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2016.9.13 テロと難民は、どうして発生したのか? (2016年9月14日、17日に追加あり)
 
 2001年9月11日  イラク戦争 イラク戦争の検証   2014.10.12     シリア爆撃      
アメリカ同時多発テロ        2016.7.7朝日新聞   東洋経済     

      
     2016.3.17        難民          難民             難民
国境なき医師団の病院爆撃   

(1)今、テロと戦争の境界はどうなっているのか
 日本政府は、*1-1のように、2015年12月4日、過激派組織「イスラム国(IS)」のテロ活動を照準に、中東などでの情報収集と分析能力を強化して、「パリ同時テロ」を受けたテロ対策を決めたそうだ。

 また、オバマ米大統領も、2016年4月1日、第4回核安全保障サミットで、*1-2のように、①ISによる核テロの可能性を強く警告し ②ISの壊滅を誓うとともに ③核物質の管理強化へ向けた機運維持を訴え ④核物質や核施設の防護・保安は国家の根本的な責任だとして ⑤核テロ阻止の取り組みを「永続的な優先課題」と位置付けるコミュニケを採択したとのことである。

 しかし、*3のように、日本の特定秘密保護法12条は、テロを「政治上その他の主義主張に基づき、国家もしくは他人にこれを強要し、または社会に不安もしくは恐怖を与える目的で人を殺傷し、または重要な施設その他の物を破壊するための活動」と規定しており、日弁連の江藤氏が「法案は言論弾圧や政治弾圧に利用される恐れがある」と指摘したほど、「テロ」と認定される範囲は広い。そして、国家ぐるみでない核テロの可能性というのは考えにくく、むしろ環境省や原子力規制委員会の了承の下に行われている*5-1、*5-2のフクイチの大量の核物質の拡散の方が、国家ぐるみの核テロに当たると言えそうだ。

 なお、*1-3のように、「イスラム国」は本当に「国」を造ろうとしている人たちの集まりで、イラク戦争で米国に敗れたサダム・フセイン政権下の旧軍人や当時与党だったバース党の党員らが中核として支えており、米軍がバグダッドに進攻した時にいなくなったフセイン大統領の防衛隊と民主化の過程で追放されたバース党員が、イスラム国の指導者と反米で一致して共闘を組み、強力になったと考えられるそうだ。

 また、米国は、独裁的であるとしてシリアのアサド政権とも敵対しており、アサド政権を支援するわけにはいかないため、サウジアラビアをはじめとする湾岸諸国や米欧が支援してきた反アサド政権組織の自由シリア軍を中心に武器を与え、戦術・戦略も教えて支援していくことになるのだそうだ。

 しかし、日本は、イラク戦争ではイラクに自衛隊を派遣して学校や道路の修復を行ったが戦争には参加していないため、日本人がテロの直接ターゲットにされる可能性は低く、空爆を行った米国・フランス、武器供与や人道支援をした英国・ドイツ、軍事作戦に参加表明した豪州・カナダ・オランダ、空爆に参加したサウジアラビア・アラブ首長国連邦・カタール・バーレーン・ヨルダンの人や石油を中心とする経済施設、欧米の外交施設、欧米系のホテル・ショッピングモールなどがテロの対象となり、警戒を要するそうである。

 海外では政府から独立した機関の検証が進み、オランダの独立調査委員会は、2010年、「イラク戦争は国際法違反だった」との報告書を出した。また、英国でも*1-5のように、ブレア元首相をはじめ120人以上を喚問して、「平和的な解決手段を尽くす前に侵攻した」と断定し、英ブレア政権だけでなく、米ブッシュ政権をも厳しく批判する260万語に及ぶ報告書を、2016年7月6日に公表した。

 さらに、米国では、2004年に中央情報局(CIA)主導の調査団が、2005年には独立調査委員会が、それぞれ情報収集の誤りを全面的に認める報告書を公表し、2014年の上院委員会による報告書は、拷問や過酷な尋問など、イラク戦争を含めた「テロとの戦争」時の問題点を指摘している。

 米国主導の2003年のイラク戦争とそれへの日本政府の支持が正しかったかどうかについては、私も当時の事情説明の報道を聞いて疑問に思ったが、やはり大量破壊兵器は見つからず、現在、*1-4のように、日本でも検証を行う市民グループの公聴会が始まっている。しかし、米英軍の侵攻の後、イラク戦争で民間人が16万人超も亡くなり、フセイン大統領も処刑され、現在も空爆で民間人の虐殺と難民化が続いていることに対しては、どういう賠償がなされるのか疑問だ。

 それにもかかわらず、イラク戦争をいち早く支持した日本では、2012年12月に外務省内の政策決定過程に関する4ページの「検証結果」が発表されたのみで、聴取した個人名も公表されず、大量破壊兵器が確認できなかったことについては「厳粛に受け止める」とするに留まっている。これについて、上智大学の中野教授は、「日本では国家は間違わないという神話が根強く、官僚も政府の過ちを認めない」と説明しておられるが、これはあらゆることに当てはまり、国家が責任を認めなかった分は被害者の責任になっているのである。

(2)民主主義を抑え込むツールになる「共謀罪」について
 このように「テロ」の定義がどうにでも拡大解釈できる中、*2-1のように、「共謀罪(犯罪を実行する前に相談しただけで処罰できるとする法律)」は、過去3回、国会に提出して廃案になったにもかかわらず、与党が罪名を「テロ等組織犯罪準備罪」に変えて国会提出を検討している。どちらが最初の加害者かわからないのに、我が国でイスラム国の「テロ」を口実にして、テロ防止のためとして人権侵害にあたる法律制定が続いているのは問題だ。

