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2022.9.29~10.7 最近の話題から (2022年10月17、20、21、23日、11月3、4、10日に追加あり)
(1)安倍元首相の国葬、旧統一教会、日韓トンネルなど
1)安倍元首相の国葬儀に参列して


  2022.9.28東京新聞    2022.9.27NNJnews      2022.9.28FNN

(図の説明:左図は国葬儀の全貌、中央の図が動画による安倍元首相のピアノ演奏、そして右図が一般献花に訪れた人である)

 私も元衆議院議員ということで招待状が来たので、佐賀県まで夫妻で選挙応援に来ていただいた安倍元首相の国葬に参列した。元職の中には、招待状が来たこと自体をTVで批判していた人もいたが、国葬儀と決まった以上は招待状の送付段階で差別する方が不適切であるため、特に世話になっておらず、思い出もない人は自らの判断で参列しなければいいだけではないかと思う。

 その国葬は、*1-1-1のように、9月27日に日本武道館で行われ、国内及び各国・地域・国際機関の代表4,183人が参列し、私が集合場所の第一議員会館から武道館までバスで移動した時には一般献花に訪れた人の長い列が見え、午後6時までに約2万3000人が献花したそうだ。

 安倍元首相への銃撃事件で警護の不備が浮き彫りになった警察当局は、今回は北海道や福岡など道府県警からの応援も二千数百人含む2万人規模の大規模な警備だったそうだが、数さえ多ければよいわけではないと思う。

 その国葬は午後2時に始まり、遺骨を乗せた車が都内の私邸から到着し、国歌演奏と黙とうに続いて安倍氏の生前の映像が流れた。

 その生前の映像では、*1-1-2のように、安倍元首相がグランドピアノで「花が咲く」を弾いておられ、全曲を弾いた後に「もう一回、行く?」と話しかけられた時は、かなり練習し暗譜して間違いなく弾かれたものの、決してうまいとは言えない演奏だったため、「もう一度はいい」と思われるタイミングで、微笑みと拍手を誘った。その後、BGMにその「花は咲く」のピアノ演奏を使用して生前を忍ぶ約8分間の映像が流され、さまざまな場面が映し出されたのは、さすがの構成だったと思う。また、19発の弔砲は、ひどく悲しげなかすれた音で鳴った。

2)安倍元首相の「国葬」に関する海外メディアの報道
 国葬をめぐっては、野党が批判を強めて反対のデモも起き、海外メディアは、*1-1-5のように、①AP通信:「国葬をめぐって日本が分裂している理由は、与党が超保守的な旧統一教会と癒着しているから」 ②ロイター通信:「岸田首相は旧統一教会と自民党の繋がりを断つと約束したが、党と政権への影響は計り知れない」 ③米ニューヨーク・タイムズ:「(旧統一教会をめぐる問題を指摘した上で)国葬を岸田政権による一方的な押し付けととらえる国民の追悼の念は薄れている」 ④英フィナンシャル・タイムズ:「岸田政権の支持率が急落している中、「岸田首相の苦境は彼のリーダーとしての時間が限られ、日本の首相の不安定な時代に戻るかもしれないという懸念を抱かせた」 等と報道している。

 また、*1-1-3のように、⑤CNNテレビ:「安倍元総理大臣は最も長く総理大臣を務め、日本の世界的注目度を高めた。参列できなかった市民が朝早くから献花をしようと訪れている」「多くの人が多額の国費が議会に諮ることなく使われたことに不満を持ち、食べるのに苦労している人もいる中で税金の使い方に問題があるとの意見もあって一日中抗議している」 ⑥欧州メディア:「国葬に関する国民の賛否が分かれている」 ⑦AFP通信:「世論調査では約60%の日本国民が『国葬』に反対」 ⑧韓国連合ニュース:「国葬」に反対する市民グループの集会の様子を詳しく紹介した上で「『国葬』による日本国内の世論の分裂が『国葬』当日に最もはっきりと示された」 と報道した。

 このような中、海外の首脳級は元職14人を含む50人前後が参列したがG7の首脳は1人も参列せず、G7の首脳も変わっている上に現職首脳はG7で頻繁に会っているためまあよいとは言うものの、日本メディアは、くだらないことでも政治家を叩きさえすれば権力に抗しているというポーズをとることが、このように世界での日本の地位を弱めていることに早く気づくべきである。

 なお、台湾の代表3人は他の海外からの参列者と同様に献花を行い、その際、会場で「台湾」とアナウンスされたが、私は「台湾には『中華民国』という正式名称があるため、そうアナウンスすればよかったのに」と思った。

 これについて、中国は「台湾は中国の不可分の一部で、『1つの中国』の原則は国際社会における普遍的な共通認識だ。日本は両国間の4つの政治文書の原則を順守し台湾独立分子に政治的な工作を行ういかなる舞台や機会も与えるべきではない」としているが、これは、日本の曖昧さの弱点を突いてはいるものの、独立国に対する内政干渉だと思う。

3)議員と旧統一教会および関連団体との関係
 2)の①②③④に書かれているとおり、日本のメディアは、安倍元首相が殺害された当初から、殺害の不当性や警備の甘さよりも、旧統一教会と国会議員との関係について長時間を割いて指摘してきたが、これが国葬をめぐって日本国民を分裂させた大きな理由となった。しかし、個人的な批判ばかりが多くて、日本の首相が1年毎に交代し、役に立つ構造改革ができない時代に戻るのは困ったものである。

 自民党は、*1-2-1のように、旧統一教会及び関連団体と自民党議員との接点を調べたそうだが、「会合への祝電・メッセージ等の送付」は会合に誘われれば普通はするものだ。また、広報誌のインタビューや対談に応じたり、関連団体の会合に出席したり、挨拶したりも、頼まれればするのが普通だ。そして、旧統一教会がどのようにして金を集めたのか、それが罪に当たるのか否かは、国会議員ではなく警察はじめ司法が調査すべきものだろう。

 *1-2-2は、⑨日韓トンネルは旧統一教会創始者の文鮮明氏が1981年に提唱し、教団や友好団体が推進 ⑩玄界灘を望む佐賀県唐津市名護屋城跡から南に約1.5kmの山中にコンクリートで固めた大きな穴があり ⑪日本と韓国を海底トンネルで結ぶ日韓トンネル構想は両国を全長200キロを超えるルートで繋ぐ計画で ⑫日本の閣僚からは「荒唐無稽」との声も上がるが、計画推進のための会合には国会議員らも参加 ⑬日韓トンネル構想の事業を担うのは旧統一教会の友好団体、国際ハイウェイ財団 ⑭日韓トンネルは九州北部から長崎県の壱岐・対馬を通って韓国南部までを最短約235kmで結ぶ ⑮総事業費は10兆円と試算 ⑯2010年以降は「日韓トンネル推進会議」が各地に立ち上がり ⑯2011年に徳島県議会が、13年に長崎県対馬市議会が、日韓トンネルの早期建設や着工を求める意見書を衆院に送付した ⑰2015年に設立大会が開かれた「日韓トンネル実現九州連絡会議」の会長は九州大学元総長が務める 等としている。

 私は、九州が浮揚するには近くの中国・韓国と密接な関係になるのが有効だと思っていたので、2005年に衆議院議員に立候補した時、日韓トンネルを推奨し、後に国際ハイウェイ財団の福岡集会で挨拶もしたが、これは旧統一教会創始者の文鮮明氏が提唱したからでは決してない(だいたい、そういうことは知らなかった)。にもかかわらず、「日韓トンネル推奨=統一教会と関係あり=金をもらったか、選挙で手伝ってもらった」などとして日韓トンネルの計画自体がおぞましいものであるかのように言うのは、意図的であり的外れも甚だしいのである。

 しかし、その後の日韓関係、日本の外交能力、リスク管理能力、防衛能力、メディアの世論形成に鑑みれば、日本が大陸と海で切り離されていることは防衛のためには非常に重要であり、日韓トンネルで陸続きにするのはむしろ危険だという結論に達した。

(2)防衛費増額で日本を護れるのか
1)国の財政状態について
 
        財務省          2020.12.22読売新聞 2021.11.20日経新聞 

(図の説明:左図は、国の一般会計における歳出と税収の推移で、最近になるほど差が大きくなっており、箍が外れた感がある。中央の図は、2021年度の一般会計予算で、2020年度にコロナ対策として長期間経済を止めたので税収は減少し、コロナ関係の歳出が5兆円ある。2021年度は、当初予算のほかに経済対策として右図の補正予算が組まれており、コロナ関連と銘打っての無計画で生産性の低い歳出が増加している)

 財務省は、*2-1-1のように、2022年8月10日、国の借金(=国債+借入金+政府短期証券)が、2022年6月末時点で1,255兆1,932億円で、同3月末からも13.9兆円増え、0歳児から最長高齢者まで含めた国民1人あたり約1,005万円の借金になったと発表したそうだ。

 債務の膨張が止まらないのは、2021年度の税収が67兆円で税外収入が5兆5,647億円しかないのに、当初予算106兆6,097億円(うち新規国債発行43兆5970億円)、補正予算35兆9,895億円(うち新規国債発行22兆580億円)というように、借金を原資にした歳出が多く、物価高対策を盛り込んだ2.7兆円規模の22年度補正予算も財源の全額を赤字国債で賄ったからである。

 これにより、日本の債務残高はGDPの2倍を超えて先進国中最悪になったが、これは、成長力に繋がる「賢い支出」をするのではなく、その場限りのバラマキが多かったため、税収増にも税外収入増にも繋がらなかったことによる。

2)防衛費増額について

  
2022.9.5日経新聞 2022.3.18日経新聞 2022.8.12京都新聞 四国経済産業省 

(図の説明:1番左の図が防衛費増額のイメージだが、何から何を護るのに、どういう武器を使い、そのために必要な自衛官は何人かという根本的戦略がないため、省庁間で整合性のない行動をとっている。また、左から2番目の図のように、『武器だけで国を護ることはできない』という認識に至ったのはよいが、実際には経済安全保障の対象は先端技術だけなので、右から2番目と1番右の図のように、食料とエネルギーの自給率低迷が放っておかれたままになっている)

 防衛省は、*2-1-2のように、台湾有事を睨んで、2023年度予算概算要求でGDP比1%の上限を撤廃して2%も視野に入る過去最大の防衛費を計上したそうで、日米で進む外交・安全保障の基本戦略「統合抑止(Integrated Deterrence)」の考え方によるとしている。

 しかし、名目がそうでも実質はGDP比2%を視野に戦略なき装備品購入計画になっている点が問題である。何故なら、仮に台湾有事への対応が主な増額理由なら、台湾を独立国と認める外交努力を行い、食料・エネルギー・工業製品は外国依存ではなく自給率を高め、ミサイル等の武力攻撃に対応できない原発や使用済核燃料は早急に安全な場所に処分しなければ、実際に戦うことはできないからである。

 そのため、*2-1-3のように、何とかごまかしながら5年で防衛費を倍増し、世界3位の「軍事大国」になっても、高額だが決して使えない装備に金をかけただけになりそうなのだ。

3)2022年版防衛白書について
 2022年版防衛白書は、*2-2-1のように、防衛費の増加や敵基地攻撃能力の保有などの国家安全保障戦略改定に向けて検討する防衛力強化への前向きな記述が入り、その前提となる周辺国への情勢認識の記述が強められたそうだ。

 しかし、「NATO諸国の国防予算の対GDP比目標(2%以上)を念頭に、5年以内の防衛力抜本的強化に必要な予算水準の達成を目指す」というのは、NATO諸国とは異なる平和憲法を持つ日本にとっては、単なる予算獲得手段としか思えない。

 「防衛費は国防の国家意思を示す大きな指標」と言っても、武器さえあれば戦争ができるわけではなく、日本の場合は、台湾有事への対応にも明確な大義名分がなく、武器以外の準備は全くしていないのが実情だ。

 さらに、*2-2-2のように、中国、ロシア、北朝鮮に囲まれた日本の安全保障環境が厳しさを増し、2021年10月に中ロ両軍の艦艇が日本列島を一周して、2022年5月には中ロ両軍の爆撃機が日本周辺を長距離にわたって共同飛行しても、日本は抗議を含めて何の対応もできなかったのである。

(3)原発推進に固執した経産省と日経新聞の罪

 
 2022.9.10日経新聞   2022.9.10日経新聞  2022.9.1Goo 2022.9.5西日本新聞

(図の説明:1番左の図のように、ミサイル技術も進歩し、発射の兆候は察知しにくく、弾道が途中で変化するので迎撃もしにくくなっているが、左から2番目の図のように、日本は核廃棄物の最終処分場所も決まっておらず、使用済核燃料は原発近くの高所にあるプールに溜めてあるのだ。そして、右から2番目の図のように、24基の原発が廃炉になるのは喜ばしいことだが、このような無防備な状態を無視して、1番右の図のように、『安全性が増す』などと称して次世代原発に前のめりになっているのは、国民を護ることを考えていない証拠である)

1)戦時における原発と使用済核燃料の危険性
 (多分)ロシア軍は、*3-1-1のように、ザポリージャ原発とその周辺で、IAEAの専門家が滞在する中で、原発を狙って砲撃をしかけ、主要な外部電源との接続が途絶して予備の送電網に頼るなどの危うい状況が続いた。しかし、「戦争があっても原発だけは攻撃されない」というのは、超楽天的な希望にすぎない。

 日本の場合は、*3-1-2のように、北朝鮮がミサイル技術を高めて弾道弾の4割を変則型にしたため、ミサイルの軌道が読みにくくなり、迎撃が困難になった。しかし、どこの国でも、武器を作る以上は相手国の迎撃をかわすよう進歩させるのが当たり前であるため、これは当然のことであろう。そのため、どこまでやってもいたちごっこであり、旧式の武器は維持・管理・処分に困るわけである。

2)放射性廃棄物の処分について
 日本では、*3-2のように、原発等から出る様々な廃棄物の最終処分場が決まっていないにもかかわらず、政府(特に経産省)が原発再稼働拡大に前のめりで、外交・防衛との整合性はもちろん考えておらず、リスク管理が0点である。

 そもそも他国を制裁して戦争を仕掛ける前に、放射性廃棄物は人間の手の届かない離れた場所に処分しておくべきだ。フクイチ事故を起こしてもそれをやらず、「(ただCO2を出さないというだけで)他国が原発を使うから日本も原発活用!原発活用!」などと騒ぎたてているのは、何も考えておらず神経が麻痺している。

3)“改良型”の新原子炉なら安全か 
 (これまでの怠惰が祟って)電力需給が逼迫する中、政府の政策転換を契機として、三菱重工・日立製作所などが、*3-3-1のように、安全性を高めた改良型の新原子炉を関電、北電、四電、九電など電力会社4社と共同開発して、2030年代半ばの実用化を目指すそうだ。

 この革新軽水炉は既存の加圧水型軽水炉を改良して自然災害や大型航空機の衝突などテロに対して対策を講じるもので、①地下式構造で被害を受けにくくし ②格納容器の外壁を強化し ③破損の確率を既存炉の100分の1未満に減らし ④炉心溶融が起きても溶融核燃料を「コアキャッチャー」でためられるようにして放射性物質を原子炉建屋内に封じ込め ⑤炉心冷却のための電源も充実して事故の影響を発電所敷地内に留め ⑥原発の技術伝承を計る のだそうだ。 

 しかし、自然災害や大型航空機衝突等のテロ対策を講じただけでは、武力攻撃には全く対応できない。さらに、①②③④⑤は、原発事故を0にするものではない上、膨大な熱エネルギーを作り出し、それを海水で冷やしながら稼働させて、食料の宝庫である海を温めることには、何ら変わりがないのだ。

 さらに、万一、事故を起こせば、食料の宝庫である農地を汚染して使い物にならなくするため、そういうリスクのある原発を、⑥のように、原発技術の維持存続自体を目的として多少の改良をし、国民の金をつぎ込んでも国益にならないことには全く変わりがない。

 このような中、日経新聞は、*3-3-2のように、しつこく、⑦エネルギーの安定供給と脱炭素の両立へ国が前面に立ち、あらゆる手段を動員する総力戦で臨むべきだ ⑧2050年の電源構成に占める再エネ比は7割に留めて残り3割は原発活用を国主導で行い、脱炭素への移行期間の電力安定供給や資金確保に万全を期すべき 等と記載してきた。

 しかし、東海発電所が1966年7月に営業運転を開始してから既に56年が経過しているのに、国の補助金がなければ原発を開発も稼働もさせることができず、放射性廃棄物の処理方法も決まっていないのでは、原発は実用的なエネルギー源としてとっくの昔に落第している。

 一方、太陽光発電の補助金制度は、最初は普及目的で1993年にスタートし、2005年に一旦停止した後、2008年度に再開されたが、普及が進んで設置費用が下がったことにより、2013年度までという短期間で終了している(https://nakajitsu.com/column/52080p/ 参照)。

 従って、費用対効果・エネルギー自給率向上によるエネルギー安全保障・脱炭素・脱放射性物質・脱温排水のいずれをとっても太陽光を始めとする再エネの方が優れていることが明らかで、“安定供給”を名目として人為的で勝手なエネルギーミックスを決め、原発を優先することは税金の膨大な無駄遣い以外の何物にもならないのである。

 なお、玄海原発の立地自治体である佐賀県でも、*3-4のように、現在稼働している玄海原発について佐賀新聞社が県民世論調査したところ、「目標時期を決めて停止」と回答した人が最多の40.3%で「即時停止」の4.6%と合わせて44.9%に達し、「運転継続」の31.0%を上回ったそうだ。そして、原発新増設や運転期間延長には慎重な意見が根強いそうで、これは当然の結果だろう。私は、危険なので「即時停止」したい方だが、「目標時期を決めて停止」するとすれば、3、4号機が40年に達する時が潮時で、使用済核燃料も速やかに搬出すべきだと考える。

(4)日本経済の現状と再エネ投資の有用性
1)貿易赤字と円安の理由
 *4-1のように、2022年1~8月の貿易収支通算は12.2兆円の赤字で、通年では2014年の12.8兆円を上回って過去最大になりそうだが、その理由は、円安(8月の為替レート:$1≒135円)と資源高で輸入額は大幅に増えたが、円安の輸出押し上げ効果が小さく、輸出が伸び悩んだからだそうだ。

 しかし、これは、今から30年前の1992年頃、日本企業が円高と高コスト構造で国内生産を諦め、世界市場に参入したばかりで人件費等のコストが安かった東欧や中国に進出しはじめた頃から「国内産業の空洞化」として予想され、それを食い止めることもなく現在に至っているものである。そのため、このままなら、貿易赤字と財政赤字の双子の赤字が日本経済の趨勢となり、その結果として、円安はさらに進むだろう。

 にもかかわらず、例えば新型コロナでは、科学的根拠もないのにワクチンを害悪視して学校を休校にし、経済は長期間停止させ、結局、マスクからワクチン・治療薬のすべてを輸入に頼り、ワクチン代は全額を国が支払った。そして、経済を止めた代償として、国はまたまた膨大なバラマキを行ったのである。この中で、その後の日本経済にプラスとなる「賢い支出」は1つもなく、これが、ワクチンや治療薬を生産して売った欧米諸国とそれらを高い価格で買っただけの日本の現在の景気の差を作っているのだ。

 このように、既に国内産業が空洞化している日本は、世界の貿易量が回復しても「工業製品を輸出する」という経済モデルは成り立たなくなっており、日本の消費者でさえ日本製にこだわらなくなっている(価格と品質の総合で負けている)ため、いつまでも「円安になれば輸出が伸びる」「海外経済が回復すれば外需を取り込める」と考えるのは、現状認識が甘すぎるのである。

 このような中、資源高と円安で化石燃料の輸入による国富の海外流出が見過ごせない状態なのに、未だに化石燃料と原発に補助金を出し、再エネによる国産エネルギーへの転換に投資しないのは、自分の国の現状を把握して長所を活かす行動をしていない状態なのだ。

2)再エネ導入の方法と効果
 私は、*4-2-1のような東京都の戸建住宅まで含んで太陽光パネル設置を義務化し、住宅メーカーが設置義務を負うとする政策に賛成だ。しかし、マンションを含み新築に限ってしまえば、中古住宅を購入して改装した場合は太陽光パネルの設置が義務づけられないため、太陽光パネルの耐用年数(20~30年)より長く居住できる住宅の売買には太陽光パネルの設置と省エネを義務化するのがよいと思う。

 また、東京都だけでなく、全国の自治体で同様に義務化すれば、地球環境によく、地域の富が他地域に電気代として流出するのを防ぎ、災害時の停電被害を最小にすることが可能だ。

 従って、再エネは脱炭素時代の主力電源であることに間違いはなく、*4-2-2のように、2050年の電源構成に占める再エネ割合7割というのは、ビルや住宅への太陽光発電設置を義務付ければ低すぎる目標になる。また、産業用電力には、余った太陽光電力や風力・地熱発電など多くの再エネが考えられるため、再エネに投資する方が原発に延々と補助金を出すよりも、ずっと環境によく「賢い支出」になる。

 さらに、荒廃農地だけでなく営農中の農地でも、風力発電をしたり、倉庫やハウスに太陽光発電機器を設置したりすることによって、電力を自家消費したり、副産物として販売したりすることが可能になり、農業所得を増やすことに貢献できる。そのため、いつまでも「再エネは不安定」などと言って思考停止しているのではなく、蓄電池の大容量化やコスト低減を行い、エネルギーのイノベーションを加速すべきなのである。

3)再エネへの移行資金
 *4-3は、①脱炭素社会の実現はクリーンエネルギー発電を増やすだけでなく ②CO2を多く出す産業の排出抑制が必要 ③国・企業・個人の金を脱炭素社会移行に回す仕組みを整えたい ④政府の見通しは、今後10年間で官民あわせて150兆円の投資が必要 ⑤再エネ普及や蓄電池開発を成長戦略と位置づけ有効な金の使い方を検討すべき ⑥採算が不透明で民間が負いにくい投資リスクは、まず国が引き受けて民間資金の呼び水の役割を果たすべき ⑦新たな国債の償還財源を確保するためカーボンプライシングを早く実行して欲しい ⑧経営者は脱炭素戦略を示し、実行方法を株主と協議すべき ⑨企業が排出抑制を進めるには機動的な資金調達も必要で、銀行や資産運用会社も体制を整えるべき 等と記載している。

 私は、①~⑨に大きな異論はないが、③の国の資金や⑦の国債償還財源は、まず原発や化石燃料に対する補助金をなくし、電源は同じ土俵で競争させることから始めるべきだ。その上で、各企業は、有価証券報告書や計算書類で自社のSDGsへの対応を開示し、投資家や消費者はそれを吟味しながらNISA等の投資対象を決めるのがよい。何故なら、SDGsは利益率を我慢して行うべきものではなく、SDGsを行うことが利益率を上げる時代に既に入っているからである。

(5)日本政府が国民生活を軽視する政策に傾くのは何故か?

  
   Gen Med          厚労省       2021.8.23日経新聞

(図の説明:左図は高齢者人口及び高齢者割合の推移だが、何歳以上を高齢者と定義するかによって変わる。しかし、中央の図のように、人口ピラミッドの変化はずっと前から言われていることで、ある年に生まれた人の人数はその年が終われば判明するため、今頃になって騒いでいる人は近未来のことを考えていなすぎる。なお、「人口が減るから困る」という論調は、世界人口が産業革命以後に等比級数的に増加し、世界ではむしろ人口過多の方が問題になり始めていることを無視しており、視野が狭すぎると言わざるを得ない)

1)公的年金の引き下げ
 公的年金は、*5-1のように、平成17年3月まで「物価スライド制(実質年金額を維持するため、物価変動に応じて年金額を改定する制度)」だったが、制度変更により平成17年4月から「マクロ経済スライド制(年金財政の均衡を保つことができない場合、年金額の伸びを物価の伸びより抑える制度)」という誰にとっても意味不明の言葉を使った国にとって都合の良い制度に変更され、2022年4月から0・4%引き下げられた(https://www.nenkin.go.jp/service/yougo/hagyo/bukkaslide.html 参照)。

 国民年金は、もともと月額6万5千円未満という生活費にも足りない金額しか支給していないため、さらに引き下げれば生活できなくなる。また、この10月から一定以上の所得がある75歳以上の医療費窓口負担も1割から2割に引き上げられたため、介護保険料を払えずに年金の差し押さえを受ける人も全国で2万人を超え、生活破綻している高齢者が多いそうだ。

 しかし、この年金制度は、「現役世代が保険料を納めて高齢者を支える『賦課方式(仕送り方式)』で維持されているため、年金額を抑えて制度を維持する必要がある」という説明を何度も聞いたが、実際には、1985年に最初の男女雇用機会均等法が制定されたのと時期を同じくして制度変更を行い、サラリーマンの専業主婦など年金保険料を支払わない人にまで給付対象を広げて、積立方式から賦課課税方式に変更し、専業主婦を優遇したのである(https://www.mhlw.go.jp/shingi/2002/07/s0702-2a.html 参照)。

 さらに、団塊の世代が生産年齢人口だった時は支払われる年金保険料の方が支給される年金よりずっと多かったため、発生主義で積み立てておけば大きな問題は生じなかった筈だが、日本政府は現金主義でものを考え、余れば目的外の大きな無駄遣いをし、今後は年金給付に必要な原資が足りなくなるから減額するという、その場限りのお粗末な発想をしているわけである。

 この状況では、公的年金に対する信頼などは持つ方が悪いかのようだが、そうなると賦課課税方式による年金保険料は税金と同じになり、国民負担率があまりに高くなる。つまり、保険は保険として約束どおりに支払う姿勢がなければ、信用できる保険にはならないのだ。

2)日銀の物価上昇政策
 日銀は、*5-2のように、「2%の物価上昇率」を政策目標に掲げ続けているが、そもそも中央銀行の役割は、金融政策によって物価の安定を図り、通貨の信用や国民の財産を護ることであるため(https://www.nikkei4946.com/knowledgebank/visual/detail.aspx?value=215 参照)、中央銀行が物価上昇を政策目標に掲げること自体が世界でも異常なのである。

 異常である理由は、日銀は、「現在の物価上昇は資源高や円安による輸入物価の上昇による影響が大きく、賃金上昇を伴う持続的な物価上昇には至っていないから」と説明しつつ、物価の安定を図って通貨の信用や国民の財産を護るどころか、年金や賃金の実質価値を密かに毎年2%づつ下げて国民生活を犠牲にし、皆が貧しくなるようにしながら国会審議のいらない課税によって政府財政の大赤字を帳消しにしようとしているからである。

 そして、日銀は、「超低金利政策による景気の下支えを優先する」として大規模な金融緩和策を維持し続けることを決めたが、FRBは世界標準の金融政策を採って0.75%の大幅利上げを決定しているため、市場では運用に有利な金利の高いドルを買って円を売る動きが定着した。資金の海外逃避は労働力の海外移動よりも容易であるため、日本と他国の金利差が広がれば、このように円安が加速し、円安が続くのは当然のことなのである。

3)医療費について


2022.10.6日経新聞  2022.6.24日経新聞  2021.1.21毎日新聞  2022.9.21厚労省 

(図の説明:1番左の図は、健保組合の保険料は年50万円に上るとしているが、私はDINKSで働いてきたため、夫婦それぞれがこれ以上の保険料を扶養家族もないのに支払ってきた。そのため、退職後“に仕送りを受けている”などと言われるのは論外だ。また、左から2番目の図のように、「現役世代が減る」としているのも、国の子ども政策の悪さと職場の多様性のなさせいであり、国民に責任はない。さらに、右から2番目の図が所得判定だが、高齢者なら200万円の所得は豊かな方に入るというのも、生活感がなさすぎる。最後に、1番右の図のように、退職後の後期高齢者だけが入る保険を作れば公費や現役世代からの支援が必要になるのは当然である)

 高齢になると病気やけがで医療機関を受診する機会が増えるが、その理由は、身体に備わっている健康維持機能が衰えるからで、これは遅かれ早かれ誰にも平等に起こるものである。

 そのような中、日常生活をするだけでもやっとの年金しかもらっていない人は、医療費負担を重いと感じるわけだが、現行制度は、年齢等によって加入する医療保険制度が異なり、窓口で自己負担する割合も異なる。病気やケガをして病院にかかった時の医療費窓口負担割合は、(所得によって異なるが)0~6歳:2割、7~69歳:3割、70~74歳:原則2割、75歳以上等で後期高齢者医療制度に加入する人は、2022年10月から、一般所得者等1割、一定以上の所得がある人2割、現役並み所得のある人3割に変更された。

 厚労省は、後期高齢者医療制度の窓口負担を見直した理由を、①75歳以上の後期高齢者の医療費は約5割を公費で負担し、約4割が現役世代の負担(支援金)によって支えられている ②令和4年以降は他の世代より突出して人口の多い団塊の世代が75歳以上になるため、医療費がさらに増大して現役世代の負担が大きくなることが懸念される ③こうした中、現役世代の負担を少しでも減らし、全ての世代が安心して医療を受けられる社会を維持するため 等としている。

 ただし、医療機関や薬局で支払った医療費が、同一月内で一定額を超える場合は、超えた金額を払い戻す「高額療養費制度」を設けて年齢や所得に応じて窓口負担額の上限を決め、2割負担となる人は外来のみなら月18,000円、外来と入院を合わせた場合は月57,600円が上限額となるそうだ(https://www.gov-online.go.jp/useful/article/202209/1.html 参照)。

 また、*5-3-1は、④2021年度は健康保険組合の半数超で収支が赤字で ⑤赤字が続けば保険料率を上げざるを得ず ⑥赤字要因は医療費増加と65歳以上の高齢者医療への拠出金の増加で、特に75歳以上の後期高齢者が増加し ⑦現役が支払う保険料の4割が高齢者に「仕送り」され ⑧給付と負担の見直しが急務で ⑨健保組合に加入する会社員の場合、社会保険料は医療保険9.0%、介護保険(40~64歳)1.8%、厚生年金18.3%の合計約29%となり、現状は給付が高齢者に、負担は現役世代に偏っており ⑩後期高齢者の保険料引き上げだけでなく、給付抑制も議論する必要がある としている。

 しかし、後期高齢者医療制度は私が衆議院議員時代に作られたが、⑦の“仕送り制度”が決まった時から、私は反対していた。何故なら、年齢によってかかる病気の種類や頻度は変わり、これは平等であるため、年齢によって加入する医療保険を変えれば、病気にかかりにくくて治りやすい生産年齢人口のみが入っている健康保険は、支払保険料の方がずっと多くなり、大きな黒字となるからだ。従って、働いていた期間に入っていた医療保険に退職後の高齢者も入り続けなければ、保険制度が成立しないのである。

 そのため、①のように、75歳以上の後期高齢者医療費は約5割を公費で負担し、約4割を現役世代が負担することになったわけだが、人為的に4割・5割などと決めた数字にズレが起こるのは当たり前で、団塊世代の多くは、生産年齢人口時代に十二分に保険料を支払っているため、「仕送りした」などという生意気なことを言われたり、④⑤⑥⑩のようなことを言われる筋合いはないのである。日経新聞には、保険の仕組みがわかる人もいないのか?

