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2017.3.10 東芝・三菱重工・日立の原発による損失と原発の手終い方 - まず日本が再稼働せずに直ちに脱原発し、廃炉・使用済核燃料の処理に取り掛かるべきである (2017年3月11、12、14、15、16、17、20日、4月6、8、12日に追加あり)
  
 事故前後の   2号機の   除染された表土     従来の放射性廃棄物 
福島第一原発  ロボット調査   の野積み            の保存法
      2017.2.10東京新聞  毎日新聞

(図の説明:2号機のロボット調査で毎時650シーベルトの放射線量が観測されたが、2号機は被害が小さかった原発であり、3号機は爆発して放射性物質が噴出しており、その結果、関東まで含む広い範囲が放射性物質で汚染されているのである)


 2015.5.22   軍艦島            池島         池島の坑道
 朝日新聞
(図の説明:高レベル放射性廃棄物の最終処分場は、一番左の図のように地下300メートル以下とされているが、軍艦島や池島の深い坑道なら、水の下で人が近づくこともなく、既に地下がある。そのため、防御をしっかりすれば比較的安価に高レベル放射性廃棄物の最終処分場を作れるのではないだろうか)

(1)東芝・三菱重工・日立の原発による損失について
1)東芝の原発による損失
 東芝は、*1-1、*1-2のように、2017年2月14日に、2016年4~12月期連結決算で、ウェスチングハウス(以下、“WH”と記載)などの原子力事業に7,125億円の損失を計上すると発表したが、これで2015年3月期に計上した2,476億円の損失と合わせて1兆円弱の原子力事業に関わる損失を計上することとなった。しかし、WHが米国の原発4基の完成をあきらめて撤退すると、さらにWHの電力会社への違約金が生じる契約で、その親会社保証が2016年3月末で約7,935億円あるそうだ。

 しかし、「世界でエネルギー事情が変化しても、米国での原発建設を2020年末までに終えなければ、WHが工事費の増加とは別に違約金を負担し、それを親会社の東芝が保証する」という契約は、あまりにも東芝に不利にできており、このような契約を結ぶのは、営業や経営の実力のなさである。そして、このように災害に似たリスクを負う場合は保険をかけるのが通常であるため、保険もかけていなかったとすればお粗末すぎる。

 さらに、2017年3月9日の報道によれば、*1-3のように、建設工事の遅れで今後発生する損失を抑えるため、東芝が米原発子会社WHに米連邦破産法11条の適用を申請する方向で調整に入るそうだが、米国政府がWHの事業に83億ドル(約9,500億円)の債務保証をしていたとしても、契約通り処理して米原発子会社WHを破綻させるのが、誰もが納得できる問題の少ない解決策である。この際、米国民の負担や米政府の反応を気にして、日本政府が日本国民の税金を投入する理由は全くなく、徹底した契約社会で法治国家の米国は、日本政府が言い出さない限り、そのような解決策は期待しないだろう。

2)東芝の半導体事業について
 東芝は、*1-3、*1-4のように、1982年という日本では最も早い時期に超LSI研究所を設置し、クリーンルームに230億円の設備投資をした、半導体では先進的な会社であり、半導体は東芝の中核事業になっていた。にもかかわらず、東芝は、その半導体事業を分社化して設立する新会社の全株式売却も視野に入札手続きを進め、その売却額を1兆5千億〜2兆5千億円と想定しているそうだ。

 しかし、経営者と原発事業部長の判断ミスによる原発損失を半導体事業部など他の事業部の売却等で賄うと、それまでこれらの事業部で小さな製品を作りながら着実に頑張ってきた従業員はたまったものではない。従って、(私が提案してできた)持株会社方式を使って事業部毎に子会社とし、それぞれの事業部を独立採算制にしておけばよかったのだ。また、現在の日本には、(これも私が提案して)連結納税制度もできているため、事業部毎に100%子会社にすれば支払税金は増えず、事業部毎に直面している異なる市場環境で適切な意志決定を迅速に行うことができ、さらに現場から経営者までの階層が短くなるため、情報伝達が容易になった筈なのだ。

 東芝は、2017年1月27日の取締役会で、*1-4のように、半導体メモリー事業を分社化し、それをWHの巨額損失を補填するために売却することを決定した。そのような中で、東芝の半導体メモリー事業が、*1-5のような投資ファンドの餌食にならないためには、売却する相手はシナジー効果の出る他の製造業でもよいが、半導体事業部の有志が出資して銀行借り入れを行い、「東芝メモリー(仮称)」のような独立した会社を作るマネージド・バイ・アウトという方法もある。こうすると、東芝が解体された後で、優良部門だけが集まって東芝を再構築する機会もできる。

3)三菱重工、日立について
 原発で損をしそうなのは東芝だけではなく、*1-6のように、三菱重工業も、66億ドルという巨額の損害賠償請求訴訟を起こされているそうだ。

 また、*1-7のように、日立の子会社は、英国中部に2020年代前半の稼働を目指し、総事業費2兆円超の原発2基を建設するが、受注競争のためにJBICや政投銀が日立の子会社に融資や株式の買い取り支援を行うそうなのだ。ここでも、原発という過去のエネルギーに対して、日本政府が日本国民の金を「兆円」単位で投入しており、その結果が国民負担になるのは目に見えている。

(2)使用済核燃料の最終処分について
 事故を起こしていない原発にも、*2-1のように、使用済核燃料の最終処分という問題がある。九州電力は玄海原発3、4号機(佐賀県玄海町)の再稼働後を見据えて、使用済核燃料の乾式貯蔵施設を建設する敷地内候補地の選定作業に着手し、①まず3号機の貯蔵プールの容量を増強し ②次の段階として原発敷地内での乾式貯蔵施設の新設 を挙げている。

 また、原子力規制委員会は、*2-2のように、水や電気を要しない空冷の保管容器の導入を促すために、原発の使用済核燃料の保管に関する基準を緩和する方針を決めたそうだ。

 しかし、フクイチ事故を見ればわかるように、多量の使用済核燃料を貯蔵していること自体も危険で、乾式貯蔵のように空気の通りがよい場所で保管すれば、空気が汚染される危険性が高いので、使用済核燃料の貯蔵に関しても、少くも30km圏内の近隣住民の同意を要件とすべきだ。

 私自身は、*2-3のように、過去のエネルギーである原発廃棄物の最終処分場の建設やその運営に「3.7兆円+α」を支払うよりは、すでに石炭採掘後の広い地下空間があり、海面下の地下深くで人が近づかず、安全に保管できる長崎県の池島か軍艦島の深い坑道に空冷の保管容器を保存するように整備するのが、過去のエネルギーという点では一致しており、安価で、新しい観光スポットにもなるため、よいと考える。もちろん、島民のうち原発廃棄物の最終処分場建設に伴って移住したい人には、その費用を負担すればよいだろう。

(3)玄海原発再稼働について
 九州電力玄海原発3、4号機の再稼働に関して、佐賀県は、*3-1のように、2月21日に初めての県民説明会を唐津市民会館で開き、唐津市や玄海町だけでなく佐賀県内各地から192人が参加し、会場からは原発の必要性や安全対策を疑問視するなど、再稼働への反対や懸念を示す意見が相次いだそうだ。住民は真剣に考えた上で反対しているのであるため、説明会を単なるプロセスとして形式的に説明会さえ終われば再稼働してもよいなどと考えるべきではない。

 また、*3-2のように、半径30キロ圏外では初めて武雄市文化会館で開かれた説明会には、周辺市町の首長・職員・住民ら117人が参加し、会場から「再生可能エネルギーや蓄電池などの開発に国策を転換して」などの意見が上がったそうだ。再稼働に慎重姿勢の谷口嬉野市長は、エネ庁の法的に地元の同意は必要ないとの明言について、「事故があればわれわれも避難する立場であり、同意を取ってほしい」としており、尤もだ。

 さらに、*3-3のように、原発再稼働に関する佐賀市の住民説明会には234人が参加して不満が噴出したそうだ。原発は、平時でも海水を利用して熱を逃がしているため、「海温め装置」と言われており、漁業環境を変化させて漁獲減に繋がっている。

 原発再稼働に関する佐賀県内4カ所目の県民説明会は、*3-4のように、2月28日に伊万里市民会館で開催され、周辺市町の住民らを含めて388人が参加し、安全性などへの疑問点を質問し、会場からは「福島原発事故の収束や原因究明も終わらない状態で、なぜ再稼働を急ぐのか」「避難訓練が必要なほどのリスクの中で進める理由が分からない」との批判や「再稼働ありきで検討が進んでいる」との不信感も漏れ、使用済核燃料保管の問題や、テロなどでの航空機墜落事故の際の安全対策への疑問が出たそうで、全く尤もである。

 *3-5のように、佐賀県では5会場での県民説明会を終え、国と九電が再稼働の必要性や安全対策に関する紋切り型の説明をしたが、参加者から容認する意見はなく、安全性への不安や必要性への疑問が相次ぎ、九大大学院の吉岡教授(科学史)は、県民の参加状況に関して、「周知不足だけではなく、県の姿勢に期待が持てず『形だけのスケジュールを消化している』と多くの住民が判断したのではないか」と見ているそうだ。

 玄海原発の再稼働に反対する佐賀県内の複数の団体は、*3-6のように、3月9日に説明会を要望し、全市町での県民説明会の開催や再稼働に反対・慎重の意見を持つ専門家の説明会などを佐賀県に求めたそうで、これは必要なことだ。

 また、九電玄海原発3、4号機の再稼働に同意した岸本玄海町長に対しては、*3-7のように、脱原発を訴える市民団体のメンバーが、町役場で抗議して同意撤回を求めている。

(4)リーダーたちの見解
 大震災から6年経過したが、*4-1のように、①原発被災地では今も8万人が避難生活を強いられ ②地域社会の再生は見えず ③除染が終わったと連絡が来ても線量は十分に下がっておらず ④避難指示解除とともに東電が家賃の支払いを停止する のは問題だとして抗議している状況だ。

 原子炉は炉心溶融を起こしたとされているが、それは事実とは思えず、3号機は爆発して核燃料を噴出したというのが正しいだろう。その証拠は、爆発時の映像、ぐにゃりと曲がった鉄骨だけの建物の残骸、「まだわからない」とされている惨状である。そして、東電がロボットを投入した2号機は、1、3号機よりは被害が小さかったが、650シーベルトの放射線量を記録しており、溶け落ちた核燃料を取り出す道筋は見当もつかないのだそうで、その対応の無責任さには呆れるほかない。

 原発の賠償・除染・廃炉等の費用について、経産省は昨年末、総額21.5兆円にのぼるとの見通しを示し、これは従来想定の2倍で、巨額の負担が電気料金や税金として国民にのしかかるが、21.5兆円という金額は年間消費税の8.6%分だ。従って、原発のコストは非常に高く、早々に再稼働なしの脱原発を進めるべきなのである。

 このような中、*4-2のように、日本カトリック司教団は、 2016年11月11日、「地球という共通の家に暮らすすべての人」に向け、「原子力発電の撤廃を―福島原子力発電所事故から5年半後の日本カトリック教会からの提言」と題するメッセージを発表して原発撤廃を呼び掛け、世界のカトリック教会に協力と連帯を要請したそうだ。これは、世界が共通の認識を持つための重要な一歩になる。

 これに先立って、日本仏教の多くの宗派も、*4-3のように、2012年6月26日の段階で原発への反対表明をしており、今後は世界の仏教圏へのアクセスが望まれる。

 政治では、*4-4のように、民進党が3月7日、「原発ゼロ基本法案」の国会提出を明記した政策方針を了承したそうだ。私は、再稼働なしの原発ゼロ実現に向けて、自然再生可能エネルギーの利用を促進し、これまでの原発立地自治体には、他の産業で成り立つ方法を提供するのがよいと考えている。

<東芝・三菱重工・日立について>
*1-1:http://mainichi.jp/premier/business/articles/20170215/biz/00m/010/032000c (毎日新聞 2017年2月17日)「撤退なら違約金8000億円」米原発やめられない東芝
●債務超過に転落(3)
 東芝は2月14日、2016年4~12月期連結決算で、ウェスチングハウスなど原子力事業に関して7125億円の損失を計上すると発表した。15年3月期にもウェスチングハウスで2476億円の損失を計上しており、原子力事業は2年間で9601億円もの損失を出したことになる。ほぼ1兆円という莫大(ばくだい)な損失。2011年の福島第1原発事故以降、原発をめぐる社会環境が一変したことに、東芝の経営陣は目をつぶってきた。そのツケが一気に噴出したのだ。急激な環境変化にもっと早く対応していれば、ここまで大きな損失にはならなかったのではないか。14日の記者会見で、東芝の綱川智社長は、原子力事業について(1)米国4基、中国4基の建設中の原発はあらゆるコストを削減して完成させる(2)原発新設は原子炉供給などに特化し、今後、土木建築工事は受注しない(3)原子力事業の売上高の8割は既存原発の燃料・サービスであり、安定したビジネスとして継続する(4)再稼働、メンテナンス、廃炉事業は継続するーーと説明した。
●新たな損失の可能性は?
1兆円近い損失を出した8基の原発新設で、今後、新たな損失が出ることは本当にないのか。二度あることは三度あるのではないか。もっと抜本的に原発事業を見直さないと、また別の損失が出てくるのではないか。記者の質問はそこに集中した。記者の一人と、綱川社長の会見に同席した畠澤守・常務原子力事業部長との間で次の質疑があった。  記者「海外の原発建設で、今後、東芝のコスト負担は最悪どのくらい出てくると見込んでいるのか」。原子力事業部長「今回発表の損失に見込んだ将来コストの見積もりは、かなり保守的に積み上げた数字だ。将来のコストなので、リスクがないと言えばうそになる。ただ、そのリスクの最小化に努めていく」。記者「現状でまだ見えていないリスクはあり得るのか」。原子力事業部長「我々はこれから(原発の建設に関する)効率改善に取り組むが、それが期待通りにいかないリスクはある。ただ、今の最悪の状態が続く前提で損失額を計上した。改善しないという可能性はゼロではないが、少ないと思っている」
●電力会社への支払い保証
これだけひどい目にあった建設中の原発から、東芝が全面撤退することはできないのか。その手がかりになる事情が、14日に公表された東芝の資料の一番最後にあった。「ウェスチングハウスに対する親会社保証」と書かれた1枚の資料だ。そこには「16年3月期 有価証券報告書の記載額(偶発債務及び保証類似行為)」として「16年3月末 7934億9900万円 ※米国AP1000の客先に対する支払い保証が90%弱」と書かれていた。さらに、「米国AP1000プロジェクトにおいてウェスチングハウスの客先への支払い義務(プロジェクトを完工できなかった場合の損害賠償請求を含む)を履行できなかった場合、東芝はウェスチングハウスの親会社として、客先にこれを支払うことが要求されている」との注記があった。AP1000は、ウェスチングハウスが建設中の原発に導入する予定の新型原子炉だ。客先とは、原発建設をウェスチングハウスに発注した電力会社のことだ。もしいま、ウェスチングハウスが米国の原発4基の完成をあきらめて撤退すると、電力会社に「7934億円」の違約金を支払う義務があるということだ。そして、東芝は親会社としてそれを保証しているのだ。この保証は現時点も続いている。すでに損失1兆円が発生した事業。ここで退けば、さらなる地獄が待っているという状況の一端が、この1枚のペーパーに記されていた。

*1-2:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12832302.html (朝日新聞 2017年3月9日) 東芝、新たな損失恐れ 20年末に税制優遇期限 米原発建設
 東芝が、米国で手がける原発4基の建設工事を2020年末までに終えられなければ、工事費用の増加とは別に、新たな損失が最大数千億円規模で生じる可能性があることが分かった。発注元の電力会社が米政府の税制優遇を受けられなくなり、東芝側に補償を求める公算が大きいためだ。工期を期限ぎりぎりの20年12月まで延長した原発もあり、さらに遅れれば再び大きな損失が出かねない。05年に定められた米政府の税制優遇では、20年末までに運転を開始した新設の原発は、発電量1キロワット時当たり1・8セントを税金から差し引く「税額控除」を8年間受けられる。海外電力調査会などによると、この4基の税額控除は1基当たり最大11億ドル(約1250億円)になる見込み。4基とも間に合わなければ、電力会社は5千億円規模の税制優遇を失う計算で、東芝側が求められる補償も数千億円規模になる可能性がある。東芝の米原発子会社ウェスチングハウス(WH)は先月、原発4基について3度目となる工期延長を電力会社2社に要請。最も遅いサマー3号機は20年12月の完成を見込み、1カ月の遅れも許されない状況だ。WHは4基を08年に受注。13年に工事を始めたが、4年経ったいまも約3割しか終わっていない。世界の原発事情に詳しい環境エネルギー政策研究所の飯田哲也所長は「過去の経緯からみて、さらに工期が遅れる可能性は高い。その際、電力会社が東芝側に補償を求めるのは自然な流れ」と話す。補償を求められる可能性について、東芝は「コメントできない。現在の目標で工事を終わらせるよう努力する」(広報担当)としている。税制優遇を巡っては昨年、地元下院議員が20年末の期限を撤廃する法案を議会に提出したが、廃案になった。今年も同趣旨の法案を提出する動きがあるが、成立するかは不透明な状況だ。

*1-3:http://qbiz.jp/article/105252/1/ (西日本新聞 2017年3月9日) 東芝、WHに米破産法申請で調整 銀行団へ数千億融資要請を検討
 経営再建中の東芝が、米原発子会社ウェスチングハウス・エレクトリック(WH)に米連邦破産法11条の適用を申請する方向で調整に入ったことが9日、分かった。日本の民事再生法に相当する制度を活用し、建設工事の遅れで今後発生する損失を抑える狙いだ。近く最終判断する。WHの事業には米国政府が83億ドル(約9500億円)の債務保証をしている。破産法が適用された場合、米国民の負担が発生して外交問題に発展する恐れがあり、米政府の理解を得られるか流動的な側面もある。東芝もWHの事業に債務保証をしており、破産法適用が認められたとしても、今後も原発の建設費用などで応分の負担を迫られる。このため東芝は、取引銀行団に数千億円規模の追加融資を要請する検討に入った。この2年で東芝がWH関連で計上する損失額は1兆円規模に上る。WHが米国で進める原発建設は工事の遅れが常態化している。来年度以降も巨額の損失が発生すれば、東芝の経営が立ち行かなくなる危険があり、経営陣は破産法の活用に傾いたもようだ。社内には「(適用申請には)数カ月かからない」(幹部)との声もある。東芝は、半導体事業を分社して設立する新会社について、全株式売却も視野に入札手続きを進める。売却額は1兆5千億〜2兆5千億円を想定しているが、売却完了は2017年度後半となる見通し。それまでに原発建設の費用が膨らみ、手元資金が不足する恐れがあるため、銀行借り入れで乗り切りたい考えだ。支援を受けるため、半導体の新会社の株式を一時的に融資の担保とする案が浮上している。建設中の米原発は、当初16年から順次稼働する計画だったが、延期を繰り返している。東芝は現段階でも人件費などで計61億ドル(約7千億円)のコスト増になると試算しており、完成が遅れると費用はさらに拡大する。

*1-4:http://mainichi.jp/premier/business/articles/20170203/biz/00m/010/002000c (毎日新聞 2017年2月6日) 「8500億円半導体事業切り売り」は東芝解体の第一歩
●東芝解体の危機(6)
 東芝は1月27日に開いた取締役会で、半導体メモリー事業の分社化を決めた。分社化後、株式の2割弱を入札で売却し、得た資金で米原子力事業の巨額損失を補てんする。すでに10社程度の売却候補の名前があがったり消えたりしている。半導体メモリーは、東芝の中核事業だ。その2割弱の株式を外部に売ることは、どんな意味を持つのか。 2016年1月26日付の毎日新聞東京朝刊より  東芝の発表によると、分社化の対象は、東芝の社内カンパニーであるストレージ&デバイスソリューション社のメモリー事業。「NAND型フラッシュメモリー」の開発、製造、販売部門だ。東芝の主力製品であり、稼ぎ頭である。製造拠点は三重県の四日市工場だ。分社化する部門の2015年度の売上高は8456億円、営業損益は1100億円の黒字。売上高に対する営業利益の比率は13%で、かなり高い利益率をあげている。東芝は15年度、不正会計が発覚し、連結売上高5兆6000億円に対し、営業損益は7191億円の大赤字だった。半導体メモリーだけがまとまった稼ぎをあげていた。
●NANDの世界シェアは2位
 「NAND」は「ナンド」と読む。小型の記憶媒体のことだ。スマホや携帯音楽プレーヤーの記憶装置に多用され、デジカメのメモリーカードや、パソコンに接続するUSBメモリーにも使われている。「NAND」という名前は、コンピューターの演算の種類である「Not」と「AND」を組み合わせたものだ。フラッシュメモリーの「フラッシュ」は、書き込んだ内容を一瞬で消せることから付けられた。NAND型フラッシュメモリーは東芝が1980年代に開発した。携帯音楽プレーヤーやスマホが広がるにつれ、需要が急速に伸びてきた。ただし、世界シェアのトップは、韓国サムスン電子。東芝は2位、3位は四日市工場で東芝と共同で投資を行っているウエスタン・デジタルだ。もともと東芝の半導体は、「DRAM(ディーラム)」と呼ばれるコンピューターに使われる製品が主流だった。80年代に生産量が世界一になったこともある。当時は東芝、日立製作所、NECがシェア上位を競っていた。ところがその後、サムスン電子など韓国勢が大がかりな投資で製品を量産して価格攻勢をかけ、東芝は競争に負けて00年代はじめに撤退する。代わって力を入れたNAND型フラッシュメモリーが、スマホなどの普及で東芝の屋台骨に育った。
●後ろ向きの分社化
 半導体部門の分社化は、経営の意思決定のスピードアップや、設備投資に振り向ける巨額資金を外部から調達するという前向きの狙いでこれまでも検討されてきた。ただし、外部資本を入れると、その分、配当という形で利益の一部を外部に流出させることになり、決断までに至らなかった。今回は、原子力事業の巨額損失の穴埋めのために、分社化することになった。打って出る前向きの分社化ではない。1月27日の東芝の記者会見でも、記者から次のような質問が相次いだ。「稼ぎ頭であるNANDを切り離し、それで得る資金を成長分野に振り向けるシナリオもあったが、それができなくなった。追い込まれる前にやっておくべきだったのでは」「主力事業を切り売りする形になって、本当に東芝の再生は果たせるのか」 東芝の綱川智社長=2017年1月27日、根岸基弘撮影  これに対して綱川智社長は「分社化がNAND事業を強化する一助になればと考えている。再建に向かって頑張りたい」と通り一遍の回答だった。半導体事業を担当する成毛康雄副社長は「東芝全体の危機と受け止めて、乗り切ることに注力したい」と短く回答するのみだった。半導体は分社化して2割弱の外部資本を導入した後、どういう道を歩むのだろうか。これは、どんな外部資本が株式を保有するかにかかっている。次回はそのあたりを詳しく解説する。

*1-5:http://mainichi.jp/premier/business/articles/20170206/biz/00m/010/006000c (毎日新聞 2017年2月7日) 東芝半導体新会社に群がるファンドの百鬼夜行
●東芝解体の危機(7)
 半導体メモリー事業の分社化を決めた東芝は、さっそく、入札で株式の2割弱を売却する手続きに入った。すでに、10社前後の売却候補の名前が挙がったり消えたりしている。投資ファンド、銀行系ファンド、事業会社だ。このなかで、有力なのは投資ファンドだ。入札するかどうかは判明していないが、事前に名前が挙がったのは米コールバーグ・クラビス・ロバーツ(KKR)、米ベインキャピタル、米シルバーレイク・パートナーズ、英ペルミラといった名前だ。いずれも世界的に名前の知られたファンドで、日本でも実績のある大どころが並ぶ。投資ファンドに詳しいある関係者は、「まだほかのファンドが出てくる可能性がある。半導体メモリー事業に興味があるファンドは多いはず」と見る。投資ファンドの目的ははっきりしている。数年後に新会社を上場させ、株式の価値が上がったところで売却して利益を出すことだ。手を挙げるファンドがたくさん出て、競争が激しくなれば、東芝は思った以上に株式を高く売れるかもしれない。ただし、高値になればなるほど、数年後、投資ファンドが株式を手放す「出口」にたどり着いたときのハードルは高くなる。
●「出口」で大もめした投資ファンド
 「出口」で大もめしたのは、西武鉄道に出資した投資ファンド、サーベラスが記憶に新しい。西武鉄道(その後西武ホールディングス)は2004年に有価証券報告書の虚偽記載が発覚し上場廃止となった。東芝と同じくらいの窮地だった。そこにサーベラスが約1000億円を出資し、約32%の筆頭株主となった。10年後、再建を果たした西武は再上場した。その過程で、思ったほど売却益が出ないと考えたサーベラスは、路線廃止や球団売却を要求したり、株式の公開買い付け(TOB)で経営陣に揺さぶりをかけたり大騒ぎした。アベノミクスで全体の株価が底上げされ、そこそこの売却益が出ることになったため、静かになったが……。サーベラスは10年も出資をしてきた。言ってみれば「寝かせていた」ため、それなりの見返りを求めた。東芝が分社化する半導体メモリー事業について、投資ファンドは2~3年後の上場を想定し、少なくとも2~3割の売却益を目指すだろう。原子力事業の大損失がなく、戦略的に分社化・上場ができたなら、東芝が手にできたはずの利益だ。
●銀行系ファンドも有力候補
 銀行系ファンドも売却先の候補に挙がっている。その筆頭格が日本政策投資銀行(政投銀)が出資する投資ファンドだ。政投銀系の投資ファンドはベンチャー企業などに投資実績があり、企業再生に向けた出資も行っている。ただし、東芝のような大企業の再建支援に、政府系金融機関が乗り出せば、批判の声が上がる可能性がある。「投資ファンドや民間銀行系ファンドに任せればいい、なぜ政府系が手を出すのか」という批判である。政投銀は15年前、経営難に陥った大手スーパー、ダイエーの再建支援で、民間銀行とともに再建ファンドを作って出資し、このファンドがダイエーの筆頭株主になったことがある。このときも「国策救済」と批判された。結局、再建はうまくいかず、ダイエーは産業再生機構の支援を受け、最終的にイオンの傘下に入った。いま、ダイエーは店舗名からもほとんど姿を消している。仮に政投銀系ファンドが半導体新会社に出資することになったとしても、ダイエーの二の舞いにならないとは限らない。このほか、三井住友銀行やみずほ銀行、三菱東京UFJ銀行などメガバンク系のファンドも候補になる。政投銀やメガバンクのファンドは、東芝の半導体新会社の2割弱の株式をすべて手に入れることは想定していないだろう。金額が大きすぎるからだ。他の出資者と組むことが考えられる。東芝側は、外国系の投資ファンドが売却先の主体になった場合でも、政投銀や銀行系ファンドに一部出資してほしいと考えているはずだ。信用力と、話のわかる相手だからである。入札にはキヤノンなど、事業会社の名も挙がっていた。だが、キヤノンは「大変難しい」と事実上、参加しない方針を明らかにしている。次回は、そのあたりの事情を解説する。

*1-6:http://mainichi.jp/premier/business/articles/20170123/biz/00m/010/001000c (毎日新聞 2017年1月24日) 東芝だけじゃない 三菱重に賠償請求66億ドルの衝撃
●米国での原発新設(3)
 米国内では2013年以降、原子力発電所の廃炉が相次いでいる。「シェールガス革命」で電力価格が下がり、福島第1原発事故の影響で安全規制が強化され、原発のコストが上昇したことを受けた動きだ。米国内の原発新設計画も大きな影響を受けた。東芝の子会社、米ウェスチングハウスは、08年に受注したボーグル原発2基、VCサマー原発2基以外に、フロリダ州レビィ原発1、2号機を09年に受注していた。ところが、レビィ原発は当初の予定通りに米原子力規制委員会の建設運転認可がとれず、契約が解除された。東芝本体も、09年にテキサス州サウス・テキサス・プロジェクト原発3、4号機の建設を受注していた。東芝としては初の海外での原発受注だった。だが、このプロジェクトに共同出資を計画していた東京電力が、福島原発事故で断念した。さらに、プロジェクトの主体だった米電力大手も、福島原発事故直後に投資を打ち切ると発表した。2基は16年2月に建設・運転認可を受けたが、東芝は「テキサス州では電力価格が低迷していることから、電力市況を見極めながらパートナー企業を募集し、適切な時期に建設開始を判断する」と発表し、事業は凍結された。
●3割しか工事が進んでいないボーグル、VCサマー原発
 ウェスチングハウスと東芝の両社で米国内で受注した8基は、当初の予定では16年に4基、17年に3基が完成するはずだった。ところが建設が開始されたのはボーグル原発、VCサマー原発の計4基にとどまった。その4基の工期も予定より大幅に遅れている。原発回帰の流れにのって、米国内で原発を次々新設するという東芝・ウェスチングハウスの狙いは、大きく外れてしまったのだ。建設中のボーグル原発、VCサマー原発は今のところ、19年と20年に2基ずつ運転を開始することになっている。東芝が数千億円損失の可能性を公表したのはこの4基の建設についてだ。建設工事は全体の3割しか進んでいないことも明らかになった。ウェスチングハウスも、親会社の東芝も、巨額の損失で債務超過の恐れが出ている。そうした企業に、3割しか建設が進んでいない原発を完成させることができるのか、という疑問が湧いてくる。
●三菱重工に対して起こされた巨額の損害賠償請求
 米国内での原発事業で大変な目にあっているのは東芝・ウェスチングハウス連合ばかりではない。巨額の損害賠償請求訴訟を起こされている日本企業がある。三菱重工業だ。カリフォルニア州のサンオノフレ原発2、3号機のうち、3号機で12年、加圧水型原子炉の重要設備である蒸気発生器の配管が破損し、放射性物質が漏れた。定期点検中の2号機でも多数の配管の摩耗が見つかった。蒸気発生器は三菱重工製で、交換されて2年以内のものだった。米原子力規制委員会は三菱重工のコンピュータ分析のミスが、設計上の不具合につながったと結論づけた。地元住民が再稼働に反対し、米原子力規制委の調査も長期化するなかで、電力会社は13年に廃炉に追い込まれた。電力会社は三菱重工に対し、廃炉費用を含め、75億7000万ドル(今の為替レートで約8600億円)という巨額の損害賠償を求めた。三菱重工は契約上、支払いは最大1億3700万ドル(約155億円)だと主張。請求額はその後66億6700万ドル(約7570億円)に減額されたが、争いはパリの国際商業会議所の国際仲裁裁判所で係争中だ。東芝が抱えた数千億円の損失といい、三菱重工が抱える巨額の損害賠償請求といい、原発事業のリスクがいかに大きいかを物語っている。

*1-7:http://digital.asahi.com/articles/ASJDH3WLZJDHULFA00N.html (朝日新聞 2016年12月15日) 日立受注の英原発に資金支援 政府系金融機関
 政府系金融機関の国際協力銀行(JBIC)や日本政策投資銀行は、日立製作所が英国で進めている原子力発電事業に資金支援する方針を固めた。設計から運営までを担う日立の子会社に、融資などを行う。原発の輸出ビジネスに官民で取り組む姿勢を明確にする。
●日立が日本原電と協定 英国での原発建設へ協力要請
 日立の子会社は英中部に原発2基を建設する。2020年代前半の稼働を目指し、総事業費は2兆円超とされる。JBICや政投銀は、同社への融資や株式の買い取りを検討する。来年中に支援の大枠を固める。英国では中国の原子炉の導入が予定されている原発計画もある。安全面などから逆風が吹く原発ビジネスに官民で取り組む姿勢を示し、受注競争を有利に進めるねらいがある。来日したハモンド英財務相は15日、麻生太郎財務相と会談。原発事業への資金支援についても話し合ったもようだ。ハモンド氏は会談前、朝日新聞などのインタビューに応じ、日本の支援について、「前向きに考えてくれていることをうれしく思っている」と述べた。年内には、世耕弘成経済産業相とクラーク英ビジネス・エネルギー・産業戦略相も会談し、原発分野での協力を話し合う見通しだ。

<核燃料の最終処分>
*2-1:http://qbiz.jp/article/101074/1/ (西日本新聞 2017年1月3日) 玄海原発敷地内に乾式貯蔵施設 九電、候補地選びに着手 
 九州電力が玄海原発3、4号機(佐賀県玄海町)の再稼働後を見据え、使用済み核燃料の乾式貯蔵施設を建設する敷地内候補地の選定作業に着手したことが分かった。玄海原発が再稼働すれば、同原発の使用済み核燃料貯蔵プールを全て使っても、4〜5年程度で満杯になる見通し。このため、まず3号機の貯蔵プールの容量を増強。次の段階として、乾式施設も新設する方針。
●再稼働後を見据え容量拡大
 玄海原発では、使用済み核燃料を原発内の貯蔵プールで保管しており、既に容量の約6割が埋まった状態。九電は2010年2月、3号機の貯蔵プール容量を燃料集合体1050体から2084体に約2倍に増やすリラッキング工事の計画を国に申請していた。しかし、11年3月の東京電力福島第1原発事故で、電源喪失のため貯蔵プールが冷却できなくなるトラブルが発生。事故後に発足した原子力規制委員会の田中俊一委員長は、同様の問題が起きなかった乾式施設の新設を電力各社に強く要求している。九電は規制委の求めに応えて、乾式施設の新設も具体化させる。ただ、関係者によると九電は、乾式施設よりも貯蔵プール増強の方が完成が早いと判断。再稼働後にプールが満杯になる事態を避けるため、3号機のプール増強を優先する。着工から完成まで4年程度と見積もっていた従来の増強計画の設計を、福島第1原発事故後の新規制基準に適合するよう変更した上で、再稼働後なるべく早い時期に国へ工事の認可を申請する方針。乾式施設建設のための調査も始動。再稼働に向けた安全対策で手狭になった敷地内に施設を置くための、具体的な建設レイアウトの検討に入った。貯蔵容器をコンクリート製にするか金属にするかなど技術面に関する検討も進めている。使用済み核燃料を巡っては、青森県六ケ所村の再処理工場稼働の見通しが立っておらず、九電は原発敷地外への持ち出しができない状態。16年8月には、玄海原発の対岸にある佐賀県唐津市鎮西町串地区の住民が、中間貯蔵施設誘致の要望書を市に提出するなど、使用済み核燃料の取り扱いが再稼働に伴う大きな焦点となっている。
◆使用済み核燃料の貯蔵方法 プールに貯蔵する「湿式」と、キャスクという密閉容器に入れる「乾式」がある。使用済み核燃料が出す熱をプールの水の循環で冷やす湿式には、電源や水が必要なため、電源が失われると冷却できなくなる危険性がある。乾式は使用済み核燃料をキャスクに入れて建屋に保存し、空気の自然換気で冷却する。海外では安全性が高く保守・点検が簡単な乾式が普及。日本でも福島第1原発事故後に原子力規制委員会が導入を促している。

*2-2:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12765433.html (朝日新聞 2017年1月26日) 原発の使用済み燃料、空冷保管を促進 規制委、基準緩和へ
 原発の使用済み燃料の保管について、原子力規制委員会は25日、水や電気を必要としない空冷の保管容器の導入を促すために基準を緩和する方針を決めた。プールでなく、地表に置いた容器で燃料を保管する方法で、乾式貯蔵と呼ばれる。使用済み燃料は通常、燃料プールで保管し、ポンプで水を循環させて冷やしているが、地震などで停電すると冷却機能が失われかねない。東京電力福島第一原発の事故では、4号機プールで1千体以上が冷やせなくなり、燃料がむき出しになることが懸念された。乾式貯蔵はプールで十分に冷やされた燃料を専用の容器に入れて密封し、空気の通りがよい場所で保管するもの。規制委が導入を促す容器は燃料の輸送用で、高さ9メートルからの落下試験や高温の炎に耐える試験にも通っている。この保管法は欧米で導入が進んでいる。これまで国内では耐震性の高い建屋が必要だったり、地震の揺れの想定が必要だったりして、導入のハードルが高かった。そのため、日本原子力発電東海第二原発(茨城県)など一部でしか導入されていない。規制委の田中俊一委員長は乾式貯蔵について、「プールで保管するより安全度がはるかに高い」と話した。電気事業連合会によると、全国の17原発にある使用済み燃料は計約1万5千トン。プールなどの保管施設は7割が埋まっている。乾式貯蔵で保管できるようになれば、プールに余裕が出るため電力会社も導入に前向きだ。ただ、原発が立地する自治体には、燃料の新たな保管場所ができることで、敷地での保管が長期化しかねないとの懸念も強い。

*2-3:http://www.tokyo-np.co.jp/article/economics/list/201703/CK2017030602000168.html (東京新聞 2017年3月6日) <原発からの請求書>(5) 最終処分場建設、運営に3.7兆円 増額の可能性も
Q 原発から出る核のごみを受け入れる最終処分場にはいくらかかりますか。
A 経済産業省の試算では建設・運営費で計三兆七千億円かかります。東京五輪向け新国立競技場(総工費約千五百億円)が二十四個できる金額です。
Q なぜそんなにかかるのですか。
A 燃料は再利用しますが、廃液など「高レベル放射性廃棄物」が出るからです。人が近づくとすぐ死亡するほど危険なので、ガラスに混ぜて固め、三百メートル以上の地下に埋めます。日本は地震が多いので耐震性を高め、完全な地下水対策も必要。その状態で最長十万年管理し、やっと放射線が減少するのです。その分、費用はかさみます。東京電力・福島第一原発事故の溶解燃料も受け入れる可能性があり、その場合もっと高くなるでしょう。
Q お金はだれが払うのですか。
A わたしたち電気を利用する国民が払っています。大手電力が出資する専門組織が建設・運営するのですが、費用は電気料金に上乗せされ、積み立てられています。東電の上乗せ額は一キロワット時あたり〇・〇四二五円で、約三百六十キロワット時使用した家庭(図のケース)では月十五円。家庭が電力会社を選べるようになった昨春以降は主に大手電力の利用者が負担しています。二〇一六年三月末時点の積立金は約一兆円にとどまっており、本紙試算では最低四十六年上乗せを続けないと必要額に達しません。
Q 原発を持たない新電力と契約すれば負担をしなくてよいのですか。
A いいえ、一部は負担を迫られます。経産省は〇五年に最終処分対象の核のごみの種類を増やし、見積総額も約八千億円上積みしました。燃料のリサイクルに必要な費用も膨らんでいたので、まとめて計二兆七千億円分を十五年かけて電線使用料である「託送料」に上乗せして集めると決めたのです。検針票の裏に小さく記されている「使用済燃料再処理等既発電費相当額」という長い名前の項目です。一キロワット時につき〇・一一二円の負担で、図の家庭は約四十円の負担。従来負担と合わせ月五十五円。東電管内の平均家庭(月間使用量二百六十キロワット時)は毎年計千六百七十五円ずつ積み立てに協力している計算です。
Q 処分場はいつできるのですか。
A 政府は長年候補地を探してきましたが、人々の抵抗感は強く、みつかりません。経産省は断層の状況などから有望地域を示す地図を昨年末までに示す予定でしたが、先送りにしています。ごみの受け入れ先がないにもかかわらず、政府と電力会社は原発再稼働を急いでおり「無責任」との批判があります。日本学術会議も「いまの科学で十万年の安全確保は証明できない」としており、建設計画は難航が必至。資金面でも作業が進めば、三兆七千億円の見積もりを大きく超え、国民は電気代からの積み立て増額などを迫られる可能性があります。原発政策と電気代についての疑問、意見をお寄せください。ツイッター上からハッシュタグ #原発からの請求書 をつけて投稿してください。メールは keizai@tokyo-np.co.jp  ファクスは03(3595)6914

<玄海原発再稼働>
*3-1:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/407816 (佐賀新聞 2017年2月22日) 玄海再稼働 唐津市で県民説明会始まる、住民から不安、疑問 国と九電は対策強調
 九州電力玄海原発3、4号機(東松浦郡玄海町)の再稼働に関し、佐賀県は21日、初めての県民説明会を唐津市民会館で開いた。エネルギー政策、適合性審査の概要、原子力防災の取り組み、原発の安全対策の4分野について、国と九電の担当者が説明し、再稼働への理解を求めた。会場からは原発の必要性や安全対策を疑問視するなど再稼働に反対や懸念を示す意見が相次ぎ、終了時間を1時間近く延ばして対応した。唐津市や玄海町だけでなく、県内各地から192人が参加した。原子力規制庁、資源エネルギー庁、内閣府、九電の担当者が各分野の概要や取り組みを挙げ、福島第1原発事故を教訓に「審査に通ることがゴールではない」「原子力に対する不安の声に真剣に向き合う」などと述べた。会場からは「熊本地震のように複数の地震に対する審査をしたのか」「福島の事故は終わっていない」など、震災を踏まえて再稼働に反対する質問が噴出し、国や九電の担当者は説明に追われた。質問時間が1人1分間と短いことへの不満や、再度の説明会開催を求める声も上がった。主催した佐賀県の山口祥義知事は「再稼働する、しないにかかわらず玄海原発はそこにある。時間が足りないというのはよく分かるが、われわれもプロセスを大切にしたい」と語った。県は県内首長にも案内を出し、参加を呼び掛けた。唐津市の峰達郎市長は「文言が専門的すぎる。一方的な説明の仕方が印象的で、住民は分からないのではないか」と感想を話した。玄海町の岸本英雄町長は「町議会特別委員会で説明を受けた内容と同じで、わざわざ出る必要はない」として欠席した。県は、この日の県民説明会をインターネットで中継したほか、動画も見られるようにする。今後は22日に武雄市、27日に佐賀市、28日に伊万里市、3月3日に鳥栖市で開催する。玄海原発3、4号機の再稼働に関しては1月18日、規制委の適合性審査に合格した。これを受け国は県と玄海町に理解を求め、山口知事は県民から広く意見を聞く姿勢を示している。

*3-2:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/408220 (佐賀新聞 2017年2月23日) 武雄で玄海再稼働に関する県民説明会、水蒸気爆発想定審査せず
 九州電力玄海原発3、4号機(東松浦郡玄海町)の再稼働に関する県民説明会が22日、半径30キロ圏外では初めてとなる武雄市文化会館で開かれ、周辺市町の首長や職員、住民ら117人が参加した。国と九電が、エネルギー政策や安全対策などを説明した上で再稼働に理解を求め、住民からの質疑に答えた。会場からは「再生可能エネルギーや蓄電池などの開発に国策を転換して」などの意見が上がった。資源エネルギー庁は再稼働の必要性について「現状では電力の安定供給、経済性、温暖化対策でリスクがあり、今すぐ原発を代替できるものではない」などと説明した。適合性審査を担当した原子力規制庁には、重大事故が発生した場合に水蒸気爆発が起こるかどうかに質問が集中した。規制庁は「海外の知見も踏まえて水蒸気爆発が起きないことを確認している」と繰り返し、万が一、爆発が起こる想定に関しては「審査していない」と答えた。参加した武雄市朝日町の朝重節男さん(82)は、国の説明を聞いて「安全対策が十分かどうかは判断できないが丁寧だった」と話した。会場は前日の唐津会場に続いて空席が目立ち、市内の会社員の女性(31)は「若い人がいない。周知が足りないのか関心がないのか…」と首をかしげた。再稼働に慎重姿勢の谷口太一郎嬉野市長は、エネ庁が法的に地元の同意が必要ないことを明言したことに対し「はっきり言われて驚いた。事故があればわれわれも避難する立場であり、同意を取ってほしい」と顔をしかめた。説明会は今後、27日に佐賀市、28日に伊万里市、3月3日に鳥栖市で開催する。

*3-3:http://qbiz.jp/article/104555/1/ (西日本新聞 2017年2月28日) 原発再稼働、佐賀市でも不満噴出 住民説明会
 佐賀県は27日夜、佐賀市日の出1丁目の市文化会館で、九州電力玄海原発3、4号機(玄海町)の再稼働に関する3回目の住民説明会を開き、234人が参加した。前回までと同様、参加者からは事故への不安を訴える声が相次いだ。原子力規制庁の荒木真一原子力規制企画課長は、玄海原発が福島第1原発事故を踏まえた新規制基準に適合し、格納容器の破損を防ぐ冷却手段の強化や、海水を利用して熱を逃がす対策を確認したことを説明し、理解を求めた。参加者からの質問は1、2回目の説明会と同じく1人1分以内に限られ、不満が噴出。出席者が「福島の事故が収まっていない中で、世界一といえる基準が作れるのか」と訴えたのに対し、規制庁の担当者は「分かってきている基本的な部分を参考に新基準を作った。必要なものがあれば追加する」と回答した。「海外のように(炉心溶融時に溶けた核燃料を閉じ込める)コアキャッチャーは設置しないのか」との質問には「同様の機能を持たせている」と答えた。

*3-4:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/410217 (佐賀新聞 2017年3月1日) 玄海原発再稼働、伊万里説明会 市長「反対変わらぬ」、「なぜ急ぐ」住民も批判
 九州電力玄海原発3、4号機(東松浦郡玄海町)の再稼働に関する県内4カ所目の県民説明会(佐賀県主催)が28日、伊万里市民会館であった。周辺市町の住民らを含め388人が参加、安全性などへの疑問点を質問した。地元の塚部芳和市長は「参加者の不安や疑問に国や九電は答えていない。再稼働に反対の立場は変わらない」と述べた。原子力規制庁と資源エネルギー庁、内閣府、九電の担当者が防災の取り組みや国のエネルギー政策などを説明した。会場からは福島原発事故の収束や原因究明が終わらない状態で「なぜ再稼働を急ぐのか」「避難訓練が必要なほどのリスクの中で進める理由が分からない」と批判の声や、「再稼働ありきで検討が進んでいる」と不信感も漏れた。このほか、使用済み核燃料の保管の問題や、テロなどでの航空機落下事故の際の安全対策への疑問が出た。伊万里市のほぼ全域は原発から半径30キロ圏内にあり、緊急時防護措置準備区域(UPZ)にあたる。塚部市長は、国が再稼働の必要性についてエネルギーの安定供給に終始したことに触れ、「原発の安全安心とエネルギー問題は同列で論じられない。不安への回答になっていない」と指摘した。その上で会場から再稼働への疑念を示す意見ばかりが出されたことを挙げ「県がどのような判断を下すか、注目したい」と話した。
■4カ所目、最多388人参加 市長「市民の関心、不安表れ」
 首長が再稼働反対を主張する伊万里市の会場で開かれた4回目の県民説明会。これまでの最多となる388人(県発表)の参加に、塚部芳和市長は「市民の原発に対する関心の高さと不安への思いの表れだ」と強調した。唐津市と武雄市の参加者が少なかったため、伊万里市には市民から「市が周知すべきだ」と意見が寄せられた。市は24日、各公民館長に対して区長に住民への周知を促すよう呼び掛ける文書を発送。その効果もあったのか、会場には行政関係者や区長以外に一般住民の姿も目立ち、住民ならではの「命の訴え」が相次いだ。70代女性は「既成事実のための説明会という印象」と切り捨てた上で、「みんな本当に反対しているのだと分かった。市長はあくまで反対を貫き通してほしい」と求めた。一方、70代男性は「反原発団体の関係者の殺気だった質問と怒号が目立ち、あんな雰囲気の中でごく普通の市民は質問できない」と違和感を訴え、「公民館で開かれるなら、もう一度聞きたい」と期待を寄せた。説明会を巡って伊万里市と市議会は2月17日、県に市内全地区の公民館(13カ所)での開催を申し入れ、「まず伊万里での県民説明会の様子を見て、改めて協議したい」と県の回答を得ていた。終了後、塚部市長は「県がどう判断するかだが、聞き入れられなければ市議会と相談する」と地区別での実施を求めていく姿勢を示した。

*3-5:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/411493 (佐賀新聞 2017年3月6日) 原発県民説明会 容認意見なく、空席目立つ
■専門家「県の説明必要」
 九州電力玄海原発3、4号機(東松浦郡玄海町)の再稼働に関し、佐賀県は5会場での県民説明会を終えた。国と九電が再稼働の必要性や安全対策を説明し、参加者から容認する意見はなく、安全性への不安や必要性への疑問が相次いだ。説明内容の分かりづらさや質問時間の短さを指摘、追加開催の要望も上がった。1000人以上収容できる各会場は空席が目立ち、有識者は事故被害の甚大さを踏まえ、県民意向調査の実施を訴えている。各会場の受け付けでは開始時間が過ぎても参加者用の資料がうずたかく積まれたまま。「多くの県民に説明を聞いてほしいが、難しい」と県幹部はこぼした。説明会は、国が説明責任を果たすことを条件に県が主催した。2月21日~3月3日に半径30キロ圏の唐津、伊万里両市と佐賀、武雄、鳥栖市で開いた。参加者数は伊万里の388人が最多で、佐賀234人、唐津192人、武雄と鳥栖は各117人の計1048人。夜の開催で、子育て世代や若者は少なかった。説明会の運営では説明内容や質疑時間を巡り課題が指摘された。説明者の答えがかみ合わず、紋切り型の説明が繰り返され、怒号が飛び交う会場もあった。質疑時間は、原子力規制庁が適合性審査の概要説明後に20分、資源エネルギー庁がエネルギー政策、内閣府が避難計画、九電が原発の安全対策を説明した後に2回目を30分設け、「規制」と「推進」で分けた。県は「多くの意見を聞く」として質問を原則1人1問で1分間に限定。質問中に「30秒前」「まとめてください」と書いたボードをステージ上で掲げた。会場からは「重大な問題なのに短すぎる」「もう一度説明会を開いて」と批判が出た。ただ、多くは1分を超えたものの、司会者が遮ることはほとんどなく、各会場とも終了予定時間を1時間近くオーバーした。県民説明会について九州大大学院の吉岡斉教授(科学史)は「再稼働を判断する立場にある佐賀県の説明が必要だった」と指摘する。県民の参加状況に関しては、周知不足だけではなく「県の姿勢に期待が持てず『形だけのスケジュールを消化している』と多くの住民が判断したのではないか」と読み解く。住民避難に特化した説明会の必要性も挙げた上で「何より県が、県民の生命・健康を守る立場から徹底的に安全性を評価し、県民世論を幅広く収集することが大切。これまでのように政府や業界に従う姿勢は改めるべき」と述べ、住民意向調査を行うよう求めた。唐津と佐賀の説明会に出席した山口祥義知事は「福島の事故を経験して不安の声が多かった」と感想を述べた。県はメールや書面で意見を受け付け、18日には20市町の首長の考えを聞く。開会中の県議会は、再稼働容認の自民議員が多数を占める。「県議会の意見は極めて大切」と強調する山口知事。追加の説明会を開くのかどうか、幅広い声をどうそしゃくし、いつ判断を下すのか。過程を重視する知事の説明責任も重要さを増している。

*3-6:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/412564 (佐賀新聞 2017年3月10日) 玄海原発 反原発団体も説明会を要望、県に24項目の要請書
 九州電力玄海原発3、4号機(東松浦郡玄海町)の再稼働に関し、反対する県内の複数の団体が9日、全市町での県民説明会の開催や再稼働に反対・慎重な意見を持つ専門家の説明会などを佐賀県に求めた。山口祥義知事が判断材料にする会合が3月中旬に集中し、慎重な対応を求めた形だ。再稼働に反対する県内9団体で構成する脱原発佐賀ネットワークは、県内5カ所で開かれた県民説明会では不十分として、子育て世代や離島住民も参加できるよう、昼間や休日に説明会を追加開催することや、公開討論会の実施など24項目の要請書を提出した。県外住民の参加を認めることや、健康への影響、避難計画を検証する委員会の設置などを盛り込んでいる。県内各界の代表が委員を務める広く意見を聴く委員会の委員を出している県労連(北野修議長)は、再稼働に疑問を持つ専門家による説明会を求める要望書を提出した。2月の第2回会合では、再稼働を推進する国と九電の説明を聞いており「幅広い見地からの検討が必要」と指摘し、中立性を保つため県に選任を求めた。また共産党県委員会は、岸本英雄玄海町長が玄海3、4号機の再稼働に同意したことに対し抗議声明を発表した。広く意見を聴く委員会は13日、県議会原子力安全対策等特別委員会は15、16の両日、山口知事が県内首長の意見を聞く会合「GM21ミーティング」は18日に、それぞれ開かれる。

*3-7:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/412275 (佐賀新聞 2017年3月9日) 玄海原発、町長の再稼働同意撤回を 市民団体が抗議
 東松浦郡玄海町の岸本英雄町長が町内に立地する九州電力玄海原発3、4号機の再稼働に同意してから一夜明けた8日、脱原発を訴える市民団体のメンバーらが町役場で抗議活動し、同意の撤回を求めた。玄海原発対策住民会議(会長・藤浦晧玄海町議)をはじめ、佐賀市や武雄市などから集まった20人余りが、役場前でマイクを手に「再稼働は町長や議会だけで判断できるものではない」「玄海町で福島原発の二の舞いが起きてはいけない」などと声を張り上げた。その後、庁舎内に移動し、同意表明の撤回を求める要求書を、体調不良という岸本町長に代わって対応した町の担当者に手渡した。提出に先立ち、庁舎内の混乱を避けようと代表者だけの入庁を求める町職員に対し、「みんなが町民、県民の代表だ」とメンバーが詰め寄る一幕もあった。

<リーダーの見解>
*4-1:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12832205.html (朝日新聞社説 2017年3月9日) 大震災から6年 「原発は安い」では済まぬ
 東日本大震災からまもなく6年。復興はまだ道半ばだが、とりわけ原発被災地の福島県では今も8万人が避難生活を強いられ、地域社会の再生は見えない。原発事故の被害とその処理費用も膨らみ続けている。にもかかわらず、政権は原発を「重要な基幹電源」として、今後も積極的に使う構えだ。事故の惨禍を目の当たりにしてもなお、原発に頼り続けることに理はあるのだろうか。政府や電力業界が言うように、本当に「原発は安い」のか。
■膨らみ続ける費用
 東京都内のホール。福島第一原発の事故で全町避難を強いられた福島県浪江町が2月に開いた住民との懇談会で、避難者たちが次々に悲痛な声を上げた。「除染が終わったと連絡が来たが、線量は十分に下がっていない。これでは家に帰れない」。「私たちは原発事故で町を追い出された。帰れない人には東電が家賃を払い続けるべきだ」。浪江町の中心部は今月末に避難指示が解除され、住民は戻れるようになる。ただ、楢葉町など指示がすでに解除された地区では帰還率が1割ほどのところが多く、先行きは厳しい。炉心溶融を起こした原子炉の内部は、惨状がようやく見え始めたところだ。高熱で曲がった鉄格子、こびりついた黒い塊……。東京電力は2号機に調査ロボットを投入したが、人間なら数分足らずで致死量に達する強い放射線や堆積(たいせき)物に途中で阻まれた。溶け落ちた核燃料を取り出す道筋は見当もつかない。賠償や除染、廃炉などの費用について経済産業省は昨年末、総額21・5兆円にのぼるとの見通しを示した。従来想定の2倍で、巨額の負担が電気料金や税金として国民にのしかかる。そもそも、壊された生活や地域社会など金銭では表せない被害もある。痛手は計り知れない。
■保護ありきの政府
 政府は東電をつぶさないため、支援策のてこ入れに乗り出した。東電や原発を持つ電力大手各社が負担してきた賠償費を、今後40年間にわたって、電力自由化で参入した「新電力」にも一部負担させる方針だ。これは、自由化でめざす消費者の利益より、原発の保護を優先するやり方にほかならない。原発を持たない新電力にも原発固有のコストを押しつけ、大手の負担を軽くするからだ。なりふり構わぬ姿勢から浮かび上がるのは、原発はもはや強力な政策支援がないと成り立たないという実態である。それでも、経産省は「福島事故の費用を織り込んでも、原発のコスト面の優位性は変わらない」と言う。引き合いに出すのは15年に示した試算だ。原発を新設する場合の発電コストについて、火力や自然エネルギーなど他の電源より低いとする。30年度時点で必要な電気の2割ほどを原発でまかなう政策の根拠としている。だが、これにはさまざまな疑問が出ている。原発に批判的な専門家は「試算は、原発を大きなトラブルなく長く運転できることが前提。過去の稼働状況や費用の実績をもとに計算すれば、発電コストは高くなる。建設費用も震災後は世界的に上昇している」と指摘する。経産省の試算には、費用の見積もりが仮置きにすぎない項目も目につく。たとえば核燃料サイクルは技術が確立されておらず、具体的な進め方も未定の部分が多い。長年の懸案である高レベル放射性廃棄物の最終処分地選びは遅々として進まない。これらは既存の原発にもかかわる問題だ。歴代の政権は、原発推進の旗を振りつつ、「負の課題」については先送りやその場しのぎを繰り返してきた。そんなやり方は、もはや限界だ。
■脱原発への具体策を
 今年は国のエネルギー基本計画を見直す時期に当たる。この機をとらえ、原発をはじめ各電源の経済性やリスク、利点を精査し、新計画に反映させるべきだ。原発推進派だけでなく、批判的な専門家も招き、多角的に検討することが欠かせない。海外に目を向ければ、ドイツや台湾が脱原発を決めた。他の先進国でも原発を前倒しで閉鎖したり、原発への依存度を下げる目標を掲げたりする動きが出ている。安全性を重視する社会では、事故や廃棄物への対策が解決できていない原発は、手に余るものになりつつある。そのきっかけとなったのが、福島の事故だった。安全規制の強化とコストの上昇は最近の東芝の経営危機にもつながった。安倍政権がなすべきなのは、原発を取り巻く現実や再稼働に慎重な民意に向き合い、原発への依存度を着実に下げていく具体策を真剣に練ることである。閉鎖的な「原子力ムラ」の論理が幅を利かせ、安全神話がはびこった結果、福島で何が起きたか。この6年間をいま一度思い起こし、エネルギー政策を合理的で持続可能なものに作り替えなければならない。

*4-2:http://www.kirishin.com/2016/11/20161126.html (キリスト新聞 2016年11月26日) 司教団が原発撤廃を呼び掛け 世界のカトリック教会に協力と連帯要請
 日本カトリック司教団は11月11日、「地球という共通の家に暮らすすべての人」に向けて、「原子力発電の撤廃を――福島原子力発電所事故から5年半後の日本カトリック教会からの提言」と題するメッセージを発表した。同司教団は東日本大震災後の2011年11月、「いますぐ原発の廃止を」と訴えるメッセージを発表。その後、韓国のカトリック司教団とも原発について学びを重ねてきた。今回のメッセージでは、被災者が現在も経済的・社会的・精神的な苦境に立たされており、東京電力福島第一原子力発電所事故の収束の見通しも立っていないことを指摘。放射性廃棄物の根本的な処理方法が確立されていないにもかかわらず、日本政府は48基の原子炉を順次再稼働し始め、新原子力発電所建設計画の再開、原発輸出に向けた動きを加速していると述べた。そして、「一国の司教団が、世界に向けてメッセージを発するのはきわめて異例のことかもしれません」とした上で、「しかし、福島原発事故から5年半が経過し、日本がこのような事態に陥ってしまった中で日本司教団は、原子力発電の危険を世界のすべての人に知らせ、その撤廃を呼びかけるほかはないと考えるに至った」と、メッセージを発表した理由を説明した。メッセージは、「なぜ日本司教団は呼びかけるのか」「5年半をへて分かったことと学んだこと」「原子力発電を推進する国家の姿勢」「キリスト教信仰の視点から」「国際的な連帯の呼びかけ」の5項目から成り立っている。「国際的な連帯の呼びかけ」では、原子力発電の撤廃は、国際的な連帯がなければ実現困難だとし、世界中のカトリック教会に協力と連帯を要請。特に各国の司教団に対して、原子力発電の危険性を理解し、その是非について福音的立場から議論するよう求めた。最後に、「原子力発電の是非を将来世代をも含めたすべての人間の尊厳を守るという一点から判断しなければならない」と主張。また、核エネルギーを利用している国々が選択すべき道は、原子力発電の撤廃を決定し、再生可能エネルギーの利用拡大を推進していくことだと強調。「今一度立ち止まり、人類社会の目指すべき発展とは何か、真の豊かさとは何かを問い直さなければなりません」とし、それは「新たな豊かさに向けての前進」だと訴えた。

*4-3:http://www.higan.net/news/2012/06/post-28.html (彼岸ネット 2012年6月26日) 日本仏教各宗派は原発についてどう考えている? 
 毎週金曜日夜、首相官邸前や大阪の関西電力本店前などで行われている、大飯原発再稼動決定に対する抗議デモはどんどん規模が大きくなっていますね。6月22日には、官邸前に4万5000人、大阪の関電本店前には1500人が集まったと言われています。日本の仏教界では、6月12日に東本願寺(真宗大谷派)が「大飯原子力発電所再稼動に関する声明」を発表。こちらもTwitterやFacebook上で話題になりました。ところで、日本仏教界の各宗派は、原発についてどんな意見を持っておられるのでしょうか。各宗派のウェブサイトに記載されている声明や談話を、震災後から時系列に沿ってまとめてみました。
●東本願寺「原子力に依存する現代生活」を問い直す姿勢を表明(2011年7月7日、安原晃宗務総長)
http://higashihonganji.or.jp/info/news/detail.php?id=337
 宗会(最高議決機関)において、安原晃宗務総長が「原子力に依存する現代生活」の問題は「人間の方向」の問題であると述べ、「放射能飛散と被ばくのいたましい現実から『原発』の誤謬性を思い知らされることであり、したがって極力、ていねいな議論が必要な最重要課題であります」。
●全日本仏教会 会長談話「原子力発電所事故から思うこと」(2011年8月25日、河野太通会長)
http://www.jbf.ne.jp/2011/08/post_206.html
 原発の利便性ゆえに便利な生活を享受してきた反面、事故による放射能汚染、廃棄物の処理について見通しがつかないという現状があることに言及したうえで、「私ども仏教徒は、仏陀の教えに連なるひとりとして、今を生きるひとりの人間として、また大切な地球の中に生きる者として利便性と経済的効果のみを追求せず、自らの足、実地を踏む良き道を選び、歩んでまいりたいと思います」。
●臨済宗妙心寺派「宣言(原子力発電に依存しない社会の実現)」(2011年9月29日、臨済宗妙心寺派宗議会)
http://www.myoshinji.or.jp/about/post_9.html
 平和利用とは言え、原子力発電が人類に制御できない危険なものであることが明らかになった今は「一刻も早く原発依存から脱却し、これに代わる安全なエネルギーへの転換に向け社会に働きかけなければいけない」としたうえで、「私たち仏教徒は、利便性や経済性のみを追求せず、仏教で説く「知足(足るを知る)」を実践し、持続可能な共生社会を作るために努力することをここに決意し、宣言します」。
●曹洞宗「原子力発電に対する曹洞宗の見解について」(2011年11月11日)
http://jiin.sotozen-net.or.jp/wp-content/uploads/2011/11/20111101aboutapg.pdf
 「現状において即時に全ての原子力発電を停止し、再生可能エネルギーに転換することは不可能」であり、火力や水力もCO2増加や環境への負荷がかかること、電力不足で経済が混乱するなどの問題があると指摘。原発を速やかに停止して再生可能エネルギーへと移行することが望ましいとしながらも「現時点で原子力発電の是非について述べることは非常に難しいのではないでしょうか」。
●全日本仏教会「原子力発電によらない生き方を求めて」(2011年12月1日、河野太通会長)
http://www.jbf.ne.jp/2011/12/post_214.html
 快適さや便利さを追い求める影で、原子力発電所立地の人々が事故による「いのち」の不安に脅かされ、処理不可能な放射性廃棄物を生みだして未来に問題を残しているという現実があることに言及。「「いのち」を脅かす原子力発電への依存を減らし、原子力発電に依らない持続可能なエネルギーによる社会の実現を目指します。誰かの犠牲の上に成り立つ豊かさを願うのではなく、個人の幸福が人類の福祉と調和する道を選ばなければなりません」。
●西本願寺 本願寺新報「まことの安穏を目指して」(2012年1月1日号、梯實圓先生)※6/26追記
 本願寺出版社が発行する『本願寺新報』2012年1月1日号表紙に、梯實圓先生の文章を掲載。震災以降、本願寺派の公式発行物で原発に触れた最初の記事だとされています。仏教の説く「三毒の煩悩」になぞらえて、自分と自分の属する集団の利潤を最優先することを戒められています。以下、一部を引用。「単純な自然災害でも、天災と人災が複雑に組み合っていますが、とりわけ今度のような原子力発電所の事故は、想定を超えた天災のせいだけではなく、経済的効果に惑わされて、想定を甘く設定した人災であったといわねばなりますまい。さらにいえば原子力発電そのものが、経済発展を最高の価値と見なす思想が生み出した危険な産物です。その意味でこの事故は経済的利潤の追求を、すべてに優先させている思潮への激しい警鐘と受け取るべきでしょう」
●東本願寺「原子力発電所の再稼働に対する真宗大谷派の見解」(2012年4月24日、真宗大谷派解放運動推進本部長 林治)
http://higashihonganji.or.jp/info/news/detail.php?id=391
 2011年末に、政府に対して「原子力発電に依存しない社会の実現を目指す」要望書を提出。「生きとし生けるもののいのちを脅かすことなく、さらに未来を生きる子どもたちのためにも、一刻も早く原子力発電に依存しない社会の実現」を求め、「すべての原発の運転停止と廃炉を通して、原子力に依存しない、共に生きあえる社会」へと歩みたいと表明。「私たちは、すべてのいのちを摂めとって捨てない仏の本願を仰いで生きんとする念仏者として、仏智によって照らし出される無明の闇と、事故の厳しい現実から目をそらしてはならないと思っています」。
●法華宗(本門流)「第66次定期宗会において声明文を発表」(2012年6月11日)※6/27追記
http://www.hokkeshu.or.jp/
 「一、東京電力福島第一原発事故の一日も早い収束を祈り、原子力発電にたよらない、持続可能な自然エネルギーによる社会の実現に向け、努力してまいります」。
●東本願寺宗派声明「大飯原子力発電所再稼動に関する声明」を発表(2012年6月12日、宗務総長 安原晃)
http://higashihonganji.or.jp/info/news/detail.php?id=402
 「福島第一原子力発電所の事故で多数の苦しんでおられる方がある中で、一旦停止した原子力発電所を再稼動する理由に、人のいのちよりも優先すべきことがあったのでしょうか」と問いかけ、野田内閣総理大臣による大飯原子力発電所再稼動表明に強い遺憾の意を表明。すべての原発が「決して再稼働することないよう念願するものであります」。

*4-4:http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2017030701001351.html (東京新聞 2017年3月7日) 民進、「原発ゼロ法案」を了承 蓮舫代表、党大会で表明へ
 民進党は7日、エネルギー環境調査会(玄葉光一郎調査会長)を国会内で開き「原発ゼロ基本法案」の国会提出を明記した政策方針を了承した。原発ゼロ実現に向け、再生可能エネルギーの利用促進などを盛り込んだ。蓮舫代表が12日の党大会で表明する原発エネルギー政策に反映させる。政策方針は「民進党のエネルギー政策(当面の論点メモ)」。「2030年代原発ゼロ」目標の「30年」への繰り上げ明示を見送った一方、「原発依存からの脱却が前倒しで実現可能となるよう、来る総選挙に向け検討を進める」とした。省エネ目標を上積みするほか風力や水力などの再生可能エネルギーの導入を加速する。


PS(2017年3月11日追加):*5-1のように、国は年間積算の空間線量が20ミリシーベルト以下の地域では避難解除を進めているが、この線量は原発の中と同じである上、加算しなければならない内部被曝を考慮していないため、帰還した一般市民は原発労働者より大きな放射線量を365日、24時間浴び続けることになる。にもかかわらず、「20ミリシーベルトは最大で普通はそれ以下だ」という言い訳も聞くが、基準はそういうもので、原発労働者も同じである。また、避難し続けるか帰還するかについては、放射能汚染の正確な情報を公開した上で意思決定させるべきであるのに、正確に計ることもせず、「放射能による健康被害はないから、心配するのは風評被害だ」と決めつけるなど、想定が甘く非科学的すぎる。その上、避難し続ける人を「必要以上に不安に思っている人」などと吹聴しており、これが避難生活をやりにくくして、周囲から驚くような内容の差別やいじめの言葉を引き出すことになっている。そのため、*5-2のように、科学的に説明した上で、希望する避難者へは支援を継続することが必要だ。
 なお、*5-3のように、フクイチの原子炉建屋を覆っていたカバーは、解体され、現在は取り外されたままである。そのため、放射性物質の付着した粉じんが舞い上がるのを防ぐために飛散防止剤を吹き付けたとしても、その効き目がそれほど長くて強いとは思われず、フクイチは現在、遮るものもなく解放されているわけである。その上、*5-4の約350億円の国費を投入した凍土遮水壁は、かなり前に凍結を開始したものの未だに目的を果たしておらず、これから夏や台風の季節になればさらに凍りにくくなって、フクイチは汚染水を垂れ流し続けることになる。
 さらに、*5-5、*5-6のように、フクイチ2号機に、堆積物除去ロボットを投入して調査したところ、空間放射線量が毎時650シーベルトと推定され格納容器内の高線量でカメラは2時間で故障したというお粗末な結果で、「ロボットが圧力容器下まで行けなかったためデブリの状況が確認できなかった」などと説明されたが、人工衛星・ドローン・ミュー電子・放射線に感光するフィルムなど他の方法も使用可能であるため、これは稚拙な言い訳に過ぎない。

 
   スイス気象台の      日本のフクイチ以前と以後の   2015.4.14現在の上    
 2017.3.11放射能拡散予測    放射性セシウム基準    日本産食品の輸入制限上    
    (http://blog.goo.ne.jp/1shig/e/578f13d84d4da457255da1d206ae0d55参照)

(図の説明:一番左の図のように、フクイチからの放射能は現在も拡散し続けており、累積では天文学的数字だ。また、フクイチ事故前の食品に含まれていた放射性物質は大変微量だったが、現在の基準である100ベクレル以下というのは決して小さくなく、食べ続けても安全という証明はない。また、日本産食品の輸入にあたっては、条件をつけたり産地制限したりしている国が多い)

