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2020.12.20~29 男女不平等が経済に与える悪影響と日本で女性がリーダーに選ばれにくい理由 (2020年12月30日、2021年1月2、3日追加)
  

(図の説明:左図のように、日本のジェンダーギャップ指数は、2018年の110位から2019年は121位と下がった。そして、中央の図のように、経済分野と政治分野の遅れが目立っている。特に、右図のように、政治分野が世界平均より著しく低いことがわかる)

(1)製造業における女性差別と女性蔑視
1)自動車工業会の豊田章男会長(トヨタ自動車社長)の主張について
 自動車工業会の豊田章男会長(トヨタ自動車社長)が、*1-1-1・*1-1-2のように、「①電動化車両は、EVだけでなくPHV・PHEVも含まれるのでミスリードはやめるべき」「②自動車産業はCO₂削減努力を行ってきて、平均燃費は2001年の13.2km/Lから2018年の22.6km/Lと71%向上し、CO₂排出量も2.3億トンから1.8億トンに22%減るという結果を出している」「③今の電力状況のままクルマをすべてEVに置き換えれば電力不足になるため、EVへの急激な移行に反対する」「④日本は火力発電所がメインであるため、EV化がCO₂排出量削減にはならない」「⑤50年『実質ゼロ』目標の実現には研究開発に10年~20年はかかり、個別企業として続けるのは無理なので国の支援を求める」「⑥ガソリン車比率の高い軽自動車は、地方のライフラインなので、脱ガソリンで困るのは国民だ」「⑦2030年代に新車のガソリン車販売をなくすことを検討しているのは、自動車業界のビジネスモデルを崩壊させる」「⑧EVは製造や発電段階でCO2を多く排出するので、日本で車をつくれなくなる」「⑨ガソリン車をなくすことでカーボンニュートラルと思われがちだが、今までの実績が無駄にならないように日本の良さを維持することを応援してほしい」「⑩日本はエネルギー問題の方が大きく、原発新設どころか既存施設の再稼働もできない状況であり、カーボンフリーの電力をどうやって確保するのか」等を述べられた。

 しかし、この発言には、私や小池知事などの女性政治家が作った方針はどうせ大したことはなく、理系に弱くて現状把握もしていないだろうという事実とは異なる女性蔑視を含んでいる。製造業(特に自動車)には女性管理職が少なく、それにはこのような女性蔑視が影響しており、その結果として判断の誤りも生んでいるため、その内容をここに記載する。

 まず、①については、排気ガスによる公害を出し続けてきたガソリン車からEVへの変換時における過渡的状況の下ではPHV・PHEVも認められるが、たとえ②の実績があったとしても、PHV・PHEVは排気ガスを出さず環境を汚さない車とは言えないのがFactであるため、これをEVと強弁することこそニーズを理解していないミスリードである。

 また、⑤については、1995年に私が経産省に提案して1997年にCOP3で京都議定書が採択された時に、EV化・再エネ発電・蓄電池開発の必要性が日本企業に開示されており、その時点から開発が始まっているため、10年~20年どころか25年(四半世紀)も前から始めてこれまで応援し続けてきたのだ。しかし、日産はゴーン社長の下でEVに進んで結果を出したが、トヨタはハイブリッド車と燃料電池車に進んでいつまでも資本を集中投下しなかったため、未だに⑦⑨の問題が残っているのであり、これは経営者の判断ミスに基づく経営の失敗だ。そして、日本は、リーダーに合理的判断力がないため欧米に追随することしかできず、欧米は既に米テスラのみならず、*1-3のように、独ダイムラーも本業のEVへの注力を鮮明にしている。

 なお、③④⑧⑩については、地震が多くて国土の狭い日本に原発という選択肢はなく、既に原発は進歩的な電源でもないため、私は、2011年の東日本大震災直後から再エネへのシフトを10年以上も提唱しており、あらゆる意味でその方が日本にプラスであることもずっと述べている。そして、*1-4のように、東芝の車谷社長は、再エネ関連事業の売上高を2030年度には2019年度の約3.4倍にあたる6,500億円とする目標を掲げ、達成に自信を見せている。

 また、⑥の軽自動車が地方の重要なライフラインであるというのはFactだが、軽自動車のガソリン車比率の高かったり、*1-2のように、EVにすると割安さや車体のコンパクトさが失われかねないというのは嘘だ。何故なら、EVはガソリンエンジンを作って積む必要がなく、軽自動車で往復する距離は短いためこれまでの蓄電池でも十分で、製造コストが安くなるからである。そのため、脱ガソリン・電動化シフトで困るのは、これまでガソリンエンジンだけしか視野に入れてこなかった製造メーカーであり、軽自動車のユーザーである国民ではないというのがFactだ。さらに、軽自動車のユーザーは女性が多いため、環境意識が高く、デザインのよさも求めており、EV版のVWやフィアットがあればそちらでもよいのだ。

 そのため、私は、*1-5の2030年までに都内で販売される新車すべてをEVかHVに切り替えるため、充電器などのインフラ整備向けの補助金を拡充するのはよいと思う。東京都は既にマンションの駐車場に設置する充電器への補助制度を設けているそうだが、これは、スーパー・コンビニ・事業所などの駐車場にも広げ、太陽光発電する駐車場屋根とセットで全国ベースに広げて欲しい。そうすれば、客はそのような設備のあるスーパーやコンビニを選び、自動車は無料か非常に安い燃費で動くことになる。

 なお、エンジンは水素燃料電池にも応用できるので、いつまでもガソリンにこだわる必要はない。日本自動車工業会の豊田章男会長(トヨタ自動車社長)は、2030年代半ばに全ての新車を脱ガソリン車とする目標に懸念を示し、守りの姿勢に入ってかえって守れない状況に陥っているが、これがトヨタグループの創始者で豊田自動織機製作所(現:豊田自動織機)を創業した豊田佐吉だったら、「いつまでも車だけにこだわる必要はない。もっているノウハウと人材を使って、水素燃料電池を飛行機や列車や船舶に応用しろ」と言ったに違いない。

(2)農業における女性差別と女性蔑視
 農業は主に食品産業であるため、共働きが増えても家事における性的役割分担が顕在する日本では、購入の選択をする人は女性が多い。そのため、栄養や料理に強く、女性のニーズに気付きやすい女性が活躍できる素地がもともとあるのである。

 そのような中、*2-1のように、事業の効率化や需要の拡大・新規開拓を目指して、JAグループ高知が高知市に開設する直売所「とさのさと」と同じ敷地に大型スーパーが出店し、互いの強みを活かして客を呼び込むのは良い案だと思う。

 最近は、スーパーもカット野菜・総菜・加工品・調味料を豊富に扱い、共働きの主婦や高齢者が食事の質を落とさずに家事の省力化をできる提案が多くなったが、同じ敷地内にJAの直売所があれば新鮮な地場産野菜や果物を比較的安く購入できてさらによい。ただ、それぞれの売り場で清算しなければならないのは時間がかかるため、まとめて清算できる仕組みにして欲しく、それは店や出品者に番号をつけて区別することで可能だ。

 また、JAわかやまは地域経済の活性化に向けて地元の和食チェーン「信濃路」と連携することで合意したそうだが、コロナ禍では、需要減だけではなく需要増もあり、それは中食や出前であるため、長く続いた規制のために店じまいに追い込まれたレストランとJAが組んで、新鮮な食材で美味しさに妥協しない省力化料理を販売すれば、互いの強みを生かせるだろう。

 このような新規アイデアの実現には、ポイントをついたマーケティングと結果を経営に反映できる経営者(役員)の存在が必要で、*2-2のように、JA全中では、2020年7月現在、JA役員(理事・経営管理委員・監事)に占める女性比率が9.1%と前年比で0.7%増えたそうだ。全中は、今後も目標達成に向けて、JAに働き掛けを強めるそうである。

 全正組合員に占める女性の割合が22.7%しかいないのは、前年比で増えたといっても少ないと思うが、総代は9.8%と前年比0.4%増、役員総数は1,419人で前年より53人の増加だそうだ。女性の割合を高めるために非常勤理事の定数は増やさず、地域選出の女性理事を増やしたり、地域選出の理事定数を削減して全域の女性理事枠を設定したりするなど役員選出方法の見直しを行ったりしており、製造業や政治よりも努力しているとは思う。

 しかし、会議で少数意見として無視されないためには、役員に少なくとも30%の女性が必要なので、次の男女共同参画基本計画では、正組合員に占める女性の割合を40%以上、JA役員に占める女性の割合を30%以上にするのがよいだろう。

(3)政治における男女不平等と生活関連政策の軽視・縦割行政
1)政治分野に女性議員が少ない理由
 日本では、政治だけでなく製造業・農業などの他分野でも、トヨタ自動車社長の豊田章男氏のように、創業者の直系男子が地位を受け継ぐ世襲になっている場合が多い。これは、江戸時代に成熟した封建制と儒教文化によるのだろうが、このような先入観があると、一般国民が無意識でも、民主主義に基づいて投票した筈の女性の当選確率は下がり、この結果は能力に比例するものではない。

 また、県連の推薦に基づいて党本部が公認する場合、県連でも女性蔑視が働き、地方の県連は中央よりもさらに保守的な場合が多いため、女性を公認候補として党本部に推薦することに積極的ではない。そのため、女性は、地方で推薦されるより中央で推薦される方が容易なくらいである。もちろん、男性はそうではない。

 このようなことが重なる結果、*3-1のように、小選挙区の多くに現職候補がいる自民党で特に女性議員の割合が小さく、自民党国会議員393人(衆参両院議長を除く)のうち女性国会議員は39人の約1割で、衆議院議員全体でも女性議員の割合は1割足らずになり、各国の議会と比較した世界ランキングは167位だそうだ。

 それでは、「世襲制は政治によい影響を与えるのか?」と言えば、わかりやすい例を挙げると、(1)のトヨタ自動車社長である豊田章男氏がトヨタグループ創始者で初代の豊田佐吉と比較すると、偉人ではなく普通のぼんぼんであるのと同じことが政治の世界でも起こっている。つまり、世襲の場合、(全部ではないが)選りすぐられていない普通の人が多くなるのである。

 このような中、女性蔑視の先入観というハンディを乗り越え、世襲でないのに衆議院議員になった女性は、同じく世襲でないのに衆議院議員になった男性よりも、ハンディの分だけ狭き門になっており、より選りすぐられていると言える。

 そのため、*3-1のように、①クオータ制には現職らから「議員の質が下がる」といった批判もある ②議員や候補者へのハラスメント防止 ③多様性が必要だが、明確な目標設定がないと進まない と言われているそうだが、①については、現在の現職は、男性や世襲ということで下駄をはかせてもらって当選した人が多いため、クオータ制にして女性割合を30%(50%ではない)にしたからといって、議員の質(そもそも、質の定義が不明)は下がらないと思う。

 また、②は実際に起こるため、特に女性議員や候補者に対するハラスメントは、インターネットによる女性蔑視を利用した誹謗中傷も含めて徹底して禁止すべきだ。そして、③の多様性がなければ、2)に記載するように、政策に関するあらゆる方向からの議論ができないので、明確な目標設定をした女性の政治進出を含め、多様性は維持すべきなのである。

 しかし、私は女性だが、夫婦別姓を認めない民法の規定を合憲とした2015年の最高裁判決は妥当だと思う。その理由は、憲法24条1項は、「婚姻は両性の合意のみに基づいて成立する」と規定しているだけで、夫婦の姓については規定していないからだ。

 そして、民法第750条も、「夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫又は妻の氏を称する」と規定しているので、条文上、男女不平等ではない。そのため、21世紀の現在なら、憲法と民法の理念に従って両性が平等な立場で結婚し、家族が使う「Family Name」を話し合いで決めた上、改姓する人が旧姓を使いたい場合には、戸籍法上の届け出を行えば徹底して旧姓を使えるよう、戸籍法を改正すればよいと考える。

2)女性議員が少ないことの政策への悪影響
i) 2020年度第3次補正予算について

   
2020.12.16東京新聞           2020.12.15産経BZ 

(図の説明:左図のように、新型コロナを名目とした追加経済対策や補正予算を含めて、2020年度は歳出が175.6兆円、国債発行額は112.5兆円と跳ね上がったが、これは、新型コロナへの対応失敗を原因とする人災によるものだ。また、新型コロナを名目とする追加経済対策と第三次補正予算の内訳は右図のとおりだが、普段から計画的・継続的・無駄なく行うべきものが多い)


                2020.12.15NHK

(図の説明:左図のような医療提供体制の充実は普段から行っておくべきもので、新型コロナ対策としてそこだけに焦点をあてて行うのは、お粗末すぎる。また、中央の図のような経済構造改革は、新型コロナとは関係なく、変化に伴って継続的に行っておくべきものだ。さらに、右図の国土強靭化も、計画的で無駄のないよう、普段から行っておくべきものである)

 日本政府(特に厚労省)は、初めから新型コロナウイルスに対し非科学的で誤った対応をしていたため、日本は他の東アジア諸国と比べて極めて悪い成績となり、経済を止めたので「需要不足」にもなり、何がいけなかったのかについて反省することもなく、*3-2-1のように、国民の血税をばら撒いて大きな経済対策を行う第3次補正予算案を出した。そのため、このような馬鹿なことは、今後も続くと思わざるを得ない。

 そして、年換算で34兆円になる“需要不足”を財政支出で穴埋めするそうだが、本物の需要と財政支出で無理に作り出す需要は供給者が異なる上、作り出された需要によって福利を得る者も変わり、慣れない人がもともと求められていなかった仕事をするため、生産性や意欲が低くなる。

 その財政支出による支出先は、①コロナの感染拡大防止 ②ポストコロナに向けた経済構造の転換・好循環の実現 ③防災・減災のための国土強靱化 が柱だそうだ。

 しかし、このうち、①については、無症状でも感染力のあることが最初からわかっていたので、なるべく多くPCR検査をして感染者を隔離すべきだったのに、検査をするのに何段階もの障壁を設けて感染症を市中に蔓延させ、技術力を上げる機会となる治療薬やワクチンの開発も時間のかかることがよいことででもあるかのように吹聴して外国頼みになってしまった。そのため、政府の誤った政策とメディアが発した悪いメッセージが、まず猛省されるべきなのである。

 また、②の時代に合った経済構造への転換は、コロナとは関係なくいつでも行っていなければ無駄の多いヒト・モノ・カネの使い方になるのに、日本では、それが行われない。つまり、日本の終身雇用・年功序列・一度辞めたら戻れないという雇用体系の下では、雇用調整助成金を支払ってでも人の移動をさせないことが必要になり、生産性の著しく低い人や実質的に仕事をしていない人が多くなるため、景気が好循環するわけがないのだ。従って、本当は、企業に雇用調整助成金を支払うより、失業した個人に適時に失業保険を支払う政策にした方がよく、失業しても失業保険給付ももらえないような労働者は、男女にかかわらず作ってはいけないのである。

 さらに、③の防災・減災のための国土強靱化も、景気対策ではなく、よく設計された無駄のない使い方をしなければ、失業者救済のための質の低いばら撒きに終わってしまう。そのため、失政を改めることなく、“需給ギャップ”を理由に国民につけを廻して「真水」と「財政投融資」を緩めるのは、借金を増やすだけの大きな問題である。

 結局、*3-2-2のように、閣議決定された第3次補正予算は19兆1761億円と決定されたが、日本は台湾と同じく島国であるため、科学的理論にのっとり、いい加減でない検疫や防疫措置を行っていれば、感染症を市中に蔓延させることはなく、強制力を持つ営業時間の短縮・休業・ロックダウンやそれに伴う血税の無駄遣いも必要なかった。

 そのため、新型コロナ感染拡大防止目的と称して何兆円もの予算を使い、経済対策としてグリーンニューディールを行い、無駄遣いの多い防災・減災・国土強靭化を推進して、100兆円超の国債を新規に発行し、社会保障を持続可能なものにすると称して、つけを国民負担増と社会保障削減で国民に支払わせることには憤りしか感じない。

 そして、このように、生活を無視した政策を平気で行えるのは、生活感も計画性も科学的センスもない男性が中心となって政策を決めているからであろう。

ii) 106兆円の2021年度予算案について

    
2020.12.21毎日新聞 同、北海道新聞       2020.12.15NHK 

 政府は、*3-2-3のように、12月21日の閣議で106兆6097億円の2021年度予算案を決定し、長引く新型コロナ禍の中、さらなる積極財政をとるそうだ。

 水素や蓄電池などの技術開発が進み、グリーン社会が実現して、エネルギー自給率が100%以上となり、排他的経済水域内の海底資源も掘り出して使えるようになれば、失政続きで積みあがった国債を国民に迷惑をかけずに税外収入で償還することも可能かもしれないが、支出は収入がある程度は確実になってからするもので、全く不確実な段階でするものではない。

 また、デジタル化やスマート化は、省力化に必要な手段かもしれないが、世界では既に当たり前になっているため、これが国の収入増に結び付くか否かはわからない。さらに、自治体のシステムを一つに統一してしまうと、それぞれの工夫によるその後の発展がなくなる上、マイナンバーカードや都市封鎖で国民を管理したがる国を、私はよい国だとは思わない。

 なお、NHKは、*3-2-2で、令和3年度は、①感染拡大防止 ②ポストコロナに向けた経済構造転換 ③財政健全化 という3つの課題に対し、バランスをはかりながら予算を組む必要があるとしているが、①は、感染症対策の基本を守りながら、新しい治療や予防の方法があれば積極的に取り入れることに尽き、これがすべてできなかった厚労省のレベルの低さに驚く。

