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2014.5.31 農林業は、改革の方向性を間違ったら取り返しがつかなくなる (2014.6.2最終更新)
    
*3-1より   日本の大豆畑        日本の麦畑       日本の水田

(1)自己目的化しているTPP決議
 *1には、「日米協議の詰めを急ぎTPP交渉決着を」と題して、「交渉12カ国による共同声明は交渉妥結に何が必要かの見解を共有し、決着を目指す機運が高まった」と記載されているが、具体的なことは何も書かれていない。そして、私が、このブログで何度も記載したとおり、TPP条約が締結されると、既に貿易自由化や現地生産が進んでいる日本の製造業にとってはメリットがなく、規制に関して主権を失うディメリットの方が大きい。それに加えて、食品の安全基準緩和や農産品の関税引き下げ、医療保険、ISD条項等の問題によるディメリットが大きいため、全体として、TPP条約の締結はわが国の誰にどういうメリットがあるのか不明であり、日本にとってはマイナスの方が大きいように見える。

 このような中、「日米が2国間協議で膠着状態に陥った」「日米間の協議が前進し、障壁だった対立の構図が薄れた」などとして、いかにもシビアな交渉をしているかのような報道をするのは、TPP決着努力を自己目的化しており、見かけだけの交渉努力に思える。

(2)農業や地方を知らない人が作った農業改革案は適切ではない
1)農協法に基づく中央会制度の廃止はよいことではない
 *2-1に書かれているように、農業を強くするためとして、規制改革会議は、「①農家や地域の農協が独自に経営強化に取り組むには、全中が持つ権限を弱める必要があり、全中の『指導権』を廃止することを求める」「②各地の農協が、上部団体に納めてきた『上納金」といえる賦課金は、グループの方針を国の政策に反映させる陳情活動などに使われ、『負担が大きい』『使い道の情報開示が不十分』などと批判があるため、廃止して農協ごとの農家支援策に使えるよう改める」としている。

 しかし、全中が強いから農家や地域の農協が経営強化できないというのは、経団連、弁護士会、司法書士会、税理士会、公認会計士協会、医師会、看護連盟、労働組合など、どの業種も業界全体の利益を纏める組織を持っていることから考えておかしい。また、全体が纏まって初めて政治にモノが言えるため、そのやり方も、農協の組合員が民主的な方法で決めるべきだ。

 さらに、「約700ある地域の農協が自由に活動できるようにするため、全中の『指導権』を廃止して、全中、県団体、農協というタテの『指揮系統』を見直す」というのはいわれなき強者叩きであり、軍隊と官僚機構以外の組織は、現場の方が事情に通じていて行動しやすいことと、それらの諸事情を統合してより高い見地から意思決定や交渉を行うべきことが混在しているため、内容によってトップダウンだったり、ボトムアップだったりするのが普通である。そのため、*3-1に、「中央会廃止論も中央会指導が単協の独自性をそいでいるかのような誤った認識に基づいている」「JAグループは、現場の実践を最大限尊重し、優良事例は横展開し相互に高め合う柔軟な組織構造で、上意下達のような指揮系統にはなっていない」と書かれているのであり、これは本当だ。そして、これについては、*3-1、*3-2、*3-3、*3-6、*3-7など、現場を知る学者の反対意見が多く、横の連携も、まとめ役があって初めて効率的に機能するものであるため、規制改革会議のこの提案は、農業や一般の組織を知らない人の作文である。

 なお、*2-1に、「農協関係者が、全中は利益を重視した革新的な取り組みより、グループの秩序を壊さない伝統的な運営方針を好む傾向があると言うので、改革案で、農家や地域の農協が独自に経営強化に取り組むには全中が持つ権限を弱める必要があるとして全中の『指導権』を廃止することを求める」と記載されているが、*3-1、*3-2等に書かれているとおり、JAグループは、現在、主体的に自己改革に取り組んでおり、環境次第で、全中も先進的で強力なリーダーシップを持つことができるのは明らかであるため、組織を弱めることを目的とする“改革”はマイナスである。

2)農協の配当率制限をなくすのは、どういう意図か?
 *2-1に、「農協は出資の配当が7~8%に制限されており、こうした制限もなくす」と書かれているが、配当率7~8%というのは、日本国内では、現在、高い配当率である。しかし、配当率は組織で決めるのが本来の姿であるため、法律上の制限を無くして組織決定にしてもよいと思う。しかし、これは、出資者である組合員のためになる改革なのか否か、この記述からは不明だ。

3)農協の役員制限緩和について
 *2-1に、「農協の役員に登用できる外部の人材は定員の3分の1未満だが、この規制も緩和し、民間から経営感覚のある人材を登用できるようにする」と書かれているが、農協に必要な経営上の見識は、民間の経営感覚とは異なる。わかりやすく言えば、NHKの○○会長のようになっては取り返しがつかないため、農協は3分の1未満という制限をつけながら外部人材も入れているのだ。そして、私も、「民間の経営感覚」は補助的にあればよいと考えるが、認定農業者だけでなく、その他の農業に従事した経験のある人、川下の食品産業やサービス産業に従事した経験のある人など、多様な役員が、経営意思決定権のない50%未満くらいはいてよいかも知れない。

4)全農自体を株式会社に転換するのはよいことではない
 *2-1に、「農産物の販売などを手がける全農は、将来の『株式会社化』を提案する。農協法に株式会社化を選択できる新たな規定を設け、生産や流通、販売段階の効率化や大規模化に向けて、様々な資金調達の手段を確保するねらいだ」と書かれている。

 しかし、*3-1のように、そもそもJAや連合会の目的は、弱い立場の農家が、「協同組合」として集まることで、組合員農家の所得向上と国民への食料安定供給を図ることであり、主役は組合員である農家であって株主ではない。もし、全農や経済連が株式会社になれば、農家の所得向上のために共同行為を行うよりも、株主の利益のために、取引相手として農家と対峙しなければならなくなる。つまり、何でも株式会社にしさえすれば問題解決できるという発想は拙い。

 そして、農業の6次産業化などで、株式会社にした方が製造・販売・資金調達などがスムーズにいく製品を全農が生産する場合には、農家の協同組合である全農が支配権を持てる子会社にして行うのがよいと考える。

5)准組合員の事業利用制限はよいことではない
 農業地帯では、農協の正組合員の農家だけではなく、消費者である地域住民を準組合員として、地域全体で農業や農協を支える仕組みを作っている。そして、地域住民も農協のサービスにより支えられている面が大きく、地方では農業は税金を支払っている重要な産業だ。そのため、准組合員に制限を設けるか否かなどは、経営手法として農協が決めればよいことであり、都会で種々のサービスを選択できるが、地域との繋がりの薄い人が決めた改革案は当たっていない。

6)単位JAの信用事業を、農林中金・信連に移管することは必要か?
 規制改革会議は、「単位JAの信用事業を、農林中金・信連に移管することが必要」としているが、それに対して、*3-1は、「単協の信用・共済事業切り離しも、世界の協同組合のモデルとなっている日本の総合事業の優位性を無視した暴論である」としている。今までの実績で見れば、地域の農業のニーズに合わせた融資は、窓口でニーズを把握し、ニーズに近い融資を行い、地元の人の預金を地元に還元してきた分だけ、単位JAの方が、農林中金や信連よりも優れていたと言える。

 一方の農林中金は、集めた資金を農業ではなく、日本の他の銀行と同様、アメリカのサブプライムローンなど質の悪いローンに融資して消失させてしまったのだから、日本の金融界は使命を果たしていないと言わざるを得ない。しかし、「単位JAが、金融事業で他の事業の赤字を埋めている」というのは、金融における前近代的な管理であり、これでは預金者の預金を守れない。

 農業地帯の資金需要に対応するためには、一般銀行や信用金庫から農業者への融資もやりやすくしなければならない。しかし、単位JAの金融事業を、預金者の預金を守れるように農林中金に移管するとしても、地方銀行と同様に、管轄地域を区切り、集めた資金はその地域で、地域のニーズにあった運用をしてもらいたいというのが、貯めた資金を都会に持って行かれ、どこかで消失させられてしまって開発が遅れている地方の要望である。

7)企業の農業生産法人への出資比率の緩和について
 *2-2には、「国内農業を強化するため、上限を25%に制限している企業の出資比率を高めるほか、農作業への従事を義務付ける役員の割合を減らすことを検討する」と書かれている。「農業生産法人の改革では、規制改革会議が農業関係者以外の出資できる比率を50%未満まで高めるよう提言した」ということだが、50%未満であれば経営の決定権は農家に残るので問題ない。しかし、過半数の役員が農業に従事していなければ、農業生産法人とは言えないだろう。

8)企業の土地所有について
 *3-4に書かれているように、「担い手」への農地集積は2009年の農地法改正で「所有」から「貸し付け(リース)」へと本格的に移り、リース方式で既に約1300件の企業が農業に参入し、農地中間管理機構(農地集積バンク)の整備でその流れはさらに強まっているため、農業をするのに土地所有は必要条件ではない。それにもかかわらず、規制改革会議が農地を所有できる「農業生産法人」の要件緩和を提案し、農業生産法人の事業用件を廃止して、農業生産法人の土地所有を許せば、*3-4に書かれているとおり、「農業生産法人」に「抜け道」を準備して、農業以外の事業を許すことになるのでよくない。農業以外の事業を行いたいのなら、「農業生産法人」としてではなく、「一般企業」としてやるべきである。

 また、農地は、長い年月をかけ、多くの人の貢献によって築き上げてきた国富であるため、*3-5に書かれているように、「農業委員会は選挙制度を残した最後の行政委員会であり、農地の移動には、その土地に精通した人が選挙で選ばれる必要がある」というのが正しく、その時点の所有者の意思のみで農地の転用がなされて良いものではないと考える。

   
   じゃがいも畑       梅畑         みかん畑         梨畑

*1:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20140523&ng=DGKDZO71644900T20C14A5EA1000 (日経新聞社説 2014.5.23) 日米協議の詰めを急ぎTPP交渉決着を
 シンガポールで開いた環太平洋経済連携協定(TPP)交渉の閣僚会合で、大筋合意に向けた道筋がようやく見えてきた。日米など交渉12カ国による共同声明は「交渉妥結に何が必要か、見解を共有した」と記し、残る課題が絞られてきたことを示した。決着を目指す機運が高まったことを歓迎したい。前回の2月の閣僚会合では、自由化を主導すべき日米が2国間協議で膠着状態に陥り、他の10カ国に「模様ながめ」の空気が漂っていた。今回の会合で各国が積極姿勢に転じたのは、日米間の協議が前進し、障壁だった対立の構図が薄れたからだ。交渉の勢いを維持しなければならない。そのためには日米が最終的な詰めを急ぎ、日米合意の内容を堂々と各国に示す必要がある。具体的にどこまで合意したのか分からない曖昧な状態のままでは説得力に欠け、交渉全体を力強く推し進める力にはならない。これから先は時間との戦いになる。推進役の米国が、11月に議会の中間選挙を控えているからだ。オバマ政権の通商政策は、ますます議会や特定業界の意向に左右されやすくなる。労働組合や自動車産業など保護主義的な勢力は、個別議員への影響力が大きい。日本への輸出を増やしたい豚肉業界なども、強硬姿勢を求めて強い声を上げている。中間選挙が近づくほど、オバマ政権は譲歩しにくくなる。日米に残された時間は多くない。日米両国の経済規模はTPP交渉国の約8割を占める。日米協議で決まる措置は、TPP域内の自由化の実質的な水準の目安となるだろう。牛肉・豚肉、乳製品などの関税の引き下げ幅や、自由化にかける期間、セーフガード(輸入制限措置)などが日米間で具体的にどう決着するかによって、各国の対応は変わってくる。日米の交渉担当者は「21世紀型の自由貿易協定」というTPPの看板に恥じない中身で、合意を築いてほしい。見かけ上の関税率の数字でなく、経済的に意味がある実質的な市場開放が重要だ。関税による保護に頼らない強い農業を築く改革の実行が、安倍政権の急務だ。一時的に不利益を被る農家や企業を支援する移行措置が必要になる場合もあるだろう。TPP交渉が大詰めを迎えた今こそ、こうした国内対策を含めて、通商政策と農業政策の知恵の絞りどころである。

*2-1:http://digital.asahi.com/articles/DA3S11131782.html
(朝日新聞 2014年5月13日) 全中の「指導権」廃止提言 規制改革会議、「上納金」制度も
●JAの仕組みと改革案
 政府の規制改革会議が検討している農協(JA)グループの改革案がまとまった。グループを束ねる全国農業協同組合中央会(全中)の「指導権」を廃止し、全中、県団体、農協というタテの「指揮系統」を見直す。約700ある地域の農協が自由に活動できるようにするねらいだ。改革案は、JAグループの役割や運営方法を規定する農業協同組合法(農協法)の改正も提言し、14日にも公表する。農協法には、全中などが組織、事業、経営について指導するとあり、全中が農協などを指導・監督する根拠とされてきた。グループで活動目標を3年ごとに定めることになっており、全中は取り組み状況を定期的にチェックしている。農協関係者によると、全中は利益を重視した革新的な取り組みより、グループの秩序を壊さない伝統的な運営方針を好む傾向があるという。改革案では、農家や地域の農協が独自に経営強化に取り組むには、全中が持つ権限を弱める必要があるとして、全中の「指導権」を廃止することを求める。農協などが、上部団体に納めてきた「賦課金制度」も廃止するよう求める。「上納金」ともいえる賦課金は、グループ方針を国の政策に反映させる陳情活動などに使われ、2014年度は77億円の見込み。「負担が大きい」「使い道の情報開示が不十分」などと批判があり、農協ごとの農家支援策に使えるよう改める。農産物の販売などを手がける全農は、将来の「株式会社化」を提案する。農協法に株式会社化を選択できる新たな規定を設け、生産や流通、販売段階の効率化や大規模化に向けて、様々な資金調達の手段を確保するねらいだ。協同組合では出資の配当が7~8%に制限されているが、こうした制限もなくす。農協の役員に登用できる外部の人材は定員の3分の1未満だが、この規制も緩和し、民間から経営感覚のある人材を登用できるようにする。今回の改革案に全中は強く反発しそうだ。農協改革をめぐっては、自民党も改革案を検討している。政府は規制改革会議案や自民党案を見極め、6月にも政府の改革案をまとめる。
■農業改革、待ったなし
 《解説》規制改革会議が全中の権限を弱める改革案をまとめた背景には、農家と直接つながる地域の農協に芽生えてきた改革意欲を積極的に生かし、成功事例を全国に広げるねらいがある。代表例がJA越前たけふ(福井県越前市)だ。地域農協の多くは、コメなどの経済事業が赤字続きなのを悩んでいる。物価下落が続くデフレや、企業との激しい競争のためだ。「たけふ」はこれらの事業を株式会社化し、黒字化した。コメは、グループでコメ事業を手がける全農などに頼らず、もうけが多いグループ外に売っている。だが、全中は「たけふ」を問題視し、成功事例として広めようとはしなかった。これを認めると、全国の地域農協が、全農などを通さずに外部に売るようになる。全農の仕事が減り、農薬や肥料の売り上げにも影響する。これまでの農協改革は、全中の圧力を受けた政治家らの反対で踏み込めずにきた。今回も全中の猛反発は避けられない。しかし、関税の原則撤廃を目指す環太平洋経済連携協定(TPP)や、農家の高齢化などで農業そのものの改革は待ったなしの状況だ。国内農業を再生する最後のチャンスとして取り組む必要がある。

*2-2: http://www.saga-s.co.jp/news/national/10201/66987
(佐賀新聞 2014年5月24日) 企業の農業参入促進へ本格調整、出資25%の緩和検討
 政府、与党は24日、国内農業を強化するため、農業生産法人の規制を緩和して企業参入を促す改革案の策定に向け本格調整に入った。規制改革会議の提言をたたき台にする。上限を25%に制限している企業の出資比率を高めるほか、農作業への従事を義務付ける役員の割合を減らすことを検討する。有識者でつくる規制改革会議が22日に決定した改革案には与党内の反発が強い。だが、安倍晋三首相の強い改革姿勢を受け、農業を成長産業に育てていくには企業の参入拡大が不可欠との判断に傾いた。自民、公明両党が5月中にもそれぞれ改革案を出して与党案として取りまとめ、規制改革会議が6月半ばにまとめる首相への答申に反映させる。政府はこれらを盛り込んだ「規制改革実施計画」を6月中に閣議決定する予定だ。農業生産法人の改革では、規制改革会議が農業関係者以外の出資できる比率を50%未満まで高めるよう提言したが、農家側が上限の引き上げをどの程度まで受け入れられるかが焦点となる。役員の過半が農業に常時従事するなどとの現在の要件に関しても、規制改革会議は大幅に緩和するよう求めており、重要な検討課題となる。ただ、政府が今年になって立ち上げた「農地中間管理機構」は、土地の売却に抵抗の強い農家に配慮して、農地の貸し出しを基本としているなど、企業による土地買収につながる農業生産法人の規制緩和には慎重な意見が根強い。農協の改革では、規制改革会議の改革案に全国農業協同組合中央会(JA全中)を頂点とする中央会制度の廃止が盛り込まれた。しかし、与党の農林関係議員が激しく反発しており、調整の最大の焦点となる。安倍首相は19日の産業競争力会議で農協、農業生産法人、農業委員会の3点セットで改革を断行すると表明した。これを受けて与党内では「こちらからも一定程度踏み込んだ改革案を示す必要がある」との声が強まっている。

*3-1:http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=27699
(日本農業新聞 2014/5/15)  不当な農業改革 農協解体を総力で阻止
 政府の規制改革会議が農業改革提言を公表し、農業委員会、農協、農業生産法人の見直しを掲げた。農業への全面的な企業参入に道を開き、JAグループを事実上解体に追い込む極めて不当な内容だ。とりわけ民間の協同組織であるJAに対する改革案は、無知と無理解に基づき到底容認できない。JAグループは今まさに主体的に自己改革に取り組んでいる。与党の議論も見据えながら、総力を挙げJAつぶしに抗していこう。これは、明らかに規制改革に名を借りたJA解体論であり、民間の独立組織への政治的介入である。そして、全ての協同組合セクターへの攻撃でもある。こうした提言を、政府が6月にまとめる成長戦略の改訂版に反映させることは断じて許されない。
 農協改革提言は、中央会制度の廃止、JA全農の株式会社化、単協信用事業の農林中金・信連への移管、准組合員の事業利用制限、理事会役員構成の見直しなどを盛り込んでいる。これをまとめた同会議農業ワーキンググループは、協同組合組織の歴史的成り立ちや基本的意義が理解できているのか。いうまでもなくJAや連合会の目的は、経済的に弱い立場にある個々の農家が「協同組合」に結集することで、農家組合員の所得向上と国民への食料の安定供給を図ることである。その主役は組合員であり、JAは組合員の負託を受けて最大奉仕するための自主・自立の組織だ。株主の意向に左右される株式会社とは異なる。だから農協法によって利用者本位の事業運営を法的に措置しているのだ。
 全農や経済連が株式会社になったら、農家の所得向上のための共同経済行為はできなくなり、農機や肥料の価格交渉力は弱まるだろう。販売面で大手量販店などの買いたたきに対抗できるのも協同の結集力があるからだ。また、県域を越えた需給調整機能が、営利主義の株式会社にできるだろうか。
 中央会廃止論も、中央会指導が単協の独自性をそいでいるかのような誤った認識に基づいている。中央会は協同組織の指導機関として法的に位置付けられている。JAグループは、現場の実践を最大限尊重し、優良事例は横展開し相互に高め合う柔軟な組織構造を持っている。萬歳章JA全中会長が8日の記者会見で「中央会の本来的な役割はJA・連合会の総合力発揮の推進力になること」と述べたように、上意下達のような指揮系統にはなっていない。単協の信用・共済事業切り離しも、世界の協同組合のモデルとなっている日本の総合事業の優位性を無視した暴論である。
 与党には現実に即した建設的な改革論議を期待したい。JAグループは今、農業者の所得増大に向けた革新プランに取り組んでいる。不当な介入をはね返すには、正しい情報発信と自己改革が不可欠だ。組織一丸となって攻撃に立ち向かおう。

*3-2:http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=27869
(日本農業新聞 2014年5月23日) 農業改革 廃止ありき 浮き彫り 中央会で内閣府 現場から意見なし
 規制改革会議の農業ワーキンググループ(WG)が農協改革の提言に中央会制度の廃止を盛り込んだことについて、事務局の内閣府は22日の参院農林水産委員会で「(担い手農業者やJAなどへのヒアリングで)当事者から中央会制度の廃止などの直接の意見はなかった」と説明した。公明党の平木大作氏、共産党の紙智子氏への答弁。農業WGは中央会制度を廃止する理由として、地域のJAの独自性を発揮するためとしている。しかし、現場の当事者の声を踏まえてないことが国会審議でも明らかになり、“廃止ありき”だった可能性が高まっている。また、環太平洋連携協定(TPP)交渉について林芳正農相は同日の衆院農林水産員会で、「重要5品目などの聖域確保を最優先する」と述べ、衆参両院の国会決議を踏まえて国益を守るとの考えをあらためて強調した。公明党の石田祝稔氏への答弁。19、20日の両日にシンガポールで開かれた閣僚会合では、首席交渉官会合を7月に開催することで合意した。これを受け、林農相は今後の見通しを「残された課題の解決に向けて、各国と精力的に交渉を進めていくことになる」と説明。牛肉・豚肉などの重要品目について、関税撤廃などの対象から除外または再協議とするとした決議を守る考えを示した。また、TPP政府対策本部の渋谷和久内閣審議官は、日米間の協議について「(関税率について)お互いに幅を狭めていくということにはならない」と述べ、「仮説としていろいろな議論はしているが、幅が特定されたということではない」とした。「関税率はある程度の幅で合意しているのではないか」とした石田氏に答えた。
●参考人質疑で担い手農家 JAの役割を評価
 農協とは今後も太いパイプでやっていきたい――。22日の参院農林水産委員会に参考人として出席した担い手農家が、JAの役割を評価する場面があった。営農に主軸を置くためJAの経済事業を活用していることを紹介。政府の規制改革会議は急進的な農協改革案を打ち出したが「他の所でどうこう言ってもらう筋合いはない。農家の要望に合わせていくのが農協の在り方だ」と強調した。担い手の声だけに、今後の政府・与党の議論にも影響を与えそうだ。発言したのは島根県の(株)勝部農産社長の勝部喜政氏。米と麦、大豆を手掛け、地域の農地55ヘクタールを借り入れながら、30ヘクタールの作業受託もこなす。農産物の販売について勝部氏は、大消費地が遠いことを挙げ「自分は生産に一生懸命。販売は農協に任せており、代金は必ず集金してもらっている」と農協出荷の利点を指摘した。6次産業化についてもJAの活躍に期待を寄せた。農家側の考えとして「手間や時間を取られる。軸足は生産に置きたい。個人の労働力や資金では大変だ」と述べた。その上でJAと連携した6次産業化に意欲を見せた。
●農政改革法案賛否分かれる 参院農水委参考人質疑
 参院農林水産委員会は22日、政府提出の農政改革法案について、担い手農家や研究者、農業団体関係者による参考人質疑をした。経営所得安定対策の見直しをはじめとする政府・与党の農政改革には賛否が分かれた。兼業農家らの離農が増え、担い手への農地集積が進む中、面積拡大に対応するための担い手側の体制づくりも課題に浮かび上がった。参考人は東京大学大学院准教授の安藤光義氏、(株)勝部農産(島根県)社長の勝部喜政氏、北海道農民連盟書記長の山居忠彰氏、愛媛大学客員教授の村田武氏。勝部氏は水田作の法人代表で、現場の実態として2013年度までの農地集積協力金などを背景に「兼業農家の離農が増えている」と報告。地域の担い手として、離農する農家の農地を「(自らが)限界でも引き受け」ており、作期分散などで工夫しているとした。安藤氏は、経営所得安定対策のうち畑作物の直接支払交付金(ゲタ)と米や麦、大豆などの収入減少影響緩和対策(ナラシ)に面積要件を設けず、多面的機能支払いでは農業者だけの活動も対象とした点などを挙げ、「方向性は原則、評価できる」と述べた。今後は現場の意見をくみ上げ、改善点を検証するよう提起した。山居氏は、担い手経営安定法案の修正を要求。米の直接支払い交付金を10アール当たり7500円に半減し、5年後に廃止する方針に対し「大規模農家、規模拡大に向けて投資をしてきた担い手ほど打撃は大きい」と主張。主食用米をゲタ対策の対象とするよう求めた。村田氏は農政改革法案について「構造改革に逆行する施策を一掃するという位置付け。しかし戸別所得補償制度は構造改革に逆行するものではなかった」と指摘。今回の見直しでゲタ、ナラシ対策の対象を認定農業者らとすることには「農村に差別を持ち込む」と懸念を示した。

*3-3:http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=27885
(日本農業新聞 2014/5/24)  中央会制廃止 東京農業大学名誉教授 白石正彦氏 
 規制改革会議の農業ワーキンググループ(WG)の提案には、農業協同組合の見直しの一つに農協の連合組織である中央会制度の廃止が盛り込まれている。
●世界的潮流から逸脱 教育と監査で機能の強化へ
 国際協同組合同盟(ICA)は、1995年に21世紀の協同組合原則を採択し、その第4原則「自治と自立」の中で「政府を含む他の組織と取り決めを行う場合は、組合員による民主的管理を保証し、協同組合の自治を保持する条件のもとに行う」と明示している。国連や国際労働機関(ILO)はこの原則を尊重し、政府による協同組合への干渉を厳しく戒め、2012年国連国際協同組合年も含め、世界の協同組合の自主的発展を支援している。世界の潮流と異なるこのような干渉を許すとJAの准政府機関化への変質が危惧される。WGの提案にある「中央会主導から単位JA中心へ」という記述も協同組合であるJAの本質的理解の中核に位置付けられるべき「組合員による民主的管理」が欠けている。日本のJAを含む世界の協同組合は組合員自らが共通する経済的、社会的、文化的なニーズと願いをかなえるために単位協同組合を組織し事業経営を行い、その機能を補完するために連合組織、さらにICAに結集している。このように人々の結合体である非営利の協同組合と資本の結合体である株式会社には本質的差異があり、それぞれ共に役割分担を図っており、リーマン・ショック時には協同組合の経済社会の発展への貢献が注目された。グローバル化時代は、協同組合人らしい国際的見識と専門的知識が求められる。ドイツの協同組合連合組織は、協同組合の的確な監査機能の発揮や協同組合アカデミーでの大学と連携した博士学位の授与をしており、国内外の協同組合役職員の高度な協同組合教育・研修に熱心である。日本のJA中央会は、今後このような監査機能や協同組合教育・研修で、より高度な機能発揮が求められる。中央会制度廃止という見解は世界的潮流とは異次元と言わざるを得ない。欧州連合(EU)の政府や農協などは連携して、14年国際家族農業年の意義を重視し、「欧州と世界のより持続可能で活力ある農業のための意見交換会議」を開催した。家族農業の重要性の確認と若手農業者らによる実践、未来のための挑戦・革新、家族農業支援の最適手段としての農協の役割、消費者と農業者のネットワーク、直接契約の草の根組織の役割などを論議している。WGの提案には「非連続な農業改革を断行することを提言する」とあるが、例えば米国中西部の農協では、自ら生産したバイオエタノール85%含有を明示した自動車燃料用をガソリンスタンドで販売(日本では3%以内に規制)している。むしろこのような分野の規制改革で、バイオ資源米・飼料米定着化による水田フル活用や高付加価値型農業化を支援するべきである。
<プロフィル> しらいし・まさひこ
 1942年山口県生まれ。九州大学大学院修了。農学博士。ICA協同組合原則・宣言検討委員、日本協同組合学会長などを歴任。現在は東京農業大学総合研究所農協研究部会会長、日本農業労災学会副会長。

*3-4:http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=27963 
(日本農業新聞 2014/5/29) [農業改革 言うことあり 6] 企業の農地取得 農山村地域経済研究所長 楠本雅弘氏
 「担い手」への農地集積は2009年の農地法改正で「所有」から「貸し付け(リース)」へと本格的に移った。リース方式では既に約1300件の企業が農業に参入しており、農地法改正前の7倍以上に増えた。農地中間管理機構(農地集積バンク)の整備でその流れがさらに強まる。
●目的外使用に道開く 集落営農こそ最善の仕組み
 今回、規制改革会議が農地を所有できる「農業生産法人」の要件緩和を提案した。これは経済界が求める企業の農地所有を進める狙いがあり、「所有から借地へ」という農地利用の流れに逆行するものだ。また、一定期間、(借地で)農業をすれば要件を満たさなくても農業生産法人として農地所有を認める、という「抜け道」も提案し、執拗(しつよう)に企業の農地所有を目指している。最長40年間借りられる農地を、経営リスクを負ってまで購入しようとするのはなぜか。農業経営上は農地を所有する必要はないのだから、農業生産以外に目的があるのだろう。所有権を持てば、目的外使用や処分を規制するのは困難。過去に耕作放棄されたり、産業廃棄物の捨て場になったりした事例は少なくない。このような批判をかわす狙いで規制改革会議の案には、参入した法人は農業委員会の許可を得なければ退出できない、という旨の規制を設けるとある。しかし、撤退する法人はわざわざ許可申請するより耕作放棄に走る懸念の方が大きい。かねて経済界は「農業への参入は原則自由にして、農地利用の義務を厳格に規制すればよい」との主張を繰り返してきたが、実際には農地を守れない空論であることは、農地に関する農水省の検討会など過去何回もの政府内の議論でも論証済みだ。農業委員の公選制を廃止して首長の任命制にするとか、農地の権利移動を原則届け出制に改めるといった提案を認めれば、国民の公共財である農地を安定的に維持するために、現場の英知を積み上げて築かれてきた農地法を骨抜きにし、農地を企業の営利活動に委ねてしまうことになる。短期の利潤追求を使命とする企業が30年、50年にわたって地域の資源や環境保全の共同活動といった義務を果たし続けられるのか、大いに疑問だ。農地は地域の共同資源であり、地域社会が成り立つための基盤だ。だから住民自らが主体的に管理・活用しなければならない。農地を保全・活用する最善の仕組みは集落営農だと考えている。地域住民の英知を結集して皆で意思決定し、得意分野で生涯現役で参加できる。元気な農業と活力ある地域を両立させる大きな可能性がある。農地を有効活用するために、農家以外に所有権が移っている農地を地域で共同管理できる仕組みづくりの方が優先すべき課題だ。
<プロフィル> くすもと・まさひろ
 1941年愛媛県生まれ。一橋大学経済学部卒。農林漁業金融公庫を経て山形大学教養部・農学部教授。2007年から農山村地域経済研究所を主宰。島根、熊本、大分、徳島、宮城など全国で集落営農塾を開講している。

