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2021.7.22~ 身近に起こっている地球温暖化の影響
・・工事中ですが・・

(1)地球温暖化の影響で増える自然災害
1)洪水の多発とダム決壊の恐れ
イ)欧州の「100年ぶり」の豪雨 ← これから頻繁に起こるのでは?


  2021.7.16Yahoo    2021.7.17News Week     2021.7.17NHK

(図の説明:2021年7月16日、欧州西部を襲った記録的豪雨で河川が氾濫して発生した洪水)

 欧州西部を襲った記録的豪雨で、*1-1-1のように、水位の上昇が続いて河川が氾濫し、洪水が発生して住宅が押し流されるなどの大規模な被害が発生し、7月16日時点で、ドイツ・ベルギー・オランダで約1,300人の安否が確認されず、死者が120人を超えたそうだ。

 また、ケルン当局の報道官は「ネットワークが完全に遮断され、インフラは完全に破壊された。病院は患者を受け入れられなくなっている」とし、ドイツ政府は700人を超える軍隊を動員して救援にあたっているが、ダムが決壊すれば下流地域が一段の洪水に見舞われる恐れがあるとして放流も試みているとのことである。

 気象学者は、「気候変動の影響でジェットストリームの流れが変わったため、今回の豪雨が引き起こされた」と指摘し、欧州委員会のフォンデアライエン委員長も、「今回の洪水の規模を踏まえると気候変動が影響していることは明らかなので、迅速に対応する必要がある」という考えを示しているそうだ。

ロ)中国河南省は「1000年に1度」の暴雨 ← これから頻繁に起こると思うが・・


   2021.7.22Ameblo      2021.7.21BBC       2021.7.21Yahoo

(図の説明:中国河南省の記録的大雨で、左図は、地下鉄が浸水した様子、中央の図は、街中の様子、右図は、亀裂が生じて決壊する恐れがあるとされる満タンのダムの様子)

 中国河南省でも、7月17日以降に記録的な大雨が続き、*1-1-2のように、鄭州市で地下鉄が浸水するなどして7月21日までに少なくとも計16人が死亡して10万人が避難し、鄭州の気象局は「1000年に1度の暴雨」だとして警戒を呼びかけているそうだ。

 鄭州市では、7月17日以降の3日間で年間雨量に匹敵する617ミリの雨量を計測し、20日午後6時頃に、雨水が地下鉄構内への浸水を防ぐ遮水壁を越えて線路まで流れ込み、市内の地下鉄全線が運行停止となって、500人余りが避難したが逃げ遅れた12人が死亡した。このほか、家屋の倒壊等によっても4人が死亡したそうだ。

 また、*1-1-3のように、駅や道路が冠水し、住民1万人以上が避難を余儀なくされ、人口約9400万人の河南省に最高レベルの気象警報が発令されている。さらに、洛陽市のダムに20メートルほどの亀裂が生じて決壊する恐れも出ており、同地域には兵士が配備されいるが、軍は「いつ決壊してもおかしくない」と警告したそうだ。

 同地域では少なくとも今後24時間は土砂降りの雨が続くと予想されており、洪水発生の原因は複合的であるものの気候変動による気温上昇は激しい降雨のきっかけになる。

2)気温の上昇に伴う海面の上昇

   
    2020.1.16朝日新聞     2019.12.24日本気象協会  2019.9.25毎日新聞

(図の説明:左図は、世界の気温の推移を、1951~1980年の平均気温を基準として1880~2020年の年間平均気温についてグラフにしたもので、初めは低かった気温が近年になって急速に上がり、全体で約1°C上がっているが、上昇幅は新興国が市場参入して多くの化石燃料を使い始めた時期に大きくなっている。中央の図は、日本の気温が1981~2010年の平均を基準として年間平均でどれだけ高かったか低かったかを1899~2019年についてグラフにしたもので、マイナス部分が多いように見えるが、実際には1889年と比較して2019年は2°C近く上昇している。世界の気温上昇に伴って海水温も上がり、右図のように、1950年と比較すると2020年には既に30~40cmは海面上昇しており、これは見た目の実感と一致している)

   
  2021.7.22Gooddo     2021.7.21AmericanView    2018.11.15産経新聞
                    氷河の後退
(図の説明:気温が上がると海面が上昇する理由は、左図のように、極地の氷が解けたり、中央の図のように、山間部の氷河が解けて後退したりするからだ。右図は、北極海の氷が解け、北極海を通行しやすくなった場合の航路短縮のメリットを記載しているが、海面上昇で国土が狭くなったり、インフラが使えなくなったりするディメリットは考慮されていないようだ)

イ)氷河の融解
 *1-2-1のように、カナダ・フランス・スイス・ノルウェーの研究者が、NASAの衛星「Terra(テラ)」に搭載したカメラで世界各地21万カ所以上の氷河の写真を撮影し、20年分の衛星写真をまとめて、2000年から2004年にかけては年間2,270億メートルトンの氷河が失われ、2015~2019年には年間2,980億トンが解けて、このままのペースで融解が続けば、今世紀半ばには多くの氷河が完全に失われる可能性があると、『Nature』に掲載したそうだ。

 論文は、この変化の原因に温暖化や降水量の増加を挙げており、溶けて河川や海に注ぎ込んだ水の量は、過去20年間に観測された海面上昇分の約5分の1に相当するとしているが、過去20年間に観測された海面上昇分の約1/5にすぎないのなら、残りの4/5はどこから来たのか?

 日本でも、海面上昇は重大問題で、これまで標高の低かった地域は海抜以下になって下水の排水が困難となり、洪水も起こり易くなる。中国で地下鉄に水が流れ込んだ例は、東京・大阪でも他人事ではなく、これ以上、海抜の低い地域に人口を密集させて、そこに地下鉄をはじめとするインフラを集中投資することは意味が問われるようになった。

 氷河が減ると、氷河をバッファとして比較的低く保たれてきた海水温はさらに上がりやすくなり、急速に溶ける氷河の水は北インドでは狭い渓谷を下ってふたつのダムに到達し、200人が亡くなる事故という環境災害を引き起こした。そして、国連の気候変動に関する政府間パネルが2018年に発表した報告書は、その凄まじい洪水や地滑りが高山で起きやすくなっている原因を温暖な気候にあると指摘している。

ロ)2020年は日本も世界も平均気温が史上最高で、豪雨・異常高温が相次いだ
 2020年の世界と日本の平均気温は、*1-2-2のように、観測が始まった19世紀末以降最高となり、気温の上昇により各地で30年に一度の規模の高温や大雨が頻発し、日本では2020年7月に九州で長期にわたる豪雨災害が発生し、九州を襲う前の6月中旬以降に中国の長江の中・下流域で活動を活発化させて270人以上が死亡・行方不明となる豪雨を発生させていた。

 2020年夏以降は太平洋の中部・東部の海面水温が平年より低くなるラニーニャ現象が発生して2020年末から2021年にかけては寒い冬になったが、英国気象庁によると、2021年の世界の気温は2015年以降の数年間よりはラニーニャ現象の影響で少し涼しくなるものの、1850~1900年の平均よりは約1度高く、長期的な温暖化傾向に変わりはないとのことである。

 また、*1-2-3によると、都市部ではヒートアイランド現象による気温上昇が別途加味されるが、日本全体の気温の推移を確認する場合は都市部を除いた地点の全国をまんべんなく抽出して調べたところ、日本の平均気温は昭和元年から令和元年(1926~2019年)の94年間で1.4度上昇し、猛暑日も平成以降急激に増えて2010年代の10年間は1980年代と比較すると日数が4.6倍になるそうだ。

 その上、都市部は建築物・舗装道路・人工排熱等の影響で気温が上がりやすく、ヒートアイランド現象が起こるため、全国平均よりも気温の上昇が大きく、年間猛暑日も明確に多いそうだが、これも体感と一致している。

(2)それではどうすればよいのか
1)都市の構造を変える

   
     東京(日本)         大阪(日本)        福岡(日本)

(図の説明:左図は、東京の空中写真だ。スカイツリーの近くを流れる空を映して青く見えているのは隅田川で、下水道で処理しきれなくなった場合は汚水も流すため、近くで見ると濁っていてきれいでない。また、東京の地面は、殆どがコンクリートとアスファルトで覆われており、コンクリート製の建物が密集して緑が少ないため、ヒートアイランド現象を起こし易い。つまり、都市計画が乏しい。中央の図は、大阪の空中写真で、大阪城近くを撮影しているため緑が多く見えるが、街中は東京と同じかそれ以下だ。大阪城近くを流れている大川(旧淀川)や寝屋川も、空を映して青く見えてはいるが、近くで見るときれいな川ではない。なお、右図は、福岡の空中写真で、空港にJR直通の地下鉄が乗り入れていたり、空港が街に近かったりするのはよいが、都市は東京と同じくコンクリートとアスファルトで覆われ、コンクリートの建物が密集して緑は東京より少ない《福岡の人は「自然が近いからいい」と言っていたが》。そして、どの都市も飛行機から見ると家並が時代を経るに従って無秩序に広がっていき、都市計画はないようだ)

