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2017.1.31 東芝の7,000億円規模の原発関連損失と原子力及び再生可能エネルギーの今後について (2017年2月1日、2、13、15、17日に追加あり)

米国原子力発電のコスト 世界のエネルギー フランスのソーラーロード エチオピアの 
 2017.1.20東京新聞   コスト推移   Newsweek2017.1.17 ソーラーキオスク     

  
 南アフリカのソーラー空港 アフリカのソーラー航空機  スイス船籍のソーラー船

(図の説明:原子力発電のコストは上がり、太陽光発電のコストは規模の拡大により下がって、2016年には風力発電よりも低くなった。今後は、太陽光発電の原材料変化によるコストダウンも見込まれる中、フランスでは太陽光発電を埋め込んだ道路ができ、道路で発電できるようになった。また、アフリカでは、電線の引かれている地域が限られているため、太陽光発電等に依る分散発電には大きな意味がある。さらに、ソーラー空港・ソーラー航空機・ソーラー船は、太陽光発電の将来性の大きさを感じさせる)

(1)東芝の経営意思決定における失敗と損失 ← 原発への固執は、会社を破綻させること
 東芝は、*1-1、*1-3のように、4,800億円と見込まれていた損失額が7,000億円になりそうなため、債務超過を回避する目的で、世界シェアの高い半導体事業を分社化してつくる新会社の株式を一部売却するのだそうだ。そして、綱川社長は、*1-4のように、2017年1月27日に原発事業の海外建設工事から撤退する等の方針を表明し、「原発事業はエネルギー事業のなかで最注力としていたが変える」と強調したそうだ。

 東芝の家電や太陽光発電機器は優れているため、私は東芝の失敗とその後の「選択と集中」に関する経営意思決定を残念だと思っていたが、東芝の原発事業からの撤退が、フクイチの後にすぐ決定されていれば、損失はずっと少なかったと思う。また、東芝の主導権は50%超の株式を保有していれば確実に維持できるため、株式は金もうけ目的で会社を買って転売する投資ファンドではなく、協業することによってシナジー効果を得られる他業種の製造会社に売却すれば、前向きの効果が得られると考える。

 なお、東芝が、S&W社を275億円で買収して数千億円もの損失を出した理由について、*1-2は、東芝の子会社である米ウェスチングハウスが1年前に原発建設会社S&W社を買収し、米規制当局の安全規制強化等で建設コストが膨らんだので生じたとしている。しかし、私には、フクイチの後、世界が原発から手を引こうとしている時に、純資産額を約105億円も超える価格で原発関連会社を買収し、買収後に純資産額がマイナス数千億円に達したのは、リーダーが世界の潮流を見誤って甘い意思決定をしたからとしか思われない。さらに、ウェスチングハウスとS&W社は、今回の損失を予見した上で、原発から撤退するに当たって、日本企業の東芝に損失を負わせた可能性すらある。

 また、*1-3に、「7,000億円」という数字は、世界の4大監査法人の一つで老舗監査法人のプライスウォーターハウスクーパース(PwC)の米国事務所がウェスチングハウスに対して示した数字だと書かれているが、これが監査であり、顧問先企業の損失を冷静に把握して監査に反映させなければ、後で株主・投資家・債権者などに対して、監査法人は会社と連帯責任を負うことになるのである。

 それらの総合的な結果として、米格付け会社のスタンダード・アンド・プアーズは、東芝の格付けを「シングルBマイナス」から「トリプルCプラス」に引き下げたそうだ。

(2)フクイチとその後の状況
 フクイチでは、*2-1のように、昨年の透視調査で核燃料の大部分が原子炉圧力容器内に残っていると推定されていた2号機に、事故から約6年経ってカメラを入れて見たところ、溶けた核燃料のような塊が飛び散っている様子が見え、核燃料取り出しや廃炉の困難さがわかったのだそうだ。そして、1号機と3号機は、核燃料の大部分が原子炉圧力容器内に残ってもいないようだ。

 溶けた核燃料が原子炉の外に出た事故は、これまで旧ソ連のチェルノブイリ原発事故だけで、事故から30年経過した今でも取り出しに着手していない。東電などは、2018年度に溶けた核燃料の取り出し方法を決め、2021年にも着手するとしているが、事故から約6年経って核燃料かもしれない姿の一部を見ただけで、広がりも、量も、状態も公表していないのである。

 1~3号機を合わせて、放射性物質が大気中に放出された量については、*2-2のように、ノルウェーの研究チームが、日本政府が2011年6月に発表した推定放出量よりもずっと多いと報告している。これは、世界各地で観測された放射能データを組み合わせて、大気中の放射性物質の量と流れを推定した結果だそうだ。

 さらに、日本政府の主張とは異なり、4号機の使用済み核燃料プールからも大量のセシウム137が放出されていたと報告しており、もっと迅速に対応していれば、これほど大量の放射性物質が放出されずにすんだかもしれないと述べており、私もそのとおりだと思う。そして、原子炉から何が放出されたのかがより重要で、それには原子炉内で何が起きたのかを厳密に知らなければならないが、それがまだ明らかにされていないのである。

 なお、*2-2に、「3月14日の午後、風向きが変わって陸に向かって吹き始め、セシウム137が東北南部から中部地方にまで広がり、15日夜から16日未明にかけて雨が降った栃木県と群馬県の山間部では土壌から比較的高濃度の放射性物質が検出された」と書かれているが、埼玉県では15日夕方からぽつぽつと雨が降り、その時外出していた私の傘は、後に放射線量が非常に高いことがわかった。これは、あらかじめ予報されていれば、外出を控えたり、傘を洗ったりなどの対応ができた筈のものである。

 原発事故による放射能汚染廃棄物は、焼却しても放射性物質が空中に飛び散るためさらに問題なのだが、*2-3には、汚染牧草をすき込んで牧草の堆肥化をすると書かれている。なお、国の指定基準(1キロ当たり8000ベクレル)以下の廃棄物なら何をしてもよいのかと言えば、放射性物質は総量が重要であるため、「400ベクレル以下の牧草はすき込み、400ベクレルを超えるものも堆肥に混ぜ込むことで、ほとんど焼却しないで済む」などというのは、「放射性物質は閉じ込める」という原則的対応からかけ離れた判断なのだ。

 政府は、*2-4のように、福島の復興指針を改定し、除染費用は東電が負担するとの原則を転換して「帰還困難区域」の除染に国費を投入することを閣議決定し、同区域に5年後をめどに避難指示の解除を目指す「特定復興拠点」を設け、除染費用として2017年度予算に約300億円計上するそうだ。これは、フクイチの放射性物質への対応すら決まっていないのに、放射性物質をあまりにも甘く見た決定だ。

 さらに、*2-5のとおり、原発の廃炉費用の一部は、原発を所有しない新電力にも負担させるなどの費用負担をさせ、送電網の使用料として徴収することにしたそうだが、既存の電力会社が積立不足にした過去費用を関係のない新電力に負担させると、電力市場を歪めて市場の自由化に逆行する。それではどういう解決策があるかについては、総括原価方式で消費者の負担によって作ってきた大手電力会社の送電網を別会社化し、シナジー効果の出る会社に出資してもらい、それで得た資金を廃炉費用に充てるのがまっとうな方法だろう。

 その上、*2-6のとおり、1兆円超の資金を投じても稼働のメドが立たなかった高速炉開発を進める方針にしたそうだが、原発事故のリスクは0ではなく、一度起これば取り返しのつかない事態になることが明らかで、再生可能エネルギーの進歩も著しいため、核燃料サイクルは凍結や断念も視野に根本的に再考すべきであり、被爆国としての責任は原爆廃止へのリーダーシップを発揮することだと考える。

 なお、*2-7のように、原発の発電費用を研究してきた立命館大学の大島教授が、原発で一キロワット時の電力をつくるために必要な費用を、実際原価で13.1円と試算し、水力発電11.0円、石炭火力12.3円、LNG火力13.7円など他の発電方法よりも高いとしている。しかし、大島教授も原発と水力・火力の比較しかできていない。これは、「再生可能エネルギーは高い」という神話を信奉し続け、再生可能エネルギーの研究に水を差し続けた日本の政府・メディアの一つ一つの行動の総合的結末である。

(3)世界の再生可能エネルギーの進歩と日本の遅れ
 「太陽光発電の発電コストが石炭火力発電以下になり、長年"コスト高"というデメリットを抱えてきた太陽光発電が、近年、技術の進化と規模の経済性で、コスト競争力のある発電方式となりつつあることが明らかになった」と、*3-1に書かれている。

 太陽光発電は化石燃料を必要とせず、発電時に温室効果ガスや騒音・振動を発生させない、環境負荷の低い発電方式だが、日本では、発電設備のコストが高いと批判ばかりされ、あまり推進されなかった。

 しかし、世界経済フォーラムの報告書によると、オーストラリア、ブラジル、チリ、メキシコなどの世界30カ国以上で、太陽光発電のコストは既に石炭火力以下になったそうだ。日本では太陽光発電のデメリットばかりが強調されて普及が進まなかった結果、発電効率の改善や発電設備の廉価化が進まず、日本のシャープが世界で最初に商品化したにもかかわらず、シャープは破綻しそうになり、台湾企業に買収されて日本企業ではなくなった。これが、日本の政治やメディアの悪い点なのである。

 よい例は、2016年12月、世界で初めてフランスで完成したソーラーパネルを敷設した道路だ。道路は広い面積を持っているため発電量が多く、電気自動車の充電にも適している。また、2015年12月の国連気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)に続き、2016年4月には、インド、オーストラリア、フランス、エチオピア、ブラジルを含む25カ国が、太陽光発電に関する研究開発や普及のために1兆ドル(約114兆円)投資することで合意したとのことだ。

 世界の自然エネルギー導入量は、*3-2のように、過去数年で急速に拡大し、風力発電は5億kW、太陽光発電は3億kW近くに達したそうだ。また、導入量以上に画期的なのは、コストが劇的な低下を続け、風力発電は1kWhあたり3.0セント、太陽光発電も1kWhあたり2.42セントという水準に至り、条件に恵まれた地域の太陽光発電は、火力発電だけでなく、風力発電よりも安くなっていることである。

 「パリ協定」は、今世紀後半には世界の温室効果ガス排出量を実質的にゼロにすることを決め、そのためには、化石燃料から自然エネルギーへの全面的な転換が必要で、現在では、世界のトップ企業が、自らの企業の使う電力を率先して100%自然エネルギーに転換する「RE100」に取組んでいるそうだ。

 「RE100」には、欧米だけでなくインド・中国の企業も参加しているが、日本企業は参加しておらず、日本での自然エネルギー導入が遅れている中で、「RE100」の目標を掲げることに二の足を踏んでいる状況なのだそうだ。パリ協定が発効し脱炭素への転換が求められる中、世界規模でビジネスを展開する企業には、温室効果ガスの排出を大幅に削減すること、その取組として自然エネルギー100%をめざすことが、マーケットでのその企業の評価を左右するようなり、世界の多くのトップ企業が「RE100」に参加しているのは、この動向を熟知しているからだそうである。

 日本のエネルギー政策は、自然エネルギーの導入に消極的であるのみならず、石炭火力の大量の新増設を可能にするなど、「パリ協定」後の世界の流れに逆行している上、送電網を管理する電力会社が自然エネルギーの接続や有効利用に制限を加えるなど、自然エネルギーのコスト低下を阻む多くの障害を作っている。

 また、「ベースロード電源市場の創設」という名目で、原子力や石炭火力の利用を進める政策を経産省が導入するなど、「工業国に公害はつきものだ」「100%完全なことはあり得ない」などの誤った信念を持つリーダーの環境意識の低さと、「空気は汚してもよいが、現在の空気(それも身の廻りのみ)を読むのが最も重要」と考える人々の意識の低さが、日本の環境技術開発の妨げになってきたことは明らかだ。

<東芝の失敗と損失>
*1-1:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12767261.html (朝日新聞 2017年1月27日) 東芝、入札2月上旬にも 損失7000億円見込み 半導体分社
 米国の原発事業で巨額損失を計上する見通しとなった東芝は、半導体事業を分社化してつくる新会社の株式の一部売却に向け、売却先を決める入札を来月上旬にも実施する方針だ。今月27日に開く取締役会で分社化を正式に決め、3月末の臨時株主総会で必要な決議を得る予定だ。現時点で損失額は7千億円前後に拡大する見通しになっている。関係者によると、東芝は当初、損失額を4800億円と見込んでいたが、米国で損失額の確定作業を進める担当部署から、2千億円程度増えるとの見通しが伝えられているという。半導体の分社化では、新会社の株式の2割弱を手放す方向で調整しており、少なくとも2千億円程度の売却益を見込む。2割弱にとどめるのは、新会社が他社の持ち分法適用会社になるのを避け、東芝の主導権を維持するためとみられる。また、東芝のNAND(ナンド)型フラッシュメモリー事業は世界シェアが2割を超える。米ウエスタンデジタル(WD)のような同業大手の場合、出資比率が高くなると独占禁止法上の審査が必要になり、売却に時間がかかる恐れがある。確定作業を進めている米原発事業の損失額次第では、売却する株式の割合を増やす可能性も残る。損失額は、来月14日の昨年4~12月期決算発表と同時に公表する方針。東芝の自己資本は昨年9月末時点で約3600億円しかなく、販売が好調なフラッシュメモリーを軸とした半導体事業の分社化・株式売却が、債務超過の回避策の柱となる見込み。2017年3月期の債務超過を避けるには3月末までに売却益を得る必要があり、入札手続きを急ぐ。入札には、米WDに加え、キヤノンなどの取引先、英ペルミラ、米ベインキャピタルといった投資ファンドなど10社程度が関心を示している。27日の取締役会では、事業や資産の売却、投資の抑制などの対策も議論する見通し。上場グループ会社の株式売却を検討するほか、16年度下半期に約600億円を使う予定だったリストラを先送りするなどして支出を抑える方針。本業での利益の上ぶれなども含め、3千億円規模の損失対策を計画している。

*1-2:http://mainichi.jp/premier/business/articles/20170106/biz/00m/010/001000c
(毎日新聞 2017年1月10日) 「275億円の買収で東芝損失数千億円?」の大疑問
●「数千億円損失?」への疑問(1)
 自社の事業でいきなり「数千億円の損失の可能性」が出てきたら、どんな経営者も平静ではいられないだろう。東芝が昨年12月末に発表した子会社の米原子力大手ウェスチングハウスをめぐる問題は、綱川智・東芝社長ら経営陣にとって降って湧いたような衝撃の出来事だったに違いない。なぜ、こんな事態になったのか。問題は、1年前にウェスチングハウスが原発建設会社、S&W社を買収したことで生じた。ウェスチングハウスは、S&W社とともに、米国で電力会社2社から発注を受けて原発4基の建設を進めてきた。総額2兆円にのぼるプロジェクトで、ウェスチングハウスが原発の設計や主要機器を供給し、S&W社が実際の建設作業にあたる分担だった。4基は当初、2016年に2基、17年に1基、19年に1基というスケジュールで運転開始する予定だった。ところが米規制当局の安全規制強化などの対応で完成が遅れ、運転開始予定は19年に2基、20年に2基になった。規制強化と完成遅れで建設コストは膨らみ、ウェスチングハウスと電力会社が負担をめぐり互いに訴え合う事態になっていた。また、ウェスチングハウスとS&W社も同様にコスト負担をめぐって争っていた。
●買収先は売上高2000億円の企業
 そうしたなか、ウェスチングハウスは15年12月、S&W社を買収した。買収額は2億2900万ドル(当時の為替レートで約275億円)。S&W社の年間売上高は約2000億円。ウェスチングハウスはこの規模の企業を、少額で買収したことになる。ウェスチングハウスは、買収でS&W社との争いについて双方が取り下げ、同時に電力会社との訴訟や争いについても取り下げることで和解に達したと説明した。買収時のS&W社の純資産の査定額は公表されていないが、1億4200万ドル(約170億円)だったと推定される。東芝とウェスチングハウスは、買収額から純資産額を引いた8700万ドル(約105億円)を「のれん」として資産に計上することになった。のれんの資産計上は、S&W社が将来、利益を上げることを前提にしている。ところがそこに大きな落とし穴があった。純資産額が170億円どころか、マイナス数千億円にのぼる可能性が出てきたというのだ。これは次の事情による。
●新たな下請け会社の見積もり
 ウェスチングハウスは買収後、新たに別の米大手エンジニアリング会社を原発建設の下請け会社として現地で工事にあたらせることにした。S&W社の建設作業者は、この下請け会社に移管されることになった。下請け会社は改めて完成までの建設コストの見積もりを行った。そして10月にウェスチングハウスに見積もりの結果を提出した。ウェスチングハウスが精査したところ、それまで想定していた建設コストを大幅に上回ったというのだ。膨らんだ建設コストを前提にすると、S&W社の収支はこの先、大幅に悪化する。この結果、純資産額が、数千億円のマイナスになる可能性が出てきたというのだ。米国での原発事業で数千億円規模の損失が出る可能性があるとして、膨らんだ建設コストのリスクをなぜ、ウェスチングハウスがすべて背負うことになったのか。買収時にS&W社や電力会社との争いを取り下げたことに問題はなかったのか。買収契約に危険を回避する項目を盛り込むことは考えなかったのか。さまざまな疑問が湧いてくる。その疑問の先に生じてくるのは、ウェスチングハウスは本当に今回のリスクを予見できなかったのかという問いだ。そして「数千億円の損失リスク」は、S&W社固有の問題ではなく、原発新設プロジェクトでウェスチングハウス自身が抱えてきたリスクではないのか、という根本の疑問である。

*1-3:http://mainichi.jp/premier/business/articles/20170125/biz/00m/010/017000c (毎日新聞 2017年1月27日) 「東芝7000億円損失」で銀行・取引先に広がる疑心
●半導体事業の入札(1)
 東芝問題が激しく動いている。大手各紙は1月中旬、東芝の子会社である米ウェスチングハウスの原発事業で生じる損失の規模について「最大7000億円」という記事を一斉に報道した。さらに、毎日新聞は1月26日、損失額が「6800億円程度」と詳細な数字を報じた。一方、東芝の主力事業である半導体部門を分社化し、株式の2割弱を売却する方向で入札の手続きが始まったことも各紙で報じられた。いったい東芝に何が起きているのか。損失の規模について「最大7000億円」とされた点について、まず解説しよう。東芝は昨年12月末に、ウェスチングハウスが進めている米国の原子力発電所建設で追加コストが発生し、数千億円の損失が生じる可能性があると発表した。1月に入って、「損失額は4000億~5000億円」という情報が流れた。さらに1月19日に「最大7000億円」という記事が出たのだ。
●「7000億円」は米会計事務所が示した数字!?
 4000億円から7000億円まで大きな開きがあるが、これはどういう数字なのか。「7000億円」は、米国の会計事務所プライスウォーターハウスクーパース(PwC)がウェスチングハウスに対して示している数字だと関係者は説明する。これに対し、ウェスチングハウス側は4000億円から5000億円程度を主張しており、両者の間で協議が続いている、というのだ。PwCは世界4大会計事務所の一つ。4大事務所のなかでも筆頭格だ。日本ではPwCあらた監査法人と提携している。不正会計の発覚で、それまで東芝の監査を担当していた新日本監査法人は16年3月期限りで監査を降りた。その後釜は、PwCあらた監査法人になった。それと同時に、ウェスチングハウスの会計監査は、新日本監査法人と提携していたアーンスト・アンド・ヤング(EY)から、PwCに交代した。ウェスチングハウスは米原子力事業の損失について、そのPwCの監査を受けているのだ。
●東芝は2月14日に確定値を公表
 東芝の不正会計問題をめぐっては、「監査法人はなぜ見過ごしたのか」と批判の声が上がった。注目度の高い案件であり、PwCは厳しい監査に臨んでいると言われる。その結果が「7000億円」という主張になっている可能性がある。ただ、この数値も流動的だと言われている。東芝の正式な発表が遅れているなかで、額が少しずつ膨らんできた。銀行や取引先に疑心暗鬼が広がらないわけがない。東芝は1月24日、プレスリリースを出し、損失額の確定や、第3四半期決算数値について2月14日に公表することを明らかにした。その際、合わせて損失発生の原因と再発防止策についても報告するという。公表日を示すことで沈静化を図ったとみられる。
●格付け会社が再び格下げ
 そのプレスリリースが出た同じ1月24日、米格付け会社のスタンダード・アンド・プアーズが、東芝の長期会社格付けを「シングルBマイナス」から「トリプルCプラス」に1段階引き下げた。シングルBもトリプルCも「投機的」な位置づけだ。今後も格下げ方向であることは変わらないという。2017年1月25日付の毎日新聞東京朝刊  スタンダード・アンド・プアーズは格下げの理由として、「株主資本の大幅な毀損(きそん)が不可避と推定されることから、債務履行を長期的に継続することに対する不透明感が従来より強まった」と説明している。そして、こうした動きの一方で、東芝の主力事業である半導体部門を分社化し、一部株式を入札で外部に売却する手続きが始まった。売却先候補として、投資ファンドや事業会社の名前がキヤノンなど10社以上上がっているのである。

*1-4:http://digital.asahi.com/articles/ASK1W5FT8K1WULFA025.html?iref=comtop_list_biz_n04(朝日新聞 2017年1月27日)東芝、海外の原発建設から撤退へ 社長「あり方見直す」
 東芝は27日、米国で巨額損失を計上する見通しとなった原発事業について、海外の建設工事から撤退するなど、大幅に見直す方針を表明した。同事業で損失が急拡大する事態の再発を避ける狙い。半導体事業の分社化も27日の取締役会で正式決定。2017年3月期の債務超過回避を目指し、入札手続きを急ぐ。この日記者会見した綱川智社長は、原発事業について「エネルギー(事業)のなかで最注力としたが、変えていく」「海外事業は今後のあり方を見直していく」と強調した。巨額の損失をなかなか把握できなかった反省から、社長直属の事業に変更して管理を強化。今後の受注では、設計や原子炉の製造・納入などに専念し、コストが見通しにくい建設工事から手を引いて「リスク遮断する」(綱川社長)。30年度までに海外で原発45基以上の受注を見込む従来計画も、基数を含めて見直す方針を示した。半導体事業では、スマートフォンなどに使われる主力のNAND(ナンド)型フラッシュメモリー事業(従業員約9千人)を分社化。3月下旬の臨時株主総会で株主の承認を得て同月末に実施する予定。新会社の株式の一部売却は「20%未満が基本」(綱川社長)としている。米原発事業での損失額は、現時点での精査では7千億円前後に拡大する見通し。東芝は昨年4~12月期決算を発表する来月14日に、確定した損失額を公表する。半導体事業の分社化で2千億円超の利益を見込むが、債務超過が回避できるかどうかについて、綱川社長は「それ(回避)に向けて資本増強をあらゆる手段でとりたい」などと述べるにとどめ、資本増強策や原発事業見直しの詳細は、来月14日に説明する考えを繰り返し強調した。

(フクイチとその後の状況)
*2-1:http://digital.asahi.com/articles/ASK1Z5Q0KK1ZULBJ00F.html?iref=comtop_8_07 (朝日新聞 2017年1月31日) 核燃料?飛散、取り出し困難 チェルノブイリ以来の事態
 東電は宇宙線を利用した昨年の透視調査で、2号機の核燃料は大部分が原子炉圧力容器の中に残っていると推定していた。圧力容器直下にカメラを入れても、溶け落ちた核燃料が見える可能性は低いとみていた。だが、カメラの視野には、溶けた核燃料のような塊がそこかしこに飛び散っている様子が浮かび上がった。そこから分かることは、これからの核燃料取り出しや廃炉の困難さだ。溶けた核燃料が原子炉の外に出た事故は、これまで旧ソ連のチェルノブイリ原発事故以外にない。チェルノブイリ原発では、事故後30年が経過した今も、取り出しに着手していない。東電などは、2018年度に溶けた核燃料の取り出し方法を決め、21年にも着手するとしている。だが、事故から約6年で、核燃料かもしれない姿の一部が見えただけだ。広がりも、量も、状態もわからない。核燃料や、核燃料がこびりついた金属をどう切り出すのか。作業員の被曝(ひばく)をどう抑えるのか。取り出した燃料をどこに保管し、いつ処分するのか。3基がメルトダウンした世界でも例のない廃炉作業は、まだ、何一つ決まっていない。

*2-2:http://www.natureasia.com/ja-jp/nature/specials/contents/earthquake/id/nature-news-102711#fig1 (Nature 2011年10月27日号 Geoff Brumfiel) 放射性物質はどのくらい放出された?
 ノルウェーの研究チームにより、新たに福島第一原発事故で大気中に放出された放射性物質の総量が計算され、政府が6月に発表した推定放出量よりもずっと多いという報告があった。世界各地で観測された放射能データを組み合わせて大気中の放射性物質の量とその流れを推定した結果、福島第一原子力発電所の事故では、政府の推定よりもはるかに大量の放射性物質が放出されていたという研究が、Atmospheric Chemistry and Physics に発表された1。さらに、日本政府の主張とは裏腹に、4号機の使用済み核燃料プールから大量のセシウム137(半減期が長く、長期にわたって環境を汚染する物質)が放出されていたとも報告しており、もっと迅速に対応していれば、これほど大量の放射性物質が放出されずにすんだかもしれないと述べている。論文はオンライン掲載され、現在、公開査読を受けている。研究チームを率いたのは、ノルウェー大気研究所(シェラー)の大気科学者 Andreas Stohl だ。Stohl は、自分たちの分析は、これまで行われてきた福島第一原発から放出された放射性物質の量についての調査研究の中で、最も包括的なものであると自負している。スウェーデン防衛研究所(ストックホルム)の大気モデル作成の専門家 Lars-Erik De Geer は、今回の研究には関与していないが、「非常に価値のある成果です」と評価している。オンライン特集 原発事故による放射性物質の放出過程の再現は、日本国内をはじめ世界各地にある数十か所の放射性核種モニタリングステーションで観測されたデータに基づいて行われた。その多くは、包括的核実験禁止条約機構(オーストリア:ウィーン)が核実験の監視のために運用している世界規模での観測ネットワークに属する。このデータに、カナダ、日本、ヨーロッパの独立観測ステーションのデータも付け加え、これらをヨーロッパと米国が保管している広域気象データと組み合わせた。ただし、Stohl は、自分たちが作成したモデルは完全にはほど遠いものだとして注意を促している。原発事故発生直後の測定データが非常に少ないうえ、一部のモニタリングポストは放射能汚染がひどく、信頼できるデータが得られなかったからである。より重要なのは、原子炉から何が放出されたのかを知るためには、原子炉内で何が起きたのかを厳密に知らなければならないのだが、いまだ明らかになっておらず、永久に謎のままかもしれないという事実である。「チェルノブイリ事故から25年後もたった今でも、その推定値は不確かな部分が非常に多いのです」と Stohl は言う。それでも、今回の研究は、福島第一原発事故を全般的に調査したものであり、De Geer は、「Stohl らは真に地球規模の視点から、現在入手できるかぎりのデータを利用して推定しています」と話す。
●政府の発表
 3月11日の地震後に原発で起こった出来事については、すでに日本の研究者たちが詳細な経緯を推定している。福島第一原発電の6機の原子炉が激しい揺れに見舞われた50分後、巨大津波が襲来し、緊急時に原子炉を冷却するための非常用ディーゼル発電機が破壊された。それから数日の間に、地震発生時に稼働していた3機の原子炉が過熱して水素ガスを発生し、次々に水素爆発を起こした。定期点検のために停止していた4号機では、核燃料は使用済み核燃料プールに貯蔵されていたが、3月14日にこのプールが過熱し、おそらく数日にわたり建屋内で火災が発生した。一方で、原発から放出された放射性物質の量の解明は、事故の経過の再現に比べてはるかに難しい。政府が6月に発表した『原子力安全に関するIAEA閣僚会議に対する日本国政府の報告書 ―東京電力福島原子力発電所の事故について―』では、今回の事故により放出されたセシウム137は1.5×1016ベクレル(Bq)、キセノン133は1.1×1019Bqと推定している2。セシウム137は半減期30年の放射性核種で、原発事故による長期的汚染のほとんどの原因となっている。一方、キセノン133はウラン235の崩壊によって放出される半減期約5日の放射性核種であり、原発事故や核実験の際、初期に観測される。ところが、Stohl らが原発事故の再現結果に基づいて推定した放出キセノン133の量は1.7×1019Bq、セシウム137の量は3.5×1016 Bqで、政府の見積もりよりキセノンが約1.5倍、セシウムが約2倍となった。キセノン133の放出量は、チェルノブイリの総放出量1.4×1019Bqよりも多いことになる。だが、De Geer によれば、チェルノブイリでは爆発した原子炉が1機であったのに対して、福島の事故では3機も水素爆発したことで説明できるという。また、キセノン133は生体や環境に吸収されないため、健康に深刻な影響を及ぼすおそれはない。 問題なのは、数十年にわたり環境に残存するセシウム137だ。Stohl らのモデルの値は、チェルノブイリ事故での放出量の約1/2に相当する。De Geer は、このような高い値が出たことを懸念している。今後、セシウム137が人々の健康に及ぼす影響を明らかにするためには、現在行われている地表での測定を進めていくしかない。Stohl は、自分たちの推定値が政府の発表と食い違いっているのは、今回の調査ではより多くのデータを使用したことが原因の1つであるという。政府の推定の基礎となったデータは、主として日本国内のモニタリングポストによるものであり3、風に乗って太平洋を越え、北米やヨーロッパに到達した膨大な量の放射性物質は考慮されていないのだ。神戸大学の放射線物理学者で、福島周辺の土壌汚染を測定している山内知也(やまうちともや)は、「事故の本当の規模と特徴を明らかにするためには、太平洋上に出ていった放射性物質も検討する必要があります」と言う。Stohl は、政府の依頼を受けて公式な推定値を出した研究チームを非難しているのではない。むしろ、「できるだけ早く結果を出す必要があったのでしょう」と慮っている。群馬大学の火山学者で、自らも原発事故のモデルを作成した早川由紀夫(はやかわゆきお)は、「確かにこの数値だけを見れば、両者は大きく違うでしょう。けれども、どちらのモデルにもまだまだ不確実な要素があり、実際には2つの推定は非常に近いのかもしれませんね」と言う。さらに、Stohl らは、4号機の使用済み核燃料プールに貯蔵されていた核燃料が、莫大な量のセシウム137を放出していた可能性を指摘している。政府はこれまで、プールからは放射性物質はほとんど漏れ出していないと主張してきた。しかし、研究チームのモデルでは、プールへの放水をきっかけに原発からのセシウム137の放出が激減したことが、はっきり示されている(図「原発事故の経過」参照)。つまり、もっと早い段階から4号機プールへの放水を行っていれば、放射性物質の放出をもっと抑制できたかもしれないのだ。しかし、政府は、使用済み核燃料プール自体に大きな損傷はなく、使用済み核燃料が重大な汚染源になったとは考えられないと主張している。政府による公式推定値の算出にかかわった日本原子力研究開発機構(茨城県東海村)の茅野政道(ちのまさみち)は、「4号機から放出された放射性物質は多くはなかったと思います」と言う。だが De Geer は、核燃料プールの関与を含めた今回の新しい分析は、「説得力があるように見えます」と語る。さらに今回の分析は、もう1つ新たなデータを提示している。地震の直後、津波が福島第一原発に襲いかかる前から、キセノン133が漏れ始めていたというのだ。つまり、原発は、津波が襲来する前から、地震によって損傷していたことになる。政府の報告書でも、福島第一原発電を襲った揺れの大きさが、原発設計時に想定されていた揺れを上回っていたことを認めている。反原発の活動家は、以前から、政府が原発を認可する際に地質学的な危険を十分に考慮していないと主張しており(Nature 448, 392-393; 2007)、今回のキセノンの大量放出は、原発の安全性についての評価方法の再考を促すことになるかもしれないと、山内は言う。この事故で、首都圏はどうだったのか。実は、原発事故により甚大な被害を受けるおそれがあった。事故直後の数日間は、風は海に向かって吹いていたが、3月14日の午後、風向きが変わって陸に向かって吹き始め、セシウム137が東北南部から中部地方にまで広がっていった(図「放射性物質の拡散」参照)。実際、15日夜から16日未明にかけて雨が降った栃木県と群馬県の山間部では、のちに土壌から比較的高濃度の放射性物質が検出された。一方、首都圏では、そうした高濃度の放射性物質が上空を通過したときに、たまたま雨が降らなかったことが幸いした。「この時期に雨が降っていたら、東京も今よりずっと深刻な事態になっていたかもしれません」と Stohl は言う。(編集部註:ただし、(独)国立環境研究所の空間線量測定とシミュレーションによれば、21日から22日にかけても放射性物質が南関東に流れ込んだことが示されている。このときは、雨が降っていたため、南関東でも一部の地域で比較的高い線量が観測されていると思われる。)

*2-3:http://mainichi.jp/articles/20161229/ddl/k04/040/044000c (毎日新聞 2016年12月29日) 東日本大震災 .福島第1原発事故 放射能汚染廃棄物 焼却以外の「出口」模索 反対2市、すき込みや堆肥化/宮城
 東京電力福島第1原発事故による放射能汚染廃棄物の試験焼却を協議した27日の市町村長会議は「半年以内に再協議する」と結論を先送りした。この席で県が求める「年明けからの実施」に異を唱えた登米市の布施孝尚市長は28日の取材に、近く汚染牧草のすき込み実証実験を始める意向を明らかにした。会議で焼却反対を明言した栗原市も牧草の堆肥(たいひ)化を続ける方針で、汚染廃棄物の処理問題に独自の「出口」を描いたことが県方針に反する自治体の主張に結びついたといえる。布施市長は会議で、すき込みの検証作業を進める考えを示し「いましばらく時間をいただきたい」と発言した。登米市にある国の指定基準(1キロ当たり8000ベクレル)以下の廃棄物約4700トンのうち約3500トンは、堆肥化やすき込みが許容される同400ベクレル以下。布施市長によると、市役所内部で検討したところ、「400ベクレル以下の牧草はすき込み、400ベクレルを超えるものも堆肥に混ぜ込むことで、ほとんどを焼却しないで済む」との見通しがたったという。市関係の草地でさまざまな条件を設定しながら、牧草をすき込む準備もほぼ終了した。検証がまとまる時期に関連して「『半年以内』は知事のお考えであり、牧草の最初の収穫が間に合うかわからない。(次回市町村長会議までに)十分検証ができなければ、期間の延長を求めることもある」と述べた。一方、栗原市は12月議会で汚染牧草の堆肥化を本格的に進めるための予算案を認められなかったが、年度内に一部を修正し改めて提案する構えだ。販売を含め、堆肥の利用方法も検討に入るという。県議の一人は「一斉焼却に固執するのではなく、地域ごとに実情にあった出口を模索することが必要。県もそのために必要な支援策を国に働きかけるべきだ」と話す。

*2-4:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/388663 (佐賀新聞 2016年12月21日) 福島除染に国費300億円 復興指針閣議決定、2017年度帰還困難区域で
 政府は20日、東京電力福島第1原発事故で多大な被害を受けた福島の復興指針を改定し、閣議決定した。除染費用は東電が負担するとの原則を転換し「帰還困難区域」の除染に国費を投入。同区域に5年後をめどに避難指示の解除を目指す「特定復興拠点」を設け、除染費用として2017年度予算に約300億円を計上する。同区域で本格的な除染はされておらず、方針決定は初めて。関連法改正案を来年の通常国会に提出する。安倍晋三首相は官邸で開かれた原子力災害対策本部会議で「一日も早い福島の復興、再生に向け、道筋を具体化していただきたい」と述べた。改定指針は政府内での有識者を交えた検討会や国会での議論を経ていない。国民負担による東電救済との見方が多く、批判も予想される。同拠点の除染費用は5年間で3千億円規模の見通しだが整備が遅れればさらに増額する可能性がある。国費投入の背景には、費用が当初の政府試算の2兆5千億円から4兆円に拡大したことがある。試算には、放射線量が高い帰還困難区域の除染費用は含まれていない。除染関連の特別措置法は「費用は東電負担」と定めており、国費投入はできない仕組み。このため政府は、復興拠点に居住できるようにするインフラ整備に、周辺の表土のはぎ取りや樹木の伐採などの作業を組み込み、事実上の除染を「公共事業」と位置付ける。この枠組みが東電救済との批判をかわすため、福島復興再生特別措置法を改正して必要な措置ができるようにする。改定指針では、復興拠点以外の帰還困難区域も将来的な住民帰還を目指すとしている。国費での除染が増えれば、国民負担は数兆円規模に上る恐れもある。国費負担の理由については、帰還困難区域には長期間戻れないとの前提で東電が住民に賠償してきたとして、改定指針に「東電に求償せず国が負担する」と明記した。

*2-5:http://megalodon.jp/2016-1211-2210-32/ibarakinews.jp/hp/hpdetail.php?elem=ronsetu (茨城新聞論説 2016年12月11日) 原発廃炉の費用負担 電力市場をゆがめるな
 経済産業省の委員会は、原発事故の賠償金や電力会社が原発早期廃炉を決めた場合に生じる費用の一部を、原発を所有しない新電力にも負担させるなどの提言案をまとめた。経産省はこれを基に2017年度から順次、政策化することを目指す。費用は、既存の電力会社が所有する送電網の使用料(託送料)の形で徴収する方針で、最終的には電気料金に上乗せされて消費者負担となる。これは原発を所有する電力会社や事故を起こした東京電力への露骨な支援策だ。始まったばかりの電力市場の全面自由化の流れに逆行し、市場をゆがめる政策は受け入れがたい。経産省が公表した試算では、東京電力福島第1原発事故の損害賠償の費用は当初の見込みの5兆4千億円から7兆9千億円に拡大する。これまで、費用は東京電力や原発を所有する既存電力会社が負担してきたのだが、経産省は増加分2兆5千億円のうち2400億円を新電力に負担させる方針だ。経産省はまた、事故を起こしていない原発を、電力会社が当初の予定より早く廃炉にした場合に生じる費用の一部負担も新電力に求める。「過去にすべての需要家が安い原発の電力を利用してきたから」というのが広範囲の負担を求める理由だが、これらの費用は、原発運転で利益を得てきた電力会社が負担すべきものである。その原則をないがしろにし、消費者負担を求めることは、競争の中で不利になりつつある原発を所有する既存電力会社への保護策にほかならない。原発の利益はすべて享受し、経営上の判断の誤りによって生じたコストは消費者に転嫁するということが、市民の支持を得られるとは思えない。ただでも不透明な託送料への安易な上乗せを認めれば、今後に予想される賠償費用のさらなる増大などによって、電気料金が際限なく上昇するリスクも生まれる。経産省は、原発や石炭火力などからの電気を供出させ、新電力に優先的に供給する「ベースロード電源市場」を創設する方針だ。原発関連の費用負担に反対する新電力への懐柔策だろうが、これも、生まれたばかりの自由な電力市場をゆがめる政策だ。「原発と無縁な電気を使いたい」との消費者の希望に応え、原発の電力に手を出さない新電力は何のメリットも享受できずに、託送料を通じた負担だけを背負わされることになる。電力システム改革は、既存電力会社が送電網も所有する現在の仕組みを改めて、送電網を独立した企業の所有とし、すべての発電事業者が公平なルールの下でそこに電力を供給するという透明性の高い競争環境を確保することが筋だ。政府や電力会社は「原発の発電コストは安い」と主張するのだから、他の発電手法と公平な形で競争をしても何の問題もないはずだ。そもそも今回の議論の在り方自体に大きな問題がある。経産省が原発に好意的な識者や関連業界の代表を勝手に選んだ委員会で議論が進められ、一部は非公開で行われた。消費者を含めた広い議論への参加はおろか、国会の関与すらまったくないまま、国の将来を左右するエネルギー政策上の重要な改変を決めることは許されない。

*2-6:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12771846.html
(朝日新聞社説 2017年1月30日) 核燃料サイクル 再処理工場を動かすな
 高速増殖原型炉「もんじゅ」の廃炉が昨年末に決まった。計画から半世紀、1兆円超の資金を投じてもフル稼働のメドが立たなかっただけに、当然の帰結である。しかし政府は成算もないまま、再び高速炉開発を進める方針を決めた。原子力工学者らからなる国の原子力委員会は今月、新たな高速炉開発ではコスト面の課題を重視するべきで、急ぐ必要はないという趣旨の見解をまとめた。もんじゅの二の舞いを恐れての警告である。この高速炉ももんじゅ同様、核燃料サイクルの中核に位置づけられる。通常の原発の使用済み核燃料を再処理してプルトニウムを取り出し、それを高速炉などで燃やすという構想だ。プルトニウムは原爆の原料になる。高速炉の実用化が見通せない以上、危険なプルトニウムを増やすべきではない。青森県六ケ所村では使用済み燃料の再処理工場が建設中で、2018年度上期に稼働する予定だが、操業を中止すべきだ。その上で、核燃料サイクル全体について、凍結や断念も視野に、根本的に再考することを政府に求める。将来世代を含む国民への責任が問われている。
■経済性に疑問符
 天然のウランを加工して作った燃料を原発で燃やし、使用済み燃料はすべて再処理する。取り出したプルトニウムをウランと混ぜたMOX燃料にする。政府は長年、そうした全量再処理路線を掲げてきた。最大の誤算は、ウランが枯渇する心配は当分ないとわかり、価格も安定していることだ。六ケ所再処理工場の建設費は93年の着工以来、2兆2千億円に達する。完工時期は20回以上、延期されてきた。トラブル続きで稼働の先延ばしを重ねたもんじゅと同じ構図だ。大手電力など原子力事業者の共同子会社である日本原燃が建設主体で、費用は電気料金でまかなわれてきた。建設費を含む総事業費は約12兆6千億円と見積もられている。再処理の手間がいるMOX燃料が高くつくのは明白だ。経済性を重くみた米英独などは高速炉から撤退し、プルトニウムはもっぱら廃棄物扱いしている。プルトニウムには核兵器拡散問題がつきまとう。高速炉開発を続けているのが、ロシアや中国、フランス、インドと核保有国ばかりなのは偶然ではない。日本は国内の研究施設や英仏への委託で見切り発車的に再処理を進めてきた。計算上、原爆6千発分に当たる約48トンものプルトニウムを持っている。
■被爆国としての責任
 余剰なプルトニウムは持たないという核不拡散の国際規範に照らし、とりわけ唯一の戦争被爆国として、早急に保有量を減らすことが求められている。MOX燃料を原発で燃やすプルサーマル発電もあるが、四国電力の伊方原発3号機で実施されているだけで、プルトニウムは年に0・1トンほどしか減らない。原発の再稼働がどんどん進み、プルサーマルが広がるという見込みも立っていない。日本のプルトニウム現有量は六ケ所村の工場が約8年フル稼働した時の生産量にあたる。消費が進まないまま工場を動かせば、日本の核不拡散や核廃絶への姿勢まで疑われかねない。安全面の懸念も残る。六ケ所工場には使用済み燃料が3千トン近くある。大規模な火災や核分裂の連鎖反応が起きれば、放射性物質の放出リスクは原発以上とも言われる。昨年12月以降、原燃社内での安全上の虚偽報告や非常用発電機の故障、雨水の流入、核燃料物質の不適切保管が次々に発覚した。
■しがらみ超え再考を
 もんじゅ廃炉を待つまでもなく、サイクル構想には大きな無理があった。福島第一原発の事故後、長く原子力政策の司令塔役を務めてきた原子力委員会はサイクルの費用を試算し、再処理工場を稼働しないことも含めて政策の選択肢を検討する議論に踏み込もうとした。だが、原子力委の権限縮小や政権交代があり、実を結ばなかった。民主党政権下で「責任を持って議論する」(革新的エネルギー・環境戦略)とされたサイクル政策は、安倍政権下では「再処理やプルサーマル等を推進する」(エネルギー基本計画)と先祖返りしている。原子力委は今月の見解の中で、サイクル政策に「戦略的柔軟性の確保」を求め、使用済み核燃料を再処理せず長期保管する中間貯蔵の強化を推した。再処理・サイクル路線への慎重姿勢が強くにじむ。核燃料サイクルの抜本見直しは簡単ではない。国のエネルギー政策に直結し、関連施設がある各地の地域づくりにも影響する。青森県は再処理を条件に使用済み燃料を受け入れてきた。それでも今、立ち止まらなければ、国民全体が大きなつけを背負うことになりかねない。もんじゅ廃炉という、部分的な手直しですませてはならない。

*2-7:http://www.tokyo-np.co.jp/article/economics/list/201612/CK2016121102000125.html?ref=hourly (東京新聞 2016年12月11日) 経済:事故処理費増え「原発は高い」 立命館大教授・大島堅一氏に聞く
 原発の発電費用を研究してきた立命館大学国際関係学部の大島堅一教授が、原発で一キロワット時(エアコン一時間分)の電力量をつくるために必要な費用を、実際にかかってきた費用を基に「一三・一円」と試算した。政府が九日にまとめた福島第一原発の処理費用二一・五兆円を反映した。本紙のインタビューで、政府の「最大でも一〇・四円で、さまざまな発電方法の中で最も安い」とする試算を「架空の前提に基づくため実態を反映していない」と否定した。大島氏は「原発は高い」と説明する。現実に東京電力は必要な費用を払えない状態のため、「資本主義のルールに従って破綻処理したうえ、株主にも責任をとらせて財産を処分、それでもお金が足りない場合は国が責任を持って税金などを充てるべきだ」と提言。ほかの大手電力会社の原発への支援策もやめるべきだと指摘した。立命館大国際関係学部の大島堅一教授が試算した方法は明快だ。原発の建設費や投じられてきた税金、福島第一原発の賠償に充てられたお金など、実際にかかった費用を積み上げ、原発が過去につくった発電量で割った。すると、一キロワット時当たりの発電費用は一二・三円だった。さらに、経済産業省が九日、原発の事故処理費が二一・五兆円へと倍増する試算を示したため、これを反映させると一三・一円になったという。一方、経産省はこの二一・五兆円を考慮しても、原発の発電費用は一〇・二~一〇・四円にとどまると計算した。二〇一五年に試算した一〇・一円とほぼ変わらず、水力発電(一一・〇円)などほかの発電方法を下回って最も安いとの説明を続ける。経産省と財界人らでつくる「東京電力改革・1F(福島第一原発)問題委員会」の伊藤邦雄委員長(一橋大大学院特任教授)も「原発は最も効率的な発電方法だ」と語る。委員会の議論では「事故があっても安いということをもっと広報するべきだ」という意見があったという。この食い違いについて、大島氏は「政府の試算は『モデルプラント方式』といって、建設費の安い原発が事故もなく順調に稼働し続けるという理想的なシナリオを描いた計算。だから実際にかかった費用をそのまま反映するのではなく、仮定を置いて数字を変えるので安く見せるよう操作できる」と指摘する。例えば、日本の原発は稼働年数が平均三十年の時点で三基の炉心が溶融する「過酷事故」が起きた。十年に一基で事故が起きる確率だ。しかし政府試算は事故はほとんど起きない前提。このため福島第一原発にかかる費用がいくら膨らんでも、政府の試算にはほぼ影響しない。国民負担が増えているのに、政府が「原発は安い」と主張し続けるからくりはここにある。また、震災後は原発に厳しい安全対策が求められるようになり、建設費は世界的に高騰している。しかし、政府試算の前提は従来の建設費と同じ。大島氏は「政府試算の建設費の前提を、英国で新設されるヒンクリーポイント原発の建設費に置き換えただけでも、発電費用は一七・四円に跳ね上がる」と分析する。石炭火力(一二・三円)はもちろん、液化天然ガス(LNG)火力(一三・七円)より高くなる。ほかにも、政府が着手しようとしている次世代の原子炉「高速炉」の開発に投じられる税金は規模すらつかめない状態で、政府試算に反映されている金額を大幅に超えることは確実だ。大島氏は「原発は高い」と断言。「原発を続けるという選択肢があってもいいが、そのためには『原発は安い』という架空のシナリオではなく、客観的なデータを国民に示して判断を仰ぐべきだ」と語った。
<おおしま・けんいち> 一橋大大学院経済学研究科博士後期課程単位取得退学、高崎経済大経済学部助教授などを経て現職。専門は環境経済学。著書に「原発のコスト」(岩波書店)など。

<世界の再生可能エネルギーと日本>
*3-1:http://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2017/01/post-6741.php (Newsweek 2017.1.17)太陽光発電の発電コストが石炭火力発電以下に。ソーラーが「お得」な時代へ
<長年"コスト高"という大きなデメリットを抱えてきた太陽光発電が、近年、技術の進化と規模の経済性で、コスト競争力のある発電方式となりつつあることが明らかになった>
 太陽光発電は、化石燃料を必要とせず、発電時に温室効果ガスや騒音、振動などが発生しない、環境負荷の低い再生可能エネルギーの発電方式だが、発電設備のコストが比較的高いため、発電量あたりのコストが従来の火力発電に比べて高くなりがちであった。このように長年"コスト高"という大きなデメリットを抱えてきた太陽光発電だが、近年、技術の進化などに伴って、コスト競争力のある発電方式となりつつあることが明らかになっている。
●世界30カ国以上で、太陽光発電コストは石炭火力発電以下に
 世界経済フォーラムの報告書では、オーストラリア、ブラジル、チリ、メキシコなど、世界30カ国以上で、太陽光発電の発電コストが、石炭火力発電以下に低下しており、2020年頃までに、同様の現象が世界の約3分の2の国々に広がると予測している。発電所の設計、建設から運用、廃止までのコストを総発電量で割った「均等化発電原価(LCOE)」で比較すると、石炭火力発電では、メガワット時のコストが100ドル前後で推移してきた一方、太陽光発電は、10年前の600ドルから100ドル以下へと6分の1にまで縮小した。太陽光発電の発電コストが低下した要因として、発電効率の改善と発電設備の廉価化が挙げられる。米国の国立再生可能エネルギー研究所(NREL)によると、ソーラーパネルの変換効率は、20年前の15%から、現在、46%にまで上昇。また、生産プロセスの改善や規模の経済性により、発電設備の製造コストが大幅に削減され、太陽光発電の発電コストを押し下げている。太陽光発電の発電コスト低下は、新興国でも顕著に認められる。ブルームバーグ・ニュー・エナジー・ファイナンス(BNEF)によると、中国、インド、ブラジルなど、非OECD加盟国58カ国では、2016年時点で、太陽光発電導入コストが165万ドル/MWとなり、風力エネルギーをわずかに下回った。また南米チリでは、太陽光発電業者が29.1ドル/MWhの条件で政府と売電契約を設定した事例が話題となっている。
●フランスで世界で初めて、ソーラーパネルを敷設した道路が完成
 規模を問わず、発電効率が一定な太陽光発電は、大規模な発電所からスマートフォン向けの充電器まで、様々に導入できるのも特徴だ。たとえば、フランスでは、2016年12月、世界で初めて、ソーラーパネルを敷設した道路が完成。英国では、2017年1月から、電車の側面にソーラーパネルを装着し、太陽光エネルギーを電力として利用する調査プロジェクトが始動している。いわずもがな、地球温暖化防止の観点からも、太陽光発電は有力な発電方式だ。2015年12月の国連気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)に続き、2016年4月には、インド、オーストラリア、フランス、エチオピア、ブラジルを含む25カ国が、太陽光発電に関する研究開発や普及のために1兆ドル(約114兆円)を投資することで合意した。太陽光発電のコスト競争力が高まるにつれて、先進国、新興国を問わず、日射量の多い国・地域を中心に、太陽光発電への投資が多様に増え、太陽光エネルギーの活用は、ますます広がっていきそうだ。

*3-2:http://www.renewable-ei.org/column/column_20170105.php (自然エネルギー財団常務理事 大野輝之 2017年1月5日) 自然エネルギーが脱炭素社会への扉を開く―2017年、自然エネルギー100%への転換を日本からも
●自然エネルギー発展の画期となった2016年
 世界の自然エネルギー導入量は過去数年、急速に拡大してきました。2016年末の導入量はまだ明らかになっていませんが、風力発電は5億kW、太陽光発電は3億kW近くに達したのではないかと見込まれます。5年前の2011年末と比較すると、風力は2倍以上、太陽光は4倍以上という高い水準です。昨年の自然エネルギーの発展に関して、導入量の大きさ以上に画期的だったのは、そのコストが劇的な低下を続けたことです。風力発電は、既に昨年1月にモロッコで行われた入札で1kWhあたり3.0セントというレベルまで低下していましたが、太陽光発電も昨年中に世界各地で行われた入札で、次々に最安値を更新し、9月にアブダビで行われた入札では、2.42セントという水準に至りました。今や日照時間など条件に恵まれた地域では、太陽光発電は従来からの火力発電だけでなく、風力発電よりも安い電源になっているのです。自然エネルギーの発電コストの低下は今後も続くと予測されています。国際再生エネルギー機関(IRENA)が昨年6月に公表した報告書(“THE POWER TO CHANGE”)では、2015年から2025年までに、大規模太陽光発電の導入コストは、世界平均で57%下落するとしています。
●世界のトップ企業は自然エネルギー100%をめざす
 昨年11月に発効した「パリ協定」は、今世紀後半には世界の温室効果ガスの排出量を実質的にゼロにすることを決めています。排出ゼロを達成するためには、エネルギー利用の効率化とともに、使用するエネルギーを化石燃料から自然エネルギーに全面的に転換する必要があります。今、世界のトップ企業の中で広がっているのは、自らの企業の使う電力を、率先して100%自然エネルギーに転換する「RE100」という取組みです。「RE100」には、アップル、グーグル、フェイスブックなどのIT企業やゴールドマンサックスやバンクオブアメリカなどの金融機関、更にはGM、コカコーラ、ヒューレットパッカードなどの名だたる世界のトップ企業が80社以上も参加しています。グーグルが今年中には100%の達成を見込むなど、これらの企業は積極的な自然エネルギー開発や調達を進めています。
●2017年:日本の未来を開くエネルギー政策への転換を
 「RE100」には、欧米だけでなくインドや中国の企業も参加していますが、残念ながら現在までのところ、日本企業は参加していません。日本企業の中にも、自然エネルギー100%を目指そうとしている会社はあるのですが、日本での自然エネルギー導入が立ち遅れている中で、「RE100」の目標を掲げることに二の足を踏んでいる状況です。パリ協定が発効し脱炭素への転換が求められる中で、世界規模でビジネスを展開する企業には、温室効果ガスの排出を大幅に削減すること、その代表的な取組として自然エネルギー100%をめざすことが、マーケットでのその企業の評価を左右するようなってきています。世界の多くのトップ企業が「RE100」に参加しているのは、こうした動向を熟知しているからに他なりません。また冒頭に見たように、欧米などでは自然エネルギーコストが安くなってきているため、自然エネルギー100%への転換が経済的にも大きな負担を伴うものではなくなってきているのです。日本のエネルギー政策は自然エネルギーの導入に消極的であるだけでなく、石炭火力発電の大量の新増設を可能にするなど、「パリ協定」後の世界の流れに逆行しています。送電網を管理する電力会社が、自然エネルギーの接続や有効利用に制限を加えるなど、日本には自然エネルギーのコスト低下を阻む様々な障害が残っています。一方、「ベースロード電源市場の創設」という名目で、石炭火力の利用を進める政策も導入されようとしています。エネルギー政策を転換し、日本の企業が石炭火力からの電力を利用しないで済むようにすること、自然エネルギー100%への転換を容易にできるようにすることは、脱炭素経済への転換が進む世界で日本企業が活躍するためにも必要になってきています。毎年恒例の自然エネルギー財団の国際シンポジウム"REvision"は、今年は3月8日に「自然エネルギーが切り拓く未来」をテーマに開催いたします。世界各地でビジネスが自然エネルギーの導入を先導している状況をお伝えしようと思っています。"REvision 2017"などのシンポジウムの開催、様々な調査研究の実施、アジアスーパーグリッドの実現をめざす共同の取組など、自然エネルギー財団は、本年も、日本と世界のエネルギー転換を進める活動に取り組んでいきます。


<強引な原発再稼働への動き>
PS(2017年2月1日追加):日本農業新聞が、*4-1に、「世界はパリ協定の下、既に地球温暖化防止へ動きだしている」「日本も再生可能エネルギーに軸足を移さなければ世界の潮流から取り残される」「日本が昨年決めた2030年度の電源構成は、天然ガス27%(13年度43%)、石炭26%(同30%)、再エネ22~24%(同11%)、原子力20~22%(同1%)、石油3%(同15%)であり、石炭火力と原発依存が鮮明で、時代を見誤っている」と記載しているのは、全くそのとおりだ。
 また、*4-2のように、「運転中や運転可能な全国の商用原発42基のうち40基で、重要設備である中央制御室の空調換気配管の詳細な点検が行われていなかったことが、電力9社と日本原子力発電への取材で分かった」とのことで、これは原発事故や放射性物資の危険性を無視したあまりにも杜撰な行動だ。しかし、*4-3のように、玄海原発3、4号機は新基準で「適合」とされ、これは全国で6例目だそうだ。国会議員選挙では、「経済」「補助金」「ばらまき予算」を前面に出して闘うため、脱原発を主にして選択する人は多くないが、原発再稼働の賛否のみを問えば反対する人の方が多い。
 そのため、*4-4のように、「玄海原発プルサーマルと全基をみんなで止める裁判の会」は、司法を使って再稼働を止めようとしている。今後、玄海原発の再稼働は「地元同意」の手続に入るが、*4-5のように、唐津市長選で初当選した元県議の峰達郎氏が「地元同意」の範囲について、「佐賀県伊万里市や福岡県糸島市など周辺自治体と連携して、国に避難や屋内退避が必要となる半径30キロ圏への拡大を要請する」という意向を明らかにされたのは尤もで、事故時に被害を受ける範囲を考えればまだ狭いくらいである。

*4-1:https://www.agrinews.co.jp/p39774.html
(日本農業新聞論説 2016年12月27日) 地球温暖化防止 再エネ立国へ転換急げ
 世界は先月発効したパリ協定の下で、地球温暖化防止へ動きだしている。目標は「脱炭素」社会で、今世紀後半に二酸化炭素(CO2)など温室効果ガス排出を実質ゼロにする。ドイツ、北米各国は既に脱炭素への長期計画を国連に提出した。だが、日本はその検討を始めたばかりだ。安全で脱炭素の切り札の再生可能エネルギーに早く軸足を移さないと、世界の潮流から置き去りにされてしまう。世界と日本の平均気温は今年も観測史上最高となった。温暖化によって、熱波、干ばつ、洪水など異常気象による災禍は地球上で枚挙にいとまがない。パリ協定は、今世紀末の気温上昇を産業革命以前と比べ2度未満に抑える目標を設定した。正確には「2度を十分下回る」という表現で、追求目標1.5度未満が真意といえる。実現手段が脱炭素化だ。CO2排出を森林などの吸収と同等にまで減らし、差し引きゼロにする。同協定は2020年以降の枠組みだが、事前に温室ガス削減の30年目標の上積みと長期計画を各国に求めている。米国は50年までの長期計画を先月提出。電源構成の再エネ比率を55%に高め、温室ガス80%削減を目指す。トランプ次期大統領は自国経済優先で協定離脱を示唆したが、選挙後は軟化している。ドイツは80~95%削減を明示。原発全廃と再エネ推進を先導する環境先進国の気概がある。カナダも80%削減を表明した。それに比べ、日本の消極性が際立つ。50年目標80%削減という民主党政権下での閣議決定があるが、自民党政権下ではたなざらし状態だ。パリ協定での日本の30年目標は26%削減にとどまる。政府に上積み修正する気配はなく、まして80%削減達成への道筋は見えない。日本が硬直的なのは、昨年決めた30年度の電源構成に固執するからだ。構成は天然ガス27%(13年度43%)、石炭26%(同30%)、再エネ22~24%(同11%)、原子力20~22%(同1%)、石油3%(同15%)と石炭火力と原発依存が鮮明だ。これをベースにする限り、温室ガス削減目標も変えようがない。CO2を多く出す石炭火力依存の日本は先月、国際環境団体から批判の化石賞を受け面目をつぶした。原発依存も潮流に逆行している。世界では安全・経済性両面での懸念から原発離れが目立つ。わが国で進む石炭火力発電の新増設も、原発関連の高速増殖原型炉「もんじゅ」廃炉後の次世代実証炉開発も時代性を見誤っている。クリーンで安全、新ビジネスとしても有望な再エネにこそ投資すべきだ。脱炭素への長期計画の検討を経済産業省と環境省が今夏から進めている。政府の全体検討は来年度以降と遅いが、再エネ加速による温室ガス大幅削減を打ち出す決断を求めたい。再エネ立国を目指せば、地方創生を含めた持続可能な経済・社会づくりと、地球温暖化を防ぐ国際貢献の両方ができる。

*4-2:http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170115-00000014-jij-soci (時事通信 2017/1/15) 原発40基、詳細点検せず=配管腐食、再稼働の川内・伊方も―電力各社
 運転中や運転可能な全国の商用原発42基のうち40基で、重要設備である中央制御室の空調換気配管の詳細な点検が行われていなかったことが14日、原発を保有する電力9社と日本原子力発電への取材で分かった。中国電力島根原発2号機(松江市)の換気配管では腐食による穴が多数見つかっており、事故が起きた場合に機能を維持できない恐れがある。中国電は昨年12月、運転開始後初めて島根2号機で配管に巻かれた保温材を外し、腐食や穴を発見。必要な機能を満たしていないと判断し、原子力規制委員会に報告した。再稼働した九州電力川内原発1、2号機(鹿児島県)や関西電力高浜原発3、4号機(福井県)、四国電力伊方原発3号機(愛媛県)の点検でも保温材を外していない。点検方法は各社の判断に委ねられており、規制委は全国の原発の実態を確認する。中央制御室は原発を運転・監視する中枢施設で、運転員が24時間常駐する。通常は配管を通じて外気を取り入れ換気するが、事故発生時には外気を遮断し、機密性を保つ機能が求められる。原発を保有する各社によると、島根2号機と北陸電力志賀原発1号機(石川県)を除く40基で、保温材を外さないまま配管の外観点検が行われていた。40基には東京電力福島第2原発の4基も含まれる。外気取り入れ口付近の目視点検や異音検査などが実施された例はあったが、配管の保温材を全て外した上での目視確認は行っていなかった。一方、北陸電は2003年に志賀1号機の配管でさびを発見。保温材を外して点検し、08年に取り換えた。規制委は島根2号機で見つかった腐食について「規制基準に抵触する可能性がある」とみている。中国電は「海に近いため塩分を含んだ空気が配管に流れ込み、腐食が進んだ可能性がある」と説明している。日本の原発は発電用タービンを回した蒸気を海水で冷却し循環させるため、海辺に立地している。40基の内訳は北海道電力泊原発1~3号機、東北電力東通原発1号機、同女川原発1~3号機、東京電力福島第2原発1~4号機、同柏崎刈羽原発1~7号機、中部電力浜岡原発3~5号機、北陸電力志賀原発2号機、関西電力美浜原発3号機、同大飯原発1~4号機、同高浜原発1~4号機、四国電力伊方原発2、3号機、九州電力玄海原発2~4号機、同川内原発1、2号機、日本原子力発電東海第2原発、同敦賀原発2号機。

*4-3:http://qbiz.jp/article/101937/1/ (西日本新聞 2017年1月18日) 玄海3、4号機が新基準で「適合」決定 全国6例目
●再稼働は早くても夏以降
 原子力規制委員会は18日午前の定例会合で、九州電力が再稼働を目指す玄海原発3、4号機(佐賀県玄海町)の安全対策について、原発の新規制基準を満たすとする「審査書」を全会一致で正式決定した。残る審査手続きや地元同意手続きが必要なため、再稼働は早くても今夏以降となる見通しだ。審査書の正式決定は、既に再稼働した九電の川内原発1、2号機(鹿児島県薩摩川内市)などに続いて全国6例目、九電の原発では2例目となった。審査書は、規制委が昨年11月に審査書案を作成した後、一般公募した意見を踏まえて取りまとめた。内容は審査書案と大筋で変わらず、想定される最大の地震の揺れ「基準地震動」は620ガル、津波の高さは約4メートルとした上で、重大事故対策や基本的な設計方針が東京電力福島第1原発事故後の新基準に「適合している」と結論付けた。規制委は今後、施設の詳細設計をまとめた「工事計画」、運転管理体制を定めた「保安規定」の認可の可否を審査する。再稼働に対する地元同意の範囲を巡っては、国が基準を示しておらず、九電は立地自治体の佐賀県と玄海町の同意で再稼働したい考え。山口祥義知事は住民理解などを条件に容認する意向を示唆し、岸本英雄町長は一貫して賛成している。ただ同県内では複数の自治体の首長が再稼働に反対しており、同意を得るべき自治体の拡大を求める声も上がっている。玄海3号機は1994年3月、4号機は97年7月に運転開始。ともに出力は118万キロワット。3号機はプルトニウム・ウラン混合酸化物(MOX)燃料を使うプルサーマル発電を行う。2基の審査は、九電が新基準の施行直後の2013年7月に申請していた。

*4-4:http://qbiz.jp/article/101796/1/ (西日本新聞 2017年1月17日) 玄海原発差し止め 仮処分審尋が結審  年度内に決定か
 九州電力玄海原発(佐賀県玄海町)3、4号機が耐震性などの基準を満たしていないとして、住民団体が運転再開差し止めを求めた仮処分の第24回審尋が16日、佐賀地裁であり、結審した。地裁は双方の当事者に対し、決定の2週間前に期日を通知する。原告は、佐賀市の「玄海原発プルサーマルと全基をみんなで止める裁判の会」(石丸初美代表)の236人。2011年7月に3号機の差し止め仮処分を申し立て、昨年10月には4号機についても追加申請して非公開の審尋を続けてきた。立川毅裁判長は「主張と立証の関係は本日で終了する」として審尋を終結。裁判の会は、年度内に決定が出るとみている。3、4号機を巡っては、安全対策が新規制基準を満たしているとして、18日に原子力規制委員会が審査書を正式決定する予定。地元同意などを経て運転再開の手続きに入る。

*4-5:http://qbiz.jp/article/102680/1/ (西日本新聞 2017年1月31日) 「地元同意」拡大要求へ 玄海原発再稼働 糸島、伊万里と連携 唐津市長選当選の峰氏
 佐賀県唐津市長選で初当選した元県議の峰達郎氏(56)は30日、隣接する玄海町の九州電力玄海原発の再稼働に向けた「地元同意」の範囲について、同県伊万里市や福岡県糸島市など周辺自治体と連携し、国に拡大を要請する意向を明らかにした。地元同意の範囲は法令の定めがなく、再稼働を先行した鹿児島などの3県はいずれも立地自治体と県に限定。玄海原発も玄海町と佐賀県だけとなる可能性が高い。玄海3、4号機については原子力規制委員会が18日、新規制基準に適合するとした審査書を決定し、国は玄海町と県に再稼働の方針を伝達。地元同意に焦点が移っている。峰氏は、唐津市の一部が玄海原発の5キロ圏にあることを念頭に「立地町、県と同じ立場にないことがどうしても納得できない」と強調した。また、国が福島原発事故後、緊急時に避難や屋内退避が必要となる範囲を半径30キロ圏の緊急防護措置区域(UPZ)に拡大したことを踏まえ、「UPZで考えれば唐津も伊万里も糸島(福岡県)も一緒。国がつくったなら、それなりに対応してほしい」と述べ、30キロ圏にある3県8市町で連携して国に要請する考えを示した。一方、九電との安全協定については「事前了解権は欲しいが、今後の検討課題としたい」と述べるにとどめた。
●市長給与減提案へ
 唐津市長選から一夜明けた30日、初当選した元県議の峰達郎氏(56)は、公約に掲げた市長給与の2割削減を新年度当初予算案に盛り込む意向を明らかにした。同市町田の事務所で記者団の取材に答えた。峰氏は給与削減のほか、就任初年度に取り組む施策として機構改革を挙げ「全国から特別顧問のような方を3〜5人招いて市長室をつくり、市政に外からの空気を入れていきたい」との構想を語った。官製談合事件、現職市長の政治献金問題で傷ついた市政の信頼回復を図るため「これまでの既得権益と決別する」と訴えてきた峰氏は「年間100億円前後の公共工事費が使われているが、有効に使われているか見えていない。就任後はしっかり見極めたい」とし、市庁舎建て替えについても再検証する考えを示した。公約としていた支所機能の強化に関しては「機能の検証、職員配置の再構築が必要。市民センターの統廃合という形になるかもしれない。センター長には決裁権を持たせる」と述べた。当選から一夜明けた感想を問われると「いよいよ変わると信じていると激励を受けた。公約の具現化を期待されている。3万を超える方から支持をいただき、涙が出ないほど身の引き締まる思いだ」と語り、激戦を振り返って「唐津市は一つにならないと発展できない。選挙後はノーサイドでやっていかなければならない」と融和を呼び掛けた。

<技術進歩を正確に伝えない世論操作>
PS(2017年2月2日追加):日本では、*5のように、電力の需要と供給が一致しなければならないとして太陽光発電の出力を制御しているが、余った電力は、蓄電したり、水素社会に向けて水から水素を作るのに使ったりする方が賢い。何故なら、①太陽光発電システムを十分に稼働させて発電コストを下げ ②水素社会に向けて水から水素と同時に酸素を作って販売することで、空気中の酸素が薄くなるという「公害」を防ぐことができるからだ。そのためには、電力会社は定款を変更して電力以外のものも売れるようにするか、水素や酸素などのガス製造部門を切り出して子会社化しなければならないが・・。

*5:http://qbiz.jp/article/102856/1/ (西日本新聞 2017年2月2日) 太陽光出力を正確に予測 九電、システム実用化目指す 無駄な制御回避へ
 九州電力が、太陽光発電の出力を2、3時間前に予測するシステムの実証実験を進めている。毎日の電力の需要と供給などの運用計画を策定するため、現在は前日に出力を予測している。システムが実用化すれば、当日の天候によって出力が大きく変動する太陽光の発電量予測の精度が高まる。太陽光発電が増加する中、無駄な出力制御を回避し、より多くの電力を受け入れられるようになる。システムは、九電と気象会社、大手電機メーカーが共同で開発。昨年9月に試験的な運用を始めた。今後1、2年の試験運用を経て、実用化を目指す。九電は現在、前日午前10時の気象予測の画像と日照量に基づき、翌日の太陽光発電の出力を予測し、電力の需給計画を決定。その後、当日午前4時の気象予測で修正し、管内の需給が一致するようにしている。しかし、現在のシステムでは、太陽光発電量の予測と実績に差が生まれる。例えば2015年秋には、予想外の晴天となり、電力消費のピーク時に実績が予測を2倍以上も上回る日があった。火力発電所の出力を落とすなどして需給を調整したという。一方、秋雨前線の予測が外れて太陽光発電が大幅に不足し、火力発電所の出力を増やして対応することもあった。新たなシステムでは、当日の2、3時間先の気象予測データを解析し、日中に出力予測を細かく修正し続けることが可能。実績と予測の誤差を縮めることで、時間に余裕を持って火力発電の出力を調整できる。九電管内の太陽光発電の接続量は、単純計算で大型原発約6基分に相当する668万キロワット(16年11月末時点)。太陽光パネルの設置が増え続ければ出力の実績と予測の差はさらに広がるが、新システムで出力予測の精度が上がれば、無駄な出力制御を要請する事態も回避することが可能になるという。九電電力輸送本部の深川文博給電計画グループ長は「雲が急に発生した場合など予測が当たらないこともまだある。さらに工夫し、精度を上げたい」と意気込んでいる。

<脱原発へ>
PS(2017年2月13日追加):*6-1のように、世界が原発の危険を認識した中、フクイチ事故を起こした日本の経産省が米と原発の売り込みを提案することを検討しているとのことだが、日本政府のこのような誤った方針が東芝などの損失を膨らませた一因だ。これは、第二次世界大戦が航空戦の時代になっていたにもかかわらず、巨艦を建造して「不沈艦(実際にはあり得ない)」などと言っていたのと変わりない。また、経産省は「2030年までに新興国を中心に世界で30~330基の原発が新設される」などとしているが、それでは世界の原発事故発生リスクは非常に高いものになる。そのため、*6-2の台湾政府は脱原発法を成立させ、*6-3のベトナム・リトアニア政府も原発計画を撤回し、インド・トルコでも反対運動が起こっているのだ。なお、*6-4のように、民進党が「原発ゼロ基本法案(仮称)」に「2030年ゼロ」を明記するそうだが、省エネ・再エネ技術が進んだ現在、「2025年までのなるべく早い時期に脱原発」とするのが八方によいと考える。大手電力会社の社員にとっても、この方が次の東電や東芝にならずにすみ、経営資源を新エネルギーに集中させることができるため、メリットがあるだろう。

*6-1:http://www.tokyo-np.co.jp/article/economics/list/201702/CK2017020802000131.html (東京新聞 2017年2月8日) 【経済】米と原発売り込みを提案へ 世界が危険認識、損失膨らむ中
 世耕弘成経済産業相は七日の記者会見で、日米首脳会談に合わせて訪米する考えを示した。政府は世耕経産相も会談に同席する方向で調整しており、米国に対して、新興国への原発の共同売り込みなどを提案することを検討している。しかし福島第一原発の事故を受けて原発の市場は世界的に縮小し、原発産業では損失が相次いでいる。専門家は「原発を売り込んで資金を稼ぐシナリオは現実的ではない」と疑問視している。原発の共同売り込みは、日本が首脳会談で提示を目指す経済協力のための政策集「日米成長雇用イニシアチブ」の原案に載っており、「十年間で五百億ドル(五兆円超)の市場を開拓」するとされている。国内の原発メーカーのうち東芝と日立製作所は米国の企業と組んでおり、日米双方に利益があることをアピールする。しかし福島第一原発の事故により米国や欧州で安全のための規制が強まり、建設費は世界的に高騰。建設が止まったり、白紙撤回になる例が相次いでいる。さらに米国のシェール革命により、原油など火力発電の燃料価格が長期にわたって安定するめどが立ち、原発の市場は縮小しつつある。このため東芝は米国の原発関連事業で七千億円規模の損失を見込み、原発の建設から撤退することも検討中。日立も米国での研究開発をやめ、七百億円の損失を計上する。それでも世耕経産相は三日の記者会見で「世界各国で、原発を新設しようという動きはたくさんある」と述べ、原発輸出を進める考え。経産省は国際原子力機関(IAEA)の見通しなどから「二〇三〇年までに新興国を中心に世界で三十~三百三十基の原発が新設される」などとみている。しかし、ベトナム政府が住民の反対や財政難から原発計画を撤回するなど、新興国でも新設は難しくなっている。九州国際大の中野洋一教授(国際経済学)は「福島第一原発の事故で世界に危険性が知られ、価格面でも再生可能エネルギーや火力に見劣りするようになった。米国の威を借りて原発を売り込んでも、受注は難しいだろう」と指摘した。

*6-2:http://mainichi.jp/articles/20170112/k00/00m/030/068000c
(毎日新聞 2017年1月11日) 台湾、「脱原発法」成立 「25年までに全て停止」
 台湾の蔡英文政権が2025年までに脱原発を実現するため提案した電気事業法改正案が11日夜、立法院(国会)の本会議で、可決・成立した。改正法には「25年までに原発の運転を全て停止する」との条文が盛り込まれた。改正法は、原発分の電力を代替する再生可能エネルギーの普及など電力改革を行う内容。脱原発が実現すればアジアでは初となる。東京電力福島第1原発事故後、台湾では反原発の機運が高まっていた。蔡総統は総統選前から「25年までに非核家園(原発のない郷土)」の実現を掲げてきた。台湾では、完成した原発3カ所の原子炉6基(2基は停止、1基は点検中)が18年から25年までに順次40年の運転期間が終わる。日本企業が原子炉などを輸出し「日の丸原発」とも呼ばれた第4原発は14年に建設が凍結されている。蔡政権は運転延長や新規稼働を認めず、脱原発を達成する狙いだ。代替として再エネの普及拡大を目指し、電源構成で再エネ比率を現在4%から25年に20%まで大幅に引き上げ、再エネ事業への民間参加を促す。蘭嶼島にある低レベル放射性廃棄物貯蔵施設の移転計画も進める。しかし産業界を中心に電力供給の不安定化や電力価格の高騰を招きかねないと懸念の声も相次ぐ。

*6-3:http://blogos.com/article/205962/ (THE BIG ISSUE JAPAN 302号 2017年1月1日発売) ベトナム、原発計画中止 リトアニア、計画凍結 日本の脱原発への政策転換必至
●90年代からオールジャパン体制でこぎ着けた受注がご破算
ベトナム国会が原発立地計画を中止する政府提案を11月22日に可決した。ベトナム政府は電力需要に応える切り札として、2009年に4基の原発を建設する計画を承認し14年に着工する予定だった。しかし、当初案は資金難や人材不足で延期が繰り返されてきていた。また、11年の福島原発事故の教訓を生かし、津波対策として予定地をやや内陸へ移動する計画変更も行っていた。予定地は、風光明媚で漁業や果樹生産の盛んな南部ニントゥアン省ニンハイ県タイアン村だった。直前の計画では、第一原発2基は28年に、第2原発2基は29年に稼働、第一原発はロシア、第2原発は日本が受注、各100万キロワットで、計400万キロワットの設備となる予定だった。中止の理由は、福島原発事故を受けて建設コストが2倍に高騰したことに加えて、同国の財政悪化が重なったからだ。また、住民の反対の強まりや、コストをさらに大きく引き上げる要因にもなる原発の使用済燃料の処理・処分の未解決問題も指摘された。原発に代えて、今後は再生可能エネルギーやガス火力などを導入するという。マスコミのインタビューに応じたレ・ホン・ティン科学技術環境委員会副主任は「勇気ある撤退」と評価している。日本はこれまでベトナムの原発建設計画を受注すべく、90年代から原子力産業協会を中心に働きかけを繰り返してきた。2010年には「国際原子力開発(株)」を設立し、オールジャパン体制を作って臨んだ。同社は電力9社と原子力メーカー3社に、09年に政府出資で設立された「(株)産業革新機構」が株主となり設立された会社である。ロシア、韓国、中国、フランスなどの企業と受注を競う中で、ようやく合意にこぎ着け、11年9月に第2原発建設の協力覚え書きを取り交わした。同社の活動はベトナムに限定されており、同国向けに設立された会社だと言える。そんな万全の態勢で臨んだが、計画は中止となった。
●リトアニア、6割の国民が反対、日本の原子力産業界は大打撃
 また、リトアニアでも原発計画が凍結された。同国はEUに加盟する時点で、旧ソ連製の古いイグナリナ原発を廃止。09年、その敷地に隣接して新たなヴィサギナス原発建設が計画された。この建設を受注したのが日立製作所だ。12年6月21日に議会が承認、正式契約は周辺国の合意を得てからではあるが、政府による契約がほぼ固まった。事業規模は約4千億円、合計出力は最大340万キロワット、建設は2基になりそうだった。ところが、福島原発事故を受けて原発建設への反対が強まる中、野党が原発計画の是非を問う国民投票議案を提出、国民投票が12年10月に実施された。結果は建設反対が6割を超えたが、この国民投票は法的拘束力を持たず、政府は計画を中止しなかった。しかし、同時に行われた議会選挙で社会民主党が勝利し、次期首相候補は建設計画の見直しを明言。ここにきて正式に計画が凍結されることとなった。原発が市場で競争力を持つようになるか、電力供給の上で必要になるまでの間は凍結される。市場競争力は望めず、事実上の計画撤回と見てよい。国内での原発建設計画が停滞する中、輸出に活路を見いだそうと日本の原子力産業界は海外での活動を活発化させてきた。両国の撤退が原子力産業界にとって大打撃となるのは必至だ。9月に原子力関係閣僚会議が「もんじゅ」廃止の方向を決めた。再稼働は住民の反対や裁判所の決定で電力会社の期待に反してさほど進んでいない。さらに電力自由化の中で競争力を失う原発に対して、政府はさまざまな保護政策を講じ、福島原発事故の賠償や廃炉の費用を国民に転嫁しようとしている。それでも原発が以前のように復活することはないだろう。 17年にはエネルギー基本計画の改訂議論がスタートするが、今回の撤退を受けて、原子力政策の抜本的な見直しを検討するべきだ。

*6-4:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12778780.html?ref=pcviewpage (朝日新聞 2017年2月3日) 30年に「原発ゼロ」、民進法案に明記へ 「30年代」から前倒し
 民進党のエネルギー・環境調査会(会長・玄葉光一郎元外相)は2日、検討中の「原発ゼロ基本法案」(仮称)に「2030年ゼロ」を明記する考えを示した。従来の「30年代ゼロ」を実質9年前倒しする。蓮舫代表が3月の党大会で打ち出せるよう調整に入る。この日、同調査会役員会で玄葉氏が原案として示した。役員十数人で議論し、「賛成の方が多かった」(玄葉氏)。今後、党所属国会議員が参加する総会を開き、今月内に正式決定する。従来方針の「30年代ゼロ」は民主党政権時の12年に決定。党内の原発容認派に配慮し幅を持たせた。今回「30年ゼロ」へ早める背景には、13年9月から約2年続いた全原発停止の状況でも電力不足は起こらなかった事実がある。玄葉氏は記者団に、「電力をめぐる状況は変わった。省エネ技術や再生エネルギーも進んでいる」と話し、これらの推進も明記する方向。原発を利用し続ける方針の安倍政権との対立軸にする。また、原子力規制委員会の安全確認を得た原発の再稼働を条件付きで容認するとした従来方針も、要件をさらに厳しくする案が浮上している。


<メディアの質>
PS(2017年2月15日追加):*7-1に、「①新聞の発行部数は減少に歯止めがかかっていない」「②ネットを使うことにより、マスメディアを通さず個人も情報発信できるようになった」「③ソーシャルメディアにより、メディアは多数の中の一つでしかなくなった」「④ローカルは市場が小さく、広告モデルでの収益に限界がある。発行エリア以外からの収益を模索しているが、どう考えるか」と書かれている。
 私は、①の理由は、新聞が真実を追求せず、行政の広報機関と化して記事の内容に責任を持たないことにあり、②のように、本人やわかっている個人がリスクを侵して真実の情報を発信した場合には、それに内容で負けるのだと考える。ネットがなかった時代は、人々はマスメディアからしか情報を得ることができなかったが、現在は、②③のように、個人も情報を発信でき、人々は多方面から情報を入手できるようになったからだ。そして、人々が真実を求めて検索する時代になり、日本では、特に原発事故以来、行政の広報機関をして人々の側に立たなかったメディアへの信頼がなくなった。そのような中、私は、全国紙だけでなく、原発は東京新聞・河北新報・福島民友・西日本新聞・佐賀新聞、辺野古は琉球新報・沖縄タイムス、農業は日本農業新聞の記事を多く参考にした。そのため、④については、地方紙もデジタルで全国に読者を作ればよく、その方がいろいろな立場の人の考え方を知り易くなり、デジタル版に動画をつければテレビ報道も容易であるため、報道は大競争の時代に入ったのだと考える。
 なお、日本のメディアが経産省の広報機関をして国民を馬鹿にした情報を出している間に、*7-2のように、世界では自然エネルギーによる電力の普及が進んだ。そして、オランダ鉄道は、*7-3のように年明けから風力発電で全列車を運行しており、コストダウンが進んだことは間違いない。

*7-1:http://qbiz.jp/article/103658/1/
(西日新聞 2017年2月15日) 地方紙は生き残れるか ジャービス米教授、発想の転換促す
●IT先進国、米にも事例なし、ジャーナリズムを「サービス」に
 従来のビジネスモデルや伝え方に固執するメディアは淘汰される―。ジャーナリズムの将来に関する論考が世界的に注目を集める米ニューヨーク市立大のジェフ・ジャービス教授は、こう断言した。そして、特に地方紙について、その生き残りに向けた処方箋は「コミュニティーに耳を傾け、役立つサービスを提供すること」だという。部数減が続き、苦闘する地方紙の一記者として、その言葉の意味を考えた。ジャービス氏は米ローカルメディアの経験が豊富で、日本でも昨年発刊された「デジタル・ジャーナリズムは稼げるか」(東洋経済新報社刊)の著者として注目された人物。1月27日、東京都で開かれた「Media×Tech 2017」(Yahoo!ニュース・日経電子版主催)にネット中継で基調講演し、「ローカルメディアはどう生き残るか」と題したセッションにも参加した。イベントはメディアの今を受け止め、その将来を模索することを目的に初開催。地方紙や雑誌、ネットメディアなど幅広い分野の責任者が議論を深めた。
■「マス」のビジネスモデル殺した
 「ネットが殺したのは、マスメディアのビジネスモデルだ。マス、という考え方そのものもなくした」。ジャービス氏は基調講演の冒頭で、こう指摘した。今はツイッターを使うことで一個人でも影響力を行使できる。そうした手法で、マスメディアを通さずに情報発信でき、そこで関心がある人同士を見つけて、ともに行動することもできるようになった。マスメディアが出す情報はかつては手間がかかり、高価だったが、その希少性が失われている、という指摘だ。ジャービス氏は「マスメディアは、もっと人と人との関係性によって立つ存在にならなければならない」として、ジャーナリズムを「サービス」と考える発想への転換を促す。読者を「マス(集合体)」としてではなく、「個人」として捉え直すことから始めるべきだという。若い母親や商店主、それぞれのコミュニティーに耳を傾け、役立つサービスを提供することが重要だと説明した。
■単なるコンテンツ販売には限界
 「一つの製品を垂れ流しにするのではなく、たくさんの製品をつくっておく。まず自分たちのアイデアを見せるのではなく、ニーズを把握するところから始める。その上で何ができるのかを考える。それは新しいやり方で難しいが、大きな企業が小さく考えることのきっかけになると思う。それが新しいニュース組織の始まりだ」。ジャービス氏は収益について「単に(購読料として)コンテンツを販売するだけなら限界がある。メンバーから収益を取ることが重要で、そのほかに広告もあるし、イベントも活用できる」と指摘する。そして最後に、トランプ新政権についてこう言及した。「フェイクニュースには失望している。残念ながらトランプ氏が大統領になってしまった。しかし一方でフェイクニュースがあれだけ広まったということは、彼らがわれわれより、よりよい形で人々にリーチできたということでもある。シェアするのはその内容に共感するからであって、マスメディアはそこから学ばないといけない」。「コミュニティーのニーズをもっと聞くことはできる。ソーシャルメディアの存在によって、私たち(メディア)は希少な存在ではなく、多くあるうちの一つでしかなくなった。ジャーナリストになるのは、昔より大変になっていると言えるだろう」。来場者からは「ニュース記事はコンテンツではなくサービスだ、という指摘は理解できた。そこにはどのような技術が必要なのか」という質問があった。ジャービス氏は「やり方はいろいろある。フェイスブックなどの既存ツールを使うこともできる。(従来の)外向きジャーナリズムは世界で起きていることを伝えて世界を変えようとしている。そうではなく、コミュニティーの細かなニーズを満たすのが、内向きのジャーナリズム。それはネットの力でなせると思う」と答えた。
■加速する部数減への対応策は
 新聞の発行部数は減少に歯止めがかかっていない。日本新聞協会の調べでは、2000年10月に約5370万部あった新聞発行部数(朝夕刊セットを1部として計算)は2016年10月時点で約4327万部。16年間で1000万部以上減少したことになる。さらに減少率も2000年代前半は1%未満だったが、2010年以降は1~3%程度と高まっており、部数減が加速していることもうかがえる。こうした状況の中で、地方メディアはどのような取り組みが求められるのか。イベントでは、西日本新聞メディアラボの吉村康祐社長(福岡市)、十勝毎日新聞社(北海道)の林浩史社長が登壇し、その取り組みを紹介した。西日本新聞メディアラボは、西日本新聞社のデジタル部門的な存在。昨年は紙面企画と連動して「子ども貧困」対策に力を注ぎ、ヤフー・ニュースなどを経由して全国に伝えた。その結果、「子ども食堂」の支援に約1,100万円が集まった。そのほか、地元地銀の福岡銀行と業務提携してフィンテック事業(ITを活用した新たな金融サービス)や、情報コンテンツのウェブサイト「mymo」を展開。さらに九州のブロガーなど45の情報発信者を集めて、「九州を理解できる」キュレーションサイト「piQ」を運営している。一方、十勝毎日新聞社ではフェイスブックなどのSNSを活用して情報を集め、災害の紙面づくりに役立てようとしている。将来像について林氏は、こう説明した。「さらにハイパーローカルな存在を目指す。十勝は狭いので、『友達の友達は友達』という状況。権利の問題はあるが、人々の生活や一生を記録していく新聞をつくりたい。今は出生時も結婚時もお悔やみでも記事にしている。デジタルではさらに踏み込んで、人の一生を記録できるメディアにしたいと考えている」。両社の取り組みは、ジャービス氏の言う「コミュニティー」に着目しており、方向性としては間違っていないようだ。ローカルメディアの取り組みについて、吉村氏はジャービス氏に「ローカルは市場が小さく、広告モデルでの収益には限界がある。発行エリア以外からの収益を模索しているが、どう考えるか」と質問。ジャービス氏はこのように答えた。「市場以上に届けたいのなら、特別な商品が必要だ。特定のスポーツチームとか、エリアとか。オーディエンス(読者)と広告が結びついていないといけない。地方(地元)向けにやることと全国でやることを分けてほしい」
■苦しくても自らやるしかない
 印象的だったのは、米国の地方紙の事例を尋ねられたジャービス氏の反応。「2人に比べれば遅れているので、話すことはない」というものだった。地方紙は、よって立つ地域の人々と生きていくほかに方法はない。これまでも日本の各地方紙は「紙」を使ってさまざまな手法を駆使してきた。本紙以外にもフリーペーパーを発行したり、イベントを実施したりしながら、読者の囲い込みに力を注いできた。その意味では「コミュニティー」に目を向けてきたことは間違いない。ただ、それはあくまで「紙」の販売を主眼とするものだった。日本の新聞社がホームページの運営を始めてすでに20年以上が過ぎた。デジタルというツールを使い、コミュニティーとどのように接していけば、ビジネスモデルとして成り立つのか。ジャービス氏が言うように、米国より日本の地方紙の方が先進的であるとするなら、苦しくても自分たちで具体策を練るしかない、ということなのだ。

*7-2:http://www.renewable-ei.org/column/column_20160614.php (自然エネルギー財団理事長 トーマス・コーベリエル、自然エネルギー財団研究員 ロマン・ジスラー 2016年6月14日) 連載コラム 自然エネルギー・アップデート、世界の素晴らしい進歩から目をそらすな
 日本のエネルギー業界は、発電のためにウランと石炭のどちらを輸入するべきか議論しているようだが、世界の国々は、別の素晴らしい解決策をとっている。ここ数カ月間に発表されたデータを見れば、このことは明らかだ。2015年の米国の発電データが発表され、2010年比で目覚ましい進展があったことが明らかになった。化石燃料による電力は150TWh(1,500億kWh)以上減少し、原子力も10TWh(100億kWh)減少した。成長したのは自然エネルギーによる電力で、2015年には2010年比で約135TWh(1,350億kWh)増加した。今年第1四半期における化石燃料の新規導入量は18MW(1.8万kW)であった。一方、自然エネルギーの新規導入量は1,291MW(129.1万kW)で、化石燃料の70倍以上増加した。英国では、今年第1四半期に、風力による電力供給量が石炭火力を上回った。風力の電力供給量が2.3TWh(23億kWh)だったのに対し、石炭火力は1.8TWh(18億kWh)にすぎなかった。5月9日には、1882年以来初めて、石炭火力による電力が英国の電力系統に全く供給されない瞬間が訪れたと報じられた。さらに、太陽光の電力供給量が石炭火力を上回る日が1週間続いた*。ポルトガルは早くから風力発電を利用しており、風力の新規導入はポルトガルで最もコストの低い発電オプションとなっている。2015年には自然エネルギーが同国の電力消費量のほぼ半分を賄った。そして今年5月初め、ポルトガルは4日間連続で自然エネルギー100%を達成したことを報告している。このように、世界のさまざまな国で自然エネルギーが主流になってきた事例がたくさんある。ここまで発展できたのは、自然エネルギー開発に多額の支出が必要だったときに、多くの資金を産業界に投じる先駆的な国々があったおかげである。米国では開発の多くが軍の研究プログラムとして実施された。中国では、自然エネルギー支出が経済をさらに成長させるための一手段と考えられてきた。そしてドイツでは、多くの費用が必要となる原子炉事故のリスクを軽減するための手段の一つであった。このような大胆な取り組みの結果、自然エネルギーは今や世界中のほとんどの国で、競争力のある価格で利用できるようになった。2年前から、風力は世界の多くの地域で最もコストの低い新電源となっている。また昨年はいくつかの国で、太陽光が新たな電力供給のための競争に勝利を収めた。最近の最も素晴らしい成果は、ドバイで800MW(80万kW)の太陽光発電の応札価格が1kWhあたり3円となったことである。太陽光発電の価格がわずか18カ月で半分になったことになる。日本の太陽エネルギー量はドバイの半分にすぎないため、日本でのコストがドバイと同程度まで低下することはないだろうが、2倍以上である必要もない。世界の自然エネルギーは発展し続けており、日本が石炭やウランの輸入に代わって国産エネルギー源である自然エネルギーを導入する機会は、ますます拡大している。
* 更新情報:2016年5月、英国における太陽光発電推定量は1,336GWh(13.36億kWh)にのぼり、石炭火力の893 GWh(8.93億kWh)を50%も上回った。http://www.carbonbrief.org/analysis-solar-beats-coal-over-a-whole-month-in-uk-for-first-time

*7-3:http://www.saga-s.co.jp/news/national/10201/395693
(佐賀新聞 2017年1月16日) 風力発電で全列車を運行、オランダ鉄道、年明けから世界初
 オランダ最大の旅客列車運行会社、オランダ鉄道(NS)は年明けから、風力発電の電気のみで全列車を運行し始めた。同国全土で毎日約60万人が「風力電車」で移動しているといい、NSなどは世界初の快挙だと強調。「風車の国」の面目躍如と言えそうだ。NSは2015年、同国電力会社エネコと共同で、風力発電だけで列車を走らせるプロジェクトを開始。16年には既に全列車の75%が風力の電気で動いていた。NSは年間、人口約80万人の首都アムステルダムの全世帯合計とほぼ同じ電力量を消費。欧州メディアによると、NSは毎日約5500本の列車を走らせている。

<自然エネルギーの実力>
PS(2017年2月17日追加):*8のように、日本が「100%自然エネルギー」を実現すれば、投入する設備費用を差し引いても、燃料代節約などで84兆円の「得」になるそうだが、それは技術の普及・進歩によって前倒しが可能だ。そして、その効果は、①地球環境への好影響 ②環境技術の進歩 ③外国に支払っていた燃料コスト削減による企業利益率や税収の増加 ④設備導入時の前向きな投資増による資本生産性向上と景気上昇 ⑤国民生活の豊かさ実現 等で、100%の解である。そのため、「100%の解はあり得ない」「実現は遠い未来のことだ」などと決めつけるのは、自分で自分の首を絞める行為だ。

*8:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12799670.html (朝日新聞 2017年2月16日) 自然エネ100%、日本で実現すると「84兆円お得」 WWFジャパン試算
 世界自然保護基金(WWF)ジャパンは16日、日本が2050年までに石炭や石油などの化石燃料に頼らない「100%自然エネルギー」を実現すれば、必要な設備費用を投入しても、燃料代節約などで84兆円の「得」になるとの試算を発表する。地球温暖化対策の国際ルール「パリ協定」がめざす脱炭素社会は実現可能だとしている。試算によれば、10~50年の約40年間で、設備費用は産業部門や家庭での省エネに191兆円、太陽光などの自然エネルギーの導入に174兆円の計365兆円が必要な一方、化石燃料の消費が減って449兆円の節約になるという。温室効果ガスの排出量は10年に比べて95%削減できるとした。現在ある技術が広く普及すれば、エネルギー需要は10年比で47%減らせると試算。すべて自然エネルギーで賄えるとし、国内の気象データから太陽光と風力の発電量は2対1の割合が望ましいとした。30年ごろから自然エネルギー発電で余った電力から水素をつくって活用すると想定している。昨年発効したパリ協定では、各国が温暖化対策の長期戦略を国連に提出するよう求められている。日本は環境省と経済産業省がそれぞれに素案をまとめている。WWFジャパンは、政府に長期戦略の早期策定を求めている。

| 資源・エネルギー::2017.1~ | 02:24 PM | comments (x) | trackback (x) |
2016.11.28 エネルギー変換を迫るパリ協定及びエネルギー変換による日本企業の利益率上昇と日本の税収増・国富の増加について (2016年11月29、30日、12月1、2、3、6、8、14、15、21、26日に追加あり)
 書くべきことは多いが、今日は、気候変動枠組条約締約国会議(COP22)によって求められるエネルギーの変換と、それがもたらす日本企業の利益率上昇、税収増、日本の国富増加について記載する。

