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2014,07,30, Wednesday
(1)義務教育の年齢引き下げの方が重要では?
*1-1のように、2015年度に幼稚園や保育所に通う5歳児から段階的に幼児教育無償化を進める方針だというのは賛成だが、年収360万円未満の世帯だけを対象にするのが適切かどうかは疑問であるし、その目的が子育て世帯の負担軽減だけでは、教育の大計に欠ける。 私が、このブログの2014.7.18日の25日追加分に記載した通り、凍土壁を作って放射能汚染水を止水する計画は、自然の地下水の分量やこれを凍らせるために必要なエネルギー量、仮に凍らせた場合に周囲に起きる変化を考慮も計算もできない人が集まって考えたものだろう。そして、そういうことが起こる理由は、コンクリートで作られた人工の都市で育ち、暗黙知としての自然の大きさや生態系を知らず、非常に狭い領域の知識だけで試験にパスしてリーダーや技術者になっている人が多いからだと考える。なお、エネルギーや熱交換の基礎は小学校の理科で教えているので、私は、「子どもは遊ぶことが重要で、勉強ばかりしていてはいけない」と言う意見に組みしない。 つまり、問題は、「人口が都会に集中した結果、コンクリート造りの街を故郷として育ち、暗黙知として壮大な自然を知らない人が、リーダーや技術者の大半を占めるようになった」ということで、それがこのように深刻な結果をもたらしているのだろう。 そのため、私は、人口が都会に集中しすぎず、田舎で育った子どもも充実した教育を受けられ、リーダーや技術者になりやすい環境を整えることが必要だと考えている。そこで、*1-2のように、小中一貫教育学校の制度化もよいかもしれないが、私は、無駄なく充実した教育を行うために、義務教育を(少なくとも)5歳からに早めて幼稚園と小学校を一体化し、中学校は高校と一体化する方がよいと思う。 また、*1-3のように、学童保育は現在93万人が利用しており、潜在待機児童は40万人と推計されるそうだが、学童保育の時間を有効に使えば、子どもを自然の中で活動させたり、食育したり、木工を教えたり、予習復習する習慣を身につけさせたり、いろいろなことをやらせることができるので、家庭の教育力格差を補完することができる。そのため、共働き家庭や一人親家庭に限らず、質を良くした学童保育を有効活用するのがよいと考える。 (2)林業と環境教育について *2-1に、東洋大学が川越キャンパス敷地内の森林保全活動に取り組む里山支援隊を設立し、下草刈りや伐採を行い、遊歩道を整備して里山再生を目指すそうだが、大学教育でもできることは多い。 また、*2-2のように、ホームセンターが、3Dプリンターなど最先端のデジタル工作機械を集め、一般に利用してもらう市民向けの“ものづくり工房”を開設したので、必要なものを自分で作るのも面白そうだ。 さらに、*2-3には、政府の成長戦略の「日本再興戦略」の改訂版で、「豊富な森林資源の循環利用が打ち出された」と書かれているが、現在は、まだ家や家具への日本産木材の利用は進んでいない。しかし最近は、木材もコンピューターを使って組み立てるだけのところまでカットできるため、小学生、中学生、高校生にそれぞれの段階のいろいろな木工を体験させるのがよいと考える。 例えば、小学生にカットされた木材を使って天敵に見つからない鳥の巣箱を作って設置までさせれば、1)どの鳥が巣箱を使うのか 2)その鳥の天敵は何か 3)どうしたら天敵に襲われない優良な住みかになるか などを勉強して作らなければならないため、立派な理科(生物、生態系)と木工の教育になる。そして、巣箱をかけた子どもは、鳥の産卵や子育てに関心を持って、たびたび観察に出かけるだろう。そうすると、季節に依る植生の移り変わりも自然と眼に入るので、植物に名札をつけておけば、同時に植物の名前を覚えることもできる。 (3)水産業と環境教育について *3のように、ニホンウナギが絶滅危惧種と判定され取引規制の材料になりそうだが、日本では、河川を簡単な堤でせき止めて農業用水に使っている場所が多いため、海と川を行き来して産卵する生物は繁殖しにくくなっている。このように、これまで生態系を無視した建設工事や排水が多かったため、これも文科系、理科系を問わず、義務教育で全員に教えておくべき理科(生物、生態系)の内容だ。 (4)食育について *4のように、日本マクドナルドは、「チキンマックナゲット」を調達していた中国の食肉加工会社が使用期限切れの食肉を使い、中には色の変わった肉もあったため、中国製をすべて中止してタイ製に切り替えたそうだ。しかし、タイ製ならどのくらい安全なのかもわからないため、日本としては、衛生管理や予防を行う保健所のシステムを、世界に輸出するのがよいと考える。 もう一つ問題と感じたことは、マクドナルドの製品を食べて育った親が、そのような肉でもまずさを感じずに、美味しいと思って子どもに同じものを食べさせていた点だ。マクドナルドの戦略は、「子ども時代に習慣をつければ一生食べてもらえる」ということだったが、そのようにして育った親が、食品の選択眼を持たず、それを次世代に伝えていることも問題である。 そのため、学校給食や学童保育で新鮮な食材を提供することによって、子どもの味覚を育てることもでき、それは、やらなければならないことである。 <教育制度改革へ> *1-1:http://www.saga-s.co.jp/news/national/10202/86710 (佐賀新聞 2014年07月23日) 来年度から5歳児の教育無償化、3閣僚合意、財源が課題 3~5歳児の幼児教育無償化をめぐり、下村博文文部科学相ら3閣僚と与党実務者が23日、内閣府で会合を開き、2015年度に幼稚園や保育所に通う5歳児から段階的に無償化を進める方針を確認した。下村氏は年収360万円未満の世帯を対象にする案を提示。5歳児全体の22・6%に当たる約22万8千人が対象で、244億円が必要となる。財務省は難色を示しており、年末の予算編成に向け財源や対象範囲をどうするかが検討課題となる。幼児教育無償化は昨年の参院選で自民、公明両党が公約に掲げたほか、政府の教育再生実行会議も段階的無償化を提言している。子育て世帯の負担軽減などが狙い。 *1-2:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20140612&ng=DGKDASDG1103W_R10C14A6EA2000 (日経新聞 2014.6.12) 小中一貫教育を制度化 再生実行会議が素案 16年度にも導入 学制改革を議論している政府の教育再生実行会議(座長・鎌田薫早稲田大総長)は11日、9年間の義務教育を一体として実施する「小中一貫教育学校」(仮称)の制度化を求める提言素案を示した。幼児教育を段階的に無償化し、義務教育を5歳児から行うことの検討も要請した。7月に提言をまとめ、安倍晋三首相に提出する。 ●小中一貫校の制度化で「中1ギャップ」の解消が期待される 安倍首相はこの日の会議の冒頭で「我が国の未来を創造するといっても過言ではない重要な提言になる」と述べた。下村博文文部科学相は提言を受け、今夏にも「小中一貫教育学校」(仮称)の制度設計を中央教育審議会に諮問し、来年の通常国会で学校教育法を改正したい考え。同学校は早ければ2016年度から制度導入される。素案は、子供の発達の早期化や小学1年生が学習に集中できない「小1プロブレム」、就学環境が変化する中学進学後に不登校が増える「中1ギャップ」などの課題を挙げ、戦後約70年続く「6・3・3・4」の学制を「日本に見合うものとなっているか見直すときである」と指摘した。そのうえで中1ギャップの解消や学力向上のため、小学校と中学校を「6・3」で分ける現行制度とは別に、一つの学校で9年間を通じた教育課程を組む小中一貫教育学校を新たに制度化することを提唱。新制度は設置主体である市区町村が地域の特性に応じて選択できることとし、9年間のカリキュラムも市区町村の判断で「4・3・2」や「5・4」などに柔軟に区切られるようにする。幼稚園や保育所などが担う3~5歳の幼児期の教育も「機会均等と水準の向上を図ることが重要」と改善を求めた。具体策として、幼児教育を段階的に無償化することや、幼稚園教育要領の見直しを提示。5歳児の1年間を義務教育化することの検討も盛り込んだ。仕事と直結する知識や技能を身に付けた人材育成が必要として、現在ある専門学校とは別に、高校を卒業した人に実践的な職業教育を実施する高等教育機関の創設も柱の一つ。大学と同じように学校教育法第1条で定める「学校」として位置付け、国が財政支援する仕組みを想定する。 *1-3:http://www.saga-s.co.jp/news/national/10206/88285 (佐賀新聞 2014年7月28日) 学童保育93万人で最多、潜在待機は推計40万人 共働き家庭やひとり親家庭の小学生を放課後に学校内や児童館などで預かる学童保育の全国の利用児童数が今年5月1日時点で、前年比4万4782人増の93万3535人となり、過去最多を更新したことが28日、全国学童保育連絡協議会の調査で分かった。2006年の全数調査開始から増え続けており、90万人を超えたのは初めて。自治体が把握している学童保育の待機児童数は、2171人増の9115人。だが同協議会は、本来は希望しながらも親が申請をあきらめるなどした潜在的な待機児童は40万人を超えると推計している。 <林業と環境教育について> *2-1:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20140617&ng=DGKDZO72823890W4A610C1L83000 (日経新聞 2014.6.17) 川越キャンパス 敷地の森林保全 東洋大が「里山支援隊」 東洋大学は川越キャンパス(埼玉県川越市)の敷地内の森林の保全活動に取り組む「こもれびの森・里山支援隊」を設立した。学生や地域住民に保全活動への協力を呼びかけ、キャンパス内の森林の保全を進める。グラウンドとして使われた用地を里山に再生させる事業にも取り組む。同キャンパスは東武東上線鶴ケ島駅から徒歩約10分の立地で、1958年に用地を取得した。森林面積は6.2ヘクタール。樹木の手入れが行き届かず、森林の中が暗いことなどから、下草の刈り取りや伐採、遊歩道を整備し、キャンパス用地として取得した当時の里山への再生を目指す。月1回程度、森林の再生・保全に関するイベントを企画し、地域住民や学生の参加を募る。 *2-2:http://qbiz.jp/article/42401/1/ (西日本新聞 2014年7月24日) ホームセンター初の「ものづくり拠点」 グッデイの戦略 「グッデイ」を運営するホームセンター中堅の嘉穂無線(福岡県那珂川町)が、3Dプリンターなど最先端のデジタル工作機械を集め、一般に利用してもらう“ものづくり拠点”を、福岡県太宰府市に開設した。なぜ、ホームセンターがものづくり拠点を設けたのか。このほど、プレオープンした施設を訪ねた。「この施設は、ホームセンターが運営する初の『ファブラボ』です」。おしゃれな内装に真新しい機器が並ぶ施設の名称は「ファブラボ太宰府」。地元の中学生や関係者を招いたプレオープンの今月19日、施設の代表で嘉穂無線副社長の柳瀬隆志氏(38)があいさつで胸を張った。「ファブラボ」は英語を基にした造語で、米国マサチューセッツ工科大学(MIT)の教授が提唱した市民向け“ものづくり工房”のこと。ネットワークは各国に広がり、日本では鎌倉市などにあり、九州でも大分、佐賀県内にある。従来の運営母体は教育機関やNPOが中心。ファブラボ太宰府は、ホームセンターがファブラボに初参入する形となる。施設には、データ通りに自動成形・加工する3Dプリンターやレーザーカッターなどを完備。ホームセンターだから、部品や材料がふんだんにある強みを生かせるのも特徴だ。機器のインストラクターが常駐し、入会金(9月の本格オープンまで無料)と月会費を支払って個人・法人会員になれば定額使用ができる。初心者でも飛び込みでも利用が可能だ。 *2-3:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20140726&ng=DGKDZO74769060W4A720C1EA1000 (日経新聞 2014.7.26) 日本、木材大国への道、成長戦略に「循環利用」、供給増で世界一安い 課題は需要開拓、輸出カギ 政府の成長戦略の「日本再興戦略」改訂版では、目玉政策の陰に埋もれながらも「豊富な森林資源の循環利用」が打ち出された。戦後の植林材が伐採期を迎え、国産材の供給圧力が高まっている。外国材が中国の買いなどで値上がりし、国産材が世界一安くなる追い風も吹いている。木材業界は相次ぎ国産材の大型工場を建設。“眠れる資源”の活用に動き始めた。徳島県松茂町の徳島阿波おどり空港から車で南へ1時間。小松島港近くに来るとヒノキの香りが漂ってきた。窓の外には巨大な倉庫のような工場があり奥に丸太がうずたかく積まれていた。すてきナイスグループが約15億円かけて建設したナイスグループ徳島製材工場(徳島県小松島市)だ。5月半ばに操業を始め今年度は柱やハリなど2万5200立方メートル(丸太換算)の生産を見込む。ナイスの鈴木淳常務執行役員は「当社は住宅資材の卸中心だったが製造分野に進出した。徳島には社有林もあり植林も行っている。循環型林業を目指したい」と話す。中国木材(広島県呉市)は宮崎県日向市に約40億円を投じ製材工場を建設中だ。8月に試験運転を始め1年で20万立方メートル生産する。同社は米国産丸太の製材最大手だが今後は国産材を強化する。合板でもホクヨープライウッド(東京・文京)などグループ4社が岩手県北上市に工場を建設する。投資額は約68億円で来年2月に稼働の予定だ。ノダも来年初めの稼働を目指し静岡県富士市に約55億円を投じ工場を建設している。行政の補助金を活用し国産材を使う点で共通する。 ●半世紀で2.6倍に 今なぜ国産材なのか。戦後の植林材が伐採期に入り森林蓄積量(2012年)は49億立方メートルと半世紀で2.6倍に急増した。政府は木材自給率(13年は28.6%)を20年に50%にする目標だ。成長戦略の具体策でも板材を直交するように張り合わせたパネルなどの普及を促した。価格面での魅力も高まっている。中国の買い付けや円安・ドル高で外国産丸太価格が上昇し国産に割安感が強まっている。農林水産統計によると、製材用の6月の全国価格は米ツガ丸太で1立方メートル2万5100円だ。国産の杉丸太は1万4000円と44%安い。市場では国産材は「世界一安い」といわれている。外国材はロシア産や東南アジア産で輸出規制が強まるなど供給不安が起きやすい難点もある。ただ、価格が安すぎると弊害も出てくる。森林所有者で組織する全国森林組合連合会の肱黒直次代表理事専務は「丸太価格が上昇しないと間伐、林道整備など造林コストが賄えない」と訴える。売る側と買う側の双方が納得する価格形成への取り組みも欠かせない。今後の課題は需要の開拓だ。日本は人口減で住宅着工の減少が確実視されているだけに、需要を創出しないと製品がさばけない。合板業界は輸入品のシェアが高いコンクリート型枠用やフローリング台板用の販売を強化し始めた。しかし、輸入品の牙城を切り崩すには時間がかかる。需要創出で最大のカギを握るのが輸出だ。すでに丸太輸出は昨年、前年比2.3倍の26万4700立方メートルと過去最高に達した。しかし、産業育成や雇用確保の観点から製材品の輸出をどう増やすかがポイントになる。 ●韓国で住宅販売 すてきナイスグループは昨年末から韓国で日本の伝統工法で建てる木造住宅の販売を開始し4棟を契約した。住宅に使う製材品を日本から輸出する。アジアを中心に住宅を拡販し製材品輸出につなげる考え。合板でもホクヨープライウッドなどの新工場が輸出を視野に入れている。中国木材も「やがて来る国産製材品の輸出時代はコスト競争力の差が勝敗を決める。世界と競争していく覚悟が必要」(堀川保幸社長)という。日本は国土の7割弱が森林。競争力を強化できれば、資源小国の日本が木材資源大国に生まれ変わる日も夢ではない。 <水産業と環境教育について> *3:http://qbiz.jp/article/39695/1/ (西日本新聞 2014年6月12日) ニホンウナギを絶滅危惧種と判定 IUCN、取引規制の材料に 国際自然保護連合(IUCN)は12日、絶滅の恐れがある野生生物を評価したレッドリストで、ニホンウナギを絶滅危惧種に分類したと発表した。3ランクある絶滅危惧種の中で2番目に高い「近い将来における野生での絶滅の危険性が高い種」と判定した。レッドリストは生物の生息状況の科学的な評価結果で、掲載されても捕獲や国際取引の規制には直結しない。だが、ワシントン条約で国際取引規制を検討する際の有力な判断材料となる。世界最大のウナギ消費国として日本も漁獲規制など本格的な保護対策を迫られ、食卓にも影響が出る可能性がある。IUCNは、日本の親ウナギの漁獲量は1981年の1920トンから2011年の229トンに減り、稚魚のシラスウナギの漁獲は過去30年間で90%以上減ったことなどから、絶滅の危険が高まっていると判断した。乱獲や生息地の破壊、海流の変化などが理由で、養殖向けのシラスウナギの乱獲が大きな脅威でありながら、依然として各地で乱獲が続いていると警告した。また、インドネシアなどに生息するウナギの一種についても、ニホンウナギの減少に伴って代替種としての需要が高まっており、国際取引が増加傾向にあるなどの問題を指摘した。同様に漁獲量が急減しているヨーロッパウナギは10年、最もランクが高い「ごく近い将来に野生での絶滅の危険性が極めて高い種」となった。 <食育について> *4:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20140726&ng=DGKDASDZ2506K_V20C14A7TI0000 (日経新聞 2014.7.26) マクドナルド、中国製チキンの販売中止、タイ製に切り替え 「ブランドの信頼守る」 日本マクドナルドは25日、「チキンマックナゲット」など中国製の鶏肉商品8種類の販売を中止した。同社がナゲットを調達していた中国の食肉加工会社、上海福喜食品(上海市)が使用期限切れ食肉を使っていた問題で、消費者に中国製の鶏肉商品の不安が高まっているためだ。同社から鶏肉商品を仕入れていたファミリーマートも、週末にかけて臨時の消費者の相談窓口を開くなど対応に追われている。 ●日本マクドナルドは鶏肉商品をタイ製に切り替えた 日本マクドナルドは25日午後3時、国内全3100店に対して中国製の鶏肉商品の販売を停止するように一斉に通告した。「すべての『中国製チキン商品』の販売中止を決定しました」。JR東京駅近くのマクドナルドでは店内の立て看板に案内を貼りだした。同店を訪れた32歳の男性会社員は「管理体制がずさんだ」と批判した。同社は鶏肉商品8種類を中国とタイから仕入れていた。中国からは上海福喜以外からも調達していたが、25日ですべて販売を中止しタイ製に切り替えた。店舗によってはタイ製の在庫がなかったり、売り切れたりして販売できなくなる可能性がある。同社は欠品の解消時期を未定としている。中国製は店舗から回収して廃棄する。現時点で中国製の鶏肉商品の取り扱いを再開する予定はない。サラ・カサノバ社長兼最高経営責任者は同日「マクドナルドの中国製チキン商品への懸念が高まっている。ブランドに対する信頼が何よりも大切。お客の信頼に応えるべく努力する」とコメントした。業績への影響は明らかにしていない。余波は広がる。ファミリーマートは上海福喜から仕入れていた「ガーリックナゲット」「ポップコーンチキン」の販売を22日に取りやめた。24日までに消費者から687件の問い合わせがあった。25日も事実確認が続いたため平日だけだったお客様相談室を今週末も開くことを決めた。26~27日の2日間、専用ダイヤル(電話0120.954023)を用意する。上海福喜と取引のない小売・外食企業にも影響が出始めている。日本KFCホールディングスが運営する「ケンタッキーフライドチキン(KFC)」で販売している「オリジナルチキン」はすべて国産鶏。しかし中国のKFCが上海福喜と取引していたことで「日本でも使っていると混同している消費者がいる」(日本KFC)。20日に問題発覚してから客足がやや鈍っており、風評被害を懸念する声も出ている。サークルKサンクスは空揚げやフライドチキンに中国製の鶏肉を使っている。同社は「安全性は確保しているが使用を継続するか今後検討する」としている。首都圏地盤の大手スーパーには「問題の企業と取引しているのか、といった問い合わせが顧客から来ている」という。消費者には中国製の冷凍ギョーザに殺虫剤成分が混入された事件の記憶もまだ残っている。「何度も問題が起きることで『中国産』を敬遠する動きが広がる可能性もある」(同社)とみている。 PS(2014.7.31追加):塾の教育方針は「進学率の上昇」というような短期間で眼に見える成果のみを追求しがちであるため、塾と公教育の連携は、放課後に選択性で行うのがよいと考える。しかし、正規の授業も、塾の選択肢も少なく、前からのんびりしすぎている地方の公立校が「ゆとり教育」を主張すれば、質の高い労働力の確保すらおぼつかないため、正規の公教育も考え方を変えるべきだ。 *5:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20140731&ng=DGKDZO75016610R30C14A7CC1000 (日経新聞 2014.7.31)塾と一体 公教育を改革、佐賀・武雄 子供が意欲的に 「子供が飽きないような工夫が大切。20年のノウハウには自信がある」。水田に囲まれた佐賀県武雄市立武内小学校。6月末、教員10人が学習塾「花まる学習会」(さいたま市)の高浜正伸代表(55)の話に聞き入った。 ●楽しめる教材 武雄市は4月、市立小学校の授業を巡って学習会との提携を発表。武内小は学習会の教材や指導法を取り入れる「官民一体型学校」のモデル校に指定され、実証研究が始まった。樋渡啓祐市長(44)が旗振り役となって来春の導入を目指す官民一体型学校に、全国から視線が集まる。学校と塾の連携事例は増えているが、塾が担うのは放課後や土曜の補講が大半。「授業という“本丸”には踏み込ませない」(教職員組合関係者)という学校現場の意識は強く、「塾の指導法を授業に取り入れる」(樋渡市長)という構想は例がない。「できたー!」「分かった!」。4月、東京都心の花まる学習会の教室。視察した武雄市の諸石洋之助教育委員長(69)は、子供たちの活発さに目を丸くした。箱を展開した平面図を考えたり、ある法則に従ってマス目に数字を入れたり……。「なぞペー」と呼ぶ独自教材に没頭し、解ければ大きな歓声が上がる。都心の教室に長女(7)を通わせる母親(36)は「考えるのが楽しくて、時がたつのを忘れるみたい」と話す。大学進学予備校のアルバイト教師を経て学習塾をおこした高浜代表の持論は「未知の課題を解く達成感を味わった子供は伸びる」。そのきっかけを与える独自教材のほか、書き写しや計算問題を3~5分の短い間隔で区切る工夫が「今の学校に足りない、子供が意欲的に学ぶ姿につながっている」と武雄市の浦郷究教育長(63)は評価する。全国に11万人いる不登校児と、60万人を超えるニートや引きこもりの若者たち。高浜代表の考えに共感する樋渡市長は、これらの問題を念頭に「学校が楽しくなり、自ら学ぶ姿勢が身につく教育を官だけで担うのは限界」と言い切る。市では出版社と協力して動画の教材を開発し、タブレット端末で児童が学ぶ取り組みも今春スタート。市長が描くのは、武雄を公教育改革のモデルケースにするという青写真だ。ただ、課題もある。市はほとんどの授業に学習会のノウハウを取り入れたい考えだが、独自教材は国語と算数の要素が中心。現場の教員には、少人数制を前提とした指導法が一クラス30人前後の授業に対応できるのか疑問視する声もある。「どんな授業になるか分からない」(小1の母親)といった、保護者の一部にある懸念を払拭することも必要だ。 ●地方の危機感 市は全11小学校のうち、まずは3校程度を官民一体型学校にする予定。武内小の校区の住民は実証研究の結果を待たずに今月14日、立候補の意向をまとめた。背景にあるのは「都会の進んだ教育を受けさせたい」(白浜忠次区長)という地方の危機感。他の校区も高い関心を示す。学習塾の本格参入は、新たな学校教育のカタチとして定着するのか。武雄の挑戦は緒に就いたばかりだ。 ◇ 国際化やIT化が急速に進む現代社会。教育分野にも変化の波が押し寄せる。学びの現場を歩き、実相と課題を探る。
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2014,07,05, Saturday
*1-2より (1)まだそんなことを言っている究極のエコカー *1-1に、「①福岡県は、地元経済界に呼びかけ官民連携組織を年内に設立して、自治体や企業、タクシー会社にFCVの購入を働きかける」「②水素エネルギー関連の研究開発やビジネス拠点化を進める」「③FCV普及でも実績を積み水素研究先進地としての取り組みをアピールする」等が書かれている。 もちろん、福岡県のチャレンジは良いが、電気自動車や燃料電池車などのエコカーは、1995年頃、私が経産省に提案し、1997年に日本は京都議定書に調印して、既に20年近くが経過しているのだ。そのため、まだ「FCV普及のハードルが高い」などと言っているのはあまりに遅すぎ、このとろすぎる対応が、わが国企業の低利益率の原因なのである。 なお、*1-2に書かれているように、中東情勢と円安でガソリンの高値が続き、離島や漁業関係者も困っているそうだが、この話も私が国会議員をしていた2005~2009年の間にもしばしば出ていたので、漁船や離島航路の船を電気船等にして自家発電で賄えば燃料費は無料だというアイデアを出していた。しかし、10年1日の如く同じ愚痴を言って根本原因を解決しようとせず、その結果がこれなのだから、これを機会にエネルギーの転換を進めよということであろう。 (2)国産車に広がらない先進安全機能の装備 *2-1のように、スウェーデンのボルボが昨年発売した小型車は、297万円でも方向補正機能を標準装備するという安全性能が付き、購入者に次世代の車と感じさせているし、独フォルクスワーゲンの小型車(258万円から)も、日本人購入客の9割が前の車と間隔を空ける機能を備えたタイプを選び、6割は車線維持機能を備えた車を購入するほどであるにもかかわらず、日本車には先進安全機能の装備が広がっていない。(なお、私は、先進安全機能で、塀の向こうを走る見えない車やカーブを曲がって来る列車も察知できるようにして欲しいと考える) そして、*2-2のように、改正道路交通法の罰則を強化し、プライバシーの侵害や病気への偏見、高齢者の不便を助長して、地方に住む人の人権を侵害しているのだ。 つまり、日本では、私がこのブログの2014年4月23日や2014年1月6日などに記載しているように、課題を技術で解決するのではなく、変な規制変更をして、誰かに不便を我慢させたり、プライバシーの侵害をしたりして解決しようとし、人権侵害をした上、技術進歩の機会を逸しているのである。 <環境対応車> *1-1:http://qbiz.jp/article/41333/1/ (西日本新聞 2014年7月5日) 官民でFCVクラブ 燃料電池車、福岡から後押し 2014年度内に市販が始まる燃料電池車(FCV)の普及を後押しするため、福岡県は、地元経済界に呼びかけ官民連携組織「ふくおかFCVクラブ」を年内に設立する。自治体や企業、タクシー会社にFCVの購入を働きかけるなど普及の初期段階で積極的に需要を掘り起こす。同県は産学官連携で水素エネルギー関連の研究開発やビジネス拠点化を進めており、FCV普及でも実績を積み上げ、水素研究先進地としての取り組みをアピールする狙いがある。FCVは、燃料の水素を空気中の酸素と化学反応させて発電しモーターで走る。走行中には二酸化炭素(CO2)を排出しない「究極のエコカー」。トヨタは15年度の予定だった発売を14年度内に前倒しし、年内の市販も検討中とされる。ホンダも15年に投入する計画だ。ふくおかFCVクラブはこうした動きを受けたもので、県内の市町村や大学にFCV購入を要請し、水素や環境関連などの事業者やタクシー会社にも導入を働きかける。企業や消費者に魅力や安全性を発信するイベントや試乗会などPR活動を強化する。 市販当初は、FCV普及のハードルは高いとみられる。政府は、燃料を補給する水素ステーションの整備を首都圏、名古屋、大阪、福岡の四大都市圏で進める方針。福岡・北九州都市圏では15年末までに10カ所開設を目指すが、決まっているのは福岡市と北九州市の計3カ所と遅れ気味。1台700万円程度とされる車両価格も普及のネックになる可能性もある。FCV2台を公用車として実証実験中の同県は14年度にトヨタのFCV2台を購入するほか、タクシー会社に1台につき100万円を助成する予算を5台分確保済み。ふくおかFCVクラブではさらなる支援メニューを検討する。同県商工部新産業振興課は「FCVが街を走っているのを見てもらうことで、良さを分かってもらえる。水素研究の先進地として、FCVの普及を先行させたい」としている。 *1-2:http://qbiz.jp/article/41328/1/ (西日本新聞 2014年7月5日) 止まらぬガソリン高騰 九州4県で170円突破、消費者に広がる自衛策 ガソリン価格の値上がりが続いている。経済産業省資源エネルギー庁が2日に発表したレギュラーガソリン1リットル当たりの全国平均小売価格は168・4円(6月30日現在)と10週連続で上昇。石油情報センター(東京)によると、中東の情勢不安と円安が主な原因と見られ、2008年以来の高値水準。全国平均小売価格は7月中にも170円台突破の可能性があるという。離島が多く、石油精製所が大分県内に1カ所しかない九州は、全国平均より高く、影響は深刻だ。燃料費高騰で出漁を控える漁業者も出てきた。「お客さんに『また高くなったね』と言われるのがつらい」。相光石油平尾サービスステーション(福岡市中央区)の下司賢宏店長(39)はどこまで上がるか分からない価格に表情を曇らせる。仕入れ値の上昇分を店頭価格に転嫁しないと赤字になる。しかし、「高くなりすぎると客が来なくなる」。次回の来店時に1リットル当たり3円割引する券を配布するなど、利用者をつなぎ留めるのに必死だ。消費者も高値を実感。洗車に訪れた自動車整備士大場堅太さん(23)=同市博多区=は「最近はなるべく車より燃費の良いバイクに乗るようにしている」。別のスタンドで給油していた自営業の大下誠さん(42)=福岡県春日市=は「毎年、夏には家族でマイカー旅行をしているが、今年は電車で日帰りかな」。福岡市南区の主婦(47)は「満タン給油をやめ、少しでも安くなった時に千〜2千円ずつ補給している」という。カツオ漁が盛んな鹿児島県の枕崎市漁協。魚価低迷に加え、10年前の2倍以上に上昇した燃料費が重くのしかかる。同漁協によると、東北の三陸沖に出るカツオ船はこの10年で半減した。漁協幹部は「数カ月前まで週に3〜4回は出漁していた沿岸漁業も、最近は週2日が限界」と言う。福岡市漁協の野上政昭組合長(76)は「このままでは漁に出たくても出られない」と危機感を募らす。漁師の西嶋博行さん(65)は「網や浮具など石油製品の漁具も2割ほど値上がりしており、“ダブルパンチ”」と肩を落とす。センターによると、高値は当分続く見込み。夏の行楽シーズンを前に九州経済調査協会は「マイカーによる人の移動が減り、観光地をはじめ、全体的に消費活動が落ち込む可能性がある」と分析する。 <先進安全機能> *2-1:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20140705&ng=DGKDZO73812940U4A700C1TI0000 (日経新聞2014.7.5) 200万円台カーにも装備 「安心」技術、普及早い日本 「仕事で疲れて運転中に眠気が襲うことも。妻も運転するので安全を大事にした」。さいたま市に住む斎藤正浩さん(42)は5月、スウェーデンのボルボが昨年発売した小型車「V40」を買った。前の車と一定の間隔を空ける機能や車線を外れそうになると方向を補正する機能を標準装備。カメラや各種センサーを備え、天候の影響を受けにくいとの触れ込みだ。価格は297万円から。斎藤さんは通勤でも車に乗る。はるかに高い高級輸入車に乗っていたが、「これだけの安全性能が付いてこの価格は安い。次世代の車と感じた」。V40を買った人の過半は45歳以下。景気回復で懐に余裕のできた層が購入しているとみられる。先進安全技術は輸入車が先行している。500万円以上の車種の多くで標準装備。安い車種でも装備が始まっている。 昨年、輸入車で初めて日本カー・オブ・ザ・イヤーを受賞した独フォルクスワーゲンの小型車「ゴルフ」(258万円から)はオプションも含め、購入客の9割が前の車と間隔を空ける機能を備えたタイプを選び、6割は車線維持機能を備えた車を購入した。ブランド力もある輸入車には多少のコストを追加するのをいとわない消費者が多い。それに比べると小型や軽の人気が根強い国産車では先進安全機能は広がっていない。 そうした中で取り組みが目立つのが富士重工業。6月の新型車「レヴォーグ」発売に合わせ、カメラを使ったオプション機能「アイサイト」を刷新。車線維持機能を初めて備えたほか、カメラの視野角も広げ、前の車と一定間隔を空ける機能でもより精度を高めた。レヴォーグの価格は266万円から。性能を高めたものの、オプション価格は税別10万円で据え置いた。「購入客の9割がアイサイト付きを選ぶ」(富士重)。日産自動車ではあらゆる速度での追従機能を備えるのは「スカイライン」など高級車が中心。トヨタ自動車やホンダも含め普及価格帯に先進安全機能が標準装備されるのは2015年以降になる。米調査会社のラックスリサーチの予測では、日本の14年の新車販売のうち先進安全技術を備えた車は10%を占める見通し。欧米の4%に比べて高く、20年には97%に達するとみる。日本の消費者の需要が大きいことを示している。日本自動車工業会の13年の調査では、前の車を見つけると自動でブレーキをかける機能に「非常に魅力がある」と答えたのは60歳以上の女性で55%。団塊の世代が60代半ばを迎える中、国産車にもこれまで以上に先進安全機能の搭載を求める声が高まりそうだ。松本正伸が担当しました。 *2-2:http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%81%8B%E8%BB%A2%E5%85%8D%E8%A8%B1%E3%81%AB%E9%96%A2%E3%81%99%E3%82%8B%E6%AC%A0%E6%A0%BC%E6%9D%A1%E9%A0%85%E5%95%8F%E9%A1%8C ウィキペディア 運転免許に関する欠格条項問題 <要点> ●虚偽申告の罰則化 運転に支障の出る病気を故意に隠し免許を取得する者に対して、罰則を設けた改正道路交通法が、平成25年(2013年)6月7日、国会で成立した。癲癇や統合失調症など、病気の虚偽申告をした場合、1年以下の懲役または30万円以下の罰金に処せられる可能性がある。公布から1年以内に施行される。自動車運転死傷行為処罰法が施行された。 ●プライバシー侵害 2002年6月の道交法改正に伴い、申告書への記入内容にて、運転適性相談が必要となった場合、医師の診断書の提出が義務付けられている。