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2020.4.19~22 国の社会保障費削減とその他の予算の無駄遣い (2020年4月23、24、25、26、27、29、30日、5月1、2、3、4《図》、8、9、10日追加)
 
 2019.1.6毎日新聞  2018.12.21時事 2019.12.20朝日新聞 2020.4.10東京新聞  

(図の説明:1番左の図のように、日本の税収による歳入は毎年増える歳出よりも小さいため、国債残高は年毎に大きくなっている。左から2番目の図は、国の税収に占める税の種類だ。2020年度予算案は新型コロナ流行前に作成されたが、右から2番目の図のように、約103兆円であり、これに加えて、1番右の図のように、新型コロナによる経済対策を約108兆円行っている)

(1)2020年度予算は約103兆円で過去最大だった
 *1-1-1・*1-1-2のように、2020年度予算は過去最大の約103兆円で成立し、その中の予備費に新型コロナ対策の一部が入っている。

 一般会計の歳出総額は2019年度の101.5兆円より1.2%増の約103兆円と8年連続過去最大を更新し、新型コロナ対策にも予備費5000億円から緊急経済対策の一部に充てるそうだ。さらに、新型コロナに対応する経済対策のため、2020年度補正予算案の編成に着手し、その金額は(3)のように108兆円にもなるため、2020年度の予算は、合計211兆円になる。余程、金が余っているのだろう(皮肉)。

 そして、一般会計の歳出総額については、年金・医療・介護などの社会保障費が5.1%増えて約36兆円となったから全体を押し上げたと説明されている。しかし、年金・医療・介護の費用増加は高齢者割合の増加によってあらかじめ予測できていたため、発生主義で引当金を引き当てておくことが必要だったのであり、それをやっておかなかったのは、国(厚労省・財務省)の責任である。そのため、世代間対立を作って、その責任を社会保障の負担増・給付減として高齢者に押し付けているのは、契約違反であると同時に責任逃れも甚だしい。

 さらに、歳出の無駄遣いが多い割には、「教育費は高いのに、教育インフラは貧弱」という日本の状況は、毎年のように行われる景気対策で国から棚ぼた式に降ってくる金を当てにするような勉強不足でプライドのない国民を大量に作っているため、この悪循環を断ち切るには「教育内容の充実」や「教育環境の整備」が欠かせない。にもかかわらず、「社会保障費は、消費税で賄わなければならない」などという社会保障を人質にした根拠のない世界でも類を見ない消費税増税のずる賢い言い訳の真実性を確かめもせず、馬車馬よろしく足並みを揃えて財務省の政策宣伝をしてきたメディアの質も問われる。

 なお、歳出の財源となる税収は約63兆円と見込まれ、差額の148兆円は国債の増加で賄うそうだが、国債の返済は、①資源国のような国の税外収入獲得 ②資源や過去に作られた資産などの国の資産の有効活用 ③本物の無駄遣い排除 ④借りた当事者か一般国民による返済 によるほかにはないことを忘れてはならない。なお、国がお金を増刷してお金の価値を薄めるのは、全国民に知らないうちに負担させているため、④に入る。

(2)新型コロナの性格と緊急事態宣言
 安倍首相は、*1-3-1のように、新型コロナの世界的な拡大について「第3次世界大戦は核戦争になるだろうと考えていたが、このコロナウイルス拡大こそ第3次世界大戦だと認識している」語られたそうだ。私も、「第3次世界大戦は核戦争になるだろう」と考えていたが、このようなウイルスを使えば宣戦布告が不要で、責任者も不明にできるため、(人道には反するが)武器としては確かに便利だ。ぎょ

 そして、この新型コロナは、感染した当初は発症せずに次々と感染し、しばらくすると宿主を重篤にして死に至らしめるため、(高齢者・持病のある人・難民などの)健康弱者を殺すのによくできたウイルスだ。そして、新型コロナ蔓延後の厚労省の対応やメディアの報道を見ていると、もしかしたらアメリカの他の同盟国か日本がばら撒いたウイルスではないかと思うくらいで、社会保障費を削減したがっている日本の厚労省・財務省も、大いに動機がありそうだ。

 そのような状況の下、*1-3-2のように、安倍首相は4月7日、感染が急拡大している東京、神奈川、埼玉、千葉、大阪、兵庫、福岡の7都府県に、4月7日から5月6日までの緊急事態宣言を出されたが、何故かメディアにはそれより強い制限を望む声が多く、首相は、*1-3-3のように、4月16日に対象地域を全都道府県に拡大された。そのため、新たに対象となった地域の知事が法的根拠のある外出自粛要請をすることが可能となったが、私は、地域差があるので、これで十分だと考える。

 今回の新型コロナ感染騒動について私が異常だと思うのは、治療するために最大の努力を注がず、外出自粛や店舗閉鎖などの国民生活への制限ばかりを進めようとしていることだ。これによって、医療体制が逼迫しているという説明の下、トリアージを行って助ける命の選別を行い、国民経済への甚大な被害を緩和するためとして多大な補正予算を組むことも可能になった。

 さらに、新型コロナのクラスター追跡にかこつけて、国民を追跡するコロナ感染追跡アプリを解禁したが、これはいつでも情報を開示できる上、選挙妨害にも使えるため、偏った監視社会への入り口になることを忘れてはならない。日本国民は、それを望んでいるのか?

(3)緊急事態宣言による約108兆円の追加経済対策
 事業総額約108兆円という過去最大の経済対策が、*1-2-1のように閣議決定され、このうち政府が実際に支出する財政支出は約40兆円で、経済への打撃を抑え、雇用を維持する目的の現金給付や資金繰り対策がその柱だそうだ。

 そして、企業の資金繰り対策としては、*1-2-2のように、45兆円規模の政府系金融機関による無利子融資や減収企業に対する給付金を作った。また、外出自粛や休業要請で収入が激減して生活に困窮する人が増えているため、*1-2-3のように、家計向けの現金給付として一律10万円(3人家族なら合計30万円)を給付することになった。しかし、収入が激減していない人もいるため、一律10万円の給付を不要な人は請求しない選択ができる制度にした方がよい。

 また、政府は中小企業や個人事業主向けの資金繰り対策として「持続化給付金」と呼ぶ現金給付と減収世帯向けの「生活支援臨時給付金」に6兆円を投じて5月からの支給を目指し、このほか税金や社会保険料の支払いを原則1年猶予したり、民間金融機関が自治体の制度融資を使って実質無利子で融資する仕組みを設けたりもするそうだが、最終的に①誰に ②どういう理由で ③何をするのか ④手続きすべき人 ⑤その予算 を、わかりやすい一覧表にして欲しい。

 しかし、新型コロナへの効果が期待される抗インフルエンザ薬「アビガン」の備蓄や人工呼吸器、マスクの生産支援にも予算を付けたのはよいが、早期発見して早期治療を行えば他の経済対策はいらなくなるのに、ここで備蓄に重きを置くのはやはり不自然である。

(4)治療薬、汎用性ワクチンなど
 2018年にノーベル医学・生理学賞を受賞された本庶佑京都大学特別教授は、*1-4-1のように、新型コロナウイルスについて、①PCR検査の大幅増 ②東京圏、大阪圏、名古屋圏などでの完全外出自粛 ③外国で有効性が示された治療薬の早期導入 を提言しておられた。私も、②を始めとする予防も重要だが、①のように検査を大幅に増やし、③のように外国で有効性が示された治療薬は早期に導入すべきだと考える。

 そのような中、日本の厚労省は、怠慢で承認を遅らせたり、頭が固くて科学的根拠のない理由で承認しなかったりして、日本発の新薬も日本では実用化できず、優秀な研究者が日本を離れることを余儀なくされており、もったいないこと甚だしい。

 そして、*1-4-2に、④新型コロナ感染拡大が続く中、世界では治療薬開発が急ピッチで進む ⑤製薬会社は既存薬を転用することで開発期間を短くして早期の市場投入を目指す ⑥回復した患者の血液成分を使った治療法も試されている ⑦既存の医療技術・手法の掘り起こしも進む ⑧新型コロナの猛威を止めるには迅速な審査や承認を可能にする仕組みも欠かせないが、日本は「先駆け審査指定制度」を使っても、承認に最短6カ月程度かかる 等が記載されているのは、今更ながらの事実である。

 しかし、*1-4-3の「血漿療法」は、感染早期だけでなく重症になった患者にも効くものの、血液を提供した人の他の感染症が移るリスクとの比較秤量をすべきなのだ。

 なお、コロナウイルス自身が変異したり、人為的に変異させてバイオテロに使ったりする可能性もあるので、ワクチンは汎用性の高いものを作って欲しい。「BCG接種をしている国で新型コロナによる死亡者が少ない傾向がある」そうだが、BCG接種する国は、予防としていろいろなワクチンを投与する予防政策の進んだ国なのではないか? 例えば、日本なら、インフルエンザワクチンを投与していたり、65歳以上は肺炎球菌のワクチンを投与していたりするため、コロナウイルスへの抗体や肺炎を起こす他の細菌への抗体のある人が多いという具合である。

 米国では、*1-4-4のように、スタンフォード大の研究チームが、4月19日までに西部カリフォルニア州サンタクララ郡の住民を対象に新型コロナの抗体検査を行い、感染した人は4月初めに2.5~4.2%で、確認されている感染者の50~85倍に及んでいる可能性があり、この推計を基にした致死率は0.1~0.2%と算出したそうだ。また、その検査はドライブスルーの検査場を3カ所設けて4月3~4日に実施したため、検査を受けるには車も必要で、被験者には一定の偏りが生じ得るとしている。疫学調査は、このように真実を追及するために行い、母集団の偏りも認識しておくものだ。

(5)国民の暮らし
 新型コロナの蔓延が始まる前から、消費税増税・実質的な年金カット・社会保険料の負担増・物価上昇などで、高齢者を中心として暮らし向きは悪くなった。*2-1は、総務省の家計調査で、1世帯当たりの消費支出が昨年10月の消費税増税後、今年1月まで4カ月連続マイナスだったと記載している。

 私は、「経済活性化のために、消費すべきだ」という政策は人を幸福にしないが、国民が自らの福利を増加させるために消費することは必要だと考える。しかし、例えば美容院は、実質目減りした所得の中で、節約されやすい業種らしく、消費税増税後にぐっと客が減り、コロナ蔓延以降は客が途絶えた。が、なくなられては困る業種だ。

 そのため、*2-2のように、自民・公明両党の税制調査会が、2020年4月2日、新型コロナの影響を緩和する税負担軽減措置をまとめ、需要減に苦しむ中小・零細企業の納税猶予を決めたが、消費税減税については議論しなかったそうだ。ただし、この消費税減税案は、経済活性化のための時限措置として消費税を減税して消費と駆け込み需要を喚起するという詐欺のようなことを意図しており、国民生活を向上させることを意図しているわけではないため、将来の生活を考える国民がこれで需要を誘発されることはないと思われる。

 また、*2-3のように、2020年度の年金額は昨年度比0.2%のプラス改定となったが、消費税が2%上がり、それに応じて物価は2%以上あがったことから、実質目減りしている。この状況は、「マクロ経済スライド」と呼ばれる賃金や物価の変化から少子高齢化に伴う調整率を差し引いて改定率を決めるルールが作られたことによって起こっており、「マクロ経済スライド」の根拠に合理性はないが、何が何でも高齢者への給付を減らすことが目的で作られた制度だ。

 一方、高齢者の健康保険料・介護保険料は上昇が続き、2020年4月から働くシニアを対象とする雇用保険料の徴収もあるそうだ。しかし、親や配偶者に介護が必要となり、仕事を休んで従事する場合は「介護休業給付金」を受け取れるとのことである。

 このような中、*2-3のように、介護を家族で抱え込まずに社会全体で支え合うという理念で、(私が提案して)始まった介護保険制度が2020年4月で20年を迎えたが、未だに40歳以上の人しか介護保険制度に加入できない。しかし、この20年で社会の意識改革は進み、サービスの利用者は2000年は149万人だったが、2019年は487万人と3倍になっている。

 しかし、「介護保険の維持・存続について懸念する」と答える自治体は多く、問題点は、①介護現場の人手不足 ②費用の膨張 ③財源の確保 だそうだ。①の人手不足は、外国人労働者を入れて賃金を上げすぎないようにしないと、②のように費用は膨張するがサービスは減るという日本独特の行き詰まり産業になる。そうなると、③の財源確保にも嫌気のさす人が増える。

 つまり、これまでの国の見直しは、被介護者よりも介護制度を守ることを優先して「負担増」「サービス減」を繰り返し、当初は利用者の所得に関係なく1割だった自己負担割合を一定の収入がある人は2割とし、次に現役並みに所得が高い人は3割に引き上げたが、介護サービスの方は、特別養護老人ホームの新規入所者を要介護3以上に限定し、要支援1、2を対象者とした訪問介護・通所介護は全国一律の介護保険から切り離して市区町村の事業に移したものである。

 このため、「介護の社会化」を目指しているのに、高齢者が高齢者をケアする「老老介護」が広がり、介護疲れによる虐待や介護離職も増えているが、せっかく慣れてくれた外国人労働者は国に追い返しながら、「介護需要に人材確保が追いつかない」と言っているわけだ。

 ここで、*2-4のように、日経新聞は「会社員にズシリ、社会保険料30%時代、団塊世代が75歳に、迫る2022年危機」という見出しで、「医療・介護・年金の合計保険料が給与に占める比率が2022年度に労使合計で30%に迫り、人生100年時代のマイナス面も見えている」としている。つまり、社員が直接給与から支払うのは半分の15%だが、それでも親を養い家族介護していた時代より大変だと言っているのである。

 さらに、「介護保険制度の対象を全世代に広げ、介護保険料の支払いを平等にして保険料を引き下げよう」という記述はなく、「健保連は団塊の世代が75歳になり始める年を『2022年危機』と位置付け、現役世代の重い負担を見直すよう国に改革を求めた」としている。

 結論として、「高齢者は年金・医療・介護費の増加で現役世代の重荷になるから、人生100年時代バラ色ではない」と言い続けてきているのであり、このように利己的で冷たい主張の出所を考えれば、日本の国会議員・財務省・厚労省の中には、新型コロナウイルスを歓迎している人が多いように思われるわけである。

(6)社会保障財源と(本物の)無駄遣いの排除
1)資源で税外収入を稼ぐ

 
  2018.9.25エコノミスト    2019.4.22エコノミスト   2019.9.18Livedoor

(図の説明:左図のように、サウジアラビアは石油収入で歳入の約7割を賄い、残りの3割を非石油収入で賄っている。それには、中央の図のように、サウジアラビアの恵まれた油田があり、右図のように、現在は世界有数の原油生産量を誇っているが、「ビジョン2030」と呼ぶ将来を見据えた経済構造高度化構想も打ち出している)

 歳出の財源となる国の収入は、(1)に書いたように、①資源国のような国の税外収入獲得 ②資源や過去に作られた資産などの国の資産の有効活用 ③本物の無駄遣いの排除 ④税収 などがあり、国債は借金であるため、国がこれらの収入から返済するのが正道だ。

 このうち、①については、サウジアラビアを例にすると、*3-1-2のように、国営石油企業サウジアラムコから得る石油収入で歳入の約7割を賄い、残りの3割を非石油収入で賄っているが、所得税・法人税・消費税などの課税はない。しかし、地球環境維持のため世界が化石燃料の使用を控えていることで、ここ数年は原油価格の低迷や不安定な値動きが続き、ムハンマド皇太子は、2016年4月、石油依存の経済構造を脱却しようと「ビジョン2030」と呼ぶ経済構造高度化構想を打ち出した。

 そして、サウジアラムコは、油田開発・石油精製・石油化学を一貫操業する巨大企業となり、これまでフレアとして燃やしていたLNGも世界最大の輸出国となることを表明して、今後10年間でLNGに1500億ドルを投資するとして構造改革に取り組んでいる。私は、資源を金に換えて国民生活を豊かにしようと努力しているサウジアラビアは、世界一高い価格で資源を買い漁って国民に迷惑をかけている日本よりも、(民主主義の問題はあるものの)経済政策においてずっと賢くて偉いと思う。

2)豊富な再エネを使えない日本
 1)のように書くと、「日本は資源のない国だから・・」と100年1日の如き決まり文句の反論が出るが、欧州では、*3-1-1のように、太陽光発電の電力で水素を製造し、既存の天然ガスパイプラインで輸送して産業や発電に活用する大規模な「グリーン水素パイプライン計画」が始まろうとしており、これは、これまでパイプラインを建設してきた欧州で生き残るための工夫だそうだ。

 日本はパイプラインがないため、豊富な再エネを使って発電し、蓄電や送電線を使っての送電を行えば、全く有害物質を出さずに電力を資源にすることができる。にもかかわらず、日本の会社が、オーストラリアの褐炭をガス化して水素を作り、それを日本に運ぶサプライチェーンを作ろうとしたり、外国の再エネで作った水素をわざわざアンモニアにして日本に運んで発電に使う計画を立てたりしているのは、意味が分かっていない「馬鹿」としか言いようがない。そもそも、今後の日本は、何を売ってエネルギーを買うつもりなのか?

3)豊富な森林資源も利活用できない日本
 日本に豊富な森林資源を手入れして環境を護ろうと森林環境税を作っても、*3-2のように、それを山林・田畑・緑地帯・藻場などの緑地面積に応じて自治体に配分するのではなく、人口に応じて配分すれば、「緑地を増やして手入れしよう」ではなく「木を切って緑地を壊し、人口を増やそう」という動機づけになり、「森林整備」に使われる分は税収配分額の35%にしかならず、本末転倒だろう。つまり、管理している森林が少なく、CO₂を多く排出してO₂をあまり作らない大都市が、森林環境税を多く配分してもらう理由はないのである。

 また、終戦復興期・高度経済成長期に造林した森林が、*3-3のように、伐採期を迎えて稼ぎ時になり、民有林の伐採や植林を担う森林組合には、地球温暖化防止の観点からも期待が大きい。しかし、①森林組合員の高齢化が進み ②女性の登用も遅れており ③相続を機に所有者が把握できなくなる事例も相次ぎ ④組合活動も滞りがちだそうだ。

 しかし、林野庁が、森林所有者と同居していない複数の子を「推定相続人」として正組合員になる道を開くのは、森林の維持管理にむしろマイナスではないかと思う。何故なら、昔から「田を分ける者」を「田分者(たわけもの)」と言い、その理由は、所有権を細分化することにより生産性を下げるとともに、人数が増えることによって経営意思決定を遅くするからである。

 さらに、固定資産税は市区町村が課税しているため、山林に相続が生じた場合は相続者を特定して固定資産税の支払者を決めなければ、固定資産税を徴収できない。そのため、相続者の義務である登記の変更もせず、所有者が不明なまま固定資産税も払わずに打ち捨て、所有者が分からなくなってしまった森林を作るのは、市区町村の怠慢にすぎない。そのため、所有者が不明で連絡がつかず、固定資産税も払っていないような森林なら、一定期間を過ぎた後は市区町村が収容して公有林として利活用すればよいだろう。

4)国民の財産である国有財産の安価な払い下げ
 森友学園問題とは、2016年6月20日、安倍首相夫人が名誉校長となっていた「森友学園」に、財務省が大阪府豊中市の国有地を払い下げた際、土地の鑑定評価額は9億5,600万円だったのに、ゴミ撤去費用という名目で8億2,200万円を割り引き、1億3,400万円という極めて安い価格で売却した事件だ。

 野党は、「安倍首相夫人の知り合いだから1個人に国民の財産である国有財産を極めて安い価格で売却し、国民に損害を与えた」として、“えこひいき”とか“忖度”として来る日も来る日も長時間の追求を続け、安倍首相が「私や妻が関わっていれば、首相も国会議員も辞める」と言われたのだが、私は、あの言い方は本当に知らなかったのだと思った。

 もちろん、1個人や1法人に国有財産を安く払い下げたり無料で使わせたりするのは、他の国民に損害を与えるためよくない。しかし、これまで見てきたように、日本の行政府が、国有林の使用権や年金資産で購入したホテルなどの膨大な金額の国有財産を二束三文や無料で1個人や1法人に譲るのは、(残念ながら)よくあることだ。これが生じる理由は、国が国有財産を資産として認識し、国民の財産として管理し、それを増やしたり有効活用したりする発想を持っていないからで、これが本当の問題点であり論点なのである。

 それでは、何故、たった8億円(211兆円の1/263,750)の値引きだけが、予算委員会で長時間をとって追及されたのかと言えば、それは安倍首相を引きずりおろすための権力闘争だからだ。その権力闘争の中で、*3-4の近畿財務局の担当職員だった赤木俊夫さんが犠牲になられたわけだが、私は、政策に正面から反論するのではなく、権力闘争のためのゴシップづくりに専念するメディアや政治家は、民主主義社会の国民のためにならないため評価しない。

5)歳出の中の膨大な無駄遣い
 私も、*3-5のように、時代が代わって防衛ニーズも変化している中、もっと安価で効果的な代替案はいくつも考えられるため、強引な辺野古新基地建設は基地建設ありきの血税の無駄遣いだと思っている。そして、各地で琉球新報のように無駄遣いを1つ1つつぶしていけば、かなりの財源を捻出でき、本当に必要なことに使える筈だ。

・・参考資料・・
<国家予算>
*1-1-1:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO57307490X20C20A3MM8000/ (日経新聞 2020/3/27) 2020年度予算が成立 過去最大の102兆円 予備費、新型コロナ対策に
 2020年度予算が27日の参院本会議で可決、成立した。一般会計の歳出総額は19年度当初に比べ1.2%増の102兆6580億円で、8年連続で過去最大を更新した。新型コロナウイルスの感染拡大に対応するため、予備費として盛り込んだ5000億円から今後策定する緊急経済対策の財源を充てる。政府は20年度予算の成立を受け、新型コロナに対応する経済対策を盛り込んだ20年度補正予算案の編成に着手する。一般会計の歳出総額が100兆円を超えるのは2年連続。総額の35%を占める医療・年金などの社会保障費が5.1%増えて35兆8608億円となり全体を押し上げた。高齢化に伴う社会保障費の自然増のほか、19年10月の消費税増税の税収分を活用する教育無償化や低年金者の支援給付金などが加わった。新型コロナへの対応では既に策定した2回の緊急対応策の財源として19年度予算の予備費から約2800億円を使った。今後策定する経済対策にはまず20年度予算の予備費を充て、これから策定する20年度補正予算とあわせて財源とする。安倍晋三首相は参院本会議に先立つ27日の参院予算委員会の締めくくり質疑で、経済対策について「わが国経済への甚大な影響のマグニチュードに見合うだけの必要かつ十分な、強大な経済財政政策を講じていかねばならない」と述べた。

*1-1-2:https://www.jiji.com/jc/article?k=2019121301392&g=eco&utm_source=・・ (時事 2019年12月13日) 一般会計、102兆円台後半 税収63兆円台に―20年度予算案
 政府は13日、2020年度予算案の一般会計総額を102兆円台後半とする方向で調整に入った。19年度当初予算の101.5兆円を上回り、過去最大で、2年連続で100兆円を超える。財源となる税収は63兆円台となる見通しだ。社会保障費や防衛費がいずれも過去最高額となる見込みで、歳出総額を押し上げる。社会保障費では、高齢化に伴う医療・介護費の増加や、消費税増税に伴う幼児教育・保育の無償化に必要な経費の増加分が主な要因だ。防衛費も宇宙、サイバーなど新領域での対処能力強化で膨張する。

*1-2-1:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO57787830X00C20A4EE8000/?n_cid=SPTMG002 (日経新聞 2020/4/7) 108兆円経済対策、雇用維持に向け過去最大規模
 事業総額108.2兆円という過去最大の経済対策が7日、閣議決定された。政府が実際に支出する財政支出でも39.5兆円と過去最大だが、事業総額の規模の大きさがひときわ目立つ。現金給付や資金繰り対策が柱となる。経済の打撃を抑え、雇用を維持する目的で巨額の支出となった。6日夕に安倍晋三首相が表明する直前まで、明らかにされていた対策の規模は「リーマン危機後の対策を上回る規模」というもの。60兆円超が一つの目安だったため、100兆円を超える額が急に表明されたことに驚く向きも多かった。増えた分はどこから来たのか。新たに加わったのは、企業向けに打ち出された税や社会保険料の支払い猶予の26兆円分だ。2019年12月に打ち出された19年度補正予算の未執行分19.8兆円(財政支出ベースで9.8兆円)も加えられた。税や社会保険料は政府が肩代わりするわけではないため、原則1年の猶予期間が終われば企業が負担する必要がある。これまでにない措置だったため総額に加えられるか不明だったが、足元の企業の資金繰り支援に直接関わることから加算されることになった。売り上げが急減した企業でも雇用を維持できるように配慮した。19年度の補正予算ももともと消費増税による需要の落ち込みや東京五輪・パラリンピックに対応するものだ。緊急事態宣言が発令されたなかでどこまでが執行されるかは不透明だが、今後の経済を下支えするとの理由から合算された。もっとも、政府による財政支出の総額は新たに追加された分だけでも財政支出ベースで29.2兆円に上る。「かさ増し分」を差し引いても、過去の経済危機時より大型の財政措置がとられたことになる。財政支出の内訳をみると、雇用の維持や企業の事業継続に関わる部分は合計10.6兆円と大きな部分を占めた。具体的には中小企業や個人事業主向けの給付金2.3兆円や減収世帯向けの給付金4兆円だ。民間金融機関が自治体の制度融資を使って実質無利子の融資をする仕組みにも2.7兆円を付けた。新型コロナの感染拡大が長期化した場合にも、手を打った。感染症の対策予備費として1.5兆円を計上。今後急な支出が必要になった場合に備えた。企業向けには財政投融資を活用した日本政策投資銀行の「新型コロナリバイバル成長基盤強化ファンド(仮称)」を創設。企業に対して総額1000億円規模で出資できる仕組みも作った。課題はこうした緊急対策を緊急事態宣言が発令されたなかで迅速に執行できるかどうかだ。融資相談や給付金の窓口で発生している人手不足の問題を早期に解決し、足元で経済の底割れを回避するための手段を講じる必要がある。

*1-2-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200408&ng=DGKKZO57765930X00C20A4MM8000 (日経新聞 2020.4.8) 資金繰り支援45兆円 政府が緊急経済対策決定
 政府は7日夕の臨時閣議で、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う緊急経済対策を決定した。事業規模は過去最大の108兆円。このうち企業の資金繰り対策は45兆円規模となる。政府系金融機関による無利子融資や減収企業に対する給付金などで急速に深刻化する企業の財務基盤を支える。家計向け現金給付は月収減などの要件を満たした世帯に30万円を支給する。対策を盛り込んだ補正予算案は4月中の成立を目指す。2020年度本予算で対応する分を含めた財政支出の総額は39.5兆円でこちらも過去最大となる。このうち今回の補正予算に対応する16.8兆円を国債発行でまかなう。14.4兆円が赤字国債になる。資金繰り対策では中小企業や個人事業主向けの「持続化給付金」と呼ぶ現金給付や減収になった世帯向けの「生活支援臨時給付金」に合計6兆円を投じる。世帯向けは約1300万世帯分の予算を確保。政府は5月からの支給を目指すとしているが、手続きが煩雑で自治体によっては支給が夏ごろになる可能性もある。このほか税金や社会保険料の支払いを原則1年間猶予したり、民間金融機関が自治体の制度融資を使って実質無利子で融資する仕組みを設けたりする。制度融資を受け付ける自治体の窓口が人手不足に陥っていることなどに対応する。経済対策は新型コロナの感染防止を最優先に掲げた。需要が低迷を続けるなかでも企業や家計が破綻しないように手当てする一方、新型コロナへの効果が期待される抗インフルエンザ薬「アビガン」の備蓄や人工呼吸器、マスクの生産支援にも予算を付けた。新型コロナの感染拡大収束後は観光業などの需要喚起策に乗り出す。旅行商品やイベントのチケットを購入した人などにクーポン券などを出す。サプライチェーン(供給網)の再構築のために海外拠点を国内に回帰させる企業にも補助を出す。

