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2013,09,11, Wednesday
2013.8.29朝日新聞より 2013.9.14日経新聞より 2013.9.11日経新聞より (1)2020年に東京で行うのは、妥当だったのか? 影響を与えないよう決定前には書かなかったが、私は、*3に書かれているように、「東日本大震災の世界中からの支援に感謝しつつ、復興を成し遂げた姿を世界中に見てもらう」という意義があるのなら、1回遅れても、東日本大震災の被害を受けた東北(宮城県)で、復興を記念して夏季五輪を行うのがよかったと思う。 しかし、2020年夏季五輪の開催都市が東京に決まったことで、*4のように、東京及びその周辺の人は喜んでおり、それは、このようなことがなければ、東京のような都市の再開発や街づくりがしっかりと進む目途が立たないからである。しかし、この7年間は、*5を見ればわかるとおり、東北の復興と関東のオリンピック準備でバブルが再来しそうであり、わが国の公共事業は単価が高くなって、国民の税金1円当たりの成果は、その分低くなる。 (2)夢や自信や希望は、スポーツからでいいのか? *4には、猪瀬東京都知事が、「バブル崩壊からの20年間、どこかに消えていた自信や希望や夢を7年後に向けて育んでいく必要がある」と言った旨、書かれている。しかし、1990年代始めにバブルがはじけて以来、その後始末と構造改革に苦労してきたのであり、すべては55年体制とバブルが原因だった。それを、オリンピックというお祭りで忘れさせ、バブルを再来させるのは、学習能力がなさすぎる。 また、スポーツは人工的に作られた単純なルールに基づいてその場で勝ち負けを競うだけのものであり、知識の習得や科学的研究のように、その後により大きな成果を生んでくるものではない。そのため、スポーツが夢や自信や希望であり、そのスポーツで全エネルギーを発散するというのは、一部の国民がそうであってもよいが、多数の国民がそうであっては困るのである。 さらに、金融緩和によるコストプッシュ・インフレーション・消費税増税・年金支給額削減・医療や介護費用の自己負担額増加などによる生活苦からの不満を、オリンピックという祭りで、麻生財務大臣が言ったように、パーッと「ええじゃないか、ええじゃないか」と、エネルギーを発散させて忘れさせようというのでは、明治維新の時代ではあるまいし、論外である。 今の日本で人材たりうるためには、体力だけではなく知力・判断力が必要なのであり、主権在民を根付かせるためにも、メディアはオリンピック馬鹿な報道をすることなく、正確な情報を開示して、国民に本物の知識と判断力を身につけさせなければならない。 (3)スポーツ庁は不要 2020年の夏季オリンピック開催都市が東京に決まったことに気を良くした人が、「『スポーツ庁』を作ろう」と言っているが、必要性が明らかで作った消費者庁でさえ真に消費者のためには働いていない状況であるのに、そもそも「スポーツ庁」なるものは必要性がなく、またもや税金の無駄遣いである。国民の知力・体力・精神力の育成は、スポーツ馬鹿を作らないよう文部科学省が責任を持ってやるべきだ。 (4)リニア新幹線は、もう作るべき時 *4に記載されている27年開通予定のリニア新幹線については、JRと言っても地域毎に別会社であるため、「五輪前に名古屋まで」とケチなことを言わなくても、五輪前に北海道から九州まで通じさせることも可能だろう。この時、日本海側など、新幹線とは異なる地域を走らせれば、新幹線との間で二重投資にならず、天災に対しても代替的輸送手段ができ、原発がなければやっていけなかった地域を本当の意味で発展させることができる。また、工事費についてもいろいろな工夫ができ、波及効果は大きい。 (5)誰が言ったかではなく、内容が真実か否かが重要なのである *1によれば、安倍首相は、報道陣に「汚染水については完全にブロックされていると伝わったと思う。(汚染水問題は)数日前から私の口からはっきり伝えようと思った」と話したそうだが、事情を知っている人は、皆、安部首相の発言の信ぴょう性の方に疑問を持っただろう。何故なら、自分の命にも関わる問題であるため、問題意識を持っている人なら、*2の状況は把握していたからである。シルトフェンスと呼ばれる薄い幕で海水を港湾内に密閉し、完全に放射性物質をろ過して、海水だけを外洋に出しているとでも言うのだろうか。 つまり、誰が言ったから信じるか否かではなく、事実はわかっているので、その人の発言の信ぴょう性の方を判断するという段階なのである。 *1:http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2013090802000137.html (東京新聞2013年9月8日)首相強弁「汚染水問題ない」 IOC委員質問に回答 実際は外洋漏えいも 二〇二〇年夏季五輪の開催都市を決めるIOC総会で、安倍晋三首相は東京電力福島第一原発の汚染水漏えい問題について、「まったく問題はない。汚染水の影響は、港湾内で完全にブロックされている」と強調した。安倍首相はプレゼンテーションで「東京は世界で最も安全な都市の一つ」とアピール。福島第一原発事故について「状況はコントロールされている。東京にダメージを与えることは許さない」とした。この発言に対し、IOC委員が質疑応答で、東京に影響がない根拠を尋ねた。首相は「汚染水の影響は、福島第一原発の港湾内の〇・三平方キロメートルの範囲内で完全にブロックされている」と断言。近海のモニタリングの結果、「数値は最大でも世界保健機関(WHO)の水質ガイドラインの五百分の一。日本の食品や水の安全基準は世界で最も厳しい基準だ」とアピールした。 だが、福島第一原発では毎日汚染水を含む大量の地下水が漏えいしている。先月には地上タンクから約三百トンの処理水が漏出。外洋につながる排水溝に沿って、処理水と同じ特徴を示す高濃度の放射性ストロンチウムなどを含む水が確認され、外洋に漏れた可能性が極めて高い。港湾内の水についても、東電は、外洋と完全にブロックされた状態ではなく、水が行き来していると説明している。首相は「日本のどの地域でもこの基準(食品や水の安全基準)の百分の一であり、健康問題については、これまでも今も将来もまったく問題ないことを約束する」とし「抜本解決に向けたプログラムを私が責任をもって決定し、すでに着手している」と強調した。 プレゼンテーションを終えた安倍首相は、報道陣に「汚染水については完全にブロックされていると伝わったと思う。(汚染水問題は)数日前から私の口からはっきり伝えようと思った」と話した。 *2:http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2013091102000110.html (東京新聞 2013年9月11日) 「完全遮断できない」 首相 汚染水「約束を実行」 戸惑う東電 安倍晋三首相は十日、二〇二〇年夏季五輪の東京招致が決定した国際オリンピック委員会(IOC)総会での自らの発言に関し、東京電力福島第一原発の汚染水問題に政府の責任で対応する考えを重ねて強調した。しかし、当事者の東電は発言の趣旨を政府に確認するなど戸惑いを隠せていない。首相は、官邸で記者団に「ブエノスアイレスで約束した福島の汚染水対策を責任を持って実行していきたい」と強調。この後、開催決定を受け開いた閣僚会議でも「政府一丸になって、しっかり責任を果たす」と述べた。七日のIOC総会では首相が汚染水問題に触れ「汚染水の影響は原発専用港内で完全にブロックされている」と表明、対策に全力を挙げる考えを世界に示していた。これに対し、東電の今泉典之原子力・立地本部長代理は九日の会見で、首相の発言趣旨を、経済産業省資源エネルギー庁に確認したことを明らかにした。その上で、1~4号機の取水口などにはシルトフェンスと呼ばれる薄い幕が張られているものの、港湾内の海水は毎日半分が入れ替わり、放射性物質の流出は完全には止められないと明言。「外洋への影響が少ないという点では、(首相と)同じような認識」と苦しい答えに終始した。首相の「汚染水問題の状況はコントロールされている」との発言に対する考えを問われると、今泉氏は「一日も早く安定した状態にしたい」と言葉を濁した。 *3:http://www.saga-s.co.jp/news/global/corenews.0.2546663.article.html (佐賀新聞 2013年9月9日) 政府、五輪準備を本格化 / 10日に閣僚会議開催 政府は2020年夏季五輪の東京開催決定を受け10日に全閣僚出席による関係閣僚会議を開き、政府の準備作業を本格化させる。政府筋が9日明らかにした。菅義偉官房長官は9日の記者会見で「最高の大会を開催できるように関係省庁が一体となって最大限の支援をしたい」と表明した。東京開催について「東日本大震災での世界中からの支援に感謝しながら、復興を成し遂げた姿を世界中に見てもらう面もある」と意義を説明。「東京都と緊密に連携しながら、政府全体として取り組みたい」と述べた。被災地の復興に関して「五輪がある、ないは別にして復興には内閣として全力で取り組む」と強調した。 *4:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20130911&ng=DGKDASDC1000U_Q3A910C1EA1000 (日経新聞 2013.9.11) 走り出した東京五輪(1) 今日から始めてほしい 「日本に戻ってきて、本当に国民の皆さんに喜んでいただいたなと実感できました」。10日午前、首相の安倍晋三(58)はブエノスアイレスの国際オリンピック委員会(IOC)総会から帰国後の第一声で、2020年東京五輪の開催を勝ち取った高揚感を漂わせた。疲れを考慮して午後2時からと遅めに設定された閣議では、立ち上がって拍手する18人の全閣僚に迎えられた。「閣僚全てが20年五輪に向けてそれぞれのつかさで対応していただきたい」と指示。さらに念を押した。「今日から始めてほしい」。 □ □ 首相は東京五輪を金融政策、財政政策、成長戦略に続くアベノミクスの「『第4の矢』の効果がある」と位置付ける。官房長官の菅義偉(64)は同日、札幌市内の講演で「この国を発展させる最高のチャンスを得た」と胸を張った。「9月8日(日本時間)は新しい歴史がつくられた日だ。歴史教科書にも載せるべきだ」。10日夕、もう一人の立役者、東京都知事の猪瀬直樹(66)は成田空港の到着ロビーに両手を振って登場し、雄弁に語った。フェンシングの北京・ロンドン五輪銀メダリスト、太田雄貴(27)やパラリンピック選手の佐藤真海(31)ら、IOC総会の最終プレゼンテーションに臨んだメンバーとともに帰国。猪瀬の高揚は続く。「バブル崩壊からの20年間、どこかに消えていた自信や希望や夢を7年後に向けて育んでいく必要がある」。東京の勝利は、4年前の惨敗を教訓に、政府と都ががっちり手を組み「オールジャパン」体制を構築したことが大きい。その表れが、総会で実現した高円宮妃久子さまのあいさつ。「日本の皇族は常にスポーツを支援してきました」と述べられ、委員らの心を捉えた。作家として「ミカドの肖像」などの著書がある猪瀬は、昨年12月の知事就任直後から皇室の協力を得ることに注力。道路公団の民営化推進委員会などで面識があった国土交通省出身の宮内庁長官、風岡典之(66)を再三訪ねて働き掛けた。官邸も動き、文部科学相の下村博文(59)は自ら風岡に要請した。憲法の規定を踏まえ政治と距離を置くため、久子さまは9月7日の総会ではスピーチ後に降壇予定だったが、下村は10日、「降壇していただくと(IOC委員に)マイナスイメージになりかねないと私の方で判断して最後までお座りいただいた」と舞台裏を明かした。 □ □ 都の試算によると、東京五輪の経済波及効果は今後7年間で3兆円。期間中に東京が受け入れる観客や大会スタッフは1010万人と見込まれる。産業界は動き始めた。帝国ホテルは9日午前、帝国ホテル東京(東京・千代田)の宿泊やレストラン部門などのトップを集めた会議を急きょ開催。社長の定保英弥(52)は「我々のおもてなしを世界に発信していこう」と指示した。1964年の東京大会でIOC委員らが泊まった実績もあるだけに期待を込める。JTBは、グループ内に五輪に向けた専門組織などを構築する準備に入った。社長の田川博己(65)は「訪日する世界の方々に新しい交流の場をつくっていく」という。公共事業の追加への期待は湧き上がっている。28競技のうち、15競技が行われる東京都江東区は臨海部への地下鉄新設をもくろむ。副区長の佐藤哲章(65)は「先頭を切って動いてほしい」と部下に指示。9日、五輪・パラリンピック開催準備担当部を設けた。64年大会直前に開通した東海道新幹線に思いをはせ、27年開通予定の中央リニア新幹線が五輪前に「せめて名古屋まで乗れるようになれば」と夢を語ったのは、経団連会長の米倉弘昌(76)だ。大手ゼネコン各社は、総工費1300億円で建て替えられるメーン会場「新国立競技場」の受注に向けた水面下の動きを活発化させている。58年竣工の現・国立競技場の工事を手掛けた大成建設は「積極的に狙ってくるはず」(大手幹部)。一方で鹿島や大林組、清水建設、竹中工務店といった各社も色めき立つ。ただ、22の競技場や選手村の整備費用は4500億円に上る。インフラ整備は計画が固まっているものだけで6300億円超。16日間のスポーツの祭典のための財政負担はどこまで可能か。「スポーツ庁」を設置する構想が現実味を帯びつつあり、文科省幹部は「予算も人員も他省庁との交渉も今より力を持つ」と語るが、行政は肥大化しないか。安倍のプレゼンで、東京電力福島第1原子力発電所の汚染水対策は国際公約になった。7年後に向けた課題も山積している。 *5:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20130911&ng=DGKDASDC1000S_Q3A910C1EA1000 (日経新聞 2013.9.11) ゼネコン株活況 大手4社売買高、バブル期超す 個人マネー、五輪特需にらむ 2020年夏季五輪の東京開催決定を受け、株式市場でゼネコン(総合建設会社)株の取引が急拡大している。開催決定後、大成建設や鹿島といった大手4社の株式売買高は、1980年代後半のバブル期を上回る水準にまで膨らんだ。インフラ整備が業績に追い風になるとみた個人投資家の資金が流入している。関連株を買うため新たに証券会社に口座をつくる動きも活発になってきた。10日の東京株式市場では前日に続き大手建設株が大幅に上昇。大手4社の合計株式売買高は前日の倍近い4億株超に上り、2日連続でバブル期の記録を上回った。4社だけで東証1部の商いの1割強を占め、そろって年初来高値を更新した。東証1部では値上がり率上位30銘柄のうち22銘柄が建設業。「中小の建設会社株を買う動きも広がった」(国内証券)。これら五輪関連株への資金流入が支えとなり、日経平均株価の終値も前日に比べ218円13銭(1.54%)高い1万4423円36銭と約1カ月ぶりの高値水準となった。 五輪の開催決定を機に関連株に投資を始めたいという人も増えている。カブドットコム証券では銀行経由で証券口座を即時開設できるサービスの申し込みが、前週までの2~3倍に拡大。松井証券では今週に入り、証券口座への入金金額が開催決定前の数倍になった。カブドットコム証券の荒木利夫執行役は「大型イベントの開催で景気が良くなるという期待感が強まっている」と話す。もっとも、ゼネコン大手の株価は2日間で1~3割上昇。短期では過熱感を警戒する声もある。SMBC日興証券の川嶋宏樹シニアアナリストは「株価の急上昇に見合う利益を上げられるかどうか慎重に見極める必要がある」と指摘する。