 この点、共産党の機関紙である赤旗は、*2-2のように「共謀罪はテロ対策口実の市民弾圧法であり、名前を変えても本質は変わらない」と明確に述べており、南日本新聞も、*2-3のように「共謀罪の提出は監視社会への不安がある」という識者の意見を掲載している。また、琉球新報は社説で、*2-4のように「共謀罪は罪名を変えたところで市民活動を抑え込み、思想・信条の自由を侵す危うさは民主主義を崩す悪法だ」として、「共謀罪の新設は必要ない」という正論を書いている。

 さらに、法律の専門家集団である日本弁護士連合会も、2006年9月14日、*2-5-2の「共謀罪新設に関する意見書」で「政府と与党が導入を主張している共謀罪の規定は我が国の刑事法体系の基本原則に矛盾し,基本的人権の保障と深刻な対立を引き起こす恐れが高く、導入の根拠とされている国連越境組織犯罪防止条約の批准にも、この導入は不可欠とは言い得ない。よって「共謀罪」の立法は認めることができない」としており、さらに2016年8月31日には、*2-5-1の「いわゆる共謀罪法案の国会への提出に反対する会長声明」を公開している。

(3)難民について
 爆撃や内戦が続くシリアなどから、*4のように、難民・移民が欧州に押し寄せる中、極寒の北極圏を経由して自転車で北欧に流入するルートが急増しているそうだ。ロシアは、シリアのアサド政権と親密な関係で、シリア人にとってビザが比較的手に入りやすいほか、地中海を渡る従来のルートは船の遭難が続発しているため、より安全な行き方として選ばれているとのことである。

 しかし、難民となっている人たちも、もともとはりっぱな街で市民生活を送っていた人たちであり、難民の製造責任はイラクやシリアの爆撃にある。そのため、戦争を終息させ、ここに現代産業を起こして男女とも教育を徹底するのが、難民・戦争・テロをこれ以上増やさない方法だと考える。

<テロと戦争の違い>
*1-1:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20151205&ng=DGKKASFS04H4T_U5A201C1PP8000 (日経新聞 2015.12.5)「イスラム国」念頭、テロ対策を強化 官邸に情報集約/中東に人材配置
 政府は4日、パリ同時テロを受けたテロ対策の具体案を決めた。各地で頻発している過激派組織「イスラム国」(IS)によるテロ活動を意識し、中東などで情報収集体制を大幅に強化する。首相官邸が中心となり、外務、防衛両省や警察庁などの情報を円滑に共有できるかが重要になる。菅義偉官房長官は4日の記者会見で「情報収集と分析能力を強化し、テロの未然防止に必要な措置をとった」と強調した。中東やアフリカなどの在外公館で語学が堪能な職員を約20人増やし、現地の治安機関や事情に通じた部族長・宗教指導者とのパイプづくりに努める。情報網の構築でテロの未然防止と発生時の迅速な対応につなげる。警察庁はサイバー空間のテロ関連情報を専門的に収集・分析する組織を来年度中に新設する。ネット動画を活用した広報・宣伝活動に力を入れるISを念頭に置いた。約20人の「国際テロ情報収集ユニット」を外務省に置き、官邸の「国際テロ情報集約室」の要員を兼務させて情報共有を進める。政府高官は「官邸に直接、情報が入るよう工夫した」と話す。外務省や防衛省、警察庁、公安調査庁は連携があまりない。危機管理に詳しい小川和久・静岡県立大特任教授は「情報を束ねるトップが各省から情報を吸い上げられる体制が重要だ。努力の跡がみられるが、縦割りの排除には時間がかかる」とみる。

*1-2:http://www.saga-s.co.jp/news/national/10201/295997
(佐賀新聞 2016年4月2日) 核テロ阻止、永続的な課題、最後の安保サミット閉幕
 50カ国以上の首脳らが参加してワシントンで開かれた第4回核安全保障サミットは1日、核物質や核施設の防護・保安は国家の根本的な責任だとし、核テロ阻止の取り組みを「永続的な優先課題」と位置付けるコミュニケを採択、閉幕した。オバマ米大統領の提唱で2010年に始まったサミットは今回が最後。オバマ氏はこの日の会合で、過激派組織「イスラム国」(IS)による核テロの可能性を強く警告。IS壊滅を誓うとともに核物質の管理強化へ向けた機運維持を訴えた。