 また、②の令和4年以降は団塊の世代が75歳以上になるため医療費が増大する ③現役世代の負担を少しでも減らす などというのも、上の図のように前からわかっていたことなので、団塊の世代が保険料を支払っていた期間に積立てるなどの準備しておかなかった政府(特に厚労省)の責任以外の何物でもない。

 従って、⑨⑩については、政府が責任をとって、保険料の支払者にも保険金の受給者にも迷惑をかけない形で解決すべきであり、それには適正な薬価の設定や税外収入を増やして福祉財源に充てる等を行うしかないのだ。

 そのような中、*5-3-2のように、「人口の高齢化が進んで医療費が膨らみ、今の社会保障制度は恩恵が高齢者に偏る」などとしているのは、考えの浅い妬みの論理でしかなく、本末転倒の議論でもある。もちろん、全世代が安心して暮らせる「全世代型社会保障」の実現は必要だが、それには介護保険料を全世代で負担し、給付も全世代が受けられるようにするなどの高齢者に犠牲を強いない方法を考えるべきである。

 なお、*5-3-3のように、“一定以上の所得”というのが食料・エネルギー等の必需品の物価上昇が広がる中、年金収入とその他所得の合計が単身世帯で年200万円、複数なら320万円というのは、医療・介護関係費用を支払っても生活できる収入ではない。

(6)リーダーの多様性のなさによって歪む政策
1)女性差別(ジェンダー・ギャップ)によって歪んだ政策

  
2022.7.14朝日新聞 2022.8.12佐賀新聞       2022.4.17日経新聞

(図の説明:左図のように、世界経済フォーラムの男女平等ランキングで、日本は116位と、G7最下位であるのみならず、アジアでも低迷している。また、中央の図のように、特に政治・経済におけるリーダーの登用で男女格差が大きく、その結果、右図のように、大卒女性が高卒男性と同じくらいという、同じ学歴でも年収の差が大きい状態だ)


 私は、上の(2)~(5)で、政府・行政が作った政策のうち、環境を軽視している政策、費用対効果が悪すぎる歳出、社会保障や福祉の軽視など、女性の方が積極的に発言したり、活動したりしている課題について述べた。そして、このように歪んだ政策が多い理由は、女性の方が環境や生活に関わる政策に感受性が高かったり、会計管理能力が磨かれていたり、差別を嫌ったりするのに、各界のリーダーには女性が著しく少ないからだと思う。

 そして、2022年のジェンダー・ギャップ指数(世界経済フォーラムが国別に男女格差を数値化した指数)では、*6-1のように、日本は調査対象となった世界146カ国中116位、G7最下位で、そのうち政治(139位)・経済(121位)で特にジェンダー・ギャップが大きく、教育(1位)・医療(63位)はジェンダー・ギャップが比較的少ないとされている。

 こういう結果になった理由は、①1979年に女性差別撤廃条約が国連総会で成立し、1985年に日本は女性差別撤廃条約に批准したが ②同1985年に最初の男女雇用機会均等法ができた時には女性を補助職として女性差別を正当化し ③同1985年にサラリーマンの専業主婦を3号被保険者として年金制度で優遇し ④1999年に男女雇用機会均等法の努力義務規定を禁止規定に変えると、多くの女性を非正規雇用化して労働法による保護対象からはずした など、実質的には男女平等を実現させない方向への行動をとってきたからである。

 しかし、このようにしてジェンダー・ギャップを頑固に温存してきたことは、女性に対する重大な人権侵害であったと同時に、女性がリーダーとして活躍した方が多面的な検討を行えるため経済発展が促されるにもかかわらず、それを放棄してきたということなのである。

2)障害者差別
 国連の障害者権利委員会は、*6-2のように、日本政府への審査を踏まえ、障害児を分離した特別支援教育の中止と精神科の強制入院を可能にしている法律の廃止を求めたそうだ。

 私は、前から特別支援教育と称して障害児を分離教育するのは、障害児とされた児童に対する差別であり人権侵害であると同時に、その児童から普通教育を受けて生活力を身につける機会を奪うため、問題だと思っていた。その上、日本の“障害児”の定義は、世界でも広い方なのだ。

 そのため、これを教育現場の人手不足を理由に実現しないのであれば、生産年齢人口に景気対策として莫大な金額の無駄な補助金を使っていることや、生活力が身につかなかった“障害者”を生涯ケアし続ける費用をどう捻出するのかについても同時に考える必要がある。

 さらに、精神科の強制入院を可能にしている法律廃止の実現に、仮に病院団体の反発などのハードルがあるとすれば、それは病院の利益のために障害に基づく差別を行い、強制入院による自由剝奪等の人権侵害を容認するという重大な問題である。

 そのため、他国と比べて異例の規模となる約100人の障害者やその家族が日本から現地に渡航し、国連の勧告が障害者権利条約に基づいて行われたことは、当事者が頑張ったのだと思う。

3)外国人差別

 2021.5.28日経新聞     2022.3.23GlobalSaponet    2022.6.9日経新聞

(図の説明:左図のように、日本は難民申請数は多いが難民認定率が欧米とは比べ物にならないくらい低く、入国管理庁はとても先進国とは思えない人権を無視した扱いをしている。また、中央の図のように、外国人労働者として入国した人は、問題の多い技能実習生が多く、その人たちが資格外活動もしている。さらに、右図のように、外国人は非正社員の割合が高く、外国人の正社員と比較しても著しく給与が低いが、生産年齢人口の割合が減ると言って騒いでいる日本が、このままでよいわけがない)

 *6-3のように、「不法滞在」という言葉は移民に罪があるような印象を与え差別的であるため、国連では使わないことになっており、米国のバイデン政権も「alien(在留外国人)」「illegal alien(不法在留外国人)」という呼称を禁じ「noncitizen(市民権を持たない人)」「migrant(移民)」「undocumented(必要な書類を持たない)」という言葉を使う方針で、日本でも法務省政策評価懇談会の篠塚力座長はこの点を指摘しておられたそうだ。

 が、政治・行政、NHKをはじめとするメディアでは、「不法滞在」等の差別的な言葉が未だによく使われており、日本は女性・高齢者・障害者だけでなく、外国人に対しても差別の多い鈍感な国と言わざるを得ないのである。

 しかし、現在、日本政府も「我が国に入国・在留する全ての外国人 が適正な法的地位を保持することにより、外国人への差別・偏見を無くし、日本人と外国人が互いに信頼し、人権を尊重する共生社 会の実現を目指す」という目標は掲げているため、一般国民も外国人労働者・移民の受け入れを渋ったり、差別・偏見を持ったりするのではなく、公平・公正な態度にすべきだ。

・・参考資料・・
<安倍元首相国葬・旧統一教会・日韓トンネル>
*1-1-1:https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA251XU0V20C22A9000000/ (日経新聞 2022年9月27日) 安倍元首相の国葬、4200人参列 首相経験者は戦後2例目
 政府は27日、日本武道館(東京・千代田)で安倍晋三元首相の国葬を執り行った。国内の政財界や各国・地域・国際機関の代表ら4183人(速報値)が参列した。一般献花に訪れた人は午後6時時点でおよそ2万3000人だった。首相経験者の国葬は戦後2例目で1967年の吉田茂氏以来55年ぶり。国葬は午後2時すぎに始まった。遺骨を乗せた車が都内の私邸から到着し、葬儀副委員長の松野博一官房長官が開式の辞を述べた。国歌演奏と黙とうに続き安倍氏の生前の映像を流した。葬儀委員長である岸田文雄首相は追悼の辞で「あなたが敷いた土台の上に持続的ですべての人が輝く包摂的な日本、地域、世界をつくっていく」と語った。衆参両院議長、最高裁長官、友人代表の菅義偉前首相が順番に立った。菅氏は安全保障法制などに触れて「難しかった法案を全て成立することができた。どの一つを欠いても我が国の安全は確固たるものにはならない」と功績を強調した。天皇、皇后両陛下と上皇ご夫妻が派遣された弔問の使者が拝礼した。秋篠宮ご夫妻や次女、佳子さまら皇族が供花された後、参列者が献花した。海外の首脳級は元職14人を含む50人前後が参列したとみられる。米国はハリス副大統領、インドはモディ首相、オーストラリアはアルバニージー首相が来日した。中国は全国政治協商会議副主席の万鋼氏、韓国は韓悳洙(ハン・ドクス)首相を派遣した。政府は会場に近い九段坂公園に一般向けの献花台を設けた。朝から長い列ができ午前10時の予定を30分早めて受け付けを始めた。政府は国葬への賛否が割れていることを踏まえ、国民や地方自治体に弔意を求めなかった。官公庁や学校は休みとせず、コンサートやスポーツなどのイベントも自粛を求めなかった。

*1-1-2:https://news.yahoo.co.jp/articles/52f18ef1e11fda6c67ff417c8a4be82158bfa1ad (Yahoo、スポニチ 2022/9/27) 安倍元首相国葬始まる 生前自ら演奏の「花が咲く」流れ…ネット涙「切なく響く」「だめだ、もう涙腺崩壊」
 7月の選挙応援演説中に銃撃され、死去した安倍晋三元首相(享年67)の国葬が27日午後2時すぎ、東京・北の丸公園の日本武道館で始まった。遺骨を抱えた昭恵夫人が入場。遺骨は葬儀委員長の岸田文雄首相、自衛隊の儀仗(ぎじょう)隊長、隊員へと手渡され、式壇の中央に置かれた。その後、松野博一官房長官が「ただいまより安倍晋三・国葬儀を執り行います」と開式の辞を述べた。君が代の斉唱は求められず、自衛隊による演奏のみが流され、その後1分間の黙とうがささげられた。さらに、安倍元首相の生前をしのぶ約8分間の映像が流され、「全身全霊をかけて挑戦する覚悟であります」と決意の演説をする場面などが映し出された。映像のBGMには、安倍元首相自らの「花は咲く」のピアノ演奏を使用。ツイッターには「安倍さんのピアノ演奏『花は咲く』が切なく響く…」「安倍ちゃんのピアノからだ 黙祷から涙止まらん」「安倍さんのピアノをバックにこれまでの軌跡 だめだ、もう涙腺崩壊です」と、感傷に浸るツイートがあふれた。安倍元首相の遺骨はこの日午後、昭恵夫人に抱えられ、東京・富ヶ谷の自宅から、海上自衛隊の儀仗隊に見送られて出発。奏楽は家族の意向で行われず、静かな出発となった。柩車は途中で防衛省を経由し、見送りを受けた後に到着した。岸田首相と自衛隊による堵列(とれつ)が出迎え、19発の弔砲が鳴らされた。国葬は210超の国と地域、国際機関からの要人約700人を含め、国内外合わせ約4300人が参列し、午後2時から開始。秋篠宮ご夫妻ら皇族も参列された。葬儀委員長の岸田文雄首相、友人代表の菅義偉前首相らが追悼の辞を行う。首相経験者の国葬は、67年10月31日の吉田茂元首相以来55年ぶりとなる。警察は全国から最大2万人を動員、威信をかけた警備に当たった。都内では首都高などで午後9時まで交通規制が行われる。会場近くでの一般献花には、朝から多くの人が訪れ、開始時間は30分前倒しされ、午前9時半から始まった。安倍元首相は2期の政権で、日本憲政史上最長の通算8年8カ月、首相を務めた。7月8日、奈良市内で参院選の応援演説中に背後から銃撃され、搬送先の病院で死亡が確認された。岸田首相は国葬の実施を閣議決定したが、国会での審議を経ずに決定した過程などに国民の意見は分かれ、この日も東京・日比谷公園で抗議デモが行われた。

*1-1-3:https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220927/k10013839041000.html (NHK 2022年9月27日) 安倍元首相「国葬」海外の反応は?
 安倍元総理大臣の「国葬」をめぐる海外メディアなどの反応をまとめます。
●英 トラス首相「英国との温かい友情 永遠の遺産として残る」
 イギリスのトラス首相は、27日、自身のツイッターに日本語と英語の両方で、「安倍元首相の長年にわたる英国との温かい友情は、今日の日英両国の緊密な友好関係の中に、永遠の遺産として残ります」と投稿し、イギリスと良好な関係を築いてきた安倍元総理大臣に哀悼の意を表しました。
●インド モディ首相「心の中に生き続けることでしょう」
 インドのモディ首相は、自身のツイッターに日本語で「安倍さんは偉大な指導者、稀有な人物であり、印日友好に確信を持ってくれている人でした。安倍さんは何百万人もの人々の心の中に生き続けることでしょう」と投稿し、良好な関係を築いてきた安倍元総理大臣に対して哀悼の意を示しました。また、インド外務省によりますと、モディ首相は国葬の後、安倍元総理の妻の昭恵さんと面会し、弔意を伝えたということです。
●米CNNテレビ 日本武道館の近くから中継
 アメリカのCNNテレビは、会場となった日本武道館の近くから特派員が中継し「安倍元総理大臣は最も長く総理大臣を務め、日本の世界的な注目度を高めた。朝早くから参列できなかった市民が献花をしようと訪れている」などと述べました。そのうえで「多くの人たちは、多額の国費が議会にはかることなく使われたことに不満を持っている。食べるのに苦労している人もいるなかで、税金の使い方に問題があるとの意見もある。人々は一日中抗議している」として国葬をめぐって国民の賛否が分かれていることを伝えています。
●欧州メディア 「国葬」国民の賛否が分かれていると伝える
ヨーロッパのメディアは、安倍元総理大臣の「国葬」をめぐって、日本では、国民の賛否が分かれていると伝えています。このうちロイター通信は27日、日本で「国葬」が行われるのは1967年以来だとしたうえで「元総理大臣の殺害がきっかけとなり、与党の多くの議員と旧統一教会とのつながりが明らかになった」と伝えました。またフランスのAFP通信は27日「世論調査では、およそ60%の日本国民が『国葬』に反対している」と伝えました。そしてイギリスの公共放送BBCは、26日の記事に「なぜ安倍元総理大臣の『国葬』は論争になっているのか」という見出しをつけ、多額の費用に反対の声が上がっているとする一方「彼ほど長期にわたって総理大臣を務めた人はいない」と報じました。
●韓国メディア 日本国内の世論の分裂を伝える
 韓国メディアは、一部のテレビ局が会場近くに設けられた献花台の前から中継したほか、安倍元総理大臣の「国葬」をめぐって日本の世論が大きく割れていることに焦点を当てて伝えています。このうち、通信社の連合ニュースは「国葬」に反対する市民グループの集会の様子も詳しく紹介したうえで「『国葬』による日本国内の世論の分裂は『国葬』当日に最もはっきりと示された」と報じました。また、革新系のキョンヒャン(京郷)新聞は「旧統一教会との関係や『国葬』の妥当性をめぐって世論が好意的ではない中で行われた」と伝え、SNSのハッシュタグでは「安倍さんありがとうございました」と「最後まで国葬に反対します」の2種類が多く登場していると指摘しています。
●台湾メディア「代表3人が献花 会場で『台湾』とアナウンス」
 安倍元総理大臣の「国葬」について、台湾の主要なメディアはいずれも東京から中継したり日本の報道を引用したりして詳しく伝えています。TVBSなど各テレビ局は、台湾の代表3人がほかの海外からの参列者と同様に献花を行い、その際、会場で「台湾」とアナウンスされたことを強調しています。日本の一部メディアの「台湾を国扱いするものだとして中国が反発するのではないか」という見方について、台湾の日本に対する窓口機関「台湾日本関係協会」の周学佑 秘書長は27日午前の記者会見で「台湾と日本の間の基本的な人情や義理について中国が抗議する理由は何もないと思う」と述べました。
●中国 “台湾の参列者の献花 機会与えるべきでない”
 中国外務省の汪文斌報道官は27日の記者会見で安倍元総理大臣の「国葬」で台湾からの参列者が献花を行ったことについて問われ「台湾は中国の不可分の一部で、『1つの中国』の原則は国際社会における普遍的な共通認識だ。日本は、両国の間の4つの政治文書の原則を順守し台湾独立分子に政治的な工作を行ういかなる舞台や機会も与えるべきではない」と述べ、日本側をけん制しました。

*1-1-4:https://news.yahoo.co.jp/articles/fc9ae1bd0641b5889ab142513b6cc1500feff382 (Yahoo、時事通信 2022/9/25) 迫る安倍氏国葬、厳戒態勢 2万人動員、応援も 「信頼回復の第一歩」と幹部・警視庁
 27日に迫った安倍晋三元首相の国葬は、警護の不備が浮き彫りになった7月の銃撃事件以降、警察当局が臨む初めての大規模警備となる。警視庁幹部は「信頼回復の第一歩だ」と意気込み、万全を期す構えだ。同庁関係者によると、警備態勢は2万人規模に上り、5月にバイデン米大統領らが来日した日米豪印4カ国(クアッド)首脳会議の約1万8000人を上回る見通しだ。「警察の存在意義そのものが問われる」(大石吉彦警視総監)という警備には、北海道や福岡など道府県警からの応援も二千数百人を見込む。同庁幹部は「想定外があってはならない。無事に完遂させる」と気を引き締めており、東京都内の主要ターミナル駅などには既に部隊が配置された。海外要人の来日本格化を前に、24日には羽田空港(東京都大田区)と都心を結ぶ首都高速道路で、爆発物など不審物の捜索を実施した。銃撃事件の検証では、過去の警護計画を安易に踏襲したと指摘された。別の幹部は「前例踏襲にならないようチェックを徹底している」と語り、従来の大規模警備にとらわれることなく、態勢に不備がないか計画を点検していると強調する。国葬をめぐっては、野党が批判を強め、実施反対のデモも起きるなど逆風も吹いており、同庁幹部は「『自分が正義だ』という攻撃者の心理が生まれかねないムードだ」と危惧する。前兆を捉えにくい組織的背景のない個人の凶行を警戒し、不審なインターネット上の書き込みや、銃や爆発物の原材料の購入に関する情報収集も強化している。国葬当日は、複数の団体が反対デモを予定し、会場となる日本武道館近くの九段坂公園には一般向けの献花台も設置されるなど、周辺には多くの人が訪れるとみられる。このため、大勢の警察官を配置し、群衆に紛れた危険人物の察知やトラブル防止にも力を入れる。東京・富ケ谷の安倍氏の自宅で遺骨を乗せ、会場に向かう葬儀車列の警備も余念がない。生前ゆかりのあった場所周辺も数カ所経由するとみられ、幹部は「沿道も厳重に警備する。もう何もあってはならない」と語気を強めた。 

*1-1-5:https://digital.asahi.com/articles/ASQ9W006PQ9VUHBI034.html (朝日新聞 2022年9月27日) 「国葬めぐり、なぜ日本が分裂?」 海外メディアが相次ぎ報道
 安倍晋三元首相の国葬をめぐり、世論が二分されている背景などについて、海外メディアの報道が相次いでいる。AP通信は「国葬をめぐって、なぜ日本が分裂しているのか」との見出しの記事を配信し、「与党が超保守的な旧統一教会と癒着していることが、葬儀への反対を大きくしている」と報道。ロイター通信は「岸田(文雄)首相は旧統一教会と自民党のつながりを断つと約束したが、党と政権への影響は計り知れない」と伝えた。米ニューヨーク・タイムズも、旧統一教会をめぐる問題を指摘したうえで、国葬を「岸田政権による一方的な押し付け」ととらえる国民にとって、「追悼の念は薄れているようだ」と伝えた。また、安倍元首相の評価についての分析として「(安倍元首相は)国際舞台では称賛されたが、国内ではそれ以上に分裂が激しく、右傾化政策に反対した人々がいま、無数の不満を口にしている」と指摘している。エリザベス女王の国葬が行われたばかりの英国。BBCは、女王の国葬には参列しなかったインドのモディ首相が安倍元首相に敬意を表するために日本を訪れると指摘した。安倍政権による安全保障政策をめぐっては、論争を引き起こしたとする一方で、識者の見方も踏まえ、ワシントンや、中国に対して懸念するアジアの多くの国々からは歓迎されたとの見方を示した。一方、英フィナンシャル・タイムズは、岸田政権の支持率が急落している現状に注目し、「岸田首相の苦境は、彼のリーダーとしての時間が限られ、日本の首相の不安定な時代に戻るかもしれないという懸念を抱かせた」と指摘した。

*1-2-1:https://www.jiji.com/jc/article?k=2022090801115&g=pol (時事 2022年9月9日) 旧統一教会および関連団体との接点・関係 自民
1、会合への祝電・メッセージ等の送付   97人 氏名公表せず
2、広報紙誌へのインタビューや対談記事などの掲載   24人 氏名公表せず
3、旧統一教会関連団体の会合への出席
(1)議員本人ではなく、秘書が出席した会合   76人 氏名公表せず
(2)議員本人が出席したが、あいさつ等はなかった会合   48人 氏名公表せず
(3)議員本人が出席し、あいさつした会合   96人
 【衆院】逢沢一郎▽赤沢亮正▽東国幹▽池田佳隆▽石橋林太郎▽石原宏高▽石原正敬▽伊東良孝▽稲田朋美▽井林辰憲▽井原巧▽大岡敏孝▽尾崎正直▽小田原潔▽鬼木誠▽菅家一郎▽神田憲次▽北村誠吾▽工藤彰三▽熊田裕通▽国場幸之助▽小寺裕雄▽小林茂樹▽小林鷹之▽小林史明▽坂井学▽佐々木紀▽柴山昌彦▽島尻安伊子▽鈴木馨祐▽関芳弘▽高木宏寿▽高鳥修一▽高見康裕▽武田良太▽武村展英▽谷川とむ▽田野瀬太道▽田畑裕明▽塚田一郎▽土田慎▽土井亨▽中川貴元▽中川郁子▽中曽根康隆▽中西健治▽中根一幸▽中野英幸▽中村裕之▽中山展宏▽西野太亮▽萩生田光一▽鳩山二郎▽平井卓也▽深沢陽一▽古川康▽細田健一▽宮内秀樹▽宮崎政久▽宮沢博行▽務台俊介▽宗清皇一▽村井英樹▽盛山正仁▽保岡宏武▽柳本顕▽山際大志郎▽山田賢司▽山本朋広▽若林健太
 【参院】青木一彦▽生稲晃子▽石井浩郎▽井上義行▽猪口邦子▽上野通子▽臼井正一▽江島潔▽加田裕之▽加藤明良▽北村経夫▽古賀友一郎▽小鑓隆史▽桜井充▽佐藤啓▽高橋克法▽豊田俊郎▽永井学▽船橋利実▽星北斗▽舞立昇治▽三宅伸吾▽森屋宏▽山本順三▽若林洋平▽渡辺猛之
(4)議員本人が出席し、講演を行った会合   20人
 【衆院】赤沢亮正▽甘利明▽石破茂▽伊東良孝▽大岡敏孝▽小田原潔▽北村誠吾▽木原稔▽佐々木紀▽谷川とむ▽中谷真一▽中山展宏▽古川康▽宮沢博行▽務台俊介▽山際大志郎▽義家弘介
 【参院】井上義行▽猪口邦子▽衛藤晟一
4、旧統一教会主催の会合への出席   10人
 【衆院】逢沢一郎▽上杉謙太郎▽木村次郎▽柴山昌彦▽萩生田光一▽穂坂泰
 【参院】磯崎仁彦▽井上義行▽三宅伸吾▽森雅子
5、旧統一教会および関連団体に対する会費類の支出   49人(うち、政治資金規正法上、要公開の対象議員は24人)
 【衆院】青山周平▽池田佳隆▽伊藤信太郎▽伊東良孝▽井上信治▽上野賢一郎▽大岡敏孝▽奥野信亮▽小田原潔▽鬼木誠▽加藤勝信▽神田憲次▽木村次郎▽高木啓▽高木宏寿▽武田良太▽田畑裕明▽寺田稔▽中川郁子▽萩生田光一▽平井卓也▽平沢勝栄▽松本洋平
 【参院】上野通子
6、旧統一教会および関連団体からの寄付やパーティー収入   29人(うち、政治資金規正法上、要公開の対象議員は4人)
 【衆院】石破茂▽下村博文▽高木宏寿▽山本朋広
7、選挙におけるボランティア支援   17人
 【衆院】岸信夫▽木村次郎▽熊田裕通▽斎藤洋明▽坂井学▽高鳥修一▽田畑裕明▽田野瀬太道▽中川貴元▽中村裕之▽深沢陽一▽萩生田光一▽星野剛士▽若林健太
 【参院】北村経夫▽小鑓隆史▽船橋利実
8、旧統一教会および関連団体への選挙支援の依頼、および組織的支援、動員等の受け入れ   2人
 【衆院】斎藤洋明
 【参院】井上義行            (敬称略)。