| 原発::2013.7~9 | 05:21 PM | comments (x) | trackback (x) |
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2013,09,03, Tuesday
朝日新聞2013.8.29より 朝日新聞2013.9.1より (1)処理後の汚染水は、どの程度汚染されているのか? もともと原発事故現場の汚染水は、アレバ社製の浄水装置によって、汚染水でなくなっていた筈だが、実際には、セシウムのほんの一部しか除去されておらず、高度汚染水がタンクに溜められていたわけである。そして、*2のように、東電は政府(旧原子力安全・保安院)の承認を得てコンクリート堰の排水弁を全て開け、*3のように、配管の作りは杜撰で、しっかりした管理もしていなかったということだ。ここに、放射性物質からの安全管理の視点は全くない。 従って、まず、アレバ社製の浄水装置にいくらかけ、どのくらい浄水されていたかをここで明らかにすべきであって、絶対に、それを不問に付すべきではない。何故なら、これにより、①どういう事故が起こり ②どういう核種が汚染水に含まれ ③今後、どの程度、それを浄化できるかがわかるからである。それらを明確にできない人間が、*1のように、「多核種除去設備で処理後の海洋放出に理解を」などと唱えても空虚であり、賢明な人間なら誰も信用しない。 また、原発内のタンクから汚染水が漏れ出した問題に関し、*1のように、原子力規制委員会の田中俊一委員長が、「一番大事なことは国際社会に適切な情報を伝えること」と言ったと書かれているが、一番大事なことは、日本国民に適切な情報を伝え、日本国民の命や健康を守ることである。それができれば、当然、他国民の命や健康を守ることもでき、国際社会に理解され、信用され、安心されもするのだ。 (2)国の判断なら正しいのか? *2には、「高濃度汚染水が漏れた地上タンク群を囲むコンクリート堰で排水弁を全て開けていた運用について、旧原子力安全・保安院の承認を受けていた」と書かれている。つまり、今までの対応やこれからやろうとする対応を見れば、国民の人権に対する国の意識はその程度だと判断できるため、脱原発が必要不可欠なのである。 また、*3には、タンクや配管から汚染水が漏出した事故を受けて「東電は見回りの作業員を10人程度から60人まで増やす」と書かれているが、線量を測って伝える線量計を多く置いておけば、作業員の数はいらない。つまり、ここには、汚染水の漏出を素早く知って安全を保つという発想はなく、どんな仕事でもいいから人を使って雇用を増やそうという発想しかないのであり、命に関わる放射線管理において全く落第である。ここまで来ると、第二次世界大戦を思い出した。 (3)津波や過酷事故への対策が適切に実施されていれば事故は避け得たのか? このような中、*4には、日本原子力学会の事故調査委員会(委員長=田中知・東京大教授)は2日、「津波や過酷事故への対策が適切に実施されていれば事故は避け得た」などとする最終報告書原案を提出すると書いてあるが、「すべての機能は電源があることが前提となっていた」「その作業も杜撰」など、これまでの行動を見て、私は、放射線の危険からの安全管理の欠如、危機管理意識のなさが大きな原因であり、そのために必要な準備も後始末もなされないのだと思っている。 また、事故後の現場対応についても、(1)(2)で述べたような情報をつかんで伝えられるだけの知識と経験がなければその現場で十分に働くことはできず、「問題点は認められるが、総合的には標準以上」という評価は、現場に甘すぎるだろう。 (4)320億円かけたら、凍土壁で地下水を遮水できるのか? *5に記載してあるように、東電は、四方遮水壁を作るのに1000億円かかるので、これを断念したそうである。私は、単なる構造物を作るのに1000億円は高すぎると思うし、それが高すぎるため四方遮水壁をやめ、岸壁近くの海側地盤に薬液を注入して水を通しにくくする遮水壁を造り、それで地下水を止められると思ったというのにも、開いた口がふさがらなかった。 その破綻した地下水の処理のため、*6のように、今度は国が前面に出て、福島第一原発の汚染水対策に470億円をかけ、予備費も使って、土を凍らせた遮水壁の建設を前倒しするそうである。常に16度前後を保っている大量の地下水を凍らせ続けるために、どのくらいの運用費がかかるかの試算はしていないそうだが、いくらかけても自然の大量の地下水を凍らせ続けることはできないと断言する。しかし、無理に冷却し続けることで、周囲の地下水の温度が下がり、それが海水の温度まで下げて、近くの生態系を狂わせることは明らかだ。 また、汚染水から放射性物質を取り除く装置の新設に150億円かけるそうだが、メディアは、これがアレバ社製の最初のものよりどこが優れており、どの程度の核種を除去でき、海に流せる程度に浄水できるのか否かを報道すべきだ。何故なら、結果が出なければ、誰かの道楽で、”財政再建中”の国費を湯水のように使うことになるからである。 *1:http://www.nikkei.com/article/DGXNASFS02020_S3A900C1PP8000/ (日経新聞 2013/9/2) 汚染水「処理後の海洋放出に理解を」 規制委委員長 原子力規制委員会の田中俊一委員長は2日、日本外国特派員協会で記者会見した。東京電力福島第1原子力発電所で放射性物質を含む汚染水がたまっている問題では、放射性物質を基準値以下にした後に「海に放水することは避けられない」との見解を改めて示した。「精いっぱいの努力をしているので理解いただきたい」と話した。汚染水を海洋放出する場合は約60種類の放射性物質を取り除くことができる「多核種除去設備(ALPS)」で事前に処理することを説明。装置で除去できないトリチウムについては「希釈なりをして放出することになると思う」と話した。また「世界中の原子力施設から、そういったものは通常の場合でも出ている」と説明。「歴史的には核実験などで大気中の放射能レベルが今より数万倍高かった時期もある」とも指摘した。 原発内のタンクから汚染水が漏れ出した問題に関しては「一番大事なことは国際社会に適切な情報を伝えること」と指摘。「状況は日々変わっており、客観的な情報を丁寧、的確に提供することを原子力規制庁の職員にも指示した」と述べた。 *2:http://www.minyu-net.com/news/news/0825/news9.html (2013年8月25日 福島民友ニュース) 「旧保安院が開口承認」 排水弁運用で東電が謝罪 東京電力の相沢善吾副社長・原子力・立地本部長は24日、県庁で内堀雅雄副知事に会い、高濃度汚染水が漏れた地上タンク群を囲むコンクリート堰で排水弁を全て開けていた運用について「間違い」と認め、謝罪する一方、旧原子力安全・保安院の承認を受けていた経緯も明らかにした。東電、旧保安院が堰の役割を十分認識して運用していれば外部漏出は最小限に抑えられた可能性が高い。相沢副社長は「(人員確保のため)現場の判断があった。(弁を)閉めていると雨が降るたびに水を出しにいかなければならない」と述べた。タンクの見回りは8人の作業員で1日2回だったが、人員不足を背景に作業員の負担軽減のため開けていた可能性がある。今後、人員増強など具体策を詰めるとしている。 *3:http://digital.asahi.com/articles/TKY201309010256.html (朝日新聞 2013年9月2日) 配管からも汚染水漏出 福島第一、タンク見回りを増員 東京電力福島第一原発の4カ所のタンク付近から高い放射線量が検出された問題で、東電は1日、このうち1カ所で新たな汚染水漏れを確認したと発表した。タンク間をつなぐ配管の継ぎ目からで、タンク本体だけでなく、配管にも危険が潜む現状が浮き彫りになった。東電は2日以降、見回りの作業員をこれまでの10人程度から60人まで大幅に増やす。漏れが見つかったのは、先月19日に約300トンの汚染水漏れが分かったタンクがある「H4」と呼ばれる区画から、南西に約100メートル離れた「H5」区画。31日に見回り中の作業員が継ぎ目部分の外側の保温材を押したところ、水滴が落ち、床面を測ると毎時約230ミリシーベルトを検出。保温材を外したところ、配管とタンクをつなぐ継ぎ目部分から約90秒に1滴の割合で漏れているのを見つけた。継ぎ目のボルトを締めると漏れは止まったという。また、31日に表面で毎時1800ミリシーベルトが検出された「H3」区画のタンクを1日にあらためて調べたところ同1100ミリシーベルトだった一方、同じタンクの反対側で同1700ミリシーベルトを検出した。ただ、主に透過力が弱いベータ線で、防護すれば遮蔽(しゃへい)できる。東電は今後、このタンクの汚染水を別のタンクに移す方針。 *4:http://mainichi.jp/feature/20110311/news/20130902k0000e040158000c.html (毎日新聞 2013年9月2日) 福島第1原発:事前の対策に不備 原子力学会が最終報告案 東京電力福島第1原発事故を調べている日本原子力学会の事故調査委員会(委員長=田中知・東京大教授)は2日、「津波や過酷事故への対策が適切に実施されていれば事故は避け得た」などとする最終報告書原案の概要を東京都内で開いた会員向けの説明会で公表した。3日から青森県で開かれる大会でも報告し、会員からの意見を踏まえて年内にも最終報告書をまとめる。学会事故調は昨年6月に発足。約50人の専門家が既存の公表データを中心に事故進展や現場対応、事前の備えなどを調査した。原案では、事故の直接原因について、津波や過酷事故への事前の対策の不備を挙げた。機器などの設計で「すべての機能は電源があることが前提となっていた」ことを「根本的過ち」と指摘。最初に水素爆発を起こした1号機の非常用復水器(IC)が機能しなかった要因について「ICの機能への認識があいまいで、作動経験に乏しかったため」と結論付けた。 こうした事前の備えの不備の背景として、事業者や規制当局の安全意識の欠如に加え、「専門家が狭い専門に閉じこもり、システムとしての安全に見落としがあった」ことなどを挙げた。一方、事故後の現場対応については「問題点は認められるが、極限状況での人間の対応には限界があり、総合的には標準以上」と評価した。 *5:http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2013090302000238.html (東京新聞 2013年9月3日) 東電、費用公表に難色 「四方遮水壁 1000億円規模」 東京電力福島第一原発の汚染水問題で、福島県民らでつくる福島原発告訴団は三日、東電が汚染水対策として原発地下の四方に遮水壁を造るのが「最も有力」と位置付けながら、一千億円規模の費用や着工時期を公表しない方針を記していた内部文書を入手したと発表した。遮水壁は結局、海側にしか設置されていない。告訴団は同日、汚染水漏れは管理のずさんさが招いた公害だとして、この内部文書のコピーなどを添え、公害犯罪処罰法違反容疑で東電幹部らの告発状を福島県警に提出した。 告訴団によると、入手したのは原発事故から約三カ月後の二〇一一年六月に、東電から政府側にあてた内部文書という。発電所の四方に壁を造って遮水する「地下バウンダリ」という対策について、基本仕様や記者発表の対応方針が書いてある。このうち「基本仕様について」と表題のある文書は、1~4号機原子炉建屋などの地中の四方を囲む遮水壁の工事は設計がまとまり次第、着手する予定とし、「高濃度の滞留水(汚染水)をこれ以上海洋に流出させないために、『後追いにならない備え』とする」と明記している。だが、併せて作成されたとみられる記者発表に関する文書では、遮水壁は設計次第で一千億円規模の工事費がかかる可能性があり、「仮に一千億円レベルの更なる債務計上を余儀なくされることになれば、市場から債務超過に一歩近づいたとの厳しい評価を受ける可能性が大きい。是非回避したい」と記述。発表する際は着手時期や費用を「今後の調査・設計次第で不明」とする方針を伝え、政府側に理解を求めている。 地下の四方に造るはずだった遮水壁は海側にしか造られず、東電側はこの設置費も公表していない。東電の尾野昌之原子力・立地本部長代理は先月の会見で「建屋地下の汚染水は地下水位との微妙なバランスで管理している。不用意に陸側に壁を造ると、バランスを崩す恐れがあった。技術的側面の判断で、決して予算面での判断ではなかった」と強調していた。東電はこの文書について本紙の取材に回答せず、告発状については「コメントは控える」としている。 *6:http://www.nikkei.com/article/DGXNASDF03004_T00C13A9MM0000/?dg=1 (日経新聞 2013/9/3) 福島原発、汚染水対策に470億円 政府が基本方針 遮水壁、建設前倒し <政府の主な汚染水対策> ■体制・資金 ・経済産業省や国土交通省などが関係閣僚会議を設置。東京電力や地元と連携する現地事務所を新設し、国の担当官が常駐 ・総額470億円を投入。うち2013年度予算の予備費を210億円つかい、対策を前倒し ■対 策 ・建屋を凍った土で覆う遮水壁の設置(320億円) ・汚染水から放射性物質を取り除く装置を新設(150億円) 東京電力福島第1原子力発電所から高濃度の放射性物質を含む汚染水が漏れている問題で、政府は3日、総額で約470億円の国費を投じ政府主導で解決する方針を固めた。国の全額負担で原子炉建屋への地下水の流入を遮断する凍土壁を設置するほか、汚染水を浄化する装置も増設する。東京電力主体の従来の対策よりも前倒しで事態を解決できるようにする。3日に開いた原子力災害対策本部で汚染水対策の基本方針を示した。安倍晋三首相は「世界中が注視している。政府一丸となって取り組みたい」と述べた。対策費は凍土壁の建設費で320億円、浄化装置の開発費で150億円と見積もった。対策費のうち約210億円は2013年度予算の予備費でまかない、年度内に対策に取りかかる。約2年の工期がかかる凍土壁の建設を前倒しする。 凍土壁は建屋のまわりの土を冷却剤の循環により凍らせて地下水の浸透を防ぐ設備。原発内にたまった汚染水を浄化する多核種除去設備(ALPS)も、東電が設置する3系統に加え、国が高機能な浄化設備を増設する。 汚染水対策に向けた体制も強化する。従来は経済産業省や原子力規制庁が汚染水問題に対処していたが、国土交通省や農林水産省も加えた関係閣僚会議を発足させる。地下水や土壌改良の専門家を集め、政府一丸で対策にあたる態勢を整える。東電や地元との連携を深めるため、国の現地事務所も新設。福島第1原発の周辺に常駐する担当官を増やし、情報収集や対策協議を密にする。 基本方針には、▽建屋に流れ込む地下水のくみ上げ▽地下坑道(トレンチ)にたまっている高濃度汚染水の除去▽汚染水の海への漏洩を抑えるための地盤改良――などを盛り込んだ。個々の対策の実施計画も明らかにし、早期解決に向けた姿勢を内外に示す。 東電は7月下旬、福島第1原発から汚染水が海洋に流出している可能性を認め、流出量を1日300トンと推計した。対策は後手に回り、8月には汚染水をためるタンクからの漏洩が見つかるなど事態は悪化の一途をたどっていた。 原子力規制委員会は汚染水問題が、国際原子力事象評価尺度(INES)でレベル3(重大な異常事象)に相当するとの評価を決定。国内外に懸念が広がっているため、政府は「対策を東電任せにせず、国が前面に立つ」(安倍首相)との姿勢を打ち出していた。
