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2014.8.20 日本メディアの女性蔑視とそのメディアが担う民主主義のレベルについて (2014.8.22追加あり)
(1)産経新聞の朴大統領をめぐる噂の報道について
 *1-1のように、韓国大統領府の尹広報首席秘書官が、「朴大統領が旅客船沈没当日、行方不明に…誰と会っていた?」と題する記事を掲載した日本の産経新聞に対し、民事・刑事上の責任を問う方針を示したそうである。私も、衆議院議員時代、日本の雑誌や新聞に事実と異なる失礼千万な女性蔑視記事を書かれることが多かったため、朴槿恵大統領には、ここでしっかり闘ってもらいたいと思っている。

 これに対し、*1-3のように、産経新聞は、「東京本社にインターネット記事削除の要請があったが応じていない」とし、産経新聞東京編集局長が8月9日の紙面で、「問題とされた記事は韓国国会でのやりとりや朝鮮日報コラムの紹介が中心であり、この記事を理由に名誉毀損容疑で出頭を求められるというのは理解に苦しむ」としたそうだ。また、インターネットでは、「朝鮮日報のコラム書いたやつ逮捕しないの? あれが大元だろ」「言論統制そのもの」「こういうのをファシストと呼ぶ」などといった産経新聞を擁護する書き込みが少なくないそうだ。

 一方、中国のメディアは、*1-2のように、「産経新聞がセウォル号沈没後、韓国の朴大統領が7時間以上にわたり行方不明となり、その間、男性と密会していた疑惑を報じた」「日本では、報道をめぐって外国メディアの記者が捜査対象にされるのは異例なのに、韓国政府は感情的になっていると報道された」「朴大統領の当日の行動に関する説明は不十分といった日本のメディアから批判的な声が聞こえている」などとしている。

 しかし、産経新聞も、記事にして報道する以上は、内容の真実性に責任を負わなければならないし、韓国国会でやりとりがあったとしても、その書き方には責任がある。また、記事の内容が真実でない場合は、大統領であっても提訴する権利はあり、提訴されたことをもって感情的と逆ギレすべきではない。特に、朴大統領の場合は、「国と結婚する」と言って独身でいる人であるため、この報道によるダメージは大きい上、実際には、(若くは見えるが)62歳の朴大統領が朝9時から変な意味で男性と密会していたというよりは、人と会って秘密にしなければならないような会議をしていた可能性の方が高い。

(2)笹井氏と小保方氏の場合
 STAP細胞論文の共同執筆者で、理化学研究所発生再生科学総合研究センターの笹井副センター長(52)が8月5日、先端医療センター研究棟内で首を吊って自殺した。

 これを、*2-1では、7月27日に放送されたSTAP細胞問題に関する「NHKスペシャル」で、理研の調査委員会に提出された笹井氏と小保方氏のメールのやりとりのうち、「小保方さん本日なのですが、東京は雪で、寒々しております。小保方さんとこうして論文準備ができるのを、とてもうれしく思います」などの個人的なメールが暴露されたことが原因で、笹井氏は、「交際疑惑までささやかれていた」「すべてを他人の責任にしてリセットできる人は自殺しない。自殺は責任感の極まるところ」などとしているが、この個人メールの内容は、上席研究員が部下の女性研究員に部下を持ちあげる丁重なメールを送ったもので、どう見ても性的な関係のある男女間のメールではない。

 そして、*2-2のように、笹井氏が妻と兄に宛てた遺書には、自殺する理由について「マスコミなどからの不当なバッシング、理研や研究室への責任から疲れ切ってしまった」「今までありがとう」「先立つことについて申し訳ない」などの言葉が記されていたそうだ。普通の人はそれまでの仕事の積み重ねによる実績を背景に現在及び将来の仕事のネットワークを作っているものだ。そのため、全てを他人のせいにしたり、リセットしたりできる人は、マッチポンプの記者か役人くらいしかいないにもかかわらず、実績ある人の実績を否定して破滅に追い込み、責任の一端すら感じないメディアや評論家の言動には呆れる。

