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2020.3.28~31 予防と治療の重要性、病人を差別する国民性、法律に基づく差別について (2020年4月1、2、3、4、6、8、9、10、11、12、13、15、16、17日追加)

 2020.3.27   2020.3.16     2020.3.12       2020.3.21
 東京新聞     毎日新聞      中日新聞        毎日新聞

(図の説明:1番左の図は、2020年3月の世界における新型コロナウイルス感染者数推移で、左から2番目の図のように、中国では感染者数が頭打ちになったのに対し、中国以外では感染者数が等比級数的に増えている段階だ。右から2番目の図は、3月11日の世界の感染者が多い10ヶ国だが、検査数も影響しているようだ。1番右の図は、3月21日時点の日本国内の県別感染者数で、人口密集地帯に多いことがわかる)

   
2020.2.28   2020.3.23     2020.3.25      2020.3.8西日本新聞
東京新聞    朝日新聞       四国新聞       *1-2-5より

(図の説明:1番左の図は、2020年3月27日時点の新型コロナウイルス感染者が多い国・地域の感染者数と死者数だ。日本では、左から2番目の基準で学校を再開するが、右から2番目のチェックリストに従ってチェックすることになった。このように、連日、新型コロナウイルスの予防策が報道され浸透した結果、1番右の図のように、インフルエンザ患者数も前年より6割減少するという効果があったそうだ)

(1)新型コロナの感染・予防・治療について
1)欧米の感染者とその対応
 新型コロナは、*1-1-4のように、中国で始まって多数の死者を出したため、世界でアジア人やマスク姿の人が差別されていたが、現在は、*1-1-1・*1-1-2のように、欧米で蔓延している。日本でも、武漢ウイルスと呼んで中国人を差別する論調が多かったが、人種差別だけでなく病気にかかった人(感染源という加害者である以前に感染させられた被害者)を差別するのも、知識と教養の欠如による人権侵害だ。

 世界では、*1-1-1のように、3月26日20時現在、感染者47万人超、死者2万人超(イタリア7,500人超、スペイン3,600人超、米国1,000人超、フランス1300人超、英国460人超、オランダ350人超)であり、さらに、米国は、*1-1-2のように、3月下旬から感染者が急増して3月27日までに感染者が85,000人超となり、*1-1-3のように、全米の感染者数の3割がニューヨーク市に集中して病床や人工呼吸器が不足し、医療崩壊が懸念されているそうだ。

 米国でマスクが普及しなかったのはドレスコードになかったからだそうだが、欧米は難民や外国人労働者の流入も多く、貧しくて栄養が十分でなかったり、予防の知識・意識・ツールが乏しかったり、医療へのアクセスが悪かったりする人も多いと思われる。そのため、今後は、年齢や持病の有無だけでなく、感染して亡くなった方の背景も調査した方が良いだろう。

 このような中、日本では、花粉症を起こす杉花粉やフクイチ由来の放射性物質から防護する目的でマスクを常用している人が多く、栄養状態も全体としては悪くなく、予防の知識やツールもあるため、新型コロナやインフルエンザが流行しても、よほど意識の低い人でなければ一定の抵抗力はあると考える。

2)新興国(開発途上国)での感染と強制的対応
 インドネシアのジャカルタでは、*1-1-5のように、3月20日までに369人が感染して32人が死亡し、感染者の6割が首都ジャカルタに集中しているため、州知事が3月20日に非常事態宣言を出して州内の全企業にオフィス利用の停止を強く求めたほか、娯楽施設の営業を禁止し、非常事態宣言中は州内に軍や警察が展開して住民の外出を事実上制限するそうだ。

 また、インドでも、*1-1-6のように、3月24日、首相が国民向けにテレビ演説して、新型コロナの感染防止策として、3月25日から21日間、全土を封鎖すると表明している。インドやインドネシア等の新興国は、人口当たりの医師数や医療資源が乏しく、一般の衛生環境や教育・意識にもバラツキが大きいため、家にいる以外に予防手段がないというのは本当だろう。

3)日本での感染と対応
 日本の感染症のわかりやすい歴史は、1822年に世界的大流行が九州(長崎?)から日本に及んで初めてコレラが日本で発生し、1858年や1862年にも大流行が発生し、1879年と1886年に死者が10万人の大台を超えたものだ。コレラの予防には、衛生の改善と清潔な水へのアクセスが必要なのだが、江戸(東京)や大阪に人口が集中し、上下水道等の衛生関係インフラが整っていなかった時代に、免疫のないところに外国からコレラ菌が入ってきて大流行になったのである。

 現在の日本は、上下水道・衛生意識・医療などのインフラが整ってきている上、東大医科研のチームがコメに遺伝子組換技術を用いてコレラ毒素B鎖を発現させたコレラワクチン米を開発して常温保存可能な経口ワクチンを作っており、まだ臨床に応用されていないのが残念ではあるものの、よい技術を見つけているので、他の感染症にも応用が利きそうである。

 つまり、人口が密集して衛生環境の良くない大都市で、開国やグローバル化により一般人が免疫を持っていない菌が入った場合に感染症が大流行しているのであり、新型コロナも似ているため、開発途上国や先進国大都市の衛生弱者にリスクが高いと思われる。

 従って、外国で非常事態宣言を出したり、都市封鎖をしたりしたから、日本でも同様にしなければならないというわけではなく、*1-2-3のように、日本国内の感染者が3月25日午後10時までに1,269人に上り、東京都の感染者数が210人になって都道府県で初めて200人を超えたと書かれているものの、東京都の人口が13,935,645人(2019年9月1日現在)であることを考えると、感染者割合は(あまり検査していないせいかもしれないが)0%に近いのである。

 また、*1-2-4のように、「新型コロナの感染拡大が、重大局面を迎えつつある」「爆発的な急増を防ぐ措置として、東京都と関東近県が週末の往来を自粛するよう住民に求めたのはやむを得ない」「緊急事態宣言を出す」「首都封鎖」などと言うのは、騒ぎ過ぎだろう。ただし、東京都は下水道が古くて容量が足りず、上水道も節水しすぎて不潔なくらいであり、通勤・通学で近県から満員電車という密閉空間で1日300万人近くが往来するため、日本国内では感染リスクが高い方にあたる。 そのため、東京や大阪などの大都市で新型コロナが蔓延しているからといって、全国一斉に休校や自粛をする必要はないと思う。

 その新型コロナの感染が広がる一方で、*1-2-5のように、インフルエンザの患者数は前年と比較して6割減少しているそうだ。これは、新型コロナの感染予防で、手洗い・マスク着用・せきエチケットなどの取り組みが全国に浸透していったことが奏功しているそうで、これは、新型コロナの感染拡大防止にも繋がるものである。 

 なお、東京慈恵会医科大学の浦島教授が、*1-2-6のように、日本で新型コロナが感染爆発しない理由を挙げておられる。私は、これに加えて、ウイルスの弱毒化への変異があると思うが、その理由は、宿主を殺してしまえばウイルスは増殖できず、宿主を殺さない方向に変異したウイルスだけが次に感染する機会を得て増殖するからである。つまり、油断や楽観視は禁物だが、人権侵害になるほど騒ぎ過ぎる必要はないと思われるウイルスだ。

4)感染源特定と病人差別
 *1-2-1のように、医師の新型コロナ感染が判明した和歌山県有田病院の病棟内をドローンで撮影しようとしたり、ふるさと納税に対する有田町の返礼品を拒んで“地元いじめ”をしたり、感染者が悪いことをした犯人であるかのように追跡したり、感染者を見下すような報道をしたり、患者の住所を教えてほしいという要求をしたりして、新型コロナ感染者いじめをしたのは、(自分は“普通”だから上だと思っている)日本人の知識や教養に欠ける病人差別だ。

5)治療差別
 政府が、*1-2-2のように、(どのような病気であれ、病室に複数の人を収容するのは治療環境が悪すぎるが)感染症指定医療機関などに個室管理可能なベッドを1万2千床確保するのはよいことだ。ただ、厚労省は「爆発的感染拡大が起きれば、最悪で東京だけで1日4万5千人の感染者が出る」としているが、そもそも無症状や軽症者を病院に入院させておくことは他の病気ではありえない。感染防止のためなら、自宅やホテルなどの借り切りで、徹底して衛生管理すればよいと考える。

 しかし、重症化した人には治療するのが医療先進国であり、ここで“トリアージ”と呼んで年齢による治療差別を行うのはよくない。さらに、コロナ感染については、その重症化しやすさについて、必要以上に年齢差別して報道しているように見える。

(2)ハンセン病差別

   

(図の説明:左図のように、ハンセン病は1947年に治療薬ができた後も隔離政策が続き、本人だけでなく家族も著しい差別を受けた。国の隔離政策の根拠となった「らい予防法」は1996年にやっと廃止されたが、その後も元患者や家族に対する差別は続いている。中央の図は、ハンセン病への対処の歴史であり、人権よりも国家の対面を重んじるために隔離政策をとったことがわかる。そして、右図のように、その判断には科学的根拠がなく、それこそ国家の恥である)

 完治する病となり科学的根拠がなくなっても長く続いた隔離政策で、ハンセン病の元患者は、*2-2のように、社会からだけでなく家族からの偏見・差別・人権無視にも苦しんだ。例えば、元患者は家族に迷惑がかかるからと療養所内で偽名を使わせられ、隔離政策の誤りを国が認めた2001年の熊本地裁判決を機に実名に戻って故郷に帰ろうとしても家族が受け入れず、死んでも実家の墓に骨を引き取ってもらえないという状況があった。

 しかし、これは、家族が率先して社会復帰の壁になったわけではなく、長く引き離された上に日本社会から受けたすさまじい家族差別もあったため起こったことである。そのため、国の責任が認められ、元患者に補償がなされ、差別されながら顧みられかった元患者の家族に対しても、2019年11月22日に「ハンセン病元患者家族に対する補償金の支給等に関する法律」が公布・施行され、名誉回復にも言及されたのは遅すぎたとしてもないよりはずっとましだったのである。

 ハンセン病の元患者と家族は国の誤った政策により、*2-1のように、熊本地裁が指摘したとおり、人格形成や自己実現の機会が失われ、家族関係の形成を阻害されるという人生を台無しにされて取り返しのつかない「人生被害」を受けたのだから、国が賠償をするのは当然である。さらに、らい予防法廃止後も偏見や差別を除去しなかったことは驚きであると同時に憲法違反でもあるのに、この当たり前の判決が“画期的”なのである。

(3)「犯罪者≒精神障害者」とする精神障害者差別
1)責任能力の有無は本当の争点だったのか? ← 犯罪者を精神障害者に仕立て上げる日本の刑法の非科学性と精神障害者差別
 相模原市の知的障害者施設「津久井やまゆり園」で入所者45人を殺傷して殺人罪などに問われた植松被告の裁判員裁判が横浜地裁で開かれた。日本では、殺人が明白な場合の弁護側の方針は、*3-1のように、「精神病で判断力がなかった」という精神鑑定結果を出すことが多いが、ここで言われた大麻精神病などという精神病を私は聞いたことがない。

 それにもかかわらず、弁護士がこういう弁護方針を採用する理由は、*3-5のように、刑法第39条に「心神喪失者の行為は、罰しない。心神耗弱者の行為は、その刑を減軽する」と規定されているからで、その前提として、違法行為を行った者の責任を問うためには、責任能力(①事理弁識能力:物事の善し悪しが判断できる能力) ②行動抑制能力:自身の行動を律することができる能力)が必要とされているからだ。

 そして、“心神喪失者”とは「精神障害者の中でも行為の善悪の判断が全くつかない人」、“心神耗弱者”とは「精神障害者の中で判断能力が著しくつきにくい状態の人」とされているが、現在の精神病に“心神喪失”や“心神耗弱”という医学的症状はない。つまり、刑法第39条は、1907年に施行された刑法の枠組みのまま使われており、そこには現在の精神病医学の概念は入っておらず、医学的に正しくないのである。

 その上、刑法第39条は、「精神病者を、“平均人ならざる”ものであるため、“反社会的”で“危険な個人”である」と、精神医学とは全く関係なく位置付けており、法律で精神病患者を差別することになっている。そのため、“心神喪失”“心神耗弱”という言葉は正確に定義しなおし、そこに入れるべき人も検討し直すべきだ。さらに、「泥酔していたから」「薬物中毒だったから」というのは、「判断能力がなかった」等として責任を問わない理由にはならないと考える。

 植松被告の弁護側は、*3-1のように、「植松被告は2015年頃から大麻を乱用するようになって問題行動が増え、『障害者は不幸をつくるから殺す』という考えに至ったのは大麻乱用による飛躍や病的高揚感があったからだ」と指摘しているが、横浜地裁判決は、差別的な主張を繰り返した植松被告の事件当時の刑事責任能力を認めて、求刑通りの死刑判決を言い渡した。

 しかし、その裁判の進行中、検察側・弁護側・裁判所・メディアの報道は、「被告の障害者に対する差別的な考えが犯行を引き起こした」としていたが、その基になっている考え方が、非科学的な精神障害者差別そのものであることには、全く気を止めていなかった。

 一方、*3-3の埼玉県熊谷市の強盗殺人事件では、罪に問われたペルー国籍のナカダ・ルデナ・バイロン・ジョナタン被告に対して、東京高裁が「統合失調症の影響で心神耗弱状態だった」と判断して一審の死刑判決を破棄したが、「統合失調症による被害妄想→心神耗弱→強盗殺人」という論理にはそれこそ飛躍がある。そのため、東京高裁が被告の供述を持ち出して行動制御能力がないと結論づけたのは、真犯人ではないと気付いたからではないかと思うが、それなら真犯人を捕まえて罰すべきであり、刑法39条をこのように使えば、統合失調症患者にとってはいわれなき差別を助長されることになるわけだ。

 そして、このような裁判や報道が繰り返された結果、*3-4のように、全国には首長部局に知的・精神障害者を1人も雇用していない自治体が少なくとも41%あり、全体の13%は一般職員(短時間を含む)の募集条件からも知的・精神障害者を除外するという雇用差別を行うことになり、知的障害者や精神障害者に雇用の機会が与えられないという実害が生じているのである。

2)本当の論点は、家族や社会のためではなく、本人が主体として差別されず尊厳を持って幸福に生きられるか否かである
 裁判で「意思疎通のとれない人は社会の迷惑」「重度障害者がお金と時間を奪っている」等と語った「津久井やまゆり園」事件の本当の論点が、植松被告の責任能力でないことは確かだ。しかし、本当の論点を語るのは難しい上に、いわれなき非難を浴びる可能性も高い。そのため、「気の毒だが、距離を置こう」と考えるのが普通の人だが、それでは何も解決せず、誰も今より幸福にすることができない。

 そのような中、*3-4のように、重度身体障害があって18歳までの大半を施設で暮らした、れいわ新選組の木村参院議員が、障害者本人の立場から「津久井やまゆり園」事件について述べられたのは、参考になる。木村議員が、「①彼が言っていることは皆さんにとっては耳慣れなくて衝撃的でしょうが、同じような意味のことを、私は子どもの頃、施設の職員に言われ続けました」「②19歳で地域に出ていなければ、津久井やまゆり園に入所していたかもしれず、殺されていたのは私かもしれません」「③親が頼れるのは施設だけでしたが、私にとっては牢獄のような場所でした」「④食事を食べさせてもらえないこともありました」「⑤自由もプライバシーも制限され、希望すら失って決まった日常を過ごす利用者を見た人に偏見や差別の意識が生まれても不思議ではありません」と語っておられるのは、施設で人間としての尊厳を失って過ごすことを余儀なくされた経験のある本人にしか言えないことだろう。

 また、「⑥私は、被告だから事件を起こしたとは思えません」「⑦私は親から施設に捨てられた歓迎されない命だという思いを抱いて生きてきました」「⑧公園デビューをした時、息子と子どもたちが砂場で遊んでいて、車いすに乗った私が息子に声をかけ、私が母親だとわかった瞬間、周りのお母さん方が自分の子どもを抱き上げて帰ってしまいました」「⑨小学校の授業参観で教室が狭くて他のお母さんたちが入れないので『詰めていいですよ』と言っても、半径1メートル以内には近寄ってきません」「⑩社会から排除することそのものが差別です」というのは、「津久井やまゆり園」事件で如何にも人道主義者であるかのように植松被告を批判している多くの人が無意識に行っている行為だ。

 そして、「⑪福祉サービスは増えたが、重度訪問介護が就労中などに公的負担の対象外」「⑫移動支援が自治体により差がある」「⑬重度障害を理由に普通学校への入学が認められない例もある」については、高齢者のみに偏らない訪問介護が必要であり、尊厳を失わずに生きられるための普通教育も重要で、こうした課題を解決できた時に、「津久井やまゆり園」事件は意味を持てるのである。

 なお、重度障害者を家族や社会の都合ではなく、本人の幸福のためにどこまで治療して助けられるか、どこから本当の安楽死を認めるべきかという難しい論点も見逃されているが、これは、森鴎外の「高瀬舟」以来、日本では解決できていない重たすぎる課題である。

(4)後見制度について
 税理士は、事業承継が困難な中小企業や相続が発生しそうな事業主に普段から接し、税務に関する代理・税務書類の作成・アドバイスなどをしているため、成年後見や任意後見のニーズを知る機会の多い専門職だ。また、税理士法の1条、2条に基づき、独立・公正な立場で税務代理や税務書類の作成を行い、顧客の求めに応じて財務書類の作成や記帳代行も行うため、税理士が蓄積してきた知識・経験は成年後見人や成年後見監督人にも役立つものである。そのため、関東信越税理士会が、2019年11月、「成年後見人等養成研修」を行い、私もそれに参加したが、内容や資料が充実して気合いの入ったものだった。

 このような中、西日本新聞が、2019年11月26日、*4のように、「適正な類型をどう判断するか」「後見偏重の修正はこれからだ」と記載しており、私もそれに賛成だ。また、90代の父親から金を搾り取っている息子には呆れるが、そのように育てた父親にも責任の一部はあるし、他の兄弟とは異なる事情があるのかもしれないため、父親の本心をよく聞いた上で、遺産分割についての遺言を作っておいたらどうかと思う。

 なお、私は、本人の意思を尊重する指針が出て、法定後見が本人の意向が尊重される方向に改正されたのは、日本国憲法も「第11条:国民は、すべての基本的人権の享有を妨げられない」「第13条:すべて国民は個人として尊重され、生命・自由及び幸福追求に対する権利は、公共の福祉に反しない限り、最大の尊重をする」と定めていることから、よかったと考えている。

 従来の禁治産・準禁治産制度は、1898年に明治憲法下の明治民法で定められたもので、禁治産者・準禁治産者になると、その事実が公示され戸籍に記載されてプライバシーが侵害され、呼称が偏見や差別を生み、障害者本人の権利や利益の擁護はしておらず、障害者と取引を行った相手の取引の安全性も図られていなかったため、2000年の民法改正で本人の意思や自己決定権の尊重、ノーマライゼーションを理念として民法の成年後見制度が施行されたことはよかったのだ。しかし、これまで後見に慣れてきた専門家は、「後見にしておけば間違いない」という意識が強く、制度の利用が後見に偏りがちという欠点があるそうだ。
    
 関東信越税理士会の「成年後見人等養成研修」の研修の終わりに課せられ、研修内容を基にして私が書いたレポートの一部が下のとおりだが、ここでも「精神障害」を一括して後見の必要な人と定義しているため、医学的症状と整合性がとれ人権に配慮した用語への修正が必要だ。

1)現在の後見制度の種類
(イ)法定後見制度(民法838条~876条の10)
 従来の禁治産・準禁治産制度を、各人の判断能力や保護の必要性の程度に応じて、補助(新設)、保佐(準禁治産の改正)、後見(禁治産の改正)に改めたもので、被補助人・被保佐人・成年被後見人を支援するために、家庭裁判所が適当と認める者(補助人・保佐人・成年後見人)を選任して権限を付与するもので、開始時には裁判所が監督人を選任する。

①補助(民法876条の6~876条の10)
 「補助」は、比較的軽度な精神障害(認知症・知的障害・精神障害)がある人のための制度で、本人の重要な財産に影響を与える行為について、状況に応じて補助人に同意権や代理権を付与して保護を図るもので、本人・配偶者・四親等内の親族・後見人・後見監督人・保佐人・保佐監督人又は検察官が、裁判所に「補助開始の審判」を申立てることにより開始される。本人以外の者の申立てによって「補助開始の審判」を行う場合は、本人の同意を要する。申立により、家庭裁判所は、補助人を選任したり、当事者が選択した特定の法律行為に関して代理権や同意権を付与したり、代理権の追加・取消をしたり、補助の終了を行ったりする。

②保佐(民法876条~876条の5)
 「保佐」は、精神障害(認知症・知的障害・精神障害)により「事理を弁識する能力が著しく不十分な者」を対象とする制度で、一定の「重要な行為」について保佐人の同意を必要とすることで、本人が不利益を受けるのを防ごうとするものだ。保佐の開始も、本人・配偶者・四親等内の親族・後見人・後見監督人・補助人、補助監督人又は検察官・任意後見受任者・任意後見人・任意後見監督人・市町村長が、裁判所に「保佐開始の審判」を申立てることによって行われ、補助とは異なり本人の同意は不要で精神鑑定が必要である。

 これにより、家庭裁判所は本人のために保佐人を選任し、「重要な行為」を行うには保佐人の同意が必要となり、「重要な行為」でなくとも同意権付与の審判を経れば保佐人に同意権を付与することができ、特定の法律行為については、当事者が選択したものについて保佐人に代理権を付与することができる。本人の判断能力の回復により保佐開始の原因が止んだ時は、家庭裁判所は本人・配偶者・四親等内の親族・保佐人・保佐監督人等の請求により、保佐開始の審判を取り消さなければならない。また、判断能力の減退又は回復により、後見開始又は補助開始の審判に移行する時は、審判の重複を避けるため、家庭裁判所は職権で保佐開始の審判を取り消す。

③後見(民法843条~875条)
「後見」は、精神障害(認知症・知的障害・精神障害)により「事理を弁識する能力を欠く状況にある者」を対象とする制度で、自分の行動の意味や結果を理解できないため、単独で契約などを行った場合に不利益を被る恐れがある場合に、成年後見人が代わって契約等を行い、本人を保護する制度だ。後見の開始は、本人・配偶者・四親等内の親族・後見人・後見監督人・補助人、補助監督人又は検察官・任意後見受任者・任意後見人・任意後見監督人・市町村長が、裁判所に「後見開始の審判 」を申立てることによって行われ、本人の同意は不要だが、精神鑑定が必要である。

 家庭裁判所は後見開始の審判において、本人(成年被後見人)のために成年後見人を選任し、成年後見人には幅広い権限が付与される。本人の判断能力回復により後見開始の原因が止んだ時は、家庭裁判所は本人・配偶者・四親等内の親族・成年後見人・後見監督人等の請求により、後見開始の審判を取り消さなければならない。また、判断能力の回復により、保佐開始又は補助開始の審判に移行する時も、審判の重複を避けるため、家庭裁判所は職権で後見開始の審判を取り消す。成年後見人は、本人の財産に関する法律行為について代理権、同意権又は取消権を付与され、本人のためにその職務を行うとともに、善管注意義務を負う。具体的には、その職務を行うにあたり、「意思尊重義務」「身上配慮義務」が求められる。

④成年後見監督人等
 2000年の改正により、成年後見人・保佐人・補助人の権限乱用に配慮し、成年後見制度の信頼性や安全性をより確実なものにするため、法定後見制度で家庭裁判所が必要と認めた場合は、成年後見人の職務を監督する者(個人・法人とも可)を選任できる旨の規定が設けられた。そのため、成年後見監督人等の職務は、i)成年後見人等の事務を監督する ii) 成年後見人等が死亡で欠けた場合に、遅滞なく後任者の選任を家庭裁判所に請求する iii)急迫な事情がある場合は、成年後見人等に代わって必要な処置をする iv) 成年後見人等と本人の利益が相反する場合は本人を代理する などだ。そのほか、成年後見監督人等は、いつでも成年後見人等の事務に関する報告を求めて成年後見人等の事務や本人の財産状況を調査することができ、本人の財産の管理、その他後見等の事務について必要な処分を命ずることを家庭裁判所に請求したり、監督過程で不正行為を知った場合には、成年後見人等の解任を家庭裁判所に請求したりすることができる。

(ロ)現在の任意後見制度(任意後見契約に関する法律)
 任意後見制度は、2000年に施行された「任意後見契約に関する法律」で新設された制度で、本人が契約締結に必要な判断能力を有しているうちに、将来の判断能力低下に備えて任意後見人や支援の範囲等に関して公正証書により契約を行い、実際に判断能力が低下した時に、家庭裁判所による任意後見監督人の選任によってその契約の効力が生じる制度である。

①任意後見制度の特徴
 任意後見制度の特徴は、自らの意思で決める自己決定権の尊重と任意後見監督人の選任による信頼性の確保だ。

②任意後見契約の締結
 任意後見契約は、法務省令で定める公正証書によって代理権の有無・範囲を明確にして作成し、公証人が直接関与することによって委任者の真意による適法で有効な契約締結が担保することが意図され、登記所へは公証人が遺漏なく登記する。

③任意後見契約の開始と任意後見監督人の選任
 任意後見契約の締結後、本人の事務弁識能力が不十分な状態になった時は、本人の住所地を所管する家庭裁判所に対して、任意後見監督人の候補がいる場合にはその旨を記載し、通常は書面で審判の申立を行い、家庭裁判所が任意後見監督人を選任して任意後見契約が開始される。この申立ができるのは、本人・配偶者・四親等内の親族・任意後見受任者のみである。

④法定後見と任意後見契約の関係
 任意後見契約が登記されている場合には、本人の自己決定権を尊重する観点から、法定後見の開始の申立がなされた時は、任意後見を優先して裁判所は原則として法定後見開始の申立を却下する。ただし、任意後見に与えられている代理権の範囲が狭すぎ、悪質な訪問販売による被害の恐れが強い場合など、本人の利益のために特に必要があると認められる場合には、例外的に法定後見開始の審判をすることができる。

⑤任意後見制度の利用形態
 任意後見制度の利用形態には、i) 本来型(任意後見契約を単独で結び、本人の判断能力が低下してから任意後見を開始するもの) ii) 移行型(任意後見契約と民法の委任契約・代理権授与契約による財産管理等に関する契約を同時に締結し、本人の判断能力が低下してから任意後見を開始するもの) iii) 即効型(判断能力が多少不十分だが契約締結時に意思能力はある者が、任意後見契約の締結と同時に任意後見監督人の選任を申立て、直ちに契約を発効させるもの) がある。

(ハ)後見登記制度
 成年後見登記制度は、法定後見(補助・保佐・後見)及び任意後見に関する事柄を公示するための制度で、従来の禁治産宣告・準禁治産宣告の戸籍記載に代わる新たな方法として「後見登記に関する法律(平成11年法律152号)」に基づいて創設されたものだ。これは、後見に関する情報を「登記」という方法によって管理・証明し、この登記情報の開示を求めることができる者を限定することによって、取引の安全性と本人のプライバシー保護の両立を図ったものである。登記は、原則として裁判所書記官又は公証人の嘱託に基づいて行われ、申請に基づいて行われる登記は、変更又は終了の登記等の一部に限られる。

(二)2016年(平成28年)度の改正による影響
 ①成年後見人が、家庭裁判所の審判を得て、成年被後見人宛の郵便物の転送を受けることが
  できるようになった(郵便転送。民法第860条の2,第860条の3)
 ②成年後見人が、成年被後見人の死亡後にも行うことができる事務(死後事務)の内容と
  その手続が明確化された(民法第873条の2)

