引き継ぎ、英国の2カ所での130万キロワット級の改良型沸騰水型軽水炉(ABWR)を計4―6基建設する。このうち最初の1基は2020年代前半の運転開始を目指す。日立は原発建設と稼働後の保守・管理を請け負う方針。原発建設費用は精査中として公表しなかった。原発の建設費は1基5000億円前後とされており、資金調達の具体的な手段については、財務アドバイザー(FA)のみずほフィナンシャルグループ(8411.T)と米投資銀行エバコア・パートナーズと相談中で、政府系金融機関からの調達も検討する。羽生常務は、投資回収には18年程度かかる見通しで、出資と融資の割合は3対7を想定していると語った。ホライズンはRWEとエーオン2社が出資し、英国で原発事業を展開するため2009年に設立した。しかしドイツ政府が脱原発政策に転じたのを受け、今年3月に売却する方針を表明、買い手を探していた。日立は20年度の原子力事業の売上高を1600億円だった11年度に比べ、約2.3倍となる3600億円に増やす目標を掲げている。日立の受注が内定していたリトアニアでの原発建設計画が10月の国民投票で反対多数となるなど、海外での事業環境も先行き不透明感が強まっており、今回のホライズン買収で海外開拓に弾みをつけたい考えだ。

*5-3:http://headlines.yahoo.co.jp/videonews/jnn?a=20150722-00000017-jnn-pol
(JNN 2015年7月22日) 政府、中国のガス田開発で新たな証拠写真公開へ
 日本と中国が共同で開発することで合意している東シナ海のガス田開発を巡り、日本政府は、中国が合意に反し、一方的に開発を進めているとして、その証拠を示す航空写真を22日に公開することにしています。「一方的な開発には抗議してきているので、そうしたことも含めて最終調整をして、現状を明らかにしていきたい」(菅 義偉 官房長官)。東シナ海のガス田開発を巡っては、2008年に当時の福田総理と中国の胡錦濤国家主席との首脳会談を受けて、共同開発を行うことで合意しました。しかし、2010年の沖縄県・尖閣諸島沖の中国漁船衝突事故などで交渉がストップし、その間に中国側が「白樺」ガス田の天然ガス掘削施設を完成させたことなどが判明しています。外務省幹部は「日中関係改善の流れがある中で、一方で、逆の動きがあることは遺憾だ」と中国側に不快感を示しているほか、別の幹部は、写真を公開する理由について「中国側をけん制する狙いがある」と説明しています。中国のガス田開発については21日、閣議報告された「防衛白書」の中で「中国側が一方的な開発を進めていることに対して、我が国から繰り返し抗議をすると同時に、作業の中止を求めている」と説明されています。


PS(2015年8月1日追加): 資源エネルギー庁は、長期の全体見通しを立てて判断をすべきだったにもかかわらず、それをせずに日本のエネルギー自給率を下げ続けてOECD諸国最低にし、うなぎ上りに値段の上がっている原油と高い原発に頼って、単価を下げることが可能な太陽光発電を妨害し、日本のエネルギー価格を高止まりさせた戦犯である。そのため、*6のように、資源エネルギー庁の幹部に、「皆さんの持っている知識を知らしめてください」と言うのは、よほどの東大コンプレックスだろう。しかし、世の中にはいろいろな専門家がおり、「東大法学部卒→官僚」は足元にも及ばない知識を持っている人も多いため、「真実の情報を伝えること」や「言うこと」が勇気のいる大切なことであり、そのようなことにこそ「言論の自由」や「表現の自由」が保障されなければならないのだ。