   
   ロンドン(英国)      パリ(フランス)      上海(中国)

(図の説明:左図は、ロンドンの空中写真で、東京よりは高さの揃った建物が並んでいるが、コンクリート・アスファルト・石造りの建物が多く、街中を流れるテムズ川はきれいでない。しかし、東京より緯度が高いため、年間平均気温は低い。中央の図は、凱旋門を中心として放射状に広がったパリの街で、建物の高さ・設計がかなり統一されているため、街の景観が良く絵になる。緑は道路からは多く見えないが、建物の中庭にもあるようだ。また、右図は上海で、競って近代的な建物を建てているので一つ一つはおしゃれな建物も多いが、街全体としての整合性・統一性がなく、少し路地に入ると昔ながらの汚ない建物も多い。緑は東京と同じか少し多いくらいで、道は広くなったが近くを流れる蘇州河・黄浦江の水はきれいでない。そのため、ここも、環境に配慮した都市計画が必要だろう)

(2)それではどうすればよいのか
1)都市の構造を変える
イ)日本の都市構造について
 日本の都市は、奈良・京都を除いて、道路は建物の隙間を利用して作ったかのように狭くてわかりにくく、碁盤の目になっていない。そのため、番地で住所を探しにくいが、スマホの地図を見ながら歩くと危ない上、逆に居場所を探知されて悪用されるケースもあるため、私自身はスマホを使っていない。

 そのため、これからの都市造りは、あらかじめ安全性で土地にランクを付け、水やエネルギーの供給計画を立て、必要な交通システム・上下水道・電気・ガス・病院・学校・保育所・介護施設・緑地などのインフラ整備を行う必要がある。何故なら、そういうことを考えずに建物を増やしていくと、災害のリスクが上がり、結局は住環境が悪くなるからで、既にできている都市も、今後10~100年の街づくり計画を立て、それに合わせていく必要があると思う。

ロ)「空飛ぶクルマ」を使った交通システム
 JALは、*3-3のように、2025年度に、三重県等で空港と観光地を結ぶ「空飛ぶクルマ」を使ったサービスを始めるそうだ。空港を起点に目的地に行く「空飛ぶクルマ」が実用化されれば、道路の渋滞緩和や過疎地の交通に役立ちそうだ。

 しかし、「クルマ」が空から落ちてきては人も建物もたまったものではないため、事故時も安全が保たれるクルマづくり・道づくり・ルール作りをして欲しい。例えば、道路を3階建てにして、1階は歩行者・自転車・緑地用、2階は自動車用、3階は「空飛ぶクルマ」用にしておけば、「空飛ぶクルマ」は最悪でも3階に落ちるだけですみ、3階に不時着することも可能になる。そして、目的地となる場所は、建物の屋上か3階以上にポートを作る必要があろう。

 なお、この交通システムは、これまで道路の整備が遅れていた場所で作った方が早くできそうで、もしアフリカで作れば、サバンナを道路で分断せずに自動車専用道路を作ることができる。

・・以下、工事中・・


・・参考資料・・
<洪水の多発と地球温暖化の関係>
*1-1-1:https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2021/07/1201300.php (Newsweek、Reuters 2021年7月17日) ドイツ・ベルギー洪水の死者120人超に、行方不明約1300人
 欧州西部を襲った記録的な豪雨で河川の氾濫により洪水が発生し、16日時点でドイツ西部などで約1300人の安否が確認されていない。水位の上昇が続き、一部地域で通信が途絶える中、ドイツとベルギー両国の死者は120人を超えた。ドイツのラインラント・プファルツ州とノルトライン・ウェストファーレン州に加え、ベルギーとオランダで、河川の氾濫で住宅が押し流されるなど大規模な被害が発生。これまでにドイツだけでも103人の死亡が確認された。このうち12人は、夜間に鉄砲水に襲われたケルン南方のジンツィッヒにある障がい者施設の入所者だった。地元メディアは、洪水による家屋倒壊が増えているため、犠牲者数が増加する恐れがあると報道。ベルギーではこれまでに少なくとも20人の死亡が確認され、安否不明は20人となっている。ドイツでは16日時点で約11万4000世帯が停電。洪水に見舞われている一部の地域では携帯電話網が機能停止に陥り、被災者と連絡が取れない状態になっている。ラインラント・プファルツ州では、ケルン南方のアールワイラー地区で約1300人の安否が未確認。ケルン当局の報道官は「ネットワークが完全に遮断され、インフラは完全に破壊された。病院は患者を受け入れられなくなっている」と述べた。ドイツ政府は700人を超える軍隊を動員し、救援にあたっている。独政府報道官によると、メルケル首相は次期首相候補であるキリスト教民主同盟(CDU)のラシェット党首から捜索や救助活動を巡る状況報告を受け、近く被災地を訪問する予定という。ARD(ドイツ公共放送連盟)は、メルケル首相が18日にシュルトを訪れると報じた。当局は、ダムが決壊すれば下流地域が一段の洪水に見舞われる恐れがあるとして、放流を試みている。ドイツ西部シュタインバッハタール・ダムは昨晩にかけて決壊の恐れが高まったため、下流地域で約4500人が避難した。気象学者は、気候変動の影響でジェットストリームの流れが変わったために今回の豪雨が引き起こされたと指摘。欧州委員会のフォンデアライエン委員長も、今回の洪水の規模を踏まえると気候変動が影響していることは明らかだとし、迅速に対応する必要があるとの考えを示した。

*1-1-2:https://digital.asahi.com/articles/ASP7P4142P7PUHBI00V.html (朝日新聞 2021年7月21日) 地下鉄浸水12人死亡 中国・河南「千年に1度の暴雨」
 中国・河南省で17日以降、記録的な大雨が続き、省都の鄭州市で地下鉄が浸水するなどして21日までに少なくとも計16人が死亡、10万人が避難した。鄭州の気象局は「1千年に1度の暴雨」だとして、警戒を呼びかけている。習近平(シーチンピン)国家主席は同日、被災者の救済に取り組むよう関係部門に対して重要指示を出した。中国メディアによると、鄭州市では、20日午後4~5時の1時間で201・9ミリの雨が降り、中国全土での観測史上最大を記録した。17日以降の3日間では、鄭州市の年間雨量にほぼ匹敵する617ミリの雨量を計測したという。地元メディアによると、鄭州市では20日午後6時ごろ、地下鉄構内への浸水を防ぐ遮水壁を越えて雨水が線路にまで流れ込んだ。市内の地下鉄は全線が運行停止となり500人余りが避難したが、逃げ遅れた12人が死亡したという。ほかに5人がけがを追った。中国のSNSには、鄭州市内の地下鉄車内で乗客が胸のあたりまで水につかったまま取り残されている様子を映した動画も投稿されている。このほか、鄭州市内では家屋の倒壊などによって4人が死亡した。

*1-1-3:https://www.bbc.com/japanese/57911006 (BBC 2021年7月21日) 中国・河南省で記録的豪雨 12人死亡、1万人以上が避難
 中国中部・河南省は、今月16日から続く記録的豪雨で、深刻な洪水被害に見舞われている。駅や道路が冠水し、住民1万人以上が避難を余儀なくされている。当局によると、鄭州市でこれまでに少なくとも12人が死亡した。また、主要道路が閉鎖され、空の便が欠航するなど、10都市以上に被害の影響が出ている。人口約9400万人の河南省には最高レベルの気象警報が発令されている。洪水発生の原因は複合的だが、気候変動による気温上昇は激しい降雨のきっかけになる。
●ダム決壊の恐れも
 ソーシャルメディアでは、道路全体が水没している様子が画像から確認できる。水の流れは速く、車やがれきが漂流しているのがわかる。こうした中、河南省のダムが決壊する恐れが出ている。当局によると、洛陽市のダムに20メートルほどの亀裂が生じている。同地域には兵士が配備され、軍は声明で「いつ決壊してもおかしくない」と警告した。ツイッターには、鄭州市で浸水した地下鉄の車両に乗っていた乗客が、肩のあたりまで水に浸かっている映像が投稿されている。現実の状況を撮影したものなのかは不明。救助隊がロープを使って人々を安全な場所に引き上げる様子や、列車の座席に立って水に浸からないようにする人の姿などが確認できる。車両内に何人が閉じ込められているのかは不明だが、これまでに数百人が救助されたとの報告がある。シャオペイと名乗る人物は、中国のソーシャルメディア「微博(ウェイボ)」に助けを求めるメッセージを投稿した。「車両内の水が自分の胸にまで達している。もう声も出ません」。消防局はその後、この人物が救助されたと明らかにした。
●3日間で1年分の雨量
 「生まれてからずっと鄭州市で暮らしているが、こんな大雨は経験したことがない」と、56歳のレストラン経営者はAP通信に語った。鄭州市ではこの3日間で、通常の1年分の雨量に匹敵する雨が降ったと報じられている。同地域では少なくとも今後24時間は土砂降りの雨が続くと予想されている。