・・参考資料・・
*1-1-1:https://digital.asahi.com/articles/ASN3V6SR3N3VUHBI01J.html (朝日新聞 2020年3月26日) 新型コロナ、死者2万人超 イタリアとスペインで半数に
 世界で感染拡大する新型コロナウイルスによる死者数が26日、2万人を超えた。世界保健機関(WHO)や各国政府の発表をもとに集計している米ジョンズ・ホプキンス大学システム科学工学センターによると、イタリアが7500人超、スペインが3600人超で全体の半数以上を占めた。感染が急増している米国でも1千人を突破。世界の感染者数は同日午後8時現在で47万人を超えている。欧州での感染の中心となっているイタリア政府は25日、死者数が前日比で683人増え、7503人になったと発表した。感染者も7万4386人に達し、8万1千人超の中国に迫る勢いだ。イタリアでは移動の制限や公園の閉鎖などの措置が全土に広がっている。14日に政府が警戒事態を宣言したスペインでは死者数が前日より738人増えた。感染者数も4万9千人超となった。首都のあるマドリード州で被害が集中している。そのほかの死者数はフランスが1300人超、英国が460人超、オランダが350人超で、イタリア、スペインを含む欧州5カ国で計1万3千人超となり世界の死者数の6割を占める状況だ。

*1-1-2:https://www.tokyo-np.co.jp/article/world/list/202003/CK2020032702000301.html (東京新聞 2020年3月27日) <新型コロナ>世界感染50万人超 米が中国抜き最多
 米ジョンズ・ホプキンズ大の集計によると、新型コロナウイルスの感染者が二十六日、世界全体で五十万人を超えた。二十四日に四十万人に達したばかりで、二十日の二十五万人から一週間足らずで倍増。米国が初めて中国、イタリアを上回って世界最多となり、流行の拡大は新たな局面に入った。勢いは衰えず、終息の気配は見えない状態が続いている。三月は欧州で感染拡大が続いてきたが、下旬からは米国での感染者が急増し、二十七日までに八万五千人を超えた。中国は横ばいで推移、欧州ではイタリアで被害が最も大きい。世界全体の死者は二十五日に二万人を超え、二十六日時点で二万三千人に上っている。世界保健機関(WHO)の二十六日付状況報告によると、感染者の54%、死者の67%は欧州地域事務所管内(旧ソ連諸国を含む)に集中しており、三月に入り「パンデミック(世界的大流行)の中心地」(テドロスWHO事務局長)となったことを如実に反映している。同報告によると、前日からの新規感染者についても、欧州は世界全体の61%と多いが、単独で24%に上っているのが米国で、ここ数日は一日当たり一万人前後の増加が続いている。三億六千六百万人の人口を抱える米国での感染拡大防止策が効果を上げるか否かが、今後の世界的流行の情勢を左右することになる。二十一世紀に入ってからのコロナウイルスによる新たな感染症では、重症急性呼吸器症候群(SARS)が感染者約八千人で死者約八百人、中東呼吸器症候群(MERS)が感染者約二千五百人で死者約八百六十人の被害が出ている。

*1-1-3:https://digital.asahi.com/articles/DA3S14418428.html (朝日新聞 2020年3月27日)  感染集中、NYの医療窮地 病床、14万床必要なのに5万床 新型コロナ
 全米最大の都市、ニューヨーク(NY)市で新型コロナウイルスの感染拡大が止まらない。全米の感染者数の3割が集中。病床や人工呼吸器の数が不足しており、医療崩壊が懸念されている。25日昼、NY市のジョン・F・ケネディ空港の出発ロビーには、感染を避けようと防護服に身を包んだり、大型ゴーグルを着けたりする乗客たちの姿があった。「NYで暮らすリスクはあまりにも高すぎる」。市内の金融機関勤務のアジア系男性がマスクを押さえながら語った。「NYからの逃避」という言葉が、たびたび報じられている。
市内で感染者が最初に確認されたのは今月1日だが、3週間あまりで約2万人まで増え、死者も280人に達した。デブラシオ市長は25日夕、会見で「NY市はこの危機の中心地だ」と危機感をあらわにし、「4月は、3月より厳しい状況になる」と語った。感染者が次々と確認される中、医療態勢の不備が懸念されている。NY市によると、最も多くの感染者が出ているクイーンズ地区の公立病院「エルムハースト・ホスピタル・センター」(545床)では24時間のうちに感染患者13人が死亡した。集中治療室がいっぱいになり他の病気の患者を別の医療機関に移し始めた。NY州のクオモ知事によると、州内では今後2~3週間で感染者数がピークを迎え、最大で推計14万床必要だが、州内には約5万3千床。NY市内の大型会議場を含む4カ所に仮設病院を作っているが、まだ足りない。人工呼吸器も、NY市だけで1万5千個必要だが、その6分の1しかないという。NY市当局の初期対応にも注目が集まる。デブラシオ氏は今月2日時点で「1200床のベッドを確保している」と強調し、「我々には対処する能力がある」と封じ込めに自信を見せていた。12日に緊急事態宣言。その後も、1866校ある市内の公立校は「給食に頼っている子どもも多い」と続けており、保護者や教員の要請を受け、16日に休校した。ニューヨーク・タイムズ紙は「デブラシオ氏は、日常生活を送るよう市民を促し続けた」と批判し、保健当局の複数の担当者が「市長が態度を改めない限り、辞任する」としていると伝えた。市の対応が後手に回った感は否めない。

*1-1-4:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO55420100Y0A200C2000000/ (日経新聞 2020/2/8) 新型肺炎、各地で広がるアジア人差別 NYで暴行被害
 中国で多数の死者を出している新型コロナウイルスの拡大を受けて、世界各地でアジア人への差別が問題となっている。米ニューヨークの地下鉄の駅では男がマスクをつけたアジア系の女性に暴行を加える事件が発生した。SNS(交流サイト)の普及で差別的な発言やヘイトスピーチ(憎悪表現)が拡散しやすくなっており、冷静な対応が求められている。「マスクの中国人女性が暴行された」。ニューヨーク在住のトニー・ホー氏は4日、ツイッターに事件の様子をとらえた動画を投稿した。マンハッタンの地下鉄の駅内を走る女性の前に突然、男が立ちはだかり「俺に触るな」などと罵りながら傘や手でたたく様子が映っていた。ホー氏は「多くのアジア人は新型ウイルスが流行する前からマスクをつけているのに、急に脅威と感じるようになった」と嘆く。「アジア人が事件に巻き込まれても、その情報は広まらない。アジア人は従順で気が弱いと思っている」とも書き込んだ。移民に寛容なイメージの強い隣国カナダも例外ではない。トロント近郊の中国系住民が多く住む地区では、最近中国を訪れた家族のいる子どもをしばらく通学させないよう学校に求める署名運動が起きた。インターネット上で約1万人の署名が集まったが、学校側は「安全の確保という善意に基づいていたとしても、隔離を求めるのは人種差別だ」として要求を却下した。中国料理店のサイトへの人種差別的な書き込みや学校でのいじめなども報告されているという。欧州で初の感染者が確認されたフランスでも「アジア人には近づかないほうがいいと露骨に避けられた」などの声が上がっている。ジャーナリストのリンラン・ダオ氏はツイッターで「アジア人だからと侮辱され、公共交通機関から蹴り出される。これは冗談やネット上のヘイトではなく、現実に起こっていることだ」と訴えた。差別の対象となっているのは中国系住民だけではない。仏高級ブランド「ルイ・ヴィトン」の公式アカウントがSNSに掲載した日本人女優の広告には「コロナウイルスか?」といった差別的なコメントが多数寄せられた。問題のコメントは現在は削除されているが、ルイ・ヴィトン側が1週間近く対応を怠ったとしてネット上では非難の声が上がっている。仏紙パリジャンは「中国人か韓国人かなんて分からないから、アジア人の横には座らない。差別ではなく予防だ」という市民の意見も紹介した。米紙ニューヨーク・タイムズは、日本でもツイッターで「中国人は日本に来るな」がトレンド入りしたことを取り上げた。同紙は「中国の経済・軍事力の成長がアジアの隣国や西欧諸国を不安にさせる中で、新型コロナウイルスが中国本土の人に対する潜在的な偏見をあおっている」と分析している。フランスでは「私はウイルスではない(#JeNeSuisPasUnVirus)」として、ツイッターで人種差別をやめるよう訴える投稿が相次いでいる。仏国立人口学研究所のヤーハン・チャン氏は地元メディアの取材に対し「学校や公共機関での教育活動が必要だ。アジア人への人種差別を止めるため、やるべきことがたくさんある」と述べた。国連のグテレス事務総長は4日に新型肺炎を巡り「人種を理由にした差別や人権侵害を懸念している」と発言した。

*1-1-5:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO57057480R20C20A3I00000/ (日経新聞 2020/3/21) ジャカルタ、新型コロナで非常事態宣言 オフィス利用中止を要請
 インドネシアの首都ジャカルタのアニス州知事は20日、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて非常事態宣言を出した。州内の全企業にオフィス利用の停止を強く求めたほか、娯楽施設の営業を禁止した。人の移動を制限して感染拡大を食い止める狙いだが、ジャカルタには企業が集中していて、ビジネスに大きな影響が出ることは避けられない。当面、4月2日までの2週間を「災害非常事態」として、州内の全企業に原則としてオフィスを利用しないよう要請するほか、市内の映画館やバー、カラオケ店などの営業を禁止する。公共交通機関の運行も減らす。アニス氏は「責任のある態度とは、外での活動をすべてやめることだ」と述べ、住民に対して、仕事以外でも外出をしないよう求めた。インドネシアでは20日までに369人が感染し、32人が死亡した。感染者の6割がジャカルタに集中する。州政府は14日、全住民に対して外出しないように要請したが、強制力を伴わず、出勤を続ける住民も多かった。感染拡大が続くため、より強い対応が必要と判断した。非常事態宣言中は州内に軍や警察が展開して、住民の外出を事実上制限するという。周辺自治体も含めたジャカルタ首都圏には約3000万人が住む。ジャカルタ特別州だけでも個人企業もあわせて120万の企業が集まるインドネシアの経済の中心だ。首都の人の移動が大きく制限されることで、経済に大きな影響が出そうだ。

*1-1-6:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO57193700V20C20A3000000/ (日経新聞 2020/3/25) インド、新型コロナで全土封鎖 25日から21日間
 インドのモディ首相は24日、国民向けにテレビ演説し、新型コロナウイルスへの感染防止策として全土を25日から21日間、封鎖すると表明した。モディ氏は「ウイルスと戦うには社会的な距離を保つしかない。人々は外出が禁じられ、安全のため家で過ごしてほしい」と述べ、国民に外出を控えるよう呼びかけた。インドは22日に全土で外出禁止を命じ、その後は感染者が確認されていたデリーなどの75地区を31日まで封鎖する方針を示していた。モディ氏は「医療サービスが世界最高級とされたイタリアや米国でも感染拡大が防げていない。家にいる以外は手段がない」と強調し、一段と厳しい措置に踏み込むことを決めた。病院や検査機器などの医療インフラに対し、1500億ルピー(約2200億円)を拠出する考えも表明した。インドでは既に工場や航空便などが停止している。モディ氏は「経済的なコストが伴うが、ウイルスと戦うには断固とした措置が欠かせない」と言及。シタラマン財務相を中心に景気対策を検討しており、近く公表するとしている。


*1-2-1:https://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2020021601001755.html (東京新聞 2020年2月16日) “地元いじめ”に和歌山知事怒り ドローン撮影、返礼品拒否
 外科医らの新型コロナウイルス感染が判明した和歌山県湯浅町の済生会有田病院の病棟内をドローンで撮影しようとしたり、ふるさと納税に対する町の返礼品を拒んだりするなどの“地元いじめ”が相次ぎ、仁坂吉伸知事が16日の記者会見で怒りをあらわにした。県によると、感染した外科医の担当病棟がある3階付近を飛ぶドローンが14日から連日確認されているほか、「ふるさと納税の返礼品の受け取りは拒否できるか」との問い合わせが町にあった。本来は健康上の不安を相談するための県の電話窓口に「病院の患者の住所を教えてほしい」との要求まで来たという。仁坂知事は「怒りを感じる」と訴えた。

*1-2-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200326&ng=DGKKZO57239130V20C20A3EA2000 (日経新聞 2020.3.26) 入院 患者の選別カギに
 世界の感染者数は3日間で10万人増えるなどペースが加速している。東京都も25日、41人の新規感染を確認し、今週末の不要不急の外出自粛を求めた。患者が急増した場合、数が限られる病床を重症者に優先的に振り向ける対応が求められる。政府は感染症指定医療機関などで個室管理可能なベッドを1万2千床確保する。ただ爆発的な感染拡大が起きれば、厚生労働省の最悪の想定では東京だけで1日4万5千人の感染者が出ると推計される。そうした場合、政府は病床は重症者などに使い、無症状や軽症者には自宅療養を求める方針。もっとも、こうした「トリアージ」が円滑にいくかは不透明だ。都内の新型ウイルス専門外来の医師は「レントゲンでは明らかに肺炎なのに、本人は元気なことがある。見極めは簡単ではない」と話す。都の担当者も「入院している軽症者に『帰ってください』と説得できるのか。都で宿泊施設を確保するなど対応が必要になるかもしれない」と悩む。愛知県は24日、医療機関外で無症状や軽症の約100人を受け入れられる施設を月内にも開設すると発表した。相模原市も重症者に向けた病床を確保しておくため、一部の軽症患者らに自宅待機を要請しているという。
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 国内で25日に新型コロナウイルスの新規感染が確認されたのは午後9時現在78人で、感染者は41都道府県の1256人となった。東京都と北海道、愛知県でそれぞれ高齢者1人が死亡した。

*1-2-3:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO55811680Z10C20A2I00000/ (日経新聞 2020.3.25) 新型コロナ、41都道府県で1269人感染 都で新規41人 (3月25日午後10時現在)
 新型コロナウイルスの感染が国内で広がっている。各自治体などによると、国内での感染者は25日午後10時までに1日の感染確認として最多の91人の感染が新たに確認されて計1269人に上っている。東京都の感染者数は210人で、都道府県で初めて200人を超えた。感染確認は計41都道府県。このほか海外から入国して空港検疫で確認されたのは23人(25日正午現在)。手洗いの徹底など一人ひとりの感染症対策が重要となる。なお、前日午後10時より後に明らかになるなどした感染者や退院患者、死者は当日の新規分には含めていない。

*1-2-4:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200327&ng=DGKKZO57276430W0A320C2EA1000 (日経新聞 2020.3.27) 「首都封鎖」を防ぐために行動を見直そう
 新型コロナウイルスの感染拡大が「重大局面」を迎えつつあるのは間違いない。感染者が急増している東京都と関東近県が週末の往来を自粛するよう住民に求めた。感染者の爆発的な急増(オーバーシュート)を防ぐ措置として、やむを得ない。今週に入り、東京都内の新たな感染者の報告数は24日から25日にかけて、2倍以上に急増した。海外渡航者を起点にした感染者集団(クラスター)が、すでにいくつも形成されている恐れがある。外務省は全世界を対象に不要不急の渡航中止を求めた。北海道は外出自粛の効果もあり爆発的な増加を免れた。首都圏もこれをモデルに感染者集団を抑え込む努力が不可欠だ。しかし、東京は通勤・通学で近県から1日300万人近くが行き来する。感染経路の特定が難しく、封じ込めは容易ではない。政府は26日、改正新型インフルエンザ対策特別措置法に基づく対策本部を設置し、いつでも緊急事態宣言を出せるようにした。緊急事態宣言の目的は医療の機能不全を防ぐことだ。感染者の増加を遅らせ、その間に医療態勢を整えて死者を増やさないようにする。そのための措置が、厳しい外出制限だ。緊急事態を宣言すれば各国の「都市封鎖」に近い状態になり、社会や経済の活動が一段と制約される。今はその一歩手前だ。「首都封鎖」という最悪の事態を招かないためにも、一人ひとりが今の状況を自覚し、外出や飲食を伴う集まりを自粛するなど行動を見直すことが重要だ。住民に協力を求めるには、国や自治体が情報開示を徹底して信頼を得る必要がある。最悪の場合、感染はどこまで広がりうるのか、行動制限や外出自粛でどの程度抑制できるのか、どんな条件を満たせば普段の生活に戻れるのか。明確でわかりやすい説明が信頼を育み、対策の効果を上げる。政府の専門家会議は19日に大都市圏で感染者の爆発的な急増が起こる可能性が高いと指摘していたが、そのメッセージが浸透していたとは言い難い。政府が学校の休校を解除すると決めたのも、誤った安心感を与えた可能性がある。特に若い世代に危機感が薄い傾向があり、伝え方に工夫が必要だ。危機対応では専門家の知見を踏まえて国民に行動を促すのが、政治家の役割だということを改めて肝に銘じてほしい。

*1-2-5:https://www.nishinippon.co.jp/item/n/590238/ (西日本新聞 2020/3/8) インフル患者、前年から6割減 新型コロナで予防浸透
 新型コロナウイルスの感染が広がる一方で、インフルエンザの患者数が急減している。医療機関の報告を基にした厚生労働省の推計によると、2020年の全国の累計患者数(3月1日時点)は、前年同期(約1024万人)の4割を切る約397万人で、600万人以上減少した。新型コロナウイルスの感染予防で手洗いやマスク着用などが徹底されたことが奏功しているようだ。厚労省がまとめた約5千の定点医療機関からの報告によると、20年の患者数のピークは1月6~12日の週で1医療機関当たり平均18・33人。前年ピークの週(1月21~27日)の57・09人を7割近く下回った。九州各県も同様の傾向で、今年ピークとなった週の患者数は、熊本県が15・99人で前年ピークより約7割減少。福岡(23・55人)や大分(26・59人)なども約6割減った。厚労省は昨年11月15日、例年並みだった前年より1カ月ほど早く全国的な流行が始まったと発表した。昨年9月~12月末までの患者数は約315万人で、前年同期の約106万人を大きく上回る勢いだった。だが、昨年12月以降、中国・武漢市で新型コロナウイルスの感染が急拡大。1月15日には国内初の感染者が確認され、マスク着用やせきエチケットなどの感染予防の取り組みが全国に浸透していったとみられる。厚労省感染症情報管理室の梅田浩史室長は「一人一人の感染予防意識が高まったことが要因で予防対策の効果が示された。新型コロナウイルスの感染拡大防止にもつながるだろう」と分析した。 

*1-2-6:https://forbesjapan.com/articles/detail/33158 (Forbs JAPAN 2020/03/19) 日本で新型コロナが「感染爆発」しない理由 浦島充佳:東京慈恵会医科大学教授
 3月11日、ドイツのメルケル首相は、「ドイツ国民の60%から70%が新型コロナウイルスに感染する可能性がある」と警戒を呼びかけた。こんなことが本当に起こりえるのだろうか?これが現実になった場合、感染者のうち1~2割が重症化し、入院治療が必要になること考えると、医療崩壊は免れないだろう。しかし、私はそうはならないと考える。その理由は新型コロナの感染拡大パターンにある。
●新しい感染症が入ってくるとどうなる?
 メルケル首相の言葉は、新しい感染症に対する基本モデルに基づいている。ある感染者がその感染症に対する免疫を持たない集団に入ってきた場合、かなりの勢いで広がっていく。しかし、集団免疫という考え方がある。感染から回復し免疫を得た人々が「免疫の壁」として立ちはだかるようになり、未感染者が感染者から感染するのを阻止する形となるのだ。すると、一定の未感染者を残しながらも、感染拡大は停止する。ウイルスの感染力が弱まって感染拡大が止まるわけではない。
●60%から70%が感染のカラクリ
 ある感染者がその感染症に免疫を全く持たない集団に入ったとき、感染性期間に直接感染させる平均の人数を「基本再生産数」と呼ぶ。これが1より大きければ感染は拡大し、1であれば感染は定常状態となり、1未満になれば感染は終息に向かう。新型コロナ、インフルエンザ、SARS の基本再生産数はだいたい2~3といわれている。計算式に当てはめると、基本再生産数が3のとき、集団免疫による感染拡大停止までに67%が感染することになる。メルケル首相が、「国民の60%から70%が新型コロナウイルスに感染可能性」を示唆した背景には、この計算があるのだろう。しかし、これは集団が新型コロナに対して全く免疫を持っていないという仮定に基づいている。
●私たちは新型コロナウイルスへの免疫を持っている?
 2009年にパンデミック化した新型インフルエンザを思い出してほしい。基本再生産数が3だったとしても国民の6~7割が感染するようなことはなかった。季節性インフルエンザに対する免疫が、新型インフルエンザにもある程度有効だったと私は考える。そもそも「新型」ではない「コロナウイルス」は、主に子供の風邪のウイルスとしてありふれたものである。これは「新型コロナウイルス」とは別物であり、多くの人が年に1,2回は感染している。そのため、子ども、子育て世代、小児科医などは新型コロナに対しても免疫を持っているかもしれない。また、新型コロナは8割が軽症である。無症状で経過する人も相当数いる。日本には春節前から多くの中国人が訪れていた。あくまで推測の域をでないが、既に日本人の多くが自分でも知らない間に感染しているかもしれない。そうであれば、先に示した集団免疫の作用で感染爆発は起こり難い。またメルケル首相の発言には「仮に政府が何も対策をとらなかったら」という仮定も入っている。しかし、日本も含め多くの国が既に強い対策に打って出ており、また人々は行動変容を起こし、大勢の人が集まるところに出かけることを控えている。よって、無防備に感染が拡大するとは考えにくい。新型コロナの感染拡大パターンは、次のようなものである。
●新型コロナの感染パターン
 3月9日夜、新型コロナ対策専門家会議の記者会見があり、新型コロナ対策専門家会議・尾身茂副座長が疫学的知見を発表している。感染症が進行中の集団の、ある時点における、1人の感染者から発生した二次感染の平均の数である、「実効再生産数」について述べている部分を引用する。「現時点において、感染者の数は増加傾向にあります。また、一定条件を満たす場所において、一人の感染者が複数人に感染させた事例が、全国各地で相次いで報告されています。しかし、全体で見れば、これまでに国内で感染が確認された方のうち重症・軽症に関わらず約80%の方は、他の人に感染させていません。また、実効再生産数は日によって変動はあるものの概ね1程度で推移しています」。新型コロナの基本再生産数は2〜3である。対して、実効再生産数は1。要するに、日本国内で感染が広がっている速さを示す実効再生産数は、現在、ウイルスの持つ感染力を示す基本再生産数を下回っているということだ。
●新型コロナの感染状況をビジュアル化
 実効再生産数が1ということは、10人の患者から新たに10人の二次感染患者が再生産されることになる。しかし、専門家会議は「80%が誰にも感染させていない」としている。例えば、新型コロナウイルス感染患者が10人いたとする。そのうち8人は誰にも感染させず、2人が感染させる。一旦感染すると2週間など長期にわたって咽にウイルスをもち感染力を保ったまま活動できてしまうので感染が拡大する。そのため実効再生産数が1であっても、患者数は増加し得る。では、感染を終息に向かわせるにはどうするべきか?図3のように、例えば2つのライブハウスでの感染をブロックできれば、10人から3人の患者しか発生しないので、やがて患者数は減っていく。だれがウイルスをもっているか判らなく、感染力も強く、致死率が高い。このような場合で、かつ感染拡大パターンを最初に示した基本モデルで考えると、感染拡大を止めるにはどうしても外出自粛、休校、移動制限、地域封鎖となってしまう。新型コロナの場合、確かにだれがウイルスをもっているか判らないことが、人々に大きな恐怖心を植え付けている。しかし、私達は今までの経験からクラスター(集団感染)を形成しやすい条件を知っている。それは、換気の悪い室内で、不特定多数と長時間会話したり、食事をしたときだ。
●エアロゾル感染のリスクは「換気」で減らす
 3月9日の専門家会議の記者会見で「みなさまにお願いしたいこと」として以下の点が指摘された。1. 換気の悪い密閉空間、2. 多くの人が密集、3. 近距離(互いに手を伸ばせば届く距離)での会話や発声 という3つの条件が同時に揃う場所や場面を予測し、避ける行動をとってください。これを多くの市民が実施できれば、クラスター発生を予防でき、国が強権を発動せずとも感染は終息に向かうであろう。実際、諸外国と比べて日々の感染者数は数十人で収まっている。ただ、人は同じ説明を聞いても、何も気にせず日常生活を送れる人もいれば、家から一歩も出られない、仕事にも行けない人まで様々であろう。レストランで外食したり、会社で仕事をしたりというのは上記1・2・3にあてはまるからだ。そこで、人々の不安を少しでも解消し、対策の一助になればと思い、感染のメカニズムを解説したい。会話やくしゃみで飛沫が飛び散る。大きな飛沫は放物線を描いて地面に落ちる。しかし、目に見えないくらいの小さな飛沫粒子、いわゆるエアロゾルは数時間室内を空気のように浮遊する。大きな飛沫による感染は(3)の近距離での会話や発声に対応する。これは、お互いにマスクをしていれば予防できるし、マスクがない場合には1~2メートルなど距離を開ければ解消できる。エアロゾルによる感染は(1)の換気の悪い密閉空間に対応する。新型コロナウイルスは1時間で半減するものの、数時間は感染性を保ったままエアロゾルとして空中を浮遊することが最近アメリカの研究チームにより報告された。これは窓を開けて空気を入れ替えれば、解消される。外であれば、まず問題にならない。人数が数十人、数百人と多くなればなるほど、その中にウイルスをもった人がいる確率があがる。(2)の多くの人が密集というのは、このことを指している。しかし、新型コロナの発生がほとんどない地域では気にしなくてもよいかもしれない。「3つの条件が同時に揃う場所」を言い換えれば「1つの条件が解消されていれば避ける必要はない」ということである。例えば十分な換気をはかれればよいことになる。また十分な換気ができなければ、マスクをするか、距離をとればよいことになる。
●今後の日本は如何に?
 2月後半、1日の報告件数が10人、20人と増えだした。これに対して、日本政府は在宅勤務の推奨、大型のイベント自粛、休校を要請した。患者数の推移を海外と比較すると、日本は地域を封鎖したり、移動制限や外出自粛を強要したりすることもなく、何とかよく持ちこたえていると思う。これは政治決断の効果でもあり、日本人1人1人ができることをやっている成果であるとも思う。今後は、患者数の推移を慎重にみながら、屋外や換気を十分するといった条件で、社会活動を少しずつ再開してもよいのではないだろうか。とはいえ、大規模イベントや、今までクラスターのあった場所での活動の再開は慎重にするべきである。危機管理の基本は、初動において厳しい対応をして、様子を観ながら徐々に緩めるのが鉄則だ。