    
   日本のエネルギー自給率推移と       原油輸入単価と太陽光発電単価の推移
    OECD諸国における位置

*6:http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2015073002000254.html
(東京新聞 2015年7月30日) 反原発コメンテーターを「個別撃破」 大西議員、エネ庁幹部に要求
 自民党の大西英男衆院議員(写真、東京16区)は三十日午前、党本部で開かれた原子力政策に関する会合で、原発に批判的なテレビのコメンテーター(解説者)らに関し「個別にどんどん正確な知識を知らせていくべきだ。各個撃破でいいからぜひ行って、皆さんの持っている知識を知らしめてください」と資源エネルギー庁の幹部らに求めた。大西氏は六月、党の勉強会などで安全保障関連法案をめぐり「誤った報道をするマスコミには広告は自粛すべきだ」などと、報道機関に圧力をかける発言を繰り返し、谷垣禎一幹事長から二度にわたり厳重注意を受けたばかり。昨年は国会で女性蔑視のやじを飛ばして謝罪している。大西氏は会合で「安保法制が一段落つけば、九州電力川内(せんだい)原発がようやく再稼働になるが、こういった(再稼働)問題にマスコミの攻勢が行われる」と指摘。解説者らの発言を「ことさら原発再稼働反対の意思を表示している。一般の人たちが聞くと、あたかも日本のエネルギー政策は間違っているというとらえ方をしかねない」と述べた。


PS(2015年8月2日追加):考えたくないことは考えずに“想定外”と説明してきた東京電力福島第一原発事故だが、*7のように、「高さ15.7メートルの津波が襲う可能性があるという試算は、2009年6月までに報告されたにもかかわらず必要な措置を怠って重大な事故を発生させた」という理由で、東電の元3幹部が強制起訴された。検察審査会は、議決で「原発事業者は『万が一にも』発生する津波、災害にも備えなければならない高度な注意義務を負う」と指摘しており、過酷事故の存立危機事態を招く程の大きさを考えれば、私もそう思う。そして、川内原発も、周囲に活火山が多いため、万が一を考えるべきだ。

*7:http://www.tokyo-np.co.jp/article/feature/nucerror/list/CK2015080102100004.html (東京新聞 2015年8月1日) 東電元3幹部 強制起訴へ 「原発 万が一に備える義務」
 東京電力福島第一原発事故の刑事責任をめぐり、東京地検が二度不起訴とした東電の勝俣恒久元会長(75)ら旧経営陣三人について、東京第五検察審査会は三十一日、業務上過失致死傷罪で起訴すべきとする二回目の議決を公表した。三人は今後、裁判所が指定した検察官役の弁護士が強制的に起訴する。市民の判断により、原発事故の刑事責任が初めて裁判で問われる。選挙権のある国民から選ばれた審査員十一人による議決で、七月十七日付。他に起訴議決が出たのは、武藤栄(さかえ)元副社長(65)と、武黒(たけくろ)一郎元副社長(69)。検審は議決で、「原発事業者は『万が一にも』発生する津波、災害にも備えなければならない高度な注意義務を負う」と指摘。勝俣元会長らを「福島第一原発に高さ一五・七メートルの津波が襲う可能性があるとの試算結果の報告を、遅くとも〇九年六月までに受けたが、必要な措置を怠り、津波による浸水で重大な事故を発生させた」とした。東電は〇七年七月に柏崎刈羽原発事故などを経験し、原発が浸水すれば電源を失って重大事故が起きる危険性を把握していたとも指摘。勝俣元会長らは福島第一原発でも地震と津波による事故発生を予測でき、運転停止や防潮堤の建設などの対策を取れば、事故を避けられたと結論づけた。事故では、近隣病院の入院患者が避難を余儀なくされ、衰弱死するなどした。検審は、原発の建物が爆発した際に負傷した東電関係者や自衛官ら計十三人と、死亡した患者計四十四人を被害者と判断した。被災者らでつくる「福島原発告訴団」は一二年六月、勝俣元会長らを告訴・告発。東京地検は一三年九月、津波は予測できなかったとして、捜査対象の四十二人全員を不起訴にした。検審は昨年七月、元会長ら三人を「起訴相当」と議決。地検は今年一月に再び不起訴とし、別メンバーによる検審が再審査していた。