*1-2-1:https://news.yahoo.co.jp/articles/794b549b846d24273ef57f58173d01c107872ca7 (Yahoo 2021/5/1) 世界の山間部の氷河が、2050年までに“完全消失”する:衝撃の研究結果が意味すること
 これまでに氷河を散策した経験がないなら、近いうちに行きたくなるかもしれない。標高の高い場所にある世界の氷河が、科学者が想定していたよりも速く溶けていることが判明したのだ。すでに2015年以降だけで年間3,000億トン近くの氷が失われている。4月28日に発表された包括的な研究によると、このままのペースで融解が続けば、今世紀半ばには多くの氷河が完全に失われる可能性があるという。このほどカナダとフランス、スイス、ノルウェーの研究者たちが、米航空宇宙局(NASA)の衛星「Terra(テラ)」に搭載された特殊なカメラで撮影された20年分の衛星写真をまとめた。このカメラは「ASTER(Advanced Spaceborne Thermal Emission and Reflection Radiometer=アスター)」と呼ばれる機器で、世界各地の21万カ所以上の氷河の写真を撮影している。氷河の表面の特徴を立体的に捉えるために、撮影にはふたつのレンズが使用された。今回の研究にはグリーンランドと南極の大規模な氷床は含まれていないが、こちらは別の科学者のチームが調査している。今回の研究は『Nature』に掲載されたもので、2000年から04年にかけて年間2,270億メートルトンの氷河が失われたことが判明した。ところが15~19年には、溶ける量が年間2,980億トンまで増えていたことも明らかになっている。こうした変化の原因として論文では、温暖化や降水量の増加を挙げている。すべてを合わせると、溶けて河川や海に注ぎ込んだ水の量は、過去20年間に観測された海面上昇分の約5分の1に相当するという。
●人々の生活を脅かす現象
 問題は海面上昇にとどまらないが、重大な問題であることには変わりない。インドネシアやバングラデシュ、パナマ、オランダといった沿岸国や米国の一部の住民の生活が脅かされているからだ。また内陸地域の一部では、何百万人もの人が雪解け水からきれいな水を得ている。降雪量が少ないときは、長年にわたって氷河が予備の水源になっているのだ。そうした状況はアンデス山脈やヒマラヤ山脈、アラスカ州の一部に特に見られている。「氷河は地球全体の多くの場所に冷涼で豊富な水を提供しています」と、ノーザンブリティッシュコロンビア大学の地球科学教授で今回の論文執筆者のひとりであるブライアン・メヌーノスは言う。「これらの氷河がなくなると、そうしたバッファとしての機能が失われてしまいます」。これまでの氷河溶解に関する研究では、空間的にも時間的にもほとんど計測が実施されていなかった。このため氷河が実際にどれほど後退しているのかについては、不明瞭な点があったという。それが詳細な衛星写真を使うことで、「わたしたちの推計では不明確な部分を大幅に減らすことができました」と、メヌーノスは言う。21万1,000カ所すべての氷河のデータを処理するために、ノーザンブリティッシュコロンビア大学のスーパーコンピューター1台を1年間にわたってほぼフル稼働させる必要があった。
●厳しい未来への警鐘
 今回の研究結果は厳しい未来に警鐘を鳴らしているのだと、ブリストル大学の地理学教授のジョナサン・バンバー(今回の研究には参加していない)は言う。「これは21世紀の世界の氷河の質量損失に関する最も包括的、徹底的かつ詳細な評価です。かなり詳細な研究結果のおかげで、世界全体の個々の氷河の変化を初めて知ることができました」と、バンバーは説明する。現在の傾向が続けば、標高の低い山地の一部では2050年までに氷河が完全に失われることが分析で示されていると、バンバーは言う。「研究自体やその成果は素晴らしいものですが、最上段に掲げられたメッセージはとても悲観的です。氷河は消えゆく運命にあり、水源や自然災害、海面上昇、観光、そして地域の生活に深刻な影響を与えているのです」。論文の筆者たちも、この評価と同じ考えだ。ノーザンブリティッシュコロンビア大学のメヌーノスは、今世紀半ばまでにカスケード山脈やモンタナ州のグレイシャー国立公園などの場所から氷が完全になくなるだろうと指摘している。「見られるうちに見ておいたほうがいいでしょうね」と、メヌーノスは促す。急速に溶ける氷河が生み出す水は、環境災害を引き起こすことがある。例えば今年2月には、融解が進んでいたヒマラヤの氷河が北インドで崩れ、水の壁が狭い渓谷を下ってふたつのダムに到達して200人が亡くなる事故が起きた。国連の気候変動に関する政府間パネルが18年に発表した報告書は、そうした凄まじい洪水や地滑りが高山で起きやすくなっている原因は、温暖な気候にあると指摘している。「氷河の後退や永久凍土の融解によって山の斜面の安定が崩れ、氷河湖の数や面積が増えると予測される」と、報告書では結論づけている。「その結果、地滑りや洪水、水が滝状に流れる現象が、かつてそうした現象がなかった場所でも起きるだろう」
●氷河の損失の半数が北米に
 カナダと欧州の研究者たちが執筆した今回の論文は、アラスカやカナダ西部、米国で溶けつつある氷河が、世界全体で加速する氷河の質量損失の半分近くを占めていることも突き止めている。「アラスカ州の南東部は心配な場所です。ここ10年間で途方もない変化が起きています」と、メヌーノスは指摘する。アラスカ州では融解する氷が原因で地震の規模が大きくなっている。3月に『Geophysical Research』に掲載されたアラスカ大学フェアバンクス校の研究者たちの論文によると、氷河の下にある地面が隆起して圧力が解放され、付近の断層にかかる力に影響を及ぼしているのだという。全体としては悪いニュースではあるが、研究チームが20年間の衛星写真からまとめたデータの量に専門家は感銘を受けている。「本当に素晴らしい成果だと思いました」と、NASAゴダード宇宙飛行センターの雪氷圏科学研究所所長のトム・ノイマンは言う。「時系列の威力がはっきりと示されています。多くの場合、こうした調査には5~7年単位の年月がかかります。研究チームがいまでも優れたデータを集めているという事実は驚きに値します。そうしたデータは史上初の成果を得る上で大きな力になったのです」。ノイマンは、NASAの地球観測衛星「ICESat-2」のミッションのプロジェクトサイエンティストを務めている。ICESat-2は、地球の極地にレーザーを反射させて氷河や極地の氷床の損失を計測し、世界の海面上昇への影響を監視する。「20年は続けたいと思います。そしていつの日か、今回の論文のようなものを執筆できればいいですね」と、ノイマンは語る。

*1-2-2:https://www.sankeibiz.jp/workstyle/news/210104/cpd2101040638001-n1.htm (産経BZ 2021.1.4) 2020年は日本も世界も平均気温が史上最高 豪雨、異常高温相次ぐ
2020年の世界と日本の平均気温が、観測が始まった19世紀末以降、最高となる見込みであることが気象庁の調査で分かった。気温上昇に伴い、各地で30年に一度の規模の高温や大雨などが頻発。国内も九州で豪雨災害が発生するなどした。地球温暖化も寄与したとみられ、2020年は新型コロナウイルスだけでなく、気象も人類に牙を向いた年として記憶されそうだ。一方、今年はこうした傾向がやや緩和されるとの見方もある。気象庁によると、世界の1~11月の平均気温は平年(1981~2020年の平均)から0・47度上がり、16年1~11月の0・45度を抜いて1891年以降、歴代1位となった。100年で0・75度上昇したことになる。太平洋南東側やアフリカ大陸の南東側の海を除くほとんどの地域で、平年より平均気温が高くなった。日本の平均気温も1898年の観測開始以来、過去最高となり、平年より1・07度高かった。100年あたりでは1・27度上昇した。各地で異常高温もみられ、気象庁がまとめた主な現象だけでも世界の11地域で発生。シベリアの一部地域では気温が平年より14・2度高くなり、永久凍土まで解ける地域もあった。気象庁のまとめでは、8~9月に米国西部で森林火災が発生するなど、2020年は8件の気象災害が発生。うち6件が大雨、1件がハリケーンによる被害だった。6~10月にインドなどを含む南アジアで発生した大雨で、周辺では2700人以上が亡くなった。国内では7月に九州で長期にわたる豪雨災害が発生したが、この雨をもたらした暖かく湿った空気と長く停滞した梅雨前線は、九州を襲う前の6月中旬以降、中国の長江の中・下流域でも活動を活発化させ、270人以上が死亡・行方不明となる豪雨を発生させた。気象庁異常気象情報センターの担当者は「20年が暑かった原因は、温室効果ガスによる地球温暖化に加えて複数ある」と分析する。20年初頭は北極にある寒気が南に降りてきにくい大気の状態だったことから、暖冬が進行。さらに19年ごろからインド洋の海面水温が平年より高まったことが地球全体に広がり、年間を通してさらなる温暖化に寄与した可能性があるという。一方、20年夏以降は太平洋の中部・東部の海面水温が平年より低くなるラニーニャ現象が発生。ラニーニャ現象が発生した年は日本列島は寒くなる傾向にあるといい、20年末から21年にかけては一転して寒い冬となるという。気象庁と同様に地球温暖化を監視している英国気象庁によると、21年の世界の気温は15年以降の数年間よりはラニーニャ現象の影響で少し涼しくなるものの、1850~1900年の平均よりは約1度高く、長期的な温暖化傾向に変わりはないとみられる。