*1-2-3:https://www.shinmai.co.jp/news/nagano/20200418/KP200417ETI090013000.php (信濃毎日新聞 2020.4.18) 一律10万円給付 国民目線欠いた責任重く
 政府、与党が新型コロナウイルスの感染拡大を受け、全国民に一律10万円を給付する検討を始めた。補正予算案に盛り込んでいた減収世帯対象の30万円の給付は取り下げる。安倍晋三首相はこれまで、一律給付には否定的な考えを示していた。閣議決定した予算案を組み替えるのは極めて異例である。コロナウイルスの感染拡大に伴う外出自粛や休業の要請で、収入が大幅に減少して生活に困窮する人たちが増えている。迅速に支援することが必要だ。それなのに政府の対応はスピード感に欠けている。政府内で現金給付案が浮上したのは3月中旬だ。現在の補正予算案が順調に成立したとしても、支給開始は5月になる予定だった。予算案の組み替えで、国会提出は1週間程度遅れる。成立は5月1日にずれ込む可能性がある。支給開始はさらに遅れる。減収世帯を対象にした30万円の給付は、要件が複雑で分かりにくい。世帯主を対象として、共働きが増えている実情にも配慮していなかった。対象は全世帯の2割にとどまり、不公平感から国民の批判が高まっていた。一律給付は野党などが当初から求めていた案だ。富裕層が対象になることや、給付総額が膨らむなどの問題もあるため、与党も一度は減収世帯対象で合意していた。それが一転したのは、支持者離れを懸念した公明党などが強硬に一律給付を主張したためだ。安倍首相はきのうの記者会見で「緊急事態宣言を行い、全国に広げていく中で、国民が乗り越えていくには一律給付が正しいと判断した」と唐突な方針変更の理由を述べ、判断の遅れを陳謝した。最初に緊急事態を宣言したのは補正予算案を閣議決定した7日だ。当初から感染拡大や外出自粛で国民生活が困難になることは分かっていたはずだ。状況を見誤って混乱し、後手に回った政府の責任は重い。一律給付で給付の総額は当初の約4兆円から12兆円超に膨れ上がる。財源は赤字国債が想定されている。補正予算案を組み替えるなら、終息後の消費喚起策など当面は必要ない項目を削除して、歳出抑制に努めるべきだ。麻生太郎財務相はきのうの会見で「要望される方、手を挙げる方に配る」との考えを示している。首相の一律給付の方針と異ならないか。これ以上の混乱は認められない。早急に調整して方針を決め、国民に説明する必要がある。

*1-3-1:https://digital.asahi.com/articles/DA3S14444769.html (朝日新聞 2020年4月17日) 首相、コロナ拡大を「第3次世界大戦」 面会した田原総一朗氏、明かす
 新型コロナウイルス感染症の世界的な拡大に伴う混乱について、安倍晋三首相が「第3次世界大戦」と表現していたことがわかった。首相と面会したジャーナリストの田原総一朗氏が14日、自身のブログで明らかにした。田原氏は10日に首相官邸を訪れ、首相と面会した。田原氏のブログによると、首相は「第3次世界大戦は核戦争になるであろうと考えていた。だがこのコロナウイルス拡大こそ、第3次世界大戦であると認識している」と語ったという。田原氏が、「緊急事態宣言はなぜ遅れたのか」と問うと、首相は財政への悪影響を理由に「ほとんどの閣僚が反対していた」と明らかにしたという。田原氏は、閣僚による財政悪化への懸念を「平時の発想」と指摘。首相がこうした「平時の発想」から、感染拡大を戦争ととらえる「戦時の発想」に転換したことで、宣言を出すに至ったと分析している。

*1-3-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200408&ng=DGKKZO57766680X00C20A4MM8000 (日経新聞 2020.4.8) 緊急事態宣言を発令 首相「接触8割減を」、東京など7都府県、経財相「地域追加も」 新型コロナ
 安倍晋三首相は7日、政府の新型コロナウイルス感染症対策本部で特別措置法に基づく緊急事態宣言(総合2面きょうのことば)を発令した。感染が急拡大している東京、神奈川、埼玉、千葉、大阪、兵庫、福岡の7都府県が対象で実施期間は7日から5月6日まで。宣言が出たことで7都府県の知事は外出自粛や営業休止を要請する法的な裏付けを得たが各知事の判断は揺れている。米欧では強制力がある外出禁止令を出す例がある。イタリアも罰金付きの外出制限を出したが感染者の増加が鈍化するまで時間がかかった。日本の外出自粛要請は強制力がないため住民の自発的な対応が不可欠になる。今回の宣言で感染爆発を防げるかは未知数だ。首相は7日夜、首相官邸で66分間、記者会見した。「もはや時間の猶予はないとの結論に至った」と説明した。「国民生活、国民経済に甚大な影響を及ぼす恐れがある。経済は戦後最大の危機に直面している」と強調した。いまのペースで感染拡大が続けば感染者が2週間後に1万人、1カ月後には8万人を超えるとの見通しを示した。「緊急事態を1カ月で脱出するには人と人との接触を7割、8割減らすことが前提だ」と協力を求めた。ホテルなどの協力を得て関東で1万室、関西で3千室を確保したと話した。感染拡大防止策を講じ、保育所や学童保育は規模を縮小して開くと説明した。地方には「重症化リスクが高い高齢者もたくさんいる」と指摘し、対象地域の都市部から地方への移動を控えたり、原則として自宅で仕事をしたりすることを呼びかけた。バーやナイトクラブ、カラオケ、ライブハウスへの出入りも自粛するよう訴えた。西村康稔経済財政・再生相は同日の国会答弁で対象地域は「必要があれば追加を考えたい」と語った。宣言の対象に入らなかった福井県の杉本達治知事は同日「緊急事態宣言直前の状況だ。医療体制は逼迫している」と訴えた。人の外出や往来を減らせなければ感染拡大が続き、宣言の対象地域の追加や期間延長が現実味を帯びる。発令を受け7都府県の知事は住民に外出自粛などを求める。知事は娯楽施設など人が集まる施設の使用を制限するよう求めたり、学校の休校を要請したりできる。強制力はないが、事業者が正当な理由なく応じなければ「要請」より強い「指示」を出して事業者の名前も出せる。発令後も鉄道やバスなど公共交通機関は運行を続ける。食料品や医薬品などの生活必需品を扱うスーパーマーケットやドラッグストアも営業する。最低限の生活を維持した上で人と人が接触する機会を減らす狙いだ。

*1-3-3:https://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2020041601001482.html (東京新聞 2020年4月16日) 安倍首相、全国に緊急事態宣言 7都府県から拡大、5月6日まで
 安倍晋三首相は16日、新型コロナウイルスの感染増加に対応する緊急事態宣言の対象地域を全都道府県に拡大した。7日に発令した東京、大阪など7都府県から対象地域を追加。新たに対象となった地域の知事は、法的根拠のある外出自粛要請が可能となった。期間は5月6日まで。感染拡大に歯止めをかけ、医療崩壊を防ぐには、大型連休中を含めた人の移動を全国一斉に抑える必要があると判断した。16日夜に効力が発生した。緊急事態宣言は改正特別措置法(新型コロナ特措法)に基づく私権制限を伴う措置。海外のような都市封鎖(ロックダウン)は想定していない。

*1-4-1:https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20200413-00000006-ykf-soci (夕刊フジ 2020.4.13) ノーベル賞・本庶氏、新型コロナ対策で緊急提言! 病態解明と治療薬につながる研究「100億円投入せよ」
 2018年にノーベル医学・生理学賞を受賞した本庶佑(ほんじょ・たすく)京都大学特別教授(78)が11日朝、日本テレビ系情報番組「ウェークアップ!ぷらす」に生出演し、新型コロナウイルス研究への「100億円」投入を訴えるなど、緊急提言した。「個人的には、一番厳しいやり方が効果がある。中途半端でダラダラやると長くなる。できれば、短期間でコントロールできるのが望ましい」。本庶氏は、人の動きへの規制について、こう語った。「医療崩壊」を防ぐために、「1カ月の完全外出自粛」も提言している。免疫とがん細胞と結びつけるタンパク質「PD-1」を発見し、がん免疫治療薬「オプジーボ」の開発につなげた、世界的な免疫療法の権威。新型コロナウイルスについても、以下のように主張している。(1)PCR検査の大幅増(2)東京圏、大阪圏、名古屋圏などで完全外出自粛(3)外国で有効性が示される治療薬の早期導入。本庶氏は「多くの人が不安に思っているのは死者が多いこと。死亡率は5%を超える。インフルエンザは0・1%。(新型コロナウイルスは)最後に免疫不全で、あっという間になくなってしまう」と指摘した。ワクチンや特効薬の開発が注目されるが、「このタイプのウイルスは、ワクチンができにくい。製薬企業も大規模投資はリターンがないので、尻込みする」といい、インフルエンザ治療薬「アビガン」や、8日に国内での臨床実験が開始された「トリシズマブ」の導入を提言した。最後に本庶氏は「(日本政府が)100億円を研究者に対する、病態解明と治療薬につながる研究に出していただければと信じている」と締めくくった。

*1-4-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200419&ng=DGKKZO58240640Y0A410C2MM8000 (日経新聞 2020.4.19) 新型コロナ治療薬 開発急ピッチ、世界で治験650件 有効性なお見極め
 新型コロナウイルス感染拡大が続くなか、世界で治療薬開発が急ピッチで進んでいる。製薬会社は既存薬を転用することで開発期間を短くし、早期の市場投入を目指す。回復した患者の血液成分を使った治療法も試されており、既存の医療技術・手法の掘り起こしも進む。新型コロナの猛威を止めるには、迅速な審査や承認を可能にする仕組みも欠かせない。新型コロナ治療薬の開発は待ったなしだ。米国の臨床試験登録データベースによると、18日時点、世界で650以上のコロナの治験が登録されている。治療薬、ワクチンや再生医療など様々な研究が進む。17日の米株式市場で、米医薬大手ギリアド・サイエンシズの株価が約10%急騰した。ギリアドのエボラ出血熱の治療薬候補だった「レムデシビル」が新型コロナ重症患者の回復につながったとのリポート内容が伝わったためだ。レムデシビルはエボラの治療薬として有効性が低いとして開発が中断された薬だ。富士フイルムホールディングスの「アビガン」も別の病気の治療薬として開発された。いずれも新型コロナウイルスが体内で増殖するのを防ぐ効果があると報告されている。ギリアドは5月にもレムデシビルの初期治験データを得られるとしている。有効性が確認できれば米食品医薬品局(FDA)に対して承認を申請し、早ければ夏にかけて米国の医療現場で使える可能性がある。一方、アビガンは日米で治験を開始。最短で6月末までに治験を終え、早くて年内にも市場に出てくるとの観測がある。新型コロナ特有の症状が、重症の肺炎だ。その肺炎重症化を抑制する効果があるとされるのがリウマチ治療薬だ。スイス・ロシュの「アクテムラ」や仏サノフィなどの「ケブザラ」がそのリウマチ新薬だ。アクテムラは4月から治験をスタート。9月までに治験終了を見込んでおり、米国で今秋の承認を目指し動いている。ケブザラは2021年3月に治験終了を見込み、承認はその1~2カ月後になるとの観測がある。新型コロナ治療では既存の治療法も応用されている。コロナから回復した患者の血液を使う「血漿(けっしょう)」を投与する治療法だ。国内では国立国際医療研究センターが早ければ4月中にも試験的な治療を試みる方針だ。回復者の血漿の成分を活用した「血漿分画製剤」では、武田薬品工業が米CSLベーリングと組み開発を進める。年内の実用化を目指している。世界の製薬会社や研究所が新型コロナ治療薬開発に既存の薬や技術を応用するのは、有効性が確認されればすぐに医療現場で使えるようになるからだ。新薬をゼロから開発し、実用化するには10年近くかかる。既存薬は安全性確認など時間のかかる作業が終わっているため、短期間で薬として使える可能性がある。現在、既存薬で新型コロナ薬として期待されているのは十数種類。治験で有効性が確認できれば、各国の規制当局への承認申請に進む。「治療薬承認に向けあるゆる障壁を取り除く」。米トランプ大統領が新型コロナ薬の早期承認を公言しており、有効性が確認された薬があれば1カ月程度で承認される可能性がある。欧州や英国でも規制当局が新型コロナ治験支援や条件付きでの迅速承認を準備している。一方、日本は承認審査スピードを速める「先駆け審査指定制度」(総合2面きょうのことば)があるが最短で6カ月程度だ。日本は薬価が決まるのにも1~2カ月かかり、海外に比べ時間がかかる。18日には国内で新型コロナ感染者が1万人を超えた。世界でコロナ感染者は200万人、死者は15万人に達する。治療薬への期待は過熱気味で、米国立アレルギー・感染症研究所のファウチ所長は「(薬の効果は)科学的に有効性を証明しなければいけない。間違った希望は持たないでほしい」と呼びかける。有効性を見極めつつ、副作用リスクや供給能力を慎重に判断する必要性もある。

*1-4-3:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200419&ng=DGKKZO58237600Y0A410C2EA5000 (日経新聞 2020.4.19) 血漿療法、月内にも試験 新型コロナ治療へ国内で
 新型コロナに対する治療法は、既存薬の転用だけではない。コロナから回復した患者の血液を使う「血漿(けっしょう)療法」という治療法もある。国内でも早ければ4月中にも試験的な投与が始まる。血漿は血液から赤血球や白血球などを取り除いた成分のことで、「アルブミン」や「グロブリン(抗体)」といったたんぱく質が含まれる。このうちグロブリンには様々な性質があり、血漿から分離し精製することで免疫不全の治療や重度の感染症治療に使える医薬品となる。実はこの仕組みは日本の近代医学の父、北里柴三郎博士が世界で初めて確立した。今回の新型コロナでは、回復した人の血液の中にはコロナを排除する免疫(抗体)が存在するケースがある。この成分を重症患者に投与すれば体内のウイルスを排除するのに役立つことが期待される。中国でも重症患者に対する血漿療法で回復した人がいるとする報告が出ており、米食品医薬品局(FDA)も血漿投与を認め、カナダでも大規模な臨床研究が始まった。日本でも国立国際医療研究センターが早ければ4月中にも試験的な治療を試みる方針だ。回復者の血液を使った血漿製剤で製薬企業も動き始めた。先頭を走るのは血漿分画製剤の世界大手、武田薬品工業だ。血漿療法には別の感染症にかかるといったリスクもあり、副作用や合併症の危険性もある。聖路加国際病院救急部の一二三亨副医長は「治療法がない感染症にも応用でき、理論的には感染早期に投与すると高い効果が期待できる」と話す。

<暮らし>
*2-1:https://www.nishinippon.co.jp/item/n/596450/ (西日本新聞 2020/3/31) 暮らし向き4年ぶりマイナス域
 総務省の家計調査によると、1世帯当たりの消費支出は昨年10月の消費税増税後、今年1月まで4カ月連続マイナスと低迷している。今回、福岡の生活者の暮らし向きについて調査した結果、1年前より暮らし向きが「良くなった」「どちらかというと良くなった」の割合から、「悪くなった」「どちらかというと悪くなった」の割合を減じた「暮らし向き判断指数」は、昨年から5・7ポイント低下のマイナス2・0ポイントとなり、2015年以来のマイナス域を記録。福岡でも増税後の消費マインド低下がうかがえる結果となった。

*2-2:https://www.jiji.com/jc/article?k=2020040201087&g=eco (時事 2020年4月3日) コロナ対策、消費減税を一蹴 冷え込む需要、さらに混乱―与党税調
 自民、公明両党の税制調査会は2日、新型コロナウイルスの影響を緩和する税負担軽減措置をまとめた。需要減に苦しむ中小・零細企業の納税猶予を打ち出す一方で、与野党を問わず多くの議員が訴えていた消費税減税は見送られた。コロナの影響が色濃い消費の喚起へ「税率ゼロ」の主張もあったが、国民の混乱を招くとの懸念が強く、与党税調として消費減税は「まったく議論しなかった」(幹部)と一蹴した。自民党の若手有志は3月30日、政府が検討している大型経済対策に消費税減税を盛り込むよう要望。趣旨に賛同した党内議員は100人を超えたといい、各地で顕在化した飲食や宿泊などの需要急減に強い危機感を唱えた。経済対策に反映させるため、政府が3月中下旬に集中開催した民間ヒアリングでも「経済を活性化させるためなら、消費減税の効果が大きい」(外食大手首脳)との声が上がった。コロナ禍で人、モノ、カネの移動が大幅に制約される「緊急事態宣言」が俎上(そじょう)に載るなど景気の先行きに暗雲が漂う。時限措置として思い切った減税による消費喚起と駆け込み需要の誘発効果も取り沙汰されたが、雲散霧消した。前回2014年4月に消費税率8%へ引き上げた際には大幅な需要変動が起きた。昨年10月の消費税増税では回避しようと、政府・与党が飲食料品の軽減税率やキャッシュレス決済時のポイント還元制度などに巨費投入を決めた経緯もある。今回の与党税調でも、ただでさえ需要が冷え込む中、「短期間での税率変更はかえって国民が混乱する」との認識が支配した。財務省は現行税率10%への引き上げを2度延期した安倍政権に「相当身構えた」(幹部)が杞憂(きゆう)に終わった。

*2-3:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO57305810X20C20A3PPE000/ (日経新聞 2020/3/29) 年金、新年度「実質目減り」 介護保険料は大幅増も
 もうすぐ4月。新年度入りに伴って、シニアが受け取る公的年金の金額や現役世代らが納める社会保険料などが切り替わる。これらの改定は、世帯収入の増減やそれを踏まえた消費動向にも影響してくる。いつどうなるかを知り、家計の運営に生かしたい。まずは年金から。2020年度の年金額は昨年度比0.2%のプラス改定となった。自営業者らが加入する国民年金(満額)は月6万5141円と133円増え、主に会社員だった人が受け取る厚生年金(夫婦2人分の標準額)は同22万724円と458円増える。2年連続のプラスだが、増える金額はわずかだ。
■物価ほど増えず
 昨秋に消費税が2%上がったことを考えれば、0.2%の増額はいかにも少ない。なぜなら、改定の際の2つのルールで増加率が削られ、物価ほど増えない「実質目減り」が続くからだ(図A)。1つは賃金や物価の変化に応じて本来の改定率を決める基本ルール、そしてそこから少子高齢化に伴う調整率を差し引く「マクロ経済スライド」だ。基本ルールでは、新たに年金をもらい始める人は賃金、いったんもらい始めたらその後は物価に連動するのが原則だが、04年からもらい始めた人も経済環境によっては賃金に合わせるようになった。これによって本来の改定率は物価より小さくなる場合が増えた。状況によってはさらにスライド率が差し引かれ、年金の伸びが抑えられる。20年度は物価が0.5%上がったが、賃金は0.3%だった。基本ルールに沿って本来の改定率は賃金の0.3%となった。さらにスライド率の0.1%が引かれ、最終的な改定率は0.2%になった。日本年金機構は年金受給者に対し、6月に新しい年金額の通知書を送付する。2カ月分まとめて払うので、4、5月分が6月15日に振り込まれる予定。今後「年金は物価ほど増えないことを頭に入れておきたい」(ニッセイ基礎研究所の中嶋邦夫主任研究員)。現役世代が納める保険料はどうか。厚生年金の保険料は17年9月から、給与水準(標準報酬月額)に対する比率が18.3%(労使合計)で固定された。このため保険料は増えないと思っている会社員もいるようだが固定されたのはあくまで料率。これに報酬を掛けて計算する保険料は昇給すれば増える場合がある。また、今年9月には標準報酬月額の上限が改定される見通し。月収など実際の報酬が63.5万円以上あると標準報酬月額の等級が上がり、保険料負担が企業、本人それぞれで年3.3万円増える(図B)。保険料の負担を減らすには、計算の際に用いるこの標準報酬月額の等級を下げればよいのだが、「会社員に名案はなかなか見当たらない」と社会保険労務士の永山悦子氏は話す。よく言われるのが、残業を調整して4~6月の給料を減らすこと。通常はこの3カ月の平均の報酬で標準報酬月額を出し、9月から1年間適用する。だが、実際には会社員が残業をコントロールして等級を下げるのは難しい。近年は働き方改革で残業も減っている。交通費も標準報酬月額に含まれるので、会社の近くに引っ越せば下がるという人もいるが、家賃などの出費が増えたら逆効果だ。自営業者らが払う国民年金保険料は130円増えて1万6540円となる。
■雇用保険でも徴収
 健康保険料と介護保険料は上昇が続いている。介護では給料など報酬額に比例して保険料が決まる「総報酬割」を4年かけて段階的に増やしており、最終年度の20年度は全面導入となる(図C)。報酬が高い人が多くいる健保組合の負担が増え、料率が大きく上がるところも出てくる。健保と介護は料率改定が3月(実際の保険料に反映されるのは4月の給料からが多い)で、標準報酬月額は9月(同10月)となる。このため「春は料率、秋は標準報酬月額の改定によって、年2回保険料が変わる場合がある」と社会保険労務士の篠原宏治氏は話す。4月から変わる制度では働くシニアを対象とする雇用保険料の徴収がある。雇用保険は失業した際の生活を保障する制度(図D)。17年から65歳以上の社員も条件を満たせば適用対象になったが、これまで保険料は免除されていた。被保険者の負担は0.3%(一般の事業)で、月額では数百円程度という人が多そうだ。標準報酬月額ではなく、給料から天引きされるので保険料の金額は毎月変わる。以前は一度しかもらえなかった「高年齢求職者給付金」は、失業を繰り返したとしても求職活動をするたびに受け取れるようになっている。「65歳未満は雇用保険から失業給付などを受けると特別支給の老齢厚生年金が支給停止になったが、65歳以上はこの給付金をもらっても年金額に影響はない」(永山氏)という。親や配偶者に介護が必要になり、仕事を休んで従事する場合は「介護休業給付金」を受け取れることも知っておきたい。

*2-3:https://www.kochinews.co.jp/article/358500/ (高知新聞社説 2020.4.4) 【介護保険20年】持続可能性が問われる
 介護を家族で抱え込まず、社会全体で支え合う―。そんな理念で始まった介護保険制度が、4月で20年を迎えた。「介護の社会化」は40歳以上の人が支払う保険料と税金、利用者の自己負担で賄う制度だ。介護の必要度合いを軽い方から「要支援1、2」「要介護1~5」と7段階に分類。訪問介護や通所介護(デイサービス)など、在宅や施設への入所といった多様なサービスを選べるようになった。この20年で社会の意識改革が進み、サービス利用者は2000年の149万人から19年は487万人と3倍になった。制度は定着したといえるだろう。その一方で、世界有数のスピードで進む高齢化は、介護現場の人手不足などさまざまなほころびを見せ始めた。制度の持続可能性に黄信号が点滅している。共同通信が3月、都道府県庁所在地と政令市の計52自治体に実施したアンケートによると、回答があった50自治体のうち、介護保険の維持、存続について1自治体を除いて全てが「懸念する」と答えた。制度の問題点を聞いた設問では、介護現場の人手不足、費用の膨張、財源の確保の順で多かった。人手不足の中でもヘルパー不足は深刻な状況に陥っている。一般的に介護職員は、重労働の割には賃金が安いといわれる。2月公表の政府資料では、全産業平均に比べて月額9万円程度低い。新規採用が難しい上に、離職率も高い。政府はおおむね3年に1度、制度を見直してきた。段階的に賃金の引き上げを実施してきたが、焼け石に水の状態だ。自治体アンケートでは賃上げの財源として国の税金を増やすべきだとの意見が目立った。これまでの国の見直しは、制度を守ることを優先するあまり、「負担増」と「サービスの縮小」の繰り返しに終わってきた。当初は利用者の所得に関係なく1割だった自己負担割合を、一定の収入のある人は2割とし、次には現役並みに所得が高い人は3割に引き上げた。サービスの面では、特別養護老人ホーム(特養)の新規入所者を原則、要介護3以上に限定。また、要支援1、2を対象者とした訪問介護と通所介護は、全国一律の介護保険から切り離し、市区町村の事業に移した。「介護の社会化」を目指しながら、高齢者が高齢者をケアする「老老介護」も広がっている。介護疲れから虐待に発展する事件や、介護を理由にした離職も増えている。介護需要に人材確保が追いつかない。高齢の夫婦のみの世帯も増えている。介護する人への支援を強化するには、自治体が要望する国の税金投入も考えるべきだ。小手先の改革を繰り返しても、サービスが低下しては本末転倒だろう。制度開始の原点に立ち戻り、持続可能性を高める道を探りたい。

*2-4:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO57061100R20C20A3K15200/ (日経新聞 2020/3/22) 会社員にズシリ 社会保険料30%時代、団塊世代が75歳に 迫る「2022年危機」
 医療・介護・年金の合計保険料が給与に占める比率が30%に迫っている。改めて聞くと負担の大きさに驚く会社員も多いだろう。三大社会保険料はなぜこんなに上がっているのか。中身を知ると「人生100年」のマイナス面も見えてくる。
■労使合計 社会保険料が急上昇
 健康保険組合連合会(健保連)は昨年まとめた「今、必要な医療保険の重点施策」の中で1つの推計を示した。大企業の会社員らが負担する医療・介護・年金の三大社会保険料は2022年度に合計額が給与水準(標準報酬)の30%を超える。これは労使を合計した平均値で、社員が直接給与から払うのは半分ほどだが、それでも大きな負担だ。健保連は団塊の世代が75歳になり始めるこの年を「2022年危機」と位置付け、現役世代の重い負担を見直すよう国に改革を求めた。「全組合の平均が30%に乗るというのは負担増が伝わりやすい数字。現役世代に自分たちの負担を知ってほしいし、高齢者にも知ってほしい。そしてみんなでどうしたらよいか考える必要がある」と健保連の田河慶太理事は話す。一般に会社員は社会保険料などが天引きされたあとの手取りの給料に目が向かいがち。「保険料の負担増加に気付きにくく、しっかり訴えた方がよいと考えた」と続けた。健保連の試算では、全国約1400の健保組合の平均の医療の保険料率は22年度に9.8%となり、19年度比で約0.6ポイント増える。介護は同2.0%と同0.4ポイント増加する。これに厚生年金(18.3%)を加えると30.1%となる。組合によってはすでに30%に乗っているところもある。中小企業の会社員が入る全国健康保険協会(協会けんぽ)では19年度で平均が30%を超えている。原因は高齢化に伴う医療・介護費の増加と、アンバランスな負担の構造にある。年間の医療費は42.6兆円、介護費は10.2兆円(ともに18年度)に上り、年々増え続けている。特に大きいのが、より多くの医療・介護を必要とする75歳以上の後期高齢者の増加だ。この世代は年金以外の収入が少なく、医療・介護の多くを国と現役世代が賄う仕組みになっている。医療ではこれら高齢者への拠出金が膨らみ、介護では費用の約4分の1を現役世代が負担している。人生100年時代に向けて、国は高齢者らも活躍できる社会づくりを掲げるが、社会保険料の面から考えるとバラ色とはいえない。医療・介護費の増加は続き、負担に歯止めが掛かりそうもないからだ。年金には「マクロ経済スライド」という給付を抑制する仕組みがあるが、医療や介護にはない。健保連の推計では三大保険料の合計は25年度には31%に上がる。国が18年に公表した「2040年を見据えた社会保障の将来見通し」では、健保組合の医療・介護の1人当たりの保険料率は、医療が最大で11.2%、介護が2.6%(計画ベース)となる。仮に年金が18.3%のままなら、保険料の合計は最大で32%台に上がることになる。