*1-3:http://toyokeizai.net/articles/-/50287 (東洋経済 2014年10月12日) 「イスラム国」との戦いは第3次イラク戦争だ、畑中美樹・インスペックス特別顧問に聞く(上)
●フセイン時代の共和国防衛隊やバース党員が共闘
――「イスラム国」とはどのような組織か。
 イスラム国の全容はまだはっきりとはわかっていないが、イスラム国の元メンバーのインタビューなどが先進国の専門機関を通じて行われており、多少輪郭がわかってきている。一般のマスメディアでは、アルカイダと同様、イスラム原理主義の過激な国際テロ組織ととらえられているが、実態はそうではなく、本当に「国」をつくろうとしている人たちの集まりである。イラク戦争で米国に敗れたサダム・フセイン政権下の旧軍人や、当時イラクの与党であったバース党の党員らが中核としてイスラム国を支えている。6月に(イラク北部の都市)モスルを制圧した時などの軍事作戦を見ていると、どう考えても素人による作戦ではない。モスル制圧の後、首都バグダッドに進軍するが、落とせないとなると今度は北部のクルド人地域を攻撃。その過程で油田や製油所、ダムといった、国家にとってのライフライン、収入源になる施設をしっかり押さえている。こうした組織的、計画的な動きは、単なるテロリスト、過激派集団が行っているのではなく、軍事的経験のある旧軍人や政権を担ってきたバース党員たちがバックにいることを示している。そのため、私は今のイスラム国の動きを「第3次イラク戦争」と呼んでいる。第1次が1991年1~3月の湾岸戦争。米国はこれでサダム・フセイン政権を叩いたが、大量破壊兵器を持ったまま生き残ったという疑いを理由に2003年3~5月にイラク戦争を行った。これが第2次。結果としてサダム・フセイン政権は崩壊し、フセイン大統領も処刑された。しかし、米軍がバグダッドに進攻した時に、フセイン大統領を守る強力な軍隊と言われていた共和国防衛隊の大半が忽然と消えてしまった。一方、バース党員はイラク民主化の過程で追放された。彼らが、台頭してきたイスラム国の指導者と嫌米、反米で一致し、戦術的な共闘を組んだ。したがって強力になったと考えられる。米国のヘーゲル国防長官の議会証言などを聞いていても、イスラム国は単なるテロ組織ではなく、準国家組織のような言い方をしている。米国はその辺をよくわかっているのだと思う。空爆だけでは解決できず、数年以上かかると言っているのは、最終的には地上での戦闘で駆逐しない限り勝てないと考えているからだ。
●問題はシリア、自由シリア軍はあてにできない
 空爆だけでは終わらないことはわかっている。したがって、イラクについては、イラクの正規軍を米国の軍事顧問団によって訓練し、新たな軍備も供与して、イスラム国と地上で戦闘させている。
問題はシリアだ。米国はシリアのアサド政権とも敵対しており、同政権を支援するわけにはいかない。となると、サウジアラビアをはじめとする湾岸諸国や米欧が支援してきた反アサド政権組織の自由シリア軍を中心に、やはり武器を与えて、戦術・戦略も教えて支援していくことになろう。ただ、イラク正規軍とは違い、自由シリア軍は過激派組織で、人数も少数なので、イスラム国と対等に渡り合える戦力になるかははなはだ疑問だ。
――最終的に米国自身が地上軍を派遣する可能性は。
 オバマ政権が続く2016年までは米兵の地上軍派遣はないだろう。ただ、イラクにはすでに1600人の軍事顧問団が入っており、イラク正規軍が最前線で戦っている時にその一部が後方で指示を出したり作戦を供与したりすることはあるだろう。それでもイスラム国は駆逐されないと見られ、次の大統領が就任する17年以降に米国の世論がどうなっているかによって、場合によっては地上軍派遣がありうるかもしれない。オバマ大統領は、本心としては中東にあまり手を染めたくないと考えているようだ。それよりも、国内の経済問題を中心に政策努力を集中し、米国経済を再生することに最大の関心がある。ただ、今年の中間選挙を控え、中東問題でこのまま何もしないと選挙に大敗しかねない。それを食い止めるためにも、空爆の決断をしたということだろう。11月の中間選挙後にオバマ政権がどう動くかはよく見ていく必要がある。
●日本人はテロに巻き込まれないよう警戒を
――米国などの世論を動かしたイスラム国による欧米人の公開処刑や無差別テロ、諸外国からイスラム国への大量参加といった動きがさらにエスカレートする恐れは。
 空爆が始まったことにより、イスラム国は逆に自分たちは被害者だと広報宣伝活動を強めるだろう。彼らが主張しているのは、今のイラクやシリアの国境線は20世紀初頭に当時の大国が勝手に引いたものであり、そうした外国勢力の庇護下にある政権を倒し、すべてをイスラム国にすべきだというものだ。そうした主張に共鳴する人たちの間では、空爆開始を機に、イラクやシリアに入ってイスラム国に加わろうという動きが強まるかもしれない。また、欧米で、あるいはアジアも含めて、欧米系の経済権益や人々に対するテロ攻撃が起きる可能性がある。
――日本人がターゲットになる可能性も高まっているといえるか。
 彼らの考える費用対効果から言えば、日本人を直接ターゲットにする可能性は低いだろう。彼らのいちばんのターゲットは、空爆を始めた米国や、イラクで空爆に加わったフランス、武器供与や人道支援をしている英国やドイツ、軍事作戦参加を表明した豪州やカナダ、オランダなどの人たちだろう。欧米以外では、今回の空爆に参加したサウジアラビアやアラブ首長国連邦(UAE)、カタール、バーレーン、ヨルダンの人たちや石油を中心とした経済施設、さらには欧米の外交施設、欧米系のホテル、ショッピングモールなどでテロの警戒を要する。日本人はおそらく直接の対象というより、昨年9月にケニアのショッピングモールで起きたように、テロに巻き込まれる二次被害のほうが可能性として高いのではないか。
――中東に展開する日本企業のビジネスマンたちへのアドバイスは?
 これまで比較的安全と思われていた湾岸の産油国もこれからは報復の対象になるため、これまで以上にテロの発生を意識した警戒的行動をとる必要がある。特に気をつけなければならないのは、米国、英国、フランス、ドイツなどの外交施設やそれらの国の公共施設に行くときには細心の注意が必要だ。また、欧米系のホテルやショッピングセンターに行くときも気をつけなければならない。さらに、産油国なので油田施設などへの出入りも注意を要する。
●現地のホテルでチェックすべきこと
――畑中さんご自身が中東にいるとき、心がけていることは?
 なるべく欧米系のホテルは避けるようにしている。特にユダヤ系の資本が入っていないホテルを選ぶ。ホテルに泊まる時も、なるべく3階から7階ぐらいの部屋にしている。なぜなら、自動車爆弾が地下の駐車場や1階で爆発したときに、大きな影響を避けられるからだ。7階ぐらいまでというのは、消防車のはしご車が届く範囲を考えてのものだ。また、部屋では二重にロックをするのに加え、窓のカーテンは二重に閉めておく。爆破されても、ガラスの破片が飛んでこないようにするためだ。寝るときにも、枕元にパスポートや現金などを入れたビニール袋を置いておき、緊急時にさっと持って逃げられるようにしている。また、部屋に入ったら必ずホテル内の案内図を見て、自分の部屋の位置や逃げる経路を頭に入れておくよう心がけている。