*1-2-3:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000006.000044799.html(パシフィック・コミュニケーションズより抜粋 2020年3月23日)昭和から令和で気温1.4度上昇!
■平成の31年間は1989年の観測史上、もっとも日本の気温が上昇した期間。
 昭和元年から令和元年(1926~2019年)の94年間で、日本の平均気温は1.4度上昇。
■世界全体で見ても平均気温は上昇傾向。2019年の世界の年平均気温は史上2番目の高さで、15~19年の5年間、10~19年の10年間の平均気温はいずれも過去最高。
■気象庁発表によると、2020年3月~5月の気温は全国的に高く、夏(6月~8月)の気温も全国的に平年並みか、高め。昨年より早い時期から真夏の太陽が照り付けると想定される。
■日本全体で進む高気温化
 都市化による影響が小さい全国15地点(※)の年平均気温偏差(濃い折れ線)および全国13地点*1の猛暑日*2の平均年間日数(薄い折れ線)の推移。
*1:全国15地点:網走*,根室,寿都,山形,石巻,伏木,飯田*,銚子,境,浜田,彦根,宮崎*,多度津,名瀬,石垣島(全国13地点:全国15地点のうち、*以外の地点)
 ※都市部ではヒートアイランド現象による気温上昇が別途加味されるため、日本全体の気温推移を確認する場合は、都市部を除いた地点を全国まんべんなく抽出している。
*2:日最高気温が35度以上の日
 日本気象協会によると、昭和元年から令和元年(1926~2019年)の94年間で、日本の平均気温が1.4度上昇したことがわかりました。2015年7月に発表された研究によると、大気中の二酸化炭素レベルが現在とほぼ同じだった300万年前の気温は、現在よりも2℃から3℃高く、海抜は最低でも6メートル高かったことがわかっています(※)。この内容から単純に計算すると、気温が1度上昇するごとに海面は2mほど高くなることから、気温1.4度の上昇がどれほど大きな変化かわかるでしょう。中でも、平成以降の約30年は気温が一段と高くなっており、統計的にも平成の30年は1898年の統計開始以降、最も暑い30年間だったと言うことができます。また、猛暑日の出現日数についても1920年から10年刻みで日数を確認したところ、平成以降急激に猛暑日が増えていることがわかりました。特に2010年代の10年間は1980年代と比較すると猛暑日の日数が4.6倍にも及ぶほか、1926年以降で猛暑日の出現日数が多かった年をランキングにしてみると、上位5カ年のうち4カ年が平成元年以降に集中するなど、直近30年の気温の高さが伺えます。
 ※Dutton et al. 2015 https://science.sciencemag.org/content/349/6244/aaa4019
■都市部でも大きな変化が
 横浜・京都・福岡など都市部では全国平均よりも大きく気温が上昇。年間の猛暑日数に関しても明確な増加傾向にあることが分かりました。一般的に、都市域では建築物や人工排熱などで気温が下がりにくいヒートアイランド現象の影響を受けやすいため、その効果が全国平均よりも顕著な気温上昇傾向として表れた可能性があります。
■令和を迎えた昨年、日本全体の年平均気温の最高を更新。2020も高気温の見通し
 2020年1月、気象庁は、2019年の日本の年平均気温(基準値との差:+0.92℃)が、1898年の統計開始以来で最も高い値であると発表。加えて、世界気象機関(WMO)は、2019年の世界の年平均気温(基準値との差)が史上2番目の高さであり、15~19年の5年間、10~19年の10年間の平均気温はいずれも過去最高であると発表するなど、日本だけでなく世界全体で見ても多くの研究で高気温化が認められています。日本全体の気温上昇は、地球温暖化の影響と自然変動の影響を受けていると考えられ、今後ますます注意が必要です。また、気象庁が20 年2月25日に発表した、向こう3ヶ月(3月~5月)と今年夏(6月~8月)の天候見通しによると、今年の夏の気温も全国的に平年並みか高めになるとのことです。また、梅雨時期の降水量はほぼ平年並みで、その後は高気圧に覆われて晴れる日が多くなると予想。昨年は7月下旬まで雨が続き、気温が上がらなかったことを考えると、今年は昨年より早い時期から真夏の太陽が照り付けるでしょう。この結果を受けて、日本気象協会は、今年は本格的な夏を待たずに、いち早く猛暑対策を行う必要があるとしています。(以下、略)

<政策の方針と予算>
*2-1-1:https://digital.asahi.com/articles/DA3S14983912.html (朝日新聞社説 2021年7月22日) 30年電源構成 原発維持は理解できぬ
 2050年に脱炭素社会を実現するために、30年度にどんな電源構成をめざすべきか。経済産業省がきのう、政府の次期エネルギー基本計画の素案で新しい目標を示した。再生可能エネルギーを「最優先」と明記し、30年度の再エネ比率を36~38%と現行目標より14ポイント高くした。再エネを主力電源と明確に位置づけたことは評価できる。一方、理解できないのが、原子力の比率を20~22%に据え置いたことだ。国際エネルギー機関(IEA)が集計した昨年の国内の発電実績の速報では、原発の割合は4・3%に過ぎない。素案が示す原発比率の達成には、新規制基準で審査中の11基を含む国内の原発27基を、8割の高稼働率で運転させる必要がある。しかし現実には、福島の事故以来、国民の不信感が根強く、再稼働は進んでいない。コストが安い電源だとの主張も根拠が揺らいでいる。経産省が今月まとめた電源別の発電コスト試算の最新結果では、30年に新設する原発は1キロワット時当たり11円台後半以上。04年には5・9円とされていたが、安全対策費用が増え続けて上昇傾向が止まらない。30年時点で8円台前半~11円台後半と最も安くなる見通しの事業用太陽光など、コスト低下が進む再エネとは対照的だ。素案が「可能な限り原発依存度を低減」としながら、非現実的な目標を掲げざるを得ないのは、30年度の温室効果ガス排出を13年度より46%減らす新しい政府目標との整合性を取る必要があるからだろう。それだけ無理をしても、30年度の電源構成の目標で最も大きいのは火力だ。昨年実績の7割からは下がる見通しだが、依然、41%もある。そもそも、8年半後の電源構成を現状から大きく組み替えることには限界がある。発電施設の建設や送電システムの改革には時間がかかるからだ。まずやるべきは、脱炭素社会実現をめざす50年のあるべき電源構成の姿を示すことではないか。主役は現時点では、再エネしか考えられない。昨年の発電実績で21・7%と、現行の30年目標(22~24%)に匹敵する水準に育った再エネの潜在力を、できる限り生かすのが得策だ。30年度の数字は、50年の目標に向けての足取りを検証するための中間指標との位置づけで考え直すのが望ましい。太陽光や風力など電源ごとに具体的な施策を挙げた長期の実行計画をまとめ、検証と修正を重ねながら柔軟に進めていく。そんな態勢を整えることこそ、脱炭素社会への早道になるだろう。

*2-1-2:https://www.kochinews.co.jp/article/471271/ (高知新聞 2021.7.14) 再生エネの優位性を磨け
 2030年時点の各電源の発電コストについて経済産業省が示した新たな試算は、太陽光が最安になった。これまで最も安いとされた原子力のコストが上昇し、太陽光は初めて原子力を下回った。原子力は東京電力福島第1原発事故を受けた規制強化に伴い、安全対策費が膨らんだ。このため前回15年の試算より1割程度上がった。改正地球温暖化対策推進法は、50年までの脱炭素社会の実現を明記している。そのためには、大規模な省エネルギーとともに、二酸化炭素(CO2)排出量の4割を占める電力部門の対応が鍵を握る。中期目標では、30年度の排出量を13年度比で46%削減する。取り組みの加速が求められている。太陽光など再生可能エネルギーは導入量の増加で主力電源になると見込まれる。今夏をめどに改定する「エネルギー基本計画」に合わせた電源構成の新目標は、現行より引き上げる方向で検討されている。火力は縮小へ国際的な圧力がある。そこで、原子力は目標を維持するとの見方が出ている。CO2を排出しない再生エネと原発の電源割合を引き上げることで補うことをもくろむ。発電コストを巡っても、経産省は原子力の安さを強みと位置付けてきた。だが、その見方も安全性とともに揺らいでしまった。災害などを想定した事故防止対策のコスト増加が見込まれる。第1原発の廃炉で最難関とされる溶融核燃料(デブリ)の取り出し費用などは含んでおらず、コストはさらに上昇することは間違いない。この試算は発電設備を新たに更地に建設して運転した場合を前提としている。土地取得の費用などは含まず、利用状況などで数値は変動するとはいえ、運転開始から40年を過ぎた原発が再稼働する中、新増設は厳しい状況だ。石炭火力はCO2排出抑制の対策費がかさむため、上昇を見込む。一方、太陽光の発電コストは、事業用、住宅向けとも下がるとした。世界的に普及が進むことでパネルなどの価格が低下するとみる。陸上風力や液化天然ガス(LNG)火力なども、発電コストを最も安く見込んだ場合の試算値では、原子力の発電コストを下回った。ただし、再生エネへの期待を膨らませても、導入は簡単に拡大するものではない。送電網の整備費などは今回の試算に含まれていない。天候に左右される発電条件など、乗り越えなければならない課題も多い。来年4月施行予定の改正温対法は、太陽光や風力発電などの促進区域を市町村が設定する制度を創設する。手続きの簡素化や資金面での優遇を想定している。だが、生態系や景観の悪化を懸念する住民らの反対運動も目立つようになった。国は土砂災害などが想定される地域は指定対象から除外する方針のようだが、地域の混乱を誘発するようでは本末転倒だ。再生エネの優位性を生かすように、きめ細やかな対応が求められる。