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2013,08,24, Saturday
*3より 2013.8.19日経新聞より 2013.8.5日経新聞より (1)原発の本当のコスト 私が、このブログの「原発」「内部被曝」「環境」のカテゴリーにずっと記載しているとおり、原発でシビアアクシデントが起こった場合は、近隣の住民が一時的に避難すれば災害を免れるというものではない。外に放出された放射性物質は、*1のように森林や土壌を汚染して植物や動物(人間も含む)の体内に入り、結局は、人間が食べ物や呼吸によって内部被曝させられる。また、汚染された水は、いろいろな経路で川や海に流れ込んで海産物を汚染するが、人間にとって危険物であるため、除染も容易ではない。 そのため、原発のコストには、電力会社が支出する経費だけでなく、国が原発立地自治体に支払う交付金や原発事故処理のために支出するコスト、金銭の受け渡しがなかったとしても住民が危険にさらされたコストや農林漁業や観光業が受けた損害としてのコストがある。金銭の受け渡しがないのに、関係のない他者が支払うコストを、経済学では「外部不経済」と呼び、その典型的な例が公害だ。 (2)佐賀県の首長の意見 「今回、シビアアクシデントを起こしたのは、東京電力であって九州電力ではない」と地元の関係者には言う人が多い。しかし、技術やセキュリティーのレベルはあまりかわらないし、事故が起こった際には、玄海原発の方が福島第一原発よりも陸地の汚染地域が広くなる。そのため、これだけのリスクを犯してまで原発で発電する必要はないと私は考えている。 *3及び上の左図は、原発交付金を受けており、自民党支持者の多い佐賀県の首長アンケートの結果だが、原発の今後については「将来的に廃止」が16人で最も多く、「数を減らして維持」「現状維持」は合わせて4人で、ごく少数であった。一般市民では、さらに再稼働反対が多く、再稼働を認める人でも、「原発で生活しているから」「今は仕方がないから」という理由が多い。 (3)もう再稼動させない *4のとおり、長崎県漁連も原発再稼働に反対している。また、私もこのブログの2018.8.23に記載しているとおり、放射線被害に関する電力会社や日本政府の環境意識は高くはなく、規模をより大きくした水俣病の二の舞になりそうだと思っている。また、原発は、事故が起これば被害が大きく、人間の力が及ばないため、もう再稼動は許さないようにしよう。そう決めてしまえば、*5や上の中央・右図のように、いろいろな工夫があり、やりようはいくらでもあるのだから。 *1:http://www.tokyo-np.co.jp/article/tochigi/20130824/CK2013082402000139.html (東京新聞 2013.8.24) 捕獲のシカから1000ベクレル イノシシと合わせ7検体が基準値超え 栃木県が実施した野生鳥獣の放射性物質モニタリング調査で、宇都宮、大田原、日光、市貝、塩谷の五市町で捕獲されたシカとイノシシの計七検体から、国の一般食品の基準値(一キログラム当たり一〇〇ベクレル)を上回る放射性セシウムが検出された。県の発表によると、六~七月にかけて県内十四市町で捕獲したシカ六検体、イノシシ十三検体、カルガモ二検体の計二十一検体を今月二十二、二十三の両日に測定。最高値は日光市で六月三十日に捕獲されたシカで、一〇〇〇ベクレルあった。ほかにシカ二検体とイノシシ四検体から一六〇~二八〇ベクレルが検出された。県は「捕獲場所周辺での野生鳥獣の自家消費は控えて」と注意を呼びかけている。 *2:http://www.asahi.com/paper/editorial.html?ref=com_gnavi#Edit2 (朝日新聞 2013年 6月 29 日) 原発と政治―「地元」をとらえ直そう 原発が事故を起こせば、極めて広範囲に打撃を与える。この最低限の教訓さえ、まだきちんと生かされていない。国は福島の事故後、防災対策を準備する「重点区域」を、原発の8~10キロ圏から30キロ圏に広げた。対象の自治体は45市町村から135市町村に増えた。原発を再稼働するなら、これら「地元自治体」から同意を得るのが不可欠だろう。実際、関係する自治体は電力会社に、再稼働時は同意を条件とする立地自治体並みの協定を結ぶよう求め始めている。だが、交渉は難航している。関西電力が早期の再稼働をめざす福井県の高浜原発では、30キロ圏内に入る京都府や滋賀県の自治体が関電と交渉中だが、関電は認めようとしない。 立地自治体の側にも、被害地域を広く想定する国の方針に反発する動きがある。福井県は全国最多の14基の原発が集中立地し、大きな災害が起きれば原発が相次いで事故を起こす心配がある。ところが、県は「国の避難基準があいまい」などとして、隣接する他府県の自治体との交渉を後回しにし、避難先を県内に限る計画をつくった。その結果、美浜原発の過酷事故を想定した6月の避難訓練では、美浜町民は原発から遠ざかる滋賀県ではなく、県の計画に従い、大飯原発のある県内のおおい町へ逃げた。これが、住民の安全を第一に考えた対応だと言えるだろうか。背景には、原発事業者と立地自治体との特別な関係がある。事業者は自治体に寄付金や雇用の場を提供し、自治体は危険な原発を受け入れる。「地元」が広がれば、事業者にとっては再稼働のハードルが上がり、立地自治体もこれまで通りの見返りが得られる保証はない。事故の現実を目の当たりにしてもなお、双方に、そんな思惑が見え隠れする。こんないびつな関係を続けることは、もう許されない。 事業者は30キロ圏内の自治体と協定を結び、監視の目を二重三重にする。自治体は広域で協力し、発言力を強める。そして万一の際の避難計画をつくる。もたれあいでなく、住民の安全を第一に、緊張感のある関係を築かねばならない。しかも、これからは新しい規制基準のもと、再稼働できない原発も出てくる。国策に協力してきた自治体にとっては厳しい事態ではある。原発への依存から方向転換するのは容易ではない。ただ、福井県も「エネルギー供給源の多角化」を掲げ、液化天然ガス(LNG)の受け入れ基地の誘致に動き出すなど、脱原発依存に向けた試みが垣間見える。安倍政権は、再稼働への理解に努力するのではなく、新たな自立への支援にこそ、力を入れていくべきだ。 *3:http://www.saga-s.co.jp/news/saga.0.2507474.article.html (佐賀新聞 2013年7月13日) 原発再稼働 知事・首長アンケート 九州電力玄海原発3、4号機(東松浦郡玄海町)の新規制基準に基づく安全審査申請に合わせ、佐賀新聞社は知事と県内20市町の首長に玄海原発の再稼働や将来的な原子力政策について聞いた。再稼働は21人のうち、玄海町長が「賛成」、14人が「条件付き賛成」、「反対」が5人、「その他」が1人だった。今年3月時点のアンケートと比べ、「反対」が2人増えた。ただ、「条件付き賛成」「反対」のいずれも、「地元理解」を求める意見が多く、再稼働に向けては、安全協定の締結を含めた同意手続きの在り方が焦点になりそうだ。再稼働について、「賛成」「条件付き賛成」「反対」の3項目から選択してもらった。樋渡啓祐武雄市長と田中源一江北町長が前回の「条件付き賛成」から「反対」に変わった。ただ、反対の理由は「新基準をクリアするには現時点で無理がある。まずは地元への事前説明を」(武雄)、「時期尚早。何が何でも反対ではないが、(安全協定を含め)県民の理解を得る努力を」(江北)と、丁寧な説明と地元理解を求めた。「条件付き賛成」でも、「規制委の厳しいチェックを」(田島健一白石町長)と厳格な審査を求める意見のほか、「周辺地域の安全対策や安全協定の締結」(塚部芳和伊万里市長)、「市長会として協定締結の話し合いを進めている」(横尾俊彦多久市長)など、九電に対して安全協定を求める声も多かった。このほか、「最終的には国が判断し、自治体などに十分説明して住民の不安払しょくを」(坂井俊之唐津市長)、「国が安全性確保を保障し、十分な説明を」(秀島敏行佐賀市長)など、国の積極的な関与を求める声も多かった。古川康知事は「いずれも選択せず」とした上で、「現時点で判断材料がまったく示されていないため、国が責任を持って判断し、再稼働までのプロセスを明確に示してほしい」と今後の手続きの明確化を求めた。 7月8日に施行された新規制基準については「シビアアクシデント対策などが強化された」と一定の評価を示す声がある一方、「専門的知識もなく、判断できない」との意見も目立ち、自治体独自での安全性確認の難しさも浮き彫りになった。原発の今後については3月の回答と変わらず、「将来的に廃止」が16人で最も多く、「数を減らして維持」「現状維持」が合わせて4人。古川知事は「その他」とし、「中長期的には依存度の低減を進めていく必要がある。エネルギー戦略は国が責任を持って決めていくべきもの」と答えた。 *4:http://www.saga-s.co.jp/news/global/corenews.0.2525873.article.html (佐賀新聞 2013年8月5日) 長崎県漁連、原発の再稼働反対 / 玄海、海上デモも 長崎県漁業協同組合連合会は5日、理事会を開き、原発事故が起きた場合の漁業被害対策について九州電力から納得のいく説明がないとして、玄海原発(佐賀県玄海町)の再稼働に反対することを決めた。漁船による海上デモの実施方針も確認。都道府県単位の漁連として異例の対応を取る。理事会では「玄海原発再稼働に関する緊急対策本部」(本部長・川端勲長崎県漁連会長)を5日付で設置した。今後実施する反対活動の詳細を詰める。海上デモのほか、国への要請活動や農協など1次産業に関わる他団体との連携を検討する方針も確認した。 *5:http://qbiz.jp/article/22355/1/ (西日本新聞 2013年8月23日) 九州の太陽光発電、普及堅調 玄海1号並み容量に 昨年7月に始まった再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度で、九州7県で発電を始めた太陽光発電の設備容量が、5月末で玄海原発1号機(佐賀県玄海町、出力55万9千キロワット)を上回る56万2千キロワットに達した。太陽光発電は天候に左右され、出力は最大でも設備容量の半分程度にとどまるものの、記録的な猛暑が続く中、電力の供給力確保に一定の貢献をしているとみられる。20日に経済産業省が公表した資料を基に集計した。九州7県で稼働中の太陽光発電設備容量は、全国の19%を占め、九州で再エネの導入が堅調であることがうかがえる。県別で九州最大は福岡の17万6千キロワットで、全国でも愛知県の18万1千キロワットに次ぐ2位だった。九州の2番目は熊本の7万8千キロワット、3番目が大分の7万5千キロワットだった。福岡県の稼働設備容量が全国トップクラスであることについて九州経済産業局は「短期間で太陽光発電を設置する技術を持つ業者がいることが一因」とみている。一方、九州で同制度を活用するための認定を受けた設備容量は計498万1千キロワット。稼働設備容量の9倍近くあり、稼働しているのは認定設備容量の11%にとどまる。県別では鹿児島の105万4千キロワットが九州で最も多く、全国でも4位だった。大分は95万7千キロワットで全国5位。福岡は75万9千キロワットで九州で3番目だった。太陽光発電以外で九州で稼働しているのは、長崎のバイオマス発電(2千キロワット)、鹿児島の水力、大分の地熱など計3千キロワット。認定を受けながら未稼働の施設(計7万9千キロワット)としては、鹿児島の風力発電4万4千キロワットが目立ち、熊本と宮崎の水力、熊本と鹿児島の地熱などが含まれる。 PS(2013.8.29追加):小泉元首相の政策選択のセンスは、やはりGoodです。 *6:http://mainichi.jp/opinion/news/20130826ddm003070155000c.html (毎日新聞 2013年8月26日 東京朝刊) 風知草:小泉純一郎の「原発ゼロ」 脱原発、行って納得、見て確信−−。今月中旬、脱原発のドイツと原発推進のフィンランドを視察した小泉純一郎元首相(71)の感想はそれに尽きる。 三菱重工業、東芝、日立製作所の原発担当幹部とゼネコン幹部、計5人が同行した。道中、ある社の幹部が小泉にささやいた。「あなたは影響力がある。考えを変えて我々の味方になってくれませんか」。 小泉が答えた。 「オレの今までの人生経験から言うとね、重要な問題ってのは、10人いて3人が賛成すれば、2人は反対で、後の5人は『どっちでもいい』というようなケースが多いんだよ」。「いま、オレが現役に戻って、態度未定の国会議員を説得するとしてね、『原発は必要』という線でまとめる自信はない。今回いろいろ見て、『原発ゼロ』という方向なら説得できると思ったな。ますますその自信が深まったよ」。 3・11以来、折に触れて脱原発を発信してきた自民党の元首相と、原発護持を求める産業界主流の、さりげなく見えて真剣な探り合いの一幕だった。 呉越同舟の旅の伏線は4月、経団連企業トップと小泉が参加したシンポジウムにあった。経営者が口々に原発維持を求めた後、小泉が「ダメだ」と一喝、一座がシュンとなった。 その直後、小泉はフィンランドの核廃棄物最終処分場「オンカロ」見学を思い立つ。自然エネルギーの地産地消が進むドイツも見る旅程。原発関連企業に声をかけると反応がよく、原発に対する賛否を超えた視察団が編成された。 原発は「トイレなきマンション」である。どの国も核廃棄物最終処分場(=トイレ)を造りたいが、危険施設だから引き受け手がない。「オンカロ」は世界で唯一、着工された最終処分場だ。2020年から一部で利用が始まる。 原発の使用済み核燃料を10万年、「オンカロ」の地中深く保管して毒性を抜くという。人類史上、それほどの歳月に耐えた構造物は存在しない。10万年どころか、100年後の地球と人類のありようさえ想像を超えるのに、現在の知識と技術で超危険物を埋めることが許されるのか。 帰国した小泉に感想を聞く機会があった。 −−どう見ました? 「10万年だよ。300年後に考える(見直す)っていうんだけど、みんな死んでるよ。日本の場合、そもそも捨て場所がない。原発ゼロしかないよ」。 −−今すぐゼロは暴論という声が優勢ですが。 「逆だよ、逆。今ゼロという方針を打ち出さないと将来ゼロにするのは難しいんだよ。野党はみんな原発ゼロに賛成だ。総理が決断すりゃできる。あとは知恵者が知恵を出す」。 「戦はシンガリ(退却軍の最後尾で敵の追撃を防ぐ部隊)がいちばん難しいんだよ。撤退が」。