 そして、“ポストコロナ”“新たな日常”などという言葉を使って、新型コロナ感染症を経済構造改革の起爆剤にしようと言うのでは、わざと新型コロナを蔓延させているのではないかとさえ思われる。しかし、構造改革は、企業や個人がContenuing Improvementを行いながら、常日頃から継続的に行っていかなければ世の中についていけなくなる当然のものなのである。
 
 従って、東アジアにある日本は、新型コロナに対して欧米とは異なる特性を持っているため、感染症対策の基本を徹底して行い、早々に新型コロナを収束させて、経済を止めずに、返す当てもない選挙対策の際限なき財政出動はやめるべきだ。

iii) 「命を守るため」と言いながらの新型コロナ蔓延政策は故意か重過失か

  

(図の説明:左図のように、人口100万人当たりの新型コロナ死者数は、中国・韓国・日本で著しく低い。また、中央の図のように、日本企業が開発したアビガンは、米国・ドイツほか20ヶ国が既に購入を決定し、イスラエルが治験を開始しているものだ。アビガンは、ウイルスの増殖を抑える機序で効くため、既にウイルスが増えてしまった重症の患者より、まだウイルスがそれほど増えていない軽症・中等症の患者に使った方が有効なわけである)

 厚労省の医薬品専門部会は、12月21日、*3-2-4のように、新型コロナ感染症治療薬候補「アビガン」の承認を見送り、その理由を、「開発した富士フイルム富山化学等から得られたデータは、アビガンを投与した患者は偽薬投与の患者よりも症状が軽快し、陰性になるのが約2.8日短くなったが、『偽薬は効かない』との先入観から医師が適切に判断できていない事例があった」としている。

 しかし、新型コロナに感染しているのに偽薬を飲まされる患者はたまったものではない上、アビガンを投与した患者は偽薬投与の患者よりも症状が軽快し、陰性になるのが約2.8日短くなり、海外では既にアビガンを使っていることから、この判断は、医師や患者の負担を顧みず、アビガンを承認しない理由を探しているにすぎない。

 一方、*3-2-5のように、政府は、12月23日、新型コロナ感染症対策分科会に特別措置法の改正に向けた論点を示し、都道府県知事が要請・指示した休業や営業時間短縮に応じない店舗などに罰則の導入を検討していることを明らかにしたそうだが、休業や営業時間短縮などの国民に対する私権制限が新型コロナ感染症拡大を止めるという証拠は示しておらず、私権を制限する特措法を作るため、故意に新型コロナ感染症を長引かせているのではないかとさえ思われる。

 その上、尾身氏が「東京、首都圏が他地域と比べて人流が減っていない」「午後10時よりも早くという意見が多く出た」と話していることから、このような休業や営業時間短縮等の強制によって損害を受けた店舗は、自分の店の時短が新型コロナ感染症拡大を止めるという根拠を、アビガンのレベルで明らかにするよう、集団訴訟して損害賠償請求を行えばよい。何故なら、そのくらいのことをしなければ、政治・行政・メディアの横暴が止まらないからである。

iv) 年収200万円(月収16.7万円)の暮らしと後期高齢者医療費の窓口負担増
 *3-2-6に、「①菅首相と公明党山口代表が、年収200万円以上の後期高齢者医療費窓口負担を1割から2割に引き上げることに合意」「②後期高齢者でも現役並みの所得がある年収383万円以上の人は3割負担」「③2022年に団塊の世代が75歳以上になり始めるのを前に、現役世代の負担を軽減する狙いで2022年10月から実施」「④厚労省は年金収入のみの単身世帯で年収240万円以上に絞る案から155万円以上まで5つの案を示し、年収200万円以上は3つ目」「⑤これにより現役世代の負担が880億円減る」「⑥首相は、将来の若い世代の負担を少しでも減らしていくのは大事だと述べた」と記載されている。
  
 そのため、年収200万円の単身年金受給者はどういう暮らしができるのか計算したところ、年間社会保険料9.41万円(=《200-120-33》X9.64%+4.88)、年間所得税3.25万円(=《200-120-38-9.41》X0.1)円、年間市県民税9.9万円(=《200-120-9.41-33》X0.10+6.2)がかかるため、手取り年収は約177万円(=200-9.41-3.25-9.9)となり、手取り月収が14.8万円となる。これは、最低生活とされる生活保護受給額(物価の低い地域13.1万円、物価の高い地域15.8万円)の中間程度だが、生活保護受給者は医療費の自己負担がない。

 そして、手取り月収が14.8万円の人の生活費を例に上げると、家賃5.3万円、食費3万円、水光熱費 1万円、通信費 1万円、交通費1万円、雑費(日用品・消耗品) 1万円、その他(交際費等々)2.5万円となり、借家の場合は、特に苦しい生活になる。

 そのため、現役世代の負担を880億円減らすために、生活保護受給者程度の所得しかない人から、後期高齢者という病気しがちな年齢になって、医療費の窓口負担を1割から2割に引き上げるのはいかがなものかと思う。何故なら、この人たちが使える1カ月分の食費は、麻生財務大臣の1回分の飲み代にも満たない金額だからだ。しかし、男性の政治家や行政官は、生活費の計算ができないらしいのだ。

 結論として、後期高齢者医療費を現役世代のために880億円節約することを考えるのは、命を大切にしない高齢者いじめに過ぎず、それより、いくらでも働ける現役世代にばら撒く何十兆円もの無駄遣いをやめるべきことは、誰が考えても当然である。

 さらに、「高齢者の方が若者より貯金があるから不公平だ」などと言う馬鹿者が少なくないが、働けなくなり病気がちになった時のために、働けるうちに一生をかけて貯金しているのだから、高齢者の方が若者より貯金があるのは当たり前だ。にもかかわらず、このようなことを言う馬鹿者がいるのは、「どういう育て方をしたのか。教育が悪い」としか言いようがない。

v)最低所得保障は、働けない人に行うべきであること
 菅政権が設けた「成長戦略会議」のメンバーの竹中氏が、*3-2-7のように、生活保護や年金を縮小して全国民を対象に1人当たり月7万円を支給する「ベーシックインカム(BI、最低所得保障)」の将来の導入に備えて議論を進めるべきだとの考えを示されたそうだが、生産年齢人口にあたる働き盛りのハンディキャップもない人に国が金を配る必要はない。

 それより、これを行う原資として生活保護や年金を縮小すれば、①本当に必要とする人への所得保障ができず ②働き盛りの人がやる気を出して頑張るのも阻害する。つまり、列車が力強く進むためには、なるべく多くの機関車を繋ぐ必要があるのに、国民を全員客車にすれば列車は動かなくなる。客車ばかりを多く繋げても、列車は決して動かないことを忘れてはならない。

 そのため、何を考えているのかと思うが、日本では、このようにわけのわからない人が一流と言われる経済学者で、首相の「成長戦略会議」メンバーであり、その発言におかしさを感じない人が多いのに、さらに驚くわけである。

vi) 縦割りとセクショナリズムは、縄張りを作りたがる男性の本能では?
イ)縦割りでは戦えない自衛隊
 菅首相が、*3-3-1のように、航空自衛隊入間基地で開かれた航空観閲式で、①組織の縦割りを排し、陸海空自衛隊の垣根を越えて取り組むことが重要 ②宇宙・サイバー・電磁波など新たな領域への対応が求められている ③個々の組織のみでの対処はより難しくなったので、知見と経験を最大限に活用し、特別チームのように新たな任務に挑戦し、自衛隊をさらに進化させることを強く望む と言われたのには賛成だ。

 太平洋戦争当時は、既に航空機の時代が到来していたにもかかわらず、日本軍は帝国陸軍と帝国海軍しかなく、それぞれが航空隊を持ち、お互いの意思疎通は悪かったと言われている。今後は、②のように、宇宙・サイバー・電磁波などを使って、自分は安全な場所にいながら、省力化した安上がりの戦闘を行うのが主流になると思われるため、①③は重要だ。

 しかし、日本は、憲法9条のおかげで幸い陸海空軍はなく、あるのは自衛隊(以下、自衛軍と呼ぶ)だけだと言える。そのため、自衛軍の組織替えを行えば、必要な場所に必要な人を配置できる。従って、新しいことは効果的なメンバーを集めてまずプロジェクトチームで行い、軌道に乗って増員が必要になれば増員すればよいが、そのメンバーも量より質の時代なのだ。そして、このような時に縦割りとセクショナリズムを振りかざして組織再編に反対すれば、合目的的でない軍隊となり、太平洋戦争と同じ結果になるだろう。

 軍隊の場合は、外国との戦争で結果が如実に出るのでわかりやすいが、日本では、省庁にも縦割り・セクショナリズム・無責任体制があり、ポジションを増やそうとして、既得権益を失わないようにしながら予算の分捕り合戦を行っている。そのため、真に国民のために使われる予算が小さくなり、合理的な配分にもならず、国民のためにならない上に国力を弱めている。

ロ)農水省と経産省を統合したらどうか?
 地方に関係している中央省庁は、通信は総務省、産業は農水省・経産省、労働は法務省・厚労省、交通は国交省だ。そして、これらが漏れなく重複なく、うまく機能しなければ、無駄が多い割に役に立たない。

 一つの例として、農業地帯は、*3-3-2のように、農地が10ha規模の場所も存在する北海道でさえ高齢化や担い手不足で離農が急速に進んで過疎地となっている。そして、農家の自助努力では農地を維持することが難しく、現場からは作業の自動化を求める声が根強いが、通信環境が未整備でスマート農業の導入が進まない現実があり、これでは、日本の食料自給率は、さらに下がるだろう。

 「このような考え方は保護主義で、食料は外国から輸入すればよい」などと考える人がいるが、外国から食料を輸入できるのは製造業が比較優位にあって輸出額が多い場合であり、日本は、既にコスト高になっている上、付加価値の高いものを作る努力もしていないため、製造業も風前の灯なのである。その上、食料自給率が低いと安全保障上の問題も大きい。

 しかし、高齢化の進行によって担い手に農地を集積することで、1戸あたりの平均耕地面積を10ha以上にできる時代は、農業も生産性の高い産業にできるため、やり方によっては、ピンチをチャンスに変えることができる有望な時代である。

 その規模拡大を実現できるためには、農機の自動化・通信基盤の整備・労働者の常用雇用・繁忙期のアルバイト雇用など、大規模経営を可能にするインフラが整っていなければならない。これに関わる省庁は、農水省だけではなく経産省・総務省・法務省・厚労省などで、地域の事情に詳しい地方自治体が必要事項を取り纏めて要求していく必要がある。この時、省庁が縦割りで全体の展望が見えておらず、おかしな判断をすると、すべてが頓挫してしまうのだ。

 なお、*3-3-3のように、「役所にとって負けず劣らず重要なのが組織定員要求」というのは農水省に限ったことではないが、これを放っておくと「税金で養っている公務員の数/生産年齢人口」や「税金で養っている公務員の数/GDP」が上がる。これがまずい理由は、税金で養われる公務員には、効率化・付加価値増大の圧力がなく、格付けを重視して仕事の柔軟性が乏しく、働いているふりをしながら後ろ向きの仕事をしていても倒産しないため、公務員の割合が高くなればなるほど国全体の生産性が下がることである。そのため、橋本内閣が行った2001年の省庁再編は重要だったのだ。

 そのような中、*3-3-3に、「①単独省として存続した農水省は、どの局が削減されるか大議論になった」「②現在、廃止された畜産局が復活するかどうかのヤマ場を迎えている」「③現在の食料産業局は新組織案では大臣官房に新事業・食品産業部が設置されるらしい」「④輸出・国際局や作物原局(農産局、畜産局、林野庁、水産庁)との連携が今以上に図られ、食料産業のますますの発展につながる組織改正となることを期待したい」などと記載されている。

 このうち①②は、元に戻そうとする後ろ向きの仕事のような気がする。しかし、農業を産業として強くしつつ、食料自給率を上げて安全保障に貢献し、余剰能力があれば輸出して外貨を稼ぐことが、現在の農林漁業に課せられたニーズであるため、より効果的にそれができる方法を考えた方がよいと思う。

 そして、より効果的にそれができる方法は、農林漁業・自然・地域に関する知識を多く持つ農水省と産業政策・輸出入・エネルギーを担ってきた経産省を統合し、農林水産品の輸出に既にある経産省の基盤を使いながら、農林漁業地帯で再エネ発電も行い、産業としても強い農業を作ることではないかと、私は思う。何故なら、経産省管轄の第二次産業である製造業は高コスト構造によって既に先細りになっているが、食品生産も製造業の一部で、民間にとってはどの省庁の管轄かよりも、既にある知識やインフラを使って効率的に発展できることが重要だからである。

ハ)エネルギーについて

  
        Goo            Jcca       WWFジャパン

(図の説明:左図のように、1973~2016年は、名目GDPは2.5倍になっているが、エネルギー消費は1.2倍にしかなっていない。その理由は、省エネが進んだこともあろうが、内訳を見ると業務他部門は2.1倍になっているのに対し、産業部門は0.8倍になっているため、第二次産業が海外に出て減り、第三次産業に移行したのではないかと考える。2018年の部門別CO₂排出量割合が中央の図で、産業関係の56.3%《35.0+17.2+4.1》が最も大きく、運輸部門が18.5%、家庭部門は14.6%である。これを右図のように次第に減らし、温暖化ガス排出量を2050年に実質0にする計画だそうだが、本気でやれば15年後の2035年でもできそうな気がする)

 日本にとって有利なエネルギーの変換なのに、仕方なく世界についていくという情けない形で、日本政府は、*3-3-4のように、温暖化ガス排出量を2050年に実質0にするというゆっくりした行動計画を公表した。

 その内容のうち、①新車は2030年代半ばに全て電動化(HVも含む)する ②2050年に電力需要が30~50%膨らむと想定し、再エネ比率を50~60%に高める ③産業・運輸・民生全体で電化を加速し、エネルギー源の電力部門は脱炭素化する ④洋上風力は40年までに最大4500万kw(原発45基分)の導入を目指す ⑤蓄電池は2030年までに車載用の価格を1万円/kwh以下に下げる ⑥住宅・建築物は2030年度までに新築平均で実質0にする などである。

 これらに成績をつけると、①は、2030年代半ばになってもHVを含むので「可」に留まる。また、②は、2050年(今から30年後)なら再エネ比率を100%にすることもできるのに、*3-3-6のように、高コストで激しい公害を出す原発にまだ固執しているため「不可」。③の産業・運輸・民生全体で電化というのは「優」だが、電力部門が激しい公害を出す原発を使うつもりなので「可」に留まる。④は、再エネは洋上風力だけではないため「良」程度だ。⑤は、安いほどよいが、まあ「優」だろう。⑥は、可能かつ重要なので「優」。これらをまとめると、経産省と大手の絡むところが、既得権を護るために改革の足を引っ張っていると言える。

 メディアの説明も、i) 風車は部品数が多く裾野が広い ii) 国内に風車は製造拠点がない iii) 燃焼時にCO2を排出しない水素を火力発電で2050年に2000万t消費する目標 iv) 需要拡大で水素でガス火力以下のコストを実現 v) アンモニアを水素社会への移行期の燃料とする vi) 軽自動車は、電動化するとコスト競争力を失う恐れがある vii) バスやトラックなどは電動化が難しい vii) 船舶は50年までに水素やアンモニアといった代替燃料に転換 となっているが、おかしな部分が多い。

 例えば、i)のように、部品数を多くし裾野を広くすると、ユーザーにとってはコスト高で管理が難しく、サプライヤーにとっては安価で柔軟な生産体制にできないため、効果が同じなら簡単な作りで部品数の少ない製品の方が優れている。

 また、ii)は、風車は紀元前から使われている道具であり、最新の材料や流体力学を駆使したとしても、作るのは容易だ。さらに、iii)は、再エネ由来の電力で水(H₂O)を電気分解すれば水素(H₂)と酸素(O₂)ができるのに、それを燃やして火力発電を行うというのは愚かである。iv) v)については、水素は燃料のいらない再エネ発電で作れるため、化石燃料由来のガス以下のコストになるのは当然で、水素の方が容易に作れるのに移行期と称してアンモニアに投資するのは資本の無駄遣いである。

 なお、vi)の軽自動車は、電動化した方が軽量で安いものができ、環境意識・コスト意識が高く、デザインも気にする女性にもっと売れるだろう。vii) のバス・トラックの電動化は外国では既にできているのに、日本では難しいと言うのか(??)。さらに、vii) の船舶は、2050年までなら水素燃料で十分で、アンモニアを使う必要などない。このように、非科学的で不合理な選択を促しているのは、無駄が多すぎて見るに堪えないのである。

 そのため、国民は、原発を使おうとしている大手電力会社の電力を使わない選択をせざるを得ず、それには、*3-3-5のように、2030年に新築住宅・建築物のCO₂排出量を0にする目標は歓迎だ。ゼロ・エネルギー・ハウスの価格は、一般国民の手の届く範囲でなければならないが、それが標準になれば大量生産でコストが下がるので、価格も下げられるだろう。

 最後に、除雪技術・高性能建材・エネルギーの最適利用システム・ビル壁面設置型太陽電池の実用化などの新しい工夫は、大いに期待できる。

(4)女性がリーダーに選ばれにくい理由と女性差別の関係
1)女性がリーダーに選ばれにくい理由と女性差別の関係の本質
 「『女性にリーダーは向かない』というジェンダー・バイアスをなくそう」として、*4-1に、「①働く女性は有償の仕事と無償のケア労働を担い、ダブルワークになっている」「②有償労働と無償労働は足して考えるべき」「③日本人女性の総労働時間は日本人男性より長く、睡眠時間は短い」「④日本人女性の総労働時間はOECD諸国の中で最長」と書かれている。