*1-3-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200315&ng=DGKKZO56809510U0A310C2MM8000 (日経新聞 2020.3.15) 米欧、新型コロナ対策総動員 検査拡充や企業支援、米、非常事態で5兆円
 新型コロナウイルスの感染が拡大する米国や欧州で、各国政府が緊急対策に動いている。トランプ米大統領は13日に国家非常事態を宣言し、最大5兆円超を投じてウイルス検査などを拡充することを決めた。欧州各国では医療体制の強化や企業の資金繰りの支援が広がる。感染拡大による社会の混乱や景気の失速を防ぐために、政策を総動員して対応にあたる。トランプ氏は13日、非常事態宣言によって「連邦政府の力を最大限に引き出す」と力説した。災害対策基金など最大500億ドル(約5兆4千億円)を地方政府に振り向ける。最大の柱はウイルス検査の見直しだ。米政権は規制を一時的に緩和し、スイス製薬大手ロシュが開発した24時間以内に4千件超を検査できるシステムを緊急で承認した。スーパーや薬局の駐車場での「ドライブスルー検査」も全米に広げる。米ジョンズ・ホプキンス大の集計では米の感染者は2100人を超え、死者は47人に達した。感染者は46州と首都ワシントンで確認し、ほぼ全米に広がっている。新型コロナで打撃を受けた企業や個人の支援も強化する。非常事態宣言により、新たに中小企業の支援に70億ドルのローンを提供できるようにした。戦略石油備蓄を積み増すため大量の原油を購入し、エネルギー会社も支援する。個人には学生ローンの利息支払いを免除する。14日には議会下院が野党・民主党の経済支援策も可決した。新型コロナの無償検査、有給の病気休暇、失業保険の拡充、低所得者向け食糧支援などを盛り込んだ。トランプ氏も法案に署名する考えで、近く成立する公算が大きい。感染者の広がりでは、欧州の置かれた状況はより深刻だ。感染者はイタリアが1万7千人超と中国に次いで多い。同国政府は最大250億ユーロ(約3兆円)程度の経済支援策を用意する計画だ。売り上げが大きく減った企業の支援、医療体制の拡充などに充てる。スペインでも感染者が5千人を超え、サンチェス首相は13日に非常事態を宣言した。政府が強制力を持って人の往来を制限したり、一定の物資を管理下に置いたりすることができるようになる。ドイツ政府は13日、新型コロナの感染拡大の影響を受けた企業の資金繰りを支援するため、総額に上限を設けない無制限の信用供与を実施すると発表。メルケル首相は同日「必要なことは何でもやるつもりだ」と語った。フランスは休校中の子供の世話などで欠勤せざるをえない従業員への給与補償、企業の納税の延期・一部免除などを順次実施する。こうした措置で数百億ユーロ(数兆円)の予算が必要になるとみられる。英国は2020年度の政府予算で300億ポンド(約4兆円)規模の経済対策を講じる方針だ。医療体制の強化や休業補償などにあてる。米国を中心に人の移動制限に加えて、財政政策も打ち出すことで、感染拡大と景気の落ち込みを食い止める狙いがある。

*1-3-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200326&ng=DGKKZO57209430V20C20A3MM8000 (日経新聞 2020.3.26) 現金給付、所得減世帯に 5月にも実施、経済対策50兆円超 GDPの1割
 政府は新型コロナウイルスの感染拡大を受けた緊急経済対策で、5月にも所得が大幅に減少した世帯に現金を給付する検討に入った。条件が当てはまる1世帯に20万~30万円程度とする案がある。売り上げの急減が予想される飲食業や観光業は割引券や商品券を発行して支える。経済対策の事業規模(総合2面きょうのことば)は名目国内総生産(GDP)の1割にあたる56兆円超をめざす。海外でも米国やオーストラリアなどは新型コロナを巡る経済対策でGDPの1割近い財政出動に踏み切る構えで、日本も足並みをそろえる。リーマン・ショック後の事業規模56兆8000億円を上回る過去最大とする方針だ。海外では事業規模を先に表明することが多いが、日本が目標値を先行させるのは異例となる。日本は個別の政策を積み上げ、積算した規模を公表してきたためだ。新型コロナに伴う株安をにらみ、市場の動揺を抑える狙いがある。安倍晋三首相は2020年度予算案が成立する27日にも経済対策の編成を指示する。裏付けとなる補正予算案を4月上旬にも閣議決定し、下旬の成立を見込む。5月にも給付を始める。事業規模は国による直接支出に加え、融資に伴う金融機関の貸し出し分などを含めた額だ。給付の仕組みは今後詰める。新型コロナの感染拡大を理由とした所得減かを見極めるのは簡単ではない。所得をどの程度減らした世帯を対象にするかや所得制限をかけるかが制度設計の論点だ。フリーランスといった所得の把握が難しい人への対応も課題となる。日本の世帯数は約5300万あり、一定の所得水準を設けて約1000万世帯に絞り込むことも検討する。給付の手法は緊急小口資金の制度を参考にする。同制度は自治体の社会福祉協議会に申請書を出せば、個人の口座に現金が振り込まれる。全国民に配った定額給付金は総額2兆円規模に膨らんだ。多くが貯金に回り消費下支えの効果は乏しかったとの反省がある。雇用確保に向けては従業員を休ませるなどして雇用を維持する企業に支給する「雇用調整助成金」を拡充する。中小企業の場合、賃金相当額の3分の2の助成率を5分の4に引き上げる案が軸となる。従業員を解雇しなかった例では9割の助成も考える。新卒で入社する社員など雇用期間が短いケースでも助成の対象になるよう要件を緩め、内定取り消しが広がらないよう目配りする。飲食業や観光業の支援は消費者が外食や旅行などに支払う料金の一部を国が助成する制度を設ける。日本政府が19年末にまとめた26兆円規模の経済対策は公共事業を中心に執行が進んでいない。緊急的な対応として未執行分の一部も新型コロナ対策に活用する。これに今後編成する30兆円超の対策費を上乗せする。海外では米国はGDP比9.3%にあたる2兆ドル(約220兆円)規模の対策をとりまとめる。

*1-3-3:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200322&ng=DGKKZO57075100R20C20A3MM8000 (日経新聞 2020.3.22) 外食・旅行消費に助成 売り上げ急減で重点支援 緊急経済対策
 政府は4月にまとめる新型コロナウイルスの感染拡大を受けた緊急経済対策で、売り上げが急減している飲食業や観光業などを重点的に支える。消費者が外食や旅行に支払う料金の一部を国が助成する制度を検討する。この個人消費への助成策(総合2面きょうのことば)の関連予算は1兆円規模になる可能性がある。新型コロナが直撃している産業に的を絞って強力な支援を実施し、関連業界の雇用を維持する。訪日外国人の減少に加え、政府が要請している大規模イベントの自粛でスポーツ行事やコンサートなどを中止・延期する措置が相次ぐ。旅行や外食を控える動きも広がっており、関連業界は大きな打撃を受けている。政府は観光や飲食のほか、イベント関連支出なども助成の対象にする方向で検討する。飛行機や新幹線など公共交通機関も対象に含める可能性もある。利用者の国籍は問わない。焦点となる国の助成率は今後詰める。たとえば20%を助成することになった場合、飲食店で一定の条件を満たして1000円の食事をしたら800円を消費者が負担し、残りを国が助成することを想定する。助成の仕組みは、政府が各店舗や宿泊施設などで割引となるクーポンを発行したり、インターネット上のホテルや飲食店などの予約サービスを使って支払いをした際に、一部をポイントで還元したりする案がある。高齢者はお金と時間に余裕がある人も多く、高齢者に限って通常より高い補助率を設定して、消費を一段と促すことも想定している。実施期間などは新型コロナの状況をみて判断する。飲食業や観光業などでは、赤字に転落する中小企業が続出することが予想される。そうした中小企業は赤字の規模に応じ、前年度までに支払った法人税の一部を還付してもらうことができるようにもする。「繰り戻し還付」と呼ばれる制度で、災害時には還付対象の企業を広げる規定もある。国税庁は大規模感染症も災害に該当しうると判断している。

*1-3-4:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO57269620W0A320C2MM8000/?n_cid=NMAIL006_20200326_Y (日経新聞 2020/3/26) G7、新型コロナワクチン開発支援へ 研究機関に拠出
 日米欧の主要7カ国(G7)の各政府は、新型コロナウイルスの世界的大流行(パンデミック)を受け、ワクチン開発支援で実績のある国際研究機関に数十億ドル規模を拠出する方向で調整に入った。民間では巨額の資金を出しにくいため、公的な資金を国際協調で集中させて早期の開発・実用化をめざす。中国やインドなど20カ国・地域(G20)に加盟する新興国にも参加を呼びかける。資金拠出の対象として検討しているのは、ノルウェーに拠点を置く官民連携でワクチン開発を推進する国際機関、感染症流行対策イノベーション連合(CEPI)。日欧などの政府の拠出で2017年に発足した。エボラ出血熱のような世界規模の流行が生じる恐れのある新興感染症に対するワクチン開発推進を主な活動目的としている。今週実施したG20財務相・中央銀行総裁やG7財務相の電話やテレビの会議では、ワクチン開発を効率的に進めるため、先進国を中心に共同で財政支出する必要性で合意していた。日本政府も数百億円を軸に拠出を検討する。中国やインドなどG20加盟国にも協力を求めていく。CEPIは少なくとも20億ドルが必要と試算している。今回のような未知の感染症は流行が続くのか短期で終息するのか判断がつきにくいため、民間企業はワクチンの開発に巨額の資金を投じにくい。このため各国の政府が出し合ったお金をもとに、CEPIが企業や研究所、大学の開発を援助し、治験を加速する考えだ。コロナウイルスが原因の中東呼吸器症候群(MERS)のワクチン開発を支援した実績があり、技術転用も期待できる。ワクチンは有効性を確認するための期間が治療薬よりも長く、開発に時間を要する。年単位の時間がかかることが一般的だ。CEPIが主体となって開発に成功した場合でも、日本で使うためには厚生労働省から承認を得ることが必要になるが、弾力的な運用も可能となりそうだ。厚労省は新型インフルエンザが流行した10年、輸入ワクチンについて手続きを簡略化する特例を承認した。

<ハンセン病差別>
*2-1:https://digital.asahi.com/articles/ASM6X56YGM6XUTIL02G.html (朝日新聞 2019年6月29日) らい予防法違憲判決から18年、家族の被害にようやく光
 ハンセン病の元患者の家族らが起こした訴訟で、熊本地裁はその苦しみを「人生被害」と指摘し、国に賠償を命じた。原告弁護団は高く評価し、今も消えない差別や偏見をなくす契機になればと期待する。一方、国側は今後の対応について明言を避けた。「画期的な判決だ。らい予防法廃止後も偏見と差別を除去しなかったことについて違法性を認めた」。判決後の記者会見で、弁護団の八尋光秀共同代表の表情は硬いままだったが、言葉は力強かった。就学拒否、結婚差別、就労拒否……。判決は、ハンセン病患者の家族について「人格形成や自己実現の機会が失われ、家族関係の形成が阻害された」と指摘した。国が患者の隔離政策を続けたことによって、家族までもが平穏に生活をする権利を侵害されたとして、明確に国の責任を認めた。ハンセン病は、らい菌による感染症。感染力は極めて弱いが、進行すると手足や顔に変形が起きうる。国は1931年に癩(らい)予防法を成立させ、患者の強制隔離政策を推進。戦後「らい予防法」と名を変えた法が廃止されたのは、半世紀以上が経った後の96年だった。元患者が起こした訴訟で熊本地裁は2001年、「予防法の違憲性は明らか」と断じたうえで、「60年以降、96年の法廃止まで、隔離の必要性が失われたことに伴う政策の抜本的な変換を怠った」と厚生相(当時)や国会の責任を認めた。28日の判決はこの判断を踏襲しつつ、96年以降も「偏見差別を取り除くため、正しい知識を普及する活動を行うべき義務を尽くさなかった」と、国の新しい責任を認定した。28日の判決は、人権啓発を担う法務相と、教育を担う文部相・文部科学相の責任に踏み込んだ点でも、01年の判決と異なる。予防法の廃止後も、法務相は「住戸や職場などへの働きかけがなく、活動として不十分だった」と判断。文部相は「教員に対し、誤った教育をしないよう適切な指導」や「差別の是正を含む人権啓発教育」が必要だったのに、怠ったと述べた。判決は一方で、02年以降は「不十分ながら、国などの人権啓発活動の効果が一定程度生じた」として、国の責任を認めなかった。01年の判決や政府の控訴断念、国会謝罪決議などの動きがあったことで、「02年以降は差別被害があっても、隔離政策が原因だったとはいえない」とした。今回の訴訟では、「不法行為を知ってから3年以内に提訴したか」という時効の起算点も争点だった。判決は、元患者の家族が鳥取地裁に起こした訴訟の判決が言い渡された15年を起算点とすることで、原告側の訴えを有効と認めた。鳥取地裁判決は請求を棄却しつつ、差別への対策を怠った国の過失に言及しており、熊本地裁への集団提訴のきっかけとなっていた。
●救済への課題これから
 元患者について国の責任を認めた、01年の判決確定から20年近く。なぜ、家族たちの苦しみに光が当たらなかったのか。「元患者に対する差別や偏見をどうなくしていくかが、あまりにも大きな課題だった。家族の問題までたどり着けなかった」。01年当時に厚生労働相で、控訴断念を決めた協議にも加わった坂口力さん(85)はこう振り返る。28日の判決の後には「家族に被害があったのは事実。裁判の結果にかかわらず、どう解決するかは、我々の大きな課題だ」と話した。家族訴訟弁護団共同代表の徳田靖之弁護士も、「差別と偏見に包まれ生きてきたから、元患者の家族であるという声を非常に上げづらかった」と説明する。元患者の訴訟に加わった遺族はわずかで、実名を公表できた人はほとんどいなかった。元患者の中には、「家族が悲惨な目に遭った。だからこの裁判をするんだ」と訴えた人がおり、弁護団も家族の被害は認識していたが、徳田弁護士は「自分たちが正面から採り上げ、提訴することを怠った」と悔やむ。ハンセン病に対する差別や偏見は根強く残る。13年には誤った認識を持った教員の授業を受けた小学生らが、「骨が溶ける病気」などと感想文を書き、教育委員会が翌年に謝罪したこともあった。28日の判決もこのことに触れ、「正確な知識に基づいた指導がなければ、社会から差別を除去することは困難だ」と指摘した。徳田弁護士は判決後の記者会見で、「国が総力を挙げて差別と偏見の解消に取り組まなければならないと認めたことは大きな前進」と述べ、こう強調した。「国に控訴させないという、大きなうねりを起こすことで、家族が置かれている状況を本質的に変えることが可能になるのでは」
●求められる政治判断
 ハンセン病について正しい情報を発信し、患者の家族への差別や偏見をなくすための義務を怠ったと認定された3省には、動揺が広がった。根本匠厚生労働相は記者団の取材に応じ、「国の主張が認められなかったと聞いている。今後の対応については、判決内容の詳細を確認した上で、各省庁と協議していきたい」と述べた。さらに質問を受けても「関係省庁と協議していきたい」と繰り返し、明言を避けた。厚労省内でも判決直後、担当部署の職員が慌ただしく出入りした。控訴するかどうかについて、ある職員は「判決は法務省や文科省の違法性にも触れている。我々だけでは決められないだろう」と話した。山下貴司法相は判決後、「判決内容を十分精査し、関係省庁と協議した上で、適切に対応する。ハンセン病をめぐる偏見・差別をなくし、理解を深めるための啓発活動を適切に実施する」とコメントした。一方、ある法務省幹部は「ここまで踏み込んで来るとは予想していなかった」と驚きを隠さない。「あまたある差別の中からハンセン病に的を絞った人権啓発を求めるのは、要求が高すぎる」と話した。文部科学省によると、人権教育を担う教師を対象とした研修会でハンセン病について説明するなどしてきた。担当者は「取り組みは裁判で示しているが、その上での判決。判決文をよく読んでみないと何とも言えない」と語る。元患者の裁判では原告の勝訴後、小泉純一郎首相(当時)が政治判断で控訴を断念し、判決を元に被害者の補償立法がなされた。元患者の家族についてはどうか。首相官邸関係者の一人は「まだ政治判断の段階ではない」と語る。菅義偉官房長官は28日午後の記者会見で「国の主張が認められなかったと報告を受けている。関係省庁で判決内容を精査した上で対応する」と述べるにとどめた。

*2-2:https://digital.asahi.com/articles/ASMCB6GNCMCBUTIL1MP.html (朝日新聞 2019年11月16日) 加害者でなく被害者だった家族 ハンセン病差別の根深さ
 長年にわたる国の隔離政策で、ハンセン病の元患者は社会からの偏見や差別に苦しんできた。裁判で国の責任が認められて元患者に補償がされた一方、差別にさらされながら顧みられてこなかったのが、元患者の家族たちだ。家族たちが起こした訴訟で、国に賠償を命じた熊本地裁の判決をきっかけに、家族への補償金支給を定めた補償法が15日に成立し、名誉回復に取り組むための法改正が実現した。元患者たちの取材を長く続けてきた北野隆一編集委員は、家族が起こした訴訟に当初、ある違和感を持っていた。それが「認識の浅さ」だったと思い知らされた経緯を振り返った。
●「家族が社会復帰の壁」という思い違い
ハンセン病の隔離を定めた「らい予防法」が1996年に廃止される前から、元患者への取材を続けてきたが、2016年に提訴された家族訴訟の取材は、初めは気が進まなかった。複数の元患者から「家族が社会復帰の壁になっている」と聞いていたからだ。元患者らは家族に迷惑がかかるからと療養所内で偽名を使っていたが、隔離政策を誤りとして国の責任を認めた01年の熊本地裁判決を機に実名に戻り、故郷に帰ろうとした。だが家族が受け入れず、死んでも実家の墓に骨を引き取ってもらえない――。そんな話だった。だが家族訴訟が結審した後の今年3月、東京で開かれた集会で原告らの話を聞き、私は自分の認識の浅さを思い知った。家族らがときに元患者に冷たく接したのは、日本社会から受けてきたすさまじい差別から身を守るためだった。家族は加害者というより、被害者だったということだ。社会の片隅で息を潜め、沈黙を続けていた家族の心を解きほぐすきっかけは、家族らが定期的に集まる「れんげ草の会」を、熊本で国宗直子弁護士が続けてきたことだった。その会で10年以上かけて家族らの話を聞いた福岡安則・埼玉大名誉教授と黒坂愛衣・東北学院大准教授が聞き書きを本にまとめたことで被害が可視化され、家族らの提訴に結びついた。成立したハンセン病家族補償法は前文で、家族が強いられた「苦痛や苦難」の重大性が認識されず、取り組みがされなかったことについて国会と政府が「深くおわびする」と明記した。知らなかったから許されるわけではないが、家族らが自ら差別の被害を語り始めた今は、もう見ぬふりはできない。補償法にうたわれた日本社会の偏見・差別を「根絶する決意」が問われているのは、国だけではない。

<「犯罪者≒精神障害者」とする精神障害者差別>
*3-1:https://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/202002/CK2020021102000137.html (東京新聞 2020年2月11日) 相模原殺傷公判 「大麻精神病が影響」弁護側の医師、鑑定否定
 相模原市の知的障害者施設「津久井やまゆり園」で入所者ら四十五人が殺傷された事件で、殺人罪などに問われた元施設職員植松聖(さとし)被告(30)の裁判員裁判の第十三回公判が十日、横浜地裁(青沼潔裁判長)で開かれた。被告の精神状態を調べた工藤行夫医師が弁護側証人として出廷し「被告は大麻乱用による大麻精神病で、判断力が著しく低下していた」と述べ、大麻の影響はないとした精神鑑定結果を否定する考えを示した。工藤医師は、関係者の供述調書や植松被告との面接などを踏まえ、事件一年前の二〇一五年ごろ、被告が大麻を乱用するようになり、信号無視や速度違反、けんかなどの問題行動が増えた点に注目。「障害者は不幸をつくる」との思考から「殺す」という考えに至った点には大麻乱用による「飛躍や病的な高揚感」があったと指摘。短時間に四十三人の入所者を殺傷した犯行そのものが「並外れたエネルギーと驚異的な行動力がなくてはできない。全ての行程に異常な精神状態が認められる」と話した。前回七日の公判での尋問で「大麻による行動への影響はなかったか、あっても小さかった」とした大沢達哉医師の鑑定結果について、工藤医師は「大麻による影響を著しく低く評価している」と否定した。公判の争点は刑事責任能力の有無や程度。検察側は「大麻の使用は犯行の決意が強まったり時期が早まったりしたにすぎず、完全な責任能力がある」と主張。弁護側は無罪を主張している。 

*3-2:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/500533 (佐賀新聞 2020.3.16) 相模原殺傷、植松被告に死刑判決、責任能力認定、横浜地裁
 相模原市の知的障害者施設「津久井やまゆり園」で2016年7月、入所者ら45人が殺傷された事件の裁判員裁判で、横浜地裁(青沼潔裁判長)は16日、殺人罪などに問われた元職員植松聖被告(30)に求刑通り死刑判決を言い渡した。障害者が狙われ、19人もの死者を出した事件。判決は、差別的な主張を繰り返した植松被告の事件当時の刑事責任能力を認めた。被告は初公判で起訴内容を認めたが、弁護側は、心神喪失状態で責任能力がなかったとして無罪を主張していた。争点となった責任能力について、検察側は「パーソナリティー障害」と判断した精神鑑定結果を引用し、特異な考えは人格の偏りにすぎず、正常心理の範囲内と述べた。大麻の影響も少なく、完全責任能力があったとして死刑を求刑していた。弁護側は、大麻による精神障害と反論。乱用によって人格が急変したと強調し、差別的な考えが事件にまで発展したのは「病的な飛躍」で、大麻の高揚感で引き起こしたと訴えていた。公判で被害者は1人を除き匿名で審理。傍聴席内に設けた遺族らの席はついたてで遮蔽する異例の措置を取った。起訴状によると、16年7月26日未明、入所者の男女を刃物で突き刺すなどして19人を殺害、24人に重軽傷を負わせたとされる。また職員5人を結束バンドで廊下の手すりに縛り付け、2人を負傷させたとしている。 

*3-3:https://digital.asahi.com/articles/ASMD54FDFMD5UTIL013.html?iref=comtop_8_03 (朝日新聞 2019年12月5日) 「生きる気力なくなった」遺族落胆 熊谷6人強殺の判決
 埼玉県熊谷市で2015年、7~84歳の6人を相次いで殺害したなどとして、強盗殺人罪などに問われたペルー国籍のナカダ・ルデナ・バイロン・ジョナタン被告(34)に対し、東京高裁は5日、統合失調症の影響で心神耗弱状態だったと判断し、一審の死刑判決を破棄。改めて無期懲役の判決を言い渡した。判決後、殺害された加藤美和子さん(当時41)ら妻子3人をなくした男性(46)らが都内で会見を開いた。「死刑がひっくり返ることはないと思っていた。裁判官は都合のいいところだけを見て判断した。やりきれないし、納得がいかない」と憤りをあらわにした。法廷で判決を聞いた瞬間、「何も言葉が出なかった」という。男性は「家族を失ってから、どうにか生きていこうと踏ん張ってきた。家族にどう報告したらいいのか……生きる気力がなくなったというのが今の気持ちです」と話した。会見に同席した遺族側代理人の高橋正人弁護士は「一審判決は被害妄想への影響を認めつつも、被告の行動は合理的で説明がつくと判断した。高裁は、被告の供述をことさらに持ち出し、行動制御能力がないと結論づけている。明らかに見誤っている」と批判。検察側に上告するよう求めたことを明らかにした。

*3-4:https://digital.asahi.com/articles/ASN3B5WR9N32UTFL01G.html?ref=weekly_mail_top (朝日新聞 2020年3月15日) 障害ある子生まれ「おめでとう」と言えますか 木村議員
 相模原市の障害者施設「津久井やまゆり園」で利用者19人の命が奪われるなどした事件の判決が、16日に予定されている。元職員である被告の言葉をどうみるか。事件が繰り返されないためには――。重い身体障害があり、18歳までの大半を施設で暮らした、れいわ新選組の木村英子参院議員(54)は、障害のある子の誕生に「おめでとう」と言える社会かどうかを問う。どういうことなのか。
●殺されていたのは私かも
 彼の言葉は心の傷に触れるので、集中して公判の報道を見ることができませんでした。施設にいたころの傷ついた自分の気持ちに戻っていくのです。
(裁判で被告は「意思疎通のとれない人は社会の迷惑」「重度障害者がお金と時間を奪っている」などと語った)
彼が言っていることはみなさんにとっては耳慣れなくて衝撃的なのでしょうが、同じような意味のことを私は子どものころ、施設の職員に言われ続けました。生きているだけでありがたいと思えとか、社会に出ても意味はないとか。事件は決してひとごとではありません。19歳で地域に出ていなければ、津久井やまゆり園に入所していたかもしれない。殺されていたのは私かもしれないという恐怖が今も私を苦しめます。私は横浜市で生まれ、生後8カ月のときに歩行器ごと玄関から落ち、首の骨が曲がる大けがをして重い身体障害を負いました。小学5年から中学3年の5年間を除き、18歳までの大半を施設で暮らしました。入所は親が決めました。重い障害のある私に医療や介護を受けさせたいという責任感と、施設に預けなければ家族が崩壊しかねなかった現実からです。私には24時間の介護が必要です。親は疲弊し、一家心中をしようとしたことも何度かあった。親が頼れるのは施設でした。やさしい職員もいましたが、私にとっては牢獄のような場所でした。施設が決めた時間に食事をしてお風呂に入って、自分の暮らしを主体的に決めることがない。食事を食べさせてもらえないことも。一番嫌だったのは「どうせ子どもを産まないのに生理があるの?」という言葉です。全ての施設がそうだとは思いませんが、私がいたのはそういう施設でした。時代が変わっても施設とはそういうものだと私は思っています。プライバシーも制限され、自由のない環境で希望すら失い決まった日常を過ごす利用者を見た人たちが、「ともに生きよう」と思えるでしょうか。偏見や差別の意識が生まれたとしても不思議ではありません。私は、被告だから事件を起こしたとは思えない。
●公園で浴びた排除の視線
(裁判では、新たな事実が明るみに出たものの、事件に及んだ動機や真相は十分には解明されなかった。同じような事件を繰り返さないためにどうすればいいのか)
 被告を罰しただけでは社会は変わらない。第2、第3の被告を生まないためには、子どものころから障害者とそうでない人が分け隔てなく、地域で暮らせる環境をつくることが必要です。私が望むのは、障害のある子どもが生まれたとき、「おめでとう」と言える社会。私は親から施設に捨てられた、歓迎されない命だという思いを抱いて生きてきました。うしろめたい存在だと思うことも、絶望感のなかで仕方のないことだとあきらめていた。歓迎されない命などない、と気づいたのは19歳で地域に出てからです。23歳で結婚し、息子を出産しました。不安だったのは、子どもをかわいいと思えるかでした。母に抱かれた記憶があまりない私は、母に対する愛情が持てなかった。でも出産した時は、子どもへのいとおしさがこみあげました。公園デビューをしたときのことです。息子と子どもたちが砂場で遊んでいるのを、車いすに乗った私が近くで見ていました。だれも私が母親だとは思っていない。私が息子に声をかけ、私が母親だとわかった瞬間、周りのお母さん方が自分の子どもを抱き上げて帰ってしまった。自分の子どもが私に近づくと「そっち行っちゃダメ」。小学校の授業参観でも教室が狭くて、他のお母さんたちが入れないので「詰めていいですよ」と言っても、半径1メートル以内には近寄ってこない。私と関わると厄介なことになる、巻き込まれたくない、といった意識が働くのでしょう。本人たちは差別とは思っていませんが、あからさまな差別です。障害のある人とそうでない人を分けることによってお互いが知り合う機会を奪われることから差別は生まれます。社会から排除することそのものが差別なのです。地域で暮らして35年。福祉サービスは増えましたが、重度訪問介護が就労中などに公的負担の対象外だったり、移動支援が自治体により差があったり。普通学校への入学が重度障害を理由に認められない例もある。こうした課題をみんなで解決できたとき、障害のある子が生まれて「おめでとう」と言える社会になる。それが事件を乗り越えることになるのではないでしょうか。

*3-4:https://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2020032201001730.html (東京新聞 2020年3月22日) 知的・精神障害者は雇わず41% 自治体調査、13%は募集除外
 全国の自治体(1788)を対象とした共同通信アンケートで、首長部局に知的、精神障害者を一人も雇用していないと回答した自治体が少なくとも41%の731自治体に上ることが22日、分かった。全体の13%に当たる230自治体は、一般職員(短時間を含む)の募集条件から知的、精神障害者を除外していた。障害者雇用を巡っては、中央省庁で2018年夏に採用人数の水増しが発覚。厚生労働省は同年12月、特定の障害種別によって応募を制限しないよう自治体に通知した。しかし知的、精神障害については、体調管理や仕事の創出が難しいことを理由に、障壁が解消されていない実態が浮かんだ。