*1-2-2:https://digital.asahi.com/articles/ASQ945GMFQ92TIPE006.html?iref=com_rnavi_arank_nr03 (朝日新聞 2022年9月4日) 日韓トンネルは「教祖の悲願」 賛同者に大物政治家、教団の狙いとは
 玄界灘を望む佐賀県唐津市。かつて豊臣秀吉が朝鮮出兵の拠点とした名護屋城跡から南に約1・5キロの山中に、周りをコンクリートで固めた大きな穴がぽっかりと開いている。穴の上にかかる看板には「日韓トンネル唐津調査斜坑」と日韓2カ国語で書かれていた。日本と韓国を海底トンネルで結ぶ「日韓トンネル」構想は、両国を全長200キロを超えるルートでつなぐ計画。「世界平和統一家庭連合(旧統一教会)」の創始者、故・文鮮明氏が1981年に提唱し、教団や友好団体が推進してきた。日本の閣僚からは「荒唐無稽」との声も上がるが、計画推進のための会合には国会議員らも参加していた。記者が訪ねた8月中旬、人の気配はなかった。付近の住民によると、もともとこの辺りは牛の放牧場だった。近くに住む80代の男性は「本工事に向けて、機械を入れるトンネルと聞いている。コロナ禍以前は時折バスが何台も来て、視察をしていたようだ。非現実的な計画で、実現するかどうかはあまり関心がなかった。これまで地元とのトラブルなどはなかったと思う」と話す。
●「日本を陸続きに…」 関係者が語った教祖の悲願
 日韓トンネル構想の事業を担うのは、「世界平和統一家庭連合(旧統一教会)」の友好団体の一般財団法人「国際ハイウェイ財団」(東京)。1982年に設立された前身の団体のトップには、教団の日本での初代会長を務めた久保木修己氏が就任した。教団の資料や財団によると、日韓トンネルは、九州北部から長崎県の壱岐と対馬の両島を通り、韓国南部までを最短約235キロで結ぶ。総事業費は10兆円と試算する。斜坑がある佐賀県唐津市の土地は広さ約19万4千平方メートル。斜坑の建設費は約21億7500万円で、調査費は約45億6600万円としている。斜坑はトンネル本体の工事に向け、地質調査などを目的に試掘したもの。86年に起工し、2007年までに直径6メートルの坑道を約540メートルまで掘り進めた。所有する敷地の境界に達し、それからは中断しているという。掘り進んだ土地は10年、教団から財団に寄付されている。かつて財団の元幹部はトンネルについて「教祖の悲願」と表現し、「日本(と韓国)を陸続きにして島国でなくするという文鮮明師の考え方に基づく」と、朝日新聞記者らに説明した。構想を後押しする動きは、国内でじわりと広がっていた。10年以降は「日韓トンネル推進会議」が各地に立ち上がった。また衆院事務局によると、11年に徳島県議会が、13年に長崎県対馬市議会が、日韓トンネルの早期建設や着工を求める意見書を衆院に送付した。17年には東京都内で「日韓トンネル推進全国会議」の結成大会が開かれた。財団が共催し、教団の友好団体「UPF(天宙平和連合)―Japan」「平和大使協議会」が協力に名を連ねた。会場では、朝日新聞記者が取材していた。財団の徳野英治会長(当時)が「新幹線に乗って東京からソウルにまいりましょう」と呼びかけると、大きな拍手が起きた。徳野氏は当時、教団の日本の会長でもあった。大会には自民党の国会議員も出席していた。当時、幹事長特別補佐を務めていた武田良太衆院議員は「二階(俊博)幹事長もご招待いただいたが、国会中で日程調整がつかず、私が代わりをさせていただく」と述べ、「この夢を必ずや実現していきたい」。参院憲法審査会長だった柳本卓治・元参院議員は「日韓トンネルで、心だけではなく本当に往来ができるように実現を図っていかなければならない」とあいさつした。元官房長官で、当時日韓議員連盟幹事長だった河村建夫・元衆院議員がビデオメッセージを寄せ、日韓トンネルについて「究極の日韓融合の一つの大きな指標だと我々も認識している」と話した。日韓トンネルに関して名前が出てくるのは、政治家だけではない。15年に設立大会が開かれた「日韓トンネル実現九州連絡会議」の会長は、九州大学の元総長が務める。推進会議の地方組織の会合では、民間閣僚だった元総務相やJR九州元社長らが講演していた。日韓を結ぶ海底トンネルは、過去に日韓首脳の間で話題になったこともある。財団は「過去、日韓の首脳がその意義を認め、賛同の意を何度も表明した国際プロジェクト」と説明する。一方、斉藤鉄夫国土交通相は8月26日の会見で「(国土づくりの方向性を示す)国土形成計画において、日韓トンネル構想を検討したことはない。ちょっと荒唐無稽な構想だと思っていた」と述べた。地元はどうか。
●試掘坑の見学ツアー 「寄付の口実として利用」指摘
 佐賀県によると、単に穴を掘るだけでは県の許認可対象となる「開発行為」には当たらない。一定範囲以上の森林伐採があれば森林整備課で法令に沿った対応をするが、今のところそうしたこともないという。唐津市の峰達郎市長は8月26日の会見で「民間団体が私有地で活動していると理解している。市は一切関与していない」と述べた。さらに「報道で出るたびに、看板に『唐津』の文字が入っていることにちょっと違和感を持っている。できれば看板は取り外してほしいという個人的な気持ちはある」と漏らした。教団が14年に記者に配布した資料には、「日韓トンネル早期実現のために全ての教会員が協力している」「教会と信徒が100億円を超える寄付を行い、財団が調査と建設の事業を担ってきた」などと記していた。ただ、日韓トンネルが絡んだ献金をめぐっては、教団に損害賠償を求める訴訟も過去には起きている。80年代、複数の訴訟で代理人を務めた「全国霊感商法対策弁護士連絡会」代表世話人の山口広弁護士は「教団は献金を集める名目として日韓トンネル計画を利用してきた。政治家や学者らが関与すれば社会的な信用を与えることになり、献金を助長するおそれがある。即刻手を切るべきだ」と批判する。教団がトンネル資金のために借りた金の名義貸しをさせられたとして、元信者が約1億8千万円の損害賠償を求めた訴訟を担当した平田広志弁護士(福岡県弁護士会)は「旧統一教会は、信者らを頻繁に試掘坑の見学ツアーに連れて行った。日韓トンネル計画は、統一教会が意義深い活動をしている印象を信者らに持たせ、活動資金を寄付させる口実として利用された」と語る。財団は、朝日新聞の取材に「多くの団体、個人から貴重な寄付金をいただき、実現に向けての調査、研究、用地確保などを行ってきた」と説明する一方、日韓関係の悪化や日本の経済不況を挙げて「1990年ごろ以降は寄付金募集も決して容易ではない状況にあることは認めざるをえない」とする。さらに「教団批判に注力している弁護士らが、教団に被害を及ぼすことを目的に日韓トンネルを持ち出し、事実に反する内容を繰り広げている」とも主張している。教団は「資金集めのための運動ではない。そのように言われることは大変遺憾だ」と回答した。
●河村元官房長官「計画、趣旨には賛同」
 17年の「日韓トンネル推進全国会議」結成大会に参加した経緯などについて、河村建夫氏は取材に「自分は教団の支援は一切受けていないし、日韓トンネルは教団が推進している計画だと知っていたので積極的に参加したくなかったが、教団から支援を受ける地元山口県の市議に頼まれたのでビデオメッセージを送るだけにした。計画自体は日韓友好につなぐ夢として趣旨には賛同している」と語った。武田良太氏は「無回答」とし、柳本卓治氏は期限までに回答がなかった。

<防衛費増額で日本を護れるのか>
*2-1-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20220811&ng=DGKKZO63369280R10C22A8MM8000 (日経新聞 2022.8.11) 国の借金、初の1人1000万円 6月末、総額最大の1255兆円
 財務省は10日、国債と借入金、政府短期証券を合計したいわゆる「国の借金」が6月末時点で1255兆1932億円だったと発表した。3月末から13.9兆円増え、過去最多を更新した。国民1人あたりで単純計算すると、初めて1000万円を超えた。債務の膨張に歯止めがかからず、金利上昇に弱い財政構造になっている。企業の業績回復に伴い、2021年度の税収は67兆円と過去最高を更新した。一方、新型コロナウイルス対策や物価高対策などの歳出は増え続けている。低金利が続き利払いは抑えられているが、歳出の増加が税収の伸びを上回り、債務が膨らむ構図になっている。7月1日時点の総務省の人口推計(1億2484万人、概算値)で単純計算すると、国民1人あたりで約1005万円の借金になった。およそ20年前の03年度は550万円で、1人あたりでみると2倍弱に増えた。物価高対策を盛り込んだ2.7兆円規模の22年度補正予算は財源の全額を赤字国債でまかなった。財務省は22年度末には、借入金や政府短期証券を含めた国の借金が1411兆円まで増えると推計している。日本の債務残高は国内総生産(GDP)の2倍を超え、先進国の中で最悪の水準にある。成長力を底上げして税収増につなげる「賢い支出」を徹底する必要がある。

*2-1-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20220905&ng=DGKKZO64040950V00C22A9MM8000 (日経新聞 2022.9.5) 防衛費を問う(1)日米「統合抑止」への変革、日本、台湾有事にらみ概算要求最大 戦略・制度も欠かせず
 日本の防衛が歴史的な転換点を迎える。防衛省は8月末、2023年度予算の概算要求で過去最大の防衛費を計上した。国内総生産(GDP)比で1%の上限を撤廃し、2%も視野に入る。大幅に増やす防衛費は何が必要なのか。課題をみる。「統合抑止(Integrated Deterrence)」。日米で進む外交・安全保障戦略擦り合わせのキーワードだ。5月、日米防衛相会談ではオースティン国防長官が促し、事務方の交渉でもこの言葉が軸になっている。統合抑止は米国が新たに打ち出した安全保障の基本戦略で、これまでの軍事力だけではなく、同盟国の能力、サイバーや宇宙の領域を幅広く活用する。米軍単独では中国の脅威に対処できない危機感がある。過去最大となった防衛省の概算要求は、その第一歩だ。これまで日本の防衛費論議は国民総生産(GNP)比1%枠が象徴する「数字ありき」の議論や、どんな装備品を購入するのかの「買い物計画」に偏りがちだった。米国とより連携を深めるなら米国と補完し合う形で装備品を調達し、戦略や制度も見直さなければならない。年末に国家安全保障戦略など3つの政府文書を改定するのもそのためだ。特に台湾有事の対応が問われる。
●「0発対1250発」
 第1段階の統合抑止で最も重要なのはミサイルになる。米国は過去の条約の制約で現在、中距離ミサイルを持たない。日本から中国に届く中距離ミサイルは日米ともに保有していない。条約の対象外だった中国は1250発以上を持つとされる。「0対1250」の圧倒的不均衡の修正が急務だ。日本の防衛省は今回の概算要求で一つの策を示した。相手の射程外から攻撃できる長射程の「スタンド・オフ・ミサイル」だ。国産の「12式地対艦誘導弾」の射程を1000キロメートルに伸ばす改良費に272億円を計上した。1000発以上を量産する案が取り沙汰されている。政府・自民党内では22年度に沖縄県・石垣島に陸上自衛隊の駐屯地を新設し、ミサイル部隊を置く構想がある。構想通りに配備すれば沖縄の在日米軍基地や台湾に近く、中国側に届く。米国の統合抑止への目に見える関与といえるが、中国の反発も必至だ。米中対立のはざまに入る覚悟もいる。統合抑止は装備だけではない。インフラや制度、組織も日米がともに使えなければ機能しない。「本州にある航空自衛隊の基地を米軍の戦闘機に使わせてほしい」。今夏、米シンクタンク、ランド研究所が実施した机上演習でこんな場面があった。台湾有事の仮想シナリオで米軍幹部が自衛隊幹部に要請した。台湾周辺の米戦闘機は沖縄の在日米軍基地に集中する。中国の攻撃前に分散しなければ、簡単に壊滅しかねない。日本が退避場所を提供できるかが米軍の生命線になる。
●指揮系統は別々
 自衛隊組織の見直しも大事だ。米国が参加する北大西洋条約機構(NATO)や米韓同盟には「最高司令部」や「連合司令部」がある。トップは米軍の司令官だ。日米には統合司令部はなく指揮も別々だ。米韓や日米には朝鮮半島有事にどう協力して対処するかを規定する「共同作戦計画」があるが、日米の間で台湾有事に向けた計画は完成していない。装備や人員の配置、輸送や補給手段などを具体的に定めなければ統合作戦は動かせない。陸海空3自衛隊を束ねる統合幕僚長を務めた折木良一氏は「米国との窓口を担う統合司令官をつくるのが基本中の基本だ。危機になると統合幕僚長は防衛相や首相官邸など文官を補佐する仕事に追われる」と指摘する。統幕長は有事に(1)3自衛隊の統括(2)首相や防衛相への説明(3)在日米軍やインド太平洋軍司令部との調整――をすべて担う。同時並行でこなすのは非現実的だ。南西諸島には全長300メートル以上の米空母が寄港できる港湾設備はない。最新鋭戦闘機が発着できる堅固で長い滑走路も見当たらない。港や空港は国土交通省の所管だ。国・地方あわせて15兆円の公共投資予算で防衛向けは1900億円。従来の防衛費の概念に入らない他省庁の予算は多い。日本は戦後、自らは一度も紛争に巻き込まれたことがない平和国家だった。防衛費増を危険視する向きもあるが、軍事に傾斜する中国や北朝鮮、ロシアが近くにあり安保環境は厳しさを増す。必要な備えがなければ、攻撃は抑止できない。平和を守るには有事をにらんだ備えがいる。

*2-1-3:https://www.sanin-chuo.co.jp/articles/-/263975 (山陰中央新報論説 2022/9/5) 防衛費概算要求 軍拡競争に陥る恐れ
 ロシアによるウクライナ侵攻や台湾を巡る米中の緊張など国際情勢が激しく動く中で、日本はどういう役割を果たしていくのか。問われるのは根本的な外交・安全保障戦略の在り方だ。2023年度予算の概算要求で、防衛省は過去最大の5兆5947億円を計上した。ただ、それにとどまらず「5年以内に防衛力を抜本強化する」という岸田政権の方針に沿って、金額を示さない「事項要求」を多数盛り込んでいる。政府関係者は1兆円程度が上積みされ、当初予算は最終的に6兆円台半ばになるとの見通しを示している。毎年1兆円の増額を続ければ5年で防衛費は倍増し、世界で米中に次ぐ3位レベルの「軍事大国」になる計算だ。しかし、大幅な増額は周辺国を刺激し、軍拡競争に陥ることにもなりかねない。米国と同盟関係にある一方、中国と地理的に近く、両国と深い経済関係を持つ日本が果たすべき役割は、紛争を起こさないための対話を進め、地域の緊張緩和に取り組むことではないか。専守防衛を基本とし、「平和国家」の理念を掲げてきたからこそ周辺国から得られてきた信用もある。その貴重な「資源」を放棄するのか。真の安全保障のための戦略と防衛態勢はどうあるべきか。国会でも真正面から議論し、針路を定めていくよう求めたい。岸田文雄首相は5月の日米首脳会談で防衛費の「相当な増額」を表明。6月の経済財政運営の指針に「防衛力の抜本強化」を明記した。一方、自民党は参院選公約で、北大西洋条約機構(NATO)加盟国が国内総生産(GDP)比2%以上を目標としていることを挙げ、大幅増額を訴えた。これまでGDP比1%程度だった防衛費を倍増すれば自民党の要求を実現するものになる。政府は年末までに外交・安保政策の長期指針「国家安全保障戦略」など3文書を改定する。焦点は防衛費の増額と、相手国の領域内を攻撃できる敵基地攻撃能力を改称した「反撃能力」の保有を認るかだ。防衛省の概算要求は事項要求の柱として、相手の射程圏外から攻撃できる「スタンド・オフ防衛能力」の強化を挙げた。反撃能力の保有が決まれば転用が可能な装備だ。安保戦略改定の議論を先取りし、既成事実化するものと言える。このほかにも攻撃型の無人機の導入や、最新鋭戦闘機の追加取得などを列挙した。専守防衛との整合性が問われよう。配備を断念した地上配備型迎撃システム「イージス・アショア」の代替策としてはイージス・システム搭載艦2隻を建造する。従来のイージス艦よりも大型で最新鋭の装備を搭載する計画だ。「焼け太り」ではないか。厳しい財政事情の中で財源はどうするのか。今でも隊員が不足している自衛隊に運用が可能なのか。課題は尽きない。多岐にわたる事項要求について防衛省幹部も「初めてのことで手探りだった」と語る。額を増やすために「かき集めた」のが実情ではないか。「増額ありき」で主導してきた政治の責任は重い。「抑止」のための反撃能力だと主張しても、相手国には攻撃力と映り、結局は軍拡競争に陥る「安全保障のジレンマ」が待っている。対立の構図から脱して、対話の道を開いていく国家戦略こそが求められる。

*2-2-1:https://digital.asahi.com/articles/DA3S15365763.html (朝日新聞 2022年7月23日) 防衛力強化、理解求める記述増 「1人当たりの国防費」比較・敵基地攻撃能力「解説」 防衛白書
 2022年版防衛白書は、防衛費の増加や敵基地攻撃能力の保有など、岸田政権が年末の国家安全保障戦略などの改定に向けて検討する防衛力強化について、前向きな記述が入った。前提となる周辺国に対する情勢認識の記述を強めるなど、国民の理解を得たい思惑が垣間見える。防衛費をめぐっては、5月の日米首脳会談で岸田文雄首相が「相当な増額」を打ち出した。自民党は参院選で「NATO(北大西洋条約機構)諸国の国防予算の対GDP(国内総生産)比目標(2%以上)も念頭に、5年以内に防衛力の抜本的強化に必要な予算水準の達成を目指す」と公約に明記した。例年、防衛費の各国との比較は掲載しているが、今年は自民公約と連動するように、NATO加盟国がGDP比2%以上の国防支出の達成で合意していることを書き込んだ。さらに、「(国民)1人当たりの国防費」の主要国比較も新たに掲載した。日本の4万円に対し、米国21万円、中国2万円、ロシア9万円、韓国12万円、英国10万円などとなっており、増額に向けて国民の理解を求めたい意向が透ける。岸信夫防衛相は22日の記者会見で、こうした記載について「防衛費は国防の国家意思を示す大きな指標となる。国民のみなさまに防衛費の現状についてご理解を深めて頂けるように初めて記述した」と話した。日本を攻撃しようとする外国のミサイル基地などをたたく敵基地攻撃能力についても、「急速に変化・進化するミサイル技術への対応」と題した「解説」を新たに設けた。「迎撃能力を向上させるだけで本当に国民の命や暮らしを守り抜くことができるのかといった問題意識のもと、あらゆる選択肢を検討」していると説明。従来の国会答弁も紹介し、「『先制攻撃』を行うことは許されないとの考えに変更はない」と強調した。
■周辺国の情勢認識、表現強化
 防衛力強化の必要性の根拠となる周辺国の情勢認識については、年末の国家安全保障戦略などの改定で本格的に議論されるが、白書でも先行して表現を強めた。ロシアは前年の「注視」から「懸念を持って注視」と変えた。海洋進出や台湾への軍事的圧力を強める中国は「わが国を含む地域と国際社会の安全保障上の強い懸念」、核・ミサイル開発を進める北朝鮮は「わが国の安全に対する重大かつ差し迫った脅威」という表現を踏襲したものの、それぞれ「こうした傾向は近年より一層強まっている」という一文を加えた。特に中国については昨年よりも3ページ多い34ページを割いて詳報し、強い警戒感を示している。日本周辺での活動を「急速に拡大・活発化」させてきたことを踏まえ、「活動の定例化を企図しているのみならず質・量ともにさらなる活動の拡大・活発化を推進する可能性が高い」と懸念を示し、「強い関心を持って注視していく」必要性を訴えた。
■中国「強烈な不満」
 防衛白書について、中国外務省の汪文斌副報道局長は22日の定例会見で、「中国の脅威を誇張し、台湾問題で中国内政に干渉している」などとして「強烈な不満と断固とした反対」を表明。日本側に厳正な申し入れを行ったと明らかにした。汪氏は、白書が「反撃能力」について記述したことなどについて「日本がますます平和主義や専守防衛から遠ざかるのではないかと懸念されている」と訴えた。
■表紙はAIアート
 2022年版の防衛白書は、表紙にAI(人工知能)アートをあしらった。手がけたのは、テクノロジーアーティスト集団「ライゾマティクス」。防衛省として、先端技術を活用するとの意思を示したという。従来は艦艇や戦闘機などの写真を採用することが多かったが、昨年は人気の墨絵アーティストによる騎馬武者の墨絵を採用するなど、「イメージチェンジ」を図っている。今回は、AIに「ハイブリッド化した安全保障上の挑戦に革新的なアイデアと最先端技術で打ち勝つ」というコンセプトをキーワードとして入力。AIが生成した原画を加工した。ライゾマティクスに依頼したのは、省内に設置された「防衛白書事務室」。防衛省事務職員と陸海空の自衛官の計6人で構成する。約500ページに及ぶ防衛白書は、防衛省・自衛隊の任務や防衛政策の説明から世界の国々の軍事動向まで多岐にわたり、「海外の安保関係者も、新版が出るたびに分析している」(防衛省幹部)と言われている。一般の人にも手にとってもらうため、安全保障の専門家だけでなく、出版社や広告会社にも意見を求めた。

*2-2-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20220723&ng=DGKKZO62845750S2A720C2EA1000 (日経新聞社説 2022.7.23) 中ロ連携の深化に危機感示した防衛白書
ロシアのウクライナ侵攻は力による一方的な現状変更であり、アジアを含む国際秩序の根幹を揺るがしている。政府が22日に公表した2022年版の防衛白書はこんな危機意識を示し、防衛力を早急に強化すべきだと説いた。中国、ロシア、北朝鮮に囲まれた日本の安全保障環境は厳しさを増しており、白書が示した認識はおおむね妥当だろう。政府は年末の国家安保戦略の改定に向け、防衛費の増額などに関する議論に本格的に乗り出す。国民にその必要性を丁寧に説明し、有効な手立てを検討してもらいたい。岸信夫防衛相は巻頭で国際社会がいま「戦後最大の試練」を迎えていると言明した。ロシアのウクライナ侵攻はその一因だが、ロシアが東アジアでも軍事活動を活発にしているのは気がかりだ。白書がとりわけ注目したのはロシアと中国の軍事協力の深化で、「懸念を持って注視する」と記した。両軍の艦艇10隻は21年10月、日本列島をほぼ一周する異例の行動をみせた。今年5月には両軍の爆撃機が日本周辺を長距離にわたって共同飛行した。米国は中国との競争を重視する方針を掲げながらも、当面はウクライナ支援に力を割かざるを得ない。日本が果たすべき役割はその分、重みを増す。中ロが期せずして同じタイミングで挑発的な行動に出る可能性も排除できない。政府はそうした事態も念頭に、備えを怠ってはならない。先の参院選で自民党は防衛費の増額を訴えたが、使い道を具体的に明らかにしなかった。厳しい財政状況で増額が必要ならば、政府・与党は早期に道筋を示して国民の理解を得るよう努めるべきだ。白書は中国に関して昨年と同じ表現で「安全保障上の強い懸念」を示した。台湾との軍事バランスが中国有利に傾き、その差は広がっていると指摘した。台湾有事が日本と無縁ではないとの認識は浸透しつつある。日本経済新聞社の世論調査でも、現行法で、あるいは法改正をしてでも台湾有事に備えるべきだと9割以上の人が回答している。白書はミサイル発射を繰り返す北朝鮮を引き続き「重大かつ差し迫った脅威」と位置付けた。台湾、朝鮮半島いずれの有事への備えでも米国や友好国との共同軍事訓練の拡充は有効だ。現行法に抜け穴がないかも点検すべきだ。

<原発推進に固執した経産省と日経新聞>
*3-1-1:https://digital.asahi.com/articles/DA3S15407450.html (朝日新聞 2022年9月5日) 原発周辺での砲撃続く IAEA6人滞在中 ザポリージャ
 ロシア軍が占領するウクライナ中南部ザポリージャ原発とその周辺では、国際原子力機関(IAEA)の専門家が滞在する中、4日も砲撃が続いた。ロシア側とウクライナ側は互いに原発を狙って攻撃をしかけていると主張。3日には主要な外部電源との接続が途絶し、予備の送電網に頼る危うい状況が続いている。ロシア国防省は4日、ウクライナ軍が同原発を攻撃するため、ドローン8機を使用したと発表した。8機はいずれもロシア軍により撃退されたとしている。一方、ロシアの独立系の調査報道サイト「ザ・インサイダー」は、2日から3日の夜にかけてロシア軍の多連装ロケット砲が原発に隣接する場所から発射されているとする動画を、4日公表した。「ロシアは送電線を破壊してウクライナへの送電を止め、ロシアへの送電を狙っている」との見方を示している。現在、原発には6人のIAEA専門家が滞在。今週中にも2人が「常駐」する態勢に移行して原発の監視と支援を担う。IAEAのグロッシ事務局長は3日の声明で、「原発周辺の状況に強い懸念を抱いているが、我々がそこに滞在し続けることが最も重要だ」と述べ、可能な限り職員の常駐を続ける考えをあらためて示した。市民生活にも影響が出ている。ウクライナのメディアは4日、原発の地元エネルホダル市の市長の話として、人道支援物資を運ぶトラックが砲火で届かない状況が2日間続いていると伝えた。