PS(2015年8月3日追加):*8に書かれているとおり、原発過酷事故の際の被害地元は広大な地域であるため、その地域の人は、その時の対処方法を確認しておく必要がある。しかし、原発の過酷事故は、一時的に避難すればよいというような甘いものではなく、熊本県、宮崎県、鹿児島県に住めなくなったり、農水産物が食べられなくなったり、高天原(@宮崎県高原町)に行けなくなったりするのだということを忘れてはならない。にもかかわらず、鹿児島県と薩摩川内市以外の同意はいらないとするのは、再稼働のための便宜でしかない。

       
    2015.8.3、7.7      2015.7.8  過酷事故時の汚染地図 
      東京新聞        西日本新聞    (フクイチ、大飯)
*8:http://www.tokyo-np.co.jp/article/economics/news/CK2015080302000117.html
(東京新聞 2015年8月3日) 川内原発 迫る再稼働 鹿児島県外から説明会の要請続々
 九州電力川内(せんだい)原発1、2号機(鹿児島県)の再稼働が迫るなか、九電に公開の説明会を求める声が、鹿児島県外にまで広がっている。宮崎、熊本両県では、四つの市町議会が決議などの形で意志を表明した。だが、九電は求めに応じていない。原発から七十八キロ東の宮崎県高原(たかはる)町。川内原発がある西からの風が吹くことも多く、市民グループが原発近くから風船を飛ばした実験では、三時間後に町内で拾われたこともある。議会は「事故時に原発の風下になれば、町は壊滅的被害を受ける。まさに『被害地元』そのもの」と主張。説明会を求める文書を九電に送った。中村昇町議(63)は「放射能は県境に関係なく飛んでくる。このままの再稼働は許されない」と焦りをにじませる。隣り合う鹿児島県出水(いずみ)市から避難住民を受け入れる計画の熊本県水俣市では、同議会が「(福島では)いまだ十二万人が故郷を奪われたままなのに、原因の究明は中途半端。市民が不安なまま再稼働に踏み切るのは無責任だ」と安易な再稼働を批判するとともに、説明会を求める決議をした。原発まで百三十キロほど離れた熊本県荒尾市と大津(おおづ)町の議会はいずれも、福島の事故当時、政府が二百五十キロ圏まで避難が必要になる最悪のケースを想定していたことを指摘。「川内原発にあてはめれば九州全域がすっぽり入り、全県が避難の対象になる。説明会は当然」などと訴えた。鹿児島県内では三月以降、原発から約百七十キロ離れた屋久島町議会など六市町議会が九電に説明会を求めてきたが、九電は「個別の要請に応じて話はしている」と、公の場での開催を避けている。


PS(2015年8月5日追加): 8月6日のヒロシマ原爆の日直前の8月5日に原子力規制委が川内原発再稼働の認可を行い、8月9日のナガサキ原爆の日翌日の8月10日に九州の川内原発を再稼働するというのは、唯一の被爆国として皮肉なことだ。また、国の存立をも脅かす規模になるため、決して過酷事故を起こしてはならないリスク機器の運転延長を認めるというのも常識はずれだ。さらに、このような場合に「原発事故の確率は0ではない」などと小賢しげに居直るのは、総合的判断力のない馬鹿である。 ぷん

*9:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/215629
(佐賀新聞 2015年8月5日) 川内再稼働「法令違反だ」 脱原発団体、国会内で集会
 脱原発を掲げる各地の市民団体の代表らが九州電力川内原発1号機(鹿児島県)の再稼働反対を訴える集会が4日、国会内で開かれた。参加者は「運転開始30年を超えて稼働する際に必要な認可手続きに不備があり、法令違反だ」と主張し、説明に訪れた原子力規制庁の担当者に、再稼働延期を申し入れた。九電は、早ければ今月10日に原子炉を起動させ再稼働する方針。集会に参加した各団体は5日、原子力規制委員会前で抗議集会を開く。川内1号機は7月で運転開始から31年。集会に参加した「原子力規制を監視する市民の会」の阪上武代表は「30年を過ぎる前に認可を得る必要があるが、まだ認可がなく、法的に問題がある」と指摘。「規制委は再稼働の日程に間に合わせるため、慌てて5日に認可しようとしている。率先して電力会社を手助けしているとしか思えない」と批判した。