<フクイチ事故とその後>
*5-1:http://fukushima20110311.blog.fc2.com/blog-entry-94.html (福島 フクシマ FUKUSHIMA、津波被害と原発震災に立ち向かう人々とともに) 「20ミリ基準で解除」は原発の中と同じだよ ――帰還目指す住民も汚染の実態に警鐘
 国は、「年間積算の空間線量が20ミリシーベルト以下」を基準に、避難区域の解除を進めている。4月1日、田村市都路(みやこじ)地区が、20キロ圏内の旧警戒区域では最初の解除となった。南相馬市は2年後の解除を決めている。しかし、このような避難解除の進め方に、疑問を抱いている住民は少なくない。その一人である木幡寛治さん(仮名)にお話を聞いた。木幡さんは、30数年来、福島第一原発を中心に原発作業員として働いてきた。しかし、原発事故によって木幡さんの自宅も避難区域とされ、現在は、仮設住宅で暮らしながら、除染作業などに従事している。木幡さんは、原発内の作業に長年携わってきた知識と経験から、「日常生活で20ミリシーベルトというのは到底了解できるものではない。まさに原発の中の放射線管理区域で暮らすということなんだから」と厳しく見ている。とくに、木幡さんは、空間線量以上に汚染の実態と内部被ばくのリスクについて警鐘を鳴らす。だから、空間線量だけを見せて、汚染の実態について知らせないという国のやり方に対して、「国による犯罪」だと批判する。その一方で、木幡さん自身は、自宅へ「戻る」ことを選択し、「戻る」人びとと共に地域再生に取り組むことを模索している。しかし、「その前に『戻らない』人たちの選択を守っていく必要が絶対にある」と訴える。また、「戻る」にあたっても、汚染の実態を正確に調査し開示して、住民が主体となって、内部被ばくを防護する対策を徹底する必要があるという考え方だ。そして、国が、事故を何ひとつ反省せず、原発の再稼働と増設に突き進むことに対して、「国がそういう態度なら、国民の側から転換をつくり出していく必要がある」という思いを持っている。
●外部放射線以上に汚染が問題
○4月1日に田村市都路地区の避難指示が解除になり、小高や浪江もそういう方向で進んでいます。
木幡:いつまでたっても復興事業ができないとか、このままだとコミュニティーが崩壊してしまうとか、国に限らず、市町村も、遮二無二解除しようとしているよね。で、放射線に対する防御よりも、復興を優先して行くような雰囲気がどんどん強まっているし、そういう圧力が高まっているね。これ以上、除染しても無理だと思うし、そういうところに戻って住むか住まないかは個人の判断によるしかないんだけど、もし、年間20ミリシーベルト近く被ばくをする可能性があるようなところで生活するというなら、それはまさに原発作業員と同じなんだから。だから、そうするんだったら、そういう管理をきちっとやれよという話なんだよね。
○木幡さんは30年以上、主に福島第一原発で作業員をやって来られましたね。その経験や知識からすると、20ミリシーベルト基準での解除には問題があると。
木幡:そうね、相当に問題があるんじゃないかな。原発で働いてきたから、職業被ばくとして、年間20ミリシーベルト〔※〕ということについては、まあ了解しているよ。でも、日常生活で20ミリシーベルトというのは到底了解できるものではない。〔※法定の限度は「実効線量で5年間に100ミリシーベルトを超えず、かつ、1年間に50ミリシーベルトを超えない」。それに準じて、東京電力や協力企業では、概ね年間20ミリシーベルトを管理基準にしてきた〕。放射線管理区域というのが法律で定められている。その基準は、外部放射線で言えば、3カ月で1.3ミリシーベルトを超えるところ。そういうところでは、被ばく管理や汚染管理をきちんとしなさいよと決められている。例えば、放射線管理区域の中で作業をするときには、APD(警報付ポケット線量計)とか、ガラスバッチ(個人積算線量計)をつけて外部被ばくの線量を管理している。それから、作業を終えて管理区域から出るときは、汚染を服や体にくっつけたまま持ち出してしまわないように、スクリーニングチェック(表面汚染検査で汚染者を選別する)を受けなければならないんだ。表面の汚染密度で基準を作っている。そこで引っかかると、落ちるまで洗わされるとか、服なんか取り上げられるとか、そういう風にやっていたんだよ。それから、3カ月に1回はホールボディーカウンターの検査、それに6カ月に1回の電離健康診断が義務づけられているんだ。で、そういう検査でもし基準以上の数値が出たりしたら、放射線管理区域の中での作業ができなくなるんだよ。20ミリシーベルトというのはそういう世界なんだから、そういう管理がなされないといけないという話なんだよね。
○外部放射線にだけに目が行ってしまいますが、放射線管理区域では、外部放射線に対する管理とともに、汚染濃度で内部被ばくに対する管理が行われていたのですね。
木幡:その通り。原発労働の経験からすると、外部被ばくだけを見ていたらだめだと思うんだ。土壌や空気中のダストの汚染濃度を見ないと。震災前の原発では、外部被ばくに対する管理では、年間20ミリシーベルトを超えないように管理しているし、実際にはそれよりさらに低く抑えるようにしていた。しかし、それ以上に、内部被ばくに対する管理が厳しかったと思うよ。外部被ばくの防護管理だけであれば、線量測定と時間管理だけで十分なんだけど、汚染管理やスクリーニングとかホールボディーカウンターというのは、内部被ばくに対する防護としてやっていたわけだからね。だから、法律で決められている放射線管理区域の条件も、三つの基準があるんだよ。ひとつは、外部放射線で、実効線量が3カ月で1.3ミリシーベルト。もうひとつは、空気中の放射性物質の濃度。三つ目が、体や物の表面の放射性物質の密度。二つ目の空気中のダストの場合は、基準が核種によって違っていて、たとえばセシウム137だったら、1立方センチ当たり3×10-3ベクレルが空気中の濃度限度で、その1/10が管理基準といった具合。で、これがマスクオーダーだった思うんだよね。それ以上のダストが予想される場合は全面マスクをしないといけない。大事なのは、三つの指標があって、決して外部放射線だけではなかったということなんだ。
○そうすると、国の20ミリシーベルト基準の問題点は、単に、外部被ばくの数値として高いかどうかではなく、内部被ばくのリスクを軽視している点にあると。
木幡:そういうことだね。原子力規制委員会が昨年11月に「帰還に向けた安全・安心対策に関する基本的考え方(線量水準に応じた防護措置の具体化のために)」という見解を出しているけど、それを見ても、最初から最後まで線量に対する防護措置だけを扱っているんだよ。でも、20ミリシーベルト以下であれ一定の空間線量があるということは、そこにそれだけの放射性物質が存在して汚染しているということでしょ。で、外部被ばくは、空間線量率で予測できるけど、内部被ばくは主に汚染濃度に影響されるわけだからね。そういう汚染がある所で生活するということは、それを取り込むリスクがあるわけだ。それが一番危険なのに、そのことをほとんど無視しているという点だよね。
●シーベルトで管理する狙い
○そうすると、国は、汚染を密度・濃度でとらえるということを、意図的にネグレクトしているということでしょうか?
木幡:私としては、そう思わざるをえないね。実際、管理基準を変えているんだよね。あまり知られていないけど。まず、震災前の管理がどうだったかということを、少し前に作ったものだけど、表にしてみたんだ。(「放射線管理区域内の区分と管理例」 )もちろんこういう規定があるという意味ではなく、自分の経験と記憶の範囲でしかないけど。3・11以前から原発に関わってきた人は、こういうものだと思って、そういう基準でやってきたわけ。ところが、原発がドーンとなって、汚染が噴出したら、基準もガーンと変わってしまうというね。それも一時的な緊急措置ならまだしも、汚染にかんする基準は元に戻っていないわけだから。放射線管理区域から出るときの表面汚染の基準、スクリーニングの基準だね、それは、もともとアルファ線核種以外では1平方センチ当たり4ベクレル以下、カウントで約1300cpmだった。ところが、3・11以降、緊急時ということで40ベクレル、1万3千カウントにして、さらにすぐに10万カウントに引き上げた。で、その年の9月に40ベクレルには戻したけど、それがいまも続いている。3・11以前の基準の10倍。これは意図的でしょう。要するに、もう4ベクレルで管理しようとしても、そこら中が汚染だらけで、対応できないということでしょう。そういう意味で、汚染密度とか濃度ということにはできるだけ触れないで、外部放射線のシーベルトでくくっていると、これは管理しやすい。住民もシーベルトしか測んないから、本当の汚染が高いのか低いのかは分かんない状態なんだよ。もちろん、中心にいてコントロールしている人は分かっているでしょう。放射線管理区域の基準がどうだったかとか、汚染と内部被ばくの問題とか。でも、そういうことには触れないで、20ミリシーベルトという線量で切って解除ということにしている。これは、国による犯罪に近い行為なんだよ。
○なるほどそういう手口だったのですね。
木幡:ただね、国の方には、こういう言い訳があるんじゃないかと思うんだ。つまり、外部被ばくにしても、汚染を内部に取り込んだときの被ばくにしても、結局、シーベルトで統一しているんだからいっしょだと。外部被ばくで1ミリシーベルトを浴びようと、内部被ばくで1ミリシーベルト浴びようと影響は同じだというわけ。ICRP(国際放射線防護委員会)などの考え方なんだけど、外部被ばくでも、内部被ばくや局所的な被ばくでも、体の単位体積での平均的な影響で計算してしまう。でも、これは、私は違うと思うよ。例えば、細い針で皮膚を突いたときと、太い筒で突いたときとでは、痛さ、ダメージは違うでしょ、同じ力で押しても。だから、ECRR(欧州放射線リスク委員会)2010勧告では、内部被ばくは、外部被ばくに対して100倍から1000倍ぐらいリスクが高いと指摘しているよね。だから、原子力規制委員会の見解は、内部被ばくのリスクを非常に軽視したものだと思うよ。
●不安とリスコミ
○ところで、復興加速化方針では、被ばくと健康リスクに関して、住民の不安を取り除くためのリスクコミュニケーションということを言っています。
木幡:そこのところが、一番、頭に来ているんだ。たしかに健康への影響は、すぐに出てくる場合もあるかも知れないけども、すぐには出て来ない方が多い。少なくとも、健康への影響は、「わからないことが多い」というのが正しい知見でしょう。だけど、国の加速化方針は、放射線の健康影響は実際にはないと決めてかかっているよね。で、住民の抱いている「不安」には科学的な根拠はないと。それでも「不安」だというから、そういう人にはリスクコミュニケーションで「不安」を取り除いてあげましょうと。外部被ばくの数字だけを見せておいて、「大丈夫ですよ」「戻れますよ」というやり方はほんとにおかしいよ。これだけの放射能汚染があるよということを情報としてきちんと開示するべきでしょう。それからだよ、戻るかどうかは。もちろんそれをちゃんと理解した上で戻るという選択はあると思うけど。だけど、そのためには、ちゃんとした環境データをつくらないと。放射能は測ればわかるんだから。誰でも計測器があれば測れるんだから。
○国は、今後は個人の線量を把握すると言っていますが。
木幡:個人線量計つけるかどうかじゃないよ。帰還する住民に個人線量計を持たせるとか、それが被ばく対策で帰還促進策だと言っているけど。ガラスバッチを各家庭に配って、3カ月単位で送り返すと。ガラスバッチで積算線量を測るには便利だけど、その最少単位が0.1ミリシーベルトなんだ。だから0.1ミリシーベルト以下は被ばくゼロになってしまうんだ。そんなんじゃなくて、身体汚染とか内部への取り込みとか、汚染拡大なんかを防止することに力を注ぐべきだよ。
●除染の目標は「除染前よりは下げる」
○ところで、木幡さんは除染作業員としてモデル除染からかかわっていますね。また、被災者としてご自宅が除染の対象になっているわけですが。
木幡:うーん、除染ね。除染は必要は必要だよね。住宅の除染はどうしても必要だよね。ただ、やってもダメなところはダメだし、こんなやり方ではやらない方がいいんじゃないかというのもあるよね。屋根はもうやんなくてもいいと思うんだよ。最初の頃は、たしかに、一階より二階の方が線量が高いといったことがあって、やっぱり屋根から来ているということだったけど、今は、もう雨で汚染が流れてしまっているからね。あと苔が生えているような屋根とかは、苔を取ればいい。錆びたトタン屋根とか、そういうのはもう張り替えるしかない。雨樋もあるよね。雨樋なんか取り換えればいい。だけど、今の除染マニュアルでは、取り換えないね。壊れているものがあってもそれをそのままの状態におくんだ。非常に硬直している。それから壁でも、拭き取りによって効果がある材質のものだったら、拭き取りをやればいいだろう。それから洗浄でもいいと思うんだよ。
○洗浄は水の回収の問題があるのでは?
木幡:私も、最初の頃は、洗浄したら、水を回収はどうするんだかと言っていたんだけど、下がコンクリートだったら側溝に堰を作って回収する。それから、土のところでは、流れた水は土に染み込むけど、後で表土を5センチはぎ取る作業をやるから、結局、回収できるんだ。放射性物質は表土にとどまっていているからね。
○そうすると除染の現場で感じている問題は?
木幡:一番の問題は、拭き取りのできない材質のものだな。最悪なのはブロック塀。ワイヤーブラッシでブラッシングしているんだよね。これが最悪。たしかにブロックは多孔質で、放射性物質が付着していてなかなか取れない。だから、ワイヤーブラッシでやったら、ああキレイになったというのはあるかも知れないけど、で、それはどこに行ったのって?飛び散っちゃうんだから。
○それは作業している人にとって非常に危険ですね。
木幡:そう、それを一番心配しているんだよ。
それから、線量が高い場所での除草作業でもそうなんだ。ベーラーと言って、コンバインみたいな機械を運転しながら草を刈っていくわけ。そうすると粉塵がすごい。思わずもう風上に逃げたよ。タイベックを着て、マスクをして、あとタオルを覆ったりしてやってるんだけど。しかも除染作業員は、原発作業員よりも、検査の回数とか少ないんだ。ホールボディーカウンターだって、最初に除染作業に入る前と辞めた後に1回ずつ受けるだけ。例えば、除染作業員を2年やっていたら、その間は受けられない。除染電離則(除染業務における放射線障害を防止する法律)というのはそういうひどい法律なんだよ。
○ところで除染の作業には、数値的な目標や基準はないのですか?
木幡:厳密な意味での基準はないね。
 最初のモデル除染(2011年11月から12年3月)のときは、一応、きつい基準でやってたよ。ゼネコンがそれぞれ独自に目標を掲げて、空間線量率で毎時0.23マイクロシーベルトとか、表面汚染密度で1平方センチ当たり1000カウントとか。でも、環境省がこの間、言ってきたのは、「長期的な目標として追加被ばく線量が年間1ミリシーベルト以下」、「2011年8月末と比べて物理的減衰等を含めて約50パーセント減少」〔『除染関係Q&A』環境省〕という目標だよね。でも、「長期的な」と言っている通り、1ミリシーベルトはあくまでも先の先ということでしょう。それから50%減少というけど、「物理的減衰等を含め」というところがミソ。セシウム134の半減期が2年だから、その効果で線量も下がってきているわけ。それから雨や風で流されていったりして下がることもあるし。だから、この3年についていえば、除染をしなくても線量はかなり下がっているんだよね。でもこれから先は、半減期が30年のセシウム137が支配的になるから、なかなか下がらないだろうね。ともかく、こういうことだから、環境省の目標は目標じゃないよ。
○そうすると現場ではどうしているのですか?
木幡:まずは、やってみないとわからないということだな。
 とくに、田畑や家の周囲の山林はとにかくやっているだけという感じ。実際、どうしようもないよね。
○除染して、住宅とその周囲は0.23マイクロシーベルト以下になったけど、住宅から10メートルも山の方に行ったらもう1マイクロシーベルトを超えているというような話がありますが。
木幡:山林や田畑はもうそれ以上、下げることはできないでしょう。スポット的に除染して下げることは可能かも知れないけど、全体では無理だと思う。
○宅地については?
木幡:宅地については、空間線量で見て、除染前よりも線量が高いときに再除染をしているな。除染でかえって汚染を拡散させて、除染後の線量を上げてしまうことだってあるんだよ。とにかく現場では、「除染前よりは下げる」ということでやるしかないんだな。「数字が下がっていることを見せる」というためにやっているという感じだな。何マイクロ以下といった数値目標はないね。結局、先ほどスクリーニングレベルでも言ったけど、1万3千カウントから下げてないんだから。作業者のスクリーニングで、1万カウントの汚染が出たらエライことで、よっぽど特殊なことをやらないとそういうのは出ないんだから。つまり、1万3千カウント、40ベクレルというスクリーニングレベルを基にしたら、そもそも除染なんてする必要もないということになるよね。除染も形だけでいいとなる理由もここにあると思うんだよ。
○ところで、この間、環境省と福島、郡山、相馬、伊達の各市長が会合をもって(4月14日)、除染をめぐる勉強会を初めて、「追加被ばく量年間1ミリシーベルト」という除染の一応の目標を見直し、緩めようという方向で動いていますが。
木幡:結局、除染がうまく行かなくて、それが復興の妨げになっているからって、目標そのものを変えてしまおうというやり方だよね。外部放射線で、追加被ばくが1ミリシーベルトという点については、意見に一定の幅があるところだと思うけど、狙いが、「戻れ、戻れ」というところにあるのが問題だよね。それから、いま話してきたことだけど、外部放射線だけとらえて、いいとか悪いとかという議論に引き込んで、結局、汚染と内部被ばくのリスクという問題から目を逸らさせていることが一番の問題だわな。
●インフラ工事で汚染拡大
○ところで、除染とは違いますが、インフラ復旧工事が、汚染拡散を防止する措置もなく進められています。巨大ダンプがひっきりなしに走ってますね。
木幡:これもね、根本には国が1平方センチ当たり40ベクレルからスクリーニングレベルを下げない以上はどうしようもないんだ。いま帰還困難区域の中を走って来たって、スクリーニングも受けないでそのまま出て来ちゃんだから。一応、受けてくださいとはいっているんだけど、個人の判断になっちゃう。だから、浪江のところのスクリーニング会場の人も暇そうにしているでしょ。国のやり方として、あれは無責任極まりないよ。警戒区域にしているときは、必ずやっていたんだよ。状況は変わってないんだから、本当はそういう管理をしないといけない。汚染が出たらどうするのか、公共の除染場もつくらないといけない。ただ、1平方センチあたり40ベクレルの汚染なんて、基準が緩すぎてほとんど出ることはない。だから形だけになっちゃう。そういう緩い基準で住民が慣れてしまうのを待っているようなもんだよね。だから汚染は拡散しっぱなしだ。
○そういう状態をどう見ていますか?
木幡:チェルノブイリの場合、食品の汚染が大きな問題になっているよね。汚染していると分かっているけど、貧しいから野生のキノコを食うしかないとか、野イチゴを食べるとか。そういうことで相当長いこと内部被ばくが続いている。日本では、現在のところでは、いろいろな取り組みもあって、一応、食品に関しては、そういう状況にはないだろうと思うけど。しかし、空気中のダストはわかんないよ。逆にチェルノブイリよりもひどいかもしれない。「除染だ、インフラだ」っていじって、余計に粉塵が舞い上がっちゃっている。そういう感じがするぐらい杜撰だよね。これが後々どういう影響がでるかが心配だよ。
●「戻らない」選択と「戻る」選択
○お話を伺っていると、空間線量だけを見て、戻るかどうかの議論や判断が行われていることに問題があると。つまり、汚染の実態ということを見ると、厳然と健康被害のリスクがあるというご指摘ですね。
木幡:そういうことだな。外部放射線だけでは、いいとも悪いともいえないところだと思うんだよ。ただ、そこで生活するという選択をする場合、やはり内部被ばくが問題になるわけでしょ。 そのリスクはあるんだから。だから、「戻りたい」という人たちの話の前に、そんな線量ではとても「戻れない」という人、とくに若い人、子育て世代、こういう人たちの選択があると思う。そういう選択の人たちを守っていく必要が絶対にあると思う。そういう人たちに対して、「じゃあ、帰んなくていいよ。その代り補償は打ち切るからね」なんていうやり方は絶対にしたらいけないよ。で、早く帰還する人には賠償を上乗せするなんて言ってるけど、そんなことをするんじゃなくて、むしろ賠償は、帰って来れない人がこれから生計を立てていくために使うべきでしょう。その上で、私自身は、戻ろうと思っているんだけどね。
○では翻って、「戻る」という住民にとっては、何が必要だと考えていますか?
木幡:木村真三さんの本(『「放射能汚染地図」の今』)を読むと、志田名(しだみょう:いわき市北部のホットスポット 本サイトの記事参照)の除染の話が出てくる。住民が出してくる意見にはかなり鋭いものがあって、そういう意見を取り入れながら進めたということがよくわかる。住民はその土地のことを良く知っているわけだからね。こういうやり方がやっぱり正しいんだと思うよ。もっとも、小高や浪江では、なかなかこうはいかないだろうね。志田名は小さい集落だからまとまれたかも知れないけど、やっぱり広いと簡単じゃない。それから、志田名の場合、そこに生活していたからできたんだと思う。小高や浪江は、避難しちゃってバラバラになっている。だから、いろいろ呼びかけても、それっきりになっちゃって、なかなか立ち上がって来ないわけね。だから、私としては、とりあえず、いま国でやっている除染は除染として一通り終わらせる。その後、帰還する人たちで、空間線量ももちろんだけど、土壌、空気中ダスト、水、食品、植物、動物などの環境モニタリングを詳細にやる必要があるでしょう。で、それに踏まえて、生活の中で、どうやったら内部被ばくを低減できるかという取り組みを具体的に詰めて行うことが必要だと思う。あるいはまた電離検診も義務付ける必要があるよね。それから、住民が調べた結果、まだ除染が必要だと判断すれば再除染を要請するとか。そういったことを町づくりというか町の再建の一環として、はじめていくということかなと考えている。それを住民の手でやっていくことが大切なんじゃないかと思う。
○住民が主体になる必要があると。
木幡:そう、だから、国には、避難解除をするならするんでいいけど、解除して終わりじゃなくて、それからやることがいろいろいっぱいあるだろって言っているんだよ。でも、今の政府のやり方は、除染のやり方でも解除の決め方でもそうだけど、住民の様子を見ながら、結局、自分たちの方に責任が来ないようにという動きをしているよね。自分たちが責任をとって率先してやろうとはまずしない。住民への説明会なんかでも、環境省の本体の人間なんて見たことがない。どっかのコンサルタント会社に雇われた地元の人間が出てくる感じ。
●いま変わらなくて、いつ変わる
○木幡さんは、2011年3月11日にまさに福島第一原発にいたわけですが、今日のお話しから、やはり3・11を経て、考え方に大きな転換があったといっていいでしょうか。その点を最後に聞かせて下さい。
木幡:そう、建屋の中にはいなかったけど、構内にね。30年以上、福島原発をメインにやってきたから。3・11以降もしばらく収束作業に入っていたし。長く原発に関わってきただけに、全電源停止で水素爆発を起こすのを見て、痛切に反省をさせられた。自分自身、いかに、現代の科学技術文明にどっぷりと浸りきっていたんだって。津波の凄まじさとか、原発メルトダウンとか、科学技術文明に頼りすぎてきたことへの、自然の側からのしっぺ返しのような気がしたんだ。だから、これまでの日本人のライフスタイルの総点検とか、日本の進路の総点検ということを、一人ひとりが考えなければならないと思うんだ。そういう意味で、日本人のあり方とか、日本の社会のあり方そのものが重なって問題になっていると思うんだよね。そんなことを、高木仁三郎を読んだりして考えたね。
○ところが、政府の方では、原発の再稼働と増設を打ち出した『エネルギー基本計画』を閣議決定しました(4月11日)。また、修正過程では原発事故への「深い反省」が一旦削除されました。
木幡:もう、怒り心頭だよね。国は、これまでの考え方を何も変えていない。何も反省していない。そして事故や被害はもう忘却の彼方にだよね。まあ、この流れはこの間、ずっと見えていたことだから今さら驚かないけど。結局、国がそういう態度なら、国民の側から転換をつくり出していかないとね。どうしたら転換していけるか、そこが問われていると思うよ。そういう問題意識を持っている人がいま結構多くなっていると思うよ。新聞の投稿なんかでも、「明治維新でも変わらなかった。終戦でも変わらなかった。いま変わらなくていつ変わるんだ」って。本当にそういうことだと思うんだ。
<管理区域の設定基準>
 以下の基準を超えるおそれのある場所について管理区域に設定すると電離則などの法律〔※〕で定められている。〔※放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律施行規則、人事院規則一〇一五、電離放射線障害防止規則、経産省告示第百八十七号など〕
①外部放射線に係る線量については、実効線量が3月あたり1.3mSv
②空気中の放射性物質の濃度については、3月についての平均濃度が空気中濃度限度の10分の1
③放射性物質によって汚染される物の表面の放射性物質の密度については、表面汚染密度(α線を放出するもの:4Bq/cm2、α線を放出しないもの:40Bq/cm2)の10分の1
④外部放射線による外部被ばくと空気中の放射性物質の吸入による内部被ばくが複合するおそれのある場合は、線量と放射能濃度のそれぞれの基準値に対する比の和が1

*5-2:http://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-458940.html (琉球新報社説 2017年3月11日) 東日本大震災6年 避難者支援さらに拡充を
 東日本大震災と東京電力福島第1原発事故から6年となった。被災地以外で震災報道が少なくなったと懸念する声を聞く。社会が関心を失う中で、被災者に対する偏見が広がっていることを憂慮する。福島第1原発事故で福島県から横浜市に自主避難した男子生徒へのいじめ問題が一つの例だ。復興に向けて生活再建が進む一方、古里に戻りたくても戻れず苦悩している人々がいることを忘れてはならない。私たちに何ができるかを考え、共に歩みたい。東日本大震災で故郷を離れ、プレハブ仮設住宅や賃貸住宅、親族宅などに身を寄せる避難者は全国で12万3千人に上る。阪神大震災では約5年で仮設住宅がなくなったのに対し、岩手、宮城、福島の被災3県では1月末現在で1万8千戸に入居者がいて、仮設生活の解消も見通せない。沖縄県内への避難者数は598人(1月現在)。県別では福島県が419人と最も多く、宮城県92人、岩手県3人。ピーク時の約半数に減った。県が2016年11~12月に県内避難者を対象に実施したアンケート結果によると、88%が今後の生活について「避難を継続」「県内に定住する」と答え、沖縄で県内の生活を望む避難者が大多数であることが明らかになった。中には経済的な理由で戻れない人もいる。福島原発事故で避難区域外から避難した自主避難者に対する住宅無償提供がことし3月で打ち切られる。支援打ち切りは避難者の生活を直撃する。県内への避難者は子どものいる世帯の割合が高く、二重生活の長期化で経済的不安を抱える世帯も多い。県は新たな補助制度を設けているが、さらに支援を拡充してほしい。避難者は国の原発政策が招いた事故の被害者である。当然ながら国は、被災者の生活安定に責任を持つべきだ。一方、横浜市に自主避難した男子生徒へのいじめ問題が発覚した昨年11月以降、全国各地で同様のケースが存在することが明らかになった。横浜市の男子生徒は名前に「菌」を付けて呼ばれていた。教育現場で被災地や避難者の現状を伝え、放射線について科学的な知識を教える必要がある。同時に社会が関心を持たなければ、偏見はなくならない。大人の責任でもある。

*5-3:http://kenplatz.nikkeibp.co.jp/atcl/cntcolumn/15/00012/00009/?n_cid=nbpncr_twbn (日経BP社 2017年2月20日) 原発事故から4年後の難関、カバー解体、1号機原子炉建屋カバー工事編(第5回)
 時の流れは早い。福島第一原発1号機原子炉建屋の最上階(オペレーティングフロア)に残ったがれきの撤去に手を付けるため、4年間にわたって建屋を覆っていたカバーの解体が始まった。清水建設はカバーの建設に引き続き、工事を担う(以下、敬称略。肩書きや組織名は、特記以外は2016年2月時点)。清水建設生産技術本部の印藤正裕本部長(2011年12月時点)らが知恵を絞って計画した建屋カバーが完成してから、約4年後の15年7月28日。東京電力福島第一原子力発電所では、役割を終えたカバーの解体が始まった。放射性物質が付着した粉じんが作業時に舞い上がるのを防ぐため、建屋カバーの内側に眠るがれきに飛散防止剤を「これでもか」と吹き付けてから、最初のステップである屋根パネルの撤去を始める。建設時と同様に、風が弱まる早朝を狙う。750t吊りクローラークレーンを操って「自動玉掛け装置」を吊り込み、全長40mもの大きさの屋根パネルを取り外す算段だ。クレーンは、カバーの組み立てに使用した機体と同じもの。操作を担当するオペレーターの技能とマシンが一体となり、一つ目のパネルが無事に外れた。「その瞬間、現場には感動が広がった」。解体工事を指揮する清水建設JVの砂山智所長は、その時の現場の様子をこのように振り返る。カバー解体の第一段階である屋根パネル6枚の取り外しはその後も順調に進み、同年10月5日に終了した。

*5-4:http://www.minpo.jp/pub/topics/jishin2011/2016/03/post_13557.html (福島民報 2017年2月22日) 東日本大震災 「福島第一原発事故」アーカイブ2016/3/31分、31日「凍土遮水壁」運用開始 第一原発汚染水対策規制委が認可
 東京電力は31日、福島第一原発の建屋への汚染水流入を抑制する「凍土遮水壁」の運用を開始する。原子力規制委員会が30日の会合で、建屋海側(東側)などの先行凍結を認可した。東電は工程を3つに分けており、規制委が認めたのは工程の第1段階。建屋の周囲約1・5キロを取り囲む凍土壁全体のうち、海側全面(690メートル)と山側(860メートル)の大部分が対象。効果は1~2カ月程度で表れるとみている。東電は山側の残りの部分(7カ所、計45メートル)についても今後、実施計画を申請する。凍土壁全体の凍結が完了するまでには8カ月かかる見込み。31日は昼ごろ、凍結を始める。規制委の田中俊一委員長(福島市出身)は会合で「建屋への流入水を減らすのが本質的な解決ではない。最終的には建屋の水を枯らす必要があり、今後の道筋に向けデータを取ってほしい」と注文した。凍土壁は1~4号機を取り囲むように埋めた配管に冷却材を循環させて地盤を凍らせ、建屋に入り込む地下水を遮って汚染水の増加を抑える。しかし、建屋周囲の地下水位が下がり過ぎると、建屋内の汚染水の水位と逆転し、汚染水が地中に漏れ出す恐れがある。地下水位が下がり過ぎた場合、凍結中止や建屋周辺の井戸への注水で対応する。凍土壁の建設には約350億円の国費が投入され、平成26年6月に着工し、先月設備工事が終わった。
■最後のステップ 経産副大臣
 高木陽介経済産業副大臣は、いわき市で開かれた政府、東電による廃炉・汚染水対策現地調整会議後、「地下水バイパス、サブドレン計画実施、海側遮水壁とさまざまな汚染水対策を行ってきた。(凍土遮水壁は)最後の大きなステップ」と述べた。東電の増田尚宏福島第一廃炉推進カンパニー最高責任者は「決して運用を間違うことがないよう取り組む」と語った。

*5-5:http://www.tokyo-np.co.jp/article/economics/list/201702/CK2017021002000259.html (東京新聞 2017年2月10日) 福島2号機、格納容器内の高線量確実 カメラ2時間で故障
 東京電力が九日、福島第一原発2号機の原子炉格納容器内に堆積物除去ロボットを投入して実施した調査で、空間放射線量が毎時六五〇シーベルトと推定された。一月下旬の前回調査の推計五三〇シーベルトを上回る過去最高値。政府内では前回調査を疑問視する意見が少なくなかった。画像の解析によるもので、線量計で測定しておらず、大きな誤差がある可能性があるためだ。また圧力容器の真下付近の線量が最も高くなるとみられるが、二〇シーベルトとされた。信頼性が揺らいでいるとして、数値の公表に慎重な意見もあった。しかし、今回の調査でも高い線量が推計されたことで、誤差を考慮しても格納容器内が数百シーベルトという高線量であることはほぼ確実となった。堆積物の除去作業は九日午前に始まり、約二時間後、ロボットに搭載したカメラの映像が暗くなる不具合が発生して中断した。東電は「カメラは一〇〇〇シーベルトに耐えられるが二時間で壊れた。五〇〇~六〇〇シーベルトはおおむね正しいと思う」としている。

*5-6:http://www.tokyo-np.co.jp/article/feature/nucerror/condition/list/CK2017021802000147.html (東京新聞 2017年2月18日) 【福島第一原発の現状】自走ロボ調査は失敗
 東京電力は福島第一原発2号機の原子炉格納容器内に、サソリ型の自走ロボットを投入したが、圧力容器下の足場にたどり着けなかった。途中、レール上の堆積物で動けなくなった。回収も断念して内部に放置。調査は失敗に終わった。一月下旬からの予備調査では、溶融した核燃料(デブリ)の熱で溶けたとみられる穴が圧力容器下の鉄製の足場で見つかった。格納容器内で最大毎時六五〇シーベルト(推定)を計測。ロボットが圧力容器下まで行ければ、デブリの状況をもっと詳しく確認できる可能性があった。デブリを取り出すためには、まだまだ情報が不足している。今回のロボット調査が失敗したことで、東電は新たなロボット開発など調査方法の練り直しを迫られる。


PS(2017年3月12日追加):*6のように、九電が玄海町と唐津市鎮西町・肥前町・呼子町を全戸訪問して“丁寧な”コミュニケーションをしたそうだが、いつもの紋切り型の説明にすぎないと思われる。何故なら、「丁寧な」とは、言葉が丁重でお辞儀が深いことを意味するだけで、内容が変わるわけではないからだ。また、「肯定的意見が約7割」というのは、わざわざ訪ねてきた九電職員の前で否定的な意見は言いにくく、もし否定的な意見を言えば、「停電してもいいのか」「ここの家の電気を止めたい」などと脅迫されるからであり、この全戸訪問は再稼働の説明と原発再稼働を推進する与党議員の選挙運動を兼ねたものにすぎないだろう。しかし、鎮西町や肥前町には「近所の娘さんが白血病になった」という話や、呼子には「海藻が少くなった」などの実体験があるのだ。

*6:http://qbiz.jp/article/105387/1/ (西日本新聞 2017年3月12日) 九電が全戸訪問、58%で面会 再稼働へ玄海町や唐津市
 九州電力は10日、佐賀県玄海町の玄海原発再稼働を巡り、同町と一部が原発5キロ圏に入る同県唐津市の鎮西町、肥前町、呼子町の全戸を2月に訪問し、約58%に当たる4347戸で住民に面会して安全対策を説明したと発表した。全戸訪問は玄海町では2013年以来約3年半ぶり。唐津市では初めて。玄海町は1569戸のうち約63%の991戸で面会、唐津市では5905戸のうち約57%の3356戸で面会できたという。住民からは約2300件の意見が寄せられ、再稼働、原発の必要性、安全性に関する意見が約1300件。肯定的意見が約7割、慎重な意見と反対意見が約2割、賛否が判別しにくい意見が約1割だったという。避難に関しては約300件あり、約6割が不安を訴える内容だった。九電は「今後は面会できていない世帯を数カ月で訪問し、丁寧なコミュニケーション活動を続けたい」としている。


PS(2017年3月14日追加):西日本新聞が*7の記事を掲載しているが、佐賀県の第三者委で意見表明した26人のうち女性は6人で23%、男性は20人で77%であり、女性は1/3に満たない。そして、原発再稼働について、女性は反対4人・容認2人、男性は賛成9人・容認5人・反対6人と、食品の安全性や環境汚染に敏感な女性の方が反対が多いのである。
 その食品の生産者である農業者は、4人のうち伊万里農協の岩永組合長が明確に再稼働反対を表明し、唐津農協の堤組合長は反対しているものの最大の心配事は原発事故ではなく風評被害で、佐賀県農協の金原組合長は再稼働に賛成しており、食品製造者として情けない。これなら、原発のないオーストラリア産牛肉の方が、安い上に脂肪が少なく、人工の放射性物質を含まないため、安全でよいと思う。また、漁業者のうち男性である佐賀県有明海漁協の徳永組合長は再稼働容認で、女性である佐賀県漁協女性部の西村連合会長は言いにくそうに再稼働に反対している。また、佐賀県森林組合連合会の福島会長は纏めるのが難しかったとしながら容認しているが、農林漁業は太陽光・風力・バイオマスなどの自然再生可能エネルギーによる発電機器を設置できる場所が多く、自らが発電者になり得るので、流されることなく、自然再生可能エネルギーで発電するための補助を求めた方が有益だと考える。
 なお、佐賀県中小企業団体中央会の内田会長の「安全性が確保されたら再稼働もやむを得ない」「原発以外に石油、天然ガスのほか、風力・太陽光といった再生エネルギーが考えられるが、生産コストが割高で、中小企業の経営の圧迫に繋がる」等というのは、メディアで宣伝されている自然再生可能エネルギー高コスト論そのままだが、すべての専門家が「原発に100%の安全はない」としている上、私がこのブログの「原発」「資源・エネルギー」「環境」の項目で証拠をつけて述べてきたとおり、世界の自然再生可能エネルギーのコストは原発より安くなっている。

*7:http://qbiz.jp/article/105484/1/ (西日本新聞 2017年3月14日) 賛否両論さまざま 玄海原発再稼働 第三者委
 九州電力玄海原発(佐賀県玄海町)の再稼働について有識者らの意見を聞く県の「第三者委員会」(会長・副島良彦副知事)第3回会合では13日、委員から賛否さまざまな意見が出た。県は委員会としての結論は求めず、山口祥義知事が再稼働に同意するかどうかの判断に役立てるとしているが、委員会を今回で終了させることに異論も相次いだ。県は委員会の中に原子力や地震分野の学識者7人による専門部会を設けており、今月中にも最終会合を開いて報告書をまとめる予定。13日の会合の主な意見は次の通り。
①堤武彦・唐津農協組合長 国が示す新しい対策は、それぞれの分野で格段に安全対策が強化され評価している。ただ、最大の心配事である風評被害についての新たな対策強化は聞いていない。このような中では再稼働に賛成とは言い難い。
②岩永康則・伊万里市農協組合長 原則は「第二の福島をつくらない」ということ。東北、近畿、九州でも原発事故が起きたら「日本の農産物は食べられない」と世界で議論される。原発をゼロにして国民が負担を強いられるとしても、納得はできると思う。
③家永美子・JA県女性組織協議会長 佐賀は農業県で、一度事故が起きると1次産業は壊滅的被害を受ける。再稼働についての説明は、資源エネルギー庁だけでなく環境省や国土交通省、農林水産省からもあるべきだった。農業団体としてはもう少し考えてもらいたい。
④徳永重昭・県有明海漁協組合長 ノリ養殖は冷凍網や加工などあらゆる面で電力が必要。原発事故が起きてから化石燃料に頼りすぎ、温暖化が加速する傾向がある。将来的には原発廃止の方向に進むべきだと思うが、再生エネルギーで電力に余裕が出るまでは頼らざるをえない。
⑤西村陽子・県漁協女性部連合会長 福島原発事故の現地視察で見た光景が今も鮮明に浮かぶ。佐賀県の主幹産業はノリ。熊本でも地震があった。佐賀でないとは言えない。再稼働した場合、地震がないか心配だ。専門部会委員との話し合いの場も設けてほしい。
⑥福島光洋・県森林組合連合会長 組合で統一した意見をまとめるのは難しかった。将来は、原発や化石燃料よりも再生エネルギーにシフトしてほしい。原発は安全の上に安全を重ねて、再稼働するよう努力してもらいたい。
⑦内田健・県中小企業団体中央会長 安全性が確保されたら再稼働もやむを得ないと考えている。原発以外に石油、天然ガスのほか、風力・太陽光といった再生エネルギーが考えられるが、生産コストが割高で、中小企業の経営の圧迫につながる。
⑧青柳直・連合佐賀会長 現場を抱える九電労組があり、賛成も反対もある。企業の生産活動には安定したエネルギー供給が欠かせない。単価が上がれば企業に影響を与える。新規制基準をクリアし、地元同意が得られたら再稼働やむなしと判断している。
⑨松永宣子・県老人福祉施設協議会長 会員の中に賛否はあるが、容認が多い。原発5キロ圏内の施設長から話を聞くと、玄海原発は安全性も配慮され、テロなどがない限り事故は起きない、と言っているので信じたいが、入所者の安全を考えて避難計画を立てている。
⑩岩本諭・佐賀消費者フォーラム理事長 県は、原発から30キロ圏という距離にこだわらず、安全確保のために努力する姿勢を示してほしい。化石燃料を使うから電気料金を値上げしたのなら、再稼働したら料金を下げる必要がある。県は九電と向き合う際に把握しておいてほしい。
⑪柳瀬映二・県平和運動センター事務局長 いち早く原発をやめ、子どもが安心でき、豊かな自然を残し続けることを考えなければいけない。再稼働と避難計画は車の両輪だが、避難計画の説明は不十分なままだ。電気は足りている。県は再稼働しない判断をしてほしい。
⑫飯盛康登・県商工会連合会長 新規制基準に適合していると判断したのであれば、玄海原発の再稼働をお願いしたい。小規模事業者は経営が圧迫され、大変であると分かっていただきたい。エネルギー政策は、国が中長期的な政策を示してほしい。
⑬池田秀夫・県医師会長 災害発生時の医療体制を最優先に考えてほしい。住民への安定ヨウ素剤事前配布はもちろん、被災時の情報の正確かつ迅速な開示、入院・在宅患者の搬送、避難患者の受け入れなどの態勢づくりが再稼働の前提条件だ。
⑭寺尾隆治・県歯科医師会長 自分たちは専門家ではないが、専門部会のメンバーが十分に審議したと思う。安全面について最善の注意を払って頂けるならば、原発再稼働に反対するものではない。
⑮佛坂浩・県薬剤師会長 事故時の健康被害防止や避難時の医療充実のため安定ヨウ素剤の事前配布と講習、適切な服用方法の周知徹底をしてほしい。安全確保が担保されれば再稼働に反対しない。ただし、原発依存度を低減させ代替エネルギー施策を講じてほしい。
⑯三根哲子・県看護協会長 看護職は原発事故の時、被ばく者に最初に対応する職業の一つで、必然的に被ばく者になる。国は環境問題改善(温暖化防止対策)のためであっても、原発再稼働を国民に強いてはいけない。県は県民の命と安全な暮らしを守るため再稼働を認めない判断が必要。
⑰北野修・県労働組合総連合議長 原発は100%安全と言えない。使用済み核燃料は安全保管できず、核燃料サイクルも破綻している。住民説明会でも反対意見しかなかったことを踏まえ、山口知事には原発再稼働反対を表明してもらいたい。
⑱藤岡康彦・県介護老人保健施設協会長 原発をコントロールできない現状では再稼働は反対。それでも玄海原発を再稼働するのであれば避難計画を早急に見直し実効性のあるものにしてほしい。これまでの計画は机上の考えで、介護現場の現状を理解していない。
⑲松尾義幸・県障害者社会参加推進協議会長 再稼働について、もう(手続きが)進んでおり、いろいろ申し上げることはない。30キロ圏内の避難計画について再度の配慮をお願いしたい。
⑳山田浩史・県連合青年団事務局長 分かりやすい言葉で県の方向性を示してほしい。国の意向は無視しても構わない。県は委員会を(今後も)やるべきだ。(再稼働を)決めるのは誰か分からないが、決めた人が責任を持つべきだ。
【欠席した9人のうち、次の6人は書面で意見陳述した。3人は後日提出する】
①金原寿秀・県農協組合長 代替エネルギーが確保できないうちに原発を止めれば電気代も上がり産業や生活に大きな影響が出る。廃炉には多額の費用が掛かり、それを捻出するためにも、今ある原発は高い安全性が確認できれば動かしていくべきだ。
②井田出海・県商工会議所連合会長 福島原発事故の反省を踏まえ、厳格な規制基準が設けられ、行政も電力会社も緊張感を持っているので、事故時も適切な対応がなされると思う。日本の経済力を維持し、生活水準を落とさないために原発は必要だ。
③枝吉真喜子・佐賀商工会議所女性会長 住民説明会の参加者が少なかったのは県の姿勢に期待が持てず、形だけのスケジュールを消化していると住民が思っているからではないか。山口知事は再稼働容認方針だが、少なくとも30キロ圏内の住民に丁寧な説明をする責任がある。
④村岡安広・佐賀経済同友会代表幹事 県内産業界のほとんどの人が、早期の再稼働をお願いしたいということであると理解している。私も同じように思っている。
⑤三苫紀美子・県地域婦人連絡協議会長 安全が保証されない限り再稼働には賛成できない。
⑥工藤和彦・原子力安全専門部会長 原発についての個人的な見解としては「100%の安全はない」との意識を常に持って、安全性向上へ不断に取り組んでいくことが必要だと考える。


PS(2017年3月14日追加):*8の関西弁の万博資料は、関西人はこの程度だとして関西人を侮辱しており、「万博はゴチャゴチャを解決する場」というのも論理が通らず、これを書いた人の頭がゴチャゴチャなのだと思われる。また、「主なゴチャゴチャは精神疾患だ」というのは、病気はゴチャゴチャな状態だと言うのと同じで、これを書いた人は、知識も見識もなく差別意識のみがあり、レベルが低いことがわかる。経産省がこれでは、エネルギーに関する簡単な問題も必要以上に複雑にして、解決困難になるわけだ。

*8:http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201703/CK2017031402000247.html (東京新聞 2017年3月14日) 「ゴチャゴチャ解決の場 例えば精神疾患」 万博資料、経産相「不適切」
 世耕弘成(せこうひろしげ)経済産業相は十四日の閣議後会見で、経済産業省が二〇二五年国際博覧会(万博)を大阪に誘致するため十三日に公表した報告書案の関西弁版が「不適切だった」と陳謝し撤回した。関西弁版では万博を「人類共通のゴチャゴチャを解決する方法を提言する場」と表現し、「例えばやな、精神疾患」などと記載していた。世耕氏は「関西弁版(の作成)はまったく報告を受けていなかったし、不適切な表現が入っていた」と話した。担当者は、関西人にも親しみを持ってもらいたかったと作成の理由を話しているというが、世耕氏は「関西人の私が見ても、親しみは持てなかった」と語った。資料は十三日に大阪市内で開かれた有識者会合で配られ、経産省のホームページにも掲載された。正式な報告書案は「いのち輝く未来社会のデザイン」として、二五年五月三日から十一月三日に大阪湾沿岸部の人工島「夢洲(ゆめしま)」で開催する内容。万博を「人類共通の課題の解決に向けたアイデアを発信し、異なる知と知が融合することで新たなアイデアが生まれる場」としている。経産省は報告書案に加え、「試作品」として関西弁版も添付した。万博は「ゴチャゴチャを解決する場」で、「主なゴチャゴチャの例」として正式な報告書案になかった「例えばやな、精神疾患」などを追加。冒頭に「こんな言い方せーへんとか、細かいこと言わんといてな。とにかく大目にみてくれると助かるわ」と書いていた。


PS(2017年3月15日追加):*9のように、1kg当たり5,000~8,000ベクレル以下の膨大な量の除染土を、日本全国の公共工事で再利用するのが既定路線のようだが、数世帯が放射線量の高い地域にある家に帰る意欲を持つために放射性廃棄物を日本全国にばら撒くのではなく、それらの人々に補償して移住を進めるのが筋だ。何故なら、フクイチ事故以前は、100ベクレル以上の放射性廃棄物は、再利用などせずにドラム缶で厳重に保管してきたのであり、放射性廃棄物は閉じ込めるのが原則であって、ばら撒くのは論外だからだ。
 フクイチ事故後は大量の放射性廃棄物が出たが、それを日本全国にばら撒けば厳重に管理できるわけがないため、一か所に集めて厳重に管理する必要がある(★)。その一か所は、5,000~8,000ベクレル以上の土壌になっている帰還困難区域の埋め立てや防潮堤建設、海岸防災林や高速道路工事であり、それでも分量が多いのでコンクリートでしっかりした枠を作って、環境と遮断すべきだ。そうすれば、そのような場所でも、自然再生可能エネルギーによる発電地帯や自然公園にはできる。
 なお、日本では、既に放射性廃棄物を焼却してセメントの材料などにしているが、これでは新しいマンションや新築の家を安心して購入することはできない。

★大量の放射性廃棄物を日本全国にばら撒けば、①全国で心疾患や癌が増えて平均寿命が短くなり、年金財政にはプラスである ②全国で増える心疾患や癌の増加原因をフクイチ事故と特定できなくなり、「日本人の食習慣が変わったから」「人口が高齢化したから」など他の理由をつけることが可能になる 等の効果があるため、放射性廃棄物のばら撒きは、これらが目的の悪魔の政策ではないか?

*9:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/413609 (佐賀新聞 2017年3月14日) 除染土、再利用実証試験へ 福島原発事故で環境省、住民理解、ハードル高く
 東京電力福島第1原発事故に伴う福島県内の除染で生じた土を全国の公共工事で再利用するため、環境省は4月にも除染土で盛り土を作って放射線量を測る実証試験を同県南相馬市で本格的に始める。安全性を確認した上で再利用につなげたい考えだが、再利用先の周辺住民の理解が得られるかどうかは見通せない。環境省は昨年6月、管理責任が明確で、長期間掘り返されることがない道路などの公共工事に限定し、放射性セシウム濃度が基準以下となった除染土を再利用する方針を決定。工事中の作業員や周辺住民の被ばく線量が年間1ミリシーベルト以下となるよう、1キログラム当たり5千~8千ベクレル以下に設定した。さらに土やコンクリートで覆い工事終了後の住民の被ばく線量を年間0・01ミリシーベルト以下に抑える。昨年7月に避難指示が解除された同市小高区の「東部仮置き場」。柵で囲まれた広大な敷地に除染土が詰まった黒い袋が大量に積み重なっていた。その一角にある盛り土の予定地付近には重機が並び、「再生資材化プラント」では放射性物質の飛散を防ぐテントの建設作業が進んでいる。実証試験は、仮置き場に保管された平均値で1キログラム当たり2千ベクレル程度と推計される除染土約千立方メートルを使う。分別して品質調整した除染土を遮蔽(しゃへい)のため別の土で覆って盛り土を作る。放射線量や浸出水の放射性物質濃度を測り、風雨の影響がどの程度あるか調べる。「目の前の仮置き場にいつまでも黒い袋があるから、家に帰る意欲がそがれる。袋が減るなら再利用も仕方ない」。避難先から東部仮置き場近くの自宅に戻っていた男性(68)は悩ましげだ。福島県内の除染廃棄物の量は、最大で東京ドーム18杯分に当たる2200万立方メートルに上ると推計される。中間貯蔵施設(同県双葉町、大熊町)で保管後、県外で最終処分する予定だが、全てを処理するのは難しいため、再利用で量を減らすのが環境省の狙いだ。南相馬市の担当者は「大量の土を中間貯蔵施設へ輸送するだけでは、仮置き場の解消に長い年月がかかる」と説明。市は仮置き場の早期解消のため、比較的濃度の低い除染土について、市内の海岸防災林や高速道路の工事での再利用の可能性を探っている。ただ、再利用先の住民が放射性物質への不安から、受け入れに反発することも予想される。男性も「除染土が流出したり、飛散したりしないかが心配だ。責任を持って管理してもらわないといけない」と懸念する。福島県外では、住民理解のハードルがさらに上がるのは必至。これまでの環境省の有識者検討会では、専門家から「県外での再利用は簡単ではない」「技術開発を進めても、実際の再利用先がなければ意味がない」との意見も上がった。環境省は実証試験前に仮置き場周辺の住民への説明会を開いており、現場の見学会も開く予定。担当者は「実証試験で安全に管理する方法を検証し、住民に理解してもらえるようにしたい」と話している。


PS(2017年3月16日追加):*10-1のように、原発事故の際には玄海町と同じリスクに晒され、避難に協力もしなければならない周辺自治体に原発再稼働に関する同意権がなく、“原発の地元”は玄海町と佐賀県だけというのはフクイチ事故の教訓を考慮していないため、周辺自治体から不満が出るのは当然だ。なお、参加者の「100%安全と言わないのに、なぜ再稼働をするのか。もっと環境に優しいエネルギーがあるはずだ」「事故が起きたときの生活の補償はどうなっているのか」などの質問はもっともだ。そして、この付近には潮流発電や風力発電の適地が多く、*10-2のように、鷹島には海岸の入江を締め切った海中ダムがあり、低層の貯留水を海へ放流しているので、その放流口に発電機をとりつければ、給水だけでなく発電もできそうだ。

   
 玄海原発30km圏内     玄海原発        鷹島での説明会    鷹島の海中ダム     
               2017.3.16西日本新聞

*10-1:http://qbiz.jp/article/105657/1/ (西日本新聞 2017年3月16日) 玄海原発「再稼働ならデモも」 長崎・鷹島、「同意」対象外に不満 県外説明会
 九州電力玄海原発(佐賀県玄海町)の再稼働を巡り、長崎県は15日夜、原発から最短8・3キロの離島、同県松浦市鷹島町で国と九電による住民説明会を開いた。同原発から30キロ圏内の自治体のうち、佐賀県以外で説明会が開かれたのは初めて。安全性への不安を訴える声が相次いだほか、事実上、立地自治体の玄海町と佐賀県に限られる「地元同意」について不満の声が出た。説明会には島民を中心に約80人が参加。国や九電の担当者は審査概要や安全対策などを説明した。質問に立った男性は「立地する町と県の同意があれば再稼働するという話だ。再稼働を前提にした説明会ではないか。玄海町に近い私たちの声は届かないのか」と怒りを込めた。新松浦漁協の志水正司組合長(69)は「再稼働には漁業者の9割が反対している。漁民の声を無視して再稼働するのなら海上デモも辞さない」と声を荒らげた。説明会は予定の2時間を超えた。終了後、友広郁洋市長は記者団に「周辺自治体には説明のみではなく、再稼働の了解を得る制度をつくるよう、国に要請していきたい」と語った。長崎県内では21日まで、30キロ圏内の佐世保市や平戸市、壱岐市でも説明会が開かれる。玄海原発をめぐっては、玄海町の岸本英雄町長が7日に「同意」を表明。焦点は佐賀県の山口祥義知事の判断となっている。
●避難路への不安消えず 陸路は佐賀に向かう橋のみ
 佐賀県玄海町の九州電力玄海原発の再稼働に向け、長崎県松浦市鷹島町で15日に開かれた住民説明会。再稼働の是非を判断する「地元同意」がないことへの批判のほかに、原発事故が起きた場合の避難ルートのぜい弱さを指摘する意見も出た。難解な専門用語が飛び交う説明会に参加者からは戸惑う声もあった。会場となった鷹島スポーツ・文化交流センターには市民約80人が集まった。鷹島は、原発から最も近い場所で約8キロしか離れていない。島全体が30キロ圏内に入り、原発事故時の避難は島外への脱出が必要となる。だが、陸路の避難は原発のある佐賀県側に、いったん入る形の「鷹島肥前大橋」を通過するルートしかない。質疑に立った参加者からは「(避難ルートが1本だけでは)橋が渋滞してしまう。どのような対応をするのか」との意見が出た。国の担当者は「佐賀、長崎両県と話し合っていく」と述べるにとどめた。その後、「風向きによっては鷹島に放射性物質が飛んでくることもあり得る。そうなった場合に、島民が避難できると考えているのか」と国などに訴える参加者もいた。立地自治体の玄海町と佐賀県のみの「地元同意」についても、松浦市にも同意権を与えるように求める声が上がった。だが、九電側からは容認する答弁はなかった。参加者の1人は「100%安全と言わないのに、なぜ再稼働をするのか。もっと環境に優しいエネルギーがあるはずだ」と疑問を呈していた。また、女性の参加者は「事故が起きたときの生活の補償はどうなっているのか」など、事故後の生活を懸念する声もあった。主催する県では、16日以降も県北4会場で説明会を開く。ただ、その後に再度、説明会を開く予定はないという。

*10-2:http://www.wec.or.jp/library/100selection/content/takashimadam.html 鷹島海中ダム、長崎県鷹島町
鷹島は、九州の西北端・玄界灘に面した南北13kmの島です。本地区は、本土に比べて降雨が少なく、河川もわずかで、農民は、安土・桃山時代から「六本幟」と呼ぶ雨乞いを行うなど、常に水不足と闘う生活を強いられてきました。その様な状況を打開すべくダムの建設が、昭和60年に計画され平成6年に完成しました。鷹島海中ダムの特徴は、ダムの建設地に陸で適地がなかったことから海岸の入江を締め切り、ダム湖内の海水塩分を沈殿させ、流入水をためて内水面を海面より高くして高低差と比重差を利用し、堤体下部に設けた除塩暗渠から、塩分の沈殿作用が進んだ低層の貯留水を海へ放流して淡水化を図るという方式で、日本初の海中ダムです。有効貯水量46万トンの水は、島内ほぼ全域の農地に給水されています。また、堤体背面に「六本幟」等が描かれ、島の玄関口・日比港を出入りするフェリーからその個性のある景観を見ることができます。ダム湖周辺は、展望所をはじめ周辺は遊歩道や公園も整備され、春先には芝桜が咲き、公園内のダム湖へ注ぐ「せせらぎ水路」はメダカやアメンボなどの生息地になっています。初夏はホタルが群舞する幻想的な姿を見せるなど、地域住民の憩いの場となっています。鷹島海中ダム湖では毎年1回、住民参加によりダム湖周辺の清掃作業を行い、ダム本来の機能を保つとともに、景観等を保持しています。


PS(2017年3月17日追加):*11のように、福島県など地元自治体が強く要請してきた4基全ての廃炉は、事故から6年経っても「まだ道筋が見えない」などと呆れたことを言わずに速やかに行うべきであり、この判断は、6年経たずとも事故直後に出た筈だ。にもかかわらず、このように重要性の順番が異なり、徹底した原因究明やそれに基づく意思決定がなされない態度が、日本の電力会社の原発運転能力のなさと経産省の政策の不誠実を示唆している。なお、フクイチの廃炉は、核燃料(デブリ)を迅速に取りだすことができないのなら、チェルノブイリのように直ちに石棺にするのが、放射性物質をむやみに散乱させず、最も安価で最短時間の解決をして被害を最小にする方法で、事故直後からわかっていた筈だ。

   
            2017.3.17毎日新聞             牛白血病の増加 周産期死亡率の推移

*11:http://mainichi.jp/articles/20170317/k00/00m/020/140000c (毎日新聞 2017年3月17日) 県民は「全基」を要請 
 東京電力ホールディングス(HD)は福島第2原発(福島県)の1号機について廃炉とする方針を固めたが、福島県など地元自治体が強く要請してきた4基全ての廃炉の道筋はいまだ見えない。一方、東電は福島第1原発事故の処理費用捻出のために柏崎刈羽原発(新潟県)の再稼働は進める方針だが、地元の反対は根強い。「県民の強い思いは県内原発の全基廃炉だ」。福島県の内堀雅雄知事は今年1月、東電の広瀬直己社長との会談で、福島第2原発の廃炉を迫った。一方、広瀬社長はこれまで「福島の思いは理解しているつもりだが、会社としては大変大きな判断になる」と明確な方針を示してこなかった。東電は福島第1原発の廃炉や賠償などの対応に追われており、これらの処理費用を捻出するための経営再建も喫緊の課題だ。福島第2の廃炉に手をつければ、さらに人手や費用が必要になる。東電内には「福島第1原発の対応が最優先で、第2原発の廃炉は待ってほしい」(幹部)との思いが強かった。だが、いつまでも地元の要請を無視し続けるわけにはいかず、福島第1原発の処理費用の工面も一定のめどがついたことから、まずは1号機に限った形で第2原発の廃炉を打ち出すことにした。政府内には「柏崎刈羽原発の再稼働に理解を得るためにも、福島第2の方針を明確にする必要がある」(政府関係者)との思惑もある。残る3基についても東電は廃炉の方向で検討を進めるが、費用面などで課題は残り、廃炉を決めても長い期間がかかることも予想される。また、1基で年間500億円の収益改善効果が見込まれる柏崎刈羽原発の再稼働についても新潟県知事は慎重な姿勢を示しており、東電の原発事業はなお課題が山積する状態だ。


PS(2017年3月20日追加):*12に、「東芝は、①原発が停止し、国内で火力発電用の燃料が必要とされたため、原油と連動しない米国産LNGを2019年から20年間にわたり年220万トン購入し、日本の電力事業者などに発電用として供給することにした ②東芝の思惑に反して原油とLNGの価格が下落し、米国産は割高となって競争力が低下したため、今後20年間で最大計1兆円近くの損失が生じかねない」と書かれている。しかし、エネルギー改革の時代に、20年間の長期でLNG調達契約をするなど、東芝のエネルギー部門は先見の明がなく、その杜撰な経営が他部門の足を引っ張っていることがわかる。

*12:http://qbiz.jp/article/105869/1/ (西日本新聞 2017年3月18日) 東芝、LNG事業で損失1兆円も 割高で販売先なく
 経営再建中の東芝は、米原発のほか液化天然ガス(LNG)事業でも巨額損失の不安を抱える。国際相場を見誤り、米企業から割高なLNGを長期にわたって調達する事態となったためだ。販売先を見つけられない場合、今後20年間で最大計1兆円近くの損失が生じかねない。全体の約半分の量について複数の顧客と基本合意書を締結したとしているが、条件面の調整は終わっておらず実際の販売契約には至っていない。既に2020年3月期決算で100億円規模の損失を見込んでいるようだ。東芝は13年に米フリーポート社(テキサス州)と、米国産天然ガスから加工したLNGを調達する契約を結んだ。東京電力福島第1原発事故で原発が停止し、国内で火力発電用の燃料が必要とされたためだ。当時は原油価格の高騰に連れてLNGも値上がりしていたため、原油と連動しない米国産LNGを19年から20年間にわたって年220万トン購入し、日本の電力事業者などに発電用として供給することにした。ところが東芝の思惑に反して原油とLNGの価格は下落し、米国産は割高となって競争力が低下した。東京電力ホールディングス子会社と中部電力が共同出資するJERA(ジェラ)から販売やマーケティング活動で支援を受けているが、顧客探しは難航している。19年9月に供給を始めるためには、18年中に販売先を決めて準備をする必要がある。LNGの売れ行きにかかわらず、フリーポート社に対し液化にかかる費用は支払わなければならないため、想定より安く売りさばいたり、LNG化を見送ったりすれば損失処理が必要となる。


PS(2017年4月6日追加):*13-1に書かれているように、震災復興の司令塔である今村復興相が記者会見で、「①(自主避難者は)本人の自己責任」「②裁判でも何でもやればよい」としたことのうち、①は、*13-2のように、放射線量が年間20mSV以下なら避難指示を解除するという日本基準が、チェルノブイリ法の強制移住地域5mSV以上と比較してあまりに高いことがそもそもの原因だ。また、②は、*13-3のように、各地で提訴された東電・国に賠償を求める原発被災者訴訟で、2017年3月には前橋地裁が国に賠償を命じたが、裁判をするには時間と労力がかかり、最高裁まで行くと結果が国寄りになるため、苦労が絶えないわけである。さらに、今村復興相は、TV番組で「③ふるさとを捨てるのは簡単だが、戻って頑張っていく気持ちをもって欲しい」などとも述べておられるが、これは、自民党憲法改正草案のように「日本国」を主に考えているか、日本国憲法のように「日本国民」を主に考えているかの違いだ。つまり、日本もチェルノブイリ法と同程度の権利を原発被災者に与えるべきなのである。
 なお、この放射線被害は、(日本政府は認めたくないようだが)風評被害のような実態がないのに評判だけで起こる被害ではなく、また不安や心の傷といった精神的な問題でもなく、心疾患や癌などの命に関わる病気になるという健康被害をもたらすものである。そのため、チェルノブイリ原発事故で強制移住地域となった年間5mSV以上の地域は避難・帰還のどちらを選んでも補償されるべきだ。それには、原発被災者の土地・家屋を買い取って移住させる方法もあり、移住を選択可能にして補償すべきなのである。そのようにしても、旧ふるさととの繋がりは、県人会や「南相馬出身者の集い(もしくは情報交換会)」などを、知事や市長・町長などを招いて頻繁に開くことによって可能だ。

   

(チェルノブイリ法は、年間被曝量1mSV超の可能性のある地域を汚染地域と定義している)
     《http://www.windfarm.co.jp/blog/blog_kaze/post-13030 参照》
 
*13-1:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12878633.html (朝日新聞社説 2017年4月6日) 今村復興相 避難への無理解に驚く
 震災復興の司令塔なのに、原発事故の避難者たちが置かれた複雑な状況を分かっていないのではないか。今村雅弘復興相が記者会見で、「本人の責任でしょう」「裁判でも何でもやればいい」と話した。福島第一原発の事故後、避難指示の対象区域以外から逃げた自主避難者をめぐる発言である。国の支援のあり方を記者から重ねて問われるうちに今村氏は激高し、会見を打ち切った。後で感情的な態度は謝罪したものの、発言については「客観的に言ったつもりだ」と釈明し、撤回しなかった。避難指示を受けた人と自主避難者との違いを指摘したかったようだが、内容には聞き流せない問題がある。自主避難者の多くは、避難指示に関して国が定めた放射線量の基準に不安が拭えず、悩んだ末に地元を離れる決断をした。全国で2万数千人にのぼり、家族がばらばらになった人は多く、生活に困窮する人もいる。東京電力からの損害賠償や行政による住宅提供も、避難指示を受けた人に比べると手薄だ。自身で決めたこととはいえ、自主避難者も事故の被害者だ。それを自己責任で片付けるのは、国策として原発を推進してきた政府の責任への認識に欠けると言わざるをえない。裁判をすればいいという発言に至っては、開き直りにしか聞こえない。東電や国に賠償などを求めて提訴した原発被災者は各地で1万人を超える。3月には前橋地裁が国に賠償を命じたが、裁判には手間ひまがかかる。その負担を避難者に背負えと言うのだろうか。今村氏はこれまでも、被災者との意識のずれを指摘されることがあった。今年1月、福島市での会合では、最近の避難解除でようやく本格化しつつある福島の復興について「マラソンにたとえると30キロ地点」と発言。3月にはテレビ番組で「ふるさとを捨てるというのは簡単だが、戻って頑張っていく気持ちをもってほしい」と述べた。避難者で地元に戻る人はまだ少数派で、生活基盤や放射能への不安などから当面戻らないという人は少なくない。ふるさとから離れていても、つながりは保ちたいという声も根強い。今村氏の発言は、さまざまな事情を抱える避難者の心を傷つけ、切り捨てと受け取られても仕方ない。帰還の促進策ばかりでなく、被災者の多様な声に耳を傾け、必要な手立てをとるという国の役割を自覚すべきだ。

*13-2:http://www.tokyo-np.co.jp/article/feature/tohokujisin/fukushima_report/list/CK2015070702000163.html (東京新聞 2015年7月7日) 【ふくしま便り】20ミリシーベルト基準を許さない 避難指定解除 南相馬住民の決意
 東京電力福島第一原発の事故で放射線量が局所的に高いホットスポットとなった特定避難勧奨地点の指定を解除したのは違法として、福島県南相馬市の住民約五百三十人が、国に解除の取り消しと一人十万円の損害賠償を求めて東京地裁に提訴したのは、今年四月十七日のことだった。原告団の一人で「南相馬・避難勧奨地域の会」事務局長の小沢洋一さん(59)は、訴訟を「二〇ミリシーベルト基準撤回訴訟」とも呼ぶ。「人の命が何より大切とはっきりさせる訴訟だ」とも。小沢さんと現地を歩いた。特定避難勧奨地点に指定された百五十二世帯は南相馬市の西側半分、阿武隈山地に連なる農村部に点在している。福島第一原発から二十五キロ前後。線量の高さを考えれば、避難指示が出ても不思議はなかった。行政区分を基にした単純な線引きで区域外とされたにすぎない。だが、あまりにも線量が高いことがわかり、国は追加措置をとる。地域の中で、年間積算線量が二〇ミリシーベルトを超えるとみられる地点で、小さな子供や妊産婦などがいる世帯を選んで避難を促す対応をとった。「露骨な分断工作だった」と小沢さんは話す。「同じ小学校に通う子供で指定を受けた家の子とそうでない家の子がいる。指定を受ければ、慰謝料が払われた上、医療費、税金、電気代、ガス代、NHKの受信料までただになる。指定外の家の子も避難はしたが、経済的にも大変。誰だって理不尽だと思うでしょう」。福島県には伊達市や川内村の一部にも特定避難勧奨地点があったが、二〇一二年十二月に解除された。そして南相馬市についても、政府は昨年十二月に解除した。除染により線量が年間二〇ミリシーベルトを下回ったのが解除の理由であると説明された。
●畑の端で、毎時17.7マイクロシーベルトと高い値が計測された
 「分断」を乗り越えて住民は反対で団結した。地域の行政区長のひとりで原告団長でもある菅野(かんの)秀一さん(74)は「年間二〇ミリシーベルトを基準にするのもおかしいと思うが、地域の線量が、二〇ミリシーベルトを下回っているとは到底思えない。それでも特定避難勧奨地点がなくなれば、ただの地域になる。何ごともなかったかのように東電は賠償を打ち切るでしょう」と話す。たしかに地域の線量は驚くほど高い。小沢さんと一緒に実際に線量計をもって計測して歩いたところ、田畑の際などで空間線量が毎時一〇マイクロシーベルトを超えるような場所が随所にあった。政府は年間二〇ミリシーベルトの積算線量に達する目安を毎時三・八マイクロシーベルトとしているが、楽に超えてしまう。南相馬・避難勧奨地域の会の末永伊津夫会長は「東京五輪に間に合わせたいのか、政府は避難区域の解除に躍起になっている。その基準とされるのが年間二〇ミリシーベルトですが、無理があるのは明らかです。もしもこれが既成事実となったら、将来、世界のどこで原発事故が起きても二〇ミリシーベルトまでは大丈夫となる。こんなむちゃを黙認するわけにはいかないのですよ」と話す。前出の菅野さんは、こうも話した。「解除しても現実に帰ってきた子持ち世帯はない。病院もスーパーも閉鎖。長寿会も少年野球もPTAも崩壊。地域社会がなくなった場所へ帰って来られるわけがない。年寄りばかりになって将来なんかない。先日、近所のおばあさんが池に身を投げた。皆で引き上げたけど助からなかった。ここで、どれほど悲惨なことがおきているか、政府は知っているのか。私らは伝えなくちゃならない」。農民一揆、という言葉が頭に浮かんだ。 

*13-3:http://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-463362.html (琉球新報社説 2017年3月19日) 原発避難者訴訟 国と東電の責任は明白だ
 国と東京電力の責任を認めた判決は極めて妥当な判断だ。福島第1原発事故で福島県から群馬県などに避難した住民ら137人が国と東電に計約15億円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、前橋地裁は「東電は巨大津波を予見しており、事故を防げた」と判断し、東電と安全規制を怠った国の賠償責任を認めた。原告のうち62人に計3855万円の支払いを命じている。判決は東電が2002年ごろには第1原発が津波に襲われる可能性を知り得たと認定した。予見可能だった時期がいつなのかは訴訟の最大争点だった。原告側は「02年~08年の間」と主張し、東電と国は「巨大津波は想定外だった」と真っ向から対立していた。政府の地震調査研究推進本部が02年に「福島県沖を含む太平洋側の日本海溝沿いでマグニチュード(M)8級の津波地震が30年以内に20%程度の確率で発生する」との長期評価を公表していた。しかし東電も経済産業省の旧原子力安全・保安院も過去400年間に福島県沖で大地震が起きていなかったため、長期評価を考慮せず、津波対策を先送りにしてきた。東電は08年、長期評価に基づく試算をしていた。高さ10メートルの第1原発の敷地を大きく超える津波が襲来し、敷地南側では東日本大震災と同規模の最大15・7メートルが押し寄せるとの結果だ。すでに大津波を予見していたのだ。それなのに東電は試算結果を公表せず、何の対策も取らなかった。旧保安院に結果を報告したのは3年後の11年3月7日だ。その4日後に震災が発生し、大津波が押し寄せた。無為無策というほかない。原発事故はタービン建屋に給気口から津波が入り、非常用配電盤の浸水により核燃料の冷却機能が失われたために起きた。長期評価や試算結果を踏まえて、給気口のかさ上げ、配電盤や発電機を高台に設置するなどの対策が取られていれば事故は起きなかった。判決はこうした対応を安全より経済的合理性を優先させたと指摘し「特に非難に値する事実がある」と批判した。事故によって福島県から県内外に避難している人は現在でも約7万7千人に上る。判決で国と東電の責任が明白になった。原発再稼働に突き進む国と電力会社は判決を真摯に受け止め、脱原発へと政策転換を図るべきだ。二度と同じ過ちを繰り返してはいけない。


PS(2017年4月8日追加):*14の「①ウェスチングハウスを巡る調査で、経営陣が2016年3月期にも巨額損失の可能性を認識していたのではないかとみて、監査法人が詳しく調べるよう求めていた」「②東芝は事前に損失を認識していた証拠はない」というのは、②は現時点で証拠がないからといって事実がなかったとは言えないため、①は監査法人としては当然だろう。しかし、現在行っている決算は第三四半期のものであるため、決算書にその旨を付記するなり、限定意見を出すなりして決算発表し、一年決算の第四四半期有価証券報告書までにすべてをクリアにしたらどうかと考える。なお、私はスペインで報道を見ていたのだが、2017年3月29日のウェスチングハウスの破産申請日は英国のEU離脱通告日と重なったため、欧州での報道は英国のEU離脱が中心で東芝の取り上げられ方は小さく、公表日の選び方は正解だったと思われる。また、スペインの工業製品のメーカーを見たところ、ホテルの空調は東芝、フロントの担当者が使っていたスマホはソニー、テレビはサムソン、エレベーターはOTISで、タクシーは50%くらいがプリウスだった。さらに、スペインではタクシーの運転手の50%くらいは女性で、帰りのバルセロナからロンドンまでのブリティシュ・エアウェイの機長も女性だったことを付け加えておきたい。

*14:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12882131.html (朝日新聞 2017年4月8日) 東芝決算、なお調整難航 監査法人と溝 11日期限
 東芝の昨年4~12月期決算の発表期限が11日に迫るなか、同社とその監査法人との溝が埋まっていない。監査法人側は、経営破綻(はたん)した米原発子会社ウェスチングハウス(WH)を巡る調査で、WH経営陣が2016年3月期の間にも巨額損失の可能性を認識していたのではないかとみて、詳しく調べるよう求めていた。監査法人による決算の承認はまだ得られていない。問題となっているのは、WHの経営幹部が損失を小さく見せるよう部下に「不適切な圧力」をかけた内部統制の不備だ。監査法人側は、調査の対象期間を15年秋よりも前にさかのぼる必要があると指摘。当時からWH経営陣が損失の可能性を認識していたのかどうかが焦点となっている。東芝はこれまでの調査から、「事前に損失を認識していた証拠はない」(幹部)として、調査そのものを終えた。しかし、監査法人側は、疑いを完全には晴らしていない様子だという。損失を事前に認識していた場合、東芝は16年3月期の決算を修正する必要が生じる。17年3月期末だけでなく、16年3月期末も債務超過となる可能性もある。東京証券取引所では、2期連続の債務超過で上場廃止となる規定がある。しかし、このケースではすぐに適用されるわけではない。18年3月期末までに債務超過が解消されれば、免れる。東芝はこれまで決算発表を2度延期。経営不安をいっそう高める異例の3度目は避けたい考えで、ぎりぎりの調整を続けている。


PS(2017年4月12日追加): *15-1に、東芝の決算について、監査法人は「ウェスチングハウス(WH)の経営幹部が『不適切な圧力』を部下にかけた」ということで「意見不表明」とした。しかし、*15-2のように、「意見不表明」とは、監査証拠の入手が困難で財務諸表に対する意見表明ができないというものであり、内部統制報告書に関する監査報告書の意見不表明は、上場廃止基準に抵触しない。そして、東芝で問題となっているのは、「WHの経営幹部が損失を小さく見せかけるよう部下に『不適切な圧力』をかけた」という内部統制の問題で、東芝は、2017年3月29日にWHの破産申請をしており、WHの破産後は内部統制は問題でなくなり、残余財産のみが問題となる。そして、東芝自体の債務超過や「継続企業」の問題は、他の子会社をいくらで売却できるかにかかっているだろう。

*15-1:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12887149.html(朝日新聞 2017年4月12日) 東芝、信頼欠く決算発表 監査法人「意見不表明」
 東芝は、2度にわたって延期していた2016年4~12月期決算を、国が認めた期限の11日に発表した。ただ、通常の決算につくはずの監査法人の「適正意見」は得られず、代わりに「意見不表明」という信頼性を欠いた異例のものとなった。経営破綻(はたん)した米原発子会社ウェスチングハウス(WH)をめぐる調査で監査法人との溝が埋まらなかった。東芝を担当するPwCあらた監査法人は、原発事業の損失を小さくみせようとして、WHの経営幹部が「不適切な圧力」を部下にかけたことを問題視。損失を経営陣が早くから認識していた可能性も調べていた。だが、詳しい調査の必要性を訴えるPwCに対して、東芝の綱川智社長は11日夕方の記者会見で「これ以上調査を続けても意味がない」と突き放した。PwCは報告書のなかで「調査結果を評価できておらず、財務諸表に修正が必要か否か判断できなかった」とした。「意見不表明」は十分な監査の証拠が手に入らない場合に監査法人が出す見解で、大手上場企業ではきわめて異例だ。綱川社長は「適正意見のめどが立たないことから、これ以上、ステークホルダー(利害関係者)に迷惑をかけられない」と話した。ただ、東芝の信用はさらに傷ついた。過去の不正会計問題で、東京証券取引所は東芝株を「特設注意市場銘柄」に指定し、上場を維持するかどうかを検討中。この件でも審査に入る。多くの課題も待ち受けている。異例の発表で、支援する金融機関の態度には変化が出かねない。体力のない地方銀行で融資を引きあげる動きがすでに出ている。まずは17年3月期の通期決算の発表を、予定する5月にできるかが当面の焦点になりそうだ。東芝の3月末時点の自己資本は6200億円のマイナスとなり、債務超過に陥る。18年3月期末も債務超過となれば上場廃止になる。その解消には、半導体子会社「東芝メモリ」を高値で売ることが不可欠だ。東芝が発表した16年4~12月期決算は、米国の原子力事業関連で7166億円の損失を計上し、純損益は5325億円の赤字(前年同期は4794億円の赤字)。企業としての存続に疑義が生じたことを示す「継続企業の前提に関する注記」を初めて記載した。
■決算に対する監査意見の種類
(1)適正意見
 企業会計の基準に従って、決算が正しいと監査法人が判断した場合
(2)限定付き適正意見
 一部に不適切な事項はあるが、決算全体には、それほど重要性がないと判断した場合
(3)意見不表明
 重要な監査手続きができず、決算が正しいかどうか判断できないとみなされた場合
(4)不適正意見
 不適切な事項が見つかり、決算全体に重大な影響を与えると判断した場合
〈通常は(1)。(3)(4)は東京証券取引所の上場廃止の基準に抵触し、廃止のおそれが出てくる。今回は(3)

*15-2:http://www.hp.jicpa.or.jp/ippan/cpainfo/ke_word/2007/09/post_40.html (日本公認会計士協会) 意見不表明
 監査報告書において監査意見を表明しないこと。監査報告書を提出しないということではなく、監査意見を表明しない旨を記載した報告書を提出する。監査人が「意見不表明」の報告書を提出するのは、財務諸表に対する意見表明ができないほど、会計記録が不十分であったり、監査証拠が入手困難である場合に限られている。この監査報告がなされると、「不適正意見」と同様に「その決算書は信用できない」ということになり、上場会社は上場廃止基準に抵触することになる。「内部統制監査報告書」においては、重要な監査手続きが実施できなかったことにより、内部統制報告書に対する意見表明のための合理的な基礎を得ることが出来なかったときは、意見不表明となる。内部統制報告書の監査報告書の意見不表明は、上場廃止基準には抵触しない。

| 原発::2015.11~ | 02:21 PM | comments (x) | trackback (x) |
2016.8.16 福島原発事故の隠蔽と原発再稼働の不合理 (2016/8/17、18、19、20、21、28、29(図表を含む)、2016/9/15、2016/10/20に追加あり)
    
 放射能汚染           2015.3.25月刊宝島4月号より     2016.3.10時事ドットコム
2013.9.13現在

       
  放射性セシウム       食品基準           農産物の汚染  上 農地の除染法 
   体内残存量 (暫定基準と2012年4月以降の基準)  (これで農産物の汚染がなくなるか疑問)

(1)雑誌が奮闘して書いた原発事故の影響
 月刊宝島が、2015年4月号で、*1-1のように、「汚染17市町村で小児甲状腺ガン、急性心筋梗塞が同時多発していること」「周産期死亡率も汚染17市町村で高いこと」「高止まりしているのは2012年からであること」を国の人口動態統計の死亡率から突き留め、フクイチ原発事故による被曝の健康被害として公表した。

 この記事を書くにあたり東電に取材依頼書を送ったところ、東電から「(記事を)読む方の不安を煽るような内容になったりするのではないんでしょうか」と質問された上、「人口動態統計での各死亡率等についての数値の変化については、さまざまな要因が複合的に関係していると思われ、それら変化と福島原子力事故との関係については、当社として分かりかねます」という“回答”がFaxで送られてきたそうだ。

 そして、死亡統計や被曝に詳しい筈の厚労省は、「環境省に聞いていただきたい」とし、環境省は「昨年12月22 日に公表した『東京電力福島第一原子力発電所事故に伴う住民の健康管理のあり方に関する専門家会議』の中間取りまとめが、①放射線被曝により遺伝性影響の増加が識別されるとは予想されないと判断した ②今般の事故による住民の被曝線量から、不妊、胎児への影響のほか、心血管疾患、白内障を含む確定的影響(組織反応)が今後増加することも予想されない としているため、周産期死亡率や急性心筋梗塞年齢調整死亡率が増加したとしても、それは原発事故の影響ではない」と原発事故で現実に起こった事象から目を逸らしてごまかしているそうである。

 これらは、官の責任回避のためのチームプレイであり、原発事故の被害者にとっては決して許せることではなく、他の国民にも今後の原発利用への判断を歪めて迷惑がかかるものだ。

(2)食品放射能基準は、蓄積・呼吸による内部被曝・外部被曝を考慮していないため、甘すぎること
 原子力規制委員会の田中委員長は、2016年8月3日、*1-2のように、「(食品の放射性物質濃度基準値が放射性セシウムで1キロ当たり100ベクレル以下などと規制されていることについて)私の知る限りでは科学的根拠があるとは思えない」と述べた。

 しかし、食品・飲料水の放射性物質濃度基準値は原発事故直後の暫定基準から2012年4月に厳格化されたとは言え、一日10ベクレルでも長期間摂取すると体に蓄積するので、食品に人工の核種は含まないにこしたことはない。にもかかわらず、厚労省や食品安全委員会が「国際的指標を踏まえ、食品からの被曝線量上限を年1ミリシーベルトにした場合の値(つまり、食品以外からの被曝は考慮していない)で、長期的な健康への影響も含めて専門家が科学的見地から判断している」としており、さらに原子力規制委員会の田中委員長は医療の専門家ではないにもかかわらず、「厳格化された基準になったことで風評被害や出荷制限で大変な思いをしている」と述べた。しかし、福島県の農漁業生産者へは、安全な産物を生産できなくなったことに対して損害賠償や補償をすべきなのであり、国民に汚染食品を食べて協力させるのは間違いである。

 このような中、*1-3のように、今村復興相が産業再生を重点施策に据え、福島の産物に対する風評被害対策として消費運動を促す仕掛けづくりに意欲を示されたそうだが、放射性物質が含まれていても基準以下なら安全だと吹聴することこそ、国民に対する科学的根拠なき風評による加害である。

(3)危険な伊方・川内原発の再稼働
  
    中央構造線と川内原発・伊方原発    事故時の放射性物質拡散予測  広島での反対
2016.8.8佐賀新聞                   2016.8.16高知新聞   2016.8.12東京新聞 

 女性自身の原発関連記事は、2016年8月2日、*2-1のように、「事故が起きたら死ぬ伊方と川内原発のお粗末すぎる避難計画」という記事を掲載している。伊方原発は、そばを国内最大級の中央構造線断層帯(活断層)が通っており、2016年4月に起きた熊本地震に誘発されて付近の断層が動く可能性が指摘されている。また、最大43万人以上の死者になるという南海トラフで地震が起きると複合災害となって避難は不可能だそうだ。さらに、原発事故で放射能漏れしている時に、その場所にバスやフェリーを出せる民間会社もないだろう。