*3-1-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20220911&ng=DGKKZO64235330R10C22A9MM8000 (日経新聞 2022.9.11) 北朝鮮弾道弾 「変則型」4割 新型の迎撃困難に、日米韓、抑止が急務
 北朝鮮がミサイル技術を高め、迎撃が難しくなってきた。2019年以降に発射した弾道弾を分析すると、迎撃が難しい変則軌道が少なくとも4割弱、兆候を読みにくい固体燃料が7割強を占めた。16~17年から一変した。核搭載できる様々な飛距離の新型を開発し、日米韓の隙を突く。「核は絶対的な力であり、朝鮮人民の大きな誇りだ」。金正恩(キム・ジョンウン)総書記は8日の演説でこう述べ、核・ミサイル開発への決意を強調した。最高人民会議は同日、核兵器の使用条件などを定めた法令を採択した。北朝鮮は22年前半だけで28発以上の弾道ミサイル(総合2面きょうのことば)を発射した。最多だった19年の年間25発を上回る水準だ。韓国政府系の研究機関は北朝鮮は1月以降の発射で最大870億円を費やしたと分析する。北朝鮮の推定国内総生産(GDP)の2%に相当する。制裁で厳しい経済状況の北朝鮮が開発を急ぐのはなぜか。発射するミサイルの変化を追うと狙いが浮かぶ。防衛省や韓国軍の発表をもとに分類し、16~17年の40発と19年以降の70発を比べた。変化が顕著なのが燃料だ。17年までは液体燃料型が大多数を占めていたのが直近は固体燃料型が主軸になった。「スカッド」や「ノドン」といった旧型に代わり、ロシアや米国が開発し配備するミサイルと類似した「KN23」や「KN24」が登場した。固体燃料は発射前の数日以内に注入する必要がある液体燃料と比べ、情報収集衛星などで発射の兆候を探知しにくい。一度充填すると保存できない液体燃料と異なり燃料付きで保管できる強みもある。日米韓に察知されずに奇襲しやすくなる。北朝鮮はトンネルに隠した鉄道貨車から撃つといった手法も試みた。弾道を巡る技術開発も進む。17年までは放物線状の通常軌道ばかりだった。19年以降は3分の1超が途中で向きを変える変則軌道の発射だと分析された。左右方向に向きを変える例も出てきた。日米韓の軍事拠点への打撃力確保を意図する。韓国軍が射程110キロメートルとみる新型弾は軍事境界線付近から韓国のソウルや米韓軍が基地を置く平沢(京畿道)に届く可能性がある。KN23は佐世保(長崎県)や岩国(山口県)の在日米軍基地を圏内におさめる。北朝鮮は開発の動きを止めない。金正恩氏は21年の朝鮮労働党大会で、5年間の方向性として「固体推進の大陸間弾道ミサイル(ICBM)」と「戦術核」などを示した。ICBMは米本土などを狙う長距離ミサイルだ。これまで北朝鮮のICBMは新型の「火星17」を含め液体燃料だった。固体燃料型を配備すれば素早く核ミサイルを撃てるため米国への脅威が高まる。もう一方の戦術核は開発が進む短距離弾への核弾頭の搭載を意味する。弾頭の小型化には高度な技術が必要になる。このため日米韓の専門家には北朝鮮が7回目の核実験に踏み切るとの観測がある。北朝鮮は核・ミサイルの技術を高めて優位に立とうとする。防衛大の倉田秀也教授は「在韓・在日米軍は核を持たない。戦術核で脅せば米軍に介入をちゅうちょさせ、戦争の初期段階で主導権を握れると考えている」と指摘する。日米韓の対応は遅れている。日本は年末までの国家安全保障戦略の改定で敵の軍事拠点への「反撃能力」の保有などを検討する。それでも発射時点で日本を狙うミサイルを特定するのは難しい。倉田氏は「米国を扇の要に日米韓で共同対処する体制構築が必要だ」と話す。米韓とともに北朝鮮に核・ミサイルの使用をためらわせる抑止策を立てることが急務になる。

*3-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20220911&ng=DGKKZO64235680R10C22A9EA2000 (日経新聞 2022.9.11) 原子力政策転換の行方(5)核のごみ 先送りの連鎖 EU、処分場とセットで議論 早期解決、原発活用へ必須
 原子力発電所の再稼働拡大の検討に着手した政府にとって、議論が欠かせないのが「バックエンド」と呼ばれる放射性廃棄物の処分のあり方だ。日本では原発などから出る様々な廃棄物の最終処分場が決まっていない。政府は原発の「最大限活用」を強調するが、核のごみ問題や、使用済み核燃料を再利用する核燃料サイクル政策は宙に浮いたままだ。2011年に事故を起こし、廃炉作業が進む東京電力福島第1原発。東電は8月25日、22年後半に取りかかる計画だった2号機の溶融燃料(デブリ)取り出しの時期について1年半程度延期すると明らかにした。デブリは1~3号機の内部に880トンある。処分先は決まっておらず、取り出し作業を順調に進められるのかも見通せない。東電は廃炉などに関連して福島第1で32年ごろまでに約78万立方メートルの廃棄物が出ると試算する。敷地内に一時的な保管施設を建設中だ。将来は最終処分場に移す考えだが、場所は未定のまま。東電は「国と東電、福島県などが協議して決める」と説明するが、議論は進んでいない。原発事故による放射性廃棄物は原発敷地外にもある。事故で飛散した放射性物質によって汚染された土壌やがれきだ。その量は約1400万立方メートルにもなると見込まれている。処理を担う環境省は福島第1周辺の1600ヘクタールの敷地を中間貯蔵施設にしている。45年までに福島県外に運ぶ約束だが、持ち出し場所は見えていない。商用原発からもがれきや使用済み制御棒といった放射性廃棄物が生じる。廃炉を決めた原発や検討中のものは福島第1を除いて18基ある。20年10月に北海道の寿都町などが文献調査に応募した最終処分場は、使用済み核燃料を再処理した際に生じる「ガラス固化体」を埋めるためのものだ。原発の解体時に出る放射性廃棄物などのほとんどは対象外で、電力会社は別に最終処分場を探さなければならない。海外では原発の活用拡大と処分場はセットで検討が進む。欧州連合(EU)は7月、環境面で持続可能な事業を定めた「EUタクソノミー」で原発をグリーンな事業と認定した。その要件として、原発から出る高レベル放射性廃棄物の処分施設の具体的な計画をつくることを求めた。日本は廃棄物の処分を進める主体が縦割りになっている課題がある。大学や研究施設から出る放射性廃棄物は文部科学省などが所管する。商用炉は電力会社、福島の中間貯蔵施設は環境省などと担当が分かれ、関係官庁が放射性廃棄物の処分で密に連携し、全体像を描こうとする様子はない。バックエンドにはサイクル政策の問題もある。使用済み核燃料を再利用するため加工する日本原燃の再処理施設は25年間も完成延期を繰り返す。総事業費は14兆円にも上るが、事業化のメドはたたない。再処理施設が稼働しないため、電力各社は使用済み核燃料を各原発の敷地内にため込む。関西電力は自社の原発が立地する福井県に対し23年までに搬出先の県外候補地を確定すると約束した。青森県むつ市の中間貯蔵施設の活用を探ったが同市の宮下宗一郎市長は核燃サイクルの行方が不透明なことを指摘する。「むつ市は核のゴミ捨て場ではない」と慎重な姿勢を崩さなかった。福島の廃炉などを巡る費用は数十兆円に上るとの試算もある。足元では資源高で電気代も高止まりする。原発の議論を先送りしてきた結果、多くの課題が残されたままになっている。とはいえ原発を止めたままでは日本のエネルギー安定供給は成り立たない。カーボンゼロとエネルギー供給を両立させるためには原発をどう稼働させていけるかを考える必要がある。

*3-3-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20220930&ng=DGKKZO64742970Z20C22A9TB1000 (日経新聞 2022.9.30) 三菱重工、改良型の新原子炉 4社と開発、2030年代実用化に道 政府の政策転換が契機
 三菱重工業は29日、安全性を高めた新型原子炉「革新軽水炉」を関西電力など電力会社4社と共同開発すると発表した。革新軽水炉は既存の原発技術を改良し、次世代原子力発電所の中では実用化に最も近いとされる。2030年半ばの実用化をめざす。日立製作所なども新型原子炉の開発に取り組む。各社が実用化を急ぐのは、政府の政策転換が契機だ。運転開始から30年以上たつ原発が過半を占める実情もある。三菱重工や関電、北海道電力、四国電力、九州電力の電力4社が実用化をめざす革新軽水炉は既存の加圧水型軽水炉(PWR)を基に改良する。出力は120万キロワット級。安全性を高める。自然災害や大型航空機の衝突などテロに対して対策を講じる。地下式構造で被害を受けにくくし、格納容器の外壁を強化し、破損の確率を既存炉の100分の1未満に減らす。東日本大震災の教訓を生かす。仮に炉心溶融が起きた場合でも溶け出した核燃料が外部に漏れないよう原子炉容器の下に備えた「コアキャッチャー」でためられるようにし、放射性物質を原子炉建屋内に封じ込める。炉心冷却のための電源も充実することで事故が起きても影響を発電所敷地内にとどめられるという。今回の新型原発は安全性の面で最も実用化に近いとされる。既存原発と基本構造が近く、既存軽水炉をもとに原発事故後に定められた新規制基準に対応する。他の次世代原発は規制の面が壁になる。例えば小型モジュール炉の場合はコンパクトな設計にするために既存軽水炉と異なる構造で、それに見合う規制が新たに必要になる。三菱重工などの背中を後押しするのが政府の方針転換だ。電力需給が逼迫するなか原発の新増設・建て替えを想定しない震災以降の方針を転換して次世代原発の開発・建設を検討する。ウクライナ危機を受けたエネルギーの安全保障問題も大きく響いている。政府の方針転換を踏まえ、産業界でも具体化に向けた動きが出始めた。三菱重工が既存の技術を基にした新型原発を開発を急ぐのは、残された時間は少ないという事情もある。稼働から30年以上経過する原発は運転可能なベースで国内にある33基の過半の17基になる。原子炉等規制法で定められた運転期間は原則40年間で、60年までの延長が認められているものの、40年以降は稼働原子炉が急減する見通しだ。新増設が具体的にどこまで進むかはまだ見えないが、政府内で想定される候補地の一つが関西電力美浜原発(福井県美浜町)だ。1、2号機は廃炉作業が進行中で、残る3号機も稼働から40年超がたった。関電も「新増設や建て替えがおのずと必要になる」との立場で、東日本大震災前には1号機の後継について自主調査も始めていた。原発の技術伝承が難しくなっているという側面もある。三菱重工にとり原発新設は09年に北電が運用を始めた「泊3号」以来。ただ建設を含めると20年近くのブランクがある。納入済みの24基(合計出力約2000万キロワット)ではほぼすべて主体となってEPC(設計・調達・建設)のノウハウを積んできたが、「なんとか踏みとどまれているが技術伝承は厳しくなっている」(三菱重工の泉沢清次社長)。供給網の維持にも課題がある。三菱重工によると原発供給網のうち原子力に特化した技術を持つ企業は約400社以上あるが、11年以降は厳しい経営状態が続き、事業撤退を決める会社が拡大傾向にある。川崎重工業は原子力事業を手がけ、日本初の商業用原発である日本原子力発電の東海発電所向けなどに蒸気発生器を提供した実績もあった。ただ11年の震災を機に人員が1割に減ったことも響き、2021年に撤退した。日立や東芝などが手掛ける沸騰水型軽水炉(BWR)を採り入れる電力会社の動きも注目される。東京電力ホールディングスの小早川智明社長は9月中旬の記者会見で、「まずは(休止中の)柏崎刈羽原子力発電所7号機の再稼働に向け安全最優先で諸課題に取り組む」と発言した。原発新設が進むかは自治体の了承もカギだ。原発は法律上、安全審査を通過すれば稼働できるとされているが、安全審査を通っても再稼働していない原発が現状7基ある。電力会社が各都道府県や立地自治体と安全協定を結び、自治体に「拒否権」があるからだ。岸田文雄首相は「国が前面に立ってあらゆる対応をとる」と話すが、事故リスクを抱える地元自治体とどう折り合いをつけるかが重い課題になる。

*3-3-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20220926&ng=DGKKZO64610670V20C22A9MM8000 (日経新聞 2022.9.26) 原発、国主導で再構築を 再生エネ7割目標に、エネルギー・環境、日経緊急提言 「移行期」の安定と脱炭素両立
 日本経済新聞社はエネルギーの安定供給と脱炭素の両立へ国が前面に立ち、あらゆる手段を動員する総力戦で臨むべきだとする緊急提言をまとめた。2050年の電源構成に占める再生可能エネルギーの比率7割を目指す。原子力発電所の活用の体制を国主導で再構築し、脱炭素への移行(トランジション)期間の安定供給や資金確保に万全を期す必要がある。世界はロシアによるウクライナ侵攻など、地政学リスクの増大に伴うエネルギーの供給不安と、地球温暖化との関係が指摘される異常気象の増加という「2つの危機」に直面している。提言は論説委員会と編集局が検討チームをつくり、専門家らと議論を重ねてまとめた。2つの危機への対処が国家の将来を左右するとの認識の下、12のテーマについて取るべき道筋を示した。エネルギー危機を克服し、脱炭素を着実に進めるためには、国の強いリーダーシップが不可欠だ。そのためにエネルギー・環境政策を統合的に立案・遂行する司令塔となる「総合エネルギー・環境戦略会議」(仮称)を首相直轄下に置くことを提案した。そのうえで温暖化ガスの排出ゼロを実現するまでの移行期間のエネルギー安全保障を確保しながら、脱炭素時代の最適なエネルギーの組み合わせ(エネルギーミックス、総合・経済面きょうのことば)を追求する必要がある。脱炭素時代の電源構成はコストや供給の安定性を考慮しながら、再生エネ比率7割の高みを目指すべきだ。残り3割は原発と温暖化ガスを排出しない「ゼロエミッション火力」で確保する。ただ、足元で再生エネの比率は約2割にとどまる。データセンターの増加などで電力需要は増えるとの試算もある。再生エネ比率6~7割は発電量を4~5倍に増やす計算となり簡単ではない。実現には太陽光や風力、地熱などあらゆる再生エネを伸ばす政策的な措置が必須となる。新築住宅への太陽光発電パネルの設置義務化や、洋上風力発電の入札対象区域の拡大などが求められる。原発は再生エネを補完する脱炭素電源である。しかし、東京電力福島第1原発の事故から11年が経過しても原発に対する不信感は払拭できていない。安全や透明性の確保を前提に活用すべきだ。原発事業は巨額の建設・運営費や事故時の損害賠償リスクを考えると、事業会社が全責任を負う現行の国策民営の仕組みには限界がある。推進に最適な形態の検討が欠かせない。再稼働に事実上、必要な地元の同意を得る交渉に国が前面に立つことなども提起した。新増設について政府がいつまでに何基が必要か、工程表を示すことも求めた。火力発電は段階的に減らして脱炭素化する。移行期間の設備の維持・更新についても必要な資金供給の枠組みを整えなければならない。温暖化ガスの排出量が多い石炭火力は新設せず、脱炭素化の時期を可能な限り前倒しする。燃焼させても温暖化ガスを出さない水素やアンモニアとの混焼や、二酸化炭素(CO2)の回収技術との組み合わせを義務付け、50年までに排出実質ゼロへ移行する。脱炭素を成長戦略に位置付けるには資金の役割がカギを握る。黒字化が見通しにくい高難度の技術研究などに国が投資し民間資金の呼び水となるマネーの循環をつくることがポイントになる。鉄鋼や化学など温暖化ガス排出の多い産業の脱炭素を促す資金供給も重要になる。移行期間の産業や技術の脱炭素化を促すには「移行金融」が大きな役割を果たす。日本が先頭に立ち、移行の定義や情報開示、効果検証の仕組みをつくり、アジア各国の金融・市場当局と連携すべきだ。原則全ての上場企業に気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)に基づく開示を促す。2000兆円に及ぶ個人金融資産の大半を占める預貯金の活用を促すため、移行金融を支える債券を少額投資非課税制度(NISA)の投資対象に加えることも提唱する。資金の循環には財源の確保が不可欠だ。「GX(グリーントランスフォーメーション)経済移行債(仮称)」の償還財源として活用するためにもCO2に値付けするカーボンプライシングの導入議論をまとめ、実行に移さなければならない。省エネルギーは既存の技術を使うことができ、費用対効果が高い対策である。大規模ビルだけでなく、中小ビルや住宅も省エネ基準を満たすよう義務化するなど、さらなる深掘りを求める。エネルギー・気候変動政策の国民理解を促すため、住民参加型の対話の場を設けることも促している。

*3-4:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/927133 (佐賀新聞 2022/10/3) <佐賀県民世論調査>玄海原発3、4号機の今後「目標時期決め停止」最多40% 「運転継続」は31%
 佐賀新聞社が実施した県民世論調査で、九州電力玄海原発3、4号機(東松浦郡玄海町)の今後について「目標時期を決めて停止」と回答した人が最多の40・3%だった。「即時停止」を求める4・6%と合わせると44・9%になり、「運転を継続」の31・0%を上回った。政府は電力の安定供給に向けて原発の新増設や運転期間の延長を検討する方針を打ち出しているが、原発立地県の県内では慎重な意見が根強いことがうかがえる。玄海原発の今後について地域別に見ると、「運転を継続」とした割合は玄海町が7割を超える一方、玄海原発から半径30キロ圏内(UPZ)に位置する唐津市と伊万里市ではいずれも2割台だった。支持政党別では、自民党支持層は継続と停止が4割ずつと拮抗きっこう。立憲民主党や社民党、共産党などの支持層と支持政党がない人は、停止を求める意見が継続を上回った。「継続」の回答者からは「電力不足が懸念される現状では、安全面を考慮しながら運転を継続すべき」のほか、「日本はただでさえ資源がなく、原発は増やすべき」と電力の需給逼迫ひっぱくへの不安などを背景に増設を求める声もあった。「停止」の回答者からは「もし玄海原発で福島の様なことが起これば、家にも故郷にも住めなくなる」「地震大国の日本にはリスクが大きすぎる」など、東京電力福島第1原発事故を踏まえ、安全性に疑問を呈す意見が相次いだ。今後の原発依存度については「下げるべき」が31・5%と最多で、「ゼロにすべき」の14・7%を合わせると脱原発の意見が46・2%となり、「高めるべき」の9・1%、「現状維持」の27・1%を合わせた36・2%を10ポイント上回った。山口祥義知事は9月の県議会一般質問で「佐賀県においては、原子力発電はその依存度を可能な限り低減し、再生可能エネルギーを中心とした社会の実現を目指すべき、との考えに変わりはない」と答弁している。

<日本経済の現状と再エネ投資>
*4-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20220916&ng=DGKKZO64378870V10C22A9EP0000 (日経新聞 2022.9.16) 貿易赤字最大、輸出増鈍く、8月2.8兆円、資源高打撃 産業構造変化で円安の恩恵薄れる
 8月の貿易収支は過去最大の赤字となった。1~8月の通算は12.2兆円の赤字で、通年でも2014年の12.8兆円を上回って過去最大を更新する可能性がある。円安と資源高が重なり輸入額が大幅に増えた一方、円安の輸出押し上げ効果は限定的で輸出は伸び悩んでいる。新型コロナウイルス禍からの回復基調に乗り遅れたまま、先行きには不透明感も漂う。8月の貿易統計速報によると、輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支は2兆8173億円の赤字となった。比較可能な1979年以降、単月として過去最高となった。輸出額は前年同月比22.1%増の8兆619億円、輸入額は49.9%増の10兆8792億円だった。原粗油の輸入通関単価は円建てで87.5%上昇し、輸入額全体を押し上げた。8月の為替レートは1ドル=135円08銭と前年同月に比べ22.9%の円安・ドル高だった。内閣府が15日試算した輸出入数量指数の季節調整値をもとに足元の貿易の動きをみると、輸出は前月比3.2%低下と落ち込んだ。米国向けは13.0%上昇と好調だったが、欧州連合(EU)向けが15.5%低下し、アジア向けも7.4%落ち込んだ。急激なインフレなどで欧州の景気に陰りが出ている上、ゼロコロナ政策を掲げる中国の一部都市で厳しい行動制限がなされている影響が出ているとみられる。コロナ禍からの回復で、日本の輸出は出遅れ感がある。オランダ経済政策分析局がまとめる世界の貿易量は今年6月時点でコロナ前の19年平均を9.5%上回るまで回復している。日本の輸出は今年8月になっても19年平均を3.8%下回る。サプライチェーン(供給網)の途絶で自動車生産が滞るなどの要因が重なり、海外経済が回復する流れを外需経由でうまく取り込めていない。為替レートが円安に振れても輸出が伸び悩む背景の一つに国内製造業の生産基盤が弱体化したことも大きい。経済産業省の製造工業生産能力指数(15年=100)は7月時点で95.2とコロナ前(19年平均)を3.0%下回る。国内製造業の生産能力はリーマン・ショック以降、設備投資の手控えや海外移転などで縮小が続いており、能力指数は1984年ごろの水準まで落ち込んだ。円安による単純な輸出拡大効果を狙える産業構造ではなくなりつつある。「円安は企業収益の拡大などで経済全体には最終的にプラス効果がある」とニッセイ基礎研究所の斎藤太郎氏は指摘する。財務省・内閣府がまとめた7~9月期の法人企業景気予測調査では、急激な資源高にもかかわらず企業全体の今年度の経常利益は0.9%増とプラスの見通しだ。今後は企業の稼ぎがどこまで経済全体に循環するかが重要となってくる。米欧各国が利上げにかじを切る中、海外経済の先行きは不安感が強い。中国もゼロコロナ政策を維持する見通しで、アジア全体の供給網も途絶リスクが継続する。SMBC日興証券の宮前耕也氏は「貿易赤字の局面は長引くだろう。22年や22年度は過去最大の赤字額となる可能性が高い」とみる。政府ではインバウンド本格再開に向け水際規制を大幅緩和する検討も進む。貿易統計にはあらわれないサービス関連の国際収支がどう動くかも焦点となる。

*4-2-1:https://digital.asahi.com/articles/DA3S15433880.html (朝日新聞 2022年10月3日) 太陽光パネル義務化案 戸建ても対象、情報発信丁寧に ネットワーク報道本部・笠原真
 新築建物に太陽光パネルの設置を義務づける制度づくりに東京都が動いている。戸建て住宅まで含む仕組みは全国初だ。年末の都議会に条例改正案を提出し、成立すれば2025年4月から始める。義務は、戸建て住宅の場合、建築主ではなく大手住宅メーカーが負う。各社に発電量のノルマが課され、それをクリアするだけの太陽光パネルを販売物件に設置する。メーカーを対象にすることで、太陽光パネルを含め省エネ住宅の普及が進むと都は期待し、都内の太陽光発電導入量を61万キロワット(19年度)から200万キロワット(30年度)に増やせると見込む。都が5月に意見を公募したところ、約3700件が集まり、賛成56%、反対41%だった。設置費は一般的な戸建てで約100万円だ。都は「初期費用は売電や節電を通じ10年で回収可能」などと強調する。だが都内の住宅価格は上昇が続く。「さらに負担が増せば住宅購入を諦める人が出る」(大手住宅メーカー担当者)という心配の声はある。都は、初期費用をゼロにするリース事業者や住宅購入者に対し、何らかの支援をする方針だ。義務の対象となる建物は最大で年約2万5千棟。耐用年数が20~30年とされるパネルの大量廃棄時期を見据え、都はリサイクルの課題を検討する協議会も先月設立した。実は、新築建物へのパネル義務化は京都府や群馬県で先行例があるが、戸建て住宅は対象外だ。国も昨年「30年までに新築住宅の6割にパネル設置」という目標を定めたが、地域ごとに日照量が異なる事情もあり、全国的な義務化には踏み込まなかった。
■東京都の取り組みに熱視線
 国全体と比べれば都内は地域差が小さいうえ、都の制度案は、メーカーが立地条件を考慮し、パネル設置に適した住宅を柔軟に選べる仕組みになっている。空き地の少ない都内で太陽光パネルの普及を進めるには屋根の有効活用が現実的だ。東京都は全国最大の電力消費地。「30年までに温室効果ガス排出量を00年比で半減させる」という、国より高い目標を設定しているが、20年度時点の削減率は3・7%にとどまる(速報値)。運輸部門で二酸化炭素排出量が50・7%減った一方、住宅など家庭部門では逆に32・9%も増えており、現状への危機感は強い。前真之・東京大准教授(建築環境工学)は「東京都ほど環境政策の立案能力がある自治体は他にない。全国に広まるかは都の取り組み次第」と言う。同様の義務化方針を9月に表明した川崎市の担当者は「都が住宅メーカーの理解を得られれば我々も追従しやすい」と熱い視線を送る。意見公募では「台風に耐えられるのか」といった声が寄せられた。適地が想定通りに確保できるのかという疑問も専門家から上がる。家計、景観、環境、防災、電源構成。生活に身近な論点が多岐にわたる。都は、都民や事業者の理解が得られるよう制度の作り込みと丁寧な情報発信に努める必要がある。