*3-5:https://keiji-pro.com/columns/164/ (弁護士法人プラム綜合法律事務所、梅澤康二弁護士より抜粋) 刑法第39条の概要|責任能力有無の判断基準と39条が適用される対象
 刑法第39条には『刑事責任能力のない人は処罰の対象外とする、または、処罰を軽減する』という記述がされています。法律に違反したなら処罰されるのが当然に思えますが、なぜこうした犯罪者をかばうような法律があるのでしょうか。それは、違法な行為を行った者に対して責任を問うために、事理弁識能力(物事の善し悪しが判断できる能力)と行動抑制能力(自身の行動を律することができる能力)が必要とされているからです。例えば、事情のわからない赤ん坊が誤って機械のスイッチを押してしまい、それによって被害者を負傷させたとします。この場合、赤ん坊を罪に問えません。しかし、責任能力がなかったとしても罪を犯したことには変わらないので、納得がいかない人も多いかと思います。この記事では、刑法第39条についてみていきましょう。
●刑法第39条とは
 以下が刑法39条です。
(心神喪失及び心神耗弱)
第三九条 心神喪失者の行為は、罰しない。
2 心神耗弱者の行為は、その刑を減軽する。(引用元:刑法第39条)
●刑法第39条の対象になる人
 刑法第39条が適用されるのは、次のような人たちです。
●精神障害者
 精神障害者の中でも、行為の善悪の判断がまったくつかない人は“心神喪失者”として、判断能力が著しくつきにくい状態の人は“心神耗弱者”として扱われます。
●泥酔状態者・薬物乱用者
 精神障害を持っていなくても、上と同様に、行為の善悪の判断がまったくつかない人や判断能力が低い人ならば、刑法39条の適用対象になります。しかし、自らの意思で泥酔状態に陥ったような場合は、完全な刑事責任を問われる可能性もあるでしょう。
●刑法第39条が適用された事例
心神喪失が認められ、無罪・不起訴となった事例
 睦沢町で2014年2月、井戸掘削会社社長の男性=当時(61)=が自宅に侵入してきた男に刺殺された事件で、殺人などの罪に問われた無職の男(64)に対し、心神喪失として無罪を言い渡した千葉地裁判決について、千葉地検は30日、控訴を断念したことを明らかにした。控訴の期限の同日が過ぎれば、男の無罪が確定する。地検は「判決の内容を精査、検討したが、原判決を覆すことは困難と判断した」とコメント。今後、心神喪失者等医療観察法に基づく措置を地裁に申し立てる。千葉地裁は16日、男の殺害行為を認めたうえで、「統合失調症の影響を強く受けており、行動を制御することが困難だった。心神喪失状態だったとの合理的な疑いが残る」と述べ、男を無罪とした。検察側は「男は心神耗弱の限度で責任能力はある」と主張し、懲役10年を求刑していた。(引用元:睦沢男性刺殺事件 検察側が控訴断念 心神喪失で無罪判決 | 千葉日報オンライン)
●心神耗弱が認められ、減軽された事例
 東京都世田谷区の自宅で今年1月、生後3カ月の長女を浴槽に沈めて殺害したとして、殺人罪に問われた無職、鈴木由美子被告(39)に対し、東京地裁の裁判員裁判は30日、懲役3年、執行猶予5年(求刑・懲役4年)の有罪判決を言い渡した。島田一裁判長は「子を守るべき立場にありながら、水に沈めるなど犯行態様は悪い」と非難する一方、事件当時は心神耗弱状態だったと認め「治療の必要性が高い」として執行猶予を付けた。(引用元:東京地裁:乳児殺害 母に猶予判決 心神耗弱認める - 毎日新聞)

<法定後見制度>
*4:https://www.nishinippon.co.jp/item/n/562768/ (西日本新聞 2019/11/26) 適正な類型、どう判断 「後見偏重」修正これから
 【成年後見はいま・3】90代の男性が、質問によどみなく答えていく。「息子さんは来ます?」「全く。来ませんね」。福岡県内の高齢者施設。面会に訪れた50代の男性司法書士に「でも、そろそろ来るんじゃないかな。プレゼントをあげたから」。数年前の出来事を口にした。男性は成年後見制度を利用する。法定後見にある三つの類型のうち、判断能力の低下が中間程度の「保佐」とされた。この司法書士が保佐人として生活支援や財産管理に当たる。制度の助けを借りたのは、息子にたびたびお金を渡していたため。施設に来た息子と銀行に向かい、多い日は80万円ほど。渡した額が計400万円近くになった時、施設側が専門家に相談した。司法書士が保佐人になっても要求は続く。1回20万~30万円。男性本人に伝えると「あげてください」。数日空けて「この前の件、本当に振り込んでいいんですか」と尋ねると、理解できていないことがある。貯金は減っている。息子に一度、「お金は親族の体調不良のため」と言われ、親族に確認してみた。返ってきた言葉は「連絡は取っていません」だった。
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 法定後見は、判断能力が低い順に「後見」「保佐」「補助」の3類型がある。後見になると最も広い範囲で法的な手助けを受ける。保佐はこれが後見より狭くなり、逆に本人の意向がより尊重される。司法書士は、この本人の意思の尊重と、保佐人に課せられた財産管理の間で悩む。もし息子のきょうだいに「なぜ1人にだけ財産を渡すのか」と問われたら、責任を取れないとも思う。歯止めをかける方法はある。「類型を後見に変更する」「息子に一定額を送金する際は保佐人の同意を必要とする」ことを家庭裁判所に認めてもらえばいい。しかし、本人は一定の認知機能があり、息子のことを悪くは思っていない。自己決定権の尊重という制度の理念に、それは反しないか-。家裁に相談したが、納得いく答えはなかった。国は今、制度を普及させるため保佐と補助を増やす考えを示す。利用者の約8割を後見が占めている現状は、保佐や補助相当の人が手を挙げていないと見ているためだ。今月は、後見人らが勝手に判断せず、本人の意思を尊重する指針案を公表した。利用者に合った類型を当てはめ、意思も重視するという基本があらためて注目されている。ただ、司法書士は思う。「単に保佐や補助を増やすだけでいいのか疑問だし、意思を尊重するにも男性のような例がある。そんな時の対応も考えるべきだ」。後見に慣れた現場を変えるのも容易ではない。後見人は保佐人や補助人より強い権限で、本人を手厚く守ることができる。家裁や専門家、どの類型が適当か診断する医師の間には「後見にしておけば間違いはない」という意識が強い。九州のある司法書士は「保佐や補助は本人ができることと、できないことの見極めが難しい。ほぼ全てを任される後見の方が正直、仕事は楽」と打ち明けた。
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 その類型を巡り現場で意見が食い違うこともある。福岡県の女性(69)は頭の病気で倒れ、保佐を申し立てることにした。しかし、医師の診断書は「後見相当」。担当した40代の男性司法書士は「本人の状態に合わない」と、そのまま保佐を申し立てた。家裁が鑑定を行い、出した結論は保佐。鑑定費用約7万円は女性の負担になった。司法書士は「後見になると、本人ができることでも後見人が代わりにしてしまう。本人の能力を生かす類型は何か、もっと考える仕組みが必要」と語る。こうしたこともあり、国は今年4月、類型が記憶力や理解力を反映したものになるよう診断書の様式を改めた。福祉関係者が生活状況などを書く「本人情報シート」も作り、判断する材料を増やした。個人に合う類型を選び、意思を尊重する理念に立ち返ろうとする国と、後見偏重が染み付いた現場。理念とかみ合わぬ運用の修正はこれからになる。
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【ワードBOX】法定後見の3類型
 法定後見は、判断能力がほとんどない人は「後見」▽著しく不十分な人は「保佐」▽不十分な人は「補助」-の3類型がある。支援するのは後見人、保佐人、補助人。本人に代わって契約を結ぶ「代理権」、本人が結んだ不当な契約を取り消す「取り消し権」、本人が契約をする際、同意できる「同意権」があり、類型ごとに与えられる権限は異なる。後見人は代理権と取り消し権があり、日常生活に関する行為を除いて幅広い法的権限が与えられる。

<緊急事態宣言から緊急事態条項にならないために・・>
PS(2020年4月1、2、4、6、9、11日):メディアには「緊急事態宣言を出して欲しい」という論調のものが多いが、その原因は、*5-1のように、諮問委員会メンバーの釜萢日本医師会常任理事による「緊急事態宣言を出す時期だ」という発言や指示待ち族が多い国民性だろう。しかし、東京・大阪で患者数が増加しても、院内感染による多数の患者発生もあり、他の地域に患者の急増はないため、新型コロナにかこつけた「何でもあり」は危なすぎる。むしろ過度の外出自粛要請・指示は経済をストップさせ、消費税増税による消費減退に加えて経済活動をストップさせ、企業の倒産や雇用の消滅により別の意味で生命の危険に遭遇する人を増やしそうだ。
 WHOは、*5-3のように、世界各地で導入が進む移動制限について、「都市封鎖などの措置は、移動の自由を侵害するため慎重にやらなければならない」と指摘し、安易な運用を戒めている。実際に、*5-4・*5-5のように、新型コロナによる制限が実体経済に与えた影響は大きく、観光業界やイベント業界だけでなく、美容業界はじめ不特定多数の客を扱う店舗へのマイナスの影響が大きい。そのため、*5-6の治療薬アビガンなどはとっくに治療に使っているべきなのに、今から治験とは驚きだし、治療の前提となる検査も十分に行われていないので、「本当に治療する気があるのか?」と思うくらいだ。
 また、政府は、*5-2のように、新型コロナをきっかけとして携帯電話会社やIT大手に利用者の位置情報や検索ワード履歴を集めた統計情報の提供を要請したそうだが、これも新型コロナにかこつけたプライバシーの侵害であり、これは興味本位や営業目的にも使えるものだ。
 さらに、「医療崩壊・・」という言葉も何度も聞いたが、*5-5のように、観光客の急減で破綻しそうなほど客が減っているホテルなどを軽症者の隔離に利用し、きちんと管理して入院施設の不足を防げばよいだろう。
 安倍首相が、*5-7のように、新型コロナ感染拡大防止のため布マスクを全世帯に2枚ずつ配る方針を示されたことについて、私は賛成だ。50年前の日本は、ガーゼを重ねたマスクが普通で、洗って何度も使うのが常識だった。現在は、中国製の紙マスクを使い捨てにするのが普通であるため、それしか知らない人は「布マスクは防護機能が低い」と言って品不足になっているが、布マスクも生地の選び方や重ね方で機能は変わり、紙マスクのように隙間ができないため防護機能をより高くできるかもしれない。また、*5-8のように、高級ファッションブランドのバレンシアガとサンローランが、同ブランドでマスクの生産を開始すると発表し製造に向けて準備中で、グッチもトスカーナ地方のファッション企業から要請を受けて数週間以内に110万枚のサージカルマスクと5万5000着の医療用オーバーオールを寄付する予定だそうだ。そのため、せっかくなら機能的でおしゃれなマスクや医療用オーバーオールができればよいと思う。さらに、*5-9のように、政府が自動車メーカーに人工呼吸器の部品を生産するよう求める動きが相次いでおり、米国はGMに生産を指示し、英国はマクラーレンが生産を計画しているそうだ。また、重症患者には「体外式膜型人工肺」が使われるが、数が少ないためニプロが増産準備を進めているとのことである。一般に、医療機器は、自動車や家電と比較して構造が簡単であるにもかかわらず、(顧みられることが少なかったためか)ちゃちな製品が多い。そのため、外国メーカーの臨機応変の対応に感心するとともに、改良に期待するわけだ。このような中、感染防止のために常時マスクをつけている医師が、メディアで「マスクは感染防止効果がない」などと言っているのは、自己矛盾であるとともに知識と見識が疑われる。
 厚労省が、*5-10のように、病院は重症者の治療に専念できるよう、軽症者や無症状の感染者は自治体の用意する施設・ホテル・自宅での療養を検討するよう、4月2日付で都道府県などに通知したことを受けて、東京・大阪だけでなく福岡でもホテル等の確保に向けた動きが出ているそうだ。私は、自宅療養すれば家族や周囲に感染させそうであるため、14日間くらいならホテル等できちんと管理しながら療養できる体制にした方が、皆にとって負担が少ないと考える。
 なお、*5-11のように、埼玉県では病床不足でホテル等での療養も検討しているが、そのホテルがまだ決まらないそうだ。しかし、自宅待機している間に重症化しては困るので、これは一刻を争うことで、診断がついて軽症の人を移すホテルを早々に決めるべきだ。そして、オリンピックが延期になり、ビジネスや観光もストップしているため、これは比較的容易な筈で、他の都道府県でも同じだろう。
 2020年4月11日、佐賀新聞が、*5-12のように、イリノイ大の研究者が「布マスクはウイルスの拡散や取り込みを防ぐには不十分で、感染防止効果が低い」という調査結果を発表し、厚労省は軽症者らが自宅療養する場合は感染対策として「サージカルマスク等の着用」を挙げたと記載している。しかし、サージカルマスクが手に入らなければ布マスクを使うしかない上、布マスクも下の図のように工夫次第であるため、厚労省は、PCR検査を待っている間に軽症者を重傷者にすることなく、速やかに検査を行って治療を開始できるよう、検査が必要な人に過度に待機させる帰国者・接触者相談センターや保健所を通させるのをやめるべきである。
 帰国者・接触者相談センターや保健所が検査のネックになっていることは、*5-13のように、さいたま市の西田保健所長が、「病院があふれるのが嫌で(検査対象の選定を)厳しめにやっていた」と言っていることから明らかだ。そして、これは、さいたま市だけの問題ではなく、厚労省の考え方そのものであり、軽症者を重傷化させたり、感染者を増やしたりすることに大きく“貢献”しているため、本末転倒も甚だしいわけである。



(図の説明:1番左は、広島県の下着メーカーが伸縮性のある生地で作ったマスク、左から2番目は、今治産タオルのマスクだ。また、右の2つは、手作りマスクで、特に子供用にはかわいい柄付きや動物の鼻付きマスクも面白く、喜んで使ってもらえそうだ。なお、下のように工夫された生地もあるので、三密になりがちな国会議員は、気の利いたマスクをして議論したらどうか?)

   

(図の説明:1番左は、丹後ちりめんに鳥インフルエンザの抗ウイルス加工を施したマスク用生地で、左から2番目は、抗ウイルス加工を施した材料を使う事例だ。そのため、鳥インフルエンザに限らない抗ウイルス加工した資材を、特に駅・病院・ホテル・バス・列車などの公共空間に使ったらどうかと思う。右から2番目は、抗ウイルス加工した丹後ちりめんの説明で、一番右は、綿布に同じ加工を施した説明で、織物はじめ資材も進歩させることができるわけだ)

*5-1:https://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/202003/CK2020033102000172.html (東京新聞 2020年3月31日) <新型コロナ>「緊急事態宣言 出す時期」 政府諮問委の日医幹部
 新型コロナウイルス感染症の急拡大で緊急事態宣言を出す際に政府が判断を仰ぐ諮問委員会のメンバーを務める釜萢敏(かまやちさとし)日本医師会常任理事は三十日の記者会見で、宣言について「個人的には発出し、それに基づき対応する時期ではないかと思う」と話した。政府は、東京都を中心とした感染拡大の現状を踏まえ、発令の要件に適合するかどうか本格的な検討に入った。釜萢氏は、新型コロナウイルスの流行状況などの分析を行い、見解を示す政府の専門家会議と、緊急事態宣言に関する諮問委のメンバーを兼務している。釜萢氏によると、この日の専門家会議メンバーらによる非公式の電話会議でも「もう宣言をした方が良いのではないか」という意見がほとんどだったという。患者が急増する東京では、感染経路が不明の症例が相次ぎ、封じ込め対策が難航。医療機関では防護服やマスクといった必要な物資が不足し、病床(ベッド)が足りなくなる恐れも高まっている。菅義偉(すがよしひで)官房長官は会見で、「ぎりぎりの状態にある。各方面の専門的な知見に基づき、慎重に判断することが必要だ」と強調した。政府は宣言を出した際の経済的な悪影響を懸念してきた。だが、専門家から発令を求める意見が出始めてきたこともあり「そんなことを気にしている場合じゃない」(高官)と急速に危機感を強めている。立憲民主党の枝野幸男代表も「フェーズが変わりつつある。補償とセットになった緊急事態宣言を真剣に検討しなければならない段階に入った」と指摘した。特措法は「国民の生命、健康に重大な被害を与える恐れがある」「全国的かつ急速なまん延により国民生活と経済に甚大な影響を及ぼす恐れがある」の二つの要件を満たせば、首相が宣言を出せる。政府は既に「生命、健康に重大な被害」は該当するとしている。発令されれば、対象となった都道府県の知事が外出自粛の要請や、百貨店など大人数が集まる施設の使用制限、学校の使用制限を要請・指示することなどができる。

*5-2:https://mainichi.jp/articles/20200331/k00/00m/010/347000c (毎日新聞 2020年3月31日) 政府、通信事業者に任意で位置情報提供を要請 「クラスター」早期発見狙う プライバシー侵害懸念も
 新型コロナウイルスの感染拡大を受け、政府は31日、携帯電話会社やIT大手に対し、利用者の位置情報や検索ワードの履歴などを集めた統計情報の任意での提供を要請した。人の流れをビッグデータで把握することにより、クラスター(感染者集団)の早期発見につなげる狙いがある。要請先には、NTTドコモなど携帯電話大手3社のほか、ヤフーや楽天、「GAFA」と呼ばれる米IT大手4社も含まれる。これらの企業の統計データを使い、人が密集しやすい地域を早期に把握して注意を喚起したり、特定の検索語の増加と感染者の増加との関連性を見いだすことで、早期に医療体制を整えたりするといった活用法が期待されている。情報は企業側で匿名化するため「プライバシーの問題はない」(総務省総合通信基盤局)としている。同局は「単にデータだけもらっても政府で分析するのは難しい。データをどう使うか企業に提案してもらい、有効となれば施策に生かしたい」としている。ただ、要請に法的な根拠はなく、強制力はない。ヤフーは取材に対し、「顧客のプライバシー保護が大前提。ビッグデータの力で新型コロナの感染拡大防止に貢献できる方法が無いか検討したい」とコメント。携帯電話大手のKDDI(au)は「個人情報保護法などの法律の範囲内で対応したい」としており、アプリを通じて得られる位置情報の提供などを想定しているという。ITを使った感染防止策を巡っては、欧州各国で外出禁止措置の順守状況を確認するため、政府が通信会社と携帯電話の位置情報を共有する動きが出ている。シンガポールでは、一定の距離で接触した人の履歴を記録し、感染者が出た場合に濃厚接触者を割り出すスマートフォンアプリも開発され、感染源や感染先の特定に使われている。個人情報保護に詳しい日本情報経済社会推進協会の坂下哲也常務理事は「感染拡大防止のためにデータ活用するという方向性は理解できる。企業が政府の要請に応じる場合は、集めたデータをどのように匿名化するかを公表しプライバシー侵害の懸念の払拭(ふっしょく)に努めるべきだ」と話す。

*5-3:https://www.tokyo-np.co.jp/article/world/list/202003/CK2020033102000276.html (東京新聞 2020年3月31日) <新型コロナ>「移動制限」丁寧な説明が必須 WHO、安易な運用警鐘
 世界保健機関(WHO)で緊急事態対応を統括するライアン氏は三十日、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて世界各地で導入が進む移動制限措置について「各国政府は国民に対し、なぜ必要なのかを隠し立てせず、分かりやすく伝えることが肝要だ」と述べ、安易な運用を戒め、丁寧な説明が必須と強調した。ライアン氏は、都市封鎖などの措置は「移動の自由を侵害するので、非常に慎重にやらなければならない」と指摘。また「都市封鎖だけではウイルスを撲滅できない」と述べ、感染疑い例へのウイルス検査や感染経路の特定、隔離といった対策を決して怠らないようくぎを刺した。またテドロス事務局長も、都市封鎖などは感染拡大を遅らせ、医療体制崩壊を防ぐ「時間稼ぎ」には使えるとしながらも「社会保障制度が整っていない国もある」と指摘。「日々の糧を得るために、毎日働かなければならない人がいることを忘れてはならない」と強調し、移動制限や営業停止措置に伴って収入源を失う人々に配慮した対策を取るよう各国に求めた。ライアン氏は「社会が受け入れられるものであるかどうかを、各国政府は最重視しなければならない」と言明。移動制限を導入する場合、人々が順守して実効性のあるものにするためにも「影響を受ける国民の人権や尊厳が尊重されなければならない」と訴えた。

*5-4:https://www.jiji.com/jc/article?k=2020032401260&g=eco (時事 2020年3月24日) 自粛による損害、助成を イベント業界、政府に要望―経済対策・新型コロナ
 政府は24日、新型コロナウイルス感染症の実体経済への影響に関する集中ヒアリングを首相官邸で開いた。同日はイベント業界の代表者らが出席。中止や延期で影響を受けているイベント主催者らから、自粛で生じた損害への助成や、再開時に必要となる消毒液やマスクなどの費用負担の要望が相次いだ。チケット販売大手「ぴあ」の矢内広社長は感染拡大の影響でコンサートやスポーツなどの国内イベントが中止・延期となった結果、既に1750億円の損失が生じていると指摘。矢内社長は終了後、報道陣に対し、「自粛要請を受けて自らの判断で中止・延期した人たちへの補助をきちんとしてほしい」と訴えた。

*5-5:https://www.nishinippon.co.jp/item/n/596774/ (西日本新聞 2020/3/31) 九州初、福岡と佐賀の宿泊施設が経営破綻 新型コロナで観光客急減 
 新型コロナウイルスの感染拡大による観光客の急減などを受け、九州の2宿泊施設の経営破綻が31日、相次ぎ明らかになった。福岡県うきは市の旅館「原鶴温泉咸生閣(かんせいかく)」は福岡地裁久留米支部に破産を申請。佐賀県武雄市の「武雄センチュリーホテル」の運営会社も破産申請の準備に入り、営業を停止した。東京商工リサーチ福岡支社によると、咸生閣の負債総額は約2億円。新型コロナ感染拡大でキャンセルが相次ぎ、3月中旬から休業していた。創業50年を超える老舗で1998年5月期は売上高約2億5千万円を計上したが施設の老朽化などで集客力が低下。2019年5月期は売上高約7500万円と低迷していた。武雄センチュリーホテルによると、昨夏の記録的大雨や韓国人客の減少で売り上げが減少。新型コロナの感染拡大が追い打ちをかけた。運営会社は瑞穂商事(島根県)で、ホテル従業員約70人は3月31日付で解雇。ホテルを所有する静岡県の宗教法人は「新たな運営会社を早く見つけ、存続させたい」としている。帝国データバンクによると、瑞穂商事などグループ3社はスキー場やリゾートホテルも運営。負債は計約30億円が見込まれる。

*5-6:https://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2020033001002562.html (東京新聞 2020年3月30日) 富士フ、アビガン治験開始へ 新型コロナで、増産も
 富士フイルムホールディングス(HD)が、新型インフルエンザ治療薬「アビガン」について、新型コロナウイルス治療のための臨床試験(治験)を近く始めることが30日、分かった。増産も進める。アビガンについては、安倍晋三首相が28日の記者会見で、正式承認に向けた手続きを始める考えを示していた。アビガンを開発した富士フイルムHD傘下の製薬会社、富士フイルム富山化学(東京)が病院と連携して行う。感染拡大が深刻化している状況を踏まえ、治験後は早期に承認される可能性がある。生産能力拡大のため他社への生産委託も検討している。

*5-7:https://digital.asahi.com/articles/DA3S14426289.html (朝日新聞 2020年4月2日) 1世帯2枚ずつ、政府が布マスク 新型コロナ
 安倍晋三首相は1日、新型コロナウイルスの感染拡大防止のために、洗濯して繰り返し使える布マスクを5千万余りある全世帯に2枚配る方針を示した。再来週以降、感染者数の多い都道府県から順次配る。首相官邸で開かれた政府対策本部の会合で明らかにした。

*5-8:https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20200323-00010002-ampreview-bus_all (AMP 2020/3/23)バレンシアガとサンローラン、マスク生産 グッチは医療用衣類寄付
 高級ファッションブランドのバレンシアガとサンローランの親会社であるフランスのケリングが、同ブランドでマスクの生産を開始することを発表した。現在フランスに本拠地を置く同ブランドは、従業員に対して新型コロナウイルスへの十分な対策を行いながら、マスクの製造に向けて準備をしているという。生産工程と原料について正式に認可され次第、すぐに生産を開始するとのことだ。また同社は今回の新型コロナウイルスのパンデミックを受け、中国やイタリアに寄付を実施。さらに同社が運営するファッションブランド・グッチはトスカーナ地方のファッション企業からの要請を受け、今後数週間以内に110万枚のサージカルマスクと5万5,000着の医療用オーバーオールを寄付する予定だという。

*5-9:https://www.nikkei.com/article/DGXKZO57384230Z20C20A3NN1000/ (日経新聞 2020/3/30) 人工呼吸器とは 新型コロナで自動車メーカーも生産
 海外では、政府などが自動車メーカーに人工呼吸器の部品を生産するよう求める動きが相次いでいる。米国がゼネラル・モーターズ(GM)に生産を指示したのは、非常時に企業活動を指示できる「国防生産法」に基づく措置。英国ではマクラーレンが生産を計画しているという。重症の患者には「体外式膜型人工肺」と呼ばれる装置が使われる。血液をいったん患者の体外に取り出し、酸素を供給し二酸化炭素を排出してから体内に戻す。日本呼吸療法医学会などが調べた1558施設の設置台数は約1400台で、ほかのタイプより少ない。このためニプロが増産準備を進めている。取り扱いに高度な技量が必要で、扱える医療従事者の不足も懸念されている。
▼人工呼吸器 自力で呼吸できなくなったとき、肺への空気の出入りを補助する。息を吸う時は装置で圧力を高めて空気を肺に送り込む。吐く時は、圧力を低くして空気を排出しやすくする。気管にチューブを挿し込む一般的なタイプのほかに、口や鼻を覆うマスクタイプがある。使われていない装置が多かったが、新型コロナウイルスの感染拡大で不足する懸念が出てきた。

*5-10:https://www.nishinippon.co.jp/item/n/597841/ (西日本新聞 2020/4/4) ホテルや自宅療養、福岡も 軽症者対象 厚労省通知受け施設確保急ぐ
 厚生労働省は3日、新型コロナウイルスの感染拡大状況に応じて、軽症者や症状がない感染者については自治体の用意する施設やホテル、自宅での療養を検討するよう都道府県などに通知したと発表した。大都市圏では感染が急拡大し、入院患者を受け入れる病床が逼迫(ひっぱく)しつつある。重症者に対する治療を優先し、医療崩壊が起きるのを防ぐ狙い。通知は2日付。これを受けて、病床数不足が懸念されている福岡県内では施設確保に向けて個別のホテルなどと調整する動きが出ている。福岡市の高島宗一郎市長は3日の会見で「ホテルを借り切って軽症者に入ってもらったり、自宅で療養してもらったりする準備を進めている」と述べた。既に、宿泊施設側に意向や予約状況などの聞き取りを進めており、状況が整い次第、重症者以外は原則、病院外で療養させる医療体制に移行する考えを明かした。同県内では、同市や北九州市でクラスター(感染者集団)が相次いで発生。県や福岡市によると、2日現在、同市内の感染症病床8床は満床で、県内の66床も3分の2が埋まっている。感染者を受け入れられる一般病床の確保数は「数十床」で、感染が判明しても入院先がすぐに決まらず自宅待機を余儀なくされているケースが頻発している。新小文字病院の医療スタッフ19人が院内感染した北九州市では、21人の自宅待機が続く。入院先を調整していたさなかの厚労省の通知に担当者は「急激な感染者の増え方を見ると自宅療養など次の準備をしなければならない」と話した。同県の小川洋知事は3日の会見で、「今までも民間宿泊施設の活用ができないかという話はしていて、既に検討している。作業を加速させたい」と述べた。現時点で、感染者を受け入れられる病床に余裕がある大分県も医療体制の移行について検討を始める方針だ。3日までの感染者は31人だが、感染症病床と一般病床を合わせた118床を確保。県の担当者は「病床は重症者を優先しなければならない」と感染拡大期に向けた備えを万全にする構えを示した。