*3-5:http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=27850 (日本農業新聞 2014年5月22日) [農業改革 言うことあり 1] 北海道大学名誉教授 太田原高昭氏 JA弱体化
 規制改革会議の農業ワーキンググループがまとめた文書は、現政権が目指しているという「農業・農村の所得倍増」にとって有益だとはとても思えない。地域農業の担い手のメリットになるかも極めて疑問だ。
●農家利益 確保できぬ 歴史と現実に学ぶ態度必要
 JAが事業展開する上で、地域の単位組織、県域・全国域の連合会という枠組みが欠かせない。これらが一体となって販売・購買事業を展開しており、これを分断することは組合員である農業者の利益確保に逆行する。また、JA全中はJAのナショナルセンター(全国中央組織)だ。全国的組織はどこでも、合意形成や運動のために必要だからナショナルセンターを持っている。中央会の指導で単位JAの自由がないなどという批判は、およそ現場の感覚から離れている。都市部にも農村部にも、そこで役割を発揮している優れたJAはたくさんある。JAグループも改めるべき部分はあるが、互いに情報を共有し自ら改革すべきことだ。
信用事業と共済事業の代理店化は、信共分離そのものとみることができる。JAは経済事業の専門農協になれということかもしれない。かつて畜産や果樹などで専門農協が元気だった。その時は「総合農協から専門農協の時代だ」といわれたが、総合農協に吸収された。かんきつや畜産物の自由化で成長農産物がつぶされたことの影響が大きいが、金融事業を持っていなかったということもある。総合農協ゆえに危機に対する耐性があるのだ。わが国ではなぜ総合農協が発達したのか、もっと歴史と現実に学ぶ態度が必要だろう。JAグループが、農産物の供給により国民生活のインフラを支えていることからすれば、JAの弱体化で国民が失うものは大きい。この案を作った人たちは協同組合についての見識がほとんどないのではないか。協同組合は、小規模事業者らが大資本と対峙するために存在している。だからこそ独占禁止法の適用除外もある。農業だけでなく中小企業なども同様だ。小規模事業者が大資本と対等な関係になるという、戦後改革の“経済民主主義”の原点を忘れてはならない。政府は農業基本法以来、自立した家族農業をつくることを目的にしてきた。それがうまくいっていないとして、これまでの外的環境の変化の検証もないままに企業を参入させようとしているように見える。しかし、それで本当に国際化に耐えられるのかというと、そんな保証はない。企業の方が逃げ足が速いということだけだろう。農業委員会は選挙制度を残した最後の行政委員会だ。選挙制度や農業団体による推薦制度をなくし、上から選任された人が間に立って農地の移動が進むのか。その土地に精通した人が選挙で選ばれてこそ、正統性があるのだと思う。
<プロフィル> おおたはら・たかあき
 1939年福島県生まれ。北海道大学大学院農学研究科農業経済学専攻博士課程修了。同大学農学部長、同大学大学院農学研究科長、道地域農業研究所長などを歴任。日本農業経済学会長、コープさっぽろ会長も務めた。

*3-6:http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=27870 (日本農業新聞 2014年5月23日) [農業改革 言うことあり 2] 信州大学・大阪府立大学名誉教授 桂 瑛一氏 株式会社化
 政府の規制改革会議が示したJA全農の株式会社化は乱暴な提言だ。やるべきことが十分できていないからといって協同組合の存在自体を否定するというのは極端過ぎる。
●協同否定、共販に制約 役割明確化し経済事業強く 
 株式会社になったのでは、全農とJA・組合員は買い手と売り手の間柄になってしまう。また独占禁止法の適用除外から外れ、無条件委託を前提とした現在の共同販売に制約が生じる恐れが強い。組合員がJAの力を借りて協同の力で売っていくのがJAグループの販売事業だ。現に協同の力により、市場メカニズムの重要な担い手として競争力と交渉力を強化し、品質の一定した農産物を安定供給したり、効率的に農産物を流通させたりして、農家の所得向上と食料の安定供給を目指し、成果を上げている。大規模農家や農業法人の直販などの個別対応がもてはやされている。しかしそれができるのは、JAグループが農産物を安定供給するといった流通基盤を整えたからこそ、注目が高まっているという側面を見逃してはならない。とはいえ、JAの強みを生かした十分な取り組みがなされていない現実が提言の背景になって いることは明らかだ。そこは謙虚に受け止めなくてはならない。いかにも消極的で内向きの共販三原則((1)無条件委託(2)共同計算(3)特定の取引先に集中させない平均販売)ではあるが、うやむやにするのでなくきちんと総括をして、それに代わる販売事業の理論武装が必要な時だ。組合員とJA役職員は一緒に意見を出し合い、時には批判や文句を言い合って事業を担うことこそが販売力強化への道なのだ。いま一度、JA、経済連(全農県本部)、全農の役割分担を明確にして販売事業を展開する必要があるのではないか。世界に冠たる長寿を支えてきたとされる食文化は、長年の試行錯誤の中で築き上げられたもので、消費者ニーズそのものである。その基本は素材の持ち味にこだわり、品質にこだわる点にある。日本の農業はコストを掛け、技を駆使して曲がりなりにもそれに応えてきた。全農は日本の食料、農業そして農村のすごさを国民に訴えて正しい評価を得る必要がある。農産物に対する値頃感を正す取り組みも重要だ。1本130円の缶コーヒーを毎日買うのに対し、数カ月間かけて生産されたキャベツが1玉300円になると「野菜が高騰した」と大騒ぎする。こうした風潮を正す必要もある。天候不順で農産物が高騰した際に、スーパーが安く売る行為に対しては、「需給バランスを無視した商行為」とスーパーに質問状を出すぐらいの気概があってもよい。特に全国レベルの全農は、単位JAでは対応が難しい農産物の消費拡大や食文化の発展につながるダイナミックな活動を展開してほしい。
<プロフィル> かつら・えいいち 
 1939年旧満州(中国東北部)生まれ。京都大学農学部農林経済学科卒業。農学博士。専攻は農産物流通学。地域農林経済学会副会長や放送大学客員教授などを務め、現在は農業開発研修センター理事。

*3-7:http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=27885 (日本農業新聞 2014年5月24日) [農業改革 言うことあり 3] 東京農業大学名誉教授 白石 正彦氏 中央会制廃止 
 規制改革会議の農業ワーキンググループ(WG)の提案には、農業協同組合の見直しの一つに農協の連合組織である中央会制度の廃止が盛り込まれている。
●世界的潮流から逸脱 教育と監査で機能の強化へ
 国際協同組合同盟(ICA)は、1995年に21世紀の協同組合原則を採択し、その第4原則「自治と自立」の中で「政府を含む他の組織と取り決めを行う場合は、組合員による民主的管理を保証し、協同組合の自治を保持する条件のもとに行う」と明示している。国連や国際労働機関(ILO)はこの原則を尊重し、政府による協同組合への干渉を厳しく戒め、2012年国連国際協同組合年も含め、世界の協同組合の自主的発展を支援している。世界の潮流と異なるこのような干渉を許すとJAの准政府機関化への変質が危惧される。WGの提案にある「中央会主導から単位JA中心へ」という記述も協同組合であるJAの本質的理解の中核に位置付けられるべき「組合員による民主的管理」が欠けている。日本のJAを含む世界の協同組合は組合員自らが共通する経済的、社会的、文化的なニーズと願いをかなえるために単位協同組合を組織し事業経営を行い、その機能を補完するために連合組織、さらにICAに結集している。このように人々の結合体である非営利の協同組合と資本の結合体である株式会社には本質的差異があり、それぞれ共に役割分担を図っており、リーマン・ショック時には協同組合の経済社会の発展への貢献が注目された。グローバル化時代は、協同組合人らしい国際的見識と専門的知識が求められる。ドイツの協同組合連合組織は、協同組合の的確な監査機能の発揮や協同組合アカデミーでの大学と連携した博士学位の授与をしており、国内外の協同組合役職員の高度な協同組合教育・研修に熱心である。日本のJA中央会は、今後このような監査機能や協同組合教育・研修で、より高度な機能発揮が求められる。中央会制度廃止という見解は世界的潮流とは異次元と言わざるを得ない。欧州連合(EU)の政府や農協などは連携して、14年国際家族農業年の意義を重視し、「欧州と世界のより持続可能で活力ある農業のための意見交換会議」を開催した。家族農業の重要性の確認と若手農業者らによる実践、未来のための挑戦・革新、家族農業支援の最適手段としての農協の役割、消費者と農業者のネットワーク、直接契約の草の根組織の役割などを論議している。WGの提案には「非連続な農業改革を断行することを提言する」とあるが、例えば米国中西部の農協では、自ら生産したバイオエタノール85%含有を明示した自動車燃料用をガソリンスタンドで販売(日本では3%以内に規制)している。むしろこのような分野の規制改革で、バイオ資源米・飼料米定着化による水田フル活用や高付加価値型農業化を支援するべきである。
<プロフィル> しらいし・まさひこ
 1942年山口県生まれ。九州大学大学院修了。農学博士。ICA協同組合原則・宣言検討委員、日本協同組合学会長などを歴任。現在は東京農業大学総合研究所農協研究部会会長、日本農業労災学会副会長。

| 農林漁業::2014.2~7 | 11:45 AM | comments (x) | trackback (x) |
2014.5.29 燃料電池車と東京都の対応について - もう、補助金の時期ではないでしょう
      
 *1より    iMiev(三菱) トヨタ燃料電池車 ホンダ燃料電池車 ヤマトEV車

(1)電気自動車(燃料電池車を含む)の普及について
 *1に、「①トヨタが燃料電池車を年内にも市販する」「②一般向け販売のハードルは500~1000万円になる」「③政府は『水素ステーション』を15年に100カ所設ける目標だが、まだ3分の1しかメドが立っていない」「④消費者が購入価格に見合ったメリットを得られないと普及が進まない」「⑤燃料電池車の普及を目指す自民党の研究会は6月中に、購入費用や燃料費の補助を政府に求める」「⑥水素の補給費用も当面は無料にする」と書かれている。
 
 しかし、電気自動車の構想ができてから既に20年、三菱自動車が2009年に最初の燃料電池車「i-MiEV」を発表してから5年が経過しているのだから、まだ①②③④のようなことを言っているのは、やる気がなかったというほかない。これに対しては、⑤⑥のように、民間企業の製品に対して税金由来の補助金をつけるよりも、排気ガスに応じて環境税をかけた方がよいと思う。

 また、*2のように、東京都も、2020年の東京五輪を念頭に燃料電池車の普及を急いで環境と調和した未来都市の姿を世界に印象づけたいということだが、それなら、2020年1月1日から、東京都内では電気自動車(燃料電池車を含む)以外は通行禁止にするのがよいだろう。何故なら、東京都を走れない車は日本国内での価値が低くなるため、日本全体で電気自動車の普及が推進され販売価格が安くなるからだ。そうなれば、充電施設や水素ステーションなどのインフラも自然とできる。もちろん、京都、大阪、名護屋、札幌、福岡などの大都市が、次第にこの規制を導入していけば、日本の環境はクリーンになるとともに、CO2削減効果も大きい。

(2)水素発電について
 せっかく燃料を国内で自給できる水素に変換するのに、それを外国から輸入しようというのは、経済の全体を見ておらず視野が狭いと思うが、*3のように、川崎重工業が2017年をメドに、水素を燃料とする火力発電設備を、世界に先駆けて量産するそうである。それならば、国内では、各家庭やビルで安全に自家発電するために水素を使い、その水素は、日本に豊富な地熱や汐潮発電で作るのがよいと考える。

*1:http://www.nikkei.com/article/DGXNASFS2802Y_Y4A520C1EA2000/
(日経新聞 2014/5/29) トヨタ、燃料電池車を年内にも市販 官民の連携拡大
 燃料電池車は水素と酸素を化学反応させて生み出した電気でモーターを動かして走る。いま国内では数十~100台が試験用に走るのみ。政府は15年からの市販開始を成長戦略の一つに掲げ、普及策検討を進めてきた。ひとつが燃料タンクの容量拡大。経産省は高圧ガス保安法の省令を改め、1回で車に補給できる水素の圧力上限を約700気圧から875気圧まで高める。これにより車両の走行距離は2割長くなる。トヨタ車の場合、平均的な乗用車を上回る600キロメートルの航続が可能になる。東京・大阪間を水素補給なしで走り続けられる計算だ。海外では高圧の補給が認められており、日本だけが規制のハードルが高かった。輸出のハードルも下げる。国連は日本や欧州連合(EU)などが燃料電池車の輸出入を簡素化するための交渉を進めている。政府は1国の安全審査を通った車両部品を他国の審査なしで輸出できる協定を16年に国内法に反映させる考え。日本の工場でつくった燃料電池車の輸出がしやすくなる。トヨタは規制緩和を追い風に燃料電池車の量産に向けた開発を急ぐ。これまで「15年中」と公表していた市販開始の時期を14年度中に前倒しする方向。ホンダも15年中に一般向け販売を始める。ほかに15年中の市販を予定するのは韓国の現代自動車のみで、日本メーカーが市場開拓でライバルを一歩リードする。一般向け販売のハードルは500万~1000万円とされる車両の価格だ。政府は燃料を補給できる「水素ステーション」を15年に100カ所設ける目標だが、まだ3分の1しかメドが立たない。「消費者が購入価格に見合ったメリットを得られないと普及が進まない」(経産省幹部)。燃料電池車の普及を目指す自民党の研究会は6月中に、購入費用や燃料費の補助を政府に求める提言をまとめる。購入費用の自己負担を「200万円台まで」とし、水素の補給費用も当面は無料にする。政府は提言を受け、15年度予算に補助金をどれだけ盛り込むかの検討に入る。

*2:http://www.nikkei.com/article/DGXNZO71329340W4A510C1L83000/
(日経新聞 2014/5/16) 燃料電池車普及急ぐ 東京都、減税や補助金検討
 東京都は環境への負担が少ない燃料電池車の普及へ減税や補助金制度の創設を検討する。16日に初開催した「水素社会の実現に向けた東京戦略会議」の終了後、舛添要一知事が明らかにした。非常時に避難所や家庭向けの電源供給に活用することも視野に、防災対策の強化も兼ねて都営バスへの導入も想定する。都の水素戦略会議は、一橋大学の橘川武郎教授を座長に自動車メーカーやエネルギー関連企業の担当者らで構成する。1台1千万円程度とされる燃料電池車のコストや規制など様々な課題の解消策を議論。2020年五輪開催時の利用法や、その10年後の30年を見据えた中期的な活用拡大策をまとめ、15年2月に最終報告を出す。16日の初会合で、舛添知事は20年五輪を念頭に燃料電池車の普及を急ぐ考えを表明、「環境と調和した未来都市の姿を世界に印象づけたい」と訴えた。出席者からは、最も需要の見込める都心部で地価の高さから水素ステーションの計画がない問題点などが指摘された。都はガソリンスタンドより広い敷地を必要とする規制などについて国に緩和を働きかける方針だ。

*3:http://www.nikkei.com/article/DGXNASDD120G1_V10C14A2MM8000/
(日経新聞 2014/2/16) 水素発電設備、川重が世界初の量産 17年メド
 川崎重工業は2017年をメドに、水素を燃料とする火力発電設備を、世界に先駆けて量産する。水素は燃やしても二酸化炭素(CO2)を排出しないほか、長期的に発電コストが天然ガス火力並みに下がる見通し。川重は自家発電設備として日本や、温暖化ガスの削減を急ぐ欧州などで売り込む。三菱重工業や米ゼネラル・エレクトリック(GE)なども開発を急いでいる。水素発電は20年以降に普及しそうだ。川重は火力発電の中核設備であるガスタービンの大手。水素燃料だけで発電するタービンを世界で初めて実用化する。標準家庭で2000世帯分を賄える出力7000キロワット級など中小型機を明石工場(兵庫県明石市)で量産する計画。価格は従来のガスタービンより1~2割高い水準に設定する考えだ。水素はガスと比べて熱量が大きいため燃やすとタービン内の燃焼温度が非常に高くなり故障の原因となる。川重は専用の冷却装置を取り付け、タービン内部の設計も改良し耐久性を高めた。水素発電は燃料のコストの高さと安定調達が課題だった。トヨタ自動車など世界大手は今後、水素を燃料とする量販タイプの燃料電池車を相次ぎ投入、20年以降に先進国で普及する見通しだ。水素が大量生産されることで、燃料価格が現在の3分の1程度に下がり、水素発電のコストも石炭やガスを使う火力発電に対抗できる可能性がある。水素発電設備の世界市場は30年に2兆円規模になるとの予測もある。

| 環境::2012.12~2015.4 | 05:21 PM | comments (x) | trackback (x) |
2014.5.26 大飯原発再稼働差止判決の意義と新規制基準、原発再稼働について (2014.5.27、29に追加あり)
          
     2014.5.21西日本新聞より  2014.5.22日経新聞より *3-6より

(1)隠されている真実
 *1-1のようなことが書かれている吉田調書を、*1-2のとおり、政府事故調等をふまえて新規制基準を決め、再稼働の審査をしている筈の規制委委員長は、「読んでいない、知らない」と答えた。それで「全部考慮してやっている」と言われても、「それは不可能だ」としか言いようがない。原発には、このような変なことが多いが、それは、真実を語れば、誰も原発の再稼働を認めなくなるからである。

(2)福井地裁による大飯原発再稼働差止判決の格調高さとそれに対する関係者の反応
 *2-1及び*4(大飯原発差止判決要旨全文、長いため最後に掲載)に書かれているように、福井地裁は、「大飯原発の安全技術と設備は脆弱なものと認めざるを得ない」として運転の差し止めを命じた。大飯原発は、新規制基準に基づく原子力規制委員会の再稼働に向けた審査を受けたとはいえ、その新規制基準は(1)のようなものであるため、福井地裁が、福島第一原発事故を踏まえて、「生存を基礎とする人格権は憲法上の権利であり、法分野において最高の価値を持つ」「差止の判断基準は新規制基準への適否ではなく、福島事故のような事態を招く具体的な危険性があるか否かである」としたのは、的を射ている。

 また、大飯原発再稼働差止判決は、使用済核燃料貯蔵プールについて、「使用済核燃料も原子炉格納容器と同様、堅固な施設で囲われて初めて万全の措置と言えるが、むき出しに近い状態になっている」としており、実情はそのとおりである。関電が「原発の稼動が電力供給の安定性、コストの低減に繋がる」と主張した点については、「多数の人の生存権と電気代の高低の問題等とを並べて論じること自体、法的に許されない」「国富の流出や喪失の議論があるが、たとえ本件原発の運転停止によって多額の貿易赤字が出るとしても、これを国富の流出や喪失というべきではなく、豊かな国土とそこに国民が根を下ろして生活していることが国富であり、これを取り戻すことができなくなることが国富の喪失である」としたのも全くそのとおりで、これまでの原発に関する議論と比較して格調高い。

 さらに、大飯原発再稼働差止判決は、「原子力発電所の稼動がCO2排出削減に資するもので、環境面で優れていると主張するが、原子力発電所でひとたび深刻事故が起こった場合の環境汚染はすさまじいもので、福島原発事故は我が国始まって以来最大の公害、環境汚染であることに照らすと、環境問題を原子力発電所の運転継続の根拠とすることは甚だしい筋違いである」と述べており、そのとおりである。それにもかかわらず、昨日、一昨日のNHKスペシャルでは、「ドイツは脱原発で電気代が高くなり、企業が電気代の安い近くの国に移動した(←企業は主に電気代で立地を決めるわけではない)」「再生可能エネルギーの普及で、原発電気の需要増加という話もある(←不確実で根拠がないのに、無理に言っている)」「原発は石炭に比べて環境によいエネルギー(←この二者択一にするのがおかしい)」などとしていたが、原発を語るメディアの記者や編集者は、少なくとも大飯原発再稼働差止判決を読んで、内容を理解しておくべきである。

 この判決が画期的だったため、日弁連は、*2-2のように即座に会長声明を出し、「本判決は、技術の危険性の性質やそのもたらす被害の大きさが判明している場合には、その性質と大きさに応じた安全性が認められるべきとの理に基づき、原子力発電所の特性、大飯原発の冷却機能の維持、閉じ込めるという構造の細部に検討を加え、大飯原発に係る安全技術及び設備は、確たる根拠のない楽観的な見通しの下に成り立ちうる脆弱なものとして運転差止めを認めた」「福島第一原発事故の深い反省の下に、国民の生存を基礎とする人格権に基づき、国民を放射性物質の危険から守るという観点から、司法の果たすべき役割を見据えてなされた画期的判決であり、他の原子力発電所にもあてはまる」と、福井地裁判決を評価している。

 また、日弁連会長声明は、「政府に対しては、本判決を受けて、従来のエネルギー・原子力政策を改め、速やかに原子力発電所を廃止して、再生可能エネルギーを飛躍的に普及させるとともに、原子力発電所の立地地域が原子力発電所に依存することなく自律的発展ができるよう、必要な支援を行うことを強く求める」とも述べている。

 一方、この判決を受けても、菅官房長官が「原子力規制委員会が新規制基準への適合を認めた原発の再稼働を進めるという従来の政府方針について全く変わりない」としているのは、勉強不足に過ぎる。

 関電は、*2-3のように、「当社の主張が理解いただけなかった」として、判決の翌日、名古屋高裁金沢支部に控訴したが、事の重大性を理解していないのは関電の方だ。

 さらに、日経新聞も、*2-4のように、電力会社の主張を繰り返し、「原発に100%の安全性を求め、絶対安全という根拠がなければ運転は認められないと主張しているのに等しい判決は疑問が多い」「上級審ではそれらを考慮した審理を求めたい」としているが、原発は、一旦事故が起これば取り返しのつかない大きな被害をもたらすため、原発には100%の安全性が求められる。

(3)他の原発の地元では・・
 佐賀地裁で玄海原発の運転差し止めを求める訴訟を争う玄海訴訟原告団は、*3-1のように、福井地裁判決に対し、「画期的」「衝撃」と評価し、「もう原発を再稼働すべきではない」としている。全国最大8千人近い原告が、佐賀地裁で玄海原発の操業停止を求めている訴訟の原告団長を務める長谷川照・元佐賀大学長(京都大学大学院理学系研究科出身)は、「安全神話から決別し、原発事故後の今とマッチしたすばらしい判決」としてこの判決を高く評価されたそうで、私も全く同感である。
 
 福井地裁の大飯原発再稼働差止判決が、「地震大国日本で基準地震動を超える地震が来ないというのは楽観的過ぎる」「地震という自然の前に、人間の限界を示しており、信頼できる根拠は見いだせない」としている点について、長谷川団長は「基準をクリアするかどうかで原発の安全を判断する規制委員会の考え方を否定した」とその意義を強調されたそうだが、新基準は(1)のようなものであるため、これは重要なポイントだ。弁護団共同代表の板井弁護士も、「二度と事故を繰り返さない立場に立った、すべての原発に通じる判断。玄海原発の訴訟にもいい影響を与える」としている。

 さらに、判決が、「憲法上、最高の価値ある人格権を広範に奪うのは、大きな自然災害、戦争以外では原発事故しかない」と断じたことについて、「玄海原発プルサーマルと全基をみんなで止める裁判の会」の石丸初美代表は、「命や健康が最優先という我々の主張と重なり、勇気づけられた」「九電も再稼働すべきではない」と語ったそうだ。

 九電は、川内原発(鹿児島県)の再稼働に向けた国の審査が最優先で行われており、今回の判決に対して、「具体的な内容を把握しておらず、コメントは差し控える」としているが、川内原発も同じである。

 関西電力大飯原発の運転差し止めを命じた福井地裁判決に対し、玄海原発が立地する佐賀県内の首長からは「衝撃的」と驚きの声が上がる一方で、「住民の不安を認めた結果」と理解を示す声もあり、再稼働をめぐるそれぞれの立場で反応が分かれた。しかし、下級審の判決であっても、この判決は論拠が明快で的を得ているため、上級審でも支持されて全国の原発に影響を与えてもらいたい。

 なお、*3-2のように、「脱原発をめざす首長会議」は、「いのちを守る避難計画はできるのか」と題する原発事故に備えた防災計画の勉強会を京都市内で開いたそうだが、30キロ圏内だけでも避難は困難を極めるのに、日本で250キロ圏内の人の避難などできるはずがない。

 さらに、*3-5、*3-6に書かれているように、原発再稼動第一号を目指している川内原発のケースでは、安全神話に乗った上で工事目的の対応をしており、これは、従来と全く変わっていない。

*1-1:http://digital.asahi.com/articles/ASG5N5JY6G5NUUPI004.html?ref=nmail
(朝日新聞 2014年5月21日) 発表要請「絶対にだめだ」 原子炉危機、周知に壁
 住民が知らないうちに大量被曝の恐れのあるドライベントが実施されていたかもしれない――。東京電力福島第一原発で事故直後に実際に起きたことは、原発再稼働の前提となる住民の避難計画づくりの重要な教訓となるはずだ。東電がドライベントを検討していたのは、情報規制の最中だった。「いまプレスをとめてるそうです」。2011年3月14日午前7時49分。福島第一原発には東電のテレビ会議システムを通して本店の官庁連絡班からそんな報告が届いた。3号機の原子炉圧力が急上昇している事態について、当時の原子力安全・保安院が報道機関に発表してはならないという情報統制を敷いているというのだ。政府事故調の報告書などによると、その数分後、原子炉の圧力が設計上の最高使用圧力を超えたとの連絡があった。原子炉の危機が高まっていた。東電は報道発表について首相官邸の了解を得るため、官邸に派遣されていた本店社員が保安院の担当者を探し回り、手間取っていた。また、福島県も住民へ周知するため報道発表をしたいと要請していたが、保安院は「絶対にだめだ」と返事をした。保安院は圧力が下がり原子炉に冷却水が注入できるようになることを期待していた。住民に危機を知らせるより、原子炉の暴走を止めることを優先したのだ。原子炉の状況が自治体や住民に的確に伝わらないなかで、住民が安全に避難することは難しい。企業統治に詳しい久保利英明弁護士は「ドライベントのような重大な決断は検討段階から住民に知らされるべきだ。深刻な事態では、企業は住民に対する安全保護義務を負っている。3年以上たっても東電も国も責任を明確にしない中で再稼働の議論には入れない」と語った。
■ベント判断は各社任せ
 原発事故当時、国にはどのような状況でベントの実施が許されるのかというルールがなく、電力会社に任せていた。東電の事故時操作手順書では「格納容器圧力が最高使用圧力の2倍」または「温度200度」に達した場合に、緊急時対策本部長(発電所長)の最終判断でベントをすることになっていた。福島第一原発で最終判断をする吉田昌郎(まさお)所長は、圧力が2倍に達しなくてもドライベントをするべきだという趣旨の発言をテレビ会議でしていた。ベントの際には周辺住民の避難情報を確認することが必要で、東電は「国や自治体等の関係機関と最大限に情報を共有しながら、実施について調整していく」としていた。しかし東電の資料によると、実際には1、2、3号機のウエットベント実施の際に「通信手段の不調」で連絡できなかった自治体もあった。原発事故を受け、原子力規制委員会は13年、原発を運転する前提となる新しい規制基準を作った。新たにフィルター付きベント設備の設置が義務づけられるなど設備面の強化策は打ち出された。しかし、どのような状況でベントの実施が許されるかという運用については相変わらず、自治体と電力会社が結ぶ「安全協定」という法律に基づかない協定に委ねられたままだ。このため、福島第一原発の事故のように一刻を争う中で緊急避難的に実施される場合は、住民が避難する時間的余裕がなくなってしまうことが今後も起きうる。東電柏崎刈羽原発の再稼働に慎重な新潟県の泉田裕彦知事は「(ベントに)どういう性能を持たせるかは避難計画とセット」として、ベントは避難する地元住民に影響がないことを保証しない限り実施しないこと、避難について自治体と協議することを東電に求めている。

*1-2:http://digital.asahi.com/articles/ASG5N0Q5VG5MULBJ01G.html
(朝日新聞 2014年5月20日) 原子力規制委員長「吉田調書読んでいない、知らない」
 東京電力福島第一原発で事故対応の責任者だった吉田昌郎氏(故人)が政府事故調査・検証委員会に答えた「聴取結果書」(吉田調書)について、原子力規制委員会の田中俊一委員長は19日の朝日新聞の取材に「読んでいない。知らない」と答えた。規制委は政府事故調などをふまえ、原発の新しい規制基準を決めた経緯がある。田中氏は「全部考慮してやっている。(調書が表に)出れば読ませていただきたい」と語った。これに関連して菅義偉官房長官は20日の会見で調書を開示しない方針を示したうえで、「吉田氏は外部への開示を望んでいない。本人からは書面での申し出もある」と説明した。菅氏の説明によると、吉田氏は政府事故調の聴取後に体調を崩し、その後の国会事故調による聴取の求めに応じられなかった。このため国会事故調が政府事故調にヒアリング記録の提出を要求。政府は①第三者に向けて公表しない②国会事故調でヒアリング記録を厳重管理する③調査終了後は政府事故調へ返却する――ことを条件に、吉田氏から国会事故調への提出の許可を得たという。自民党の石破茂幹事長は会見で「極限の事案の時にどう対応するかは危機管理だ。生命の危険があると逃げた時に、法的にどう裏打ちされたものなのか政府で検証されるものだ」と注文した。新潟県の泉田裕彦知事は、会見で「事故の検証のためにも公表すべきだ」と語った。小野寺五典防衛相も会見で「内容が事実であれば明らかにしなければならない」と述べた。小野寺氏は福島第一原発の所員が吉田氏の命令に違反して撤退したことについて「そのようなことがもしあったなら大変残念だ。内容に問題があるなら、担当大臣がしっかりした対応を取られると思う」と語った。