 また、現在稼働中の鹿児島県川内原発から50kmに桜島があり、桜島は姶良カルデラという巨大火山帯の一部で、多くの火山学者は火山噴火の予知は不可能としているにもかかわらず、九電は「敷地周辺のカルデラが、巨大噴火する可能性は十分に小さい」とし、薩摩川内市の担当者は「風向きによって避難する方角が変わるので事前に避難先を決めても意味がない。避難の必要性が生じたら鹿児島県が予め整備した原子力防災・避難施設等調整システムによって、その都度、避難先を選定する」としている。しかし、アメリカでは、現実的な避難経路が確立されていない原発は即廃炉であり、日本では避難計画は新規制基準の対象外だそうだ。

 そして、どちらも避難することしか話題にしていないが、原発が事故を起こした場合には周辺の土壌や近くの瀬戸内海・日本海・太平洋が汚染され、その被害はフクイチどころでなく、広い地域が避難したまま使えなくなることについては指摘されていない。

 そのため、*2-2、*2-5のように、無理してまで原発を動かす大義が見当たらない中、伊方原発の再稼働について豊後水道を挟んだ大分県内18市町村のうち半数の9市町議会が再稼働に反対や見直し、慎重対応を求める意見書案を可決した。また、*2-4のように、広島の原爆慰霊碑前でも座り込みが行われ、周辺自治体には、政治的立場の左右を問わず懸念や反対が広がっている。

 さらに、*2-3のように、伊方町民を対象にした原発意識調査の結果、再稼働に反対は55%で、賛成の24%を上回り、賛成住民のうちの67%も大地震発生時の原発に不安を感じているそうだ。

(4)国民負担になる原発のコスト
 福島原発事故5年で、*3-1のように、賠償・除染などの国民負担が3兆4千億円超になっており、今後も増え続ける見通しだそうだ。そのほか電源開発促進税が入るエネルギー特別会計から約1兆1000億円が中間貯蔵施設の建設費等に充てられ、政府の直接財政支出は2014年度までに廃炉支援や食べ物の放射能検査、研究開発の拠点整備など計1兆2144億円が使われ、確定していない2015年度分の除染費や直接支出を含めれば、国民負担はさらに膨らむそうだ。

 また、*3-2のように、最近になってフクイチの2号機内部を透視したところ、溶融核燃料が原子炉の圧力容器の底に残っている可能性が高いことがわかったと発表されたが、3号機については爆発時に核燃料を外に吹き出してしまって内部に残っていないらしく、全く言及されていない。そして、これまで強い放射線で作業員が近づけないため溶融燃料を確認できなかったなどと言い訳されているが、人体はずっと前からレントゲン、CTスキャン、MRIなどで直接見ることのできない場所を透視しているため、その気があれば応用は容易だった筈である。

 なお、*3-3のように、廃炉費用についても当初の見込みを大幅に超過するという話で、東電は国に支援要請をしている。フクイチの被災者への賠償費用も国が無利子で立て替えており、既に6兆円を超えているそうだ。

(5)他の原発の安全性
 北電は、*4-1のように、「加圧水型軽水炉のタービンを回すために使う2次冷却水や蒸気に放射性物質を含まない」と説明をしていたが、1次冷却水に含まれるトリチウムは金属配管を透過して2次冷却水に漏れ出しているため事実と異なり、北海道新聞が「事実と違う」と指摘したところ、「(2次冷却水には)蒸気発生器の伝熱管を透過したトリチウムが含まれている」と説明内容を修正したそうだ。

 私も玄海原発について九電から同じ説明を受け、混じりあわなくても近くで接すれば放射能を帯びることがあるかもしれないと思って何度も問い返したことがあるが、2次冷却水や蒸気には放射性物質を含まないという同じ説明だったので、他の原発も検証すべきである。

 また、*4-2のように、原子力規制委が新規制基準の合格証となる「審査書案」を了承して40年以上の老朽原発を延命していくのは、原発事故のない社会を作りたいという多くの国民の声を無視しており、原発の過酷事故を経験した国が進めるべきことは、金をかけて老朽原発を延命することではなく、廃炉にすることだ。

(6)世界の潮流と日本政府のギャップ
 世界銀行(World Bank)と国連(UN)は、*5-1のように、2013年11月27日、最貧国に電力網を整備するため数十億ドル規模の資金援助が必要だと訴え、いずれの国でも原子力発電への投資は行わない考えを表明している。現在は分散発電が可能になったため、①地下に電力網の整備すること ②エネルギー効率を倍増すること ③再生可能エネルギー比率を倍増すること ④新エネルギーを開発することは、開発途上国だけでなく日本でも行うべき重要な政策である。

 さらに、*5-2のように、第21回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP21)、2015年12月12日、「途上国を含む196カ国が参加する2020年以降の新たな温暖化対策「パリ協定」を採択し、「産業革命前からの気温上昇を2度より十分に低く抑える目標を掲げたうえ、さらに1.5度以内とより厳しい水準へ努力する」とした。そして、この ブログの2015年12月8日に記載しているとおり、「パリ協定」の温暖化対策は原発を意図しているのではなく、100%自然エネルギーを意図しているのだ。

 それにもかかわらず、*5-3のように、日本の山本環境相は2016年8月3日の就任記者会見で、温室ガス削減目標達成は原発抜きでは「極めて困難」と述べ、著しい放射線公害を引き起こす原発の再稼働を進めており、大量の温室効果ガスを排出する石炭火力発電の新設計画も条件付きで容認する意向であるため、既に再生可能エネルギー技術が進み、さらにこれを伸ばして税収を増やすべき日本の環境相として失格だ。

 また、*5-4のように、原発事故を受けて企業や家庭の節電が進み、エアコンの利用が増える猛暑でも夏の電力需給は安定し、原油安で電力大手の業績も改善し、新電力への切り替えで大手に対する電力需要が減っている現在、原発再稼働の大義はない。

 初期投資の大きい原発は長く使うほど利益が出るため、九電は玄海3、4号機を早く再稼働させたいそうだが、それなら、被災者への賠償費用(約5・4兆円)、廃炉費用(約2兆円)、使用済核燃料の最終処分費用等、これまで国民が負担してきた費用も電力会社が負担するよう制度変更してから、意思決定すべきである。

(7)再生可能エネルギーの発展
 九州電力の子会社で再生可能エネルギー事業を手掛ける九電みらいエナジーは、*6-1のように、長崎県の五島列島沖で潮流を利用した発電の実証実験を始めるそうだ。まだ出力が小さく、運転開始も2019年度だが、日本には五島列島沖はじめ狭い海峡になっていて潮流の速い場所が多いため、本気でやれば潮流発電も力を発揮できると考える。

 また、*6-2のように、農家の経営安定と地域の災害時安全保障のため、再生可能エネルギーが農村の電源になりつつあるそうだ。原発を遠慮なく使っていた時代でも電気料金は高すぎたため、農家は輸入した燃油を使っていたが、太陽光・水力・風力などの自然エネルギーを動力として使えるようになれば、農家の所得が上がって地域を活性化できると同時に、日本のエネルギー輸入額が減少するため、より重要なものに支出を振り向けることができる。

 なお、埼玉県は、*6-3のように、下水処理施設で下水汚泥から発生するメタンガス等を使った発電を2019年4月に開始し、事業者へのガス売却代金や土地賃貸料など年間6000万円の収入を見込むことができた上、汚泥の減量化にも繋がるとのことである。事業者は施設内に発電機を設置し、1キロワット時あたり39円(税抜き)で20年間、電力会社に売電するそうだが、このように邪魔者をエネルギーに換えるのはアッパレだ。他の自治体も、この“資源”は豊富に持っているのではないだろうか。

*1-1:http://blog.takarajima.tkj.jp/archives/1957240.html (月刊宝島2015年4月号) 福島県の汚染地帯で新たな異変発覚!「胎児」「赤ちゃん」の死亡がなぜ多発するのか?
~誰も書けなかった福島原発事故の健康被害 【第6回 後編】~最新2013年の「人口動態統計」データを入手した取材班は、高い放射能汚染に晒されている「17の市町村」で、周産期死亡率が急上昇している事実に辿り着いた。ジャーナリストが自力で行なう「原発事故による健康への影響調査」最終回!
■小児甲状腺ガン、急性心筋梗塞「汚染17市町村」で同時多発
 福島第一原発事故発生当時、18歳以下だった福島県民の人口は36万7707人。そのうち、14年12月末時点で甲状腺ガン、またはその疑いがある子どもの合計は117人である。この数字をもとに、福島県全体の小児甲状腺ガン発症率を計算してみると、10万人当たり31.8人となる。これでも相当な発症率であり、十分「多発」といえる。14年度の検査で新たに「甲状腺ガン、またはその疑いがある」と判定されたのは8人だが、そのうちの6人が「汚染17市町村」の子どもたちである。「汚染17市町村」における小児甲状腺ガン発症率を計算してみると、同33.0人と県平均を上回り、より多発していることがわかった。汚染17市町村」では、急性心筋梗塞も多発している。【図5】は、同地域における過去5年間の「急性心筋梗塞」年齢調整死亡率を求めたものだ。
 最新13年の年齢調整死亡率は、福島県全体(同27.54人)を上回る同29.14人。おまけにこの数値は、12年(同29.97人)から“高止まり”している。つまり「汚染17市町村」が、福島県全体の同死亡率を押し上げていた。周産期死亡率、小児甲状腺ガン発症率、さらには急性心筋梗塞年齢調整死亡率のいずれもが、「汚染17市町村」で高くなる──。これは、福島第一原発事故による「健康被害」そのものではないのか。それとも、偶然の一致なのか。本誌取材班は、東京電力を取材した。同社への質問は、
(1)原発事故発生後の「福島県における周産期死亡率の上昇」は、原発事故の影響によるものと考えるか。
(2)原発事故発生後の「汚染17市町村における周産期死亡率の上昇」は、原発事故の影響によるものと考えるか。
(3)「汚染17市町村」で周産期死亡率と急性心筋梗塞年齢調整死亡率がともに上昇していることは、この中に、被曝による「健康被害」が内包されている可能性を強く示唆している。これに対する見解をお聞きしたい。
 という3点である。取材依頼書を送ったところ、東京電力広報部から電話がかかってきた。
      *
「(記事を)読む方が、心配になったりするような内容ではないんでしょうかね?」
──「心配になる内容」とは?
「質問書をいただいた限りだと、『震災以降、率が上がっている』といったところで、特に不安を煽るような内容になったりするのかなと、個人的に思ったものですから」
──「不安を煽る」とはどういうことでしょうか?質問した内容はすべて、国が公表したデータなど、事実(ファクト)に基づくものです。
「ファクトですか」
──はい。
「国等(とう)にも当社と同様にお聞きになった上で、記事にされるんでしょうかね?」
──はい。そうです。
      *
 その後、同社広報部からファクスで次のような“回答”が送られてきた。
「人口動態統計での各死亡率等についての数値の変化については、さまざまな要因が複合的に関係していると思われ、それら変化と福島原子力事故との関係については、当社として分かりかねます」。しかし、「分かりかねる」で済む話ではない。そもそも、日本国民の「不安を煽る」不始末を仕出かしたのは東京電力なのである。それを棚に上げ、事実を指摘されただけで「不安を煽る」などという感情的かつ非科学的あるいは非論理的な言葉で因縁をつけてくるとは、不見識も甚だしい。自分の会社の不始末が「国民の不安を煽っている」という自覚と反省が不十分なようだ。猛省を促したい。
■環境省「放射線健康管理」の正体を暴く
 続いて、国民の健康問題を所管する厚生労働省に尋ねた。
      *
「それは、環境省のほうに聞いていただく話かと思います」
──原発事故による住民の健康問題は、環境省に一本化されていると?
「そうですね」
      *
 ご指名に基づき、環境省を取材する。面談での取材は「国会対応のため、担当者の時間が取れない」との理由で頑なに拒まれ、質問への回答は、同省総合環境政策局環境保健部放射線健康管理担当参事官室よりメールで寄せられた。回答は以下のとおり。「昨年12月22 日に公表された、『東京電力福島第一原子力発電所事故に伴う住民の健康管理のあり方に関する専門家会議』の中間取りまとめによれば、
●放射線被ばくにより遺伝性影響の増加が識別されるとは予想されないと判断する。
●さらに、今般の事故による住民の被ばく線量に鑑みると、不妊、胎児への影響のほか、心血管疾患、白内障を含む確定的影響(組織反応)が今後増加することも予想されない。
 とされています」
 環境省は、たとえ周産期死亡率や急性心筋梗塞年齢調整死亡率が増加したとしても、それは原発事故の影響ではない──とした。その根拠は「専門家会議の中間取りまとめ」が、原発事故の影響でそうした疾患が増加することを予想していないからなのだという。ちなみに、「専門家会議」を所管しているのは、この回答の発信元である同省の「放射線健康管理担当参事官室」である。科学の権威たちが揃って予想だにしないことが起きたのが福島第一原発事故だったはずだが、あくまで「予想」に固執する環境省は同じ轍(てつ)を踏みそうだ。もちろん、科学が重視すべきは「予想」より「現実」である。環境省の説が正しいとすれば、原因は別のところにあることになり、それを明らかにするのが科学であり、それは環境省が拠りどころとする「専門家会議」の仕事のはずだ。だが、その原因を特定しないまま、環境省は端から全否定しようとするのである。なぜ、環境省は現実から目を逸らし、真正面から向き合おうとしないのか。身も蓋もない言い方だが、環境省が現実に目を向けることができないのは、昨年12月に出したばかりの「中間取りまとめ」を、環境省自身が否定することになりかねないからなのである。つまり、本誌取材班の検証で明らかになった「汚染17市町村」での周産期死亡率や急性心筋梗塞年齢調整死亡率の増加の事実は、「専門家会議の中間取りまとめ」の「予想」結果を根底から覆しつつ「権威」を失墜させ、その贋物性を白日の下に曝け出してしまうものだった。中間取りまとめ」が予想していない疾患の増加はすべて「原発事故の健康被害ではない」として、頭ごなしに否定する環境省の姿勢は、かつて「日本の原発は事故を起こさない」と盛んに喧伝してきた電力御用学者たちの姿を彷彿とさせる。12年7月に出された国会事故調(東京電力福島原子力発電所事故調査委員会)の報告書は、「歴代の規制当局と東電との関係においては、規制する立場とされる立場の『逆転関係』が起き、規制当局は電力事業者の『虜』となっていた。その結果、原子力安全についての監視・監督機能が崩壊していた」としていた。環境省もまた、電気事業者の「虜」となっているようだ。そう言われて悔しければ、「現実に向き合う」ほかに名誉挽回の道はない。このように不甲斐なく、頼りにならない環境省のおかげで、このままでは「汚染17市町村」での“健康異変”は十把一絡(じっぱひとから)げにされ、かつて「水俣病」が発覚当初に奇病扱いされたように、原因不明の奇病「福島病」とされてしまいそうである。メチル水銀中毒である「水俣病」に地域の名前が付けられたのは、加害企業の責任をごまかすべく御用学者が暗躍し、「砒素(ひそ)中毒説」などを唱えたことにより、原因究明が遅れたことが原因だった。これにより、病気に地域名が付けられ、被害者救済も大幅に遅れることになったのである。従って、「汚染17市町村」で多発する病気に「福島」の名が冠されるようになった時の原因と責任は、すべて環境省にある。

*1-2:http://www.jiji.com/jc/article?k=2016080300780&g=soc
(時事ドットコム 2016.8.3) 食品放射能基準「根拠ない」=田中委員長が批判-規制委
 原子力規制委員会の田中俊一委員長は3日の定例記者会見で、食品の放射性物質濃度基準値が放射性セシウムで1キロ当たり100ベクレル以下などと規制されていることについて、「私の知る限りでは科学的根拠があるとは思えない」と述べた。食品や飲料水の基準値は東京電力福島第1原発事故を受け、2012年4月に厳格化された。それまでは野菜や穀類、肉などは同500ベクレル以下などとされていた。田中委員長は「あの基準になったことで、風評被害や出荷制限で大変な思いをしている」と述べ、福島県の農業生産者らの苦労を強調した。チェルノブイリ原発事故後の欧州の食品基準にも言及し、「コントロールできるようになったから(基準値を)低くしている。そういうのが本来の姿だ」と指摘。「私のような人たちから見ると日本は変な国だ」と批判した。厚生労働省は現行基準について「国際的な指標を踏まえ、食品からの被ばく線量上限を年1ミリシーベルトにした場合の値。長期的な健康への影響も含めて判断している」と説明。食品安全委員会事務局も「専門家が科学的見地から取りまとめた」としている。

*1-3:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/344681
(佐賀新聞 2016年8月15日) 編集局長インタビュー 今村雅弘復興相に聞く 風評被害対策に意欲
 第3次安倍再改造内閣で初入閣した今村雅弘復興相(69)=衆院比例九州、鹿島市出身=は、佐賀新聞社のインタビューに応じた。5年が経過した東日本大震災の復興・復旧について、産業再生を重点施策に据える考えを示すとともに、根強く残る福島の産物に対する風評被害対策として、消費運動を促す仕掛けづくりに意欲を示した。今村復興相は就任直後に改めて被災地3県を回った。現状について「5年前に比べると、基盤整備などで着々と姿を現してきており、復興・復旧が進んできた」と評価した。その上で「基盤が整備されても、なりわいの再生が進まなければ人は戻らない」として、産業再生へ支援策を重点的に打ち出す考えを示した。原発事故の影響で福島を中心に農産物や海産物の風評被害が残っていることに関しては「危ないものではないということをもっとアピールして、福島の食材を買おうという運動を常に起こしていくことが重要」と指摘した。「福島農産物ファンクラブのようなものや、ふるさと納税に似た仕組みで消費拡大を促してもいい」と私案も披露した。原発の再稼働問題では「日本のエネルギー事情を考えると、原発は最小限必要」と容認の立場を鮮明にした。ただ、条件として「二重、三重の安全対策を講じ、さらに万一、事故が起きた場合に備えた多重防護策を施すべき」と福島第1原発事故を教訓にした対策の徹底を挙げた。

<伊方・川内原発の再稼働>
*2-1:http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20160802-00010000-jisin-soci
(女性自身 2016年8月2日) 「事故起きたら死ぬ」伊方&川内原発のお粗末すぎる避難計画
「ここでの暮らしは、つねに不安がつきまとう。原発で事故が起きたら、逃げ場がありませんから」と話すのは、佐多岬半島(愛媛県伊方町)の先端近くに住む平岡綾子さん(仮名・43)。伊方原発は、すぐそばを国内最大級の中央構造線断層帯(活断層)が通っている。4月に起きた熊本地震に誘発されて、伊方付近の断層が動く可能性も指摘されている。また南にある南海トラフで地震が起きると、最大で43万人以上の死者数になる可能性も……(内閣府試算)。「伊方原発は、佐多岬半島という日本一細長い半島の付け根にあるんです。だから、伊方原発から西に住む半島の住民(4,906人)は、原発事故が起きたら原発の前を通って東に避難するしかありません。でも放射能漏れしている原発の前を通って逃げるなんて不可能です」と平岡さん。しかし避難経路になっているのは片側一車線の道が多く、なかにはがけ崩れが修復されず、そのままになっているところもあった。政府は、放射能漏れがひどく原発の前を通って逃げられない場合は、佐多岬半島の港からフェリーで大分県に避難する計画も立てている。「訓練のときは、迎えのバスが来て港まで連れて行ってくれました。でも地震でガケくずれが起きたら、すぐに道がふさがれてしまう。第一、放射能漏れしているのにバスやフェリーを出してくれる民間会社なんてあるんでしょうか」(平岡さん)。避難訓練にも参加した国道九四フェリーの広報担当者にも尋ねた。「放射能漏れがなければフェリーは出せますけどね。当社も、船員の人命を守らねばなりませんから、(放射能漏れが)あった場合は対応できるかむずかしいですね」。昨年の避難訓練では、ヘリを導入することも予定されていたが、天候不良で中止になるというお粗末さ。事故がおきれば、逃げ道をふさがれた住民の命は切り捨てられる。現在、日本で唯一稼働している鹿児島県の川内原発。そこから50kmには桜島がある。桜島は姶良カルデラという巨大火山帯の一部で、これが巨大噴火を起こせば川内原発も破壊的なダメージを受ける可能性がある。九電は「敷地周辺のカルデラが、巨大噴火する可能性は十分に小さい。原発の運用期間中は、火山活動のモニタリングを続ける」と説明する。多くの火山学者は「火山噴火の予知は不可能」と批判している。しかし、原子力規制庁も九電の言い分を認めて再稼働に至っている。避難計画も穴だらけだ。介護が必要な高齢者や障害者の避難計画はないに等しい。「県や市は、避難計画を各施設に丸投げです。原発事故が起きたら、施設に通う高齢者は自宅に帰せと言うが、ひとり暮らしで認知症がある高齢者も少なくないのに、帰せるわけがありません」。そう話すのは、川内原発から約17kmにある、いちき串木野市で「デイサービス蓮華」を営む江藤卓郎さん。原発から5~30km圏内の要介護者は“屋内退避”が原則だが、避難が必要になった場合に施設の利用者を受け入れてくれる先は決まっていない。市の担当者は「風向きによって避難する方角が変わるので、事前に避難先を決めておいてもあまり意味がない。避難の必要性が生じたら、鹿児島県が予め整備した原子力防災・避難施設等調整システムによって都度、避難先を選定する」と話す。「風向きを読むことは、もちろん大事です。でも、事故が起きてから高齢者をいきなり知らない施設に避難させることは不可能です」と江藤さん。事前に利用者の家族にアンケート調査を実施し、避難の意向を確認。独自に原発から30km離れた知人の介護施設に受け入れてもらえるよう手はずを整えた。施設に通う80代の女性は、ポツリとこうもらした。「原発事故が起きたら、逃げられやせん。もう、ここで死ぬだけよ」前出の後藤さんもこう語る。「アメリカでは、現実的な避難経路が確立されていない原発は即廃炉です。でも日本の場合、避難計画は原子力規制委員会が原発再稼働を進めるために新たにつくった新規制基準の対象外なんです。だったらなおさら、安全がきっちり確認できない原発は再稼働を認めない、という厳しい姿勢で臨まなければ」。今回の取材で出会った、福島県南相馬市から京都府綾部市に避難中の女性も、次のように訴える。「福島では、事故のときに逃げ遅れたり、放射能の方向に避難してしまったりして被ばくした人がたくさんいます。その教訓がまるで活かされていない。事故が起きたら、国の言うことを信じずに、逃げられる人はすぐに逃げてほしい。国の指示を待っていたら被ばくするだけです」

*2-2:http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201608/CK2016081202000241.html (東京新聞 2016年8月12日)伊方、不安置き去り再稼働 周辺自治体に広がる懸念・反対
 四国電力は十二日午前、伊方原発3号機(愛媛県伊方町)を再稼働させた。東京電力福島第一原発事故を踏まえ策定された原子力規制委員会の新規制基準に適合した原発では九州電力川内1、2号機(鹿児島県)、関西電力高浜3、4号機(福井県)に次ぎ五基目。川内1号機の再稼働から一年たち政府は原発活用を加速させたい考えだが、伊方原発近くには長大な活断層「中央構造線断層帯」が通り、熊本地震を機に活発化する懸念や、事故時の避難計画の実効性に不安も根強い。日本一細長い半島に位置し、事故時には住民避難も収束作業も支援も困難が予想される四国電力伊方原発3号機(愛媛県)が再稼働した。九州から四国を通って本州に至る活断層「中央構造線断層帯」に沿って発生した四月の熊本地震後、豊後水道を挟んだ大分県各地の議会で、再稼働への懸念や反対を表明する動きが広がっている。その一方、暑い日が続く中でも四国の電力需給は安定。無理をしてまで原発を動かす大義は見当たらない。いくら地震や津波の対策をしても、原発のリスクはなくならない。一般的な工業施設なら、事故の影響は限定的。広範囲かつ長期にわたる影響が出る点で、原発はやはり別格と言える。何度、伊方の地を訪れても、雄大な美しい光景に圧倒される。その半面、尾根筋を走る一本の国道を除けば、道は細く険しく、岩肌ももろい。事故に備えて進めている道路拡幅は未完成のまま。住民避難計画では海を渡って大分などに避難するというが、現実的と受け止めている住民には出会ったことがない。地震が起きたら道は寸断される可能性があるためだ。「港に行く前に、閉じ込められる」と多くの人が語った。険しい半島の岩場を切り崩し、埋め立てて造った原発。敷地に余裕はない。事故時の対策拠点も必要最低限の施設で、休むスペースはなく、トイレも仮設が一つあるだけ。福島のような高濃度汚染水問題が起きても、保管するためのタンクの置き場も見当たらない。「新規制基準を満たせば、事故はある程度で止まる」。そんな危うい仮定の上で、伊方原発の「安全」は成り立っている。

*2-3:http://www.ehime-np.co.jp/news/local/20160812/news20160812018.html
(愛媛新聞 2016年8月12日) 町民反対55% 伊方原発再稼働
 四国電力伊方原発3号機(愛媛県伊方町)の再稼働を前に、県内外の8人でつくる「瀬戸内海を守ろう会」は11日、伊方町民を対象にした原発への意識調査結果を発表した。再稼働に反対は55%で、賛成の24%を上回り、賛成住民でも67%は大地震発生時の原発には不安を感じているとしている。調査は、7月11日~8月10日に県内外のボランティアが戸別訪問し、伊方町民294人から回答を得た。大地震発生時の伊方原発には「とても不安」が全体の56%で、「少し不安」は29%、「大丈夫だと思う」は10%。再稼働に賛成の住民は「少し不安」が42%で「とても不安」は25%。「大丈夫だと思う」は31%だった。再稼働反対の住民は「とても不安」が73%を占め、「事故が起きれば逃げ場がなく、避難計画に不安がある」などの意見があった。

*2-4:http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2016081201001778.html
(東京新聞 2016年8月12日) 「再稼働強行に抗議」で座り込み 広島の原爆慰霊碑前
 四国電力伊方原発3号機(愛媛県伊方町)が再稼働した12日、広島市中区の平和記念公園にある原爆慰霊碑前では、反原発派の市民団体メンバーら約30人が「再稼働の強行に抗議する」と訴え、座り込みをした。原水爆禁止広島県協議会(広島県原水禁)が呼び掛けて実施。金子哲夫代表委員(68)は「絶対的に安全だとは言えない。放射能被害に遭った広島と同じ思いをさせないためにも、直ちに停止させるべきだ」と批判し、参加者らは「原発再稼働をゆるさん」と書かれたプラカードを掲げた。

*2-5:http://qbiz.jp/article/92331/1/
(西日本新聞 2016年8月13日) 伊方原発再稼働 大分のシイタケ農家、対岸60キロ圏から抗議
 天気が良い日は、豊後水道を挟んだ対岸に伊方原発3号機(愛媛県伊方町)の原子炉格納容器のドームが見える。原発から約60キロの大分県杵築市大田でシイタケ栽培を営む中山田さつきさん(62)は再稼働に不安を募らせる。「過酷事故が起きれば、海を越えて放射性物質が飛来する。そんなことになったら、生活を根こそぎ奪われてしまう」。12日、四国電力は3号機を再稼働させた。中山田さんの住む国東半島は、江戸時代からため池やクヌギ林を活用したシイタケ栽培が盛ん。その循環型農業が評価され、地域は2013年、国連食糧農業機関(FAO)の世界農業遺産に認定された。中山田さん方も代々続くシイタケ農家。自宅で乾燥させ、大分名産の干ししいたけとして出荷する。今春は菌が入った「種コマ」をクヌギの原木に約9万5千個打ち、生育を待っている。東京電力福島第1原発の事故後、福島県産の露地栽培シイタケから基準を上回る放射性物質が検出され、出荷停止になった。生産量日本一を誇る大分県産の干ししいたけも、産地を問わずに敬遠される風評被害で価格が急落した。12年、中山田さんは同業者の声を聞こうと福島県二本松市の農家を訪ねた。汚染されたシイタケは行き場がなく、倉庫に積まれたまま。「同じことが大分で起きるかもしれないと思うとぞっとする。シイタケもクヌギ林も全部汚染され、生活が立ちゆかなくなる」。今年3月、関西電力高浜原発(福井県)の運転差し止めを求める仮処分申し立てを大津地裁が認めた。「隣県の住民でも止められるんだ」と勇気をもらった。7月上旬、大分地裁に伊方原発の再稼働差し止めを求めて仮処分を申し立てた。「今まで立地県の人に、原発と戦うことを押しつけてきた。申し訳なかった」。原発はとんでもない怪物だと思う。「過酷事故を想定して、30キロ圏内の自治体には避難計画を義務づけ、何十万という人を避難させるかもしれない前提で、動かす。そんな工場や発電所がほかにありますか?」。再稼働を前に開かれた今月10日の仮処分申し立ての審尋で、四国電力は「安全性に問題はない」と主張した。「事故はいつ起きるか分からない。一日も早く止めなければ」。伊方原発が再稼働した12日、居ても立ってもいられず、発電所周辺で開かれた抗議集会に駆け付けた。
   ◇   ◇
●反対意見書の可決次々 大分9市町議会、全体の半数
 愛媛県の中村時広知事が昨年10月に伊方原発3号機の再稼働に同意して以降、大分県内18市町村のうち半数の9市町議会が再稼働に反対や見直し、慎重対応を求める意見書案を可決した。経済的利益は受けず、事故の際には被害だけを受けることになる大分県では、不信感が高まっている。意見書案を可決したのは杵築、竹田、由布、別府、中津、国東、豊後高田、臼杵の市議会と日出町議会。このうち、全会一致で可決した杵築市議会は、再稼働にあたり、周辺自治体の同意や実効性ある避難計画が必要だと求めた。内陸部の竹田市議会は「放射性物質が飛来すれば、農林畜産業など主要産業が壊滅する」としている。杵築市議の一人は「原発の安全性確保に関しては、保守も革新もない。事故が起きれば市民は誰だって被害者になってしまう」と話す。臼杵市の中野五郎市長は今年1月、伊方原発を視察した際に「絶対に安全ということはありえない」と訴え、四国電力に大分県内での説明会開催を求めたが、四電は応じていない。大分県は、愛媛県からの避難者を受け入れる方針を示し、再稼働自体には反対していない。

<国民負担の原発事故コスト>
*3-1:http://www.jiji.com/jc/article?k=2016031100118&g=soc (時事ドットコム 2016/3/11) 国民負担3兆4千億円超=賠償・除染など、事故5年で-総額見えず拡大へ・福島原発
 東京電力福島第1原発事故の発生から5年間に損害賠償や除染、汚染水対策などで国民が負担した額が、確定分だけで3兆4613億円を超えることが分かった。日本の人口で割ると1人2万7000円余りに上る。今後も増え続ける見通しで、総額が見通せない状況だ。時事通信は復興特別会計などの原子力災害関連予算の執行額と、東電など電力7社が電気料金の値上げ分に含め賠償に充てる一般負担金などを集計した。国民負担は、電気料金への上乗せ▽事実上の国民資産である東電株の売却益やエネルギー特別会計(エネ特)からの支出▽政府の直接財政支出-に大別される。電力7社は事故後の電気料金値上げで、一般負担金を2015年度までに少なくとも3270億円上乗せした。東電は汚染水処理装置の保守管理費や賠償相談のコールセンター運営費など、2193億円以上も値上げ分に含めている。一般負担金は原子力損害賠償・廃炉等支援機構を通じ、賠償費用を立て替えている政府に納付されるが、その際に機構の運営費が差し引かれる。14年度までの運営費は117億円だった。東電株の売却益やエネ特の支出は、除染や汚染廃棄物の処理費、中間貯蔵施設関連費に充当される。これらの費用は14年度までに計1兆6889億円発生し、政府が立て替えている。東電株の購入に際し、機構が金融機関から受けた融資には政府保証が付き、焦げ付いた場合は税金で穴埋めされる。機構は東電株が大幅に値上がりすれば約2兆5000億円の売却益が生じ、除染などの費用を賄えると見込む。電源開発促進税が入るエネ特からは、約1兆1000億円が中間貯蔵施設の建設費などに充てられる。直接財政支出は14年度までに、廃炉支援や食べ物の放射能検査、研究開発の拠点整備などで計1兆2144億円が使われた。確定していない15年度分の除染費などや直接支出を含めれば、国民負担はさらに膨らむ。

*3-2:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20160729&ng=DGKKASGG28H1J_Y6A720C1MM8000 (日経新聞 2016.7.29) 溶けた核燃料、圧力容器内に 福島第1の2号機 内部を透視
 東京電力と政府は28日、福島第1原子力発電所2号機の内部を透視する最先端の技術を使って調べたところ、溶け落ちた核燃料が原子炉の圧力容器の底に残っている可能性が高いと発表した。強い放射線に阻まれて作業員が近づけない溶融燃料を確認したのは初めて。具体的な取り出し方法を決める手がかりになるとみており、今後より詳しい調査を進める。2011年3月の福島第1原発事故で、1~3号機は炉心溶融(メルトダウン)が起きた。原子炉内部の調査には、宇宙線から生じる「ミュー粒子」と呼ぶ素粒子を使う。この粒子は人体などたいていの物質を通り抜けるが、ウランなど密度が高い物質に当たると進路が折れ曲がり、レントゲン撮影のような透視画像を得られる。今回の観測では、圧力容器の底に大きな影が映っていた。影の大部分は溶融燃料とみられる高い密度の物質で、その量は160トンほどと推定した。この数字から、原子炉中心部付近にあった核燃料はほとんどが溶け落ちたとみられる。2号機については、核燃料が集まった炉心を覆う鋼鉄製の圧力容器の中に溶融燃料が多く残っていると推定されてきた。しかし、建屋周辺の除染や調査の準備などに時間がかかっていた。溶融燃料の位置や量が把握できたことで、今後の取り出し方法の選定に向けて前進したことになる。東電と政府は今年度中にも、ロボットを使って格納容器の内部を調べる計画だ。

*3-3:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20160729&ng=DGKKZO05400790Z20C16A7MM8000 (日経新聞 2016.7.29) 廃炉費用 東電が国に支援要請 当初見込みを大幅超過
 東京電力ホールディングス(HD)の数土文夫会長は28日の記者会見で、福島第1原子力発電所の廃炉に関して政府に支援を求める考えを明らかにした。作業工程の遅れなどで、廃炉費用が当初見込んだ約2兆円を大幅に上回る可能性が高くなったため。原発事故の賠償費用が当初見込みを上回っている問題でも政府と対応を協議する。数土会長は福島第1原発の廃炉費用について「経営に多大なインパクトを与える」と強調。そのうえで「これまで以上に国や原子力損害賠償・廃炉等支援機構と連携を密にする」と述べた。具体的な廃炉費用の見通しや支援要請の内容は明らかにしなかった。福島第1原発事故の被災者への賠償費用は国が無利子で立て替えている。従来の再建計画では5兆4000億円を見込んでいたが、すでに6兆円を超えた。想定を上回る分をどう負担するかについて政府と協議する。東電HDは経営改革を加速することで国の支援を取り付けたい考えだ。数土会長は電力小売りの全面自由化などで「環境が大きく変化している」とし、「過去の習慣にとらわれず非連続の改革に取り組む」と語った。政府は東電HDからの支援要請を受け、廃炉が着実に実施できるような支援措置の検討に入る。費用が膨らんだ場合でも作業が滞らないようにする考えだ。

<原発の安全性>
*4-1:http://dd.hokkaido-np.co.jp/news/society/society/1-0301450.html
(北海道新聞 2016/8/6) 北電が泊原発資料修正 地元首長「信頼揺らぐ」と批判の声
 北海道電力が4月から後志管内で行っている泊原発(後志管内泊村)に関する地域説明会で「原発の2次冷却水には放射性物質が一切含まれない」と事実と異なる説明をしていたことが分かり、北電は5日から説明会の資料や説明内容の修正を始めた。後志管内の首長からは「説明の信頼が揺らぐ」との批判の声が出ている。北電によると、地域説明会の資料に、泊原発が採用する加圧水型軽水炉について「タービンを回すために使う2次冷却水や蒸気に放射性物質を含みません」などと記載し、口頭でも同様の説明をしていた。しかし、1次冷却水に含まれるトリチウムは金属配管を透過して、2次冷却水に漏れ出している。北海道新聞が「事実と違う」と指摘したところ、内容の修正を決めた。北電は「資料は沸騰水型原発との構造の違いの説明を主眼にしたもの。故意に誤った説明をした訳ではないが、誤解を招く表現なので修正した」としている。北電は5日夜の留寿都村での説明会では「(2次冷却水には)蒸気発生器の伝熱管を透過したトリチウムが含まれている」と説明を変え、修正した資料を配った。誤った内容による説明会は18市町村で計61回行われたが、「説明会のやり直しはしない」という。これに対し、泊村の牧野浩臣村長は「当初の説明内容が軽率だった。説明会をやり直す必要はないが、機会を見て住民への説明責任をしっかり果たしてほしい」と指摘。仁木町の佐藤聖一郎町長は「(トリチウムが)入っていないと説明したのに、入っていたとなると不信感が募るだけ。北電は悪いことも含め事実をしっかり伝えてほしい」と話している。

*4-2:http://mainichi.jp/articles/20160808/ddm/005/070/002000c
(毎日新聞社説 2016年8月8日) 老朽原発の延命 「40年廃炉」の骨抜きだ
 老朽原発の運転延長が、立て続けに認められようとしていることに、大きな危惧を抱かざるを得ない。あくまでも「例外」とされた措置が、普通のことになってしまった。福島第1原発事故を教訓に見直された原子力安全規制は事実上、大きく方向転換したことになる。関西電力が40年を超えた運転を目指す美浜原発3号機(福井県)について、原子力規制委員会は新規制基準への合格証となる「審査書案」を了承した。11月末までに追加の審査に合格すれば、最長で2036年まで運転が延長できる。
●「例外」が普通のことに
 老朽原発の運転延長は、今年6月に認可を得た関電高浜原発1、2号機(同)に続き3基目となる。福島第1原発事故後、原発の運転期間を原則40年とする法改正がなされた。老朽化による原発のリスクを低減するためだ。福島第1原発で炉心溶融した1〜3号機は運転開始から約35〜40年が過ぎていた。導入当時の民主党(現民進党)政権は、40年の根拠を「圧力容器が中性子の照射を受けて劣化する時期の目安」と説明し、法改正には野党だった自民、公明両党も賛成した。規制委が認めれば1度限り、最長で20年間の延長を認める規定が盛り込まれたが、あくまで「例外的」な措置のはずだった。日本は地震と火山の国だ。原発に依存し続けるリスクは大きい。多くの国民も、40年原則を当然だと受け止めたはずだ。原発の安全性を向上させるためにも、脱原発依存を進めるためにも、政府と電力会社は40年廃炉の原則を厳守すべきだ。老朽原発の部品は新品に交換できても、施設の配置などは古い設計を変えづらく、安全性向上には限界があるとされる。古い技術をどうやって継承していくのかも、大きな課題となっている。こうした老朽原発のリスクを重く見るのなら、運転延長の審査は、通常の原発に比べても、格段に厳しいものであるべきだ。ところが、高浜、美浜両原発の運転延長に関する規制委の一連の審査では、むしろ、関電を手助けしているようにすら見える。高浜原発は今年7月が認可の期限だった。美浜原発は運転開始40年の前日となる11月末が期限となる。審査期間が限られる中、規制委は担当者を両原発に集中させ、安全審査を申請済みの他の原発よりも優先して審査してきた。しかも、審査が時間切れになるのを避けるため、重要な機器を実際に揺らして耐震性を確認する試験を、運転延長の認可後に先送りした。認可後の試験で耐震性に問題ありと判定された場合でも、認可は取り消さず、追加対策をして確認をやり直せばよいという。この問題については、規制委の一部委員からも「確認のやり直しは社会の理解を失う」との批判が出たほどだ。老朽原発では、燃えやすいケーブルを使っていることが問題視されていた。新規制基準は全ケーブルの難燃化を求めているが、すべて難燃性ケーブルに交換するには膨大な費用と時間がかかる。規制委は、交換が難しい箇所を防火シートで覆うという関電の代替策を認めた。難燃性ケーブルを使う場合と同等の安全性が保てるのか、疑問が残る。
●疑問募る委員長の発言
 規制委の田中俊一委員長は就任当初、原発の40年超運転について「延長は相当に困難」と述べていた。しかし、最近では「費用をかければ技術的な点は克服できる」という言い方に変わった。電力会社の代弁者のように聞こえはしまいか。福島第1原発事故後に廃炉が決まった老朽原発は、東電分を除くと6基ある。ただ、出力は30万〜50万キロワット級と小規模なものばかりだ。一方で、美浜3号機や高浜1、2号機は出力が80万キロワット級と、廃炉が決まった原発に比べれば大きい。関電は安全対策費として、高浜1、2号機で2000億円超、美浜3号機で1650億円を見込む。それでも延長に踏み切るのは、火力発電の燃料費削減など収益改善効果があるからだ。高浜1、2号機の場合、1カ月当たり約90億円に上るという。国内では今後10年間で、美浜3号機を含めて15基の原発が運転開始から40年を超える。関電の原発がお手本となり、安全対策費をかけても採算が見込める一定規模以上の原発の運転延長申請が続くだろう。廃炉の選択は、経済原理に基づく電力会社の判断に託され、例外規定の形骸化が更に進む。40年廃炉原則には、こうした電力会社の経済原理よりも、安全性を重視する意味があったはずだ。しかし、安倍政権は30年度の電力供給における原発比率を20〜22%とする計画を掲げる。これも、老朽原発の延命を後押しする。40年原則を徹底すれば、既存と建設中の原発がすべて稼働したとしても、比率は15%程度にとどまるからだ。これでは、原発に依存しない社会をできる限り早く作りたいという多くの国民の声には応えられない。原発の過酷事故を経験した国として、進めるべきは、老朽原発の延命ではなく淘汰(とうた)のはずだ。

<世界の潮流と日本のギャップ>
*5-1:http://www.afpbb.com/articles/-/3004099?ctm_campaign=topstory
(朝日新聞 2013年11月28日) 「原発は援助しない」、世銀と国連が表明
 世界銀行(World Bank)と国連(UN)は27日、最貧国に電力網を整備するため数十億ドル規模の資金援助が必要だと訴えるとともに、いずれの国においても原子力発電への投資は行わない考えを表明した。世銀のジム・ヨン・キム(Jim Yong Kim)総裁と国連の潘基文(パン・キムン、Ban Ki-moon)事務総長は、2030年までに世界中の全ての人が電力の供給を受けられるようにする取り組みについて記者団に説明した。その中でキム総裁は「われわれは原発は行わない」と明言した。キム総裁によると、世銀は来年6月までに42か国の発電計画をまとめる予定。電力網の整備やエネルギー効率の倍増、再生可能エネルギー比率の倍増などを掲げ、目標達成には年間およそ6000~8000億ドル(約61兆~82兆円)が必要になるとしている。しかしキム総裁は、集まった資金は新エネルギー開発にのみ使用すると報道陣に明言。「原子力をめぐる国家間協力は、非常に政治的な問題だ。世銀グループは、原発への支援には関与しない。原発は今後もあらゆる国で議論が続く、たいへん難しい問題だと考えている」と述べた。

*5-2:http://www.nikkei.com/article/DGXLASGG12H37_S5A211C1000000/ (日経新聞 2015/12/13) COP21、パリ協定採択 196カ国・地域が参加、18年ぶり 温暖化1.5度以内へ努力
 第21回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP21)は12日午後7時26分(日本時間13日午前3時26分)、途上国を含むすべての国が参加する2020年以降の新たな温暖化対策「パリ協定」を採択した。産業革命後の気温上昇を抑える目標を掲げたうえ、できるだけ早期に温暖化ガス排出を減少に転じると明記した。各国の自主性に委ねられる面は大きいが、196カ国・地域が史上初めて温暖化防止にともに努めると約束した。地球温暖化の阻止へ歴史的な一歩を踏み出した。12日夜、パリ郊外に設置された特設会場に設けられた大会議場にケリー米国務長官や中国の解振華・国家発展改革委員会特別代表、丸川珠代環境相など各国の閣僚が集まった。議長を務めるファビウス仏外相が「パリ協定を採択した」と述べ、木づちを振り下ろすと会場は長い間、拍手や歓声で包まれた。世界の温暖化対策がまとまるのは、1997年採択の京都議定書以来、18年ぶり。パリ協定は産業革命前からの気温上昇を2度より十分に低く抑える目標を掲げたうえ、さらに1.5度以内とより厳しい水準へ努力するとした。2度を超えると、異常気象といった様々な影響が現れると指摘されている。すでに地球の気温は1度程度上昇している。このため、温暖化ガスの排出量を早期に頭打ちにし、今世紀後半には人為的な排出量を森林などによる吸収量と均衡する状態まで減らす。米国や、中国などの途上国を含むすべての国が温暖化ガス削減の自主目標を作成し、国連に提出し、国内対策を実施する義務を負う。各国の削減目標を引き上げるため、2023年から5年ごとに目標を見直し、世界全体で進捗を検証する仕組みも導入する。温暖化に伴う被害を軽減する世界全体の目標を定めることも決めた。パリ協定の採択に向けて最大の焦点となった途上国の資金支援を巡っては、「温暖化は先進国の責任」とする途上国と、将来の支援額を明示できないうえ新興国にも拠出側に回ることを望む先進国で意見が激しく対立。途上国への資金支援は義務づける一方、具体的な拠出額は協定とは切り離す形とし、25年までに、最低でも年間1000億ドルとする新たな拠出額の目標を決めることで決着した。地球温暖化を巡っては、国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が14年に第5次評価報告書を公表し、「人間活動が20世紀半ば以降に観測された温暖化の支配的な要因であった可能性が極めて高い」と結論づけた。世界各地で温暖化の影響とみられる豪雨や洪水、干ばつなどの被害の報告も相次いでいる。国際社会が地球環境問題に危機感を感じ、1992年には気候変動枠組み条約が採択された。97年の同条約第3回締約国会議(COP3)で京都議定書がまとまった。だが京都議定書の採択後、中国やインドなど経済成長を遂げた途上国を中心に温暖化ガスの排出量が急増。さらに米国が2001年に離脱し、日本などが参加を見送るなど、参加国が大幅に縮小し、13~20年に削減義務を課された国々の排出量は世界全体の1割強にとどまっている。こうした状況を打開すべく、09年のデンマークでのCOP15で新たな枠組みの合意を目指し、首脳級による交渉が行われたが先進国と途上国の意見の隔たりが大きく失敗。その後6年間かけて各国の温暖化対策の機運を徐々に高めていき、ようやくパリ協定の採択に至った。

*5-3:http://www.jiji.com/jc/article?k=2016080400011&g=pol
(時事ドットコム 2016.8.4) 原発抜きでは「極めて困難」=温室ガス削減目標達成-山本環境相
 山本公一環境相は3日の就任記者会見で、地球温暖化対策を進める上での電源構成(ベストミックス)について「原子力発電抜きで、2030年までに(13年比で)温室効果ガスを26%削減する目標を達成するのは極めて困難」と述べ、原発の再稼働などを進める政府方針を堅持する考えを示した。環境相はまた、大量の温室ガス排出を伴う石炭火力発電の新設計画の条件付き容認方針も基本的に踏襲する意向も表明。一方で「(環境影響評価法に基づき)石炭火力への抑制的な思いをにじませたい」とも述べた。政府は30年のベストミックスとして、原発の比率を20~22%、石炭火力を26%、再生可能エネルギー22~24%とすることを決めている。

*5-4:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12509511.html (朝日新聞 2016年8月13日) 「原発必要」揺らぐ根拠 電力大手、需給に余力・業績も回復 伊方再稼働
 四国電力の伊方原発3号機(愛媛県)が再稼働した。電力業界は需給や経営を安定させるのに「原発は欠かせない」として、審査中の原発の再稼働を進める方針だ。だが、原発事故を受けて企業や家庭の節電が進んだ結果、エアコン利用が増える猛暑でも夏の電力は安定。原油安で業績は改善しており、再稼働の根拠は逆に揺らいでいる。2011年3月の東京電力福島第一原発事故をきっかけに、大手に対する電力需要は減っている。節電が定着したことに加え、新電力への切り替えが進んだためだ。15年度の需要は5年前より約13%減。ピーク時でも電気を十分に供給できることから、政府はこの夏、震災後で初めて「節電要請」を見送った。四電は、伊方3号機の再稼働で、原発1基分にあたる98万キロワットが余る計算になり、首都圏や関西圏向けに電気を売る方針だ。1年前に川内原発(鹿児島県)が再稼働した九州電力は「余る電力を売ることが必要」(幹部)と、自粛していたオール電化の営業を7月から再開した。「再稼働しないと電力不足になる」状況にはない。業績も回復している。事故後、原発の代わりに動かす火力の燃料費が増え、原発頼みだった各社の業績は悪化した。だが、原発を持つ9社の16年3月期決算は、震災後初めて全社が経常黒字になった。WTI原油の先物価格は11年以降、1バレル=80~100ドル台で推移したが、今年2月には一時20ドル台に下落した。原油安の影響で火力の燃料費負担が減り「燃料価格の安さなど外部環境がプラスに働いた」(瓜生道明・九電社長)。それでも「収益力の本格回復には至っていない」として、玄海3、4号機(佐賀県)の再稼働を急ぐ考えだ。初期投資の大きい原発は長く使うほど利益が出るため、今ある原発は早く再稼働させたい。電気事業連合会の勝野哲会長(中部電力社長)は7月の記者会見で「需給と電力の事業収支の面で厳しい状況が続いている。早期の再稼働に向かって進めていく」と改めて強調した。
■かさむ事故対策費
 経産省は昨年5月、30年時点の原発の発電コストは1キロワット時あたり10・3円以上と試算し、太陽光や火力など他の電源と比べて「最安」と位置づけた。ところが、政府は今年4月からの「電力自由化」で競争が激しくなり、原発を持つ大手の経営環境は厳しくなると見て、原発事業を維持する制度づくりを進める。例えば、使用済み核燃料の再処理事業では、電力が撤退や破綻(はたん)することも想定し、国の関与を強めた。原発事故時の損害賠償制度をめぐっては、電力側の責任の範囲を小さくすることも含めて議論を始めた。こうした見直しに国の有識者会議の委員からは「原発コストは安いという試算があるのに、なぜ自由化で『原発はやっていけない』という議論が出るのか」と、矛盾を指摘する意見も出た。実際、事故対応のコストは当初の想定より膨らんでいる。被災者への賠償費用(約5・4兆円)や廃炉費用(約2兆円)は、東電の想定を大幅に上回る見通しだ。電力各社が見込む原発の安全対策費も年を追うごとに増えている。原発の実際の発電コストは試算を上回っている可能性が高い。再稼働を進めるにあたっては「原発は安い」との試算を前面に出し、実際には「高コスト」を前提に政府内の議論が進む。都留文科大の高橋洋(ひろし)教授(エネルギー政策)は「すでに電気は十分に足りているし、コストが安いという神話は崩壊している。政府は、原発が安くないことを認めたうえで、それでも推進する根拠を説明する必要がある」と指摘する。

<再生可能エネ>
*6-1:http://www.saga-s.co.jp/news/national/10201/337842
(佐賀新聞 2016年7月26日) 国内最大の潮流発電設置、長崎、五島列島沖で実証実験
 九州電力の子会社で再生可能エネルギー事業を手掛ける九電みらいエナジー(福岡市)は26日、長崎県・五島列島沖で潮の流れを利用した発電の実証実験を始めると発表した。新日鉄住金エンジニアリング(東京)などと共同で実施。出力は2千キロワットを想定しており、潮流発電としては国内で最大規模になる。本年度から準備を進め、2019年度の運転を目指す。潮流発電は再生エネの中でも天候に左右される太陽光や風力と違い、年間を通じて安定した発電ができるとされ、政府も導入に力を入れている。実験は環境省の委託事業として選ばれ、総事業費は本年度からの4年間で30億円以上を見込む。

*6-2:http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=37920
(日本農業新聞 2016/6/17) 再生エネルギー 収益で地域活性化 災害時 農村の電源に
 地域ぐるみで再生可能エネルギー発電を行い、大規模な災害に備えて蓄電する取り組みが、農山村で広がっている。固定価格買取制度による売電収入で地域活動の財源が見込めるだけでなく、停電した場合の一定期間、非常用電源にも活用できる。自然災害で集落が孤立した場合などへの備えになり、「農家の経営安定と地域の災害時の安全保障につながる」と効果を実感する声が上がる。兵庫県朝来市の10集落の住民でつくる「与布土地域自治協議会」は、児童数の減少で閉校になった小学校体育館の屋上に太陽光パネルを設置し、昨年3月から固定価格買取制度を利用して売電を始めた。パネルと同時に蓄電池も設置。体育館は災害時に地域の避難所となり、その場合に使える非常用電源を確保した格好だ。山に囲まれた与布土地域。閉校を契機に、協議会では過疎高齢化が進む地域の存続問題について話し合いを重ね、再エネ発電に挑戦した。太陽光パネルと蓄電池設置の総費用は2200万円。うち蓄電池は500万円程度で、体育館の数日間の電源が確保できる見通しだ。県の助成500万円を活用し、残りの1700万円は無利子融資を受けた。年間180万円の売電収入のうち、年間50万円は協議会の活動費に充てる。同協議会の西山俊介さん(73)は「地域活性化のために自由に使える活動費は貴重。自然災害が発生しライフラインが途絶えた時に、自分たちの生活を地域で守ることもできる」と笑顔だ。兵庫県では再エネを活用した非常用電源を整備した集落を「エネルギー自立のむら」と認定し、補助や無利子貸し付けを行う。現在、県内の中山間地域などで12集落を認定。同県は「エネルギーの地産地消により災害時の自給自足が実現できる」(水エネルギー対策課)と説明する。地元農家や地域づくり団体などでつくる福島県いわき市の「いわきおてんとSUN企業組合」も太陽光発電と蓄電に取り組む。売電する他、蓄電池を整備することで災害時の電源対応ができる。島村守彦事務局長は「再エネは、売電による経済効果も大きいが、自分たちでエネルギーを作って自分たちで使い、いざという時の生活を守ることができる」と感じる。熊本県南阿蘇村の「里山エナジー」は、農家が再エネに参入する支援をする。代表者の農家、大津愛梨さん(41)の家では、再エネ発電をしていたことから熊本地震の本震が発生した4月16日もすぐに電気が使えた。大津さんは「再エネの力は災害時に改めて証明された」と強調。地域の資源を生かした発電について「農村は食べ物もエネルギーも作れることを示し、農業の経営安定にも災害時の安全保障にもつながる」と指摘する。

*6-3:http://www.nikkei.com/article/DGXLZO05236320V20C16A7L72000/
(日経新聞 2016/7/26) 下水汚泥発電の準備着手・県、桶川で19年に開始
 埼玉県は25日、下水処理施設で下水汚泥から発生するメタンガスなどを使った発電事業の準備に着手したと発表した。元荒川水循環センター(桶川市)に設備を設け、2019年4月に発電を開始する。県は事業者へのガスの売却代や土地の賃貸料で年間6000万円の収入が見込め、汚泥の減量化にもつながるという。事業者は公募型プロポーザル方式で大原鉄工所(新潟県長岡市)の東京支店(東京・文京)を選定。県は同センターに汚泥消化槽を建設し、年間に発生するメタンガスを主成分とする消化ガスのうち6割に相当する146万立方メートルを同社に売る。同社は同センター内に発電機を設置し、1キロワット時あたり39円(税抜き)で20年間、電力会社に売電する。年間発電量は270万キロワット時で、一般家庭500世帯分に相当するという。国が定めた再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度(FIT)を活用する。ガスの残り4割は汚泥焼却炉の燃料として活用。県は汚泥消化槽の建設や焼却炉の改造などに約40億円を投じる。同センターは熊谷、行田、鴻巣、桶川、北本の5市の33万人分の下水を処理している。県は中川水循環センター(三郷市)でも発電事業を予定している。


PS(2016/8/17追加):*7-1のように、7月の鹿児島県知事選では三反園氏が当選し、川内原発の一時停止を要請しているため、停止後は再稼働しない可能性も出てきた。しかし、愛媛県は2014年11月に2度目の当選を果たした中村氏が、四国電の再稼働に関し、「安全確保を最優先に慎重に取り組んでいただきたい」と述べただけだったため、愛媛県の伊方原発は、*7-2のように、司法で止めるか、知事を換えて止めるかしかなさそうだ。

*7-1:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/342354
(佐賀新聞 2016年8月8日) 地震で原発立地知事に差
■川内原発 一時停止の要請を表明
■伊方原発 再稼働に追加策求めず
 連続して震度7を記録し大きな被害が出た4月の熊本地震を巡り、原発を抱える周辺自治体首長の対応に差が目立っている。鹿児島県の三反園訓知事が九州電力川内原発(同県薩摩川内市)の一時停止を求める意向を示す中、12日にも再稼働する四国電力伊方原発3号機(愛媛県伊方町)の再稼働に同意した同県の中村時広知事に特段の動きは見られない。市民団体は「熊本地震を受け安全対策を再検証すべきだ」と批判している。
▼対決姿勢
 7月に初当選した三反園氏は、熊本地震の影響を調べるため、稼働中の川内1、2号機の一時停止を九電に要請することを表明。「地震後に安全性は確認した」とする九電との対決姿勢を鮮明にしている。一方、伊方3号機の近くには長大な中央構造線断層帯が通っており、熊本地震をきっかけに活発化することを危ぶんだ住民らは松山地裁や大分地裁に運転差し止めを求める仮処分を申し立てた。一部の市民団体は、再稼働同意を撤回するよう中村氏に要請した。だが、原子力規制委員会は「審査で十分検討した」との立場で、中村氏もこれをほぼ踏襲する形で、再稼働までに四国電や国に追加の安全対策を要求しない考えを示してきた。
▼影潜める
 中村氏は昨年10月の再稼働同意に際し、国の基準以上に施設を耐震化するよう四国電に求めるなどの県独自の安全対策を取るとともに「過酷事故が起きたときの国の責任が曖昧」と繰り返し批判。“物言う知事”としての存在感をアピールしたが、熊本地震後は影を潜めたようにも見える。今年7月下旬の定例会見。中村氏は県の取り組みを改めて紹介した上で「立地条件などが違い、鹿児島県と同じ土俵で(対応を)比較できない」と理解を求めた。今月5日、四国電が再稼働の日を12日と発表した際も、中村氏は「安全確保を最優先に、慎重に取り組んでいただきたい」などとコメントを出しただけだった。

*7-2:http://www.oita-press.co.jp/1010000000/2016/08/16/000804532 (大分合同新聞 2016/8/16) 対岸の原発 伊方再稼働㊦ ― 「一私企業の経営安定のために、どうして多数の住民がリスクを負わなければならないのか」(井戸謙一 1954年生まれ。大阪府出身。東京大学教育学部卒。75年司法試験合格。金沢地裁、京都地裁で民事部の裁判長を務めた。2011年3月に退官し、現在は弁護士。滋賀県彦根市在住)
 関西電力高浜原発3、4号機(福井県)に隣接する滋賀県の住民の申し立てを認め、運転を差し止めた3月の大津地裁決定は、重大事故が起きた場合に放射能被害が及ぶ可能性のある周辺自治体の住民を勇気づけた。滋賀住民の弁護団長を務め、四国電力伊方原発(愛媛県)の運転禁止を求める「大分裁判」の弁護団にも加わった井戸謙一弁護士(滋賀弁護士会)に、大津決定の意義などを聞いた。
●大津決定の意義は。
 現実に動いている原発を、隣接県の住民の申し立てで隣接県の裁判所が止めたことだ。(立地県でない住民の主張を認めたのは)東京電力福島第1原発事故の被害が広範に広がったことの裏返しだ。
●追随する司法判断は出るか。
 これまで裁判所は、電力会社側に原発が安全基準に適合していることを、原告側には原発の危険性の立証を求め、原告側のハードルが高かった。大津決定は従来の枠組みを踏襲しながらも、関電に対し「福島事故後の規制がどう強化され、関電がどう応えたか」の立証責任を強く求めた。(他の裁判所が)同調しやすい判断枠組みだ。
●決定は政府が「世界最高水準」と自負する新規制基準を不十分と指摘した。
 国際基準である国際原子力機関(IAEA)の「深層防護」の考え方を取り入れなければならないのに、新基準は避難計画を審査の対象としていない。それだけで原子力基本法、原子力規制委員会設置法に違反する。「世界一厳しい」というのは大うそだ。
●井戸さんは元裁判官で、金沢地裁の裁判長だった2006年に北陸電力志(し)賀(か)原発の差し止め判決を言い渡した。
 もともとは原発廃止論者ではなかった。原発なしでは日本のエネルギーが立ち行かないと思っていた。しかし、審理の中で、北陸電力がコスト削減のためにあえて不利な部分に目をつぶっていると感じた。原発自体は反対しないが、やるなら安全性を高めて、との思いを込めた。「3・11」直後も原発をすぐゼロにとは言えなかった。だが、2年間、原発が1基も動かず、日本社会には原発がいらないことが分かった。今夏は節電要請もしていない。一私企業の利益のために周辺住民がリスクを負う理由はない。
●伊方原発をどう見る。
 最も大きいのは耐震性の問題。中央構造線が動いたときの地震の加速度予測は、四国電の計算にごまかしがあるとしか思えない。合理的な避難計画もできず、立地不適だ。
●「大分裁判」の弁護団に参加した。
 大分、松山、広島と3地裁に伊方原発差し止めの仮処分が申し立てられている。最低でも一つ勝ち、何としても止めたい。鹿児島県では九州電力川内原発の一時停止を掲げた知事が当選した。川内は政治で、伊方は司法で止めることができる。もう時代は変わった。動き始めた原発を一つ一つ止めていき、原発ゼロを実現したい。


PS(2016年8月18日追加):朝日新聞編集委員の上田氏が伊方原発近くの集落生まれだそうで、*8に、「『なんか声をあげんといかん』。道は、その先に開かれる」と書いておられるが、役に立つ有力な地元出身者だろう。そして、その先の道は、原発がなければ瀬戸内海は釣り堀のように魚が多くて美しい内海にでき、豊予海峡は海峡幅が約14kmで流れが速いため関アジ・関サバのような筋肉質の高級魚が獲れる上、潮流発電の適地にもなりうる。従って、その先は栽培漁業を含む漁業や九州・四国間海底トンネルをつくって四国・瀬戸内海をめぐる観光拠点にするなど、いろいろな可能性が考えられる。

*8:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12516729.html (朝日新聞 2016年8月18日) ザ・コラム 伊方原発再稼働 声をあげる、その先に  (編集委員 上田俊英)
 朝のうちから夏の日差しが照りつけていた。11日、愛媛県伊方町。穏やかな瀬戸内の海が眼前に広がる四国電力伊方原発のゲート前に、斉間淳子さん(72)はいた。3号機の再稼働反対を訴えるためだ。伊方の隣の八幡浜市で生まれ育ち、夫で地域紙を発行する満さん(2006年死去)と原発反対運動を続けてきた。兄が四電にいて運動と距離を置いた時期もあったが、1981年に伊方沖で魚の大量死が発生。県の調査グループは放射能の影響を否定したものの、淳子さんは恐怖を感じた。「海に浮いている魚を見て、わが子のように思ったんよ。どこかで必ず事故が起こる。そうなったら、子どもや孫が帰るところがなくなってしまう」。11年3月11日、不安は福島で現実になる。東京電力福島第一原発事故からほどなく、淳子さんは東日本大震災の「月命日」の毎月11日に、ゲート前で座り込むようになった。「反対の声をあげんといかん。そうすれば四電もむちゃくちゃを、ようせんようになる」という思いからだ。最初の座り込みは、みずからが88年につくった「八幡浜・原発から子どもを守る女の会」のメンバーと2人。それが3号機の再稼働を翌日に控えたこの日、全国から集まった人たちは80人ほどはいただろう。その輪の中で淳子さんは訴えた。「子どもの命を、だれが守ってくれるんですか」
     ◇
 伊方で原発の建設計画が表面化したのは69年。激しい反対運動のなか、8年後の77年に最初の1号機が運転を始める。そして94年までに3基の原発が並んだ。淳子さんの夫の満さんは新聞記者として、当初から取材にあたった。満さんは著書「原発の来た町/原発はこうして建てられた/伊方原発の30年」に記す。「原発は決して伊方を豊かにはしなかった。道路や建物は立派になったが、人々の心は傷つき、人間の信頼は失われた」。それは、まさにいまの福島の被災地の姿だ。第一原発周辺の広大な避難指示区域。人々は分断され、心は傷ついたままだ。伊方の反対運動は73年、原発の安全性を争う日本で最初の裁判へ発展する。住民が1号機について国の設置許可の取り消しを求めて最高裁まで争い、92年に敗訴が確定した。しかし、この裁判は、反対運動に、いまにつながる道を切り開いていた。伊方の最高裁判決は次のように述べた。原発の設置許可の判断に不合理な点があるという主張や立証の責任は「本来、原告(住民)が負うべき」だが、原発の安全審査に関する資料をすべて国側が持っている点などを考えると、国側に「判断に不合理な点のないことを相当の根拠、資料に基づき主張、立証する責任があり」、それを尽くさなければ「判断に不合理な点があることが事実上推認される」。関西電力高浜原発3、4号機(福井県)をめぐり滋賀県の住民が大津地裁に再稼働の差し止めの仮処分を求めた裁判で、地裁が今年3月に出した運転停止の決定も、この最高裁判決を引用した。被告が電力会社の場合も原発の安全を立証する責任は電力会社側にあり、関電がそれを尽くしていないなどとして、住民の申し立てを認めた。伊方3号機は12日、予定通りに再稼働した。反対する住民は広島、松山、大分の3地裁にそれぞれ運転停止の仮処分を申請。いま、司法の力での運転停止を目指す。
     ◇
 伊方原発は愛媛の西に針のように突き出た佐田岬半島のつけ根にある。事故の際、避難の「命綱」となる幹線道は、半島を貫く国道197号と、そこから分かれて瀬戸内海沿いを通る378号だけである。原発を離れて378号を東に向かうと、ほどなく私が生まれた集落に着く。人口450余。避難路はこの国道1本だ。道は片側が海、反対側は崖。かつては幅が狭く、ガードレールもまばらで「酷道(こくどう)」と呼ばれた。集落の2キロほど東には60年前に路線バスが海に転落し、9人が亡くなったことを伝える「慰霊碑」も立つ。集落で知人を見かけた。「事故があったらどう逃げる」と尋ねたら、「みんな、あきらめとる」。現実かもしれないが、それでは困るので、言った。「なんか声をあげんといかん」。道は、その先に開かれる。


PS(2016年8月19日追加):*9-1のように、鹿児島県の三反園知事は九電川内原発周辺を視察し、「道路・避難訓練など、事故時の避難計画を含めて見直す必要がある」と述べている。これにより、道路整備のために原発が必要だということにならないことを望みたい。一方、電力供給については、*9-2のように、北九州市や地場企業が出資する地域エネルギー会社「北九州パワー」が、供給可能なすべての市施設への電力供給を達成し、供給先を民間企業にも拡大する方針を決めた。また、*9-3のように、九電管内の揚水発電所は太陽光発電接続量が約600万キロワット(原発6基分)に達し、日中に水をくみ上げる日が増加して揚水発電所が太陽光発電の余剰電力を調整する「蓄電池」の役割を果たしているそうだ。さらに、北九州市は、*9-4のように、響灘沖の洋上風力発電に向けて事業者の公募を開始しており、*9-5のように、地中熱の利用で省エネ・創エネもできるため、強烈な公害を伴う原発は、既に過去のエネルギーとなっている。 

   
    *9-1より         *9-3より      2016.8.18      北九州市響灘 
                                  東京新聞        風力発電ゾーン 

*9-1:http://qbiz.jp/article/92651/1/ (西日本新聞 2016年8月19日) 九州の原発:事故時の「避難計画を見直す」 鹿児島知事が明言、川内原発周辺視察で
 鹿児島県の三反園訓知事は19日、九州電力川内原発(薩摩川内市)周辺を視察した。前知事時代に作成された原発事故時の避難計画が適切かどうかを判断するため、避難道路の状況を確認。住民からも意見を聞き「道路や避難訓練の問題など、早急に対応が必要なことが分かった。避難計画を含めて見直す必要がある」と述べた。記者団の質問に答えた。今回の視察は、7月の知事選で川内原発の一時停止を公約として掲げて当選した三反園知事にとっては、実現に向けた初めての具体的な行動。三反園知事はこの日、薩摩川内市や原発30キロ圏内のいちき串木野市を視察した。

*9-2:http://qbiz.jp/article/92556/1/
(西日本新聞 2016年8月18日) 「北九州パワー」が中小企業に売電 来年1月から
 北九州市は17日、市や地場企業が出資する地域エネルギー会社「北九州パワー」(戸畑区)が2017年1月から市内の事務系中小企業への売電を始めることを市議会環境建設委員会に報告した。18年1月をめどに工場系の中小企業にも売電を始める。企業側は電気料金の削減が期待できるという。同社は4月から市内2カ所のごみ焼却施設で発電する電力を買い取り、市施設の約3割に当たる122施設に他の事業者より安く売電。残りは売っても採算割れする施設などで、同社は「供給可能なすべての市施設への電力供給を達成した」と判断し、1日の取締役会で供給先を民間企業に拡大する方針を決めた。同社は昨年12月に設立。4〜6月の売上高は約1億9600万円で営業利益は約1600万円。購入した122施設では3カ月間で計1111万円の電気料金削減効果があったという。

*9-3:http://qbiz.jp/article/92610/1/
(西日本新聞 2016年8月19日) 電力新時代:揚水発電所「昼夜逆転」 余剰太陽光の受け皿に
 九州電力管内で、くみ上げた水を使って発電する「揚水発電所」の役割が変化している。従来は夜間に原子力や火力などの電力を使って貯水し、需要が増える時間帯に発電していたが、近年は日中に水をくみ上げる日数が増加。太陽光設備の余剰発電量を調整する「蓄電池」の役割を果たしている。揚水発電所は、電気を使って低所ダムの水を高所ダムに移し、必要に応じて水車を回して発電する仕組み。九電は天山(佐賀県唐津市、出力60万キロワット)、大平(熊本県八代市、出力50万キロワット)、小丸川(宮崎県木城町、出力120万キロワット)の3発電所を持つ。離島を除く九州の太陽光発電の接続量は、国の再生可能エネルギー固定価格買い取り制度が始まった2012年以降に急増。今年6月末現在の接続量は615万キロワットで、11年度末の約8・3倍に増えた。このため、春や秋の需要が少ない時期には、日中の発電量が想定を上回る状況が発生。供給過多だと停電の恐れもあることから、九電は需給調整のため揚水発電所を活用している。水をくみ上げた延べ日数の合計を昼夜別にみると、11年度以降、昼間の稼働は年々増加。15年度には昼夜が逆転した。九電によると、昼間のくみ上げ日数は、15年度の3倍程度まで増やせる余地がある。現在も増加を続ける太陽光発電の受け皿として、重要性がさらに高まりそうだ。

*9-4:http://qbiz.jp/article/92596/1/ (西日本新聞 2016年8月19日) 北九州市、事業者の公募開始 響灘沖の洋上風力発電
 北九州市若松区沖での洋上風力産業集積を目指す北九州市は19日から、響灘の港湾区域2700ヘクタールに発電施設を設置・運営する事業者の公募を始める。市は投資金額1千億〜1500億円、関連産業を合わせて将来的に千人超の雇用を見込む。公募は10月18日まで。外部の有識者からなる「評価・選定委員会」の意見を参考に市が事業者を選び、来年1月ごろに結果を公表する。事業者は環境アセスメントを経て2021年度以降に発電を始める予定。評価項目には、風力発電産業の総合拠点化に向けた産業集積、拠点形成に役立つ具体的提案も含まれている。市港湾空港局は「洋上風力の風車には2万点程度の部品が必要とされ、裾野が広い産業。単に発電所を設置するだけでなく、北九州市をけん引する新たな産業集積を図りたい」としている。

*9-5:http://www.saga-s.co.jp/column/economy/22901/346157
(佐賀新聞 2016年8月19日) 「地中熱の利用促進を」九州研究会、最新事例など発表
 再生可能エネルギーとして注目されている地中熱を研究している「九州地中熱利用促進研究会」(野田豊秋会長、8社)の結成1年を記念した講演会が佐賀市であり、地中熱を導入したモデルルームの事例などが報告された。地中熱は浅い地盤にある低温の熱エネルギーで、地上の外気温と地中の温度差を利用して冷暖房に役立てる。地盤改良機製造のワイビーエム(唐津市)は、地中熱の利用により夏期の電力消費を50%以上削減できたという。講演会では、研究会が建設した小城市のモデルルームでの実験結果を報告。太陽光発電と地中熱を利用することで、外気がマイナス3度でも20度以上の室温を実現した事例が示された。同社の大久保博晃主査は「海外からの視察もあり、地中熱が次世代のエネルギーの主役になる可能性がある」と力を込めた。講演会には約50人が参加。佐賀大の宮良明男教授が地中熱利用技術の最新研究を発表した。


PS(2016年8月20日追加):東電福島第一原発事故による避難区域のうち、放射線量が年間50ミリシーベルト超の帰還困難区域を、どうすれば年間1ミリシーベルト以下の居住可能区域にできるのか不明であり、際限なく国家予算をつぎ込めば年間1ミリシーベルト以下の居住可能区域になるわけでもない。そのような中、最終的には数兆円にもなる可能性のある除染を国費で負担しつつ、原発のコストは安いと強弁し、社会保障は消費税率を上げなければ財源がないなどとして、特定の省庁のメンツや趣味のために国民の生命・財産・生活をないがしろにするのは程がある。

*10:http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201608/CK2016082002000130.html (東京新聞 2016年8月20日) 帰還困難区域の除染に国費 事実上の東電救済策
 東京電力福島第一原発事故に伴う避難区域のうち、最も放射線量が高く、立ち入りが制限されている福島県の「帰還困難区域」の除染について、政府が国費を投入する方針を固めたことが政府関係者への取材で分かった。帰還困難区域では本格的な除染作業は行われておらず、方針が決まるのは初めて。政府は区域内に、五年後をめどに避難指示の解除を目指す「復興拠点」を設ける方針で、この拠点や関連するインフラの整備を公共事業として行うことで、通常の除染作業と同様、線量を下げる。洗浄や表土はぎ取りといった従来の除染は、東電が費用を負担する仕組み。国費の投入は「国が前面に出る姿勢のアピール」(政府関係者)で、帰還困難区域の除染がスムーズに進むとの期待がある一方、東電の事実上の救済に当たるため、反発も出そうだ。政府関係者によると、復興拠点の整備事業として、対象地域内の建物の解体・撤去や土壌の入れ替え、道路の基礎整備・舗装などを実施することで、除染と同様に大幅な線量低下が見込めるという。インフラ整備と一体化して行うことにより、除染が迅速化すると同時に、東電の負担軽減につながる。こうした除染費用の方針について、政府は近く与党の提言を受け、今月末にも正式決定する。拠点外の除染については、整備の進展に応じて今後、検討する。一方、既存の利用可能な設備やインフラなどの除染費用は、政府が従来通り、東電に請求する。政府は二〇一三年、東電が負担する除染費用を二・五兆円と試算したが、範囲の拡大や経費の高騰などで大幅に超過する見込みで、本年度当初予算までに二・九兆円が計上されている。帰還困難区域を含めると最終的には数兆円程度に増える可能性もあり、このうち、国費で負担する復興拠点の除染費用は見通しが立っていない。
<帰還困難区域> 東京電力福島第一原発事故による避難区域のうち、放射線量が年間50ミリシーベルトを超え、原則立ち入り制限がされている区域。第一原発のある大熊町、双葉町をはじめ、浪江町、富岡町、飯舘村、葛尾村、南相馬市のそれぞれ一部が対象で、事故前の区域内人口は約2万4000人、面積は約337平方キロ。


PS(2016年8月21日追加):送電網がなくても電気を使えるのが太陽光発電などによる自家発電だ。パナソニックは、*11-1のように、「①ブランドイメージは最初に手にする商品で創られる」「②日本製は機能や品質は高いが価格も高いと言われてきた」としているが、最近の日本製は、他国製と比較して機能差より価格差が大きすぎ、これがブランドイメージになっている。ではどうすればよいかと言えば、生産を現地化してインドでよく教育された優秀な技術者やインド商人として有名なインド人営業マンを使って、市場のニーズに合う製品を作って販売することだ。これは、グローバリズムの中のローカリズムと言われ、現地に雇用を生み出して購入資金を提供するとともに、会社としてのパナソニックのファンを増やし、市場がインド人の視野の内にあるユーラシア大陸に広がるという効果を持たらす。これは、左ハンドルの大型アメ車を輸入して日本で売ろうとしても売れないのと同じグローバル化の原則だ。
 さらに、アフリカもインドと同様に太陽光発電の適地である上、これから生産適地にもなるため、現地で生産・販売することを視野にビジネスを行った方が、地域を豊かにして販売も進むと考えられる。
 このような中、*11-2のように、経済同友会副代表幹事「原発の運転延長をしないと原子力比率20%は達成しえない」と述べたり、*11-3のように、内閣府原子力委員会が原子力白書を復活して原発回帰したりしていれば、せっかく日本で発明された太陽光発電の普及や生産が妨害され、10年後にはインドよりも、15年後にはアフリカよりも遅れて、またバスに乗り遅れまいと必死で追い駆け、(逆転できたとしても)逆転できたことを喜ばなければならない立場になっているだろう。何故なら、生産技術は販売され生産する場所で改良され定着するものだからだ。 