PS(2015年8月8日追加):*10-1のように、特定の理論物理の専門家が、「再生可能エネルギーは蓄電技術が不十分なため、千年先を考えると原子力に代わるエネルギー源があるとは思えず、最終的には核融合発電しかない」などとしているのは、畜電技術は水素燃料や蓄電池の改良などが着々と進んでいる中で、お手盛りの論理の飛躍が過ぎる。また、「一般市民は、発作的に脱原発を訴えている」などとしているのも増長し過ぎで、一般市民は素粒子馬鹿ばかりではないため多面的に検討しているのだ。なお、*10-2のように、既に太陽光発電の普及や節電技術の進歩で猛暑でも電力にゆとりが出ており、日本は自然エネルギーの豊富な国であるためドイツよりも条件が良く、数十年単位や千年単位ではなく数年単位で実現可能なのである。

       
     8月5日の各社       2015.8.8朝日新聞  川内原発周辺の  審査中の原発
     電力使用状況         (*10-2)      医療・福祉施設  

*10-1:http://qbiz.jp/article/68518/1/ (西日本新聞 2015年8月8日) 【再考〜原発再稼動 識者インタビュー】(終)京都産業大教授・益川敏英氏
◆現実的視点が不可欠
−原発についてどう考えているか。
 「化石燃料は、あと300年ほどで枯渇する。シェールガスやシェールオイルの開発が進んでも、枯渇時期が100年ほど延びるだけで、いずれ化石燃料に代わるエネルギー源が必要になる。最終的には核融合発電だろうが、技術的問題が残っている。再生可能エネルギーも蓄電技術が不十分なため、安定的に利用できない。千年先を考えると、原子力に代わるエネルギー源があるとは思えない」
−川内原発(鹿児島県薩摩川内市)が再稼働に向け最終段階に入った。原発再稼働についての考えは。
 「福島第1原発事故が起きたように、原発はまだ安心して使える電源ではない。使用済み核燃料をどう処分するか、という難題も抱えている。国内に既にたまっているプルトニウムで大量の核爆弾が製造できてしまうのは、怖いことだ。火山と地震が多い日本で、核のごみを地中に埋める処分方法が適切とは思えない。原発は非常に難しい問題を抱えている」 「それでも、背に腹は代えられないというべきか、原発を再稼働するよりほかに方法がないと思う。ドイツは脱原発にかじを切ったと言われるが、リスクや責任を周辺国に転嫁しているだけだ。最も怖いのは、将来的に原子力の人材がいなくなる事態だ。原子力研究はかつて花形だったが、学生の人気が落ちつつあるようだ。一流の技術者が育たなくなれば、原子力は余計に危なくなってしまう」
−国民世論の多くは脱原発を望んでいる。
 「福島の事故を受け、一般市民が不安を覚えるのは当然の反応だが、多くの人が発作的に脱原発を訴えているのは問題だろう。エネルギーは誰もが使わざるを得ない。長期的な視点とリアリズム(現実主義)が不可欠だ」
−長期的には、再生エネの普及拡大が期待できるのではないか。
 「基本的に電気はためられないことが、ネックになっている。大量かつ安価にためられる電池技術が確立され、太陽光や風力を増やせれば、ある程度の問題は解決できる。だが、エネルギー問題は一筋縄にいかない。民間主導、商業ベースでの技術開発には限界がある。原発にしろ再生エネにしろ、300年後を見据えて課題を抽出し、国家プロジェクトとして継続的な研究に取り組む必要がある」