病歴はプライバシー情報であり、プライバシー情報を警察が集めることになるとの指摘がある。 ●病気への偏見 2002年6月の法改正の素案段階では、欠格条項に病名が複数盛り込まれていた。素案に含まれていた病名は以下の通り(カッコ内は問題とされる理由)。これは特定の病気に対する偏見を引き起こし、雇用差別などにつながるとの指摘がある。 ①統合失調症、双極性障害、躁病、重度だと判断されるうつ病、持続性の妄想障害 ②てんかん(意識障害) ③ナルコレプシー(睡眠発作) ④脳虚血(意識障害) ⑤糖尿病(治療薬の副作用である、低血糖によって引き起こされる意識障害) ⑥睡眠時無呼吸症候群(睡眠発作) ⑦患者団体の働きかけを受け、法案からは病名が取り除かれている。 ●治療の妨げ 人口密度の低い地方では、車なしには医療機関や社会復帰施設に通いにくい場所が多い。このような地域でこれまで車を使用していた人が新たに欠格となると、治療を妨げることになり、病状の悪化にも繋がる可能性があるとの指摘がある。また、免許がなくなることを恐れて、不調の際にも受診しない人が増えることで、未治療の病気による事故が増えるのではないかとの指摘がある。 PS(2014.7.6追加):(1)の水素を作るためには、当然、火力発電や原子力発電ではなく自然エネルギーを使うべきで、これにより、エネルギーの国産化とエネルギー構造改革による税収増加が可能だ。そのためには、太陽光発電、風力発電、地熱発電がよく知られているが、わが国では、*3のような潮流発電の潜在力も大きいため、漁業や海洋生物に害を与えない形で推進すべきである。 2014.6.22日経新聞 *3より *3:http://www.itmedia.co.jp/smartjapan/articles/1405/16/news013.html (スマートジャパン) 潮流発電を2018年に実用化へ 環境省が5年間の開発・実証事業島国の日本にとって海洋エネルギーの開発は将来に向けた大きな課題だ。膨大な潜在量が見込まれる海洋エネルギーの中で、環境省は潮流発電に焦点を当てた技術開発プロジェクトを開始する。2018年の実用化を目指して、発電能力が500kW以上の設備を使った実証事業を推進していく。環境省は2014~2018年度の5年間をかけて「潮流発電技術実用化推進事業」を実施する計画だ。潮流発電に必要な要素技術の開発から始めて、海中における実証試験を通じて、2018年までに実用化に向けた発電システムの確立を目指す。初年度の2014年度は5億5000万円の予算を割り当てることにして、5月14日に事業者の募集を開始した。6月13日まで応募を受け付け、6月末に決定する。すでに実施海域が確定していて地元の漁業関係者などから合意を得られていることが応募の条件になる。発電設備は1基あたりの出力が500kW以上になるもので、国内の海域に広く適用できる仕様にする必要がある。日本では瀬戸内海を中心に大量の潮流エネルギーが分布している。瀬戸内海の東にある鳴門海峡から西にある関門海峡までの海域のほか、新潟県や長崎県の半島・離島の周辺にも潮の流れの速い海域がある。これらの海域の中から事業対象が選ばれる可能性が大きい。専門家の試算によると、鳴門海峡だけで原子力発電1基分に相当する100万kW以上の潜在量が見込まれている。潮流発電はイギリスをはじめ欧州で実用化が進んでいるが、日本では取り組みが遅れていた。数少ない実例としては北九州市が2011年度から開始した「関門海峡潮流発電設置推進事業」がある(上の写真)。この実証事業は海中に設置した垂直軸の水車を潮流で回転させて、最大で1.4kWを発電する試みだ。関門海峡に面したニッカウヰスキーの門司工場の桟橋で実施した実証試験では、海峡の中で潮流が遅い場所だったにもかかわらず、風力発電並みの20%を超える発電効率が得られた。潮流は天候の影響を受けにくく、安定した発電量になる利点がある。 PS(2014.7.11追加):小学校の理科で習ったとおり、水素は水を電気分解すればできるし、水素を副産物として出す工場もあるのに、「水素を海外から安く大量調達」とか「車用に高圧で圧縮したり、輸送したりする過程でガソリンより割高になる」などというのは、馬鹿にも程がある。また、いつまでも、政府が燃料電池車の販売に1台200万円も出したり、ステーションの建設に1カ所2億~3億円出したりしなければならないというのもおかしい。さらに、「燃料電池車は簡易なタイプから」というのもやる気がない。つまり、例えば、クラウンに乗っていた人が喜んで燃料電池車に乗り換える必要があるのであり、ガソリンエンジンと動力伝動装置による自動車設計の制約がなくなるため、本当は、それが可能なのだ。そのため、「自動車等の交通機関は、2025年から排気ガスによる公害を出してはならない」と規制するのがよい。 *4:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20140711&ng=DGKDZO74085880R10C14A7EA1000 (日経新聞 2014.7.11) 水素の値段、普及のカギ、燃料電池車、トヨタ年度内に発売 20年、ハイブリッド並みに 水素と空気中の酸素を反応させて走る「究極のエコカー」、燃料電池車。トヨタ自動車が世界初の量産車を今年度中に約700万円で発売すると発表したが、ガソリン車と比べた費用対効果はどうか。政府の補助金もにらみつつ現状を追った。名神高速道路に近い岩谷産業中央研究所(兵庫県尼崎市)の敷地。14日のお披露目を待つのは水素の充填施設だ。商業用では国内初の燃料電池車用ステーションになる。燃料電池車の発売はまだ先だが、「いつ販売が始まってもいいように準備する」と関係者は言う。国内では同社に加え数社が首都圏、中部、関西、九州で計31の拠点敷設を決め、来年には100カ所まで増やす計画だ。ただ需要見通しがやや不透明だ。トヨタ以外ではホンダが来年、日産自動車が2017年に燃料電池車を発売するが、いずれも月に何千台と生産するわけではなさそう。給油所が3万4000カ所あるガソリン車と違い、インフラ整備が不十分なのが理由だ。 ●車かインフラか 逆にインフラの担い手も生産台数が小規模なら積極投資は難しい。投資額は1カ所あたり5億~6億円で、ガソリンスタンドの5~10倍する。車が先かインフラが先か。鶏と卵のジレンマがこの先に待つ可能性がある。政府は燃料電池車の販売に1台約200万円の補助金を検討する。ステーションの建設にも1カ所2億~3億円を出す方向。20年までは「国が積極的に関与して普及させ世界の先頭を走る」と経済産業省関係者は言う。トヨタの一号車は約700万円。補助金を受ければ500万円前後になる。社用車や公用車の買い替えを予定する大企業、官公庁を主な顧客と想定しており、当面は四大都市圏の施設で乗り切れる可能性はある。ただ、政府が関与するのは100カ所まで。その先は民間で普及させ、事業を継続する必要がある。果たして可能か。財団法人エネルギー総合工学研究所(東京・港)の坂田興部長は「普及のカギは水素の価格」とみる。消費者に燃料電池車に乗り換えてもらうには相応の合理的理由が必要だからだ。水素は今のところ、国内調達が可能で製造原価も安い。だが、供給元の石油会社(製油用に内製)で車用に高圧で圧縮したり、輸送したりする過程でガソリンより大幅に割高になってしまう。経産省は6月に作成した「ロードマップ」で、15年に水素の充填価格をガソリン車と同等、20年ごろにハイブリッド車の燃料コストと同等(ガソリン車の約6割水準)、30年にはハイブリッド車の燃料コストの半分にすることを目標に据えた。製造、輸送、貯蔵と工程の見直しや規制緩和に加え、水素を海外から安く大量調達できるかどうかも模索する。 ●「国頼み」色濃く ただ、それでも限界があると考える企業はステーションの維持・運営でも「補助金を」と動いているという。ロードマップは25年に「ステーション1000カ所、燃料電池車200万台(累計)」の目標を掲げるが、実現しても車、インフラ、燃料のすべてに補助金が「充填」されれば国頼みの色彩が強まる。コンサルティング会社ローランド・ベルガーの長島聡シニアパートナーは「ガソリン社会が水素社会に短期間で移行するのは至難の業。適した都市を絞り、徐々に浸透させるのが得策」と話す。フランスでは郵便公社が小型燃料電池を補助動力に付けた電気自動車の導入を計画する。既存技術の組み合わせなので、システムもコストも簡便で割安という。要は最初から完成された燃料電池車ではなく、簡易なタイプでまずは市場を創り、「水素社会への理解を社会に醸成する戦略」と関係者は話す。日本の燃料電池車は価格が10年前の10分の1以下(トヨタの場合)と画期的だが、まだ特別な車だ。インフラも採算性もついていけるよう、用途や地域をはっきりさせて普及のきっかけをつかむ。そんな工夫も必要だ。
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2014,06,07, Saturday
長崎の原爆資料館より (1)成績の良さと人間力は矛盾した関係にあるのではない *2に、「①成績の良い子じゃなく、人間力を育てたい」 「②論理力や発想力、考える力を培うことに主眼を置く」「③この国は働けない大人を量産している」「④今の若者は考える力と人間関係が徹底的に弱い」「⑤次に何をやればいいですかと聞くばかりで哲学がない」「⑥人間世界は嫌なことがいっぱいあるし、それでも強く生きる必要があり、教え直さないといけない」「⑦異学年での青空教室を行い、武雄を野外体験のメッカにして日本中から人が訪れたいと思うようにしたい」「⑧学習会はキャンセル待ちの状態で、嫌になってやめる子はほぼいない。先生にはうちの教育法をどうですかと示し、受け入れてもらうしかない」と、民間学習塾の高濱氏が、武雄市の武内小で“教育改革”の必要性に言及したと書かれている。 しかし、②の論理力は、(公式の暗記ではない)本当の数学の勉強によって養われるものであるため、論理力のある子は数学・物理の成績がよい。また、知識の基盤なき発想は空想にすぎず、役に立つ本物の発想力は知識と経験の基盤の上に成り立つ。さらに、勉強とは、丸暗記することではなく、知識を得てそれを消化しながら考えることであるため、本当の勉強をすれば、考える力が養われると同時に成績もよくなる。そのため、論理力や発想力、考える力のある子は、成績も良いのである。それにもかかわらず、高濱氏のような見解が出てくるのは、「勉強することは、知識を丸暗記することだ」と誤解しているからだろうが、膨大な知識を丸暗記することはそもそも不可能であり、勉強としても要領が悪い。 また、③については、非正規雇用割合の増加や新卒者の就職難が続いたことが原因であり、教育の失敗の結果ではないだろう。④についても、私は、昔の若者より今の若者が平均して考える力と人間関係が弱いとは言えないと思うが、仮にそうなら、原因はもっと精緻に分析する必要がある。さらに、⑤については、「自分の頭で考えよ」と親・教師・上司がアドバイスして手本を示せば解決することであり、それができないのが問題なのである。 ⑥の「人間世界は嫌なことがいっぱいあるし、それでも強く生きる必要があり、教え直さないといけない」という命題については、志が高く人間力のある生徒を育てるためには、「理不尽な理由で嫌なことをされた場合には、我慢するばかりではなく、その理不尽と闘って変えることが重要だ」と教えるべきである。 なお、高濱氏は、⑧のように「嫌になってやめる子はいない」としているが、⑦の遊びの延長のような青空教室ばかりしていれば、やめる子がいないのは当然である。しかし、それでは、思考力に結びつく知識は身に付かないため、青空教室は、学童保育・林間学校・総合学習などでやるようにするのがよいと、私は考える。そのため、武雄市は、この方式を来春から導入することに決めてしまったのであれば、通う公立小学校を選択できるようにして、毎年、教育の成果を比較するのがよいだろう。 (2)被爆者に「死に損ない」と暴言を吐いた中学生の成績と人間力はどうか *1のように、修学旅行で長崎を訪れた横浜の公立中学校の5人の生徒が、被爆者で被曝体験の語り部をやっている元教員の森口さんに「死に損ないのくそじじい」などと暴言を吐いたり、周りの生徒に向けて「笑え」「手をたたけ」などとはやし立てたりしたそうだ。 私は、77歳という年齢から考えて、学童疎開をしていて自分だけ被曝を免れた森口さんは、戦争や原爆の理不尽さについて、知識と経験を次世代に伝えるために、力を尽くして闘っておられるのだと考える。それに対し、校長は「男子生徒の一人の態度が悪く、森口さんから『出て行け』としかられた経緯があり、逆恨みをして言った」としているが、叱るべき時にきっちり叱らないのは、教育者も悪い。 この生徒たちは、成績の良さを追求したから被曝者に共感する人間力に欠けたのだと結論する人はいないと思うが、知識を教えてそれに基づいて考えさせ、人間性や礼儀を教えて叱るべき時は叱るのが、いつの時代も教育の原点だろう。中学3年生であれば、既に日本史の勉強は一度は終わっている筈だが、ついていた男性教諭は暴言を止めるような注意をせず、事前の歴史教育も不十分だったわけである。これは、私には、学級崩壊や学校でいじめがありながら放置されているのと同じ現象に見えた。 *1:http://digital.asahi.com/articles/ASG673RG9G67TOLB001.html?iref=com_alist_6_01 (朝日新聞 2014年6月7日) 修学旅行生、被爆者に「死に損ない」 横浜の中学校謝罪 修学旅行で5月に長崎市を訪れていた横浜市の公立中学校3年の男子生徒5人が、被爆遺構を案内していた被爆者で語り部の森口貢(みつぎ)さん(77)=長崎市=に「死に損ない」などと暴言を吐いたり、やじを飛ばしたりしていたことが分かった。森口さんは学校に抗議し、校長が電話で謝罪した。森口さんは原爆投下後に長崎市中心部に入り、入市被爆をした。小学校の教諭を退職後、1998年から被爆遺構の案内や講話をしている。現在は「長崎の証言の会」の事務局長を務め、案内や講話の回数は年100近いという。森口さんや学校によると、3年生119人が5月27日、長崎市を訪れ、証言の会の会員9人が班ごとに被爆遺構を案内した。森口さんは10人ほどを爆心地から600メートルほどの山里小学校へ案内。原爆で多くの児童が亡くなった話を始めようとした際、この班とは別行動をしていたはずの男子生徒5人が近づいてきて、うち数人が「死に損ないのくそじじい」と大声を上げた。森口さんは話を聞くよう注意したが、5人は周りの生徒に向けて「笑え」「手をたたけ」などとはやし立てた。男性教諭も注意したが暴言は続き、山里小では案内ができなかったという。森口さんは翌日、「たいへん悲しいことでした。多くの被爆者の方に申し訳なく、つらい時間でした」と記した手紙を校長に郵送。返信がなかったため、今月3日に学校へ電話すると、校長から「すみませんでした」と謝罪されたという。校長は取材に対し、森口さんらと最初に対面した際、男子生徒の一人の態度が悪く、森口さんから「出て行け」としかられた経緯があったと説明。暴言について「逆恨みをして言ったのだろうが、許される言葉ではなく反省を促したい。十分な指導ができず申し訳ない」と話した。今後、生徒の感想文とともに校長の謝罪文を森口さんに送るという。森口さんは「こんな経験は初めて。被爆69年となり、戦争や原爆をひとごとと感じているのだろうか。本気で向き合ってもらえなかったことが悔しく、悲しい」と話した。 *2:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/71409 (佐賀新聞 2014年6月6日) さが教育新流 花まる学習会が武雄市で説明会 武雄市教委と民間学習塾「花まる学習会」(本部・さいたま市)による官民一体型学校のモデル校となっている武内小(代田昭久校長)は4日夜、同校で学習会の高濱正伸代表を招いての説明会を開いた。保護者はじめ市内外から約150人が参加した。高濱代表は「成績の良い子じゃなく、人間力を育てたい」と語った。高濱代表が説明会に出席するのは初めて。武内町内だけでなく、みやき町や佐賀市、伊万里市などからも参加した。高濱代表は自身の経験や学習塾経営で培ってきた教育論のほか、論理力や発想力、考える力を培うことに主眼を置く学習会の教育手法を説明した。「この国は働けない大人を量産している。今の若者は考える力と人間関係が徹底的に弱い。次に何をやればいいですかと聞くばかりで、哲学がない」と問題提起。その上で「人間世界は嫌なことがいっぱいあるし、それでも強く生きる必要があり、教え直さないといけない」と教育改革の必要性に言及した。また「異学年での青空教室を行い、武雄を野外体験のメッカにして日本中から人が訪れたいと思うようにしたい」と述べた。質疑では「共感を持って聞いた」と歓迎する意見の一方、「塾はやめることができるが、公立はやめられない。花まると合わない子はいるのか。先生には独自の教授法があり、先生たちがノーと言ったらどうなるのか」と質問が出た。高濱代表は「学習会はキャンセル待ちの状態。嫌になってやめる子はほぼいない。先生にはうちの教育法をどうですかと示し、受け入れてもらうしかない」と答えた。代田校長は「先生の負担は増すので無理がなく、齟齬(そご)がないようにやっていきたい」と理解を求めた。説明会後、母親の一人は「正解のない問題を解く力が大事なのは分かるが、おとなしい娘が活発な子の意見に流されてしまいそう。実際に授業を見ないことには分からない」と語った。高濱代表は27日にも武雄入りし教員に授業法と狙いを説明する。武内小では8月から一部公開授業を始め、今秋には希望校を募り、来春から正式に導入する。 PS(2014.6.8追加):水俣病患者がどういう症状を発して被害を受け、それが何を原因として起こり、その後の国の対応がどうだったか、また、日本国憲法で保障されている「基本的人権」「職業選択の自由」「健康で文化的な生活をする権利」とはどういうものであるかを知っていれば、このように長時間かかって制限的で僅少な損害賠償しかしなかった国を批判することはあっても、被害者に対して「そんなに金が欲しいのか」という言葉をかけたり、差別したりすることはないだろう。つまり、これも、論理性のなさ、知識がないために起こる共感力・人間力のなさだが、「大人がこれでは、・・・」と思わざるを得ない。 *3:http://www.nishinippon.co.jp/nnp/kumamoto/article/93514 (西日本新聞 2014年6月8日) 水俣病語り部に差別電話 会長宅「そんなに金欲しいか」 [熊本県] 水俣病認定患者で熊本県水俣市立水俣病資料館「語り部の会」会長(56)の自宅に5月、「そんなに金が欲しいのか。(水俣病の)被害者のふりをして。もうやめんか」などと中傷する電話が計3回かかっていたことが7日、分かった。会長は「根深い水俣病への差別や偏見が現在もある。全ての被害者に対する侮辱行為で、行政は人権問題として啓発に力を注ぐべきだ」と訴えている。会長によると、電話があったのは、水俣病犠牲者慰霊式が同市で開かれた5月1日。午後9時前、テレビで慰霊式に出席した会長の姿が放送された直後に電話が鳴り、会長の妻が出たところ、男性の声で一方的に中傷してきたという。妻が身元を尋ねたところ「福岡」と言って切れた。午後10時すぎまでに同じ男性とみられる電話がさらに2回あり、男性は「いつまであんたどま騒ぐとか」「あんたどんがこげんこつすっでおかしゅうなっとたい」などと言い放った。会長は当時外出中だったため、翌日、電話機に表示された発信元の携帯電話番号を警察に連絡した。会長宅にはその後、今月6日までに夜間や早朝に十数回、非通知の無言電話があった。会長は24日に面会予定の蒲島郁夫知事に水俣病への差別や偏見の解消に取り組むよう申し入れる考えだ。水俣病に関する人権問題に詳しい熊本学園大水俣学研究センター長の花田昌宣教授は「水俣病問題が徐々に理解され、最近では差別事案が表面化することがなかった。悪質な行為としか言いようがなく、行政などと一体で解決する必要がある」と話している。