    
 2016.11.20  2016.11.20  2016.11.18   2016.11.19   2016.11.23
                  日経新聞
(図の説明:パリ協定の発効により、環境に良い財やサービスを供給する会社の事業機会が広がり、これは国民の福利を増すことにも貢献する。また、多くの業界に低炭素の動きが広がっており、これは同時にNOxやSOxの排出も抑制するため、空気をきれいにして住環境をよくする。そして、世界の自動車メーカーがEV・FCVなどの無公害車に舵を切ったが、日本では1995年頃から本格的なEV・FCVの開発を始めため、既に多くのノウハウを持っている。このような中、ドイツのVWが急速にEVシフトを始め、トヨタや日産もガソリン車の熱交換器や排気部品を作っていた子会社の扱いに苦慮しているが、これらの会社も熱交換や排気の技術を応用して事業機会の広がった市場にアクセスすれば、生き残りは十分に可能だ)

 
 日本ガイシの蓄電池     地熱発電所     有機薄膜型太陽電池 除染と廃炉
            2016.11.20日経新聞          2016.11.27日経新聞
(図の説明:自然・再生可能エネルギーを使う技術は進歩し、日本ガイシの大容量蓄電池、地熱発電所、有機薄膜型太陽電池《建物の壁や窓にも設置可》などができたため、原発のコストは決して安くない)

(1)気候変動枠組条約について
1)COP21、COP22
 モロッコで開かれたCOP22は、*1-1のように、パリ協定(COP21)を受けて、「地球温暖化対策はすべての国の緊急の責務だ」とする「マラケシュ行動宣言」を発表し、国際社会が一丸となって温暖化対策取り組む決意を示した。

 パリ協定は、化石燃料を排して自然エネルギーに転換することを決定し、*1-2のように、世界の都市・企業・投資家など約700の組織が実施を支援すると表明している。支援を約束した組織は、ニューヨーク・ロンドン・東京・横浜等の都市や米マイクロソフト・独保険大手アリアンツ・富士通・リコー・武田薬品・帝人等の企業で、COP21の議長ファビウス仏外相は「低炭素社会や気候変動に強靱な未来への移行の鍵となる」としているが、都市計画や技術革新などで積極的にパリ協定を支援した方がメリットの大きい都市や企業は多いだろう。

2)厳しい環境規制とエコカーの普及は生産性の向上と成長のツールである
 *1-3のように、トランプ氏は米国の環境規制に慎重だそうだが、厳格な環境規制によるEV・FCVなどのエコカー普及は、新興国も含めた地球温暖化対策のKeyになる。そして、これらのNOxやSOxを出さないエコカーにより、①車が普及しても街がすすけないため ②公害を出さず ③自然エネルギーと組み合わせれば、どの国でもエネルギーを自給でき ④すべての車をエコカーにすれば、道路を建物の中に通すことも可能になる などの利点がある。

 また、自動車製造の競争において土俵が変わるため、これまでの順位に縛られず、米国企業はじめ開発途上国の企業が自動車産業で勝利するチャンスが生まれる。そのため、カリフォルニア州の排ガスを一切出さない車の販売を義務付ける厳しい方向への規制強化は技術進歩を促してよいと私は考える。

 日欧勢よりトラック販売が多く、燃費規制への対応に苦慮してきた米系メーカーがあるそうだが、アメリカはEV・IT・自動運転・人工衛星技術が進んでいるため、トラックもまた、本気で開発すればFCV・EVによる自動運転車の開発はすぐである上、自然エネルギーを使って自ら発電しやすい農家が使用する農業機械とEVの親和性は高く、それを開発すれば自然に普及すると思われる。

3)エネルギーの変換が日本企業の利益率を上昇させ、日本の国富を増やす理由
 燃料は、産業革命後(日本では明治維新後)、石炭から石油へと変わってきたものの、どちらも日本では十分に産出されないものだったため、自然・再生可能エネルギーに変換すれば、自分でも発電できる比較的安いエネルギーが日本にも十分に存在することになる。そのため、高いエネルギーコストを外国に支払わなくてすみ、その分、エネルギー需要者の生活は楽になり、エネルギーを使う企業の利益率も上がって、それは賃金増、税収増、配当増に繋がる。

 また、自然・再生可能エネルギーへの変換を国として見れば、エネルギーが国内に存在するため、エネルギー代金を外国に支払わなくてすみ、それだけ国内消費や投資に回せる資金が多くなる。

(2)EV・FCVが起こす自動車会社再編の事例
1)独フォルクスワーゲン(VW)の場合
 独フォルクスワーゲン(VW)は、*2-1のように、2016年11月22日、2025年には電気自動車(EV)の販売台数を100万台として業界首位をめざし、米国でもEVを生産する戦略を立てた。そして、車がネットに接続した付加サービスも充実して世界8,000万人の会員を獲得し、2025年には関連売上高で10億ユーロ(約1180億円)を狙って、車販売以外の収益源も広げるそうだ。

 一方、VW乗用車のブランドは、2020年までに3万人削減を柱としたリストラ策をまとめ、効率化で次世代技術やサービス投資の原資を確保し、EVの米テスラモーターズ、ライドシェア(相乗り)の米ウーバーテクノロジーズなど新興勢力に対抗するとのことである。そして、「電動車両は4、5年でブレークスルーが起きる。販売台数だけでなく技術、ビジネスモデルでもリーダーに立つ」と宣言して、EV専用に車台や主要部品を共通化したプラットフォーム「MEB」の車両生産を、独2工場に加えて米国でも生産するそうで、経営戦略の変更から実行までの時間が短く、戦略内容にも先見の明がある。

2)日産自動車の場合
 日産自動車は、*2-2のように、2016年11月22日、系列最大の自動車部品メーカー、カルソニックカンセイを米投資ファンドのコールバーグ・クラビス・ロバーツ(KKR)に売却すると発表し、「系列解体」の大なたを振るうカルロス・ゴーン社長が中核部品メーカーまで手放すとのことで、これは、系列とともに新技術へと向かうトヨタ自動車と一線を画している。

 カルソニックカンセイ株は、KKRが、4,983億円で株式公開買い付けする。EVや自動運転が普及すれば、自動車の熱交換器や排気部品は市場縮小に繋がるため、日産自動車はカルソニックを手放す一方で、自動運転をにらんで独ボッシュや独コンチネンタルなど「メガサプライヤー」と呼ばれる欧米部品大手と連携を強め、彼らの先端技術に日産のノウハウを加えて効率的で競争力のあるクルマづくりを目指すとのことで、トヨタがトヨタ自動車系列の部品会社に自動運転などの先進分野への投資を促しているのと対照的である。

 世界では日産のゴーン社長のやり方が普通で、トヨタのやり方は日本式経営だ。トヨタの経営の方が、せっかく作った組織が壊されず、従業員の雇用が守られ、グループの結束も強くなるが、変化に迅速さを欠く。そのため、トヨタの方法は、変化に時間をかけられる場合には強いが、通用しない場合もある。

3)トヨタ自動車の場合
 しかし、本格的な馬力の出るEV(電気自動車)やFCV(燃料電池車)を開発したのは日本の自動車会社が世界で最初だったため、既に、蓄積している技術も多く、トヨタ自動車は、*2-3のように、中国の開発拠点を増強して、EV投入も検討するそうだ。中国ではPHV(プラグイン・ハイブリッド車)とEVを「新エネルギー車」として普及に力を入れるため、その中でのPHVは既に古いだろう。そのため、今後はトヨタもゼロエミッション車としてFCV・EVの双方に注力するというのは、戦略として妥当である。

 それでは、これまで培ってきた自動車の熱交換・排気技術が生かせないというのが、大手自動車メーカーの悩みだが、熱交換や排気の技術は自動車にしか使えないわけではなく、航空機・船舶などの大型の乗り物、ビルや家などの建物にも応用できる。

 そのため、*2-4のように、トヨタホームがミサワホームを子会社化し、技術・商品開発・調達などの協業を拡大して環境性能の高い住宅を作り出せば、国内の住宅販売の伸びが小さくても、自動車と同様、輸出や海外展開が可能だろう。さらに、*2-5のように、トヨタは、大型トラックに水素で電気を作る燃料電池を搭載して米で実証実験を行うそうだが、燃料電池には熱交換や排気の技術が欠かせない。

4)それでは、日産系のカルソニックカンセイはどうすればよいのか
 日産自動車が米投資ファンドのコールバーグ・クラビス・ロバーツ(KKR)に売却すると発表した日産系列の自動車部品メーカー、カルソニックカンセイは、やはり熱交換器や排気部品を製造していた会社であるため、*2-6の大和ハウスなどの住宅・建築や航空機・船舶・農機具メーカーなどとゼロエミッション化のための技術・商品開発、部材調達などの協業を行うのが効果的だろう。

 つまり、現在、持っている技術を最大限に生かしながら、次の技術開発を行い、それを商品化して市場に出すのが最も合理的だと、私は考える。

(3)再生可能エネルギーによる発電と蓄電技術の進歩
1)再生可能エネルギーによる発電技術
 *3-1のように、「温暖化対策は日本にとって商機だ」という考え方がやっと広まってきたのは、遅すぎたがよいことだ。日本は文系が科学音痴であるため、パリ協定の批准では後れを取って環境でリーダーになることができなかったが、技術上は地熱・ごみ焼却による発電は既に行っている。そのため、後は、政治・行政・メディアが変わるだけなのだ。

 また、*3-2のインドネシアで大規模地熱発電の建設を進めているのは、日本の東芝・伊藤忠商事・九州電力等で、日本よりインドネシアの方が開発しやすいため、インドネシアで先に建設しているのだ。

2)蓄電技術の進歩
 日本ガイシは、*3-3のように、三菱電機からコンパクトな世界最大級の電力貯蔵用NAS電池(出力5万キロワット、容量30万キロワット時)を受注し、九電の蓄電池変電所に納入して運転開始したそうだ。

 九電管内では、太陽光発電を中心として再生可能エネルギーの普及が急速に進んでいるため、NAS電池によって電力の安定供給・再生可能エネルギーの円滑な接続に向けた取り組みを進めるそうだ。NAS電池は、日本ガイシで2002年に事業化され、現在は世界で約200カ所、総出力53万キロワット、総容量370万キロワット時の納入実績があり、イタリアやアラブ首長国連邦(UAE)でも電力系統に設置されて電力需給バランスの調整に利用されているとのことである。

3)電力自由化と脱原発・再生エネの選択
 グリーンコープ生協さが(佐賀市、柳川晶子理事長)は、*3-4のように、11月14日から、太陽光発電などの再生可能エネルギーを使った電気「グリーンコープでんき」の共同購入を受け付けるそうだ。これにより、原発によらない太陽光・バイオマス・火力などの電気を100%供給するため、電力の需要者もそれを選べることになる。このように、需要者が電力を選択できることが、(私が提案した)電力自由化の狙いだったのである。

(4)放射性廃棄物と電源構成
 日本の経産省は、*4-1のように、「電力の安定供給のために、2030年の電源構成で原子力や石炭火力などの“ベースロード電源”を全体の6割以上にする」そうだ。これには、次世代送電網や上記の新技術・新ビジネスの創出は考慮されていない。これが、「日本は文系が科学音痴で駄目だ」と私が書いている理由である。

 そして、原子力の構成比を従来通り20%以上と決めた後、*4-2のように、福島廃炉・賠償費は、2013年末に11兆円としてきた約2倍の20兆円を超えると再推計し、費用の上振れ理由は、前回2013年末には想定していなかった賠償対象件数の増加や除染作業の難しさが理由だとしている。これは、経産省の想定、見積もり、予算の信頼性が皆無だということを意味する。また、東電へは無利子融資枠を現在の9兆円より広げる方向で財務省と協議した上、一部はほかの電力会社も含めて電気料金に上乗せするため、国民負担の増大が避けられないのだそうだ。

 さらに、*4-3のように、経産省の有識者会議で原発の廃炉をめぐり、その費用を誰が、どう払うのかが、今さら議論されており、一部の費用負担をすべての国民に求める案を検討しているそうだ。しかし、「原発は安全でコストが安い」などとして異論を言わせず原発を推進してきたのは、経産省と大手電力会社自身であるため、その責任を明らかにすることなく国民が負担するのは、今後のためにもよくない。

<COP22、パリ協定>
*1-1:http://digital.asahi.com/articles/ASJCL3RWTJCLULBJ00B.html
(朝日新聞 2016年11月18日) 温暖化対策は「緊急の責務」 COP22宣言
 モロッコで開かれている、気候変動枠組み条約締約国会議(COP22)の参加国は17日、共同で「地球温暖化対策はすべての国の緊急の責務だ」とする「マラケシュ行動宣言」を発表した。温暖化対策のルール「パリ協定」からの離脱の意向を示すトランプ次期米大統領に対し、国際社会が一丸になって取り組む決意を示した。宣言では、パリ協定を受けて、各国政府や産業界などあらゆる分野で温暖化の取り組みがなされ、その流れは押し戻せないとし、「地球温暖化と闘うために、各国は最大限の政治的な努力をすべきだ」とした。さらに、温暖化対策のために途上国に対し、年間1千億ドルの資金を拠出することを改めて明言した。4日に発効し、日本も締結したパリ協定は、すべての国が参加し、産業革命前の気温と比べて気温上昇を2度より低く抑えることを目指している。

*1-2:http://www.nikkei.com/paper/related-article/tc/?b=20161120&bu=BFBD9496EABAB5E6B39EBAA88BA48 (日経新聞 2016.11.20) 都市や企業など世界700の組織、パリ協定を支援
 12日に閉幕した第21回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP21)で採択された地球温暖化対策の2020年以降の新枠組み「パリ協定」について、世界の都市や企業、投資家など約700の組織が16日、協定の実施を支援すると表明した。気候変動に対応するための変革も加速する。支援を約束したのはニューヨークやロンドンなどの都市と米マイクロソフト、独保険大手アリアンツなど。日本からは東京都や横浜市、富士通、リコー、武田薬品工業、帝人などが加わった。COP21の議長を務めたファビウス仏外相は「低炭素社会や気候変動に強靱(きょうじん)な未来への移行の鍵となる」と話す。

*1-3:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20161118&ng=DGKKZO09676030X11C16A1TI1000 (日経新聞 2016.11.18) トランプ氏、米環境規制に慎重 エコカー戦略を翻弄 大型車には追い風も
 オバマ大統領の遺産のひとつとされる厳格な環境規制への対応が迫られる米国市場。16日のロサンゼルス自動車ショーでは、電気自動車(EV)などエコカーの発表が相次いだ。だが、温暖化対策に慎重なトランプ次期米大統領の登場で、流れが変わる可能性もある。「我々にとって最初のEVだ」。英高級車ブランド、ジャガー・ランドローバーのラルフ・スペッツ最高経営責任者(CEO)は自動車ショーの会場で胸を張った。2018年発売予定のEV「アイペース」は1回の充電で220マイル(約354キロメートル)走る。この日は独BMW傘下のミニも充電できるハイブリッド車(PHV)を初披露。韓国現代自動車も20年までに14モデルのEV、ハイブリッド車、PHVを米国で投入する方針を表明した。マツダはディーゼル車を北米市場に初投入すると発表。19年までにEV、21年以降にPHVも投入する。ガソリン安を背景に米新車市場の約6割はピックアップトラックなど燃費の悪い大型車が占め、小型で購入費も高いエコカー人気は伸び悩む。それでも各社が開発に注力してきた背景には厳しい米国の燃費規制がある。連邦レベルでは25年までに燃費を今より5割以上改善するよう求める。カリフォルニア州では排ガスを一切出さない車の一定数の販売を義務付ける規制が18年モデルの車から強化される。だが、トランプ次期米大統領は温暖化対策に慎重で、選挙中は米環境保護局(EPA)の予算大幅削減を公言。日欧勢よりもトラック販売が多く燃費規制への対応に苦慮してきた一部米系メーカーはこれを好機ととらえる。選挙直後の9日、米自動車工業会はトランプ氏の政権移行チームに、燃費規制の緩和を求める書簡を早速送った。エコカー開発に既に巨額の投資をしてきたトヨタやホンダのような企業にとっては「先行者の強み」をそがれる恐れがある。ホンダの北米担当幹部は「規制にかかわらずエコカーの開発は進める」と言うが、政権交代の象徴としてトランプ氏が燃費規制をつぶしにかかってもおかしくはない。自動車ショーの会場内では今年もエコカーよりも数多くのピックアップトラックや多目的スポーツ車(SUV)が並ぶ。トランプ次期米大統領が政策を大きく方向転換すれば、自動車メーカーに与える影響は大きい。

<自動車会社の再編>
*2-1:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20161123&ng=DGKKASGM22H81_S6A121C1FF1000 (日経新聞 2016.11.23)EV販売、25年100万台に VWが目標、首位めざす
 独フォルクスワーゲン(VW)は22日、中核のVWブランド乗用車部門の2025年までの経営戦略を発表した。25年に電気自動車(EV)の販売台数100万台で業界首位をめざし米国でもEVを生産する。車がネットに接続した付加サービスも充実し世界8000万人の会員を獲得、25年に関連売上高で10億ユーロ(約1180億円)を狙う。車販売以外の収益源を広げる。VW乗用車ブランドは18日に20年までの3万人削減を柱としたリストラ策をまとめたばかり。効率化で次世代技術・サービスの投資の原資を確保し、EVの米テスラモーターズ、ライドシェア(相乗り)の米ウーバーテクノロジーズなど新興勢力に対抗する。VWブランドはグループの販売台数の約6割を占め改革の成否を握る。同部門を率いるヘルベルト・ディース取締役は22日の記者会見でEV首位を狙う戦略に関し「電動車両は4、5年でブレークスルーが起きる。販売台数だけでなく技術、ビジネスモデルでもリーダーに立つ」と宣言した。EV専用に車台や主要部品を共通化したプラットフォーム「MEB」の車両生産は18日に決めた独2工場に加え21年から米国でも生産することを決めた。すぐに利益に結びつく従来の製品群も拡充。販売台数に占める多目的スポーツ車(SUV)の比率を2倍に増やし、VWが強い欧州、中国以外でも上積みを狙う。

*2-2:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20161123&ng=DGKKASDZ22HRG_S6A121C1TI1000 (日経新聞 2016.11.23) 日産、トヨタと別の道 カルソニック売却発表 系列解体、次世代車シフト
 日産自動車は22日、系列最大の自動車部品メーカー、カルソニックカンセイを米投資ファンドのコールバーグ・クラビス・ロバーツ(KKR)に売却すると正式発表した。仏ルノーから1999年に日産に乗り込んで以来、「系列解体」の大なたを振るうカルロス・ゴーン社長が中核部品メーカーまで手放す。自動運転や電気自動車(EV)の技術開発に向けた決断は、系列とともに新技術へと向かうトヨタ自動車と一線を画している。
●総額5000億円
 KKR傘下の会社を通じて2017年2月下旬からカルソニックカンセイ株に対しTOB(株式公開買い付け)を始める。日産が持つ41%を含めた全株の取得を目指す。買い付け価格は1株当たり1860円で全株式を取得する場合の買収総額は4983億円。KKRによる日本での投資額としては14年に傘下に収めたパナソニックヘルスケア(約1650億円)を抜き過去最大になる。カルソニックカンセイは日産の系列でも中核の中の中核企業といっていい。大量の部品を納めるだけではない。モータースポーツにも「CALSONIC」を冠した車両が参戦する。グループの黒子であると同時に主役であり、技術力と存在感の双方を兼ね備える。ただEVや自動運転が普及すれば魅力が徐々に薄れるのも事実だ。EVの普及は得意とする熱交換器や排気部品の市場縮小につながる。日産は何社もの同業にカルソニック株の売却を持ち掛けたが断られ、売り先はなかなか決まらなかった。「サプライヤーの潜在能力を生かす巧拙が競争力を左右する」。日産の西川広人共同最高経営責任者(CEO)は話す。カルソニックを手放す一方、自動運転をにらんで独ボッシュや独コンチネンタルなど「メガサプライヤー」と呼ばれる欧米部品大手との連携を強める方針。彼らの先端技術に日産のノウハウを加え、効率的で競争力のあるクルマづくりを目指す。日産向け売上高比率が8割超のカルソニックと対照的なのがトヨタ自動車系部品会社だ。デンソーはトヨタグループ以外への比率が半分を超える。トヨタは他流試合も奨励して系列メーカーの収益力を高め、自動運転など先進分野への投資を促そうとしている。かつてのトヨタはグループ内で利害対立が表面化することもあったが、近年は連携を強めようとする動きが目立つ。愛知県蒲郡市にグループの研修施設を置き、各社の新任役員が互いの歴史を学ぶ機会を設ける。12月に新設するEVの企画開発組織にはデンソーなど主要3社の社員も加わる。
●世界の潮流
 系列を崩し、幅広いサプライヤーの技術を活用する日産の選択は世界の自動車メーカーの潮流だ。サプライヤーが供給するモジュールの組み立てに注力すればコストは下がる。ただ部材が共通になることで似たようなクルマを生みだしてしまわないかという懸念は常にある。欧米流のクルマづくりか、グループ連携の強化か。両社の選択の成否は勝ち残りに向けた競争力に直結しそうだ。

*2-3:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20161119&ng=DGKKASDZ18HNP_Y6A111C1TJC000 (日経新聞 2016.11.19) トヨタ、中国の開発拠点を増強 EV投入を検討
 トヨタ自動車は18日、中国江蘇省常熟市の研究開発拠点を拡張すると発表した。既存の実験棟を増強し、新たな実験棟や電池の評価試験に使う施設を建設する。中国では2018年の発売を予定しているプラグインハイブリッド車(PHV)に加え、電気自動車(EV)の投入も検討すると表明。環境車の品ぞろえを増やし、環境規制の強化に対応する。同日に報道陣への公開が始まった広州モーターショーの会場で、中国本部長の大西弘致専務役員が説明した。研究開発拠点は全額出資子会社のトヨタ自動車研究開発センター(中国)が増強し、18年末以降に完成する予定だ。同拠点では6億8900万ドル(約760億円)の投資を予定しており、今回の増強もこの範囲に含むという。中国ではPHVとEVを「新エネルギー車」と定め、多額の補助金を支給するなど普及に力を入れている。トヨタは18年に主力小型車「カローラ」などのPHVを発売するほか、15年には広州汽車集団との合弁会社を通じ、中国独自ブランドのEVを発売する方針を示していた。今後はトヨタブランドでもEVの投入を検討する。トヨタは12月、本社にEVの企画・開発組織「EV事業企画室」を設け、この分野の取り組みを強化する。ゼロエミッション車では燃料電池車(FCV)とEVの双方に注力する方針だ。

*2-4:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20161123&ng=DGKKASDZ22HR0_S6A121C1TJC000 (日経新聞 2016.11.23) トヨタホーム、ミサワホームを子会社化 110億円で、国内市場縮小に備え
 トヨタホームは22日、ミサワホームを子会社化すると発表した。TOB(株式公開買い付け)と第三者割当増資を組み合わせて約110億円を投じ、持ち株比率を51%に引き上げる。ミサワの上場は維持する。子会社化を契機に、部材の調達や商品の共同開発などの協業を拡大し、国内住宅市場の縮小に備える。トヨタホームはミサワ株の27.8%を保有する。ミサワの発行済み株式の14.1%に相当する約546万株を上限にTOBを実施する。51%を保有するために必要な残りの株式は、新株発行と自社株処分を組み合わせてミサワから割り当てを受ける。TOBによる取得株数が上限に達しなかった場合でも、増資の金額を増やすことにより、51%の持ち株比率を実現する考えだ。TOBによる買い付け価格は1株あたり1100円で、21日までの1カ月間の平均株価に34%上乗せした価格とする。TOBの期間は28日~12月26日。第三者割当増資の1株あたりの価格は874円とする計画だ。ミサワを子会社化する背景には、国内の住宅市場の縮小懸念がある。国土交通省によると、2015年の新設住宅着工戸数は約91万戸だった。08年の約109万戸を最後に、年間100万戸を割り込む水準が続く。トヨタホームも19年度までに戸建て住宅の販売を14年度比で約5割増の7千戸に増やす計画だが、この目標値は実質的に取り下げている。ミサワも中期経営計画では16年度の売上高目標を5千億円としていたが、今期見通しは4050億円。ミサワはトヨタ自動車を親会社に持つトヨタホームの信用力と資金力を後ろ盾に事業の拡大に弾みをつける考えだ。トヨタホームとミサワホームは住宅販売の大幅な伸びが見込めないなか、合理化などで協力関係を一段と深め生き残りをめざす。技術や商品開発、部材調達などの共通化部分を増やす。ミサワは増資などで得た資金を不動産開発に投じる計画だ。両社とも戸建て住宅が中心の収益構造のため事業の多角化ノウハウを共有する。ミサワは経営状態が悪化し、04年に産業再生機構の支援が決まった。その後、トヨタなどがスポンサーとなり役員などを派遣。トヨタがトヨタホームに住宅事業を集約するなどして、現在はトヨタホームがミサワの筆頭株主となっている。

*2-5:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20161119&ng=DGKKZO09731110Y6A111C1TJC000 (日経新聞 2016.11.19)トヨタ、大型トラックに燃料電池を搭載 米で実証実験
 トヨタ自動車は17日、水素で電気を起こす燃料電池の技術を使った大型トラックについて、米カリフォルニア州で実証実験を始めると発表した。同社はすでにセダン型の燃料電池車(FCV)を発売している。大型トラックにも燃料電池を搭載できれば、荷物の輸送時などに出る温暖化ガスを大幅に削減できるとみている。

*2-6:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20161123&ng=DGKKZO09849690S6A121C1DTA000 (日経新聞 2016.11.23) 大和ハウス、6年債と10年債の発行見送り コスト上昇で
 金利上昇が企業の資金調達に影響を与えている。大和ハウス工業は22日、20年債の発行条件を決めた一方、6年債と10年債の起債を見送った。米大統領選後の長期金利上昇の影響で、資金調達コストが当初の想定よりかさむと判断したためだ。市場では、金利の不安定な推移が続けば今後の起債ペースが鈍るとの見方も出ている。20年債の発行額は100億円で、利率は0.690%に決まった。当初は「6年債と10年債で300億円程度を調達する」と投資家に通知していたが「投資家が期待する利回りが上昇した」(大和ハウスの担当者)ため、20年債のみに切り替えた。今後の代替調達方法は未定という。米大統領選後、マイナス圏で推移していた日本の長期金利はプラスに浮上した。社債金利も歩調を合わせて上昇。流通市場で大和ハウスと同格付けのダブルA格社債の利回りは0.3%台前半と、10月末(0.2%台半ば)から上昇している。投資家からは「社債の相対的な魅力が低下した」(国内運用会社)との指摘が多くなっている。企業の10月の起債額は8250億円と、過去最高だった9月の発行額に比べ約6割減った。11月の起債額も22日時点で3200億円と、引き続き低調だ。みずほ証券の香月康伸シニアプライマリーアナリストは「償還までの期間が短い社債の発行に、企業は慎重になっている」と指摘する。

<再生可能エネルギー技術>
*3-1:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20161120&ng=DGKKZO09751410Z11C16A1TJC000 (日経新聞 2016.11.20) 温暖化対策、日本に商機、COP22閉幕、パリ協定ルール18年決定 地熱・ごみ発電強み トヨタ、自社工場に大型風力
 モロッコで開かれていた第22回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP22)が19日閉幕した。2020年以降の地球温暖化対策「パリ協定」を受け、世界のグローバル企業は「温暖化ガス削減は商機」とみて動く。協定批准で日本は後れを取り、企業には負担増を警戒する見方もあるが、地熱発電やごみ焼却発電など得意の環境技術を生かしたビジネスが育つきっかけにもなる。モロッコのマラケシュで開かれたCOP22は、パリ協定の詳細ルールを2018年に作ることで一致して閉幕した。4日に発効したパリ協定は地球の気温上昇を抑えるため、今世紀後半には温暖化ガス排出を実質ゼロにすることを目指す。各国は独自の削減目標を掲げるが、グローバル企業は国の枠にとらわれずに対策に取り組む。米アップルや米ゼネラル・モーターズ(GM)、英蘭ユニリーバ。事業活動で使う電力を全量、太陽光発電など再生可能エネルギーで賄うことを目標とする世界企業の集まり「RE100」には欧米中心に80社以上が名を連ねる。日本企業では電通の英子会社だけだ。世界企業が脱炭素を急ぐのは投資家からの要請でもある。世界最大級の政府系ファンドのノルウェー政府年金基金は今春、石炭関連企業から出資を引き揚げた。持続成長につながるとして環境に配慮した企業に優先的に投資する動きが世界の大手年金基金を中心に広がっている。温暖化対策は日本では企業の社会的責任(CSR)と捉えがちだが、「世界企業は収益に直結するとみている」(後藤敏彦サステナビリティ日本フォーラム代表理事)。出遅れが指摘される日本企業でも変化は起きている。トヨタ自動車は高級車「レクサス」などを生産する田原工場(愛知県田原市)内に、20年をめどに出力が最大2万6000キロワットの風力発電設備を設置する予定だ。電力は工場で全量消費する。自社向けの風力発電設備としては国内最大となる。トヨタは50年に工場の二酸化炭素(CO2)排出をゼロにする長期目標を掲げる。風力発電はその一環だ。先進国に限定した京都議定書と異なり、パリ協定は全世界が対象だ。日本で培った環境技術を新興国や途上国に輸出できる商機到来ともいえる。原子力発電所200基分――。地中深くにある蒸気を使って電力をつくる地熱発電は、50年に世界で総出力2億キロワットと、40年間で20倍に膨らむとの予測がある。市場の中心は東南アジアやアフリカだ。中核部品である地熱発電用タービンは東芝など日本の3社で世界シェア7割を握る。インドネシアで16年度末に稼働する世界最大施設のタービンも東芝製だ。地中の蒸気に不純物を含むため「機器の耐久性などは一朝一夕にまねできない」(東芝幹部)と、世界で営業攻勢をかける。ごみ焼却発電設備やエネルギー消費ゼロの住宅やビルなどでも日本企業は独自技術を持つ。「低炭素」から「脱炭素」へ世界が向かう中、大きな商機が生まれる。

*3-2:http://www.nikkei.com/paper/related-article/tc/?b=20161120&bu=BFBD9496EABAB5E6B39EBAA88BA48 (日経新聞社説 2016.11.20) 地熱発電 エネ革命名乗り、温暖化抑制へ深掘りの技
 地球温暖化の原因となる二酸化炭素(CO2)を出さずに安定的に電力を供給できる地熱発電に、熱い視線が注がれている。インドネシアでは日本企業が大規模な設備の建設を進める。国内では開発が足踏みしていたが、原発事故や温暖化問題を受けた規制緩和で風向きが変わりつつある。地下深くに眠る熱を吸い上げる次世代の地熱発電が実現すれば、原子炉50基分の発電が可能になるかもしれない。インドネシア・スマトラ島にある同国第4の都市、メダンから車で8時間走ると、突然、森を切り開いた広大な大地が現れた。褐色の地面から白い蒸気が空高く噴き上がる。世界最大規模の地熱発電所「サルーラ発電所」だ。地下2000メートルまで約30本の井戸を掘り、高熱の蒸気や熱水を取り出す。今年11月から3基の発電施設が順次稼働する予定で、工事は急ピッチで進む。総出力は計33万キロワットと、日本最大の九州電力八丁原発電所(大分県)の3倍。事業費16億ドル(約1800億円)の巨大プロジェクトだ。伊藤忠商事などが出資するサルーラ・オペレーションズの油屋真一最高経営責任者(CEO)は「サルーラの資源量(潜在的な発電量)は非常に豊富で、力強い」と手応えを感じている。世界の火山帯の地下には、高温のマグマがたまっている。雨水が岩盤の割れ目を通って地下1500~3000メートルに達すると、マグマだまりによって熱せられた岩石に触れ150度以上の蒸気や熱水となる。これが地中の亀裂などの「貯留層」にたまる。井戸を掘って蒸気や熱水を取り出し、タービンを回転させて発電するのが地熱発電だ。日本は米国、インドネシアに次ぐ世界第3位、2347万キロワット、原発20基分に相当する資源量を持つ。有力企業も多く、地熱発電タービンでは世界シェアの7割を握る。だが現在の合計出力は52万キロワット。国内の全電源の0.3%にとどまる。資源の8割が国立公園や国定公園にあり、周辺の温泉が枯れるとの懸念もあり大規模開発は進んでいない。日本の地熱発電量は1997年から減少に転じ、現在はピーク時の約7割だ。だが福島原発事故の後、原発に代わる安定電源への関心が高まった。さらに昨年末、196カ国・地域が参加して開いた第21回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP21)で、今世紀後半に温暖化ガスの人為的な排出量を実質ゼロにするとの目標を掲げた「パリ協定」が採択された。政府は30年までに、CO2を出さない再生可能エネルギーの電源比率を22~24%に高める方針だ。地熱は太陽光や風力と違って季節や天候、昼夜を問わず安定的に電力を供給できる強みがある。昨年、国立・国定公園の開発規制を緩和し、建設禁止区域の地下に、区域外から斜めに井戸を掘ることを認めた。地熱発電の資源量を倍増するとみられる次世代技術の開発も進む。新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が研究する「高温岩体発電」は、深度2000~5000メートルの岩盤を砕き人工的に貯留層を作る。ここに注水して熱水を作り、発電に使う。深く掘るほどマグマに近く高温になるため、地表近くにマグマだまりがある火山帯でなくても地熱発電が可能だ。NEDOの米倉秀徳研究員は「深度3000メートル前後のところだけでも、日本には2900万キロワット以上の資源量がある」と話す。従来型と合計すると5300万キロワット以上となり、原発50基分に相当する。1980年代からNEDOや電力中央研究所が井戸を掘削して実験してきたが、石油や原発に比べてコストが高いと判断された。だが電中研の海江田秀志研究参事は「従来型の地熱発電をしている場所で高温岩体発電を実施すれば、規模が拡大しリスクも低減する」と強調する。さらに深い領域から熱を取る「超臨界地熱発電」の構想も浮上している。日本列島の下では海洋プレートが大陸プレートの下へと沈み込んでおり、プレートとともに地下に引き込まれた大量の海水が高温・高圧状態になっている。これを発電に利用する。アイスランドでは、地下2000メートルのマグマ付近の高温・高圧の蒸気を取り出す実験に成功。地熱発電の拡大で電力を再生可能エネルギーでまかなう体制をいち早く作り上げ、化石燃料から脱却した。地熱発電は投資額が大きく、環境影響評価も必要で開発に時間がかかる。政府は30年までに、電源比率を現在の3倍に引き上げる考えだが、それでも1%にすぎない。地熱発電は、日本のエネルギーの将来を占う手掛かりになりそうだ。

*3-3:http://www.ngk.co.jp/news/2016/20160303_01.html (日本ガイシ株式会社 2016年3月3日) 世界最大級のNAS電池が運転開始、コンテナ型でコンパクト、短期間設置を実現
<日本ガイシ株式会社(社長:大島卓、本社:名古屋市)が三菱電機株式会社(本社:東京都千代田区)から受注し、九州電力株式会社(本社:福岡市)豊前蓄電池変電所(福岡県豊前市、豊前発電所構内)に納入した、世界最大級の蓄電池設備となる電力貯蔵用NAS電池が本日、運転を開始しました>
 豊前蓄電池変電所に納入したNAS電池の出力は5万キロワット、容量は30万キロワット時(一般家庭約3万戸分の一日の電力使用量に相当)で、当社が新たに開発したコンテナ型NAS電池(20フィートコンテナ内に出力200キロワットのNAS電池と制御装置類を組み込んだ可搬型の蓄電池)252台で構成されています。2015年6月に受注し生産を開始、8月中旬から据え付けを行い、2016年1月上旬に全てのNAS電池の設置を完了しました。従来のパッケージ型に比べて設置期間を約3分の1に短縮できる特長を生かし、世界最大級の蓄電池設備の設置を約半年間で実現しました。また、NAS電池は他の定置用蓄電池に比べてエネルギー密度が高く、コンパクトでスペース効率に優れています。豊前蓄電池変電所では、約14,000平方メートルの敷地面積に30万キロワット時のNAS電池が設置されており、単位面積当たりの蓄電容量は他の電力系統用大規模蓄電池を大幅に上回っています。九州電力管内では、太陽光発電を中心に再生可能エネルギーの普及が急速に進んでおり、同社は電力の安定供給のために、再生可能エネルギーの円滑な接続に向けた取り組みを進めています。NAS電池はその一つとして取り組む大容量蓄電システム需給バランス改善実証事業※に使用されます。この実証事業ではNAS電池を電力系統に接続し、揚水発電と同等の電力貯蔵機能を活用した電力需給バランスの改善と、系統電圧制御への適用についての実証が行われます。
※一般社団法人新エネルギー導入促進協議会「再生可能エネルギー接続保留緊急対応補助金(大容量蓄電システム需給バランス改善実証事業)」
NAS電池は2002年の事業化以来、全世界で約200カ所、総出力53万キロワット、総容量370万キロワット時の納入実績があり、イタリアやアラブ首長国連邦(UAE)でも電力系統に設置され、電力需給バランスの調整に利用されています。当社は今後も世界的に高まる大容量蓄電池のニーズに応え、再生可能エネルギーの導入拡大に寄与していきます。
<運転を開始したNAS電池の概要>
設置場所: 九州電力豊前蓄電池変電所 (福岡県豊前市、豊前発電所構内)
出力: 5万キロワット、容量: 30万キロワット時、設置台数: コンテナ型252台、敷地面積: 約14,000平方メートル、運転開始: 2016年3月3日

*3-4:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/375962 (佐賀新聞 2016年11月12日) グリーンコープ生協さが、県内で再生エネ供給、14日から受け付け
■「脱原発」を推進
 グリーンコープ生協さが(佐賀市、柳川晶子理事長)は14日から、太陽光発電などの再生可能エネルギーを使った電気「グリーンコープでんき」の共同購入を受け付ける。グリーンコープ連合が、年内にも九州全域で組合員の一般家庭や事業所に供給を始める。2018年には原発によらない電気を100%供給し、「脱原発」を推進していくとしている。太陽光やバイオマス、火力など自社発電施設を持つ丸紅グループや卸電力市場などから電気を調達する。電気は九州電力の送電網で届く。厳密に原発以外の電気を区別できないが、グリーンコープ生協さがの藤瀬広樹専務理事は「原発の電気を使いたくないという人が購入先を選べることで、原発不支持の意思表示になる」と話す。7月から福岡県内約900世帯で供給を始めている。18年からはグリーンコープ連合の14生協でつくる新電力「グリーン・市民電力」(福岡市)の太陽光発電所など再生可能エネルギーによる自社電気の供給も始め、九電からの調達をゼロにする。料金は家庭の標準的な電気使用量(330キロワット)で月額約7800円。市民電力の発電施設は組合員の出資金で建設した。出資金は現在、1万2千人から約10億6千万円が集まっている。太陽光のほか、九州の地域団体と共同で進める小水力発電を含め10施設がある。年間発電量は一般家庭1550世帯分の8200キロワット。不足が生じた場合は丸紅グループから調達して安定供給を図りながら、自前の発電設備を増やして対応する。

<放射性廃棄物と電源構成>
*4-1:http://www.nikkei.com/article/DGXKZO85364450X00C15A4EA1000/ (日経新聞 2015/4/7) 電源構成は将来を見据えて議論せよ
 経済産業省は2030年の電源構成に関し、原子力や石炭火力など「ベースロード電源」を全体の6割以上にする考えを示した。電力の安定供給に必要というのが、理由だ。しかし、これでは各電源の使い分けや構成比が東日本大震災前と大差ないものになりかねない。東京電力福島第1原子力発電所事故の教訓を踏まえつつ、動き出した電力市場の自由化にも対応した、もっと柔軟な電源の使い方を考えるべきだ。次世代送電網(スマートグリッド)といった新技術や新ビジネスの創出を促し、日本の成長に長期的に資するエネルギー政策を、政府は示してもらいたい。ベースロード電源について経産省は、発電コストが安く昼夜を問わず安定して電気を生む電源、と定義している。具体的には原子力と石炭火力、水力、地熱の4つをあげる。天然ガス火力や太陽光、風力発電などはベースロードでないとされる。10年前ならこうした考え方に説得力があったかもしれない。だが状況は変わった。原発には、故障や災害で止まると容易に復旧しない不安定さがある。地球温暖化を抑えるため、石炭の利用には世界的に制約が強まっている。国内では、効率の高い天然ガス火力をベースロード電源としてすでに日常的に使っているのが現実だ。ドイツなど欧米では太陽光や風力発電などを積極的に電源に組み入れており、その傾向が将来さらに強まるのは間違いない。世界規模で電力システムの革新が進む。電源構成をめぐる議論は将来の日本の姿を決めるのが目的だ。従来通りでよしとする発想では技術革新を妨げ、世界の潮流から遅れてしまわないだろうか。経産省が「ベースロード電源6割」という考え方を持ち出したのは、原子力の比率を正面から論じたくないからではないか。机上の計算だが、同省の考えに沿うと結果的に原子力の構成比は20%以上に高まる可能性が大きい。原子力はこれからも一定程度必要だ。そのことを真正面から論じ、将来の電源構成に明確に位置づける必要がある。「ベースロード電源」というくくり方で本質的な問題を避けていると、議論が実態から離れ副作用も生む。原子力を含むエネルギー政策全般への国民の不信感も消えないだろう。

*4-2:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20161127&ng=DGKKASFS26H2I_W6A121C1MM8000 (日経新聞 2016.11.27) 福島廃炉・賠償費、20兆円に 想定の2倍、経産省推計 国民負担が増大、東電へ融資拡大
 経済産業省が東京電力福島第1原子力発電所で起きた事故の賠償や廃炉費用の合計が20兆円を超えると推計していることがわかった。11兆円としてきたこれまでの想定の約2倍に膨らむ。東電の財務を支えるため、無利子融資枠を9兆円から広げる方向で財務省などと協議する。原発の事故処理費用(総合・経済面きょうのことば)の一部はほかの電力会社も含めて電気料金に上乗せするため、国民負担の増大が避けられない。複数の関係者によると、経産省は新たな推計を東京電力の経営改革や資金確保策を話し合う同省の有識者会議の委員らに伝えた。福島第1原発事故では、賠償や除染、汚染土を保管する中間貯蔵施設の整備、廃炉に費用がかかる。これまでの見積もりは賠償が5.4兆円、除染は2.5兆円、中間貯蔵施設は1.1兆円。廃炉は不明確だったが、東電が確保のめどをつけたのは2兆円だった。新たな見積もりは賠償が8兆円、除染が4兆~5兆円。作業が最低30~40年続く廃炉はこれまで年800億円だった費用が年数千億円に膨らむとみており、総額も数兆円単位で上振れする。中間貯蔵施設の費用も合わせて20兆円を超える。費用の大幅な上振れは、前回見積もった2013年末には想定しなかった賠償対象件数の増加や、除染作業の難しさが主な理由だ。廃炉は溶け落ちた核燃料(デブリ)の取り出しが始まる20年代前半を控え、原発内部の状況が徐々に明らかになるにつれて2兆円では到底収まらないことが確実になった。廃炉費以外は原子力損害賠償・廃炉等支援機構が政府から交付国債を受け、必要なときに現金化して東電に無利子で貸し付けている。当初5兆円だった国債の発行枠を13年度に9兆円に広げており、再び拡大する。廃炉費は東電が利益を積み立てて負担する。原賠機構と東電は費用の膨張も踏まえて年明けに再建計画を改定し、政府が認定する。東電や他社の電気料金への上乗せをなるべく抑えるには東電が収益力を高め資金を捻出する必要がある。すでに火力発電・燃料調達事業は中部電と全面統合を視野に提携しているが、今回の改定で送配電や原子力事業でも再編・統合の方針を盛り込む。他社から広く提案を受け、収益力の向上につながる統合相手を選ぶ。

*4-3:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20161120&ng=DGKKZO09754640Q6A121C1PE8000 (日経新聞社説 2016.11.20) 原発の廃炉費は丁寧な議論を
 経済産業省の有識者会議で原子力発電所の廃炉をめぐる二つの議論が進んでいる。一つは、電力自由化の下で必要な廃炉を進める方策について。もう一つは、事故を起こした東京電力(現東京電力ホールディングス)福島第1原発を処理する体制についてだ。いずれも放置が許されない課題だ。やり遂げる仕組みを整えることが急務である。そのための費用を誰が、どう払うのか。国はわかりやすい議論と、国民への丁寧な説明を心がけてほしい。二つの議論に共通するのは、一部の費用の負担をすべての国民に求める案を検討している点だ。新規に参入した電力事業者も使う送電線の利用料に費用を上乗せすることで、新電力から電気を買う消費者にも負担を求める考え方だ。自由化で競争が激しくなれば、原発を持つ電力会社が廃炉に備えて用意する引当金を確保できなくなる可能性がある。そのため、予定より前に廃炉を決めた原発については送電線の利用料の一部を廃炉費用にあてる案が出ている。福島第1原発の処理では、廃炉や損害賠償などの費用が見込みを大きく上回る可能性が高まっている。そこで、上振れ分の一部を送電線の利用料に上乗せして集める案を、国は示している。負担が事業者間の競争を阻害するものであってはならない。一方で重要なのは、役目を終えた原発の廃炉と、福島の事故処理・復興を着実に進めることだ。資金不足で滞るようなことが起きてはならない。事故処理の費用を東電HDの経営努力だけで賄えないなら、補う財源が必要だ。不足分を広く国民に負担を求めざるを得ないのなら、理由を誠実に説明することが大切だ。どうして送電線に上乗せするのか。ほかに手段はないのか。理解を得られるようつとめるべきだ。議論が限られた場所で進む「密室感」は国民の疑念を招く。原発を重要なエネルギーとして使い続けるためにも、信頼を積み上げる努力を怠ってはならない。


PS(2016.11.29追加):*5のように、環境性能の良い自動車の税金を安くするエコカー減税をどこまで認めるかが議論されているが、2017年4月から適用される減税なら、排気ガスを出さないEVとFCVだけを環境車として自動車税免税にすべきだ。何故なら、その方が環境への配慮が進み、EV・FCVの生産投資と買替が起こって、景気もよくなるからだ。しかし、自動車は必需品であるため、自動車購入時に自動車税・自動車重量税・自動車取得税を賦課した上に消費税をかけるのは、諸外国と比較しても理不尽に税を取り過ぎている。間接税として消費税をかけるのなら自動車取得税は廃止すべきであり、一般車の自動車税もドイツ(23.5%)程度にすべきだ。なお、自動車重量税は、自動車専用道路の整備に充てるのなら賦課する理由があるが、一般財源なら自動車に賦課する理由がないため廃止すべきだろう。


自動車関係諸税の大きさ 自動車諸税国際比較  2016年エコカー減税 自動車保有国際比較

(図の説明:自動車関係諸税は租税総収入の10%弱を占めており、とれるところからとっている感がある。しかし、現在、自動車は地方では贅沢品ではなく必需品であるため、自動車関係諸税が高すぎるのはおかしい。せめて、自動車産業同士が激しく競争しているドイツ程度にすべきで、税優遇する次世代自動車は排気ガスを出さないEV・FCVだけとし、EV・FCVの開発を促すのがよい。何故なら、100人当たりの自動車保有台数は、人口の多いインドや中国でも上がってきており、排気ガスを出さないEV・FCVの重要性がますます大きくなるからだ。なお、化石燃料に課税すれば、環境負荷が軽くて燃費の良い自動車が自然と優遇され選択されるため、自動車取得時に低燃費車を優遇しなくても問題ない)

*5:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20161129&ng=DGKKZO10050540Z21C16A1EA2000 (日経新聞 2016.11.29)エコカーなお攻防 経産・総務省 投資減税、拡大が焦点
 結論が出ておらず、今後の焦点になる項目もある。一つは環境性能が良い車の税金を安くするエコカー減税。もうひとつは中小企業の設備投資減税だ。いずれも景気刺激を優先する経済産業省と、地方自治体の財源を確保したい総務省との間で主張が真っ向から対立している。エコカー減税は車を買うときに都道府県に払う自動車取得税を、燃費に応じて20~100%割り引く仕組みだ。メーカーの燃費性能は毎年向上しており、現在の基準では新車の86%がエコカー減税の対象になっている。総務省は「燃費が平均以下の車まで『エコカー』として優遇するのはおかしい」(幹部)との立場。対象を絞り込めば、メーカーの研究開発を促す効果も期待できるとしている。経産省や自動車メーカーはこれに反発する。「過大な税負担が国内の自動車市場低迷の一因」として、今の燃費基準の維持を求めている。25日の自民党税調の会合では「減税対象を絞り込むと販売が減り、景気に悪影響が出る」との懸念が出る一方、「販売はそのときの景気で決まる。税金は関係ない」との声も多かった。もうひとつの焦点は今年度から実施している設備投資減税だ。中小企業が導入した機械設備の固定資産税を3年間にわたって半減する内容だが、経産省はこの対象を広げて効率の良い空調設備や介護ロボットを含めるよう求めている。製造業だけでなくサービス業にも活用してもらうためだ。固定資産税は全国の市町村にとって最大の財源だ。総務省は「まだ導入初年度の効果も検証できていないのになし崩し的に拡大するのは納得できない」(幹部)として徹底抗戦の構えを取る。


PS(2016年11月30日追加):*6のように、非正規社員は、正規社員と賃金・福利厚生のみならず、配置・研修・昇進などの扱いが異なり、その結果、長期間働くほど賃金差が広がって、賃金差は50代で最大になる。つまり、日本的経営を行っている日本企業は正規社員には(なるべく)終身雇用を保障しているが、そのために非正規社員を雇用調整に使っているわけである。また、1985年に第一次男女雇用機会均等法が導入される前は、正規社員の割合は15%程度と少なく、そのかわり女性が補助的な仕事を行って短期間で退職する労働者とされていた。そして、1985年の第一次男女雇用機会均等法導入後、企業は非正規社員の割合を次第に増やして、現在では労働者の1/3以上が非正規社員となり、非正規社員の割合は特に女性で高くなっているのだ。
 そして、「自分で選んで非正規社員になった」等々、会社側の言い訳はいろいろあるが、多くの労働者が他に選択肢があって選択したわけではないため、これは雇用形態の違いを理由にした差別に基づく搾取だ。そのため、労働基準法や男女雇用機会均等法で守られず、事業者が社会保険料も納めない非正規社員は非常に例外的なものにすべきで、正規社員でも遠距離の転勤がなかったり、短時間労働(その場合は、それだけ賃金が低いだろうが)にしたりすることは、経営判断で可能な筈である。


 *6より 1984~2012年正規・非正規推移  男女別正規・非正規雇用者数の推移

*6:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20161129&ng=DGKKZO10050770Z21C16A1MM8000 (日経新聞 2016.11.29) 正規・非正規の基本給 格差縮小促す、職務や能力厳格評価 働き方改革、指針に反映
 政府は非正規社員の待遇を改善するため、基本給について仕事内容が同じなら正社員との格差を縮めるよう評価の基準を設ける。基本給の差を認める基準は職務能力や職務内容、勤続年数、配置転換の有無などに厳格化する。働き方改革実現会議(議長・安倍晋三首相)で議論し、年内にまとめる「同一労働同一賃金」のガイドラインで示す。早ければ来年の通常国会で関連法の改正を目指す。現在、企業は正社員には企業ごとの給与規定によって賃金を定め、年齢や勤続年数を反映した基本給を払っている。ただ、将来的な働き方が見通せない非正規では仕事の成果が給与に反映されにくい。これを見直し、原則として同じ企業内では雇用形態での不合理な賃金差を認めないこととする。働き方を適切に評価することで全体の生産性向上につなげる。新たに策定するガイドラインでは、どのような賃金差が合理的であるか、または不合理であるかを事例で示す方針。例えば、正社員と非正規の職務に違いがない場合は賃金の差を認めないが、正社員がキャリア形成の一環で実習を積む場合は非正規と同様の仕事内容でも賃金差を容認する。ガイドラインには賃金差の根拠などについての企業側の説明責任を盛り込むことを検討している。企業側には慎重論もあり、調整が続いている。交通費などの諸手当、賞与、福利厚生についても正社員と非正規に不合理な差をつけないよう企業側に促す。一方で、非正規の処遇を改善することで正社員の賃金が下がらないよう企業に労働分配率を引き上げることを求める。政府はガイドラインの拘束力を担保するため、関係する労働契約法、パートタイム労働法、労働者派遣法の3法の改正案を早ければ2017年の通常国会に提出する。6月に閣議決定した「ニッポン一億総活躍プラン」では、19年度からガイドラインを運用すると工程表に定めている。現在も労働契約法など関連3法では正規と非正規について「不合理な相違があってはならない」などと明記しているが、どのような差があれば、待遇の違いが認められるかは具体的に触れられていなかった。日本の多くの企業は人件費抑制などを狙い、非正規の比率を高めており、国内の労働市場で非正規の割合は約4割にのぼる。欧州では同等の仕事をしていれば非正規でも正社員の8割程度の賃金を得ている。日本では約6割にとどまるため、政府は欧州並みに近づけたい考えだ。非正規は昇給がほとんどなく、賃金の差は勤続年数が長いほど大きくなる。最近では働き方の多様化、人手不足を背景に、小売業でパート・アルバイトが店長を務めるなど、非正規でも正社員並みの仕事をするケースが増えている。同一労働同一賃金の考え方を採り入れた人事制度を導入し、非正規の働きぶりをより評価して企業全体の生産性向上を目指す動きも出ている。りそな銀行は08年、業務の難易度などで分かれていた「職務等級」を正社員と非正規で共通にして、等級が同じなら時間当たりの基本給を同じにしている。


PS(2016年12月1日追加):高齢化やバリア・フリー化など課題先進国である日本の市場は、その需要を満たす製品を作れば、後に続く国への輸出やグローバル展開が可能だ。そのため、*7-1の自動ブレーキは、車両間衝突防止、車線はみ出し修正、歩行者への衝突防止などを徹底させて、国内外の他のメーカーにも販売すると利益が上がるだろう。また、自動車メーカーは典型的な男社会で、壮年期の男性に適した製品が殆どだが、女性や高齢者が設計の本丸部分に加わると、女性や高齢者に受ける自動車ができると思われる。なお、*7-2のように、信号機が老朽化して更新時期を迎えているのなら、更新するにあたっては、色の変化だけでなく、①位置情報 ②一方通行の情報 ③「進め」「右折可」「止まれ」などの電磁信号を自動車に送るようにすれば、より自動運転しやすいと思われる。

*7-1:http://digital.asahi.com/articles/ASJD133CTJD1ULFA006.html?iref=comtop_8_01 (朝日新聞 2016年12月1日) 自動ブレーキ性能、マツダ「アクセラ」最高点 2位は…
 国土交通省は1日、市販車の自動ブレーキによる衝突防止性能などの評価結果を公表した。従来の車両追突時などの評価に加えて、今回は歩行者との衝突防止性能を加えた点数を初めて公表。総合点でマツダの「アクセラ」が最高点となった。同省の評価に応募した、トヨタ自動車、ホンダ、マツダ、富士重工業、スズキの5社11車種が対象。車を時速10~60キロの範囲で5キロ刻みで走らせ、そのたびに人形を飛び出させて、自動ブレーキで止まれるかを測定した。人形に衝突すると減点になる。人形は、大人(身長180センチ)と子供(同120センチ)の2種類を用意した。自動ブレーキの車両衝突防止や、車線はみ出し時の警報などの安全性能に、歩行者衝突防止性能の点数(25点)を加えて総合評価した(計71点)。最高点はマツダのアクセラ(70・5点)で、富士重工のフォレスター(69・5点)とインプレッサ(68・9点)が続く。国交省は、12点以上で「ASV(先進安全自動車)+」、46点以上で「ASV++」を販売時に表示することを認めており、今回は全車種が46点以上だった。今回新たに評価した歩行者との衝突防止性能に限った点数をみると、アクセラ(24・5点)、フォレスター(23・5点)、インプレッサ(22・9点)の順だった。自動ブレーキについて、国交省は2014年から車両衝突防止性能の評価は公表しているが、歩行者衝突防止性能については初。交通事故の死者の4割近くは歩行者で、高齢ドライバーの事故も相次ぐなか、国交省は点数の公表でメーカーの開発競争を促す。

*7-2:http://qbiz.jp/article/99167/1/ (西日本新聞 2016年12月1日) 信号機 進む老朽化 制御機2割が更新期経過 警察庁まとめ
 信号機の赤青黄の点灯をコントロールする「信号制御機」や、信号を支える柱の老朽化が進んでいる。警察庁によると、制御機の更新時期は設置から19年。全国の制御機の約2割がこの期間を経過し、老朽化したと判断されており、重大事故を招く危険性が懸念されている。2012年9月、神戸市中央区の国道交差点で、信号の柱が突然折れ、路上に停車中の乗用車に接触。車は破損したが、運転していた男性や通行人にけがはなかった。柱は設置から45年がたっていたが、修理されないままになっていた。警察庁によると、「信号機の心臓部」ともいえる制御機は今年3月末時点で全国に20万5千基。うち「老朽化」と判断されたのは約2割の4万3千基。信号が消えたり、点滅を続けたりするなど、老朽化した制御機のトラブルは14年度に全国で314件起きた。制御機1基の更新費用は約120万円で、都道府県が負担する。信号は高度経済成長期以降に大量に整備されたが、自治体によっては予算を確保できず、事実上放置されている信号が増えているとみられる。15年度末時点で、福島県は、47都道府県で老朽化の比率がワーストの35・6%。一方、最も低い岐阜県は0・6%にとどまる。33・7%と全国2番目に高い兵庫県は、15年度に確保できた予算のままで更新ペースが続けば、25年度には県内の6割以上が老朽化すると予測している。全国的な統計はないが、信号を支える柱も、制御機と同様に老朽化が進んでいるとみられる。兵庫県警は柱の適切な更新時期を設置から40年としており、15年度末時点で県内の約14%がこれを超えている。県警は柱をたたいて強度を調べる打音検査のほか、海辺で潮風に当たりやすいなど設置場所の環境から傷みやすい柱を優先的に更新するなどして対応している。警察庁は20年度までに老朽化した信号機約4万3千基の更新を目標に掲げ、都道府県警にも計画の策定や予算の確保を指示。兵庫県警の担当者は「地下の見えない部分で腐食が進む場合もあり、危険性の判断は難しい。予算を平準化し、計画的に更新できる態勢づくりが必要」と話している。


PS(2016.12.2追加):日本では、世界でトップを切って1995年頃からEVをはじめとする本格的な環境車を開発し始めたのに、*8のように、「①EVは航続距離や充電時間に課題がある」「②EVの背中を押したのは外国の環境規制」「③独連邦参議院が2030年までにエンジン車の販売禁止を求めるとの独誌シュピーゲルの報道に対し、トヨタ首脳は『極端だ』と反応」「④FCV普及の前提となる水素ステーションの整備も課題」などとして、開発済のEVやFCVも本気で普及する体制をとらない点で、私もトヨタの経営陣はどうも先見の明や環境センスに欠けると思っていた。例えば、①④の課題は、1~5年で解決すべきで、10~20年も同じことを念じ続けるようなものではない。また、②は、リーダーの不勉強による見識の低さから、日本政府の環境意識が低いことによる。さらに、③の「極端だ」という反応は「バランスが重要」と言いたがる文系の人によく見られるが、例えば、「よりよいものができても、街灯にはろうそく・ガス灯・白熱電球・蛍光灯・LED電球をバランスよく使うべきだ」と結論づけるのと同じくらい馬鹿げているのだ。

     
 *8より  あかりの変遷     ガス灯       水銀灯    ソーラーLED

*8:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20161202&ng=DGKKASDZ28IET_Z21C16A1EA1000 (日経新聞 2016.12.2) EV注力、トヨタの焦燥と勝算、環境規制受け開発加速 グループ一丸で巻き返し
 トヨタ自動車が12月1日付で「EV事業企画室」を設立し、電気自動車(EV)の量産に向けた取り組みを急いでいる。世界で初めてハイブリッド車(HV)の量産に成功し、水素で走る燃料電池車(FCV)を「究極のエコカー」に据えるトヨタ。EVにこれまで以上に注力する背景からは、環境変化に対する「焦燥」とトヨタなりの「勝算」が透けて見える。
●後ろ向きの印象
 9月下旬、仏パリ。トヨタの豊田章男社長はパリ国際自動車ショーの会場に足を運んだ。会場では独ダイムラーや独フォルクスワーゲン(VW)などが相次いでEVのコンセプト車を披露。欧州勢の動きを目にした豊田社長は周囲に「ショーと現実は異なるが、EVシフトが加速するかもしれない。注意が必要だ」と漏らした。トヨタは1997年に世界初の量産型HV「プリウス」を発売し、2014年には走行中に二酸化炭素(CO2)を一切出さないFCV「ミライ」も出した。こうした取り組みにより「トヨタ=環境」のイメージを強め、「エコカーもすべて開発している」(伊地知隆彦副社長)。だが、「EVに後ろ向き」との印象がつきまとっていた。例えば昨年発表した50年までの環境目標。HVやFCVは意欲的な販売目標を掲げる一方、EVについては「航続距離や充電時間に課題があり、近距離の移動に向いている。現在の乗用車と同様の車についてはHVやプラグインハイブリッド車(PHV)が適している」(伊勢清貴専務役員)と述べるにとどめた。課題があるにもかかわらず、なぜEVに注力するのか。背中を押したのは、各地の環境規制だ。米カリフォルニア州では18年式の製品から規制が強まり、一定の販売を義務付けるエコカーの対象からトヨタが得意とするHVが除外される。世界最大の自動車市場である中国でも当局が手厚い補助金でEVの普及を後押しする。HVを筆頭に「エコカーで先行するトヨタを米中両国が規制を使って締め出している」との見方は業界の通説だ。もっともこうした規制は以前から明らかになっていた。トヨタ幹部が「想定外だった」と打ち明けるのは、欧州の動向だ。VWはディーゼルエンジンの排ガス不正問題を契機に、EVへのシフトを表明。同社は6月、「25年までにEVを30車種投入し、25年に世界販売台数の20~25%をEVにする」と宣言した。10月に入ると、衝撃的なニュースも飛び込んでくる。独誌シュピーゲルが、独連邦参議院(上院)が30年までにエンジン車の販売禁止を求めると報道したのだ。トヨタ首脳は「極端だが、多くの人が今のままではよくないと考えている証拠だ」と発言。走行中にCO2を出さないゼロエミッション車(ZEV)の開発加速が必要との見方を示した。
●燃料電池車に壁
 もちろんトヨタが量産で先行したFCVでもZEV規制に対応できる。だが、FCVは主要部品の生産能力に限界があり、17年時点でも年間生産は3000台。普及の前提となる水素ステーションの整備も課題だ。「参入メーカーが比較的多いEVの方が充電拠点の整備が早く進む」(トヨタ幹部)との読みがある。EVをFCVと並ぶZEVの柱と位置付けたトヨタの今後の焦点は、競争力のある製品を生み出せるかに移る。トヨタは年間100万台規模を生産・販売するHVの技術をEVにも応用できるとみているが、グループ内には「HVとEVでは異なる点もあり、トヨタは出遅れた」との声もある。巻き返しのカギを握るのがEV事業企画室の顔ぶれだ。発足当初は4人ときわめて少人数だが、現行のプリウスの開発責任者を務めたトヨタの豊島浩二氏をヘッドに、デンソー、アイシン精機、豊田自動織機の出身者が脇を固める。「開発初期からグループ会社が参画するのは当社で初めて」(トヨタ幹部)という。トヨタの経営陣はここ数年、グループの一体感の醸成に注力してきた。内部で意見が対立して時間を浪費することもあったが、一丸となれば効率は高まる。EV事業企画室に参画するグループ3社の研究開発費(16年3月期実績)を足すと6000億円を上回り、自動車部品最大手の独ボッシュに迫る。EVの開発はグループ連携の成否を占う試金石にもなる。


PS(2016.12.3追加):大容量蓄電池や燃料電池が進歩したため、*9-1の“ベースロード電源”という概念は不要であり、これは、*8で述べた恣意的かつ不合理な電源バランスの考慮にすぎない。そして、*9-2のように、経産省が「福島原発事故処理に22.6兆円、廃炉に8.2兆円かかる」としながら、*9-3のように、「石炭や原子力の低コスト電気を新電力に大手が供給する」と主張しているのは、原価計算も理解せずに強弁を繰り返している点で間違っている。
 なお、*9-4の電力小売自由化で300社を超える企業が電力供給に参入したにもかかわらず、契約を切り替えた家庭が3%強に留まるのは、価格だけの問題ではなく、*9-3のように、新電力も化石燃料や原子力由来の電力と混合している上、事故処理や廃炉費用を負担させられ、新電力が従来の電力会社と電力という商品の内容で差別化できないからである。つまり、経産省の方針は、市場経済ではなく、経済学・経営学も理解しておらず、焼け太りしながら日本の国民や産業を邪魔しているにすぎない。

    
 世界の日本の農水産物  台湾の輸入制限への   2016.11.30    2016.12.3 
  に対する輸入制限    日本政府の態度     共同通信      日経新聞

(図の説明:左図の赤で着色された国が2015年5月現在、フクイチ事故の放射能汚染により、日本の農水産物の輸入停止や条件付輸入をしている国で、これによる損害も原発事故の被害だ。これに対し、日本政府は「世界貿易機関(WTO)への提訴も考える」などとしているが、世界を相手にフクイチ事故の放射能汚染を“風評被害”と強弁してWTOに提訴するような滅茶苦茶なことをすれば、日本食品の安全基準が疑われるとともに、その後は、まともなことを言っても相手にされなくなるだろう。これは、フクイチ事故処理費用を億面もなく22.6兆円と増加させ、それを新電力に負担させるやり方にも同様に出ている)

*9-1:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20161203&ng=DGKKASFS02H40_S6A201C1EA2000 (日経新聞 2016.12.3) ベースロード電源 昼夜問わず安定的に発電
▽…コストが安く、昼夜を問わず安定的に発電できる電力源。原子力や石炭火力、水力、地熱発電などが該当する。日本はエネルギー政策を考える上で、安全性や安定供給、経済効率性、環境への適合といった要素を重視しており、ベースロード電源の割合を高めていけば、停電のリスクは減り、電気料金も抑制できる。政府はエネルギー基本計画で原発を「重要なベースロード電源」と位置づけ、安全を確保できた原発を再稼働させる必要性を示してきた。
▽…ベースロード電源を多く持つ電力会社は電気料金を低く設定でき、競争上も優位な立場に立てる。大手電力が長く、地域の電力需要を独占してきた日本では、原発や水力発電などの設備の多くを大手電力が保有する。水力と石炭火力、原子力を合計したベースロード電源の割合(2015年度)を比べると、大手電力が4割近くに達するのに対し、新電力は10%強にとどまる。新電力がコストが高い電源に頼らざるをえない構図は今後も続く見通しで、競争環境の是正が急務となっていた。
▽…ベースロード電源以外では、次に発電コストが低い「ミドル電源」、発電コストが高い「ピーク電源」がある。エネルギー資源に乏しい日本は各電源の利点や欠点を踏まえつつ、バランス良く各電源を活用していくことが欠かせない。政府は昨年、ベースロードの比率を56%程度などとする30年時点の望ましい電源構成を決めた。

*9-2:http://this.kiji.is/176377454849410556 
(共同 2016/11/30) 福島原発事故処理に22.6兆円、廃炉8.2兆円、新電力も負担
東京電力福島第1原発の事故処理費用 経済産業省が東京電力福島第1原発の廃炉費用について、従来想定の約2兆円から約4倍に当たる8兆2千億円に拡大すると試算していることが29日、分かった。賠償や除染費用も増大し、事故処理費用は総額22兆6千億円となる。政府は巨額費用の負担による東電の経営危機を避けるため「廃炉の加速化」を名目に、新たに年数百億円程度を電気料金に上乗せし、東電を支援する方向で検討する。他の大手電力や電力小売りに参入した新電力も対象で、家計の負担は一段と重くなりそうだ。廃炉は溶け落ちた核燃料取り出しの工法が決まらないため費用の試算が難しく、これまで数兆円規模で増えるとされていた。

*9-3:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20161203&ng=DGKKASFS02H48_S6A201C1MM8000 (日経新聞 2016.12.3) 新電力に低コスト電気 石炭や原子力、大手が供給、福島賠償を共同負担
 経済産業省は電力自由化で参入した新電力が石炭火力や原子力など発電コストの安い電気を調達できるようにする。電力大手が新電力の需要の3割相当を提供し、代わりに東京電力福島第1原子力発電所事故の賠償費用のうち3兆円程度を大手と新電力の共同負担に切り替える。賠償による新電力の料金上昇を抑え、大手との競争を促す。電力市場の競争促進や原発事故の処理費用の負担を話し合う経産省の有識者会議で来週にも決める。必要に応じて関連法や省令などを改正する。石炭火力や原子力などコストが低く発電量が天気や時間帯に左右されないベースロード電源を日本卸電力取引所に放出することを2020年度をめどに義務づける。いま大手が取引所に出すのは石油火力などコストの高い電気が中心で、割安な電気は自社の小売部門に流している。1キロワット時あたりの発電コストは原子力が約10円、石炭火力は約12円、石油火力は30円を超える。300社以上の新電力のなかには自前の発電所のない事業者も多い。取引所に調達を頼るが、安い電気が手に入らず対等な競争が難しかった。新電力の需要の3割にあたる量を発電コスト以下で放出してもらう。現在は石炭火力の発電量が多いが、再稼働が進めば原発の電気も出てくる。新電力はオークションで電気を買い付ける。福島第1原発事故の賠償費用はこれまでの想定の5.4兆円を上回る8兆円ほどに膨らむ。東京電力ホールディングスを中心に関西電力や中部電力などほかの大手も一緒に負担してきたが、今後は3兆円程度を新電力との共同負担に変える。賠償費用は大手が11年の事故後から拠出しているが、共同負担の3兆円は事故に備えてそれ以前に積み立てておくべきだった金額との位置づけだ。全ての電気利用者が大手と契約して原発の電気を使っていた時代の費用をこれから回収するため、新電力も含む全ユーザー(原発のない沖縄は除く)に負担を求める。具体的には大手と新電力の双方が負担する送電線の利用料に賠償費用を上乗せする。全国の電気の販売量に占める新電力の比率は8%。利用料はおおむね販売量に応じて払うため、新電力の負担は数千億円になりそうだ。福島第1原発以外の全国の原発の廃炉費用の一部も送電線利用料に上乗せする方針で、新電力に100億円単位の追加負担になる。新電力が費用をすべて小売料金に転嫁すれば、家庭の電気料金を1カ月あたり数円から数十円押し上げる要因になる。経産省は「安価な電気を調達できるようになるメリットのほうが費用負担よりも大きい」(幹部)とみている。本格的な価格競争が起きれば、大手も含めた料金の引き下げにつながる。大手と新電力の損得のバランスを取りながら、賠償と競争を同時に進める。

*9-4:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20161203&ng=DGKKZO10252260T01C16A2PP8000 (日経新聞 2016.12.3) 政治大手既得権にメス 低コスト電気提供 新電力との競争促す
 経済産業省が電力大手に石炭火力など安価な電気の放出を求めるのは、大手の既得権にメスを入れるためだ。東京電力福島第1原子力発電所事故の賠償費負担の一部を新電力に切り替えるのをきっかけに、競争力のあるベースロードの電気を新電力に回して一気に競争を促す。4月の電力小売り自由化で300社を超える企業が参入したが、契約を切り替えた家庭の割合は3%強にとどまる。低コストの電気を大手が囲い込み、新電力は余った電気を調達せざるを得ない構造が根底にある。経産省は昔から大手に取引所への電気の放出を求めてきたが、競争力の源泉である石炭火力や原子力の電気は出てこなかった。無理に放出を義務づければ財産権の侵害に当たる恐れもあった。ここにきて賠償費用が大幅に上振れし、新電力に一部を肩代わりしてもらうことになった。経産省は見返りとして大手にベースロードの放出を説得していった。幹部は「こんなときじゃないと求められない」と話す。大手はなお反発している。一方、大手の契約者だった時代に払っておくべきだったという理屈で新電力の利用者に賠償費用を負担させる案は理解しにくい。事故処理費用が膨らんで後付けで理屈を考えたとの批判もある。原発が嫌いで新電力に乗り換えた人には、いっそう丁寧な説明が必要だ。


PS(2016年12月6、15日追加):日立の社長が、*10-1のように、「将来の経済発展や環境問題を考えると、原発は重要な選択肢」としているのは、日立の利益という観点からにすぎない。何故なら、経済発展のためには、無尽蔵で請求書のこない自然エネルギーを使う方が合理的であり、環境問題を考えれば原発は最悪の公害を出すからだ。そのため、ベトナム政府の判断は世界の潮流に沿って未来を考えたもので日本政府の判断より優れていると私は思うが、それでも自分の方が正しいと考える理由は、過去にもあった日本人の根拠なき自信から来る傲慢さだろう。
 なお、*10-2のように、麻生副総理・財務相と菅官房長官が、2016年12月15日、ハモンド英財務相と会談して日本政府が民間企業である日立の原発輸出を支援するために、英国の原子力発電所の建設プロジェクトに1兆円の資金支援を行い、事故が起きた場合の賠償の仕組み(日本国民が負担 ??)についても英政府と協議するそうだ。そして、日本政府は原発輸出を成長戦略の柱と位置づけているとのことだが、今でも原発を成長戦略の柱と考えているのなら馬鹿にも程がある。メイ首相が原発建設の許認可を先送りしたのは、中国への依存度が高まるのを懸念したのではなく、原発建設は環境配慮も経済合理性もなく、無料の自然エネルギーへの変換を阻害するだけであることに気づいているからだろう。

*10-1:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12692425.html (朝日新聞 2016年12月6日) 「原発の重要性不変」 日立・東原社長、輸出に注力
 日立製作所の東原敏昭社長は5日、ベトナム政府が日本やロシアとの原発計画を撤回したことについて、「逆風があっても、将来を考えれば原発の重要性は変わらない」と述べ、引き続き原発の輸出に注力する考えを示した。朝日新聞などのインタビューに答えた。ベトナム政府は先月、安全対策費用の高騰などから原発計画を撤回。日立が受注を目指すリトアニアでも10月の議会選で「反原発」を掲げる野党が第一党となったことなどを踏まえ、東原氏は「足元では(原発輸出に)いろいろと逆風が吹いている」との認識を示した。そのうえで、「将来の経済の発展や環境問題を考えた議論をしたとき、原発は重要な選択肢として残るはずだ」と強調した。米大統領選でトランプ氏が勝利してから円安が進んでいることについては、「業績にプラスに働くのは事実だが、今後も何が起こるか分からない。為替も1ドル=100円から120円ぐらいまで幅を持って見ていく」とした。業績に追い風が吹くなか、政府が経済界に求めている来春闘での賃上げについては、「為替の影響を除いた実力の成果を見極めて判断したい」と述べるにとどめた。

*10-2:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20161215&ng=DGKKASFS14H8E_U6A211C1MM8000 (日経新聞 2016.12.15) 英原発に1兆円支援、政府、日立受注案件に
 政府は英国が計画する原子力発電所の建設プロジェクトを資金支援する。英国政府から原発の建設・運営を受託した日立製作所の英子会社に国際協力銀行(JBIC)や日本政策投資銀行が投融資する。総額1兆円規模になる公算が大きい。政府は原発輸出に力を入れているが、ベトナムでの新設計画が中止になるなど逆風が絶えない。官民連携で突破口を探る。麻生太郎副総理・財務相と菅義偉官房長官が15日、ハモンド英財務相と会談し、日英関係の強化を確認。世耕弘成経済産業相は年内にクラーク・ビジネス・エネルギー産業戦略相と会談し、原発分野での協力を表明する方向で調整している。両政府は来年中にも資金支援の大枠を固める。支援対象となるのは日立傘下のホライズン・ニュークリア・パワーが英中部ウィルファで計画する原発2基。ホライズンは日立が英国で手掛ける原発の設計から運営までを受け持つ全額出資子会社だ。ウィルファの2基にかかる総事業費を現時点で約190億ポンド(約2.6兆円)と想定。日立が総事業費の1割程度、英国政府が25%以上を出す案が出ている。日本政府はJBICと政投銀を通じホライズンに投融資する。さらに日本貿易保険(NEXI)が信用保証枠を設定。日本のメガバンクやHSBCといった日英の大手金融機関を呼び込み総額1兆円規模の資金を融通する計画。日英政府が支援姿勢を明確にすることで機関投資家などによる出資を促す。稼働後の売電収入なども加え全体の事業費をまかなう方向だ。日本政府は原発稼働後の電力の買い取り価格や買い取り期間、事故が起きた場合の賠償の仕組みなどについても英政府と協議し、持続可能な枠組みづくりをめざす。日本政府が異例の資金支援に乗り出すのはメイ政権の発足が大きい。キャメロン前首相は2015年10月、英南東部の原発に先進国として初めて中国製原子炉の導入を決めるなど中国を重視する姿勢を示していた。だが英国のEU離脱決定を経て就任したメイ首相は今年7月、中国国有の中国広核集団とフランス電力公社が英南部で手掛ける原発建設の許認可を突然先送りした。9月末には条件付きで建設を認めたが、メイ政権は中国への依存度が高まるのを懸念しているとみられる。日本にとってはチャンスともいえる。安倍晋三政権はインフラ輸出を成長戦略の柱と位置づけている。


PS(2016年12月8日追加):高齢ドライバーの事故ばかり吹聴していると、高齢者と若年者が事故を起こした場合には、若年者が悪くても高齢者の不注意や認知症のせいにされそうである(メディアに、このように差別を助長する表現を含む記事が多いのは問題だ)。しかし、*11の逆走については、曲がる場所を一度間違えると目的地とは程遠い場所に行かなければならなくなる高速道路の設計にも問題があり、慣れない地域を走る人や外国人も高速道路を使うことを考えれば、後戻りや進路修正をもっと容易にすべきだ。また、道路から自動車に信号を発して逆走できないシステムにする方法も考えられる。

*11:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/384417
(佐賀新聞 2016年12月8日)2016年県内、高齢運転者の逆走3件目
 佐賀県内の高速道路では今年、高齢ドライバーによる逆走が他に2件発生している。いずれも80代の男性で、本線に入った直後に発覚して事故は免れた。県警高速隊によると、3月中旬に佐賀市の長崎自動車道の下り線で、男性(83)が運転する車が金立サービスエリアから福岡方面に逆走し、約2キロ先で制止させられた。男性は「財布を忘れて取りに戻ろうと思った」と話しているという。11月上旬には、武雄市の男性(82)が運転する車が長崎道の武雄北方インターチェンジ(IC)から進入して本線に入った直後、Uターンして逆走しながらICに戻った。男性は一般道と間違って高速道に入ったとみられる。このほかにも、1月に福岡県内の24歳女性が運転する軽乗用車が長崎自動車道を逆走し、神埼市で大型バスに接触する事故が発生。これらとは別に、逆走までは至らない高速道路への誤進入は今年、県内で3件確認されている。


PS(2016年12月14日追加):数人の高齢者が運転中に問題を起こしたからといって全高齢者が運転不能で免許返納すべきであるかのように主張するのは、程度の低い決めつけであり、高齢者いじめだ。何故なら、年齢別交通事故発生頻度は、10~20代は60~70代の1.5倍である上、30代でも1.1倍あり、これは自賠責保険の保険料に既に反映されているからだ。また、*12に書かれているように、公共交通が不便な地域では車は生活必需品であり、コミュニティーバスがあっても財政の都合で便数が少く不便なため、自動ブレーキなどの事故防止機能を充実させた車の普及が急がれ、これは生活の質を保つために年齢も国も問わないニーズなのである。なお、男女を同じに論じているが、下のように、平成27年時点の0歳時の平均余命(=平均寿命)は男性80.79歳・女性87.05歳であり、80歳時点の平均余命は男性8.89年・女性11.79年で、それだけ元気に動いており、その元気さは普段からの活動量に比例する。さらに、現在、農業者の平均年齢は65歳を超えており、自動車だけでなく農機具も電動の安全性の高いものにすべきで、これらの需要は日本と似た人口推移を辿る他国でも次第に多くなる本物なのだ。なお、アクセルとブレーキの踏み間違いを防ぐためには、オートマチック車からマニュアル車に切り替えて昔に戻るよりも、それらを間違えようのない遠い場所に配置する方がよいと、私は考えている。

   
  年齢別平均余命   農業の修業人口と平均年齢    日本の世代別人口の推移 

*12:https://www.agrinews.co.jp/p39657.html (日本農業新聞 2016年12月11日) 高齢者の運転 生活の質と安全両立を
 高齢者の運転による悲惨な交通事故が後を絶たない。運転免許証の返納を促す動きもあるが、交通不便な農村にとって車は欠かせない。自家用車に頼らず移動できる手段を確保するとともに、自動ブレーキなど事故防止機能を充実させた車の普及が急がれる。高齢者の生活の質を保ちつつ安全対策は待ったなしだ。高齢ドライバーの事故は年々増え続けている。特に注視すべきは80歳以上だ。警察庁によると2005年は8645件だったが、15年は1万4895件と7割も増えた。年を取って目が悪くなったり、反射神経が鈍ったりする他、認知機能の低下などが疑われる。認知症への対策を強化するため、来年3月に改正道路交通法が施行される。75歳以上のドライバーが運転免許の更新時に認知機能検査を受け、「認知症の恐れがある」とされた場合は医師の診断が義務付けられる。認知症と診断されると免許取り消しになる。更新時でなくても、信号無視などの違反があれば、臨時の認知機能検査を受けなければならない。取り締まりは厳しさを増す。ただ、公共交通機関が整わない農村部で車は生活必需品だ。過疎化が進む地方では一人暮らしの高齢者も多い。同居世帯でも日中は一人で、家族に運転を頼れない。最寄りのバス停や駅までは遠く、バスや電車は1日数本の地域も少なくない。日々の病院や買い物に行くのに高価なタクシーばかり使えない。運転に不安を抱きながら、やむを得ず運転を続ける事情もある。自由に運転できることは、気持ちの張りや生活の質を保つ側面もある。自分の力で外出できれば友人と交流し行動範囲を広げ、社会への参画につながり、心身を活性化させる。「危ないから」と免許を取り上げるだけでは行動のきっかけを失って家に閉じこもり、寝たきりや認知症を招きかねない。メーカー各社は自動ブレーキなどの機能を搭載した車種開発を進めている。車両の衝突防止、車線はみ出し時の警報と性能は高まってきている。しかし、歩行者との衝突を避ける機能開発・普及はまだ不十分だ。政府も事故防止のため、技術面の支援を加速させるべきだ。一方で、自治体は高齢者が移動できる手段の整備を急がなければならない。安価に利用できる乗り合いタクシーやコミュニティーバスなど、地域住民同士で支え合う仕組みづくりへ知恵を絞るべきだ。事故を防ぐには当人の自覚が一番だ。過信せず、体の衰えを見極めた上で危険を減らす対策が求められる。暗くなる夕方以降は運転をやめる、高速道路は走行しない、アクセルとブレーキの踏み間違いを防ぐためオートマチック車からマニュアル車に切り替えるなど、できることは多い。家族や地域は高齢者の活動を奪わないよう、多様な選択肢を用意したい。


PS(2016年12月21日追加):*13-2のように、農林水産物・食品の輸出拡大に向け、販促や輸出支援の新組織を立ち上げるそうだが、そのような目的のために素人が天下りして作った新組織が役立つとは思えない。それより、*13-1のように、原発事故から5年たっても十分な除染すら行われていない中、風評被害や差別などではなく医学的根拠があって輸入制限のかかるような放射性物質汚染食品を「日本産」として一括して販売すれば、美味しいか否かとは関係なく、日本産の安全ブランドを損なって輸出の妨げになる。また、産地表示がなければ、日本国民でもなるべく日本産を避けなければならなくなる。そのため、まとめるとすれば、「made in Kyusyu(Japan)」「made in Shikoku(Japan)」「made in Hokkaido(Japan)」など獲れた地域を明記すべきであり、地域が明記されない場合は、消費者は安全性を考えて最悪の地域を想定しなければならない。そのためにも、原発は廃止すべきなのだ。

*13-1:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12706402.html
(朝日新聞 2016年12月15日) 除染に税金、数千億円 来年度から予算計上 政府方針
 政府は、東京電力福島第一原発の事故費のうち、帰還困難区域の除染に国費を使う方針を固めた。帰還希望者のため「復興を加速させる」狙いだ。東電が負担すべき事故関連費に税金を直接使うのは初めて。この費用は東電に求めない。来年度予算に計上し始め、総額は数千億円になる見通しだ。当面、所得増税などで集めた復興予算(計32兆円)を使う。これまで除染は国が立て替え、最終的に国が持つ東電株の売却益で充てる前提だった。方針は14日、自民党内でおおむね了承され、20日にも閣議決定される。

*13-2:https://www.agrinews.co.jp/p39725.html (日本農業新聞 2016年12月21日) JAグループ、ジェトロ・・・ 輸出増へ15団体協定 3月にも新組織 農水省
 JAグループや日本貿易振興機構(ジェトロ)、経団連など15団体は20日、東京・霞が関の農水省で、農林水産物・食品の輸出拡大に向けた連携を強化する協定を初めて締結した。業界を挙げて現地での販売促進などに取り組む。農水省は、来年3月にも輸出を支援する新組織を立ち上げる方針。輸出額が伸び悩む中、政府の1兆円目標達成に向け、官民で輸出体制を強化する。
●業界挙げて販売促進
 海外への販売促進は、産地がばらばらに行って訴求力を十分発揮できず、単発の商談会やイベントに終わって継続的なPRにつながっていないなどの課題がある。11月の政府の農林水産業・地域の活力創造プランでは、海外での販売促進の強化や輸出支援のための新組織を立ち上げることを決定している。消費者への販売促進などにたけた食品専門の販促機関であるソフェクサ(フランス食品振興会)をモデルに、「日本版ソフェクサ」として来年3月にも創設する。新組織は国内外に専門家を置き、海外のニーズを把握して国内の生産者につなげたり、消費者向けの販売促進を強化したりする。ジェトロ組織を活用し、将来民営化することを視野に入れ、民間企業など外部人材も活用する計画だ。連携協定は、政府が立ち上げる支援組織の効果をより大きくするため、実際に輸出に関わる団体の連携を強化する。農業団体や、米や青果物などの業界団体、経団連、商工会議所、全国知事会の代表が参加。政府が決定したプランに沿った取り組みを官民で進めることをアピールした格好だ。山本有二農相は「皆さんと新たな体制の下で互いに連携し合い、一緒になって輸出を伸ばしたい」と述べ、新組織の活用を促した。全中の奥野長衛会長も「国内の生産力を高めるためにも輸出は非常に大事だ」と輸出の意義を強調した。


<バスの小型化と自動運転車>
PS(2016年12月26日追加):*14-1のように、路線バスは財源難だけでなく運転手不足からも便数を減らさざるを得ない状態になっており、これを解決する方法には、バスの小型化や自動運転機能の搭載がある。特に佐賀県には、乗車人数が少ないのに大型バスを走らせるのはもったいない区間が多いため、バスを小型化すれば大型免許がいらないので運転手の増加が見込まれる上、女性運転手も少ないので積極的に女性も採用すればよいだろう。なお、*14-2のように、完全自動運転車生産のための企業間連携も進んでいるが、これは、もう少し時間がかかりそうだ。

*14-1:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/390030 (佐賀新聞 2016年12月26日) 県内路線バス 運転手不足深刻、免許保有者減、取得費高く
■佐賀市交通局「このままなら縮小も」
 路線バスの運転手が不足している。大型二種免許の保有者が減って人材確保が難しくなっているためで、業界では免許取得費用を援助するなどの取り組みも広がっている。佐賀市でも「市民の足」としてバスが担う役割は大きく、市交通局は「このままいけば路線縮小もあり得る」と危機感を募らせる。佐賀市南部をカバーする市交通局には現在94人の運転手がおり、平均年齢は53歳と高齢化が進んでいる。現状でも運転手は6人足りず、時間外勤務で路線をなんとか維持しており、「病気やけがで欠員が出ればさらに厳しくなる」と担当者。人手不足が解消せず、高齢化が進めば「路線縮小も検討せざるを得ない」とこぼす。市交通局は随時、運転手を募集しているが、なかなか人が集まらない。免許を持つ人が全国的に減少しているためで、2011年に104万人いた保有者は、15年には96万人まで減っている。また県内に大型二種免許の公認教習所がなく、取得に60万円前後の高額な費用が必要なことも、人材確保の壁となっている。市交通局のベテラン運転手(52)は「偏りが出ないようシフトを組んでもらったり、体調にも気を遣ってもらったりと配慮してもらっている」と話す一方、「人は足りてない。時間外勤務や公休出勤が増え、25年間働いてきて今が一番きつい」と打ち明ける。対策を打つ事業所もある。西鉄バスは、採用枠を大型二種免許取得者以外にも広げ、自社で運転手を育成している。自社が持つ自動車教習所に通わせ、免許取得にかかった費用を5年間で全額支給したり、普通免許を持つ高校新卒者を採用して3年後に大型二種を取得させたりと、人材確保に力を入れている。県バスタクシー協会は「深刻な問題だと認識しているが、現時点で具体的な対策や話し合いの場などは持てていない」と動きは鈍い。市交通局の大塚智樹副局長は「路線バスは地域住民の足。路線縮小は避けなければならない。人材確保は業界全体の問題であり、各事業所がどうこうできるレベルを超えつつある。国や県単位で大型二種免許取得者を増やす取り組みが必要ではないか」と指摘する。

*14-2:http://qbiz.jp/article/100576/1/ (西日本新聞 2016年12月22日) ホンダとグーグルが連携へ 完全自動運転で共同研究
 ホンダは22日、米IT大手グーグルと、ハンドルやアクセル、ブレーキの操作が一切いらない完全自動運転の実現を目指した共同研究の検討を始めたと発表した。実現すれば、ホンダは日本メーカーとして初めて、自動運転の研究で世界でも先行しているとされるグーグルと手を組む。ホンダとグーグルが業種の垣根を越えて手を組めば、他のメーカーなどでも連携が加速し、自動運転の開発競争が一段と激しくなりそうだ。共同研究は、ホンダ子会社の本田技術研究所(埼玉県和光市)と、グーグルが自動運転の研究開発部門を別会社化して設立した「Waymo(ウェイモ)」(米カリフォルニア州)の技術チームが進めることを検討している。ウェイモの自動運転用センサーやソフトウエアなどを、ホンダが提供する車両に搭載し、米国で共同の実証実験を行う予定だ。ホンダが完全自動運転に関する具体的な取り組みを公表するのは初めて。ホンダとグーグルは、正式契約に向けて今後、実証実験の時期など共同研究の詳細を詰める。ホンダは2020年ごろに高速道路での自動運転の実用化を目指し、開発を進めてきた。より高度な自動運転に向け、段階的な技術開発を目指すホンダに対し、ウェイモは既に難度が最も高い完全自動運転に向けた取り組みを進めている。ホンダは「開発の手法が異なる両社で幅広く取り組む方が、ゴールにより早く近づける」(広報部)と強調した。ただ、完全自動運転の実用化の目標時期は示さなかった。グーグルは、欧州自動車大手のフィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)とも自動運転の共同開発を進めている。

| 資源・エネルギー::2015.5~2016.12 | 05:37 PM | comments (x) | trackback (x) |
2016.11.4 世界が脱炭素社会に進む中で、日本が迷走する理由は何か (2016年11月5、8、9、10日、2017年6月2、4日に追加あり)
   
 1人当たりCO2排出量  世界のCO2排出量総計  各国の削減目標 エネルギー由来排出量

(図の説明:CO2の総排出量は中国、米国、インド、日本、ロシアの順だが、一人当たりCO2排出量となると米国、韓国、ロシア、日本の順であり、これらの国での節減効果は大きい。しかし、日本の削減目標は2013年比で26%にすぎず、他国と比較しても環境意識が低い。また、エネルギー由来のCO2排出量は、EV・太陽光発電などの再エネ・燃料電池で0にすることが可能だが、これについても日本は出遅れており、このように環境意識が低いのは、憲法に環境に関する規定がないことが理由ではなく、日本のリーダーに先見の明がなく、生態系や国民の命・健康への意識が低いことによると思われる)

(1)世界が脱炭素・再エネ導入を猛スピードで行っているのに、日本政府は・・
 2015年12月に国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP21)で採択されたパリ協定に、*1-1のように、大排出国の中国と米国が2016年9月に締結し、インド・欧州連合(EU)加盟国などが続いて、10月には発効条件である総排出量の55%以上、55カ国以上という要件を満たし、2016年11月2日には94の国と地域が協定を締結して、2016年11月4日に発効する。

 日本は、1997年12月に京都市で開かれた第3回気候変動枠組条約締約国会議で、地球温暖化防止に関する「京都議定書」の採択に尽力したにもかかわらず、現在の政府・経済界のリーダーは環境意識が低いため、「実現可能性がない」などとして2013年度比で26%減という低い目標しか出さず、*1-2のように、国益にならないTPPの批准ばかりを急いで、パリ協定には対応していなかった。

 しかし、「実現可能性」は政府がどう対応するかによって異なり、*1-2のように、世界は、欧州はじめ北米、中国、インドでも太陽光・風力といった再エネの導入を加速しているが、日本政府は、再エネを電気料金を上げる経済の足かせと捉え、原発再稼働・石炭火力依存を主軸とする時代錯誤状態にある。

 そのため、日本は、*1-3で独シュタインマイヤー外相が述べているように、決して請求書をよこさない再エネという資源の少ない国の産業への福音とも言えるビジネスから取り残され、最初に太陽光発電や本格的な電気自動車を発明した国であるにもかかわらず、*1-4のように蓄電池等の技術革新を外国に譲ることになった。しかし、ドイツ自動車部品最大手ボッシュのフォルクマル・デナー社長は、「電池の航続距離の倍増、価格半減は可能」と述べているのだ。

 また、農山村では、*1-2のように、太陽光、風力、小水力、木質バイオマス、地熱などの活用が十分できるにもかかわらず、農機が電動化しておらず燃油を使っているため、外国に高い燃油代金を支払わなければならない状態が続いている。しかし、早急に再エネ立国に転換し、農業者の発電に補助して農家を電力供給源と位置づければ、再エネ由来の電力が増えるとともに、農家に副収入が得られて、その他の農業補助金を削減することが可能だ。

 なお、*1-5-1で、日経新聞がやっと「日本企業はビジネスモデル転換が不可欠になったが危機感が乏しい」と書き、大成建設が横浜市内に、断熱性や通気性を高めてビルのエネルギー消費量を75%削減し、建屋壁面につけた薄膜太陽光発電設備などで必要なエネルギーを賄って外部調達エネルギーをゼロにする「ゼロ・エネルギー・ビル(ZEB)」を建てたことを紹介している。ZEBは、1995年頃、(私が)太陽光発電の提案をした時から視野にあったことで、技術開発が遅すぎたが、これで日本は建築資材も輸出可能になるだろう。

 今、日本では、ガソリンを使うハイブリッド車はエコカーと看做されているが、そろそろ排ガスゼロの電気自動車(EV)や化石燃料を原料とせずに作った水素を使う燃料電池車を環境車にすべきことは誰が考えても明らかだ。そのため、パリ協定を前倒しする規制強化が世界で始まっているのはよいことだ。

 また、*1-5-2のように、家庭用燃料電池「エネファーム」が日本で開発され、「オール電化」とあわせて実用に供されるのはよいことだが、化石燃料を原料としない水素を使用するのが本当のエコである。また、設備の定価が172万8千〜216万円というのは、「少し良いと著しく高い価格設定」の例になっている。そのため、家庭に普及させCO2の削減に貢献するには、化石燃料を原料としない水素を燃料とするエネファームを「瞬間湯沸器+α」程度の価格にすべきで、そうなれば国内での普及と輸出が可能だ。

(2)原発に関する日本政府の迷走
 経産省幹部は、*2-1のように、「新潟県民にここまで原発再稼働アレルギーがあるとは」と嘆いたそうだが、2004年10月23日にM6.8の直下型地震である新潟県中越地震を経験し、原発に怖い思いをさせられた新潟県民の意識を軽く見すぎている。新潟県にも医師はじめ専門家がおり、政府高官が「安全」等々と言えばそれを信じると考えるのは、民間人をあまりにも馬鹿にしている。