*11-1:http://digital.asahi.com/articles/ASJ8D64VXJ8DULZU00F.html?ref=nmail
(朝日新聞 2016年8月21日) 日本品質を途上国価格で 「エネルギーのはしご」見据え
 南アジアやアフリカの送電網がほとんど整備されていない地域で、電気のある暮らしが急速に広がっている。かぎを握るのは、太陽光パネルを使った簡素な機器と、低所得者層の実情にあった販売手法の組み合わせだ。貧困問題の解決はビジネスチャンスにもつながる。日本企業も本腰を入れ始めた。レンガ造りの家の中で、子どもたちが本を読んでいた。インド・ニューデリーの東約200キロにあるゴート村。明かりは、小さな太陽光パネルとリチウムイオン電池、LED照明を組み合わせたソーラーランタンだ。「ケロシン(灯油)の明かりは、暗くて煙で目が痛かった。これで夜も勉強できるようになった」。大学生のポージャ・チャンドラさん(18)と中学生のアカシュ君(12)のきょうだいは口をそろえた。家の外では母親のマヤさん(45)がもう1台で夕食の準備をしていた。送電線はあるが、電気がつくのは日に2~3時間。昨年末に2台買ってから、市場で野菜などを売って暮らす一家の生活は明らかに上向いた。夜も商売ができるようになり、収入が2割増えたという。約900世帯の集落では、ランタンの明かりの下で店を開いたり、工芸品を加工したりする人たちも目につく。この村で一番売れているのはパナソニック製だ。機能を絞って、価格を1500~2500円に抑えた。インド全体ではこれまでに約5万台売れた。ソーラーランタンはインドで年間約300万台が売れている。大半は欧米のベンチャー企業製。日本製はこれまで「機能や品質は高いが価格も高い」と敬遠され、もっぱら社会貢献として寄贈されてきた。そこにあえて参入したのが、パナソニック・インド事業開発センターの柿本敦さん(39)たちだ。電気が使えると、教育や健康も改善され、貧困から抜け出す足がかりになる。自然エネルギーの電気なら地球温暖化防止にも役立つ。安くて信頼できるエネルギーへのアクセスは、国連が2030年までに解決をめざす「持続可能な開発目標(SDGs)」の重要なテーマでもある。寄贈や援助でなく、ビジネスを通じて社会課題を解決するのが世界の流れだ。パナソニックは14年11月、価格をこれまでの半分以下に抑えた低所得者層向け製品を発売した。販売面では現地の社会的企業と連携し、「なぜ健康や家計にプラスなのか」という啓発や代金回収、アフターサービスの窓口などを委託した。もうけは薄い。ただ、インドの無電化人口は2億4千万人もいる。潜在的な市場は巨大だ。電気のない生活から、安定した電気が使える生活へと発展していく道筋は「エネルギーのはしご」と呼ばれる。ソーラーランタンは「はしご」の1段目にあたる。柿本さんは、その先を見据える。「ブランドイメージは、最初に手にする商品でつくられる」。パナソニックは家電のラインアップが豊富だ。無電化地域の人たちはこれから「はしご」を登り、家電を増やしていく。目先の利益は難しくても、将来的には大きな利益が見込めるはずだ。「うちも元は二股ソケットで大きくなった。大きな可能性があると思う」。電気のない生活をしている人は世界に約12億人、不安定な電気しか使えない人は約10億人いる。多くは年間3千ドル(約30万円)未満で暮らす低所得者層だ。この人たちが灯油やロウソクなどのエネルギーに使うお金は、年間約270億ドルにのぼる。送電網につなげないソーラーランタンなどの「オフグリッド(独立電源)」の市場は、まだ世界で7億ドルだが、20年には31億ドルに拡大し、約1億世帯に普及するとみられている。
■南アジアだけでなくアフリカでも
 世界には、インドを含む南アジアのほかにもう一つ、広大な無電化地域がある。アフリカだ。人口約1億人とアフリカで2番目に多いエチオピアでは、日本の中小企業連合がエネルギービジネスに挑む。「東京電力の顧客の2倍にあたる1億人に電気を届けましょう」。8月上旬、東京・新宿のスナックに中小企業の社長ら10人が集まって気勢をあげた。町工場の技術を結集した「ソーラー・ホーム・システム(SHS)」が完成したのだ。SHSは「はしご」の2段目にあたる機器。ランタンよりひと回り大きい10~100ワット程度の太陽光パネルを屋根に置いて蓄電池にためる。複数の照明やテレビ、扇風機などを動かせる。きっかけは、LEDや蓄電池製品を製造・販売するアイガジェット(東京都千代田区)の川口辰彦社長(62)が、途上国の低炭素化事業を企画する会社を経営する松尾直樹さん(55)と出会ったことだ。2年前、松尾さんが国内の大企業と開発していたSHSの試作品をたまたま見かけ、川口さんはダメ出しをした。松尾さんが「あなたはできるの」と聞くと、「できますよ」と答えた。製品化を考えたことはなかったが、勝算はあった。太陽光パネルや蓄電池を世界各地から安く調達できる人脈と、核となる制御装置に日本の高い技術を投入できる人脈を両方持っていたからだ。松尾さんとエチオピアを訪ね、社会的な意義も実感した。1年後にできた試作品は、大企業のものよりはるかに能力が高かった。コストもぎりぎりまで抑え、1万円程度で量産できる見込みだ。6~12カ月のローンなら現地の人にも手が届く。年内に1千台のテスト販売を予定している。川口さんを突き動かしたのは「技術ではどこにも負けない」という中小企業の意地と、「短期的な利益は薄くても将来性は十分ある」という確信だ。「日本品質の製品を途上国価格で提供することは十分可能。日本の生きる道はここだと示したい」と川口さん。アフリカの無電化人口は6億3千万人で世界の半分以上を占める。27、28日にケニア・ナイロビで開かれる第6回アフリカ開発会議(TICAD)でもエネルギーアクセスの向上が議論される。
■コストダウンとマイクロクレジットの広がり
 太陽光パネルと蓄電池を組み合わせて電気を自前でまかなう動きは、送電網が整備された先進国にもある。だが、いま世界で先頭を走っているのは途上国の人たちだ。いくつかの無電化地域を歩いて、その勢いを感じた。後押ししているのは、最近6年間で80%も下がった太陽光パネルの急激なコストダウンと、貧困層への無担保少額融資(マイクロクレジット)の広がりだ。実は、SHSが世界で最も普及している国はバングラデシュだ。グラミン銀行の創設者でノーベル平和賞を受賞したムハマド・ユヌス氏は、マイクロクレジットの手法で、1996年から販売に取り組んだ。初めは月に2、3セットだったが、いまでは1日に1千セット。通算で160万セットも売れた。他社分も合わせ400万世帯に普及した。SHSは1万~5万円。3年ローンを組めば、毎月の返済は明かりの灯油代とほぼ同じになる。マイクロクレジットは、インドやアフリカでも広がる。最近は各国で携帯電話による決済も可能になっている。お金と時間をかけて発電所や送電網を整備する前に、電気のある暮らしが広がる。電話回線を引く前に携帯電話が普及したのと同じ「カエル跳び」現象だ。自然エネルギーの技術と新しいビジネスモデルが融合し、世界のエネルギーの構図を変えつつある。

*11-2:http://jp.reuters.com/article/asada-nuclear-plant-idJPKCN10213Z?feedType=RSS&feedName=topNews&utm_source=twitterfeed&utm_medium=twitter (ロイター 2016年7月 22日) インタビュー:電源構成、原発比率10%達成も危うい=同友会副代表幹事
 7月22日、経済同友会の朝田照男副代表幹事(丸紅会長)はロイターとのインタビューで、政府が2030年度の望ましい電源構成(ベストミックス)で20─22%と想定している原子力発電の比率について、現状を踏まえると10%の達成も危ういと指摘した。写真は川内原発、2015年8月撮影(2016年 ロイター/Issei Kato)[東京 22日 ロイター] - 経済同友会の朝田照男副代表幹事(丸紅(8002.T)会長)はロイターとのインタビューで、政府が2030年度の望ましい電源構成(ベストミックス)で20─22%と想定している原子力発電の比率について、現状を踏まえると10%の達成も危ういと指摘した。太陽光などの再生可能エネルギー拡大に向けた民間投資を促すよう、政府の積極的な支援を求めた。同友会は6月28日に「ゼロ・エミッション社会」実現への提言を発表。その中で、原子力について、「40年廃炉ルール」を厳格に適用した場合、原発全基が再稼動しても政府目標の達成は難しく、「その発電割合は15%程度になる」との見通しを示している。朝田氏は昨年、同友会の環境・資源エネルギー委員会委員長として同提言のとりまとめにあたった。インタビューの中で、朝田氏は福井県にある関西電力の高浜原子力発電所の1号機と2号機が40年超の運転を認められたことに触れ、「あのような運転延長を入れていかないと、原子力比率20%は達成しえない」と指摘。しかし、原子力規制委員会による新規制基準への適合可能性や司法判断による運転見合わせのリスクなどを考慮すると、「残念ながら、10%も行くかどうかという状況」と述べた。一方、再生エネルギー開発については、日本のエネルギー産業で最大の成長分野でありながら、促進するには「障害が多すぎる」と指摘。具体的には、地熱、水力、風力発電に長期の環境アセスメントが必要になるという実態のほか、最大の問題として送電線の不備を挙げた。朝田氏は、再生エネルギーを推進しなければ、「日本が世界の笑いものになってしまうという危機感を持っている」としたうえで、民間企業による投資への促進措置や送電線整備への政府や政府系ファンドからの資金支援を強く求めた。

*11-3:http://mainichi.jp/articles/20160725/k00/00m/040/102000c
(毎日新聞 2016年7月25日) 原子力白書、7年ぶり復活 「原発回帰」の伏線か
 内閣府原子力委員会(岡芳明委員長)は、東京電力福島第1原発事故以来、発表を中止していた「原子力白書」を来春に復活することを決めた。2010年以来、7年ぶりとなる。原子力委はかつては「原発推進の司令塔」と位置付けられており、「原発回帰」の伏線との臆測を呼びそうだ。白書は、11年春に10年版が発表される予定だったが、福島事故を受けて急きょ中止され、09年版以降、発表がストップしていた。今年度になって「編集作業に必要な人員を確保できた」(内閣府幹部)として復活を決めた。来春発表される16年版は、事故後の原子力政策の動きや、今後の展望を紹介する内容になりそうだ。原子力委は、国の原子力政策を推進するために56年設置された。78年には旧原子力安全委員会と分離され、福島事故後も業務や体制を縮小されたが、自民党内には「『原発推進のとりで』として復権させるべきだ」といった意見が根強くある。

<アフリカについて>
    
 世界の開発段階別    アフリカ諸国の  アフリカ諸国の      世界人口の推移  
一人当たりGDP成長率  現在の産出物  人口ピラミッド  (飢餓や戦争の原因になる人口爆発も
                                         教育で抑制することができる)

PS(2016年8月28日追加):*12-1のように、①安倍首相は、今後3年間で総額300億ドル(約3兆円)規模をアフリカに投資し ②インフラ整備に3年間で約100億ドル(約1兆円)を拠出する方針を表明し ③産業の基礎を支える人材や感染症専門家の育成はじめ約1000万人の人づくりに取り組み ④アジア・アフリカをつなぐ二つの大洋(太平洋、インド洋)を平和なルールの支配する海にし ⑤民主主義、法の支配、市場経済のもとでのアフリカの成長に貢献する考えをTICAD6で示された。このうち②は、決して原発や電柱を建てるのではなく、自然エネルギーによる分散発電を行い、上下水道・ガス管・電線を同時に埋設し、発電できるゴミ処理施設を建設したりするのが最も安上がりで迅速だと考える。その時は、日本の自治体は既にノウハウを持っているので、JICAと組んで熟練した人をアフリカ各地に派遣し、自治体事務を効率化すると同時に定年延長や若い世代の研修を果たせると考える。また、③については、米国は、米国が奨学金を出してアフリカのリーダーとなる人を米国の大学で勉強させるシステムを持っており、これは日本でアジア・アフリカ系の留学生がアパートや下宿探しでさえ苦労させられたのとは対照的で展望の大きさに違いを感じる。そして、それらのインフラ(人材も含む)ができれば廻り出すため、積極的に男女の留学生を受け入れて教育するべきだ。
 なお、*12-2のように、サウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマン副皇太子(石油依存からの脱却を目指す経済改革を主導)が日本を訪問し、日中両国に民間投資の拡大を促し、改革「ビジョン2030」への協力を強く求められるそうで、今後は資源の産出国も加工する時代になるため、日本がコストをかけて遠くから原油を運んできて加工し、輸出するというスキームは成り立たなくなることを忘れてはならない。 

*12-1:http://mainichi.jp/articles/20160827/dde/001/010/054000c
(毎日新聞 2016年8月27日) アフリカに3兆円投資 安倍首相、午後表明 官民・3年で
 安倍晋三首相は27日午前(日本時間27日午後)、ケニアの首都ナイロビで開幕する第6回アフリカ開発会議(TICAD6)で基調演説し、今後3年間で民間資金を含めて総額300億ドル(約3兆円)規模でアフリカに投資する方針を表明する。産業の基礎を支える人材や感染症専門家の育成をはじめ約1000万人の人づくりに取り組む考えも打ち出す。首相はアフリカで初めて開催するTICAD6を「日本とアフリカ諸国の関係の新たな幕開け」と位置付け、資源価格の低迷やエボラ出血熱、平和と安定などアフリカが直面する課題をともに解決していく姿勢を強調する。2013年のTICADで、日本は5年間で約3兆2000億円の支援を表明した。今回の300億ドルについて首相は演説で「3年前のプランを充実、発展させる日本の新たな約束」と説明する。インフラ整備には3年間で約100億ドル(約1兆円)を拠出する。首相は、日本とアフリカの経済関係を強化するため「日アフリカ官民経済フォーラム」を常設することにも言及。フォーラムは、日本の閣僚や経済団体、企業のトップが3年に1回、アフリカを訪れ、投資環境改善などを協議する場になる。3年間の人づくりに関しては、将来の職長、工場長など現場指導者を1500人、感染症の専門家らを2万人育成するほか、基礎的保健サービスを受けられる人口を200万人増やす。一方、豊富な資金力でアフリカに進出する中国を念頭に、首相は「日本は太平洋とインド洋、アジアとアフリカの交わりを、力や威圧と無縁で、自由と法の支配、市場経済を重んじる場として育てる責任を担う」と述べ、民主主義、法の支配、市場経済のもとでのアフリカの成長に貢献する考えを示す。
●安倍晋三首相の基調演説 骨子
 ・アフリカの国連安全保障理事会常任理事国入りを支持
 ・日アフリカ官民経済フォーラムを設立
 ・感染症対策を強化
 ・今後3年間で約1000万人の人づくりを実施。官民で総額300億ドル規模を投資
 ・アジアとアフリカをつなぐ二つの大洋(太平洋、インド洋)を平和な、ルールの支配する海に

*12-2:http://www.saga-s.co.jp/news/national/10201/348056
(佐賀新聞 2016年8月23日) サウジ副皇太子が31日初訪日へ、安倍首相と会談
 サウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマン副皇太子(30)が、就任後初めて31日から日本を訪問し、安倍晋三首相らと会談することが23日分かった。複数の外交筋が明らかにした。ムハンマド副皇太子はサルマン国王の息子で、異例の若さで国防相と国家経済評議会議長を兼務。最高実力者の一人として、石油依存からの脱却を目指す経済改革を主導している。副皇太子は今回、日本と中国を歴訪。日中両国に民間投資の拡大を促す狙いがあり、副皇太子が進める改革「ビジョン2030」への協力を強く求める。日本側は、国家元首級として厚遇する。


PS(2016.8.29追加):*13のうち「世界的な1次産品の価格下落」は、6次産業化によって付加価値を上げれば解決するが、それには人材育成や衛生環境が不可欠だ。また、「地熱や水力発電などのエネルギーインフラや電子通信網の整備」は、九電みらいエナジーなど、アフリカの自然を壊さず活かしながら行える技術を持つ日本企業も多く、貢献できるだろう。

*13:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20160829&ng=DGKKASFS28H1Q_Y6A820C1PE8000 (日経新聞 2016.8.29) 「教育・雇用を支援」 アフリカ開発会議ナイロビ宣言
 第6回アフリカ開発会議(TICAD)は合意文書「ナイロビ宣言」で、アフリカの経済成長には、社会を安定させ、テロや紛争の抑制につながる若者への教育や雇用での支援が重要だとの方針を打ち出した。安倍晋三首相は全体会合で「日本企業の高い技術力はアフリカの課題解決に資する」と強調した。TICADは27~28日の2日間、日本とアフリカ諸国の首脳らが経済発展のあり方を話し合った。ナイロビ宣言はテロや紛争に加え「世界的な1次産品の価格下落」「エボラ出血熱の流行」をアフリカの新たな課題だと指摘。これに対応するため「質の高いインフラ整備」などを通じた経済の多角化・産業化や人材育成、保健システムの強化が必要だとした。ナイロビ宣言とともにまとめた各国・機関向けの実施計画は、港湾や空港、鉄道、幹線道路などの建設を加速する方針を明記。地熱や水力発電などエネルギーインフラや電子通信網をさらに開発するとした。経済特区の推進も盛り込まれており、政府は日本企業の受注増につなげたい考えだ。首相は28日の共同記者会見で「海で法の支配が尊重されることは、地域の平和と安定、繁栄の基礎になる」と指摘。「日本とアフリカが経済的な関係を深め、貿易を通じて繁栄していくには海が自由で開かれていなければならない。それを担保するのが法の支配だ」と強調した。中国が念頭にあるとみられる。


PS(2016.9.15追加):*14のように、経産省はフクイチの教訓から学ぶことなく、一定規模の原発を維持するために、まだ原発で創った電気が安い(?!)などとして電力自由化で参入した新電力に原発で創った電気を供給させ、同時に原発の廃炉費用の負担も新電力に求めるとしている。しかし、新電力の売りは、①原発や化石燃料で創った環境に悪い電力を使わないこと ②原発や化石燃料による発電をしないため料金を安くできること の2つであるため、この経産省の方針によれば、新電力は差別化できなくなって電力自由化は失敗する。このように、国が「ベースロード電源」などとして一定規模の原発を維持するという原発ありきの市場原理を無視した恣意的な政策をとると、よりよい製品(この場合は電気)を選択していく市場経済を失敗させるのであり、これがまさに共産主義経済の失敗の原因なのである。そのため、経産省のこの経済運営は、既に失敗が証明された共産主義の経済運営と同じであり、このようなことを続けていれば、日本はアフリカよりも遅れるだろう。

*14:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20160915&ng=DGKKASFS14H3F_U6A910C1PP8000 (日経新聞 2016.9.15) 原発の電気、公開市場に 経産省検討 大手に義務付け
 経済産業省は原子力発電でつくった電気を公開市場に供給するよう電力大手に義務づける検討に入った。4月の小売り自由化で参入した新電力が調達できるようにして、安い電気を家庭や企業に売りやすくする。一方、原発の廃炉費用などの負担を新電力に求める。一定規模の原発を維持するため、大手と新電力の利用者が受益と負担を分け合うしくみを整える。学識経験者らで構成する審議会を近く立ち上げ、来年の通常国会に電気事業法の改正案を出す。数年内の実施をめざす。原子力や石炭火力などコストが低く発電量が天候や時間帯に左右されない「ベースロード」と呼ばれる電気を日本卸電力取引所に供給することを義務づける。いま大手が取引所に出しているのは石油火力などコストの高い電気が中心で、割安な電気は自社の小売部門に優先的に流している。原発で作った安い電気が市場に出回れば、自前の発電所の少ない新電力が大手と価格競争しやすくなる。義務づける電気の供給量は今後詰める。一方、原発の廃炉費用などは新電力にも負担を求める。通常の原発を廃止するには数百億円のコストがかかり、これまでは原発を持つ大手が家庭や企業が支払う電気料金で回収してきた。今後は新電力も支払う送電線利用料に上乗せして回収する。家庭や企業は契約先が大手か新電力かにかかわらず原発のコストを負担することになる。反原発の消費者などからの反発も予想されるため、経産省は慎重に制度設計をする考えだ。


PS(2016年10月20日追加):九州の原発30キロ圏内21自治体を調査したところ、*15-1のように、屋内退避に課題があると答えたのが5割に上るそうだが、万が一にも原発事故が起これば、フクイチの例のとおり、短期間の屋内退避だけではすまず、その後、その地域を棄てるか、莫大な費用をかけて完全に除染するかしなければならない。しかし、現在では、そのようなリスクとコストをかけて原発で発電しなければならない理由はないため、早急に脱原発し、オーストラリアやニュージーランドのように、原発のない国として安全な農水産物を生産し、徹底して「安全な食品」というブランドを高めるべきである。
 なお、*15-2のように、原発政策を進めるには、原発建設費・地元補助金を除く関連処理費として、フクイチの事故処理・廃炉・最終処分場建設・核燃サイクルなど最低でもこれまでの処理に総額30兆円かかり、既に国民が14兆円負担しているそうだが、これらは発電時に原発のコストとして電力会社が引き当てていなければならなかったもので、本来、一般国民が負担する理由のないものである。

*15-1:http://qbiz.jp/article/96303/1/
(西日本新聞 2016年10月20日) 屋内退避に「課題」5割 九州の原発30キロ圏21自治体調査
 九州電力の玄海原発と川内原発の30キロ圏内にある佐賀、長崎、福岡、鹿児島の4県と17市町のうち、半数に当たる11県市町が、重大事故の発生時に5〜30キロ圏の住民に原則屋内退避を指示する現在の避難計画について、「課題がある」と考えていることが西日本新聞のアンケートで分かった。震度7が2度発生し、家屋倒壊で多くの犠牲者が出た熊本地震を背景に、複合災害への対応を不安視している実態が明らかになった。熊本地震後に避難計画の見直しを着手・検討しているのも12県市町に上った。5キロ圏の住民は屋外、5〜30キロ圏は屋内とする2段階避難について、「十分に対応できる」としたのは佐賀県玄海町のみ。11県市町が「対応できるが、課題もある」と回答し、理由として「パニックが予想され、指示に従わない住民が出る恐れがある」(鹿児島県さつま町)「老朽化している避難施設もある」(佐賀県伊万里市)などを挙げた。「対応できない」と答えた自治体はなかったが、4市町は「分からない」とし、この中で鹿児島県姶良市は「複合災害では避難経路の安全確保などさまざまな問題が発生し、予測できない」と答えた。残り5県市は「状況に応じて柔軟に対応する」「現時点では問題ない」などとした。熊本地震後、避難計画の見直しに着手したのは佐賀県唐津市と長崎県、鹿児島県。9県市町は「検討中」とした。見直しが必要な項目は「避難車両の確保」(9県市町)「避難道路の確保」(8市町)「要支援者のスムーズな避難」(7県市)が多く挙がった。熊本地震では道路が寸断されたが、交通混乱の想定については、複数の避難経路を確保するなどして「想定している」としたのが13県市町、「想定していない」は6市町だった。自治体間の避難連携に基づく広域避難は18県市町が「仕組みが整っている」とし、16県市町は訓練も実施していたが、鹿児島県さつま町と同県長島町は「実際に訓練したことはない」と答えた。「仕組みが整っていない」と回答したのは同県日置市のみで、長崎県と同県壱岐市は「整備中」とした。アンケートは原発事故発生時の避難計画の策定が義務づけられている21県市町を対象に9、10月に実施し、全自治体が回答した。

*15-2:http://www.tokyo-np.co.jp/article/economics/list/201610/CK2016102002000131.html (東京新聞 2016年10月20日) 原発処理に総額30兆円 既に国民負担14兆円 本紙調べ
 原発政策を進めるには原発建設費、地元補助金を除き、関連処理費用として東京電力福島第一原発の事故処理、廃炉、最終処分場建設、核燃サイクルに最低でも約三十兆円かかることが本紙の調べで分かった。十九日には、経済産業省が有識者会合の作業部会を開き、規制変更によって廃炉が決まった原発の廃炉費用を電気料金に上乗せする方針を固めた。高速増殖炉もんじゅの行き詰まりなど原発政策の矛盾が拡大する中、政府が国民負担を増やそうとする論議が本格化する。すでに国民は電気料金や税金で十四兆円を負担しており、今後、さらに十六兆円以上の負担を迫られる可能性がある。新潟県や鹿児島県知事選で原発慎重派の候補が当選するなど原発への厳しい民意が強まる中で、政府が国民負担を増やしながら原発を推進するかが問われそうだ。福島第一原発の処理に必要なお金は、二〇一三年時点の見積もりを超過。二・五兆円を見込んでいた除染費が来年度予算の概算要求では三・三兆円に、被災者への賠償金がすでに六・三兆円にのぼっている。廃炉費用の見込み額も二兆円となっており、総額で十二兆円以上かかりそう。東電は自力で払うのは困難とみて政府に支援を求めた。経産省が財界人らとつくった「東京電力改革・1F(福島第一原発)問題委員会」で検討しているが、東電の経営努力で賄えない分は、電気代などを通じ国民に負担を求める方針だ。東電を除く原発の廃炉費用問題では、福島第一原発の事故後、原発の規制基準が変わったため関西電力美浜原発1号機など六基が廃炉を決定。予定より早い廃炉決定などで計三百二十八億円の積み立て不足(一三年三月末時点)が生じている。経産省は原発による電力を販売していない新電力の契約者も含めすべての利用者の電気料金に上乗せし、回収する意向だ。他の原発も合わせると合計二・九兆円(福島第一などを除く)の廃炉費用が必要だ。また、使用済み核燃料をリサイクルする計画の柱だった高速増殖炉「もんじゅ」の廃炉方針に伴い、経産省は代わりの高速炉を開発する。政府はすでに核燃サイクルに十一兆円(最終処分場を除く)を費やし、電気代や税金で国民が負担している。もんじゅの後継が決まれば、さらに国民負担は膨らみそうだ。核のごみの最終処分場は場所が決まっていないが、政府試算では最低三・七兆円かかる。このうち積み立て済みは国民が支払った電気代をもとにした一兆円だけ。政府は年末にかけ候補地選定作業を急ぐ予定で具体化すればさらに国民負担が増える可能性がある。政府は福島第一原発の処理問題やもんじゅの後継問題でも、年末までに方針を決める意向だ。

| 原発::2015.11~ | 01:52 PM | comments (x) | trackback (x) |
2016.2.2 後始末のできないこれだけの事故を見ても、原発を推進したがるのは何故か? (2016/2/4、8、10、12、16、17に追加あり)
     
      2015.12.29       2016.1.1     2015.12.20     2015.12.21
      西日本新聞        西日本新聞      日経新聞        東京新聞

  
         2016.2.1             2016.2.1          日本の社会保障費  
         愛媛新聞              日経新聞         (スペード社会保障は必要経費で
                                             あるため、国庫負担分から 
                                             資源収入で賄うようにしよう)    
(1)国連気候変動枠組み条約第21回締約国会議(COP21)と世界の動向
 COP21は、*1-1のように、途上国を含む全世界が「今世紀後半までに排出と吸収を均衡させる」という目標を掲げる「パリ協定」を採択し、化石燃料に頼らない社会を目指すことを宣言した。これを、CO2の排出削減を痛みを分かち合う制度と捉えれば発展性はないが、より快適なエネルギーを使うための産業革命と捉えればエネルギー関連の投資を拡大して、コストダウンすることができる。

 そして、日本でも自然エネルギーが普及し、*1-2のように、四国電力伊方原発(愛媛県伊方町)が全基停止して記録的な寒波に見舞われても、電力供給力に占める需要の割合は90%に達した平日は昨年12月以降、3日間だけで、電力の安定供給に影響はなかったそうだ。そして、*1-3のように、四国電力は企業や家庭から買い取る太陽光発電の発電量が上限に達したため、電力供給が過剰となった場合には、買い取り制限するとしているくらいだ。

 それにもかかわらず、日経新聞は、*1-4のように、パリ協定を受けて長期戦略を描く時だとしながら、理由も書かずに突然、「①原子力は今後も維持していく必要がある」「②安全性の高い設備に更新するのが望ましい」「③原子力の信頼回復を急げ」「④中国電力の島根原発3号機など建設半ばで足踏みする原発も稼働への道筋をつけるべき」「⑤放射性廃棄物の最終処分について政府や電力会社は具体的な道筋を示す責任がある」と記載している。しかし、世界銀行は、すでに原発には融資しない方針を定め、世界は既に脱原発に舵をきっているのだ。

 *1-4の記事は、①②の結論が先にあって、③のように、「フクシマの事実を隠しても原子力の信頼回復を急げ」としていることが明らかだ。また、④は現在でも多くの証拠で否定されている上、今後は自然エネルギーのコストがどんどん下がると予想される。その上、⑤のように個別の企業が使った危険性の高い産業廃棄物を原発稼働から40年経った今でも原発の近くの使用済核燃料プールに大量に保管し続け、最終処分の目途すら立たずに政府に頼っている電力会社は、他の産業ではあり得ない怠惰な状況なのである。

(2)電力自由化について
 電力会社が他産業ではあり得ない怠惰な状況でもやってこられたのは、地域独占体制に守られていたからである。そのため、電力自由化で電力の供給に競争原理を導入すれば、*2-1のように、より便利で安く公害の出ない電力供給へと電力の需要側から圧力をかけることができる。電力自由化に対する反対意見もあったが、荷物を送る手段が鉄道のチッキしかなかった頃と比較すれば、宅急便の参入で荷物を送るのが簡単で便利になった結果、市場が拡大したり、これまでできなかったことができるようになって新市場ができたりしたのと同じ成果が現れる筈だ。

 そのため、*2-2のように、九州でも26社が電力小売りに参入する予定で、このうち地場が11社あるというのは、喜ばしいことである。電気エネルギーを地元で作れれば、エネルギー代金が外に奪われることなく地元で還流するため、財政が豊かになることは確実であり、これは、国の規模でも同じだ。

 また、*2-3のように、一般企業も、これまで自家発電を行ってきたため発電能力のある企業が多く、新しい事業者として有望である。そして、*2-4のように、九州では既に九電から特定規模電気事業者(新電力)に切り替えた九州内の企業や自治体が7628件あり、九電離れが原発1基分超あるそうだ。

(3)送配電システム
 *1-3のように、四国電力は「企業や家庭から買い取る太陽光発電の発電量が上限に達したため、今後は電力供給が過剰となれば金銭的な補償なく買い取りを制限する」としており、これは九州電力はじめ大手電力会社で同じである。

 しかし、これでは再生可能エネルギーの足を引っ張る。そのため、*3の電線地中化を行う際に、地方自治体が、上下水道と電力供給のインフラを一緒に設置すれば、①簡単に送配電設備を設置して公平中立な送配電を低価格で行うことができ ②地方自治体に送配電料という収入が入り ③安い電気料金を提案できる自治体は地場産業や新たな企業の誘致に有利となる。

(4)原発事故と後始末
 NHKは、2015年12月18日になって、*4-1のように、「東京電力は、フクシマ3号機からの放射性物質の放出は格納容器が機能を失い、直接外部に放出されたとした」と放送している。しかし、3号機爆発の真実は爆発直後から映像でわかっていた筈で、爆発直後の公表と現在の公表では住民の予防の徹底度が異なるため、病気の発症割合が異なる。そのため、住民の命を最も大切にはしない判断が行われたということだ。

 さらに、*4-2-1のように、フクシマ原発事故に伴って自治体が受けた損害に対する賠償は、事故から4年8カ月近くたっても、福島県内56市町村が請求した553億3900万円に対し、東電が支払ったのは11.4%にすぎないとのことである。

 また、*4-2-2のように、岡山大大学院の津田敏秀教授(生命環境学)が6日付の国際環境疫学会の医学専門誌「エピデミオロジー(疫学)」に論文を発表し、「福島県が福島原発事故当時に18歳以下だった県民を対象に実施している健康調査の結果を分析したところ、甲状腺癌の発生率が国内平均の20~50倍だった」「福島県では甲状腺がんの過剰発生がすでに検出されており、多発は避けがたい」として、今後、患者数が爆発的に増える可能性を示唆したそうだ。このように、次第に出てくる結果を見れば、フクシマの爆発状況は推定されるのである。

 また、*4-2-3のように、福島県は、フクシマ原発事故当時18歳以下だった約38万人を対象に実施している甲状腺検査で、2915年7月から9月末までの3カ月間に新たに11人が癌と診断されたと発表したが、甲状腺癌のリスクは、当時18歳以下だった人のみにあるのではなく、県境でリスクが変わるわけでもないため、この検査範囲では不十分だ。さらに、フクシマ原発事故による病気のリスクは、甲状腺癌だけでなく、いろいろと弁解は多いものの、*4-2-4のような白血病や心臓病もあるのである。

 さらに、*4-3-1、*4-3-2のように、「Nature(ネイチャー)」などが日本政府の福島第一原発への対応を批判しており、①漏れた汚染水の放射線量が最初に報道されていた状況よりも18倍も高かったこと ②報道が遅れたこと ③監視体制の甘さなどを挙げている。また、汚染水が海洋生物にどのように影響があるかを調べる専門家もおり、日本が他国から多くの専門家を呼び込むべきだとしている。

 なお、*4-4のように、南相馬市除染推進委員会の委員長を務める児玉東大教授(医師)は、2013年の同市産米から国の基準(1キロ当たり100ベクレル)を超える放射性物質が検出された問題で、現地の水源や水田の調査をせず、科学的検討も行わずに「福島第1原発のがれき処理が原因でない」と因果関係を否定した原子力規制委員会の田中俊一委員長の発言を強く批判した。私は、児玉教授の見解がもっともだと考える。

 さらに、多くの日本人は、「風評被害」と信じ込まされているが、*4-5のように、EUは2016年1月9日から食品の輸入規制を一部緩和したのである。そして、これは、低線量の外部被曝を受け続けたり、呼吸による内部被曝を受けたりしておらず、他の食品は全く汚染されていない、人体にとっては日本よりずっと好条件の国の話なのだ。

(5)原発のコスト
 従って、*5-1のように、原子力発電は高くつくため、原発ゼロに向かって再考すべきであることは、フクシマ原発事故以来、誰の目にも明らかになった。さらに、汚染水一つ後始末できず、病人を増やし、国土を狭め、農林漁業も不能になることが明白になった。そして、*5-3のように、原発事故後5年たっても故郷に戻れぬ原発避難者は、2015年末で6900件が移住を余儀なくされている。そのため、持続可能で豊かな社会に向けて、そろばんを弾き直すことに、私も賛成である。

 そのような中、*5-2のように、経団連会長は、「原発停止は国の損失」「全国で停止中の原発を再稼働させるべき」などとしているが、第一線の経済人が、このようなそろばんのはじき方をしているようでは、日本経済や日本企業が本質的に回復することなどあり得ない。そのため、いつまでも、カンフル剤にしかならない財政支出をして国民に迷惑をかけ続けるしかないだろう。

<COP21と世界の動向>
*1-1:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12116852.html  (朝日新聞 2015年12月15日) <視点>実質排出ゼロ社会、新技術が導く 温暖化対策、パリ協定採択
 国連気候変動枠組み条約第21回締約国会議(COP21)は12日夜(日本時間13日未明)、2020年以降の地球温暖化対策の国際枠組みを定めた「パリ協定」を採択した。先進国だけに温室効果ガスの削減を義務づけた京都議定書に代わり、途上国を含むすべての国が削減に加わる。開幕には約150カ国・地域の首脳が集まったこの会議で「今世紀後半までに排出と吸収を均衡させる」という目標も掲げた。排出を実質ゼロにすることであり、石炭や石油など化石燃料に頼らない社会を目指すことを宣言したに等しい。1997年のCOP3で採択された京都議定書は、世界が科学の声を聞き入れ、温暖化を招いた先進国が率先し、欲望を抑える「痛みを分かち合う」制度と受け止められていた。経済活動で増える排出量を抑えるのが、政府の役割と考えられていた。今回のパリ協定は、違う文脈でとらえられている。米ホワイトハウスは、ただちに「合意は、ここ数年のエネルギー関連の投資を相当拡大することになるだろう」との声明を発表。欧米の経済界からは歓迎のツイートが相次いだ。風力発電は18年前の50倍に、太陽光発電は原発の設備容量の半分までに成長した。爆発的な普及に伴ってコストは急激に下がり、途上国でも火力発電を下回るようになってきた。低炭素経済への移行は、温暖化対策に後ろ向きとみられた新興国でも進む。中国は世界一の自然エネルギー大国であり、インドも22年までに風力を6千万キロワット、太陽光を1億キロワットにする計画を掲げる。多くの国で経済成長と二酸化炭素(CO2)排出は連動しなくなり始めた。昨年、世界経済は3%成長したのに、CO2排出量は横ばいだった。今年の排出量は下がると見られている。196カ国・地域の意思が詰まったパリ協定は、こうした経済の動きを伸ばそうとしている。削減目標の達成までは義務化されていないので、実効性に疑問を持つ声もある。ただ、目標の作成と報告は義務づけられ、世界が見ているなかで5年ごとに点検する。さぼることは難しいだろう。世界初の量産ハイブリッド車「プリウス」はCOP3に合わせて発売された。パリ協定が生まれた今日、より多くの低炭素技術が生まれている。日本は50年に80%削減の目標を持ちながら、実現への政策手段を持ち合わせていないままだ。日本がまずやるべきは、いまある削減技術への投資と普及、次に新たな技術の開発と新しいライフスタイルの確立だ。

*1-2:http://www.ehime-np.co.jp/news/local/20160131/news20160131227.html
(愛媛新聞 2016年1月31日) 伊方原発全停止、4回目の冬 安定供給に影響なし
 四国電力伊方原発(愛媛県伊方町)が全3基停止した状態で迎えた4回目の冬。県内は1月、記録的な寒波に見舞われたが、電力需給に関しては供給力に占める需要の割合を示す使用率が90%に達した平日は昨年12月以降、3日間だけ。おおむね80%台で推移し安定供給に影響は出ていない。使用率が90%と「やや厳しい需給状況」になったのは松山で最高気温が10度を下回り7.2度だった1月13日に加え、県内で大雪を伴う氷点下の地点が続いた25、26日の3日間。最大需要の記録は松山で最高気温が3.3度までしか上がらなかった1月19日の481万キロワットだった。一方、昨年12月の使用率は78~88%で推移。四電によると、四国4県の県庁所在地の平均気温は平年比プラス2.0度、前年比プラス3.6度と暖かく、需要減につながった。四電によると例年、冬季の最大需要が発生するのは2月が多い。一般的に、寒い日が連続すると需給状況が厳しくなる傾向があるといい、安定供給へ「気は抜けない」としている。

*1-3:http://www3.nhk.or.jp/lnews/takamatsu/8035461111.html
(NHK 2016.2.1) 四電、太陽光が制限枠に到達
 四国電力は企業や家庭から買い取る太陽光発電の発電量が上限に達したと発表しました。
今後も買い取りの契約は受け付けますが、電力の供給が過剰となった場合、金銭的な補償なく買い取りを制限することになります。再生可能エネルギーで発電した電力を電力会社が買い取るよう義務づけた国の制度では、太陽光発電を中心に申し込みが急増したため、去年、電力会社が買い取る発電量に制限が設けられました。四国電力の発表によりますと、発電事業者や家庭などからの買い取り量は、すでに契約済みの分と申し込みが来ている分の合計が、先月22日に、上限の257万キロワットに達したということです。四国電力は今後も買い取り契約の申し込みは受け付けるものの、上限を超えた分については、発電量が電力の需要を上回るなど供給が過剰になる場合、買い取りを制限することなります。また、買い取りを制限した場合も電力会社側からの金銭的な補償はないということです。太陽光発電の受け入れが上限に達したのは、大手電力会社の中では北海道電力などに続いて4社目です。四国電力では、「無制限に買い取り続けた場合、逆に安定供給に支障が起きることもある。ぜひご理解いただきたい」と話しています。

*1-4:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20160201&ng=DGKKZO96762260R00C16A2PE8000 (日経新聞 2016.2.1) パリ協定受け長期戦略を描くとき
 21世紀後半までを見通す息の長い日本のエネルギー戦略について国をあげて議論を始めるときだ。昨年12月に開いた国連の会議で地球温暖化の抑止を目指す「パリ協定」が採択された。国民世論を二分する原子力発電の扱いをはじめ難しい問題はあるが、政府は腰を据え長期の戦略づくりに取り組む覚悟を固めてもらいたい。
●見え始めた低炭素社会
 パリ協定は人間の活動による二酸化炭素(CO2)排出を今世紀後半にゼロにするよう世界各国に求めている。化石燃料の消費を世界全体で大きく減らし、「低炭素社会」へと向かう潮流がはっきり見えてきた。日本はCO2の排出量を2030年時点で13年に比べ26%減らす目標を掲げているが、その先は明確でない。パリ協定を誠実に履行するには、30年以降の長期のエネルギー政策の方向性をはっきりさせ、日本社会や産業をどこまで「低炭素化」できるか具体策を考える必要がある。発電所や送電線などエネルギー関連の設備投資や技術開発には時間がかかる。30年は遠い未来ではない。今から手立てを尽くしておかねばならない。まず目指すべきは、エネルギーを効率よく使う社会の実現だ。現在の原油の安値は消費者にはとりあえず恩恵といえるが、省エネには逆風となる。ここで省エネの手綱を緩めるのは望ましくない。燃料価格が再び高騰することもあるだろう。化石燃料の価格がどうあれ、工場や住宅の省エネ努力や、バイオや水素など化石燃料に代わる新エネルギーの普及の足取りを滞らせてはいけない。省エネは化石燃料の輸入を減らし、エネルギー安全保障の観点からも意義が大きい。化石燃料の消費を継続的に減らすには、CO2排出をコストとして経済活動に取り込む仕組みも有効だ。例えば化石燃料の消費に課税する炭素税がある。既存の地球温暖化対策税は炭素税の体裁をとっているものの、消費抑制の効果が薄い。補助金の財源になっているだけだ。見直してはどうか。再生可能エネルギーは果たす役割が大きくなる。再生エネの電気を電力会社が買い取る制度によって太陽光発電などの導入が進んでいる。問題は設置が容易な太陽光が先行し、風力や地熱発電の拡大が遅れバランスを欠く点だ。買い取り制度を維持するため消費者が電気料金の一部として払う賦課金の額も膨らむ。制度は見直しを迫られている。ただし太陽光の発電コストは着実に下がり、賦課金の負担もやがては減る。風力や地熱も立地を妨げる規制を緩和し、普及を後押ししてもらいたい。電力会社間の連系線を柔軟に運用して電力を融通し合えば、再生エネを受け入れる余地は広がる。再生エネを電力供給を支える基幹電源の一つに育てていくべきだ。原子力は今後も維持していく必要がある。東京電力福島第1原発の事故後、政府は原発依存度を下げるとしてきたが、ゼロにするのは現実的でない。活断層などの不安を抱え、老朽化して採算性の良くない原子炉を電力会社は積極的に廃止し、安全性が高い設備に更新するのが望ましい。中国電力の島根原発3号機など建設半ばで足踏みする原発も稼働への道筋をつけるべきだ。
●原子力の信頼回復急げ
 原子力維持の最大の課題は国民の信頼をいかに回復するかだ。事故から5年近くになるが、なお道遠しと言わざるを得ない。原子力規制委員会の厳格な審査に加え、電力会社自身が規制基準を上回るまでに安全性を高めることが極めて大事だ。だがその努力は十分とはいえない。放射性廃棄物の最終処分についても政府や電力会社は具体的な道筋を示す責任がある。火力発電は設備の新陳代謝を急ぐ必要がある。再生エネの出力変動を機敏に補うため火力発電は要るが、発電効率が悪くCO2排出が多い設備をそのままにはできない。発電量あたりのCO2排出が少ない最新鋭設備への置き換えを進めてほしい。一方で電力の自由化が進みコスト競争が激しくなる。再生エネや原子力を必要なだけ維持するにはどうすればいいか、知恵を絞る必要がある。なすべきことは多い。

<電力自由化>
*2-1:http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201512/CK2015122002000132.html (東京新聞 2015年12月20日) 
都民6割「東電以外」検討 電力自由化 より安く/原発の電気いや
 来年四月に始まる電力の小売り自由化で、電気の購入先を東京電力から新しい電力販売業者に代えようと考えている東京都民が六割に上ることが、本紙と新潟日報の合同世論調査で分かった。料金がより安いところがあれば代えたいという理由が最も多いが、「原発でつくられた電気を使いたくない」を理由に挙げた人は二番目に多かった。また東京、新潟とも七割が将来的には原発をゼロにし、再生可能エネルギーを軸に取り組むべきだとの意思を示した。調査は、東電福島第一原発事故から五年を前に、原発に関する意識を調べるために実施。今月十二日から十六日までの五日間、十八歳以上を対象に、東京と新潟でそれぞれ一千人、計二千人から有効回答を得た。電力の小売りが自由化されると、これまでは地域の大手電力会社に限られていた電気の購入先が、一般家庭でも自由に選べるようになる。購入先を切り替えるかどうか尋ねたところ、東京では6%が「切り替える」、56%が「すぐではないが検討する」と答えた。合わせて六割超の人が、東電から別の事業者に購入先を切り替えようと考えているとの結果が出た。「切り替えない」「当面は切り替えない」は計約三割にとどまった。切り替えを考えている人たちにその理由を聞いたところ、うち35・3%の人が「より安い電気を使いたい」と答え、二番目は「原発を保有しない電力会社の電気を使いたい」(28・2%)だった。東北電力管内の新潟では「切り替える」「検討する」が計四割弱、「切り替えない」「当面は切り替えない」が計五割弱だった。原発に対する考え方では東京、新潟とも「すぐゼロにするべきだ」「徐々に減らし将来はゼロ」が合わせて七割に上り、脱原発を望む声の大きさがあらためて明らかになった。逆に「今まで通り活用」「徐々に減らすが、一定数は活用」はともに三割弱にとどまっている。今後、力を入れるべきエネルギーを二つ選んでもらう問いでは、東京、新潟とも太陽光や風力、バイオマスなどの再生エネを軸に、水力や火力、原子力との組み合わせを挙げる人が八割いた。原発推進の考え方を持つ人に絞っても、六割超の人が再生エネを軸にすべきだと答えた。
<電力の小売り自由化> 来年4月からは、地域の電力会社の独占が崩れ、消費者は、国に「小売電気事業者」として登録したさまざまな業者から電気を購入できるようになる。契約先を切り替える際、メーターを新型のスマートメーターに取り換える必要があるが、原則費用負担はない。12月7日現在、登録業者は全国で73。ガス会社、石油会社、リース会社、商社などが参入するほか、再生可能エネルギーを中心にする業者、地域限定の業者もあり、選択肢は大幅に広がる。

*2-2:http://qbiz.jp/article/79739/1/
(西日本新聞 2016年1月31日) 電力小売り、九州26社が参入予定 地場は4割11社
 一般家庭でも電気の購入先を選べるようになる4月1日の電力小売り全面自由化後、九州では26社が電力小売り事業への参入を予定していることが分かった。参入業者は今後さらに増える可能性もある。26社のうち地場企業は約4割の11社。九州都市ガス最大手の西部ガス(福岡市)や石油販売大手の新出光(同)などは、ガスや石油などと合わせて電力を販売。ケーブルテレビ最大手ジュピターテレコム(JCOM)の子会社ジェイコム九州(福岡市)はインターネットなどとのセット割引で顧客獲得を狙う。九州外の企業では、KDDI(au)やソフトバンクなどが参入を予定している。すでに料金プランを発表したのは6社。新規参入業者が料金設定の目安とする九州電力が新プランを発表したことを受け、残る各社も今後相次いでプランを公表するとみられる。ただ準備に時間がかかることなどから、4月時点で電力供給を始めるのは15社前後にとどまる見通しだ。

*2-3:http://qbiz.jp/article/77862/1/
(西日本新聞 2016年1月1) 電力、消費から供給へ 鉄鋼や製紙大手、発電事業を強化
 2016年4月の電力小売り全面自由化を前に、大規模工場で電力を大量消費する鉄鋼や製紙大手が、電力供給事業を強化している。自家発電の運営経験を生かせるほか、本業の需要低迷による生産縮小で生じた遊休地を活用する狙いもある。「阪神大震災後の電力インフラ強化に貢献したかった」。神戸製鋼所の北川二朗執行役員は参入の経緯を振り返る。震災と同じ1995年に電気事業法が改正され、一般企業も電力事業に参入できるようになった。神戸製鋼所は総工費2千億円を投じ、神戸中心街に近い神戸製鉄所に計140万キロワットの石炭火力発電所を建設した。鋼材の製造過程で大量の電力を使う鉄鋼業は、電気代節約のため自家発電機などを備え、大半の電力を自前で確保。11年の東日本大震災後の電力不足では、余剰分を供給に回してきた。
   ■    ■
 神戸製鋼所は、神戸市の電力需要の約7割に当たる電力を関西電力に販売しており、年間150億円前後の経常利益を安定的に生み出す。さらに神戸製鉄所の高炉跡地に計130万キロワットの石炭火力、栃木県真岡市に計120万キロワットのガス火力の発電所を建設する計画で「電力は屋台骨を支える事業」(幹部)との認識だ。新日鉄住金やJFEスチールも遊休地を活用する。鉄鋼需要の減少で高炉の休止など合理化を迫られており、発電施設を設置できる広い土地が各地にある。東京電力が募集した火力発電の電力卸供給は、15年8月末に新日鉄住金が他との共同案件を含む2案件を落札した。製鉄所は燃料を直接荷揚げできる港湾施設などが充実。発電施設の運営ノウハウもあり「競争力がある」(関係者)という。ただ石炭火力は二酸化炭素(CO2)の排出が伴い、温室効果ガス削減への対応が課題になる。
   ■    ■
 売上高500億円へ−。日本製紙は15年5月に発表した17年度までの経営計画で、電力事業を新たな経営の柱に据えた。紙の国内需要も縮小しており、生産縮小による遊休地の活用を進める。徳島県小松島市で太陽光、熊本県八代市でバイオマスの発電施設を稼働させたほか、宮城県石巻市に石炭とバイオマスによる13万5千キロワットの発電設備を建設する計画だ。王子ホールディングスは、宮崎県日南市や北海道江別市でバイオマス発電の運転を順次開始。北海道や静岡県の水力発電所の発電効率も高める。バイオマス発電は、成長の過程でCO2を吸収する木を使うため、発電による温室効果ガスはゼロとみなされる。製紙大手は間伐材の調達ルートを持っており「有力な発電事業者になる」(関係者)とみられている。

*2-4:http://373news.com/modules/pickup/index.php?storyid=72451
(南日本新聞 2016 /1/17) 「九電離れ」原発1基分超 新電力へ企業・自治体7628件
 九州電力から特定規模電気事業者(新電力)へ切り替えた九州内の企業や自治体が、7628件(2015年11月1日時点)に上ることが16日分かった。新電力が割安な料金で顧客を奪っている構図で、4月からは一般家庭向けを含めた電力小売りが全面自由化となり、“九電離れ”はさらに広がりそうだ。電力小売りの自由化は、安価な電力供給を目指す国の電力システム改革の一環として、00年から段階的に開始。現在は需要が一定規模以上の工場やスーパーなどが対象で、自由に電力会社を選べる。九電からの切り替えは、11年3月1日時点では1508件(31万3000キロワット)だったが、15年3月には5321件(77万キロワット)と3倍以上に膨らんだ。ここ数年は前年比1.5倍ほどのペースで、東京など各地の新電力への移行が進んでいる。契約電力ベースでみると、昨年再稼働した薩摩川内市の川内原発(出力89万キロワット)の1.2基分の約109万5000キロワットが移った格好だ。

<送配電>
*3:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20151225&ng=DGKKZO95528320V21C15A2MM0000 (日経新聞 2015.12.25) 電線地中化、減税で促す 政府・与党方針、固定資産税3分の2 災害対策や景観維持
 政府・与党は2016年度から無電柱化を税制面で後押しする。16~18年度の間に、新たに地中に埋めた電線やケーブルにかかる固定資産税を4年間にわたって3分の2にする。道路法で道路上に電柱を立てることを禁じた地域では2分の1にまで減らす。来年1月4日召集の通常国会に提出する税制改正関連法案に盛り込み、今年度中の成立をめざす。政府は、地震で倒れた電柱が緊急車両の通行の妨げになることを防いだり、景観を維持したりするため電線の地中化を進める。予算面では16年度予算案に1兆円強を計上した地方自治体向けの防災・安全交付金で無電柱化を促す。13年6月には道路法を改正し、道路を管理する国や自治体の判断で道路上に電柱などを立てられない区域を指定できるようにもした。税制面での後押しをめぐっては、1986~05年度の間にも電線の地中化を促す固定資産税の減税措置があった。20年の東京五輪に向け、無電柱化の機運が高まったことから税制優遇を復活させた。国土交通省によると、今回の減税規模は約10億円だという。日本の無電柱化は諸外国に比べて遅れが目立つ。ロンドンやパリなど主要都市で電線の地中化が完了する一方で、東京23区は14年度末時点で7%にとどまる。大阪市内は5%。全国ベースでは1%にすぎない。政府は市街地を中心とした全国の主な幹線道路2万4000キロメートルでの無電柱化を急いでおり、14年度末に16%だった地中化率を20年度までに20%にまで引き上げたいとしている。

<原発事故と後始末>
*4-1:http://www3.nhk.or.jp/news/html/20151218/k10010345211000.html
(NHK 2015年12月18日) 福島第一原発 格納容器機能失い放射性物質放出か
 東京電力福島第一原子力発電所の事故で環境を汚染した原因の1つである3号機からの放射性物質の放出について、東京電力は放射性物質を閉じ込める「格納容器」と呼ばれる設備が機能を失い、直接外部に放出されたと考えられるとする見方を示しました。東京電力は福島第一原発の事故で起きた放射性物質の放出の原因などについて、新たにまとまった検証結果を公表しました。核燃料が溶け落ちた福島第一原発3号機では放射性物質を閉じ込めるため、原子炉を覆っている「格納容器」内の圧力が上がり、破損するおそれがあったため、水蒸気などを放出する「ベント」と呼ばれる操作を繰り返し行いました。これについて、東京電力はデータを改めて確認した結果、3月13日の午後9時に行った3回目のベント以降は圧力の下がり方が緩やかなことなどから、ベントは成功していないという見方を示しました。このため、14日の夜から16日にかけて引き起こされた環境への汚染は核燃料の熱で3号機の格納容器が放射性物質を閉じ込める機能を失い、直接放出されたのが原因と考えられるとしています。これについては、ベントの状況によっては圧力が緩やかに下がることもありうるほか、操作の前後で圧力が変動しているのはベントによる可能性があるという指摘が専門家の間から出ていて、現在も検証が続いています。 .

*4-2-1:http://www.minpo.jp/news/detail/2015110126389
(福島民報 2015/11/1) 支払い依然1割 財政運営に影響 自治体賠償
 東京電力福島第一原発事故に伴う自治体賠償で、県内56市町村が請求した553億3900万円に対し、東電が支払ったのは11・4%の62億8900万円にとどまる。事故から4年8カ月近くがたっても東電との交渉は進まず、自治体の財政運営に影響を与えている。福島民報社の調査で分かった。30日までに全59市町村から回答を得た。各市町村の請求総額と、東電からの支払総額は【表】の通り。請求総額の平均は9億8820万円で、10億円を超えたのは11市町。双葉町の192億5335万円が最も多く、次いで郡山市71億8933万円、福島市59億970万円、いわき市35億1508万円となっている。一方、請求総額に対する東電の支払総額の割合は11・4%。平成25年8月の前回調査7・0%(請求総額342億3000万円、支払総額24億1000万円)を4・4ポイント上回るが依然として低率だ。請求額の多くは人口減に伴う住民税や固定資産税の減収分、原発事故対応の職員増に伴う人件費など。東電は支払いが進まない理由を「請求額が膨大で精査に時間がかかっているため」としている。「賠償金の未払いが市町村の財政運営に影響を与えているか」との質問では、10市町村が「大きな影響を受けている」、26市町村が「影響を受けている」と回答した。「大きな影響がある」と回答した桑折町は請求総額に対して支払いが23・1%。「未払い分は一般財源を充てており、他の事業も抑制を余儀なくされている」として、このままなら事業の遅滞や町民サービスの低下を招きかねないとみる。富岡町は「帰町に向けて施設の復旧に取り組むところだが、賠償が決まらず、財源確保に苦慮している」と訴えた。このような状況を踏まえ、15市町村は裁判外紛争解決手続き(ADR)による原子力損害賠償紛争解決センターへの和解申し立ての検討に入った。請求額の多い市部や避難区域が設けられた町村に目立つ。福島市と桑折町は既に申し立てを行い、水道事業などの賠償で東電と和解合意している。残る39市町村は「予定なし」としているが、須賀川市は「他市町村の動向を見ながら対応する」としており、今後、検討する自治体は増える可能性がある。東京電力は「具体的な算定基準が策定できた項目から賠償金請求を受け付け、早期支払いに取り組んでいる。それ以外の項目も請求を受けた場合は事情を聴きながら適切に対応している」と説明している。
※支払総額と請求総額、合計は1000円以下切り捨て。下郷、柳津、三島の各町は賠償請求の手続き準備中。ADRの○は既に申し立てを行い、和解合意した。●は申し立てを検討している

*4-2-2:http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/165762
(日刊ゲンダイ 2015年10月9日) 福島の甲状腺がん発生率50倍…岡山大・津田教授が警告会見
 岡山大大学院の津田敏秀教授(生命環境学)が6日付の国際環境疫学会の医学専門誌「エピデミオロジー(疫学)」に発表した論文に衝撃が広がっている。福島県が福島原発事故当時に18歳以下だった県民を対象に実施している健康調査の結果を分析したところ、甲状腺がんの発生率がナント! 国内平均の「50~20倍」に達していた――という内容だ。8日、都内の外国特派員協会で会見した津田教授は「福島県では小児や青少年の甲状腺がんの過剰発生がすでに検出されている。多発は避けがたい」と強調した。福島県で原発事故と子どもの甲状腺がんの因果関係を指摘する声は多いが、権威ある医学専門誌に論文が掲載された意味は重い。国際的な専門家も事態を深刻に受け止めた証しだからだ。津田教授は会見であらためて論文の詳細を説明。原発事故から2014年末までに県が調査した約37万人を分析した結果、「二本松市」「本宮市」「三春町」「大玉村」の「福島中通り中部」で甲状腺がんの発生率が国内平均と比較して50倍に達したほか、「郡山市」で39倍などとなった。津田教授は、86年のチェルノブイリ原発事故では5~6年後から甲状腺がんの患者数が増えたことや、WHO(世界保健機関)が13年にまとめた福島のがん発生予測をすでに上回っている――として、今後、患者数が爆発的に増える可能性を示唆した。その上で、「チェルノブイリ原発事故の経験が生かされなかった」「事故直後に安定ヨウ素剤を飲ませておけば、これから起きる発生は半分くらいに防げた」と言い、当時の政府・自治体の対応を批判。チェルノブイリ事故と比べて放射性物質の放出量が「10分の1」と公表されたことについても「もっと大きな放出、被曝があったと考えざるを得ない」と指摘した。一方、公表した論文について「時期尚早」や「過剰診断の結果」との指摘が出ていることに対しては「やりとりしている海外の研究者で時期尚早と言う人は誰もいない。むしろ早く論文にしろという声が圧倒的だ」「過剰診断で増える発生率はどの程度なのか。(証拠の)論文を示してほしい」と真っ向から反論。「日本では(論文が)理解されず、何の準備もされていない。対策を早く考えるべき」と訴えた。「原発事故と甲状腺がんの因果関係は不明」とトボケ続けている政府と福島県の責任は重い。

*4-2-3:http://digital.asahi.com/articles/ASHCZ61VFHCZUGTB00P.html
(朝日新聞 2015年11月30日) 福島の11人、新たに甲状腺がんと診断 合計115人に
 福島県は30日、東京電力福島第一原発事故当時18歳以下だった約38万人を対象に実施している甲状腺検査で、今年7月から9月末までの3カ月間に11人が新たにがんと診断されたと発表した。甲状腺がんが確定したのは合計115人になった。昨年3月末までの1巡目検査でがんの疑いがあると診断され、手術を受けた2人と、昨年4月以降の2巡目検査でがんの疑いが見つかり手術を受けた9人が新たにがんと確定した。1巡目検査の2人は、本人の都合で確定診断に必要な手術がこの時期になった。これで、がんが確定したか疑いがあるとされた人は1巡目114人、2巡目39人で計153人になった。2巡目でがんや疑いがあると診断された39人のうち、2人は、1巡目検査で一定の大きさ以上のしこり(結節)があり、それががん化したとみられるという。19人は1巡目検査では「何もない」とされており、新たにがんが発生したと考えられるという。県検討委員会の星北斗座長は「分かる範囲では、推定される福島県民の甲状腺の内部被曝(ひばく)線量はチェルノブイリの住民より低く、放射線の影響を受けやすい乳幼児にがんが発生していないことから、今見つかっている甲状腺がんは放射線の影響とは考えにくい」と述べた。

*4-2-4:http://digital.asahi.com/articles/ASHBJ7DNSHBJULBJ014.html
(朝日新聞 2015年10月20日) 原発事故後の被曝、初の労災認定 白血病の元作業員男性
 労災が認められたのは北九州市在住の男性(41)。男性によると、2012年から13年まで、東京電力の協力企業の作業員として、3号機や4号機周辺で、構造物の設置や溶接の作業に当たり、14年1月に急性骨髄性白血病と診断された。累積の被曝線量は福島第一原発で約16ミリシーベルト、定期点検の工事で12年に約3カ月間働いた九州電力玄海原発で約4ミリだった。男性の労災申請を受けた富岡労働基準監督署(福島県)が業務内容や被曝実態を確認し、被曝の専門家らで構成する厚労省の検討会で被曝と白血病の因果関係を検討、「業務上(業務由来)」と結論づけた。これを受け同労基署が20日付で労災と認定した。医療費と休業補償が支払われる。1976年に定められた国の放射線業務従事者の労災認定基準では白血病の場合、年5ミリシーベルト以上被曝し、最初の被曝を伴う作業から1年超経って発症した人は、白血病を引き起こす他の要因の影響が排除できれば労災が認められる。厚労省は20日の会見で、「今回の認定により科学的に被曝と健康影響の関係が証明されたものではない。『年5ミリ以上の被曝』は白血病を発症する境界ではない」とした。白血病の認定基準については「労災保険の精神に基づき、労働者への補償に欠けることがないよう配慮し、また、76年当時の一般公衆(住民)の被曝限度が年5ミリだった点も考慮して決まった」と説明した。福島第一原発事故の対応にあたった後、被曝と関係する病気になった人の労災申請は今回を含め8件。3件は不支給、1件は本人が取り下げ、3件は調査中で、がんの種類など詳細は明らかにされていない。東京電力によると、事故から今年8月末までに福島第一原発で働いた約4万5千人のうち、約2万1千人は累積被曝量が5ミリを超え、20ミリ以上も9千人を上回る。今年4月から8月末までの5カ月間に働いた約1万5千人でみても、約2200人が5ミリ超の被曝をした。現場では被曝を伴う作業が長期にわたって続き、労災申請が増える可能性がある。

*4-3-1:http://www.huffingtonpost.jp/2013/09/07/nuclear_error_nature_n_3884364.html?utm_hp_ref=tw (The Huffington Post 2013年9月7日) 汚染水漏れ 「Nature(ネイチャー)」が日本政府の福島第一原発の対応を批判
 ネイチャーの指摘する内容はどのぐらい厳しいものなのか。記事は「Nuclear error」と題され、「日本はもっと世界に助けを求めるべきだ」という副題がついている。福島第一原発事故の事故は東京電力の手に負えないほどのものとした上で、政府が先頭に立って対応するということを決めた時期が遅すぎると非難している。また、漏れた汚染水の放射線量が、最初に報道されていた状況よりも18倍も高かったことや、報道が遅れたこと、監視体制の甘さなどを挙げ、情報に精通した海外の専門家に助けを求めるべきと助言している。日本が海外の力を借りるべきとする意見を出しているのは、ネイチャーだけではない。ドイツ出身のエネルギーコンサルタント、マイケル・シュナイダー氏は、ハフィントン・ポストUK版の取材について、「現在の課題は、彼ら(日本政府)の現実逃避的な姿勢を崩すことだ。これは組織的な現実逃避だ。ここでは日本の持つプライドが問題になっているが、プライドが現実逃避の態度へと変わってしまうと、このような問題は本当に危険なものとなる。彼らは人々を、高まり続けるリスクにさらしている」と述べている。アメリカの科学者、チャールズ・ファーガソン氏も、ロシアやノルウェーには、汚染水が海洋生物にどのように影響があるかを調べる専門家がいることなどを挙げ、日本が他の国から多くの専門家を呼び込むべきだということに同意している。また、ロシアの国営原子力発電所操業会社ロスエネルゴアトムの第一副社長、ウラジミール・アスモロフ氏は、「原子力業界はグローバル化しており、事故が国内でとどまることはない。国際的な問題だ」と述べ、ロシアとしても支援する用意があると述べたという。ネイチャーは、福島沖の海洋汚染の問題を挙げ、安倍首相が掲げる科学振興に言及して次のように述べている。安倍首相と政権は、科学振興を推進すると述べている。世界中の研究者が、(汚染された海洋データを)調査しシェアしていくことを支援するべきではないか。チェルノブイリの事故後にはこのような機会がなかった。しかし、福島ではまだ遅くはない。東京電力は、相澤善吾副社長が8月21日の記者会見において、海外を含む国内外の叡智を結集して汚染水の対応にあたると話している。一刻も早い対応が期待される。

*4-3-2:http://www.nature.com/news/fukushima-leaks-18-times-worse-than-first-thought-1.13626 (nature 29 August 2013 ) Fukushima leaks 18 times worse than first thought 、New revelations from stricken plant’s operator add to claims that it cannot cope with clean-up operation.
 Pressure continued to mount on the owner of Japan’s crippled Fukushima Daiichi nuclear plant on 1 September after it admitted that recent leaks of contaminated cooling water contained 18 times the levels of radiation previously reported.The Tokyo Electric Power Company (TEPCO) said that one hot spot was found to be giving off 1,800 millisieverts per hour — much more than the 100mSv initially quoted and enough gamma radiation to kill a human within four hours. It also emerged that the pipe from which the water was leaking had been sealed with plastic tape.The company vowed to launch an investigation of the leak and “take any appropriate countermeasures immediately”, adding that only 1mSv of the radiation was made up of gamma rays, with the rest being less penetrating beta radiation.But the new revelations will heap pressure on the Japanese government to intervene in the clean-up of Fukushima after experts voiced fears that TEPCO is unable to cope with the operation, which has seen hundreds of tonnes of radioactive water escape into the Pacific Ocean. Analysts warned that if the government fails to act, prime minister Shinzo Abe’s pro-nuclear stance may be jeopardized.“It’s clear that TEPCO is unable to solve the problems on its own,” said Tsutomu Toichi, managing director and chief economist at the Institute of Energy Economics in Tokyo. “The government has to step in to ensure these problems are solved quickly. It is going to have to provide funds, as well as a plan for moving forward, and explain this to the public in a way that is easy to understand.”Wiktor Frid, a nuclear expert with the Swedish Radiation Safety Authority in Stockholm, added, “That water leaked from a tank unnoticed for several days is alarming and extremely embarrassing for TEPCO”.The leaks have also led to renewed concerns over ocean contamination and food safety, with local fishing cooperatives suspending trial catches and one oceanographer saying that further leaks would have “severe” consequences for marine life.
●Incident upgrade
 The leak of some 300 tonnes of partially treated water that had been used to cool melted nuclear rods from the destroyed reactors was reported by TEPCO on 19 August. The radioactivity of the water stands at about 80 megabecquerels per litre, about 1% of what it was before treatment by an on-site purification system. Japan’s Nuclear Regulation Authority initially labelled the incident a level 1 event (known as an ‘anomaly’) on the International Nuclear Event Scale, but on 28 August upgraded it to level 3 (‘serious incident’), citing the large amount of contaminated water leaked and the fact that a safety buffer was not available for the water tank in question.At present, TEPCO is storing more than 300,000 tonnes of radioactive water on the site of the destroyed Fukushima Daiichi plant. Radioactive caesium isotopes are being removed from the water by an advanced liquid-processing system built after the accident, but a facility for removing strontium isotopes is not yet ready. Tritium, another harmful radionuclide, cannot be safely removed by any known purification system because it is incorporated within water molecules.The leaked water is thought to have seeped into the ground and will eventually reach the sea adjacent to the plant. The storage site near Fukushima’s reactor 4, where the leak was discovered, lies some 50 metres above sea level and is just a few hundred metres from the coast.Measures proposed so far to prevent the polluted water from flowing into the sea — such as freezing or excavating the soil surrounding the storage site — seem to be either very expensive or technically unfeasible, says Joachim Knebel, a nuclear expert and chief science officer at the Karlsruhe Institute of Technology in Germany.“We can’t really assess the situation from far away,” he says. “But it appears to me that none of the proposed measures would work. TEPCO would be well advised to seek international expertise in coping with the problems.”Several countries, including Russia, have offered to assist with the company’s clean-up efforts, and TEPCO said last week that it will consider accepting outside help. On Monday, it also announced a series of measures, including the installation of a new central control system, to mitigate the risk of future leaks.
“Some tanks have automatic monitoring equipment and some don’t,” says Yo Koshimizu, a TEPCO spokesman. “We are currently determining whether to add such equipment to all of the tanks.”
●Storage situation
 Some 400 tonnes of cooling water are being collected in tanks each day. The growing fleet of storage tanks — which currently stands at about 1,000 — is a source of alarm for experts, who fear that huge amounts of contaminated water will eventually have to be dumped into the ocean. Worse still, some 300 tonnes of groundwater highly contaminated with caesium-137, which has a 30-year half-life, are thought to be flowing from beneath the destroyed reactors into the sea every day.The potential for harm is huge, says Jota Kanda, an oceanographer at the Tokyo University of Marine Science and Technology who monitors radionuclide distribution in sediments and biota off Fukushima1.“The effects of one relatively small leak may be insignificant,” he says. “But there are huge amounts of radionuclides in these tanks and the water may have to be stored for a long time to come. If more leaks were to occur the consequences might be severe.”The Fukushima nuclear accident resulted in the largest ever accidental release of radioactivity to the oceans. Some 80% of all the radionuclides released from Fukushima ended up in the Pacific2. In some local fish, high residual levels of radioactivity were measured two years after the accident. Commercial fishing in the area is still banned.But it is unclear how much residual radioactive contamination is still entering the sea from leaks around the Fukushima plant, says Scott Fowler, a marine ecologist at Stony Brook University in New York who has been involved in previous assessments of contamination levels in the ocean near Fukushima.To track changes in coastal waters and predict when seafood species in the region may be safe to consume, it will be necessary to establish a ‘temporal data set’ — that is, to measure the levels and distributions of contaminant radionuclides at a given location over time, he says.“Even if one assumes that leaks from the plant into the sea will eventually be stopped, residual contamination would continue to be present in the adjacent marine ecosystem for many years,” he says. “So the contamination of long-lived radionuclides in different organisms in the local marine food webs needs to be monitored continually.”