*4-2-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20220926&ng=DGKKZO64596570U2A920C2M12400 (日経新聞 2022.9.26) 再生可能エネルギー 導入拡大へあらゆる適地を掘り起こす
 再生エネは脱炭素時代の主力電源である。これを最大限伸ばす必要がある。国は第6次エネルギー基本計画の策定作業において、2050年の電源構成に占める再生エネを5~6割とする参考数値を示した。これに甘んじることなく、6割を超え、7割の高みを目指すべきだ。12年度に始まった固定価格買い取り制度(FIT)の後押しもあり、20年度の電源に占める再生エネ比率は11年度比で2倍近い19.8%に増えた。ただし、50年時点の電力需要は電力を大量に消費するデータセンターの増加など情報化の進展や電動車の普及などにより足元の1.3~1.5倍に増えるとの試算もある。再生エネ比率6~7割の達成には発電量ベースで20年度実績の4~5倍の再生エネ導入が必要となる。しかし、拡大をけん引してきた太陽光発電は足元で、単年度の導入量は減少傾向にある。発電コストも21年には14年比で4分の1の水準まで低下したが、ここ数年は下げ止まり、むしろ上昇している。再生エネ7割はこれまでの方策の延長線上では実現が難しい。社会経済構造の転換を大胆に進めつつ、利用が遅れている太陽光発電の適地を掘り起こし、風力発電や地熱発電などあらゆる再生エネを伸ばす政策的措置が必要となる。導入適地を最大限活用するとともに、需要家側のさらなる省エネの取り組みや技術革新と組み合わせて再生エネ比率7割に近づける。
●新築住宅への太陽光発電パネルの設置義務化を
 まず、住宅だ。科学技術振興機構によれば、住宅屋根は全国で9900平方キロメートル分の利用可能面積がある。新築住宅への太陽光パネルの設置を原則、義務化してはどうか。50年までに住宅屋根の30~50%に置き、8000万~1億3000万キロワットの出力を確保する。太陽光発電システムの設置には1戸あたり100万~200万円の費用がかかる。政府・自治体による導入補助や減税措置などの支援策が欠かせない。制度づくりにあたっては地域や立地条件の違いも考慮する必要がある。政府は30年までに国・地方公共団体が保有する設置可能な建物や土地の半分に太陽光パネルを導入し、40年に100%とすると定めている。現状は進んでいる自治体でも20%程度とされ、この徹底と導入の加速を求める。工場や倉庫、工業団地、商業施設の屋根・土地についても、太陽光パネルの設置可能面積は7600平方キロメートルと、住宅に迫る規模がある。この積極活用を促し、4500万~5000万キロワットの出力を確保する。全国に28万ヘクタール存在する荒廃農地も活用すべきだ。荒廃農地のなかでも、農地として再生利用が困難とされる19万ヘクタールの土地について農地の認定を解除したうえで太陽光発電の設置場所にも使えるようにする。農地に支柱を立てて太陽光パネルを置き、農作物栽培を続けながら上部空間で発電する営農型は農業経営の改善にもつながる。農地利用の拡大へ転用許可などの規制緩和を徹底し、農地活用で1億8000万~2億キロワットの出力を確保する。
●洋上風力発電は入札対象区域の拡大を
 海に囲まれた日本において洋上風力発電は大きなポテンシャルがある。この活用を促すために、海外の風力発電プロジェクトに比べると小規模にとどまる、1件あたりの入札対象海域を拡大する。地元調整や送電線確保などに国が初期段階から関与する「日本版セントラル方式」を最大限活用する。国の洋上風力産業ビジョンは40年までに3000万~4500万キロワットの洋上風力の導入計画を掲げる。この最大値である4500万キロワットの目標を達成したうえで、入札対象区域の拡大などにより50年までに導入規模を上積みする。4000万キロワット超の陸上風力とあわせ、風力全体で出力1億キロワット規模の導入を目指す。再生エネの導入拡大には時間や天候によって出力が変動する場合の供給安定策が欠かせない。日射や風の予測と発電量予測を高精度化し、需給調整に役立てる。再生エネの適地が多い地域と大消費地を結ぶ基幹送電線の整備を急ぐ。北海道と東北・本州をつなぐ海底直流送電線や東日本と西日本をつなぐ周波数変換所の増強を優先し、完成の前倒しを検討する。
●地熱発電の完成までの時間短縮へ
 地熱発電は安定出力が見込める再生エネである。日本は米国、インドネシアに次ぐ世界3位の資源量がありながら、導入量はトルコやケニアを下回る10位にとどまる。国は30年度の導入目標を150万キロワットとしFIT支援の対象に位置付けながら、FIT導入後の稼働は10万キロワット程度にとどまる。地熱発電は完成までに10年単位の時間がかかる。この短縮に取り組まねばならない。地熱資源の調査や開発など初期段階から国と企業が緊密に連携し、案件組成を迅速化する。現状で3~4年かかる環境アセスメントを2年程度に半減するために、行政手続きの効率化を追求する。地熱に加え、水力やバイオマス発電などをあわせて6500万キロワット程度の出力を目指す。
●蓄電池の開発・産業化を国の重点に
 蓄電池は再生エネの出力変動の調整に大きな役割が期待されている。家庭、業務・産業、電力ネットワークの各場面で蓄電池導入を促進すべきだ。30年度時点で家庭用の導入コストは工事費含め20年度比4割に、業務用は4分の1へコストを下げる必要がある。政府は電池産業の育成を重点分野に位置付け、電池の大容量化やコスト低減に取り組まねばならない。イノベーションはエネルギー転換の成否を左右し、脱炭素時代の国家や企業の力を分ける。この認識の下、総額150兆円のGX(グリーントランスフォーメーション)資金を長期的視野に立って効果的に投じる必要がある。折り曲げることができる「ペロブスカイト型」太陽電池や、浮体式洋上風力発電など、脱炭素技術の開発と早期実装へ産官学が連携し、産業化を国が支援する。
●エネルギーの地産地消へスマートシティ拡大を
 大型発電所から発電した電気を送電線で遠隔地の大消費地に送る「大規模集中発電」から、再生エネや蓄電池、電気自動車(EV)などを組み合わせて、発電した場所で電気を消費する「分散型」の電力システムへの移行は、災害などへの耐久力を高め、安定供給にも寄与する。政府の国家戦略特区を活用した「スーパーシティ」や、民間が主導するスマートシティなど、地域単位での地産地消モデルの拡大を後押しする。
●透明性の確保へ、事業者に地域との対話を義務付け
 再生エネ事業を規制する自治体条例が増加している。20年度時点で130を超す自治体が規制を導入し、岡山県や兵庫県のように県全体で導入する例もある。再生エネと地域の共生へ、事業者に住民との対話を義務付け、透明性ある形で工事や運営について説明する必要がある。

*4-3:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20220916&ng=DGKKZO64380790W2A910C2EA1000 (日経新聞社説 2022.9.16) 脱炭素への移行に資金の好循環確立を
 脱炭素社会を実現するためには、クリーンエネルギーを使った発電を増やすだけでなく、製鉄など二酸化炭素(CO2)を多く出す産業の排出抑制がどうしても必要だ。多額の資金も投じなければならない。国や企業、個人のお金を脱炭素社会への移行に回す仕組みを整えたい。政府の見通しでは、2050年に温暖化ガス排出実質ゼロを目指すうえで、今後10年間で官民あわせて150兆円の投資が必要となる。再生可能エネルギーの普及や蓄電池の開発などを成長戦略と位置づけ、有効なお金の使い方を検討する必要がある。採算が不透明で民間が負いにくい投資のリスクは、まずは国が引き受け、民間資金の呼び水としての役割を果たすべきだ。新たな国債の発行も選択肢のひとつとなる。償還財源を確保するためにも、CO2に値付けするカーボンプライシングの議論に早く結論を出し、実行してほしい。国が先導するとはいえ、技術の評価や商用化は、民間に委ねたほうが効率的に進む。150兆円の多くの部分は、企業や個人のお金で賄う必要がある。手元に300兆円の現金・預金を持つ日本企業は、かねて株主から投資を増やすよう求められてきた。今こそ経営者は脱炭素戦略を具体的に示し、実行への手立てを株主と協議すべきだ。企業が排出抑制を進めるには、機動的な資金調達も必要だ。銀行は融資に機動的に応じる体制を整えるべきだ。資産運用会社も、企業が脱炭素に必要な資金を調達するための債券を投資対象として検討してほしい。2000兆円の個人金融資産も、脱炭素を後押しする力となりうる。岸田文雄首相は、少額投資非課税制度(NISA)の拡充に取り組む方針だ。目先の議論の中心は制度の簡素化や株式投資枠の拡大だが、脱炭素移行を目的とするさまざまな債券を対象に加えることも、一案ではないか。こうした「移行金融」を根づかせるために、銀行や運用会社が脱炭素技術を評価するための専門性を高めることが欠かせない。個人も含め、地球温暖化の深刻さを改めて認識すべきだ。日本が「移行金融」の取り組みを強めれば、国際的な注目が増し、外からの投資も呼び込める。それを技術開発に生かすなど資金の好循環を確立したい。

<日本が生活系の政策を軽視するのは何故か>
*5-1:https://www.chugoku-np.co.jp/articles/-/158451 (中國新聞社説 2022/4/23) 年金引き下げ 抜本的見直し議論せよ
 人生100年時代を支える制度と言うにはあまりに心もとない。今月から0・4%引き下げられた公的年金のことである。引き下げは2年連続。賃上げが抑えられていることが理由である。保険料を40年間、満額納めた人が受け取れる国民年金の月額は、前年度比で259円減って6万4816円となる。コロナ禍のご時世だ。「このくらい我慢せねば」と思うお年寄りもいるかもしれない。だがロシアのウクライナ侵攻などによる原油高に、20年ぶりの円安が重なって物価は上がっている。今後も続く可能性がある。物価高の一方で減額が続けば暮らしはさらに傷む。納得できない人も増えてこよう。年金は老後の生活を支える「財布」である。政府はほころびを改め、年金増額につながる経済対策にも取り組まなくてはならない。年金制度は現役世代が保険料を納めて高齢者を支える「賦課方式(仕送り方式)」で維持されている。現役世代が減る中、負担をこれ以上増やせない事情も分かる。しかし「原資がない」だけでは問題は何も解決しない。特に気になるのは物価が急に上がる、現在のような局面である。年金の増減を決めるのは、物価ではなく賃金の変動率にならうのが現行ルールだからだ。企業が今の原材料高を乗り越えて賃上げ増を実現できるならいい。しかし賃上げできなければ、物価は上がっているのに年金は減額される事態が恒常化されかねない。安倍政権下の経済政策で株価は上昇したが、企業は利益をため込むだけで賃金上昇につながらなかったことを忘れてはなるまい。賃上げが進まず、年金の目減りが続けば、しわ寄せは現役世代にも及ぶ。年金に対する信頼が低下すれば、制度そのものが崩壊の危機に見舞われる。にもかかわらず岸田政権の経済対策はばらまきが目立つ。ご破算になった、年金生活者への5千円給付がその最たる例だろう。その場しのぎでは、日本経済の再生どころか満足な賃上げすら難しいのではないか。2022年度の年金制度見直しの柱はシニア労働者の拡大である。平均寿命が延びる時代にはうなずける点も多い。だが高齢者に長く働いてもらうことで保険料を多く納めさせ、行き詰まった年金財政を立て直そうというのならば都合が良すぎる。物価が上がればそれに伴って年金額も増え、下がれば減るという制度ならば納得もいこう。しかし現実の仕組みはそうはなっていない。加えて、現役世代人口の減少や平均寿命の延びに応じて年金額を抑える「マクロ経済スライド」の導入で、30年後の受取額は今より2割も目減りするのが現実なのだ。国民年金だけでは今でも厳しいのに、10月からは一定以上の所得がある75歳以上の医療費窓口負担も1割から2割に引き上げられる。介護保険料を払えず、年金の差し押さえを受けた人も全国で2万人を超えている。年金額を抑えて制度を維持しても、国民生活が破綻してしまっては意味がないだろう。年金制度を信頼に足る仕組みに改めるべきだ。今夏には参院選も控えている。各党は抜本的な年金見直し案を公約に掲げ、議論を戦わせてもらいたい。

*5-2:https://news.yahoo.co.jp/articles/44ebb91592db58d85b172cd79ce68677ebcedece (Yahoo、毎日新聞 2022/9/22) 日銀、金融緩和策維持を決定 持続的物価高に至らずと判断
 日銀は22日に開いた金融政策決定会合で、大規模な金融緩和策を維持することを決めた。政策目標に掲げる2%の物価上昇率は、4月から5カ月連続で達成しているものの、資源高や円安による輸入物価の上昇による影響が大きく、賃金上昇を伴う持続的な物価上昇には至っていないと判断した。超低金利政策による景気の下支えを優先する。21日には米連邦準備制度理事会(FRB)が0・75%の大幅利上げを決定。市場では運用に有利な金利の高いドルを買って円を売る動きが定着し、為替相場は円安傾向が続いている。日米の金利差がさらに広がったことで、円安が一段と加速する可能性がある。

*5-3-1:https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA034A10T01C22A0000000/ (日経新聞 2022年10月5日) 健保組合、21年度は半数超赤字 高齢者医療へ拠出金重く
 全国に約1400ある健康保険組合の半数超で、2021年度は保険料収入から医療費などの給付を差し引いた収支が赤字だったことが明らかになった。前年度の33%から急増した。医療費の増加に加え、65歳以上の高齢者医療への拠出金が膨らみ、大企業の組合でも赤字が相次ぐ。赤字が続けば保険料率を上げざるを得ず、給付と負担の見直しが急務になる。健保組合は従業員と勤務先が毎月払う健康保険料をもとに、医療費の支払いなどの保険給付、健康診断などの保健事業を担っている。主に大企業の従業員と家族ら約2900万人が加入する。6日に公表予定の1388組合の決算見込みによると、21年度は全体の53%にあたる740組合が赤字となった。20年度の33%から大きく上がった。全組合の収支を合計すると825億円の赤字で、約3千億円の黒字だった前年度から大幅に悪化した。合計が赤字になったのは8年ぶりだ。赤字要因の一つに、現役世代が入る健保組合から65歳以上の高齢者医療への拠出金がある。収入が乏しい高齢者を支えるためだが、75歳以上の後期高齢者の増加とともに医療費が伸び、拠出金が膨らむ。21年度は保険料収入が前年度比1%増の約8.2兆円だったのに対し、拠出金は約3.6兆円と3%増えた。現役が払う保険料の4割が高齢者に「仕送り」されている形だ。拠出金は後期高齢者医療制度ができた08年度に比べると、1兆円以上増えた。健康保険組合連合会は25年度には約4兆円になると試算する。比較的余裕がある大企業の組合でも赤字が相次いでいる。日本生命保険の健保組合は21年度に20億円を超える赤字だった。赤字は14年度以来で、過去最も大きい。当面は保有資産を取り崩して対応するが、保険料率の引き上げも検討する。新型コロナウイルス禍で20年度に受診控えが起き、21年度は反動で医療費が増えた面もある。日立製作所の健保組合は受診が急増し、21年度の収支が赤字になった。トヨタ自動車も赤字だった。健保組合は独立採算で、赤字が続けば保険料率を上げざるを得ない。21年度は決算ベースで3割弱の組合が料率を上げた。労使折半する保険料率は21年度の平均で収入の9.23%と過去最高の水準にある。被保険者1人当たりの保険料は年49.9万円で、08年度比では約11万円増えた。料率は中小企業の従業員が加入する全国健康保険協会(協会けんぽ)の10%前後に近づく。健保組合の支出につながる医療費は伸びが続く。厚生労働省が9月に公表した21年度の概算の医療費は44.2兆円で、前年度から4.6%増えた。健保組合全体の保険給付費は8.7%増の4.2兆円だった。社会保険料は現役世代の大きな負担だ。健保組合に加入する会社員の場合、介護保険の平均料率である1.77%と、厚生年金の18.3%を加えると29.3%になり、収入の3割近くに当たる額が公的な保険料に回る。現状の医療は給付が高齢者に、負担は現役世代に偏っている。10月からは一定の所得がある後期高齢者の窓口負担が2割に上がったが、現役世代の保険料などを抑制する効果は25年度で830億円にとどまる。政府は「全世代型社会保障」の実現を掲げ、負担と給付の見直しに向けた議論を始めた。年末までに結論を出す。後期高齢者の保険料引き上げなどを検討するが、高齢者の反発も予想される。給付を抑える仕組みも議論する必要がある。

*5-3-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20221006&ng=DGKKZO64919470V01C22A0EP0000 (日経新聞 2022.10.6) 社会保険負担、格差見直し急務 健保組合の半数超が赤字 現役世代、保険料膨張続く
 社会保険の負担が会社員などの収入を圧迫している。人口の高齢化が進んで医療費が膨らみ、健康保険組合による保険料の引き上げが相次ぐ。今の社会保障制度は恩恵が高齢者に偏る。政府が掲げる「全世代型社会保障」の実現には、高齢者にも一定の負担を求め、医療費などの給付を抑える改革が欠かせない。会社員らの現役世代による社会保険の負担は膨らみ続けている。健康保険組合の加入者が労使折半で負担する保険料は2021年度に1人あたり年49.9万円と、08年度比で約11万円増えた。40歳になると介護保険の保険料も払う。健康保険の料率に介護保険の平均料率である1.77%と、厚生年金の18.3%を加えると29.3%になる。収入の3割近くに当たる額が公的な保険料に回っている。背景には国全体で見た医療費の伸びがある。厚生労働省が9月に公表した21年度の概算の医療費は44.2兆円で、前年度から4.6%増えた。健保組合全体の保険給付費は4.2兆円と、8.7%増えた。健保組合の加入者は現役世代だが、その中でも平均年齢が少しずつ上がり、必要な医療費が増えている。高額な薬剤や治療法の登場といった医療の高度化も医療費の増加につながり、保険料が上がる要因になる。給付費の元手となる保険料は大きな伸びが見込めない。現役世代の人口が減っているうえに、収入も伸び悩んでいるためだ。保険料算定の基準となる標準報酬月額は21年度の平均で約37.7万円と、前年度比0.3%増にとどまる。医療費や高齢者医療への拠出金の伸びに見合うだけの保険料が入らないと、健保組合は料率を上げざるを得ない。平均料率はすでに9.23%と、中小企業の従業員が加入する全国健康保険協会(協会けんぽ)の10%前後に近い。健保組合が赤字に耐えられず解散すれば、加入者は協会けんぽに移る。協会には1兆円規模の国費が投入されており、加入者が増えると国費負担も増す。将来世代に負担のつけ回しが起きる。負担の世代間格差の是正は急務だ。10月からは一定の所得がある後期高齢者の窓口負担が2割に上がった。ただ、現役世代の保険料などを抑制する効果は25年度で830億円にとどまる。政府は全世代型社会保障の実現に向けた議論を始めており、年末までに結論を出す。後期高齢者の保険料引き上げなど反発が予想される大胆な改革案にも踏み込む必要がある。

*5-3-3:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20221003&ng=DGKKZO64814460T01C22A0PE8000 (日経新聞社説 2022.10.3) 高齢者医療の改革を続けよ
 75歳以上の高齢者が支払う医療費の窓口負担割合が10月から一部変更になり、一定以上の所得がある約370万人が1割負担から2割負担に引き上げられた。年金収入とその他所得の合計が単身世帯で年200万円、複数なら320万円以上あると対象になる。食料品などの物価上昇が広がるなかで負担増を求めることになるが、2025年9月末までの3年間は毎月の負担増を最大で3000円に抑える配慮措置が実施される。政府や自治体はこうした措置も対象者に丁寧に説明し、負担増への協力を求めてほしい。今回の負担増は高齢者の医療を支える現役世代の負担を軽くするのが狙いだ。75歳以上の医療費は患者負担を除いた費用の5割を税金、4割を医療保険を通じて現役世代が支払う支援金、1割を高齢者の保険料で賄う。高齢者の増加で医療費が膨らむと、現役世代の負担が重くなっていく。ただ今回の改革で現役世代の重荷を軽くする効果は限定的だ。支援金の総額は21年度の6.8兆円が25年度に8.1兆円に増える見通しだが、この伸びを抑える効果は25年度時点で830億円しかない。大企業会社員の場合、労使折半後の現役1人あたりの保険料軽減効果は月にわずか33円だ。効果が小さいのは負担増の範囲が小幅だからだ。今回の対象者は75歳以上の約20%。現役並み所得があって3割負担がすでに適用されている人は約7%なので、今後も約73%は1割負担が続く。さらに1カ月あたりの医療費負担の上限額は見直しの対象外だ。2割負担の対象者でも外来受診のみの場合で1万8000円、入院があっても世帯で5万7600円と、これまでと変わらない。2割負担の対象者を広げるとともに、所得だけでなく資産に着目して能力に応じた負担を求める改革が急務だ。薬や検査の重複を減らす仕組みづくりなど医療の効率化も欠かせない。現役世代の負担を抑える改革をこれで打ち止めにしてはならない。
にしてはならない。

<リーダーの多様性のなさによって歪んだ政策>
*6-1:https://www.huffingtonpost.jp/entry/story_jp_61c2aaebe4b0bb04a62b19cd (Huffingtonpost 2022年7月13日) ジェンダーギャップ指数2022、日本は116位。政治・経済分野の格差大きく、今回もG7最下位、世界経済フォーラム(WEF)が国別に男女格差を数値化した指数。日本は調査対象となった世界146カ国のうち116位だった
 世界経済フォーラム(WEF)は7月13日、男女格差の大きさを国別に測って比較する「ジェンダーギャップ指数2022」を発表した。日本は調査対象となった世界146カ国のうち116位だった。156カ国のうち120位だった前年からわずかに順位をあげたが、主要7カ国(G7)では引き続き最下位となった。特に衆院議員の女性割合の少なさなど政治参加分野の格差は引き続き大きかった。また経済分野については前回(117位)より順位を下げた。
●経済、政治の格差大きく
 WEFは世界の政財界のリーダーが集う「ダボス会議」を主催する国際機関。ジェンダーギャップ指数は、「経済」「教育」「医療へのアクセス」「政治参加」の4分野のデータで、各国の男女格差を分析した指数。4分野の点数は、いくつかの小項目ごとの点数で決まる。小項目を集計する際は、標準偏差の偏りを考慮したウェイトをかけている。 ただし、4分野の点数から算出される総合点は、4分野の平均になっている。スコアは1を男女平等、0を完全不平等とした場合の数値で、数値が大きいほど男女格差の解消について高い評価となる。日本は今年も経済(121位)と政治(139位)で格差が大きく、順位が低かった。一方で教育(1位)や医療(63位)では、格差はない、もしくはほとんどないと評価されている。
■政治分野
 「政治参加」については、以下の3つの小項目で評価される。
・国会議員(衆院議員)の女性割合(133位、スコア0.107)
・女性閣僚の比率(120位、0.111)
・過去50年の女性首相の在任期間(78位、0)
2018年に成立した「政治分野における男女共同参画推進法」では、男女の候補者ができる限り均等となることを掲げ、各政党に男女の候補者数について目標を定めるよう努力義務を課している。しかし、この法律が成立して初めて迎えた2021年の衆院選では、当選者に占める女性の割合はわずか9.7%にとどまり、前回(2017年)を下回った。政府は、2025年までに国政選挙の候補者に占める女性の割合を35%にする目標を掲げているが、衆院選でこの目標を達成したのは共産と社民のみだった。なお、衆院議員の女性割合で評価されるジェンダーギャップ指数には関連しないが、今回の参院選(7月10日投開票)では181人の女性候補が立候補し、35人が当選した。候補者全体の割合で見ると33%、当選者全体で見ると28%となりいずれも過去最多に。一方で政党別で見ると差があり、候補者について「2025年までに35%」という政府目標を達成したのは立憲、国民、共産、れいわ、社民の5党にとどまった。
■経済分野
「経済的機会」分野は、以下5つの小項目で評価される。
・労働参加率(83位、スコア0.750)
・同一労働での男女賃金格差(76位、0.642)
・収入での男女格差(100位、0.566)
・管理職ポジションに就いている数の男女差(130位、0.152)
・専門職や技術職の数の男女差(-)*スコア、順位の記載なし
 経済分野については、前回(117位)より順位を下げた。労働参加率や管理職ポジションに就いている数の男女差のスコアが下がったことが背景にある。経済的な権利についての男女格差をめぐっては、世界銀行が世界190カ国・地域の職場や賃金、年金など8つの分野で男女格差を分析した調査もある。3月に発表された最新の調査で、日本は前回の80位タイから103位タイに大きく順位を下げた。移動の自由や年金制度では格差がないとして満点の評価だったが、職場の待遇や賃金などで低い評価となった。一方、男女の賃金格差の是正に向けては、具体的な政策も動き出している。厚生労働省は7月8日、従業員が301人以上の企業に対し、男女間の賃金格差の開示を義務付ける「女性活躍推進法」の省令改正を施行した。岸田文雄首相は1月の施政方針演説で「世帯所得の向上を考えるとき、男女の賃金格差も大きなテーマ。この問題の是正に向け、企業の開示ルールを見直します」と言及していた。格差を可視化し、是正に向けた取り組みを促すことが狙いだ。
●1位はアイスランド、世界の傾向は
 今回のジェンダーギャップ指数2022で1位となったのはアイスランドで、13年連続で「世界で最もジェンダー平等が進んでいる」と評価された。2位以降はフィンランド、ノルウェー、ニュージーランド、スウェーデンが続いた。上位5カ国の顔ぶれは前回と同じだった。世界全体の傾向についてWEFは、新型コロナウイルスの感染拡大後、ジェンダー格差が広がったが、それを縮小する動きは力強さに欠いていると指摘。労働力の中で格差が広がっており、「生活費の危機的な高騰が女性に強い打撃を与えると予想されている」と分析した。
*ジェンダーギャップ指数とは
 各分野での国の発展レベルを評価したものではなく、純粋に男女の差だけに着目して評価をしていることが、この指数の特徴だ。ジェンダーギャップを埋めることは、女性の人権の問題であると同時に、経済発展にとっても重要との立場から、WEFはこの指数を発表している。

*6-2:https://www.sankei.com/article/20220909-DFB5Z26PRBJ7BPXAWZIMIMLOPQ/ (産経新聞 2022/9/9) 特別支援教育中止など要請 国連委が日本政府に勧告
 国連の障害者権利委員会は9日、8月に実施した日本政府への審査を踏まえ、政策の改善点について勧告を発表した。障害児を分離した特別支援教育の中止を要請したほか、精神科の強制入院を可能にしている法律の廃止を求めた。勧告に拘束力はない。さらに実現には教育現場の人手不足や病院団体の反発などのハードルの存在も指摘される。特別支援教育を巡っては通常教育に加われない障害児がおり、分けられた状態が長く続いていることに懸念を表明。通常学校が障害児の入学を拒めないようにする措置を要請したほか、分離教育の廃止に向けた国の行動計画策定を求めた。精神科医療については、強制入院は障害に基づく差別だと指摘。強制入院による自由の剝奪を認めている全ての法的規定を廃止するよう求めた。勧告は障害者権利条約に基づいており、日本への勧告は平成26年の条約締結後、初めて。審査は8月22~23日、スイス・ジュネーブで日本政府と対面で行われた。審査では、他国に比べ異例の規模となる約100人の障害者や家族らが日本から現地に渡航していた。