 そして、「知事には原発を止めたり稼働を指示したりする法的権限はない」とも書かれているが、知事選は地元自治体の意志表示であるため、経産省の先見の明のなさによって発生した国民負担額を、特定の地域を原発事故のリスクに晒すことにより解決してよい筈がない。

 また、*2-2に、「進まぬ再稼働と燃料高で東電ホールディングスの脱国有化への道筋が不透明になった」と書かれているが、これはまさに、*1-2に書かれている日本政府の時代錯誤の結果である。

 さらに、*2-3には、「志賀原発に雨水6トン流入して安全機能を失う恐れもあった」「これほどの雨が流入するのは想定外だった」と書かれているが、万が一の事故も許されない原発で、また次元の低い想定外かと思われる。

(3)国民への廃炉費用・事故処理費用のつけ回しで、せっかくの電力自由化が骨抜き
 *3-1に、「①フクイチの廃炉にいくらかかり、その費用をだれが負担するかの答えを出す作業が経産省の有識者会議で本格化しているが、その会議は非公開である」「②廃炉費用総額の見通しが示されていない」「③経産省は2回目の会合で、年800億円程度から数千億円に膨らむ可能性があると説明しただけだった」とのことである。しかし、少しでも国民の税金で負担するのなら、工法の妥当性や費用の抑制可能性を検討するために、先に試算結果を示すべきだ。

 なお、原則として、東電が過去に原発で発電した時のコスト(事故処理や廃炉費用も含むのが当然)を、その時発電された電力と無関係の国民が税金で負担する理由はないため、私は、東電自身が資産の売却や費用節減で資金を確保するか、それで足りなければ金融機関の債権放棄などを含む法的整理をするのが筋だと考える。

 その上、*3-2のように、 経産省は11月2日の有識者会議で、フクイチの賠償や他の原発の廃炉にかかる費用の一部を電力自由化で参入した新電力にも負担させる案を示したそうだが、原発のコストをすべての電力利用者で負担する理由はなく、原発を使ったことがない新電力に原発のコストを負担させて電力自由化を骨抜きにしようとするのは、これも迷走としか言えない。

 さらに、経産省が2030年度時点で発電全体の20~22%を原発で賄うとしたのも、その間にコスト低減して普及が進む再生エネを疎かにしすぎており、経済の原則にも反し、先見の明がなく、いくら原発の必要性を説明しても納得する人は少ないだろう。そもそも、再生可能エネルギーの導入コストは、全ての電気利用者が負担するのではなく、最初は税金から補助するのが筋である(原発は、40年間も税金で莫大な補助をしてきて、これからも金食い虫なのだ)。

(4)新たな放射能の安全神話
 福島県は、*4-1のように、フクイチ事故の避難区域だった場所に国内最大規模の建築用CLT(直交集成板)生産工場を整備し、東京五輪・パラリンピックの関連施設で製品が活用されるよう国と調整するそうだが、原発事故後、5年も経過して放射性物質を吸い上げた近隣の木材内部は2000ベクレルもあるそうだ。そのため、この建材で作られた建物の中にいる人の健康を心配するのは当たり前で、それを福島県産材の風評被害だとすることこそ、新たな放射能の安全神話である。

 文系、特に法学部系の人は、「疑わしきは罰せず」という意識のためか、健康被害があると証明されていないものは使ってよいと考える人が多いが、食品や薬は「害がないことが証明されていないものは、食べない、使わない」のが原則であり、放射性物質は0に近い方が望ましい。何故なら、被害が出てからでは遅いからである。

 また、*4-2のように、フクイチ事故に伴う除染で出た汚染土も、環境省の検討会が「法定の安全基準まで放射能濃度が減るのに170年かかる」という試算を示しながらも再利用の方針を決め、長期管理の可否判断を先送りしていたそうだ。私は、汚染土も、コンクリートで密閉した中に入れて上に盛り土や植栽などを行えば、避難区域近くの堤防などに使うのは可能だが、市街地の道路のように掘り返すことのある構造物に使うのは不適切だと考える。

 なお、原子炉等規制法は原発解体で生じる金属などの「安全に再利用できる基準(クリアランスレベル)」を放射性セシウム1キロ当たり100ベクレル以下と定めているのに、事故後成立した放射性物質汚染対処特別措置法は、8000ベクレル超を指定廃棄物とし、8000ベクレル以下なら問題なく廃棄処理できると規定したのも、人の健康被害を無視した放射能の安全神話である。

 その上、*4-3のように、フクイチ事故後5年半が経過しても、汚染水対策は予算ばかり使って足踏み状態であり、「海への放出が低コストで処分時間も短い」などとされているそうだが、これを実害がないのに悪評が立つ“風評被害”と決めつけるのは環境意識が低すぎ、この調子では、トリチウム以外はすべて除去されているかどうかも疑わしくなる。

<世界の動向>
*1-1:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12641667.html (朝日新聞 2016年11月4日) パリ協定、きょう発効 排出ゼロへ新ルール 温暖化対策
 パリ協定は、昨年12月、国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP21)で採択された。2大排出国の中国と米国が9月に締結、インドや欧州連合(EU)加盟国などが続き、10月に発効の条件となる総排出量の55%以上、55カ国以上の締結を満たした。30日後の11月4日に発効する。国連によると、2日時点で94の国と地域が協定を締結。出遅れた日本は4日にも国会で協定締結を承認する見通しで、その後閣議決定して国連に提出する。世界の温室効果ガス排出量はCO2換算で年間約370億トンに上る。日本はこのうち約14億トン(2013年度)で世界5位。各国は削減計画をたてることになっており、日本も30年度に13年度に比べて26%減らす目標を提出している。7日からは、モロッコのマラケシュで第22回締約国会議(COP22)が開かれ、パリ協定を実行するための詳しいルールを決める交渉を始める。パリ協定採択後、国際的な温暖化対策の仕組み作りが進んでいる。10月に航空機国際線のCO2排出規制や、高い温室効果がある代替フロンの生産規制で合意。国際海運でも18年までに、排出削減戦略を作ることを決めた。

*1-2:https://www.agrinews.co.jp/p39346.html (日本農業新聞 2016年11月2日) パリ協定発効 温暖化防止 日本出遅れ
 地球温暖化防止の新たな枠組み「パリ協定」が4日、発効する。気温上昇を抑えるため、世界各国が今世紀後半には二酸化炭素(CO2)など温室効果ガス排出の実質ゼロを目指す。半端な「低炭素」ではなく究極の「脱炭素」への決意は、人類生存の危機感の表れである。日本は協定批准ができておらず完全に出遅れた。失地回復には再生可能エネルギー立国への大転換しかない。熱波、洪水、海面上昇、生態系破壊、感染症まん延、食料不足・・・。温暖化の脅威は日増しに高まっている。世界の平均気温は上がり続けており、わが国も異常気象に見舞われている。温暖化防止は待ったなしだ。昨年末合意のパリ協定は2020年以降の枠組みだが、各国は米中の9月批准を皮切りに早期発効に動いた。発効は協定ルール整備後との見方が覆ったのは、多くの国が温暖化防止の政治的優先度を高めたからだ。それなのに安倍政権は何をやっているのか。大企業優先で真の国益にかなうはずもない環太平洋連携協定(TPP)の批准ばかり急ぎ、肝心のパリ協定は後回しだった。安倍晋三首相主宰の5月の伊勢志摩サミットでは、パリ協定の年内発効努力を宣言した。その日本が未批准とは失態と言うほかない。モロッコで7日に始まる国連気候変動第22回会議(COP22)に合わせ、パリ協定第1回締約国会議が15日から4日間予定される。日本は批准遅れのためオブザーバー参加しかできない。温暖化防止に「熱意なき国」を印象付け、環境外交での地位低下は免れない。世界では今、欧州や北米、中国、インドなども太陽光、風力といった再エネ導入を加速する。原発もCO2を排出しないが、廃炉・廃棄物処理を含めた総経費が高く、安全性懸念もあって敬遠がち。だが、安倍政権は再エネを電気料金を上げる経済の足かせと捉え、福島原発事故を忘れたかのような原発再稼働と、脱炭素化とは逆の石炭火力依存を主軸にしている。日本はその時代錯誤性から、再エネという新ビジネスからも取り残されていく。農山村に目を向ければ太陽光、風力に限らず小水力、木質などのバイオマス(生物由来資源)、地熱の活用は十分できる。早急に再エネ立国へ転換すべきだ。パリ協定は、今世紀末の気温上昇を産業革命以前と比べ2度未満(極力1.5度未満)に抑える目標を設定している。だが、現在の各国の温室ガス排出削減目標は不十分で、2.7度の上昇を許すとされる。日本の目標も、50年までに「80%削減」の閣議決定(12年)がありながら、30年までに「26%削減」(13年比)では緩過ぎる。協定発効によって、2年後に各国は最初の目標見直しを迫られる。わが国は再エネ推進による大幅排出削減を率先して主導しないと、環境先進国への復帰はできそうにない。

*1-3:http://www.tokyo-np.co.jp/article/world/list/201610/CK2016102902000142.html (東京新聞 2016年10月29日) 【国際】太陽や風は決して請求書をよこさない 独シュタインマイヤー外相 本紙寄稿
 脱原発政策を進めるドイツのシュタインマイヤー外相(60)が本紙に寄稿した。原子力発電の「高い潜在リスク」を指摘、再生可能エネルギーへの転換を訴え、温室効果ガス削減に向けた「新たな道」を共に切り開いていくよう、日本に呼び掛けている。タイトルは「世界規模のエネルギーシフト(転換)-太陽や風は決して請求書をよこさない-」。エネルギーシフトは、原子力に頼らず、再生可能エネルギーで供給を賄う政策だと説明。ドイツでの萌芽(ほうが)は、一九八六年の旧ソ連、チェルノブイリ原発事故(現ウクライナ)にさかのぼるとした。放射性物質の降下を恐れ、雨の日に屋外で遊べず、牛乳が飲めなくなるなど不安が広がり、環境に配慮したエネルギーへの転換を求める意識が高まった。東日本大震災の直後に起きた二〇一一年三月の東京電力福島第一原発事故で「決定的な影響」を受け、脱原発の表明に至ったと、経緯を振り返った。二二年末までに全ての原発の稼働を停止し、五〇年までにエネルギー消費を半減させ、再生可能エネルギーとスマートグリッド(次世代送電網)への移行を目指すとの目標を確認した。再生可能エネルギーの研究開発により、ドイツでは三十七万人超の雇用を創出し、エネルギーの効率化で産業界のコスト削減につながったと、経済効果も強調した。国際的にも、地球温暖化対策の新たな枠組み「パリ協定」への合意が広がり、エネルギーシフトの潮流は勢いを増していると主張。日本でも、多くの自治体でエネルギーシフトへの関心が高く、対話が望まれていると指摘し、「全力を尽くして支援していきたい」と述べた。外相の寄稿に関連したドイツのエネルギーシフトや日本との協力を考える「日独シンポジウム 温暖化対策と地方創生」(在日ドイツ大使館など主催)が来月二日午前九時半から、東京都港区赤坂のドイツ文化会館で開かれる。参加無料。申し込みはドイツ日本研究所のホームページ=https://www.dijtokyo.org/ja/=から。
<フランクワルター・シュタインマイヤー外相> 1956年1月、ドイツ西部デトモルト生まれ。大学で法学と政治学を学び、司法試験に合格。75年、中道左派の社会民主党に入党。シュレーダー前首相の側近となり、首相府長官を務め、メルケル首相率いるキリスト教民主同盟との大連立政権で2005年11月から09年10月まで外相。連邦議会社民党院内総務を経て、13年12月から外相再任。
<パリ協定> 京都議定書に代わる地球温暖化対策の新たな枠組み。昨年12月に採択された。今世紀後半に二酸化炭素(CO2)などの温室効果ガス排出を「実質ゼロ」にし、産業革命前からの気温上昇を2度未満に抑えるのが目標。各国が自主目標を掲げ互いに検証する。批准国が55カ国以上、排出量の合計が世界の55%以上との要件を満たし、11月4日の発効が決まった。協定の第1回締約国会議が同15日に開かれる。日本は批准手続きが遅れ、正式メンバーとして参加できない。

*1-4:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20161101&ng=DGKKZO09009150R31C16A0FFB000 (日経新聞 2016.11.1) 電池の「破壊的」技術革新 石油需要減、到来早く
 「石油生産者は予期せぬ技術進歩にさらされている」。英格付け会社フィッチ・レーティングスは10月半ばのリポートでこう指摘した。近年の業界で技術進歩の代名詞といえば「シェール革命」。これで原油生産がいずれ限界を迎えるとする「ピークオイル論」は遠のいた。だがフィッチが指摘するのは電池の「破壊的」技術革新だ。石油会社の収益に影響を及ぼし、電力、自動車にも余波が押し寄せるという。フィッチは電気自動車(EV)が競争力を増し、石油需要が想定より早く落ち込むと警鐘を鳴らす。国際エネルギー機関(IEA)によれば、世界の石油需要の55%は車で使うガソリンなどの輸送部門。フィッチは極端なシナリオとして欧州の新車販売の5割がEVの状況が10年続けば、域内ガソリン需要は25%減ると試算する。電池の価格下落は進む。米エネルギー省(DOE)によると2015年の1キロワット時あたりの価格は268ドル(約2万8千円)と過去7年で73%下落。22年までに125ドルまで下げ、ガソリン車並みの競争力を持たせるのがDOEの目標だ。量産効果と、素材改良など技術革新が背景にある。電池メーカーでは近年、欧州で工場の建設ラッシュが続く。韓国のLG化学はポーランドに17年、サムスンSDIはハンガリーに18年に欧州初の工場を稼働する。EVシフトを進める欧州メーカーがターゲットだ。象徴が内燃機関に誇りを持ってきたドイツ。10月24日、独ダイムラーが電池第2工場の着工式を開いた。19年から発売する航続距離500キロEVを支える基幹拠点だ。トーマス・ヴェーバー取締役は「電池技術は当社だけでなく、ドイツにとっても重要」と指摘。自動車部品最大手の独ボッシュも合弁や買収で電池開発に乗り出し、「電池の航続距離の倍増、価格半減は可能」とフォルクマル・デナー社長は説く。電気をためる電池は出力変動が大きい再生可能エネルギーとの相性がよい。IEAによると、15年の世界の電池の投資は100億ドルに達した。だが「電力系統につながっているのはわずか0.4%で、これから接続が本格化する」(ファティ・ビロル事務局長)。一方、15年の再生エネ発電容量の増加分は1億5300万キロワットと、原油安でも過去最高になり、容量で石炭火力を抜いた。IEA再生エネ部門を率いるパオロ・フランクル氏は「再生エネの発電量のシェアは14%にとどまるが、5年で20%を超える」とみる。車は買い替え期間が長く、一朝一夕で石油需要が減るわけではない。だが欧米石油大手には気候変動対策による業績への影響「カーボンリスク」の開示を求める株主からの声が高まる。株主の関心はピークオイルではなく「ピークデマンド」に移りつつある。9月28日、石油輸出国機構(OPEC)はアルジェでの緊急会合で減産に合意したが、その後も油価の戻りは限定的。翌29日に開幕したパリ国際自動車ショーでは欧州勢がEVシフトを鮮明にした。11月4日には地球温暖化対策の新たな国際枠組み「パリ協定」が発効する。電池を軸とする地殻変動は始まっている。

*1-5-1:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20161104&ng=DGKKASGG31H3V_R31C16A0M10900 (日経新聞 2016.11.4) パリ協定特集ビジネスモデル転換が不可欠に 日本企業、危機感乏しく
 日本企業は省エネ技術に優れているといわれてきた。だがパリ協定は低炭素ではなく脱炭素社会の実現を企業に要請する。これまでの技術やサービスの延長線上では世界で取り残される。日本企業はビジネスモデルの転換が求められる。「2年間実証して、エネルギー収支がゼロのビルは実現可能だとわかった」。大成建設の今酒誠環境本部長は、横浜市内に建てた実験ビルに手応えを感じている。地上3階建てのビルは「ゼロ・エネルギー・ビル(ZEB)」と呼ばれる。断熱性や通気性など高めた建屋の設計でエネルギー消費量を従来より75%削減。必要なエネルギーは建屋壁面につけた薄膜太陽光発電設備などで賄うことで、外部調達するエネルギーは年間通じてゼロを実証できた。太陽光発電だけで必要な電力は確保できるため、温暖化ガス排出量もゼロだ。20年にはZEB市場が本格的に立ち上がるとみて実用開発を急ぐ。パリ協定は温暖化ガス排出量の実質ゼロを目標としている。「炭素を出さない新たな経済社会システムの実現を定めた条約だ」。世界の温暖化問題に詳しいNPO気候ネットワークの平田仁子理事は語る。企業は事業活動や製品で排出ゼロに向けた知恵が求められる。パリ協定が早期発効したことで「自動車の燃費基準はより強化されるだろう」。日産自動車の川口均専務執行役員は身構える。電気自動車(EV)販売で先行する同社だが「危機感を持って(排ガスゼロの)ゼロエミッション車の開発を加速させたい」(川口専務)。米カリフォルニア州は自動車メーカーに販売車の一定比率以上をエコカーと定める環境規制で17年秋以降、ハイブリッド車がエコカーとみなされなくなる。パリ協定を前倒しするような規制強化が世界で始まっている。世界の潮流をにらみ、トヨタ自動車は50年までにエンジンだけで走る車をほぼゼロとする目標を定めた。グローバル企業はこれまでの技術やノウハウに固執しない挑戦に動き出している。だが危機感を持って挑戦する企業は日本はまだ少ない。運用総額100兆ドルを超える世界の有力機関投資家の支援で企業の温暖化対策を調査する国際NPO、英CDP。16年の調査で日本企業の回答率は53%と、65%前後の欧米より低かった。特に、国内温暖化ガス排出量の4割を占める電力業界は、対象10社で回答したのが東京電力ホールディングスだけだった。パリ協定の発効で、世界の投資家の注目を集めている調査だが「日本企業は対応がまだ二極化している」(英CDPの森沢充世ジャパンディレクター)。世界では温暖化対策は経営問題として取り組み始めている。日本企業は意識改革が求められる。

*1-5-2:http://qbiz.jp/article/97308/1/ (西日本新聞 2016年11月3日) エネファーム 販売攻勢 西部ガスの家庭用燃料電池
 西部ガス(福岡市)が、都市ガスを使った家庭用燃料電池「エネファーム」の普及を加速させている。エネルギー自由化で競争が激化する中、九州電力の「オール電化」に対抗し、環境への優しさもPRする。今後、既存住宅や新築マンションへの営業を強化する。西部ガスは2009年度、福岡市や北九州市など都市ガス供給エリアでエネファームの販売を開始。13年度は1283台(設置ベース)と初めて年千台を突破した。15年度は2600台に倍増し、累計で約7400台に上る。営業面では、日頃からガスの顧客に接するグループ会社の販売店23店舗に、西部ガスの営業社員が出向。大阪ガスから講師を招くなど、販売店の営業社員約340人が提案型の営業を磨いている。本社の社員も、新築を手掛ける大手住宅メーカーに売り込みを図っている。来年4月のガス自由化を控え、同社は新築マンションへの販売も進める。第1弾として福岡市中央区で今年1月に完成した分譲マンションに設置。近隣地区の5物件への導入も決まった。床暖房などで付加価値を高めたい高級マンションに人気だという。エネファームの特徴は、環境性能の高さと光熱費の安さ。最新機種の場合、一戸建ての4人家族の購入電力量を66%削減。ガスの従量料金単価も約6割下がり、年間約7万3千円の節約になるという。九電がオール電化で攻勢に出ている中、西部ガスの平島孝三郎副社長は「家で電気を起こし、お湯も沸かす先進性が強み。料金も対抗できる」と強調する。ただ、設備の標準モデルの定価が172万8千〜216万円と初期費用がかかるなど課題も多い。国は20年に全国で140万台の普及を目指しており、同社営業計画部の松本大さんは「全国のガス会社で販売量を増やし、メーカー3社が量産することで、価格を下げていきたい」と意気込んでいる。
■エネファーム 都市ガスから取り出す水素を、空気中の酸素と化学反応させて発電する家庭用燃料電池システム。その際に発生した熱を給湯にも利用する。住宅の近くで発電と給湯を同時に行うため、エネルギー利用効率が高く、95%に上るという。環境面では、西部ガスの試算で年間の二酸化炭素(CO2)排出量を4人家族で1・3トン削減できる。

<原発での日本の迷走>
*2-1:http://digital.asahi.com/articles/ASJBJ5JN4JBJULFA003.html
(朝日新聞 2016年10月16日) 新潟知事選、国と東電の誤算 再稼働のシナリオ揺らぐ
 経済産業省の幹部は16日夜、「新潟県民にここまで原発再稼働アレルギーがあるとは」と嘆いた。経産省は、福島第一原発事故の賠償や廃炉に責任がある東電について、柏崎刈羽原発の再稼働を前提に新たな支援策を練ってきた。この秋には省内の有識者会議が、年内にまとめる報告書の議論を始めた。だが、今回の知事選で、県民が柏崎刈羽の再稼働に強い抵抗感を持っていることが明確になった。7月の鹿児島県知事選でも、稼働中の九州電力川内原発(薩摩川内市)の一時停止を公約に掲げた三反園訓氏が当選。全国の原発再稼働を進めたい経産省のシナリオは狂い始めている。経産省にとっては、柏崎刈羽の再稼働こそ東電再建の「前提」と考えていただけに衝撃は大きい。東電は2016年3月期に営業利益3722億円の黒字を出した。ただ、原油安で火力発電などの燃料費が前年より1兆円減ったのが主因。被害者賠償や廃炉に無限責任を負っており、費用は自らの利益で賄う。原油価格が上がれば、それがおぼつかなくなる。東電が14年1月に公表した再建計画では、福島第一の処理費は総額11兆円だった。廃炉・汚染水対策に2兆円、被害者賠償や放射性物質の除染、中間貯蔵施設の整備などに9兆円かかると試算。これらを、ほかの大手電力会社の協力や国の無利子融資で立て替える仕組みも整えた。ところが、費用は膨らみそうだ。経産省の内部資料によると、少なくとも廃炉で4兆円、賠償で3兆円は増える。東電の広瀬直己社長は「合理的に見積もると債務超過になる可能性がある。倒れると(廃炉や賠償が)いかんともしがたい」と国に支援を求めた。いま、原子力規制委員会は柏崎刈羽の6、7号機を審査中だ。東電はこの再稼働で営業利益が年2千億円増えるとはじく。経産省幹部は「その分を廃炉や賠償に充てられる」という。知事には原発を止めたり稼働を指示したりする法的権限はないが、再稼働には地元自治体の同意を得るのが慣例だ。米山氏が新知事に選ばれたため、再稼働のハードルは高まった。ただ、再稼働が遠のくと、別建てで検討が進む東電救済シナリオの現実味が増しかねない。有識者会議の議題にもなっている新たな国民負担だ。今春の電力小売り全面自由化で参入した「新電力」の利用者も含めて広く電気料金に上乗せし、福島の賠償費なども織り込もうとしている。米山氏の当選を受け、経産省幹部は「新知事にも粘り強く理解を求めていくが、これから4年間、再稼働は難しいだろう」と言う。経産省は年内に、柏崎刈羽が早期に再稼働した場合と、しなかった場合の国民負担額を有識者会議に示す見込みだ。

*2-2:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20161101&ng=DGKKASDZ31I5E_R31C16A0TI1000 (日経新聞 2016.11.1) 東電、再建に三重苦、福島廃炉 進まぬ再稼働 燃料高、4~9月 7割最終減益
 東京電力ホールディングス(HD)の脱国有化の道筋が不透明になってきた。収益改善効果が大きい柏崎刈羽原発(新潟県)の再稼働はメドが立たず、今後は原油高による燃料費上昇も懸念材料だ。さらに福島第1原子力発電所の廃炉費用がのしかかる、いわば三重苦。広瀬直己社長は31日の記者会見で、廃炉費用を自前で賄う方針を改めて強調したが、当事者能力は一段と低下している。この日発表した2016年4~9月期連結決算は事業環境の厳しさを浮き彫りにした。純利益は941億円と前年同期比7割弱減った。今年4月に始まった電力小売りの全面自由化で、東電は半年で100万件以上の顧客を新電力などに奪われた。そんな中、経営陣が期待をかけるのが業績改善効果の大きい原発再稼働。しかし、柏崎刈羽原発がある新潟県では慎重姿勢をとる米山隆一氏が知事に就任し再稼働は当面、困難になったとの見方が多い。下期にかけては原油高の逆風も強まる。燃料コストが上がるなか、原発なしで火力発電所をフル稼働させなくてはならない。加えて福島第1原発の事故処理にかかる金額は従来想定を大きく上回りそうだ。広瀬社長は「非連続の改革を断行し、国民に負担をかけず廃炉費用を捻出する覚悟だ」と強調、福島事故に対する責任を果たす姿勢を示したが、「まだ総額はわからない」(広瀬社長)状況だ。経済産業省の専門家委員会は10月、廃炉費用は現在の年800億円から数千億円に拡大する可能性があるとした。廃炉作業は今後、何十年にもわたって続く見込みで、東電が本当に自力でコストをカバーし、国民負担を回避できる確証はない。東電は根本的な経営改革を進めるため、様々な事業分野で他社と連携する考えを示している。だが、その具体策は経産省が委員会を設けて検討を始めたばかり。広瀬社長も会見では「委員会で議論してもらえる」と何度も繰り返した。経産省が掲げた原子力事業の分社についても「今は差し控える」と明言を避けた。東電は16年度中に社債の発行を再開する計画だが、実現できるかは不透明だ。17年初めに新たな再建計画を策定し、国の経営評価を経て脱国有化するというシナリオの行方はみえない。

*2-3:http://digital.asahi.com/articles/ASJBM4K37JBMULBJ00D.html (朝日新聞 2016年10月20日) 志賀原発に雨水6トン流入 「安全機能、失う恐れも」
 停止中の北陸電力志賀原発2号機(石川県)の原子炉建屋に6・6トンの雨水が流れ込み、非常用照明の電源が漏電する事故が9月に発生し、原子力規制委員会は19日、北陸電に原因究明と再発防止を求めた。田中俊一委員長は「これほどの雨が流入するのは想定外だった。安全上重要な機能を失う恐れもあった」として、新規制基準に基づく再稼働の審査を見直す可能性を示唆した。北陸電の報告によると、雨水の流入は9月28日に発生した。原子炉建屋の横にある排水路が道路工事で一部ふさがれていたため、雨水が道路にあふれ出た。仮設ケーブルを通すためふたが一部開いていたケーブル配管に流れ込んだ。雨水は配管を通って原子炉建屋の1階に流入。非常用照明の電源設備などが漏電した。さらに床のひび割れなどを通って地下2階まで達した。地下1階には、地震などで外部電源が失われた際に使われる最重要の蓄電池があるが、その真上の場所にも水が来ていたという。気象庁によると、当日の雨量は1時間あたり最大26ミリだった。東京電力福島第一原発は、津波で非常用電源が失われて事故につながった。このため、新基準は防潮堤で津波を防ぎ、建屋に水密扉をつけて浸水を防ぐなどの対策の強化を求めている。しかし、配管から雨水が流れ込むことは重視されてこなかった。志賀原発は近くに川などがないため洪水対策は不要とされ、配管は密封されていなかった。規制委は今後、志賀2号機の再稼働に向けた審査で対策を求めていく方針。また、今回の問題が志賀原発固有の問題か、他原発の審査にも広げる必要があるかどうか、北陸電の報告を待って検討するという。北陸電の金井豊社長は19日、規制委の臨時会で「現場周辺は標高が高く、止水対策が後手に回っていた。当直の危機意識も薄く、警報への対応も遅れた」と陳謝した。

<国民への廃炉費用・事故処理費用のつけ回し>
*3-1:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12628010.html
(朝日新聞社説 2016年10月27日) 福島廃炉費用 これで議論できるのか
 未曽有の事故を起こした東京電力福島第一原発の廃炉にいくらかかり、その費用をだれがどう負担するのか。この問いに答えを出す作業が経済産業省の有識者会議で本格化している。国民負担にもかかわる難題だが、今の議論の進め方には納得しがたい点が多い。まず疑問なのは、会議が非公開であることだ。議事要旨が後に公表されるが、概要にとどまり、誰の発言かもわからない。廃炉作業を担う東電の経営は柏崎刈羽原発(新潟県)の再稼働の有無に左右されるが、会議のメンバーには原発推進を支持してきた財界の首脳が名を連ねる。先の知事選の結果が示す通り、地元では再稼働への反対が強い。そのなかで再稼働をあてにした形で検討が進むのでは、という懸念がぬぐえない。廃炉費用の総額の見通しがまだ示されていない点も、理解に苦しむ。初会合で早く示すよう出席者が求めたが、先日の2回目の会合で経産省は「足元の年800億円程度から数千億円に膨らむ可能性がある」と説明しただけだった。具体的な試算結果は、今年末にも東電の経営改革の姿や国の対応とセットで示すという。だが、この手順はおかしい。廃炉にいくらかかりそうかを見極めることが、議論の出発点のはずだ。溶け落ちた核燃料の実態がはっきりしない現状では、正確な見積もりは確かに難しい。しかし、工法が妥当なのか、費用を抑える工夫ができないかをしっかり検討するためにも、先に試算結果を示すべきだ。費用のまかない方について、有識者会議は、金融機関の債権放棄などを伴う法的整理のほか、国が税金で肩代わりする案や、今の公的管理を長く続ける案を退け、東電自身が経営改革で資金を確保する道を選んだ。柏崎刈羽原発を分社化し、他社の原発事業と再編する方向性を示したのも、「自助努力」を強調するのが狙いなのだろう。東電が改革を徹底し、税金投入や電気料金値上げといった国民負担を避ける努力を尽くすのは当然だ。ただ、問われるのは、それだけで最低でも数兆円とみられる巨額の費用を東電がまかなえるかどうかの見極めである。途中で自力路線が行き詰まり、廃炉作業に影響が出れば、福島の復興が遅れることにもなりかねない。公開の場で、拙速を避けて、費用や負担について検討を尽くす。福島第一の廃炉は国民的な課題だけに、幅広い納得を得る姿勢が欠かせない。

*3-2:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20161103&ng=DGKKASFS02H5S_S6A101C1EA2000 (日経新聞 2016.11.3) 新電力にも原発コスト、賠償・廃炉費 大手で賄えず 消費者に負担転嫁も 経産省案
 経済産業省は2日に開いた有識者会議で東京電力福島第1原子力発電所事故の賠償や、福島第1を除く原発の廃炉にかかる費用の一部を電力自由化で参入した新電力にも負担させる案を示した。膨らみ続ける賠償などの費用を東電や電力大手だけで賄うのは難しいためだ。原発のコストをすべての電力利用者で負担する仕組みづくりをめざすが、反発も広がる。有識者会議が年内に結論を出し、経産省は来年の通常国会に関係法の改正案を提出する方針だ。福島第1原発事故の賠償費用は現在、東京電力ホールディングスと他の電力大手など11社が原子力損害賠償・廃炉等支援機構(原賠機構)に負担金を支払っている。2015年度は総額で1630億円(東電の特別負担金は除く)。電力大手はほかに、福島第1以外の原発の廃炉に伴う減価償却費や解体費の積み立ても負担している。経産省が提示した案は、こうした原発に関連するコストの一部を新電力にも担ってもらうというものだ。新電力が電力大手に支払う送電線利用料への上乗せを想定している。新電力がその分を小売料金に転嫁すれば、利用者に負担が回る。新電力にどのくらい負担を求めるかは、これから検討する。新電力の利用者も自由化前は大手の客で、原発の電気を使っていた。経産省幹部は「大手に残った人だけ負担するのは不公平だ」と話す。福島第1原発事故の賠償費用はすでに被災者への支払いが6兆円に上り、さらに兆円単位で膨らむ見込みだ。一方、事故後の新規制基準の導入などで再稼働は全国で遅れている。稼働しているのは九州電力川内原発(鹿児島県)と四国電力伊方原発(愛媛県)だけだ。司法判断で停止した関西電力高浜原発(福井県)のような例もあり、原発は収益性を見通しにくくなった。大手の負担余力が限られるなか、新電力にも一部を補ってもらった方が原発を安定的に維持できる、との見方がある。いまも原発関連のコストのなかで使用済み核燃料の再処理費用は、原発を持たない新電力が一部を負担している。賠償費用や廃炉費用もこれに続くかたちになる。2日の有識者会議では日本消費生活アドバイザー・コンサルタント・相談員協会の大石美奈子委員が「新規参入者が競争意欲を失うのでは」と指摘した。東大教授の松村敏弘委員は「上乗せするとしても何らかの歯止めが必要だ」と述べた。政府は2030年度時点で発電全体の20~22%を原発で賄う計画だ。二酸化炭素(CO2)の削減やエネルギー安全保障の観点から原発は有効とみており、その必要性を説明していく考えだ。太陽光など再生可能エネルギーの導入コストは、再生エネを好むかどうかにかかわらず全ての電気利用者が負担している。標準家庭で電気料金に月675円を上乗せしてでも、その普及が国益になるとの判断がある。有識者会議でSMBC日興証券の円尾雅則委員は「再生エネと同じように原子力が必要だからみんなでコストを回収すると整理すればすっきりする」と指摘した。この日は福島第1原発の廃炉費用について東電1社に負担させる案も示した。利益を優先的に廃炉に回しながら、原賠機構に基金をつくって支払いを支える仕組みだ。

<放射能安全神話>
*4-1:http://blog.goo.ne.jp/flyhigh_2012/e/b76853de83e1a746f9ba8d3ff7eeaa90 (福島民報 2015/6/20) CLT生産拠点 県来年度にも着工 大熊が有力
 県は東京電力福島第一原発事故に伴う避難区域に、国内最大規模となる建築用のCLT(直交集成板)生産工場を整備する。被災地の産業振興と県内全域の林業再生を目指した取り組みで、東京五輪・パラリンピックの関連施設で製品が活用されるよう国と調整する。大熊町が復興拠点に位置付ける同町大川原地区が工場の設置場所として有力視されており、平成28年度にも着工する。
■東京五輪活用目指す
 19日に開かれた6月定例県議会本会議の代表質問で、柳沼純子議員(自民党、郡山市)の質問に小野和彦県農林水産部長が答えた。東日本で初のCLT生産工場となり、国内最大級の年間5万立方メートルの出荷を目指す。県は7月中に産学官による検討会を設け構想を具体化する。県内の建設業者などでつくる県CLT推進協議会、原発事故に伴い避難区域が設定された12市町村、復興庁、木材を扱う民間企業などが参加する予定で、27年度は工場の設置・運営主体を決め、設置場所を選ぶ。国内外で需要調査に取り組む。設置場所として浮上している大熊町大川原地区は居住制限区域だが、30年度に開設予定の常磐自動車道大熊インターチェンジ(仮称)に近く、高速道路を使い県内全域からCLTの原料となる木材を集めやすいというメリットがある。早ければ29年度内の完成を目指す。東京五輪・パラリンピック選手村の宿舎などに活用するよう政府に求める。災害公営住宅での導入も検討する。県は原発事故に伴う県産材への風評対策として、生産工場に木材のモニタリング設備を設ける方針だ。国内林業の成長産業化を目指す国土交通省と林野庁は昨年11月、CLT普及のロードマップを発表。36年度までに、CLTの国内年間生産量を現在の1万立方メートルから50万立方メートルまで増やす方針を掲げている。県CLT推進協議会は今年2月、湯川村に東日本初となるCLT共同住宅を建設した。竹下亘復興相や今井敏林野庁長官らが相次いで視察し、本県での取り組みを支援する考えを示した。県林業振興課は「CLT産業の先進地を目指し、林業再生につなげたい」としている。国内では岡山など西日本の3県でCLT生産工場が稼働している。

*4-2:http://mainichi.jp/articles/20160627/k00/00m/040/085000c (毎日新聞 2016年6月27日) 汚染土、「管理に170年」…安全判断先送り、再利用方針
 東京電力福島第1原発事故に伴う除染で出た汚染土を巡り、環境省の検討会が再利用の方針を決めた際、法定の安全基準まで放射能濃度が減るのに170年かかるとの試算を非公開会合で示されながら、長期管理の可否判断を先送りしていたことが分かった。環境省は汚染土を道路の盛り土などに再利用し、コンクリートで覆うことなどで放射線を遮蔽(しゃへい)するとしているが、非公開会合では盛り土の耐用年数を70年と提示。道路の供用終了後も100年間の管理が必要で、専門家は「隔離もせずに計170年もの管理をできるはずがない」と厳しく批判している。この非公開会合は「放射線影響安全性評価検討ワーキンググループ(WG)」。汚染土の減容や再利用を図るため環境省が設置した「中間貯蔵除去土壌等の減容・再生利用技術開発戦略検討会」の下部組織で、メンバーは一部重なる。毎日新聞が入手したWGの内部資料によると、1〜5月に6回開かれ、放射線の専門家ら委員8人と環境省や日本原子力研究開発機構(JAEA)の担当者ら計20人余が出席した。原子炉等規制法は原発解体で生じる金属などの「安全に再利用できる基準」(クリアランスレベル)を放射性セシウム1キロ当たり100ベクレル以下と定める一方、事故後成立した放射性物質汚染対処特別措置法は8000ベクレル超を指定廃棄物とし、同ベクレル以下を「問題なく廃棄処理できる基準」と規定。WGはこの8000ベクレルを汚染土再利用の上限値とするための「理論武装」(WG委員長の佐藤努北海道大教授)の場となった。環境省は汚染土をコンクリートで覆うことなどで「放射線量はクリアランスレベルと同程度に抑えられる」として道路の盛り土や防潮堤など公共工事に再利用する計画を発案。1月27日の第2回WG会合で、委員から「問題は(道路などの)供用後。自由に掘り返していいとなると(再利用の上限は)厳しい値になる」との指摘が出た。JAEAの担当者は「例えば5000ベクレル(の汚染土)を再利用すれば100ベクレルまで減衰するのに170年。盛り土の耐用年数は70年という指標があり、供用中と供用後で170年管理することになる」との試算を提示した。その後、管理期間を巡る議論は深まらないまま、上部組織の戦略検討会は8000ベクレルを上限として、コンクリートで覆う場合は6000ベクレル以下、植栽した盛り土の場合は5000ベクレル以下など用途ごとに目安を示して再利用を今月7日に了承した。環境省は年内にも福島県内の仮置き場で濃度の異なる汚染土を使って盛り土を作り、線量を測る実証実験を始めるとしている。戦略検討会の委員を兼ねるWGの佐藤委員長は管理期間170年の試算を認めた上で、「議論はしたが何も決まっていない。今回は再利用の入り口の考え方を示したもので、(170年の管理が)現実的かどうかは今後検討する」とした。環境省除染・中間貯蔵企画調整チーム長だった小野洋氏(6月17日異動)は、「最後どうするかまでは詰め切れていないが、そこは環境省が責任を持つ」と述べた。同じ検討会の下に設置され土木学会を中心とした別のWGでは汚染土再利用について「トレーサビリティー(最終段階まで追跡可能な状態)の確保は決して容易ではない」との見解が示されている。
●捨てているだけ…熊本一規・明治学院大教授(環境政策)の話
 汚染管理は、一般人を立ち入らせないことや汚染物が埋まっていることを知らせるなどの要件を満たすことが必要だ。道路など公共物に使いながら170年間も管理するのはあまりに非現実的。70年の耐用年数とも矛盾する。このような措置は管理に当たらないし、責任を取らないと言っているに等しい。実態としては捨てているだけだ。
●除染による汚染土
 住宅地などの地表面をはぎ取った汚染土はフレコンバッグなどに入れ現場の地下に埋設保管されているほか、自治体などが設置した仮置き場で集積保管されている。推計で最大2200万立方メートル(東京ドーム18個分)とされる福島県内分は双葉、大熊両町に整備中の中間貯蔵施設で最長30年間保管後、県外で最終処分する方針だが、処分先などは未定。福島県外では栃木、千葉など7県で計約31.5万立方メートルが昨年9月末時点で保管されているが、今後の取り扱いは決まっていない。

*4-3:http://mainichi.jp/articles/20160907/ddm/003/040/044000c
(毎日新聞 2016年9月7日) クローズアップ2016、福島原発事故5年半 汚染水対策、足踏み
 東京電力福島第1原発事故の発生からまもなく5年半経過するが、政府や東電の汚染水対策が足踏みしている。地中に「氷の壁」を造り、地下水流入を防ぐ「凍土遮水壁」(全長約1・5キロ)は効果が表れず、放射性のトリチウムが残る処理水の行き先も宙に浮いている。政府は東京五輪イヤーの2020年中に、原子炉建屋内の汚染水処理を完了させる方針だが、黄信号が点灯している。
●溶ける凍土遮水壁
 「大雨の影響で、地下の2カ所で温度が0度以上に上がってしまった」。東電の広報担当者は台風10号が通過した直後の1日の記者会見で、大雨によって地下水が大量流入し、凍土遮水壁の2カ所が溶けたことを明らかにした。凍土遮水壁は今年3月に凍結を開始したが、一部では地質の関係で地下水の流れが速く、凍結できない状況が続いていた。さらに今回の大雨で凍結部分が溶けるという弱点も明らかになり、専門家からは計画の破綻を指摘する声が上がる。第1原発の原子炉建屋周辺には、山側から大量の地下水が流入し、これが溶けた核燃料に触れるなどして高濃度の放射性汚染水が1日約400トン発生している。東電はこの流れを断つため、13年に凍土遮水壁の建設を決定。建屋周囲の地下30メートルまで1568本の凍結管を打ち込み、氷点下30度の冷却液を循環させて氷の「地下ダム」を造った。東電は汚染水対策の切り札と位置付け、今年3月から海側での凍結を開始し、6月からは山側の大半で凍結させた。先月時点で海側は99%、山側は91%凍結したとしている。しかし、凍結を開始して5カ月が経過しても汚染水の発生量はほとんど変わらないまま。先月18日にあった原子力規制委員会の検討会でも、専門家から「いつ効果が出るのか」「遮水効果が高いとの東電の説明は破綻している」などの意見が相次ぎ、東電が答えに詰まる場面もあった。凍土遮水壁は、20年開催の東京五輪への思惑も絡む。政府は13年9月に、凍土遮水壁などの汚染水対策へ国費を投入することを決定。その4日後に開かれた五輪招致のプレゼンテーションで、安倍晋三首相が「汚染水による影響は第1原発の港湾内の0・3平方キロの範囲内で完全にブロックされている」と国際公約し、東京招致を勝ち取った。政府は凍土遮水壁の建設費として国費345億円を投入しており、計画が「破綻」すれば国民からの批判を招きかねない。世耕弘成経済産業相は先月の記者会見で「凍結しづらいのは事実だが、凍結は進みつつある」と強調したが、効果は見えないまま。政府と東電は20年までに、建屋内の汚染水処理を終えるとの廃炉工程表も掲げており、凍土遮水壁は「国際公約」の成否も握る。凍土遮水壁の効果を上げるため、東電は6月から、温度の下がりにくい部分に特殊なセメントを注入し、凍らせやすくする追加工事を実施している。東電は今後「全面凍結」させる方針だが、効果が表れるかどうかは見通せない。地盤力学が専門の浅岡顕・名古屋大名誉教授は「凍土壁は『壁』ではなく、すき間のある『すだれ』のようなものでしかない」と指摘。「凍土壁の遮水性が低いことは明らか。早急に別の種類の壁を検討すべきだ」と話している。
●2020年完了に黄信号
 汚染水対策は「入り口」で地下水の流入を防ぐ凍土遮水壁だけでなく、「出口」も課題を抱え、20年の完了目標の壁になっている。放射性物質の大半を除去した後に出る処理水の処分方法が決まっておらず、貯蔵タンクの容量が逼迫(ひっぱく)しているためだ。経済産業省は今秋に専門部会を設置し、処分方法を検討する方針。現時点で海への放出が低コストで処分時間も短いとされるが、風評被害を懸念する地元が反対している。東電は原子炉建屋などにたまった汚染水をくみ上げ、62種類の放射性物質を除去する多核種除去設備「ALPS(アルプス)」で浄化しているが、トリチウム(半減期約12年)は除去できずタンクにためている。トリチウムは、原子核内の陽子数が水素と同じで中性子の数が異なる水素の同位体。トリチウムを含む水は沸点などの物理的性質が普通の水とほとんど変わらず、分離が難しい。国際原子力機関(IAEA)は13年公表の報告書で「トリチウムは海洋生物の体内に蓄積されず、人体への影響は非常に限定的」と指摘。海に流すことも含めて検討するよう提言した。通常の原発の運転でも、トリチウムを含む排水が国の基準に従って海に放出されており、原子力規制委員会の田中俊一委員長も「海洋放出すべきだ」との考えを示す。経産省は、トリチウムを含む処理水の処分方法について、海洋放出▽水蒸気化▽電気分解で水素化して大気放出▽セメントなどで固めて地下埋設▽パイプラインで地下に注入−−の5方法を比較。トリチウム水の総量を80万トン、流す量を1日400トンなどと仮定すると、海洋放出の処理期間は7年1カ月〜7年4カ月と最も短く、コストも18億〜34億円で最低になるとの試算を4月に発表した。ただし、これは濃度を国の基準の上限値(1リットル当たり6万ベクレル)に希釈して流す場合の試算。より低い濃度で放出する場合、放出量を増やさなければ長期化する。国と東電は山側でくみ上げた地下水を海に流す際、トリチウム濃度を同1500ベクレル未満に設定しており、仮にこの濃度で放出すれば、1日400トンの放出量では最大293年かかる計算だ。一方、福島県漁業協同組合連合会は風評被害を懸念し、トリチウム水の海洋放出に反対している。経産省が試算を発表した4月に開かれた政府と地元との協議会で、野崎哲会長は「慎重に進めてもらいたい」と異議を唱え、タンクで保管を続けるよう促した。事故後、県漁連は沿岸での操業を自粛。国の出荷制限指示もあり、県内漁港の水揚げ額は15年現在、事故前(10年)の約6%まで激減した。鈴木正晃副知事も協議会で「社会的影響も含め、総合的に議論してほしい」と述べ、海洋放出などについて拙速に判断することがないようクギを刺した。

PS(2016年11月5日追加):*5の海上保安庁の耐用年数を超えた巡視船・巡視艇を次第に新造していくのはよいと思うが、現代の新造船は化石燃料ではなく、水素による燃料電池か電動にして、海流の速い海域に停泊していると充電できるような新システムにすると、これも輸出可能だろう。

   
 2016.11.5佐賀新聞   巡視艇やまゆり      巡視船こがね

*5:http://www.saga-s.co.jp/news/national/10201/373606
(佐賀新聞 2016年11月5日) 海保船艇の35%が耐用年超過、2百カイリ設定時の建造影響
 海上保安庁の巡視船と巡視艇計366隻のうち、昨年度末までに耐用年数を超えた船が35%の129隻に上ることが5日、分かった。1977年の領海拡大と漁業水域設定を受けて大量建造した船の更新が進んでいないのが理由。沖縄・尖閣諸島周辺での中国船への対応などで海保の役割の重要性は増しているが、予算の制約の中で必要な船舶をどう確保するかや、効率的な運用方法が課題となっている。海保は船体の摩耗や金属疲労の度合いを考慮し、外洋で活動する比較的大型の巡視船の耐用年数を25年、主に沿岸を警備する小型の巡視艇を20年としている。


PS(2016.11.8追加):*6のように、送電網の利用料に上乗せする形で廃炉費用を新規参入した新電力に負担させるのは、大手電力会社の原発関連の負債を、原発を使ったことがない新会社に押し付けるもので、全く筋が通らない。このようなことをすれば、公正な市場で伸ばすべき新分野の芽を摘むので、送電網の利用料は中立でなければならないが、それができないようなら、ガス会社や地方自治体が送電網を埋設するなど、送電網を複数作って選べるようにした方がよいと考える。なお、長距離送電には、例えば、鉄道の敷地を利用して超電導電線を設置し、鉄道会社が送電料もとる方法がある。

*6:http://headlines.yahoo.co.jp/videonews/ann?a=20161108-00000000-ann-bus_all (テレビ朝日 2016.11.8) 孫社長「根底からおかしい」 原発廃炉費用負担で
 福島第一原発の廃炉費用などを電力自由化で参入した新電力にも負担させる案が政府内で検討されていることについて、ソフトバンクグループの孫正義社長が批判しました。ソフトバンクグループ・孫正義社長:「考え方は根底からおかしいのではないかと思う。古い業界を守るために過去の遺産を新しいところに押し付けることを意味していて、新しく伸びるべき分野の芽を摘んでしまうのではないかと危惧する」。政府は現在、兆円単位で増えることが予想される福島第一原発の廃炉費用に加え、他の原発の廃炉費用についても送電網の利用料などに上乗せする案を検討しています。原発を保有していない新電力も廃炉費用を負担することになるため、孫社長は真っ向から反論しました。


<原発のコストと環境への悪影響>
PS(2016年11月9日追加):*7-1のように、原発の建設費や地元補助金を除く原発費用として、フクイチの事故処理、廃炉、最終処分場建設、核燃サイクルに最低でも総額30兆円かかるそうだが、経産省はこれまで「原発のコストは安い」と強弁し、その反省もなく財界人らと作った「東電改革1F問題委員会」で東電で賄えない分は電気代等を通じて国民負担を求めるそうだ。しかし、そのために、年金・医療・介護・教育・保育など社会保障の同じ財布から出される部分が削減されたりしている。
 また、*7-2のように、経団連の榊原会長がパリ協定の承認を受け、「①原発の早期再稼働が必要」「②日本にとっては非常に高い目標を国際公約した」「③安全審査を通った原発は地元の理解をいただき、早期に再稼働することが絶対に必要だ」などと述べたそうだが、①は今では根拠のない時代遅れの見解であり、②は日本企業の経営者は環境意識が低すぎるということであって、③も(事故を起こさない)100%安全な原発はないと規制委員会が明確に述べているため、環境と財政に悪影響を与えるのはCO2よりも原発の「放射性物資+原発温排水」の方が大きく、日本の産業界の“リーダー”は経済にも自然にも弱すぎるということだ。

*7-1:http://www.tokyo-np.co.jp/article/economics/list/201610/CK2016102002000131.html?platform=hootsuite (東京新聞 2016年10月20日) 原発処理に総額30兆円 既に国民負担14兆円 本紙調べ
 原発政策を進めるには原発建設費、地元補助金を除き、関連処理費用として東京電力福島第一原発の事故処理、廃炉、最終処分場建設、核燃サイクルに最低でも約三十兆円かかることが本紙の調べで分かった。十九日には、経済産業省が有識者会合の作業部会を開き、規制変更によって廃炉が決まった原発の廃炉費用を電気料金に上乗せする方針を固めた。高速増殖炉もんじゅの行き詰まりなど原発政策の矛盾が拡大する中、政府が国民負担を増やそうとする論議が本格化する。すでに国民は電気料金や税金で十四兆円を負担しており、今後、さらに十六兆円以上の負担を迫られる可能性がある。新潟県や鹿児島県知事選で原発慎重派の候補が当選するなど原発への厳しい民意が強まる中で、政府が国民負担を増やしながら原発を推進するかが問われそうだ。福島第一原発の処理に必要なお金は、二〇一三年時点の見積もりを超過。二・五兆円を見込んでいた除染費が来年度予算の概算要求では三・三兆円に、被災者への賠償金がすでに六・三兆円にのぼっている。廃炉費用の見込み額も二兆円となっており、総額で十二兆円以上かかりそう。東電は自力で払うのは困難とみて政府に支援を求めた。経産省が財界人らとつくった「東京電力改革・1F(福島第一原発)問題委員会」で検討しているが、東電の経営努力で賄えない分は、電気代などを通じ国民に負担を求める方針だ。東電を除く原発の廃炉費用問題では、福島第一原発の事故後、原発の規制基準が変わったため関西電力美浜原発1号機など六基が廃炉を決定。予定より早い廃炉決定などで計三百二十八億円の積み立て不足(一三年三月末時点)が生じている。経産省は原発による電力を販売していない新電力の契約者も含めすべての利用者の電気料金に上乗せし、回収する意向だ。他の原発も合わせると合計二・九兆円(福島第一などを除く)の廃炉費用が必要だ。また、使用済み核燃料をリサイクルする計画の柱だった高速増殖炉「もんじゅ」の廃炉方針に伴い、経産省は代わりの高速炉を開発する。政府はすでに核燃サイクルに十一兆円(最終処分場を除く)を費やし、電気代や税金で国民が負担している。もんじゅの後継が決まれば、さらに国民負担は膨らみそうだ。核のごみの最終処分場は場所が決まっていないが、政府試算では最低三・七兆円かかる。このうち積み立て済みは国民が支払った電気代をもとにした一兆円だけ。政府は年末にかけ候補地選定作業を急ぐ予定で具体化すればさらに国民負担が増える可能性がある。政府は福島第一原発の処理問題やもんじゅの後継問題でも、年末までに方針を決める意向だ。

*7-2:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12649167.html (朝日新聞 2016年11月9日) 「原発の早期再稼働、必要」 経団連・榊原会長が見解 パリ協定承認受け
 経団連の榊原定征会長は8日、「パリ協定」の承認案が衆院本会議で承認されたのを受け、「日本にとっては非常に高い目標を国際公約したことになる。安全審査を通った原発は地元の理解をいただき、早期に再稼働することが絶対に必要だ」と金沢市での会見で述べた。榊原会長は「原発の安全性に対する懸念は国民感情として当然ある」としたうえで、「安全審査をパスした原発は再稼働を認めることを期待したい」と述べた。


PS(2016.11.10追加):*8-1の原発事故の賠償に関する「原子力損害補完的補償条約(CSC)」は、原発事故が起こった際には、電力会社などの原子力事業者が過失の有無にかかわらず賠償責任を負い、事故を起こした原発メーカーの製造物責任が免除されるというものだ。しかし、インドの国内法では原発メーカーにも事故の賠償責任を求めることができ、これが日本や米国など海外の原発メーカーの進出の妨げとなっていたが、CSCが発効すれば「国内法は事実上骨抜きとなり、外国企業が進出しやすくなる(インドの専門家)」そうで、インドは2016年2月4日、CSCに批准している。しかし、メーカーの製造物責任は通常の商慣行であるため、原子力損害補完的補償条約(CSC)が発効していても、原発メーカーに瑕疵があると認められればメーカーに製造物責任が認められるだろう。その時、実質的に日本国民が損害賠償責任を負うなどという内容が日印原子力協力に特別に含まれていないかどうかは、日本国民にとって重要な問題である。
 なお、*8-2は、「①インドのエネルギー問題が原子力発電の増加で解決できるか疑問」「②インドの送配電ロス率は23%程度で、エネルギー効率に問題がある」「③インドの製造業の17.9%のエネルギー効率改善は、既存の省エネルギー技術導入で可能」「④広大な国土に点在する村落部への電力供給を大規模集中型の火力発電所や原子力発電所によって行うには長距離送電網が必要で、効率が悪くコスト高」「⑤このような地域への電力供給は、地域の持続可能な小規模分散型エネルギーによるべき」「⑥インドの原子力委員会委員長と原子力省長官は同一人物で、原子力委員会による原子力省の監督はできない」「⑦原発建設予定地および建設された地域に極めて根強い原発反対運動がある」と述べており、日本の経験から尤もだと考える。つまり、原発は、世界で卒業すべきエネルギーであり、日本は卒原発をリードすべき国なのだ。


 インド、ヒマラヤ インド、タージマハル インド、ニューデリー インド、カシミール
    (どの国にも、かけがえのない街と自然と住民の生活があるのだから)

*8-1:http://mainichi.jp/articles/20160206/k00/00m/030/098000c
(毎日新聞 2016年2月5日) 賠償責任は電力会社に…原発条約を批准
 インドは4日、原発事故の賠償に関する国際的なルールとなる「原子力損害補完的補償条約」(CSC)を批准した。インドは昨年12月の日印首脳会談で、日本の原発輸出を可能とする原子力協定の締結で原則合意するなど、原発増設に取り組んでいる。事故時の賠償に関する国際的な枠組みに参加することで、日本や米国など海外の原発関連企業の進出加速につなげる狙いがあるとみられる。CSC加盟国は、過失の有無にかかわらず電力会社などの原子力事業者が賠償責任を負うとされる。インドの国内法では原発メーカーにも事故の賠償責任を求めることができるとされ、米企業などの進出の妨げとなっていたが、CSCが発効すれば「国内法は事実上骨抜きとなり、外国企業が進出しやすくなる」(インドの専門家)と指摘されている。ただ、国民から反発を招く可能性もあり、今後、議論になりそうだ。CSCは日米などが批准しており、昨年4月に発効した。事故の際は発生国が一定額まで賠償責任を負い、その額を超えた部分については締約国の拠出金で補う仕組み。また、賠償訴訟はすべて発生国が管轄する。インドは2010年にCSCに署名したが、批准しておらず、米国などが早期の加盟を求めていた。インド外務省は批准について「決定的な一歩だ」としている。インドで発効するのは、批准から90日後の5月4日となる。

*8-2:http://www.cnic.jp/wp/wp-content/uploads/2015/11/201511_CNIC_Japan_India_nuclear_agreement.pdf#search='%E6%97%A5%E5%8D%B0%E5%8E%9F%E5%AD%90%E5%8A%9B%E5%8D%94%E5%AE%9A+%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%83%89%E3%81%AE%E5%8E%9F%E7%99%BA%E4%BA%8B%E6%95%85%E6%90%8D%E5%AE%B3%E8%B3%A0%E5%84%9F' (日印原子力協力協定の締結による世界の核拡散への影響 2015年11月 原子力資料情報室 松久保肇より抜粋)
 インドはエネルギー対策、そして温室効果ガス排出量削減手段として、原子力発電の増加を志向している。しかし、インドのエネルギー問題が原子力発電を増加させて解決できる問題であるかについては大きな疑問がある。第一に、インドのエネルギー効率の問題がある。例えば、インドの送配電ロス率はおおよそ23%程度で推移しているが、2011年のOECD諸国の送配電ロス率の平均は6.15%13であり、インドの配送電システムの改善余地は極めて大きい。また、シーメンス・フィナンシャル・サービスは、インドの製造業において、17.9%のエネルギー効率改善が既存の省エネルギー技術を導入することにより可能だと報告している。このように、インドのエネルギー効率の改善余地は極めて大きい。第二に、インドでは、都市部や工業地帯の電力需要増加と、木質バイオマスなどに依拠している村落部のエネルギー供給を両立させる必要がある。とくに広大な国土に数多く存在している村落部への電力供給を、大規模集中型の火力発電所や原子力発電所によっておこなうことは、長距離の送電網の開発などが必要となるため、効率性が低く、コストも高くなる。よって、こうした地域へのエネルギー供給は、地域にとって持続可能な形での小規模分散型エネルギーによっておこなうべきだと指摘されている。第三に、インドの原子力規制の独立性への懸念がある。原子力委員会委員長と原子力省長官は同一人物であり、原子力委員会による原子力省の監督には疑念がある。さらに、インド会計監査局は2012年の報告で、原子力規制委員会は規制の決定権を持たないことや、原子力省に予算や組織の維持等を依存していることなどから、独立性に懸念を示していることからも分かる通り、インドでは原子力分野における規制と推進が分離されていないのだ。そして、最大の問題として原発建設予定地および建設された地域における極めて根強い原発反対運動がある。インドの原発反対運動は、広大な国土、多様な民族や言語、宗教、社会階層によって分断され、なかなか全国規模の問題としては認識されていないが、新規の原発建設予定地とされるすべての地域で、広範な住民の支援のもと展開されている。こうした運動には徹底的な非暴力運動、民主的な集団的指導体制、政治的にオープンな立場であり積極的に政府機関や政党と討議をおこなう、という3つの大きな特徴がある。一方、インド政府はこうした運動に対して、安全対策の強化を図るとしながらも、時には暴力的な弾圧もおこない、原発建設方針については変更の余地を見せない。


PS(2016.11.10追加):*9のように、フクイチ事故で自主避難した生徒を、「①菌」「②賠償金もらってるだろう」などといじめる生徒がいたのは、それが小中学生だったとしても思いやりがなさすぎる。そして、①については、放射能汚染は「菌」ではないため他の人に伝染することはなく、放射能に曝露されると遺伝子が変異して癌や白血病になる危険性があるから避難するのだということを、小中学校には生物が専門の先生もいるのに、この機会をとらえて生徒に説明できなかったのは実力不足だ。また②についても、そのような理由で不本意ながら故郷を捨てなければならなかった人に損害賠償金をもらっているなどと羨むのは見当はずれで、このような場合に慰謝料や損害賠償金をもらうのは当然であることを、社会科が専門の先生も説明できなかったとすれば、先生のレベルが問題なのだ。さらに、遊ぶ金として万単位の金を10回も支払うことができるほど親が小5の生徒に金を渡すのも教育に悪く、学校・市役所・議員などにいじめの問題を指摘すべきだった。そのため、カウンセリングを受けるべきは生徒ではなく、このような行動を続けていた大人たちの方で、教育の崩壊が甚だしい。まして、「だから自主避難しない方がよい」とか「放射能汚染を言うのは福島への差別に繋がる」などと言う大人がいるのは狂っている。

*9:http://www.sankei.com/life/news/161109/lif1611090036-n1.html (産経新聞 2016.11.9) 原発避難の生徒がいじめで不登校 「菌」「賠償金もらってるだろう」 横浜市
 横浜市教育委員会は9日、東京電力福島第1原発事故で福島県から横浜市に自主避難した市立中1年の男子生徒が不登校になっており、いじめ防止対策推進法に基づく調査の結果、市教委の第三者委員会がいじめを認定していたことを明らかにした。報告書では、「積極的に教育的支援をしなかったのは、教育の放棄に等しい」などと学校や市教委の対応を厳しく批判している。報告書によると、生徒は小学2年だった平成23年8月、横浜市立小学校に転校。直後から「菌」を名前につけられるなどのいじめを受けた。小5のときには、同級生に「(東電から原発事故の)賠償金をもらっているだろう」と言われ、遊ぶ金として5万~10万円を計10回ほど払わされたと証言したとしている。生徒はカウンセリングを受けているという。第三者委は、学校の対応について、一昨年に生徒側から相談を受けていたにも関わらず、適切に対応しなかったことを「教育の放棄に等しい」と批判した。市教委に対しても、重大事態と捉えず、調査の開始が遅れ、生徒側への適切な支援が遅れたとした。生徒側が昨年12月、調査を求める申し入れ書を市に提出。推進法に基づき、市教委の諮問で第三者委が調査していた。林文子横浜市長は同日の定例記者会見で、「非常に深く受け止める。申し訳ない」などと述べた。また、岡田優子横浜市教育長は「報告書で指摘されている学校、教育委員会の課題や再発防止策にしっかり対応したい」とした。


<アメリカも迷走>
PS(2017年6月2日追加): *10-1のように、「①トランプ米大統領は米国第一を優先してパリ協定からの離脱判断を表明した」「②世界最大の温暖化ガス排出国中国の李克強首相は、中国はパリ協定を履行する決意を表明した」「③李氏はパリ協定支持の共同声明を発表する方向」とのことである。そして、中国だけでなくインドも、*10-4のように、将来的に国が運営する主要12港湾で使用するすべての電力を再生可能エネルギーによる発電に切り替えるそうで、19年までに太陽光15万キロワット(kW)、風力5万kWの発電設備を設置し、数年で50万kWまで増強するそうだが、旧産業の抵抗が少ない新興国の方が新産業への転換が速やかなようだ。
 なお、私は、CO2だけが地球温暖化の原因ではないにしても、化石燃料車が環境を汚して自動車の不快感を増していることは間違いなく、中国やインドなどの人口の多い新興国が自動車社会になってきた現在では、これは見過ごすことのできない大きな問題だと考え、1990年代中頃からアクションしてきた。しかし、日本は、ドイツよりもずっと早い1990年代後半から市場投入するEVや蓄電池を開発してきたにもかかわらず、何故か「航続距離が短い(改善しようと思えばすぐできる問題)」等の足を引っ張る論調ばかりが多くて普及が妨げられ、*10-5のように、中国市場で市場の陣取合戦が始まってようやくEV充電器の規格を巡って本格的な競争を始めたような馬鹿げた国なのである。そして、トップランナーだった日産は、*10-6のように、電池子会社を中国ファンドに1100億円で売却することになった。そのため日本は、このような愚鈍な意思決定になる背景を、徹底して変えなければならない。
 また、トランプ米大統領のパリ協定離脱についての米国民の反応は、*10-1に書かれているように、69%がパリ協定への残留を支持して離脱派は13%に留まるそうで、米産業界ではアップルのティム・クック最高経営責任者(CEO)がホワイトハウスに電話して残留を要請し、化学大手ダウ・ケミカルのアンドリュー・リバリスCEOは協定を支持する主要30社首脳の書簡をまとめ、石炭業界にも離脱に否定的な声があり、イーロン・マスク氏は離脱を決断すれば委員会をやめると言い、トランプ大統領の長女イバンカさんは、ゴア元副大統領をトランプ氏に引き合わせて翻意を迫ったそうだ。また、*10-2のように、石油メジャー首脳も冷ややかで、ドイツ・フランス・イタリアの3国政府は、*10-3のように、「パリ協定は不可逆的で再交渉できない」とする共同声明を発表している。
 私は、ここで環境規制を緩めて古いエネルギー産業を護ることによりアメ車の進歩を妨げれば、アメ車はどこの国にも受け入れられない旧式なものとなり、輸出を伸ばすどころか米国の産業を遅れさせて、環境だけでなく経済でも米国第一どころではなくなると考える。そのため、米国は、州ででも環境規制した方がよいだろう。

 
 2017.6.2日経新聞  2015.12.15西日本新聞    2016.10.6    2016.10.6  
                                    毎日新聞

*10-1:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20170602&ng=DGKKASDC01H1D_R00C17A6EA2000 (日経新聞 2017.6.2) トランプ氏「米国第一」優先 パリ協定離脱判断、表明へ 中国・EU 協定推進で連携
 トランプ米大統領は1日午後3時(日本時間2日午前4時)、地球温暖化対策の国際的な枠組み「パリ協定」からの離脱判断を表明する。米メディアは同氏が離脱を決断したと一斉に報じた。内外の反対を押し切り「米国第一」の看板公約を実行する公算が大きい。米政権とロシアとの不透明な関係を巡るロシアゲート疑惑が強まるなかで支持者のつなぎ留めを優先し、政権浮揚を狙う。世界最大の温暖化ガス排出国、中国の李克強首相は1日、ドイツでメルケル首相と会談した。会談後の共同記者会見で「中国は国際的な責任を全うする」と述べ、パリ協定を履行する決意を表明。メルケル氏も李氏の発言を歓迎した。李氏は2日、欧州連合(EU)のトゥスク大統領らとも会談。「EUと中国はパリ協定を歴史的な成果と認識している」といった協定支持の共同声明を発表する方向だ。「パリ協定に関する私の判断を木曜日(1日)に発表する。米国を再び偉大に!」。トランプ氏は5月31日、ツイッターにこう投稿した。5月に中東や欧州を巡る初外遊をしたトランプ氏に、各国首脳らはパリ協定にとどまるよう求めた。安倍晋三首相は主要国首脳会議(タオルミナ・サミット)で「米国が引き続き気候変動の問題にリーダーシップを発揮していくことが重要だ」と呼びかけた。主要国のほとんどの首脳も慰留。ローマ法王フランシスコは環境保護の重要性を説いた自著を贈り、残留を促した。トランプ氏は態度を保留し続けた。ロシア疑惑で政権に逆風が吹くなかで、トランプ氏が重視するのは国内の支持基盤だ。その一つが炭鉱労働者。大統領選では、接戦だったペンシルベニアやオハイオなど石炭産出州で勝ったことが大きかった。パリ協定離脱の看板公約を有言実行することで、脱石炭に歯止めをかけ、炭鉱労働者の雇用を維持すると支持者に訴える意向だ。ロシア疑惑は、与党・共和党からも解明を求める声が強まっている。捜査の進展によっては、共和党の姿勢が政権の命運を握る。パリ協定離脱は、マコネル上院院内総務ら党指導者も求めていただけに、トランプ氏は公約実現で挙党一致を演出したいところだ。ただ、米国民の多くはパリ協定残留を求めている。米エール大が5月8日に発表した世論調査では、69%が残留を支持、離脱派は13%にとどまった。共和党支持者に限っても51%が残留派だ。米産業界でも反発が相次ぐ。アップルのティム・クック最高経営責任者(CEO)は、ホワイトハウスに電話して残留を要請。化学大手ダウ・ケミカルのアンドリュー・リバリスCEOは、協定を支持する主要30社首脳の書簡をまとめた。石炭業界にも離脱に否定的な声がある。国際的な温暖化対策の議論が米国を除いた欧州の主導で進めば厳しい規制を招きかねないとの警戒論もある。産業界の大統領助言委員会に参加する著名起業家のイーロン・マスク氏は5月31日、離脱を決断すれば「委員会をやめる」と語った。政権内は分裂する。バノン首席戦略官・上級顧問やプルイット米環境保護局(EPA)長官が離脱を主張。プルイット氏はエネルギー業界とつながりが深く、環境規制の撤廃を求め、EPAを10回以上も訴えた筋金入りの反対派だ。一方、残留派の筆頭は長女イバンカさん。環境保護に熱心なゴア元副大統領をトランプ氏に引き合わせ、翻意を迫った。

*10-2:http://www.nikkei.com/article/DGXLASDZ01H7H_R00C17A6000000/?dg=1&nf=1 (日経新聞 2017/6/1) 米国のパリ協定離脱 石油メジャー首脳は冷ややか
 トランプ米大統領が地球温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」からの離脱を近く表明する見通しとなった。中国と並ぶ温暖化ガス排出国の米国が離脱すれば、企業活動にも影響が出そうだ。やや意外だが、温暖化ガス排出のおおもとである石油・天然ガスを開発するメジャー(国際石油資本)の間では「パリ協定支持」が支配的だ。トランプ氏の姿勢には冷ややかな視線が目立つ。
■石油出身の国務長官は協定支持
 「パリ協定に関する決断を発表する。木曜日の午後3時(日本時間2日午前4時)だ」。トランプ氏は31日、ツイッターでこうつぶやき、最後にお決まりの「米国を再び偉大にする!」で締めくくった。離脱となれば政権内で難しい立場に立つのがレックス・ティラーソン米国務長官だ。同氏は直前まで米石油最大手エクソンモービルの最高経営責任者(CEO)を務めた。エクソンは業界屈指の高収益体質で知られるが、コストが先立つ温暖化対策には後ろ向きだとして長く環境団体の攻撃対象だった。だがティラーソン氏はエクソンCEOのとき、時代の流れにあらがえないとパリ協定支持を表明。「あのエクソンが」と業界でも驚きがあったほどだ。同氏は政権入りしてからもパリ協定にとどまるよう主張してきた。ティラーソン氏の判断に影響を与えたとみられるのが欧州の競合の動きだ。英蘭ロイヤル・ダッチ・シェル、英BP、仏トタルなどは2020年以降の温暖化対策の枠組みづくりをにらみ早い段階から連携した。CEOが連名で枠組みをつくるよう主張。具体論として温暖化ガス排出量に応じたコストを課す「炭素価格」の枠組みを国境を越えて導入するよう国連などに求めてきた。
■欧州勢、したたかに仕組み作りに動く
 もちろん各社の狙いは慈善活動ではない。鉱区で出る副次ガスを減らせば事業の採算は上がる。さらに近年のメジャーは、燃やした際の温暖化ガス排出量が石炭の6割程度で済む天然ガスに力を入れてきた。石炭依存度が高いアジアでガス転換を促す事業拡大の好機だ。温暖化対策から距離を置くより制度作りに関与することで、長期にわたり自らにも優位な仕組みをつくろうとの思惑がある。「米国第一」で孤立主義に走るトランプ氏の手法とは真逆だ。シェルのベン・ファン・ブールデンCEOは5月、英紙フィナンシャル・タイムズで米国の協定離脱の結果起こる事態として、「米国が基本的に自分で多くの(交渉)テーブルに招かれないようにして自らの立場を弱めてしまう」と指摘している。北欧の石油の巨人、スタトイル(ノルウェー)のエルダー・サトゥレCEOもトランプ氏の姿勢に冷淡だ。2月に日本経済新聞の取材に対し、「我々は(大統領の任期である)4年単位でビジネスはしていない。10年以上先を見据えている」と強調した。スタトイルは洋上風力発電にも積極的で、トランプ政権になっても米東海岸での洋上風力事業をやめる予定はない。サトゥレ氏は洋上風力のコストは大幅に下がると見通す。長い目でみれば、トランプ氏が守りたがる石炭の火力発電より、洋上風力の方が競争力を持つという自信があってのことだ。
■株式市場も圧力強める
 欧州連合(EU)が先行した排出量取引制度は中国でも似た制度が導入される。中国は大気汚染対策の必要もあり、脱石炭など低炭素型ビジネスへのシフトが続く見通しだ。株式市場も同様だ。長期投資をする年金基金などは近年、温暖化対策の遅れが企業の業績に及ぼす影響「カーボンリスク」の開示圧力を強める。31日に開かれたエクソンの株主総会では、カーボンリスクの開示を求める株主提案に62%の支持が集まった。石油の世紀である20世紀を代表したエクソンはより「グリーン」に動く。21世紀の代表格になりそうな米テスラのイーロン・マスクCEOは31日、米国が協定から離脱すれば、トランプ氏への助言組織の委員を辞任する考えを示した。企業は一つのベクトルに向かって動き出した。米国の最高指導者は最終的にどう判断するだろうか。

*10-3:http://digital.asahi.com/articles/ASK622VS3K62UHBI014.html?iref=comtop_8_02(朝日新聞 2017年6月2日)パリ協定「不可逆的で再交渉できない」 独仏伊が声明
 トランプ米大統領がパリ協定からの離脱を発表したのを受けて、ドイツとフランス、イタリアの3国政府は1日、「再交渉はできない」とする共同声明を発表した。声明は米国の決定を「残念に思う」としたうえで、パリ協定について「不可逆的であり、再交渉されるべきものではないと信じている」と表明。さらに「すみやかに実行することを再確認し、気候変動と闘う行動を加速させることをすべてのパートナー国に促す」としている。また、ドイツ首相府によると、メルケル首相はトランプ氏に個別に電話し、遺憾の意を伝えたという。メルケル氏はツイッター上で「地球を守るための政策に引き続き全力を尽くす」としている。欧州議会のタヤーニ欧州議長は同日、「合意は守られなければならない。これは信頼とリーダーシップの問題だ。(トランプ大統領の)決定は米国と地球を傷つけることになるだろう」とツイッターで批判した。

*10-4:http://qbiz.jp/article/110920/1/ (西日本新聞 2017年6月1日) インド 主要12港湾、使用電力すべて再生可能エネに
 インド政府は、国が運営する主要12港湾への電力供給について、将来的にすべて再生可能エネルギーによる発電に切り替える計画だ。エコノミック・タイムズ(電子版)が5月31日伝えた。19年までに太陽光15万キロワット(kW)、風力5万kWの発電設備を設置する。その後、数年で50万kWまで増強し、主要12港湾で使用するすべての電力を再生可能エネルギーによる発電で賄う。当面の投資額として、50億ルピー(約86億円)が予定されている。政府が運営する港湾の電力をすべて再生可能エネルギーに切り替える試みは世界初という。主要12港湾には、西部グジャラート州のカンドラ港や東部オディシャ(オリッサ)州のパラディープ港、西部マハラシュトラ州のムンバイ港、同州ジャワハルラル・ネルー港、南部アンドラプラデシュ州のビシャカパトナム港などが含まれる。主要12港湾の貨物取扱量は国内全体の6割を占める。

*10-5:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12965954.html (朝日新聞 2017年6月1日) EV充電器、陣取り激化 日本と欧米、規格の普及巡り
 電気自動車(EV)の普及に欠かせない急速充電器の規格をめぐり、日本と欧米勢の主導権争いが続いている。規格は新興国に広がるEV競争にも影響する。製品規格の国際標準化で後れをとりがちだった日本勢は、技術供与で味方を広げ、優位を保とうとしている。
■中国市場、最大焦点
 EVはフル充電で走れる「航続距離」が短いのが弱点で、普及には充電インフラの整備がカギを握る。日本勢は2010年、EVを量産している日産自動車と三菱自動車、東京電力などを中心に「CHAdeMO(チャデモ)協議会」を設立し、独自の急速充電規格「チャデモ方式」を世界に先駆けて広めることを目指してきた。これに対し、独フォルクスワーゲン(VW)や米ゼネラル・モーターズ(GM)など欧米勢は独自規格「コンボ」で対抗。ただ、現状では、日産のEV「リーフ」で先行したチャデモの充電器が、世界で約1万5千カ所と最も多い。欧米でも、チャデモとコンボの両方を使えるようにした充電器が主流になっている。しかし、新興国などでは今後、ゼロからの整備が始まる。日独などのメーカーは自国の規格が採用されればEVの輸出もしやすくなる。規格の「縄張り争い」はまだこれからの様相だ。VWは昨年、エコカー開発の軸足をEVへと大胆に移す戦略を打ち出した。昨年11月には、VWグループ、BMW、ダイムラーのドイツ勢と米フォード・モーターが協力し、高出力の急速充電器を20年までに欧州の数千カ所に普及させると発表。「コンボ」規格の巻き返しをアピールした。最大の焦点は、世界最大級のEV市場、中国だ。独自の充電規格を持つが、日本が長く技術協力を進め、チャデモと主要部分が共通する。31日、チャデモ協議会の年次大会で、吉田誠事務局長は「チャデモが生き残るため、中国との親和性を高め、インドにも惜しみなく技術を開示して普及を図った」と述べた。歩み寄りの気配もある。日独政府は3月、「ハノーバー宣言」を出し、モノとインターネットを融合させる技術分野の協力で合意。充電インフラの分野でも連携を促進するとした。チャデモとコンボの互換性を高めることも検討していく。

*10-6:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20170527&ng=DGKKZO16933470W7A520C1TJ2000 (日経新聞 2017.5.27) 日産、電池子会社を中国ファンドに売却 1100億円、最終調整
 日産自動車が売却を検討していた車載用電池子会社について中国の投資ファンド、GSRグループと最終調整に入ったことが26日、明らかになった。売却総額は1100億円前後とみられる。日産は外部調達に切り替えて電池のコストを引き下げ、次世代エコカーの本命と位置付ける電気自動車(EV)の価格競争力を高める狙いだ。売却対象となっているのは2007年に設立したオートモーティブエナジーサプライ(AESC、神奈川県座間市)。日産が51%、NECグループが49%を出資し、主力EV「リーフ」向けの車載用リチウムイオン電池などを生産する。15年の車載用電池の世界シェアはパナソニックに次ぐ2位。日産は米英に持つ車載用電池の生産設備についてもGSRと売却交渉を進めているもよう。現行のリチウムイオン電池技術を使った電池の生産からは撤退する方向だ。一方で新素材を使う次世代電池は自前での研究開発を続ける。GSRはIT(情報技術)や環境分野に強みを持つファンドで、米国や中国の車載用電池メーカーにも投資実績がある。AESCが持つ設計・生産ノウハウを取り込み、環境規制を背景にEV市場が拡大する中国で車載用電池の供給体制を構築する狙いがあるようだ。


PS(2017年6月4日追加):トランプ大統領の「パリ協定」からの離脱表明に対し、*11のように、ニューヨーク・カリフォルニアなどの州政府ほか百八十市がパリ協定履行への支持を表明し、ニューヨーク・シカゴ・サンフランシスコなど大都市の市長も相次いでパリ協定の目標達成に向け再生可能エネルギーへの投資拡大などを表明したそうで、アクションが迅速だ。

*11:http://www.tokyo-np.co.jp/article/world/list/201706/CK2017060402000107.html (東京新聞 2017年6月4日) 【国際】10州180市 パリ協定支持 離脱表明の米で反発広がる
 トランプ米大統領が地球温暖化防止の国際的な枠組み「パリ協定」からの離脱を表明したのに対し、反対する州知事や市長が相次ぎ、全米に広がっている。米メディアによると、州や自治体がパリ協定の目標達成に向けた独自の政策を採用しているなか、トランプ氏の離脱表明後、少なくともニューヨークやカリフォルニアなど十の州政府のほか百八十市が協定履行への支持を表明した。報道によると、米国ではすでに二十州と首都ワシントンが温暖化の原因のひとつとされる二酸化炭素(CO2)排出を削減する独自策を実施。協定に基づく連邦政府が定めた目標を上回る水準を設定した所もある。トランプ氏の離脱表明を受け、連邦政府の方針とは関係なく自治体レベルで取り組む動きが広がった形だ。ニューヨーク州のクオモ知事は「パリ協定からの離脱は重大な間違いだ。壊滅的な影響をもたらす」とトランプ氏の決定を批判。二日には太陽光発電などに最大十五億ドル(約千六百五十億円)を拠出すると発表した。同州と「米気候連盟」を結成したカリフォルニア州のブラウン知事はパリ協定の目標達成に取り組む国や自治体が集まる会合に参加するため中国に出発する。ニューヨークやシカゴ、サンフランシスコなど大都市の市長も相次いでパリ協定の目標達成に向け、再生可能エネルギーへの投資拡大などを表明した。こうした動きはトランプ政権の支持者が多い南部の州にも波及。テキサス州ヒューストンやルイジアナ州ニューオーリンズなどにも広がっている。


PS(2017年6月5日追加):*12のように、全農地でソーラーシェアリングすれば、原発1840基分になるそうだ。もちろん、「①ソーラーシェアリングした方がよいかどうかは作物による」「②景観を壊さない機器にすべき」などの問題はあるが、私は、農業に再生可能エネルギー機器の導入を補助することによって、永久に農家に補助金を支払うのを回避することが可能であり、エネルギー代金が地域で循環するため、一石三鳥だと考える。


 2017.6.4     2016.12.4   従来のソーラーパネル 有機薄膜型ソーラーパネル
 東京新聞      農業新聞

(図の説明:現在行われているソーラーシェアリングは一番左の写真のようなものが多いが、これは景観を悪くするとともに、左から2番目のような大型機械を導入する際には使いにくい。それに対し、①従来のソーラーパネルでも右から2番目のもので温室型にする ②一番右の有機薄膜型ソーラーパネル《緑近傍の光だけで発電するため、作物が光合成で使う光は使わない》を温室で使う などの日本ならではの進化形もある)

*12:http://www.tokyo-np.co.jp/article/economics/list/201706/CK2017060402000129.html (東京新聞 2017年6月4日) 【経済】ソーラーシェアリング脚光 「全農地導入なら原発1840基分に」
 太陽光発電などの可能性を話し合う「再生可能エネルギー・フォーラム」が三日、東京都内で開かれた。社会科学の研究者らが参加する「関東政治社会学会」が主催し、田畑に太陽光パネルを設置して農業と発電を両立するソーラーシェアリングの実践例などが報告され、約三十人が熱心に耳を傾けた。会合で城南信用金庫の吉原毅(つよし)相談役(62)が基調講演し、「日本の農地四百六十万ヘクタールすべてでソーラーシェアリングを導入すれば、原発千八百四十基分の電力をまかなえる計算だ」と訴えた。太陽光発電の買い取り価格は年々下がっているが、吉原氏は「太陽光パネルや工事の費用が下がっており、十分に採算が取れる」と語った。ソーラーシェアリングは農林水産省の規制緩和で二〇一三年度から可能になった。作物の収穫量や品質の維持などが許可の条件。許可件数は増加傾向にあり、一五年度には累計七百七十五件になった。
◆田畑に太陽光パネル設置
 農業と発電の両方に太陽光を活用する取り組み「ソーラーシェアリング」が少しずつ広がっている。電気を売った収入が得られることに加え、太陽光パネルの設置で農地に適度に日陰ができて農作物の収穫量が増えるケースもある。農家の収益向上に貢献している。千葉県市原市の民家が点在する田園風景の一角。計七百五十平方メートルの畑に高さ三メートルの支柱で組んだ台に太陽光パネル(縦五十四センチ、幅百二十センチ)が三百四十八枚設置されている。二五度の傾きで固定されたパネルの間から日光が降り注ぎ、その下でサツマイモやサトイモなどの葉が伸びる。「サトイモは収穫量が10%アップした」。両親の農地をこの先、継ごうと考えている会社員の高沢真(まこと)さん(54)は笑顔で語った。パネルを設置したのは二〇一三年。固定価格買い取り制度に沿って東京電力と二十年間、一キロワット時当たり四十二円で売却する契約を結んだ。年間の発電量は四万キロワット時で、東電に電気を売った収入は年百六十万~百七十万円になる。設置にかけた千三百万円は十年足らずで回収できる見込みだ。高沢さんの試みは、収入面などから実家の農地を引き継ぐかどうか悩んでいる人たちの関心が高いという。高沢さんは「ソーラーシェアリングは農業に挑戦することを躊躇(ちゅうちょ)している人を後押しする仕組みだ」と話している。

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2016.7.19 脱原発とクリーンエネルギーへの転換 (2016年7月20、21、22、24日追加あり)

 2016.7.7   フクイチ汚染水 2016.5.26朝日新聞     水産物の輸入禁止  大手メディア
 西日本新聞                凍土壁             (韓国の例)      の報道


      九州の火山     九州の断層帯 原発立地 原発輸出国     日本の食品対応

(1)九州の選択
 参議院議員選挙での争点にはならなかったが、*1-1のように、鹿児島県は「原発のない社会をつくろう」と訴えた無所属で新人の三反園氏を新知事に選んだ。三反園氏は、「熊本地震を受け、原発を停止して再検査し、活断層の調査をすべきだ」「安全性が確保されない原発は動かすわけにはいかない」とも述べておられ、農林漁業、工業、観光などの他産業も多く、原発事故が起これば被害甚大で、その可能性が低いとは言えない状況の鹿児島で、それは当たり前のことである。

 また、*1-2のように、三反園氏が当選した翌日、玄海原発の早期再稼働を望む佐賀県の関係者は今後の動きを注視し、再稼働反対派は「脱原発」の機運の高まりを期待している。九電は「原発の重要性は変わらないので、安全確保の状況を説明していきたい」としているが、原発はむしろ新エネルギーの発展を阻害し、原発に100%の安全性はなく、原発がなくても電力は足り、熊本地震で断層帯・火山・大地震の存在が明瞭になって原発の安全性はさらに低くなったのだから、私は、原発再稼働なしの脱原発が最も合理的な選択だと考える。

 そのような中、*1-3のように、九電玄海原発の30キロ圏にある佐賀県伊万里市の塚部市長が7月4日の定例会見で「玄海原発の再稼働は認められない」と述べられた。30キロ圏の伊万里市は佐賀県と「市の意向を十分配慮する」という覚書を結んでおり、伊万里市長は、「九電の経営に加担する必要はなく、玄海町の一部経済のために伊万里市民が再稼働への不安を押し殺す必要もない」と踏み込んでいる。これは、他の30キロ圏内にある市町村も全く同じだ。

(2)水素の時代へ
 *2-1のように、北九州市で5月1、2日に先進7カ国(G7)エネルギー相会合が開かれ、北九州市は「環境都市」を発信し、水素で作った電気で家庭電力を賄う「水素タウン」などに、各国要人らも高い関心を示したそうだ。また、欧州連合(EU)の高官は2日の共同会見で、「クリーンエネルギーへの転換がどのように経済を成長させ、エネルギーの安全保障を高めるかを示している街だ」と評価し、エネ相会合で採択された「北九州宣言」に、クリーンエネルギーの発展に向けた研究開発や普及の強化が盛り込まれたとのことである。

 また、トヨタ自動車九州は、2-2のように、2016年6月28日、宮田工場で水素エネルギーを製造・活用するモデル事業を来年3月から実施し、ゆっくりしすぎだが2050年までに工場からのCO2排出をゼロにする目標を掲げており、東芝も、*2-3のように、2016年7月14日、水を電気分解して水素を発生させる新型の水素製造装置を開発して1時間で燃料電池車(FCV)2台分の燃料に相当する水素を作り出せるようになったそうだ。しかし、量産段階でも価格が1台2億円前後というのは、価格が高すぎて本当に普及を意図しているようには見えない。

 そのため、私は、知事選中の東京都は、地震・津波に備えて災害に強い都市にするための区画整理や福祉を組み込んだ新しい街づくりを行い、2020年のオリンピックを目標にEVか燃料電池車しか走らせない安全で水と緑の美しい環境都市とし、太陽光発電、燃料電池、蓄電池などの次世代エネルギーを一般住宅・マンション・ビルに標準装備させ、クリーンエネルギーのみを使う環境都市・福祉都市としてオリンピックで世界にアピールすればよいと考える。また、他の都市も、新しい街づくりは、この方式がよいと思う。

(3)脱原発と電力会社
 このような中、*3-1のように、経産省は、原発は経済性に優れるとして原発を重要なベースロード電源と位置づけたが、これは15年も時代遅れだ。大手電力会社も原発に頼る姿勢を変えず、*3-2のように、関電前会長の森関西経済連合会会長などは、2016年7月13日、「司法リスクを限りなく小さくする必要があるので仮処分の申し立てができないよう法改正などを政府に求めていく」としている。法改正までして提訴できないようにするというのは、井戸弁護士が言われるとおり傲慢だ。

(4)政府の放射線公害に対する鈍感さ
 環境省は、*4-1のように、2016年6月30日、放射性セシウム濃度が1キロ当たり8000ベクレル以下の汚染土であれば公共事業などに限定して再利用する基本方針を正式決定したそうだ。ここで考えなければならないのは、「最大8000ベクレル/キロ X 最大2200万立方メートル X 約5000(注)=約880億ベクレル(注:土の比重を約5としてキログラムを立法メートルに換算)」という膨大な総量を福島県外の非汚染地域で再利用や最終処分すれば、いたずらに放射性物質を拡散させ、管理どころではなくなることである。そのため、私は、この決定に呆れている。

 さらに、*4-2のように、「凍土壁」は最初からわかっていたとおり遮水効果を果たしていないが、この凍土壁には多額の国家予算が研究開発名目で投じられ、維持にも多額の費用がかかる。そのため、このような膨大な無駄遣いを決定した東電、経産省、規制委の判断には問題がある。

 そして、このブログの2016.3.14に記載したとおり、 フクシマ原発事故による汚染水の海への垂れ流しにより、日本の海産物は多くの国で輸入規制の対象になっているのだ。

(5)原発の温排水も豊かな海がなくなった原因であること
 朝日新聞は、*4-3のように、2016年7月18日の社説で、「①経済成長を追い求めるとともに海が痛めつけられた」「②工場や家庭排水の影響で窒素・リンの濃度が高まる富栄養化が起き、赤潮が頻発して漁業被害が深刻化した」「③沿岸は次々に埋め立てられ、全国の3分の1以上が人工海岸になった」「④都市に近い内海や湾で多くの干潟や藻場が失われた」「⑤政府は70年代以降、汚濁物質の流入を抑える対策に力を注いで水質は着実に良くなり、瀬戸内海では赤潮の発生がピーク時の3分の1ほどにまで減ったが、海の豊かさは戻ってきていない」「⑥瀬戸内海の漁業生産量は、最盛期の約4割しかなく、全国でも沿岸漁業の生産量は減り続け、漁業離れに拍車をかける」「⑦海藻が消失する磯焼けも各地で相次いでいる」「⑧沿岸の干潟や藻場は陸から流れ込む窒素やリンを取り込み、海の富栄養化を抑える役割を果たしていたが、それが失われると復元は容易ではない」「⑨人の手で適切に補っていく必要がある」と書いている。

 そのうち、①②⑤は、(田舎では最近になって)下水道を整備し、工場排水も自己責任で浄化しなければ排出できないようにしたことによって解決しつつある。しかし、③④⑧は、コンクリートで固めるのが近代化だと勘違いしてコンクリート化し続けた公共工事が原因なので、このような公共工事に膨大な予算を使った後に、⑨のように人手でそれを補おうとするのは、焼け石に水である上、予算の二重取りだ。

 さらに、⑥⑦の流れ込む窒素・リンを制御した後でも磯焼けが進み漁獲高が増えないのは、原発を冷却するために海水を取り込み温水を排出しているためで、この行為が原発に取り込まれた海水中の動植物の幼生を殺しつつ海水の温度を上げているからである。これは、原発停止によって従来の海藻が回復し、従来いた魚が増えたことによって明確になったのだが、新聞各社はこれを記載するのを避けている。

 なお、下水道が普及して地方の海はかなり透明になったが、東京湾のように船の往来が多い港の水は茶色く濁って汚い。この状況は、晴れた日に国内線の飛行機から下を見ているとよくわかる。そして、船の往来が多い港の水が汚い理由は、船からの原油・重油系の排出が多いことが原因だと言われており、地上も船も水素を燃料とする時代になれば、これは解決できる。このように、まず、汚染源を特定してそれを止めなければ、自然と比較して微力な人間がかかわっても元の海は取り戻しにくい。

(6)原発の推進・輸出は時代錯誤であること
 米カリフォルニア州の電力大手PG&Eは、*5-1のように、原発の2基の原子炉(出力計224万キロワット)の稼働を2025年までに停止して閉鎖し、今後8~9年で、電源を太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギーに転換して、2031年までに総発電量の55%を賄う計画を掲げているそうだ。

 また、*5-2のように、東芝は、経済発展と共に電力需要が高まっており、政府が再生可能エネルギーの普及を後押ししているフィリピンで、発電設備の受注に力を入れるそうだ。フィリピンは、日本と同様に水が豊富で火山国であるという条件から、水力や地熱の引き合いが強いとのことである。

 そのような中、*5-3のように、安倍首相とインドのモディ首相が「原則合意」した日印原子力協定は、正式に協定を結べば、インドに原発を輸出し、事故時は日本国民が税金で責任を負うことになっている。しかし、そうまでして原発の製造や輸出にこだわる必要はないだろう。

<エネルギー政策の展望>
*1-1:http://digital.asahi.com/articles/ASJ7B63QTJ7BTLTB00K.html
(朝日新聞 2016年7月10日) 鹿児島知事に三反園氏 「原発いったん停止し再検査を」
 鹿児島県知事選は10日投開票され、無所属新顔で元テレビ朝日コメンテーターの三反園訓氏(58)が無所属現職の伊藤祐一郎氏(68)を破り、初当選を確実にした。三反園氏は伊藤氏の4選阻止を訴え、民進、社民両党県組織や保守系地方議員の一部の支援を得て草の根の選挙戦を展開した。選挙事務所の内外に集まった支持者約200人の前に、三反園氏は午後8時24分に姿を見せた。「私は原発のない社会をつくろうと一貫して訴えている。熊本地震を受け、原発をいったん停止して再検査し、活断層の調査をすべきだ」と発言。安全性に問題が見つかった場合の対応を報道陣に尋ねられ、「安全性が確保されない原発は動かすわけにはいかない」と述べた。鹿児島県で過去に4選した知事はおらず、伊藤氏の4選の是非が焦点の一つとなった。三反園氏は多選を批判するとともに、熊本地震の発生で九州電力川内原発(鹿児島県薩摩川内市)の安全性に不安が広がると、反原発グループとも連携。「川内原発を停止し、点検するよう九電に申し入れる」との公約を掲げ、支持を広げた。一方で、選挙戦では反原発の主張を強調せず、保守層にも気を配った。伊藤氏は自民、公明両党の支援を得て組織戦を展開したが、及ばなかった。

*1-2:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/332812
(佐賀新聞 2016年7月12日) 鹿児島県に「脱原発」知事 玄海への影響注視
 10日投開票の鹿児島県知事選で初当選を果たした新人の三反園訓(みたぞのさとし)氏(58)が九州電力に対し全国で唯一再稼働している川内原発(同県)を一時停止し、点検するよう求める考えを表明した。一夜明けた11日、玄海原発(東松浦郡玄海町)の早期再稼働を望む佐賀県内の関係者は今後の動きを注視し、再稼働反対派は「脱原発」の機運の高まりを期待した。九電本店は「(停止の)具体的な要請が来ているわけではない。原発の重要性は変わらないので、安全確保の状況を説明していきたい」とし、玄海3、4号機の年度内再稼働を目指す。玄海町の岸本英雄町長は「あくまで新知事が国や電力会社と相談すること」と静観、「どういうことになるか想像がつきにくいが、玄海への影響はないのではないか」。佐賀商工会議所の井田出海会頭も「知事が替わっただけで判断が変わってしまうのはどうなのか」と警戒感を示しつつ、影響は否定した。一方、再稼働に反対する伊万里市の塚部芳和市長は「脱原発の動きも多少出てくるのではないか」と期待。「玄海原発プルサーマルと全基をみんなで止める裁判の会」の石丸初美代表は「原発を不安に思う市民の心に寄り添っている」と評価し、佐賀県知事に「(原発を止める)権限がないからではなく、県民を守るために同じように立ちはだかってほしい」と注文した。副島良彦副知事は記者団に「特に佐賀県としてのスタンスは変わることはない」と安全性が厳格に確認された上で、玄海の再稼働を容認する考えを改めて示した。