*4-4:http://mainichi.jp/articles/20151225/ddl/k07/040/190000c (毎日新聞 2015年12月25日) 福島第1原発事故 南相馬・汚染米問題 除染推進委員長、規制委員長発言を批判 「現地を調査せず」 /福島
 南相馬市除染推進委員会の委員長を務める児玉龍彦・東大教授は24日、2013年の同市産米から国の基準(1キロ当たり100ベクレル)を超える放射性物質が検出された問題で、福島第1原発のがれき処理が原因でないと因果関係を否定している原子力規制委員会の田中俊一委員長の発言を強く批判する見解を発表した。児玉教授は、田中氏が除染していない山林から流れたセシウムが原因の可能性があるとの見方を南相馬市の桜井勝延市長と10月に会談した際に示したことについて、「田中氏は現地の水源や水田の調査をしておらず、科学的検討を行った発言ではない」と批判。(1)汚染は複数の水源を持つ複数の水田で確認された(2)前年収穫されたコメに汚染はなく14年以降も国の基準値を下回っている(3)発言の根拠とする放射性物質飛散の実験値は実測値との乖離(かいり)が指摘されている−−などと反論した。さらに児玉教授は、「規制委は放射性物質の飛散防止に全力を挙げる責任があることを深く自覚」するよう求めた。田中氏は桜井市長と会談した際、汚染とがれき処理との因果関係を否定したうえで「除染が終わっていない山から流れてくる水に(放射性)セシウムが溶け込んでいる場合があると思う。今後もそういう事例が出てくる可能性は否定できない」と発言。国が1キロ当たり100ベクレル以下を基準としていることについても、「何で100にしたのか。500でよかった。それでも国際基準より厳しい」として政府の対応を批判していた。

*4-5:http://mainichi.jp/articles/20160108/k00/00m/020/135000c
(毎日新聞 2016年1月7日) 福島原発事故、EUが9日から食品の輸入規制一部緩和
 農林水産省は7日、欧州連合(EU)が東京電力福島第1原発事故を受けて実施している日本産食品の輸入規制のうち、福島県産の野菜や牛肉などが9日に緩和されることになったと発表した。福島産はこれまで酒類を除く全品目が規制対象だった。EUは昨年11月に緩和の方針を示しており、手続きが完了した。EUは現在、規制対象に対して放射性物質の検査証明書の添付を義務付けている。今回、野菜や牛肉などの畜産品のほか、柿を除く果実、そば、茶などを規制対象から外す。コメやキノコ、大豆などは引き続き規制の対象となる。また青森、埼玉両県を規制対象の地域から外し、全ての品目で検査証明書を不要とする。これでEUによる規制対象が残るのは、福島を含めて13県となる。このほかに岩手、宮城、茨城、栃木、群馬、千葉の6県のコメや大豆、そばなど一部を規制対象から除外する。一方で、これまで規制対象外だった秋田や山形、長野のゼンマイなどを新たに対象に加える。

<原発のコスト>
*5-1:http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2015111902000128.html (東京新聞 2015年11月19日) 原発ゼロへ再考を 原子力は高くつく
 きょうは原発推進の人たちにとくに読んでいただきたい。原子力発電は結局、高くつく。そろばんを弾(はじ)き直し、原発ゼロへと考え直してみませんか。やっぱり金食い虫でした。原子力規制委員会が日本原子力研究開発機構に示した、高速増殖原型炉「もんじゅ」の運営を「ほかの誰かと交代せよ」との退場勧告は、その操りにくさ、もろさ、危険さを、あらためて浮かび上がらせた。そして、本紙がまとめた「核燃料サイクル事業の費用一覧」(十七日朝刊)からは、もんじゅを核とする核燃料サイクルという国策が、半世紀にわたって費やした血税の大きさを実感させられる。
◆巨費12兆円を投じて
 原発で使用済みの核燃料からプルトニウムを抽出(再処理)し、ウランと混ぜ合わせてつくったMOX燃料を、特殊な原子炉で繰り返し利用する-。それが核燃料サイクルだ。その上もんじゅは、発電しながら燃料のプルトニウムを増やしてくれる。だから増殖炉。資源小国日本には準国産エネルギーをという触れ込みだった。それへ少なくとも十二兆円以上-。もんじゅの開発、再処理工場(青森県六ケ所村)建設など、核燃サイクルに費やされた事業費だ。国産ジェット機MRJの開発費が約千八百億円、小惑星探査機「はやぶさ2」は打ち上げ費用を含めて二百九十億円、膨らみ上がって撤回された新国立競技場の建設費が二千五百二十億円…。十二兆円とはフィンランドの国家予算並みである。
◆1日5500万円も
 ところが、もんじゅは事故や不祥事、不手際続きで、この二十年間、ほとんど稼働していない。止まったままでも一日五千五百万円という高い維持管理費がかかる。もんじゅは冷却に水ではなく、大量の液体ナトリウムを使う仕組みになっている。ナトリウムの融点は九八度。固まらないように電熱線で常時温めておく必要がある。千七百トンのナトリウム。年間の電力消費量は一般家庭約二万五千世帯分にも上り、電気代だけで月一億円にもなるという。発電できない原子炉が、膨大な電力を必要とするという、皮肉な存在なのである。もんじゅ以外の施設にも、トラブルがつきまとう。さらなる安全対策のため、再処理工場は三年先、MOX燃料工場は四年先まで、完成時期が延期になった。MOX燃料工場は五回目、再処理工場に至っては、二十三回目の延期である。研究や開発は否定しないが、事ここに至っては、もはや成否は明らかだ。これ以上お金をつぎ込むことは是とはされまい。核燃料サイクルが、日本の原子力政策の根幹ならば、それはコストの面からも、根本的な見直しを迫られていると言えそうだ。欧米で原発の新増設が進まないのは、3・11以降、原発の安全性のハードルが高くなったからである。対策を講ずるほど費用はかかる。原発は結局高くつく。風力や太陽光など再生可能エネルギーにかかる費用は普及、量産によって急速に低くなってきた。国際エネルギー機関(IEA)の最新の報告では、太陽光の発電コストは、五年前より六割も安くなったという。ドイツの脱原発政策も、哲学だけでは語れない。冷静に利益を弾いた上での大転換だ。原子力や輸入の化石燃料に頼り続けていくよりも、再生エネを増やした方が、将来的には電力の値段が下がり、雇用も増やすことができるという展望があるからだ。
◆そろばん弾き直そう
 核燃料サイクル事業には、毎年千六百億円もの維持費がかかる。その予算を再エネ事業に振り向けて、エネルギー自給の新たな夢を開くべきではないか。電力会社は政府の強い後押しを得て、核のごみを安全に処理するあてもまだないままに、原発再稼働をひたすら急ぐ。金食い虫の原発にこのまま依存し続けていくことが、本当に私たち自身や子どもたちの将来、地域の利益や国益にもかなうのか。政治は、その是非を国民に問うたらいい。持続可能で豊かな社会へ向けて、そろばんをいま一度弾き直してみるべきだ。

*5-2:http://www.nikkei.com/article/DGXLASFS15H2R_V10C16A1EE8000/
(日経新聞 2016/1/15) 経団連会長「原発停止は国の損失」 柏崎刈羽の再稼働要請
 経団連の榊原定征会長は15日、新潟県の東京電力柏崎刈羽原子力発電所を視察した。柏崎刈羽6、7号機を含めた全国で停止中の原発を再稼働させる必要性を改めて訴えたうえで「原発が止まっているのは国として損失だ。早期に動かして(企業と家計の)電力コスト削減につなげてほしい」と強調した。榊原氏は安倍晋三政権になってから円高など経済の「6重苦」は解消しつつあるが、「最も対応が必要なのはエネルギー問題だ」と指摘。東日本大震災後、電気料金は家庭用で2割、産業用で4割上がったとして「もともと世界で電力コストが一番高い日本でさらに高くなった。成長と投資、発展の大きな障害になっている」と強調し、時期への言及は避けつつも再稼働を重ねて訴えた。視察には東電の広瀬直己社長も同席。榊原氏は東電が取り組む安全対策に対して「中越沖地震と福島の事故の教訓を受け、考えられる限りの対策をしていると感じた」などと評価した。九州電力の川内原発(鹿児島県)など西日本が先行する形で、震災以降に止まっていた原発に再開の動きが少しずつ出てきた。ただ東日本の原発は柏崎刈羽原発を含めて東電福島第一原発と同型の沸騰水型軽水炉が多く、先行きを見通しにくい面が多い。

*5-3:http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201601/CK2016013102000111.html (東京新聞 2016年1月31日) 震災5年 故郷戻れぬまま 原発避難者 移住6900件
 東京電力福島第一原発事故で住まいを追われた福島県の避難住民が、二〇一一年三月の事故後、政府の制度を利用し県内や首都圏などに新たに土地や住宅を買って移住するケースが、毎年増え続けていることが本紙の独自調査で分かった。累計の移住件数は、一五年末現在で約七千件。元の住まいに戻れる見通しが立たず、避難先などで生活再建を図ろうとしている実態が浮かんだ。移住しても、住民票はそのままにしている避難住民が多いため、どれくらいの人が移住したのか実態はつかみにくい。本紙は、避難指示区域の住民が移住先で不動産を買うと不動産取得税が軽減される特例がある点に着目。福島県のほか、避難者の多い十一都道県に適用件数を聞き取りし、主な状況を調べた。その結果、一一年度末では六十六件だったが、一二年度末には累計で七百四十五件に増え、一三年度末は二千百九十件、一四年度末には四千七百九十一件にまで増えた。一五年度は昨年末時点ながら、六千九百九件にまで増えた=グラフ。このほか、他の府県での制度の適用例や特例を使わないケースもあるとみられる。移住用に家や土地を購入した先は、全体の約九割が福島県内(六千八件)。次いで多いのが、隣接する茨城(二百八十五件)や栃木(百五十六件)、宮城(百十五件)の各県だった。いずれの都道県でも毎年増えている。政府は帰還困難区域を除く避難指示区域を一六年度中に解除する方針を示しているが、福島第一周辺はいまだに広く汚染されている。仮に避難指示が解除される状況になっても、放射線の影響への不安があるほか、商店や病院、学校など暮らしの基盤がどこまで元のような姿になるのか見通すのは非常に難しい。五年近い避難の中で、新たな仕事や通学の関係から、避難先に根づき、生活再建しようとする住民も多い。福島県の担当者は「避難先での基盤が固まってきた一方、故郷に戻ろうにも生活の厳しさがある。事故後五年を迎え、帰る、帰らないの判断をする時期に来ており、今後も移住が増えていくのでは」と分析している。大阪市立大の除本理史(よけもとまさふみ)教授(環境政策論)は「元通りの暮らしを期待して故郷に戻りたい住民、人口減を何とか食い止めたい避難元の自治体、避難者の数を少しでも減らしたい政府、と三者で思惑にずれがある。避難者のニーズにそったきめ細かい施策が必要だ」と強調している。
<福島県からの避難住民> 政府の統計では、福島第一原発事故の避難者数は2016年1月14日現在、自主避難含め9万9000人とされる。このうち、県外への避難者は4万3000人に上り、北は北海道から南は沖縄まで全都道府県に及ぶ。特に多いのが東京都(6000人)などの首都圏と、福島県に隣接する山形、宮城、新潟県。ピーク時の16万4000人(12年5月)から減っているが、数多くの人が先行きの見えない暮らしを送っている。


PS(2016/2/4追加):*6-1のように、政府は、原発再稼働を進めるため、「電源立地地域対策交付金」を原発を再稼働させた自治体に手厚く払うようにして再稼働への同意を促した。その結果、再稼働した原発地元の道県・市町村は、新たに原発1基当たり年間最大5億円を支払われるそうだ。また、*6-2のように林経済産業大臣は、「原子力の問題や事故が起きたら、政府が責任をもって対応する」としている。このように、原発には電力会社が発電コストに入れていない多額の税金が投入されている。
 なお、*7のように、原油先物相場が下落したとして、原油が出ない国の日本人が中東など産油国の財政を心配しているのはおかしい。何故なら、サウジアラビアなど富裕な産油国は、日本のような税はない上、公共料金・医療・福祉が原油代金で賄われて無料というめぐまれた状態で、「増税しても年金・医療・介護・福祉を削減しなければやっていけない」などと言っている日本とは雲泥の差だからだ。しかし、日本も自然再生可能エネルギーにエネルギーを転換したり、LNGを掘り出したりすれば、油田を発見したのと同じ効果がある。

<原発への政府の支出と推進>
*6-1:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/268020
(佐賀新聞 2016年1月13日) 原発再稼働で交付金手厚く 来年度から、政府が配分見直し
 政府が原発の再稼働を進めるため、立地自治体に対する財政面からの誘導を強めている。交付金の分配の在り方を見直し、2016年度分から再稼働した原発の立地自治体に手厚く支払うようにするなど、「アメとムチ」で再稼働への同意を促す狙いだ。立地道県や市町村に支払う「電源立地地域対策交付金」は原発で発電した電力量に所定の単価を掛けるなどして算出する。従来は定期点検などで原発が停止中でも自治体の財政が維持できるよう稼働率を一律81%とみなして支払われてきた。16年度からは、再稼働した原発は実際の稼働率で計算する。停止中の原発は、福島事故前10年間の平均稼働率を採用するが、同期間の全国平均稼働率(68%)以上は認めない。再稼働した場合は、原発1基当たり年間最大5億円を立地自治体に支払うインセンティブを与える。一方、再稼働を進める上で国民の間に不安が根強い老朽原発の廃炉を進めるため、交付金の激減緩和措置を用意した。「みなし稼働率」は03年に導入され、当初は100%に設定されていた。しかし実態に比べ高すぎると見直しが入り、10年に81%に引き下げられた。翌年、東京電力福島第1原発事故が発生。その後、全国の原発が停止した中でも、このみなし稼働率で交付金が払われてきたが、政府は再稼働の進捗を踏まえ、みなし稼働率の在り方をあらためて見直した。地元の原発の再稼働が見通せない自治体では大幅減収になる可能性が高い。政府は16年度の当初予算案で立地交付金を15年度当初比4・8%減の868億円に抑えた。東電柏崎刈羽原発の地元、新潟県柏崎市によると、震災前10年間の同原発の平均稼働率は47%。市は今回の見直しで、15年度約26億5千万円あった交付金が16年度は3億円程度減ると試算する。市担当者は「稼働率が低かったのは東電のトラブル隠しや中越沖地震が原因で、自治体のせいではない」と指摘。「見直しの影響は大きい」と訴えている。

*6-2:http://www3.nhk.or.jp/lnews/fukui/3054441721.html
(NHK福井 2015年12月20日) 西川知事と林経産大臣が会談
 関西電力・高浜原子力発電所3号機と4号機について林経済産業大臣が西川知事と会談し、「原子力のさまざまな問題や事故が起きた際には政府が責任をもって対応する」と述べ、高浜原発の再稼働に理解を求めました。高浜原発3号機と4号機は、現在、再稼働に向けて最終段階の検査を受けているほか今月(12月)に入って、高浜町長と県議会が再稼働に同意するなど、再稼働へ向けた手続きは知事の判断が焦点となっています。こうしたなか林経済産業大臣が20日、西川知事と会談しました。このなかで林大臣は、西川知事が政府に求めていた再稼働を判断するための5つの条件について▼原子力に対する国民理解を促進するため、全ての都道府県でシンポジウムを開くことや▼福島の原発事故を教訓とした事故の制圧体制の強化のため、政府として訓練や改善に取り組むなどと応えました。そのうえで林大臣は、「原子力のさまざまな問題や事故が起きた際には政府が責任をもって対応します」と述べ、高浜原発の再稼働に理解を求めました。これに対して西川知事は「国が責任をもって進めていきたいという方針が示され、評価させて頂きたい」と述べ、国からの説明に一定の理解を示しました。知事との面談を終えた林経済産業大臣は高浜原発の再稼働について「ある程度の理解が得られたのではないか」と述べ、今後、原発の重要性、必要性について国民に丁寧に説明していく考えを示しました。

<原油高騰に日本が懸念 ?!>
*7:http://mainichi.jp/articles/20160103/k00/00e/020/113000c
(毎日新聞 2016.1.3) 昨年3割下落 中東諸国の財政に打撃
 2015年のニューヨーク原油先物相場は年間で約30%下落し、46%下げた前年に続く大幅下落となった。原油価格の長期低迷で中東などの産油国の財政は急激に悪化しており、各国は政府支出や海外投資の圧縮に懸命だ。オイルマネーの縮小が世界の金融市場を不安定化させる懸念も出ている。12月31日のニューヨーク市場で、指標の米国産標準油種(WTI)2月渡しは前日比0.44ドル高の1バレル=37.04ドルで取引を終えた。14年末の53.27ドルから約30%の下落。米国のシェールオイル増産や中国経済の減速による需要減で、供給過剰に陥っているのが原因だ。この影響で、中東・北アフリカの11産油国の原油輸出総額は、15年の1年間で3600億ドル(約43兆2000億円)も激減した。歳入の大半を占める原油収入の落ち込みで、財政収支は、サウジアラビアが国内総生産(GDP)比15%の赤字に落ち込むなど、15年は11カ国平均で同10%前後の赤字となる見通しだ。過去の原油収入の積み立てで、直ちに財政危機に陥る懸念は低いが、今後、米国の原油輸出の解禁などで一段の価格下落の可能性もあり、国際通貨基金(IMF)は「包括的な財政調整が不可欠」と警告している。サウジアラビアは12月28日、公務員給与の削減などで16年の歳出を前年比14%削減すると発表。クウェートも軽油価格を値上げしたほか、バーレーンもガス料金や医療保険料を値上げするなど、各国は相次いで財政引き締め策を導入した。ただ、サウジなどの富裕な湾岸産油国は、11年に始まった民主化要求運動「アラブの春」の波及を食い止めるため、公共料金無料化や公務員増員などのバラマキ政策を実施してきた。「国内の不安定化につながりかねない大胆な緊縮策は取りにくい」(英調査会社)のが実情だ。産油国は原油収益を先進国の株式や土地などに投資しているが、英紙フィナンシャル・タイムズによると7〜9月期に少なくとも190億ドル(約2兆2800億円)が産油国に引き揚げられた。IMF中東・中央アジア局のマザレイ次長は「資金の撤退が市場の大きな変動をもたらす可能性がある」としている。


PS(2016/2/8追加):*8のように、汚染された木くずを日本全国にばら撒き、堆肥を製造して農産物を作れば日本全体の農産物が汚染されるが、これを「風評被害」と呼ぶのは日本だけである。なお、汚染木材を家の新築にも使うそうだが、ここまでくると呆れてものが言えない。

<放射性廃棄物の処理>
*8:http://www.chibanippo.co.jp/news/national/302919
(千葉日報 2016年2月7日) 汚染木くず千葉県にも 大津地検が捜査資料開示
 東京電力福島第1原発事故で放出された放射性セシウムに汚染された木くずが滋賀県高島市などに不法投棄された事件で、木くずは滋賀のほかに茨城、栃木、千葉、山梨、鹿児島の各県にも搬出されていたことが6日、大津地検が部分開示した捜査資料で明らかになった。開示は5日付。開示資料によると、木くずは2012年12月~13年9月、計約5千トンが計12ルートで6県に運ばれた。運搬には栃木、埼玉、千葉、山梨各県の業者が関わっていた。京都市の無職男性(75)が昨年2月に捜査資料の閲覧を地検に請求したが、3月に不許可とされたため、大津地裁に準抗告。地裁は7月、自治体名を含めた閲覧を認め、地検に開示を命じる決定を出した。地検は特別抗告し、最高裁は12月14日に「搬出先が特定され、風評被害などで経済損害が発生する恐れがある」として地裁の決定を一部取り消し、市町村名などを除いて閲覧を認める決定を出した。これを受け、地検が今月5日に資料を男性に部分開示した。高島市の木くずはその後、前橋市の産業廃棄物処理業者の施設で破砕され、中間処理された。不法投棄をめぐっては、東京のコンサルタント会社社長(当時)の男性が、高島市に木くずを持ち込んだとして産業廃棄物処理法違反の罪で14年12月に大津地裁で有罪が確定。男性は各地の搬出先には汚染について伝えず「堆肥製造のため」などと説明し、木くずは野ざらしの状態だった。


PS(2016.2.9追加):*9-1のように、丸川珠代環境大臣が、長野県松本市で、「『反放射能派』で、どれだけ下げても心配だという人は世の中にいるが、そういう人たちがわあわあ騒いだ中で何の科学的根拠もなく、時の環境相が1ミリシーベルトまで下げると急に言った」と述べたのは、単に無知であるだけでなく、環境大臣になったから環境に詳しいという本末転倒の自負がある。その上、「そういう言い回しをした記憶はない」「誤解を与えたなら言葉足らずだった」としているのは誠実さに欠ける。
 また、*9-2に、「年間1~20ミリシーベルトの幅で適切な防護をしながら長期的に1ミリシーベルトを目指すという国際放射線防護委員会(ICRP)の考え方に基づく」という専門家の指摘があるが、人間の体にとって長期的とはどのくらいの期間かという問題が未だ棚上げされている。私は、「短期的とは、速やかに脱しはしたが事故で仕方なく陥った状態の最短期間」であり、癌が発症し始める5年は十二分に長期であり、短期的・長期的という言葉を使って放射線安全神話を作ってはならないと考えている。
 なお、*9-3のように、丸川環境大臣がその発言をした松本市は、信州大学医学部助教授などを経てチェルノブイリ原発事故後、ベラルーシの放射性物質汚染地域で医療支援活動にあたった菅谷氏を市長に選んでいる地域で、講演を聞きに来た一般市民には丸川環境大臣よりも放射線防護に詳しい人も多かったと思われるため、よりによって松本市でそういう発言をしたのは喜劇の部類に入る。

*9-1:http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201602/CK2016020902000243.html (東京新聞 2016.2.9) 丸川環境相「被ばく上限、根拠ない」 国会追及で陳謝
 丸川珠代環境相が、東京電力福島第一原発事故後に国が定めた年間被ばく線量の長期目標一ミリシーベルト以下について「何の根拠もない」と発言したと、九日の衆院予算委員会で指摘された。丸川氏は発言の記憶がないとしながら「誤解を与えたなら、言葉足らずだったことはおわびする」と述べた。丸川氏は七日、長野県松本市であった自民党の若林健太参院議員の集会で講演した際に「『反放射能派』というと変だが、どれだけ下げても心配だという人は世の中にいる。そういう人たちがわあわあ騒いだ中で何の科学的根拠もなく、時の環境相が一ミリシーベルトまで下げると急に言った」と発言した。民主党の緒方林太郎氏が九日の衆院予算委で問題だと追及。丸川氏は「記録を取っていないし、そういう言い回しをした記憶はない」と釈明した上で陳謝。「数字の性質を十分に説明し切れていなかったのではないかという趣旨のことを申し上げた」と述べた。福島第一原発の事故後、当時の民主党政権は、自然放射線などを除いた一般人の通常時の年間被ばく線量限度を一ミリシーベルトとした国際放射線防護委員会(ICRP)の勧告に基づき、長期的な目標を一ミリシーベルトとした。

*9-2:http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2016020901002341.html
(東京新聞 2016年2月9日) 専門家からいぶかる声 丸川環境相の線量発言
 東京電力福島第1原発事故後、国が「年間被ばく線量1ミリシーベルト」と定めた除染の長期目標をめぐり、丸川珠代環境相が講演で「何の根拠もなく時の環境大臣が決めた」などと発言した問題で、放射線の専門家からは9日、「根拠はある。発言の真意がよく分からない」といぶかる声が上がった。鈴木元国際医療福祉大教授(放射線疫学)は、1ミリシーベルトの目標は「事故で出た放射性物質と共存する状況にあって、年間1~20ミリシーベルトの幅で適切な防護をしながら長期的に1ミリシーベルトを目指すという国際放射線防護委員会(ICRP)の考え方に基づく」と指摘。

*9-3:http://mainichi.jp/articles/20151217/ddl/k20/010/150000c
(毎日新聞 2015年12月17日) 松本市長選 菅谷氏が出馬表明 4選目指し /長野
 任期満了に伴う松本市長選(来年3月6日告示、13日投開票)で、現職の菅谷昭氏(72)は16日、4選を目指し立候補すると表明した。同日閉会の12月市議会で「引き続き市長の使命を果たすべきだと決断した」と述べた。信州大医学部助教授、県衛生部長などを歴任。2004年に初当選し3期目。チェルノブイリ原発事故後、ベラルーシの放射性物質汚染地域で医療支援活動にあたった。「健康寿命延伸都市宣言などの施策は道半ばだと、市民から続投の強い要請を受けた。私を育んだ松本のまちづくりを引き続き担うのも道である」と語った。市長選には、いずれも新人で、団体役員の鈴木満雄氏(65)、前市議の増田博志氏(63)が立候補を表明。前市教育委員の小林磨史(まふみ)氏(61)、元NHK解説委員の臥雲義尚氏(52)が立候補の意思を示しており、過去最多の5人による争いとなる可能性がある。

      
2016.2.10東京新聞    2016.2.12NHK     2015.10.12、2015.11.20佐賀新聞 
                                     (http://no-genpatsu.main.jp/上参照)

PS(2016年2月12日追加): *10-1で、原発由来の物質であるセシウム137が多いほど、人間以外の生物も白血病の傾向があることがわかる。しかし、NHKは、*10-2のように、原発から遠い地域に住んでいる人も含めた3600人ばかりのアンケート調査により、①電気料金が安い ②地球温暖化など環境への影響が少ない ③安定して十分供給できる ④安全に発電できる などとするフクシマ原発事故前の“常識”を理由に、原子力発電所を「増やすべき」「現状を維持すべき」が合わせて29%だったと強調し、「すべて廃止すべきだ」だけでも22%あるにもかかわらず、これについては表題に記載せず重視もしていない。そして、「不安の程度はやや和らいだものの、まだほとんどの人が不安を感じている」などと、原発による公害や原発のコストには言及せず、「不安」という情緒論に終始している。この分析力と報道力が、NHKの能力だとしても企業文化だとしても、どちらにしても問題だ。

*10-1:http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2016021101001336.html
(東京新聞 2016年2月11日) 福島のヤマメに貧血傾向 放射性物質多いほど
 東京電力福島第1原発事故で影響を受けた家畜や野生動物をテーマにしたシンポジウムが11日、東京都文京区の東京大で開かれた。東北大大学院の中嶋正道准教授(水産遺伝育種学)は、福島県内の河川で採取した魚の調査で、筋肉中に含まれる放射性物質の量が多いヤマメに貧血傾向がみられると報告した。中嶋氏によると、同県浪江町を流れる請戸川など県内の三つの河川で2012年末~14年にヤマメを採取し、血液などを調べた結果、筋肉中のセシウム137の量が多いほど、赤血球1個当たりのヘモグロビン量が減少するなど貧血傾向にあることが確認された。

*10-2:http://www3.nhk.or.jp/news/html/20160211/k10010405331000.html
(NHK 2016年2月11日) 原発「現状維持」26% 「減らすべき」49% NHK調査
 東日本大震災の発生から5年になるのを前にNHKが行った調査で、今後、原子力発電所をどうすべきだと思うか尋ねたところ、「増やすべきだ」と「現状を維持すべきだ」が合わせて29%だった一方、「減らすべきだ」が49%、「すべて廃止すべきだ」が22%でした。NHKは、去年12月、全国の16歳以上の男女3600人を対象に、調査員が訪問して調査用紙を配る「配付回収法」による世論調査を行い、調査の対象になった人の71%に当たる2549人から回答を得ました。この中で発電について最も重要だと思うことを尋ねたところ、「電気料金が安いこと」が13%、「地球温暖化など環境への影響が少ないこと」が30%、「安定して十分供給できること」が28%、「安全に発電できること」が29%でした。原発事故が起きた2011年の12月に行われた調査と比べると、「安全に発電できること」が13ポイント減った一方、「地球温暖化など環境への影響が少ないこと」が11ポイント増えました。「今後、原発をどうすべきだと思うか」という質問に対しては、「増やすべきだ」が3%、「現状を維持すべきだ」が26%、「減らすべきだ」が49%、「すべて廃止すべきだ」が22%でした。過去の調査との比較では、「増やすべきだ」と「現状を維持すべきだ」と答えた人は、前回2013年より6ポイント増え、2011年と同じ水準でした。「減らすべきだ」は、前回より3ポイント増え、2011年より2ポイント減りました。「すべて廃止すべきだ」は、前回より8ポイント減りましたが、2011年より2ポイント増えました。原発から出る高レベル放射性廃棄物、いわゆる「核のゴミ」の最終処分場の問題について、今後原発をどうすべきかを考えるにあたって、どの程度考慮するかという質問に対しては、「大いに考慮する」が52%、「ある程度考慮する」が35%と考慮するという答えが87%を占め、「あまり考慮しない」が10%、「全く考慮しない」が2%でした。今回の調査では、福島県と宮城県それに岩手県の3県でも同時に16歳以上の1368人を対象に同様の方法で調査を行い、72%に当たる987人から回答を得ました。この中で、廃炉作業が進められている福島第一原発の現状について尋ねたところ、「不安だ」が50%、「どちらかといえば、不安だ」が42%で、合わせて92%の人が不安に感じていると答え、「どちらかといえば、不安ではない」が6%、「不安ではない」が1%でした。2013年の調査と比べると、「不安だ」が12ポイント減って「どちらかといえば、不安だ」が10ポイント増え、不安の程度はやや和らいでいるものの、まだほとんどの人が不安を感じていることがうかがえます。


PS(2016年2月13日追加): *11のように、丸川環境大臣が1ミリシーベルトの除染基準について、「何の科学的根拠もない」などと根拠もなく発言し、2月12日に「福島をはじめ、被災者に改めて心からおわびしたい」と謝罪したそうだが、詫びの内容はまだ矮小化されている。何故なら、「何の科学的根拠もない」という発言は、被災者だけでなく、科学的根拠を持って行動している人の人格権を傷つけた上、無知なのは丸川大臣本人だからだ。そのため、「無知で思考力がなかったため、科学的根拠を持って行動している人を逆に根拠もなく誹謗中傷して、大変申し訳なかった」と明確に詫びたとしても、許すか否かは人格権を傷つけられた側が決めるものだ。
 なお、原発労働者の白血病労災認定基準は「年間5ミリシーベルト以上」で、チェルノブイリ原発事故によるウクライナの移住権利区域も「年間5ミリシーベルト以上」であるのに、「日本の一般住民の被曝限度は、年間1~20ミリシーベルトでよい」と主張する人もいるが、それでは甘すぎるため、そう主張する人は、被災者の立場になって物事を考えられるよう、家族を連れてこのような場所に移住すべきで、それには原発推進派の議員、経産省・厚生労働省、NHKをはじめとするメディア、電力会社・原発推進企業の本社機能などが該当するだろう。

*11:http://mainichi.jp/articles/20160213/k00/00m/040/113000c
(毎日新聞 2016年2月12日) 被ばく線量発言を撤回 被災者におわび
 丸川珠代環境相は12日の記者会見で、東京電力福島第1原発事故後に定めた除染などの長期目標について「何の科学的根拠もない」などとした発言を撤回した。これまで「記憶がない」と発言を事実上否定していたが、5日後になってやっと自分の発言と認め、「福島をはじめ、被災者に改めて心からおわびしたい」と謝罪した。閣僚の辞任は否定した。丸川氏は「福島の皆さんと信頼関係を保つ上で、撤回すべきだと判断した。福島の思いに応えるのが私の責任だ」と述べた。これ以上、発言を否定し続ければ、福島県など被災自治体との関係がさらに悪化するうえ、野党も国会で追及を強める構えを見せており、発言撤回で事態を収拾させる思惑がある。丸川氏は7日、長野県松本市内で開かれた自民党参院議員の会合で講演し、除染の長期目標について「科学的根拠もなく、時の環境大臣が決めた」と述べたことが報じられ、発覚した。当時の環境相は民主党の細野豪志政調会長で、民主党が閣僚辞任を求めていた。国会答弁などでは「そういう言い回しを使ったか記憶にない。伝えようとした趣旨が伝わらず、言葉足らずで申し訳ない」と述べていたが、12日になって発言を記録したメモを点検し、会合出席者の証言から「自らの発言」と確認をしたという。福島県知事にも電話で謝罪した。長期目標は民主党政権時に定められ、自然放射線などを除いた一般人の通常時の年間被ばく線量を1ミリシーベルト以下にすることを目指して除染などを進めるとしている。丸川氏は「1ミリシーベルト」について「達成に向けて政府一丸で取り組む」と述べ、引き続き長期目標として維持する方針を強調した。


PS(2016年2月16日追加): *12-2のように、国際放射線防護委員会(ICRP)勧告は、公衆被曝線量限度を、1977年勧告で年間5ミリシーベルト以下としているが、1985年勧告では数年間は5ミリシーベルト以下を許容しその後は年間1ミリシーベルト以下とし、1990、2007、2012年勧告では数年間の5ミリシーベルト以下という文言もなくなって年間1ミリシーベルト以下としている(http://www.rri.kyoto-u.ac.jp/NSRG/etc/13-10-3Nitiben.pdf#search='WHO+%E5%B9%B4%E9%96%93%E5%85%AC%E8%A1%86%E8%A2%AB%E6%9B%9D%E7%B7%9A%E9%87%8F%E9%99%90%E5%BA%A6 参照)。従って、ICRPの公衆被曝線量限度は年間1ミリシーベルト以下であるにもかかわらず、「追加被曝線量の長期目標を年間1ミリシーベルト」とするのも国際基準より甘く、丸川大臣の言葉はもちろん軽すぎるため、どういう志を持って環境大臣をしているのか聞きたい。
 また、*12-1のように、島尻沖縄北方大臣が北方領土の一部である歯舞群島の「歯舞」を読めなかったというのは、北方領土交渉の重要なKey Wordであって単なる固有名詞の読み方の問題ではないため、どういう意思を持って北方領土交渉を行っているのか(もしくは何もやっていないのか)を聞きたいところだ。そして、この傾向は、女性大臣だけでなく、男性大臣にもある。

*12-1:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12210350.html
(朝日新聞社説 2016年2月16日) 丸川環境相 撤回しても残る「軽さ」
 国が追加被曝線量の長期目標として示した年間1ミリシーベルトについて、7日の講演で「『反放射能派』と言うと変ですが、どれだけ下げても心配だという人は世の中にいる。そういう人たちが騒いだ中で、何の科学的根拠もなく時の環境大臣が決めた」などと発言した。翌日の信濃毎日新聞が報じた。放射性物質の除染や、追加被曝の抑制などは、安倍内閣の最重要課題の一つである。原発事故からまもなく5年。除染だけでは長期目標の達成が難しい地域がまだ残り、住民の帰還が進まない現状がある。長期目標は、国際放射線防護委員会が原発事故から復旧する際の参考値とする「年1~20ミリシーベルト」の最も厳しい水準だ。1ミリシーベルトに決まった背景には、安全や安心を求める地元福島の要望もあった。一日も早い帰還を願う住民の思いと、長期目標をどう整合させるか。さまざまな複雑な要素を考慮して決められ、いまなお試行錯誤が続く難題である。丸川氏がそうした経緯を知らなかったとすれば、不勉強と言われても仕方がない。それとも、経緯を知ったうえで、決定当時の民主党政権をおとしめるための発言だったのか。さらに深刻なのは発言が報じられて以降の二転三転ぶりだ。国会質問や取材に「こういう言い回しをした記憶は持っていない」などと答え続け、一転して「言ったと思う」と認めたのは12日朝、発言を撤回したのはその日夕方になってからだ。本当に発言内容を忘れたのか。記憶がないと言っていれば、いずれ国民が忘れてくれると思ったのか。いずれにせよ、閣僚としての適格性が疑われる発言というほかない。丸川氏だけではない。安倍内閣の言動の「軽さ」を印象づける場面は他にもある。島尻沖縄北方相は記者会見で、北方領土の一部である歯舞(はぼまい)群島の「歯舞」を読めず、秘書官に問う場面があった。安倍首相も、自民党のインターネット番組で、2014年に北朝鮮が拉致被害者らの再調査を約束した「ストックホルム合意」を、中東和平の「オスロ合意」と間違えた。確かに、言い間違いや思い違いは誰にでもある。ただ、原発事故対応や北方領土、拉致問題はいずれも安倍内閣が重要課題に掲げるテーマだ。閣僚の資質とともに、内閣としての姿勢が問われかねない。

*12-2:http://www.rist.or.jp/atomica/data/dat_detail.php?Title_No=09-04-01-08
<概要>ICRP(国際放射線防護委員会)による線量限度は、個人が様々な線源から受ける実効線量を総量で制限するための基準として設定されている。線量限度の具体的数値は、確定的影響を防止するとともに、確率的影響を合理的に達成できる限り小さくするという考え方に沿って設定されている。水晶体、皮膚等の特定の組織については、確定的影響の防止の観点から、それぞれのしきい値を基準にして線量限度が決められている。がん、遺伝的疾患の誘発等の確率的影響に関しては、放射線作業者の場合、容認できないリスクレベルの下限値に相当する線量限度と年あたり20mSv(生涯線量1Sv)と見積もっている。公衆に関しては、低線量生涯被ばくによる年齢別死亡リスクの推定結果、並びにラドン被ばくを除く自然放射線による年間の被ばく線量1mSvを考慮し、実効線量1mSv/年を線量限度として勧告している。


PS(2016年2月17日追加):*13の「みやまスマートエネルギー」は、環境負荷が少なく、好意が持てる。今後は、見守り・その他のサービスもセットにできるだろう。

*13:http://qbiz.jp/article/80823/1/ (西日本新聞 2016年2月17日) 電力の半分は地元太陽光 みやまスマートエネルギー 水道とのセット割プランも
 福岡県みやま市などでつくる電力会社「みやまスマートエネルギー」は16日、4月から開始する家庭向け電力販売の料金プランを発表した。調達する電力のうち約半分を地元の太陽光発電分が占めるのが特徴で、離島を除く九州全域に販売する。一般的なプランでは、使用量の多い家庭ほど料金が割安になる。17日から予約を受け付ける。一般的なプランは、契約容量30アンペア以上が対象。月間の基本料金を九州電力よりも低く抑え、300キロワット時を超える分の単価を割安にした。みやま市内約2千世帯の電力使用データを基にしたモデル家庭(契約容量60アンペア、年間使用量6472キロワット時)では、九電の現行プラン「従量電灯B」に比べ、年間約4千円お得になると試算。休日の電気料金が割安になるプランとオール電化向けプランもある。親子間など親族との一括契約で基本料金を割り引くほか、市内世帯向けに水道と電力とのセット割引も設けた。また、電気料金の支払額に応じて独自ポイントを付与。たまったポイントで、インターネット上の仮想商店街にある約100店舗から地元の農産物などを購入できる。みやまスマートエネルギーは九州全域での契約目標を掲げていないが、みやま市内では3年後に約1万4千世帯のうち約7割への供給を目指す。磯部達社長は「『地産地消』電力を多くの人たちに勧めていく。太陽光だけでなく、水力や風力など再生可能エネルギーの比率を高めたい」と述べた。

| 原発::2015.11~ | 01:23 PM | comments (x) | trackback (x) |
2015.10.27 もう低コストの安定電源という言い訳は通らないのに、川内原発・伊方原発再稼働とは・・ (2015年10月28日、29日、30日、31日、11月3日、28日に追加あり)
         
 パブリック・ 政府のエネル 大手メディア   フクイチ作業員   一般住民の放射線防護
コメント結果 ギー・ミックス   の報道     の被曝状況   (平時は1mSv以下で、「100mSv
                                         以下なら健康への影響はない」
                                         という科学的根拠はない)
(1)東電福島第一原発事故(以下、“フクイチ”)後について
 *2-1のように、現在のフクイチは、「①周辺に“怪しい霧”が発生し、近くにいると異様な日焼けをする」「②港湾内外の海水から検出される放射性物質の濃度が上昇している」「③1~3号機から溶け落ちた大量の核燃料デブリが地中へメルトアウトして地下水流の汚染をより高めている可能性があり、プルトニウムは含まれていないため、3号機のデブリは格納容器の底に留まっているか、爆発時に外に放出してしまった可能性が高い」「④メルトアウトした核燃料デブリが、今も核分裂反応を起こしているらしい」などである。そして、いまだに「中のことはよくわかっていない」などと曖昧なことを言っているのは、「わかっているが、言えない」ということで、ここまで国民を粗末にする、技術的にもずさんでチェルノブイリより劣る対応が、現代の日本にあってよい筈がない。

 そして、*1-1のように、フクイチ後の作業で被曝した後に白血病になった元作業員に、労災保険が認定された。これまで、白血病の労災が認められるには、年5ミリシーベルト以上を被曝し、作業開始から発症まで1年以上あることが基準だが、この男性の累積被曝線量は19.8ミリシーベルトであり、そのうち大半の15.7ミリシーベルトをフクイチでの作業が占めたため、福島県の富岡労働基準監督署がフクイチでの被曝が大きな原因と判断したそうだ。厚労省は「科学的に被曝と健康影響の因果関係を証明したわけではない」としているが、フクイチの収束作業で白血病も含む癌を発症したとする申請は既に8件も出ており、因果関係があると考える方が自然だ。

 また、*1-2のように、放射能汚染されたガレキの撤去作業をしていたフクイチの元作業員(53歳、男性)が、4か月で56・41mSv被曝し、作業後11か月で転移ではない3つ癌(胃癌、結腸癌、膀胱癌)を同時に発症して、東京電力らを相手に損害賠償請求訴訟を起こしたそうだ。Aさんの被曝線量は年間上限の50mSvを少し超えただけだったとしても、線量計をはずして働いたり、放射線値の高いガレキを直接抱えたりしたのであれば、線量計に出た数値以上に被曝しており、転移ではない3つの癌はそれらの結果として発生したのだろう。

 なお、*1-3のように、岡山大大学院の津田教授(生命環境学)が、国際環境疫学会の医学専門誌エピデミオロジー(疫学)に、「福島県が福島原発事故当時18歳以下だった県民を対象に実施した健康調査の結果を分析したところ、甲状腺がんの発生率が国内平均の20~50倍に達していた」という内容の論文を発表された。そして、都内の外国特派員協会の会見で「①福島県では小児や青少年の甲状腺がんの過剰発生がすでに検出されており、多発は避けがたい」「②チェルノブイリ原発事故の経験は生かされず」「③チェルノブイリ事故と比べて放射性物質の放出量は10分の1と公表されたが、もっと大きな放出・被曝があったと考えざるを得ず」「④今後、患者数が爆発的に増える可能性がある」と示唆されたそうだ。この発表を「時期尚早」として、癌と原発事故の因果関係を否定するのは、非科学的であるとともに、国民の命を大切にしない人権侵害である。

 さらに、*1-4のように、外務省が1984年、国内の原発が戦争やテロ等で攻撃を受けた場合は急性被曝で最悪1万8千人が亡くなり、原発の約86キロ圏が居住不能になると試算していたにもかかわらず公表されなかったのだそうで、現在、再稼働し始めている原発周辺の住民は、そういう前提で考えるべきである。これまでは、「危険性を知らなかった」という理由で地元住民に責任はなかったが、これからは、「危険を承知で交付金目的の原発再稼働をさせたのだから、自己責任だ」と言われても仕方あるまい。

 しかし、経産省が2030年の電源構成(エネルギーミックス)を決めるために国民から意見を募った「パブリックコメント(意見公募)」では、*1-5のように、原発への依存度をさらに引き下げるかゼロにするよう求める意見が約9割に上ったにもかかわらず、経産省は原発割合を「20~22%」として公募意見を「黙殺」し、意見公募を単なる儀式にして、あらかじめ予定していた電源構成に決めた。権力で自然現象を変えることはできず、自然の摂理を無視した法律や基準は、次第にその不遜さが表れるのに、である。

 なお、*2-2のように、フクイチの避難者が「『避難の権利』を求める全国避難者の会」を結成したそうだが、これはフクイチを小さく見せ、地域振興するためには、住民(国民)の命を犠牲にしてもよいと考えている本末転倒の政治・行政に対抗する手段として重要だ。

(2)川内原発再稼働について
 鹿児島県の川内原発2号機は、*3-1のように、2015年10月15日に4年1か月ぶり再稼働し、今年8月に再稼働した1号機に続いて2基目となったそうだ。川内原発1号機は1984年7月4日、2号機は1985年(昭和60年)11月28日に営業運転を開始して約30年経過しており、川内原発の蒸気発生器は中を通る細い管に傷が入るトラブルがたびたび見つかり、原発に反対するグループからは「このまま、再稼働させるのは安全性に問題がある」と指摘されている。

 また、*3-2のように、九電川内原子力総合事務所の藤原伸彦所長は、2号機の稼働が約4年ぶりであることに触れ「何が起こるか分からないという緊張感を持ち、営業運転まで当たりたい」と述べたそうだが、川内原発前では、反原発派の100人が集会を開催して「再稼働のスイッチを押すな」と声を上げ、福岡市の九電本店前でも抗議する人たちの姿が見られたそうだ。

 東京新聞も、*3-3のように、2011年3月のフクイチ事故後、新規制基準に基づく審査に適合した原発として川内原発の再稼働を取り上げ、夏の電力需要ピークも原発なしで乗り切った九州で、太陽光発電の買い取りを制限しながら、複数の原子炉を近くで稼働させるのは危険性だとしている。また、新規制基準に合格しても、火山の巨大噴火への備えはなく、鹿児島県の伊藤知事らは「広域に避難するような事態にはならないだろう(いわゆる想定外)」と楽観的に見て再稼働を認めているのだ。

 そのため、南日本新聞も、*3-4のように、福島原発事故では放射性物質が立地自治体の外にまで拡散し、局地的に放射線量の高い「ホットスポット」も見つかり、当初は川内原発30キロ圏市町の多くが、立地自治体並みの協定を求め、それは住民の不安を踏まえれば当然だった筈で、少なくとも避難対象地域となる半径30キロ圏までは、同意が必要な「地元」と解すべきだとしている。私は、同意が必要な「地元」は、過酷事故時に被害を受ける80キロ圏もしくは250キロ圏だと考えている。

(3)玄海原発について
 フクイチで拡散した放射性物質は、当時の防災対策重点区域だった10キロ圏を超え、50キロ圏の福島県飯舘村を汚染して全村避難に追い込んだ。そのため、*4-1のように、佐賀新聞社の佐賀県民世論調査で、従来の手続きを適切とした県民は15%に満たず、80%以上の県民が地元の範囲を広げるべきだと回答したそうだ。玄海原発の半径30キロ圏内には、立地自治体の東松浦郡玄海町のほか、佐賀県唐津市、伊万里市、福岡県糸島市、長崎県佐世保市、平戸市、松浦市、壱岐市が含まれ、影響を受ける人口や産業が大きすぎるため、私は、いろいろな資源の多いこの地域でわざわざ原発を行うよりも、筑肥線を複線化して呼子・玄海町、伊万里、松浦、平戸などまで延長する方が、将来に役立つ投資になると考えている。

 そのような中、半径30キロ圏内の同意や説明を省略して、*4-2のように、九電の黒字化のために原発再稼働をすることは許されず、このようなことを続ければ、単に価格だけの問題ではなく、環境という視点から国民の新電力への切り替えが進むだろう。

 また、*4-3のように、「玄海原発プルサーマルと全基をみんなで止める裁判の会」(石丸初美代表)は、佐賀市の中央大通りで抗議活動を行い、「①フクイチの犠牲を踏みにじる暴挙」「②フクイチは収束どころか、まだまだ続いている」「③(火山対策や避難計画の不備を挙げて)原発事故は起きる。原発事故は地球を滅ぼす。そんな原発はいらない」「④山口知事は、佐賀のことは佐賀で決めるといって当選した。知事は再稼働の同意権を持っており、住民説明会や地元の範囲など国任せではなく、県民の立場で判断すべき」と批判し、即時停止を訴えたとのことで、そのとおりだ。

(4)伊方原発再稼働について
 *5-1のように、佐田岬半島に位置する伊方町にある四国電力伊方原発3号機の再稼働をめぐる陳情の採択について、町議会の特別委員会の審議は非公開とされ、早期再稼働を求める陳情3件が全員一致で採択されたそうだ。そして、愛媛県議会も再稼働を認める決議案を本会議で可決し、中村知事は、*5-2のように、2015年10月26日、伊方再稼働に同意した。

 中村知事は「非常に重い責任を伴う判断」「国の考え方、四国電力の取り組み姿勢、地元の議論を総合的に判断した」などとして再稼働に同意する意思を伝えているが、交付金目当てで再稼働に進んだ責任を、事故時にどう負えるのか、国の考え方、四国電力の取り組み姿勢が何故よいのかについては、説明がとんでいるため不明だ。瀬戸内海に面した原発で過酷事故が起きれば、その事故が瀬戸内海に与える影響は太平洋の比ではないのに・・。

<東電福島第一原発事故(“フクイチ”)の影響>
*1-1:http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201510/CK2015102102000134.html (東京新聞2015年10月21日)福島事故後被ばくで初の労災認定 白血病発症の元作業員
 厚生労働省は二十日、東京電力福島第一原発事故後の作業で被ばくした後に白血病になった元作業員に、労災保険を認定した。事故収束作業に伴う白血病の発症で労災が認められたのは初めて。厚労省によると、労災が認められたのは発症時三十代後半だった男性。建設会社の社員として二〇一一年十一月~一三年十二月、複数の原発で作業した。一二年十月以降の一年一カ月間は福島第一を担当。原子炉建屋に覆いを造ったり、使用済みの防護服などを焼却する施設を建設した。男性は一三年十二月に福島第一を去った後に体の不調を感じ、白血病と診断され労災申請した。現在は通院治療している。白血病の労災が認められるには、年五ミリシーベルト以上を被ばくし、作業開始から発症まで一年以上あることが基準。男性の累積被ばく線量は一九・八ミリシーベルトで、福島第一での線量は大半の一五・七ミリシーベルトを占めた。福島県の富岡労働基準監督署は、厚労省の専門家による検討会の見解を聴いた上で、福島第一での被ばくが白血病の大きな原因になった可能性があると判断した。男性には医療費や休業補償が支払われる。厚労省は「労災認定は補償が欠けることがないよう配慮した行政上の判断で、科学的に被ばくと健康影響の因果関係を証明したわけではない」としている。事故前に全国の原発で白血病や悪性リンパ腫などの労災を認められた作業員は十三人。福島第一の収束作業で白血病も含むがんを発症したとする申請は八件。今回の男性を除く七件の内訳は三件が不支給、一件が取り下げ、三件が調査中。福島第一原発での作業をし、白血病となった男性が初めて労災認定されたことに、作業員からは「認められてよかった」との声が上がったが、収束作業の現場が被ばくとの闘いであることは変わりない。他のがんなどの労災認定には高いハードルが設けられていることなど、作業員を取り巻く環境は課題が山積している。白血病の認定条件の一つは「年五ミリシーベルト以上の被ばく」。東電のまとめによると、事故発生後、福島第一での作業に関わって累積で五ミリシーベルト以上被ばくした人は二万人強いる。二〇一一年度だけで一万人以上が五ミリシーベルト超被ばくしていることなどから、「累積五ミリシーベルト以上」の二万人強の多くが、「年五ミリシーベルト以上」という条件に当てはまるとみられる。仮に白血病になった場合、救済の道が開けたことは安心材料になる。ただ、胃がんなどでは明確な基準が定まっておらず、一〇〇ミリシーベルト以上の被ばくが認定の一つの目安とされるなど、白血病に比べ厳しい運用がされている。技術者の作業員は「がんになるのでは、と不安になることもある。どうすれば認定されるのか、決めてほしい」と話した。別の作業員も「福島第一で命をかけて働いている。(国は)家族のためにも救済側に立ってほしい」と訴えた。胃など三カ所のがんになった元作業員は、高線量の作業をしたが、記録上の線量が一〇〇ミリシーベルトに満たないなどとして労災が認められなかった。この男性を含め、線量計を低線量の場所に置いて作業していたと証言した作業員は少なくない。その場合、実際の被ばく線量は記録より高くなる。現場では、がれきが除去されるなどして当初よりは線量が下がった。現在はタンク増設や敷地内の舗装が中心のため、作業員の被ばく線量も全般的には低めで推移している。だが今後、廃炉作業は原子炉へと近づく。ベテラン作業員は「来年はもっと高線量の作業が増える。がんになる人が増えたら、福島第一に来なくなる人が出てくるかもしれない」と懸念した。
<東電の広報担当者の話> 作業員の労災申請や認定状況について当社はコメントする立場にない。今後も作業環境改善に取り組み、被ばく管理を徹底していく。

*1-2:http://news.livedoor.com/article/detail/10747967/
(週刊女性 2015年10月24日) 第一原発元作業員の53歳、作業11か月で3つのがんを同時発症
○北海道に住む53歳男性は、膀胱がん、胃がん、結腸がんを発症した
○福島第一原発の元作業員で、放射能汚染されたガレキの撤去作業をしていた
○男性は9月、東京電力らを相手取り、損害賠償を求める訴訟を起こした
 わずか11か月間で膀胱がん、胃がん、結腸がんを発症。それも転移ではなく別々の発症だ。しかも、53歳という若年期での同時発症は極めてまれだ。汚染された樹木を高圧洗浄する作業員。除染による被ばくの影響も危惧されている。3つのがんに見舞われたのは北海道札幌市に住む男性(現在57)。仮にAさんとしておく。Aさんは長年“一人親方”として重機のオペレーターに従事していた。その腕と経験を買われ、知人から誘われたのが福島第一原発の収束作業だった。簡単に言えば、放射能汚染されたガレキ等の撤去作業だ。原発爆発事故からわずか数か月後に誘いを受けたとき、Aさんは「行きたくない」と思った。だが、どうしてもとの誘いを断れず、「いやいや行った」のだ。就労は2011年7月4日から10月31日までの4か月間。Aさんは今、働いたことを悔いている。一般人の年間被ばく量は1ミリシーベルト(以下、mSv)と規制されているが、原発労働者の場合は、年間最大で50mSv(5年間の累計で100mSvまで)。だが、Aさんは4か月で56・41mSvと年間の上限に達したため退職する。そして翌’12年6月、’13年3月、5月と冒頭の3つのがんに侵されたのだ。自分がこうなったのは、原発の労働環境以外に考えられない。Aさんは今年9月1日、東京電力、その元請けの大成建設、そして一次下請け業者の山粼建設の三者を相手取り約6500万円の損害賠償を求める訴訟を札幌地裁に起こした。「福島第一原発での収束作業と発がんの因果関係を争うことでは初めての裁判になります」。こう語るのは、9人の弁護士で構成するAさんの弁護団団長、高崎暢弁護士(たかさき法律事務所)だ。「本人には身体をボロボロにされた憤りはあります。でもそれ以上に、もう被ばく者を出してはいけないとの思いが強いんです」。だが、Aさんの被ばく量は年間上限の50mSvを少し超えただけだ。これで、3つのがんとの因果関係を争えるのか。この疑問を高崎弁護士にぶつけると、「56・41mSvはあくまでも表向きの数字。なぜなら、Aさんらは線量計をはずして働いたこともあるし、放射線値の高いガレキなどを直接、人力で抱える危ない労働もしていたからです」と、その労働環境こそが被ばく者を生み出すと強調した。じつは、体調を崩して労災申請をした福島第一原発の元労働者は、Aさんを含め8人いる。1人だけ申請を取り下げたが、Aさんを含む5人に不支給が決定し、2人が審査中だ。行政の壁は厚い。それを突き破るための今回の提訴だ。しかし「闘える」と高崎弁護士は読んでいる。高崎弁護士は、かつて『原爆症集団訴訟』を担当。原爆症と認定されない被爆者数百人が、2003年から全国各地で認定を求めて提訴したもので、31の裁判のうち29で原告が勝訴、原告の訴えがほぼ認められた。この裁判で明らかになったことがある。2号機と3号機の間にある通路に積まれたガレキ。作業員が重機で撤去した。「ここから上の線量が危険で、ここから下が安全という“しきい値”が存在しないことです。つまり、低線量でも危険というのは司法の場で決着ずみ。今回も、線量にこだわらないで裁いてほしい」(高崎弁護士)。だが厳しい闘いになるのは間違いない。日本の原発で働いた労働者は推定数十万人だが、自らの被ばくについて訴えた裁判となると敗訴続きだ。日本初の原発労働者による裁判は、放射線皮膚炎と二次性リンパ浮腫に罹患した岩佐嘉寿夫さんが1975年に起こした。しかし、「被ばくを記録した証拠がない」ことで地裁、高裁、最高裁で敗訴。岩佐さんはその後、亡くなる。市民団体『原子力情報資料室』によると、最近では1979年2月から6月まで島根原発と敦賀原発で働いた福岡市の梅田隆亮さんが、2000年に心筋梗塞を発症したのは被ばくが原因だと’12年、福岡地裁に国を相手取り提訴した事例がある。ところが国は、「100mSv以下の線量による影響の推定には、非がん疾患を含めない」「心疾患は生活習慣病のひとつ」として因果関係を認めない(原爆症認定訴訟では、心筋梗塞は認定されている)。梅田さんとAさんに共通するのは、「放射線の人体への害悪や危険性を教えられていなかった」ことだ。梅田さんは責任感から、作業中にブザーが鳴らないよう、床面にたまった強度に汚染された汚水のふき取りなどの危険な仕事を、線量計を人に預けて作業した。Aさんらも長時間にわたる屋外作業をなかば強いられ、ガレキを直接持ち運び線量計をはずしてきた。高線量のホコリも吸った。ここに、大成建設と山粼建設は、労働者への「安全配慮義務違反」を犯したと高崎弁護士は主張する。現在、Aさんは経過観察のため定期受診をしているが、もうフルタイムで働けない。体調のいいときに短時間労働をこなすだけだ。「被ばく者は被害者。だけど、その現状を訴えると逆に差別されたり、仕事を干されます。だから、Aさんの提訴は勇気ある行為なんです」(高崎弁護士)。11月5日、札幌地裁での初公判でAさんは意見陳述を行う。安全性が無視され誰もがお払い箱になる現場で、2度と原発被ばく者を出さないために。

*1-3:http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/165762
(日刊ゲンダイ 2015年10月9日) 福島の甲状腺がん発生率50倍…岡山大・津田教授が警告会見
 岡山大大学院の津田敏秀教授(生命環境学)が6日付の国際環境疫学会の医学専門誌「エピデミオロジー(疫学)」に発表した論文に衝撃が広がっている。福島県が福島原発事故当時に18歳以下だった県民を対象に実施している健康調査の結果を分析したところ、甲状腺がんの発生率がナント! 国内平均の「50~20倍」に達していた――という内容だ。8日、都内の外国特派員協会で会見した津田教授は「福島県では小児や青少年の甲状腺がんの過剰発生がすでに検出されている。多発は避けがたい」と強調した。福島県で原発事故と子どもの甲状腺がんの因果関係を指摘する声は多いが、権威ある医学専門誌に論文が掲載された意味は重い。国際的な専門家も事態を深刻に受け止めた証しだからだ。津田教授は会見であらためて論文の詳細を説明。原発事故から2014年末までに県が調査した約37万人を分析した結果、「二本松市」「本宮市」「三春町」「大玉村」の「福島中通り中部」で甲状腺がんの発生率が国内平均と比較して50倍に達したほか、「郡山市」で39倍などとなった。津田教授は、86年のチェルノブイリ原発事故では5~6年後から甲状腺がんの患者数が増えたことや、WHO(世界保健機関)が13年にまとめた福島のがん発生予測をすでに上回っている――として、今後、患者数が爆発的に増える可能性を示唆した。その上で、「チェルノブイリ原発事故の経験が生かされなかった」「事故直後に安定ヨウ素剤を飲ませておけば、これから起きる発生は半分くらいに防げた」と言い、当時の政府・自治体の対応を批判。チェルノブイリ事故と比べて放射性物質の放出量が「10分の1」と公表されたことについても「もっと大きな放出、被曝があったと考えざるを得ない」と指摘した。一方、公表した論文について「時期尚早」や「過剰診断の結果」との指摘が出ていることに対しては「やりとりしている海外の研究者で時期尚早と言う人は誰もいない。むしろ早く論文にしろという声が圧倒的だ」「過剰診断で増える発生率はどの程度なのか。(証拠の)論文を示してほしい」と真っ向から反論。「日本では(論文が)理解されず、何の準備もされていない。対策を早く考えるべき」と訴えた。「原発事故と甲状腺がんの因果関係は不明」とトボケ続けている政府と福島県の責任は重い。

*1-4:http://www.tokyo-np.co.jp/article/feature/nucerror/list/CK2015040802100010.html (東京新聞 2015年4月8日) 
【福島原発事故】被ばく死 最悪1.8万人 原発攻撃被害 84年に極秘研究
 国内の原発が戦争やテロなどで攻撃を受けた場合の被害予測を、外務省が一九八四(昭和五十九)年、極秘に研究していたことが分かった。原子炉格納容器が破壊され、大量の放射性物質が漏れ出した場合、最悪のシナリオとして急性被ばくで一万八千人が亡くなり、原発の約八十六キロ圏が居住不能になると試算していた。研究では東京電力福島第一原発事故と同じ全電源喪失も想定していたが、反原発運動が広がることを懸念し公表されなかった。八一年にイスラエル軍がイラクの原子力施設を空爆したことを受け、外務省国際連合局軍縮課が外郭団体の日本国際問題研究所(東京)に研究委託。成果は「原子炉施設に対する攻撃の影響に関する一考察」と題した六十三ページの報告書にまとめられ、本紙が情報公開を通じてコピーを入手した。報告書は出力百万キロワット級の原発が攻撃されたと仮定。原発の場所は特定せず、(1)送電線や発電所内の非常用発電機がすべて破壊され、すべての電源を失う(2)原子炉格納容器が爆撃され、電気系統と冷却機能を失う(3)格納容器内部の原子炉が直接破壊され、高濃度な放射性物質を含む核燃料棒などが飛散する-の三つのシナリオで検証した。このうち、具体的な被害が示されたのは(2)の格納容器破壊のみ。当時、米国立研究所が米原子力規制委員会(NRC)に提出した最新の研究論文を参考に、日本の原発周辺人口を考慮して試算した。それによると、緊急避難しない場合、放射性物質が都市部など人口密集地に飛来する最悪のケースでは一万八千人が急性被ばくで死亡。ただ、被害は風向きや天候で大きく変わるとして、平均では三千六百人の死亡になると試算した。五時間以内に避難した場合は最悪八千二百人、平均八百三十人が亡くなるという。急性死亡が現れる範囲について、報告書は「十五~二十五キロを超えることはない」と記述している。長期的影響としては、放射性物質セシウムなどで土壌汚染が深刻化すると指摘。農業や居住など土地利用が制限される地域は原発から最大で八六・九キロ、平均で三〇・六キロにまで及ぶとしている。最も被害が大きい(3)の原子炉破壊については「さらに過酷な事態になる恐れは大きいが、詳しい分析は容易ではない」と紹介。福島原発事故と同じ(1)の全電源喪失では、実際に起きた水素爆発の可能性に触れ「被害が拡大する危険性がある」と指摘しており、報告書が公表されていれば、事故の未然防止や住民避難に役立った可能性がある。八〇年代は、七〇年代の二度にわたる石油危機を受け、国は原発建設を積極的に推進。国内の原発十六基が運転を始めた。軍事攻撃が想定とはいえ、原子炉に重大な損害が生じれば深刻な被害が及ぶとのシナリオは世論の不安を呼び、国の原子力政策に水を差す可能性があった。報告書にも「反原発運動などへの影響」などと、神経をとがらせていたことをうかがわせる記述がある。原子力資料情報室の伴英幸・共同代表は報告書の存在を「知らなかった」とした上で「反対運動を理由にした非公開ならとても納得できない。テロの脅威が高まる中、原発のリスクを国民にもっと知らせるべきだ」と話している。
◆公表する理由がない
 外務省軍備管理軍縮課の話 報告書は保存されているが、作成部数や配布先など詳しい経緯は分からない。今後、公表の予定はない。積極的に公表する理由がない。
◆原発攻撃被害報告書 「福島」に生かされず
 軍事攻撃による原発の放射能被害を予測していた外務省の報告書。水素爆発した福島第一原発事故は地震と津波が引き金とはいえ、報告書が指摘していた「全電源喪失」の危機がシナリオ通りに再現された。三十年も前から原発の潜在的な危険性を知りながら、反原発運動の広がりを恐れて公表を控えた外務省。原発推進を掲げた当時の国策の下で、都合の悪い情報をひた隠しにする官僚の隠蔽(いんぺい)体質が浮かび上がる。 「限定配布の部内資料(『取扱注意』なるも実質的に部外秘)」「外務省の公式見解でないことを念のため申し添える」…。高度な秘密性を裏付けるように、報告書には当時の国際連合局軍縮課長が書いた「ことわりがき」が添えてある。当時、同局の審議官だった元外交官の遠藤哲也氏(80)は本紙の取材に「記憶が確かではない」としながらも「ショッキングな内容なので(非公表に)せざるを得なかったでしょうね」と話した。同氏によると、一般的に部内資料は省外への持ち出しが禁止されており、報告書が官邸や原子力委員会などに配布されていなかった可能性が高い。作成された二年後の一九八六(昭和六十一)年には旧ソ連・チェルノブイリ原発事故が起きたが、その時ですら報告書の公表はなく、原発の安全対策に生かされることはなかった。当時は米ソが核兵器の開発を競う冷戦時代。科学技術史が専門の吉岡斉・九州大教授(61)は原発の軍事攻撃を想定した報告書が公表されれば「国民の間で核兵器と原発が一体的に連想されることを心配したのではないか」と推測する。「国家と秘密 隠される公文書」(集英社新書)の共著者で、歴史学者の久保亨・信州大教授(62)も「原子力は、軍事に転用できる技術の最たるもの」と指摘する。久保教授が懸念するのは昨年十二月に施行された特定秘密保護法。安全保障やテロ対策などを理由に原発に関する情報が一段と制限され「闇から闇へ葬られかねない」と懸念を示している。

*1-5:http://www.tokyo-np.co.jp/article/economics/list/201510/CK2015102602000124.html(東京新聞2015年10月26日)公募意見の9割が「原発多すぎ」 電源構成で異論「黙殺」
 経済産業省が2030年度に目指す電源構成(エネルギーミックス)のうち、原発の占める割合を「20~22%」とする報告書をまとめる際に国民から意見を募った「パブリックコメント(意見公募)」で、原発への依存度をさらに引き下げるかゼロにするよう求める意見が約9割に上っていたことが分かった。寄せられたすべての意見を本紙が情報公開請求して取得し、分析した。政府は国民から意見を募集しながら全体傾向や詳細は明らかにしなかった。構成目標の最終決定にも反映させておらず、一般の人々からの異論を「封殺」するかのような国民軽視の姿勢が浮き彫りになった。経産省は今年六月に電源構成の原案を示し、六月二日~七月一日まで意見公募を実施。メールやファクスなどで二千五十七件(本紙集計)が寄せられた。しかし、同省は意見の全容を示さず、七月十六日に原案通り構成を決定。その際、件数と意見を部分的に抜粋し公表したにとどまった。本紙は開示された三千三百八十六ページの文書すべてを分析、内訳を分類した。原発については千六百十七件の意見があり、うち依存度を引き下げるかゼロにするよう求める意見は千四百四十九件で、89・6%だった。原案の依存度を支持するか、さらなる拡大を求める「維持・推進」は三十八件で2・4%にとどまり、賛否の判断が困難な意見は百三十件で8%だった。原発比率引き下げを求める理由は「老朽原発の稼働を前提としていて事故が心配」「使用済み核燃料の処分方法が解決していない」などが多かった。政府原案が「22~24%」とした太陽光や風力など再生可能エネルギーに関する意見は延べ千六百六件(原発への意見と重複分含む)。うち91・7%の千四百七十二件が「もっと増やす」ことを要求。原案の支持か、比率引き下げを求める意見は十四件(0・9%)にとどまった。行政手続法は各省庁が重要な指針などを決める際は意見公募し結果を公表するよう定めているが、公表範囲は各省庁の裁量に委ねられている。民主党政権下の一二年、将来の原発比率を決める際は政府は公募意見約八万八千件を分析、87%が「原発ゼロ」を支持していることを公表していた。
<電源構成見通し(エネルギーミックス)> 中長期的に日本がどんな電源に発電を頼るかについての比率。この見通しに沿う形で、政府は規制や財政支出を行い、電力各社も原発の運営方針や、再生エネルギーの活用策を決めるため、日本のエネルギー政策の基本となる重要な数字。家庭の省エネ目標もあり、国民生活へのかかわりも深い。2030年度時点の見通しは、14年4月に安倍政権が閣議決定したエネルギー基本計画に基づき、経産省の審議会の報告も反映し今年7月に策定した。

<フクイチの後始末>
*2-1:http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20151025-00055426-playboyz-soci (週プレNEWS 2015年10月25日) フクイチ周辺にだけ発生する“怪しい霧”に“異様な日焼け”が警告するものとは
 福島第一原発事故から4年半――。『週刊プレイボーイ』本誌では当時の総理大臣・菅直人氏とともに、“フクイチ沖1.5km”の海上から見た事故現場の現状をリポートしたーー。フクイチで今も続いている危機は、前回記事(「元総理・菅直人が初めての“フクイチ”海上視察!」)で指摘したベント塔の老朽化だけではない。事故発生以来、港湾内外の海水から検出される放射性物質の濃度も上昇するばかりなのだ。これは構内の地面から流れた汚染水と、フクイチ施設の地下を流れる汚染地下水が海へ漏れ出ている影響としか考えられない。さらに、1~3号機から溶け落ちた大量の核燃料デブリが地中へメルトアウトして、地下水流の汚染をより高めている可能性もある。そこで本誌は、フクイチ沖1500mの「海水」1リットルと、海底(深さ15m)の「海砂」約3㎏を採取し、専門機関に測定を依頼した。その結果、事故当時に大量放出された「セシウム137」(半減期約30年)と「セシウム134」(同約2年)が検出され、やはりフクイチ事故の影響が続いていることがわかった。さらに重要なのが、セシウムと同じくウラン燃料が核分裂した直後に放出される「ヨウソ123」(同約13時間)が、何度か変化して生まれる同位体の放射性物質「テルル123」(同約13時間)も微量ながら検出されたことだ。この海水は、採取1日後から約47時間をかけて測定したので、微量ながら「テルル123」が検出されたことは「採取の数十時間前くらいにフクイチからメルトアウトした核燃料デブリが核分裂反応を起こした?」という見方もできるのだ。では「海砂」の測定結果はどうか。船上に引き上げた限りでは、泥を含んだ様子もなく、生きたハマグリの稚貝も交じるきれいな砂だった。しかし測定結果を見ると、海水よりも多くの放射性物質を含んでいた。まず注目されるのが、核燃料そのものといえる「ウラン235」(同約7億年)と「セシウム134」「セシウム137」。それ以外に「タリウム208」(同約3分)、「アクチニウム228」(同約6時間)、「ラジウム224」(同3・66日)、「ユーロピウム」(同4・76年)など、セシウムよりも半減期が短い放射性物質もいくつか検出された。採取に立ち会った、フクイチ事故の汚染拡大パターンを研究する長崎大学院工学研究科の小川進教授(工学、農学博士)は、こう分析する。「このウラン235は自然界にも存在しますが、やはり採取場所からみてフクイチ事故で放出されたと判断すべきでしょう。そして、これは放射線科学の教科書的内容ともいえる基礎知識ですが、ウラン燃料が原子炉内で核分裂すれば、今回この海砂から検出された、すべての〝短半減期核種〟が発生します。しかし、もうフクイチの原子炉は存在しないので、これらの短半減期核種とウラン235の発生源は、デブリの臨界反応とみるのが理にかなっています。もしデブリが建屋の地中へ抜けているなら、海の汚染を防ぐのは至難の業になるでしょう。ただ、ひとつ気になるのは、3号機だけで使われていたウラン+プルトニウム混合燃料(MOX燃料)のデブリから発生するはずのプルトニウムが、この砂から検出されていないことです。もしかしたら3号機のデブリだけは、まだ格納容器内の底にとどまった状態なのかもしれません」(小川進教授)。今年5月に1・2号機の格納容器内へ投入した探査ロボットの映像からは、今のところデブリの落下位置は突き止められていない。しかし、フクイチ付近の海で放射能汚染が急に高まった昨年前半あたりから、1・2・3号機それぞれのデブリの位置と反応に大きな変化が起き始めた可能性がある。かつてフクイチ構内を作業員として取材したジャーナリストの桐島瞬氏が、こう推理する。「事故後しばらくは、1・2・3号機から蒸気や煙状の気体が出ていたと現場の作業員が話していました。いまだに中のことはよくわかっていないので、3号機のデブリが1・2号機とは違った場所で発熱しているとも考えられます。もうひとつ気になるのは、一昨年から海際近くの汚染水くみ出し井戸などで、濃度の高い“トリチウム”が検出されるようになったことです。この放射性物質は“三重化水素”とも呼ばれ、急速に水と結びつき、その水を放射能を帯びた特殊な水に変えます。フクイチの原子炉周辺は濃い霧に包まれることが多いのですが、これも放出量が増えたトリチウムの影響ではないかという意見も聞かれます」。空気中の水(水蒸気)と三重化水素が結びつけば分子量が大きくなるので、当然、霧が発生しやすくなる。そういえば今回の海上取材でも、南側の4号機から北側の5・6号機にかけて、約1㎞幅、厚さ20mほどの霧の帯がフクイチ構内の地上から高さ30~40m、巨大な原子炉建屋の上部3分の1ほどの空中に浮いていた。6、7月頃の福島県沿岸には「やませ」と呼ばれる冷たい風が吹き寄せ、浜通りの海岸地帯では朝晩に霧が立つことが多い。実際、今回の船上取材でも朝9時に久之浜港を出て、しばらくは沿岸のあちこちに霧がかかり、福島第二原発にも薄霧の層がたなびいていた。しかしフクイチの霧は、どうも様子が違った。気温の上がった昼近くになっても、他の場所よりも濃い霧の層がしつこく居座り続けた。少し強く海風が吹くと一時的に薄れるが、しばらくするとまたモヤモヤと同じ場所に霧の塊が現れた。この海上取材から10日後の8月2日には、3号機燃料プール内に落下した大型瓦礫を撤去する作業が行なわれた。その際にも、3・4号機付近から濃霧が湧き出すように見えるニュース画像が話題になった。このフクイチ上空の“怪霧”について、船上取材に同行した放射線知識が豊富な「南相馬特定避難推奨地域の会」小澤洋一氏も、後日、あれは気になる現象だったと話してくれた。「私は昔から海へ出る機会が多いのですが、フクイチだけに濃い霧がかかる現象は記憶にありません。凍土遮水壁の影響で部分的に地上気温が下がっているとも考えられますが、トリチウムが出ているのは事実なので、その作用で霧が発生する可能性は大いにあると思います。だとすれば、あの船上で起きた“気になる出来事”にも関係しているかもしれません」。その出来事とは、取材班全員が短時間のうちにひどく“日焼け”したことだ。フクイチ沖を離れた後、我々は楢葉町の沖合20㎞で実験稼働している大型風力発電設備「ふくしま未来」の視察に向かった。この時は薄日は差したが、取材班数名は船酔いでずっとキャビンにこもっていたにもかかわらず、久之浜に帰港した時には、菅氏とK秘書、取材スタッフ全員の顔と腕は妙に赤黒く変わっていた。つまり、曇り状態のフクイチ沖にいた時間にも“日焼け”したとしか考えられないのだ。「トリチウムは崩壊する際にβ(ベータ)線を放射します。これは飛距離が1m以内と短い半面、強いエネルギーを帯びています。私たちが1時間ほどいたフクイチ沖1500mの空気にも濃度の高いトリチウムが含まれていたはずで、それが皮膚に作用したのではないでしょうか」(小澤氏)。だとすれば、我々は、トリチウムによるβ線外部被曝を体験したのか…。とにかく、今回訪れた福島県内では多くの新事実を知ることができた。まず実感したのは、福島復興政策の柱として進められている除染事業が、避難住民を帰還させるに十分な効果を発揮しているか非常に疑わしいことだ。また、フクイチ事故で行方知れずになった燃料デブリが地下水、海洋汚染のみならず今後もさらに想定外の危機を再発させる恐れもある。やはりこの事故は、まだまだ厳重な監視が必要なステージにあるとみるべきなのだ。今回の現地取材に同行した菅直人氏は、フクイチ事故当時の総理としての行動と判断が賛否両論の評価を受けてきたが、今後も政治生命のすべてを「脱原発」に注ぐと宣言している。また機会をあらためて、次はフクイチ構内への同行取材を成功させ、事故現場の現状を明らかにしたいものだ…。

*2-2:http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201510/CK2015102502000113.html (東京新聞 2015年10月25日) 原発避難の権利確立を 全国組織、29日に設立集会
 東京電力福島第一原発事故の避難者らが「『避難の権利』を求める全国避難者の会」を結成し、二十九日に東京で設立集会を開く。強制避難と自主避難の壁を越え、全国に散らばった避難者のネットワークをつくり、政府や自治体に、避難の権利を保障する立法や支援策を求めていく考えだ。「さまざまな避難者に呼び掛けが伝わる工夫を」「住宅支援問題の取り組みは外せない」。七日夜、札幌市のアパートで福島市から妻子と自主避難した介護サービス業中手聖一さん(54)が、インターネット電話「スカイプ」で設立準備会の会議に臨んでいた。準備会メンバーは、福島県やその近隣から避難し、十都道府県で暮らす約十五人で、今夏ごろから話し合いを重ねてきた。この夜も活動方針や入会方法など、会議は三時間を超えた。同会が求める避難の権利を、中手さんは「避難する人もとどまる人も、自分の意思で選択できるよう等しく支援を受けられること」と説明する。政府は住民が帰還できる環境が整ったとして、これまでに福島県楢葉町などの避難指示を解除。放射線量が高い帰還困難区域以外の他の地域も二〇一七年三月までに解除する方針だ。福島県も自主避難者に対する住宅無償提供を同じ時期に打ち切ることを決めている。こうした状況に中手さんらは「避難の権利が切り捨てられようとしている」と危機感を抱き、政府と交渉できる全国組織が必要と考えたという。会では、避難の支援や健康診断の充実を政府に求めていくとともに、避難者の実態把握などにも取り組む方針だ。強制避難、自主避難にかかわらず入会でき、被災当時、どこにいたかも問わない。経済的な理由などで帰還した人も参加可能だ。避難者が抱える課題は一人一人異なり、行政からの支援にも格差がある。避難指示の解除により、自主避難の立場に変わる人が増える可能性もある。福島市から京都府木津川市に家族で避難し、中手さんと共に共同代表に就任予定の宇野朗子(さえこ)さん(44)は「お互いに理解して支え合い、分断を乗り越えたい」と話している。問い合わせは、中手さん、電080(1678)5562。

<川内原発再稼働>
*3-1:http://www3.nhk.or.jp/news/html/20151015/k10010270051000.html
(NHK 2015年10月15日) 川内原発2号機 きょう再稼働
 鹿児島県にある川内原子力発電所2号機は15日午前、原子炉を起動する操作が行われ、再稼働します。原発事故後に作られた新しい規制基準の下で国内の原発が再稼働するのは同じ川内原発の1号機に続き、2基目になります。川内原発は去年9月、東京電力福島第一原発の事故後に作られた新しい規制基準の審査に全国の原発で初めて合格し、1号機は、ことし8月に再稼働しました。これに続いて、2号機でも再稼働前に必要な検査を14日までに終え、九州電力は15日午前10時半から核分裂反応を抑える32本の制御棒を順次、引き抜いて2号機の原子炉を起動し、再稼働させることにしています。川内原発2号機は原発事故の半年後に定期検査に入って以降、運転を停止しており、稼働すれば4年1か月ぶりとなります。また、新しい規制基準の下、国内の原発が再稼働するのは同じ川内原発の1号機に続き、2基目になります。九州電力によりますと、再稼働後12時間程度で、核分裂反応が連続する「臨界」の状態になり、今月21日に発電と送電を開始するとしています。その後、運転の状態を確認しながら、徐々に原子炉の出力を高め、問題がなければ、来月中旬に営業運転を始める計画です。 .川内原発2号機とは川内原子力発電所2号機は昭和56年5月に建設工事が始まり、昭和60年11月に営業運転を開始しました。福島第一原発の事故の、およそ半年後から運転を停止した状態が続いています。その後、原発の新しい規制基準が作られ、これを踏まえて、九州電力は津波の被害を防ぐための海抜15メートルの防護壁を設置したり、移動式の大型発電機や非常用のポンプを整備したりしてきました。その結果、去年9月2号機は1号機とともに、全国の原発で初めて新しい規制基準に適合していると認められました。ことし6月からは再稼働に向けた設備や機器の検査、使用前検査が始まり、先月、原子炉に157体の燃料が入れられ、準備が最終段階に入っていました。一方、川内原発では原子炉の熱でタービンを回すための蒸気を作り出す蒸気発生器が、1号機は7年前に交換されましたが、2号機は昭和60年の営業運転開始以来、取り替えられていません。蒸気発生器では中を通る細い管に傷が入るトラブルがたびたび見つかっており、原発に反対するグループからは「このまま、再稼働させるのは安全性に問題がある」という指摘も出されています。これについて九州電力は、平成30年の定期検査に合わせて2号機の蒸気発生器を交換することにしており、「現段階でも、検査を通して安全性は十分確保されている」としています。この冬 自社のみで電力供給可能に九州電力が発表している、この冬の電力需給の見通しによりますと、最も多く見積もった需要は平成23年並みの厳しい寒さとなった場合で、1515万キロワットと予測しています。これに対し、川内原発1号機に続いて2号機も再稼働すれば、供給は最大で1648万キロワットとなり、8.8%の余力を確保できるとしています。九州電力は原発の運転停止によって需要の増える夏と、冬の時期にほかの電力会社から電力の融通を受けていましたが、今シーズンは冬としては平成22年以来5年ぶりに、自社のみで電力を供給できる見通しだとしています。避難計画 残る不安川内原子力発電所の周辺に住む住民からは1号機が再稼働したあとも、事故の際の避難計画などに不安の声が出ているとして、県や自治体は説明や対応を行っています。このうち、全域が川内原発の30キロ圏内に入る鹿児島県いちき串木野市では、原発事故の際、高齢者や入院患者などいわゆる災害弱者から不安の声が出ているとして、今月6日、市議会が県に対し、医療機関や福祉施設を対象にした説明会を行うことや、避難に必要な福祉車両の充実を図ることなどを求める意見書を提出しました。また、市には、住民から事故の際に避難する場所を事前に確認したいという要望が寄せられているため、市が用意したバスで避難所まで案内する取り組みも行っています。いちき串木野市まちづくり防災課の久木野親志課長は、「原発事故に対する住民の不安は根強いので、再稼働したあとも不安の声を丁寧に聞き取り、解消していく必要がある」と話しています。一方、鹿児島県の計画では、川内原発で事故が起きた際の住民の避難にバスも使うことになっており、県は、ことし6月、地元のバス協会やバス会社と協定を結びました。8月にはバス会社の担当者およそ70人を集め、初めての研修会を開きましたが、出席者の間には、「運転手や車体の除染に関して具体的な説明は聞けず、不安の残る内容だった」といった声があります。これについて県は、「研修会を繰り返し開き、理解を進めていきたい」としています。