*1-4:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12444314.html
(朝日新聞 2016年7月6日) (ニュースQ3)イラク戦争の政府対応検証、今なぜ必要?
 米国が主導した2003年のイラク戦争。日本政府の戦争支持は正しかったのか――。そんな検証を行う市民グループの公聴会が始まっている。10年以上がたった今、検証が必要な理由とは?
■市民グループ動く
 「組織で働く人間はみんな米国のやり方は変だと思っていたが、『これは米国の話だから』と思考停止した」。5月末、東京・永田町の衆院議員会館。市民グループ「イラク戦争の検証を求めるネットワーク」主催の「イラク戦争公聴会」の初会合があった。小泉内閣などで内閣官房副長官補を務めた元防衛官僚の柳沢協二氏(69)がイラク戦争当時の経緯について証言し、学者や野党議員ら約80人が聴き入った。「北朝鮮の核開発が大きな心配事で、守ってくれるのは米国しかないという判断があったのだろう」。柳沢氏は振り返った。米英軍は03年3月、大量破壊兵器を持っているとしてイラクに侵攻。当時の小泉首相はいちはやく支持を表明した。だが大量破壊兵器は見つからなかった。日本はイラクに自衛隊を派遣し、学校や道路の修復を担った。戦争の犠牲は大きかった。国際NGOの推計では、米英軍の侵攻後に亡くなった民間人は16万人を超す。なぜ開戦の根拠がない戦争をおこしたのか。海外では、政府から独立した機関の検証が進む。オランダの独立調査委員会は10年、イラク戦争が国際法違反だったとの報告書を出した。英国ではブレア元首相ら120人以上を喚問し、260万語に及ぶ報告書を6日に公表する。こうした海外の動きに比べ、日本はどうか。外務省は12年12月、省内の政策決定過程に関する「検証結果」を発表したが、たったの4ページ。しかも聴取した個人名も公表していない。大量破壊兵器が確認できなかったことを「厳粛に受け止める」とするにとどまった。中野晃一・上智大教授(46)は「日本では国家は間違わないという神話が根強く、官僚も政府の過ちを認めない」という。
■安保法成立が背景
 では、なぜ市民が検証を始めたのか。公聴会事務局のジャーナリスト志葉玲さん(40)は安倍政権による「安保法制の成立」と「憲法改正の動き」を挙げる。「日本が米国の戦争に世界中で協力を強いられる危険性が高まっている今こそ、検証が必要だ」。柳沢氏も「安保法制によって戦争の当事者になる可能性はとても高くなった」と警鐘を鳴らす。1~2年以内に報告書にまとめる。
■語り始めた元重鎮
 政界の元重鎮も語りはじめた。小泉政権時の自民党幹事長だった山崎拓氏(79)は7月下旬に出版する著書「YKK秘録」(講談社)で、当時の経緯を紹介する。03年2月、来日したパウエル米国務長官の「イラクの大量破壊兵器保有は疑いようがない」との言葉を信じ、小泉首相に開戦を支持するよう進言した。「米国の同調の求めに、日本は断る術(すべ)がなかった。問題なのは、日本の外交は国連中心主義よりも日米同盟堅持の方が優位にあることだ」。イラク戦争後の混乱は過激派組織「イスラム国」(IS)の台頭も招いた。山崎氏はこう話す。「ISの製造責任は、イラク開戦に賛成した日本にもある。その意味では検証は必要だ」

*1-5:http://mainichi.jp/articles/20160708/ddm/005/070/028000c
(毎日新聞社説 2016年7月8日) イラク戦争報告 英国の検証を評価する
 イラク戦争に関する7年越しの調査である。2003年3月の米英軍による開戦について、英国の元内務省高官ら5人で構成する独立調査委員会は「平和的な解決手段を尽くす前に侵攻した」と断定した。当時のブレア政権だけでなく、戦争を主導した米ブッシュ政権への厳しい批判であるのは言うまでもない。イラク戦争に関する英国の報告は今回が4回目だ。同戦争で179人の兵士を失った英国民は以前の報告に満足せず、09年から再調査が始まった。新たな報告書は260万語に達する。イラク戦争にまつわる問題を置き去りにせず、徹底検証しようとする英国の姿勢を評価したい。報告書はイラク戦争が招く結果を軽く見ていたと指摘し、戦後イラクにおける英国の施策も不適切だったと結論づけた。フセイン政権崩壊に伴う宗派対立やイスラム過激派のテロに加え、過激派組織「イスラム国」(IS)が台頭して大きな勢力となったことを指していよう。また、ブレア首相が開戦前、一蓮托生(いちれんたくしょう)を意味する書簡をブッシュ大統領に送ったことを明らかにした上で、英米は国益が異なるので無条件の支持は必要なかったと指摘した。イラク戦争をいち早く支持した日本も耳を傾けるべき意見だろう。日本政府は12年、「対イラク武力行使に関する我が国の対応」という短い報告書を公表し、開戦の大義名分とされた大量破壊兵器(WMD)が発見されなかったことを「厳粛に受け止める」としたが、徹底検証とはほど遠い。オランダの独立調査委員会は10年、イラク戦争は国際法違反とする報告書をまとめている。米国では04年に中央情報局(CIA)主導の調査団が、翌年には独立調査委員会が、それぞれ情報収集の誤りを全面的に認める報告書を公表した。14年の上院委員会による報告書は、拷問や過酷な尋問など、イラク戦争を含めた「テロとの戦争」時の問題点を指摘している。だが、ブッシュ政権にとってWMDは方便に過ぎず、「戦争ありき」が本音だったとの見方が強い。そもそもイラクのWMD保有には多くの中東専門家が懐疑的だった。1991年の湾岸戦争後、イラクのWMDは国連が廃棄を進めた。経済制裁で疲弊したイラクが、あえてWMDを持つ意義があるとも思えない。湾岸戦争は父親のブッシュ大統領の時代であり、息子の大統領はイラクの実情を知りつつWMDを大義名分としたように見える。では、そんなにフセイン政権を倒したかったのはなぜか。それがイラク戦争最大の謎ともいえよう。この疑問を「ヤブの中」とせず、今度は米国が新たな徹底調査を始めるべきではないか。