 これは、無償労働が女性に偏り、無償であることによって「大した仕事ではない」「働いていない」と誤解されていることによって起こった悲劇だ。実際には、家事は必ず結果を出さなければならない大変な仕事で、子育てを含む家事をすべて外注すれば20~30代の一般サラリーマンの給料より高くなるが、有償で働いているサラリーマンは「働いている」とされ、無償で家事と子育てを受け持つ妻は「働いていない」と言われるのである。

 それでも、女性の立場が弱くて状況を変えることができないとすれば、理由はさまざまだろうが、有償で働いて見せることができない女性が多いからだろう。

 *4-1には、「⑤2019年12月に世界経済フォーラムが発表したジェンダー・ギャップ指数で、日本は153カ国中121位」「⑥特に政治・経済分野の女性リーダーが少ない」「⑦経営陣が均質の集団だと集団浅慮が起きる」とも書かれている。

 ⑤⑥は、日本が女性の登用で非常に遅れている事実を数値で示しており、その結果、⑦のように、意思決定に関わる経営陣が均質化しすぎて多面的に議論できない状態になっているのだ

 また、*4-1は、「⑧アンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)がある」「⑨無意識の偏見により、採用、評価、昇進昇格などで差が出る」「⑩男性として望ましく、リーダーとしても望ましい特性で共通するのは『責任感がある』『行動力がある』『説得力がある』など重なりが多く」「⑪女性として望ましく、リーダーとしても望ましい特性で共通するのは『責任感が強い』『自立している』のみだった」「⑫ここから分かるのは『リーダーは男性向きで、女性には向かない』という偏見があることだ」「⑬力強いリーダーシップを発揮している女性を、『女性らしくない』とマイナス評価してしまう可能性がある」「⑭リーダーは男性向きで、女性には向かない」など、無意識の偏見による女性差別についても記載しており、その点でこれまでの記述よりずっと深く、「女性活躍→子育て支援」ばかりの記述とは雲泥の差がある。

 このうち、⑧⑨は、私の経験から見ても正しく、日本人には、女性に特に謙虚さや楚々とした態度を求め、女性が実績を示してリーダーにふさわしいことを証明することを不可能にしたがる人が多い。それでも、能力やリーダーにふさわしい事実を証明した女性には、⑪⑫⑬のように、それとは両立しない“女性らしさ”の要素を勝手に作り出して持ち出し、どうしても⑭の結果を導こうとするのである。こういう人は、男女にかかわらず多いため、教育に原因があるだろう。

 なお、メディアも、能力や体力が十分な女性には、「意地が悪い」「優しくない」などの負の印象付けをして偏見や差別を助長し固定化させている。それがフジテレビの演出で、それを間に受けて悪乗りし、ネットで中傷し続けた人によって引き起こされた女性プロレスラーの自殺事件が、*4-2だ。これは、損害賠償請求してもよい事件だが、メディアもネットも嘘であっても言いたい放題(「言論の自由」「表現の自由」には値しない)で、投稿した人が誰かもわからないようにして、ずっと残すわけである。私の場合は、名誉棄損で侮辱の週刊文春の嘘記事とそれを引用したネット記事が代表だが、決してそれだけではない。

 こんなことを放置していてよいわけがないのだが、「発信者情報の開示を求める申し立ては、不都合なことを書かれた企業などからも起こされていて、正当な批判や内部告発をためらわせる圧力になっている」などとする意見もある。しかし、正当な批判や内部告発なら、ネットを使って匿名で行うのではなく、しかるべき所に責任を持って行うべきであり、“試行錯誤”などと言っているうちは、人権侵害による損害が多発し続けているのだ。

2)夫婦別姓と通称使用
 夫婦別姓は世界の常識とまで言われるようになったが、中国・台湾・韓国で妻の姓が夫と異なるのは、子はその家の子としてその家の姓を名乗るが、妻は他家の人であり、子の母と認めるか否かは夫が決めるという超女性蔑視の名残だと、いろいろな人から聞いている。

 日本は、第二次世界大戦後、敗戦によって民主化が行われ、(3)1)に記載したとおり、日本国憲法24条1項で「婚姻は両性の合意のみに基づいて成立する」と規定され、民法第750条で「夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫又は妻の氏を称する」と規定されて、条文上は男女平等になった。

 それでも改姓するのは殆ど女性で、女性が改姓の不利益を受けがちなのは、21世紀の現在も、日本人が憲法と民法の理念に基づいて平等な立場で結婚していないからだと言える。その理由には、①女性労働には無償や低賃金が多いため、平等に交渉できない ②儒教文化の弊害 など国民に内在する本質的な問題があるからだが、少数とはいえ、改姓した場合に不利益を受けるのは女性だけではない。

 そのため、私は、家族が使う「Family Name」は平等な立場でどちらかに決め、改姓する人が旧姓を使いたい場合は、戸籍法上の届け出を行えば徹底して旧姓を使えるよう、戸籍法を改正すればよいと考えるのである。

 しかし、*4-4は、「③選択的夫婦別姓制度の導入が後退した」「④働き続ける女性が増える中、改姓で仕事に支障が生じる」「⑤1人っ子が増え、結婚しても実家の姓を残したいという希望も強い」「⑥選択的夫婦別姓はあくまで希望者に新たな選択肢を示すというものだ」「⑦今回の計画は、旧姓の通称使用拡大を強調するが、2つの姓の使い分けには限界がある」「⑧夫婦同姓を法律で義務付けているのは、主要国でも異例だ」「⑨家族の一体感のみなもとは同姓であることだけでもない」「⑩大事なのは、議論を止めず、しっかり続けることだ」としている。

 このうち、④は、徹底して旧姓を使えるようにすればよいので、③のように後退したとは言えない。⑤は、残したい姓を「Family Name」にすればよく、統一した「Family Name」を持つ意味は、子の姓の不安定性をなくし、誰も他人ではない家族の一体感を得ることだ。⑥では、夫婦別姓を選択しなかった場合にやはり改姓の不利益が残り、⑦は戸籍に記載すれば徹底して旧姓を使えるよう戸籍法を改正すれば足りる。さらに、⑧は、むしろ夫婦別姓の方に女性蔑視の歴史があり、⑨は、家族の一体感の源はもちろん同姓であることだけではないが、1要素ではあり、⑩のように、議論を続けるばかりでは改姓の不利益の被害者が増え続けるのである。

 そのため、*4-3のように、外務省が、2021年4月1日の申請分からパスポートの旧姓併記要件を緩和し、戸籍謄本、旧姓を記載した住民票の写し、マイナンバーカードのいずれかを提出すれば旧姓を明示できるようにするとしたのは当然のことだ。

 私は、2020年6月に、戸籍謄本と旧姓を記載した住民票を持って、夫とともにパスポートを更新しに行ったところ、外国での論文の発表や業務による渡航など旧姓使用の実績を証明していないから旧姓を併記させないと難癖をつけられて怒りを覚えた。何故なら、衆議院議員の間は旧姓を使い、現在の名刺も旧姓を記載しているため、実績を証明していないなどと外務省から言われる筋合いはなかったからである。

 そして、この時点で旧姓を併記させなかった省庁は外務省だけであり、総務省のマイナンバーカードも警察庁の運転免許証も地方自治体の住民票も旧姓併記できていたのだ。

・・参考資料・・
<製造業>
*1-1-1:https://news.yahoo.co.jp/articles/7545be8044b2a87b478132aa7bbd6c705869fc8d (Yahoo 2020/12/17) 自工会・豊田章男会長が大手メディアに「電動化車両はEVだけではない!」ミスリードやめてと苦言
●いまの状況でEVが増えると電力不足になる!?
 自動車工業会の豊田章男会長(トヨタ自動車社長)が、2020年12月17日に懇談会規模の記者会見をおこなった。挨拶に代表される無駄な時間を掛けず、冒頭より記者からの質問を受けるという内容です。最初に出たのは、昨今話題にあがる電動化について。記者側から「自工会としてどう考えるのか?」という茫洋とした問いだったのだけれど、熱い回答になりました。長い内容になったため概要を説明すると、まず会長自らトヨタ調べの数字で現状を紹介した。自動車産業はずっと二酸化炭素削減努力をおこなっており、その結果、販売している車両の平均燃費でいえば、2001年の13.2km/Lから2018年の22.6km/Lと71%も向上しており、自動車が排出する二酸化炭素の排出量も2.3億トンから1.8億トンへ22%も減っているという。あまり公表されていない数字だったこともあり、改めて自動車環境技術の進化に驚かされる。続けて電気自動車の話になった。多くのメディアはすべて電気自動車にすべきだというけれど、いまの電力状況のままクルマをすべて置き換えようとすれば電力不足になるうえ、そもそも日本は火力発電所がメインのため二酸化炭素の排出量削減にならないという。この件、裏を返せば、日本という国全体のエネルギー問題のほうが大きいということだと考えます。現時点でカーボンフリーの電力をどうやって確保したらいいかという論議はまったく進んでいない。原子力発電所を新設するどころか、既存の施設の再稼働すら出来ない状況。十分な安全性を担保出来なければこのまま廃炉になっていくと思う。
●「EVだけになるわけではない」大手メディアの誤認識に苦言も
 実際問題として「2050年にカーボンニュートラル」という目標を、どういった方策で実現するかまったくわからない。少なくとも現在の排出量を提示し、大雑把でいいからそれぞれの分野でどのくらいの目標設定をするか、エネルギー事情をどうするのかくらいの目安がなければ、自動車業界の対応策すらイメージ出来ないということなんだろう。どうやら2050年カーボンニュートラルや、東京都知事の電動化車両以外販売停止の件、政治家サイドで突如に決めたことらしい。いうのは簡単ながら、エネルギー政策まで考えてくれなければ対応するのも難しいと思う。そもそも、脱ガソリン車で困るのは国民です。地方で移動手段の主力となっている軽自動車もどう対応したらいいかわからず、このままだとユーザーが困る。返す刀でメディアもバッサリ切った。電動化車両のなかにハイブリッド(HV)や、プラグインハイブリッド(PHV/PHEV)も含まれているのに、報道を見ると電気自動車しか販売出来ないようなミスリードをしているという。これはもう、報道するメディア側に大きな問題があります。大手メディアの記者は勉強不足のため、電動化車両にハイブリッドやプラグインハイブリッドも含まれることを認識していない。結果、少なからずそうした報道を見た人が、東京都は2030年からすべて電気自動車になると理解している。そのほか、豊田会長はメディアの誤認識や意地の悪い報道に対し苦言を呈す。聞いていて「その通りですね!」の連続だ。これだけ率直に自分の意見をいうトップは珍しい。「これだけいうと叩かれると思います」と会長自らオチまで付けた。今後も自動車産業代表として大暴れして欲しい。

*1-1-2:https://news.yahoo.co.jp/articles/677759feaa63e0627321fc86f24f2ef515f8fb1f (Yahoo 2020年12月17日) トヨタ社長「自動車のビジネスモデル崩壊」 政府の「脱ガソリン」に苦言
 菅義偉首相が打ち出した2050年に温室効果ガス排出を「実質ゼロ」にする目標に向け、産業界の「重鎮」が苦言を呈した。日本自動車工業会(自工会)の豊田章男会長(トヨタ自動車社長)は17日、オンラインで取材に応じ、政府が30年代に新車のガソリン車販売をなくすことを検討していることについて「自動車業界のビジネスモデルが崩壊してしまう」と懸念を示した。日本は火力発電の割合が大きいため、自動車の電動化だけでは二酸化炭素(CO2)の排出削減につながらないとの認識を強調し、電気自動車(EV)への急激な移行に反対する意向を示した。原発比率が高く、火力発電が日本と比べて少ないフランスを例に挙げ、「国のエネルギー政策の大変革なしに達成は難しい」「このままでは日本で車をつくれなくなる」などと発言。EVが製造や発電段階でCO2を多く排出することに触れ、「(そのことを)理解した上で、政治家の方はガソリン車なしと言っているのか」と語気を強めた。ガソリン車の比率が高い軽自動車を「地方では完全なライフライン」とし、「ガソリン車をなくすことでカーボンニュートラルに近づくと思われがちだが、今までの実績が無駄にならないように日本の良さを維持することを応援してほしい」と述べ、拙速な「脱ガソリン車」には賛成できない考えを示した。一方、日本鉄鋼連盟の橋本英二会長(日本製鉄社長)は17日の定例記者会見で、50年「実質ゼロ」の目標の実現について、研究開発に「10年、20年はかかり、個別企業として続けるのは無理だ」と述べ、国の支援を求める考えを示した。政府の目標達成には、自動車業界や鉄鋼業界の協力が不可欠。「財界総理」と言われる経団連会長を輩出し、政府に対する発言力も強いトヨタや日鉄のトップから懸念が示されたことで首相の「ゼロエミッション」は曲折も予想される。

*1-2:https://www.nikkei.com/article/DGXZQODZ1135N0R11C20A2000000/ (日経新聞 2020/12/17) 電動化、軽・トラック遅れ ダイハツなど価格・車体が壁
 政府が自動車業界に「脱ガソリン車」への対応を迫っている。国内では新車市場の約5割を占める軽自動車やトラックが課題となりそうだ。例えば軽は約7割がガソリン車で、電気自動車(EV)にすると割安さや車体のコンパクトさが失われかねない。軽シェア首位のダイハツ工業やトラック首位の日野自動車などにとって、電動化シフトは険しい道のりとなる。政府は10月に「2050年に温暖化ガスの排出量を実質ゼロにする」との方針を発表。この達成に向け、経済産業省は具体的な工程表を年内にまとめる。30年代半ばに新車販売を全てハイブリッド車(HV)やEVなどの電動車にする目標を盛り込む見通しだ。軽やトラックがこの対象に含まれるかは未定。それでも「特別扱いは難しいのでは」(自動車メーカー幹部)と業界は身構える。日本独自の規格車である軽は、2019年の新車販売台数が148万台と全体の約3割。ただ現在は約7割がガソリンエンジンのみで動くタイプだ。軽以外の乗用車と比べて電動化が進んでいない上に、足元では燃費改善効果が小さい「マイルドハイブリッド」と呼ばれる簡易式HVしかなく、EVや燃料電池車(FCV)はまだない。首位のダイハツや3位のホンダは、現時点で軽の電動車の品ぞろえがゼロだ。電動車比率が6割以上の2位のスズキも簡易式HVしか持たない。小型・軽量化で燃費性能を高めてきた軽は、電動化に本格的に取り組んでこなかった。HVやEVに必要なモーターやバッテリーは価格が高く、軽の最大の強みである安さが失われるためだ。総務省によると19年の軽の平均価格は143万円で、一般的な小型車(217万円)よりも3割強安い。地方を中心とした重要な移動手段でもあるため、ダイハツ幹部は「電動車にすると軽の価格が上がって顧客が離れてしまう。補助金など支援策が必要だ」と困惑する。車内空間を確保するため、電池の搭載スペースが限られることも電動化の足かせとなる。ダイハツは今後は低価格のHV開発を急ぐ。一方、三菱自動車は日産自動車と共同開発する軽のEVを23年度にも投入する計画で、電動化の試金石になりそうだ。さらに厳しいのがトラックだ。国土交通省によると、19年度のトラック(3.5トン以上)販売のうちHVなど電動車は1%に満たず、大半はディーゼル車だ。電池を積んだEVだと搭載できる荷物が減ってしまう上に、充電にも時間がかかってしまうためだ。小型トラックでは三菱ふそうトラック・バスがEVを販売し、いすゞ自動車や日野自はHVを手掛ける。ただ「価格が高いのでニーズは少ない」(関係者)。それでも世界で環境規制が強まるなか、脱炭素への取り組みは不可欠だ。電動化への圧力は、協業や再編を加速させるきっかけにもなりそうだ。

*1-3:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20201219&ng=DGKKZO67507380Z11C20A2NNE000 (日経新聞 2020.12.19) ダイムラー、F1出資半減 「常勝」の自社チーム EVへ注力鮮明
 独ダイムラーは18日、自動車レースの最高峰、フォーミュラ・ワン(F1)の自社チームへの出資比率を現在の60%から33.3%に減らすと発表した。新たな株主に欧州化学大手のイネオスを迎える。ダイムラーの高級車事業会社メルセデス・ベンツは本業で電気自動車(EV)への注力を鮮明にしており、その影響もあるとみられる。メルセデスのF1チーム「メルセデスAMGペトロナス」は2014年から7年連続で総合優勝し、20年も17戦中13戦で勝利するなど圧倒的な強さを誇っている。こうしたなかで21年シーズンからイネオスとダイムラー、チームの代表を務めるトト・ヴォルフ氏の3者がそれぞれ対等な出資比率とする。出資比率変更の方法などについては明らかにしていない。メルセデスは引き続き車体やエンジンの供給を続ける。

