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2014.12.28 原発の本当のコスト及び電力需要者・住民の選択権 (2014年12月29日追加あり)
     
   *2-1より     *3-3より     *5より   フクシマ汚染地図 

(1)経産省は、安全でもないのに原発再稼働に向けて圧力をかけていること
 *1-2のように、関電高浜原発3、4号機(福井県)の審査書案を了承したことを受け、原子力規制委員会の田中俊一委員長は12月17日の記者会見で「稼働への条件を満たしているか審査したが、イコール事故ゼロかというと、そんなことはない」と述べている。田中委員長は九電川内原発1、2号機の審査書案を了承した今年7月にも、「安全とは私は申し上げない」と述べているにもかかわらず、政府及び政治家は、「規制委が安全性を確認した原発については再稼働を進めていく」と言っているわけである。これは、事故時の責任をお互いに相手に押し付けて回避する体制をとったことを意味し、国民の命や環境への配慮は不在の姿勢である。

 また、*1-1、*1-3のように、経産省は、再稼働に必要な立地自治体の同意を促すため、原発立地自治体の電源3法交付金を、再稼働した自治体に発電量に応じて重点的に配分し、老朽原発の廃炉後に新しい原子炉を設置するリプレースに触れるなど原発に積極姿勢を打ち出しているが、これはエネルギー基本計画の「原発依存度を可能な限り低減させる」に逆行しており、新エネルギーの発展を妨げる。

 確かに原発が稼働していないのに電源3法交付金を渡すのは不合理だが、原発は、稼働していなくても一歩間違えばフクシマのように大爆発する可能性の高い使用済核燃料を原子炉の近くに大量に保管しているため、使用済核燃料の早急な処理と処理を終えるまでの期間の危険手当は必要だ。そして、このように安全でも低コストでもない原発にしがみついて再稼働させるのは誰にとってもマイナスであり、電源3法交付金を交付するよりも、次のエネルギーに進むためのインフラ整備や消費税の地方税移管を行った方が、原発立地自治体にとっても日本経済の活力にとってもプラスである。

(2)本当の原発発電コストは、決して安くないこと
 *2-1のように、原発の発電コストは世界的には1キロワット時当たり平均14セント(約15円)で、太陽光発電とほぼ同じ、陸上風力発電や高効率天然ガス発電の8.2セントと比べるとかなり高いという試算を、エネルギーの調査機関である米国のブルームバーグ・ニュー・エナジー・ファイナンス(BNEF)がまとめた。日本政府は、原発の発電コストを2004年に1キロワット時当たり5.9円と試算し、フクシマ原発事故後、これを「コスト等検証委員会」で見直して、事故対策費などを含て8.9円と試算し直した。しかし、ブルームバーグ・ニュー・エナジー・ファイナンスの1キロワット時当たり14セント(約15円)には、事故対策費は含まれていないのである。このほか日本では、税金から支出する地元対策費、廃炉費、使用済核燃料の処分費なども含んでおらず、原発の発電コストは実際よりもかなり低く表わされている。

 なお、再生可能エネルギーの発電コストは、地熱(6.5セント)、小水力発電(7.7セント)、陸上風力(8.2セント)、石炭火力(9.1セント)、天然ガス火力(8.2セント)で、太陽光発電も近年コストが下がって14.9セントとなっているのだ。日本では、海外に比べて高価な国内製機器が使われることから太陽光発電は32.9セントと高いが、BNEFは「安い輸入機器の利用を拡げればコストは低下する」としている。また、風力発電も、日本は機器のコストが高く、稼働率は欧米に比べて低いため、19セントと割高なのだそうで、これらが改善すべき問題だ。

 それにもかかわらず、*2-2のとおり、再来年に導入される電力市場自由化に向け、経産省は総合資源エネルギー調査会原子力小委員会で、原発による電力を、一定期間、固定価格で買い取る新しい原発優遇策を検討しているそうだ。これは、「原発はコストが安い」というふれ込みに反し、新時代に対応して未来を切り開くカネの使い方でもなく、今後の日本経済には全くプラスにならない。私も、原発は、それを作ると他の産業が育たず、公害のない低廉なエネルギーを供給して経済を発展させるというスタンスから全く程遠いものだと考えている。

(3)過酷事故のコスト
 *3-1に書かれているように、東電はフクシマ原発事故の賠償に必要な資金として、政府の原子力損害賠償・廃炉等支援機構から総額4兆5337億円を受け取り、その内容は、被災した宅地、建物、家財道具の賠償、原発事故で収入が減った人への賠償、農作物の風評被害の補償などだそうだ。なお、「実害がない」と証明されたわけでもないのに、「風評被害だ」と決めつけるのは恣意的かつ意図的である。また、東電はこれとは別に、政府から原子力損害賠償法に基づいて、合計で4兆5319億円の賠償金をもらっているそうで、これは消費税2%分の1年間の税収に当たるが、原発事故の被災者がいるため、その補償額は節約できず、国民の税金が湯水のごとく使われているのだ。

 また、まだ補償していないが、*3-2のように、事故直後の検査では「異常なし」だった子供4人が、2巡目の検査で「がんの疑い」とされ、1巡目で、がんの診断が「確定」した子どもが8月公表時の57人から27人増えて84人に、がんの「疑い」は24人(8月時点で46人)にになったことも新たに判明したそうだ。福島県立医大は、「事故による放射線の影響ではない」ということにしたがっているが、事故後に生まれた子どもは罹患率が0であるため、その言い分は無理があろう。

 さらに、原発は、地域住民だけでなく、*3-3のように、作業員にも常時被曝を強いているのであり、フクシマ原発事故では、4号機の核燃料は何とか取り出せたものの、1~3号機は高線量で作業員が近づくことすらできず、除染にも限界がある。そして、これらは後ろ向きの技術であり、カネの使い方なのだ。このような中、「東電は百分の一に汚染が減ると期待したが、五分の一程度までしか下がっていない」などという、原子力業界特有の恐ろしい楽観主義がまた出てきている。

 NHKは、2014年12月21日になって初めて、*3-4のように、フクシマ原発事故で放射性物質が大量放出され、事態が深刻であることを報道した。しかし、「①放射性物質は、核燃料のメルトダウンや水素爆発が相次いだ事故発生当初の4日間ではなく、その後に全体の75%が放出され汚染を深刻化させていたことが分かった」「②放射性物質の大量放出がなぜ長期化したのか原因不明」などと、これまで大量放出を報道しなかったことを正当化している。

 しかし、私がこのブログの2011.7.27に書いたとおり、2011年7月27日の衆院厚生労働委員会参考人質疑で、参考人として招かれた児玉教授(東大先端科学技術研究センター教授 東京大学アイソトープ総合センター長)が、「3月15日に、我々最初に午前9時ごろ東海村で5μシーベルトという線量を経験しまして、それを第10条通報という文科省に直ちに通報いたしました。その後東京で0.5μシーベルトを超える線量が検出されました。これは一過性に下がりまして、次は3月22日に東京で雨が降り、0.2μシーベルト等の線量が降下し、これが今日に至るまで高い線量の原因になっていると思います」と話し、この話と一致するデータが、スイス気象台のHPやドイツの放送で、当時から流れていた。

 事故が起きてから放出された47万テラベクレルという量の放射性物質は、住民や作業員の命と健康に大きな影響を与えることが明らかだ。そのため、知らなかったという言い訳や放送したという言い逃れが重要なのではなく、被曝を回避するために必要な情報を開示して住民の対応に資したのか否かが、最も注目すべき大切なことである。

(4)隠された川及び海洋の汚染
 *4-1のように、フクシマ原発事故で汚染水が連続して海に流され続け、*4-2のように、 米国カリフォルニア州の沿岸部でさえ、フクシマで放出された放射性セシウムが海水から検出される状態になっているが、今後は、フクシマの敷地内で汚染水漏れなどの事故が起きた場合に国際的な原子力事故評価尺度(INES)による評価はしないそうだ。その理由は、要するに、原子力事故評価尺度は壊れていない原発を想定しているため、フクシマは桁違いに大きく、とても適用できないからである。

 また、*4-3のように、フクシマ原発事故の影響で、東京都心部を流れる隅田川は全般的に146~378ベクレルと濃度が高く、川が大きく蛇行し流れが緩いため、底土に高い濃度の放射性セシウムがたまり続けるそうだ。一方、荒川は、河口域では1キログラム当たり300ベクレルを超える汚染が確認されるが、さかのぼっていくと濃度が急速に低下し、河口部から約17キロの江北橋(足立区)では100ベクレルを下回るそうで、「水量と流れのある荒川は、放射性物質が一気に河口部まで運ばれたが、隅田川は流れも緩く、大雨で徐々に海に運ばれていくとしても、濃度が下がるには長い年月がかかる」そうである。

 問題は、フクシマ原発事故により、国際的な原子力事故評価尺度を使うことすらできなくなっている状況であるにもかかわらず、海や川の汚染調査はボランティアに任され、国はまともな調査すら行わず、TVメディアは安全性を強調するだけで、汚染を無視してきたという環境意識の低さである。

(5)まだ場所が見つからない最終処分場
 *5のように、フクシマ原発事故で発生した指定廃棄物の最終処分場建設が行き詰まっているが、これは、名水の里である塩谷町のように全く適さない場所を候補地にするからだ。指定廃棄物等はフクシマで帰還困難区域となった場所に集約して徹底管理するのが、最も合理的で汚染を広げない方法だろう。

(6)再生可能エネルギーの普及を阻んで原発に回帰する経産省
     
     透明な膜の太陽光発電       炭素使用の太陽光発電 レンズ使用の太陽光発電
                  <最近の太陽光発電機器>
 *6-1に書かれているように、経産省は再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度を見直し、電力会社が太陽光発電の事業者に対して補償金を払わずに発電の抑制を無制限に要請できるようにし、抑制の対象設備を小規模な家庭用にも拡大するそうだ。このうち太陽光発電の抑制強化が最も大きいが、この太陽光発電をはじめとする再生可能エネルギーの普及こそが、環境を汚さずにエネルギーを国産化し、燃料費として国富が流出するのを防ぐため、アベノミクス第三の矢の大きな担い手なのである。

 そして、このように、イノベーションを好まない人々が、現状維持のためにあらゆる力を発揮して逆噴射するのが、我が国の生産性を下げ、成長率を低くしている最も大きな原因だ。

 なお、*6-2のように、「太陽光発電で作った電気の買い取り価格を、2015年度は初めに1キロワット時あたり20円台に引き下げる」というのはよいと考える。しかし、これは、太陽光に偏らないようにすることが目的ではなく、太陽光はじめその他の再生可能エネルギー発電機器をコストダウンし、その価格を世界標準以下に下げることを目的とすべきだ。

 さらに、*6-3のように、東京都は「水素社会」向けて前進を始め、燃料電池車普及のための水素ステーションを増やす方針とのことで、他の地域も見習えばよいのだが、2020年の東京五輪時に水素ステーションが東京都内で35カ所というのは目標が低すぎるのではないだろうか。また、水素価格の設定がガソリンと変わらない程度なら需要者にとっては利便性が増さないため、余った電力は発電を抑制するのではなく、水素に変えて水素燃料を安くすべきである。

(7)総選挙で原発や電源構成は争点になっていたか
 総選挙では与党が大勝し、「信任を受けた」として原発推進政策がさらに進んでいるが、*7のように、与党候補者の大半が市民団体「脱原発法制定全国ネットワーク」の原発再稼働の賛否を尋ねたアンケート調査に回答しなかったのだから、与党は原発再稼働の争点化を回避していたと判断できる。

<安全ではないのに原発再稼働に前のめりの経産省>
*1-1:http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2014122201001363.html
(東京新聞 2014年12月22日) 原発再稼働の自治体に重点配分 電源交付金、停止は削減方針
 経済産業省が、原発が立地する自治体を対象とする電源3法交付金について、原発が再稼働した自治体に重点的に配分する方向で検討していることが22日、分かった。原発事故後、停止した原発についても稼働しているとみなして一律に配分しているが、2016年度にも重点配分を始める。24日の総合資源エネルギー調査会原子力小委員会で示す中間整理で「稼働実績を踏まえた公平性の担保など既存の支援措置の見直し」という表現で、原発の発電量に応じて配分する必要性を明記する。再稼働に事実上必要な立地自治体の同意が得やすくなる効果が見込まれる。

*1-2:http://mainichi.jp/select/news/20141218k0000m040098000c.html
(毎日新聞 2014年12月17日) 高浜原発基準適合:田中委員長「イコール事故ゼロでない」
 関西電力高浜原発3、4号機(福井県)の審査書案を了承したことを受け、原子力規制委員会の田中俊一委員長は17日の定例記者会見で「稼働への条件を満たしているか審査した。イコール事故ゼロかというと、そんなことはない」と述べた。田中委員長は1例目の九州電力川内(せんだい)原発1、2号機(鹿児島県)の審査書案を了承した今年7月にも「安全とは私は申し上げない」と述べ、政府の「規制委が安全性を確認した原発については再稼働を進めていく」という方針と異なるため物議を醸した経緯がある。高浜原発の審査書案了承までは約1年5カ月かかった。当初は半年程度とされていた審査が長期化したことについて、田中委員長は「(関電は)従来の安全対策で十分という意識から抜けきれず、時間を取ってしまった」と指摘した。

*1-3:http://www.47news.jp/CN/201412/CN2014122401001795.html
(47ニュース:共同通信 2014/12/24) 将来の原発維持に積極姿勢 経産省小委の中間整理
 経済産業省は24日、総合資源エネルギー調査会の原子力小委員会を開き、原子力政策の課題を示す「中間整理」をまとめた。老朽原発の円滑な廃炉を促す一方、廃炉後に敷地内に新しい原子炉を設置する建て替え(リプレース)に触れるなど、将来の原発維持に向けた積極姿勢を打ち出した。政府は示された課題を踏まえ、電力自由化や将来の電源構成の策定も念頭に、具体的な政策の検討に入る。しかし政府のエネルギー基本計画で示した「原発依存度を可能な限り低減させる」方針とは逆行しており、世論の反発も招きそうだ。
(ニュースの言葉)
☆エネルギー基本計画(2014年4月11日)エネルギー政策基本法で政府に策定が義務付けられた、国の中長期的なエネルギー政策の指針。おおむね3年ごとに見直し閣議決定する。電力やガス、石油などエネルギー企業の投資計画にも大きな影響を与える。民主党政権は2010年策定の計画で、地球温暖化防止の観点を重視し二酸化炭素の排出が少ない原発の新増設方針を明記した。原発事故で民主党政権は原発ゼロ方針に転換し基本計画の見直しに着手したが、作業途上で自民党政権に交代した。
☆総合資源エネルギー調査会(2011年10月3日)2001年に設置された経済産業相の諮問機関で、資源エネルギー庁が所管。委員は経産相が任命する。鉱物資源やエネルギーの安定的で効率的な供給の確保や、適正な利用の推進などについて審議する。エネルギーの需給政策について長期的な方向性を示す「エネルギー基本計画」を政府が変更する場合には、経産相が調査会の意見を聞くことが法律で決められている。

<電源別発電コスト>
*2-1:http://www.47news.jp/smp/47topics/e/257032.php (47News 2014/9/17) 【原発の発電コスト】原発の電力、風力より高い 太陽光とも同レベル 米企業系調査機関が試算
 原発の発電コストは世界的には1キロワット時当たり平均14セント(約15円)で太陽光発電とほぼ同レベル、陸上風力発電や高効率天然ガス発電の8・2セントに比べてかなり高いとの試算を、エネルギー問題の調査機関として実績のある米国企業系「ブルームバーグ・ニュー・エナジー・ファイナンス」(BNEF)が16日までにまとめた。東京電力福島第1原発事故後の安全規制強化もあって建設費や維持管理にかかる人件費などが世界的に高騰していることが主な理由。再生可能エネルギーのコストの低下が続く中、原子力の優位性が薄れていることを印象付ける結果となった。2004年の日本政府による試算では、原発発電コストは1キロワット時当たり5・9円だった。BNEFは、原子力やバイオマス、地熱、水力など23の発電手法について、14年上期時点の世界各国の設備費、燃料費、資金調達に必要な債務費などを調べ、施設の耐用年数などでならしたコストを算出した。炉心溶融などの深刻な事故を防ぐための対策強化が求められるようになった結果、原発の発電コストは近年上昇しており、設備利用率を92%と高く見積もっても1キロワット時当たり14セントとなった。地熱(同6・5セント)、小水力発電(同7・7セント)、陸上風力(同8・2セント)などの再生可能エネルギーに比べてかなり割高だった。石炭火力は9・1セント、天然ガス火力は8・2セントだった。原発コストには、放射性廃棄物処分のために電力会社が積み立てている費用を含むが、廃炉費用は含んでいない。太陽光発電は近年、発電コストが下がって14・9セントとなっている。日本では、海外に比べ高価な国内製機器が使われることから32・9セントと高いが、BNEFは「安価な輸入品機器の利用拡大で、コストは低下傾向にある」としている。風力発電も日本は機器コストが高く、稼働率が欧米に比べて低いため、19セントと割高だった。BNEFは、米国大手情報サービス企業「ブルームバーグ」の傘下。原発の発電コスト 日本の原発の発電コストは2004年の政府の審議会の試算で1キロワット時当たり5・3円とされ、他の電源に比べて有利だとされてきた。だが、東京電力福島第1原発事故後に政府の「コスト等検証委員会」で見直しが行われ、事故対策費などを含めると最低でも同8・9円と試算された。今回のブルームバーグ・ニュー・エナジー・ファイナンスの分析は、同委員会の試算手法とは異なり、事故対策費用などは含んでいない。

*2-2:http://digital.asahi.com/articles/DA3S11498456.html?_requesturl=articles%2FDA3S11498456.html&iref=comkiji_txt_end_s_kjid_DA3S11498456 (朝日新聞 2014年12月9日) (思想の地層)本当のコスト 何のための原発保護か 小熊英二(歴史社会学者)
 原発の新たな優遇策が検討されている。経済産業省の総合資源エネルギー調査会原子力小委員会で議論されている差額決済契約(CFD)がそれだ。CFDはイギリスで導入された制度で、固定価格での電力買い取りを一定期間保証するものだ。買い取り価格は使用済み核燃料処分や廃炉など、将来費用も含む総コストを勘案して算出される。イギリスで適用が合意された原発は一つだけで、買い取り基準価格は1キロワット時15円ほど。陸上風力発電より高値で、保証期間も35年と長い。原発は初期投資が大きく、市場経済ではコスト回収が保証されない。日本でも再来年に導入される電力市場自由化にむけ、CFDをはじめ、原発保護政策が検討されているのはそのためだ。だがこうした政策を導入することには、様々な異論が出ている。第一に、買い取り価格が電力料金に転嫁され、消費者の負担が増える可能性が高い。報道によると「(日本で)原子力CFDを既存の原発に適用すれば賦課金総額は年間3兆円を超える計算で、現在の電力料金の代替燃料費負担とほぼ同額」である。ある大手製造業幹部は「原発建設にかかわっている企業ならともかく、料金が割高になるのなら原子力発電を再開するメリットはない。もしもCFDが導入されたなら、自家発電量を大幅に引き上げるしかない」と述べている(「原発の『本当のコスト』が見えてきた」選択12月号)。
     *
 第二に、決定過程が不透明である。検討が行われている原子力小委員会には、専門委員として電力会社および原子力事業者が出席している。福島原発事故後に実施されていた審議会のビデオ中継はなくなり、第6回会合までは音声データすら公開されていない。第7回以降は音声のみ公開されたが、「議事録を掲載するまでの暫定的な提供」とされている。中継での公開が行われない理由として、委員長は「この場で意見を言いにくいという方がいらっしゃる」と述べている(大島堅一「さらなる原子力保護政策は許されるか」世界12月号)。
     *
 第三に、こうした政策では、経営努力をしない電力会社の方が有利になる。これも報道によると、中部電力は以前から火力発電の効率化を進め、東京電力も福島原発事故後は「火力部門を成長の柱に立てることになった」。両社は燃料部門を統合し、LNGの国際調達価格を削減することも模索している。それに対し関西電力は、依然として旧来の原発重視を変えず、「原発と心中」する路線をとっているという(特集「電力再編」週刊ダイヤモンド10月11日号)。旧態依然の経営方針を優遇し、新時代に対応する努力に報いない政策では、未来は開けない。合意のない不透明な保護政策は、依存を生み、健全な努力を損なう。茨城県東海村前村長の村上達也氏は、原発が地域にもたらす弊害として、「みんな努力しなくなる」ことを挙げている。「例えば衣料品店、村民の方を向いてません。作業着とか靴とか、原発作業員用のものを仕入れて売ればいい」。「旅館もそう。原発作業員向けだから、雑魚寝で風呂は共同なんだよ」。「個室にするとか、部屋を改装しなきゃダメだって言っていたんだけど、やらない。『改装なんていい。作業員が来るから』ってみんな言いますよ」。結果として「原発を作ると他の産業は育たない」という(村上達也「原発のメリット? デメリットだらけの疫病神だ」ダイヤモンドオンライン2月6日)。衆院選の公示前日の党首討論で、安倍首相は「国民がもう原子力発電は懲り懲りだと思われるのも当然だ。同時に安定的に低廉なエネルギーを供給していく責任がある」と述べた(本紙朝刊12月2日付)。「低廉」ではないことを電力会社と経産省が事実上認めたいま、首相に原発保護が必要なのかを語ってほしい。

<過酷事故のコスト>
*3-1:http://www.yomiuri.co.jp/economy/20141224-OYT1T50082.html
(読売新聞 2014年12月24日) 賠償資金受け取り、総額4・5兆円に…東電
 東京電力は24日、福島第一原子力発電所事故の賠償に必要な資金として、政府の原子力損害賠償・廃炉等支援機構から755億円を受け取ったと発表した。資金の受け取りは35回目で、総額は4兆5337億円。被災した宅地や建物、家財道具の賠償や、原発事故で働けなくなって収入が減った人への賠償、農作物の風評被害の補償などにあてる。東電はこれとは別に、政府から原子力損害賠償法に基づき、1200億円の補償金を受け取っている。19日までに支払った賠償金は約4兆5319億円となっている。

*3-2:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20141224&ng=DGKKZO81242910U4A221C1CR8000
(日経新聞 2014年12月24日) 事故直後「異常なし」の子供4人、がんの疑い 2巡目検査
 福島県の子供を対象に東京電力福島第1原発事故による放射線の影響を調べる甲状腺検査で、事故直後の1巡目の検査では「異常なし」とされた子供4人が、4月から始まった2巡目の検査で甲状腺がんの疑いと診断されたことが23日、関係者への取材で分かった。25日に福島市で開かれる県の検討委員会で報告される。調査主体の福島県立医大は確定診断を急ぐとともに、事故による放射線の影響かどうか慎重に見極める。検査の対象は1巡目が事故当時18歳以下の約37万人で、2巡目は事故後1年間に生まれた子供を加えた約38万5千人。1次検査で超音波を使って甲状腺のしこりの大きさや形状などを調べ、程度の軽い方から「A1」「A2」「B」「C」と判定し、BとCが血液や細胞などを詳しく調べる2次検査を受ける。関係者によると、今回判明したがんの疑いの4人は震災当時6~17歳の男女。1巡目の検査で「異常なし」とされていた。4人は今年4月からの2巡目検査を受診し、1次検査で「B」と判定され、2次検査で細胞などを調べた結果「がんの疑い」と診断された。また、1巡目で、がんの診断が「確定」した子どもは8月公表時の57人から27人増え84人に、がんの「疑い」は24人(8月時点で46人)になったことも新たに判明した。

*3-3:http://www.tokyo-np.co.jp/article/feature/nucerror/list/CK2014122102100005.html (東京新聞 2014年12月21日) 【福島原発事故】1~3号機、阻む高線量 福島4号機、核燃料取り出し終了
 東京電力は20日、福島第一原発4号機のプールに残っていた核燃料4体(未使用)の取り出し作業を報道陣に公開した。事故当時、大量の使用済み核燃料が残り国内外を震撼(しんかん)させた4号機。昨年11月から71回に及ぶ作業が続き、プールは空になった。これで課題の一つは解決されたが、建屋内の放射線量が高い1~3号機を含めた全体の廃炉に向けた作業は続く。前日まで二十六体が残っていたが、別の輸送容器で二十二体が運び出され、最後の四体がプール内で容器に詰められていた。この日公開されたのは、建屋に併設された取り出し用骨組みのクレーンで、四体の入った容器をプールから引き上げる作業。クレーンはプール上に移動し、容器をつかんでゆっくりと上げた。作業員十数人が容器を拭いたり、シートを広げて水滴が落ちないよう保護したりし、容器は三十メートルほど南の除染場に到着。作業は約四十五分で終わった。今後、容器は除染し、ふたを閉めた後、別のクレーンで地上に下ろされ、6号機プールに移される。これが済めば、千五百三十五体あった核燃料はなくなり、4号機のリスクは実質的になくなる。福島第一の小野明所長は「作業員の努力のたまもの。気を緩めず、廃炉を進めたい」と話した。
◆残る難題 除染に限界
 4号機の危険性は取り除かれたが、1~3号機には、炉内に溶け落ちた核燃料、プールには計千五百七十三体が残る。作業できるようどう放射線量を下げ、どう取り出すのか。検討課題は山積している。正念場はこれからだ。比較的早く取り出しに入りそうなのが3号機。建屋上部に積み上がっていたがれきはほぼ除去された。二〇一五年度中の取り出し開始を目指す。しかし、プールのある五階の線量はいまだ高い。床のコンクリートを削り、高圧洗浄し汚染は減ったが、放射性物質は深く床に染みこんだ。東電は百分の一に汚染が減ると期待したが、五分の一程度までしか下がっていない。除染には限界があり、鉛による遮蔽(しゃへい)など追加策が必要になる。1号機は一七年度から取り出す計画だったが、建屋カバーの解体が遅れたこともあり、二年ほど延びることになった。建屋が健全だった2号機は汚染蒸気が充満し高濃度に汚染が残る。高い所だと毎時八八〇ミリシーベルトもある。建屋上部を解体する方向だが、具体策の検討は二年後という。 (荒井六貴)

*3-4:http://www3.nhk.or.jp/news/genpatsu-fukushima/20141221/1836_osen.html (NHK 2014年12月21日) 東京電力 福島第一原発事故 関連ニュース、危機後の大量放出で汚染深刻化
 東京電力福島第一原子力発電所の事故で放出された放射性物質は、核燃料のメルトダウンや水素爆発が相次いだ事故発生当初の4日間ではなく、その後に全体の75%が放出され汚染を深刻化させていたことが、日本原子力研究開発機構の分析で分かりました。政府などの事故調査はこの時期に何が起きていたかを解明しておらず、専門家は「放射性物質の大量放出がなぜ長期化したのか、原因の解明が求められる」と話しています。福島第一原発事故の規模は、放射性物質の放出量からチェルノブイリ原発事故と同じ「レベル7」とされていますが、放出の詳しい全体像は明らかになっていません。日本原子力研究開発機構の茅野政道所長代理らの研究グループは、原発周辺などで観測された放射線量の新たなデータを集め、大気中への放出状況を詳しく分析しました。その結果、事故が起きてから放出がおおむね収まった3月末までに放出された放射性物質の量は47万テラベクレルと推定され、このうち、核燃料のメルトダウンや水素爆発が相次いだ3月15日の午前中までの4日間の放出量は全体の25%で、むしろ、その後の2週間余りで全体の75%を占める大量の放出が続いていたことが分かりました。さらに、当時の気象条件を基に拡散の状況を解析したところ、15日の夕方から深夜にかけて起きた大量放出で、今も帰還困難区域となっている原発周辺の汚染が深刻化していたほか、20日の夜から翌日にかけての放出が関東地方など広範囲に広がり、一部の水道水の汚染などにつながったとみられることが分かりました。今回の分析結果は、事故の進展を食い止められず危機的状態とされた当初の4日間のあとも放射性物質の大量放出を抑え込めていなかったことを示していますが、政府などによる事故調査は当初の4日間に重点が置かれ、その後の放出の原因については解明されていません。茅野所長代理は、「今後の原発事故の防止や事故の早期の収束のためにも、なぜこのような放射性物質の大量放出が長く続いたのかを解明していかなければならない」と話しています。

<隠された川及び海洋の汚染>
*4-1:http://www.tokyo-np.co.jp/article/feature/nucerror/condition/list/CK2014121302000127.html (東京新聞 2014年12月13日) 海に除染水 不安の声
 東京電力福島第一原発では六~十二日、建屋周辺の井戸(サブドレン)から除染した地下水を海に流す計画について、東電と経済産業省が、地元漁業者に二度目の説明会を開いた。過去五回の除染試験で放出基準を下回ったと報告したが、参加者からは不安の声が続出。理解は得られていない。原子力規制委員会は、敷地内で汚染水漏れなどの事故が起きた場合、今後は国際的な原子力事故評価尺度(INES)による評価をしない方針を決めた。福島第一の事故は、INESの尺度で七段階中最悪の「レベル7」と評価されている。尺度は壊れていない原発を想定しており、個々の事故・トラブルを機械的に評価するのは「混乱を生む可能性がある」のが理由という。

*4-2:http://www.asahi.com/articles/ASGCH23ZLGCHUHBI003.html
(朝日新聞 2014年11月15日) 米沿岸で福島原発からの放射性物質を初検出 研究所発表
 米カリフォルニア州の沿岸部で、東京電力福島第一原発事故で放出された放射性セシウムが海水から検出されたと米ウッズホール海洋研究所が発表した。米国での検出は初めて。非常に微量で人体への影響はないとしているが、原発事故から約3年半かけて太平洋を渡ったことになる。同研究所は、ボランティアの協力を得て海水を採取してきたが、8月にカリフォルニア州北部で採取した海水から放射性セシウム134が検出された。セシウム134は通常自然界では検出されず、半減期が2年のため、原発事故時のものと考えられるという。検出したのは1立方メートルあたり2ベクレル以下と、米政府が定める飲料水基準の1千分の1以下の値で「人体にも海洋生物にも影響する値ではない」としている。カナダ西海岸では今年2月に微量を検出したとの研究者の報告があったという。海流の流れ方は複雑なため、放射性物質の拡散の仕方や量の予測にはばらつきがあり、「2、3年後にセシウム値が上がるとの予測もある」としている。