(3)両者に共通するものは、女性蔑視だ
 両者は、活躍している女性を貶めるための下品な性的スキャンダルであるという点で共通している。

 朴大統領の場合は、全体として、すでにトップに立っている女性を目障りと感じる者が叩き落とそうとしてでっちあげたものだろう。私は結婚しており、そのようなことに非常に気をつけていたので、衆議院議員時代にそういうケチのつけられ方をすることはなかったが、そのかわりに週刊文春やインターネットによるキャリア・ウーマン叩きの嘘記事で、これまで作ってきた実績をなきものされた。それは、被害者にとっては、過去の被害ではなく、現在の被害であり、未来に影響している被害なのである。

 また、小保方氏の場合は、部下としてかわいがってもらわなければ自らの研究が進まない上司である笹井氏とのよい関係を男女関係としてバッシングされたもので、それにより、女性研究者の協力者となった優秀な男性研究者もバッシングされ、「女性研究者と一緒に仕事をするのはこりごりだ」という風潮ができてしまい、こういうことは、男女の機会均等を阻む要因となる。そして、これも、私が公認会計士として働いていた頃、能力を評価して引き上げてくれた男性上司との関係を変に言われたり、たまたま乗り合わせたエレベーターから一緒に降りてきただけで「どういう関係か」と言われたりして、理解ある男性上司の方に嫌な思いをさせることがあったので経験済だ。

 そして、このような低レベルで品のない憶測記事は、女性が輝きながら働くのを妨げる敵の一つであるため、必ず駆逐しなければならないと考えている。

<朴大統領の場合>
*1-1:http://japanese.yonhapnews.co.kr/relation/2014/08/07/0400000000AJP20140807002200882.HTML
【ソウル聯合ニュース 2014/8/7】 朴大統領めぐるうわさ報道 産経新聞に「責任問う」=韓国
 韓国青瓦台(大統領府)の尹斗鉉(ユン・ドゥヒョン)広報首席秘書官は7日、「朴槿恵(パク・クネ)大統領が旅客船沈没当日、行方不明に…誰と会っていた?」と題する記事を掲載した日本の産経新聞に対し、民事・刑事上の責任を問う方針を示した。この記事は朝鮮日報のコラムと証券街の情報などを引用し、朴大統領の私生活に関するうわさを報じており、外国のマスコミが他国の首脳を侮辱したと物議を醸していた。尹秘書官は「口にするのも恥ずかしいことを記事にした。うそを書いて読者を増やせるのかもしれないが、とことんまで厳しく対処していく」と述べた。また、市民団体がすでに産経を告発したことも明らかにした。これと関連し、最大野党・新政治民主連合の安敏錫(アン・ミンソク)国会議員は同日の人事聴聞会で、社会副首相兼教育部長官に指名された黄祐呂(ファン・ウヨ)氏に対し「朴大統領が所在不明だった7時間の間に何らかの不適切な行為をしたといううわさを産経が掲載した」と述べた。また「もしもわれわれが日本の首相や天皇について同じような記事を書いたなら、(日本は)黙っているだろうか。プライドもないのか」と追及した。

*1-2:http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20140820-00000031-rcdc-cn
(YAHOOニュース Record China 2014年8月20日より) 産経の朴大統領報道、韓国検察は「重罪」を検討、日本では「韓国は感情的」と反発の声―中国メディア
 2014年8月20日、環球時報(電子版)は「韓国、産経記者に重罪を検討」と題し、産経の朴槿恵(パク・クネ)大統領報道に関して、韓国検察側の姿勢と日本メディアの反応を伝えた。産経新聞は今月3日、セウォル号が沈んだ当日の朴大統領の動向について、韓国紙・朝鮮日報のコラムなどを引用しながら、「朴大統領が7時間以上にわたり行方不明となっていた。その間、男性と密会していたのではないか」という疑惑を報じた。同報道に韓国は国家元首の名誉棄損と批判し、18日には産経新聞のソウル支局長・加藤達也氏がソウル中央地検で事情聴取を受けた。韓国・国民日報によると、検察側は加藤達也氏に対し情報通信網法の名誉毀損罪の適用を検討している。同罪が適応されれば、7年以下の懲役、10年間の資格はく奪または5000万ウォン(約500万円)の罰金が言い渡される。一方、韓国の検察側の姿勢に日本メディアからは批判的な声が聞こえている。日本では、「報道をめぐって外国メディアの記者が捜査対象になるのは異例。韓国政府は感情的になっている」「朴大統領の当日の行動に関する説明は不十分」といった報道が見られた。