*6-3:https://webronza.asahi.com/national/articles/2022091200002.html?iref=comtop_Opinion_06 (朝日新聞 2022年09月16日) まるで入管の「広報」だった。NHK「国際報道2022」の問題点、「国際報道」の名が泣くミスリードの多さ(児玉晃一 弁護士)
 NHK-BS1で2022年8月31日午後11時45分から放送された「国際報道 2022」を見て驚きました。SPOT LIGHT〈不法滞在の長期化 日本の入管に密着〉と題する特集が、入管当局からの情報のみに依拠したような内容だったのです。放送後、私は個人として番組宛てに抗議文を送りました。他の人々や団体からも意見が寄せられたようで、NHKは9月12日の同番組で「8月31日の放送について様々なご指摘をいただきました。情報を追加してお伝えします」と〈在留資格のない外国人 現状と課題〉を放送。その中で、滞在者の人数など内容の一部について「誤解を与える伝え方をした」と謝罪しました。しかし、「国際報道」という番組名とはおよそかけ離れた8月31日の放送は、「誤解を与えた」という程度ではなく、より深刻な問題をはらんでいたと考えます。改めて、その問題点を指摘したいと思います。
●誤った印象与えた「不法滞在」という言葉
 まず、特集のタイトルにあった「不法滞在」という用語についてです。番組中、この用語は何度も無批判で繰り返し、使われていました。ですが、これは、国連では常に移民に罪があるような印象を与えるため差別的なので使わないことになって久しい言葉です。法務省政策評価懇談会の篠塚力座長もこの点を指摘しています(注1)。米国バイデン政権も2021年4月に、移民・関税執行局と税関・国境警備局にこれまで使用されてきた「alien」(在留外国人)や「illegal alien」(不法在留外国人)といった呼称を禁じ、代わりに「noncitizen」(市民権を持たない人)や「migrant」(移民)、「undocumented」(必要な書類を持たない)という言葉を使う方針を示しました(注2)。2021年12月21日に出入国在留管理庁が公表した「現行入管法上の問題点」1ページでは、「我が国に入国・在留する全ての外国人 が適正な法的地位を保持することにより、外国人への差別・偏見を無くし、日本人と外国人が互いに信頼し、人権を尊重する共生社 会の実現を目指す」とされています(注3)。差別・偏見をなくすためには、国連あるいは米国の例にならい、出入国在留管理庁が率先して、差別・偏見を助長するような「不法滞在者」「不法入国者」などの用語を用いず、「非正規滞在」と呼ぶべきです。今回の報道は、そのような問題意識を全く持つことなく、出入国在留管理庁の用いる「不法滞在」という用語を無批判に用いています。これでは「国際報道」の番組タイトル名が泣きます。
注1)2022年2月28日法務省政策評価懇談会(第66回)会議資料会議
資料1-2 5ページhttps://www.moj.go.jp/hisho/seisakuhyouka/hisho05_00034.html
注2)https://courrier.jp/news/archives/242206/
注3)https://www.moj.go.jp/isa/content/001361884.pdf
●「非正規滞在者が増加」と強調した誤り
 8月31日の番組では、2021年1月1日のデータをもとに「不法滞在者」が5年前(2016年62818人)に比べて2万人増え、約8万人となったということが強調されていました。ですが、入管庁が公表したデータによれば、2022年1月1日時点での「不法残留者」は66759人で、2021年に比べ16109人、19.4%減少しています(注4)。2016年と比較しても、約4000人、約6%増えたに過ぎません。2022年のデータは3月29日には公表されていました。それなのに、8月31日の放送で2021年のデータを使った理由について、9月12日の番組では「2022年は在留資格を失った外国人の一部の内訳が揃っていなかったため、データの揃っている2021年の数字を使うこととし」たと釈明していました。しかし、入管庁の公表データでは一部の内訳が揃っていない、ということはなく、8月31日の放送は総数を示しただけで内訳は関係ありませんでした。さらに、もう少し長い時間軸で見れば、2016~21年だけのデータで「増加」とすることにも疑問があります(以下、人数のデータは2021年版「出入国在留管理」日本語版44ページによる)。非正規滞在者は、1993年には約30万人いました。そこからすると番組が指摘した2021年の82868人でも3分の1以下ですが、こうした数字は示されませんでした。また、退去強制手続について米国やEUと比較していたにもかかわらず、非正規滞在者の人数には触れていません(ちなみに、2019年における米国の非正規滞在者は1030万人とのことで、まさに桁違いです=注5)。このようなデータの選び方・使い方は視聴者に「不法滞在者の増加が深刻だ」と感じさせる「印象操作」ではないでしょうか。さらに2016年から21年までに非正規滞在者が2万人増えた原因についても言及がありませんでした。この点について、2021年2月16日に行われた法務省政策評価懇談会での出入国在留管理庁当局は次のように述べています。「私どもの見立てといたしまし ては、近年、政府全体で観光立国実現に向けた取組が進められてきた結果、外国人入国者数が大幅に増加した。これが不法残留者数の増加に少なからず影響しているものと考えております」。「技能実習制度の技能実習1号ロ又は技能実習2号ロという在留資格から不法残留になった者が3割以上の増加になってございますので、御指摘の技能実習生の失踪者からの不法残留問題というのは事実として存在することだと理解してございます」(2021年2月16日、法務省政策評価懇談会議事録より)。つまり、観光立国で入口を緩めたために短期滞在が増えたことと、経済を支えるための歪んだ政策で本来就労を目的としないはずの技能実習・留学生を受け入れた結果、在留期限を過ぎた滞在(オーバーステイ)が増加したことが理由なのです。こうした要因分析もせずに、単に人数の増加だけを強調する報道姿勢は、公正なものとはいえないでしょう(注6)。
注4)本邦における不法残留者数について(令和4年1月1日現在)出入国在留管理庁
https://www.moj.go.jp/isa/publications/press/13_00003.html
注5) https://www.americanimmigrationcouncil.org/research/immigrants-in-the-united-states 
注6)オーバーステイが増えたのは国策の結果だった(2021年3月31日、児玉晃一 note)
●家族の結びつき省みない事例紹介
 番組では、非正規滞在となったタイ国籍の女性が婚約者と日本で暮らしたいと訴えていた事例と、受刑歴のあるブラジル国籍の日本滞在20年におよぶ、妻子のいる男性の事例をとり上げていました。番組全体のトーンから、非正規滞在で強制送還されるのが当然なのに「ごねている」という印象を与えるようなとり上げ方でした。ですが、市民的政治的権利に関する国際規約(自由権規約)17条は、家族生活への恣意的干渉を禁止し、同23条1項は家族の保護を、同2項は「婚姻をすることができる年齢の男女が婚姻をしかつ家族を形成する権利は、認められる。」としています(注7)。番組が取り上げたような事例は、ヨーロッパ人権裁判所の判決例や規約人権委員会の意見からすると、強制送還が当然違法とされるべきケースです(注8)。ここでも「国際報道」という視点が欠けているように思います。
注7)市民的政治的権利に関する国際規約
https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/kiyaku/2c_004.html
注8)2021年4月21日衆議院法務委員会で参考人として発言した際に利用した資料(2021年4月23日児玉晃一 note)の資料⑨「犯罪歴のある外国人と家族の保護裁判例」
https://note.com/koichi_kodama/n/ndd29c4a00456
●「強制送還」をめぐる不正確な表現
 さらに、番組では、「強制的に退去強いることなし」という表現が使われていましたが、これは明らかに事実に反します。下表は、入管庁の2020年版「入管白書」59ページからの引用です(注9)。名古屋出入国在留管理局に収容中の2021年3月6日に亡くなったスリランカ人のウィシュマ・サンダマリさん(当時33)についての調査の報告書では「一度、仮放免を不許にして立場を理解させ、強く帰国説得する必要あり」とされており、収容を強制送還に追い込む手段としていることを当局が行っていたことが明らかになっています(注10)。さらに、帰国費用が自己負担となっており、その準備ができないことが非正規滞在の長期化の原因であると述べられていましたが、入管法52条4項は「退去強制令書の発付を受けた者が、自らの負担により、自ら本邦を退去しようとするときは、入国者収容所長又は主任審査官は、その者の申請に基づき、これを許可することができる。」としており、法律は国費送還が原則なのです。その原則を曲げて本人負担させようとした結果、様々な事情で帰国を拒否している人達が送還に応じず、非正規滞在の期間が長期化するのは、当然のことです。なおフランスでは庇護希望者に対し、チケットや帰国後の助けとなる費用を渡しているとのことです(注11)。このような国際比較の観点も、番組にはありませんでした。番組では強制送還に従わない場合に罰則がないとも述べられていました。これは、2021年廃案になった入管法案審議の際にも出入国在留管理庁が繰り返し述べていたことと同じです。ですが、オーバーステイだけでも入管法70条による罰則はあります。この点に言及せず、命令に従わない場合の罰則がないことだけを述べるのはミスリードです。そもそも、国連の恣意的拘禁作業部会は、2018年2月7日付改訂審議結果第5号は次のように述べています。「移住者による非正規入国・滞在は犯罪行為と見なされるべきではない。よって非正規の移住を犯罪行為と見なすことは、自国の領土を保護し非正規移住者の流入を規制するに際して国に認められる正当な利益として許される限度を超える。移住者を、国家あるいは公共の治安および/または公衆衛生の維持の観点からのみ犯罪者と認定し、または犯罪者として扱ったり、判断してはならない」。番組の中で、このような国連文書を一顧だにしなかったことは大いに疑問です。以上のとおり、8月31日「国際報道2022」の出入国在留管理庁の言い分に沿った情報のみに依拠した内容は、「国際報道」の名に値するものではありませんでした。残念です。番組の名に恥じない、国際的な視点に立った報道を望みます。
注9)2020年版「入管白書」https://www.moj.go.jp/isa/content/001335866.pdf
注10)「令和3年3月6日の名古屋出入国在留管理局 被収容者死亡事案に関する調査報告書」58ページhttps://www.moj.go.jp/isa/content/001354107.pdf
注11)国際人権ひろば No.140(2018年07月発行号)
https://www.hurights.or.jp/archives/newsletter/section4/2018/07/post-201814.html
注12)国連恣意的拘禁作業部会 審議結果第5号(移住者の自由の剥奪)第10パラグラフ

<ジェンダー平等へ←国税庁や裁判所の旧さをなくすべき>
PS(2022/10/17追加): *7-1・*7-2のように、「①寺田総務相が事務所を置くビルの一部を所有する妻に2012~21年合計2688万円(267万円/年)の賃料を支払っていたのが身内への政治資金の支払いで疑問」「②人件費から源泉徴収していなかったので脱税」と一部の週刊誌が書き、立憲民主党も「③証明できる書類がないのではないか」と質問したため、寺田総務相は「④適正価格だ」「⑤妻は会社社長で扶養家族でない」「⑥経済的に別の主体なので合法的な行為」「⑦(納税証明書は妻の)個人情報で、適正に申告して納税していることは税理士が確認した」と説明された。
 寺田総務相の奥さんは、池田勇人元総理の孫・池田行彦元外相の姪で、会社社長でもあるため、寺田総務相の扶養家族ではなく、寺田総務相が事務所を置く東京都内のビルの一部を所有して267万円/年の賃料を受け取っている状況は容易に想像できる。そのため、①は10年分まとめて書くことによって必要以上に誇張しており、寺田総務相の④⑤⑥の回答は正しいと思う。また、②も、業務委託契約に基づいて報酬を支払う場合の源泉徴収範囲は限定されているため、源泉徴収していないから直ちに脱税とは言えないし(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2792.htm 参照)、その範囲は、税務申告を行う税理士や監査を行う公認会計士がアドバイスするので間違いはない筈で、いちゃもんに見える。また、③についても、⑤⑥のように、奥さん(私人)は別の経済主体で扶養家族ではないため⑦は正しいし、税理士は資格をかけて代理人として確定申告しているため間違ってもいないだろう。
 では、何故、このような事例が極悪なことをしたような言い方をされるのかと言えば、例えば、税理士の妻が代理人として弁護士の夫の確定申告を行い、報酬をもらったところ、同一世帯内での支払いであるとして否認され、最高裁まで行って弁護士・税理士夫妻が負けた事例がある。しかし、夫婦であっても、税務上は個人単位で申告しており、経済的にも独立採算である夫婦は多いため、税理士が申告しても無償と看做すのは税務署も裁判所も旧すぎるわけである。そのため、私は、このような事例で変ないちゃもんをつけられないようにするには、税法・政治資金規正法等の改正が必要で、これを機に寺田総務相や自民党にはそれをお願いしたいわけだ。

*7-1:https://nordot.app/950930751189532672?c=39546741839462401 (共同通信社 2022/10/7) 総務相、妻に賃料支払い問題なし 「価格適正、脱税でない」
 寺田稔総務相は7日の記者会見で、自身の政治団体が、事務所を置くビルの一部を所有する妻に賃料を支払っていたことに関し「何ら問題ない。価格も適正だ」と述べた。で脱税と報じられたことに触れ「事実に反する。誠に遺憾だ」と語った。法的措置などは現時点で考えていないとした。既に岸田文雄首相に報告。首相から「適正な処理ならそれでよい。説明してほしい」と指示されたと明らかにした。寺田氏は妻について、会社社長を務めており、自身の扶養家族ではないと強調。と主張し、身内への政治資金の支払いを疑問視する声を否定した。

*7-2:https://mainichi.jp/articles/20221015/ddm/005/010/132000c (毎日新聞 2022/10/15) 妻の納税証明を総務相提出拒否 事務所賃料支払い
 寺田稔総務相は14日、自身の政治団体が妻に事務所の賃料を支払っていたことを巡り、立憲民主党が要求していた妻の納税を証明する書類の提出を拒否する意向を文書で伝えた。「(妻の)個人情報だ。適正に申告し、納税していることは既に税理士が確認している通りだ」と回答した。立憲の山井和則国対委員長代理は記者団に「証明できる書類がないのではないか」と述べ、17日からの衆院予算委員会で追及する意向を示した。これに関連し、自民党の世耕弘成参院幹事長は記者会見で「しっかりと(寺田氏)本人が説明することが重要だ」と語った。寺田氏は12日、2012~21年に政治団体が事務所を置くビルの一部を所有する妻に計2688万円を支払い、妻は納税したと税理士が確認したとの文書を立憲に提出。立憲は十分な証明にならないとして証拠書類の提示を求めていた。

<無駄遣いのオンパレードと日本の弱体化は、何故、起こるのか>
PS(2022年10月20、21日追加):*8-1-1・*8-1-2のように、ガソリン・電気(多くが化石燃料で発電)・ガス料金の値上がりを、またまた“緊急策”として補正予算で巨額の補助金を計上して抑えようとするのは、放漫財政であるだけでなく環境維持にも逆行する。また、“困窮する層に的を絞ったきめ細かいやり方”というのは、恣意的に線を引いて複雑化する上に不自然な分断を作るため、私は、電力会社の再エネ賦課金を廃止するのがよいと思う。何故なら、他の電源には賦課金などは課しておらず、それどころか補助金を使って市場ではなく政治が時代に逆行する不合理な電源の選択をしているからである。そのため、送電線敷設に予算を使った方が、財政支出によって景気を保ちながら金利を上げることができ、エネルギー自給率の向上にも資するため、その後はエネルギー価格高騰に右往左往する必要がなくなり、経済効果が大きい。にもかかわらず、政府は、電気料金・ガス料金・ガソリン・灯油に環境に逆行しながら負担軽減策を導入し、電気料金は電力会社各社に支援金を支払う形で利用者負担を減らす支援制度にするそうなのだ。何故、これほど無駄遣いばかりの政策を行うかについては、「これらの企業関係者に選挙を手伝ってもらったから」くらいしか理由を思いつかないから参るわけである。
 また、*8-1-3のように、政府は「原子力ムラ」である経産省の審議会「総合資源エネルギー調査会」を通して原発政策を転換し、再稼働加速・運転期間延長・新型炉建設の検討をするそうだが、原発の課題や方策については何の科学的・経済的検討も解決策の提示もしておらず、またまた“緊急避難的に”“外国でやっているから”という理由なのであり、この調子では決して安全第一にはならず、再度「安全神話」を作るだけだと言わざるを得ない。
 なお、「再エネは安定電源でないため、原発をベースロード電源にする必要がある」という反論もよく聞くが、*8-2-1の住商やオリックス等のように大型蓄電池を送電線に繋げば再エネを主力電源化することは可能だし、「EVも化石燃料で発電した電力を使えばCO₂削減にならない」という思考停止の反論をする人もいるが、これらは工夫もせずに現状維持を主張しているにすぎないため、次の発展に繋がらないのだ。従って、国は、終わりかけたエネルギーに補助し続けるより、送電線・蓄電池・EVなどの将来に向けた投資に補助した方がよいわけである。また、*8-2-2のように、地方自治体は、ごみのリサイクル率を高めて処理経費を削減したり、草木類を別に回収して堆肥やチップとして資源化したり、ごみ焼却熱で発電したりもしており、工夫次第で税外収入を増やしながら財政支出を削減することは可能なのである。
 今、自民党の宮沢税制調査会長が、*8-3-1のように、「自動車重量税に適用する『エコカー減税』を2023年度税制改正で見直しておられるそうで、その内容は、①税優遇の適用基準を厳しくして対象車種を絞り ②国が定める燃費基準の達成度合いが低いHVの減税幅を縮め ③EVには高い税優遇を維持する 方向とのことだ。しかし、2010年に世界初のEVを市場投入した日産自動車は、ゴーン元会長逮捕で後退し始めており、あまりに遅すぎた。何故なら、2000年代に①②③のようなことをしていれば、Excellentだったが、既にEVというだけではなく、高齢者・障害者も自由に自動車を利用することができ、運賃や保険料を安くできる自動運転という付加価値も加えて税優遇した方がよい時代になっているからである。
 一方、*8-3-2のように、仏ルノーは日産自動車への43%の出資比率を引き下げ、両社が出資比率を15%に揃える協議を行っており、また、EVとエンジン車を別会社にして本体から切り離し、EV新会社には日産も出資を検討しているそうだ。つまり、これは、ゴーン元会長の解任以降、日産が赤字決算となって業績がV字回復する見込みのない「お荷物子会社」になったため、ルノーにとっては、静かに日産とエンジン車という「リスク」を切り離し、エンジン車の会社は次第に縮小するチャンスなのである(https://maonline.jp/articles/is_exit_from_renault_dominance_lucky_for_nissan221013 参照)。つまり、世界では、得意技を活かして伸ばせなければ魅力のない会社となり、得意技もない魅力もない会社とお情けで提携関係を持ち続ける会社はないため、日本政府や日産もモタモタしていれば、他の電動車に強い会社と提携し直される可能性が高いのだ。

*8-1-1:https://digital.asahi.com/articles/DA3S15450152.html (朝日新聞社説 2022年10月20日) 電気ガス代軽減 弊害大きい手法やめよ
 ガソリンに続き、電気やガスの料金でも、広く値上がりを抑え込む政策が検討されている。緊急策だとしても、巨額の補助の割には効果が薄く、弊害が大きい手法だ。困窮する層に的を絞ったきめ細かいやり方に改める必要がある。電気・ガス料金は、この1年で2~3割上がったケースが多く、来年春にも大幅な値上げが見込まれる。政府は、その前に負担軽減策を導入しようと検討を急いでいる。物価高対策では、まずガソリンや灯油への補助が1月に始まり、先月には岸田首相が電気料金で対策をとる考えを示した。さらに与党の声に押される形で都市ガスも加わり、LPガスでの導入を求める声も出ている。対象は広がる一方だ。確かに、代替の利かない必需品の急騰は、余裕のない家計や事業者にとって負担が重い。何らかの対策は必要だ。だが、すべての利用者を対象にした一律の価格抑制は、恩恵が富裕層や好業績の企業にも及び、値上がりを通して自然に消費が抑えられる市場の働きが損なわれる。省エネや脱炭素化も妨げる。使われる公金も、ガソリン補助だけで年末までに3兆円に達する。朝日新聞の社説はこうした点を繰り返し指摘し、手法の変更を求めてきた。経済産業省の審議会でも、ガソリン補助の延長を漫然と繰り返すことに、批判が多く出ている。ところが政府は、「激変緩和策」のはずのガソリン補助の出口を示さないどころか、同様の手法を電気・ガスにも広げようとしている。いったん始めるとなかなかやめられない危うさを理解しているのだろうか。電気やガスでは、これからの冬の供給に不安があるのを忘れてはならない。状況次第では大がかりな節約が求められる。政府自身が「節電ポイント」への支援など節電・節ガスを促す準備をしているはずだ。その時期に使用料金を大きく抑えれば、ブレーキとアクセルを同時に踏むちぐはぐな状況になりかねない。物価高は多くの分野に広がっているが、個々の商品価格に政府が介入し続けることには限界がある。政府は9月に、住民税非課税世帯への5万円の現金給付を決めたが、生活に困る人は他にも多い。支援を本当に必要とする対象を見定め、速やかにお金を配る仕組みの重要性は、コロナ禍以降たびたび指摘されてきた。いまだにそれを整えようとせず、場当たり的な対処を続けるのなら、怠慢のそしりを免れない。そろそろ具体的な検討を真剣に進めるべきではないか。

*8-1-2:https://digital.asahi.com/articles/DA3S15445632.html (朝日新聞 2022年10月15日) ガス代も負担軽減策 電気代は来年早期に開始 自公党首合意 財政支出さらに拡大
 岸田文雄首相(自民党総裁)は14日、公明党の山口那津男代表と首相官邸で与党党首会談を行い、政府が月内にまとめる総合経済対策で、電気料金に加えてガス料金にも負担軽減策を導入する方針で合意した。必要な費用は臨時国会に提出予定の補正予算案に計上する。すでに実施済みのガソリンや灯油の価格抑制策の継続も確認した。エネルギー高騰対策で財政負担が大きく膨らむことになる。両党首は会談で、来年春以降の急激な電気料金の上昇に備え、電力会社各社に支援金を支払う形で利用者の負担を減らす新たな支援制度で合意。激変緩和の幅は段階的に縮小するとしつつ、来年1月以降できるだけ早いタイミングで開始をめざすとした。ガスについては「値上がり動向、事業構造などを踏まえ、電気とのバランスを勘案した適切な措置を講じる」ことを確認。都市ガスを対象に負担軽減策を導入する方針で一致した。ガソリンなどの燃油価格の抑制策では「来年1月以降も補助上限を調整しつつ引き続き実施」するとしつつ、「その後、補助を段階的に縮減する一方、高騰リスクへの備えを強化する」ことで合意した。首相は会談後、記者団に「国民生活に高い効果のある具体的な政策を積み上げ、中身も規模も国民に納得していただける思い切った経済対策をしていきたい」と語った。会談では、子育て支援策も経済対策に盛り込む方針で一致。妊娠時から出産・子育てまで一貫して相談に応じて支援につなぐ「伴走型相談支援事業」や、0~2歳児の親への経済的支援としてオムツなどの商品で使えるクーポン券を発行する方向で調整している。

*8-1-3:https://digital.asahi.com/articles/DA3S15449126.html (朝日新聞社説 2022年10月19日) 原発政策転換 議論の幅が狭すぎる
 原発が抱える数々の難題を脇に追いやり、推進に好都合な点ばかり訴える。そんな「結論ありき」の議論で、重大な政策転換を進めていいのか。課題や方策について多角的に検討を尽くすことが、政権の最低限の責務である。政府はこれまで、11年前の福島第一原発事故の教訓を踏まえて、原発は「可能な限り依存度を低減する」としてきた。ところが、岸田首相は8月、再稼働の加速、運転期間の延長、新型炉建設の検討を指示した。この「原発復権」に向けた地ならしの舞台になっているのが、経済産業省の審議会「総合資源エネルギー調査会」だ。年末までに結論を出すという。そこでの議論では、原発推進を前提にした意見が大勢を占める。原発を動かせば電力供給の安定化につながる、温室効果ガスを出さず脱炭素化に役立つ、といった利点の強調がほとんどだ。早速、政策での支援の強化も検討されている。だが原発は、事故対策はもちろん、放射性廃棄物の処分や核燃料サイクルの行き詰まり、将来の経済性低下など、長年の懸案が山積みだ。そうした点については表面的な議論に終始し、中身は深まらない。なぜこれほど、議論の幅が狭くなってしまうのか。審議会の議題と人選は経産省が決めている。委員の多くは、原子力研究者や電力業界と関わりが深い有識者、経済人だ。原発に懐疑的な視点から意見を述べる人はごく一部しかいない。これで十分な調査と審議ができるのか、極めて疑わしい。通り一遍の議論で、推進官庁の提案にお墨付きを与えるだけの役回りになるのではないか。審議会でも、慎重派委員から「国民各層とのコミュニケーション、結果ありきでないオープンな議論が必要」との意見が出た。政府は指摘を真摯(しんし)に受け止め、熟議ができる環境を整えなければならない。4カ月での新方針決定というのも、あまりに急だ。エネルギー問題は激動期にあり、複雑さを増している。原発の位置づけは、電気の使い方を将来にわたって左右する大きなテーマだ。安定供給や脱炭素の効果だけでなく、課題やコストとリスク、他の選択肢との比較など、さまざまな観点から検討を重ねることが欠かせない。審議会を含め、さまざまな専門家をバランスよく集め、透明性を確保した議論の場が必要になる。かつて、産官学の「原子力ムラ」が政策を主導するなかで「安全神話」が広がり、11年前の惨事に行き着いた。異見を排除した閉鎖的な議論が何をもたらすか。深く顧みるべきだ。

*8-2-1:https://www.nikkei.com/article/DGKKZO61089980U2A520C2TB2000/ (日経新聞 2022年5月25日) 大型蓄電池、送電線と直結、電力調整、法改正が追い風 住商やオリックス参入
 送電線と直結して発電所のように使う「系統用蓄電池」に参入する企業が相次いでいる。住友商事は2023年度内に北海道で電気自動車(EV)の電池を束ねたシステムを稼働する。オリックスなども23年度以降の参入を目指す。関連法制の改正や電力の需給調整力を売買する新市場の開設を新たな商機ととらえ、技術革新を急ぐ。住友商事は日産自動車と共同出資するフォーアールエナジー(横浜市)と協業し、北海道千歳市で22年度にも出力6000キロワットの大型蓄電池の建設を始める。約700台分のEV電池をひとつにまとめて蓄電池とみなす。23年度に稼働する。住商は鹿児島県薩摩川内市の廃校の跡地で系統用蓄電池の実証実験をしてきた。22年4月には福島県浪江町で実証機を稼働し、北海道での設置は17~18年ごろから検討してきた。実用化のめどが立ったため、運用を決めた。今後、北海道の他の地域や東北、九州などにも広げ、26年度までに計10万キロワットの導入を目指す。オリックスは関西電力と共同で参入する。開発する蓄電池の出力は数万キロワットの見通しで、23年度以降の稼働をめざす。オリックスが出資する地熱発電大手の米オーマット・テクノロジーズは系統用蓄電池も運用している。オリックスと関電はオーマットの知見も生かして日本市場を開拓する。ENEOSは北海道室蘭市の室蘭事業所で23年度内に稼働する方針だ。一般的な家庭用蓄電池換算で数千台に及ぶ大型蓄電池を計画しており、22年内にも建設を始めるとみられる。ミツウロコグループホールディングスも22年末に北海道で運用を始める。企業の参入が相次ぐ背景には電気事業法改正や電力市場の整備がある。政府は3月に電気事業法改正案を閣議決定し、23年4月の施行をめざす。改正案では今まで曖昧だった系統用蓄電池の役割を明確にした。送電線に接続され、売電する電力の合計が1万キロワットを超える蓄電池を「発電事業」と位置づけた。今の法律は蓄電池を単体で送電線につなげるケースを想定していない。電力市場の広がりも追い風だ。系統用蓄電池の収益確保の手段として期待される市場は大きく3つある。電力の需給を調整して報酬を得る「需給調整市場」と電力の供給力を売買する「容量市場」、翌日の電力量を取引する「卸電力市場」だ。企業が特に期待するのは需給調整市場だ。市場は調整力を提供するまでのスピードなどを基準に5つに区分される。今は15分以内に対応できる調整力までだが、24年からは10秒以内や5分以内に対応できる調整力のやりとりが始まる。系統用蓄電池は瞬時に電力を調整できるため、短い時間での調整を求める市場の開設は追い風になる。容量市場は将来の発電能力を売買しており、20年からオークションが始まった。一定の出力を確保できる系統用蓄電池が増えれば、電力小売事業者は数年先の夏や冬の電力需要期をにらみ、あらかじめ必要な電力を手当てしやすくなる。卸電力市場は30分ごとに電力を取引する。最近では発電所のトラブルなどが起きると市場価格もすぐ急騰しがちだ。系統用蓄電池を使えば、市場価格が安い時間帯に電力を買ってためておき、高い時間帯に売るというビジネスに応用できる。日本の電力需給は不安定だ。3月には季節外れの寒波で、東京電力ホールディングスと東北電力の管内で初の電力需給逼迫警報が出た。4月になると東北電など複数の大手電力が再生可能エネルギーの発電事業者に太陽光発電の出力を抑えるよう要請し、わずか1カ月で需給環境が一変する極端な事態に陥った。電力ガスなどエネルギー関連の法制度に詳しい西村あさひ法律事務所の松平定之弁護士は「太陽光などの再生エネのさらなる導入と送電網の安定性とのバランスをとるためにも蓄電池は不可欠だ」と指摘する。蓄電池をもっと普及させないと電力の安定供給はおぼつかないままだ。蓄電池の課題は高コストだ。今のエネルギー基本計画によると、産業用蓄電池の発電コストは19年度時点で1キロワット時当たり約24万円。政府は30年度時点で同6万円程度まで下げる目標を掲げるが、コスト減への工程表は定まっていない。各社は系統用蓄電池に参入するが、実際に市場が動き出さなければ収益を特定するのは難しい。送電線の空きが少ないのも難点だ。蓄電池から電力を送りたくても、空きがなければ送れない。国の機関は送電線の容量を現在の約2倍に増やすには3兆8000億~4兆8000億円の投資が必要とみる。誰がいつ、どのように投資するかは未定だ。企業の参入意欲を冷え込ませないためにも、電力システムの抜本的見直しが欠かせない。