*1-3:http://digital.asahi.com/articles/ASJ745CJJJ74TIPE029.html
(朝日新聞 2016年7月5日)玄海原発「再稼働認めない」 伊万里市長、覚書をてこに
 九州電力玄海原発(佐賀県玄海町)の30キロ圏にある佐賀県伊万里市の塚部芳和市長は4日の定例会見で「玄海原発の再稼働は認められない」と述べた。九電は再稼働の同意権限を県と玄海町に限るが、市は県と「市の意向を十分配慮する」という覚書を結ぶ。県は覚書と再稼働は無関係との立場で、影響は未知数だ。「原発が止まった時は、地域経済や市民生活への影響を心配したが、5年たってみて大きな支障はなかった。再稼働しなくていいんじゃないかというのが市民の感覚だ」。4日の会見で玄海原発の再稼働に対する考えを報道陣に尋ねられ、塚部市長はそう述べた。また「もし事故が起きたら取り返しがつかない。再稼働の連鎖は打ち切らなければ」とし、「九電の経営に加担する必要もなく、玄海町の一部経済のために伊万里市民が再稼働への不安を押し殺す必要もない」と踏み込んだ。塚部市長はこれまで、「避難道路も防災無線も整備されていない中で再稼働には賛成しかねる」と慎重な立場を示してきたが、明確に再稼働反対を唱えたことはなかった。九電は、佐賀県と、原発が立地する玄海町を再稼働の際に同意を得る「地元」とし、玄海原発の計画変更の際に事前了解を得るとする安全協定を結んでいる。同等の協定を結ぶため、伊万里市は2013年8月から九電と30回以上交渉を重ね、実現しないまま今年2月、「九電が市に事前説明をし、市は九電に意見できる」という内容の協定を結んだ。ただ市はその際、県と「県は(九電との協定の運用にあたって)伊万里市の意向に十分配慮する」という内容の覚書を交わした。これをてこに、塚部市長は県を通じて再稼働反対を九電に主張する考えだ。九電が再稼働する際には県に同意を求める、と伊万里市は考えており、その場合「当然、伊万里市の意向が配慮される」と主張する。
■県と市に温度差
 これに対し、県の反応は冷ややかだ。石橋正彦・県産業労働部長は「一つの意見として受け止める」と述べるにとどめた。覚書をもとに配慮を求める市の主張について、県と九電の安全協定には再稼働のことが明記されていないため「関係ない」と反論。地元の幅広い理解の必要性は認めながらも「再稼働は国と事業者が決めるべきこと」と述べた。九電も「再稼働の同意が必要なのは県と玄海町」との考えを変えておらず、伊万里市が反対しても再稼働に向けた動きを進める考えだ。広報は「再稼働に当たっては地域の方々に安全対策について理解頂き、安心して頂くのが重要と考えており、コミュニケーション活動を続けたい」とする。玄海原発は再稼働に向け、原子力規制委員会の審査が進む。5月までは3回の開催だったが、6月中旬からは週1回以上のペースに。原発の基本設計や方針をチェックする審査が終盤に差し掛かっている。瓜生道明社長は6月28日の記者会見で「年度内には動かしたい」と意欲を示した。

<水素の時代へ>
*2-1:http://qbiz.jp/article/86149/1/
(西日本新聞 2016年5月4日) 北九州市のエネ相会合、「環境都市」発信に成果
 九州で唯一、主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)の関係閣僚会議として北九州市で1、2両日、先進7カ国(G7)エネルギー相会合が開かれた。市は公害を克服し、「環境都市」へ発展した取り組みを積極的にPR。水素で作った電気で家庭電力を賄う「水素タウン」などに、各国要人らも高い関心を示した。凶悪事件が相次いだ負のイメージの一新に大きな成果を上げる一方、環境都市として今後どう進化するのか、真価が問われる。「北九州市は二酸化炭素の排出量が少なく、安価な地域エネルギー創出に向けて努力している」。北橋健治市長は2日、東田地区(八幡東区)を視察した各国の次官や局長を前に英語でスピーチした。未来のエネルギー社会を示す二つの実験が2014年度まで行われた同地区。市長は水素タウンやITを使い電気を効率的に利用する「北九州スマートコミュニティ創造事業」の概要を説明。水素で動く燃料電池車から住宅へ電力を供給する実験も披露した。昨年7月に会合開催決定後、市は情報発信に努めてきた。3月には東京から海外メディア特派員を招待。会合会場では、エネルギー施策や水ビジネスなどの国際協力を紹介するパネルも展示した。欧州連合(EU)の高官は2日の共同会見で「クリーンエネルギーへの転換がどのように経済を成長させ、エネルギーの安全保障を高めるかを示している街だ」と評価。シリア人の男性記者(42)も「日本の産業発展を支え、新エネルギー先進地に転換した歴史を紹介したい」と話した。エネ相会合で採択された「北九州宣言」には、クリーンエネルギーの発展に向けた研究開発や普及の強化も盛り込まれた。「水素タウンやスマートコミュニティをさらに進めるとの(国際的な)合意ができたのではないか。さらに前進させていきたい」。北橋市長は意気込む。ただ、国際舞台で「環境都市・北九州市」を発信したことで、その成長は“国際公約”にもなった。水素タウンなどの実験の成果を今後、どのように市民生活に浸透させていくか。大きな課題を背負ったと言える。

*2-2:http://qbiz.jp/article/89762/1/
(西日本新聞 2016年6月29日) トヨタ九州 水素製造 宮田工場内で活用
 トヨタ自動車九州(福岡県宮若市)は28日、宮田工場(同)で水素エネルギーを製造、活用するモデル事業を来年3月から実施すると発表した。福岡県や九電テクノシステムズ(福岡市)、豊田通商(名古屋市)との共同事業。工場で太陽光発電から一貫して水素を製造、活用するのは全国初の試みという。トヨタ自動車は2050年までに工場からの二酸化炭素(CO2)排出をゼロにする目標に掲げており、事業はその一環。宮田工場の屋根に太陽光パネルを取り付け、得られた電力で水素を製造。従来の電動フォークリフトに比べてCO2排出量が半分で済む燃料電池フォークリフトの燃料などに使う。九電テクノなどが水素の需要や貯蔵データを収集し、効率化を図る。来年度までの総費用は7億3千万円で、うち4億8千万円は経済産業省の補助金で賄う。金子達也社長は「段階的にリフトや燃料電池を増やして規模を拡大する。苅田、小倉工場にも取り組みを広げたい」と話した。

*2-3:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20160715&ng=DGKKASDZ14HR6_U6A710C1TJC000 (日経新聞 2016.7.15) 東芝、水素の製造装置を開発 生産量国内最大
 東芝は14日、新型の水素製造装置を開発したと発表した。1時間で燃料電池車(FCV)2台分の燃料に相当する水素を作り出せる。水を電気分解して水素を発生させる電解液にアルカリ水溶液を使うタイプでは国内最大の製造量という。今年度中の販売開始を予定しており、価格は量産段階で1台2億円前後を見込む。

<脱原発と電力会社>
*3-1:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12429239.html
(朝日新聞社説 2016年6月27日)電力株主総会 原発頼みで展望あるか
 国が原発を重要なベースロード電源と位置づけ、30年度の比率を20~22%にすると言っている。原発は経済性にも優れる。だから安全確保を大前提に原発を再稼働していきたい――。経営陣の主張はおおむね同じだ。だが、東京電力福島第一原発事故を経験したわが国で、原発を動かすことは格段に難しくなった。経営環境の激変を率直に受け止め、乗り切るための長期展望を示すのが経営陣の務めだ。しかも電力小売りが全面自由化された時代に、「とにかく再稼働を」と繰り返すだけで、株主の信頼は得られるか。現状を改めて直視すべきだ。事故後から5年余り、全国の原発はほとんど動かせなかった。昨年、九州電力川内原発1、2号機が新規制基準のもとで初めて動き出した。だが今年1~2月に再稼働した関西電力高浜原発3、4号機は3月、大津地裁の仮処分決定で運転の差し止めを命じられた。原発の運転を禁じる司法判断は事故後もう3件目だ。住民が裁判所に判断を求める動きは各地で相次ぎ、「司法リスク」は高まっている。原発はますます思惑通りに動かせない電源となってきている。電力会社はそれでも原発に頼る姿勢を変えようとしない。関電は運転開始から40年を超す3基もさらに20年延長して動かす方針を打ち出した。だが、原発を動かし続けるなら必須となる使用済み核燃料の中間貯蔵施設はいっこうに建設のめどが立たない。経営陣は原発の建て替えや新増設への意欲は強調するが、具体的な計画は「国の方針が出た後に」とお茶を濁す。責任感や主体性を感じ取るのは難しいと言うしかない。関電の大株主である大阪市は今年も議案を出した。将来の原発廃止まで、必要最低限の再稼働は認めるものの、万全の安全対策や使用済み核燃料の処分方法の確立を会社に義務づけることを提案している。「事故時の住民避難計画を検証する委員会を設ける」「希望する周辺自治体すべてと安全協定を結ぶ」。ほかの株主提案にも、原発依存からの脱却をはかるうえで、傾聴に値するアイデアがいくつもある。株主の声に耳を傾け、原発に頼らない未来を切り開く道筋をともに探る。そういう姿勢を電力会社の経営陣に望みたい。

*3-2:http://digital.asahi.com/articles/ASJ7F55ZRJ7FPLFA005.html
(朝日新聞 2016年7月13日) 原発差し止め仮処分申請「できないように」 関電前会長
 原発の運転差し止めを求める仮処分の申し立てが全国の裁判所で相次いでいることについて、関西電力前会長の森詳介・関西経済連合会会長は13日、「司法リスクを限りなく小さくする必要がある」と述べ、申し立てができないように法改正などを政府に求めていく考えを示した。仮処分を申し立てた住民側からは「傲慢(ごうまん)だ」との声が出ている。関電は12日、高浜原発3、4号機(福井県)運転を差し止める大津地裁の仮処分決定に対する異議が退けられ、同原発が動かせない状態が続く。関経連の会見で森氏は「仮処分は民事で扱わない、特定の裁判所でやるとか、いろいろな方法がある」と指摘。国のエネルギー政策とかかわる原発の運転をめぐる問題は仮処分申請を認めず、知的財産権を専門に扱う知財高裁のような特定の裁判所で扱うべきだなどとした。森氏はそのうえで「資源エネルギー庁も大変大きな問題意識を持っている。最終的には法務省に要望していきたい」などと述べた。会見では、角和夫副会長(阪急電鉄会長)も森氏に同調して「原発を動かす、動かさないは行政訴訟に限定するなど、やり方はある」などと説明した。これに対し、大津地裁に仮処分を申し立てた住民側の井戸謙一弁護士は「人権侵害を緊急に救済する道を閉ざせば、憲法の『裁判を受ける権利』の否定になる。法改正まで訴えるのは、傲慢な姿勢だ」と批判した。

<政府の放射線公害に対する鈍感>
*4-1:http://mainichi.jp/articles/20160701/k00/00m/040/063000c
(毎日新聞 2016年6月30日) 原発汚染土、「8000ベクレル以下」なら再利用を決定
東京電力福島第1原発事故に伴う福島県内の汚染土などの除染廃棄物について、環境省は30日、放射性セシウム濃度が1キロ当たり8000ベクレル以下であれば、公共事業の盛り土などに限定して再利用する基本方針を正式決定した。同省が非公式会合で盛り土の耐用年数をはるかに超える170年もの管理が必要になると試算していたことが発覚したが、基本方針では「今後、実証事業で安全性や具体的な管理方法を検証する」と表記するにとどまり、管理期間には言及しなかった。福島県大熊、双葉両町にまたがる中間貯蔵施設に保管される除染廃棄物は最大2200万立方メートルになると見込まれる。国は2045年3月までに県外で最終処分する方針で、できるだけ再利用して処分量を減らしたい考え。基本方針では、再利用は管理主体などが明確な公共事業に限定し、1メートル離れた場所での追加被ばく線量を年間0.01ミリシーベルト以下に抑えると明記。同8000ベクレルの汚染土を使う場合、50センチ以上の覆土をし、さらに土砂やアスファルトで覆う対策を取るという。ただし、原子炉等規制法では、制限なく再利用できるのは同100ベクレル以下。環境省の非公式会合で、同5000ベクレルの廃棄物が同100ベクレル以下まで低下するには170年かかる一方、盛り土の耐用年数は70年とする試算が出ていた。基本方針では、再利用後の管理期間の設定や、管理体制の構築について触れられておらず、原子炉等規制法との整合性を疑問視する声も上がっている。環境省側は「管理期間や方法については、モデル事業を通じ、今後検討を進める」(井上信治副環境相)との姿勢だ。

*4-2:http://toyokeizai.net/articles/-/121239 (東洋経済 2016年6月4日) 政治・経済震災と復興.福島第一「凍土壁」は、遮水効果に疑問がある、東電、鳴り物入りの汚染水対策が難航
 東京電力ホールディングス・福島第一原子力発電所の汚染水抑制対策が思うような効果を発揮していない問題で、同社は6月2日、新たな工法を導入することを決めた。この日、原子力規制委員会の検討会合で、東電は「凍土工法」を用いても凍らなかった土壌の凍結対策として、セメント系の材料を新たに注入すると説明。規制委から「やむを得ない」として了承を得た。6月6日から工事を開始し、今月中に完了させる。これにより、目の粗い石が多いために地下水の通り道になっていると見られる地中箇所の凍結を確実にしたい考えだ。新たな工事は凍土壁工事の一環として行われ、総額345億円が用意された国の研究開発予算の一部を用いる。
●凍結後も地下水流入量に変化なし
東電が福島第一原発の原子炉建屋の周囲約1.5キロメートルにわたって構築した「陸側遮水壁」は通称、「凍土壁」と呼ばれる。地下約30メートルの深さまで埋設した約1500本の配管に零下30度の冷却材を流し込むことで、周辺の土を凍らせる。これによって、建屋内への地下水の流入を抑制し、溶け落ちた燃料に接触することによって発生する放射能汚染水の抜本的な削減を見込んでいる。だが、凍土壁は3月31日に原子炉建屋の海側全面および山側の一部が稼働して2カ月が経過したにもかかわらず、「現在のところ、地下水流入量を減らす効果が出ているとはいえない」(川村信一・福島第一原発広報担当)状態だ。このところ降雨量が多いこともあり、地下水の流入は1日当たり200立法メートル程度の高水準が続いており、「凍結開始後も大きな変化はない」(東電)という。建屋内への流入量を減らすことを目的として設置した「地下水ドレン」と呼ばれる井戸からくみ上げた水を、放射性物質の濃度が高いために海に放出することができず、東電ではやむなく建屋内に戻している。凍土壁の稼働で、こうした本来の目的と異なるオペレーションの是正が期待されたが、現在のところ目立った成果は現われていない。東電の説明に苦言を呈した更田豊志・原子力規制委員会委員長代理(6月2日の検討会合)こうした中で、東電は規制委の了承を得て、遮水壁の凍結範囲を拡大する。これまで先行凍結させてきた海側に続き、山側部分についても大部分を凍結させることを決めた。凍結作業は数日内に開始する見込みで、新たに490本の凍結管に冷却材を流し込む。もっともその効果は未知数で、原子炉建屋を凍土壁で完全に囲い込むメドは立っていない。
●規制委は凍土壁の効果を疑問視
そもそも凍土壁は、汚染水問題の重層的な対策の一環として導入された。だが、工事金額の大きさやマンパワーのかけ方で注目度が大きかった反面、規制委は「根本的な解決策にはならない」(田中俊一委員長)とみなしてきた。のみならず規制委は、凍土壁で原子炉建屋を囲い込んだ結果、建屋内の汚染水の水位が遮水壁の外側の地下水位よりも高くなってしまうことで汚染水が流出するリスクを懸念してきた。今回、そうしたリスクが当面高くないとして規制委は山側の大部分の凍結を了承したが、そうかといって所期の効果がどこまで現われるかも定かでない。2日の規制委の検討会合でも、「最も期待した(地下水ドレンなどの)くみ上げ量減少が実現していない。本当に(凍土の)壁が形成されているのか。このままではいつまでたっても(効果を)判断できない恐れがある」と規制委の更田豊志委員長代理は東電に苦言を呈した。地下水位に有意な変動があることなどを理由に、東電は凍土壁の形成によって遮水効果は見え始めていると説明したが、規制委のメンバーは納得しなかった。凍土壁には前述のように、多額の国の予算が研究開発名目で投じられている。一方、稼働後のランニングコストは東電が負担する。電気代を含む総額は年間に十数億円になり、2016年度の電気の使用量は4400万キロワット時にも上る見通しだ。1万2000世帯以上が1年間に消費する電力量に相当する。今後も期待したほどの効果が発揮できない場合、凍土壁の周囲にセメントを大量注入するなどの抜本策も必要との声も検討会合に参加した専門家から上がっている。汚染水対策の出口は見えず、試行錯誤が続いている。

*4-3:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12466361.html
(朝日新聞社説 2016年7月18日)海の再生 豊かな「里海」へ、行動を
 きょう18日は「海の日」だ。この祝日を機に、人間と海との関係を考えてみる。島国だけに、海はつねに魚や貝類をはじめ、豊かな実りをもたらしてくれていた。だが戦後、社会がひたすら経済成長を追い求め、人々の暮らしが豊かになるにつれ、その代償を払うように、海はひどく痛めつけられた。その反省を踏まえた環境改善が進むなか、さらに一歩先の「海の再生」をめざす動きが各地で始まっている。
■戻らぬ豊かさ
 高度成長期だった60~70年代、日本の海は激変した。瀬戸内海や東京湾、伊勢湾では赤潮が頻発した。工場や家庭排水の影響で、窒素やリンの濃度が高まる富栄養化が起き、プランクトンが異常発生する現象だ。漁業被害も深刻化した。沿岸は次々に埋め立てられ、全国の3分の1以上が人工海岸になった。都市に近い内海や湾では、多くの干潟(ひがた)や藻場(もば)が失われていった。このため政府は70年代以降、汚濁物質の流入を抑える対策に力を注いだ。水質は着実に良くなり、瀬戸内海では赤潮の発生がピーク時の3分の1ほどにまで減った。ところが、海の豊かさは戻ってきていない。瀬戸内海の漁業生産量は、最盛期の約4割しかない。全国でも沿岸漁業の生産量は減り続け、漁業離れに拍車をかける。海藻が消失する磯焼けも各地で相次いでいる。原因は未解明だが、森林が荒れ、腐植土に含まれる鉄分が川を通じて海に供給されなくなったためという見方もある。5月に富山市で開かれた主要7カ国(G7)環境相会合は、大きさ5ミリ以下の微小プラスチックが海の生き物に及ぼす悪影響への懸念を表明した。ペットボトルや化粧品など、身の回りのさまざまなものが発生源だ。人間の活動が海にかけている負荷は重い。
■人の手を加える
 海と人間の望ましい関係を考えるうえで、近年、「里海(さとうみ)」という言葉が注目されている。
 「人手が加わることで、生物の生産性と多様性が高くなった沿岸海域」という定義だ。98年から提唱してきた柳哲雄・九州大名誉教授は「きれいで、豊かで、にぎわいがある海」と表現する。ポイントは、山から河川を経て、海へ至る物質の流れを滑らかにすることだ。たとえば、沿岸の干潟や藻場は陸から流れ込む窒素やリンを取り込み、海の富栄養化を抑える役割を果たしていた。それが失われると、復元は容易ではない。人の手で適切に補っていく必要がある。里海の先駆例として知られるのが日生(ひなせ)(岡山県備前市)の漁師らによる「アマモ場」の再生だ。アマモはイネに似た長い葉をつける海草で、多くの生き物を育むゆりかごである。瀬戸内海が汚れるにつれ、日生の浅瀬からアマモの群生が消えた。「魚が減ったのもそのせいでは」と考えた漁師らが85年からアマモの種をまき始めた。台風の直撃で全滅するなどの苦難を乗り越え、昨年には50年代の4割ほどまでアマモ場は回復した。魚やエビが戻り、特産の養殖カキの収穫も安定する効果が出ている。アマモ場づくりは各地に広がっている。6月に日生で開かれた「全国アマモサミット」には2千人が集まった。環境省の14年度の調べでは、「里海づくり」に取り組む行政や市民らの活動は全国で216件にのぼる。「森は海の恋人」を合言葉に、宮城県のカキ養殖漁師らが89年から続ける植林や、干潟の保全など内容はさまざまだ。
■一人ひとりが意識を
 豊かな海の復活には、活動の輪を広げ、より多くの人が息長く携わることが欠かせない。東京湾再生に取り組む官民連携組織は13年から「東京湾大感謝祭」を始めた。江戸前の海の幸を食べたり、海辺のレジャーを体験したり。昨年は3日間で8万8千人が盛り上がった。企画を担う海洋環境専門家の木村尚(たかし)さんは、横浜市でアマモ場再生に尽力してきた。東京湾周辺には3千万人が暮らしている。「その3千万人が3千万通りに東京湾にかかわっていくようになれば、海はよみがえる」と木村さんは言う。たとえば、近海でとれた魚介類を積極的に買って食べれば、里海づくりを担う漁師らの支えになる。潮干狩りや磯遊びで子どもたちに海の魅力を体験させるのもいい。暮らしの中から出てくる排水やごみを減らすことも大切だ。私たち一人ひとりが海を意識し、具体的に行動する。その先に、豊かな里海が見えてくるに違いない。

<原発推進・輸出の時代錯誤>
*5-1:http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2016062201000780.html
(東京新聞 2016年6月22日) 米加州最後の原発閉鎖へ 再生エネに転換
 米カリフォルニア州の電力大手PG&Eは21日、運営するディアブロキャニオン原発の2基の原子炉(出力計224万キロワット)の稼働を2025年までに停止し、閉鎖すると発表した。同州から原発がなくなることになる。同州では13年に、電力会社サザン・カリフォルニア・エジソンがサンオノフレ原発の廃炉を決め、ディアブロキャニオンが唯一の原発になっていた。PG&Eは今後8~9年で、電源を太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギーへ転換、31年までに総発電量の55%をまかなう計画を掲げている。

*5-2:http://qbiz.jp/article/88921/1/
(西日本新聞 2016年6月16日) フィリピン 東芝、水力や地熱で発電機の大型受注狙う
 東芝は、フィリピンで発電設備の受注に力を入れる。経済発展と共に電力需要が高まっており、政府が再生可能エネルギーの普及を後押ししていることを商機と見ている。特に、水が豊富で火山国であるという地理的条件から引き合いが強い水力や地熱を中心に大型受注を狙う。アジア統括会社、東芝アジア・パシフィックの土光辰夫・アジア総代表が15日、フィリピンで明らかにした。東芝はこれまで、パンガシナン州のサンロケ水力発電所(出力41万1,000キロワット=kW)をはじめ、フィリピンで5カ所の水力発電所、3カ所の地熱発電所、2カ所の火力発電所に発電機を納入した実績がある。総出力は210万7,000kWに上る。発電機は日本と中国で製造した。東芝は、水力発電の可変速揚水システムと地熱発電の地熱タービンで世界一のシェア(それぞれ累計納入プラント数ベース、運転プラント容量ベース)を占め、メンテナンスでも高い技術を持つ。発電機は消費財の販売とは異なり、中長期的なサービスが必要であり、保守事業が次の受注につながることもあるという。土光総代表はフィリピンについて、「ハードディスク駆動装置(HDD)の唯一の自社生産拠点として、当社にとって大きな位置を占める」とした上で、今後は発電などのインフラ事業を積極的に展開し、同国での収益基盤の拡大を図りたいと話した。時期を見て、鉄道インフラへの参入も検討するという。
■現地工場、昨年は5億台出荷
 現地法人の東芝情報機器フィリピン(TIP)は昨年、HDDと記憶媒体としてフラッシュメモリーを使う次世代記憶装置「SSD(ソリッド・ステート・ドライブ)」を計5億台出荷した。TIPの岡村博司社長は、需要の変動はあるが、工場の生産能力にまだ余裕があり、現時点で設備増強の計画はないとコメント。「今後は、モノのインターネット(IoT)の発展と共に、データストレージの需要は増えていく。データセンター向けストレージ製品の需要が伸びるだろう」との見通しを示した。TIPの工場の延べ床面積はラグナ州の「ラグナ・テクノパーク」工場が計8万5,783平方メートル、同州の「カーメルレイ・インダストリアル・パーク」工場が6万7,124平方メートルで、従業員は約6,500人に上る。15年の売上高は20億米ドル(約2,000億円)超だった。HDDとSSDの輸出額は、フィリピンの昨年の電子製品の約8%を占めた。

*5-3:http://digital.asahi.com/articles/ASJ244JDTJ24UTFK00F.html
(朝日新聞 2016年2月4日) 「日印原子力協定の再考を」 超党派議連76人が談話
 9党76人の衆参議員(代表=近藤昭一・民主党衆院議員)が参加する「原発ゼロの会」は4日、安倍晋三首相が昨年12月、インドのモディ首相と「原則合意」した日印原子力協定について、再考を求める談話を発表した。正式に協定を結べば、インドへの原発輸出が可能となる。インドは核不拡散条約(NPT)に加盟しておらず、非加盟国と協定を締結するのは初めて。同会は談話で、「NPTを形骸化させるもので、核不拡散体制にとって致命的な一歩となる」と批判。使用済み核燃料について「再処理の扱いが明らかにされていない」と指摘した。河野太郎行政改革担当相は入閣に伴い、同会の共同代表を辞任した。


<原発地元の動向>
PS(2016年7月20日追加):*6-1のように、全国の原発で唯一稼働中の九電川内原発の運転継続は、鹿児島県の有権者の49.9%が反対しており、*6-2のように、脱原発を訴える佐賀県内の市民団体は九電玄海原発再稼働反対の9万人分の署名を佐賀県知事に提出した。また、*6-3の北海道新聞全道世論調査では「規制委基準を満たしても泊原発を再稼働すべきでない」と考える人が39%、「再稼働の同意を求める地元自治体の範囲も札幌市や小樽市など(泊原発から)30キロ以上にも広げるべきだ」が54%を占めた。さらに、*6-4のように、四電伊方原発の再稼働については、熊本・大分地震は世界最大の活断層・中央構造線が動いたことを受けて、広瀬隆氏が大分県で「日本に原発の適地はない」と講演している。そして、これらをポピュリズムと呼ぶ人がいるが、それこそ傲慢で思考停止だ。 

*6-1:http://qbiz.jp/article/90190/1/ (西日本新聞 2016年7月6日) 川内原発「反対」49.9%、「賛成」45.9% 鹿児島県有権者
 全国の原発で唯一稼働中の九州電力川内原発(鹿児島県薩摩川内市)の運転継続について、同県の有権者の49・9%が反対していることが西日本新聞の電話世論調査で分かった。反対の回答は再稼働前の2014年末調査を5・8ポイント下回ったが、なお賛成の回答数を上回っており、再稼働後も県民の賛否が二分する現状を浮き彫りにした。参院選の世論調査に合わせて3〜5日に実施、1112人から回答を得た。運転継続の是非を聞いたところ「反対」は21・9%、「どちらかといえば反対」は28・0%。一方「賛成」は17・4%、「どちらかといえば賛成」は28・5%で、反対派が賛成派を上回った。地元の薩摩川内市を含む衆院鹿児島3区では賛成派55・1%、反対派38・8%だった。再稼働の是非を尋ねた14年12月の衆院選時の調査(回答者1403人)では反対派55・7%、賛成派38・0%だった。

*6-2:http://qbiz.jp/article/88553/1/
(西日本新聞 2016年6月10日) 玄海再稼働反対9万人署名 市民団体、佐賀知事に提出
 脱原発を訴える佐賀県内の市民団体は10日、九州電力玄海原発(佐賀県玄海町)の再稼働に同意しないよう求める約9万人分の署名を山口祥義知事に提出した。直接受け取った山口知事は、署名が県外からも多く寄せられたことを受け「佐賀だけの問題ではなく、福岡や長崎とも関係する。そういう意識を持って(再稼働の是非を)考えていきたい」と述べた。署名は今年1月から、県内8団体で作る「脱原発佐賀ネットワーク」が全国で集めた。市民団体は「原発を不十分な規制基準で運転すれば、また東京電力福島第1原発事故のような惨事が繰り返される」と訴え、県と住民との公開討論の場を設けるよう要望した。玄海原発は1号機の廃炉が決まり、3、4号機は再稼働に向けた審査が進んでいる。山口知事は再稼働について、幅広い意見を聴いた上で判断するとしている。

*6-3:http://dd.hokkaido-np.co.jp/news/society/society/1-0294092.html
(北海道新聞 2016/7/17) 泊原発 規制委基準満たしても「再稼働すべきでない」39%
 北海道新聞社の全道世論調査で、停止中の北海道電力泊原発(後志管内泊村)の再稼働について、原子力規制委員会が審査で基準を満たすと認めたとしても「再稼働すべきでない」との回答が39%に上った。審査で認められれば「再稼働してもよい」の31%を上回っており、再稼働に慎重な道民の意識がうかがえる。調査は11、12の両日に行った。原子力規制委員会の審査後を想定して再稼働の是非を聞くのは初めて。「どちらともいえない」は30%だった。男女別では、審査後なら「再稼働してもよい」が、男性は40%だったのに対し、女性は23%にとどまった。「再稼働すべきでない」は男性36%、女性42%だった。年代別では「再稼働してもよい」は40代の44%が最も多く、70代以上は50%が「再稼働すべきでない」を選んだ。原子力規制委員会の審査結果にかかわらず、再稼働の是非だけを聞いた今年4月の世論調査では「認めてもよい」が39%、「認めるべきではない」が57%だった。再稼働の同意を求める地元自治体の範囲について聞いたところ、「札幌市や小樽市など(泊原発から)30キロ以上にも広げるべきだ」が54%(4月の世論調査比1ポイント減)で最も多かった。

*6-4:http://www.oita-press.co.jp/1010000000/2016/07/17/005425524
(大分合同新聞 2016/7/17) 「日本に原発適地ない」 中央構造線の危険強調 伊方原発
 原発の危険性を訴え続けている作家の広瀬隆さん(東京)が16日、大分市内で「中央構造線が動き出した!その時、伊方原発は耐えられるか?」と題して講演した。熊本・大分地震は「世界最大の活断層・中央構造線が動いた」と指摘、今月下旬の再稼働が見込まれている四国電力伊方原発(愛媛県伊方町)そばの中央構造線で直下型地震が起きれば大事故が起きると訴えた。広瀬さんは日本列島の成り立ちや、活断層の存在が知られていない場所でも大地震が起きてきたことを紹介し、「日本は全ての土地が活断層の上に存在する。日本に原発を建てる適地はない」と説明。中でも中央構造線は日本を縦断する巨大断層で、南海トラフと連動して大地震を起こす危険性があるとした。伊方原発そばの海域を走る中央構造線は「太平洋側からの力を受けて傾斜している。原発の真下に向かって活断層が延びており、直下型地震が起こる」とし、「震源からの距離が近いので、(原子炉を)止める時間がないのが一番怖い」と語った。熊本・大分地震で震度7を観測した熊本県益城町では、上下動の最大加速度(揺れの強さ)が地表面で1399ガルだったとも説明。伊方原発の耐震設計の目安となる基準地震動は最大650ガルだが、これは水平動で、上下動は377ガルの想定にとどまる。「岩盤上に立つ原発でも耐えられるはずがない」と強調した。講演会は今月発足した住民組織「伊方原発をとめる大分裁判の会」が開いた。同会は既に有志4人が伊方3号機の運転差し止めを求める仮処分を大分地裁に申請した。今夏に大分県在住者100人以上で訴訟も起こす方針で、原告や応援団のメンバーを募っている。参加した約250人を前に、広瀬さんは「日本は次の原発の大事故を待っている状態だ。今が生き残る最後のチャンス。(裁判を)県民を挙げた運動にしてほしい」と期待を寄せた。
*ひろせ・たかし 1943年、東京生まれ。長年にわたって原発問題を訴え続け、著書に「危険な話」「東京に原発を!」「原子炉時限爆弾」などがある。


PS(2016年7月21日追加):*7のように、四電伊方原発3号機(愛媛県伊方町)の再稼働差し止め訴訟を、対岸の大分県の住民らが8月にも大分地裁に提訴する見通しとなったそうだ。大分県民の安全や豊予海峡でとれる高級魚の関アジ、関サバはじめ大分県の産業を護るために当たり前のことであるため、速やかな再稼働差し止めの仮処分が望まれる。

*7:http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2016072101001518.html
(東京新聞 2016年7月21日) 8月にも伊方再稼働差し止め訴訟 大分、原告団は100人超
 四国電力伊方原発3号機(愛媛県伊方町)の再稼働差し止めを求め、対岸に位置する大分県の住民らが早ければ8月にも運転差し止め訴訟を大分地裁に起こす見通しとなった。住民側の代理人弁護士が21日、明らかにした。原告団は100人を超える見込みだ。21日は本訴に先立ち、住民の一部が運転差し止めを申し立てた仮処分の第1回審尋が大分地裁(竹内浩史裁判長)で開かれた。記者会見した代理人弁護士によると、この日は争点と証拠の整理を中心に進められ「地震と津波、土砂災害(が起きた際の危険性)が主な争点になるだろう」と説明した。


PS(2016年7月22日追加):*8の博多港も赤潮が発生したり、水が濁っていたりしていて見られない港の一つだ。しかし、クルーズ船も停泊するのなら、クルーズ船から見える海の中や陸地の風景も重要であるため、①海の透明度を増して船から下を見ると海底や魚が見える海にする ②陸地はコンクリートだけでなく30%以上は緑があるようにする(飛行機から見ると福岡の緑は東京よりも少ない) など、環境がよくて便利な港にするのがよいと考える。クルーズ船で来る人は、船内で本物の音楽、映画、ダンスパーティーなどのアトラクションに親しんでいるため、特色のない安っぽいイベントならいらないと思う。

*8:http://qbiz.jp/article/91110/1/
(西日本新聞 2016年7月22日) 福岡市の三セク「博多港開発」、どうする
 福岡市の有識者会議は21日、市の第三セクター「博多港開発」(博多区)の今後の在り方について、報告書を大筋でまとめた。主力の埋め立て事業をほぼ終えたことから、博多港のバス待機所整備などクルーズ客船の受け入れ強化につながる事業の促進を検討するよう求めている。市は報告書を基に活用策をまとめる。市港湾空港局によると、同社は博多港の整備を主目的に1961年に設立。戦後に埋め立てた市内の約1500ヘクタールのうち、須崎ふ頭(中央区)や小戸・姪浜地区(西区)など774ヘクタールを整備した。アイランドシティ(東区)は全体の24%(97・2ヘクタール)の造成を手掛け、売却用地の9割以上が分譲済み。報告書では、ウオーターフロント地区の再開発をにらみ、NPOなどと連携したイベント実施も検討すべき役割として盛り込んだ。


<地元の範囲はどこまでか>
PS(2016年7月24日追加):最近、埼玉県ふじみ野市の自宅上空を旅客機や自衛隊機が低空飛行していることが多く、ヘリコプターは自宅マンションの上空でホバリングしているのではないかと思うことさえある。これは、人口密集地帯でのプライバシー侵害や墜落リスクがあるため、*9のように、「羽田空港の国際線発着回数を増やすため、東京都心上空を飛行するルートを新たに設定することで、国と地元自治体が近く合意する」というのは、合意する自治体の範囲の拡大と経路の再考が必要だ。

*9:http://qbiz.jp/article/91202/1/
(西日本新聞 2016年7月24日) 都心の上空飛行、地元合意へ 羽田空港、国際線の発着増
 羽田空港の国際線発着回数を増やすため、東京都心上空を飛行するルートを新たに設定することで、国と地元自治体が近く合意することが23日、関係者への取材で分かった。都心上空の飛行は、騒音に配慮し避けてきた経緯がある。新ルートの運用時間は限定し、空港周辺で騒音対策を実施することで地元の理解を得て、大幅増便は実現に向けて動きだした。2020年の東京五輪・パラリンピックまでに、羽田空港の発着回数は現在の年間44万7000回から最大3万9000回増やし、国際線に振り分ける。現行9万回の国際線は、1.4倍の12万9000回となる。政府は、利便性向上で羽田空港の国際競争力の強化を図る考えだ。羽田空港の発着は従来、都心を避け、主に東京湾上空の東側か南側を通ってきた。南風の場合は東京湾上空で旋回し、北側から滑走路へ。北風で北向きに離陸する際も、都心部を大きく迂回(うかい)し上昇する。直線ルートが少なく、東京湾上空の狭い範囲で旋回するため、ルート同士の距離が近いことが増便の障害だった。新ルートは、北側から南に向けての着陸の際、さいたま市付近から、空港のある東京都大田区にかけ直進しながら降下する。北向きの離陸時は、湾岸エリアの江東区や、東京スカイツリーがある墨田区付近の上空を通過するほか、南向きの離陸の際、従来は飛行しなかった川崎市上空も直進し上昇する。

| 資源・エネルギー::2015.5~2016.12 | 02:29 PM | comments (x) | trackback (x) |
2016.4.24 エネルギー変換の必要性と九州大地震←“熊本地震”という名は、今回の地震を過小評価するため使用しません(2016年4月24、25、26、27、28、29、30日、5月1、2、3、4、6日追加)
 
 2016.4.22   中央構造線     1596年の伊予・  宇宙から見える     2016.4.24
  日経新聞    と震度分布      豊後・伏見地震    中央構造線      西日本新聞


2016.4.24   太陽光発電      2016.4.22      ローン0でできる    2016.4.22
 高知新聞     普及率         日経新聞   上  太陽光発電住宅     日経新聞
                            (太陽光発電は、もう屋根に置く 
                             のではなく、屋根や建材として 
                             デザインよく建物に組み込む時)
(1)中央構造線(断層)に沿った地震の発生
 熊本、大分を中心とする今回の地震は、上の左図のように中央構造線に沿って起こったが、これに似た地震が今から420年前の1596年に起こった伊予・豊後・伏見地震だ。中央構造線は日本列島の成り立ちからできた断層で、この断層に沿って河川や湾(白川・緑川・球磨川・八代海、臼杵川・大野川・大分川・別府湾、吉野川、紀ノ川)があり、川沿いに平野・道路・市街地ができていて木が少ないため宇宙からも見える。

 そのため、*1-1、*1-2、*1-3のように、今回の地震は断層に沿って熊本県南西部及び大分県北東部に繋がると考えるのが自然であり、「これ以上は広がらない」と考える科学的根拠はなく、伊予・豊後・伏見地震のような大地震は1000年に一度しか起こらないと証明されているわけでもない。

(2)JR九州の可能性
 本年度中の株式上場を目指しているJR九州は、*1-4のように、地震で新幹線の脱線事故を起こし、今後は安全投資を迫られるそうだが、他方では、今回の地震で家を失った人や建て替えを検討する人は多く、不動産子会社が新幹線や在来線の駅近くで大規模な街づくりを進めることが可能だろう。

 その際には、上の図のように、日照時間が長くて土地の価格が比較的安い九州では、屋根全体を太陽光発電にすれば、オール電化しても住宅ローンが0で済むような住宅を作ることもでき、進歩した21世紀型の住宅団地を作ることが可能であるため、ここで使うべきは頭脳である。

 *3-1のように、純粋な民間会社であるヤマダ電機は、この電力自由化のチャンスに家庭向け電力小売市場に参入し、省エネ性能の高いスマートハウスと合わせて提案していくそうで、楽しみだ。

(2)地震の被害について
 地震は、*2-1のように、トマト、スイカなど全国有数の生産量を誇る熊本県内の農業にも打撃を与え、野菜の選果機などが損傷し、出荷に影響が出始めたそうだ。しかし、別の調達先を探されて売上を逃すよりも、近くの別の選果場で選果を行ってもらえばいいのではないだろうか?

 また、*2-2の熊本城や阿蘇神社は、前よりも文化的価値や観光的価値の増す形で復旧したい。これは、世界の名所・旧跡・城の活用方法を調査して、九州の観光のためにも速やかに行うべきである。

(3)農業の電動化
 *3-2のように、ため池は全国約20万カ所あるが、7割が江戸時代以前に整備されたもので、集中豪雨や南海トラフ地震などによって決壊して周辺に被害をもたらす可能性が指摘されているそうだ。そのため、使わなくなった池の廃止も検討すべきではあろうが、ため池でも発電して農業に安定して安い電力を供給し、いつまでも燃油価格高騰などの外部要因で振り回されることなく、農業におけるエネルギーの自給率向上とコストダウンを計るべきである。

 なお、*3-3のように、北海道のJA士幌町は、酪農家が取り組むバイオガス発電を活用し、4月からJA施設の電力地産地消を始めると発表している。酪農も、バイオガスだけでなく広い畜舎の屋根を利用した太陽光発電や牧場を利用した風力発電など、電力を作るのに適している。

 そのような中、*3-4のように、電気モーターを動力としてガソリンを使わない電気自動車が農村でじわりと浸透し、エコである上に経費節減にも寄与しているそうだ。今後は、農業機械も電動化して、農村でのエコと経費節減を両立すべきだ。

(4)原発停止へ
 *4-1、*4-2のように、2016年7月下旬頃に見込まれる四電伊方原発3号機(愛媛県伊方町、中央構造線の真上)の再稼働に反対する集会が4月23日に松山市の城山公園で開かれ、中四国だけでなく九州の原発立地先の住民ら約2800人(主催者発表)が参加したそうだ。

 熊本で大地震が起きて、いつ南西に広がるかわからなくても川内原発を止めないのは規制委も含めて問題が多い上、その活断層の北東部真上付近にある伊方原発を早急に廃炉として使用済核燃料を別の場所に移さないのも危険極まりない。これは、一回の地震動が570ガルを超えたか650ガル以下だったかという単純で小さな問題ではなく、繰り返し地震に襲われたり、隆起や陥没が起こったりすることも考慮しなければならないということなのだ。

 なお、*4-3のように、大間原発訴訟で、函館市は、「(原発の審査基準となる新規制基準について)欧州諸国と比べて緩やかであり、世界で最も厳しい基準だと強調する政府は新たな安全神話を流布している」と批判したそうである。

 さらに呆れるのは、*4-4のような原発の「40年ルール」の骨抜きだ。狭い国土に多くの人が住み、地震などの自然災害も多い日本で、多くの原発を抱えていくリスクは大きすぎる。福島での事故を経て、そこが原子力行政見直しの出発点だったはずだし、原発を維持する国民的コストは膨大すぎる。

 また、世界でも、エネルギー自給率は再生可能エネルギーの育成で高めようというのが大勢である。そして、再エネ施設が事故を起こしたとしても原発事故のような長期間の大きな被害にはならない上、*4-5のように、太陽光、風力、地熱などの九州の再エネ施設は無事だったそうだ。

*1-1:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/304092
(佐賀新聞 2016年4月22日) 地震活動終息見えず 熊本南西部ひずみ警戒
 震度7が連続して起きた熊本県の地震活動は、阿蘇山や大分県に余波が及んだまま1週間が過ぎた。地震回数は2004年の新潟県中越地震を超えて最多となり、活動がいつ終息するのか見通せない状況が続く。専門家は熊本県の南西部にたまった地殻のひずみの大きさを指摘。今後の地震に警戒を呼び掛ける。「過去に例のない状況で(終息の)見通しはない。期限を明示することは難しい」。21日の気象庁の記者会見。青木元・地震津波監視課長は硬い表情で語った。
◆異例
 海溝型の大地震が連続する例がないわけではないが、震度7の直下型地震の連発は「想定外」。余震の数はその分多い。また震源となった「布田川(ふたがわ)断層帯」「日奈久(ひなぐ)断層帯」の北東延長部でも地震が誘発された。熊本県の中心部と、活火山の阿蘇山を越えた大分県境、大分県内の計3カ所。異例の同時活動だ。遠田晋次・東北大教授(地震地質学)は「大分などの地震は16日の地震とほぼ同時に起きている。南西から北東に向けて断層破壊が起こり、地殻のひずみが直ちに伝わった」と指摘。だが、ひずみがより大きくなったのは大分県側ではなく、日奈久断層帯の南側に近い熊本県南西部だ。「もともと地震が起こりやすいと考えられていた部分。いつとは言えないが、大きな地震がまた起きるだろう」
◆飛び火
 地殻のひずみに詳しい西村卓也・京都大准教授(地殻変動学)は「震源周辺はブロック状の地殻の固まり同士の境界に当たり、年約1センチのひずみをためている」と話す。東日本大震災を起こした日本海溝の年8~9センチ、巨大地震が懸念される南海トラフの年5~6センチよりは小さいが、地震が起きやすい地域だ。西村氏によると、今回の地震で変化したひずみの影響は震源に近いほど強まる。震源に近い熊本県南西部は引き続き注意が必要だ。一方、大分の地震活動が、対岸の四国を横断する巨大断層「中央構造線断層帯」に飛び火すると考える専門家は少ない。鷺谷威・名古屋大教授(地殻変動学)は「大分は陸域の地震で、徐々に活動は静まってきている。地震が海域に及んで活発にならない限り心配はないと思う」と話している。【共同】

*1-2:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20160422&ng=DGKKZO99945210R20C16A4M12800 (日経新聞 2016.4.22) 特集熊本地震 未知の連鎖、「断層の巣」震源北東へ 南西も拡大警戒
 熊本地震の発生から21日で1週間を迎えた。16日未明にはより大規模な「本震」が起き、距離の離れた阿蘇地方や大分県でも大きな地震を誘発する異例の事態に発展した。建物の倒壊や土砂災害による被害は広域に及び、多発する余震や震源域の一段の拡大への警戒が続く。住民の生活を再建し、地域の復興を遂げるには時間がかかりそうだ。熊本県熊本地方が激しい揺れに見舞われたのは14日午後9時26分ごろ。地震の規模を示すマグニチュード(M)は6.5で、同県益城町では震度7を記録した。気象庁によると南北方向に引っ張られる力で地盤が水平に動く「横ずれ型」と呼ぶタイプの地震だった。震源の深さが11キロメートルと浅く、揺れが大きくなった。国内で震度7を観測するのは2011年の東日本大震災以来で、住宅の倒壊で犠牲者が出るなど大きな被害につながった。地震活動は過去に例のない展開を見せる。16日午前1時25分ごろ、熊本地方を再び強い揺れが襲う。1995年の阪神大震災と同じM7.3。14日夜の地震を上回る規模だった。気象庁は後に震度計のデータを解析し、益城町などで震度7だったと発表した。気象庁は14日の地震が起きた時点で、さらに大きな地震が来るとは考えていなかった。経験則から、大きな地震の後に続く余震の多発に警戒を呼びかけていた。もはや従来の常識は通用しなかった。16日未明から朝にかけ、阿蘇地方や大分県中部でも大きな地震を観測した。地震の連鎖はなぜ起きたのか。日本列島は地震を繰り返す2000以上の活断層がある。政府の地震調査委員会によると、最初の震度7は長さ約81キロメートルの日奈久(ひなぐ)断層帯の北端がずれたことが原因だった。次の16日は同断層帯の北側を走る布田川(ふたがわ)断層帯で発生した。大分県から熊本県に至る別府―島原地溝帯付近は、両断層帯を含め多くの活断層が集まる「地震の巣」だ。大分県側にも別府―万年山(はねやま)断層帯がある。日本列島の下には海底のプレート(岩板)が沈み込み、陸地に力が加わる。「もともと地盤にひずみがたまっていた」(東京大学の古村孝志教授)地域で大きな地震が起き、誘発されるように北東方向に拡大した。1つの活断層がずれると周辺へかかる力が変わり、次の大地震の引き金になるとの考えはある。だがM7級の地震をきっかけに九州を横切るほどの規模で震源域が広がるのは「見たことがない現象」(京都大学の飯尾能久教授)で、詳しい仕組みは不明だ。日奈久断層帯の南西側などでさらに大地震が起きる懸念も指摘されている。

*1-3:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20160422&ng=DGKKZO99946320R20C16A4TJN000 (日経新聞 2016.4.22) 「中央構造線」列島横切る巨大断層、熊本地震の延長上 九州~近畿で400年前に連続発生
 熊本県から大分県にかけて強い地震が連続して発生、大きな被害を出した。内陸で起きる地震の常識を超えて100キロメートルもの範囲に震源が広がり、さらに東の愛媛県などに拡大するのではないかと懸念する声が出ている。一連の地震の震源の延長上に西日本を縦断する「中央構造線」と呼ばれる大規模な断層帯が存在するためだ。西日本を背骨のように貫く中央構造線とはどのようなものなのだろうか。「一番の懸念は、(一連の地震が)中央構造線につながっているということだ」。18日に開いた緊急記者会見で、日本地震学会会長の加藤照之さんはこう語った。14日の夜に熊本市近郊で最初の地震が発生。16日未明にそれをはるかに上回る規模の本震が起き、これをきっかけに阿蘇山周辺から大分県へと、マグニチュード(M)5級の地震が広がっていった。今回のような直下型地震は、地下の断層がずれることで起きる。地震を起こした活断層の延長上で別の地震が起きることはしばしばあるが、これほど大きな地震が100キロ以上も進んでいくのは「かなり特徴的」(加藤さん)だという。
●全長1000キロ以上
 地震は、九州を横切る「別府―島原地溝帯」を東に進んだ。地溝帯というのは、両側を断層で挟まれた幅の広い谷のことだ。別府―島原地溝帯は、西日本を横切る長大な断層の連なり「中央構造線」の西端に当たる。中央構造線の周辺には並行して多くの活断層があり、地震の連鎖が広がるのではと懸念された。中央構造線は、全長1000キロメートル以上に及ぶ。九州から四国北部を経て紀伊半島を横断。伊勢湾を横切り、天竜川に沿って北上して、長野県諏訪湖付近で本州の中央部を横切るフォッサマグナとよばれる巨大な地溝帯にぶつかる。このフォッサマグナの西の縁が、中央構造線と並ぶ巨大な断層帯として知られる糸魚川―静岡構造線だ。異なる断層に由来する大きな地震が連動するのは、近代的な観測が行われるようになってからはあまり例がない。だが、過去の時代の文献からは、そうした事例があったことが見て取れる。安土桃山時代末期の1596年9月1日、中央構造線沿いの愛媛県でM7級の慶長伊予地震が起きた。その3日後に、およそ200キロメートル離れた大分県で、同程度の慶長豊後地震が起きている。その翌日に兵庫県で発生した慶長伏見地震も、これらの地震と関連するとみる研究者もいる。
●分かれる意見
 今回の地震が、大分県を越えてさらに東へと強い地震が広がる可能性はあるのか。研究者の見方は様々だ。九州大学准教授の松島健さんは「1995年に中央構造線近くで阪神大震災が起きた。今回も中央構造線に沿って他の地震が起きる可能性は否定できない」と見る。一方、京都大学防災研究所教授の岩田知孝さんは「慶長伏見地震などから約400年しかたっていない。ひずみはたまっておらず、すぐには動かないのでは」と話す。中央構造線の元になった断層は、今から1億年以上前、日本列島がアジア大陸の一部だったころに誕生した。恐竜がいた白亜紀に、海洋プレートが運んできた陸地が大陸にぶつかった。その後、大陸の端が大きく横ずれして巨大な断層ができたと考えられている。これが中央構造線だ。日本列島は、中央構造線の一部を含んだ形で、2500万年くらい前に大陸から離れはじめた。海底にできた裂け目が広がり、日本海ができたことで太平洋側へと押し出された格好だ。この過程でさらに断層がずれ、現在の日本列島の形ができた。中央構造線にはひずみが集中しており、その周辺には活断層帯が多い。別府―島原地溝帯には、熊本地震を引き起こした日奈久(ひなぐ)断層帯や布田川(ふたがわ)断層帯、大分の地震との関連が疑われる別府―万年山(はねやま)断層帯などの活断層がある。中央には巨大な阿蘇山が存在し、雲仙岳がある島原半島から熊本県八代市沖までは活断層の密集地帯だ。今回の地震は、遠く離れた断層が連動して動く可能性を印象づけた。地下の断層の動きはいまだ予測がつかず、対策は警戒を怠らないことしかないようだ。

*1-4:http://qbiz.jp/article/85534/1/
(西日本新聞 2016年4月24日) 上場目指すJR九州、「収益」と「安全」の両立はできるのか
 熊本地震で影響を受けた九州新幹線を28日にも全線再開させる方針を明らかにしたJR九州。九州の大動脈の早期復旧は、公共交通機関を担う事業者の使命であり、震災からの復興に大きく貢献することになる。だが「想定外」の震災で、事業の根幹に関わる安全性は大きく揺らいだ。本年度中の株式上場を目指すJR九州は「収益」と「安全」をともに向上させるという重い経営課題に向き合う。九州新幹線は14日以降の地震で、約150カ所の損傷を受けた。大都市を結ぶ新幹線の運休長期化は経営上も重大な打撃となることから、JR九州幹部は早期再開を「大きな一歩」と語る。しかし、損傷箇所の多くは応急的な補修どまり。通常ダイヤへの復帰を可能にする本格修復は遠い。14日夜の地震では「本来あってはならない」(JR九州関係者)はずの新幹線車両の脱線事故が起きた。脱線を食い止める線路の「脱線防止ガード」が設置されているのは、全257キロのうち24キロ。地震による全体被害額も、まだ把握できていない状況だが「今後、追加的な安全対策が必要になるのは間違いない」(同)。今後、巨額の安全投資を迫られる。鉄道はJR九州の基幹事業だ。最大の経営課題である在来線の赤字を、新幹線収益や他事業で補い、上場へ向けて歩を進めてきた同社。安定的に収益を生み出すと期待された新幹線の損傷は、本年度を目標とする上場にも影響しかねない。青柳俊彦社長は23日、上場への影響について「精査をした上での判断になる」と述べるにとどめた。安全を確保しながら早期の完全復旧を実現させ、さらに悲願の上場を遂げる。政府の手を完全に離れ、純粋民間企業としての独り立ちを目指す同社。その力量が問われている。

<被害>
*2-1:http://www.saga-s.co.jp/column/economy/22901/304099
(佐賀新聞 2016年4月22日) 地震、農業県・熊本に打撃、出荷施設損傷、価格高騰も
 熊本県を中心に相次ぐ地震はトマト、スイカなど全国有数の生産量を誇る県内農業に打撃を与えている。野菜の選果機などが損傷し、出荷に影響が出始めた。被災農家も日々の生活対応に追われて本格的な農作業の再開が遅れている。品薄感から今後、価格が値上がりする可能性がある。熊本県の2014年の農業産出額は3283億円と全国6位。トマト、スイカの生産額は全国トップで、メロンやナス、キャベツなども上位に入る。県によると、野菜を色や大きさなどで選別する機械やハウス施設が壊れるなどの被害が約50件あり、畜舎が倒壊し牛が圧死する事例もあった。多数の犠牲者を出すなど大きな被害があった熊本県益城町はスイカが主力品だ。4~5月に出荷がピークを迎えるが、JAかみましきでは、1カ所しかない選果場の設備が壊れ、手作業で箱詰めをしている。農家約80軒のうち、3分の1は自宅が全半壊しているとみられ、JAかみましきの担当者は「人手が足りず負担が増えている」と話した。九州各地から生鮮品が集まる福岡市中央卸売市場では、熊本県産の野菜の流通量が減少。5月はスイカとメロンの8割以上を熊本県産が占めるため、このままでは値上がりが懸念される。市場関係者は「トマトなどの野菜は別の調達先を探し、全体的な出荷量を維持したい」としている。

*2-2:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/304103
(佐賀新聞 2016年4月22日) 専門家、熊本城復旧に「10年以上」、文化財に深刻被害
 熊本県を中心に相次ぐ地震は、熊本城(熊本市中央区)など貴重な文化財にも深刻な被害をもたらした。大きな余震が続き、損傷状況の調査もままならない。熊本城の復旧には「10年以上かかるかもしれない」との見方すら出ている。大型連休を前に観光面の打撃は避けられず、関係者からは不安の声が漏れる。「築城の名手」とされる武将加藤清正が1607年に築いた熊本城。国の重要文化財13カ所のうち、長塀(ながべい)、東十八間櫓(ひがしじゅうはちけんやぐら)など5カ所が倒壊した。城内最古の宇土櫓(うとやぐら)を含む他の8カ所も、ひび割れ、しっくいのはげ落ちが確認された。高くなるにつれ勾配がきつくなる「武者返し」で知られる石垣もあちこちで崩壊し、熊本城総合事務所の担当者は「余震で詳細な調査に入れない」と話す。外国人観光客が増加し、昨年度に訪れた人は約177万人に上るが、当面は入場禁止だ。熊本藩主細川家の菩提(ぼだい)寺跡がある立田自然公園と北岡自然公園(同市中央区)も、計100基以上の石灯籠や墓石が倒れ、江戸時代初期創建の唐門(からもん)が全壊した。余震でさらに崩れる可能性もあり、修復の見通しは立たない。江戸時代から続く地主の屋敷で、現在も第11代当主江藤武紀さん(76)と家族が暮らす江藤家住宅(熊本県大津町)では、国の重要文化財に指定された建物の大半が、16日未明の本震で半壊した。1830年に建てられた主屋は2階の床の間が落ち、1階に寝ていた江藤さんは避難生活を余儀なくされた。江藤さんは「何代にもわたり地域と一緒に守ってきたという責任と愛着がある。難しいのは承知だが、また住めるように修復したい」。阿蘇市の観光名所、阿蘇神社も1850年落成の楼門が倒壊、境内最古の「一の神殿」も大きく傾いた。佐伯紀行事務官は「歴史もあり、地域の人々の支えになってきた神社。いつまでかかるか分からないが、必ず再興したい」と話した。

*2-3:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20160422&ng=DGKKZO99945300R20C16A4M12800 (日経新聞 2016.4.22) 生活再建・復興、なお見えず
 14日夜に発生した最初の地震から1週間が過ぎた。同じ場所で震度7が2回起きる前例のない災害が住宅などに与えたダメージは大きい。震度5クラス以上の余震も続き、被災者の生活再建や復興に向けた道筋は見えないままだ。一連の地震で損壊した建物は、熊本県を中心に九州の5県で1万棟を超えた。震度7を観測した益城町では住宅の1割強が全壊したとみられる。揺れが大きかった地域ほど調査は進んでおらず、被害戸数は増える可能性が高い。住宅が損壊し、避難所に駆け込む人は14日夜に発生した地震で約4万4千人に上った。「大きな余震はないだろう」と思い、同日午後には1万人を割り込んだが、16日夜に「本震」に襲われたこともあり、熊本県を中心に600以上の避難所に約9万人が身を寄せる。熊本県と熊本市は自宅が全半壊した人を対象に県営住宅、市営住宅の空き部屋を無償で提供する方針だが、大量の避難者の受け入れはメドは立っていない。ライフラインでは電気が早い段階で復旧したものの、熊本市の中心部を含めて断水。飲用やトイレ用など生活用水が大幅に不足した。都市ガスもガス管などの開栓作業に時間がかかっている。市内中心部のホテルなどは営業を再開できないでいる。鉄道は断続的に運休していたJR鹿児島線が18日午後に荒尾―熊本間が運転を再開し、福岡方面との行き来ができるようになった。しかし直後に熊本駅舎の被害が判明し、約4時間ストップするなど混乱した。同線熊本―八代間も21日午後に運転再開にこぎ着け、福岡と鹿児島を結ぶ幹線は1週間ぶりに全線復旧した。当面は本数を減らして運行する。九州新幹線は大雨の影響もあり復旧作業が進まず、博多―新水俣間は復旧のめどが立っていない。空路は閉鎖していた熊本空港で19日に到着便の運航を再開。続いて出発便も再開したが、ターミナルビルの機能が完全ではなく、運航は一部にとどまる。

<自家発電システムと農業の電力化>
*3-1:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20160422&ng=DGKKZO99945850R20C16A4TI1000 (日経新聞 2016.4.22) ヤマダが電力小売り、スマートハウスと合わせ提案、住宅子会社と連携
 家電量販店最大手のヤマダ電機は家庭向けの電力小売市場に参入する。地域ごとに大手電力会社や新電力と提携し、ヤマダが販売代理店となって消費者に販売する。住宅子会社とも連携し、省エネ性能の高い「スマートハウス」と合わせて提案していく。主力の家電販売は人口減を背景に長期的に横ばいとみており、スマートハウスの関連商材を成長事業に育てる。電力小売り「ヤマダのでんき」は沖縄県を除く全国で6月からサービスを提供する。郊外などで全国に約1千店を展開するヤマダが参入することで、地方を中心に従来の電力会社からの切り替えが進みそうだ。サービスの詳細はこれから詰めるが、電力料金は大手電力会社より割安に設定する。ヤマダの店舗で使えるポイントも付与する方針だ。5月中旬から申し込みを受け付け、5年間で50万件の契約獲得を目指す。全国に約1千店あるグループの家電量販店で申し込みを受け付けるほか、注文住宅のヤマダ・エスバイエルホーム、低価格住宅のヤマダ・ウッドハウス(群馬県高崎市)の購入者向けにも電力を販売する。子会社コスモス・ベリーズ(名古屋市)のボランタリーチェーンに加盟する中小の電器店など全国1万店も販路として活用する。ヤマダは顧客獲得競争が激しい電力小売りだけを展開するのでは利幅が薄いと判断、スマートハウス事業の拡大で利益を上げる。同社は住宅子会社で家庭向けエネルギー管理システム(HEMS)や太陽光発電設備、蓄電池などを備えたスマートハウスを提供している。「電気料金のデータを分析すれば、新たなスマートハウスやHEMSのアイデアも生み出せる」(ヤマダの山田昇会長)との期待もあり、新事業の創出にも結び付ける。ポイント付与で家電販売の上積みも目指す。電力小売りは4月に全面自由化された。同社は本格的な普及はこれからと予測している。グループの事業基盤を生かして顧客を開拓する。同社は20年3月期の連結売上高を15年3月期比1割増の1兆8550億円に増やす計画。主力の家電販売は同期間によくて横ばいとみており、2千億円弱の増収分はスマートハウスを中心とした新規事業で稼ぐ考えだ。電力小売りの自由化を受け、家電量販店の間では新規参入の動きが広がっている。ビックカメラが東京電力と、エディオンが中部電力と組んで電力小売りを始めている。

*3-2:http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=37124
(日本農業新聞 2016/4/22) 予算確保万全に ため池 防災対策急げ 自民議連が小委設置
 自民党の農村基盤整備議員連盟(会長=二階俊博党総務会長)が「ため池小委員会」(宮腰光寛委員長)を設置し、21日に初会合を開いた。地震や豪雨による決壊被害の防止が急務となる中、必要な予算は不足しているのが現状。十分な額の予算を確保するとともに、今後のため池整備に関する政府の方針に議論を反映させる考えだ。ため池は、大きな河川が少ない西日本を中心に全国約20万カ所あるが、7割が江戸時代以前に整備されたもの。一方で、近年増えている集中豪雨や、近い将来に予想される南海トラフ地震などによって決壊し、周辺に多大な被害をもたらす可能性が指摘されている。宮腰委員長は会合冒頭で「東日本大震災や熊本地震でもため池が被害を受けている。どうしっかり対応していくかを議論していきたい」と述べた。また8月に閣議決定する新たな土地改良長期計画や、秋までに取りまとめる土地改良制度の在り方の見直しにも意見を反映させたい意向を示した。会合で農水省は、ため池の決壊を防ぐための整備などを含む「農村地域防災減災事業」の予算が、2016年度は前年度比81%増の508億円になったと報告。ただ、ため池の数が多い上位3県の兵庫、広島、香川の各県や土地改良区の担当者からは、県の要望額と国の割当額に開きがあるなど、予算不足で「計画的に事業が進まない」といった意見が相次いだ。こうした状況を踏まえて二階会長は「財務省に宣戦布告はしてある」、宮腰委員長も「何しろ予算が足りない」と述べ、予算の確保に意欲を示した。出席議員からは、使わなくなったため池の廃止や、受益農家が減る中での負担軽減策も検討すべきとの意見が出た。

*3-3:http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=36779 (日本農業新聞 2016/3/29) 「酪農発」新電力地域循環めざす 関連会社が購入、供給へ 北海道・JA士幌町
 北海道のJA士幌町は28日、酪農家が取り組むバイオガス発電を活用し、4月からJA施設の電力の“地産地消”を始めると発表した。JAの関連会社(株)エーコープサービスが、バイオガス発電所から電力を購入、18施設に供給する。農家やJAが主体となり、農業から出るエネルギーを活用・循環する手法として注目を浴びそうだ。バイオガス発電は、家畜ふん尿をメタン発酵させて出るガスで発電する。酪農・畜産農家の悩みの種であるふん尿処理の解決策となる。残さとして出る副産物も牛舎や畑地に還元できる。多額の投資が伴うが、固定価格買取制度で1キロワット時当たり39円(税別)で売電できるようになり、設備の普及が加速している。同JAはバイオガス発電に積極的で、町内の酪農家8戸がそれぞれ導入している。北海道電力に売電していたが、地元が購入する仕組みをつくり、電力の“地産地消”に踏み出す。電力はエーコープサービスが購入し、JAの事務所やAコープなど18施設に供給。契約電力は計約700キロワットを見込む。JAでは今後2基のバイオガス施設の稼働を控えている。同社の社長を務めるJAの七條光寛常務は「発電量に見合ってどのように供給できるかを考え、地産地消を進めていきたい」としている。

*3-4:http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=36898 (日本農業新聞 2016/4/8) 電気自動車 農村を快走 充電環境ぐんと充実 エコ 経費節減も もちろん 
 電気モーターを動力源とし、ガソリンを使わない電気自動車(EV)が農村で、じわりと浸透してきた。JAの店舗や農産物直売所でも急速充電ができるようになるなど環境が整備されたことから、EVを所有する農家が年々増加。初期投資はガソリン車以上にかかるものの、乗り換えた農家は、環境に優しいだけでなく経費節減につながると効果を実感している。車を利用して4年。ブルーべリーのプリンなど農産加工品の配達で、1日に150キロ近く走行することもある。環境への配慮が購入のきっかけだが、今では「大幅な経費節減になった」と実感する。充電は主に道の駅や購入先のメーカー、家などで済ませる。電気代など維持費は推定で年間3万~4万円。燃料代で年間約40万~50万円が浮いた計算だ。オイル交換の必要がなく、車検費用も半分以下だ。初期費用は約380万円と、ガソリン車に比べて高いが「元は取れた」とみる。しかも近隣の給油所は近年減っていることから「電気自動車は便利だ」と痛感する。心配だったのは走行距離だが、最近は道の駅やサービスエリアに充電器の設置が進み、途中で急速充電しながら約470キロ先の札幌市まで高速道路を使って行けるようになった。横田さんは「小まめに充電すればよく、不自由さは感じない。賢く使って経費を抑えられた」と喜ぶ。公用車に電気自動車を導入したり、急速充電器を設置したりするJAも増えている。東京都JAマインズ、静岡県JAおおいがわ、滋賀県JA草津市、JA鳥取中央などでは直売所や本店に急速充電器を設置。買い物や食事、JAで用事を済ませる間に充電できる体制を整えた。佐賀県JAからつが運営する直売所「唐津うまかもん市場」も急速充電器を設置。事務担当の坂本輝憲さん(39)は「充電を目的に来てくれるお客さんもいて、直売所のPRになっている」と歓迎する。
●JA店舗や直売所でも
 次世代自動車振興センターによると、EVの保有台数は2009年度末(9000台)以降、年々増えて、14年度末には全国で7万台を超えた。1回フル充電した時の走行距離は100~300キロ、30分の急速充電ができる車種が一般的だ。200ボルトの家庭用電源を使うと8時間前後でフル充電できる。購入への補助事業もあるが、初期投資がかかるため、誰もが「お得」というわけではない。同センター次世代自動車部の荻野法一課長によると「車を多用し、小まめに充電できる環境がある」農家にお薦めという。充電器の普及状況を調べる「GOGOEV」によると、充電器の設置場所は急速・普通合わせて約1万7800カ所と、年々増加している。一方、給油所は14年度末で3万3510カ所(経済産業省調べ)。ここ20年間で、半数近くの約2万7000もの給油所が消えた。それだけに荻野課長は「充電環境が整ってきた電気自動車は、農村部でさらに広がる可能性がある」と見通す。

<原発停止からエネルギーの変換へ>
*4-1:http://www.kochinews.co.jp/article/17519/
(高知新聞 2016.4.24) 地震続発で伊方原発に危機感 松山市で再稼働反対集会
 7月下旬ごろに見込まれる四国電力伊方原発3号機(愛媛県伊方町)の再稼働に反対する集会が4月23日、松山市の城山公園で開かれ、中四国のほか九州の原発立地先の住民ら約2800人(主催者発表)が参加した。熊本、大分両県で相次ぐ地震を受け、中央構造線断層帯に近接する伊方原発の過酷事故に対する危機感を訴えた。松山市の市民団体「伊方原発をとめる会」の主催。「熊本で地震が起きても(鹿児島県の九州電力)川内原発を止めない。悔しい」。松山城近くの公園。福島県いわき市出身の講談師、神田香織さんが訴えた。「事故から5年たっても福島はのたうち回っている。私たちの経験が生かされていない」。14日以降、九州地方で大型地震が連続している中、川内原発1、2号機は「安全上の問題はない」として運転を続けている。川内原発が立地する鹿児島県薩摩川内市の村山智さん(68)は「これだけ地震が続いているのだから、安全と言われても信用できない。原発をいったん止め、専門家の意見を聞きながら本当に大丈夫か検証すべきだ」。上原正利さん(68)の自宅は川内原発から約8キロ。「九州では大地震は起きないと言われていた。前例のないことも実際に起きる。いったん動きだしたら止めるのは難しい。いま伊方の再稼働を止めないと」。大分県津久見市の池見耕治さん(75)は、16日深夜の地震で跳び起きたという。「まず心配したのは伊方と川内。活断層の範囲が熊本から伊方の方向に広がっているから」。伊方原発は佐田岬半島に位置し、その北側の沖合6~8キロの海底には日本最大の中央構造線を構成する断層帯が東西に走る。豊後水道を挟み、津久見市の一部は伊方から50キロ圏内。余震が続く中で集会に参加した池見さんは「地震が起こると道路は寸断され、避難などできない。活断層だらけの日本に原発など造ってはいけない」と強調した。集会後、参加者は四電原子力本部前などをデモ行進した。高知県からは約70人が駆け付けた。高知市の女性(52)は九州の地震のニュースを見るたび、伊方近くの中央構造線が気になって仕方がないとし、「廃炉にするしかない。福島のように想定以上のことが起こってからでは遅い」と語気を強めた。

*4-2:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/302719 (佐賀新聞 2016年4月19日) 活断層と原発 広がる震源域、不安増す、川内原発で規制委「問題ない」
 熊本の地震を引き起こした活断層を巡り、原子力規制委員会は18日、全国で唯一稼働中の九州電力川内原発1、2号機(鹿児島県)は「安全上の問題はない」として、停止は不要との考えを示した。7月下旬の再稼働が予定される四国電力伊方原発3号機(愛媛県)の近くにも活断層があり、住民の不安が広がっている。
■活発化懸念
 14日以降の一連の地震を引き起こしたとされるのは「布田川(ふたがわ)断層帯」「日奈久(ひなぐ)断層帯」。14日夜の前震では震度7、マグニチュード(M)6・5、16日未明の本震では震度6強(M7・3)が観測された。断層帯の北東部に加えて、川内原発に近づく南西部の活発化が懸念されている。川内1、2号機は2014年9月に新規制基準の審査に合格したが、審査で断層帯について議論済みだ。九電は二つの断層帯が全域の長さ92・7キロにわたって一度に動き、M8・1になるとの想定で川内原発への影響を評価したところ、原発での最大加速度は150ガル程度にとどまった。震源の直上から敷地への距離が約90キロと遠いためだ。九電は、直下に未知の震源があることも想定し基準地震動(耐震設計で目安とする揺れの想定)を最大加速度620ガルと設定しており、規制委は施設への影響はないとしている。
■中央構造線
 一方、今回の地震では大分県側にも震源域が広がったことで新たな懸念が生まれている。「別府-万年山(はねやま)断層帯」と、その延長線上に位置する「中央構造線断層帯」だ。中央構造線は四国の北部を通り近畿地方まで延びる長大な活断層で、伊方3号機の審査で最大の焦点となった。四国電は当初、基準地震動を570ガルと設定していたが、別府-万年山と中央構造線が計480キロにわたって連動するとの想定を加えて最大650ガルに引き上げた。愛媛県がさらに対策を求めたため、四国電は施設がおおむね千ガルにも耐えられるよう工事をした。田中俊一委員長は「中央構造線は審査で十分検討した」としている。ただ伊方原発は南海トラフ巨大地震の震源域にある。広島の被爆者を中心とする約65人は今年3月、地震や津波による被害が強く懸念されるとして、伊方原発の運転差し止めを求め広島地裁に提訴。同時に差し止めの仮処分も申請しており、地裁の判断が注目される。原告団長で被爆者の堀江壮さん(75)は原発事故への不安を口にする人が増えたとして「原爆も原発事故も同じ放射線の被害者を出した。四国電は再稼働を絶対にやめてほしい。政府も国民の不安を取り除くために賢明な判断をしてほしい」と訴えた。

*4-3:http://dd.hokkaido-np.co.jp/news/society/society/1-0261718.html
(北海道新聞 2016年4月21日) 「政府は安全神話流布」 大間原発訴訟、函館市が批判
 函館市が国と電源開発(東京)に大間原発(青森県大間町)の建設差し止めなどを求めた訴訟の第8回口頭弁論が20日、東京地裁(林俊之裁判長)であった。函館市側は、原発の審査基準となる新規制基準について「欧州諸国と比べて緩やかであり、世界で最も厳しい基準だと強調する政府は新たな安全神話を流布している」と批判した。函館市側は新規制基準の問題点として、耐震設計の目安となる地震の揺れ(基準地震動)を挙げた。2005~11年の約6年間に、基準地震動を超える揺れが全国の原発立地地域で5回観測されていることを指摘。欧州では基準地震動は1万年に1回未満の発生確率で設定されているとして「日本の発生頻度は異常だ」として基準を見直すべきだと強調した。大間原発は、ウランと原発の使用済み燃料から取り出したプルトニウムを混ぜて作る混合酸化物(MOX)燃料だけを使う、世界初のフルMOX商業炉だ。函館市側は「ウラン燃料の原子炉より危険性が高いのに、新規制基準にはフルMOXに特化した規則がない」とも批判した。また、九州電力川内原発1、2号機(鹿児島県薩摩川内市)の運転差し止めを認めなかった今月6日の福岡高裁宮崎支部決定については「論理矛盾が複数ある不当な決定」と述べた。国と電源開発の主張はなかった。次回期日は7月14日。

*4-4:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12320288.html
(朝日新聞社説 2016年4月21日) 原発40年規制 早くも骨抜きなのか
 原子力規制委員会は、運転開始から40年を超えた関西電力高浜原発1、2号機(福井県)について、新規制基準を満たしていると正式に決めた。新基準のもとで40年超の老朽原発の運転延長が認められるのは初めてだ。残る細かい審査を7月の期限までに終えれば、あと20年、運転が続く公算が大きい。「40年ルール」は福島での事故後、法律を改正して導入された。「1回だけ、最長20年間」と定められた運転延長は「極めて例外的」と位置づけられた。あえて例外を設けたのは電力不足に備えるためだったが、節電や省エネの定着で懸念は解消していると言っていい。おりしも熊本県を中心に「今までの経験則からはずれている」(気象庁)という地震が続く。隣の鹿児島県で運転中の九州電力川内原発に影響が及ばないか、不安を感じている国民は少なくない。いきなり例外を認め、規制のたがを緩めるような対応は、原発行政への不信を高めるだけではないか。安倍政権は個別原発の可否の判断を規制委に丸投げしつつ、運転延長を前提にしたエネルギー計画を立てた。「原発依存度を可能な限り低減する」と繰り返していた首相は、なしくずしに方針を転換してきた。規制委は、あくまで科学的見地から原発の安全性を高めることが役割だが、今回の審査では耐震性の試験を後回しにすることを関電に認めるなど、手順に疑問が残る。7月の審査期限をにらんだスケジュールありきだったとすれば、まさに本末転倒である。結局、廃炉にするかどうかの実質的な判断は電力会社に委ねられ、運転延長が採算に合うかどうかという観点から決まるという状況になりつつある。狭い国土に多くの人が住み、地震など自然災害も多い日本で、多くの原発を抱えていくリスクは大きい。福島での事故を経て、そこが原子力行政見直しの出発点だったはずだ。原発を維持する政策をとり続ければ、廃棄物の処理などで長期的には国民負担も増えかねない。エネルギー自給率は再生エネルギーの育成で高めようというのが世界の大勢だ。移行期間は必要だとしても、着実に原発を閉じていく政策にこそ合理性があろう。40年規制はそのための柱の一つである。そのことを思い起こすべきだ。

*4-5:http://qbiz.jp/article/85491/1/
(西日本新聞 2016年4月23日) 九州の再エネ施設は大半無事だった 太陽光、風力、地熱…
 地震でライフラインに被害が出た熊本や大分に多く立地する、太陽光などの再生可能エネルギー発電設備はどうだったのか。経済産業省九州産業保安監督部(福岡市)が行った調査の結果、一部設備に損傷があったものの大半に異常がないことが分かった。同監督部は「地震の規模からみて相応の被害が懸念されたが、ほとんど無事だったことは評価できる」としている。事業者への18日時点の聞き取りによると、所管する熊本、大分両県内の太陽光発電設備(出力2千キロワット以上)は計23カ所あり、九州電力の送電網停止が原因と思われる停止が1カ所あった以外は稼働しており、設備自体に損傷はなかった。風力発電設備(同500キロワット以上)計11カ所のうち、熊本県内の4カ所が停止したが、3カ所は九電の送電網停止が理由。1カ所だけ地下ケーブルが土砂崩れのために損傷した可能性があるが、風車の倒壊や羽根の脱落はないという。地熱でも設備に異常はなく、大分県九重町の九電八丁原発電所1号機が地震で自動停止したが、点検が完了し、運転を再開した。水力は熊本県内55カ所のうち3カ所で導水管の損傷などのため停止。大分県内49カ所はほぼ異常がないとしている。


<原発再稼働関係の追加>
PS(2016年4月26日追加):*7-1~*7-4のように、これまで対処済と言われていた原発事故時の避難は、(もともと大して検討されていないことはわかっていたが)今回の地震で机上の空論であることが明らかになった。また、日本のようなプレート銀座・断層銀座では、安全に原発を立地できるような場所はなく、原発の温排水が漁業に悪影響を与える上、原発があると他産業を誘致できない(他産業は、わざわざ危険な場所には行かない)など、百害あって一利なしなのである。そのため、それぞれの原発地元は早急に廃炉にすべきで、「本当に原発がなくなっていいの?」と聞く人もいるが、私は逆に「そこまでして何のために原発を残さなければならないの?」と問いたい。そして、これは、“特定秘密”にするのではなく、主権者である国民に明確に説明すべきことだ。

*7-1:http://news.mixi.jp/view_news.pl?id=3965113&media_id=173&from=twitter&share_from=view_news (mixiニュース 2016年4月26日) 国際基準では「動かしてはいけない」はずが…稼働続ける川内原発21
 地震が頻発する中、震源域から80キロほどにある川内原発が、運転を続けている。活断層による直下型地震に、日本の原発は耐えられるのか。熊本や大分で4月14日以降続いている地震は、震源域が南西側、北東側に拡大した。南西側の延長線上には、付近に国内で唯一稼働中の九州電力川内原発1、2号機(鹿児島県)がある。「放射線モニターの指示値に変化はなく、外部環境への影響はありません」。九電は、大きな地震が起きるたびにこのような発表を繰り返し、2基を停止する考えがないことを示す。原子力規制委員会の田中俊一委員長も4月18日の会見で「今は安全上の問題はない」と強調。理由として、近くの活断層がマグニチュード(M)8.1の地震を起こしても、安全が保たれることを確かめてある、と説明した。しかし地震後、川内原発は国際原子力機関(IAEA)が定める安全基準を満たせない状況になっている。基準では第5の防護層として、緊急時の避難計画を求めている。ところが、川内であてにされている高速道路や九州新幹線は、地震で不通区間が残る。熊本県にも避難者を受け入れてもらう予定だが、そもそも川内原発から熊本県境までは40キロ弱しか離れていない。福島原発事故で、約50キロ離れた地点まで居住制限区域レベルに汚染されたことを考えると、熊本県民も迅速に避難する必要が出てくる。何より、今それどころでないのも明らかだ。国際基準に照らせば、少なくとも周辺地域が平常状態に戻るまで、原発を動かしてはいけないのだ。一方、震源域の北東の先には、四国電力伊方原発(愛媛県)がある。実は四電は、伊方への立地を決めた40年以上前、中央構造線は1万年前以降は地震を起こしていないと軽視。1、2号機とも300ガル(地下の基盤面での数値、以下同)の想定で設計している。ところが1990年代に入って、岡村眞・高知大学特任教授らの調査で、敷地前面の中央構造線断層帯が、1万年前以降もたびたび大地震を起こしていることがわかった。住民が伊方原発2号機の設置許可取り消しを求めた訴訟の判決(2000年)でも、松山地裁は住民の訴えを棄却したものの、中央構造線について国の安全審査が「結果的に誤りであったことは否定できない」と指摘した。四電はその後、研究の進展にあわせて何度も揺れの想定を見直し、福島原発事故後は650ガルになっている。しかし岡村特任教授は「古い原発でも使える範囲でしか、想定を変えていない。最近のデータに照らせばまだ過小評価。中央構造線が動けばこんなものでは済まない」と話す。四電は3月、1号機を廃炉にすると発表した。福島原発事故後に策定された新規制基準に適合するように補強するには費用がかかりすぎるからだ。一方、同じレベルで設計した2号機と、3号機(473ガルで設計)は使い続ける。規制委は4月19日、3号機の再稼働の前提となる審査を全て終えたと発表した。四電は今年7月下旬の再稼働を目指している。何事もなかったかのように、着々と進む原発再稼働。本当に大丈夫なのか。(

*7-2:http://www.chunichi.co.jp/article/mie/20160426/CK2016042602000103.html (中日新聞三重 2016年4月26日) 川内原発の即時停止を 熊本地震受け県保険医協会が声明
 多くの被害をもたらし、大勢の避難者が出ている熊本地震を受け、県内の開業医、勤務医ら約二千人でつくる県保険医協会(渡部泰和会長)は二十五日、新規制基準の審査に適合とされた原発として、全国で唯一稼働中の九州電力川内原発(鹿児島県薩摩川内市)の即時停止を求める会長名の声明を首相や地元選出国会議員、県議らに送ったと発表した。声明は、地震の強い振動が原発にどんな損傷をもたらし、その蓄積がどのような影響を及ぼすかが未調査だとした上で、原発直下に最大震度の地震が発生する可能性を指摘。避難計画が不十分で、免震棟もないまま再稼働したことにも触れ、福島第一原発事故の経験を踏まえて「異常があってからでは遅い」と指弾した。

*7-3:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/305156
(佐賀新聞 2016年4月26日) 市民団体、規制委に川内原発の停止要請、「住民不安」
 佐賀県内外の反原発市民団体は25日、熊本地震で住民の不安が高まっているとして、九州電力川内原発1、2号機(鹿児島県)を直ちに停止させるよう、国会の参議院会館で原子力規制委員会に要請した。「玄海原発プルサーマルと全基を止める裁判の会」らが原子力規制庁の担当者に要請書を手渡した。川内や玄海原発について全ての配管や建屋を点検、結果を公表することに加え、国主導での避難計画策定も求めた。裁判の会の石丸初美代表は「今回の地震で屋内退避を想定した避難計画が不可能なことだと分かった。被災者は余震が怖くて外で過ごしている」と訴えた。規制庁との意見交換では「今回のような繰り返し襲う地震を想定した耐震安全基準になっているのか」という質問が出た。担当者は、重要な機器に関しては何度揺れても変異せず元に戻る「弾性設計」の範囲内に収まるよう基準を設けていることを説明した。

*7-4:http://qbiz.jp/article/85614/1/
(西日本新聞 2016年4月26日) 脱原発へ「肥薩ネット」 地震対応、懸念相次ぐ 
 全国で唯一稼働中の九州電力川内原発(鹿児島県薩摩川内市)から30〜40キロ圏にある鹿児島、熊本両県の脱原発市民団体などが連携する「川内原発を考える肥薩ネットワーク」の設立総会が24日、鹿児島県出水市で開かれた。熊本地震で断層帯の危険性があらためて注目されたこともあり、川内原発への影響を懸念する意見が相次いだ。鹿児島市の反原発市民団体の向原祥隆代表が記念講演。川内原発で地震による重大事故が起きた際の避難計画について「熊本地震の被害で屋内退避はできないとはっきりした」と実効性に疑問を呈した。さらに同原発付近では危険性がないとされる活断層についても「原発付近まで延びる可能性を専門家が指摘している」と話した。出水市の市民団体代表は「地震の終息や発生は予測できない。命を守るには原発を止めることだ」と訴えた。「肥薩ネット」に参加するのは熊本県水俣市と、鹿児島の出水、阿久根、伊佐各市の市民団体や市議ら。今後も情報を共有し、現在の避難計画の見直しなどで連携を図るという。


PS(2016年4月26日追加):このように、2016年4月14日、16日に中央構造線上で激しい地震が起こり、その後920回以上の余震が続いている中で、*9のように、伊方原発3号機の審査が終了し、原子力規制委員会は保安規定を認可したそうだが、それでは審査の意味がないだろう。

*9:http://digital.asahi.com/articles/ASJ4M4RC4J4MULBJ00V.html
(朝日新聞 2016年4月19日) 伊方原発3号機、審査終了 規制委、保安規定を認可
 四電は19日、「今後も検査に丁寧に対応し、再稼働に向けたステップを安全最優先で確実に進めます」とのコメントを発表した。規制委は、設備が計画通りに設置されているかや、正常に動くかといった検査を今月から現地で始めている。検査は再稼働まで続く。伊方原発は、使用済み燃料から取り出したプルトニウムをウランに混ぜた燃料(MOX燃料)を使うプルサーマル発電を計画。四電は2013年7月に審査を申請した。規制委は昨夏、安全対策の基本方針が新規制基準を満たすと認める審査書を決定。設備の詳細設計を記した「工事計画」も今年3月に認可した。すべての許認可を受けたのは、九州電力川内原発1、2号機(鹿児島県)と関西電力高浜原発3、4号機(福井県)に続き3例目となる。愛媛県や伊方町は、昨年10月に再稼働に同意した。伊方原発は瀬戸内海に面する佐田岬半島の付け根にあり、半島に住む住民は重大事故時に対岸の大分県などに避難する計画だ。


PS(2016年4月27日追加):「フクイチ事故で被害者は出なかった」と今でも主張し、原発事故の被害はなかったことにしようとしている人がいるが、それは、現実から逃避した放射能安全神話にすぎない。また、私も、「チェルノブイリ事故は旧ソ連だから起きたので、日本では起こらない」と日本の原発関係者や経産省の担当者から何度も聞かされたが、これこそ日本人が陥りやすい根拠なきプライドであり、傲慢なのだ。そして、(このブログに何度も記載したため、長くは書かないが)*11からもわかるように、国民負担から見て最も高くつくのが原発なのである。

*11:http://www.tokyo-np.co.jp/article/world/list/201604/CK2016042602000130.html (東京新聞 2016年4月26日) 「科学技術進んでも原発事故は起き得る」 ベラルーシのノーベル賞作家が警告
 旧ソ連ウクライナ共和国で起きたチェルノブイリ原発事故から二十六日で三十年。最大の被害を受けた隣国ベラルーシ共和国の作家で、昨年ノーベル文学賞を受賞したスベトラーナ・アレクシエービッチさん(67)=写真、共同=が共同通信のインタビューに応じ、「科学技術が進んでも原発事故はまた起こり得る」と、福島第一原発事故を念頭に警告した。チェルノブイリ事故で被害に遭った人々の証言を集めたノンフィクション作品などで知られるアレクシエービッチさんは、ベラルーシの首都ミンスクの自宅で「原発事故とは何か。三十年たってもその本質を理解している人はいない。私たちは今もこの問題の蚊帳の外にいる」と述べた。ベラルーシは事故で放出された放射性物質の約六割が降下したとされ、約二十万平方キロの国土の13%が今も汚染されている。汚染地域には人口の一割超の約百十万人が住んでいる。「政権はチェルノブイリという言葉を使うのを事実上禁止している。事故を克服するのではなく、風化させて無かったことにしようとしている」。一方で「私の本は、国内で出版できないが、ロシアから持ち込まれ少しずつでも読まれている。この流れは止めることはできない」とも。同じ原子力災害の第一原発事故に思いをはせる時、忘れられない言葉が頭をよぎる。二〇〇三年に講演で日本を訪れた時のことだ。日本の原発関係者から「チェルノブイリ事故は旧ソ連の人が怠惰だったから起きた。技術大国の日本ではあり得ない」と言われた。その八年後に第一原発事故が起きた。「二つの事故で分かったのは科学技術が進んでいても、真摯(しんし)な態度で管理していても原発事故は起こり得るということ。むしろ技術が進むほど、大きな事故につながるのではないか。人間が自然に勝つことはできないのだから」。原発事故の被災国であるベラルーシでは今、初めての原発建設が進んでいる。建設中の二基のうち1号機は一八年に完成、稼働する計画だ。国民は反対しないのか、と尋ねると「反原発運動も環境保護運動も禁止されていて、大統領の独断に国民は反対できない。それに、経済的に困窮した国民は原発問題よりも、明日の仕事のことを心配している」との答えが返ってきた。第一原発事故に強い関心を持ち、年内にも福島を訪れたい、という。「三十年たっても、私たちが原発事故について理解しているのは、薬や治療が必要だということだけ。原発事故を哲学的に、人類学的に考え、理解することこそ必要。フクシマで何が起きているのか、日本の人々がどう考えているのかを聞きたい」と話した。
<スベトラーナ・アレクシエービッチさん> 1948年5月、旧ソ連ウクライナ共和国生まれ。父はベラルーシ人、母はウクライナ人。ジャーナリスト、作家として活動し、多数の市民から聞き取った話を一人称の独白形式で表現する手法が特徴。邦訳された「チェルノブイリの祈り」は86年のチェルノブイリ原発事故の処理に当たった人や地元住民らの証言を記録。2015年、ノーベル文学賞受賞。


PS(2016年4月28日追加):断層地震により、これだけの心配と迷惑をかけても川内原発を停止させないのは、国民のためでも産業のためでも国のためでもなく、九電の利益のためだということが、*14-1で、さらに明確になった。九州が最小のコストで素早く効果的に復興できるか否かは、原発事故のあるなしで大きく左右されるのにである。しかし、*14-2の、田代九経調常務理事が「地震がないことが魅力的な企業進出先や観光地としての強みを支えていただけに、九州は危ないというイメージを持たれ続けると九州経済全体にとって長期的な打撃になると懸念している」と言っていることについては、企業の進出先として最もリスクが高いのは原発事故であるし、この地震によって阿蘇山を含む中央構造線の存在が有名になり、真実は隠しても限界があるため、隠すよりも日本列島の成り立ちまで考察しながら日本の自然を見る観光に活用する方が賢明だと考える。

*14-1:http://qbiz.jp/article/85868/1/
(西日本新聞 2016年4月28日) 九電が4年ぶり復配 1株5円、川内原発再稼働が寄与
 九州電力が4年ぶりに株主配当を復活する方針を固めたことが27日分かった。配当額は1株5円で最終調整している。28日の取締役会で正式決定する。川内原発(鹿児島県薩摩川内市)の再稼働による収支改善などで、2016年3月期連結決算が5年ぶりの最終黒字になることなどを踏まえて判断した。九電は管内の全原発停止により燃料費がかさみ、15年3月期まで4年連続の最終赤字を計上。株主配当は12年3月期を最後に途絶えていた。原油安による燃料費の低減に加え、昨年の川内原発再稼働で収支が改善。福岡高裁宮崎支部が今月、川内原発の運転差し止めを求める仮処分申請を棄却したことで当面の収支悪化リスクを回避できる見込みとなったこともあり、復配に踏み切る。

*14-2:http://qbiz.jp/article/85874/1/ (西日本新聞 2016年4月28日) 地震のイメージ払拭を 田代雅彦・九経調常務理事に聞く 西日本景気トレンド
 熊本地震発生から約2週間。九州新幹線の全線再開など復旧の動きが本格化しているが、九州経済への影響は広範囲に及び、被害の規模も計り知れない。九州経済調査協会(福岡市)の田代雅彦・常務理事調査研究部長に現状と今後の見通しを聞いた。今回の地震は、ものづくりと観光、1次産業という九州の強みが集積する熊本と大分で起きてしまった。「地震がない」ことが、魅力的な企業進出先や観光地としての強みを支えていただけに、「九州は危ない」というイメージを持たれ続けると、九州経済全体にとって長期的な打撃になると懸念している。その意味では、九州新幹線の全線再開や高速道路の再開など、インフラが予想以上に早期に復旧している姿を示せていることは大きい。国内外に影響を与えている自動車や半導体大手の関連工場も復旧しつつあるようだ。東日本大震災のときほど影響は長期化しないのではないか。むしろ、人材と資金が不足しがちな中小企業や零細企業の被害と復旧の度合いが心配。早めの実態把握が必要だ。観光分野では国内外の宿泊キャンセルが相次いでおり、復旧が進んだ後も風評と闘う状況になるだろう。九州の官民が一体となって正確な情報を発信し続けることが欠かせない。忘れてはならないのは、被災された方々への生活支援の強化。当協会は昨年末、九州経済の2016年度実質成長率をプラス1・8%と予想した。地震による下押しリスクは当然あるが、復旧に伴う公共工事や設備投資など数字上はプラスに働く面もある。数字には表れない被災者の生活支援や防災計画の見直しなど「災害に強い九州」に官民で取り組み、対外発信することが、マイナスイメージの払拭(ふっしょく)にもつながると考える。


PS(2016年4月28日追加):*15のとおり、ルールさえ作ってそれを守ればよいのでないことは明らかで、そのルールの内容(適切性)が最も重要である。何故なら、「放射性セシウム濃度が1kg当たり8千ベクレル以下なら指定を解除して一般ごみと同様に処分を認める」というのは、分量が多ければ濃度が低くても有害物質の総量が非常に大きくなるからだ。従って、この基準は、原発事故処理を早く終えたいためだけの住民を置き去りにした棄民政策であり、どこに処分するか、どこで焼却するか(放射性物質は焼却しても残り、焼却時に周囲の広い範囲に拡散する)は、明確に開示すべきである。

*15:http://www.saga-s.co.jp/news/national/10201/306101
(佐賀新聞 2016年4月28日) 指定廃棄物で新ルール、環境省、濃度下回れば一般ごみに
 環境省は28日、東京電力福島第1原発事故で発生した指定廃棄物に関し、放射性セシウム濃度が1キログラム当たり8千ベクレル超の基準を下回った場合は指定を解除し、一般ごみと同様の処分を認める新ルールを正式決定した。解除は国と自治体が協議して決める。解除後の処分費用は指定廃棄物と同様、国が負担する。放射性物質汚染対処特別措置法の省令を改正し、同日付で施行した。


PS(2016年4月29日追加):*16のように、原子力規制委は、「現状はすべて想定内で、我々が納得できる稼働を止めるべき科学的根拠はなく、川内原発で想定外の事故が起きるとは判断していない」とのことだが、原発の安全性は自動車のように実験して計ったものではなく、コンピューターでシミュレーションしたものにすぎない。そのため、シミュレーション時に想定していなかった事象は考慮されておらず、どこが破損するかわからないため、「安全だ」と言う科学的根拠こそないのである。