*1-3:http://www.j-cast.com/2014/08/09212789.html (Jcastニュース 2014/8/ 9) 
産経新聞ソウル支局長に出頭要請 朴大統領めぐる報道で「名誉毀そん」の疑い
 産経新聞がインターネットに掲載した記事で韓国の朴槿恵大統領の名誉を毀そんしたとの市民団体の告発を受けて、ソウル中央地検が同社ソウル支局の加藤達也支局長(48)に事情聴取のため出頭するよう求めたことがわかった。産経新聞は2014年8月9日付朝刊で、加藤支局長が12日に出頭するよう求められていることを明らかにした。8月3日、「MSN産経ニュース」に掲載された「追跡~ソウル発 朴槿恵大統領が旅客船沈没当日、行方不明に…誰と会っていた?」の記事が問題視されている。
●「名誉毀そん容疑で出頭。理解に苦しむ」
 記事は、4月16日に起きた旅客船・セウォル号の沈没事故の当日、朴大統領の姿が7時間にわたって確認できなかったことをめぐり、その間の行動などに韓国国内で論議が高まっているという内容。セウォル号事故などをきっかけに、6割前後だった朴大統領の支持率が4割に落ち込んだことを引き合いに、「こうなると吹き出してくるのが大統領など権力中枢に対する真偽不明のウワサだ。こうした中、旅客船沈没事故発生当日の4月16日、朴大統領が日中、7時間にわたって所在不明となっていたとする『ファクト』が飛び出し、政権の混迷ぶりが際立つ事態となっている」との書き出しではじまる。韓国の国会内での議論やうわさ、地元紙、朝鮮日報に掲載されたコラムなど公開されている情報をもとに、それらを紹介するかたちで書かれている。ウェブサイトへの掲載後、産経新聞には韓国大統領府からソウル支局に抗議があったほか、在日本韓国大使館から東京本社に「名誉毀そんなどにあたる」として記事削除の要請があったが、同社は記事の削除に応じていない。小林毅・産経新聞東京編集局長は8月9日付の紙面で、「問題とされた記事は韓国国会でのやりとりや朝鮮日報コラムの紹介が中心であり、この記事を理由に名誉毀損容疑で出頭を求められるというのは理解に苦しむ」とコメントしている。インターネットでは、「朝鮮日報のコラム書いたやつ逮捕しないの? あれが大元だろ」「言論統制そのもの」「こういうのをファシストと呼ぶ」などといった産経新聞を擁護するカキコミが少なくない。