*8-2-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20221015&ng=DGKKZO65156810U2A011C2L83000 (日経新聞 2022/10/15) (データで読む地域再生)ごみ処理 八王子市、焼却熱で発電、環境配慮の新施設
 首都圏の自治体では、埼玉県鶴ケ島市の近隣市町がごみの分別収集徹底や効率的な処理でコスト削減に取り組んでいる。神奈川県座間市は家庭から出る可燃ごみのうち、草木類を分けて収集することでごみ処理量の削減につなげた。東京都八王子市や栃木県矢板市などでは、環境に配慮した高効率処理施設の建設が相次いでいる。埼玉県鶴ケ島市と毛呂山町、鳩山町、越生町の4市町は埼玉西部環境保全組合を組織し、共同でごみ処理に取り組んでいる。同組合は効率的にごみを処理するため、現在の処理施設が稼働する前からごみの分別や適正な処理方法について計画を立てた。各市町ごとのごみ排出傾向を徹底的に分析し、2026年度までに1人あたりの家庭ごみの排出量で2%前後、事業者系ごみで5%程度の削減を目標に定める。23年4月には約190億円を投じた最新鋭のごみ処理施設、埼玉西部クリーンセンター(同県鳩山町)が稼働する。ごみ処理能力は1日当たり130トンと現在の高倉クリーンセンター(鶴ケ島市、同180トン)を下回るが、同組合の担当者は「リサイクル比率を高めてごみ処理経費を削減し、組合の自主財源を多く確保できるようにしたい」と話す。神奈川県内の市町村でごみ処理費用の削減率が2番目に大きかった座間市は1人あたりのごみ排出量が最も少ない。可燃物や不燃物などの分別協力が定着し、21年度の家庭系可燃ごみの排出量は約1万9300トンと、前年度比7.8%減った。市によると、21年度から可燃ごみにまとめられがちな草木類を別に回収し、堆肥やチップとして資源化していることも削減につながった一因という。連携協定を結ぶ小田急電鉄の廃棄物管理サービス「WOOMS(ウームス)」を活用。草木類の収集は可燃ごみと同じ日だが「収集車が草木類のある集積所をウームスのシステムにデータ入力し、草木類専用の後続車が最短ルートで収集している」(市の担当者)という。環境省の一般廃棄物処理実態調査によると、神奈川県の20年度の1人あたりのごみ事業経費が11年度比で7.3%減と、関東・山梨の8都県で唯一減少した。神奈川のごみ事業費が県全体で減った要因は県内の7市町村がごみ袋を有料化し、分別を本格化したためという。ただ、横浜市、川崎市はまだ有料化しておらず、大都市部のごみ処理コスト削減の取り組みは今後本格化するとみられる。千葉県や栃木県、東京都、茨城県は1人あたりのごみ事業経費は高めで、削減の取り組みは道半ば。東京都では八王子市内の可燃ごみを焼却処分する館クリーンセンター(同市)が1日、本格稼働した。旧清掃工場跡地に169億円を投じて整備。屋外にはビオトープ(植生物の生息帯)や散策路を整備し、ごみの焼却時に発生する熱を使ってタービンを回転させ、発電する環境配慮型施設にした。焼却炉を2基備え、1日あたりの処理能力は計160トン。ごみ焼却熱で発電した電力は施設や八王子市役所などで利用する。栃木県矢板市では、近隣市町との広域行政組合が運営する処理施設の設備が老朽化していたため、環境性能を高めた広域処理施設、エコパークしおやを矢板市内に建設。19年に本格稼働した。同施設ではごみ焼却時の熱を利用して発電し、その電力を利用して施設内でフィットネスジムや入浴施設を運営している。焼却後の灰は埋め立てなどに再利用している。粗大ごみとして持ち込まれたが、再利用できる椅子や机、棚といった家具を無償で譲渡する抽選会を開催するなど、ごみの削減に努めている。

*8-3-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20221015&ng=DGKKZO65175800V11C22A0EA2000 (日経新聞 2022年10月15日) 「エコカー減税、基準厳しく」 自民税調会長車種絞り込み検討
 自民党の宮沢洋一税制調査会長は14日、日本経済新聞とのインタビューで、自動車重量税に適用する「エコカー減税」制度を2023年度税制改正で見直すと明らかにした。税優遇の適用基準を厳しくして対象車種を絞り、国が定める燃費基準の達成度合いが低いハイブリッド車(HV)などの減税幅を縮める。電気自動車(EV)は高い税優遇を維持する方向だ。自動車重量税は車検の際に支払う。エコカー減税制度では燃費性能が高い自動車の税を減免する。現行制度の期限が23年4月末に迫っており、どう見直すかが焦点の一つだった。今の制度では、燃費基準を達成した車種は初回の車検時に免税となる。基準を75%達成すれば50%の減税、60%達成なら25%減税と、燃費性能によって差をつけている。宮沢氏は「(自動車メーカーには)燃費を常に改善してもらわないといけない。基準を少し厳しいものにしていくことになると思う」と述べた。HVやガソリン車で免税、減税のハードルを上げメーカーの技術革新を促す。EVは現在の免税措置を続ける案がある。燃費に応じ購入額の1~3%を課税する「環境性能割」を減免する基準もより厳格にする方針だ。自動車関連税制の抜本改革は23年度改正では見送る考えだ。宮沢氏は「EVを含めたモビリティー全体の税のあり方を考えないといけない」と語り、走行距離に応じて課税する案も含め、制度の見直しを中長期で進める必要性を強調した。温暖化ガスの排出に金銭負担を求める炭素税などのカーボンプライシング(CP)は「どういう債券や国債が発行され償還するかという話になって初めて税の出番になる」と説明。23年度改正の導入を見送る意向だ。政府は脱炭素分野の財源として「GX(グリーントランスフォーメーション)経済移行債」(仮称)を検討中だ。宮沢氏は一連の詳細な設計が年末までに決まらないとの見通しも明らかにした。国際的な税逃れを防ぐ制度改正にも着手する。経済協力開発機構(OECD)で法人税負担の最低税率を15%とする仕組みが大枠で合意されたことを受け、23年に国内の法整備を進める。詳細なルールを巡り22年末まで国際交渉が続く。交渉がまとまる前提で国内法の改正案を「来年の国会にできれば出したい」と述べた。導入後は低税率国に子会社を置く日本の親会社に対し、日本の税務当局が最低税率との差分を課税できる。企業誘致などを狙い、各国が法人税引き下げを競う「底辺への競争」に歯止めをかけると期待されている。法人事業税の外形標準課税についても「何らかの手当てはしなければいけない」と話した。資本金1億円超の企業が課税対象で、経営が悪化した企業を中心に1億円以下に減資する例が相次いでいる。「外形標準課税逃れのような行為が散見される」と指摘した。

*8-3-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20221019&ng=DGKKZO65255540Z11C22A0MM8000 (日経新聞 2022.10.19) ルノー「日産と関係対等に」
 仏ルノーのルカ・デメオ最高経営責任者(CEO)は17日、日本経済新聞の取材に応じ、日産自動車との提携関係を「より対等にする必要がある」と述べた。両社はルノーから日産への43%の出資比率を引き下げる交渉をしている。日仏連合は経営危機に陥った日産をルノーが1999年に救済して発足し、ルノーが運営の主導権を握ってきた。世界3位の自動車連合の経営形態が転換点を迎える。ルノーは日産株を43%保有する筆頭株主で、日産も15%のルノー株を持つ。だが、仏会社法の規定で日産が保有するルノー株には議決権がなく、日産はかねて規模で劣るルノーが優位な資本関係の見直しを求めていた。両社はルノーが日産株の一部を手放し出資比率を15%にそろえることを軸に協議を進めている。ルノーの出資比率が40%未満に下がると、日産のルノー株には議決権が生まれる。デメオ氏は日産株の売却について「機微に触れる話だ。コメントできない」とした。そのうえで「日産との議論はとても建設的だ。非常に複雑で様々な議題があるが、解決策を見つけようとしている」と述べ、協議が進んでいることは認めた。ルノーは15%を出資する筆頭株主のフランス政府とも日産との交渉などについて協議している。日産幹部によると、仏政府は現時点で引き下げに反対の姿勢は示していないようだ。ルノーは99年、約6000億円を投じて日産に37%を出資した。カルロス・ゴーン被告を日産の最高執行責任者(COO)として送り、完成車や部品などの5工場を閉鎖した「日産リバイバルプラン」などのリストラで経営を立て直した。2016年には日産が三菱自動車に34%を出資し日仏連合は3社に拡大した。仏政府は14年に特別法を設けて2年以上株式を保有する株主に2倍の議決権を与えた。ルノーの経営への関与を強めたうえで、日産の経営に介入する懸念が生じた。ゴーン元会長が18年に逮捕されてルノーが経営統合を提案し、両社の関係がぎくしゃくしたため、資本関係の見直しは棚上げされた。ルノーはトヨタ自動車など他の自動車大手に比べて規模が小さい。電気自動車(EV)の開発や生産には巨額の費用がかかるため、保有する日産株を売却して資金を捻出する必要がある。仮に3割の日産株を売却すると、18日の終値では6000億円弱の資金が手に入ることになる。デメオ氏は両社の提携関係について「これまでは片方が勝って、片方が負けるという状況があった。連合の新たな幕を開けることに意味がある」と述べた。日産は幹部人事にルノーの指名権があるなどルノー優位の提携関係に不満を募らせていた。ルノーは2月、EVとエンジン車をそれぞれ別会社にして本体から分離する計画を発表した。EVの新会社には日産が出資を検討しており、デメオ氏は「(EVの専門会社を設けることで)より多くの製品開発が実現でき、日産にも利益をもたらすだろう」と話した。

<防衛費増額で継戦能力向上が見込めるのか>
PS(2022年10月23日追加):*9-1は、①政府が防衛力の抜本的強化を目指して有識者会議をスタートさせ ②年末までに数回会合を行って年内に改定する「国家安全保障戦略(NSS)」「防衛計画の大綱(防衛大綱)」「中期防衛力整備計画(中期防)」に反映させ ③2月上旬には提言をまとめて「中期防衛力整備計画(中期防)」を来年度予算に反映させる ④防衛力の抜本的強化は継戦能力向上と敵基地攻撃能力保有が焦点 ⑤自民党内ではNATO諸国の国防費予算GDP2%以上と同様、日本も防衛費を5年以内にGDP比2%以上とすることを求める声が強まり ⑥2022年度当初予算GDP比1%の5.4兆円の防衛費を5年間でGDP比2%まで引き上げるには毎年約1兆円程度ずつ増額していく必要 ⑦安易な国債発行は将来にわたる国民の負担増で、将来の成長期待の低下を通じて企業の設備投資を抑制し、経済の潜在力を低下させる ⑧受益者である企業と国民が相応の負担をする法人税引き上げと個人所得税引き上げを行って財源とするのが妥当 等と記載している。  
 このうち、①②③④については、北朝鮮を標的にした敵基地攻撃能力の保有とNATO諸国の国防費予算GDP2%以上に合わせることが目的だそうだが、今後、本当に必要な防衛力の検討がなされていない。また、⑤⑥は、日本はGDPが大きいため、GDP比を同じにすれば平和国家であるにもかかわらず防衛予算はNATO諸国よりずっと大きくなるため、比率ではなく支出額とその目的適合性を検討すべきだ。さらに、無人化・自動化が進んでいる現在、人件費・糧食費は減って当然であるし、海洋国家日本で陸上自衛隊の経費が最も大きいというのも変である。従って、⑧のように、防衛予算の増額で企業と国民が受益者になるというのは甘い幻想に過ぎず、そうなるためには、正確な目的設定とそれに沿った政策間の整合性・査定が必要なのである。なお、⑦のように、安易な国債発行を行えば国債の返済と利払いで予算の多くが占められる結果となり、社会保障等の国民の生命を守る歳出を削減したり、0金利政策を変更できずに国民の財産を毀損したりすることになる。つまり、歳入・歳出・国債残高を通じて、すべては繋がっているのだ。
 このような中、岸田首相は「政府全体の資源と能力を総合的かつ効率的に活用した防衛体制の強化を検討する」と強調しておられるが、省庁間の政策ベクトルの方向を揃えることは必要不可欠なので、そのための関係省庁の関連費用を「国防関係予算」から支出するのはアリだろう。
 現実には、(国際法規違反と非難しても)戦争となれば兵糧攻めは定石であり、ウクライナはクリミア橋を爆破し、ロシア軍は、*9-2-1・*9-2-2のように、電力インフラを主な標的として40発のミサイルとイラン製の突入自爆型無人ドローン「シャヘド」を16機発射し、これに対してウクライナ軍がミサイル20発とシャヘド11機を撃墜したものの、南部ザポロジエやオデッサ、ミコライフ、西部リウネ、フメリニツキー、東部ハリコフなどの各州で電力等の重要インフラが損傷したそうだ。このうち、ザポロジエ原発の安全は最も心配だが、原発で集中発電しているリスクの大きさが改めて明白になった形だ。
 バイデン米大統領は、*9-3のように、「世界は冷戦が終わって以来初めて『世界最終核戦争』の危機に晒されており、ウクライナ侵攻のプーチン氏にとっての『出口』を模索中」と言われたそうだが、現在は、核戦争以前に原発を自爆させることも容易であり、その世界への悪影響は著しく大きいのである。

    
2022.9.5日経新聞  東京新聞     2021.1.10Yahoo    2021.10.23JCP

(図の説明:1番左の図が「防衛費増額のイメージ」で、GDP比2%という数字が目標になっているだけで、5年後に本当に必要か否かの検討がされていない上、米軍基地再編費は除かれている。また、左から2番目の図が、NATO諸国と日本の防衛費のGDP比で、NATO諸国の目標であるGDP比2%より小さいとしているが、右から2番目の図のように、日本のGDPは世界で3~4番目に大きいため、単純に比率を同じにすれば防衛費も世界で3~4番目に大きくなるのである。それを示したのが1番右の図だが、政策の連携がされていないため、憲法に反してまで世界で3~4番目に大きな防衛費を使っても機能しないのが日本の根源的問題なのである)

   
 2022.1.4朝学ナビ             Clearing Mod

(図の説明:左図は、2022年度予算案のポイントで、歳出は約107兆円で10年連続過去最大だが、日本経済は低迷しているので歳出内容をチェックすべきだ。また、約5兆円の防衛費も過去最大で、右図のように無駄が多いのに拡大圧力が強い。そのような中、約36兆円《歳出全体の約1/3》の社会保障費が大きすぎるとして圧縮圧力が強いが、本当に国民の生命・財産を第1に考えるなら、国民全体が関係する社会保障費の圧縮は極めて慎重で合理的根拠に基づかなければならない筈である。国債費も過去最大で24兆円あるが、国債残高は増加しているため、利払い負担は増える一方である。右図は、防衛関係費の内訳で、人件費・糧食費が約45%、隊別では陸上自衛隊38.2%が最大だが、少子化で偵察衛星・無人機・ミサイル・無人ドローンの時代に兵員数は多い必要がないと思われるため、人件費・糧食費は半減させてよいだろう。また、装備品の購入単価が著しく高く、高額予算の割には大したことができていないため、もっと安上がりで効果的な方法を考えるべきである)

*9-1:https://www.nri.com/jp/knowledge/blog/lst/2022/fis/kiuchi/1003 (NRI 2022/10/3) 本格化する防衛力増強、防衛費増額と財源の議論 執筆者:木内 登英、エグゼクティブ・エコノミスト
●防衛力の抜本的な強化に向けた有識者会議がスタート
 日本の防衛力の抜本的な強化を目指す政府が、その検討を本格化させている。「国力としての防衛力を総合的に考える有識者会議」が9月30日に初会合を開いた。年末までに数回の会合を行い、2月上旬をメドに提言をまとめる。その議論は、年内に改定する「国家安全保障戦略(NSS)」、「防衛計画の大綱(防衛大綱)」「中期防衛力整備計画(中期防)」の3文書に反映される。さらに、「中期防衛力整備計画(中期防)」は来年度予算に反映される。2013年に改定された「国家安全保障戦略(NSS)」、2018年に改定された「防衛計画の大綱(防衛大綱)」は概ね10年程度で改定されることが想定されている。また、「中期防衛力整備計画(中期防)」は5年間の計画だ。この3つを同時に改定することは、日本の防衛政策の大きな転機となることは間違いないだろう。有識者会議はその見直しのプロセスに国民目線を反映させる役割を担っている。
●脆弱な継戦能力の向上と「敵基地攻撃能力(反撃能力)」の保有が焦点に
 同会議の初会合に内閣官房国家安全局が提出した資料では、「国際秩序は深刻な挑戦を受けている」、「2025年には中国の軍事的影響範囲は西太平洋全体に及び、米中の戦力バランスも中国側に傾く」との見方を示し、国防上の危機感を強調している。防衛力の抜本的な強化では、継戦能力の向上と敵のミサイル拠点をたたく「敵基地攻撃能力(反撃能力)」の保有が、2つの大きな焦点となる。弾薬は最大2か月ほどしかもたないといった試算があるうえ、精密誘導弾についても数日しかもたないとの指摘もあり、脆弱な継戦能力の向上が焦点となる。また、「敵基地攻撃能力(反撃能力)」の保有は北朝鮮を念頭に置いたものだ。北朝鮮の弾道ミサイルを迎撃するには技術的に限界があることから、抑止力として浮上しているのが、この「敵基地攻撃能力(反撃能力)」の保有だ。8月末に公表した来年度予算案の概算要求で防衛省は、敵基地攻撃能力にも使える射程が長い「スタンド・オフ・ミサイル」の量産などを既に盛り込んでいる。しかし攻撃するには、まず相手の着手を認定する必要があり、その前に攻撃すれば国際法違反の先制攻撃となってしまう、あるいは相手が先制攻撃と受け止めてさらに攻撃の度を増すリスクがあるなどの課題があり、実際の運用には大きな課題を抱えている。その中で、保有するだけで十分な抑止力を発揮できるのかが焦点となるだろう。
●防衛費増額は数字ありきではなく省庁横断、官民協力が重要
 岸田首相は防衛費の抜本的強化を打ち出す一方、「必要な防衛力の内容の検討、予算規模の把握、財源の確保を一体的かつ強力に進めていく」との3点セットを示してきた。単純に防衛費の積み増しを求める声も自民党内には強まる中、こうした方針は重要であり評価できる。自民党内では、北大西洋条約機構(NATO)諸国が国防費予算をGDPの 2%以上とすることを目指していることを念頭に、日本でも防衛費を5年以内にGDP比2%以上とすることを求める声が強まっている。2022年度当初予算で防衛費はGDP比1%の5.4兆円だった。これを5年間でGDP比2%まで引き上げるには、単純計算で毎年約1兆円程度ずつ増額していくことが必要となる。しかし数字ありきではなく、いかに効率的に防衛力を強化することができるかを検討すべきだ。岸田首相は「政府全体の資源と能力を総合的かつ効率的に活用した防衛体制の強化を検討する」と強調している。単純に防衛庁の予算を増額するのではなく、省庁横断で防衛力強化に取り組むために、各府省庁の関連費用を「国防関係予算」として創設することが検討されている。例えば防衛費の規模に関して、政府は海保経費や科学技術費、インフラ整備費などを含めた考え方を検討している。NATOの基準に従って、日本の海保に当たる沿岸警備隊にかかる費用も防衛費に含めることも検討しているのである。「官民の研究開発や公共インフラの有事の活用」も検討されている。従来は行われてこなかった軍民両用(デュアルユース)である。有事に自衛隊が使いやすい空港、港湾などが想定されている。与党内では、他省庁に計上されていた予算を防衛費予算に付け替えることで、防衛費を形だけ膨らませることになってしまうことを警戒する向きもある。しかし、省庁横断で、そして官民協力で防衛力強化に取り組むことにより、いたずらに予算が増加することを抑制しつつ、効率的な防衛力の向上を図ることは重要なことだ。
●国債発行で賄えば経済の潜在力を低下させ将来の防衛力低下も
 さて、防衛力強化、防衛費増額で大きな課題となるのはその財源の問題である。政府内では、法人税率引き上げによる財源確保、あるいはそうした財源の確保ができるまでの「つなぎ国債」の発行、あるいは通常の国債発行、などが検討されている。厳しい国際情勢を踏まえれば、防衛費の増額は一時的な措置となる可能性は低いことから、恒久財源を確保することが望まれる。安易に国債発行で賄えば、それは将来にわたる国民への負担増となり、世代間の負担の公平性の問題以外に、将来の成長期待の低下を通じて、企業の設備投資の抑制などをもたらし、経済の潜在力を低下させる。それは、将来に向けての防衛力の強化という方針に逆行してしまうだろう。また、財源の確保ができるまでの「つなぎ国債」で決着しても、結局は財源の確保ができずに、なし崩し的に通常の国債発行で借り換えられてしまう可能性もあるだろう。従って、当面は「つなぎ国債」で資金を賄うとしても、財源はしっかりと確定させておく必要がある。
●法人税引き上げと個人所得税の引き上げの組み合わせも選択肢か
 仮に年間5兆円規模の恒久財源を消費税率引き上げで確保する場合には、消費税率を2%ポイント引き上げる必要が生じる。ただし増税による財源確保で、現在主に検討されているのは法人税の増税である。バイデン米政権が主導する形で、世界の法人税率引き下げ競争に歯止めが掛かってきたことが、その検討の背景にある。法人税収は2021年度に13.6兆円に達した。その税率は国と地方の実効税率ベースで29.74%である。5兆円の防衛費増額分を法人税率引き上げで賄う場合には、実効税率を37.4%まで8%ポイント近く引き上げることは必要な計算となる。これはおよそ20年前の水準まで法人税率を戻すことを意味するものだ。ただし、国際的な税制の環境が変わって法人税率が引き上げやすくなったから、法人税率引き上げで防衛費増額分を賄う、つまり、取りやすいところから取るという発想は必ずしも妥当ではない。防衛力の強化で誰が利益を得るのか、という受益者を特定し、受益者に相応の負担を求めるとの考え方が重要なのではないか。有事の際に国内の生産施設や内外の物流施設が被害にあえば、企業活動に甚大な支障が生じる。この観点から、企業が相応の負担をするのは適切だろう。他方で、防衛力の強化によって国民の生命が守られるのでれば、国民もその受益者であり、相応の負担を求められるべきではないか。東日本大震災後の復興特別税と同様に、法人税引き上げと個人所得税の引き上げの組み合わせで財源を確保することも、検討すべきではないか。
(参考資料)
「防衛力有識者会議、12月上旬メド提言 安保戦略に反映へ」、2022年10月1日、日本経済新聞電子版
「省庁横断「国防費」提言へ 首相「政府全体の能力活用」-政府内、財源に法人税案」、2022年10月1日、日本経済新聞電子版
「防衛費増、財源論が本格化 法人増税案、復興債が先例」、2022年10月1日、日本経済新聞
「安保戦略、有識者が初会合」、2022年10月1日、朝日新聞 
「防衛費、枠組み議題に 海保経費など一括算入で懸念」、2022年10月1日、産経新聞

*9-2-1:https://www.yomiuri.co.jp/world/20221022-OYT1T50090/ (読売新聞 2022/10/22) ロシアの重要インフラ攻撃、米欧は「民間人巻き込む無差別攻撃」と非難…安保理
 国連安全保障理事会は21日、ウクライナのエネルギー関連施設を含む重要なインフラ(社会基盤)へのロシアの攻撃を巡り、緊急会合を開催した。米欧は民間人を巻き込む無差別攻撃として非難した。会合は、フランスとメキシコが要請した。フランスの国連大使は「ロシアはウクライナの都市を無差別に攻撃することで、ウクライナ国民の士気をくじこうとしている」と批判した。米国などは、ウクライナへの攻撃にイラン製の無人機(ドローン)が使用されたと強調した。英仏独の3か国は21日、イラン製無人機の使用疑惑の調査を国連に求める書簡を国連事務総長と安保理に提出した。国連は「加盟国からの情報は分析する用意がある」(事務総長報道官)との立場だ。ロシアのワシリー・ネベンジャ国連大使は会合で、露軍によるイラン製ドローンの使用を否定。英仏独の書簡に触れ、「調査すれば、国連事務局との関係を見直す」とけん制した。

*9-2-2:https://news.yahoo.co.jp/articles/92a26b4e49c0025737b3d33ba4aedb45dcbdfb17 (Yahoo、産経新聞 2022/10/23) ロシア、電力インフラ攻撃継続 南部では複数集落を放棄
 ウクライナ軍参謀本部は22日、ロシア軍が電力インフラを主な標的として40発のミサイルとイラン製の突入自爆型ドローン(無人機)「シャヘド」16機を発射したと発表した。うちミサイル20発とシャヘド11機を撃墜したが、南部ザポロジエやオデッサ、ミコライフ、西部リウネ、フメリニツキー、東部ハリコフなどの各州で電力などの重要インフラが損傷したとした。また、同参謀本部は22日、ロシアが一方的に併合を宣言した南部ヘルソン州を流れるドニエプル川の西岸地域で複数の集落を露軍が放棄したと指摘した。露軍は同川の西岸地域に位置する州都ヘルソン市で市街戦の準備を進めるとともに、同川の東岸地域に防衛線を構築し、実効支配する南部クリミア半島方面へのウクライナ軍の前進を防ぐ思惑だとみられている。電力など民間インフラへの攻撃について、ウクライナは戦争のルールを定めた国際法規違反だと非難。ゼレンスキー大統領は22日のビデオ声明で、停電の復旧作業が進んでいるとした上で、国民に節電を要請。「停電の中でさえも、ウクライナ国民の生活はテロ攻撃を行うロシアよりも文明的だ」と述べ、国民に団結と忍耐を呼び掛けた。ロシアはクリミアと露本土を結ぶクリミア橋で8日に起きた爆発を「ウクライナのテロ」だと主張し、「報復」として10日からウクライナ各地の電力インフラなどにミサイルやドローンによる大規模攻撃を開始。ウクライナのエネルギー当局は19日時点で、約40%の電力インフラ施設が破壊されたと発表していた。東・南部の戦線で劣勢に立つロシアは橋での爆発を口実に電力インフラを攻撃し、ウクライナ軍の兵員・物資輸送を妨害するとともに、国民の戦意をくじく狙いだとする観測が強い。