*3-2:http://qbiz.jp/article/72800/1/
(西日本新聞 2015年10月15日) 九電、川内2号機再稼働 1号機に次ぎ全国2基目
 九州電力は15日午前、川内原発2号機(鹿児島県薩摩川内市、出力89万キロワット)を再稼働させた。東京電力福島第1原発事故後に策定された新規制基準に基づく原発の再稼働は、8月の川内原発1号機(同)に次いで全国で2基目。午前10時半、中央制御室からの遠隔操作で、核分裂を抑える制御棒を引き抜いて原子炉を起動させた。約12時間後の午後11時ごろ、分裂反応が安定的に継続する「臨界」に達する見通し。工程が順調に進めば21日に発電と送電を開始。11月中旬の営業運転を目指す。九電川内原子力総合事務所の藤原伸彦所長は、2号機の稼働が約4年ぶりであることに触れ「何が起こるか分からないという緊張感を持ち、営業運転まで当たりたい」と述べた。川内原発前では、反原発派の100人が集会を開催。「再稼働のスイッチを押すな」などと声を上げた。11日から座り込み、抗議のハンガーストライキをしている同市の自営業川畑清明さん(59)は「原発は命より経済を優先する社会の象徴。廃炉まで反対し続ける」と訴えた。福岡市の九電本店前でも抗議する人たちの姿が見られた。

*3-3:http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201510/CK2015101502000258.html (東京新聞 2015年10月15日) 川内2号機 再稼働 複数炉の危険、想定せず
 九州電力は十五日、川内(せんだい)原発2号機(鹿児島県薩摩川内市)の原子炉を起動し再稼働させた。二十一日に発電と送電を開始する。二〇一一年三月の東京電力福島第一原発事故後、新規制基準に基づく審査に適合した原発の再稼働は、今年八月の川内1号機に続いて二基目。2号機は十五日午前十時半に再稼働した後、約十二時間後に核分裂反応が安定的に続く「臨界」に達する見通し。営業運転への移行は十一月中旬を予定している。川内原発前や福岡市の九電本店前では、再稼働に反対する住民らが抗議の声を上げた。1号機では再稼働後の出力上昇中に復水器のトラブルが発生し、作業が一時中断した。2号機でも問題が起きれば再稼働に厳しい目が向けられるのは必至で、九電は慎重に作業を進める。瓜生(うりう)道明社長は十五日、「緊張感を持って安全確保を最優先に今後の工程を進めていく」とのコメントを発表した。十五日午前十時半に九電の作業員が川内原発の中央制御室で、2号機の原子炉内の核分裂を抑えていた制御棒の引き抜き操作を始め、原子炉が起動した。再稼働の前提となる規制委の審査には、川内原発のほか関西電力高浜3、4号機(福井県高浜町)、四国電力伊方3号機(愛媛県伊方町)が合格している。
◆福島事故の教訓どこへ
 夏の電力需要ピークも原発なしで乗り切り、その後も安定的な電力供給が続いている九州で再稼働二基目となる川内原発2号機が動きだした。原発は目先のコストは安く、九電の経営にとっては好都合だが、原発の内外とも多くの課題を積み残したままだ。東京電力福島第一原発事故が見せつけたのは、複数の原子炉が近くで稼働する危険性だ。1号機の水素爆発で全作業の一時中断を迫られ、3号機の爆発では突貫工事で完成したばかりの2号機の注水ラインがずたずたにされた。複数炉が悪影響を与え合い、事態を深刻化させた。しかし、原子力規制委員会の審査は、複数炉の問題をあまり考慮していない。「新規制基準さえ満たしていれば、各号機で対処できる」(田中俊一委員長)ことが大前提となっている。がれきで資材を運べなかったり、十分な要員が集まらなかったり事前の事故収束シナリオを外れるような事態は想定していない。国内で火山活動が活発化しているが、桜島もその一つ。周辺の姶良(あいら)カルデラなどの巨大噴火への備えも必要だが、監視態勢は不十分で、核燃料の緊急移送もまだ検討中だ。住民の避難計画も形はできているが、県のトップらは「広域に避難するような事態にはならないだろう」と楽観的にみて再稼働を認めている。
<川内原発> 鹿児島県薩摩川内市にある九州電力の加圧水型軽水炉。1号機が1984年、2号機が85年に営業運転を開始した。出力はともに89万キロワット。定期検査で1号機が2011年5月、2号機が同9月に停止した。13年7月、新規制基準の施行日に原子力規制委員会に審査を申請し、14年9月に全国の原発で初めて審査に適合した。1号機は今年8月11日に再稼働し、同14日に発電と送電を始めた。

*3-4:http://373news.com/_column/syasetu.php?ym=201510&storyid=70609
(南日本新聞 2015.10.23)[2号機発送電] 「川内方式」には反対だ
 九州電力は川内原発2号機の発電と送電を4年ぶりに始めた。これから出力を段階的に引き上げ、11月1日のフル稼働をめざす。すでに営業運転中の1号機は、出力上昇中に復水器の細管が破損し、計画に狂いが生じた。「1号機の経験を踏まえ、慎重にやっていく」と九電は述べた。根強い不安や反対を振り切っての運転再開である。スケジュールありきは許されない。営業運転30年を昨年迎えた1号機に続いて、2号機も来月には30年となる。そろそろ老朽化が懸念される。1号機は運転開始から24年後、「加圧水型炉のアキレスけん」と言われる蒸気発生器を交換した。しかし、2号機は東京電力福島第1原発事故の影響で、交換予定を2018年へ先送りしている。1号機の交換タイミングに比べるとほぼ10年遅れだ。安全上の問題はないのか。1号機以上に厳しい目が注がれていることを忘れてはならない。問題はまだある。原発再稼働の地元同意手続きで「川内方式」と呼ばれているものも、その一つである。川内原発では「鹿児島県と薩摩川内市で十分」と伊藤祐一郎知事が発言し、薩摩川内市議会の賛成陳情採択から2週間足らずで手続きを済ませた。安倍内閣も「川内原発の対応が基本的なことになる」(菅義偉官房長官)と、原発が立地する自治体に限定した川内方式を踏襲する姿勢だ。福島原発事故では放射性物質が立地自治体の外にまで拡散した。局地的に放射線量の高い「ホットスポット」も、半径20キロ圏外で見つかった。尻すぼみになったものの、当初は川内原発30キロ圏市町の多くが、立地自治体並みの協定を求めた。住民の不安を踏まえれば当然の判断だったはずだ。少なくとも避難対象地域となる半径30キロ圏までは、同意が必要な「地元」と解すべきだ。事故の教訓を忘れたような川内方式は同意できない。川内に続いて新規制基準に適合した関西電力高浜原発3、4号機でも、政府は福井県と高浜町の同意だけで十分との考えだ。5キロ圏の京都府舞鶴市などは、事故が起これば立地自治体並みの被害を受けるのは明らかである。川内方式をごり押しすべきではない。来年、電力自由化を控える九電にも聞きたい。「核のごみ」の処分、廃炉などの難題とどう向き合うか。誠実に答えてほしい。

<玄海原発>
*4-1:http://www.saga-s.co.jp/column/genkai_pluthermal/20201/238628
(佐賀新聞 2015年10月12日) 原発再稼働「同意地域広げて」80%超、県民世論調査
 被害が広域化した福島の原発事故後、再稼働の際に同意が必要な「地元」の範囲をどう定めるべきかが課題となっている。8月の川内原発の再稼働では鹿児島県と立地自治体の薩摩川内市に限られたが、佐賀新聞社の県民世論調査では、従来の手続きを適当とした県民は15%に満たず、80%以上が地元の範囲を広げるべきと回答した。玄海原発の半径30キロ圏内には、立地自治体の東松浦郡玄海町のほかに唐津市と伊万里市、福岡県糸島市、長崎県の佐世保、平戸、松浦、壱岐市が含まれる。世論調査では、川内原発のケースと同じ従来通りの立地自治体と県が地元範囲となる「玄海町と佐賀県」が14・7%にとどまった。これに対し、「福岡、長崎両県を含む30キロ圏内の自治体」が最も多い52・7%を占め、「佐賀県内の全自治体」も30・5%に上った。性別や年代、支持政党に関わらず、満遍なく同様の傾向となった。福島の事故で拡散した放射性物質は当時の防災対策重点区域だった10キロ圏を超え、50キロ圏の福島県飯舘村を汚染し、全村避難に追い込んだ。こうした実例から原発事故が起きれば立地自治体だけの問題ではなくなるとの思いが県民の中に根強くあることが浮き彫りとなった。地域別(16市郡)にみると、九電に立地自治体並みの権限拡大を求め、県内で唯一、安全協定を結んでいない伊万里市は、地元の範囲を「30キロ圏内の自治体」にすべきとの回答の割合が全市町で最も多い75%を占めた。ほかに玄海町と唐津市、有田町でも60%を超えた。政府は原発再稼働の手続きに関して「川内原発の対応が基本」(菅義偉官房長官)とし、半径30キロ圏内の自治体に避難計画の策定を求める一方、地元同意の範囲は「立地県の知事の判断を尊重する」と判断を丸投げしている。一方、山口祥義知事は8月の定例会見で、地元同意の範囲について「基本的には国が考えること」と述べた。これを受け、伊万里市の塚部芳和市長は「薩摩川内市の面積は玄海町に唐津市、伊万里市を合わせたぐらいの大きさ。位置関係が違うので、知事には国に働き掛けてほしい」と強調した。

*4-2:http://qbiz.jp/article/72889/1/
(西日本新聞 2015年10月16日) 九電、本格回復道半ば 電力自由化対策急務
 川内原発1、2号機(鹿児島県薩摩川内市)を相次いで再稼働させたことで、九州電力は2016年3月期の通期黒字が明確に見通せる状況になった。電力供給にも大きな余力が生まれる。ただ、16年4月には電力小売りの全面自由化が控え、業界の垣根を越えた大競争が始まる。玄海原発3、4号機(佐賀県玄海町)の再稼働に向けた手続きも道半ばで、直面する課題はなお尽きない。九電は川内原発2基の再稼働で月平均150億円の収支改善を見込む。2号機は21日から段階的に出力を上げ、機器トラブルなどがなければ、11月から再稼働による財務面への効果が本格的に出てくる見通し。16年3月期は5年ぶりに黒字化できる公算が大きくなった。電力供給面では、余力分を市場で販売できる。高負荷での稼働が続いた火力発電所の維持・補修作業にも順次、取り組む方針だ。だが、瓜生道明社長は株主への復配や社員の賞与復活など今後の利益配分については「さまざまな利害関係者がおり、バランスをとる。現時点でどうこうという答えは出さない」と慎重な構え。他の九電幹部からも、川内原発の再稼働による安堵(あんど)感はうかがえない。財務状況が好転するとはいえ「抜本的な改善には玄海原発2基の再稼働が不可欠」(幹部)だが、本年度内の再稼働は厳しい状況。引き続き経営効率化を図っていくという。原発が停止していた間に九電が失ったのは、それまで積み上げた利益だけではない。電気購入契約を新電力などに切り替え、九電から「離脱」した企業や自治体は、電気料金を抜本値上げする以前の3倍以上に増えた。電力小売り全面自由化は約5カ月後。なお自由度の限られた経営資源を使って、どれだけ魅力的な料金やサービスを提供できるか−。引き続き難しい対応を迫られる。

*4-3:http://www.saga-s.co.jp/column/genkai_pluthermal/20201/239751
(佐賀新聞 2015年10月15日) 川内2号機再稼働、佐賀市で抗議行動
 九州電力が川内原発(鹿児島県薩摩川内市)2号機を15日に再稼働させたことを受け、反原発の市民団体「玄海原発プルサーマルと全基をみんなで止める裁判の会」(石丸初美代表)は佐賀市の中央大通りで抗議活動を展開した。「福島第1原発事故の犠牲を踏みにじる暴挙」と批判し、即時停止を訴えた。石丸代表らメンバー約10人は抗議声明のビラを配り、「福島原発事故は収束どころか、まだまだ続いている」と指摘した。火山対策や避難計画の不備を挙げて「原発事故は起きる。原発事故は地球を滅ぼす。そんな原発はいらない」と呼び掛けた。さらに隣県を含む川内原発周辺の自治体住民が、説明会開催を求めているにも関わらず、九電が応じていない現状も批判した。近く原子力規制委員会の適合性審査が再開される玄海原発ついても「山口知事は、佐賀のことは佐賀で決めるといって当選した。知事は再稼働の同意権を持っており、住民説明会や地元の範囲など国任せではなく、県民の立場で判断すべき」と主張した。

<伊方原発>
*5-1:http://digital.asahi.com/articles/ASHB84Q6RHB8PTIL00P.html?iref=comtop_list_pol_f01 (朝日新聞 2015年10月16日) 原発の町 閉じた審議なぜ(考 民主主義はいま)
 愛媛県の佐田岬半島に位置する伊方町にある四国電力伊方原発3号機の再稼働をめぐる陳情の採択について、町議会の特別委員会の審議は非公開とされた。原発再稼働の行方は、住民にとって最大の関心事。議会制民主主義の下で選ばれた住民代表による議論は、公開を求める声があったにもかかわらず、なぜ閉ざされたのか――。早期再稼働を求める陳情3件が全員一致で採択された2日の伊方町議会原子力発電対策特別委員会は、現在手続きが進む「地元同意」の第一歩となった。6日に本会議でも採択し、9日に県議会も再稼働を認める決議案を本会議で可決した。中村時広知事と山下和彦町長は、同意の是非を近く判断するとしている。議会関係者によると、町議会では議会運営をリードする「主流派」10人と「非主流派」の6人に分かれる。運営方法を決める会議で非主流派議員から「再稼働の是非は住民の関心が高い。公開すべきだ」との意見が出たが、冒頭と最後の採決の公開だけになった。ふだん審議をめぐり、公開の是非が焦点となることはない。今回非公開とした判断の根拠は「議員のほか委員長の許可を得た者が傍聴することができる」という町の条例だ。必要と認める時は委員長の判断で傍聴人の退場を命じ、非公開にできる。委員長は非公開の理由を「忌憚(きたん)のない意見を聞きたいから」と説明した。主流派議員の一人は「非公開は全会一致を目指すためだった。議員を選んだ伊方町民の総意としても『よし、行け』なんだという結論を出したかった。立地自治体としてもめんように丸く収めたかった」と打ち明ける。もう一つ別の思惑もあったという。「賛成意見だけで議論が盛り上がらなかった場合、公開だと格好悪い。『反対意見も出ない伊方町ってどんな町なんや』と思われるのも嫌だった」。人口約1万人の町の今年度一般会計予算は約100億円。3割を原発による電源三法交付金や固定資産税が占める。町に落ちた「原発マネー」はこの40年間で約900億円。地元振興のための施設が各地に散らばる。非公開には反対したが、再稼働には賛成の立場を取った議員の一人は「原発なしの町政は考えられん。恩恵があまりにも大きすぎる」と漏らした。
■「議会の意味ない」
 議会は民意を代表しチェック機能を果たすべき存在だ。非公開の審議に60代の町民の男性は険しい表情で語った。「再稼働反対の町民はいるのに、議員は反対意見を言わない。しかも特別委は非公開。議員がどんな意見を持っているか、聞けるはずだったのに議会の意味がない」と、「政治」と「民意」の乖離(かいり)を嘆く。「町が長いものに巻かれようという考えだと、事故があったとき、町民が何か意見を言っても、国や県は聞く耳を持たないだろう」。一方、再稼働に賛成の住民は多い。別の男性は「様々な意見を表に出さないようにして、全会一致で賛成を表明した方が再稼働に向かいやすくなる」と話す。九州電力川内原発1、2号機が再稼働した鹿児島県薩摩川内市では「再稼働賛成」と「反対」の陳情が付託された市議会特別委員会の審議は公開だった。副委員長を務めた成川幸太郎市議は「非公開との声は全くなかった。よその議会のことをどうこう言えないが、非公開だと住民に変な疑念を持たれてしまうのでは」。原発の国の新規制基準作りに関わった勝田忠広・明治大准教授(原子力政策)は「町議の考えを知る大事な機会をなくし、町民が主体的に考えるきっかけも失わせた」と批判。「東京電力福島第一原発事故後、技術的な安全性は改善に向かっていると言えるが、地元の自治体が経済的に過度に原発に依存する体質について議論がない。そもそも原発はなぜ必要かという根源的な議論が必要だ」と指摘する。
     ◇
〈伊方原発〉 愛媛県伊方町の瀬戸内海側に1~3号機がある。再稼働に向けて準備が進む3号機は1994年に運転が始まった。東京電力福島第一原発と異なる加圧水型炉で、出力は89万キロワット。使用済み燃料から取り出したプルトニウムを混ぜた燃料を使うプルサーマル発電を計画している。

*5-2:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12036328.html
(朝日新聞 2015年10月26日) 伊方再稼働、県が同意 愛媛知事表明、地元手続き完了
 愛媛県の中村時広知事は26日、四国電力伊方原発3号機(同県伊方町)の再稼働への同意を表明した。これで地元同意手続きは完了となり、今後は原子力規制委員会による認可手続きや設備の使用前検査を経て、早ければ今冬以降に再稼働する見通し。原発の新規制基準ができて以降、地元同意は九州電力川内原発1、2号機(鹿児島県薩摩川内市)に次いで2例目。中村知事はこの日、松山市の愛媛県庁で、四電の佐伯勇人社長と面会。中村知事は「非常に重い責任を伴う判断だ」と述べ、「国の考え方、四国電力の取り組み姿勢、地元の議論を総合的に判断した」と、再稼働に同意する意思を伝えた。そのうえで、▽異常通報連絡の徹底や地元住民への真摯(しんし)な説明の継続▽県や市町が行う原子力防災対策への支援――など9項目を要請した。中村知事はその後、記者会見し、安全対策について県独自に四電に求めてきたことなどを解説。再稼働への同意を決断した理由に理解を求めた。22日には山下和彦町長が中村知事に同意の意思を伝えていた。中村知事は26日午後に上京し、林幹雄経済産業相に同意の意思を伝える。伊方原発の防災重点区域となる半径30キロ圏は、山口県上関(かみのせき)町の離島・八島(やしま)の一部も含まれるが、同意手続きには関わらなかった。30キロ圏で反対を表明する県内の自治体もなく、川内1、2号機のケースと同様、四電と安全協定を結ぶ原発立地自治体の伊方町と県のみの判断となった。1994年12月に営業運転を始めた伊方3号機は、2010年3月から原発の使用済み燃料から取り出したプルトニウムを混ぜた核燃料を使うプルサーマル発電をしていたが、11年4月に定期検査で停止した。今回の知事同意で、福島第一原発事故後、プルサーマル運転を地元自治体が初めて認めたことになる。
     ◇
 菅義偉官房長官は26日午前の会見で、中村知事が伊方3号機の再稼働への同意を表明したことを受け、「知事の理解を得られたことは極めて重要だ。引き続き、法令上の手続きに基づき、四国電力が安全確保を最優先に対応することが極めて大事だ」と述べた。


PS(2015年10月27日追加):そもそも、*6-1のような空母・潜水艦は戦争で使うものであるため撃沈される確率が高く、それが原子力を動力にしているのは危なくて仕方がない上、事故時に乗組員が退避するのでは周囲の人はたまったものではない。そのため、空母や潜水艦は真っ先に燃料電池船にすべきだし、*6-2のように、洋上風力発電などの自然エネルギーを利用して燃料電池を充電する漁船があれば、離島でも燃料費高に悩まされることなく漁業をすることができるのに、と考えている。

*6-1:http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201510/CK2015102302000149.html (東京新聞 2015年10月23日) 
原子力艦事故の避難判断基準 防災相、原発並みに変更を検討
 河野太郎防災担当相は二十二日、米軍空母など原子力艦で事故が起きた場合の避難判断基準の変更を検討する考えを示した。原発と同様、停泊地の周辺で放射線量が毎時五マイクロシーベルトを超えたら住民が避難や屋内退避を始めるよう、国の災害対策マニュアルを見直す。首相官邸で記者団に語った。現在の原子力艦事故の避難判断基準は、毎時一〇〇マイクロシーベルトで原発事故の二十倍。河野氏は「同じ放射性物質なのに(原発と)変える意味がない」と述べ、十一月に開く関係省庁や有識者の作業委員会で見直すとした。また河野氏は原子力艦事故の屋内退避の範囲が、空母の場合は半径三キロとされていると指摘。原発事故の原子力規制委員会の指針は半径三十キロ圏内となっており「原子力艦は、今のままでいいのか範囲を広げるのがいいのか(作業委で)議論してもらう」と述べた。内閣府によると、原子力空母や原子力潜水艦が入港する米海軍基地があるのは神奈川県横須賀市、長崎県佐世保市、沖縄県うるま市。

*6-2:http://qbiz.jp/article/73552/1/
(西日本新聞2015年10月27日) 洋上で風力発電を燃料電池に利用 エコ漁船へ研究会、長崎
 国立研究開発法人水産総合研究センター(横浜市)や長崎県、五島市などは26日、水素を燃料とする燃料電池漁船の導入を目指す「五島市離島漁業振興策研究会」を発足させた=写真。2020年度以降の実用化に向け、漁船の設計に必要な条件を検証していく。環境省は既に同市沖で進める「浮体式洋上風力発電実証事業」の余剰電力から水素を製造し、燃料電池船(10トン級)の燃料にする実証事業を行っている。同事業から得られるデータを基に、漁具を積んで操業する際の安全性や、必要な電力量などを検証し、定置網の水揚げなど沿岸漁業に適した漁船の開発を目指す。研究会には、燃料電池車を市販するトヨタ自動車も技術アドバイザーとして加わる。同センターの宮原正典理事長は「再生可能エネルギーの地産地消で、五島の基幹産業である漁業の振興につなげたい」と話した。


PS(2015年9月28日追加):*7-1、*7-2のように、川内原発は、カリフォルニア州サンオノフレ原発と同じ三菱重工業製の加圧水型原子炉で、高い気圧の水を蒸気発生器に送るため配管破断のリスクがあり、サンオノフレ原発は2012年に起きた蒸気発生器配管の水漏れをきっかけに廃炉になったそうだ。そして、*8のように、2010年1月29日、九電川内原発でも7人が死傷する大事故があり、死者は靴しか残っていないほどのひどい火傷で、瞬時に超高熱火災が発生したとのことだが、これは高温・高圧の蒸気による事故だったのではないのか?

1)高温高圧に耐えなければならない加圧水型原子炉蒸気発生器の設計には無理がある
*7-1:http://dot.asahi.com/wa/2015090900135.html
(週刊朝日 2015年9月18日号)  再稼働 川内原発の“大事故”が危ぶまれる本当の理由
 発端は、2012年1月。カリフォルニア州サンオノフレ原発3号機で、交換後の蒸気発生器の配管から放射性物質を含む水漏れ事故が起きたことだった。蒸気発生器とは加圧水型原子炉に備わる装置で、タービンを回して発電するための蒸気を作り出す重要なもの。それが新品に交換した後に故障したのだ。同原発を運営する南カリフォルニア・エジソン社は、装置内に張り巡らされた伝熱細管と呼ばれる管が異常摩耗していたことが原因だったと断定。定期点検中の2号機にも同様の摩耗が見つかった。米国でこの問題を取材していたジャーナリストの堀潤氏が解説する。「米原子力規制委員会(NRC)の調査では、問題となった三菱重工業製の蒸気発生器の1万5千カ所以上に異常な摩耗が見つかったと報告されました。しかもNRCによると、三菱重工は製造した蒸気発生器に欠陥部分があることを設置前に認知していて、それを認めた報告書を12年9月にNRC側に提出していたと言います」。そのとおりなら、三菱重工は欠陥品を売ったことになる。事態を重く見たNRCは、原因究明と安全確保がなされるまで再稼働を禁止。12年10月には、神戸にある三菱重工の事業所に抜き打ち検査を行った。「そのときNRCは、蒸気発生器の欠陥部品を改良した配管に対する安全検査の方法が、連邦法などが定める基準に沿っていないことを見つけたのです。具体的な問題点は、[1]住友金属工業(現・新日鉄住金)から購入したモックアップ用配管が検査要求を満たす仕様になっていたか確認しなかった[2]東京測器研究所による市販の測定サービスの精度が基準を満たすか確認していなかったことなどです」(堀氏)。 つまり、三菱重工側の品質保証が、NRCや顧客の求める基準を満たしていなかったということになる。トラブルを起こした蒸気発生器は「経済性重視」のため、設計上の無理があったとの指摘もある。原子炉停止に追い込まれたエジソン社は早期再稼働を目指すが、周辺住民が反発。NRCも安全性が確保できないとして再稼働許可を与えず、13年6月にサンオノフレ原発は廃炉の選択を余儀なくされる。その後、責任を巡ってエジソン社と三菱重工の泥仕合が始まる。エジソン社は検査や補修にかかった費用1億ドル(約97億円)を三菱側に請求したが、折り合いがつかず13年に国際仲裁裁判所(国際商業会議所)へ仲裁を申請。そして今年7月、「欠陥のある蒸気発生器を設計、製造した三菱重工には甚大な被害の責任がある」として75.7億ドル(約9300億円)を請求したのだ。問題は三菱重工製の蒸気発生器が、再稼働した川内原発の加圧水型の原子炉(同社製)にも採用されていることだ。三菱重工によると、同社がいままで納めた蒸気発生器は122基。「サンオノフレ原発と同一仕様の蒸気発生器は他の原発に納入されていない」という。だが、トラブルを起こすリスクはあると指摘するのは、川内原発再稼働の異議申し立てを原子力規制委員会に行った山崎久隆氏だ。九州電力が公表した資料によると、7年前に交換した川内原発1号機の蒸気発生器にはすでに35本の配管(伝熱細管)に穴が開きかけて施栓をしています。これが30年間使い続けている2号機の装置になると、栓をした本数は400カ所を超える。加えて古いタイプの装置は改良型に比べて配管に応力が集中しやすく、大きな地震が来たら耐えられない危険さえあるのです」。蒸気発生器は、熱交換効率を上げるために配管の厚みがわずか1.1ミリから1.3ミリほどしかない。常に加圧された熱水が管の中を流れているため、時間の経過によって摩耗し、穴が開くリスクも高まる。「常時どこかに穴が開いていて、定期点検で塞ぐ」(原発エンジニア)といわれるほどだ。摩耗した配管が裂けて高圧水が漏れだすと、重大事故につながりかねない。原発の危険性を訴え続ける作家の広瀬隆氏も「加圧水型の原子炉は高い気圧をかけた水を蒸気発生器に送るため、配管破断のリスクがある」と話す。「摩耗したどこかの配管が破れて水が噴き出すと鉄砲玉のように隣の配管を壊し、連鎖反応で一気に破壊される。1987年にイギリスの高速増殖炉で起きた事故では、10秒未満で40本の配管が連鎖破断しました。91年に起きた美浜原発2号機の事故は、蒸気発生器から噴き出した高圧水で配管がスパッと切れたギロチン破断だったのです」。蒸気発生器の配管が破損すると、1次冷却水が圧力の低い2次側へ急速に漏出する。つまり原子炉の冷却水が失われ、メルトダウンにつながる危険性をはらんでいる。事実、美浜原発の事故では20トン以上の冷却水が漏れ、炉が空焚き状態になりかけたと言われた。このように蒸気発生器のトラブルは深刻な事故につながるため、慎重な安全対策が必要。だが高価で大がかりな装置の上、取り換えにも時間を要するため、補修費用がかさむか、施栓が増えて定格出力ダウンにでもならない限り交換はしない。全部で1万本程度ある配管の18%程度が施栓で使えなくなると交換時期ともいわれる。その一方、再稼働を急ぐあまりか、耳を疑うような出来事もある。九電は400カ所以上に栓をした川内原発2号機の古い蒸気発生器を交換するため、新品を準備済み。だが、変えずに再稼働するという。九電はこう主張する。「信頼性向上の観点から14年度の取り換えを計画していたが、新規制基準適合への作業などがあり、ひとまず交換せずに再稼働を目指すことにした。現行の蒸気発生器は非破壊検査をして健全性を確認している」。だが、前出の山崎氏は「新しいものを発注したのは、九電が交換する必要があると判断したから。これでは安全軽視以外の何物でもありません」と批判する。川内原発1号機では再稼働直後の8月下旬、蒸気を海水で冷やして水に戻す復水器が海水混入事故を起こした。九電は混入の原因となった管など69本に施栓したが、同様の事故は今回が初めてではない。97年と99年にも玄海原発で同じ事故が起きていたのだ。広瀬氏が言う。「日本の原発は海岸線にあり、ただでさえ塩分で腐食しやすい。それが再稼働で高温環境になれば、ますます進む。4年以上動かしていない原子炉はすぐにトラブルを起こすのが当たり前で、いま現場の技術者は戦々恐々としているはず」。国民は大事故が起きないことを、祈るしかない。

*7-2:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12036505.html?rm=150#Continuation
(朝日新聞 2015年10月27日) 三菱重工への請求9160億円 米原発廃炉
 三菱重工は7月、賠償請求額が75.7億ドルになる見通しを発表しており、今回、額が確定した。三菱重工は、契約上の賠償の上限は1億3700万ドル(約166億円)と主張しており、国際商業会議所(パリ)の国際仲裁裁判所が仲裁に入っている。問題になったのは、カリフォルニア州のサンオノフレ原発。2012年に起きた蒸気発生器の配管の水漏れがきっかけとなって、運営会社の南カリフォルニア・エジソン社が廃炉を決めていた。

2)本当はどういう事故だったのか?
*8:http://www.data-max.co.jp/2010/04/post_9611.html
(NetIBNews 2010年4月21日) 九電川内原発7人死傷事故―許されない談合決着
 九州電力川内原子力発電所の現実を検証していくにあたり、まずは今年1月に同原発で起きた事故についての記事を再掲載する。1月29日、九州電力川内原発1号機で7人が死傷した。原発では「大事故」にも関わらず、メディアの続報がない。ひたすら「調査中」しか繰り返さない九電は、一体何をしているのか。電力会社とは持ちつ持たれつの連合がバックアップするのが、「小鳩政権」。その「政治とカネ」にメディアの注目が集まっているのを幸いに、ツジツマ合わせに苦慮している姿が思い浮かぶ摩訶不思議な事故だ。
<「事故は隠せ」 電力会社長年の悪癖>
 どうしてこんなことが起きるのか。テレビ、新聞の第一報に接しても理解不能だったのが、今回の事故だ。「原発は安全」を謳い文句に原発建設を推進してきたのは国と電力会社。チェリノブイリ級超巨大惨事になりかねない重大事故は当然ながら、小さな事故も原発のイメージを悪くするというので握りつぶすのを当たり前としてきた。そこには本社員であろうが末端の下請け作業員であろうが、一個人に対する尊厳のかけらもなく、ともかくその場を糊塗するのを旨としてきたのが電力会社だ。とくに原発は「放射能=被曝」のイメージが強いため、電力会社は放射線被曝事故や周辺への放射能漏洩にはことさら神経を尖らす。しかし、原発という巨大システムは、放射能に直接関わりはないところにも重要施設や機材がヤマほどあり、それらが一体に運用されている。そんな場所や機材での事故や故障が原発中枢の原子炉やタービンに影響をおよぼし、重大事故になることもあり得る。したがって、放射能漏洩や被曝とは直接関係なくても、とにかく「事故は隠せ」が電力会社のいわば習い性になっている。そんな電力会社の体質も近年はわずかながら改善され、情報公開の重要性を理解してきたように見受けられたが、長年の悪癖はそう簡単に直るものではなかったようだ。ましてや、今回のような大事故は隠せるものではないだけに、注視すべきは今回の事故への九電および国の今後の対応だ。事故は1月29日早朝の午前7時過ぎに起きた。原子炉の運転を止めて行なわれる定検は、原子炉をはじめとするあらゆる機器の保守・点検を行なう。原発の点検作業は事前に予定されたものと、事故、トラブルで緊急に行なわれるものがある。後者は当然のことながら、今回のように事前に予定されていたものも、早く終えて運転再開したいのが電力会社の性。企業として生産性を上げるのはもとより、コストは「原発が安い」をアピールする国策にも沿うからだ。その結果、現場は大変だが、原発では徹夜作業も早朝作業も当たり前に行なわれている。事故そのものは、九電と協力企業の西日本プラント工業、西日本技術開発の作業員7人で、配電室にある配電機器の保守・点検を行なう際に発生した。配電室は、タービン建屋という原子炉建屋とは別棟の放射線管理区域外に設置されている。したがって、彼らの着衣は放射線防護服ではなく、通常の作業衣である。そして、配電設備の分電盤を点検するため、1人の作業員が電気を地中に逃がすアースを取り付けようとしたときに火花が発生。本人を含む3人が重症、4人が軽傷を負い、救急車で病院へ搬送された。しかし、重傷者のうち、アースを取り付けようとした西日本プラントの作業員はその日のうちに死亡した。
<追加情報がない「大事故」>
 原発での死傷事故は過去にたびたび起きているが、もっとも多い放射線被曝によるそれは、公式記録では極端に少ない。「原発は安全」を金科玉条とする国と電力会社は、被曝事故などあってはならないので、それらは握りつぶす。証拠の記録やデータの改ざんなどは電力会社の得意とするところで、それらの数値を盾に被曝との因果関係を否定するからだ。被曝以外の死傷は公式記録上もかなりあって、作業中の転落や熱水や火災による火傷、感電などさまざまだが、今回のように7人も同時に死傷するのは異例。原発内事故としては「大事故」である。しかも、発生したのは配電室という中枢施設だ。というのも原発は、心臓部の原子炉を中心に水系統や油圧など無数の配管、いわば血管が通っている。それらを正常に機能させるには、コンピュータ制御を含めた電気系統が不可欠。これまた血管類の一つとして、原発内各所に張りめぐらされている。その電気系統のいわば心臓部が、配電室だ。そんな中枢施設を保守・点検するのは、電気系統に通じたプロ集団であるべき。チームのトップは当然ながら九電社員で、ほかの6人も九電社員と同じ九電グループのしかるべき社員であり、「知識のない孫請け、ひ孫請けの作業員ではありません」(死亡者を出した西日本プラント)というのも当然だろう。それが大事故を起こす、あるいは起きてしまったのはなぜか。九電が発表した写真では、点検しようとした分電板がかなり焼けこげているが、死傷者について当初は「感電」としていたのも不可解。2月1日に、国の原子力安全委員会へ経産省原子力安全・保安院が報告したときも、「感電」である。火災と感電。一体何が起きたのか。事故当時の現場のイメージが湧かない。続報を注視していたが、九電からもメディアにもさらなる追加情報がない。
<地元軽視の電力会社 明かされない真相>
 九電に問い合わせしたのが事故後2週間以上経ち、全体像が見えておかしくない頃だが、同社広報部門の回答は基本的に「調査中」の繰り返し。2月16日に九電と協議会を開いた薩摩川内市側の、「作業マニュアルを出して欲しい」との要請を九電は断っている。出して何か不都合があるのか。地元をバカにするのも電力会社の悪癖だ。県も同様、本来なら電力会社には国と同等の影響力をもつ立場ながら、九電の報告待ちの姿勢は同じだ。それは国も同じである。電力会社のすべてを管理するのが経産省であり、原発はそのなかの原子力安全・保安院が管理する。そこには、電力会社から真っ先に報告が行く。2月22日に問い合わせをすると「本日発表」と言うので、それを見ると想定通りである。詳細は省くが、よくできた報告文だ。一言でいえば結論はまだ出していない。作業員個人のミスやチームとしての意志疎通の不備などに言及し、あくまでも「推定」という逃げの余地を残したものである。それが最終的にどんな結論に至るのか。少なくとも事故は捜査中ながら、死因は「熱傷」(薩摩川内警察署)すなわち火傷であり、搬送されるときの死傷者のうち死者は「90%火傷。靴しか残っていない状態」(薩摩川内消防局)であり、感電ではない。つまり事故のイメージとしては、火花を機に周辺で瞬時に超高熱火災が発生したということだ。専門家も、「このようなケースはきわめて希な現象」(関東電気保安協会員)と見ている。それが作業員個人に帰せられるのか、チームの監督者責任なのか。そんな個人よりも市に作業マニュアルを出さない九電の定検とは何か。事故は常に複合的な要因で起こる。死傷した作業員の着衣が純綿なら死亡しなくても済んだのに、化繊系が災いした可能性もある。それはコスト削減のためか。さらに、過労によるミスもある。それらも念頭に、今回の定検のなかで配電施設点検がどう位置付けられていたのか。九電の姿勢を知りたいもの。これだけの大事故。作業者たちだけに目を奪われていては、真相を見誤る。機材そのものの経年劣化も影響した可能性もあり、メーカーと電力会社のパワーバランス、そして国とのそれで「真相」はいかようにもなるのがこれまでの原子力行政。それを覆すのが地元の県市や警察の責任。それができなければ3号機の増設など論外。鹿児島や九州はもとより、日本に住む人間にはハタ迷惑というものだ。


PS(2015年10月29日追加):*9-1、*9-2のように、東電がフクイチの汚染水海洋流出を抑える柱として建設を進めていた海側遮水壁が完成したそうだが、本当に壁で水をせき止められると考えている人はいないだろう。何故なら、壁で流れをせき止められた水は、壁のない横か、上に行くのであって、流れ込んだ400トンもの地下水を護岸近くの井戸でくみ上げて浄化するのが間に合う筈はなく、くみ上げればくみ上げた分だけ、さらに多くの水が流れ込むからである。また、海水に鋼管ではすぐ錆びるだろう。
 なお、「浄化後の汚染水は、トリチウムだけは取り除けない」とも書かれているが、他の放射性物質がすべて取り除けているのなら上出来の方であり、本当に他の放射性物質が含まれていないかどうかについては、溜められた汚染水をぬきうちでサンプリング調査すべきだ。
 さらに、「周囲の地盤を凍らせる凍土壁の建設が進んでいる」とも書かれているが、大量の地下水が流れ込み、核燃料デブリが崩壊熱を出している中で、凍らせ続けるためには、これまでフクイチが発電した電力と挙げた利益の全てを使っても足りないと思うが、これまでで凍った部分はあるのだろうか?

  
                        *9-2より
*9-1:http://www.minpo.jp/news/detail/2015102726281
(福島民報 2015/10/27) 海側遮水壁が完成 港湾内流出大幅減へ 第一原発
 東京電力が福島第一原発で汚染された地下水の海洋流出を抑える柱として建設を進めていた海側遮水壁が完成した。東電が26日、発表した。港湾内への流出量は1日400トンから10トンと大幅に減る見通し。東日本大震災と原発事故から4年7カ月余。汚染水対策は大きな節目を迎え、今後は建屋内への地下水の流入を防ぐ凍土遮水壁の運用などが焦点となる。東電によると、海側遮水壁は総延長780メートルで、594本の円筒状の鋼材を壁のように並べて打ち込んだ。26日午前9時40分ごろ、鋼材の隙間にモルタルを注入する止水工事の完了を確認し、一連の作業を終えた。地下水の流れをせき止めることで、港湾内への地下水の流出量は1日400トンから10トンに減らせ、放射性セシウムやストロンチウムは40分の1、トリチウムは15分の1まで低減できると試算している。せき止められた地下水は建屋周辺の井戸「サブドレン」や護岸近くの井戸「地下水ドレン」でくみ上げ、浄化した上で海洋放出する。これにより地下水の上昇を防ぐ。今後1カ月程度かけ、港湾内の海水に含まれる放射性物質の濃度などを分析し、遮水壁の効果を確認する。東電は平成24年4月に遮水壁の建設を開始した。26年9月の完成を目指していたが、水位が上昇して地表にあふれ出る恐れがあったため、約10メートルを残して工事を中断していた。今年8月、県漁連が「サブドレン計画」の受け入れを決定したのを受け、9月から工事を再開していた。遮水壁の完成を受け、県原子力安全対策課は「汚染水の低減につながるだろうが、運用に当たっては地下水位のコントロールを徹底してほしい」と求めた。県漁連の野崎哲会長は「港湾内の放射性物質濃度が目に見えて改善されると期待している。引き続き、注意深く廃炉作業を進めてほしい」と注文した。
   ◇  ◇
 今後は建屋内への地下水の流入をいかに防ぐかが課題になる。現在、1日約160トンの地下水が流入し、汚染水になっている。東電は、東京五輪・パラリンピックが開催される32(2020)年内に地下水の流入をなくし、建屋にたまっている汚染水をほぼゼロにする計画。当面は建屋内への地下水の流入を氷の壁で抑える凍土遮水壁を運用させるなどし、28年度中に流入量を1日当たり100トン未満に減らす方針。

*9-2:http://www.imart.co.jp/houshasen-level-jyouhou.html
(福島第一原事故後の最新情報 27.10.26) 汚染水の海流出防ぐ遮水壁 きょう完成へ (要点のみ)
 東京電力福島第一原子力発電所で3年越しで建設が進められてきた「遮水壁」と呼ばれる設備が、26日にも完成する見通しです。汚染された地下水が海に流れ出すのを抑えるため、護岸を鉄の壁で完全に囲うもので、事故から4年半余りたって汚染水対策は大きな節目を迎えることになります。「遮水壁」は、福島第一原発の護岸沿いの地中に深さ30メートル、全長780メートルにわたって鋼鉄製の壁を設け、海に流れ出している汚染された地下水をせき止めるもので、東京電力は、事故の翌年から建設を進めていました。鋼鉄の板を打ち込む作業はすでに終わっていて、26日午前中に鉄板の隙間をセメントで埋める最後の作業を行い、問題がなければ3年越しで進められてきたすべての建設作業が終わる見通しです。遮水壁でせき止めた地下水はポンプでくみ上げ、浄化して海に流す計画で、東京電力は今後、地下水の水位や海水中の放射性物質の濃度を監視するなどして効果を確かめるとしています。東京電力は、遮水壁が完成すれば海に流れ出す地下水の量がこれまでの1日400トンから10トンまで減り、放射性物質の流出も抑えられるとしていて、海への流出が大きな課題となってきた汚染水への対策は、事故から4年半余りたって大きな節目を迎えることになります。遮水壁の経緯と予想される効果
【遮水壁の経緯】
 福島第一原発で遮水壁の建設が始まったのは、事故発生から1年余りたった平成24年5月でした。しかし、完成に向けては大きな課題がありました。何も対策を取らなければ、せき止められた地下水が地表などからあふれ出してしまうのです。このため東京電力はせき止めた地下水をポンプでくみ上げ、浄化したうえで海に排水する計画をたて、去年8月、地元の漁業関係者に了承を求めました。しかし、浄化するとはいえ1度は汚染された地下水を海に流すことへの不安に加え、汚染水対策を巡る東京電力への不信感もあり、地元からは強い反対の声が上がりました。長い交渉を経て地元が計画に同意したのは1年後のことし8月。その結果、中断していた遮水壁の建設作業が再開し、26日、ようやく完成にこぎ着ける見通しとなりました。
【海の汚染の現状は】
 福島第一原発では、海の汚染は当初から深刻な問題として対策が求められてきました。事故発生直後、核燃料から放出された放射性物質に加え、原子炉に注がれた冷却水が高濃度の汚染水となって海に流れ出し、海水の放射性物質の濃度は、「セシウム137」の場合、原発に隣接する場所で1リットル当たり数百万ベクレルに上りました。その後、濃度は1年後までに大きく下がったあと、おおむね横ばいの状態が続いています。現在は、雨やトラブルの影響による変動はありますが、「セシウム137」で比較するといずれも高いところで、原発の港湾の内側で十ベクレル前後、外で数ベクレル程度となっています。こうしたなか、地下水の問題は、海を汚し続ける残された課題の一つとなっていました。
【遮水壁の効果は】
 東京電力は、遮水壁が完成すれば地下水を通じて海に流れ出す放射性物質の量が、セシウムとストロンチウムはこれまでの40分の1に、トリチウムは15分の1に減ると試算していて、今後、海水に含まれる放射性物質の濃度の変化を調べ、効果を確かめることにしています。
●汚染水対策の現状と残る課題
汚染水を巡っては、「遮水壁」の完成後も数多くの課題が残されています。
【課題1 海への流出対策】
 福島第一原発では毎日400トンの地下水が海に流れ出していて、一部は原子炉建屋の周辺など汚染された場所を通るため、海を汚染する原因の一つと指摘されてきました。東京電力は、「遮水壁」が完成すれば海に流れ出す量は10トンまで減るとしていて、「海への流出」への対策は1つの区切りを迎えることになります。
【課題2 汚染水の増加対策】
 一方、汚染水の増加を抑える対策も進められています。福島第1原発では地下水が建屋に流れ込んで内部の高濃度の汚染水と混ざり、毎日新たに400トンずつ汚染水が発生していました。東京電力は、建屋に流れ込む前の地下水をくみ上げて海に流す「地下水バイパス」と呼ばれる取り組みなどで、地下水の流入量を1日当たりおよそ100トン減らすことができたとしています。先月からは「サブドレン」と呼ばれる建屋の周辺の井戸から地下水をくみ上げて浄化して海に放出する対策を始めたほか、周囲の地盤を凍らせる「凍土壁」の建設も進んでいます。将来的には、建屋を補修して地下水を完全に止水したうえで汚染水をすべて取り除きたいとしていますが、具体的なめどは立っていません。しかも、事故で溶け落ちた核燃料を取り出さない限り、汚染水の発生を完全に無くすことは難しいのが実情です。
【課題3 汚染水管理と処分】
 さらに、汚染水の管理や最終的な処分も課題として残されています。
おととし、建屋からつながる「トレンチ」と呼ばれる地下のトンネルにたまった高濃度の汚染水によって地下水が汚染され、海に流れ出していたことが明らかになりました。さらに、保管用のタンクから高濃度の汚染水およそ300トンが漏れ、一部が海に流れ出すトラブルも発生しました。このため東京電力は、「トレンチ」にたまった汚染水の抜き取りを進め、ことし7月までに作業を終えてセメントで埋め立てたほか、タンクで保管している汚染水から放射性物質を取り除く作業を進めています。しかし、「トリチウム」と呼ばれる放射性物質は取り除くことはできません。現在、タンクで保管している汚染水の量は70万トン余りに上っていますが、最終的な処分についてはめどさえ立たないのが現状です。


PS(2015年10月30日追加):*10-1、*10-2のように、大間原発建設差止訴訟を起こしている函館市の工藤市長を激励に、小泉純一郎、細川護熙両元首相が函館を訪れ、建設中の大間原発と函館の近さも確認して、「函館から意見は聞かずに避難計画を作れという法律は、矛盾している(小泉氏)」「(原発建設は)青森側だけの同意ではなく、函館やその他の沿岸地域の同意を受けるべきだ(小泉氏)」。「私たちも原発ゼロや自然エネルギー普及へ頑張りたい(細川氏)」等、述べられたそうだ。津軽海峡も替えのないよい漁場で日本国民の宝であるのに、何からでもできる発電のために豊かな生態系を破壊するなど、とても許されるものではない。

*10-1:http://www.asahi.com/articles/ASHBY4TP7HBYUTFK00D.html
(朝日新聞 2015年10月29日) 小泉元首相「矛盾している」 原発訴訟の函館市長を支持
 小泉純一郎、細川護熙両元首相が29日、北海道函館市を訪れ、大間原発(青森県大間町)の建設差し止めを求める訴訟を起こしている函館市の工藤寿樹市長と意見を交わした。函館市の一部は大間原発から30キロ圏にあり、福島第一原発事故後に避難計画の策定が義務づけられた。一方、工藤市長は原発の稼働に当たって函館市には同意権がないことを問題視し、提訴の理由としている。小泉氏は「函館から意見を聞かない。しかし、避難計画を作るという法律がある。矛盾している」と函館市の姿勢を支持した。原発事故後に工事がいったん中断していた大間原発について、工藤市長は「完成して稼働すれば、これからもドンドン新しい原発をつくっていくことにつながる」と指摘した。

*10-2:http://dd.hokkaido-np.co.jp/news/area/donan/1-0196153.html
(北海道新聞 2015年10月30日) 原発ゼロ、函館から訴え 小泉、細川両元首相が来函
 電源開発大間原発(青森県大間町)の建設差し止め訴訟を起こしている函館市の工藤寿樹市長の激励を目的に、29日に函館を訪れた小泉純一郎、細川護熙両元首相は、市役所で工藤市長の説明を聞き、津軽海峡の対岸で建設中の同原発と函館の距離の近さも確認した。「(原発建設は)青森側だけの同意じゃいけない。函館やそのほかの沿岸地域の同意を受けるべきだ」(小泉氏)。「私たちも原発ゼロや自然エネルギー普及へ頑張りたい」(細川氏)。道内外から集まった大勢の報道陣に囲まれ、函館から「原発ゼロ」を訴えた。両元首相ら一般社団法人「自然エネルギー推進会議」(東京)のメンバーら7人は29日正午ごろ、函館空港から市役所に到着。正面玄関で出迎えた工藤市長と笑顔で握手を交わし、道内や東北、東京などから集まった報道陣が待つ市長会議室に入った。約20分間の非公開の会談で、小泉氏らは大間原発の建設状況などを質問。会談後の取材で、小泉氏は事故時の避難計画作成を求められながら建設同意権がない函館の状況に理解を示し、工藤市長は「短時間で他の原発との違いをよく分かってもらえた」と手応えを語った。下北半島を一望する庁舎8階では「あの白いのか」などと言いながら、ガラス越しにうっすら見える大間原発を肉眼や双眼鏡で確認。小泉氏は「距離が短いねえ。これじゃあ風が吹いたらもう…」と、原発事故時の函館での放射能汚染の恐れにも言及した。午後2時から市内のホテルで開かれた小泉氏の講演会には、実行委の想定を約200人上回る約800人が集まった。歯切れのいい「小泉節」に、実行委代表で大間原発訴訟の会の竹田とし子代表は「小泉さんは原発ゼロでも国内の電力が十分賄えることを明確に語ってくれた。今後も活動を続けて頑張らなければと思った」。講演を聴いた市内の無職菅原久美子さん(66)は「原発の温排水が海に与える影響に関する話は参考になった。周囲には大間原発の問題は考えないようにしているという人も多いが、講演会を聞き、やっぱり反対しないとダメだと感じた」と感想を語った。


PS(2015.10.31追加): *11-1のように、英国がいくつもの新原発建設を行うのは、英国の失敗の始まりで残念だと思うが、その受注額は1700億円前後などと桁違いに大きい。しかし、事実でないことを根拠にした首相のトップセールスで原発を売り込めば、*11-2のように、事故時には、信用をなくしたり、国民負担が生じたり、恨まれたりする可能性が高いのである。

*11-1:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20151031&ng=DGKKASDZ22HH1_Q5A031C1MM8000 (日経新聞 2015.10.31) 
日揮、原発建設に参入 日立の英計画、1700億円で受注へ
 日揮は原子力発電所の建設事業に参入する。日立製作所が計画する英国西部ウィルファの原発で建屋などの建設工事を請け負う見通しで、受注額は1700億円前後に達する見込み。海外でのプラント建設で培ったノウハウを生かす。国内の原発建設はこれまで総合建設会社(ゼネコン)が手掛けてきたが、国内の新規案件が止まるなか、大成建設などが海外での建設に乗り出す方針。プラント大手の日揮の参入で受注競争が激しくなりそうだ。英国では日立傘下の原発事業会社が原発4基の建設を計画。このうち2基を設置するウィルファの計画は2019年にも着工、24年の稼働を目指しており、1基目の建屋の発注に向けて日立が日揮と交渉に入った。原子炉などの中核機器を日立が手掛け、日揮は米エンジニアリング大手ベクテルと共同で建屋建設などを担う見通し。1基あたりの事業費は約50億ポンド(約9200億円)で、建設費は7~8割を占める。日揮の受注分は建設費のうち2~3割となるもようだ。日揮は日本で原発建設の実績はない。一方、アジアや中東でエネルギープラントの工事経験が豊富で、数千人に及ぶ外国人労働者の管理や建築資材の大量調達など、大型案件を得意としている。

*11-2:http://blogs.yahoo.co.jp/liliumnokai/9984591.html
(毎日新聞 2013年8月3日) 原発輸出:国民負担に直結 国のリスク不十分な説明
 日本が安全確認体制を整備しないまま、原発輸出を強力に推進し続ける背景には、原子力安全条約の存在がある。条約は原発事故の責任を「原発を規制する国(立地国)が負う」と規定しており、日本は免責されるという論法だ。茂木敏充経済産業相も5月28日の衆院本会議で「(海外で事故があっても)日本が賠償に関する財務負担を負うものではない」と強調している。果たして本当に「知らぬ顔」は通用するのか。推進役の経産省幹部でさえ「賠償でなくても援助などの形で実質的な責任を取らざるを得ない」と高いリスクの存在を認める。売り込み先の一部には別のリスクもある。インドには電気事業者だけでなく、製造元の原発メーカーにも賠償責任を負わせる法律があり、米国はこの法律を理由に輸出に消極的とされるが、日本は前のめりだ。そもそも、輸出国向けに実行される国際協力銀行の融資は税金が原資であり、何らかの原因で貸し倒れが起これば、国民負担に直結しかねない。国のリスクに関する説明は不十分だ。安倍晋三首相は原発輸出について「新規制基準(などによって)技術を発展させ、世界最高水準の安全性を実現できる。この技術を世界と共有していくことが我が国の責務」(5月8日、参院予算委)と正当化。公明党の山口那津男代表も6月、新規制基準を前提に輸出を容認する姿勢に転換した。しかし、この基準は国内の原発にしか適用されず、輸出前に原子力規制委員会が安全確認を行うシステムはないのだから牽強付会(けんきょうふかい)だ。「安全」を強調する一方、事故時の責任回避も主張する姿は、原発を推進しつつ賠償責任を電力会社に負わせる「国策民営」と呼ばれてきた原子力政策に重なる。原発事故から2年超を経てなお約15万人が避難する現状に照らせば、無責任な輸出は到底許されない。


PS(2015年11月3日追加):*12-1、*12-2のように、伊方3号機再稼働に愛媛県知事が同意したため、市民が同意撤回の請願書を知事に渡し、愛媛県松山市の城山公園で伊方原発再稼働反対の全国集会を開いた。そして、行動している人よりずっと多くの人が原発再稼働に反対しているのだ。

       
         伊方原発の位置          2015.11.2愛媛新聞  2015.9.20東京新聞

*12-1:http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2015110201001401.html
(東京新聞 2015年11月2日) 伊方3号機の再稼働同意撤回を 市民ら愛媛県知事に請願書
 愛媛県伊方町の四国電力伊方原発3号機の再稼働に反対する市民らは2日、中村時広知事が10月に再稼働に同意したことを受け、同意の撤回を求める知事宛ての請願書を県に提出した。請願書は、四国電がおおむね千ガルの地震の揺れに耐えられるとしている3号機の耐震性に関し、想定外の地震に耐えられず不十分だと訴えた。集まった約60人の市民らが、1人ずつ県の職員に向かって請願書を読み上げた上で提出した。提出を呼び掛けた松山市の市民団体「伊方原発をとめる会」の和田宰事務局次長は「知事は一度も批判的な立場の専門家から意見を聴取していない」などと批判した。

*12-2:http://www.ehime-np.co.jp/news/local/20151102/news20151102014.html
(愛媛新聞 2015年11月2日) 4000人再稼働ノー 伊方原発再稼働反対全国集会
 四国電力伊方原発の再稼働に反対する全国集会が1日、愛媛県松山市堀之内の城山公園であった。10月26日に中村時広知事が伊方3号機の再稼働に同意したことを受け、参加者は「断固許さない」との決意を胸に、市内をデモ行進した。主催の市民団体「伊方原発をとめる会」(松山市)によると、北海道、福島、鹿児島など全国から約4千人が参加した。集会でとめる会の草薙順一事務局長は、中村知事の同意に対して「理性も倫理も投げ捨てた行為」と批判。再稼働の阻止に全力を挙げると宣言した。会場の参加者は「原発再稼働ゆるさん」と書かれたメッセージを一斉に掲げてアピール。市内のデモ行進では「命を守れ」「再稼働反対」とシュプレヒコールを上げて、買い物客らに訴えた。


PS(2015年11月24日追加): このブログに何度も記載しているため理由を長くは書かないが、*13は、①30キロ圏の住民だけが避難すればよいという科学的根拠はない(チェルノブイリ、フクイチを参照) ②どれだけの期間、避難すればよいかという認識が甘い(チェルノブイリ、フクイチを参照) ③汚染水で(狭い)日本海が使い物にならなくなるという認識がない(フクイチを参照) ④フクイチの場合は、陸地に落ちた放射性物質は20%以下だったが、玄海原発の場合は80%以上が陸地に落ち、西日本の広域が汚染される という認識がなく、また安全神話によりかかっている。

*13:http://www.saga-s.co.jp/news/national/10201/254265
(佐賀新聞 2015年11月28日) 玄海原発事故想定し合同訓練、30キロ圏の3県、6千人参加
 佐賀、福岡、長崎の3県は28日、九州電力玄海原発(佐賀県玄海町)の重大事故を想定した合同防災訓練を実施した。原発から30キロ圏の住民、関係機関の担当者ら約6千人が参加。避難手順の確認に加え、被ばく者が出た際の搬送訓練も行い、万一の場合に備える。3県の合同訓練は今回で3回目。玄海原発4号機が運転中に電源を失い、炉心が冷却できなくなった事故を想定した。佐賀県では、通過するだけで車両に付着する放射性物質を検出できるゲート型の機器を初めて設置。原発内で被ばくした負傷者を、国の指定医療施設の長崎大病院にヘリコプターで搬送し、迅速に対応できるか確認する。

星このような記事を女性が書くと、「感情論」「風評(根拠のない噂)」等の矮小化した解釈をされることが多く、これは先入観と偏見による女性に対する過小評価だ。そのため、私は、上の記事を書くにあたって、公衆衛生学、生物学、生態学、物理学、化学、経済学、法律、監査などの知識・経験を使っており、これらの知識・経験を一人で使って考えることのできる人は日本全体でもあまりいないということを記載しておく。しかし、こう書くと今度は、「謙虚でない」「女らしくない」などと言う人がおり、両方を合わせると「女性は全員、感情的で科学や論理に弱く知識もないため、風評をまき散らすだけだから、謙虚にして黙っていろ」ということになり、これは、女性蔑視そのものだ。そして、こういうことを書くと、「生意気だから嫌い」「あいつの政策は(正論でも)実現させない」と言う人も少なくないが、それこそ感情論である。

| 原発::2015.4~10 | 02:07 PM | comments (x) | trackback (x) |
2015.9.13 フクイチ事故の事実、甚大な被害、そして原発再稼働について (2015年9月14日、15日、16日、21日、27日、10月2日、11月24日、25日に追加あり)
  
              2014.12.13東京新聞           2015.9.5東京新聞

   
1号機と3号機の爆発比較  3号機の爆発  2015.9.11   2015.9.12東京新聞
                    時系列      佐賀新聞
(1)フクイチ事故について
 *1-1のように、今頃になって原子炉内部を画像で確認したというのは誠実さに欠けるが、東電が公表した宇宙線を利用してフクイチの原子炉内を透視した画像では、大きな燃料は確認されず、本来核燃料があった場所に、核燃料は殆ど残っていないことが確かめられた。

 これについて、東電は「燃料の大部分が溶け落ちた」としているが、それはまだ甘い解釈であり、3号機は上の写真のように1号機とは全く別の爆発の仕方をしており、最初にオレンジ色の光が出ているため核爆発だと外国のメディアでは説明しており、このオレンジの光は日本のメディアでは公表されていない。このため、3号機は核爆発して内部の核燃料を外に吹き出し、本来燃料があった場所に核燃料は殆ど残っていないと考えるのが自然で、これは、上の段の左図のように、1、2号機と比べて3号機建屋内の線量が桁違いに低いことからも明らかだ。

 そして、*1-2のように、この原発事故賠償のために、国は東電に税金から上限9兆円(一年間の消費税3.6%分)の支援を行い、その資金の回収を終えるまでに最長30年かかるとする試算を会計検査院がまとめた。私は、資金回収の原資は送電子会社の株式売却によっても得られると思うが、それにしても9兆円は膨大な金額であり、これで賠償が終わるという保証はない。

 また、国際原子力機関(IAEA)は、*1-3のように、フクイチ原発事故を総括する最終報告書を公表し、事故の主な要因は「日本に原発が安全だという思い込みがあり、備えが不十分だった」と指摘した上で、安全基準を定期的に再検討する必要があると提言した。また、「いくつかの自然災害が同時に発生することなど、あらゆる可能性を考慮して安全基準を定期的に再検討する必要がある」とも提言している。

 一方、市民の健康について、IAEAは、*1-3のように、「事故を原因とする影響は確認されていない」とし、原子力学会も、*2-5のように、「除染や帰還をめぐり1ミリシーベルトの壁(目標)ができているのはとてもおかしいことだ」という考えを示している。しかし、どちらも原発の機械の専門家であって病気や健康の専門家ではないため、謙虚になってお手盛りの発言は控えるべきだ。東電フクイチ事故調査委員長を務めた畑村氏は、*2-5のように、「年間追加被曝線量1ミリシーベルト以下を掲げる必要はない」とし、その根拠として、自然放射線による年間被曝線量が国内の平均値で年間1.5ミリシーベルトだとしているが、私が過酷事故の影響を受けていない佐賀県唐津市で測った線量は0.05~0.13マイクロシーベルト/時であり、これは0.438~1.14ミリシーベルト/年(0.05~0.13マイクロシーベルトX 24時間 X 365日/1000)にしかならず、国際基準も1ミリシーベルト以下なのである。

 このような中、*1-5のように、小泉元首相が「原発は環境汚染産業」としているのは当然であり、もはや必要がないのに高リスク・高コストをかけて原発再稼働を行うのは、原子力発電が自己目的化しているからにすぎない。

 なお、*1-4のように、「原発安全神話」の復活に危機感を持ち、原発の元技術者にも「原発を疑え」という人が出ている。川内原発の地元商店主は、原発の再稼働で全国から作業員が大挙して行う定期点検を待ちわびているそうだが、それで街の経済が本物に育っていくわけがなく、原発があることで「危険で不便な街」として住民がますます減り、街は衰退する方向に向かうだろう。そのため、「再稼働を認めない」という地元住民も多いことに注目すべきであり、今が原発から撤退する潮時なのである。

(2)年間20ミリシーベルト以下の地域の避難解除では国民の命を守れない
 *2-1のように、国は、「楢葉町の宅地における空間線量が1時間当たり平均0.3マイクロシーベルト/時(昨年7〜11月)に低下し、年間被曝線量が帰還の目安である年間20ミリシーベルトを下回ることが確実になった」として避難解除を決定した。

 しかし、*2-4の日本弁護士連合会会長声明に書かれているとおり、チェルノブイリ法では、年間5ミリシーベルトを超える地域では避難が義務付けられ、1~5ミリシーベルトでは避難の選択権があり、我が国でもこれまで一般公衆の被曝限度は年間1ミリシーベルト以下とされ、労災認定基準や放射線管理区域の基準は年間5ミリシーベルトとされてきた。これらに比べて、年間20ミリシーベルトという基準はあまりにも高すぎるため、*2-2のように、「復興拠点に」と国が後押ししても、戻った住民は1割で、医者がいないのは当然なのだ。何故なら、住宅地の空間線量が0.3マイクロシーベルト/時(2.6ミリシーベルト/年)にまで下がったとしても、住宅地以外は除染されておらず、水がめの木戸ダムの湖底の土からも放射性物質が検出され、農作物の安全も危ぶまれるからである。

 また、*2-6のように、9月11~12日の豪雨によって除染された土が入っていた袋が240個流出したことについても、袋が劣化してしまう現在まで豪雨で流れるような場所に放っておいたことや国民の多額の税金を使って除染したことの意味を理解しておらず、環境意識が低すぎることに対し、私は怒りを覚えている。そのため、*2-3のように、家族を残して帰還するケースや戻らぬ決断をするのも当然であって、こういう意思決定をした人に不利益が生じることがあってはならない。

(3)川内原発はじめ他の原発の再稼働について
 太陽光発電は、*3-1のように、2012年7月1日に買取制度がスタートして3年以内に、大手電力会社と経産省が買取制限したくなるほど短期間に普及した。このほか、再生エネには、地熱・風力・小水力・潮流・バイオマスなどがあり、そのすべてが自給率100%で輸入代金を支払う必要がなく、CO2をはじめとする排気ガスも排出しないため、再生エネに投資した方が将来の日本経済にプラスであり、当面も、原発より安全な新しい仕事ができる。そして、一般市民は、素直にそれを感じており、*3-2、*3-4、*3-5のように、8月10日、11日に、川内原発再稼働反対の拳があちこちであげられたのだ。

 なお、*3-3に書かれているように、米国のカリフォルニア州サンオノフレ原発3号機で、交換後の蒸気発生器の配管から放射性物質を含む水漏れ事故が起きて廃炉に至った原発は、三菱重工業製で九電川内原発と同じ型だそうだ。

 佐賀県では、*3-7のように、佐賀県商工会議所連合会が佐賀市で総会を開き、「原発停止後の電気料金値上げで過酷な負担を強いられている」として、玄海原発の早期再稼働の要望を採択したとのことだが、自分本位の超短期的視点でものを考えるのはもうやめてもらいたい。また、会員企業による議員大会は開かず総会で決定し、総会には県内8商議所の会頭、副会頭、専務理事26人が出席したそうだが、もし全体の意見を聞いていれば、再生エネや食品関係の事業者も多く、農業者は既に再生エネに取り組んでいるため、このような結論にはならなかっただろう。

 しかし、*3-6の玄海原発停止訴訟は有名な訴訟で、原告数が1万人に迫っている。また、*3-8のように、伊方原発再稼働についても反対が51%となっており、原発再稼働のための屁理屈はもうやめるべきである。

<フクイチ事故>
*1-1:http://mainichi.jp/feature/20110311/news/20150320k0000m040078000c.html (毎日新聞 2015年3月19日) 福島第1原発:「透視」画像公表 大きな燃料確認されず
 東京電力は19日、宇宙線を利用して福島第1原発1号機の原子炉内をエックス線写真のように「透視」した画像を公表した。原子炉圧力容器内の核燃料が収められていた位置に1メートル以上の大きな燃料は確認されなかった。燃料の大部分が溶け落ちたとする東電などの計算結果が裏付けられた。原子炉の内部を、直接画像で確認したのは初めて。今後、格納容器下部にカメラを搭載したロボットを入れ、溶け落ちた燃料の場所などを調べる。調査は、宇宙から降り注ぐ宇宙線が地球の大気に当たって生じる素粒子「ミュー粒子」を利用。ミュー粒子はコンクリートなどは透過するが、核燃料のように密度の高い物質には吸収される。2月12日〜3月10日に撮影した結果、本来燃料があった場所は白っぽく写り、燃料がほとんど残っていないことが確かめられた。今回の調査では1メートル程度の大きさの燃料が検知できるという。

*1-2:http://www3.nhk.or.jp/news/html/20150323/k10010025401000.html
(NHK 2015年3月23日) 原発事故賠償の9兆円 回収に最長30年
 福島第一原子力発電所の事故の賠償などのため国が東京電力に行っている上限9兆円の支援について、資金の回収を終えるまでに最長で30年かかるとする試算を会計検査院がまとめました。会計検査院は、東京電力や電力各社などが納める負担金などの水準によっては資金の回収が長期化し、国の財政負担が増えることになると指摘しています。福島第一原発の事故を巡り、国は、上限としている9兆円の国債を発行していて、原子力損害賠償・廃炉等支援機構を通じて東京電力に資金が交付され、住民などへの賠償や除染にかかった費用の支払いなどに充てられることになっています。交付された資金は、東京電力と電力各社などから毎年納められる負担金や、支援機構が保有する東京電力の株式の売却益などによって回収されることになっていて、会計検査院は、今後の見通しを試算しました。それによりますと、東京電力が特別負担金として昨年度分と同じ500億円を毎年納めることを想定した場合、資金の回収が終わるのは、株式の売却益の金額によって、最長で30年後の平成56年度、最短で21年後の平成47年度になるとしています。また、経常利益の半分を毎年納めることを想定した場合でも、資金の回収が終わるのは最短で18年後の平成44年度になるとしています。試算では、国が支援に必要な資金を金融機関から借り入れるために負担する支払利息は、総額890億円余りから最大で1260億円余りに上り、追加の財政負担が必要になるとしています。会計検査院は、負担金や株式の売却益の水準によっては資金の回収が長期化し、支払利息など国の財政負担が増えることになると指摘しています。 資金回収のカギになるのは?国が交付する9兆円の資金の回収を終えるまでにどのぐらいの期間がかかるのか。その鍵を握るのが、東京電力の株式の売却益と、東京電力と電力各社などが納める「負担金」の水準です。会計検査院は、今回の試算で資金の回収に充てられる株式の売却益について、▽3兆5000億円、▽2兆5000億円、▽1兆5000億円の、3つのケースを想定しました。これを1株当たりの平均の売却価格にすると、それぞれ、▽1350円、▽1050円、▽750円となり、株式の価格が高くなるほど資金の回収が終わるまでの期間が短くなるとしています。会計検査院は、株式を高い価格で売却するためには財務状況のさらなる改善や内部留保の蓄積などが必要だが、その取り組みは容易ではないとして、国などに対し、資金の確実な回収と東京電力の企業価値の向上の双方に十分に配慮する必要があると指摘しています。また、資金の回収には、電力会社などが毎年納める「負担金」が充てられ、昨年度分は、「特別負担金」として東京電力が500億円、「一般負担金」として東京電力を含む電力各社などが1630億円を納めました。このうち「一般負担金」は、コストとして電力料金の原価に算入できるもので、電力会社などの収支の状況などを踏まえて、原子力損害賠償・廃炉等支援機構が定めることになっています。今回の試算では、今後も電力会社などが昨年度分と同じ額の一般負担金を納めることを想定しています。一方、会計検査院は、原発の停止に伴う燃料費の増大などの影響で電力会社の中には複数年にわたって経常収支が赤字になっているところがあるとして、今後も同じ程度の水準の一般負担金を維持できるか注視が必要だとしています。専門家「改めて負担の在り方検討を」東京電力の経営について詳しい立命館大学の大島堅一教授は、「事故処理の対策はまだ入り口で、これから除染で出た廃棄物の最終処分の費用も発生し、今の9兆円の支援ではすまない可能性がある。改めて費用負担や資金の回収の在り方を検討する必要が出てくると思う」と指摘しています。そのうえで大島教授は、「電力各社などが納める一般負担金は電気料金の原価に含まれていて、国民の負担は税金だけでなく電気料金にも及ぶ。費用がいくら発生し誰がどのように負担しているか国民にきちんと開示して、判断を仰ぐことが必要だ」と指摘しています。東電「コストさらに削減」東京電力は「現時点で柏崎刈羽原子力発電所の具体的な運転計画を示すことができる状況にないが、コスト削減のさらなる徹底などにより、事業計画で掲げた目標の達成に向け最大限努力して参りたい」とコメントしています。さらに、廃炉・汚染水対策について「指摘された留意事項を真摯(しんし)に受け止め、対応を検討していきます」とコメントしています。

*1-3:http://www3.nhk.or.jp/news/html/20150901/k10010211871000.html
(NHK 2015年9月1日) IAEA最終報告書「原発が安全との思い込み」
 IAEA=国際原子力機関は、東京電力福島第一原子力発電所の事故を総括する最終報告書を公表し、事故の主な要因として「日本に原発が安全だという思い込みがあり備えが不十分だった」と指摘したうえで、安全基準を定期的に再検討する必要があると提言しました。IAEA=国際原子力機関は31日、福島第一原発の事故について40を超える加盟国からおよそ180人の専門家が参加してまとめた1200ページ以上に上る最終報告書を公表しました。この中でIAEAは、事故の主な要因として「日本に原発は安全だという思い込みがあり、原発の設計や緊急時の備えなどが不十分だった」と指摘しました。そのうえで、いくつかの自然災害が同時に発生することなどあらゆる可能性を考慮する、安全基準に絶えず疑問を提起して定期的に再検討する必要がある、と提言しています。また、市民の健康については、これまでのところ事故を原因とする影響は確認されていないとしたうえで、遅発性の放射線健康影響の潜伏期間は、数十年に及ぶ場合があるものの、報告された被ばく線量が低いため、健康影響の発生率が将来、識別できるほど上昇するとは予測されないとしています。IAEAは、この報告書を今月行われる年次総会に提出して、事故の教訓を各国と共有し、原発の安全性の向上につなげたいとしています。 .「経験から学ぶ姿勢が安全の鍵」今回の報告書について、IAEAの天野事務局長は「世界中の政府や規制当局、関係者が、必要な教訓に基づいて行動を取れるようにするため、何が、なぜ起きたのかについての理解を提供することを目指している」と述べ、その意義を強調しました。そのうえで、事故の甚大な影響を忘れてはならないとし、「福島第一原発の事故につながったいくつかの要因は日本に特有だったわけではない。常に疑問を持ち、経験から学ぶ開かれた姿勢が安全文化への鍵であり、原子力に携わるすべての人にとって必要不可欠だ」と述べ、事故の教訓を原発の安全性の向上につなげてほしいと訴えました。安全の問題に責任と権限が不明確IAEAは、福島第一原発の事故の背景には、原発は安全だという思い込みが日本にあり、重大な事故への備えが十分ではなかったと指摘しています。具体的には、仮にマグニチュード8.3の地震が発生すれば最大で15メートルの津波が到達することが予想されたのに、東京電力などが必要な対応を取らなかったとしているほか、IAEAの基準に基づく十分な安全評価が行われず、非常用のディーゼル発電機の浸水対策などが不十分だったとしています。また、東京電力は、複数の場所で電源や冷却装置が喪失した場合の十分な準備をしていなかったほか、原発の作業員は非常時に備えた適切な訓練を受けておらず、悪化する状況に対応するための機器もなかったと結論づけています。さらに、当時の日本の原子力の安全や規制については、多くの組織が存在していて、安全上の問題に遅滞なく対応するために拘束力のある指示を出す責任と権限がどの組織にあるのか明確ではなかったとしています。そのうえで、当時の規制や指針は国際的な慣行に完全に沿うものではなかったとも指摘しています。これまでのところ健康影響確認されず市民の健康について、IAEAは、これまでのところ、事故を原因とする影響は確認されていないとしています。そのうえで遅発性の放射線健康影響の潜伏期間は、数10年に及ぶ場合があるものの、報告された被ばく線量が低いため、健康影響の発生率が、将来識別できるほど上昇するとは予測されないとしています。そして、甲状腺検査の結果、一部で異常が検知された子どもたちについては、被ばく線量が低いことから、事故と関係づけられる可能性は低く、この年代の子どもたちの自然な発生を示している可能性が高いと分析しています。ただ、事故直後の子どもの被ばく線量については不確かさが残るともしています。一方で、地震や津波などいくつかの要素が関わっているとみられるため、どこまでが原発事故の影響かは判断することは難しいものの、住民の中には、不安感やPTSD=心的外傷後ストレス障害の増加など、心理面での問題があったと指摘しており、その影響を和らげるための対策が求められると強調しています。東電旧経営陣3人強制起訴へ福島第一原子力発電所の事故を巡っては、検察審査会の議決を受けて旧経営陣3人が業務上過失致死傷の罪で強制的に起訴されることになり、今後、裁判で刑事責任が争われます。政府の事故調査・検証委員会の報告書によりますと、東京電力は事故の3年前に福島第一原発に高さ15.7メートルの津波が押し寄せる可能性があるという試算をまとめましたが、根拠が十分でない仮定の試算で実際にはこうした津波は来ないなどと考え、十分な対策は取られませんでした。こうした東京電力の対応について検察は、これまでの捜査で、「予測を超える巨大な津波で刑事責任は問えない」などとして旧経営陣を不起訴にしました。これに対して検察審査会はことし7月に出した議決の中で、自然現象を確実に予測するのはそもそも不可能で、原発を扱う事業者としては災害の可能性が一定程度あれば対策を取るべきだったと指摘しています。さらに議決では、当時の東京電力の姿勢について、「安全対策よりも経済合理性を優先させ、何ら効果的な対策を講じようとはしなかった」と批判しています。この検察審査会の議決によって東京電力の勝俣恒久元会長ら旧経営陣3人が、業務上過失致死傷の罪で強制的に起訴されることになり、今後、裁判で刑事責任が争われます。

*1-4:http://qbiz.jp/article/70677/1/ (西日本新聞 2015年9月11日) 元技術者「原発疑え」、”安全神話”復活に危機感 川内1号機営業運転
 九州電力川内原発1号機(鹿児島県薩摩川内市)の再稼働から11日で1カ月を迎える。フル稼働への過程でトラブルが発覚した復水器を建設当時、技術者として取り付けた市内の山下勝次さん(73)は今、やりきれない思いを抱く。福島原発事故で崩れ去ったはずの“安全神話”が復活しつつあるからだ。「原発に絶対の安全はない」。そう訴え続けることが自分に課せられた使命だと信じる。再稼働後の8月28日、山下さんは薩摩川内市役所にいた。「九電はなぜ、チェックしなかったんだ。安全意識がお粗末だ」。再稼働直後、蒸気を水に戻す復水器の配管に穴が開くトラブルが発生。反対派住民の先頭に立ち、荒い口調で市職員に詰め寄った。復水器は自ら設置したものだった。プラントメーカーに勤務していた1982年。現場責任者として技術者80人を束ね、1、2号機に計6基を据え付けた。機器の組み立てで許される誤差はマイクロ単位、溶接作業は微小の傷でも元請け担当者からやり直しを命じられた。考え得る最高水準の技術を集め「当時としては完璧な仕事だった」と振り返る。もともと原発推進派。上司に駆り出され、九電営業所前で反対派のデモ隊と何度もにらみ合いになり「ろうそくで暮らす気か」と決まり文句を浴びせた。退職後、福島事故が発生。安全神話を信じ切っていた自分に罪悪感を抱き、原発反対派の集会に足を運ぶようになる。すると、政府が「世界最高水準」と強調する新規制基準の下、川内原発は再び動きだした。再稼働後、原発の報道はめっきり減った。街頭での反対運動に足を止める人もわずか。中年男性からは「いまさら何言ってんだ」となじられた。動きだしたからしょうがない−。そんな空気が漂うが、街に活気が戻ったわけでもない。全国から作業員が大挙する定期点検は13カ月後。商店主らはじっと待ちわびる。落ち着きだけを取り戻した街で、山下さんは街頭に立ち、元技術者、元原発推進派の立場で訴え続ける。「皆さん、原発を疑って」
◆「再稼働認めない」住民らが抗議集会
 九州電力川内原発1号機(鹿児島県薩摩川内市)が営業運転を始めた10日、県内の反原発団体が発電所ゲート前で集会を開いた。参加した住民ら約40人は「国民も県民も再稼働を認めていない」などと抗議の声を上げた。警備員らが警戒する中、参加者は次々にマイクを握った。川内原発建設反対連絡協議会会長の鳥原良子さん(66)は「原発は街の活性化に何の足しにもならない。住民無視の再稼働だ」と批判し、「推進派は『安全だ』と言うが、住民は信じていない」と訴えた。来月にも初孫が生まれるという市内の自営業、川畑清明さん(59)は「危険があるこの街に住まわせるべきか迷っている」と明かし、「黙っていれば、原発を認めたことにされる。『嫌なものは嫌だ』と声を上げ続ける」と語った。