*4-3:http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2014121902000133.html (東京新聞 2014年12月19日) 福島事故 放出セシウム 隅田川底土 続く蓄積
 東京電力福島第一原発事故の放射能汚染問題で、本紙が新たに東京の都心部を流れる隅田川の底土を調査したところ、かなり高い濃度の放射性セシウムが長期的にたまり続ける可能性の高いことが分かった。川は大きく蛇行し、流れが緩いことが大きく影響しているとみられる。本紙は首都圏の湖沼や東京湾、福島県の農地などで汚染の調査を続け、今回が六回目。十月から十二月にかけ、隅田川最上流部の岩淵水門(東京都北区)から日の出桟橋(港区)まで八地点(橋では左右両岸)で底土を採取。荒川は九月に実施した河口部に加え、埼玉県秩父市まで採取した。底土は乾燥させた後、それぞれ八時間かけ、セシウムの放射能濃度を測定した。その結果、荒川は河口域で一キログラム当たり三〇〇ベクレルを超える汚染が確認されたが、さかのぼっていくと濃度が急速に低下。河口部から約十七キロの江北橋(足立区)では一〇〇ベクレルを下回り、もっと上流部では五〇ベクレルを下回るレベルだった(詳細は分析中)。一方、隅田川は一四六~三七八ベクレルと全般的に濃度が高く、浅草周辺などの中流域が高かった。水がよどみやすい蛇行部の内側は濃度が高くなる傾向も確認された。測定結果について、独協医科大の木村真三准教授(放射線衛生学)は「水量と流れのある荒川は、放射性物質が一気に河口部まで運ばれた。隅田川は流れも緩く、大雨で徐々に海に運ばれていくとしても、濃度が下がるには長い年月がかかる。今後は半減期が三十年と長いセシウム137が汚染の中心となる。市民が底土に触れる機会は少ないだろうが、水がよどむ部分や河口域がどうなっていくのか、監視が重要になる」と分析した。

<まだ場所が見つからない最終処分場>
*5:http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2014121102000270.html
(東京新聞 2014年12月11日) 最終処分場建設 行き詰まる議論 反発強く候補者明言せず
 東京電力福島第一原発事故で発生した指定廃棄物の最終処分場建設が行き詰まっている。候補地の反発が強く、打開策を見いだすことが難しいためだ。衆院選でも与党候補が賛否を明言しないなど議論は深まらない。地元住民からは「争点とならず、がっかりしている」とため息が漏れる。「ご心配を掛けているが、私は発言を慎んでいる」-。栃木県の建設候補地となった塩谷町を選挙区に抱える自民党現職閣僚は、公示日の二日、さくら市での演説で慎重な言い回しに終始した。同じ選挙区の民主党候補は建設反対の立場を強調、指定廃棄物は福島県の原発周辺に集約すべきだと主張する。ただ発生した県内で処理する方針は民主党政権時代に決めたもので、福島県は一貫して受け入れない意向だ。共産党候補は選定の白紙撤回を訴える。塩谷町は七月に最終処分場候補地に選ばれて以来、風評被害などへの不安から住民ぐるみで反対運動を展開中だ。候補地の近くに名水百選に選ばれた「尚仁沢(しょうじんざわ)湧水」があり、見形(みかた)和久町長は「これだけの自然を壊すことに賛成の町民はいない」と国の選定に憤る。望月義夫環境相は県内処理の方針を見直さない意向を表明しており、各地に仮置きされた指定廃棄物の行く先に見通しは立たない。宮城県では栗原市と大和(たいわ)町、加美町が候補地に挙げられた。環境省は十月、候補地を一つに絞るため現地調査に乗り出したが、住民が道路をふさぐなどしたため中止に追い込まれた。積雪がある間は着手できず、計画は大幅に遅れる見通しだ。宮城県内の選挙区でも、処分場建設問題の論戦は盛り上がらない。加美町で反対運動に加わっている男性会社員(56)は「足元で反対運動が起き、明確な意思表示がしにくいのだろう。選挙結果がどうなっても、反対に向けた長い戦いは続く」と話す。茨城、群馬、千葉の各県でも最終処分場を新設する予定だが、いずれも候補地の選定が進んでいない。

<再生可能エネルギーの普及を阻んで原発に回帰する経産省>
*6-1:http://www.hokkaido-np.co.jp/news/editorial/581748.html
(北海道新聞社説 2014.12.21) 再生エネルギー 原発依存が普及を阻む
 電力5社が太陽光発電の新たな受け入れを中断していた問題を受け、経済産業省は再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度の見直し案を発表した。電力会社が太陽光発電の事業者に対し、補償金を払わずに発電の抑制を無制限に要請できるようにし、抑制の対象設備を小規模な家庭用にも拡大する内容だ。電力5社のうち、北海道、東北、九州の太陽光発電の受け入れ可能量は、国の認定を受けた設備の半分程度にすぎない。発電の抑制強化を受け、5社は受け入れを再開する見通しだが、事業者は買い取ってもらう量が減り、採算が悪化して計画の変更を迫られる恐れもある。価格面で優遇され、建設が容易な太陽光の急増は当初から予想されており、事態を放置してきた経産省の責任は重大だ。今回の見直しで、発電の抑制方式を1日単位から時間単位に改め、事業者に通信装置の設置を義務付けて遠隔制御を可能にする。天候に左右される太陽光や風力の活用にはきめ細かな制御が前提で、欧州各国では、こうした仕組みは常識だ。対応が遅く、場当たり的と言わざるを得ない。何より、再生エネを普及させるには、明確で高い導入目標と、将来の電源構成比率が不可欠だが、一向に示されない。これなくしては、事業者は展望を持てず、投資をためらうだろう。政府のエネルギー基本計画の再生エネ比率は、2030年に約2割を上回るという極めてあいまいな表現にとどまっている。2割は東日本大震災前の前回計画と同様のあまりに低い水準だ。しかも前回が原発比率を約5割としていたことを考えれば、非現実的とさえ言える。電力会社の再生エネ受け入れ可能量の妥当性にも疑問がある。電源構成比率の議論が先送りされているにもかかわらず、電力各社は保有する原発の稼働を前提に可能量を算定している。これでは、再生エネの導入を最大限加速し、原発依存度を可能な限り低減させるとの政府方針とはあべこべに、原発依存度に合わせて再生エネの枠を絞るようなものではないか。再生エネを「最大限」活用するには、送電網を拡充して受け入れに十分余裕のある大都市圏に送電する必要がある。送電網増強の議論を置き去りにして根本的な解決は図れない。政府の怠慢は目に余る。

*6-2:http://www.nikkei.com/paper/related-article/tc/?b=20141224&bu=BFB (日経新聞社説 2014.12.24) 太陽光価格、20円台に、企業向け買い取り、3年連続下げ 再生エネ偏り是正
 経済産業省は企業が太陽光発電でつくった電気について、電力会社が買い取る際の価格を引き下げる。来年1月から第三者委員会が価格の決定に向けた議論を始め、2015年度は初めて1キロワット時あたり20円台になる見通しだ。3年連続の引き下げで、再生エネルギーの普及が太陽光に偏らないようにする。一方、九州電力と東北電力は来月から太陽光の買い取り手続きを再開する。再生エネの固定価格買い取り制度は12年7月に導入した。再生エネでつくった電気を決まった価格で買い取ることを電力会社に義務づけている。買い取り価格は年度ごとに、有識者がメンバーの調達価格等算定委員会が発電設備導入に伴うコストなどを踏まえて決める。主に企業が参入する出力10キロワット以上の太陽光の価格は13年度、14年度も下げている。太陽光の買い取り価格を下げるのは、政府が認定した再生エネ設備の9割を占めるほど、導入が増えているためだ。経産省は「導入量も考慮した価格算定のあり方を検討すべきだ」との意向を第三者委に伝え、引き下げ方向の検討を促す。価格を引き下げることで、導入が遅れる地熱や中小水力の比重が高まるように誘導する。発電出力が小さい住宅用の太陽光は電力会社が受け入れやすく、災害にも強い利点がある。経産省は住宅用を優先して導入する方針を示し、第三者委も買い取り価格を引き下げるかどうかを慎重に議論する。経産省は18日、認定済みの再生エネを電力会社がより多く受け入れられるようにするため、太陽光などの発電を制限しやすくする新ルールを発表した。無補償で制限できる対象を500キロワット未満に広げ、時間単位で制限できるようにする。買い取り価格が決まった後も設備費が下がるまで発電を始めず、不当な利益を得ようとする事業者らへの対処方針も示した。省令を改正し、15年1月中旬以降に新しい仕組みを導入する。経産省の対応策の公表を受け東北電力は地熱と水力などの買い取り手続きを18日に再開し、来年から太陽光も再開する方針だ。九州も近く地熱などの手続きを再開する。発電制限を頻繁に求められると事業の採算が合わなくなる可能性があり、参入にリスクを伴う。九州電力管内で太陽光発電を手掛ける再生エネ事業者は「現状ではやむを得ない」とため息をつく。福島県の再生エネ事業者は「仮に2カ月の間制限されたら利益がなくなる。稼働率を勝手に電力会社に決められたら売電益を見通せなくなる」と憤った。

*6-3:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20141219&ng=DGKKZO81079940Y4A211C1L83000 (日経新聞 2014.12.19) 都「水素社会」向け前進、燃料電池車普及へ供給基地 五輪時35カ所目標
 東京都で排ガスのないクリーンな「水素社会」を目指す官民の取り組みが動き出した。18日に都内第1号の商用の水素ステーションが練馬区で誕生。15日に世界で初めて発売された燃料電池自動車(FCV)の普及を支える拠点となる。舛添要一知事は水素社会を2020年五輪のレガシー(遺産)にする方針を打ち出しており、補助金も出して整備を促す。練馬区の「練馬水素ステーション」は、東京ガスが既存の天然ガススタンドに併設して整備した。商用ステーションとして国内3カ所目だが、関東地方では初めて。事業費は公表していないが、国から最大1億9千万円の補助を受ける。水素の供給価格はFCVの納車が本格的に始まる年明けにも決める。東京ガスは「ユーザーに受け入れられる価格設定が重要」として、ガソリンと変わらない水準を目指すという。水素ステーションはFCVに欠かせないインフラ。ただ普及初期は利用台数も少なく、採算は厳しい。標準的な建設コストもガソリンスタンドの約5倍の5億円程度かかるとされる。このため経済産業省は標準的なケースで2億2千万円を補助する制度を2013年度に創設。都も歩調を合わせ1億8千万円の補助金を出し、事業者負担をガソリンスタンド並みに抑える。都議会に提出した14年度補正予算案に21億円を計上、当初10カ所の導入支援を想定している。都は自動車メーカーやエネルギー企業などを集めた官民の会議で「水素社会」実現の数値目標も定めた。五輪のある20年に都内でFCV6千台、水素ステーションは35カ所とする。25年には10万台、80カ所に増やす。ここまで拡大すれば、10分程度の走行時間でステーションに到達できるようになるという。都によると14年度末までに水素ステーションは合計4カ所に増える。JX日鉱日石エネルギーが八王子市と杉並区、岩谷産業が港区に開く予定だ。板橋区、千代田区、大田区でも計画があるという。東京ガスは荒川区など2カ所の研究開発用ステーションの商用転用も検討する。舛添知事は18日の都議会での答弁でも水素ステーション誕生に言及。「スピード感をもって、水素社会の実現に向けて我が国をけん引していく」と強調した。

<総選挙で原発や電源構成は争点になっていたか>
*7:http://www.saga-s.co.jp/news/national/10202/134917
(佐賀新聞 2014年12月11日) 与党、原発争点回避か、候補者調査に大半回答せず
 市民団体「脱原発法制定全国ネットワーク」などは11日、衆院選の小選挙区候補者に原発再稼働の賛否を尋ねたアンケート結果を公表した。反対が大半を占めたが、再稼働推進の自民党と、容認姿勢の公明党の候補者はほとんど回答せず、同ネットワークは「与党が原発の争点化を避ける姿が浮き彫りになった」としている。アンケートは全候補者のうち、連絡が取れない3人を除く956人を対象に実施。10日までに360人が回答した。再稼働反対が319人と最も多く、賛成は24人だった。賛否を二択で尋ねたが、その他が17人いた。


PS(2014年12月29日追加):“風評被害”と決めつけられると、「食品中の放射性物質に関する基準が甘くなり、全数検査をしているわけでもなく、検査値の表示もしてないため、需要者は生産地で選んで用心する権利がある」と思うが、確かにフクシマ原発事故で栃木県・群馬県の野菜や宮城県の水産物の売り上げは落ちたと考えられる。そのため、「食べて協力」と強制するのではなく、東電から損害賠償を受けるのが筋だ。

*8:http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2014122902000119.html
(東京新聞 2014年12月29日) 茨城の農家、集団請求へ 原発風評被害、賠償継続を
 東京電力福島第一原発事故による風評被害で売り上げが落ちた茨城県西部の野菜農家約二百五十人が、東電の損害賠償の継続を求めて来年三月にも、原子力損害賠償紛争解決センターに裁判外紛争解決手続き(ADR)を申し立てることが分かった。農家による集団申し立ては異例。申し立てを準備しているのは、坂東市や境町、八千代町などでキャベツ、レタス、ネギ、白菜などを生産する野菜農家。原発事故後、東電から賠償金を受け取っていたが、「事故から相当期間が経過し、業績が回復した」などの理由で二〇一三年三月分を最後に賠償を打ち切られていた。窓口となっている原発被害救済茨城県弁護団によると、今回のADRで求めるのは、打ち切り後の一三年四月~今年六月の一年三カ月分の損害賠償。請求総額は十数億~二十億円規模になる見通しだ。茨城県による定期的な検査では一二年以降、県産野菜から放射性セシウムは検出されていない。だが、農家からは「原発事故後に値下がりした地元野菜の価格はまだ戻っていない」といった指摘がある。茨城県の農家らに対する東電の損害賠償打ち切りは一三年秋に二十数件が表面化。橋本昌知事は「不利な条件下で事業者は必死に取り組んでいる」と批判したが、東電側は争いがあればADRで和解する意向を示していた。
<裁判外紛争解決手続き(ADR)> 福島第一原発事故の訴訟を起こさず、損害賠償を東京電力に請求する手続きの一つ。国の原子力損害賠償紛争解決センターに申し立て、受理されると、弁護士などの仲介委員が双方の主張を聞いて和解案を提示する。

| 原発::2014.10~2015.3 | 03:20 PM | comments (x) | trackback (x) |
2014.12.23 ふるさと納税制度について
   
  *2-1より           *3-1より        玄海町浜野浦の夕日

(1)ふるさと納税制度の趣旨とその発展的展開
 「ふるさと納税制度」を提案し実現にこぎつけたのは私だ。そこで、「ふるさと納税制度」の趣旨を書くと、地方である「ふるさと」で教育を受けて大都市で働いている人の多くは、高校までの教育費を地方で支出してもらいながら、働き手となって税金を納めるのは居住する大都市に対してであるため、教育投資をする場所と働き手として税金を納める場所が異なるという根本的な齟齬(そご)が生じている。また、その老親は、地方である「ふるさと」に残って医療・介護などのケアを受けるため、地方は、支出は多いが収入が少ないという構造的な問題を抱えることになる。

 そこで、私は、都会で働く地方出身者を視野に「ふるさと納税制度」を提案したため、地方出身者が自分が育った地方にふるさと納税を行うというのが最初の趣旨だったが、①父親の転勤等で「ふるさと」が複数ある人はどこに納税すればよいのか ②自分の転勤で住んだ第二の「ふるさと」に納税したいができるか ③東日本大震災のような災害時に被災地に納税できるか などのさまざまな要望があり、*1のような発展的展開になっているもので、私は、これでよいと思っている。

 そして、重要なことは、これまでとられるだけだった税金を、人々が地域や事業を選んで納めることができるようになったことで、これを使えば、メニューさえあれば、現在住んでいる自治体に対しても「ふるさと納税制度」を利用して、使途を指定して税金を納めることが可能である。そのため、それぞれの自治体が知恵を出して政策を作れば、確かに、よいまちづくりが進むとともに、市民の地方自治への関心を高めて民主主義の活性化にも繋がるだろう。

(2)地方自治体の努力とその成果
 *2-1に書かれているように、平戸市はふるさと納税制度の本年度の寄付申込が10億円を突破し、昨年度の個人市民税と法人市民税の合計約10億5370万円と匹敵するそうだ。その理由は、①寄付額に応じてポイントを寄付者に付与し、ウチワエビ、平戸牛などの特典をカタログから選べる制度を導入したこと ②ポイント付与率の引き上げや特典拡充 ③クレジットカード払い導入 などで寄付者を増やしたことだそうで、アッパレだ。

 黒田成彦市長は「市の知名度を上げ、特産品の販売増と生産者の所得向上につなげたい。観光客や移住の増加も期待している。」と話しているそうで、寄付集めに熱心な自治体は、人口減少などで税収減に悩んでいる地域に多く、寄付額の上位10位に九州の5市町が入っている。政府は来年度から減税対象となる寄付の上限を2倍に引き上げる方針であるため、工夫すればもっと実を結ぶことになる。

 また、玄海町のふるさと納税は、米、いちご、高品質の黒毛和牛、豚の角煮、うにの塩漬け、サザエ、サザエご飯、鯛、鯛茶漬け、イカの一夜干しなど、美味しそうな特典が多いため人気があるが、これは、玄海町にある上場商工会議所が知恵を絞って地元農水産物の振興と合わせて行っているからだ。

 しかし、*2-2の玄海町の新酒づくりはよいのだが、「音音〜ネオン〜」という名前では当たらないと思う。何故なら、ネオンなら都会の方がオリジナルで数が多い上、ネオン街の酒は清潔そうでも美味しそうでもないからだ。そのため、むしろ玄海町の長所である自然の風、岬、紺碧の海か歴史的な地名である「末盧」をアレンジした命名にした方がよいと考える。なお、今までそれほど酒好きでなかった人を酒市場に取り込むためには、スパークリング清酒も面白いが、イチゴ(ショッキングピンク)やみかん(黄色)で作ったスパークリング・ワインがよいと思う。

(3)返礼合戦でふるさと納税の趣旨は薄れず、平準化主義はむしろ自治体の努力を妨げる
 *3-1の日経新聞記事は、「ふるさと納税返礼合戦で、お得感が膨らみふるさと納税の趣旨が薄れた」とし、「ふるさと納税は、自治体間の税金の奪い合いになりかねない面があり、過度な競争は地方の自滅になる」と京都府知事が懸念していると書き、「東京都は、ふるさと納税で5億円近い税収が“流出”した」としている。しかし、これらの大都市こそ、教育費を出さずに働き手を入手して納税させている地域であり、東京都にとっての5億円は小さな金額であるため、お礼に工夫を凝らしてふるさと寄付金を増やした自治体を攻めるのは的外れだ。

 また、*3-2の北海道上士幌町の場合も、そもそも北海道には美味しい食品が多い上、北海道上士幌町には和牛や蜂蜜などの魅力的な特産品があり、住民は少なく個人住民税も少ないため、半年で個人住民税の倍になったとしても驚くには当たらない。これはむしろ、ふるさと納税制度が人口の偏りを特産物で是正している姿であり、上士幌町は返礼品にそれだけ魅力があることに自信を持って、それらの商品が品切れにならないよう増産すべきなのである。

   
      春(菜の花)       夏(ハスの花)  秋(彼岸花)      冬(樹氷)

<ふるさと納税の趣旨と展開>
*1:http://www.f-tax.jp/site/about_tax (ふるさと納税応援サイト ふたくす)
●「ふるさと納税制度」とは
 「ふるさと納税」について、言葉からは、“生まれ育った「ふるさと」に「納税できる」制度”と受け止める方が多いと思います。しかし、国が制度化した趣旨や具体の運用方法はこれとは若干異なると考えるため、勝手ながら説明させていただきます。
※ここで書く内容は、下記文書をベースに、一部当法人の考えを交えてまとめたものです。
  •総務省:「ふるさと納税研究会報告書」
  •自由民主党:「平成20年度税制改正大綱」
 これまで、“とられる”イメージであった税金について、“選んで納める”という市民の自発的行為に基づいて自治体に渡していくものであり、従来の考え方を変えるものです。また、まちづくりにおいては資金の確保が重要な要素でありますが、これにより、市民が主体性を発揮してまちづくりを進められる新たな可能性が生まれました。
●人それぞれの“ふるさと”への寄付
 一般的に“ふるさと”とは、“生まれ育った地域”と捉えられ、“ふるさと納税”については、地域への恩返しや地域で暮らす親への生活支援等のために納税することを指すと考えられがちです。しかし、自分を育ててくれたのは、“生まれ育った地域”のみならず、“すばらしい歴史や自然を有する地域”や“心温かいもてなしをしてくれた人たちが暮らす地域”など人それぞれです。また、将来、“この地域に住みたい”、“この地域でとれる農作物を食べていきたい”など、今後を見通した新たな形の“ふるさと”も考えられます。つまり、人それぞれが、“生まれ育ったふるさと”のみならず、“第二のふるさと”や“心のふるさと”を持っており、各々の思いのある地域を選んで納税することができる制度といえます。
●「納税」ではなく「寄付」
 手続きとしては、“自治体を選んで税金を納める”のではなく、“他の自治体に寄付した金額の一部を、本来納めるべき税から引いてもらう”ことになります。わかりやすさの面から「納税」という語が使われているに過ぎず、手続きとしては「寄付金分の控除」となっています。
●税金が使われる「事業」の選択も可能
 “○のために資金面で協力したい”という思いを形にする制度ですので、単に“生まれ育った○町に!”、“一生懸命がんばる○村に!”と納税するのみならず、“あの歴史あるまちなみの保全のために”、“地域のために働く志の高い人材を育成するために”といった「取り組み・事業」を選んで寄付することができます。言い換えれば、あなたの税金が、まちづくり事業の出資金・投資資金となるわけです。実際に、この制度が始まる前から寄付は多く行われていますが、“緑の保全のために”、“子供たちの交通安全のために”と使途を限定するものが多くを占めていましたので、これを促す制度であるといえます。ということは「自分の住む自治体にも・・・」。現在住んでいる自治体に対しても「ふるさと納税」制度を活用することができ、税金を単に納めるだけではなく、使途を指定して納められると考えます。“何のために使われているかよくわからない”といぶかしく納税していたお金を、“この地域の発展のために”と範囲を限定したり、“若者の教育のために”、さらには“この事業のために”、と使途を限定して寄付(資金を提供)することができる訳です。全国には、「住民税の1%を自分の望む団体の活動資金に回せる自治体(千葉県市川市)」や、「自分の望む事業に寄付できる自治体(北海道夕張市)など」も現れています。それぞれの自治体が知恵を出し合って政策を競い合うことで、各地でより住みよいまちづくりが進むとともに、市民に対して地方自治への関心を高め、民主主義(ないし自治)の活性化にもつながると考えられます。

<地方自治体の努力と成果>
*2-1:http://qbiz.jp/article/52453/1/
(西日本新聞 2014年12月23日) 平戸市、ふるさと納税10億円超 全国初、昨年度の26倍
 長崎県平戸市は22日、ふるさと納税制度での本年度の寄付申込額が約10億2420万円(約2万6400件)となり、10億円を突破したと発表した。昨年度の寄付額の約26倍。ふるさと納税に関する全国の情報を集めたポータルサイト「ふるさとチョイス」によると、10億円突破は全国の自治体で初めてという。市によると、昨年度の個人市民税と法人市民税は計約10億5370万円で、ふるさと納税でこれに匹敵する寄付が集まった。平戸市は寄付額に応じてポイントを寄付者に付与し、ウチワエビ、平戸牛などの特典をカタログから選べる制度を昨年8月に導入。ポイント付与率の引き上げや特典拡充、クレジットカード払い導入などで寄付者を増やした。黒田成彦市長は「市の知名度を上げ、特産品の販売増と生産者の所得向上につなげたい。観光客や移住の増加も期待している」と話した。寄付集めに熱心な自治体は、人口減少などで税収減に悩んでいる地域に多く、寄付額の上位10位に九州の5市町が入った。政府は来年度から減税対象となる寄付の上限を2倍に引き上げる方針。一方、豪華な返礼品による自治体の“特典合戦”を問題視する声もある。

*2-2:http://qbiz.jp/article/47263/1/
(西日本新聞 2014年10月7日) 玄海町、ふるさと納税生かし新酒づくり
 佐賀県玄海町が、全国から寄せられるふるさと納税制度の寄付金を用いて、地元の棚田で収穫した新米を使った新酒づくりに取り組んでいる。来春にも第1弾の5千本が完成する予定で、棚田米を生かした特産品として売り出すほか、ふるさと納税のお礼にも活用する。町財政企画課によると、町内には夕日の観賞スポットとして知られる「浜野浦の棚田」などが点在。海と山に挟まれて寒暖の差が大きく、米にも甘みが出やすいという。来年10月には全国棚田サミットが同町で開かれることもあり、食味のいい米を使った土産品の開発を検討していた。今回、唐津市の酒造会社・鳴滝酒造の協力を得て、純米酒とスパークリング清酒の2種類を製造。すでに秋口に収穫した新米約2700キロを確保し、19日にも米の磨き作業に入る。事業費には、ふるさと納税制度を通じて募った寄付金500万円を活用。新酒の完成後は、数量限定で納税のお返し品にもする。新酒は「音音〜ネオン〜」と命名する予定。酒を囲んで、笑い声などさまざまな音が響き合う場にとの願いを込めている。財政企画課の担当者は「町には生塩ウニやこのわたなど酒のあてはたくさんあるが、地酒はなかった。海産物と合わせてPRし、町の新たな土産品として定着すれば」と話している。

<平準化主義は工夫を妨げること>
*3-1:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20141027&ng=DGKKZO78882390V21C14A0ML0000 (日経新聞 2014.10.27) ふるさと納税返礼合戦 「居住地以外で寄付」に税控除 膨らむお得感、薄れる趣旨
 居住地以外の自治体に寄付すると住んでいる自治体で税金が控除される「ふるさと納税」が急拡大している。寄付者の自己負担を上回る額の返礼が増え、返礼品を見比べられるサイトが登場するなど、お得なイメージが広がった。他の自治体に入るはずの税金を原資にした返礼合戦や、ゆかりの土地に貢献する趣旨が薄れていることへの疑問も強まっている。「今のままだとお礼の品の予算が尽きてしまう」。新潟県三条市の国定勇人市長は15日の記者会見で、ふるさと納税による寄付が、返礼品が不足しそうなほど急増していることへの喜びを口にした。1万円以上の寄付者に、園芸用のハサミなど寄付額の6割に相当する特産品を送る仕組みを1日にスタート。2週間で申込件数は1021件、金額は1566万円となり、目標の月間300件を軽く超えた。返礼品の追加には補正予算で対応するという。
●震災前比で倍増
 ふるさと納税の利用者は、所得などに応じた上限額の範囲内なら何回でも寄付することができ、自己負担の2千円を除く全額が居住地の住民税などから控除される。例えば三条市に3万円を寄付すると2万8千円の税金が控除され、1万8千円相当のお礼が返ってくるため、寄付者は1万6千円のプラス効果を見込める。市からみると1万8千円の返礼で3万円が入る勘定だ。国定市長は「寄付を受ける自治体は損しない仕組みで(議会の理解が得やすく)予算を組みやすい」と話す。返礼品を地元業者から購入すれば、地域振興にもつなげられる。総務省によると、ふるさと納税による寄付額は2012年に約130億円。一時的に急増した東日本大震災の直前の10年の約67億円のほぼ倍だ。ふるさと納税支援の専門サイト「ふるさとチョイス」を12年9月から運営するトラストバンク(東京・渋谷)によると、同サイトに返礼品を掲載している自治体は現在、約980団体で、1年間で4割増えた。9月の閲覧ページ数は約1500万件で前年同月の17倍だ。13年12月からクレジットカードで寄付を受けられるサービスを導入したのも奏功したという。普及の背景にあるのは、寄付の上限額が高くなる高額所得者を中心にメリットの認知度が高まったことがある。独身で年収5千万円の寄付者の上限額は92万3千円。仮に上限額を寄付して半額分を返礼品として受け取れば、2千円の負担で40万円を超す特産品などが得られることになる。4月に出版された「100%得をするふるさと納税生活」の著者、金森重樹氏は「一定のルール下で『欲』に訴えたことでテコが働いた。利用者視点がないと継続的な制度にならない」と指摘する。返礼合戦の過熱を象徴する事例も生じている。京都府宮津市は1千万円以上の寄付者に750万円相当の土地を無償譲渡する特典を設け、9月中旬に告知を始めたが、総務省が待ったをかけた。土地の譲渡は税控除を受けられない税法上の「特別の利益」に当たる恐れがあるとの理由だ。井上正嗣市長は「勉強不足だった」と認め、9月26日に募集中止を発表した。同市は100万円以上の寄付なら来夏の花火大会で寄付者の名前を冠した50万円相当の花火を打ち上げるコースの募集も始めている。ふるさと納税には、特産品を競い地元をPRする効果がある一方で、自治体間の税金の奪い合いになりかねない面がある。あくまでも国から地方への税源移譲を訴える全国知事会の山田啓二会長(京都府知事)は過度な競争は「地方の自滅になる」と懸念。自民党の「ふるさと納税の拡充を目指す議員の会」も今後の留意点として「節度を期待する」と提言した。
●5億円弱「流出」
 ふるさと納税により、13年度に都道府県で最も大きい5億円近い税収が“流出”した東京都は「影響は限定的で静観している。ただ返礼の過熱が好ましいとは思っていない」(財務局)という。都は返礼品を設けていないが、総務省内には「東京が返礼品の導入に乗り出せば、さらに税収が都に集中することになる」との声もある。普及と節度のバランスをどうとるのか。お得感だけでなく、他の自治体や住民に納得感を生む努力も欠かせない。

*3-2:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20141027&ng=DGKKZO78882480V21C14A0ML0000 (日経新聞 2014.10.27) 北海道上士幌町の場合 半年で個人住民税の倍
 ふるさと納税の返礼品には正負両面の評価がつきまとう。総務省が昨秋に公表した自治体調査によると、特産品の送付に関し「特に問題はない」との回答は5割程度を占めたが、「問題はあるが、自治体の良識に任せるべき問題」も都道府県で約3割、市区町村で約2割にのぼった。返礼が寄付を呼ぶのは確かだ。北海道上士幌町は和牛や蜂蜜といった特産品とクレジットカード対応を武器に、ここ半年余りで個人住民税の2倍近い約4億4千万円を集めた。返礼品などの経費を除くと約35%が残る。学校の吹奏楽部の楽器など「通常予算での購入が難しかった資材に使いやすい」(企画財政課)。「話題性を優先し、すぐ品切れになる返礼品が少なくない」と指摘するのは、ふるさと納税の情報サイト「ふたくす」を運営するNPO支援全国地域活性化協議会(東京・千代田)の吉戸勝理事長。「お得感を宣伝する返礼はせず、地元の家族をパイプに、校区など身近なエリアへの寄付を上手に集める自治体もある」と強調する。総務省の研究会が制度の骨格を規定した07年の報告書は第一の意義に「納税者が自分の意思で、納税対象を選択できるという道を拓く」と明記した。それぞれの自治体が「どんな納税者に選ばれたいか」と自問してみるのも意味があるかもしれない。

| 経済・雇用::2014.6~2015.10 | 03:40 PM | comments (x) | trackback (x) |
2014.12.19 選挙制度改革の必要性について ← 男性が多い世襲政治の価値観から脱皮すべき (2014年12月21日、24日に追加あり)
              