*16:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12334057.html (朝日新聞 2016年4月29日) (時時刻刻)地震、原発止めず大丈夫? 川内停止要望、約5000件
 熊本県などでの地震が続くなか、九州電力川内原発(鹿児島県)は「安全性に問題ない」と運転を続けている。気象庁は今後も強い揺れに警戒するよう呼びかけているが、原子力規制委員会は運転に「お墨付き」を与える。活断層が動くことによる地震はわからないことが多い。想定外の事態が起きた時、原発は大丈夫なのか。川内原発は全国で唯一、稼働中の原発で、熊本地震を経ても変わらない。九州電力の瓜生道明社長は5年ぶりの黒字決算を発表した28日の会見でこう語った。「原子力は国の基本計画でも必要なエネルギー。安全を確認し、問題ないと判断して運転している」。16日未明のマグニチュード(M)7・3の本震時、川内原発で観測した揺れは最大で8・6ガル(ガルは揺れの勢いを示す加速度の単位)。緊急停止させる設定値(160ガル)を下回った。それでも「想定外」に備え停止を求める声が広がった。九電には15日からの1週間に、停止の要望がメールや電話などで約5千件寄せられた。九電の予想では今夏に2013年並みの猛暑になっても、電力需要に対する供給の余力(予備率)は14・1%。川内原発の供給力を単純に引くと、最低必要とされる3%を下回るが、昨年の計画並みに他社から融通を受ければ、余力は計算上6%を超える。九電幹部も「川内が動かなくても、安定供給は当面は維持できる」と明かす。ではなぜ原発にこだわるのか。当面の発電コストが火力などより安く、経営面でうまみが大きいからだ。九電は東日本大震災前の原発依存度が全国でもトップレベルで、発電量の4割近くをまかなってきた。原発の停止で経営は悪化したが、「切り札」(幹部)の川内原発が再稼働し、月100億~130億円ほど収支が改善した。九電の瓜生社長は会見で、次は「玄海原発の早期再稼働を目指したい」と語った。
■規制委「想定外、起きない」
 「我々が納得できる科学的な根拠はない。止めるべきだとの声があるから、政治家に言われたからと言って止めるつもりはない。現状はすべて想定内。今の川内原発で想定外の事故が起きるとは判断していない」。熊本県などで一連の地震が続くなか、原子力規制委員会の田中俊一委員長は18日、川内1、2号機などの状況報告を受けた臨時委員会の後でそう語った。東京電力福島第一原発事故の教訓を受け、新規制基準では地震対策が強化された。原子炉建屋などの直下に活断層があると再稼働できず、北陸電力志賀1号機(石川県)や日本原子力発電敦賀2号機(福井県)は廃炉を迫られている。今回地震を起こした布田川(ふたがわ)・日奈久(ひなぐ)断層帯の活動も、川内原発の審査で、阿蘇から八代海の海底まで全長約90キロが連動してM8・1の地震が起こるケースを想定。川内原発の揺れを約150ガルと試算していた。原発の揺れは原子炉建屋地下の固い地盤でみる。地表では増幅され、揺れが大きくなることが多い。審査では未知の活断層なども想定。地表で最大1127ガルを記録したM6・1のモデル地震が川内原発の直下で起きたと仮定して、原発の揺れは最大620ガルと算出された。この値が、川内で耐震設計のもととなる最大の揺れ(基準地震動)になっている。仮に基準地震動を上回る揺れで設備が壊れても、消防車や電源車などを使って原子炉を冷やす過酷事故対策で放射性物質の放出を食い止める、というのが規制委の論理だ。ただ、今回は震度7が約28時間の間隔で連続するという専門家の想定を超える事態だった。熊本県益城町では復旧作業にあたっていた電源車が転倒し、道路や鉄道は広域で寸断され、余震を恐れて屋外や車で寝泊まりする人が相次いだ。過酷事故対策の作業中に激震の追い打ちを受けたらどうなるのか。5~30キロ圏の住民に指示される屋内退避は成り立つのか。27日の会見で問われた田中委員長は言い切った。「川内原発に活断層はない。耐震設計もしており、そういう心配はしなくていい」「丈夫な建物や遠くに避難することになると思う。5~30キロ圏の建物が全部だめになることは考える必要もない」
■事故恐れ止めた例も
 危険な状態がおさまるまで、原発を一時的に止めることはできないのか。前例はある。東日本大震災直後の2011年5月6日、当時の菅直人首相は中部電力に、浜岡原発(静岡県)の停止を要請した。巨大地震の想定震源域の真上にあり、被災して福島のような大事故が起きれば、東海道新幹線や東名高速などが断たれ、日本が壊滅的な打撃を受ける心配があったからだ。中部電内には「法的権限に基づかない要請に従う必要は無い」との反対論もあったが、政権トップの「政治決断」は受け入れるしかなかった。自民党政権だった1979年には、米スリーマイル島原発の事故を受け、当時の日本の規制当局である原子力安全委員会が、同タイプの関西電力大飯原発1号機(福井県)について、事故の原因となった装置に問題がないと確認できるまで停止するよう求めた。これを受け、当時の通商産業省(現経済産業省)は一時停止を求め、関電は約2カ月間の停止に応じた。米国でも、巨大ハリケーンなどが予測された際、緊急事態を想定して原発を停止した例がある。19日の衆院環境委員会。菅氏は浜岡の例を挙げて「予防的な観点から、しばらくは(川内原発を)停止するといったことを安倍総理に進言したらどうか」と規制委を所管する丸川珠代環境相に求めた。だが、丸川氏は「規制委の判断を尊重する」と答弁し、政府が責任を負うことに慎重な構えを崩さなかった。事故の教訓を踏まえて改正された原子炉等規制法では、「災害発生の急迫した危険」があれば規制委に停止を命じる権限はある。ただ、どんな想定が「急迫した危険」にあたるかは具体的に決まっていない。


PS(2016年4月30日追加):*18のように、4月29日に大分県由布市北部が震度5強の「最大余震」に見舞われた。これまでは日奈久断層帯、布田川断層帯が中心だったが、今回は別府−万年山断層帯が震源で、この断層帯は大分県東部の鶴見岳や別府湾の海底にも連なり「地下深くでつながっている」と指摘する専門家もおり、「本格的に動けば、M7級の地震を引き起こす恐れもある」とのことである。そのため、伊方原発と川内原発がリスクの高い危険な状態になっていることは間違いない。

    
  2016.4.30        中央構造線と       2016.4.16     2016.4.19
  西日本新聞         原発の位置        西日本新聞     西日本新聞

*18:http://qbiz.jp/article/86034/1/
(西日本新聞 2016年4月30日) 2016熊本地震、「本格活動でM7も」と識者 断層帯、連鎖やまず
 「最大余震」に大分県が見舞われた。29日に由布市北部を震源として発生した震度5強の地震。これまで熊本地震の余震は、熊本県内の日奈久断層帯や布田川(ふたがわ)断層帯が中心だったが、今回は大分県中部地方を走る別府−万年山(はねやま)断層帯が震源とみられ、熊本地震の影響が広範囲に及んでいることをあらためて示した。複数の断層帯がひしめく九州。専門家は「連鎖はしばらく続く」との見方を強めている。気象庁によると、熊本地震で千回を超える余震(震度1以上)の震源は、これまで熊本地方と阿蘇地方が中心で、大分県中部地方は比較的少なく、規模も小さかった。ただ、このエリアには阿蘇地方と隣接する別府−万年山断層帯があり、16日の本震後、大分県中部地方を震源とする震度3以上の余震が36回観測されている。今回の地震についても、九州大地震火山観測研究センターの清水洋センター長(地震火山学)は「熊本地震の前震や本震から誘発されて起きた」と指摘する。別府−万年山断層帯の特徴は、多くの断層がひしめき合っている点。一つ一つの断層は短いが、福岡管区気象台の石原和彦地震情報官は「今回は震源の深さが7キロと非常に浅い地震だったため、大きな揺れとなった」とみている。一方、同断層帯は大分県東部の鶴見岳や別府湾の海底にも連なり「地下深くでつながっている」と指摘する専門家もいる。今回の地震の規模はマグニチュード(M)4・5だったが、清水センター長は「本格的に動けば、M7級の地震を引き起こす恐れもある」として警戒を呼び掛けている。


PS(2016年5月2日追加):*20にも書いてある通り、原発はシミュレーションしかしないため、シミュレーション時に予想しなかった要素は考慮していない。それでもまだ、①地震が原発にどう影響するかを研究すれば原発は安全になり ②原油開発の投資を拡大し ③再生可能エネルギーや水素などのクリーンエネルギーは経済と環境の両立という位置づけでしかない としていることに呆れた。何故なら、環境保全、エネルギー安全保障、エネルギー自給率の向上はいつでも不可欠の要素であり、①②は環境保持にもエネルギー自給率にもエネルギー安全保障にも適合しないため税金の無駄遣いにすぎず、③のみが無駄のない将来性のある投資だからである。

*20:http://qbiz.jp/article/86063/1/
(西日本新聞 2016年5月2日) G7エネ相会合開幕 日米、原発地震対策研究へ 北九州市
 先進7カ国(G7)エネルギー相会合が1日、北九州市で開幕した。世界経済の成長に不可欠なエネルギーの安定供給に向けた対応策を議論し、2日に共同声明「北九州宣言」を取りまとめる。全体会合に先だって行われた個別会談では、日米が原発の地震対策で共同研究を進めることで合意した。会合には、議長を務める林幹雄経済産業相をはじめ、日米欧の担当閣僚や副大臣らが出席。1日夜に始まった全体会合では、エネルギーを安定的に確保するための協調策について意見交換し、原油価格の下落で減少している原油や天然ガスなどの資源開発について、投資を維持拡大していく必要性を確認した。また経済と環境の両立に向けて、再生可能エネルギーや水素などクリーンエネルギーの技術開発の重要性についても議論を深めた。林氏は全体会合の前に、米国のアーネスト・モニーツエネルギー長官やカナダのジェームズ・カー天然資源相など各国の代表ら5人と個別に会談。米国とは、地震が原発にどう影響するかのシミュレーションの研究開発で、日米の専門家が協力することを確認した。個別の会談では各国の代表らから熊本地震についての発言も相次ぎ、モニーツ氏は「米国から物資などの支援ができうれしく思う。できることがあればいつでも対応する用意がある」と述べた。


PS(2016年5月3日追加):フクイチ事故前後から現在まで、何かと安全神話を作って自己満足に浸っているのは日本であり、それは現在も改善されていないため、*23-1のように、日本が原発の安全対策を主導することなどはできないと、私は判断している。また、ドイツとイタリアが速やかに脱原発を決めたのは賢明な選択だったと思う。なお、*23-2のように、大学教員・弁護士・学術研究者などでつくる日本科学者会議滋賀支部も、5月2日、九電川内原発の即時運転停止と四電伊方原発の再稼働中止を求める声明を出し、原子力規制委員会や電力会社などに送付するそうだ。

*23-1:http://qbiz.jp/article/86103/1/
(西日本新聞 2016年5月3日) 原発の安全対策、日本が主導 新興国の増設意識
 G7エネルギー相会合声明では、原発に関する記載に「過去にない分量」(資源エネルギー庁関係者)が割かれた。福島第1原発事故後、新興国で新増設の動きが再び強まっていることを受け、国際的な原発の安全確保の必要性について文言に盛り込むことを日本が主導した形だ。G7では福島の事故後、ドイツとイタリアが脱原発を決め、維持・推進を続ける他国との違いが表面化。2014、15年のエネルギー相会合声明では、原発を基幹電源の選択肢として1行触れているにとどまる。これに対し、今回は会合終盤まで文言の調整を続け、4項目計25行を使って「いかなる国においても安全について自己満足に浸る根拠はない」などと明記し、情報公開と安全対策の徹底を求めることで一致した。中国やインド、中東各国などが原発新増設にかじを切る中、日本としても高い安全基準の導入をアピールし、原発技術の輸出につなげる狙いもありそうだ。

*23-2:http://www.kyoto-np.co.jp/environment/article/20160503000018 (京都新聞2016年5月3日) 熊本地震受け「川内原発停止を」 科学者会議滋賀支部が声明印刷用画面を開く
 大学教員や弁護士、学術研究者らでつくる日本科学者会議滋賀支部は2日、熊本地震発生後も稼働を続ける九州電力川内原発(鹿児島県)の即時運転停止と、震源となった断層帯の延長線上にある四国電力伊方原発(愛媛県)の再稼働中止を求める声明を出した。国の原子力規制委員会や両電力会社などに送付する。声明では、川内原発は熊本地震の震源域となった日奈久断層帯の南方にあり、同断層帯が活発化すれば原発への影響は無視できないと指摘。地震で新幹線や高速道路などが寸断され、「避難計画が非現実的であることも立証された」と強調した。伊方原発は今回の地震で連鎖的に動いた可能性がある別府-万年山断層帯の東にあり、四国電が7月下旬に計画する3号機の再稼働も中止すべきとした。


PS(2016年5月6日追加):太陽光発電住宅なら、そもそも停電はしない。また、日本は自然エネルギーやLNGの豊富な国である。それにもかかわらず、まだ、①原発を止めれば電気料金が高くなる ②日本は資源に乏しい国で、原発に依存するしかない ③原発を止めれば昔のように電気のない生活をしなければならない ④どうすればフクシマの教訓が生かされるのか5年たっても答えは見えない などというとぼけたことを、西日本新聞のエネルギー・金融を担当して経済部にいる記者が言っているわけだ。この記者は、確かに計算に弱くて原価計算はできず、科学や経済学にも弱すぎて、これでは西日本新聞の記者のレベルと報道の姿勢が問われるわけである。

*25:http://qbiz.jp/article/86081/1/ (西日本新聞 2016年5月6日) 南阿蘇で考えた停電と原発 *川崎弘(西日本新聞社経済部所属。エネルギー担当を経て現在は金融担当。社内で「経済部にいるけど、足し算できるの?」と質問されることが多く、原因を鋭意分析中。佐賀市出身。)
 日ごとに増える夜の明かりに、多くの村民が希望を託していたように感じられた。熊本地震の本震が起きた4月16日。夜明け前に福岡市をレンタカーで出発。下道で7時間かけて、熊本県南阿蘇村に入った。役場は大混乱で、行方不明者の情報や搬送を待つ透析患者の名字、宿泊客が孤立したホテルの名称などが生々しく飛び交っていた。村内全域は停電。家族や知人の安否を確認するうちに電池が切れたのだろう。役場のロビーには、数十人の住民が集まり、非常用発電機から携帯電話に充電をしていた。待ち時間の間は情報交換の場になっていて、平成版井戸端会議のようだった。日が暮れると、村は闇に包まれた。家の被害は軽微で済んだという住民も「余震が怖いから」と避難所に戻ってきた。言葉の裏には、電気が来ない自宅で夜を迎える心細さがにじんでいた。九州電力の復旧工事は深夜まで続いていた。現認した限り、村に電気が戻ったのは18日。19日になると、信号や街頭にも明かりが戻り、夜の住宅街に光の点線ができた。「電気が戻れば、夜も避難所に行かずに済む」という村民もいて、小さな明かりが被災者に安心感や勇気を与えることが見て取れた。
  ◇   ◇
 さて、少し理屈っぽくなるが、今回の復旧を通じて考えなくてはいけないのは、その電気の一部が国内の原発で唯一稼働している川内原発(鹿児島県薩摩川内市)からもたらされていることだ。もちろん、電気に色はついていないので、火力や太陽光などの発電方法ごとに分けることはできないが、九州全体の電力需給でみれば、被災地にも原発の電気が供給されていることになる。熊本地震の震源域と近いことから「川内原発を止めるべき」という意見もあったが、南阿蘇村にいると「とにかく早く電気がほしい」というのが多くの住民の本音だと思った。仮に川内原発を止めても、当面の電力需給はどうにかなるかもしれない。しかし、電気料金が高くなる可能性はある。4月に始まった電力の小売り自由化が浸透すれば、状況が変わるかもしれないが、今の段階での影響は限定的だと思う。東日本大震災から5年。災害と原発の関係は、今後も日本全体を覆う大きな問題であり続ける。原発をなくすのが理想だが、資源に乏しい国で空気のように電気を使える生活を維持するには、原発に依存するしかないのが現実だと思う。逆に言えば、停電を許容するタフさがあれば、原発をなくせる気がする。昔は電気がない生活が当たり前だったことを考えれば、不可能ではないはずだ。ただ、停電の村に身を置いてみて、悲しいかな、それがいかに困難かを思い知らされた。どうすればフクシマの教訓が生かされるのだろう。5年たっても答えは見えない。


<復旧・サポート情報の追加>
PS(2016年4月24日追加):*5のように、感染症を防ぐ予防として、「消毒液」や「アルコール製剤による手洗い」などと報道するメディアが多いが、消毒液やアルコールで拭くことを「手洗い」とは言わない。清潔は、石鹸をつけて流水で洗い流すのが重要で、消毒液やアルコールをつけて手洗いが終わったと考えるのは不衛生この上ないため、こんなこともわかっていないメディアの誤った(無知にも程がある)報道が多いのには呆れている。また、栄養状態が悪いと抵抗力(免疫力)が落ちるため、白米の握り飯やカップラーメンのようなものだけを食べていてはならず、これらは精神的な問題ではなく実質的・基本的な問題なので、農業をやっていて手が離せないなどの特別の理由がない人は、問題を解決するため被害の少なかった周囲の自治体に速やかに避難すべきである。

*5:http://mainichi.jp/articles/20160424/k00/00m/040/041000c
(毎日新聞 2016年4月23日) 避難所、感染症警戒 南阿蘇村ノロウイルス検出
 熊本地震被災者の避難所になっている熊本県南阿蘇村立南阿蘇中学校で、避難者の男女25人が下痢や吐き気などの症状を訴え、一部の人からノロウイルスが検出されたことが23日、分かった。ノロウイルスの感染は他の避難所でも確認されているほか、インフルエンザ患者も出ている。衛生状態の悪化で感染症流行の恐れが高まっており、県は「手洗いを徹底してほしい」と注意を呼びかけている。日本医師会から南阿蘇村に派遣された松本久医師によると、断水で水が出ないため、避難者らはトイレで、くみ置きの水を使って手を洗ったりしていた。この水を介して感染が広がった可能性があるという。村はトイレを消毒した。熊本県などによると、避難所のノロウイルスの感染者は南阿蘇村のほか、菊池・阿蘇・御船の三つの保健所管内の4避難所で8人、熊本市の7避難所で7人が確認されている。いずれもトイレが感染源になっている可能性が高いという。自治体の管理が行き届かず、避難所のトイレの清掃が十分でなかったり、トイレと避難スペースを土足で行き来したりするケースもある。一方、インフルエンザ患者は菊池、御船、宇城の三つの保健所管内の4避難所と、熊本市の6避難所で計16人の患者が確認されている。蒲島郁夫知事は記者団に「市町村と一緒に予防と対応、治療に取り組む」と述べた。避難所で感染症が流行しかねない状況に、南阿蘇村の避難者から不安の声が漏れた。同村河陽の古沢五年生(いねお)さん(74)は「疲れもたまり、ここで病気になってしまうと長引かないか心配だ」。同村長野の渡辺茂子さん(72)は「避難所は人が多く、すぐに感染してしまわないか不安。しっかり予防して、自分の身は自分で守りたい」と話した。14日の地震発生から9日を過ぎても熊本県内では6万7000人以上が避難生活を余儀なくされている。
●感染症を防ぐ主な予防や対策
◆ノロウイルス
・消毒液で扉の取っ手や水道の蛇口、トイレの便座、ふた、吐しゃ物で汚れたところを消毒
・消毒液がなければ水500ミリリットルに対しペットボトルのキャップ2杯分の家庭用塩素系漂白剤を混ぜて作る
・吐しゃ物、汚物はマスクや手袋を着用してペーパータオルなどで拭き取りビニール袋に入れ、封をして廃棄
◆インフルエンザ
・アルコール製剤による手洗い
・せきやくしゃみが出るときはマスクを着用
・十分な休養とバランスの取れた栄養摂取
※厚生労働省などの資料を基に作成


PS(2016/4/25追加):*6のように、JA女性部のおかげで、益城町の避難所は、栄養のある美味しい食事で一息つけてよかったですね。 カレー

*6:http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=37172
(日本農業新聞 2016/4/25) JA熊本県女性協が炊き出し 被災者に温か豚汁
 「平成28年熊本地震」の避難者を支援しようと22~24日、JA熊本県女性組織協議会が益城町で計3000食のおにぎりや豚汁、カレーライスの炊き出しを実施した。余震が続く中、「温かい食べ物を届けたい」と、女性部員40人が結集。今後は各JA女性部に呼び掛け、小規模な避難所への炊き出しなども計画する。豚汁に使う材料はJA菊池の直売所「きくちのまんま」で調達、みそもJA菊池女性部が仕込んだ手作りだ。JA熊本市がミニトマト、JAあまくさ女性部が手作りのタケノコの酢漬け、高菜の油炒めも持ち込んだ。作業にはJA熊本中央会や連合会の職員が加わった。おにぎりに使う米は、農機具メーカーのサタケ(広島県東広島市)が2トンを提供。緊急用として140キロの米を一度に炊ける炊飯器も持参した。22日は約350人が避難する益城中央小学校で約400食を配った。熊本女性協会長の寺本眞理子さんは「テレビや新聞を見るたび、つらかった。なんとかしてあげたい思った」と目を潤ませた。「多くの女性部員が余震の続く中でも、手を挙げて集まってくれた。これから長い戦いになるが、支援を続けていきたい」と力を込めた。


PS(2016年4月26日追加):*8-1、*8-2のように、九州新幹線や自動車道は、殆ど月内に開通する。それにもかかわらず、*8-3に仮設住宅を建設すると書かれているが、100%近くの人が自家用車を持ち、新幹線も通じているのに、*8-4のような近隣地域のホテルやアパートの空室を使わず、断熱効果が低くて居住性の悪いプレハブの仮設住宅を2900戸も建てるのは、選挙目当ての無駄遣いのように見える。土地から離れられないのは農林業関係者だけであるため、一般市民は、現在あるホテルやアパートの空室を優先して利用することを考えた方がよいと思う。

*8-1:http://qbiz.jp/article/85635/1/
(西日本新聞 2016年4月26日) 九州新幹線全通 4月27日夕に前倒し
 熊本地震の影響を受けて運休が続いている九州新幹線の熊本−新水俣について、JR九州が27日夕にも営業運転を再開させる方針であることが分かった。25日、同社関係者が明らかにした。再開はこれまで28日を目指していたが、復旧作業が順調に進んだため、1日前倒しが可能になったという。27日午後に試験運転を実施し、問題がなければ営業運転に踏み切る。ただ、今後の作業の進捗次第では遅れる可能性もある。

*8-2:http://qbiz.jp/article/85666/1/
(西日本新聞 2016年4月26日) 嘉島−八代、26日中に復旧へ 九州道
 石井啓一国土交通相は26日の閣議後会見で、熊本地震の影響で通行止めが続く九州自動車道の嘉島ジャンクション(JCT)―八代インターチェンジ(IC)、九州中央道の嘉島JCT―小池高山ICが同日中に復旧、一般車も含め走行可能になると明らかにした。復旧は午後の見通し。残る通行止め区間のうち、九州道の植木IC―嘉島JCTは月内に復旧の見通しだが、大分道の湯布院IC―日出JCTはめどが立っていない。

*8-3:http://digital.asahi.com/articles/ASJ4Q5TGXJ4QUTIL04D.html (朝日新聞 2016年4月22日) 熊本県、仮設住宅建設へ 被災者に公営住宅貸し出しも
 熊本県などでの一連の地震で、熊本県は22日、被災者向けに仮設住宅を建てる方針を発表した。同県西原村にまず約50戸を建てる。また県と熊本市は、公営住宅320戸前後を無償で被災者に貸し出すことを決めた。住まいを失った被災者への仮住まいに関する具体的な計画が決まったのは初めて。西原村の仮設は木造で、5月中に着工、6月中の完成をめざす。村は約200戸の建設を希望している。他の市町村については今後、入居希望者の把握や住宅の損壊の程度などをもとに、方針を決める。県は5月中に土地の選定を終えることをめざす。また公営住宅のうち、県営住宅約70戸は住宅が全半壊した熊本市以外の人向け。入居期間は原則6カ月間、最大1年間で、5月3日に抽選して入居者を決める。熊本市民向けには、同市が市営住宅250戸程度を無償で貸し出す予定。23日から受け付ける。県は22日、災害時の仮設住宅建設の協力協定を結ぶプレハブ建築協会が約2900戸分の仮設住宅を建てる準備があることを確認したと発表。熊本県優良住宅協会も同様に約100戸分の準備があるという。熊本県と大分県によると、22日時点で住宅の被害が約1万1千棟にのぼる。約8万人が避難生活を余儀なくされている。熊本県によると、地震による死者は22日現在48人。災害関連死の疑いは22日に同県阿蘇市で新たに1人が判明し、11人となった。亡くなったのは同市の70代女性。同市によると、女性は16日未明の本震後、家族と自宅敷地内の車中に避難後、近くの高校に移動。同日午前4時ごろに「胸が痛い」と訴え病院で治療を受けたが、正午ごろに亡くなった。高血圧で通院中だったという。一方、同県南阿蘇村は22日、地震で自宅の下敷きになった同村の女性(69)が、21日に入院先の病院で死亡したと発表した。2人が安否不明となっている南阿蘇村では、雨の影響で中断していた捜索が22日午後に再開された。JR九州は22日、運転を見合わせている九州新幹線の博多―熊本間で23日正午前から運転を再開することを正式に発表した。

*8-4:http://mainichi.jp/articles/20160425/ddl/k41/040/259000c
(毎日新聞 2016年4月25日) サポート情報 県内 /佐賀
 県内約150の宿泊業者が加盟する「県旅館ホテル生活衛生同業組合」(小原健史理事長)が、熊本地震による熊本県の被災者の受け入れを始めた。無料で宿泊と食事を提供する。24日午前11時半時点で55件200人以上の予約を受け付けた。組合は、車中泊によるエコノミークラス症候群の続発などを受け、各施設に受け入れ可能人数を調査。1日200〜1200人程度の受け入れが可能とまとまった。県の公費支援も受け、空室を最大2カ月程度、無償で提供する。小原理事長は「熊本県のお客様にはこれまで大変お世話になっており、恩返しがしたい。心と体を休めてほしい」と話した。事前予約が必須。問い合わせは同組合0954・42・0240。


PS(2016年4月27日追加):*10のように、九州新幹線は27日に全通し、九州道の植木IC−嘉島JCTは月内に復旧の見通しだそうだ。しかし、熊本よりも被害が小さかったとされる大分道の湯布院IC−日出JCTでめどが立っていないのは変である。

*10:http://qbiz.jp/article/85705/1/
(西日本新聞 2016年4月27日) 九州新幹線27日全通 九州道、嘉島−八代も復旧
 JR九州は26日、熊本地震の影響で運休が続いている九州新幹線熊本−新水俣の営業運転を27日午後に再開し、博多−鹿児島中央の全線が復旧すると発表した。高速道路では九州自動車道の嘉島ジャンクション(JCT)−八代インターチェンジ(IC)、九州中央道の嘉島JCT−小池高山ICが26日午後、復旧した。新幹線の運行ダイヤは、27日午前に公表する。同日の運行本数は通常より大幅に減便。各駅停車で、全て自由席扱いになる。山陽新幹線との直通運転もしない見通し。一部区間で徐行運転をするため、博多−鹿児島中央は通常なら各駅停車で約1時間50分だが、数十分程度長くなる見通し。JR九州は当初、全線再開時期を28日と設定したが、復旧作業を加速させて1日前倒しを実現した。27日朝、熊本−新水俣を中心に試験運転を実施し、安全を確認した上で再開する。同社は、14日の前震で回送中の車両が熊本駅近くで脱線した問題を重視。安全対策強化のため今後、レールに取り付ける「脱線防止ガード」の設置対象範囲を拡大する方向で検討する。九州の高速道で残る通行止め区間のうち、九州道の植木IC−嘉島JCTは月内に復旧の見通し。大分道の湯布院IC−日出JCTはめどが立っていない。


PS(2016年4月27日追加):*12-1のように、焼却できないごみが復興の妨げとなっているが、福岡市、佐賀市、北九州市などが受け入れている。しかし、福岡県や鹿児島県などの近場にも、受け入れ可能な自治体があるのではないだろうか?なお、私は、九州のゴミの分別は緩やかで、資源化するゴミが少なく燃やすゴミが多くなっているため、今後はゴミの分別をしっかりやった方がよいと考える。
 また、*12-2のように、被災地応援の「ふるさと納税」を、「ふるさとチョイス」と他の自治体が受付代行しており感心したが、このうち特に石川県輪島市は目を引いた。唐津市、伊万里市、有田町などは、「熊本城、熊本神社、阿蘇神社などの修復費」と使い道を指定して受付代行し、修復された暁には、その中の雰囲気の合う場所に展示させてもらってはどうだろうか?


受付を代行       熊本城              熊本神社       阿蘇神社    古伊万里
する自治体                                                

*12-1:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/305664
(佐賀新聞 2016年4月27日) 佐賀市清掃工場 熊本のごみ受け入れ、1日50トン
 佐賀市は26日、熊本市の家庭ごみを1日50トンまで受け入れると発表した。熊本市内にある二つの焼却施設のうち1施設が地震の影響で焼却炉が停止し、焼却できないごみが復興の妨げとなっている。熊本市側の運搬準備が整い次第、佐賀市高木瀬町の市清掃工場で受け入れを始める。熊本市では現在、焼却施設の停止で処理能力が不足し、東区内の仮置き場に運んで保管している。佐賀市によると、停止中の焼却炉は1日600トンの処理能力がある。既に福岡市が1日100トンを受け入れており、北九州市も1日50トンの受け入れを表明している。佐賀市には、25日に環境省所管の公益社団法人「全国都市清掃会議」を通じて熊本市から要請があった。期間は被災地の復興状況を見ながら判断する。佐賀県が復興を支援している西原村にも、佐賀市は26日からごみ収集車2台と職員4人を派遣した。避難所や家庭から出るごみの収集が一部で滞っており、市職員がごみを収集、益城町の仮置き場に運ぶ。派遣は30日まで5日間。今回の支援により、村の住民が出せるごみは、生ごみから可燃ごみに拡大したという。市環境部は「被災地のごみを少しでも減らすことで、復興に貢献したい」としている。

*12-2:http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=37219 (日本農業新聞 2016/4/27) 被災地応援へ ふるさと納税活用 他自治体が業務代行 返礼品なし 熊本、大分に
 地震で大きな被害を受けた熊本県を応援しようと、「ふるさと納税」=メモ=の制度を活用し、被災した自治体に返礼品なしで寄付金を送る取り組みが急速に広がっている。インターネットの専用サイトでは「頑張れ熊本」「地震に負けるな」といったメッセージとともに、既に5億円を超える寄付金が集まった。被災自治体の負担を軽減しようと、過去に災害を経験した自治体などが受け付け業務を代行しているのも支持を集める理由だ。ふるさと納税を通して、熊本地震への支援を呼び掛けているのは、全国自治体のふるさと納税を仲介するサイト「ふるさとチョイス」。地震が発生した14日の翌日から「災害支援でチョイス」の中で熊本支援ページを立ち上げた。1県16市町村が益城町などの被災自治体に代わって、ふるさと納税による寄付金を受け付けている。同制度は通常、当該の自治体が入金確認や確定申告に必要な受領証明書の発行業務を伴うが、「肩代わりすれば、震災対応に注力してもらえる」と他の自治体が代行支援を買って出た。寄付金は甚大な被害があった益城町や阿蘇市、西原村、熊本県などに全額送られ、農畜産物などの返礼品はない。昨年9月の関東・東北豪雨被害からの復興に、ふるさと納税による寄付金を当てた茨城県境町も名乗りを上げた。16日から熊本県に代わって、寄付金を受け付ける。26日現在、同町には5000件、計1億1000万円の寄付金が集まった。同町では「寄付をしても被災地に負担を掛けてしまうからと、ためらっていた人からも好評。豪雨被害で全国から応援してもらった恩を返したい」(まちづくり推進課)と意義を強調する。2007年3月の能登半島地震で被災した石川県輪島市も23日、阿蘇市や西原村などの代行受け付けを始めた。震災時の業務の大変さを経験したからこそ、「力になりたい」(地方創生室)と話す。熊本県に加え、同県宇土市、小国町、嘉島町、熊本市、八代市、山都町、菊池市、宇城市、大分県は、ふるさと納税による直接支援を受け付けている。100人以上が避難所生活を送る菊池市では25日現在、「数千件の寄付の申し込みがある」(企画振興課)という。「避難者が多く、どれだけ被害が広がるか調査中だが、復興のため大切に使わせてもらいたい」(同)と感謝する。
〈メモ〉 ふるさと納税
 応援したい自治体に2000円を超える寄付をすると、一定額が所得税と住民税から控除される仕組み。14年度寄付実績は389億円と前年度(145億円)を大幅に上回った。寄付先の自治体から米や牛肉、果物といった返礼品を目当てにした利用者は多いが、熊本地震をきっかけに返礼品なしの寄付も根付き始めている。


PS(2016年4月27日追加):*13のように、修学旅行などの団体客4万5493人、個人客2万7924人のキャンセルがあり、「旅館やホテルの経営に影響を来す可能性もあるので支援措置を検討している」のなら、自分のことだけを考えずに熊本県の避難者を受け入れればよいだろう。そのくらいの社会貢献を思いつかない旅館やホテルが修学旅行生を受け入れても、よい教育はできないのではないか?

*13:http://qbiz.jp/article/85801/1/ (西日本新聞 2016年4月27日) 長崎県宿泊 地震の余波 予約取り消し7万人超 知事「安全を発信する」
 長崎県の中村法道知事は26日の記者会見で、熊本地震後にあった県内の宿泊施設へのキャンセルが7万3417人分に上っていることを明らかにした。中村知事は「県内の観光施設や宿泊施設は通常通り営業を行っている。観光ホームページなどでは伝えているが、時期をみて安全という情報を発信していきたい」と述べた。宿泊施設へのキャンセルは、県観光連盟が113施設に調査をかけ、26日午前9時時点で回答があった100施設の結果をまとめた。内訳は修学旅行などの団体客が4万5493人、個人客が2万7924人。中村知事は「旅館やホテルの経営に影響を来す可能性もあるので、支援措置を検討している」と語った。県緊急支援室によると、県内へ一時避難を求める被災者からの相談は26日午後3時までに125件あり、うち40件が旅館などの宿泊施設へ、23件が県営住宅などへの入居手続きに入っている。中村知事は「県民の協力をいただきながら、県全体で被災地の復興支援に努めたい」と発言。県内にも活断層があることから、防災対策を計画的に進める考えも示した。


PS(2016年4月29日追加):今後、高齢者が増える中、*17-1のように、熊本市やその周辺地域もサービス付集合住宅、デイサービス、特別養護老人ホームが足りなくなると思われるため、家を新築することのできない高齢者等のためには、これらを街に近い安全な場所に建設して被災者を受け入れればよいと考える。そして、*17-2のプレハブ仮設住宅のような作っては壊すようなものに税金を使うのではなく、まっすぐ最終形の街づくりをした方が、その後に生産性が上がり、税金の節約にもなる。さらに現在は、*17-3のように、金融緩和・マイナス金利で資金調達が容易である上、広い屋根に太陽光発電を付ければそれによる収益を建設費の返済に充てることもできるため、今、熊本県がやるべきことは、この地震を踏まえ住民が満足して生活できる新しい都市計画を速やかに作って実行することだ。それが完成するまで、被災者は、他県も含め被災していない地域の福祉施設や住宅を利用していればよいと思う。

*17-1:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12334116.html
(朝日新聞 2016年4月29日) 高齢者続々、もう限界 熊本地震、入居断る福祉施設も
 28日夕、熊本市南区の複合型老人福祉施設「ケアタウンかわしり」は約130のベッドがすべて埋まっていた。さらに会議室などに300人余りが段ボールや毛布を敷いて避難していた。「困った人を助けたいが能力的に限界。共倒れになりかねない」。中村幸子施設長は訴えた。18日ごろから1日20件前後、避難所の閉鎖や家の倒壊で居場所を失った要介護者の入居希望が相次ぐ。しかし、要介護度の低い人は断らざるを得ない。「職員も被災し、疲労がたまっている。毎日厳しい判断を迫られている」。「今はまだ頑張れているが、長期になったら心が折れてしまう」。益城町で最大規模の特別養護老人ホーム「ひろやす荘」の永田恭子施設長も悲鳴をあげる。運営主体が同じ介護老人保健施設で被災した入居者約60人を受け入れ始めた。定員155人に対して200人以上。周辺施設はどこも人であふれ、移転先を探すのは至難の業だ。避難を続けながら出勤したり、自宅に倒壊の恐れがあったりする職員も多い。「これから長期にわたり、職員の確保が必要になります」と課題を口にした。デイサービスなどを手がける熊本市東区の小規模多機能施設「健軍くらしささえ愛工房」は益城町に近く、職員約20人には被災した人も多い。通常、宿泊と通所の利用者は計30人ほど。まだライフラインや設備が復旧しておらず、これまでは他の施設や県の担当窓口を紹介してきた。宮川いつ子施設長は「復旧に伴い、利用者が増えれば人手が不足しそう」。すでに同種施設の連絡協議会を通じて2日間、新潟県と千葉県から2人の介護職が支援に入ったという。一方、同じグループの特別養護老人ホームは地域の高齢者ら約60人の避難を受け入れた。小笠原嘉祐理事長は「職員と利用者の配置など関係なくとにかく受け入れた。パニックになった利用者を家に帰すわけにはいかない」と話す。小笠原さんは、さらに利用者の増加が続くことを予想し、被災した職員の疲労が蓄積して適切なサービスを提供できなくなる恐れを指摘した。

*17-2:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20160429&ng=DGKKZO00265210Z20C16A4EA1000 (日経新聞社説 2016.4.29) 被災者向け住宅の確保急げ
 熊本県などで発生した地震から2週間余りが過ぎ、避難者はなお3万人を超す。水道などの完全復旧を急ぐと同時に、避難所の生活環境の改善が必要だ。被災者の生活再建にも乗り出したい。まず、400カ所を超す避難所の衛生を保ち、被災者の不便や不安を減らすことが急務だ。一部の避難所ではノロウイルスによる感染症も発生している。巡回する医師や看護師らが目配りし、被災者が気楽に相談できる体制を整えたい。車中泊を続ける人にエコノミークラス症候群への注意を促すことも欠かせない。避難生活の長期化を避けるためには仮設住宅の早期整備が要る。プレハブ住宅の建設が基本になるが、民間などの賃貸住宅を借り上げる「みなし仮設」も積極的に確保すべきだろう。熊本県は全体で4200戸を整備する方針だ。県外の自治体が公営住宅を提供する動きもある。県内の物件で足りなければ、県外に一時的に移ってもらい、仮設住宅が完成した後に戻ってもらうような柔軟な対応も考えるべきだ。仮設住宅への入居では高齢者や障害者への配慮が欠かせない。阪神大震災では独り暮らしの高齢者が仮設住宅で孤立し、孤独死に至るケースもあった。できるだけこれまでの集落単位や隣近所の関係を保てるような入居を働きかける必要があるだろう。熊本県によると、被災した住宅は一部破損を含めて3万棟を超す。国土交通省の集計では建物の応急危険度判定で「危険」とされた物件は8400棟に上る。最終的にどれだけの住宅が必要かまだ判然としない。仮設住宅に入るためには住宅の被害の程度を示す罹災(りさい)証明書が要る。しかし、庁舎が被災した市町村を中心に証明書の発行作業は遅れている。他の自治体職員の応援が必要だ。避難所生活から脱することは生活再建の第一歩になる。政府と自治体、民間が協力して被災者への住宅提供に全力を挙げたい。

*17-3:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20160429&ng=DGKKASGF28H1A_Y6A420C1MM8000(日経新聞 2016.4.29) マイナス金利「効果見極め」 日銀総裁「変化表れにくい」 金融政策を維持
 日銀の黒田東彦総裁は28日、金融政策決定会合後の記者会見で、2月に導入したマイナス金利政策について「(経済や物価に対する)効果の浸透度合いを見極めていくことが適当だ」との考えを示した。日銀は同日、金融政策の現状維持を決めた。黒田総裁は「経済や物価の下振れリスクは引き続き大きい」と語り、必要と判断すれば追加的に金融を緩和する考えを重ねて表明した。マイナス金利政策を受けて国債利回りに低下圧力がかかり、企業向けの貸出金利や住宅ローン金利が一段と下がっている。黒田総裁は実体経済や物価を押し上げる効果を指摘しながらも「市場で新興国や資源国経済の先行き不透明感が続くなかで前向きな変化が表れにくい状況」と語り、現段階では政策効果を見極めたいとの姿勢を示した。日銀は28日の決定会合で、政策目標とする2%の物価上昇の達成時期をこれまでの「2017年度前半ごろ」から「17年度中」に再び先送りした。4月公表の企業短期経済観測調査(短観)などの統計で企業や家計の物価上昇期待が後退していることを映した。黒田総裁は「直近のデータを分析して最も適切な見通しをつくった。2%の物価目標は十分達成できる」と述べた。そのために「必要と判断した場合には、ちゅうちょなく追加的な金融緩和措置を講じる」と強調した。日銀は景気の現状判断について、前月の「基調としては緩やかな回復を続けている」を据え置いた。消費は前月に続き「底堅く推移している」としながらも「一部に弱めの動きもみられる」との表現を加えた。熊本地震の被災地の金融機関を対象とする総額3000億円の貸し出し支援も決めた。


PS(2016年5月1日追加):今回の地震は、原発事故を併発しておらず、阪神大震災の経験も活きたため、*19-1、*19-2のように、道路・電気・ガスの復旧が迅速で火事も出なかった。そのため、全国から応援に来られた方を含め、24時間体制で工事に携わった方々には敬意を表する。なお、「自由化以降は、非常時の閉栓・開栓作業に問題が生じる」というのは、他産業は自由市場で競争していても非常時には協力しているため、問題ないだろう。
 このような中、*19-3のように、厚生労働省が中心となって残業制限への法改正を検討しているが、形ばかりで本物の仕事をしていない労働基準監督署をはじめとする暇な役所と異なり、国会議員も含めて、9時~5時の勤務時間では責任を果たせない仕事は多いため、「女性の活躍のためには残業規制が必要だ」などと主張して一般的に残業規制を強めるのは、均等な雇用機会を失わせて女性にとってもマイナスになるため迷惑だ。そのため、特に悪質で不合理なことをしていれば摘発したり改善したりすればよいのであって、残業規制の強化として一般に敷衍する必要はないと考える。

*19-1:http://qbiz.jp/article/86054/1/ (西日本新聞 2016年5月1日) 都市ガス復旧完了、4600人が24時間突貫作業 当初見込みより8日早く
 西部ガス(福岡市)は30日、熊本県内での都市ガスの復旧作業を完了。被災者が待ち望んでいた自宅での入浴や自炊がほぼ可能な状態になった。電気などに比べると全面復旧に時間を要したものの、当初見込みよりも8日早い完了は、他の都市ガス各社の応援も得た24時間態勢の作業によって成し遂げられた。26日、熊本市西区の住宅街。道路に掘った深さ約1・3メートルの穴の周りに西部ガスと協力会社の社員6人が集まっていた。地震の激しい揺れで金属製のガス管の接合部が緩み、水が混入したようだ。担当者は交代で、長さ約80メートルの区画を丸1日かけて調査。水抜き対策を行い、ガスが使える状態に戻した。西部ガス福岡支社供給管理センターの吉野英夫さんは「こうした場所が点在する。一つ一つ、つぶすしかない」と話した。西部ガスは、同県の熊本市や合志市など7市町の約11万2千戸にガスを供給。16日の本震で約9割の供給を止めた。過去最大の被害だった長崎大水害(約4万2千戸)の2倍超に上る。都市ガス復旧には、多くの手順が必要だ。供給停止後、二次被害を防ぐため各家庭を訪ねて閉栓。次に地区を細分化してガス管を調査し、損傷があれば修繕。異常がなければ順次、供給再開する。復旧に時間を要するのはこのためだ。導管の多くは地中。県内の総延長は1375キロに及ぶ。同社は業界団体の日本ガス協会に協力を要請し、22社が最大約2600人を派遣。計約4600人による人海戦術を展開した。阪神大震災後、柔軟性に優れ震災に強いポリエチレン製のガス管の導入を進めていたことも奏功し、復旧は想定より早く進んだ。しかし、顧客先での開栓作業は約2割が残っており、作業はなおしばらく続く。震災は、来年4月の都市ガス小売り自由化にも課題を残した。自由化以降は供給エリアを越えた顧客争奪が予想されるが、非常時の閉栓・開栓作業を誰が担うかはまだ決まっていない。「今後も災害時に他社から協力を得られるかどうかも、十分議論しておく必要がある」。一橋大の山内弘隆教授(公共経済学)は指摘する。

*19-2:http://www.yomiuri.co.jp/national/20160424-OYT1T50034.html
(読売新聞 2016年4月24日) 九州自動車道、今月中に全線復旧見通し…国交省
 熊本地震の影響で一部区間が通行止めとなっている九州自動車道について、国土交通省は24日、今月中に全線で復旧するとの見通しを明らかにした。石井国交相は「九州を南北に連絡する大動脈が回復する」と述べた。JR九州は24日、熊本駅付近で脱線した九州新幹線の回送列車について6両全ての撤去を終えた。運休中の熊本―新水俣で線路の修復などを急ぎ、28日にも全線で運行を再開する予定。2人が安否不明となっている熊本県南阿蘇村では24日、捜索が再開された。県警などによると、土砂崩れが起きた河陽(かわよう)地区で、安否不明の男性の携帯電話が見つかった。阿蘇大橋付近では無人重機も投入して捜索が続いた。

*19-3:http://www.saga-s.co.jp/news/national/10201/293313
(佐賀新聞 2016年3月25日) 首相、残業制限へ法改正検討、働き過ぎ是正指示
●首相、残業制限へ法改正検討
 安倍晋三首相は25日、長時間労働を是正するため、残業規制を見直すよう指示した。労働基準法の改正などで残業時間を制限し、違反した際の罰則を設けることを検討する。仕事と育児の両立や女性の活躍推進、過労死の防止が狙い。残業時間の上限設定の検討に加え、残業が月80時間超の企業には労働基準監督署が立ち入り調査をする。安倍首相は官邸で開かれた1億総活躍国民会議で「時間外労働(残業)規制の在り方を再検討する」と述べた。労基法は労働時間を1日8時間、週40時間までと定めているが、「三六協定」と呼ばれる労使協定を結べば、法定時間を超えて働く「残業」が可能になる。


PS(2016年5月2日追加):今回の地震で5市町の庁舎が損壊したというニュースは驚きだったが、よく見ると熊本県の市町は合併が進んでいないため、規模が小さく数が多い。それにより、財政力・行政力が小さくなりがちで財政効率も悪いため、この際、合併して市を増やせばよいと考える。合併した後の名前は、人口規模より歴史に残る名前を残して歴史探訪をしやすくし、これまでの名前は町名として下につければ、どの人も納得できるだろう。なお、「合併すると住民のニーズに合ったきめ細かな行政サービスができなくなる」という声が郡部からよく聞かれるが、専用線で繋いでおけば窓口でどんなサービスでもできるので、これまでの庁舎近くに小さな窓口(支所)を残してニーズを汲んだ業務をすればよいと思う。

*21:http://mainichi.jp/articles/20160502/k00/00e/040/161000c
(毎日新聞 2016年5月2日) 5庁舎損壊使用できず 人吉市など機能分散移転
 熊本地震で庁舎が損壊した熊本県人吉市が2日、庁舎での業務を終え、役場機能を分散移転させる。地震で庁舎が使えなくなるのは同県で5市町目。地震発生から間もなく3週間となるが、庁舎に倒壊の恐れがあったり、庁舎に戻れても行政機能の完全復旧にはまだ日数を要したりするとみられ、市民生活への影響の長期化が懸念されている。
●4庁舎は旧耐震基準
 2日午前、人吉市の市役所には連休のはざまを使って市民が訪れ、窓口で必要な手続きを済ませていた。一方で壁にいくつものひびが走った庁舎の中で、職員らは通常業務の合間に急ピッチで引っ越し作業を進め、荷物を詰め込んだ段ボールを積み上げていた。市民向けの主な窓口業務は約600メートル南西の別館に移し、9日から業務を開始する。さらに総務や教育、経済関係の部署は別館から約2キロの体育施設や文化施設に入る。この日、住民票を取りに来た会社員の中神康行さん(30)は「庁舎が危ないのなら移すのは仕方ないが、しばらく部署ごとに別々の場所で対応するらしいので少し不便になる」と心配そう。総務課職員係長の熊部哲也さん(49)は「長年親しんできた庁舎を離れるのは寂しいが、市民や職員の安全を考えると仕方ない。市民に不便をかけるが、ご理解とご協力をお願いしたい」と話した。地震で庁舎が使えなくなったのは人吉市の他、宇土市、八代市、大津町、益城町の4市町で、いずれも役場機能を移転させた。16日未明の本震で震度6強を記録した宇土市。本庁舎は4階部分が完全に押しつぶされて倒壊寸前となり、立ち入り禁止となっている。機能は分散移転され、市民は罹災(りさい)証明書を申請するなら本庁舎から約600メートル離れた市民体育館に、生活保護などの手続きは体育館から約520メートル南の保健センターに行く必要がある。市幹部は「本庁舎隣の別館に住民のデータが入ったシステム機器があるが、別館も立ち入り禁止だ。本庁舎が倒壊して機器が損傷すれば数カ月は業務に支障が出る」と話す。八代市の庁舎も多数のひびが入り、使えなくなった。市は各部署を市内の5支所など14カ所に分散。住民票や罹災証明書などは支所で対応しているが、市営住宅関係は庁舎から約5キロの水処理センターのみで受け付ける。大津町は庁舎の壁に亀裂が入り、天井の一部が落下。庁舎近くの町民交流施設で窓口業務をしている。益城町庁舎は2012年度に耐震工事を終え、耐震基準は満たしていた。しかし、震度7に2度も襲われ、壁に亀裂が入り、災害対策本部を庁舎から約1.5キロ西の保健福祉センターに移した。町のほとんどの機能が停止したままだったが、罹災証明書の申請受け付けを1日から開始。庁舎の安全も確認され、対策本部は2日に庁舎に戻る。しかし、行政機能は庁舎に戻らず、9日以降に分散移転で順次再開していく。市民サービスが地震前の状態に戻るには時間がかかりそうだ。庁舎が損壊した5市町の庁舎のうち、4庁舎が1960〜70年代の建設で、いずれも現行の耐震基準を満たしていなかった。自治体庁舎の耐震化や建て替えには多額の費用がかかるが、総務省などによると、学校などと違って国の補助制度はなく、自治体は積み立てた基金などを充てている。八代市では新庁舎建設計画が本格化していたが、担当者は「小中学校の耐震化工事などを優先させたため、庁舎の建設計画が遅れてしまった」と話す。


PS(2016年5月3日追加):田植えの時期を前にして、*22のように、農地、用排水路、ハウスなどの農業基盤を中心とする農業被害額が熊本県だけで767億円に達するため、スピーディに復旧・復興することが重要だが、TPPに入るか否かにかかわらず、農業における生産性の向上は重要であるため、大型の機械が入りやすい区割りにするなど、これを機会に単なる復旧ではなく改良もした方がよいと考える。また、被害で廃業したくなったような農家は、農業生産法人の設立、パートナーシップの設立、集落営農など、個人の力のみに頼るのではない農業への移行も選択肢として考えられる。

*22:http://digital.asahi.com/articles/ASJ525GG3J52TIPE020.html?iref=comtop_urgent (朝日新聞 2016年5月3日) 熊本県、農業被害767億円 用排水路・ハウスなど打撃
 熊本県などでの一連の地震で、熊本県内の農業被害額が767億円に達することが県のまとめでわかった。このうち756億円(約99%)を農地や用排水路、ハウスなど農業基盤の被害が占めた。森山裕農林水産相は2日、被災地を視察後、報道陣の取材に「できる限りの努力をする。農家のみなさんに負担の少ない形で復旧復興の制度をフル活用したい。前例にとらわれず、スピード感を持ってやることが大事だ」と述べた。被害額の大きさを踏まえて、今後、再度の補正予算編成も必要になるとの見方も示した。県の推計では、一連の地震による被害(1日現在)は、林業や水産業を加えた農林水産関係で1022億円。911億円の被害額となった阪神・淡路大震災の被害額を超え、2012年に熊本、大分、福岡3県を襲った九州北部豪雨の1265億円に迫った。農業被害では、農地のひび割れや用排水路の損傷、ハウスや選果場などの施設損壊など、生産の前提となる農業基盤への損害が目立った。地域的には震源に近い熊本市や上益城郡、阿蘇地域などに集中。田の被害は1574カ所、畑は1147カ所だった。JA熊本中央会の梅田穰会長らは2日、県庁で森山農水相と蒲島郁夫知事に面会。復旧へ向けた財政措置や、農地や農業用水、選果場などの共同利用施設といった農業基盤の早期復旧などを求めた。農業基盤への打撃により、梅雨時期の田植えなど営農の先行きが見通せない状態で、梅田会長は「TPP(環太平洋経済連携協定)をはじめ、将来に不安を抱いている農家が今回の被害で廃業に向かうのではと心配している。スピード感をもって対応してほしい」と訴えた。気象庁によると、一連の地震で震度1以上の地震回数は1150回を超えた。熊本県や大分県では3日に大雨が予想されている。熊本県によると、2日午後現在、県内391カ所に計2万2人が避難している。


PS(2016年5月4日追加):海外市場で円相場が一時「1ドル=105円台半ば」に急伸したことについて、麻生財務相が「投機的動きが強まっていることを憂慮している」との認識を示されたそうだが、私は「1ドル=105円」は実力程度ではないかと思った。円安が続くと、輸出企業の業績はよくなり輸入企業の業績は悪くなるが、為替相場は輸出超過で円高になるので、これだけの災害が起こっても円高というのは国民が自らの消費を控えて輸出ばかりしている姿を反映している。そのため、この際、価格が安くて質も悪くない住宅・太陽光発電設備・労働力などを海外から輸入して、迅速に復興すればよいと考える。

    
  イギリスの住宅街     フランスの住宅街     アメリカの住宅街  日本の太陽光発電住宅
     <どの国も高級住宅街は緑が多くて敷地が広いが、熊本なら作れるのでは?>

*24:http://qbiz.jp/article/86158/1/
(西日本新聞 2016年5月4日) 円急伸「憂慮している」 財務相、再び市場けん制
麻生太郎財務相は3日、ドイツのフランクフルトで記者会見し、海外市場で円相場が一時1ドル=105円台半ばに急伸したことについて「一方的で偏った投機的な動きがさらに強まっていることを憂慮している」との認識を示した。その上で「投機的な動きが継続しないよう、これまで以上に注視し、必要な時にはしっかり対応する」と述べ、改めて市場をけん制した。会見に同席した日銀の黒田東彦総裁は「為替などの変動が経済、物価の動向に与える影響を十分注視し、物価安定目標の達成に必要ならちゅうちょなく追加の金融緩和を講じる」と強調した。中国主導で設立されたアジアインフラ投資銀行(AIIB)への日本の参加について、麻生氏は「これまでのスタンスは変わらない。運営方法などを引き続き注目していきたい」と述べ、慎重な姿勢を示した。麻生氏と黒田氏は東南アジア諸国連合と日中韓(ASEANプラス3)の財務相・中央銀行総裁会議などに出席するため、フランクフルトを訪問している。

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2016.4.17 火山、地震の脅威から原発ゼロへ (2016年4月18、19、20、21、22、23、24日に追加あり)
 避難を余儀なくされていらっしゃる方には、心からお見舞い申し上げます。しかし、九州は、旅館の空室や空き家も多いので、大人数で体育館などにいるのではなく、地震の影響をあまり受けていない近隣の自治体が、落ち着くまでの間、避難の受け入れをした方がよいと思います。その理由は、食料が乏しく、栄養管理や衛生管理ができない場所に医師や保健師が行ってもできることが限られるため、栄養のある食品を食べてゆっくり休むことのできる場所を提供するのが一番だからです。

    
    2016.4.17西日本新聞           地震と原発     2016.4.16  日本の断層 
                                           日経新聞
      
                       2016.4.16西日本新聞
(1)九州大震災
 *1-1、*1-2、*1-3のように、2016年4月14日午後9時26分に発生したマグニチュード(M)6.5の地震に続き、4月16日午前1時25分頃にはM7.3の地震があり、その後、大分県も震源域となり、震源は上図のように中央構造線付近を移動しており、これは、九州内陸部過去100年の地震で最大規模だそうだ。

 気象庁は、「①このような規模の地震が広域的に続発するのは記憶にない」「②震源3つは前例がない」と述べているが、地殻変動の周期は長いため、①は、どの範囲の記憶のことを言っているのか不明で、②は、前例のあることしか起こらず既存の断層帯以外は決して断層にならないという保証はないため、現在は断層がないからといって安心はできない。

 また、地震は、本震とその他に分けて名前をつけることにあまり意味はなく、それより重要なのは、どういう理由でこれらの地震が起こったかである。何故なら、それがわかれば、さらに大きな地震がくるのか、火山噴火の可能性は高いのか、九州で歪(ひずみ)を解消すれば一連の地震が終わるのかがわかるからだが、それを解説した報道は今までにない。

 そして、気象庁火山課は、*1-4のように、「熊本県阿蘇中岳で噴煙が第1火口から約100メートルまで上がった小規模な噴火があったが、地震との関連を明確に示すデータはない」とし、火山噴火予知連絡会副会長の石原京大名誉教授も「阿蘇山は地震前から噴火活動が続いており、このところの火山性微動のデータを見ても活発化する要因が見当たらない。今のところは、たまたま同じ地域で地震と噴火が重なったと見ていい」としている。しかし、本当に活発化する要因はないと言えるのだろうか?

 日本の火山は、(簡単に書けば)下図のように、太平洋プレートやフィリピン海プレートがマントルの動きによって北米プレートやユーラシアプレートの下に押し込まれ、流体のマグマが地上近くに上がってきて起こるものだ。これは、プレートの境界と火山帯の分布、日本列島の地形を見ればわかることで、ユーラシアプレート・フィリピン海プレート・北米プレート・太平洋プレートが押し合っている日本アルプス付近は、飛行機から見ると山脈がまさに地殻の皺のような形をしており、他の山脈も似たようなものである。

 この現象を、GPSで証明したのが下の右図で、九州では中央構造線付近で力の向きが変わり、フィリピン海プレートがユーラシアプレートの下に押し込まれる力の影響を受けているのがわかる。そして、東日本大震災後の太平洋プレートの沈み込みは海山などの障害が取れたらしくて速くなり、太平洋プレートがフィリピン海プレートを押す力が増して、それに連動して火山の噴火や地震が増えたのだと思われる。

    
        マントルの動き・造山運動・日本を取り巻くプレート            GPSによる 
                                                  移動距離の測定 
   
      プレートの沈み込みとマグマ             GPSによる移動距離の測定

 なお、この地震で、*1-5のように、いつもは慎重な九州JRで新幹線が脱線し、その場所は想定外の区間だったそうだが、災害はどういう形でやってくるかわからないため、「想定外」はよくない。また、*1-6のように、この地震によって、南阿蘇村で大規模な土砂崩れがあり、阿蘇大橋や俵山トンネルが崩落し、国道57号線やJR豊肥線が寸断され、熊本城や熊本神社も被害を受けているそうである。

(2)稼働を止めない川内原発
 交通系が念のため運航停止して確認したのに対し、*2-1、*2-2のように、川内原発は設備損傷などの異常は確認されていないとして、通常運転を継続している。しかし、誰がどの程度の確認をして「異常なし」と言っているのか、運転中に配管のひび割れまで確認できるのかについては疑問がある。

 また、「異常は確認されていない」というのも、確認しなかっただけでなかったと言えるわけではなく、施設内の装置で自動停止基準内だったという程度であるため、原発を扱う事業者としての慎重さに欠ける。

 そして、*2-3、*2-4、*2-5のように、熊本県を中心に震度7の地震に襲われ、最大震度6強の余震が140回を超える中、九電は全国で唯一稼働する川内原発1、2号機の運転を継続しており、原子力規制庁は「安全上、問題はない」との認識を示し、政府もそれを容認しているが、「より大きな地震の発生もあり得る」と指摘する地震学者もおり、一つ一つの揺れが自動停止基準の震度5を超えていなくても、揺れる回数が多ければ配管等の部品が痛んでくるため、安全という保証はなく、運転継続は危険だと考える。そのため、フォトジャーナリストの広河隆一さんら文化人6人が4月16日に、川内原発の即時停止を求める要請文を九電に送ったそうだ。

(3)地震と原発
 日本は、*3-1のように、プレートの重なりの上にできた国であり、地震が多い。仮に、私たちが、生まれてから今まで経験したことのない揺れだったとしても、日本の成り立ちから考えれば年中起こっていることが起こったにすぎないだろう。

 福岡高裁宮崎支部は、対策上想定される基準地震動を極めて合理的と判断したが、現在は、いつ阿蘇山が噴火してもおかしくない上、震源地を熊本県・大分県とする大地震が起こり、道路や新幹線が寸断されているわけである。国会の福島第一原発事故調査委員会は、原因は津波だけではなく地震による損傷の可能性も否定できないと指摘しており、小手先の対策を集積しても根本的な問題は解決しない。

 そのような中、電力会社、原子力規制委員会、政府、一部の地元住民は、地震の揺れや断層を甘く見すぎている。地震・津波は、既に「想定外」ではなく「想定内」である。私も、「いつでも、どこでも、強大な地震は起こりうる」というのが、日本では社会通念であり、一般常識だと考える。

 そのため、*3-2のように、今回の参議院議員選挙は、憲法改正・安保法制・辺野古移設の是非・TPP・消費税だけでなく、原発ゼロとエネルギー変換も重要な争点にすべきだと考える。

<九州大震災>
*1-1:http://qbiz.jp/article/85019/1/ (西日本新聞 2016年4月16日) 6強続発、新たに20人死亡 死者は計29人に 最大M7・3、阪神大震災級
 16日午前1時25分ごろ、熊本県熊本地方を震源とする最大震度6強の地震が発生した。震源は深さ12キロ、地震の規模を示すマグニチュード(M)は7・3と推定される。その後も大分県を含め震度6弱以上の地震が断続的に続いた。熊本県や各自治体によると、同県南阿蘇村で建物の下敷きになるなど、午後1時時点で20人が死亡し、14日の熊本地震以降の死者は計29人となった。九州で少なくとも948人が負傷し、16日午後1時現在、7万5469人が避難している。橋や道路の崩落、列車の脱線など交通網は各地で寸断。菅義偉官房長官は記者会見で「甚大な被害が発生した。復旧のため全力で取り組んでいる」と述べた。16日発生したM7・3の地震は、熊本地震のM6・5を上回り、1995年の阪神大震災と同規模。気象庁は「14日以降の地震は前震で(今回が)本震と考えられる」との見方を示した。九州の内陸部での地震では過去100年で最大規模。同庁は「このような規模の地震が広域的に続発するのは記憶にない」としている。各自治体の発表や遺族によると、死亡者は熊本市で2人、同県益城町で5人、嘉島町で3人、西原村で5人。八代市では火災が発生し、1人死亡した。県警によると南阿蘇村でも2人が死亡。また、同村の東海大近くのアパートでは1階部分が倒壊し14人を救出したが、うち男女計2人の死亡を確認した。このほか熊本市消防本部によると、市内で4人が心肺停止。政府によると、少なくとも約80人が重傷という。南阿蘇村では阿蘇大橋が崩落したほか、阿蘇市では国指定重要文化財の阿蘇神社の楼門が倒壊。宇土市、大津町の庁舎が一部損壊した。熊本市の熊本城では、国重要文化財の宇土櫓などが一部損壊している。各所で道路が寸断されており、南阿蘇村ではペンションや飲食店の従業員ら約120人が8カ所で孤立。山あいの温泉地が孤立状態にあるとの情報が相次いだ。大分県内でも家屋倒壊や土砂崩れが発生。同県別府市では別府港の一部が液状化した。14日の地震で最も大きな被害を受けた熊本県益城町は、再び大きな地震に見舞われ、減少傾向にあった避難者が再び増加。16日は7千〜8千人が、町総合体育館などで不安な朝を迎えた。(以下略)

*1-2:http://qbiz.jp/article/85018/1/
(西日本新聞 2016年4月16日) 阿蘇、大分も震源域に 九州横断の「溝」にずれ
 14日の熊本地震を上回るマグニチュード(M)7・3を観測した16日未明の地震は、強い揺れを引き起こし、九州に甚大な被害をもたらした。熊本地震について政府は15日、日奈久(ひなぐ)断層帯(約81キロ)の北端付近が引き起こしたと判断。ところが16日の地震は、熊本県の阿蘇外輪山から宇土半島付近に延びる布田川(ふたがわ)断層帯(約64キロ)のずれだと専門家はみている。その後、震源域は北東側に大きく移動してきており、地震が次の地震を呼ぶ連鎖が懸念されている。気象庁は、マグニチュードが大きい16日午前1時25分の地震を「本震」と位置づけ、熊本地震をその「前震」に格下げした。本震をもたらした今回の震源は、日奈久断層帯北端の北側、布田川断層帯に乗っている。東京大地震研究所の古村孝志教授(地震学)は「16日の地震は、熊本地震をきっかけに布田川断層帯が約30キロにわたってずれたことによる地震だ」と指摘する。震源の深さは約12キロと浅い。マグニチュードも「九州の内陸部地震では、この100年で最大だった」(福岡管区気象台)ことが、各地の被害を大きくした。さらに、その後の地震が特徴的な動きを見せている。14日までは熊本地震で震度7を記録した熊本県益城町が余震の主な震源域だったが、16日未明の地震以降、北東の同県阿蘇地方、大分県方面に移動し始めている。もともと、大分県の別府湾から阿蘇山などを経て長崎県の雲仙に至る区間は、地盤間の溝(別府−島原地溝帯)が走っているとされる。溝を境に南北方向に引っ張る力が岩板(プレート)にかかり、この地域にある活断層が「横ずれ」と呼ばれる動きを見せるのはこのためだ=イラスト参照。古村教授は「地溝近辺ではこれまで、大きな揺れがなくエネルギーがたまっているエリアが多い。地震が次の地震のきっかけになる連鎖が起きる可能性は否定できない」と注意を促す。「本震の後に余震が続き、やがて収束していく『本震余震型』の地震のパターンだけではない」と指摘するのは、鹿児島大の井村隆介准教授(地質学)。2日前から前震が確認されていた東日本大震災(2011年)がまさに「前震本震型」だったという。井村准教授は「今回の地震が本震なのかどうか、まだ分からない。これ以上の本震が今後あるかもしれず、余震が数カ月続くことも考えられる」という。

*1-3:http://www.nikkei.com/article/DGXLASGG16H4L_W6A410C1EA2000/?dg=1
(日経新聞 2016/4/16) 断層の巣、地震連鎖 気象庁「震源3つは前例なし」
 九州地方で14日夜から相次ぐ地震は、熊本から阿蘇、大分へと震源域が広がった。内陸の地震では異例だ。100キロメートル規模で地震活動が活発になったのは断層が集中する地域特有の地盤が影響している。今後どこまで広がるのかについては専門家でも意見が分かれている。飯尾能久・京都大学教授は「今回の地震はよくわからない、見たことのない現象が続いている」と話す。これまでも内陸で断層を原因とする地震はいくつも起きているが、広域でマグニチュード(M)6級の地震が続くのは珍しいからだ。気象庁も「離れた3カ所で大きな地震が起こるのは前例がない」と言う。地震活動が活発になっている地域の地盤には、南北方向に引っ張る力が働いている。このため、断層が水平方向にずれる「横ずれ型」の地震などが起こりやすい。大分県から熊本県にかけては、九州地方を東西に横断する「別府―島原地溝帯」と呼ばれる多数の断層を伴う地形がある。断層が集中すると、地震の群発につながりやすい。1つの断層が動いて地震が起こると、ほかの断層周辺にひずみがたまり、新たな地震を引き起こすという流れが考えられるからだ。政府の地震調査研究推進本部は14日夜に熊本県益城町で震度7の揺れを観測した地震について「日奈久(ひなぐ)断層帯」と呼ぶ活断層の北側がずれることで起きたとする。国土地理院は16日未明に発生したM7.3の本震に関し、日奈久断層帯の北側にある「布田川(ふたがわ)断層帯」で起きたと発表した。断層のうち約27キロメートルが約3.5メートル滑ったという。気象庁によると、熊本地方の地震発生回数は2004年の新潟県中越地震に次ぎ、過去2番目のペースで推移している。本震の後は熊本地方、阿蘇地方、大分県の3地域を中心に地震が相次いだ。国土地理院地理地殻活動研究センター・矢来博司地殻変動研究室長は「(本震が)周辺の断層に影響を与えた可能性がある」と指摘する。布田川断層帯の延長方向にある別府―万年山(はねやま)断層帯に飛び火したようにみえるからだ。別府―万年山断層帯を東に延ばすと、四国や紀伊半島など西日本を横断する巨大な断層構造「中央構造線」につながる。豊後水道を越えて四国地方にまで影響が及ぶ可能性もあるが、気象庁は「中央構造線が活発化しているというようにはみえない」との見解だ。名古屋大学の鈴木康弘教授も「四国地方は北西から南東の向きに圧縮する力が働いており、九州地方と根本的に地震のメカニズムが違う」と説明する。九州大学の松島健准教授は「今後、四国に延びるのか、反対側の長崎に延びるのかは分からない」と話す。地震が多い地域では今後も警戒が必要だ。熊本大学の松田博貴教授は「布田川断層帯の中の空白域や日奈久断層帯の南側のエリアで地震が起こる可能性が高い」と注意を呼びかける。日奈久断層帯の中央部や南西部では今後1カ月程度は注意が必要との指摘もある。

*1-4:http://mainichi.jp/articles/20160416/dde/041/040/038000c
(毎日新聞 2016年4月16日) 小規模噴火 地震と関連のデータなし 気象庁
 気象庁によると、16日午前8時半ごろ、熊本県の阿蘇山・中岳第1火口で小規模な噴火があり、噴煙が火口から約100メートルまで上がった。同庁は噴火警戒レベル2(火口周辺規制)を維持している。気象庁火山課は「(16日未明に同県で起こったマグニチュード7・3の)地震との関連を明確に示すデータは得られていない」としている。火山噴火予知連絡会副会長の石原和弘・京都大名誉教授(火山物理学)は「阿蘇山は地震前から噴火活動が続いており、このところの火山性微動のデータを見ていても、活発化する要因が見当たらない。今のところは、たまたま同じ地域で地震と噴火が重なったと見ていいと思う」と話した。

*1-5:http://qbiz.jp/article/84968/1/
(西日本新聞 2016年4月16日) 新幹線脱線の理由、その場は対象外だった
 JR熊本駅近くで起きた九州新幹線の脱線事故から一夜明けた15日、運輸安全委員会は鉄道事故調査官3人を派遣し、原因を調査した。JR九州が地震による脱線を想定しなかった区間で起こった九州新幹線初の事故。原因究明にも時間がかかりそうだ。JR九州によると、14日午後9時26分ごろ、熊本駅から約8キロ離れた熊本総合車両所に向けて回送中の列車が左側に脱線した。現場は、営業車両と回送の共用区間。通常通り時速80キロ程度で走っていた。運輸安全委の長田実・調査官は「(6両編成)すべての車両が脱線していた」と言う。現場は急カーブで、走行中の列車の傾きも大きい。運転士は同社の聞き取りに「強い揺れを感じて手動で列車を非常停止させた」と証言。同時に、地震を感知したら自動的に非常停止する装置が作動したことも確認したという。直下型で震源が近く、非常停止が間に合わなかった可能性がある。同社は2004年の新潟県中越地震時の新幹線脱線を受け、国やJR他社と対策を協議。この結果を踏まえ、活断層の活動が確実とみられる区間計27・5キロに車輪が引っかかる出っ張りをレールにつける「脱線防止ガード」や、脱線しても車両が線路を大きく外れないようにする「逸脱防止ストッパー」を設置するなど対策を進めていた。だが、事故の起きた区間は対象外だった。兵藤公顕新幹線部長は「これだけ強い地震は想定していなかった」と話す。大惨事を招きかねない新幹線の脱線は全国で4件目。この日、現場を視察した青柳俊彦社長は「(車両は)すさまじい状態だった。早い復旧に取り組みたい」と硬い表情で話した。

*1-6:http://qbiz.jp/article/85017/1/ (西日本新聞 2016年4月16日) 阿蘇大橋、俵山トンネルも崩落 国道57号やJR豊肥線が寸断
 16日未明から相次いだ地震により、熊本県を中心に交通網などに大きな影響が出た。橋やトンネルが崩落し、道路の寸断で被害確認が進まない地域も。熊本空港の発着便は全便欠航となり、JR九州も多くの路線で運転を見合わせた。国土交通省によると、南阿蘇村では大規模な土砂崩れがあり、国道57号やJR豊肥線が寸断、阿蘇大橋が崩落した。熊本市から阿蘇市方面に向かう主要な交通手段が断たれ、救助活動などに支障が出る恐れがある。熊本県によると、南阿蘇村と西原村にまたがる俵山トンネルも崩落した。

<川内原発>
*2-1:http://qbiz.jp/article/84932/1/
(西日本新聞 2016年4月16日) 川内原発は運転継続
 九州電力によると、稼働中の川内原発1、2号機(鹿児島県薩摩川内市)では設備損傷などの異常はなく、15日も通常運転を継続している。停止中の玄海原発(佐賀県玄海町)では、核燃料を保管している貯蔵プールなども含め異常は確認されていないという。  大分県から最短距離で約45キロに位置する四国電力伊方原発(愛媛県伊方町)は、施設内の装置では地震の揺れを感知しておらず「影響はない」としている。

*2-2:http://qbiz.jp/article/84967/1/
(西日本新聞 2016年4月16日) 川内、玄海「異常ない」 九電
 九州電力によると、稼働中の川内原発1、2号機(鹿児島県薩摩川内市)では原子炉や配管など設備に損傷などの異常はなく、15日も通常運転を継続した。停止中の玄海原発(佐賀県玄海町)では、核燃料を保管している貯蔵プールなども含め、異常は確認されていないという。大分県から最短距離で約45キロに位置する四国電力伊方原発(愛媛県伊方町)は、施設内の装置では地震の揺れを感知しておらず「影響はない」としている。

*2-3:http://qbiz.jp/article/84966/1/
(西日本新聞 2016年4月16日) 余震警戒の中、運転継続 川内原発 住民ら、安全性に不安の声
 熊本県を中心に震度7の地震に襲われ、最大震度6強の余震が140回を超える中、九州電力は全国で唯一稼働する川内原発1、2号機(鹿児島県薩摩川内市)の運転を継続している。政府も容認、原子力規制庁は「安全上、問題はない」との認識を示すが「より大きな地震の発生もあり得る」と指摘する地震学者もおり、地元住民からは不安の声が上がる。九電は15日、川内原発と玄海原発(佐賀県玄海町)敷地内の震度や揺れの最大加速度をホームページで公表した。最大で川内、玄海とも震度2、川内の加速度は11・8ガルだった。川内原発は水平方向に160ガルか、垂直方向に80ガルを超える勢いの揺れが発生した場合、原子炉が自動停止するように設定されており、九電は「自動停止の基準を超えておらず異常とは判断していない」と説明する。だが大地震に直面し、原発の安全性に不安を覚える住民は少なくない。薩摩川内市の女性(67)は「余震が何回も続くようなら原発の運転を止めてほしい」と話す。鹿児島県の市民団体「ストップ川内原発!3・11鹿児島実行委員会」は18日、九電と同県に対し川内原発を止めた上での総点検を申し入れる方針だ。熊本地震は原発の安全に関する国の情報発信の課題も浮き彫りにした。規制庁が原発に異常がないことを、ツイッターなどで一般向けに発信したのは地震発生から約12時間後の15日朝。一般向けに情報発信するのは、原発立地自治体で震度5弱以上の地震が発生した場合という内規があり、薩摩川内市は震度4だった。菅義偉官房長官の改善指示を受け、規制庁の松浦克巳総務課長は15日の記者会見で「反省する点が多い。一般国民に分かりやすい情報発信が大事。態勢整備も含めて工夫したい」と情報発信の在り方を見直す方針を示した。

*2-4:http://www.jiji.com/jc/article?k=2016041600197&g=pol
(時事ドットコム 2016年4月16比) 川内原発「停止の必要なし」=丸川担当相-熊本地震
 丸川珠代原子力防災担当相は16日午前、熊本地震の非常災害対策本部で、運転中の九州電力川内原発(鹿児島県)について、観測された地震動が自動停止させる基準値を下回っているとして「現在のところ、原子力規制委員会は停止させる必要はないと判断している」と報告した。

*2-5:http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201604/CK2016041702000107.html (東京新聞 2016年4月17日) 「川内」運転 住民ら不安 政府、地震域拡大でも静観
 熊本地震発生後も、新規制基準の審査に適合とされた原発として全国で唯一稼働中の九州電力川内(せんだい)原発(鹿児島県)は運転を続けている。政府は「止める必要はない」と静観の構えだが、地震活動が広がり、周辺の住民からは不安の声も上がる。九電などによると、通常は原発の半径五十キロ以内で震度4以上の揺れが観測された場合、国に状況を報告。原子力規制庁が原発に関する情報発信を強化した十五日以降は、距離にかかわらず震度5弱以上の全ての地震が報告対象となり、川内原発でも運転員が原子炉の状態をその都度確認し、現場パトロールも実施しながら運転を続けている。規制庁の担当者は「再稼働前の審査で、地震の揺れや外部電源の喪失、火山噴火に対する事業者の備えを確かめた。一連の地震で、その前提が崩れたとは考えていない」との立場だ。地震が拡大した大分県と豊後水道を挟んで四国電力伊方原発(愛媛県)がある。県と四国電は十六日未明、県庁で記者会見を開き、伊方1~3号機に異常はないと説明。四国電担当者は、再稼働前の最終的な手続きである3号機の使用前検査に「影響は出ないと思う」と強調、七月下旬の再稼働を目指す姿勢を変えていない。熊本地震でも原発の地元や周辺には動揺が広がる。川内原発のある鹿児島県薩摩川内市で飲食店を営む女性(71)は「運転は続けてほしいが、予測の付かない地震がこれだけ起こると心配がないわけではない」と話す。川内原発建設反対連絡協議会の鳥原良子会長は「川内原発周辺にも活断層があり、いつ南九州で大きな地震があるか分からない。とにかく運転を止めてもらわなければ」と語気を強めた。松山市の市民団体「伊方原発をとめる会」の和田宰(つかさ)事務局次長(63)は「再稼働の方針を考え直してもらいたい」と訴えた。
◆「異常あってからでは…」即時停止を 文化人6人要請
 九州で相次ぐ地震を受け、フォトジャーナリストの広河隆一さんら文化人六人が十六日、川内原発の即時停止を求める要請文を、九電に送ったと明らかにした。要請したのは他に、作家の落合恵子さん、沢地久枝さん、広瀬隆さん、ジャーナリストの鎌田慧さんと、若者のグループSEALDs(シールズ)の山田和花(のどか)さん。要請文では「異常があってからでは遅いということは、東京電力福島第一原発事故の経験から、誰の目にも明らか。人々は、次の大地震が川内原発を襲うのではないかという恐怖にさいなまれている」と記した。

<地震と原発>
*3-1:http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2016041602000142.html?ref=rank (東京新聞社説 2016年4月16日) 地震と原発 やっぱり原点に戻ろう
 日本はやはり地震国。九州を襲った「震度7」に再び思い知らされた。福島第一原発事故のそもそもの原因は、地震である。その原点に立ち戻り、原発の安全対策の在り方を再点検するべきだ。「今までに経験したことのない揺れだった」と、強い余震が繰り返される中、住民は不安に戦(おのの)く。「断層帯全体が動いたにしては規模が小さい」と専門家。さらに大きな地震の恐れがあった、ということなのか。あらためて思い知らされた。「いつでも、どこでも、強大な地震は起こりうる」。今月六日、福岡高裁宮崎支部は、今回の震源地からもさほど遠くない九州電力川内原発の運転差し止めを求める住民の訴えを退けた。高裁は、対策上想定される基準地震動(最大の揺れの強さ)を「極めて合理的」と判断した。住民側は「国内の原発ではそれを超える揺れが、二〇〇五年以降だけで五回観測されている」と観測地の過去の平均値から基準を割り出す手法に異議を唱えていた。瓦や石垣が無残に崩れ落ちた熊本城の姿を見ても、同じ判断ができただろうか。国会の福島第一原発事故調査委員会は、原因は津波だけでなく「地震による損傷の可能性も否定できない」と指摘。「小手先の対策を集積しても、根本的な問題は解決しない」と結論づけた。ところが、電力会社も原子力規制委員会も、地震の揺れを甘く見すぎてはいないだろうか。その象徴がくしくも九電だ。九電は、川内原発の再稼働がかなうやいなや、事故対策の指揮所になる免震施設の建設をあっさりと引っ込めた。それでも原子炉は止められない。原発は無数の機器と複雑な配管の固まりだ。見かけは正常に動いていても、強い震動がどの部位にどんなダメージをもたらすか。その積み重ねがどんな結果につながるか、未解明のままなのだ。断層のずれは、想定外の地震を起こす-。熊本地震の教訓だ。規制委の審査を終えて次回再稼働候補とされる四国電力伊方原発の近くには、日本最大の断層である中央構造線が走っている。今回の被害を教訓に、起こり得る地震の規模や影響をじっくりと検討し直すべきではないか。「いつでも、どこでも、強大な地震は起こる」。地震国日本では、これこそ社会通念であり、一般常識だからである。

*3-2:http://www.jiji.com/jc/article?k=2016041100766&g=pol
(時事ドットコム 2016.4.11) 原発ゼロを参院選争点に=小泉元首相
 小泉純一郎元首相は11日、仙台市内で記者会見し、「選挙が間近に迫って、野党第1党が(即時)原発ゼロを言い出せないのが不思議だ。争点にして戦う価値のある問題だ」と述べ、民進党に対して夏の参院選では脱原発を掲げて戦うよう注文を付けた。小泉氏は、「原発ゼロを宣言すれば、多くの国民は賛同する。首相だったら、なぜこのチャンスを生かさないのか歯がゆい」と語り、安倍晋三首相の原発政策に疑問を呈した。 また、衆参同日選が取り沙汰されていることについては、「結局は首相の判断で決まってくるから、(是非は)言わないようにしている」と語るにとどめた。


PS(2016年4月18日追加):*4-1、*4-2のように、九州新幹線は100ヵ所で地震による被害を受け、電気は阿蘇市、南阿蘇村、益城町などの約3万5400戸で停電し、ガスは西部ガスは熊本市など2市5町の約10万5千戸への供給を停止しているが、プロパンガスは約7割で復旧作業を終えたそうだ。ここでわかることは、エネルギーは分散型にした方が災害時の供給停止リスクも軽減されるということだ。
 また、いくらなんでも阿蘇山の近くや断層の上に住宅を建てるのはリスク管理に不備がある上、人口減少の時代でもあるため、復興時の街づくりでは、高齢者や一般市民は熊本市の近くなどにコンパクトに集め、阿蘇山の近くは農業(畜産、オリーブ、アーモンド等々)を中心とする徹底して美しい田園地帯に変えた方がよいと考える。なお、*4-3のように、熊本県の入院患者を県外に移送しているのは妥当で、既にドクターヘリが普及しているため、これを使えばよいだろう。

 
 2016.4.18西日本新聞  2016.4.16西日本新聞     2016.4.18日経新聞        

*4-1:http://qbiz.jp/article/85057/1/
(西日本新聞 2016年4月18日) 九州新幹線100ヵ所被害 停電3万、ガス停止10万戸超 
 電気やガスなどのライフラインや九州各地を結ぶ交通網は、17日も地震の影響が続き、各社は対応に追われた。18日からは九州新幹線で脱線した車両の撤去が始まる予定だが、運行再開時期のめどは立っていない。九州電力によると、17日午後11時現在、熊本県で地震の揺れが大きかった阿蘇市や南阿蘇村、益城町などを中心に約3万5400戸が停電中。九電からの要請を受け、大手電力8社は復旧作業員の派遣を決めた。西部ガス(福岡市)は、熊本市など2市5町の約10万5千戸への供給停止を継続している。熊本県LPガス協会(熊本市)によると、17日午前までに同県内のプロパンガス世帯の約7割で復旧作業を終えたという。国土交通省によると、九州新幹線は高架橋の亀裂など約100カ所に被害が見つかっており、18日以降も全線で運休。JR九州の在来線は鹿児島線の一部などで運転を見合わせる。高速道路は、土砂が流入するなどした熊本県や大分県の一部区間で17日も通行止めが続いた。高速バスは福岡と九州各地を結ぶ路線などで終日運休。西日本鉄道(福岡市)は18日の高速バスの運行について、同日早朝に判断するという。ターミナルビルの壁面にひび割れなどが見つかった熊本空港(熊本県益城町)は17日、全便を欠航。「施設の安全確認が終わっていない」として18日も全76便を欠航する。

*4-2:http://qbiz.jp/article/85054/1/ (西日本新聞 2016年4月18日) 地震連鎖南西にも 日奈久、布田川2断層の延長上 八代で多発、四国に波及も
 熊本県にある日奈久(ひなぐ)、布田川(ふたがわ)両断層帯が14日と16日に相次いで大きく破壊され、震度6強を超える地震を引き起こしたのを発端に、もともとエネルギーをためている周辺断層への「連鎖」が懸念されている。両断層帯でひずみが残っている区間や、既に地震が多発する大分県から海峡を経て四国方面の断層などに影響は出ないのか。14日に震度7の揺れを記録した日奈久断層帯について気象庁と政府の地震調査委員会は17日、「南にも活動が広がっている」との見解を示した。熊本県八代市などで微小地震が発生しているためだ。政府はもともと、同断層帯を三つに区分。14日に地震をもたらした北部の「高野−白旗」区間より南、八代市などを通る「日奈久」「八代海」両区間の地震発生確率は全国の主要断層で上位だ。東京大地震研究所の古村孝志教授(地震学)は「日奈久断層帯の南側では、地震発生に注意が必要だ」と警戒を呼び掛ける。日奈久断層帯の南部で大規模地震があった場合、心配されるのが九州電力川内原発(鹿児島県薩摩川内市)への影響。調査委メンバーの一人は「影響は分からない。だが、原発を慎重に運転すべきだとの考えは、一つの見識として否定しない」と言葉を選んだ。古村教授は、16日未明の地震で動かなかった布田川断層帯の西側区間や、日奈久断層帯の南東方面にある緑川断層帯での「連鎖」の可能性も指摘する。懸念はさらに広い地域に及ぶ。大分県では17日も由布市を中心に地震が続いた。同市には、別府湾内から同県西部まで東西に別府−万年山(はねやま)断層帯が走っており、16日の布田川断層帯の影響を受けているとされる。この断層帯から東には、愛媛県から四国電力伊方原発(愛媛県)付近を経て奈良県まで続く中央構造線断層帯も控える。1596年の慶長地震では、関西や中央構造線、別府湾での地震が連動していたとの見方もある。このため、九州大地震火山観測研究センターの松島健准教授(地震学)らは、愛媛県などに新たな観測点を設けることを検討中。松島准教授は「プレート(岩板)内の地震の連鎖がいつ止まるのか、見極める必要がある」と話す。さらに、プレート間の南海トラフ地震を誘発する可能性はないのか。京都大地震予知研究センター宮崎観測所の寺石真弘助教(測地学)は、日向灘の海上地震計のデータを注視する。「今のところ大きな変化はみられないが、引き続き警戒していく」としている。

*4-3:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20160418&ng=DGKKZO99760980X10C16A4CR8000 (日経新聞 2016.4.18) 患者 相次ぎ県外搬送 断水・停電、病院余力なく
 16日未明以降、最大震度6強の本震などで被害地域が広がったことを受け、入院患者を県外に移送する医療機関が相次いでいる。広範囲で断水や停電が続く中、新たな入院患者を受け入れる余力が県内の医療機関から失われつつあることが背景にある。熊本市中央区の「くまもと森都総合病院」では17日昼すぎから、入院患者が次々とストレッチャーなどに乗せられ、他の医療機関に搬送された。同病院は震度7を観測した14日夜の地震後、入院病棟の壁にひび割れや水漏れが見つかった。16日未明の地震でさらにひび割れが拡大。「患者の安全を確保できない」と判断し、移送を決めた。当初は移送先として近隣の医療機関とも交渉したが、受け入れ先を見つけることは難しかった。山中剛副院長は「熊本市内の病院は断水などで受け入れ余力がない。県外への搬送を進めざるを得ない」と話す。同病院のように16日未明の地震で建物に深刻な被害を受けた医療機関は少なくない。さらに県内の医療機関は断水や停電の影響で十分な医療を提供できなくなっている。被災地に入った災害派遣医療チーム(DMAT)には16日以降、県内の医療機関が受け入れられないことから、負傷者などの県外搬送の依頼が急増。県災害対策本部によると、16~17日の2日間だけで、ドクターヘリなども使って700人以上を福岡、佐賀、宮崎、鹿児島の4県に運んだ。


PS(2016年4月17日追加):熊本城は地震で大きな被害を受け、天守閣の屋根や石垣が壊れ、国の重要文化財である東十八間櫓、不開門、長塀なども崩壊したため、*5-1のように修復を要する。そこで、せっかくなら(耐震構造でありながらも)歴史に忠実に復元し、パリのルーブル美術館やオーストリアのシェ―ンブルン宮殿のように、安土桃山時代・江戸時代の美術品(絵画、屏風、襖絵、着物、焼き物、漆器など)を展示したり、内部で茶会や能などの催しを行ったりすれば、日本中世の生きた歴史館となって観光上の価値も上がると考える。

  
被災後の熊本城             被災前の熊本城、外部と内部
 *5-1より   
*5-1:http://mainichi.jp/articles/20160418/k00/00m/040/034000c
(毎日新聞 2016年4月17日) 熊本地震、熊本城「修復に10年以上」…事務所見通し
 熊本城総合事務所は17日、熊本地震で大きな被害に遭った熊本城について、「修復に10年以上を要する可能性がある」との見通しを明らかにした。総合事務所によると、天守閣は石垣が崩落し、建物全体が傾いている状態になっている。他にも、1600年初頭の築造当初の建造物で、国の重要文化財に指定されている▽東十八間櫓(ひがしじゅうはちけんやぐら)▽不開門(あかずのもん)▽長塀(ながべい)−−などの五つが崩壊。周囲の道路にも地割れの被害が出ている。河田日出男所長は「予想だにしない事態でショックを通り過ぎて言葉が出ない。被害状況が詳細に把握できていないが、年単位の修復は間違いない」と話し、今後、文化庁とともに詳細な調査にあたるという。大西一史市長は「県民のシンボルが損傷しているのはつらい状況だ」と語った。

*5-2:http://www.manyou-kumamoto.jp/contents.cfm?id=471
■熊本城のあゆみ
<熊本城歴史年表>
1496年(明応5年)鹿子木親員、茶臼山西南麓(現在の古城)に築城
1550年(天文19年)大友宗麟が城主を鹿子木氏から城親冬にかえる 
1587年(天正15年)豊臣秀吉が佐々成政を肥後の領主とする
1588年(天正16年)加藤清正、隈本城に入城
1601年(慶長6年)茶臼山に築城着手
1607年(慶長12年)新城完成、隈本城を熊本城に改称
1611年(慶長16年)清正死去、加藤忠広が相続
1632年(寛永9年)細川忠利肥後54万石領主として熊本城入城
1871年(明治4年)廃藩置県により肥後藩が熊本県となる鎮西鎮台を熊本城内に設置
1877年(明治10年)西南戦争、熊本城炎上
1927年(昭和2年)宇土櫓解体修理、長塀改築
1933年(昭和8年)熊本城全域を史跡に、建造物を国宝に指定
1950年(昭和25年)国宝建造物が重要文化財に指定(文化財保護法改正)
1955年(昭和30年)史跡熊本城跡が特別史跡に指定
1960年(昭和35年)熊本城天守閣が復元落成
1989年(平成元年)数寄屋丸二階御広間復元
1991年(平成3年)9月の台風19号で甚大な被害を受けたため、天守閣を大改修
1993年(平成5年)旧細川刑部邸を東子飼町から三の丸に移築復元
2002年(平成14年)南大手門復元
2003年(平成15年)戌亥櫓、未申櫓、元太鼓櫓復元
2005年(平成17年)飯田丸五階櫓復元
2008年(平成20年)本丸御殿大広間復元
2009年(平成21年)第Ⅱ期復元整備事業着手


PS(2016/4/19追加):*6-1、*6-2のように、阿蘇の草地を利用した畜産は、放牧することで脂肪が少なく蛋白質の多い牛肉ができるため、ヘルシーという付加価値がつき、さらに草地を利用することによってコスト削減もできる。そのため、私は、阿蘇は畜産や酪農によい場所だと考える。さらに、オリーブやアーモンドは山間地でも作りやすく、阿蘇九重(くじゅう)国立公園の景色をさらによくするだろう。
 また、*6-3、*6-4のイベリコ豚は味の良いことで有名だが、どんぐりの林と牧草地が必要で、これらは中山間地の耕作放棄地でも容易に作れる。そのほか、地熱を利用した施設園芸も有利で、農林中央金庫は、本来は、このようなことをリサーチして融資や投資を行うべきなのである。


                阿蘇九重(くじゅう)国立公園の阿蘇山
     
     阿蘇の放牧      桜に似た花の咲く   トスカーナのオリーブ畑   イベリコ豚の放牧
                    アーモンド畑               
*6-1:http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=37027 (日本農業新聞 2016/4/19) 酪農、繁殖を優先 畜産経営継承支援 生産基盤強化急ぐ JA全国機関
 JA全国機関は畜産・酪農で中止した経営を新たな担い手に引き渡す「JA畜産経営継承支援事業」で、2016年度は酪農と肉用牛繁殖経営を優先して実施する。戸数の減少が続いており、生産基盤の強化が急務だと判断した。引き継ぐ経営体の規模が大規模化していることに対応するため、1案件当たりの支援額の上限も引き上げた。事業は全中と全農、共済連、農林中央金庫の資金助成で01年度に創設した。中止した経営を引き受け、組合員やJA出資法人などに引き渡すJAの取り組みを支援する。経営中止者の施設を補修する費用や、継承先に貸し付ける家畜を導入する費用、経営継承のための部署の設置といった体制整備にかかる費用などを助成する。予算は総額5億円で、1県域当たりの助成額の上限は従来通り原則6000万円とした。一方で1継承案件当たりの助成額の上限はこれまでの原則2000万円を3000万円に引き上げた。経営の大規模化で引き継ぐ施設も大型化するなど、継承にかかる費用が膨らんでいることに対応する狙いだ。各県域で中央会・連合会でつくる協議会が、JAからの申請を6月末まで受け付ける。全国機関の協議会の審査を経て、10月に結果を通知する流れ。肉用牛は繁殖農家の減少に伴い、子牛の頭数減と価格高騰が問題化している他、酪農家も戸数の減少が止まらない。こうしたことから、16年度は肉用牛繁殖、酪農経営を優先的に支援する方針だ。事業を未活用の県域への推進も図る。同事業は15年度までに16県域の60JAを支援。助成総額は18億3900万円で、支援した経営形態は酪農が144件、肉牛が46件、養豚が18件、採卵鶏が3件となった。

*6-2:http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=36751 (日本農業新聞 2016/3/26) 粗飼料 不足時に供給めざす 草地27ヘクタール管理 JAおきなわ八重山地区畜産振興センター
 JAおきなわ八重山地区畜産振興センターは2016年度から、草地を管理して牧草を畜産農家に供給する事業を本格的に始める。計27ヘクタールの草地で牧草を収穫し保存、主に粗飼料が不足しがちな冬季に安く供給する。価格は輸入粗飼料の3分の1程度と格安だ。JAは「コスト削減と増頭に貢献する」と強調する。JAは、20年ほど前から草地13ヘクタールを管理。主に家畜市場で、週に1度の船便の到着を待つ牛に与える粗飼料を賄ってきた。ここに、新たに国の特定地域振興生産基盤整備事業で整備した草地14ヘクタールが加わった。計27ヘクタールと東京ドーム6個分の広さとなり、生産者への販売を本格化できると判断した。施肥や収穫、乾燥、ロールラッピングなどはJA利用課が担う。栽培するのは、嗜好(しこう)性が高いとされる暖地型牧草の「ローズグラス」や「トランスバーラー」。天候にもよるが、年1700ロール(1ロール300キロ)の収穫を見込む。うち800ロールが家畜市場に回り、残りを約700戸の畜産農家に販売する。
●価格 輸入の3分の1
 肥料などのコスト負担もJAが請け負うが、販売価格は1ロール6500円に抑える。JAによると、輸入粗飼料は1キロ60~70円ほどなので、JAの販売価格は3分の1ほどになる計算だ。刈り取った草の一部はトラクターの格納庫などで保管し、粗飼料が不足する冬季に販売。50トン程度を輸入粗飼料から置き換えられるとみる。既にJAが粗飼料を販売している畜産農家からは「自前の草が足りなくなる時期に安く買えるので助かる」などの声が上がる。JA畜産部の幸喜英信課長は「価格メリットは大きいはず。JAが粗飼料生産を手掛けることで、増頭を後押ししたい」と強調する。