*1-4:https://digital.asahi.com/articles/DA3S14736310.html (朝日新聞 2020年12月19日) 東芝、再エネ3.4倍目標に自信 車谷社長に聞く
 東芝の車谷暢昭(のぶあき)社長は17日、朝日新聞の取材に応じ、再生エネルギー関連事業の売上高を2030年度に19年度の約3・4倍にあたる6500億円とする目標について「かなり細かく積み上げた数字」と述べ、達成に自信を見せた。そのうえで「比較にならないような規模に成長する可能性もある」とも語った。東芝は11月、20~22年度の3年間で、過去3年間の約5倍にあたる1600億円を再生エネルギーの分野に投資する計画を示していた。車谷社長は、20年を「新型コロナでデジタルとグリーン(環境)の必要性があぶり出され、次の数十年のスタートの年になった」と振り返った。世界中で進む「脱炭素」の実現に向けて期待される技術のうち、水素エネルギーや、二酸化炭素を回収して有効利用する手法などは「ずっと開発してきたが、これまでは需要がついてこなかった。環境が様変わりし、すごく順風になった」と手応えを語った。一方で、東芝は原発事業による巨額損失で債務超過に陥ったために17年、東京証券取引所1部から2部に降格。今春から審査が続いている1部への復帰については、子会社で新たな不正取引が見つかったことなどが影響し、時間がかかるとみられている。「株主や取引先、従業員のみなさんが再生の象徴として希望しておられるので、実現に最大限努力することにつきる」と述べるにとどめた。9月には約4割を出資する半導体大手キオクシアホールディングスが、米中摩擦などから株式上場を延期した。上場していれば、東芝はキオクシア株の一部を売り、得た利益の半分を株主に還元する予定だった。「(上場が)達成された時に約束通りやっていく」と話した。

*1-5:https://r.nikkei.com/article/DGXZQOFB168O10W0A211C2000000 (日経新聞 2020年12月19日) 小池都知事、EVインフラの補助金拡充の意向 、「30年すべて電動車」へ周辺自治体と連携も模索
 東京都の小池百合子知事は日本経済新聞のインタビューに応じ、2030年までに都内で販売される新車すべてを電気自動車(EV)やハイブリッド車(HV)などの電動車に切り替えるため、充電器などのインフラ整備向け補助金を拡充する意向を示した。「内燃のエンジンは貴重な技術」としつつ、世界的な脱ガソリン車の流れに先んじる政策の必要性を訴えた。都は既にマンション駐車場に設置する充電器への補助制度を設けているが、小池氏は「充電設備の充実は引き続き行う」と述べた。21年度当初予算編成における知事査定で対応策を検討する。都税でEVなどを優遇する制度も「総合的に対応したい」と語った。ただ、都内のEVインフラが充実するだけでは、広域に走る利用者の利便性は確保できない。小池氏は「(1都3県と5つの政令指定都市を含めた)9都県市の共通課題として挙げていく」と話し、周辺自治体との連携を模索する姿勢を示した。脱ガソリン車を巡っては、日本自動車工業会の豊田章男会長(トヨタ自動車社長)が、政府が調整中の30年代半ばに全ての新車を脱ガソリン車とする目標に懸念を示している。小池氏は「内燃のエンジン、ハイブリッドは大変貴重な技術だ」とする一方、次世代車の技術開発競争について「これは覇権争いだ」とも指摘。「産業が大きく変わる中で、日本の居場所を確保しておくことは重要だ」と語った。小池氏は「世界市場を考えると電動二輪はニーズが増える」として、35年までに二輪車も全て電動化する目標も表明した。

<農業と食品>
*2-1:https://www.agrinews.co.jp/p52633.html (日本農業新聞論説 2020年12月10日) JAと企業の連携 地域振興に相乗効果を
 JAと企業との新たな連携が生まれている。地域の人口減少や新型コロナウイルス禍でモノやサービスの需要が減退。地域の実情などに応じて連携することで、事業の効率化や需要の拡大、新規開拓を目指す。農業と地域経済の振興につながるよう相乗効果の発揮を求めたい。JAグループ高知が高知市に開設する直売所「とさのさと」と同じ敷地には、大型スーパーが出店。互いの強みを発揮して客を呼び込む。スーパーはカット野菜や総菜、加工品、調味料を豊富に扱う。一方、直売所は高知県産にこだわり、県内から新鮮な地場産が毎朝届く。野菜の県産率は8割に上る。直売所の関係者は「商品が全く異なり競合しない」と言い切る。むしろ、連携で来店者の6割が両方を利用。直売所は午後と若年層の利用者が増え、スーパーは午前中の売り上げが増え、双方に効果が出ている。LPガスでも連携の動きがある。JA全農みえとLPガス大手の岩谷産業は、伊勢市に同社が新設したLPGセンターの相互利用などに乗り出した。LPガスの充填(じゅうてん)・配送業務を効率化するのが狙い。同じエリアに拠点を置く両者が連携し、経営資源を効果的、効率的に利用してLPガス事業の機能強化を図る。当面は、それぞれの容器を使って配送するが、将来的には容器の統一や配送の一元化を目指す。業務用を中心に、コロナ禍で需要が減少した農産物を、地元の企業と組んで地域内で消費する取り組みも見られる。JAわかやまは、地域経済の活性化に向けて地元の和食チェーン「信濃路」(和歌山市)と連携することで合意した。第1弾として、業務用米を同社が買い入れる。使用する米の全量を同JA産に切り替えるという。毎月6トンの無洗米を22店舗で提供する予定だ。商品開発も見られる。農協観光と日本航空は、岡山、島根、広島県の3空港をチャーター便で結ぶ日帰り観光の企画商品の販売を始めた。コロナ禍で就航本数が減った国際線の飛行機を使う。岡山を起点に島根から広島へのルートを1日で往復し、県内観光をしてもらう。広島では遊覧飛行もする。各空港で旅行客を乗せることで飛行機の稼働率を高め、価格を抑え、近隣地域での観光を促す。隣県を1日で結ぶチャーター便の企画は日本航空では初という。JA同士や協同組合間と並行して、地域やJAの実情に応じた連携の取り組みが始まっている。JA事業を巡っては、高齢化や過疎化で地域の需要が減少する中で、他の事業者との競争が激化、コロナ禍が需要減に拍車を掛けている。また、JAだけでは地域の生活インフラを支えきれない場合もある。こうしたことが背景だ。「地域をより良くしたい」との共通の思いを基盤に協調するところは協調し、互いの強みやブランド力を生かしてほしい。

*2-2:https://www.agrinews.co.jp/p52605.html?page=1 (日本農業新聞 2020年12月6日) JA運営で女性参画着々 役員、正組…軒並み増
 JA全中は2020年7月現在のJAの女性運営参画状況を公表した。役員(理事・経営管理委員・監事)に占める女性の比率が9・1%と前年比で0・7ポイント増えた。数値目標を掲げる①正組合員②総代③理事など──の女性割合が前年を上回った。全中は目標達成に向け、JAに働き掛けを強める考えだ。全正組合員に占める女性の割合は22・7%となり、前年比で0・3ポイント増えた。総代は9・8%で同0・4ポイント増。役員総数は1419人となり同53人増加した。県域JAへの合併などで役員総数が680人減って1万5580人となる中で、女性役員が増えた。JAグループ愛知は、女性役員を1年で44人増やし、県の女性役員比率を47都道府県で最も高い15・3%に伸ばした。「女性役員割合15%以上」の目標達成へ期限を設定。女性の割合を高めるため非常勤理事の定数は増やさずに、地域選出の女性理事を増やしたり、地域選出の理事定数を削減して全域の女性理事枠を設定したりするなど、具体的に役員選出方法を見直した。JAあいち女性組織協議会の会長も務める、JA全国女性組織協議会の加藤和奈会長は「目標設定を明確にし、段階的に進めたことが良かった。男性、女性双方が意見を出し合えればJA運営は良くなる」と指摘する。JAグループは、19年3月の第28回JA全国大会で、女性参画の数値目標を決定。①正組合員30%以上②総代15%以上③理事など15%以上──の目標を掲げている。政府は第4次男女共同参画基本計画で、20年度にJA役員に占める女性の割合を10%にするよう求めていた。20年度に達成できなかったことから現在策定中の第5次計画(21~25年度)で目標を据え置く見込みだ。JA全中青年女性対策課は、女性のJA運営参画のメリットとして理事会・会議の活発化などを挙げ、「JAが変われば地域も変わる。愛知を参考に女性の運営参画をJAに働き掛けていきたい」と強調する。

<政治分野における男女不平等と生活関連政策軽視・縦割行政>
*3-1:https://digital.asahi.com/articles/ASNCC7FXSNCCULFA00Y.html?ref=mor_mail_topix1 (朝日新聞 2020年11月12日) 「女性は野党に出して頂いて」 男女平等、遅れる政界
 日本のジェンダー平等を進めるための、次の男女共同参画基本計画のメニューが出そろった。指導的地位の女性割合を30%に高める目標は未達のまま持ち越され、足もとでは取り組みを強める動きも広がるが、今度こそ達成に向かうのか。新たに緊急避妊薬の市販検討なども盛り込まれたが、議論が続く選択的夫婦別姓と同様に慎重論も根強く、実現は簡単ではない。
●女性議員1割の自民、増えぬ理由は
 日本が特に遅れているのが政治分野だ。衆院議員の女性割合は1割足らずで、各国の議会を比べた世界ランキングは167位。2018年には、議会選挙の候補者を出来る限り男女同数にするよう政党に求める「候補者男女均等法」ができ、翌年の参院選では候補者の女性割合が過去最高の28・1%になったが、男女同数には遠く及んでいない。今年9月には、自民党の下村博文選挙対策委員長(当時)が「30年に党の女性議員が3割」になることを目指して、国政や地方の選挙で候補者の一定数を女性にする「クオータ制」を導入する提言をまとめて二階俊博幹事長に申し入れた。ただ、その後は導入に向けた動きは見えていない。二階氏は今月9日の記者会見で、その後の取り組みについて問われ「バックアップすることはできるが、女性議員をつくることに党が真正面からどうだと言ってみても、国民のみなさんが決めること。そう期待通りにはいかない」と述べた。自民党の国会議員393人(衆参両院議長を除く)のうち、女性国会議員は39人で約1割。選挙で候補者を擁立する際は、男性が多い「現職」が優先されるため、与党が女性候補を増やすのは簡単ではない、というのが党内の見方だ。野田聖子幹事長代行も9日、記者団に「野党にどんどん女性を出して頂いて、効果があれば循環していくのだろう。うち(自民)は残念ながら動かすだけの(空白区などの)キャパがない」と語った。野党第1党の立憲民主党は、国会議員149人(衆参両院の副議長は含めず)のうち、女性国会議員は28人で2割弱。党のジェンダー平等推進本部で、女性候補者を増やすための取り組みを検討している。選挙資金の援助や、女性のスタッフ配置などを想定しているという。だが、衆院議員の任期も残り1年を切り、すでに候補者選考も進んでいる。9月6日、記者団に女性擁立の数値目標について問われた枝野幸男代表は「理想論だけでは進まない。リアリティーある目標を掲げていくのが誠実な対応だ」などと述べるにとどめている。候補者男女均等法をとりまとめた超党派の「政治分野における女性の参画と活躍を推進する議員連盟」(中川正春会長)も、同法改正の検討を始めている。だが、クオータ制には現職らから「議員の質が下がる」といった批判もあるため、超党派での合意を得られやすい、議員や候補者へのハラスメント防止などが主な検討項目になっているという。一方、新たな動きを見せているのが経済界だ。経団連は9日、日本企業の役員に占める女性の割合を「30年までに30%以上」とする数値目標を初めて掲げた。いまは上場企業の役員で6・2%でハードルは高いが、少子高齢化やデジタル化など変化が激しい社会で企業が生き残るには多様性が必要で、そのためには「明確な目標設定がないと、なかなか進まない」(中西宏明会長)と考えたという。グローバル企業には、市場や投資家の視線という「外圧」も高まっている。幹部は「企業の経営のあり方を重視するESG投資が急速に広がっており、女性役員の比率が判断基準の一つになっていく」と話す。答申は今回、最高裁判事を含めた裁判官の女性割合の引き上げにも初めて触れた。夫婦別姓を認めない民法の規定を合憲とした2015年の最高裁判決で、違憲の意見を述べたのは女性3人を含む5人。家族や社会のあり方への司法判断にもジェンダーバランスが求められるからだ。最高裁判事は裁判官や弁護士、検察官、学者などから候補が挙がり、内閣が任命するが、今は15人のうち弁護士出身の宮崎裕子氏と行政官出身の岡村和美氏の2人(13・3%)だけ。最も多かった昨年2月時点でも3人で、裁判官出身で最高裁判事になった女性は、まだいない。ただ、最高裁によると昨年12月時点で裁判官3484人のうち女性は22・6%の787人。弁護士や検察官より3ポイントほど高く、40年前の2・8%(76人)から増え続けており、任官10年未満の判事補に限れば34・5%という。最高裁の担当者は「裁判官にふさわしい女性の任官について努力を継続する」としている。

*3-2-1:https://www.nikkei.com/paper/related-article/?R_FLG=1&b=20201208&be=NDSKDBDGKKZ・・・ (日経新聞 2020/12/4) 34兆円「需要不足」穴埋め 経済対策、支出積み上げへ 量ありき、効果に懸念
 政府が近く決定する追加経済対策の規模拡大に向け、財政支出の積み増しを検討している。7~9月期に年換算で34兆円と試算した「需要不足」を穴埋めできる財政支出とする方向で調整する。低金利で貸し出す財政投融資や2021年度当初予算案の予備費も活用し、長期化する新型コロナウイルスの感染拡大に対応するために規模優先の財政運営を続ける。経済対策は(1)コロナの感染拡大防止(2)ポストコロナに向けた経済構造の転換・好循環の実現(3)防災・減災のための国土強靱(きょうじん)化――が柱になる。20年度第3次補正予算案と21年度当初予算案を一体で編成し「15カ月予算」と位置づける。第3次補正予算案は一般会計から歳出を追加するほか、特別会計から雇用調整助成金の特例措置を延長する財源を捻出する。こうした「真水」と呼ばれる国費とは別に、財政投融資も積み増す。21年度一般会計予算案での予備費も例年の5千億円から大幅に増やし、機動的にコロナ対策に回せるようにする。財政支出の規模として意識するのが34兆円。内閣府は日本経済全体の需要と潜在的な供給力の差を示す「需給ギャップ」が7~9月期にマイナス6.2%で、金額にすると年換算で34兆円だったと発表している。緊急事態宣言が出された4~6月期の57兆円よりは縮む一方、コロナによる経済活動の停滞で需要不足はなお大きい。自民党の下村博文政調会長は11月30日、菅義偉首相に「34兆円の需給ギャップを埋めるような近い額で大型補正を組んでほしい」と要望した。野村総合研究所の木内登英氏は「需給ギャップで経済対策の規模を決めるのはかなり無謀だ」と指摘する。34兆円は7~9月期の年換算の金額であり、21年に執行する追加経済対策に当てはめるのは不適切だとみる。経済協力開発機構(OECD)は12月1日、日本の経済成長率は20年にマイナス5.3%、21年はプラス2.3%となる見通しを公表した。経済対策の予算を支出する時期には、需給ギャップは足元よりも小さくなっている可能性が高い。ポストコロナに向けた経済構造の転換は長い時間をかけて取り組むため、予算が即効性ある需要穴埋めに結びつかない面もある。温暖化ガス実質ゼロに向けた技術革新の支援や大学の研究基盤整備、自治体システムの標準化は基金をつくり、複数年で支出する。どうしても規模ありきの経済対策は中身の精査が甘くなる面がある。財政支出は20年度第1次補正予算が48兆円、第2次補正予算では72兆円に上った。「青少年交流の家」の空調設備などコロナ対策として疑問符がついた費用も計上された。