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2014,04,22, Tuesday
幼稚園就園率 義務教育の就学率 高校・大学進学率 (下から3歳児、4歳児、5歳児) (1)教育の必要性と現在の教育制度について 2012.12.1の記事を始め、このブログの「教育・研究開発」のカテゴリーに多面的に記載したように、先端の人材を育成するためにも、質の良い労働力を育てるためにも、教育は不可欠であり、よい教育を受ける機会を与えられた人は、それだけ考えるツールが増し、幸福になれる機会も多い。 そして、現在の教育の基礎となった教育改革は、*1に書かれているように、米国教育使節団が教育の機会均等を基本理念とした報告書をまとめ、1947年に義務教育の小・中学校から高校、大学へと進む6・3・3・4制を定めて、すべての子どもに差別なく9年間の義務教育を受けさせ、高学歴への道も開いたものだ。1946年に公布され1947年から施行された日本国憲法には、国民が等しく教育を受ける権利を有することが明記され、これによって、1947年に教育基本法と学校教育法が公布・施行されている。 (2)では、なぜ新たな教育改革が必要なのか 戦後すぐに行われた教育改革は、戦前の6年間の義務教育とその先にあった複雑な高等教育を、すべての子どもに対し、9年間の義務教育と高学歴への道を開くというものだった。これにより、上の真ん中のグラフのように、義務教育の就学率は1970年代に100%近くなり、高校進学率も右のグラフのように1990年台には96%以上となって、その時代の経済に資する質の良い労働力を育成する目的を果たした。 しかし、現在、高校は、96%以上の進学率でありながら、義務教育ではないため無償化されておらず、親の経済力が子の進学に影響したり、少子化の原因になったりしている。また、進学率50%を超える大学も同様だ。さらに、幼児教育を行う幼稚園の就園率は、上の左のグラフのように、1990年前後の65%を最高として、共働きの影響で保育園にシフトして幼稚園の就園率が減少傾向にあるとはいえ、現在も4歳児と5歳児では53~54%、3歳児でも41~42%の就園率になっている。 そのため、産業がグローバル化・高度化して、高度な人材や労働力が求められる現在、新しい時代にあわせた教育改革は、必要であるとともに、合理的だと考える。 (3)新しい時代にあわせた教育改革とはどういうものか *1によると、安倍首相が、学制改革への意欲を表明したそうだ。私は、(2)の現状や教育における貧富の差の解消、子どもを産めない理由の一つとなっている親の学費負担を考えれば、3歳から18歳までを義務教育として無償化し、教育内容を体系化し直して、必要なことはゆっくり学ばせるのがよいと思う。勉強が難しく感じられるのは、教育を短期間で行い、よく理解しないうちに先に進むからで、時間をかけてしっかりやれば、誰でもついていけるだろう。 そのため、3歳~8歳までの6年間(初等教育)、9歳~12歳までの4年間(前期中等教育)、13歳~18歳までの6年間(後期中等教育)というように、義務教育を6・4・6制に移行し、中等教育以降は、必要な事項を学習し終われば飛び級させたり、外国から来て下の学年の勉強をしたい人がいれば、必要な科目を履修させるなどして、柔軟な選択が出来るようにしてはどうかと思う。 (4)「勉強すること=学歴偏重、名目主義」というのは変な論理 *1には、「①大学の名前で一生が決まる」「②恐るべき試験地獄」などとして、「③学校教育の充実=学歴偏重、学歴社会、偏差値教育、過度の受験競争」と書かれており、そのために「ゆとり教育」になり、学力低下を招いたことが記載されている。 しかし、現在、①をやっているのは官庁くらいで、この記事を書いた朝日新聞の人事も①ではない筈だ。何故なら、①のような人事をしていれば、一番よい記事を書ける人が残らず、読者が減って利益が上がらないというように、大学卒の学歴だけでできるような甘い仕事はないからである。なお、公平・公正に選抜した結果、一部の大学卒の人が多くなるのは、自然現象であって学歴偏重ではない。 また、②については、勉強することが地獄にならないために、時間をかけて無理なくしっかり理解させることが必要なのである。③については、学校教育の充実と学歴偏重は次元が異なり、学歴社会か否かを問わず、必要なことは学んでおかなければ考えることもできない。また、偏差値教育というのも、狭い範囲の周囲と比較して優劣を競いたがる社会の意識の問題であって、教育の充実と直接結びつくものではない。また、「過度の受験競争」というのも、どれくらい以上を過度と呼んでいるのかわからないが、受験があるから一生懸命勉強したという人も多いだろう。 (5)では、どういう改革をすべきなのか 私は、幼児教育の一般化に伴い、義務教育の早期化による幼児教育の無償化を実現し、すべての幼児に充実した幼児教育を提供することに賛成だ。しかし、この際には、働く女性のことを考慮して、学童保育の整備も必要である。また、新たな学校区分へ移行することにも賛成で、現在の小中高を再編して前倒しに教育課程の検討を行い、学び直し、飛び級、早期卒業も可能にすべきだろう。 しかし、専門高校等を活用した5年一貫職業教育や普通高校と専門高校の適正比率の検証については、普通高校から大学への進学希望者がこの60年間一貫して増加し、学歴を積んで勉強したい人が増えており、それが進歩した時代の要請にかなっている以上、希望ではなく無理に普通高校と専門高校に振り分けるのは、不必要な挫折者を出してよくないと考える。何故なら、専門は、高専や大学、大学院以降でも十分に勉強でき、普通高校程度の基礎知識は、誰にでも必要だからだ。 *1:http://digital.asahi.com/articles/DA3S11064493.html (朝日新聞 2014年4月3日) (教育2014)学制改革、狙いはどこに みんなが同じように進級・進学して、それぞれの学歴を獲得していく戦後日本の学校制度。その仕組みを根本から変えようと、2012年に政権与党に返り咲いた自民党は「平成の学制大改革」を掲げ、安倍晋三首相が意欲を示す。なぜいま、学制改革なのか。 ■戦後 義務教育以降の道、平等に 義務教育の小・中学校から高校、大学へと進む6・3・3・4制が定まったのは、日本が米国の占領下にあった1947年のことだ。その年の2月15日付朝日新聞の1面には、こんな見出しが躍っている。「六・三制即時実施せよ 特権階級から教育開放 南原氏質問」。論戦の舞台は、帝国議会本会議。45年の終戦直後に東京帝大総長となり、吉田茂首相直属の教育刷新委員会で学制改革に取り組んだ貴族院議員の南原繁氏が、吉田首相に改革断行を迫った。議事録によると、南原氏はこう切り出した。「最も重要な一つの分野が取り残されている。それはほかならぬ、教育に関する改革の問題であります」。その前年、米国教育使節団が教育の機会均等を基本理念とした報告書をまとめた。柱は6・3・3・4制と、無償の義務教育を6年から9年に延ばすこと。戦前は一握りの特権階級のためだった高学歴への道を、すべての子どもに開くものだった。南原氏は「祖国再建の成否は国民の新しき教育にある」と訴え、財政難で動きが鈍かった政府の背中を押した。「もしも政府が財政上の理由からこの実現を遅らせるということがあるならば、国民国家にとって極めて大なる損害と不幸と思う」。吉田首相は「実現に努める」と応じ、翌年度からのスタートが本決まりに。3月には教育基本法や学校教育法が公布された。戦後の混乱期で学校整備は難航したが、新しい教育への国民の期待は大きかった。帝国議会は46年に「渾身(こんしん)の努力を教育の再建に傾注しなければならない」と政府に求める決議を採択。各地では学校再建のための募金活動が広がっていた。戦前の義務教育は6年間の初等教育のみ。そこから先の高等教育への道は、複雑で階級的な「複線型」の狭き門だった。帝国大学を頂点に、旧制高校や旧制中学、高等女学校、高等小学校、実業学校(職業学校)、師範学校(教員養成)などに分かれ、年限もバラバラだった。それが戦後、みんなが同じように階段をのぼるシンプルな「単線型」に変わった。憲法は、国民が等しく教育を受ける権利を有することを明記。すべての子どもが平等に教育を受け、高等教育への道をめざせるシステムができあがった。 ■現在 脱「6・3・3」へ、首相意欲 安倍首相(自民党総裁)は3月3日の参院予算委員会で、学制改革への意欲を表明した。「戦後の6・3・3制をもう一度見直そうと、学制の大改革にもいま挑戦し、議論をしているところだ」。自民党教育再生実行本部の「平成の学制大改革部会」が昨年5月にまとめた提言は、6・3・3制を弾力化し、4・4・4制や5・4・3制などへ移行することをうたう。小中一貫の義務教育学校(仮称)の創設や、後期中等教育の複線化に向けて5年一貫職業教育の検討も明記した。これも踏まえ、首相直属の教育再生実行会議は昨年10月から、学制の見直し論議をスタートさせた。安倍首相は悲願とする憲法改正をはじめ、米国の占領時代に土台が固まった戦後レジーム(体制)からの脱却を掲げてきた。いまの学制改革論議も、その流れに沿ったものだ。これまでも大規模な学制改革を唱えた提言はあった。1971年、文部相の諮問機関だった中央教育審議会(中教審)による通称「46(よんろく)答申」だ。答申は「敗戦という特殊な事情のもとに学制改革を急激に推し進めたことによる混乱やひずみも残っている」とし、4・4・6制への移行を念頭に、幼児学校や中高一貫の先導的導入を提言した。だが、これには学校現場などから「国民の十分な信頼のもとにすでに安定している小学校教育をなぜ変えようとするのか」と強い反発が起き、答申はたなざらしになった。それから40年余。安倍首相は「(いまの学制が)子どもの発達段階に即したものになっているか、能力や個性に柔軟に対応できるものになっているかなど、改めて問い直す時期」としつつ、「幅広い観点から丁寧に議論を重ねていくことも必要だ」と慎重に進める構えも示す。(編集委員・前田直人) ■子どもの個人差イメージして 国立教育政策研究所総括研究官・山森光陽さんに聞く 学校の制度改革を考えるとき、私たちはどんな点に注意したらいいのか。教育心理学が専門で、学級規模の研究に取り組む山森光陽(こうよう)・国立教育政策研究所総括研究官に話を聞いた。 ◇ 教育心理学は、子どもがどうなるのかを研究対象とした学問です。制度が子どもに与える影響を研究していますが、その影響は個人差によって様々です。私が研究している学級規模についても同様で、少人数学級を実施してもそれがクラスの全員に同じような効果があるとはいえません。進級・進学の制度がどんな影響を子どもたちに与えるのか、答えは簡単には出ません。6・3・3・4制改革にしても「大事なところだからつなげる」「大事なところだから切る」という両論があり得ます。発達段階は、全員が同じというわけではない。また、子どもが制度の変化を経験することでどういう影響があるのかを考えることも必要でしょう。飛び級は、一定の学力がついたかを重視する修得主義的な発想です。明治の前期は修得主義で、いわゆる等級制で同じ級にいろんな年齢の人たちがいました。その後、一定期間の就学を重視する履修主義となって次第に学級は同一年齢の集団になり、以降、先生が工夫を積み上げてきたわけです。それぞれ利点と難点があって、折り合いをつけるのは難しいと思います。昔と今で子どもを取り巻く環境も変わりました。学校の制度をめぐる議論が出ることは自然なことです。子どもたちは先生の指導の仕方から影響を受けます。制度は先生を介して間接的な効果をもたらすものですから、先生が授業しやすくなるかどうかも大事。子どもに優しい視点と言ったらいいのでしょうか。子どもの立場に立って、個人差をイメージしていくことが大切だと思います。 ■学歴偏重、見えぬ是正策 教育機会の均等をめざした戦後の学制のもとで新たに生まれた社会問題が、受験競争を過熱させる学歴社会の弊害だった。1966年、ソニー創業者の盛田昭夫氏が学歴社会を批判する「学歴無用論」を著した。「政府も人づくりと言えば、大学さえつくればいいということになり、駅弁大学という言葉が生まれるほどに大学を設けるし、大学の名前で一生が決まるという、不可解な現実が、この恐るべき試験地獄をつくりあげてしまった」。中教審も66年の答申で「学校中心の教育観にとらわれて社会の諸領域における一生を通じての教育という観点を見失ったり、学歴という形式的な資格を偏重したりすることをやめなければならない」と指摘した。是正に乗り出そうとしたのは、首相直属の臨時教育審議会をつくった中曽根康弘元首相だ。1986年1月、国会で、こう答弁している。「偏差値教育の問題は学歴偏重の社会的風潮、過度の受験競争といういろいろな問題が絡み合っている。そういう面についてメスを入れていかなければ、抜本的改革はできない」。臨教審は学歴社会の弊害の是正策として、生涯学習、学校教育改革、企業・官公庁の採用改善の3点を指摘。受験競争の過熱や偏差値偏重、詰め込み教育を改めようとした中曽根政権の問題意識は「ゆとり教育」へとつながった。しかし、学歴偏重をめぐる議論は次第に下火に。のちに「ゆとり教育」は学力低下を招いたとの批判を浴び、第1次安倍政権も「脱ゆとり」の流れを加速させた。学歴社会の弊害をどうただすかという問いかけへの答えは、出ていない。 ■自民党教育再生実行本部「平成の学制大改革部会」提言(要旨) 結果の平等主義から脱却し、社会状況や子どもの実態等に応じて、学校制度を多様化・複線化 【1】幼児教育の無償化の実現 すべての3~5歳児に充実した幼児教育を提供 【2】6・3・3・4制の見直しと義務教育の充実 新たな学校体系への移行を目指し、6・3・3制を弾力化。4・4・4、5・4・3など新たな学校区分へ移行▽小中一貫校「義務教育学校(仮称)」の制度を創設▽小中高一貫教育、義務教育の早期化の検討▽学び直しのための体制整備、飛び級・高校早期卒業の制度化などにより、個人の能力・適性に応じた学びの保証システムを実現▽先導的取り組みに対する財政支援を創設 【3】後期中等教育等の複線化 専門高校等を活用した5年一貫職業教育(目標200校)の検討▽普通高校と専門高校の適正比率の検証 ■飛び級「賛成」51% 朝日新聞社が2月15、16の両日実施した全国定例世論調査(電話)で、成績が優秀な子どもが学年を飛び越えて進級する「飛び級」を義務教育で認めることへの賛否は、賛成が51%で反対の38%を上回った。 PS(2014.4.22追加):*2のように、全国学力テストの①全員参加方式が復活 ②学校別の成績については各学校の判断だったが、区市町村教委の判断で公表が可能になった ③文科省は条件付きで区市町村教委が学校名を示した成績を公表できるよう実施要領を改めた といういずれにも驚く。何故なら、①については、全員参加して調査しなければ正確な状況はわからず、日本国内での比較もできないからだ。本来は、正確な状況を把握した上で、その原因を究明して改善すべきである。また、②については、これまで学校別の成績は公表しなかったのは何のためか思うが、学校は子どもの教育のためにあることを忘れてはならない。さらに、③については、文科省もそれを黙認し、「過度の受験競争」をやめるとして「ゆとり教育」に進ませたが、中高一貫の進学校から東大を卒業した都市部出身の文科省官僚の場合はそうでも、地方では、ただでさえのんびりしていたので、それ以上「ゆとり」や「脱競争」でのんびりすれば、必要な学力もつかないだろうと思っていた。 *2:http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/news/20140422-OYT8T50315.html (読売新聞 2014年4月22日) 成績公表解禁、「学テ」始まる…224万人参加 今年度の全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)が22日朝から始まった。昨年度に全員参加方式が復活してから2度目の実施で、国公私立の小6、中3の計約224万1000人が、国語、算数・数学の、それぞれ基本問題(A)と応用・思考力をみる問題(B)に臨んだ。参加するのは、国公立は計3万186校。私立は457校で全体の47%だった。全国学力テストについては、今回から、学校別の成績について区市町村教委の判断で公表が可能になっており、どの程度情報公開が進むか注目される。これまでは、区市町村別の成績については区市町村教委の判断で公開可能とし、学校別は、各学校の判断としていた。だが、文科省は昨年11月、条件付きで、区市町村教委が学校名を示した成績を公表できるよう実施要領を改めた。保護者のニーズがあり、各校での改善策につながると判断した。