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2013,08,15, Thursday
2013.8.9 朝日新聞より 2013.8.7 日経新聞より (1)事故の事実は開示されていたのか 2011年3月12~15日に東電福島第1原発が爆発して2年5ヶ月が経過しているが、事故の真相は未だ国民には知らされておらず、爆発した原発の地下や核燃料がどうなっているのかわからない。しかし、高濃度汚染水は確実に海洋に流出しており、経産省の担当者は、「汚染水は、事故直後から流出している可能性も否定できない」と言うが、東電が汚染水海洋流出の事実を認めたのは2013年7月であり、都合の悪い事実は隠していた。*5には、「恐れるべきは、この責任者が、国なのか東電なのか、はっきりしないことである」と書かれているが、国は、東京電力からの情報に基づいて対応しているため、東京電力が正確な情報を適時に国や地方自治体に開示していたか否かは重要な問題である。 (2)汚染水対策は的確だったのか そのような中、*3に書かれているように、海への流出防止のために薬剤で土を固めて地下に設置した「土の壁」を越えて、汚染水は海に流出している。その土の壁は、地表から深さ約1・8メートルまで作ったもので、横も上も閉じていないため、横と上から汚染水が流れ出ている。また、*2に書かれているように、地下水の水位が上昇した分、貯水槽が40センチ浮いたそうだが、これらは、やってみるまでもなく当然のことである。そういう土の壁を作ると地下水の流れを止めることができるというのは、誰の発案で実行に移されたのだろうか。無駄な税金を使ったのだから、責任追及すべきだ。 次は、*4、*5に記載されているように、「抜本対策の切り札として、経済産業省と政府が原発1~4号機の周囲1.4キロの土壌を凍らせて地中に壁を作り、地下水の流入を抑制する『凍土遮水壁』で地下水を阻止する」とのことである。しかし、永久凍土地帯でもないのに、原発周囲の大量の地下水に熱を与えられ、これが成功するわけがない。人の生命線である社会保障を減らし、消費税率を上げようと言いながら、このように何も産まない無駄遣いばかりするのはいい加減にすべきだ。「大事なのは、一刻も早く汚染水の流出を止めることだ」と記載されているが、それならば、原発周囲に、コンクリートで遮水壁を作るべきだろう。結局、水で冷やし続ける方法は破綻したのだから。 (3)菅元首相が視察に行って邪魔したからベントができなかったというのは言い訳だ *5のように、いざという時には、「東電だけで事態を打開するのが困難だから、国が税金を使って前面に出よ」という声になるにもかかわらず、東電は、(1)でも明らかなように、菅元首相に適時、的確に情報を伝えたとは思えない。そのためもあって、菅元首相は視察に行ったのだと思う。それで邪魔されたからベントができなかったなどというのは東電の言い訳にすぎないが、*1によれば、「菅元首相が東日本大震災が起きた翌日に福島原発の視察を強行した」という理由で刑事責任を問うた人がいるので驚いた。何故なら、言いがかりも甚だしいからである。首相は、何も知らずに金だけ出せとでも言うのだろうか?それでは、国民が困る。 しかし、勝俣前東電会長や東電関係者は、①事実や情報を正確に伝えなかった ②事故の対応が的確でなかった ③シビア・アクシデントを想定外にしていた などの理由で、業務上過失致死等の罪に問われるのは当たり前であり、急に与党となっていた民主党の菅元首相とは事情が違うだろう。 *1:http://www.saga-s.co.jp/news/global/corenews.0.2533169.article.html (佐賀新聞 2013年8月14日) 菅元首相、原発事故刑事責任ない / 告訴・告発で検察に文書提出 東電福島第1原発事故をめぐり、業務上過失傷害容疑などで福島県の住民らから告発された菅元首相が「事故直後の対応に問題はなかった」と自身の刑事責任を否定する文書を14日、弁護士を通じて検察当局に提出した。 菅元首相は東日本大震災が起きた翌日に福島原発の視察を強行したとして批判を浴びた。関係者によると、提出した書面では、当時の対応を時系列で詳細に説明し、原子炉格納容器の圧力を下げるベントについては「視察前に東電側の要請を受けて了承しており、対応に問題はなかった」と主張したという。 検察は、勝俣前東電会長ら東電関係者も含む約40人について不起訴処分にする見通し。 *2:http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130813-00000032-asahi-soci (朝日新聞デジタル 8月13日) 貯水槽40センチ浮く 福島第一原発、地下水の浮力か 東京電力は13日、福島第一原発で4月に汚染水が漏れた地下貯水槽が最大40センチ浮き上がったと発表した。周囲を流れる地下水によって浮力が生じたことが原因とみられる。汚染水は地上タンクに移送され、貯水槽は空だった。東電は、新たな汚染水の漏れはないと説明している。東電によると、高濃度の汚染水が入っていた3号貯水槽(縦56メートル、横45メートル、深さ6メートル)が最大約40センチ浮き上がり、5、6号機の建屋地下の低濃度汚染水を入れていた4号貯水槽(縦40メートル、横25メートル、深さ6メートル)も最大約15センチ浮き上がった。3、4号貯水槽は、いずれも1~4号機の建屋の山側にある。1日千トンの地下水が流れているという。貯水槽周辺の地下水位は4月から1メートル程度上昇したという。対策として東電は、地下貯水槽の上に50センチほどの砂利を敷き、重しにする。ゲリラ豪雨などで急に地下水位が上がった場合は、地下貯水槽の周囲の井戸から地下水をくみ出し、別の地下貯水槽に移すという。 *3:http://www.saga-s.co.jp/news/global/corenews.0.2530705.article.html (佐賀新聞 2013年8月10日) 土の壁越え、原発の汚染水流出 / 地下水上昇し海側に 福島第1原発の汚染水流出問題で、東京電力は10日、海への流出防止のため地下に設置した「土の壁」から約2メートル山側の地下水の水位を測ったところ、壁を越える高さだったと発表した。周辺の地下水からは高い濃度の放射性物質が検出されており、東電は「汚染された水が壁を乗り越えて海側に流出している可能性が高い」としている。土の壁は護岸の地盤を薬剤で固めて、汚染水が海へ流れ出さないようにする仕組みだが、地表から深さ約1・8メートルまでは薬剤がうまく注入できず壁をつくることができないため水が通過する。これに対し、10日に測定された地下水の水位は地表から深さ約1・2メートル。 *4:http://373news.com/_column/syasetu.php?ym=201308&storyid=50440 ( 南日本新聞 2013.8.10 ) [汚染水対策] 東電に任せておけない 東京電力福島第1原発の汚染水が海に流出している問題で、安倍晋三首相が「東京電力に任せるのではなく、しっかりと対策を講じる」と政府主導で対応する考えを明らかにした。経済産業省は、2014年度予算の概算要求に原子炉建屋への地下水流入防止策の関連費用を盛り込む方針だ。認められれば、汚染水対策で初の国費投入である。汚染水の流出が明らかになったのを受け、東電は護岸の土壌改良など防止策を急いでいるが、効果は不透明だ。加えて、敷地内の汚染水は毎日400トンのペースで増え続けているのに、対策の決め手はない。東電の汚染水対策は事実上、破綻している。 このままでは海洋への汚染拡大が懸念される。責任を負うべき東電だけで事態を打開するのは困難だ。国が前面に出て、汚染水の封じ込めに全力を挙げてほしい。政府は、原発敷地内から毎日300トンの汚染水が海へ流出しているという試算を公表した。原発周辺で1日約1000トンの地下水の流れがあり、そのうち、地下にたまった高濃度の汚染水と混ざって汚染された水が、海へ漏れ出しているとみている。経産省の担当者は「事故直後から流出している可能性も否定できない」という。事故からもう2年5カ月になる。東電が海洋流出の事実を認めたのは先月のことだ。あまりに遅すぎると言わざるを得ない。問題を放置し、対策を講じてこなかった責任は重大である。政府は抜本対策の切り札として、原発1~4号機の周囲1.4キロの土壌を凍らせて地中に壁を作り、地下水の流入を抑制する「凍土遮水壁」に期待している。汚染水が増え続ける原因となっている地下水を阻止する作戦だ。ただ、これほど大規模な施工例はなく、効果は見通せない。工事費は300億~400億円、冷却のための維持費も膨大という。国費を投入する以上、実効性を慎重に検証する必要がある。そもそも汚染水問題は、原発事故直後の11年4月に超高濃度の汚染水漏れが見つかった時からの懸案である。廃炉計画を進めるにもこの問題の解決が欠かせない。安倍政権は発足直後から政府主導の廃炉対策推進を掲げてきたが、具体的な取り組みは遅れた。東電の対策の遅れを放置してきた責任も、国は重く受け止める必要がある。大事なのは、一刻も早く汚染水の流出を止めることだ。国は総力を結集して、具体的で実効性のある対策を講じなければならない。 *5:http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2013081002000135.html (東京新聞 2013年8月10日) 福島原発対策 国際海洋汚染の自覚を 何と恐ろしい話だろう。今この瞬間にも、放射能に汚染された地下水が海に流れ込んでいる。政府試算では、その量は一日三百トンにも上る。流出の元を誰かが断たねば、海洋汚染は広がるばかりだ。目の前の漁場を汚され、生活の糧を奪われ、なすすべもない漁師の心中は、察するに余りある。流出がこのまま続けば、英国の石油資本BPによる三年前のメキシコ湾原油流出事故を上回る、国際海洋汚染事件に発展する恐れもあるのではないか。九日の長崎平和宣言は「東京電力福島第一原発事故は、いまだ収束せず、放射能の被害は拡大しています」と訴えた。止められない汚染水は、被害拡大の象徴ではないか。恐れるべきは、この拡大の責任者が、国なのか東電なのか、はっきりしないことである。 経済産業省は、1~4号機の周りにパイプを巡らせ、マイナス四〇度の冷却材を循環させて、凍土の壁で囲い込み、地下水の流入を食い止める計画に、国費を投入するという。トンネル工事に用いられる工法だが、これほど大規模な遮水工事に効果があるかどうかは未知数だ。事故直後から構想はありながら、実行に移されてはいなかった。冷却材を循環させ続けねばならず、電力も費用もかかる。恒久的な対策とは思われない。 水の流れを、地中で完全に遮断するのは難しい。遮水工事を進めるのと同時に必要なのが、流出する地下水を減らす方法を見つけることだ。地下水の建屋への流入経路と、汚染水となって海へ広がる流出経路を突き止めて、完璧にふさいでしまうための調査こそ、必要なのではないか。建屋の周辺では、高い放射線量があらゆる作業を阻む、だとすれば、例えば日本のものづくり技術を総動員して、遠隔操作で探査や作業ができるロボットの開発を急ぐべきではないか。誰が費用を負担するかを議論しているような場合ではない。東電の負担なら電力料金に跳ね返る。国費なら税金だ。結局、負担するのは国民なのだ。その国民も、両者がそれぞれに全力を挙げ、一刻も早く汚染水の流出が止まり、廃炉への作業が安全に進むよう願っている。国費をつぎ込む以上、研究や作業の進み具合を、周辺住民はもちろん、国民すべてに速やかに報告すべきは、言うまでもない。
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2013,08,04, Sunday
*1より 2013.8.3日経新聞 *1、*2のように、「岸壁近くの地盤に薬液を注入して水を通しにくくする遮水壁を造り、汚染水が海へ流出するのを防ぐ」という記事が多くの新聞に出ていたが、私は、おかしいと思っていた。何故なら、地下水は、地面にしみ込んだ雨水や雪解け水が地下に大きな流れを作っており、陸地や海底から湧き出してくるものだからである。その大量の自然の水の流れを上のような遮水壁で止められるわけがなく、壁で遮られた水は、後ろから押されて横か上に行き、流れ出ると考えるのが自然である。ここで犯した大きなミスは、人間がちゃちな遮水壁を造ったり、ポンプで地下水をくみ上げたりすれば、自然界の大量の地下水を処分できると考えていたことだが、東電や原子力規制委員会の真意は何なのか? 私は、地中に汚染水がしみ出すのを止めるためには、その汚染源を片付けるか、それが不可能であれば水に溶けださない形(コンクリートで固めるなど)にするしかないと思っている。これが、チェルノブイリで行われたことだ。しかし、原発の爆発後、かなり広い範囲に放射性物質が飛び散っているので、雨が降れば流され、水にも溶け、川や地下水によって海に流れ込み、海は汚れるだろう。その放射性物質を片付けるのが除染だが、現在、森林は全く除染されていない。 さらに、東電は、「2013年8月2日、海に漏れ出た放射性トリチウム(三重水素)は20兆~40兆ベクレルに達するが、これは、事故前の運転で1年間に放出されていた量の約10~100倍にあたり、運転時の放出基準の上限とほぼ同程度で環境への影響は少ない」としているが、通常でもトリチウムがそれだけ排出されていたことは、今、初めて聞いた。また、「今後、より環境に影響を与えやすいストロンチウムの流出量についても試算する」としているが、今まで、やっていなかったのにも驚く。これらが、環境や人間に悪影響を与えないことが証明されない限り、「風評被害であって実害はない」とは言えない筈だ。 東電のやり方が、あまりにも自然の仕組み、生態系、人間の健康に疎いので、環境省の外局として、2012年9月19日に発足した原子力規制委員会メンバーの略歴を、*3のように調べてみた。その結果、ここに集まっている“専門家”5人の内訳は、工学系の原子力の専門家2人、理学系の地震の専門家1人、理学系の放射線の専門家1人、海外対応のための外務省出身者1人の合計5人のみであり、生態系・生物学・医学系の専門家は1人もいなかった。環境省の外局として原子力規制委員会を置く意味は、環境・生態系・人体への影響という視点の専門家が厳密なチェックをすることが期待されているにもかかわらず、それに関する専門家は1人もいなかったのである。何故だろうか? これでは、実効が上がらないのは当然であり、これらすべてのことが起こる土壌が問題なのだが、何故、そういうことが起こるのかという答えの一つが、*4の「驚愕! 