<笹井氏と小保方氏の場合>
*2-1:http://news.livedoor.com/article/detail/9122028/
(livedoor NEWS) 笹井氏悲劇の裏に「裏切りリーク」「小保方氏とのメール暴露」
 笹井芳樹悲劇の裏には一体、何が!? STAP細胞論文の共同執筆者で、理化学研究所発生・再生科学総合研究センター(CDB=神戸市)の笹井芳樹副センター長(52)が5日、同センターの施設が入る先端医療センター研究棟内で首をつっているのが発見された。現場には遺書が残されており、自殺とみられる。同論文主著者の小保方晴子研究ユニットリーダー(30)も大きなショックを受けているという。それにしても日本有数の再生医学の権威は、なぜ死に場所にあえて研究棟を選んだのか?理研の広報室などによると午前8時40分ごろ、笹井氏が首をつっているところをセンター関係者が発見。ただちに警察と消防に通報し、隣接する神戸市立医療センター中央市民病院に運ばれたが、午前11時3分に死亡が確認された。現場状況から事故や他殺の可能性はないという。5日午後、笹井氏の自宅に人の出入りはあったものの、報道陣への応対はなかった。笹井氏は遺書とみられる書面を4通残し、3通が自殺現場にあった。小保方氏宛てのほか、部下やCDBの竹市雅俊センター長(70)への謝罪、さらに理研の関係者宛てに、残された家族に対してのことが書かれていたという。また、笹井氏の研究室内にある秘書の机には、総務課長らへの遺書があったという。関係者によると、小保方氏宛てのものには「STAP細胞を再現してください」という趣旨の言葉が記されていた。ノーベル賞候補と称されたこともあるエリート研究者の自殺の裏側には何があったのか。理研の関係者は「笹井さんは裏切られたと話していました」としてこう語った。「笹井さんは味方も多いが、敵も多かった。その反笹井派がやったNHKを筆頭にしたマスコミへのリークが度を越えていた」。度を越えたリークとは、個人的なメールの暴露で、それもかなりひどい状況だったようだ。理研から与えられたアドレスで小保方氏と行ったやりとりが、調査で公表していない部分まで全て漏れていたというのだ。笹井氏は6月に「自分が出したメールがバラまかれている。その内容をコピーしたものを添えて、私をバカにするような内容のメールが届いた」と、あるジャーナリストに明かしていた。確かに先月27日に放送されたSTAP細胞問題に関する「NHKスペシャル」では、理研の調査委員会に提出された笹井氏と小保方氏のメールのやりとりが放送された。「小保方さん本日なのですが、東京は雪で、寒々しております。小保方さんとこうして論文準備ができるのを、とてもうれしく思います」と男性のナレーションで笹井氏のメールを紹介。続けて女性の声に変わり「また近いうちにご相談にうかがわせていただけないでしょうか」との小保方氏のメールが、画像をバックに読み上げられた。「騒動が過熱してからは笹井さんも小保方さんも理研のアドレスを一切、使用しなくなった。メールの盗み見とリークについては、小保方さんも笹井さんも『そんなことまでするのか』と疲弊していました」(前出の関係者)。ましてや2人には交際疑惑までささやかれていたから、なおさらだ。理研内部の何者かの裏切りリークに心を痛めつけられたことが、自らの命を絶つ引き金になった可能性は否定できない。自殺場所として選んだのは、自宅でもなく、研究拠点である発生・再生科学総合研究センターでもない。自分の研究室がある先端医療センター研究棟2階でもなく、iPS細胞の研究もしている先端医療センター研究棟5階の階段部分だった。メールをリークした裏切り者へ「なぜそこまでする?」という抗議の意図があったのだろうか。精神科医の東京・銀座泰明クリニックの茅野分(ちの・ぶん)院長は、こう指摘している。「STAP細胞やiPS細胞の研究をしていた場所で自殺をしたのは、内心STAP細胞が本当にあるのかと疑問に思いつつも、わが命を懸けてでも最後の責任を取り、誠意を表したいと思ったのでは。殉死したという印象。武士の切腹に近いものを感じる」。また、一方で「すべてを他人の責任にしてリセットできる人は自殺しない。自殺とは責任感の極まるところ」と茅野氏は、笹井氏の自責の念が自殺という選択肢を引き出してしまったのでは、ともみている。笹井氏が心理的なストレスで3月に入院していたことも、5日に明らかにされた。本紙もその当時、笹井氏の精神不安を報じている。小保方氏も大きなショックを受けており、騒動の発端となったSTAP細胞論文に影響も出そうだ。自殺で失ったものは計り知れない。