2014.12.11日本農業新聞 2014.12.14日経新聞 2014.12.11、12佐賀新聞
   
(1)民主主義になっていない選挙
 *1-1に、日経新聞が、「①有権者の半数が棄権」「②無党派層は分散して組織政党が有利になった」としているが、①②から、棄権した人には、1)一般有権者の実態に全く合わない政策を並べている政党や実行力に疑問がある政党ばかりで、どの政党も負託に堪えないと思った人 2)普段から政治に関心がないためサボった人  の二種類があるだろう。

 しかし、*1-2のような50%程度の低投票率でも、菅義官房長官が「私どもは当然(信任を)受けたと思っている」と述べているとおり、選挙結果は公約にお墨付きを与えることになり、これが民主主義なのである。しかし、これによって、本当はもっと賢い方法があるにもかかわらず、i)消費税率を上げ ii)年金給付額を減らし iii)保育・介護が不足しているにも関わらず社会保障を削減し iv)ばら撒くことが目的の公共工事を増やし v)原発に無駄使いして vi)高齢者福祉を高齢者の既得権益などと呼ばせる 倫理観に欠けた政治が信を得たことになった。しかし、この見せかけだけの民主主義は、官にとっては、自らがやりたい政策に政治がお墨付きを与える制度になっているため、むしろ変えたくないものなのである。

 そのため、*1-3のように、「今回の選挙結果で安倍政権が信任されたと民意をはき違えては困る」という論調のメディアも少なくなかったのは、せめてもの救いだ。

     
     2014.12.12、13日本農業新聞     2014.12.10、13佐賀新聞 

(2)世襲議員と男性議員ばかりの害
 *2-1の麻生副総理兼財務相は、大久保利通、牧野伸顕、吉田茂(祖父)、麻生多賀吉(父)が祖先の世襲の中の世襲議員で、先日、「①子どもを産まないのが問題だ」と発言した。これは、自民党の公約よりもかなり遅れた価値観だが、菅官房長官は、これを「②全く問題ない」と擁護し、麻生副総理兼財務相は、問い詰められた後に「③保育施設などの不足で産みたくても産めないのが問題との趣旨だった」と釈明した。しかし、麻生氏は総理大臣の時に、子どもを産んだという理由で、小渕優子氏を少子化対策・男女共同参画担当大臣に任命しており、麻生氏の本音は①なのである。

 そのような麻生家では、妻の価値は子どもを産むことで、その他の価値は付属にすぎないのだろうが、少子化対策・男女共同参画担当大臣としての適格性を持てる知識や見識を、子どもを産んだだけで持てるわけはなく、逆に、子どもを産まなくてもそういう知識や見識を持っている人は多い。しかし、自民党は、①②のような価値観の議員が多いため、まだまともな介護や子育て支援制度ができていないのである。

 なお、小渕優子氏は、子どもを産んでも支障なく国会議員や大臣を務め続けていられるのだから、子育ての大部分を誰かにやってもらっているに違いない。これは、普通の働く女性から見れば、殆どの男性議員と同様、子育てをやったとか、仕事と子育てを両立したとか言えるようなものではない。

 しかし、このように行政の政策を鵜呑みにする世襲議員や男性議員が高い割合を占める中で政策を決めると、*2-2のように、①人口1億人を維持することが不可欠(イノベーション、女性・外国人の雇用、定年延長、失業率などを無視しており、根拠なし) ②そのためには2040年に出生率2.07が必要(人口置換水準を線形で計算しているため、計算間違い) ③合計特殊出生率を1.8まで引き上げることが、まず目指すべき水準と明記(女性の自己決定権を無視した出産の押しつけという人権侵害に疑問を持たない体質) などという政策を推し進めることになるのである。

 そして、このビジョンが「人口減で国としての持続性すら危うくなる」という危機感に基づいているのは、環境を壊し、原発を推進し、食料やエネルギーの大半を他国に依存しながら、結論を導くためにあからさまなこじつけをしているところが、悲劇を超えて滑稽ですらある。つまり、これらを総合的に考えて解決できる総合力を持たない人が、政治や行政システムの中で意思決定しているのが、現在の日本の最も大きな問題なのである。

(3)選挙制度改革の必要性
 2014年12月14日投開票の総選挙では、小渕優子氏や小泉進二郎氏が早々に当選を決めたと、NHKなどのメディアが何度も何度もその状況を放送していたが、これらの世襲議員の選挙区では、対立候補が共産党からしか出ていなかったため、早々に当選が決まるのは当たり前であり、実際には公示日に候補者が確定した時には、選挙戦は終わっていたのである。

 これは、強力な対立候補と選挙戦を繰り広げざるを得ない立場の世襲でない候補者とは対照的で、それでも、この2人の映像が何度も流されたのは、これらの世襲議員には裏で何かの力が働いていたからにほかならない。そして、日本の政治は、こうやって世襲議員を大量に当選させ、大臣や総理大臣にしていく仕組みになっているが、これでよい筈はないのだ。

 それでは何故、世襲議員が当選に有利かと言えば、下のような理由がある。
  1)先代の後援会や慣れた秘書などの地盤を引き継ぐため、有力な選挙基盤が最初からある
  2)先代の地盤には、地元の首長・県議・市議などに先代の親派が多いため、候補者調整や
    選挙応援で有力である
  3)小選挙区では、地元への利益誘導が重要であるため、1)2)の総合力が力を発揮する

 では、これでいいのかと言えば、一般に一代目より二代目、三代目となるにつれ、世の中に矛盾を感じてそれを変えるために政治家になろうと志した人ではなくなるため、人物が小さくなってよくない。では、どういう選挙制度にすればよいのかと言えば、数を減らせばマイノリティーの政党や女性当選者が減って多様性が減るという副作用があり、国民にとっては数を減らせばよいわけでもない。

 そこで、私は、衆議院は、小選挙区制か中選挙区制で比較的狭い範囲の地域を地元として、地域の代表を議員として選び、これをチェックする立場の参議院は、狭い地元への利益誘導よりも国全体の視点を重視させるとともに一票の格差を完全になくすため、全員を全国区の得標順にするのがよいと考える。ただ、こうしても、本当に政治家にすべき人が選ばれるか否かは、やはり有権者と有権者に正確な情報を流すべきメディアの見識次第になる。

<民主主義と今回の総選挙について>
*1-1:http://www.nikkei.com/article/DGXLASFS14H1E_U4A211C1PE1000/
(日経新聞 2014/12/15) 漂う有権者 半数が棄権 無党派層は分散、組織政党有利に
 衆院選は与党がひとまず勝利をおさめた。安倍晋三首相が有権者から一定の期待を集める一方、野党は政権批判票を多く取り込めなかった。有権者の関心が高まらず、投票率は過去最低を更新。有権者の半数が棄権する状況は、組織力で勝る自民や公明、共産各党に有利に働いた。特定の支持政党を持たない無党派層の多くは棄権したとみられるが、1票を投じた無党派層は分散した。現行の小選挙区比例代表並立制が導入された1996年以降、自民が最も多い議席を得たのは小泉純一郎首相時代の2005年衆院選の296議席だった。情勢調査ではそれに迫る勢いを一時示していた自民だが、結局は公示前勢力を下回った。それでも政権側は信任されたという認識だ。菅義偉官房長官は14日夜のTBS番組で「私どもは当然(信任を)受けたと思っている」と述べた。減らしたとはいえ、291の獲得議席は過去の衆院選と比較しても高い水準にはある。各選挙区で1人しか当選できない小選挙区制は、得票率の差はわずかでも勝敗を大きく分ける。自民の小選挙区の得票率は約48%だが、全295選挙区の約76%の議席を確保した。野党の得票率は民主党が2割強、共産が1割強、維新の党が1割弱。05年、09年、12年と4回連続で1党に大きく振れる「雪崩」現象を招いた。与党勝利を後押ししたのは投票率の低下だ。小選挙区の投票率は過去最低だった前回12年の59.32%を下回る見通しで、組織型政党に追い風になった。企業・団体や個人後援会を基盤とする自民のほか、創価学会を支持母体とする公明や、固い支持層を持つ共産はいずれも好調な戦いだった。なぜ投票率が低かったのか。東大の境家史郎准教授(政治学)は「有権者の投票参加につながるような明確な争点や対立軸がなかった。安倍政権が争点に掲げた消費増税延期の是非も主要政党に大きな差はなかった」と指摘する。報道各社の情勢調査で自民の優勢が伝わり、政権交代の可能性が低いとみた有権者が投票意欲を一層低下させた、との見方も示す。今回の衆院選はインターネットを使った選挙運動の解禁後、補欠選挙を除いて初めての衆院選になった。13年参院選に続いて若年層の関心が高まるのか注目されたものの、効果は限定的だったとみられる。無党派層はどう動いたのか。投票行動論が専門の早稲田大の田中愛治教授は「多くが投票に行かなかった公算が大きい。無党派層はあまり風を起こさなかった」とみる。自民に無党派層を引き付ける力は弱い。民主政権時に味わった民主への失望は有権者の意識に残り、維新は前身の日本維新の会が分裂するなど、第三極の離合集散にも不信を抱いていると分析する。共同通信社の出口調査で「支持政党なし」と答えた無党派層に投票先を聞いたところ比例代表で21.1%が自民に投票した。民主は20.8%、維新は21.7%、共産は17.7%だった。公明7.4%、次世代の党3.9%、社民党3.2%、生活の党2.9%と続いた。小選挙区では自民31.7%、民主28.5%、共産18.8%、維新11.2%の順だった。自民は無党派層からも一定の票を獲得した。ただ、投票所に足を運び、自民を選んだ無党派層は「ほかよりはまし」という消極的な理由だった可能性がある。比例代表での政権批判票の「受け皿」は民主、維新、共産に分散した。無党派層を頼った民主は思うようには取り込めなかった。

*1-2:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20141215&ng=DGKKZO80907900V11C14A2PE1000 (日経新聞 2014.12.15) 民主主義 迫る危機 投票率低迷、政治に不信
 衆院選の投票率が過去最低に落ち込む見通しになった。投票したくても、1票を投じたい政党や候補者が見つからない。有権者の多くはそんな政治不信を抱き、漂流している。議会制民主主義の正統性を揺るがしかねない危機が迫っている。棄権した人にはそれぞれの事情があるだろう。だが、議会制民主主義は、主権を持つ国民が選挙に参加して代表を議会に送ることで、民意が国政に反映される仕組みだ。憲法の規定で参院より優越される衆院で、投票率が50%に近づいたのは、極めて深刻な事態といえる。投票率は若い世代ほど低くなる傾向があり、今回も若者の投票率が一段と下がった可能性がある。投票所に足を運んだ割合の大きい高齢者を政党や政治家が政策決定などで配慮する「シルバー民主主義」の恐れが強まる。高齢者の既得権益が守られ、大胆な社会保障改革に踏み込みにくくなれば、ツケを払わされるのは投票に行かなかった若者だ。消費税率引き上げを延期する是非を問いかけて衆院解散・総選挙に踏み切った安倍晋三首相に、有権者が「解散の大義が分からない」と戸惑ったのは事実だ。だが、自民党に代わる政権の選択肢を示せなかった野党、とりわけ民主党が問われる責任は重い。小選挙区制を主体とした衆院選は本来、政権と首相を有権者が選択する選挙である。それなのに民主は候補者が198人と過半数(238)にも届かず、政権交代を目指す目標を早々とあきらめてしまった。政権交代につながる可能性のある野党第1党がなければ、選挙が緊迫感を欠くのは当たり前だ。野党が再生しなければ、日本の民主主義それ自体が漂いかねない。特定の支持政党を持たない「無党派層」の膨張に政治家はより危機感を抱くべきだろう。日本経済新聞社の世論調査では、7月に全体の47%に達し、かつてない水準にまで高まっていた。既存政党への警鐘は鳴らされていた。主要政党は投票年齢を20歳以上から18歳以上に引き下げることにしている。投票率を上げようと有権者や将来の有権者である子どもたちへのキャンペーンを強めたり、投票所を増やしたりする提言が浮かぶ。しかし、こうした努力をいくらやったとしても、政党側の魅力が乏しいままならば、有権者が投票に行かなくなる問題の根源は解消しない。

*1-3:http://www.kobe-np.co.jp/column/shasetsu/201412/0007586579.shtml
(神戸新聞 2014/12/16) 安倍政権継続/民意をはき違えては困る
衆院選から一夜明け、引き続き政権を担う安倍晋三首相が会見した。与党圧勝の選挙結果について「アベノミクスをさらに前進せよ、との国民の声だ」と述べ、政権が信任を得たとの認識を強調した。不意打ちの解散を仕掛け、経済政策の単一争点化に成功し、全議席の3分の2を超える巨大与党を維持した。思惑通りの展開といえるだろう。来年9月の自民党総裁選で再選され、さらに3年間政権を担うとの見方が有力だ。長期政権を視野に入れる首相にとって、最大の政治課題が安全保障法制の見直しであり、憲法改正であることは間違いない。案の定、会見では集団的自衛権の行使容認と関連法整備にも「国民の支持を得た」と主張し、憲法改正にあらためて意欲を示した。だが、いずれも選挙戦では与党が深入りを避けてきた問題だ。自民党の公約に「集団的自衛権」の文言はない。菅義偉官房長官は解散直前、行使を認める閣議決定や特定秘密保護法の是非については争点化に消極的だった。世論を二分する重要政策を正面から問わず、選挙に勝ってしまえば思い通りにできるかのように振る舞うのは国民を欺くことになる。民意をはき違えてはならない。自民候補が小選挙区で全敗した沖縄県の選挙結果を、首相がどう受け止めるかも焦点だろう。政府が進める米軍普天間飛行場の辺野古移設に対して県民ははっきり「ノー」の意思表示をした。だが首相は「唯一の解決策であり、考えに変化はない」とし、移設を進める構えを崩さなかった。地域の民意を無視して強引に突き進めば、問題はこじれ、世論の反発を招いて政権の致命傷になりかねない。一度立ち止まり、異論にも耳を傾ける姿勢が要る。今回の選挙で国民の多くが求めたのは「景気回復」である。首相は宿願達成に前のめりにならず、約束した経済対策に全力を挙げるべきだ。安倍政権を暴走させないためには野党の立て直しが急務だ。野党第1党の民主党の責任は大きい。海江田万里代表は議席を失い辞任を表明した。後任選びとともに安倍政権への対抗軸を明確にする必要がある。党内の議論を尽くし、国民の信頼回復に努めねばならない。

<この発言の本音はジェンダーである>
*2-1:http://www.saga-s.co.jp/news/national/10202/133847
(佐賀新聞 2014年12月9日)麻生氏が釈明「誤解招いた」、産まない発言、菅氏擁護
 麻生太郎副総理兼財務相は9日の閣議後の記者会見で、少子高齢化に伴う社会保障費増に絡み「子どもを産まないのが問題だ」とした発言に関し「誤解を招いた」と述べ、不適切な表現だったとの認識を示した。麻生氏の釈明を受け、菅義偉官房長官は「全く問題ない」と擁護したが、上川陽子法相は「閣僚はいかなる状況でも、理解してもらえる発言をすべきだ」と苦言を呈した。麻生氏は、保育施設などの不足で産みたくても産めないのが問題との趣旨だったと釈明し「きちんと説明するのを省いてしまった。時間をかけるべきだった」と述べた。

*2-2: http://digital.asahi.com/articles/ASGDL52NJGDLULFA01Q.html?_requesturl=articles%2FASGDL52NJGDLULFA01Q.html&iref=comkiji_txt_end_s_kjid_ASGDL52NJGDLULFA01Q (朝日新聞 2014年12月19日) 人口1億人維持には… 「40年に出生率2.07必要」
 政府の人口減対策と地方創生の方針となる「長期ビジョン」と、2020年までの施策を盛り込んだ「総合戦略」の原案が明らかになった。1人の女性が生涯に産むと見込まれる子どもの数である合計特殊出生率を1・8まで引き上げることが「まず目指すべき水準」と明記し、2030年に達成する想定にした。政府が目標に掲げる「50年後に総人口1億人」が確保される出生率の推計として「2040年に2・07」との仮定も示した。政府は出生率を「数値目標」とは位置づけていないが、達成水準を数値で示すことは有識者から「出産の押しつけ」といった指摘もあり、議論を呼びそうだ。13年の出生率は1・43だった。ビジョンの原案では、出生率について「若い世代の結婚・子育ての希望が実現すれば、1・8程度の水準まで向上することが見込まれる」と説明した。「子供を何人欲しいか」という厚生労働省の調査結果をもとにした民間の試算を参考に、政府が算出した数字だ。また、人口規模が長期的に維持される「人口置換水準」(現在は2・07)についても、「将来いつかの時点で回復することが必須の条件」とした。そのうえで、出生率が30~40年ごろに人口置換水準まで回復すれば、「50年後の60年に総人口1億人」が確保されるとのシナリオを示した。その推計で、出生率が「20年に1・6、30年に1・8、40年に2・07が達成されるケース」と仮定していることにも触れた。ただ、数値明記への批判にも配慮して「結婚や出産はあくまでも個人の自由な決定に基づくもので、個々人の決定にプレッシャーを与えるようなことがあってはならない」とも記した。ビジョンは人口減で「究極的には国としての持続性すら危うくなる」と危機感を表明。人口減に歯止めをかける「積極戦略」と、人口減に対応した社会に再構築する「調整戦略」を同時に進める方針を示した。とりわけ①東京一極集中の是正②若い世代の就労、結婚、子育ての希望の実現③地域特性に即した課題解決――に取り組むとした。「総合戦略」の原案はその具体策として、地方が自由に使える交付金の創設といった施策と、「地方への人材還流と人材育成を20年までに10万人」などとする数値目標を盛り込んだ。


PS(2014.12.21追加):下のグラフのように、今回の総選挙の投票率は59.32%で戦後最低であることが問題だとする論調が多い。しかし、投票率は、①1928年の男子普通選挙導入時にそれまでの85~95%から75~85%くらいに下がり ②1945年の男女普通選挙実現時に70~75%くらいに下がり ③小選挙区制導入後、60~70%の間を推移していたが、最近、また下がったのである。これを世代毎にみると、若い世代ほど投票率が低く、①②から「母集団の増加とともに棄権する人は増えるが、普通選挙の有難味がわかっている世代は投票に行く確率が高い」、③から「小選挙区制による無力感と支持政党なしという理由が加わった」「普通選挙の有難味を意識しない世代の割合が増えた」と分析できる。
 基本的には、*3の日本国憲法に書かれているとおり、選挙権は権利であって義務ではないため、棄権するのは自由である。しかし、「政治にかかわらないのが美徳でスマート」という主権在民とは相いれない価値観が広く存在するのは問題であり、これらの人々は国や地方自治体の意志決定を他人に委ねているわけだ。そのため、オーストラリアのように、こういう価値観がなくなるまで、例えば10年という時限立法で、やむを得ない理由がないのに選挙権を棄権した人からは1人1万円の罰金をとる方法が考えられる。そうすると、総選挙の場合は、約5000万人の有権者のうち約1500~2000万人が棄権し、1500~2000億円の収入がある。2回連続して棄権すれば2万円、3回連続して棄権すれば3万円と値上げしてもよい。そして、この収入を選挙費や民主主義のコストに充てるのはどうだろうか。もちろん、地方自治体の選挙については、罰金はその地方自治体の収入にすべきだろう。

   

*3:http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S21/S21KE000.html (日本国憲法)
第十五条  ①公務員を選定し、及びこれを罷免することは、国民固有の権利である。 ②すべて公務員は、全体の奉仕者であって、一部の奉仕者ではない。 ③公務員の選挙については、成年者による普通選挙を保障する。 ④すべて選挙における投票の秘密は、これを侵してはならない。選挙人は、その選択に関し公的にも私的にも責任を問はれない。


PS(2014.12.24追加):*4の論調は、①高齢者から若年層への世代間資産移転を促す税優遇制度の拡大を行い、個人消費の活性化に繋げる ②非課税贈与制度の拡充で消費増税後に低迷する住宅市場のてこ入れを図る ③この税制改正で、個人金融資産1650兆円の大半を持つ高齢者から消費が旺盛な若年層に資産を移し消費拡大に繋げる という内容で、自民党内部の会議でよく発言されるものだが、私は、これは、金持ちか世襲の男性議員が大半を占めるからこそ出てくる政策の間違いだと思う。
 何故なら、①については、若年層のみ個人消費が盛んであるように思っており、高齢者は通常の消費の上に医療・介護・家事支援などの新たな消費を大きな金額で必要とするという一般消費の実態を理解していない、また、②のように、消費税増税と産業の支援しか考えておらず、生活向上の視点がない、さらに、③のように、高齢者が個人金融資産1650兆円の大半を持つため、高齢者から若年層に資産を移せば消費拡大に繋がるという程度の考慮しかない からである。
 しかし、高齢者が個人金融資産を持っているのは、働けなくなってから医療・介護で多額の支出が生じるため必要に迫られてのことであり、普通は、それは働ける期間にこつこつと貯めてきたものだ。にもかかわらず、「高齢者は個人金融資産の大半を持つから、高齢者から若年層に資産を移せ」というのは、余程の金持ちで自らは介護サービスを必要とせず、親から低い相続税・贈与税で金をもらうことしか考えず、生涯所得・消費・貯蓄の関係については考えたこともない人にしか思いつかない愚策である。

*4:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20141224&ng=DGKKASFS23H2E_T21C14A2NN1000 (日経新聞 2014.12.24) 若者に資産移転 消費促す、子育て贈与非課税/子ども版NISA 税制改正作業が大詰め
 2015年度税制改正の議論が大詰めを迎えている。子育て資金の贈与を非課税にする制度や子ども版の少額投資非課税制度(NISA)など、高齢者から若年層に資産移転を促す仕組みを盛り込み、個人消費の活性化につなげる。法人実効税率は15年度の引き下げ幅を2.4%台にする方向で最終調整を進める。自民、公明両党の税制調査会は30日に税制改正大綱をまとめる。15年度改正の柱の一つは、世代間移転を促す税優遇制度の拡大だ。子や孫に教育資金を一括贈与した場合、1人あたり1500万円まで贈与税が非課税になる制度の期限を15年末から18年度末まで延長する。入学金や授業料などに限っていた使い道も、留学渡航費や定期券代などに広げる。少子化対策として20歳以上の子や孫に結婚、出産、子育てに使う資金を贈与した際の非課税制度も15年度に創設する。期限は18年度末。株式投資などの運用益が非課税になるNISAは16年から子ども版をつくる。親や祖父母が20歳未満の子や孫の代理で専用口座を作って投資する場合、年80万円までの投資が非課税になる。非課税の贈与制度で消費増税後に低迷する住宅市場のてこ入れも図る。最大1000万円まで認めている住宅資金の非課税贈与制度は15年から最大1500万円に拡充。17年4月に予定する消費再増税に向け、最大3000万円に拡充する案も検討している。こうした税制改正を通じ、個人金融資産1650兆円の大半を持つ高齢者から、消費が旺盛な若年層に資産を移し、消費拡大につなげる。消費喚起策では、急増する外国人旅行者が免税店を使いやすくなる仕組みも導入する。店舗ごとに必要だった免税手続きをショッピングセンターや商店街では1カ所で済ませられるようにする。外航クルーズ船の寄港に合わせて仮設の免税店を出す場合の手続きも簡素化する。安倍政権の成長戦略の柱で、最大の懸案だった法人税改革も盛り込む。現在35.64%(東京都)の法人実効税率を15年度は33%台に下げる方向で調整。所得ではなく給与総額などを基に課税する外形標準課税の拡大など大企業への課税強化で財源を確保する。企業が関連会社から受け取る配当への課税強化や研究開発減税の縮小も進める。初年度の税率の下げ幅を大きくする先行減税で企業の負担を減らす。

| 民主主義・選挙・その他::2014.12~ | 04:27 PM | comments (x) | trackback (x) |
2014.12.17 ロボット、電気自動車・燃料電池車、蓄電池、エネルギーの技術進歩でイノベーションへ (2014.12.17、20、30に追加あり)
    
    *1-1より              トヨタとホンダの燃料電池車

(1)ロボットについて
 *1-1のように、電通がマツコ・デラックスさんをモデルに「マツコロイド」を開発し、今後、ロボットタレントとして活動させるそうだ。マツコさんの等身大であり、表情や癖、しぐさなどもそっくりで、マツコさんの声で話すとのことで、本人より人気が出るかもしれない。

 そして、私は、これを、観光地の案内に使ったら面白いのではないかと思う。例えば、大英博物館では、ロゼッタ石が書いてある内容やその解読の経緯を紹介したり、エジプトのツタンカーメン王やネフェルティティ王妃が、当時の衣装をつけた美男美女の姿でエジプトの歴史を客の母国語で解説すれば、面白く世界史を学ぶことができ、大英博物館の人気が上がるだろう。

 これは、日本なら、*1-2の法隆寺で釈迦三尊像や薬師如来像が、自分が表わしている内容を聞き手の母国語で説明したり、聖徳太子のロボットが同じく聞き手の母国語で歴史を語ったりすることであり、これらはロボットだからといって決しておもちゃではなく、本物の時代考証や法隆寺の由来に則し、客の質問も受けながら声優が演技して初めて魅力的になり、各国からの修学旅行生も増えるのである。

(2)観光について
 私は、ギリシャが財政危機というのは変だと前から思っていたが、*2-1のように、ギリシャはパルテノン神殿など由緒ある建造物や彫刻を数多く持っており、ヨーロッパ文化の先祖である。しかし、パルテノン神殿のように廃墟と化していれば一度行けば十分であるため、EUとギリシャは、まず現在残っているギリシャの建造物や彫刻を資産として活かすべく忠実に復元し、ヨーロッパの威信をかけて最新技術でロボットなどの解説員をおけばよいのではないだろうか。

 なお、*2-2は、400年間続いた磁器の街、有田(伊万里)の事例で、ここには、昔ながらの街並みがあるだけでなく、ロボットではなく生きた重要無形文化財などの人々が400年間磁器を作り続けている。そのため、ちょっと街を廻ると、現在の14代今泉今右衛門、15代酒井田柿右衛門、14代李参平(朝鮮出身の陶工で、有田焼《伊万里焼》の生みの親)などに会うことができる。また、宮内庁御用達の香蘭社、辻精磁、深川製磁なども近くに軒を並べているため、磁器を作るだけではなく、歴史的価値の高い観光地としてもグローバルに魅力を発信できる筈である。

 なお、古代ローマ帝国期の闘技場「コロッセオ」も廃墟と化しており、現在は一度行けば十分な場所になっているが、*2-3のように、「再び床を敷き、格闘技やコンサートの会場にしよう」という案があるそうで、私は、考古学に忠実に復元すれば、これも世界で人気の出る名案だと考えている。イタリアの多くの遺産が人目につかぬままに崩れ落ちているのなら、それこそもったいない話であり、EUとイタリアは、現在残っている建造物や彫刻を資産として活かすべく、威信をかけて考古学に忠実に復元し、各国語に対応できる最新ロボットの解説員や案内人を置けばよいだろう。

(3)燃料電池車と蓄電池の進歩
 *3のように、トヨタ自動車が2014年12月15日に燃料電池車(FCV)「MIRAI(ミライ)」を世界に先駆けて国内で発売した。走行時に水しか出さないため「究極のエコカー」だが、年間販売目標はたった400台だそうで、価格設定も723万6千円と高く、国の補助金を利用しても520万円であるため、とても普及車(300万円代の前半までだろう)にはなれそうもない。

 これは、せっかくよい技術が出てきても、価格設定を高くしすぎて普及を阻んだために、より安価な液晶テレビが出てきて普及前に消えてしまったプラズマテレビを思い出させる。もう燃料電池車は未来の技術ではなく現在の技術であるため、ミライがミイラにならないよう本格的な普及を心がけるべきだ。

 また、*4のように、固体の電解質を使った新世代の蓄電池が開発され、充電時間が従来の10分の1、電池の重さが半分以下になったそうだ。電気自動車の走行距離延長や自然エネルギー発電にも利用でき、電気自動車の走行距離がガソリン車に劣るということは、近々なくなるだろう。

<ロボット>
*1-1:http://qbiz.jp/article/51558/1/
(西日本新聞 2014年12月10日) 電通がロボタレント開発、第1弾はこの人
 電通は10日、タレントのマツコ・デラックスさんをモデルに開発したアンドロイドと呼ばれる精巧なロボット「マツコロイド」の写真を公開した。同社はロボットタレントとして活動させる考え。テレビ番組やCMへの出演時期は未定という。知能ロボット研究で知られる大阪大の石黒浩教授が監修した。マツコさんの等身大で、表情や癖、しぐさなどもそっくりの仕上がり。録音したマツコさんの声で話すなど、忠実に再現しているという。電通はテレビ番組やCMでタレントや歌手のアンドロイドの需要が拡大していくと予測しており、第2弾以降の開発も進める方針だ。

*1-2:http://www3.nhk.or.jp/news/html/20141208/k10013802581000.html
(NHK 2014年12月8日) 1年のほこり落とす「お身拭い」 法隆寺
 聖徳太子ゆかりの奈良の法隆寺で、新年を前に仏像に積もったこの1年のほこりを落とす「お身拭い」が行われました。奈良県斑鳩町の法隆寺の「お身拭い」は、仏像に清らかな姿で新年を迎えてもらおうと、毎年、この時期に行われています。国宝の金堂には午前10時にさむえ姿にマスクをつけたおよそ10人の僧侶たちが、一列になって入りました。僧侶たちは仏像の魂を抜くためのお経を唱えたあと、棒の先に細長い和紙の束をつけたはたきやはけを手に作業を始めました。そして、国宝に指定されている本尊の釈迦三尊像や薬師如来坐像などの肩や頭に積もったほこりを、丁寧に払い落としていきました。「お身拭い」は30分ほどで終わり、参拝に訪れた人たちは、お身拭いを終えてきれいになった仏像に静かに手を合わせていました。

<観光>
*2-1:http://digital.asahi.com/articles/ASGD82TMVGD8UHBI003.html
(朝日新聞 2014年12月9日)パルテノン神殿彫刻をロシアで公開 ギリシャ、英に怒る
 大英博物館が所蔵するギリシャ・パルテノン神殿の彫刻の一部がロシアに移送され、公開が始まった。19世紀に英国に移されてから、他国での公開は初めて。返還を求めているギリシャ政府は激怒している。6日からサンクトペテルブルクのエルミタージュ美術館で一般公開が始まったのは「川の神イリッソス像」。彫刻群は、オスマントルコ支配下のギリシャに駐在した英外交官が切り取って母国に持ち帰ったもので、外交官の名から「エルギン・マーブル」と呼ばれる。ロシアへの移送に、ギリシャのサマラス首相は「ギリシャ国民への挑発行為だ」と批判する声明を出した。ギリシャは彫刻群の返還を強く求めてきたが、大英博物館側が「壊れやすいので移送できない」と拒んできた。サマラス氏は「移送できないという英国側の言い分は、もはや存在しない」と主張した。サマラス氏は、かつて文化スポーツ相としてアクロポリス博物館の開設に尽力した。「ギリシャには重要な文化遺産を所蔵する能力がない」という批判を覆すためだった。同博物館には、彫刻群が返還された時のための空間が確保されている。