東電幹部 原発再稼働へ向けて猛暑を念じ、経産省幹部へメール」という記事に示されていたので、参考までに掲載する。 *1:http://digital.asahi.com/articles/TKY201308020718.html?ref=pcviewpage (朝日新聞 2013.8.2) 福島第一原発、汚染水危機 地下水、3週間で地表到達の計算 廃炉計画、破綻招く恐れ 東京電力福島第一原発の放射能汚染水が海に流出し続けている問題で、原子力規制委員会は2日、初めての検討作業部会を開いた。しかし、抜本的な対策は示されず、東電が進めている対策では海への流出が止められない。事故から2年半たった今も八方ふさがりで、汚染の拡大を防げない危機的な状態が続いている。このままの状態が続けば、廃炉計画は破綻(はたん)しかねない。問題になっているのは、1~3号機の海側の敷地と港湾。地中に汚染水がしみ出し、海に漏れていると見られる。東電は岸壁近くの土を薬剤で固めて遮水壁を造り、汚染水が海へ流出するのを防ぐ工事を進めている。遮水壁ができあがっていくにつれ、観測井戸の水位が地表から1メートルほどまでに急上昇した。遮水壁で地下水がせき止められ、行き場がなくなったためとみられる。遮水壁は工法の制約で地下1・8メートルより深い部分しか造れない。すでに、観測井戸の水位が遮水壁の上端を上回っており、完成しても海への流出が止められないのではと懸念されている。このままのペースで上昇すれば3週間で、水が地面にあふれ出す計算だ。地下には配管や電線などを通す坑道が張り巡らされている。事故直後に超高濃度の汚染水が2、3号機の坑道に流れ込み、計約1万1千トンの水がたまったままになっている。この汚染水が、地震などで壊れた坑道から地中に広がっているとみられている。建屋から坑道はつながったままで、汚染水の流れを止めるのは難しい。2日の規制委の検討作業部会では、汚染された地下水をくみ上げるべきだとの指摘が出た。遮水壁による東電の対策では不十分との考えからだ。東電の担当者は会議で、遮水壁の工事の影響で、地下水をくみ上げるポンプの設置は8月後半になると回答。海への流出を防ぐには1日約100トン単位でくみ上げる必要があると試算する。だが、くみ上げた水を保管する場所がないのが実情だ。東電は、遮水壁を延ばして汚染水が広がっていると見られる場所を10月までに取り囲んで漏出を防ぐ工事をする。東電原子力・立地本部の尾野昌之本部長代理は2日、記者会見で「追加対策をすれば、相当改善される」と述べた。東電はこれとは別に、山側から流れる地下水が原子炉建屋に流れ込んで汚染される前にくみ上げて海に流し、汚染水が増えるのを抑える計画を進めている。しかし、地元漁協は今回の海への汚染水流出を受けて反発している。 ■20兆~40兆ベクレル、すでに流出 福島第一原発では2011年4、5月に2、3号機の坑道から高濃度の汚染水が海に漏れ出た。東電は、止水工事をして、その後の海への流出は止まったとみていた。しかし、それ以後も汚染水が漏れ続けており、東電は先月22日にようやく漏出を認めた。東電は8月2日、海に漏れ出た放射性トリチウム(三重水素)は20兆~40兆ベクレルに達するとの試算結果を発表した。事故前の運転で1年間に放出されていた量の約10~100倍にあたる。しかし、東電は「運転時の放出基準の上限とほぼ同程度で環境への影響は少ない」としている。地中から海への流出量について、東電は港湾内の海水のトリチウムの濃度が上昇した今年5月以降は汚染水の流出量がさらに増えたと試算。7月末までで総量で20兆~40兆ベクレルに達すると見積もった。今後、より環境に影響を与えやすいストロンチウムの流出量についても試算する。 ◆キーワード <福島第一原発の放射能汚染水> 事故で溶けた燃料を冷やした水に地下水が混ざり、1日約400トンずつ汚染水が増えている。浄化装置で放射性物質を取り除いているが完全に取り切れないため、敷地内のタンクにため続けている。汚染水は7月30日現在で約42万トンにのぼる。 *2:http://digital.asahi.com/articles/TKY201307310752.html?ref=pcviewpage (朝日新聞 2013.7.31) 汚染水漏れ口、2年放置 事故直後、対策発表 東電福島第一原発 福島第一原発の放射能汚染水流出について、東京電力が事故直後の2011年4月、流出元の建屋と地下坑道の間の「遮断」を防止策として公表しながら、2年以上、建屋の漏れ口をふさがずに放置していたことが分かった。今夏、汚染水が海へ漏れていることが判明し、ようやく遮断工事の試験の準備に入った。対応の遅れが汚染拡大を招いた可能性が高い。東電は2011年3月27日、2号機タービン建屋そばの地下坑道に毎時1千ミリシーベルト超の汚染水がたまっているのを見つけ、翌日発表した。その際、地下坑道と建屋地下階の仕切りが津波で破られ、水の通り道ができたようだと説明した。朝日新聞記者は当時の会見で、汚染水が坑道のつなぎ目から地下に染み出して海へ漏れ出す可能性を質問したところ、東電の課長はその可能性を認めていた。東電は同年4月17日に事故収束への道筋を発表。2号機の汚染水流出で「再発防止策を検討・実施」した例として、実施済みの二つの対策と並んで「トレンチ(坑道)と建屋間の遮断」を発表資料に明記した。だが、実際は漏れ口をふさいで遮断しておらず、その後も放置していた。坑道の海側の端をコンクリートや砕石でふさぐ応急措置で十分と考えたとみられる。今年6月以降、汚染された地下水が海に流出していることが分かり、坑道にたまった汚染水が地下に染み出して海へ漏れた可能性が強まっている。東電によると、今も建屋と坑道は筒抜けで、高濃度汚染水が新たに流れ出している恐れがあるという。東電は取材に対し、坑道の海側の端をふさいだ措置が「トレンチと建屋間の遮断」にあたると主張。建屋の漏れ口の遮断は、政府の指示で12年5月に「信頼性向上対策」をまとめた以降は検討してきたが、「(技術的に)難しく、結果として今も閉塞できていない」としている。 ◆キーワード <汚染水流出問題> 原子炉冷却のため注入された水が汚染されて建屋へ漏れ出し、事故直後には海へ流出した。地下坑道にもたまっている。今年5月以降、海側の井戸の地下水から高濃度の放射能を検出。東電は7月19日に汚染水が海へ流出していると判断したのに22日まで公表せず、批判されている。 *3:原子力規制委員会(環境省の外局として、2012年9月19日発足) http://www.nsr.go.jp/nra/gaiyou/profile01.html 委員長 (任期5年) 1)田中 俊一 東北大学原子核工学科卒業 日本原子力研究所 東海研究所副所長 日本原子力学会会長 http://www.nsr.go.jp/nra/gaiyou/profile02.html 委員 (任期2年又は3年) 2)大島 賢三 東京大学法学部中退、外務省入省 (独)国際協力機構(JICA)顧問 国会福島原子力発電所事故調査委員会委員 3)島崎 邦彦 東京大学理学部地球物理学科卒 東京大学地震研究所教授 平成18年5月日本地震学会会長 4)中村佳代子 東京工業大学大学院理学系研究科博士課程修了 慶應義塾大学専任講師(医学部放射線科学) (公社)日本アイソトープ協会プロジェクトチーム主査 5)更田 豊志 東京工業大学大学院理工学研究科博士課程修了 原子炉安全工学部燃料安全研究室長 (独)日本原子力研究開発機構、原子力基礎工学研究部門副部門長 *4:http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20130710-00000002-sasahi-soci (Yahooニュース 2013年7月10日) 驚愕! 東電幹部 原発再稼働へ向けて猛暑を念じ、経産省幹部へメール 内容は、下の「続き▽」をクリックすると、見ることができます。 続き▽
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2013,07,28, Sunday
玄海原発事故時の汚染の広がり方 同九州の汚染予測 *3より (SPEEDIによる最初の1時間) *1に「東電は岸壁近くの地盤に薬液を注入し水を通しにくくする」と書かれているが、本当に薬剤で土を固めると地下水を止められると思っているのなら、東電は、あまりに物理・化学に弱いのではないか?何故なら、それは、土に薬液を注入して固め、ダムの壁をつくるのと同じくらい耐久性がない上、薬液が溶け出す可能性もあるからだ。また、東電は、「放射性物質をほとんど除去した処理済みの水を海に流そうと福島県や関連漁協などに理解を求めようとしていた」とも書かれているが、放射性物質のうちトリチウム(H3)は、水から分離できない物質であり、これだけ汚染水に鈍感な人たちが、「放射性物質をほとんど除去した処理済みの水」と言っても、もはや信用できないのである。 *2には、「東電はこれまで汚染水の漏出を認めてこなかったが、今月22日に一転して海への流出の可能性があるとの見解を示した」と書かれている。これについて、自らの産業に影響を受ける全漁連が東電に抗議するのは当然だ。食料を汚染された消費者も抗議したい。 そのような深刻な状況の中、*3には、「溶け落ちた燃料が格納容器の底部にたまる1~3号機の取り出し作業も見通しが立たない」「小野明福島第1原発所長は、『放射線量が高く、人が入っての作業が難しいため、中の様子は分かっていない』と説明した」と書かれているが、人が入らなくても、放射性物質があれば放射線を出すので、映像にすることができる。そのため、「分かっていない」というのは、言い訳にすぎない。さらに、現場を視察して説明を聞いた後、経済同友会の長谷川氏が「思っていたより被害状況はひどいが、他の原発については経済への影響や、エネルギー安全保障の観点からも、早期再稼働を求める考えは変わらないと言い切った」というのは、あまりにも自ら判断する能力がなく、経済産業省のシナリオに従っているだけで、経済界のリーダーとしての見識がないと思う。 そして、*4には、「全九州電気工事業協会の評議員大会が、7月18日、唐津市で開かれ、原発の早期再稼働を訴えるとともに、発送電分離には『電力の安定供給に支障が出る』として反対していくことを決めた」と書かれている。しかし、これは、再生可能エネルギーによる発電で利益を得る筈の多くの会員の要望ではなく、九州電力の旗振りによる既存の大企業のリーダーシップの結果であろう。また、九州電力の大島洋常務が、「世界最高水準の安全性を目指すことで、再稼働の理解を得たい」と言っているが、現在、福島第一原発事故の後始末、使用済核燃料の保管や処分、人権や環境への配慮など、総合的には最低の水準にあることを考えれば、そのようなことは無理と言うほかない。 また、事故が起これば、1時間以内に居住不能区域となる唐津市でこのような会合を行うのは、ずうずうしいにも程があるし、玄海原発は九州の北西部に位置するため、放出された放射性物質は、殆どが市街地、田畑、山、海苔の養殖で有名な有明海に落下するという意味で、フクイチよりも深刻な被害になるのである。 *1:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20130724&ng=DGKDZO57683210U3A720C1EA1000 (日経新聞社説 2013.7.24) 汚染水対策は破綻寸前だ 福島第1原子力発電所の敷地内から高濃度の汚染水が海に流出していることが明らかになった。流出がわずかだとしても海の汚染が今なお続く事実は重い。東京電力が状況把握に手間取り、海洋流出を否定し続けたため、漁業者らは東電への不信を一段と強めた。極めて憂慮すべき事態だ。東電はタンクにたまり続ける汚染水の処置に苦慮し、放射性物質をほとんど除去した処理済みの水を海に流そうと福島県や関連漁協などに理解を求めようとしていた。実現すれば汚染水を減らす切り札になり得たが、今回の事態で見通しがつかなくなった。 汚染水流出を止めるため、東電は岸壁近くの地盤に薬液を注入し水を通しにくくする。また流出源である疑いが濃い、原子炉建屋周辺のトレンチ(坑道)から汚染水を抜く計画だ。いずれも流出抑制に一定の効果が期待できるが、とりあえずの対症療法にすぎない。汚染水の発生を減らす抜本策を講じないと、増え続ける汚染水のせいで福島原発の収束作業が滞る事態が予想される。このことは今年4月に地下貯水槽からの低濃度汚染水の漏れが判明した時から指摘されてきた。東電の汚染水対策は破綻にひんしていると政府は認識すべきだ。もはや東電だけでは手に負えなくなりつつある。政府が一歩前へ出て世界の知恵を集め、長期的な展望にたった対策を考えて実行に移していく必要がある。汚染水流出で水産物の風評被害の再燃が懸念される。福島県の漁業者は昨年6月、タコ類など放射能の影響がきわめて少ないものから試験操業を始めた。現在は対象魚種を広げ、本格的な操業再開に向けて努力を続けている。福島県外の市場でも、水揚げした水産物の放射能を調べて消費者の信頼回復に取り組んできた。新たな汚染水流出は水産業の復興をめざす関係者の努力を台無しにしかねない。海の汚染状況の把握に政府と東電はもっと力を入れ、風評の払拭にも努めるべきだ。 *2:http://www.nikkei.com/article/DGXNASDG2501P_V20C13A7CC0000/ (日経新聞 2013/7/25) 全漁連が東電に抗議 福島第1汚染水問題 東京電力福島第1原子力発電所の汚染水が海に流出している問題で、全国漁業協同組合連合会(全漁連)などは25日午前、東電本社を訪れ、広瀬直己社長に抗議するとともに、再発防止を求める要望書を手渡した。全漁連の岸宏会長は広瀬社長に「全国の漁業者、国民に対する裏切り行為。強い怒りを抱く」と述べ、不快感をあらわにした。全漁連は東電に対し、汚染水漏出を早期に完全防止する対策を取るとともに、消費者の信頼を得るための海域モニタリングの徹底・強化を要請した。要望書を受け取った東電の広瀬社長は「申し訳なく思っている。対策をしっかりやっていきたい」と頭を下げた。東電はこれまで汚染水の漏出を認めてこなかったが、今月22日に一転して「海への流出の可能性がある」との見解を示した。 *3:http://qbiz.jp/article/20506/1/ (西日本新聞 2013年7月14日) 「被害予想以上」「それでも再稼働を」 経済同友会、福島第1原発視察 増え続ける汚染水との戦いに苦闘し、廃炉への道のりは遠く感じた−。13日、東京電力福島第1原発を視察した経済同友会の長谷川閑史(やすちか)代表幹事たちメンバー18人に同行して所内に入った。事故から2年4カ月たったが収束の見通しは立たない。原発の再稼働を強く求める経済界。長谷川氏は視察後、「それでも再稼働は必要」と強調した。視察はバスの車窓からに限られ、約40分かけて1周した。津波が襲った原子炉建屋のそばでは、ひしゃげたトラックや、ぐにゃぐにゃに曲がった鉄骨が残されたまま。放射線量は事故当時から大幅に下がったとはいえ、3号機のそばを通過する際は毎時1・15ミリシーベルトの放射線量を記録した。静まり返った車内に「ピ、ピ、ピ」と線量計の警報音が響いた。