<財源と無駄遣い>
*3-1-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200405&ng=DGKKZO57629330T00C20A4TM3000 (日経新聞 2020.4.5) 欧州でグリーン水素パイプライン計画
 太陽光発電の電力で水素を製造して既存の天然ガスパイプラインで輸送、産業や発電に活用する大規模な「グリーン水素パイプライン計画」が欧州で始まろうとしている。2050年までに脱炭素を目指す欧州連合(EU)の長期目標に沿う。計画のまとめ役を担う仏ソラドベント社(本社パリ)の創業者、ティエリー・ルペック氏に計画の内容や背景を聞いた。
――どのような計画ですか。
 天然ガスパイプラインを管理・運営するガスTSO(系統運用者)からの依頼で、競争力のあるグリーン水素の生産、輸送、消費の大規模な企業コンソーシアムを結成している。スペインに60万キロワット級の電解工場を建て、太陽光発電の電力で水素を製造する。これをTSOが保有する既存のパイプラインで消費地に運ぶ。ユーザーは化学や肥料、鉄鋼などの工場、発電所、工業用熱生産だ。天然ガスと石炭を代替する」「最初のプラントはいずれ100万キロワット級に拡張する計画だ。重要なのは液化天然ガス(LNG)に対抗できる競争力を持てるかだ。そのために早期の大規模化を狙う。50年までに100万Btu(Btuは英国熱量単位)あたり7.5ドルを目指す。スペインに続いて、欧州とパイプラインがつながるアルジェリアやチュニジアでの太陽光発電による水素製造を視野に入れている」
――なぜまずスペインなのか。
 「スペインは固定価格買い取り制度(FIT)で太陽光発電が急増した後、制度廃止などで停滞していた。しかし太陽光発電のコストが十分に下がったため再び建設ブームが始まっている。問題は電力網が満杯で発電事業者に系統接続の権利があっても容易につなげない。余裕のある電力で水素をつくることで太陽光発電の変動性を解消し電力系統の安定運用に資する」
――天然ガスパイプラインに水素を流すにはパイプラインの改修が必要になるのでは。
 「送ガス網への設備投資については、この1年でTSO自身の認識に大きな変化があった。既存の設備で天然ガスとのブレンドでも100%水素でも輸送可能だと姿勢を変えた。コンプレッサーなど一部設備は改修が必要だが、パイプラインを作り直す必要はない」
――見方が変わったのはなぜ。
 「生き残りだ。欧州は脱炭素に向けて動いている。TSOはガスの生産と消費を結ぶ『中流』の事業だが、天然ガスの供給も消費も減っていく。パイプラインが座礁資産になる。グリーン水素の輸送を担い資産価値を復活させ、雇用も維持したいと経営者たちは考えた。グリーンなエネルギーを望む顧客が増え、その要望に応えることが生き残るために不可欠だと判断したのだ」
――コンソーシアムに参加する企業は。
 「スペインのエナガス、イタリアのスナム、フランスのGRTガスとテレガ、ドイツのOGE、ベルギーのフラクシス、オランダのガスユニなどのTSOが中心だ。これらのTSOは『ガス・フォー・クライメット』という団体を組織している。ほかに電解装置のメーカーや太陽光発電のデベロッパーなどが参画する。欧州投資銀行(EIB)やほかの投資銀行、投資家からも私たちの計画は支持されている」
――脱炭素を掲げるEUの取り組みは非常に野心的だが、達成可能か。
 「達成できなければ私たちは非常に困った状況に陥る。前向きに考え、どう達成するかという問いを発すべきだ。欧州の目標が野心的に過ぎ、達成できなかったことは過去にもある。目標や規制は大事だが、起業家や投資家が動かなければ脱炭素は困難だ。世界最大規模の機関投資家であるノルウェー政府年金基金はエナガスの大株主だが、グリーン水素に強い関心をもつ。いま投資家が動き始めている」
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 ルペックさんに会うのは2年ぶり。以前にインタビューしたときは仏大手電力エンジーの副社長だった。グリーン水素のためベンチャーに転じた。グリーン水素のプロジェクトは日本でもいくつかある。川崎重工業はオーストラリアの褐炭ガス化でもたらされる水素を日本に運ぶサプライチェーンを構想、液化水素タンカーを建造している。東京ガスは自然エネルギーの電力でつくった水素をアンモニアにして日本に運び発電などに使う計画を公表している。また千代田化工建設などはブルネイで調達した水素をメチルシクロヘキサンという化学物質に反応させ液体にして運び、消費地で水素に分離するというシステムを提案し実証に挑む。

*3-1-2:https://weekly-economist.mainichi.jp/articles/20190507/se1/00m/020/048000c (エコノミストオンライン 2019年4月22日) サウジアラムコ起債に応募殺到 LNG、石油化学でも影響力増大=岩間剛一
 サウジアラビアの国営石油企業サウジアラムコに、世界の債券投資家の注目が集まっている。サウジの実力者ムハンマド皇太子が推し進める経済構造改革の原資として予定していたサウジアラムコのIPO(新規株式公開)は断念に追い込まれたが、次善の策として打ち出したサウジアラムコの債券発行計画に対し、運用難に悩む債券投資家の応募が殺到。サウジアラムコは当初予定よりも調達資金を積み増し、まさに面目躍如といったところだ。サウジアラムコにとっては今回が世界の債券市場へのデビューとなる。ロイター通信などによれば、サウジアラムコは3年、5年、10年、20年、30年の年限に分けて起債し、100億ドル(約1兆1000億円)を調達する予定だった。ところが、フタを開けてみると投資家からの応募が殺到し、4月9日時点で1000億ドルを超えたという。これを受けて、サウジアラムコは起債額を120億ドルへと積み増した。驚くのは、その発行条件である。債券発行時の利回りは信用力の高い米国債を基準に決められ、ブルームバーグなどによれば、サウジアラムコ10年債の利回りは米国債に105ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)上乗せした水準となった。この利回りの水準は同じ年限のサウジ国債を12.5bp下回っており、サウジアラムコが持つ豊富な原油埋蔵量や収益力の高さが、債券市場では政府(ソブリン)よりも高く評価された結果といえる。
●米アップルの1・8倍
 実際、サウジアラムコの業績は驚異的だ。サウジアラムコが4月1日、初の起債を前に投資家向けに開示した財務情報によれば、2018年のEBITDA(利払い・税引き・償却前利益)は2240億ドル(約24兆6000億円)、純利益は1111億ドル(約12兆円)とケタ違いの規模だった。純利益は上場企業で世界最大の米アップル(595億ドル、18年9月期)の1.8倍を超え、同じ石油企業の米エクソンモービル(208億ドル、18年12月期)の5倍以上に達する。サウジアラムコの強みは、サウジの石油・天然ガス開発を独占していることにある。サウジは南米ベネズエラに次ぐ、世界第2位の原油埋蔵国だが、超重質油で生産コストの高いベネズエラの原油と異なり、軽質であるうえに生産コストが1バレル当たり4ドル程度に過ぎない。世界最大の産油国となった米国のシェールオイルの生産コスト(1バレル当たり30ドル超)と比較しても、極めて高いコスト競争力を持った世界一の優良原油である(図)。サウジアラムコは債券発行で調達した資金を手元資金と合わせて、世界的化学メーカーに成長した国営企業サウジ基礎産業公社(SABIC)の買収に充てる。その企業価値は1000億ドル(約11兆円)にのぼり、株式の7割は政府系ファンド「パブリック・インベストメント・ファンド」(PIF)が保有する。サウジアラムコがSABICを買収すれば、7兆円以上の資金が政府の経済構造改革の原資となる。サウジ政府はもともと、企業価値が2兆ドル(約220兆円)ともされるサウジアラムコの株式のうち、5%をニューヨーク、ロンドン両証券取引所へ上場し、1000億ドル(約11兆円)の調達をもくろんでいた。だが、サウジの原油埋蔵量などは重要な国家機密であり、どこまでサウジアラムコの財務状況が開示されるのかが不透明だった。サウジ側は両証取に上場基準の緩和を求めるなどしたが、受け入れられることはなかった。加えて、昨年10月に起きたサウジ人著名記者の殺害事件により、サウジ政府とムハンマド皇太子が国際社会から非難され、欧米諸国の証券市場や金融機関の支援を得ることが難しくなった。そこで、サウジ政府はIPOを断念し、開示の基準が緩い債券発行へと方針転換する。世界的な低金利環境が続く中、投資家は相応の金利が見込める優良・大型の投資先を渇望していた。また、株主責任を負う株式への直接投資とは異なり、債券投資は国際社会の非難も浴びにくいという事情もあった。
●構造改革の「先兵」に
 サウジは政府歳入の7割近くを石油収入に依存する。だが、ここ数年は原油価格の低迷や不安定な値動きが続き、昨年12月に発表した19年の政府予算は5年連続の赤字を見込む。そのため、サウジ政府は増税や補助金の削減など財政健全化に取り組むが、国民に不満が高まって王族支配の根幹すら揺らぎかねない。そうした危機感を背景に、ムハンマド皇太子が16年4月、石油依存の経済構造を脱却しようと打ち出したのが「ビジョン2030」と呼ぶ経済構造高度化構想である。ビジョン2030では、数値目標を掲げて製造業や中小企業の振興など経済多角化を目指すとしたが、その原資として当初期待していたのがサウジアラムコのIPOだった。そのIPOが頓挫したことで経済構造改革の行方も危ぶまれたが、サウジアラムコの起債によって評価を一変させた。また、サウジアラムコはSABIC買収により、油田開発から、石油精製、石油化学と、上流から下流まで一貫操業する巨大企業となり、サウジ政府の改革を資金面で支える先兵ともなる。サウジアラムコは、さらに野心的な目標を掲げる。LNG(液化天然ガス)の輸出プラントを持たず、これまでは原油生産に随伴する天然ガスはフレアとして燃やすだけだったが、アミン・ナセルCEO(最高経営責任者)は昨年11月、30年までに世界最大のLNG輸出国となることを表明。今後10年間で天然ガスに1500億ドルを投資するとし、敵対するLNG大国のカタールやイランを脅かす姿勢を鮮明にした。サウジアラムコは石油化学部門も強化しており、今年2月には中国・遼寧省で中国企業とエチレン生産能力が年間150万トン、石油精製能力が日量30万バレルに達する総額100億ドルの石油精製・石油化学コンビナート建設で合意した。また、中国や韓国、インドネシアなどアジア諸国の製油所にも出資し、貴重な原油輸出先と位置づけるアジア諸国の囲い込みを図っている。債券市場やLNG、石油化学にまで及ぶサウジアラムコの影響力は、もはやとどまるところを知らない。

*3-2:https://mainichi.jp/articles/20200331/ddn/003/010/012000c (毎日新聞 2020年3月31日) 森林環境税の使途、「森の整備」は35% 先行配分、74自治体調査
 安倍政権が創設した森林環境税について、全国の道府県庁所在市と政令市、東京23区(計74自治体)の2019年度の使途を調べたところ、最大の目的である「森林整備」に使われるのは、税収配分の見通し額の35%にとどまることがわかった。大都市は管理する森林が少なく、国産材を利用した公共事業に充てるケースが多い。森の荒廃防止を掲げて納税者1人につき年1000円を徴収する新税のひずみが早くも浮かんだ。森林環境税の徴収は24年度からだが、政府は早急な災害対策のために森林整備が急務だとして、別の財源を準備。19年度から先行的に、譲与税として自治体への配分を始めた。

*3-3:https://www.agrinews.co.jp/p50423.html (日本農業新聞 2020年3月31) 森林組合法改正案 役割発揮へ体質強化を
 民有林の本格的な利用期を迎え、伐採や植林を担う森林組合の活性化が課題になっている。地球温暖化防止の観点からも期待が高い。山村を支える人々の利益につながるように、組合員の拡大や若返りなどにより森林組合の体質強化を急ぐべきだ。森林組合は、森林所有者である組合員の委託を受けて植林や下刈り、間伐、主伐など山の作業全般的を担う。全国に620余りあり、組合員は151万人に及ぶ。農業との兼業も多い。山村住民の高齢化に伴って組合員の高齢化と減少が進み、総会や総代会などへの参加も減っている。女性の登用も遅れ、正組合員に占める割合は10%、役員に占める割合は0・5%と低水準だ。相続を機に所有者が把握できなくなる事例も相次ぎ、組合活動も滞りがちだという。一方、民有林は、終戦復興や高度経済成長期に造林した森林が主伐期を迎えている。これからが稼ぎ時である。せっかくの財を「宝の持ち腐れ」にしてはならない。また、切った後に植林をしないと山が荒れる。植林から伐採まで計画的に取り組む森林組合の役割は重要度を増す。山村に富をもたらすこの時機を逸してはならない。林野庁は、森林組合法の改正案を今国会に提出し体質強化を後押しする。森林所有者と同居していない子どもら「推定相続人」に正組合員になれる道を開き、人数制限も撤廃する。組合員の若返りと女性の参画を進め、組合活動の活性化を促したい考えだ。総会や理事会での論議も活発になると期待される。森林所有者が将来分からなくなるのを防ぐことにもつながる。問題は実効性だ。親元を離れて暮らす「推定相続人」に、森林管理や組合活動への関心を高め積極的に参加してもらうにはどうするか。また、組合員数が多くなった一部林家の発言力が高まることを懸念する声もある。国会審議では、こうした点について丁寧な論議が必要だ。改正案では一部の事業を他の森林組合などに継承できるようにする「吸収分割の制度」や、新たな連合会を設置して事業を継承できる「新設分割の制度」を設ける。小規模な組合が多様な連携で林産物の輸出など事業拡大を目指すという方向性は一定に理解できるが、リスクも伴う。組合員の理解が不可欠だ。政府は、所在が不明な森林所有者に代わって森林組合が管理できるようにしたり、国有林の樹木を採取できる権利を林業経営者に与えたりする法制度を整備し、本格的な利用期に備えている。また地球温暖化防止や国土保全、水の涵養(かんよう)といった森林の公益的な機能を維持するため、森林環境税を財源にした森林の管理制度を創設し、課税に先行して自治体への資金の譲与を開始した。森林管理の中心的な担い手として、森林組合の役割は一層重要となる。国民の期待に応えられるよう、森林組合改革への一層の取り組みが期待される。

*3-4:https://www.nishinippon.co.jp/item/n/594829/ (西日本新聞社説 2020/3/25) 森友学園問題 なぜ再調査をしないのか
 決裁文書の改ざんという前代未聞の不祥事は一体、誰が何のために引き起こしたのか。疑惑の真相解明に向けた新たな契機としなければならない。学校法人「森友学園」の国有地売却問題で財務省近畿財務局の担当職員だった赤木俊夫さんが、同省理財局長だった佐川宣寿(のぶひさ)元国税庁長官の指示で決裁文書の改ざんを強制され自殺に追い込まれたとして、遺族が国と佐川氏に損害賠償を求めて提訴した。遺族は赤木さんの手記や遺書も公表した。この問題が発覚したのは2017年2月だ。安倍晋三首相や昭恵夫人の関与も取り沙汰され、首相は同17日の衆院予算委員会で「私や妻が関わっていれば、首相も国会議員も辞める」と断言していた。手記によれば、近畿財務局の上司から赤木さんに初めて改ざんの指示があったのは、この首相答弁の9日後だった。赤木さんは「全て佐川局長の指示です。学園に厚遇したと受け取られる疑いの箇所は全て修正するよう指示があったと聞きました」としている。手記は関係者が実名で記され、日時や会話のやりとりなど具体的な情報や動きが詳述されている。改ざんに手を染めることへの抵抗と苦悩とともに「財務省が真実に反する虚偽の答弁を貫いていることが最大の原因」「うそにうそを塗り重ねるという、通常ではあり得ない対応」と所属組織を告発している。何より驚かされるのは、こうした遺書や手記を突き付けられても、首相や麻生太郎財務相が「再調査の必要はない」と開き直っていることだ。その論拠は財務省が18年6月に公表した調査報告書と「齟齬(そご)がない」「新事実がない」からだという。財務省の報告書は理財局長だった佐川氏が「方向性を決定づけた」としてはいる。しかし、具体的な指示や動機、背景には踏み込んでいない。いわば核心部分の曖昧さは麻生財務相が当時、いみじくも「それが分かれば苦労しない」と述懐した通りだ。財務省の一局長だけの判断で国会と国民を欺く決裁文書改ざんが可能なのか。そんな疑問も改めて湧く。そもそも財務省の調査は内部調査にすぎず、身内による聞き取りの限界が指摘されていた。ここは第三者機関で再調査するのが当然ではないか。国会にも注文したい。立法府もまんまと財務省に「だまされた」問題である。与野党の別なく、国政調査権を駆使して政府と財務省の姿勢をただすべきだ。「刑事訴追の恐れがある」として証人喚問で肝心な部分の証言を拒んだ佐川氏の再喚問が必要なのは言うまでもない。

*3-5:https://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-1103589.html (琉球新報社説 2020年4月8日) 辺野古軟弱地盤工事 基地建設ありきを改めよ
 また計画のずさんさが露呈した。血税の無駄遣いをこれ以上、許してはならない。新型コロナウイルスの感染拡大で経済が大打撃を受けている中ではなおさらだ。名護市辺野古の新基地建設を巡り、軟弱地盤の改良工事に向けて政府が設置した有識者会議「技術検討会」の説明資料に20カ所のミスが判明した。護岸の安定性に関する数値の間違いに加え、計算結果が正しく反映されていない図表、粘性土の強度を示すグラフにも修正箇所があった。間違ったデータを基に審議していたことは大きな問題だ。軟弱地盤を巡っては、防衛省が3月までに少なくとも6件の護岸・岸壁工事の発注を打ち切っていたことも判明している。うち5件は護岸や岸壁そのものの建設に至っていないにもかかわらず、一部の工事や地質調査などに使われた経費として6件で計約303億円が業者に支出された。軟弱地盤が明らかになった影響で護岸建設を先送りせざるを得ないのが理由だ。この宙に浮いた多額の税金の使途について防衛省は詳細に説明する責任がある。無駄遣いになった経費があれば、極めて重大な問題だ。防衛省は本紙の取材に対し一部事業の最終支払額を3桁も間違え、224億7785万9千円を2億9214万円と説明していた。護岸本体には着工せず浮具や調査などに当初契約の約1・4倍の支出をしていた。税金の使い方が極めて乱暴だ。ここまでミスが続けば、政府の説明の信頼性は完全に失われたと言っていい。新基地建設ありきでなりふり構わず工事を進める姿勢が原因だろう。事業の可否判断や評価の基になるデータがずさんなのだから、事業を中止して再調査や検証をすべきである。辺野古を調査した専門家が防衛省のデータや検討会の審議の在り方を疑問視して質問状を送っても、政府、検討会のいずれも再検討を拒否した。このやり方は、通常の公共工事の進め方から逸脱している。行政をゆがめる手法だ。辺野古の新基地建設を巡っては、軟弱地盤以外にも、米国が設定した飛行場周辺の高さ制限の逸脱や活断層など、建設計画策定後に新しい事実が次々と判明した。政府は総工費を当初の2・7倍に上る9300億円、完成までの期間は12年に試算を変更した。巨額の税金を使ってまで工事を強行するのは、県との裁判を有利に進め、埋め立ては止められないという既成事実をつくるためだろう。基礎的データの修正や計画変更が相次ぐずさんな工事に膨大な血税を投じるのはばかげている。県が設けた専門家会議は辺野古に固執せず在沖米軍基地を県外・国外へ分散することが「近道」と提唱している。新型コロナ対策で多額の財政支出が必要な中、辺野古新基地は最大の無駄遣いと言える。政府は基地建設ありきの強硬姿勢を改め、建設を即刻断念すべきだ。

<10万円の給付とふるさと納税>
PS(2020年4月23日追加):*4-1のように、広島県の湯崎知事が、「緊急経済対策として県職員が国から受け取る現金10万円を、県の対策事業の財源に活用したい」という考えを表明して波紋を広げたが、私も、公務員やサラリーマンの多くは、新型コロナ感染防止のための外出自粛や休業要請で所得が減るわけではないため、現金10万円を受け取った上で、困っていない人は自主的に寄付してよいと思う。その際、*4-2-1・*4-2-2のように、農漁業は政府の臨時休校要請で学校給食が停止し、農畜産物の供給が混迷して牛乳・野菜の販売が滞っているため、これらを返礼品にして「ふるさと納税(居住地の自治体でも可)」を募ったらどうか? 公務員の皆さんは、各自治体の政策や返礼品を比べつつ、自分の自治体でさらに工夫できる余地を考えれば、次に活かせると思う。

*4-1:https://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/202004/CK2020042202000275.html (東京新聞 2020年4月22日) <新型コロナ>職員の「10万円」 県財源に 「給付から寄付」念頭 広島知事発言波紋
 広島県の湯崎英彦知事は二十一日、緊急経済対策として県職員が国から受け取る現金十万円を、県の対策事業の財源に活用したい考えを表明した。自主的な寄付として募り、新たに設ける基金に積み立てる手法などを念頭に、仕組み作りを急ぐ。国による十万円の給付は全ての国民を対象に五月から始まる見通しで、湯崎知事の突然の発言は波紋を広げている。県職員連合労働組合の大瀬戸啓介中央執行委員長は「驚いている。新型コロナの感染防止で職員は懸命に働き、家庭状況もさまざまだ。一律の対応を求められるのかなどを注意深く見守る」と話した。湯崎知事は休業要請の協力金について発表した記者会見で、県職員が受け取る十万円の扱いについて言及した。協力金や他の対策に多額の費用がかかるとの見通しを説明。「必要な財源が圧倒的に足りない。捻出する時に、今回(国から)給付される十万円を活用することで、聖域なく検討したい」と強調した。具体的な仕組みについては「まさに検討しなければならない」と述べ、制度設計を急ぐとした。県職員が受け取った十万円を積み立てる基金を新たに創設し、事業費に充てる方策かという問いには「そういうイメージだ」と応じた。県によると、知事が任命権を持つ県職員は四千四百五十一人(四月一日時点)。全職員から十万円を集めると、四億四千五百万円余りとなる。

*4-2-1:https://www.agrinews.co.jp/p50200.html (日本農業新聞 2020年3月5日) 学校給食停止 産地、業者の救済不可欠
 新型コロナウイルスの感染拡大防止に向けた政府の臨時休校要請で学校給食が停止し、農畜産物の供給が混迷している。牛乳や野菜の販売でキャンセルが相次ぐ。このままでは産地や関連事業者の売り上げ減少は必至。政府の支援が欠かせない。春休みを前に学校給食は例年より2週間早く停止した。影響が大きいのは給食向け牛乳(学乳)だ。国内の飲用向け生乳生産量(年間約400万トン)の1割近くを占める。仕向け量が多い関東では10万トンを学乳に供給するが、2週間で7500トンもの生乳が行き先を失う恐れがある。指定団体には、メーカーから取引休止の連絡が相次ぐ。北海道から都府県への生乳移送もキャンセルが発生している。乳業業界は、加工原料乳に振り向けようと対応に追われる。しかし、乳製品工場は人員の確保が難しく、処理能力にも限りがある。観光客の大幅落ち込みが響き、土産用の加工品の需要が低下している。酪農家は影響の長期化を不安視する。文部科学省によると、学校給食の1人1食当たりの食品別摂取量(2017年度)は、牛乳が200グラムで最多。野菜類が91グラムと続き、米や果実など幅広く供給している。全国学校給食会連合会によると、給食のメニューや調達する食材は1カ月前に決めているところが多く、影響は広がる見通しだ。JA東京むさし小平支店は、地元の小学校や中学校の学校給食センターに食材を提供してきたが、3月分の野菜などの契約4500キロが全てキャンセルとなった。食材を供給する他のJAからは「学校給食は安定した単価で買い取ってもらっていた」と影響を懸念する。給食向け食材に占める国産割合は76%、地元食材に限っても26%に及ぶ。農畜産物の重要な販売先で、産地は安定した取引が見込める。給食は児童や生徒が国産食材の魅力に触れる。食育の観点からも重要だ。新型コロナ問題で農畜産物の売り先がなくなり、取引価格の低下や廃棄する事態になれば、給食を支える産地や関連事業者にとって大きな痛手となる。政府の支援が求められる。萩生田光一文科相は「関係省庁と連携し、事例に応じて具体的な対応を検討していく」と発言。生乳を加工原料乳に仕向けると牛乳より販売価格が安くなるが、江藤拓農相は「(減収分は)何らかの手だてをしたい」と支援に前向きな姿勢を示した。産地や業者が今後も事業を継続できるよう、政府は早急に救済の具体策を示すべきだ。一斉休校で子どものいる家庭では自宅で過ごす時間が長くなる。給食や外食の機会が減った分、家庭での消費が高まっている。行き先を失った農畜産物の廃棄は何としても避けたい。農水省はホームページで牛乳や牛肉、野菜、切り花といった農畜産物の家庭での消費を呼び掛けている。窮状にある産地を応援する輪を広げていこう。

*4-2-2:https://www.agrinews.co.jp/p50599.html (日本農業新聞 2020年4月21日) [新型コロナ] 緊急事態宣言で需給緩和 生乳 家庭消費拡大を メーカーに支援策 農水省
 農水省は20日、新型コロナウイルス感染拡大防止に向けた緊急事態宣言に伴い、業務用の牛乳乳製品需要が減退したことで、「生乳需給が大幅な緩和局面に入った」と厳しい認識を示した。産地で生乳が増産傾向となる一方、全国的な一斉休校に伴い需要の低迷が続く。「家庭用消費の一層の拡大を図ってほしい」と訴え、バターやチーズの増産で需給調整に協力する乳業メーカーへの支援策も示した。同省は同日に臨時の記者会見を開いた。乳業メーカーからの聞き取りを基に、生クリームなど業務用の牛乳乳製品の落ち込み分を算出すると、3月は2割減、緊急事態宣言発令後の4月は5~7割の減少を見込んだ。乳製品を主に作る北海道は、4月だけで生乳換算で7~9万トンの業務用需要がなくなるとした。同省は6月中旬にかけての需給調整は予断を許さないとの認識を示す。在庫が潤沢な脱脂粉乳へは、生乳から仕向けられる量に限界があるとする。できる限り家庭内で牛乳・乳製品の消費を増やし、行き場を失う生乳の発生を未然に防ぐことを目標に掲げた。具体的には、18歳未満の子どもが週1回コップ1杯分(200ミリリットル)牛乳を飲む量を増やすことで、学校給食の1週間分(9500トン)の約4割に相当する生乳が消費されると試算。インターネット交流サイト(SNS)やホームページなどで、「もうあと1杯、もうあと1本飲んでもらいたい」と、家庭での購入を促す考え。合わせて、チーズやバター、全粉乳などの製造を増加することで、需給調整に協力するメーカーには19億円の予算を措置し、生乳1キロ当たり数円の支援を行うと表明。「事業の具体的な要綱については、近日中に明らかにする」(牛乳乳製品課)としている。

<日本の製造業と医療>
PS(2020年4月24日追加):*5-1-1のように、埼玉県の50代と70代の男性が自宅待機中に容体悪化で死亡する事例が発生したが、そもそも厚労省が作った“軽症者”の定義がおかしく、急性疾患である感染症に自宅療養を優先するという判断も変だったのである。本来は、学校閉鎖した3月上旬には、医師・看護師が常駐するホテルを準備して速やかに検査・治療・療養を行う体制にすべきだったし、それは可能だった筈だ。にもかかわらず、死人を出すまで動かないのが日本の行政の怠慢で、それに加えて「子育ての関係で自宅療養を選択せざるを得ない人」というのは、家事や子どもの世話が外出を伴う重労働であることを考えれば、厚労省の言う“軽症”の感染症を抱えた人は不可能なのである。
 このような中、*5-1-2のように、米国NY州で無差別サンプリングによる抗体検査を実施した結果、陽性が約14%で、州全体で26万3000人確認されている感染者数は実際にはその10倍の約270万人となり、大都市のニューヨーク市では21.2%が陽性だそうだ。日本は、未だに「抗体検査の信頼性が100%ではないので・・」などという馬鹿なことを言っている人がいるが、何もわからないよりは多少の誤差があっても概要がわかった方がずっとましなのである。また、*5-1-3のように、英オックスフォード大学の研究チームが、2020年4月23日、新型コロナウイルスのワクチン候補を使った臨床試験を開始し、世界中では少なくとも5例の治験が行われており、ドイツも、2020年4月22日、ビオンテックが開発する新型コロナワクチンの治験を認可したそうだ。日本では、また厚労省が何とかかんとか言って、新型コロナの流行が終息した頃にワクチンが認可されるかもしれないが、それでは意味がなく、*5-2-1のようなことがいつまでも解決されずに続くのだが、これが日本の医療行政の現状なのである。
 さらに、*5-2-2・*5-2-3のように、政府が配布を進める布マスクのようなローテク製品でさえ、虫・髪の毛・糸くずの混入やカビの付着など不良品が相次ぐ始末だ。マスクに他の細菌やウイルスがついていれば有害であるため、製造工程の衛生管理は重要だ。そのため、私は送ってきたらまず洗浄・除菌してから使おうと思っていたが、それにしてもこの布マスクは、政府が国内の商社など納入業者5社(興和:54億8000万円、伊藤忠商事:28億5000万円、マツオカコーポレーション:7億6000万円、3社の合計90億9000万円)を通して中国・ベトナム・ミャンマーから調達したのだそうだ。厚労省は、それぞれの調達枚数を明らかせず、「開示すれば、マスクの単価を計算できることになり、今後の調達などに影響を及ぼす恐れがある」などと説明しているそうだが、①マスクさえ外国に発注しなければ作れず ②管理もせずに衛生管理の悪い環境で制作させ ③単価は国民に公表できないほど高い というのが、(あまりに情けないものの)日本の製造業の現状と言わざるを得ないようだ。