*2-1:http://digital.asahi.com/articles/DA3S11148418.html (朝日新聞 2014年5月22日) 大飯原発再稼働認めず 福島事故後初の判決 地震対策の不備認定 福井地裁
 関西電力大飯原発3、4号機(福井県おおい町)をめぐり、住民らが関電に運転の差し止めを求めた訴訟の判決が21日、福井地裁であった。樋口英明裁判長は「大飯原発の安全技術と設備は脆弱なものと認めざるを得ない」と地震対策の不備を認定し、運転差し止めを命じた。関電は22日にも控訴する方針。2011年3月の東京電力福島第一原発の事故後、原発の運転差し止めを求めた訴訟の判決は初めて。大飯原発は13年9月に定期検査のため運転を停止し、新規制基準に基づく原子力規制委員会の再稼働に向けた審査を受けている。この判決が確定しない限り基準に適合すれば大飯原発の運転は可能だが、世論の大きな反発も予想される。福島第一原発事故を踏まえ、まず樋口裁判長は「生存を基礎とする人格権は憲法上の権利であり、法分野において最高の価値を持つ」と述べ、差し止めの判断基準として「新規制基準への適否ではなく、福島事故のような事態を招く具体的な危険性があるか」を挙げた。そのうえで大地震が来た時に原発の冷却機能が維持できるかどうかについて検討。05年以降、安全対策の基準となる「基準地震動」を超える大きさの地震が東日本大震災を含めて5回原発を襲ったことを指摘し、大飯原発の基準地震動を700ガル(ガルは揺れの勢いを示す加速度の単位)とした関電の想定を「信頼に値する根拠はない」とした。関電は、基準地震動の1・8倍にあたる1260ガルに達しない限りメルトダウンには至らないと主張したが、判決は「その規模の内陸地殻内地震は大飯原発で起きる危険がある」と退けた。次に、使用済み核燃料を貯蔵するプールについても、樋口裁判長は福島第一原発事故で建屋の壁が吹き飛ぶなどして、周辺住民の避難が計画されたことを指摘。「使用済み核燃料も原子炉格納容器と同様に堅固な施設によって囲われてこそ初めて万全の措置と言える」と、関電の対応の不十分さを批判。「関電は、原発の稼働が電力供給の安定性につながるというが、極めて多数の人の生存そのものに関わる権利と電気代の高い低いの問題とを並べた議論の当否を判断すること自体、法的には許されないと考える」と結論づけた。裁判は、福井県民ら計189人が原告となっていた。判決は、福島第一原発の使用済み核燃料プールをめぐるトラブルで250キロ圏内の住民の避難が検討されたことを踏まえ、大飯原発から同じ距離圏内に住む原告166人について差し止め請求を認めた。(太田航)
■政府方針「不変」
 判決を受け、菅義偉官房長官は21日の記者会見で、原子力規制委員会が新規制基準への適合を認めた原発の再稼働を進めるという従来の政府方針について「全く変わりません」と述べた。
■コスト論より人格権優先
 《解説》この訴訟で示された判決は、大飯原発の運転の是非にとどまらず、地震国で原発を持つことができるのかという本質的な問いを突きつけた。判決では、大飯原発を襲う最大の地震の揺れを想定することはできず、住民の安全を確保できないとした。阪神大震災をきっかけに、国は2006年に耐震指針を見直し、地震の揺れを見積もるやり方を厳しくした。しかし、その後も想定を上回る地震の揺れが各地の原発を襲った。判決では大事故ほど混乱で思うような収束は難しいと指摘。政府の福島原発事故調による「吉田調書」でもその事実が裏付けられた。さらに、原発のあり方についても論を展開している。優先すべきは「生存にかかわる人格権」で、発電の一手段でしかない原発はそれよりも優先度を低く置くべきだとしている。「原発の稼働がコストの低減につながる」といった、電気代と住民の安全を同列で考えるべきではないと指摘。安全性を確保できなければ、原発を運転すべきではないと判断した。原発の再稼働に向けた準備が大詰めを迎えている。しかし、判決は福島事故で厳しくなった原発の規制基準の是非を論ずる以前に、原発の安全性に対する考え方を根本から見直すべきだとした。これは再稼働に向けた国の審査に影響を与えることになる。福島事故を起こした日本が原発を持つ意味とは何か、その資格はあるのか。判決は、私たちに改めて考えるよう求めている。

*2-2:http://www.nichibenren.or.jp/activity/document/statement/year/2014/140521_2.html (日本弁護士連合会会長 村越進 2014年5月21日) 福井地裁大飯原発3、4号機差止訴訟判決に関する会長声明
 福井地方裁判所は、2014年5月21日、関西電力株式会社に対し、大飯原子力発電所(以下「大飯原発」という。)から半径250km圏内の住民の人格権に基づき、同原子力発電所3号機及び4号機の原子炉について、運転の差止めを命じる判決を言い渡した。本判決は、仮処分決定を除くと、2011年3月の福島第一原発事故以降に言い渡された原発訴訟の判決としては初めてのものである。従来の原子力発電所をめぐる行政訴訟及び民事訴訟において、裁判所は、規制基準への適合性や適合性審査の適否の視点から、行政庁や事業者の提出する資料を慎重に評価せず、行政庁の科学技術的裁量を広く認めてきた。また、行政庁や事業者の原子力発電所の安全性についての主張・立証を緩やかに認めた上で、安全性の欠如について住民側に過度の立証責任を課したため、行政庁や事業者の主張を追認する結果となり、適切な判断がなされたとは言い難かった。これに対し本判決は、このような原子力発電所に関する従来の司法判断の枠組みからではなく、技術の危険性の性質やそのもたらす被害の大きさが判明している場合には、その性質と大きさに応じた安全性が認められるべきとの理に基づき、裁判所の判断が及ぼされるべきとしたものである。その上で、原子力発電所の特性、大飯原発の冷却機能の維持、閉じ込めるという構造の細部に検討を加え、大飯原発に係る安全技術及び設備は、万全ではないのではないかという疑いが残るというにとどまらず、むしろ、確たる根拠のない楽観的な見通しの下に初めて成り立ちうる脆弱なものとし、運転差止めを認めたものである。本判決は、福島第一原発事故の深い反省の下に、国民の生存を基礎とする人格権に基づき、国民を放射性物質の危険から守るという観点から、司法の果たすべき役割を見据えてなされた、画期的判決であり、ここで示された判断の多くは、他の原子力発電所にもあてはまるものである。当連合会は、昨年の人権擁護大会において、いまだに福島第一原発事故の原因が解明されておらず、同事故のような事態の再発を防止する目処が立っていないこと等から、原子力発電所の再稼働を認めず、速やかに廃止すること等を内容とする決議を採択したところである。本判決は、この当連合会の見解と基本的認識を共通にするものであり、高く評価する。政府に対しては、本判決を受けて、従来のエネルギー・原子力政策を改め、速やかに原子力発電所を廃止して、再生可能エネルギーを飛躍的に普及させるとともに、原子力発電所の立地地域が原子力発電所に依存することなく自律的発展ができるよう、必要な支援を行うことを強く求めるものである。

*2-3:http://www.saga-s.co.jp/news/national/10201/66092
(佐賀新聞 2014年5月22日) 大飯原発差し止め、関電が控訴、「安全性主張していく」
 関西電力は22日、大飯原発(福井県おおい町)3、4号機の運転差し止めを命じた福井地裁判決を不服として、名古屋高裁金沢支部に控訴したことを明らかにした。関電は「当社の主張が理解いただけなかった。控訴審で安全性について主張していく」と説明している。福井地裁の判決をめぐっては、原告団のメンバーらが22日午前、関電本店(大阪市北区)を訪れ、控訴をせず判決内容に従うよう申し入れていた。

*2-4:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20140523&ng=DGKDZO71644930T20C14A5EA1000 (日経新聞社説 2014.5.23) 大飯差し止め判決への疑問
 関西電力大飯原子力発電所3、4号機について、福井地裁が運転再開の差し止めを命じた。東京電力福島第1原発の事故後、同様の差し止め訴訟が相次いでいるなかで初めての判決だ。裁判では、関電が想定する地震の揺れの強さが妥当か、事故時に原子炉を冷やす機能を維持できるのかなどが争点になった。判決は「(関電の対策は)確たる根拠のない楽観的な見通しのもとに成り立つ脆弱なもの」と断じた。疑問の多い判決である。とくに想定すべき地震や冷却機能の維持などの科学的判断について、過去の判例から大きく踏み込み、独自の判断を示した点だ。判決は関電の想定を下回る揺れでも電源や給水が断たれ、重大事故が生じうるとした。地震国日本では、どんなに大きな地震を想定しても「それを超える地震が来ない根拠はない」とも指摘した。これは原発に100%の安全性を求め、絶対安全という根拠がなければ運転は認められないと主張しているのに等しい。国の原子力規制委員会が昨年定めた新たな規制基準は、事故が起こりうることを前提に、それを食い止めるため何段階もの対策を義務づけた。「多重防護」と呼ばれ、電源や水が断たれても別系統で補い、重大事故を防ぐとした。判決はこれらを十分考慮したのか。大飯原発は規制委が新基準に照らし、安全審査を進めている。その結論を待たずに差し止め判決を下したのには違和感がある。関電は判決を不服として控訴した。原発の安全性をめぐる科学的判断に司法はどこまで踏み込むのか、電力の安定供給についてどう考えるのか。上級審ではそれらを考慮した審理を求めたい。一方で、判決が住民の安全を最優先したことなど、国や電力会社が受け止めるべき点もある。安全審査が進むなか、住民の避難計画づくりが遅れている。安全な避難は多重防護の重要な柱だ。自治体の計画づくりを国が支援し、電力会社も説明を尽くすべきだ。

*3-1:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/65965
(佐賀新聞 2014年5月22日) 「画期的」「衝撃」評価と驚き 玄海訴訟原告団
 大飯原発3、4号機の再稼働にノーを突きつけた21日の福井地裁判決。福島第1原発事故を教訓に「原発の危険性と被害の大きさは十分明らかになった」とする司法判断に、佐賀地裁で玄海原発の運転差し止めを求める訴訟を争う原告からは「画期的な判決。もう原発を再稼働すべきではない」との声が上がった。「安全神話から決別し、原発事故後の今とマッチしたすばらしい判決」。全国最大の8千人近い原告が、佐賀地裁で玄海原発の操業停止を求めている訴訟の原告団長を務める長谷川照・元佐賀大学長は、判決を高く評価した。「3・11」以前から、全国の原発周辺の住民らが数々の運転差し止め訴訟を起こしてきた。しかし、住民側が勝訴したのは2006年に金沢地裁が志賀原発2号機について「想定を超える地震で被ばくする可能性がある」とした1例だけ。この判決も上級審で逆転敗訴し、司法は国の原発政策を追認してきたのが実情だ。福井地裁の判決では、国が再稼働を審査する上で大前提となる基準地震動の設定について「地震という自然の前に、人間の限界を示しており、信頼できる根拠は見いだせない」とした。長谷川団長は「基準をクリアするかどうかで原発の安全を判断する規制委員会の考え方を否定した」とその意義を強調した。判決はまた、「地震大国日本で基準地震動を超える地震が来ないというのは楽観的過ぎる」「使用済み核燃料プールに、原子炉格納容器のような堅固な設備がない」など、原発そのものの危険性を指摘。弁護団共同代表の板井優弁護士は「二度と事故を繰り返さない立場に立った、すべての原発に通じる判断。玄海原発の訴訟にもいい影響を与える」と分析する。さらに判決は「憲法上、最高の価値がある人格権を広範に奪うのは、大きな自然災害、戦争以外で原発事故しかない」と断じた。約780人が原告となり、玄海原発の運転差し止めなどを求めた訴訟を起こしている「玄海原発プルサーマルと全基をみんなで止める裁判の会」の石丸初美代表は「命や健康が最優先という我々の主張と重なり、勇気づけられた。九電も判決を見習って再稼働すべきではない」と語気を強めた。九電が抱えるもう一つの原発の川内原発(鹿児島県)は再稼働に向けた国の審査が最優先されている。九電は今回の判決に「訴訟の具体的な内容を把握しておらず、コメントは差し控える」とした。
■県内首長 受け止めさまざま
 関西電力大飯原発の運転差し止めを命じた21日の福井地裁判決に対し、玄海原発が立地する佐賀県内の首長からは「衝撃的」と驚きの声が上がる一方、「住民の不安を認めた結果」と理解を示す声もあり、再稼働をめぐるそれぞれの立場で反応が分かれた。夕方、佐賀市内で記者団の取材に応じた古川康知事は「これまで下級審では(差し止めを)認める判決もあった。裁判官が独自の審理で出された判決だと思う」と淡々と受け止めた。電力会社の主張をことごとく退けた判決内容には「驚いた」とした上で、玄海原発訴訟への影響には「独立して審理されている。参考にされるだろうが、それについて述べるのは控えたい」と言及を避けた。政府の原子力政策に対しても「下級審の判決を見て、再稼働などの是非を判断することにはならないだろう」との認識を示した。玄海原発の再稼働は「原子力規制委員会に国民の信頼に足る審査を行ってもらうことに尽きる。(再稼働などは)その後の判断になる」と従来の考えを強調した。玄海原発が立地する東松浦郡玄海町の岸本英雄町長は東京都内で原発立地自治体の首長らが参加する会議に出席していた。「司法の判断なのでコメントする立場にない」としつつ、「判決が玄海原発の再稼働にどのように影響するのか現時点では未知数。規制委には粛々と審査を進めてもらうしかない」と話した。玄海原発に隣接する唐津市の坂井俊之市長は「衝撃的な判決だ。判決内容の詳細はまだ把握しておらず、福井地裁が(原発の)どういう部分を否定したのか、しっかり分析したい」と述べた。九州電力に立地自治体並みの安全協定締結を求めている伊万里市の塚部芳和市長は「原発250キロ圏内の住民の不安を司法が認めた結果であり、国には重く受け止めてもらいたい」と国に注文。「周辺地域住民の原発に対する不安は非常に大きい。国は再稼働を進めるのであれば、住民が安心できるような防災対策への支援とともに、電力事業者との立地自治体並みの安全協定の締結にも配慮してもらいたい」とコメントした。

*3-2:http://qbiz.jp/article/38455/1/
(佐賀新聞 2014年5月25日) 「複合災害の避難計画遅れ」 脱原発首長会議が勉強会
 全国の市町村長などでつくる「脱原発をめざす首長会議」(95人)は24日、「いのちを守る避難計画はできるのか」と題する、原発事故に備えた防災計画の勉強会を京都市内で開いた。愛媛県や京都府などの、原発周辺自治体の4市長が避難計画の策定状況などを報告。地震などとの複合災害が想定されておらず、避難先の確保が難しいなど、十分な計画にはほど遠い現状を明らかにした。「計画は作ったが、機能するのかと言われれば難しく、矛盾を抱えている」。四国電力伊方原発(愛媛県伊方町)から南東に最短約13キロに位置する同県西予市。三好幹二市長は、勉強会で「地震が発生すれば道路が使えない恐れがあるが、複合災害はまだ想定できていない」と話した。同県宇和島市も30キロ圏内の緊急防護措置区域(UPZ)に含まれるが、石橋寛久市長は「避難計画は問題だらけ。再稼働には慎重にならざるを得ない」と指摘した。一方、関西電力高浜原発(福井県高浜町)から最短30.9キロという京都府京丹後市。中山泰市長は「30キロをわずかに超えるため独自に避難計画を策定中。30キロ圏を外れると、予算で国の支援も得られず、避難先の確保も進まない」とUPZの線引きに疑問を呈した。勉強会ではこのほか、避難計画に詳しい専門家からも課題の指摘があった。


PS(2014.5.27追加):*3-3のように、原子力規制委員会の優先審査で再稼働に最も近いとされる川内原発に関し、鹿児島県と薩摩川内市が開催した住民説明会で、参加者から、関西電力大飯原発運転差止を命じた福井地裁判決を引き合いに、「再稼働より人命が大事だ」との声が上がったとのことである。鹿児島県は農業、漁業が盛んで、最近は九州新幹線により「福岡⇔薩摩川内」間が1.5時間程度で結ばれ、薩摩川内市は、原発が無い方が地域振興できる場所になったため、再稼働は不要だ。

*3-3:http://qbiz.jp/article/38545/1/
(西日本新聞 2014年5月27日) 「再稼働より人命」住民から不満の声 川内原発避難説明会
 鹿児島県は26日夜、九州電力川内原発が立地する同県薩摩川内市で、原発事故時の避難計画などについて、市とともに住民説明会を開催した。川内原発は原子力規制委員会の優先審査で、再稼働に最も近い原発とされる。参加者からは、関西電力大飯原発3、4号機の運転差し止めを命じた福井地裁判決を引き合いに、「再稼働より人命が大事だ」との声も上がった。県は原発から半径30キロ以内(緊急防護措置区域=UPZ)で、現地の市町とともに順次、説明会を開いている。この日は原発から東へ約23キロの入来文化ホール(同市入来町)であり、対象地区の住民約2万1千人に対し約70人が参加した。市と県は避難指示が出た後の行動の手順などを説明。これに対し、参加者からは「避難計画は夜間を想定しておらず、机上の空論だ」「再稼働ありきの説明会だ」などの反論が出た。市は「計画を立てて住民の安全確保を図ろうとしている」などと理解を求めた。県はUPZ圏内の全9市町で、6月中をめどに説明会を終える予定。


PS(2014.5.27追加):*3-4のように、津軽海峡を挟んで大間原発の対岸30キロ圏内にある函館市は、事業者であるJパワーと国を相手取って、大間原発建設差止訴訟を東京地裁に起こした。函館市は、五稜郭などの歴史遺産がある場所で、農水産資源と観光資源がその地域の富であり、原発事故が起こればそのすべてを失う。そのため、自治体に原告適格があるかというような論点に終始せず、また、眼先の発電能力や根拠なき“安全性”に依拠することなく、原発の建設差止が認められるべきである。

*3-4:http://digital.asahi.com/articles/ASG4341HTG43UTIL021.html
(朝日新聞 2014年4月3日) 函館市、大間原発建設差し止め提訴 自治体、初の原告
 北海道函館市は3日、青森県大間町で建設中の大間原発について、事業者のJパワー(電源開発)と国を相手取り、建設差し止めを求める訴訟を東京地裁に起こした。原発差し止め訴訟で自治体が原告になるのは初めて。訴状を提出した工藤寿樹市長は「危険だけを押しつけられて、(建設の同意手続きの対象外のため)発言権がない理不尽さを訴えたい」と語った。函館市は津軽海峡を挟んで大間原発の対岸にあり、市域の一部は原発事故に備えた避難の準備などが必要な30キロ圏の防災対策の重点区域(UPZ)に入る。東京電力福島第一原発事故では深刻な被害が30キロ圏に及んだ。函館市は「大間原発で過酷事故が起きれば、27万人超の市民の迅速な避難は不可能。市が壊滅状態になる事態も予想される」と訴え、「市民の生活を守り、生活支援の役割を担う自治体を維持する権利がある」と主張する。その上で、立地市町村とその都道府県にある建設の同意手続きが、周辺自治体にはないことを問題視。同意手続きの対象に30キロ圏の自治体を含めるべきで、国が2008年4月に出した大間原発の原子炉設置許可は、福島原発事故前の基準で不備があり、許可も無効と指摘する。今回の提訴は、函館市議会が今年3月に全会一致で認めた。弁護団の河合弘之弁護士は「市長が議会の承認を得て起こした裁判で、その重さは裁判官にも伝わるだろう」と語った。弁護団は「3年で判決を得たい」とした。函館市は訴訟費用を年間約400万円と見込んでおり、それを賄うため全国に募金を呼びかけ、2日までに109件514万円が集まった。大間原発の建設は提訴後も続く見通しだ。Jパワーは「裁判を通じて計画の意義や安全対策の考えを主張していく。函館市に丁寧に情報提供や説明をしながら計画を推進していきたい」とのコメントを出した。大間町の金沢満春町長は「他の自治体が決めたことにコメントはできない。町は今まで通り『推進』ということで地域一丸になって頑張る」とコメントした。菅義偉官房長官は記者会見で「自治体などの理解を得るために事業者が丁寧に説明を行うことはもちろん、国としても安全性を説明していきたい」と述べた。
    ◇
〈大間原発〉津軽海峡に面する青森県・下北半島の北端で建設が進む。使用済み核燃料から取り出したプルトニウムとウランを混ぜた燃料(MOX燃料)を100%使う世界初の「フルMOX原発」として2008年5月に着工。建設工事は東日本大震災で中断したが、12年10月に再開した。工事の進捗(しんちょく)率は37・6%、完成予定は未定。完成すれば出力は約138万キロワット。

PS(2014年5月29日追加):*3-5のように、公害を出しながらその処理費用を支払わない民間企業に対して、国がシェルター整備のために税金から補助金311億円を交付し、「原発のコストは安い」などと言うのは筋が通らない。何故なら、原発のコストとは、これらすべての費用を含むものだからである。また、事故時は、住民がしばらく避難していれば、戻ってきて住居・田畑・里山・海が元どおり使えると考えているのも、原発公害を過小評価しすぎている。

*3-5:http://qbiz.jp/article/38738/1/
(西日本新聞 2014年5月29日) 原発シェルター、「川内」5キロ圏内5カ所整備へ
 原発事故が起きても、30キロ圏外にすぐには逃げられない高齢者や障害者らが被ばくを避ける場所として、全国の原発周辺でシェルター(一時的屋内退避施設)が整備されている。国はこれまでに整備の補助金311億円を交付。九州電力川内、玄海両原発を抱える九州では本年度中に計24施設が整備される。シェルターを訪ね、課題を探った。壁や天井はコンクリートと鉛の板で覆われ、窓もすべてふさがれている。中に入ると、圧迫感を感じる。九州電力川内原発(鹿児島県薩摩川内市)から南に2・9キロの寄田小学校跡にシェルターの一つがある。体育館だった建物の舞台部分を取り払い、床面積は約90平方メートル。52人を収容できる。放射性物質除去フィルター付きの換気装置に加え、放射性物質の侵入を遮断するため屋内の空気の圧力を屋外より高くする機能も備える。非常用発電機は、給油しなくても4日間連続して使用できるという。東京電力福島第1原発事故では、周辺の病院の入院患者が避難の途上で48人亡くなったとの報告もある。薩摩川内市防災安全課の角島栄課長は「高齢者や障害者はすぐに逃げられない。しばらくはとどまらざるを得ない」と話す。事故時は即時避難が求められている5キロ圏の4地区(寄田、滄浪(そうろう)、水引、峰山)には在宅の要援護者91人が暮らす。4地区には要援護者と付添人が一時退避できるよう、旧寄田小跡を含めシェルターが本年度中に計5カ所整備される予定だ。1施設の建設費は2億円。国が全額を補助する。川内原発から1・4キロにある、認知症の84〜99歳の男女18人が暮らすグループホーム「お多麻(たま)さんの家」は、寄田小跡のシェルターへの一時退避を決めた。最終的には30キロ圏外の鹿児島市の施設に車で避難する計画にしているが、管理者の瀬戸口眞知子さん(62)は「急激な環境変化や長距離移動は高齢者には大変な負担になる」と判断した。30キロ圏に拡大すれば、要援護者の数は急増する。5〜30キロ圏にもシェルターを求める声は多い。原発から約12キロに住む同市東郷町斧淵の片平和代さん(62)は自力では動けない要介護5の母(90)と暮らす。「行政は『バスが集合先の小学校に来る』と言うが、着の身着のままの避難は母には無理」と訴える。だが、地元行政で5〜30キロ圏内に整備する議論は今のところない。鹿児島県は「シェルター整備の条件が5キロ圏内、および30キロ圏内の離島、半島などとなっている」と説明している。

PS(2014年5月29日追加):また、*3-6のように、避難経路も放射性物質の拡散の仕方を考えておらず、「過酷事故は起こらない」という安全神話の上に成り立っている。

*3-6:http://373news.com/modules/pickup/index.php?storyid=57160
(南日本新聞 2014 5/28) 原発事故時避難計画 放射性物質拡散考えず
 九州電力川内原発1、2号機(薩摩川内市久見崎町)の重大事故を想定し、原発から30キロ圏の9市町が策定した住民避難計画は、放射性物質の広がり方や方向を左右する風を考慮しておらず、避難先は1カ所しか指定していない。県や当該市町は「事故の状況を踏まえて対応する」としているが、住民の不安を払拭(ふっしょく)するには程遠い。住民の不安は避難先や経路が風下に当たる恐れがあるのに、複数の避難先が確保されていないからだ。避難は自治会・地域単位が基本。避難先の自治体は複数であっても、自治会に割り当てられた避難所は1カ所なのが現状だ。

*4:http://www.news-pj.net/diary/1001
(NPJ 2014年5月21日) 【速報:大飯原発運転差止請求事件判決要旨全文】を掲載していますが、長いので、下の「続き▽」をクリックすれば出てくるようしています。

続き▽
| 原発::2014.5~8 | 12:03 PM | comments (x) | trackback (x) |
2014.5.24 配偶者控除廃止論について-所得税法改正以前に、まず女性の無償労働を有償化すれば、どれだけの所得に当たるかを計算すべきである。(2014年5月25日追加あり)
       

(1)その世帯の本当の所得はいくらか?←女性の無償労働も考慮に入れるべき
 *2の改善はまあよいが、保育利用料の上限が据え置かれても、年収470万~640万円の世帯が、3歳以上6歳以下の子(4万1500円/月)と0~2歳までの子(4万4500円/月)の二人を保育園に通わせて働いていると、正規の保育料だけで8万6000円/月(103万2000円/年)を支払わなければならない。時間外や子どもの病気などで保育園を利用できない時に、保育ママ等を利用すれば、子育ての経費はさらに高くなる。

 女性がフルタイムで働く場合は、家事はあまりできないため(両方を普通にやれば過重労働になる)、お手伝いさんを雇ったり、掃除を外注したり、中食(なかしょく)のために調理済食品を買ったりと、家事を外部委託することが多くなるが、それも女性が外で働くための経費である。この費用を、小さく見積もって毎月8~10万円程度だとすれば、前期の保育料と合わせて、女性が働くために家事を外部化した費用は、約16.6~18.6万円/月(199.2~223.2万円/年)になる。その逆に、0~2歳と3歳以上6歳以下の2人の子を自分で育て家事を外部化していない専業主婦は、少なく見積もっても約16.6~18.6万円/月(199.2~223.2万円/年)という金額を稼ぎ出しているのであり、これまでは、とかく家事労働の対価は無償として計測されなかったが、外部の人に頼めば、これだけの報酬を要求されるものなのだ。

 これは、*3、*4の介護も同じで、外で働くことにより得る収入が、働くために増加する経費よりも小さい人は、仕事をやめて自分でやるのが、その時点の経済性だけ見ると合理性のある選択となる。

 なお、私は、「保育サービス」は役務提供であるため、電気料金、郵便料金、運賃などと同様、所得によって料金が変わるのはおかしいと思っている。同じサービスは同じ料金で提供するのが当然であるにもかかわらず、保育サービスの料金体系は、頑張る夫婦にペナルティーを課しているかのようだ。所得の再分配機能は所得税で果たしているため、保育料でまで行う必要はないにもかかわらずである。

(2)負担力主義の所得税制下で、無償労働の対価をどう扱うべきか→2分2乗方式へ?
 税は負担力のある人が応分の負担をする仕組みであるため、無償労働には負担力が無いという理由で所得税がかからない。また、共働き夫婦が支払う家事の外部委託費用は経費として考慮されないため、共働き世帯と片働き世帯の税負担には不公平が生じる。これは、*1のような、たった年間38万円の配偶者控除を残すとか廃止するとかで解決する問題ではない。

 わが国は、*5に書かれているように、1950年のシャウプ勧告以来、個人単位課税方式を採用するようになり、私も、これは合理的だと思うが、アメリカ(2分2乗方式も選択可)と同様、法律婚をしている場合には世帯単位課税も選択できるようにするのがよいと考える。世帯単位課税が選択できれば、働いているのに無報酬の配偶者の所得がもう一方の配偶者の課税時に考慮され、低い所得税率が適用されて所得税が低くなり、夫婦間の所得の組み合わせによって課税額が異なることがなくなるからだ。

(3)扶養家族の数も考慮したn分n乗方式の方が、さらによいのでは?
 *5に書かれているように、フランスでは夫婦合算の所得を子どもも加えた世帯人数に分割して課税するn分n乗方式が採用されている。この制度では、扶養家族も1/2として人数に入れるため、子どもの数が多い世帯は所得税がそれだけ低くなる。そのため、この税制は、当然のことをしながら、人口政策に効果を発揮する。

(4)結論
 確定申告を要件とし、世帯単位課税を選択した方が課税額が小さくなるように税率を設定して、世帯単位での課税を選択することも可能にすれば、結婚する動機付けが増すメリットがある。また、フランス型のn分n乗方式なら、子どもの数が増えるとそれに応じて所得税が低くなるため、人口政策にもなる。そして、それは、たった38万円の扶養控除を認めるよりも、実態に即しており合理的である。

 そのため、わが国は、個人所得課税を基本としながらも、家族があってそちらの方がメリットのある人は、フランス型のn分n乗方式を選択できるようにし、どちらを選択した場合でも、一定の家事外部委託費用は経費として認めるのがよいと考える。

*1:http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2014042102000123.html (東京新聞社説  2014年4月21日) 配偶者控除 女性就労の壁は本当か
 安倍晋三首相の意向で政府税制調査会が始めた「配偶者控除」廃止議論は到底理解できない。女性就労の妨げとの論理の乱暴さもさることながら、廃止による大幅増税は家計への打撃が大きすぎる。配偶者控除をめぐっては「百三万円の壁」という言葉が定着している。たとえばサラリーマンの妻がパート勤めで年収が百三万円を超えると、本人に所得税がかかるうえ、夫には配偶者控除が適用されなくなって所得税額が増える。そのため妻が百三万円を超えないよう労働時間を抑え、それが壁になっていることを指す。政府は過去に「壁」の解消をねらって「配偶者特別控除」を追加し、百四十一万円未満までは、夫の年収が一千万円以下であれば一定の控除が受けられるようにした。だが、特別控除による恩恵はそれほど大きくないため、「百三万円の壁」が依然として高い。それなら配偶者控除を廃止すれば女性の就労は進むだろうというのが廃止論者の考えであり、女性の社会進出拡大を成長戦略の一つに掲げる安倍首相の意向である。しかし、話はそんなに単純ではあるまい。女性の社会進出を阻んでいる大きな要因は、保育所の待機児童や介護施設の定員不足に代表される「子どもを預けられず、介護も女性任せ」で、とても安心して働きには出られない社会構造にあるのではないのか。女性の就労促進といいながら、パートなど低賃金労働の選択肢しかない状況で女性を都合よく活用しようという政府や経済界の意図が透けてみえるようである。配偶者控除の廃止が女性の就労促進につながるかは、はっきりせず、ほとんど効果がないとの研究もある。逆に、廃止が家計に与える影響の甚大さは明白だ。財務省によると、「配偶者控除」の適用者は約一千四百万人で、減税額は六千億円に上る。「配偶者特別控除」も約百万人、三百億円だ。もし配偶者控除が廃止になると、年収五百万円の家庭で約七万円の増税になる。消費税率8%への引き上げと、すでに廃止された年少扶養控除を合わせれば年間負担増は二十五万円を超える。相次ぐ増税と物価上昇で家計は疲弊する。増税分をまかなうために女性はもっと働け、ということか。それが成長戦略なのか。自民党は昨年の参院選、一昨年の衆院選で「配偶者控除の維持」をマニフェストに掲げていた。公約違反は許されないはずだ。