目下の課題は、増え続ける汚染水への対応。1〜4号機の西側から、原子炉建屋に1日400トンの地下水が流れ込む。東電は2016年度までに汚染水を収容するタンクの容量を、約80万トンに倍増する。敷地南側では急ピッチで造成工事が進められていた。汚染水の発生量そのものを減らすため、原子炉建屋西側に12本の井戸を掘削済み。建屋に入る前に地下水をくみ上げ、海に放出する計画も進める。東電は放出予定の水に汚染は無いとしている。だが、最近になって海側の井戸の水から放射性物質が検出された問題もあり、漁業者の同意は得られていない。視察に同行した東電の広瀬直己社長は「リスクを小さくする取り組みだと、何度でも説明したい」と話した。溶け落ちた燃料が格納容器の底部にたまる1〜3号機の取り出し作業も見通しは立たない。小野明福島第1原発所長は「放射線量が高く、人が入っての作業が難しい。中の様子は分かっていない」と説明した。5月末には、4号機の使用済み核燃料を取り出すための逆L字形の骨組みが完成。11月にも取り出しに着手する。所内には1日3千人の作業員が出入りする。約20キロ離れた「Jヴィレッジ」で行っていた防護装備の脱着などは、今月から発電所正門に新設した管理施設に移された。少しずつだが改善の兆しも出てきた。長谷川氏は視察後「思っていたより被害状況はひどいという印象」と述べたものの、他の原発については「経済への影響や、エネルギー安全保障の観点からも、早期再稼働を求める考えは変わらない」と言い切った。 *4:http://www.saga-s.co.jp/news/saga.0.2516846.article.html (佐賀新聞 2013年7月24日) 原発の早期再稼働訴え 九州電気工事業協 全九州電気工事業協会(4735社)の評議員大会が18日、唐津市で開かれた。原発の早期再稼働を訴えるとともに、発送電分離には「電力の安定供給に支障が出る」として反対していくことを決めた。大会には九州8県から約250人が参加。花元英彰会長は「夏の節電が社会生活や生産活動に影響を及ぼし、火力発電による燃料費の負担増は電力会社の経営だけでなく日本経済全体に深刻な影響を与えている」と述べ、原発の早期再稼働の必要性を訴えた。来賓出席した玄海町の岸本英雄町長は「安く、質のいい電気を提供してもらうことが日本の発展には必要」と早期再稼働の持論を繰り返し、九州電力の大島洋常務は「原発の全炉停止以降、わが社の財務は大変厳しい状況にある。世界最高水準の安全性を目指すことで、再稼働の理解を得たい」と語った。
| 原発::2013.7~9 | 01:57 PM | comments (x) | trackback (x) |
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2013,07,26, Friday
ストロンチウム分布(朝日新聞) 海の汚染(東京新聞) フクイチ3号機爆発 原発推進派の中には、「原発事故で亡くなった人はいない」と言う人がいるが、*1のように、もともと健康だった人が甲状腺癌などの原発由来の病気になり、心配しながら生きていかなければならないこと自体が、既に大きな被害である。その上、*1では、「放射線の影響を明らかに示すものではない」として、原発事故由来であることを曖昧にしている。しかし、その気があれば、福島原発事故の影響を受けなかった西部地域で同じような母集団について同様の検査をして比較すれば、福島県の「県民健康管理調査」の結果が原発事故由来か否かは、すぐに判明する筈である。 *2の意図的な甘さは、癌が増えるのは100ミリシーベルト以上の被曝をした人としていることである。実際には、生物の反応は正規分布になるので、100ミリシーベルト以上になると突然癌が増えるのではなく、なだらかなカーブを描いて増加する。このブログの2013.6.18の*2で引用したとおり、原発労働者は、累積被ばく線量5~130ミリシーベルトの被曝で白血病、多発性骨髄腫、悪性リンパ腫として労災認定を受けている。 *3の楢葉町井出の井出川河口付近で表面放射線量の高い破片4点が発見されたのは、福島第1原発事故の爆発で飛散したものと考えるのが自然だが、やはり「引き続き調べる」として曖昧にしている。これも、いつまでも不明としている点がおかしい。 そのような中、*4の盛岡市(福島第一原発から約250km)の対応は、遅ればせながら適切である。実は、私の自宅の埼玉県(福島第一原発から200~250km)でも、屋内で0.15~0.25マイクロシーベルトを記録しているが、埼玉県は何の対応もしていないばかりか、放射線量を測ってすらいない。アメリカ政府は、事故直後、原発から80km圏内の米国人は退避するよう指示していたが、チェルノブイリ事故の際は風向きによっては最大600kmまで濃度の高い放射性物質が拡散したとのデータがあり、距離だけではなく風向きも重要な要素である。これからは、きちんと放射線量を計測して、年間1ミリシーベルトを超える場所は公表してもらいたい。何故なら、それによって、福島第一原発事故の本当の被害や原発のコストが明らかになるとともに、原発事故が原因で病気になった人がその保障を受けられるからである。 *1:http://www.nishinippon.co.jp/nnp/science/article/7847 (西日本新聞 2013年6月5日) 甲状腺がん「確定」12人に 福島18歳以下、疑いは15人 東京電力福島第1原発事故による放射線の影響を調べている福島県の「県民健康管理調査」の検討委員会が5日、福島市で開かれ、甲状腺がんと診断が「確定」した人は前回2月から9人増え12人に、「がんの疑い」は15人になったとの結果が報告された。甲状腺検査は、震災当時18歳以下の約36万人が対象。これまで1次検査の結果が確定した約17万4千人の内訳を、調査主体の福島県立医大が説明した。前回2月の検討委では、がん確定は3人、疑いは7人だった。検討委の星北斗座長は、記者会見で「現時点では放射線の影響を明らかに示すものではないと理解している」と述べた。 *2:http://www.asahi.com/national/update/0719/TKY201307180504.html (朝日新聞 2013年7月19日)甲状腺被曝、公表の10倍 福島第一作業員、半数未受診 東京電力福島第一原発事故で、がんが増えるとされる100ミリシーベルト以上の甲状腺被曝をした作業員が、推計も含め2千人いたことが分かった。対象を広げ詳しく調べ直したことで、昨年12月の公表人数より10倍以上増えた。東電は、大半の人に甲状腺の異常を調べる検査対象となったことを通知したというが、受検者は半数程度にとどまるとみられる。作業員の内部被曝の大部分は事故直後の甲状腺被曝だ。だが、厚生労働省も東電も、全身の線量だけで作業員の健康を管理しており、甲状腺被曝の実態把握が遅れている。国の規則が全身の被曝線量の管理しか求めていないためだ。東電は昨年12月、一部の作業員の甲状腺被曝線量を初めて公表した。世界保健機関(WHO)に報告していた、実測値のある522人のデータで、100ミリシーベルト以上の人は178人、最高は1万1800ミリシーベルトとしていた。東電はこれをきっかけに、対象を広げ、甲状腺の線量をきちんと実測しなかった作業員についても、推計した。さらに今年に入り、東電からデータの提供を受けた国連科学委員会が、作業員の甲状腺被曝線量の信頼性を疑問視していることが判明。厚労省も、東電と関連企業に内部被曝線量の見直しを指示した。実測値を再評価したほか、体内に入った放射性ヨウ素の量がはっきりしない場合、セシウムの摂取量をもとに、作業日の大気中のヨウ素とセシウムの比率などから推計した。この結果、100ミリシーベルトを超えた作業員は1973人と分かった。中には、線量見直しで甲状腺被曝が1千ミリ以上増えた人もいた。旧ソ連のチェルノブイリ原発事故の経験などから、甲状腺に100ミリ以上の被曝をすると、がんのリスクが高まると考えられている。従来は、40歳以上はがんが増えにくいとされていたが、最近は40歳以上でもリスクが増えるとの報告も出ている。 東電広報部は「甲状腺被曝線量が100ミリを超えていた作業員全員に対し、東電の負担で生涯、年1回の甲状腺の超音波検査を行う。検査対象者にはすでに通知した」としている。検査を受けた作業員の割合は確認中というが、関係者によると、甲状腺検査を受けた作業員は半数程度にとどまっている。 ◇ 〈甲状腺被曝(ひばく)〉 主に吸入などで体内に入った放射性ヨウ素による内部被曝。100ミリシーベルト以上被曝するとがんが増えるとされるが、チェルノブイリ原発事故では50ミリシーベルト以上でがんが増えたとの報告もあり、予防目的で甲状腺被曝の防護剤を飲む国際基準は50ミリシーベルトだ。 *3:http://www.minyu-net.com/news/news/0724/news11.html (2013年7月24日 福島民友ニュース) 高線量は原発事故原因 楢葉で発見の破片4点 避難指示解除準備区域となっている楢葉町井出の井出川河口付近で表面放射線量の高い破片4点が発見された問題で、東京電力は23日、破片に付着した放射性物質が福島第1原発事故によるものとする推定結果を発表した。破片に放射性物質が付着した経緯は不明で、水素爆発などで飛散したのかなどを引き続き調べるとしている。東電によると、破片に付着した放射性セシウムの量は、半減期の長いセシウム137が、半減期の短い同134に比べて多かった。このセシウム量の比率が、事故から2年後に検出されるセシウムの比率の試算と一致したため原発事故が原因と判断した。また4点のうち、最も表面線量が高かったのは長さと幅が約2センチ、厚さ約0.1センチのゴムシートのような破片で、毎時3万6千マイクロシーベルトあった。 *4:http://www.iwate-np.co.jp/cgi-bin/topnews.cgi?20130726_4 (岩手日報 2013/7/26) 盛岡市、除染基準を厳格化 多数の施設超過か 盛岡市は空間の放射線量の除染基準を引き下げ、従来の「日常の生活空間毎時0・23マイクロシーベルト以下」、「雨どいの下など局所的に高い空間同1マイクロシーベルト以下」をいずれも「毎時0・19マイクロシーベルト以下」とした。県内市町村では最も厳しく、全国でもトップ級の厳しさ。大幅引き下げとなる局所的空間では基準超えが相次ぎ、今後多数の施設を除染することになる。市環境企画課によると、市内の小中学校、保育所、公園、学童保育クラブなど878施設を昨年測定したところ、従来基準を上回った施設はなかったが、新基準に照らすと局所的空間では164施設が上回った。基準引き下げに伴い、市は今年6月から、廃止した1施設を除く163施設を再測定。これまで測定を終えた約70施設の約7割に当たる約50施設が局所的空間で0・19マイクロシーベルトを超え、同課は「相当数の施設が新基準を超える」とみている。土壌調査は今月から学校や公園約270施設で行い、数値を公表する。 市は5月に基準を引き下げたが公表していなかった。市環境企画課の桜正伸課長は「従来の基準でも健康に悪影響を及ぼすことはないが、不安に思う市民のためより安心感を高めようという措置」と語り、公表しなかったことについては「測定の途中であり、除染の規模や方法を見定めた上で公表したいと考えていた」と説明する。
| 原発::2013.7~9 | 07:50 PM | comments (x) | trackback (x) |
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2013,07,23, Tuesday
放射性物質の海への拡散予測 水産庁の計測データ *1、*2のように、放射能汚染水の漏洩について、東京電力は言を左右にしながら2013年7月23日に限定的に漏洩を認め、公表が遅れた理由は東電社内の情報共有の失敗だと弁解している。しかし、このブログの原発のジャンルにずっと書いているように、そもそも、事故の状況から考えて、前から漏洩して魚を汚染していたと考えるのが自然である。 そのため、私は、*3の記事に2013年7月1日に福島県沿岸でアワビの稚貝2万個を放流したと書かれていたのには呆れたが、これはまあ、放流はしても、収穫して食べる時に放射能検査をすればよいと考えていた。 しかし、いわき市で7月15日に海水浴場で海開きをしたというニュースには驚いた。いわき市は月2回、海水の放射性物質濃度を検査して、13日時点の濃度は検出限界を下回ったと言うが、それは、いつでも、どの地点でも、安全であるということを示すわけではない。私は、そのような時に、子どもも含む人たちが、わざわざリスクを犯して、その近くの海で海水浴をする必要はないと思う。 また、*4では、漁業者が「風評被害も厳しくなるだろう」と言ったそうだが、風評(実体のない噂)だけで実害はないという証明はできていない。さらに、*5では、「日本原子力研究開発機構が発注した除染モデル実証事業(2011~12年)で、中堅ゼネコンの日本国土開発(東京)が福島県南相馬市で生じた汚染水三百四十トン(同社推計)を、農業用水に使う川に流していた」とも報告されているが、水や食べ物の汚染に関する感覚があまりにもずさんである。これでは、健康でいたければ福島県及びその付近のものは口にしないという選択しかないではないか。 *1:http://www.tokyo-np.co.jp/article/feature/nucerror/condition/list/CK2013071302000157.html?ref=rank (東京新聞 2013年7月13日) 地下水セシウム急上昇 規制委、東電に早急対策促す 今週(六~十二日)の東京電力福島第一原発では、2号機の取水口近くの汚染監視用の井戸で、放射性セシウム濃度が急上昇し、汚染拡大の可能性が高まった。原子力規制委員会は、東電に早急な対策を促した。これまで周辺の地下水からセシウムはほとんど検出されなかったが、五日に一リットル当たり三〇九ベクレルだったセシウム濃度が九日には三万三〇〇〇ベクレルへと急上昇した。タービン建屋地下などから高濃度汚染水が漏れている可能性が高まった。東電は、一昨年四月に取水口近くで漏れた高濃度汚染水の一部が土壌中に残留し、セシウムは土壌に吸着された-との説を唱えていたが、セシウムが検出されると、今度は採取した水に汚染土が「混入」した可能性を言いだした。いずれにしても、汚染源を特定し、早期に海への拡散防止策を進める必要がある。また、事故の発生直後から現場指揮を執った吉田昌郎元所長が九日、食道がんで死去した。作業員から信頼されるリーダーだったが公式取材に一回しか応じず、事故の核心は語られないままだった。 *2:http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2013072302000110.html (東京新聞 2013年7月23日) 東電 汚染水 海漏出認める 東京電力福島第一原発敷地内の海側にある汚染監視用の井戸で高濃度の放射性物質が相次いで検出された問題で、東電は二十二日、高濃度汚染水が地下水と混じり、海に流出している可能性が高いことを初めて認めた。