*3-2-2:https://www3.nhk.or.jp/news/html/20201215/k10012765931000.html (MHK 2020年12月15日) 第3次補正予算案 閣議決定 追加の歳出19兆円余
 政府は、新型コロナウイルスの感染防止やポストコロナに向けた経済構造の転換などを後押しする経済対策を実行するため、追加の歳出を19兆1761億円とする今年度の第3次補正予算案を決定しました。政府は15日の臨時閣議で先週まとめた経済対策を実行するため、追加の歳出として一般会計で19兆1761億円を盛り込んだ今年度の第3次補正予算案を決定しました。
●主な施策
 新型コロナウイルスの感染拡大防止のための予算としては、
▽病床や宿泊療養施設の確保など医療を提供する体制を強化するために「緊急包括支援交付金」を増額する費用として1兆3011億円
▽各都道府県が飲食店に営業時間の短縮や休業を要請する際の協力金などの財源として「地方創生臨時交付金」を拡充する費用として1兆5000億円を盛り込んでいます。
 ポストコロナに向けた経済構造の転換や好循環を実現するための予算としては、
▽中堅・中小企業が事業転換を行うための設備投資などを最大で1億円補助するための費用として1兆1485億円
▽遅れが指摘される行政サービスのデジタル化を進めるため、地方自治体のシステムを統一する費用などに1788億円
▽「脱炭素社会」の実現に向けて基金を創設し、野心的なイノベーションに挑戦する企業を10年間継続して支援する費用として2兆円を計上しています。
●防災・減災や国土強じん化を推進
 防災・減災や国土強じん化を推進する予算として、
▽激甚化する風水害や巨大地震などへの対策、インフラの老朽化対策などの費用として2兆2604億円が盛り込まれました。
●国債の新規発行額は初の100兆円超え
 一方で、新型コロナウイルスの影響による企業業績の悪化や消費の低迷で今年度の国の税収は、当初の見込みから8兆円余り減少して、55兆1250億円となりました。今年度は当初予算が一般会計の総額で102兆円余りでしたが、補正予算を3度にわたって組んだ結果、一般会計の総額は175兆円余りに膨らみました。今回の補正予算に必要な財源を確保するため、政府は追加で赤字国債などを発行する方針で、今年度の国債の新規発行額は、112兆5539億円と、初めて100兆円を超えることになります。今年度の予算全体でみますと、歳入の64%余りを国債に頼る過去最悪の状況になります。政府は、15日、第3次補正予算案を決定したのに続いて、来週には来年度の予算案を決定し、15か月予算の形で切れ目のない対策を実行することにしています。
●新規国債発行額の推移は
 新規の国債発行額は、今から30年前、1990年度は7兆円余りでした。その後、増加が続き、2000年代は30兆円前後で推移していました。この時期には、すでに歳入の3割から4割を国債に頼る状況となり、財政の健全化が課題とされていました。2009年度にはリーマンショックに伴う景気対策などで歳出が一気に膨らみ、国債発行は過去最大の51兆9550億円となりました。その後、景気回復に伴う税収増加で国債の増加ペースはいくぶん抑えられましたがそれでも30兆円台から40兆円台で高止まりする状況が続いていました。そうした中、今年度は新型コロナウイルスへの対策で、3度にわたる補正予算が編成される一方、企業業績の悪化で税収は当初の見込みを8兆円余り下回りました。巨額の歳出を賄うため、大量の国債発行を余儀なくされ、今年度の発行額は112兆5539億円に上ることになりました。過去最大だった2009年度の51兆9550億円を2倍以上も上回る規模で、初めて100兆円を超えることになります。歳入に占める国債の割合は実に64%を超え、過去最悪の状況です。
●次の焦点 来年度予算の課題は
 今年度の第3次補正予算案の編成が終わり、次の焦点は編成作業が大詰めを迎えている来年度・令和3年度予算案に移ります。「感染拡大の防止」「ポストコロナに向けた経済構造の転換」それに「財政健全化」という3つの課題に対し、バランスをはかりながら、予算を組んでいく例年以上に難しい編成作業となります。
●感染拡大の防止
 このところ、新規の感染者や重症患者の数が夏の“第2波”のピークを超え、“第3波”に入ったという指摘もあります。国民の命はもとより、経済を下支えし、雇用や暮らしを守るうえでも、感染拡大の防止は最重要の課題です。医療体制が機能不全に陥ることを食い止める実効性のある対策が求められています。
●ポストコロナに向けた経済構造の転換
 日本経済を安定的な成長軌道に戻すには、新型コロナウイルスで様変わりした人々の意識に適応した形に社会や経済を転換していく必要があります。政府は来年度の予算編成の基本方針で、デジタル改革や、脱炭素に代表されるグリーン社会の実現、それに中小企業などの事業転換を後押しすることで、生産性の向上と継続的な賃金の底上げによる好循環の実現などを打ち出しています。
“新たな日常”への対応で海外に遅れを取らず、国際競争力を高めていけるかが問われます。
●財政の健全化
 感染拡大を防ぎながら、将来の成長への種をまき、財政状況にも目配りしなければならないという難題を抱えての予算編成となります。
●麻生副総理・財務相「民需主導の経済回復を確かに」
 麻生副総理兼財務大臣は、今年度の第3次補正予算案を閣議決定したあとの記者会見で「コロナの危機を乗り越えて未来をつないでいくことが責任だと思っている。経済対策を迅速に実行してコロナの災いを乗り越えて、未来の成長力を強化して民需主導の経済回復を確かなものにしないといけない」と述べました。一方、今年度の予算全体で、歳入の64%余りを国債に頼る過去最悪の財政状況になったことについて、麻生副総理は「足元の財政が悪化しているのは事実だ。信認が損なわれないよう経済再生と財政健全化の両立を進める必要がある。また、難しい時だからこそコロナだけではなく日本が抱える構造的な課題に着実に取り組まないといけない。最も差し迫った問題が少子高齢化で引き続き、社会保障を持続可能なものにしていかなければならない」と述べ、歳出と歳入の両面で改革を進めていく考えを強調しました。

*3-2-3:https://www.nikkei.com/article/DGXZQODF188IF0Y0A211C2000000/ (日経新聞 2020/12/21) 2021年度予算案106兆円、脱炭素で成長 実効性カギ 
 政府は21日の閣議で一般会計総額106兆6097億円の2021年度予算案を決定した。長引く新型コロナウイルス禍で国民の不安が消えないなか、積極的な財政出動で支える姿勢を示した。コロナ禍を抜け出すには成長を促す戦略が必要だ。支出ありきではなく、予算の無駄づかいを防ぎ、実効性を高めることが重要になる。菅義偉首相は「感染拡大の防止に万全の対応をとりつつ、次の成長の原動力となるグリーン社会実現やデジタル化に対応する」と語る。21年度予算案の一般会計総額は過去最大で、20年度第3次補正予算案と合わせた「15カ月予算」の規模は126兆円に達する。特徴はコロナ禍を機に構造転換を促す成長戦略を打ち出した点だ。脱炭素社会に向けた2兆円基金は最大10年間にわたり水素や蓄電池などの技術開発を支援する。21年9月にはデジタル庁を発足させ、自治体のシステム標準化やマイナンバーカードの普及を推進する。19年12月に決定した19年度補正の経済対策分4.3兆円と20年度当初予算102.7兆円の合計は107兆円だった。15カ月予算として比べると、今回は前年よりも19兆円ほど大きい。政府は財政で支える姿勢を鮮明に打ち出し、コロナ禍が拡大すればさらに補正で上積みする可能性もある。欧米各国も一斉に財政出動に動く。国際通貨基金(IMF)によると、財政支出や金融支援を含む日本のコロナ対策は20年度第2次補正予算までの段階で国内総生産(GDP)比35%に達した。ドイツやイタリアも30%台後半の高水準だ。日本はさらにGDPの1割を超す事業費73.6兆円の追加対策を加え、単純計算でGDP比は5割近くに達した。米国では米議会が9000億ドル規模の追加対策で合意し、対策のGDP比は2割を超える見通しだ。コロナ感染の再拡大が収束せず、欧米では都市封鎖も繰り返される。政府の支えが必要との指摘は多い。課題はどう実効性を高めていくかだ。コロナに対応する現場ではまだまだ課題が多い。コロナ患者を治療する病院では重症患者などを受け入れる病床が不足し、医師や看護師の負担も高まる一方だ。コロナ対策予算では執行が遅れているものもある。病床や宿泊療養施設の確保などに使う都道府県向けの交付金は第1次と第2次の補正などで2.7兆円を計上した。しかし実際に医療現場に届いたのは8000億円にとどまる。申請手続きが複雑な点などが指摘されており、目詰まりを防ぐ改善が欠かせない。予算の効率的な執行とともに必要なのは、無駄遣いの監視だ。規模ありきで事業が積み上がると、必ずしも必要ではない事業にお金が回る事態が増えかねない。例えばデジタルや脱炭素を推進する基金は5~10年といった中期で事業に取り組める一方、いったん予算が成立すれば各省や公益法人が国会のチェックなしで支出を続けることが可能だ。最初に使途を決めない予備費は20年度補正予算で11.5兆円を計上した。7兆円近くは使わなかったが、21年度予算案にも5兆円を盛り込んだ。非効率とムダを排除しながら実効性を高め、日本経済を浮上させる効果を得られるかが問われる。

*3-2-4:https://www.tokyo-np.co.jp/article/75795 (東京新聞 2020年12月21日) アビガン承認見送り、厚労省部会 コロナ治療、有効性の判断は困難
 厚生労働省の医薬品に関する専門部会は21日、新型コロナ感染症の治療薬候補「アビガン」の承認を見送り、新たなデータの提出を待ってから再審議することを決めた。開発した富士フイルム富山化学などからこれまでに得られたデータでは、有効性を明確に判断するのが困難なことが理由。富士フイルム富山化学は10月、治験結果を基に承認申請。治験は重篤を除く患者計156人が対象で、アビガンを投与した患者は偽薬投与の患者よりも症状が軽快し、陰性になるのが約2・8日短くなったとした。だが関係者によると「偽薬は効かない」との先入観から、医師が適切に判断できていない事例があったという。

*3-2-5:https://digital.asahi.com/articles/DA3S14742156.html (朝日新聞 2020年12月24日) 時短応じぬ店、罰則検討 政府、特措法で 私権制限など課題
 政府は23日、新型コロナウイルス感染症対策分科会に特別措置法の改正に向けた論点を示し、都道府県知事が要請・指示した休業や営業時間短縮に応じない店舗などに罰則の導入を検討していることを明らかにした。実効性を高める案の一つだが、私権制限のあり方などの課題は多い。政府が23日に示した論点は、(1)特措法が対象とする感染症の中に新型コロナをどう位置づけるか(2)緊急事態宣言後に開設するとしている「臨時の医療施設」を宣言前にもつくれるようにするか(3)罰則や支援措置を設けて知事の時短要請などの実効性を高めるかの三つ。政府は分科会の意見を踏まえ、来年の通常国会に提出をめざす改正案の内容を固める。新型コロナが収束し、一連の対応などを検証してからとしてきた特措法の改正に政府が前向きに転じた背景の一つには、11月以降の感染拡大への対策に「打てる手が見つからない」(政府高官)など手詰まり感が出ていることがある。政府は一時、東京都に午後10時までの営業時間の短縮を1時間繰り上げて強化する案なども水面下で打診。だが、小池百合子知事が「協力してくれる事業者が少なくなる現実も考えなければいけない」と述べるなど両者には距離がある。全国知事会が以前から要請の実効性を高めるよう求めていたこともあり、特措法の改正が浮上した。ただ、焦点の罰則については政府・与党や専門家にも様々な意見がある。自民党の下村博文政調会長は「法的な根拠をもうけることは理にかなっている」と述べる一方で、内閣法制局の関係者は「罰則を設けるには根拠が必要だ」と指摘する。メンバーの日本医師会常任理事の釜萢敏氏は分科会後「冷静に議論するのはまだ難しいという意見もあった」と話した。新設するにしても、どの程度の金額水準とすれば効果があるのかなどの検討が必要だ。また西村氏は、東京など感染拡大が続く地域を対象に、1月11日までイベントの参加者数の上限を5千人までに戻す規制強化を発表した。販売済みチケットのキャンセルは求めず、上限を超える新規販売の自粛を呼びかける。分科会は東京都内を念頭に、午後10時までの営業時間の短縮要請を早めて強化することを改めて求めた。尾身氏は「東京、首都圏が他地域と比べて人流が減っていない」と指摘した上で、「午後10時よりも早くという意見が多く出た」と話した。

*3-2-6:https://www.nikkei.com/article/DGXZQOFS079N00X01C20A2000000/ (日経新聞 2020/12/9) 75歳以上の医療費窓口負担 年収200万円以上は2割に 
 菅義偉首相(自民党総裁)と公明党の山口那津男代表は9日夜、都内で会談した。75歳以上の後期高齢者の医療費窓口負担を1割から2割に引き上げる対象を年収200万円以上にすると合意した。2022年10月から実施する。22年に「団塊の世代」が75歳以上になり始めるのを前に、現役世代の負担を軽減する狙いがある。後期高齢者の医療費窓口負担は現在、原則として1割で、現役並みの所得がある年収383万円以上の人は3割を負担する。新たに2割負担を求める対象の所得基準を巡り、政府・与党が協議を続けてきた。与党は医療費の負担が急増しないよう制度導入時に激変緩和措置も検討する。政府は11日にも全世代型社会保障検討会議を開き、引き上げ方針を盛り込んだ最終報告をまとめる。厚生労働省は11月、年金収入のみの単身世帯で年収240万円以上に絞る案から、より幅広い155万円以上まで5つの案を示した。対象人数は200万人から605万人としていた。政府・与党が合意した年収200万円以上は5つの案のうち、中間の3つ目にあたり、平均的な年金額を目安とする基準だ。2割に負担が増える人の対象は370万人となる。厚労省の試算ではこれにより、現役世代の負担が880億円減る。首相は4日の記者会見で「将来の若い世代の負担を少しでも減らしていくのは大事だ」と述べた。5案のうち年収170万円以上を軸に調整するよう指示していた。公明党は「負担が増える高齢者を減らすべきだ」と主張し、年収240万円以上とするよう求めていた。自公両党の幹部が協議してきたが折り合わず、党首会談で決着した。2割への引き上げ時期は22年10月からとする。政府は19年末の中間報告で「遅くとも22年度初めまでに改革を実施」と明記していたが、同年夏の参院選への影響を考慮した。関連法案を21年1月召集の通常国会に提出する。後期高齢者の医療費改革を巡っては安倍政権が19年12月、一定以上の所得がある人はいまの原則1割から2割に引き上げる方針を決めた。政府の全世代型社会保障検討会議は当初、今年6月に最終報告をまとめる予定だった。新型コロナウイルスの感染拡大に伴う影響で、議論を先延ばしした経緯がある。

*3-2-7:https://www.tokyo-np.co.jp/article/65553?rct=politics (東京新聞 2020年10月31日) 最低所得保障、将来に備え議論を 竹中平蔵氏が見解
 菅義偉政権が新たに設けた「成長戦略会議」のメンバーで、慶応大名誉教授の竹中平蔵氏(69)が31日までに共同通信のインタビューに応じた。最低限の生活を保障するため全国民にお金を配る「ベーシックインカム(BI)」(最低所得保障)について、「将来の導入に備えて議論を進めるべきだ」との考えを示した。竹中氏は9月下旬、BS番組に出演し、BIについて全国民を対象に1人当たり月7万円支給するよう提言。財源は生活保護や年金を縮小して充てるとした。菅政権のブレーンの一人として注目され始めた時期と重なり、波紋が広がっていた。

*3-3-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20201129&ng=DGKKZO66772390Y0A121C2EA3000 (日経新聞 2020.11.29) 首相「陸海空自、縦割り排して」 航空観閲式で訓示
 菅義偉首相は28日、航空自衛隊入間基地(埼玉県狭山市)で開いた航空観閲式で訓示した。「組織の縦割りを排し、陸海空自衛隊の垣根を越えて取り組むのが重要だ」と指示した。首相は「宇宙やサイバー、電磁波などの新たな領域の対応が求められている」と述べ、個々の組織のみでの対処がより難しくなったと指摘した。「知見と経験を最大限に活用し、特別チームのように新たな任務に果敢に挑戦し、自衛隊をさらに進化させるのを強く望む」とも話した。1964年の東京五輪の開会式で上空に五輪を描いた空自の任務に触れた。「固定観念や前例にとらわれることなく、試行錯誤を重ねた結果、新たな道を切り開くことができた」と訴えた。「来年の夏、人類がウイルスに打ち勝った証しとして東京五輪・パラリンピックを開催する決意だ」と強調した。

*3-3-2:https://www.agrinews.co.jp/p52725.html (日本農業新聞 2020年12月21日) [現場ルポ 熱源を歩く] 遠いスマート化 担い手限界寸前 進まぬ通信整備 北海道留萌市
 高齢化や担い手不足で離農が急速に進む北海道の過疎地。都府県と違い一つの農地が10ヘクタール規模の場所も存在するが、人手が足りない。農家の自助努力では農地を維持することが難しく、現場からは作業の自動化を求める声が根強い。ただ通信環境が未整備で、スマート農業の導入が進まない現実がある。中心市街地から車で30分の山奥にある道北部の留萌市藤山町。古くから山間の沢に沿って水田が列を成す地域だ。谷津の奥地は12月、腰の高さまで雪が積もる。一部携帯電話はつながらない。「請け負える農地はもってあと5ヘクタール。それ以上は限界だ」と、同市の水稲農家、中尾淳さん(43)は胸中を吐露する。同市の水稲農家は今年1月時点で35戸。10年前から14戸減った。高齢化も進行。担い手が減る中、耕作放棄地を出すまいと30~50代の担い手数人が離農地を集積している。それに伴い1戸の平均耕地面積も12・5ヘクタールと10年前から2・2ヘクタール増えた。この差は都府県の農家1戸の平均的な経営面積と同じ大きさだ。中尾さんも年々面積が増え、山奥の水田16ヘクタールなどを管理する。豪雪地帯で雪解けが遅く作業期間が限られるため、春先の田植え作業に多大な労力がいる。高齢の両親の手伝いと併せ繁忙期はアルバイトを雇い対応する。既に手が回らず、草刈りの回数は半減させた。道内の1戸当たりの平均経営耕地面積は年々増加し、30・6ヘクタールと都府県の14倍だ。十勝やオホーツク地方など大規模農業地帯では自動操舵(そうだ)が当たり前になってきたが、過疎地への導入は進まない。通信基盤が整っていないためだ。中尾さんは「担い手が減る中、まずは農機運転の自動化ができなければ地域農業は守れない。実現できれば他の作業を手伝える。でも当分無理だろうね」と苦笑いした。JA南るもい幌糠支所の鳥羽桂行支所長は「省力化したくてもできず、諦めている農家が多い。あと1ヘクタール増やすだけでも限界という担い手もいる」と説明。ただ、放棄地を出さないために現場が望む作業の自動化には、インターネット環境の整備が必要となる。北海道大学の野口伸教授は、道の過疎地の通信基盤整備の必要性を強調した上で「受益者負担も生じ、地域によっては費用対効果の話も出る。非常に難しい問題だ」と解決の複雑さを語る。総務省によると、道内全農地における超高速ブロードバンド(光ファイバー)の整備率は51・6%。農地面積が広大かつ点在する北海道では、残りの整備負担の試算額は全体で最大1600億円必要で、整備されていない自治体は山間地が大半を占めている。この莫大(ばくだい)な予算をどう捻出するのか。同省は今年度の補正予算で「高度無線環境整備推進事業」に過去最大の計531億9000万円を計上。地方創生臨時交付金と併せて自治体の整備負担額を減らし、農家世帯や住宅地などへの完備を目指す。ただ、同省が目指すのは世帯への完備で、農地ではない。留萌市は来年度から同省の事業を活用して基盤の整備を進める。一方で市の担当者は「山奥の農地への整備をどうしていくかは世帯整備後の話となる」(農林水産課)と説明する。中尾さんは使命感を語る。「親父から受け継いだこの田んぼに食わせてもらった。子どもたちの古里をなくさないためにも守り続けたい」