*9-3:https://news.yahoo.co.jp/articles/80d8d5d85de0d6b67c26ae5e759be47a29ab7581 (Yahoo、時事 2022/10/7)冷戦以来初の「世界最終核戦争」の危機に 米大統領
 米国のジョー・バイデン(Joe Biden)大統領は6日、世界は冷戦(Cold War)が終わって以来初めて「世界最終核戦争」の危機にさらされているとして、ロシアのウラジーミル・プーチン(Vladimir Putin)大統領にとってのウクライナ侵攻の「出口」を模索していると述べた。バイデン氏はニューヨークで開かれた民主党の資金調達イベントで、人類が世界最終戦争の危機にさらされるのは1962年のキューバ危機以来だと述べた。専門家はプーチン氏が使うとすれば小型戦術核の可能性が最も高いとしているが、バイデン氏は限定された地域への戦術攻撃であろうと、大惨事の引き金になりかねないと警告した。バイデン氏は「プーチン氏が戦術核兵器や生物・化学兵器を使う可能性に言及するのは、冗談で言っているわけではない。ロシア軍の戦果は期待を大きく下回っていると言えるからだ」との見解を示した。また、プーチン氏による核の脅しは「冗談ではない」として、「われわれはプーチン氏にとっての出口を見極めようとしている。彼はどこに出口を見いだすだろうか?」と語った。

<不合理な防衛費使用の果てに>
PS(2022年11月3、4日追加): 韓国軍の合同参謀本部は、北朝鮮が11月3日午前7時40分頃、首都ピョンヤン郊外から日本海に向けて長距離弾道ミサイル1発を発射し、飛行距離約760km、高度約1920kmで、マッハ15で飛行したと発表した。これについて、*10-1-1は、①ミサイル発射で宮城・山形両県等にJアラートが発令され、住民に避難が呼びかけられ ②一時は日本列島を越えて落下したという情報もあったが ③午前9時頃、ミサイルは日本上空を通過していないというニュースが流れ、政府が日本海に落下と修正した と記載しているが、北朝鮮から7時40分頃に発射されたマッハ15のミサイルの飛行ルートを、日本政府が午前9時過ぎに初めて確認したとすれば、多額の防衛費をかけても満足に守備もできないことが明らかであるため、これまで使った多額の防衛費はどこに消えたのかと思う。
 一方、*10-1-2は、④北朝鮮は、2022年3月24日にも大陸間弾道ミサイルを発射して北海道・渡島半島の西方約150kmの日本のEEZ内に落下させており ⑤今回のミサイルが通常軌道で発射されれば米国全土に到達する可能性があり ⑥落下海域は過去の北朝鮮による発射で最も日本列島に近く ⑦岸田首相は「許されない暴挙で断固非難する」と強調し、「制裁を含む対応を日米、日米韓で実施したい」とされたが ⑧ミサイルの領域(領土・領海)内への落下や我が国の上空通過が想定されなかったためJアラートやエムネットは作動させなかった とする。しかし、⑦の制裁が効くのは、日本に大きく依存している国だけなので、いつまでも制裁が効くと考えるのは甘い。そのため、日本の領土・領海・領空を侵したり、侵さなくてもEEZ内に落下させたりすれば漁業者や航行する船舶に危険が及ぶので応酬するとあらかじめ言っておき、演習を兼ねて反撃すればよいと思う。相手も演習なら、こちらもそれを迎撃する演習をして問題ないし、日本は能力が低すぎて迎撃できないのを特定秘密にしているわけではあるまい。
 ただし、迎撃能力が低くてミサイルを完全には迎撃できないことも十分に考えられるため、その場合は、*10-2のように、原則40年・最長60年としていた原発の運転期間を運転開始30年後から10年以内毎に建物・原子炉の劣化具合を“審査”すれば60年超運転することを可能にしたり、小型原子炉は比較的安全だから新設して原発を維持しようなどと言うのは無謀な計画すぎる。そもそも、構築物のうち耐用年数の長い競技場用の鉄骨鉄筋コンクリート造スタンドでも耐用年数は45年で、コンクリート敷・ブロック敷・れんが敷・石敷舗装道路は15年、爆発物用防壁・防油堤は25年、放射性同位元素の放射線を直接受けるもの15年、塔・柱・がい子・送電線・地線・添加電話線36年、送電用地中電線路25年などが通常の耐用年数なのに(http://tool.yurikago.net/583/yurikago/ 参照)、強い放射線を直接受け、高圧に耐えなければならず、事故時には被害甚大になる原発だけは60年を超えて使用できると考えること自体、非科学的で、セキュリティーに甘く、著しく非常識なのである。
 上記のように、防衛費・原発や生産年齢人口への景気対策と称するバラマキには莫大な予算をつけながら、国民の命に直結する介護については、「介護全体にかかる費用が2022年度に13.3兆円と2000年度の介護保険制度創設時と比較して約3.7倍になったため、給付と負担の見直しが必要」として、*10-3のように、⑨介護サービス利用時の原則2割負担への引き上げは見送るが ⑪65歳以上の介護保険料を引き上げる議論を始め ⑩(65歳以上が支払う保険料は既に創設時の2倍超の6000円超だが)現行サービス維持には65歳以上の介護保険料を2040年には月額平均9,000円程度(現在の1.5倍)にする必要があるとし ⑪現在は国の目安で所得に応じて9段階、平均月6,014円、年間所得320万円以上の最も高額な人は月10,224円だが ⑬さらに高所得の階層を作って10段階以上とし負担額を引き上げられないかを探る などとしている。
 が、65歳以上の人の多くは、生産年齢人口時代の所得よりも大きく減った年金所得から介護保険料や医療保険料を事業主負担なく全額自費で支払っているため、生産年齢人口の人より可処分所得がずっと少なく、⑪のように、年間所得320万円以上が所得の多い人に当たり、月10,224円(年間12万円以上)もの介護保険料を支払っているのである。にもかかわらず、⑪⑫⑬のように、さらに65歳以上を標的にして介護保険料を引き上げたり、⑨のように、介護サービス利用時の負担を引き上げたりするというのは、高齢者に対する福祉・生活・人権を考慮していない。
 その上、介護保険制度は、高齢者だけのためにあるのではなく、親等の介護のため離職を余儀なくされそうな生産年齢人口や自らが生産年齢人口でも病気や出産のため介護を受けたい人が、家族に負担をかけずに尊厳を持って介護を受けられることを目的に作ったものなので、65歳という年齢で分けること自体が著しくナンセンスなのである。そのため、「給付と負担の見直し」は、介護を受けることができる年齢制限をなくし、所得に応じて負担額を決めるのが妥当で、そうすれば薄く広い負担となって高齢者に過度の負担をかけずにすむのだ。なお、プロによる介護は、共働き・高齢化社会の進展に伴ってニーズが増えるのは当然であり、政治・行政が不適切(ここが重要)な節約をしなければニーズは次第に大きくなるのが自然であり、高度サービス産業として発達することによって、あとに続く国にノウハウの輸出ができる筈だったのだ。

*10-1-1:https://news.yahoo.co.jp/articles/0c91e16ff4281c7f651be8d99b5818b12e302fe9 (Yahoo、毎日新聞 2022年11月3日) Jアラート発令、宮城・山形などで緊張走る 「予測の精度上げて」
 北朝鮮のミサイル発射により宮城と山形両県などに3日朝、全国瞬時警報システム(Jアラート)が発令され、住民に避難が呼びかけられた。一時は「日本列島を越えて落下」という情報もあり、県庁や漁業関係者に緊張が走った。両県などによると、午前10時現在で被害の情報はないという。宮城県はJアラート発令直後の午前7時50分に危機管理警戒本部を設置した。県庁5階の復興・危機管理部には職員が慌ただしく出入りし、情報収集にあたった。午前8時50分ごろまでに、操業中の漁船に被害がないことを確認。県警や消防にも被害情報は入っていない。午前9時ごろには「ミサイルは日本上空を通過していない」とのニュースが流れたが、千葉伸・県危機管理監は報道陣に「政府からの正式な連絡がまだなので、通過したと想定して県内に落下物などがないか確認にあたる」と話した。防災担当者らによる会議後、復興・危機管理部の佐藤達哉部長は「Jアラートに驚いた県民は多いと思うが、落ち着いた行動が大事だ」と呼びかけた。一時は上空を通過したとの情報もあり、漁業関係者が警戒を強めた。県漁業協同組合気仙沼総合支所の男性職員(60)は「ここ最近頻繁に起きているので、正直な所『またかや』と思った」と話し「政府には北朝鮮にけん制をするよう発信を続けてほしい」と要望した。政府が日本海に落下と修正したことに対しては「二転三転するのも困るので、予測の精度は上げてほしい」とため息をついた。一方、日本三景の松島では、紅葉シーズンに加えて全国旅行支援などもあり、大勢の観光客が滞在していた。大阪府岸和田市から修学旅行に来ていた高校の男性教諭は「出発の直前にアラートがなり、宮城上空を通過したと知りびっくりした」と驚いた様子。すぐに落下との情報が入り、生徒らも落ち着いて行動したといい、予定通り遊覧船に乗船した。栃木県から幼い子どもら家族4人で旅行に来ていた30代の男性は「一瞬怖いと思ったが、結局何も起きず、Jアラートに慣れすぎて、あまり緊急性を感じなくなってしまっている」と本音を漏らした。JR東日本によると、午前7時50分ごろから、東北新幹線の小山―盛岡駅間▽上越新幹線の高崎―新潟駅間▽北陸新幹線の飯山―上越妙高駅間で、それぞれ安全確認のため一時運転を見合わせた。午前8時6分に運転を再開したが、一部に遅れが生じた。JR東日本東北本部によると、宮城県内の在来線でも約20分の遅れが発生した。

*10-1-2:https://mainichi.jp/articles/20220324/k00/00m/030/365000c (毎日新聞 2022/3/24) 北朝鮮弾道ミサイル、米本土到達の可能性 通常軌道で発射なら
 防衛省は24日、北朝鮮が午後2時33分ごろに弾道ミサイル1発を発射し、午後3時44分ごろ、北海道・渡島半島の西方約150キロの日本の排他的経済水域(EEZ)内に落下したとみられると発表した。韓国軍合同参謀本部によると発射地点は平壌の順安(スナン)付近と推定され、飛行距離は約1080キロ、最高高度は約6200キロ。飛行時間(約71分)と最高高度はいずれも過去最高で、日本政府は新型の大陸間弾道ミサイル(ICBM)級とみて警戒を強めている。日本の船舶・航空機などへの被害は確認されていない。防衛省は、通常よりも高い角度で打ち上げる「ロフテッド軌道」で発射したと分析。2017年11月に発射されたICBM「火星15」の飛行時間約53分、最高高度約4500キロを大きく超えており、「新型のICBM級ミサイルと考えられる」とした。今回のミサイルが通常軌道で発射された場合、米国全土に到達する可能性がある。落下海域は過去の北朝鮮による発射で最も日本列島に近いとみられ、北朝鮮のミサイル技術の進展を裏付けた。発射は日米韓などを強くけん制する狙いとの見方が出ている。韓国軍は対抗して地対地ミサイルなど計5発を発射した。岸田文雄首相は24日、訪問先のベルギー・ブリュッセルで記者団に「許されない暴挙で断固非難する」と強調。「国連安全保障理事会決議に違反する」とし、制裁を含む対応を日米、日米韓で実施したい考えだ。現地の主要7カ国(G7)首脳会議でも取り上げる意向を示した。日本政府は、国家安全保障会議(NSC)の関係閣僚会合を首相官邸で開き、松野博一官房長官や岸信夫防衛相らが情報を分析。経済制裁を担当する鈴木俊一財務相も出席した。北朝鮮に対しては北京の大使館ルートを通じて厳重抗議し、松野氏は記者会見で「一方的に挑発をエスカレートさせている」と非難した。一方で政府は今回、全国瞬時警報システム(Jアラート)や緊急情報ネットワーク(エムネット)は作動させなかった。松野氏は会見で「ミサイルの領域(領土・領海)内への落下や、我が国の上空通過が想定されなかったため発出しなかった」と説明した。北朝鮮のミサイル発射は今年に入って11回目。北朝鮮は2月27日、3月5日に順安からICBM級の新型ミサイルを発射。16日にも同じ順安からミサイルを発射したが、この時は発射直後に爆発して失敗した。

*10-2:https://digital.asahi.com/articles/DA3S15463756.html?iref=pc_shimenDigest_top01 (朝日新聞 2022年11月3日) 原発運転、60年超も可能案 規制庁提示、30年以降10年ごと審査
 原則40年、最長60年とする原発の運転期間のルールに代わり、原子力規制庁は2日、運転開始から30年を起点にして10年を超えない期間ごとに建物や原子炉の劣化具合を審査する案を示した。経済産業省が検討する運転期間の延長方針が前提で、この案では60年超の運転が可能になる。原子力規制委員会は、年内にも原子炉等規制法(炉規法)の改正案の骨子をまとめる方針。現行の「40年ルール」は2011年の東京電力福島第一原発の事故後に導入された規制の柱の一つ。運転開始40年を前に原子炉容器の劣化などを調べ、規制委が認めれば1回だけ60年まで延ばせる仕組みだ。これとは別に、運転30年から10年ごとに事業者の運用や管理などの評価もなされる。規制庁の案では、これらを合わせる形で運転開始30年から審査を始める。以後10年を超えない期間ごとに事業者による原子炉の劣化評価や長期施設管理の計画を規制委が審査する。審査をクリアすれば、60年超の原発も稼働できるという。運転期間の延長は、8月のGX(グリーン・トランスフォーメーション)実行会議での岸田文雄首相の指示を受け、経産省が検討。10月に規制委に対し、現在は炉規法で規定されている運転期間を利用政策側(経産省)の法律で規定し直す方針を説明した。規制委の山中伸介委員長は「運転期間は利用側で決めること。規制委が意見を述べるべきではない」と発言。制度の見直しを規制庁に指示していた。

*10-3:https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA3121A0R31C22A0000000/?n_cid=SPTMG002 (日経新聞 2022年11月1日) 介護保険料、高所得者の引き上げ議論 抜本改革は尻込み
 厚生労働省は31日、社会保障審議会(厚労相の諮問機関)の介護保険部会を開き、65歳以上が毎月支払う介護保険料の引き上げに向けた議論を始めた。所得が高い人を対象に検討する。3年に1度の制度改正では目玉の一つだった介護サービス利用時の原則2割負担への引き上げは見送る公算が大きい。膨張する費用が課題となる中、抜本改革には尻込みの状況だ。介護保険制度の次回の改定時期である2024年度に向け、厚労省は本格的な議論に着手している。介護全体にかかる費用は22年度に13.3兆円(予算ベース)と00年度の制度創設時から約3.7倍になった。介護保険の「給付と負担」の見直しが必要になっている。65歳以上が支払う保険料は既に創設時の2倍超の6000円超になった。現行のサービス内容などを維持する場合、65歳以上の介護保険料は40年に月額平均9000円程度と現在の1.5倍になるとの試算を厚労省は示している。ただ高齢者全体で一律に負担増を求めるのは難しいとの指摘は多い。31日の部会で厚労省は「負担能力に応じた保険料設定についてどう考えるか」と議論を促した。介護保険料は自治体が決めている。国が目安をつくり、所得に応じて9段階の基準を示している。平均は月6014円で、最も高額なのは年間所得320万円以上の人で月1万224円だ。厚労省はさらに高所得の階層をつくって10段階以上にし負担額を引き上げられないか探る。自治体によっては既に先行して階層を増やすところもあり、厚労省は参考にして制度設計する。国が段階を増やせば、現在の国の目安と同等に9段階で運用するほとんどの自治体が追随する見通しだ。所得の低い人の保険料を引き下げる案もある。ただ、この見直しによる増収効果はそれほど大きくないとみられる。介護保険を巡っては制度維持に向けて抜本的な改革が待ったなしの状況だ。俎上(そじょう)に載るのが、サービスを利用した場合の利用者負担を原則1割から2割に引き上げる改革案だ。3年前の前回改定時も高齢者の負担増への懸念から先送りした。今回も既に議論は下火になっている。現在は原則1割負担だ。所得に応じて2割を支払っている人もいるが要介護(要支援含む)認定の人の5%程度、3割の人が4%程度にとどまる。原則2割にすれば一定の効果がある。介護サービスを受ける人は75歳以上の後期高齢者が多く、厚労省は原則2割負担は家計への影響が大きいとみている。介護以外の社会保障制度改革との見合いもあるようだ。医療保険制度でも後期高齢者の保険料引き上げが検討されている。後期高齢者が医療と介護の双方で負担増となるのは理解を得にくいと厚労省はみている。厚労省はサービス利用時の2割負担について、所得の高い人に絞って対象の拡大を図る方向だ。31日の部会では後期高齢者の医療保険制度で2割負担の対象者が所得上位30%である点を紹介した。厚労省は議論を踏まえ、年末には介護保険制度の改革に向けた意見をまとめる方針だ。24年度の実施を目指している。小手先の見直しにとどまらず、制度全体を見据えた議論が欠かせない。

<環境汚染に熱心な国、日本>
PS(2022年11月10日追加):環境NGOの国際ネットワーク「気候行動ネットワーク」が、*11-1のように、①国際協力銀行や日本政策投資銀行などが石炭・石油・天然ガスに2019~21年に平均で約106億ドル(約1・6兆円)と世界最多の投資を行い ②日本政府はCO2を出さないとしてNH3を石炭に混ぜる方式を海外に輸出しようとしているのは「偽りの対策」だ として、日本を化石賞に選んだそうで、私も賛成だ。何故なら、今から石炭・石油に投資するのは気候変動対策に逆行する上、自然エネルギーでH2 を作れば安価に国産のクリーンな燃料ができるのに、わざわざ化石燃料を輸入してH2 を作り、燃やせば窒素酸化物が出る燃料を作るのは、コストを上げてクリーンさを放棄する方法だからである。
 また、経産省が、何が何でも原発を稼働させようと、*11-2のように、③「原則40年、最長20年延長」の現行規定を維持する案 ④運転期間の上限を設けない案 ⑤「原則40年、最長20年延長」を維持しつつ停止期間を運転期間から除く案 ⑥停止期間を除外せず運転開始から30年を起点に10年を超えない期間毎に建物や原子炉の劣化具合を審査していく案 を検討しているそうだが、前のめりで、安全性の確認を規制委が担うとしても、目視でどれだけ正確に確認できるかは疑問で、安全第一とは言えない。何故なら、運転休止中も配管・ケーブル・ポンプ・弁などの設備・部品は劣化するし、原子炉のように交換できないものもあるからで、私も原則40年の運転期間をゆるめることは認められないし、これを強行すれば日本政府は国民を守る責務を放棄していると思うが、それでもここまで原発が好きなのは何故か?
 さらに、*11-3のように、⑦佐賀空港への自衛隊輸送機オスプレイ配備計画で、防衛省が「駐屯地予定地以外の隣接する土地も購入する」 ⑧「駐屯地からの排水は西側と東側の樋門(ひもん)から分散して行う」と文書化した ⑨防衛省は排水を海水と混ぜて塩分濃度を調整し空港西側の樋門から放流する案を複数示したが、組合員への説明会で追加の説明を求める声が上がって東側樋門からも放流するように要望が出ていた ⑩海水との混合に関してもノリ養殖に影響が出ないように調整する比重の数値を明示した そうだが、⑦により、漁業などは放棄して土地を売却したい人の要望で話を進めたことが明らかだ。また、⑧の西側と東側の樋門から分散して排水しても汚染水が広がるだけで意味はなく、⑨の排水を海水と混ぜて規定内にしても大量に流すことに違いはない。さらに、⑩は比重を重くしてノリ養殖に影響が出ないようにすれば、汚染物質が底に溜まって貝やヒラメなどの海産物に悪影響を与える。つまり、海は下水処理場ではなく、水産物という食料を確保するには自然を護ることが大切で、クリーンにした処理水しか流せないのである。全員、何か勘違いしていないか?

*11-1:https://digital.asahi.com/articles/ASQCB2RCPQC9ULBH00G.html (朝日新聞 2022年11月10日) 日本に化石賞 化石燃料投資「1.6兆円で世界最多」 COP27
 国連の気候変動会議(COP27)で、温暖化対策に後ろ向きな国に贈られる「化石賞」に9日、日本が選ばれた。環境NGOの国際ネットワーク「気候行動ネットワーク」(CAN)が選んだ。化石燃料への公的資金の投資額が世界最多となったことなどを理由にした。受賞の根拠となったのは、米NGO「オイル・チェンジ・インターナショナル」が8日に公表した調査結果。国際協力銀行や日本政策投資銀行などによる石炭や石油、天然ガス事業への投資額が、2019~21年の年平均で約106億ドル(約1・6兆円)になり世界最多だったという。投資額の多い国はカナダ、韓国、中国、米国と続く。さらに、日本政府が、燃やしても二酸化炭素を出さないアンモニアを石炭に混ぜて発電する方式を海外に輸出しようとしていることは「偽りの対策」で、「石炭発電を延命させるものだ」と批判。途上国の「損失と被害」の支援ではなく、破壊の元となる化石燃料に公的資金を使っているとしている。化石賞はCOPの期間中ほぼ毎日発表されるが、COP27ではこの日が初めて。日本はこれまでも毎年のように受賞している。

*11-2:https://digital.asahi.com/articles/DA3S15468995.html (朝日新聞 2022年11月9日) 原発の運転延長、世論意識し調整 経産省が2案、「停止中除外」有力
 最長60年と定めている原発の運転期間について、経済産業省は8日の原子力小委員会で、三つの案を示した。経産省は小委員会での議論もふまえ、再稼働に必要な審査などで停止した期間を運転期間から除外することで延ばす方向で最終調整している。原発の運転期間は、2011年の東京電力福島第一原発事故後に原子炉等規制法(炉規法)が改正され、原則40年、最長20年延長できると定められた。この日の原子力小委員会で、経産省は今の規定を維持する案のほか、運転期間を延ばす2案を示した。一つは運転期間の上限を設けない案。もう一つは「原則40年、最長20年」の骨格を維持しつつ、再稼働に必要な審査などで停止した期間を運転期間から除く案だ。経産省の資料では、除外案について、「事業者が予見しがたい、他律的な要素による停止期間」を運転期間に含めず、20年の延長期間に追加すると説明。具体例として、再稼働に必要な原子力規制委員会の審査や、運転を差し止める司法判断で停止している期間などを挙げた。経産省内では、この案が最有力となっている。背景にあるのが、世論への配慮だ。「上限撤廃」は無制限に運転を続けるとの印象を与えかねない。原発事故の教訓で生まれた制度だけに、一切なくなるとなれば大きな反発を生む可能性もある。小委員会の議論でも「原子力の利用のみを徹底することはやや行きすぎと思われる」との意見が出た。委員長の山口彰・原子力安全研究協会理事も「国民から理解していただくことが前提」と述べた。一方で、経産省は除外する期間の詳細は示していない。すでに40年超の運転を始めている関西電力美浜3号機(福井県)の場合、審査の申請から再稼働まで6年ほどかかった。こうした期間が候補となりそうだ。北海道電力泊1~3号機は審査が10年近く続いている。今後、運転開始から40年を迎えて延長する場合、20年に加えて10年前後を追加で延ばせることになる可能性がある。いずれの案でも、安全性の確認は規制委が担う。すでに停止期間は除外しない前提で、運転開始から30年を起点に10年を超えない期間ごとに建物や原子炉の劣化具合を審査していく案を示している。
■「事故の教訓ないがしろ」 市民団体
 原発の運転期間の延長には、安全性への懸念が根強くある。全国の約100の市民団体やNGOなどは7日、国会内で集会を開き、原則40年の規定を維持するよう規制委に申し入れた。反対する3663人分の署名も提出した。声明では「老朽原発を動かすことは極めて大きな危険を伴う。交換できない部品も多く、点検できる範囲も限定的だ」と強調。運転期間の規定を炉規法から削除することは「福島原発事故から得た教訓をないがしろにし、国民を守るべき責務を放棄するものだ」と批判する。経産省は、再稼働に必要な審査などで停止した期間を運転期間から除外する方向だ。停止中は核燃料から出る中性子による原子炉の劣化がないとしているが、声明では「運転休止中も、配管やケーブル、ポンプ、弁などの設備・部品が劣化する。原則40年を運転期間とする規定をゆるめることは到底認められない」としている。

*11-3:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/945269 (佐賀新聞 2022/11/10) <オスプレイ 配備の先に>防衛省、漁協要望に踏み込んで回答 予定地以外の土地購入、排水は分散放流 協定見直し会議で回答提示
 佐賀空港への自衛隊輸送機オスプレイ配備計画で、防衛省が「駐屯地予定地以外の隣接する土地も購入する」「駐屯地からの排水は西側と東側の樋門(ひもん)から分散して行う」と従来の説明より踏み込んだ対応の確約を文書化していたことが9日、分かった。県有明海漁協が自衛隊との空港共用を否定した協定の見直しに応じることを決めた1日の幹部会議で、県を通して示されていた。県は、協定見直しの可否を判断する漁協全15支所の代表者らによる検討委員会が1日に開かれるのを前に、漁協から要望を聞き取り、防衛省に対して「回答書」として明文化するよう求めていた。防衛省が取得を目指す駐屯地予定地31ヘクタールは全て漁協南川副支所の所有だが、ここを含む空港西側一帯の約90ヘクタールは早津江、大詫間、広江の3支所にも地権者がいる。これまでは予定地以外の土地に関し「駐屯地開設ごろの売却の可能性や範囲について地権者の考えを伺いたい」としてきたが、回答書では「予定地を購入後、隣接する土地も購入する」と明記した。漁協が重要視していた駐屯地からの排水対策を巡っては、防衛省は排水を海水と混ぜて塩分濃度を調整し空港西側の樋門から放流する案を複数示していた。それでも夏に開いた組合員への説明会では追加の説明を求める声が上がり、東側樋門からも放流するよう要望が出ていた。防衛省は、排水場所の変更について「議論のテーブルにのせる」という表現でにとどめていたが、回答書では「分散して排水する」と確約。海水との混合に関してもノリ養殖に影響が出ないように調整する比重の数値を明示した。その上で今後も組合員向けに説明会を開いていくとした。また、防衛省は「駐屯地に米軍の常駐計画はない」とする考えも回答書に記載した。夏の説明会で組合員から米軍についての考えを文書化するよう求められていた。山口知事は9日の県議会一般質問で、漁協が抱えるさまざまな懸念について、防衛省に「口約束ではなく文書化を迫った」と答弁し、回答書の存在を明らかにした。回答書は1日付で、県の担当者が検討委員会に示した。検討委員会で漁協は、空港建設時に県との間で結んでいた協定について「空港を自衛隊と共用できる」と変更することに応じた。

| 外交・防衛::2019.9~ | 04:57 PM | comments (x) | trackback (x) |

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