*6-3:http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=37026
(日本農業新聞 2016/4/19) スペイン産豚、輸入量3倍に 現地の相場安が要因
 スペイン産豚肉の輸入量が5年間で約3倍に伸びている。現地の生産量が増え、相場が下がったことが要因。多くは加工原料用に回っている。輸入の動きは今後も活発な見込みで、一部のスーパーでは「イベリコ豚」など、国産と競合する高級品の扱いを増やす例も出始めている。東京都内の大手食肉加工業者は2015年度、同国産の輸入量を前年度より2割近く増やした。主にハムやソーセージの原料として使う。バイヤーは「価格が下がり、冷凍品は米国産より買いやすい」と強調する。今年度も増やす計画だ。スペイン産の輸入量は15年度(16年2月まで)、7万3758トン。前年度実績を既に4.8%上回っている。前年度超えは6年連続。年度累計では、冷凍品の国別輸入量で米国を初めて抜き、デンマークに次ぐ2位になったとみられる。欧州委員会の統計によると、同国産の15年の枝肉価格は、前年より2割ほど安かった。生産量が増えたのが要因。15年は前年比7.6%増の約390万トンだった。豚飼養頭数が欧州連合(EU)で最多になるほど、増産が目立っている。ロシアがEU域内産の輸入を禁じたことも日本への輸出意欲を高めた。生産量はイベリコやデュロック種といった上位の銘柄を含めて「全般的に伸びている」(スペイン大使館)もようだ。スーパーでは「黒豚」など国産銘柄豚と売り場を奪い合う場面も目立つようになってきた。首都圏で展開するいなげや(東京都立川市)は今年度、さしが細かく入る「霜降り」が特徴のデュロック種の精肉販売を増やす。前年度の売れ行きが好調だったためだ。バラ肉は100グラム258円(税別)と、鹿児島産「黒豚」と大差ない価格だが、「お客からの評価は良い」(広報担当)という。別のスーパーでは15年度、「イベリコ豚」の売り上げが前年度と比べ55%伸びたと明かす。

*6-4:http://www.pedronieto.com/jp/crianza.asp (イベリコ豚の飼育)
 最近になって、牧畜業者の経験から、豚に更にバランスの良い食餌を与えることになりました。現在、イベリコ豚は遅くとも生後10ヶ月目からどんぐりを食べ始めます。それ以前は、骨格がよく発達しバランスよく成長するように、離乳後、まだ子豚のうちは高品質の選び抜かれた飼料を与えます。この方法によってのみ、理想的な体重、状態で山の放牧地に移る、優れた豚が育てられるのです。イベリコ豚の食餌は大変重要で、肉の質に決定的に影響します。当然生ハムや他の製品の質にもです。どんぐり(樫の一種アルコルノケの実)のタイプと質、どんぐりと草のバランス、一定に決められた牧草地の中で餌を食べる豚の数なども関係があります。これによってそれぞれの豚のグループが独自の特徴を持つようになり、つまり製品の質に影響するようになるのです。全ての豚のグループは唯一であり、そこから生ハムの不一定性が生じると言えます。豚の屠殺は、祭礼儀式のようなものであり、お祭りのようなものでした。主に冬場の、自然界が人に食物をあまり供給してくれない時期に行われ、一年分の肉を備えるために行われるものでした。自給自足を基本としていた経済社会においてマタンサ、またはモンドンゴとも呼ばれた豚の屠殺の行われる日は「冬場の貧人の満腹」を意味していました。マタンサの歴史をたどればそれは人類の始まりにまで遡らなければならないでしょう。人は食べるために動物を常に犠牲にしてきたのです。
●放牧場
 豚はエンシーナ、アルコルノケ、ケヒーゴといった木々から自然に落ちるどんぐりを利用する形で食べます。これらの木々の茂った放牧地の存在なくしてはイベリコ豚は育ちません。ここでイベリコ豚はどんぐりだけではなく、草や、野生の木の実、小動物、爬虫類、かたつむりやなめくじ、その他の昆虫などを食べ、これが、生ハムに素晴らしい自然の香りと味を与えるのです。さらにこの生息環境では、豚は歩き回ることによって運動し、それによって、より柔らかな、過剰な水分のない、その結果グリコーゲンが豊富な肉となるのです。
●放草地
 当社の放草地はカセレスに位置するエル・プンタル・デ・アリーバと言う名のものとアンダルシア地方のものがあります。エンシーナやアルコルノケの木々に囲まれて、豚はその適切な成長に欠かせない、どんぐりを食べて育つのです。


PS(2016.4.20追加):*7-1のように、被災地は、耐震基準強化前に建築された古い家が多く、益城町では、5400棟が損壊し、そのうち750棟が全壊したそうだ。しかし、*7-2のように、国民もふるさと納税で応援し始めており、*7-3のように、政府も予算を付けている。九州は、これまで感覚的に地震は他人事のようなところがあり、下の表のように、1981年建築基準の耐震基準を満たしている住宅の割合も低いが、今回はとりあえず原発事故は起きていないため、すぐ復興に取りかかれる。そのため、この際、決してつぎはぎだらけで元に戻す“復旧”をすることなく、(それこそ頭を柔らかくして)人口減少や高齢化を見据え、災害に強くてコンパクトな環境配慮型の美しい街づくりをして欲しい。なお、家に戻れず避難している被災者には、*7-4のように、周囲の自治体や民間業者が空き室を提供するのが無駄がないため、国はこれに対して住居費・家電などの支援を行い、最終的な復興を急いだ方がよいと考える。

     
      2016.4.20日経新聞             2016.4.19、20佐賀新聞    2016.4.20
                                                      西日本新聞
*7-1:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20160420&ng=DGKKZO99858240Q6A420C1CR8000 (日経新聞 2016.4.20) 
旧耐震基準の全壊目立つ 益城町 新基準、熊本76%どまり
 熊本地震による被災地で、家屋被害の状況が分かってきた。最大震度7を観測した熊本県益城町では700棟以上が全壊だった。建築基準法で耐震基準が強化された1981年以前に建てられた古い家屋の被害が目立つという。住宅の耐震化率の向上は全国的な課題になっている。同町などによると、これまでに5400棟の損壊を確認しており、うち750棟が全壊だった。調査が進むにつれ、被害は拡大するとみられる。この地域には古い家屋が多い。調査にあたった同町の杉浦信正都市計画課長は「全壊した家屋には旧耐震基準のものが相当数含まれていた」と話す。基礎部分がコンクリートではなく石に木の柱を立てた簡易な構造だったり、現行基準より重い屋根瓦が使われたりしていた。同町では14日に震度7を観測して以降、16日未明の本震を含め大きな揺れに何度も見舞われた。杉浦課長は「最初の地震で柱が土台の石からずれるなど構造にダメージが生じ、その後に重い屋根が揺さぶられて倒壊したケースが多いのではないか」とみている。81年の建築基準法改正で、住宅の耐震基準は引き上げられた。それまでの「震度5強で損傷しない」に加え、震度6強~7でも倒壊しない耐震性を求められるようになった。国の調査では、全国の住宅約5200万戸のうち新基準を満たす住宅は約82%。熊本県は76%にとどまる。県は講演会などで補強工事の必要性を訴えてきたが、建築課の担当者は「南海トラフなど地震の予測がある他県に比べ、危機感が薄い面は否めない」と認める。ただ耐震化の遅れは全国的な課題だ。首都直下地震が想定される東京都は、約663万戸の耐震化率の推計値は約83%(昨年3月時点)。政府が昨年度までの目標とした90%に届かない。建て替えや補強には費用がかかるほか、マンションでは住民の合意形成が必要なケースもあるためだ。名古屋大学減災連携研究センターの福和伸夫教授(耐震工学)は「都市部も補強工事に積極的とはいえない」と指摘。国が安価で効果的な工法を認定して補助金を出すなど「市民が震災を『我が事』として捉えやすい環境をつくる必要がある」としている。

*7-2:http://qbiz.jp/article/85214/1/ 
(西日本新聞 2016年04月20日) ふるさと納税急増 4日で1億円、熊本県と南阿蘇村
 熊本地震で大きな被害を受けた熊本県と同県南阿蘇村に対する「ふるさと納税」が急増している。民間サイト集計によると16日以降、5300件、1億円に迫る。東日本大震災では、日本赤十字社などを通じた義援金の被災地への分配が遅れたり、使い道が見えにくかったりしたことが、寄付者たちの不満となった。ふるさと納税は出身地だけでなく、寄付する自治体を自由に選べる点が評価されており、被災地を支える新たな手法として全国に広がりつつあるようだ。
     ◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎
 「何もできませんが、九州・熊本を応援しています!」「復興に少しでもお役に立てれば幸いです」−。
 ふるさと納税をインターネット上で募る民間サイトの運営者によると、寄付とともに被災地を励ますメッセージも寄せられているという。全国からの寄付の総額はわずか4日で熊本県に約4620万円(約2千件)、南阿蘇村に約4850万円(約3300件)に上る。民間サイトと連携し、被災自治体への納税手続きを、他地域の自治体が支援する新たな仕組みも生まれている。茨城県境町(さかいまち)は、震災対応に追われる熊本県への寄付を同県の代わりに受け付け、寄付者に「受領証明書」を発行するなどの事務を代行している。境町が遠い九州の被災地支援を買って出たのには、理由がある。昨年9月、鬼怒川が決壊するなど町に甚大な被害をもたらした豪雨災害。町に約1800万円のふるさと納税が集まり「被災者支援や復興に活用できた」(町担当者)との思いがあるからだ。民間サイトには「境町さんのすばらしいご協力に感謝」などの称賛も相次ぐ。ふるさと納税は、税額控除や寄付先からの特産品の返礼など、寄付者側のメリットにばかり注目が集まりがち。被災地支援を目的に募った今回の寄付は全て、寄付者に対する“見返り”はなく、被災地への純粋な支援金となる。民間サイトも今回は、手数料なしで代行業務を請け負っている。被災者支援などの業務に追われる南阿蘇村の幹部職員は「村を支援したいと思ってくれる人たちが全国にいることは、本当にうれしいし、励みになる。感謝したい」と話す。
*ふるさと納税 個人が出身地だけでなく、応援したい地方自治体に寄付をすると、2千円の自己負担を除いた金額が、所得税や居住地の住民税から軽減される制度。地域間格差の是正を目的に、2008年に創設された。高級な牛肉や海産物など、自治体がお礼に贈る特典が好評で、寄付額は増加傾向。2015年度上半期は総額453億5500万円だった。一方、寄付獲得のため特典の豪華さを競う動きを懸念する声もある。

*7-3:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/302800 
(佐賀新聞 2016年4月19日) 熊本地震で政府、復旧へ補正予算検討、がれき処理や橋再建
 政府は18日、熊本、大分両県を中心に相次ぐ地震の復旧・復興事業を進めるための2016年度補正予算案を編成する方向で検討に入った。がれき処理や土砂崩れの復旧工事、崩落した阿蘇大橋(熊本県南阿蘇村)など公共施設の再建を念頭に置く。緊急的に必要な支援の経費は、成立済みの16年度当初予算を振り替えたり3500億円の予備費を活用したりして優先的に確保する。住宅やインフラなどの被害の程度を見極めて予算額を詰める。夏の参院選後に開く臨時国会へ経済対策の補正予算案提出を検討しており、震災復旧費をそれに上乗せする想定だが、復旧予算の確保を急ぐ必要が出てきた場合は地震関連を先行させる可能性がある。安倍晋三首相は18日の衆院環太平洋連携協定(TPP)特別委員会で、今回の地震を復旧事業への国の補助率を引き上げる激甚災害に早期指定する意向を表明した。補正予算編成の可能性を問われ「必要なあらゆる手段を講じていきたい」と強調。予備費の活用などと合わせ、復旧費を「国がちゃんと負担していく」と述べた。

*7-4:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/303083 (佐賀新聞 2016年4月20日) 空き室184戸、県内公営住宅被災者に、受け入れ準備急ぐ みやき町は1世帯入居
 強い余震が続く熊本地震を受け、佐賀県内の自治体は空き室の公営住宅を活用して被災者を受け入れる準備を進めている。県のまとめでは、14市町の128戸、県営56戸の計184戸が受け入れ可能で、運用ルール作りを急ぐ。既に避難者が入居した自治体も出ている。県建築住宅課によると、公営住宅での受け入れは東日本大震災時に準じた運用ルールになる見込み。使用料や敷金、保証人は不要で入居期間は6カ月程度とし、状況に応じて更新する。罹災証明も必要になるが、建築住宅課は「被災地の状況次第で証明はなかなかすぐに発行されないため、『後日提出』も検討したい」と柔軟に対応する。東日本大震災では雇用促進住宅の活用なども含めて対応し、10県から計196世帯512人を受け入れた。今回の地震でどこまで対応するかは避難状況を見ながら判断する。既に受け入れを決めた自治体もある。三養基郡みやき町は19日、熊本県からの1世帯3人を町営住宅に受け入れた。末安伸之町長は「『一週間ほど車上生活でもいいから滞在したい』と相談があった。せっかく町を頼ってこられた方にそんな不自由はさせらない」と語る。このほか、武雄市が市営住宅「久保田住宅」の12戸とたけお競輪場の選手宿舎30室を家賃無償で貸し出す。


PS(2016.4.21追加):今回の九州大地震では、*8のように、熊本県の阿蘇や大分県の温泉街を周遊するツアー客はキャンセルが多く、その影響は熊本・大分に留まらず、福岡・佐賀・長崎・宮崎・鹿児島まで広がってホテルや旅館に空き室が増えている。そのため、どうせ短期間で壊してしまう仮設住宅を建てるより、国の負担で借り上げして家をなくした被災者をしばらく滞在させるのがよいと思う。

    
   地層の縦ずれ                2016.4.21西日本新聞(被害状況)

*8:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20160421&ng=DGKKASDC20H04_Q6A420C1EA1000 (日経新聞 2016.4.21) 熊本地震の影響懸念 九州、ツアー中止相次ぐ
 政府がたてた2020年の訪日客数の目標は4000万人。15年度の約2倍で、実現への道のりはまだ遠い。熊本地震も先行きに影を落とす。九州は韓国や中国と近く、訪日客は4年続けて過去最高を更新した。福岡から入り、熊本県の阿蘇や大分県の温泉街を周遊するツアー客も多い。大分県別府市の観光名所、地獄めぐり。近くの飲食店街では、いつもなら屋外まで並べられているテーブルといすが片付けられ温泉蒸気だけが勢い良く噴き出している。「地震後はキャンセルの電話ばかり」。JR別府駅近くの大手ホテル社長は嘆く。観光庁によると、中国政府は九州への渡航に注意喚起を出した。韓国でもツアーの中止やルート変更を決める会社が出ている。余震の不安に加え、九州新幹線や高速道路の復旧の見通しが立たず、福岡や鹿児島にも影響が広がっている。城山観光ホテル(鹿児島市)は5月末までの宿泊で2割弱のキャンセルが出ているという。観光庁の田村明比古長官は「地震の影響は少なからずある。最小限に抑えるために正確な情報発信に努める」と話す。


PS(2016年4月21日追加):*9の「①おにぎりじゃ戦はできない」「②物資配送の滞りは自治体の責任」と内閣副大臣が言ったと非難しているが、私もTVを見ていて白米のおにぎりしか配っていないのには呆れた。何故なら、白米のおにぎりだけでは戦ができないどころか被災者の健康維持ができないからで、どうせ持って行くなら弁当を作っておかずも一緒に持って行けばよく、それは周囲の自治体がやる気を出せばできた筈だ。そして、その請求書を国にまわすべく前もって話をしておけば問題はないため、中学校程度の栄養学の知識とやる気があったか否かが問題なのだ。②については、「90万食・・」というのが早くから言われていたので、届けることが仕事の人が被災者に届けなかったのが問題なのである。 

*9:http://qbiz.jp/article/85364/1/
(西日本新聞 2016年4月21日) 政府現地本部長交代 暴言続き地元がNO、事実上の更迭
○食事におにぎり→「こんな食事じゃ戦はできない」
○物資配送の滞り→「あんたら(地元自治体)の責任。政府に文句言うな」
 政府は20日、熊本地震の政府現地対策本部長を松本文明内閣府副大臣から酒井庸行内閣府政務官に交代したと発表した。松本氏は15日から、熊本県庁内の対策本部で政府と被災地の連絡調整を担っていたが、言動を熊本県や被災自治体から批判されており、事実上の更迭との指摘がある。菅義偉官房長官は交代理由を「昼夜たがわず食料支援などで指揮をした。体力面を考慮した」と説明。河野太郎防災担当相は「交代は予定通り」と強調した。一方、政府関係者は西日本新聞の取材に「(松本氏は)県との連携がうまくいっていなかった」と認めた。別の関係者も、松本氏が本部長を続ければ「政権に大打撃となる。早め早めに手を打った」と話した。関係者によると、松本氏は食事におにぎりが配られたときに「こんな食事じゃ戦はできない」と不満を口にした。避難所への支援物資配布を巡って「物資は十分に持ってきている。被災者に行き届かないのは、あんたらの責任だ。政府に文句は言うな」と、地元の自治体職員に声を荒らげたこともあったという。県や被災自治体は「松本氏が震災対応の邪魔になっている」と不信感を募らせていた。松本氏は政権幹部に電話で「怒鳴ってしまいました」と謝ったという。松本氏は20日、官邸で安倍晋三首相に報告した後、記者団に「びしびしと言い過ぎたことが批判につながっているなら、甘んじて受ける」と語り、おにぎりの件について「そういう事実はない」と否定した。


PS(2016年4月22日追加):*10-1のように、「佐賀県有明海漁協が県産のり発送」「佐賀熱気球パイロット協会が救援物資輸送」というのは、普通の人が気づかない能力を活かした支援で感心した。また、「浜玉町の旅館が使用していない部屋7室(各8畳程度)と温浴施設を無償提供」などというのも助かるだろう。なお、寒い中で募金活動をしている人も見かけて感心するが、募金では大した金額が集まらないので、力自慢の人や高校生は、茫然としている人のところへ、休みの日に後片付けや整理の手伝いに行ってはどうだろうか?さらに、JR九州も余力のある弁当屋のつてが多いのではないかと思う。
 また、*10-2のように、他県で公営住宅やホテルの受け入れが始まったが、まだ数が足りないので公務員宿舎や民間アパートの空室も探したらどうかと考える。なお、近くに顔なじみがいない不安や孤独は、週に一度、元の居住地に集まって復興方法に関する話し合いをしたり、インターネットで情報交換したりすれば解決できる。何故なら、この場合のストレスは、人に悩みを話せば解消する性質のものではなく、安心して生活でき、前向きの活動が始まって希望が持てれば解決する性質のものだからだ。
 なお、*10-3のように、4月22日、韓国からも空軍C130輸送機2機で、レトルト米、毛布、テントなどの支援物資を熊本地震の被災者に向けて熊本空港に運んでいただいている。

*10-1:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/303902
(佐賀新聞 2016年4月22日) 募金、物資発送情報、=熊本地震 支援の輪=
◆ボランティア募る 公益財団法人「佐賀未来創造基金」は、大型テント設置や物資の仕分けなどを行う被災者支援ボランティアを募集。問い合わせは電話0952(26)2228。
◆県有明海漁協は県産のり発送 県有明海漁協は県産焼きのり8000パック(おにぎり12万食相当)を佐賀市を通じ避難所などに届ける。
◆浜玉町の旅館が部屋提供 唐津市浜玉町の旅館「唐津 網元の宿 汐湯凪の音」は、被災者の緊急宿泊場所として、使用していない部屋7室(各8畳程度)と温浴施設を無償提供する。事前に受け付けが必要。問い合わせは電話0955(56)7007。
◆生徒が募金呼び掛け 神村学園高等部武雄校舎の生徒は22日午後1時半~同3時、武雄市図書館で募金を呼び掛ける。
◆24日に街頭募金 鹿島市社協と市ボランティア連絡協議会は24日午後4~5時まで市内の商業施設や肥前鹿島駅など6カ所で募金を呼び掛ける。
◆佐賀市社協が街頭募金 佐賀市社協は27日午後5時からJR佐賀駅とバスセンターで街頭募金を行う。4月28日~5月6日にボランティア運営スタッフとして職員2人を派遣する。
◆佐賀熱気球パイロット協会が救援物資 佐賀熱気球パイロット協会(笹川和朗会長)は24日、阿蘇市に救援物資を輸送する。
◆子育て支援の物資も 佐賀市諸富町の子育て支援センターは24日、被災地の乳幼児とその母親を支援するため、紙おむつや水など物資を送る。
◆小城市は救援物資受け付け 小城市は飲料水とカップ麺など保存食に限定し救援物資を22日まで小城保健福祉センター「桜楽館」で受け付け、23日に菊陽町に送る。
◆江北町はロールマット送る 江北町はB&G財団を通じて熊本県玉名市のB&G海洋センターへ、備蓄品の銀キャンプ用のロールマット100枚を送った。
◆多久市が被災支援本部 多久市は被災地支援本部を設置した。熊本・大分両県の必要とする支援の情報収集と迅速な対策を取る。
◆外国人支援で職員派遣 佐賀県国際交流協会は20日、熊本県にいる外国人被災者支援のため職員1人を現地派遣した。避難所を巡回し、通訳・翻訳などのニーズなどを把握する。

*10-2:http://qbiz.jp/article/85406/1/ (西日本新聞 2016年4月22日) 九州で2700戸、公営住宅入居に被災者から希望殺到 大分ではホテルが受け入れ
 熊本地震の被災者の一時入居先として九州各県が21日までに公営住宅約2700戸を確保、受け付けを開始した窓口に問い合わせや申し込みが相次いでいる。福岡県は初日だけで問い合わせが200件超。福岡市では40戸に対し100件超の申し込みがあり、新たな部屋が確保できるまで受け付けを見合わせる。各県内の内訳は、福岡約530戸▽佐賀約150戸▽長崎約500戸▽熊本約170戸▽大分約210戸▽宮崎約600戸▽鹿児島約540戸。福岡県は、住宅が一部損壊以上の被害を受けた人が対象で最長12カ月入居できる。敷金や家賃は免除し、寝具も提供。21日までに21世帯が入居した。担当者は「提供できる場所と希望のマッチングなどの難しさもあるが、早期入居の態勢を整えたい」と話す。熊本地震から1週間。被災者の一部は、自治体が提供する公営住宅などへの入居を始めている。住み慣れない地域での暮らしには、どんなサポートが必要なのか−。体験者に聞くと、孤立を防ぐ行政や周辺の目配りや、被災者同士の交流が支えになるという。「知り合いもほとんどおらず、不安だった」。福島県南相馬市の八巻(やまき)美知子さん(42)は、2011年3月の東日本大震災直後、同市から福岡市内の県営住宅へ引っ越した。地元に残った夫と離れ、小学生の娘2人との生活。長女が学校になじめず、わずか8カ月で南相馬市へ戻った。「団地は住民同士の交流が希薄になりがち。孤立しないようなサポートがあれば」と振り返る。05年の福岡沖地震。福岡市西区玄界島の住民約700人の多くは、島外での避難所生活を体験した。玄界島保育園の松田ゆかり園長(56)は過酷な日々について「それでも、住民が一緒の避難所にまとまって生活できたことは心強かった」と語る。当時、避難所を出ていったん市内の親類や知人宅に身を寄せていた住民が、再び避難所に戻る現象もみられた。公営住宅などに転居すれば、住環境は劇的に改善する。安倍晋三首相は21日、熊本地震を受けて首相官邸で開かれた非常災害対策本部会議で「最も大切なのは、安心して過ごせる住まいに移っていただくこと」と強調した。避難所を出れば心身の大きなストレスから解放される。一方で、近くに顔なじみがいなくなる不安や孤独を感じる人もいる。福岡県の馬場順子保健師は、避難所を離れる被災者のサポートについて「県や市町村の保健師が連携し、地域とつないでいくことが必要」とアドバイスする。つらい体験をした人同士の交流も大切だ。福島原発事故後、群馬県館林市に夫を残し、4歳だった長男と福岡県福津市に移った芝野章子さん(50)は「被災者仲間とグループを結成し、体験を語り合うことで勇気が出た」と言う。
   ◇   ◇
■熊本の被災者1500人受け入れ 大分県旅館ホテル組合
 熊本地震の被災者を支援しようと、大分県旅館ホテル生活衛生同業組合(400軒)は21日、家屋を失うなどした熊本県の約1500人を会員ホテルなどで受け入れる方針を明らかにした。大分県内でも余震が続き、一部施設で建物の損傷や予約キャンセルも相次いでいるが、「災害時は助け合いが大切」としている。仮設住宅などの住環境が整うまで1泊3食付きで部屋を無料提供する。災害救助法の「避難所」扱いとなり、高齢者や障害者など要支援者の受け入れを想定。熊本県知事から大分県知事に要請があり次第、組合が各施設に割り振る。堀精治専務理事は「大分の旅館やホテルも大変な状況だが、九州が復興へ向かうための一助となりたい」と話している。
   ◇   ◇
■所在不明者、熊本県が電話相談
 熊本県は22日、熊本地震以降、家族や知人の所在が確認できない人を対象にした電話相談を始める。地震発生時に1人で旅行中の人などと連絡がついていないケースなどを想定。庁舎が被災して対応が難しい市町村もあることから、県災害対策本部に相談専用電話を置く。相談内容は警察署や市町村につなぐなどして支援する。「熊本地震所在不明者相談ダイヤル」=096(333)2815。月−金曜日の午前9時〜午後5時。当面は休日も開設する。
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■被災者生活支援情報
●佐賀県採用試験に代替日
▽佐賀県は24日の県職員採用試験(行政特別枠)の受験が困難な被災者を対象に5月15日の代替試験日を設ける。4月24日の試験は行う。罹災(りさい)証明書や事前連絡は不要。受験票を紛失した場合は代替日に再発行する。人事委員会事務局=0952(25)7295。
●保険料の払い込み猶予
▽日本損害保険協会と加盟26社は熊本県内の被災者を対象に、各種損保の保険料払い込みや継続手続きを最長6カ月(10月末まで)猶予する。自動車損害賠償責任保険は期間と対象が異なる。協会は当面、土日祝日も相談を受け付ける。そんぽADRセンター=(0570)022808。契約先などが分からない場合は照会センター=(0570)001830。
●公営住宅受け入れ
▽各自治体の受け入れ戸数(一部民間など含む)と連絡先は次の通り。福岡県飯塚市(13戸)=0948(22)5500。同県田川市(11戸)=0947(44)2000。佐賀県唐津市(19戸)=0955(72)9218。
●部屋を無償提供
▽佐賀県唐津市浜玉町の旅館「汐湯凪の音(しおゆなぎのと)」は8畳の部屋7室と温浴施設を被災者に無償提供する。無期限。同旅館=0955(56)7007。
●欠陥住宅相談会
▽欠陥住宅ふくおかネットは23日午前11時〜午後4時、倒壊・損壊した建物についての電話相談会を開く。所有または居住する建物が被災した人を対象に、熊本県内に限らず受け付ける。阪神大震災や東日本大震災では、設計ミスや手抜き工事が疑われる事例が多数あったという。無料。専用電話=092(721)1208。

*10-3:http://mainichi.jp/articles/20160423/k00/00m/040/022000c
(毎日新聞 2016年4月22日) 支援物資載せた韓国軍機が到着…熊本空港
 熊本地震の被災者への支援物資を載せた韓国空軍のC130輸送機2機が22日、熊本空港(熊本県益城町)に到着した。韓国軍による物資輸送は東日本大震災以来。韓国政府が日本側に支援の意向を伝えていた。韓国軍が提供した物資はレトルト米2000パック▽2リットル入りと500ミリリットル入りの水のボトル各1000本▽毛布6000枚▽テント1700張り。自衛隊が同空港から避難所に届ける。菅義偉官房長官は22日の記者会見で「心温まる支援に感謝申し上げたい」と述べた。


PS(2016年4月23日追加):*11のように、全国からボランティアが来てくれているそうで、私も、山のような瓦礫の撤去も人が多ければ早く終わると思う。しかし、片付けの際には、家の人が仕分けして、ボランティアに段ボールに詰めたり廃棄したりしてもらい、引越しの際に持って行くものは、表面に名前や中身を書いてまとめて置く必要があるため、運送会社の段ボールやマジック、ガムテープなどが大量にあると便利だろう。なお、地震学・火山学はもちろん、建築・土木・都市計画・工学などの分野を志している学生も、こういう場所でボランティアをすると、都市や建物や家電はどうあるべきかを実体験して考えることができ、世界でも注目される論文が書けたり、学業の役に立ったりすると考える。

 
              2016.4.21~23西日本新聞              2016.4.22毎日新聞 

*11:http://mainichi.jp/articles/20160423/k00/00e/040/173000c
(毎日新聞 2016年4月23日) 広がる助け合いの輪、全国から続々ボランティア
 熊本地震で自治体によるボランティアの受け入れが始まって初めての週末になる23日、被災地には全国各地から多くの人たちが駆けつけ、復興支援に汗を流した。昨秋の関東・東北豪雨の被災地から「恩返しに」と参加した人もいて、約8万人が避難生活を続ける被災地に助け合いの輪が広がった。
■熊本市
 約4万6000人が避難を続けている熊本市。市中心部に設置された災害ボランティアセンターには、午前9時の受け付け前からボランティアの長い列ができた。会社員の海沼陽一さん(43)は昨年秋の関東・東北豪雨で大きな被害を受けた栃木県鹿沼市から駆け付けた。「水浸しになった家屋の片付けなどで熊本のボランティアや行政の方々に助けてもらった。余震が続いているので精神的ストレスは大きいと思う。恩返しになるか分からないけれど、少しでも自分にできることをしたい」と意気込んだ。東日本大震災でボランティアをしたという熊本県八代市の神職、浦口政弘さん(43)は「山のようながれきの撤去も、人がたくさん集まればあっという間に終わる」と語った。高校生や大学生の姿も。城北高校(熊本県山鹿市)バレーボール部3年の川口憂哉さん(17)は「全国から救助隊などが来てくれていることをテレビで知った。県民の一人として力を合わせて助け合いたい」と話した。熊本市では受け付け初日の22日、想定の2倍にあたる約1000人が駆けつけ、約半数には作業を割り当てることができなかった。避難者には「家の片付けをしてほしい」との要望が多いが、危険度未判定の家屋が多く安全を確保できないため派遣できないという。一方、ボランティアの到着を心待ちにしている住民は多い。同市東区の中学校に母、兄と身を寄せている会社員の久富良房さん(57)は「食事は菓子パンが多い。炊き出しがあればうれしい」。
■益城町
 5000棟以上の住宅が損壊し、7000人以上が避難生活を送る益城町にも大勢のボランティアが詰めかけた。福岡県からきた安部江美さん(51)と娘の志織さん(20)はかつて熊本市に住んでいた。「避難所や車で生活している友人らの話を聞いて、いても立ってもいられなくなった。できることは何でもしたい」。東京からきた男性6人は「休みなので来た。力仕事もできる」と笑顔を見せた。町内の中学1年、亀谷未希さん(12)は仲が良かった同級生や知り合いの家が全壊した。「うちは大丈夫だったから、他の人を手伝いたい」。だが、混乱が続き、町災害ボランティアセンターもニーズを把握しきれていない。22日にはボランティア自身で被災者のニーズを掘り起こしてもらおうと被災者に「何をしてほしいか」と聞く調査をしてもらった。運営する町社会福祉協議会の国元秀利事務局長(59)は「被災者にとってはボランティアがしっかり話を聞いてくれるだけで心が救われるはず」と話した。


PS(2016年4月24日追加):*12-1のように、佐賀県の旅館ホテル組合が、県全体で被災者1200人を受け入れる準備をしている。他県もこうすると、被災者が、まず不衛生でストレスの多い環境から脱することができ、次の段階に進めるのではないだろうか。なお、*12-2のように、被災者を受け入れる地域は、保育園や学校などの受入準備をする必要もありそうだ。

*12-1:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/304607
(佐賀新聞 2016年4月24日) 県旅館ホテル組合、被災者1200人受け入れ方針
 佐賀県旅館ホテル生活衛生同業組合(小原健史理事長)は、熊本地震の被災者を県内の旅館・ホテルに受け入れる方針を決めた。県全体で一日最大1200人分の部屋を確保する。宿泊にかかる費用は公費負担となるように、県や国と協議している。同組合に利用を希望した被災者を県内の旅館やホテルに振り分ける。運転免許証などの身分証明書で被災地の住民と確認できれば、宿泊できるようにする。どこまでを被災地とみなすかは「柔軟に対処したい」としている。受け入れ期間は仮設住宅が完成するまでの1~2カ月を見込む。組合は県内15支部を通して、空室状況を随時確認。地震の影響で予約のキャンセルが相次いでいる一方、新たな宿泊予約も入ってきており、空室数は流動的という。小原理事長は「これまで熊本や大分から来ていただいていたお客さまへの恩返し。一日も早く県内の旅館やホテルに入り、心と体を休めてもらいたい」と話す。利用申し込みは同組合、電話0954(42)0240へ。

*12-2:http://mainichi.jp/articles/20160424/k00/00m/040/087000c?fm=mnm
(毎日新聞 2016年4月24日) 熊本地震、15万人授業受けられず 県内小中高生の75%
 熊本地震で学校が休校し、授業を受けられなくなった熊本県内の小中高校などの児童生徒が、22日現在で404校の約15万人に上ることが県教委などへの取材で分かった。県内の児童生徒約20万人の約75%に当たる。壁や天井など耐震化が不十分な部材を中心に被害が出た学校が少なくとも351校あり、避難所として使われている学校も多い。24日で地震発生から10日となるが、被害の大きかった自治体では授業再開のめども立っておらず、子供たちへの影響も懸念される。
●校舎被害や避難所利用
 県教委や熊本市教委などによると、22日段階で休校している学校は、国公立が小学校224校▽中学校102校▽高校38校▽特別支援学校13校、私立が中学・高校27校。国公私合わせ県内655校の約6割に当たる。昨年度の児童生徒数などから推計すると、公立の小学生約7万4000人▽中学生約3万6000人▽高校生約2万3000人▽特別支援学校生約1300人−−と私立の約1万7000人に影響している。文部科学省や県教委によると、県内の公立小中学校は98.5%で柱やはりなどの構造部材を補強する耐震化を完了しており、倒壊などの大規模な被害はなかった。ただ、耐震化の期限が定められていない、壁の崩落防止や棚の固定など構造部分以外の耐震対策を終えたのは60.1%にとどまり、公立の小中学校293校▽高校43校▽特別支援学校15校−−で壁や天井、校舎接合部の破損などが相次いだという。このうち熊本市では、小中学校137校が被災。24校で体育館の壁や筋交いなどが破損し、地震後に避難してきた住民を校舎に移した。嘉島(かしま)町や宇城(うき)市などでも体育館の屋根や壁などが破損し、避難所に使用できなくなっている。被害は軽微でも、多数の避難者が寝泊まりしているため、授業を再開できない学校も多い。市内の小中学校すべてが休校している熊本市は22日の授業再開を目指していたが、「学校が避難所となっており、余震も続いている」(市教委)として、一部を除き来月10日ごろまで延期した。多数の犠牲者が出た益城(ましき)町教委も「4月末までは休校し、5月以降は状況を見て決める」とし、来月9日ごろの再開を目指す西原村教委は「小さな村で避難者を移せる施設も少ない。来月初めの避難状況を見て、最終的な再開時期を判断したい」と述べた。文科省の担当者は「壁や照明の落下、本棚の転倒などの対策はまだ進んでいるとは言い難い。今回は夜間の地震だったが、平日昼間なら子供の命にも関わりかねない。被災した学校の安全確保を進め早期の再開を目指すと同時に、非構造部材の耐震対策もさらに進めたい」と話している。

| 資源・エネルギー::2015.5~2016.12 | 04:31 PM | comments (x) | trackback (x) |
2016.4.4 電力自由化からクリーンエネルギーの選択へ ← 放射能公害を考慮できない人は、エネルギーや環境を語る資格がないこと (2016年4月4、6、7、9、11、12日に追加あり)
 
    電力自由化     世界の自由化状況   上      2016.3.31西日本新聞  上  
                          (原発より再生可能    (まだ電力自由化の仕組みがわか
                           エネルギーの方が     っていないのは、スポーツ・犯罪・
                           高いとしているのは、   天気をはじめ、馬鹿な番組しか
                           意図的で変である)    放送できないメディアの責任だ)

(1)「パリ協定」がなければ、温暖化対策もできなかった我が国の環境意識の低さ
1)イノベーションによる経済成長があるのに・・・
 国連の会議で2020年以降の温暖化対策国際的枠組み「パリ協定」が採択され、「今世紀後半に世界全体で温暖化ガスの排出量をゼロにする」とされた。そこで、イノベーションによって経済成長を達成し、より住みやすい国にするためには、*1-1のように、省エネや炭素税も重要だが、①発電の分散化 ②電力の地産地消 ③水素の利用 ④蓄電池の進歩と自然再生可能エネルギーの利用によって、すべての産業で使用するエネルギーを、安くて公害(当然、放射性物質やNOx、SOxなどの排出による公害も含む)の出ない方法で創ることが必要である。

 このうち、④の蓄電池は、*1-3のように、現在の100倍以上高速に充電できるリチウムイオン電池が開発され、これは、携帯端末、ウエアラブル機器、電気自動車のコスト削減と加速性能の向上に繋がるため、5年以内の実用化を目指すそうだ。「5年以内の実用化」というのは相当のんびりしているが、経産省も最近は、遅ればせながら2020年における世界の蓄電池市場は20兆円で、そのうち車載用蓄電池は8兆円に達すると推定しているとのことである。

2)環境の快適化もできるのに・・・
 環境を快適化するには、温室効果ガス(CO2)を削減して地球の気温上昇幅を2度以内に抑えるだけでよいわけではないが、*1-2のように、政府の「エネルギー・環境イノベーション戦略」案では、2050年の実用化を目指して重点的に開発を進める分野として、システム、省エネ、エネルギー貯蔵、自然エネルギー、二酸化炭素固定化の五つと人工知能を挙げたそうである。

 本当は、①どの公害も出さない ②自然の緑に囲まれた便利で居心地のよい街づくり など、必要なことは温室効果ガスの削減に限らず、いくらでもある。

(2)電力自由化のスタート
1)電力自由化の不完全性について
 (私が提案して始まった)電力小売りの全面自由化が、*2-1のように、2016年4月1日に始まり、大手電力会社10社の地域独占は廃止されて、8兆円規模の市場に新電力約260社が参入したそうだ。しかし、電力料が安くなれば、他のエネルギーから電力への切り替えが進むため、電力市場が8兆円に留まることはない上、発電方法を選べばクリーンなエネルギーを純国産で供給できるため、電力自由化とそれに伴う再生可能エネルギーへの転換は、日本にとって100点満点の解決になる。

 そのため、*2-2、*2-3に書かれているように、この電力小売り全面自由化は再生可能エネルギーを伸ばす契機にしたく、間違っても原発依存に逆戻りさせたくないため、新電力には脱原発の原動力になって欲しいわけである。そして、それができるためには、消費者が電源を選択できるよう電力会社の発電方法開示は義務化すべきで、新電力が大手電力会社に支払う送電料に原発の使用済核燃料再処理費が算入されるなどの制度上の問題点も解消されるべきだ。つまり、政府は、原発ありきの不公平な姿勢を改めるべきなのである。

 *2-3に、信濃毎日新聞が、電力自由化で社会を変える市民の選択が可能になると題して、課題はいくつも残されており、送配電網の恣意的運用や不適正な使用料金を挙げている。大手電力の発電部門と送配電部門の分離が4年後に先送りされたことで、その間に新電力が破産してはせっかくの電力自由化も無意味になるため、公正な競争が不可欠なのである。しかし、他の産業と同様に公正取引委員会ではなく電力取引監視等委員会が監視する役割を担うのは、既に公正とは言えない。

2)九州では
 九州では、*2-4のように、九電の入社式で、瓜生社長が「原発の早期再稼働で収支改善目指す」と述べたそうだ。九電は、昨年、川内原発1、2号機(鹿児島県)を再稼働させ、2016年3月期の連結決算は5年ぶりに黒字転換する見込で、九電の社長は「抜本的な収支改善に向け、玄海3、4号機(東松浦郡玄海町)の早期再稼働を目指す」と強調したそうだが、原発にはリスクと多額の税金と未解決の多くの問題が残されており、それを明るみに出すには、金額で示すのがよいだろう。

 さらに、*2-5は「安い電気、消えぬ不安 過当競争、寡占再来も」と題しており、「①電力小売りが全面自由化され、100社を超す企業が家庭向け市場に参入した」「②競争が激化する中、新電力大手が撤退や収益悪化を余儀なくされるなど早くも厳しい選別にさらされている」「③電気を自由に選ぶ時代は何を意味するのか。競争相手が増え、営業現場では激しい値下げ合戦が繰り広げられている」「④先行して自由化を進めた欧米では新電力の倒産や発電設備への投資抑制が続出し、大手の寡占が進んで逆に料金が上がった例もある」「⑤電気はつくれば売れるものではなくなった」など、西日本新聞は後ろ向きの発言が多い。

 しかし、①③⑤は、どの市場でも普通に起こっていることで、これまでは電力についてのみこのような市場競争がなく地域独占であったため、総括原価方式が通用して料金が高止まりし、あらゆる産業の足を引っ張っていたのだ(こんなことも知らないで記事を書いた?)。さらに、②は、電力会社の発電方法の開示を義務化して消費者が電源を選択できるようにし、新電力が大手電力会社に支払う送電料の問題点も解消して、送配電網の恣意的運用を不可能にして初めて、公正な市場競争ができるものである。また、④のヨーロッパの事例は、仮にそれが本当であったとしても、日本でもそれを繰り返す必要はない。

 そして、これらを速やかに解決する手段として、上下水道を持っている地方自治体が送配電設備を作って公正中立で安価な送配電料で送配電を行えば、電線の地中化も同時に行われてよいと考える。

(3)原発回帰はありえない
 *3-1のように、安倍首相が、核物質や核施設の防護・管理強化を話し合う「核安全保障サミット」で演説して、フクイチ事故を踏まえ「日本は二度とあのような事故を起こさないとの決意の下、原子力の平和的利用を再びリードすべく歩み始めた」と原発の再稼働推進を宣言されたそうだ。

 しかし、いくら決意しても、原発事故発生の確率が0でなく低いとも言えないことは、フクイチ後の日本の対応を見れば誰にでもわかることだ。そのため、事故の教訓を活かすなら、原発は止めてエネルギーの転換を行うべく、イノベーションを進めるべきである。

 なお、*3-2のように、ブリュッセルで起きた連続テロを受けて、仏エネルギー大手エンジーは、ベルギー当局の要請を受け、同社が運営するベルギー南部ティアンジュ原発の稼働中の原発の大半の作業員を避難させたそうだ。

 また、*3-3のように、福島県下の多くの小中学校周辺の土壌で、「放射線管理区域」を上回る高濃度のセシウムが検出されるという驚愕の事実が「女性自身」に続き「週刊プレイボーイ」の調査でも判明したが、原発村広告漬けの「週刊新潮」は影響を否定しているそうだ。住民を被爆させながら県や村を維持するのは守るべきものを間違えているため、他の原発地元も為政者のこの発想を忘れてはならない。

 さらに、*3-4のように、フクイチ事故を受けて茨城や千葉の市民団体が1800人余りの子どもの甲状腺を検査したところ、「小さなしこりやのう胞と呼ばれる液体がたまった部分があるものの、特に心配はなく経過観察」とされた子どもが1139人、「一定以上の大きさのしこりなどがあり、さらに詳しい検査が必要」とされた子どもが7人で、担当医師は原発事故の影響とは判定できないとしているそうだが、それは疫学調査をすればすぐわかることである。そして、原発事故の影響を受けるのは子どもだけではない。

 *3-5のように、フクイチ事故に伴って福島県の避難指示区域外から千葉県に自主避難した6世帯20人は、国と東電に計2億2千万円の損害賠償を求め、国と東電側は請求棄却を求めているそうだ。

 このような中、*3-6のように、九電川内原発(鹿児島県薩摩川内市)から30〜40キロ圏の鹿児島県出水市、阿久根市、伊佐市と熊本県水俣市の複数の脱原発市民団体や市議が、2016年4月24日、新組織「川内原発を考える肥薩ネットワーク」を設立するそうだ。新組織の会員は200人規模で、4市の市議5人も加わる予定であり、「互いの地域の課題を持ち寄り、協力して活動したい」とのことである。

*1-1:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20160325&ng=DGKKZO98811600U6A320C1KE8000 イノベーションを考える 第5章 成長に果たす役割(6) 「パリ協定」が電力後押し 東京大学教授 大橋弘
 昨年末に、国連の会議で2020年以降の温暖化対策の国際的枠組み「パリ協定」が採択されました。今世紀後半に世界全体で温暖化ガスの排出量をゼロにすると定めています。パリ協定を踏まえ、わが国は「地球温暖化対策計画案」をまとめ、省エネルギーと再生可能エネルギーで野心的な目標を設定しました。省エネでは2%程度の経済成長を前提にしながら、30年度に向け、12年比で35%のエネルギー効率改善を目指しています。過去20年間の効率改善は約10%ですので、極めて高い目標です。1970年代は石油価格の高騰が省エネ技術を発展させました。石油価格が低迷する現在では、それに代わる省エネのインセンティブ(誘因)が必要です。炭素税はその候補になりえます。家庭や運輸部門など各部門間でバランスの良い省エネ技術の開発が求められます。再生エネでは現状の2倍の導入量が目標ですが、低廉・大容量で長寿命の蓄電池の開発が有効です。日が沈むと発電しない太陽光発電も、蓄電池が登場すれば夜でも太陽光で発電した電気を使えます。蓄電池の普及は再生エネの分散型電源としての価値を高め、地域で発電した電気をその地域で消費できるようになります。電力の地産地消が進むと電気を他地域から送る必要が減り、送電に伴う損失も減少します。一方で地産地消を超えて再生エネを大量導入する施策も取られており、政策の整合性が必要です。また、余った電気を水素に変換して利用すれば、水素を使った燃料電池車の普及を後押しする可能性があります。人口減などを背景に国内の電力需要は今後低減していきます。電力分野の技術開発は海外展開を視野に入れる必要があります。送配電系統が脆弱な新興国地域では、電力システムの分散化に向けたイノベーションは特に重要です。技術的に旧態依然といわれる電力システムですが、分散化を推し進めれば、イノベーションが起こる日はそう遠くないかもしれません。

*1-2:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12275353.html
(朝日新聞 2016年3月25日) 温室ガス削減へ技術戦略 人工知能活用・700キロ走れる蓄電池
 内閣府の有識者会合は24日、革新的な技術を開発して温室効果ガスの排出を大幅に減らすことを目指す「エネルギー・環境イノベーション戦略」の案をまとめた。日本発の技術を実現、普及させることで、世界全体の排出量を最大で年100億トンほど減らす効果を期待するという。昨年末の国連気候変動会議(COP21)に合わせ安倍晋三首相が策定を指示していた。政府の総合科学技術・イノベーション会議で4月中にも正式決定する。戦略案では、2050年の実用化を目指し重点的に開発を進める分野として、システム、省エネ、エネルギー貯蔵、自然エネルギー、二酸化炭素固定化の五つを挙げた。発電量が変動する自然エネルギーを増やすため、人工知能などを活用して電力システム全体を効率化させる技術などを盛り込んだ。内閣府によると、世界全体の排出量は30年に約570億トンと見込まれている。気温上昇幅を国際社会が目指す2度以内に抑えるには、50年までに300億トン以上減らす必要がある。戦略案に掲げた技術を普及させることができれば、数十から100億トンほどの削減につながるという。今後、産業界とも連携して開発を進める。島尻安伊子科学技術担当相は「2度目標を実現するためにはイノベーション(技術革新)なくしては不可能」と述べた。

*1-3:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20160404&ng=DGKKZO99229380T00C16A4TJM000 (日経新聞2016.4.4)充電100倍速い電池 カネカと愛知工大、リチウムイオンで
 カネカと愛知工業大学の森田靖教授らは、100倍以上高速に充電できるリチウムイオン電池を開発した。電極に独自開発の有機材料を使っており、携帯電話なら10分で充電できるとみられる。携帯端末やウエアラブル機器、電気自動車などの用途に向けて、5年以内の実用化を目指す。開発したリチウムイオン電池は、正極の材料として、TOTと呼ぶ有機分子にカーボンナノチューブを混ぜたものを用いた。体積あたりにため込める電子の数が多く電気伝導度も高いため、効率よく充放電できる。試作した体積1立方センチメートルのコイン型リチウムイオン電池は36秒で充電でき、5000回充放電をしても性能が落ちなかった。携帯電話用の大きさなら10分ほどで充電が完了する見通し。大容量の電池が必要な電気自動車でも、充電時間を大幅に短縮できる。現在のリチウムイオン電池は正極に希少金属であるコバルトの酸化物を用いており、同じ大きさのコイン型電池の充電に数時間かかる。大電流を得るのも困難で、電気自動車では加速時などに備え、電気をため込んで一気に流すキャパシタという装置を搭載している。新開発の電池は大電流を流せるのでキャパシタが不要になる。コスト削減と加速性能の向上につながると期待される。開発した電極は有機物材料なので、曲げたり伸ばしたりしても壊れない。丸めて運べる電子ペーパーや、体に付けて使う生体センサーなどのウエアラブル機器などの用途にも向く。有機ELなど曲げられるディスプレーはすでにあるが、これまで曲げられる電池がなかったため、用途が限定されていた。現在のリチウムイオン電池は充放電しすぎると発火することがあり、何重もの安全策が講じられている。新開発の電池は過充電しても発火などの事故は起きておらず、安全性も高いとみられる。今後は電気自動車向けに大型化した電池で性能と安全性を確かめる。充電可能な蓄電池の市場は、今後大きく成長する見通し。経済産業省は2020年に世界の蓄電池市場は20兆円、うち車載用蓄電池は8兆円に達すると推定しており、メーカーや研究機関が競って開発を進めている。

<電力自由化>
*2-1:http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2016033101001886.html
(東京新聞 2016年4月1日) 電力小売り自由化がスタート 8兆円市場に異業種参入
 家庭が電力会社を選べるようになる電力小売りの全面自由化が1日、始まった。東京電力や関西電力など大手電力10社の地域独占が崩れ、約8兆円の市場が開放される。ガス会社や石油元売り、通信など異業種が参入し顧客獲得を競う。政府は料金の低下やサービスの向上を狙い、エネルギー分野の規制緩和をさらに進める。新規参入の電力小売り会社として政府に登録したのは266社(3月25日時点)。東京ガスや大阪ガスなど大手都市ガス、地域のガス会社、JXエネルギーなど石油元売り系、KDDIなどの通信会社や私鉄の東京急行電鉄が加わった。

*2-2:http://dd.hokkaido-np.co.jp/news/opinion/editorial/2-0052982.html
(北海道新聞 2016年4月1日) 電力自由化 再生エネ伸ばす契機に
 家庭などを対象に、電力小売りがきょう全面自由化した。東京電力、北海道電力など大手10社の地域独占が崩れ、8兆円規模の市場に新電力約260社が参入する。消費者が電力会社を自由に選べる大きな転換点を迎えた。自由化の歩みは欧米諸国と比べて20年近く遅れている。政府は公正な競争を通じて、料金の引き下げを促さねばならない。全面自由化は原発、火力発電など大規模電源に依存する構造を変えるきっかけになる。再生可能エネルギーを活用する新電力には、脱原発の原動力になってほしい。ただ、再生エネの電源は不足している。民間企業の拡大に向けた取り組みに加え、政府の支援が欠かせない。自由化は、大手電力の発電と送配電部門を切り離す2020年の発送電分離が総仕上げとなる。小売り全面自由化では、全国でガス、石油や通信関連など異業種が参入し、道内では北海道ガス、流通関連企業など十数社がサービスを始める。北海道は太陽光、風力、バイオマスなど再生エネの宝庫だ。その特性を十分に生かすべきだ。国内の再生エネの現状の発電量は水力を除けば数%にすぎない。道内を含む風力発電基地の計画をはじめ、国境を越えて再生エネによる電気を融通する民間の構想もある。着実に再生エネの電源を増やすことが大切だ。さらに、天候などで出力が不安定になる再生エネの欠点の克服に向け、送電網の拡充や蓄電池の開発で政府の後押しが求められる。気になるのは、火力、原発、再生エネなど電源の構成の情報開示に、再生エネを重視したり自社電源を持つ企業を除き、多くの新電力が消極的な点だ。経済産業省の電力取引監視等委員会が、開示を努力義務にとどめたことが背景にある。環境にやさしい電源かどうかは、消費者にとって大切な判断材料だ。一層の開示に期待したい。大手電力と比べた新電力の電気料金の割引率は、標準的な家庭で数%にとどまる例が多い。電気以外の商品とのセット割引を含め、価格設定で一層の工夫が必要だ。見過ごせない制度上の問題もある。新電力が大手に支払う電気の託送料金には、原発の使用済み燃料の再処理費が算入されている。再生エネを扱う新電力も原発関連費用を間接的に負担する矛盾が生じてしまう。政府は原発ありきの姿勢を改めるべきだ。

*2-3:http://www.shinmai.co.jp/news/nagano/20160401/KT160331ETI090008000.php (信濃毎日新聞 2016.4.1) 電力自由化 社会を変える市民の選択
 電力小売りの全面自由化がきょうから始まった。家庭が契約する電力会社を選べるようになった。必要な登録を得た企業は200社を超える。大手電力会社が独占していた8兆円の市場をめぐり、新たな競争がスタートした。県内でも通信やガス会社などが新規参入し、本業の商品とのセット割引や、各種のポイントサービスとの連携を打ち出している。どの電力会社を選べばいいのか、悩んでいる人も多いだろう。各社のサービスをじっくりと比較して選択したい。
<恣意的運用の懸念>
 課題はいくつも残されている。まず必要なのは公正な競争環境の確保である。今回参入した新電力は、現時点では大手電力会社の送配電網を使って電力を供給する。大手電力が特定業者を優先したり、新電力の送電を受けつけなかったりすれば競争が成り立たない。大手電力の発電部門と送配電部門の分離は4年後に先送りされた。現状では、大手電力が競争力確保のため、恣意的運用する懸念が残る。送配電網の使用料金も適正にする必要がある。自社電源を持たない多くの新電力が電力を調達する市場に、余剰電力が十分に供給されることも必要だ。経営基盤が強くない新電力も多い。自治体や電力会社から電力を仕入れ、公共施設などに供給してきた新電力大手の日本ロジテック協同組合(東京)が、破産申請手続きの準備に入ったことも判明している。公正な競争は電力の自由化に不可欠だ。鍵を握るのは、電力取引監視等委員会である。電力取引が適切に行われているかチェックする。立ち入り検査や業務改善勧告をする権限も持つ。問題は、委員会が経済産業相の直属機関であることだ。公正取引委員会などに比べ独立性が弱い。経済産業省は大手電力と一体になって原発政策を進めてきた。委員会が同省の影響を受ける心配はないのか。消費者の信頼を得るため、組織の位置付けを見直す必要がある。
<少ない情報開示>
 情報の開示も欠かせない。日本生活協同組合連合会の調査では、原発や火力、再生可能エネルギーといった電源構成を電力会社の選択に「必要な情報」とする回答が8割以上に上った。それなのに経産省も電力会社に対し、自主的な開示を要請するにとどまる。発電方法を開示している事業者も少ない。原発が含まれている電源を拒否し、価格が多少高くても再生可能エネルギーに積極的に取り組んでいる企業を応援したい消費者もいる。地産地消のエネルギーを選択したい人や、地球温暖化防止に向けて二酸化炭素(CO2)の排出がない電源を選びたいという考え方もあるだろう。消費者は自らの選択の結果として、電力業界や社会を変えることもできる。情報が不足すれば自由化の意義が大きく損なわれる。消費者が電源を主体的に選ぶ権利を確保しなくてはならない。電力会社は積極的に情報を明らかにするべきだ。
<大手電力の抵抗>
 自由化を進める取り組みは1990年代からあった。割高な電気料金が経済の足かせになっているという理由だった。企業向けの小売り自由化が実現したのは2000年3月。その先は、経営環境の悪化を懸念する大手電力や政界の安定供給を掲げた強い抵抗に阻まれた。事態が変わったのは、東日本大震災と東京電力福島第1原発事故だった。地域間の電力融通がうまくいかず、東電管内が計画停電に追い込まれるなど供給体制のもろさが露呈。電気料金も高騰した。競争環境で災害に強い供給体制をつくり、料金を抑制することが求められ、民主党政権当時の12年7月に自由化方針が決まった。大手電力の抵抗は続いている。4年後の「発送電分離」実施を定めた改正電気事業法の付則には、実施前に電力の需給改善の進み具合を検証し「必要な措置を講ずる」と盛り込まれた。大手電力の主張を取り入れたとされ、「原発再稼働が遅れる場合は分離を延期する」という解釈が、電力会社や政界の一部に広がっている。安全性が確保できず再稼働できない原発は、膨大な維持費だけがかかる。自由化が進んで競争が激しくなれば、大手電力の経営の足かせとなる。だからといって自由化阻止に動くのは筋違いだ。原発が経済的に見合わないのなら、廃炉を進めるしかない。原発なしでも電力供給に支障が出ないことは、震災後の原発停止で明らかになっている。自由化を止める理由にはならない。新電力が送配電網を大手と公平な条件で利用できる「発送電分離」は自由化の成否を握る。抵抗は消費者の利益を損なう。

*2-4:http://www.saga-s.co.jp/column/economy/22901/296208
(佐賀新聞 2016年4月2日) 九電入社式で社長、早期再稼働で収支改善目指す
 九州電力はは1日、福岡市で入社式を開いた。瓜生道明社長は新入社員約200人を前に、この日から始まった電力自由化に触れ「エネルギー業界は本格的な競争時代を迎える。九州域内外や海外の事業に積極的に取り組みたい」と訓示した。九電は昨年に川内原発1、2号機(鹿児島県)が再稼働し、2016年3月期連結決算は5年ぶりに黒字転換する見込みだ。瓜生社長は「抜本的な収支改善に向け、玄海3、4号機(東松浦郡玄海町)の早期再稼働を目指す」と強調した。新入社員の縄田由香利さん(23)は式典で「電力自由化を飛躍のチャンスと捉え、九州のためにできることは何かを考えて行動したい」と述べた。

*2-5:http://qbiz.jp/article/83843/1/
(西日本新聞 2016年3月31日) 安い電気、消えぬ不安 過当競争、寡占再来も
 4月1日、電力小売りが全面自由化され、100社を超す企業が家庭向け市場に参入する。競争が激化する中、新電力大手が撤退や収益悪化を余儀なくされるなど、早くも厳しい選別にさらされる。消費者もリスクと恩恵の見極めに戸惑う。「電気を自由に選ぶ時代」は何を意味するのか。「こっちが年間600万円の値下げ効果があると提案したら、ライバル会社は1千万円を示した。そんなに下げられるはずがない」。企業向けに電力を売る新電力大手の九州にある代理店関係者はこう嘆く。競争相手が増え、各社が販売量の確保を優先するため、営業現場では激しい値下げ合戦が繰り広げられている。この関係者は警鐘を鳴らす。「名だたる大手も安売りしている。省エネの助言やアフターケアなど、今までと違うサービスで本来は競うべきなのに」。だが懸念は表面化した。新電力5位の日本ロジテック協同組合(東京)の経営破綻だ。自前の発電所を持たず、自治体などから余剰電力を仕入れ、公共施設などに販売。事業拡大を続けたが資金繰りが行き詰まったとみられる。家庭向けにも参入を予定したが、今月末で事業から撤退する。先行して自由化を進めた欧米では、新電力の倒産や発電設備への投資抑制が続出。大手の寡占が進み、逆に料金が上がった例もある。日本もその予兆なのか。コスト低減が鍵。電力自由化に詳しい日本総合研究所創発戦略センターの瀧口信一郎シニアマネジャーは「自前の電源を持つなどコストを抑えられなければ、体力のない企業は淘汰(とうた)される」と指摘する。だが、自前の電源を保有しても巨額投資に見合う利益が得られるかは不透明だ。大手電力が市場を独占してきたこれまでと違い、電気は「つくれば売れる」ものではなくなった。「大規模でなく、少ない量での卸販売の交渉を進めている。九電ばかりに頼ってはいられない」。西部ガス(福岡市)の幹部はこう明かす。同社は最大出力160万キロワットの液化天然ガス(LNG)火力発電所を北九州市に計画。九電に電気を販売する方向で長期交渉してきたが、九電も原発再稼働の時期や需要動向が読めず、宙に浮いたままだ。このままでは先に進めない−。西部ガスは投資リスクの小さい発電所の小規模化と「九電以外」への販売を視野に動き始めた。切り替えは0.1%。九州の家庭向け市場への参入は三十数社。どこも「九電よりお得」を掲げ、九電も「億単位」(幹部)を投じ、テレビCMなどで新料金をPRする。“序盤戦”は九電の強さが目立つ。九電から他社に流れたのは23日時点で約9千件と、九電の小口顧客の0・1%どまり。九電幹部が「予想より少ない」と言うほど、関東や関西に比べて動きがない。「数百件の申し込みがあり、まずまずの数字。今後は伸びる」(鹿児島市のナンワエナジー)と強気な企業もあるが、消費者の視線は甘くない。西日本新聞が行った九州7県の100人アンケートでは、35人が九電の現行料金を「高い」と感じている。一方、95人が契約先を他社に「切り替えない」「未定」とした。「制度の仕組みや料金の違いが分からない」との理由が最多だが、切り替えに対する潜在的な不安が根強いのも事実だ。だが消極的な「様子見」は、結局は既存の大手電力が圧倒的なシェアを持ち続け、料金低減につながらない恐れもある。電力中央研究所の筒井美樹主任研究員は「供給余力の状況や原油価格次第で、容易に値下げ競争が終わる」と指摘。健全な競争や価格を維持するためにも「消費者も企業を選ぶ目が必要となる」としている。

<原発回帰はありえない>
*3-1:http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201604/CK2016040202000142.html (東京新聞 2016年4月2日) 「原子力利用再びリードする」 首相、原発推進を宣言
 安倍晋三首相は一日午前(日本時間二日未明)、核物質や核施設の防護・管理強化を話し合う「核安全保障サミット」で演説し、東京電力福島第一原発の事故を踏まえ「日本は二度とあのような事故を起こさないとの決意の下、原子力の平和的利用を再びリードすべく歩み始めた」と原発の再稼働推進を宣言した。事故から五年を経ても収束の道筋が見えない福島第一原発の現状には言及しなかった。首相は演説で「事故の教訓を原発を導入するすべての国と共有し、安全性や事故対策についての知見を世界に広げることが日本の使命だ」と強調。各国への支援、安全基準に関する国際協力などを積極的に行っていく考えを表明した。福島第一原発では、現在も放射能汚染水の対策に追われる。福島県では十万人近くが避難生活を送り、放射性物質を含む汚染土を処分するめどもついていない。東電や国から十分な賠償が得られていないとして集団訴訟も相次いでいる。首相は、こうした状況に関する説明は避けた。一方で、原発の再稼働に関しては「世界で最も厳しいレベルの新規制基準をつくった」と主張。新規制基準をめぐっては、大津地裁が三月、新規制基準を疑問視し、稼働中の関西電力高浜3、4号機(福井県高浜町)の運転差し止めを決定したばかりだ。さらに、首相は、日本は国際原子力機関(IAEA)の下、高水準の透明性を保ってプルトニウムを厳格に管理していると説明。「利用目的のないプルトニウムは持たない」との方針で核物質の最小化、適正管理に取り組んでいると強調した。各国が原子力の平和利用を将来も続けるには「完全な透明性の確保が必要だ」と訴え、日本が支援していく考えも示した。日米両政府は核安保サミットに合わせ、京都大の研究用原子炉から高濃縮ウランを撤去するとの合意を盛り込んだ共同声明を発表した。首相は演説で「世界の核セキュリティー強化への大きな貢献だ」と述べた。

*3-2:http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160322-00000166-jij-eurp
(時事通信  2016年3月22日) 原発作業員の大半避難=ベルギー南部
 ロイター通信によると、仏エネルギー大手エンジーは22日、ベルギー当局の要請を受け、同社が運営するベルギー南部にあるティアンジュ原発の大半の作業員を避難させたことを明らかにした。原発は稼働中で、稼働に必要な作業員は残しているという。ブリュッセルで起きた連続テロを受けた措置とみられるが、何らかの異変があったかどうかは不明。 

*3-3:http://lite-ra.com/2016/03/post-2116.html (LITERA 2016年月31日号) 福島の高濃度放射能汚染が「女性自身」に続き「週プレ」の調査でも判明! 影響否定の「週刊新潮」は原発村の広告漬け
 先日、「女性自身」(光文社)3月22日号が福島県下の多くの小中学校周辺の土壌で、「放射線管理区域」を上回る高濃度のセシウムが検出されるという驚愕の事実を報道したことを取り上げたが、今度は「週刊プレイボーイ」(集英社)が「県や村を維持するために住民を被爆させる“棄民”政策がさらに進んでいた!!」(3月14日号)、「原発事故から5年たっても、福島の汚染地域は住んでいいレベルではない!!」(3月21日号)と連続して福島県の各地の放射線土壌汚染と行政の欺瞞の実態をレポートしている。同誌の調査によればやはり「女性自身」の調査同様、多くの場所で信じられない数値が出ていた。例えば2014年に「特定避難奨励地点」が解除された南相馬市原町区馬場にある民家の裏庭では毎時1μSv(マイクロシーベルト)を超える空間線量があったという。これは一般の被爆限度である年間1mSv、毎時に計算すると0.23μSvを遥かに上回る数字だ。また来年3月に避難者指示区域解除を目指す飯館市の中学校では、雪に覆われているにも関わらず空間線量が0.7μSvを超える場所が何カ所もあり、雨水を測定すると80Bq(ベクレル)/kgだった。これは飲料水基準の8倍もの数値だという。また、早期の居住制限解除を目指し住民から猛反発にあった南相馬市小高地区の小学校でも1平方m当たり30万Bqもの土壌汚染が見つかっている。これはなんと事故前の3000倍もの汚染だ。
「一般の人が立ち入りできない放射線管理区域は4万Bq/㎡。それよりも7倍近い場所を『安全』と言い、子供たちを遊ばせようとしているのが今の政策だ」(14日号記事より)。まだまだある。南相馬市高倉にある通学路の土からは400万Bq/㎡、飯館村の学校からは1000万Bq/㎡を超える汚染土も見つかっているが、同誌が測定した放射能プルームから外れた新潟の土壌に比べ、なんと100〜2400倍もの数値だという。こうしたホットスポットが点在する場所に住民や子供たちを帰還させる。同誌ではこれを“棄民”と表現しているが、まさにその通りだろう。記事には今年1月に飯館村中学校の校内を測定した市民団体の小澤洋一氏のこんなコメントを寄せている。「私が今年1月に校内を測定したときには、毎時20μSvの場所がありました。村はまずこの小中学校を再開して、小中学校の授業を始めると聞いています。子供たちが避難する福島市や川俣町からスクールバスでここまで送迎するようです。ですが、これではわざわざ被爆せるために通学するようなもの」。同誌では学校だけでなく様々な場所で土壌を測っているが、その結果も驚くべきものだった。「そもそも法律では、4万Bq/㎡以上に汚染された場所は『放射線管理区域』に指定され、区域内には一般人は入れないようにしている。18歳以下の就労も禁止だ。理由は、それたけの放射線を浴び続ければ人体に悪影響があるから。しかし、福島の土壌を検査すると、多くの場所でこの基準をいとも簡単に上回ってしまうことがわかっている」(集英社「週刊プレイボーイ」 2016年月21日号記事より)。しかも、行政や自治体には「住民を守る」という発想はなく、頭にあるのは「自治体の維持」ばかりで恫喝まがいのことまで行っている。それが避難区域解除に伴う賠償金の打ち切りだ。「除染して線量が下がったから帰ってきても安全と宣伝し、帰ってこられるようにインフラも整えた。だから元の自治体に戻ってこない住民には補助を打ち切る。これでは、体裁を整えるためだけに無駄金だけが突っ込まれ、住民は命の危険に晒されることになる」(同14日号記事より)。子供の被爆を恐れる親が元の場所に戻らなければ、補助金は打ち切られ全ては自己責任というわけだ。既に福島県の166人もの子供たちが甲状腺がんに侵されているというのに、子供たちをさらなる被爆に晒し、欺瞞に満ちた“安全神話”で帰還を強制する。避難地区に指定された人々は福島第一原発事故直後、激烈な放射線に晒された。そして5年経った今、今度は根拠のない“安全宣言”と賠償金打ち切りという脅迫で、“第二の被爆”に晒されようとしている。さらに問題なのは、こうした調査や報道が「女性自身」や「週刊プレイボーイ」、テレビでは「報道ステーション」といったごく一部でしか報じられないことだろう。しかも電力会社や電力団体が、またぞろメディアに対しての原発広告というバラマキ工作を再開させている。このままでは再び、電力会社のメディア支配、そして原発の安全神話が復活しかねない。実際、毎号のように電事連の原発広告を掲載している「週刊新潮」(新潮社)は、3月24日号で、福島での「甲状腺がん」増加を報道した「報道ステーション」にかみつき、まったくデタラメな根拠を並べて、甲状腺がん増加を「過剰診断」だと断定した。そうした中、事故から5年経った現在でも一貫して放射線や健康問題を報じ続けている「週刊プレイボーイ」や「女性自身」には、圧力や懐柔に屈することなく、これからもぜひ告発を続けてもらいたい。

*3-4:http://kodomozenkoku-news.blogspot.jp/2014/11/blog-post_9.html (情報ブログ 2014/11/9) 関東子ども健康調査支援基金による甲状腺エコー検査の結果が報道されました。
 11月9日 6時04分東京電力福島第一原子力発電所の事故を受けて茨城や千葉の保護者などで作る市民団体が1800人余りの子どもたちの甲状腺を検査したところ、このうち7人が「一定以上の大きさのしこりなどがあり、さらに詳しい検査が必要」とされましたが、担当の医師は原発事故の影響とは判定できないとしています。団体では今後も検査を続けることにしています。茨城や千葉の保護者などで作る市民団体「関東子ども健康調査支援基金」は、原発事故で放出された放射性物質が子どもたちの健康に影響していないか調べようと去年10月から希望者を対象に医師の協力を受けて甲状腺の検査を行ってきました。検査は茨城、千葉、埼玉、神奈川、栃木の5つの県で行われ、ことし9月までに検査を受けた18歳以下の子どもたち1818人の結果がまとまりました。それによりますと「正常」と診断された子どもが672人、「小さなしこりやのう胞と呼ばれる液体がたまった部分があるものの、特に心配はなく経過を観察」とされた子どもが1139人、「一定以上の大きさのしこりなどがあり、さらに詳しい検査が必要」とされた子どもが7人でした。今回の結果について検査に当たった島根大学医学部の野宗義博教授は「チェルノブイリ事故の例から見て原発事故から3年余りで甲状腺がんが発生するとは考えにくく、詳しい検査が必要とされた子どもについても被ばくによる影響とは判定できない。今後も定期的に検査をしていくことが大切だ」と話しています。市民団体では今後も希望者を対象に検査を続けることにしています。
*2014年11月9日 NHKニュース(下記サイトに動画あり。数日で削除されると思いますが)
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20141109/k10013058381000.html

*3-5:http://this.kiji.is/88115145579562493
(共同通信 2016/3/31) 原発事故自主避難者が訴訟で陳述、「極限状態」、千葉
 東京電力福島第1原発事故に伴い、福島県の避難指示区域外から千葉県に自主避難した6世帯20人が、国と東電に計2億2千万円の損害賠償を求めた訴訟の第1回口頭弁論が31日、千葉地裁(鹿子木康裁判長)で開かれ、原告が「体力的、精神的に極限状態になった」と意見陳述した。
 原告の一人で、福島県南相馬市原町区から千葉県四街道市に家族で避難した女性(37)は「国が一方的に線引きした避難区域外から逃げたため、損害賠償がまともに受けられていない」と声を震わせた。国と東電側は請求棄却を求めた。

*3-6:http://qbiz.jp/article/83127/1/
(西日本新聞 2016年3月21日) 脱原発を訴える広域組織設立へ 鹿児島、熊本の市民ら
 九州電力川内原発(鹿児島県薩摩川内市)から30〜40キロ圏の同県出水市、阿久根市、伊佐市と熊本県水俣市の複数の脱原発市民団体や市議が4月24日、新組織「川内原発を考える肥薩ネットワーク」を設立する。原発近接地に比べ、九電などからの情報が少ないため、広域連携して過酷事故時の避難計画などの問題点を探る狙いがある。参加する水俣市の「原発避難計画を考える水俣の会」(永野隆文代表)によると、新組織の会員は200人規模で、4市の市議5人も加わる予定。「互いの地域の課題を持ち寄り、協力して活動したい」としている。


PS(2016年4月4日追加):使用済核燃料貯蔵量は、下図のように日本全体で17,315tにもなっており、これを貯蔵していること自体に大きなリスクがあることは、フクイチ原発事故で明確になった。そのため、そのように大きなリスクがあるものを無料で保管することを、保管する自治体はじめ事故を起こした時に影響を受ける範囲の自治体が容認すべき理由はなく、(課税する自治体の範囲や使い方には異議があるものの)使用済核燃料の貯蔵に課税することはリスク負担料として合理的である。また、保管し続ければ無限にかかる使用済核燃料の保管費や使用済核燃料税は原子力発電を行った電力会社が全額支払うべきで、その費用は原発による発電コストとして発電時に引当金を積むのが正しい会計処理だ。
 しかし、こうすると継続できる大手電力会社はなくなり、国民負担も莫大になるため、現在ある使用済核燃料に限って多重バリアで包み、1000年しかもたないステンレス製や金属製の容器ではなく、10万年以上もつセラミック製の容器に入れて、(地層処分はどこも引き受けないため)地層処分ではなく日本海溝の流れのない窪地に正確に沈めるのがよいと考える。

      
 使用済核燃料貯蔵量    使用済核燃料への課税額と課税方法    多重バリアによる最終処分  
                                    *4より上
*4:http://digital.asahi.com/articles/ASJ4143D3J41UUPI004.html
(朝日新聞 2016年4月4日) 使用済み核燃料への課税拡大 8市町村で毎年29億円
 東京電力福島第一原発事故後、原発から出る使用済み核燃料に対して立地自治体が独自の課税を強め、原発や関連施設がある全国の8市町村に2017年度以降、少なくとも毎年計約29億円が入るようになることが朝日新聞の調べで分かった。この税金分は大手電力会社の電気料金に影響する。原発の使用済み核燃料を再処理して再び燃料に使う核燃料サイクルが進まない中、再処理できずにたまり続ける使用済み燃料を新たな収入源にする動きが広がったことになる。原発再稼働も進まず、減少する電源三法交付金などの穴埋めの意味が強く、新たな原発マネー依存との指摘もある。使用済み燃料への課税では、立地の市町村が課す場合と、立地の道県が課税して税収の一部を立地市町村に交付する場合がある。いずれも自治体が条例をつくって課す法定外税。設置には総務相の同意が必要だが、不同意となったのはこれまで1件だけだ。使用済み核燃料税は、使用済み燃料の重量などにかかる税金で、03年、東電柏崎刈羽原発がある新潟県柏崎市と九州電力川内原発がある鹿児島県薩摩川内市が始めた。税収は14年度実績でそれぞれ5億7千万円、3億9千万円だった。朝日新聞は、原発や再処理施設が立地する全12道県、全20市町村の検討状況を調べた(福島県内を除く)。九電玄海原発がある佐賀県玄海町の岸本英雄町長は3月10日、使用済み核燃料税を17年度から導入することを町議会で表明した。九電には1月に正式に伝えており、税収は年間約4億円を想定しているという。東北電力女川原発がある宮城県女川町は取材に「検討中」と答えた。茨城県は14年4月、日本原子力研究開発機構の再処理施設(茨城県東海村)に関し、使用済み燃料の保管への課税を始めた。年間約6千万円を東海村に交付する。青森県は12年4月、日本原燃再処理工場(青森県六ケ所村)などへの課税で得た一部を立地周辺の市町村に配る交付金制度を始めた。青森県大間町、むつ市、東通村、六ケ所村の立地4市町村へは最大で計10億円だったが、14年4月には計15億円に引き上げた。全国最多の原発11基を抱える福井県の西川一誠知事は今年3月11日、11月から使用済み燃料への課税を始める方針を表明した。六ケ所村の再処理工場は完成が遅れ、燃料プールはほぼ満杯。また電気事業連合会によると、全国の原発にある使用済み燃料は1万4700トンウラン。各地の原発が再稼働すると5年後には、全国の17原発のうち12原発で燃料プールの貯蔵割合が8割を超える。これまでは原発で燃料が使われる際の課税が主だった。使用済み燃料へ課税を始めることについて、各自治体は「使用後には危険性が高まり、安全対策などに充てるため」とする。福井県は燃料の搬出を促すという理由も挙げるが、搬出先が決まるめどはない。一方で佐賀県玄海町は、減っていく交付金などの穴埋めが目的と認める。資源エネルギー庁が示すモデルでは、原発周辺にもたらされる電源三法交付金は、運転が始まると建設中のピーク時の4分の1に減少。また旧国家戦略室が11年に示したモデルでは、固定資産税は運転から20年で20分の1になる。廃炉で交付金は対象外となり、固定資産税もなくなる。税収の使途では、漁業支援など安全対策とは直接関係ない事業が目立つほか、人件費やゴミ処理などの義務的経費も増えている。これまで使用済み核燃料税などは、電気料金算定の基礎となる経費「原価」に上乗せされており、負担するのは実質的に電気利用者だった。六ケ所村の再処理工場を中心に予定されてきた再処理事業には、原発を持つ全国の大手9電力会社が電気料金から資金を拠出してきた。今年4月の小売り自由化後も、原発を持つ大手電力会社は使用済み核燃料税などの分を電気料金で回収することになる。
■利権構造が継続
 〈福島原発事故の政府事故調査・検証委員会で委員を務めた吉岡斉・九州大教授(科学技術史)の話〉 使用済み燃料を半永久的にカネを取るための材料にしたい立地自治体、置いておくしかないから支払って電気料金転嫁を狙う大手電力会社、それらを受け入れる政府。原発を巡る利益配分の構造は変わっていない。福島の事故で原子力に関するあらゆるハードルは上がったはずだが、一定程度再稼働は進む流れで、配られる分け前は減るものの原発を巡る利権構造は維持されようとしている。国民は、電力と税金を巡る関係にもより関心を持つ必要がある。


PS(2016年4月6日追加):*5に、「①九電川内原発1、2号機の運転差し止めを求めた即時抗告審で、福岡高裁宮崎支部は九電の主張を丸のみして、鹿児島地裁と同様に住民側の申し立てを退けた」「②鹿児島県は道路整備が進んでおらず、事故が起きた場合、どれだけの人が避難できるのかについて決定は全く配慮していない」「③薩摩川内市で飲食店を営む男性は、経済的に一番底の状態で再稼働差し止めとなると大変だと話した」などと記載されている。
 しかし、①については、福岡高裁はどんな時でも地裁判断を丸のみするので三審制の存在意義が問われる印象があり、②については、仮に道路整備が進んでいて避難できたとしてもすぐ帰れるわけでないのはフクイチ原発事故でわかっていることであり、③の「再稼働が差し止めになると経済的に大変という飲食店がある」というのは、生産年齢人口にあたる人が国民の無駄な拠出でやっと生活しているということで、誠にもったいなく情けない話なのである。つまり、薩摩川内市は、海岸に海ガメが産卵に訪れ、近くに鶴の越冬地があり、温泉も出て、食べ物が美味しく、新幹線が停車するようになったのだから、もっとポジティブで役に立つビジネスができるよう、公害のないきれいな街づくりをしてはどうかと思われる。

         
 鹿児島地裁判決 風船が飛ぶ範囲 偏西風の影響     汚染水と海流    火山の噴火
   <つまり、川内原発の事故時には、遠い地域の人も無関係ではいられないということ> 

*5:http://mainichi.jp/articles/20160406/k00/00e/040/224000c
(毎日新聞 2016年4月6日) 割れた司法判断「なぜ」 住民、落胆と怒り
 またも訴えは司法に届かなかった。九州電力川内原発1、2号機(鹿児島県薩摩川内市)の運転差し止めを求めた即時抗告審で、福岡高裁宮崎支部は6日、昨年4月の鹿児島地裁と同様、住民側の申し立てを退けた。関西電力高浜原発(福井県高浜町)の運転差し止めを命じた1カ月前の大津地裁に続く決定を期待した住民は「なぜ認められないのか」と不満をあらわにした。一方、経済効果に期待する地元からは安堵の声も聞かれた。「不当決定」「私達は屈しない」。午前10時半過ぎ、宮崎市の福岡高裁宮崎支部前で住民側弁護団が垂れ幕を掲げると、集まった住民や支援者から憤りの声が上がった。森雅美弁護団長は「非常に残念な結果。鹿児島地裁の焼き直しのようだ」と厳しい表情で語った。続いて宮崎市のビルの一室で開かれた記者会見。森弁護団長は「九電の主張を丸のみした決定。司法の後退を意味している」と強い口調で批判し、「棄却決定は法解釈を誤ったもので東京電力福島第1原発事故の重大性を認識していない」とする声明文を読み上げた。仮処分を申し立てた一人、鹿児島大名誉教授、荒川譲さん(82)は「鹿児島県は道路整備が進んでおらず、事故が起きた場合、どれだけの人が避難できるのか。決定はまったく配慮していない」と疑問を投げかけた。仮処分申請に参加した会社員の塚田ともみさん(45)=同県姶良(あいら)市=は「残念だがまだ本訴(運転差し止め訴訟)もある。本来ならば政治の力で変えるのがあるべき姿だ」と語った。他の住民らは、抗告審で火山の専門家らが原子力規制委員会を明確に批判したことなどを念頭に「今までの審理の過程を考えると勝って当然なのに……」と言葉を詰まらせた。一方、薩摩川内市で飲食店を営む男性(43)は「ほっとした。再稼働してこれから街が元気になると期待していた。今、経済的には一番底の状態で、差し止めとなると大変」と話した。
●今回の決定は妥当
 宮崎慶次・大阪大名誉教授(原子力工学)の話 高浜原発3、4号機の運転差し止めを命じた大津地裁の仮処分決定では、福島第1原発事故で起きたようなことが高浜でも起きるような論調になっていた。新規制基準は福島事故の反省を踏まえ厳格に作られた。今回の決定はそれが正当であるとしており、妥当な決定と言える。
●規制委に説明責任
 諸葛宗男・元東京大公共政策大学院特任教授(原子力安全規制法制)の話 専門的な内容の判断については原子力規制委員会に委ねたということだろう。評価が裁判所によって分かれたのは、規制委が「規制基準に適合している」としか言っていないことにある。規制委は国民に丁寧に説明すべきだ。
*解説 国と電力会社は国民不安直視を
 関西電力高浜原発3、4号機の運転停止を命じた大津地裁決定から1カ月。福岡高裁宮崎支部が、国の新規制基準に基づいて昨夏再稼働した九州電力川内原発の運転を追認し、またも司法の判断は分かれた。3月の大津地裁は、新基準について「十二分の余裕をもつべきだ」と指摘。これに対し、高裁宮崎支部は社会通念上、「絶対的な安全性に準じる安全性の確保」までは求められていないとして、原子力規制委員会が策定した新基準は合理的と結論づけた。東京電力福島第1原発事故以前、原発を巡る訴訟の判断基準となった四国電力伊方原発訴訟の最高裁判決(1992年)は、旧原子力安全委員会などによる審査の目的を「災害が万が一にも起こらないようにするため」とした。当時、行政庁の審査に通りさえすれば「事故は万が一にもない」とする考えが、司法を含む社会全般に通底していた。事故後、原発の運転差し止めを巡る判決や仮処分決定は今回で9件目だが、うち3件で運転差し止めの判断が出ている。運転は止めなかったものの、高裁宮崎支部も規制委がまとめた火山影響評価ガイドを批判し、「過去の最大規模の噴火で設計対応不可能な事象を起こす火山が地理的領域にある場合は、立地不適とすべき」と踏み込んだ。全国で唯一運転している川内原発が止まれば、国内の稼働原発が再びゼロに戻るところだった。再稼働を進める国も電力各社も今回の決定に安堵(あんど)したに違いない。だが、その前に司法も揺れているという事実を直視し、国民の不安に真摯(しんし)に向き合うべきだ。


PS(2016年4月7日追加):福岡高裁が「破局的噴火は無視しうる」「避難計画は実効性がなくても人格権を侵害しない」として新基準は合理的という結論を導き出したのは、私もおかしいと思った。また、「日本全体の破局的噴火は約1万年に1回程度」とする専門家もいるが、それなら、①噴火は約1万年に1回しかないという根拠を示すべきであり ②その1万年に1回というのは、東日本大震災が起こった後の現在でも無視できるほど遠い将来のことと言えるのか について、原発を立地して「安全だから稼働する」としている九電が根拠を持って示すべきで、立証責任の所在が逆だと考える。
 また、福岡高裁が「一般の建築規則では破局的噴火を無視できるとする社会通念があり、原発だけ特別に安全対策を考える根拠はない」としている点については、原発が事故を起こせば建物の所有者に限らず被害甚大になるため一般の建築規則では判断できず、静岡大の小山教授(火山学)の「そんな社会通念はないと思う。破局的噴火は一般社会に知られていないだけで、むしろ今後はそのようなリスクと原発の利点を比較し、どちらをとるかの社会通念を形成していくべきだ」という意見に賛成だ。

*6:http://qbiz.jp/article/84322/1/ (西日本新聞 2016年4月7日) 「社会通念」が判断の基準 安全評価「ピント外れ」「妥当」…識者評価割れる 川内差し止め棄却
 「破局的噴火は無視しうる」「避難計画は実効性がなくても人格権を侵害しない」。川内原発(鹿児島県薩摩川内市)の運転差し止めを求めた仮処分申し立ての即時抗告審で、福岡高裁宮崎支部は6日、新規制基準の一部や自治体が定めた避難計画の問題点を指摘しながら、社会通念を用いて「新基準は合理的」との結論を導き出した。住民側弁護団は「問題があるのに差し止めを認めないのでは、司法の役割を果たしていない」と強く批判する。「即時抗告審で主張した火山評価の問題点は、ほぼ認められた」。抗告審の決定後に宮崎市内で会見した住民側の海渡雄一弁護士はこう説明した。弁護団は抗告審で、破局的噴火を予測できるとした新規制基準の安全対策指針(火山ガイド)などの問題点を、火山学者の協力を得ながら集中的に反論。高裁は同指針を「不合理」と判断した。日本大の高橋正樹教授(火山地質学)は「できないことをできないと言ったのは妥当だ」と評価している。ところが、運転差し止めには「破局的噴火の発生可能性が、根拠を持って示される必要がある」と高いハードルを課した。鹿児島大の井村隆介准教授(地質学)は「『噴火は予測できない』と認めながら、住民側に根拠を求めるのは明らかに矛盾している。指針に問題があったわけだから、1度原発を止め、破局的噴火の発生可能性について議論を尽くすよう決定を出すべきだった」と批判した。伊方原発の設置許可を認めた1992年の最高裁判決は、専門的な行政判断を尊重するべきだとしつつ、「裁判所は審査基準に不合理な点がないかを審理する」と判示。ただ、今回は指針を不合理としながら、運転差し止めに踏み込まなかった。海渡弁護士は「伊方判決を骨抜きにする判断だ」と憤り、最高裁への抗告を検討している。さらに、弁護団の反論を認めた高裁が「(一般の)建築規則で考慮していないのは、破局的噴火を無視できると容認する社会通念の反映」とし、「原発だけ特別に安全対策を考える根拠はない」と断じた。これに対し、静岡大の小山真人教授(火山学)は「そんな社会通念はないと思う。破局的噴火は一般社会に知られていないだけで、むしろ今後はそのようなリスクと原発の利点を比較し、どちらをとるかの社会通念を形成していくべきだ」と話す。避難計画について、昨年4月の鹿児島地裁の決定は「一応の合理性、実効性を備えている」と評価していた。ところが、今回の高裁決定は「(政府方針に従って計画さえ作れば)合理性や実効性を欠いても、違法ではない」とし、避難計画の重要性を引き下げた。東京大の金井利之教授(自治体行政学)は「避難計画が不十分だと裁判所が実質的に認めており、ある意味で画期的だ。計画の合理性、実効性を点検する仕組みも現行法制では不在だと指摘したのと同じ。関係自治体と電力会社が責任をもって計画の実効性を高めるべきだ」と注文を付けた。
◆リスク軽視 荒い判断
 吉岡斉九州大教授(科学史)の話 裁判官は原発の過酷事故のリスク認識が甘く、安全を非常に軽視した決定だ。原子力規制委員会の新規制基準とその運用を丸ごと認め、火山噴火の危険性も原発が存在する間に無事であれば良いと受け取れる。避難計画についても、3月の大津地裁の仮処分決定は、国主導の計画策定と規制委による審査を求めたが、今回は「基本的に市町村の責務」とした。「計画の問題点を指摘できるとしても、計画が存在しないのと同視できない」というくだりは「ないよりはましだ」とも受け取れ、荒っぽい判断だ。
◆安全評価ピント外れ
 勝田忠広明治大准教授(原子力政策)の話 福岡高裁宮崎支部の決定は新規制基準や原子力規制委員会の審査の合理性を認めたが、無批判すぎる。優先審査の対象だった川内原発1、2号機の審査は先を急いでいた印象がある。住民側は安全の問題を見落としていると訴えているのに、決定は書類の手続きしか見ておらず、ピント外れだ。また安全性の判断基準に「社会通念」を用いているが、東京電力福島第1原発事故以降、どこまで安全性を求めるかの社会通念が定まっていないことが原発問題の根幹。裁判長は「社会通念はこれだ」と明確にすべきだった。
◆地震動想定甘い恐れ
 高知大の岡村真特任教授(地震地質学)の話 川内原発周辺の断層は海底部分でさらに延びている可能性がある。即時抗告審で住民側がそれを訴えたが、認められなかった。断層が長くなれば、現在想定している基準地震動が過小評価となる。最近の直下型地震をみても九電の想定地震動の2〜3倍に達するものもあり、その点を考慮してこそ、福島原発事故の教訓を踏まえたことになる。
◆法に沿った妥当な決定
 奈良林直・北海道大特任教授(原子炉工学)の話 法律に準拠した妥当な決定だ。法の下で策定された新規制基準と審査に合理性があることを認め、火山や自然災害も含めた九州電力の安全対策が新基準に合致していることを理路整然と評価した。電力会社には、安定した価格で電力を供給する義務があり、国民の利益につながる。関西電力高浜原発3、4号機の運転差し止めの仮処分決定を出した大津地裁や福井地裁の判断に見られた事実誤認もなかった。
   ◇   ◇
◆川内原発差し止め棄却 高裁宮崎決定要旨
 九州電力川内原発1、2号機の再稼働差し止めを認めなかった6日の福岡高裁宮崎支部の決定要旨は次の通り。
▼司法審査の在り方  
 どのような事象でも原子炉施設から放射性物質が放出されることのない安全性を確保することは、少なくとも現在の科学技術水準では不可能だ。わが国の社会がどの程度の危険性であれば容認するかの社会通念を基準として判断するほかない。
▼新規制基準の合理性  
 基準地震動(耐震設計の目安となる揺れ)の策定、耐震安全性確保や重大事故対策に関する新規制基準に不合理な点はなく、施設が新基準に適合するとした原子力規制委員会の判断も不合理とは言えない。九電は相当の根拠、資料に基づく説明を尽くした。基準地震動を上回る地震のリスクはゼロではないが、耐震安全性の確保の観点から新基準は極めて高度の合理性を有する。住民に直接的かつ重大な被害が生じる具体的な危険が存在するとは言えない。
▼火山の危険性   
 火山の噴火時期や規模を的確に予測できるとする規制委の前提は不合理だが、日本全体で見れば破局的噴火は約1万年に1回程度だ。極めて低頻度で経験したことがない規模の自然災害の危険性については、安全性確保の上で考慮されないのが実情であり、無視できるという社会通念がある。このような危険性を自然災害として想定するかは政策判断に帰するが、現行法制度では想定すべきだとの立法政策は取られていると解釈できない。立地不適とは言えない。
▼その他の危険性   
 竜巻による飛来物が使用済み燃料ピットに衝突し重大な被害が生じる具体的な危険があるとは言えない。テロリズム対策も新基準に適合するとした規制委の判断は不合理ではない。戦争による武力攻撃対策は国の防衛政策に位置づけられ、危険性を検討する余地があるとしても、九電による人格権侵害の恐れがあるとは言えない。
▼避難計画の実効性  
 避難計画は、施設からの距離に応じた対応策が合理的かつ具体的に定められていることを確認したとして原子力防災会議で了承されている。段階的避難の実効性や避難経路の確保などの問題点を指摘することができるとしても、避難計画が存在しないのと同視することはできない。原発の運転で、直ちに九電による人格権侵害の恐れがあるとは言えない。


PS(2016年4月9日追加):*7-1のように、みやま市の再生エネのみを使って電力を供給するモデルが東京都に採用されたのは、大変よかった。埼玉県、千葉県、神奈川県など関東の他県でも再生エネ由来の電力を供給し、関東で容易にスマートエネルギーの電力が手に入るようにして欲しい。また、*7-2のように、下水道汚泥から発生するバイオガスから水素を作り、燃料電池自動車の燃料にしたり発電に使ったりするのも、邪魔物から価値ある物を作っており、賢い。

*7-1:http://qbiz.jp/article/84490/1/
(西日本新聞 2016年4月9日) みやま市が東京都に技術協力 再生エネルギーモデル事業
 東京都は8日、電力小売り事業に参入すると発表した。福岡県みやま市などでつくる電力会社「みやまスマートエネルギー」が、技術やノウハウ面で協力する。都の公益財団法人「東京都環境公社」を通じて、7月から都内の公共施設2カ所への電力供給を始める。都は都内の電力消費量に占める再生可能エネルギーの割合を2030年までに30%程度に高める目標を掲げているが、再生エネのみを使って電力を供給する事業者が都内には少ないのが現状。都がモデル事業として小売りに乗り出すことで、再生エネの利用拡大を図る。公社は今回、バイオマスや太陽光に由来する再生エネの電力を宮城県と都内の2事業者から調達する。みやま社は、昨年11月から公共施設などに電力を供給してきたノウハウや技術を提供。電力の需給調整のほか、再生エネ由来の電力の共同調達などで公社と連携する。公社が調達した電力をみやま市に融通する計画もある。みやま社は業務を受託することで、事業規模の拡大を図る。「電力の地産地消」を掲げるみやま社は、10月にも新電力会社の設立を目指す鹿児島県肝付町なども支援。さらに、九州大と共同で電力小売り事業に参入する自治体向けのソフトウエアの開発を始めており、今後も全国の市町村との連携を広げていく考えだ。この日、記者会見した舛添要一都知事は「今回の取り組みでノウハウを蓄積し、再生エネ由来の電気を供給する事業者を育てていきたい」と述べた。

*7-2:http://mainichi.jp/articles/20160409/dde/041/040/048000c (毎日新聞 2016年4月9日) 下水汚泥 、.発生するバイオガスから水素生成、発電 自動車燃料に 国交省試み
●汚れた水を利用、再生 新たな技術
 国土交通省が、下水道の汚泥から発生するバイオガスから水素を作り、燃料電池自動車(FCV)の燃料にする取り組みを進めている。水素と酸素の化学反応で発電する電気で動き、水しか出さない「究極のエコカー」と呼ばれるFCV。そのエネルギーに、廃棄物である下水汚泥を有効活用できれば、FCVの普及につながるとして、全国の自治体も注目している。バイオガスは、下水汚泥を微生物の働きで処理する過程で発生する。既に発電などにも利用されているが、小規模な施設では発電の設備が設置できないなどの理由で、国内で発生するバイオガスの全体量のうち3分の1は焼却する形で廃棄されているという。国交省によると、廃棄されているバイオガスの量は8900万立方メートルで、仮に有効活用できれば年間1・3億立方メートルの水素が生成できると試算している。FCV1台の1回当たりの水素充填(じゅうてん)量を50立方メートルとすると、約270万回分に上る。国交省は2014〜15年度に、福岡市中部水処理センター(福岡市中央区)で実証実験を実施。(1)下水汚泥を発酵させて発生したバイオガスから二酸化炭素を除去し、高濃度メタンガスを回収(2)メタンガスと水蒸気を反応させ水素を作る(3)吸着剤で残っている二酸化炭素をさらに除去する−−という手順で、高純度の水素を生成。1日にFCV65台前後の燃料になる3300立方メートルの水素を作り出した。こうした取り組みに着目した埼玉県、横浜市、青森県弘前市が事業化に向けた検討を始めており、それ以外の複数の自治体も関心を寄せているという。下水汚泥の活用は、他の分野でも始まっている。佐賀市は汚泥を高温発酵して堆肥(たいひ)として活用している。汚泥から発生したバイオガスを燃料に発電する「バイオガス発電」は北海道や横浜市、広島県など55カ所が実施(13年度現在)しており、国交省下水道企画課の担当者は「下水汚泥は重要な国産エネルギー源。活用を加速させたい」としている。