*2-2:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20141217&ng=DGKKZO80998500X11C14A2EA1000
(日経新聞 2014.12.17) 有田焼作陶で最年少の人間国宝 十四代今泉今右衛門氏(51)
 陶芸の世界では最年少となる51歳で、先代の父に続き色絵磁器の重要無形文化財保持者(人間国宝)の認定を受けた。存命の人間国宝としても最若手だ。「若いからいいのではなく、長く仕事を続けてこそ出てくる美意識もある。次への可能性を期待してもらった」。謙虚な話しぶりに穏やかな人柄がにじむ。江戸期に佐賀鍋島藩窯で焼く「色鍋島」の御用赤絵師を代々務めた家の次男に生まれた。しかし、父の跡を継ぐつもりはなかったという。進学した美術大学では金工を学び、卒業後はインテリア会社に勤めた。「営業や販売促進では世間の理不尽さも味わったが、そこで取り扱う工芸品の美しさに触れた経験は今につながっている」。憧れていた京都の前衛陶芸家、鈴木治氏に師事し、焼き物の道へ。2年半の修業を経て、28歳で有田に戻った。「同世代の作家より遅れている」と焦りながらも作陶に真っすぐ向き合ってきた。色鍋島の伝統を核に、十三代が確立した技法を受け継ぎつつ、白抜きの下絵付け「墨はじき」や優雅な上絵付け「プラチナ彩」で新境地を開いた作風は現代の感覚を映す。2016年に有田焼が生まれて400年となる節目を控え「陶都」再興へ十四代への地元の期待は高まる。「日々の積み重ねを大切にしながら前向きに仕事をしたい」と静かに意欲を燃やしている。
[いまいずみ・いまえもん]
1962年生まれ、佐賀県出身。85年武蔵野美大卒、福岡市の「ニック」勤務などを経て、90年に父である十三代の下での作陶を開始。02年に十四代を襲名。14年10月重要無形文化財保持者に認定。

*2-3:http://digital.asahi.com/articles/ASGC43624GC4UHBI00H.html
(朝日新聞 2014年11月5日) コロッセオでコンサート? 再建案巡りイタリアで大論争
 古代ローマ帝国期の闘技場「コロッセオ」に再び床を敷き、格闘技やコンサートの会場にしよう――。イタリアの文化大臣が考古学者の提案に賛成し、賛否両論が巻き起こっている。約5万人を収容した巨大闘技場はローマの象徴だ。紀元1世紀に完成。地下には剣闘士と闘うライオンなど猛獣のおりがあった。現在は床がなく、訪問客は客席部分から地下の構造をながめることができる。フランチェスキーニ文化大臣は2日、「考古学者マナコルダ氏のコロッセオ再建策はとても気に入った。ほんの少しの勇気だ」とツイッターに記した。マナコルダ氏は7月、「床があるのが本来の姿だ。イタリアで一番の遺跡を過去のままにとどめず、現代に生き返らせられる」と提案した。文化遺産に一切手を加えず保存しようとすることを、「偏執的だ」とも批判した。文化省の遺産諮問委員会のボルペ座長も「格闘技やコンサートの会場にもできる」と賛意を示した。「観光客は地下を訪れ、2千年前に戻る体験ができる」という意見も出た。これに対し、歴史学者のモンタナリ氏は「コロッセオを遊園地にしようという低俗な発想だ」と強く批判。同氏の「コンクリートで客席を再建するのか? 我が国の多くの遺産が人目につかぬままに崩れ落ちている時に、コロッセオにばかり注目し、娯楽のために使うのが、本当に大臣のすべきことか」と指弾する投稿が地元紙に掲載された。研究者に賛同が広がっている。修復を担うローマ考古学遺産特別監督局は「床の再建が実現可能か、どんな技術的解決策が最善か、研究中だ」としている。伊北部ベローナに残る闘技場アレーナは、野外オペラの会場で知られている。

<燃料電池車>
*3:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20141215&ng=DGKKASDZ13HF8_U4A211C1TJC000
(日経新聞 2014.12.15) ミライ、受注1000台へ トヨタ燃料電池車 年販売目標の倍 きょう発売
 トヨタ自動車が15日、水素と酸素で走る燃料電池車(FCV)「MIRAI(ミライ)」を世界に先駆けて国内で発売する。走行時に水しか出さない「究極のエコカー」への関心は高く、受注台数は年間販売目標(約400台)の2倍以上の1千台に達する勢いだ。ミライは4人乗りのセダンタイプで、価格は723万6千円(税込み)。国の補助金を活用すれば約520万円で購入できる。トヨタ系販売会社、東京トヨタ自動車は11日までに約50台を受注した。法人と個人が半々で、個人は「50~60代を中心に、すでにハイブリッド車(HV)を保有している人が多い」(同社)。商談中や見積もり希望も40件を超えるという。名古屋トヨペット熱田店(名古屋市)には、多い日で1日5件程度の問い合わせがあり、法人から数台を受注した。大阪トヨタ自動車にも企業経営者などから数十件の購入希望があるが、納期を案内できないため「正式な受注は待ってもらっている」状況だ。トヨタは12月に元町工場(愛知県豊田市)でミライの生産を開始。年間の生産予定台数は700台だが、販売店の受注台数は全国で1千台弱と大きく上回る。トヨタは来年末に増産を予定しているが、販売店側では「納期は数年かかると案内している」(名古屋トヨペット)。

<蓄電池>
*4:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20141209&ng=DGKKZO80667620Z01C14A2TJM000 (日経新聞 2014.12.9) 蓄電池、新世代 固体の電解質、リチウムイオンより安全、東北大・トヨタ、充電時間10分の1
 現在主流のリチウムイオン電池より安全な「全固体電池」と呼ぶ次世代電池の研究成果が相次いでいる。東北大学とトヨタ自動車は、充電時間を従来の電池の10分の1に短縮した。東北大の別チームも、軽量な全固体電池を開発し、動作温度を下げた。韓国サムスン電子は全固体電池を長持ちさせる技術を開発しており、国内外で実用化に向けた開発競争が熱を帯びている。リチウムイオン電池の主要部材である電解液は発火しやすい有機溶媒を含んでいる。全固体電池は電解液の代わりに燃えにくい固体電解質の中をリチウムイオンが動き、安全性を高めている。理論的には電解液の電池より蓄電量が多く高出力とされるが、従来は電解液の電池以上の性能が出せず実用化が難しかった。東北大の一杉太郎准教授らは電解質と電極の境界面に注目した。真空装置を使い、電池の製法を工夫することで電解質と電極をきれいに密着させた。境界面がぴったり接することでリチウムイオンが電池内を移動しやすくなった。固体電解質と電極が隙間や不純物の影響でしっかり接していなかった課題を解決した。試作した電池を使った実験では、従来の電解液を使うと30分以上かかる充電時間を3分に短縮できた。電気自動車(EV)のバッテリーに使えば、短時間で充電できる。今後はトヨタや電池メーカーと共同でバッテリー開発に取り組む。同じく東北大の折茂慎一教授と宇根本篤講師らは、リチウムと水素の化合物を電解質に使い、電池の重さを従来の全固体電池の半分以下にした。研究の進んでいる硫化物や酸化物の電解質を使った電池は、電解液の電池より重かった。リチウムと水素の化合物を使うと高温の環境でしか動かない問題があるが、電解質の成分などを工夫し、従来のセ氏約120度から約90度に引き下げた。将来は室温での動作が目標だ。三菱ガス化学と協力し、5年後をめどにEVなどに搭載するバッテリー向けに実用化を目指す。サムスン電子は硫化物を使った全固体電池の耐久性を高めた。500回の充放電を繰り返した後も約8割の容量を維持でき、実用レベルに近づいた。これまで充放電を繰り返すと容量が急激に下がるのが課題だった。正極の構造を工夫するとともに、電気を通しやすい物質を正極内で均等に分散させた。京都市で先月開かれた電池討論会で発表した成果だ。現在主流のリチウムイオン電池は体積あたりの出力が高く電気も多くためられる。携帯端末やEVなどで使われている。ただ発熱により破損する可能性があり、安全性の懸念が指摘されている。


PS(2014.12.17追加):農業も作物を選ぶと、*5のように、太陽光パネルとソーラーシェアリングして発電しながら収量をより多くすることもできるため、各地域で適切な作物を研究することが望まれる。

*5:http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=31277 
(日本農業新聞 2014/12/17) アシタバ増収を確認 露地と比べ16%増 営農型発電パネル下栽培 ソーラーシェアリング協会と東大が共同研究
 営農型発電を進めるソーラーシェアリング協会は、東京大学との共同研究で、太陽光パネルの下でアシタバを栽培すると、遮光で減収せず、むしろ大幅に増収することを確認した。営農型発電に取り組む農家などに対し、申請時に必要な資料を提供し、営農型発電とアシタバ栽培を推進する。既にアシタバの導入準備を始めた農業参入企業もある。太陽光発電をしながら農業をする営農型発電は、農地の一次転用を申請し許可を受ける必要がある。パネル下は遮光で収量が減るとされるが、申請には収量が周辺の8割以上確保できるという、いわゆる知見資料を添付しなければならない。同協会は茨城県土浦市の農家圃場(ほじょう)で試験をした。パネル下の384平方メートルと隣に露地の334平方メートルの試験区を設定し収量を比較した。6月18日に「源生林あしたば」を定植。8~10月の毎月下旬に地上部を全部収穫して収量を調査した。累計の10アール換算収量は、露地で栽培した場合が1447キロだったのに対し、太陽光発電パネルを設置した区は16%多い1682キロだった。市場単価が高い8月は40%も増収した。栽培試験を担当した東京大学大学院理学系研究科の和地義隆研究員は「アシタバは半日陰の方が生育が良い。営農型発電とアシタバの組み合わせはメリットが高い」と結論付けた。太陽光発電事業者のmisono電源(千葉市)は、この研究成果に着目。農業法人を設立し、アシタバと営農型発電で農業参入する。千葉県内に約1.5ヘクタールの農地を確保した。出力1~1.5メガワットの発電所を建設する。茨城県内でさらに候補地を検討中だ。別の農業法人も20ヘクタール規模のアシタバによる営農型発電を検討している。


PS(2014.12.20):「環境を汚しっぱなしにした人が得をする」という制度にしないためには、環境に負荷をかけるものに課税して外部不経済を内部化する方法がある。例えば、化石燃料に環境税を課して電気自動車や燃料電池車の使用を促進したり、*6のように、CO2を吸収する森林の維持管理費として環境税を課したりする方法である。そのうち森林環境税は、例えば長野県のように、広大な森林を有する人口の少ない県の人だけが森林の維持管理費を負担するよりも、森林は少なく人口が多くてCO2を多く発生している東京都の人たちも負担するのが合理的であるため、地方税ではなく国税にしようとするものだが、前から経済団体が反対しているのである。

*6:http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=31318 (日本農業新聞 2014/12/19) [ニュース三面鏡] 森林吸収源対策に経済界「反対」 環境より利益 声高
 自民党は2015年度税制改正大綱の30日の決定に向け、衆院選で止まっていた議論を再開した。地方の声を受け、同党農林部会などは、森林環境税の創設を含む森林吸収源対策の財源確保を重点事項とする。ところがこれに、日本経団連や経済同友会など113の経済団体が声明を出し、「反対する」とかみついた。政府は20年度に温室効果ガスを05年度比で3.8%削減することを目標に掲げ、そのうち2.8%以上を森林による吸収で達成する方針だ。しかし達成に必要な森林整備の安定財源がなく、地方自治体や林業団体などは(1)森林環境税の創設(2)地球温暖化対策として石油石炭税に上乗せ課税している分(地球温暖化対策税)を森林整備にも使えるようにすること――などを求め続けている。自民党も今年、財源確保のための新たな仕組みを検討するプロジェクトチームをつくって議論。11月には農林部会などの合同会議で、財源確保を15年度税制改正要望の重点事項に盛り込んだ。しかし経済団体の声明は、原子力発電所の停止による化石燃料輸入の増加や円安による原油高騰が経済の好循環の足かせになっている中、国民や企業にさらなる税負担を求めるべきではないと強調。地球温暖化対策税の使途拡大や森林環境税の創設に反対すると明言した。声明は、森林整備は社会全般に利益をもたらすため、費用を「特定の国民だけに負担させるべきではない」とも指摘する。だが自民党農林幹部は「都市住民も利益を得ているのに、地方の自治体や住民が負担して森林を整備しているのが実態。その言葉をそっくりお返ししたい」と反論。「農業や林業は補助金漬けだと批判しながら、自分たちは法人税も含めて税金を逃れようとする。浅ましい考えだ」。


PS(2014/12/29追加):*7のように、買い物に行き車を止めている間に充電できれば、便利である。駐車場に太陽光発電の屋根をつければ、無料で電気を供給することも可能であるため、コンビニやスーパーもやればよいのにと思っていたところだ。なお、農業では、軽トラック以外にも多くの燃油を使っており、これが値上がりして経営に打撃を与えているため、農機具等の動力も早く電気に変えた方がよい。

    
     農業用電気トラック(自家発電して電動器具を使えば、燃料費は0になる)

*7:http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=31451 (日本農業新聞 2014/12/29) 充電スタンド登場 オズメッセセルフSS 地元要望受け運用 JA愛媛たいき
 JA愛媛たいきは、オズメッセセルフSSスタンド(愛媛県大洲市)の敷地内に電気自動車専用の充電スタンドを設置し、運用を始めた。充電スタンドは直売所や道の駅などで設置が進んでいるが、JA―SSに設置するのは全国的にも珍しい。PRのため年内は無料で利用でき、その後は有料にする予定だ。充電スタンドは、次世代の自動車として有力視される電気自動車(EV)やプラグインハイブリット車(PHEV)の普及に伴い、組合員や地域のニーズに応えようと設置した。愛媛県が進める「次世代自動車充電インフラ整備ビジョン」に基づいて設置した。費用は約870万円で3分の2は国や県などの補助金と自動車メーカー4社の補助で賄った。急速充電では約30分で充電が終わるため、隣接するJA産直市「愛たい菜」などで買い物する間に充電ができる。利用時間は午前7時から午後10時まで。JA経済部の谷本哲也部長は「組合員だけでなく組合員の第2世代以降や若者など、幅広い客層に関心を持ってもらい、組合員や地域住民の利便性を図っていきたい」と話す。

| 教育・研究開発::2014.8~2016.11 | 12:52 PM | comments (x) | trackback (x) |
2014.12.11 それでは、原発交付金がなくなったら、原発立地自治体はどうすればよいのか?   ←  玄海町、唐津市、佐賀県のアジアでの位置と産業創出の事例から (2014年12月15日、16日、18日に追加あり)
  
日韓トンネルの進捗状況(日本政府が馬鹿なことばかりやってカネと時間を浪費している間に)

(1)アジア高速鉄道1万キロ計画に日本はどうかかわるか
 *1に書かれているように、アジアでは高速鉄道計画が実現に向かって動き始め、日本や中国からの売り込み合戦が熱を帯びているそうだ。

 日本が売り込みに成功すればよいと思っているのは私も同じだが、私がここで書きたいのは、日本を、そのアジア高速鉄道1万キロの出発地点にしたいということだ。韓国と北朝鮮の統一が視野に入ってきた現在、日本発のアジア高速鉄道はそれほど遠い夢ではなく、技術はドーバー海峡トンネルなどで既にある。私は、どうせカネを使うなら、このような次に向かって発展性のある投資に使った方が、原発にむやみと交付金をつぎこむよりも、生きたカネの使い方になると考えている。

 なお、韓国では、既に「韓日海底トンネル構想」としてルートの検討も行われており、日本から韓国への最短ルートは、日本側では豊臣秀吉が朝鮮出兵のための基地を作った名護屋(玄海町と唐津市の間に位置する)付近だ。そのため、この近くにアジア高速鉄道の駅ができれば、玄海町、唐津市、佐賀県とも、原発交付金に頼らずにユーラシア大陸と共存しながら産業を発展させることができるようになる。

(2)玄海町・唐津市付近の産業の育成と誘致
   
   *2-2より
     燃料電池車の進捗状況(日本政府は原発に比べて水素燃料に消極的だが)

 *2-1のように、現在、唐津市はコスメティック構想を持ってフランス企業と化粧品産業の拠点を創ろうとしている。この地域は高品質の原料植物を提供できるため、コスメティックバレーのジャメ会長が唐津市を訪れ、ビジネスマッチングに向けて商談を希望するフランス企業のリストを提示したそうで、ジャメ会長は「アメリカ、フランス、日本がリードしているが、中国も急成長を遂げている。日本とは企業だけでなく、大学も含めて専門的な交流を深めていきたい」と述べている。そのため、スピーディに対応して次のステージに繋げるべきである。

 また、*2-2のように、政府は、次世代エコカーの本命とされる燃料電池車の燃料を供給する水素ステーションの規制緩和を行い、その設置コストを半減して、2015年度中に全国100カ所の整備を目指すそうで、セブン―イレブン・ジャパンが来年度からステーションを併設したコンビニエンスストアを出すなど企業の動きも広がってきたそうだ。その上、*2-3のように、現在は水素社会の入り口となっているため、玄海町は、原発の電線を逆に使って自然エネルギーで作られた電力を集め、水素を生成するエネルギー産業を創るのが、このチャンスを活かす道だろう。

 なお、*2-4のように、読売新聞グループは、建設中の仙台工場(宮城県大和町)で、産経新聞社が東北地方で発行する4紙も印刷する合意をしたそうだが、印刷すべき原稿をデジタルデータ化してインターネットやイントラネットで容易に送付できる現在、新聞社の管理部や印刷工場が都市部にある必要はなく、玄海町か西九州自動車道のインターがある北波多に来てもらうべきである。

(3)企業はどういう地域に立地したがるのか
 企業は、法人税が安いことを第一の条件にして、立地地域を選択するわけではない。では、どういう場所を好んで立地を検討するかについては、以下の要素がある。
1)需要のある地域に立地する
 企業は、財・サービスを販売して利益を出すために営業している組織であるため、需要の多い場所に立地するのが、最も合理的な選択となる。また、既存の製品を、販売地域の需要にあわせて進化させるためには、販売地域の近くで優秀な人材を雇用して研究開発を行うのが合理的な選択である。
2)生産コストの安い場所に立地する
 生産コストが販売単価より高ければ、企業は利益を出すことができないため、発展はおろか継続することすらできない。そのため、安価で良質な原材料や労働力を入手しやすい場所に工場を立地させる。
3)その他の経費が安い場所に立地する
 電力、ガスなど、生産に関わる他のコストやインフラの整備状況も考慮して、安価で安定的に入手できる場所を選択する。しかし、アジア諸国に立地した時は、他の要素がまさっていたため、インフラが整備されていなくても自家発電して工場を立地させている。
4)輸送に便利な場所に立地する
 1)~3)のように、販売地域と工場は必ずしも一致しないため、工場でできた製品を安価で確実に販売地域に輸送できる場所に、工場を立地する。
5)教育や生活環境がよい場所に立地する
 企業が立地するためには、他地域から移動してくる人材や現地雇用する労働者がいるため、その要求を満たす教育環境や生活環境が不可欠である。しかし、唐津・玄海地域は、教育に関しては、公立でも既に小中一貫・中高一貫教育となっており、早稲田佐賀中高一貫校も誘致して準備済である。また、生活環境(食品、住居費、海・山・川・田畑などの自然環境へのアクセス)は、都会よりよい。
6)政府が変な規制で制限したり、圧力をかけたりしない場所に立地する
 *2-2のように、政府は、今まで「水素ステーションで7台分の水素しか貯蔵してはいけない」などという規制をしていたわけだが、このように燃料電池車の普及を邪魔する規制があると、高額の研究開発費を使って最初に開発に成功しても、その利益は得られない。そのため、このような政府の妨害がなく、開発のための人材が豊富で、特許権の護られる国で開発することになる。
7)税制
 法人税が安いだけで立地場所を選択する企業はないが、法人税、事業税なども高すぎないことは必要であり、企業誘致したい地方自治体は地方税の優遇を行っている所が多い。
8)その他の要素
 「近くに原発がある」「地震・津波がいつ来るかわからない」などの事故や災害に巻き込まれるリスクも、企業立地には当然加味される。そのため、玄海町は、これを機会に原発をやめ、速やかに使用済核燃料を処分するのが次に繋がる道である。

*1:http://www.asahi.com/articles/ASG9B4HGTG9BUHBI012.html?iref=comtop_6_01 (朝日新聞 ) アジア高速鉄道1万キロ計画始動 日中、売り込みに熱
 アジアで高速鉄道計画が実現へ動き始めた。マレーシアとシンガポールを結ぶ路線は来年にも入札を予定。インドやタイなど、構想段階も含めると計画の総延長は約1万キロに上る。成長するアジアを舞台に、日本や中国などからの売り込み合戦が熱を帯びている。「日本の新幹線は安全なだけではない。時間に忠実に運行していることがすべての強みの原点にある」。マレーシアの首都クアラルンプールで先週開かれた鉄道展示会。講演したJR東日本の小県方樹副会長は、同国の鉄道当局幹部らを前に、こう訴えた。「絶対に落札したい」。小県氏が公言してはばからない、2020年の開業を目指すクアラルンプールとシンガポール間の高速鉄道計画が念頭にあった。約350キロを1時間半で結び、総事業費は400億リンギ(約1兆3千億円)と見込まれている。マレーシア陸上公共交通委員会のカマル最高経営責任者は「来年10~12月には入札ができるだろう」と話す。計画には、中国やフランス、スペインなども関心を寄せる。日本勢はJR東日本、住友商事、三菱重工業などが連携。8月中旬にトップセールスでマレーシアを訪れた太田昭宏国土交通相に各社幹部も同行した。アジアでは、タイ軍事政権が国内2路線の事業を承認。ベトナムではハノイとホーチミン間の一部で部分着工する案が議論されている。インドでも西部のアーメダバードとムンバイ間で着工に向けた調査が進む。米国やブラジルなどにも計画や構想はあるが、経済成長と人口増を背景にアジアに計画が最も集中。各国が売り込みに乗り出す。ただ、日本は07年に開業した台湾に新幹線車両を輸出した以外の実績に乏しい。受注競争を優位に進めるために、車両だけでなく、運行支援や保守・点検も含めてアピールする。アジアの高速鉄道計画をめぐって、攻勢を強めるのが中国だ。今年7月に完成したトルコの高速鉄道の建設に中国企業が参加。雲南省・昆明からラオス、タイを抜けてシンガポールに縦断する総延長3千キロの高速鉄道網を自国主導で建設する構想まで描く。その足がかりとして、財政難のラオスに、7千億円の建設費の融資を検討しているとされる。7月にあったタイ軍事政権との戦略対話でも、タイ国内の高速鉄道網に強い関心を示した。中国企業の建設費は日本の半分ほどとみられ、工期も短い。09年には武漢―広州間(1069キロ)を着工から4年半で開業させた。マレーシアの展示会でJR東日本よりも大きなブースを構えた大手鉄道車両メーカー、中国南車集団の関係者は「価格だけでなく、安全性でも負けない」と話した。
■カギ握る規格争い
 鉄道インフラの輸出で、カギを握るのが、事業の実現可能性などを調べる鉄道コンサルタントだ。日本や中国、欧州では信号や運行管理システムなどの規格が違う。欧州に多いコンサルタントは、欧州の規格に沿った調査をして事業計画を作りあげるため、「その規格で製品を提供する欧州メーカーが有利になる」(鉄道関係者)。先行する欧州勢に対抗して、JR東日本なども鉄道コンサルタント会社を設立。インドやインドネシアの高速鉄道計画で調査業務を受託した。東南アジア諸国連合(ASEAN)は15年に経済共同体の実現を目指す。国境をまたぐ鉄道整備も加速するとみられる。オーストラリア国立大のジェフリー・ウェイド客員研究員は「鉄道網が結ばれれば、規格や運行主体も各国間で統一される可能性がある。受注には各国の総合力が試される」と指摘する。

<産業の育成と誘致>
*2-1:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10103/129723
(佐賀新聞 2014年11月27日) =ワイドスコープ= 動き出す唐津コスメ構想
■仏の会長県内視察 商談企業31社を提示
 化粧品産業の企業誘致課題
 唐津市に化粧品産業の拠点をつくろうと、フランスの協力を得て進む唐津コスメティック構想。世界最大の化粧品産業集積地コスメティックバレーのマーク・アントワーヌ・ジャメ会長が唐津市を訪れ、ビジネスマッチングに向け、商談を希望するフランス企業のリストを提示した。昨年4月に協力連携協定を結んで以来、初めての具体的な提案だけに、唐津側も「後れを取らないように、積極的に提案したい」と意欲を見せている。11月8日から3日間の日程で行われたジャメ会長の視察には、事務部門トップのジャン・リュック・アンセル事務局長も同行。ジャパン・コスメティックバレー(JCC、事務局・唐津市)の会員企業との意見交換のほか、フランス企業との取引も多い化粧品成分分析会社「ブルーム」(唐津市浜玉町)や東松浦郡玄海町の薬草研究所などを見学した。一番の収穫はコスメバレー側が提示した日本企業との商談を希望するフランス企業31社のリスト。アンセル事務局長はJCC会員企業に「私たちはスピード感のある連携を望んでいる。日本側もできるだけ早く、パートナーとなる企業を示してほしい」と訴えた。今年に入り、駐日フランス大使ら要人の唐津訪問が続いており、行政レベルでは関係を強化。ブルームの山崎信二社長は「フランスにとってコスメは国家プロジェクトだけに、動きが速い。この提案で、唐津の構想も大きな一歩が踏み出せる」と歓迎した。フランス側の言葉の端々から伝わってくるのは業界の競争の激しさ。世界2位LVMH(モエ・ヘネシー-ルイ・ヴィトン)グループ事務総長も務めるジャメ会長は「アメリカ、フランス、日本がリードしているが、中国も急成長を遂げている。日本とは企業だけでなく、大学も含め、専門的な交流を深めていきたい」と述べた。コスメバレーの強みは、世界のトップブランドから中小企業まで約350社が連携し、150の商品開発を進めているという研究部門の充実ぶり。ジャメ会長は、プロジェクトへのJCC会員企業の参加も呼び掛けた。天然原料で成功を収めてきただけに、新商品開発へ未知なる東洋の植物に関心は高く、アンセル事務局長は玄海町の薬草研究所で「ここの薬草は、アンチエイジングに使える研究は始まっているか」などと積極的に質問していた。一方、唐津コスメ構想の目標をアジア市場に向けた製造拠点づくりとすると、現在は浜玉町にブルームと、受託製造会社「トレミー」が並ぶだけで、化粧品産業の企業誘致はこれからの大きな課題。市コスメティック産業推進室の八島大三室長は「フランス側もこちらの対応を注視している。これを機にフランスの取引を増やし、アジアにおけるパートナーとして、ウエートを高めることが将来の企業誘致にもつながる」。信頼関係の構築が次のステージへの一歩となりそうだ。

*2-2:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20141210&ng=DGKKASDF09H0Y_Z01C14A2MM8000 (日経新聞 2014.12.10) 水素スタンド、設置費半減、 燃料電池車の普及へ規制緩和 セブン、コンビニ併設20店
 政府は次世代エコカーの本命とされる燃料電池車の燃料を供給する水素ステーションの規制緩和に乗り出す。建築基準や保安規制の緩和で設置コストを半減する。エネルギー各社などの設置計画を後押しし、2015年度中に全国100カ所の整備を目指す。セブン―イレブン・ジャパンが来年度からステーションを併設したコンビニエンスストアを出すなど、企業の動きも広がってきた。ガソリンスタンドに相当する水素ステーションは圧縮器で水素をタンクに詰め、充填機を通じて燃料電池車に供給する。爆発しやすい水素を取り扱う安全規制が足かせとなり、建設予定も含めて首都圏で26カ所、全国で45カ所にとどまっている。高圧ガス保安法や建築基準法の関連12省令を14~15年度中に見直す。タンクにためる水素を増やせるように、水素の圧縮率を高め、現在は燃料電池車7台分しかためられない1カ所当たりの水素の貯蔵量の上限をなくす。より多くの客を受け入れられ、採算がとりやすくなる。圧縮器の保安検査も簡素化する。安全を考慮して水素の充填機と公道との距離は現在8メートル以上が原則だが4メートル以上にする案が有力。太陽電池で発電した電力を使い、その場で水から水素を生成して充填する簡易版ステーションの建設も許可する方針だ。水素ステーションの建設費は1カ所4億~5億円と欧米の2倍の水準だが、規制緩和で20年ごろに半減を目指す。一般のガソリンスタンドの建設費(1億円程度)の2倍程度で済むようにする。規制緩和は水素ステーション建設を加速させそうだ。セブン―イレブン・ジャパンは岩谷産業と組み、水素ステーションを併設したコンビニを出店する。まず15年秋にも東京都と愛知県の2カ所で開業し、17年度までに20店に広げる。エコカーの利用拠点として集客力を高める。水素ステーションの設置費用は岩谷産業が負担し、同社が運営する。コンビニは24時間営業し、水素ステーションは平日の日中に営業する。岩谷産業はセブンの持つ不動産情報や店舗開発ノウハウを活用して立地条件の良い土地を効率よく探す。交通量の多い郊外の幹線道路沿いを中心に出店していく予定だ。JX日鉱日石エネルギーは15年度末までに全国で40カ所、岩谷産業は20カ所の設置を計画しているが、公道から8メートル離すなどの規制を満たす土地を探すことが難しい。「特に都市部で用地選定が難航している」(JXエネ幹部)という。建設条件の緩和でコストを抑制し適地を見つけやすくなり、計画を前倒しで達成できる可能性がある。燃料電池車はトヨタ自動車が15日に新型車「ミライ」を発売し、15年度中にホンダも商品化する予定。普及には水素インフラの整備が欠かせないため、経済産業省は規制緩和に加え、来年度予算で建設費の3分の2程度を補助する予算110億円を要求している。

*2-3:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20141211&ng=DGKKZO80756690Q4A211C1L83000
(日経新聞 2014.12.11) 水素社会実現へ意欲 舛添知事、五輪遺産で外部有識者と意見交換
 東京都の舛添要一知事は10日、2020年の東京五輪のレガシー(遺産)について検討する「レガシー委員会」で外部有識者と意見交換した。水素社会の実現や選手村を中心とした街づくりに関し、内閣府や東京ガス、三井不動産グループの担当者と約1時間にわたって話し合った。舛添知事は冒頭、「東京の街づくりと一体となって五輪を考えないといけない。民間の力と知恵を借りながら、地域の声を集め、街づくりを進める」とあいさつした。同委の次回会合は未定だが、今後も外部有識者を招き、意見交換する計画だ。これに先立ち、舛添知事は同日、東京ガスの千住テクノステーション(東京・荒川)を視察した。都市ガスから水素を作り出す実証試験を見学し、「大会のレガシーとして残れば、大きなエネルギー革命になる」と評価。水素エネルギーの選手村への導入については「夢じゃないなという感じがしている」と述べた。