*2:http://digital.asahi.com/articles/DA3S11150429.html
(朝日新聞 2014年5月23日) 保育利用料、上限ほぼ据え置き 新制度の価格案公表
 来年4月に始まる保育・幼児教育の新制度で、政府は22日、利用者の負担額や、事業者に払われるサービスごとの「公定価格」の案を公表した。利用料の上限はほぼ今の水準に据え置く。サービスの質の向上に取り組む施設の収入は、今より1割程度増えるようにする。新制度は、消費増税を元手にした社会保障充実の目玉。制度づくりはほぼ終わり、今後は各市町村が具体的な運用の検討に入る。保育の利用料は、国が決めた上限額の範囲で各市町村が決める。上限より安くするケースが多く、差額は自治体が負担する。新制度の上限額は、認可保育所や、保育所と幼稚園の機能を併せ持つ認定こども園、小規模保育などで共通。保護者の所得で額は変わる。利用が1日最長11時間(標準時間)の場合、上限額はほぼ現行通りとする。最長8時間(短時間)の利用では、標準より1・7%ほど安くする。金額は子の年齢で二つの区分があり、多くの場合、「0~2歳」を「3歳以上」より月3千円高くする。新制度では、利用料が割高といわれる認可外の保育所や保育ママなども、条件を満たせば認可制度に入れるようになる。多くの利用者で負担が軽くなるとみられる。また幼稚園でも上限額は基本的に今と同程度とする。ただ、独自の幼児教育サービスなどの費用を別に徴収することもできる。一方、事業者に払われる「公定価格」では、質の向上をねらったさまざまな項目を導入。私立施設で働く職員の賃金を平均3%上げるために単価を引き上げるほか、3歳児向けに職員を手厚く配置すると加算される仕組みなどを設ける。その結果、消費税率が10%になり、必要な財源の確保が見込まれる2017年度には、標準的な規模の認可保育所や認定こども園などの各施設が質の向上を進めた場合、収入が今より1割前後増える見通しだ。ただ、待機児童の解消策では、中途半端になった点もある。政府は、認定こども園向けのサービス単価を高めに設定し、定員割れが目立つ幼稚園からの移行を促すことを検討した。だが結局、幼稚園や認定こども園、保育所などであまり単価に差をつけなかった。自民党関係者によると、保育所などの業界団体が「公平な価格設定」を政府や与党に働きかけた結果という。内閣府は「移行を望む施設に、整備の支援などを行っていく」と説明するが、認定こども園がどれほど増えるかは不透明だ。政府は、公定価格や利用者負担の案を26日の「子ども・子育て会議」で示す。正式には年末の15年度予算編成で決める。
■保育新制度の利用者負担の上限(月額)
◇所得区分(モデル世帯での年収)
<1>3歳以上  <2>0~2歳
    *
◇生活保護受給
<1>0円  <2>0円
◇市町村民税非課税(年収およそ260万円未満)
<1>6000円  <2>9000円
◇市町村民税課税・所得税非課税(同260万~330万円)
<1>1万6500円  <2>1万9500円
◇市町村民税の所得割課税額9万7千円未満(同330万~470万円)
<1>2万7000円  <2>3万0000円
◇同9万7千円以上~16万9千円未満(同470万~640万円)
<1>4万1500円  <2>4万4500円
◇同16万9千円以上~30万1千円未満(同640万~930万円)
<1>5万8000円  <2>6万1000円
◇同30万1千円以上~39万7千円未満(同930万~1130万円)
<1>7万7000円  <2>8万0000円
◇同39万7千円以上(同1130万円以上)
<1>10万1000円  <2>10万4000円
※負担額は「標準時間」(1日最長11時間)利用の場合。「短時間」(同8時間)利用ではこれより1.7%程度低くなる。モデル世帯は「夫婦・子2人で、夫はフルタイム、妻はパートタイム労働」の想定

*3:http://www.kochinews.co.jp/?&nwSrl=319740&nwIW=1&nwVt=knd
(高知新聞 2014年5月8日)  【介護離職】仕事と両立できる社会に
 家族の介護のために仕事を辞める「介護離職」が深刻だ。総務省によると、2012年までの5年間で家族の介護や看護を理由に約43万9300人が離職している。こうした状況を受け、政府は仕事と介護の両立に有効な支援制度を実際に企業に導入してもらって課題を探る実証実験を始めた。14年度中に効果的な事例をまとめ、企業に普及啓発していく。今後5年間で団塊世代がすべて70代になり、家族を介護する働き盛りの40~50代の急増が懸念されている。家族の介護は予測がつかず、仕事とどう両立するかは待ったなしの課題だ。実効性のある取り組みにつなげたい。問題の背景には少子化がある。介護を必要とする世代が増える一方で、子どもの世代はきょうだいの数が少なく、未婚率も高い。独身男性が高齢の親の面倒を見るケースも少なくない。精神的に追い込まれた末の「介護殺人」という悲劇も起きている。さらに介護問題に対して理解が進まない企業の風土もある。育児・介護休業法は通算93日までの介護休業の取得を企業に義務付けている。大企業を中心に1年以上の休業期間を設けるなど、介護を担う社員を支援する動きも広がってきた。だが介護が長期化すると復職か退職かの選択を迫られる。特に男性は悩みを打ち明けられずに、離職を選ぶことが多いという。働き盛りの社員を失うことは企業にとっても大きな損失だ。相談体制を充実させるとともに、勤務時間の短縮や在宅勤務制度の導入など柔軟な働き方を進めてほしい。仕事を辞めても現実は厳しい。家計経済研究所の調査では、在宅介護に掛かる自己負担額の平均は月約6万9千円にも上る。介護保険でカバーされる部分があるにしても、収入が途絶えた中で介護が家計を圧迫しているのは間違いない。再就職の道は険しく、自らの老後にも不安が残る。介護離職は大きなリスクを抱えることにもなる。仕事と子育ての両立と同様に介護との両立も避けられない時代となった。政府は施設入所から在宅介護への移行を促しているが、その前に働きながら介護できる仕組みを整える必要がある。国と企業が力を合わせ、両立できる社会を実現させたい。

*4:http://qbiz.jp/article/37720/1/
(西日本新聞 2014年5月15日) ボランティア介護、限界 「要支援1、2」が市町村に移管へ 
 衆院厚生労働委員会は14日、介護保険と医療提供体制の見直しを盛り込んだ地域医療・介護総合確保推進法案を自民、公明両党の賛成多数で可決した。介護サービスの低下や利用者の負担増につながるなどとして野党が反対する中、与党が採決を強行。15日に衆院を通過させ、参院に送付する方針で、今国会で成立する公算が大きい。14日の理事会で与党が同日中の採決を提案。野党側は審議時間が不十分だと反発し、審議継続を求めた。そのため、与党は質疑が終了後、動議で審議を打ち切った。14日午後の委員会には安倍晋三首相も出席。首相は「負担増ばかり強調されているが、所得の高い方に負担を求める一方で、低い方には保険料を軽減する。持続可能な介護保険にする」と理解を求めた。法案は、介護の必要度が低い要支援1、2の一部サービスを市町村事業に移すほか、一定以上の所得がある利用者の自己負担割合を2015年8月に1割から2割に引き上げる。特別養護老人ホームへの入所は原則、要介護3以上に限定する。地域医療・介護総合確保推進法案は、地域の介護ボランティアなどにも波紋を広げている。法案には、比較的症状が軽い要支援1、2の人向けのサービスのうち、訪問介護と通所介護(デイサービス)を2015年度から3年間で市町村事業に移管することが盛り込まれている。国はボランティアやNPO法人を担い手にして経費削減をもくろむが、ボランティアへの過度の負担や、自治体によるサービスの地域格差も懸念されている。「上を向いて歩こう」のメロディーに合わせて、椅子に座った24人の高齢者がゆったりと腕を上げ下げしていた。介護予防の先進地とされる福岡県行橋市。西宮市(にしみやいち)3区の集会所で開かれる「いきいきサロン」だ。週に1度約2時間、ダーツや卓球を楽しむ日もあれば、講演会やバスハイクの日も。年会費1200円で38人が登録するが、介護認定を受けている人はいない。介護制度が変われば、こうしたサロンに通う地域住民も、要支援の人を支えるボランティアとして期待される。高齢者世帯が多いこの地区では2年前、孤独死が相次いだ。サロンは「近所付き合いを楽しみつつ健康維持を」と、住民が中心になって始めた。ただ、参加者は普段から活発に出歩く人ばかり。「一番来てほしい人が来ない。迎えに行こうか」。共同代表の野本玲子さん(69)はそう提案したことがあるが、「けがをしたら誰が責任取るの」と反対が相次ぎ、断念した。
■先進地も戸惑う
 九州で同様に介護予防の先進地とされる長崎県佐々町は、6年前に介護予防ボランティアの養成を始めた。多くは自らも高齢者。今は約50人で買い物や家の掃除、ごみ出しなどを手伝う生活支援サービスなど、多彩な展開をしている。両市町は「介護保険に頼りすぎない町づくり」を掲げ、介護予備軍の健康増進を図ってきた。先進事例としてしばしば紹介してきた厚生労働省は、新制度では両市町のような取り組みが地域介護の新たな受け皿になる、と期待する。ただ、要支援の人の中には、ボランティアには対応が難しい初期の認知症患者もいる。親などを最長9時間のデイサービスに預けて仕事をしている人も少なくない。サロン運営を支援する行橋市社会福祉協議会の担当者は「ボランティアでできることには限界がある。本来は国がみるべき分野なのに、お金がないからボランティアにやってもらおう、という発想はおかしい」と疑問を口にする。
■老老介護に不安
 要支援1の身で、要介護2の妻(82)の面倒をみる福岡市東区の長家昌一さん(84)にとって、介護制度の変更は深刻な問題だ。通所介護を嫌がった妻を「俺も一緒に行くから」と説得し、2年前から週1回デイサービスセンターに通う。妻は病弱だ。足もともおぼつかず、四六時中、目が離せない。「関東から引っ越してきたので地域に頼れる人も少ない。センターは家内の世話をお願いし、自分のことができる唯一の場所なのに…。来られなくなったら、とても困る」。福岡市の要支援1、2は約1万9800人。市は「今、サービスを受けている人になるべく影響が出ないようにしたいが、利用制限や費用負担をお願いする可能性もある。そこを補えるよう、ボランティア育成に力を入れたい」とする。
◆自治体間格差に懸念
 2013年4月現在、要支援1、2の人は154万人で、介護保険認定者の27%。国はその人たちへのサービスを市町村事業に移管することで、毎年5〜6%ずつ増え続ける介護費用を、後期高齢者(75歳以上)数の伸びと同じ3〜4%に抑えることを目標にしている。要支援向けのサービスは掃除や洗濯、買い物など軽度なケアがほとんどだ。その一部をボランティアやNPO法人に任せて、介護費用を安く上げようという考えだ。ただ、長崎県佐々町のように介護予防ボランティアの活動が根付いている市町村は少ない。「要支援1、2の人は市内で千人以上。支援体制をわずか3年で整えるのは難しい」(福岡県嘉麻市)など、自治体からも悲鳴が漏れる。国は団塊の世代全員が後期高齢者となる25年に向け、中学校区単位で医療や介護を一体的に提供する「地域包括ケアシステム」の構築を目指す。ただ、福岡県の場合、拠点となる地域包括支援センターは149カ所だけで、公立中学校の339校に遠く及ばない。立教大の芝田英昭教授(社会保障論)によると、要支援1、2向けの訪問介護と通所介護サービスにかかる費用は年約3千億円で、介護費用全体の数%にすぎない。芝田教授は「ボランティア任せになると高齢者の症状が悪化し、逆に介護費用が増える恐れもある。自治体の財政力によってサービスに差が生じ、高齢者にしわ寄せがいきかねない」と、制度の変更には懐疑的だ。

*5:http://www5.cao.go.jp/seikatsu/whitepaper/h9/wp-pl97-01504.html
(経済企画庁 平成9年11月) 国民生活白書 働く女性 新しい社会システムを求めて
第I部 女性が働く社会
第5章 働く女性と社会システム
第4節 税  制
 女性の就労に関しては税制面からの影響も少なからずあるものと考えられる。税制の準拠すべき一般的基準について1988年の我が国の税制改革では,税負担の公平性,経済に対する中立性,税制の簡素化が基本理念とされているが,女性の就労という観点からは,このうち中立性からの視点が重要と思われる。すなわち特段の政策的目的がない限りは,働くという個人の生活上の選択に対して,税制がそれを有利にしたり,不利にしたりして特段の影響を与えることがない方がよいと考えられるようになってきている。こうした観点からは所得税の課税単位の問題を考える必要がある。すなわち課税単位を個人に設定するか,あるいは世帯に設定するかの問題である。前者は稼得者を単位として課税するものであり,後者は実際の消費生活の単位である世帯を課税単位としている。本節では,所得税の課税単位の問題を中心に我が国と諸外国の税制を概観し,翻って我が国の税制を検討する。
1. 我が国の税制
 我が国では,1887年の所得税創設以来,家族制度を反映して戸主及び同居家族の所得を合算し,その総額に所定の税率を適用ずる合算非分割方式の世帯単位課税であった。しかし,戦後は1950年にシャウプ勧告を契機に合算方式は廃止され,各人の所得税はその所得の大きさに従って課税されるようになり,個人単位の課税方式が採られるようになった。これに配偶者控除や扶養控除などの人的控除を導入し世帯的要素を加味したものとなっている。
2. 欧米諸国の税制
 近年,先進国においては女性の社会進出を始め女性のライフスタイルは多様化が著しい。このことは,就労,未婚,結婚等の選択が多様化しているだけでなく,自らのライフサイクルの中でも多様な選択を行っていることになる。以下ではこのような社会的背景を踏まえ,主に所得税を中心に欧米諸国の税制がどのように変化してきたのか,課税単位や人的控除を含めた各国の税制を概観することとする。
(各国の課税単位)
 欧米諸国の課税単位をみると,個人単位課税を採る国は,イギリス,イタリア,スウェーデン,ベルギー,オランダ,デンマーク,オーストリア,フィンランド,ギリシア,カナダの10カ国と最も多く,個人単位と世帯単位の選択制を採る国は,アメリカ,ドイツ,アイルランド,ノルウェー,スペインの5カ国,世帯単位課税を採る国は,フランス,ポルトガル,ルクセンブルクの3カ国となっている。
(主要国の税制)
 課税単位を巡る問題は,所得税が納税者の負担能力に配慮して累進税率となっていることに起因しており,各国の課税単位については以下のような変遷がみられた。
1)アメリカでは,48年まで個人単位課税を採用していたが,州によっては夫婦の所得分割が認め
  られたこどにより,累進税率の高まりとともに州間での不公平が問題となり,現在では世帯単
  位課税の1類型である2分2乗方式(夫婦の合算所得の2分の1に税率をかけ2倍したもの)も
  選択できることになっている。この方式では単身世帯が不利になるため,複数の税率表(独身
  者,夫婦合算申告,夫婦個別申告,特定世帯主)を使っている。人的控除は本人,配偶者,子ども
  等の扶養家族を対象に1人あたり2,550ドル(96年)の所得控除がある。
2)ドイツでは,世帯単位課税のうちの合算非分割方式を採用していたが,この制度では単身者より
  も夫婦に重い負担がかかるため,57年の違憲判決を契機に個人単位課税と2分2乗方式の選
  択制となった。人的控除としては扶養子女控除がある。
3)フランスでは,45年以来夫婦合算の所得を子どもも加えた世帯人数に分割し,課税するn分n乗
  方式が採用されている。この制度では子どもの数が多いほど,また高所得者ほど有利になる。
  戦後の人口政策との見方もある。この制度の導入自体が扶養負担に応じた控除制度の意味
  をもつものであり,配偶者,扶養子女を対象とした人的控除はない。
4)イギリスでは,1799年の所得税創設以来,夫婦を課税単位とする合算非分割の課税方式を採用
  してきたが,女性の社会進出を背景に,1972年に妻の所得を夫の所得から切り離して課税する
  ことが選択可能になった。その後,90年以降は完全な個人単位課税となった。人的控除としては,
  夫婦控除(96年)が65歳未満が1,790ポンド,65歳以上75歳未満が3,115ポンド,75歳以上が
  3,155ポンドとなっている。また,アメリカと同様,妻が働いているかどうかがこの控除の適用に
  関係することはない。
5)スウェーデンでは,71年に夫婦合算非分割の世帯単位課税から個人単位課税にかわった。また,
  非勤労者配偶者控除(税額控除)が設けられていたが,控除対象者の減少により現在では廃止
  されている。所得区分に応じた人的所得控除が認められており,扶養子女については児童手当
  の支給がある。
 以上みたように,欧米諸国では個人単位の課税方式を採る国が多く,例えばイギリス,スウェーデンでは女性の社会進出等から課税単位を世帯から個人に変更している。またドイツでも課税単位を世帯から個人及び世帯の選択制に変更している。しかし,アメリカでは州間での公平を図るため逆に個人単位の課税方式から2分2乗方式と個人単位方式の選択制に変わり,フランスでは世帯単位の中でも珍しいn分n乗方式を戦後一貫して採用しており,各々の歴史的,社会的事情を反映している。また,配偶者控除については,アメリカ,イギリスで就労の有無にかかわらず一定額の所得控除がある。
3. 課税単位からみた我が国税制の評価
 個人単位課税は,個人間の中立性は確保できるが,夫婦間の所得の組み合わせによって課税額が異なるため,節税目的のための所得分割の可能性が指摘されている。一方,世帯単位課税は,実際の生活単位である家庭をひとしく課税するもので,世帯間の公平性は確保できるが,合算非分割方式では,働いていた男女が結婚すると課税額が増える等の問題がある。結局,両制度とも一長一短あることになるが,女性の就労という点に関していえば,世帯単位課税では,女性の稼得した所得は夫の所得に合算され,累進税率の下では高い税率が適用されるため就労抑制的になる。我が国が個人単位課税を戦後一貫して採用してきたことは,女性の就労やライフスタイルの多様化という今日的な課題に照らして賢明な選択であったと考えられる。しかし,配偶者控除や配偶者特別控除の存在は,女性の社会進出が増大する中で中立性を損なうのではないかとの指摘がなされている。この問題については人的控除の基本的なあり方に関する問題として,今後検討していくことが適当と思われる。


PS(2014年5月25日追加):上のように、財務省、厚労省、文科省、経産省、農水省など、複数の省庁が協力して問題解決に当たるべき問題について、縦割意識の強い省庁では合理的な解決策が作れない。そのため、*6のように、縦割ではない政治主導や内閣府・地方自治体の関与は重要だ。

*6:http://www.saga-s.co.jp/news/national/10202/67023
(佐賀新聞 2014年5月24日) 内閣人事局に女性登用部署、課長級交流拡大へ指針
 安倍政権は、府省庁の幹部人事を一元管理する内閣人事局に女性の幹部登用を推進する専門部署を設置する方針を固めた。また男女問わず課長級の人事交流を拡大するため規模や基準を示す指針を策定する。政府関係者が24日、明らかにした。内閣人事局は30日に発足する。政権は「政治主導の徹底を図る」(幹部)方針で、成長戦略に盛り込んだ「女性の活躍」の実現を図る。女性登用の専門部署では、女性幹部の割合を増やすため、官民人事交流の一環として弁護士や公認会計士など一定の資格を持つ民間人の採用を進める。審議官や課長級のポストに積極的に女性を配置する人事を検討するほか、女性公務員の育成や働きやすい環境に向け制度を設計する。課長級の府省庁横断人事は、政策立案の中枢を担う中堅幹部の「縦割り意識」を排し、多様な人材を育成する狙い。現在も実施されているが、政権は指針策定によって交流枠を広げ「霞が関が一枚岩になって諸課題の改革に取り組む」(菅義偉官房長官)との姿勢を示したい考えだ。安倍晋三首相は、内閣人事局の初代局長に加藤勝信官房副長官を充てる方針を固め、7月にも予定される幹部人事に向けて作業を進める。政治主導には官僚側から「情報が偏るのではないか」との懸念も出ている。

| 人口動態・少子高齢化・雇用 | 01:53 PM | comments (x) | trackback (x) |
2014.5.22 農業における女性の地位 (2014年5月22日、23日に追加あり)
    
                                           *7より
(1)世界農業者機構(WFO)における女性の地位向上宣言
 *1のように、世界農業者機構は、総会で、「女性の地位向上が農業・農村の開発や成長に欠かせない」とする宣言を採択し、農業分野でも女性の地位向上が進み始めた。確かに、「女性農業者は世界の食料生産の半分以上、アフリカでは最大で80%を担っている」にしては、これまで、農業分野における女性の経営や技術能力の開発、男女平等は遅れていたと言わざるを得ない。

 日本では、*5のように、「農家の高齢化に歯止めがかからないため、担い手の育成・確保が最重要課題だ」と言われつつ、女性は、農業の手伝いではあっても担い手に数えられてはいない。しかし、生活に密着した農業製品を作るに当たって、仲間づくり、地域貢献、政策提言、相互研鑽などを行う時、そのメンバーに女性が30%以上含まれていれば、議論の内容はさらに地に足のついた実利あるものになると考える。何故なら、栄養・食品・保育・介護などは女性が担当している場合が多いため、その知識や要請を踏まえた多方面からの議論ができるからである。

 そのような中、*2のように、日本で最も女性差別がきついと思われる鹿児島県のJAで、女性の総代が前年度より120人増え、女性総代比率が6.5%となったのは喜ばしいことである。しかし、6.5%という割合は、2020年までに女性管理職を30%にするという国の目標には遠く及ばず、国会議員の女性比率よりも低いということを忘れてはならない。同様に、地方議員も、女性がいなかったり、全体の5%以下だったりする地域が多く、これが、政治における社会保障政策の遅れに繋がってきた。

(2)女性に能力ある人材がいないのではない
 「仕事上、男女平等になっておらず、管理職に占める女性割合が少ない」と言うと、必ず「女性は能力とやる気のある人材が少ない」「家庭との両立ができずに辞める人が多い」と反論される。しかし、農業は最もわかりやすい例で、女性が退職するわけでも、家庭と両立しないわけでもないのに、担い手としての女性の認定やJAの女性総代比率は低いのであり、これは、古い型の“日本文化”が原因である。

 具体的には、*3のように、女性グループが林業を盛り上げるために活動したり、女性が狩猟したりするケースもある。山からとれる製品にも、家、家具、食器、食品の材料など、生活に身近なものが多いことを考えれば、今まで女性がその分野に少なく、女性のセンスが活かされてこなかった方が不思議なくらいだ。ちなみに、東大農学部等、関連する教育機関は女子学生を差別していない。

 また、*4のように、農村女性の起業数が2012年度に調査開始以来最多となり、グループ経営は平均60歳以上の経営体が7割に上って高齢化が進んでいるものの、39歳以下の若手女性の参入も目立つとのことである。起業活動の内容は、「食品加工」が全体の75%を占めるそうだが、産地でとれたての食材を加工すれば、美味しくて付加価値の高いものができることは言うまでもない。

    

*1:http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=26806
(日本農業新聞 2014/3/30)  女性の地位向上宣言 会長にケンドール氏 WFO総会閉幕
【ブエノスアイレス(アルゼンチン)山田優編集委員】当地で開かれていた世界農業者機構(WFO)の第4回年次総会は28日、女性の地位向上が農業・農村の開発や成長に欠かせないとする宣言を採択し閉幕した。また、2代目の会長に英国農業者連盟元会長のピーター・ケンドール氏を、副会長にザンビア全国農業者同盟出身のエベリン・ヌレカ氏をそれぞれ選出した。2015年の総会はイタリア、16年はオーストラリアで開催することも決まった。80カ国から100人以上が参加して3日間、世界の農業者が抱える課題や解決策などを議論した。WFOは11年に発足。順調に加盟団体を増やし、財政基盤も安定したとの報告があった。ロバート・カールソン前会長は「国連など国際社会の場で農家の声を代表する団体としてWFOが着実に存在感を増してきた」と胸を張った。昨年の新潟総会に続き焦点になったのが、女性の能力開発の強化だ。総会では「女性農業者は世界の食料生産の半分以上、アフリカでは最大で80%を担っている」として、女性の経営、技術能力の開発、男女平等を実現するための政府による制度の確立などを支援する方針を決めた。また各国で日本を追いかけるような形で農業の高齢化が進んでいる。若い農業者の仲間づくりや育成など日本の取り組みにも注目が集まった。28日の「青年」の分科会でパネリストとして登壇したJA全青協の山下秀俊会長は、地域社会への貢献や政策提言、相互研さん、次世代の育成、アジアでの農業支援など取り組みを、事例を挙げて報告した。
●会長就任会見 地球規模の課題 農業が対応貢献
 WFOの年次総会で会長に選出されたピーター・ケンドール氏は28日、ブエノスアイレスで記者会見した。「これまで『農業が問題だ』と言われてきたが、『農業が未来を開く』と期待されるようになってきた」と指摘。食料需要の増加や気候変動など地球規模の課題への対応に農業が貢献できるとの見方を示した。また、「収益性を高めるため農家が力を合わせて販売力を強めていくべきだ」として、スーパーマーケットなどの巨大な購買力に対抗していく必要性を強調した。

*2:http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=27609
(日本農業新聞 2014年5月10日) 女性総代が120人増 比率6.5%へ上昇 鹿児島
 JA鹿児島県女性組織協議会が、女性の総代登用を県内JAに働き掛けた結果、2013年度末時点で457人と、前年度より120人増えた。女性総代比率は6.5%となり、同1.8ポイント高まった。3年間では209人(3ポイント)増えた。「女性総代比率10%以上」の目標は、県内15JAのうち6JAが達成。前年度より3JA増えた。JA女性部は、リーダー学習会で優良事例を学び、「JA役職員と語る会」などで女性枠について協議。JAは運営委員会などで女性総代の選出について協力を呼び掛けた。13年度の女性理事は、11JAで15人。JA鹿児島県中央会も女性理事を1人登用した。14年度は中央会の指導指針を踏まえ、改選JAで女性理事が増え、23人になる見込み。正組合員の女性比率は、県平均で20.4%。目標の25%達成は6JAと、徐々に増えてきている。県女性協の事務局は「3月に策定した県独自の女性組織活性化プランでも、女性のJA運営参画による女性パワーの発揮は大きな柱としている。JAと話し合いながら、目標達成JAを増やしていきたい」と話している。

*3:http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=27526
(日本農業新聞 2014年5月5日)  若者に林業PR 女性グループ 東京で映画試写
 林業を盛り上げようと活動する女性グループ林業女子会@東京は4日、東京都千代田区で、林業を題材にした映画「WOOD JOB(ウッジョブ)!~神去なあなあ日常」の試写イベントを開き、20、30代中心の若者約100人に林業の魅力をPRした。イベントは、映画が10日から全国公開されることに先立ち、林業や農山村部で働くことに関心を持ってもらおうと開いた。映画は、都会育ちの青年がひょんなことから林業に従事し、成長していく青春ドラマだ。試写後、林業女子会@東京のメンバー、真鍋弥生さん(25)が司会を務め、矢口史靖監督と、撮影に協力した三重県の林業家、三浦妃己郎さんらが、映画や林業について話し合った。矢口監督は「映画では、林業の面白さだけでなく、厳しくて危険なことや村で暮らす大変さも描いた。見てもらえれば、林業を自分の人生の選択肢に入れる若者も増えるだろう」と自信を見せた。三浦さんは「林業を振興しようといろいろ頑張ってきたが、この映画はそれを超える波になると思う。今年は林業にとってルネサンスになる」と語った。林業女子会@東京の廣田茜代表は「映画を通じて自然や林業、山間地の魅力を感じてほしい」と期待を寄せた。

*4:http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=26812  (日本農業新聞 2014/3/31) 農村女性の個人起業 過去最多 12年度 ネットで多様化 若手の台頭も
 農村で暮らす女性個人の起業数が2012年度は調査開始以来、最多となり、全体のほぼ半数を占めたことが農水省の調べで分かった。主流だったグループ経営が高齢化による休業などで減ったことや、直売所やインターネット環境の整備で販路が多様化したことが要因。39歳以下の若手女性の参入も目立ち、世代交代の兆しが見えてきた。全体の起業活動数は9719件と、2010年度の調査(9757件)に比べて減った。ただ、女性が個人で起業するケースは4808件と同335件増え、グループ経営は4911件と同373件減った。年齢層で見ると、個人経営では39歳以下の起業が13件増加。グループ経営は平均60歳以上の経営体が7割に上り、高齢化が進んでいることがうかがえた。起業活動の内容は、「食品加工」が全体の75%を占めた。一方、自ら「農業生産」に乗り出す例が19%増、農家民宿やレストランなど「都市との交流」は15%増、直売所やインターネットなどで農産物などを販売する「流通・販売」に取り組む例は9%増え、多角化が進んでいる。同省は「個人でも売りやすい環境が整い、柔軟な発想を生かした事業で多角化するなど起業活動は量から質へと変化している」(就農・女性課)とみる。ただ、全体の半分は売上高300万円未満。ビジネスとして軌道に乗せるには、事業を担う「人手の確保」や「販売ルート、集客の確保」などが課題だ。

*5:http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=26790 (日本農業新聞 2014/3/29) [ニュースアイ] 担い手確保が争点 農政改革関連法案 国会審議入り
 政府・与党と野党双方の農政改革関連法案が衆院で審議入りした。政府・与党は経営所得安定対策の対象者を見直し、担い手育成を加速させる方針。野党は戸別所得補償制度で全ての販売農家の営農を維持することで担い手育成につなげる考え。農家の高齢化に歯止めがかからない中、担い手の育成・確保が最重要課題であることは、与野党とも一致する。その実現に向けた考え方と具体的な方策をどうするかが、国会論戦のポイントになりそうだ。
●政府・与党=対象絞り構造転換
 「戸別所得補償制度は全ての販売農家を対象としていたから、担い手への農地集積が遅れた」。安倍晋三首相は、法案が審議入りした27日の衆院本会議でこう強調した。こうした認識に基づき、政府・与党は担い手経営安定法を改正し、経営所得安定対策の対象者を見直すことにした。法案には、畑作物の直接支払交付金(ゲタ対策)、米や麦、大豆などの収入減少影響緩和対策(ナラシ対策)の対象を認定農業者と集落営農、認定新規就農者にすることを盛り込んだ。2015年産からの適用を目指す。対象者に要件を設けるのは農業構造を変えていくためだ。林芳正農相は「食料を安定供給するには効率的、安定的な農業経営が相当部分を占める構造にすることが重要」と考える。このため全販売農家を対象とせず自ら経営改善の計画を立て、実現しようとする認定農業者などを対象とし、担い手育成を加速させる。ただ、面積は問わないことにした。ナラシ対策の認定農業者4ヘクタール、集落営農20ヘクタールなどの要件は15年産から廃止する。面積規模要件は07年に導入した旧品目横断的経営安定対策で設けたが、“選別政策”との批判を受けたことへの反省だ。門戸を広げた理由には、当時より担い手不足が深刻になっているという農村の厳しい現実もありそうだ。
●野党=全農家の意欲促す
 担い手育成を重視する政府・与党に対し、戸別所得補償制度法案を提出した民主、生活、社民の野党3党は「静かな構造改革」を打ち出す。同制度があれば、農家が自らの規模を見直す動きが広がると考える。同制度は全販売農家が対象。民主党の大串博志氏は「規模や形態で差別しない」と政府・与党との違いを強調する。販売農家の営農を維持し、食料の安定供給や多面的機能の維持につなげる。政府・与党の「ばらまき」批判に、民主などの野党は「農業構造を変える働きも備えている」と反論する。米の定額払い(10アール1万5000円)などで全国一律の単価を設定すれば、2ヘクタール以上だと利潤が確保でき、規模が大きいほど利潤も増えることを論拠に挙げる。2ヘクタール以下の農家は規模拡大をしたり、高齢なら離農したりすることを想定。2ヘクタール以上なら、一層の規模拡大の動機づけになると見込む。結果、農業構造が変わっていくというのが民主などの野党の主張だ。
●米の扱いも正反対に
 主食用米への支援の在り方も政府・与党と野党の主張は正反対だ。政府・与党は「高関税の国境措置で守られている」ことから、米の直接支払交付金に理由はないと判断。10アール1万5000円の単価を半減し、18年産から廃止する。野党は「コスト割れしている作物」と位置付け、生産調整の参加を条件とした定額払いを掲げる。政府・与党の農政改革で、米の直接支払交付金を見直す意義として、自民党の齋藤健農林部会長は「外国産との競争にさらされていない米を麦、大豆と同等に論じることはできない」と訴える。主食用米向けの支援を縮小する半面、非主食用米の支援を手厚くした。飼料用米や米粉用米で「数量払い」を導入し、産地交付金による追加支援も用意した。主食用米からの転換を促し、水田フル活用と稲作農家の経営安定を目指す。一方、民主などの野党は戸別所得補償制度法案に定額払いの法制化を盛り込んだ。これまでと同様、生産調整への参加を条件とした。民主党の玉木雄一郎氏は「米もコスト割れが生じている。国境措置以外は不要とする政府・与党案とは、根本的な考え方が異なる」と指摘。戸別所得補償制度の本格実施後、過剰作付けが4万ヘクタールから2万ヘクタール台に減った実績などを踏まえて、支援の必要性を訴える構えだ。来週には農林水産委員会での法案審議を予定する。林農相は28日の会見で政府法案について「農政改革の重要部分を占める。制度が安定するよう現場では法制化の要望が強い」と強調。成立に向けて「丁寧に議論し、与野党の理解を得るよう努力したい」と述べた。