   
 2020.4.24読売新聞      2020.4.8毎日新聞      2020.4.8東京新聞

(図の説明:左図は、抗体検査によるニューヨーク州の推定新型コロナ感染者数で、予防しにくい階層・人種の感染者割合が高いことがわかる。中央の図は、行動制限をした場合の東京・大阪の予想感染者数推移で、右図は、行動制限を続けた場合の経済への打撃とその対策だ)

*5-1-1:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/515852 (佐賀新聞 2020.4.24) 埼玉死亡受けホテル療養移行急ぐ、自宅待機の患者数把握も
 加藤勝信厚生労働相は24日の記者会見で、新型コロナウイルス感染症で自宅療養中の患者数を把握する考えを示した。埼玉県内の50代と70代男性が自宅待機中に容体が悪化して死亡する事例が発生したことを受けての対応。自治体が用意し、看護師らが常駐するホテルや宿泊施設での療養に速やかに切り替える。一方、埼玉県の大野元裕知事は24日、「このような事態に至ったわれわれの責任は重い」と記者団に述べた。基礎疾患のない軽症者や無症状者の自宅待機を認める方針を改め、原則としてホテルでの療養に切り替える。加藤氏は「自宅療養と宿泊療養の内訳について都道府県から情報を得るよう努力したい」と強調。子育ての関係で自宅療養を選択せざるを得ない人もいるとして「患者や家族へのフォローアップをしっかりするよう自治体にお願いしている」と述べた。施設の準備が整わなければ引き続き自宅を容認する。厚労省は今月2日、病床の逼迫による医療崩壊を避けるため、軽症や無症状感染者は宿泊施設やホテル、自宅での療養を検討するよう都道府県に通知。加藤氏は23日になってホテルや宿泊施設での療養を基本とすると方針転換した。厚労省はマニュアルを作成し、宿泊施設では保健師か看護師が日中は常駐し、医師も電話で対応することや、症状悪化時に適切に対応できるよう搬送手段や受け入れの医療機関と事前に調整するよう求めている。高齢者や妊婦、糖尿病などの基礎疾患がある人などは重症化のリスクが高いため、原則入院となる。

*5-1-2:https://news.biglobe.ne.jp/international/0424/0585979323/tbs_tab.html (TBS 2020.4.24) 米NY州抗体検査で陽性14%、感染者数 公式発表の10倍か
アメリカ・ニューヨーク州で、新型コロナウイルスに感染したことがあるかを調べる抗体検査を実施した結果、陽性がおよそ14%だったことがわかりました。感染者の数が公式発表の10倍にのぼる可能性があるということです。ニューヨーク州のクオモ知事は23日、感染の実態を把握するため、アメリカで初めて実施した大規模な抗体検査の結果を発表しました。それによりますと、州内各地でおよそ3000人を無作為で抽出し、抗体検査をしたところ、全体の13.9%が陽性でした。大都市のニューヨーク市では21.2%が陽性で、5人に1人以上が感染していたことになります。州全体ではこれまで26万3000人の感染者が確認されていますが、抗体検査の感染率から、その10倍のおよそ270万人が感染した可能性があるということです。その場合、致死率は低くなり、感染者のおよそ0.5%になるとしています。

*5-1-3:https://www.newsweekjapan.jp/stories/technology/2020/04/post-93231.php (Newsweek 2020年4月24日) オックスフォード大、新型コロナウイルスのワクチン治験開始
 英オックスフォード大学の研究チームが23日、新型コロナウイルスのワクチン候補を使った臨床試験を開始した。ワクチンの有効性や副作用の有無を調べる。新型コロナワクチンを巡っては世界中で100種程度の候補が開発中で、少なくとも5例の治験が行われている。ドイツ当局は22日、バイオ医薬ベンチャーのビオンテックが開発する新型コロナワクチンの治験を認可した。[ロイター]

*5-2-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200423&ng=DGKKZO58359930S0A420C2MM8000 (日経新聞 2020.4.23) 綱渡りの中小支援、33都道府県が協力金、資金難なお深刻
 新型コロナウイルスの感染拡大で中小企業の資金繰り不安が増すなか、33の都道府県が休業協力金を給付することが分かった。先行する東京都は最大100万円の給付金の受け付けを22日に始めたが、関係書類をそろえるなどの手続きは煩雑で、支給まで2週間かかる。緊急事態宣言が5月7日以降も続いた場合、都が確保した960億円の予算は不足しそうだ。経済の土台をなす中小支援は綱渡りの状況だ。日本経済新聞が22日時点の状況を調べたところ、高知や沖縄など37都道府県が感染拡大を防ぐため休業要請を決めた。このうち33都道府県が要請に応じた事業者への協力金など支援策を用意する。先駆け事例となるのが都で、休業や時短営業の要請に応じた事業所や店舗に協力金を給付する。支給額は1店舗なら50万円、複数店舗なら100万円だ。この日は受け付け開始の午後3時以降、130回線ある都の問い合わせ用電話がひっきりなしに鳴り続けた。事業者が気にするのはそろえるべき書面だ。所定の申請書のほか、都が休業要請した11日以前に営業していたことを示す書類、営業に必要な免許や許可を得ていることが分かる書類などが必要だ。都は税理士や公認会計士などの専門家による事前の書面審査を奨励し、チェックが無ければ「支給まで時間を要する場合がある」とした。台東区の焼肉店経営者は22日にすぐ協力金を申請しようと準備していたが、専門家が見つからず断念。後日、税理士に相談したうえで郵送で申請することにした。この経営者は「個人で申請するのは難しい」と話す。デジタル対応の壁もある。都内でバーを営む女性経営者は22日、協力金の申請書類一式を、知り合いの税理士に送った。申請には「休業の状況が確認できる書類」が必要。店舗のホームページがあれば休業を告知する画面を印刷するだけで済むが、パソコンとは無縁だ。休業日を手書きした張り紙を急ごしらえし店舗のドアに貼り付けて写真を撮った。給付を受けてもビジネスが成り立つかは事業者による。都内に和食居酒屋など2店舗を持つ経営者は「100万円では家賃や人件費をまかなえない」と話す。4月に新店舗を開く予定だったため、3店舗分の費用がかかっている。今は夜間は店を閉めているが、固定費だけで毎月300万円以上かかるという。支給開始が5月7日以降となることも「翌週の資金繰りすら危うい中小には厳しい」(都内の弁護士)との指摘がある。申請できるのは都の休業要請に従う事業者だが、線引きが難しい場合もある。食料品の専門店を百貨店に展開している都内の中小企業は全店舗の7割近くとなる20店弱を休業中。一部は都ではなく百貨店の要請で休業しており「対象になるのかわからず困っている」(同社社長)。13万事業者の申請を念頭に960億円の予算を確保した協力金だが、緊急事態宣言を政府が延長した場合、都の休業要請も延びる見通し。事業者の資金繰り負担は増え、都幹部も「2回目の給付も想定しなければならない」と話す。日本の中小企業数は2016年時点で約358万社あり、大企業も含めた企業数全体の99%を占める。働く人は約3220万人と、大企業(約1460万人)が抱える雇用の2倍超だ。資金支援は財政力がある都が先行したが、その後に政府が総額1兆円の地方創生臨時交付金を協力金に充てることを決定した。二の足を踏んでいた自治体も一気に休業要請と協力金の創設に動き出したが、期間が長引けば財政負担も高まる。経済の痛みを最小限にとどめるためにも、実効性ある感染対策が不可欠だ。

*5-2-2:https://mainichi.jp/articles/20200421/k00/00m/040/185000c (毎日新聞 2020年4月21日) 虫混入、カビ付着…全戸配布用の布マスクでも不良品 政府、公表せず
 新型コロナウイルスの感染拡大防止に向け、政府が配布を進める布マスクに、虫が混入するなど不良品が相次いで確認されている。厚生労働省は18日、妊婦向けの布マスクのうち1901件について不良品の事例を発表し、21日に妊婦向けマスクの配布中止を決定。しかし、政府のマスク等物資対策班の関係者によると、18日時点で全戸配布用に準備していたマスクでも不良品が発見されており、これについては公表していない。政府の衛生面での認識が問われるとともに、全戸配布のスケジュールにも影響しそうだ。布マスクは政府が一括して購入し、全国5000万世帯に2枚ずつ配布する計画で、約466億円が投じられる。先月下旬から、妊婦向けに50万枚▽高齢者の介護・福祉施設向けに1930万枚▽小中高校に800万枚――を優先的に配布。続いて感染者の多い東京都内などで全戸配布が始まっている。厚労省は18日、妊婦向けの布マスクに関して「変色している」「髪の毛が混入していた」「異臭がする」などの報告が相次ぎ、80市町村で1901件の報告があったと発表。大阪府内の自治体では、ガーゼの黄ばみや変色、ゴミの混入も確認。発表を受け、ツイッター上では「健康被害はないのか」「安心して使えない」などの不安の声が広がった。しかし、政府の対策班に配られた内部文書によると、18日時点で妊婦向け以外の全戸配布用に包装を始めた200万枚のうちでも、虫や髪の毛、糸くずの混入、カビの付着など200件の異物混入などの問題事例を確認。これについては公表しなかった。マスク配布を担当する厚労省経済課は、妊婦向け以外の不良品を非公表とした理由について「回答できない」とし、全戸向けのマスク配布については「現時点で中止は検討していない」としている。
  ×   ×
 相次ぐ異物混入などの発覚を受け、政府は各都道府県に注意喚起の通達を出し、一部の業者が製作したマスクについては全品回収を始めた。マスクの製造企業名などは公表されていないが、政府関係者によると、国内の商社など納入業者5社が中国やベトナム、ミャンマーから調達している。(以下、略)

*5-2-3:https://news.tbs.co.jp/newseye/tbs_newseye3961647.html (TBSNews 2020年4月22日) 政府配布の布マスク、3社から90億円あまり
 新型コロナウイルス対策で全世帯に配布する布マスクについて、政府が大手商社など3社から、合わせて90億9000万円で調達していたことが明らかになりました。これは、社民党の福島みずほ党首が厚生労働省からの回答としてツイッターで明らかにしたもので、興和が54億8000万円、伊藤忠商事が28億5000万円、マツオカコーポレーションが7億6000万円でした。3社合わせて90億9000万円ですが、政府は、布マスクの費用を総額で466億円と説明しており、福島氏は差額についてさらに問い合わせるとしています。また厚生労働省は、それぞれの調達枚数も明らかにしておらず、「開示した場合、マスクの単価を計算できることとなり、今後の調達などに影響を及ぼす恐れがある」などと説明しています。布マスクをめぐっては、全国の妊婦のために配布した布マスクに汚れなどが相次いで見つかっていますが、厚生労働省は共産党の小池書記局長の問い合わせに対して、妊婦向けマスクの製造メーカーはこれら3社を含む4社であることを明らかにしています。

<日本の産業と農家の収益性>
PS(2020年4月25、26、27日追加):*6-1に記載されている「①食料を供給し暮らしを支えているのは農業」「②大都市への人口集中の危険性を露呈」「③事態が収束すれば、農山村への田園回帰の流れはますます広がる」「④テレワークが広がり、分散型社会の必要性とその可能性を立証している」「⑤効率性・採算性による医療再編の動きを看過してはならない」「⑥キーワードは持続可能性」のうち、①は漁業も入るものの事実だ。また、大都市で生まれ育って並ぶこと自体に意義を感じるようになった集団を見ると、他にすることはないのかと思う。しかし、こういう人が多数派を占める②の状況は問題であるため、③④は必ず進めるべきだ。また、分散しなければ、災害時も考慮した⑥の持続可能性は、視野に入らない。そのインフラとなる⑤の医療再編は、本物の効率性・採算性は考えるべきだが、セキュリティーまで考慮したものでなければならないし、病気(特に急性疾患)への対応は時間との勝負なのである。
 このような中、*6-2のように、日米貿易交渉は食料自給率を無視し、日本の産業は自動車と自動車部品さえあればよいかのような交渉をしているが、これもおかしい。今後、何を売って、どこから、どういう品質の食料を買うつもりなのか? “食料生産力”さえあれば、日頃から生産していなくても高品質のものを生産できると考えるのは、マスクの事例を見ればわかるとおり、甘すぎて馬鹿げた幻想にすぎない。
 さらに、*6-3のように、国の登録品種から農家が「種取り・株分け」することを禁ずる改正種苗法案が国会の審議に入り、農家の自家増殖が一律禁止されるそうで、これは優良なブドウやイチゴの登録品種が海外に持ち出されにくくするためとされているが、優良品種の流出防止なら海外でも品種登録すればよく、海外で品種登録が認められない程度の“新”品種なら、日本の農家が自家増殖するのも自由であるべきだ。また、主要農作物種子法を「民間の開発意欲を阻害する」という理由で廃止し、国や都道府県の試験研究機関が保有する種苗に関する知見を海外企業も含む民間企業へ提供するよう求めているのは、これまで金を払って作ってきた国民の財産を無償で提供するもので、特許権の価値を無視したものである。
 なお、*7-1のように、北海道は、4月23日、「北海道短期おしごと情報サイト」を立ち上げ、農家などの人手確保に悩む職種が求人情報を掲示し、休業等で短期的な仕事を求める人を結び付けて人手不足解消を支援するそうだ。外国人技能実習生が入国できない状況で、運送業・小売業も人手不足に拍車が掛かっているため、よいアイデアだと思う。また、牛乳や乳製品等の需給緩和については、牛乳・卵は免疫強化にも役立つので、2000ml入りの牛乳パックを作ったり、冷凍できる乳製品を作ったりするのがよいと思う。
 また、農業の人手不足については、*7-2のように、鹿児島県鹿屋市の堀之内さんが、梅園地を中国人の岳淑芬さん(31歳、女性)と劉亜男さん(30歳、女性)に託す準備を進めているそうだ。2人は事務所の電話に滑らかな日本語で応えたり、パソコンに向かって売上・仕入のデータを入力できたり、現場で農作業の指示を出したり手本を見せたりもでき、やる気と誠意と能力があるという意味で人柄がよいのだろう。
 農水省は、*7-3のように、新型コロナ感染拡大の影響で外国人技能実習生らが来日できずに人材確保が難航している農家を支援するため、代替人材を雇って労賃が予定を上回った場合の掛かり増し分を1時間500円を上限として、交通費、宿泊費、保険料とともに補助の対象とするそうだ。技能実習生の代わりに学生やJA職員らが援農する際の費用も支援し、これは農業高校・農業大学校・JAなどを対象とするそうだが、私は、大学生(特に農学・生物学・工学・栄養学専攻など)も良い経験になるため、入れた方がよいと思う。

  

(図の説明:左から、米作、ブドウ、りんご。田畑で並んでいる人などはおらず、農業はいつも人手不足。コミュニケーションは土や植物と行い、自然は美しい)



(図の説明:上は、ふるさとチョイスで牛乳と卵から検索した写真。1番左はオホーツクの牛乳、左から2番目は高千穂牧場の乳製品、右から2番目はダチョウの卵を使ったアイスクリーム、1番右は抗生物質・薬品不使用の卵が80個も入った箱で、その豊かさに笑顔になった)

*6-1:https://www.agrinews.co.jp/p50538.html (日本農業新聞 2020年4月14日) “国難”の先を見る 持続社会へ教訓学ぼう
 国難を乗り切り、どんな社会を切り開くのか。新型コロナウイルスの感染拡大が止まらない。社会のもろさが表明化し、恐怖と緊張、閉塞(へいそく)感が覆う。危機の中で、食料を供給し暮らしを支えているのが農業だ。大切さが改めて認識され始めた。“コロナ後”を見据え、農を基に持続可能な社会を考えたい。新型コロナウィルスの感染者の急増を受けて政府は、7都府県に対し一定の私権の制限が可能となる緊急事態宣言を出した。対象地域だけでなく全国の住民が不安な日々を余儀なくされ、外出自粛や入国制限などで、飲食店や観光を中心に地域経済は深刻な打撃を受けている。政府は万全の対策をスピード感を持って行うべきだ。コロナ禍から教訓を学び収束後の社会を展望することが、考えや行動、働き方を変え危機を乗り切ることにつながる。キーワードは持続可能性だ。感染者は東京都や大阪府などで急増。大都市への人口集中の危険性を露呈した。食品の買いだめも発生し、食料確保への都市住民の不安感も表面化。そんな今だからこそ、“ポストコロナ”を見つめる力を持ちたい。事態が収束すれば、農山村への田園回帰の流れはますます広がるだろう。今は行き来が難しいが、都市と農村の連帯が重要となってくる。さらに、多くの企業が在宅勤務に移行し、遠隔でも仕事ができるテレワークが広がっている。分散型社会の必要性と、それが可能であることを立証しているといえる。働く場所や時間を柔軟に選べるようにすることは働き方改革と、ライフスタイルや価値観に合った生き方ができる社会づくりにつながる。企業にとってもリスクを軽減できるという価値がある。「今こそ農業の底力を示す時だ」。こう意気込む農家がいる。農の価値や食料自給、流通の重要性を人々が感じている。お金があるから肉や野菜、米が食べられるのではない。土と水が、豊かな農村があり、技を持つ農家と、集出荷や物流、加工、販売に携わる人がいるからこそ、食べ物が手に入る。そして医療の大切さ。厚生労働省は公的医療機関の再編を促しているが、命に直結する問題である。効率性や採算性による再編の動きを看過してはならないと言える。感染源を巡る差別や、失業者の増加や賃金低下による所得格差の拡大などで、今後さらに社会の分断が深まる恐れがある。災害時に必要なのは助け合いだ。休校になった子どもに弁当が配られたり、需要が減った農畜産物の“応援消費”が活発になったりしている。分散型社会や農業・農村、流通、医療、助け合いの大切さなどコロナ禍の教訓はいくつもある。これらは暮らしの安全保障の基盤でもある。自制心と冷静さで外出を自粛しつつ、未来に目を向け、歩み始めよう。

*6-2:https://www.agrinews.co.jp/p50606.html (日本農業新聞 2020年4月22日) [新型コロナ] 日米協定 新型コロナ拡大が波及 予備協議先送り
 日米貿易協定の追加交渉に向けた両国の予備協議の行方が不透明な状況となってきた。4月末までに協議を整える方針だったが、両国で新型コロナウイルスの感染拡大が深刻化し、協議が進展していないことなどが影響している。米国大統領選も本格化し、追加交渉を巡る動きは先送りの様相が濃くなってきた。ただ、米国は依然として追加交渉に対する意欲を持っており、予断を許さない状況は続く。日米両首脳が昨年9月に署名した日米共同声明では、協定発効から4カ月以内に「関税や他の貿易上の制約、サービス貿易や投資に係る障壁、その他の課題」の中から交渉範囲を決める協議を終える方針を示している。このうち、関税について日本政府は「自動車、自動車部品以外は想定をしていない」(交渉を担った茂木敏充外相)としているが、関税交渉が始まれば双方の攻めと守りの品目の駆け引きは必至。農業分野が除外されるかは不透明だ。両政府は協議を「複数回行っている」(同)。ただ、交渉関係者によると日程調整などにとどまり、交渉範囲を具体化させる協議には至っていないとみられる。正式な予備協議は電話での対応も想定している。新型コロナも協議に影響を与えつつある。日本では感染者が1万人を超えたが、米国は世界で最も深刻で感染者は70万人、死者は4万人を超えた。首都ワシントンの外出制限で、交渉を担う米通商代表部(USTR)は担当者が出勤できないといい、在米日本大使館では感染者も出ている。日本政府関係者は「この1、2カ月は接触すらできていないのではないか」としている。交渉範囲を決める予備協議が進んだとしても、実際の交渉は、米国大統領選以降との見方が強い。既に選挙戦は本格化。トランプ大統領と、バイデン前副大統領の一騎打ちの構図が固まり、投開票まで半年余りとなっている。とはいえ、米政府は追加交渉への意欲は失っていない。3月31日に公表した外国貿易障壁報告書では日米協定を成果として誇示した一方、「全ての農産品をカバーしていない」と指摘。追加交渉への意欲を表明した。日本の米や豚肉の輸入制度などにも改めて懸念を示している。

*6-3:https://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2020042502000153.html (東京新聞社説 2020年4月25日) 種苗法改正 農業崩壊にならないか
 国の登録品種から農家が種取りや株分けをすることを禁ずる改正種苗法案が、大型連休明けにも国会の審議に入る。国民の命を育む食料の問題だ。コロナ禍のどさくさ紛れの通過は、許されない。現行の種苗法により、農産物の新しい品種を生み出した人や企業は、国に品種登録をすれば、「育成者権」が認められ、著作権同様、保護される。ただし、農家が種取りや株分けをしながら繰り返し作物を育てる自家増殖は、「農民の権利」として例外的に容認されてきた。それを一律禁止にするのが「改正」の趣旨である。原則容認から百八十度の大転換だ。優良なブドウやイチゴの登録品種が、海外に持ち出されにくくするためだ、と農林水産省は主張する。果たして有効な手段だろうか。もとより現政権は、農業に市場原理を持ち込むことに熱心だ。米や麦などの優良品種の作出を都道府県に義務付けた主要農作物種子法は一昨年、「民間の開発意欲を阻害する」という理由で廃止。軌を一にして農業競争力強化支援法が施行され、国や都道府県の試験研究機関が保有する種苗に関する知見を、海外企業も含む民間企業へ提供するよう求めている。そこへ追い打ちをかけるのが、種苗法の改正だ。対象となる登録品種は、今のところ国内で売られている種子の5%にすぎず、農家への影響は限定的だと農水省は言う。だが、そんなことはない。すでに種子法廃止などにより、公共種子の開発が後退し、民間種子の台頭が進んでいる。その上、自家増殖が禁止になれば、農家は許諾料を支払うか、ゲノム編集品種を含む民間の高価な種を毎年、購入せざるを得なくなる。死活問題だ。小農の離農は進み、田畑は荒れる。自給率のさらなる低下に拍車をかけることになるだろう。在来種だと思って育てていたものが実は登録品種だったというのも、よくあることだ。在来種を育てる農家は絶えて、農産物の多様性は失われ、消費者は選択肢を奪われる。そもそも、優良品種の流出防止なら、海外でも品種登録をした方が有効なのではないか。何のための「改正」なのか。種子法は、衆参合わせてわずか十二時間の審議で廃止になった。種苗法改正も国民の命をつなぐ食料供給の根幹にかかわる問題だ。今度こそ、十二分に議論を尽くしてもらいたい。

*7-1:https://www.agrinews.co.jp/p50617.html (日本農業新聞 2020年4月24日) 北海道がコロナ対策 農家に働き手仲介 サイトで休業者に
 北海道は23日、農家に働き手を仲介するインターネットサイトを立ち上げた。農業など人手確保に悩む職種が求人情報を掲示し、ホテルや飲食店の休業などで短期的な仕事を求める人を結び付ける仕組み。新型コロナウイルス感染拡大の影響で深刻化している農家の人手不足解消を支援する。
●SNSで需要喚起
 立ち上げたのは「北海道短期おしごと情報サイト」。道が同日発表した新型コロナの感染拡大に伴う新たな経済対策の柱の一つとなる。道内では、観光客の激減で多くのホテルや飲食店などが従業員の雇用を続けるのが厳しい状況にある。一方、農業は定植などの繁忙期にもかかわらず、外国人技能実習生が入国できない産地があるなど、運送業や小売業などとともに人手不足に拍車が掛かっている。サイトでは人手不足に悩む道内の農家や企業などが、募集する仕事の場所や内容、時給、連絡先といった情報を登録する。登録するのは農業や運送業、小売業などを想定している。募集対象は6カ月以内の短期のアルバイト。情報は誰でも確認ができ、求人者に連絡を取り調整する。道が同日発表した新たな経済対策には、道産食品の消費拡大策も盛り込まれた。牛乳・乳製品については、小・中学校の臨時休校などで生乳需給が緩和し、乳製品の保管が限界に達してきている状況だ。そこで「SОS! 牛乳チャレンジ」と題した需要の喚起策に取り組む。牛乳を飲んでいる姿をインターネット交流サイト(SNS)に投稿し、フォロワーに牛乳の消費を呼び掛けてもらうという試み。牛乳が苦手な場合は、飲むヨーグルトやチーズでもよいという。同日開いた臨時の記者会見で鈴木直道知事は「私も近いうちに牛乳をがぶがぶ飲んで投稿したい」と話し、積極的な投稿を呼び掛けた。

*7-2:https://www.agrinews.co.jp/p50618.html (日本農業新聞 2020年4月24日) 育てた園地 荒れさせぬ 元技能実習生を後継者に 「大切なのは人柄」 鹿児島県鹿屋市の梅農家 堀之内辰男さん
 鹿児島県鹿屋市の堀之内辰男さん(80)は、梅園地を中国人の岳淑芬さん(31)と劉亜男さん(30)に託す準備を進めている。2人は堀之内さんが10年以上前に受け入れた元技能実習生。後継者が見つからず悩んでいた堀之内さんのため、在留資格を取って日本に定住した。堀之内さんは「自分が造った園地を地域に残せる」と安堵(あんど)する。「はい、堀之内農園です」。事務所の電話に滑らかな日本語で応える。パソコンに向かえば売り上げや仕入れデータの入力作業もこなす。営業部長である岳さんの仕事だ。加工部長の劉さんは現場で農作業の指示を出す。日本人には日本語で、中国人実習生には中国語で。剪定(せんてい)などの手本を見せていく。どちらの仕事も以前は堀之内さんだけで担っていた。引退を見据え、2人に仕事を引き継いだ。「まだ危なっかしいところはあるけど、あと1、2年で任せられるかな」。堀之内さんは手応えを感じ、笑みを見せる。2人は2007年、堀之内農園に技能実習生としてやってきた。当時、堀之内さんは漁師をやめて就農したばかり。営農技術は他の農家ほど教えられない。代わりに2人の日本語習得に力を入れた。会話の練習をしたり、日本語検定の問題集を買いそろえたり。日本語学校に通って取得する日本語検定1級の資格が取れるほど、語学力は向上。周囲を驚かせた。当時は技能実習生への不当な扱いが問題になっていた時期。岳さんの同期実習生には逃げ出してしまった人もいる。「自分たちは本当に恵まれていた」。2人は感謝する。中国に帰ってからも堀之内さんと電話で近況を話していた岳さん。70歳を超えた堀之内さんに後継者がおらず、困っていることを知った。岳さんは迷った。通訳や翻訳の仕事に就きたかったからだ。それでも「恩返しをしたい」という気持ちが捨てられなかった。悩んだ末に一緒に研修を受けた劉さんを誘い、日本行きを決めた。二人は留学の在留資格を取り、私立鹿児島国際大学に進学した。国内の大学を卒業していると就労の許可も下りやすい。留学中に仕事をしてもらうことはできないが、堀之内さんは生活支援をしながら卒業を待った。二人が大学を卒業して今年で4年。岳さんは「技術・人文知識・国際業務」と書かれたカードを得意げに掲げる。専門的な知識を持った人だけが得られる在留資格だ。これまでは毎年更新が必要だったが、長く働いている実績から3年に1度で済むようになった。「日本農業の後継者として認めてもらっているようでうれしい」と岳さんは笑う。外国人を後継者にすることに周囲から批判や懸念の声もあった。だが、自分が造った園地を残すために迷わず進んできた。「正義感があって、ちゃんとした人柄なら民族なんて関係ない」。二人の働きぶりに堀之内さんは確信する。

*7-3:https://www.agrinews.co.jp/p50644.html (日本農業新聞 2020年4月27日) コロナ禍 技能実習生が来日不能 代替雇用の農家支援 時給や宿泊・保険…JA・学生援農も 農水省検討
 農水省は、新型コロナウイルス感染拡大の影響で外国人技能実習生らが来日できず、人材確保が難航している農家らの支援に乗り出す。代替人材を雇い、労賃などが当初の予定を上回った場合、掛かり増し分を一定水準で補助する考え。学生やJA職員が農家の援農に出向く場合にかかる経費なども補助対象とする。農家の生産規模の維持につなげる方針だ。来日の見通しが立たない農業関係の技能実習生や特定技能外国人は1900人に上り、人材確保は急務の課題となっている。同省は、2020年度補正予算案に「農業労働力確保緊急支援事業」として46億4600万円を計上。具体的な支援内容を固めた。予定していた技能実習生らが来日できなくなった農家や法人などを対象に、新たに募集するなどして代替人材を雇い入れる場合の掛かり増し経費を補助する。労賃は、当初予定を上回った額に対して、1時間500円を上限に補助する方針。交通費や宿泊費、保険料も補助の対象とする方向で検討している。4月1日までさかのぼって、支援申請できるようにする予定だ。人材募集にかかる経費も支援の対象となる。農家やJAなどが人材マッチングサイトに情報を掲載したり、ちらしを作ったりする際の費用を半額以内で補助する。技能実習生らの代わりに、学生やJA職員らが援農する際の費用も支援する。農業高校や農業大学校、JAなどが対象。実習として作業を手伝ったり、業務として現場に出向いたりする場合の交通費や宿泊費、保険料を実費で補助する。JAが職員に手当を支払った場合は、1日4000円程度を上限に支援する考えだ。一連の支援策の申請窓口は、全国農業会議所となる予定。具体的な申請方法は現在、調整している。詳細は今後、同省ホームページで動画を配信するなどして解説する。