*2-4:http://qbiz.jp/article/51277/1/
(西日本新聞 2014年12月5日) 読売、産経新聞の印刷受託 来年3月、宮城の工場で
 読売新聞グループ本社は5日、建設中の仙台工場(宮城県大和町)で、産経新聞社が東北地方で発行している4紙を印刷することで合意したと発表した。工場が全面稼働する来年3月から開始する。両社は共同輸送も検討する。印刷を受託するのは産経新聞、サンケイスポーツ、フジサンケイビジネスアイ、競馬エイトの計4紙。仙台工場では、岩手、宮城、山形各県内に配達する読売新聞朝刊やスポーツ報知を印刷する予定で、産経新聞社の分も含めて約20万部となる。読売新聞の仙台工場は東日本大震災で被災し、ことし1月に新工場の建設を始めた。


PS(2014.12.15追加):*3の趣旨には同意するが、今回の衆議院議員選挙は原発が主テーマではなかったため、例えば川内原発再稼働についても、30km圏内の住民や過酷事故で被害が及ぶ範囲の住民が、その地域の同意を不要とした鹿児島県知事をリコールする方法などもあり、このまま再稼働が進むとは限らない。

*3:http://senkyo.mainichi.jp/news/20141215k0000e010417000c.html
(毎日新聞 2014年12月15日) 衆院選:「反原発派の敗北」と独有力誌
 衆院選で自民党が勝利したことについて、ドイツ有力誌シュピーゲル電子版は14日、「反原発派の敗北」として大きく伝えた。ドイツは東京電力福島第1原発事故を受け、2022年末までの「脱原発」を決めている。シュピーゲルは「衆院選での大勝を受け、安倍晋三首相は原発の再稼働をちゅうちょなく進めることができる」と指摘した。一方、世論調査では再稼働に日本の国民の多くが反対しているとして、首相の「原発回帰」の方針は論議を呼んでいると報じた。


PS(2014.12.16追加):西日本新聞の*4の記事は、「①九電は1990年代から地元や国と慎重に調整しながら調査や同意手続きを進めてきた」「②国は、既存原発は新しい基準や審査に基づいて再稼動を認める方針だが、新・増設については依然として定まっていない」などとしているが、①は、慎重に進めた結果、火山や過酷事故の対応も考慮していたとでも言うのだろうか。福島第一原発事故がなくても、立地適正や過酷事故を検討していなければ、「慎重に進めた」という表現は当たらない。また、②は、「新・増設を早くやれ」とでも言いたいのだろうか。それならば、西日本新聞社は、原発立地自治体に移転すればよい。そうでなければ、自分たちは嫌だが、人口の少ない地域の人は原発の被害にあってもよいというメッセージになる。しかし、我が国は、そういう地域で食料生産を行っていることを忘れてはならない。この記事の筆者は、指摘されなければ(されても?)、そのようなことも気がつかないのがレベルが低い。

*4:http://qbiz.jp/article/51891/1/
(西日本新聞 2014年12月16日) 【12月16日】川内原発増設、“幻の決定”(2010年)
 【経済産業省は16日、九州電力の川内原子力発電所(鹿児島県薩摩川内市)3号機の増設計画について、国の重要電源開発地点に指定した。これにより、出力159万キロワットと国内最大の川内原発3号機増設が決定した。九電は2013年度着工、19年度運転開始を目指す。都内で大畠章宏経産相から指定の通知書を受け取った真部利応九電社長は、記者団に「ようやく増設が決まり感無量。安全第一に工事も運転もやっていく」と話した(2010年12月17日付・西日本新聞朝刊3面から)】
 川内原発3号機増設計画について、九電は1990年代から地元や国と慎重に調整しながら調査や同意手続きを進めてきたが、国が正式に「重要電源開発地点」に指定したことで増設が本決まり。当時の社長が「感無量」と安どした節目だった。あとは原子炉設置変更許可など具体的な建設手続きを進めるだけだったが、翌2011年3月、状況は一変する。東日本大震災と福島第一原発事故を受け、「原発推進」のエネルギー政策は揺らぎ、それまでの決定は事実上白紙となった。国は、既存原発は新しい基準や審査に基づいて再稼動を認める方針だが、新・増設については依然として定まっていない。電力会社が国に毎年提出する「供給計画」でも、九電は川内増設の着工時期や稼働時期を「未定」としたままだ。


PS(2014/12/18追加):*5に、「地方への本社移転に税優遇」という記事があるが、税優遇だけでなく、地方は高齢化先進地域であり、地方の生活や自然環境は都会からでは推測できない。そのため、時代にあった新製品を現場で肌で感じて開発するためには、霞が関等に対応する人員だけを東京営業所に残し、本社・研究開発部・製造部を地方に移転するのが有効な産業は多い。

*5:http://www.nikkei.com/article/DGXLASFS17H6A_X11C14A2MM8000/?dg=1
(日経新聞 2014/12/18) 地方に本社移転、税優遇 社屋投資や転勤で控除、政府・与党 
 政府・与党は17日、企業が本社機能を地方に移転する際、社屋などへの投資額の最大7%を法人税額から差し引けるようにする調整に入った。管理部門など本社機能の移転に伴う社員の転勤などで地方拠点の雇用が増えた場合も、1人あたり最大140万円を税額控除できる。安倍晋三首相が重要政策に掲げる地方創生の目玉として、30日にまとめる来年度の与党税制改正大綱に盛り込む。本社機能の地方移転を進めて雇用を創出するとともに、東京への税収の偏りを修正する。地方からの人口流出を抑え、地方経済の底上げにつなげる狙いだ。国は本社が集中している東京23区などを「移転促進地域」に指定する。三大都市圏などは移転しても税優遇の対象としない「除外地域」とする。移転すれば税優遇を受けられる地域は国や地方自治体が今後、詰める。都道府県は企業誘致をてこ入れする対象地域を決め、市町村とともにどんな業種を誘致するかなどの計画をつくる。計画は国が審査する。新たな税制は移転先のオフィス投資への減税と、移転先での雇用増に合わせた減税措置の2本立てだ。企業が減税の対象となるには、本社拠点を都心から地方に移したり、すでにある地方の拠点を拡充したりするための設備投資や雇用増の計画について、2017年度末までに都道府県から承認を得る必要がある。投資減税では、移転促進地域から本社機能を地方に移す場合、設備投資額の25%を前倒し償却(特別償却)するか、投資額の最大7%の税額控除を受けるかを選べる。移転でなく、地方にある既存の本社機能を拡張する場合も、15%の特別償却か最大4%の税額控除を選べるようにする。控除の上限は法人税額の2割とする。雇用面では、本社機能の地方移転の場合でも、既存の拠点の拡張の場合でも、地方拠点の雇用を増やせば1人あたり50万円を1年限りで法人税額から差し引ける。移転する場合にはさらに、地方拠点で増やした社員1人あたり年30万円の控除を最長3年間受けられる。雇用面の税優遇では、企業は法人全体の雇用者数が前年より5人以上かつ10%以上増えるという条件を満たす必要がある。大企業などが10%増の条件を満たせない場合は、50万円の控除を20万円に減額する。減税の上限は投資減税と雇用減税を合わせて法人税額の3割までとする。例えば、企業が本社機能を移すため、地方の拠点に10億円を投資した場合、税額控除を選べば法人税負担は7000万円軽くなる。地方移転に伴い20人が転勤し、地方拠点で20人を新規雇用すれば、3年間で最大5600万円の控除が得られる。合計で約1億3千万円の税負担軽減となる。

| 原発::2014.10~2015.3 | 10:33 AM | comments (x) | trackback (x) |
2014.12.8 国民は、ここで原発再稼働にNoの意志表示をしなければ取り返しがつかなくなること、及び、原発に関わる核のゴミ処理問題は深刻であること (2014年12月10日、12日に追加あり)
   
 *1-2より        *2-1より          交付金交付先      *3-1より
党別エネルギー政策   廃炉廃棄物の処分       (電源別)       海のセシウム汚染  

(*自民党の政策に、「再生可能エネルギーの持続的推進と国民負担の抑制を両立」と書かれているが、実際には原子力に6,251億円、火力に2,499億円の電源三法交付金が交付されており、太陽光・風力・潮流発電などには全く交付されていない。その上、原子力は、事故処理、廃炉、避難、使用済核燃料の処分にあたって国民が納付した税金を使うため、自民党の説明は我田引水だ)

(1)原発再稼働にNoの意志表示を!
 *1-1、*1-2に書かれているとおり、世論調査では原発再稼働反対が原発再稼働賛成を上回っている原発をめぐって、与野党が主張の違いを鮮明にしており、今後のエネルギー政策に衆院選の投票結果が持つ意味は大きい。そのため、私も原発再稼働には明確に「No」の意志表示をして欲しいと考えている。そして、それは、小選挙区で心に決めた候補者がいたとしても、比例で政党を選択する時に、脱原発を主張する政党を選択することにより可能だ。

 川内原発は、原子力規制委員会が「安全は保証しない」と言っているにもかかわらず、新たな規制基準での適合性審査を終えて地元同意も取り付けたことになっている。また、国民の多くが再稼働に反対であるにもかかわらず、共同通信社の全国電話世論調査では「投票で最重視する課題」について、「原発・エネルギー政策」を選ぶ人は7・7%しかいなかったそうだ。しかし、上記の図表で明らかなように、電源をコストで比較しても、国民が負担している原発のコストは高く、エネルギーに対する交付金を節約して社会保障に回せば、減税しながら社会保障を増やすことさえ可能なのだ。

 なお、機器の進歩や市場メカニズムによるため、将来の電源構成比率を人間が勝手に決めるのは適切ではないが、①自然エネルギー由来の再生可能エネルギーが最も環境負荷が少なく ②100%国産できるエネルギーであり ③地域からカネを持ち出さないエネルギーでもあり ④機器も出そろってきたため、自然エネルギー由来の再生可能エネルギー普及にまい進するのが最も賢い方法である。

(2)核のゴミ処理について ← これで政府や環境省を信用できるか?
 *2-1に書かれているように、使用済核燃料などの高レベル放射性廃棄物の最終処分場も決まっていないが、低レベル放射性廃棄物の処分方法も不透明な部分が多く、2009年に廃炉作業が始まった中部電力浜岡原発1、2号機では「核のごみ」の行き場が決まらないまま、作業が続けられ、廃炉作業に伴って出る約48万トンの低レベル放射性廃棄物は、処分先の目途も立っていないそうだ。

 国の地中埋設基準は甘い上、最も汚染のひどい炉心支持板など原子炉内の構造物などについては詳しい埋設方法も決まっていないが、埋設地を電力会社の責任で選定して日本のあちこちで分散管理すれば、漏れるリスクは大きく、管理コストは高くなる。これは、廃炉方針が固まった九州電力玄海原発1号機も同様だが、後始末の方法も考えずに開始することこそ無責任と言うべきである。

 お粗末な他の事例を挙げれば、*2-2のように、フクシマ原発事故で出た汚染土などを保管するために環境省が福島県大熊、双葉両町に建設する中間貯蔵施設の場合は、地権者の行方が分からず土地契約交渉が進まないそうだが、3年半も経過すれば死亡者や移住者は把握できていなければならない筈で、本当に国や地方自治体がやる気を出せば、地権者を探して特定するのは簡単な筈なのである。

 また、*2-3のように、フクシマ原発事故で出た放射性物質を含む指定廃棄物の最終処分場に、環境省(!)が、豊かな水源に接する栃木県塩谷町を候補地と決めたため、栃木県内のすべての医師会が、、「命の源である水源地を汚染し、未来に残すべき自然環境を破壊し、住民の健康を阻害する可能性のある放射性廃棄物の最終処分場の建設に断固として反対する」という宣言を取りまとめて環境省に提出するそうだ。私も水源の里に放射性物質の最終処分場を造るなど呆れかえっていたため、栃木県の医師会は社会的責任を果たすよいことをしたと思っている。

(3)フクシマの汚染水は3年半垂れ流しで、水産物も汚染されている可能性が高い
 *3-2のように、数百億円かけて「氷の壁」を作り、汚染水を遮断しようとしたのは、(当然のことながら)半年たっても凍らず、氷の壁を断念してトレンチをコンクリートで埋めるそうだ。しかし、コンクリート案についても、リスクの高い汚染されたコンクリートが増えるだけという懸念もあるそうだ。

 また、*3-1のように、2014年12月1日、東京新聞は独協医科大学の木村教授(放射線衛生学)と合同で原発周辺5カ所の海水と海底土(砂)を採取して放射能汚染の状況を調べ、外洋への汚染を確認し、放射性物質は底に沈むため、海底土(砂)で海水よりも汚染度が高くなっていたそうだ。

 「1ベクレルの海水=食品基準の100ベクレルの魚が捕れる可能性」が一つの目安であり、これは決して無視できない汚染だが、東電は原子力規制委員会が定めた「国のモニタリング基準」に沿って海水のモニタリングを行い、日々の公表資料には「検出せず」という記述をしている。原子力規制委事務局の担当者は「高濃度汚染がないか監視するのが目的で、迅速性が求められ、精度が低いとは思わない」としているが、現在のレベルなら、やり方を変えないと信頼できるデータは出ないとのことだ。

<今回の衆院選で原発再稼働は重要な争点>
*1-1:http://www.saga-s.co.jp/column/ronsetsu/132932
(佐賀新聞 2014年12月6日) 2014衆院選 原発再稼働
 今後のエネルギー政策に、衆院選の投票結果が持つ意味は大きい。年明けにも九州電力川内原発(鹿児島県)の再稼働が予定されており、最終的には政府が判断を下すことになるからだ。川内原発はすでに新たな規制基準での適合性審査を終え、地元同意も取り付けている。経済優先の安倍政権は「再稼働を進める」姿勢で、政策変更がない限りは運転再開へと進んでいく。だが、国民の多くは再稼働に慎重だ。今年9月に日本世論調査会が実施した全国面接世論調査では、反対が61%で、賛成の34%を大きく上回っている。東京電力福島第1原発事故以降は、原発を見る目が変わっている。それでもそのまま投票に反映されるわけではない。11月の共同通信社の全国電話世論調査では「投票で最重視する課題は」の問いに、「原発・エネルギー政策」を選ぶ人は7・7%しかいなかった。経済政策や社会保障を重視する人のほうがずっと多い。選挙は政策を単品ではなく、パッケージで選ぶ。だから6割の声がまとまることはない。単品で選んでいなくても、引き続き現政権が過半数を得れば、「再稼働の方針が信任された」とゴーサインを出すだろう。再稼働について、民主党は「責任ある避難計画」、維新の党は「『核のごみ』の最終処分の解決」がなければ、認めない立場だ。次世代の党は原発活用に積極的で、他の野党は一切認めない。福島事故で安全神話も発電コストが安いという神話も崩壊した。原発依存から可能な限り早く抜け出すことが国民の多くの願いだろう。再稼働の是非と一緒に、将来の電源別の構成比率も問いたい。自民党は来年夏までに党としての結論を出す考えで、公約では「原発依存度を可能な限り低減させる」と具体的な目標は示していない。その一方で、4月に閣議決定したエネルギー基本計画では、原発を「重要なベースロード電源」と位置づけており、どの程度維持するのかはっきりしない。公明党は「原発に依存しない社会・原発ゼロ」を目指すとしている。しかし、原発ゼロと再稼働との整合性について、明確な説明をしているとは言い難い。与党は争点化を避けずに、エネルギー計画を有権者に示すべきだ。民主党は与党時代に討論型世論調査などを経てまとめた「2030年代に原発稼働ゼロを実現するようあらゆる政策手段を投入する」を掲げる。維新の党は市場競争で「既存原発はフェードアウト(消滅)」。脱原発を求める他の野党も含め、原発ゼロ実現の道や再生可能エネルギーの拡大など具体的な戦略を掲げる必要がある。現在は原発停止で火力発電の比率が増えているが、このまま続けるわけにもいかない。地球温暖化につながる二酸化炭素(CO2)の排出量が増え、火力発電の燃料費アップに伴う電気料金の再値上げも時間の問題だ。一筋縄ではいかず、推進側にも理由はある。川内が先陣を切れば、条件を満たした原発は次から次に動き出すだろう。安倍政権下の2年間で加速した「原発回帰」を進めるのか、止めるのか。当たり前だが、1票を投じることは、公約実現を後押しする力になると肝に銘じたい。

*1-2:http://qbiz.jp/article/51344/1/
(西日本新聞 2014年12月7日) 【衆院選 公約点検】(4)原発・エネルギー 賛否が分かれる再稼働
 世論調査で反対が賛成を上回る原発再稼働をめぐり、与野党は主張の違いを鮮明にしている。自民党は「原発依存度は可能な限り低減する」としながらも、「重要なベースロード電源との位置づけの下、活用する」と主張。2012年の前回衆院選に比べ再稼働推進に踏み込んだ。公明党は「原発に依存しない社会・原発ゼロを目指す」としながらも、連立与党重点政策では「厳格な規制基準を満たすことを大前提に(再稼働を)進める」と、自民と足並みをそろえた。民主党も新規制基準に適合した原発の再稼働は認める立場だが、国民の生命と財産を守る避難計画に触れ、「責任ある計画がなければ再稼働はすべきでない」と強調。基本スタンスとしては「30年代に原発稼働ゼロとするようあらゆる政策資源を投入する」と、従来の方針を変えていない。維新の党は「既設原発はフェードアウト」との表現で、将来の原発ゼロを目指す。共産党や社民党は、はっきりと再稼働反対を訴える。九州電力など大手電力会社5社が接続手続きを中断している再生可能エネルギーについては、ほぼ全政党が導入拡大を掲げる。自民は「系統問題を克服し、最大限かつ持続的な導入促進と国民負担の可能な限りの抑制とを両立」と主張。民主も「分散型エネルギー推進基本法を制定し、地域の中小企業を支援する」としたが、いずれも具体的な導入拡大策までは踏み込んでいない。自民は将来の電源構成比率について「速やかに示す」と記すにとどめた。原発の依存度低減と再生エネの導入拡大をどこまで進めるのか−。エネルギー政策の議論に不可欠な数値なだけに、「争点隠し」と批判する声もある。

<核のゴミ処理について>
*2-1:http://qbiz.jp/article/51345/1/
(西日本新聞 2014年12月7日) 廃炉、核のごみどこへ 中部電・浜岡原発ルポ 
 老朽原発を廃炉にするか延命させるか、原発の選別に注目が集まっている。政府は古い原発の廃炉を進めることで安全性をアピール、再稼働への理解を得ようとしているが、廃炉に伴い大量に発生する低レベル放射性廃棄物の処分先のめどは立っていない。2009年に廃炉作業が始まった中部電力浜岡原発1、2号機(静岡県御前崎市)では「核のごみ」の行き場が決まらないまま、淡々と作業が続けられていた。浜岡原発の出入り口。2本のポールの間を、トラックがゆっくり通過する。ポールは放射線量の測定器。一定以上の放射線量を感知すると警報が鳴る仕組みで、放射性物質で汚染された廃棄物を誤って敷地外に出さないために設置された。「これまでの作業は順調です」。中部電浜岡地域事務所総括・広報グループの村松立也専門部長が説明する。背後の原子炉建屋の外観は運転中と何ら変わらない。撤去され土台だけが残る重油タンク跡などが、かろうじて廃炉作業中であることを示す。廃炉作業が完了するのは22年後の36年度の見通しで、その間に出る廃棄物は約48万トン。建屋外にあるタンクや変圧器の鉄くずなど9割以上は一般廃棄物と同じように処分や再利用ができるが、原子炉圧力容器や作業で使った手袋など約1万7千トンの低レベル放射性廃棄物が発生する見込みだ。これまでは建屋外の設備撤去を中心に行ってきたため、放射性廃棄物は出ていない。「だんだん原子炉領域に近づく。これまで以上に注意を払って進める」と村松専門部長。来年度以降、原子炉周辺の設備解体など、放射能レベルが高い領域での作業が始まる。
■「玄海」でも
 最終処分場が決まっていない使用済み核燃料などの高レベル放射性廃棄物と同様、低レベル放射性廃棄物の処分方法にも不透明な部分が多い。国は汚染の程度で3種類に分類、地中に埋設する基準を策定したが、最も汚染のひどい炉心支持板など原子炉内の構造物などについては詳しい埋設方法も決まっておらず、原子力規制委員会が規制基準づくりに着手したばかり。さらに埋設地は電力会社の責任で選定しなければならない。中部電は「処分先は未定で、来年3月までに決める」とするが、原発敷地内に埋めるとしても、周辺地域から反発が起きる可能性が高く難航は必至だ。来年10月に運転40年を迎え、廃炉方針が固まった九州電力玄海原発1号機(佐賀県玄海町)の低レベル放射性廃棄物について、九電は「廃炉にしても運転延長にしても、いずれはやってくる課題」との認識を示すにとどまり、明確な処分方針は明らかにしていない。
■行き場なし
 国内の商用原発は浜岡1、2号機に加え日本原子力発電東海発電所、東京電力福島第1原発1〜6号機の計9基で廃炉作業が進む。経済産業省は10月、廃炉の判断を急ぐよう電気事業連合会に要請した。国内では原発7基が運転開始から40年前後経過、本格的な廃炉時代を迎えるが、現状では廃炉が決まり解体が始まっても埋設地が決まらなければ、行き場のない低レベル放射性廃棄物は敷地内で保管し続けるしかない。明治大の勝田忠広准教授(原子力政策)は「再稼働を進めれば使用済み核燃料が増え、廃炉を決めれば低レベル放射性廃棄物が出る。廃棄物問題の議論を避けるべきでなく、真正面から向き合うべきだ」と指摘している。

*2-2:http://mainichi.jp/shimen/news/20141119dde041040020000c.html (毎日新聞 2014年11月19日) 東日本大震災:福島第1原発事故 中間貯蔵の土地契約交渉、地権者の半数連絡つかず 全町避難の大熊、双葉町
 東京電力福島第1原発事故で出た汚染土などを保管するため、環境省が福島県大熊、双葉両町に建設する中間貯蔵施設の土地契約交渉が進まない。避難により、地権者の行方が分からないケースが多発しているためだ。登記簿上の地権者2365人のうち、連絡先が判明したのは1300人程度。目標とする来年1月搬入開始は極めて困難な状況だ。中間貯蔵施設は、第1原発を囲むように両町の帰還困難区域16平方キロに建設予定。今年9月に県が受け入れを表明したのを受け、環境省は登記簿から地権者2365人を抽出したが、登記簿は震災後は更新されておらず、記載の住所も避難前のもの。町に避難先の照会を依頼したが、既に死亡していたり、住民票が町になかったりして、登記簿と町の資料で地権者情報が一致し、避難先が判明したのは1269人だった。判明した地権者には地権者説明会の通知を郵送。このほか、報道などで知り、問い合わせてきた人が30人程いた。通常は建設地を回って住民や隣人から情報を得るが、全町避難が続く現状ではそれもできない。「地権者の理解」を前提に県の受け入れ表明を容認した両町は、こうした現状を問題視。また、説明会に出席した地権者からも土地の補償額などに不満の声が上がっており、両町長は10月23日、小里泰弘副環境相に「地権者への丁寧な説明」を申し入れた。建設受け入れを正式に表明していない両町に配慮し、同省は連絡先が分かっている地権者との個別交渉も自制している。同省の担当者は「町に納得してもらうためにも地権者の7割程度を割り出したい」と話すが、打つ手は乏しい。建設地の行政区長を頼って住民の情報を求めているほか、転送を期待して避難前の住所に通知を送ることを検討中。行方が分からない地権者に代わり、家庭裁判所が選任した弁護士らから土地を買い取るという、民法の「財産管理制度」も視野にあるが、「安易に使えば反発が増すだけ。最後の手段」と話す。環境省は、施設が完成しなくても契約が済んだ土地に汚染土を仮置きする方針。それでも来年1月に搬入を開始するなら、入札など早急に土地整備の手続きに入る必要がある。今月7日、竹下亘復興相が計画の見直しに言及した。同省の関係者は「11月になっても土地が手に入る見通しすら立っていない」と漏らす。正式に搬入開始の延期を決めざるを得ないところまで迫られている。

*2-3:http://www3.nhk.or.jp/lnews/utsunomiya/1093016391.html
(NHK 2014年11月9日) 最終処分場 医師会が反対宣言
 東京電力福島第一原子力発電所の事故に伴って発生した放射性物質を含む指定廃棄物の最終処分場を巡り、栃木県の医師会は、県内の候補地に選定された塩谷町での建設に反対する宣言を取りまとめました。宣言を取りまとめたのは、およそ2100人の医師が加入する県医師会をはじめとした、県内のすべての医師会です。県医師会によりますと、今月1日に県内の医師会の会長らが出席して開かれた会合で、指定廃棄物の最終処分場の県内の建設候補地として国が塩谷町を選定したことが議題となり、これに反対する宣言が全会一致で決議されたということです。宣言は、候補地が豊かな水源に隣接しているとしたうえで、「命の源である水源地を汚染し、未来に残すべき自然環境を破壊し、住民の健康を阻害する可能性のある放射性廃棄物の最終処分場の建設に断固として反対する」と宣言し、これを環境省に提出するのは重要なことだ。

<フクシマの汚染水は、3年半垂れ流し>
*3-1:http://www.tokyo-np.co.jp/article/feature/nucerror/list/CK2014120102100012.html (東京新聞 2014年12月1日) 海洋汚染、収束せず 福島第一 本紙調査でセシウム検出
 東京電力福島第一原発至近の海で、本紙は放射能汚染の状況を調べ、専用港の出入り口などで海水に溶けた状態の放射性セシウムを検出した。事故発生当初よりは格段に低い濃度だが、外洋への汚染が続く状況がはっきりした。一方、東電は精度の低い海水測定をしていながら、「検出せず」を強調する。事故当事者としての責任を果たしているのかどうか疑問がある。本紙は十月二十日、地元漁船をチャーターし、独協医科大学の木村真三准教授(放射線衛生学)と合同で原発周辺五カ所の海水と海底土(砂)を採取。後日、同大の高性能のゲルマニウム半導体検出器を使い、それぞれ二十四時間、八時間かけ計測した。海水はろ過し、ちりなどに付着したセシウムは除去した。結果は図の通りで、水、砂とも港の出入り口が最も濃度が高く、ここから拡散していることがうかがえる。注目されるのは、同地点の海水から一リットル当たり一・〇七ベクレルのセシウムを検出したことだ。「一ベクレルの海水=食品基準の一〇〇ベクレルの魚が捕れる可能性」が一つの目安としてあり、決して無視できない汚染といえる。東電は原子力規制委員会が定めた基準に沿って海水モニタリングをしているが、日々の公表資料は「検出せず」の記述が並ぶ。計測時間はわずか十七分ほどで、一ベクレル前後の汚染はほとんど見逃すような精度しかない。大型魚用の網で小魚を捕ろうとするようなものだ。東電の担当者は「国のモニタリング基準に沿っている」と強調する。原子力規制委事務局の担当者は「高濃度汚染がないか監視するのが目的。迅速性が求められ、精度が低いとは思わない」としている。しかし、かつての高い汚染時なら、精度が低くても捕捉できたが、現在のレベルなら、やり方を変えないと信頼できるデータは出ない。汚染が分からないようにしているのではないかとの疑念を招きかねない。地元、相馬双葉漁協の高野一郎・請戸(うけど)支所長は「何度調べても汚染が検出されなければ、私たちも消費者も安心できる。しかし、国や東電がきちんと調べてくれないと、誰も信用できない」と語った。木村准教授は「高性能な測定機器を使っても、短時間の測定では、国民や漁業関係者から信頼される結果を得られない。海の汚染は続いており、東電は事故の当事者として、汚染の実態を厳密に調べ、その事実を公表する義務がある」と指摘している。

*3-2:http://www.sankei.com/smp/affairs/news/141101/afr1411010007-s.html
(産経新聞 2014.11.1) 「氷の壁」温度10度上昇 福島第1原発 コンクリでの埋設も現実味
 東京電力福島第1原発の海側のトレンチ(地下道)に流れ込む汚染水を遮断するための「氷の壁」が半年たっても凍らない問題で、東電は31日、未凍結部分に止水材投入後も、一部で温度が約10度上昇していたことを明らかにした。全体的に温度は低下傾向にあるとしているが、11月中旬までに止水材投入に効果がないと判断すれば、トレンチをコンクリートで埋め、氷の壁を断念するという。この日の原子力規制委員会による検討会で、東電側が報告した。東電は4月末、凍結管を通して周囲の水を凍らせる氷の壁を導入したものの、氷やドライアイスを投入しても約1割が凍らないため、10月初旬から止水材を入れて未凍結部分を間詰めする工事を実施してきた。間詰め後に温度は一時、マイナス15度近くまで下がったが、10月30日に計測したところ、再び10度近く上昇していたことが判明。東電は「水位が高い所で温度が上昇しており、熱量の流動のデータを見て吟味している」と話し、原因を究明中だという。間詰め工事は10日まで行われる。当初は、凍結止水した上で、汚染水を移送し、トレンチに閉塞(へいそく)材を充填(じゅうてん)する方針だった。氷の壁で止水効果が確認できない場合、トレンチ内の水を抜き取るのではなく、汚染水ごと水中不分離性のセメント系材料で埋める方策に移行することがこの日の検討会で確認された。トレンチには高濃度の汚染水が約1万トン以上滞留しており、津波などによる海への漏洩(ろうえい)が危険視されている。この日の検討会でコンクリ埋設の案について、会津大の角山茂章・教育研究特別顧問が「リスクの高い汚染されたコンクリートが増えるだけだ。かなりの量になると推定できる」と懸念を示した。


PS(2014.12.10追加):このような中、*4のように、鹿児島県の衆院選候補者は、「自民の5人中3人が再稼働に賛成」「再稼働の条件とされる『地元同意』の範囲は、伊藤祐一郎知事が適用した『鹿児島県と薩摩川内市で十分』と明言したのは自民の2人だけ」「現行の避難計画を『合理的』と評価したのは5区の自民前職1人だけで、民主、共産、社民の7人は『ずさん』『机上の空論』と批判した」とのことである。私は、鹿児島県は火山のリスクが高い上、守るべき他産業も多く、既に九州新幹線は開通しているが原発に近くては企業誘致もうまくいかないため、原発は廃炉にして速やかに使用済核燃料を処分するのが、地域の発展のために賢明だと考える。