この問題では、原子力規制委員会から「海に汚染が拡大していると強く懸念される」と指摘されていた。東電は同日、福島県に謝罪した。井戸で高い放射能が検出され始めたのは五月下旬からで、事故発生当初に大量の高濃度汚染水が漏出した2号機取水口の周辺を中心に、相次いで井戸水の汚染が確認された。東電は、高濃度汚染水の一部が土壌中に残り、放射性セシウムは土に吸着され、残りのベータ線を発する放射性物質が地下水の影響で井戸に出てきた可能性が高いと説明してきた。しかし、その後、一部の井戸で高い濃度のセシウムも検出され、当初の説明ではつじつまが合わなくなっていた。規制委からの指摘もあり、東電は海に近い土中に薬剤を注入して固め、壁のようにするなど漏出防止対策を進める一方、1~4号機の取水口周辺の地下水の水位と、潮位や降雨量との関連も調査してきた。その結果、潮の満ち引きに応じて地下水位が変動するほか、雨が降ると地下水位が上昇し、特に3号機の取水口前では海水の放射能濃度が上昇する傾向が確認された。こうしたことから東電は、海に近い地点では、地下水と海水は行き来しており、敷地内の放射性物質が海に流れ込んでいる可能性が高いと判断した。ただ、専用港口の海水の汚染度には大きな変動がないことから汚染は取水口近くに限定されるとみている。 *3:http://www.47news.jp/CN/201307/CN2013070101001507.html (共同通信 2013/7/1) 福島沿岸でアワビ2万個を放流 漁再開へ期待 東京電力福島第1原発事故で漁の自粛が続く福島県沿岸で1日、震災後初めてアワビの稚貝2万個が放流された。放流はいわき市の4カ所で実施。全長約3センチだが、順調にいけば4年後には採取可能な9・5センチほどの大きさになるという。震災前は、県栽培漁業協会が福島県大熊町で放流用のアワビやヒラメを育てていたが、津波で施設が全壊。協会は、水産総合研究センターの増養殖研究所南伊豆庁舎(静岡県南伊豆町)に職員を派遣し、育てた。放流にはいわき市の地元漁師が協力。漁師の馬目正平さん(58)は「漁業が再開できる時までに無事に育ってほしい」と話した。 *4:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20130723&ng=DGKDASDG22052_S3A720C1CC1000 (日経新聞 2013.7.23) 漁協「風評被害厳しく」 汚染水流出 「やっと一歩を踏み出したところだったのに……」。東京電力福島第1原子力発電所の観測用井戸から高濃度の放射性物質が検出された問題で、東電が汚染水の海への流出の可能性を認めた22日、漁業者や観光業者には衝撃が広がり、失望の声が上がった。東電社内の情報共有の失敗による公表の遅れも判明。福島県は東電に対し、対策の徹底と原因の究明を強く求めた。「またしても東電に踏みにじられた」。9月から同県いわき市沖などで試験操業を始める予定のいわき市漁業協同組合(同市)に加盟する男性漁師(75)は憤る。試験操業は本格操業に向けたデータ収集が目的。魚種や海域を限定して漁を実施し、小規模な販売が可能となる。同漁協は6月、試験操業の計画を福島県漁業協同組合連合会(いわき市)に提出し、3年ぶりの漁再開へ準備を進めていたさなか。東電は、影響は原発の専用港の範囲にとどまるとしたが「信用できない。風評被害も厳しくなるだろう。本格的な漁の再開が遠のきかねない」と肩を落とした。昨年6月から同県相馬市沖などで試験操業を続ける相馬双葉漁業協同組合(相馬市)の佐藤弘行組合長(57)は「(汚染水流出を)東電はなぜすぐに認めなかったのか。やっぱりかという印象だ」とあきれる。県漁連の新妻芳弘専務理事も「ショックだ。魚の安全性に影響がないことを消費者に理解してもらえるか」と試験操業への影響を懸念。22日、説明に訪れた東電幹部に、県漁連は「とにかく大至急、対策を」と要望したという。 いわき市では15日、2つの海水浴場が海開きをしたばかり。市観光交流課の担当者は「東電から何も説明がない。どういうつもりなのか」と声を震わせる。同市は月2回、海水の放射性物質濃度を検査しており、今月13日時点の濃度は検出限界を下回った。今後も汚染水の流出の状況を確認しながら「引き続き厳しい検査体制を敷く」。同市内の勿来(なこそ)海水浴場の昨年の海水浴客は例年の3%程度。担当者は「海水浴場は風評被害で苦しんでいる。東電が問題を起こすたびに死活問題に直面する」と話した。福島県庁には22日午後7時ごろ、東電福島第1安定化センターの高橋毅所長らが訪れ、長谷川哲也生活環境部長に社内の情報共有が不十分で海への流出の判明・公表が遅れた経緯などを説明し、陳謝した。長谷川部長は「以前から(汚染水処理に)英知を結集したと言っていたはずだ」と、東電の縦割り組織の弊害が依然強く残っていることを批判した。 *5:http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2013071202000129.html (東京新聞 2013年7月12日) 国の除染 農業用水に汚染水340トン 日本原子力研究開発機構が発注した除染モデル実証事業(二〇一一~一二年)で、中堅ゼネコンの日本国土開発(東京)が福島県南相馬市で生じた汚染水三百四十トン(同社推計)を、農業用水に使う川に流していたことが十一日、共同通信の調べで分かった。原子力機構は、川に流すことを知りながら、排水経路に触れていない国土開発の計画書を了承、地元に提出していた。南相馬市は「排水の説明はなかった。排水されたことも知らなかった」と反発。福島県も説明は受けていないとしている。放射性物質汚染対処特措法(特措法)は正確な情報伝達を求めており、環境省は調査に乗り出した。原子力機構は「地元と合意書は交わしていないが、排水については口頭で説明したはず」と説明。国土開発は「機構が地元に説明をしたと聞いていたので、排水してもいいと理解していた。農業用水に使う川とは知らなかった」としている。同社は一一年十二月~一二年二月、大成建設(東京)を中心とする共同企業体に加わり、国の除染特別地域に指定されている南相馬市立金房小学校と周辺を除染した。共同通信が入手した国土開発の内部資料「回収水等の分析データ」と取材回答書によると、作業で出た汚染水六百九トンを回収。このうち、水処理業者が処理するなどした二百六十九トンとは別に、放射性物質を検出した三百四十トンを、一二年一月から二月にかけて側溝を通じ、南相馬市内を流れ水田に水を供給する飯崎川へ排水していた。経費節減が目的とみられる。「分析データ」によると、特措法の施行規則から、原子力機構が排水の目安として設けた放射性セシウムの管理基準(一リットル当たり最大九〇ベクレル以下)を超す一二一~一〇〇ベクレルの六十トンも含まれていた。流された放射性物質の総量は、一六〇〇万ベクレルに上った。だが、下水処理場のような常設施設からの排水ではないため、原子力機構はこの六十トンについては施行規則の対象外としている。 ◆こちらに責任ある <日本国土開発東北支店南相馬工事事務所の陣川幸雄現場代理人の話> 日本原子力研究開発機構が何回も地元に事業説明をしたので、(排水を)もうやっていいかなという理解だった。排水先が農業用水に使う川とは知らなかった。地元が排水を聞いていないというなら、こちらに責(任)がある。 <排水の管理基準> 放射性物質汚染対処特措法の施行規則(2011年12月)は、下水処理場のような常設施設の排水について「1リットル中の放射性セシウム134単独なら60ベクレル、137単独なら90ベクレル、混合の場合は60~90ベクレルの範囲」の各濃度以下と規制した。日本原子力研究開発機構はこれを「管理基準」とし、除染で生じた排水の目安とした。今回の日本国土開発の排水のうち12年1月5日、23日、2月4日の3回分はこの基準を超過したが、機構は、常設施設の排水ではないとして施行規則の対象外としている。
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2013,07,13, Saturday
東京新聞より 左の原発のカテゴリーをクリックすると、私は、2011年7月からフクイチ関連の記事や原発に関する意見を記載しており、責任を持って考えれば脱原発しかないことを、代替電源とともに詳細に説明している。 しかし、*2の日経新聞の記事は、未だに「原発が止まったままでは経済への悪影響が大きい」「自民党には新基準施行を受けた次の手立て(原発立地地域への金のバラマキによる説得)を問いたい」「原発の代替として、太陽光などの自然エネルギーでどこまで肩代わりできるのか、そのために家庭や企業の負担はどのくらい増すのか」など、原発が安価で安定した電源であるため、それを動かすことこそが政治の責任だという経済産業省の論理を掲載している。 また、*2において、日経新聞は、「原子力規制委員会が直下に活断層があると断定した原発について、廃炉の判断を電力会社任せにするのか。原発を国策民営で進めてきた以上、国が廃炉の手順を示すべきだ。使用済み核燃料の再処理や、プルトニウムを原発で燃やす計画をどうするのかも説明不足だ」としているが、これまでのことはともかく、今後の稼働については、リスクの大きさから、声を枯らして脱原発を叫んでいる人々の税金を原発に投入することは、許されない。その点、*1の朝日新聞社説は、事実を直視しており妥当である。 前に東京新聞が掲載した上の図に示されているように、使用済み核燃料プールの空きスペースは、玄海原発は6年分未満であり、近くに活断層もある。また、フクイチのような事故が起きれば、北西の風によって九州の半分がひどく汚染されることを考えれば、今後は、最終処分場を選定し、近隣が放射能で汚染されないように注意しながら廃炉にすることこそ、国の重要な責任であろう。 原発を手じまうにあたっては、*4の脱原発基本法案に近いものを成立させるのが、立地地域の住民が心から望むところである。何故なら、「国は、脱原発を実現するに当たって原子力発電所が立地している地域及びその周辺地域における雇用状況の悪化等の問題が生じないよう、エネルギー産業における雇用機会の拡大のための措置を含め、十分な雇用対策を講ずる責務を有する」としており、原発立地地域の住民も、本当は、*3のように、原発のような危険施設ではなく、他の産業を誘致して地域振興したいと思っている人が多数だからである。佐賀県議会は、鹿児島県・新潟県などの他の原発立地地域と連携して、*4を土台にして、脱原発基本法のモデル案を作成してはどうだろうか。 *1:http://digital.asahi.com/articles/TKY201307120501.html?ref=comkiji_redirect (朝日新聞社説 2013.7.13) 原発政策 自民党は「現実」を見よ 原発再稼働の是非を聞かれれば「反対」と答える人が多い。今月8日には新しい規制基準が施行され、3・11後の原発政策は新たな局面を迎えた。なのに、参院選で原発をめぐる論戦はいまひとつ盛り上がりを欠く。なぜか。原因のひとつは、優勢が伝えられる自民党が巧みに争点化を避けていることにあるのではないか。安倍首相は再稼働に意欲を示す一方で、「原発の比率を下げていくのは基本的な方針」とも語ってみせる。とりわけアベノミクスの推進を前面に押し出す戦術だ。有権者の一番の関心が景気と雇用にあることから、原発についても経済浮揚に欠かせないインフラだと位置づける。エアコンに頼りがちな猛暑の夏、「原発は安くて安定した電源」との説明は、電力不足や電気料金が心配な人々へのアピールなのだろう。だが、「安くて安定」はもはや色あせた言い回しだ。脱原発を訴える野党は、その矛盾をあぶりださなければならない。 新しい基準によって、原発の再稼働には多額の安全投資が必要になった。廃炉にしなければならない原発も出てくる。もちろん、火力発電などで代替していけば目先の燃料費負担が増えるのは事実だ。しかし、原発は使用済み燃料や放射性廃棄物について、処分の方法や場所のめども立っていない。これら先送りしたコストや事故の際の損害賠償を考えれば、原発の経済的な優位性はすでに崩れている。「安定」神話も幻だ。放射能汚染の恐ろしさや電力会社の隠蔽(いんぺい)体質を目の当たりにして、日本人は原発の運転に極めて慎重になった。今後は小さなトラブルにも徹底検証を求めていくだろう。原発は長期にわたり停止しかねない。1基の不具合をきっかけに全基を止めて再点検、という事例も増える。諸外国に比べてただでさえ低い原発の稼働率は、さらに下がる。原発はますます不安定な電源になった。 脱原発が非現実的なのではなく、3・11以前には戻れないことこそが現実である。そうである以上、原発を減らすための政策を総合的に進めることが政権党のつとめだ。代替電源の確保と省エネ化を進め、廃棄物処分など後始末の問題や立地自治体の支援に取り組む。当面の国民負担を最小化する策を講じる。やるべきことは山ほどある。求められるのは現実を直視する政治である。 *2:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20130713&ng=DGKDZO57312950T10C13A7EA1000 (日経新聞社説 2013.7.13) 責任と説得力あるエネルギー論議を 参院選では原子力発電をめぐり与野党の対立が鮮明だ。自民党は成長戦略の柱に原発の再稼働を据える一方、野党各党は目標時期の違いこそあれ「原発ゼロをめざす」と公約した。私たちは原発に賛成か反対かという単純な二者択一では、エネルギー問題の解決策は見いだせないと訴えてきた。選挙戦で原発論議がいまひとつ盛り上がりに欠けるのは、有権者の多くが同じ思いを抱いているからではないか。福島第1原発事故が起き、これから原発への依存度が下がるのは避けられない。重要なのは安全性や経済性に照らして原発をどう選別するか、電力の供給不安を拭うため自然エネルギーや省エネをどのように拡大するかだ。各党はそれらの具体策を競うべきだ。 原発の新しい規制基準が施行され、「安全と確認された原発を再稼働させる」ことでは、与党のほか民主党なども一致している。大半の原発が止まったままでは経済への悪影響が大きい。審査に合格した原発は、地元の理解を得られるよう国が努めるのは当然だ。自民党には新基準施行を受けた次の手立てを問いたい。原子力規制委員会が直下に活断層があると断定した原発について、廃炉の判断を電力会社任せにするのか。原発を国策民営で進めてきた以上、国が廃炉の手順を示すべきだ。使用済み核燃料の再処理や、プルトニウムを原発で燃やす計画をどうするのかも説明不足だ。連立を組む公明党が「可能な限り速やかに原発ゼロをめざす」と訴えているのに配慮してなのか、自民党は原発政策について踏み込んだ言及を避けている。政権政党として、それでは困る。 野党も責任ある政策を示してほしい。民主党は政権時代と同様、「2030年代に原発ゼロをめざす」と訴え、みんなの党や日本維新の会もそれぞれ20年代、30年代の脱原発を唱えている。だが原発の代替として、太陽光などの自然エネルギーでどこまで肩代わりできるのか、そのために家庭や企業の負担はどのくらい増すのか。