<新型コロナの検査と治療>
PS(2020年4月27日追加):*8-1-1のように、新型コロナに感染しているか否かを判断するPCR検査の結果がわかるまでに、4月初旬は1.8日を要したが4月18日時点には7.3日と延び、発症から7日以降に症状が悪化することから結果が分かった時には手遅れになっている。また、その間、陽性と知らずに市中にいる結果、潜在的感染者を増やすのに“貢献(皮肉)”もしている。こう書く理由は、検査の能力不足と言われているが、民間検査会社はPCR検査の能力に余裕がある上、*8-2-1のように、横浜市立大の研究チームが2020年3月9日に抗体を検出する新しい検査法を開発して15~30分で結果が分かるようになっている。さらに、*8-2-2のように、米国のAbbott社が開発した新型コロナの新検査法は、結果が出るまで5分で検査機関への往復も不要だ。また、*8-2-3のように、島津製作所が、2020年4月20日、検査時間を半分にする「新型コロナウイルス検出試薬キット」を発売もしている。
 にもかかわらず、厚労省は、*8-1-2のように、2020年3月4日、「検査料の点数の取扱いについて」「新型コロナウイルス核酸検出の保険適用に伴う行政検査の取扱いについて」などを発出し、2020年3月6日からPCR検査のみを保険適用にしたが、「検査キット原価+防護服原価+検査活動」の合計である診療報酬に13,500円(1350点)、単なる郵送費に4,500円(1800点-1350点=450点)を設定しており、単なる郵送と比較して知識と訓練を要し危険を伴う検査活動に対して低すぎる単価を設定した。さらに、自己負担分や補助金額の処理は付加価値のない複雑さであり、「PCR検査を効率的に行うための会議」で、さらに時間がかかるようにした。つまり、厚労省は、新型コロナが市中に蔓延し始めてもクラスター潰しに専念し、効率的な検査と治療をする気はなかったと言わざるを得ないのだ。
 さらに、治療については、*8-3のアビガンが有力候補だが、未だに「申請後の審査の期間を短縮して年内の承認をめざすが、緊急的な対応での特例扱いでどこまで早められるかは未知数」などと、ぼけたことを言っている。アビガンが胎児に奇形が生じる可能性があることについては、卵子は生まれた時から持っているものなので、出産を予定する女性と妊娠中の女性が使わなければよいのであって、その他の人は使ってよい。また、男性の精子は次々と作って捨てているものなので、アビガンを使ってすぐに子づくりをしなければよく、「使い方」は使用上の注意に書いてある筈だ。
 このようにして、検査も治療もやろうと思えばできたのにせず、新型コロナを市中に蔓延させ、緊急事態宣言で経済活動を止め、その代償として、*9-1のような25兆円超にものぼる補正予算案を提出して財源を全て国債で賄うことになったのであるため、この責任は屁理屈を付けて国民に押し付けるのではなく、政治と行政で取るべきだ。そのため、解雇と再雇用の約束がセットになっていても失業保険を給付したり、*9-2の雇用調整助成金も失業保険から支払ったりすればよいだろう。

   
  2020.4.6 Our World in Date     中日新聞     2020.4.27佐賀新聞

(図の説明:左図のように、人口100万人あたりの日本の新型コロナ検査数は非常に少なく、これでは蔓延するのが当たり前で、真の新型コロナの感染者数も死亡者数も不明だ。また、「医療崩壊を防ぐ」と連呼しつつ、重症者を増やして感染者と医療従事者を犠牲にし、中央の図の緊急事態宣言によって国民に不便を強いた上、経済活動の停止で収入の道を絶った。それに対し、右図のように、国債を原資とした25兆円の経済対策を行うそうだが、政府の失敗の責任を国民への請求書の押し付けで解決する体質は、必ず変えなければならない)

*8-1-1:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO58426540T20C20A4MM8000/?n_cid=NMAIL006_20200424_A (日経新聞 2020/4/23) 滞るコロナ検査、結果まで1週間 民間委託拡大カギ
 新型コロナウイルスに感染しているかどうかを判断するPCR検査の体制が感染者の拡大傾向に追いつけていない。検査の実施が滞っており、発症から陽性が確定するまでの期間が1週間と長期化し始めた。検査の機能不全を背景にした陽性判明の遅れは重症化リスクを高めるほか、潜在的な感染者と他者との接触機会を増やしかねない。医療崩壊を避けながら感染拡大を防ぐためにも、国による民間への検査委託の拡大や簡易検査の後押しが必要だ。日本経済新聞がコンサルティング会社、ジャッグジャパン(東京)が収集した陽性事例のデータを基に分析したところ、発熱やせきなど新型コロナウイルスの症状が出てから検査で陽性が確定するまでの期間は、7日移動平均で4月18日時点が7.3日と4月初旬から1.8日延びた。感染者数の拡大が続き、検査が間に合わずに確定が遅れている可能性がある。厚生労働省は、重症化する人は発症から7日以降に肺炎症状が悪化するとしている。検査体制強化が課題となるなか、能力に余裕がある民間への検体検査の委託拡大が急務となっている。4月中旬に入ってからのPCR検査の実施数は、全国で1日当たり8000件前後が続く。うち民間の検査会社による受託件数は2000件ほどで、残りは国立感染症研究所(東京・新宿)や地方衛生研究所などの公的機関が担っている。民間検査数は2月下旬まではゼロの日もあった。みらかホールディングス(HD)など国内の主要な検査会社の検査能力の合計は1日当たり約4000件と見られており、能力を活用できていない。民間シフトを阻む一因にはスピードよりも実績を重んじる医療界の慣行がうかがえる。各自治体の指定病院は、検査を民間ではなく地方衛生研究所に委ねる傾向が目立つ。「感染症は国が担うものだという意識が強い」(検査会社)。長野では県が優先度に応じて民間か行政かの検査委託先を決める方針だが、こうした調整に乗り出す自治体はまだ少ない。民間が主に担ってきた軽症者の検体検査が増えにくい問題もある。現状では、熱が出て気分が悪いといった程度ではすぐには検査を受けられない。京都大学病院は15日、院内感染予防の視点から「無症状であっても公費でPCR検査を受けられるようにすべきだ」との声明を出した。民間側もPCR装置の調達に苦戦している。世界中で新型コロナの感染拡大が続いており「装置の争奪戦になっている」(国内検査会社)。香港や韓国では簡易キットも駆使した検査の大量実施が進む。日本でも楽天が20日、法人向けに新型コロナウイルスの感染の可能性が分かる自宅でできる検査キットを発売した。ただ日本医師会が22日に「採取の方法が不適切であれば結果は信頼できず混乱を招く」との意見を出すなど、医師を介さない検査は普及に壁がある。安倍晋三首相は6日、PCR検査の1日当たりの能力を2万件に倍増すると表明したが、進捗は遅く政府でも危機感が高まりつつある。「全国で同様の取り組みが広がるよう支援する」。加藤勝信厚労相は23日、東京都新宿区で地域の医師会が設置したPCR検査センターを視察した。検体検査はみらか傘下のエスアールエルに委託する。自民党の塩崎恭久元厚労相は「2月ごろから民間の検査機関を活用すべきだとの声は医療現場などにあった。政府がクラスター(感染者集団)潰しを重視しすぎて検査体制の強化が後手に回った」と指摘している。韓国やイタリアは、当初から大量の検査件数をこなした結果、軽症者が病院に押し寄せて医療キャパシティーがパンクしたという経緯があった。下表は各国の検査数、感染者数、死亡者数の比較だ。見れば分かるが他の国でも検査数と死亡者数はあまり相関性がない。検査対象の絞り込みは、社会全体の感染のフェーズに適した形で行うべきだ。しかし、その際にも検査のメリットとデメリットの冷静な見極めが必要なのは変わりない。「検査用キットや防護具、熟練した臨床検査技師などのリソースは有限で、すぐにそれらを急激に増やすことはできない。医師が病歴や身体所見などの情報から的確に絞り込んだ感染疑いのある人を対象とし、必要な検査を精度と安全性が確保できる環境で十分に行い、精度が担保できない環境での不必要な検査を乱発しないことが、検査が社会全体にもたらすアウトカム(結果)を上げるのには重要だ」と、日本臨床検査医学会名誉会員で日本感染症学会日本環境感染学会の評議員も務める、上尾中央総合病院の熊坂一成臨床検査科科長兼感染制御室室長は指摘する。新型コロナウイルスパンデミックは、日本と世界が持つ検査や健診についての認知のゆがみを浮き彫りにした。私たちは日頃から健診・検査とどう向き合えばいいのか。特集『健康診断のホント』全18回を通じて詳しく見ていこう。

*8-1-2:https://gemmed.ghc-j.com/?p=32688 (GemMed 2020.3.5) 新型コロナウイルス検出のためのPCR検査、3月6日から保険適用―厚労省
目次
○1 検体の郵送等状況などに応じて、1800点または1350点を算定
○2 都道府県等から「患者の自己負担分」を公費補助
○3 「PCR検査を効率的に行うための会議」を設置し、地域で実施可能な検査数等把握を
 新型コロナウイルス感染症疑い患者への診断、新型コロナウイルス感染症で入院している患者の退院可能性を判断するための検査(PCR)を3月6日から保険適用し、医師は「保健所の判断」を待たずに検査を実施することが可能とする。本検査は、感染症の発生状況、動向、原因究明のための積極的疫学調査に用いることはできない―。診療報酬上、▼検査所等の検体を郵送する場合には1800点(1万8000円)▼それ以外の場合には1350点(1万3500円)―とするが、「都道府県から医療機関等に検査を委託するもの」と取り扱い、患者の自己負担は求めないこととする―。なお、当面は院内感染防止・検査の精度管理の観点から、▼帰国者・接触者外来▼帰国者・接触者外来と同様の機能を持つと都道府県が認めた医療機関―においてPCR検査を実施することとする―。厚生労働省は3月4日に通知「検査料の点数の取扱いについて」や通知「新型コロナウイルス核酸検出の保険適用に伴う行政検査の取扱いについて」などを発出し、こうした点を明らかにしました。
●検体の郵送等状況などに応じて、1800点または1350点を算定
 中華人民共和国武漢市で発生したとみられる新型コロナウイルスが本邦でも猛威を振るい、各地で患者クラスター(集団感染)が生じ、残念なことに死亡例も発生しています。安倍晋三内閣総理大臣が全国の小学校・中学校・高等学校に休校を要請したり、イベント等の開催自粛要請を行うなど、国民生活にも大きな影響が出ており、政府は2月25日に政府は2月25日に「新型コロナウイルス感染症対策の基本方針」を決定。医療体制に関し、▼患者数増等を見据え、医療機関における病床や人工呼吸器等の確保を進める▼患者数が大幅に増えた状況では、一般医療機関の外来で、診療時間や動線を区分するなどの感染対策を講じた上で、新型コロナウイルス感染疑い患者を受け入れる▼高齢者や 基礎疾患を有する者では、重症化しやすいことを念頭におき、より早期・適切な受診につなげる▼風邪症状がない高齢者や基礎疾患を有する者等に対する継続的な医療・投薬等については、感染防止の観点から、「電話による診療等により処方箋を発行する」など、極力、医療機関を受診しなくてもよい体制を構築する―などの考えを明確化しています。そうした中で今般、新型コロナウイルス感染症を鑑別するための検査が保険適用されるに至ったものです。まず、「新型コロナウイルス感染症が疑われる患者」に対する診断の目的、あるいは「新型コロナウイルス感染症治療で入院している患者」の退院可能性判断の目的のために、患者の▼喀痰▼気道吸引液▼肺胞洗浄液▼咽頭拭い液▼鼻腔吸引液▼鼻腔拭い液―からの検体を用いて、新型コロナウイルス検出の薬事承認・認証を得ている体外診断用医薬品(「病原体検出マニュアル 2019-nCoV」(国立感染症研究所)に記載、あるいはこれに準じたものに限る)で実施した場合に、次のように診療報酬を算定できます。
(1)検体を、「感染性物質の輸送規則に関するガイダンス 2013-14年版」(国立感染症研究所)記載のカテゴリーB感染性物質の規定に従い、検体を採取した医療機関以外の施設へ輸送して、検査を委託して実施した場合には1800点(D023【微生物核酸同定・定量検査】の12「SARSコロナウイルス核酸検出」(450点)の4回分)
  →この場合、レセプトの摘要欄に検査実施施設名を記載する
(2)それ以外の場合には1350点(同の3回分)
「新型コロナウイルス感染症が疑われる患者」の診断目的で検査を実施した場合には、診断確定までに(1)(2)に沿った点数を1回に限り算定できます。ただし、発症後に「陰性」であったものの、「新型コロナウイルス感染症以外の診断がつかない」場合には、さらに1回、(1)(2)の沿った点数を算定できます。なお「検査が必要と判断した医学的根拠」をレセプトの摘要欄に記載することが必要です。また「新型コロナウイルス感染症治療で入院している患者」の退院可能性判断目的で検査を実施した場合には、1回に限り(1)(2)に沿った点数を算定できます。この場合には検査実施の日付とその結果をレセプトの摘要欄に記載することが求められます。
●都道府県等から「患者の自己負担分」を公費補助
 ところで、医療保険は「公費」「保険料」「患者負担」の3要素を財源としており、患者負担は年齢・収入によって1-3割に設定されています。患者負担徴収には「応益負担」(受益に応じた負担を行う)や「患者に医療保険財源は有限である」ことを知らせるなどの意味合いがあり、医療機関が自己判断で減免することは認められません。しかし、今般、厚労省は「帰国者・接触者外来を設置している医療機関等で実施する『保険適用された検査』は、都道府県から医療機関等に行政検査を委託するもの」と取り扱い、「患者負担を求めない」こととする考えを明確にしました。もっとも、その際には、医療機関で「患者負担分」の収入が減少してしまうため、減少分について「公的な補助」が行われます。
具体的には、次のような流れとなります。
▽感染症指定医療機関等(▼感染症指定医療機関▼それ以外で都道府県知事の勧告によって新型コロナウイルス感染症患者を入院させる医療機関▼「帰国者・接触者外来を置く医療機関」「帰国者・接触者外来と同様の機能を有すると都道府県が認めた医療機関」―)が、都道府県等と委託契約を結ぶ(契約が3月6日以降となっても、3月6日から適用)
▽都道府県等から医療機関等を経由して、患者に対しPCR検査にかかる患者負担額相当を支給する(患者負担と相殺することが認められ、この場合、事実上「患者負担ゼロ」となる)
【補助金額】
▽3割負担者
・6歳(義務教育就学)から70歳まで・70歳以上のうち「現役並み所得」者
上記区分に沿って(1)では5850円、(2)では4500円
▽2割負担者
・6歳未満(義務教育就学前)・70-74歳
上記区分に沿って(1)では3900円、(2)では3000円
▽1割負担者
・75歳以上
上記区分に沿って(1)では1950円、(2)では1500円
●「PCR検査を効率的に行うための会議」を設置し、地域で実施可能な検査数等把握を
 なお厚労省は、検査体制の充実を求めるとともに、検査実施体制の把握・調整等を行うための会議体設置を都道府県等に求めています。検査実施体制の把握・調整等を行うための会議体には、▼医師会▼病院団体▼感染症指定医療機関▼地方衛生研究所▼衛生検査所協会▼帰国者・接触者外来を設置する医療機関―などが参加。「地域でPCR検査実施が可能な機関(医療機関も含む)」「各機関で1日当たり実施可能な検査数」を把握したうえで、地域内で効率的にPCR検査を実施できるような対策・方向を検討し、関係者間で調整することが求められます。例えば「受診者が一部機関に偏ってしまい、検査が実施できない」といった事態を避けることが狙いです。こうした情報は、会議体から都道府県に、都道府県から厚労省に提供され、効率的な検査実施に向けたアドバイスにつなげられます。

*8-2-1:https://www.tokyo-np.co.jp/article/kanagawa/list/202003/CK2020031002000245.html (東京新聞 2020年3月10日) <新型コロナ>血清から抗体検出 横浜市立大が新検査法開発
 横浜市立大の研究チームは九日、新型コロナウイルス感染の新検査法を開発したと発表した。血液から分離した血清を調べて、ウイルスに対抗して免疫がつくる抗体を検出する仕組み。検査キットが実用化されれば十五~三十分で結果が分かる。外部に委託せず、病院内で検査を行えるようになることが期待される。チームが新検査法を感染が分かっている患者六人に実施したところ、いずれも陽性反応が確認された。感染早期は抗体が見つかりにくいため、発症から七~十日経過した患者に有効という。現在行われているのは、遺伝子から感染を調べるPCR検査で、結果が出るまでに四~六時間程度待つ必要がある。病院から外部に検体を送る手間なども掛かるため、多くの検査を行うのが難しくなっている。

*8-2-2:https://jp.techcrunch.com/2020/03/28/2020-03-27-a-new-fda-authorized-covid-19-test-doesnt-need-a-lab-and-can-produce-results-in-just-5-minutes/ (TC 2020年3月28日) 5分間で陽性がわかるAbbottの新型コロナ検査、米食品医薬局が新たに認可
 ヘルスケアテクノロジーのAbbottが開発した新型コロナウイルス(COVID-19)の新検査方法は、結果が出るまでの時間がこれまでで最速で、しかもその場でできるため検査機関への往復が必要がない。現在、全世界的なパンデミックを起こしている新型コロナウイルスを検査するこの方法は、米国のFDA(食品医薬局)から緊急時使用許可を受けており、来週から検査の生産を開始する。1日に5万件を検査できる。このAbbott ID NOW COVID-19という検査は、診断プラットフォームAbbott ID NOWを使用する。検査装置は小さな台所用品ほどのサイズで、陽性の結果は5分間、陰性は15分間以下で出る。臨床の現場や診療所などでも検査できるようになること、また検査とその結果が出るまでの時間が短くなることから、非常に有用な手段になる。他の国で使われてきた高速検査や、結果の精度を確認しないFDAの新しいガイドラインによる高速検査方法と違い、この検査は患者から採取した唾液や粘液を使う分子検査法を利用する。従って患者の体内にあるウイルスのRNAを同定でき、ウイルスの実際の存在を検出できる。これに対して、血液中に抗体を探す方法は、すでにウイルスのいない回復した患者の血液中の抗体も陽性として見つけるかもしれない。この検査の利用可能性に関する良いニュースは、検査に使用するAbbottのハードウェアID NOWが、米国ではすでに臨床現場即時遺伝子検査用として広く普及していることだ。ID NOWは医師のオフィスや救急病院、集中治療室などの医療施設に設置されていることが多い。Abbottによると、この新しい迅速検査と3月18日にFDAの緊急時使用認可を受けた施設での検査と合わせて4月には500万件の検査が可能になるという。検査が、新型コロナウイルスによるパンデミックに対処する上で初期の問題の1つだ。一定人口あたりの検査実施数で、他国に後れをとっていた。そのためウイルスの拡散とそれによる呼吸器疾患を正確に調べることもできなかった。患者は、検査まで待つ日数が長すぎると不満の声をあげており、接触の可能性が高くてそれらしき症状が出ていても、これまでは迅速な対応を受けることができなかった。

*8-2-3:https://www.shimadzu.co.jp/news/press/zfdyn69049lnnr8r.html (SHIMADZU 2020年4月10日) 煩雑な手作業を省き、検査時間を半分に、「新型コロナウイルス検出試薬キット」を発売
 島津製作所は、4月20日にかねてより開発を進めていた「新型コロナウイルス検出試薬キット」を発売いたします。当面は国内のみの販売となりますが、5月以降の海外輸出も視野に入れて準備を進めてまいります。現状の遺伝子増幅法(PCR法)による新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の検出では、鼻咽頭拭い液などの試料(検体)からRNAを抽出して精製する煩雑な作業が必要です。これが多数の試料を迅速に検査する際の妨げになってきました。本キットの使用によってRNAの抽出・精製工程が省けるため、検査に要する人手を大幅に削減でき、かつ2時間以上かかっていたPCR検査の全工程を従来の半分である約1時間に短縮できます。96検体用PCR装置を用いて、96検体を検査した場合でも1時間半以内で行えます。また、手作業を行わずに済むため、人為的なミスの防止にもつながります。「新型コロナウイルス検出試薬キット」は、当社独自のAmpdirect技術※1 をベースに国立感染症研究所のマニュアル※2 に沿って開発しました。同技術は「生体試料に含まれるたんぱく質や多糖類などのPCR阻害物質の作用を抑制できるため、DNAやRNAを抽出・精製することなく、生体試料をPCRの反応液に直接添加できる」というものです。島津製作所は、これまでにAmpdirect技術を用いて、腸管出血性大腸菌やサルモネラ属菌、赤痢菌、ノロウイルスなどの病原体検出試薬を開発・販売しており、ここで培った技術を応用して新型コロナウイルス検出試薬の開発を行いました。
※1 Ampdirectは島津製作所の登録商標です。
※2 国立感染症研究所 「病原体検出マニュアル 2019-nCoV」(以下略)

*8-3:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200427&ng=DGKKZO58518390W0A420C2NN1000 (日経新聞 2020.4.27) アビガン早期承認 未知数、スピード感で米欧に後れ 厚労省、特例の活用鈍く
 新型コロナウイルス感染症の治療薬として期待が高まるアビガンの国内での早期承認が課題となっている。厚生労働省は申請後の審査の期間を短縮して年内の承認をめざすが、緊急的な対応での特例扱いでどこまで早められるかは未知数だ。もともと米欧などに比べ薬を現場で使えるようにするまでの仕組みが硬直的で、スピード感が劣る問題もある。アビガンは富士フイルム富山化学が抗インフルエンザウイルス薬として2014年に製造・販売の承認を得た。新型インフルの流行を念頭にした備蓄用で一般に流通はしていない。今の備蓄は200万人分。新型コロナでは1人の治療にインフルの3倍の量が必要とされ、コロナ患者では約70万人分に相当する。中国でいち早く新型コロナで治療効果を発揮した例がある。日本は現在100人規模の治験を進めており、政府はアビガンの備蓄を20年度中に現在の最大3倍にあたるコロナ患者200万人分に増やす方針だ。富士フイルムは設備の増強で9月には生産量を月30万人分に引き上げる。薬が患者に使えるようになるまでには大きく2つの段階がある。安全性や有効性を臨床試験で確かめる「治験」と、製薬会社の申請を受けて治験の結果を検証・評価する「承認審査」だ。市場投入を急ぐには承認審査の短縮が鍵を握る。インフル薬として承認済みのアビガンも、新型コロナでは投与量が3倍と大幅に異なるため安全性などを改めて確かめる必要がある。6月末までに順調に治験が終われば申請手続きに入る。日本では通常、承認審査に1年かかる。厚労省は13日、医薬品審査で新型コロナの治療薬を最優先に進めると明らかにした。審査期間を最大限短縮する特例の一つが15年に創設した「先駆け審査指定制度」。画期的な薬が開発された場合などに6カ月をメドに短縮できる。18年2月に塩野義製薬の抗インフルエンザ薬「ゾフルーザ」を申請から4カ月程度で承認した。アビガンは先駆けの指定を受けていない。加藤勝信厚労相は21日、新型コロナ治療薬の承認審査を「できる限り短期で対応したい」と述べた。先駆けの場合の6カ月に「こだわるつもりは全くない」とも語った。念頭にあるのは医薬品医療機器法に基づく措置だ。希少疾病用の医薬品など特に必要性が高いと認めた場合に最優先で審査できると定める。厚労省はこの特例を活用する構えだが、どこまで短縮できるかは未知数だ。米欧はスピード感と柔軟性がある。米国は国家の安全に重大な影響がある緊急時は米食品医薬品局(FDA)が未承認の医薬品でも使用を認める仕組みがある。通常は承認までに6カ月程度かかる薬でも短期間で使えるようになる。薬の場合は過去は2カ月程度の例があった。今回は約1カ月とみられ、検査キットなどはさらに早い。豚由来の新型インフルエンザが09年に流行した時はPCR検査キットを6日で許可した。日本との保険制度の違いなどから既存薬も別の病気の治療に使いやすい。米国がこうした対応をとるのは、炭疽(たんそ)菌などバイオテロ対策が念頭にあったためだ。テロや戦争という非常時には安全を最優先する名目で異例の対応も容認されやすい。今回の新型コロナへの対応を巡りFDAは3月に検査キットの申請を受理してから24時間以内で承認した。通常は数週間かかる手続きだという。欧州連合(EU)で医薬品を審査する欧州医薬品庁(EMA)も緊急承認の手続きがある。通常約210日の承認審査を約70日にする制度だ。一般的に医薬品の承認を規制当局に申請する場合、有効性や安全性、臨床試験などのデータをそろえて提出する必要がある。資料一式で10万ページ以上にもなる膨大な量だ。EMAの緊急承認では製薬会社が個々のデータができるとその都度、提出して審査を受ける。同時並行で審査が進むため、審査期間は大幅に短くなる。緊急対応が迫られる日本はアビガンの投与を望む患者らの不満が高まる。承認されない限りは研究目的での利用に限られる。病院が審査会などを開いて投与を認める手続きをとる必要がある。福岡市は国家戦略特区を活用してこの手続きを省略し、医師の判断で軽症段階から投与できるように厚労省に要望した。日本医師会からはアビガンの早期承認を求める声が上がる。政府内では緊急時に機動的に対応しない厚労省への不満は多い。厚労省が早期の承認に慎重な背景には1970~80年代の薬害エイズ事件の苦い記憶がある。アビガンは胎児に奇形が生じる可能性が指摘されており、副作用への目配りは欠かせない。同時に、いまは危機に備えた対応が迫られている。

*9-1:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/516805 (佐賀新聞 2020.4.27) 25兆円超の補正予算案提出、コロナ対策、30日成立へ
 政府は27日、2020年度補正予算案を国会に提出した。新型コロナウイルスの緊急経済対策の実施に向け、歳出総額25兆6914億円を計上。全国民に現金10万円を給付するため、7日に一度決定した予算案を組み替え、8兆8857億円増額した。中小企業の資金繰り支援や医療体制の整備などの費用も計上し、財源は全て国債で賄う。与野党は30日に成立させる審議日程で合意している。補正予算案では、当初計画していた減収世帯への30万円給付を取り下げ、全国民に一律10万円を配る「特別定額給付金」を追加。事務経費を含めて12兆8803億円を計上した。早い自治体では、5月上旬にも支給を始める。中小企業に最大200万円、フリーランスを含む個人事業者に最大100万円を給付する「持続化給付金」には2兆3176億円を充てた。児童手当の受給世帯への子ども1人当たり1万円給付も手当てした。全世帯への布マスク配布や、人工呼吸器やマスクの生産支援を措置。新型コロナに効果が期待される新型インフルエンザ治療薬「アビガン」の備蓄確保や、ワクチン開発支援も盛り込んだ。自治体向けの臨時交付金1兆円や新型コロナ予備費1兆5千億円に加え、感染終息後の消費喚起策を反映した。民間投資も含めた緊急経済対策の事業規模は、10万円給付の予算を加算し、117兆1千億円となっている。