*4:http://qbiz.jp/article/51516/1/ (西日本新聞 2014年12月10日) 再稼働地元同意「十分」2人のみ 衆院選鹿児島14候補 川内原発アンケート
 西日本新聞社は、政府が新規制基準下で全国初の再稼働を目指す九州電力川内原発が立地する鹿児島県の衆院選5小選挙区立候補者全14人に、再稼働への賛否などをアンケートした。自民の5人中3人が再稼働に賛成、自民と無所属各1人が容認し、維新、共産、社民の計7人が反対した。自民、民主の各1人は賛否を明らかにしなかった。再稼働の条件とされる「地元同意」の範囲は、伊藤祐一郎知事が適用した「県と薩摩川内市」で「十分」と明言したのは自民の2人だけだった。民主、維新、社民の各1人と共産の5人は「不十分」などと批判し、原発30キロ圏への拡大や法的枠組み作りを求めた。アンケートは「再稼働への賛否」「地元同意の範囲は現行で十分か。法的枠組みは必要ないか」「自治体の避難計画への評価」を問い、48字以内の自由記述で回答を得た。自民で再稼働賛成を明言したのは前職3人。「当面の安定的、低コスト電源として賛成」などとした。原発立地選挙区の3区の新人は「エネルギーの現状からやむを得ない」とした。4区の前職は原子力規制委員会を管轄する環境副大臣であることを理由に回答を控えた。反対した野党の7人は「噴火対策が不十分」「使用済み核燃料の処分方法が未定」などと指摘した。地元同意の範囲をめぐっては、1区の自民前職は現行で十分かどうかは答えず「今後充実する努力を」と提案した。3区の無所属前職は「今後は範囲拡大の議論をするべきだ」とした。現行の避難計画を「合理的」と評価したのは5区の自民前職1人だけ。3区の無所属前職は「国が財政面を含め主導を」と国の一層の関与を求めた。民主、共産、社民の7人は「ずさん」「机上の空論」などと批判した。


PS(2014.12.12追加):維新の党が強い大阪以外の選挙区には影響がなくなってからの判決で遅すぎるが、*5のように、大阪地裁が環境省に対して、瓦礫の受け入れを行った自治体名の公開命令を出した。しかし、これは、日本全国の自治体で同じである。

*5:http://digital.asahi.com/articles/DA3S11502758.html (朝日新聞 2014年12月12日) がれきの受け入れ、自治体名公開命令 大阪地裁、「住民に不安あった」
 大阪地裁の田中健治裁判長は11日、自治体による東日本大震災のがれきの受け入れ検討状況を一部開示しなかった国の処分を取り消し、公開を命じた。自治体名を伏せた環境省に対し、情報公開を求めていた大阪府守口市の市民団体が提訴していた。判決によると、環境省は震災発生から約7カ月後の2011年10月、岩手、宮城、福島の3県と沖縄県を除く都道府県を通じ、市区町村にがれき受け入れの意向の有無を調査。54の自治体が「受け入れを決めた」「検討中」と答えたことを公表したが、自治体名は伏せていた。市民団体の公開請求に対し、環境省は12年5月、「意思決定の中立性が損なわれる恐れがある」として公開しなかった。田中裁判長は「住民には災害廃棄物が放射性物質に汚染されている可能性があるという不安があった」と指摘。開示しない不利益は大きいと判断した。大阪市内で記者会見した市民団体代表の橋本杉子さん(54)は「情報の公開に対する国の姿勢を正した」と評価。環境省は「判決内容を精査し、対応を検討したい」との談話を出した。

| 原発::2014.10~2015.3 | 05:30 PM | comments (x) | trackback (x) |
2014.12.3 「この道」はいつか来た道で、日本を昔に逆戻りさせる道でしかない - 経済・年金減額・消費税増税から (2014年12月4日、8日に追加あり)
     
 消費税増税と税収の関係  *1-1より     2014.11.28、29日経新聞より
        <消費税を導入してからワニの口は開き始めた>
(1)アベノミクスの“この道”は、昔の日本に逆戻りする道である
1)消費税増税と社会保障の切り捨ては、今後必要となる財やサービスの発展を阻む
 *1-1は、財務省の論理を記載しており、「ワニの口」とは国の税収と歳出の推移を示したもので、「歳出-歳入」の差が次第に広がって、大きく開いたワニの口の形をしているため、名付けられたものである。そして、「消費税増税」そのものが目的である財務省は財政再建を旗印として、社会保障費の確保を人質に、消費税再増税を訴えているわけだ。

 また、メディアも、軽減税率適用時に自らが軽減税率適用対象となる目的と財務省のオウム返ししかできない質の低さにより、*1-1のように、「再増税先送りは債券、株、円のトリプル安を招く恐れがあり、将来に大きな禍根を残しかねない」とか、*1-2のように、「消費再増税、信頼維持に重要」とか、*1-6のように、「不利益の分配も問う時」などという記事を掲載している。

 しかし、省毎に縦割りの中で、財務省だけで考えれば財政再建には増税しか思いつかないだろうが、私が、このブログの「年金・社会保障」「資源・エネルギー」「まちづくり」などのカテゴリーに何度も記載したように、①エネルギーを国産の再生可能エネルギーに変換する ②排他的経済水域内で天然ガスなどの資源を採掘する ③日本国民(高齢者が多い)に本当のニーズがある財やサービスを開発し生産して、間もなく同じものが必要となるアジアや世界に輸出する など、本物の経済成長を促して財政健全化に資する正道は、他にいくらでもあるのである。

 それでも、高齢者に対する年金や社会保障をカットしたがるのは、③の日本国民に本当のニーズがある財やサービスを開発・生産することを阻み、ヒューマニズムに反すると同時に、今後、世界で必要となる産業を育成することをも妨げている。

2)アベノミクス政策では日本経済は発展せず、実質賃金や実質年金収入は減る以外にない
 安部首相は、企業に何度も賃上げを頼んでおられるが、*1-3のように、1人当たりの名目給与総額が0.5%増加しても実質賃金は減少し続けており、これは当然の結果だ。何故なら、企業は、その生産性以上の賃金を支払うことはできず、ここで言う生産性とは会社全体、もしくは国全体の平均であるため、不要な仕事をして給料をもらう人が多ければ多いほど、全体の生産性は低くなるからである。

 そのため、景気対策として不要な工事を行えば、全体の生産性は低くなる上、辺野古の埋め立てのように、その工事の結果として環境にマイナスの影響が出て、さらに経済の足を引っ張ることもある。

 なお、*1-3に、「①物価の影響を加味した実質賃金は2.8%減と16カ月連続で減少」「②賃金の伸びは物価上昇に追い付かない」などと書かれているが、①については、名目で語ることはそもそも意味がなく実質のみが意味のある数字だ。また、②については、まさに日本を昔の低賃金の状態に戻して輸出を増やすべくインフレ政策を行っているので実質賃金が下がるのは当然のことだが、歴史の進歩と新興国の台頭で既に日本が輸出を増やすことは不可能になっているため、目的は達せられない。そのため、問題点の突き方が甘いのである。

 しかし、*1-4では、「個人消費の低迷が続いているものの、企業の投資意欲は高い」としている。これは、マイナス金利による設備投資と公共投資による投資需要が主な理由だろうが、自動車と建築向け素材しか眼中にないようでは、お先真っ暗だ。

 このような中、*1-5で、公明党の山口代表が「アベノミクスの推進に加え、家計などを支援するための緊急経済対策の速やかな実施を訴えていく」という考えを示されたそうだが、「きめ細かな配慮」と称する意図的な需要操作を行うよりも、減税や年金削減の中止、必要な社会保障の充実を行った方が、21世紀に世界で必要とされる需要に合った財やサービスを開発し、生産・販売するのに役立つ。また、消費税増税があると必ず緊急経済対策の実施と称する公共投資などの歳出が増加するのが、「ワニの口」が開く理由だったことを決して忘れてはならない。

3)「不利益の分配が必要」というのは、本当の責任者の責任逃れと乏しい発想力の結果である
   
1950年と2012年  時代による人口          *2-1より    2014.11.28東京新聞
の人口ピラミッド    ピラミッドの変化
比較(世代毎)

 *1-6には、「①いちばん恩恵をこうむっているのが高齢者で、投票する頭数の多さからその世代の利益が優先されるシルバー・デモクラシーに日本政治は流されている」「②若い人が割を食う世の中はやはり問題だ」「③所得や地域だけでなく世代の格差もならすことを考えなければならない」「④これから、より迫られるのは『不利益を分配する政治』だ」などとしている。

 しかし、①については、人口の中で割合が増える高齢世代のニーズにあう財・サービスを生産するのが次の産業発展に繋がることを忘れてはならないし、高齢者を粗末にすれば若い世代が大切にされるということも絶対になく、これは単純な対立の構図を作って見せる誤った考え方である。さらに、投票率が高いのはシニア世代であり、民主主義における意志決定は投票に依るため、棄権する人の意見は反映されないことも、若い世代は認識しておくべきだ。

 また、②については、年金積立金の放漫な管理の責任を、高齢者と若者の世代間対立に落とし込み、本当の責任者を見えなくして高齢者いじめをしているが、一昔前と違ってこれからのシルバー世代は、年金保険の支払いをしてきており、「若い人が割を食う」という表現は当たらない。また、これからのシルバー世代は必要なものに対する消費性向が高いため、「消費は若者がするものだ」という先入観も古い。

 さらに、③については、格差をなくすためには一番下に合わせるしかないため、格差の解消を唱えれば努力した人が報われる社会にはならない。例えば、皆一緒にゴールする100m走がオリンピックにあったら、努力して記録を伸ばし、そこに参加する人はいなくなるのと同じである。そのため、最低線のセーフティー・ネットは整えた上で、公正な(ここが重要)競争の結果できた格差はあるのが当然とすべきだ。

 なお、④のように、「不利益の分配が必要」という声は多いが、これは責任なき人にも責任を負わせることによって真の責任者が責任を逃れる手法である上、実際には(1)の1)に記載したとおり、解決する手段は他にいくらでもあるのに皆が損することを薦めている変な理屈である。薬は、病気の原因に作用するから効くのであって、苦いから効くのではない。

(2)日本が本当に進むべき道は、どういう道か
1)国民の豊かさや幸福を求めることとその指標について
 国民の豊かさは、名目ではなく実質で測らなければわからないため、今後は実質のみで議論すべきだ。また、豊かさは、一人当たりの豊かさによって感じるものであり、国全体の実質GDPが多くても、国民一人当たりの実質GDPが小さければ、国民は貧しいのである。

 ただし、国民一人当たりの実質GDPが同じでも、例えば、①不自由なく暮らせる ②社会保障がしっかりしていて安心である ③土地や家が広い ④食べ物が安全で美味しい ⑤環境がよい ⑥自由である など、国民の幸福を増す他の要素はあるだろう。

2)アベノミクスの「三本の矢」では、国民は貧しくなるだけだ
 アベノミクスの三本の矢とは、①大規模な金融緩和 ②拡張的な財政政策 ③民間投資を呼び起こす成長戦略 のことだ。

 このうち、①については、日銀がお金を印刷して発行すればよいためすぐできたのだが、これにより円の価値が下がって尺度が変わったため、円の価値を反映する為替レートは円安になり、企業価値を反映する株価は上昇し、財・サービスの価値を反映する物価は上がった。従って、円で生活している日本国民の資産は減り、給料も目減りした。「デフレを脱却してインフレになった」とは、こういうことである。

 また、②の拡張的な財政政策は、東日本大震災から復興しなければならないため、迅速に必要な工事をすれば十分だった筈である。しかし、その上さらに財政出動したため、建設関係のモノ不足と作業員不足で、同じ歳出でもできあがるものが減り、工期も延びた。また、政府が景気対策として行う財政出動は、出動することが目的であるため、生産性を高めず、環境を壊した上、無駄遣いという事例が多い。

 次に、③の民間投資については、民間は、(正常な経営が行われていれば)需要のある生産を行うためにしか投資しないため、これを誘うためには、本当に必要な需要が増える必要がある。そして、この典型が、人口が増えたのにまだ整っていない高齢者関係の需要、家事の外部化を行うための需要、新エネルギー関係の需要なのだが、年金や社会保障を削減し、原発再稼働を薦めてこの需要を抑えたため、本当に必要な需要が増えず、民間投資も勢いづかないという結果を招いている。

(3)年金減額、労働条件の悪化、人件費の削減が経済にもたらす影響
1)年金減額の影響について
 *2-1、*2-2に書かれているように、年金の給付水準は、2回目の減額が終わった現段階で、削減前に比べて国民年金(基礎年金)で月額1,041円、厚生年金(標準世帯)で月額4,015円カットされ、その上、もう一回減額があり、これ以外にも給付抑制が進む予定だそうだ。また、物価上昇時には年金給付の伸びを物価上昇より低く抑える「自動抑制」が来年度にも動きだすとのことである。

 これは、「切迫する年金財政を支えるため」として、民主党の野田政権時代に自、公、民の三党でまとめた「税と社会保障の一体改革」で決めたそうだが、このシナリオを描いたのは財務省・厚労省だ。そして、「税と社会保障の一体改革」が行われれば、もともと少ない年金しかもらっていない高齢者は生活できなくなる。また、「年金の財源は現役世代が負担し続けてきた」とも書かれているが、これから高齢者になる人は現役時代に年金保険料をしっかり支払った人が多く、年金が積立方式から賦課課税方式に変更されたのは1985年であり、賦課課税方式ではこのような結果になるのは、人口ピラミッドを見て前からわかっていなければならない。つまり、この積立金不足は、厚労省はじめ政府の年金制度に関する失政のつけであるのに、その責任を高齢者の二重負担として、これからの高齢者に強いるものなのである。

 さらに、公的年金積立金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は、今年10月、株式の運用比率を大幅に引き上げる方針を決め、「成長への投資に貢献する」としたそうだが、これは、リスクの高い株式に投資するということであるため、将来の年金支給に充てるべき積立金が株価下落のリスクに晒される可能性は高く、危険な行為である。

 そして、マクロ経済スライドによる年金支給額の抑制により、人口の大きな割合を占める年金生活者の実質所得が減らされ、需要があっても購入できない状況になれば、本物の需要は伸びず、景気の足を引っ張り、これを政府の生産性の低い公共投資で補えば、国全体の生産性はさらに低くなるとともに、新たな産業の創造はできない。

 *2-3のように、「実質国内総生産(GDP)のうち、公共投資による押し上げ分は5割弱を占め、建設労働者が不足し、民間工事の一部に人手が回らなくなった」そうだが、民間需要や民間投資こそが生産性を高めるために必要な投資であるため、国が国民の所得をこっそり移転して生産性の低い公共投資に無駄遣いすることは国益にならない。なお、公的年金の支給開始年齢の引き上げには、私も賛成だが、それは定年の延長と同時に行わなければ、失業者や暮らせなくなる高齢者が増えるだけである。

2)非正規、派遣という働かせ方による労働条件の悪化と人件費の削減について
 非正規、派遣という働き方では、労働者として労働法で保護されることができない。そのため、この働かせ方は、一時的なものとして雇用の増加に含めるべきではないだろう。

 また、非正規労働者・派遣労働者は、生涯所得が低くて不安定な雇用形態である上、社会保険料の支払いを行っていない人が多いため、このような労働者が増加することは、本人にとっても、他の国民にとっても困ることなのである。

(4)税制に組み込まれた所得の再配分
1)所得税に組み込まれた所得の再配分効果
 所得税は、累進課税であるため所得の大きい人ほど高い税率になり、所得の再配分効果が税制の中に組み込まれている。また、法人税も所得税も景気がよくなると増え、景気が悪くなると減るため、景気調整効果(ビルトインスタビライザー)を内蔵している優れた税制である。

 しかし、消費税は誰に対しても同様に税を課すため、所得の低い人ほど税率が高くなる。このため、公明党は軽減税率の適用を公約にしているが、これは何を軽減するかに関して意図が入りやすく、軽減税率を適用すれば、それだけ消費税増税による税収が落ちる。つまり、国税としての消費税は、あまりお勧めではない税だと、私は考えている。

 そのため、戦後、シャウプ勧告を出して日本の税制の基礎を作ったアメリカでは、付加価値税(消費税に似たもの)は国税ではなく州税となっており、各州で自由に税率を決めることができる。私も、消費税は全額地方税として県や市町村で自由に税率を決められるようにするのがよいと考える。そして、税収を移転した分は地方交付税を減らし、それぞれの地域で努力に見合った税収があるようにすべきである。

2)衆院選で作るべき構図は、一強の転換だ
 *3に、東京新聞が、「一強継続か転換か」と題した記事を書いているが、今回の一強の状態で、自民党は、国民の「知る権利」を侵す特定秘密保護法、武器輸出三原則の事実上の撤廃、原発の「ベースロード電源」としての位置付けなどを、まともな国会論戦もなく国民を馬鹿にした目線で、次々と決めていった。そのため、私は、野党との力のバランスが重要であると考えている。

 また、「この道」より賢い道については、私は、このブログの2012年12月18日をはじめ「年金・社会保障」のカテゴリーで、既に何度も記載している。

<財務省・厚労省の論理をそのまま語る政治家やメディアは、その役割を果たしていないこと>
*1-1:http://qbiz.jp/article/50860/1/
(西日本新聞 2014年11月29日) 閉じない「ワニの口」 歳出削減と税収増、見通せず
 中央官庁が集中する東京・霞が関で、「ワニの口」と呼ばれるグラフがある。国の税収と歳出の推移を示したもので、両者の距離が広がる様子が、大きく開くワニの口のように見える、というわけだ。財政再建を使命とする財務省の幹部らはこのグラフを手に夏以降、政府、与党幹部を回って来年10月の消費税再増税の必要性を訴えてきた。一方で4月の消費税増税で景気は失速し、夏場の天候不順や円安による物価高で消費は低空飛行のまま。「再増税して景気がさらに悪化すれば元も子もない」。安倍晋三首相周辺からは公然と再増税延期論も出てきた。首相が再増税の是非を有識者に聞く「景気点検会合」が始まった翌日の11月5日。危機感を強めた財務省は麻生太郎財務相を先頭に事務次官、主計局長、主税局長らが顔をそろえて首相に直接再増税を迫った。だが時既に遅し。延期への流れは固まっていた。
    □    □
 消費税増税の目的は財政健全化と、増え続ける社会保障費の確保だった。少子高齢化により社会保障費が毎年約1兆円伸びているのに対し、増税延期で2015年度は約1兆5千億円の減収が見込まれる。再増税を果たせなかった財務省は早速“意趣返し”に出た。麻生財務相は25日、消費税10%への引き上げ時に予定していた低年金者への月5千円の上乗せ給付について、実施を先送りする意向を示した。「法律で10%に上げた時と書いてあるので、その時にやらせていただく」とにべもない。塩崎恭久厚生労働相も「当然優先順位はつけなきゃいけない」と表明。首相の指示を受け15年4月からの子ども・子育て支援新制度を予定通り行うことを最優先にする構えだが、実施延期や規模縮小になる事業が出るのは必至だ。
    □    □
 財政健全化について「国内総生産(GDP)に対する基礎的財政収支(プライマリーバランス、PB)の赤字の割合を15年度に半減、20年度に黒字化する」とする政府目標に影響が及ぶのも避けられない。首相は再増税延期の一方で「財政健全化目標も堅持する」と明言したが、内閣府の最新の試算では20年度のPBは11兆円の赤字だ。これは15年10月に消費税を上げ、税収も約69兆円と、過去最高だった約60兆円(1990年度)を大きく上回ることが前提。再増税見送りで目標達成はさらに困難になった。大和総研の熊谷亮丸チーフエコノミストは「再増税先送りは将来に大きな禍根を残しかねない。財政規律の維持に失敗すると債券、株、円のトリプル安を招く恐れがある」と警告する。再増税を含め税収増を図るとともに、歳出削減に抜本的に切り込む−。「ワニの口」を閉じる手段は限られるが、その先行きは見通せない。

*1-2:http://qbiz.jp/article/48400/1/
(西日本新聞 2014年10月24日) 消費再増税、信頼維持に重要 閣議後に財務相
 麻生太郎財務相は24日の閣議後記者会見で、来年10月に予定される消費税率10%への引き上げに関し「国際社会における日本の信用だ。確実に実行することが日本への信頼を保証する意味でも非常に大きい」との認識を示した。同時に、再増税に備えた経済対策について「12月の予算編成時期までにきちんと対応しないといけない」との考えをあらためて強調した。自民党の山本幸三元経済産業副大臣ら再増税に慎重な議員が、先送りを主張していることに関しては「自由な意見を言えて、最終的に決められた通りにやっていくのが自民党の良き伝統だ」と語った。

*1-3:http://qbiz.jp/article/51011/1/
(西日本新聞 2014年12月2日) 1人当たり給与総額、0・5%増 10月、実質賃金は減少続く
 厚生労働省が2日発表した10月の毎月勤労統計調査(速報、従業員5人以上の事業所)によると、1人当たりの全ての給与を合わせた現金給与総額は前年同月比0・5%増の26万7935円と、8カ月連続で増加した。春闘の賃上げや堅調な雇用情勢を反映した。ただ、物価の影響を加味した実質賃金は2・8%減と16カ月連続で減少。消費税増税や円安の影響で、依然として物価上昇に賃金の伸びが追い付いていない。基本給などの所定内給与は0・4%増の24万2370円。フルタイムで働く一般労働者が0・5%増、パートタイム労働者は0・3%減だった。残業代などの所定外給与は0・4%増の1万9673円。残業時間が伸び悩んだことから、プラス幅は前月の1・9%増から縮小した。ボーナスなどの特別給与は6・0%増の5892円だった。

*1-4:http://qbiz.jp/article/50923/1/
(西日本新聞 2014年12月1日) 設備投資伸び率拡大、5・5%増 7〜9月GDP上方修正か
 財務省が1日発表した7〜9月期の法人企業統計は、金融・保険業を除く全産業の設備投資が前年同期比5・5%増の9兆4383億円と6四半期連続で増えた。伸び率は4〜6月期の3・0%増から拡大した。個人消費の低迷が続いているものの、企業の投資意欲は底堅いことを示した。4〜6月期と比べた季節調整済みの設備投資(ソフトウエアを除く)も3・1%増だった。内閣府が8日に発表する7〜9月期の実質国内総生産(GDP)改定値は今回の結果が反映され、速報値の前期比年率1・6%減から上方修正されるとの見方が出ている。前年同期と比べた設備投資の内訳は、製造業が10・8%の大幅増で2四半期ぶりのプラス。非製造業も2・7%増と6四半期連続で増えた。全産業では売上高、経常利益とも伸ばし、財務省は「緩やかな回復基調が続いている経済全体の傾向を反映している」と分析した。設備投資は、スマートフォン向け電子部品や自動車関連の生産能力の増強が全体を押し上げた。非製造業では、商業施設やオフィスビルの開発投資がけん引した。売上高は全産業で2・9%増と5四半期連続で増えた。消費税増税に伴う駆け込み需要の反動減から持ち直し、伸び率は4〜6月期の1・1%増を上回った。製造業が0・9%増、非製造業は3・8%増といずれも増えた。天候不順の影響で飲料など食料品が減収となった一方、自動車や建築向け鋼材需要は好調だった。経常利益も7・6%増で、製造業が19・2%増と特に大きく伸ばした。

*1-5:http://www3.nhk.or.jp/news/html/20141130/k10013606251000.html
(NHK 2014年11月30日) 公明 山口代表 家計支援の緊急経済対策を
 公明党の山口代表は東京・北区で街頭演説し、衆議院選挙では安倍政権の経済政策・アベノミクスの推進に加え、家計などを支援するための緊急経済対策の速やかな実施を訴えていく考えを示しました。この中で公明党の山口代表は安倍政権の経済政策・アベノミクスについて、「働く人の数は増え賃金は上がってきているが、実感できていないのも実情だ。消費税率を10%に引き上げるまでの間に賃金アップを行い、物価に追いつき追い越せるようにしていくのが我々の責任だ」と述べ、アベノミクスを推進していく考えを示しました。そのうえで山口氏は、GDP=国内総生産の伸び率が2期連続でマイナスになったことについて、「今の経済状況を考えると、ことし4月に消費税率が上がり、物価高の直撃を受けている人たちも多い。家計や中小企業を助け、大都市から地方に経済の流れを及ぼしていく対策もあわせて実行しなければならない」と述べ、衆議院選挙では家計などを支援するための緊急経済対策の速やかな実施を訴えていく考えを示しました。

*1-6:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20141203&ng=DGKKASDE01H1P_R01C14A2MM8000 (日経新聞 2014.12.3)「不利益の分配」も問う時だ 論説委員長 芹川洋一
 これまでの2年間を問い、これからの4年間を託すこんどの選挙。いちばんの争点はアベノミクスだという。有権者のふところを温かくするための経済の手法をめぐる政治のぶつかり合いである。もちろん大切なことだが、それだけでなく政治は口に苦い話にも向き合う必要があるのではないだろうか。小選挙区選挙は、政権・首相・政策の3つを選択するものだが、残念ながらこんどは政権も首相も選べる状況にない。野党のふがいなさを嘆いてもしかたがない。安倍晋三首相みずからが設定したように、アベノミクスを中心とした政策の選択にならざるを得ない。政治が個々人の豊かさを実現するための進め方をめぐって論じ合うことは、けっこうなことだ。世の中はこうあるべきだといった物の考え方で対立し接点が見いだせないのより、ずっとましだ。経済を真っ正面にかかげ政権の命運をかけるのは池田勇人内閣以来である。高度成長の当時、日々ふところが豊かになっていく実感があった。所得倍増はなんなく達成した。遠い昔の話である。デフレ脱却をめざすアベノミクスのひとつの特徴は、期待という人の心理に働きかける経済政策である。今すぐではなく、時間軸をつかいながら、ちょっと先の豊かさに期待を持たせる時間差攻撃がミソだ。「期待の政治」である。ひと昔前の自民党は右肩上がりの経済を前提に、利益の分配がお家芸だった。公共事業を中心に全国津々浦々までみんな等しく豊かになる「利益の政治」だった。しかしもはやその手法は使えない。すぐさま利益を与えるのも無理だ。期待の政治はそうした中から出てきた変化球である。それが決して悪いわけではない。「豊かで自由で安全な社会」をめざしてきたのが戦後日本である。社会の安定が個人のふところによるのは間違いない。期待の政治がもたらしたのは資産を持つ人だけのふところの温かさなのか、資産がなくともこの先まだ可能性はあるのか、これまでのやり方ではうまくいかないのか……アベノミクスをめぐる議論は大いにたたかわせる必要がある。ただ心配なのは、自分たちのふところの豊かさを追い求めるのはいいが、子や孫のふところまでちゃんと考えているかどうかという点だ。消費再増税の延期について、中止を主張する政党は別にして、選挙の争点にはなっていない。デフレを脱却しまず経済を立て直さないことには前に進めないというのはその通りだ。経済を大きくするのが何より大事だ。成長戦略が促されるゆえんだ。しかしどう考えても、膨大な借金を抱えたままで、この国が先々までやっていけるわけがない。少子高齢化はいやおうなく進む。地方はどんどん疲弊していく。入るを量りて出ずるを制すしかない。とりわけ毎年増えていく社会保障費の抑制はやむを得ない。いちばん恩恵をこうむっているのが高齢者で、投票する頭数の多さからその世代の利益が優先されるシルバー・デモクラシーに日本政治は流されていないかどうか。若い人が割を食う世の中はやはり問題だ。所得や地域だけでなく世代の格差もならすことを考えなければなるまい。これから、より迫られるのは「不利益の政治」のはずだ。それを知らん顔して論戦を交わしていていいものかどうか。過去の業績と将来への期待をはかりにかけながらの選択になるとしても、不利益も視野に入れたものでありたい。そうしなければこんどの選挙は次につながらない。

<年金減額や高齢者切り捨てでは、経済にも良い結果が出ないこと>
*2-1:http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2014113002000124.html
(東京新聞 2014年11月30日) <安倍政治2年 くらしこう変わった> (3)国民年金
 年金の給付水準は、本来より高い「特例水準」が二〇〇〇年度から続き、直近で2・5%高くなっていた。これの解消に向けて、昨年十月、今年四月、来年四月と三回にわたって段階的な引き下げが行われている。物価の上昇分は勘案されているが、それでも二回目の減額が終わった現段階で、削減前に比べて国民年金(基礎年金)は月額千百四十一円減少。厚生年金(標準世帯)は同四千十五円のカットになった。もう一回減額がある。これ以外にも、給付抑制が進む予定だ。年金給付は物価に連動して上下するが、物価上昇時に給付の伸びを低く抑える「自動抑制」が、早ければ来年度にも動きだす。物価下落時には、それ以上に給付を減らす仕組みも検討されている。特例水準の解消は、切迫する年金財政を支えるため、野田政権時代の一二年六月に自民、公明、民主三党でまとめた「社会保障と税の一体改革」で決まったこと。自動抑制も〇四年の年金制度改革に基づく措置で、いずれも安倍政権が決めたわけではない。そもそも特例水準は時の政権が受給者の反発を恐れて据え置いてきたもので、その財源は現役世代が負担し続けてきた。ただ、アベノミクスに伴う円安で物価上昇が続く中だけに、給付抑制策が既定方針通り進んだことは、年金生活者にとって大きな負担感をもたらす結果になった。低所得者に対しては上乗せ給付制度の新設が予定されているが、消費税率10%への再増税が財源とされている。再増税が先送りされ、現段階で実現の見通しは立っていない。一方、年金をめぐっては、公的年金積立金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が今年十月、株式の運用比率を大幅に引き上げる方針を決めた。「成長への投資に貢献する」という安倍晋三首相の意向に沿い、約百三十兆円ある積立金を経済成長に活用する動きだが、将来の年金支給に充てる積立金が、株価下落のリスクにさらされる懸念もある。さらに、第一次安倍政権時の“宿題”もある。年金記録問題だ。〇七年の参院選で首相は「最後の一人まで年金を支払う」と約束した。しかし、「宙に浮いた年金記録」のうち、四割にあたる約二千百十二万件は持ち主が不明のまま。厚生労働省と日本年金機構は事実上、照合作業を打ち切っている。 

*2-2:http://digital.asahi.com/articles/DA3S11480752.html
(朝日新聞 2014年11月29日) 年金、初の実質減額へ 来年度1.1%程度 物価上昇で発動
 公的年金の支給額の伸びを物価上昇よりも低く抑える仕組み(マクロ経済スライド)が、来年度に初めて実施されることが確実な情勢となった。2014年の通年での物価上昇が決定的となったためだ。これにより年金の支給水準は来年度、物価に比べて実質的に目減りすることになる。マクロ経済スライドは、少子高齢化で厳しくなる年金財政を維持するため04年に導入された。来年度の抑制額は1・1%ほどが見込まれている。国民年金を満額(月6万4400円)もらっている人で言うと、物価上昇に対応した本来の増額分から、月に700円ほど目減りする。年金額は本来、前年の物価や賃金の上昇に合わせ、翌年度から増額される。マクロ経済スライドは、例えば物価が2%上昇しても年金は2%までは上げず、支給額を実質的に減額していく。条件がそろえば自動的に発動されると法律で決まっている。抑制幅は、保険料を払う働く世代の減少度合いなどに応じて決まる。ただし物価下落時は発動されないルールがある。制度導入後デフレが続いたことなどから、まだ一度も発動されていない。しかし今年は経済状況が変わった。総務省が28日に公表した10月の消費者物価指数が前年同月比で2・9%上昇。1~10月の消費者物価指数は前年比約2・6%上がった。また、かつて物価下落時に年金額を据え置いたことで高止まりとなっている支給水準(特例水準)を解消するため、来年4月に0・5%分の引き下げが決まっている。このため来年度は、マクロ経済スライドによる抑制の約1・1%と特例水準解消分をあわせ、本来の物価上昇による増額分より、支給額は計約1・6%抑制される見通し。国民年金の満額受給者で言うと、合計の抑制額は月1千円ほどとなる。ただ物価の伸びが大きいため、名目の年金額自体は増える見込みだ。来年度の正式な年金額は、来年1月末に分かる14年の年間物価上昇率を反映させ、厚生労働省が公表する。