<共謀罪について>
*2-1:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12530121.html
(朝日新聞 2016年8月27日) 「共謀罪」案にらみ合い 政権、対テロ強調 野党「人権保障を」
 菅氏は「国際組織犯罪防止条約の締結に伴う法整備は進めていく必要がある」としたうえで、法案の提出時期については「現段階で結論を得ているということではない」と語った。共謀罪は、重大な犯罪を実行に移す前に、相談しただけで処罰できるもので、過去3回の国会提出は廃案に。安倍政権は適用範囲を絞るなどした新たな法改正案をまとめ、罪名を「テロ等組織犯罪準備罪」に変えて国会提出を検討している。安倍政権が法整備の必要性を訴える根拠は、テロ防止のための国際的な情報コミュニティーとの連携だ。国際組織犯罪防止条約は187カ国が締結しており、政権は「締結には共謀罪を含む法整備が必要」とする。首相官邸の幹部は「他国から捜査共助の要請があっても、現状では応じられない。他国に協力できなければ、テロ防止に必要な情報は集まらない」と言う。これに対し、共産党の小池晃書記局長は「日本の刑法の大原則は、実行行為があって初めて処罰されるということ。行為なしの処罰は許されず反対だ」と主張。民進党の山尾志桜里政調会長は「捜査の必要性と人権保障のバランスをとる必要がある。中身を見極めたい」と述べた。

*2-2:http://www.jcp.or.jp/akahata/aik16/2016-08-28/2016082801_01_1.html (赤旗 2016年8月28日) テロ対策口実の市民弾圧法、共謀罪 名前変えても本質変わらず
 自民党政権が過去3度にわたり国会に提出しながら世論の強い批判をあびて廃案となった共謀罪。安倍政権は、名称を変えて秋の臨時国会に提出しようとしています。「テロ対策」のための法案と強調していますが、実態は最悪の市民弾圧法です。

*2-3:http://373news.com/_column/syasetu.php?ym=201608&storyid=78298
(南日本新聞 2016/8/28) [「共謀罪」提出へ] 監視社会への不安拭え
 「目配せや相づちも共謀になるのか」「酒席で『上司を殺そう』と盛り上がれば適用されるのか」
 そんな懸念が消えず、過去3回廃案になった「共謀罪」法案が組織犯罪処罰法改正案として、9月の臨時国会に提出される方向だ。評判の悪い罪名は「テロ等組織犯罪準備罪」に変えた。捜査機関の拡大解釈と乱用への批判をかわすため、適用対象をこれまでの単なる「団体」から「組織的犯罪集団」に限定した。犯罪の構成要件も共謀だけでなく「準備行為」を加えた。それでも識者は「犯罪集団や準備行為の定義が曖昧で、捜査当局の恣意(しい)的な判断の余地がある。『監視社会』になってしまう危うい構造は変わっていない」と警鐘を鳴らす。政府はこうした危惧を真摯(しんし)に受け止め、国家による市民監視強化への不安を払拭(ふっしょく)すべきである。政府が法整備を急ぐのは、昨秋のパリ同時多発テロなど、世界各地でイスラム過激派らによるテロが続発しているからだ。2020年の東京五輪を控え、テロの未然防止に取り組む必要もある。さらに政府は国際社会からの要請も挙げる。日本政府は2000年に国際組織犯罪防止条約に署名したが、条約を締結するには共謀罪など法整備が必要との立場だ。2年前のテロ資金根絶を目指す国際会合では、日本を名指しして国内法の不備を非難する声明が出されたこともある。国際テロの防止や、資金源を断つための政策は当然進めなければならない。だからと言って、市民団体や労働組合などの健全な活動を萎縮させかねない法整備は最大限慎重を期すべきである。法案が国会に提出されたら徹底した審議を求めたい。これまで日弁連内からは「現行法でも予備罪や陰謀罪など、未遂以前の段階で処罰できる仕組みがある」との指摘があった。実際、14年に施行された特定秘密保護法も共謀を処罰する規定を盛り込んだ。今年5月には刑事司法改革関連法が成立し、捜査で電話やメールを傍受できる対象犯罪が大幅に増えた。捜査機関にとって共謀罪はさらなる権限拡大につながる「悲願」とされる。だが危うさもはらむ。改正案に直接関係はないが野党の支援団体が入る建物敷地に、無断で隠しカメラを設置したとして大分県警の署員らが建造物侵入の疑いで書類送検された。改正案の「乱用の危険はない」と言う検察内の声はうつろに響く。