*2-1-3:https://www.ehime-np.co.jp/article/news202107150013 (愛媛新聞社説 2021年7月15日) 太陽光「最安電力」 再生エネを促進し原発は全廃を
 経済産業省が2030年時点での発電コストの試算を示し、「最も安い電力」が原子力から太陽光に交代した。太陽光の発電コストが原子力を下回るのは初めてとなる。原子力は発電コストの安さを強みとしてきた。だが、安全性への懸念や、高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の最終処分などの問題に加え、経済的な優位性も揺らぎ、存在意義は薄れる一方となっている。国は太陽光など再生可能エネルギーの主力電源化を推し進めるとともに、原発の速やかな全廃に道筋を付けるべきだ。試算は、発電設備を更地に新設して運転するのが前提となっている。原子力の発電コストは04年試算で1キロワット時当たり5・9円だったが、11年の東京電力福島第1原発事故を機に上昇。前回15年は10・3円以上、今回は11円台後半以上だった。前回試算と比べると、1基当たり平均1千億円と見積もった安全対策費が今回は2千億円になった。福島の事故を巡る廃炉や賠償、除染などの見積額も12兆2千億円からほぼ倍増。これらが発電コストを押し上げている。廃炉で最難関の溶融核燃料取り出しや、除染土壌の最終処分の費用は試算に含まれておらず、原発のコストが上振れするのは避けられないだろう。二酸化炭素(CO2)排出量が多い石炭火力も排出抑制対策に費用がかかり、発電コストの上昇が見込まれる。地球温暖化の元凶でもあり、原発と同様に一刻も早く廃止すべきだ。一方、太陽光は世界的な普及拡大でパネルなどの価格が低下し、発電コストが下がる。最安の計算値は、事業用が1キロワット時当たり8円台前半、住宅用が9円台後半。陸上風力も原子力を下回る見通しという。今年5月、「50年までの脱炭素社会実現」を明記した改正地球温暖化対策推進法が成立。政府は30年度の温室効果ガス排出量を13年度比で46%減らす目標を掲げる。達成に向け、省エネと合わせ、より安全で安価な再生エネの普及拡大に注力するのが合理的といえる。ただ、課題も残る。太陽光や風力発電の適地は全国に分散しており、大消費地への送電網拡張が欠かせない。天候の変化に備えた蓄電池の整備なども必要になる。こうした費用は試算に入っておらず、コストを抑える取り組みが重要だ。大規模施設を設置するための森林伐採が土砂災害リスクを高めるとの懸念もある。水質や景観への悪影響を理由とした反対運動も各地で起きている。国は地元に対応を丸投げしてはならない。行政と住民、事業者の利害を調整し、丁寧に合意形成を図る制度が必要ではないか。経産省は今月21日にもエネルギー基本計画の改定案を提示する。計画の土台となる30年度の電源構成目標で、再生エネを大きく伸ばす姿勢を明確に打ち出し、民間企業による投資拡大や技術革新につなげたい。

*2-2-1:https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA0311G0T00C21A7000000/ (日経新聞 2021年7月3日) 概算要求に特別枠 22年度予算、成長分野の投資促す
 財務省は2022年度予算の概算要求基準で、成長分野に優先的に予算配分できる特別枠を設けるよう調整する。各省庁で使い道を決められる裁量的経費を前年度からまず10%減らすよう求め、削減額の3倍を特別枠で要求できるようにする。デジタル化の加速や脱炭素など菅義偉政権が力を入れる分野で政策を集め、投資を促す狙いがある。概算要求基準は各省庁による予算要求のルールとして位置づけられる。政府が近く与党と調整し、正式に決める。各省庁は8月末までに財務省に概算要求を出す。財務省は金額と政策を査定し、年末までに政府の予算案をつくる。政府は6月に閣議決定した経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)で①グリーン社会の実現②デジタル化の加速③少子化の克服④地方の活性化――の4分野を今後の重点課題にした。22年度予算編成に向けて、既存の事業の見直しを求めてメリハリを利かせたうえで、重点分野の予算を増やす。公共事業や教育など一般会計の裁量的経費は、21年度当初予算で約15兆円だった。前提として各省庁には既存経費の10%削減を求める。特別枠は削った額の3倍を上乗せして要求できる。人件費など義務的経費を減らした分についても特別枠に入れることを認める。歳出に上限は設定しない。新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、昨年の予算編成では概算要求の締め切りを1カ月遅らせて9月末にするなどの対応を取った。特別枠も設けなかったため、22年度は例年のかたちに戻る。予算規模の大きい社会保障関係費の扱いについては、骨太方針に従い、過度に膨張しないよう高齢化に伴う伸び(自然増)に抑える方針を示す。21年度予算では社会保障費の伸びを4800億円と見込んでいたが、薬価改定などで実質的な伸びを3500億円にとどめた。22年度は団塊の世代が75歳以上になり始める影響もあって、自然増はこれまでより増える見通し。医師の技術料など診療報酬の見直しなどでどれくらい伸びを圧縮できるかが今後の焦点になる。新型コロナに関連する予算などでは、影響が現時点で見通しにくいことを考慮し、金額を示さない事項要求を認める。21年度の当初予算は一般会計で106.6兆円と9年連続で過去最大を更新した。22年度も膨張が予想される。

*2-2-2:https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA13AP70T10C21A7000000/ (日経新聞 2021年7月15日) 米欧の財政支出、脱炭素・ITに集中 日本は配分課題
 米国や欧州が新型コロナウイルス危機の出口を見据え、環境やデジタルの分野で数十兆円規模の巨額の財政支出に動き始めた。税財源の計画も打ち出し、数年単位の持続的な成長戦略と位置づける。明らかになっているメニューの比較で日本は支出が実質的に10分の1に及ばず、メリハリも効いていない。長期構想に基づいて予算を無駄なく戦略的に配分する仕組みを整えなければ国際競争で劣後する恐れがある。米欧はもともと産業振興に巨額の補助金などを投じることには慎重だった。ただ脱炭素などの新技術の開発では政府がインフラ開発などで旗を振らなければ、民間の投資が伸びにくい。国家を挙げて技術覇権の確立を狙う中国に後れを取りかねないとの危機感も米欧政府の背中を押す。米バイデン政権が掲げた「雇用計画」は8年間で2兆ドル(約220兆円)をインフラ整備や気候変動対策に投じる。電気自動車(EV)を購入する消費者への補助金などに総額約19兆円、電力網の刷新に約11兆円など巨額のメニューが並ぶ。中国との覇権争いも絡むデジタル経済のカギを握る半導体支援も重点テーマだ。2022会計年度(21年10月~22年9月)から5年間で、米国内に工場や開発拠点を設ける企業への補助金など計5.7兆円を出す法案を米議会上院が可決した。政策を実現する財源確保の一環で法人税率の引き上げや富裕層への課税強化策も表明している。欧州連合(EU)は気候変動分野に集中投資する。21年から7年間の中期予算と「コロナ復興基金」の計約1兆8千億ユーロ(230兆円)のうち3割を気候変動対策にあてる。目玉は水素戦略だ。30年までに日本の目標の3倍超にあたる年1千万トンの生産体制を整える。EUは14日、国境炭素税の案を公表した。環境対策が不十分な国・地域からの輸入品に欧州の排出枠価格と同程度の税を課す。事実上の関税として年100億ユーロ近くの収入を想定し、環境投資の新たなサイクルを回す。中国は2014年から基金を作り、半導体関連技術に5兆円超の大規模投資を進めている。上海に二酸化炭素排出枠の取引所を設け、気候変動対策にも本腰を入れる。成長分野への支出で日本は質量ともに見劣りする。脱炭素に10年間で2兆円を投じる基金は20年度第3次補正予算に急きょ盛り込んだ。EVなど向けの経産省の補助金は21年度に155億円で、19兆円の米補助金に比べ桁違いに少ない。第一生命経済研究所の永浜利広氏は「経済規模の違いを考えても日本の支出は米国の10分の1以下。成長力で差が広がりかねない」という。単年度主義の硬直的な予算で赤字国債の発行に頼る財政運営も限界がある。大和総研の神田慶司氏は「コロナ後にどういう経済社会をつくるのか、財政健全化に目配りしつつ、いつまでにどれだけの政策・予算が必要なのか大きな青写真が見えない」と指摘する。日本もコロナによる経済への打撃を和らげるため、予算は大幅に増やしている。国際通貨基金(IMF)の集計によると20年以降の財政対応は計88兆円、国内総生産(GDP)比にして15.9%に上る。米国の25.5%ほどではないが、先進国で中程度の水準だ。しかし規模ありきの編成の結果、約30兆円を使い残した。無駄な部分を大胆に見直しつつ、民間の投資を促すような戦略的配分が求められる。政府は22年度予算編成ではデジタルや脱炭素などに充てる特別枠を2年ぶりに設けた。実際は各省庁のばらばらの要求の受け皿という面がある。経済成長がないまま政府債務ばかり膨らむ危うい状態に陥る恐れがある。経済協力開発機構(OECD)の見通しによると日本の21年と22年の実質成長率は主要7カ国(G7)で最も低い。長期展望や柔軟性に乏しい予算や政策の仕組みのままでは米欧の背中がますます遠のきかねない。