*1-5:http://digital.asahi.com/articles/ASH9C5QFQH9CUTFK00V.html
(朝日新聞 2015年9月12日) 「原発は環境汚染産業」 小泉元首相、再稼働を批判
 小泉純一郎元首相(73)が朝日新聞の単独インタビューに応じ、川内原発1号機が営業運転を再開するなど原発再稼働の動きが進んでいることについて、「間違っている。日本は直ちに原発ゼロでやっていける」と語った。政府や電力会社が説明する原発の安全性や発電コストの安さに関して「全部うそ。福島の状況を見ても明らか。原発は環境汚染産業だ」と痛烈に批判した。小泉氏は首相在任中は原発を推進してきたが、東京電力福島第一原発の事故後、原発の危険性を訴え講演活動を続けている。小泉氏が報道機関のインタビューに応じるのは、2006年9月の首相退任以来初めて。インタビューは原発問題をテーマに9日、東京都内で行った。小泉氏は、07年の新潟県中越沖地震や11年の東日本大震災など、近年、日本で大きな地震が頻発していることから「原発は安全ではなく、対策を講じようとすればさらに莫大(ばくだい)な金がかかる」と主張。原発が温暖化対策になるという政府の説明についても、「(火力発電で発生する)CO2(二酸化炭素)より危険な『核のゴミ』(高レベル放射性廃棄物)を生み出しているのは明らかで、全然クリーンじゃない」と語った。原発再稼働を推し進める安倍政権に対しては「原発推進論者の意向に影響を受けている。残念だ」と批判。今年3月、首相経験者による会合の席で安倍晋三首相に「原発ゼロは首相の決断一つでできる。こんないいチャンスはないじゃないか」と直接迫ったことも明らかにした。米国と原発推進で歩調を合わせていることには「日本が『原発ゼロでいく』と決めれば、米国は必ず認める。同盟国であり、民主主義の国だから」と述べた。原発ゼロを掲げる政治勢力を結集するための政界復帰は「まったくない」と否定。ただ、原発政策が選挙の争点にならない現状について「争点になる時は必ずくる。その時に候補者自身がどう判断するかだ」と強調し、原発ゼロの国づくりをめざす国民運動を「焦ることなく、あきらめずに続けていく。そういう価値のある運動だ」と決意を示した。

<避難解除は妥当か>
*2-1:http://mainichi.jp/select/news/20150905k0000m040138000c.html?fm=mnm
(毎日新聞 2015年9月5日) 楢葉町:全域避難を解除…すぐに帰還1割未満、再生険しく
 政府の原子力災害対策本部(本部長・安倍晋三首相)は5日午前0時、東京電力福島第1原発事故で全域避難となった福島県楢葉町の避難指示を解除した。解除は田村市都路地区と川内村東部に続き3例目で、全域避難した県内7町村では初めて。国は今後、楢葉町を拠点に沿岸部に広がる避難指示区域の除染やインフラ整備を進める。一方、放射線への不安や病院などの生活基盤の不備などから、すぐに帰還する住民は約7300人のうち1割に満たないとみられ、町再生への道のりは険しい。
◇財源確保が課題
 国は2017年3月までに放射線量の特に高い「帰還困難区域」を除き、県内の避難指示を解除する方針だ。3段階ある避難指示区域の中で最も放射線量が低い「避難指示解除準備区域」(年間積算放射線量20ミリシーベルト以下)の楢葉町を「復興の拠点」と位置づけ12年9月から除染に着手。道路などの整備も14年度中にほぼ完了した。国によると、楢葉町では宅地の空間線量が1時間当たり平均0.3マイクロシーベルト(昨年7〜11月)に低下。国は「年間被ばく量が帰還の目安の20ミリシーベルトを下回ることが確実になった」として、町や住民らとの協議を経て、解除を決定した。医療や買い物への不安を緩和するため、病院への無料送迎バスの運行や町内のスーパーによる宅配サービスも始まる。町内には福島第1原発の収束作業や除染を請け負う大手ゼネコンの作業員の宿舎が急増。しかし、住民の転出が相次ぎ、町の人口は事故前の8100人前後から約1割減少した。町の税収も減り、震災前に6割を超えていた自主財源率も3割程度と低迷が続く。一方、復興関連事業費は膨らみ、今年度の当初予算は10年度の5倍となる過去最高の200億円を突破。復興の財源確保は解除後の大きな課題だ。復興庁が昨年10月実施した帰還意向調査(回収率55.6%)では、「すぐに戻る」「条件が整えば戻る」と答えた町民は46%で、うち帰還時期を避難指示解除から「1年以内」と答えた人は37%だった。しかし、今年4月に始まった「準備宿泊」に登録した町民は約780人にとどまった。17年4月に同県いわき市の仮設校から町に戻る町立小中学校に「通学する」とした児童生徒数も、町のアンケート調査で就学対象者の7%しかない。

*2-2:http://digital.asahi.com/articles/ASH955JN3H95UTIL00Z.html
(朝日新聞 2015年9月6日) 避難解除、戻った住民1割 楢葉「医者いない、店ない」
 東京電力福島第一原発事故で福島県楢葉(ならは)町に出ていた避難指示が5日、解除された。全自治体規模で解除されるのは初めて。戻ってきたのは、住民7400人のうち1割にも満たない。事故から4年半がたち、町は廃炉の前線基地へと変わった。いまだ避難指示が出ている福島県内9市町村の7万人余りは帰還できるか。政府が試金石とする町の復興は始まったばかりだ。5日、町内で開かれた復興祈念式典には政府関係者がずらりと並んだ。町の未来図を示したパネルが披露された。仮設校舎で学ぶ子どもたちは植樹したエノキを「きぼうの木」と命名。町は祝賀ムードに包まれた。昨年7~11月の調査では住宅地の空間線量の平均が毎時0・3マイクロシーベルトにまで下がり、政府は「帰還して居住することは可能」と説明する。だが、町の水がめの木戸ダムの湖底の土から放射性物質が検出され、飲料水の安全を心配する住民は少なくない。町の姿は事故前とは大きく変わった。空き家状態だった多くの民家が荒れた。事故で原則立ち入りが禁じられる警戒区域に指定されたが、2012年8月から日中の立ち入り、今年4月からは宿泊もできるようになった。だが、住宅の解体や修理を担う業者が足りず、再建が進んでない。このため、町に戻った住民は一部にとどまる。自宅に戻る準備をするための宿泊制度に登録していたのは351世帯780人程度。実際に戻った人はさらに少なく全体の1割に届かない。「医者もいないし、店もない」。町に戻った志賀良久さん(77)は生活の不便さを訴える。町内にあった内科医院は10月に再開され、県立診療所も来年2月に開院する。だが、住民が通院していた近隣自治体の医療機関は避難指示が出ており、閉鎖されたままだ。町内で食料品を買えるのは仮設商店街にあるスーパーとコンビニ店のみ。町商工会によると、事故前に59店舗あった会員の小売店や飲食店のうち、先月20日までに町内で営業を再開したのは14店舗にとどまる。4年半に及ぶ避難生活で、避難先で職をみつけ、学校に通うなどして、現役世代や子どもたちを中心に避難先で定住することを決めた人も多い。いわき市の仮設住宅に住む無職男性(61)は市内に中古の一戸建てを買った。「楢葉町は治安と飲み水が心配だ」と話す。
■「復興拠点に」国は後押し
 政府は、避難指示が出た区域の中では放射線量が比較的低い楢葉町を「復興の拠点」と位置づける。そのため、除染や道路、医療機関などを整備して町の復興を後押ししてきた。政府にとって今回の解除は、帰還政策がうまくいくかを占う試金石となる。除染などが進み、楢葉町は廃炉作業の前線基地となりつつある。関連産業に伴う新たな雇用を作り出し、元の住民が戻る環境を整えようとしている。町の工業団地には、廃炉技術を研究する原発の大型模型(モックアップ)が建設中だ。日本原子力研究開発機構が運営し、研究者ら60人が勤める予定。滞在を当て込み、17年秋には町で初めてビジネスホテルが進出する。東電の関連企業の社員の宿舎も建つ。災害公営住宅などを建てる「コンパクトタウン」には、ホームセンターや食料品店が入る商業施設をつくる計画もある。しかし、どれだけの雇用が生まれ、町にどれだけの人が戻ってくるのかは未知数だ。福島県内ではなお9市町村の7万人余りが戻れず、6町村は自治体丸ごと避難指示が出ている。政府はこのうち、放射線量が一定量以下に下がった地域は「17年3月までに帰れるようにする」ことを掲げる。来春には南相馬市や川俣町、葛尾村でも避難指示を解除したい考えだ。福島第一原発のある大熊、双葉両町の大部分など放射線量の高い帰還困難区域(人口約2万4千人)は解除のめどが立たない。両町にまたがる16平方キロは、福島県内の放射能に汚染された土を30年間保管する、中間貯蔵施設となる予定だ。双葉町幹部は「5年後も状況は何も改善していないかもしれない」と話す。

*2-3:http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150906-00000008-asahi-soci
(朝日新聞 2015年9月6日) 家族残し帰還・自宅荒れ戻らぬ決断… 楢葉避難解除
 東京電力福島第一原発事故で福島県楢葉町に出ていた避難指示が5日、解除された。故郷に戻った人、戻るか迷っている人、戻らないと決めた人。それぞれに4年半の歳月が重くのしかかる。
■「子どもたち、避難先になじんだ」
 避難指示が解除された、5日午前0時。大楽院第43代住職・酒主秀寛(さかぬししゅうかん)さん(44)は町の復興を願い、火柱の前で経を唱えた。「寺に住む者は、人びとに寄り添うべき人間。一つの区切りの日。今日から寺に戻ります」。2011年3月11日は酒主さんにとって特別な日だった。真言宗豊山派本部から住職に任命され、住職を50年務めた父の明寛(みょうかん)さん(78)から寺の仕事の大半を引き継ぐつもりだった。避難指示が出た後、一家6人で避難した。町職員でもある秀寛さんは、同県会津若松市の借り上げアパートに一時避難して被災者支援にあたった。その後、妻千咲さん(39)、長女真由さん(11)と長男大誉(ほまれ)君(7)の避難する茨城県北茨城市に移った。明寛さん夫妻は群馬県を経て、福島県いわき市に避難した。今回、楢葉町に戻ったのは秀寛さん1人だけ。子どもたちを戻らせるか決めかねている。町は17年春に小中学校が再開する。だが、大誉君に町の記憶はほとんどない。秀寛さんは「家族一緒に住みたい気持ちはある。だが、子どもたちは向こうの暮らしになじんでいる。学校再開までに、家族みんなで帰るかどうかを考えたい」と話す。檀家(だんか)には生活の不便さや放射線への不安から楢葉町に戻れない人も多い。楢葉町民の8割が避難するいわき市に設けた「別院」は当面、維持するという。
■「農業も無理、知り合いもいない」
 事故でまちは大きく変わった。沿岸部は津波で倒壊した住宅が今なお残る。田畑だった一帯には、汚染土を詰めた黒い袋が並ぶ。事故後、町内には原発の廃炉や除染作業に携わる業者の事務所や宿泊施設などが建つようになった。作業員が千人以上暮らし、元からの住民の数を上回る。昼時になると仮設商店街はトラックやワゴン車が駐車場に並び、作業服姿の男性たちでにぎわう。町に戻った元の住民も少なく、夜は暗くひっそりとしている。地域の結びつきも切れたままだ。いわき市の仮設住宅で暮らす石沢輝之さん(75)は「帰りたいけど帰れない。町が暗くて、とても妻を一人で歩かせられない」と話す。5日夕、楢葉町から名古屋市緑区の公営住宅に避難している松本頌子(のぶこ)さん(79)は、避難指示解除を伝えるニュースを見つめた。「もう帰れねえ。今さら解除って言われてもな。悔しい。悔しいけどね」。愛知県に住む長女(52)を頼って名古屋市にきた。当初、夫の義治さん(80)と「1年ぐらいで帰れっぺ」と励ましあった避難生活は、4年半になる。楢葉町の自宅はかびが生え、ネズミに荒らされ、生い茂った草木は背丈を超えていた。家財の処分や片付けのために一時帰宅した長女らから、荒れていく様を聞いた。今春、「直すには1千万円かかる」と言われ、頌子さんは覚悟を決めた。「私はもう名古屋にいるわ」。「おれは1人でも帰っからな」。それでも義治さんは言い続けていた。8月上旬、片付けの仕上げのつもりで一家で帰った。腰の痛みをおし、避難後初めて自宅に戻った義治さんは、涙をこらえきれなかった。隣は家を壊し始め、向かいも壊すと決めていた。一家5人で暮らしていた裏手は、80代のおばあちゃんだけが戻るという。近所の知り合いで、ふるさとに戻るのは1人だけだった。「帰りたい。でも百姓もできない、知り合いもいないでは、生きていかれねえ。あの家を見て、遠くなっちゃった気がした」と義治さん。自宅を取り壊すかどうかは、まだ決められずにいる。「ご先祖様には怒られっぺな」。少なくとも代々の墓だけは、楢葉町に残して欲しい。子どもたちには、そう頼んだ。

*2-4:http://www.nichibenren.or.jp/activity/document/statement/year/2014/140131.html (日本弁護士連合会会長 山岸憲司 2014年1月31日) 避難住民の帰還に当たっての線量基準に関する会長声明  
 原子力規制委員会は、昨年11月20日、「帰還に向けた安全・安心対策に関する基本的考え方(線量水準に応じた防護措置の具体化のために)」と題する報告書を取りまとめ、その後、政府の原子力災害対策本部は、12月20日に「原子力災害からの福島復興の加速に向けて」と題する指針を決定した。原子力規制委員会の報告書は、避難指示区域への住民の帰還に当たっての年間の被ばく線量について、20ミリシーベルト以下を必須条件とし、長期的な目標として、個人の追加被ばく線量が1ミリシーベルト以下になるよう目指すこと、また、被ばく線量については、「空間線量率から推定される被ばく線量」ではなく、個人線量計等を用いて直接実測された個々人の被ばく線量による評価をすることを提案しており、政府の指針もこれを踏まえて作成されている。しかしながら、低線量被ばくの危険性については、疫学的に有意差があるとの報告もあり、専門家の間でも意見が分かれている。特に子どもたちは放射線感受性が高いことが知られており、予防原則に基づく対策が求められている。いわゆるチェルノブイリ法では、年間5ミリシーベルトを超える地域では避難を義務付けられ、1~5ミリシーベルトでは避難の選択ができるとされている。 我が国でも、一般公衆の被ばく限度は年間1ミリシーベルトとされており、労災認定基準や放射線管理区域の基準は年間5ミリシーベルトとされてきている。これらに比して、年間20ミリシーベルトという基準は、たとえ必須条件にすぎないとしても、高きにすぎるといわざるを得ない。国際放射線防護委員会(ICRP)の「長期汚染地域住民の防護に関する委員会勧告」は、汚染地域内に居住する人々の防護の最適化のための参考レベルは1~20ミリシーベルトの範囲の下方部分から選定すべきであり、過去の経験により、その代表的な値は実効線量が年間1ミリシーベルトであることが示されているとした上で、防護措置の策定及び実施には住民が関わるべきであると勧告している。このような勧告に照らしても、年間20ミリシーベルトという基準は、国際的水準を逸脱するもので、到底容認できるものではない。確かに、福島県県民健康管理調査が継続されてはいるが、その結果について様々な評価がされているところであり、住民が適切に自己決定できるように、調査方法・内容をより充実させ、住民に対して正確かつ詳細な情報を提供することが必要といえる。また、被ばく線量の評価方法について、空間線量による推計ではなく、個人線量計による実測値による評価へと変更することについても、これによって住民の自己管理が可能になるとの側面はあるが、他方で、個人線量計の不適切な使用等による測定誤差は避けられないこと、個人線量計では全ての放射線量を計測することはできないこと等を勘案すれば、むしろ過少評価となるおそれも否定できない。また、屋外活動時間を避けられない等の事情がある個人にとっては、被ばく量が自己責任であるとされるおそれもある。できる限り安全側に立った評価を行うためには、空間線量による推計値を基本とすべきであり、個人線量計の実測値はそれを補完するものと位置付けるべきである。当連合会は、昨年10月4日に「福島第一原子力発電所事故被害の完全救済及び脱原発を求める決議」を採択し、国に対して、予防原則に基づき、避難指示解除は年間1ミリシーベルト以下であることが確認された地域から行うべきであること、年間5ミリシーベルトを超える地域については、十分な補償・避難先での生活保障を前提に、避難指示を出すこと等を要請した。残念ながら、今回の報告書及び指針は、到底当連合会の要請に応えるものではない。よって、当連合会は、国に対し、予防原則に立った以下の措置を求める。
(1) 避難指示解除の線量基準については、地域住民の参加の下で十分に時間をかけて住民の合意に基づき決定されるべきで、拙速な決定はなすべきではないこと。
(2) 避難指示解除は、年間1ミリシーベルト以下であることが確認された地域から行うべきであり、年間5ミリシーベルトを超える地域については解除すべきでないこと。
(3) 帰還するか、避難を継続するか、避難先で生活再建するか、いずれの選択をしても、住民が健康で安定した生活を送れるように十分な配慮・支援を行うこと。
(4) 被ばく線量の評価は、安全側に立った空間線量による推計値を基本とし、さらに住民の自己管理に資するように個人線量計による実測値を補完的に用いること。

*2-5:http://www.minyu-net.com/news/news/0910/news7.html
(福島民友ニュース 2015年9月10日) 「1ミリシーベルトの壁」疑問視 原子力学会「秋の大会」
 日本原子力学会の本年度「秋の大会」は9日、静岡市の静岡大で始まった。11日まで。初日の分科会では東京電力福島第1原発事故で政府の事故調査委員長を務めた畑村洋太郎東大名誉教授が講演し、本県での事故後の取り組みについて「除染や帰還をめぐり1ミリシーベルトの壁(目標)ができているのはとてもおかしいことだ」との考えを示した。政府は除染の長期的な目標として「年間追加被ばく線量1ミリシーベルト以下」を掲げている。畑村氏は、自然放射線による被ばく量が国内の平均値で年間1.5ミリシーベルトあることを示す資料を提示。原発事故の避難でストレスを抱えた人などがいることを踏まえ「人間を取り囲むさまざまな健康阻害要因がある中で、放射線のリスクだけを取り上げ1ミリシーベルトの壁をつくったのはいけないことだった」と語った。畑村氏はまた、今後の原子力分野について「事故はこれからも必ず起こると考える必要がある。原子力ムラのような閉鎖的体制ではいけない。他の分野の失敗経験からも学んでほしい」と呼び掛けた。

*2-6:http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2015091201001793.html
(東京新聞 2015年9月12日) 豪雨による除染袋流出240個に 一部は破損、中身空に
 東京電力福島第1原発事故の除染で出た汚染廃棄物を入れた大型の袋が豪雨で福島県飯舘村の河川に流出した問題で、環境省は12日、流出が計240袋になったと発表した。このうち113袋を回収したが、一部の袋は破れて中身が空になっていたという。環境省は残りの袋の回収を急ぐとともに、回収した袋の状態や周辺環境への影響がないか確認を急ぐ。道路の通行止めなどで調査ができていない場所もあり、今後流出数が増える可能性がある。12日午後9時半現在の調査結果を集計した。240袋のうち238袋は飯舘村で、2袋は保管場所から約20キロ下流の南相馬市原町区で見つかった。

<川内原発はじめ原発の再稼働>
*3-1:http://digital.asahi.com/articles/DA3S11960658.html (朝日新聞 2015年9月12日) 太陽光、管理強化へ始動 再生エネ有識者、初会合 登録制や急増対策を議論
 経済産業省は11日、再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度(FIT)を抜本的に見直す検討を始めた。急増する太陽光発電への国の管理を強めるため、設備の登録制や買い取り急増時の歯止め策などを検討する。普及が遅い地熱や風力などは規制緩和で後押しする。普及拡大と国民負担の抑制の両立が課題となる。FITは、電気料金に再生エネの買い取り費用を上乗せし、電力会社が再生エネを高値で買い取るしくみ。割高な再生エネの普及を加速させる狙いで2012年に始まった。FITの見直しに向けて同省が11日開いた有識者会議の初会合では、有識者らから「(見直しの)タイミングが遅すぎた」などと批判が相次いだ。太陽光に導入が偏りすぎたためだ。買い取り価格が割高で、参入障壁も低い太陽光に認定容量の約9割が集中。太陽光は30年度の電源構成で6400万キロワットを想定しているのに、今年3月末の認定容量で、すでに想定を3割上回る約8千万キロワットに急増した。買い取り費用は電気代に賦課金として上乗せされ、利用者全体で負担している。標準的な家庭が負担する賦課金は12年度の月66円から15年度は月474円と7倍に。太陽光の買い取り費用の総額は、30年度に見込む2・4兆円の8割近い1・8兆円に15年度で達する見込みだ。経産省は「太陽光の導入ペースが速すぎる」と判断。30年度の電源構成に沿ったペースに抑えるよう国の管理を強めるしくみを導入したい考えだ。年間の認定量に上限を設ける案などを検討する。認定済みの設備についても選別を強める。実際に発電を始めているのは容量ベースで2割程度にとどまるためだ。買い取り価格が高いうちに認定を受け、設置費用が下がるまで発電をしない「空押さえ」が数十万件に上るとみられ、発電コストの低い後発の事業者が参入しづらくなっていた。このため経産省は、要件を満たせば認定するいまの制度を改め、電力会社との接続契約を条件とする「登録制」を導入する方向。発電開始を義務づける対象設備を、いまの400キロワット以上から大幅に広げることも検討する。年内に見直し案をまとめ、来年の通常国会で法整備を目指す。ただ、太陽光は今夏、電力需要が最も多かった日の日差しが強まる時間帯に電気の約1割を担うなど、ピーク時に頼りになる電源になりつつある。規制を強め過ぎると、普及に急ブレーキがかかるおそれもある。
■地熱・風力は普及テコ入れ
 一方、地熱や風力、バイオマスなど太陽光以外の再生エネについては普及のてこ入れ策を検討する。
 30年度の電源構成を実現するには、設備容量をそれぞれいまの3倍に増やす必要があるが、FIT開始前から3年間の増加率は4・4%にとどまる。着工に必要な環境評価に数年かかり、温泉事業者や漁協など地元関係者の同意を得る必要があることが普及の壁になっている。経産省は今後、環境評価の期間を短くするしくみや、国立公園で地熱発電をしやすくする規制緩和などを検討する。

*3-2:http://qbiz.jp/article/68677/1/
(西日本新聞 2015年8月11日) 「再稼働ノー」怒りの拳 薩摩川内市
 「福島を忘れたのか」−。全国の原発の先頭を切って九州電力川内原発1号機(鹿児島県薩摩川内市)が再稼働した11日、発電所ゲート前では反原発団体のメンバーらが抗議の声を張り上げた。一方、地元の市民からは地域経済を潤してきた原発が動きだすことに期待の声も上がった。ゲート前では約200人の警察官が警戒に当たる物々しい雰囲気の中、早朝から約100人の反対派が座り込んだり、テントを張ったりして「再稼働ノー」の声を上げた。制御棒を抜いた午前10時半の5分前から参加者たちは原子炉建屋に向かい、拳を突き上げた。市民団体メンバーの野呂正和さん(64)はジョン・レノンのイマジンを歌い「原発事故の恐ろしさを想像しよう」と呼び掛けた。集会には、菅直人元首相やルポライターの鎌田慧さんも駆け付けた。菅氏は「原発がないと電気が足りないというのは大うそ。原発事故への備えは全くできていない」と政府を批判した。鹿児島市の徳満正守さん(64)は「事故が起きても誰も責任をとらない。核廃棄物の処分場も決まっていない」と指摘。福岡市から来た大学4年の熊川果穂さん(21)=鹿児島県姶良市出身=は「1パーセントでも事故が起こる可能性があるなら原発は動かすべきじゃない」と訴えた。参加者の一部は午前6時から車5台をゲート前に止めて封鎖。警官から移動を求められても応じず、4時間後に封鎖を解いた。反対派の男性が持つ工具をめぐり、警官隊ともみ合う場面もあり、緊張が走った。川内原発から東へ十数キロ。薩摩川内市の中心街にいた専門学生の女性(19)は「生活に電気は必要。九電と国が安全と言うなら事故はないはずだ」と話した。スーパーで買い物をしていた建設作業員、瀬戸口豊隆さん(58)は「電気が足りているなら再稼働しないでほしいが…」とうつむきながら言う。昨年夏は3カ月間、川内原発で作業員として働いた。「ほかの現場より賃金は高い。原発で経済が回っている街だから、再稼働はしょうがない」
●「なぜ月命日に…」 福島事故の避難者、憤り
 鹿児島県の川内原発1号機の再稼働について、東京電力福島第1原発事故で避難生活を余儀なくされている福島県の住民からは「同じ苦しみを味わってほしくない」「福島の深刻さを分かっていない」と事故再発を懸念する声が相次ぐ一方、原発で生計を立てる住民に理解を示す声も聞かれた。「再稼働という事実だけでも胸が痛むのに、なぜあえて(震災の月命日の)11日を選んだのか。怒りや悲しみ、失望の感情が渦巻いている」と話すのは、同県浪江町から避難し福島市で暮らす主婦金井春子さん(66)。病気がちの夫を支えながらの避難生活は4年以上が経過したが、終わりは見えない。「心身ともに限界。他の人には同じ苦しみを味わってほしくない」と訴えた。原発事故で電気工事の仕事を休業に追い込まれ、同県二本松市の仮設住宅で生活する岩倉文雄さん(67)も、第1原発事故の検証が終わる前の再稼働に「福島で起きたことの深刻さを考えていないのでは」と疑問を呈した。一方で「原発のおかげで地域経済が支えられてきたのは事実。再稼働してほしいという(立地自治体周辺の)人の気持ちも分かる」と話すのは、同県いわき市で避難生活を送る原発作業員の男性(28)だ。事故がまた起きて故郷を追われる人々が出るのは心配だが、原発をきっぱりと否定することもできない。男性は「生活を支えてもらった恩がある。俺は原発に生かされてきたから」と複雑な胸中を明かした。

*3-3:http://dot.asahi.com/wa/2015090900135.html?page=1 (朝日新聞 2015.9.9) 再稼働 川内原発の“大事故”が危ぶまれる本当の理由
 発端は、2012年1月。カリフォルニア州サンオノフレ原発3号機で、交換後の蒸気発生器の配管から放射性物質を含む水漏れ事故が起きたことだった。蒸気発生器とは加圧水型原子炉に備わる装置で、タービンを回して発電するための蒸気を作り出す重要なもの。それが新品に交換した後に故障したのだ。同原発を運営する南カリフォルニア・エジソン社は、装置内に張り巡らされた伝熱細管と呼ばれる管が異常摩耗していたことが原因だったと断定。定期点検中の2号機にも同様の摩耗が見つかった。米国でこの問題を取材していたジャーナリストの堀潤氏が解説する。「米原子力規制委員会(NRC)の調査では、問題となった三菱重工業製の蒸気発生器の1万5千カ所以上に異常な摩耗が見つかったと報告されました。しかもNRCによると、三菱重工は製造した蒸気発生器に欠陥部分があることを設置前に認知していて、それを認めた報告書を12年9月にNRC側に提出していたと言います」。そのとおりなら、三菱重工は欠陥品を売ったことになる。事態を重く見たNRCは、原因究明と安全確保がなされるまで再稼働を禁止。12年10月には、神戸にある三菱重工の事業所に抜き打ち検査を行った。「そのときNRCは、蒸気発生器の欠陥部品を改良した配管に対する安全検査の方法が、連邦法などが定める基準に沿っていないことを見つけたのです。具体的な問題点は、[1]住友金属工業(現・新日鉄住金)から購入したモックアップ用配管が検査要求を満たす仕様になっていたか確認しなかった[2]東京測器研究所による市販の測定サービスの精度が基準を満たすか確認していなかったことなどです」(堀氏)。 つまり、三菱重工側の品質保証が、NRCや顧客の求める基準を満たしていなかったということになる。トラブルを起こした蒸気発生器は「経済性重視」のため、設計上の無理があったとの指摘もある。原子炉停止に追い込まれたエジソン社は早期再稼働を目指すが、周辺住民が反発。NRCも安全性が確保できないとして再稼働許可を与えず、13年6月にサンオノフレ原発は廃炉の選択を余儀なくされる。その後、責任を巡ってエジソン社と三菱重工の泥仕合が始まる。エジソン社は検査や補修にかかった費用1億ドル(約97億円)を三菱側に請求したが、折り合いがつかず13年に国際仲裁裁判所(国際商業会議所)へ仲裁を申請。そして今年7月、「欠陥のある蒸気発生器を設計、製造した三菱重工には甚大な被害の責任がある」として75.7億ドル(約9300億円)を請求したのだ。問題は三菱重工製の蒸気発生器が、再稼働した川内原発の加圧水型の原子炉(同社製)にも採用されていることだ。三菱重工によると、同社がいままで納めた蒸気発生器は122基。「サンオノフレ原発と同一仕様の蒸気発生器は他の原発に納入されていない」という。だが、トラブルを起こすリスクはあると指摘するのは、川内原発再稼働の異議申し立てを原子力規制委員会に行った山崎久隆氏だ。「九州電力が公表した資料によると、7年前に交換した川内原発1号機の蒸気発生器にはすでに35本の配管(伝熱細管)に穴が開きかけて施栓をしています。これが30年間使い続けている2号機の装置になると、栓をした本数は400カ所を超える。加えて古いタイプの装置は改良型に比べて配管に応力が集中しやすく、大きな地震が来たら耐えられない危険さえあるのです」。蒸気発生器は、熱交換効率を上げるために配管の厚みがわずか1.1ミリから1.3ミリほどしかない。常に加圧された熱水が管の中を流れているため、時間の経過によって摩耗し、穴が開くリスクも高まる。「常時どこかに穴が開いていて、定期点検で塞ぐ」(原発エンジニア)といわれるほどだ。摩耗した配管が裂けて高圧水が漏れだすと、重大事故につながりかねない。原発の危険性を訴え続ける作家の広瀬隆氏も「加圧水型の原子炉は高い気圧をかけた水を蒸気発生器に送るため、配管破断のリスクがある」と話す。「摩耗したどこかの配管が破れて水が噴き出すと鉄砲玉のように隣の配管を壊し、連鎖反応で一気に破壊される。1987年にイギリスの高速増殖炉で起きた事故では、10秒未満で40本の配管が連鎖破断しました。91年に起きた美浜原発2号機の事故は、蒸気発生器から噴き出した高圧水で配管がスパッと切れたギロチン破断だったのです」。蒸気発生器の配管が破損すると、1次冷却水が圧力の低い2次側へ急速に漏出する。つまり原子炉の冷却水が失われ、メルトダウンにつながる危険性をはらんでいる。事実、美浜原発の事故では20トン以上の冷却水が漏れ、炉が空焚き状態になりかけたと言われた。このように蒸気発生器のトラブルは深刻な事故につながるため、慎重な安全対策が必要。だが高価で大がかりな装置の上、取り換えにも時間を要するため、補修費用がかさむか、施栓が増えて定格出力ダウンにでもならない限り交換はしない。全部で1万本程度ある配管の18%程度が施栓で使えなくなると交換時期ともいわれる。その一方、再稼働を急ぐあまりか、耳を疑うような出来事もある。九電は400カ所以上に栓をした川内原発2号機の古い蒸気発生器を交換するため、新品を準備済み。だが、変えずに再稼働するという。九電はこう主張する。「信頼性向上の観点から14年度の取り換えを計画していたが、新規制基準適合への作業などがあり、ひとまず交換せずに再稼働を目指すことにした。現行の蒸気発生器は非破壊検査をして健全性を確認している」。だが、前出の山崎氏は「新しいものを発注したのは、九電が交換する必要があると判断したから。これでは安全軽視以外の何物でもありません」と批判する。川内原発1号機では再稼働直後の8月下旬、蒸気を海水で冷やして水に戻す復水器が海水混入事故を起こした。九電は混入の原因となった管など69本に施栓したが、同様の事故は今回が初めてではない。97年と99年にも玄海原発で同じ事故が起きていたのだ。広瀬氏が言う。「日本の原発は海岸線にあり、ただでさえ塩分で腐食しやすい。それが再稼働で高温環境になれば、ますます進む。4年以上動かしていない原子炉はすぐにトラブルを起こすのが当たり前で、いま現場の技術者は戦々恐々としているはず」。国民は大事故が起きないことを、祈るしかない。

*3-4:http://qbiz.jp/article/68609/1/
(西日本新聞 2015年8月10日) 川内再稼働「中止を」 原発前と九電で500人抗議
 九州電力川内原発1号機(鹿児島県薩摩川内市)の再稼働を控え、原発ゲート前と福岡市の九電本店前では10日、原発反対派らが再稼働を止めようとシュプレヒコールを上げた。「原発事故の責任をとるのは誰だ」。原発ゲート前には全国から約400人が集結し、こんな横断幕を掲げた。警察官が厳戒態勢を敷く中、「老朽原発は危険」「再稼働は中止すべきだ」と叫んだ。集会には菅直人元首相も参加。福島第1原発事故時に首相だった菅氏は避難計画の不備から大混乱を招いたとして「大変申し訳なかった」と謝罪。その上で自治体の避難計画は依然として不十分と指摘し「安全も確保されないで再稼働は認められない」と訴えた。作家の広瀬隆氏は「4年間も停止した原発を動かすのは非常に危険。その結果が何をもたらすかは福島の人々がよく知っている」。東京から友人8人と駆けつけた大学4年の嶋根健二さん(23)は「原発におびえながら生活したくない」と語気を強めた。福岡市の九電本店前では、市民団体の約100人が「原発いらない」などと声を上げた。非政府組織「ピースボート」の吉岡達也共同代表は「福島の事故で世界中の人が恐怖におののいたことを忘れてはならない」と唱えた。一方、原発から30キロ圏内に工場を持つ鹿児島県阿久根市の部品製造会社の男性社長(48)は「原発がなければ電気料金の値上げも懸念される。事故の備えを考えるより生活が先だ」。同県薩摩川内市内の飲食店経営者の男性(43)は再稼働には賛成でも反対でもないと前置きし「将来は(原発を)無くすべきだけど、急には無くせない」との立場だ。

*3-5:http://www.saga-s.co.jp/column/genkai_pluthermal/20201/217837
(佐賀新聞 2015年8月11日) 川内再稼働 反原発団体、県内でも抗議
 九州電力が川内原発(鹿児島県薩摩川内市)1号機の11日の再稼働を正式公表した10日、玄海原発を抱える佐賀県内では反原発団体が抗議活動を展開した。「世論を無視した暴挙。絶対に許されない」と再稼働の中止を訴えた。11日も現地で抗議活動したり、佐賀市内で街宣活動を行う。佐賀市の九電佐賀支社前では、県平和運動センターの呼び掛けで県内3団体約100人が抗議集会を開いた。「電気は足りてるぞ」「国民の声を聞け」などと、シュプレヒコールを繰り返した。平和運動センターの原口郁哉議長は「再稼働に大義はない。あるのは九電の赤字解消の目的だけ」と批判。「福島事故の検証もできていない中での再稼働は人類に対する犯罪行為」とする抗議文を採択した。九電や政府に送る。玄海原発プルサーマルと全基をみんなで止める裁判の会など九州4団体は午前中、博多港に寄港した国際交流団体「ピースボート」とともに福岡市の九電本店前で抗議活動を行った。その後、玄海原発が立地する東松浦郡玄海町を訪れ、再稼働を認めないように求める要請書を提出した。要請書は「日本だけでなく、東アジアの人々の命と子どもたちの未来を守るためにも、原発に頼らない社会をつくるべき」と主張している。韓国・ソウル市の女性パク・キュンハさん(43)は「韓国も海に面して多くの原発が稼働しており、福島の事故は韓国の未来になるかもしれない。再生可能エネルギーの推進を積極的に進めていくべきだと思う」と指摘した。

*3-6:http://www.saga-s.co.jp/column/genkai_pluthermal/20201/228143 (佐賀新聞 2015年9月10日) 玄海原発停止訴訟の原告1万人に迫る、15回目の提訴で413人追加
 原発の再稼働に反対する佐賀県内外の市民が国と九州電力に玄海原発全4基の操業停止を求めている訴訟で10日、新たに413人が佐賀地裁に追加提訴した。提訴は15回目で、原告数は計9809人となった。弁護団の東島浩幸幹事長は「川内原発の再稼働など政府のやり方に対する不信感を反映し、原告数が伸びている。1万人を達成するとともに、原発の周辺自治体に脱原発を提言する活動などを進めたい」と話した。

*3-7:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/228659
(佐賀新聞 2015年9月11日) 県商議所連合会、県への要望27項目を採択
 佐賀県商工会議所連合会(井田出海会長)は11日、佐賀市で総会を開き、玄海原発(東松浦郡玄海町)の早期再稼働など県への要望27項目を採択した。新規は、来年1月に運用が始まるマイナンバー制度の情報セキュリティー対策、老朽化した宿泊施設の改修に対する費用支援など6項目。25日に山口祥義知事、中倉政義県議会議長に提出する。原発の早期再稼働は、2012年から継続して要望している。原発停止後の電気料金値上げで過酷な負担を強いられているとして、電気の安定供給を求め、再生可能エネルギーの普及・促進も盛り込んだ。新規では、人口減少対策として、女性が活躍できる環境整備や、結婚や出産、子育て支援、高齢者の地方移住支援など具体的な取り組みを求める。県産素材を使った食品や加工品のブランド化を進めるため、原材料の品薄や価格変動への対応も新たに加えた。総会には、県内8商議所の会頭、副会頭、専務理事26人が出席した。台風15号の影響で当初予定していた8月25日の開催を延期しており、会員企業による議員大会は開かず、総会で決定した。

*3-8:http://www.shikoku-np.co.jp/kagawa_news/social/20150819000115
(四国新聞 2015/8/19) 伊方再稼働「反対」51%/愛媛の市民団体アンケート
 愛媛県の市民団体「伊方原発50キロ圏内住民有志の会」は18日、四国電力伊方原発3号機(同県伊方町)の再稼働の賛否を問うアンケートを伊方町で実施し、反対は51%で、賛成の27%を大幅に上回ったと明らかにした。賛否を明らかにしなかったのは22%だった。同会によると、今年2~8月、2488戸を訪問した。アンケートは対面か、留守の場合は回答用紙を郵送してもらって実施し、合計881戸から回答があった。伊方町には約4800世帯あるが、訪問した2488戸には空き家も含まれていたとみられる。また、トラブルを避けるため四電の社宅は訪問しなかった。アンケート結果は途中経過で、全戸を訪問した上で10月ごろにあらためて公表する。同会世話人で松山市の堀内美鈴さん(51)は「再稼働をめぐる地元同意の手続きが進んでいて、危機感から前倒しで公表した。町や県は結果を考慮して」と話した。伊方町の担当者は「詳細を把握していないのでコメントできない」とし、県の担当者は「結果を知らないので何ともいえない」と話した。伊方3号機は7月に原子力規制委員会の審査に合格した。


PS(2015.9.14追加):原発で加圧する以上、パイプやその連結部分を含むすべての部品が、長期間、その熱と圧力と放射性物質に耐え続けなければならないが、私は、それは不可能だと考えるため、*4は、「やはり・・」と感じられた。そして、利益を上げられず、将来の成長も見込めない事業を他の事業と一緒に行えば、一緒に行う事業の足を引っ張るだけであるため、撤退すべきなのである。

*4:http://www.nikkei.com/article/DGXLZO86436700V00C15A5FFB000/
(日経新聞 2015/5/5) 4期連続最終赤字のアレバ、仏政府が救済へ 原発専業岐路
 原子力大手の仏アレバが経営不振にあえいでいる。鳴り物入りで登場した最新鋭の原子炉に相次ぎ問題が発生し、引当金の計上などで2014年まで4期連続の最終赤字に落ち込んだ。日本の原子力発電所の再稼働も遅れ、事業機会は大きく縮小している。仏政府はアレバの救済に乗り出す方針で、原発専業の事業モデルは岐路を迎えている。北欧ボスニア湾にのぞむフィンランド南西部のオルキルオト島。強い海風が吹く4月下旬、ドーム屋根のオルキルオト原発3号機の周りは、建設資材が積み上げられていた。「以前はもっと作業員がいて活気があったのだが……」。現場を知る関係者はこう話すが、今は人影もまばらだ。同原発はアレバが開発した欧州加圧水型炉(EPR)の初号機だ。出力160万キロワットの大型炉で、民間航空機の衝突にも耐えられる強固さと、事故で電源が失われても原子炉が自動停止する安全性を売りに05年に建設が始まった。だが設計ミスや部品の強度不足など相次ぐトラブルで完成時期は遅れ、当初計画の09年が18年にずれ込んだ。建設費は当初の3倍近くの90億ユーロに膨れあがった。運営主体の現地電力会社TVOのサルパランタ・シニアアドバイザーは「18年に稼働すると信じているが、見通せない部分もある」と自信なさげだ。工期の遅れやコストの膨らみの責任を巡ってアレバと、タービンを受注したシーメンス連合と、TVOの訴訟合戦になっているからだ。2番目に建設が始まったEPRの仏北西部フラマンビル原発3号機にも問題が浮上した。4月半ば、仏原子力安全局(ASN)がEPRの圧力容器の強度に「重大な懸念がある」との見解を表明したのだ。同機はただでさえ部品の落下や死亡事故などのトラブルが続き、完成予定が12年から17年にずれ込んでいた。アレバは専門家らによる調査団をつくり、真相究明に乗り出したが、圧力容器を交換すれば数億ユーロの負担が生じる恐れがあり、完成時期がさらに後ずれする可能性がある。同じ圧力容器を使いEPRを建設中の中国は安全上の問題が解決するまで台山原発1、2号機への燃料搬入を延期するようアレバに求めたという。建設中のEPR4基が問題を抱え、アレバは頭を抱える。受注が固まった英国のヒンクリーポイントC原発への悪影響が出る懸念があるほか、インドなど原発建設に関心を示す新興国へのEPR離れが起きかねないからだ。アレバの14年の最終損益は48億ユーロの赤字で過去最大。4期連続の最終赤字だ。潮目が変わったのは、11年の東京電力福島第1原発の事故だ。ドイツなど欧州の一部の国が脱原発を決め、日本の原発の再稼働が大幅に遅れ、アレバはビジネス機会を失った。アレバのフィリップ・クノル最高経営責任者(CEO)は「中長期的に原発市場は回復する」と訴える。アジアや中東などの新興国は、自国の経済成長に見合う電力をまかなうため原発導入意欲が旺盛だからだ。三菱重工業とはトルコで中型炉「アトメア1」の受注に成功した。だが受注には激しい競争を勝ち抜く必要がある。問題続きのアレバの先行きは明るくない。


PS(2015年9月15日追加): 原発事故後、食品・環境規制基準は強化されたどころか大幅に緩和され、4年後の今でも元に戻っていない。また、原発の新規制基準には避難計画などの緊急時の備えはないため、「内容を真摯に受け止める」などという行動を伴わない空念仏はもはや信用できず、「国際社会への積極的な情報発信に努める」というのも、国民に情報を隠しながら何をアピールしているのかと思う。世界は、その様子も見ているのだ。

   
    2015.9.1NHK     食物からの内部被曝(現在)   除染土の保管(現在)

*5:http://www3.nhk.or.jp/news/html/20150915/k10010234901000.html
(NHK 2015年9月15日) IAEAで日本原発再稼働に理解求める
 IAEA=国際原子力機関の総会で、日本は、事故の経験を踏まえて強化された新しい規制基準のもとで原子力発電所を再稼働させたことを説明し、今後、順次、原発を再稼働させる方針に理解を求めました。IAEAの総会は、14日、オーストリアのウィーンで始まり、日本政府を代表して、原子力委員会の岡芳明委員長が演説しました。冒頭で、岡委員長は、IAEAが日本の緊急時の備えが不十分だったと指摘した東京電力福島第一原子力発電所の事故を総括する報告書について、「内容を真摯に受け止めている」と述べました。そのうえで、廃炉作業や汚染水の対策については、「国際社会への積極的な情報発信に努め、開かれた形で進めていく」と強調しました。さらに、岡委員長は、鹿児島県にある川内原子力発電所が再稼働したことを説明し、再稼働にあたっては、「事故の経験と教訓を踏まえて強化された規制基準のもとで2年以上にわたる厳格な審査を経ている」と述べました。そして、今後、順次、原発を再稼働させる方針に理解を求めました。また、これに先立ち、日本政府は、福島第一原発の現状などを紹介する会合を開き、被災地の日本酒や特産品をふるまうなどして、復興をアピールしました。IAEAの総会は5日間にわたって開かれる予定で、17日には、福島第一原発の報告書について詳しい説明が行われることになっています。


PS(2015年9月16日追加):*6の事件で、NHKは、「放火の動機は大量に電力を消費するJRが許せなかったから」とし、「原発再稼動に反対している人は、このように無知で短絡的な人だ」と表現している。しかし、①動機も容疑者本人から直接聞いたものではなく警視庁からのまた聞きにすぎず ②容疑者の段階であるため公開の場で双方の言い分を言い合って裁判で結審したわけでもない などの理由で、私は、この報道には疑問を感じた。つまり、(本当かどうかわからない)反原発派の一人が放火したからといって、脱原発を主張している人全員が無知で短絡的であるかのように表現するのは、それこそ短絡的で意図的であり、私は、最初にこの事件の報道を見た時、辺野古移設、TPP、労働者派遣法、安全保障法案等より優先して報道する程の事件ではなく、むしろその目隠しだろうと思った。しかし、JRも、外部の人が容易に放火できる場所に電線を設置しておくのは、危機管理や安全保障の問題が大きいため、この際、高架化や次世代の送電線・電車について、国土交通省も交えて検討した方がよいと考える。

     
    2015.9.16NHK     2015.9.13中日新聞  2015.1.24日経新聞

*6:http://www3.nhk.or.jp/shutoken-news/20150916/4978843.html
(NHK 2015年9月16日) 「大量電力消費のJR許せず」
 東京都内のJRの施設などで相次いだ放火事件で、品川区の変電所の事件に関わったとして逮捕された42歳の男が、動機について「大量に電力を消費するJRが許せなかった」などと供述していることが、警視庁への取材でわかりました。警視庁はさらに動機を調べるとともに、男が一連の放火事件に関わったとみて捜査しています。東京都内のJRでは、品川区のJR東日本の変電所で敷地の一部が焦げたほか、渋谷区や目黒区、それに中野区などでケーブルや架線の一部などが焼けるなど、8月以降にわかったものだけで放火事件が8件相次ぎました。警視庁は、防犯カメラの捜査などから、東京・武蔵野市に住む自称、ミュージシャンの野田伊佐也容疑者(42)が、品川区の変電所の事件に関わった疑いが強まったとして15日夜、威力業務妨害の疑いで逮捕しました。警視庁によりますと、これまでの調べに対し、野田容疑者は「やったことはやった。業務妨害とは思っていない」と供述しているということですが、その後の調べに対し、動機について「大量の電力を消費するJRが許せなかった」などと供述していることが、警視庁への取材でわかりました。また、変電所以外にも複数の放火に関わったという趣旨の供述をしているということです。警視庁は、さらに詳しい動機を調べるとともに、野田容疑者が一連の放火事件に関わったとみて裏付けを進めています。逮捕された野田容疑者の父親が、千葉県内の自宅で取材に応じ「きのうの夜、息子が逮捕されたと報道で知りました。信じられないことで大変申し訳なく思っています。最後に会ったのは1年くらい前で、原発の再稼動に反対していると聞きましたが、JRや鉄道に関する話は聞いたことがありません」と話していました。そのうえで野田容疑者について「高校を卒業したあたりから20年ぐらい音楽をやっていて大学も中退していました。音楽をやっているのだから、作詞や文章で表現してほしかったです。事件を起こすような人間ではなかったと思いますが、42歳にもなっているので大人としての自覚をもってほしかったと思います」と話していました。


PS(2015年9月21日追加):*7のように、放射線量分布を調査するのはよいが、上空300メートルで放射線量を測定しても、生活環境よりかなり低い値が出るため、役に立たない。その理由は、原発由来の放射性物質は地面に落ち、風で舞い上がってはまた落ちて拡散し、雨で水路に流れ込むため、放射線量は地面や水路の底土で高く、空中は地面からの距離の二乗に反比例して弱くなるからだ。そのため、市民が計測器を持ち、庭やベランダ、建物内の床や机の上、壁や天井や本棚などを測定するのが最も効果的で、掃除をして再度測ると掃除のやり残しもわかるくらいだ。なお、私の経験では、計測器によって計測値が少し異なるため(日本製は低く出た)、生産国の異なる複数の計測器で測るのがよいと思う。

*7:http://qbiz.jp/article/70942/1/
(西日本新聞 2015年9月16日) 川内原発80キロ圏の線量調査へ
 再稼働した九州電力川内原発(鹿児島県)の80キロ圏を対象に、原子力規制委員会が放射線測定器を載せた航空機で11月から来年1月に放射線量分布を調査することが15日、分かった。過酷事故に備えて事前に通常時の線量分布を把握するほか、地形の特徴を確認し事故時の測定を円滑に行うのが狙い。規制委によると、海域を除き川内原発の半径80キロ圏の上空約300メートルでヘリコプターで放射線量を測定する。総飛行距離は熊本県や宮崎県の上空も含めて約1870キロに上る予定。


PS(2015年9月27日追加):電力会社は、*8-2のように、大きな自然災害について、楽観的展望により対策を敬遠しがちだ。そのため、*8-1のように、全国世論調査を行うと、「原発再稼働反対」の人が58%であり、「事故時に避難できない」と考えている人も74%おり、「再生可能エネルギーの目標をもっと上げるべきだ」と考えている人は55%にのぼる。そのような中、*8-3のように、原発立地4県の議長が、県商工会議所連合会の要望に答えて国に原発再稼働の積極関与を要請し、「国が再稼働を前提に政策を進める以上、国に再稼働に関する責任の所在も明確に求める」とするのは、多くの国民が反対している原発再稼働を国に進めさせた上で、国民が納めた電気料金や税金から原発立地交付金、事故対策費、核のごみ処理費用を出させるということだ。そのため、これは原発立地地域のエゴであると同時に、責任の押し付けであり、日本経済や地元の将来の両方のためにならない。

*8-1:http://www.tokyo-np.co.jp/article/economics/news/CK2015092002000124.html(東京新聞 2015年9月20日) 全国世論調査 原発再稼働 反対が58% 74%「避難できない」
 東京電力福島第一原発事故を踏まえた新しい規制基準を満たした原発について政府が進める再稼働に反対の人が58%で、賛成の37%を上回ったことが、本社加盟の日本世論調査会が十二、十三日に実施した全国面接世論調査で分かった。再稼働した原発で事故が起きた場合、住民が計画通りに避難できるかどうかについて「できるとは思わない」「あまりできるとは思わない」が計74%に上り、「ある程度」を含め「できる」とした計25%を大きく上回った。八月に九州電力川内原発1号機(鹿児島県)が再稼働したが、事故への備えに懸念が強いことが浮き彫りになった。再稼働に反対の理由は「原発の安全対策、事故時の住民避難などの防災対策が不十分」(39%)が最も多く、「原発から出る核のごみの処分方法が決まっていない」「福島第一原発事故が収束していない」が続いた。賛成の理由は「電力不足が心配」(34%)が最多。若年層(二十~三十代)で賛成の割合が高く、地域別では近畿と四国で賛成が反対を若干上回った。福島第一原発の廃炉に向けた作業に関しては、「どちらかといえば」を含めて計87%が「順調でない」とした。二〇三〇年時点で総発電量に占める原発の比率を20~22%にするとした政府目標について、41%が「もっと下げるべきだ」、22%が「ゼロにするべきだ」としたのに対し、「もっと上げるべきだ」は5%にとどまった。一方、太陽光や風力などの再生可能エネルギーが占める比率を22~24%にするとの目標については、55%が「もっと上げるべきだ」と答えた。電源構成比率を考える上で最も重視することは「再生可能エネルギーの普及」が34%と最多。「電気料金」は最も少なく6%だった。
◆避難対策軽視に不信感
 政府が進める原発再稼働に58%が反対し、事故時に周辺住民が計画通りに避難できないと考える人が74%に上った。再稼働への反対理由でも住民避難の問題を挙げた人が多く、避難対策を軽視した再稼働に対する不信感がうかがえる。東京電力福島第一原発事故で住民避難が大混乱した教訓を踏まえ、国は防災対策の重点区域を原発の十キロ圏から三十キロ圏に拡大し、圏内の自治体に避難計画の策定を義務づけた。事故時にはまず五キロ圏の住民が避難し、五キロ圏外では測定される放射線量に応じて避難の判断をするとしている。こうした避難手順の実効性や、福島事故で死者を出してしまった入院患者らの避難対策に対する懸念は根強いが、八月の九州電力川内原発1号機(鹿児島県)再稼働前に県などが定めて国が了承した避難計画に基づく訓練は行われなかった。再稼働が見込まれる四国電力伊方原発(愛媛県)をめぐっては、原発と海に挟まれた半島に住む約五千人の避難などに不安の声が上がっている。再稼働の前提となる審査をした原子力規制委員会も「絶対安全とは言わない」としている以上、避難対策の充実は欠かせない。安易な再稼働は許されず、政府は住民らの声に真摯(しんし)に耳を傾けるべきだ。 

*8-2:http://www.sankei.com/affairs/news/150925/afr1509250036-n1.html
(産経新聞 2015.9.25) 東電、津波対応を拒否 福島第1原発事故の2年前、事故調書で判明
 東京電力福島第1原発事故をめぐり、事故発生の2年前に原子力安全・保安院(当時)の審査官が、東電に津波対応の検討を求めたが、東電側が「(原子)炉を(保安院が)止めることができるのか」などと拒否していたことが25日、政府が公開した事故調査・検証委員会の「聴取結果書(調書)」で分かった。調書によると、保安院は平成18年9月に原発の耐震性の調査を全国の事業者に指示。審査官が21年に2回、東電の担当者を呼んで津波対策の検討状況を聞いたところ、担当者は「土木学会の検討を待つ」と返答した。審査官は「それでは少し遅い」と感じ、重要設備を建屋内に入れ、設備に水が入らないように防水化を提案したが、担当者は「会社として判断できない」「炉を止めることができるのか」と反発したという。原発事故では、想定を上回る津波が押し寄せ、非常用発電機などが水没。燃料を冷却できなくなり、放射性物質を周囲にまき散らす重大事故に陥った。東電広報室は「ヒアリング記録の個別の内容については、コメントを差し控える。当社は関係者への聞き取りなどを総合的に評価し事故報告書として公表している」とした。

*8-3:http://www.saga-s.co.jp/column/genkai_pluthermal/20201/233080
(佐賀新聞 2015年9月25日) 佐賀など原発立地4県議長、国に積極関与要請へ
 佐賀県議会の中倉政義議長は25日、原発再稼働をめぐる地元同意の範囲や手続きに関し、国が積極的に関与するよう、原発が立地する4県の県議会議長と共同で菅義偉官房長官に要請する考えを明らかにした。玄海原発(東松浦郡玄海町)の早期再稼働に関する県商工会議所連合会(井田出海会長)の要望に答えた。菅官房長官との面会に向けて調整しており、近く上京し、原発立地県の福井、愛媛、鹿児島の県議会議長と共に地元の不安や懸念を伝える。4県の原発はいずれも、新規制基準の適合に向けた原子力規制委員会の審査が先行している。中倉議長は「国が再稼働を前提に政策を進める以上、積極的に責任ある対応を求める必要がある」と述べ、再稼働に関する責任の所在も明確に求めていく考えを示した。


PS(2015年10月2日):このブログに何度も記載したが、私も、汚染水の取扱いは、*9に書かれているとおり、真剣さに欠け、ひどすぎると思う。また、凍結は(する筈がないと思うが)、したのだろうか?

*9:http://mainichi.jp/select/news/20151002k0000e040236000c.html
(毎日新聞 2015年10月2日) 汚染水流出:公害犯罪処罰法で東電社長ら32人書類送検へ
 東京電力福島第1原発事故の収束作業に伴い高濃度の放射性物質を含んだ汚染水が外洋に流出した問題で、福島県警は近く東電の社長ら幹部32人と同社を公害犯罪処罰法違反容疑で福島地検に書類送検する方針を固めた。捜査関係者によると、書類送検するのは、広瀬直己社長や勝俣恒久元会長、清水正孝元社長ら。東電幹部らは業務上の必要な注意を怠ったため汚染水を外洋に放出させた疑いが持たれている。この問題を巡っては、東電の幹部らを業務上過失致死傷容疑などで検察当局に告訴・告発した団体の代表らが2013年9月、公害犯罪処罰法違反容疑で福島県警に刑事告発。告発状によると、地下水に関して政府は事故後に東電に対して地下遮蔽(しゃへい)壁の構築の検討を指示していたが、東電は費用などを理由に11年6月に中長期対策とする方針を表明し、対策を先送りした。さらに強度の弱いタンクを使用し約300トンの汚染水が漏れ、監視体制の不備による発見の遅れが漏水量の増大を招いたとしている。

PS(2015年11月24日、25日追加):*10-1の「汚染した地下水が護岸から海に流出するのを防ぐための海側遮水壁が完成して1カ月になるが、海水に含まれる放射性セシウムの濃度は、護岸付近は下がったものの、それ以外は完成前とほとんど変わらない」というのは、「汚染地下水が護岸から海に流出するのを防ぐためだけの遮水壁だから当然だ」という言い訳もできるが、それなら金を使って遮水壁(そもそも水は壁では止まらない)を作った意味がないため、国から東電に予算が入っている以上、①どういう意図で ②いくら使って遮水壁を作り ③効果はどうだったか について、決算行政監視委員会で追求すべきだ。答えは、「ただ金をばら撒くために作っただけ」と推測されるが、原発はこういうことが多すぎる。
 また、丸川環境大臣は埃を通さない重装備でフクイチを視察されたそうだが、これでも放射線は衣服や身体を貫通する(だからレントゲンは骨を写すことができる)ため、これから妊娠する可能性のある女性がこのような場所に行くのは(理由を長くは書かないが)避けた方が良い。ましてや、上記(2)のように、年間20ミリシーベルト以下の地域を避難解除して、本来なら放射線管理区域にすべき場所に一般国民を居住させるなどの放射線安全神話は論外だが、環境大臣や環境省にその程度の思考や判断ができないのが日本の現状なのである。何故、こうなったのだろうか。
 なお、11月25日、*10-2のように、「環境省のリスクコミュニケーション(リスコミ)関連三事業は、電力会社や原発事業者幹部らが役員を務める公益財団法人『原子力安全研究協会』が高額で請け負っている」という情報があった。多分、ここは環境省からも天下りを受けており、環境省も独立性はなく、原発や放射線のリスクが低いことを国民にアピールする機関になっていると推測される。

  
   2015.11.22        2015.11.24          国会前の脱原発デモ
    東京新聞           報道局      (国会前は、人が集まり易い広場にしたらどうか?)

*10-1:http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201511/CK2015112202000132.html (東京新聞 2015年11月22日) 福島第一 海側遮水壁1カ月 外洋流出に効果見えず
 東京電力福島第一原発で汚染した地下水が護岸から海に流出するのを防ぐための「海側遮水壁」が完成して間もなく1カ月になる。海水に含まれる放射性セシウムの濃度は、護岸付近は下がったものの、それ以外は完成前とほとんど変わらない状態が続いている。二〇一二年四月に工事がスタートした遮水壁は、1~4号機の海側に、約六百本の太い鋼管を打ち込んで造られた。鋼管は長い金具で連結され、すき間はモルタルでふさぎ、十月二十六日に完成した。東電の試算では、壁により地下水の流出量は一日四百トンから十トンにまで減り、セシウムの流出量も約四十分の一になる-とされた。東電が公表している海水の分析データを、本紙がグラフ化したところ、最後に残っていた開口部を閉じる工事が始まった九月十日以降、セシウム濃度の振れ幅は小さくなり、特に水中幕で仕切られた内側の1~4号機取水口近辺の濃度はがくんと下がった。港内の海水は二日で入れ替わり、海底にたまった放射性物質が巻き上がらないよう砂などで覆う作業も終わっている。壁が完成すれば、港内全体の値はさらに下がるはず-。こう期待されたが、推移を見る限り、東電が調査している十二地点のいずれも濃度は下げ止まりの状況。外洋に出て行く港湾口の一年間のデータを追ってみても、海にすむ魚に影響を与える可能性がある一リットル当たり一ベクレル前後が続いている。昨年十月、本紙が港湾口で調査した際も約一ベクレルを検出している。現状では、福島第一から外洋への影響は、壁ができる前と後ではあまり変わらない、といえる。遮水壁に残ったすき間から流出している可能性や、原発敷地内から排水溝によって流れ込む汚れた雨水の影響などが考えられるが、はっきりしない。東電の担当者は「効果の検証には時間がかかる。様子をみたい」と話している。

*10-2:http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201511/CK2015112502000121.html (東京新聞 2015年11月25日) 福島事故の健康不安対策 原発関連財団請け負い
 東京電力福島第一原発事故による住民の健康不安に対応し、悩みの軽減や解消を目指す環境省の「リスクコミュニケーション(リスコミ)」関連三事業を、電力会社や原発事業者幹部らが役員を務める公益財団法人「原子力安全研究協会」が二〇一四年度に、総額四億一千三百万円で請け負っていたことが分かった。同協会は本年度も同種事業を継続。原発を推進する側が幹部を務める法人が税金を使って、原発を不安視する住民の相談事業を担う状況が続いている。本紙は昨年四月、三事業のうち、住民に被ばく対策を説明する「相談員」の支援事業を環境省が同協会に七千四百万円で発注したことを報じた。今回、国の事業の無駄や執行状況を政府自身が点検する「行政事業レビュー」の資料で、より多くの事業を協会に発注していたことが判明した。環境省を含む十一省庁・委員会が一四年度、避難住民の早期帰還に向けて放射線による健康不安に対応することを主な目的に、リスコミ事業を本格化させた。このうち環境省の三事業は入札で事業者を募集し、協会が落札した。協会が請け負った事業は、相談員の支援のほか、住民の放射線による健康不安に対応する資料の改訂や、住民向け集会の運営など。環境省は、一五年度も同協会が同種の事業を落札したと認めているが、金額など詳細を公表していない。協会は、原子力の安全性を中心に研究する組織。理事に関西電力や日本原子力発電の現役幹部が就いている。事業が原発推進側の論理に立った内容になる可能性について、環境省は「契約内容に沿って事業を遂行してもらっている」(放射線健康管理担当参事官室)と否定。協会の担当者は「環境省に聞いてほしい」と述べるにとどめた。福島原発事故に伴う損害賠償を求める団体などでつくる「原発事故被害者団体連絡会」共同代表の武藤類子さん(62)は「放射線の健康被害は、大丈夫と言う人もいれば、危ないと言う人もいる。双方の意見を聞いて判断したい。原発推進側に近いとみられる組織がリスコミを担うのは住民として不安だ」と話す。福島県で講演した経験のある京都大原子炉実験所の今中哲二助教は「年間二〇ミリシーベルトという避難基準以下でも、被ばくによる健康影響の危険性があると住民に話したら、行政側からリスコミの邪魔になると言われたことがある。多様な意見を出し合いながら一定の方向性を出す体制で進めるべきではないか」と指摘した。リスコミ事業をめぐっては、文部科学省は、被災地住民の問い合わせや相談に対応する事業を、原子力行政を担ってきた旧科学技術庁出身者が役員を務める国立研究開発法人「日本原子力研究開発機構」と同法人「放射線医学総合研究所」に発注している。文科省は両法人に発注した事業の額を明らかにしていない。

| 原発::2015.4~10 | 03:29 PM | comments (x) | trackback (x) |
2015.8.30 いつまでも原発にこだわっている時代ではない (2015年8月31日、9月1日、9月3日、9月11日に追加あり)
    
     電力システム改革の流れ        東京電力の分社化    エコカー市場の拡大
2015.3.17                                       2015.8.23 
西日本新聞                                        日経新聞

(1)電力自由化、発送電分離に対する電力会社の対応不足について
 上の左の2つの図及び*1-1のように、2016年4月に電力小売りの全面自由化と電力会社の地域独占廃止が行われ、2020年には「発送電分離」が実施されるため、九電は、2015年度中に電力事業を「発電」「送配電」「小売り」に分ける組織改正に踏み切る方針を固め、送配電部門を切り離すそうだ。

 しかし、「発電部門」は大きく変えないとしている点については、私は、発電部門も電源由来別に分けて独立採算とし、「社内カンパニー制」ではなく「分社化」して正確に電源由来別の原価を把握し、独立採算にしてディスクローズした方が、誰にとってもわかりやすく、連結納税制度を活用すれば税務上の損失もあまりないため、メリットが大きいと考えている。

 何故なら、「社内カンパニー」は、一つの会社の中で事業部に分けているにすぎないため、①顧客が電源由来別に正確なコストを支払って電力を選択することができない ②火力発電、原子力発電、新エネルギー、スマートシティーの構築など、異なる性格の技術者を同一の就業規則や給与体系で処遇しなければならないため、不合理な人事管理になって必要な人材を繋ぎとめられない ③規模が大きくなるため、組織階層が多すぎて現場のニーズがトップに正確に伝わらず、有効な経営管理がやりにくい ④それらすべての分野に精通した社長を置くことは不可能である などの不都合があるからだ。

 そのため、上中央の図のように、東電も2016年度に発電事業会社、送配電事業会社、小売事業会社を子会社化して持ち株会社の下につけるが、私は、発電事業会社をさらに細かく、「火力発電会社」「原子力発電会社」「自然エネルギー発電会社」などに分け、電源由来別に選択できるようにした方が、顧客獲得と資金調達の両方に有利だと考える。その理由は、これからは、顧客も株主も、環境やエネルギー自給率に資する電源を選択するようになるからだ。

 なお、*1-2のように、九電が「『日本一のエネルギーサービス』を提供する企業グループになる」と言うのを西日本新聞は驚きを持って報道しているが、本来、日本企業に「日本一」は普通に存在し、分野によっては「世界一」も珍しくない。これまで、電力産業でそういうことがなかったのは、古い意識の役所(経産省)と甘え合って、規制で保護され先進的なことも止められていたからであり、自由化するとこういうことが可能になるのである。

(2)太陽光はじめ自然エネルギー由来の電力買い取りについて
 九州で太陽光発電が普及し、九電は買い取り制限を始めたが、*2-1のように、電力小売り事業に参入する福岡県みやま市が主体となって設立した電力売買会社「みやまスマートエネルギー」が、2015年10月15日から市内の公共施設向けに売電を始め、2016年4月からは家庭向けにも電力供給するそうだ。そして、メガソーラーや家庭用太陽光発電機の電力を九電より高い価格で買って安く販売するそうなので、他の市町村も頑張ってもらいたい。

 なお、*2-2で東京新聞が記載しているように、今夏は太陽光発電が原発十二基分に当たる計一千万キロワット超(川内原発の出力八十九万キロワットの約十二倍)の電力を生み出し、二年前の供給の1%から6%台に急伸したそうだ。太陽光発電が千百万キロワット弱(6・5%)の電力を生み出したのは、政府の事前予測五百万キロワットの2倍であり、これは、再生可能エネルギー固定価格買い取り制度がスタートして、たった三年後の成果なのである。

(3)電気自動車、燃料電池車について
 「太陽光発電は不安定な電力」と言われることが多いが、これは、*3-3のような研究開発で蓄電池が大容量かつ安価になったり、電力を水素燃料に変えて保存できるようになったりすれば解決することだ。しかし、*3-2のように、日本は電気自動車に取り組み始めて20年にもなり先行していた筈なのに、*3-1のように、エコカーはまだハイブリッド車が主流であり、本気で電気自動車や燃料電池車に変えようとしているようには見えない。日産自動車の電気自動車「リーフ」の走行可能距離がやっと300キロメートルになるそうだが、「電気で走ればいいんだろ」と言わんばかりのワンパターンのデザインであるため、魅力に乏しく、BMWやテスラのように本気で開発した電気自動車には見えないのである。

 また、ホンダも2016年3月末までに発売する燃料電池車の走行可能距離を700キロメートル以上とトヨタのFCV「ミライ」(約650キロメートル)を上回る水準にするそうだが、水を電気分解すれば100%国内産の水素燃料を作ることが簡単である。しかし、水素燃料の進捗が遅く、外国から輸入する化石燃料から水素を作る案もあり、これは筋が悪すぎる。何故なら、そのような水素と酸素を化学反応させてエネルギーを作れば、我が国のエネルギー自給率は上がらない上、燃料電池車の普及後には空気が酸素不足になるからだ。そのため、水素は水から作るのを原則とし、同時にできる酸素も供給すべきである。

(4)原発は公害が深刻すぎるため、過去のエネルギーにすべき
 *4-1のように、全国知事会原子力発電対策特別委員会の西川委員長(福井県知事)が、原子力規制委員会の田中委員長と会談して、「現場を重視した実効性のある安全対策を進めてほしい」と要望し、避難に緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム(SPEEDI)などを活用する仕組みづくりを求めたそうだが、当然のことである。

 また、*4-2のように、暮らしを一変させた東電福島第1原発過酷事故から4年5カ月で、九電は鹿児島県の川内原発1号機を再稼働させたが、このやり方はモデルケースにはできない。また、廃炉や最終処分場などについても、原発ゼロへの道筋があり、これ以上核廃棄物を出さない確約があって初めて相談に乗れるものだ。そして、このことは、川内原発再稼働に「反対」との回答が57%を占めている世論調査からも明らかである。

 さらに、「原発はコストが安い」ともよく言われるが、これはまず、電源由来別に別会社にして正確にコストを集計してから、同じ次元で比較すべきなのである。その上で、*4-3のようなコストも加えれば、原発は金食い虫であり、維持してプラスになるものではないことが、いっそう明らかになる。

 なお、*4-4のように、川内1号機は、2次冷却水に海水が混入して出力上昇を延期したそうだが、これと似たようなことが同じ型の米サンオノフレ原発の蒸気発生器で起こり、*4-5のように、NRC(米原子力規制委員会)が三菱重工の製造工場に抜き打ちで調査に入った後、サンオノフレ原発の廃炉が決定的となり、現在、三菱重工は9300億円の訴訟を起こされているそうである。

<電力自由化と発送電分離>
*1-1:http://qbiz.jp/article/58025/1/
(西日本新聞 2015年3月17日) 九電、7月めどに配電部門を再編 「発送電分離」へ備え
 九州電力は、2015年度中に電力事業を「発電」「送配電」「小売り」に分ける組織改正に踏み切る方針を固めた。7月をめどに、営業と配電業務を担う現在の「お客さま本部」から配電部門を切り離し、「電力輸送本部」と統合する方向で調整している。国の電力システム改革の一環として16年4月に導入される新たな制度をにらんだ対応。大手電力会社の送配電部門が切り離される「発送電分離」に備えた動きが本格化しそうだ。九電は労働組合に組織改正の意向を伝えた。今後、具体的な協議に入る。組織改正は、国が電力小売りが全面自由化される16年4月に導入する新たな制度によって、大手電力も発電事業が届け出制、送配電事業が許可制、小売り事業が登録制となるのに対応するのが目的。本店組織から着手し、段階的に出先の拠点の機能整理も進める。具体的には、電力輸送本部に配電部門を統合することで送配電を一元的に担える体制とし、お客さま本部は小売りの営業に特化させる方向。発電部門は、現在の「発電本部」から当面は大きく変えない。今回の組織改正に応じて、部署名を変更する可能性がある。政府は、発送電分離を20年4月に実施する電気事業法改正案を既に閣議決定している。九電は今回の組織改正をベースに、各部門を独立採算とする「社内カンパニー制」の導入や分社化の検討も進めるとみられる。各部門の独立性を高めながら、業務の効率化や全面自由化後の競争力強化にもつなげたい考えだ。国の電力システム改革をめぐっては、東京電力が他の電力大手に先んじる形で13年4月に社内カンパニー制を導入しており、16年度にも持ち株会社を設立して事業の分社化に踏み切る方針を示している。
   ◇   ◇
◆改革への対応「第一歩」
 九州電力が2015年度に乗り出す組織改正は、電力システム改革に対応する社内体制構築の第一歩となる。20年4月に予定される発送電分離による送配電部門の分社化が避けられない中、九電は経営環境の激変をにらんだ体制整備を迫られている。電力システム改革の一環として、16年4月の電力小売り全面自由化と同時に導入されるのは「ライセンス制」と呼ばれる制度。大手電力会社の「一般電気事業者」という事業類型を廃止し、「発電事業者」「送配電事業者」「小売り事業者」に再分類し、従来の一貫体制を前提としない制度に移行する。国は、これを円滑な発送電分離につなげたい考えだ。発送電分離は、持ち株会社に発電、小売り、送配電の3社をぶら下げる方式のほか、発電と小売りの一体会社が送配電の子会社を傘下に置く形態も認められる方向。ただ、親会社には送配電会社の中立性を確保するための規制が課せられ、今年4月に設立される「電力広域的運営推進機関」の送配電会社への関与が強まることも想定される。九電を含む大手電力は今後、市場の全面自由化に伴う競争環境の変化に対応しながら、将来の組織体制の検討も進めることになる。原発の再稼働が進んで収支状況が好転したとしても、会社経営の在り方は大きく変容する見通しで、九電幹部も「会社が東日本大震災前の状況に戻ることはもうない」と断言する。

*1-2:http://qbiz.jp/article/69448/1/
(西日本新聞 2015年8月26日) ついに「日本一」を掲げた九電
 その瞬間は耳に引っかからなかったのに、後から意味ありげに響くことがある。九州電力が今年4月に発表した「九州電力グループ中期経営方針」に明記された言葉がそうだ。「『日本一のエネルギーサービス』を提供する企業グループ」。競争が日常となっている一般のビジネスにあって、企業が「日本一」を目標に掲げることは、むしろ普通だ。でも、地域ごとに独占を認められ、完全かつ激しい自由競争にさらされてこなかった大手電力会社が「日本で1番」という目標を、ここまでど真ん中直球で掲げたことはなかったと思う。関西電力や中部電力は「NO.1」という言葉を使っているが、「どこの1番」かは明確じゃない。これまで何度か電力業界を取材してきたが、いつも「横並び」とか「序列」といったキーワードがつきまとっていた。いまも基本的な印象は変わらない。でも、九電の「日本一宣言」はその壁を破ろうとする意志を感じる。言うまでもなく、背景にあるのは、来春に迫った電力小売りの全面自由化だ。企業向けは自由化されていたが、「一般家庭が電気を買う企業を自由に選べる時代」に入る危機感は、これまでの比ではないだろう。だからこそ、なのか。九電関係者は言う。「日本一と言う文言は、若手・中堅から原案が上がってきたようだ。先が読めない中だからこそ、攻めの目標を掲げようということだろう」。別の幹部はこうも語った。「国や電事連(電気事業連合会)の中で、ある意味優等生として頑張ってきたが、もうルールが変わると言うのなら、九電として一丸となって生き残っていくしかない」。新規制基準下では全国初の原発再稼働。復水器の不具合。そして25日には台風の影響という、まさかの火力発電所連続停止。九電にとっては試練が続く。「日本一」は、厳しい自由化時代の壮大な目標か、悲壮な覚悟か−。いずれにしても、長年培ってきたと自負する九電ブランドの全てが問われることになる。その答えは、そう遠くない将来出る。

<太陽光発電>
*2-1:http://qbiz.jp/article/69178/1/
(西日本新聞 2015年8月20日) みやま市が10月15日から売電
 全面自由化される電力小売り事業に参入する福岡県みやま市が主体となって設立した電力売買会社「みやまスマートエネルギー」(同市)が、10月15日から市内の公共施設向けに売電を始めることが19日、分かった。2016年4月からの家庭向け電力供給をにらみ、売電事業を本格化させる。売電先は、市役所本庁を皮切りに、市内の学校や公民館など計38カ所を予定している。病院や工場など民間施設への供給も順次開始し、市外にも売電エリアを広げる方針。電気料金は、基本料金を安く設定することを検討している。新会社が、大規模太陽光発電所(メガソーラー)や家庭用太陽光発電機の電力を九州電力よりも高い価格で買い取り、安く販売する。売り上げは15年度に1億5千万円を目指す。家庭向けに売電を始める16年度は12億円を見込む。