*2-4:http://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-346152.html
(琉球新報社説 2016年8月29日)「共謀罪」提出へ 民主主義崩す「悪法」だ
 罪名を変えたところで、市民活動を抑え込み、思想・信条の自由を侵す危うさは消えない。「共謀罪」の新設は必要ない。安倍政権は、国会で3度も廃案を重ねてきた「共謀罪」をつくろうとしている。罪名を「テロ等組織犯罪準備罪」に変える組織犯罪処罰法の改正案を、9月の臨時国会に提出する見通しだ。2020年の東京五輪に向けたテロ対策を前面に押し出す構えだ。昨年11月のパリ同時多発テロ後、自民党内からテロの不安に便乗し、「共謀罪」創設を求める声が出たが、首相官邸は火消しに走った。なぜか。国民生活を縛る「悪法」との印象が根強く、今年夏の参院選への悪影響を懸念したからだ。7月の参院選で大勝した後、政府は「共謀罪」創設に走りだした。国民受けの悪い施策を封印し、選挙後になって推し進める。安倍政権お決まりのやり方である。「共謀罪」とは何か。具体的な犯罪行為がなくとも、2人以上が話し合い、犯罪の合意があるだけで処罰対象となる。これまで「団体」としていた適用対象が「組織的犯罪集団」に変わった。市民団体や労働組合を標的にした乱用の恐れがあるとの批判をかわしたつもりだろう。一方、謀議だけでなく、犯罪実行の「準備行為」も罪の構成要件に加えた。犯罪集団や準備行為の定義はあいまいで、捜査当局が組織的犯罪集団か否かを判断する構図は変わらない。恣意(しい)的な判断による立件の恐れがある。謀議や準備行為を巡り、盗聴や密告奨励など監視社会が強まる危険性は拭えない。治安維持法の下で言論や思想が弾圧された戦前、戦中の反省を踏まえ、日本の刑法は犯罪が実行された「既遂」を罰する原則がある。政府は「共謀罪」をテロなどに対処する国連の「国際組織犯罪防止条約」への加入条件とするが、現行刑法でも予備罪や陰謀罪など、未遂以前の段階で処罰する仕組みはある。特定秘密保護法、集団的自衛権行使に道筋を開く安全保障関連法の成立など、安倍政権は立憲主義を軽んじてきた。名護市辺野古や東村高江では、新基地にあらがう市民を力ずくで排除している。政権への批判に対し、度を越えた反発を示して威圧する狭量が色濃い。この政権が「共謀罪」を手中にする危うさも考えたい。民主主義を掘り崩す制度は要らない。

*2-5-1:http://www.nichibenren.or.jp/activity/document/statement/year/2016/160831.html (2016年8月31日 日本弁護士連合会会長 中本 和洋)いわゆる共謀罪法案の国会への提出に反対する会長声明
 今般、政府は、2003年から2005年にかけて3回に渡り国会に提出し、当連合会や野党の強い反対で廃案となった共謀罪創設規定を含む法案について、「共謀罪」を「テロ等組織犯罪準備罪」と名称を改めて取りまとめ、今臨時国会に提出することを検討している旨報じられている。政府が新たに提出する予定とされる法案(以下「提出予定新法案」という。)は、国連越境組織犯罪防止条約(以下「条約」という。)締結のための国内法整備として立案されたものであるが、その中では、「組織犯罪集団に係る実行準備行為を伴う犯罪遂行の計画罪」を新設し、その略称を「テロ等組織犯罪準備罪」とした。また、2003年の政府原案において、適用対象を単に「団体」としていたものを「組織的犯罪集団」とし、また、その定義について、「目的が4年以上の懲役・禁錮の罪を実行することにある団体」とした。さらに、犯罪の「遂行を2人以上で計画した者」を処罰することとし、その処罰に当たっては、計画をした誰かが、「犯罪の実行のための資金又は物品の取得その他の準備行為が行われたとき」という要件を付した。しかし、「計画」とはやはり「犯罪の合意」にほかならず、共謀を処罰するという法案の法的性質は何ら変わっていない。また、「組織的犯罪集団」を明確に定義することは困難であり、「準備行為」についても、例えばATМからの預金引き出しなど、予備罪・準備罪における予備・準備行為より前の段階の危険性の乏しい行為を幅広く含み得るものであり、その適用範囲が十分に限定されたと見ることはできない。さらに、共謀罪の対象犯罪については、2007年にまとめられた自由民主党の小委員会案では、対象犯罪を約140から約200にまで絞り込んでいたが、提出予定新法案では、政府原案と同様に600以上の犯罪を対象に「テロ等組織犯罪準備罪」を作ることとしている。他方で、民主党が2006年に提案し、一度は与党も了解した修正案では、犯罪の予備行為を要件としただけではなく、対象犯罪の越境性(国境を越えて実行される性格)を要件としていたところ、提出予定新法案は、越境性を要件としていない。条約上、越境性を要件とすることができるかどうかは当連合会と政府の間に意見の相違があるが、条約はそもそも越境組織犯罪を抑止することを目的としたものであり、共謀罪の対象犯罪を限定するためにも、越境性の要件を除外したものは認められるべきではない。当連合会は、いわゆる第三次与党修正案について、我が国の刑事法体系の基本原則に矛盾し、基本的人権の保障と深刻な対立を引き起こすおそれが高く、共謀罪導入の根拠とされている、条約の締結のために、この導入は不可欠とは言えず、新たな立法を要するものではないことを明らかにした(2006年9月14日付け「共謀罪新設に関する意見書」)。また、条約は、経済的な組織犯罪を対象とするものであり、テロ対策とは本来無関係である。そして、以上に見たとおり、提出予定新法案は、組織的犯罪集団の性格を定義し、準備行為を処罰の要件としたことによっても、処罰範囲は十分に限定されたものになっておらず、その他の問題点も是正されていない。よって、当連合会は、提出予定新法案の国会への提出に反対する。

*2-5-2:http://www.nichibenren.or.jp/library/ja/opinion/report/data/060914.pdf
(2006年9月14日 日本弁護士連合会) 共謀罪新設に関する意見書
意見の趣旨
 政府と与党が導入を主張している「共謀罪」の規定は我が国の刑事法体系の基本原則に矛盾し,基本的人権の保障と深刻な対立を引き起こすおそれが高い。さらに導入の根拠とされている国連越境組織犯罪防止条約の批准にも,この導入は不可欠とは言い得ない。よって「共謀罪」の立法は認めることができない。(以下略)