PS(2016年4月11日追加):森林資源は戦後の努力でやっと豊富になってきた状況であるにもかかわらず、*8のように、「太陽光発電偏重は悪いことで、木質バイオマス発電が必要であり、木材の利用と言えば発電のために燃やす木材チップの加工設備を新増設することしか合点が行かない」というのは、物理学・化学・生物学・経営学・経済学のわかっていない人が書いた記事であり、問題が多い。
 何故なら、物理学・化学・生物学的には、木材を燃やす発電方法は太陽光発電よりCO2を出す上、木材は燃やせば次第に枯渇するため持続可能性もなく、経営学的・経済学的には、長期間かかって育てた木材を最も低い付加価値で使用しており、記者はそれを多面的に批判することができていないからである。つまり、燃やして発電するのは、使い道のないゴミだけで十分なのだ。
 しかし、これは、(文科系・理科系を含む)教育において知識と論理的思考力を軽視しすぎた結果であり、これでは正しい判断をする主権者や将来性のある事業を選別できる人材は育たない。

    
           中国家具              イギリス家具       イタリア家具
 <世界に輸出できる家具を作るためには、家具会社やデザイナ―を誘致してくる方法もある>

    
          <木材の使い方は進歩し、環境に優しい用途が増えている>

*8:http://qbiz.jp/article/84439/1/ (西日本新聞 2016年4月11日) 【工場立地、木材が26業種中4位】食品、車、半導体に続く「常連」に?
 九州経済産業局がまとめた2015年の工場立地動向調査によると、九州7県の立地件数(電気業を除く)は106件となり、7年ぶりに100件を突破した。26の業種別でみると、最多は食料品20件、次いで金属製品19件、輸送用機械器具9件で、ここまでは九州経済のイメージ通りだ。業種別4位に入ったのは木材・木製品の8件。九州は森林資源が豊富だが、木材と「工場立地」はあまり結びつかないのではないだろうか。九州経産局によると、木材・木製品の工場立地で目立つのは「木質バイオマス発電の燃料となる木材チップ加工設備の進出や増設」とのことで、ようやく合点が行った。九州では、大分県などで既に国内屈指の発電規模を持つ木質バイオマス発電所がある。太陽光偏重だった固定価格買い取り制度の見直しもあり、他にも複数の大規模建設計画が浮上している。当然、発電燃料の木質チップを安く、安定的に調達することが必要。森林資源が多く、質も高いとされる九州に木質チップ設備の立地や増設が相次ぐのも自然な流れだ。実際、立地8件のうち大分県内が半分の4件を占めている。業界では、木材チップの供給不足が懸念される一方、あまりに供給が増えすぎると木材市況への影響も出かねない。さらに、固定買い取り価格の変動など国のエネルギー政策にも左右される側面があり、今後も右肩上がりで普及が進むかどうかは不透明だ。九州の木材・木製品業種の工場立地は例年1〜3件程度が続いていたが、13年5件、14年8件と増加。業種別の上位に入るようになっている。食品や自動車、半導体関連に続く、九州の「常連」業種となるだろうか。


PS(2016.4.12追加):*9のように、日経新聞が、一億総活躍社会で女性の活躍は重点になっているが、「①2013年以降を見ると、就業者数が伸びているのにGDPは横ばいで1人当たりの生産性が下がっている」「②女性は働くことを余儀なくされているだけ」「③女性の活躍の真の目的は、女性が男性の仕事を取ることではなく、男女ともに活躍して総生産を増やすこと」「④現在のような需要不足の状況では、総需要を増やさなければ生産を増やしようがない」「⑤それをせずに企業に女性の受け入ればかりを強要すれば男性との仕事の取り合いになるのは自然のこと」「⑥最終需要の拡大は、民間に任せるだけでは無理なことは、過去20年を振り返っても政府が財政を投入してつくるしかない」「⑦女性進出を目指すなら、大企業は必ず中小は複数の企業で保育室を作ることを義務づけるくらいの思い切った方策が必要」などとしている。
 しかし、日本国憲法27条に「すべて国民は勤労の権利を有し義務を負う」と規定されており、男性が優先的に職を得るとは書かれていない(男女平等なのだから当然)。そのため、③⑤の主張は、憲法違反かつ男女雇用機会均等法違反で誤りだ。そもそも、「女性が男性の仕事を取ることではない」などと書く以上、何が男性固有の仕事かをリストアップしてみせるべきだが、戦闘機にも女性が乗っている現在、男性固有の仕事はあまりない上、これまで勤労者が男性に偏っていたためわからなかった本当の需要は多く、保育や介護はその一部にすぎない。また、人によって働く目的や動機は異なり、私(純然たる女性)は、仕事を通じて自己実現するために、勉強し、仕事上の経験を積み、目的に沿った仕事をしてきたので、②を全女性に当てはめるのは失礼だ。そして、こういうことを書く女性を「謙虚でない」「自分を知らない」「女らしくない」などと論評する人がいるが、それはジェンダーによる間接差別であるため、そう言う人は、「謙虚さ」「自分を知ること」「女らしさ」に関する自分の定義とその定義を誰にでも押しつけることの正しさについて見直すべきである。なお、⑦の「女性進出を目指すなら企業で保育室を作ることを義務づけることが必要」というのも、「保育=母親の仕事」という固定観念によっているため間違いで、日経新聞がここまでの差別記事を掲載するとは呆れた。
 さらに、①の「就業者数が伸びたのにGDPが横ばい」というのは、⑥のように、政府が税金を投入して必要性が小さく付加価値の低い(もしくは、付加価値のない)最終需要を作り、多くの労働力がそういう仕事についているからで、そのために政府が税金を上げると、また消費者は本物の需要を節約し、④の需要不足が促進され、GDPも落ちるという負のスパイラルになっているのである。家計という消費の60%を占める実物経済の重要な部分を知らない人には想像すらできないようだが、日経新聞の記者が経済学に弱くて本質を突けず、官のマイクロホンと化しているのでは役に立たない。

*9:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20160412&ng=DGKKZO99530030R10C16A4EN2000 (日経新聞 2016.4.12) 女性活躍の必須条件
 安倍晋三政権は一億総活躍社会を目指し、なかでも女性の活躍は重点課題になっている。実際、2013年以降を見ると、就業者数は伸び、その推進役は女性の就業者数の増大で、男性就業者数はほとんど変わっていない。これから見ると、政策は成功しているように見える。一方、この間の実質国内総生産(GDP)はほぼ横ばいで、マイナス成長すら起こっている。就業者数が伸びているのにGDPが横ばいなのは、1人当たりの生産性が下がっているということだ。その結果、1人当たりの所得が減り、家計の平均所得は変わらない。これは、従来、夫1人の働きで成り立っていた家計が、夫婦共働きでなければ成り立たなくなっていることを意味する。つまり、生活はまったく楽にならず、女性は働くことを余儀なくされているだけだ。子供を持つ家庭では、事態はさらに深刻だ。女性が働こうとすれば、その前に保育園探しに奔走しなければならないからだ。運良く仕事に就いても、保育園の入園はすでに職のある人が優遇される。最近話題の「保育園落ちた……」というブログが引き起こした波紋は、子育て家庭を取り巻く切実な状況が背景にある。女性の活躍の真の目的とは、女性が男性の仕事を取ることではなく、男女ともに活躍して、総生産を増やすことだ。だが、現在のような需要不足の状況では、総需要を増やさなければ生産を増やしようがない。それをせずに、企業に女性の受け入ればかりを強要すれば、男性との仕事の取り合いになるのは自然のことだ。その結果が非正規雇用と低賃金労働の拡大となって、子育て家庭は、子供を保育園に入れる資金さえ足りなくなってしまう。最終需要の拡大こそが、一億総活躍社会の必要条件であり、それができれば、活躍の場は自然に広がる。最終需要の拡大は、民間に任せるだけでは無理なことは、過去20年を振り返ってもわかる。政府が財政を投入してつくるしかない。その上で、特に女性進出を目指すなら、大企業は必ず、中小は複数の企業で保育室を作ることを義務づけるくらいの、思い切った方策が必要であろう。そうでなければ、たとえ仕事が増えても保育園探しがますます深刻化し、働くことが難しくなる。

| 資源・エネルギー::2015.5~2016.12 | 03:23 PM | comments (x) | trackback (x) |
2015.12.8 温室効果ガスの削減は、自然再生可能エネルギーによってなされるべきであり、原発再稼働は不要であること → 今年のKey Wordは、「ゼロ・エミッション」 (2015年12月9日、10日、13日、15日に追加あり)
     
2015.11.30    2015.10.31       2015.12.6   2015.9.20   2015.12.6
 朝日新聞       西日本新聞        日経新聞     日経新聞     東京新聞

(1)第21回国連気候変動枠組条約締約国会議(以下“COP21”)について
 *1-1のように、国連が、「このままでは世界の気温が今世紀末に2.7度上昇する」と発表し、多くの国が削減目標を出したが、電気自動車・燃料電池車・太陽光発電などを最初に開発した日本の削減目標は26%と他国より低く、*1-5のような「日本が取り残される事態」に陥ったのは、理系研究者・技術者の科学力・開発力は高いが、政治・行政・メディア・経営などの主たる担当者である文系の人に科学的判断力がなさすぎるのが原因だ。

 また、*1-5のように、原発ゼロでも自然再生可能エネルギーによる温室効果ガス排出量削減は可能で、*1-6のように、市民は脱原発を訴えているのに、大手電力会社は化石燃料か原発かという選択肢しか思い浮かばないというのもお粗末すぎる。しかし、これは教育の結果であるため、文系でも誰でも、幅広い基礎知識や思考力・洞察力を身につけられるように、初等・中等・大学教育の改革や入試科目の増加を行う必要があるだろう。

 なお、*1-2のように、COP21では、日米欧などの先進国が2020年以降の途上国への温暖化対策資金支援を、官民合わせて年間1,000億ドル(約12兆3000億円)を超える規模とする方向で調整し、日本は2020年までに現在の1.3倍の年1兆3000億円に増額すると表明したそうだ。このように、文系担当者の思考力・洞察力・判断力の低さを、国民の血税を国内のみならず国外にもばら撒くことでカバーしているのが今の日本の現状であり、これでは金を出しても尊敬はされない。そのため、こうなった本質的な原因を解決すべきなのである。

(2)では、世界的にはどうすればよいのか
 私は、世界中の人に平等に、公平・中立・簡素な化石燃料税(炭素税又は環境税)を課し、二酸化炭素吸収力を加味した森林・藻場・緑地の面積に比例して、意図を入れずに全額補助金として配るのがよいと考える。何故なら、そうすると、結果として開発途上国や新興国は純額で補助金の方が多くなり、世界のあらゆる場所で緑地化や藻場の造成に励み、これを壊すことには慎重になるからだ。また、緑地には、都市の緑地面積も加えた方が、緑地整備の動機づけになってよいだろう。

 このようにして、緑地面積に応じて補助金が入れば、*1-3のように、途上国の大半は、多額の補助金を得ることができるため、環境を考慮しながら再生可能エネルギーを使った次の開発が行われることになる。そうすると、地熱発電、水力発電等への投資も進めることができ、熱帯地域や砂漠地帯は太陽光発電の適地でもあるため再生可能エネルギーによる分散型発電を行って、例えばアフリカなどは、20世紀型の電線を張らずに、まっすぐ21世紀型の地産地消型分散発電によって電気が使える地域を広げることができる。

 さらに、*1-4のように、2014年に建設された再生可能エネルギーの発電設備容量は9,700万キロワット(原発97基分)で2013年に比べると約17%増えており、太陽光や風力は不安定で頼りないのではなく、世界は今、脱原発して再生可能エネルギーの推進に向かっているのだということがわかる。そして、日本でも、投資をするなら燃料費のコストダウンに繋がる自然再生可能エネルギーが合理的であるため、①低コストの自然再生可能エネルギーへの投資をやめさせ ②高コストの原発を維持させながら ③投資を増やした企業にさらなる税優遇を与える というのは、国民に3重苦を与える愚かな政府だ。

(3)現代日本のエコ技術
 科学・技術の分野では、*2-1のように、「エネルギー収支ゼロ」住宅ができ、苦労なくスマートに「省エネ」「ゼロエネ」を行うことができるようになった。従って、新しい街づくりではこの技術を取り入れるように投資促進すればよく、また、「エネルギー収支ゼロ」住宅は、アフリカなどで使えば大発電所を建てたり電線を張ったりすることなく、快適な生活に進むツールになる。

 また、*2-2のように、日本で始まって20年間も遅々としていた電気自動車・燃料電池車の普及を進めれば、化石燃料ではないエネルギーを安価に供給できる。そのため、開発途上国では、まっすぐこれを普及させればよく、化石燃料体系ができてしまっている先進国よりも話が簡単な筈である。

 そのほか、*2-3のように、日本は世界第3位の「地熱資源国」であるため、今までこれを発電に使わなかったことの方がむしろ不思議だ。また、*2-4のように、ごみ処理を広域化して熱を利用した発電を行い、自治体が電気を周辺住民や誘致企業に上下水道と同様の安い単価で供給することも可能だ。

 さらに、*2-5のように、「佐賀県海洋エネルギー産業クラスター研究会」が発足し、海洋エネルギーの実用化で地方活性化を目指すそうだ。私も、浮体式洋上風力発電や潮流発電を速やかに実用化して船も電動化すれば、化石燃料を購入して燃やす必要がなく、安価な乗り物になると考えている。特に、空母や潜水艦などは、間違っても原子力を動力とするのではなく、潮流発電で充電する方法を考えて欲しい。

 なお、*2-6のように、農業で小水力発電や太陽光発電の導入を進めれば、①国産エネルギー資源が拡大し ②雇用が創出され ③農家の安定した副収入になる。そのため、農家に毎年所得補助を行うよりも、農地へのこれらの機器設置を補助した方が、国民の税負担が少なく、再生エネによる発電が進んで、一石二鳥ではないだろうか。

(4)電力自由化と選択
 *3-1のように、2016年4月に電力小売りが全面自由化される。この時、電力需要者は、発電方法も加味して電力会社を選択しようと思っているため、それが可能な状況にすべきだ。しかし、*3-2のように、電力小売り全面自由化に向けて大手電力9社が経産省に申請した送電線使用料には、使用済核燃料再処理費など送電と無関係な原発関連費用が上乗せされ、原価の1割近くを占めていることがわかったそうだ。これだから、送電会社は別会社として上場し、ガラス張りの会計処理にすべきなのである。

 九州電力の場合は、1年間の託送原価4,536億円のうち電源開発促進税324億円、核燃料再処理費76億円と原発費用が8.8%を占め、大手9社では9.3%が原発費用だそうだ。電力自由化は、託送原価に送配電に必要な費用のみを計上して、消費者がよい発電方法を選択していくチャンスであるのに、経産省が「促進税と再処理費は電力の安定供給を実現するための費用で、全消費者が公平に負担すべきもの」などとしているのでは、日本の経産省は組織全体として、①科学に弱く ②技術進歩を阻害しており ③電力自由化の意義すら理解できないほど経済にも疎い と言わざるを得ない。

 なお、*3-3のように、経産省が電力会社の発電内訳開示を義務化せず、固定価格買い取り制度(FIT)を利用した再生エネのみ「FIT電気(太陽光)」などと表示させ、原発や石炭火力での発電を消費者に敬遠されるのを避け、あらかじめ電源構成を決めるなどというのは、経産省が日本の技術進歩の足を引っ張り、環境破壊を進めて、世界に遅れる原因を作っているということにほかならない。

*1-1:http://qbiz.jp/article/73955/1/
(西日本新聞 2015年10月31日) 【温室ガス削減】世界の気温、今世紀末2.7度上昇 国連発表
 国連気候変動枠組み条約事務局は30日、世界146カ国が既に公表した温室効果ガス削減目標を実行したとしても、今世紀末の世界の平均気温は2・7度上昇する恐れがあると発表した。ベルリンで記者会見したフィゲレス事務局長は「主要国の目標が出そろったのは歴史的成果だ。正しい方向に向かっているが、気温上昇を2度未満に抑えるという国際目標の達成には十分でない」と話し、各国にさらなる努力を促した。地球温暖化対策の新たな国際枠組みを決めるため、11月30日からパリで開かれる条約締約国会議(COP21)まであと1カ月。今の努力だけでは、温暖化の被害が広がる可能性があり、対応策の検討が求められる。事務局は、10月1日までに提出した146カ国の目標を足し合わせて分析した。温室ガス排出量が世界1位から5位の中国、米国、インド、ロシア、日本をはじめ温室効果ガスの大排出国の削減目標が含まれ、世界の排出量の86%を占めている。2030年の世界全体の排出量は570億トンになると推定。目標がない場合と比べると、40億トン削減できるが、増え続けている排出量を減少に転じさせることはできないと指摘した。今世紀末の気温上昇を2度未満に抑えるには、30年に150億トンの削減が求められるとした。2度未満に抑えることは難しいが、各国が努力を続ければ達成は不可能ではないとしている。

*1-2:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20151206&ng=DGKKASGG05H2A_V01C15A2NN1000 (日経新聞 2015.12.6) 
途上国支援、20年以降年1000億ドル超、COP21で日米欧調整
 パリで開催中の第21回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP21)で、日米欧などの先進国は2020年以降の途上国への温暖化対策の資金支援を、官民合わせて年間1000億ドル(約12兆3000億円)を超える規模とする方向で調整に入る。COP21は、20年以降のすべての国が参加する新枠組みで合意することを目指しているが、交渉は難航中。先進国は途上国の求めに応じることで打開を目指す方針だ。COP21では、先進国のみに温暖化ガスの排出削減を義務付けた京都議定書に代わる新たな枠組みの合意を目指している。5日に事務レベルの会合を終え、7日から閣僚会合が始まるが、交渉は難航している。最大の焦点は、途上国への支援の増額だ。合意の条件として途上国は、温暖化ガスの排出削減や洪水や高潮といった被害抑制の対策に充てる資金支援を先進国に強く求めている。先進国は09年のCOP15で、20年までに官民合わせて年間1000億ドルを途上国に供与すると約束した。COP21では11月30日の首脳級会合で、日本が20年までに現在の1.3倍の年1兆3000億円に増額すると表明。ドイツや英国なども増額方針を示し、1000億ドルの達成がほぼ確実になった。

*1-3:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12100172.html
(朝日新聞 2015年12月4日) 再生エネ、途上国「好機」 温暖化対策、成長の糧
 2020年以降に始める地球温暖化対策の新しい国際枠組みに向けて、約180カ国・地域が削減目標を掲げた。そのうちの途上国の大半は、二酸化炭素(CO2)排出量が世界全体の1%に満たない。経済成長への「足かせ」とみられがちな環境対策は、これらの国では再生可能エネルギーを増やす投資の「呼び水」になっている。
■ケニアへ先進国投資
 ケニアの首都ナイロビから北西約120キロ。ヘルズゲート国立公園内に、同国最大のオルカリア地熱発電所がある。施設の周り、道路の脇からも真っ白な湯気が上がっていた。「これはジオサーマルグラス(地熱草)。ここを掘ればいい熱がとれる」。ケニア電力公社のカリンギティ部長補佐が、草をむしって見せてくれた。発電所は4号機までが完成し、さらに新設、増強する。完了すれば出力は約100万キロワットで、日本の原発1基分に匹敵する。「融資があればまだまだ掘れるよ」。カリンギティさんは自信満々だ。ケニアの再生可能エネルギーへの開発資金は、いまは世界銀行など公的融資が中心だが、今年10月に米グーグルが同国の風力発電に投資をするなど、民間のお金も集まり始めた。ケニアの電気は水力が約半分で、地熱は4分の1。石油や石炭の発電もあるが、今後は地熱や風力を中心に1500万キロワットの発電容量を増やす。「価格が変わりやすい石油や石炭に、経済力が弱い途上国は頼れない。再生エネはコストの見通しがつきやすく、続けるのも簡単だ」。世銀グループの国際金融公社のベルナデット・タベコ氏は分析する。電気が届く地域をいまの約5割から全土に広げるほか、東アフリカの玄関口として海外企業を誘致し、経済発展をめざしている。一方、温室効果ガスの排出量を「何も対策をしなかった場合に比べて30年までに30%削減する」という目標を掲げた。1日100リットル以上を使う事務所やホテル、家庭に太陽熱給湯器を義務づけ、固定価格買い取り制度を導入するなど、環境対策も次々と打つ。「環境と持続可能性を重視している。そこに大きな市場がある」。同国エネルギー規制委員会のパベル・オイメケ再生エネ部長は話す。
■周辺国にも計画次々
 再生エネの国際組織「REN21」によると、14年の再生エネへの投資額は、途上国で約1313億ドルと前年から36%も伸び、先進国に迫る勢いだ。途上国のうち約6割は中国が占めるが、国内総生産(GDP)当たりでみれば、世界の上位には中堅の途上国が並び、ケニアは2位だった。再生エネは燃料代がほとんどかからず、技術革新で発電コストも下がった。機関投資家が化石燃料関連の企業から投資を引き揚げ、再生エネに振り向ける動きが出ていることも普及を後押しする。ケニアの周辺国、エチオピアやウガンダ、タンザニアにも水力や地熱の発電所計画が次々に生まれ、買い取り制度の整備も進む。これらの国々を送電網で結び欧州のように電気を融通し合う仕組みの構想もある。化石燃料で発展した中国やインドとは違う道をめざしている。(ナイロビ=小坪遊)

*1-4:http://www.kahoku.co.jp/editorial/20150706_01.html
(河北新報 2015.7.6) 再生エネルギー/クリーンな発電世界が期待
 原子力発電に比べると、太陽光や風力など自然任せの発電は不安定で頼りない。そうした懸念を乗り越える動きが世界的に広がっている。2014年に建設された再生可能エネルギーの発電設備容量は9700万キロワットで、総容量は13年に比べ約17%も増え、6億5700万キロワットに上っている。エネルギーの専門家でつくる「21世紀の再生可能エネルギーネットワーク」(REN21、本部フランス)がまとめた世界の現状である。新設された発電設備のうち約6割を再生可能エネルギーが占め、クリーンで安全な発電として期待が高まっているのだ。その効果は明白で、経済成長に伴ってエネルギー消費が増大しているにもかかわらず、世界全体の二酸化炭素(CO2)排出量は前年と変わらなかった。CO2排出量が最も多い中国で、再生可能エネルギーが急拡大していることが一つの要因だ。14年の中国の太陽光発電建設は1060万キロワットで最多だった。世界の大型水力を除いた再生可能エネルギーによる発電総容量は6億5700万キロワットで、やはり中国がトップで1億5300万キロワット、次いで米国1億500万キロワット、ドイツ8600万キロワットの順。日本は3100万キロワットで5位にとどまった。中国でも原発はエネルギー戦略の柱の一つではある。ただ全電源に占める原発の比率は1.1%程度にすぎず、東京電力福島第1原発の事故後は安全性への懸念が拡大。四川大地震にみられるような地震多発国であり、住民の不安も強い。電力多消費国の中国で再生可能エネルギーの発電が増えるのは必然なのだ。日本の原発推進派は利点として、低コストでCO2を排出せず、再処理が可能などを掲げるが、いずれの点でも反対の指摘がある。コストの見積もりが過小で、燃料採掘や建設の過程でCO2を排出する、核燃料サイクルはいまだ実現していない-などだ。メリット、デメリットを冷静に点検、潮流を慎重に見極める必要もある。その際、福島の事故で原発の安全神話が崩れた事実を踏まえねばならない。大量の放射性物質を放出し、制御不能の事態を引き起こした、そのことをだ。世界は今、脱原発、再生可能エネルギー推進に向かっている。REN21の報告が如実に物語っていよう。調査結果は14年に再生可能エネルギー開発に投資された金額が2700億ドル(約33兆円)で過去2番目の規模だった事実を示す。中国が833億ドルで以下、米国383億ドル、日本343億ドルと続く。その経済効果も無視できない。一方で世界の原発市場は冷え込んでいる。フランスの原子力大手アレバは経営が悪化し、14年の通期決算で約48億ユーロ(約6700億円)の純損失を計上、6000人の人員削減を迫られている。太陽光や風力発電などの適地整備は有力な方向で、蓄電などの技術が進めば自然条件の制約を突破、安定供給が可能だ。水素発電など新エネルギーも出てきた。経済優先で考えても投資的価値はあろう。長期的な展望に立った賢明な対応が求められている。

*1-5:http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2015113002000151.html (東京新聞社説 2015年11月30日) 温暖化対策パリ会議 日本が取り残される
 温暖化対策パリ会議(COP21)では初日から首脳会合を開催し、新たなルール作りに意欲を見せる。脱化石燃料の時代へと、世界は一気に加速する。地球史的な会議になる。一九九七年暮れの京都会議(COP3)は、先進国に温暖化対策の法律的な義務を課し、数値目標を割り当てたという点で、当時としては画期的だった。パリ会議では京都議定書第二約束期間の後を受け、途上国や新興国も参加する二〇二〇年以降の温暖化対策の新たなルール作りをめざす。世界が初めて一つになって、気候変動の悪影響がさまざまに目立ち始めた地球環境を、立て直そうというのである。
◆難民問題の引き金に
 東北大学の明日香寿川(じゅせん)教授は、シリアの難民問題の引き金を引いたのも、温暖化だと指摘する。気候変動で降雨量が減ったため、シリアは〇六年から一〇年にかけて、史上最悪といわれる干ばつに見舞われた。農地は荒れ果て、家畜を失い、難民化したシリアの農民は百五十万人に上るという。巨大化するハリケーンなどの自然災害は、低所得者層により大きな打撃を残し、格差を助長する。温暖化は今や、世界的な社会不安の温床にもなっている。世界銀行は今月初め、三〇年までに適切な温暖化対策が取られなければ、貧困層が一億人以上増えるという試算を発表した。増大する危機感が、国際社会の背中を押している。来年、米国は大統領選挙に染まり、大きな政策決定ができなくなる。パリで合意できないと、ルール作りは大きく後退するだろう。温室効果ガスの削減数値を先進国に割り当てた京都議定書とは違い、パリ会議では、参加各国が自主的に提示した「約束草案(目標案)」が合意の基本になる。
◆気温抑制 目標に届かず
 いつまでにどれだけ削減するか。目標の設定は参加各国の判断に委ね、達成までの過程と成果を、互いに監視、評価し合うという形を取ることになりそうだ。ガス排出量世界一の中国、二位の米国、三位のインド、それに産油国のサウジアラビアなども含め、これまでに約百八十の国と地域が目標案を公表済みである。世界の排出量の九割以上を占める国と地域が、新たな対策ルールへの参加を決めたことになる。議定書か、協定か、呼び名はまだ分からない。いずれにしても法的拘束力のある、何らかの合意文書が採択されるはずである。ただし、今のところ、各国の目標案をすべて足しても「二度目標」には届かない。国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は、先進国の工業化が始まった十九世紀末以来の地球の平均気温の上昇を二度未満に抑えなければ、地球上の生命や社会、経済などにも、取り返しのつかない悪影響が及ぶと、警告を発してきた。自主目標は恐らく五年に一度、見直されることになる。二度目標の達成に向けて、各国の自主目標を引き上げていく仕組みを盛り込まないと、“歴史的合意”の意義は薄れてしまう。三〇年度に一三年度比26%減という、日本の目標案の国際評価は高くない。途上国グループのリーダーとして、削減義務受け入れ反対の急先鋒(せんぽう)だった中国は、九月の米中共同声明で「低炭素経済」へ移行する方針を打ち出した。二酸化炭素(CO2)を大量に排出する企業に対しては、公的投資を減らしていくという。また再来年には、発電や製鉄などの主要産業にCO2排出量の上限を設け、過不足分を取引できる排出量取引制度を導入する。ところが日本は、原発の停止を口実に、CO2の大量排出源である石炭火力発電所の新増設にまい進し、その技術を途上国へ輸出しようと躍起になっている。一方、再生可能エネルギーの普及には、電力の安定供給に支障を来すと電力会社に請われるままに、ブレーキをかけつつあるようだ。逆行というしかない。
◆原発ゼロでも削減可能
 経済協力開発機構(OECD)は、日本の高効率石炭火力技術を温暖化対策とは認めなかった。昨年度の日本の温室効果ガス排出量は、原発がすべて停止していたにもかかわらず、五年ぶりに前年度を下回った。原発ゼロをきっかけに省エネと再生エネの普及が進み、発電由来のCO2が減ったのが主な理由という。これこそ日本がパリで強調すべき、方向性ではないか。パリ合意の採択は再生可能エネ時代の到来を、あらためて世界に告げることになる。このままでは日本は独り、世界の流れに取り残されていく。

*1-6:http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201512/CK2015120602000104.html (東京新聞 2015年12月6日) 「脱原発」銀座に響く
 脱原発を訴える集会が5日、東京都千代田区の日比谷野外音楽堂で開かれた。参加者約3000人(主催者発表)は集会後、経済産業省や東京電力本店前で「原発要らない」などと叫びながら銀座までデモ行進した。毎週金曜に首相官邸前でデモをしている首都圏反原発連合が主催。集会では、城南信用金庫(品川区)の吉原毅(よしわらつよし)相談役が「原発は採算に合わない。太陽光で地域が豊かになれば、原発は要らなくなる」と説いた。参加した豊島区の無職島村ひろ子さん(67)は「電力も足りているし、やめるべきだ。核燃料サイクルの資金を再生エネルギーの普及に使って」と話した。

<現代のエコ技術>
*2-1:http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150211-00000522-san-soci (YAHOO、産経新聞 2月11日) 「エネルギー収支ゼロ」実証棟の“カッコイイ!”大成建設が都市型で世界初
 大成建設技術センター(横浜市戸塚区)内にあるZEB実証棟(ZEB=ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)を見学する機会に恵まれました。建物単位で年間の一次エネルギー収支がゼロになることを目指すZEBに注目が集まる中、世界初という都市型ZEB実証棟について紹介したいと思います。
■「省エネ」から「ゼロエネ」へ
 日本の最終エネルギー消費(※1)の推移を見ると、全体の3割を占める民生部門は、産業・運輸部門に比べると過去からの増加が顕著です。民生部門の5割以上をオフィスや小売店舗、病院、学校などの業務部門が占めていますが、省エネ対策の強化がもっとも必要な部門ともいえるでしょう。エネルギー基本計画(平成26年4月11日閣議決定)では建築物については、32年までに新築公共建築物等で、42年までに新築建築物の平均でZEBを実現することを目指す。また、住宅については、32年までに標準的な新築住宅で、42年までに新築住宅の平均でZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)の実現を目指します。ZEBは21年に経済産業省から提案され、「建築物における一次エネルギー消費量を、建築物・設備の省エネ性能の向上、エネルギーの面的利用、オンサイトでの再生可能エネルギーの活用等により削減し、年間の一次エネルギー消費量が正味(ネット)でゼロまたはおおむねゼロとなる建築物」と定義されています。欧米や東南アジアなど世界的にZEB実現に向けての取り組みが始まっていますが、東日本大震災以降は国の支援が強化され、日本での取り組みにも注目が集まっています。
■国内、海外評価制度の最高位認証を国内で初めて取得
 26年5月末に竣工(しゅんこう)した大成建設技術センター ZEB実証棟(地上3階、塔屋1階、延べ床面積1277平方メートル)を訪ね、同社技術センター技師長の森川泰成氏に案内していただきました。外観で目にとまったのが、有機薄膜太陽電池を使った「発電する建物外壁ユニット」。大成建設と三菱化学が共同開発したもので、濃いグリーンの太陽光外壁ユニットは建築デザインと見事に融合して、思わず「カッコいい!」と声が漏れました。有機薄膜太陽電池は軽量なうえ、有機材料を用い、色の自由度が高く意匠性も高いため、太陽電池の用途が広がると期待されています。「この外壁ユニット内の太陽光発電システム部は建物の内側から取り外しや交換ができます。創エネ設備としては、屋上にも効率性の高い太陽光発電システムを設置しています。ほかにも燃料電池とコージェネレーションを導入し、電気と熱のエネルギーを高効率利用しています」(森川氏)
■評価制度の最高位認証取得
 ZEB実証棟は、国土交通省が26年4月に創設した「建築物省エネルギー性能表示制度」(BELS=BuildingEnergy-efficiency Labeling System)で最高位評価「五つ星」を取得しました。評価指標は一次エネルギー消費量が基本で、最高位評価の第1号となりました。また、「米国グリーンビル評価システム」(LEED=Leader ship in Energy and Environmental Design)-NC(New Construction=新築)で最高位のプラチナ認証を国内で初めて取得しました。年間消費エネルギーを一般のオフィスビルと比べて75%を省エネで削減し、残る25%を太陽光発電による創エネで賄い、年間エネルギー収支ゼロの実現を目指します。 2、3階は研究チーム員が実際に執務室として利用しているそうです。ZEB実証棟には「超省エネ型タスク・アンビアント空調システム」が導入されています。人のいる場所だけパーソナル空調の吹出し口を自動で空け、部屋全体は天井コンクリートスラブに埋設された配管に冷水(温水)を循環させる躯体放射空調を行っています。「冷水は、燃料電池の低温排熱を利用し、吸着式冷凍機で製造します。外気量も自動制御し、夏季でも省エネで快適なオフィス空間を実現し、知的生産性が落ちません」(森川氏)。オフィス内の消費エネルギーの約2割は照明ですので、消費エネルギーの最小化には効率的な照明システムも不可欠です。ユニークなのが、世界最高水準の性能を持つ有機EL照明パネルを使用した「オフィス向けタスクライト」が導入されていること。大成建設、三菱重工、岡村製作所の共同開発で、有機ELと自然光、天井照明、間接照明が統合的にデザインされています。タスクライトは快適な明るさと寿命、デザイン性も考慮されています。また、東光高岳と共同開発した人検知センサーにより、人の在・不在を判断し、空調の個別制御とともに無線によるLED天井照明の照度制御を行っています。「照明エネルギーを最小化するため、自然光は、天井面に照射してまぶしさ感を抑制し、部屋の奥まで光を到達させ、室内の明るさ感を向上させました。年間を通し、室内照明環境の実証・評価を行っていきます」(森川氏)
■耐震性の強化で安全性向上
 都市型ビルは狭い敷地に建てられることも多いことから、ZEB実証棟では耐震性を強化し、狭い敷地でも最大限に建築面積を確保できるように配慮されています。1階の柱に用いた超高強度コンクリート「Tas-Fine」は、世界最高強度で、一般のコンクリートに比べて10分の1の断面積で開放感ある空間をつくり、火災や地震の際の安全性を確保します。建屋地下には「都市型小変位免震」を導入。揺れの大きさに応じて抵抗力を切り替える新開発の「切替型オイルダンパー」によって、大地震が起きても30センチメートル以内に横揺れが抑えられます。見学の最後に、大成建設が新たに開発した「BIM-VR高速変換システム」のデモンストレーションを見せていただきました。BIM(※2、Building InformationModeling)のデータを、VR(VirtualReality=仮想現実)画像に1分半で高速変換するシステムで、3次元モデルや設計情報を立体画像として確認することができます。ZEB実証棟もBIMVR高速変換システムにより設計プロセスの検討・確認が行われました。ZEB実証棟の今後の課題は何ですか?「コストの低減が課題の1つです。また、さまざまな実証・評価で課題を1つずつ解決していき、32年までの商用化を目指したいと思います」(森川氏)。ZEB実証棟を見学して、未来の都市型ビルが「ゼロエネ」「快適性」「耐震性」「安全・安心」「デザイン性」といういくつもの要素を兼ね備え、想像以上に進化した姿であることに感嘆しました。実証棟に導入されている日本の技術力と創造力を世界にも大きくアピールしてほしいと思います。
※1=産業部門(工場など)や民生部門(オフィスや家庭など)、運輸部門で実際に消費されたエネルギーのこと
※2=コンピューター上に建物の3次元モデルを作成し、そこにコストや仕上げ、風の流れなどのデータを落とし込み、建築の設計、施工、維持管理に活用するツール
<松本真由美(まつもと・まゆみ):東京大学教養学部客員准教授(環境エネルギー科学特別部門)。上智大学在学中からテレビ朝日のニュース番組に出演。NHK-BS1ワールドニュースキャスターなどを務める。環境コミュニケーション、環境とエネルギーの視点から持続可能な社会のあり方を研究する傍ら、シンポジウムのコーディネーターや講演、執筆活動などを行っている。NPO法人国際環境経済研究所(IEEI)理事>

*2-2:http://qbiz.jp/article/75697/1/
(西日本新聞 2015年11月26日) 電気自動車、走行距離を5倍に 環境技術強化で政府戦略
 地球温暖化対策として政府は26日、燃料として使っても二酸化炭素(CO2)を排出しない水素の製造、貯蔵、輸送や、電気自動車(EV)の走行距離を現在の5倍にする次世代蓄電池など、環境分野の技術開発強化に向けた戦略を来年春にまとめることを決めた。また環境に配慮した投資の拡大や、省エネ性に優れた技術の普及を図る。日本は、温室効果ガス排出を30年度に13年度比26%削減するとの目標を設定しており、30日からの国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP21)を前に、さまざまな取り組みを進める姿勢を示した。目標達成には、企業や家庭などでの大幅削減の実現が課題となる。

*2-3:http://www.iza.ne.jp/kiji/economy/news/150118/ecn15011820590006-n1.html (産経新聞 2015.1.18) 
日本は世界3位の「地熱資源国」だ この貴重なエネルギーを大事に生かそう
 昨年、「日本地熱学会タウンフォーラム・青森地熱開発理解促進シンポジウム」でパネルディスカッションのコーディネーターを務めさせていただく機会がありました。第一線の研究者の方々と日本における地熱発電の今後について議論しました。今回は、シンポジウムで提供された情報の一部を紹介したいと思います。
■地熱発電開発が再活性化
 日本の地熱発電ポテンシャルは2300万キロワット以上で、米国、インドネシアに次ぐ世界3位の地熱資源量を誇ります。しかし、開発有望な地域の8割が国立・国定公園内にあること、温泉枯渇や周辺環境への影響を懸念する温泉事業者との摩擦の問題、また自然公園法、温泉法、森林法、電気事業法、環境アセスメント法などの許認可制度をクリアするため探査から開発まで15年程度かかり、初期コストが大きいことなどが普及の障壁とされてきました。国内には17カ所の地熱発電所がありますが、国立・国定公園の普通地域内では、平成11年に運転を始めた東京電力の八丈島地熱発電所(東京都)を最後に開発は進まず、発電設備容量53万キロワットは日本の全発電電力量の0.3%にすぎません。しかし、東日本大震災後、地熱が再評価されて各種の支援政策が復活し、開発市場が再び活性化しています。地熱開発には多くのメリットがあります。日本が世界有数の地熱資源量を有していることや、発電時の二酸化炭素(CO2)排出量がほぼゼロであること、他の再生可能エネルギーと比べて発電コストが低く、設備利用率が約80%と高く、ベースロード電源になることです。国もここにきて、太陽光に偏重した再エネ比率を是正するため、地熱や中小水力発電などを再エネ買い取り価格などで優遇し、普及を後押しする方針を示しています。(以下略)

*2-4:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/241041
(佐賀新聞 2015年10月19日) 完成間近のさが西部クリーンセンター視察
 4市5町でつくる県西部広域環境組合(管理者・塚部芳和伊万里市長)の首長ら組合議員12人は19日、完成間近で試運転中の広域ごみ処理施設「さが西部クリーンセンター」(伊万里市松浦町)を視察した。ガス化溶融炉は計2炉で1日最大205トンを処理する。余熱を利用して発電する蒸気タービン(3900キロワット)も備えた。粗大ごみは不燃性と可燃性に選別した後、鉄やアルミを再資源化する。総事業費は約170億円。施設本体工事は完了しており、現在は外構工事や搬入路の舗装工事などを進めている。9月から各自治体からのごみを搬入して試運転し、来年1月に営業運転を開始する。視察では工事関係者が施設の概要を説明した。見学者コースに沿って、粗大ごみを再資源化する「マテリアルリサイクル推進施設」と、ごみを熱分解、溶融処理する「エネルギー回収推進施設」の試運転の様子を見学した。塚部市長は「着々と完成に近づいている。非常に近代的でクリーンな施設だと感じた」と語った。

*2-5:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/257573
(佐賀新聞 2015年12月8日) 佐賀を海洋エネ先進県に「J☆SCRM」、産学官67団体で研究会
 海洋エネルギーの実用化で地方活性化を目指す「佐賀県海洋エネルギー産業クラスター研究会」が7日、発足した。唐津市呼子町の加部島沖が浮体式洋上風力発電と潮流発電の国の実証フィールドに選定されており、県は研究会を通じて産学官の連携を進め、10年後の2025年を目標に海洋エネルギーの先進県を目指していく。研究会には企業や官公庁、大学・研究機関など67団体が参加。国内唯一の海洋エネルギー研究開発拠点を伊万里市に持つ佐賀大学が中心となり、機械・金属、造船会社、金融機関などが名を連ねる。市場調査会社の試算では現在、世界の海洋エネ市場は1兆円ほどだが、2030年には9兆円台に達する。研究会では年2回会合を開き、情報交換を進めるほか、先進地視察、企業同士のマッチングの機会をつくり、関連産業の集積を図る。海洋エネ技術の実用化と量産化を進め、海洋エネの先進県を目指す。唐津市で開かれた設立総会では、山口祥義知事の提案で、会の名称を「佐賀県は産学官でスクラムを組み、海洋エネルギー産業を目指す」との思いを込めて「J☆SCRM(ジェイ・スクラム)」とした。実用化を目指す技術開発で地場企業参入の可能性もあり、会長に就任した建設機械製造ワイビーエムの吉田哲雄会長は「佐賀発の新技術を生むチャンス。多くの企業でエネルギー分野へ参入してみようという機運が高まってほしい」と述べた。現在、加部島沖で実証実験に取り組んでいるのは三井海洋開発(本社・東京)の1社だけ。同社の発電機は昨年12月に水没。今年5月に引き上げ、原因の究明は終えたが、実験の継続については社内で検討を続けている。

*2-6:http://www.saga-s.co.jp/column/economy/22901/254413
(佐賀新聞 2015年11月28日) 農業用水で小水力発電推進、導入へ運営研修
 用水路や揚水機場など農業水利施設を活用した小水力発電の推進を目指す研修会が19日、佐賀市のグランデはがくれで開かれた。県や市町、土地改良区の関係者ら55人が再生可能エネルギーの動向や小水力発電の仕組みなどを学んだ。小水力発電や太陽光発電の導入推進に向け、発電施設の整備や運営に必要な知識を学ぼうと開催。発電の事業運営に関する講演や先進地の事例の発表などがあった。九州経済産業局の植木健一郎・エネルギー対策課長は講演で、国産エネルギー資源の拡大や雇用創出など導入の意義を紹介。固定価格買取制度の課題や認定の条件などを説明した。農業用水を活用した小電力発電に取り組む「東京発電」の富澤晃・事業戦略グループマネジャーは「既存の水路を活用できる」「安定した発電が望める」「国が普及を促進している」などと説明。導入の条件として「一定以上の流量」「距離50メートル以内で7メートル以上の高低差」「200メートル以内に電力会社の電柱がある」などを挙げた。

<電力自由化>
*3-1:http://www.nikkei.com/article/DGXLZO92638580Z01C15A0EA1000/
(日経新聞 2015/10/9) 電力、広がる選択肢 小売り参入第1弾に40社
 2016年4月に全面自由化される電力小売りに参入する企業が明らかになった。経済産業省は8日、NTTグループが出資するエネット(東京・港)など40社を登録したと発表した。ガスや石油とセットで売るなど電力の販売方法が多様になる。登録企業は来年4月までに100社を超える可能性があり、地域独占の電力会社に限られていた家庭や中小企業の選択肢が広がりそうだ。経産省に「小売電気事業者」として登録した企業は16年4月からすべての消費者に電気を販売できる。10月7日時点で82社から登録申請があり、第1陣として40社が経産省と電力取引監視等委員会の審査を通過した。各社は大手電力が申請した送配電網の使用料金(託送料金)をもとに、年内にも料金プランやサービスを固める。第1陣の顔ぶれをみると、電力小売り市場開拓のビジネスモデルは大きく3つに分類できる。一つは自社の既存の顧客網を生かす戦略だ。札幌市地盤の北海道ガスは、都市ガス販売の顧客網を生かしてガスと電気のセット販売を検討している。まとめて買えば割安になるようにする。出光興産は子会社を通じて、風力発電などの電源を用意し約3700カ所の給油所などで販売する。もう一つは自社の設備やノウハウを活用してつくった電力を売る動きだ。機械メーカーの荏原の子会社である荏原環境プラント(東京・大田)は廃棄物処理設備の建設・保守管理で培った強みを生かし、自社や関連会社が建設した発電設備から電力を調達。企業などへの販売拡大を視野に入れる。地域の活性化や雇用創出の観点から参入する動きもある。一般財団法人の神奈川県太陽光発電協会は太陽光パネルでつくった電気を周辺地域で売る「地産地消」を志向。長野市のグリーンサークルが電源とするバイオマス発電は、燃料となる木材の切り出し・加工を通じて地元に雇用などの波及効果が見込める。「関西電力が2度にわたり値上げしたことで、当社に関心を持つ企業が増えている」。第1弾に入ったにちほクラウド電力(大阪市)の鈴木あかり社長は参入への手応えを感じている。東日本大震災後に値上げしてきた関電を下回る割安な料金を武器に中小企業などに契約切り替えを促す。

*3-2:http://qbiz.jp/article/75813/1/ (西日本新聞 2015年11月28日) 送電料の1割が原発費用、九電などが上乗せ申請 再生エネ業者も負担
 電力小売り全面自由化に向け大手電力9社が経済産業省に申請した送電線使用料(託送料金)に、使用済み核燃料再処理など送電と無関係な原発関連費用が上乗せされ、原価の1割近くを占めていることが分かった。託送料金は新規参入業者が送電線を所有する会社に支払うもので、原発を保有しない業者も原発費用を負担することになる。電気料金にも転嫁されるため「原発を所有する大手電力が負担すべきだ」と不満の声が上がっている。託送料金に上乗せする原発費用は、電源開発促進税と核燃料再処理費。促進税は立地地域交付金や安全対策、核燃料サイクルの研究開発など大半が原発関係に使われている。九州電力は1年間の託送原価を4536億円と申請、うち促進税324億円、再処理費76億円と原発費用が8・8%を占めた。大手9社では9・3%が原発費用だった。本来、託送原価は送配電に必要な費用を計上するのが原則。各社とも送配電にかかる人件費や送電設備の修繕費などを積み上げて算出している。送配電に無関係な促進税と再処理費を入れた理由について、電力各社は「国の制度に基づいて計上した」(九電)と説明する。経産省によると、促進税と再処理費は「電力の安定供給を実現するための費用で、全消費者が公平に負担すべきもの」などとして、2000年から段階的に自由化された大口向け電力の託送料金にも上乗せされてきた。来年4月からの全面自由化に伴い、経産省は原価の算定基準を見直したが、専門家会合の議論を踏まえ、促進税と再処理費を家庭向けも含めて上乗せすることを決めた。新算定基準では、太陽光や火力、風力などの電気を売る事業者も託送料金を通じて原発費用の負担を強いられる。自由化により、原発の電気を使いたくない消費者は大手電力以外の業者も選べるが、託送料金を含む電気料金を通じて原発費用を支払うことになる。託送料金は、電力取引監視等委員会が審査中で、年内にも申請額が妥当か結論が出る。
■自由化の意義に反する
 日本消費生活アドバイザー・コンサルタント・相談員協会の辰巳菊子常任顧問の話 全ての消費者が負担する託送料金に原発費用を入れるのは絶対におかしい。消費者の選択が将来の電源構成に影響を及ぼす自由化の意義にも反する。原発を使う電力会社が必要な費用を最初から最後まで責任を持つように制度を改めるべきだ。

*3-3:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12100173.html?ref=pcviewpage
(朝日新聞 2015年12月4日) 発電内訳開示、義務化せず 自由化後、電力会社に 経産省方針
 4日に開く同省の有識者会合で、電気事業法に基づく電力会社向けの指針案として示す。年内に広く意見を募るパブリックコメントにかけて、電力会社の営業活動が本格化する年明けにも実施する予定だ。指針案では、発電の内訳を示す電源構成の開示を「望ましい行為」と位置づける。電力会社に自主的な開示を促すが、違反した場合に勧告や罰則の対象となる義務づけはしない。発電による二酸化炭素(CO2)の排出量の開示も「望ましい行為」とするが、放射性廃棄物の量の開示は明記しない。開示の例としては、ホームページなどで項目ごとに、発電の内訳を円グラフで表示することが想定されている。開示する場合は、計画値と実績値を両方示すことが義務づけられる。計画通りに発電しなかったり、前年の実績から発電の内訳が変わったりすることがあるためだ。また、固定価格買い取り制度(FIT)を利用した再生エネは、「FIT電気(太陽光)」などと表示しなければならない。電力小売りの自由化が進む英独仏など欧州では、前年実績の開示が義務づけられている。日本でも消費者団体などは開示の義務づけを要望。一方、電力会社側は費用負担になるなどの理由で義務化には慎重だった。原発や石炭火力での発電を消費者に敬遠されるのを避けたい事情もあるとみられる。


PS(2015年12月9日追加):高木経産副大臣が、再稼働した九州電力川内原発を視察した後、伊藤鹿児島県知事や岩切川内市長と会談し、「再稼働にあたってリーダーシップを発揮し、協力を頂いたことに感謝する」と述べられたそうだが、“リーダー”とされる人たちがこうだから日本は方針を誤ってエネルギーの変換が遅れたのだ。そして、どんなに「リスクコミュニケーション」をしても、原発事故のリスクは0ではないのであり、一度でも過酷事故が起これば取り返しがつかないのは、既にフクイチで証明されている。

*4:http://qbiz.jp/article/76020/1/
(西日本新聞 2015年12月2日) 経産副大臣が川内再稼働感謝 視察後、知事と薩摩川内市長訪問
 高木陽介経済産業副大臣は1日、再稼働した九州電力川内原発(鹿児島県薩摩川内市)を視察後、伊藤祐一郎知事や岩切秀雄市長と会談し、「再稼働にあたってリーダーシップを発揮し、協力を頂いたことに感謝したい」と述べた。川内原発が再稼働後、原子力政策を進める政府要人が県や市を訪れるのは初めて。高木副大臣は会談で「安全性について、住民に理解してもらうため、引き続き連携したい」と述べ、国のエネルギー政策への協力を呼び掛けた。伊藤知事や岩切市長は、国が九電に対し安全運転を強く指導するよう求めた。また、岩切市長は使用済み核燃料の最終処分場の早期完成についても要請し、高木副大臣は「国の責任として手順を踏みながらやる」と応じた。高木副大臣は県庁で記者団の取材に応じ、「(川内原発の安全対策に)福島の事故の教訓が生かされ、現場の職員が安全に対する意識を高いレベルで持っていると実感した」と話した。また、住民の放射線の不安に対し、リスクについて情報共有して相互理解を図る「リスクコミュニケーション」をきめ細かく行っていく考えを示した。

<自動車取得税について>
PS(2015年12月10日追加): 自動車取得税は、現在、グリーン税制として低公害車・低燃費車について軽減されているが、一つの購買取引に対して消費税と同時に課されるため二重課税であり、2017年4月の消費税10%への増税時の廃止が決まっていた。そして、自民党は、自動車取得税の廃止と同時に燃費新税を創設するそうだが、創設すべきなのは、*5のような燃費性能で取得時の税率を分ける新税ではなく、公平・中立・簡素に化石燃料の使用に比例して課税する化石燃料税(炭素税または環境税)だ。何故なら、そうでなければ安全性を無視しても軽い車さえ作ればよいことになって、環境、安全性、低燃費、エネルギー自給率の向上を同時に達成することができないからである。

    
 *5より     日産EVトラック     ホンダ燃料電池車     水素ステーション   高速充電器

*5:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20151209&ng=DGKKASFS09H0D_Z01C15A2MM0000 (日経新聞 2015.12.9) 燃費新税、半数が非課税 17年度から、車取得税を廃止 消費増税の影響緩和
 自民党税制調査会は9日、2017年4月の自動車取得税の廃止と同時に導入する新税の全容を固めた。購入時に燃費性能に応じて支払う仕組みで、環境負荷の低い車が税率0%となる枠を拡大する。17年度は新車販売台数の半数以上が該当する見込み。自動車購入にかかる税収規模を取得税より200億円ほど抑え、実質減税とする。消費税率10%への引き上げによる販売の落ち込みを和らげる狙いだ。自動車をめぐる税制は現在、購入時に消費税や取得税がかかるほか、普通車の持ち主は自動車税、軽は軽自動車税を毎年支払う。購入時と車検時には自動車重量税もかかる。車の保有にかかる税も17年度以降の負担減を検討する。燃費に応じた新税は取得税を廃止する代わりに創設し、取得税と同様、自治体に支払う地方税とする。公明党との協議をふまえ、10日をメドにまとめる16年度与党税制改正大綱に盛り込む。新税は燃費に応じて税率が変わり、普通車は購入額の0、1、2、3%の4段階の税率をかける。軽自動車は0、1、2%の3段階とする。2年ごとに見直す。普通車、軽自動車とも国土交通省が定める20年度の燃費目標基準を10%以上上回る車種を税率0%とする。今年4~8月の新車販売実績をみると、台数ベースで全体の5割がこの条件を満たしていた。自動車メーカーの技術開発により、新たに投入する車種の燃費は年々向上している。このため、17年度時点では新車の半数以上が税率0%となる見通しだ。現在の取得税にも環境に優しい車を対象にしたエコカー減税があるが、非課税となる車は台数ベースで新車全体の30~40%にとどまる。新税の税収規模は取得税の1096億円から約890億円に減らす。トヨタ自動車の「プリウス」やホンダの「フィット」といったハイブリッド車やスズキの「アルト」などの低燃費の軽自動車は現在でも新税でも税率0%。日産自動車の「ノート」やダイハツの「タント」などは現在は取得税がかかっているが、新税では0%となる。自民税調はエコカーを買う場合に翌年度の自動車税を軽くする「グリーン化特例」も見直す。現在は大部分の車が減税対象になっている。より環境に優しい車への買い替えを促すため対象を絞る。保有にかかる税については17年度税制改正を議論する来年末にも負担減の詳細を決める方針だ。自動車の新税をめぐっては結論の先送りを求める自動車業界や経済産業省と早期決着を訴える地方自治体や総務省が対立していた。調整が難航していた自動車の税制がほぼ固まり、16年度の与党税制改正大綱の論点は消費増税時に取り入れる軽減税率の制度づくりを残すだけとなった。自公の溝は埋まらず、両党はギリギリの調整を続けている。


PS(2015年12月13日追加):*6-1のCOP21合意は、化石燃料から自然エネルギーへの歴史的転換として、各国で歓迎されている。そのような中、日本は、*6-2のように、エネルギー政策を理念なき利益誘導と感情論で決めた結果、リーダーになれるどころか逆噴射になった。日本の2030年のエネルギーミックスは、経過的には再生可能エネルギーとLNGとし、なるべく早い時期に再生可能エネルギーのみとすべきだったのであり、それらは日本に存在する資源なのである。

      
 2015.12.13日経新聞   2015.4.24日経新聞

*6-1:http://mainichi.jp/articles/20151213/ddm/001/040/088000c
(毎日新聞2015年12月13日) 温暖化対策、合意へ パリ協定 18年ぶり枠組み
 パリで開催中の国連気候変動枠組み条約第21回締約国会議(COP21)で12日、フランス外相のファビウス議長は「パリ協定」の最終合意案を提示し、採択される見通しとなった。1997年に採択された京都議定書に代わる、18年ぶりの地球温暖化対策の枠組み。石油・石炭など化石燃料に依存しない社会を目指し、条約に加盟する196カ国・地域が参加する史上初めてのルールとなる。パリ協定は「産業革命前からの気温上昇を2度未満に抑える」という国際目標を明記。海面上昇によって国土の消失などが懸念される島しょ国が強く求める「1・5度未満」も努力目標として併記した。「世界全体の排出量をできるだけ早く頭打ちにし、今世紀後半には排出を実質ゼロにする」ことを初めて盛り込んだ。これらを達成するため、各国が自主的に削減目標を作成し、国連に提出、対策をとることを義務付けた。合意を優先した結果、目標の達成義務化は見送られた。実施状況の報告と目標の5年ごとの見直しを義務化、その内容を公表する。最大の争点だった途上国への資金支援は、先進国が拠出する具体的な目標額を協定には盛り込まず、法的拘束力のない別の文書に「年1000億ドル(約12兆3000億円)を下限として新しい数値目標を2025年までに設定する」とした。一方、先進国以外にも自発的に資金の拠出を求め、双方歩み寄った。
■パリ協定案 骨子
 ・産業革命前からの気温上昇を2度未満に抑える。1.5度未満になるよう努力する
 ・できるだけ早く世界の温室効果ガス排出量を頭打ちにし、今世紀後半に実質ゼロにする
 ・2023年から5年ごとに世界全体の削減状況を検証する
 ・全ての国に削減目標の作成と提出、5年ごとの見直しを義務付ける
 ・温暖化被害軽減のための世界全体の目標を設定する
 ・先進国に途上国支援の資金拠出を義務付けるが、他の国も自発的に拠出することを勧める
 ・先進国は現在の約束よりも多い額を途上国に拠出する

*6-2:http://www.nikkei.com/article/DGXLASDF23H1W_T20C15A4MM8000/
(日経新聞 2015/4/24) 原発比率20~22%に 30年電源構成、経産省案、震災前から減
 経済産業省は23日、2030年時点の望ましい電源構成「ベストミックス」について、原子力の比率を20~22%とする原案を関係閣僚に示した。東京電力福島第1原発の事故を踏まえ、原子力の比率を東日本大震災前の約30%から減らす一方、太陽光などの再生可能エネルギーは原子力よりやや高い22~24%とする。経産省は「総合資源エネルギー調査会」(経産相の諮問機関)の長期エネルギー需給見通し小委員会で示し、5月中の正式決定をめざす。温暖化ガスの排出を減らす前提とする。既存の原発について、十数基が原子力規制委員会の安全審査に合格して最大20年運転を延長できれば、原発の電源構成を20%以上にできるとみられる。ただ実際に運転延長の対象となる原発が何基かは不透明なため幅を持たせる。太陽光や風力などの再生エネの比率は現在10%程度にとどまる。地熱や水力、バイオマスにはまだ拡大の余地があるとして比率を引き上げる。火力発電は全体の5割半ばを占める。温暖化ガス排出量が多い石炭火力を26%と13年度の30%から減らす一方、液化天然ガス(LNG)火力は27%とする方向だ。


PS(2015年12月15日):*7-1、*7-2のように、COP21は2015年12月12日に「今世紀後半に世界の温室効果ガスの実質排出量ゼロを目指す」という正しい決定を行った。これには、米国、中国、日本など190カ国を超える国が参加することとなり、1997年採択の京都議定書(排出削減義務は先進国のみ)以来18年ぶりの歴史的枠組みが誕生して、この18年間の技術進歩により化石燃料に依存する経済社会の変換が現実となった。 
 しかし、京都議定書をまとめた日本はその後は迷走し、*8-1のように、同日、安倍首相がインドのモディ首相と会談して、(日本の新幹線システム導入が決まったのはよいが)日本からインドへの原発輸出を可能にする原子力協定について合意したそうだ。これには、すかさず*8-2のように、ニューヨークで在留邦人など十数人が、「フクシマ原発事故は終わっていないのに、インドに原発を売っている場合か」と抗議の声を上げ、私はニューヨークの寒さ中でのその迅速で勇気ある行動に感心した。

      
       2015.12.14西日本新聞(*7-1)        2015.12.13東京新聞(*8-2)

<世界のエネルギー変換決定>
*7-1:http://qbiz.jp/article/76848/1/ (西日本新聞 2015年12月14日) 温暖化対策 パリ協定採択 190ヵ国超に排出削減義務 COP21
 パリ郊外で開かれた国連気候変動枠組み条約第21回締約国会議(COP21)は12日、2020年からの実施を目指す地球温暖化対策の新たな枠組み「パリ協定」を採択した。今世紀後半に世界の温室効果ガス排出量を実質的にゼロにするのを目指す。米国や中国、日本など190カ国を超える国が参加する。先進国だけに排出削減を義務付けた1997年採択の京都議定書以来、18年ぶりの歴史的枠組みの誕生で、化石燃料に依存してきた社会や経済の在り方が大きく変わりそうだ。協定は、産業革命前からの気温上昇を2度未満に抑える目的を明記した上で被害の深刻な小さな島国に配慮して1・5度に抑えるよう努力する意思も示した。より具体的な削減の道筋を示した長期目標も提示。世界の温室ガス排出をできるだけ早く減少に向かわせ、その後急速に減らすことで、今世紀後半に温室ガス排出量と森林や海による吸収量とのバランスを取るとした。排出量を実質的にゼロにすることを意味する。各国はそれぞれ削減目標を定め、国内対策を進める義務を負う。達成の義務化は見送られ、議定書に比べ法的拘束力が緩くなった。削減の実効性を担保するために、対策の進み具合を評価し、目標を5年ごとに見直す仕組みも設けた。また削減の進め方について、先進国が主導する責任を明確にする一方で、途上国も将来、先進国のような総量削減目標を持つことを推奨した。焦点の一つになっていた途上国への資金支援は先進国側の拠出を義務化。また他の国は自主的に支援するよう求めたが、パリ協定に具体的な金額は盛り込まれなかった。支援額は別の決議文書で示され、既に合意のある年1千億ドル(約12兆円)を最低額として、25年までに新たな数値目標を提示するとした。COP21はパリ同時多発テロ後の厳戒態勢の中、11月30日に始まり、12月13日に全議題を終え閉幕した。
    ◆    ◆    ◆
●首相「最重要課題」
 安倍晋三首相は13日、「パリ協定」の採択について「公平な合意が得られた。高く評価する」とした上で「内閣の最重要課題として取り組む」と決意を示す談話を発表した。温室効果ガス排出量を2030年度までに13年度比で26%減らすとの日本の目標に関し「経済成長を犠牲にせず達成していく」と指摘した。
    ◆    ◆    ◆
●文明史的な転換
環境保護団体「気候ネットワーク」の浅岡美恵代表の話
 パリ協定によって、先進国と発展途上国が協力し、世界が足並みをそろえた地球温暖化対策がようやくスタートする。パリ協定は(各国の目標の継続的な見直しと向上を盛り込むなど)長期にわたり切れ目のない仕組みになっている。文明史的な転換だ。実のあるものにするのは各国やわれわれの取り組みにかかっている。目標の見直しに加え、国内対策の実施も求められており、この数年、基本的な温暖化対策の計画がない日本にとっても極めて大きな意味がある。

*7-2:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12116622.html (朝日新聞 2015年12月14日) 温暖化対策、パリ協定採択 全ての国に実施義務 新枠組み「京都」以来 COP21
 「小さな木づちが、大きな仕事をやってのける」。12日午後7時半前、議長のファビウス仏外相がパリ協定の採択を宣言すると、会場が総立ちになり拍手は断続的に5分間続いた。採択後、丸川珠代環境相は記者団に「世界を変えていく非常に重要な合意だ」と話した。パリ協定では、産業革命前からの気温上昇を「2度よりかなり低く抑える」とともに、「1・5度未満に抑えるよう努力する」と盛り込んだ。その上で、温室効果ガスの排出を今世紀後半には実質ゼロにすることを目指す。そのために、すべての国に削減目標の作成・報告を義務化。5年ごとに世界全体で進み具合を管理し、各国の目標を出し直す仕組みも設けた。先進国は、国全体から排出される総量の削減に取り組むが、制度が整っていない途上国はできるところから始め、やがて総量で減らすように求める。最後まで残っていた論点だった先進国から途上国への資金支援は、引き続き先進国が義務を負うとともに、経済力をつけた新興国にも自発的に資金を出すよう促す。(パリ=香取啓介)
■<解説>排出ゼロへ長期目標
 パリ協定では、すべての国が参加できるよう、米国などが反対する温室効果ガスの削減目標の「達成」は義務化できなかった。罰則がある京都議定書(1997年採択)に比べれば厳格さに欠ける。しかし、達成のための国内対策の実施は義務化され、世界全体で排出量を減らす仕組みが設けられた。一つは温暖化対策の長期目標だ。「気温上昇を2度未満に抑える」ために「今世紀後半に人為的な排出と吸収を均衡させる」と明確にした。「実質排出ゼロ」を目指すということだ。さらに温暖化の影響を受けやすい島国などが求めていた「1・5度」も努力目標として入った。このためには、実質排出ゼロを前倒しで実現する必要があり、石炭や石油など排出の多い化石燃料に頼る時代を終わらせることを意味する。二つ目は、長期目標の達成に向けた定期的な点検と見直しの仕組みだ。各国が提出した目標を足し合わせた効果を5年ごとに世界全体で点検し、その結果を受けて自国の目標を更新する機会を与え、対策を徐々に強化する。各国は2025年または30年に向けた目標を掲げているが、これは通過点に過ぎない。日本の「30年度までに13年度比26%減」の目標も、5年ごとに見直すことになる。各国は実質排出ゼロ社会に向けた長期戦略作りが急がれる。協定では「持続可能なライフスタイルや消費・生産の重要性」も強調した。自治体や企業、市民社会も積極的に参加し、国をリードすることが求められる。
■「パリ協定」の骨子
【世界全体の目標】
 ・気温上昇を2度よりかなり低く抑える。1.5度未満に向けて努力
 ・今世紀後半に温室効果ガスの排出と吸収を均衡させる
【各国の削減目標】
 ・作成・報告、達成の国内対策を義務化
 ・5年ごとに更新。後退させない
【途上国への支援】
 ・先進国に拠出を義務化
 ・途上国に自主的な拠出を奨励
【温暖化の影響への対策】
 ・被害の軽減策を削減策と並ぶ柱に
 ・途上国で起きつつある被害の救済策に取り組む

<日本の行動>
*8-1:http://digital.asahi.com/articles/ASHDD5GMCHDDULFA00Q.html
(朝日新聞 2015年12月12日) 日印首脳、原子力協定に「原則合意」 原発輸出可能に
 安倍晋三首相は12日、インドのニューデリーでモディ首相と会談した。両首脳は、日本からインドへの原発輸出を可能にする原子力協定について「原則合意」した。インドは核不拡散条約(NPT)に加盟しておらず、日本が非加盟国と協定を締結すれば初の事例となる。また、両首脳はインドの高速鉄道計画をめぐり、一部区間で日本の新幹線方式を採用することも確認した。日印の原子力協定交渉は民主党政権時代の2010年に始まった。唯一の被爆国である日本は核廃絶を目指す立場から、核実験を1998年以来、一時停止しているインドが実験を再開した場合、日本の協力を停止する措置を盛り込むことを求めてきた。だが、この日公表された共同声明や別途署名された原子力協定に関する覚書にはこうした措置は盛り込まれておらず、今後の交渉に委ねられた。NPT非加盟のインドと協定を締結すれば、核不拡散を掲げる日本の原子力政策は大きな節目を迎えることになる。両首脳が会談後に発表した共同声明で、原子力協定については「技術的な詳細が完成した後に署名されることを確認」とした。安倍首相は会談後の共同記者発表で「日印間の平和的目的の原子力協力に基礎を与える協定につき、原則合意に至った」と述べた。日本側の説明によると、安倍首相は首脳会談で、万が一インドが核実験を行った場合は協力を止めることを伝えたという。日本政府はこの発言がインドへの歯止めになるとしている。また、会談では商業都市ムンバイとアーメダバード間(約500キロ)の路線で、日本の新幹線方式を採用することを確認。日本は総事業費約1兆8千億円のうち、最大81%の円借款を低金利で供与する。新幹線が導入されれば海外では台湾に次ぎ2例目となる。このほか、両首脳は海洋進出を強める中国を念頭に南シナ海情勢について「変化に留意する」との認識で一致。防衛装備品・技術移転や秘密軍事情報保護の協定も結び、安全保障分野で協力を進めることを確認した。
■日印共同声明の骨子
 ●防衛装備品・技術移転協定、秘密軍事情報保護協定の締結歓迎
 ●日印米・日印豪3カ国対話など促進
 ●原子力協定の合意歓迎。技術的な詳細が完成した後に署名されることを確認
 ●日本の新幹線システム導入に関する覚書署名を歓迎
 ●南シナ海における変化に留意。地域の緊張につながる一方的な行動回避を呼びかけ
 ●核兵器廃絶に向けたコミットメントを再確認

*8-2:http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2015121301001025.html
(東京新聞 2015年12月13日) NYで日印原発協定に抗議 「事故終わってない」
 【ニューヨーク共同】「フクシマの原発事故は終わってない。インドに原発を売っている場合か」。日本とインドが原子力協定の締結に原則合意したことを受け、米ニューヨーク・マンハッタン中心部の大通りで12日、協定に反対する在留邦人ら十数人が、東京電力福島第1原発事故に触れながらデモを行った。参加者は「日印原子力協定やめろ」と書かれたプラカードを掲げたり、太鼓をたたいたりして抗議の声を上げた。ニュージャージー州の会社員(46)は「核拡散防止条約(NPT)未加盟のインドに、核兵器に転用される恐れのあるものを日本が輸出するのは許されない」と強調した。

| 資源・エネルギー::2015.5~2016.12 | 02:49 PM | comments (x) | trackback (x) |
2015.10.11 原発事故に依る健康被害・環境被害と、それでも原発が不可欠だと主張し、20年前に日本で最初に開発し始めた燃料電池で米国に後れを取った原因は何か? (2015年10月12日、13日、14日、15日、23日、31日に追加あり)
   
  ゼロエネ住宅   自立型水素エネルギー     EV軽トラック        ホンダ燃料電池車
                 供給システム
     
      日産EV      トヨタ燃料電池車    燃料電池船   IHIの燃料電池航空機 
  2015.10.29西日本新聞             *12-3より

(1)原発事故の人体への影響
 *1-1のように、外務省が、国内の原発が戦争やテロなどで攻撃を受けた場合の被害予測を、1984年に極秘で研究し、最悪の場合には急性被曝死が1.8万人で原発の約86キロ圏が居住不能になると試算していたが、反原発運動が広がることを懸念して公表しなかったのだそうである。そして、その研究では、東電福島第一原発事故と同じ全電源喪失も想定していたそうだ。

 長期的影響としては、放射性セシウムなどで土壌汚染が深刻化し、農業や居住などの土地利用が制限される地域は原発から最大で86.9キロ、平均で30.6キロにまで及ぶとしているが、外務省は公表する理由がない(?)ため公表しないとしており、都合の悪い情報は国民に隠す隠蔽体質が浮かび上がっている。信州大の久保教授は、昨年12月に施行された特定秘密保護法により、安全保障やテロ対策などを口実に、原発に関する情報が一段と制限され、闇から闇に葬られかねないとしている。

 そのような中、*1-2のように、東日本大震災で「トモダチ作戦」にあたった米原子力空母「ロナルド・レーガン」の元乗組員たちが、事故から1年9カ月後の2012年12月に、「東京電力福島第一原発事故で東電が正しい情報を示さなかったため、放射性プルームに包まれて被曝した」としてカリフォルニア州サンディエゴの連邦地裁に提訴したそうだ。提訴理由は、被曝の影響で「2011年末、車を運転中に突然気を失い、高熱が続き、リンパ節がはれ、足の筋力が衰え、髪の毛が抜け、体重も十数キロ激減した」「筋肉を切り裂くような痛みは腕や胸に広がり、全身のはれや囊胞、発汗、膀胱不全などを発症」「作戦に従事した元乗組員2人が亡くなり、ほかの仲間も深刻な健康被害を抱えている」などだ。これに対し、東電は「政治的問題なので裁判になじまない。日本で審理するべきだ」などとして却下を申し立てている。

 また、*1-3のように、東電福島第1原発事故後、福島県で見つかった子どもの甲状腺癌の年間発症率は事故前の日本全体と比べて20~50倍で、その多くは被曝で発症したものだとする分析結果を岡山大の津田教授らのチームが国際環境疫学会誌電子版に発表した。しかし、ここまで他の要素を考えなくてすむわかりやすいケースでも「結論は時期尚早」と指摘する専門家もいるそうだ。実際には、大人にもロナルド・レーガンの元乗組員と似たような症状を出している人や甲状腺癌になった人はいるだろうし、セシウムやストロンチウムの影響によって、白血病その他の疾病も増えていくと考えるのが自然だ。

(2)原発事故に依る地域の汚染
 *2のように、東電福島第1原発事故により年間積算放射線量が50ミリシーベルト超となり、帰還困難区域に指定されている福島県浪江町津島地区の住民32世帯117人が、国と東電を相手に、2020年3月までに、国際基準で平常時の追加被曝の限度とされる年1ミリシーベルトを下回るまで津島地区を除染するよう要求すると同時に、事故によって失ったものに対する慰謝料を求めており、もっともだ。しかし、除染しても到底国際基準(年1ミリシーベルト)以下にならない場合は、移住を選択した方が無難だろう。

 また、国が事故直後に放射性物質の拡散予測を公表せず、避難が遅れて無用な被曝をしたとして1人300万円の慰謝料を求めているのは、避けられ得た被曝の強制であるため特に重要だ。他の原発地元も、拡散予測のためには、緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム(SPEEDI)の使用を要求すべきである。

(3)原発再稼働と環境破壊
 *3-1のように、川内原発は、1号機に続き2号機も再稼働の準備が最終段階に入っているそうだ。

 しかし、*3-2のように、原発の原子炉が出した熱の2/3は電気にならず、温排水として海に捨てているため、原発の稼動によって海の環境破壊が進むことが、原発停止期間中に各地で原発周辺の海洋環境が著しく回復したことによって証明された。出力100万キロワットの原発の場合、1秒間に約70トンの温排水を出し、原発を冷やすために吸い込まれる海水には小さな生物が含まれているため、原発周辺の海域では、「海洋生物の死亡」「海藻の全滅」「漁獲の激減」などの環境破壊が生じている。また、原発温排水の影響は火力よりも大きいそうだ。

 さらに、*3-3のように、東日本大震災前後から日本全国で火山活動が活発化する中、九州では阿蘇山ほか霧島山、口永良部島、桜島も活動を活発化させており、火山の噴火予測は難しく、原発建設時には火山噴火までは考慮していないのが実情だ。

(4)原発再稼働の根拠
 大手電力会社は、「原発の再稼働がなければ、電力需給は厳しい」とし、政府やメディアにもこのフレーズを繰り返す人が多いが、実際には、*4-1のとおり、電力需給は今夏も余力があり、原発再稼働の根拠は揺らいでいた。それは、①太陽光発電が原発12基分に相当する1200キロワットの電力を生み出すようになった ②節電ツールが増えた ③企業や自治体が大手電力を解約して新電力へ切り替えた などが理由で、あるべき方向に進んでいるのである。

 そのような中、*4-2のように、九電は、原油価格の下落や川内原発1号機の再稼働で2015年9月中間連結決算の純損益が450億円の黒字になる見通しとのことだ。しかし、このブログに何度も記載しているように、原発事故の補償は税金から多額の支出がなされ、原発の立地、再稼働、*4-3の使用済核燃料の貯蔵・廃棄についても税金が原資の多額の費用が支払われる。そのため、原発の総コストは、太陽光発電をはじめとする自然エネルギーをはるかに上回るのだ。

 なお、*4-3のように、政府が原発の使用済核燃料の中間貯蔵施設を拡充するために、各電力会社に貯蔵能力を拡充する具体的な計画の策定を求め、容量増強を受け入れた自治体への交付金を増額するというのは、原発の地元をさらなるリスクに晒し、地域振興を阻害するため、とんでもないことである。新安保関連法の成立で、日本の軍隊がPKOであっても戦争の現場に出動したり、日本が武器輸出したりすれば、恨みを買うことは必定で、その時、原発関連施設はオウンゴール(Own goal)の強力な原爆となる可能性があることを忘れてはならない。

(5)日本の再生可能エネルギー技術の停滞
 節電は、上図や*5-1のような太陽光発電によるゼロエネルギー住宅で徹底的に行うことができる。そのため、ミサワが全戸、パナホームが85%、積水ハウスも70%に標準仕様として設置するのは誠に頼もしく、ゼロエネ住宅は発電能力5キロワット程度の太陽電池をのせるため、20万戸で原発1基分の発電能力を有する。私は、このような家は、世界で受け入れられるに違いないと考える。

 (私が提案して)日本で太陽光発電、電気自動車、蓄電池の開発が始まったのは、世界初である1995年前後であり、現在はそれから20年も経過しているのだが、日本国内では、「性急すぎる(?)のはいけないことで、時間がかかるのがいいことだ」などと言われ、本気で実用への道筋がつけられなかった。

 そうこうしているうちに、*5-2のように、米ハーバード大学の研究チームが無害、非腐食性、不燃性の新しい素材を使った、安全安価で高性能なフロー電池の開発に成功し、畜電池が大きく前進した。そのため、名誉だけでなく、蓄電池の重要な特許もそちらにいく。何故、こうなるのかと言えば、日本では、意思決定する立場にいる人が殆ど文系の科学音痴で、開発や特許権の重要性に疎く、技術の選択眼もなく、外国がやっているのを見て初めて日本でもやらなければと焦るキャッチアップ型(新興国に多い)の政治・行政しか行えないからだ。

 また、温室効果ガスの悪影響についても、(私が提案して)日本がイニシアティブをとり、京都議定書(京都市で1997年12月に採択された気候変動枠組条約に関する議定書)を決めたにもかかわらず、日本国内では「無理だ、理想だ、現実的でない、妥協こそ大事だ」「排出量取引でごまかそう」などとして何とか本物の排出削減目標を低くしようとしてきた。しかし、*5-3のように、現在の世界は、既に途上国も含めて、日本(2030年に2013年比26%減)より高い目標を出しており、ゼロエネルギー住宅や電気自動車・燃料電池車を標準とすれば、それは原発を使わなくても可能なのである。

<原発事故の人体への影響>
*1-1:http://www.tokyo-np.co.jp/article/feature/nucerror/list/CK2015040802100010.html (東京新聞 2015年4月8日) 【福島原発事故】被ばく死 最悪1.8万人 原発攻撃被害 84年に極秘研究
 国内の原発が戦争やテロなどで攻撃を受けた場合の被害予測を、外務省が一九八四(昭和五十九)年、極秘に研究していたことが分かった。原子炉格納容器が破壊され、大量の放射性物質が漏れ出した場合、最悪のシナリオとして急性被ばくで一万八千人が亡くなり、原発の約八十六キロ圏が居住不能になると試算していた。研究では東京電力福島第一原発事故と同じ全電源喪失も想定していたが、反原発運動が広がることを懸念し公表されなかった。八一年にイスラエル軍がイラクの原子力施設を空爆したことを受け、外務省国際連合局軍縮課が外郭団体の日本国際問題研究所(東京)に研究委託。成果は「原子炉施設に対する攻撃の影響に関する一考察」と題した六十三ページの報告書にまとめられ、本紙が情報公開を通じてコピーを入手した。報告書は出力百万キロワット級の原発が攻撃されたと仮定。原発の場所は特定せず、(1)送電線や発電所内の非常用発電機がすべて破壊され、すべての電源を失う(2)原子炉格納容器が爆撃され、電気系統と冷却機能を失う(3)格納容器内部の原子炉が直接破壊され、高濃度な放射性物質を含む核燃料棒などが飛散する-の三つのシナリオで検証した。このうち、具体的な被害が示されたのは(2)の格納容器破壊のみ。当時、米国立研究所が米原子力規制委員会(NRC)に提出した最新の研究論文を参考に、日本の原発周辺人口を考慮して試算した。それによると、緊急避難しない場合、放射性物質が都市部など人口密集地に飛来する最悪のケースでは一万八千人が急性被ばくで死亡。ただ、被害は風向きや天候で大きく変わるとして、平均では三千六百人の死亡になると試算した。五時間以内に避難した場合は最悪八千二百人、平均八百三十人が亡くなるという。急性死亡が現れる範囲について、報告書は「十五~二十五キロを超えることはない」と記述している。長期的影響としては、放射性物質セシウムなどで土壌汚染が深刻化すると指摘。農業や居住など土地利用が制限される地域は原発から最大で八六・九キロ、平均で三〇・六キロにまで及ぶとしている。最も被害が大きい(3)の原子炉破壊については「さらに過酷な事態になる恐れは大きいが、詳しい分析は容易ではない」と紹介。福島原発事故と同じ(1)の全電源喪失では、実際に起きた水素爆発の可能性に触れ「被害が拡大する危険性がある」と指摘しており、報告書が公表されていれば、事故の未然防止や住民避難に役立った可能性がある。八〇年代は、七〇年代の二度にわたる石油危機を受け、国は原発建設を積極的に推進。国内の原発十六基が運転を始めた。軍事攻撃が想定とはいえ、原子炉に重大な損害が生じれば深刻な被害が及ぶとのシナリオは世論の不安を呼び、国の原子力政策に水を差す可能性があった。報告書にも「反原発運動などへの影響」などと、神経をとがらせていたことをうかがわせる記述がある。原子力資料情報室の伴英幸・共同代表は報告書の存在を「知らなかった」とした上で「反対運動を理由にした非公開ならとても納得できない。テロの脅威が高まる中、原発のリスクを国民にもっと知らせるべきだ」と話している。
◆公表する理由がない
 外務省軍備管理軍縮課の話 報告書は保存されているが、作成部数や配布先など詳しい経緯は分からない。今後、公表の予定はない。積極的に公表する理由がない。
◆原発攻撃被害報告書 「福島」に生かされず
 軍事攻撃による原発の放射能被害を予測していた外務省の報告書。水素爆発した福島第一原発事故は地震と津波が引き金とはいえ、報告書が指摘していた「全電源喪失」の危機がシナリオ通りに再現された。三十年も前から原発の潜在的な危険性を知りながら、反原発運動の広がりを恐れて公表を控えた外務省。原発推進を掲げた当時の国策の下で、都合の悪い情報をひた隠しにする官僚の隠蔽(いんぺい)体質が浮かび上がる。 「限定配布の部内資料(『取扱注意』なるも実質的に部外秘)」「外務省の公式見解でないことを念のため申し添える」…。高度な秘密性を裏付けるように、報告書には当時の国際連合局軍縮課長が書いた「ことわりがき」が添えてある。当時、同局の審議官だった元外交官の遠藤哲也氏(80)は本紙の取材に「記憶が確かではない」としながらも「ショッキングな内容なので(非公表に)せざるを得なかったでしょうね」と話した。同氏によると、一般的に部内資料は省外への持ち出しが禁止されており、報告書が官邸や原子力委員会などに配布されていなかった可能性が高い。作成された二年後の一九八六(昭和六十一)年には旧ソ連・チェルノブイリ原発事故が起きたが、その時ですら報告書の公表はなく、原発の安全対策に生かされることはなかった。当時は米ソが核兵器の開発を競う冷戦時代。科学技術史が専門の吉岡斉・九州大教授(61)は原発の軍事攻撃を想定した報告書が公表されれば「国民の間で核兵器と原発が一体的に連想されることを心配したのではないか」と推測する。「国家と秘密 隠される公文書」(集英社新書)の共著者で、歴史学者の久保亨・信州大教授(62)も「原子力は、軍事に転用できる技術の最たるもの」と指摘する。久保教授が懸念するのは昨年十二月に施行された特定秘密保護法。安全保障やテロ対策などを理由に原発に関する情報が一段と制限され「闇から闇へ葬られかねない」と懸念を示している。

*1-2:http://digital.asahi.com/articles/ASH9W4TZ7H9WPTIL008.html
(朝日新聞 2015年10月1日) トモダチ作戦、称賛の陰で 元空母乗組員ら健康被害訴え
 東日本大震災で「トモダチ作戦」にあたった米国の原子力空母「ロナルド・レーガン」が1日、米海軍横須賀基地(神奈川県横須賀市)に配備された。作戦から4年半。当時の乗組員たちは今、健康被害を訴えて米国で訴訟を続けている。称賛された支援活動の陰で何があったのか。
■帰国後に体調悪化
 トモダチ作戦に従事した元海軍大尉のスティーブ・シモンズさん(37)に会うため、記者は米国ユタ州ソルトレークシティーを訪ねた。ロナルド・レーガンの元乗組員たちは事故から約1年9カ月後の2012年12月、「東京電力福島第一原発事故で東電が正しい情報を示さず、被曝(ひばく)した」としてカリフォルニア州サンディエゴの連邦地裁に提訴。当時、艦載機部隊の管理官だったシモンズさんも訴訟に加わっている。「空母では当初、海水蒸留装置の水を飲んだり、その水で調理した食事をとったりしました。現場海域に着いてから3日後の2011年3月15日、艦長が『水を飲まないように』と命じました。だが、すでにシャワーを浴びたり、水を飲んだりしたあと。その後も、甲板の洗浄には汚染された海水を使っていました」。「乗組員は強い放射線にさらされ続けましたが、当時は健康へのリスクに無知でした。私たちは人道支援にあたったのであり、核惨事に対応できたわけではない。東電が正しい情報を出していれば、違った対応がとれたはずです」。シモンズさんは帰国後、体調が悪化。様々な症状に苦しんでいる。「11年末、車を運転中に突然気を失いました。高熱が続き、リンパ節がはれ、足の筋力が衰えました。髪の毛が抜け、体重も十数キロ激減。トモダチ作戦前は登山をするなど健康体でしたから、症状が現れたときには打ちのめされました」。「筋肉を切り裂くような痛みは腕や胸に広がり、全身のはれや囊胞(のうほう)、発汗、膀胱(ぼうこう)不全などを発症。通院するソルトレークシティーの退役軍人病院の医師は『放射能の影響だろう』としています」。米国防総省は昨年、連邦議会へ報告書を提出した。乗組員らが受けた放射線量は一般の米国人が自然界から受けるより低いとし、健康被害との因果関係は考えられないと主張している。「報告書は使い物にならない代物。乗組員全員の検査をせず、健康被害のリスクはなかったとしている。飲料水の汚染は検知器の誤作動だったとしているのも不可解です」。「作戦に従事した元乗組員2人が亡くなり、ほかの仲間も深刻な健康被害を抱えています。一方で(係争中の訴訟は)米国内で理解されていません。私自身は海軍に16年以上勤めたので医療費を受けられますが、20代の若い仲間は健康問題が生じると何の保障もなく海軍を追い出されている。見捨てられません」。横須賀に配備されたロナルド・レーガン。地元からは「事実上の母港化が続く」「原発再稼働に匹敵する問題」などとして反対の声が上がるほか、「完全に除染されたという客観的証拠を示すべきだ」との指摘もある。「(ロナルド・レーガンには)『トモダチ』としての顔と『放射能汚染にさらされた船』という両面があると思う。日米政府間の信頼醸成には資するが、地元側が安全性に疑問を抱くのも当然。原発事故後、日本人の放射能汚染への意識は高まっているでしょう。レーガンの除染について、米側に正しい情報を求める権利がある」
■「放射性プルームに包まれた」
 米情報公開法に基づき、訴訟の弁護団がロナルド・レーガンの航海日誌や米原子力規制委員会(NRC)の電話会議記録を入手していた。航海日誌によると、演習参加のためにハワイから韓国・釜山に向かっていたロナルド・レーガンは、大震災を受けて11年3月13日までに福島沖に到着。米第7艦隊や海上自衛隊と活動を始めた。そしてNRCの電話会議記録には、13日の米海軍高官の発言が残る。「東北近海の海自艦に立ち寄ってレーガンに戻ったヘリ搭乗員の靴などから放射性物質を検出した」「沖合約185キロにいたレーガンは放射性プルーム(雲)の下に入った。空気中の放射線量が通常の30倍の数値を示し、救援活動を一時停止した」。その後の状況も航海日誌に記されていた。「16日午後11時45分、福島第一原発東方沖約230キロの海域を航行中に放射性プルームに包まれた」「17日午前5時7分に抜け出すまでの5時間あまり強い放射線にさらされた」。ロナルド・レーガンは4月上旬まで日本近海で活動を続け、東南アジアや中東を経て9月にハワイへ。ワシントン州の海軍施設で除染されたという。横須賀への配備を前に外務省北米局は「我が国の周辺に米海軍の強固なプレゼンスが引き続き維持される。トモダチ作戦に従事した艦船でもあり、入港を歓迎する」と発表した。一方、米国で訴訟を起こした元乗組員側の原告は250人を超え、10億ドル(約1200億円)の救済基金の設立を要求。2人が骨膜肉腫や急性リンパ球白血病で亡くなっている。東電側は「政治的問題なので裁判になじまない。日本で審理するべきだ」として却下を申し立てている。
     ◇
〈米原子力空母「ロナルド・レーガン」〉 2003年に就役した「ニミッツ」級空母。全長約333メートル、幅約77メートル、満載排水量約9万7千トン。動力として原子炉2基を搭載する。戦闘機など60機以上を艦載し、航空要員を含めて5千人以上が乗り組む。これまでの母港サンディエゴから、前任の原子力空母「ジョージ・ワシントン」に代わって横須賀に配備される。

*1-3:http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2015100601002207.html
(東京新聞 2015年10月7日) 「被ばくで発症」と主張 福島事故後の甲状腺がん 
 東京電力福島第1原発事故後、福島県で見つかっている子どもの甲状腺がんの多くは被ばくで発症したものだと主張する分析結果を岡山大の津田敏秀教授(環境疫学)らのチームがまとめ、国際環境疫学会の6日付の学会誌電子版に発表した。別の疫学専門家からは「結論は時期尚早」との指摘がある。研究チームは、福島県が事故当時18歳以下だった約37万人を対象にした昨年末時点までの甲状腺検査の結果を分析。年間発症率は事故前の日本全体と比べ、20~50倍と算出した。さらに福島県内でも地域によって発症率が最大2・6倍の差があった。

<原発事故に依る地域の汚染>
*2:http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150929-00000126-mai-soci (YAHOO、毎日新聞 2015年9月29日) <福島原発事故>浪江町117人が集団提訴 原状回復求め
 東京電力福島第1原発事故により帰還困難区域(年間積算放射線量50ミリシーベルト超)に指定された福島県浪江町津島地区の住民32世帯117人が29日、国と東電を相手取り、除染による古里の原状回復や慰謝料など約65億円の支払いを求め、福島地裁郡山支部に提訴した。弁護団によると、帰還困難区域の住民による集団提訴は初めて。住民らは、2020年3月までに国際基準で平常時の追加被ばくの限度とされる年1ミリシーベルトを下回るまで津島地区を除染するよう要求。期限に間に合わない場合は、地域コミュニティーの再生が困難になって古里を奪われるとして1人3000万円の慰謝料を求める。また、1人につき月10万円の精神的賠償を35万円に増額することや、国が事故直後に放射性物質の拡散予測を公表せず避難が遅れ無用な被ばくをしたとして1人300万円の慰謝料も求めた。津島地区の約170世帯約480人も今後追加提訴し、同地区の半数が訴訟に参加する見通し。

<川内原発再稼働>
*3-1:http://www3.nhk.or.jp/lnews/kagoshima/5055226071.html
(NHK 2015年9月28日)2号機は15日にも再稼働
 1号機に続き再稼働に向けた準備が最終段階に入っている川内原子力発電所2号機について、九州電力は今後の検査や作業で問題がなければ来月15日に原子炉を起動し再稼働する計画であることがわかりました。
川内原子力発電所は福島第一原発の事故後につくられた新しい規制基準の審査に、去年、全国の原発で初めて合格し、1号機は先月11日に再稼働しました。2号機も今月13日までに原子炉に燃料が入れられ再稼働に向けた準備は最終段階に入っています。来月1日からは新しい規制基準に基づいて増設された非常用の設備や機器を使った事故対応の訓練が行われることになっており、九州電力は今後の検査や作業に問題がなければ来月15日に原子炉を起動し再稼働する計画であることがわかりました。再稼働後は12時間程度で核分裂反応が連続する「臨界」の状態に達し、その後、発電用のタービンを起動し2号機でも発電を開始することにしています。2号機が再稼働した場合、新しい規制基準のもとでは1号機に続き全国の原発で2例目ですが、福島第一原発の事故の影響で4年にわたって運転を停止した状態が続いているため検査や作業に時間がかかり再稼働の時期がずれ込む可能性もあります。

*3-2:http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20150906-00058720-hbolz-soci (YAHOO:HARBOR BUSINESS Online  2015年9月6日) 川内原発再稼動で再び懸念される「海の環境破壊」
 川内原発の温排水放出口がある寄田海岸には、2009年に29匹のサメが打ち上げられたという(川内原発「温廃水」訴訟訴状より)。九州電力川内原発1号機が今年8月11日、4年3か月ぶりに運転を始めた。原子炉が出した熱の実に3分の2は電気にならず、温排水として海に捨てられる。「海暖め装置」でもあるのが原発だ。一方、2年近く続いた原発ゼロ期間中、各地で原発周辺の海洋環境が劇的に改善したとの報道が相次いだ。
◆温排水停止の4年間で徐々に海の環境が回復!?
 「それまで浜辺に魚などの死体が打ち寄せられていたのが、川内原発が運転を止めてからピタリと止まりました。劇的な変化でした」と話すのは、市民団体「反原発・かごしまネット」の向原(むこはら)祥隆さんだ。川内原発の稼働中、近くの浜辺には毎日のようにサメやエイなどの大型魚類、クジラやイルカなどの海生哺乳類、ウミガメなどの死体が海岸に漂着していた。ところが2011年9月の運転停止以降はそれらが一切なくなったという。海水1度の温度上昇は、気温でいえば3~4度上がるのに相当する変化だとされる。原発が排出してよい温排水の温度は取水口の海水温度プラス7度まで。出力100万キロワットの原発の場合、1秒に約70トンもの温排水が出る。九電は温排水の影響を否定するが、向原さんらは温排水によって川内原発周辺海域で環境破壊が生じているとして、2010年10月に九電を相手取り「温廃水」訴訟を起こした。訴状で、温排水の影響として「海洋生物の死亡漂着」「原発南側での海藻の全滅」「原発南側に隣接する漁協での漁獲の激減」などを挙げている。鹿児島地裁は12年10月、訴えを退けた。
◆火力より影響が大きい? 原子力の温排水
 もっとも、温排水を出すのは原発に限らない。火力発電所からも温排水は出る。しかし熱効率で比べると、原子力が30%程度なのに対して、火力は40~60%だ。つまり火力発電所の温排水は原発よりも温度が低い。つまり原発の再稼働が進めば、火発を運転するよりもムダな熱が海に捨てられることになる。京都大学舞鶴水産実験所の益田玲爾(れいじ)准教授は若狭湾で潜水調査を続ける。若狭湾では関西電力高浜原発の停止後に周辺海域の海水温が下がり、地元特産のアカウニやムラサキウニ、マナマコなどが姿を見せるようになったという。海藻も茂ってきたそうだ。舞鶴湾には舞鶴石炭火力発電所があるが、こちらでは海洋生物への影響はみられないという。「火力発電所の周辺で変化が見られないのは、第一に、火力発電所の方が効率よく熱を使っているからです。しかも10年前に完成した舞鶴火力発電所は、舞鶴湾内から採水。冷却に使った(つまり加温された)海水を長い地下パイプを経て、湾外に放出しています。ですので、排水口に近い瀬崎沖で潜水中に測定しても、同所と舞鶴湾内の水温差はほとんどありません。一方、40年前に作られた高浜原発では、湾外の海水を冷却に利用し、7℃高い水を湾内に放出しています。このため、原発稼働中に高浜町の内浦湾は温排水による影響を強く受けていました」(益田氏)。川内原発の場合、現在のところ温排水を沖合に放出する地下パイプのような設備はない。向原さんは「原発が停止し、4年かけてようやく“海焼け”した海底にヒジキなどの海藻が付き始めたところ。再稼働で徐々に影響が広がるでしょうが、これでは元の木阿弥です」と話し、温排水の影響を懸念している。