*2-3:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20141129&ng=DGKKZO80291350Z21C14A1MM8000 (日経新聞 2014.11.29) 
社会保障改革 目先の痛み、迫れず 歳出削減に切り込みを
 「短期的には柔軟な対応をする。中長期にはしっかりとした財政再建の目標は崩さない」。甘利明経済財政・再生相はアベノミクス第2の矢である「機動的な財政政策」の意味をこう語っていた。2012年12月の政権発足直後、安倍晋三首相は12年度補正予算で10兆円超、13年度補正で5兆円超の対策をそれぞれ打った。「コンクリートから人へ」を掲げた民主党政権から一転、公共事業の積み増しに転じた。景気の下支え効果はあった。14年7~9月期までに増えた実質国内総生産(GDP)のうち、公共投資による押し上げ分は5割弱を占める。一方、建設労働者が不足するなかで、公共事業を増やした結果、民間工事の一部に人手が回らなくなる副作用を生んだ。家計向け支援が不十分だったことも、4月の増税後の消費回復が鈍い一因となった。政権発足からの2年足らずで、国の借金は41兆円あまり増え、総額は1000兆円を超えた。公共事業、防衛、文教など主な歳出項目は軒並み増えた。最大の問題は、膨張する社会保障費の伸びを十分に抑えきれずにいることだ。医療では70~74歳の窓口負担を1割から2割にあげ、介護保険でも収入が多い高齢者の自己負担は2割にあげた。だが「竹やり戦術では不十分」と鈴木亘学習院大教授は指摘する。公的年金の支給開始年齢の引き上げ、診療報酬の大胆な引き下げ、抜本的な少子化対策など「本当に重要なことには手をつけていない」。自民党も民主党も、国と地方の基礎的財政収支を20年度に黒字にする財政健全化目標を掲げてはいる。だが、肝心の実現手段は公約から抜け落ちている。社会保障制度を持続可能にするための道筋も見えない。20年度時点で最大13兆円の赤字が残る――。日本総合研究所によれば、17年4月に消費税率を10%に引き上げたうえで、公的年金の支給開始年齢を70歳に遅らせ、後発医薬品の普及で医療費の伸びを名目成長率並みに抑えたとしても、財政健全化目標は達成できない。「歳出削減や消費税のさらなる増税で皆が痛みを分かちあう必要があるのに、政治が国民に伝えようとしていない」と同総研の岡田哲郎主席研究員は話す。高齢者向け給付が手厚く、現役世代の負担が重いという不均衡は、「シルバー民主主義」の産物だろう。有権者が高齢化するほど高齢者に給付減や負担増といった痛みを迫る政策を出すのを政治が尻込みする。そのツケを払うのは若者や将来世代だ。小黒一正法政大准教授は「問われるべきは、消費増税の是非ではなく、『いまの痛み』か『近い将来のより大きな痛み』かだ」という。欧州のスウェーデンでは今年「もう減税はしない」といって社会民主労働党が政権を奪還した。米国の中間選挙では歳出削減による「小さな政府」を訴える共和党が上下両院を制した。翻って日本。リベラルな勢力が社会保障充実のための増税を、保守勢力が歳出削減をそれぞれ十分に唱えずにいる。有権者にとって、各党が「何を語っていないか」を見抜く力もカギになる。

<衆院選について>
*3:http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2014120202000278.html
(東京新聞 2014年12月2日) 【政治】<衆院選>「一強」継続か転換か
 <解説> 国会は、憲法四一条で「国権の最高機関」と位置付けられている。その最高機関はこのところ「一強多弱」といわれる。自民党は二年前の衆院選で過半数を大きく超える二百九十四議席を獲得し、政権復帰。翌年七月の参院選でも勝ち「一強」を作り上げた。それ以降、安倍政権は国民の「知る権利」を侵す恐れのある特定秘密保護法を成立させ、他国への輸出を禁じた武器輸出三原則を事実上撤廃する大幅な見直し、原発を「ベースロード電源」と位置付ける新エネルギー基本計画を決定。他国を武力で守る道を開く集団的自衛権行使を容認する憲法解釈変更を閣議決定で行った。いずれも世論が割れる問題だが、十分な国会論議があったとは言えない中で次々に決めていった。経済では、安倍晋三首相自身が「アベノミクス」と呼ぶ政策を進めた。首相は衆院解散にあたりアベノミクスを「この道しかない。この道を前に進む」と断言した。民主党政権の時、政策決定のたびに与党内で混乱、分裂を繰り返し「決められない政治」と批判された。逆に今は矢継ぎ早に行われる重要な政策決定に対し、民意が十分反映されていないとの指摘がある。安倍政治の二年間が問われる今回の衆院選は一強が続くのか、一強が崩れて転換するのかの分岐点でもある。野党は「この道」とは違う「もう一つの道」を有権者に示すことができるのか。その意味で、今回の衆院選は野党も問われている。


PS(2014.12.4追加):私は、「“格差”とは、公正平等な競争条件の下でできた差」と理解しているが、*4では、低年金生活者や非正規雇用などを格差と呼んでいる。年金の水準を下げ、医療や介護の自己負担も重くするというのは、私は、格差と言うよりも憲法25条(すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない)違反に当たるケースが多い。また、常時の非正規雇用や派遣労働は、労働法の脱法行為であるため、実質的な労働法違反として扱うべきだろう。

*4:http://mainichi.jp/opinion/news/20141204k0000m070112000c.html
(毎日新聞社説 2014年12月4日) 衆院選 ここを問う 日本の貧困
◇格差放置は安定損なう
 安倍政権の経済政策で株価は上がり輸出企業が潤う一方で、貧困が高齢者ばかりか若年層にも深く広がっている。生活保護を削減し困窮者に自助努力を求める政策がもたらした負の側面だ。「アベノミクスの陰」は選挙戦の重要な争点である。現在の日本は先進国で貧富差が最も大きい国の一つだ。全国民の年収を順に並べた中央値の半分に満たない人の割合を示す「相対的貧困率」は16.1%(2013年国民生活基礎調査)で過去最悪を更新、生活保護受給者も200万人以上に及ぶ。ところが、2年前に安倍政権が始まった時、すぐに着手したのが生活保護の削減だった。自助や家族による助け合いを重視するのが自民党の伝統だが、安倍政権は給付水準の段階的引き下げに加え、親族の扶養義務の強化など要件も厳しくした。家族に頼ることができない独居の高齢者は10年時点で約500万人だったが、30年には約730万人になる。無年金・低年金だけが問題ではない。満額受給者の年金の水準も下がり、一方で医療や介護の自己負担は重くなる。低年金者への給付も、消費増税の延期とともにあっさりと先送りされた。貧困の高齢者は加速度的に増えるだろう。さらに最近は20〜30代の生活保護受給者が急増している。低賃金や劣悪な雇用条件で心身の健康を害する人も少なくない。「アベノミクスで雇用は伸び、賃金は増えた」と首相は力説するが、増えたのは非正規雇用ばかりで、正社員は減っている。中小企業や非正規雇用の賃金はあまり改善されていない。特に女性は深刻で、年収200万円以下の人が4割にも上る。パートや派遣の仕事を掛け持ちし、長時間働きながら低収入の人は多い。会社内で職業訓練を受ける機会がなく、キャリア形成ができないことも貧困の要因となっている。社会保障の制度自体にも貧困や格差を悪化させている面がある。非正規雇用の人が加入する国民健康保険(国保)や国民年金には保険料に事業主負担がなく、個人の負担は重い。国保の保険料には世帯の人数による応益負担部分があり、子どもの数が多い貧困家庭ほど負担が重い原因となっているのだ。貧困対策や格差の是正はただ困っている人を助けるだけではなく、社会を安定させ、国民相互の信頼を高めることにつながる。消費を喚起し経済全体の底上げにも寄与するはずだ。自助か現金給付によるバラマキかという単純な比較ではなく、各党の公約をじっくり見極めたい。


PS(2014.12.8 追加):自民党は「責任与党だから」というのを消費税増税強行の理由にしているが、実際には消費税増税を行っても税収は増えず、景気対策と称する歳出が増えて、上のグラフのワニの口は開くばかりだった。つまり、「責任与党だから消費税を増税する」というフレーズは、「責任与党は、行政官僚が作った消費税増税政策を進める」という意味で、これは国民主権の下での議会政治を自ら否定して官主主義を推進しており、*5で野党が言っているとおり、国民に対しては無責任である。

*5:http://qbiz.jp/article/51357/1/
(西日本新聞 2014年12月8日) 「強い決意」「無責任」 与野党 景気条項廃止で応酬
 与野党の幹事長らは7日のNHK番組で、消費税再増税の2017年4月への延期に伴い、景気の動向次第で増税を停止できる「景気条項」を増税法から削除するとした安倍晋三首相の方針をめぐり議論した。与党は増税への強い決意だと評価する一方、野党は無責任だと批判した。自民党の谷垣禎一幹事長は「必ず(増税を)するという強い意志の表れだ」と強調。「財政再建と景気回復の二兎(にと)を追う」と述べた。民主党の枝野幸男幹事長は「経済は生き物だと首相は言ってきた。3年先、経済がどうなっているか。決め打ちするのは無責任だ」と反発した。維新の党の江田憲司共同代表は「景気が悪ければ(延期を決めた)今回と同じ判断をすべきだ」と柔軟な対応を訴えた。公明党の井上義久幹事長は「財政健全化の目標がある」とした上で、再増税凍結を打ち出した民主党に関し「はるかに無責任だ」と反論した。共産党の山下芳生書記局長は「国民の暮らしがどうあれ、17年に10%に上げるというなら大変な『増税宣言』だ。暮らしが壊れ、経済が壊れる」と非難した。これに先立ちフジテレビ番組で谷垣氏は、再増税延期で財源不足が懸念される子育て支援を充実させる方向性は変わらないとの考えを強調した。


PS(2014.12.8 追加):*6のように、野党が苦戦する理由は、1)景気対策と称する歳出は、与党議員が当選しやすいように行われてきたこと 2)前回の民主党政権のように、まともな政策でも行政官僚の意図と異なるものは否定され、メディアも行政官僚のメガホンとして動いていること 3)このように何かと与党である自民党の方が有利であるため、候補者や地元も与党志向であり、“人物”で選んでも与党が勝つ候補者構成になる場合が多いこと 4)行政官僚が作った政策を進めるだけが仕事であれば、議員時代は小選挙区の地元の祭りに顔を出したり、地元に利益誘導したりして、選挙区で“いい人”“役に立つ人”という評判をとり、名前を売っておくのが最も重要な仕事となり、これは現職や世襲に有利であること などである。つまり、選挙は公示後に始まるのではないため、有権者も日頃から、何が自分を幸福にするのか、そして国の発展に繋がるのかを、主権者として関心を持って考えておくべきである。

*6:http://qbiz.jp/article/51356/1/
(西日本新聞 2014年12月8日) 衆院選 野党なぜ苦戦 経済対案具体性欠く 選挙協力ぎくしゃく
 衆院選の序盤情勢調査で、自民党が300議席超獲得の勢いを見せる「自民1強」の現状が浮き彫りになった。野党不振の背景について有識者や関係者は、公約の実現性や、政権批判票を取り込む「受け皿」としての位置付けが不明確だと指摘する。14日の投開票へ巻き返しを図る野党側の課題となりそうだ。論戦の焦点となっている経済政策について、民主党は安倍政権の経済政策「アベノミクス」が生んだ格差是正へ「厚く、豊かな中間層」の復活を公約に掲げた。子育て世帯への支援や最低賃金の引き上げなど家計支援を盛り込み、大企業や富裕層を優遇して経済再生を目指すアベノミクスとの違いを際立たせる戦略だ。しかし実現への道筋や財源を明示していない政策も多い。他の野党の公約にも同様の課題がある。実施段階に入った政策が含まれる自民党公約と比べ、野党の政策は「具体性に欠け、実現可能性を判断しにくい」と、市場関係者は説明する。慶応大大学院の小幡績准教授は、アベノミクスは成長戦略の成果が出ていないとする一方で、民主党公約に関し「中間層全員にお金をばらまくのか」と疑問を示す。国民の将来不安をなくすため、社会保障改革などを訴えるべきだと提案した。
   □    □    
 民主党や維新の党など共産党を除く野党各党は、政権への批判票を分散させまいと候補者を調整し、295選挙区のうち194選挙区は一本化に成功した。だが内実は、政策の不一致を度外視し、共倒れを回避したにすぎない。相互の推薦はほとんどなく、選挙後のビジョンも異なる。維新の党の橋下徹共同代表は街頭演説で「反対ばかりだから民主党は駄目だ」と批判。民主党幹部は「矛先が違う」と不快感を隠さない。民主党最大の支援組織の連合と、官公労を敵視する橋下氏は水と油の関係だ。連合幹部は「維新候補を支援しろとは、とても言えない」と話す。一方の維新の党関係者も「うちにあるのは『ふわっとした民意』だけ。組織票と違って他党に差し上げられない」と語る。民主党幹部は「空白区が100以上もあれば、政権奪取への覚悟が疑われても仕方ない」と嘆く。自民党幹部は「単なる数合わせなら怖くない」と断言した。
   □    □    
 衆院選公示直後、東京都心に雨が降った夕方。ビルや飲食店が立ち並ぶ一角で声をからす野党候補の訴えに足を止める人はまばらだった。多くの人は候補者をちらりと見ただけで家路を急いだ。作家で映画監督の森達也さんは「野党が具体的戦略を打ち出せないだけでなく『野党では駄目』というイメージが有権者に刷り込まれている」と分析。民主党政権が公約実現に「失敗した」と繰り返し報じたメディアの影響も大きいとみる。森さんは「ここ十数年、多数派につこう、勝ち馬に乗ろうという流れが強まっている」と「日本人の集団化」も指摘する。精神科医の香山リカさんには、有権者の熱狂的な与党支持も、野党への反発も感じ取れていない。「『景気はそんなに悪くない。このままでいい』との曖昧な支持が多い気がする。目の前の生活に追われ、政治家任せになっているのだろう」と話している。

| 経済・雇用::2014.6~2015.10 | 05:58 PM | comments (x) | trackback (x) |
2014.12.1 今回の選挙では、原発再稼働の是非も重要な争点だということ ← 原発事故の人体への影響から (2014年12月2日、12日、13日、2015年1月3日に追加あり)
     
 2014.11.28NHK  2014.11.24西日本新聞      東京新聞

(1)原発輸出や原発再稼働などの原発回帰は正しい方向ではない
 *1-1にも記載されているように、安倍政権下の2年で「原発回帰」の流れが加速し、民主党政権時に国民的議論から導かれた「2030年代の原発ゼロ」の方向は無視されたが、政権が変わったからといって、その時にパブリックコメントで表明された原発に関する国民の意志が変わったわけではない。

 それにもかかわらず、2014年4月に「原発は重要なベースロード電源」と位置づける新エネルギー基本計画を閣議決定したのは、重要な論点として今回の総選挙で主権者である国民の目に晒されるべきだ。何故なら、税金からカネを出して原発事故の責任を負うのも、平時の原発運転や過酷事故の放射能汚染で健康を害して被害を受けるのも国民自身にほかならないからである。

 一方、公害を出さない再生可能エネルギーに対しては、太陽光発電による電力の買取を大手電力会社が受け入れ中断し、その上で、経産省と大手電力会社が、電力不足を挙げて原発再稼働の必要性を説いている。電源構成は、①公害を出して国民を害することがない ②国民にとって安価である ③日本で自給できる などの視点から、より優れた電源が勝ち残るべきなのであり、電源構成をあらかじめ人為的に定めれば、最も優れた電源が勝ち残る機会は奪われる。

 この際、メディアは、国民の判断を誤らせないため、「原発のコストは安い」「放射能は安全だ」などという虚偽の情報を流してはならない。何故なら、国民が判断を誤れば、その結果は国民負担として国民に返ってくるからである。

 なお、*1-2で、川内原発をエリアとする西日本新聞が、「原発回帰、高まる不信 問われるエネルギー政策」「原発は安全と何万回も聞いたが、安全に絶対はない」という記事を書いている。一方、自民党が前回の衆院選で「太陽光などの再生可能エネルギーを最大限導入する」と公約としたにもかかわらず、九電はじめ大手電力会社5社は、2014年9月、再生エネの接続申し込みが許容量を超えたとして契約手続きを中断した。

 しかし、私が、このブログに根拠を挙げて何度も記載したように、*1-2の「原発停止や円安で電気料金の高止まりが続く」「再生エネの導入を増やせばその分も料金に上積みされる」という解説については、総括原価方式を採用してきた地域独占企業である電力会社には、コスト削減の動機付けも努力もなく、再生エネと火力燃料の値上がり分だけを料金にサーチャージする仕組みもおかしいので、これは正確な原価計算によるコスト比較にはなっていない。

(2)原発事故の人体への影響
 *2-1には、津田岡山大大学院教授(環境医学)が「日本公衆衛生学会」で講演し、国の有識者会議などが支持している「(累積で)100ミリシーベルト以下の被ばくでは、がんの増加が確認されていない」という見解を否定し、「世界保健機関(WHO)が2013年の報告書で、福島県で甲状腺がんや白血病が増える可能性があると予想している」と報告したことが述べられている。「こうした事実が知られていないため、放射線から身を守るための建設的な議論がストップしている」「放射能は県境で遮断されるわけではない」というのも、私は全く同感だ。

 また、*2-2には、18歳以下の子ども1818人の甲状腺検査の結果、「①正常と診断された子どもが672人」「②小さなしこりやのう胞と呼ばれる液体がたまった部分があるものの経過観察とされた子どもが1139人」「③一定以上の大きさのしこりなどがあり、さらに詳しい検査が必要とされた子どもが7人」だったが、この結果について、検査に当たった島根大学医学部の野宗義博教授は、「チェルノブイリ事故の例から見て原発事故から3年余りで甲状腺がんが発生するとは考えにくく、詳しい検査が必要とされた子どもについても被曝による影響とは判定できない」としていると記載されている。

 しかし、*2-2の検査と結論は、1)18歳以下の人しか甲状腺癌が起こらないとしている点 2)どのような被曝線量を浴びても(また浴び続けても)、3年以上経なければ甲状腺癌は発症しないとしている点 3)甲状腺癌だけしか調べていない点 で科学的ではない。

 そのような中、*2-3のように、雑誌『宝島』の2014年10月号に福島県内で急増する「急性心筋梗塞」のレポートが掲載され、各方面から大きな反響があったそうだ。そして、『宝島』11月号では、全ガン(悪性新生物)の死亡者数が増加傾向にある背景について検証している。

 それによると、小児甲状腺ガンは既に多発しており、地域別の発症率は、福島市の「中通り」が一番高くて10万人当たり36.4人、いわき市などの「浜通り」が同35.3人、原発直近の「避難区域等」が同33.5人、原発から80キロメートル以上離れた「会津地方」は同27.7人で最も低く、放射能汚染の度合いが高い「中通り」と、相対的に低い「会津地方」では、同8.7人もの地域差があったのである。

 これに対し、福島県立医科大学はこの地域差を、「被曝の影響とは考えにくい」「福島県で原発事故による健康被害は発生していない」としているが、福島原発事故時、既に誕生していた子どもたちには小児甲状腺ガンが多発しているのに対し、事故の1年後以降に誕生した子どもたち9472人の間では小児甲状腺ガンの発症がゼロだったため、福島県立医科大学の反論は当たらない。

 また、福島県で増えているガンは「甲状腺ガン」だけではなく、ガンごとの潜伏期間は、「【白血病、悪性リンパ腫】0.4年(146日)、【小児ガン(小児甲状腺ガンを含む)】1年、【大人の甲状腺ガン】2.5年、【肺ガンを含むすべての固形ガン】4年」などとなっており、福島県立医大の唱える「発ガンは原発事故発生から4年目以降」という説は、『Minimum Latency Types or Categories of Cancer』から全く相手にされていないそうで、私も、こちらの方が科学的に矛盾がなく、常識的だと考える。

(3)原発に対する国民の意見は?
 原発公害の深刻さがわかった後、*3-1のように、国民に意見を募った「パブリックコメント」で脱原発を求める意見が9割を超えていたにもかかわらず、経産省は基本計画で原発を「重要なベースロード電源」と位置づけた。また、2012年に民主党政権が行った「2030年の原発比率に関するパブリックコメント」でも、約9割が「原発ゼロ」を支持しており、これは、政権とは関係なく国民の意志なのである。

 それにもかかわらず、このように民意を無視した政治がおこなわれる理由は、「官僚を使う(麻生財務大臣)」としながらも、実際には官僚のシナリオ通りに使われざるを得ない状況になっている政治家と選挙で応援してくれた産業に有利に予算を配分する政治のためである。これは、(長くは書かないが)根深い問題であり、政治家が身を切る改革をすれば解決するというような簡単なものではない。

 しかし、NHKは、*3-2のように、「原発の再稼働には若い世代に賛成が多い傾向がある」とし、「地元・薩摩川内市では、20代から30代で『賛成』『どちらかといえば賛成』が75%に上り、若い世代で再稼働に賛成の割合が多くなる傾向はほかの地域でも見られた」としている。

 が、これには、1)20代から30代の世代は、小学校で「原発は安全」という誤った知識を副読本で教えられていること 2)彼らが物心ついて以来、メディアからも「原発は夢のエネルギー」「原発は安全」というメッセージを多く受け取ってきたこと 3)ゆとり教育や理科系科目への敬遠の中で、物理学や生物学の知識の乏しい人が多くなっていること 4)それにより、正しい知識や情報に基づく論理的思考ができない状態になっていること などが、理由として挙げられる。

*1-1:http://www.kochinews.co.jp/?&nwSrl=329840&nwIW=1&nwVt=k
(高知新聞 2014年11月30日) 【エネルギー政策 14衆院選】国の責任をはっきり語れ
 安倍政権下の2年で、「原発回帰」の流れが加速している。民主党政権時に国民的議論から導かれた「2030年代の原発ゼロ」から方向転換し、ことし4月には原発を「重要なベースロード電源」と位置付ける新たなエネルギー基本計画を閣議決定した。原発再稼働は、安倍首相が衆院選で国民に信を問うアベノミクスの一角を占める政策である。果たして、福島第1原発事故を経た日本に原発は必要なのか。年明けにも九州電力・川内(せんだい)原発の運転再開が視野に入る今、あらためて議論を深める機会としなければならない。「責任あるエネルギー政策」をうたった安倍政権は、原子力規制委員会が新規制基準への適合を認めた原発は再稼働させる方針をエネ計画に盛り込んだ。「国も前面に立ち」地元の理解を得るとも明記し、この衆院選でも公約とした。だが、川内原発の再稼働手続きで、「責任」の曖昧さが浮き彫りになったといえる。安全対策でげたを預けられた形の規制委は、基準の適合性を審査するだけで、必ずしも安全を担保するものではないとの立場を崩さない。地元の鹿児島県などは「国の責任」を挙げ、安全対策では「規制委を信じる」と同意を決めた。安全に対する最終的な責任を押し付け合うようにもみえる構図から、重要な課題もこぼれ落ちた。事故時の避難計画は規制委の審査対象に含まれず、実質的には地元任せだった。実効性を疑問視する声も根強い。広域に被害が及んだ福島の教訓が生かされたとはいいがたく、「安全神話」の復活さえ印象付ける。今後の手続きで「川内方式」がひな型となり、多くの問題を抱えたまま全国の原発が次々と再稼働する恐れがある。国の責任がみえないのは原発に限った話ではない。エネ計画でも示されなかった電源構成からしてそうだ。
●根本的な疑問
 安倍政権は原発再稼働が見通せないと構成決定を先送りしてきたが、長期的な原発維持を明確にすれば、世論の反発を招くとの思惑はなかったか。しわ寄せは大きくなりつつある。再生可能エネルギーでは、太陽光発電の急増で、四国電力など大手電力に受け入れ中断の動きが広がる。普及の切り札、固定価格買い取り制度の見直しは不可避ながら、将来の導入量が未定のために、国民負担の推計が難航して作業が遅れている。地球温暖化対策の国際枠組みの交渉にも影響が懸念される。主要国が次々と温室効果ガスの削減目標を公表する中、日本は目標設定が遅れ、本気度を疑われかねない状況にある。これも排出量全体の約4割を占める電力部門で電源構成が固まらないからだ。政府はようやく、来年夏までに電源構成を決めると明らかにした。ただし、その前に国民に説明すべきことがあるはずだ。そもそも今夏、原発ゼロで需要のピークを乗り切ったのに、原発は本当に要るのか。使用済み核燃料の処理はどうするのか。国民の根本的な疑問は解消されたとはいえまい。与党は再稼働を進めるなら、選挙戦で明確に答える責務があろう。将来的な原発ゼロを掲げた民主党などの野党も、国民的な議論につながる論戦を展開する必要がある。

*1-2:http://qbiz.jp/article/50660/1/ (西日本新聞 2014年11月27日) 原発回帰、高まる不信 問われるエネルギー政策
 「原発は安全と何万回も聞いたが、安全に絶対はない」。九州電力川内原発1、2号機(鹿児島県薩摩川内市)の再稼働が目前に控える中の衆院解散。福島第1原発がある福島県双葉町から鹿児島市に避難した遠藤昭栄さん(71)は、政府が原発の安全性を強調するたびに、憤りを隠せない。双葉町の自宅は原発から約2キロ。事故後は公民館など県内外の施設を転々とした。故郷に戻るめどが立たず、2012年春、妻と愛犬を連れ、長男が住む鹿児島市に身を寄せた。年明けに再稼働する川内原発のほか原子力規制委員会では12原発(18基)が審査中。来年は審査が先行する関西電力高浜原発3、4号機(福井県)や九電玄海原発3、4号機(佐賀県玄海町)なども再稼働が見込まれる。「福島の事故も収束していない。政治は福島を忘れたのか」。故郷を遠く離れた鹿児島で再び原発と向き合う遠藤さんの政治への不信は高まる。
    □    □
 「3・11」から4年足らず。福島の事故が国民に突きつけた原発の課題は、何一つ解決していない。例えば、原発が出す高レベル放射性廃棄物「核のごみ」。政府の原子力委員会が、地下深くに埋設する方法を決めたのが1984年。実験は進んだが、30年たった今も処分場の選定方法さえ決まっていない。問題があらためて注目されるきっかけになったのは、昨秋以降の小泉純一郎元首相による相次ぐ「脱原発」を求める発言だ。小泉氏は昨年11月、日本記者クラブで「首相が決断すれば(脱原発は)できる。再稼働すればまた核のごみが増える」と政府に迫った。小泉氏の強いメッセージ力に危機感を抱いた政府は昨年12月、最終処分場の選定について「国が前面に立つ」と宣言。建設スケジュールなどを盛り込んだ基本方針を今春までに見直す方針を打ち出した。だが、2月の東京都知事選で、小泉氏と共闘する形で立候補した細川護熙元首相が落選すると作業はストップ。基本方針の見直しは宙に浮いている。
    □    □
 自民党が衆院選の公約で「最大限導入する」と明記した太陽光などの再生可能エネルギーの行方も不透明だ。九電をはじめとする大手電力会社5社が9月、再生エネの接続申し込みが許容量を超えたとして、契約手続きを中断した。「衆院選をする暇があれば、一刻も早く解決策を示してほしい」。太陽光発電事業に挑戦するつもりで金融機関から5千万円を借り、既に土地も購入した鹿児島県内の自営業男性(31)は、突然の手続き中断に憤まんやる方ない様子だ。原発停止や円安で電気料金の高止まりは続く。再生エネの導入を増やせば、その分も料金に上積みされる。複雑に絡み合ったエネルギー政策の方向性を示す覚悟が政府に問われている。

<原発事故の人体への影響>
*2-1:http://www.tokyo-np.co.jp/article/tochigi/20141108/CK2014110802000179.html (東京新聞 2014年11月8日) 原発事故の健康影響「検査態勢の充実必要」 国見解否定の津田教授講演
 東京電力福島第一原発事故後の健康影響を考える集会が六日夜、宇都宮市の県総合文化センターで開かれ、「ただちに健康影響はない」とする政府見解に異を唱えてきた津田敏秀・岡山大大学院教授(環境医学)が講演した。県内外の医療関係者や放射線に関心がある市民ら約六十人が耳を傾けた。講演は、全国の医師や研究者が集まる「日本公衆衛生学会」(五~七日)の自由集会内で行われた。津田教授は、疫学の専門家である立場から、チェルノブイリの原発事故後のデータなどを基に、国の有識者会議などが支持している「(累積で)一〇〇ミリシーベルト以下の被ばくでは、がんの増加が確認されていない」という見解を否定した。世界保健機関(WHO)が二〇一三年の報告書で、福島県で甲状腺がんや白血病が増える可能性があると予想していることも報告。「こうした事実が知られていないため、放射線から身を守るための建設的な議論がストップしている」と警鐘を鳴らした。福島県に隣接する栃木県についても「放射能は県境で遮断されたわけではない」と、検査態勢を充実する必要性を主張。健診だけでは受診率が下がるため、全市民に手帳を配布するなどして、経過を記録しやすくする方法を提案した。

*2-2:http://www3.nhk.or.jp/news/html/20141109/k10013058381000.html
(NHK 2014年11月9日) 子どもの甲状腺 今後も検査を
東京電力福島第一原子力発電所の事故を受けて茨城や千葉の保護者などで作る市民団体が1800人余りの子どもたちの甲状腺を検査したところ、このうち7人が「一定以上の大きさのしこりなどがあり、さらに詳しい検査が必要」とされましたが、担当の医師は原発事故の影響とは判定できないとしています。団体では今後も検査を続けることにしています。茨城や千葉の保護者などで作る市民団体「関東子ども健康調査支援基金」は、原発事故で放出された放射性物質が子どもたちの健康に影響していないか調べようと去年10月から希望者を対象に医師の協力を受けて甲状腺の検査を行ってきました。検査は茨城、千葉、埼玉、神奈川、栃木の5つの県で行われ、ことし9月までに検査を受けた18歳以下の子どもたち1818人の結果がまとまりました。それによりますと「正常」と診断された子どもが672人、「小さなしこりやのう胞と呼ばれる液体がたまった部分があるものの、特に心配はなく経過を観察」とされた子どもが1139人、「一定以上の大きさのしこりなどがあり、さらに詳しい検査が必要」とされた子どもが7人でした。今回の結果について検査に当たった島根大学医学部の野宗義博教授は「チェルノブイリ事故の例から見て原発事故から3年余りで甲状腺がんが発生するとは考えにくく、詳しい検査が必要とされた子どもについても被ばくによる影響とは判定できない。今後も定期的に検査をしていくことが大切だ」と話しています。市民団体では今後も希望者を対象に検査を続けることにしています。