*9-2:https://www.tokyo-np.co.jp/article/ibaraki/list/202004/CK2020042702000128.html (東京新聞 2020年4月27日) <コロナ緊急事態>県内のハローワーク 雇用助成金相談が急増 経営者、休業と雇用維持に苦心
 新型コロナウイルスの感染拡大による休業要請や営業時間短縮を受け、県内のハローワークでは、休業などに伴う従業員への手当を国が助成する、雇用調整助成金を巡る相談が急増している。政府は二十五日、助成額をより強化することを発表。ただ、経営者側は、事業の存続と従業員の雇用の維持を両立させるため、対応に悩む。働く側からも雇用継続を不安視する相談が増えつつある。「外出自粛で新たな契約や受注が減っている。資金繰りが厳しい」。土浦市の土浦公共職業安定所(ハローワーク土浦)に、相談で訪れた市内の建築・不動産業の女性は、ため息交じりに状況をそう説明する。女性の会社は業務を続けるが、十人ほどの従業員の休みを週二日から四日に増やした。交代制で勤務してもらい、退社時間も一時間早めた。女性は「コロナが終息した後、すぐに通常業務に戻れるよう、従業員を確保しながら、会社の経営も守らなければならないのが難しい」と不安を口にした。ハローワーク土浦では、一日平均で三十件ほどの相談があり、女性のほかにも、経営者らが席で順番を待っていた。相談が増えているのは、中国人観光客の利用が多かったバスなどの観光業者らで、外出自粛が呼び掛けられるようになると、飲食や小売り、旅館業者にも広がっているという。雇用調整助成金は、雇用を守りながら事業を続けてもらう狙いで、新型コロナで休業や事業縮小を余儀なくされた経営者に対し、従業員に支払う休業手当を助成する。四月から六月までの休業などに適用される特例で、中小企業の場合、助成率を従来の三分の二から最大十割(一人一日当たり八千三百三十円を上限)に引き上げる。申請から一~二カ月程度で支給を受けられる。茨城労働局によると、相談は一月に開始し、二月上旬から増え始め、三月末からは急増。三月十日~四月十日の一カ月間で、県内の各ハローワークや労働局で約三千件の相談があった。また、茨城労働局は、求職状況の悪化も見込む。売り上げが落ち込んでいる飲食店のパート従業員などの在職者が、先行きの不安から求職相談するケースが増えている。一方で、求人募集する企業は減ってきているため、今後の有効求人倍率は減少するとみられる。茨城労働局職業安定課の担当者は「雇用情勢へのコロナの影響は、今後出てくるだろう」と話した。

<検査と治療を抑制した論理と新型コロナの蔓延>
PS(2020年4月29日追加):ダイヤモンドが、2020年4月13日、*10-1のように、日本がコロナでPCR検査抑制を決めた論理を図解付きで、「①検査を増やせば感染の封じ込めに繋がるわけではない」「②感度・特異度が100%の検査は存在しないため、検査前に有病率の高い集団になるよう絞り込むのが、医師の診察・保健所・帰国者・接触者外来などの相談窓口の経由だ」「③まず医師が診察して発熱などの症状がある人を抽出し、その中から胸部X線画像などで新型コロナを疑わせる所見が確認できた人を抽出し、ここに濃厚接触者や渡航歴から感染の疑いがある人も含めて検査してようやく陽性的中率が高まる」「④検査数をむやみに増やすと、検査が患者にもたらす利点よりエラーの問題の方が大きくなる」「⑤現状で治療法がない新型コロナ肺炎は、検査で陽性となっても治療法が陰性の人と同じ対症療法であるため、偽陽性者を収容することによって重症患者のためのベッドが塞がれる」「⑥新型コロナの確定検査として今のところ唯一のPCR検査にはすご腕技術者が必要で、個人防護具を毎回着替えることも必要」「⑦最も大事なのは重症化を抑えて死亡率を上げないことなので、重症の人を正しく絞り込んで医療キャパシティーを空け、経路調査と接触調査を行ってクラスターを突き止め、クラスターをつぶすために検査するということを主眼に置くべきだ」と説明している。そして、この論理は、メディアで何度も報道されたものと類似しているため、厚労省及び専門家会議の公式見解なのだろう。
 しかし、①⑤は、治療法は中国が早くから公表しており、*8-3のような治療薬もあるため、厚労省が屁理屈を言って承認しないのが問題なのである。また、②については、100%の検査は存在しないが、その対応法はあり、医師が必要と判断しても保健所・帰国者・接触者外来などの“相談窓口”が事務的に止めて、*10-3のような無念の孤独死の後に新型コロナ感染が判明しているようなことが問題なのである。より被害の大きいこちらに対する損害賠償は、厚労省(→国民の税金)がするつもりか?さらに、*10-2-4のように、厚労省は埼玉県で50代と70代の男性2人が自宅待機中に容体が悪化して死亡したことを受けて、4月28日、自宅療養中の患者に「表情・外見」「息苦しさ」「意識障害」などの12項目の症状がある場合は自治体に連絡することにしたそうだが、そのような状態になった時に自治体に連絡して時間を浪費することなどできないため、速やかに医師に相談すべきなのだ。さらに、③の要件は、重症の人とクラスターの中に入った無症状の人を混在させており、(もう長くは書かないが)科学的でも効率的でもないのだ。また、④⑤⑥⑦については、厚労省とその肝いりの専門家会議が、*10-2-1・*10-2-2・*10-2-3のように、何カ月も同じ後ろ向きのことを言っている間に、検査方法も*8-2-1、*8-2-2、*8-2-3のように短所を改善した方法が開発され、外国では承認されている。これが、日本の厚労省の問題点なのである。
 さらに、*10-4に、「⑧首相は、新型インフルエンザ治療薬『アビガン』の活用を進める方針も示し、1月末から2月の初めに新型コロナウイルスの治療に有望だとの報告があったと言及し、(患者)本人にぜひ希望していただき、医師に『自分は使いたい』と言ってほしい」と語った」「⑨立憲民主党など野党5党は事業者の家賃負担を支援する法案を衆院に共同提出」と書かれている。しかし、⑧については、私のいとこ(45歳、男性)が入院して酸素吸入した後も頭が割れるように痛かったので、ウイルス性髄膜炎なども心配して担当医にアビガンを使ってくれるよう頼んだが、担当医に「重症ではないので、あなたには使えない」と言われた。しかし、アビガンは、軽症時に使わなければ効果が低いため、承認されていないことが問題なのだ。また、⑨の家賃については、そもそも日本企業は、家賃を払うために働いているかと思うほど収益に占める家賃の割合が高く、それが日本国内で仕事をしにくくしている理由の一つだ。にもかかわらず、バブルで収益還元価値よりも高くなりすぎた家賃(不動産価格)を1990年代に苦労して修正したのを、再び上昇させて喜んでいたのが馬鹿というほかないのである。

   
 2020.4.6 Our World in Date    2020.4.13ダイヤモンド(*10-1より)

(図の説明:左図のように、日本の人口100万人あたりの新型コロナ検査数は著しく低い。また、中央の図のように、ダイヤモンドが、検査を抑制している理由を検査数を増やしても治療薬がないため死亡者は減らないからと説明している。さらに、右図のように、完璧な検査法はなく、新技術も見通し不良だとしている。しかし、このような硬直的な考え方が、新しい検査方法や治療薬の開発・実用化を妨害し、検査数の低下をもたらし、国民の命を無駄に失わせた上、膨大な経済対策を必要にさせているのだ)

*10-1:https://diamond.jp/articles/-/234135?page=5 (ダイヤモンド 2020.4.13) 日本がコロナで「PCR検査抑制」を決めたロジックを完全図解 
新型コロナウイルスの感染が世界に広がる中、注目を集めているのが“検査”だ。検査を増やせば感染の封じ込めにつながるという意見も多いが、そこには落とし穴がある。特集『健康診断のホント』(全18回)の#1では、日本が「PCR検査抑制」という戦略を採ったロジックを図解で分かりやすくお伝えする。 
●マイクロソフト創業者ビル・ゲイツ氏が、楽天の三木谷浩史氏が「検査」に関心
希望する全ての人に新型コロナウイルスの検査を――。このような使命に燃える経営者が増えている。米マイクロソフトの創業者ビル・ゲイツ氏は、自身の福祉財団で、米シアトル周辺地域の住民に向けて、家庭用の新型コロナ検査キットを配布する計画を発表した。自宅で鼻の内側を綿棒で拭って採取した検体をアマゾン配送網で検査センターに送ると、新型コロナへの感染の有無を調べられるという。日本でも「検査キット100万個を無料で配る」と孫正義・ソフトバンクグループ会長兼社長が発言(後に撤回)すれば、楽天の三木谷浩史会長兼社長も「日本は新型コロナ検査が遅れており、このままでは信頼感がなくなる。非対面やドライブスルーで検査し、まず初診はスマートフォンを使った遠隔医療を」と主張している。「検査を増やせば感染の実態が分かり、迅速な隔離と治療につなげられる。もっと検査を」という声は、日本でも世界でも、政治家、企業人、一般人の別を問わず多い。しかし、今回の新型コロナの流行や、感染者がどこにいるか分からない状態を生み出したその元凶の一端は、皮肉なことに「検査」にもあると考えられるのだ。新型コロナウイルスパンデミックは、日本と世界が持つ検査や健診についての認知のゆがみを浮き彫りにした。私たちは日頃から健診・検査とどう向き合えばいいのか。特集『健康診断のホント』全18回を通じて詳しく見ていこう。はなから頼りにされている検査だが、そもそもこの検査とは何か。感染している人を正しく陽性と判定する確率を「感度」、そして感染していない人を正しく陰性と判定する確率を「特異度」と呼ぶ。感度・特異度が100%の検査は存在しない。これが大前提だ。上図を見てほしい。左の20人中10人が感染している(有病率50%)状態で、感度70%、特異度90%の検査をしたとする。感染している10人のうち3人が陰性(偽陰性)、感染していない10人のうち1人が陽性(偽陽性)になる。この検査で陽性となった人の中で実際に感染している人の比率(陽性的中率)は88%だ。一方、検査を受ける人の数が多く有病率が9%と低い右の集団では、陽性的中率は41%に下がってしまった。陽性判定の半分以上が「ぬれぎぬ」を着せられたわけだ。病気の人を探したいのに当たりが半分以下では困る。ならば、検査前に有病率が高い集団になるよう絞り込まなければいけない。現在新型コロナの検査は医師の診察または保健所や帰国者・接触者外来などの相談窓口を経由して行うようになっている。「なかなか検査してくれない」とブーイングも上がるが、まさにこれは検査対象をフィルタリングしているのである。先の図のように、まず医師が診察し、全体の中から発熱などの症状がある人を抽出、さらにその中から胸部X線画像などで新型コロナを疑わせる所見が確認できた人を抽出する。ここに濃厚接触者や渡航歴から感染の疑いがある人も含めて検査。これでようやく陽性的中率が高まる。「検査を意味なく渋っている」のではない。病状のない人にまで検査を乱発すると見逃しやぬれぎぬを続出させるだけだ。正しい絞り込みなしに検査したところでまともに感染者は見つからない。検査の数を増やせば増やすほど偽陰性・偽陽性が増える。仮に1000万人に広げるとしよう。すると先の図で示した通り、有病率が全体の90%と高くとも、最大で360万人の偽陰性者、つまり「本当は感染しているのに誤った陰性結果に安心して野に放たれる人」をつくり出すことになる。ダイヤモンド・プリンセス号の乗客の検査でも、陰性証明書を手に安心して街に出た偽陰性の人から感染が広がったということがあった。これと同様のことが起きる。また「検査数をむやみに増やすと、検査が患者にもたらす利点よりエラーの問題の方が大きくなるのではないか」と東京大学公共政策大学院の鎌江伊三夫特任教授はみる。というのも、現状で治療法がない新型コロナ肺炎では、検査で陽性となると本人は隔離されるが、治療法は陰性の人と同じ対症療法だからだ。そのため偽陽性者を収容することによって、より重症の真陽性患者のために空けるべきベッドがふさがれるのも見逃せない。
●機械だけじゃ無理、すご腕技術者が支えるPCR検査
 ただし、きちんとしたフィルタリングの上で「検査数」を増やすべきなのは確かだ。それには何が必要か。まずは現行のPCR(ポリメラーゼ連鎖反応)検査について知る必要がある。新型コロナの確定検査として今のところ唯一のPCR検査。その工程は大きく四つに分かれる。まずは医師、看護師などが患者から検体を採取する。新型コロナの場合、ウイルスは肺に近い下気道の方にいるため、国立感染症研究所は気道からの吸引液か、鼻からスワブを突っ込み咽頭から液を拭い取る方法を推奨している。この作業自体も飛沫感染の危険を伴う。そのため個人防護具を着て1人終わるごとに毎回手順通りに着替えることが本来は必要になる。検体を他の検査機関に輸送するにも二次感染を防ぎ検体の品質を維持するため厳重な態勢が必要だ。冒頭のビル・ゲイツ財団が計画する「自分で検体を取って郵送する」やり方は大いに問題がある。検体が検査機関に到着すると、臨床検査技師の出番である。PCR検査では、検体前処理の図版中の写真のようにバイオハザード対応のキャビネットの中で、人手による前処理作業をすることが欠かせない。遺伝子検査業務は無資格者でもできるが、経験の浅い人がやると失敗や感染の危険がある。ここまでやっていよいよPCR反応にかける。DNAと試薬の入ったチューブを、温度の変化を繰り返しながらDNAを大量に増幅させ、見える形にしてようやく「陽性」と判定が出る。ここにたどり着くまでに数多くのハードルがあり、逆に言えば検査の工程上、落とし穴が多く偽陰性が出やすいということだ。検査精度を保ったまま検査数を増やすのは難しい。感染拡大を機にさまざまな新検査方式が登場してはいるが、大半は実用化に至っていない。迅速検査のイムノクロマトが普及すれば、クリニックで検査ができるようにはなるが、これは感度70%、特異度99%ほどといわれている現行のPCRよりも精度が落ちる見込みだ。また、感染の初期には使えない可能性も高い。そもそも、検査はなぜ行うのか。感染した個人の治療に役立て、社会の感染状況を科学的に分析するという二つの目的があるが「最も大事なのは重症化を抑え、死亡率を上げないこと。だから重症の人を正しく絞り込み、その分の医療キャパシティーを空ける。そして経路調査と接触調査を行い、クラスターを突き止め、つぶすために検査をするということを主眼に置くべきだ」と米国立衛生研究所・アレルギー感染症研究所博士研究員の峰宗太郎氏は指摘する。

*10-2-1:https://www.mixonline.jp/tabid55.html?artid=69146 (ミクスオンライン 2020/4/23) 新型コロナ専門家会議 「対策のフェーズが変わった」医療崩壊と重症化の防止に力点
 政府の新型コロナウイルス感染症対策専門家会議は4月22日、厚労省内で記者会見し、緊急事態宣言発出後の状況分析と現状の課題について提言した。副座長の尾身茂氏(地域医療機能推進機構理事長)は、医療提供体制とPCR検査体制について、「対策のフェーズが変わった」と述べ、「医療崩壊防止と重症化防止により死亡者数の最小化を図っていくかに力点を置く」と強調した。感染拡大で患者数が増加することに備えて、地域医師会と協力し、かかりつけ医が患者から直接相談を受ける体制を整える。かかりつけ医は必要に応じて地域医師会が運営する「コロナ検査センター(PCRセンター)」に検査を依頼。無症候者や軽症者は自宅療養、宿泊療養で対応する。一方、都道府県は感染症指定病院への受入れを重症・中等症の患者に割り当てるなど、地域で医療崩壊を起こさせないような連携体制の構築を求めた。
◎感染者の増加のスピードに追いつかない
 専門家会議はこの日の会見で、東京都など一部地域で「感染者の増加のスピードに追いついていない状況」となっていることに危機感を表明した。その上で、都道府県知事のリーダーシップのもと、①医療機関の役割分担の促進、②PCR等検査の実施体制の強化、③保健所体制の強化、④感染状況の共有、⑤搬送体制の整備-に取り組むよう要請した。また国に対しては、感染リスクと背中合わせでウイルスと闘っている医療従事者のために、感染防護具などの確保、検査試薬、検体採取スワブ等の資材の安定確保に最大限努力するよう要請した。
◎患者の相談や受診に「かかりつけ医」が参画 地域医師会との協力体制構築を
このうち医療機関の役割分担の促進では、地域医師会との連携を強く求めた。発熱症状などを訴える患者の相談や受診については、地域の「かかりつけ医」が参画するよう求めている。これまでの対応では、帰国者・接触者相談センターが窓口となっていたが、感染者が増加していることから、別途、地域の診療所等の活用による「2系統体制」を構築する。かかりつけ医がPCR検査の必要性を認めた場合は、地域の医師会が運営するコロナ検査センターに検査を直接依頼できる。これにより検査実施から結果までの時間を短縮できるほか、自宅療養、宿泊療養への患者の振り分けや、その後の療養指導などを地域の医師会と連携して行うことができる。すでに東京都医師会が「地域のPCRセンター」を最大47立ち上げることを表明している。この際のPCR検査については、保険診療として民間の検査会社を活用することができる。
◎重症化リスクの高い人「day0、day1でも即座に相談を」尾身副座長
 なお、この日は新型コロナウイルス感染症を疑う症状の定義で新たな見解を示した。高齢者や基礎疾患がある重症化リスクの高い人、妊婦については、「肺炎が疑われるような強いだるさ、息苦しさ、37.5℃以上の発熱が続くなどの症状が、ひとつでもある場合は、4日を待たずすぐに相談して欲しい」と呼びかけた。「day0(発熱初日)、day1(発熱1日後)でも即座に相談して欲しい」と強調した。毎日体温を測定するなどして、体調管理を行い、”普段と違う”というサインに自ら耳を傾ける必要性を指摘した。また小児については、小児科医による診察が望ましいとした。
◎治療薬「重症化するリスクの高い患者に適切な治療薬を」
 治療薬やワクチンについては現在、観察研究や治験が複数進行中。尾身副座長はこの重要性を強調したうえで、薬事承認まで一定の期間を要することから、「副作用等を慎重に検討しつつも、迅速に臨床での使用を検討することが必要」と指摘した。現在の投薬については、あくまで”緊急避難的な対応”として、「医師の判断による治療薬の投与は日本感染症学会の見解をもとに、医療機関で所定の手続きをとり、患者の同意を取得した上で、引き続き継続すべき」とした。また、重症化するリスクの高い患者に対して、重症化する前に適切な治療薬を選択することが必要とした。ただし、重症化する前の投与は、研究として行われるべきとした。また、重症な予兆を示唆する「重症化予測マーカー」の確立に向けて、研究班を立ち上げ、結果を早急に臨床現場で活用できるよう検討することを求めた。尾身副座長は、「重症化予防、死亡者をできるだけ減らしたいというのが最優先の課題」と述べ、重症化しやすい患者を同定し、適切な治療につなげることの重要性を強調した。
◎「人との接触を8割減らす、10のポイント」を公表
 このほか専門家会議は「人との接触を8割減らす、10のポイント」を公表した。具体的には、①ゴールデンウイークはオンライン帰省、②スーパーは1人または少人数で、③ジョギングは少人数、公園はすいた時間を、④待てる買い物は通販で、⑤飲み会はオンラインで、⑥診療は遠隔診療、定期受診は間隔を調整、⑦筋トレやヨガは自宅で動画を活用、⑧飲食は持ち帰り、宅配も、⑨仕事は在宅勤務、⑩会話はマスクをつけて-の実施を呼びかけ、ヒトとの接触機会を「最低7割、極力8割」まで減らすことを実践して欲しいと要請した。専門家会議はまた、正確な国民の感染状況を確認するため、抗体保有状況を確認する等の「血清抗体調査」を継続的に行う体制を整備する方針も盛り込んだ。

*10-2-2:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%96%B0%E5%9E%8B%E3%82%B3%・・ (Wikipediaより、新型コロナウイルス感染症対策専門家会議メンバーを抜粋)
座長:  脇田隆字(国立感染症研究所所長)
副座:  長尾身茂(地域医療機能推進機構理事長)
構成員: 岡部信彦(川崎市健康安全研究所所長)
     押谷仁(東北大学大学院医学系研究科教授)
     釜萢敏(日本医師会常任理事)
     河岡義裕 (東京大学医科学研究所感染症国際研究センターセンター長)
     川名明彦(防衛医科大学医学教育部教授)
     鈴木基(国立感染症研究所感染症疫学センターセンター長)
     舘田一博(東邦大学医学部教授)
     中山ひとみ(霞ヶ関総合法律事務所弁護士)
     武藤香織(東京大学医科学研究所教授)
     吉田正樹(東京慈恵会医科大学医学部教授)

*10-2-3:https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200428/k10012409751000.html (NHK 2020年4月28日) 緊急事態宣言「全国対象に期間延長を」日本医師会 常任理事
 新型コロナウイルスの感染拡大に伴う緊急事態宣言について、政府の専門家会議のメンバーで日本医師会の常任理事を務める釜萢敏氏は「感染者の減少が十分とは言えない」として、全国を対象としたまま、来月6日までの期間を延長すべきだという考えを示しました。日本医師会の釜萢常任理事は記者会見で、緊急事態宣言について「延長するかどうかを判断する大きな指標の1つは、各地の医療提供体制だ。医療資源の乏しい地域ではひとたび院内感染が発生すると一気にひっ迫した状況になるので、全国で感染者が増えないようにすることが必要だ」と指摘しました。そのうえで「宣言から3週間がたったが、当初狙っていたほどの感染者の減少には至っていない。対象を全国に拡大したのは、感染者が多い地域からの人の移動で感染を広げるリスクがあったからだが、その懸念はまだしばらく続く」と述べ、全国を対象としたまま、来月6日までの期間を延長すべきだという考えを示しました。

*10-2-4:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/517520 (佐賀新聞 2020.4.28) 厚労省、緊急性高い12症状公表、「胸の痛み」「脈がとぶ」
 厚生労働省は28日、新型コロナウイルス感染症の軽症者や無症状の感染者がホテルなどの宿泊施設や自宅で療養する際、注意すべき緊急性の高い症状を公表した。「胸の痛みがある」「肩で息をしている」「脈がとぶ」といった12項目の症状。一つでも当てはまれば自治体の相談窓口か宿泊施設の看護師らにすぐに連絡するよう呼び掛けている。厚労省は埼玉県で50代と70代の男性2人が自宅待機中に容体が悪化して死亡したことを受け、軽症者や無症状者の療養先を原則ホテルや宿泊施設に切り替えた。ただ、施設の準備が整わないといった場合は、引き続き自宅療養を容認している。療養中に症状の変化に素早く気付いて対応できるよう、患者本人や家族に確認してもらいたい考え。「表情・外見」「息苦しさ」「意識障害」に分けて緊急性の高い症状を示している。具体的には「唇が紫色になっている」「ゼーゼーしている」「ぼんやりしている(反応が弱い)」「横になれない。座らないと息ができない」などを挙げている。軽症者は宿泊施設や自宅での療養中にウイルス量が増える可能性がある。そのため、自身で1日3~4回、朝昼晩や就寝前に症状をこまめに確認するよう求めている。

*10-3:https://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/202004/CK2020042602000150.html (東京新聞 2020年4月26日) <新型コロナ>単身赴任男性、無念の孤独死 発熱6日後検査、死後コロナ判明
 全国の警察が変死などとして扱った十五人が、新型コロナウイルスに感染していたことが判明した問題。そのうちの一人が、東京都世田谷区の社員寮で急死した五十代の男性会社員だった。単身赴任中の男性は発熱後、保健所に相談しようとしたものの電話がつながらず、PCR検査を受けられたのは発熱から六日後。検査結果が出たのは、命が失われた後だった。死に至るまでの状況を証言したのは、男性の友人。取材に「遺族が嫌がらせを受ける恐れがある」と、会社名など身元を特定する情報は報じないよう求めた。友人によると、男性が発熱したのは今月三日。その少し前から職場の上司に発熱とせきがあったため、男性は九州の自宅に残る妻に「新型コロナに感染したかもしれない」とLINE(ライン)でメッセージを送っていた。男性は世田谷保健所の相談センターに何度も電話したが、回線が混み合っていたためか、一度もつながらなかったという。男性が自宅待機していた七日、上司はPCR検査で陽性と判定された。男性は会社から「濃厚接触者に当たる可能性がある。検査を受けるように」と言われ、再び相談センターに電話したが、またしてもつながらなかった。かかりつけ医が保健所に連絡してくれたことで、男性は二日後の九日にようやく検査を受けられることに。だが、病院は検査を受ける人であふれていたようで、妻に「結果が出るまで一週間かかると言われた」とメッセージを送っている。入院することもなく寮に戻った男性。「せきがひどくて眠れない。胸が痛い」「薬局に薬を届けてもらった」。十日夜、妻にラインで状況を伝えた後、応答がなくなった。翌十一日、寮で暮らす同僚が部屋に様子を見に行くと、既に息絶えていた。警視庁玉川署は変死事案として捜査。妻が死因は新型コロナによる肺炎だと知ったのは、同署に呼ばれた十三日だった。密封された遺体は、防護服姿の署員によって葬儀会社の車に積み込まれ、妻との対面がかなわないまま火葬された。同行した友人は「明るくて健康なラガーマンだった。一人でいながら一向に保健所に電話がつながらず、どれほど不安だったか」と唇をかんだ。男性の妻は友人を通じて本紙に、「発熱もせきもあったのになかなか検査を受けられず、入院もできなかった。同じことが繰り返されぬよう、(行政などは)態勢をきちんと整えてほしい」との言葉を寄せた。
      ◇ 
 世田谷区の感染者数は都内の市区町村で最多。保健所の相談センターに電話が殺到したことから、区は十三日、回線数を六回線に倍増させ、担当職員も六人から九人に増やした。
都医師会は今月中に、保健所の相談センターを通さなくても開業医らの判断で検査できる「PCRセンター」を都内に十カ所ほど開く考えを示している。
◆50代男性 死亡の経過
4月3日 発熱。少し前から上司が発熱とせき。妻に「新型コロナに感染したかも」とライン。
     保健所の相談センターに何度も電話したが、つながらず
  7日 上司が陽性と判明。会社から検査を受けるように言われたが、相談センターに
     電話つながらず
  9日 ようやくPCR検査。「結果が出るまで1週間かかると言われた」と妻にライン
 10日 夜「せきがひどくて眠れない。胸が痛い」などと妻にライン後、応答なくなる
 11日 男性が自室で亡くなっているのを同僚が見つける
 13日 新型コロナによる肺炎が死因だと、妻が警察から知らされる
     電話殺到を受け、世田谷区が相談センターの態勢を強化

*10-4:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/517250 (佐賀新聞 2020.4.28) 首相、家賃支援で追加対策検討、アビガン活用に意欲、衆院予算委
 安倍晋三首相は28日の衆院予算委員会で、新型コロナウイルスの感染拡大を受けた事業者への家賃支援を巡り、追加の対策を検討する意向を示した。自民党の岸田文雄政調会長の提案に対し、党の検討を受け止めると表明。「この状態がさらに延びることになれば当然、さらなる対策も考えなければならない。ちゅうちょなく、やるべきことをやる」と応じた。新型インフルエンザ治療薬「アビガン」の活用を進める方針も示した。立憲民主党など野党5党は事業者の家賃負担を支援する法案を衆院に共同提出。首相は野党の動向も念頭に、家賃を巡る追加支援に前向きな姿勢を示したとみられる。首相は事業者などへの支援を巡り、手続きの迅速化を急ぐ意向も言明。「今はまさに非常時だ。多くの方々が経営を続けることができるかどうか、生きるか死ぬかの状況に直面している。今までの発想を変えなければならない」と述べた。岸田氏は企業が従業員を休ませた場合に支給する「雇用調整助成金」などを巡り、窓口対応の遅さを指摘。首相は自身の責任で改善を図るとした上で「危機を乗り越えることを最優先に、不正などは事後対応を徹底すればいい」と強調した。立民の枝野幸男代表は、金銭的に厳しい状況の大学生などへの支援に関し、中小企業や個人事業主向けの「持続化給付金」を適用すべきだと主張。首相は給付型奨学金や雇用調整助成金で対応できるとして慎重な考えを示した。首相はアビガンに関し、1月末から2月の初めに新型コロナウイルスの治療に有望だとの報告があったと言及。「(患者)本人にぜひ希望していただき、医師に『自分は使いたい』と言ってほしい」と語った。