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2014,03,21, Friday
檜(ヒノキ)林 杉林 竹林 松林 (1)クールでスマートな木材の利用をするには? 木材は、戦後の植林事業の成果が出て、現在では、日本に豊富な資源となっているが、住宅や家具は国産の木材をあまり使わない構造になってしまっているため、*1のように、林野庁が後援し、佐賀新聞社と全国地方新聞社連合会が主催して、「木材の利用を考えるシンポジウム」を開かなければならないくらいの状況だ。 そして、利用されなければ、木材の販売価格は安くなるため、間伐などの手入れも進まず、公費で補助して間伐しても、労賃を節約して間伐した木材を搬出せずに放置するようなもったいないことをしている。しかし、林業を付加価値の高い産業にすれば、森林資源の多い地方が元気になるので、クールでスマートな木材の利用を進めたいわけだ。 (2)どうやって利用方法を開発すればよいか 1)大学で取り上げるのが有効 では、どうやってクールで、スマートで、高付加価値の木材の使用方法を開発するかについては、このような状況を理解した上で、大学が、基礎研究と人材育成を行うのがよいと思う。 *2のように、佐賀大学は、佐賀県立有田窯業大学校を統合し、「有田」「唐津」といったブランド力の高い焼き物産地として、次代を担う作家を養成し、創作をビジネスにつなげる経営感覚を持った人材を育てて窯業を支える拠点になることを目指し、「芸術学部」を2016年4月から新設するそうだ。焼き物の場合は、今後、化学・工学などの最新技術も採用していかなければならないため、総合大学が技術を担う拠点となり、学生に幅広い知識や技能を習得させて、大学卒・大学院卒の資格を与えるのがよいと思う。 それと同様に、木材の利用でも、建物、家具、漆器など、工学部の先端技術と芸術学部の芸術の両方の要素が必要であるため、大学で取り上げるのが有効だと思う。その結果として、イタリアはじめ外国製の家具や建物のように、世界の人を惹きつける製品を作るべきである。 2)産業での利用を進めると大量消費できるが・・ 木材も、一定の産出量が見込めれば、産業で積極的に利用できる。その目的で、林野庁は、持続可能な木材利用を進めるためには、どの地域で、どの品種の木材を、1年間にどのくらい伐採と植林すればよいかについて、概算でもよいから公表すべきだ。何故なら、その数字が出れば、後は、いろいろなアプローチができるからである。 *1:http://www.saga-s.co.jp/news/saga.0.2649734.article.html (佐賀新聞 2014年3月20日) 地元産木材の利用考える 29日、シンポ 地元産木材の利用を考えるシンポジウム「木で、未来をつくろう!in佐賀県」(佐賀新聞社・全国地方新聞社連合会主催、林野庁など後援)が29日午後1時半から、佐賀市の佐賀新聞社で開かれる。地元産利用が豊かな森林資源づくり、地域活性化につながることを学ぶ。入場無料。林野庁地域木材情報分析官の西林寺隆さん、県優良住宅建設事業者協議会の野口博会長が講演。国の制度、地元産材利用の現状などを紹介する。パネル討論には佐賀新聞社の田中善郎論説委員長ら4人が加わり「佐賀県における地域材利用、現在と未来」をテーマに意見を交わす。国の木材利用ポイントを活用した事例も紹介する。 定員100人。はがきに郵便番号、住所、氏名、年齢、電話番号を明記し、〒840-8585 佐賀新聞社事業部「地域材利用に関するシンポジウム」係へ。25日必着。電話やファクス、メールでも受け付ける。電話0952(28)2151、ファクス0952(29)4709、メールmokuzai@saga-s.co.jp *2:http://www.saga-s.co.jp/news/saga.0.2649610.article.html (佐賀新聞 2014年3月20日) 佐賀大「芸術学部」新設へ 有田窯大を統合 佐賀大は19日、「芸術学部」を2016年4月から新設する構想を発表した。県立有田窯業大学校(西松浦郡有田町)が同大に統合されるのに合わせ、「有田」「唐津」といったブランド力の高い焼き物産地として、次代を担う作家を養成するとともに、創作をビジネスにつなげる経営感覚を持った人材を育て、窯業を支える拠点づくりを目指す。構想では、芸術学部は定員110人を予定。現在の文化教育学部の美術・工芸課程を引き継ぎ、新たに創作活動の産業展開などを学ぶ芸術マネジメントのコースも開設する。統合される有田窯大を「有田キャンパス」として、学士号が取得できる定員20人程度の「有田セラミック専攻」を設ける。また、最先端のICT(情報通信技術)を活用したデジタルアート教育も充実させる。新学部創設に伴い、文化教育学部は「教育学部」に再編、教員免許取得を義務付けない課程(新課程)を廃止し教員養成機能に特化する。これまで定員90人だった学校教育課程を120人に増員。小中学校の教員養成だけでなく、発達障害支援や特別支援教育の専攻を設け、教職大学院の設置も計画している。文部科学省が昨年6月、国立大の教育学部にある新課程を廃止する方針を打ち出したのを受け、佐賀大は対応を検討。同11月に有田窯大を事実上統合することで県と合意したことから、芸術に特化した学部創設を念頭に同省と学部再編の協議を重ねてきた。14年度中に学部新設などを同省に申請、翌15年度の認可を目指す。廃止される新課程(定員150人)は14年度に行う入試を最後に募集を停止する。学部再編は法人化前の旧佐賀大で1996年に文化教育学部を設置して以来。芸術学部や教育学部の入試方法などは4月中に公表する。佛淵孝夫学長は「美術・工芸課程の歴史と実績や美術館という大学の強みを生かし、伝統工芸、観光などとも結び付けて今までにない芸術学部になる。県と一緒に世界の窯業の拠点化を目指したい」と話した。 ★解説★「地域密着」構想 色濃く 芸術学部の新設を柱とした佐賀大の学部再編構想。背景にあるのは国が進める国立大学改革の流れだ。少子化に伴う「大学全入時代」を迎え、特色や強みを生かした個性的な戦略づくりと機能強化を図らなければ生き残れない、大学側の強い危機感がにじむ。文科省は改革の一環として、学力向上や教員の専門性を高めるため、教育学部の教員養成課程の強化を打ち出す一方、少子化に伴う採用枠の減少を背景に設置された教員免許取得を義務付けない新課程の廃止を求めている。学生の定数減に直結する問題だけに、各大学が対応に苦慮する中で、佐賀大は有田窯大の統合を好材料に、何とか学部再編の道筋をつけた形だ。景気回復の兆しが見えつつあるとはいえ、厳しい価格競争にさらされ、構造不況にあえぐ窯業界を、大学という「知の拠点」からどう支援していくか。新学部の果たす役割に期待が集まる一方、教員養成に特化される教育学部も卒業生の県内での教員採用を増やす目標を打ち出すなど、構想は「地域密着」が色濃い。改革は今後、理工学部や農学部の再編も視野に入れる。県内唯一の国立大として、自ら掲げる「地域に必要とされる大学」の実現に向け、主体的な機能強化が求められている。
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2014,03,16, Sunday
今日は簡単な話ですが、佐村河内守(新垣隆)さんの音楽の評価について、私は、変だと思っています。その理由は、佐村河内守氏が、両耳の聴力を失った作曲家として音楽を売り込んだにもかかわらず、それが嘘だったという佐村河内氏個人の人格だけが批判されているからです。 しかし、音楽の良さに関する評価は、作曲家個人の人格や背景とは関係なく、作者不詳の曲でも人の心を打つものは良いし、良くないものは残りません。また、ベートーベンの曲も、作者が難聴から全聾になった人だから残っているわけではなく、優れた曲を作曲した人が難聴から全聾になった人であるため、作曲された背景から、重厚な音楽の意味が、さらによく理解されたにすぎません。 そのため、佐村河内守(新垣隆)さんの音楽の評価を、作者が難聴ではなかったということで変えた人には、どういう基準でよい音楽か否かを決めているのかを、私は聞きたいと思います。 よくない音楽でも、難聴のふりをして大量に売ったのなら、佐村河内守氏は、(もちろん嘘はよくありませんが)音楽の真の価値がわからず、情に訴えるストーリーに弱いという日本人にありがちな人の弱点を知って、それを販売に利用したのだということになります。そして、その音楽が、実際には価値のないものであったのなら、*1のNHKはじめ、その音楽を推薦した人やよい音楽だと思ってCDを購入した人の音楽に対する評価力も問われる筈です。 *1:https://www.nhk.or.jp/special/detail/2013/0331/ 『2013年3月31日(日) 午後9時00分~9時49分総合』 魂の旋律 ~音を失った作曲家~ NHKスペシャルでは、去年3月31日、「魂の旋律~音を失った作曲家~」と題し、両耳の聴力を失った作曲家として、佐村河内守氏を紹介いたしました。しかし放送当時、本人が作曲していないことや全聾ではなかったことに気づくことができませんでした。視聴者の皆様や、番組の取材で協力して頂いた方々などに、深くお詫び申し上げます。なぜこうした事態を防げなかったのか、調査の結果をご報告いたします。
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2014,02,19, Wednesday
正規分布 子ども園 小学校 *1は東京都の課題だが、わが国の大都市ではだいたい同じ課題が山積している。そして、このように重要なことが今まで解決されなかった理由は、①戦後の男女共学教育の下で働く能力を十分に身につけた女性の存在を、「少数だから」と無視する人が多かったこと ②核家族化の進行による負担は女性の犠牲的労働で賄えばよいとする意見が多かったこと ③その結果、家事・育児・介護は女性の無償労働という考え方を見直す動きがあまり出なかったこと などが挙げられるだろう。 しかし、次の時代に常識となる行動は、最初は上図の正規分布のA領域にいる少数の人から始まって次第に広がっていくものである。そのため、「少数だから」という理由で無視するのは根本的に間違いであり、政策の取捨選択は、公正性と先見の明によって行うべきだったのだ。 (1)幼児教育について-子を保育園に預けている親も幼児教育が不要だとは思っていない そのような中、現在、0歳~小学校就学までの子どもは、保育所(管轄:厚労省)、幼稚園(管轄:文科省)、認定子ども園(管轄:都道府県)が担当している。そして、両親が働くためには、勤務時間中に子どもを預かってもらうことが必要であるため、*2-1、*2-2のような保育所に預けることになる。 現在、保育所は、保護者が働いているなどの何らかの理由で保育に欠ける児童を預って保育する施設とされており、幼稚園は、満3歳から小学校就学までの幼児を預かり、適切な環境を整えて心身の発達を助長するための教育施設とされている。しかし、子どもを保育所に預けている親も、適切な環境と子どもの発達を促す教育が不要だと考えているわけではなく、狭い部屋に詰め込まれている子どもの心身の発達には問題を感じている。一方で、幼稚園は、専業主婦の減少とともに空きが多くなった。 そのため、保育所も教育機能を持ち、幼稚園も預かり機能を持てばBestだったのだが、これは監督官庁が異なるということで、私は、1995年に初めて提案し衆議院議院だった2005~2009年にもやったができなかった。そのかわり、保育所も幼稚園も、認定基準を満たす施設は、都道府県知事が「認定こども園」の認定を行うことができるようになり、預かり機能と教育機能の両方を有する施設ができたのである。従って、認定子ども園の利用者は、保育園児として入園しても幼稚園児と同じ教育が受けられるので、東京都などの地方自治体は、質と量の両方を充実できる、この制度を推し進めればよいと考える。 (2)初等・中等教育について-「ゆとり教育」は、先生のための「ゆとり」だったのでは? *3-1に書かれているとおり、政府の教育再生実行会議が、義務教育の開始年齢を5歳からに早める案を検討している。これに反対する人もいるようだが、イギリスの義務教育は5歳から始まる。私は、①義務教育の無償性 ②早期の語学教育や幼児教育の必要性 ③ゆっくり、しっかり学べることの有効性 などの観点から、イギリスと同様、5歳からにするのがよいと思う。 また、「ゆとり教育」により、公立学校で勉強する内容が減ったことについては、私立や塾に行けない家庭の子どもは学業のチャンスが奪われ、親は子どもの勉強について心配と教育費用が増えた。そのため、グローバル経済の現在、*3-2のように、公立学校で学べば、国内の大学の入学試験に合格できるだけでなく、海外留学や海外での仕事も容易にできる基礎学力が身に着くようにすべきである。 (3)学童保育と補習 *3-3のように、北九州市教委が、新年度、希望者を対象に放課後の校内で、国語と算数や数学を教える学習塾事業を始めるそうだ。学習塾は放課後の空き教室を利用して、講師は教員OBや大学生から募るそうだが、これは、質の高い学童保育の一部として、できない子(上図E領域の子)には落ちこぼれ防止効果があり、できる子(上図A領域の子)にはさらに上の段階の勉強を教えるのがよいと思う。そして、現在は不備も甚だしい学童保育も、このような質の高いものを十分に提供することが重要である。 (4)広く才能を開拓しなければ、国の発展はない 科学技術の研究を行い、それを評価して経営を行ったり予算をつけたりする事例を考えれば、国の底力は、それを担う国民全体の知識レベルや質の高さに依存することがわかる。また、付加価値の高い製品やサービスを作り出し、国民の幸せに繋げるためには、上図の正規分布で言えば、A領域の人だけではなく、A~E領域のすべての人の総合力がものを言うのである。 小学校 総合学習 社会 *1:http://mainichi.jp/opinion/news/20140203k0000m070082000c.html (毎日新聞 2014年2月3日) 都知事選と福祉 若者がいなくなる前に 政治や経済の中心というだけでなく、東京は1300万以上の人々が暮らす場所でもある。介護や子育てに有権者の関心が高いのは当然だ。しかし、これまでの都政が福祉に熱心だったとは言い難く、今回の各候補者の福祉政策も総じて物足りない。もっと具体的な議論が聞きたい。高齢者福祉では医療や介護の必要が高まる75歳以上がどのくらい増えるのかが重要だ。東京では2010年から30年まで前期高齢者(65〜74歳)の数はさほど変わらないが、後期高齢者(75歳以上)は127万人から211万人へと大幅に増える。このままでは深刻な病院不足、介護サービス不足に陥る。適切な対策を講じないと若年層も東京で暮らせなくなる日がやってくる。家族の構成人数が少なく、高齢者の独居や夫婦のみ世帯が多いことが東京の特徴だ。高齢者は持ち家率が高いが、高齢者のみの世帯は借家暮らしが3〜4割もある。地価が高く介護施設の新設は難しいが、その一方で空き家が約70万戸もある。財政も比較的恵まれており、都心では独自の手厚い介護サービスもある。こうした東京の特性を反映した福祉ビジョンが必要だ。もう一つ注目すべきは、親族の介護のため離職や転職をする人の8割以上が女性、要介護認定を受けて介護保険サービスを利用している人の7割以上が女性ということだ。つまり、男性は妻や娘に介護される人が多いが、長生きする女性は介護をしてくれる家族がなく、公的介護サービスに頼る割合が高くなる。最近増えているサービス付き高齢者向け住宅は家賃と食費だけで毎月10万円以上が必要だ。在宅でも要介護度が高くなれば長時間の介護サービスが必要になり、自己負担が増える。給付額の少ない国民年金しかない女性はどうすればいいのだろうか。少子化や子育て対策も急務だ。東京の出生率は1.09しかなく、全国平均(1.41)を大きく下回る。一方、全国で最も保育所の待機児童が多いのが東京だ。もともと都市は死亡率が高く出生率が低い。地方から人々が移ってくることで都市の人口は維持されている。だが、全国的に現役世代の人口が減っており、いつか東京に移入する人数が確保できなくなる時代がやってくる。負担の重さを嫌って東京から地方へ移住する人も増えるだろう。東京で暮らす現役世代の女性が安心して結婚し子供を産めるような政策が今ほど必要な時はない。