PS(2014.5.22追加):*6のように、安倍首相は女性の活躍に理解があり、このことにアクションが速いのはGoodだが、子どもか仕事か(もしくは結婚か仕事か)の二者択一を迫る社会は、男女共学の教育を受けた女性たちが社会に出て働き始めた1970年代に終わっておくべきであり、正しくは40年遅れだ。

*6:http://www.saga-s.co.jp/news/national/10201/66167
(佐賀新聞 2014年5月22日) 首相、学童保育の定員拡充を表明、「30万人分受け皿つくる」
 安倍晋三首相は22日、共働き家庭や、ひとり親家庭の小学生を放課後に校内、児童館などで預かる「放課後児童クラブ」(学童保育)に関し「5年間で30万人分の受け皿をつくっていきたい」と述べ、定員を拡充する方針を正式に表明した。横浜市内の関連施設を視察後、記者団に述べた。政府は2015年度から本格実施し、19年度末までの5年間で実現を目指す。6月にまとめる新たな成長戦略に盛り込む見通しだ。学童保育を充実させることで「女性の活躍」を推進するとともに、少子化対策につなげる狙いがある。首相は横浜市神奈川区の市立中丸小学校内で実施されている「放課後キッズクラブ」を見学。市や学校関係者から説明を受けた後、放課後に教室で読書や塗り絵をしていた小学生と交流し、紙飛行機作りも一緒に体験した。安倍政権は昨年、保育所の待機児童解消のため17年度までの5年間で40万人分の保育の受け皿を整備する計画をまとめた。今回、小学生を対象とした学童保育の定員拡充も打ち出し、小学校入学を機に親が仕事と育児を両立できなくなる「小1の壁」の解消を目指す。


PS(2014.5.23追加):*7のように、農業の担い手候補は、農家出身者だけではないため、今まで農学部出身者が農業と関係のない仕事に就かなければならなかったことが、もったいなかったのだ。そのため、農業法人で働いたり、実務研修を積んだ後で土地を借りて独立農業者になれたりする仕組みがあれば、それらの人材を活かせる。ただし、農家出身でない若者は、自然の中でできる遣り甲斐のある職業として農業を選んでいるのであって、古い型のムラ意識や束縛を好んでいるわけではないことを忘れてはならない。また、機械やアルバイトを使えれば、女性も施設園芸だけでなく何でもできる。

*7:http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=27848 (朝日新聞 2014年5月22日) 農の担い手 多様化 映画・漫画で注目度上昇 農大校入学者アンケート
 農業の担い手育成を目指す農業大学校の入学者に変化が出てきている。今春、入学した学生の中で、実家が農家以外の出身者の割合が高まり、女性も増えてきていることが日本農業新聞のアンケートで分かった。増加の背景には、今春に映画化された農高生らの成長と青春を描いた漫画「銀の匙」などメディアの効果もうかがえる。
●職業選択の一つに 
 アンケートは、北海道から沖縄県まで1道2府39県の農業大学校計42校に対して行った(有効回答41校)。2014年度の入学者数のうち、農家と農家以外の出身者の割合を尋ねたところ、41校中21校が「農家以外の出身者の方が多い」(51%)と回答、過半を占めた。一方「農家出身者の方が多い」は17校(42%)にとどまった。特に、農家以外の出身者が多いとの回答が目立ったのは中部・関東地方。中部6県(信越含む)のうち新潟以外の5県が「農家以外の出身者の割合が高い」と回答。中でも岐阜、静岡、愛知の3県の農業大学校は「農業法人への就職が増えた」と回答。それが農家以外の出身者の入学増につながったとしている。「銀の匙」などのメディア効果に言及した学校も相次いだ。大消費地・東京を抱える関東では「酪農を題材とした漫画などの影響から酪農コースに興味を持つ受験生が増えている」(埼玉)、「映画や漫画でさらに農業の(良い)イメージが高まってくれるとよい」(神奈川)と期待する。他の県からも「映画を見て農業に興味を持ち、農業を志そうという農家以外の出身 者の学生が多い」(山形)、「映画や漫画を通じて学生が農業に興味を持ってくれるのは非常にありがたい」(福島)などの意見が相次いだ。女性の入学者も目立つ。入学者の男女比を尋ねたところ、全体の3割に当たる14校で「女性が例年より増えた」と回答。特に香川は入学者31人中15人が女性だった。「例年は2割程度だが今年度は特に高い」という。高知は女性の入学者が過去5年平均で17%だったが今年は24%に。栃木も「2年連続で女性の入学が増えた」という。静岡は前年の女性比率35%から43%に上昇。80人中34人を女性が占め、「施設園芸は女性でも参入しやすい。農業のイメージが刷新され、職業選択の一つとして捉えられるようになったのではないか」と増加の背景を分析する。ただ、農業大学校全体で見れば定員割れは続いており、「定員より入学者が多い」と回答したのは4校(9%)。34校が定員割れだった。
●女性「生活密着産業」をイメージ 博報堂 荒川あゆみ氏に聞く 
 農業大学校に農家以外の出身者や女性の入学者が増えてきている背景に何があるのか。食と農業に詳しい 博報堂テーマビジネス開発局の荒川あゆみプラナーに聞いた。
―農家以外の入学者が過半を占めました。
 農水省の青年就農給付金など新規就農者への助成制度が充実したことが一役買っている。総務省による「地域おこし協力隊」でも、任期終了後も地域に定住し、就農する人が出てきた。
―農業を扱った漫画の流行なども関係しているようですが。
 農業の世界を描いた漫画が流行すれば当然、若者の関心は農業に向くだろう。入学者に農家以外の出身者が多いというのは、現場の厳しさを知っている農家の親より、農家でない親の方が就農に反対をしないからだと思う。メディアで農業を格好良く描いても、農家は現場との隔たりを感じるだろうが、農業以外の家庭は農業を職業選択の一つとして受け入れやすい。
―女性の入学者も目立っています。
 グリーン・ツーリズムの普及で農業体験をしたことがある女性が増えてきた。若者が農業に触れる機会が増えたことが入学増につながったといえる。また、直売所で特徴ある農産物を販売したり、インターネットで付加価値のある加工品販売などに取り組んだりする女性たちが増えてきた。就農を希望する女性たちが思い描くのは大型トラクターでの大規模農業というより、少量多品目の野菜栽培など「生活密着産業」としての農業ではないか。少量でも良い品であれば買ってくれる人がいて、生活が成り立つというイメージだ。
―高齢化が進む中、農業に未来はありますか。
 女性が丁寧に作った農産物に価値を見いだせる消費者と社会をつくるべきだ。そうなればメディアのつくった一過性のブームではなく持続可能な現象となる。直売所に足を運び、農家が丁寧に生産した農産物に対価を払うファンはとても多い。希望はある。

| 男女平等::2013.12~2014.6 | 11:33 AM | comments (x) | trackback (x) |
2014.5.21 自ら選択して時代遅れになっていく、これが日本の愚かさであり、低成長率になった原因である。
    
  日本の経済成長率推移        *1-1より        *1-3より

(1)日本の経済成長率が低くなっていった理由
 このブログの2014.5.5(年金・社会保障のカテゴリー)に記載したように、わが国の経済成長率は、上の左のグラフのとおり、1955年体制から20年経過した1975年にオイルショックで下落し、異次元の金融緩和によってもたらされたバブルで何とか雇用を維持しながら20年経過した1995年のバブル清算時に、さらに落ちた。その理由は、バブル時の金融緩和で、次の時代に向けての変革と投資をしなかったからで、その状況は、このブログの2012.5.18(経済のカテゴリー)に、詳しく書いた。

 そして、金融緩和に依る低金利は日本企業の利益率を低下させ、物価高騰による貨幣価値の低下と相まって、年金や貯蓄で暮らしている老人の財産や年金資産・保険資産に被害を与えた。つまり、生産性を上げ、新たに必要となったサービスに転換するという当然のことをせず、雇用維持のみに汲々とし、それを是としたわが国の文化がこの低成長率の原因なのだ。そのため、現在も行われている同じ行為を、(2)と(3)で説明しよう。

(2)中国・米国もEV(電気自動車)にシフトしている時、環境技術を提供してエンジンの燃費削減(!?)
 *1-1、*1-2のように、中国政府はEV購入への補助金を拡大し、排気ガス削減に取り組んでいる。日産自動車(ゴーン社長)はこの流れに乗り、EVの販売を拡大し、20%のシェアを占めようとしており、ヴェヌーシアブランドの新型車『R30』について「5万元(約80万円)よりもっと下の価格で出せる」と言っている。これは、環境と価格の両方の要請に対応した商品だ。

 また、環境に関心が薄かったガソリン車の国、米国でも、フランスのEVシェアリング事業者が、米国トップクラスのカーレースイベントの開催地であるインディアナポリスに、EV500台、充電ステーション1200か所を投入して、EVシェアリング事業を始めるそうだ。

    
              *1-4より                  *2より
 ヨーロッパでは、*1-4のように、スイスのマッターホルン山麓にあるツェルマットで、20年以上も前からEVが利用されており、ツェルマットの市街地は自治体の条例でEVしか走れないため、市街地を走るのはEVと観光用の馬車のみだ。私は、1998年にここを訪れ、バスに乗った時に、運転手さんに「電気自動車で坂道を走るのは馬力が足りないのではありませんか?」と聞いたことがある。これに対し、運転手さんは、「環境を守るというそれよりも大切なことのためには、我慢しなくちゃね」と答えたので感心し、日本なら十分に馬力があって不便のないEVが作れるだろうと思って経産省に提案し、EVの開発が始まった。そのため、日本で先頭を切ってEVが走っていても不思議はないのだ。

 しかし、*2のように、トヨタやホンダなどの国内自動車8社は共同で、環境負荷の少ないディーゼルエンジンの研究を行い、二酸化炭素(CO2)排出量を2020年までに10年比3割減らす燃焼技術などを開発し、成果は各社がガソリン車も含めて実用化するという志の低さだ。これは、排気ガス0を目指して、世界がEVや燃料電池車を開発している時に、日本が先んじて開発した環境技術を世界に供与しながら、自らは過去にこだわって投資費用、研究費用をどぶに捨てているようなもので、このような意志決定とそれが行われる土台こそが、国民を犠牲にしながら経済成長率を上げられなかった理由である。

(3)発電技術も同じ
 *3-1のように、福島の子どもの甲状腺がんは、がんの診断が「確定」した人が50人、「がんの疑い」とされた人が39人になったそうだが、環境省は、これでも放射線の影響を否定している。また、*3-2のように、フクシマで原発所員は9割撤退し、その後、衝撃音がして原子炉圧力抑制室の圧力がゼロになった(爆発した)ことも隠されたままだった。

 そして、*3-3のように、太陽光発電等の自然エネルギーによる発電機器も日本が一番進んでいたにもかかわらず、「火力発電用燃料の輸入増で国富は日々流出し、料金再値上げで国民の負担は増大する」という理由で国は原発の再稼働を急いでいるという、つきあいきれない先見の明のなさなのだ。

 これらは、古いシステムにしがみついて、せっかく日本で最初にできた技術を世界で遅れさせてしまう行為だ。その根底には、役所のシステムや当面の雇用と既得権益者を守ればよいとする考え方があり、最初に日本で開発された技術が他国で開花したのを見て、バスに乗り遅れまいと、あわてて導入するという情けなさなのである。

(4)問題の解決法
 先日のSTAP論文に対する報道を見ても、文科系の人でも科学的思考ができるようにすべきであり、同情論や妬みの論理しか言えないような人は作らず、他人の成功を祝福できる国民性を育てることが必要である。また、新しい複雑な事象が発生してそれにあった合理的なルールが必要な時に、既存の基準(ルール)を守ってさえいればよいとしか言えない人も作ってはならない。

 これは、日本が低賃金労働で比較優位となる開発途上国を卒業して先進国となり、従順に上の指示を実行して他国を真似して一丸となって進めばよい時代から、他国の手本は無く、多くの人が頭脳を持って現在のニーズにあった付加価値の高いものを作るべき時代になったことに対する教育の対応である。

*1-1:http://qbiz.jp/article/38012/1/
(西日本新聞 2014年5月19日) 中国がEV補助金を拡大、日産はEV販売に本腰
 中国政府は電気自動車(EV)購入への補助金を拡大しており、排気ガス削減に取り組んでいる。日産自動車はこの流れに乗り、EVの販売を拡大し、20%のシェアを占めようとしている。米ブルームバーグの5月14日の報道を引用し、環球網が伝えた。EVは「ゼロ排出」車であるが、価格が高額で、航続距離が限られており、充電スタンドが少ないことから、普及が進んでいない。アナリストは、2017年もしくは2018年までに、中国でのEV販売台数が10万台に達すると予想した。最も楽観的な予測によると、その販売台数は40万台に達する見通しとなっている。日産の中国合弁である東風汽車有限公司の関潤総裁は、「中国政府は新エネ車の普及を重視しており、他国では比にならぬほどの補助金を支給している。販売台数の増加に伴い、充電スタンドも増加するだろう」と語った。日産のリーフは、中国で最も売れているEVだ。リーフは昨年、値下げと航続距離の延長により、販売台数が76%増の7547台に達した。日産はその一方で、現地ブランド「ヴェヌーシア」によって、中国のEVの需要を満たすことを決定した。ヴェヌーシア初のEV「e30」が、今年度中に発売される。日産は大連、広州、襄陽などで協力を展開し、自社製EVの魅力を高めている。

*1-2:http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20140514-00000041-rps-bus_all
(YAHOOニュース 2014年 5月14日) 日産関専務、ヴェヌーシアR30「もっと安くできる」
 日産自動車の関潤専務執行役員兼東風汽車有限公司総裁は、近く中国で受注を開始するヴェヌーシアブランドの新型車『R30』について「本当に5万元以下でやっていけるのかとよく聞かれるが、実は我々、もっと下で出すつもりだった」と明かした。R30は4月に開催された北京モーターショーで初公開され、5万元を切る価格で、今後2か月以内に受注を開始することが伝えられた。関総裁はR30の価格について「探りの5万元」と表現した上で、「造れる量もいろいろ限られているので、造れる量とお客様の反応をみて、どれくらいでだそうかなと考えた。ポテンシャルではもっといけると思っている」と述べた。具体的なコストダウンに関しては「造りを少しリーズナブルにしたところはある。たとえばヘッドレストの分割をやめているとか、リアのハッチゲートをハッチガラスにするなど、シルエットを極端に変えないところで、競合他社がすでに安くした部品を、そのまま我々も導入して安くしている。またすでに償却が終わっているものを流用して安くしている」と説明。その一方で「中国のお客様が、この価格帯で要望されているものをちゃんと織り込んで喜んでもらうというのがポイントになるので、単純にビジネスでみていくというのではなく、そういったところから車をまず描いて、そうしたテクニックを織り込んで実現した」とも語った。

*1-3:http://www.afpbb.com/articles/-/2949802?pid=10888290
【AFP 2013年6月12日】 EVシェアリング、米インディ500開催市に進出
 フランスの電気自動車(EV)シェアリング事業者が、米国トップクラスのカーレースイベントの開催地に目を付けた──インディアナポリス(Indianapolis)だ。パリ(Paris)でEVシェアリング事業を成功させた仏ボロレ(Bollore)は来年初め、EV500台、充電ステーション1200か所を、インディアナポリス500(Indianapolis 500)の開催地に導入する計画を立てている。総額3500万ドル(約34億円)の同プロジェクトは、ボロレ初のフランス国外での自動車シェアリング事業で、米国の各都市に進出する第一歩となる。ニューヨーク(New York)やシカゴ(Chicago)、サンフランシスコ(San Francisco)などの大都市と異なり、自動車シェアリングプログラムや公共交通機関の発達していない米中西部の広大な都市にとって、より良い公共交通機関には切迫したニーズがあり、インディアナポリスで始まる同プロジェクトはその要望に応えることができるだろう。プログラムは短距離の片道のEVレンタルが基本で、目的地の最寄りの充電ステーションに車載GPS(全地球測位システム)を通じて駐車スペースを予約しておくというもの。プログラム名はまだ決まっていない。
■インディアナポリス皮切りに全米に広がるか
 物流大手で、EV用電池と「スマート」電力システムを開発するボロレは、インディアナポリス市長が昨年、市の公用車を全台EVに変える計画を発表したことを受けて、同市に目を付けたという。また政治方針だけでなく、同市には、自動車シェアリングを活用できるような「非常にダイナミックなビジネス社会」と、大規模な学生人口が存在すると、プロジェクトを運営するボロレ子会社のゼネラルマネジャー(GM)は語る。充電ステーションは自家用のEVでも利用可能で、これによりインディアナポリスは米国有数の電気自動車都市となる。ボレロは米国の複数の都市とすでに接触しており、ボロレ子会社のGMによると、どの都市もEVシェアリングプログラムに関心を示しているという。「問題は、その関心をどうやったら実際のプロジェクトに変換できるかだ」と同GMは語った。

*1-4:http://bizmakoto.jp/makoto/articles/1002/03/news010.html
[松田雅央Business Media] 電気自動車と馬車しか走れない
 スイス・マッターホルン山麓にある「ツェルマット」は高級リゾート地として知られているが、市街地を走れるのは電気自動車(EV)と馬車のみ。最新技術のEVと前時代的な馬車が混在する街とは一体どのようになっているのか。現地をリポートする。
 スイス・マッターホルン山麓にあるツェルマットは高級リゾート地として世界にその名を知られている。夏は登山、冬はウィンタースポーツを楽しむ人々でにぎわい、三角錐(さんかくすい)の頂を持つ名峰マッターホルンをはじめとした4000メートル級の山や氷河へ通じる山岳鉄道の基地でもある。
 最寄の都市ヴィスプからツェルマットまでは道路も通じているが、主要交通機関は鉄道だ。雪深い土地のため狭い渓谷を縫うようにして走る道路は不便であり、またエンジン自動車の多用は排気ガスによる大気汚染を引き起こしてしまう。
 特筆すべきはツェルマットの特異な「EV交通政策」だ。ツェルマット市街地は自治体の条例によりEV(電気自動車)しか走れない決まりになっており、市街地を走るのはEVと観光用の馬車のみ。最新技術のEVと前時代的な馬車が混在する光景は正直いって奇妙だが、環境と都市交通をテーマとしている筆者にとっては刺激的な組み合わせでもある。
●EVが500台
 EVの実用化に対する世界的な関心が盛り上がってきたのはここ数年なのに対し、ツェルマットがEV利用に取り組みだしたのは20年以上も前のこと。ツェルマット交通局のEV路線バス運行責任者ベアート氏もいつからEV交通政策が始まったのか正確には分からないそうだ。現在、ツェルマットを走るEVは計500台(EV路線バス6台)。にわかにEV利用を始めた都市とは歴史の長さが違う。ヴィスプからおよそ1時間ほどで列車は終点のツェルマットに到着する。タクシー、バス、配送用のクルマを含め、駅前に停まっているクルマはすべてEVだ。ただし、除雪車やブルドーザーなど、高いパワーを長時間要する作業用EVはまだ実用化されていないため、通常のエンジン車両が利用されている。住民がエンジン自動車を持つことは制限されていないが、市街地に乗り入れることはできないので市街地の端にある公共駐車場に停めなければならない。そこから自宅までは徒歩かEV路線バスを利用する。EVはタクシーや業務用に限られており、基本的に個人のEV所有はできない。さらに観光バスや観光客の自家用車の規制はもっと厳しく、ツェルマット市街地から数キロ離れた駐車場までしか乗り入れることができない。
(松田雅央プロフィール:ドイツ・カールスルーエ市在住ジャーナリスト。東京都立大学工学研究科大学院修了後、1995年渡独。ドイツ及び欧州の環境活動やまちづくりをテーマに、執筆、講演、研究調査、視察コーディネートを行う。記事連載「EUレポート(日本経済研究所/月報)」、「環境・エネルギー先端レポート(ドイチェ・アセット・マネジメント株式会社/月次ニュースレター)」、著書に「環境先進国ドイツの今」、「ドイツ・人が主役のまちづくり」など。ドイツ・ジャーナリスト協会(DJV)会員。公式サイト:「ドイツ環境情報のページ」)

*2:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20140518&ng=DGKDASDZ1702M_X10C14A5MM8000 (日経新聞 2014.5.18)
日本車8社で新エンジン、欧州勢対抗へ研究 CO2を3割減
 トヨタ自動車やホンダなど国内自動車8社は共同で、環境負荷が少ない自動車用エンジン(総合・経済面きょうのことば)の基礎研究に乗り出す。ディーゼルエンジンの二酸化炭素(CO2)排出量を2020年までに10年比3割減らす燃焼技術などを開発し、成果は各社がガソリン車も含めて実用化する。国際競争には燃費改善につながるエンジンの革新が欠かせない。大学などとも連携し、環境性能で競合する欧州勢に対抗する。東京大学や早稲田大学とも協力する。自動車への環境規制の強化は世界的な流れで電気自動車(EV)などの需要も拡大するが、エンジンは当面、動力源の主役であり続ける。20年の段階でも、世界で造る車の9割以上がエンジン車という予測もある。国内各社は基礎研究の成果をそれぞれのエンジン開発に生かす体制で国際競争に臨む。共同研究に参画するのはトヨタ、ホンダ、日産自動車、スズキ、マツダ、三菱自動車、ダイハツ工業、富士重工業。国内の乗用車メーカー8社すべてがそろう。技術者と資金を出し合い「自動車用内燃機関技術研究組合」を設立し、理事長にはホンダ子会社の本田技術研究所の大津啓司常務執行役員が就いた。各社は単独では取り組みにくい高度な技術課題としてディーゼルエンジンを選んだ。同組合を通じ、大学の研究室に技術者を派遣する。実務経験を持つ技術者と大学の研究者が共同で基盤技術の開発にあたる。ディーゼルが出す白煙の低減や排ガスからススを取り除く触媒装置のシミュレーション技術などを研究テーマとして検討する。研究プロジェクトに投じる資金は14年度からの3年分だけで20億円規模に達する可能性がある。初年度は3分の2を国の補助金で賄う。各社は研究成果をそれぞれのエンジン開発に生かす。この段階では、エンジンの最終的な性能や完成時期を競い合う関係になる。研究成果はガソリンエンジンの改良にも活用する。日本車メーカーは低公害・低燃費エンジンで長く優位を保ってきた。ただしBMWやフォルクスワーゲン(VW)などドイツ勢の猛追を受け、ディーゼルでは先行を許したとの見方が強い。マツダがエンジンなどの低燃費技術「スカイアクティブ」を開発するなど、日本メーカーは独自にエンジン開発を手がけてきた。競争環境の変化を受け、基礎研究での協力を通じ、業界のエンジン技術を底上げする。世界の自動車業界は中国市場の伸びや北米市場の回復を受け、日欧米韓の有力メーカーの主導権争いが激しくなっている。新興国市場では価格が高めのハイブリッド車(HV)や充電インフラが必要なEVの普及には時間がかかるもよう。エンジンの技術革新は成長市場の開拓に欠かせない。国内では環境分野を中心に、競合する車メーカーが足並みをそろえる動きが出てきている。トヨタ、日産、三菱自、ホンダの4社は国内でEVやプラグインハイブリッド車(PHV)の普及をめざし、充電インフラ整備を担う新会社を共同出資で近く設立する。

*3-1:http://www.saga-s.co.jp/news/national/10208/64578
(佐賀新聞 2014年5月18日) 福島の子ども甲状腺がん50人に  県、放射線の影響調査
 福島県の全ての子どもを対象に東京電力福島第1原発事故による放射線の影響を調べる甲状腺検査で、対象者の約8割の結果がまとまり、がんの診断が「確定」した人は県が今年2月に公表した数より17人増え50人に、「がんの疑い」とされた人が39人(前回は41人)に上ることが17日、関係者への取材で分かった。検査は県内の震災当時18歳以下の約37万人を対象に県が実施。今年3月までに1巡目の検査が終わり、4月から2巡目が始まっている。チェルノブイリ原発事故では4~5年後に子どもの甲状腺がん増加が確認された。このため県は1巡目の結果を放射線の影響がない現状把握のための基礎データとし、今後、2巡目以降の検査でがんが増えるかどうかなどを確認、放射線の影響の有無を調べる。1巡目では、1次検査として超音波を使って甲状腺のしこりの大きさや形状などを調べ、大きさなどが一定以上であれば2次検査で血液や細胞などを調べた。3月までに約30万人が受診、全対象者の約8割に当たる約29万人分の1次検査の結果がまとまった。2070人が2次検査に進み、がんと診断が確定した人は50人、疑いは39人だった。手術で「良性」と判明した1人を加えた計90人は、震災当時6~18歳。このうち34人は、事故が起きた2011年3月11日から4カ月間の外部被ばく線量が推計でき、最も高い人は2・0ミリシーベルト以上2・5ミリシーベルト未満で、21人が1ミリシーベルト未満だった。国立がん研究センターによると、10代の甲状腺がんは100万人に1~9人程度とされてきた。一方で、環境省は福島県外の子どもの甲状腺検査を実施し、約4400人のうち、1人ががんと診断。「福島と同程度の頻度」として、福島での放射線の影響を否定している。

*3-2:http://digital.asahi.com/articles/ASG5L51KCG5LUEHF003.html
(朝日新聞 2014年5月20日) 福島第一の原発所員、命令違反し撤退 吉田調書で判明
 東京電力福島第一原発所長で事故対応の責任者だった吉田昌郎(まさお)氏(2013年死去)が、政府事故調査・検証委員会の調べに答えた「聴取結果書」(吉田調書)を朝日新聞は入手した。それによると、東日本大震災4日後の11年3月15日朝、第一原発にいた所員の9割にあたる約650人が吉田氏の待機命令に違反し、10キロ南の福島第二原発へ撤退していた。その後、放射線量は急上昇しており、事故対応が不十分になった可能性がある。東電はこの命令違反による現場離脱を3年以上伏せてきた。
■所員9割、震災4日後に福島第二へ
 吉田調書や東電の内部資料によると、15日午前6時15分ごろ、吉田氏が指揮をとる第一原発免震重要棟2階の緊急時対策室に重大な報告が届いた。2号機方向から衝撃音がし、原子炉圧力抑制室の圧力がゼロになったというものだ。2号機の格納容器が破壊され、所員約720人が大量被曝(ひばく)するかもしれないという危機感に現場は包まれた。とはいえ、緊急時対策室内の放射線量はほとんど上昇していなかった。この時点で格納容器は破損していないと吉田氏は判断した。午前6時42分、吉田氏は前夜に想定した「第二原発への撤退」ではなく、「高線量の場所から一時退避し、すぐに現場に戻れる第一原発構内での待機」を社内のテレビ会議で命令した。「構内の線量の低いエリアで退避すること。その後異常でないことを確認できたら戻ってきてもらう」。待機場所は「南側でも北側でも線量が落ち着いているところ」と調書には記録されている。安全を確認次第、現場に戻って事故対応を続けると決断したのだ。東電が12年に開示したテレビ会議の録画には、緊急時対策室で吉田氏の命令を聞く大勢の所員が映り、幹部社員の姿もあった。しかし、東電はこの場面を「録音していなかった」としており、吉田氏の命令内容はこれまで知ることができなかった。吉田氏の証言によると、所員の誰かが免震重要棟の前に用意されていたバスの運転手に「第二原発に行け」と指示し、午前7時ごろに出発したという。自家用車で移動した所員もいた。道路は震災で傷んでいた上、第二原発に出入りする際は防護服やマスクを着脱しなければならず、第一原発へ戻るにも時間がかかった。9割の所員がすぐに戻れない場所にいたのだ。その中には事故対応を指揮するはずのGM(グループマネジャー)と呼ばれる部課長級の社員もいた。過酷事故発生時に原子炉の運転や制御を支援するGMらの役割を定めた東電の内規に違反する可能性がある。吉田氏は政府事故調の聴取でこう語っている。「本当は私、2F(福島第二)に行けと言っていないんですよ。福島第一の近辺で、所内にかかわらず、線量が低いようなところに1回退避して次の指示を待てと言ったつもりなんですが、2Fに着いた後、連絡をして、まずはGMから帰ってきてということになったわけです」。 第一原発にとどまったのは吉田氏ら69人。第二原発から所員が戻り始めたのは同日昼ごろだ。この間、第一原発では2号機で白い湯気状のものが噴出し、4号機で火災が発生。放射線量は正門付近で最高値を記録した。
    ◇
〈吉田調書〉 政府事故調が吉田氏を聴取した内容を一問一答方式で残した記録。聴取時間は29時間16分(休憩1時間8分を含む)。11年7月22日から11月6日にかけ計13回。そのうち事故原因や初期対応を巡る聴取は11回で、事務局に出向していた検事が聴取役を務めた。場所はサッカー施設Jヴィレッジと免震重要棟。政府事故調が聴取したのは772人で計1479時間。1人あたり約1・9時間。原本は内閣官房に保管されている。
    ◇
■全資料公表すべきだ
 《解説》 吉田氏が死去した今、「吉田調書」は原発事故直後の現場指揮官が語る唯一の公式調書だ。肉声がそのまま書き残され、やりとりは録音されている。分量はA4判で400ページ超。事故対応を検証し、今後の安全対策にいかす一級の歴史的資料だ。ところが、政府事故調は報告書に一部を紹介するだけで、多くの重要な事実を公表しなかった。中でも重要な「9割の所員が待機命令に違反して撤退した」という事実も伏せられた。事故の本質をつかむには一つひとつの場面を具体的な証言から再現・検証する必要がある。国は原発再稼働を急ぐ前に、政府事故調が集めた資料をすべて公表し、「福島の教訓」を安全対策や避難計画にいかすべきだろう。吉田調書にはこのほかにも国や東電が隠している事実が多く含まれ、反省材料が凝縮されている。私たちは国や東電の事故対応の検証を続けていく。