*2-2-3:https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR13BNE0T10C21A7000000/ (日経新聞 2021年7月14日) EU並み気候変動対策、第三国に要求 国境炭素税
 欧州連合(EU)の欧州委員会が14日公表する国境炭素調整措置(CBAM)案は、第三国にEU並みの気候変動政策を要求するものだ。中国やロシアをはじめ、日米なども対象になる可能性がある。EUは緩やかに導入を進めることで他国との対立を避けたい考えだが、貿易摩擦につながるリスクがある。「第三国の生産者が排出を減らすインセンティブになる」。欧州委の担当者はこう強調する。EU域外の事業者がEUに製品を輸出するために排出減に向けて努力するというわけだ。実際、EU並みの気候変動対策をとっていれば制度の対象にはならない。CBAMは国境炭素税とも呼ばれる。影響が大きそうなのがロシアや中国、トルコの企業だ。EUの輸入に占める割合を見ると、セメントではトルコが37%を占めるほか、肥料では36%をロシアが、鉄鋼ではトップ3に中国、ロシア、トルコが名前を連ねる。厳しい環境規制で競争力の低下を懸念する欧州の鉄鋼やセメント業界などは制度の導入を支持する一方、中ロや日米などの域外国は懸念を示してきた。保護主義的な措置で、世界貿易機関(WTO)の無差別原則などのルールに違反しているのではないかといった理由だ。EU高官は6月、日本経済新聞の取材に「2050年に温暖化ガス排出の実質ゼロを宣言した先進国を念頭に置いた制度ではない」と述べた。だが日米などの企業のすべての製品が対象外になるかは不透明な面が残る。日米などは全国的な排出量取引制度を持たないため、EUと同等の環境対策をしているとデータで示すことが難しい可能性がある。EUでは排出量取引に基づいて、二酸化炭素(CO2)を出す権利の価格が日々公開される。データで示せなければ、制度の対象になるリスクが高まる。EU内にも貿易摩擦につながりかねないと不安視する声はある。とりわけ米国とはトランプ前政権時代には通商問題を巡って関係が冷え込んだ。フォンデアライエン欧州委員長は6月のバイデン大統領との首脳会談でCBAMを巡って意見交換することに同意するなど、一定の配慮を見せた。23年から3年間の移行期間を設けたのも、各国の理解を得るためだ。制度が成立するには、加盟国の承認と欧州議会の同意を得る必要がある。成立までに1~2年かかるとの見方もあり、制度設計を巡って曲折がありそうだ。日本経済研究センターは欧米が国境炭素調整を導入した場合の日本の製造業への影響について、CO2・1トンあたり50ドル(約5500円)の場合、EU向けに年2.5億ドル、米英に年5.67億ドルを支払う可能性があると試算する。業種別の負担額は機械産業で290億円、輸出額の大きい自動車産業も215億円になる。関税の上乗せで輸出額も減少する見通しだ。試算ではCO2排出量の多い鉄鋼業は欧米への輸出額が5・7%、窯業・土石業で4・7%、それぞれ減少する見通し。日本も炭素税などを導入すれば越境課税は回避できる。ただCO2・1トンあたり50ドルの炭素税を導入すると、日本経済研究センターは製造業の納税額が約1兆2010億円になると試算する。19年度に企業が納めた法人税(10.8兆円)の1割強に相当する。

*2-3:https://www.tokyo-np.co.jp/article/118798 (東京新聞 2021年7月23日) 中国・台山原発、仏なら一時停止 燃料棒破損、合弁の電力会社見解
 中国広東省の台山原発の燃料棒が破損し冷却材中の放射性物質の濃度が上昇した問題で、合弁で同原発を建設したフランス電力(EDF)は23日までに「フランスであれば、状況を正確に把握し(濃度上昇の)進行を止めるため、原子炉を一時停止する」との見解を発表した。23日付のフランス紙レゼコーは「事故ではないが、進行性の状態で深刻だ。フランスであれば、できるだけ早く原子炉を止める必要がある」とのEDF関係者のコメントを伝えた。EDFは22日の声明で、原子炉を止めるかどうかの決定は、中国側が主導権を握る運営企業にあると指摘した。

<先端技術の応用>
*3-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20210715&ng=DGKKZO73887760V10C21A7MM8000 (日経新聞 2021.7.15) EU、ガソリン車販売を35年に禁止、排出ゼロへ包括案、国境炭素税は23年にも
 欧州連合(EU)の欧州委員会は14日、温暖化ガスの大幅削減に向けた包括案を公表した。ハイブリッド車を含むガソリン車など内燃機関車の新車販売について2035年に事実上禁止する方針を打ち出した。環境規制の緩い国からの輸入品に事実上の関税をかける国境炭素調整措置(CBAM)を23年にも暫定導入する計画だ。欧州委案が成立するには、原則として加盟国との調整や欧州議会の審議を経る必要がある。企業や域外国の反発も避けられそうにない。欧州委の政策パッケージは、30年までに域内の温暖化ガスの排出量を1990年比55%減らす目標を実現するための対策だ。2030年目標は50年に排出実質ゼロにする目標の中間点となる。欧州委はガソリンやディーゼルといった内燃機関車について、35年に事実上禁止する方針を初めて提案した。自動車のCO2排出規制を同年までに100%減らすよう定める。フォンデアライエン欧州委員長は14日の記者会見で「化石燃料に依存する経済は限界に達した」と述べ、速やかに脱炭素社会を実現すると表明した。対応を迫られる自動車業界は反発を強める。ドイツ自動車工業会のヒルデガルト・ミュラー会長は7日、「35年にCO2をゼロとすることはハイブリッド車を含むエンジン車の事実上の禁止だ。技術革新の可能性を閉ざし、消費者の選ぶ自由を制限する。多くの雇用にも響く」と訴えた。トヨタ自動車幹部は「戦略練り直しは避けられない」と話す。欧州委は燃料面からも運輸部門の排出減を促す。自動車とビルの暖房用の燃料を対象にした新しい排出量取引制度を設け、CO2排出にかかる炭素価格を上乗せする。EUには産業や電力など大規模施設を対象にした排出量取引制度がある。だが炭素価格の上昇による燃料費の高騰が低所得層の家計を圧迫しかねないとの批判もあり、当面は別建ての制度とする。従来の排出量取引制度では海運を新たに対象とする。欧州委が導入を目指すCBAMは国境炭素税とも呼ばれる。当初は鉄鋼、アルミニウム、セメント、電力、肥料の5製品を対象とする方針。23年からの3年間を移行期間として暫定的に始め、事業者に報告義務などを課す。26年から本格導入され、支払いが発生する見通しだ。欧州委は30年時点でCBAMに関連する収入を年91億ユーロ(約1.2兆円)と見込む。制度案では、EU域外の事業者が環境規制が十分でない手法でつくった対象製品をEUに輸出する場合、EUの排出量取引制度に基づく炭素価格を支払う必要がある。製品の製造過程における排出量に応じた金額を算出し、事業者に負担させる。EU域内外の負担が等しくなるという考え方だ。