<特定秘密保護法>
*3:http://www.hiroshimapeacemedia.jp/?p=19193 (中国新聞社説 2013年12月4日) 特定秘密保護法案 テロの定義があいまい
 多くの国民が不安を感じたことだろう。自民党の石破茂幹事長が自身のブログで、特定秘密保護法案に反対するデモをテロになぞらえた問題である。法案が定める特定秘密4分野の一つがテロ防止だ。もしデモをテロとみなすのであれば、幅広い国民が監視の対象となる可能性があろう。言論や表現の自由が脅かされかねない。石破氏はブログでの発言を陳謝し一部を撤回した。これを受け、菅義偉官房長官はきのう、秘密保護法案を今国会の会期末である6日までに成立させたい意向を重ねて示した。しかし法案への懸念を広げたのは、ほかならぬ与党の幹部である。審議時間を一方的に区切る強引な姿勢は許されない。もともと法案が定めるテロの定義はあいまいと批判されてきた。「政治上その他の主義主張に基づき、国家もしくは他人にこれを強要し、または社会に不安もしくは恐怖を与える目的で人を殺傷し、または重要な施設その他の物を破壊するための活動」。12条はこう規定する。森雅子内閣府特命担当相はこれまでの国会審議で、人を殺傷したり施設を破壊したりしなければテロには当たらないと答弁してきた。だが「または」という接続詞につながれた条文の文言だけを読めば、主張を強要するだけでテロになるとも受け取れる。これではデモに限らず、さまざまな言論活動もテロになってしまうと指摘されていた。疑義が深まる中で出てきたのが、石破氏のブログ発言である。特定秘密を決める側の本音ではないのかと、国民がいぶかるのは当然だろう。法案の中身があいまいなのはテロの定義に限らない。衆院から審議の場を移した参院の特別委員会でも、政府の答弁はぶれ続けている。例えば、秘密指定の妥当性をチェックする第三者機関をどこに設けるかである。森担当相が行政機関の内部と外部の両方の可能性に言及しているのに対し、礒崎陽輔首相補佐官は「行政から完全な独立ではない」とちぐはぐだ。透明性を確保するための重要な論点であるにもかかわらず、政府内で方針がまとまっていない証拠だろう。法案自体が生煮えと言わざるを得ない。きのうの参院特別委の参考人質疑で、招かれた3人全員が法案の慎重な審議や廃案を求めたことも重く受け止めなければならない。日弁連の江藤洋一氏は石破氏の発言に触れ、法案が言論弾圧や政治弾圧に利用される恐れがあると指摘した。石破氏は発言の撤回後、大音量のデモについて「本来あるべき民主主義の手法とは異なる」との見解をあらためて示した。ただ、それを言うのなら、国民が抱く疑念が払拭されていないのに秘密保護法案の成立を急ごうとする政府・与党の姿勢ではないか。野党7党は法案の慎重審議を求める共同声明をまとめた。与党が何もなかったように、数の力で法案を押し通すことがあってはなるまい。国民が全てを白紙委任しているわけではないことを忘れてもらっては困る。少数意見でも、しっかり耳を傾けるのが民主主義だろう。政府・与党は今国会での法案成立にこだわるべきではない。

<難民>
*4:http://qbiz.jp/article/75055/1/ (西日本新聞 2015年11月17日) 難民 自転車で北欧流入、極寒の北極圏経由でルート急増
 内戦が続くシリアなどから難民や移民が欧州に押し寄せる中、ロシアの北極圏を経由して北欧ノルウェーに自転車をこいで入る新ルートが注目されている。ロシアはシリアのアサド政権と親密な関係で、シリア人にとってビザが比較的手に入りやすいほか、地中海を渡る従来のルートは船の遭難が続発しているため、より安全な行き方として選ばれている。欧米メディアによると、新ルートの主なものはシリアなどからレバノンに抜け、空路でモスクワ入り。その後、列車でロシア北極圏ムルマンスクに入り、車や購入した自転車でノルウェーへ。ビザや交通費は総額で約2500ドル(約30万円)かかり、出発から3日でノルウェーに着いた人もいるという。自転車使用は当局の規制をかいくぐるのが目的。ロシアは徒歩での国境越えを認めていない一方、ノルウェー側では人を運ぶ車の運転手は必要書類の提出を求められ、ロシアのタクシーは難民らを乗せて国境を越えられない。苦肉の策として自転車が使われており、国境付近では難民らが乗り捨てた自転車が山積み状態になっている。米紙ニューヨーク・タイムズによると、このルートを使った難民らは昨年、5人だけだったが、今年は9月に400人以上、10月には1週間で250人以上がノルウェーに入っているという。今年2月にこのルートを使ったシリア人難民らがノルウェー政府から手厚い対応を受け、その様子をソーシャルメディア上で公開したことで人気に拍車が掛かった。ただ、今後は本格的な冬入りを迎えて国境近くの北極圏は極寒の地と化すため、新ルートも危険との指摘も出ている。


PS(2016年9月14日追加):*5-1のように、プール内の燃料は2020年度から取り出し始める方針で、その核燃料の搬出も見通せないのに、早々とフクイチ1号機の建屋壁カバーを撤去し始め、その後は大量の核燃料が空中にむき出しの状態になるとのことである。これは、作業員の体が汚染されるという問題だけでなく、人工の核種が環境に飛散するという問題だ。また、*5-2のように、環境省は、福島県内の除染で出る2千万立方メートル超の汚染土のうち「3千ベクレルもしくは8千ベクレル」を下回るものは、日本全国の公共事業の資材に活用して再利用する検討をしているそうである。つまり、日本全国に大量の放射性物質をばら撒くということだ。君たちならやりかねないのであらかじめ言っておくが、まさか豊洲市場の地下をこれで埋めるのではないでしょうね。 