*5-11:https://headlines.yahoo.co.jp/videonews/fnn?a=20200409-00130247-fnn-soci (FNN 2020.4.9) 埼玉の軽症者ら78人入院できず 病床不足でホテルなどでの療養も検討
 埼玉県で、新型コロナウイルスの感染者のおよそ3割が、入院できずに自宅などで待機していることがわかった。埼玉県では、これまでに253人の感染者が出ているが、8日の時点で、78人が入院できずに自宅などで待機していて、さらに増える見通し。埼玉県・大野知事「当初から感染者病棟と一般病棟、さらに難しいときは、ホテルだけでなく、病院以外の施設や自宅待機と段階的にやっていく計画を当初から立てていた。正直、受け入れ表明した病院が入れられない状況がある」。埼玉県によると、自宅で待機している感染者は、主に無症状や軽症者で、地元の保健所が1日2回程度健康状態を確認しているという。埼玉県は、今後、ホテルなどでの療養も選択肢として検討するとしている。

*5-12:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/511015 (佐賀新聞 2020.4.11) 米専門家、布マスクの防御力低い、限界指摘「理解し使用を」
 布マスクはフィルターとしての機能が弱く、新型コロナウイルス感染を防ぐ効果は低いとする見解を、感染防御などが専門の米イリノイ大の研究者らが11日までに公表した。日本では安倍晋三首相が全世帯に2枚配布する方針を表明。今後、無症状の感染者や軽症者らの自宅療養も想定され、専門家は「布マスクで感染を完全には予防できないことを理解して使ってほしい」と呼び掛ける。見解は過去の複数の研究成果に基づく。その一つが、ウイルスのような微粒子に対し、マスクや布製品がどの程度フィルター効果を発揮するかを調べた米国立労働安全衛生研究所の実験だ。医療現場などで使うN95マスクが最も効果が高く、微粒子の95%以上を捉えた。タオルが40%前後、スカーフが10~20%程度、Tシャツが10%前後、布マスクは10~30%程度だった。ベトナムの医療現場で働く人を対象にした別の研究では、不織布のサージカルマスクに比べ、布マスクを着けた医療関係者の方が感染してしまう割合が高かった。こうした結果からイリノイ大の研究者は、布マスクはウイルスの拡散や取り込みを防ぐには不十分で「感染防止には効果がないだろう」とした。厚生労働省は軽症者らが自宅療養する場合の考え方の中で、家族ら周囲の人の感染対策として「サージカルマスク等の着用」を挙げた。不織布のマスクを入手できない場合に布マスクを代用で使うよう呼び掛ける。布マスクでも、くしゃみやせきでしぶきが飛ぶのをある程度は抑えられる。ウイルスが付いた自分の手が口や鼻に触れるのも防ぐため、政府は「感染拡大防止に一定の効果がある」とする。全世帯配布の経費は466億円と見積もる。聖マリアンナ医大の国島広之教授は、不織布のマスクの方が有効だとした上で、入手困難なら布マスクでしのぐのが妥当だと指摘。「自宅療養などの際は、換気や消毒と併せて予防効果を高めてほしい」と話した。

*5-13:https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20200410-00000195-kyodonews-soci (共同通信 2020/4/10)保健所長「病院あふれるのが嫌」、さいたま市の検査数少ない理由
 新型コロナウイルス感染の有無を調べるPCR検査が、さいたま市では2カ月で171件にとどまったことについて、市の西田道弘保健所長は10日、記者団の取材に「病院があふれるのが嫌で(検査対象の選定を)厳しめにやっていた」と明らかにした。さいたま市は2月に検査を開始し、今月9日までに171件。同市より人口、感染者ともに少ない千葉市は同日時点で4倍以上の700件を超えた。西田氏は、軽症や無症状の患者で病床が埋まるのを懸念したと説明。「検査を広げるだけでは、必要がないのに入院せざるを得ない人を増やすことになる」と述べ、滞在先施設の確保が必要だと強調した。

<感染症も考慮に入れた病院再編のあるべき方向性は?>
PS(2020年4月3日追加):*6-1のように、日本医師会が「①一部地域で病床不足になりつつある」として医療危機的状況宣言を発表したが、①については、*6-3の東京都内で97人の感染が確認されたという一部地域の問題で多くの院内感染を含むため、医師会はホテル借り上げなどの意思決定はできないことを考慮して、政治は国民に犠牲を強いない政策を考えるべきだ。
 また、医師会常任理事の釜萢氏は、*6-2に「②比較的症状が軽い患者を受け入れる“コロナ専門病院”を決めておくことを各地の医師会や行政に求めたい」としておられるが、②については、病名のわからない患者がコロナ専門病院を自ら選んで受診することは不可能であるため、地域の基幹病院が検査して振り分ける必要がある。
 そして、横浜市立市民病院感染症内科部長の立川氏は、「③新型コロナはいきなり呼吸不全に陥るのではなく、症状の軽い時期が数日続くため、この間に感染がわかれば重症化を防げる。疑わしきは検査し、重症度を判定して早めに治療すれば、入院患者も人工呼吸器の使用も減らせ、十分ウイルスと戦える。治療薬は別の病気の薬で新型コロナに効きそうなものが4種類はあり、当院でもこれらを組み合わせて効果が出ており、早期の検査と治療がカギだ」「④現在は、PCR検査で陽性なら入院となるため感染しても元気な人が入院し、その分、治療が必要ながん患者が入れないのでは本末転倒だ」「⑤軽症者は別の施設で経過を見て、病院には重症者だけを残す形に早く移行するのがよい」「⑥退院には2度のPCR検査で陰性になることが必要だが、これも見直すべきだ」としておられ、③⑤が治す気がある場合の正攻法である。
 一方、日経新聞は、*6-4のように、「⑦新型コロナの院内感染を防ぐため、ビデオ通話によるオンライン診療の活用を広げる規制緩和が、限定的な範囲に留まる恐れが出ている」「⑧これは、オンライン診療の拡大を恐れる日本医師会への配慮だ」などと記載している。しかし、医師は初診の患者が入ってきた時は、その愁訴を聞くだけではなく、服装・歩き方・顔色・匂い・触診・愁訴内容などのすべての情報から検査項目を決め、検査の結果によって病名を特定しているため、「⑨初診からオンライン診療では、対面に比べて診察時に得られる情報が限られる」という医師会の主張や「⑩受診歴のある慢性疾患の患者であれば可能」という厚労省の主張は正しい。そのため、⑦⑧のように、新型コロナにかこつけてオンライン診療を解禁させようとするのは、日本の医療水準を落として国民のためにならず、大きな問題である。
 さらに、厚労省は、公的病院のうち「急性期」「高度急性期」の病床を持つ1455施設に、2017年時点の手術実績で手術数の少ない病院に再編・縮小に向けた検討を求めて、*6-5のように、2019年9月にリストを発表したが、これには感染症が考慮されていなかったのだそうだ。しかし、インフルエンザ・肝炎・肺炎・結核・風疹・はしかなどの感染症は最も多い基礎的疾患であるため、これを考慮しないというのはあり得ず、金銭に関する稚拙な算術だけで医療を考えることの危うさをあらためて浮き彫りにした。


     死因別死亡率        人口10万対病床数   2019.10.3 2019.11.12 
                               朝日新聞  毎日新聞

(図の説明:1番左の図のように、日本の人口10万対死亡率は2011年から肺炎が3位に浮上している。しかし、左から2番目の図のように、日本は一般病床・精神病床が多すぎる割に感染症病床が殆どない。にもかかわらず、右の2つの図のように、厚労省は手術実績のみを基準として手術数の少ない病院に再編・縮小に向けた検討を求めており、改悪の方向になっている)

*6-1:https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200401/k10012362941000.html (NHK 2020年4月1日) 日本医師会が「医療危機的状況宣言」 病床不足の地域も
 新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、日本医師会は、一部の地域では病床が不足しつつあるとして、「医療危機的状況宣言」を独自に発表し、国民に感染を広げない対策や適切な受診行動を呼びかけました。新型コロナウイルス対策の特別措置法に基づく「緊急事態宣言」をめぐって、安倍総理大臣は1日の参議院決算委員会で「今、この時点で、出す状況ではない」と述べていて、政府は今後の感染者数の推移や経済への影響などを見極めながら、引き続き慎重に判断していく方針です。こうした中、日本医師会の横倉会長は記者会見で、「国の宣言は国民の生活や経済の影響を踏まえて発令をされるのだろうが、一部の地域では病床が不足しつつあり、感染爆発が起こってからでは遅い。今のうちに対策を講じるべきだ。現場は『医療危機的状況宣言』と言える状況だ」と述べました。そして医療提供体制を維持するために、国民に対し、みずからの健康管理や、感染を広げない対策、そして適切な受診行動をとるよう呼びかけました。一方で横倉会長は政府の新型コロナウイルス対応について、「今、物資の不足とか、体制が十分にとれていないという現実からみれば、もっと対応を加速してほしい」と述べました。

*6-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200402&ng=DGKKZO57515920R00C20A4TCS000 (日経新聞 2020.4.2 より抜粋) 「感染爆発」 社会をどう守る
 新型コロナウイルスの世界的な感染拡大が止まらない。国内でも東京都の小池百合子知事が「感染爆発の重大局面にある」と述べ、外出の自粛を呼びかけるなど、危機感が広がっている。救える命を救い、社会を守るために今何が必要なのか。専門家に聞いた。
   ◇  ◇
■地域ごとに「専門病院」を 日本医師会常任理事 釜萢敏氏
 体調を崩した人が真っ先に受診するかかりつけ医は感染症対応でも最前線に立つ。日ごろからインフルエンザや溶連菌などの検査を行っている所も多く、試料を採取する際に思いがけず新型コロナウイルスにさらされるリスクをはらむ。医療の現場を守りながら新型コロナに対応するためには、かかりつけ医はなるべく日常通り稼働してもらうことがよいと考えている。かかりつけ医の現状は厳しい。全国の診療所では目下、マスクが足りない。日本医師会は国に要望して計1700万枚ほどを配布したが、交換する頻度を減らすなどして何とかしのいでもらっている。新型コロナウイルスの検査に必要なだけの性能の防護服が十分にそろわない診療所もあるだろう。北海道の診療所で受診者のなかに感染者がいたため、内科医が感染した例もある。最大の問題は日本ではこれ以上、医師や病床などの医療資源を拡充するのが難しいことだ。イタリアは医療費削減のために医師の定年制を敷いてきたが、結果的に多くの医師経験者が再雇用された。ドイツでは医療資源が十分に確保できており死者が少ない。日本は高齢の医師が現役で働いているほど日ごろから医師が不足しており、急に増員する余裕はない。人工呼吸器や体外式膜型人工肺(ECMO)を増産しても使いこなせる人材がすぐには出てこない。オーバーシュート(爆発的な感染拡大)が起こり、患者を選ばなければならない事態になりかねない。医療の現場を守りながらコロナに対応するには、現存する医療資源をフル活用する方策を考えるしかない。具体策として、比較的症状が軽い患者を受け入れる「コロナ専門病院」を決めておくことを各地の医師会や行政に求めたい。かかりつけ医が疑わしい患者から電話相談をあらかじめ受けるようにし、必要に応じて「専門病院」を案内する。患者の動きを分けることで、かかりつけ医が感染したり長期の休診に陥るのを防ぎ、透析などで日常的に通院が必要な患者の受け皿を維持したい。「専門病院」には、たとえば夜間や休日に診療できる施設や、都道府県の公立病院などの施設になってもらうのが理想だ。人工呼吸器が必要かどうかという程度の患者まで診てもらい、さらに重度の患者は国立国際医療研究センターなどの病院で受ける。数段構えのイメージだ。都市ごとに各地の医師会と話し合い全国の整備状況を把握しようとしている。それでも病床は足りそうにない。まん延期を見据え、入院中だけれども症状が重くはない人に退院してもらい、なるべく病床を空けることが喫緊の課題だ。基本的には自宅にとどまってもらい、ハイリスクな家族への家庭内感染のおそれがある患者には滞在施設を設けて入ってもらう。宿泊施設などと調整を急ぐ。必要な情報が各診療所にすぐに届くような仕組みも必要だ。「感染者情報が遅い」「発症日ベースで感染者情報を出してほしい」という要望を受けているので、改善すべきだ。かまやち・さとし 78年日本医科大学卒。88年から群馬県の小泉小児科医院院長。高崎市医師会会長などを経て14年から現職。地域医療や感染症危機管理対策などを担当。66歳
   ◇  ◇
■早期の検査・治療カギ 横浜市立市民病院・感染症内科部長 立川夏夫氏
 これまで計30人近くの新型コロナ感染症患者を受け入れた。半数はクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」に乗船していた人たちだ。3人は集中治療室で処置した。現在も数人が入院している。第一種感染症指定医療機関として、エボラ出血熱など1類感染症の患者を受け入れられる態勢がある。それでも、クルーズ船の患者が数日の間に10人以上搬送されてきたのは想定外だった。感染症病床は一時すべて埋まり、それ以上は連携先の別の病院で受け入れてもらった。恐怖心がなかったわけではないが、中国のデータでは若い人の重症化例は少ない。当院の若手スタッフに万が一うつっても即、致死的とはならないのは救いだと感じた。一番の問題は、看護師の負担が増えたことだ。学会の推奨を上回る水準まで感染防護を強化しており、防護服で普段通りのケアをするのは大変だ。脱ぐときに接触感染が起きやすいため、別の人に見てもらう必要もある。他の診療科からも応援を頼み、その場で教えながら対応した。人工呼吸器を使った例はあるが、体外式膜型人工肺(ECMO)は患者の年齢、基礎疾患、家族の希望などを踏まえ使用していない。急に多数の患者が来れば機器が不足する心配はある。近隣病院ではマスクが悲劇的に不足している。市が優先的に回してくれる当院でも、できるだけ1日1枚の使用にとどめている。政府は国内感染者発生のピークを遅らせることに、ある程度成功してきた。受け入れ可能な病床数から逆算してPCR検査をしている結果、感染判明者が少ないのだろう。増加ペースが今くらいで、人材や機器の準備期間がとれれば対応はできる。だが、今後どうなるかはわからない。入退院に関しては課題がある。現状ではPCR検査で陽性なら入院となる。感染していても元気な人が入院し、その分、たとえば治療が必要ながん患者が入れないのでは本末転倒だ。政府は新型コロナのまん延期には、軽症者は自宅や別の施設で経過をみて、病院には重症者を残す形に移行するとしているが、まだその時期ではないという。早く移行すべきだ。また、退院するには2度のPCR検査で陰性になり、ウイルスがいなくなったのを確認できなければならない。これも状況に応じて柔軟に見直すべきだ。入退院の判断は医療者がするのがよい。新型コロナはいきなり呼吸不全に陥るわけではなく症状が軽い時期が数日続くので、この間に感染がわかれば重症化を防げる可能性がある。疑わしきはまず検査し、重症度を判定して早めに治療する。こうすれば入院患者も人工呼吸器の使用も減らせ、十分ウイルスと戦える。治療薬は別の病気の薬で新型コロナに効きそうなものが4種類はあり、当院でもこれらを組み合わせて効果が出ている。検査で感染の有無を確定させ、必要に応じて有望な薬を使う症例を積み重ねて、一刻も早くよい治療法にたどり着きたい。それが医療者の安心にもつながる。たちかわ・なつお 1990年佐賀医科大(現・佐賀大医学部)卒。国立国際医療センター(現・同研究センター)などで感染症治療にあたってきた。2008年から現職。60歳

*6-3:https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200402/k10012364551000.html (NHK 2020年4月2日) 東京都内で97人の感染確認 これまでで最多に
 東京都の関係者によりますと、2日都内で新たに97人が新型コロナウイルスに感染していることが確認されたということです。都が、1日に発表する数としては、3月31日の78人を上回ってこれまでで最も多くなりました。97人のうち、患者や医療従事者などすでに100人以上の院内感染が疑われている東京 台東区の永寿総合病院の関係者が21人いるほか、新宿区の慶応義塾大学病院の関係者も15人いるということです。これで都内で感染が確認されたのは合わせて684人になります。

*6-4:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200403&ng=DGKKZO57597170S0A400C2EA2000 (日経新聞 2020.4.3) オンライン診療、壁は厚労省、「初診解禁」かかりつけ医の紹介条件 医師会へ配慮にじむ
 新型コロナウイルスの病院内での感染を防ぐため、ビデオ通話などによるオンライン診療の活用を広げる規制緩和が限定的な範囲にとどまる恐れが出ている。焦点は受診歴のない患者でも初診からオンライン診療を認めるかどうか。厚生労働省は対面で得る情報の重要さを理由に、かかりつけ医から情報提供を受けた別の医療機関などに絞る方針だ。拡大を恐れる日本医師会への配慮がにじむ。「人類が経験したことのないようなことが起きている。あまりに生ぬるいというのが私の感覚だ」。2日、政府の規制改革推進会議の小林喜光議長(三菱ケミカルホールディングス会長)は落胆を隠さなかった。作業部会が提案した「受診歴のない患者にも初診からオンライン診療を可能とすべきではないか」との意見に対し、厚労省からの回答は「非常に距離があるものだった」(小林議長)。オンライン診療は、風邪や発熱といった軽症の人が自宅にいながら診断してもらえるようにするなど医療の利便性を高める力を持つ。新型コロナの感染が拡大してからは、通院先での感染を防ぐ手段としても期待が高まっている。3月31日の経済財政諮問会議で、安倍晋三首相は「現状の危機感を踏まえた緊急の対応措置を規制改革推進会議で至急取りまとめてほしい」と指示を出していた。規制改革推進会議の主張は、受診歴のない患者でも初診からオンライン診療を認めれば、通院を省け、患者も医療従事者も院内感染から守れるというものだ。一方、厚労省は受診歴のある患者で高血圧などの慢性疾患であれば可能だが「受診歴のない患者は認められない」と説明したという。厚労省がオンライン診療の拡大を阻もうとする背景には日本医師会の存在がある。オンライン診療は「対面に比べ診察時に得られる情報が限られる」というのが医師会の主張だ。通院にかかる時間をあまり気にしなくて済むため、評判のよい病院に人気が集中し、淘汰が進むのを恐れていることも抵抗の裏側にある。オンライン診療はあくまで対面診療を補完するものと位置づけられ、生活習慣病など慢性疾患に限られてきた。医療サービスの対価として受け取る「診療報酬」も対面より少なく、対面の場合と比較して半分以下となることもある。加藤勝信厚労相は3月31日、オンライン診療の初診解禁を検討すると表明した。だが、厚労省が4月2日に開いたオンライン診療の指針を議論する有識者検討会は、限定的な範囲にとどめる方向性で一致した。言葉のイメージ通り、受診歴のない患者に対して、初診でオンライン診療を認めるのは重症化の徴候を見逃すリスクなどがあるため難しいと判断した。患者が急増し、外来医療が危機的な状況にあるなど極めて限定された場合だけに認める方向で、具体的な条件を引き続き検討する。かかりつけ医から情報提供を受けた別の医療機関で、風邪などの症状をオンラインで診てもらうことは認めることになった。ただこれも、かかりつけの医療機関で院内感染が起き、普段と異なる医療機関を受診しなければならないケースを想定したものだ。オンライン診療は18年度に保険適用されたが、18年7月時点でオンライン診療を実施する医療機関は1000カ所程度で全国の医療機関の1%に満たない。オンライン診療に積極的な医師もいるが、規制の厳しさが利用拡大を阻む。オンライン診療に移行するには原則、事前に3カ月以上の対面診療が必要だ。新型コロナ感染症の広がりをうけ、厚労省はオンライン診療のルールを特例・臨時的に2度緩和してきたが、その範囲は限られている。

*6-5:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO54489680W0A110C2EE8000/?n_cid=SPTMG002 (日経新聞 2020/1/16) 公立病院の再編リストを修正へ 厚労省
 厚生労働省は再編や縮小を促す目的で昨年9月に実名公表した全国424の公立・公的病院のリストを一部修正する。データを精査した結果、新たに対象に加わったり、今のリストから外れたりする病院が出てくるためで、全体では増える見通しだ。17日に公表する方向で調整している。今回の修正でリストから外れる場合、病院の希望に応じて病院名を公表する。一方、新たにリストに加わる病院名は公表しない方針だ。厚労省は、自治体が運営する公立病院と、日本赤十字社などが運営する公的病院のうち、病気が発症した直後の「急性期」や「高度急性期」の病床を持つ1455施設に対し、2017年時点での手術実績などを分析。実績が乏しい病院もあり、再編や縮小に向けた検討を求める狙いで19年9月にリストを発表した。当時は「資料は暫定版で、今後精査した後に都道府県に確定版を通知する」としていた。近く公立・公的病院との競合状況を示す民間病院のデータも各都道府県に提供し、議論を促す考えだ。

<これを機会にステップアップしたら?>
PS(2020年4月4、8、12日追加):*7-1のように、新型コロナ感染拡大の影響で非正規を中心として職を失っており、会社の寮にいるため仕事を失えば住居もなくなる人もいる。そのため、政府は、企業の従業員解雇防止のために雇用調整助成金を拡充し、休業手当を払って従業員を休ませた企業には助成金を出すことにしたが、休業手当は一定割合を企業が負担するため、企業はコスト負担を敬遠して非正規の雇い止めを優先させる恐れがあるのだそうだ。一方、米国では、*7-2のように、新型コロナの感染拡大で経済活動が大きく制限され、ホテル・飲食店・小売店等が営業を大幅に縮小して従業員をレイオフ(解雇・一時帰休)した結果、失業保険の申請が664万件に上ったそうだ。日本では、(企業から見れば)終身雇用・年功序列制度の下で解雇が難しいため、従業員を正規と非正規に分けて非正規を雇用の調整弁として使っているが、米国は、正規と非正規の差別がないかわりに正規でも簡単にレイオフされて失業給付を受け取る。米国の方が、平等で雇用調整も速やかだが、これができるためには、労働市場が流動的で中途採用でも不利にならないことが要件になる。
 しかし、新型コロナの感染拡大はすべての業種で人手を余らせたわけではなく、*7-3のように、外国人技能実習生の入国見通しが立たないため、労働力確保の支援を求めている業種もある。そのため、企業は雇用調整助成金をもらった上で従業員を人手が足りない職種に派遣すれば、従業員が感染リスクの小さな農業地帯で農業に従事することによって、今まで見ていなかったICTやロボット技術のニーズを見て新製品を作ったり、*7-4のようなスマート農業が本格化する中、非正規という雇用の調整弁に甘んじるよりはスマート農業の担い手になったりなど、企業・従業員・地域のすべてに新しい閃きが生まれてプラスになると思う。現在、農業への転職については、*7-5のように、全国の農地情報がデジタル地図に集約されつつあり、*7-6のように、後継者のいない多くの集落営農組織が集落外から若者を受け入れて、地域全体で若い農業者を育てて経営刷新するという雰囲気になっている。
 さらに、国を挙げての再エネへのエネルギー変換には、*7-7のような徹底した発送電分離が必要で、それには21世紀型送電線の敷設が不可欠であり、農業地帯は副産物として電力を産出することが可能であるため、農業はやり方によっては21世紀の先端産業になり得るのだ。
 なお、非正規で最初に雇用を打ち切られる人がステップアップするには、*7-8のような農林業経営のプロと地域のリーダーを育てる農林環境専門職大学に入学する方法もあるし、地域の農協で募集する農業の仕事に応募する方法もある。ただ、*7-9のように、都市部の新型コロナ感染者が地方に移動すると感染を広げるリスクも大きいため、移動して14日間は外出を控え、寮などで仕事内容や地域に関する研修を受けられる仕組みにするのがよいと考える。
 新型コロナの影響で営業を縮小せざるを得ない観光業・飲食サービス業等から、*7-10のように、JAや行政が人材を仲介して農業に労働力を回す取り組みが始まっているそうだが、これは、人材の融通に留まらず、お互いの理解と関係を深める上でも良いと思う。



(図の説明:1番左は、スマート農業の説明、左から2番目は、無人田植機を使った田植えの様子、中央は、ドローンを使った消毒作業《あらかじめ害虫の多い場所を把握して効率化している》、右の2つは、収穫ロボットを使ったトマトとブドウの収穫作業だ。収穫ロボットは、色・糖度・大きさ等を測って収穫し《人間より確実かも》、分類してパック詰めする)

*7-1:https://www.tokyo-np.co.jp/article/economics/list/202003/CK2020033102100017.html (東京新聞 2020年3月31日) <新型コロナ>非正規の雇い止め増加 雇用構造のもろさ露呈 現金給付で救済急務
 新型コロナウイルスの感染拡大で、非正規を中心に多くの人たちが職を失う危機に直面している。有効求人倍率の高さなど雇用をアベノミクス成功の証拠とアピールしてきた安倍晋三首相だが、労働市場の中身は、非正規割合が高まり景気悪化のショックには極めてもろい構造が露呈している。人々の仕事と暮らしをどう守るかは重い課題だ。
◆突然の契約終了通告
 「もう雇い止めも覚悟している」。日産自動車の栃木工場(上三川町)で、期間工として働く男性(47)が言う。コロナの影響による世界的販売不振と中国などからの部品供給の減少のダブルパンチの自動車業界。トヨタ、日産など大手各社は工場の一時停止による減産を発表。男性の働く栃木工場も四月六日から二十二日までの長期間、操業が止まる。昨春から三カ月ごとの契約で一年働いてきたが、「今の契約が切れる五月末で終わりになるだろう」。会社の寮にいるため、「仕事を失えば住まいもなくなる」と不安にさいなまれる。大阪府内の不動産会社で、住宅の設計をしていた二十代の派遣社員の女性は先週、四月末で契約終了と告げられた。昨年末にマンションを購入、ローンは夫と二人で払う。「いま仕事を失うとローンも返せない。この時期、職がすぐみつかるとも思えない」。働く人々の生活が揺らいでいる。
◆収入途絶えれば即生活危機に
 二〇〇八年の年末。東京・日比谷公園にはリーマン・ショックで雇い止めや派遣切りにあった人々があふれ、支援団体の提供する炊き出しやテントで暖をとった。この「年越し派遣村」の出現を機に、非正規労働の多さは問題化。民主党政権では製造業への労働者派遣を禁止する議論もあったが、企業の立場を重視する自民党の安倍政権は非正規を一段と増やす政策を推進した。一五年の派遣法改正では、それまで企業が派遣社員を使える上限が三年だったのを、働き手を代えればずっと派遣に任せられるようにし、正社員を派遣に置き換える流れを助長した。雇用されないフリーランスや個人事業主としての働き方も奨励。企業を人件費コストから解放する半面で安全網のない不安定な働き手が増加した。一方、非正規の低賃金労働は「貯蓄ゼロ」世帯を増加させた。昨年時点で23%と、二十年間でほぼ倍増。非正規切りで収入が途絶えれば、生活危機に直結する。
◆「正社員だけ守る差別やめて」
 政府は、企業が従業員を解雇するのを防ぐため、雇用調整助成金を拡充、休業手当を払って従業員を休ませた企業に助成金を出す。だが、雇用助成金は、あくまでも企業が自分から申請しないと支給されず、休業手当の一定割合は企業が負担するルール。このため企業がコストを敬遠し、非正規は雇い止めを優先させる恐れがある。労働問題に詳しい宮里邦雄弁護士は「正社員だけを守るような差別はしないよう企業に指導し、助成金支出にもそのような条件を付けるべきだ」と指摘する。
◆モノ言えない非正規への対策を
 働く人々に直接渡る現金給付など、所得補償も不可欠となりそうだ。リーマン時は金融危機が消費不振を招くまで一定の時間があったのに対し今回は需要が短期間で蒸発、所得の大幅低下などで人々の暮らしをすでに脅かしている。関根秀一郎派遣ユニオン書記長は「非正規は企業にモノを言えない弱い立場。現金給付や減税など直接生活を助ける対策が急務だ」という。