<緊急事態宣言のさらなる延長と教育>
PS(2020年4月30日、5月1、2、4《図》日追加):*11-1に「①東京都の4月28日の感染者は112人で、その4割弱の42人は感染経路不明」「②都市部を中心に新型コロナの収束の兆しが見えず、知事会の要請を受けて、政府が緊急事態宣言を1カ月程度延長する方針」「③5月1日に開く政府専門家会議で状況分析する」「④専門家会議の座長を務める脇田国立感染症研究所長は、4月29日の参院予算委員会で、延長の是非を判断する材料として(i)感染の広がり (ii)接触削減などの行動変容 (iii)医療提供体制 の3点を挙げた」「⑤首相は『薬とワクチンの開発によって収束ということになる』と説明した」と書かれている。しかし、①の東京都は特に人混みが多く感染経路不明者が出るのは当たり前であるのに、③④の政府専門家会議と厚労省は、自分たちが三密の中で、いつまでもクラスター追跡に専念し、論文に書けない程度の統計数字の発表ばかり行って市中蔓延に至らしめ、検査も絞って⑤の治療に結び付けず、②の新型コロナ収束に失敗した張本人であるため、政府専門家会議は厚労省の代弁者ではなく、それこそITを使って各地で治療・研究の第一線で働いている医師や研究者の組織に変更する必要があるだろう。
 さらに、*11-2のように、全国知事会は、新型コロナ対策に関する国政への提言をしてよいことだと思うが、緊急事態宣言を全国一律に延長するかどうかについては、感染状況が下の右図のように都道府県によって異なるため、それぞれの都道府県の判断に従った方がよく、むしろ全国知事会は検査の充実と治療薬の早期承認を要望された方が効果的だと思う。
 なお、*11-2の「⑥休校する地域とそうでない地域で学力差が生じる懸念がある」「⑦この機に9月入学の欧米に合わせるべきだ」という意見については、私は、他の要素での格差も大きいので、①のように首都圏の公立校が不利になる格差だけを問題にするのは、むしろ不公平だと思う。そのため、護送船団方式でいっせいに不利にするのはむしろマイナスで、それぞれの不利について各自治体で解決法を考えるべきだと思う。また、⑦や*11-3-2の9月入学については、高校・大学はグローバル・スタンダードに合わせた方が留学・就職に便利だが、小中学校を何歳の何月から始めるかは各自治体が自らの不利をカバーするように考え、次第にBest Practiceに収れんさせるのがよいと考える。
 文科省が、*11-3-1のように、「⑧新型コロナ感染拡大による休校を解除する際、優先度の高い小学1年・小学6年・中学3年の登校を先行するよう各自治体に求める方針を固めた」「⑨任意の分散登校を行い、学級ごとに登校時間をずらす・・」というのは、文科省の仕事としては小さすぎる。それより、これを機会に1学級の人数を標準30人に決め、そのための教員増加や感染症を広げず学業がはかどる空調を備えた学校施設への改修に補助を行う方がよいだろう。
 なお、*11-4のように、安倍首相は新型コロナの感染拡大で長期化する学校休校を踏まえ、9月入学制を来年導入する可否の具体的検討に入り、教育界だけでなく社会全体に大きな影響を及ぼすとして各府省庁の事務次官に課題の洗い出しを指示されたそうだ。私も、欧米諸国・中国などと同じ秋入学にした方が便利だと思うが、小1児童の入学時期が秋になれば移行期4~8月は保育所等の受け入れ態勢が課題となる上、子どもの数が減って小学校はゆとりがあり、共働きが増えて保育園は不足しているため、この際、小学校入学年齢を英国と同じ5歳か約87%の子どもが幼稚園か保育園に入る3歳にするのがよいと思う。

  

(図の説明:左図は、新型コロナウイルスの電子顕微鏡写真で、中央の図は、新型コロナウイルスをエアロゾルにした時の生存期間だ。これだけはっきり見えているウイルスを、「目に見えない敵」と表現するのは非科学的なのでやめた方がよい。また、右図が新型コロナウイルスの都道府県別感染者数で、《不完全な統計でも》人同士の距離が近くなる都会に多いことがわかる)


英国の義務教育制度      日米の教育制度       日本の幼稚園・保育園通園率

(図の説明:左図のように、英国は5歳の時に小学校に入学し、中央の図のように、日米は6歳の時に小学校に入学する。また、右図のように、日本では、3歳で幼稚園か保育園に通っている子どもが約87%おり、5歳では98%の子どもが幼稚園か保育園に通っている)

*11-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200430&ng=DGKKZO58627330Q0A430C2PE8000 (日経新聞 2020.4.30) 新型コロナ、収束の兆し見えず、緊急事態宣言延長、知事会も要請 専門家会議あす開催
 政府が緊急事態宣言を1カ月程度延長する方針を固めたのは、宣言発令から3週間が過ぎても、都市部を中心に新規の感染者数が十分に下がらないためだ。全国の自治体からも全都道府県での延長を求める声が相次いでいる。新型コロナウイルスの感染拡大は収束の兆しがなおみえない。30日で緊急事態宣言を全国に広げて2週間になる。5月1日に開く政府の専門家会議で状況を分析する。新規感染者数は鈍化傾向にあるが、なお高止まっている。東京都は29日、新たに47人の感染が確認されたと発表した。前日の28日は112人で、その4割弱にあたる42人が感染経路が不明だった。1日の死者数も最多の9人だった。地方でも札幌市で過去最多に並ぶ26人に達するなど、一部の地域で高水準の新規感染者が確認されている。安定した収束傾向には至っていない。延長の対象地域を巡っては、全国知事会が29日にテレビ会議方式で開いた会合で全国一律で延長すべきだとの意見が多く出た。一部の地域で先行して宣言を解除すれば、都道府県境を越えてその地域に人が流入する可能性を懸念している。静岡県の川勝平太知事は会合で「県内は感染まん延期の直前だ。宣言延長では県境をまたぐ移動を防ぐためにも対象地域を限定すべきではない」と訴えた。秋田県の佐竹敬久知事は「大都市の感染拡大が収まらない限り、全国的なリスクは残る」と述べた。30日にも新型コロナ対策を担う西村康稔経済財政・再生相に緊急提言として提出する。29日の参院予算委員会には専門家会議の座長を務める脇田隆字・国立感染症研究所長が出席した。延長の是非を判断する材料として(1)感染の広がり(2)接触削減などの行動変容(3)医療提供体制――の3点を挙げた。現状の患者数が2週間前の感染状況を反映しているとされ、脇田氏は「ピークアウトしたかどうかまだ判断できない。1週間程度感染の状況を見て判断する」と話した。安倍晋三首相は29日、日本医師会の横倉義武会長と首相官邸で会い、医療現場の現状を巡り意見交換した。感染者数を抑制できなければ、医療現場の崩壊につながりかねないとの懸念は強い。これも延長判断の大きな理由になったとみられる。政府が緊急事態宣言を1カ月で終えるために掲げた「人と人の接触機会8割削減」という目標も達成できていない。NTTドコモのモバイル空間統計によると、28日の新宿周辺の人出は感染拡大前に比べて70.8%減少した。福岡市の天神周辺は58.9%減にとどまるなど、地方ではなお外出自粛が不十分だとの見方がある。首相は衆院予算委で緊急事態宣言の根拠となる改正特別措置法のさらなる改正に触れた。「今の対応や法制で十分に収束が見込まれないのであれば、当然新たな対応も考えなければならない」と指摘した。西村経財相は27日、自治体が特措法に基づく休業指示を出しても従わない事例が多発した場合に、法改正で罰則規定を設ける考えがあると言及していた。宣言を延長しても、収束のめどが立っているわけではない。首相は予算委で「薬とワクチンの開発によって収束ということになる」と説明した。米国で秋にもヒトへのワクチン接種が可能になるとの見通しを示し「日本も研究を加速させていきたい」と言明した。感染者が少数にとどまる県では全国を対象としたまま延長することへの慎重論もある。佐賀県の山口祥義知事は29日の全国知事会会合で「(感染者が多い)都市部に合わせるのではなく、地方それぞれの特性があっていいのではないか」と発言した。

*11-2:https://www.shinmai.co.jp/news/nagano/20200430/KT200429ETI090009000.php (信濃毎日新聞 2020年4月30日) 全国知事会 住民目線で国政に注文を
 国の対策が後手に回る中、現場に近いところで指揮を執る知事の役割が重要性を増している。全国知事会が新型コロナウイルス対策に関する国政への提言を議論した。噴出する課題は医療、福祉、教育などあらゆる場面に及ぶ。地域における感染防止の課題や暮らしへの影響を国が把握し切れない状態は、今後も続くだろう。各知事は国政に対し、住民の目線で具体的な提案を重ねていかねばならない。全国知事会は、その先頭に立ってもらいたい。今回焦点になった一つは、緊急事態宣言を全国一律に延長するかどうかだ。一部の地域で解除すると、他の地域から人が移動して感染を広げる恐れがある。ただ、感染状況は都道府県によって開きがある。延長に伴う財政負担への懸念から否定的な知事もおり、温度差が目立った。一律延長の検討を国に求める方針を確認したものの、今後は、財政力の違いも踏まえどんな提言を示せるかが課題となりそうだ。知事会はこれまで、医療や検査の体制整備を国に求めてきた。既に独自の取り組みを進めている都道府県も多い。それぞれの経験を基に、有効な対策を共有する取り組みも重要になってくる。気になるのは、強権的な姿勢が目立ち始めた点だ。新型コロナ特措法に基づく休業要請に応じない事業者に罰則を設けるよう、法改正を求める声が出ている。支援策が不十分なまま、従わないのが悪い、と決め付ける雰囲気を社会に醸成するような対応が良い方向に向かうとは思えない。やむにやまれず営業する事業者がいれば、その声に耳を傾け、実効性ある対策を探っていくのが知事の役割ではないか。私権の制限には慎重であるべきだ。ここにきて知事の間で急速に盛り上がってきたのが、小中高校や大学の休校長期化を受けた9月入学制の導入論議である。長野県を含む17県の知事でつくる「日本創世のための将来世代応援知事同盟」などで賛成が相次いだ。休校する地域とそうでない地域で学力差が生じる懸念があり、この機に9月入学の欧米に合わせるべきだとの意見がある。一方、社会的な影響の大きさを考えて慎重な意見もある。一石を投じた意義はある。重要なのは現場に即して考える視点だろう。学校や家庭は子どもたちの学習機会を保障しようと努力を続けている。飛び越えて議論が進むことがあってはならない。

*11-3-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200501&ng=DGKKZO58653800Q0A430C2CC1000 (日経新聞 2020.5.1) 小1・小6・中3 優先登校 文科省指針 再開時、受験・「慣れ」配慮
 文部科学省は新型コロナウイルス感染拡大による休校を解除する際、小学1年、小学6年、中学3年の登校を先行するよう各自治体に求める方針を固めた。1日にも開かれる政府の専門家会議の報告を踏まえ、同日中に全国に通知する指針に盛り込む。学校では感染拡大の原因となる3密(密閉・密集・密接)になりやすい。登校の一斉再開を避け、優先度の高い学年から段階的に再開することで、感染リスクを抑える狙いがある。萩生田光一文科相は30日の参院予算委員会で「段階的に必要最小限度の教育活動を開始することが重要だ」と指摘。「例えば任意の分散登校を行い、進学を控える最終学年から学習活動を開始するなど様々な工夫が考えられる」と述べた。小6と中3は受験や卒業を控えており、現状の学事日程では休校期間中の授業時間を次の学年で補えない。小1は集団生活に慣れ始める時期であることなどを考慮した。文科省はこれまでの指針で、学校を再開する場合は毎朝の検温や換気の徹底、マスク着用などの対策をとることを求めていた。今回の指針では学級ごとに登校時間をずらすことなども選択肢として盛り込む見通しだ。

*11-3-2:https://www.nikkei.com/paper/related-article/?b=20200501&c=DM1&d=・・ (日経新聞 2020.5.1) 小池・吉村知事が9月入学求める 共同でメッセージ
 東京都の小池百合子知事と大阪府の吉村洋文知事は30日、学校の9月入学の導入などを求める共同メッセージを発表した。9月入学が多くの国で導入されていることを踏まえ「若者が世界で活躍するためにも重要だ」(吉村氏)と両知事が賛成の立場を示した。小池知事による生配信の動画サイトに吉村知事が出演し、共同メッセージを公表した。小池氏は「日本の教育が世界のスタンダードになっていくために中身の濃い議論をスピーディーに行うことが必要だ」と強調した。また、新型コロナウイルスの感染拡大防止策の一環として、休業に協力した事業者への家賃支援を迅速に法制化するよう国に要望した。改正新型インフルエンザ対策特別措置法で、防止対策を円滑に講じられるように自治体による裁量権の拡大も求めた。

*11-4:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/518770 (佐賀新聞 2020.5.1)  9月入学制、論点整理着手、来年導入、6月上旬にも方向性
 安倍晋三首相は新型コロナウイルスの感染拡大で長期化する学校休校を踏まえ、9月入学制を来年導入する可否の具体的検討に入った。教育界だけでなく社会全体に大きな影響を及ぼすとして、首相官邸が各府省庁の事務次官に課題の洗い出しを指示した。政府筋が1日、明らかにした。論点整理を受け、6月上旬にも方向性をまとめたい考えだ。首相は国会で「選択肢として検討する」と答弁。「課題が解決されれば現実味を帯びる」(政府筋)との見方が出ている。9月入学案は、学習の遅れや、学校再開時期のばらつきが生じることへの不安解消策として浮上した。欧米諸国や中国などの秋入学に足並みをそろえ、海外留学や外国人留学生の受け入れ加速を狙う意味合いもある。一方、9月入学とした場合、4月を起点とする社会・経済システムとの整合を図る必要が生じる。3月卒業を前提に実施される国家試験の日程調整が求められるほか、企業採用へ影響する可能性もある。小1児童の入学時期が秋にずれ込めば、移行期の4~8月は保育所などの受け入れ態勢が課題となる。導入論に対し、自民、立憲民主両党では「難題が多い」として慎重姿勢が目立つ。一方、国民民主党は導入に向けた提言案をまとめている。政府と自治体側の擦り合わせも不可欠だ。9月入学は9年前に東京大学が検討を始めたものの、最終的に見送った経緯がある。菅義偉官房長官は5月1日の記者会見で「時々刻々と変化する事態を注視しながら、文部科学省を中心に必要な対応を前広に検討していきたい」と述べた。

<やはりおかしい“緊急事態”“医療崩壊”の連呼 ← 得したのは誰か?>
PS(2020年5月3、8、9、10日追加):*12-1のように、専門家会議やメディアは、「①医療崩壊になりそう」「②医療体制が逼迫」と連呼し、「③緊急事態宣言を延長し」「④新たな生活様式の呼びかけ」たが、その根拠として「⑤実効再生産数(感染者1人が何人に感染させるかを示す値)を挙げ、⑤が1より大きければ流行は拡大し小さければ収束していくとした。
 しかし、⑤については、*12-2のように、日本におけるPCR検査の割合は諸外国と比較して人口比で極端に低く、このような背景の下に机上で産出された西浦北大教授(理論疫学)の実効再生産数は、空想上の数字でしかなく(嘘だと思ったら、それを論文にして世界に発表してみればよい)、そこから出た結論も空想にすぎない。そして、検査数の増加スピードも著しく遅いため、患者を早期に発見し、薬を使って早期治療を行わない結果、重症化させて長期入院を必要とするようになり、②の医療体制の逼迫が起こるのである。また、西浦北大教授(理論疫学)の実効再生産数には、治療薬出現の効果も考慮されていない。
 さらに、④の「新たな生活様式の呼びかけ」は、具体的には、i)3密回避 ii)手洗い iii)テレワーク だそうだが、i)は回避できない場合もあるため、病気の人は病欠したり、マスクをかけたり、職場の1人当たり面積にゆとりを持たせたり、席の配置を考えたりすべきなのである。また、ii)は新型コロナに限らず常識で、iii)のテレワークができるのは、どこででもできる仕事をしている人に限られ、家庭で仕事をすれば仕事と家庭生活の区別がつきにくく、生産性も落ちるので、私は勧めない。ただ、満員電車による通勤は感染症を広げるため、企業は都会に置くオフィスの就業者数を本当にそこでしか仕事ができない人に限り、職場内のテレワークを使って他の場所でもできる仕事は、自家用車で通勤できる地方に置いた方が、(子どもの教育も含めて)環境がよく、仕事がはかどり、生活費は安いため、人件費や賃貸料の削減に繋がるのである。
 なお、PCR検査が増えない理由には、*12-3のように、陽性患者が出ると職場の同僚や家族まで中傷や偏見に晒されて事業経営に悪影響が出るため、検査を自粛するという行動もありそうだ。感染者本人を差別するのも罪だが、これらの一般の反応を作ったのは、「(治療薬については副作用ばかりを強調し)効果的な治療薬のない絶望的な病気で、繁華街でうつって周囲に迷惑をかける」という印象を植えつけたメディアの報道に大きな責任がある。
 また、医療行為を行う前から、①②のように「医療崩壊」「医療体制の逼迫」と連呼し、日本の医療水準が後進国並みに低いかのような行動を国民に強いているのは、専門家会議や厚労省に問題があり、これは検査方法や治療薬の工夫を妨害した。そして、*12-4のように、日本政府は、新型コロナの治療薬として米ギリアド社の「レムデシビル」を米食品医薬品局(FDA)が認可したという理由で日本での早期承認に動いているが、情けないにもほどがあり、これによって日本の製薬会社は外国(特に米国)で開発して承認をとらなければ日本国内でも使用されないという状況を招いているのだ。さらに、大量生産の段階になると、アビガンのように日本はコストが高すぎて中国で生産しなければ利益が出ず、いくら紙幣を印刷して国民の預金価値を薄めて金を捻出しても、その金は他国の景気を回復させるだけという状況である。これは高付加価値の薬剤に限らず、*13のような食料・エネルギーにも及んでおり、「日本は、何を売って必要なものを買うつもりですか?」という問いを、再度、経産省に投げかけざるを得ない。
 このように、不確かな数字を根拠に際限のない休業要請をした結果、社会経済活動が停止して破綻する事業者や解雇される雇用者も出ている。そのため、*12-5のように、大阪府は、入院患者のベッド使用率が一定の数値を下回るなどした場合に休業と外出自粛要請を段階的に解除するという独自基準を設ける方針を決めた。医療崩壊の危機をことさら叫んで受診を控えるように呼びかけていた(とんでもない)NHKの調査によっても、*12-6のように、病床数に占める入院中及び入院必要な患者数が100%を超えるのは東京都(131%)だけで、軽症者のホテル収容を実施しているのにその収容数は収容能力と比べて著しく低く、工夫もせずに「危機だ」「危機だ」と叫んでいるわけだ。また、50%以上100%未満は北海道(81%)、石川県(81%)、群馬県(71%)、福岡県(70%)、兵庫県(65%)、千葉県(61%)、滋賀県(58%)、奈良県(58%)、富山県(57%)、愛知県(57%)、埼玉県(56%)、沖縄県(56%)、京都府(51%)等の13道県しかなく、それでもホテルなどの宿泊施設に収容可能な軽症者がまだ病院にいることが多い。そのため、ホテルなどの宿泊施設における健康管理と病院との連携を充実させれば、病床数に占める入院中及び入院必要な患者数は逼迫しない筈なのである。これに加えて、*12-7のように、東京都は年代別の新型コロナによる死亡者数を公表し、「60代以上が9割で、男性が85人・女性が37人」としているが、これくらいのサンプル数でジャンル別の傾向はわからず、「死亡者は高齢者・持病のある人に多い」という馬鹿の一つ覚えの偏見を生むのに加担している(これも嘘だと思ったら、論文にして世界に発表してみればよい。症例数や検査割合の少なさ、考察の浅さに呆れられるだけだろう)。
 なお、この騒ぎで得した人は、まず「携帯電話端末の位置情報を、どさくさに紛れて使えるようにした人」「テレワークの機材を生産している人」「テレワークを進めたかった人」などだが、その他については、読者にお任せしたい。
 *12-8に、「新型コロナ感染者の療養先は自宅がホテル等の宿泊施設の2.3倍で、厚労省が軽症者や無症状者に宿泊施設の利用を優先してもらう方針を示しているのに、移行が進んでいない」と書かれている。しかし、「宿泊療養が時には受け入れてもらえない」というとんでもないこともあるのかもしれないが、東京(自宅療養者635人)・埼玉(自宅療養者354人)・大阪(自宅療養者332人)・千葉(自宅療養者約250人)・神奈川(自宅療養者約250人)・福岡(自宅療養者81人)はホテルの多い地域である上、全国の宿泊施設で1万2090室が受け入れ可能となっているのに約7%しか利用されていないのでは宿泊施設を準備した意味がないため、自宅療養を選んだ人に理由を聞いて改善すべきだ。病院入院後の回復期にホテル療養をした私のいとこの場合は、宿泊施設のホテルはシーツの交換が全くなく、部屋の掃除や洗濯も自分でしなければならず、下着やタオルが足りなくなっても当然外出できないため、病気の人に不潔な状態での我慢を強いる状態になっているようだった。
 新型コロナ感染者のうち軽症者・無症状者の隔離と療養に充てるため、長崎県が8医療圏にそれぞれ設ける計画で内定したホテルの周辺住民が反対を表明し、選定が難航して宿泊施設が決まらないのだそうだ。しかし、*12-9のように、ホテルの活用は既に行われており、神奈川県では運営の一部を自衛隊が担当し、福岡県は人出が減っているJR博多駅前等のホテルを確保しており、医療圏毎に必要とも思われないので、できたところから始めればよいのではないか?
 朝日新聞が、2020年5月10日の社説に、*12-10のように、「⑪米国が重症者向けに緊急使用を許可したレムデシビルを、厚生労働省はスピード承認した」「⑫治療薬の早期開発に期待を寄せる声は多いが、有効性や安全性を確かめる手続きをないがしろにするわけにはいかない」「⑬現場の医師が注目しているのは、国内のメーカーが開発し、新型インフルエンザ用に承認されているアビガンだ」「⑭アビガンの月内承認をめざしている首相に、京大の山中伸弥教授からさらなる前倒しに向けて『鶴のひと声』を求められる場面もあった」「⑮多くの患者はアビガンを使わずに回復しており、催奇性があるので前のめりになりすぎるのは禁物だ」「⑯対象から外れた患者が発言を頼りに投与を希望したら、その対応で現場の負担が増える」「⑰政府は40カ国以上にアビガンを無償提供すると表明したが、国内患者の健康に関わるだけでなく国際協力にもつながる薬だからこそ、手順を踏んで遺漏のないようにしたい」「⑱薬害の歴史を忘れることなく、コロナ禍に適切に対処しなければならない」と記載している。⑱から、この記事は、アビガンの早期承認を要望している人は催奇性という副作用を知らないか忘れているという前提の上に立っているが、⑬⑭の現場の医師や京大の山中教授が自分よりも薬の作用・効果と副作用を知らないと考えているのは無知の上に傲慢だ。また、⑮については、もちろんアビガンを使わずに回復した患者もいるが、それだけ回復に時間がかかり、重症化するリスクも高くなり、助けられるのに死亡した患者を犠牲にしたのである。また、⑯の手間より、重症化を防ぎ入院期間を短くしながら命を助ける効果の方が大きいから、⑬のように現場の医師が期待しているのだ。なお、⑫のように、国内での承認に時間ばかりかかるため、⑪のように、「外国で承認されたから、横並びで・・」などという情けない理由で承認したり、⑰のように、国内では使えないうちに海外に無償提供したりしなければならず、日本の開発関係者は国内で開発すると徒労に終わることが多すぎるのだ。「10万円、マスク来ぬうち、コロナ去り」はまだ笑い話にできるが、「アビガンも、承認せぬうち、コロナ去り」は、文系のドアホが人の命をないがしろにした結果であるため、とうてい笑い話にならない。


 2020.5.2朝日新聞             2020.4.26Yahoo  2020.4.29東京新聞

(図の説明:1番左の図のように、一人の患者が何人に感染させるかで新規感染者数が異なるそうだが、これは大数を正確に処理した結果として出るもので、個人が他人に感染させる数は職業・電車通勤の有無等によって大きく異なる。左から2番目は、緊急事態宣言による行動自粛によって感染の山を右にずらすという論理だが、PCA検査数が少なく感染者が市中を歩いている状態では感染者数はますます増え、それを治療しないことにより重傷者が増えて医療崩壊は早まる。右から2番目の図は、外出自粛や休業要請で事業者がいつまで持つかを質問した結果で、1番右の図は、外出自粛や休業要請により非正規労働者から解雇や雇い止めが始まっている様子だ)

*12-1:https://digital.asahi.com/articles/DA3S14463367.html (朝日新聞 2020年5月2日) (時時刻刻)くすぶる感染、長丁場 感染者減「期待に至らず」 専門家提言 新型コロナ
 1日に政府の専門家会議がまとめた提言は新型コロナウイルスの新たな感染者は減っているとしつつも、減り具合が目指したほどではなく、医療体制も逼迫(ひっぱく)していると指摘した。長期の対応を迫られるなか、感染リスクが高い3密を避け、接触機会を減らした「新たな生活様式」の定着を呼びかけた。専門家会議が1日午後に開いた記者会見。尾身茂副座長は「感染者数は減少しているが、そのスピードは我々の期待するまでには至らなかった」と語った。緊急事態宣言直後の4月11日に全国の新たな感染者数が700人近くになったが、最近は200人ほどの日もある。ただ、1日に数十人だった3月上旬~中旬に比べると、まだ多い。減少ペースも「急増のペースに比べると緩やかに見える」と提言は指摘し、「大都市圏から人が移動したことで、地方に感染が拡大した」と分析した。感染が拡大しているかをみる重要な指標の一つが「実効再生産数」だ。感染者1人が何人に感染させるかを示す値で、1より大きければ流行は拡大し、小さいと収束していく。全国で2・0(3月25日時点)、東京で2・6(3月14日時点)だったが、4月10日時点では全国で0・7、東京で0・5まで下がった。厚生労働省クラスター対策班に参加する西浦博・北海道大教授(理論疫学)は、1を下回ったのは全国も東京も緊急事態宣言が出る前の4月1日ごろだったと説明。そのうえで、「全国的にみると、8割の接触機会の削減で求めていた水準には達していない」と指摘。目標とする0・5以下になることを確認していく必要があるとした。ただ、PCR検査の件数が限られ、とくに流行地域で感染者を把握しきれていないとの指摘もある。尾身さんも会見で「我々は感染の実態の一部を把握しているに過ぎない」と認めた。宣言の延長判断で重要なもう一つの要素が医療現場の逼迫だ。患者は平均2~3週間入院する。特に人工呼吸器が必要な重症患者の入院は長期化する。全国的に人工呼吸器が必要な患者はこの1カ月で3倍超に増えて約280人、人工心肺が必要な患者も約2・5倍に増えて約50人になっている。会見で、会議のオブザーバーを務める東京都立駒込病院の今村顕史・感染症センター長は「患者数が減っても重症重篤の患者でかなり病床が埋まっている。軽症者にも重篤になる人がいる。(医療現場の)負担は続いている」と話した。
■続く通勤、接触減に限界
 提言では、厚労省のクラスター対策班が分析する人同士の接触機会がどれくらい減ったかのデータが示された。西浦さんは「(政府目標の8割減を)達成できた所とできなかった所がまだらだった」と述べた。主要な駅周辺などを対象にして、携帯電話端末の位置情報をもとにその区域の人口密度と、同じ時間帯に同じ区域にいた人の数などから、計算式を使って割り出した。感染拡大前の1月17日と4月24日(ともに平日)を比べると、東京・丸の内周辺では夕方から夜間は81%減だが、渋谷駅周辺では昼間は49%減、夕刻から夜間は62%減と目標に満たなかった。大阪市の難波駅は同じく29%減と41%減だった。県境を越えた移動は、神奈川、千葉、埼玉の3県と東京との間の減少率は昼間35~41%と小さかった。西浦さんは「都心への通勤を続ける限りは、(強制ではない)自粛要請のレベルでは限界があることがわかった」などと語った。ただ個人の属性や行動パターンなどで大きく変わることがあり、精度や技術的課題は多いとも話した。
■制限下の生活「定着を」 3密回避、手洗い、テレワーク 地域でメリハリ、緩和条件は示されず
 新型コロナは世界に蔓延(まんえん)し、現状では根絶は困難だ。「一定期間はこの新たなウイルスとともに社会で生きていかなければならない」。提言は、対策が長丁場になることを覚悟しなければならないと呼びかけた。ウイルスの蔓延防止を最優先にしつつ、社会経済活動とどう両立させるか。提言では、地域ごとに対策にメリハリをつける考えを前面に出した。感染状況が厳しい地域では新たな感染者数が一定水準に減るまで、外出や営業の自粛要請などを続ける。十分減れば対策を緩められる対象にする。要件の一つは感染状況だ。新たな感染者数や感染者が増えるペースが一定水準にまで減り、感染把握に必要なPCR検査などがすぐできることを求める。もう一つの要件は医療の状況。新型コロナの患者を診るための医療機関の役割分担や、軽症者らに対応する宿泊療養施設の確保を挙げる。これらをもとに総合的に判断してもらうとした。ただ、対策を緩められる地域でも以前の生活に戻る状況は想定していない。感染拡大のリスクが高い密集・密閉・密接の「3密」を徹底的に避け、手洗いや他人との距離を保つのは不可欠。テレワークなども重要とする。全国的な大規模イベントも、感染対策が整わなければ中止などを求めるとしている。「長丁場を前提とした『新しい生活様式』の定着が必要だ」。会見で尾身さんは強調した。こうした対策で感染を抑え込みながら、早期診断と治療法の確立やワクチン開発を待つ狙いだ。ただ、対策を緩和する要件にある一定水準とはどの程度の減少なのかや、緩和できる対策の範囲は明らかでない。「新しい生活様式」も、人との接触が避けられない環境の人がいるなど、定着には課題がある。ただ、以前の生活に戻せば感染拡大がすぐに起きる可能性は、外部の研究者も指摘する。東京大の大橋順准教授(集団ゲノム学)の推計によると、人口10万人の都市の感染者数が50人になった時点で他人との接触頻度を8割減らすと、30日後には23人まで減少。だが、接触頻度が元に戻ると約15日で50人に戻った。大橋さんは「医療崩壊を防ぎ、ワクチンや治療法が開発されるまでの時間をかせぐためには、接触頻度を減らす努力を継続することが必要だ」と話す。