*3-3:http://qbiz.jp/article/70870/1/
(西日本新聞 2015年9月15日) 火山活動、九州際立つ 噴火予測難しく
 1年以上にわたり小規模な噴火を断続的に繰り返してきた阿蘇山が14日、2千メートルの噴煙を上げ、噴火警戒レベルも初めて3(入山規制)に引き上げられた。全国で火山活動が活発化する中、九州では阿蘇のほか霧島山、口永良部(くちのえらぶ)島、桜島も活動を活発化させており、動きは突出している。相次ぐ異変に関連はないのか。九州のほかの火山に影響はないのか−。専門家は十分な警戒を呼び掛けている。「活発化はしていたが、マグマがたまった様子や地殻変動は見て取れなかった。今回のような小規模な噴火は予測が難しい」。福岡管区気象台の米田隆明・火山防災情報調整官はこう語った。阿蘇山は昨年8月に噴火警戒レベル2(火口周辺規制)に引き上げられた後、同11月からは21年ぶりにマグマ噴火を繰り返すなど活動を活発化させていた。火山ガスの量はやや多い状態で推移。今年8月以降は火山活動の指標となる「孤立型微動」が増え、噴火直前の14日午前9時20分ごろには震動を示す数値が急に倍増していた。京都大火山研究センター(熊本県南阿蘇村)の大倉敬宏教授(火山物理学)は「いつ噴火してもおかしくない状況だった」。ただ、そのタイミングまでは分からなかった。これまでの立ち入り禁止区域は火口から半径1キロ。気象台によると、この日の噴火に伴う噴石は2キロ近くまで飛んだとみられる。当時、火口から1キロ余りの阿蘇山ロープウェー付近には観光客十数人が滞在していた。「けが人が出なかったのは幸運だった」。阿蘇市職員はこう振り返る。
   ◇    ◇
 阿蘇山では1979年9月の噴火で観光客3人が犠牲となった。石原和弘京都大名誉教授(火山物理学)は「今回は79年の噴火と同規模とみられる。これまで静かだったのはマグマをため噴火能力を蓄えていたからで、それが一気に噴出したのでは」と分析する。気象庁によると、山体の膨張が小さいことからマグマの供給量は少ないとみられ、今回より規模の大きな噴火が起きる可能性は低いという。微動も減少傾向にあるといい、「(噴火の)サイクルが終わる可能性が高い。ただ、確実にこれで収まるとは言えない」。
   ◇    ◇
 火山は全国で活動が活発化しており、専門家には東日本大震災と関連づける見方もある。火山噴火予知連絡会の藤井敏嗣会長(東京大名誉教授)は「海外でも巨大地震の後に火山噴火が起きた事例はあり、一つの遠因と言える。箱根山などだけでなく、鹿児島の諏訪之瀬島でも火山性微動が増えた」と指摘する。九州では近年、霧島山(宮崎、鹿児島)、口永良部島(鹿児島)、桜島(同)など、南部を中心に火山の動きが活発だ。雲仙岳(長崎)や九重山(大分)に目立った動きはないが、常時観測対象の活火山だ。日本列島には二つの火山密集帯があり、沖縄から九州を縦断して中国地方へつながる西日本の「火山フロント」は南海トラフに平行して形成。最近噴火した箱根山(神奈川)や御嶽山(長野、岐阜)は日本海溝に平行する東日本のフロント上にある。だが、マグマだまりは火山ごとに独立しており、気象庁は「隣接する火山の噴火が連動するという考え方はしていない」と説明する。地震と火山活動の関係や、火山活動の連動性は未解明の部分が多い。藤井名誉教授は「九州での相次ぐ火山活動に関連性はないと考えるが、活火山に近づく際には気象庁の情報に注意するよう心掛けてほしい」と話している。
◆マグマ水蒸気噴火か
 14日に中岳第1火口で発生した噴火は「マグマ水蒸気噴火」とみられ、今年5月の口永良部島(鹿児島県)噴火と同じだ。阿蘇山には多数の火口があるが、1934年以降、噴火が確認されているのは中岳第1火口のみ。気象庁によると、近年は数カ月から数年の周期で噴火を繰り返し、多くは赤熱した噴石を間欠的に飛ばすマグマ噴火の「ストロンボリ式噴火」で、昨年11月の噴火もストロンボリ式だった。阿蘇火山博物館の須藤靖明学術顧問によると、阿蘇山でマグマ水蒸気噴火を最後に確認したのは93年。須藤氏は「11日から小噴火が相次いでガスが抜け、噴火の威力は弱まったのではないか」と指摘し「火口に残る水蒸気がなくなった後にはストロンボリ式に移る可能性がある」との見方を示す。気象庁は「マグマ水蒸気噴火とマグマ噴火でどちらが危険度が高いかは一概には言えない」としている。
◆観光客死傷、戦後相次ぐ
 九州屈指の観光地・阿蘇山は、カルデラ内の活動中の火口に接近できることが特長だが、有史以降、数え切れないほどの噴火を繰り返しており、戦後も観光客らを巻き込む死亡事故が起きている。最も活動的なのは「中岳第1火口」。気象庁などによると、1953年の噴火では噴石などにより観光客6人が死亡、90人以上が負傷した。人間の頭大以上の噴石が火口から数百メートル飛んだという。58年には突然、爆発的噴火が発生。噴石が火口から約1・2キロに達し、ロープウエーの作業員ら12人が死亡、負傷者は28人に上った。79年にも噴石により観光客3人が犠牲になった。97年には、火口から放出された火山ガスの二酸化硫黄により観光客2人が死亡。人身事故以外にも、大量の火山灰により周辺の農作物に被害をもたらす噴火もたびたび発生している。
◆気象庁が初の噴火速報
 気象庁は14日、阿蘇山の噴火を受け、8月に運用を始めた「噴火速報」を初めて発表した。犠牲者が多数出た昨年9月の御嶽(おんたけ)山(さん)(長野、岐阜県)の噴火を踏まえ、登山者などがいち早く避難できるようスマートフォンでも即時に情報を得られるが、専用アプリが必要だ。噴火は午前9時43分。「噴火から5分以内」を目標とする噴火速報の発表は7分後の同50分だった。福岡管区気象台は「黒煙が出始めた同47分前後に速報が必要と判断した。最善を尽くした」と説明した。速報発表とほぼ同時に民間2社のアプリ登録者約400万人に情報が届いた。「いつもと違う通知音ですぐに気付いた」という熊本県南阿蘇村の旅館従業員の男性(45)は「噴火直後に知り、職場に駆け付けた。テレビをつけていなかったので役立った」と話した。一方、スマホを持っていない同県高森町のリンゴ園経営、後藤和弘さん(69)は「ラジオのニュースを聞くまで(噴火に)気付かなかった」という。特定地域のすべての携帯電話に情報を一斉送信できる自治体の緊急速報メールも使われたが、送信時刻は同県阿蘇市が午前10時23分、南阿蘇村が同40分ごろで噴火発生から40分〜1時間後だった。

<原発再稼働の根拠>
*4-1:http://www.tokyo-np.co.jp/article/economics/news/CK2015092802000134.html (東京新聞 2015年9月28日) 電力需給 今夏も余力 原発再稼働の根拠揺らぐ
 この夏の全国の電力需給を電力各社に取材したところ、需要が最も高まるピーク時の電力使用率が95%を超える「厳しい」日はゼロだったことが分かった。節電の定着や企業・自治体の大手電力離れで需要が減る一方、電力会社間の融通や太陽光発電の増加で供給力を確保し、電力の安定につながった。8月に川内(せんだい)原発1号機(鹿児島県)が再稼働した九州電力を除く地域は今夏も原発なしで乗り切った。本紙は、原発のない沖縄を除く電力九社に、今年七月~九月中旬までの月-金曜日のピーク時の電力使用率を取材した。使用率は、電力会社が気温などから需要を予測して事前に準備した供給力に対する実際の最大需要の割合で、どれだけ電力に余力があったかを知る目安となる。昨年の夏は中部電力と関西電力でそれぞれ一日「厳しい」日があった。今年は東京で過去最長の八日連続の猛暑日となるなど、全国的に八月上旬に暑さのピークを迎え、冷房などの使用により各地で今夏の最大需要を記録した。九電管内では八月十一日に川内原発1号機が再稼働。九電は「原発の再稼働がなければ、電力需給は厳しい」としていたが、再稼働前は中部、中国両電力から融通してもらい、余力を確保していた。原発が動いていない電力各社は既存の発電所の増強や、老朽火力も活用して供給力を確保。太陽光発電の導入が昨年に比べて倍増し、原発十二基分の出力に相当する計千二百万キロワットの電力を生み出したこともピーク時の供給を下支えした。東京電力管内では、最高気温が三七・七度となった八月七日に今夏最大の四千九百五十七万キロワットの需要を記録したが、使用率は92・3%と余力を残していた。原発依存度の高い関電管内は、原発稼働がゼロでも使用率が90%未満の「安定」した日がほとんど。同四日に今夏の需要がピークとなったが、中部、中国、北陸の電力三社から計百一万キロワットを融通してもらい、使用率は88・1%にとどまった。夏を乗り切れた理由について、電気事業連合会の八木誠会長は「節電が大きな要因」と説明。全国の最大需要は東日本大震災前の二〇一〇年と比べて、今夏は13・5%減少した。加えて、企業や自治体などが、料金値上げをした大手電力を解約して新電力へ切り替える動きが進んだことも需要減の一因となり、今夏の安定につながった。

*4-2:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/226295
(佐賀新聞 2015年9月5日) 9月中間で九電5年ぶり黒字 原発再稼働寄与
 九州電力は4日、2015年9月中間連結決算の純損益が450億円の黒字になる見通しだと発表した。純損益の黒字は5年ぶり。原油価格の下落や川内原発1号機(鹿児島県薩摩川内市)の再稼働などが寄与して前年同期の359億円の赤字から大幅に改善した。瓜生道明社長はこの日、川内1号機の再稼働後、初めて記者会見し「東京電力福島第1原発のような事故を起こさないため、安全対策に万全を期してきた」と強調。川内1、2号機に加え、玄海原発3、4号機(東松浦郡玄海町)が再稼働した場合、料金の本格値下げについて「財務状況を勘案し、総合的に判断する必要がある」と述べた。ただ、玄海3、4号機の本年度中の再稼働は「現実的には少し難しい」と話した。川内1号機は8月11日に再稼働し、九電は月75億円の収益改善効果を見込んでいる。原油安で火力発電の燃料費が大幅に減少したことも黒字化に大きく貢献した。売上高は9300億円と予想。16年3月期の売上高は1兆8800億円を見込むとした。純損益は未定としたが、瓜生社長は黒字化に「川内2号機が予定通り10月中旬に再稼働し、効率化をもう少し進めれば可能ではないか」と述べた。また瓜生社長は、16年4月に始まる電力小売り自由化に向け「ライフスタイルに合わせた新しい料金メニューを検討している」と明らかにした。

*4-3:http://qbiz.jp/article/72271/1/
(西日本新聞 2015年10月7日) 使用済み核燃料の貯蔵拡充を要請 政府、九電など電力各社に
 政府は6日、原子力に関する関係閣僚会議を開き、原発から出る使用済み核燃料の中間貯蔵施設を拡充するための行動計画をまとめた。各電力会社に、貯蔵能力を拡充する具体的な計画の策定を求めるほか、容量増強を受け入れた自治体への交付金増額などを盛り込んだ。使用済み燃料をめぐっては、日本原燃の再処理工場(青森県六ケ所村)がトラブル続きで稼働できず、各原発の貯蔵プールにたまり続けている。保管容量が限界に近づいている原発もあり、九州電力の玄海原発(佐賀県玄海町)は、再稼働から5〜6年で満杯になる見通し。満杯になれば運転できなくなるため、政府は原発の敷地内に限らず、貯蔵施設を拡充するよう各社に要請してきた。ただ地元の理解なども必要で、具体的な取り組みは進んでいない。行動計画では容量の拡大に向けて、特に使用済み燃料を金属製の容器に入れて保管する「乾式貯蔵」を推奨。維持管理や輸送が容易になるためで、導入を受け入れた自治体には交付金を手厚くする方針も示した。

<再生可能エネルギー>
*5-1:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20150920&ng=DGKKASDZ19H6A_Z10C15A9MM8000 (日経新聞 2015.9.20) 消費電力抑え太陽光発電 ゼロエネ住宅、一斉販売、ミサワ、全戸標準仕様 パナホームは85%に
 住宅大手がエネルギー消費が実質ゼロとなる省エネ住宅「ゼロエネルギー住宅(総合・経済面きょうのことば)」の販売に乗り出す。屋根に設置する太陽光パネルによって、家庭内で消費するエネルギーよりも多く発電する。ミサワホームは2017年度に販売する全戸をゼロエネ住宅とし、パナホームも18年度に85%にする。環境負荷を減らせる一方、消費者にとっては家計の節約にもつながる。ゼロエネ住宅は電気やガスを使って消費するエネルギーから、太陽光発電で生み出したエネルギーを差し引くと、年間のエネルギー消費量が実質ゼロとなる。消費電力の低減が重要なため、断熱材のほか省エネタイプの給湯器や換気システムを標準装備する。このため通常の住宅と比べて250万~300万円の追加費用が必要だ。これとは別に太陽電池が工事費込みで150万~200万円かかる。光熱費の節約や売電収入によって、長期的に追加の費用を回収する。ミサワホームは17年度には販売する住宅のすべてでゼロエネタイプを標準とする。まずは今春から30代など比較的若い世代を対象とする価格が低めの住宅で、ガラス繊維の密度を高めた高性能の断熱材を使用して、太陽電池も標準で搭載した。同社は年間8千戸を販売している。14年度のゼロエネ住宅の受注数は66戸と1%に満たなかったが、省エネ住宅への引き合いが強いことから切り替えを進める。14年度はゼロエネ住宅がほぼゼロだったパナホームは、パナソニック製の太陽電池「HIT」や蓄電池を組み合わせた新たな住宅の販売を強化する。同社の試算では築20年の住宅を新タイプの住宅に建て直すと、年間の光熱費が約35万円から約7万円に減らせる。さらに太陽光でつくった余剰電力を電力会社に売れば年間13万円の収入が得られるという。戸建て大手は各社とも省エネの住宅を増やす方針だ。積水ハウスも16年度に受注棟数の70%をゼロエネ住宅にするほか、積水化学工業も20年度に過半にする目標を掲げている。昨年度の同住宅の販売戸数は住宅大手10社合計で1万~2万戸程度にとどまっている。今後、各社が一斉に販売の重点を置いていくことで、20年度までに10社で5万戸以上に増える見通しだ。ゼロエネ住宅は発電能力5キロワット程度の太陽電池を載せるため、20万戸で原発1基分の発電能力に相当する。工場やオフィスに比べて遅れているとされる家庭部門の省エネが進み、二酸化炭素(CO2)の削減につながる。

*5-2:http://www.nikkei.com/article/DGXMZO92371410S5A001C1000000/ (日経新聞 2015/10/10) ニュースフォローする 画期的な蓄電池を開発、住宅用にも 米ハーバード大
 米ハーバード大学の研究チームがこのたび無害、非腐食性、不燃性の新しい素材を使った、安全安価で高性能なフロー電池の開発に成功した。太陽光発電のみで電力をまかなえる家に住みたいと願うなら、曇りの日用に電力を蓄えておけて、発火するおそれのない安全な電池が必要だ。米ハーバード大学の研究者が、そんな蓄電池を考案したと科学誌「サイエンス」2015年9月25日号で発表した。未来の電池を開発しようと世界中の研究者がしのぎを削るなか、今回開発されたのはフロー電池と呼ばれるタイプのものだ。安価で無害、非腐食性かつ不燃性の材料でできており、しかも高性能であるという。「誰でも使えるようになるという意味で、畜電池は大きく前進しました」。ハーバード大学の工学教授で、論文の共同執筆者であるマイケル・アジズ氏はこう説明する。腐食の心配がない安全な電池であれば、事業用にも家庭用にも適している。「自宅の地下室にも安心して置いておける化学物質が使われています」。気候変動問題が深刻化し、太陽光や風力などのクリーンな再生可能エネルギーへの期待が高まるにつれ、5年ほど前から電力貯蔵技術の研究がさかんになってきた。理由は簡単だ。太陽光発電や風力発電は出力の変動が大きく、太陽が出ていないときや風が吹いていないときに備えて電力を貯蔵する必要がある。蓄電池のなかでもよく知られているのはリチウムイオン電池だ。今から20年以上前に主に個人用電子機器向けに実用化されたものだが、特に大出力のものは高価で、発火の危険性がある。実際、電気自動車で発火事故が数件起きているほか、大量のリチウムイオン電池を輸送する貨物機で火災が発生したこともある。研究者たちは現在、リチウムイオン電池の改良に取り組むほか、まったく別の方式も模索している。今回のハーバード大学の研究チームのように米国エネルギー省から資金を得て、新しい材料の組み合わせや、ナノサイズの電極の開発に取り組む研究者もいる。アジズ氏のチームはフロー電池に注目した。フロー電池は、電気が発生する電池セルとは別のところにあるタンクの液体にエネルギーを貯蔵するため、タンクを大きくすればより多くのエネルギーを貯蔵できる。問題は、フロー電池のほとんどがバナジウムなどの高価で腐食する金属を使っていることだった。
■すでに複数の企業がアプローチ
 ハーバード大学の科学者たちは2014年、バナジウムの代わりにキノンという有機分子を使ったフロー電池を試作した。この試作品はうまく機能し、欧州の企業に製造を許諾したが、材料に有害で揮発性のある臭素が含まれていた。研究チームは今回、臭素をフェロシアニドという無害な非腐食性イオンに置き換えることに成功した。「フェロシアニドは青酸と同じシアン化物なので、毒性があると思われるかもれませんが、そうではありません」と、ハーバード大学のポスドク時にこの新しい素材を考えつき、現在は米コロラド大学ボールダー校に所属するマイケル・マーシャク氏は説明する。「青酸は体内の鉄イオンと非常に強く結びついて呼吸を阻害し、致死的な作用を及ぼします。これに対して、フェロシアニドは最初から鉄と結びついているので安全なのです」。フェロシアニドは食品添加物や肥料にも広く用いられているという。米アルゴンヌ国立研究所エネルギー貯蔵共同研究センターのジョージ・クラブツリー所長は、「この研究は、有機分子を電池に活用する新しい分野を開拓するものです」と言う。彼はこの新分野を「画期的で有望」と評価し、さらに多くの成果を生むだろうと予想する。今回の研究には関与していないが、米ケース・ウェスタン・リザーブ大学の工学教授で蓄電池の専門家であるロバート・サヴィネル氏は、「大容量化が容易で危険性がなく、製造コストも抑えられるでしょう」と、この電池の優れた性能を認めている。サヴィネル氏は、10年以内に商品化も可能だろうと期待を寄せるが、まださらなる検証も必要だと述べている。アジズ氏自身も検証の必要性を認めている。研究チームは短時間の実験結果で寿命を推定しただけなので、「何千回、何万回の充放電サイクルを経ても劣化しないことを証明する必要があります」と言う。彼は1年以内にこのテストを始めるつもりだが、ハーバード大学はそれ以前に製造を許諾する可能性がある。アジズ氏は、すでに複数の企業からアプローチを受けていることを打ち明け、「そう遠くない時期に商品化が実現するかもしれません」と言う。具体的な時期は、製造を許諾される企業が新興企業か大きな電池メーカーかで変わるだろう。ほかにも、起業家イーロン・マスク氏のテスラ・ギガファクトリー(米国ネバダ州)などが、自動車用、家庭用、事業用に畜電池の大量生産をめざしている。太陽光や風力による発電能力が上がるにつれ、エネルギー貯蔵分野の競争がもっとさかんになることをアジズ氏は期待している。しかし今後の電力貯蔵用電池の市場の巨大さを考えると、「最も安価な電池でさえ、需要をすべて満たすにはおそらく相当な時間がかかるでしょう」

*5-3:http://mainichi.jp/feature/news/20151002k0000e030212000c.html
(毎日新聞 2015年10月2日) 温室効果ガス:インド2030年に33〜35%削減を目標
 インド政府は1日(日本時間2日未明)、温室効果ガスの排出量について、2030年に国内総生産(GDP)当たり05年比で33〜35%削減する目標を国連に提出した。インドは世界第3位の排出国だが、削減目標を国際的に公約するのは初めて。1日は国連への提出期限となっており、中国やブラジルなどの主要国も含め148カ国・地域の目標が出そろった。排出削減について、京都議定書は先進国が対象だったが、11月30日からパリで開かれる国連気候変動枠組み条約第21回締約国会議(COP21)では途上国も含め、すべての国が参加する温暖化対策の新枠組みを目指している。世界の排出量の9割近くを占める148カ国・地域の目標が出そろったことで、合意への動きが加速しそうだ。インドは、これまで20年までにGDP当たりの排出を05年比20〜25%減とする目標を掲げていた。新目標では、二酸化炭素(CO2)を排出しない非化石エネルギーの総発電量に占める割合を30年までに40%に増やすことや、CO2を吸収する森林量を追加することなど、達成に向けた具体策も挙げた。一方で、これらを実行するためには、先進国からの資金支援が欠かせないことも明記した。インドでは、大気汚染や温暖化に伴う熱波や洪水などの災害が深刻化し、対策を求める世論が高まっていた。ただし、経済発展が前提との姿勢は変えておらず、将来のGDPに基づく相対的な目標にとどめ、総排出量には上限を設けなかった。
◇主要国の温室効果ガス削減目標
 中国 2030年にGDP当たり05年比60〜65%減(遅くとも30年を排出のピークとする)
 米国 25年に05年比26〜28%減
 欧州連合 30年に1990年比40%以上減
 インド 30年にGDP当たり05年比33〜35%減
 ロシア 30年に90年比25〜30%減
 日本 30年に13年比26%減
 韓国 30年に対策を取らなかった場合に比べ37%減
 カナダ 30年に05年比30%減
 ブラジル 30年に05年比43%減
 メキシコ 30年に対策を取らなかった場合に比べ25%減
 インドネシア 30年に対策を取らなかった場合に比べ29%減
 豪州 30年に05年比26〜28%減
 南アフリカ 遅くとも25年を排出のピークとする


PS(2015年10月12日追加):福島第1原発事故と関係した支出増や収益減について、東電に請求するのは当然であり、広範囲で長期に多額の費用がかかるのが原発事故の特質だ。しかし、「風評被害対策費」と書かれているのは、本当に噂だけで害がないのであれば、科学的根拠を明らかにしてそれを説明すれば受け入れられる筈で、「害があるかどうかわからないから、気をつける」というのは、正当な注意であって風評被害とは言わない。

*6:http://mainichi.jp/select/news/20151012k0000e040134000c.html
(毎日新聞 2015年10月12日) 福島第1原発事故:東電と6県1市係争 損害賠償など
 東京電力福島第1原発事故後、福島県を含む17都県と7政令市が放射線検査の経費など総額563億6000万円を損害賠償請求したところ、200億円余について東電が応じず、6県1市が原発ADR(裁判外紛争解決手続き)で係争中か近く申し立てる方針であることが分かった。住民や法人と比べて補償の枠組み作りが遅れているためで、自治体担当者は「国がもっと具体的に関与する必要がある」と指摘している。毎日新聞が全都道府県と政令市を対象に取材し、8月末時点の請求額や内容をまとめたところ、東北、関東地方は全ての都県と政令市が賠償請求、三重県や島根県も放射線測定の機器購入費などを請求していた。自治体関係者によると、東電は(1)水道、下水道など公営企業の減収(2)学校給食や農畜産物の放射線検査費(3)放射性物質を含む廃棄物の処理・保管費−−など計362億9000万円分について賠償の対象と認めた。だが、項目によっては期限を切っている上に、福島県の住民税等減収分▽秋田県の風評被害対策費▽群馬県の被害者支援費などは応じていないという。こうした東電の姿勢に不満で迅速な賠償が必要として、青森、秋田、山形、宮城、千葉の5県が原発ADRを申し立て、群馬県と仙台市も近く申し立てる。岩手県は既に2億5000万円の支払いで和解した。東日本大震災の被災3県(岩手、宮城、福島)によると、県とは別に大半の市町村が賠償請求しており、総額は628億8000万円。このうち東電が賠償に応じているのは86億5000万円分にすぎなかった。3県以外の市町村も請求しているケースがあり、自治体請求は全国で1200億円を超えるとみられる。東電は取材に対し「原子力損害賠償紛争審査会の中間指針などを踏まえ、必要かつ合理的な範囲を賠償している」とコメントした。
◇例がない広がり
吉村良一・立命館大法科大学院教授(環境法)の話 自治体による企業への損害賠償請求としては金額、広がりともに過去に例がない規模で、原発事故の特質をよく表している。天災でも人災でも住民が困っていれば対応するのは自治体の本来業務だが、今回は長期に負担がかかり本来業務を超えている。


PS(2015年10月13日追加):薩摩川内市は、既に新幹線が開通しているので、原発再稼働はせず、豊かな自然や広い土地を活かした21世紀の街づくりをした方が将来のためになると、私も考える。

   
                           薩摩川内市の様子
*7:http://digital.asahi.com/articles/ASHBD5416HBDTLTB001.html
(西日本新聞 2015年10月12日) 川内原発再稼働は「自殺行為」 鹿児島で1800人集会
 九州電力川内原発(鹿児島県薩摩川内市)2号機の再稼働に反対する集会が12日、鹿児島市のJR鹿児島中央駅前であった。九州各地の脱原発団体メンバーら約1800人(主催者発表)が参加。九電が15日にも予定する2号機の再稼働中止や、8月から稼働している1号機の停止を訴え、中心街をデモ行進した。市民グループ「ストップ再稼働! 3・11鹿児島集会実行委員会」の主催。アイドル「制服向上委員会」のライブの後、参加者が口々に原発に反対する思いを述べた。川内原発建設反対連絡協議会の鳥原良子会長は、8月に川内1号機が再稼働した地元・薩摩川内市について「運転開始から30年が過ぎた川内原発と同じく、まちくりの発想が老朽化している。原発に頼り切って、発想の転換がなかなか図れません」と指摘した。 「原発いらない!宮崎連絡会」の小川渉さんは「川内原発で事故が起きれば、偏西風で自分が住む宮崎県綾町も被害を被る」と懸念を訴え、「九電の姿勢を変えさせるため、電力自由化されたら、原発を稼働する九電から買わないことを実践しよう」と呼びかけた。九州電力は、2009年に2号機の原子炉建屋内にある蒸気発生器を耐食性に優れたものに取り換えることを計画しながら、今回は実施せずに再稼働する。集会ではこれを「自殺行為」と断じて再稼働に反対するアピールを採択した。


PS(2015年10月14日追加): *8-1、*8-2のように、2013年11月に、世銀と国連は原発の援助はしないことを表明し、新エネルギーに舵を切っている。また米国では、*8-3のように、「シェールガスの普及で電力価格が下がり採算性が悪化した」として東部にある原発を4年後までに停止して廃炉にするそうで、原発はフェードアウトしつつある。そのような中、*8-4のように、2015年10月13日、日本の岸田外相がイランの原子力利用を支援することを約束したのは、時代を読めず、民主主義に対する理解も乏しく、当時のドイツ、イタリアと同盟を結んで第二次世界大戦に突っ走って行った構図と似ている。

*8-1:http://www.afpbb.com/articles/-/3004099
(AFP 2013年11月28日) 「原発は援助しない」、世銀と国連が表明
 世銀のジム・ヨン・キム(Jim Yong Kim)総裁と国連の潘基文(パン・キムン、Ban Ki-moon)事務総長は、2030年までに世界中の全ての人が電力の供給を受けられるようにする取り組みについて記者団に説明した。その中でキム総裁は「われわれは原発は行わない」と明言した。キム総裁によると、世銀は来年6月までに42か国の発電計画をまとめる予定。電力網の整備やエネルギー効率の倍増、再生可能エネルギー比率の倍増などを掲げ、目標達成には年間およそ6000~8000億ドル(約61兆~82兆円)が必要になるとしている。しかしキム総裁は、集まった資金は新エネルギー開発にのみ使用すると報道陣に明言。「原子力をめぐる国家間協力は、非常に政治的な問題だ。世銀グループは、原発への支援には関与しない。原発は今後もあらゆる国で議論が続く、たいへん難しい問題だと考えている」と述べた。

*8-2:http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/158086 (日刊ゲンダイ 2015年3月14日) 「投資対象にしない」 世界銀行が突きつけた原発への“絶縁状”
 国連防災世界会議に出席するため来日した世界銀行のキム総裁が13日、外国特派員協会で会見を開き、反原発の姿勢を鮮明にした。「難しい問題だが、原発はリスクが未知数なため、世銀は投資の対象にはしない。炭素税導入で、火力発電によるCO2排出量を抑えると同時に、地熱、水力などのクリーンエネルギーへの投資を拡大するべきと考えている」。キム総裁は9日にもワシントン市内で原発の危険性に関し、懸念を表明。福島原発事故について、「フクシマの技術は最先端ではなかった。新しい技術で本当に安全な原発ができるのか。核廃棄物の貯蔵や取り扱いを安全にできるのか。その証拠を示せなければ国民の納得を得るのは難しい」と語り、原発の安全性を強調し、再稼働に突き進もうとしている安倍政権を批判した。
■原発向け融資は控えたまま
 途上国が原発を建設する場合、先進国の企業がセールスをかけ、発注する国は受注した企業などからの資金を受けて建設する。その後、発電所の電気料金の収入で債務を返済していくケースが一般的だ。受注者の多くは米国、ロシア、中国、韓国などの企業だが、もちろん日本も名を連ねている。昨年4月にはトルコ、UAEへの原発輸出を可能にする原子力協定が参院本会議で承認され、安倍首相がセールスに意欲満々なのは周知の通りだ。ところが、世銀は1959年にイタリアの原発施設に4000万ドル貸し付けて以来、原発向けの融資は控えている。この日のキム総裁の発言は縁切り宣言みたいなものだ。今や反原発が世界の潮流であることを国民も知るべきだ。

*8-3:http://www3.nhk.or.jp/news/html/20151014/k10010269141000.html
(NHK 2015年10月14日) 米東部の原発 採算性悪化などで廃炉へ
 アメリカ東部にある原発について、運営する電力会社は、シェールガスの普及で電力価格が下がり採算性が悪化したなどとして、4年後までに運転を停止して廃炉にすると発表しました。廃炉が決まったのはアメリカ東部マサチューセッツ州にあるピルグリム原発で、運営する電力会社、エンタジー社は、遅くとも2019年6月までに運転を停止して廃炉に向けた作業を始めるとしています。その理由について、エンタジー社は、シェールガスの生産量が増えたことによる電力価格の低下や、安全対策にかかる費用が増えたことで運転コストが上昇し、採算性が悪化したためだと説明しています。ピルグリム原発は、東京電力福島第一原子力発電所の1号機などと同じ型の原発で、1972年から営業運転を続けていますが、ことし1月、外部電源が失われて原子炉が自動停止するなどトラブルが相次いでいました。このため、アメリカのNRC=原子力規制委員会は、先月、この原発の安全性の評価を全米で最も低いランクに位置づけていて、地元からは、安全対策への懸念を指摘する声も上がっていました。エンタジー社は去年12月、アメリカ東部にある別の原発の運転も停止していて、アメリカでは、この数年で採算性の悪化を理由に5つの原発の廃炉が決まっています。

*8-4:http://digital.asahi.com/articles/ASHBF1TQPHBFUHBI004.html
(朝日新聞 2015年10月13日) 日本、イランの原子力利用を支援へ 外相会談で合意
 岸田文雄外相が12日、イランを訪問し、首都テヘランで同国のザリフ外相と会談した。両者はイランによる原子力の民生利用を日本が支援することで一致。東京電力福島第一原発事故などを教訓に、地震への備えや事故時の対処について知識を授ける。また、両国は投資協定を結ぶことでも合意した。米欧など6カ国とイランが7月に結んだ核合意は、イランに発電や医療のための小規模な核開発を認めるかわりに、「原子力安全センター」をつくって専門知識や技術を習得するように定めている。合意文書には「6カ国か他の国がセンター設立に協力する」とだけ書かれており、日本が名乗りを上げた形だ。外相会談後に発表された共同声明によると、日本はセンターに専門家を派遣。原子力事故が起きた場合の対応策や、耐震構造の重要性、核物質の計量や管理についてイラン側に研修する。核合意を履行する準備が整う来年以降に行われる見通しだ。岸田外相は「日本が知見を有する分野で貢献し、協力を続けたい」と述べた。また、日本とイランは投資協定を結ぶことで合意した。イラン進出を考える日本企業には追い風となる。イランとの投資協定はドイツやフランス、中国や韓国など52カ国が結んでおり、交渉開始から約1カ月のスピード合意となった。経済、環境など様々な分野で連携する「日・イラン協力協議会」の立ち上げでも一致。ザリフ外相は会見で「両国の関係は非常に明るい展望がある」と話した。


PS(2015/10/14追加):*9のように、「女性は感情的であって科学的でない」などとするのは、女性蔑視に基づく女性差別であって質が悪すぎる。これに対する私の回答は、「馬鹿も休み休み言え」だ。

*9:http://www.mutusinpou.co.jp/%e6%97%a5%e6%9b%9c%e9%9a%8f%e6%83%b3/2015/10/38423.html
(陸奥新報 2015/10/11 ) 「女性と原子力問題」感情的ではなく科学的に
 「原子力を国民の手に」をスローガンとして2年前に発足した原子力国民会議が主催する集会が東京であり、私も参加した。同会はわが国の経済・エネルギー、地球温暖化など、いわゆる「3E」(経済性、環境問題、エネルギー安全保障)を考えるとき、原子力は不可欠なものであり、安全性が確認された原発は早急に再稼働させ、本県に立地する核燃料サイクル事業の早期竣工も願って結成されたもので、原子力に関する知識や情報を発信するとともに、政府などへの提言を積極的に行ってきている。しかし約4年8カ月前の福島第1原発重大事故以来、原子力への不信を募らせ、原発再稼働にも反対だとする国民が多いのも確かだ。こうした状況を受け、集会のテーマは「原子力の誤解を考える」であり、原子力に反対する人は女性に多いこともあって、「女性の目線から考える」がサブテーマであった。内容は3人の女性講師による講演と、講師と女子学生3人とのディスカッションである。結論から言うと、3講師は「女性の目線」には違和感をもっておられ、客観的に考えなければならぬ時、「女性の目線」も「男性の目線」もないのだとした。免疫学が専門の宇野氏は福島原発事故を振り返り低線量放射線に怯えるあまりに強いストレスを感じ、免疫が低下した事実を上げ、感情に左右されることの恐ろしさを客観的に紹介した。原子力が専門の村上氏は、福島事故以後、世界的に原発開発が衰退したなどとする誤解を事実に即して批判した。ジャーナリストの細川氏はマスメディアが反原発を感情的にあおっていることの危険を批判した。講演の内容はいずれも「女性の目線」からではなく、事実を客観的に捉えようとする「目線」からのものであったが、それはさらにディスカッションにおいて明確に主張された。司会者の質問に答え、学生が「リスクがゼロでなければ自身が母親ならば避難する」としたが、村上氏は、研究者として、妊娠時にも原発の管理区域に入った経験から、「原子力・放射線に対しては女性も男性もない。命を大切にするのは母親だけではない、あるのは事実に基づく行動だけ」とし、細川氏は「女性に原子力反対が多いのは勉強不足に尽きる」と断言した。すなわち、科学的事実に基づいて行動することに女性も男性もなく、さらに言えば「女性の目線」とは事実を求めるのではなく、己の感情に基づく見方でしかなくなる危険性もあると主張されたのだ。私は、社会の様々な事象や場面において「女性の目線」が必要な時もあろうが、原子力を含め、科学的に考え行動することが求められる時には不必要であり、問題の解決を遅らせ、誤まらせる危険すらあると思っている。(青森地域社会研究所特別顧問 末永洋一)


PS(2015.10.15追加):*10-1のように、トヨタ自動車が今から35年後の2050年までにエンジンだけで走る自動車の販売をほぼゼロにする目標を発表し、自動車革命を「天変地異」などと言っているようでは、2050年にはトヨタ自動車はなくなっているだろう。何故なら、日本では、今から20年も前に電気自動車に必要な技術開発を始めたため、そのつもりで準備していれば、今頃は技術者の再教育や更新も完了して準備が整っていた筈であり、それをやっていなかったのなら、経営者に洞察力がないということだからだ。なお、*10-2の本命については、HVは経過的妥協作にすぎず、環境車の本命はEV、FCVだ。また、大地震の中、都市で避難することなどを考えれば、FCVよりもEVの方が爆発せず安全であるため、自家用車はなるべくEVで、EVでは馬力の足りない大型のバス、トラック、航空機、大型船はFCVという選択になるだろう。つまり、これは、エンジンを電動系に変えてトップに立つチャンスでもあったのだ。

*10-1:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20151015&ng=DGKKASDZ14HYT_U5A011C1EA2000 (日経新聞 2015.10.15) トヨタ、50年にエンジン車ゼロ、燃料電池車などシフト 環境目標
 トヨタ自動車は14日、2050年までにエンジンだけで走る自動車の販売をほぼゼロにする長期目標を発表した。ハイブリッド車(HV)や燃料電池車(FCV)の比率を高めて新車の走行時の二酸化炭素(CO2)排出量を10年比9割減らす。自動車の開発競争の中心がエンジンから電池や制御ソフトなど「電動化技術」に移り産業構造にも影響を与えそうだ。
●「天変地異だ」
 トヨタは5カ年の環境計画を設定し、HVの普及などに取り組んできた。14日は新たに21年3月期までの計画を公表するとともに、初めて50年までの長期目標「トヨタ環境チャレンジ2050」を発表した。「長年にわたってHVやFCVの開発に取り組んできたが地球環境は日々悪化している。20年、30年先を見据えたより高い水準の新たな挑戦が必要と考えた」。14日の説明会でトヨタの内山田竹志会長は強調した。長期目標では新車の走行時のCO2排出量を9割減らす方針だ。車両1台生産する際に排出するCO2の量も段階的に削減しゼロを目指す。工場で省エネを一段と進めると同時に、風力発電など自然エネルギーや水素の利用を進める。記者会見した伊勢清貴専務役員は「エンジンだけを搭載した自動車は生き残れない。エンジン車がなくなるのは(自動車メーカーにとって)天変地異だ」と述べた。トヨタは世界で販売するほぼすべての車を50年までにFCV、HV、家庭用電源で充電できるプラグインハイブリッド車(PHV)、電気自動車(EV)とする目標を示した。目標の達成に向け、FCVとHVの販売拡大を今後5年間の実行計画の柱に据えた。同社は14年12月に発売したFCV「ミライ」の生産体制を段階的に増強している。17年には年間3千台規模にする。さらに20年をメドに販売台数を一気にこの10倍に当たる3万台以上に引き上げる。国内では月1千台の水準にする。日産自動車のEV「リーフ」と同じ規模だ。
●新興国でも拡販
 HVの販売は20年までに14年実績より18%多い年間150万台に増やす。トヨタは1997年に世界初の量産型HV「プリウス」を発売した。HVの累計販売台数は今年7月に800万台を超えた。ただ大半を北米と日本で売っている。今後はコスト低減によって価格を抑えて、中国など新興国でも販売を増やしていく考えだ。トヨタはHVで培った制御ソフトなどの技術をFCVやEVなどに幅広く活用できるとみている。燃料電池で作った電気でモーターを動かすFCVは「HVと共有できる部品が多い」(トヨタ幹部)。現在、ミライの価格は700万円台と割高だが、HVの量産効果を取り込んで価格を引き下げていく。エコカーの動力源として電池やモーターなどの重要性が高まれば、自動車産業の構造にも影響を与えそうだ。電機メーカーやIT(情報技術)企業にとっては自動車関連事業を拡大するチャンスが広がる。エンジン部品メーカーなどは事業構造の見直しを迫られる。伊勢専務も「トヨタの体質を変えないといけない」と指摘。新環境目標はトヨタグループの構造改革につながっていく可能性がある。

*10-2:http://www.nikkei.com/paper/related-article/?b=20151015&c=DM1&d=0&nbm=DGKKASDZ14HYT_U5A011C1EA2000&ng=DGKKASDZ14HYZ_U5A011C1EA2000&ue=DEA2000 (日経新聞 2015.10.15) 次の本命まだ見えず
 電池や制御ソフトといった電動化技術が世界の自動車業界で競争の焦点となってきた。トヨタ自動車はハイブリッド車(HV)で培った技術を燃料電池車(FCV)に応用する。ディーゼル車の排ガス不正問題に揺れる独フォルクスワーゲン(VW)は、電気自動車(EV)に開発の軸足を移すことを表明した。いずれの技術も本格的な普及には課題がある。「FCVは二酸化炭素(CO2)を排出せず、走行距離も長い。水素の充填にかかる時間もガソリン車並みだ」。14日の記者会見でトヨタの伊勢清貴専務役員はFCVがエコカーの本命になるとの見通しを示した。自動車大手ではホンダや米ゼネラル・モーターズ(GM)などもFCVの販売を計画している。水素ステーションの整備が本格的な普及のハードルとなっている。設置には1カ所当たりガソリンスタンドの約5倍に当たる5億円程度がかかる。日本国内の開設は2016年3月期までに100カ所程度にとどまる見通し。EVを手掛ける米テスラ・モーターズのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)は「インフラ整備は難しい」と指摘する。EVはテスラや日産自動車が重点投資する。中国メーカーも開発に熱心だ。VWはイメージが悪化したディーゼル車に代わってエコカー開発の主軸に据えた。小型EV向けの新たな車台(プラットホーム)を開発し、複数のブランドで共用する。最上級セダン「フェートン」の新モデルはEVにする計画だ。そのEVにも課題はある。日産は12月「リーフ」の新モデルを発売する。1回の充電で従来より約2割長い280キロメートルを走行できる。それでも航続距離はガソリン車などに及ばないのが実情だ。販売地域も環境規制が厳しい米カリフォルニア州などに偏っている。各社は電池の性能向上に力を入れ一定の成果を上げているが、トヨタ幹部は「充電時間を短縮する技術のメドは立っていない」と指摘する。エンジンは約1世紀にわたり自動車の動力源の主役を担ってきた。しかし各地で強まる環境規制を乗り越えるには限界もみえてきた。各社はそれぞれの課題を解決するスピードが問われている。


PS(2015年10月23日追加):*11-1のように、自動運転技術開発が加速していることや、*11-2のように、レクサスなど燃料電池車の種類が増えるのはよいことだが、日本では、前者は提案してから5年、後者は20年以上経っており、「今頃、そんなことを言っているのか」と思われる。そして、電気自動車の方が仕組みが簡単であるにもかかわらず、*11-2に書かれているような「環境意識の高い消費者に高額の商品を売りつけ、環境に悪影響を与えているフリーライダーが低額の商品を使う」という考え方は、環境維持を必要条件とする21世紀において、あまりにも意識が低く、質が悪い。
 また、*11-3のように、米電気自動車(EV)メーカー、テスラモーターズが革命的な家庭用蓄電池「パワーウォール」を開発したが、日本のメディアや展示会はこれを黙殺し、「日本の木造住宅だと壁をかなり補強しないと設置できない」などの欠点を挙げるだけで、工夫と改善でよりよいものにしていく気が感じられない。これでは、当然、駄目なのである。

*11-1:http://qbiz.jp/article/73004/1/ (西日本新聞 2015年10月18日) 自動運転車実用へ加速 走行安定、乗り心地も快適 異業種の開発参入続々
 ハンドルやペダルを操作しなくても、車が勝手に目的地へ運んでくれる−。自動運転技術をめぐり、国内外の自動車メーカーや情報技術(IT)企業による技術開発競争が加速している。高速道路上の自動運転は数年内に実用化する見通しで、実現すれば人為ミス回避による安全性向上や渋滞緩和が期待される。完全自動運転の普及へ向け、法令の見直しなど官民による環境整備も本格化しそうだ。6日、トヨタ自動車が都内で開いた自動運転実験車の試乗会。「自動運転に入ります」。運転者がハンドルのスイッチを押す。両手をハンドルから離し、足をペダルから下ろした。それでも車は走り続け、首都高速道路の本線に合流。一般車も走行する約8キロのコースを、微妙な加減速を繰り返しながら走り切った。試乗した記者がひやりとさせられる場面は一度もなく、乗り心地は快適そのもの。車線変更まで自動でこなすことには驚かされた。高性能センサーなどを駆使して周囲の状況を把握し、人工知能がそれらのデータや高精度地図情報などを基に適切な操作を瞬時に判断するという。トヨタはこの日、東京五輪が開かれる2020年をめどに高速道路での自動運転技術を実用化すると表明した。いかなる状況でも正常な動作を保つ精度やコストに課題を残すというが、「手放し運転」が実現する日は遠くなさそうだ。
●16年発売視野 
 自動運転をめぐっては、日産自動車が高速道路で利用可能な車の16年発売を目指しホンダも近い将来の商品化を視野に入れている。海外勢ではドイツ・アウディや米ゼネラル・モーターズなども開発に力を注ぐ。異業種からも参入が相次いでいる。ディー・エヌ・エー(DeNA)はロボット開発ベンチャーのZMP(東京)と合弁会社を設立、20年の自動運転タクシー実用化に向け、16年1月にも実証実験を始める。米IT大手のグーグルも、自社設計の自動運転車開発に本腰を入れる。「自動運転は、クルマの概念を根底から変える可能性がある重要な技術だ」(自動車メーカー幹部)。各社の開発競争は激しさを増している。
●法整備は必要 
 自動運転技術は実用化済みの「運転支援機能」から「完全自動走行」まで四つのレベルに区分される。トヨタや日産が現在、高速道路で実用化を目指す技術は、運転者が必要に応じて操作するレベル2に相当。現行の道路交通法下でも導入できる見通しだ。民間調査会社の矢野経済研究所(東京)は、レベル2の車が20年に世界で360万台、30年には3155万台に増えると予測。緊急時以外は運転者が操作しないレベル3も実用化に向けた開発が進み、30年時点での普及台数は979万台に達するとみている。一方、道交法や国際条約では、自動車は「運転を制御できるドライバーが乗っている」ことが前提。レベル3以上では、この想定が根底から変わるため、事故の責任を負うのが運転者かメーカー側かなどについて法整備が必要。警察庁は月内にも、法律上の課題について検討作業を始める。さらに完全自動運転の普及には交通インフラの整備のほか、車同士の通信技術の高性能化や高精度地図の導入なども不可欠。関係企業が業態を超え、協調を求められる局面も出てくる見通しだ。自動運転車 IT技術を使ってハンドルやブレーキを自動で操作し、走行できるシステムを搭載した車。高性能センサーやレーダー、カメラなどで走行中の周辺状況をリアルタイムで把握し、人工知能システムが加減速や停止を判断し、操縦を担う。技術レベルが四つあり、最終的には運転者が運転に全く関与しない完全自動運転車の実用化が見込まれるが、センサーなどのさらなる技術開発が不可欠とされる。

*11-2:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20151023&ng=DGKKASDZ22HKZ_S5A021C1MM8000 (日経新聞2015.10.23)「レクサス」でも燃料電池車 トヨタ、20年メド販売へ
 トヨタ自動車は高級車ブランド「レクサス」で燃料電池車(FCV)を販売する検討に入った。東京五輪が開かれる2020年をめどに発売を目指す。レクサスは環境性能の高さが売り物で、最先端のFCVも用意しブランド価値を高める。トヨタは20年ごろにFCVの年間販売を3万台以上に増やすべく、次世代車は月産3千台に高める方針を部品各社に伝え始めた。現行のFCVは国内では1900店で扱っているがレクサス店でも扱い普及を加速する。トヨタは14年に発売した世界初の量産型FCV「ミライ」の後継車種開発に着手している。コストが低く造りやすい基幹部品を開発し同じものを両ブランド車に載せる。レクサスでは大型セダン「LS」にFCVを設定する案が有力だ。現行のミライは約720万円で、現行車種が約850万円からのLSでの価格は未定。レクサスは富裕層を顧客に抱え環境意識の高い消費者に訴える。次世代車では水素と酸素を反応させて電気を取り出す基幹部品「燃料電池スタック」に使う白金を減らし、水素漏れを防ぐ工程などを短縮し生産を増やす。

*11-3:http://diamond.jp/articles/-/78018
(週刊ダイヤモンド 2015年9月8日) テスラの家庭用蓄電池「価格破壊」の盲点
 「革命的だ!」。突如、蓄電池市場に現れた黒船、米電気自動車(EV)メーカーのテスラモーターズの家庭用蓄電池「パワーウォール」(PW)に業界関係者たちは当初、拍手喝采した。破格的な安値で勝負してきたからだ。日本メーカーのそれは、1日の日中に使う電力を賄えるとされる容量5キロワット時なら100万円以上で、1キロワット時当たりおよそ20万円の計算だ。対してPWは7キロワット時で36万円。1キロワット時当たりわずか約5万円だ。テスラのイーロン・マスクCEOは5月にPWを発表。直後のドイツの太陽光関連展示会「インターソーラー・ヨーロッパ」では、実物大サンプルがお披露目された。7月の日本の展示会「PVJapan2015」でも披露が期待されたが、残念ながらEVだけ。担当者によれば、「日本では2016年以降の出荷予定だが、価格など詳細は未定」。日本市場への正式発表はまだ先となっている。それにしてもなぜこんなに安いのか。太陽光発電製品を扱う関係者の間では、「EV用に大量仕入れしたパナソニック製リチウムイオン電池のおかげ」との声が一般的。一方で、「シェア拡大のためのフラッグシップ製品で採算性を度外視」との見方もある。「設備投資の資金を金融機関や投資家から引き出すアドバルーン」だというのだ。もっとも、価格には、電力を直流から交流に変換するインバーターが含まれていない。これを含めると70万~80万円程度になるとみられる。EVとの併用ならカーポートへの設置が便利だが、「住宅に配線するなら電気工事費がさらにかさむ」(業界関係者)という。非常用電源や余剰電力の売電、省エネシステムとの組み合わせによる節電などで使える蓄電池。日本では国から導入補助金が出るが、蓄電池単体では導入費に対する金銭的メリットが小さい。太陽光パネルなどと一緒に導入するのが一般的で、なかなか普及していない。そこに革命児のごとくPWが現れるのだが、その安さは額面通りに受け止められそうにない。また、国内発売を心待ちにする業界関係者はある盲点に気付いてしまった。
●木造住宅は補強が必要
 従来の日本製は地面に基礎を打ち設置するが、PWは壁掛け式。故に簡易施工で場所も取らないというのが売り文句だ。製品仕様では、重量100キログラム、大きさは高さ130センチメートル、幅86センチメートル、奥行き18センチメートル。これほどのものを取り付けるとなると、「日本の木造住宅だと壁をかなり補強しないと設置できない」(前出の業界関係者)のである。このままでは補助金の対象にならないともされる。
*ドイツの展示会では実物大のサンプルが出展されたが、日本の展示会ではEVだけだった。


PS(2015年10月31日追加):上記や*12-1、*12-2のように、とっくに再生可能な自然エネルギーによる水素社会・電力社会という解を出して実現させているにもかかわらず、まだピンと来ず、ガソリンエンジンやロータリーエンジンを改良したり、火力か原発かという選択肢を振りかざしたりしている愚か者は、意思決定に関わらないのがBestだ。なお、*12-3の燃料電池船が市場投入されれば、①漁業者が燃油高騰で漁に出られないということがなくなる ②燃油に支払っていた金が地元で廻る ③港を油で汚さない など、地球環境以外にも多くの問題解決ができ、メリットが大きいのだ。

*12-1:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20151029&ng=DGKKASDZ28HUG_Y5A021C1TI1000 (日経新聞 2015.10.29) 未来のクルマ 楽・守・技、東京モーターショー、きょう開幕 トヨタ、燃料電池車を核に/ホンダ、欧米での展開視野
 世界の自動車メーカーが出展する「第44回東京モーターショー2015」が29日、東京ビッグサイト(東京・江東)で開幕する。各社は燃料電池車(FCV)や自動運転など最新の技術を盛り込んだ車を披露し、環境性能や安全性を前面に打ち出す。「走る楽しさ」に軸足を置いた車も多く登場。先進国中心に車離れが進むなか、環境・安全を守る技術と楽しさを切り口に持続的な成長を目指す。28日の報道機関向けの事前公開ではFCVのお披露目が相次いだ。トヨタ自動車は高級車ブランド「レクサス」の旗艦モデルを想定したコンセプト車「LF―FC」を初公開。2014年末に発売した「ミライ」に続くFCVをレクサスでも20年以降に投入する考えを正式に表明した。今回のモーターショーには作った電気を他の自動車などに供給できるFCVのコンセプト車も出展。今後のエコカー戦略ではハイブリッド車(HV)に次ぐ柱として、FCVを推し進めていく立ち位置を明確にした。ホンダも初の量産型FCV「クラリティフューエルセル」を世界で初披露。16年3月から官公庁などへのリース販売を始め、増産体制が整った段階で市販する。水素と酸素を反応させる発電装置をホンダの従来のFCVより33%小さくし、大人5人が快適に座れるようにした。八郷隆弘社長はクラリティについて、「環境性能はもちろん、運転する楽しさや使う喜びも持つ」と述べ、欧米でも展開する考えを明らかにした。グーグルなどの異業種も加わり、新たな競争軸となった安全性能や自動運転の技術では日産自動車が20年以降の自動運転車をイメージしたコンセプト車「IDSコンセプト」を出展した。自動運転時にはハンドルを収納して車内スペースを広げるほか、人工知能(AI)を使って運転手の体調や気分を検知。最適なレストランを案内するといった機能も併せ持つ。富士重工業は独自の運転支援システム「アイサイト」を進化させた「スバル・ヴィジヴ・フューチャー・コンセプト」を出展した。高速道路での自動運転や自動駐車を可能とし、20年に量産車への搭載を目指す。吉永泰之社長は「スバルの自動運転はハンドルを無くすためのものではない。安心と楽しさを目的とする運転手のための運転支援技術だ」と述べた。20年をめどに高速道路での自動運転車の販売を目指すトヨタの豊田章男社長は「すべての人に運転の楽しさを提供するために必要な技術だ」と強調。そもそも運転が難しい高齢者や障害者でも自由に移動できるようにするため、従来より踏み込む開発姿勢を示した。クルマ本来の魅力である走りや運転する楽しさに焦点をあてた車の展示も目立つ。マツダは12年に生産を終了したロータリーエンジンを積むコンセプト車「RX―VISION(アールエックス・ビジョン)」を出展。ロータリーエンジンの力強い走りには中高年層を中心に根強いファンが多く、小飼雅道社長は「私たちの将来の夢を託した」と語った。ホンダは05年に生産を終えた「NSX」の新型車、トヨタも大きさが小型車「ヴィッツ」並みのスポーツカー「S―FR」を公開した。少子高齢化や若者の車離れを背景に国内の新車販売は1990年の777万台をピークに減少傾向にあり、14年は556万台まで落ち込んだ。各社とも最新の技術に磨きをかけると同時に感性に訴える車づくりで新たな需要の喚起を狙う。

*12-2:http://qbiz.jp/article/73925/1/ (西日本新聞 2015年10月31日) 【温室ガス削減】脱原発との両立に悩む日本 脱温暖化、脱原発 両立議論は不十分
 11月末からパリで開かれる条約締約国会議(COP21)に向け、世界各国が既に公表した温室効果ガス削減目標を達成したとしても今世紀末の世界の平均気温は、国際目標の「2度未満」に抑えられないことが明らかになった。今後、先進国は一層の削減を発展途上国から求められる可能性が高い。ただ、日本の温暖化対策は福島第1原発事故の後、原発に対する是非論に議論が集中。脱原発と温暖化の防止をどう両立させるべきかについて議論が深まっているとは言えない。「(欧州連合に比べて見劣りする、日本の温室効果ガス削減目標に対し)強い批判が少ないのは、日本のエネルギーミックスの厳しい現状が理解されているからだ」。COP21のホスト国であるフランスの政府関係者はこう指摘する。「2030年までに13年度比で26%削減する」。この日本の削減目標については「不十分だ」と、国内外の非政府組織などから批判も出ている。ただ、やり玉に挙げられている、とまでは言えない。原発推進への国民批判が根強く、短期的には火力発電の依存を減らせないことへの世界からの「同情」とも取れる。電力業界の二酸化炭素(CO2)排出量は国内の約4割。九州電力によると、川内原発2基が1年間稼働すると、CO2を約900万トン削減できるという。原発ゼロ時の排出量から2割弱減らせる計算だ。政府も電力業界も、原発再稼働を削減の短期的な“切り札”と位置づけている。ただ、これには異論がある。東北大の明日香寿川教授(環境科学政策)によると、30年にエネルギー使用を10年比で3割減らし、再生可能エネルギーの電力比率を現状の10%余から35%に引き上げれば、原発なしでも欧州連合(EU)並みの排出削減は可能。原発比率25%を確保した場合と比べても、電気料金も大きく変わらないという。明日香教授は「中長期的に再生エネと省エネを進めれば、脱原発と温暖化防止は両立できる」と訴えている。

*12-3:http://www.asahi.com/articles/ASH874SV6H87ULBJ008.html
(朝日新聞 2015年8月8日) 燃料電池船、走り出す 国内初、実証実験スタート
 長崎県五島市沖で燃料電池船の実証実験が始まった。年内いっぱい、安全性や航行性能を確認し、実用化に向けた課題を洗い出す。燃料電池船は日本では初めてという。事業は環境省の委託で、戸田建設(東京都)が中心となって行う。漁船を想定した全長12・5メートルで12人乗りの小型船舶がモデル。450リットルの水素タンクを備え、燃料電池で発電した電気でモーターを動かす。速度は20ノット(時速約37キロ)で一般的な漁船並みだが、1回の水素燃料の補給で航行可能な時間は2時間とまだ短い。五島沖には環境省の委託で戸田建設が設置した浮体式洋上風力発電がある。ここで発電して余った電気を使い水素を作る実証実験も行われている。燃料電池船は、この水素を使っており、水素製造時も大気汚染物質や二酸化炭素(CO2)を出さない。戸田建設の担当者は「再生エネルギーで海を使わせてもらっている。燃料電池船を実用化して漁業者に喜んでもらいたい」と話している。

| 資源・エネルギー::2015.5~2016.12 | 03:07 PM | comments (x) | trackback (x) |
2015.6.29 天文学的コストの原発に回帰し、安価な再生可能エネルギーへの転換を遅れさせて、エネルギー自給率を落とす愚策は、日本の技術進歩と経済成長の邪魔をしているだけだということ (2015年6月30日、7月1日、2日に追加あり)
     
   2015.6.18NHK           2014.12.14宝島    2014.12.27そもそも総研

(1)政府による電源構成比率の決定は、技術を妨害する計画である
1)政府の電源構成決定
 *1-1の経産省の有識者会議が了承した電源構成の報告書案で、①発電コストが安く(?)運転が安定しているため(?)経済成長に資する(?)として原発の総発電量を20~22%を確保し、②原発再稼働に向けて国が前面に立って自治体の理解と協力を得るよう取り組み(!?)、③発電が天候に左右されるとして太陽光や風力の伸びは抑え(??)、④地熱・水力・バイオマスは自然条件に関係なく安定して発電できると評価して将来は原子力にかわる電源として積極的に拡大する(?)とし、⑤太陽光と風力を大量に導入すると火力のコスト負担も生じる(?) などとしているのは、技術進歩を考慮できず、技術進歩を妨害して、経済成長を妨げるものである。 ぷん

2)原発は本当に市場競争力のある安い電力か?
 *1-2のように、政府は、高経年化した原発が発電する場合に限って「原子力発電施設立地地域共生交付金」を出すこととしており、長期運転の原発を抱える自治体に最長5年間で最高25億円交付するだそうだが、これらの交付金は原発のコストであり、危険受忍の奨励であり、公正な市場競争では原発が成立しないことの証でもある。

 なお、薩摩川内市は、原子力発電施設立地地域共生交付金を貴重な財源と位置付けているそうだが、これまでも原発立地による電源立地地域対策交付金が入っていたのに、まだ企業誘致や産業活性化・福祉ができていないのであれば、これらの交付金が地域振興を促すとは考えにくく、交付金をあてにして無駄遣いしてきたと思われても仕方がなく、それよりも、開通した九州新幹線を活用することを、地域で考えた方が地域振興にプラスである。また、*1-3のように、30年超運転に向け、原子力規制委員会が九電に速やかな対応を求めるなどというのは論外である。

3)原発再稼働と世論
 *1-4、*1-5のように、電力会社の株主総会でも「脱原発の世論を直視すべき」として原発依存体質に怒りが噴出したが、各社とも原発再稼働の必要性は譲らなかったそうだ。これは、(1)1)2)のような政府による原発推進に起因しており、政府の愚鈍で硬直的な責任が大きい。

 そもそも、世論の通り(普通に考えれば誰でもわかるのだが)、*1-6のように、原発ゼロを決断すれば一部を再稼働するよりも電力会社だけを考えても発電コストが下がって電気料金は安くなるだろう。まして、国が支払う交付金、使用済核燃料保管のリスクと費用、核廃棄物の処理費も考慮すれば、原発をゼロにすれば国民負担が大きく減るのは明らかである。その上、再生可能エネルギー技術が進歩して、これによる経済成長があるとともに、エネルギー自給率も上がって、ホルムズ海峡の機雷が我が国の存立危機になるなどという馬鹿なことはなくなるのである。

(2)川内原発再稼働のための課題は解決したのか?
 *2-1、*2-2、*2-3のように、九電の瓜生社長は株主総会後に記者会見し、川内原発1、2号機の再稼働で5年連続の赤字を回避できる可能性があるとしたそうだ。しかし、九電の黒字や九電株主の早期復配のために、原発の安全性に関する懸念や核廃棄物の処理などの原発のあらゆる課題と不合理を無視して、次世代につけを残しながら、川内原発を再稼働することは許されない。

 また、*2-4のように、市民らが、地震対策の不備や情報公開の不十分さを指摘して、九電川内原発1号機の工事計画認可の取り消しを求め、原子力規制委員会に異議申し立てをしている。

 それにもかかわらず、*2-5のように、電事連が、「電力自由化で競争が進めば、発電のコストを電気料金に上乗せできる総括原価方式がなくなる上、福島第一原発事故の影響で原発の安全規制が強化されると、原発運営のコストが膨大になる懸念がある」という理由で、核燃料サイクル事業に国の資金的関与を求めているのは、原発は発電コストが安いのが長所としている論拠が虚偽であることを、自ら認めているものだ。

(3)原発事故汚染の影響とまだ金額に換算されていないコスト
 *3-1のように、WHOが「福島県でガン多発」という報告書を公表したが、広告料で首根っこを押さえられているのか、記者クラブはこれを無視して国民には報道しなかった。日本の専門家会議も、WHOの健康リスク評価に対して、「過大評価の可能性がある」として無視し続けたそうである。

 そのWHO報告書は、「東電・福島第一原発事故で深刻な放射能汚染に晒された原発近隣地域の住民の間で、甲状腺ガンをはじめとしたガンが増加し、特に若い人たちの間でガンが多発する」と明言し、主な「評価対象」は避難が遅れた浪江町と飯舘村に暮らしていた住民で、過小評価を避けるための仮定を積み重ねた上で住民の推定被曝線量を出したとのことである。確かに、避難までに4カ月はかかっておらず、汚染された福島県産の食材を食べ続けたわけでもないが、その後も高線量の場所で暮らしている上、日本政府が食品からの内部被曝に鈍感なことは、*3-2の対応を見ても明らかだ。本来なら、日本政府が、*3-4のような検査を関東も含む汚染地域全体で行って正確な結果を出すべきなのである。

 なお、韓国では、*3-3のように、釜山地裁が女性の甲状腺癌について「原発付近に居住し、相当期間、原発から放たれた放射線にさらされた。このため、甲状腺がんと診断を受けたとみるのが相当だ」として原発と甲状腺がんの因果関係を認めたそうだ。その判決がポイントとして挙げたのは、①甲状腺がんの発生には、放射線にさらされることが決定的な要因として作用することが知られている ②その女性は原発から10キロ圏に20年近く暮らし、放射線に長期間さらされてきた ③女性の甲状腺癌の発生には、原発から放出された放射線以外に、原因があると思える明確な材料がない ④原発周辺地域の住民の疫学調査の結果、原発から5キロ~30キロ離れた地域でも、遠く離れた地域よりも1・8倍高い発生率を示している ⑤他の癌と異なり、甲状腺がんの場合、原発からの距離と発生率とに相関関係があるという調査結果が出ている などだそうである。

 また、釜山地裁は、「加害企業は、技術的・経済的に被害者よりもはるかに原因の調査が容易な場合が多いだけでなく、原因を隠蔽する恐れがあるため、加害企業が有害な原因物質を出し、それが被害者に及んで損害が発生すれば、加害者側が無害だと証明できない限り、責任を免れられないとみることが社会均衡の理念にあう」としたそうで、もっともだ。

(4)安全神話を除いた原発のコストは安いのか?
 *4-1のように、政府はお盆前に避難指示を解除して、原発事故は大したことはなかったのだという印象をつけようとしているが、除染で線量が十分に下がっているわけではないため、これも安全神話だ。

 また、*4-2のように、東電の株主が歴代経営陣に賠償を求めている裁判でも、原告は、「事故の3年前に津波対策は不可避だと認めていたのに先延ばしにしていた」と主張している。

 さらに、*4-3のように、東電福島第1原発事故を総括した国際原子力機関(IAEA)の最終報告書は、「原発の安全神話を過信し、必要な対策を怠ったことが過酷事故につながった」として、国や東電の認識の甘さと安全対策の不作為を厳しく批判している。

 そして、まともにこれらの安全対策を行い、被害者に原発由来の病気の補償をした上でも、原発のコストが安いわけではなく、これらは、まだ金額が算出されていないか、曖昧にされているにすぎないのだ。

(5)再生可能エネルギーの技術進歩に対する経産省の妨害

    
  2015.6.24          現在の太陽光発電            2015.6.22    2015.6.20  
  西日本新聞                                   日経新聞      日経新聞

 *5-1のように、九州・沖縄では、太陽光発電関連が伸びて建設業売上高は上位10社が増収したが、太陽光関連は九電による再生可能エネルギーの新規契約一時中断などの影響が避けらず、政府が電源構成比率を決定して原発を基幹電源とし、太陽光・風力発電を抑えたことが普及を邪魔している。

 確かに、メガソーラーは景観が悪く、土地の使い方ももったいないが、ソーラーフロンティアが、*5-2のように、ガラスではなく高機能フィルムを採用して建物の曲面に張るなど用途拡大が期待でき、設置作業も容易で、13%台の高効率で発電する太陽電池を、2018年に発売するそうだ。私は、あらゆる理由から、こちらを伸ばすべきだと考えている。

 また、*5-3のように、九大が、弱い風でも効率よく発電できる小型風車の開発にメドをつけ、これは、騒音が少ないため公園、住宅、学校、工場などに設置しやすいとのことで、このように、太陽光発電、風力発電及び畜電技術は、日進月歩で進み、世界で競争しているのだ。

 そのような中、*5-4のように、2014年に世界で建設された太陽光・風力などの再生可能エネルギー発電設備容量は9700万キロワットに上り、総容量は13年比約17%増の6億5700万キロワットに達し、新設された発電設備の約6割は再生エネで、その成長ぶりは顕著だそうだ。そのうち太陽光発電は1年間に4千万キロワット建設され、中国の1060万キロワットが最多で、昨年は世界の経済成長に伴ってエネルギー消費も増えたが、二酸化炭素排出量は13年と変わらず、中国などでの再生可能エネルギーの急拡大がその一因という状況なのである。

<政府の原発推進>
*1-1:http://www.asahi.com/articles/DA3S11785829.html
(朝日新聞 2015年6月2日) 原発重視、政府案を了承 太陽光・風力は抑制 電源構成
 経済産業省の有識者会議は1日、2030年度の電源構成(エネルギーミックス)の報告書案を了承した。発電コストが安く運転が安定していると位置づけた原発は、総発電量の20~22%を確保する一方、発電が天候に左右される太陽光や風力の伸びは抑えた。7月にも政府案として正式決定する。同省の「長期エネルギー需給見通し小委員会」でまとまった。2日にも広く意見を求める「パブリックコメント」にかける。3年ごとに検討する国のエネルギー基本計画にあわせ、必要に応じて見直すという。報告書案では、経済成長を続けるために発電にかかるコストを抑える考え方を打ち出し、原発を重視する方針を明確にした。原発の再稼働に向けて、国が前面に立って自治体などの「理解と協力を得るよう取り組む」との方針も、新たに盛りこんだ。再生可能エネルギーでは、地熱や水力、バイオマスは、自然条件に関係なく安定して発電できると評価。将来は「原子力を置き換える」電源として「積極的に拡大」するとした。22~24%とした再生エネの5割以上を、これらの電源で見込む。太陽光と風力は天候で出力が大きく変わり、大量に導入すると、発電量が足りない場合に運転する火力のコスト負担も生じるなどと指摘。「コスト負担が許容可能な範囲で最大限導入する」と位置づけ、計8・7%にとどめた。委員会では、委員の橘川武郎・東京理科大大学院教授が「政権の『原発は可能な限り低減させる』という公約と違う。(原発の)20~22%の実現は難しい」としてただ一人、報告書案に反対を表明した。委員長の坂根正弘・コマツ相談役は「意見が合わないところはあると思うが、3年後の見直しで議論する機会がある」と引き取った。報告書案について、九州大の吉岡斉教授(科学技術史)は「震災前に戻すかのように原発と石炭は維持して、再生エネは軽んじられている」と批判した。一方、日本原子力産業協会の服部拓也理事長は、原発割合について「想定の範囲内」とし、「原子力の価値をもう一度きっちり議論する必要がある」と語った。

*1-2:http://qbiz.jp/article/64603/1/ (西日本新聞 2015年6月17日) 原発共生交付金活用へ、鹿児島県が検討 30年経過、川内再稼働見越し 
 九州電力川内原発1、2号機が立地する鹿児島県が、運転開始から30年がたち高経年化した原発がある都道府県に交付される「原子力発電施設立地地域共生交付金」の申請を検討していることが分かった。1号機は昨年7月に運転30年を超え、2号機も今年11月に30年に達する。交付は「発電する施設」が条件だが、近づいてきた川内原発再稼働を見越して、申請準備に入ったとみられる。交付されれば九州の県で初となる。共生交付金は長期運転の原発を抱える自治体を支援するため、2006年に導入された。最長5年間で最高25億円が交付される。申請する都道府県が、関係自治体の(1)地域活性化(2)福祉対策(3)公共用施設整備(4)企業導入・産業活性化−に資する事業を対象にした「地域振興計画」を策定し、国の承認を得る必要がある。川内原発がある薩摩川内市は合併から10年が経過し本年度から地方交付税が段階的に縮減されるため、交付金を「貴重な財源」と位置付ける。13年8月の県との協議では、再稼働が不透明なこともあり県は動かなかったが、今年4月以降、県と市で制度の仕組みなどの確認に入ったという。市は「県にぜひ申請してほしい。行政へのニーズに対応する財源として使いたい」と期待する。一方、九電玄海原発が立地する佐賀県は、2号機が1981年の運転開始から30年以上経過し、交付対象になって4年になるが、まだ申請していない。県は「25億円は貴重な財源であり、申請はする方向だ。地域振興にどのような使い道が有益か、内部で検討を重ねている段階」とする。立地する玄海町との調整はまだしていないという。共生交付金は既に福井、島根、茨城、愛媛県が受給している。静岡県は08年度に最初の交付を受けたが、中部電力浜岡原発1、2号機の廃止により1年で打ち切られた。

*1-3:http://qbiz.jp/article/64524/1/
(西日本新聞 2015年6月16日) 川内原発30年超運転へ「早期対応を」 規制委、九電に要求
 原子力規制委員会は15日、運転開始から30年前後が経過した九州電力川内原発1、2号機(鹿児島県薩摩川内市)をめぐり、機器や設備の中長期の保守管理について議論した。30年超運転に向け必要な申請が遅れており、規制委側は九電に速やかな対応を求めた。運転開始から30年を超える原発は、劣化状況の評価と中長期の保守管理方針策定が義務付けられている。1号機は昨年7月に運転30年を超えたが、基準地震動(想定される最大規模の揺れ)など、再稼働に向けた審査結果を反映する必要があり、規制委は特例として手続きの延長を認めていた。九電は今年3月中旬に1号機の「工事計画」の認可を受けた後も、中長期の保守管理に関する書類を提出していない。15日の会合で九電側は「漏れをなくすため工事計画の資料を読み込んでいた」と釈明、1号機は7月上旬、2号機は9月上旬に必要な書類を提出する考えを示した。九電は8月中旬にも1号機を再稼働させる方針で、30年超の運転に必要な保守管理方針の認可は再稼働後になる可能性がある。規制委側は「今後10年間で実施する中長期の対策なので再稼働とは直接関係ないが、だらだらと時間をかけるべきではない」としている。

*1-4:http://www.kobe-np.co.jp/news/shakai/201506/0008154771.shtml
(神戸新聞 2015/6/26) 「世論を無視」原発依存体質に怒り噴出 関電株主総会
 関西電力の株主総会に出席後、報道陣の質問に答える久元喜造神戸市長=25日午前、神戸市中央区港島中町6(撮影・後藤亮平)  25日に一斉に開かれた電力9社の株主総会。関西電力の八木誠社長らが赤字決算や電気料金の再値上げを謝罪した一方で、各社とも原発再稼働の必要性は譲らず、脱原発をめぐる議論は最後まで平行線をたどった。来年4月の電力小売り全面自由化を見据えた戦略も見えにくく、株主の怒りが噴出した。「原発反対の世論を無視している」「なぜ原発推進の話ばかりするのか」。関電の総会では怒りに満ちた株主の発言が相次いだ。各社の会場周辺には反原発の市民団体が詰め掛け、会社関係者らと言い争う場面もあった。神戸市の久元喜造市長も「再値上げは市民生活を圧迫しており、極めて遺憾」と怒りを表した上で「原子力以外の多様なエネルギー源の活用を含めた最適な電源構成を示せ」と迫った。原発をめぐっては福井地裁が関電の高浜3、4号機(福井県)の再稼働を差し止める仮処分を決めたが、九州電力では川内1号機(鹿児島県)の8月再稼働に向けた準備が進む。世論調査では再稼働反対の意見が多数派だが、電気料金の値上げに苦しむ家計や企業、原発の立地自治体には再稼働を待ちわびる声もあり、世論は割れている。電力9社の総会では、脱原発の株主提案が議題となったが、いずれの提案も否決された。
【経営崖っぷち】
 電力各社の業績は一様ではない。2015年3月期連結決算は燃料価格下落の効果もあり、9社のうち6社が経常黒字を確保した。一方、北海道と関西、九州の3電力は4年連続の赤字となり、崖っぷちに立たされている。明暗が分かれた背景には、原発依存度の違いがある。東京電力の福島第1原発事故が起きる前の10年3月末を見ると、発受電電力量に占める原発比率が北海道は35%、関西45%、九州42%と他社に比べて高めとなっている。原発が止まると、代わりを埋める火力発電の燃料費負担が他社より大きくなった。北海道電や関電の社長は経営不振をわびる一方、原発再稼働で経営を立て直す考えを強調。関電の株主から「原発(依存)を高めたことが(財務の)悪化につながった。反省の弁が一言もない」との批判も出た。
【見えない戦略】
 一方、政府が進める電力システム改革は来年4月の小売り全面自由化で大きな節目を迎える。異業種からの新規参入企業を迎え撃つ大手電力にとって重要な経営課題のはずだが、総会での議論は低調だった。関電の株主総会後の記者会見で八木社長は「大事なことは料金の競争力を上げることと新たなサービスを提供することの二つ。(通信会社などとの)提携も検討していきたい」と意欲を語ったが、具体的な説明は乏しかった。東北電力は13年9月の電気料金値上げ後、約1700の顧客が流出した。この日社長に就任した原田宏哉氏は「引き続き家庭やビジネスの場で利用してもらいたい」と話すのがやっとだった。

*1-5:http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2015062602000153.html (東京新聞社説 2015年6月26日) 電力株主総会 脱原発の世論直視を
 原発の再稼働がこの夏に迫る中、電力会社が開いた株主総会では脱原発を求める株主の声が相次いだ。再稼働ありきの政府、電力会社は、鎮まることのない脱原発の世論を直視すべきだ。原発依存度が高く四年連続赤字の関西電力の総会では、株主が「原発の再稼働にすがるのは愚かな経営だ」「中長期の経営方針として脱原発を明確にすべきだ」と訴えた。中部電力でも株主が運転停止中の浜岡原発の廃炉を求めたが、会社側は「安定的なエネルギーの確保には原発の活用が不可欠だ」と反論。東京電力も含め、原発を保有する大手九社の総会は脱原発に絡む提案をすべて否決した。再稼働の見通しが立たない中で開かれた昨年の株主総会から一年。この間に政府は、二〇三〇年の原発の発電割合を20~22%とするエネルギーミックス案を決定。安全が確認された原発は再稼働させる方針に基づいて、この夏に予定される九州電力・川内原発1号機に続き、関西電力や四国電力が早期の再稼働をめざしている。だがその一方で、いくつもの重要な変化があったことを指摘しておきたい。原発停止で火力発電用の液化天然ガス(LNG)などの輸入が急増し、「国富流出」の危機が声高に論じられた。しかし、昨年後半からの原油価格の急落、価格の安定ですっかり影をひそめている。節電意識は確実に定着し、今年の夏も原発ゼロで電力不足は避けられる見通しだ。太陽光発電では買い取り制度をめぐる混乱が起きたが、再生エネルギーに対する一般の理解は一段と深まっている。こうした変化の中、原発をめぐる世論はどうなっているのか。今月中旬の調査(日本世論調査会)をみると、再稼働に賛成が31%に対し、反対は63%に達している。新聞など各種の調査でも、再稼働に反対し、脱原発を求める世論が弱まる気配はない。電力各社による再稼働方針の根幹には、準国産エネルギーに位置付けている原発を一定程度確保しておきたいという政府のエネルギー安全保障政策がある。しかし世論は、福島第一原発の事故の反省から再稼働に反対し、政府に対しては中長期的に脱原発を実現する知恵と努力、エネルギー政策の転換を求めていることは明らかだ。政府も電力会社も、国民の声に耳を塞(ふさ)いではならない。

*1-6:http://qbiz.jp/article/64808/1/
(西日本新聞 2015年6月19日) 原発ゼロで電気料金安く? 再稼働との比較を試算
 原発ゼロを決断すれば一部を再稼働するより電気料金は安くなる−。原発のコスト研究を続ける立命館大の大島堅一教授(環境経済学)が、そんな試算をまとめた。電力各社は再稼働に向け、稼働させていない原発に多大な維持費(修繕費や作業員の人件費など)を投入している。ゼロを決断して維持費をなくすと、各社が数基を再稼働し、代替の火力発電の燃料費などが抑制される分を上回る経費削減効果があると指摘。大島氏は「再稼働すれば電気料金は安くなると単純には言えない」と問題提起する。大島氏は、関西電力のデータを基に試算。関電は原発再稼働の遅れを理由に6月から、東京電力福島第1原発の事故以降、2度目の値上げに踏み切った。国の料金審査の際、最新の発電原価のデータを開示した。試算によると、関電の原発全11基(4月に廃炉が決まった美浜1、2号機を含む)には、稼働しなくても必要な維持費が年間総額約1943億円掛かっている。関電は高浜3、4号機の2基が原子力規制委員会の審査基準に適合し、今年11月から再稼働できると見込む。高浜3、4号機を1年間稼働させ、燃料費がかさむ石油火力で補っている発電を減らすと仮定しても、節約効果は年間約1千億円。つまり、原発の維持費をゼロにした方が差し引き900億円超、節約できる。実際には関電は原発依存率が高く、高浜原発を稼働しないと他社からの電力購入などで需要分を補う必要があり、その分は最大見積もっても約500億円。それを考慮しても原発ゼロを実現した方が、なお節約効果が約400億円上回る。また、関電が高浜3、4号機に加え、大飯3、4号機を再稼働したとしても、料金は値上げ前の5月の水準に戻る程度だという。原発の一部再稼働による料金引き下げ効果は限定的だ。関電の八木誠社長も4月末、衆院の委員会に参考人として出席し、原発ゼロを決断すると「(修繕費などの負担が減り)恐らく短期的には(経費が)マイナスの方向に働く」と述べた。 大島氏は「九州電力を含め、原発比率の高い電力会社はどこも同じ傾向。『再稼働準備状態』ではなく、本当に原発ゼロにした場合との料金比較も国民に示し、原発政策を考えていくべきだ」と強調する。

<川内原発再稼働について>
*2-1:http://qbiz.jp/article/65384/1/
(西日本新聞 2015年6月26日) 九電、復配なお微妙 黒字化へ再稼働が鍵【社長会見詳報】
 九州電力の瓜生道明社長は25日の株主総会後に記者会見し、川内原発1、2号機(鹿児島県薩摩川内市)の再稼働に向けた「使用前検査」について「おおむね順調に進んでいる」との見方を示し、2基の8月中旬以降の再稼働に自信をうかがわせた。九電は2基の再稼働で5年連続赤字を回避できる可能性があるとみており、検査対応に全力を傾けている。ただ、その工程は準備不足などでたびたび遅れており、再稼働時期はなお予断を許さない。株主が求める復配が2016年3月期末で実現するかは微妙だ。原発停止の影響で15年3月期が4年連続の最終赤字となったことが報告されたこの日の総会。配当が3年連続で見送られていることから、株主からは早期復配を求める声が相次いだ。

*2-2:http://digital.asahi.com/articles/ASH6M7QH4H6MTIPE054.html
(朝日新聞 2015年6月20日)川内原発に核燃料搬入、7月7日から 九電が工程見直し
 再稼働を控えた九州電力川内原発1号機(鹿児島県薩摩川内市)で、原子炉への核燃料の搬入作業が7月7日に始まる見通しとなったことが、19日わかった。九電が原子力規制委員会に伝えた。4日に始める予定だったが、よりスケジュールに余裕を持たせるため工程を見直す。1号機の再稼働は、これまで通り8月中旬を目指している。川内原発1、2号機は再稼働前の最終段階となる規制委の設備検査を受けている。1号機では19日、核燃料を原子炉に入れるために必要な検査を終えた。今週以降に始まる2号機との共用設備の検査は7月3日に終わる見通し。これまでは、4日から約150本の核燃料の搬入作業を始める計画を立てていた。しかし、作業には下請け企業も含めて数百人が関わり、準備に時間がかかることなどから、3日ほど遅らせることになった。搬入は7日から4日ほどで終わり、その後約1カ月の規制委の設備検査を経て再稼働する。ただ、九電はこれまで検査への対応に手間取るなどして再稼働の時期を何度も遅らせており、想定通りに進むかは不透明だ。

*2-3:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/201462
(佐賀新聞 2015年6月26日) 九電株主総会 原発再稼働に懸念の声、安全対策めぐり質問集中
 九州電力が25日開いた株主総会で、原発再稼働に反対する一部株主が、社長解任など7議案を提案した。いずれも否決されたが、原発依存への批判や安全性に関する不安や懸念の声が続出。経営改善のため早期の再稼働を目指す経営側との溝は埋まらなかった。「動かない原発に年間1000億円もの費用を投じて維持してきたから赤字が膨らんだ。早く脱原発にかじを切っていれば利益が出たのではないか」。3年連続で株主配当を見送った責任を問い、社長解任を求めた株主の男性は、原発に依存する九電の姿勢を批判した。唐津市肥前町の田口常幸さん(63)は「原発を推進するために立地・周辺自治体に支払った補償金や協力金は株主にも知らされず、やぶの中。健全な共存関係とはいえず、地域の自立も阻害している」と訴えた。川内原発1号機(鹿児島県)の再稼働が迫る中、安全対策や使用済み核燃料の処分をめぐる質問が相次いだ。経営側は安全性を強調する一方、放射性廃棄物に関しては「適切に検討、対応する」と繰り返した。原発政策をめぐる住民説明会の開催にも否定的だった。新規制基準に適合するための安全対策費は川内と玄海で3千数百億円。会場から「発電コストは本当に安いのか」「終わりなき安全の追求に一体、いくらかかるのか」の意見が出た。株主提案には廃炉を安全に進めるための社内検討委員会設置も。再稼働に賛成する会社役員(71)は「建設的な意見で、経営側はもう少しくみ取っていい。独り善がりの姿勢がやらせメールにつながった。再稼働目前で、しっぺ返しを食わないようにしてほしい」と注文した。

*2-4:http://qbiz.jp/article/65480/1/
(西日本新聞 2015年6月27日) 原子力規制庁に市民が意見陳述 川内異議申し立て
 九州電力川内原発1号機(鹿児島県薩摩川内市)の工事計画認可の取り消しを求めて原子力規制委員会に異議申し立てをした市民らが26日、事務局の原子力規制庁に意見陳述をした。意見陳述は非公開。会見した市民らによると、申し立てた25人のうち12人が意見陳述に参加し、地震対策の不備や情報公開の不十分さを指摘したという。異議申し立ては行政不服審査法に基づき5月に行った。規制庁によると、申し立て通り工事計画認可を取り消すかどうかを記した決定書を出す時期は未定。申立人代表の一人、福岡市の北岡逸人(はやと)さん(47)は「結論が出ないまま原発が動けば、異議申し立てや行政不服審査法の意味がない」と批判した。

*2-5:http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150608-00000005-asahi-bus_all
(朝日新聞デジタル 6月8日) 「原発継続へ、核燃サイクルに国が関与を」電事連会長
 大手電力10社でつくる電気事業連合会の八木誠会長(関西電力社長)が朝日新聞のインタビューに応じた。電力自由化後も原発を続けられるよう、民間が担う「核燃料サイクル事業」の費用を国が一部負担したり、費用負担の新たな制度をつくったりして、国の関与を強めるよう求めた。八木氏は、2030年度の原発の割合を20~22%とした政府の電源構成(エネルギーミックス)案を「原子力の確保すべき一定の規模が明示されたことに意義がある」と評価したうえで、原子力発電を続けられる環境を国が整えるよう要望した。具体的には、使用済み核燃料を処理して再び燃料として使う核燃料サイクル事業を挙げ、「国と役割分担するという考え方もある」と語った。電力自由化で競争が進めば、発電のコストを電気料金に上乗せできる「総括原価方式」がなくなるうえに、福島第一原発事故の影響で原発の安全規制が強化されると、原発運営のコストが膨大になる懸念があるという。

<原発事故汚染>
*3-1:http://tkj.jp/takarajima/contents/blog/p/1016/
(宝島 2014年12月14日:全文は『宝島』2015年1月号に掲載) 【告発スクープ】 “WHO「福島県でガン多発」報告書” 国と記者クラブが無視! ~誰も書けなかった福島原発事故の健康被害 【第3回 前編】~ガンのアウトブレイクに備えよ――汚染地域に暮らしていた(もしくは暮らし続けている)若年層における甲状腺ガン、白血病、乳ガン、固形ガンの多発を予測するWHO報告書はなぜ無視され続けるのか? (前編)
■日本の「専門家」はなぜWHO報告書を嫌った?
 10月20日、環境省が所管する「東京電力福島第一原子力発電所事故に伴う住民の健康管理のあり方に関する専門家会議」(以下、専門家会議)の第12回会議が東京・港区で開かれた。この日、専門家会議は、世界保健機関(WHO)と原子放射線の影響に関する国連科学委員会(UNSCEAR)の2つの国際機関から出されていた線量評価報告書のうち、「福島での被曝によるガンの増加は予想されない」というUNSCEAR報告書のほうが「より信頼性が高い」として絶賛。そして、
●福島第一原発事故の被曝線量はチェルノブイリ原発事故よりもはるかに少ない
●懸念されるのは甲状腺(こうじょうせん)ガンだけであり、そのリスクも疫学的にかろうじて増加するかどうかという程度としたUNSCEARの健康リスク評価について「同意する」と表明した。これぞ“我が意を得たり”ということのようだ。一方、WHOの健康リスク評価に対しては、昨年2月の同報告書公表以来、専門家会議は「過大評価の可能性がある」と敵視し続けてきた。そしてこの日、WHO報告書を事実上無視する構えを鮮明にしたのだった。そのWHO報告書はこれまで、「がん疾患の発症増加が確認される可能性は小さい」(『毎日新聞』2013年2月28日)「大半の福島県民では、がんが明らかに増える可能性は低いと結論付けた」(『朝日新聞』同年3月1日) などと報じられてきた。報道を見る限り、UNSCEAR報告書の内容と大差はなく、専門家会議がそこまで嫌う理由が全くわからない。そこで、WHO報告書の原文を取り寄せ、精読してみたところ、驚くべき「評価内容」が浮かび上がってきた。
■WHOは若年層での「ガン多発」を明言していた
 WHOは昨年2月28日、東京電力・福島第一原発事故で被曝した福島県民たちには今後、健康面でどのようなリスクがあるのかを検証した『WHO健康リスク評価報告書』(注1)を発表していた。英文で160ページ以上にも及ぶ同報告書では、ガンと白血病の発症リスクを詳細に評価。その結果、深刻な放射能汚染に晒(さら)された原発近隣地域の住民の間で、甲状腺ガンをはじめとしたガンが増加し、特に若い人たちの間でガンが多発すると明言している。この報告書をまとめるにあたり、主な「評価対象」とされたのは、避難が遅れた浪江町と飯舘村の「計画的避難区域」に暮らしていた住民たちだ。評価では、汚染地帯から避難するまでに4カ月かかったと仮定。他にも、汚染された福島県産の食材を食べ続けたと仮定するなど、過小評価を避けるための仮定を積み重ねたうえで、住民の推定被曝線量を弾き出している。WHO報告書によると、多発が極めて顕著なのは小児(注2)甲状腺ガン。被災時に1歳だった女児の場合、浪江町では事故発生からの15年間で発症率は9倍(被曝前の発症率0.004%→影響を考慮した発症率0.036%)に増え、飯舘村でも15年間で6倍(同0.004%→同0.024%)に増えると予測した(同報告書64ページ。【図1】)。もともと幼少期の甲状腺ガン発症率は非常に低い。従って、幼少期に被曝した場合のリスクを、原発事故発生からの15年間に絞って計算すると「小児甲状腺ガンと被曝との関係性がより明白になる」と、WHO報告書は言う。ひょっとするとこの部分が、原発事故による健康被害は「ない」とする評価を続ける環境省や専門家会議の癇に障ったのかもしれない。多発が予測されたのはそれだけではない。小児甲状腺ガンほどではないにせよ、小児白血病も多発するという。被災時に1歳だった男児の場合、浪江町では事故発生からの15年間で発症率は1.8倍(同0.03%→同0.055%)に増え、飯舘村では15年間で1.5倍(同0.03%→同0.044%)に増える。1歳女児の場合、浪江町では事故発生からの15年間で発症率は1.6倍(同0.03%→同0.047%)に増え、飯舘村では15年間で1.3倍(同0.03%→同0.04%)に増える(同報告書62ページ。【図2】)。そして、乳ガンも増える。被災時に10歳だった女児の場合、浪江町では事故発生からの15年間で発症率は1.5倍(同0.01%→同0.015%)に増え、飯舘村では15年間で1.3倍(同0.01%→同0.013%)に増える(同報告書63ページ。【図3】)。さらには、固形ガンも増える。被災時に1歳だった男児の場合、浪江町では事故発生からの15年間で発症率は1.14倍(同0.08%→同0.091%)に増え、飯舘村では15年間で1.08倍(同0.08%→同0.086%)に増える。1歳女児の場合、浪江町では事故発生からの15年間で発症率は1.24倍(同0.08%→同0.099%)に増え、飯舘村では15年間で1.14倍(同0.08%→同0.091%)に増える(同報告書62~63ページ。次ページ【図4】)。つまり、福島県の若年層におけるガンは、甲状腺ガン、白血病、乳ガン、固形ガンの順に増加すると、WHO報告書では予測している。
(注1)同報告書の英語名は『Health risk assessment from the nuclear accident after the 2011 Great East Japan Earthquake and Tsunami』。URL はhttp://apps.who.int/iris/bitstream/10665/78218/1/9789241505130_eng.pdf?ua=1
(注2)本稿中の「小児」の定義は、0歳から16歳までとする。
■「過大評価」したのか?それとも「過小評価」か?
 WHOの健康リスク評価では、原発事故発生からの1年間に被曝したと思われる推定線量をもとに、地域を4つのグループに分けている。12~122ミリシーベルトの被曝とされた浪江町と飯舘村が「グループ1」。3~48ミリシーベルトの被曝とされた葛尾村、南相馬市、楢葉町、川内村、伊達市、福島市、二本松市、川俣町、広野町、郡山市、田村市、相馬市が「グループ2」。1~31ミリシーベルトの被曝とされた他の福島県内の自治体や福島県以外の都道府県が「グループ3」。そして、0.01ミリシーベルト(=10マイクロシーベルト)以下の被曝とされた近隣国が「グループ4」だ。問題は、福島第一原発の立地自治体である双葉町と大熊町、そして大熊町に隣接する富岡町の3町が、どのグループにも入っておらず、評価の対象から外されていることである。これらの町の住民は「速やかに避難」したからなのだという。しかし、3町の住民もまた、避難開始前から環境中に漏れ出していた放射能によって相当な被曝をしていた。具体例を挙げよう。福島第一原発の直近から避難してきた一般市民が被曝していることが判明し始めた2011年3月12日、放射線測定器で1万3000カウント(CPM。1分ごとのカウント)以上を計測した人のすべてを「全身の除染が必要な被曝」とみなし、シャワーで体を洗い流していた。この日、全身の除染が必要とされた住民は3人。そして翌3月13日、福島県は、原発の3キロメートル圏内から避難してきた19人にも放射性物質が付着していたと発表する。住民の被曝は22人となった。だが、翌3月14日、福島県は突然、除染基準を引き上げる。国が派遣したという「放射線専門家」の意見を聞き入れ、基準を7倍以上の「10万CPM以上」としたのだ。そしてこの日以降、「今日は何人の市民を除染」といった類いの情報が、報道から消えていた──。コントロール不能に陥っていた原発から、事故発生からの数日間だけで77京ベクレル(77×10の16乗ベクレル)にも及ぶ放射能が漏れ出す中、防護服もゴーグルも防塵マスクも着けずに避難していた彼らを評価に加えていないところが、この健康リスク評価における「過小評価」部分であり、最大の欠点でもある。人によっては、前掲の「発ガンリスク」以上の健康リスクを背負わされている恐れがある。しかも、放射線被曝による健康被害はガンばかりではない。甲状腺疾患(機能低下や良性結節など)や視覚障害(水晶体混濁や白内障など)、循環系疾患(心臓や脳血管の疾患)、生殖器官の機能不全、催奇性(さいきせい)リスク、遺伝子への影響、高線量の被曝に伴う急性放射線障害などもある。だが、これらの疾患は「発生の増加は予想されない」として、WHOの報告書では詳細評価の対象外としていた(注3)。つまり、専門家会議が危惧する「過大評価」どころか、その正反対の「過小評価」に陥っている懸念さえあるのだ。(注3)WHOが詳細評価の対象外としていたからといって、ガン以外の疾患を舐(な)めてかかってはならない。飯舘村の高汚染地域に調査目的で何度も滞在した後、白内障に罹(かか)っていた人が相当数いることを、筆者は具体的に知っている。高レベルの汚染が判明している地域に立ち入るのを極力控えるか、それとも防護服姿で訪問するかしないと、こうした疾患のリスクは減らしようがない。

*3-2:http://qbiz.jp/article/64956/1/
(西日本新聞 2015年6月21日) 食品輸入規制の緩和へ協議 日中局長級、関係悪化後初
 東京電力福島第1原発事故を受けて中国が続けている日本産食品の輸入規制の緩和に向け、日中両国が北京で19日に局長級の協議を開いたことが21日分かった。この問題での日中局長級の協議が表面化したのは、2012年9月の沖縄県・尖閣諸島の国有化で日中関係が悪化して以降初めて。日中両国は昨年11月以降の2度にわたる首脳会談を経て、今月には約3年2カ月ぶりに日中財務対話も開催。経済分野を中心に関係改善が始まっており、規制緩和についても実務レベルから協議が動きだした形だ。日中関係筋によると、農林水産省の担当局長が19日、中国で食品の品質検査を担当する省庁幹部と北京で会った。日本側は食