*7-2:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO57597950S0A400C2MM8000/ (日経新聞 2020/4/2) 米の失業保険申請、最大の664万件 解雇・一時帰休で
 米労働省が2日発表した失業保険の新規申請件数(季節調整済み)は、3月28日までの1週間で664万8千件となり、過去最大だった前週(330万件)からさらに2倍に膨らんだ。新型コロナウイルスで経済活動が大幅に制限され、飲食店や小売店などでは従業員の解雇や一時帰休が急増している。トランプ政権は給与補填などの経済対策を決めたが、迅速な執行が求められる。失業保険の申請数は市場予測(260万件)を大幅に上回った。新型コロナが発生する前は1982年10月の69万件が最大で、リーマン・ショック後でも2009年3月の66万件が最多だった。米経済は長く好況が続いていたが、ホテルや飲食店、小売店などは一気に営業を大幅に縮小。飲食業界では、3カ月で500万~700万人が失業する可能性があるとの試算もあった。米国の労働力人口は1億6500万人。2月時点の失業者数は580万人で、失業率も3.5%と50年ぶりの低水準にあった。失業保険の申請数は2週間で1000万件弱に膨らみ、失業率は6月には10%を超えるとの予測も浮かんでいる。米国の急激な雇用悪化は、従業員を一時的に解雇したり帰休させたりする「レイオフ」制度の影響もある。宿泊業などは3カ月などと期限を区切って従業員の一時解雇・帰休を決め、労働者の多くは失業給付を受け取って職場復帰を待つ。日欧は給与カットなどで労働者の維持を優先するが、米経済は雇用そのものの調整幅が大きくなる。ただ、経済活動が再開すれば職場復帰も加速するため、失業率は20年後半には低下軌道に戻ると分析される。トランプ政権も雇用維持を狙い、中小企業の給与支払いを事実上肩代わりする資金支援策を発表した。中小企業の半数は手元の運転資金が15日分以下しかないとされ、迅速な資金供給が不可欠だ。

*7-3:https://www.agrinews.co.jp/p50436.html (日本農業新聞 2020年4月1日) [新型コロナ]消費喚起、人手対策を 農家らが窮状訴え
 農水省は31日、新型コロナウイルス感染拡大を受けた緊急経済対策の策定に向け、農家らから意見を聴取した。需要減退で価格が下落している和牛や果実、野菜の生産者らが窮状を訴えた。外国人技能実習生の入国見通しが立たない問題を受け、労働力確保に向けた支援を求める声も出た。江藤拓農相は、生産現場の支援へ「強大な対策」を講じる考えを示した。感染拡大の情勢を踏まえ、テレビ会議方式で意見聴取した。江藤農相の他、伊東良孝、加藤寛治両副大臣、河野義博、藤木眞也両政務官ら同省幹部が同席。江藤農相は「現場の意見をしっかり聞いた上で経済対策案をまとめなければならない」と強調。安倍晋三首相の指示を踏まえ「前例にとらわれず強大な対策をやる」と述べた。農家らは、インバウンド(訪日外国人)やイベント自粛などの需要減退で打撃を受けている実態を報告。消費喚起策を求める意見が相次いだ。宮崎県高千穂町で和牛を一貫経営する興梠哲法氏は、地元家畜市場の3月の子牛相場が「前回比15万円の値下がりになった」と説明した。枝肉価格の下落で肥育経営が悪化、それに伴い子牛価格も下落し繁殖経営も「危機的状況」と訴えた。過剰の国産牛肉在庫の対策に向け「国の支援で消費者に求めやすい形で流通」するよう要望。ふるさと納税制度の活用やインターネット販売の運賃・手数料の支援などを求めた。温室メロン専門農協、静岡県温室農業協同組合の鈴木和雄組合長は、同組合が出荷したメロン価格が2月は前年比71%、3月は同67%に落ち込んだと説明。「原価を割っている」と訴え「前例のない対応」を求めた。長野県佐久市で野菜を栽培する小松園芸の小松真知子氏は、中国人実習生が「入国できなくなっている」と報告した。「どれだけ作付けられるのか悩み、苦労している」と明かした。今季に実習生が入国できなければ生産量と売り上げが「30%減になる」と説明。「いくらかでも労働力を送ってもらえるような方策をお願いしたい」と訴えた。

*7-4:https://www.sankei.com/economy/news/191223/ecn1912230002-n1.html (産経新聞 2019.12.23) いきなり特等米を獲得 スマート農業の実力は…
 担い手の高齢化や労働力不足に悩む日本の農業の課題解決に向け、ICT(情報通信技術)やロボット技術を使ったスマート農業の導入が加速している。リモコン一つで農機を遠隔操作、熟練農家の経験と勘を目に見えるデータに落とし込む-。誰もが高品質な作物を生産できる農業の時代はすぐそこまできているのかもしれない。兵庫県北部の養父市、山間部に急斜面の棚田が広がる能座地区は、65歳以上人口が57・65%と高齢化、過疎化が急速に進む集落だ。日本の農業の課題を抱え込んだようなこの土地で、先進技術を活用した農業を目指して農林水産省が採択した「スマート農業実証プロジェクト」が4月から進んでいる。「ハンドル操作の難しいぬかるんだ所も驚くほど真っすぐ進む」。同地区で酒米を作る「アムナック」の社員、大内良平さん(45)が驚くのはクボタが開発した無人運転のロボットトラクター。準天頂衛星「みちびき」による高精度の位置情報を活かして誤差数センチ以内でルートを正確に耕していく。また、人力で行えば半日以上かかる草刈りも、ラジコン操作によってわずか44分で済ませている。作業データはクラウド上で一括管理、手間取った作業とその解決法を“見える化”することで誰もがどこでもその経験を次に生かすことができるという。
●全国モデルに
 アムナックは兵庫県三木市に本社を置く建設会社の農業事業を行う子会社として平成27年に設立。今年4月からは京都大学やクボタ子会社、ソフトバンクなどと作る共同事業体で、スマート農業の技術開発のために角度30度超の、全国有数のきつい傾斜を持つ養父市能座地区の棚田11ヘクタールで稲作に挑んでいる。

*7-5:https://www.agrinews.co.jp/p50428.html (日本農業新聞 2020年3月31日) 全国の農地情報 デジタル地図へ集約 農水省22年度から一部運用
 農水省は、全国の農地情報のインターネット上での一元管理に乗り出す。行政機関や農業団体がばらばらに管理してきた農地情報を集約し、同省の地図データと組み合わせて「デジタル地図」を作成。2022年度から一部機能の運用を始める。生産者は補助金などの申請にかかる労力が大幅に減る他、将来的には農業機械の自動運転の活用などにもつなげる。「デジタル地図」は、各機関が持つ情報をひも付けして一元管理する。21年度から運用する「農林水産省共通申請サービス(eMAFF)」と組み合わせ、申請の窓口を一本化。農業者が申請した基本情報は保存され、再入力が省略でき、事務作業が軽減される。オンラインで自宅から申請でき、パソコンやスマートフォンの画面上の地図を見ながら作業が可能になるという。行政機関は、紙の申請書の打ち直しなど事務負担が省力できる。将来的には「デジタル地図」の情報と、人工衛星による位置予測を組み合わせ、トラクターやドローン(小型無人飛行機)の自動運転に活用できる可能性もある。衛星画像と人工知能の画像解析技術を組み合わせ、台風などの災害時に速やかな被災地域特定につなげることも期待される。20年度は、既存のデジタル区画情報と各機関の情報をひも付けすることや、農地関連データの標準化を検討する。農地情報は現状、各機関が農地情報を紙の地図で管理し、手続きに多くの労力がかかっている。例えば、農業委員会に農地の権利設定を申請する場合、農業者は土地の地番や面積などを記載した10枚程度の書類を提出する必要がある。同じ土地でも農業委員会、地域農業再生協議会、農業共済組合が別々に情報をまとめており、重複する情報提出に負担が掛かる。情報を管理する機関も、データ入力や現地調査に多大な労力を費やしている。

*7-6:https://www.agrinews.co.jp/p50404.html (日本農業新聞 2020年3月28日) [ゆらぐ基 問われる実効性](3) 農山村の再生 “よそ者” 継承に活路
 福井県あわら市。集落営農組織「グリーンファーム角屋」の代表、坪田清孝さん(69)が、誇らしげに胸を張る。集落外から若者を組織の代表候補として迎え入れ、米だけでなく、タマネギやイチゴの栽培に乗り出す新しい組織に、生まれ変わろうとしているためだ。「全国に水田農業に夢を描く若者はたくさんいる。継承がうまくいけば担い手不足に困る各地の集落営農組織の希望になる」と坪田さん。同組織には3年後、集落とは縁がなかった斎藤貴さん(43)に経営をバトンタッチする予定だ。今は継承に向かう並走期間。集落の住民らと斎藤さんが共同作業を積み重ね、信頼関係を紡いでいる。後継者がいない、高齢化、もうかりにくい米経営……。多くの集落営農組織が抱える課題に、同法人は集落外から若者を受け入れ、経営を刷新することで立ち向かう。
●人手の確保組織で議論
 農水省の調査によると、離農する小規模経営体の農地の受け皿で地域を支える集落営農組織数は、2019年2月時点で1万4949。2年連続で減少した。次期食料・農業・農村基本計画案では30年の農業者数は15年比33%減の140万人と見通しており、生産基盤の要である人材の育成・確保は、農業の最重要課題だ。グリーンファーム角屋は1999年、集落の兼業農家が共同で農業を守ろうと発足。設立から20年を前に後継者不在で組織の継続が危ぶまれた。坪田さんらは16年、全戸に意向調査。88%で「後継者がいない」「割り当てられた農作業が将来的に難しい」など課題が鮮明になった。合意形成に2年かけ、集落外から若者を呼び込むことにした。知人のつてや就農フェアに参加するなどして探し、知り合ったのが斎藤さんだ。埼玉県生まれの斎藤さん。農業に興味を持ち、石川県の農業法人に長年勤めていた。独立して稲作を模索する中、後継者を探す同組織の存在を知った。斎藤さんを迎え入れるため、18ヘクタールの米が中心だった経営にイチゴやダイコン、タマネギなど園芸作物を加え、農閑期の仕事を確保。継承を踏まえ株式会社化した。斎藤さんは「決算書も見て、信頼できると思った。地域の人と一緒に経営を発展させたい」と意気込む。集落の女性らに手伝ってもらって冬は加工にも取り組む考えだ。坪田さんは「代表が代わっても農業を地域から分断させるのではなく、地域と発展する集落営農の基本理念は変わらない。高齢者ばかりの集落に若い人が来たと歓迎されている」と笑顔だ。
●多様な主体活性化の鍵
 信州大学の小林みずき助教は「水田農業の若者の継承は、農村や農業の持続性を左右する」と強調する。預ける農地の選定も含め、地域全体が若い農業者を育てる意識を持つことが重要という。次期食料・農業・農村基本計画でも「多様な主体」を農業の持続的発展のポイントの一つに挙げる。小林助教は「米の消費が減り水田活用の方法が課題となる中、高齢者に比べ、母数が少ない農村の若い力を生かすことが課題解決の鍵を握る。そのための仕組みが必要だ」と指摘する。

*7-7:https://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2020040202000168.html (東京新聞社説 2020年4月2日) 発送電分離 電力改革はまだ途上だ
 昨日スタートした発送電分離。発電と送配電事業を切り分けて、大手電力による独占の壁を取り払う-。電力システム改革の“総仕上げ”とされているのだが、現状では劇的効果は期待できない。日本の電力供給は長らく、大手十社がそれぞれの“縄張り”で、発電と送配電、小売りを一手に担う「地域独占」だった。原発のような大規模集中型電源で大量の電気を一気につくり、決められた地域へ送り込むというやり方を続けてきた。福島第一原発事故で、その弱点があらわになった。他地域からの電力融通が思うように進まず、大消費地の首都圏は、計画停電を余儀なくされた。そんな地域独占の壁に風穴を開けるべく、政府による電力システム改革が加速した。大手電力会社を発電、送配電、小売りなどに分社化、つまり解体し、「新電力」と呼ばれる中小事業者の参入を図り、大規模集中から小規模分散に移行させる狙いがあった。二〇一六年、家庭向けも含めた電力小売りが自由化された。改革の「総仕上げ」とされるのが、発送電分離である。しかし、分離と言っても、送配電網の所有権を大手から切り離す「所有権分離」には踏み込めず、小売り同様、既存の大手が送配電会社を設立し、それぞれ子会社にするだけの「法的分離」にとどまった。送配電は従来通り、大手の支配下に残された。これまでも、大手が持つ原発の電力が優先的に接続されてきたように、「新電力」からの接続が、理由を付けて抑制される懸念はぬぐえない。分離による効果は恐らく限定的だ。「新電力」には、風力や太陽光を扱う事業者が多い。政府がエネルギー基本計画にうたう、再生可能エネルギーの主力電源化にも支障を来す恐れは強い。地域ごとに送配電子会社が残るのも非効率。欧米では、送配電網の運用そのものを電力会社から切り離し、「独立系統運用機関」(ISO)に委ねるシステムが主流という。そうなれば、全国規模での電力融通もスムーズになるだろう。接続の公平性が保たれて、再生エネの普及にとっても、強い追い風になるはずだ。発電量が天候に左右されやすいという再生エネの弱点を、例えば日照が豊富な九州と、風力の適地が多い東北・北海道などが、補完し合えるようにもなるだろう。送配電網の中立性が保証されるまで、電力改革は終われない。

*7-8:https://www.agrinews.co.jp/p50496.html (日本農業新聞 2020年4月8日) 農林専門職大が始動 コロナ禍でビデオ入学式 静岡
 農林業経営のプロと地域社会のリーダーを育てる静岡県立農林環境専門職大学・短期大学部(愛称・アグリフォーレ)が同県磐田市に1日開校し、7日に入学式を行った。同校は全国に11ある専門職大学の中で初めての農林系で、大学と短大合わせて104人が入学。学生生活のスタートを切った。専門職大学は2019年4月に始まった新しい大学の制度。特定の職業に必要な講義と、豊富な実習で実践的な技能を学ぶ。静岡では県立農林大学校に替わり開校した。入学生の内訳は、4年制の大学生産環境経営学部が県内外の27人、2年制の短期大学部が77人。入学式は新型コロナウイルスの感染拡大を受け、保護者と来賓は招かず、入学生と教職員だけが出席。講義室に分かれて学内放送とビデオで行う異例の式となった。鈴木滋彦学長は「農は生活に不可欠で、しかもエネルギーを生み出す。自信と誇りを持ち、プロフェッショナルを目指してほしい」と期待した。川勝平太知事は「実学の日本のモデルにし、みなさんを日本の宝として育てたい」と祝いの言葉をビデオで寄せた。入学した同県富士宮市出身の山本琢寛さん(18)は「静岡県の良い環境を生かした仕事に将来就きたいと考え入学した」と話した。来年完成予定の新校舎には学外からも利用できるレストランを併設。再来年には新寄宿舎が完成する。

*7-9:https://www.shinmai.co.jp/news/nagano/20200407/KT200406ETI090007000.php (信濃毎日新聞 2020年4月7日) コロナ「疎開」 排除や対立招かぬように
 都市部で新型コロナウイルス感染者が急増する中、帰省したり別荘に移ったりして地方に生活の拠点を替える人が目立つ。長野県内の別荘地への「疎開」も進んでいる。政府が東京や大阪に緊急事態宣言を出すことで、不安や不便を感じる人の地方への移動がさらに活発になる可能性が出ている。若い世代は感染していても無症状か軽症が多い。移動先で、気づかないうちに人にうつしてしまう恐れがある。地方での感染拡大につながらないよう、各自治体は移動する人も意識した呼び掛けを強めたい。県内では、都内から帰省中の20代男性に感染が判明した。一緒に外出した県内の20代男性も陽性が確認されている。高齢者が感染すると重症化するリスクが高い。一方、地方では新型コロナへの医療体制が整っていない地域も少なくない。感染が広がると、病床が足りなくなる事態が想定される。都市部から地方への移動は危険を伴っていることを、当事者も周辺も自覚してほしい。移動した後も一定期間は健康観察が不可欠だ。症状がある場合は、人との接触を避けるなど一層の注意を払う責任がある。約1万6千戸の別荘がある軽井沢町の藤巻進町長は、町のホームページで「東京の危機感を共有して」と訴え、別荘住民らにも不要不急の外出自粛を求めた。茅野市も、市内の別荘約7千戸に同様の自粛要請を記したチラシを配布。今井敦市長は「開放的な気分にならず、できるだけ別荘にいて」と呼び掛けている。佐久市の柳田清二市長が「できれば首都圏の皆さんも自宅で過ごしてもらいたいと思います」と書き込んだツイッターは、賛否両論を呼んだ。不要不急の来訪が、県内での感染拡大につながってしまうとの危機感から発信したという。重要な注意喚起ではある。「怖さを感じる」と賛同する住民の気持ちも分かる。一方で、命を守る選択として来訪する人たちの事情も大切にするべきだろう。個人の移動の自由は尊重しなければならない。その上で、地域の安全や安心をどう守っていくかを考えたい。自治体は、地域の実情を詳しく知らせ、守るべきことをきちんと分かってもらう努力が必要だ。住民も移動してくる人たちを排除せず、感情的な対立を招かないように心掛けたい。

*7-10:https://www.agrinews.co.jp/p50535.html (日本農業新聞 2020年4月12日) コロナ禍の観光・飲食業 農家が人材受け入れ JAや行政が就労を仲介
 農業の人手不足が深刻化する中、新型コロナウイルスの影響で営業を縮小する観光業や飲食サービス業などから農業分野に労働力を回す取り組みが始まっている。観光業などは訪日外国人の減少に外出自粛も加わって経営が厳しく、従業員の雇用継続が難しい。そこでJAや行政が人材を仲介し、互いの労働力の課題解決につなげようとしている。(高内杏奈、藤川千尋)
●長野・JA佐久浅間 旅館組合と協力
 長野県のJA佐久浅間は、地元の軽井沢旅館組合と協力し人材のマッチングを始める。宿泊施設は、各従業員に農家での就労希望の意向を尋ね、希望する場合は出勤可能日などの情報をJAに提出。JAは農家にその情報を示し、条件が合えば面接などを経て農家が雇用する仕組みだ。今回の人材マッチングをJAに提案、相談したのは、JA軽井沢事務所野菜部会の前部会長でJA野菜専門委員会常任委員の片山修さん(48)。片山さんは人材不足に悩み、今季は収穫の手間がかかるレタスの一部をキャベツに転換した。片山さんは「労働力として来てもらえればありがたい。これを機に軽井沢の野菜のおいしさを再認識し、宿泊施設で利用が広がればいい」と期待する。旅館組合の鈴木健夫組合長も「軽井沢の観光客は野菜のおいしさに感動する。感染終息後の集客につなげたい」と話す。JAは全国にリゾートホテルを展開する星野リゾートとの連携も検討する。同社も仕事量が減少する見込みで、従業員の雇用確保が課題。JAは農家や選果場などの仕事を紹介する。JAと同社は、雇用条件面や希望人数などを協議中だ。JAでは新型コロナウイルスの影響で、94人の中国人技能実習生が来日できていない。実習生は5月以降にピークを迎えるレタスやキャベツなどの収穫作業を担う。JA営農経済部の内藤浩部長は「産地には安全で安心できる、おいしい農産物を届ける使命がある。生産基盤を守ることにつなげたい」と強調する。
●マッチング支援 青森県が窓口設置
 青森県は10日、営業自粛する観光業や飲食サービス業から労働力を農業分野に回す人材マッチング事業を始めた。青森市の無料職業紹介事業・あおもり農林業支援センターに窓口を設置。JAグループやハローワークと連携して、農業法人などの求人情報を集約する。センター職員が観光業、飲食サービス業、運送業を巡回し声掛けして、短期労働力のマッチングを後押しする。県農林水産部は「労働力不足は加速する。利用者を増やしたい」と説明する。同県はナガイモや露地野菜の出荷最盛期を迎えるが、中国を中心とする技能実習生が来日できず、人手不足が深刻化している。東北町でナガイモを3・5ヘクタール栽培する甲地武彦さん(64)さんは「人手不足で作付け縮小を検討する農家も出てきた。短期でも労働力が増えるのはありがたい」と期待する。

<新型コロナは、社会保障を節約するのに都合のよいウイルスだが、まさか・・>
PS(2020年4月4日追加):*8-1・*8-2のように、安全保障や感染症の研究で知られる米ジョンズ・ホプキンス大学が、2018年にまとめた報告書で新型コロナの登場を予見するような分析をし、中でも最大の脅威は呼吸器系に悪さするRNAウイルスで、潜伏期間中・軽い症状の間でも感染してしまうタイプが特に危ないとしていた。そして、これは、新型コロナの性格と一致しており、現在は遺伝子操作したウイルスを使ったバイオテロもできる時代であるため、主たる被害者が高齢者と基礎疾患保有者であれば、新型コロナは社会保障を節約するのに都合よく作られたウイルスのように見える。そう考えると、*8-3のように、コロナ治療薬の有望候補が4つもあるのに、非科学的なことを言って検査も治療も行わず(犯人は政治ではないだろう)、保健所の人員増強等を主張していることと整合性があるわけだ。
 そのような中、国民を犠牲にすることしか考えつかない行政はあてにならないため、*8-4のように、国民が手洗いを徹底し、人混みを避け、マスクをつけて予防した結果、インフルエンザ患者数も昨シーズンに比べて4割減ったそうだ。そのため、予防方法が同じ新型コロナも、同じ効果が出ていると思われる。

  

(図の説明:左図のように、日本は新型コロナの検査数が著しく少ないため患者数も少なく出ているが、これは実態を反映していない。また、治療薬はあるのに、できない理由を並べて使っていないが、検査しなければ使うこともできない。そのため、日本で新型コロナの致命率が低く出ているのは、単なる肺炎に入れられているケースが多いからだと思われる)
 
   
    2020.3.30東京新聞

(図の説明:何の治療もしないうちから、メディアが医療崩壊・医療崩壊と1カ月以上も騒いでいるため、「政府も医療もあてにならない」と感じて国民が予防を徹底した結果、左図のように、インフルエンザが昨年より4割減った。そのため、予防方法が同じ新型コロナも本来より4割減ったと考えるのが妥当だ。このまま、医療崩壊・医療崩壊と叫んで検査も治療もせず、対症療法も年齢でトリアージすれば、右図の日本の人口のうち団塊の世代より上の致死率が上がり、年金・医療・介護等の社会保障費が節約されるが、このやり方はあまりにあくどい)