*10-2:http://digital.asahi.com/articles/ASH875HWYH87ULFA01Y.html?iref=comtop_6_02 (朝日新聞 2015年8月8日) 太陽光発電の普及・節電定着…猛暑でも電力にゆとり
 東京都心で7日、最高気温35度以上の「猛暑日」が過去最長の8日連続となるなど、各地で記録的な猛暑が続くなかで、大手電力各社は比較的余裕のある電力供給を続けている。すべての原発は止まったままだが、太陽光発電の普及や節電の定着で、真夏の電力不足の心配は遠のいている。電力供給にどれだけ余裕があるかは、その日の電気の供給力と、一日で最も電力の需要が多いピーク時を比べた「最大電力使用率」でわかる。東京電力や関西電力の場合、これが90%以上だと電力の余裕が「やや厳しい」、95%以上だと「厳しい」とされる。100%に近づくと、必要な電力に供給が追いつかず、停電の恐れがでてくる。7日までの1週間で、東京、中部、関西、九州各電力の最大使用率をみると、95%以上になったのは1日の中部電だけだった。東電では90%以上が4日あり、あとは90%未満の「安定的」だった。関電と九電は震災前に原発依存度が高く、今夏も綱渡りの供給が心配されたが、この1週間、関電で90%以上となったのは8月3日の1日だけ。九電はゼロだ。やはり猛暑だった2013年、関電は7~8月の2カ月間で90%以上が22日間あり、最大使用率が96%に達した日もあった。余裕ができた背景には、電力供給の変化がある。東日本大震災後、安定した電力の供給源だった原発が止まったことで、電力各社は老朽化で止めていた火力発電所もフル稼働するなどして供給力を維持したが、夏場の電力需要のピーク時の供給には不安があった。だが、再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度(FIT)のもと、太陽光発電の導入量がこの5年間で10倍近くに急増。晴れた日に発電量が多くなる太陽光が夏のピークに対応し、電力供給の安定につながっている。一方で、夏のピーク時の電力需要も、震災前と比べて十数%ほど少ない。LED照明への切り替えなど、企業や家庭で節電の取り組みが広がっているためだ。九電は11日にも、川内原発1号機(鹿児島県)の再稼働をめざしている。猛暑続きでも電力供給にゆとりがある日々が続いていることは、再稼働の是非をめぐる議論にも影響しそうだ。


PS(2015年8月10日追加):*11-1には、「安全か振興か」として、地域の安全と経済や振興が二者択一であるかのように書かれているが、他産業の誘致や移住促進を行うためには安全が前提であるため、地域振興は安全の上にしか成り立たない。それに対し、「原発が停止して、受注減で原発関連会社の経営が悪化した(原発関連業者)」「怖いけど『安全』という九電や国を信じて受け入れるしかない(原発作業員向け民宿の女性)」など地元の原発関係者の再稼働賛成意見が掲載されているが、このように一部の人が自分の利益にしがみつくと、地域全体が先進的な新しい事業を始めたり、次のステップに進んだりするチャンスを逃すのである。
 さらに、*11-2のように、長期間の原発停止で、原発の温排水による生態系の破壊が、磯焼けや漁獲高の減少によって水産業に著しく迷惑をかけていたことが明らかになった。このほか、原発が平時から一定量の放射性物質を排出している公害源であることは、前にこのブログに記載したとおりだ。