*3-2-1:https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGS155WI0V10C21A7000000/ (日経新聞 2021年7月21日) 中韓勢、東南アジア市場でEV先手 長城汽車や現代自
 日本車が圧倒的なシェアを占める東南アジアの自動車市場に、中国・韓国メーカーが電気自動車(EV)で先手を取ろうとしている。タイでは中国・長城汽車、インドネシアで韓国・現代自動車が現地生産に乗り出す。両社とも現地政府のEV振興策に呼応した。日本勢は、21日に発表したトヨタ自動車やスズキなどの商用車連合で、こうした動きに対抗する構えだ。「変化する時が来た」。長城汽車は6月末、バンコクで開いた新車発表会で日本車への宣戦布告ともとれるスローガンを打ち出した。タイは日本車の生産・販売シェアが約9割に達するものの、大半をガソリン車が占める。長城汽車は3年間でEVを含む9車種の電動車を投入して市場の切り崩しを狙う。同社は2020年にタイから撤退した米ゼネラル・モーターズ(GM)の工場を取得して参入した。800億円弱を投じて人工知能(AI)技術やロボットを導入し、年産能力約8万台の「スマート工場」に改修。手始めに6月からハイブリッド車(HV)の生産を始めた。23年までにEV生産を開始する計画だ。工場改修はタイ政府のEV振興策を利用し、最長8年間の法人税免除の恩典を受けた。タイは30年までに国産車の3割をEVにする目標を掲げる。長城汽車タイ法人の張佳明社長は「タイで電動車のリーダーとなり、産業高度化に協力する」と強調する。タイは東南アジア最大級の自動車市場だが、EVシフトは遅れている。自動車大手はEVを現地生産しておらず、20年の販売台数は約1400台にすぎない。このうち約6割を中国・上海汽車集団の輸入車が占める。同社はタイ財閥チャロン・ポカパン(CP)グループとの合弁工場でEVを現地生産する予定という。日本車は日産自動車の「リーフ」やトヨタ自動車の高級車「レクサス」の一部車種の輸入販売にとどまる。現地生産は三菱自動車が23年から開始する計画を持つものの、全体的にはHVを優先する傾向が強い。充電インフラが整っておらず、所得水準もまだ低いためだ。長城汽車もまず、中国で補助金分を引いた実売価格が約120万円の小型EV「欧拉」を、中国から輸出してタイ市場に投入する。市場開拓を進めながら時期をみて現地生産に切り替えるとみられる。野村総合研究所タイの山本肇シニアマネジャーは「中国勢が間隙を突いて、低価格EVでシェアを伸ばしてくるのは確実だ」と指摘する。タイと並ぶ域内2大市場の一角であるインドネシアには現代自動車が攻め入る。首都ジャカルタ近郊で総事業費約1700億円の工場建設が進む。当初の年産能力は15万台で、年内にガソリン車の生産を開始する。現地報道によると22年にもEV生産に乗り出す。同国は日本車の販売シェアが9割台後半と、ほぼ市場を独占してきた。現代自の工場建設にはインドネシア政府の働きかけがあった。進出が決定した19年11月はインドネシアと韓国が経済連携協定(EPA)を妥結した時期と重なる。韓国から輸入する自動車部品の大半が無関税となり、韓国メーカーは日本車と同等な条件での競争が可能になった。インドネシア政府は19年の大統領令で、国産車の20%をEVとする目標を打ち出した。だが、同国が13年に出した小型エコカーの振興策を受けて、日本車は設備増強を実施済みで追加投資に慎重だ。そこで白羽の矢が立ったのが現代自動車だった。タイ、インドネシア両政府に共通するのは、動きが鈍い日本車へのいらだちだ。タイではEV普及目標の引き上げを検討する政府に対し、日本車の業界団体に当たるバンコク日本人商工会議所自動車部会が「全体でのゼロエミッションを考えて段階的に進めるべきだ」として慎重な議論を求めた。タイは火力発電が中心のため、EVだけ増やしても温暖化ガスの排出は減らせないという理屈だ。インドネシアも同様の課題を抱える。日本車の主張は一理あるものの、中韓勢との投資競争に後れをとれば、かつて家電や携帯電話でシェアを失ったように自動車市場も奪われかねない。
●商用車も日本強く 5社連合で守り固める
 日本車は東南アジアで1960年代から現地組み立てを始め、主要6カ国の新車販売に占めるシェアは約8割に達した。ただ、足元で中国勢がEVで小型車のみならず商用車でも攻勢をかける。21日にスズキやダイハツ工業が、トヨタ自動車、日野自動車、いすゞ自動車の商用車連合に合流すると発表したのも、中国勢の攻勢に対抗する守り固めの意味がある。東南アジア最大級の市場のタイは小型商用車「ピックアップトラック」が市場の半分以上を占める。20年の国内販売全体でもいすゞのシェアは23%に達し、トヨタ(31%)に次ぐ2位を占める。インドネシアでも日野、三菱ふそうトラック・バス、いすゞが商用車で寡占状態だ。だが、日本勢のすきを狙い、中国勢が商用車でも攻勢をかける。タイでは商用車大手、北汽福田汽車がEVトラックを21年中にも発売する予定だ。現状、スズキは軽商用車の海外展開をしていない。5社連合で技術力を結集した小型EVなどを出せれば、日本勢の存在感が維持できる可能性がある。

*3-2-2:https://www.webcg.net/articles/-/44769 (Webcg 2021.7.1) ボルボが全車EV化へ向けたロードマップを発表
 ボルボが全車EV化へ向けたロードマップを発表の画像拡大ボルボ・カーズは2021年6月30日(スウェーデン現地時間)、製品ラインナップの完全な電気自動車(EV)化へ向けた、技術ロードマップを発表した。ボルボが全車EV化へ向けたロードマップを発表の画像拡大目指すは実走行距離1000kmのEVボルボは現在、自社製品の急速な電動化と、より長い一充電走行可能距離や短い充電時間を可能とするバッテリーセル技術の開発を推し進めている。特にプロダクトについては、近い将来、SUVタイプの新型EVを投入し、2020年代半ばにはその次の世代となる第3世代のEVも導入するとしている。このモデルでは、航続距離をさらに伸ばすとともに、バッテリーパックをクルマのフロアに統合し、セル構造を利用して車両全体の剛性を高める、より高効率な車両パッケージも実現するという。一方、バッテリーの開発・生産に関しては、スウェーデンの大手バッテリーメーカーであるノースボルトと提携。現在のものより最大で50%エネルギー密度の高いバッテリーセルの開発を計画している。さらに2020年代の後半には、1000Wh/リッターというエネルギー密度の達成と、実走行距離1000kmのEVの実現を目指しているという。また充電に要する時間については、バッテリー技術の向上、ソフトウエアや急速充電技術の継続的な改善により、2020年代の半ばまでに現在のほぼ半分になると予想している。生産や廃棄の段階における環境負荷低減にも腐心ボルボはプロダクトの電動化以外の点でも二酸化炭素排出量の削減を推進。ノースボルトと共同開発するバッテリーセルについては100%再生可能エネルギーを使用して生産することを目指しており、他のサプライヤーとも2025年までに100%再生可能エネルギーでバッテリーを生産できるよう、取り組みを進めているという。加えて、使用済みバッテリーのリユースやリサイクルについても計画。エネルギー貯蔵などの二次利用の可能性も調査を進めている。EVのエネルギーインフラでの活用についても計画しており、SUVタイプの次世代EVでは、双方向充電により車載バッテリーの電気を電力網に流すことができるようになるという。これにより、EVのドライバーは電力の生産時に排出されるCO2量がピークとなる時間には、電力網にエネルギーを供給してCO2の排出抑制に貢献。そしてCO2排出量が減少する時間にクルマを充電することができるようになると説明している。(webCG)

*3-2-3:https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR223I60S1A720C2000000/ (日経新聞 2021年7月22日) 独メルセデス、30年にもEV専業に 5.2兆円投資
 独自動車大手ダイムラーの高級車事業会社、メルセデス・ベンツは22日、販売する新車を2030年にもすべて電気自動車(EV)にすると発表した。8つの電池セル工場を新設するなど、30年までに400億ユーロ(約5兆2000億円)をEVに投資する。オンラインで開いた記者会見で、オラ・ケレニウス社長は「高級車のEVシフトは加速している。転換点は近づいており、30年までにメルセデスは準備できているようにする。EVファーストからEVオンリーに踏み込む」と述べた。22年に満充電で航続距離1000キロメートル以上の新型車を発表する。25年にEV専用の車台(基本設計)を3種類導入。それ以降に出す車台はすべてEV専用とする。代表車種の「Sクラス」や「Cクラス」の次期モデルはEVだけになる見通しだ。ガソリン車などの販売終了時期は市場によって前後するとしている。ハラルト・ウィルヘルム最高財務責任者(CFO)は30年までにEVの生産コストを同じ車格のガソリン車と同等水準に引き下げるとしたうえで、売上高に占める調整後EBIT(利払い・税引き前損益)比率を10%以上で維持するとの見通しを示した。EVに不可欠な車載電池では専業メーカーと共同で世界に8つの大型工場を設ける。4つは欧州で、米国と中国にも建設する。年間生産能力は高級EV200万台分前後に相当する計200ギガワット時(2億キロワット時)を計画する。メルセデスはこれまで30年に新車販売の半分をEVかプラグインハイブリッド車(PHV)にし、39年にガソリン車の販売終了などで二酸化炭素(CO2)排出を実質ゼロにする「カーボンニュートラル」を目指す計画を掲げていた。半分をEV・PHVにする期限は25年に前倒しする。EV専業化に向け、PHVを含むエンジン搭載車への投資を26年までに19年比で8割減らす。欧州連合(EU)の欧州委員会は14日、35年にエンジン搭載車の販売を事実上禁止する規制案を発表した。すでに独フォルクスワーゲン(VW)傘下の独アウディや、ボルボ・カー(スウェーデン)、英ジャガーなどの高級車ブランドが相次いでEV専業への転身を発表している。