*8-1:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO57636680T00C20A4I00000/ (日経新聞 2020/4/4) 新型コロナを予見 示唆に富む米大報告書
 地球規模の脅威となる感染症を引き起こす病原体とは、どんなものか。安全保障や感染症の研究で知られる米ジョンズ・ホプキンス大学が2018年にまとめた報告書は示唆に富む。いま世界を苦しめている、新型コロナウイルスの登場を予見するような分析がみられるからだ。今後の感染症対策にも役立つはずだ。報告書は同大の健康安全保障センターが120人以上の専門家への聞き取りをもとに作成した。様々な病原体の特徴、感染が引き起こす症状、病気の広がり方などに関する科学的知見を踏まえ、注意点や対策にあたっての勧告をまとめた。このなかで、最大の脅威に挙げたのが呼吸器系に悪さをするRNAウイルスだ。インフルエンザウイルスに比べ、コロナウイルスなどには十分な注意が向けられていないと警鐘を鳴らした。潜伏期間中や、軽い症状しかないときでも感染してしまうタイプが特に危ないと指摘しており、まさに新型コロナウイルスの場合と一致する。勧告は8項目ある。まず、呼吸器系に感染するRNAウイルスに焦点を当てつつも、幅広い種類の微生物に目配りする必要性を説いた。過去に経験し、要注意ウイルスなどとして記録されているものにとらわれすぎるべきではないという。コロナウイルスに関しては疫学的調査が重要だとした。抗ウイルス薬が極めて少ない現状に懸念を示し、治療薬やワクチン開発の加速を促している。製薬企業、政府、医療機器メーカーが資金を出し合い臨床試験を円滑に進める工夫をすべきだとした。さらに、新たなパンデミック(世界的大流行)の兆候をいち早くつかむため、全世界で診断に力を入れるよう提案。コストの問題はあっても、それに見合う効果が得られるはずだと指摘した。今となれば、どれももっともな内容だ。国境を越えたヒト、モノの移動が増えパンデミックが起きやすい状況なのは世界の共通認識だった。にもかかわらず、勧告は十分に生かされず備えは進まなかった。将来、より致死率の高い病原体が広がるかもしれない。新型コロナ対策の一つ一つの経験を確実に「次」への戦略づくりに生かしたい。ジョンズ・ホプキンス大学の報告書で指摘した8つの「勧告」の要約は以下の通り。
(1)脅威となるウイルスへの備えに投資を
 パンデミック(世界的大流行)を引き起こす可能性が最も高い病原体はRNAウイルス(注1)で、特に鼻やのど、肺などの呼吸器系に感染するタイプだ。この種のRNAウイルスは地球規模で壊滅的な被害をもたらす危険性が高く、調査・監視、科学研究、対策の開発に資源や資金を大規模に投じるべきだ。だが、インフルエンザと一部のコロナウイルスを除けば、ほとんど対策は講じられていない。あらゆる病原体の専門的な知識を育成・維持するとともに、動物から人間に感染する病気の情報を集めることで、パンデミックへの備えや研究につながる。
(2)過去の経験に基づく対策では不足
 過去の感染症の事例とバイオテロ対策にもとづき、米国や世界はパンデミックに備えてきた。しかし、取り上げられていない病原体への備えは早々に打ち切られてしまい、対策が硬直的になりがちだ。こうした従来型のやり方から決別し、病原体の性質に基づいてパンデミックのリスクを評価する必要がある。また評価については、綿密な医科学的分析の結果にもとづくべきだ。こうした改善に取り組むことで、パンデミックへの備えや病原体による地球規模のリスクに対する考え方を根づかせる。
(3)呼吸器系に感染するRNAウイルスを優先
 呼吸器系に感染するタイプのRNAウイルスはパンデミックを引き起こす可能性が高い。現時点で優先度が高いのは、インフルエンザと一部のコロナウイルスだ。重症急性呼吸器症候群(SARS)と中東呼吸器症候群(MERS)の流行をきっかけに、コロナウイルスへの理解を深める動きは出ているが、実験室で体系的に調べる取り組みは進んでいない。肺炎や気管支炎の原因となるライノウイルスやパラインフルエンザウイルス、呼吸器合胞体ウイルス(RSウイルス)、メタニューモウイルスなどでも同様に動きはない。この種のウイルスは将来、パンデミックを引き起こす危険性が高く、インフルエンザと同様の調査・監視体制を確立すべきだ。
(4)効果がある抗ウイルス薬の開発に重点
 呼吸器系に感染するRNAウイルスの治療薬として、現時点で米食品医薬品局(FDA)の承認を受けているのは、抗インフルエンザ薬としては「アマンタジン」や「リマンタジン」、「ザナミビル」、「オセルタミビル」、「ペラミビル」の5種類がある。いずれもインフルエンザウイルスだけに作用し、他のウイルスには効果がない。抗インフルエンザ薬以外では、C型肺炎などの治療に使われる「リバビリン」しかない。RSウイルスの治療で承認を受けているが、効果が弱く、強い副作用が懸念される。特定のウイルスに効く治療薬が開発できれば、パンデミックを抑えられる可能性は高まる。
(5)RNAウイルスのワクチン開発を優先
 呼吸器系RNAウイルス向けのワクチンも優先すべき課題だ。インフルエンザ向けはあるが、呼吸器系RNAウイルスのワクチンは存在しない。いくつかの重要な取り組みが存在する。例えば、官民連携でワクチン開発に取り組む感染症流行対策イノベーション連合(CEPI)はMERSを引き起こすコロナウイルスとパラミクソウイルス(ニパ)向けワクチンの開発を支援している。米国立衛生研究所(NIH)は、どんな型のインフルエンザにも効く汎用ワクチンの開発に資源を振り向けるようになった。最も怖いのが鳥インフルエンザウイルスの一種だ(注2)。汎用的なインフルエンザワクチンは、こうした地球規模で脅威となるウイルスに対して大きな予防策となりうる。
(6)科学的根拠にもとづいた治療法を官民医の連携で
 インフルエンザを除くと、呼吸器系ウイルスに対する治療は科学的根拠に乏しい。どのような治療が有効なのか、合併症で気をつける必要のある感染は何か、どの段階で人工呼吸器を使うのが適切なのか、といった疑問がある。こうした疑問への答えを見つけることで、パンデミックが起きたときに医師の対応力を高められるだろう。インフルエンザについて、抗ウイルス薬と炎症を抑える抗炎症薬、抗生物質を併用する治療法の報告が増えている。明確な治療指針を作るために、これらの治療効果がはっきりとわかれば、地球規模の脅威となるウイルスへの対応力につながる。
(7)RNAウイルスの研究には特別な注意を
 パンデミックを引き起こすウイルスに関する研究には特別な注意を払う必要がある。多くは低リスクだが、例えば抗ウイルス薬への耐性、ワクチンに対する抵抗性、感染力の増強といった実験は、国際的な基準である「バイオセーフティー」上の違反が起これば重大な問題を引き起こす。1977年に出現した「N1H1型」インフルエンザ(ソ連かぜ)は、なんらかのミスで研究所から漏れ出た可能性が指摘されている。こうしたウイルスを扱う実験については、リスクに見合った形で承認するプロセスが必要になる(注3)。
(8)診断法や診断装置の実用化を世界で
 診断技術と診断装置は適用できる病気の対象、診断速度、使いやすさで改良が進んでいる。普及が進めば、感染症に対する状況認識を高めるきっかけになるはずだ。呼吸器系に感染するRNAウイルスへの調査の強化と組み合わせることで、パンデミックを引き起こす病原体の初期のシグナルを捉える能力は大幅に高まる。コストや治療効果のほか、隔離病床など病院の資源の制約によって、こうした診断装置の採用が制限されている。しかし、パンデミックへの備えという観点から、費用対効果の見積もりも変わるはずだ。人工呼吸器やワクチン、抗ウイルス薬、抗生物質と同じように考えるべきだ。
(注1)ウイルスには、遺伝子がDNAだけのタイプとRNAだけのタイプがあり、RNAウイルスの方が突然変異しやすいため危険性が高いとされる。危険性の高いRNAウイルスには、コロナウイルスの一部のほか、インフルエンザやエボラ出血熱、デング熱などがある。
(注2)鳥インフルエンザの中で毒性が高い「H5N1型」が最も危険性が高いとされる。
(注3)バイオセーフティーは病原体を扱う施設の基準で、世界保健機関(WHO)が定めている。危険度に合わせて4段階ある。最も高いレベル4については、病原体が外に漏れ出ないような対策を講じている。例えば、施設内の気圧を低くし、空気が外に漏れないようになっている。

*8-2:https://iwj.co.jp/wj/open/archives/469833 (IWJ 2020.3.13より抜粋) IWJ調査レポート!新型コロナは「地球規模の破滅的な生物学的リスク(GCBR=Global Catastrophic Biological Risk)」!? ジョンズ・ホプキンス大学の『パンデミック報告書』が、2年前にコロナの出現を予見し、警告!
 2020年3月12日、WHOが正式に新型コロナウイルスの感染拡大を「パンデミック」であると発表した。こうした事態に至る約2年前、2018年5月10日に、世界最古の公衆衛生大学院と世界屈指の医学部を有する米国ジョンズ・ホプキンス大学の公衆衛生大学院、健康安全保障センターが、『パンデミック病原体の諸特徴』と題する報告書(以下『パンデミック報告書』)を発表した。この報告書の中で「地球規模の破滅的な生物学的リスク(GCBR=Global Catastrophic Biological Risk)という新しい概念を提示して、ウイルス、細菌などの病原体が近い将来、人間社会に破滅的な影響を及ぼす可能性を予見し、警告している。GCBRを引き起こす病原体の特徴として、高い感染力、低い致死率、呼吸器系疾患を引き起こすなど、7つの特徴を列挙している。これらの特徴は、ほとんど、現在流行中の新型コロナウイルスの特徴と一致するものである。さらに、驚くべきことは、GCBRを定義する中で、『パンデミック報告書』は、GCBRを引き起こす病原体が、自然由来ばかりでなく、人為的な操作によって生み出され、広がるリスクをも想定していたことである。『パンデミック報告書』からわかるのは、陽性ながら無自覚・無症状のまま日常生活を送り、周囲を感染させてゆく「ステルス・キラー」の対策と、その主な被害者になる高齢者と基礎疾患者への対策が、今後、非常に重要になる、ということである。

*8-3:https://toyokeizai.net/articles/-/340641?page=4 (東洋経済 2020/03/29より抜粋) コロナ治療薬「世界の救世主」探る臨床の最前線、有望候補薬は4つ、東大で感染阻止の研究も進む
 クロロキンは、アメリカのトランプ大統領が、「新型コロナウイルス感染症の治療に有効」と発言して注目を集めたものの、その後は服用者の中毒例や体調悪化が報道され混乱気味。日本でも過去、クロロキンによる網膜症が問題で訴訟になった経緯があり、効くとしても扱い方には注意が必要になりそうだ。また、治療薬の開発には大学、企業も乗り出している。東京大学医科学研究所は3月18日、急性膵炎治療薬「ナファモスタット」が新型コロナウイルスの感染を阻止する可能性を突き止めたと発表した。ナファモスタットは30年近く国内で使われている薬剤で、安全性のデータが十分あるなどメリットは大きい。日本では日医工が「フサン」の製品名で販売しているのをはじめ、各社が後発品を出している。安倍首相は3月28日の会見で、「観察研究として、患者の同意を得て投与を開始する予定」と述べた。このほかに、C型肝炎治療薬である「リバビリン」や「インターフェロン」も候補薬になると見られている。
●国は早期承認制度の適用も検討
 さらに日本の製薬会社も、続々と開発に乗り出している。武田薬品は3月4日に、感染し回復した人の血液成分を使用した新薬(高免疫グロブリン製剤)をつくる。早ければ9カ月程度で実用化するという。また、スイス・ロシュグループ傘下の中外製薬は、関節リウマチ治療薬「アクテムラ」で、新型コロナウイルスを対象とした臨床試験を検討中だ。さらに、塩野義製薬やエーザイも、それぞれ開発を表明している。ただ、医薬品の開発は通常、人に対する安全性、有効性を確認する検証的な臨床試験だけで3~7年かかる。承認申請に必要な臨床試験がすべて終わるのを待っていては、今回の流行に間に合わない。このため加藤勝信厚生労働大臣は、製薬会社からの承認申請があれば、新たに導入した「医薬品の条件付き早期承認制度」を適用し、「可及的速やかに審査を行っていきたい」(3月26日・参議院予算員会)と答弁している。この制度を使えば、致死的な疾患で検証的な臨床試験に時間がかかる疾患であっても、一定の有効性、安全性が示されれば承認でき、早く国民に治療薬を届けることが可能となる。大曲氏は、臨床試験に関しても効果が見えそうなデータが揃った段階で、「(終わるのを)待たずに知見が出る可能性はある」と見る。開発に数年かかると見られる新型コロナウイルスの治療薬だが、臨床試験の状況によっては早期承認もありそうだ。

*8-4:https://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/202003/CK2020033002000209.html (東京新聞 2020年3月30日) 手洗い効果? インフル最少 昨季比4割減、流行ほぼ収束
 新型コロナウイルスの感染が広がる一方で、インフルエンザの患者数が昨シーズンに比べて激減している。医療機関の報告を基にした厚生労働省の推計で、今年第十二週(三月十六~二十二日)までの累計患者数は前年同期(千百六十四万人)より約四割少ない七百二十七万人。同省担当者は「一人一人が新型コロナ対策にもなる手洗いの徹底などに努めた結果」と受け止めている。厚労省は全国約五千カ所の定点医療機関からの報告を基にインフルエンザ患者数の推計値を毎週発表している。二十七日発表の第十二週までの累計は、比較可能な二〇一一~一二年シーズン以降で最少となった。今後も流行が続く可能性があることを示す「注意報」は全保健所管内で解除され、流行はほぼ収束したとみられる。ただ、過去には五月の大型連休前後に再流行した地域の例もあり、同省は「決して油断はしないで」と呼び掛ける。今シーズンの特徴は、昨年十二月まで例年を上回るペースで増加していた患者数が、ピーク時期になることが多い一月下旬~二月上旬にほとんど増えなかったことだ。一方、新型コロナウイルスは一月十五日に国内で初めて感染者が確認され、一月下旬以降、各地で感染が広がった。このため、例年以上に手洗いを徹底したり、人混みを避けたりして感染症の予防を心掛ける人が増えたとみられる。今シーズンは子どものインフルエンザ患者も少なかった。厚労省が自治体の報告を基にまとめた学校や保育所などの休校や学年・学級閉鎖の状況では、第十二週までの累計は昨シーズンに比べて全国で約二割少なかった。

<病院やオフィスの設備・休業補償など>
PS(2020年4月10日追加):新型コロナの感染拡大で緊急事態宣言が出された福岡県では、*9-1のように、感染症指定医療機関でない一般病院も患者の受入を増やす必要があり、院内感染を起こさないための準備をしているそうだ。この病院は、140床全てが個室で陰圧装置を備え、陰圧を強化した部屋もあるので比較的恵まれているが、本来はどの病院も全室個室で陰圧装置を備えてもらいたい。その理由は、複数の人が入る病室は不自由な団体生活になる上、感染症が広がる可能性もあり、他の病気の人と同じ部屋では気分がさらに落ち込むからである。そのため、コロナ後のV字回復には、病院設備の充実(原則として、全室個室で陰圧室)と感染症を受け入れる基幹病院が感染症病棟を備えるための補助金を出すのがよいと思う。
 また、*9-2のように、北九州市は、新型コロナ感染拡大を受けて、福岡県の無症状者・軽症者を受け入れる療養施設として「東横イン北九州空港」をホテルごと借り上げ、約200床用意するそうだ。空港近接のホテルも航空機の客室乗務員も今は空いているので、現在のニーズに合ったサービスをするのはよい考えだ。また、通常は航空機の食事を作っている会社も療養食を提供すれば業務を続けられ、新型コロナが収まった後には病院食・介護食という新しい分野に進出することが可能になるため、臨機応変に事業を行うべきである。
 さらに、日田市役所は、*9-3のように、飛沫感染防止のため、住民課と税務課の窓口に下部に隙間のある透明シートを使った間仕切りを設置したそうだ。確かに、日本の役所や会社のオフィスは、間仕切りもなく、机をつけて仕事をしており、人ばかり多くて集中できないだろうと前から思っていた。そのため、これを機会に、透明でもよいので適切な高さの間仕切りを付け、人と人との間にはパソコンや書類棚を設置して、一定の距離を確保したオフィスを作ったらどうかと思う。ちなみに、外資系会社のオフィスは、1980年代からそうだ。
 最後に、*9-4のように、新型コロナ特措法に基づく緊急事態宣言に関して、西村経済再生担当相は対象地域となった知事とのテレビ会議で、「外出自粛の効果を見極めてから」として休業要請を2週間程度見送るよう打診し、地方は休業要請の損失補償を求めているそうだ。私は、休業要請の判断は地域毎に知事の責任で行うべきだと思うが、「行政から営業自粛を求める以上、補償は表裏一体だ」「補償とセットでなければ理解いただけない」というのは賛成できない。何故なら、新型コロナ感染者を出せば大変なことになる中で、休業は自分や事業の生命を護るために行うものであり、行政から求められて仕方なくやるものではないからだ。さらに、休業によって収入が減少した事業者には、簡素な手続きで速やかに給付金を出せばよいからである。

*9-1:https://www.nishinippon.co.jp/item/n/599382/ (西日本新聞 2020/4/10) 感染者受け入れへ一般病院「逃げられない」 対策徹底、風評の懸念も
 新型コロナウイルスの感染拡大で緊急事態宣言が出された福岡県では、感染症指定医療機関ではない一般病院に入院する患者が増えている。一般病院での指定感染症の受け入れは異例の事態。各病院は感染対策の徹底に腐心し、風評被害の懸念も募る。県の受け入れ要請に備える同県広川町の姫野病院を9日に訪ねた。病院が感染者の受け入れに備えて用意した個室は3部屋。ベッドが一つ置かれ、冷蔵庫やトイレもあり見た目は普通の病室と同じだが、重症化した際に人工呼吸器を置くためのスペースを確保しておくなど細部に気を使う。「室内には陰圧装置を備えており、廊下に空気が漏れる心配はありません」。病院で感染対策室長を務める感染管理認定看護師の中西穂波さんが説明してくれた。陰圧とは室内の気圧を下げ空気を室外に漏らさない機能。フロアの一部は扉で仕切られ、ほかの入院患者とは動線が交わらないように工夫している。病院は全140床が個室。指定医療機関ほどの機能ではないが、全室に陰圧装置を備える。当面は陰圧を強化した3部屋の使用を想定し、県からの要請次第では、最大35人が入院できる1フロア全てを感染者専用にする方針だ。受け入れ態勢の検討を具体化させたのは1週間ほど前。約500人いる職員には院内感染や風評被害の懸念も根強いが、姫野亜紀裕院長が「医療機関としての使命。ウイルスから逃げてばかりはいられない」と決断した。感染者に対応するスタッフは、使い捨ての医療用長袖ガウンにキャップ、マスク、ゴーグルなどを着ける。着脱は急きょ設けた隔離エリア内に限定し、その都度、アルコール消毒するなどマニュアルも策定。スタッフが帰宅する際はシャワーを浴びることも厳守させる。看護師などを対象に研修を繰り返すという。ただ、十分な対策を講じても病院スタッフの不安は尽きない。感染患者に対応する人員の選定も課題で、中西さんは「精神的なケアも必要になるだろう」と話す。感染者の受け入れによる風評被害も拭えない。電話やインターネットでの診療も実施しているが、姫野院長は「外来診療の患者は減るだろう」と覚悟する。福岡県内の感染者数は累計で250人。県内12の指定医療機関にある感染症病床は66床しかなく、自宅待機を余儀なくされる軽症者や無症状者もいる。重症者らのために感染症病床を空けておく必要があり、県は受け入れ先を一般病院にも拡大し、週内に300床を確保する方針だ。姫野病院では9日、医師や看護師向けの訓練を実施した。中西さんは「いざ感染者が来た時に慌ててミスをしないよう事前にやれることはやっておく」と表情を引き締めた。

*9-2:https://www.nishinippon.co.jp/item/n/599334/ (西日本新聞 2020/4/9) 福岡県が軽症者を週明け移送へ 新型コロナ、北九州のホテル200床確保
 新型コロナウイルスの感染拡大を受け、福岡県が無症状者や軽症者を受け入れる療養施設として、ホテル「東横イン北九州空港」(北九州市小倉南区)を確保したことが分かった。ホテルごと借り上げ、約200床を用意できる見通し。13日にも感染者の移送を始める。厚生労働省は感染拡大状況に応じ、軽症者や無症状者について、高齢者や基礎疾患がある人、妊婦などを除き、自治体が用意した民間宿泊施設や自宅での療養を検討するよう都道府県などに通知。県内では感染者が急増して病床が逼ひっ迫ぱくしており、厚労省と協議して医療機関以外での療養に移行を決めた。関係者によると、ホテルには医療機関に入院中や自宅待機中の感染者を移送するほか、新たな感染者にも入ってもらう。1人1室での療養が原則で、感染防護の訓練を受けた看護師や保健師が常駐して健康観察し、医師も適時対応する。ホテル内での感染拡大を防ぐため、清潔な区域と、ウイルスによる汚染区域を明確に分けるゾーニングを徹底。搬送は感染予防を施した公用車などを使い、保健所職員らが対応することを検討している。ホテル従業員は一切関与しない。厚労省によると、滞在中のPCR検査で2回陰性となることが退所基準だ。福岡県内の感染者数は累計で250人。県内12の感染症指定医療機関にある感染症病床は66床しかなく、自宅待機を余儀なくされる軽症者や無症状者もいる。重症者らのために感染症病床を空けておく必要があり、県は受け入れ先を一般病院にも拡大し、週内に300床を確保する方針。

*9-3:https://www.nishinippon.co.jp/item/n/599375/ (西日本新聞 2020/4/10) 飛沫感染防止へ手作り間仕切り 日田市役所の窓口、下部に隙間も
 新型コロナウイルスの飛沫(ひまつ)感染を防ぐため、大分県日田市役所の住民課と税務課窓口に9日、透明シートなどを使った職員手作りの間仕切りが設置された。間仕切りは、財政課職員が製作。ホームセンターで農業用のマルチシートなど材料を購入し、縦横90センチの15個を完成させた。窓口担当職員の意見も聞き、下部には書類のやりとりができる15センチの隙間を作った。設置した両課は、市民との接触が最も多い部署。出生届を提出しに訪れた同市日ノ隈町の河津大輔さん(25)は「ウイルスは目に見えないのでこういう対策は安心する」と話していた。隣接する福岡県が緊急事態宣言の対象地域となった7日に同市で初めての感染が確認され、市民の危機感も高まっている。財政課の担当者は「業務が滞ることなく感染防止に役立てれば」と話し、今後は他の部署用も検討するという。

*9-4:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/510015 (佐賀新聞 2020.4.8) 休業要請2週間見送り打診、西村担当相、7都府県に
 新型コロナウイルスの感染拡大に備える改正特別措置法(新型コロナ特措法)に基づく緊急事態宣言を巡り、西村康稔経済再生担当相が対象地域となった7都府県知事とのテレビ会議で、休業要請を2週間程度見送るよう打診したことが8日、関係者への取材で分かった。感染者数の多い東京都の小池百合子知事は異論を唱えた。地方が休業要請を受けた損失補償を求めるのに対し国は拒否。双方の足並みの乱れが表面化しており、終息に向けて宣言が期待通りの効果を上げられるかどうか問われそうだ。関係者によると、特措法を担当する西村氏は8日昼、東京、大阪、千葉、神奈川、福岡など7都府県知事とテレビ会議で会談。休業要請に関し「外出自粛を第1段階として、その効果を見極めてから」として2週間程度の見送りを求めた。安倍晋三首相が7日の緊急事態宣言に伴い「2週間後には感染者の増加をピークアウト(これ以上は上昇しないという段階に)させ、減少に転じさせることができる」と述べたのを受けた対応とみられる。これに対し、小池氏は「東京は感染のスピードが速く、待てる状態ではない。統一的にではなく地域の実情に沿う対応ができるようにしてほしい」と反論。休業要請の判断を地域ごとに知事の責任で行うべきだとの意見は別の知事からも出たという。政府は7日に改正したコロナ対策の「基本的対処方針」で、宣言対象地域の知事に対し、まず住民に外出自粛を要請し、その効果を見極めた上で休業要請などを行うよう求めた。対象7都府県のうち、東京都が独自に休業要請に踏み切る考えを示す一方、6府県は「外出自粛の効果を見たい」(小川洋福岡県知事)などと当面、休業要請しない方針を示している。ただ8日の全国知事会会合で、吉村洋文大阪府知事は「行政から営業自粛を求める以上、補償は表裏一体だ」と強調。小池氏も含め賛同の声が相次いだ。背景には、地域経済や住民生活に大きく影響する休業要請を知事が出すには「補償とセットでなければ理解いただけない」(黒岩祐治神奈川県知事)との事情がある。知事会は同日、国に損失補償を強く求める緊急提言をまとめた。政府は、休業要請の対象となっていない分野でも影響があることを理由に個別補償を否定し、収入が大幅に減少した事業者に給付金を出すとの立場を崩していない。

PS(2020年4月13日追加):*10-1のように、新型コロナの感染防止対策で一斉休校していた全国の小中高校が4月6日以降は新学期をスタートさせているが、「3密」の回避には限界があるとされている。しかし、「3密の回避」や「ドアノブ・手すりの消毒」は、新型コロナ以外の感染症防止にも必要なことなので、これを機会に30人学級にして座る間隔を空けたらどうか。パソコンを置いても不自由のない大きさの机にして間隔を空けることも、子どもの数が減っており、新学期の現在なら可能だろう。
 また、「新型コロナの治療薬はない」といつまでも言われているが、実際には、*10-2のように、インフルエンザ治療薬の「アビガン」が効くことが明らかになり、日本には200万人分の備蓄があるそうだ。そのため、(他国に無償供与する前に)国内の患者に速やかに投与して治せばよいと思われる。「アビガン」は、RNAウイルス全般に効くと見られており、動物実験で催奇形性が確認されたため妊婦への使用を禁じているとしているが、それは、全員に使ってならない理由にはならない上、軽いうちに使わなければ効果が薄くなるからだ。
 そして、検査して治療することを選ばず、緊急事態宣言による外出禁止に頼った結果、*10-3のように、観光業界が「コロナで死ぬか、経済で死ぬか」という事態になっている。観光バス駐車場の利用は、前年同月と比べて99.5%減で、観光バスで働く人は職を失って再起不能になりそうなのだ。私は、動いていない観光バスを借り上げて内装を変え、駐車場に止めておけば、発熱外来や検査室として使え、テントより余程居心地が良く、一石二鳥になると思う。
 なお、ネットカフェが宿泊施設とはとうてい思えないが、*11-1のように、緊急事態宣言によるネットカフェの営業自粛で多くの人が行き場を失うので、埼玉県は県内にある73か所のネットカフェに寝泊まりしている300人ほどに上尾市のスポーツ総合センターを一時的滞在場所として開放するそうだ。しかし、ITやネットとつけば先端という時代は1990~2000年代始めに終わっているため、住居にゆとりのある地方で、*11-2のようなアルバイトをしながら、今後の生き方を考えたらいかがかと思う。

  

(図の説明:左は、現在の典型的な教室で、中央は机の間を離して配置した写真だ。どちらも、机が粗末すぎて荷物を置く場所もなく、パソコンを置けば書く場所がないという状況だ。そのため、右の写真のように、(色は白でなくてもよいが)机の幅を120cmくらいにしてパソコンを標準装備とし、生徒同士が間隔をあけて座れるよう、30人学級にすればよいと思う)

*10-1:https://www.nishinippon.co.jp/item/n/599942/ (西日本新聞 2020/4/12) 手探りの教室「3密」回避限界も 学校再開、リスク拭えず「悩ましい」
 新型コロナウイルスの感染防止対策で一斉休校していた全国の小中高校が6日以降、続々と新学期をスタートさせている。国内では都市部を中心に感染が収まらず、今後も予測不能な中での学校再開。文部科学省は再開に際して留意点の大枠を示すが、再休校の判断など対応の多くを委ねられた教育現場は難しいかじ取りを迫られている。「今は教室内で大声を出さない方が良い、となっていますので普通の声であいさつをしましょう」。始業式を各教室で迎えた子どもたちは、校内放送で流れる教師の呼び掛けに少しくぐもった声で応じた。6日、佐賀県伊万里市の伊万里小。マスク姿の子どもたちは家庭で検温して登校、結果を記入した健康観察カードを学校に提出した。長谷川晃三郎校長は「子どもたちの心身安定のためにも始業式があって良かった」とまずは安堵(あんど)した。3月下旬に学校再開の指針を示した文科省は、毎朝の検温、マスクの全員着用を原則とし、ドアノブや手すりなどの小まめな消毒を学校に要請。特に(1)換気の悪い密閉空間(2)多くの人が密集(3)近距離での会話や発声(密接)-の3条件が重なることを徹底して回避するよう求めた。伊万里小では教室の机の間隔を空け、授業でのグループ討論は行わない。音楽では当面、歌う時間を減らし、鑑賞を中心とする。体育館で行う体育のマット運動や跳び箱も先送りし、1学期は運動場で接触の少ない授業を優先するという。長谷川校長は「学校再開のメリットデメリットはあるが、今後もどうなるか分からない」と、できる範囲での対応を強調した。それでも、同じ6日に始業式のあった同県唐津市の小学校の女性教諭(26)は「3密(密閉、密集、密接)を避けたいが、児童はくっついて遊ぶことも多く悩ましい」と困惑顔だった。
      ◇        ◇
 「3密」対策の必要性は浸透するが実際のハードルは高い。給食の時間、飛沫が飛ばないよう机を向かい合わせにせず、会話を控えるようにしても配膳などの段階で接触はある。40人近い学級であれば確保できる机の間隔はわずかだ。休校が続く福岡市の中学校に勤務する40代の女性教諭は「どんなに工夫しても問題は残る。今、学校が再開されずにむしろほっとしている」と打ち明けた。文科省も指針の中で「多くの学校においては人の密度を下げることには限界がある」とし、学校教育活動上、近距離での会話や発声が必要な場面も生じることを認める。では、どうすべきか。学校によっては、学級を二つに分けて授業をしたり、登校日を分散させたりするといった案もあるが「授業時間数や教育の質を十分に確保できるのかという課題はある」(福岡県の中学校長)。現実的にはマスクの着用と換気の徹底で乗り切るしかないのが実情だ。
      ◇        ◇
 こうした学校の状況に、大分県では「勉強の遅れは取り返せても、命は取り返せない」と、県立高校生2人が休校の延長を求め、インターネットで集めた約1600件の署名を添えた要望書を県教育委員会に提出した。しかし県教委は「意見は受け止めたが、県内の感染状況は落ち着いている」として、予定通り県立学校を8日に再開している。一方、政府の緊急事態宣言を受けて対象の福岡県内をはじめ九州の一部自治体は再休校を決めたり、学校再開の方針を転換したりしている。実は新型コロナウイルスを巡る対応で安倍晋三首相の唐突な一斉休校要請も、文科省の学校再開の指針も、科学的根拠や効果は今なお示されていない。その中で選択を迫られる教育現場からすれば「地域事情を踏まえて総合的に判断するとしか言いようがない」(宮崎県教委)と歯切れも悪くなる。過去に例のない事態と向き合う現状では、学校を休校するか、再開するか、また再開した場合に感染をどう防ぐのか、完璧な答えは見えない。教育研究家の妹尾昌俊さんは「学校は本来、安全に楽しく学べる子どもたちの居場所。しかし大勢が教室に密集する日本の学校で感染リスクを大きく低下させるのは限界がある。感染が続く地域では子どもや保護者の意思を尊重できる選択肢があってもいい。いずれにせよ全ての子に学習の遅れが生じない手だては不可欠だ」と話した。