*12-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200503&ng=DGKKZO58692210R00C20A5EA2000 (日経新聞 2020.5.3) 検査目標 日本は独の14分の1 世界で拡充、米は1カ月で倍増
 新型コロナウイルスで制限した経済活動の再開をにらみ、各国が検査の大幅増加へ動き出した。日本は1日2万件の検査を目標とするが他国との差は大きく、人口比ではドイツが日本の14倍、米国も同5倍の目標を掲げる。経済再開に向けて感染の実態把握は不可欠で、日本がこのまま検査を増やせなければ緊急事態宣言解除のハードルは高い。一部地域で爆発的感染が落ち着いてきたのを受け、各国は外出制限の出口戦略を練り始めた。感染の再拡大と医療崩壊を避けるには、検査を増やして感染拡大の兆しをつかむ体制が不可欠だ。米国は現在、1日23万件のペースで感染の有無を調べるPCR検査を実施している。5月中の目標として、4月中旬(1日15万件)の2倍の「週200万件(=1日29万件)」を掲げる。現在の新規感染者は平均で1日2万7千人程度。米政権は陽性率が10%に下がる程度まで検査を増やす計画で、感染者が現在と同じなら27万人を検査することになる。「感染者1人あたり平均5人の濃厚接触者が出る」(米厚生省幹部)とみており、接触者13万5千人にも検査が必要だ。合計40万5千人になり、感染者が現状のままだと検査件数はまだ足りない。米政権は外出制限の効果で感染者が今後減っていくことを想定する。接触者もあわせて十分な検査ができるくらい感染者が減った州から、飲食店の営業を条件付きで認めるなど、段階的に経済活動を再開する方針だ。フランス政府は5月11日から商店などを再開するのにあわせ、検査能力を現状の実施件数の5倍にあたる1日10万件に増やすと発表した。外出する人が増えることで新規感染者が最大で現状の2倍の1日3千人に伸び、濃厚接触者を25人と仮定。全員をカバーしたうえで、余裕をみた検査能力を確保する。ドイツは4月中に1日20万件、英国は同10万件を目標としていた。ドイツの直近の検査数は同7万件、検査能力は同14万件あるとするが、目標達成は遅れている。検査を増やすには、人員や医療品の確保が不可欠だ。米政権は大手薬局チェーンに検査場設置を要請。CVSヘルスは5月中に最大1千カ所で1日5万件を実施する。検査用の綿棒や試料は、非常時に大統領権限で企業に命令できる「国防生産法」で増産を求める。米は6、7時間かかるPCR検査に加え、その場で結果が出る15分程度の「抗原検査」の普及も急ぐ。ウイルス特有のたんぱく質(抗原)を検出するもので、過去に感染したことがあるか調べる「抗体検査」とは別だ。抗体検査は発症直後は診断しづらいため、抗原検査でPCRを補完する。日本政府は1日2万件を目標に掲げ、同1万5千件を実施できる体制を整えたとしている。ただ実際の検査件数は同8千~9千件にとどまる。人口比でも日本の検査目標は見劣りする。人口1人あたりの目標件数はドイツが日本の14倍、英仏が9倍、米国は5倍だ。他国は経済再開と検査拡充をセットにして出口戦略を立てており、日本の出遅れは否めない。検査の人手不足などを補おうと、日本政府は検体採取業務を歯科医師にも認めると決めたほか、ドライブスルー検査の実施を自治体に促すといった対策を講じる。ただ安倍晋三首相も国会答弁で「目詰まりや地域差がある」と認める。検査拡充で感染実態が把握できなければ、緊急事態宣言の解除はおぼつかない。経済活動の正常化にはさらに検査拡充が必要との試算もある。米ハーバード大は米国民全員が毎月2回検査できる1日2千万件の検査体制を提言する。一度陰性になっても安全と言えないためだ。シンガポールは当初封じ込めに成功したとみられていたが、外国人労働者の寮で感染が再び広がった。労働者の大規模検査が必要になり、人口570万人の同国の検査数は12万件を超えた。

*12-3:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/519100 (佐賀新聞 2020.5.3) <新型コロナ>病院襲う感染デマ 「おたくやろ」「来ないで」憶測で詰問、伊万里や嬉野 中傷、偏見…家族にも
 新型コロナウイルスの感染が拡大する中、佐賀県内でも中傷や風評被害が起きている。伊万里市ではデマを発端に、同じ職場の人やその家族までもが中傷や偏見にさらされ、職員の感染が確認された嬉野市の病院の関係者も差別的な行為を受けており、心を痛めている。「本当に怖い思いをした。憶測で情報を広めることが、どれだけ多くの人を傷付けることになるか知ってほしい」。伊万里市新天町にある山口病院理事長の藤邑(ふじむら)葉子さん(62)は訴える。3月31日、佐賀県が県内2例目の感染者を「伊万里市の60代女性で、福岡市に住む30代男性医師の母親」と公表した。「山口病院の藤邑さんでは…」。デマはその日のうちに広がり始めた。年代が一致し、20代の息子が佐賀県内の病院で研修医をしていることなどから類推されたようだ。「おたくやろ」。翌日以降、病院に問い詰めるような電話が十数件かかってきた。患者からも聞かれた。いくら否定しても「かん口令が敷かれとるとやろ」。来院者や運営する介護施設の利用者が激減した。風評被害は、職員やその家族にも広がった。看護師の子どもは保育所で他の園児と離された。入院患者や通所者の家族が、職場や塾に「来ないでほしい」と言われたという話も聞いた。藤邑さんは、地元のケーブルテレビで20日間以上「当院職員の感染ではございません」などと書いた静止画像を放送した。来院者に説明し、関係者には文書も送った。元気で健在だということをアピールするため、できるだけ外を出歩いた。市にも相談した。「やれることは全部やろうという思いだった」。外来事務職員の感染が確認された嬉野医療センターの看護師も差別的な扱いを受けた。買い出しに出掛けた店の駐車場で、車のダッシュボードにセンターの駐車証を置いていると「近寄らないで」という感じで手を払うそぶりをされた。別の店でも同じようなことがあった。看護師の母親は「娘は外出も、人との接触も最小限に抑えている。私も娘の家に食料品を届けても、会わずにドアノブに掛けて帰る。感染者が出た直後は病院にも非難の電話が多かったと聞く。医療従事者が、家族を含めて感染拡大を防ぐために必死に頑張っていることを分かってほしい」と話す。ナイトクラブで県内初のクラスター(感染者集団)が発生した武雄市は、職員がネットパトロールを重ねている。悪質なケースは把握していないが、感染者が確認されると「だれ」「どこの人」と、必ず電話がかかるという。対策本部は「県からは人を特定するような情報は入らないので『情報がない』と伝えるが、怒る人もいる。仮に知っていても教えることはない」と強調する。

*12-4:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200503&ng=DGKKZO58764440S0A500C2MM8000 (日経新聞 2020.5.3) 日本、レムデシビル特例承認へ 米の緊急認可受け
 日本政府は2日、新型コロナウイルスの治療薬として米医薬大手ギリアド・サイエンシズの「レムデシビル」の使用に向けて施行令を改正した。米食品医薬品局(FDA)がレムデシビルの緊急使用を認可したのを受け日本も異例の早期承認に動く。トランプ米大統領は1日、FDAがレムデシビルの緊急使用を認可したと発表した。臨床試験(治験)で感染者の回復を早める効果を確認したとして重症患者への使用を認める。米国立衛生研究所(NIH)が4月29日に回復期間が短縮したとの暫定的な治験結果を公表しており、2日後の緊急認可となった。日本でレムデシビルが承認申請されれば「1週間程度で承認できる体制を整えるよう指示した」(加藤勝信厚生労働相)として、早ければ5月中にも特例承認が下りる可能性がありそうだ。

*12-5:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200503&ng=DGKKZO58767500S0A500C2MM8000 (日経新聞 2020.5.3) 大阪府、経済再開へ基準 病床使用率など 休業要請解除、 15日可否判断
 大阪府は2日、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う休業と外出自粛の要請について、解除する際の独自基準を設ける方針を決めた。入院患者のベッド使用率が一定の数値を下回るなどした場合、段階的に解除する。政府が緊急事態宣言を1カ月程度延長する方針を固めるなか、影響の大きい経済活動の再開に向けた出口戦略を明確に示す必要があると判断した。改正新型インフルエンザ対策特別措置法では、感染症対策で国と自治体が調整を行うことになっている。府は、政府が4日に発表する緊急事態宣言の延長を受けて5日に詳しい数値などを決める。ただ、大阪単独で解除に踏み切れば兵庫県や京都府など周辺自治体との人の往来が増し、感染が再び拡大する可能性もあり、今後、国や他の自治体との調整も必要になりそうだ。独自基準は2日の府コロナ対策本部会議で決めた。全国に先駆けた動きで、吉村洋文知事は会議終了後「社会経済活動を(通常に)戻すために基準を示す」と述べた。府は解除の基準の一つとして、医療機関のベッド数と入院患者数に基づく「病床使用率」を用いる方針。重症者向けは50%、中等・軽症者は60%を下回れば、段階的に解除する案を軸に検討。現在はいずれも下回るが、検査で陽性と確認された人の割合なども参考にしながら15日に解除の可否を判断する方針だ。府が独自基準を設ける背景には、事業者や府民から休業や外出自粛について理解と協力を得るためには解除に向けた目標設定が欠かせないとの判断がある。政府の専門家会議は1日、外出自粛などを緩和する判断材料として、新規感染者数が十分に抑えられていることや医療提供体制の確保などを挙げたが、具体的な数値は示されなかった。府内の感染者数は1600人超と東京都に次ぐ規模だが、1日までの直近1週間の新規感染者数は193人。4月上旬から3週連続で350~370人台だったのに比べると大きく減ったほか、感染経路不明の患者数の割合も下がっており、出口戦略を探りやすい環境が整ったとみている。事業者などへの休業要請を巡り、小池百合子都知事は2日、吉村知事らとのテレビ会議で「都としての出口戦略を検討したい」と述べた。

*12-6:https://www3.nhk.or.jp/news/special/coronavirus/medical/ (NHK 2020年4月28日) 医療崩壊の危機、新型コロナ対応のベッド数と入院患者数データ
 新型コロナウイルスに対応する医療体制について、NHKが全国の都道府県に取材したところ、入院患者の数が準備している病床数の8割を超えているところは、北海道・東京都・石川県の3都道県となっています。すでに27都道府県で、軽症者に宿泊施設などで療養してもらう対応をとるなどして病床がひっ迫する状況はやや緩和されましたが、専門家は今後も病床を増やすとともに宿泊施設などで療養する患者の健康を十分確認できる体制が必要だとしています。
●新型コロナ対応のベッド数と入院患者数:NHK調べ 4月27日時点の最新データ
①都道府県 ②新型コロナ対応ベッド数 ③入院中の患者数(入院必要な人含む) ④ベッドに対する割合 ⑤軽症者はホテルに
 ①北海道  ②400  ③323  ④81%  ⑤実施
 ①青森県  ②38   ③8   ④21%  ⑤準備中
 ①岩手県  ②184  ③0    ④0%   ⑤準備中
 ①宮城県  ②388  ③27   ④7%   ⑤実施
 ①秋田県  ②105  ③9    ④9%   ⑤準備中
 ①山形県  ②150  ③28   ④19%  ⑤準備中
 ①福島県  ②113  ③49   ④43%  ⑤実施
 ①茨城県  ②151  ③68   ④45%  ⑤実施
 ①栃木県  ②130  ③40   ④31%  ⑤準備中
 ①群馬県  ②143  ③102   ④71%  ⑤実施
 ①埼玉県  ②457  ③254   ④56%  ⑤実施
 ①千葉県  ②471  ③288   ④61%  ⑤実施
 ①東京都  ②2000  ③2619  ④131%  ⑤実施
 ①神奈川県 ②1000  ③213   ④21%  ⑤実施
 ①新潟県  ②234  ③34   ④15%   ⑤実施
 ①富山県  ②205  ③116   ④57%  ⑤実施
 ①石川県  ②170  ③137   ④81%  ⑤実施
 ①福井県  ②114  ③48   ④42%   ⑤実施
 ①山梨県  ②80   ③22   ④28%   ⑤実施
 ①長野県  ②227  ③51   ④22%   ⑤準備中
 ①岐阜県  ②458  ③78   ④17%   ⑤実施
 ①静岡県  ②200  ③35   ④18%   ⑤準備中
 ①愛知県  ②350  ③198  ④57%   ⑤実施
 ①三重県  ②124  ③27   ④22%   ⑤準備中
 ①滋賀県  ②95   ③55   ④58%   ⑤実施
 ①京都府  ②213  ③109  ④51%   ⑤実施
 ①大阪府  ②900  ③423  ④47%   ⑤実施
 ①兵庫県  ②372  ③241  ④65%   ⑤実施
 ①奈良県  ②73   ③42   ④58%   ⑤実施
 ①和歌山県 ②124  ③29  ④23%   ⑤準備中
 ①鳥取県  ②322  ③2    ④1%    ⑤準備中
 ①島根県  ②225  ③20   ④9%    ⑤準備中
 ①岡山県  ②117  ③12   ④10%   ⑤準備中
 ①広島県  ②200  ③85   ④43%   ⑤実施
 ①山口県  ②320  ③15   ④5%    ⑤準備中
 ①徳島県  ②130  ③1    ④1%    ⑤確保
 ①香川県  ②43   ③20   ④47%   ⑤確保
 ①愛媛県  ②70   ③16   ④23%   ⑤実施
 ①高知県  ②74   ③17   ④23%   ⑤実施
 ①福岡県  ②300  ③211  ④70%   ⑤実施
 ①佐賀県  ②70   ③26  ④37%   ⑤実施
 ①長崎県  ②102  ③10   ④10%  ⑤確保
 ①熊本県  ②312  ③47   ④15%  ⑤準備中
 ①大分県  ②222  ③25   ④11%  ⑤準備中
 ①宮崎県  ②100  ③8    ④8%   ⑤実施
 ①鹿児島県 ②143  ③7    ④5%   ⑤準備中
 ①沖縄県  ②160  ③90   ④56%  ⑤実施
 NHKでは、全国の放送局を通じて27日時点の新型コロナウイルスに対応する病床や入院患者の数などについて都道府県に取材しました。それによりますと、新型コロナウイルスの患者が入院するために確保している病床の数は、全国合わせて1万2500床余りで、先週に比べておよそ1200床増えました。また現在の入院患者は少なくともおよそ6300人で、先週と比べるとおよそ350人減りました。さらに軽症者に宿泊施設などで療養してもらう対応をとっているところは、27都道府県となり、先週から10か所増えました。その結果、都道府県別に確保できている病床数に対して入院患者や入院などが必要な人の数が8割を超えているのは、先週から3か所減って、いずれも「特定警戒都道府県」の北海道と東京都、それに石川県の合わせて3都道県となりました。一方で、宿泊施設や自宅で療養や待機をしている人は、病床が確保できていない人たちも含めて24都道府県で2400人を超えています。
●宿泊施設や自宅で療養や待機をしている人
・大阪府 約600人
・埼玉県 400人超
・神奈川県 350人余
・千葉県 300人近く
・東京都 200人近く
・福岡県 200人近く
 埼玉県で自宅待機中だった患者が死亡したことを受けて、厚生労働省は軽症者などの療養は宿泊施設を基本とする方針に変えましたが、ほとんどの都道府県は、病院や宿泊施設での療養を原則とする対応にしているとしています。また、医療機関の役割分担を進めようと重症者と中等症の患者を診る「重点医療機関」をすでに定めているところは23府県で、検討や準備を進めているのが6都道県、18県は定めていないと回答しました。さらに懸念していることを聞いたところ、病床や宿泊施設の確保に加え、宿泊施設で軽症者のケアを行う医師や看護師の確保が難しいといった声や感染拡大が続くにつれ、新型コロナウイルスの患者以外の医療への影響が懸念されるといった声が出ています。また、引き続き、医療用のマスクやガウンなどが不足する中での院内感染対策も多くのところが課題に挙げました。感染症に詳しい川崎市健康安全研究所の岡部信彦所長は、「病床の状況は改善されてきたと見られるが、まだ十分ではない。医療資源が少ない地方で、感染者が一気に増えるおそれもあり、重症患者の治療を早く適切に行い亡くなる人を減らすために今後も医療機関が病床を増やし行政が支援することが必要だ。また、一般の人たちには、連休中も外出を控えるなど感染拡大を抑えるための協力をしてほしい」と話しています。また、宿泊施設などでの療養が増えてきていることについて、「はじめは軽症であっても、容体が急変することもある。自宅療養の場合には、息苦しさを感じるなど具合が悪くなったと感じたら保健所などに連絡してもらいたい。行政や医療機関が連絡体制を整えるなど、医師や看護師が患者の健康を十分確認できる体制をとる必要がある」と指摘しました。

*12-7:https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200501/k10012415081000.html (NHK 2020年5月1日) 東京都 年代別の死亡者公表 60代以上が9割 新型コロナ
 東京都は新型コロナウイルスに感染して死亡した人の年代別の内訳を公表し、60代以上が全体のおよそ9割を占めていることを明らかにしました。都内では新型コロナウイルスの感染が確認された126人が1日までに死亡しています。このうち、確認中の4人を除く122人について都が年代別の内訳を公表しました。それによりますと、
  ▽30代以下と100歳以上で死亡した人はいなかった一方、
  ▽40代が1人、
  ▽50代が9人、
  ▽60代が18人、
  ▽70代が40人、
  ▽80代が38人、
  ▽90代で16人となっています。
 60代以上が全体のおよそ9割を占め、中でも最も多い70代と次に多い80代だけで6割余りとなるなど、高齢者の死亡が多くなっています。これについて都は、複数の病院で集団感染が発生して持病のある人が感染したことや、高齢者が重症化しやすいことが要因とみています。性別で見ますと、▽男性が85人、▽女性が37人と、男性が女性の2倍以上となっていて、都は、流行の初期に男性が感染するケースが相次いだことや、たばこを吸うなど持病がある人が男性に多かったことなども要因の1つと見ています。都の福祉保健局は「死亡は高齢者に集中しているが、若い世代の人たちも感染拡大につながらないよう自制してほしい」と話しています。

*12-8:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO58794080W0A500C2CE0000/ (日経新聞 2020/5/6) 新型コロナで自宅療養、宿泊施設の2倍超 移行進まず
 厚生労働省は6日、新型コロナウイルスの感染者の療養先についての全国調査結果を発表した。4月28日時点で8711人の感染者のうち、自宅で療養している人は1984人だった。ホテルなどの宿泊施設の療養者の2.3倍に上る。厚労省は軽症者や無症状の人に自宅療養より宿泊施設の利用を優先してもらう方針を示しているが、移行は十分に進んでいない。加藤勝信厚労相は6日、「現場では宿泊療養がときには受け入れてもらえないという話も出ている」と報道陣に語った。調査によると、検査で陽性となった全国の感染者数(死亡者や回復した人を除く)は4月28日時点で8711人で、うち入院者が5558人で最多。自宅療養が1984人、宿泊施設での療養が862人だった。自宅療養を都道府県別にみると、東京が635人で最も多く、埼玉354人、大阪332人が続いた。千葉、神奈川は約250人で、福岡は81人。この6都府県以外は30人以下で、大半は0人だった。施設療養の最多も東京で198人だった。ほぼ同時期に行われた別の調査では、全国の宿泊施設で1万2090室が受け入れ可能となっており、約7%しか利用されていないことになる。東京など自宅療養が多い6都府県でも8%にとどまり、施設が使われていない状況だ。東京の担当者は「症状が軽い人は自宅での療養を望む人も多い」と話す。施設では家族への感染が防げるほか、看護師や保健師が24時間常駐して入院への切り替えもスムーズだとして「施設療養を積極的に利用してもらいたい」としている。感染者の多い自治体では、医療機関に肺炎になるなど中等症以上の治療に専念してもらうため、軽症者などは医師の判断で施設や自宅での療養に切り替えてきた。ただ、埼玉県では自宅待機者が死亡。厚労省は4月23日、容体急変に対応するため、自宅より施設療養を優先する通知を出した。

*12-9:https://www.nishinippon.co.jp/item/n/606824/ (西日本新聞 2020/5/9) 軽症者ホテルの選定難航 長崎県、周辺住民の不安強く
 新型コロナウイルス感染者で軽症と無症状の人たちの隔離、療養に充てるため、長崎県が借り上げる宿泊施設が決まらない。県内の8医療圏にそれぞれ設ける計画だが、長崎市内では“内定”したホテルの周辺住民が反対を表明するなど選定は難航しているもようだ。「宿泊療養施設の運営につきましては、県が万全を期して行ってまいります」。地元に配布された中村法道知事の名前入りの文書には、感染者は検査で2度の陰性が確認できないと退所できない、ごみの管理は徹底する-など運営方針が記されている。県は医療崩壊を防ぐため、102床の専門病床は重症者と中等症者用に確保し、症状が軽い人向けに宿泊施設を準備する。住民たちもその方針には賛成しているが、「居住エリアから離れた場所にしてほしい」「公共施設を活用してはどうか」との声が上がる。県担当課は医療機関が近くにあることを条件としており、安全確保に努める姿勢を示しているが、不安は解消されていない。県内では4月18日以降は新たな感染は確認されていない。だが停泊中のクルーズ客船で140人超のクラスター(感染者集団)が発生、県医師会が「医療危機的状況宣言」を出したことも住民の不安を強くしているようだ。県が応募した施設はベッド付きの洋室が50部屋以上(離島部は20部屋以上)あり、それぞれバスとトイレを備えることが条件。壱岐を除く7医療圏で計23施設(計2096部屋)の応募があり、目標の千人分は突破している。こうしたホテルの活用は他県でもみられ、神奈川県では運営の一部を自衛隊が担当。福岡県は「住宅地から離れ、外出自粛で人出が減っている」との理由で福岡市のJR博多駅前などのホテルを確保している。

*12-10:https://digital.asahi.com/articles/DA3S14470582.html (朝日新聞社説 2020年5月10日) コロナ治療薬 前のめり排して着実に
 新型コロナの治療薬としていくつかの薬が候補に挙がり、試験や研究が進められている。その一つで米国が重症者向けに緊急使用を許可したレムデシビルを、厚生労働省はスピード承認した。国内の審査を簡略化できる制度を使った異例の措置だ。当然ながら副作用の懸念もあり、投与した患者全員の追跡調査をして、慎重に効能を検証することが求められる。治療薬の早期開発に期待を寄せる声は多い。関係者は最善の努力を尽くして、これに応えてもらいたい。しかし、だからといって有効性や安全性を確かめる手続きをないがしろにするわけにはいかない。いま現場の医師が注目しているのは、国内のメーカーが開発し、新型インフルエンザ用に承認されているアビガンだ。新型コロナの治療薬としての承認をめざした治験が進んでいるが、それと並行して、多くの医療機関が参加する医学研究(臨床研究)も行われ、実際に患者に服薬してもらっている。安倍首相は4日の会見で「3千例近い投与が行われ、効果があるという報告も受けている」と述べ、月内の承認をめざす考えを示した。6日放映のネット番組では対談した京大の山中伸弥教授から、さらなる前倒しに向けて「首相の鶴のひと声」を求められる場面もあった。だが前のめりになりすぎるのは禁物だ。多くの患者はアビガンを使わずに回復している。アビガンを使って良くなった症例をいくら集めても、薬の効果を見極めるのは難しい。期待先行で評価するようなことがあってはならず、また、動物実験で重い副作用が報告されていることにも留意する必要がある。思い起こすのは、02年に世界に先駆けて日本で承認された抗がん剤のイレッサだ。「副作用の少ない夢の新薬」ともてはやされたが、販売直後からその副作用が原因とみられる死亡例が相次いだ。どんなタイプの患者に効果があるかなどの情報が不十分なまま、広く使われたことが深刻な被害を生んだ。首相が、病院の倫理委員会の承認が条件としつつ「希望すれば誰でも服用できる」と繰り返しているのも、混乱を招く恐れがある。全ての病院で処方できるわけではないし、対象から外れた患者が発言を頼りに投与を希望したら、その対応で現場の負担はさらに増えかねない。政府は40カ国以上にアビガンを無償提供すると表明した。国内患者の健康に関わるだけでなく国際協力にもつながる薬だからこそ、手順を踏んで遺漏のないようにしたい。薬害の歴史を忘れることなく、コロナ禍に適切に対処しなければならない。

*13:https://www.agrinews.co.jp/p50658.html (日本農業新聞 2020年4月29日) コロナと輸出制限 食料安保確立の契機に
 新型コロナウイルスの感染拡大で農畜産物の消費が混乱し、農業者を苦しめている。食料の輸出制限が相次ぐ中で浮き彫りになったのは、食と農はひとつながりの関係にあることだ。国内生産が縮小すれば食の不安は増大する。食料の安定供給が揺らがないよう、国を挙げて生産基盤強化を急ぐべきだ。食料自給率37%(2018年度、カロリーベース)の日本にとって、日々の食卓をどう守るか考えざるを得ない事態だ。新型コロナの感染が地球規模で広がり食料貿易に影響が出ている。中でも輸出制限は輸入国の食料安全保障を脅かしかねない。世界最大の小麦輸出国ロシアは4~6月の穀物輸出量に制限を設けた。第5位の輸出国のウクライナも国内販売を優先し、輸出制限に踏み切る可能性がある。米では世界第3位の輸出国ベトナムが新たな輸出契約を3月下旬に停止した。国内の需給状況を確認する一時的な措置ともみられるが、同国政府は主食の確保に神経をとがらせる。農水省は、これらの国は主要な輸入先でないため「日本の食料輸入に影響が生じているとの情報は入っていない」とする。日米欧やロシアなど20カ国・地域(G20)は農相会議で「いかなる不当な制限的措置を回避する」ことを確認した。ただ、どんな場合が「不当」に当たるかは輸出国と輸入国で温度差があるだろう。自国民の食料確保を輸出より優先するのは政府の役割として当然ともいえる。輸出制限回避の担保を得たとは言い難い。また世界貿易機関(WTO)ルールは新たな輸出制限を設ける時はWTOに通知し、輸入国と協議することなどを定める。しかし輸出制限の歯止めとして実効性はあいまいだ。各国政府の意図と関係なく食料流通が止まる恐れもある。米国では食肉処理工場で感染が広がり、複数社が操業を停止した。同国の豚肉供給量の4、5%を占める工場も含まれ、食料品店では食肉が今後不足するだろうとの報道もある。世界最大の米の輸出国・インドでは、都市封鎖による混乱で輸出業者が新規契約の締結をやめている。グローバリゼーションで、効率性や安さを優先し食料の供給網を世界中に広げてきたことが一転、地球規模の感染拡大でリスクとなって現れつつある。日本では食料不安はまだ顕在化していない。国内で農業者が懸命に生産を続け、国民の食を守っているからだ。ただ外出自粛や休校、飲食店の休業などによる需要減と価格低下で、経営が苦境にある農業者も多い。食料の安定供給は瀬戸際にある。食料自給率が低い中で、生産力がさらに弱まれば食料不安が噴き出す恐れがある。消費者が農業者を支える番だ。輸入依存を見直し、食と農の結び付きを強めていく。その契機とすべきだ。そのために政府は、農業経営を継続できるよう支援するとともに、食料供給の実態を国民に伝えることが求められる。

| 経済・雇用::2018.12~2021.3 | 08:48 PM | comments (x) | trackback (x) |

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