*3-3-3:https://www.agrinews.co.jp/p52614.html (日本農業新聞 2020年12月8日) 組織改正と行政力 食料産業発展に期待 元農水省官房長 荒川隆氏
 師走の声を聞き、来年度予算編成も大詰めだ。予算の陰に隠れ目立たないが、役所にとって負けず劣らず重要なのが、組織定員要求だ。組織の形を定め、その格付けごとの定員(級別定数)を決める組織定員要求は、役人にとって自らの処遇や組織の格にも関わる大事だ。橋本内閣が道筋をつけた2001年の省庁再編により、1府22省庁の中央官庁が再編され、現在につながる1府12省庁(当時)体制が導入された。役所の数を減らすだけでなく、各省庁の内部部局も一律に1局削減するとともに、全省庁を通じて局の数に上限が設定された。国土交通省や総務省など統合省にあっては、内局の数も多く問題はなかったろうが、単独省として存続した農水省では、どの局が削減されるか大議論になった。定員の割に局の数が少ない農水省で、5局(当時)を4局(当時)に再編することは難題で、結局、「畜産局」が廃止され耕種部門(農産園芸局)と統合し「生産局」が設置された。今、その「畜産局」が復活するかどうかのヤマ場を迎えている。「生産金額では米を凌駕(りょうが)している」「今後の輸出拡大の目玉だ」など理屈はいろいろあろうが、それはそれで、「昔の名前で出ています」の感がなくもない。5兆円の新たな目標に向かい、今後本格化するだろう輸出攻勢を担う「輸出・国際局」の新設と「合わせ一本」ということだろう。この組織改正の陰で見逃せないのが、飲食料品産業や外食産業などを所掌する部局の位置付けの変更だ。現在はその名の通り「食料産業局」が設置されているが、新組織案では、大臣官房に「新事業・食品産業部」なるものが設置されるらしい。わが国の食料・農林水産業の売り上げは100兆円で、そのうち農業が8兆円、林業・水産業は4兆円、残りは全て広義の食料産業部門だ。その食料産業部門を国の行政組織としてどう扱うかは、農水省の組織改正の歴史上、悩ましい問題だった。とかく1次産業偏重、農業偏重といわれてきたこの役所で、1972年に「企業流通部」が局に格上げされ、現在の「食料産業局」の前身である「食品流通局」が設置された。食料産業関係者の悲願が実現したのだ。あれから50年、今般の組織改正が、よもや食料産業の格下げではないと信じたいが、はたからはそんな懸念も聞こえてくる。多忙な官房長が新たなこの部を直接指揮監督するのは難しかろうから、何らかの総括整理職が設置されるのだろう。それにより、「輸出・国際局」や作物原局(農産局、畜産局、林野庁、水産庁)との連携が今以上に図られ、食料産業のますますの発展につながる組織改正となることを期待したい。凡人の懸念が杞憂(きゆう)で終わりますように。

*3-3-4:https://www.nikkei.com/article/DGXZQODF2492P0U0A221C2000000/?n_cid=BMSR3P001_202012251359 (日経新聞 2020/12/25) 再生エネ比率、50年50~60%に 脱炭素へ政府成長戦略
 政府は25日、温暖化ガス排出量を2050年に実質ゼロにする行動計画を公表した。新車は30年代半ばに全て電動化する。50年に電力需要が30~50%膨らむと想定し、再生可能エネルギーの比率は今の3倍の50~60%に高める目安を示した。脱炭素を成長のてこにする戦略で、50年に年190兆円の経済効果を見込む。実現には政策の総動員と技術革新が欠かせない。50年ゼロという高い目標を掲げ、温暖化対策を成長の制約ではなくチャンスとして位置づける。産業構造の大転換に向けて企業の背中を押す実効的な仕組み作りが重要になる。例えば脱炭素の税制支援で今後10年の間に1.7兆円の民間投資を促す。このほか予算や金融支援などの措置に加え、排出枠取引などの経済的手法も検討課題に挙げた。全体として産業・運輸・民生の各部門は電化を加速し、そのためにエネルギー源となる電力部門は脱炭素を進める構図になる。個別には洋上風力や水素、自動車・蓄電池など14の重点分野を定め、課題と対応策を工程表としてまとめた。国内では現在ほとんど普及していない洋上風力は40年までに最大4500万キロワットの導入を目指す。原子力発電所45基分に相当し、再生エネ先進国であるドイツをしのぐ規模となる。風車は部品数が多く裾野が広い。産業育成へ40年に国内調達量を60%にする目標も打ち出した。現状では国内に風車は製造拠点がない。燃焼時に二酸化炭素(CO2)を排出しない水素は、火力発電での利用を念頭に50年に2000万トン程度の消費量を目標とする。国内の発電設備容量の2割程度をまかなえる規模だ。需要拡大を通じてガス火力以下のコストを実現する。水素社会への移行期の燃料とするアンモニアは30年に天然ガス価格を下回る価格水準での供給をめざす。自動車は30年代半ばまでに新車販売の100%を電動車に切り替える。電動化するとコスト競争力を失う恐れのある軽自動車も例外にはせず、同様の対応を求める。電気自動車(EV)などの普及のカギを握る蓄電池については30年までに車載用の価格を1キロワット時あたり1万円以下に下げる。現状は1万円台半ばから2万円程度とされる。電動化が難しいバスやトラックといった商用車は来年夏ごろをめどに結論を出す。住宅・建築物は30年度までに新築平均で実質ゼロにする。半導体・情報通信産業は40年までにデータセンターで実質ゼロを実現する。船舶は50年までに水素やアンモニアといった代替燃料に転換する。

*3-3-5:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20201226&ng=DGKKZO67722550V21C20A2M11700 (日経新聞 2020.12.26) 住宅 30年に新築の排出ゼロへ
 温暖化ガス排出を減らすには、住宅や建築物のエネルギー消費削減も必要になる。国内の温暖化ガス排出量の15%は家庭から。政府は新戦略で新築住宅の排出量を2030年にゼロとする目標を掲げた。エネルギー収支が実質ゼロの「ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス(ZEH)」をどこまで普及できるかがカギを握る。ZEHは家庭で使う電力を太陽光発電などの再生可能エネルギーで賄い、温暖化ガスの排出量を実質ゼロにする住宅だ。発電した電気をためる蓄電池や断熱材などを生かし、最小限のエネルギーで暮らせる家をめざす。国内メーカーも導入に前向きだ。積水ハウスは19年度に手掛けた一戸建ての87%がZEH。20年度の8割目標を前倒しで達成した。大京や穴吹工務店もZEHマンションの建設を進めている。ただコストは高い。ZEHの初期費用は戸建ての場合、通常よりも200万~300万円ほどかさむという。日本は暖房費や除雪費などエネルギー消費量がかかる寒冷地での普及が進まない面もある。政府はこのほか、高性能建材のコスト低減や木造建築物の普及拡大、窓ガラスなどの性能評価制度の拡充などを新戦略に盛り込んだ。エアコンの制御や充電を効率化するエネルギーの最適利用の仕組みを検討する必要があるとしている。建材・設備の開発を巡っては、ビルの壁面に設置できる次世代型太陽電池の実用化を急ぎ、導入を拡大する。

*3-3-6:https://digital.asahi.com/articles/ASNDV5T89NDCULFA03D.html?iref=comtop_BreakingNews_list (朝日新聞 2020年12月27日) 長官来県に「いよいよ来た」東電と経産省、再稼働へ着々
 肌を刺すような冷たい風に小雪が舞った14日、東京電力の柏崎刈羽原発を東京商工会議所の三村明夫会頭(日本製鉄名誉会長)ら経済界の視察団が訪れていた。敷地内では、7号機の再稼働に向け、原子力規制委員会から求められた安全対策工事が急ピッチで進む。案内役を務めた東電ホールディングスの小早川智明社長は、2011年の東日本大震災で太平洋側の発電所が軒並み止まったことを引き合いに、「日本海側の柏崎刈羽は非常に重要な電源だ」と強調。原発推進派で知られる三村氏も「原子力を相当程度活用せざるを得ない。大事なきっかけとして柏崎刈羽の稼働に強く期待する」と応じた。視察を持ちかけたのは、早期の再稼働を望む地元の柏崎商工会議所だった。電気を使う首都圏の経済界と一緒に原発の必要性を訴えることで、再稼働に向けた弾みにする狙いがあった。福島第一原発の事故から約10年。事故を引き起こした東電は今年9月、規制委から再び原発を動かす「適格性」の「お墨付き」を得て、再稼働への環境づくりを推し進めている。年明けに対策工事が終われば、いよいよ焦点は再稼働への地元同意となる。その地ならしもすでに、半年ほど前から水面下で進んでいる。
●「ここで動かせなければ二度と動かせない」
 コロナ禍による政府の緊急事態宣言が明けて間もない6月ごろ、資源エネルギー庁の高橋泰三長官(当時)は自民党新潟県連を訪れていた。長官がわざわざ乗り込んできたことに、同席した県連幹部は「いよいよ来たか」と身構えた。「お金もかけているし、安全審査も進んでいる。動かさないままにすることはできない」。そう訴える高橋氏に対し、この県連幹部は「再稼働はすぐには難しいですよ」と伝えた。県内では再稼働への反発が強く、同意した場合の知事選への影響が懸念された。東電も経済産業省もそこを意識し、知事の任期が切れる22年6月の1年ほど前、来年6月までに再稼働への同意を取りつけるシナリオを描く。再稼働で収益を改善しなければ、膨らむ福島第一の事故処理費用を賄い切れないからだ。ある経産省幹部は「ここで動かせなければ二度と動かせないかもしれない」と意気込む。高橋氏の後任、保坂伸・エネ庁長官も7月の着任以来、何度も新潟入りする異例の対応を取っている。11月27日、非公開で開かれた自民党県連向けのエネルギー政策の勉強会。自ら講師を務めた保坂氏は、再稼働への理解を直接求めることはなかったが、政府の原発政策などを紹介しつつ、日本海側の電源の重要性を訴えた。議員からは原発周辺の避難道路の整備を求める声などが挙がったという。再稼働を求める地元の経済界の要請を受け、県議会が同調し、最後は知事が同意を決断する。多くの原発再稼働で見られたプロセスが繰り返されるのか。自民、公明両党の支持で当選した国土交通省出身の花角英世・新潟県知事は、県独自の検証委員会の報告を受けて判断するとし、再稼働への態度をまだ明らかにしていない。だが、原発事故から10年を経て、東電と経産省は再稼働への地ならしを着実に進めつつある。

<女性がリーダーに選ばれにくい理由と女性差別の関係>
*4-1:https://synodos.jp/economy/23872#google_vignette (SYNODOS 2020.10.27)  「女性にリーダーは向かない」というジェンダー・バイアスをなくそう
●ポストコロナにこそ女性リーダーが求められる 
 もう元には戻れない――。コロナ禍を受けて、働く側も、企業も、そして自治体や自治体も模索が続く。過去の延長線上に、新たな社会は構築できない。社会を再構築するにあたって求められる重要な視点のひとつが、ジェンダー目線である。政治の世界においては、女性活躍推進といいながらも、働く女性の「ケア労働」に対するフォローが欠けていたことが、今回のコロナ禍で明らかになった。働く女性は職場の仕事に加えて家事育児・介護といったケア労働を担い、ダブルワーク、トリプルワークになっている。日本はOECD諸国のなかで最も、有償労働は男性に偏り、無償労働は女性に偏っている。日本人女性の有償労働、無償労働を足し合わせた総労働時間は日本人男性よりも長く、OECD諸国のなかで最長である。付言するなら、日本人女性の睡眠時間は最も短い。女性が輝く社会というキャッチフレーズの裏には、女性が睡眠時間を削って無償労働を担う姿がある。企業においては、今回のコロナ禍を受けて働き方の見直しが進んでいる。これまで在宅勤務は子育て中の女性社員のためという位置づけの企業もあったが、今回は一気に全社員に対象が広がった。性別、階層問わず広がったテレワークの実験的導入が、今後フレキシブル・ワーク(柔軟な働き方)を広げる契機となるだろう。これは正社員として働く女性にとっては追い風となる。ただし課題は山積だ。時間でなく成果で評価する仕組みをどう作るか、マネジメントの在り方をどう変えるか。在宅での仕事とケアワークとの両立をどう認めるのか。一例を挙げたまでだが、政治の世界も企業も、そして地域社会も家庭も、ジェンダー視点で見つめなおしてみると、新たな社会を築く上での課題とヒントが見えてくる。むろんジェンダー意識の高い男性リーダーもいるが、より多くの女性リーダーを登用することにより、変化が加速していくだろう。
●日本はジェンダー・ギャップ指数121位。政財界に少ない女性リーダー 
 では、日本における女性リーダーの現状はどうか。そのお寒い状況を表すのが、2019年12月、世界経済フォーラムが発表したジェンダー・ギャップ指数が153カ国中121位という結果である。過去最低の順位に沈み込んだが、その大きな要因が政治と経済分野における女性リーダーの少なさだ。衆議院の女性比率は約10%と世界最低水準、全国市区町村議会では女性の議員ゼロが2割を占める。2020年9月に誕生した菅義偉政権の女性の閣僚も、わずか2人。カナダ、スペイン、フィンランドなど閣僚の半数を女性が占める国が出てきているなか、登用が遅れているのは明らかだ。危機感を抱いた超党派の議員連盟などの働きかけにより、2018年5月、男女の候補者の数が均等になるように各政党に努力を求める「政治分野における男女共同参画推進法」が制定された。施行後初めての国政選挙となった2019年4月の参院選では女性候補者は28%と前回の25%をわずかに上回った程度。自民党の女性候補者は15%にとどまった。結果として、当選した女性議員は前回と同数という結果となった。罰則規定のない努力義務では、男女均等の実現には効力がないことが実証されることとなった。経済界でも、女性管理職比率は11.9%にとどまる(厚生労働省、2019年度「雇用均等基本調査」)。政府は2020年に、あらゆる分野で指導的地位に占める女性の割合を30%にしようという目標を掲げ「202030」という掛け言葉をかけてきたが、残念ながら目標未達は必至だ。ちなみになぜ30%かというと、ある集団の中で少数派が30%を超えると意思決定に影響を及ぼすようになるという、米ハーバード大のロザべス・モス・カンター教授の黄金の3割理論によるものだ。女性の役員比率をみると5.2%(2019年7月末現在、東洋経済新報社「役員四季報」)。欧米の2~4割に比べると、その差は明らかである。ただし人数は10年で4倍に増えている。役員増のきっかけは、2013年に安倍晋三政権が成長戦略のひとつとして女性活躍推進を掲げ、上場企業に「最低ひとりは女性役員を置くように」と産業界に要請をしたことだ。さらに2018年改訂のコーポレート・ガバナンス・コード(企業統治指針)で女性取締役を登用することを促し、もし実行できない場合は投資家への説明を求めたことも、女性取締役増の後押しとなった。
●海外では女性リーダー不在への危機感が高い 
 近年ではESG投資の観点からも、女性取締役を求める機関投資家の声が高まっている。女性取締役のいない場合、株主総会で社長の選任などに反対票を投じる海外機関投資家も現れた。そこまで女性取締役を求めるのは、なぜか。一つには、企業統治の強化である。経営陣が均質な集団だとグループシンキング(集団浅慮)が起き、リスクが回避できないという。その典型例が、リーマン・ショックだ。リーマンブラザーズの経営陣が、男性、アングロサクソン、白人と極めて均質な集団であったために、危うい経営判断に歯止めがかけられなかったとされている。もう一つは、女性取締役を迎えることが業績向上につながるという期待だ。実際に女性取締役比率の高い企業ほど業績がいいという分析が様々発表されている。マッキンゼー・アンド・カンパニーの2018年のレポートでは、経営陣に占める女性の割合が多い企業上位25%と下位25%を比較したところ、企業の収益性を示すEBITマージン(金利税引前の利益であるEBITを売上高で割ったもの)が前者のほうが2割も高いことが示されている。ただし、女性役員をひとり登用すれば業績が向上するといった単純な話ではない。性別、年齢問わず優秀な人にチャンスを与え、意思決定層を多様化している企業は業績が伸びる、ということだろう。属性や経験が異なる知と知がぶつかり合うことで新しいものが生まれるのだ。欧米では、女性リーダー不在への危機感が強い。現状のままではあらゆる分野で男女平等を実現するのに99.5年かかると世界経済フォーラムは試算している。男女間格差を是正するため、変化を加速させる必要があるとして各国が導入するのが、ジェンダー・クオータ制(割当制)だ。政治分野でいえば、議席の一定割合を女性に割り当てることを法律で定める「議席割当制」、議員候補者の一定割合を女性または男女に割り当てる「法的候補者クオータ制」、政党による「自発的クオータ制」などがある。現在世界の約6割、100を超える国と地域で導入されている。議会に占める女性割合は世界平均で約24%(2019年1月、列国議会連盟調べ)、この25年間で女性議員数が倍増したのは、クオータ制導入によるものとされている。経済分野では取締役会に占める女性の割合を3割以上、4割以上とする「女性役員クオータ制」の導入が、欧州で進んでいる。欧州連合(EU)は2013年秋、欧州議会で欧州全体の上場企業に「2020年までに社外取締役の40%を女性にすべし」という指令案を圧倒的多数で可決した。その後理事会で通らなかったため、欧州全域でのクオータ制は実現しなかったものの、押し付けを嫌った各国が独自にクオータ制を導入。今や女性役員比率2~4割に達する国が多い。なぜ、クオータ制などという強硬策まで講じて、女性役員を増やそうとしたのか。それは欧州経済危機を受けて「女性の力を生かさないと、この経済危機を乗り切ることはできない」と考えたからだ。これを現在のコロナ危機に当てはめて考えるとどうか。日本はこれまで不況を迎える度に「女性活躍推進などと悠長なことを言っていられない」と後退してきた。果たして今回はどうだろう。「女性の力を生かさないと、このコロナ危機を乗り越えることはできない」と考える企業は再生へのステップを踏み始めるのではないか。 
●リーダーは男性向きというアンコンシャス・バイアスをなくそう 
 政財界でなぜここまで女性リーダーが少ないのか。その一因として「リーダーは男性向きである」という「アンコンシャス・バイアス」があると考えらえる。アンコンシャス・バイアスとは、日本語でいうと「無意識の偏見」。いわば無意識のうちの刷り込みである。これは100%悪いわけではない。これまでの仕事の経験から得た刷り込みで素早く判断して効率性を上げるといった利点もある。問題は差別などマイナスを生む刷り込みだ。先進国のダイバーシティ推進企業がいま問題意識をもつのが、性別、人種や国籍などに関するアンコンシャス・バイアスにより、採用、評価、昇進昇格などで差別をしてしまうことだ。アンコンシャス・バイアスのなかでも、ジェンダー(社会的性差)に関するバイアスを、「ジェンダー・バイアス」という。筆者は2018年に大手企業25社約2500人を対象に、リーダーシップの性差とジェンダー・バイアスに関する調査を行った(桜美林大学講師、川崎昌氏との共同研究)。「野心的である」「愛想がいい」といった特性語38に対して、「女性として望ましい」「男性として望ましい」「組織リーダーとして望ましい」の3分類で望ましさの程度を7件法で回答してもらった。その結果、男性として望ましい、リーダーとして望ましい特性は「責任感がある」「行動力がある」「説得力がある」など重なりが多かったが、女性として望ましい、リーダーとして望ましい特性で共通するのはわずかで「責任感が強い」「自立している」のみだった。回答者の性別、階層別でみても同じ傾向だった。ここから分かるのは「リーダーは男性向きで、女性には向かない」というバイアスがあることだ。こうしたバイアスがある限り、女性自身が無意識のうちに上を目指すことにブレーキをかけることになりかねない。組織内評価でも意図せずとも「女性らしさ」と「リーダーらしさ」の異なる2つの軸で印象をもとに評価してしまう可能性もある。力強いリーダーシップを発揮している女性を、無意識のうちに「女性らしくない」とマイナス評価してしまう可能性もある。登用にあたっては「管理職にふさわしい女性がいない」という言葉がよく聞かれるが、この言葉の裏にもまた「リーダーは女性には向かない」というジェンダー・バイアスが潜んでいるかもしれない。「リーダーは男性向きで、女性には向かない」というバイアスを取り除かない限り、女性リーダーの登用はおぼつかない。
*野村浩子(のむら・ひろこ):ジャーナリスト
 1962年生まれ。84年お茶の水女子大学文教育学部卒業。日経ホーム出版社(現日経BP)発行の「日経WOMAN」編集長、日本初の女性リーダー向け雑誌「日経EW」編集長、日本経済新聞社・編集委員、淑徳大学教授などを経て、2020年4月東京家政学院大学特別招聘教授。財務省・財政制度等審議会委員など政府、自治体の各種委員も務める。著書に「女性リーダーが生まれるとき」(光文社新書)、「未来が変わる働き方」(KADOKAWA)、「定年が見えてきた女性たちへ」(WAVE出版)など。