今回の立候補者16人は全員が男性。介護や子育てに関する公約が新鮮味や具体性に乏しいのはそのせいだろうか。危機感を持って巨大都市の暮らしをどうするのか語ってほしい。 *2-1:http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2014021802000103.html (東京新聞 2014年2月18日) 認可保育所、一刻も早く 杉並区役所前 母親ら40人抗議 東京都杉並区の認可保育所に四月からの入所を申し込み、選考に漏れた区内の母親ら約四十人が十七日、区役所前で抗議集会を開いた。二十一日には、行政不服審査法に基づく異議申し立てを集団で行う。杉並区では新年度、認可保育所に三千二百五十七人が申し込み、認可保育所に千三百九十人が、区保育室に四百二十三人が内定。申請を取り下げた二十八人を除いた千四百十六人が選考から漏れた。入所の可否は十三日に通知した。区は、待機児童対策で認可保育所のほかに認可外の施設も組み合わせて対応しているが、認可保育所の希望者が多い。母親らはマイクを手に「保育士や施設の面で安心して預けられる認可保育所を増やして」などと訴えた。集会を呼び掛けた母親グループ「保育園ふやし隊@杉並」事務局の島恵子さん(40)は「区も努力しているが、認可保育所に預けられない親が大勢いる。都や国と連携し対応してほしい」と話した。昨年四月に、最終的にどこにも入れなかった待機児童数は二百八十五人。区は昨年度、認可、認証保育所整備などで受け皿を計約一千人分拡大したが、ゼロ、一歳児の入所希望や働く女性の増加で、ことし四月の待機児童解消は難しい状況にある。集会に先立ち、田中良区長は十七日午前の区議会で「新年度も認可保育所を核に六百人超の定員を確保する」と、保育施設の整備を進める方針を示した。 *2-2:http://www.nikkei.com/article/DGXNZO66955260X10C14A2L83000/ (日経新聞 2014/2/18) 東京23区の保育定員を1万人増 東京23区が相次いで保育サービスを強化する。各区の保育所定員を集計したところ、2014年4月1日時点の定員数は、1年前に比べて1万人以上増える見通し。ただ、都心では子育て世代が増え続けており、待機児童の解消にどの程度つながるかは未知数だ。「スマート保育の施設数は23区では最多となる。今後も広域に整備し、待機児童の解消を急ぐ」と話すのは板橋区の担当者。13年4月1日の待機児童数はその前年度比約2割増の417人。このうち98%が0~2歳児だ。このため0~2歳児が対象で定員19人以下の小規模保育所に東京都が独自に補助する「スマート保育」施設を大幅に拡充する。スマート保育は、認可保育所などの基準から外れる6~19人を預かる保育施設。ビルの空き室などを活用するため低予算で素早く開設できるのが特徴だ。4月に計20カ所と現在に比べ17カ所増やす。 江東区は14年度にマンション大手など民間企業の保育所12園の新設を補助金で後押しし、保育所定員を1088人増やす。1年間で2ケタを超す保育所の整備は過去最多。豊洲や有明など同区の湾岸部ではマンションの建設計画が相次ぎ、保育所併設を促すことで待機児童解消につなげる。 豊洲6丁目では三井不動産などが建設中の1千戸超の超高層マンションに定員120人の園を併設する。有明1丁目でもマンション併設で定員91人の園の整備を計画しており、区内の総定員数は10%増の1万1923人になる。園の新設を支援する補助金総額は約16億円。 品川区は14年度中に定員を406人増やす計画。用地不足などで民間の保育園新設が伸び悩んでいることから、国有地を活用した整備に着手する。南品川国家公務員宿舎跡地に定員80人の私立保育園の整備を計画し、建設・運営する民間事業者を公募で選定中だ。 港区は14年度の保育定員を1371人増の5728人とする。私立の認可保育所が13園開園することなどが寄与し、過去最大の定員拡大となる。 全国の区市町村で待機児童数が最多の世田谷区は14年度から、保育所の運営事業者が支払う土地賃借料への補助金の支給期間を3年程度から20年に延ばす。初期投資だけでなく、長期間にわたる運営費にも補助することで、民間が保育事業を始めやすいようにする狙いだ。保育所を整備するための民有地を区が借り上げ、運営業者に転貸する制度も始め、保育所の整備を加速させる。同区の保育サービスの予算は14年度に前年度比27%増の約208億円と、過去最大規模の予算を配分する。 ただ、都内の保育需要は年々増加を続けている。港区の今年1月時点の待機児童は294人だが、4月の大量開園でも待機児童がゼロになるかどうかは微妙な情勢だという。新宿区の中山弘子区長も「保育定員は増やしてはいるが、新たな申し込みも増えており、待機児童を減らせるかは何とも言えない状況」と懸念を示す。 *3-1:http://www.saga-s.co.jp/news/global/corenews.0.2636419.article.html (佐賀新聞 2014年2月19日) 5歳から義務教育で両論 / 政府の教育再生会議 政府の教育再生実行会議(座長・鎌田薫早稲田大総長)は18日、首相官邸で会合を開き、義務教育の開始を5歳からに早める意見と、慎重な検討を求める声の両論が出た。幼児教育の充実が必要との認識では一致した。昨年秋に始めた「6・3・3・4」の学制見直し議論の一環として、この日は9年間の義務教育期間の妥当性をテーマに意見交換した。義務教育の開始時期をめぐっては、戦後間もない時期と比べ子どもの成長が早くなっているとして1年早めるよう求める声が出た。一方「開始時期は保護者の意向に任せるべきだ」との意見もあった。 *3-2:http://digital.asahi.com/articles/ASG243FWJG24UTIL00K.html?iref=comkiji_redirect&iref=comtop_list_edu_n02 (朝日新聞 2014年2月4日) 小中高の英語教育検討 有識者会議委員に三木谷氏ら 文部科学省は4日、小中高校での英語教育を検討する有識者会議を設置し、発表した。委員は英語を社内公用語とした楽天の三木谷浩史社長や、予備校講師の安河内哲也氏ら11人で、今月中に初会合を開く。各学校段階の到達目標やクラス編成方法、必要な教材開発などを検討し、秋までに報告書をまとめる。下村博文文科相は4日の記者会見で三木谷氏の起用について、「直接、私からお願いした。大臣就任直後から強く私に、英語教育を学校教育にしっかり入れるべきではないかと(話された)」と説明した。 *3-3:http://qbiz.jp/article/32028/1/ (西日本新聞 2014年2月12日) 北九州市教委が小中学校で塾開講 教員OB、大学生を講師に 北九州市教育委員会は新年度、市内の小学3〜6年と中学3年の希望者を対象に、校内で放課後、国語と算数、数学を教える学習塾事業を始める。市内の小中学校全192校のうち、まず約40校で実施する。同市は全国学力テストの正答率が全国平均を下回っており、学力の底上げを図る。学習塾は放課後の空き教室を活用。講師は教員OBや大学生から募り、教員免許の有無は問わない。小学校が6月、中学校は7月からそれぞれ週2回、約1時間ずつ、文章の読解力や漢字、九九や掛け算、分数などの基礎を無料で教える。総事業費は約7千万円。北九州市は昨年4月の全国学力テストで、国語と算数、数学の全科目で全国平均を1・7〜3・4ポイント下回った。高知県が同様の取り組みで学力テストの正答率を上げており、九州でも福岡市や熊本市が既に実施している。市教委は「学力アップのほか、学習習慣そのものを身に付けてもらいたい」としている。 PS(2014年2月20日追加):*4のように、大企業か中小企業かを問わず、グローバルな展開の可否は、ビジネスの成功に大きく影響している。 *4:http://qbiz.jp/article/32468/1/ (西日本新聞 2014年2月20日) 【わが社のアジア戦略】本多機工 国際的人材がニーズに対応 社内のグローバル化を目指したきっかけは、かつて、自分の机に積まれた外国語の書類の山だった。産業用ポンプを受注生産するメーカーで、龍造寺健介社長の入社は1998年。当時、輸出先から部品の注文があっても回答できる語学力を持つ社員は少なかった。米国に23年住んだ龍造寺氏に、書類の処理が回ってきた。「これだけニーズがあるのに。もったいない」。書類の多くは輸出を担う商社に送ったが、得意先に部品が届くまでの間に仲介者が増えれば価格は上がる。安価な海外製に切り替えられてしまう恐れもあった。経済成長著しいアジアでは、工場の心臓部といえるポンプの需要は増すばかり。アフターケアで輸出先とメーカー側が直接やりとりできれば、需要を十分に取り込めるはずだと読んだ。 龍造寺氏は、義父が創業した会社を継いで2005年に社長に就任。06年に福岡市内に国際事業本部を設立し、九州にいる留学生や、外国語が堪能な日本人を含めてグローバル人材を積極的に採用し始めた。入社後は技術営業者としてインドや中国、インドネシア、タイなどに派遣。海外26社のビジネスパートナーと連携し、各国で需要を掘り起こしている。納品後はメンテナンスについてのやりとりも担った。「国際事業本部は福岡空港のすぐそば。何かあればひとっ飛びで行けます」。外国人社員は15人に増えた。海外の売上高は90年代後半、全体の20〜30%だったが、現在は60%に伸び、その大半がアジア向けだ。製品への評価も高まっている。世界で初めて、直径0・05ミリ以下の小さな気泡を発生させて排水を浄化する装置を開発した。環境問題に悩むアジア各国に売り込みを図っている。龍造寺社長は「外国との懸け橋となる人材と、オーダーメードの強みを生かしていきたい」と意気込んだ。
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2014,01,06, Monday
*1より *2より *5より (1)日立の半導体がつまずいた理由と企業レベルの解決策 *1に書かれているように、日立の半導体部門がうまくいかなかった理由は、確かに「日立の本流である重電部門の文化と新興の半導体部門の文化の衝突」であろう。そして、こういう会社は多く、その理由は、実直に同じことを繰り返すべき事業部門と、刻々と変化する市場を前に市場競争をし続けなければならない事業部門とでは、求められる人材、あるべき労務管理、経営意思決定が異なるからである。しかし、同じ会社で事業を行うと、労務管理規定や採用・労働条件を同じにしなければならず、経営意思決定にも手間取るため、刻々と変化する市場競争に直面している事業部門は敗退するのだ。 それを解決するには、異なる性格の事業を行う会社は、別会社として持株会社の下につけるのがよい。何故なら、別会社にすることにより、それぞれの事業会社で事業の実情に合わないことを言う役員を説得する必要がなくなり、迅速な経営意思決定を行うことができるため、変化への対応が速くなるからだ。また、その事業に適した労務管理を行うこともでき、会社が小さくなることによって職階数が減るため、経営者が現場と近くなって情報のフィードバックが正確で速くなるという利点もある。別会社化の成功例は、固定電話のNTTとNTTドコモ、NTTデータである。 なお、純粋持株会社は、私の提言により、1997年6月に「原則解禁」とする改正独占禁止法が成立し、わが国でも解禁された。しかし、同一会社の別部門で事業を行うよりも、別会社で事業を行う方が、連結納税制度(http://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/corporation/094.htm参照)が適用できなければ、課税上、不利である。そのため、連結納税制度は、100%子会社・孫会社だけではなく、その他の子会社・関連会社にも持ち分に応じて適用されるべきだし、地方税でも適用されるようにすべきである(http://www.renketsu-nouzei.jp/knowledge/local/article000022.html参照)。 (2)エコ化技術、スマート化技術に対する制度上の受入が遅い理由と国レベルの解決策 *1の日立の事例は、半導体に関するものだったが、*2、*4のように、半導体の需要先であるエコ化やスマート化などの技術が社会で受け入れられるには、20年以上の歳月を要した。また、*3の今後のスケジュールなどは、遅すぎて論外である。太陽光発電や電気自動車が最初に開発されたのは20年以上前の日本だが、その受入には抵抗が強く、制度上の支援がないため、実際に前に進み始めたのは他国が進めた後であり、技術の先進性は活かされなかったのだ。 何故、そうなるのかと言えば、その理由には、①官僚主導の政治は変化を嫌い、外国がやったから仕方なく遅れないようにやるという形をとること ②役所は護送船団方式をとるため、国内の最後尾の速度に合わせられること ③役所を中心とする既存のグループが抵抗勢力となること などがある。しかし、その根源的な問題は、役所や企業のリーダーに多い法律系、経済系の大学教育にあると言われる。 つまり、法学部では、「法律を作れば社会はそれに従う」と教えるが、自然現象や市場経済は、人間が法律で定めたからといってそれに従うわけではない。また、「バランスを大切にせよ」とも教えるが、バランスをとると先進的なものも抑制される。さらに、経済学部の経済学教育は、外国の書物を和訳して読んでいるだけで、(理科系では当然の)実証することの重要さを教えていない。経済学は、人間を中心として起こる現象を数値化して解析し、解説すべきものであるから、その時代の人間の動きを、実証主義で見つめるべきであり、経済学部は、それにふさわしい学生を入学させて、そういう教育をすべきなのだ。 (3)交通機関は排気ガスを出すべからず 「交通機関は、迅速に排気ガスを出さない体系にすべきだ」と書くと、必ず「現実的でない」「机上の空論だ」「バランス感覚がない」などの批判が浴びせられるが、これが、科学オンチの文科系の欠点であり、日本の技術進歩を阻害している要因だ。 また、*5には、大量の重油を使って動いていた船を、やっと風と重油のハイブリッドで動かす研究が始まったことが記載されているが、風向きが適さない時にはその風で発電して、電気で船を動かすのがよいと、私は思う。それで足りないエネルギーは水素を使って欲しい。何故なら、これは、大量の船が往来する21世紀に、空気や海を汚さないための必要条件だからである。 *1:http://www.nikkei.com/article/DGXDZO64880830U4A100C1TY8001/?dg=1 (日経新聞 2014.1.5) ニッポン半導体、なぜつまずいた 巨艦日立の教訓 かつて「電子立国」を目指した日本だが、昔日の輝きを失って久しい。10年前には5兆円あった電子産業の貿易黒字が昨年1~9月はついに赤字に転落し、国内唯一のDRAMメーカーだったエルピーダメモリは米国資本の傘下に入った。どこで道を間違い、何につまずいたのか。「産業のコメ」と呼ばれ、四半世紀前には日本勢が世界を席巻した半導体産業の歩みを検証しつつ、事態打開のための方向性も探る。1999年春、日立製作所の役員フロアで二人の男の議論がぶつかりあった。一人は生粋の半導体エンジニアで、日立製作所で専務まで務めた牧本次生、もう一人は当時の日立の会長だ。その前年、牧本は業績不振の責任を取る形でただの取締役に2段階降格された。厳しい処置だが、赤字を出したのは事実。即座に辞表を提出したが、1年間無任所で放置されたあげく、翌年になって「役員定年に達した」という名目で辞任を言い渡された。明確な説明もなく、なぜ1年も辞任を先送りしたのか。牧本は憤然と問いただしたが納得できる答えは返ってこなかった。本来なら数分で終わるはずの辞令通告が延々と続き、心配した秘書がコーヒーを差し入れる一幕もあった。 ■本流との衝突 半導体の歴史を振り返って目を引くのは、飛ぶ鳥を落とす勢いだった日本企業が1990年代半ば以降の10年ですっかり競争力を失い、主導権を米インテルや韓国・サムスン電子に譲り渡したことだ。よく言われるのは、円高や貿易摩擦、あるいはアジア企業への技術流出が重なり、それが失速を招いたという「外的要因主犯説」である。だが、企業や産業のつまずきは、往々にして組織の内部に問題の根っこが隠れていることが多い。そこに外からの逆風が加わり、日の丸半導体の没落が現実になった。半導体の歴史の証人の一人である牧本は「日立という会社の企業文化が、半導体ビジネスと相いれなかった」と指摘する。牧本と会長のぶつかり合いは、日立の本流である重電文化と新興の半導体文化の衝突とも言える。東京電力などに発電設備を納める重電事業は日立の祖業の一つであり、当時の会長を含め歴代トップは重電出身者がほとんどだった。一方、1950年代に始まった半導体は伸び盛りの事業として目立ってはいたが、社内の基盤は弱かった。会社の文化は歴史が育む。日立の社風の大きな特徴が予算主義だ。各事業部が次の年度の売上高や利益、投資額などの詳細な予算を立て、その達成度合いが事業部長クラスの人事評価を大きく左右する。予算主義そのものが重電の発想。電力会社は長期の投資計画をつくる。そこに設備を納める日立の重電部門も先の見通しが立ちやすい。得意先は財務の安定した大手電力に限られ、発注が急にキャンセルされる事態はまずなかった。一方、半導体が想定通りに進むのは、むしろ例外。受注の取り消しやライバルの安値攻勢が日常茶飯だ。「半導体はきっちり予算を組むより、その時々の情勢変化に応じて迅速に動くことが重要。でも、それが理解してもらえない。実績が予算に届かなかったら怒られるし、予算を超過して利益を上げすぎても、『見通しが甘い』と批判された」と牧本は振り返る。