*3-3:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20140220&ng=DGKDASFS1903B_Z10C14A2EA2000 (日経新聞 2014.2.20) 長引く判断に終止符を
 昨年7月に始まった原子力発電所の安全審査は長引き、再稼働のメドがたたない状態が続いてきた。火力発電用燃料の輸入増で国富は日々流出し、料金再値上げで国民の負担は増大する。東京電力福島第1原子力発電所の事故を経て、全国の原発は選別の局面に入った。まず安全な原発から稼働させるための施策が急務だ。「その手の要望は地方からこれくらい集まっている」。19日の記者会見で立地自治体からの原発稼働の要望についてたずねられた田中俊一規制委員長は、両手を大きく広げた。主要産業が動かない地方は疲弊が激しい。北海道電力は17日、再稼働の見通しが立たないとして家庭向け電気料金を再び引き上げる意向を示した。原発1基を動かせないと発電コストは1日2億~3億円増す。終わりの見えない審査に関係者は焦りを募らせる。原発の規制基準は全面的に見直され、規制委は申請のあった原発について並行して審査を進めてきた。だが膨大な作業を伴う審査は予想外に手間取るうえに、別の原発の申請が加わった。審査終了の先行きの見通せないなか規制委は重い腰を上げ、有望な原発を優先し、早期の合格を目指す方針を打ち出すに至った。早ければ春にも規制委の審査に合格する原発が出てくる。その後、立地自治体や国民を説得し再稼働にこぎ着けられるかどうかは政府の仕事だ。だが日本の将来のエネルギーで原発をどう位置付けるかが東京都知事選で争点になるのを避けるため、政府はエネルギー基本計画づくりも先送りした。原子力問題について、与党もはれものに触るような扱いだ。原発の必要性と安全性について、政府・与党は納得のいく説明をする覚悟が必要だ。いまの日本にこれ以上時間を空費する余裕はない。

| 経済・雇用::2013.7~2014.6 | 11:19 AM | comments (x) | trackback (x) |
2014.5.18 検証:メディアは真実にどう対応したか? (総括:情報の真実性は民主主義のKeyであり、正確な情報がなければ国民が意思決定を誤るにもかかわらず、多くの日本メディアは、肝心なところでは志がなかった。)
   
                     *2より
(1)「被曝で鼻血」は、「根拠のない風評」ではない
 *1で、安倍首相が、「根拠のない風評に対して国として全力を挙げて対応する」と述べられたそうだが、「被曝で鼻血を出した」という事実は、*3に書かれているように、参議院東日本大震災復興特別委員会等で参議院議員(宍戸隆子議員、熊谷大議員、山谷えり子議員、森まさこ議員)が質問しており、根拠のない風評ではない。当時は、民主党政権だったため、自民党議員が積極的に質問しているが、政権側になったら態度を変えるのではおかしい。

 また、*2には、福島で50年以上、米作りに励む太田さん(72)が、「福島は危ないと言われると、何のために苦労して米作りしているのかと情けなくなる」と言ったこと等が書かれているが、これはまさに、*4に書かれている「原発事故の実害を風評被害にすり替え、加害者に責任を負わせず被害者同士を分断する行為」である。

 そもそも、「風評被害」とは「根拠のない噂のために受ける被害」だが、「被曝で鼻血を出した」等は事実であり、消費者が「食の安心・安全」を重視し、内部被曝を警戒して原発立地周辺地域の農林水産物を避けたり、わざわざそこに観光に行ったりしないのは、基本的人権の行使だ。それによって起こる農林水産業・観光業の被害は、「風評被害」ではなく原発事故による「実害」であり、その責任は国と東京電力にある。そのため、被害者である農林水産業者・観光業者は救済される権利を有するが、補償する主体は消費者ではなく、国と東京電力でなければならない。

(2)水俣病のケースでも、同じことが起こった
 *2には、医療関係者の意見として、日本大学歯学部の野口邦和准教授の「被曝による鼻血が考えられるのは全身に500~1千ミリシーベルトを超える被曝をした場合」、東北大の細井義夫教授の「大量の被曝で鼻血が出るのは、血液を固める血小板が減るためで、その場合は歯茎などからも出血しやすくなる」等の意見が掲載されているが、いずれも外部被曝しか考慮していない。私は、岡山大の津田敏秀教授(疫学)の「因果関係がないという証明がない以上、被曝による鼻血はありうる」というのが本当に科学的な姿勢であり、因果関係はあるに違いないと思っている。

 なお、水俣病のケースでも、最初に原因究明のきっかけを作ったのは疫学調査であり、疫学調査によって目星をつけた後に原因物質(有機水銀)を特定したが、国とチッソは長くそれを認めず、被害者の救済も限定的で時間がかかった。この顛末は、多くの人の記憶に新しいだろうから、まず、自らの身は自ら守るという意識が不可欠である。

(3)憲法では、虚偽や名誉棄損などの不法行為でない限り、「言論の自由」や「表現の自由」が保障されているが、どこが虚偽や不法行為だったのか?
 *1のように、小学館の編集部は、12日発売号のゲラ(校正刷り)を、発売11日前に環境省にメールで送っていたそうだ。確認をするのは自由だと思うが、「多くの方々が不快な思いをしたことについて編集長として責任を痛感」「ご批判、お叱りは真摯に受け止め、表現のあり方について今一度見直していく」というのは、かえってわからない。このようなケースで、行きすぎた自主規制が始まらないことを望みたい。

*1:http://digital.asahi.com/articles/DA3S11141650.html (朝日新聞 2014年5月18日) (時時刻刻)美味しんぼ、苦い後味 編集部見解「表現のあり方見直す」
 「表現のあり方について今一度見直します」―。人気漫画「美味しんぼ」(小学館)の東京電力福島第一原発事故の描写をめぐり、週刊ビッグコミックスピリッツ編集部は19日発売号で見解を示す。鼻血と被曝を関連づけた描写は、放射線リスクや表現の自由をめぐる議論に発展。地元にも波紋が広がっている。
■「被曝で鼻血」両論併記
 「根拠のない風評に対し、国として全力を挙げて対応する」。安倍晋三首相は17日、訪問先の福島市で記者団に述べた。「風評」とされる内容の一つに、被曝の影響とした鼻血の描写がある。同誌の特集では、放射線との因果関係について否定と肯定の双方の意見が掲載された。日本大学歯学部の野口邦和准教授(放射線防護学)は、被曝による鼻血が考えられるのは「全身に500~1千ミリシーベルトを超える被曝をした場合」とし、福島県民の被曝はそこまでではないとした。被曝の専門家には同様の意見が多い。東北大の細井義夫教授(放射線医学)によると、大量の被曝で鼻血が出るのは、血液を固める血小板が減るためで、その場合は歯茎などからも出血しやすくなるという。一方、岡山大の津田敏秀教授(疫学)は特集の中で「因果関係がないという証明はない」とし、被曝による鼻血はありうるとした。また、ストレスなどによって健康影響が生じるとする意見も複数あった。避難者らの相談会を開く小児科医の山田真氏は「不安の中で生きている人が、『放射線のせいじゃないか』と思うのも当然」と指摘。「低線量被曝の影響はわからないことが多い。将来のためにいろいろな症状を記録していく必要がある」と朝日新聞の取材に語った。いわき市の木田光一医師は「健康状態を被曝と被曝以外の影響に分けて考えるのは難しい。被曝との関係は問わず、医療支援を充実させるべきだ」と話す。
■「表現に国介入」不安も
 最新号で完結した「福島の真実」編は、作者の雁屋哲さんが福島県の人々を取材して描かれた。前半は福島の食の安全を訴え、風評被害を憂えた。後半は、なお続く現地での不安を取り上げながら、自主避難者への支援を訴えて終わる。今回の特集で、作家の玄侑宗久さんは、「登場する『四人の鼻血の一致』は信じますが、それだけで福島県全域を危険と見做(な)し、出て行くことも支援するという考え方は、福島の複雑な状況を更に混乱させるもの」と意見を寄せている。元・東電福島原発国会事故調査委員の蜂須賀礼子さんは、主人公の被曝量では鼻血は出ないとして、セリフのやりとりを「医師が放射線と鼻血とを故意に関連づけないようにしている印象を与えます」と記した。閣僚らからの懸念の声に対しては疑問の声もある。漫画文化にくわしい藤本由香里明治大教授は今回の騒動について、「地元からの抗議は当然だが、閣僚らが一斉に遺憾の意を示したことに不安を覚える。国が漫画表現に対して介入する余地を残したのでは」と話す。漫画によるルポ作品は珍しくなく、論の運びも突出してはいないという。ジャーナリストの佐々木俊尚さんは「科学的には、(低線量被曝による鼻血は)あり得ないという知見が積み重ねられている。だが、子供が鼻血を出す経験をしたお母さんは不安だ。社会は不安に思う人がいることを引き受けなければ。作品を『非科学的』と断罪しても不安は消えない。政府などは、不安を和らげる努力を延々と続けるべきだ」と話している。「美味しんぼ」は次号から一時休載に入る。小学館広報によると「以前から決まっていたこと」という。
■発売前、環境省にゲラ 編集部、被曝の影響質問
 編集部が12日発売号のゲラ(校正刷り)を、発売11日前に環境省にメールで送っていたことが同省への取材で分かった。環境省によると、1日に編集部から「被曝が原因で鼻血が出ることがあるか」といった質問が電話とメールであった。その際、12日発売号の全ページが添付されたメールも担当者に送られてきた。同省は「こちらは求めていない。具体的な内容の訂正要求もしていない」としている。7日深夜にメールで回答したという。環境省は「他省庁にも関係する」として、復興庁や内閣府などに12日発売号の内容や編集部の質問内容を伝えたが、ゲラは「未発表の内容」として転送しなかったとしている。また、12日発売号には「大阪府と大阪市が受け入れたがれき処理で焼却場周辺住民が健康被害を訴えている」という内容もあり、環境省は2日に府と市に伝えた。府市は8日、編集部に内容を見せるよう要求。9日に訂正と削除を申し入れ、発売日の12日に抗議した。小学館広報室は「関係者の声を集めた『特集』を組むために関係各所に送った。環境省もそのうちの一つ。12日発売号が出た段階で送ったら、19日発売号の編集作業に間に合わない。検閲ということではない」としている。
■福島、反応は様々
 福島県内の反応は様々だ。福島市の旅館で働く男性(60)は「あれを読めば福島の温泉に行こうと思わなくなる」と影響を心配。県漁業協同組合連合会の野崎哲会長も「福島で生計を立てる我々はどうすればいいのか」と憤る。一方、批判に走る国や自治体に違和感を訴える人も。福島県いわき市で子育て中の女性(45)は「行政は『大丈夫だ』と説得するばかり。それに反することを言うと邪魔だと言われる状況が悲しい」。飯舘村の菅野典雄村長は「ちょっと衝撃的だったが、日本全体で勉強する機会になれば」と話す。
    ◇
 19日発売号に掲載される「編集部の見解」の骨子は以下の通り。
 ◆多くの方々が不快な思いをしたことについて編集長として責任を痛感
 ◆残留放射性物質や低線量被曝の影響についての議論や報道が激減しているなか、あらためて
   問題提起をしたいという思いもあった
 ◆ご批判、お叱りは真摯に受け止め、表現のあり方について今一度見直していく
   ◇
 誌面では「見解」のほかに、有識者13人による賛否の意見や自治体からの抗議文を紹介する特集も掲載している。

*2:http://qbiz.jp/article/37955/1/ (西日本新聞 2014年5月18日) 
美味しんぼ・鼻血描写 「健康事故前と変わらず」 福島県民「行政の情報に不信」
 週刊ビッグコミックスピリッツ(小学館)の漫画「美味(おい)しんぼ」で、登場人物が東京電力福島第1原発訪問後に鼻血を出す場面や、「福島に住んではいけない」などの発言に、福島県や閣僚から批判が相次ぐ。原作者の雁屋哲氏はブログで「真実には目をつぶり、都合の良いうそを書けというのだろうか」と真っ向から反論するが、小学館は19日発売の最新号で「批判を真摯(しんし)に受け止め、表現のあり方について見直す」との見解を掲載する。風評被害を助長する行き過ぎた表現か、真実の告発か−。この問題をどう受け止めればいいのか、福島で考えた。第1原発から北へ約30キロの相馬市赤木地区。一面に広がる水田は田植えの最盛期だ。この地で50年以上、米作りに励む太田定身さん(72)は、美味しんぼに憤りを覚えた一人だ。「福島は危ないと言われると、何のために苦労して米作りしているのかと情けなくなる」。米は全て検査した上で出荷しているが、「今でさえ風評被害がひどいのに、さらにその傾向が強まる」と心配する。さらに原発に近い南相馬市で農業を営む米倉一二さん(61)も「事故前と同じ生活をしている。健康面も以前と変わりない」と戸惑う。漫画では、第1原発がある双葉町の井戸川克隆前町長が「福島に鼻血が出る人や、ひどい疲労感で苦しむ人が大勢いるのは被ばくしたからですよ」と発言する。しかし、両市や福島市内で10人以上に話を聞いたが、事故後に鼻血の症状が出たという人はいなかった。福島県も「鼻血が出る人が増えているという情報は把握していない」(県民健康調査課)。福島市内の医療関係者も「医療現場でそういう話は聞いたことがない」と否定した。風評被害対策を担当する県広報課の吾妻嘉博主幹は「原作者にはいろんな人の意見を取材してほしかった」と語る。
   §    §
 一方で、国や県が放射線被害について「安全だ」とPRすることに、県民は複雑な感情を抱く。国が、震災直後の放射線量のデータを震災から10日以上たってようやく公表したことなどが今も影を落としている。放射線量が高い飯舘村から福島市に避難を余儀なくされている女性(57)は漫画に憤りながらも、「原発事故に関して行政が出す情報にははっきり言って不信感がある」と言い切る。「私はほぼ毎日鼻血が出る。この事実が被ばくと関係ないと立証できるのか」。双葉町の井戸川前町長は自身の体験を訴えた。同町から埼玉県加須市に避難した60代の女性は「井戸川さんは誰よりも放射線の被害について勉強している。うそを言っているとは思わない」と支持する。福島市で花店を営む女性(56)は訴えた。「福島に住む以上、福島産の農産物を食べても健康被害はないと信じるしかない。その覚悟がないと暮らしていけない。それが福島の真実なのよ」

*3:http://takedanet.com/2014/05/post_ae67.html 
(武田邦彦 平成26年5月16日) 自治体の首長は国会議員が怖い?・・・鼻血の記録
 福島県知事、大阪市長などが「美味しんぼ」に被ばくによる鼻血のことが書いてあるということで、猛烈に抗議をしましたが、下の資料の通り、原発事故の後、多くの鼻血がみられるということが国会で4人の議員が質問しています。その時に自治体の首長(福島県など)は異議を申し立てていません。(中略)マスコミも報道する場合、「首長だから」というのではなく、もちろん国会での発言は聞いているのですから、放送や記事を書くときに「被曝と鼻血のことはすでに国会で4人の議員が追及している」とか、そのことに関する取材をして放送法第4条の規定を守らなければならないと思います。NHKも殿様ではないのです。法律に基づいた放送をしなければ受信料は払うことができません。また私へのバッシングも来ましたが、ネットでも「自由に発言できる」という権利とともに、「ウソを言ってはいけない」という義務もあります。ネットでの発言も良く事実を調べて発言しなければならないのは当然です。特に匿名と言う権利をさらに使う場合は、名前を出して発言するより高い道徳が必要とされます。
<資料>
●参議院・東日本大震災復興特別委員会8号(平成23年12月02日)
宍戸隆子議員
 北海道に避難している方たちといろいろ話をしまして、その中で、例えば鼻血なんですけれども、そういうような症状を訴えていたお子さんが非常に多かったです。国は安全だと言う。これぐらいの低線量では身体的な影響は出ないと言います。私も初めはそう思っていました。自分の娘も鼻血を出したりしたんですが、それでもそれを被曝のせいだと私は初め考えておりませんでしたし、今でも疑っているのも事実です。目の前で今まで出したことのないような鼻血を出している子供たちがいたら、皆さんどうしますか。偉い学者さんがどんなに安全だと言っても今起きているその事象を優先しませんか。本当に、お手元に資料配られていると思うんですが、みんな目の前で起こったことを、それを見て避難を決めている方もたくさんいらっしゃいます。
●参議員予算委員会8号 (平成24年03月14日)
熊谷大議員(自民党)
 ある小学校の、県南の小学校の保健便りです。四月から七月二十二日現在の保健室利用状況では、内科的症状で延べ人数四百六十九名。内科的症状では、頭痛、腹痛、鼻出血、これ鼻血ですね、順に多くということ、これ結果で出ているんですね。
●参議員文教科学委員会3号(平成24年03月22日)
熊谷大議員(自民党)
 四月から七月二十日現在の保健室利用状況では、内科的症状で延べ人数四百六十九名が利用しました。内科的症状では、頭痛、腹痛、鼻出血の順に多く、鼻出血というのはこれ鼻血のことですね、外科症状では擦り傷、打撲、虫刺されが順に多かったということで書いてありますが、平野大臣、この事実もう一度、どのようにお考えになりますでしょうか。
●参議員憲法審査会4号(平成24年04月25日)
山谷えり子議員(自民党)
 井戸川町長が雑誌のインタビューでこんなことを言っていらっしゃいます。
放射能のために学校も病院も職場も全て奪われて崩壊しているのです。私は脱毛していますし、毎日鼻血が出ています。この前、東京のある病院に被曝しているので血液検査をしてもらえますかとお願いしたら、いや、調べられないと断られましたよ。我々は被曝までさせられているが、その対策もないし、明確な検査もないという。本当に重い発言だと思います。フランスの原発関係のジャーナリストに聞きましたら、こんなに情報公開がなくて、しかもいろいろな、沃素剤一つ取っても国、県の指示があって初めて服用できるというような、非常に不十分なままほったらかされていたと、この十三条と二十五条、幸福追求権と生存権が妨げられているのではないか。
●参議員東日本大震災復興特別委員会8号(平成24年06月14日)
森まさこ議員(自民党)
 例えば、具体的にこんな心配の声をお寄せいただいています。子どもが鼻血を出した、これは被ばくによる影響じゃないかと心配なんだけれども、それを診察してもらった、検査してもらった、そのお金はどうなるんですかということです。
(国会の記録は読者からご提供いただいたものです)

*4:http://uekusak.cocolog-nifty.com/blog/2014/05/post-9431.html
(植草一秀の『知られざる真実』 2014年5月17)  原発事故実害を「風評被害」にすり替える工作
 「風評被害」の意味を「goo辞書」は次のように記述する。「http://dictionary.goo.ne.jp/leaf/jn2/190458/m0u/」根拠のない噂のために受ける被害。特に、事件や事故が発生した際、不適切な報道がなされたために、本来は無関係であるはずの人々や団体までもが損害を受けること。例えば、ある会社の食品が原因で食中毒が発生した場合、その食品そのものが危険であるかのような報道のために、他社の売れ行きにも影響が及ぶことなど。
 『美味しんぼ』が休載になる。言論弾圧の色彩が濃厚である。「福島で鼻血が出た」との描写、作中に登場する井戸川克隆元双葉町長が、「福島に鼻血が出たり、ひどい疲労感で苦しむ人が大勢いるのは、被曝(ひばく)したからですよ」と語る場面が描写された。この描写に対して激しい攻撃が展開され、国や福島県が「風評被害」を引き起こすとして批判した。この攻撃を受けての休載発表である。出版社が権力の圧力に屈したというなら、言論活動を行う資格はないというべきである。福島県双葉町の元町長である井戸川克隆氏は、騒動が起きてから取材に対しても、正々堂々と持論を展開している。発言の正当性を強く訴えている。
 『美味しんぼ』原作者の雁屋哲氏は自身のブログに、「私は自分が福島を2年かけて取材をして、しっかりとすくい取った真実をありのままに書くことがどうして批判されなければならないのか分からない。真実には目をつぶり、誰かさんたちに都合の良い嘘を書けというのだろうか。「福島は安全」「福島は大丈夫」「福島の復興は前進している」などと書けばみんな喜んだのかも知れない。今度の「美味しんぼ」の副題は「福島の真実」である。私は真実しか書けない。」「今の日本の社会は「自分たちに不都合な真実を嫌い」「心地の良い嘘を求める」空気に包まれている。」と記述した。『福島の真実』は、23、24まで続くとあり、5月19日発売号が24にあたるから、予定通り発行を続けて、一段落したところで休載となるということなら当初の予定通りなのかも知れない。しかし、民間人の真摯な言論活動に対して、国家権力、公権力が圧力をかけて、その情報発信を封じようとし、出版社がその圧力に屈して休載を決定したということなら出版社の姿勢が糾弾されるべきである。根拠のないこと、ウソ、でっち上げた情報を流布して、人に迷惑をかけたのなら、その行為は糾弾されるべきだ。
 しかし、「鼻血が出た」「疲労した」「鼻血を出す人が多数いる」との発言があったことは事実であり、捏造でもでっち上げでもない。井戸川氏は鼻血が出ることをネット上でも写真入りで伝えており、ウソを言っているとは思われない。政府や福島県は現在の原発周辺の放射能汚染の現状を「安全だ」としているが、反論を唱える者は専門家のなかにも少なくない。低線量被ばくの健康への影響についても見解は割れている。「安全だ」とする見解だけを流布させて、「危険だ」とする見解を流布させないというのは、言論弾圧であり、人権尊重、民主主義の大原則に反するものだ。
 消費者が放射線による内部被ばくを警戒して、原発立地周辺地域産出の農林水産物を忌避する行動を取ることは、基本的人権の正当な行使である。これを「風評被害」とは言わない。「消費者主権」に属する行為である。消費者が「食の安心・安全」を重視して、原発立地周辺地域産の農林水産物を忌避すれば、当該地域の農林水産業者は被害を受ける。これは「風評被害」ではなく、原発事故による「実害」である。農林水産業者に罪はなく、罪があるのは国と東京電力である。被害者である農林水産業者は救済される権利を有する。その補償を行うべき主体は、消費者ではなく国と東京電力なのである。「風評被害」という言葉は、農林水産業者、あるいは観光事業従事者が被害者で、消費者が加害者とする図式をもたらす言い回しだが、これは、「責任のすり替え」なのだ。国と東京電力が負うべき損害賠償責任を消滅させるために、原発周辺地域を忌避する消費者が悪者であるとの「責任転嫁」を目論む表現なのだ。

| 内部被曝・低線量被曝::2014.4~ | 04:50 PM | comments (x) | trackback (x) |
2014.5.5 「高齢者に手厚い予算」を「少子化対策」にというのは大きな考え違いであり、公的年金は、契約どおり支払われるべきである。(2014年5月6日、13日、18日に追加あり)
   
日本の人口推移     *1-1より   GDP成長率推移  日本の公債残高推移

(1)高齢者から子育て世代への予算移転のための屁理屈がすぎる
 *1のように、「①このままでは日本の人口が2060年(50年後)に約8600万人まで減る見通しであるため、2020年ごろまで集中的に対策を進めて、人口減少に歯止めをかけ、2060年代にも人口1億人程度を維持する中長期の国家目標を日本政府が設ける」という論調は多く、「②そのために、高齢者に手厚い予算配分を現役の子育て世代に移す経済・社会改革を進められるかが課題になる」と続く。

 また、「③1人の女性が生涯に産む子供の数を示す合計特殊出生率は12年で1.41。60年に同2.07以上に引き上げ、人口1億545万人程度にすることを目指す」というフレーズも何度も聞いたが、そのため「④出生率の改善のため、資源配分は高齢者から子どもへ大胆に移す」と結論づけるのである。

 さらに、「⑤費用は現在世代で負担」し、「⑥国債発行を前提に高齢者に厚く配分している社会保障予算を見直す考え」ときたのには呆れた。

 そして、これらは、このブログの年金・社会保障のカテゴリーに何度も書いているとおり、高齢者から子育て世代への予算移転という結果ありきの屁理屈であるため、①~⑥について、どこが屁理屈なのかを記載する。
①について
 通常、短期的な視点でしかものを考えない人が、急に50年後を推計したのが下心の証拠だが、推計結果と結論は、やはり高齢者から子育て世代へ予算を移転することだった。そして、その推計の根拠は稚拙だが、日本の人口が50年後に約8600万人まで減ったとしても、それは上のグラフの1950年頃と同程度で、決して少なすぎるわけではない。また、上のグラフのGDP成長率と人口の関係を見れば、人口が急激に増えている最中でもGDP成長率は段階的に下がっており、GDP成長率鈍化の原因は、人口減少ではなく、このブログの2012年5月18日に記載したように、政策が時代に合わず、愚かだったからである。また、GDP成長率の鈍化に伴って、景気対策と称して本質的な改革や投資ではない雇用確保のためのばら撒きに税金が使われた結果、上のグラフのように、団塊の世代が生産年齢人口にあり、人口が増えている期間に、わが国の債務は膨らんだ。

    
 日本の食料自給率推移   主要先進国食料自給率推移     *1-2より

 また、上のグラフの人口と食料自給率の関係を見れば、人口が9000万人程度で、今より農業従事者が多かった1965年でも食料自給率は73%しかなく、人口が1億2774万人の2010年の39%まで、踊り場はあったものの一貫して下がり続けており、世界の人口が激増している中で、わが国は国民を養える国とはとても言えないのである。ちなみに他の先進国の食料自給率は、2005年時点で、アメリカ・フランスが120%以上、ドイツが80%前後、イギリスが75%程度あるにもかかわらず、日本は40%であり、それでも人口を増やしたり維持したりすべきだとは言えない。

②について
 ②には、この記事の目的である「高齢者に手厚い予算配分を現役の子育て世代に移す経済・社会改革を進められるかが課題」という結論が書かれているが、「社会保障は消費税からしか充当してはならない」とか「社会保障は社会保障同士でやりくりしなければならない」と決まっているわけではないため、スウェーデンや以前のイギリスとは異なり、ただでさえ薄い高齢者への予算から移転させなくても、原発等への無駄遣いをやめたり、エネルギー価格を下げて法人税を自然増させたりし、海底資源からも収入を得る体制にすれば、教育や社会保障の原資はできるし、そうすべきである。

③について
 現在は、寿命が延びて2世代ではなく3~4世代が共存しているため、合計特殊出生率が2.07(1960年くらいの合計特殊出生率)では、人口は安定せずに増加している。また、日本の人口1億545万人程度というのも、食料自給率や一人当たりの豊かさから考えると多すぎる。そして、「人口減少で約1800の地方自治体が消滅する可能性が高く、地方で集落消滅の危機」というが、それは、人口集中のひどい大都市から、住みやすい地方への人口移動を促し、そのためには農林漁業を所得の多い産業にしたり、地方に付加価値の高い産業を作ったり、地方都市が教育や文化で大都市に劣らないようにしたりするのが、抜本的解決策である。都会の男女で、豊かな自然や農林業に関心のある人は多いのだから。

④について
 「出生率の改善のため、資源配分は高齢者から子どもへ大胆に移す」などという政策や新聞のキャンペーンは、「高齢者はお荷物で若者の負担になるから、国費を使わず早く死ね。」という人の道に反する考えを持つ人を大量に作り出す。このような人材に仕事を任せても、心のこもった仕事ができるわけがないため、*1-2のような外国人労働者を使った方がよいと判断する企業が多くなるだろう。それも、日本人の補完ではなく、日本人よりも、真面目でよく働き、奉仕の精神を持つ、よりよい労働力としてである。

⑤について
 「費用は現在世代で負担」としているが、これでは、国民は年金に関して二重負担し、管理・運用が杜撰だった年金保険機構は社会保険庁時代の雰囲気のまま温存される。そのため、このブログの2012年12月18日に記載したとおり、国は、速やかに元の積み立て方式に戻して年金債務を確定し、それと現在の積立金との差額は50年くらいで償却すべきだ。

⑥について
 「国債発行を前提に高齢者に厚く配分している社会保障予算を見直す考え」としているのは、年金や医療のことだろうが、どちらも契約に基づいて保険料として支払ってきたものを受け取っているものであるため、国債発行を前提にしなければ支払えなくなったのは、管理者の無計画、杜撰、無責任な管理・運用の結果だ。そのため、積立金が足りなければ、管理・運用を行ってきた国が責任を取るべきであり、保険契約どおり支払ってきた国民に不払いや減額でしわ寄せすべきではない。つまり、契約に基づいて保険料を支払い、高齢時の生活がかかっている年金の需給や医療・介護は、マージャンと異なり、“痛み分け”で解決すべきものではないのだ。

(2)年金資産の管理・運用の杜撰さについて (もともと若者から高齢者への仕送りではない)
 *2-1のように、年金を減額するための新聞記事が後を絶たないが、今の年金のマクロ経済スライドを、2000~2002年度の賃金や物価の下落時に適用しなかったとしても、消費者物価は、この2年間で金融緩和(→円の購買力低下)と消費税増税の影響で25%くらい上がっているため、下落した物価の分はとっくに取り戻しておつりがきている。それを正確に把握せず、年金の支給額を減らしたいためにご都合主義の議論を展開するようでは、高齢者は、憲法で定められた健康で文化的な生活ができない。

 また、「年金の『所得代替率50%』を下限としているのは、何かと物入りな現役世代の半分くらいの収入で生活してもらうというイメージ」だそうだが、食費、消費税、公共料金等の生活費は年齢による区別がない上、高齢になると医療・介護・知人の葬儀など、若い頃とは異なる費用で物入りであるため、現役世代の50%で老後の生活は支えられると考えているのは、年齢による差別である。

 また、このブログの2013.7.19にも書いているように、年金はもともと積み立て方式で始まって自分の年金を積み立てていたにもかかわらず、年金制度開始当初から続いていた旧社会保険庁の管理・運用の杜撰さをカバーするために、知らないうちに賦課方式に変えられていたものである。そのため、高齢者は若い頃にせっせと積み立てた自分の貯金を使って老後を過ごしていると考えるのが正しく、「社会で扶養されている」などと言うのは事情を知らない人の大きな誤解だ。そのため、年金受給者に対して、「社会全体で扶養する『国民仕送りクラブ』」などと言うのは失礼にもほどがあり、一生懸命に働いて多額の税金を支払い、こういう馬鹿者を育てるための教育費に充てられたのならば、その分は返してもらいたい。

 なお、年金資産の管理・運用の杜撰さは、*2-2のように、公的年金運用委員長に米沢氏を充て、リスク投資を拡大して、リスクの高い株式・不動産にシフトするよう主張しているくらいであり、損しても責任をとれるわけがなく、年金資産に対する責任感が全くない体質は今も変わっていない。これは、*2-3のように、厚生年金基金なら解散になるくらいの杜撰さだが、厚生年金・国民年金は基本的な年金であるため、受給者にしわ寄せしてすむ話ではない。そのため、メディアは、この体質を批判すべきなのである。

(3)生産年齢人口と女性・高齢者・外国人労働者の活用
 *1で、労働力人口の減少に備えて、「年齢、性別に関わらず働ける制度を構築する」として、20歳以上70歳未満を「新生産年齢人口」と定義し、雇用制度などの社会保障政策を設計して女性や高齢者の労働参加も進めるというのは、実際に雇用があってそれが進めば、生産年齢人口の増加と年金支給額の減少という効果を期待することができる。しかし、まだ働ける環境でもないのに、配偶者控除のみを先行して減らせば、それは単なる増税になる。

