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2013,06,16, Sunday
医療保険料を支払っている以上、先進医療も含めてすべての治療が医療保険適用とされるのが本来の姿だ。特に抗がん剤などは、外国で効くことが証明されていても、日本で使えない治療薬が多いが、もともと公的医療保険から先進医療を除外するという前提ではなく、また除外されては困るものである。
私は、基本的には、(国民)患者の幸福のためには、先進医療も含めて、すべてを公的医療保険の適用対象にすべきだと考えている。そうでない場合が許されるとすれば、それは、治験の国間タイムラグくらいだ。しかし、現在、先進医療も含め、すべての医療が公的医療保険の適用対象になっているかと言えば、そうではない。それならば、保険適用外の治療をしなければならない局面は、(貧しい人も含めて)誰にでもあり、保険適用外の治療をすれば、適用内の治療部分まで保険適用からはずされるというのは不合理きわまりない。そのため、混合診療で多く採用され、実績を挙げた先進医療は、速やかに公的医療保険の対象として、国間の医療ラグを最小にすることが、患者(国民)の為に必要なのである。 「新しい薬や技術を使う意欲のある医師が多く、それを望む患者もいる」というのは、医師の金儲けのためではなく、患者を治したいからであり、患者もどうしても治りたいからである。このような純粋な気持ちに対して、痛くもない腹を探られるのでは、医師もたまったものではないだろう。 また、「医療費を膨張させないため」「公的医療費の抑制のため個人負担の自由診療を増やすべき」等々の発想は、公的医療保険の保険料を支払っている国民に対して詐欺であり、国民を愚弄している。何故なら、いざという時に最善の医療を安く受けるために、国民は、元気な時から公的医療保険料を支払っているのだからである。そもそも、「公的医療から先進医療は除く」というのは、病気の治療も金次第となし、わが国の公的医療保険制度を実効なきものにする考え方である。 *1:http://mainichi.jp/opinion/news/20130615k0000m070113000c.html (毎日新聞社説 2013年6月15日) 混合診療 医療費の膨張を招く 政府は医療の保険外併用療養を拡大することを盛り込んだ規制改革の実施計画を閣議決定した。専門評価機関を創設し今秋をめどに抗がん剤から拡大を検討するという。「踏み込み不足」との批判もあるが、それは的はずれだ。患者の安全のためにも、医療費を膨張させないためにも、混合診療解禁につながりかねない道へ踏み込んではならない。 現在は保険適用の治療と自由診療を併用すると保険適用分も含めて費用はすべて患者負担となる。混合診療は患者の全額負担を自由診療分だけにすることで、実質的に制限されている自由診療を広めようというものだ。このうち一部の先進医療について国指定の医療機関で有効性や安全性をチェックしながら混合診療を認めているのが保険外併用療養だ。 新しい薬や技術を使う意欲のある医師は多く、それを望む患者もいる。製薬や保険業界はビジネスチャンスの拡大を待望している。公的医療費の抑制のため、個人負担の自由診療を増やすべきだとの主張もある。 ただ、医療は不確実性が高く工業製品を組み立てるようなイメージとは異なる。混合診療が解禁されれば有効性や安全性がよく確認されていない新薬が次々と登場し、自社製品を宣伝する製薬会社の情報が氾濫する中で、医師の裁量によって保険適用の医療と自由診療が混然一体となって行われるだろう。安全性が不確かな薬を使えば付随する検査や副作用を抑える薬の使用も増えるだろう。医療機関のレセプトは診療報酬支払基金などにすべて回され、都道府県ごとの審査委員会で専門の医師らが不適切で過剰な医療行為がないか調べているが、そうしたチェックも利かなくなる。自由診療が増えると公的医療費も増えることを示す調査結果があり、自由診療が幅を利かせる米国の薬価は日本の2倍前後も高い。 製薬会社はあえて厳しい臨床試験を行わなくても高価格の自由診療を選ぶようになり、自由診療の比重が大きくなれば富裕層しか受けられない医療が増える。質の高い医療を受けるためには高額の保険に入らなければならず、米国の企業は従業員に民間保険を提供し、これが経営負担になっているといわれる。 日本では医療の地域偏在や診療科偏在が著しく、都道府県の医療計画に基づく適切な医療供給体制を整えることが検討されている。誰もが必要な医療を受けられるためには公的な規制が必要なのだ。保険外併用療養の拡大を混合診療解禁の布石にしようとする人々もいるだろうが、公的なコントロールが利かなくなると医療費が膨張し深刻な影響が広がる恐れがあることを考えるべきだ。
| 年金・社会保障::2012.4~2013.7 | 02:44 PM | comments (x) | trackback (x) |
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