*5-1:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12557543.html
(朝日新聞 2016年9月14日) 核燃料搬出、見通せず 建屋壁カバー撤去開始 福島第一1号機
 東京電力は13日、水素爆発した福島第一原発1号機に残る核燃料の取り出しに向け、建屋を囲う壁カバーの撤去を始めた。燃料をつり上げるクレーンなどを設置するため、使用済み燃料プールを覆うように崩落した屋根などを取り除く準備を本格化させる。プール内の燃料を2020年度から取り出し始める方針だが、建屋内の状況は詳しく分かっておらず計画通りに進むかは見通せない。13日早朝。大型クレーンが、長さ23メートル、幅17メートル、重さ約20トンの壁カバーをつり上げ、ゆっくりと地面に下ろした。作業は前日に行う予定だったが、弱い風のため延期になった。東電が極めて慎重になるのは、撤去作業により放射性物質を含むほこりが舞い上がる恐れがあるからだ。3号機でがれきを撤去していた13年には、作業員の体が汚染される事故があった。同年秋には、約20キロ北で収穫されたコメの一部が基準値を超え、原子力規制委員会が関連を調査した。それでも東電がカバーの撤去に踏み切ったのは、1号機のプールに392体の燃料が残っているからだ。水を循環させて冷やし続けないと、燃料自らの発熱で水が蒸発し、燃料が溶ける恐れがある。安全に冷却するには、クレーンで安定した場所に移し替えなければならない。クレーンを設置するには、建屋上部のがれきを撤去する必要がある。東電は残る17枚の壁カバーを年末までに取り外し、がれきがどう重なっているかなどを調べる計画だが、放射線量が高いため、まずはカメラを使った調査に頼ることになりそうだ。がれきを撤去する重機の搬入やクレーンの設置については「がれきの散乱状況などを見て今後決めていく状況」(東電担当者)という。プール内の燃料の取り出しについては、4号機ではすでに終了している。3号機はがれきの撤去は完了したものの、建屋上部の放射線量が高すぎ、その後の段階に入れないでいる。水素爆発を免れた2号機は、そのまま残る建屋上部を切り取らなければならず、作業方針の決定はこれからだ。一方、1~3号機の原子炉格納容器内には溶けた燃料も残る。東電と政府は21年から取り出し始める方針。現在、格納容器を水で満たすなど取り出す方法を検討しているが、燃料が溶け落ちている場所すら分かっておらず、作業は難航が予想される。

*5-2:http://blog.goo.ne.jp/flyhigh_2012/e/73a3312fb2b4f05f6458eb5a664db9da
(朝日新聞 2015年12月22日) 原発汚染土、最大で99・8%再利用可能 環境省が試算
 環境省は21日、福島県内の除染で出る2千万立方メートル超の汚染土のうち、最大で約99・8%は再利用できるとの試算を明らかにした。公共事業の資材に活用する方針で、来年度以降、技術開発や再利用のモデル事業を進める。汚染土の活用を議論する同省の検討会で示した。試算では、土に含まれる放射性セシウムの濃度を、災害廃棄物の再利用基準「1キロあたり3千ベクレル以下」と、国が処分する指定廃棄物の基準「同8千ベクレル超」を下回る場合を仮定。自然減衰で基準を下回るまで待つ場合や、化学的な処理、土の粒の大きさでより分けるなどの手を加えた場合の利用可能量と最終処分量を算出した。その結果、いずれの基準でも、手を加えた場合、ほとんどが再利用できるとなった。最終処分する量は最も少ない場合、3千ベクレルを基準にすると約10万立方メートル、8千ベクレルだと約4万立方メートルで済むという結果になった。再利用が進めば、福島県外での最終処分が必要な廃棄物が減り、処分場の受け入れ先を探しやすくなる。ただ、一度放射性物質に汚染された土への不安が残ったり、処理費用がかさんだりする懸念もある。検討会の委員からは「使い先がなければ、再利用は絵に描いた餅だ」「処理にかかるコストと得られる利益を示してほしい」などの意見が出た。


PS(2016年9月17日追加):*6のように、「共謀罪」の構成要件を少し変更しただけの組織犯罪処罰法改正案は臨時国会に提出されないことになったが、来年の通常国会での成立を目指すそうだ。しかし、この法律は、捜査機関のレベルが低く(時代についていっていない上、見識にも不安がある)、見立てが政治的理由で歪められることも多いため、乱用によって人権侵害や思想信条の自由・表現の自由の侵害が生じる可能性は高いと考える。

*6:http://qbiz.jp/article/94287/1/
(西日本新聞 2016年9月17日) 「共謀罪」臨時国会見送り
 菅義偉官房長官は16日の記者会見で「共謀罪」の名称や構成要件を変更した組織犯罪処罰法の改正案について、26日召集の臨時国会に提出しない方針を明らかにした。審議日程が窮屈な中、2016年度第2次補正予算案や、環太平洋連携協定(TPP)の承認案件と関連法案の審議を優先すべきだと判断した。政府は、来年の通常国会での同改正案成立を目指す。萩生田光一官房副長官は、16日の衆院議院運営委員会理事会に出席し、改正案を臨時国会に提出しない方針を与野党に伝えた。これに先立ち、自民、公明両党の幹事長と国会対策委員長は都内で会談し、臨時国会では補正予算案とTPP法案の早期成立を目指すことを確認した。同改正案を巡っては、捜査機関による乱用で人権侵害が生じるとの懸念が指摘されている。与党内からも「十分な議論が必要」と慎重な対応を求める声が上がっていた。

| 外交・防衛::2014.9~2019.8 | 04:23 PM | comments (x) | trackback (x) |

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