 また、外国人の活用については、「移民政策としてではなく、外国人材を戦略的に受け入れる」としているが、日本人の生産年齢人口の男性以外を人間として差別すれば、また大きなしっぺ返しがあるだろう。

(4)社会保障の削減ばかりが目につく
 *2-4のように、厚生労働省は、2000~2002年度の物価下落時に、特例で年金額を据え置いたことで、もらいすぎが発生したとして、2014年度の年金支給を0.7%減額する決定をしたそうだが、これは、前にも書いたように、現在の物価上昇を反映していない。それにもかかわらず、このように物価下落時の物価スライドを反映することのみに熱心なのが、官の体質なのである。

 また、毎年、年金保険料が0.354%ずつ引き上げられるというのは、これまで厚労省が、年金資産の杜撰な管理・運用を行い、時代にあった少子化対策や雇用政策をしてこなかったことへの大きなつけであり、年金保険料を支払っていた国民には何の責任もない。また、女性の生産年齢人口への参入もやっと本気で行い始めているが、これが進んでいれば少子高齢化の影響以上に労働力は増えており、雇用の受け皿の方が心配なくらいだった。それらの責任を、マージャンのように、痛み分けとして年金生活者にしわ寄せすることしか思いつかない思考力が、この状況を生んだのである。

*1-1:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20140504&ng=DGKDASFS03014_T00C14A5MM8000 (日経新聞 2014.5.4) 人口 50年後に1億人維持、政府が初の目標、少子化に対応 予算、子育て世代に
  ★人口1億人維持に向けた主な論点★
    ○高齢者に手厚い予算・税制を改められるか
    ○子育てと就労の両立促進
    ○雇用・医療などの規制緩和は進むか
    ○外国人を積極活用できるか
 政府が「50年後(2060年代)に人口1億人程度を維持する」との中長期の国家目標を設けることが3日明らかになった。日本の人口(総合・経済面きょうのことば)はこのままでは60年に約8600万人まで減る見通しのため、20年ごろまでに集中的に対策を進め、人口減少に歯止めをかける。高齢者に手厚い予算配分を現役の子育て世代に移し、経済・社会改革を進められるかが課題になる。政府が人口維持の明確な目標を打ち出すのは初めて。人口減は成長や財政、社会保障の持続に多大な悪影響を与えると判断。国を挙げて抜本対策をとるため、目標の提示に踏み切る。政府の経済財政諮問会議の下に置いた「選択する未来」委員会(会長・三村明夫日本商工会議所会頭)が5月中旬に中間報告として諮問会議に提言する。6月にまとめる経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)に盛り込む。提言は日本経済の課題に「人口急減と超高齢化」を挙げ、50年後に人口1億人を維持することを目標に掲げる。1人の女性が生涯に産む子供の数を示す合計特殊出生率は12年で1.41。60年に同2.07以上に引き上げ、人口1億545万人程度にすることを目指す。出生率の改善のため、国費ベースで3兆円規模の出産・子育て支援の倍増を目指す。「資源配分は高齢者から子どもへ大胆に移す」「費用は現在世代で負担」と明記し、国債発行を前提に高齢者に厚く配分している社会保障予算を見直す考え。労働力人口の減少に備え「年齢、性別に関わらず働ける制度を構築する」として女性や高齢者の労働参加も進める。出産・育児と仕事を両立させ、働く高齢者を後押しする政策を今後検討する。労働力に関する現行の統計とは別に新たな指標もつくる。20歳以上70歳未満を「新生産年齢人口」と定義し、雇用制度などの社会保障政策を設計していく考えを示す。経済改革では「ヒト、モノ、カネ、情報が集積する経済を目指す」と指摘。「起業・廃業の新陳代謝で産業の若返りを進める」として産業構造の変更を迫る大胆な規制改革の必要性を打ち出す。外国人材の活用に関しては「移民政策としてではなく、外国人材を戦略的に受け入れる」とする。人口減少で約1800の地方自治体は「40年に523が消滅する可能性が高い」と指摘。市町村の「集約・活性化」を掲げ、東京圏への一極集中も抑制するとしている。「20年ごろを節目に経済社会システムを大きく変える」と明記。一連の改革は今後5年程度で集中的に具体策を検討し、実施する方針を示す。提言は13年に1億2730万人の人口がこのままでは60年に8674万人になると推計。経済・社会の抜本改革をしなければ、国際的な地位や国民生活の水準が低下し、財政破綻を招くと警鐘を鳴らしている。

*1-2:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20140118&ng=DGKDASFS1704S_X10C14A1MM8000 (日経新聞 2014.1.18) 外国人の就労拡大検討 新成長戦略、実習期間を延長 法人税率下げも 課税対象拡大
 政府が6月にまとめる新たな成長戦略の検討方針案が明らかになった。少子高齢化による労働力人口の減少を補うため、外国人の受け入れ環境を整備、最長3年の技能実習制度の期間延長や介護分野への拡大を検討する。焦点の法人実効税率の引き下げに向け、法人税を納める企業を増やす課税ベースの拡大も協議する。専業主婦を優遇する配偶者控除などの見直しも取り上げる。20日の産業競争力会議(議長・安倍晋三首相)で決め、具体策を練る。昨年の成長戦略「日本再興戦略」で踏み込み不足との指摘が出た分野が中心。関係業界の抵抗が強い「岩盤規制」が多く政権の実行力が試される。併せて昨年の成長戦略の実行計画も決定する。製造業や農漁業などで外国人労働者を受け入れる技能実習制度について、優秀な実習生は最長3年の期間を延ばしたり、介護も対象に加えたりする方向を明記した。同制度は発展途上国への技術移転が名目で、68業種で受け入れを認めている。近年の在留者は15万人前後。人手が足りない現場を支える労働力として期待する声が多い。介護は同制度の対象外のため経済連携協定(EPA)の介護福祉士候補生として受け入れている。福祉士の資格を取れば日本で働き続けられるが、国家試験が難しい。実習生なら働く期間は制限されるものの、受け入れ人数は増やしやすい。国税と地方税を合わせた法人実効税率は2014年度から2.37%下がり35.64%(東京都の場合)になるが、他の主要国の25~30%より高く、首相は引き下げに意欲を示す。1%下げると4000億円の税収減。財務省や自民党税制調査会は代替財源が確保できないなどの理由で反対だ。このため役割を終えた政策減税(租税特別措置)の縮小や廃止、法人税以外の引き上げを検討する。女性の就労促進策もまとめる。放課後に小学生を預かる学童保育や、ベビーシッターなど家事・育児支援サービスの利用者への税制優遇措置などを想定する。配偶者の年収が103万円以下なら会社員は課税所得の計算の際に年収から38万円を差し引ける。130万円未満なら保険料を払わずに夫の年金や健康保険に加入できる。こうした制度が女性の働き方を制約しているとして見直しを図る。複数の医療法人や社会福祉法人をまとめて運営できる「非営利ホールディングカンパニー型法人制度(仮称)」を創設。病院や介護施設を一体運営できれば経営の効率化が見込め、施設間の役割分担が進めやすくなる。持ち株会社の仕組みの解禁によりグループ内の部門を統合しやすくなる。環太平洋経済連携協定(TPP)交渉に関連する農業分野では、農協や農業生産法人の改革をテーマにあげた。

*2-1:http://www.asahi.com/paper/editorial.html
(朝日新聞 2014年4月30日) 年金の未来(中)―「生活習慣病」から脱する
 年金を受け取っている方々は「とんでもない」と思うかもしれない。だが、いまの年金の水準は本来の姿よりも高くなっている。前回(21日付)の社説で紹介した通り、少子高齢化にあわせて年金水準を抑える仕組み(マクロ経済スライド)は、賃金や物価の下落時には適用しない決まりだからだ。その分、将来世代の年金を下げざるをえない圧力がかかっている。人の体にたとえれば、生活習慣病の状態である。手をこまねいていれば、いずれ致命傷になりかねない。
■将来世代に影響
 年金制度は5年に1度、「財政検証」という健康診断を受ける。年金水準はその重要なチェック項目で、「所得代替率」で診る。受け取る年金が現役世代の手取り収入に対し、どのくらいの割合かという数値だ。今の制度は、サラリーマンと専業主婦の世帯が年金を受け取り始める時点で「所得代替率50%」を下限としている。何かと物入りな現役世代の半分くらいの収入で生活してもらうというイメージだ。日本では老後の平均所得の7割弱は公的年金で、年金しか収入のない人も6割いる。老後の生活を支える水準を確保しないと、社会が成り立たない。それを、代替率50%に設定したわけだ。このラインを下回ると、年金を増やす検討に入ることがルール化されている。一方、代替率が高すぎるのもまずい。今の年金受給者には良くても、年金のお金の入りと出を調整する積立金を多く取り崩したりしなければならず、将来世代が受け取る年金が減ってしまうからだ。
■国民に「痛み」迫れず
 04年の年金改革の時点で、代替率は59・3%。これを5年で57・5%に引き下げる予定だった。ところが、09年の健康診断では逆に62・3%へと上がってしまった。一番の原因は、前述したように、現役世代の収入が下がったのに、それに見合って年金を下げられなかったことにある。年金は高齢者を社会全体で扶養する「国民仕送りクラブ」のようなものだ。支える側の現役世代の暮らしぶりと、年金という仕送りでの生活とのバランスが崩れれば長続きしない。国はこの問題の是正に手を付けないできた。いずれデフレが解消され、マクロ経済スライドも機能し始めるという立場だったが、内実は「将来世代のために今の年金を削る」というつらい措置について、国民を説得する気構えも体力もなかったといえる。体力を奪ったのは、04年以降に相次いだ旧社会保険庁の不祥事だ。年金記録ののぞき見や「宙に浮いた年金」など、ずさんな運営が露呈するなか、厳しい見通しを示して痛みを迫れば不信感を増幅する。そう恐れたのかもしれない。「抜本改革」を求める声が強まった背景には、こうした年金不信の高まりがある。その流れを振り返ってみよう。厚生労働省は09年5月、野党だった民主党の求めに応じ、賃金や物価などの経済前提を「過去10年の平均」にした場合、年金の先行きはどうなるかという試算を公表する。結果は衝撃的だった。マクロ経済スライドが機能しないために、所得代替率が72%まで上がり、2031年に積立金が枯渇するというものだった。もっとも、試算の前提となった「過去10年」は、長期の景気拡大時を含んでいたとはいえ、平均すれば実質経済成長率も賃金・物価もマイナスだった時期だ。これがずっと続けば、年金どころか日本の経済や社会自体が立ちゆかない。
■政権交代からの教訓
 民主党は「破綻しかけている年金を抜本改革する」と主張。最低保障年金の創設を掲げ、国民全員に月7万円以上の年金を約束して政権の座についた。大胆な外科手術の提案である。しかし、与党としての3年3カ月、民主党案は実現の兆しすら見えなかった。制度変更に伴う国民の負担が重くなりすぎるからだ。結局は自民、公明の両党と話し合い、漸進的な修正に立ち戻るしかなかった。生活習慣病には、食事制限と運動を地道に積み重ねるしかない。経済全体の体力を回復させつつ、将来世代も考えて妥当な給付水準を設定する。それが年金をめぐって、政権交代から得た貴重な教訓だろう。安倍政権のもと賃金や物価は上昇基調に転じ、マクロ経済スライドの発動開始も視野に入ってきている。ただ、長期にわたり年金額を抑制していく措置には相当な反発があるはずだ。将来世代への責任を果たすため、政治には強い覚悟が求められる。
   ◆
 来月上旬の最終回では、公的年金の足腰を強くする具体策について検討する。

*2-2:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20140425&ng=DGKDASFS24036_U4A420C1EE8000 (日経新聞 2014.4.25) 公的年金運用委員長に米沢氏 リスク投資拡大へ改革 株式・不動産へシフト主張
 公的年金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は24日、運用委員会を開き、米沢康博・早大大学院教授を委員長に選んだ。米沢氏は、株式などのリスク投資を拡大すべきだと主張しており、安全性を重視する国内債券中心の運用見直しを求めた政府有識者会議のメンバーだった。リスク投資を増やす方向で運用改革が進みそうだ。米沢氏は「日本経済の再生にGPIFはもっと貢献できる」と述べるなど、株式投資の拡大に理解を示す。インフラや不動産などにも投資対象を広げるように主張する。運用委は8人の外部有識者で構成し、GPIFの運用方針について助言する。今回は6人の委員が交代。委員長代理には堀江貞之・野村総合研究所上席研究員が就いた。ゴールドマン・サックス証券の西川昌宏金融商品開発部部長は、「前委員長の植田和男・東大教授時代とは変わり、株式投資拡大を求める声に配慮するだろう」とみる。

*2-3:http://digital.asahi.com/articles/ASG4S7JZBG4SULFA049.html?ref=nmail
(朝日新聞 2014年4月28日) (報われぬ国)「素人」運用、消える年金
 この3月、京都府南丹市の国際交流会館に集まった建設業者らは不安に包まれていた。「まったく落ち度がないのに負担を強いられないといけないのか」。京都府建設業厚生年金基金が開いた解散説明会だった。この基金は、府内の中小建設業者約180社が社員の厚生年金とそれに上乗せする企業年金を出すためにつくったが、大きな損失を抱えて今年度中にも解散することになった。引き金は、2012年2月に発覚したAIJ投資顧問の巨額詐欺事件だ。AIJは年金の積立金などを集め、いろいろな金融市場に投資して高い利益を目指す「デリバティブ(金融派生商品)」で運用すると説明していた。ところが、実際は運用の失敗をごまかしながらお金を集め、74の厚生年金基金から預かった約1600億円の多くを返せなくなった。京都の基金もAIJに約15億円を預け、ほとんどを失った。昨年11月には、米国の金融商品に投資するプラザアセットマネジメント(東京都)に預けた5億円も失ったことがわかった。そのつけは基金に加入する建設業者に回される。厚生年金を支給するのに必要な積立金が運用の失敗で十数億円足りなくなり、業者らで穴埋めしなければならないからだ。「負担は1千万円ほどになりそうだ。社員のためにと思っていたのに、基金の恩恵はなく、負担ばかりが増えてしまった」。ある業者は頭を抱える。社員の老後資金も細る。解散すれば、公的年金である厚生年金は穴埋めで予定通りもらえるが、上乗せされる予定の企業年金はなくなる。厚生労働省の標準モデルでは、年金のうち月に約7千~1万6千円の企業年金が失われるという。
■退職後もバイト
 福岡県に住む元タクシー運転手のキヨノブさん(62)はすでに企業年金を失っている。08年、勤めていたタクシー会社が福岡県乗用自動車厚生年金基金から脱退したからだ。この基金はリーマン・ショックによる金融危機で運用悪化に拍車がかかり、厚生年金に必要な積立金が半分ほどに落ち込んだ。もっと損失が広がると判断した会社は、社員分の損失を穴埋めして脱退した。脱退した時、キヨノブさんはタクシー会社2社に計12年間勤めた分の企業年金として一時金を受け取った。28万円だった。18歳から働き、いくつかの中小企業に勤めながら厚生年金の保険料を払ってきた。44年払うと特例で年金の満額支給が始まるため、44年たった昨年暮れにタクシー会社をやめた。しかし、安い賃金で働いてきた影響で厚生年金は月に14万円ほどにとどまり、厚生労働省が示す40年加入モデルの約16万円より低い。企業年金が十分にあれば、低い分をカバーできるはずだった。いまは農作業のアルバイトをして年金では足りない生活費を補う。それでもこう思う。「企業年金はないけど、一時金を28万円もらえただけよかった。今後はもらえなくなる人が出てくるんだから」。タクシー会社が入っていた基金は、今年9月に解散することが決まった。年金を受け取っている約1万7千人は企業年金分がカットされ、現役の社員約5千人は企業年金がなくなる。解散するのは、運用成績を立て直せなかったからだ。さらに昨年11月、プラザアセットに預けていた30億円が戻ってこなくなり、積立金が厚生年金の支給に必要な278億円の半分に満たなくなった。「安定資産」という説明を信じて契約した運用だった。プラザは17の厚生年金基金から約86億円を預かって米国の金融商品に投資していた。だが、損失が出て基金のお金をほとんど返せなくなった。この商品は日本では認められていない。多額の生命保険を多くの保険契約者から買い取って保険料を払い、契約者が亡くなると保険金を受け取るという。だが、何らかの理由で保険料を払えなくなり、保険契約が失効したとみられる。福岡県のタクシー会社社長は言う。「基金は理事会にもかけず、説明をうのみにして預けた。穴埋めのお金があれば、少しでも社員の待遇を良くできたのに」。
■つけは受給者へ
 AIJ事件やプラザ問題の背景には、厚生年金や国民年金などを運営していた厚労省・旧社会保険庁(10年から日本年金機構に業務を移管)が厚生年金基金を天下り先にしていた歴史がある。積立金の運用や管理の十分な知識がないまま基金を運営してきた。厚労省によると、09年5月時点で614基金のうち399基金に旧社保庁などの国家公務員の天下り職員が計646人いた。「天下りは基金の設立を認可する際の条件で、社保庁の人事にも組み込まれていた。みんな運用の素人なのに、厚労省は放置した」。大手銀行出身のある基金の常務理事は明かす。京都府建設業厚生年金基金の関係者によると、事務局を取り仕切る常務理事は旧社保庁出身だった。AIJもプラザも、知り合いの旧社保庁OBが紹介したセミナーで知ったという。九州の建設関連業者の基金もAIJ事件で約30億円を失った。当時の旧社保庁出身の常務理事がOBのつながりで運用を任せた結果だ。8月に解散する方向だが、年金を受け取る人は平均で月に約1万2千円の企業年金分がなくなる。いまの常務理事は「天下りが自分の仕事を守るために解散も延ばし、損失が広がった。そのつけが年金受給者と加入企業に回される」と憤る。中小企業のサラリーマンの老後資金が天下りや投資ゲームに利用されたあげく、細っている。
〈厚生年金基金〉 厚生年金基金は、サラリーマンが入る厚生年金の積立金の一部(代行部分)を国から預かり、厚生年金に上乗せする企業年金といっしょに運用している。主に中小企業が業界ごとに集まってつくっている。基金が積み立てる保険料は、代行部分を企業と社員が半々で払い、企業年金部分を企業が払う。1990年代までは約1900基金あり、1200万人を超えるサラリーマンが入っていた。しかし、高齢化が進んで年金を受け取る人が増える一方、保険料を払う現役社員が減ったり、企業業績が悪化したりして基金を存続させるのが厳しくなった。バブル経済崩壊後は株価低迷などで運用も難しくなっている。このため、02年度に厚生年金の代行部分を国に返す「代行返上」が認められると、大企業がつくる基金などが代行返上をして企業年金だけになったり、解散したりした。今年4月1日時点では527基金まで減り、加入者は約400万人になった。このうち466基金が中小企業などが業界ごとにつくった基金だ。AIJ事件をきっかけに、厚労省は今年度から5年間、加入企業が厚生年金の積立金不足の穴埋めを最大30年に分割できるなどの特例を取り入れ、解散しやすくした。74基金がこの特例を使う方針で、さらなる解散ラッシュが始まろうとしている。

*2-4:http://www.nikkei.com/article/DGXNASGC31005_R30C14A1MM0000/?dg=1
(日経新聞 2014/1/31) 14年度の年金支給、0.7%の減額決定
 厚生労働省は31日、2014年度の公的年金支給額を0.7%引き下げると発表した。国民年金と厚生年金を受給する全ての人が対象で4月分から変更する。国民年金を満額で受け取っている人は13年度と比べ月額で475円減の6万4400円となる。厚生年金を受け取る標準世帯では同1666円減の22万6925円だ。年金生活者の家計は厳しくなりそうだ。4月分の年金は6月に支払われる。公的年金の支給額は毎年、前年の物価や賃金の変動を反映する。00~02年度に、物価が下落しているにもかかわらず特例で年金額を据え置いたことで、もらいすぎの「特例水準」が生じた。政府は段階的に解消することにし、今年4月分から1%減額する予定だった。ただ、物価や賃金が上昇したため、減額幅を0.3%縮める。国民年金も厚生年金も04年度の制度改正で保険料を17年度まで毎年、引き上げることが決まっている。14年度の国民年金の保険料は現在の月額1万5040円が4月分から210円上がり、1万5250円になると発表した。厚労省は4月に、2年間の年金保険料を前払いできる制度を導入するため、15年度の保険料も公表した。15年度は14年度から、さらに月340円引き上げ、1万5590円になる。会社員が加入する厚生年金の保険料は毎年0.354%引き上げられており、今年9月分から17.474%(労使折半)になる。毎年、0.354%ずつ引き上げられている。保険料の引き上げは年金財政が少子高齢化の影響で厳しくなっているためだ。年金を受給する世代が増えて支給額が増大する一方、保険料を支払う制度の支え手は減る傾向にある。保険料の支払いが増え続ければ、現役世代の個人消費に影響がでる。支給額が減る年金生活者、現役世代ともに痛みの分かち合いが続くことになる。


PS(2014.5.6追加):*1に「人口減少で約1800の地方自治体が消滅」と書かれており、それに関して詳しく述べた記事が*3である。*3では、「日本は2008年をピークに人口減少に転じ、推計で2048年に1億人、2100年に5000万人を下回る」とされており、この推計は、「一個体当たりの縄張りが大きくなれば(暮らしやすくなれば)、その生物の繁殖力は上がる」という生物学の基礎を知らない人が描いた直線グラフを元にしており、稚拙だ。人間社会の経済を語るには、数学、統計学、生物学、社会学、経済学の知識が必要である。また、持続可能な経済を作るには、生態系や地球環境も考慮しなければならない。そのため、出生率低下と人口移動のみを言い立て、「消滅の危機」「絶望的」と煽るのは感心しない。

 しかし、「東京と地方のあり方を見直し、人口の社会移動の構造を根本から変える必要がある」というのは賛成で、もうやり始めるべき時である。それには「若者の地方から東京への流出を抑える」「高齢者の東京から地方への移住を促す」等が書かれており、それも一理あるが、生物学や工学を使って農林漁業を高付加価値でスマートな産業にすれば、*4のように、大都市で生まれ育った若者が自然豊かな地方に移住して農林漁業に従事することも十分にありうる。また、「住民が高齢化して運転できなくなる」としているのも、自動車が自動制御装置を標準装備すればかなり解決でき、そういう車は世界でもヒット商品になると思うので、イノベーションを重視すべきだ。

*3:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20140403&ng=DGKDZO69267240S4A400C1KE8000 (日経新聞経済教室 2014.4.3) 
地方戦略都市に資源集中、増田寛也 元総務相・前岩手県知事
〈ポイント〉
  ○人口減は東京集中と地方消滅が同時に進行
  ○地域の戦略都市は研究機能高め雇用を創出
  ○東京は国際化や高齢者の地方移住も検討を
 日本は2008年をピークに人口減少に転じた。推計では48年に1億人、2100年には5000万人を下回る。人口減少は容易には止まらない。合計特殊出生率は05年以降反転し、12年は1.41まで回復したが、出生数は前年より1万3000人減少した。子どもを産む女性の人数が減ったからだ。鍵を握るのは人口の再生産力をもつ20~39歳の若年女性人口で、9割以上の子どもがこの年齢層から生まれる。第2次ベビーブーム世代(1971~74年生まれ)は外れつつあり、それ以下の世代の人数は急減する。仮に30年に出生率が人口減少を食い止めるのに必要とされる2.1になっても、出生数の減少が止まるのは90年ごろとなる。日本特有の人口移動がこれを加速する。高度成長期やバブル経済期、地方から大都市圏へ大規模な人口移動があった。東京圏は現在も流入が止まっていない。政治・経済・文化の中心として集積効果が極めて高く、首都直下地震のリスクが叫ばれつつも全国から若者が集まり続ける。実に国全体の3割、3700万人が東京一極に集中している。先進各国では大都市への人口流入は収束しており、日本だけの現象だ。どの国も人口が密集する大都市圏の出生率は低く、東京都も1.09と全国最下位である。一極集中が人口減少を加速している。問題は、さらなる大規模な人口移動が起こる可能性が高いことだ。若年層が流出し続けた地方は人口の再生産力を失い、大都市圏より早く高齢化した。今後は高齢者が減り、人口減少が一気に進む。一方、大都市圏は流入した人口がこれから高齢化していく。特に東京圏は40年までに横浜市の人口に匹敵する388万人の高齢者が増え、高齢化率35%の超高齢社会となる。15~64歳の生産年齢人口の割合は6割に低下し、医療や介護サービスの供給不足は「深刻」を通り越し「絶望的」な状況になる。地方から医療介護の人材が大量に東京に引っ張られる可能性が高い。日本の人口減少は東京への人口集中と地方の人口消滅が同時に進む。都市部への人口集中が成長を高めると言われる。短期的には正しいが、長期的には逆だ。高齢者減少と若者流出という2つの要因で人口減少が進み、一定の規模を維持できなくなった地方は必要な生活関連サービスを維持できず消滅していく。東京は当面は人口シェアを高めていくが、やがて地方から人口供給が途絶えたとき、東京もまた消滅することになる。筆者は経営者や学識者有志とともに、国立社会保障・人口問題研究所の「日本の地域別将来推計人口(13年3月推計)」を用いて国土全体を俯瞰し、地域ごとの将来像を推計してみた。現在の出生率が続いた場合、若年女性人口が30年後(40年)に半減する地域は、出生率が2.1に回復しても流出によるマイナス効果が上回り、人口減少が止まらなくなる。このうち一定規模の人口(1万人を想定)を維持できない市町村は「消滅可能性」が高い。結果は人口移動が収束する場合、消滅の可能性が高い市町村は243(全体の13.5%)に対し、人口移動が収束しない場合は523(29.1%)と大幅に増えることがわかった。北海道、青森、山形、和歌山、鳥取、島根、高知の7道県ではこうした市町村の割合が5割を超える。
 東京と地方のあり方を見直し、人口の社会移動の構造を根本から変える必要がある。若者の東京流出を抑え、東京の高齢者の地方移住を促す。地方では生活関連サービス機能の維持に向け、郊外の高齢者の中心地移住を促進する。国土全体を俯瞰し、地域ブロックごとに戦略的拠点都市を絞り込み、バラマキではなく集中的に投資することが必要になる。「国土の均衡ある発展」でも「多極分散型国土形成」でもなく、地域の特徴を踏まえた戦略的開発とネットワーク化を通して日本全体の総合力を向上していく。若者の社会移動対策で必要なのは産業政策の立て直しである。戦略的拠点都市を中心に雇用の場をつくり、若者を踏みとどまらせる「ダム」とする。東京は労働や土地などの生産コストが高く日本の高コスト体質を生んでいる。上場企業の5割が本社を首都に置くような国は日本だけであり、変える必要がある。地方の産業政策としては円高による空洞化を経験した現在、工場誘致には限界がある。若者の高学歴化も視野に、時間はかかっても産業の芽となる研究開発機能の創出に取り組むことが必要だ。政策の一環に人材供給やイノベーション(技術革新)の基盤である地方大学の機能強化を組み込み、インフラなど環境整備と連携させていく。地元で学び、地元で働く「人材の循環」を地域に生み出す。農業の立て直しも重要だ。先の推計でも農業振興に成功した秋田県大潟村は消滅を免れる結果となった。職業として農業を志向する若者は増えている。東日本大震災を契機に地元に戻り、IT(情報技術)を生かした農業を始めたり、総務省の「地域おこし協力隊制度」で地方に移住して大学院出のキャリアを生かして地域活性化に貢献したりする事例が各地でみられる。こういう意欲ある若者が活躍できる社会に変えることが、これからの政策の中心となる。地方の高齢者対策では生活関連サービスの多機能集約化が必要である。地域ブロックごとに医療介護の戦略拠点をつくり、そこを中心に多様なサービス機能を集約する。直近10年、地方の雇用を支えたのは高齢者の増加に合わせて拡大した医療介護だったが、高齢者が減っていけば広域で医療介護を支えることは難しくなる。若者の雇用を守るためにも医療介護機能を集約し、高齢者を誘導して街全体のコンパクトシティー化を進める必要がある。問題となるのが、自動車での移動を前提に開発された郊外宅地だ。住民が高齢化して運転できなくなり、生活困難者となる可能性がある。中心地への移住を希望しても、不動産に買い手がつかないケースもある。コミュニティーバスなどでの支援も考えられるが、対象区域が拡大していけば、やがて難しくなるだろう。農地中間管理機構の住宅版として郊外住宅地管理機構のようなものをつくって住宅地を借り上げ、若者に安価に提供するような施策を検討する必要がある。一方、東京は世界の金融センターとして国際競争力を高め、グローバルに高度人材が集う国際都市にしていくことが望ましい。大学の国際化や企業の雇用多様化をもっと大胆に進めていく必要がある。国際機関の本部機能の誘致も重要だ。現在、日本には約40の国際機関事務所があるが、多くは欧米に本部を持つ機関のブランチにすぎない。超高齢化への対策も必要だ。医療介護人材の育成に全力を挙げないと東京はいずれ立ち行かなくなる。地方で余る介護施設の活用を視野に高齢者の地方移住の促進も真剣に取り組むべきだろう。地方の医療介護を中心としたコンパクトシティー化に東京も関わり、東京の高齢者の受け皿としていくべきだ。老後もできる限り住み慣れた土地で過ごしたいと考える人は多い。元気なときに地方にセカンドハウスを持つことを支援するような施策も必要となる。人口が減れば、国民1人当たりの土地や社会資本は増える。これをいかに有効活用できるかが、これからの日本の豊かさを左右する。国には都市や農地といった行政区分を超え、国家戦略として国土利用のグランドデザインをつくり直すことを強く求めたい。
*ますだ・ひろや 51年生まれ。東京大法卒、旧建設省へ。野村総合研究所顧問


PS(2014.5.13追加):今から50年後であれば、*4のように人口減少で労働力が足りなくなることを心配する前に、まず、働きたい人が悪すぎる労働条件でなく働き、一人一人の国民が豊かに暮らせるようにすべきである。そうでなければ、成長あって豊かさなし、国民不在の政治だ。

*4:http://www.saga-s.co.jp/news/global/corenews.0.2678418.article.html
(佐賀新聞 2014年5月13日) 50年後に1億人維持 / 政府が初の人口目標、調査会提言
 政府の経済財政諮問会議の下に設置された専門調査会は13日、日本経済の持続的な成長に向けた課題をまとめた中間整理案を公表した。出生率を高めるため子どもを生み育てる環境を整え、「50年後に人口1億人程度の維持を目指す」との目標を盛り込んだ。政府が人口に関して明確な数値目標を打ち出すのは初めて。日本の人口は出生率が回復しない場合、現在の約1億2700万人から2060年には約8700万人まで減少する見通し。人口減少で労働力が足りなくなると国の経済成長や財政に大きく影響するため、維持に向けた対策は急務となっている。


PS(2014年5月18日追加):*5のように、公的年金が契約通り支払われても、老後になってからの経済的な備えが足りないと感じている人は66・9%に上り、「生活費を得たい」というのが主な理由で65歳を超えても働きたい人が約76%いる。これは、65歳以上の“老後”が長くなった現在では自然なことであり、定年退職年齢を設けない、もしくは定年退職年齢を設けても最低70歳にするなど、雇用の方からの対応が求められる。