*2-3:http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20140926-00010000-takaraj-soci
(YAHOOニュース 宝島2014年9月26日) 福島県でなぜ「ガン死」が増加しているのか?~誰も書けなかった福島原発事故の健康被害~【第2回】
 先月号(『宝島』10月号)に掲載した福島県内で急増する「急性心筋梗塞」のレポートは各方面から反響を頂戴した。引き続き本号(『宝島』11月号)では、全ガン(悪性新生物)の死亡者数が、これも増加傾向にある背景について検証する。
■小児甲状腺ガンはすでに多発している
 前号では、福島県で多発・急増する「急性心筋梗塞」の問題を検証したが、今回は、原発への賛成・反対にかかわらず、関心の的である「ガン」に注目してみたい。旧ソ連・チェルノブイリ原発事故(1986年)の際に多発が確認されたのが、「子どもたちの甲状腺ガン」である。福島原発事故においても、事故発生当時18歳以下だった福.島県民36万7707人のうち、今年6月末時点で57人の子どもが甲状腺ガンと確定した。甲状腺ガンの疑いがある者まで含めると、実に104人(良性結節1人も含む)に及んでいる。地域別の発症率を見ると、福島市などの「中通(なかどお)り」が一番高くて10万人当たり(注1)36.4人。次いで、いわき市などの「浜通(はまどお)り」が同35.3人。原発直近の「避難区域等」が同33.5人。一方、原発から80キロメートル以上離れた「会津地方」は最も低く、同27.7人だった。放射能汚染の度合いが高い「中通り」と、相対的に低い「会津地方」では、同8.7人もの地域差がある。しかし、小児甲状腺ガン調査を担当する福島県立医科大学はこの地域差を、「被曝の影響とは考えにくい」としている。すでに地域差が表れている点についても県立医大は、会津地方では精密検査が終わっていない子どもたちが多く、甲状腺ガンと診断される子どもが今後増える可能性があるとして、「地域別発症率に差がない」と、かなり強引な解釈をしている。また、被曝の影響を最も受けやすいと見られる0~5歳で甲状腺ガンの発症がまだ一人も確認されていないこと(現時点での最年少患者は6歳)を、県立医大はことさら重視し、調査が進むにつれて甲状腺ガン患者が増え続けていく現状についても、「被曝の影響とは考えにくい」と、オウム返しのように連呼している。ともあれ、彼らの主訴は、“福島県で原発事故による健康被害は発生していない”ということなのであり、「考えにくい」のではなく、安定ヨウ素剤を子どもたちに飲ませなかった責任を追及されるのが怖い──という本音が見え隠れしている。そもそも、県立医大の期待どおりに会津地方でも小児甲状腺ガンが増えていくかどうかは不明である。それに、原発事故による放射能汚染は会津地方にも及んでおり、会津地方でも発症率が高まることが、直ちに被曝の影響を否定することにはならない。国立ガン研究センターの「地域がん登録全国推計値」によれば、子どもから大人までを含む全年齢層における甲状腺ガンの発症率は、10万人当たり年間7~8人だという。また、事故当初、甲状腺の専門医らは、通常時における小児甲状腺ガンの発症率は「100万人に1~2人」(=10万人当たり0.1~0.2人)だと、マスコミ等を通じて説明していた。これらの数字に比べると、福島県の子どもたちだけで「10万人当たり30人以上」という調査結果はかけ離れて高く、まさに「多発」と呼ぶに相応(ふさわ)しい。福島県は原発事故以前から「小児甲状腺ガン多発県」だったという話もない。この「10万人当たり」は、人口を分母にしての値ではない。この値を求める計算式は、分母を「1次検査の受診者数」として、分子が「甲状腺ガンやその疑いがあると診断された者の数」である。「中通り」の場合、受診者数が16万7593人で、甲状腺ガン患者数が61人なので、61÷16万7593×10万人=36.39…となり、小数点以下第2位を四捨五入して「36.4人」になる。
■福島県で増えているガンは「甲状腺ガン」だけではない
 山下俊一・長崎大学教授(現・同大副学長)も内閣府原子力委員会のホームページで書いているように、チェルノブイリ原発事故では発生の1年後、高汚染地域(ベラルーシ共和国ゴメリ州)で4人の子どもたちに甲状腺ガンが発症している。ゴメリ州の甲状腺ガン患者は、2年後に3人、3年後に5人、4年後には15人と増え、その後は爆発的に増加し、98年までに400人を超えるほどの多発状態に陥っていた。米国のCDC(疾病管理予防センター)では、2001年9月の世界貿易センター事件(同時多発テロ事件)を受け、ガンの潜伏期間に関するレポート『Minimum Latency Types or Categories of Cancer』(改訂:13年5月1日。以下「CDCレポート」)を公表している。これに掲載されている、ガンごとの潜伏期間を短い順に示すと、「【白血病、悪性リンパ腫】0.4年(146日)、【小児ガン(小児甲状腺ガンを含む)】1年、【大人の甲状腺ガン】2.5年、【肺ガンを含むすべての固形ガン】4年」などとなっている。小児甲状腺ガンの潜伏期間は1年ほどということになり、前掲の山下報告とも矛盾しない。県立医大の唱える「発ガンは原発事故発生から4年目以降」説など、CDCからは全く相手にされていないのである。にもかかわらず県立医大は、一見して多く見えるのは無症状の人まで調べたことによる「スクリーニング効果」によるものであり、将来発症するガンを早めに見つけているに過ぎない、などと頑(かたく)なに主張している。だが、こうした「スクリーニング効果」説は、科学の定説として確立している話でもなく、単なる仮説に過ぎない。実は、チェルノブイリ原発事故でも「小児甲状腺ガンのスクリーニング」が実施されている。行ったのは、前出の山下・長崎大教授らである。小児甲状腺ガンの発症率を、事故発生当時に0歳から3歳だった子どもたちと、事故後に生まれた子どもたちとの間で比較したのだという。その結果は昨年3月、米国放射線防護協会の年次大会の場で山下氏が報告している。それによると、事故発生時にすでに誕生していた子どもたちの間では小児甲状腺ガンが多発していたのに対し、事故の1年後以降に誕生した子どもたち9472人の間では小児甲状腺ガンの発症がゼロだった――というのである。つまり、「スクリーニング効果」仮説は山下氏によって葬り去られていた。それでも「スクリーニング効果」仮説に拘(こだわ)り続けるという皆さんは、福島原発事故の1年後か2年後くらいに生まれた福島県の子どもたちに対し、山下氏がやったのと同様の「小児甲状腺ガンのスクリーニング」を行い、現在の「多発」状態と大差ない発症が見られることを実証しなければなるまい。それに、原発事故後に福島県で増加が確認されているガンは、何も甲状腺ガンだけではない。【表1】は、事故翌年の12年に福島県内で増加した「死因」を、国の人口動態統計をもとに多い順から並べたものだ。このワースト10には、「結腸の悪性新生物」(第2位。以下「結腸ガン」)と、すべてのガンの合計値である「悪性新生物」(第6位。以下「全ガン」)がランクインしている。大分類である全ガンの数字には当然、結腸ガンの数字も含まれているのだが、ともに右肩上がりの増加傾向が続いている。しかも、全ガンは10年との比較で11年が+19人、12年には+62人と、増加の度合いが年々強まっている(結腸ガンでは11年が+33人、12年は+75人)。そこで私たちは、前回の「急性心筋梗塞」検証に引き続き、「原発事故による被曝と発ガンには関係がない」との仮説の下、それを否定することが可能かどうかを見極めることにした。病気発生の頻度を表す物差しである「年齢調整死亡率」(注2)を、福島県内の市町村ごとに計算した上で、文部科学省による福島県内の「セシウム汚染値」(注3)の濃淡と、相関関係が見られるかどうかを調べたのである(注4)。今回の検証作業でも、福島県内のセシウム汚染分布に詳しい沢野伸浩・金沢星稜大学女子短期大学部教授にご協力いただいた。
(注2)本誌2014年10月号10ページ(注2)および小社ホームページ(http://blog.takarajima.tkj.jp/archives/1921954.html)参照。
(注3)同(注3)参照。
(注4)福島第一原発事故後、高汚染のためにすべての住民が避難した原発直近の7町村(双葉町・大熊町・富岡町・楢葉町・浪江町・飯舘村・葛尾村)は、解析対象から除外した。
 年齢調整死亡率は、原発事故前年の2010のものと、事故翌年の12年のものを、それぞれ計算して求めた。こうすることによって、セシウム汚染によって数値が上がったのか否かの区別がつく。つまり、汚染の高いところで12年の年齢調整死亡率も同時に高くなるという「正比例の関係」が見られれば、被曝との因果関係が強く疑われる――ということになる。逆の言い方をすれば、もし「正比例の関係」がなければ、原発事故とは別のところに原因が存在することを意味する。
■警戒が必要なのは「悪性リンパ腫」
 その解析の結果、結論は「セシウム137の土壌汚染密度分布と『全ガン』年齢調整死亡率の分布との間には、原発事故後、弱いながら統計的には有意(r =0.24)と言える正の相関関係が生じている」というものだ。つまり、「原発事故による被曝と発ガンには関係がない」との仮説を否定する結果となったのである。実数で見ると、福島県で全ガンによる死者は増加傾向にあるものの、年齢調整死亡率で見た場合は原発事故前と比べ、横ばいで推移している。しかし、セシウム汚染との相関を見たグラフは、11年を境に何らかの“異変”が起きた可能性を示している。汚染の濃いところで10年の年齢調整死亡率が高ければ、それは放射能汚染に晒(さら)される前から死亡率が高かったことを意味し、10年のグラフの直線(回帰直線)は右肩上がりになる。12年の年齢調整死亡率がさらに上昇していない限り、「汚染との相関はない」と言える。10年の「全ガン」グラフは、完全な右肩下がり(r =-0.23)──すなわち、放射能汚染に晒される以前は死亡率が低かった地域が多いということを示し、汚染との相関が全くなかったことを表わしている。それが、事故後の12年には右肩上がり(r =0.24)に転じていた。12年に年齢調整死亡率の増加が見られた市町村は、58自治体中33の自治体である。右肩上がりに変わったのは、事故発生の年である11年(r =0.26)からだ。部位ごとにも検証してみた結果を示し、全ガンと似た傾向が見られたのは、「気管、気管支および肺ガン」(r =0.23)だ。全ガンと同様に回帰直線が事故前と事故後で反転している。とはいえ、前出の「CDCレポート」のところで示したように、肺ガンの潜伏期間は「4年」である。原発事故による健康被害が現れるにしても、肺ガンの場合、事故翌年の12年では早すぎるのだ。何が原因であるにせよ、ここまでトレンドが反転するには何らかの相当なエネルギーが必要と思われるが、現時点ではその“エネルギー源”が「原発事故」や「放射能汚染」であると推定するには、かなり無理がある。従って、今回は現時点での検証の途中経過を示すだけにとどめ、13年以降の推移を注視していくことにしたい。白血病や胃ガン、乳ガンでは、現時点で全ガンと似た傾向は見られなかった。12年の死因ランキングで第2位に入っていた結腸ガンは、年齢調整死亡率が年々微増している。セシウム汚染との相関は、11年に「弱い相関」(r =0.23)があったものの、12年には「ほとんど相関がない」(r =0.04)レベルになっていた。気になるのは「悪性リンパ腫」(r =0.12)だ。セシウム汚染とは「ほとんど相関がない」レベルだが、そのr値がわずかながらも増加してきているのである。CDCレポート」では悪性リンパ腫の潜伏期間を「0.4年(146日)」としていることからも、悪性リンパ腫には今後、特に警戒が必要と思われる。そんなわけで、福島県でどんな部位のガンが増えたことで全ガンの増加に至ったのかは、手持ちの人口動態統計データだけでは解明することができなかった。この先の分析作業には、厚生労働省にある人口動態統計の生データが必要になる。ただ、このデータは一般向けに公開されておらず、国から厚生労働科学研究費をもらっているような大学などの研究者でなければ見せてもらえないのが実情だ。ぜひ、厚労省自身の手で解明していただきたい。次回は、福島県内の取材へと駒を進める。(以下、続く) (『月刊宝島』2014年11月号より)

<原発に対する国民の意見>
*3-1:http://digital.asahi.com/articles/DA3S11450294.html (朝日新聞 2014年11月12日) 「脱原発」の意見、1万7665件で94% エネルギー計画のパブリックコメント
 安倍内閣が4月に閣議決定したエネルギー基本計画をつくる際、国民に意見を募った「パブリックコメント」で、脱原発を求める意見が9割を超えていたことがわかった。朝日新聞が経済産業省に情報公開を求めて開示されたすべてを原発への賛否で分類した。経産省は基本計画で原発を「重要なベースロード電源」と位置づけたが、そうした民意をくみ取らなかった。経産省が昨年12月6日に示した基本計画の原案に対し、対象の1カ月間にメールやファクスなどで約1万9千件の意見が集まった。同省は今年2月、主な意見を発表したが原発への賛否は分類していなかった。開示されたのは全部で2万929ページ。複数ページに及ぶものを1件と数えると1万8711件だった。うち2109件はすでに今年5月に開示され、今回残りが開示された。廃炉や再稼働反対を求める「脱原発」は1万7665件で94・4%。再稼働を求めるなどした「原発維持・推進」は213件で1・1%、賛否の判断が難しいなどの「その他」が833件で4・5%だった。脱原発の理由では「原案は民意を反映していない」「使用済み核燃料を処分する場所がない」などが多かった。「原発維持・推進」の理由では、電力の安定供給や温暖化対策に原発が必要との意見があった。開示文書は、個人情報保護のため名前が消されており正確な把握はできないが、「脱原発」の意見には同じ文面のファクスが数十件あるなど、何度も意見を送った人もいたようだ。経産省は、今回の基本計画をめぐるパブリックコメントのとりまとめでは「団体の意見も個人の意見も1件。それで数ではなく内容に着目して整理作業をした」として、原発への賛否は集計しなかった。民主党政権は2012年、30年の原発比率について国民的議論を呼びかけた。パブリックコメントでは約8万9千件が集まり、約9割が「原発ゼロ」を支持した。

*3-2:http://www3.nhk.or.jp/news/html/20141108/k10013042661000.html
(NHK 2014年11月8日) 原発の再稼働 若い世代に賛成多い傾向
 NHKが行った世論調査で、鹿児島県にある川内原子力発電所の再稼働について尋ねたところ、地元・薩摩川内市では20代から30代で「賛成」「どちらかといえば賛成」が75%に上りました。若い世代で再稼働に賛成の割合が多くなる傾向はほかの地域でも見られました。NHKは先月31日から4日間、「薩摩川内市」とその「周辺地域」、さらに「福岡市」と「全国」の4地域で20歳以上の男女を対象に、コンピューターで無作為に発生させた番号に電話をかける「RDD」という方法で世論調査を行い、調査の対象になった人のうち、およそ67%の人から回答を得ました。川内原発の再稼働について尋ねたところ、薩摩川内市では、「賛成」「どちらかといえば賛成」が49%、「反対」「どちらかといえば反対」が44%でした。
 年代別に見ますと、
▽20代から30代は「賛成」「どちらかといえば賛成」が75%、「反対」「どちらかといえば反対」が23%。
▽40代は「賛成」「どちらかといえば賛成」が60%、「反対」「どちらかといえば反対」が36%。
▽50代は「賛成」「どちらかといえば賛成」が59%、「反対」「どちらかといえば反対」が38%。
▽60代は「賛成」「どちらかといえば賛成」が44%、「反対」「どちらかといえば反対」が51%。
▽70代以上は「賛成」「どちらかといえば賛成」が42%、「反対」「どちらかといえば反対」47%でした。
 若い世代で再稼働に賛成の割合が多くなる傾向はほかの地域でも見られ、20代から30代の「賛成」「どちらかといえば賛成」と答えた割合は、▽いちき串木野市や出水市などの周辺地域では54%、▽福岡市では44%、▽全国では40%と、いずれもほかの世代と比べて割合が高くなりました。今回の世論調査の結果について、科学技術と社会の関係に詳しい大阪大学コミュニケーションデザイン・センターの小林傳司教授は「今、いちばん経済を支えて働いている世代からすれば、現実に再稼働は大きな要素で、きれい事は言えないということだろう。場合によっては事故は起こるかもしれないけれども、今の経済とのバランスを考えたときに、危険を覚悟のうえで選んだという感じがする。ただ、危ないかもしれないからやめておこうという議論と、危ないかもしれないけれども受け入れようという議論は、どちらが合理的か簡単には決められない問題だ」と話しています。


PS(2014.12.2追加):*4は、2014年5月12日現在の諸外国・地域の日本産食品輸入規制措置で、日本では「食べて協力」「風評被害をまき散らすな」と言われている東北・関東圏の食品が、食品からの内部被曝を予防するために、多くの国で「輸入停止」や「証明書要求」となっている。そして、こちらの方が世界常識であるため、TPPが締結されれば日本産農産物の輸出が増えるというのは甘い展望だ。

*4:諸外国・地域の日本産食品輸入規制措置一覧表(2014年5月12日現在)
   


PS(2014.12.12追加):*5のように、フクシマ原発事故の汚染水問題により福島県など8つの県の水産物の輸入を禁じている韓国政府が、専門家を日本に派遣して現地調査を行い、輸入規制の是非を検討するそうだ。韓国の禁輸措置については、水産庁の幹部が韓国を訪れ、「科学的根拠に乏しい過剰なもの」として直ちに撤回するよう申し入れたり、WTO(世界貿易機関)で日本政府の代表が韓国の不当性を訴えたりしたそうだが、「科学的根拠に乏しい過剰なもの」と言う以上は、その科学的根拠を出して立証する責任は原発事故を起こした日本政府の側にある。しかし、統計数値による疫学的立証はまだできない時期であるため、そのような中で「用心する権利」は誰にでもあり、命を懸けてまで「食べて協力」することを押し付ける人は良識に欠ける。

*5:http://www3.nhk.or.jp/news/html/20141212/k10013913901000.html
(NHK 2014年12月12日) 原発事故で水産物禁輸の韓国 福島など調査へ
農林水産省は、東京電力福島第一原子力発電所の汚染水問題を受けて、福島県など8つの県の水産物の輸入を禁じている韓国政府が輸入規制の是非を検討するため、来週、専門家らを日本に派遣し、福島第一原発などで現地調査を行うことを明らかにしました。農林水産省の発表によりますと、現地調査を行うのは、韓国政府がことし9月に設置した日本の水産物などの輸入規制の是非を検討する委員会の7人の専門家です。調査は今月15日から19日までの5日間の日程で行われ、このうち17日と18日には福島第一原発の汚染水対策の現状や、福島県沖で行われている試験操業の状況などを視察する予定です。韓国政府は、福島第一原発の汚染水問題を受けて、去年9月から福島県など8つの県のすべての水産物の輸入を禁止する措置を取っていますが、日本政府は、科学的根拠に乏しいとして撤回を求めています。専門家らは来年1月に再び日本を訪れて現地調査を行い、それを踏まえて、輸入規制の是非について報告書をまとめることにしています。農林水産省は「今回の現地調査を輸入規制の撤回への足がかりにしたい」と話していて、水産物の安全性について改めて理解を求める方針です。これまでの経緯韓国政府は去年9月、福島、宮城、岩手、青森、群馬、栃木、茨城、千葉の8つの県のすべての水産物の輸入を禁止したほか、8県以外の水産物などについても放射性物質が僅かでも検出されれば、追加で検査証明書の提出を求める措置を決めました。これに対して、水産庁の幹部が韓国を訪れ、「科学的な根拠に乏しい過剰なものだ」として、直ちに撤回するよう申し入れました。また、WTO=世界貿易機関の食料品の検疫措置などを話し合う委員会でも、日本政府の代表団がこれまでに4回にわたり、韓国の不当性を訴えるなど、さまざまな外交ルートを通じて働きかけを続けてきました。こうしたなか、韓国政府はことし9月、輸入規制の是非について検討するため、専門家による委員会を新たに設置しました。今後、日本政府が提出した資料の分析や来週と来年1月の2回にわたって行われる予定の現地調査などの結果を踏まえ、韓国政府が輸入規制を見直すかどうか判断することになります。

  
         *6より                       *7より

PS(2014.12.13追加):TVメディアは、お天気、スポーツ、(推測の多い)刑事事件の報道が先で、それらの報道時間も長く、ニュースのランク付けがおかしいが、このように政策の論点を開示しない報道をしながら、一般の人に「問題意識を持って選挙に行け」と言っても無理な話である。実際には、*6のような深刻な事態が進行しており、外国の報道機関はまともな報道をしているため、日本人よりも外国人の方がフクシマの真実を知っている状態なのだが、癌や心疾患による死亡率が上がってから「そうなるとは知らなかった」では済まされない。そして、日本にも警告を発している人は多いのだ。

*6:http://eigokiji.cocolog-nifty.com/blog/2014/04/post-feee.html (原文:rt.com/news/tokyo-radiation-fukushima-children-836/) (ロイター 2014年4月21日) 真実を隠す日本政府:福島の放射能で子供や東電社員達が亡くなっている
 破壊された福島原子力発電所に近い双葉町の元町長井戸川克隆は、放射能汚染が、日本の最大の宝である子供達に、悪影響を及ぼしていると、国に警告している。双葉町住民を福島県内の磐城市に移住させる政府計画について尋ねると、井戸川はそうした動きは“人権侵害”だと批判した。チェルノブイリと比較すると福島周辺の放射能レベルは“4倍高いのです”と彼はRTのソフィー・シュワルナゼに語り(英語ビデオ、英語の全文書き起こしあり)“住民が福島県に戻るのはまだ早すぎます”と語った。“政府が何を言おうと、決して安全ではありません。”政府は放射能の危険にもかかわらず、住民を故郷に戻す計画を開始したと井戸川は主張している。“福島県は帰郷キャンペーンを始めました。多くの場合、避難民は帰郷を強いられています。[元町長は、大気の汚染はわずかながら減少しているが、土壌汚染は変わっていないことを示す福島県地図を示した]。井戸川によれば、県内には約200万人が住んでおり、“あらゆる種類の医療問題”を抱えているというが、政府は、こうした状態は福島原発事故とは無関係だと言い張っている。井戸川は、当局の否認を、書面で欲しいと思っている。“当局にその主張を書面で実証するよう要求しましたが、私の要求を無視しました。”井戸川は、1986年4月26日にウクライナを襲った原発の悲劇に再度言及し、日本人は“チェルノブイリを決して忘れてはなりません”と懇願している。しかし、元行政幹部の警告に耳を傾ける人はごくわずかに見える。“現実には、放射能がまだ存在しているのに、人々は政府の言い分を信じているのです。これで子供達が亡くなっています。子供達は心臓病、喘息、白血病、甲状腺炎…で亡くなっています。多くの子供達は、授業の後、ひどくつかれています。体育の授業に出られない生徒たちもいます。ところが、当局は依然、真実を我々から隠しているのです。一体なぜかはわかりません。彼等におこさんはいないのでしょうか? 彼等が、我々の子供達を守ることができないことがわかるというのは、つらいことです。”“彼等は福島県は安全だと言い、それで誰も子供を、どこかへ避難させようとしていないのです。我々はこのことを議論することさえ許されていません。”2020年に予定されている東京オリンピックについて話す際、安倍首相が、本来“人を腹蔵無く遇する”べきことを意味する日本の言葉“おもてなし”を頻繁に使うのは皮肉だと、元町長は考えている。井戸川の考えでは、同じ処遇は、福島に最も密接に結びついている人々には平等に適用されてはいない。除染作業に携わる労働者達だ。“彼らの器具は劣化しつつあります。準備は悪化しつつあります。そこで、彼等は自分達の安全を第一に考え始めざるを得なくなったのです。それが、放射能の本当の危険を理解している人々が退職し始めた理由です。今では、素人達が現場で働いています。彼等は自分たちがしていることが何か実際に理解していません。こうした人々が間違ったポンプを使ったり、そうした類の間違いをしたりするのです。“自分の国を本当に恥ずかしく思いますが、地球を将来清浄に保つには真実を語らなければなりません。井戸川は更に、日本の歴史上、最も悲劇的な出来事の一つとの幾つかの類似点をあげた。第二次世界大戦末、アメリカ合州国による広島と長崎という産業都市への原爆使用だ。“当局は(原子爆弾攻撃の効果について)全員にウソをつきました…当局は真実を隠したのです。そういう状況に我々は暮しているのです。福島だけではありません。日本には暗い歴史があります。これはある種、過去の犠牲です”労働者や一般住民の中には放射能に関連する死者や急性疾患はいないという国連報告の詳細について問うと、井戸川は、危機の頂点で味わった自分自身の体験の一部を語る前に、“全くの嘘です”と切り捨てた。“町長時代、心臓麻痺で亡くなった多くの方を存じていますし、以後も福島で、若い方々にさえ、突然亡くなった方々が多数おられます。当局が、全世界や国連に対し、真実を隠しているのは実に恥ずかしいことです。実際に多くの方々が亡くなっている事実を認めることが必要です。こういうことをいうのは禁じられていますが、東京電力社員も亡くなっています。けれども彼等はそれについては黙して語りません。”そのような状況で実際亡くなった人々の具体的人数を教えて欲しいと言うと、井戸川は“一人や二人ではありません。そのような形で十人、二十人の方々が亡くなっているという話です。”と言って拒否した。1億2600万人の国民向けのエネルギー源として、日本には他にどのような選択肢があるか尋ねると、多数の川があるのに、政府は水力発電を無視していると彼は答えた。理由は何か? “大企業が儲からない!”為だ。井戸川は、驚くほど単純に聞こえる日本のエネルギー需要を満たす為の青写真を示そうとして話を続けた。“投資資金が限られていても、増税せずに多数の人々に電力を送れます。重力を利用するだけで非常に多くのエネルギーが得られますから、もはや原子力発電所は不要です。”
●大災害の予感
 東北日本が地震による津波で襲われた日、2011年3月11日に発電所の原子炉6基中、3基のメルトダウンを引き起こした福島原子力発電所での大事故以前に、井戸川は施設が危険なことを知っていた。“私が何も知らないふりをして、原子力発電所で起きる可能性がある事故について質問すると、私の様々な疑問に彼等が答えられないことがわかりました”と彼は語った。“率直に申しあげて、その時、東電幹部に、緊急時対策がないことに始めて気がついたのです。その時に、原発が危険なことになりうると私は悟ったのです。”津波が襲った日、近くの町にいた元町長は、地震のニュースを聞き、車を運転して双葉に戻ったことを覚えている。ようやく後になって、近づく津波で、すんでのところで命を落とす状態だったことに気がついた。“より大きな津波が来る前に何とか戻ることが出来ました。後になって始めて、津波から生きのびられたことを知りました… 幸運でした。私がその道を運転して過ぎた後、津波が来て、山にまで至ったのです。”30分の帰路、運転しながら、原子力発電所についての疑問ばかり考えていた。“‘地震がこれほど激しいなら、原発で一体何が起きるだろう? もし原子炉が損傷したらどうなるだろう? 水が漏れたらどうなるだろう? 町は何をするだろう? 町長として、何をすべきだろう?とずっと考え続けていました’”町長室に到着した井戸川は窓外を眺め、彼が“恐ろしい光景”と表現するものに直面した。“普通ここからは海は見えませんが、あの時は300-500m先まで見えました”と彼は言う。町長が原子力発電所は恐らく何らかの損傷を受けただろうと気がついたのはその時だった。夜は、携帯電話さえ機能していなかったので、唯一の情報源、テレビのニュース報道を見て過ごした後、井戸川は翌朝早く緊急避難を発令した。ところが、町民全員が緊急放送を聞けたわけではなかった。“後になって、双葉住民全員が私の声明を聞けたわけではなかったことを知りました。申し訳なく思っています…福島県が、時宜にかなう形で、私に全ての情報を教えていなかったことに気がつきました。現在、政府は放射能から住民の安全を確保するいかなる措置も講じていませんし、避難手順の実施も監視していません。”
●原子力を越えて
 井戸川克隆は、よりきれいで安全な形のエネルギー源が得られるよう日本を変えるには、日本の法律を進んで変える意思が必要だと考えている。“日本には様々な法律があります。おそらく多すぎるのです。河川やその利用方法に関する法律があります。農業用水利用に関する法律を変えれば、川を発電用に使用することが始められます。この法律を変えるだけでも、膨大なエネルギーが得られるでしょう。”こうしたこと全て、“地球を汚染せずに”実現可能だ。ところが、そのような大胆な提案は“大企業には受けません。大規模投資が不要で、巨大な発電所を建設する必要がなくなりますから。投資家や、資本家にとっては、さほど儲からないのです。”放射線のおかげで荒廃させられた日本の町の元町長として、井戸川は、世論に大きな変化が起きているのを感じている。日本人は“原子力災害を避ける必要があることを理解し始めましたから、国民の60-70パーセントは自然エネルギー利用に賛成です。”“長い時間がかかりましたが、いつの日か我々も、ヨーロッパの、ドイツの先例に見倣うでしょう。”


PS(2015.1.3追加)*7のように、「福島産米は全袋検査した結果、基準値超えはゼロ」と、いかにも厳密な検査をクリアしたかのように書かれているが、基準値は「1キロあたり100ベクレル以下」なのである。私は、これを1日、2日ではなく、1ケ月、1年、3年、5年と食べ続けてもよいという実験は見たことがなく、蓄積すると悪影響が出るのが普通であるため、この基準さえ守っていれば安全だという科学的証拠があれば示してもらいたい。何故なら、基準や法律で決めたからと言って、科学的に人体に安全になるわけでも、安全であることが証明されたわけでもないからだ。

*7:http://digital.asahi.com/articles/DA3S11532501.html?_requesturl=articles%2FDA3S11532501.html&iref=comkiji_txt_end_s_kjid_DA3S11532501
(朝日新聞 2015年1月3日) 福島産米、基準値超えゼロ 昨年分、1075万袋検査
 東京電力福島第一原発事故をきっかけに始まった福島県産米の放射性物質検査で、昨年末までに計測した2014年産米約1075万袋全てが国の基準値(1キロあたり100ベクレル)を下回った。収穫した年内の検査で基準値超えゼロを達成したのは初めて。全量全袋検査と呼ばれるこの取り組みは福島県が約190台の検査器を配備して12年に始まった。全ての県産米が対象で1袋ごとに放射性セシウム濃度を調べ、食品衛生法上の基準値以下だと「検査済」のラベルが貼られる。基準値を超えると廃棄される。検査に期限はなく今後も続けられる。基準値超えは、同じく1千万袋以上を調べた12年産米では71袋、13年産米では28袋だった。福島県内の農家は、稲が放射性セシウムを吸収しないよう肥料を工夫するなど試行錯誤を続けてきた。

| 内部被曝・低線量被曝::2014.4~ | 05:38 PM | comments (x) | trackback (x) |

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