根拠に基づき説得力のある政策を各党から聞きたい。原発の位置づけがどうであれ、使用済み核燃料から生じた放射能の高い廃棄物の処分場選びは待ったなしだ。政治の責任として各党が処分の道筋を示すときだ。 *3:http://www.saga-s.co.jp/news/genkai_pluthermal.0.2506121.article.html (佐賀新聞 2013年7月11日) 核燃料処理、運転の課題 九電と反原発団体 九州電力は10日、玄海原発が立地する東松浦郡玄海町や隣接する唐津市の反原発団体と意見交換し、使用済み核燃料の再処理や最終処分方法が決まっていないことについて、運転継続の課題になるとの認識を示した。玄海原発の池上浩二環境広報担当課長が、使用済み核燃料を搬出している青森県六ケ所村の再処理工場が未完成なことなどを挙げ、「核燃料サイクルが動かなければ運転継続は厳しい。再稼働したとしても課題として残る」と述べた。新規制基準に基づく安全対策では「福島原発事故の原因究明はまだだが、全電源喪失の教訓を取り入れている。安全確保に責任を持つ」と強調。玄海1、2号機の再稼働にもあらためて意欲を示す一方、廃炉や放射性廃棄物処分の安全確保については考えを明確にしなかった。12日にも安全審査を申請する3、4号機が再稼働となった場合、住民への説明会については「考えていない」とした。 *4:http://www.shugiin.go.jp/itdb_gian.nsf/html/gian/honbun/houan/g18001039.htm 第一八〇回 衆第三九号 脱原発基本法案 東日本大震災における原子力発電所の事故から学び取るべきものは何か。世界で唯一の原子爆弾の被爆国でありながら、虚構の安全神話の下で推進してきた我が国の電力政策の見直しが、その重要な課題であることは論をまたない。原子力発電は、潜在的な危険性の高さにおいても、放射性廃棄物の処理においても、信頼性及び安全性が確保されたエネルギーではない。一旦事故が起これば幾多の人々が故郷を追われ、働く場を失い、家族を引き裂かれるのみならず、周辺地域や国民経済に与える甚大な被害や人々の不安と恐怖を考えれば、むしろエネルギーとして、極めて脆(ぜい)弱なものであった。原子力発電所において重大な事故が発生した場合に被害を受けるのは、原子力発電の利益を享受している現在の世代の人間にとどまらない。将来の世代の人間も、その事故に起因する数々の危険にさらされる。また、事故が発生しなくても、いまだに放射性廃棄物の最終処理の道筋が確立しておらず、仮に確立できたとしても、十万年以上の長い管理が必要とされる。原子力発電所の事故がもたらす重大な影響を知った我々は、今こそ「脱原発」の意思決定をする責務がある。 一方、今後の我が国は、低炭素社会を目指すとともに経済の活力を維持することが不可欠である。省エネルギーを一層推進すること、再生可能エネルギー電気を普及させること、発電方式等を高効率化すること、エネルギーの地産地消を促進すること等と併せ、原発立地地域の経済雇用対策も重要である。このような状況に鑑み、原子力発電を利用しなくなることに伴う各般の課題への適確な対応を図りつつ、原子力発電を利用せずに電気を安定的に供給する体制を早期に確立することは緊要な課題である。ここに、我々は、国家として「脱原発」を明確にし、その確実な実現を図るため、この法律を制定する。 続き▽
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2013,07,10, Wednesday
2013.7.5 日経新聞より 2013.7.6 西日本新聞より *1のように、国会議員が参議員議員選挙で走り始めた翌日、経産省幹部が原発の再稼働を睨んでウズベキスタンに行き、政府系資源機関が原発燃料のウランを共同探査する覚書を交わすという報道があった。生産したウランは商社を通じて国内外に供給するそうだが、商社も経済産業省の管轄下にある。 経済産業省が、日本のために、これまでやらなければならなかったことは、国内資源を探査して掘り出し、日本企業に安い価格で原料やエネルギーを供給できる体制を作り、日本に安全で豊かな経済社会を作ることだった。しかし、実際にやったことは、経済産業省の管轄下にある商社や電力会社を利するだけで、国民には負担を押し付け、世界でも眉をひそめられるようなことである。経済産業省も、時代を先取りするどころか時代に合わせる能力すらなくなり、質が落ちたものである。 一方、東電広報部は、経済産業省の意向を盾に、*2のように、福島第1原発の吉田元所長が、58才の若さで食道癌により死去しても、「診断の結果、死去と被曝との直接的な関係はない」などとしている。今後とも、死因の記録において、このような意図的なことが行われれば、確かに「原発事故による死者はいない」という彼らの主張が証明されるだろうが、自然現象は、黒を白と言いくるめることはできない。 従って、本当はどこが原発推進の根源だったのかは、どの政党が与党になっても与党になった途端に同じ政策を行い始めることを合わせて考えればわかるはずだ。しかし、メディアは、これまで、筋書きのあるスポーツのように、決まりきった時代遅れの政治家批判をしてきただけだった。そして、むしろ、その根源と闘う政治家の方を、何とかかんとか言って落選させたのである。 なお、*3、*4のように、電力会社が原子力規制委員会に1万ページにも及ぶ書類を提出して、再稼働のための安全審査を申請したそうだが、書類だけを見て審査するのであれば、いくら分量が多くても、これまでと何ら変わりはない。企業が作った書類の粉飾の可能性は、有価証券報告書で十分すぎるほどの事例があり、外部証拠も収集する第三者の厳格な監査がなければ、お手盛りになることが多いのである。また、新基準を順守してさえいれば安全というものでもない。さらに、避難計画ができたとしても、フクイチのような事故の場合、どこにいつまで避難していれば安全だと思っているのだろうか。農林漁業への影響も膨大だが、それも闇に葬ればよいと思っているのだろうか。 *1:http://www.nikkei.com/article/DGXNASFS0500A_V00C13A7MM0000/?dg=1 (日経新聞 2013/7/5) 政府系、ウズベクでウラン権益 原発再稼働にらむ 経産省幹部が現地入り、共同探査で覚書へ 日本とウズベキスタンは原子力分野で協力を強化する。日本の政府系機関の石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)とウズベキスタンの政府系資源機関が8日、原発燃料のウランを共同探査する覚書を交わす。JOGMECは鉱山の権益を確保、生産したウランを商社などを通じて国内外に供給する。政府は原子力発電所の再稼働をにらみ、資源の安定調達を急ぐ。経済産業省幹部が7~10日、ウズベク入りして政府高官と会談。JOGMECの河野博文理事長とウズベクの国家地質・鉱物資源委員会幹部が8日、共同探査で合意する。共同探査するのは「砂岩型」と呼ばれるウラン鉱床。鉱石を採掘せず、溶液のままウランを回収できるため生産コストが比較的低い。これまではウズベク国営企業のナボイ鉱山製錬コンビナートが権益を独占していた。JOGMECは海外勢として初めて共同開発に参入する。共同探査によって埋蔵量や品質を確認した後、本格生産に移る。ウズベキスタンのウラン開発を巡っては、2009年に今回の種類とは異なるウランの共同調査で合意していた。ただ、品質が低く生産コストも高いため、10年3月に共同調査を中断していた。今年3月にガニエフ対外経済関係相が来日した際に茂木敏充経済産業相は、砂岩型ウランの共同探査を要請していた。日本がウラン権益を確保する理由は2つある。第一に国内の原発再稼働をにらみ、ウランの安定的な調達体制を強化するためだ。日本はウランを全量輸入に頼っており、11年3月時点の購入契約量は約41万トン。調達先はカナダやオーストラリアで半分近くを占めるが、権益を取得して安定輸入しているのは18%にとどまる。権益を増やせば相手側の事情で調達量が減ったり、価格が急騰したりする影響を抑えられる。原子力規制委員会は8日、原発の安全性を判断する新しい基準を施行して安全審査を始める。政府は規制委の判断に基づいて再稼働を進める。新興国で原発の新増設が相次ぐなか、日本が供給元としてウランを輸出する体制を整えることも権益確保の狙いだ。世界原子力協会によると天然ウラン市場は22年に需要が供給を上回る。ウズベクには世界のウラン埋蔵量の2%、約10万トンがある。日本は権益確保で競合する中国や韓国に対抗して調達先を増やす。 *2:http://mainichi.jp/feature/20110311/news/20130709k0000e040207000c.html (毎日新聞 2013年7月9日) 福島第1原発:吉田元所長が死去 事故時に現場対応 東京電力福島第1原発事故の際、収束作業を指揮した元所長の吉田昌郎(よしだ・まさお)さん=執行役員=が9日、食道がんのため東京都内の病院で死去した。58歳。葬儀は未定。大阪府出身。東京工業大大学院で原子核工学を専攻し、1979年、東電に入社した。本店原子力設備管理部長などを歴任。一貫して原子力の技術畑を歩いた。2010年6月に第1原発所長に就任した。11年11月中旬、健康診断で食道がんが見つかり、12月1日付で所長職を退いた。その後、体調が回復し復帰の意向を周囲にもらしていたが、12年7月に脳出血で倒れ、自宅療養を続けていた。吉田さんの事故後からの被ばく線量は約70ミリシーベルト。東電広報部は「担当医の診断の結果、死去と被ばくとの直接的な関係はない」としている。吉田さんは事故直後の11年3月12日夜、本店幹部が1号機への海水注入を中断するよう指示したのに対し、独断で注入を継続。中断すれば1号機の燃料溶融がさらに進行した可能性があり、その判断が評価された。官邸から現地に乗り込んだ菅直人元首相は自著で、格納容器の圧力を下げるベント(排気)作業が難航していた際、吉田さんが「決死隊を作ってやる」と決意を述べたことを明らかにしている。 *3:http://www.saga-s.co.jp/news/saga.0.2503170.article.html (佐賀新聞 2013年7月6日) 玄海原発3、4号機安全審査申請、県内反応 九州電力が玄海原発3、4号機(東松浦郡玄海町)の再稼働に向け、12日に安全審査を申請する方針を発表した5日、県内の首長からは、原子力規制委員会の厳格な審査や国に地元合意手続きの明確化を求める声のほか、九電に対して周辺自治体と安全協定を結ぶよう求める声も上がった。一方、反原発の市民団体は新規制基準への不信感を示し、反発を強めた。古川康知事は「新規制基準に適合するか、規制委員会がしっかり確認してほしい」とした上で、「規制委が適合すると認めた後の地元合意の手続きが不明確」と指摘。「再稼働に向けて、政府はどう取り組むのか、地域はどんな役割を担うのか、明確にしてほしい」と述べた。一貫して早期再稼働を求めてきた岸本英雄玄海町長は、申請が新基準施行日の8日より遅れたことについて「審査の順番に影響が出ないよう配慮してもらいたい」と規制委の判断に注文をつけた。坂井俊之唐津市長は「申請する以上はしっかりしたものにしたいと述べられていたが、その趣旨に添って判断されたと思う」とのコメントを出した。九電に安全協定締結を求めている塚部芳和伊万里市長は安全性向上の対策に一定の理解を示しつつ、「再稼働の準備を進めるのなら、伊万里市と立地自治体並みの安全協定締結を決断してほしい」と要望。原発反対の姿勢を表明している江里口秀次小城市長は「残念。原発は核のごみなど問題も多い」とした上で、「再稼働するのであれば、県市長会との安全協定締結を望んでいる」と話した。一方、原発の運転差し止め訴訟を起こしている「玄海原発プルサーマルと全基をみんなで止める裁判の会」の石丸初美代表は「再稼働は九電の企業論理であり、国民の生命を考えた判断ではない。新基準も福島原発事故の原因も解明されないまま作られた。原発に100%の安全はなく、動かすべきではない」と強く批判した。 *4:http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2013070902000138.html (東京新聞 2013年7月9日) 自治体6割超、備えまだ 7原発62市町村 原発の新しい規制基準施行をにらみ電力各社が続々と再稼働申請に踏み切る情勢を受け、本紙は、八日に申請のあった五原発のほか、早期の申請が確実な二原発を加えた七原発の周辺六十二市町村が、どのくらい原発事故への備えをしているのかヒアリング調査した。その結果、六割超の市町村が、いまだ避難計画や具体的な避難先を固めていないことが分かった。調査対象は、八日に申請が出された北海道電力泊(北海道)、関西電力大飯、高浜(いずれも福井県)、四国電力伊方(愛媛県)、九州電力川内(鹿児島県)に加え、十二日に申請予定の九州電力玄海(佐賀県)と申請方針が表明された東京電力柏崎刈羽(新潟県)を合わせた七原発の周辺市町村。 東電福島第一原発では、事故への備えをしていたのが原発のごく近くにとどまり、事故の状況や放射性物質の拡散などの情報も現地に届かず、各地で大交通渋滞が起き、住民の避難は困難を極めた。原子力規制委員会は新基準で、重点的に防災対策を進める地域を、八~十キロ圏から三十キロ圏にまで拡大。各自治体は規制委の指針を踏まえ、住民をどこに、どのように避難させるかなど具体策を練ってきたが、八日に施行された原発の新規制基準は、地域の防災体制が整っているかどうかを審査する仕組みになっていない。 避難計画は63%にのぼる三十九市町村がまだ策定しておらず、住民がどこのどの施設に避難するかという点も65%の四十市町村が固め切れていなかった。福島事故で避難が広域に及ぶことは分かっているのに、避難訓練すら実施していない自治体も九市町あった。これらの対策は、必要最低限のものにすぎず、原発がある限りは道府県の垣根を越えた訓練などを通じ、常に改良する必要がある。形が整いつつあるといえるのは、泊、玄海両原発の周辺市町村くらい。大飯、高浜、川内の三原発周辺では、それぞれ福井県、鹿児島県が避難を県内で完結させることに固執しすぎ、避難計画の策定などの対応の遅れにつながっていた。柏崎刈羽、伊方の両原発周辺では、新潟、愛媛両県を中心に準備は進んでいたが、いずれも成案にはなっていなかった。 <本紙の調査内容> 重点的に防災対策を進めることになっている原発の約30キロ圏にある62の市町村に7月上旬、電話で取材した。調整役の道府県への補足取材も加え、避難計画ができているだけではなく、大渋滞を起こさないよう避難ルートの調整がされているか、県境などにこだわらず必要な検討がされたか、などの点を重視して3段階で評価した。
| 原発::2013.7~9 | 12:43 PM | comments (x) | trackback (x) |
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