*2-2:http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20140812-00000107-mai-soci
(毎日新聞 8月12日)  <笹井氏自殺>家族宛て遺書も 遺族「絶望しか見えない」
 STAP細胞論文の著者の一人で、自殺した理化学研究所発生・再生科学総合研究センター(神戸市)の笹井芳樹副センター長(52)の遺族の代理人弁護士が12日、大阪市内で記者会見し、家族宛ての遺書の概要を明らかにした。自殺する理由について「マスコミなどからの不当なバッシング、理研や研究室への責任から疲れ切ってしまった」との趣旨の記述があったという。代理人の中村和洋(かずひろ)弁護士によると、遺書は妻と兄宛て。いずれも「今までありがとう」「先立つことについて申し訳ない」などの言葉が記されていた。笹井氏の状況について、遺族は中村弁護士に「論文の疑惑が指摘された今年3月ごろから心労を感じていた。6月にセンター解体の提言を受け、相当ショックを受けていた。精神的に追い込まれ、今回の事につながった」と話したという。遺族は中村弁護士を通じて出したコメントで「突然の出来事を受け入れることができずにいます。今は絶望しか見えません」と心境を明かした。理研の職員や研究者には「おわびのしようもありません。一日も早く、研究・業務に専念できる環境が戻ることを切に願うばかりです」としている。


PS(2014.8.22追加):*3に「科学論文ではどんな仮説を立て、実験でどう検証し、結論に至ったかを具体的なデータを示し理路整然と説明しなければならない」と書かれているが、それは科学論文だけではなく、新聞記事でも同じだ。にもかかわらず、日経新聞を筆頭とする日本の新聞は、消費税増税、原発事故、年金削減の影響などについて、具体的なデータを出して理路整然と説明することなく、意図的に政策誘導している役所の広報をまる写しして嘘の多い報道をしているため、このようなことを書くとおこがましいのだ。新聞等のメディアがこのような報道しかできなければ、国民は、選挙権のある主権者として当然持っておくべき知識や情報を知ることができず、民主主義が形骸化するので、問題なのである。

 なお、「万能細胞はES細胞か、iPS細胞しかありえない」と考え、そのための証拠探しに時間を費やすような研究者は、これまでの常識にとらわれすぎて常識を覆すような大発見はできない。しかし、ES細胞やiPS細胞も最初は常識を覆す大発見だったのであり、できないという考えをいくら述べても、科学の進歩を妨げこそすれ、世の中の役には立たない。

 *3には、「笹井氏は、嘘は避けつつ曖昧さの残る書き方が目立つ」とも書かれているが、ES細胞やiPS細胞も最初の論文からすべてPerfectにわかっていたわけではなく、新事実を発見して実用化していく場合には、段階的に解明していくのが当たり前だ。なお、新聞は、データを無視して平気で嘘を書いているため、「研究者は嘘は書かない」という点を見習うべきである。

 また、「笹井さんほどの人が、なぜ小保方氏以外にも再現実験させなかったのか」とのことだが、第一線の研究所では、(女性であれ、男性であれ、また年齢がいくつであれ)研究者が自らの研究者生命を危うくするような捏造データを出してくるとは疑わないのが普通であり、そのような画期的な発見について他の研究者に再実験をさせると、秘密を守れない可能性があるとともに、誰が(教科書に載るような)最初の発見者かわからなくなってマナー違反であるという理由が考えられる。