*10-2:https://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/202004/CK2020041302100024.html (東京新聞 2020年4月13日) 「命救う薬に」コロナへの効果期待 アビガン開発者に聞く
 新型コロナウイルス感染症の緊急事態宣言を発令した七日、安倍晋三首相は治療候補薬として、インフルエンザ治療薬「アビガン」を増産する方針を表明した。開発に携わった富山大名誉教授の白木公康さん(67)は「命を救う薬として貢献できればうれしい」と語る。
◆世界も注目 30カ国が提供申し込み
 「すでに百二十例を超える投与が行われ、症状改善につながったという報告も受けている」。首相は会見でアビガンへの期待を前面に押し出し、開発企業と協力して臨床研究を進めることを表明。世界三十カ国から提供の申し入れがあり、政府は無償供与も始める。アビガンはインフルエンザ治療薬として白木さんと富山化学工業(現富士フイルム富山化学)が開発。二〇一四年に治療薬として承認され、現在は政府が新型インフルエンザ対策として二百万人分を備蓄する。
◆ウイルスに効くと直感
 岐阜市出身の白木さんは一九九一年に富山大のウイルス学研究室教授に就任。当初は帯状疱疹などを起こすヘルペスウイルスの治療薬を研究したが、既存の薬より効くものはできなかった。違うテーマでの再出発を目指していた九八年、富山化学の研究者が、同社が持つ三万個の化合物の中から試験管での実験でインフルエンザに効きそうな結果が出た物質として、アビガンを持ってきた。「構造の化学式をみた瞬間、インフルエンザなどのRNAウイルスに効くなと思った」と、白木さんは振り返る。インフルエンザや新型コロナウイルスは、遺伝子としてDNAではなくRNAを持つ。アビガンは、細胞内に侵入したウイルスが、RNAをコピーして増殖するのに必要な部品によく似た構造をしていた。ウイルスが部品と間違えてアビガンを取り込めば、RNAのコピーができなくなり増殖が止まると白木さんはみた。長年研究したヘルペスの場合、DNAで同じような働きをする薬が特効薬になっている。アビガンにはこの薬と共通点があると見抜いた。失敗経験が生きた。
◆3月に臨床試験開始
 動物実験を始めると、マウスでもインフルエンザに効くことを示せた。しかし、富山化学の経営状況が悪化したことや、既にインフルエンザ治療薬があったことなどから治験は停滞。それでも、既存の薬が効かない新型インフルエンザが出現した場合の切り札として一四年に承認された。アビガンはRNAのコピーという、ウイルス増殖の基本的な仕組みを妨げるため、白木さんは「インフルエンザ以外のRNAウイルス全般に効く」とみていた。実際、一四年からアフリカで猛威を振るったエボラ出血熱にも使用された。標準的な治療薬には選ばれなかったが、ギニアでは死亡率を低下させたとの研究成果もある。コロナウイルスでも同様の効果を期待して、藤田医科大(愛知県豊明市)が三月に臨床研究を開始。首相はこうした研究成果を念頭に「効果が出ている」と発言したとみられる。富士フイルム富山化学も今月三日にアビガンの治験を始め、六月末までに結果をまとめる。既に増産にも乗り出した。
◆「緊急事態に使う薬に」
 ただ、アビガンは動物の試験で、胎児に奇形を生じる催奇形性が確認された。人での治験では大きな副作用は確認されなかったが、インフル治療薬として妊婦への使用を禁じている。日本医師会の横倉義武会長もアビガンの治験への協力を表明する一方で「生殖期への影響が強い。注意しながら使うことが重要だ」と強調する。白木さん自身、コロナウイルスへの有効性が確認されたとしても「いつでも広く使うのではなく、現在のような緊急事態に命を救う薬という位置付けになる」とみる。一方で「肺の炎症は、高齢になってから後遺症が出ることもある。肺で炎症のある患者には早い時期から投与する必要がある」と指摘する。

*10-3:https://digital.asahi.com/articles/ASN475T44N47IIPE01F.html (朝日新聞 2020年4月9日) 「コロナで死ぬか、経済で死ぬか」北海道・小樽のいま
 新型コロナウイルスの影響が長期化し、観光業界が苦境に立たされている。政府は7日に緊急事態宣言を出し、新たな経済対策をまとめたが、事態の収束は見通せない。国内有数の観光地、北海道小樽市では「もう限界に近い」との声が上がる。
●観光バス99.5%減の衝撃
 今月初旬、小樽市が集計した数値が地元関係者に衝撃を与えた。2月まで多くの人が行き交っていた小樽運河近くの観光バス駐車場の利用が、3月は6台にとどまった。前年同月(1343台)と比べると99・5%減。「観光客が消えた」と市の担当者は表現する。緊急事態宣言の対象は東京や大阪、福岡など7都府県で、北海道は含まれなかったが、観光需要の回復は当面見込めない。約100店舗が軒を連ねる小樽堺町通り商店街では、厳しい現状を訴える声があふれる。「コロナで死ぬか、経済で死ぬか」。昆布専門店「利尻屋みのや」の社長、簑谷和臣さん(50)はそう話す。3月の売り上げは前年の24%。例年、観光客が増える夏に向けて売り上げが伸びるため、このままでは4月の売り上げは前年の10%、5月は5%になる恐れがあるという。31人の従業員の雇用は最後まで維持する考えだが、「あと何カ月、給料を払えるだろうか」と苦しい胸の内を明かす。政府の経済対策、とりわけ即効性がある現金給付に期待を寄せるが、事態が長期化すれば焼け石に水になってしまう。「収束が最大の経済対策だ」と簑谷さんは話す。
●海鮮丼専門店、アルバイトは全員休み
 海鮮丼の専門店「どんぶり茶屋」では、3月の売り上げが前年の2~3割という。十数人のアルバイトは全員休んでもらい、他に仕事が見つかればそちらを優先してほしいと伝えたという。運営会社の外食部門の責任者、大野大輔さん(43)は「先が見えないのが一番不安。打つ手がない。今は耐えるしかない」と話す。アクセサリー店「3Ring(サンリング)」では、3月の売り上げが半減した。運営会社の副社長、淡路祐介さん(39)は「他のお店と比べれば、うちはまだマシかもしれない」。それでも、運転資金を確保するために数百万円の融資を受ける検討をしている。当初は5月までの収束を期待していたが、緊急事態宣言であきらめざるを得ない状況だ。「このままでは、また融資、また融資となりかねない。夏までに収束しないと、商店街でも事業を縮小するお店が増えてくるかもしれない」と淡路さんは言う。

*11-1:https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200412/k10012383281000.html (NHK 2020年4月12日) ネットカフェ営業自粛で行き場失う人に県施設を無料開放 埼玉
 新型コロナウイルスの感染拡大による緊急事態宣言を受けて、埼玉県は人が集まりやすい施設などに13日からの休業を要請していますが、インターネットカフェの営業自粛で多くの人が行き場を失うおそれがあるため、一時的な滞在場所として、県の施設を12日夜から開放することを決めました。緊急事態宣言を受け、埼玉県は人が集まりやすい施設などに13日午前0時からの休業を要請していて、対象の施設には24時間営業のインターネットカフェも含まれています。しかし、県によりますと、県内にある73か所のインターネットカフェには、300人ほどが寝泊まりを続けているとみられるということで、こうした人たちが行き場を失うおそれがあるため、上尾市にある県のスポーツ総合センターを一時的な滞在場所として、12日夜から開放することを決めました。和室と洋室合わせて30部屋におよそ200人が宿泊でき、県内のインターネットカフェを利用していた人は、原則、無料で1週間、滞在できるということです。施設の開放は12日午後8時から来月6日まで行われ、利用する場合は午前9時から午後6時までは「048-830-8141」、午後6時以降は「048-774-5551」まで連絡が必要だということです。

*11-2:https://www.jomo-news.co.jp/news/gunma/politics/206266 (上毛新聞 2020/4/13) 嬬恋キャベツに人手を 新型コロナで宿泊や飲食の余剰人材へ募集
 新型コロナウイルス拡大防止の水際対策強化に伴う入国制限などの影響で、外国人技能実習生らが来日できず深刻な人手不足が懸念される中、群馬県嬬恋村のキャベツ農家でつくる嬬恋キャベツ振興事業協同組合(干川秀一理事長)は12日までに、客数の落ち込みで人手余剰感がある宿泊施設や飲食店の従業員を一時的に雇い入れる農家を紹介しようと募集を始めた。村内の農家に必要な計約220人の確保を目指す。新型コロナ問題による労働者の不足と余剰を結び付け、非常時を乗り切りたい考えだ。
◎収穫終える10月まで 繁忙期などは配慮
 政府は中国やベトナムなど73カ国・地域からの入国制限をしており、同組合は実習生の入国遅れが長期化すると判断し、対応を協議してきた。キャベツの栽培管理や収穫作業は人手が必要のため実習生に頼っている。それぞれの農家は当初、今月20日ごろから栽培作業を実習生に始めてもらう段取りを取っていたという。入国制限が解除された場合でも、入国手続きには1カ月以上かかる見込み。このため今年の入国調整を見送り、収穫を終える10月ごろまでを他業種に従事する日本人や在日外国人らの一時的な雇い入れで補いたい方針だ。農家で人手不足が深刻となる一方、宿泊や飲食といった業界では外出自粛などのあおりで来客数が大幅に減少し稼働率が低下しているほか、製造業などでも海外からの部品調達が滞るなどして工場が停止し、従業員が自宅待機となるケースもあるという。同組合は、一時的に余剰感が生じたこうした業界で働く人を、キャベツ栽培農家が雇えるよう橋渡しをする。村内の観光業者や商工業者にチラシを配り、雇い止めや一時休業を考えている経営者に対して従業員の雇用確保策としても呼び掛ける。同組合はJA系統外の農家などでつくる団体だが、JA嬬恋村に支援を求める農家に対しても応募者をつなぎ、村全体のキャベツ農家に人材を提供していく考え。村内では約120戸が計約220人の人員を求めているという。新型コロナウイルスの状況次第だが、同組合事務局は「夏休みなどに繁忙期となるホテル従業員には配慮したい。短時間でもいいので村内外から一緒に頑張りたい人に来てほしい」としている。問い合わせは同組合の電子メール(fhashi18@gmail.com)へ。

<検査・治療に帰国者・接触者相談センターや保健所を通すのが誤りだ>
PS(2020年4月15、16、17日追加):*12-1のように、「新型コロナの感染が拡大し、クラスター追跡が遅れて保健所がパンクしているのが危機だ」と記載されているが、“積極的疫学調査”と称するクラスターの追跡は、(原爆症の調査を思い出すが)疫学調査のための調査であって、治療のための迅速な検査になっていない。さらに、東京都の感染者の約7~8割が感染経路不明というのも、公共交通機関・職場・歓楽街などで接した不特定多数の人の全てを報告することなどできるわけがないため当然で、有用な疫学調査にもなっていない。現在は、クラスターを追跡して無症状の人を隔離するよりも、症状の出た人を素早く検査して治療し、重症化する前に治すことが必要な段階なのである。
 京都大付属病院と京都府立医科大付属病院が、*12-2のように、新型コロナの院内感染を防ぐために、手術や救急医療を受ける患者に対して症状がなくてもPCR検査を公費で行うか保険適用するよう求める共同声明を発表し、対策が遅れれば医療崩壊に繋がると訴えている。他の病気で病院を訪れる人でも新型コロナに感染していないという保証はないため、手術や救急医療などの治療を受ける患者に検査を行うのは当然だ。そのため、治療の一環として検査を保険適用にすればよく、*12-4のような15分で判定できる高価すぎない検査キットをクラボウの中国の提携先が開発し、4月16日以降、1日1万テスト分を供給するそうだ。
 さらに、*12-3のように、北海道新聞も社説で「新型コロナの検査態勢拡充に手を尽くしたい」と記載しているが、検査方法はPCR検査だけではないため要注意だ。確かに、医師が感染を疑って検査を求めても保健所などが拒否するケースが多すぎ、まだ「感染者や渡航歴がある人などとの濃厚接触」を条件にしているのは現実に合っていない。そのため、先行事例や提言を参考にして工夫すべきだが、専門技師が不足しているからといって、「感染したら重症化するリスクが高いのは高齢者」などと年齢差別的な報道を繰り返しながら、停年退職者に検査を担わせようと考えるのは筋が違うため、リスクが低いと言わている人が対応すべきだ。
 新型コロナの国内感染者数は、*12-5のように、「ダイヤモンド・プリンセス」の乗客乗員分を合わせて1万2人となり、三重県四日市市では発熱して自宅療養中だった50代男性が死亡し、感染していたことが判明したそうだ。これは、東京在住の私のいとこ(40代男性)が、①微熱が続くのでかかりつけ医に行ったら「保健所に相談して」と言われ ②保健所は「軽症だから検査しない」と言い ③最初は37.5 度だった熱が4日後には40度になって ④苦しいので保健所に電話したら電話が通じず ⑤やっとPCA検査を受けたら結果が出るまで3日かかると言われ ⑥状態が著しく悪化したためPCA検査の結果を待たずに救急車で病院に行ったら ⑦「軽症だから公共交通機関で帰ってくれ」と言われ ⑧救急車の中で6時間も待たされた後にやっと入院できて酸素吸入を受け ⑨後でPCA検査の結果が陽性だったことがわかった というのと同じケースだと思うが、私のいとこも救急車で病院に行かなかったら「発熱して自宅療養中だった40代の男性が死亡し、死亡後に陽性だったことが確認された」などというくだらない報告になっていたところだった。つまり、日本は、とんでもない医療放棄国になってしまったのだが、①の段階で直ちに検査し、③になる前にアビガンを投与していれば、とっくに治って救急車や救急救命室を占有する必要もなかったのである。また、⑤については、結果が早く出る検査方法を使った方がよく、新型コロナの症状を出している人が⑦のように公共交通機関を使えば、東京で新型コロナが蔓延するのは当然で、どこかおかしい。
 なお、新型コロナの治療効果が期待されるアビガン(対症療法ではなく根本的治療薬である)は、*12-6のように、⑩政府は備蓄を3倍の200万人分へ増やす計画を掲げているが ⑪通常であれば中国に依存していた原料の国内生産切り替えには時間がかかる(何でも時間がかかるが、時間をかければ勝負は終わっている) ⑫緊急事態の対応で規制緩和など官民を挙げた取り組みを加速する必要がある そうだ。しかし、日本で開発された付加価値の高い医薬品でも国内で生産すればコストが高いため中国に依存していたのは情けないし、政府は今が必要な時なのだから備蓄を迅速に提供すべきだ。そして、政府が短期間で承認したいのに、厚労省が「条件付き承認でも審査に数カ月がかかる」等と言っているのは、厚労省の怠慢である。

     
 2020.4.6東京新聞   2020.4.10Yahoo  2020.3.6東京新聞

(図の説明:1番左と左から2番目のグラフのように、東京始め日本で新型コロナ感染者が等比級数的に増え、いくつかの都府県で緊急事態宣言が出された。しかし、右から2番目の図のように、37.5度以上の発熱が4日以上続き、患者が崩壊しそうになって初めて保健所や帰国者・接触者相談センターに電話相談することができ、そこの電話は繋がりにくい上に繋がっても事務的な説明をして検査を断られるケースが多く、新型コロナ感染者がやむなく自宅待機してさらに感染者を増やしている状況だ。が、1番右の図のように、迅速に検査して治療しなければアビガン等の治療薬は効かないため、保健所や帰国者・接触者相談センターへの事前相談はやめて迅速な検査と投薬で治す体制に変えるべきだ。そして、そのための準備は、ダイヤモンド・プリンセス号の経験以来、2月~3月中旬までの時間稼ぎをしている期間にやっておくべきだったのに、いつまで同じことを言って経済を停滞させ、無駄遣いばかりしているのか)

*12-1:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO58024420U0A410C2EA1000/ (日経新聞 2020.4.15) クラスター追跡に遅れ 感染拡大、駅な保健所パンクの危機
 新型コロナウイルスの感染が拡大する中、感染経路の調査を担う保健所の負担が急激に重くなっている。感染者や濃厚接触者が加速度的に増え続け、調査に非協力的な人も多い。保健所がパンクすると、クラスター(小規模な感染者集団)の発見が困難になり、感染が一段と拡大しかねない。態勢増強や業務分散が急務だ。「保健所は今、新型コロナとの闘いの主戦場だ。現場は疲弊しており、何とかしなければならない」。政府の専門家会議の尾身茂副座長は窮状を訴える。保健所は都道府県や政令市、中核市などが設置主体で、医師や看護師、保健師らが配置されている。聞き取りなどを通じ濃厚接触者を捜し出したり、体調を確認したりする「積極的疫学調査」を担う。全国に472カ所(2019年度)ある。国は感染拡大防止のため、クラスター追跡を重要施策に掲げる。尾身氏が危機感を隠さないのううは、感染者や濃厚接触者の急増で、保健所によるクラスター追跡に遅れが生じているためだ。このところ東京都で見つかる感染者のうち、約7~8割は感染経路が不明だ。都の担当者は「保健所からの情報がほとんどなく、背景がよく分からない。受診者が増えて聞き取り調査が十分できていない可能性がある」と明かす。厚生労働省によると、感染者1人あたりの濃厚接触者数はゼロから100人近くと大きな幅がある。自宅で安静にしていたか、外出していたかで大きく異なる。保健所は感染者の行動履歴から濃厚接触者を割り出すが、行動範囲の広い若者や中高年の感染者が増え、追い切れなくなっているという。歓楽街でのクラスターの関係者は聞き取りにも非協力的なことが少なくない。

*12-2:https://www.jiji.com/jc/article?k=2020041501037&g=soc (時事 2020年4月15日) 無症状でもPCR検査を 京大病院など共同声明―新型コロナ
 京都大付属病院と京都府立医科大付属病院は15日、新型コロナウイルスの院内感染を防ぐため、手術や救急医療を受ける患者に対し、症状がなくてもPCR検査を公費で行うか保険適用するよう求める共同声明を発表した。対策が遅れれば医療崩壊につながると訴えた。声明は無症状であっても感染者に手術や分娩(ぶんべん)、内視鏡検査をすれば、医師や周囲の患者らに感染させる可能性があると指摘。現在は症状がある患者だけに保険が適用され、無症状のケースで実施した場合に病院側が費用を負担すれば経営を逼迫(ひっぱく)させるとした。また、PCR検査に必要な試薬や、感染を防ぐ防護具の確保も求め、厚生労働省に要望書を提出するという。京大病院の宮本享病院長は記者会見で、「臨床現場の悲鳴でもあり、この危機感は日本中の医療関係者が共有している」と話し、他の医療団体に賛同を求めた。

*12-3:https://www.hokkaido-np.co.jp/article/412751 (北海道新聞社説 2020.4.16) コロナ検査態勢 拡充に手を尽くしたい
 新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐには、PCR検査の拡充が不可欠だ。なのに、遅々として進まない現実がある。道内の帰国者・接触者相談センターの健康相談は2、3月で1万8544件に上ったが、検査に至ったのは1・8%の349件で全国3番目の低さだった。検査ができないと、感染に不安を感じる人たちが医療機関を受診して、ウイルスをうつしたり、うつされたりする恐れがある。安倍晋三首相は今月6日、検査の可能数を1日2万件にすると述べたが、実施は8千件を下回っており、目標にはほど遠い。国は地方任せにせず、財政措置を講じて検査態勢を整え、加速させるよう手を尽くすべきだ。北海道保険医会の調査では、会員の医師が感染を疑い検査を求め、保健所などに拒否されたケースが111例あった。「感染者や渡航歴がある人などとの濃厚接触がない」などが理由である。国は感染経路から濃厚接触者を追って検査し、感染爆発を抑える手法を取ってきた。検査数の少なさは国の方針に従ったためだ。だが、感染経路が不明な人が増え、段階は変わった。検査の拡充に重点を移す必要がある。検査数という分母が感染の実態を反映していないと、科学的な統計と知見に基づいた対策を打つこともできない。感染の有無が分かれば、重症者に対して感染症指定医療機関で優先的に治療を行い、軽症者は自宅や宿泊施設で療養してもらうトリアージもしやすくなろう。それにしても日本の検査数は驚くほど少ない。ドイツの検査数は日本の約30倍に上るという調査結果もある。大量検査で早期発見に努め、重症化を阻止している。ドライブスルー方式や訪問型の検査などで院内感染を防ぎ、民間の協力を得て24時間態勢でスピードアップを図っているという。韓国で普及しているウオーキングスルー方式も有効だ。野外にブースを設けて検体を採取するため、車を持たない人でも検査ができ、飛沫(ひまつ)感染のリスクも低い。日本医師会は採血で行う抗体検査を要請している。医療従事者の感染リスクが減り、免疫獲得の確認などに適しているそうだ。こうした先行事例や提言を参考に工夫を凝らしてほしい。検査数が伸びないのは専門技師らが不足していることもある。退職者ら検査を担える人に応援を求めることも必要だろう。

*12-4:https://www.chemicaldaily.co.jp/%E3%82%AF%E3%83%A9%E3%83%9C%E3%82%A6%E3%80%80%EF%BC%91%EF%・・ (化学工業日報 2020年3月13日) クラボウ 15分で判定 新型コロナ検査キット
 クラボウは12日、新型コロナウイルスの検査キットを16日に発売すると発表した。イムノクロマト法を用い、15分で感染の有無を目視で判定できる。衛生研究所や臨床検査会社などに、1日当たり1万テスト分を供給する計画。イムノクロマト法による新型コロナの迅速検査キットは国内初とみられる。保険適用を視野に入れている。検査キットはクラボウの中国提携先が開発。これまでに1000例以上の臨床データがあり、同国では4日に標準診断法のガイドラインに採用された。10マイクロリットルの血液をキットに滴下するだけで診断でき、PCR法と比較して時間、コストなどを削減できる。血液検査のため、検査作業者への2次感染のリスクも軽減できる。キットは感染時に体内で生成される特定の抗体を検出する。PCR法で検出が難しいとされている感染初期でも判定できる。PCR法は検体中のウイルス量の影響を受けやすいが、同キットは血液中に抗体が存在すれば判定可能。サンプル採取の方法や部位による偽陰性も出にくい。感染の初期段階で生成される抗体「IgM」用と感染後長期間にわたり最も多く生成される抗体「IgG」用の2種類を用意し、正診率はそれぞれ95・72%、94・24%。陰性判定率については、ともに100%。併用することで検査精度は高まる。2種ともに価格は税別で2万5000円。同社環境メカトロニクス事業部バイオメディカル部は、イムノクロマト法などを用いた食品中の成分や食中毒菌などのDNAを判定する試薬キットを開発・販売している。今回、新型コロナの感染拡大を受けて、中国の提携先が開発したキットの輸入、販売に踏み切った。

*12-5:https://mainichi.jp/articles/20200416/k00/00m/040/248000c?cx_fm=mailsokuho&cx_ml=article (毎日新聞 2020年4月16日) 国内感染者1万人超え、クルーズ船含め 死者203人に
 新型コロナウイルスは16日、東京都の149人など新たに576人の感染が判明した。クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」の乗客乗員を合わせた国内の感染者数は計1万2人になった。13人が亡くなり、死者は計203人になった。三重、大分、沖縄の3県での死亡は初めて。大阪府では52人の感染が確認され、感染者数は1000人を超えた。和歌山県では両親の感染が既に判明していた0歳女児の陽性が新たに確認された。三重県四日市市では発熱して自宅で療養中だった50代男性が死亡し、感染していたことが判明した。

*12-6:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200417&ng=DGKKZO58155130W0A410C2EA1000 (日経新聞 2020.4.17) アビガン原料、中国頼み、政府、備蓄3倍の200万人分めざすが…国内生産移行へ総力戦
 新型コロナウイルスに対する治療効果が期待される富士フイルムホールディングスの抗インフルエンザ薬「アビガン」。政府は備蓄を3倍の200万人分へ増やす計画を掲げるが、通常であれば中国に依存していた原料の国内生産切り替えには時間がかかる。緊急事態の対応で規制緩和など官民を挙げた取り組みを加速する必要がある。
●特許切れ後発薬
 アビガンはウイルスが体内で増殖するのを防ぐ仕組みで、コロナ治療に効果があったという報告がある。政府はパンデミック(世界的な大流行)に備えてアビガンを備蓄していたが、1人の治療にインフルの3倍量が必要ということが分かり、現在の200万人分は70万人分にしかならず、富士フイルムに増産を指示した。アビガンは海外で基本特許が切れており、原料を製造する中国では同じ成分の後発薬の生産も始まった。国内への原料輸入が難しい状況となり、富士フイルムは国内で原料を製造する能力があるデンカに委託し、国内生産にシフト。7月から本格的な増産を始める計画を公表した。本来、医薬品の原材料を変更するには時間がかかる。原料の調達先変更を申請する場合「通常なら品質の確認や登録手続きに1年程度かかる」(国内の中堅製薬)という。今回は特例的な措置で、こうした手続きが1~2カ月程度に短縮されたようだ。ただ本格的な増産は7月以降とみられ、3カ月程度を要する。コストもかさむ。製薬会社が海外から原料を調達するのは製造原価を下げるためだ。錠剤など一般的な医薬品は化学合成でつくられ、化学物質に溶媒や材料を加えて化学反応を起こす。有毒なガスや排水が発生するため処理コストもかかる。種類や濃度にもよるが日本の医薬品の排水処理費用は1キログラムあたり数十円から数百円とされ、中国やインドなど海外の10倍ともいわれる。国内で原料から製造すると薬価50円の薬に、100円以上のコストが発生することも考えられる。原料生産を内製化できれば、200万人分の目標は達成できる。ただ国内製造だと製造原価も高くなる。製造コストに見合う薬価を設定し、その価格を維持していく支援も必要だ。インフルエンザの代表的な治療薬タミフルは1日2回、5日間の服用で2700円程度かかる。仮にアビガンがタミフルと同価格で3倍量が必要とすると、1人分の薬剤費は8100円。200万人分なら162億円となる計算だ。原薬の海外依存は日本の構造的な問題だ。厚生労働省が2013年に実施した後発薬の調達状況に関する調査によると、原薬をすべて国内で調達しているものは金額ベースで3割にとどまっている。残る7割は原薬の全部もしくは一部を海外から輸入。調達先を金額で比較するとインド(30%)、韓国(26%)、中国(24%)となっていた。薬価の引き下げ圧力は強まっており、現在は海外調達の比率はさらに高まっているとみられる。
●審査には数カ月
 アビガンについては実用化の時期も注目される。政府は短期間でアビガンを承認したい考えだが、厚労省は慎重な姿勢を崩さない。一般的に医薬品は申請から承認まで半年以上。アビガンの臨床試験(治験)は6月末に終了する見通しだ。「副作用などデータの評価、専門家の意見といったプロセスは必須。条件付きの承認でも審査に数カ月がかかるだろう」(元厚労省の薬事担当者)。今回は日本の製薬会社が開発した薬であっても、原料の多くを中国に依存していたため、機動的に増産することができない現実が露呈した。デンカは原料となるマロン酸の製造から17年に撤退していたが、製造設備を残しており、人員の手当てで再生産できることが分かった。デンカが生産できるのは幸運にすぎず、原料を海外に頼る日本の医薬品製造に対する構造的な問題は依然として残ったままだ。新型コロナで浮かび上がった日本の医薬品の供給体制の危うさを解消するためにも、国内生産に対する価格評価や緊急時の審査の仕組みなど柔軟な制度を今こそ再構築する必要があるだろう。

| 日本国憲法::2019.3~ | 02:39 PM | comments (x) | trackback (x) |

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