*4-2:https://digital.asahi.com/articles/DA3S14714790.html?iref=comtop_Opinion_04 (朝日新聞社説 2020年12月1日) ネット中傷対策 試行錯誤を重ねながら
 ネット上の書き込みで被害を受けた人の救済を図るため、法律を改正して新たな仕組みを導入する見通しになった。損害賠償などを求めるには、投稿した相手が誰なのかをまず突き止める必要がある。現在はサイトの運営者と接続業者を相手に、ネット上の住所や本人の氏名の開示を求めて裁判を2回起こさなければならない。これを1回で済ませられる簡易な手続きを設けるよう、総務省の有識者でつくる研究会が提言した。そこで示された裁判所の決定に不服がある時は正式な訴訟で争うことも可能にする。妥当な内容といえる。フジテレビの番組に出演していたプロレスラーの木村花さんが亡くなったこともあって、議論の行方が注目されていた。手続きの煩雑さから泣き寝入りせざるを得なかった人にとっては朗報だ。一方で、発信者情報の開示を求める申し立ては、不都合なことを書かれた企業などからも起こされていて、正当な批判や内部告発をためらわせる圧力になっている。新たな手続きが乱用されれば表現活動が広く萎縮しかねない。法施行後に運用状況を検証し、不具合が見つかればまた手直しをするという前提で、制度の設計に当たってほしい。表現の自由は民主社会の基盤であり、発信行為を禁ずることはできない。それが人権を傷つける内容であった時、どうやって被害回復を図り、再発の防止につなげるか。発展途上にある技術とどうつきあうか。試行錯誤を重ねながらより良い答えを探り続けねばならない。裁判手続きの整備や被害相談に応じる仕組みの強化に力を入れるのはもちろんだが、SNSなどを運営するプラットフォーム事業者の責任も重い。総務省はこの夏、海外勢を含む事業者から不適切な投稿への取り組み状況を聴取した。だが具体的で納得できる説明がされたとは言い難く、外国の本社任せのような回答もあった。社会的責任の大きさを自覚し、早急に態勢を整えるべきだ。米ツイッター社が事実と異なる投稿に警告表示をしたり、大統領選前にリツイート機能を見直したりして関心を集めた。事業者の介入をどこまで是とするか、国内でも議論を深めたい。利用する側も問われる。ネットは公共財と認識し、感情に流されず一呼吸おいてから発信することなどを通じて、ゆがみを正していく努力が必要だ。ネットを見ているだけで、不快な情報に心を乱されることもある。「見ない」という選択も当然あっていい。自分なりのネットとの適切な距離の取り方を改めて考えてみてはどうか。

*4-3:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20201226&ng=DGKKZO67743270V21C20A2EA3000 (日経新聞 2020.12.26) 旅券 旧姓併記しやすく 4月から、実績証明不要に
 外務省は25日、2021年4月1日の申請分から旅券(パスポート)の旧姓を併記する要件を緩和すると発表した。戸籍謄本、旧姓を記載した住民票の写し、マイナンバーカードのいずれかを提出すれば旧姓を明示できるようにする。現状は戸籍謄本の提出に加えて、外国での論文の発表や業務による渡航など旧姓使用の実績を証明する必要がある。パスポートでの表記方法も改める。カッコ内で示す旧姓について英語で「Former surname」との説明を加える。国際結婚をした場合などに使う旧姓以外の「別名」に関しては「Alternative surname」などと記す。これまではカッコ内に旧姓が示されているだけで説明書きはなかった。外務省によると旧姓を併記する国は少なく、入国時に入国管理当局から説明を求められるケースがあるという。茂木敏充外相は記者会見で「今回の変更で円滑な渡航が可能になることを期待する」と述べた。

*4-4:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20201229&ng=DGKKZO67802970Z21C20A2EA1000 (日経新聞社説 2020.12.29) 夫婦別姓の議論を止めるな
実現に向けて動き出したかと思われていたのが、一転して大きく後退した。夫婦が希望すれば結婚前の姓を名乗れる、選択的夫婦別姓制度の導入のことだ。政府が閣議決定した新しい男女共同参画基本計画の書きぶりは以前よりかなり後ろ向きだ。計画は2000年に始まり、今回が第5次だ。第1次から4次までは、選択的夫婦別氏(姓)制度という言葉を明記していた。この文言がなくなり「夫婦の氏に関する具体的な制度」というあいまいな表現になった。政府として「必要な対応を進める」という第5次の当初案も、「さらなる検討を進める」にトーンダウンした。変更の理由は、自民党内からの強い反論だ。党内には賛否それぞれの意見があり、調整は難航した。最終的には保守系に配慮したかたちで「夫婦同氏制度の歴史」などの言葉が追加された。選択的夫婦別姓の導入には、大きな逆風になりかねない。働き続ける女性が増えるなか、改姓で仕事に支障が生じるとの声は多い。一人っ子が増え、結婚しても実家の姓を残したい、という希望も強い。計画策定に先立つパブリックコメントでは、導入を求める多くの声が寄せられた。今回の計画は、こうした声に真摯にこたえたとはいえない。1996年には法制審議会が導入するよう答申した。17年の内閣府の世論調査でも、導入に賛成する人は当事者世代である18~29歳、30代でいずれも5割を超える。選択的夫婦別姓はあくまでも希望者に新たな選択肢を示すというものだ。今回の計画は、旧姓の通称使用拡大を強調するが、2つの姓の使い分けには限界がある。夫婦同姓を法律で義務付けているのは、主要国でも異例だ。家族の一体感のみなもとは「同姓であること」だけでもないだろう。大事なのは、議論を止めず、しっかり続けることだ。菅義偉首相はかつて導入に賛意を示していた。将来に向け、何が必要なのか。議論をリードしてほしい。

<外国人差別もよくないこと>
PS(2020年12月30日追加):フランスを代表するファッションデザイナーのピエール・カルダンが、*5-1のように、パリ郊外の病院で亡くなられたそうで残念だ。このHPの表紙で着ている白のスーツを始め、私のおしゃれ系スーツは殆どピエール・カルダンとクリスチャン・ディオールで、鮮やかで意外な色と洗練されたデザインの組み合わせがよく、さすがにイタリアとフランスだと思う。これに、シャネルのバッグ・フェラガモの靴・ボルボのEVを合わせるとおしゃれは完成するだろうが、日本も先進性やデザインに力を入れたらどうかと思う。
 なお、*5-2のように、棚田保全のために担い手の確保が必要だそうだ。棚田はじめ祖先が苦労して開墾した農地は国民の財産であるため、放牧地にするのはまだよいとしても、林地や緩衝帯にするのはもったいない。むしろ、レモン・オリーブ・アーモンドなどこれまで日本ではあまり作っていなかったものを作ったり、住居を用意して日本人だけでなく難民の中から希望者を募って集団移住させたりなど、人材確保を工夫すればよいと思う。農業も多様性があった方が面白いアイデアが出るのであり、私は東南アジア由来のパクチーを最近よく買っている。


     棚田の春           浜野浦の棚田        棚田の秋

*5-1:https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR294970Z21C20A2000000/?n_cid=BMSR3P001_202012292230 (日経新聞 2020/12/29) ピエール・カルダンさん死去 仏の世界的デザイナー
 フランスを代表するファッションデザイナー、ピエール・カルダン氏が29日、パリ郊外の病院で死去した。98歳だった。死因は明らかにされていない。仏メディアが一斉に報じた。同氏の名前を冠したブランドは世界的に知られる。1922年、イタリア北部で7人兄弟の末っ子として生まれる。当時のイタリアのファシズムから逃れるため家族でフランスに移住した。14歳で仕立ての仕事を学ぶなどして修業を積んだ後、著名ファッションデザイナー、故クリスチャン・ディオールのもとで働く。50年にパリで自身の高級注文服の店を開き、評価を高めた。「多くの人に作品を知ってもらうのが大切だ」としてパリ百貨店プランタンに自分の服を置くプレタポルテ(高級既製服)の道を開いた。当時としては異例の対応で、同業者から批判を受けたこともある。だが一部の人だけのものだった高級ファッションを「民主化」したとの評価もある。斬新な感性を持つデザイナーで、60年代には初めてビニールを服の素材として使って周囲を驚かせた。96年4月には日本経済新聞に「私の履歴書」を連載した。91年勲二等瑞宝章。

*5-2:https://www.agrinews.co.jp/p52776.html (日本農業新聞論説 2020年12月27日) 棚田の保全 担い手確保の政策必要
 棚田地域振興法の指定地域が順調に増え、指定開始から1年で600近くになった。棚田が持つ多面的機能への評価が高まる一方、中山間地域では高齢化や人口減少に歯止めがかからない。同法が掲げる「国民的財産」を守るには、移住者を含め、棚田の多様な担い手を確保・育成する総合的な政策が必要だ。同法は2019年6月に議員立法で成立した。旧市町村単位で都道府県が申請した地域を、国が指定する。指定を受けた地域では農家や自治体、住民らが地域協議会を組織。計画に基づいて、農業生産にとどまらない多様な活動を展開し、それを国が支援する。具体的には、中山間地域等直接支払制度で10アール当たりの基準額に1万円を上乗せする。また、地域振興に関連する事業の優先採択や面積要件の緩和、補助率かさ上げなどのメリットもある。指定地域は、19年12月の第1弾の指定から約1年で合計33道府県583地域に拡大した。最も指定が多いのは大分県で98地域。次いで新潟県・92地域、岡山県・45地域と続く。農水省は、今後も指定地域の増加が見込まれるとして、一層の浸透を図りたい考えだ。現場からは支援の拡充を求める声もある。また棚田支援に関する自民党のプロジェクトチームは、制度の課題を洗い出し、必要に応じて法改正にも乗り出す考えだ。棚田を抱える中山間地域で高齢化、人口減少が進む中、支援策と並行して農水省は、生産基盤として長期的にも棚田を残すかどうかの是非も議論している。食料・農業・農村基本計画の具体化に向けて設けた「長期的な土地利用に関する検討会」で同省は、政策支援しても維持できない場合、放牧地や林地への転換も選択肢に挙げている。また野生鳥獣の被害が増えている現状から、作物を栽培せずに草刈りなどを行い緩衝帯として活用することも提示。農地にいつでも戻せる仕組みも議論の俎上(そじょう)に載せている。農地を維持するために支援を手厚くするか、農地からの転換に踏み切るか。中山間地域対策を巡ってはこうした議論が繰り返されてきた。しかし、最優先すべきは「人材確保」である。地縁の有無や世代を問わず、都市など他の地域から人を呼び込み、移住者や関係人口などとして、棚田の保全に多様な形で携わる人材を確保する政策が必要である。また、定住できるように、所得・就業機会の確保と生活条件の整備が重要である。棚田の価値について国民理解の醸成も一層進めなければならない。自然災害が頻発する昨今、洪水防止や水源涵養(かんよう)などの多面的機能を発揮し日本の原風景も守っていることや、それには農地として人の手で維持しなければならないとの認識を共有する必要がある。食料安全保障の確立に向けて基本計画は国民運動を提起した。生産基盤としても貴重な棚田を守る機運を政府は高めるべきだ。

<病人差別と私権制限好きの存在>
PS(2021年1月2日追加):年末はNHK番組でも、*6-1のように、①新型コロナの感染者数は100年前のスペイン風邪(当時の新型インフルエンザ)と同じとし ②感染症は抑え込まねば流行を繰り返すとして ③欧米の感染者数を出して日本で危機感をあおり ④都市封鎖を奨める報道が目立ったが、100年前とは比較ににならないほど生物学・医学などの科学が進歩し、ウイルスの姿や行動もわかり、衛生設備の普及や衛生教育が進み、治療薬やワクチンもできているため、よほど無知で非科学的な行動をしない限り、歴史を繰り返すことはないのである。
 にもかかわらず、日本の場合は、*6-2のように、空港での検疫や入国後の処遇が何カ月経っても的を得ず、ウイルスの変異は日常的に起こるのにそれを調べもせず、英国が新型コロナに変異種があると発表して初めて国内で確認するという情けなさで、新型コロナ対策分科会の尾身会長が、年末に「医療体制等が逼迫して機能不全に近い状態に近づきつつある。変異種が国内で拡大すれば極めて危機的な状況が起こる」などと述べたが、厚労省がこの程度では情けない。
 さらに、平井デジタル改革相が、*6-3のように、「⑤新型コロナウイルス対策として、海外から入国した人の移動を把握するシステムを開発中だ」「⑥海外と同様、日本でのトレーサビリティーをデジタルでやろうと考えており、使わないと入国させない」「⑦GPSをオンにしてとお願いしないといけない。こういう事態だから許されると思う」と述べておられる。
 しかし、⑤については、日本では、失政続きのせいで新型コロナが市中に蔓延しており、その中から変異種が現れることも当然あるため、海外から入国した人の移動だけを把握しても無意味だ。その上、⑦については、性犯罪者でもないのに新型コロナの可能性があるとして政府から移動を監視される言われはなく、⑥を行っているのは、それこそ中国や韓国などの人権後進国なのに、そこだけ真似しようというのでは民主主義国家とは言えない。
 さらに、*6-4のように、政府が新型コロナ対策の実効性を高めるためとして特別措置法の改正を進めており、焦点は休業や営業時間短縮の要請に応じない事業者に罰則を科すことだそうだが、これは、営業の自由に反する規制である上、このような後ろ向きの規制による個人の営業上の損失を国民の血税で補填する仕組みであるため、どれだけの効果をもたらすのか明確なエビデンスが必要だ。私は、そんなことに使う金の1/10でも治療薬やワクチンの開発、ゆとりある医療システムの整備などに使った方がずっと役に立つと思っている。そして、日本独特の“積極的疫学調査”は新型コロナを市中に蔓延させた失政であり、接触した人を洗い出す方法は警察の捜査ではよく使われるが、病気は検査・治療・隔離と事前予防しかなく、疫学調査はサンプルをランダムに抽出して行うものなのである。