ちなみに消費者の好み次第でヒット商品が出たり出なかったりする家電事業も予算未達の常習犯。それを毎年繰り返すうちに、重電と半導体などの出身者の間で昇格速度に大差が生まれ、会社の意思決定における半導体部門の影響力はますます後退した。 *2: http://qbiz.jp/article/29927/1/ (西日本新聞 2014年1月3日) 太陽光で充電の環境対応車開発 米フォード・モーター 米自動車大手フォード・モーターは2日、車体の屋根に取り付けた太陽光パネルを使った充電も可能なプラグインハイブリッド車(PHV)を開発したと発表した。従来のPHVと異なり家庭用電源がなくても充電ができる上、温室効果ガスの排出削減効果も高いのが特色。実用化は未定だが、環境対応車の新たな切り口となりそうだ。米ラスベガスで7日に始まる家電見本市「インターナショナルCES」で公開する。フォードは実用性を調べる走行試験を重ねるとともに、量産に適するかどうかを検証する。乗用車「C―MAX」をベースにした試作車は、ガソリンエンジンを併用し長距離走ることが可能。フル充電時には1回のガソリン給油で最大千キロ弱の走行が可能。晴天時に充電すれば、ガソリン1ガロン当たりの走行距離は100マイル(1リットル当たり約42・5キロ)に上ると試算されている。 *3:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20131228&ng=DGKDASFS2703Z_X21C13A2PP8000 (日経新聞 2013.12.28) 次世代車の販売、30年までに7割 温暖化対策、国連に報告書 政府は27日、2020年までの温暖化ガスの削減目標と達成に向けた対策をまとめた報告書を国連に提出したと発表した。30年までに、新車販売に占めるハイブリッド車など次世代自動車の割合を現状の2割から5~7割に、普及し始めた家庭用燃料電池を530万台に引き上げることなどを盛り込んだ。このほか、洋上風力や太陽光などの再生可能エネルギーを今後3年で最大限の導入を進める。火力は発電効率を向上させ、安全性が確認された原子力発電所は再稼働させるとした。報告書は05年比で3.8%削減とした日本の目標達成に向け、具体的な対策を挙げた。今後、専門家による技術的な審査などを受ける。政府は「3.8%削減」は温暖化ガスの排出がほとんどない原発をゼロと仮定した暫定値としている。 *4:http://www.nikkei.com/article/DGXNASFB2006E_U3A920C1MM0000/? (日経新聞 2013/9/24) スマートシティ、会津若松とアムステルダムが連携 福島県会津若松市はオランダでスマートシティー(環境配慮型都市)の実証実験を進めるアムステルダム経済委員会と提携する。両市がそれぞれ取り組んでいる実験で得たデータを共有し、研究者の交流も通じて家庭や地域で効率よくエネルギーを使う手法を確立する。この分野で先行する日欧の都市が協力し技術の国際標準化につなげる。会津若松市は100戸、アムステルダム市では2000戸にスマートメーター(次世代電力計)を配備し、家庭用エネルギー管理システム(HEMS)の運用実験を進めている。会津若松市は、オランダ政府とアムステルダム市が共同出資して実験を主導する同委員会と協力し、電力需給の状況を勘案して家電の運転を制御する通信規格の国際標準づくりを目指す。アムステルダム市では公用車に電気自動車を導入する取り組みも強化している。こうした実績を基に、交通インフラも含めた地域全体で電力利用を効率化するシステムを実現したい考えだ。両地域の実験に参加しているアクセンチュアが提携を支援する。同社はIT(情報技術)関連24社と社団法人オープンガバメント・コンソーシアムを組織し、スマートメーターなどの制御技術の標準化を目指している。会津若松市は経済産業省と総務省の助成を受け、先端的なIT研究で知られる会津大学とも連携してスマートシティーのモデルづくりに取り組んでいる。 *5:http://qbiz.jp/article/29960/1/ (西日本新聞 2014年1月5日) エコ帆船、佐世保で実証実験へ 大島造船所、東大など 東京大学や大島造船所(長崎県西海市)、商船三井(東京)などの企業連合が今月中旬から、長崎県佐世保市で主に風力で動く大型の「次世代帆船」の実証実験に乗り出すことが分かった。外洋での運航を念頭に、燃料消費や二酸化炭素(CO2)排出量を従来に比べて最大で半減させる狙い。国際的なCO2規制強化が進む中、企業連合は2016年の実用化を目指している。風を主動力源とする大型船は世界でもほとんど例がないという。計画代表者の大内一之・東京大学大学院特任研究員(船舶海洋工学)によると、風力船は8万トン級の貨物船などの商船を想定。船上に繊維強化プラスチック製の帆(高さ50メートル、幅20メートル、厚さ4メートル)を4基設置する。コンピューターで海上の風向きを事前に計算し、最も大きい推進力が得られるように帆の角度を自動調整する。帆は上下に伸縮可能で、荒天や寄港の際などは縮められる。主動力源は風だが、風が弱い場合は重油を燃料とするエンジンを使う。計算上では重油消費量とCO2排出量を平均30%、最大50%減らすことが可能で、風速12・5メートル以上あれば風力だけで船を動かせる。建造費50億〜60億円と帆のない同型船に比べて10億円程度高いが、5年程度で建造費の上昇分を吸収できる燃費レベルを目指す。企業連合は13年12月、長崎県佐世保市にある大島造船所子会社で、実物の約半分の高さ20メートル、幅8メートルの帆を完成させた。同市内の高台に設置して今月中旬から1年間、スピードを落とさないために風を効率よく取り込む帆の角度や耐久性などを検証。帆の自動制御システムの開発や風を生かせる航路も研究する。早ければ15年に建造を始め、16年の就航を目指している。大内氏は「風は費用ゼロのエネルギー。燃費削減効果は大きい」と強調。大島造船所の堀龍明社長代行は「課題を一つ一つ解決し、将来の事業化につなげたい」としている。 ■船舶のCO2排出規制 国際海運のルールを作る国連の国際海事機関(IMO、本部ロンドン)は2015年から、新造船を対象に二酸化炭素(CO2)排出量を過去10年間の平均から1割削減するよう義務づける。25年からは3割に引き上げる。基準を満たさない船舶は建造できなくなる。日本政府は13年度から5年間、船舶の環境技術開発に対する補助金制度(予算総額19億5千万円)を創設し、国内の造船業を支援している。
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2013,11,18, Monday
(1)食品偽装と食品表示 *1に書かれている「全国各地のホテルや百貨店で相次ぐ食材の偽装は、おもてなし以前の問題で、人の口に入れるものをだますのは犯罪に等しい」というのは本当で、薬と同様、食品は身体の中に入れるものであるため、安全性や品質には、十分な注意が必要だ。そのため、消費者が正しく選択できるように、食品表示が義務付けられているのである。 しかし、*2のように、委員を務めるJA全農の立石食品品質・表示管理部長が、「事業者と消費者には大きな情報格差があるので、原料原産地表示などの重要課題を先送りせず、消費者目線で検討すべきだ」と主張したにもかかわらず、本来、消費者の側に立つべき消費者庁が、「食品表示法施行までの時間が限られている」として、表示基準案の作成を優先し、アレルギー表示や遺伝子組み換え表示、加工食品の原料原産地表示などの問題を先送りすることをあらためて強調したそうである。 (2)食品表示の役割 *1で、「日本農林規格法(JAS)では、加工品や生鮮食品には品種や産地名の記載が求められるにもかかわらず、外食には法規制が及ばなかった」と書かれているが、これは、私が衆議院議員だった時、議員数人で外食産業に視察に行き、私が提案したことだ。何故なら、産地名が表示されていなければ、消費者は正しい選択をすることができず、食品の安全や品質に注意して手をかけた生産者が馬鹿を見るパラドックスが起きるからだ。 そのため、消費者庁は、外食メニューにも食材の明記や安全性に関する表示を求めることを検討しているそうだが、外食や中食でも、原材料の産地は地域まで正確に記載してもらいたい。その理由は、安全・安心や質の高さに地域ぐるみで取り組んでいる県や農協もあり、産地が明確に区別されなければ、努力が水泡に帰すからだ。そのため、*2、*3のように、生産者も表示に積極的なのである。 また、*4のように、今の日本では、「放射能○○ベクレル」という放射能表示も必要になった。何故なら、それがなければ、消費者は、危険性ある地域の食材をすべて敬遠するしかないからだ。 (3)大人にも「嘘をつくな」「誠実に生きよ」という基本的道徳がないのに、誰が教えて評価する? *1に、「肝心なのは食を提供する側にモラルを取り戻すことだ」と書かれているが、そのとおりだ。それでは、どうすればそれを可能にできるかと言えば、家庭や社会の大人たちが見本を見せることができていない以上、「嘘をつくな」「誠実に生きよ」という基本的な道徳を、*5のように、学校で教える必要があるだろう。子どもにだけ教えても無理だろうが・・・。 また、*5に、重要項目として「いじめ防止」「生命尊重」「グローバル社会の中でのアイデンティティー」などが挙がっていると書かれているが、「ヒューマニズム(生命尊重やいじめ防止は当然含まれる)」と「個人の尊重(すべての人のアイデンティティーを大切にすること)」を教えれば、それらはすべて含まれる。また、子どもに「善悪の価値」や「我慢」を教えることは重要だが、「自己犠牲」を教えれば、基本的人権の軽視に繋がる「特定の価値観の押しつけ」に発展することが、日本の歴史と文化には現われている。 *1:http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2013110902000138.html (東京新聞社説 2013年11月9日) 食材偽装 モラルを取り戻そう 全国各地のホテルや百貨店で相次ぐ食材の偽装は、おもてなし以前の問題だ。人の口に入れるものをだますのは犯罪に等しい。「表示を誤った」と弁解する経営陣には最低限のモラルもない。後味の悪い話というのは、まさにこのことだ。阪急阪神ホテルズで食材の偽装が発覚したのをきっかけに、全国のホテルや百貨店などが自主調査したところ、オークラや高島屋、三越伊勢丹など大手老舗にもまん延していた。安価な食材を使いながら、高級食材を使ったように偽る。その手口も詐欺的で、一流店のすることかとあざとさに驚かされる。牛脂を注入した加工肉を「牛ステーキ」と偽り、バナメイエビやブラックタイガーを「シバエビ」「車エビ」と表記する。おせちの「からすみ」もサメとタラの卵で作った模造品だった。ハレの日、いつもより贅沢(ぜいたく)な食事を楽しんだ人は多いだろう。でも、偽物だった。偽装が常態化し、オークラは過去六年間に三十八万六千食、八億円以上を売り上げたという。「業界の慣習」と認めた役員の言葉通り、非常識な偽装は業界の“常識”だったのだ。 怖いのは、食材偽装は命さえ奪いかねないことだ。フランスのグルメ本にも載った奈良の旅館で「和牛ステーキ」として出された成型肉は、結着剤にアレルギー物質の乳などが含まれていた。肉を貼り合わせる過程で雑菌が入り込むと食中毒の危険もある。高い代価を支払う一流店なら食材も厳選している-。お客の多くはそう思っている。だが、こんなお粗末さでは「一流こそ疑え」となる。支配人クラスに食材の知識もなかったのか。現場の料理長らはプロだ。偽の食材を扱って良心は痛まなかったか。消費者庁など行政機関に告発はなかったのか。経営陣は「客を誤解させる意図はなかった」「表記の誤り」と弁解している。「偽装」と認めれば景品表示法に触れる恐れが出てくるためだろう。まず非を認め、反省を示すべきではないか。 日本農林規格(JAS)法では加工品や生鮮食品には品種や産地名の記載が求められるが、外食には法規制が及ばなかった。消費者庁は外食メニューにも食材の明記や、安全性に関する表示を求めることを検討している。肝心なのは食を提供する側にモラルを取り戻すことだ。二度とお客を置き去りにした偽装などしないと。だましてまで食べてほしい味なんてあるはずがない。 *2:http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=24361 (日本農業新聞 2013/11/7) 問題先送りで異論 内閣府消費者委食品表示部会「命に関わる」 内閣府の消費者委員会は6日、食品表示部会を開き、新たな食品表示ルール策定方針や法施行までの日程を確認した。委員からは今後の議論に当たり、委員の構成や原料・原産地表示など残された問題を先送りすることに、異論が出た。消費者庁は食品表示法施行までの時間が限られているとして、表示基準案の作成を優先し、アレルギー表示や遺伝子組み換え(GM)表示、加工食品の原料原産地表示などの問題を先送りすることをあらためて強調した。 委員を務めるJA全農の立石幸一食品品質・表示管理部長は「事業者と消費者には大きな情報格差がある」と指摘。「原料原産地表示などの重要課題を先送りせず、消費者目線で検討すべきだ」と主張した。他の委員からも「命に関わるアレルギー表示などの問題を先送りにするな」といった意見が出た。今後の議論の持ち方については、委員構成を問題視する声も上がった。立石部長は日本消費者連盟の山浦康明共同代表らと共に、消費者団体を代表する委員を減らしたことに質問状を提出。しかし、消費者庁は「人選については部会で議論すべき問題ではない」と答えるにとどまった。 *3:http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=24455 (日本農業新聞 2013/11/13) 食品の表示 適正に 関係団体へ要請 農水省が取り組み方針 ホテルや百貨店でメニューの表示と異なる食材を使っていた虚偽表示問題を受け、農水省は12日、食の信頼回復に向けた今後の取り組み方針を発表した。DNA分析やチェック体制の強化が柱。併せて同省は外・中食業界15団体に対し、適正な表示の徹底を求める指導・要請を行った。取り組み方針では、違反が多く報告されるエビなどの食材をDNA分析し表示内容を確認。地方農政局などの食品表示Gメンが外食事業者に対する表示制度の普及・啓発を行うとした。対策を通じて「表示の適正化に向けて川下の体制を強化し、成果として産地のブランドが守られるようにしたい」(表示・規格課)考えだ。消費者庁が作成する表示適正化へのガイドラインの協力も行うとしている。同日の指導・要請で同省は業者らに対し、違反事例などの周知、表示適正化の取り組み状況の把握、表示適正化を強く求めた。山下正行食料産業局長は「2020年の東京五輪に向けて輸出戦略も決め、日本食を世界に広めていこうとしている中で、今回の問題は日本食への信頼が揺るぎかねない重大な問題」と指摘。11日に開いた「食品表示等問題関係府省庁等会議」の内容も説明し、表示順守を重ねて強調した。これに先立ち、林芳正農相は同日の閣議後会見で、「改善されないと、日本の食に対し(信頼に関わる)影響が出る」と食品表示問題に懸念を表明。その上で、「消費者が食に信頼感を持てるように、政府一丸となって表示の適正化に取り組みたい」との意向を示した。 *4:http://dot.asahi.com/news/incident/2012092600824.html 福島第一原発事故の直後、CNNテレビで「すでにチェルノブイリと同じレベルだ」と指摘した米原子力技術者、アーニー・ガンダーセン氏。さらに原発の即時全廃を訴える作家・広瀬隆氏が対談で福島第一原発4号機の危機的状況を指摘した。 * * * ●広瀬:私の講演会では、ガンダーセンさんが3号機の爆発で、使用済み核燃料プールで即発臨界が起こった可能性について解説しているインターネットの動画を見せています。東京電力は認めませんが、私はあなたの解析に間違いないと思います。 ▲ガンダーセン:今は、爆発の原因を厳密に特定するのは難しい段階ですが、上向きのベクトルで劇的な爆発が起こったこと、爆発位置と偏りを考えると、核燃料プールで不慮の臨界が起こったと考えるのが自然です。 ●広瀬:原発敷地内で極めて高い放射線量が検出されたのも、臨界暴走でプールの核燃料が飛び散ったと考えると、現場の状況と符合します。著書『福島第一原発 ―真相と展望 』(集英社新書)では「4号機のプールで火災が起きたら、日本を脱出せよ」と警告していますね。 ▲ガンダーセン:4号機の核燃料プールは、今も日本列島を物理的に分断するほどの力を持っています。震災時、このプールには炉心数個分もの使用済み核燃料が入っていたのです。大気圏内で行われた過去の核実験で放出された総量に匹敵するほどの、放射性セシウムが眠っています。 ●広瀬:しかも、おそろしいことに、核燃料プールは遮蔽されていません。 ▲ガンダーセン:まさに「格納されていない炉心」です。今は水で冷やしていますが、プールにヒビが入るなどして水位が下がり、冷却できなくなると、温度が上がって燃料棒の鞘であるジルコニウム合金が発火するのです。こうなると、もはや水では消火できない。核燃料が大気中で燃えるという、人類のだれも経験したことはない、おそろしい状況になるのです。 ●広瀬:今回の事故とはけた違いの膨大な放射性物質が出てくる。大惨事です。 ▲ガンダーセン:まさしく。震災直後、日本では1、3号機の爆発に気を取られていましたが、米原子力規制委員会(NRC)は、この事態を非常に心配してきました。私自身もそうです。 ●広瀬:私は、ボロボロの4号機の燃料プールがガラッと崩れて、核燃料がバラバラと飛び散る事態を心配してきましたが、燃料プールのコンクリートに亀裂が入っただけで終わり、ということですね。 ▲ガンダーセン:科学にとって未知の大惨事になります。 *5:http://digital.asahi.com/articles/TKY201311110491.html?iref=comkiji_redirect&ref=nmail (朝日新聞 2013年11月12日) 生徒の「心」、評価対象 道徳、教科に格上げ案 文部科学省の「道徳教育の充実に関する懇談会」(座長=鳥居泰彦・慶応義塾学事顧問)は11日、小中学校の道徳を教科に格上げする報告案をまとめた。文科省は、12月に懇談会の報告を受け、年明けにも中央教育審議会に諮問し、15年度から教科化する日程を検討するが、教科書を使い、記述式で子どもを評価するという報告案の実現には問題が多い。 今は教科外の活動として週1回、副読本などを用いて教えられる「道徳」。報告案の最大の特徴は検定教科書の導入だ。「教科書は使用義務があり、授業水準を保てる」「教科書会社が競い、教材の質が高まる」などを理由に挙げる。ただ、懇談会でも、「検定基準をどう定めるのか、難しい」「教科書を選ぶ教育委員会の負担が大きい」などと慎重な意見が出た。 検定は「学習指導要領に沿っているか」「学説に照らして正確か」等の観点で判断される。「心のありように関わる記述の『正確性』を判断できるのか」と疑問視する文科省幹部も。報告案では「多様な価値観を反映した教科書を認める」としつつ、具体的な検討は文科省に委ねた。また、「成績の数値評価」は「道徳性を培うという性格上、不適切」とする一方、記述による評価の検討をうたった。しかし、具体的な評価観点は示されておらず、何をどう評価するかはまだ不透明だ。教える内容について、報告案は「発達段階ごとに精選を検討すべきだ」とし、重要項目として「いじめ防止」「生命尊重」「グローバル社会の中でのアイデンティティー」などを挙げた。11日の懇談会では「善悪の価値が最重要」「自己犠牲や我慢」といった意見も出た。「特定の価値観の押しつけにつながる」との懸念が根強い中、何を重視するかも焦点だ。 ■「崇高なもの」どう教科書に 編集者ら困惑 「自然や崇高なものとのかかわり」。現在、道徳の学習指導要領で掲げられている柱のうち、大手教科書出版社の編集者は、この項目を将来どう扱ったらいいか気をもむ。自然を愛し、人間の力を超えたものへの畏敬(いけい)の念を養うことなどを目指したもので、副読本ではトルストイの童話「七つの星」やマザー・テレサらの偉人伝などを利用して伝えてきた。この編集者は「『崇高なもの』は抽象的なので子どもが体験に基づいて振り返ることが難しく、個人差も大きい。畏敬の念を抱いたか、どう評価するかも難しいのでは」と話す。評価の導入について、本田由紀・東京大教授(教育社会学)は「記述式とはいえ、多様性の尊重や子どもの内面の自由を損なうことになる。何が良い生き方かを政府が決め、教師が子どもを裁くことになれば、憲法19条の思想・良心の自由にも抵触するのではないか」と心配する。教科化に向けた今回の議論は、政府の教育再生実行会議が2月にまとめた「いじめ対策」の提言が発端だが、効果は高いのか。内藤朝雄・明治大准教授(社会学)は「皆との同調が強く求められる環境の改善なくしていじめはなくならないだろう。むしろ、子どもの内面の善悪の評価をすることによって、『悪い』とされた子へのいじめが正当化されることにもなる」とみる。 ■「道徳」懇談会報告案の主な内容 ◆道徳の時間を「特別の教科」(仮称)に格上げ ◆検定教科書の導入 ◆数値評価は不適切だが、評価は重要。記述式など検討 ◆子どもの実態をよく知る学級担任が指導 ◆教員養成課程で履修単位数の増加を検討 ◆学習指導要領で示す道徳の内容の見直し PS(2013.11.19追加):11月19日に、*6の記事を見たが、食品表示と景品表示の区別もわからないような人が判断しているのが問題なのだ。食品はMainで景品はおまけである。 *6:http://www.saga-s.co.jp/news/global/corenews.0.2582893.article.html (佐賀新聞 2013年11月19日) 食材虚偽表示で改正景表法案 / 来年の国会提出目指す 消費者庁は19日、相次ぐ食材虚偽表示の取り締まりを強化するため、都道府県も違反業者に措置命令を出せるようにする景品表示法改正法案を、来年の通常国会に提出することを目指すと明らかにした。課徴金制度の導入や、違法行為を直接罰する規定の導入も今後の検討課題とする。 自民党の消費者問題調査会は19日、景表法に基づく国と地方自治体の取り締まり態勢を強化することや、虚偽表示の罰則強化を検討すべきとする緊急提言をまとめた。提言は悪質な虚偽表示は、政府が詐欺容疑などでの刑事告発も考えるべきだと指摘した。
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2013,11,01, Friday
原発、内部被曝、社会保障の削減など、命に関わる深刻な事案が多かったため、ダンスの風営法取締事件については後になりましたが、今日は、ダンスの話です。 (1)クラブでダンスをすると、性風俗を乱すのか *1の午後9時半過ぎに、府警が拡声機で「音楽を止めろ」と呼びかけながら、ダンス・クラブに踏み込んだ事件の報道があった時には、私も変だと思った。弁護側は、「当夜クラブでかけていた4曲で踊るダンスが性風俗を乱すものかどうか考えて欲しい」とし、今回の裁判で問題視するのは、風営法の規定そのものだそうだが、この風営法のダンス規定は1948年に制定され、現在と当時の性風俗は全く異なっているため、それが妥当だと思う。 そもそも、現代は、オリンピックでも、肌を露わにした(ように見える)女性と男性のカップルが、アイスダンスの競技を行い、多くの人が、その芸術性や技術に感心して見ている時代だ。また、性風俗を乱すような行為をしたい人は、今は、もっと直接的な行為が自由にできる。 (2)ダンスはスポーツ・文化の一種 *2に、「『設備を設けて客にダンスをさせる営業』が風俗営業に該当し、『ダンス』について法律上何らの限定はなく、社交ダンスだけでなく、サルサやヒップホップなど幅広く規制の対象とされている」と記載されているが、私は、東大で社交ダンス・クラブに入っていた。東大は、野球は弱いが、社交ダンスでは、大学間競技でよく1位になり、私は、社交ダンスを優雅なスポーツだと認識している。 しかし、「社交ダンスが趣味だ」というと、変な笑みを浮かべる人もいるため、必ず「競技ダンスです」と付け加えなければならず、閉口している。もともと、ワルツは貴族の踊りであり、今では、タンゴも古典だ。それを、「男女の享楽的雰囲気を過度に醸成させる」などとして、いやらしく考える人こそ、おかしい。 (3)風営法のダンス規制は削除すべき 現在、社交ダンスは中学校体育の必修科目(http://blogs.yahoo.co.jp/purinchan08/24913722.html 参照)であり、*2に記載されているとおり、「ダンスさせる場所=風俗営業」とするのは、時代遅れも甚だしい。また、社交ダンスは、高齢者の健康を守る運動としても盛んだ。そのダンスを披露する場所であるクラブの存在を禁止するのは社会通念に合わず、*2に書かれているとおり、法律を改正して「ダンス規制」である風営法第2条第1項第1号、同第3号、同第4号を削除すべきだろう。 (4)東京大会から、オリンピックの競技種目にしよう わが国では、社交ダンスは風営法違反とされてきたため、社交ダンスには変なイメージがつきまとっているが、映画「マイ・フェア・レディー」や「サウンド・オブ・ミュージック」などに出てくるように、もともとは貴族の上品な社交手段だったもので、ルックスがよくて上手な人が踊ると体操やフィギュアより素敵だ。 そのため、東京オリンピックから、社交ダンスを競技種目に加えたらどうだろうか。アルゼンチンで選ばれた開催地「TOKYO」であるから、アルゼンチンに敬意を表し、最もセクシーと言われるアルゼンチン・タンゴも種目に入れるべきだろう。そこで各国の踊り手が、どのようなダンスにまとめてくるか楽しみであり、社交ダンスは体操よりも人気種目になるかも知れない。 *1:http://digital.asahi.com/articles/OSK201310010046.html (朝日新聞 2013.10.1) クラブでダンス、性風俗乱す? 初公判「オアシス」響く 「ダンス規制」は時代に合っているのか――。その是非を争点とした刑事裁判が1日、大阪地裁であった。検察側はダンスを規制対象とし、無許可営業に刑罰を科す風俗営業法に基づき「違反は明らか」と指摘。これに対し被告のクラブ経営者側は「ダンスが性風俗を乱すという考え方が時代錯誤」「規制は『営業活動の自由』を侵害する」とし、憲法判断まで求める異例の展開に。それぞれの主張が平行線をたどる中、地裁の判断が注目される。 ●深夜0時、奪われた踊り 「(クラブは)規制対象とされる風俗営業ではないと、裁判所が判断すると信じています」。この日の初公判の罪状認否で、風営法違反罪(無許可営業)に問われた大阪市北区の老舗クラブ「NOON」の元経営者、金光(かねみつ)正年被告(51)は、こう述べて無罪を主張した。金光被告は昨年4月、大阪府公安委員会の許可なく客にダンスや飲食をさせたとして、逮捕・起訴された。検察側は冒頭陳述で、金光被告が1993年ごろ無許可でクラブ営業を開始し、ダンスイベントなどを開いてきたと指摘。昨年3月に府警が立ち入り調査して改善を求めたが、応じないため強制捜査に発展したと説明した。風営法で規制対象となるダンスは、ヒップホップにとどまらず、サルサ、タンゴなどほぼ全てのジャンルにわたる。検察側は今回の公判で、「ダンス」とは「社会の風俗に影響を及ぼす可能性があるもの」と定義。具体的には、薄暗い中、大音量の音楽やミラーボールなどの照明があり、酒類を提供する店内で客が音楽に合わせ、ステップを踏む▽体を上下左右に揺らす▽ひざの曲げ伸ばしをする▽腕や頭を振るものとしている。昨年4月4日の摘発当夜、店内には約20人の客がおり、英国の人気ロックバンド・オアシスの曲「She’s Electric」などがかかっていた。弁護側によると、体が触れあうような状態ではなく、音楽を聴いて会話する人もおり、「思い思いに体を揺らしていた」。午後9時半過ぎ、府警が拡声機で「音楽を止めろ」と呼びかけながら踏み込んだという。弁護側は、当夜クラブでかけた4曲を法廷で再生するよう申請。斎藤正人裁判長はこれを認めて法廷に楽曲が流れた。弁護側は「果たしてこの曲で踊るダンスが性風俗を乱すものかどうか考えて欲しい」としている。 ■クラブ利用者ら、署名16万筆 今回の裁判で弁護側が問題視するのは、風営法の規定そのものだ。「ダンスはおしなべて性風俗を害するものだという制定(1948年)当時の道徳観念に基づいており、現代にそぐわない」と指摘。売春やドラッグが横行する場ではないと訴えている。さらに、弁護側が憲法違反の主張まで持ち出す背景には、クラブが摘発のターゲットになっているとの危機感がある。弁護側によると、90~2009年で、無許可営業容疑で摘発を受けた件数は年平均6・4件。しかし10年以降は平均15件と倍増した。警察庁は4月、国会でダンス規制の是非を問われ、「店(クラブ)内外で暴行傷害事件や女性に対する性的な事件が発生したり、少年の立ち入りの問題が生じたりする」と規制が必要との見解を示した。これに対抗するクラブ側の動きは活発化している。クラブ利用者や法律家らでつくる「レッツダンス署名推進委員会」は昨年から風営法見直しを求める署名活動を始めた。音楽家の坂本龍一さんやNHKの連続ドラマ「あまちゃん」の音楽を手がけた大友良英さんも呼びかけ人に加わり、署名は16万筆を超えた。政府の規制改革会議も先月、「ダンス営業の許可基準が明確でない」などとして見直しを検討することを決めた。来年6月をめどに意見をまとめる予定だ。風営法の実務に詳しい行政書士の雨堤(あまづつみ)孝一さんは「風営法とクラブの関係を考えるうえで重要な裁判。司法が風営法の憲法判断にまで踏み込めば、見直し議論に与える影響は大きい」と話す。 ◇ 〈風営法とクラブ〉 クラブについて、「客にダンスをさせ、かつ、客に飲食をさせる営業」と定義。営業には都道府県公安委員会の許可が必要で、最長で午前1時までに制限されている。許可を得ると深夜帯に営業できないため、無許可のクラブも多いとされる。実質的に黙認状態が続いていたが、近年摘発されるケースが相次いでいる。 *2:http://www.jicl.jp/hitokoto/backnumber/20130325.html 中村和雄(Let's DANCE法律家の会代表・弁護士) ■風営法によるダンス規制 皆さんは風営法(正式名称は「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律」)という法律をご存じでしょうか。1948年に風俗営業取締法として制定されたのがはじまりです。風俗営業に関する営業時間、営業区域などを制限する法律で、①善良の風俗の維持、②清浄な風俗環境の保持、③少年の健全な育成に障害を及ぼす行為の防止が規制の目的とされています。何が「風俗営業」に該当するかについては、第2条に定義規定があり、「風俗営業」とは、以下のいずれかに該当する営業とされています。 1 キャバレーその他設備を設けて客にダンスをさせ、かつ、客の接待をして客に飲食をさせる営業 2 待合、料理店、カフェーその他設備を設けて客の接待をして客に遊興又は飲食をさせる営業 3 ナイトクラブその他設備を設けて客にダンスをさせ、かつ、客に飲食をさせる営業 4 ダンスホールその他設備を設けて客にダンスをさせる営業 上記のとおり、「設備を設けて客にダンスをさせる営業」は風俗営業に該当します。ここでは「ダンス」について法律上何らの限定はなく、社交ダンスだけでなく、サルサやヒップホップなど幅広く規制の対象とされているのです。風俗営業に該当する営業を営むためには、公安委員会の営業許可が必要となります。許可を取るためには、客室の床面積が66㎡以上あり、かつダンスをさせる部分がその面積の5分の1以上あることが必要であり、許可を得ても深夜のダンスは禁止です。違反すると、許可の取消、営業停止などの行政処分の他、刑事処分として、200万円以下の罰金、2年以下の懲役などが科されます。 ■最近の警察による過剰な取締り 近年、「ダンスをさせる営業許可(風営法2条1、3、4号)がない」などとして、警察当局の摘発が相次ぎました。DJブースやミラーボールを設置した店舗が、「ダンスをさせる意図をもっている」などと警察当局から警告をうけた事例も少なくありません。2012年4月には大阪市北区のクラブ「NOON」が摘発されました。午後9時半過ぎに約20人の客が踊っている最中に、突然客の数を上回る捜査員がなだれ込んできて経営者らを逮捕したのです。長年にわたって無許可営業を黙認していながら突然逮捕というのです。同様の事態は全国各地に広がっています。 ■憲法違反の人権侵害 風営法は、営業形態の差はあれいずれも「ダンスをさせ」る営業を風俗営業とし、これを規制対象として規定しています。そこにいう「ダンス」とは警察庁によれば「男女の享楽的雰囲気を過度に醸成させるダンス」とされていますが、いかなるダンスがかかる「ダンス」に該当するのかについては、通常の判断能力を有する一般人の理解においても判断がつきかねるものであって、上記「ダンス規制」は、憲法第31条が保障する「法定手続きの保障」に反するものです。また、芸術的文化的表現手段の一つとして認められているダンスは、少なくとも現代において、一般的に善良な風俗や清浄な風俗環境、少年の健全育成を害するような危険をはらんでいるとは言えません。にもかかわらず上記のように不明確な基準でしかない「ダンス」を基準にして規制を及ぼそうとすることは、表現の自由(憲法第21条)や営業の自由(憲法第22条)、さらには人格権(憲法第13条)を侵害するものです。他方、仮にダンスを伴う営業が善良な風俗等を害することがあるのであれば、他の個別法規によって対応することが十分に可能なのですから、「ダンス」を基準にして規制を及ぼす必要性も存しません。 ■時代遅れのダンス規制 今日、「ダンス」は、中学校体育の必修科目にされている。「ダンスさせる場所=風俗営業」とするのは、社会通念上も無理があり時代遅れも甚だしいものです。クラブカルチャーは、音楽やアート・映像、ダンスなどの身体表現など、総合的な芸術表現の場として、今日、多くのアーティスト・DJらが、オーディエンスと一体になり、つくりあげてきたものです。民衆の形成する文化を守り育てることの重要性をぜひご理解ください。 ■法律改正を 問題を解決するには、上記「ダンス規制」である風営法第2条第1項第1号、同第3号、同第4号を削除するべきです。警察庁は、風営法による規制が必要である理由として、近隣の騒音やごみ、青少年への享楽的風紀の紊乱などをあげています。たしかに一部のクラブなどにおいて近隣からの苦情があったことは事実です。しかし、その対処は,ダンスさせること自体を規制することで行うべきではありません。騒音規制条例や青少年保護条例など本来の法律や条令を適切に運用すれば良いのであり、不十分であればそれらの規制を整備すべきなのです。現在警察によって行われている「風営法違反」の規制は明らかに法の目的を逸脱した濫用行為です。こうした濫用を規制していくために、風営法からダンス規制を削除することが不可欠なのです。わが国の芸術・文化活動の発展のために、多くの読者の皆さんに風営法改正の必要性をご理解頂ければ幸いです。
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