    
     *11-1より    2014.3.11東京新聞    2014.12.20そもそも総研

*11-1:http://qbiz.jp/article/68551/1/ (西日本新聞 2015年8月10日) 安全か振興か葛藤なお 再稼働目前川内原発の街 「手放しで喜べない」
 福島第1原発のような事故が、いつか起きるかもしれない。でも原発が止まったままでは、この街の生活は成り立たない−。九州電力川内原発(鹿児島県薩摩川内市)の地元では、11日の再稼働が目の前に迫った今もなお、住民たちが「安全」と「経済」のはざまで揺れている。「手放しで喜ぶ雰囲気はない」。川内原発の安全対策工事を請け負う地元企業の作業員男性(59)は、職場の様子を打ち明けた。原発が停止して4年。受注減で会社の経営は悪化し、ボーナスは減少した。リストラの計画もあった。再稼働は待ち望んでいたはずだった。
 なぜ喜べないのか。男性は「福島事故で、原発の現場でも『事故は起こり得る』と考えるようになったから」と話す。手掛けた工事に自信はあるが、想定外の何があるか分からない。就職して32年。原発のおかげで家を建て、子どもも育てた。安全に疑念を抱いたのは初めてだ。原発の南6キロにある自宅には、父親(91)と母親(88)が同居する。ともに足腰が弱く、事故が起きても迅速な避難は難しい。「原発は絶対の技術ではない。早く自然エネルギーにバトンタッチしないと」。原発の東11キロ。旅館やホテルが軒を連ねる薩摩川内市の中心街で、民宿の女性(83)は「怖いけど『安全』という九電や国を信じて受け入れるしかない」とうなずいた。13カ月おきにある原発の定期検査で全国から来る作業員を見込み、27年前に開業した。検査で1カ月半の間は50人収容の宿が満室になった。運転停止後は1日10人前後。4人のパートを半減させ、貯金も取り崩した。ひとたび原発事故が起これば、福島のように地域は崩壊するだろう。「結局、九電さまさまなんよ。川内は『原発の街』だから」。経営を考えると再稼働に期待するしかない。原発を望む海岸では9日、再稼働反対を唱える集会があり、全国から集まった2千人(主催者発表)が「国民の大半は再稼働に不同意だ」とデモ行進した。参加者で、原発の南東8キロに住む主婦馬場園征子さん(74)は憤る。「地元でも、もろ手を挙げて賛成する住民は少ない。一部の権力者の意向だけで進む再稼働に納得できない」

*11-2:http://d.hatena.ne.jp/TAKAO100000/20140414/1397493520
(元高槻市議会議員 和田たかお 2014-4-14) 原発停止で海の生態系に劇的変化が起こっている
 今、日本国中の原発がすべて止まっている。2014年4月12日のMBS「報道特集」は、原発の長期間停止で、その周辺の海に大きな変化が起こっていることを特集していた。その場所の一つは、6月末にも原子力規制委員会の審査が終わり、8月にも再稼働と「産経」が報じている川内原発の南部、いちき串木野市北西部の海だ。川内原発が出来てから、この地区の羽島漁協定置網漁の水揚げは20年で数分の1になったという。これは海藻がなくなったからだという。ところが、原発が2年半稼働停止になっている間に、海藻が生育できる状況に少しずつ変化が生じ、磯辺でもひじきが生育し始めているという。海水温が原発からの温排水で暖められていたのがなくなったのが原因と推定されている。佐賀県の玄海原発周辺でも事情は同じ。2006年に調査したときは全く海藻が生えていなかったのに、現在では海底に少し海藻が生えてきているという。海藻は暖かい海では生育できないのだ。魚も変化している。原発稼働中は南の海の魚が生き残れることで、色鮮やかな魚やキビナゴなど暖かい海に生息する魚が多かったが、それがいなくなっている。若狭湾の原発でも事情は同じ。ここでは京都大学の益田玲爾准教授が。高浜原発近くの海で10年間潜水調査を継続されていた。益田先生によると、高浜原発稼働停止から数日間で、寒さで息絶えている魚を見たと言われる。また、ここでも現在海藻の一種ホンダワラなどが生い茂り始めている。サザエやムラサキウニなどの原発稼働前に生息していた生物が復活、稼働中に見られたガンガゼ(ウニの一種)も稼働停止後2週間で死に、1ヶ月後には長いとげしか残っていなかったという。原発周辺の海は水温が2度高くなっていたのだ。人間にとって空気中の2度はどうにでも調整できるが、魚にとっては生死を分けてしまう水温なのだという。益田先生は火力発電所でも同じ研究をなさっているが、海に変化は起きていなかった。これらの事実から考えても、如何に原発が自然環境を破壊するものなのかよくわかる。原発を「エネルギー基本計画」の中で、ベースロード電源として位置づけ、再稼働に向けてまっしぐらに進む安倍政権の危険性が示されていると言うべきだろう。

| 原発::2015.4~10 | 02:05 PM | comments (x) | trackback (x) |

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