*6-1:https://digital.asahi.com/articles/ASNDC44M4ND3ULZU009.html (朝日新聞 2020年12月11日) ウイルスがまいた第2次大戦の種 歴史生かせぬ宰相ら
●コラム「多事奏論」 駒野剛(編集委員)
 新型コロナウイルスのパンデミックが止まらない。米国では1日当たりの新規感染者数が20万人を超え、欧州もいったん解除した都市封鎖を再発動している。約100年前、今以上の大流行が世界を脅かした。スペイン風邪という新型インフルエンザにより、諸説あるが世界で2500万人から4千万人、日本も植民地を除く本土だけで45万人の命が奪われたという。1918年から20年までの流行で、同時期に戦われた第1次大戦の死者、約1千万人をはるかに上回る大災厄となったのだ。22年、内務省衛生局が刊行した「流行性感冒」は、この感染症の特徴を「本病の一度流行するや老幼、貴賤(きせん)の別なく之(これ)を侵し、土地の遠近を問はず迅速に蔓延(まんえん)して種々の社会的事情を生ずる」と書いている。事実、感染に貴賤の別はなかった。18年10月末、「平民宰相」と呼ばれた原敬(はらたかし)が、初代首相伊藤博文の墓参りの後、インフルエンザを発症した。さらに当時の皇太子、つまり昭和天皇や秩父宮ら皇族、元老山県有朋も感染し、回復した原らが対応に右往左往した記録が残っている。
     ◇
 新型インフルエンザは、短期の混乱にとどまらず、その後の世界史すら変えた、という指摘がある。
18年1月、米国のウィルソン大統領は平和14原則と呼ばれる教書を発表した。外交の公開、軍備縮小、そして諸国家の政治的独立や領土保全の相互保障のための組織、国際連盟の結成を呼びかけた。力の均衡という旧来の安全保障の枠を超えて、相互信頼に基づく公平な運営により、悲惨な戦争を繰り返さない決意がこめられている。ウィルソンは、戦勝国、敗戦国が怨讐(おんしゅう)から離れるべきだと考え、仏英が強く求めた独からの賠償金取り立ても反対だった。19年3月、講和条約を話し合う首脳会談に臨むため、ウィルソンはパリに入った。当時のパリはインフルエンザが流行し、「まるで我々の周りには何百万もののどに悪さするばい菌がうようよしている」と米代表団の一員が書き残すほどだった。1カ月ほどの会談で米仏が鋭く対立した。クレマンソー仏首相は、独が二度と立ち上がれないような措置を求め、ロイド・ジョージ英首相も、「独皇帝を絞首刑に、独から賠償を」といった国民感情を背景に、この会談の場にやってきていた。大詰めの4月3日。ウィルソンに魔の手が襲いかかり39・4度の高熱を発し会談を離脱。結局、賠償金支払いの義務を独に負わせる条項が条約に盛り込まれてしまう。その後決まった賠償額は1320億金マルク。当時の独の国民総所得の約2・5倍という膨大なもので、国民の窮乏を招き、復讐(ふくしゅう)心がナチス台頭のきっかけになった。パンデミックの実相を記した「史上最悪のインフルエンザ」の著者アルフレッド・W・クロスビーは「インフルエンザの被害に遭った人々のうちで最も痛ましい道をたどったのは、『戦争というすべての戦争をなくし、人類を高いモラルを持つ新たなレベルにまで引き上げようとする任務』に自ら着手したこの男であった」と述べ、ウィルソンの悲劇が、その後の第2次大戦の悲劇に連なっていくことを静かに暗示する。
     ◇
 こうした歴史が示す宰相の判断の重さを思うと、前政権も菅義偉首相も危機感が乏しくないか。3カ月前、私は当欄で「流行中に『Go To トラベルキャンペーン』を実施した。感染症抑制に逆効果という人の移動を税金を投じ後押しする」と疑問を呈した。事態はどうなったか。経済と感染症予防の両立と言うが、感染症は抑え込まねば流行を繰り返し、その度に経済は混乱する悪循環に陥るだけだ。菅氏は危機に迅速かつ適切に対処してきたと自負した。しかし歴史の経験に学ばない政治は、所詮(しょせん)、傲慢(ごうまん)を超えて愚行と言うしかない。この冬の終わりは遠そうだ。

*6-2:https://www.nikkei.com/article/DGXZQODG25CK50V21C20A2000000/ (日経新聞 2020/12/25) コロナ変異種、感染者を国内初確認 空港検疫で5人
 厚生労働省は25日、英国から航空機で入国した男女5人から感染力の強い新型コロナウイルス変異種が検出されたと発表した。変異種の確認は国内で初めて。いずれも空港検疫で見つかった。菅義偉首相は田村憲久厚労相に「水際対策もしっかり対応してほしい」と指示した。変異種への感染が確認されたのは18~21日に英国から羽田空港や関西国際空港に到着した10歳未満~60代の男女5人。うち4人は無症状で、60代男性はだるさを訴えていた。5人は陽性判明後に空港から宿泊施設に移され、現在も療養中で、濃厚接触者はいないという。5人の国籍は非公表。変異種は英国以外にイタリアやオランダ、デンマーク、オーストラリアなどでも見つかり、24日にドイツでも初確認されるなど拡大している。従来のウイルスより最大70%ほど感染しやすいが、重症化リスクは変わらないとされる。政府の新型コロナ対策分科会の尾身茂会長は25日、首相の記者会見に同席し、仮に変異種が国内で拡大すれば「いまでも医療体制などが逼迫、機能不全に近い状態に近づきつつある。極めて危機的な状況が起こる」と述べた。日本政府は英国からの航空便について、当面1週間の新規予約の受け付けを原則停止。26日以降、英国や南アフリカからの入国者について検疫所が指定する宿泊施設などで3日間の待機を求め、再検査で陰性を確認する。24日からは英国からの外国人の新規入国を禁止していた。日本人や日本在住の外国人が英国から帰国・再入国する場合もこれまで一定の条件下で認めていた2週間の待機期間の免除を取りやめている。26日からは南アフリカについても同様の措置とする。田村厚労相は25日夜、記者会見し、英国や南アフリカ以外からの入国者についても検疫体制を強化する意向を示した。英国では南アフリカの渡航者と接触した人からさらに別の変異種も見つかっている。英政府はこちらの方がさらに感染力が強いと説明している。

*6-3:https://www.nikkei.com/article/DGXZQOFS271DE0X21C20A2000000/ (日経新聞 2020/12/27) 入国者の追跡システム、義務化意向 平井デジタル相
 平井卓也デジタル改革相は27日のフジテレビ番組で、新型コロナウイルス対策として海外から入国した人の移動を把握するシステムを開発中だと明らかにした。東京五輪・パラリンピック向けを念頭に、入国者に利用を義務付ける意向を示した。平井氏は「使ってもらわないと入国させないというところまでやらないと効果がない」と語った。五輪について「選手のほか観客も来る。海外と同じように日本でのトレーサビリティーをデジタルでやろうと考えて進めている」と述べた。システムの詳細については明言しなかった。平井氏は「GPS(全地球測位システム)をオンにしてとお願いしないといけない。こういう事態だから許されると私は思う」と強調した。政府は東京五輪に向けビザ(査証)と入場チケット、移動情報の記録を連携させるスマホ向けのアプリの導入を検討している。

*6-4:https://www.jiji.com/jc/article?k=2020123000536&g=pol (時事 2020年12月31日) 特措法改正、罰則規定が焦点 「私権制限」に慎重論も―コロナ対策強化へ策定急ぐ
 新型コロナウイルス対策の実効性を高めるため、政府は特別措置法改正案の取りまとめを急ぐ。焦点は休業や営業時間短縮の要請に応じない事業者の罰則の在り方。菅義偉首相は罰則規定に前向きな立場を示しているが、憲法が保障する国民の権利の制限につながりかねず、政府・与党にも慎重論が根強い。改正案の早期成立は見通せておらず、首相の指導力が問われている。「時間短縮をより実効的にするため、特措法改正を視野に入れている」。首相は28日、記者団にこう語り、来年1月18日に召集される通常国会での法改正に改めて意欲を表明。自民、立憲民主両党は国対委員長会談で、2021年度予算案の成立を待たず、改正案を処理することで一致した。時短要請を担保する鍵と見込まれるのが、応じない事業者への罰則規定だ。政府は特措法改正で、緊急事態宣言の発令前でも都道府県知事が団体や個人に必要な協力を要請できると定めた24条を見直し、時短だけでなく休業の「指示」を含めた営業規制と、違反した場合の「罰金」を可能とすることで一定の強制力を持たせる方向だ。背景には、東京都の時短要請が新型コロナの拡大抑制につながらなかった苦い経験がある。都は新規感染者が目に見えて急増してきた11月28日から、飲食店などに午後10時までの時短を要請。政府は、7月から8月にかけての「第2波」の収束には時短が奏功したとみており、都の要請直後、首相周辺は「1週間でピークアウトする」と自信を示していた。だが、実際には12月以降も都の感染者は右肩上がりを続け、感染は首都圏全体に広がった。新型コロナウイルス感染症対策分科会の尾身茂会長は、春先からの各種要請に事業者や国民が「へきえきして」おり、時短への協力が得られにくくなっているとの見方を示す。強制力を持たせるための罰則には「私権制限」の懸念が拭えず、関係省庁と内閣法制局が協議した結果、事業者への「罰金」については憲法との整合性が保たれるとの認識で一致した。政府は併せて、感染症法改正により各保健所による感染ルート追跡のための「積極的疫学調査」を拒否した人への罰則も検討したが、個人に対する措置は「合憲性に疑義がある」との指摘が法制局から出て、今回の改正では見送りとなりそうだ。罰則規定には事業者からの反発も予想されるため、与党内は「議論はまとまっていない」(公明党関係者)とされ、野党の立場もまちまち。与野党が特措法改正案の内容で早期に合意できる見通しは立っていない。首相は24日の講演で、時短要請への罰則について、分科会の慎重論にも触れながら「必要ではないか」と明言した。内閣支持率が急落する背景に、政府の新型コロナ対策に対する不満があることを意識した発言とみられる。ただ、目に見える効果が上げられなければさらなる批判も予想され、まずは実効性が期待できる改正案取りまとめに手腕を求められる。

<年齢差別もよくないこと>
PS(2021年1月3日追加):*7-1の高年齢者雇用安定法が1986年に制定され60歳定年が企業の努力義務になっていたことは知らなかったが、90年に希望者を65歳まで継続雇用することが努力義務となったことは、私も知っていた。つまり、努力義務は方向性を示すだけで大きな変化は得られず、年金財政の逼迫で老齢厚生年金の支給開始年齢が65歳になるのと並行して定年年齢も徐々に引き上げられたわけである。しかし、65歳までの希望者全員が働けるよう義務づけられた現行の高年齢者雇用安定法は2012年に改正されたもので、年齢差別の廃止というよりは経済が理由で、まだ60歳以降は嘱託社員として再雇用する企業が多いのが実情だ。
 そのような中、*7-2のように、嘱託社員として低賃金で再雇用され、やる気をなくしたシニア社員を「腰掛けシニア」と呼ぶそうだが、年齢にかかわらず仕事の内容・成果を給与に反映させるのは当然と言える。また、高齢化社会では、消費者も高齢者が多いので、生産する人の年齢も多様性があった方がニーズに合った製品・サービスを作ることができ、知識・経験・ネットワークを持っているシニアはむしろ宝物だ。
 ここで面白い事例を紹介すると、私が2020年5月に運転免許証の更新のため警察署に行ったら、「コロナで休止になっているが、HPは見ていない?」と担当職員に言われてがっかりした。何故なら、私は、警察署のHPこそ見ていないが、自分のHPを持って毎日のようにブログを更新しており、そもそも1990年代からパソコンを使って意見書や論文を書いたり、インターネットを使って外国の事務所と議論したりしていたのに、60歳以上の人はすべてパソコンを見たこともないかのように言われたからである。そして、「タイピストをしていた女性などは、この若者たちよりずっと早く、正確にKey操作ができるのに・・」と思った次第だ。

   
   10年近く掲げていた「広津もと子HP」の前の表紙

(図の説明:左図は、2011年3月11日に発生した東日本大震災の後、福島第一原発事故が起こってすぐに掲げたこのHPの表紙の文章で、右図は、再生可能エネルギーは農山漁村など地方を潤すツールにすることができることを示す図だ。原発は広汎なリスクを伴うため経過的なエネルギー源とし、できるだけ早く再エネに転換すべきことを、私は2000年くらいから考えていたが、衆議院議員時代《2005~2009年》に農山漁村の多い地方の地元を廻り、再エネに転換するための技術進歩を後押ししながら、確固たる信念にしたものである)

*7-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20210101&ng=DGKKZO67692680V21C20A2M12100 (日経新聞 2021.1.1) 高年齢者雇用安定法
 高年齢者雇用安定法は1986年に制定され、60歳定年が企業の努力義務となった。90年には希望者を対象に65歳まで継続雇用することが努力義務となり、98年には60歳以上の定年が義務化された。老齢厚生年金の支給開始年齢が段階的に65歳になるのと並行し、定年となる年齢も徐々に引き上げられてきた経緯がある。現行の高年齢者雇用安定法は2012年に改正。それまでは65歳まで働く対象を限定することができたが、希望者全員が働けるように義務づけられた。終身雇用や年功序列を前提とした制度が続くなか、60歳以降は嘱託社員などとして再雇用する制度を採用する企業が多い。一方で労働力不足の解消や生産性向上を目的に、正社員の立場を続ける「定年延長」を採用する動きも徐々に出ている。

*7-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20201212&ng=DGKKZO67241090R11C20A2MM8000 (日経新聞 2020.12.12) ニューワーカー 新常態の芽生え(5) 「腰掛けシニア」は限界 現役続行、自ら磨いてこそ  
 「腰掛けシニア」。こんな言葉が企業でささやかれている。定年後にやる気をなくしたまま企業にしがみつく社員のことだ。企業活力研究所(東京・港)の調査によると「意欲を持って働いている」と答えた60代は54%と半数にすぎない。働き手としてもう一度輝いてもらおうと、一律の処遇をやめ、仕事の内容や成果を給与に反映するといった取り組みが広がっている。
●現役並み給与に
 システム開発大手TISは今春、能力や実績のあるシニア人材を対象に現役世代並みの給与を支払う制度を導入した。59歳でバンコクに赴任し、タイ資本との合弁会社で働く菅原徳男さん(65)。当初ゼロだった日系の顧客企業を100社に増やした実績が買われ、新制度が適用された。「自分のキャリアを生かせる仕事を続けられ、成果に応じてきちんと評価もしてもらえる」。60歳で定年を迎えてからは契約社員となり、年収は2~3割下がっていたが、実績を基に賞与も出て、昇給もあり得る。「体力や気力の衰えを感じるまでは、このまま働き続けたい」。処遇に変化をつける企業の方が、シニアの意欲が高い傾向にあるとの調査結果もある。60歳以上が労働人口に占める比率は2019年時点で21%と、10年比で3ポイント上昇した。大量採用したバブル世代が役職定年に差しかかるなか、中高年の生産性向上は企業にとって死活問題となった。中央大学大学院の佐藤博樹教授は「定年後などもマインドを変えられない管理職経験者が増えており、第二の『新人教育』が必要だ」と指摘する。先を見越して動き始めたシニアもいる。10月上旬の週末、プログラミング教室のテックガーデンスクール(東京・千代田)が運営する中高年向けの講座では、講師を務める20代の学生の指示に20人ほどの生徒が耳を傾け、パソコンに向かって手を動かしていた。
●危機感から学ぶ
 例えばホームページの地図上に会社所在地を示したり、作成したウェブページがきちんと表示されるか確認したり。生徒の相田俊之さん(56)は素材メーカーの技術職だが、新型コロナウイルスによる緊急事態宣言が出ていた5月から週末を利用してオンラインで授業に参加する。「あと4年で定年退職だが、今のスキルの延長では稼げない」。そんな危機感からプログラミングの勉強を始めた。終身雇用を前提とした従来型のメンバーシップ制の雇用では、社内で通用するスキルを磨くことが大事だったが、発想を転換する時期に差し掛かっている。NECは自分のキャリアをそれぞれが築く「キャリアオーナーシップ」の意識を養う研修を始めた。対象には20代の若手も含め、社内ではなく、世の中で求められ続ける人材の育成につなげる狙いがある。経験を生かして世の中の役に立つという「生きがい」だけでなく、膨らむ社会保障費を抑える観点からも、長く働き続けることが強く求められるようになった。その一方でコロナ禍で企業業績が低迷し、早期・希望退職者の募集も広がる。楽しく長く働き続けるために自分が何をすべきか。その努力は、人事制度を決める企業だけではなく、働く人すべてが問われている。

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