*3:http://www.nikkei.com/article/DGXLZO75986690S4A820C1SHA000/?dg=1
(日経新聞 2014.8.22) STAP、悲劇防ぐためにも徹底究明を(真相深層)
 理化学研究所発生・再生科学総合研究センター(CDB)の笹井芳樹副センター長が自殺し、STAP細胞の論文不正を巡る真相究明が危ぶまれている。笹井氏は最初から、いくつかの不自然な点に気づいていたともいわれる。残されたデータや共同研究者らの聞き取りをもとに、論文作成の経緯を丁寧にたどる必要がある。
■論文の土台に
 「ひどい書き方だった」。英科学誌「ネイチャー」に載った小保方晴子研究ユニットリーダーが数年前に書いた論文を見た研究者は振り返る。笹井氏の指導を受けて見違えるほどよい出来栄えに仕上がり、ネイチャー論文の土台となった。科学論文ではどんな仮説を立て、実験でどう検証し、結論に至ったかを具体的なデータを示し理路整然と説明しなければならない。笹井氏はSTAP細胞の存在を示す画像やグラフをそろえるよう小保方氏に次々と指示、同氏は手際よくデータを出したとみられる。画像などの出どころはチェックされないまま作業は進んだ。「笹井さんほどの人が、なぜ詳しく検証せず、小保方氏以外にも再現実験させなかったのか」と、笹井氏と仕事をした経験のある研究者は首をかしげる。ネイチャーのSTAP論文は2本ある。発表当初、多くの研究者が驚いたのは、笹井氏が責任著者の一人となった短い方の論文の冒頭にある画像だ。STAP細胞から作ったとされる胎児マウスの体、それを包む羊膜、胎盤などがすべて緑に光っているように見えた。緑の光はSTAP細胞があらゆる組織に育ったことを示す証拠となる。胚性幹細胞(ES細胞)など他の万能細胞は羊膜や胎盤を作らないとされており、笹井氏らは記者会見などでこの画像をもとに、STAP細胞の優れた性質を強調した。論文の不正が明らかになりSTAP細胞の存在が揺らいでからも、この画像は謎とされた。STAP細胞が作られていなかったとしたら、なぜ胎盤や羊膜が光ったのか。
■謎残されたまま
 医科学系の若手研究者は「ES細胞を使った場合でも光って見える可能性がある」と指摘する。ES細胞は羊膜の一部にはなれる。胎盤にある母体から入った細胞や血管も光り、論文の画像のように見えることもある。論文はES細胞が胎盤部分に見いだされるのは「まれ」と記述し、これらに「ならない」とは書いていない。STAP細胞は胎盤や羊膜などに「寄与した」としながら、どこにどう寄与したかは明記していない。嘘は避けつつ、あいまいさの残る書き方が目立つ。笹井氏は画像がSTAP細胞の万能性を示す証拠として「弱い」と気づきながら、問題点をオブラートで包むように慎重に書いたのではないかとの見方が出ている。STAP細胞の主張が虚構だったのかを知るうえで重要な点だ。ES細胞を使って実験し、詳しく検証する必要がある。もう一方の論文の謎も残る。マウスの血液細胞から作った「STAP幹細胞」に、もとの血液細胞の「痕跡」があることを示す遺伝子解析データがないことだ。これでは、成熟した細胞が受精卵に近い状態に戻り「初期化」したといえない。CDBの自己点検検証委員会は笹井氏らが論文発表前にこの問題を話し合った事実をつかんだ。「論文の一番の弱点だ。引き返すチャンスはあった」と委員長を務めた鍋島陽一・先端医療振興財団先端医療センター長は残念がった。笹井氏は細胞の一部を新しい培地に移すことを繰り返すうちに痕跡が消えたと解釈し、詳述を省いた。重大な問題を素通りするよう笹井氏をせき立てたのは何か。論文掲載が年度内に間に合わないと、予算上の不都合があったのか。米国で特許出願し、内容が既に公開されていたために競争を意識して急いだのか。笹井氏は論文撤回に抵抗した共同研究者のチャールズ・バカンティ米ハーバード大学教授との交渉の窓口にもなっていた。特許問題などを巡り、どんなやりとりがあったのか。「笹井氏はCDBを守るために犠牲になった」という声を若手研究者から聞いた。STAP論文ができた経緯を深追いしない空気も出ているようだが、逆だろう。悲劇を繰り返さないためにも詳細な調査が必要だ。

| 男女平等::2014.7~2015.5 | 05:48 PM | comments (x) | trackback (x) |

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