*5:http://www.saga-s.co.jp/news/national/10201/64577
(佐賀新聞 2014年5月18日) 「老後の備え不足」67%
 35~64歳を対象にした内閣府の調査で、老後になってからの経済的な備えが足りないと感じている人が66・9%に上ることが17日、分かった。現役世代が公的年金や、貯蓄・退職金の取り崩しだけでは老後の暮らしに不安を抱いている実情が浮き彫りになった。65歳を超えても働くことを希望する人は約半数に上った。調査結果は6月に閣議決定する高齢社会白書に盛り込まれる。調査は昨年11~12月に約6千人を対象に実施。老後の経済的な備えについては「かなり足りない」が50・4%、「少し足りない」が16・5%で、両方を合計した「足りない」は66・9%。5歳ごとに分析すると、「足りない」は40~44歳が74・4%で最も多く、年代が上がるにつれて下がる。一方、「十分だ」と答えた人はわずか1・6%。「最低限はある」の21・7%と合わせると計23・3%だった。老後に生計を支える収入源を三つまでの複数回答で尋ねたところ、「厚生年金などの公的年金」の82・8%が最多で、「貯蓄や退職金の取り崩し」46・2%と「自分か配偶者の給与収入」45・6%が続いた。「子どもなどからの援助や仕送り」「親族からの相続」はいずれも4・0%だった。必要と思う貯蓄額は2千万円(19・7%)、1千万円(19・5%)、3千万円(19・1%)となり、ほぼ同じ割合で並んだ。何歳まで働きたいかについては、「65歳ぐらい」が31・4%。65歳を超えても働くことを希望する人は50・4%で、このうち「働けるうちはいつまでも」が25・7%だった。60歳以降も働きたい理由(三つまでの複数回答)は「生活費を得たいから」が76・7%で圧倒的に多く、「自由に使えるお金が欲しい」の41・4%が続いた。厚生労働省によると、日本人の平均寿命は、2012年には女性86・41歳、男性79・94歳だった。60年には女性90・93歳、男性84・19歳になると推計されている。

| 年金・社会保障::2013.8~ | 02:58 AM | comments (x) | trackback (x) |
2014.5.3 ロボット掃除機の普及には、ロボット掃除機対応の家具や家も必要であること
    
     ルンバ              その他のロボット掃除機

 今日は、簡単な話題です。

(1)ロボット掃除機の市場は確実に拡大する
 福島第一原発事故以降、自宅の放射線測定値が高かったので、私も、*1に書かれているアイロボットのルンバを購入して使っている。その理由は、自動的に動いて床のカーペットをかきわけ、徹底的にゴミを吸い出してくれるからで、心配していた隅のゴミも、ハケ状のブラシのおかげで普通の掃除機よりよく採れた。そして、そのハケ状のブラシは取り外し可能だ。
 
 しかし、下のように、今ひとつ改良して欲しい点がある。
  1)あちこち走り回ってゴミを掻き出すのはよいが、掻き出したゴミの吸い込み漏れがあるため、
   普通の掃除機で、再度掃除しなければならない。そのため、掻き出したゴミは自分で完全に
   吸い取るようにしてもらいたい。
  2)走り回っている割には掃除残しがあるため、掃除残しがないようにプログラムして欲しい。
  3)掃除中、アプライトピアノに何度もぶつかってピアノが傷んだが、家具などにさわる時は
   もっと柔らかく接するようにして欲しい。

 日本企業は上のような細かい改良が得意であるため、日本の家電会社も頑張れば、*2のように、単身世帯・共働き世帯・高齢者世帯の増加で家事代行の需要が増えている中、ロボットにできることはロボットにさせた方が家事の生産性が上がるため、世界でヒットする新しい家電を作ることができると思う。

(2)掃除をロボット化するための家具と部屋のつくり
 掃除ロボットが掃除しやすい家や家具もあり、例えば、家具の床から上がっている部分(パソコンラック、ベッド、ピアノなど)は、もう少し高く上げて掃除ロボットが入れるようにするか、床にぴったりつけてゴミが溜まりにくいようにして欲しい。また、家も、細かい凹凸がなく、床はバリアフリーの方がよい。

 つまり、家具や家のつくりも、「お掃除ロボット対応」にすべきで、今後は、そういう家具や家の方が売れるだろう。また、お掃除ロボットの側も、もう少し薄くて小さければ、入れる家具の隙間が増え、普通の掃除機より優秀なパートナーになれるかもしれない。

*1:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20140416&ng=DGKDZO69927760W4A410C1TJH000 (日経新聞 2014.4.16) ロボット掃除機、アイロボットVSシャープ
 しゃがむ、かがむ、動かす、収納場所から出し入れする――。掃除機をかけるときは人手に頼る部分が多く、苦手な家事の筆頭に挙げる人も多い。助っ人として売り上げを伸ばしているのが、自ら動いて部屋をきれいにするロボット掃除機だ。草分けで最大手の米アイロボットと、独自の利用者とのコミュニケーション機能を打ち出すシャープの新製品を比べた。両製品はセンサーで部屋の広さや形状、汚れ具合などを検知し最適な動作を選ぶ。充電器につないだ状態からボタンを押して掃除を始める利用法を主に想定している。掃除を終えると自動的に充電器に戻る。アイロボットの「ルンバ880」は吸引力が前機種の5倍。モーターの駆動力を高めたことに加え、ごみをかきこむヘッド部分からハケ状のブラシをなくして強い空気の流れを作り出した。毛の長いじゅうたんにもしっかり対応でき、1回に吸い取るごみの量は前機種の1.5倍、集じん容積は1.6倍に増やした。
■2センチの段差乗り越え
 家具や壁際に接触して丹念に掃除する。ぶつかる前にはセンサーによって自動的に速度を落として衝撃を和らげる。約2センチメートルまでの段差なら乗り越えられるので、フローリングの床にラグを敷いた部屋でも使える。下向きの大きな段差を感知すると、ルートを変更して落下を避ける仕組みだ。付属の通信機器を部屋の境界に置いて部屋別の仕上がりにムラが出ないよう抑える機能も備えた。「隣の部屋に入らない」など、掃除する範囲の設定もできる。手入れもしやすく工夫した。ヘッド部分のローラーはハケ状のブラシを無くしたため、髪の毛などを取り除きやすい。フィルターの手入れをする際に手にちりなどが付きにくい。シャープの「ココロボRX―V200」はフローリングや畳など床の種類に応じて運転を調節する。衝突で傷付けることを防ぐため、センサーを使って壁や家具と接触しないようにする。「おまかせ」以外に壁際を重点的に掃除するモードも用意した。椅子の脚の間をすり抜けやすいよう、直径を約30センチメートルと小ぶりにした。このモデルの最大の特徴は、人工知能を搭載して音声認識機能による「対話」を可能にした点。掃除と関係ないことでも「天気を教えて」と呼びかけると、ネット上の情報倉庫であるクラウドを使って「今日の天気は雨だよ。おでかけには傘を持っていったほうがいいよ」などと答える。
■スマホで遠隔操作
 「きれいにして」と指示すると「分かった」と答えて掃除を始めたり、「調子はどう?」と問いかけると充電量などに応じて「まあまあかな」と返答したりする。応答パターンは前機種の2倍以上の114に増やした。スマートフォン(スマホ)をリモコン代わりにして遠隔操作できる。さらにスマホとこの掃除機を介して、外出先から自宅にあるテレビやエアコン、発光ダイオード(LED)照明、加湿空気清浄機などの電源を入れられる。対応する機器は従来のココロボはシャープ製品に限られていたが、RX―V200は赤外線通信機能があれば他社製品にも対応する。

*2:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20140425&ng=DGKDZO70376490V20C14A4TI0000 (日経新聞 2014.4.25) 1000億円市場 単身に需要
 掃除や洗濯など家庭の主婦が担ってきた家事を外注する動きが広がっている。働く女性の増加を背景に家事代行サービスの市場は年率20%増のペースで成長。2013年度は1000億円の大台を突破したもようだ。「お願いするのは風呂やトイレなど水回りの掃除や冷蔵庫の整理。まるで別の部屋のようになるので(帰宅して玄関を開けると)疲れまで消える感じがする」。アパレル勤務の井上さおりさん(仮名、29)が使うのはベアーズ(東京・中央)の単身者向けプランだ。料金は1回90分で5658円。布団干しや室内の空気の入れ替えといった「不在にする日中だからこそできるメニューを選ぶ人が多い」(ベアーズ)という。家事代行の利用者は変化している。ベアーズでは数年前まで共働き世帯が7~8割を占めていたが、今では5割以下。代わって単身者が約2割を占める。働き盛りの独身者だけではない。進学や就職で一人暮らしを始めた子供を心配して「地方に住む親から依頼される例も目立つ」。矢野経済研究所(東京・中野)によると12年度の家事代行市場は前年度比21%増の980億円。新規参入もあり市場の成長ペースは上がっている。野村総合研究所は市場の潜在需要は5000億円規模と試算する。「家事代行は(富裕層が使う)ぜいたくなサービスや嗜好品ではなくなった」とベアーズの高橋ゆき専務は指摘する。実際、百貨店や家電量販店などで気軽に選べるサービスも登場している。イオン系のカジタク(東京・中央)の「家事玄人(クラウド)」は映画館を含め全国3200店で扱う。排水口の掃除やエアコンのカビ取りなど16種類のセットメニューを用意。説明書と認証用の番号を箱に詰めた。料金は一律1万2960円。来年春までに前年の約2倍にあたる延べ20万世帯の利用を見込む。箱を手に取った消費者は電話かネットで訪問時間を指定するだけ。「均一価格の安心感と見積もり不要の手軽さ」(楠見敦美取締役)が売りだ。高齢の両親にプレゼントする人も多い。既にカジタクの受注のうち約3割を贈答用が占める。

| 経済・雇用::2013.7~2014.6 | 12:12 PM | comments (x) | trackback (x) |
2014.5.2 九州電力の原発について → 当然、再稼動すべきではない (2014.5.16追加あり)
  
                     *1-1より
(1)甘い想定を重ねて成り立っている原発の“安全性”
 *1-1のように、佐賀県が進めていた玄海原発事故時の避難時間シミュレーションが公表され、30キロ圏外への避難が最長で30時間半という結果になったそうだが、これは、避難途中の食事・トイレ、保育園・学校へのお迎え、入院患者・施設入所者などの災害弱者に関しては考慮されていないとのことである。そして、専門家は、佐賀県のシミュレーションは、「単に物理的な移動時間を示しただけで、実際の避難にかかる前後の時間を考慮しておらず、想定に無理がある」と指摘している。

 なお、最大の甘さは、30km圏内の住民だけが避難すればよく、「避難した住民は、事故が収まれば、すぐに帰宅して元の生活に戻れる」と想定しているところにあり、実際には、豊かだった土地や海が半永久的に使えなくなり、住民は、そのまま避難し続けるか、どこかへ移住しなければならないのである。

(2)玄海原発の周辺自治体である伊万里市の攻防とメディアの役割
 *1-1のように、伊万里市の塚部市長は、「伊万里市は防災行政無線が整備されておらず、初動体制に不安が残る。もっと現実的な計画が示されない限り再稼働は難しい」と強調したそうだが、これは、原発周辺自治体からの具体的な問題点の指摘だ。

 また、*1-2のように、西日本新聞記者が、「塚部市長の意見は、自治体の首長として正論であり、喝采を送るのは市民ばかりではない」「伊万里市長は正論を貫くか」と書いており、私も同感である。しかし、「市長は歴史という法廷の被告人席に座らされている」かもしれないが、その歴史の法廷は原発再稼働問題だけで市長に判決を下すわけではなく、伊万里市のよりよい発展という視点から判決を下す。そして、伊万里市は、産業振興では工業化を進めており、経産省、九州経済団体、九電から有形無形の圧力がかかる可能性があるので心配だ。

 そのような中、伊万里市長が正論を通せるか否かは、西日本新聞や佐賀新聞などのメディアが、原発の危険性に関する正しい情報を報道して主権者に知らせるか否かにかかっており、これが民主主義社会におけるメディアの役割であって、既存の権力や広告料に弱いメディアでは民主主義は守れない。

(3)そのほかも甘い想定ばかりである
 *2-1では、九州工業大学原子核物理学の岡本名誉教授が、「九電は、炉心溶融は起きえないと本心では考えているのではないか」と指摘するように、原発の過酷事故対策は甘い。

 また、*2-2のように、地震・津波という自然現象についても、九州大学地球科学カーボンニュートラル・エネルギー国際研究所の辻健准教授らのグループが、「南海トラフ地震の発生源とされる巨大断層が、従来の想定より約30キロ沖まで延びている」とする調査結果をまとめており、これまでの巨大断層の想定が過小だったことがわかる。

 さらに、*2-3のように、「脱原発をめざす首長会議」は、原子力規制委が審査を進めている九電川内原発1、2号機の再稼働反対や避難計画の問題点などを訴える決議を採択し、川内原発については、巨大噴火の被害を受ける恐れを指摘するとともに、原発の新規制基準についても、コアキャッチャーを義務付けておらず「世界一厳しい基準とは言えない」と批判しており、事故時の避難計画に関しては、「避難者の受け入れ計画とセットでなければ円滑な避難はできない」としており、もっともである。

(4)川内原発の周辺地域も頑張らないと
 *3のように、九電は4月30日に川内原発1、2号機(鹿児島県薩摩川内市)再稼働の前提となる審査の申請書類について、原子力規制委員会の指摘を反映した内容に作り直して再提出したそうだ。過酷事故対策として格納容器内の水位を正確に測るための水位計増設に取り組むそうだが、このような子ども騙しの対策で過酷事故が防げると思っているのだろうか。

 川内原発周辺の鹿児島、宮崎、熊本各県は、豊かな自然と農林漁業を有する日本の南の食糧庫であり、天孫降臨伝説のある高千穂の近くでもある。原発で発電することと、これらの資産を守ることのどちらが大切かは、再度書くまでもないだろう。

*1-1:http://www.saga-s.co.jp/news/saga.0.2672991.article.html
(佐賀新聞 2014年5月1日) 原発の避難時間推計 患者搬送に不安の声
 玄海原発の事故時の大渋滞を想定し、佐賀県が作業を進めていた避難時間シミュレーションがようやく公表された。30キロ圏外への避難が最長で30時間半という結果に、住民からは「想像以上」の声が上がる一方、長時間に及ぶ患者搬送などの課題も浮上している。県試算の“最悪”ケースは、原発に近い場所ほど周辺部の渋滞で逃げ遅れるという想定で、5キロ圏内から30キロ圏外に出るまで30時間半。玄海町内の自営業男性(67)は「避難するのに1日ほどかかるのは覚悟していたが、予想以上。別の避難道を造るなどして1時間でも早く避難する方法を考えて」と訴えた。原発から十数キロ離れた唐津市中心部でも16時間かかるとみられ、七山経由で神埼市に避難することになる女性(61)は「避難に半日かかれば、食事やトイレの問題も出てくる。学校へのお迎えで混雑するだろうし、交通誘導をよほどうまくやらないと、もっと時間がかかる」と指摘した。シミュレーションは地域ごとの推計を出しておらず、自治体の詳細な分析はこれから。唐津市は西九州自動車道を使った福岡県経由の避難で、県内の渋滞が緩和できることに着目。岡本憲幸総務部長は「福岡方面への避難が早いことがシミュレーションでも証明された。秋の訓練までには避難ルートや避難場所の見直し作業を終え、市民に周知できれば」と語った。ただ、入院患者や施設入所者など“災害弱者”対策となると、5キロ圏内のみで、5~30キロ圏は示されていない。伊万里市の山元記念病院の山元章生理事長は「患者の状態が避難中に悪化することもある。要支援者を避難させるには、もっと細かな想定が必要で、医療関係者も交えて避難シミュレーションを考えるべきだ」と県に注文をつけた。昨秋の予定が半年遅れての結果公表。国の原発安全審査が最終段階に近づくなか、再稼働の“条件整備”という見方も少なくない。玄海町の岸本英雄町長は「避難時間は想定の範囲内」とした上で、「安全対策工事も進んでおり、推計結果は直接、再稼働に影響するものではない。避難計画の精度を高める材料に生かしたい」と受け止めた。一方、市民の30キロ圏外避難が、基本ケースで7時間以内という結果が出た伊万里市の塚部芳和市長は「本当にそうなら一安心だが、大丈夫だろうかという思いが強い」と語り、玄海原発の再稼働について「伊万里市は防災行政無線が整備されておらず、初動体制に不安が残る。もっと現実的な計画が示されない限り再稼働は難しい」と強調した。玄海原発の廃炉を求め提訴している市民団体の石丸初美代表は「そもそも避難先の受け入れ態勢を含め、防災計画は不備だらけ。避難時間の予測自体できるわけがない」と厳しく批判した。
■「想定に無理ある」 専門家指摘 準備時間考慮されず
 玄海など国内全原発の住民の避難時間を独自試算している民間団体「環境経済研究所」(東京都)の上岡直見代表は、県のシミュレーションを「物理的な移動時間を示しただけで、実際の避難にかかる前後の時間を考慮していない」と不十分さを指摘する。3月に原子力規制庁と統合した原子力安全基盤機構による避難時間の定義は、「避難準備時間」「移動時間」「避難完了確認時間」の総和になっている。しかし、県のシミュレーションは、避難指示までに避難準備が整い、指示と同時に移動を開始したと想定。「実際に大事故が起きたときにそのようなスムーズな行動ができるのか。想定として無理がある」と疑問を呈す。これに対し、県消防防災課は「現実的には準備できない人もいるだろうが、準備時間については事故のケースによって大きく変わるので想定は難しい」とし、円滑な避難準備ができるようになるため、今後広報や訓練を通じて体制の充実を図るとしている。上岡さんは「住民の被ばくの可能性について全く触れないなどほかにも問題点はあるのに、県は安全に避難できることが確認できたと言っている。現時点でそこまで言う立地自治体はほかに聞いたことがない」と話した。

*1-2:http://qbiz.jp/article/36891/1/
(西日本新聞 2014年5月2日) 伊万里市長は正論を貫くか
 前任地という縁もあり、佐賀県伊万里市の動向が気になっている。玄海原発(佐賀県玄海町)から最短で12キロ。市は九州電力との原子力安全協定に原発立地自治体並みの権限である「事前了解」を盛り込むよう求めているが、九電側が難色を示しており、原発30キロ圏の自治体で唯一、九電と協定を結んでいない。塚部芳和市長は昨年3月、本紙のインタビューにこう語っている。「福島第1原発事故で、私の意識は大きく変わりました。放射性物質は広範囲に拡散し、事故が立地自治体だけの問題ではないことが分かりました。玄海原発で事故が起きると、とんでもないことになる。市民の生命、財産を守る首長として、危機意識を強く持つようになりました」。
 自治体の首長の意見としては正論であり、喝采を送るのは市民ばかりではあるまい。だが、一方の九電は伊万里市との協定に立地自治体並みの権限を盛り込むのは難しいとの立場。県と玄海町に限っている「地元」の範囲を広げると原発再稼働がやりにくくなる上、唐津市などと既に締結している協定との整合性がとれなくなるためとみられる。原子力規制委員会が玄海原発3、4号についても再稼働の前提となる審査を進める中、このまま両者の協議が平行線をたどるとどうなるか。2基が審査に合格したとしても九電は、伊万里市と協定を結ばないまま再稼働に踏み切れるだろうか。再稼働の地元了解プロセスは国が明示していないが、九電にとって難しい判断になるのは間違いない。再稼働を強行すれば、伊万里市内外から「乱暴なやり方だ」といった批判が集まることが想定される。
 北海道函館市は4月、電源開発(Jパワー)が青森県大間町に建設中の大間原発の建設中止を求めて提訴に踏み切った。伊万里市が同様の行動に出る可能性も否定はできない。
 一刻も早く原発再稼働を実現させたい九電としては協議の“落としどころ”を見いだしたい。しかし、4月に4選を果たしたばかりの塚部氏にも、譲歩の余地は少ない。思い起こされるのは昨年12月、協定について「交付金を取るための駆け引きの道具」と発言し、謝罪に追い込まれた経緯。仮に九電側からカネを引き出す形で事態を収束しようとすれば、市長も九電も「市民の安全をカネに代えるのか」といった批判は免れない。「市長は常に歴史という法廷の被告人席に座らされている」。かつて、原発とは関係のない、ある問題で重要な決断を迫られたときの塚部市長の言葉だ。今回の問題は原発再稼働に絡むだけに、さまざまな角度から有形無形の圧力がかかることも想像に難くない。歴史の判決を受けるべく、市長が正論をどこまで貫き通すか注目している。

*2-1:http://qbiz.jp/article/36615/1/ (西日本新聞 2014年4月27日) 
原発過酷事故備え万全か 懸念残る九電シナリオ 溶融物冷却できるか
 原発の過酷事故対策が不十分ではないか−。専門家から、そんな疑問の声が上がっている。事故で冷却機能が失われ、原子炉内の核燃料が溶融し、炉を覆う格納容器を破壊して大量の放射性物質を放出させる「過酷事故」。安倍政権は原子力規制委員会の新規制基準を「世界一」と強調するが、世界ではそれを上回る安全性を整えた新設炉が建設されている。新基準では、格納容器内の圧力が高まった際、爆発を避けるため、放射性物質を含む気体を外部に排出させるベント(排出口)と呼ばれる最終手段も、九州電力などの加圧水型軽水炉(PWR)では設置の先送りが認められた。「コアキャッチャーの設置は求められていなかった。(略)。格納容器の圧が高まっていた。溶け出した核燃料が圧力容器(原子炉)を破壊し、格納容器のコンクリートと反応し、大量の水素と一酸化炭素が発生している証左であった。ベントを行うしかなかった…」。現役国家公務員が「若杉冽(れつ)」のペンネームで原発政策の問題点を告発した小説「原発ホワイトアウト」終盤の一節。東京電力福島第1原発事故後の新規制基準と電力会社の対応がなお不十分で、過酷事故に見舞われるという設定だ。小説に出たコアキャッチャーとは、原子炉から溶け出した3千度弱の炉心溶融物を受け止め、近接する貯留部に誘導して冷やすなどする設備だ。フランスのアレバ社は、フィンランドや中国、フランスで建設中の次世代原子炉(欧州加圧水型炉)に設ける。ホワイトアウトが指摘した、溶融物とコンクリートとの反応で、容器を爆発させるような事態を回避するためだ。だが規制委の新規制基準にコアキャッチャーの設置義務はない。では、九電などPWR保有各社の対策はどのようなものか−。規制委の審査で九電は、配管の破断で原子炉に冷却水が送れず、電源も失われた過酷事故対策を説明してきた。何とか移動式発電機をつないで格納容器への注入を再開するなどし、原子炉下のキャビティーと呼ばれるスペースに水をため、落下する溶融物を徐々に冷やすシナリオだ。この対策に、疑問の声が出ている。「溶融物がキャビティーに徐々に落ちると、水中で小さい粒になる。粒は膜に覆われ熱を保ち続け、膜が何かのきっかけで連鎖的に破け始めると、最も破壊力がある水蒸気爆発につながる可能性がある」。元燃焼炉設計技術者の中西正之さん(70)=福岡県水巻町=はこう指摘する。一方、水をためなければ「ホワイトアウト」の展開通り、コンクリート反応で水素や一酸化炭素が発生するリスクが高まるという。燃料溶融で発生する水素で建屋が爆発したとされる福島原発3号機。ただ、国会事故調の報告書では、爆発直前にオレンジ色の閃光(せんこう)が確認されたことに触れ「一酸化炭素の不完全燃焼と推論すると理解しやすい」と、複合要因の可能性を指摘している。キャビティーに水をためれば水蒸気爆発、水をためないとコンクリートと反応し一酸化炭素などによる爆発の懸念が残る。九州工業大の岡本良治名誉教授(原子核物理学)は「格納容器の爆発を防ぐには最終的にはベントで放射性物質を外に逃がして減圧するしかない」と説明。ただ、格納容器が大きいPWRは、気体の密度が高まりづらく爆発の危険性が比較的低いとして、ベント設置は5年間猶予された。「九電は、炉心溶融は起きえないと本心では考えているのではないか」。岡本名誉教授は指摘する。東電は、柏崎刈羽原発を抱える新潟県からの「コアキャッチャーを設置しないのか」との質問に、「格納容器下部に耐熱材を敷設するなど、浸食を軽減させるさらなる安全性向上策を検討中」と、新基準を上回る独自の追加対策を示唆している。

*2-2:http://qbiz.jp/article/36702/1/
(西日本新聞 2014年4月29日) 南海トラフ断層、30キロ長かった 九大グループが構造解明
 九州大カーボンニュートラル・エネルギー国際研究所の辻健准教授(地球科学)らのグループは、南海トラフ地震の発生源とされる巨大断層が、従来の想定より約30キロ沖まで延びているとする調査結果をまとめた。辻准教授によると、この断層の構造が解明されるのは初めて。国際学術誌「アース・アンド・プラネタリー・サイエンス・レターズ」(電子版)に発表した。辻准教授によると、調査は1944年の東南海地震の震源となった紀伊半島沖で実施。沖合約100キロの南海トラフ付近から日本列島方向へ約60キロの線上で、海上から海底に向けて音波を発信して断層の亀裂内の水圧を調べた。亀裂内の水圧が高い箇所ほど活発に動くと考えられており、高水圧が連続する巨大断層とみられる層を確認。従来、地震を引き起こす巨大断層は陸側から南海トラフの手前約30キロにかけて延びていると考えられていたが、南海トラフ付近までつながっていることが分かったという。周辺の断層群は巨大断層から分岐したものと考えられるという。辻准教授は「地震発生前は断層内の水圧の数値が変化する可能性が高く、継続して水圧を調べることで地震や津波が予測できる可能性がある」としている。南海トラフは東海沖から九州沖の海底にある深さ約4千メートルの細長い溝状の地形。政府はマグニチュード9の巨大地震が発生した場合、津波などで最大33万人以上が死亡するとの想定を発表している。

*2-3:http://qbiz.jp/article/36616/1/
(西日本新聞 2014年4月27日) 川内再稼働に反対 脱原発首長会が決議 火山リスク問題視 
 鹿児島、佐賀など39都道府県の現職の市町村長やOBなどでつくる「脱原発をめざす首長会議」(94人)は26日、神奈川県小田原市で総会を開き=写真、原子力規制委員会が優先的に審査を進めている九州電力川内原発1、2号機(鹿児島県薩摩川内市)の再稼働反対や避難計画の問題点などを訴える決議を採択した。再稼働に反対する川内原発については、巨大噴火の被害を受ける恐れがあると指摘。東京電力福島第1原発の事故を受けた原発の新規制基準も、溶けた核燃料を受け止める設備(コアキャッチャー)を義務付けておらず、「世界一厳しい基準ではない」と批判した。事故時の避難計画に対しては、「避難者の受け入れ計画がセットでなければ、円滑な避難ができない」と主張。総会に参加した福島県双葉町の井戸川克隆前町長は、長期化する避難生活を紹介して「私たちの悲惨な経験が何も生かされていない」と訴えた。九州から加盟する9市町村長は欠席したが、玄海原発がある佐賀県玄海町民の避難先となっている同県小城市の江里口秀次市長は、取材に対し「避難が長期化した際の受け入れ態勢を市町村に求められても不可能。原発を再稼働させるのなら、国は住民の避難にも責任を持つべきだ」と話した。

*3:http://qbiz.jp/article/36856/1/
(西日本新聞 2014年5月1日) 川内再稼働、九電が申請書再提出
 九州電力は30日、川内原発1、2号機(鹿児島県薩摩川内市)の再稼働の前提となる審査の申請書類について、原子力規制委員会の指摘を反映した内容に作り直して再提出(補正申請)した。最大規模の揺れ(基準地震動)や最大規模の津波の想定(基準津波)を厳しく見直し、安全対策を追加した。九電は基準地震動を540ガルから620ガルへ、基準津波を約3・7メートルから約5・4メートルへ引き上げたほか、津波対策として海抜15メートルの防護壁の設置を追加。格納容器内の水位を正確に測るため水位計を増設するなど、過酷事故対策にも取り組む。全対策の工事費は約1300億円、工事終了は6月末の予定。規制委は今後、判断をまとめた審査書案を策定し、意見募集などを行う。機器の耐震評価の審査など全ての手続きが順調に進んでも、再稼働は8月以降になる見通し。


PS(2014.5.2追加):*4のような人間の不注意や操作ミスもありますが、空調設備とポンプのスイッチを間違うなどということは普通の会社でもありませんので、本当は故意ではないでしょうね。

*4:http://www.47news.jp/CN/201405/CN2014050201002093.html
(47ニュース 2014/5/2) 汚染水誤送、スイッチ間違えたか 東電福島第1原発
 東京電力福島第1原発で使う予定のないポンプが動き、移送先ではない建屋に高濃度汚染水が流入した問題で東電は2日、建屋で作業していた社員が空調設備を動かそうとした際、誤ってポンプのスイッチを入れた可能性が高いとの調査結果をまとめ、原子力規制委員会に報告した。この問題では、「プロセス主建屋」と「焼却工作建屋」の二つの建屋にあるポンプ4台が動き、本来の移送先ではない焼却工作建屋に汚染水が流入した。東電は、プロセス主建屋の水位が3月20日以降急上昇しているため、同日、ポンプ電源が入ったと推定。社員への聞き取りで、空調設備の電源を入れた社員がいたことを確認した。


PS(2014.5.16追加):*5のように、川内原発再稼働の動きがあり、九州の経済団体連合会は再稼働を要請しているが、自社を原発から遠く離れた場所に置きながら、「原発は安全だ」と称して再稼働を推進するのはエゴが過ぎる。そのため、「原発は安全だ」と主張する会社は、外部企業との関係が少ない本社管理部や経理部、工場を玄海町や薩摩川内市に移してもらいたい。玄海町(福岡市に近い)や薩摩川内市(鹿児島市に近い)及びその周辺にも住民は多くいるのであり、農林漁業を中心とする産業もある。そこに、いくつかの製造業が移転してくれば、そもそも玄海町や薩摩川内市は原発を再稼働する必要もなくなるし、現在は、原発を誘致した時代とは違って、どちらもちょっと手を入れれば便利な地域になる。

*5:http://qbiz.jp/article/37842/1/
(西日本新聞 2014年05月16日) 川内原発再稼働、9月以降か 申請書再提出は5月末に
 九州電力は15日、川内原発1、2号機(鹿児島県薩摩川内市)の再稼働の前提となる審査で、原子力規制委員会から42カ所の記載漏れを指摘された申請書類の出し直し(再補正)が5月末になる見通しを示した。審査会合で九電の中村明上席執行役員は、これまで同月末に提出するとしていた工事計画などほかの申請書類の提出について「作業的に厳しくなり、6月にずれ込む」と述べた。この影響で審査終了は7月以降になり、地元了解を取り付けて再稼働するのは9月以降になる可能性が高まった。

| 原発::2014.5~8 | 02:54 PM | comments (x) | trackback (x) |

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