*3-2-4:https://www.nikkei.com/article/DGXZQOFD21AF30R20C21A7000000/?n_cid=SPTMG002 (日経新聞 2021年7月21日) トヨタ、商用車連合を拡大 大型から軽まで電動化
 トヨタ自動車が中心の商用車連合にスズキとダイハツ工業が加わる。トヨタにとって電動化など脱炭素における商用車分野の協業の総仕上げとなる。4月に日野自動車といすゞ自動車と立ち上げた商用車の技術開発会社に軽自動車を得意とする2社が加わり、大型から小型まで商用車を全方位で開発する体制が整う。「国内の自動車保有台数7800万台のうち軽は(4割の)3100万台を占める。地方では半数を超える」。トヨタの豊田章男社長は21日の記者会見でこう切り出し、「商用軽は収益だけを考えると非常に厳しいが日本では欠かせないものだ」と軽の重要性を強調した。スズキの鈴木俊宏社長は「求めやすい価格で脱炭素を実現するには単独では非常に難しい」と参加の理由を説明した。「企業としても脱炭素をアピールできる軽の商用電気自動車(EV)へのニーズはこれまでも高かった」と別のスズキ幹部は背景をこう解説する。今回の協業で改めて強調したのが、商用車分野を電動化や脱炭素の技術開発の起点とする考えだ。物流を担う商用車はあらかじめ決められたルートを通ることが多い。「(充電設備など)インフラとセットで考えることが不可欠」(豊田社長)なEVや燃料電池車(FCV)などの開発には向いている。トヨタが日野・いすゞとの商用車連合を発表した際、念頭にあったのが、福島県での再生エネルギーから作った水素を活用したFCVのトラックによる物流網の構築だった。今回の参画で、FCVの軽商用車も視野に入り取り組みが広がる可能性がある。3月の商用車提携発表後に、自治体・インフラ事業者、運送事業者など、多くの関係者から一緒にやりたいとの声がトヨタに寄せられた。荷物の集配所から受け取る人までの「ラストワンマイル」の物流を担う軽自動車は電動化やコネクテッドなど新技術の開発には欠かせないと判断した。トヨタからスズキとダイハツに声をかけた。軽の商用車が加わることで、中長距離物流を支える大中型トラックを含めて物流に関わる技術開発が加速できるとみる。鈴木社長は「大型と軽がつながることで非常に効率がいい物流ができる。大きな成果に結びつくのではないか」と期待を示す。トヨタにとっては、大きさの制約がある中で、いかに安く作るかを突き詰めてきた軽メーカーのノウハウを取り込む狙いもある。電動化やつながる車などは今後いかに安く作れるかがカギとなる。商用車を軸とした5社連合で、新たなプロジェクトを始める起点にもなり得る。

*3-2-5:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20210724&ng=DGKKZO74149360U1A720C2MM8000 (日経新聞 2021.7.24) GXの衝撃(5)取捨選択、欧州が主導 ルールが決する競争力
 欧州委員会が4月に公表した、分類を意味する「タクソノミー」と呼ぶ数百ページの資料。企業が手がける事業がどういう基準を満たせば「持続可能」と判別されるかを示す。「まるで『閻魔(えんま)大王』みたいに企業が選別される」。こんな受け止め方が広がる。電池製造や発電などが対象で、欧州連合(EU)の温暖化ガス排出の8割をカバーする。企業は基準外の製品を作れなくなるわけではないが、ESG(環境・社会・企業統治)が広がる中、投資を集めにくくなる。
●PHVにも逆風
 環境に優しいとされる製品もやり玉に挙がる。例えば日本の自動車メーカーが強みを持つプラグインハイブリッド車(PHV)。2026年以降は「持続可能」などの分類から外れ、新車で売りにくくなる恐れがある。PHVは、ガソリン車と電気自動車(EV)の間に位置する。EVへの移行期に伸びると見込まれているが「タクソノミーでPHVの普及期の寿命は5年ほど短くなった」と専門家は分析する。石炭火力発電がタクソノミーで外される一方、天然ガスは欧州でも意見が割れる。ポーランドなど東欧諸国は「脱石炭を進めるうえで当面は認めるべきだ」と訴える。逆風の予兆はあった。「控えめに言ってガスは終わった」。欧州投資銀行(EIB)のホイヤー総裁の1月の発言。21年末までにガスへの投融資から原則、手を引く方針を表明し波紋を呼んだ。
●ガスも縮小懸念
 天然ガスは石炭より二酸化炭素(CO2)排出量が4割少ない。天候によって変わる太陽光や風力の発電量を補う役割から、石炭から再生エネへの移行期の「つなぎ役」になるとされてきた。「天然ガスの黄金時代」が到来するとのリポートを国際エネルギー機関(IEA)が公表したのは10年前。クリーンとされる液化天然ガス(LNG)の消費はこの間に6割増えた。ただ、IEAは21年5月、50年のカーボンゼロ達成には、ガスを含む化石燃料の開発投資の即時停止が必要とのシナリオを公表した。日本エネルギー経済研究所の二宮康司氏は「今のままでは30年代以降、ガスも石炭のように悪者扱いされる」とみる。国内最大手の東京ガスが関東で張り巡らすガスのパイプラインは地球1.5周分。輸入のため港湾に設けたLNG基地は1カ所で1000億円規模だ。ガスが石炭のように縮小の道をたどればこうした設備が「座礁資産」となり使い道を失う。タクソノミーのような欧州発のルールが世界の潮流となってきたケースは多い。欧州各国によるガソリン車の販売規制の表明を伊藤忠総研の深尾三四郎氏は「欧州自動車メーカーのディーゼル不正を機に欧州が有利になるようなルールに変えてしまった」と指摘する。車が製造されてから廃棄されるまでの10年間の「ライフサイクル」でみたCO2の排出量は、IEAの20年のまとめによるとガソリン車で1台あたり平均34トン程度だった。EVが24~28トンで、PHVは約25トンと、PHVは環境性能に優れるケースもあるのにEU基準ではアウトになる。欧州がEV導入の高い目標を掲げる中、ESGの圧力により、石油開発は足元で急減。ただ実際に選ぶのは消費者で、EVの普及が遅れれば需給バランスが大きく崩れ、ガソリン価格は高騰しかねない。多角的なリスクを抱えながら企業は難しい選択を迫られている。日本は通貨や通商などで欧米主導のルールを受け入れることが多かった。グリーントランスフォーメーション(GX=緑転)でルールをつくる側に回れるかどうかは、産業競争力にとどまらず、国益をも左右する。

*3-3:https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC071580X00C21A7000000/?n_cid=NMAIL006_20210709_Y (日経新聞 2021年7月9日) JAL「空飛ぶクルマ」で旅客輸送 25年度に事業化
 日本航空(JAL)は2025年度に「空飛ぶクルマ」を使った事業に乗り出す。三重県などで空港と観光地を結ぶ旅客輸送サービスを始める。ANAホールディングス(HD)も25年度に同様のサービスへの参入を検討している。空の移動が身近になれば道路渋滞の緩和や過疎地の交通対策にも役立つ。海外でも実用化競争が進んでおり、新ビジネスに見合うルール整備が課題となる。空飛ぶクルマは空を飛び近中距離を手軽に移動する次世代の乗り物。JALが使うのはeVTOL(電動垂直離着陸機)と呼ぶ2人乗りのドローン型の機体で、航続距離は35キロメートル。最高時速は110キロ。三重県とこのほど実証実験や事業化に向けた連携協定を結んだ。機体を開発したのはJALが20年に出資したドイツのスタートアップ、ボロコプター。リチウムイオン電池に蓄えた電気で複数のプロペラを回して飛ぶ。まず20キロの近距離圏内を飛ぶ実験を進め、さらに地方の都市間を結ぶような50~150キロの中距離圏のサービスを検証する。事業化の際は発着ポートを設けやすい空港を起点に観光地をつなぐ見通し。料金は今後詰める。最終的には中距離圏内であらゆる場所に行き来するタクシーのようなサービスにする構想だ。輸送事業者としてだけでなく、操縦者の訓練や安全管理などのオペレーターサービスを他の輸送事業者に提供して稼ぐ仕組みも想定する。空飛ぶクルマは滑走路が不要で機動性が強み。都市内を簡単に移動できるため、交通渋滞の解消につながると期待されている。交通手段に乏しい過疎地の移動問題の克服にもつながる。一方で社会で広く受け入れられるサービスとするにはルール整備が不可欠だ。三重県は特区として空飛ぶサービスを認めているが、他県との行き来はできない。政府は電動かつ自動操縦で飛ぶ機体を空飛ぶクルマと見なし、ルールづくりを急いでいる。機体は航空機とみなされるため航空法に基づく制度の見直しが必要で、25年までに詰める。航空機燃料を使わないため安全基準も新たな考え方が必要となる。操縦ライセンス、運航の決まりなど整理すべき点は多い。実用化では海外が先行する。トヨタ自動車が出資する米新興企業のジョビー・アビエーションは24年に輸送サービスの商用化を計画。欧州エアバスも24年のパリ五輪での有人サービスの実現を目指している。将来はスマートフォンから予約可能なタクシーサービスの提供をめざす。国内航空大手は空飛ぶクルマなど次世代モビリティー事業を成長の柱の一つと期待する。米モルガン・スタンレーは40年までに世界の空飛ぶクルマの市場規模が1兆5千億ドル(約165兆円)に成長すると予測する。

| 環境::2015.5~ | 01:08 PM | comments (x) | trackback (x) |

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