*2-2:http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2015083090071134.html
(東京新聞 2015年8月30日) 太陽光発電 今夏シェア6%台に ピーク時に原発12基分
 今夏に電力需要がピークを迎えた時間帯にどう電力が確保されたか電力各社に取材したところ、太陽光発電が原発十二基分に当たる計一千万キロワット超の電力を生み出し、供給を支えていたことが分かった。二年前は供給力の1%にすぎなかった太陽光は、6%台に急伸。九州電力川内(せんだい)原発(鹿児島県)が今月再稼働するまで約一年十一カ月にわたり国内の「原発ゼロ」が続いた間に、太陽光が欠かせない電源に成長したことが明確になった。本紙は、原発のない沖縄電力を除く全国の九電力会社に、今年七~八月の電力需要ピークの時間帯に、電源構成がどうなっていたのかデータ提供を求めた。四国電力は提供を拒否したが、八社が回答した。地域によってピークの日や時間帯は若干異なるが、八社が需要を見越して準備した供給力の合計は約一億六千六百万キロワット。首位は火力発電で、約一億二千六百万キロワット(75・4%)と圧倒的に多い。二位は、くみ上げておいた水を需要に応じて放水する揚水発電で約千八百万キロワット(10・9%)、三位は水力発電の約千二百万キロワット(6・9%)。太陽光発電は僅差で続き、千百万キロワット弱(6・5%)。川内原発の出力は一基八十九万キロワット。約十二倍の電力を生み出していたことになる。政府の事前予測は五百万キロワット前後だったが、大きく外れた。再生エネルギーの固定価格買い取り制度がスタートしてからの三年で、中心的な存在になった。需要が高まる日中、軌を一にするように発電するのが太陽光の特質で、割高な石油火力の稼働を最小限にできる効果もあった。地域別では、太陽光の発電量は東京電力管内が四百万キロワットと最も多かったが、発電割合では九州電力管内が9・5%と最も高かった。九州では今夏、ピークが通常とは異なり、日射量が減り始める午後四時だった。もしピークが一般的な昼前後であれば、発電量は二~三倍だった可能性が高い。九電は八月十一日に川内原発1号機を再稼働させたが、その前から電力の需給バランスは余裕のある状態が続いていた。中部電力などから電力融通を受けていたこともあるが、九州では太陽光の導入量が非常に多く、そのサポートで安定が保たれていたともいえる。
<固定価格買い取り制度> 太陽光や風力、地熱、バイオマスなど再生可能エネルギーでつくられた電気を、国が設定した価格で一定期間、電力会社が全量買い取るよう定めた制度で、2012年7月にスタートした。買い取り費用は電気料金に上乗せされるが、太陽光パネルの価格低下などに伴い、買い取り価格は段階的に下げられている。導入量は、設置が容易な太陽光に集中しており、家畜のふんや木材チップなどを活用し、出力調整が容易なバイオマスがあまり伸びないなどの問題もある。

<電気自動車と燃料電池車>
*3-1:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20150823&ng=DGKKASDZ07HN2_S5A820C1MM8000 (日経新聞 2015.8.23) エコカー 走行距離長く、日産、フル充電で300キロ トヨタ・ホンダも海外で攻勢
 自動車メーカー各社が環境対応車を刷新し走行可能距離を伸ばす。日産自動車は年末にも電気自動車(EV)「リーフ」を改良し、フル充電での走行可能距離を3割増の300キロメートルとする。トヨタ自動車は12月、ガソリン1リットルあたり40キロメートル超と現行モデルより約2割長く走るハイブリッド車(HV)「プリウス」の新型車を発売する。クルマの電動化を軸にエコカーの使い勝手を高め、グローバル市場での普及を促す。日産はこのほどリーフで使うリチウムイオン電池にためられる電気の量を増やす技術を開発した。EVは一度の充電で走れる距離がガソリン車より短いことが課題だったが、300キロメートルまで伸びる。電池の大きさは変わらず現行の製造ラインを使える。原価の大幅増にはならない見通しで、販売価格を大きく変えることなく商品力を上げる。現行リーフを部分改良し年末にも発売する。日産では400キロメートルの実現を目指し研究開発を続けている。「電池の技術レベルが急激に上がっており、長期では通常のエンジン車と同水準の走行可能距離も不可能ではない」(幹部)という。トヨタはHVの旗艦車、プリウスを6年ぶりに全面改良する。従来のニッケル水素電池だけでなくリチウムイオン電池も採用し、小型化しながらも出力性能を高める。モーターやインバーター(変換装置)や制御システムなども刷新する。衝突安全性を高める部品の採用で車体重量は増える方向だが、エンジンの燃焼効率も高めるなどしてガソリン1リットルあたりの走行距離を現状の32.6キロメートルから伸ばす。ホンダも2016年3月末までに発売する燃料電池車(FCV)の走行可能距離を700キロメートル以上とトヨタのFCV「ミライ」(約650キロメートル)を上回る水準にする。HVやEVといったエコカーは日本が技術開発で先駆けたが、世界での販売はまだ限られている。トヨタのHVは日本では14年で10%強のシェアを持つが、全世界では2%弱にとどまる。10年に発売した日産のリーフも、6月末までの世界累計販売は18万台強。仏ルノーと合わせて16年度までに150万台というEVの販売計画を大幅に下回っているのが現状だ。ただ、欧米などで燃費規制が強化されるためエコカー市場は拡大する見通し。調査会社マークラインズは、14年に200万台だったHVの世界市場は25年に2000万台を突破すると予測する。ドイツ勢ではフォルクスワーゲン(VW)がより廉価なHVの開発を進めているほか、BMWが家庭で充電できるプラグインハイブリッド車の扱いを増やしている。米テスラモーターズがEVの車種を拡大するなど、エコカー市場の競争は激しくなる。日本勢はより燃費を改善したり、走行可能距離を伸ばしたりすることで優位性をアピールし、欧米や中国など海外で販売を加速させたい考えだ。

*3-2:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20150823&ng=DGKKZO90864450T20C15A8NN1000 (日経新聞 2015.8.23) クルマの電動化 日本が先行、追う欧州勢
▽…自動車の駆動装置をエンジンから電気モーターに置き換えたり、モーターを併用したりすること。化石燃料の使用をゼロまたは大幅に減らすことができ、環境負荷を和らげる目的で開発された。車載電池から電気を取り出して走る電気自動車(EV)やハイブリッド車(HV)に加えて、水素と酸素を反応させて生み出した電気で走る燃料電池車(FCV)などがある。
▽…トヨタ自動車のHV「プリウス」や日産自動車のEV「リーフ」などクルマの電動化では日本メーカーが先行してきた。ただ米カリフォルニア州の「ZEV規制」や欧州の「ユーロ6」など厳しい環境規制を見据え、クリーンディーゼル車やエンジンの小型化で規制に対応してきた欧州メーカーも電動化に本腰を入れはじめた。
▽…クルマの電動化普及の壁となってきた充電インフラも整いつつある。国内の急速充電器の数は現在約5400基と2014年9月に比べ約3倍に増えた。独BMWと独フォルクスワーゲン(VW)も米国で100カ所に急速充電器を整備することを合意している。

*3-3:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20150824&ng=DGKKZO90871610T20C15A8TJM000 (日経新聞 2015.8.24) 電極に硫黄使い、リチウムイオン電池容量を4~5倍に、産総研や関大、3~5年後に実用化へ
 幅広く使われるリチウムイオン電池の電極に硫黄を採用することで電池の容量を4~5倍に増やす技術の開発が相次いでいる。硫黄は電解液に溶け出しやすいが、産業技術総合研究所は電極の金属と強く結合させることで克服した。関西大学は電極の構造を工夫し、問題を解決した。スマートフォン(スマホ)などの携帯機器を充電する頻度を大幅に減らせる見込み。電池メーカーなどと組み3~5年後の実用化を目指す。リチウムイオン電池はリチウムイオンが電解液を通じて正極と負極の間を行き来することで充放電を繰り返す。正極にレアメタル(希少金属)を含むコバルト酸リチウムなどを使っている。硫黄は電気を多く蓄える性質があり、電極材料に向く。希少資源でもない。硫黄を微粒子状に加工し、表面積を増やしたうえで正極に活用する研究などが進んでいる。ただ充放電を繰り返すと電解液に溶け、電池の性能を落とす課題があった。産総研の栄部比夏里上級主任研究員らは、正極に使う金属と硫黄の微粒子を強く結合させる技術を開発した。鉄やチタンなどの金属と硫黄を粉にし、セラミックスでできた小さな球と一緒にかき混ぜる。球がぶつかる際の衝撃で、金属原子と硫黄が強く結びつく。1つの金属原子に硫黄の微粒子が4~6個結合する。この材料を正極に使い電池を試作した。電池の容量は従来のリチウムイオン電池の3~5倍になった。電圧は半分になるが、回路構成などを工夫することで電圧を引き上げられるという。電池メーカーと協力して今年度中にも携帯電話に使う大きさの電池を試作し、実用性を確かめる。関西大の石川正司教授らの技術は、電極に使う炭素に開いた直径数ナノ(ナノは10億分の1)メートルの穴に硫黄の微粒子を染み込ませる。微粒子が固定しやすい大きさの穴を均一に作り込むとともに、硫黄を穴に効率よく充填する技術を開発した。電極の重さのほぼ3割が硫黄になり、電池の容量が従来の4倍になった。正極を作り電池で試した。数百回充放電を繰り返しても性能を保った。充電に要する時間は従来のリチウムイオン電池の20分の1に短縮できた。今後は炭素に染み込ませる硫黄の量を増やし、5年後の実用化を目指す。

<原発について>
*4-1:http://qbiz.jp/article/69273/1/
(西日本新聞 2015年8月21日) 「現場重視の安全対策を」 全国知事会が規制委に要望
 全国知事会原子力発電対策特別委員会の西川一誠委員長(福井県知事)は20日、原子力規制委員会の田中俊一委員長と会談し、「東京中心に物事が考えられがちだ。現場を重視した実効性のある安全対策を進めてほしい」と要望した。西川委員長は、東京電力福島第1原発事故の早期収拾や原子力防災体制の強化などを盛り込んだ提言書を提出。原子力災害対策指針に明確な規定がない原発から30キロ圏外の自治体でも事前対策が必要だと指摘し、避難ルートの検討に緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム(SPEEDI)などを活用する仕組みづくりも求めた。田中委員長は避難計画策定向けに「発電所ごとに気象条件や風向きを考慮してシミュレーションした基礎データを出せるようにしたい」と応じ、規制の判断基準について丁寧に説明する考えを示した。提言は宮沢洋一経済産業相にも提出した。

*4-2:http://mainichi.jp/shimen/news/20150812ddm005070045000c.html?fm=mnm (毎日新聞社説 2015年8月12日) 川内再稼働 原発依存社会に戻すな
 人々の暮らしを一変させた東京電力福島第1原発の過酷事故から4年5カ月。九州電力が鹿児島県の川内原発1号機を再稼働させた。事故後に策定した新規制基準のもとでの初の稼働である。政府も電力会社もこれをモデルケースに既存の原発を順次再稼働していく心づもりだろう。しかし、あれだけの事故を経てなお原発と向き合う政府の本質的な姿勢は変わらず、事故の教訓を生かし切っていない。この再稼働を3・11前の安全神話に逆戻りする第一歩にしてはならない。
◇ゼロへの道筋が先決だ
 3・11の教訓は、「対策をとっても原発事故は起きうる」「原発事故が人、環境、社会に与える被害は質も範囲も他の事故と大きく異なる」ということだった。しかも、日本は世界有数の地震・火山国である。日本で原発を動かし続ける危険性はあまりに大きい。核のゴミの処分問題を考えても原発は持続可能なエネルギーとは言いがたい。だからこそ、できるだけ早く原発をやめようと私たちは主張してきた。一方で、原発即ゼロがもたらす経済的、社会的リスクを考えれば、一定の条件を満たした上で最小限の稼働を認めざるをえない場合もあるだろう。そんな考えも示してきた。しかし、この再稼働は条件を満たさず、認めることはできない。まず、原発を減らしていく過程での再稼働との位置付けが欠けている。政府が昨年閣議決定したエネルギー基本計画には、「原発依存度を可能な限り低減させる」との方針が盛り込まれた。これに従えば、確実に原発を減らしていくための工程表を描くことが政府の責務だ。ところが、7月に経済産業省が決定した2030年の電源構成は原発比率を20〜22%とした。これを実現するには40年廃炉の原則を超えた老朽原発の延命、建て替え・新増設が必要となる。ここに見え隠れするのは、なし崩しに原発依存社会に戻そうとする政権の意図だ。事故が起きた場合に住民への被害を最小限にとどめる、という必須条件も満たされていない。確かに新規制基準では以前は想定していなかった過酷事故も考慮し、求められる安全対策は厳しくなった。基準適合を審査する原子力規制委員会も独立性を高めハードルは高くなった。しかし、ハード面の対策強化は再稼働の必要条件であっても、十分条件ではない。福島の事故では指揮命令系統の混乱が事態を悪化させた。拡散する放射能の情報が住民に届かず、線量の高い場所へ逃げた人もいる。入院患者や介護施設の入所者の避難は大混乱し、避難途中や避難先で亡くなった人も多い。事故後、避難計画が必要な自治体は原発から30キロ圏に拡大され、川内原発の周辺でも計画自体は策定された。ところが、その計画の実効性を担保する住民の避難訓練が実施されていない。政府もそれを容認している。住民の安全確保に十分な備えがないまま再稼働を急ぐ姿勢は、「事故は起きない」と高をくくってきたかつての安全神話と根が同じではないか。住民の安全を守るためにもただちに避難訓練を行って問題点を抽出し、場合によっては原発再停止も考えるべきだ。
◇国民の意思反映させよ
 誰の責任で再稼働するのかが明確でない点も3・11前と変わらない。原発は民間ビジネスである以上、一義的には再稼働も安全確保も電力会社の責任だ。ただし、原発は政府の国策でもある。その政府は、「規制基準への適合」を再稼働の唯一のよりどころとし、一方の規制委は「基準への適合=安全」ではないとの認識を示している。これでは、福島の事故と同様、再び事故が起きた時に誰も責任を問われない不条理がまかり通ってしまう。さらに根本的な問題もある。原発・エネルギー政策を国民の納得のもとに進めようとする意思が政府にみられないことだ。各種の世論調査によれば、事故以降、ほぼ一貫して原発再稼働への反対が賛成を上回っている。毎日新聞が8、9日に実施した世論調査でも川内原発再稼働に「反対」との回答が57%を占めた。しかし、住民にこれほどの影響を与えた事故を経ても、国のエネルギー政策に国民の強い意思を反映させる手段は用意されていない。経産省の審議会を使って政策の方向性を決める手法は事故前のままだ。民主党政権時代には討論型世論調査など、曲がりなりにも国民の意思を反映させようとする努力はあった。現政権にはその姿勢すらない。原発を動かし続ける限り核のゴミがたまり続けるという問題も大きい。10万年後まで見越して最終処分する必要性があるのに、日本ではまったくめどが立っていない。たとえ事故が起きなくてもこの問題に解決の糸口がない以上、原発を長期的に維持するわけにはいかない。政府はまず原発ゼロに向けた具体的道筋を描くべきだ。避難計画や訓練を規制委が事前評価する体制作りも早急に進める必要がある。川内原発再稼働を原発回帰の踏み台にしてはならない。

*4-3:http://www.shinmai.co.jp/news/20150819/KT150818ETI090005000.php
(信濃毎日新聞 2015年8月19日) 原発維持費 国民の理解得られない
 やはり金食い虫である。昨年度に1基も稼働しなかった原発の維持、管理のために、電力9社が計1兆4260億円を使っていたことが明らかになった。内訳は人件費や修繕費、使用済み核燃料の再処理費などだ。停止していても熱を出す核燃料を常に冷やすことが必要で、専門的な技術を持つ多数の人員による日常的な点検も不可欠なためだ。多くは電気料金に転嫁され、消費者が負担した。維持、管理費の合計は、中堅電力会社1社の年間売上高に相当する。あまりに巨額ではないか。大手電力会社は、停止中の原発の維持費は「再稼働に向け必要な経費」とする。ただ、維持されている原発には、原子炉建屋直下に活断層が走る疑いがあるため再稼働が困難とみられる北陸電力志賀原発(石川県志賀町)や、運転開始から40年近い原発も含まれる。安全なエネルギーを求める国民の意向は明確だ。危険性を排除できない原発や老朽原発の維持費を、いつまで国民が負担するのか。電力会社は廃炉を増やす検討を始めるべきだ。一方で巨額の維持費は、電力会社が再稼働を進める動機にもなっている。運転時に必要となるコストと停止中のコストが大きく変わらないためだ。九州電力の場合、昨年度にかかった原発維持費は1363億円。自社発電の46%を原発が占めていた2010年度は2157億円で、37%しか減っていない。原発停止で火力発電の経費が2倍以上に膨らみ、原発の維持費も負担となった。電気料金の値上げでもコストを回収できず、決算は4期連続で最終赤字だった。九電が川内(せんだい)原発(鹿児島県薩摩川内市)の再稼働を急いだ理由はここにある。1、2号機が再稼働すれば今期は黒字に回復する見込みだという。原発は稼働させればさせるほど利益を生み出す一方、停止しても莫大(ばくだい)なコストがかかる。原発から抜け出しにくい構造といえる。ただ、来春の電力小売りの全面自由化後には、燃料費や人件費、維持費などを電気料金に組み込める「総括原価方式」が廃止される方向になっている。新規参入が相次ぎ、競争も激化するだろう。原発の追加安全対策や廃棄物の最終処理費なども増えることが想定される。原発は電力会社の重荷になる可能性がある。電力新時代に消費者に選んでもらえるよう、電力会社も将来を見据えた戦略を考えるべきだ。

*4-4:http://www.jiji.com/jc/zc?k=201508/2015082100245&g=soc
(時事ドットコム 2015/8/21) 川内1号機、出力上昇を延期=2次冷却水に海水混入か-九電
 九州電力は21日、再稼働した川内原発1号機(鹿児島県薩摩川内市)について、2次冷却水に海水が混入した恐れがあるため、予定していた出力上昇を延期すると発表した。25日に予定している出力100%到達も遅れる見通し。九電によると、2次冷却水を循環させる復水ポンプの出口で、水質を監視する「電気伝導率」の数値が上昇した。電気伝導率は2次冷却水に海水などの塩分が混入した場合に上昇するといい、九電は発電タービンを回した後に2次冷却水を海水で冷やす「復水器」の中に海水が混入した可能性があるとみて調べている。川内1号機は11日、新規制基準に基づき全国の原発で初めて再稼働した。出力は16日に50%、19日に75%に到達し、21日に95%に上昇させる予定だった。

*4-5:http://diamond.jp/articles/-/77425 (ダイヤモンド 2015年8月29日) 9300億円の訴訟を起こされた三菱重工!! 日米原発報道での一番の違いとは?
―広瀬隆×堀潤対談<中篇>
  『原子炉時限爆弾』で、福島第一原発事故を半年前に予言した、ノンフィクション作家の広瀬隆氏。壮大な史実とデータで暴かれる戦後70年の不都合な真実を描いた『東京が壊滅する日――フクシマと日本の運命』が第4刷となった。本連載シリーズ記事も累計145万ページビューを突破し、大きな話題となっている。このたび、新著で「タイムリミットはあと1年しかない」とおそるべき予言をした著者が、「8bitNews」主宰者で元NHKアナウンサーの堀潤氏と初対談。放射能漏れ事故を起こし、9300億円の訴訟を起こされた三菱重工事件を米国現地で見た堀潤氏は、どう感じ、どんな行動に出たのか?アメリカと比較し、日本の原発報道はなにが問題なのか。川内原発再稼働で揺れる日本人の有益なモデルケースとなるかもしれない。
●放射能漏れを起こした三菱重工製の蒸気発生器
(広瀬)2012年1月に運転中だった3号機で、交換したばかりの蒸気発生器の配管に異常な摩耗が起きて、放射性物質を含む水が漏れた。その後、定期点検中だった2号機でも同様の摩耗が見つかった。サンオノフレ原発の蒸気発生器は三菱重工製でした。川内原発の再稼働で、私が最もこわいと思っているプラントで、川内原発も同じ三菱重工製ですからね。川内原発は再稼働した途端に、復水器で細管が破損しましたが、蒸気発生器の細管破損は、もっとこわいことです。くわしく聞かせてください。
(堀)ぼくがカリフォルニアに行った2012年6月頃、夏場の電力需給を考えると再稼働が必要ということになりましたが、地元住民を中心に反対の声が上がりました。「津波対策も不十分、情報公開もされていない」と。
(広瀬)アメリカでは、西部が地震と津波地帯ですからね。
(堀)アメリカの底力を感じたのは、パブリック・ミーティングを見てからです。さまざまなステークホルダー(利害関係者)、市民、原発の労働者、電力会社、米原子力規制委員会(NRC)、地元自治体、有識者、メディアなどが集まって、「サンオノフレ原発をどうするか」という話し合いが、いろいろなところで開かれていました。しかもそれがインターネットですべて公開されています。日本にはパブリック・ミーティングのような話し合いの場はなく、一方的な官製の説明会でごまかすので、市民側は裁判にいかざるを得ない。ここが大きく違います。
(広瀬)昔からアメリカのパブリック・ミーティングは制限時間がないので、いつも感心して見ていました。
(堀)たしかにヒアリングが長いです。
(広瀬)アメリカ人のよさはそこにある。怒鳴り合いもするけど、とにかく時間制限なしで徹底的に言い合う。これはアメリカだけではなくドイツもそうです。
(堀)そう、それぞれが持っている情報を出し合いながら、合意点を探す作業を丁寧に行います。これが本当のディスカッションだと思います。成熟した民主主義社会は、丁寧な議論ができる市民社会であるべきだし、情報を持っている機関は、公開することに心血を注いでいただきたい。
(広瀬)日本にはパブリック・ミーティングのような話し合いの場がないし、事実は隠蔽されたままです。成熟した民主主義社会には程遠いのが現状です。
(堀)私が2012年にアメリカに留学していた当時、米カリフォルニア州の電力会社サザン・カリフォルニア・エジソン(SCE)が運営しているサンオノフレ原発が再稼働問題に揺れていました。ディスカッションは意見ベースではなく、事実ベースで進みます。電力会社やメーカーはもちろん、環境団体や市民も、自分の感情や意見を排除して、事実と事実を突き合わせて、落としどころを探っていました。
●報道されなかった三菱重工への「抜き打ち調査」
(堀)2012年の事故発生後、エジソン社(電力会社SCE)と三菱重工は蒸気発生器の設計変更を発表しました。設計変更し、安全検査をクリアして、NRCが承認したら再稼働という流れでしたから、設計変更が完了した時点で、反対側の住民もいよいよ再稼働なのかと注視していました。そんなときNRC(米原子力規制委員会)が突然、神戸にある三菱重工の製造工場に抜き打ちで調査に入ったのです。その結果、定められた手順で安全検査を行っていないことを突き止めました。
(広瀬)日本でNRCの動きはまったく報道されていません。本当ですか?
(堀)三菱重工は、「確かに手順を飛ばした部分はあるが、安全管理上はまったく問題はない」と主張しました。それでもNRCはこれを問題視して、三菱重工の担当者とのすべてのやりとりをネットで公開しました。これによってサンオノフレ原発の廃炉が決定的になりました。SCEの親会社であるエジソン・インターナショナルは三菱重工に対し、検査や補修費用としてそれまでに1億ドル(当時のレートで約97億円)以上を請求していましたが、さらに廃炉に伴う損害賠償(約9300億円)を三菱重工に求めました。
(広瀬)最終的に、廃炉という決断を誰が下したのですか?
(堀)SCE(電力会社)です。修理して運転するより廃炉にしたほうが安いという判断でした。そういう判断を自分でできる電力会社はすごいと思います。
(広瀬)日本で報道されたのは事故が起きたことと、廃炉になったことだけです。でも、いちばん重要な部分は、NRCが三菱重工に査察に入ったことですね。そんな経緯があったなんて全然知らなかった。
(堀)これはビッグニュースですよね。しかし、日本では報道されていません。米国ではNRCが会見を開き、三菱重工とのやりとりをほとんどの局が報道していました。それなのに、日本では報道されない。でも今の私は、こうして事実を伝えられる自由な立場にいます。
●世界中から不信感を持たれる日本の原子力業界
(堀)最近、日本の電力会社の取材をしています。電力会社のある幹部は「社内や資源エネルギー庁から、堀さんの取材を受けて大丈夫なのか、と言われましたが、情報公開するにはどうすればいいか迷っている部分もあるし、こうやって話をするところから始めたい」という人もいました。他の電力会社の幹部も「どうやったら市民社会と接続できるのかを考えたい」と言っていました。
(広瀬)それはいつ頃の話ですか?
(堀)今年の7月終わりくらいです。その理由は、諸外国の原子力業界から声があがっている、日本の原子力業界への不信感です。日本の原子力業界は、事故後の対応や情報公開のやり方を世界中から批判されています。今年4月、第48回原産(日本原子力産業協会)年次大会が東京で開催されました。ブラジル、中国、フランス、インドなどの原子力部門の代表から「日本は情報公開ができていない」「あらゆるステークホルダー(利害関係者)を集めた場をつくるべき」という声があがりました。中国の代表からは「内陸部に原発をつくりたいけれど黄河を汚してしまったらとんでもないことになる。住民の声を受けて沿岸部にしかつくっていない。住民の声を聞くのが大事なんだ」と。OECD(経済協力開発機構)の原子力部門のトップからは「福島の事故は人的な側面が大きい。いくらテクノロジーを向上させても人間がエラーを起こしたらうまくいかない。そこで“心理学的側面から安全を担保する専門部署”を新たに立ち上げた」などの発表がありました。日本は事故から4年経っても業界の体質は大きく変わっていないのが現状です。
(広瀬)変わっていないどころか、原子力規制委員会は大事故が起こることを前提に川内原発を再稼動させたんですよ。地元民は「100%事故は起こらない」というから原発を誘致し運転を認めてきたのに、いまや「事故は起こる」といって動かしているのです。それが8月11日の川内原発再稼働という出来事です。だからトンデモナイことが始まったのです。
●なぜ、『東京が壊滅する日』を緊急出版したのか――広瀬隆からのメッセージ
 このたび、『東京が壊滅する日――フクシマと日本の運命』を緊急出版した。現在、福島県内の子どもの甲状腺ガン発生率は平常時の70倍超。2011年3~6月の放射性セシウムの月間降下物総量は「新宿が盛岡の6倍」、甲状腺癌を起こす放射性ヨウ素の月間降下物総量は「新宿が盛岡の100倍超」(文部科学省2011年11月25日公表値)という驚くべき数値になっている。東京を含む東日本地域住民の内部被曝は極めて深刻だ。映画俳優ジョン・ウェインの死を招いたアメリカのネバダ核実験(1951~57年で計97回)や、チェルノブイリ事故でも「事故後5年」から癌患者が急増。フクシマ原発事故から4年余りが経過した今、『東京が壊滅する日――フクシマと日本の運命』で描いたおそるべき史実とデータに向き合っておかねばならない。1951~57年に計97回行われたアメリカのネバダ大気中核実験では、核実験場から220キロ離れたセント・ジョージで大規模な癌発生事件が続出した。220キロといえば、福島第一原発~東京駅、福島第一原発~釜石と同じ距離だ。核実験と原発事故は違うのでは?と思われがちだが、中身は同じ200種以上の放射性物質。福島第一原発の場合、3号機から猛毒物プルトニウムを含む放射性ガスが放出されている。これがセシウムよりはるかに危険度が高い。3.11で地上に降った放射能総量は、ネバダ核実験場で大気中に放出されたそれより「2割」多いからだ。不気味な火山活動&地震発生の今、「残された時間」が本当にない。子どもたちを見殺しにしたまま、大人たちはこの事態を静観していいはずがない。最大の汚染となった阿武隈川の河口は宮城県にあり、大量の汚染物が流れこんできた河川の終点の1つが、東京オリンピックで「トライアスロン」を予定する東京湾。世界人口の2割を占める中国も、東京を含む10都県の全食品を輸入停止し、数々の身体異常と白血病を含む癌の大量発生が日本人の体内で進んでいる今、オリンピックは本当に開けるのか?同時に、日本の原発から出るプルトニウムで核兵器がつくられている現実をイラン、イラク、トルコ、イスラエル、パキスタン、印中台韓、北朝鮮の最新事情にはじめて触れた。51の【系図・図表と写真のリスト】をはじめとする壮大な史実とデータをぜひご覧いただきたい。「世界中の地下人脈」「驚くべき史実と科学的データ」がおしみないタッチで迫ってくる戦後70年の不都合な真実!よろしければご一読いただけると幸いです。
*広瀬 隆*1943年生まれ。早稲田大学理工学部卒。公刊された数々の資料、図書館データをもとに、世界中の地下人脈を紡ぎ、系図的で衝撃な事実を提供し続ける。メーカーの技術者、医学書の翻訳者を経てノンフィクション作家に。『東京に原発を!』『ジョン・ウェインはなぜ死んだか』『クラウゼヴィッツの暗号文』『億万長者はハリウッドを殺す』『危険な話』『赤い楯――ロスチャイルドの謎』『私物国家』『アメリカの経済支配者たち』『アメリカの巨大軍需産業』『世界石油戦争』『世界金融戦争』『アメリカの保守本流』『資本主義崩壊の首謀者たち』『原子炉時限爆弾』『福島原発メルトダウン』などベストセラー多数。
*堀潤*元NHKアナウンサー、1977年生まれ。 2001年NHK入局。「ニュースウォッチ9」リポーターとして、おもに事件・事故・災害現場を取材し独自取材で他局を圧倒。2010年、経済ニュース番組「Bizスポ」キャスター。2012年、米国ロサンゼルスのUCLAで客員研究員、日米の原発メルトダウン事故を追ったドキュメンタリー映画「変身 Metamorphosis」を制作。2013年、NHKを退局しNPO法人「8bitNews」代表に。現在、TOKYO MX「モーニングCROSS」キャスター、J-WAVE「JAM THE WORLD」ナビゲーター、毎日新聞、「anan」などで連載中。2014年4月より淑徳大学客員教授。


PS(2015.8.31追加):スズキは自らの小型車開発技術を武器に、VWが次世代の環境技術や高級車を持ち寄って収益を拡大させる狙いでVWと資本提携していたが、*5のように、お互いに満足いく結果が得られず、提携関係を解消したそうだ。しかし、日本の自動車メーカーが次世代の環境技術をドイツのメーカーに頼るというのは、日本の方が環境技術先進国だっただけに、先見の明がなかったと言わざるを得ない。一方で、スズキは軽自動車に強く、女性がよく使用しているため、日産とジョイントベンチャーを作って、自動運転機能付で素敵なデザインの電気軽自動車を、次々と世に出したらどうだろうか。女性は、操作が簡単で使いやすく、環境意識の高いおしゃれなデザインの便利な車が好きなのであって、匂いや排気ガスを出すガソリンエンジンに価値を見出しているのではないことを忘れてはならない。

*5:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20150831&ng=DGKKASDZ30H6A_Q5A830C1MM8000 (日経新聞 2015.8.31) スズキ、VWと提携解消、国際仲裁決着、全株買い戻し 5000億円規模
 スズキは30日、独フォルクスワーゲン(VW)との資本提携を解消すると発表した。2009年の提携後、経営の独立性などを巡って対立し、英ロンドンの国際仲裁裁判所(総合・経済面きょうのことば)を通して4年弱にわたり争っていた。VWが保有する全てのスズキ株式、19.9%分を買い戻す。買い戻し金額は5千億円規模になる見通し。今後のスズキの新たな生き残り策は、世界自動車メーカー再編の引き金となりそうだ。29日、国際仲裁裁判所が両社に仲裁判断を通知した。主な内容は「包括提携の解除を認める」「VWに保有するスズキ株の売却を命じる」「VWが主張していたスズキの技術関連の契約違反について一部認め、損害賠償も含め引き続き審議する」の3つ。損害賠償が発生した場合の金額などが焦点となる。現在のスズキの時価総額で計算すると株式買い取り額は約4600億円となり、株価次第では増加する可能性がある。VWは約2200億円で取得していた。スズキは15年3月期末時点で約1兆1千億円に上る手元資金のほか、持ち合いで保有する1.5%分のVW株(時価で約1千億円)も売却し、自社株買いの原資とする見通しだ。30日、スズキの鈴木修会長は記者会見で「最大の目的を達成した。結果に満足している」と話した。VWはスズキ株売却により「利益と流動性の面でよい影響がある」との声明を出した。スズキは米ゼネラル・モーターズ(GM)との提携を通じて成長してきた。だが、GMの経営不振で提携解消となったことを機に、09年にVWと資本・業務提携を発表した。スズキが小型車開発技術、VWは次世代の環境技術や高級車を持ち寄ることで、収益を拡大させる狙いだった。当初、両社は「対等関係」を強調していた。VWの19.9%という出資比率は、持ち分法適用会社化を避けるといった意味合いがあった。しかし、VWは年次報告書で持ち分法適用会社と表記し、事実上の傘下企業と位置づけた。スズキはVWの環境技術の開示が十分でないとも主張していた。一方、VWはスズキがフィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)からディーゼルエンジンを調達したことを提携合意違反だと表明。溝が生じていった。スズキは11年9月、提携解消を申し入れたが、提携の証しだった株の買い戻しにVWは応じなかった。このため同11月に国際仲裁裁判所に提訴していた。4年弱にわたる係争はスズキの海外戦略や次世代技術開発などに影響を及ぼしていた。世界販売では約280万台で10位にとどまり、持続的成長には新たな提携先を模索する可能性が高い。


PS(2015.9.1追加):IAEAが東電福島第一原発事故最終報告書を公表し、「日本では原発が安全という思い込みが浸透していたが、いかなる国も原子力安全について自己満足に浸る理由はない」としているのは、全くそのとおりだ。しかし、*6-2-1のように、福島県の検討委員会が、福島県の小児甲状腺癌の割合が通常より非常に高いにもかかわらず、「チェルノブイリ原発事故の過去の知見を踏まえると、現時点では原発事故の影響とは考えにくい」としているのは、チェルノブイリとフクシマにおける被曝状況や検査体制が全く同じではないため合理性がなく、「原発事故の影響とは考えにくい」と言うのなら、疫学の専門家も納得できるような科学的根拠を示すべきである。さらに、*6-2-2のように、甲状腺癌を「悪性ないし悪性の疑い」というマイルドな言葉を使って不明確化しているのも意図的だ。そのため、*6-3のように、静岡県の保険医協会が九電川内原発の再稼働に抗議して、エネルギー政策の転換を求める理事会声明を発表したのはもっともだ。

*6-1:http://www.asahi.com/articles/ASH9131SRH91ULBJ001.html
(朝日新聞 2015年9月1日) 「原発は安全と思い込み」が要因 IAEAが事故報告書
 2011年3月の東日本大震災で起きた東京電力福島第一原発の事故について、国際原子力機関(IAEA)は8月31日、最終報告書を公表した。事故の主な要因として「日本では原発が安全という思い込みが浸透していた」としたうえで、事故対応の設備や手順などの備えが不十分だったと指摘している。14日からはじまる総会に提出される。報告書は約200ページ。事故の原因や影響を評価し、教訓を共有するために作成された。42カ国の約180人が参加し、5冊の技術解説書(計約千ページ)もまとめた。IAEAのホームページで読むことができる。巻頭で天野之弥・IAEA事務局長は日本の原発は非常に安全だという前提で運転されていたことを踏まえ、「いかなる国も原子力安全について自己満足に浸る理由はない」と述べた。報告書では、原発の設計や緊急時対応で弱点があったことに加え、外部電源が長時間失われる事態や複数の原子炉が事故を起こす想定がされていなかったことなどを指摘している。

*6-2-1:http://www.asahi.com/articles/ASH805SMGH80UGTB00M.html
(朝日新聞 2015年8月31日) 甲状腺がん新たに1人 福島の子ども、計104人に
 福島県は31日、東京電力福島第一原発事故による健康影響を調べる甲状腺検査で、今年4月から6月末までに新たに1人が甲状腺がんと診断されたと発表した。検査対象となる事故当時18歳以下だった約38万5千人のうち甲状腺がんと確定したのは合計104人になった。2011年から昨年3月末までの1巡目の検査結果を基準に、2巡目以降の検査結果と比べ、がんが増えるかどうかをみる。これまで1巡目検査で98人、今年度末まで続く2巡目検査で計6人ががんと診断された。県検討委員会は「チェルノブイリ原発事故で甲状腺がんになった子どもの被曝(ひばく)線量や年齢といった過去の知見を踏まえると、現時点では福島で見つかった甲状腺がんは原発事故の影響とは考えにくい」としている。

*6-2-2:http://www.sting-wl.com/fukushima-children6.html (福島原発事故後の日本を生きる 2015年8月31日) 【最新】福島の甲状腺がん急増→子供達の身にいったい何が起きた?
 2015年8月31日に公表された最新の福島県民調査報告書によると、福島県の小児甲状腺がん及び疑いの子供達は、3か月前…前回の126人から11人増えて合計137人になりました。福島県の発表は甲状腺がんを、悪性…悪性とはがんのことですが『悪性ないし悪性の疑い』という言葉を使い、あたかも甲状腺がんでない子ども達もこの中に含まれているように書くことで、焦点をぼかしチェルノブイリ原発事故との比較を困難にしています。しかし137人のうち手術を終えた105人の中で、良性結節だったのはたった1人にすぎず、101人が乳頭癌、3人低分化癌との診断です。つまり『悪性ないし悪性の疑い』のうち99%は、小児甲状腺癌でした。ですので疑いという言葉を過大評価して安心するのは危険です。

*6-3:http://mainichi.jp/area/shizuoka/news/20150828ddlk22040097000c.html (毎日新聞 2015年8月28日) 鹿児島・川内原発:再稼働 抗議の声明発表 静岡県保険医協会
 静岡県内で開業している医師、歯科医師2320人で組織する県保険医協会(聞間元・理事長)は27日、九州電力川内原発(鹿児島県)の再稼働に抗議し、エネルギー政策の転換を求める理事会声明を発表した。声明では「九州電力管内でも電力需要は安定しており、電力不足を理由とした再稼働の根拠は崩れている」と指摘。御前崎市の中部電力浜岡原発についても「中部電幹部からは『手続きを進めやすくなる』との歓迎の声が上がっており、なし崩し的に再稼働が進むことを危惧する」と主張した。


PS(2015年9月3日追加):*7のように、労基署は、タイムカードによる出退勤記録を金科玉条の如く重視して労基法違反としているが、タイムカードによる拘束時間が仕事量と比例するのは、流れ作業で組み立てを行い、会社の拘束時間と成果が比例する製造業など一部の産業に限られるため、全業種でタイムカードのみを金科玉条の基準として運用するのは問題がある。例えば、営業は、普段からタイムカードでは集計されない多方面での付き合いで人脈を作っている人は成果が上がりやすく、タイムカード上、長く会社に拘束されていても成果は上がらない。また、組織再編などのコンサルティングも、長時間考えても答えを出せない人もいれば、少し調べれば適切な答えを出せる人もおり、これは記者も同じだろう。つまり、知識の集積、経験の積み重ね、人脈などはタイムカードでは測れず、タイムカード偏重は働き方の問題にも繋がるのである。また、直属の上司の時間管理や指導は、公正な業績評価のみならず、要領を得た働き方を教えるオン・ザ・ジョブ・トレーニングとしても重要だ。

*7:http://qbiz.jp/article/70138/1/
(西日本新聞 2015年9月3日) 福岡大同青果、残業不払い 労基署是正勧告、勤務時間短く算定
 市場での卸売業で九州最大の福岡大同青果(福岡市博多区)が、残業代の一部を社員に支払っていなかったことが分かり、福岡中央労働基準監督署が労働基準法違反で是正勧告していたことが分かった。労基署は、タイムカードによる出退勤記録よりも意図的に残業時間を少なくしていたと認定。同社は事実関係を認めた上で「勤務体系を変え、既に改善した」と説明している。同社は、福岡市が開設する中央卸売市場の中核企業。かつては、競り時間に合わせて早朝出勤し、夕方前に退社する勤務体系が主流だった。ただ、ここ10年ほどで特定のスーパーと産地を同社が仲介する「相対取引」が増えるに従い、長時間の過重労働が慢性化。この過程で、残業代の不払いが増えてきたとみられる。労基署は、(1)多くの従業員でタイムカードより少なく勤務時間を算定していた(2)営業担当の部長らに労働時間を管理させていた−ことから、「意図的」と判断した。西日本新聞の取材に、社員の一人は「多いときは月150時間を超える残業があった。だが、上司が経費を抑えるため、残業時間の半分程度しか認められなかった」と証言した。月80時間を超える残業は過労死の恐れが強まるとされる。同社は取材に、一部で残業が100時間を超える過重労働や休日のサービス残業があったことも認めた。同社への是正勧告は昨年12月16日付。これを受け「違法と指摘された点は3月までに改善した」としている。ただ、同社の物流子会社も同様の是正勧告を受けたが、関係者は「改善が遅れている」と明かす。福岡市は今回の件について「青果物の取引と関係ない」として調査しない方針。大同青果に業務認可を出している農林水産省は「再び発生しないように注意を払いたい」としている。同社の売上高は約630億円で、社員数は約180人。来年2月、福岡市東区のアイランドシティ(人工島)で建設中の新市場に移転する予定。


PS(2015年9月4日追加): *8の小水力発電は、農業用水などの小さな流れでもかなりの電力を発電できるため、農業用ハウスの無料のエネルギー源として使うと、安いコストでハウス栽培ができそうだ。この際に、地中熱(一年中、摂氏16度前後)で空気を適温に近くしてからエアコンを使うと、さらに節電できるとのことである。

*8:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/225948
(佐賀新聞 2015年9月4日) 県、小水力発電普及へ助成 事業者を募集
 佐賀県が小水力発電の普及を目指している。再生可能エネルギー分野の裾野を広げ、新たな産業につなげる狙いで、技術開発や実証事業に取り組む県内事業者を募集している。小水力発電は河川や水路の水をためることなく、そのまま利用する発電方式。昼夜や年間を通して安定した発電が可能で、太陽光に比べて設備利用率が高い点などが長所とされる。出力は大きくないものの、独立した電源として多目的に使え、売電収入も見込める。募集は県内の民間企業や団体、大学・研究機関などを対象にしている。小水力発電の開発や普及につながる新規事業に対して経費を助成する。補助率は総事業費の2分の1以内で、250万円を上限とする。事業期間は来年3月10日まで。県内16カ所の水力発電のうち、出力が1千キロワット以下の小水力発電は5カ所にとどまる。水利権に加え、落差と流量が見込める設置場所の確保がネックになっているが、新エネルギー課は「唐津や脊振、太良の山あいなどには適した環境がある」とみている。県内に小水力発電メーカーは2社あり、県は2018年度までに4社に増やす目標を新総合計画に掲げている。応募は9月25日まで受け付け、審査で1、2件を採択する。問い合わせは新エネルギー課、電話0952(25)7522。


PS(2015年9月11日追加):原発に余分なコストを払わずにすむ新電力の方が電気料金を安くすることができるため新電力に移行が進むのは自然だが、電力自由化後は、一般家庭もこういう選択ができるようになる。そのため、大手電力会社も電源別に別会社にして、それをアピールする子会社の名称にし、正確にコスト管理を行って電力の価格を決めなければ、顧客が離れるということだ。

*9:http://qbiz.jp/article/70589/1/
(西日本新聞 2015年9月10日) 自治体の大手電力離れ進む 新電力購入額が震災前の1.8倍に
 全国の都道府県と政令市、中核市の計112自治体が2014年度、特定規模電気事業者(新電力)から電力を購入した総額は488億円に上り、東日本大震災前の10年度(269億円)と比べ1・8倍に増えたことが、全国市民オンブズマン連絡会議の調査で分かった。大手電力会社から購入する場合と比べた節減額について、連絡会議は17億6千万円と試算とした上で「震災後の電気代の値上げで、自治体の電力へのコスト意識が高まった」と分析している。調査によると新電力から購入した自治体数は68で、10年度と比べ17増加。国が自治体に電力の調達方法を随意契約から一般競争入札に替えるよう促していることも背景にあるとみられる。九州15自治体の購入額は64億円で、震災前の1・6倍に増えた。節減額は5億円。福岡県(14億8千万円)や宮崎県(8億7千万円)の購入額が大きく、両県とも新電力の購入割合が5割を超えた。一方で長崎、大分、宮崎の3市は、新電力からの購入はゼロ。全て九州電力から随意契約で調達していた。購入額に占める新電力の割合は、都道府県と中核市で約1割、政令市で約2割。今後も新電力が伸びる余地は大きい。福岡県は本年度、本庁舎の電力について、大手電力と新電力を組み合わせる「部分供給」という方式を九州7県で初めて導入した。九電1社から購入した場合より、3400万円を節減できたという。来春の電力小売りの全面自由化を前に、福岡県みやま市など、自治体が新電力事業に参入する動きも全国で広がっている。連絡会議事務局の内田隆さん(40)は「自治体の大手電力離れはさらに進むだろう。今後は安価な電力を求めるだけでなく、再生可能エネルギーの比率を高める視点も必要ではないか」と話した。


PS(2015年9月11日追加):スズキは軽自動車を作っているのに自動運転や電気自動車の技術が遅れているため、*10のような提携をすればよいと考える。何故なら、軽自動車を使っているのは女性(特に主婦)が多く、①子どもの送り迎え ②郊外のスーパーへの買い物 ③通勤 などが目的であるため、自動運転に切り替えられる車は便利だし、かつ、安全性への要求、コスト意識、環境意識が高いからだ。つまり、どの企業も、時代をリードできなければ、せめて時代の変化にはついていかなければならない。

*10:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20150911&ng=DGKKASDZ10HPY_Q5A910C1TJC000 (日経新聞 2015.9.11) 自動運転車で日本車メーカーと提携交渉、グーグルの研究部門、生産委託など協力仰ぐ
 米グーグルの研究開発部門「グーグルX」のトップを務めるアストロ・テラー氏は10日、日本経済新聞の取材に対し、開発中の自動運転車について「日本でも様々な企業と話し合いを続けている」と述べ、複数の日本企業と提携に向けた交渉に入っていることを明らかにした。さらに「自前の工場は持たない」と語り、事業化の段階では生産委託などの形で自動車メーカーの協力を仰ぐ方針を表明した。グーグルは運転手なしで安全に走る自動車を次世代の中核事業のひとつに位置づける。トヨタ自動車の「レクサス」など既存の車両を改造して、米カリフォルニア州のマウンテンビュー市などで公道を使った走行実験に取り組んでおり、関係者の間では「17~20年には実用化しそうだ」との期待が高まっている。テラー氏は自動運転車の最終目標を「事故による死亡者をゼロにし、渋滞の間に失う1年間で1兆ドル相当の経済価値を取り戻すこと」とし、この目標を共有できる提携相手を日本でも探しているとした。さらに「よく誤解されるが、我々がメーカーになって車の販売台数を増やすことが目標ではない」と述べ、既存の自動車メーカーとは競合関係にないことを強調。グーグルはセンサーやソフトウエアなどの開発に専念し、最終的な自動運転車の販売・普及の段階では自動車メーカーと組むとの方針を示し、一部の自動車メーカーが懸念する「グーグル脅威論」を否定した。グーグルは既に自動車部品大手の独ボッシュや韓国LG電子などと提携している。日本企業との関係については「我々はオープン。具体的な社名を明かすことはできないが、部品メーカーと完成車メーカーの双方と話し合いを続けている」と語った。グーグルXが中心となって開発を進め、プライバシー保護の観点から計画が滞っているとされる眼鏡型ウエアラブル端末「グーグルグラス」については「私の部門を『卒業』し他の部門に移った。得られた知見は多くの場面で生かされている」と述べた。
*アストロ・テラー氏:1992年米スタンフォード大卒。98年に米カーネギーメロン大学で人工知能(AI)の研究で博士号取得。投資管理会社などの最高経営責任者(CEO)を経て、2010年からグーグルXの統括責任者である「キャプテン・オブ・ムーンショット」(前代未聞な船の艦長)を務める。AIをテーマに近未来SFを執筆するなど、小説家としての顔も持つ。

| 原発::2015.4~10 | 09:53 PM | comments (x) | trackback (x) |
2015.8.14 川内原発はじめ他の原発の再稼働について (2015年8月15、16、17、26、27、28日に追加あり)
       
  2015.8.?   2015.8.11 2015.8.12    2015.8.12     
  東京新聞    佐賀新聞   佐賀新聞      朝日新聞
 
      
   2015.8.1~7     2015.8.12   九州の     2015.8.12  
  最大電力使用率      朝日新聞    火山分布     産経新聞

(1)原発のコストは安くなく、川内を再稼働の雛型にしてはならないこと
 *1-1のように、九電が川内原発1号機を再稼働させて8月14日に発送電を開始し、「原発ゼロ」の状態が終わってエネルギー政策が原発に回帰し、佐賀新聞はこれを祝うように号外で報じた。しかし、「電力が足りない」という再稼働の根拠は、上の東京新聞や*1-4のように、代替電源や広域融通で既に解決されており、原発自体は課題が山積している。しかし、電力業界と経済界は「大きな一歩が踏み出された(経団連の榊原定征会長)」と歓迎しており、ここが原発再稼働のメリットを最も大きく受けるようだ。

 しかし、「原発はコストが安い」と言われてきたことについては、*1-2のように、「核のごみ処分」の目途も立っておらず、「国が責任を持って立地自治体以外に最終処分場を造れ」と言う人もおり、強引に川内原発再稼働を進めた鹿児島県の伊藤知事も最終処分場の鹿児島県への建設には反対している。

 そもそも電力会社は、核のごみ処分費用については見積もりを作って引当金を計上し、引当金繰入額と原子力由来の電力販売収益を毎期対応させてコスト比較を行うべきだったのだ。つまり、他の電源を使いたいと主張している再稼働反対派や受益者ではない将来世代に、今後発生する核のごみ処分費用を税の形で負担させるのは、受益者と負担者が一致しないため不公正なのである。

 また、行き場のない大量の核のごみが原発内の貯蔵プールに溜まっているのは今でも危険であり、その原発を再稼働してメリットがあるのは九電と一部の企業にすぎない。そのため、私も、*1-3のように、川内原発を雛型にして、次々と原発を再稼働してはならないと考える。なお、原子力規制委員会の新規制基準は、火山の大規模噴火を想定しておらず、避難計画も不備であり、*4-3のように、長期避難は想定外であるため、欠陥品である。さらに、放射性物質が拡散して線量も十分に下がっていない場所に住民を帰還させるのは、非人道的としか言いようがない。

 「原発がなければ安定的な電力が不足する(これこそ10年1日の如く言われる科学的でない観念論である)」として、政府(経産省)は2030年の電源構成目標で原発をベースロード電源として原発比率を20~22%と決めたが、*1-3のように、先進国ではベースロードという概念は消え、再エネを含めた多様な電源やサービスを公正な条件のもとで消費者が選ぶ時代になっている。それにもかかわらず、太陽光発電などの技術を最初に作った日本が、古い観念に縛られて割に合わない原発に回帰するのは愚かであり、さらに、電源構成を決めるというのは計画経済であって市場経済ではない。

(2)原発再稼働の受益者は誰か
 *2-1のように、九電は原発再稼働を業績回復の「切り札」として再稼働による収支改善に期待を寄せ、他の電力会社からねぎらいの連絡もあったそうで、再稼働の最大の受益者は電力会社である。しかし、「原発ゼロ」でも、値上げにより電力会社の黒字化は進んでいたし、電力会社の赤字解消が原発再稼働の目的であれば、原発がらみのコストはすべて電力会社が負担した上で他の電源と比較すべきだ。

 さらに、*2-2のように、大口需要先として優遇を受けている経済界からも「大きな一歩」と再稼働に歓迎の声が上がったそうだが、立地地域の商工会トップは原発の増設は「非現実的」として、原発だけに頼らない地域経済を模索する必要性を強調しており、原発立地地域も次の時代の産業に進むべき時だ。

(3)原発事故の責任者は誰か
 *3-1のように、業界は無責任体質で、立地自治体がそこまで「振興のため必要だ」と言うのなら、東京でかつての脱原発のうねりが消えるのも尤もではあるが、*4-4のように、立地自治体や周辺地域の住民も脱原発派の方が多い上、関東も鹿児島県で原発が過酷事故を起こせば汚染が広がって九州の安全な農水産物を食べられなくなるため、本当は深い関係を持っている。

 そのような中、電力会社と立地自治体の利益のために原発を再稼働させながら、*3-2の「政府は原子力の必要性とエネルギー政策の転換を改めて国民に説明し、原子力利用に伴う最終責任を国が引き受けることを明確にすべきだ」という主張には呆れるほかない。

 そのため、2016年に自由化される電力市場では、電力需要者に好みの電源由来の電力を使う選択権を与えるべきである。そうすれば公正な市場競争と消費者の見識によって原発は消え、それを無理やり残そうとすれば国民の福利を最大にしないことが明らかになるからだ(経済学の基本)。

(4)過酷事故時の汚染範囲と汚染期間
 *4-1のように、約2年間の「原発ゼロ」が終わり、「新基準は世界でも最も厳しいレベルだから、新基準に合格しさえすれば安全だ」という新たな安全神話ができた。そして、これまで規制委に審査を申請したのは、川内を含めて15原発の計25基あり、高浜原発は福井地裁が運転を認めない仮処分の決定を出したが、川内原発は鹿児島地裁が仮処分の決定を出さなかった。

 しかし、川内原発の周辺では、高齢者の多い医療施設や福祉施設で住民の避難計画が十分に整っていない上、*4-2のように、放射性物質の放出量や気象条件、地形などのデータを基に放射性物質の拡散範囲や量を予測する「緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム(SPEEDI)」は住民の避難に活用しないことが決められ、被曝前に避難することが不可能になった。さらに、*4-3のように、長期避難は、今も想定外になっている。

 川内原発再稼働は、*4-4のように、鹿児島県の伊藤知事が主導権を握って強引に進めたが、蚊帳の外にされた自治体も安全だというわけではない上、周辺の大切な農林水産業もダメージを受ける可能性が高い。そのため、私は、鹿児島県知事をリコールして、正確に次のステップに進める知事に選び直すしかないと考える。

 また、*4-5のように、過酷事故時は高線量の下で誰が突入するかも深刻な問題だ。過酷事故はテロ以外にも、*4-6の火山噴火やミサイル攻撃等でも起こり、作業員の被曝線量限度を100ミリシーベルトから250ミリシーベルトに引き上げたからといって人の手に負えるものではない。そのため、他のクリーンな発電方法も多い中、私は、発電のために国の存続や命を懸けなければならないとは思わない。

<原発再稼働の責任者について>
*1-1:http://www.saga-s.co.jp/news/national/10201/218064
(佐賀新聞 2015年8月11日) 川内1号機が臨界、エネルギー政策、原発回帰
 九州電力は11日、川内原発1号機(鹿児島県薩摩川内市)の原子炉を起動し再稼働させた。核分裂反応が安定的に持続する「臨界」に同日深夜に達し、14日に発電と送電を開始する。国内の全ての原発が停止した「原発ゼロ」状態は終わり、日本のエネルギー政策は原発に回帰。「核のごみ」問題など課題が山積し、世論の反対も根強い中、安倍政権は新規制基準に適合した原発の再稼働を進める方針だ。電力業界や経済界は「大きな一歩が踏み出された」(経団連の榊原定征会長)と歓迎。一方、国会前や川内原発前では市民団体が「福島の事故を忘れるな」などと訴える抗議集会を開いた。

*1-2:http://qbiz.jp/article/68867/1/
(西日本新聞 2015年8月14日) 【原発が動いた日〜川内1号機再稼動】(下)核のごみ
●限界迫る“行き場”探し
 九州電力川内原発1号機(鹿児島県薩摩川内市)の原子炉が起動し、3時間後の同市役所。記者会見の席で、原発から出る「核のごみ」の処分にめどが立っていないことを問われた岩切秀雄市長(73)は予防線を張った。「(原発の)リスクは全国で公平に負うべきだ」。国が責任を持ち、立地自治体以外に最終処分場を造れとの意思表示だ。原発関係者は「処分場」と聞くと、フィンランドを思い浮かべる。世界で最も核のごみへの準備が進む同国では、経済的利益がある原発新設と引き換えに、地元が処分場を受け入れた。同県では、伊藤祐一郎知事(67)も地元建設には一貫して反対。九電玄海原発がある佐賀県玄海町の岸本英雄町長(62)も引き受ける考えがない。処分場の用地選定は、福島第1原発事故の前でさえ進まなかった難事業。原発への拒否反応が広まる中、予定地を探すことは可能なのか。
   ◇    ◇
 京都教育大(京都市)で9日まであった日本エネルギー環境教育学会で、経済産業省名のペーパーが参加者に配られた。「処分地の選定調査にも着手できていない状況」を反省しつつ、最終処分問題を授業で扱ってくれる学校には、教材提供や講師派遣で支援するとの文面だ。処分事業は立地調査から埋め終えるまで100年以上かかり、推進には将来世代の理解が不可欠。一部小中学校で試験的に取り入れられるようになったのはここ1、2年にすぎず、政府が原発回帰へとかじを切った今、将来世代教育は待ったなしの課題だ。同大には核のごみの処分計画を紹介する、経産省認可法人の展示車が乗り入れていた。見学を終えた和歌山市の高校3年中井仁さん(17)が首をかしげる。「処分場がないのに、再稼働で核のごみが増えるのはどうなんでしょう。結局、僕ら世代の負担になる」
   ◇    ◇
 お盆に入った13日、再稼働当日に反対派であふれていた川内原発のゲート前は静まりかえっていた。
 川内2号機も動けば、九電は本年度決算の黒字化が見える。原子力規制委員会で審査が進む玄海原発3、4号機も再稼働すれば、経営のV字回復は確実。ただ、使用済み核燃料を再処理してウランなどを再利用する核燃料サイクル政策は、再処理工場(青森県六ケ所村)稼働にめどがつかない。行き場のない核のごみは原発敷地内にたまり続け、川内で10年、玄海だと4年の運転で貯蔵プールは限界に達し、原発は動かせなくなる。川内1号機は14日、発送電を開始する予定。核のごみ問題の解決なしに10年後の安定運転は見込めない。

*1-3:http://digital.asahi.com/articles/DA3S11911199.html
(朝日新聞社説 2015年8月12日) 原発再稼働 川内をひな型にするな
 福島第一原発事故を契機に改められた原子力規制委員会の新しい規制基準に合格した第1号でもある。政府は川内を皮切りに、規制委の審査をパスした原発はすべて動かす方針だ。しかし、今回の再稼働の決定過程には問題が多い。火山の大規模噴火について規制委の審査には疑問が投げかけられたままだ。避難計画も不備が指摘され、鹿児島県民の半数以上が再稼働に反対とする世論調査もある。誰の判断と責任で再稼働が決まったのか、あいまいだ。こうした疑問や問題、さらには民意を置き去りにした見切り発車の再稼働は認められない。川内の決め方をひな型として今後も再稼働を決めていくこと、なし崩しで原発依存に戻すことには反対である。
■消えるベースロード
 今回の再稼働に先立って、政府は2030年時点の電源構成目標を決定し、原発の比率を20~22%という水準においた。新たに原発をつくるか、相当数の老朽原発の寿命を延ばさないと達成できない数字だ。関西電力の八木誠社長(電気事業連合会会長)は先月末の会見で「(建設中の3基を含む)46基の原発を相当数稼働していく必要がある数字だと理解している」と語った。国と電力会社は原発回帰を既定路線にしようとしている。原発の位置づけは「ベースロード電源」だ。「発電コストが安く、出力が安定しているので昼夜を問わず運転を続ける電源」だという。しかし、先進国ではベースロードという概念自体が消えつつある。風力や太陽光などの再生可能エネルギーをできるだけ受け入れ、原発や火力発電は、再エネによる発電が少ないときの調整弁へと役割を変えている。こうした運用を可能にしているのが、電力改革だ。欧州では送電部門を発電部門から分離・独立させ、一元的に管理・運用している。天候に左右されがちな再エネも、精緻(せいち)な天気予報に基づいて広域的に融通させることで、需要に見合うようにしている。今後は、変動する電力需要にあわせて柔軟に供給をコントロールする技術が世界の電力ビジネスのカギになると見られている。日本も、遅まきながら電力改革に着手した。今国会で仕上げとなる法律も成立した。2020年までに3段階で改革を進める。再エネを含めた多様な電源やサービスが公正な条件のもとで競い合い、消費者が選んでいく。そんなエネルギー社会に変わることが期待されている。
■割に合わない電源に
 原発を支えてきた地域独占や、経費をそのまま消費者に転嫁する料金制度もなくなる。「安い」とされてきた原発だが近年、建設や運営にかかるコストは世界的に上昇の一途だ。世界有数の原発メーカーであるフランスのアレバは新設原発のコストが膨らんで経営が行き詰まり、政府が救済に入った。不正会計に揺れる東芝も、強化してきた原子力部門が経営の重荷になりつつある。国内の電力各社は追加の安全対策に2・4兆円を見込む。今後も新しい対策が出るたびに追加投資を迫られるだろう。廃棄物の処理や立地のための交付金制度、事故時の賠償金などを積み上げていくと、原発は「割に合わない」電源であり、新しい電力システムの中では成り立たない事業であることが見えてくる。何より、国民の過半数が「原発を使わなくてすむ社会」を望んでいる。
■再エネ築く覚悟を
 政府がいま取り組むべきは、再稼働を重ねて原発を主軸に戻していくことではない。一時的に原発に頼るとしても、老朽原発や安全面に疑問符がつく原発から優先的に廃炉にすると同時に、再エネを育てていくことである。自然環境から見て、九州は最適地の一つだ。この間、再エネの固定価格での買い取り制度が始まり、地域の特性を生かした「ご当地電力」が各地に誕生した。太陽光発電に偏っている問題や、買い取り価格を見直す課題はあるが、自給できて温暖化防止にも役立つ電源を伸ばそうという機運は、着実に育っている。当面は支援が必要だが、送電網への接続といったインフラが整って普及すれば、今より安くて持続的な電源となる可能性が高い。もちろん、再エネを主軸とした分散型エネルギー社会を築くには、時間もかかるし、曲折もあるだろう。国民の覚悟もいる。高い電気料金を受け入れなければならない時期があるかもしれない。それでも、福島での事故で、私たちは原発の怖さを知った。新しいエネルギー社会に向かう原点はそこにある。

*1-4:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/218184
(佐賀新聞 2015年8月12日) [解説]川内原発再稼働 電力代替進み必要揺らぐ
 九州電力川内原発1号機が再稼働し、東京電力福島第1原発事故から4年5カ月で日本は原発活用路線に戻った。政府と電力業界は、電力の安定供給や燃料コストの観点から原発の再稼働が必要だと主張するが、その背景説明は説得力を失いつつある。東日本大震災後、東電管内で計画停電が実施されるなど電力供給体制のもろさが露呈し、国民の間に電力不足への不安が広がった。しかし原発が長期停止する間に火力発電や、太陽光を中心とした再生可能エネルギーによる代替が進んだことに加え省エネの定着もあり供給力は着実に回復。電力需要が急増する夏を震災後4回乗り越え、記録的な猛暑が続く今年も需給は逼迫(ひっぱく)していない。昨年夏ごろまで1バレル=100ドル程度と高値で推移していた原油価格も50ドルを下回る水準にまで下落し、電力各社の収支は大幅に改善した。多くの国民の反対を振り切り再稼働を急ぐ切迫した事情は見あたらない。政府が再稼働の可否判断の根拠とする新規制基準は、厳格化されたとはいえ最低限の安全確保策を求めているにすぎず、事故のリスクが消えたわけではない。

<原発再稼働の受益者について>
*2-1:http://digital.asahi.com/articles/DA3S11911218.html
(朝日新聞 2015年8月12日) 九電、赤字脱却図る 再値上げ見送りへ 川内再稼働
 九州電力川内原発1号機が再稼働した。九電は再稼働を業績回復の「切り札」と期待する。これまでは、原発停止でコストが高い火力発電の割合が増え、4年連続の赤字。再稼働が順調に進んで黒字が視野に入れば、九電は電気料金の再値上げは見送る方向だ。九電幹部は11日夜、「これまで崖っぷちだったが、新たなスタートラインに立てた」と再稼働による収支改善に期待を寄せた。他の電力会社からはねぎらいの連絡があったという。2011年の東日本大震災まで、九電の発電量の4割は原発が占めた。比較的コストが安いとされる原発を推進したためだが、震災後状況は一変した。11年12月までに管内の全原発6基が停止。代わりに火力発電を多く稼働し、燃料費がふくらんだ。11~14年度の経常損失の累計は7千億円超。10年度に1・1兆円あった純資産は、14年度は半分以下の約4500億円に減った。13年春に電気料金の抜本値上げに踏み切ったが、川内、玄海の各原発の早期稼働を前提にしていた。しかし再稼働が遅れ、コスト増を値上げでカバーできずに赤字が続いた。九電は川内原発の再稼働が今夏から遅れれば、電気料金の再値上げが必要とみていた。しかし、川内1号機が再稼働し、2号機も10月中旬の再稼働が視野に入りつつある。九電によると、川内1、2号機が動けば、月に計150億円の収支改善効果があるという。再稼働が順調に進めば、今後の赤字縮小は確実視される。「再稼働したのに値上げ、というのは理解されない」(幹部)として、再値上げは見送られる公算が大きい。経営改善のための再稼働を強調する九電だが、「原発ゼロ」でも値上げやコスト削減で他電力は黒字化が進む。14年度決算では、10電力のうち九電と関西電力、北海道電力を除く7電力が経常黒字を確保した。九電も、今年の4~6月期決算は211億円の経常黒字だった。4~6月期としては5年ぶりの黒字だ。原油価格の下落で燃料コストが下がったことが大きい。
■収益改善、他社も期待
 再稼働を収支改善につなげたいという思いは他の電力も同じだ。震災後の赤字続きで失われた「体力」を取り戻す狙いがある。東京電力は、再稼働に向けた審査が進む柏崎刈羽原発6、7号機(新潟県)が両方動くと、利益が月に160億~280億円アップすると見込んでいる。再稼働すれば1年間で利益を数千億円上積みできる計算だ。足元では黒字を確保しているものの、福島第一原発事故の賠償や廃炉などに巨額の費用がかかる。国の支援を受けながら経営を続けている状況で、こうした事故対応の支払いを、原発再稼働によって埋め合わせたいという本音もある。九電と並んで原発への依存度が高かった関西電力。高浜原発3、4号機(福井県)と大飯原発3、4号機(同)が再稼働すると、月に計約300億円の収支改善効果があるという。電気事業連合会の八木誠会長(関電社長)は11日に出した談話で、川内原発の再稼働は「大きな節目の一つ」とし、他の原発も「一日も早い再稼働を目指す」との考えを示した。

*2-2:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/218225 (佐賀新聞 2015年08月12日) 佐賀県内経済界「現実的選択」と歓迎 地元は脱原発依存模索 川内原発再稼働
 原発停止に伴う電気料金の値上げに苦しむ佐賀県内の経済界からは「大きな一歩」と再稼働に歓迎の声が上がった。玄海3、4号機の再稼働にも期待を寄せる一方、立地地域の商工会トップは原発の増設は「非現実的」として、原発だけに頼らない地域経済を模索する必要性を強調した。「やっとこぎ着けることができた」。2年前から早期再稼働を県に要請してきた県商工会議所連合会の井田出海会長は安堵(あんど)の表情を浮かべた。反対世論は根強いが、「万が一にも備えた基準をクリアしたと考えている。感情論ではなく、現実的な選択が日本の経済を支える」と強調した。再稼働による電気料金の値下げ効果について、「大いに期待したいが、川内だけでは不十分」と玄海原発の早期再稼働に期待した。一方、玄海1号機は廃炉が決まり、九電も巨額の累積赤字を抱える。玄海町や隣接地域の事業者でつくる唐津上場商工会の古賀和裕会長は「原発が地元経済を支えてきた側面はある」と再稼働に理解を示しながらも、「今後は原発作業員や国の交付金が減り、九電も経費抑制に動く。停止前の状況には戻らない」と原発依存からの脱却を訴えた。

<原発事故の責任>
*3-1:http://digital.asahi.com/articles/DA3S11911308.html (朝日新聞 2015年8月12日) 業界の無責任体質、指摘し続ける 福島原発事故で避難の原電元幹部 川内再稼働
 11日に再稼働した九州電力川内原発の前には、全国から反対する市民が集まった。一方、電力大消費地の東京ではかつての脱原発のうねりは消えつつある。事故の記憶は、もう遠のいたのか。福島で避難を続けるかつての原発推進者は、なし崩しでの原発回帰に危機感を募らせる。「事故の想定も避難計画も不十分。こんな状態でよくも再稼働できるものだ」。日本原子力発電元理事の北村俊郎さん(70)は、ため息をついた。今回の再稼働は、東京電力が15・7メートルの津波を試算しながら福島第一原発の対策を怠った態度と重なる。「政権も根拠なく『世界一の規制基準』と説明している。安全神話にすがっている証拠だ」。国内で初めて原発を動かした原電で人事部長や社長室長を歴任。退職後は業界団体の日本原子力産業協会の参事を務めた。原子力業界の中枢に40年。その体質も問題点も知り尽くす。推進してきたその原発が起こした大事故で、家を追われた15万人の1人になった。15年前、福島県富岡町をついのすみかに選んだ。温暖で電源三法交付金で行政サービスが充実しているのが魅力だった。震災翌日に避難した。車に積み込んだのは位牌(いはい)と数枚の衣類。「どのくらい避難するの」と妻に問われ「せいぜい2、3日だよ」と答えた。県内の避難所を転々とし、現在は須賀川市の借り上げ住宅に暮らす。帰還困難区域にある自宅に戻れるのか。先月末、一時帰宅すると、雑草だらけの庭の所々に、イノシシが掘り返した穴が開いていた。富岡町にある福島第二原発は、県議会や地元市町村が廃炉を求めているが、東電は再稼働の可能性を否定しない。世論調査で反対が多数でも、政権は再稼働を推し進める。「安保法案の進め方と同じ。国民を甘く見ている」。一方、かつての推進者として、自責の念が消えることはない。事故前、住民説明会で重大事故の可能性を聞かれ、「1万年に1回」と答えていた。「もし明日起きたら」。そう返されると、「あくまで確率論。大丈夫」とごまかした。事故後、業界誌などに投稿を続けている。安全を危うくする下請け・孫請けの発注構造を「無責任体質が変わっていない」と指摘。「原発は経済的にも割に合わない」と切り込む。原産協会は震災翌年に辞めた。「批判を受け付けない業界の閉鎖性が、福島の事故につながった。内部にいた者として、問題を指摘し続ける。そうすることで私は責任を取るしかない」。事故からわずか4年余りで国民の関心が薄れていることに焦燥感を抱く。政権も復興や事故の収束より東京五輪に重点を移しているように映る。安倍首相は招致の演説で「状況は制御できている」と言い切り、福島を方便にした。「浜は祭りの/ようだけど/海のなかでは/何万の/鰮(いわし)のとむらい/するだろう」。金子みすゞの詩が、東京と福島の対比の風景として頭から離れない。
■「命を軽視」「福島を忘れるな」 川内原発前で抗議
 「九電は命を軽んじている」「福島を忘れるな」。川内原発の正門前には、11日、約200人が集まった。再稼働した午前10時半、抗議の声はひときわ大きくなった。周辺では200人以上の警察官や警備員が警戒。緊張感に包まれた。鹿児島県姶良(あいら)市の公務員女性(48)は高校生と中学生の娘と一緒に参加した。「放射能が漏れれば命が脅かされる。私たちの声が無視されるなんて不合理だ」。埼玉県富士見市の大学生梶原康生さん(20)は、原発事故があった福島、米軍基地問題で揺れる沖縄を訪ね歩き、住民の声を聞いてきた。初めて川内原発を訪れ、「基地問題も原発も根っこは同じ。国家権力の横暴を感じる」。海外メディアも注目した。台湾のテレビ局記者、胡慕情さん(32)は「欧米では再生可能エネルギーへの転換が進んでいるのに、日本はその逆を行こうとしている」と話した。
■立地自治体「振興のため必要」 大都市デモはかつての熱気欠く
 原発の足元からは、早くも歓迎ムードが漂う。川内原発の地元、鹿児島県薩摩川内市内で宿泊施設を経営する40代の男性は「見学客も全国から来る。期待します」。同市の岩切秀雄市長は「安全であれば原発は地域振興のために必要だと思う」と語った。全国各地の原発立地自治体でも、再稼働に弾みがつくとの期待の声が続いた。関西電力高浜原発がある福井県高浜町の野瀬豊町長は「原発の一つが現実に動いたことを評価したい」、Jパワー大間原発の建設が進む青森県大間町の金沢満春町長も「うれしく思います」とコメントした。一方、脱原発を目指す市民らは、電力消費地の関心が薄れていると危機感を抱く。国会の周辺では11日、反対デモがあったが、参加者は午前中に数十人、夜も数百人。沿道が埋め尽くされた3年前の熱気はない。3カ月ぶりに参加した東京都板橋区の主婦(62)は「最近は安保関連法案の反対運動が忙しく、原発まで手が回らない」。同足立区の星野芳久さん(65)は「のど元過ぎれば熱さ忘れる、という無責任さがあるのかも」と話す。2012年に都内で原発の是非を問う住民投票実施の署名集めをしたジャーナリストの今井一さん(61)は「巨額の交付金で原発を地方に押しつけ、大都市が電力を消費する構図が変わらない限り、国民の多くは問題を我がこととして考えられない」と指摘する。当時は約32万人の署名を集めたが、「今やったら5万人くらいでは」と今井さん。ただ、再稼働反対が多数である状況は以前から変わらない。「その意思を政策に映す回路さえ作れば、脱原発は実現できる」

*3-2:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20150812&ng=DGKKZO90440820S5A810C1MM8000 (日経新聞 2015.8.12) 国は責任とる覚悟示せ
 福島第1原子力発電所の事故から川内原発の再稼働まで約4年半。何が変わったのか。原子力はかつてエネルギー安全保障や安価な電力供給、温暖化対策のどの面でも他の電源に比べ優位だと考えられていた。2010年のエネルギー基本計画が電力の半分以上を原子力で賄うとしたのはその表れだ。福島原発の事故で原子力は「特等席」から滑り落ちた。7月に政府が決めたエネルギー長期需給見通しは30年時点の原子力比率を20~22%と見込んだ。再生可能エネルギーや火力と並び、電源の一選択肢にとどまる。原発は安全規制の厳格化でいつ、幾つが稼働するのか見通せなくなった。関西電力などが古い原発5基の廃止を決めたが、新増設に関しては政府は「脱原発」を求める世論を前に、議論すら封じている。自由化される電力市場で、原発の初期投資の巨大さは大きな経営リスクとなる。原子力が切り札の時代は終わり、多様な電源の組み合わせで日本のエネルギー戦略を考える時代になった。大きな転換といえる。ただ原発への依存度の低下とは逆に、原発への政府の関与は高まる。重大事故時の賠償や使用済み核燃料の処分などは民間企業や市場だけに委ねられないことがはっきりしてきた。原子力は「国策民営」といわれてきたが、国策の度合いが強まる。核物質を扱う点で再生エネや火力と本質的な違いがあるからだ。そこに原子力特有のしがらみがあり、わかりにくさがある。国策強化を福島原発事故以前への回帰の兆しだとみる人も多いだろう。再稼働の節目にあたり、政府は原子力の必要性とエネルギー政策の転換を改めて国民に説明すると同時に、原子力利用に伴う最終責任を国が引き受けることを明確にすべきだろう。放射性廃棄物の処分など山積する課題解決への道筋を早期に示す必要もある。そこを欠いては再稼働しても原子力は長続きしない。

<過酷事故時の汚染範囲と汚染期間>
*4-1:http://digital.asahi.com/articles/DA3S11911328.html (朝日新聞 2015年8月12日) リスク抱え原発回帰 川内再稼働、新基準で初 避難計画、実効性課題
 九州電力川内(せんだい)原発1号機(鹿児島県薩摩川内市)が11日午前、再稼働した。東日本大震災後にできた新規制基準を満たす初の再稼働となり、約2年間の「原発ゼロ」は終わった。安倍政権はこの審査手続きを「ひな型」に原発の再稼働を進める方針だ。避難計画の実効性などに課題を残したまま「原発回帰」が本格化する。
■1号機、「臨界」に
 東京電力福島第一原発事故を受け、政府は独立性がより高い原子力規制委員会を設け、地震や津波対策を強化した新規制基準を2013年7月に施行した。新基準は「安全神話」の反省から、事故は起きることを前提にしている。再稼働に向けた審査でも、規制委は一定規模の事故が起こりうると想定して新基準に適合すると判断した。「絶対の安全」はなく、事故のリスクをゼロにすることはできない。再稼働を進めるということは、事故が起こりうるリスクを抱えた社会に戻ることを意味する。川内1号機の再稼働は約4年ぶり。午前10時半に原子炉内で核分裂を抑えていた制御棒32本を引き抜く作業が始まり、原子炉が起動。午後11時に核分裂反応が連続的に起こる「臨界」状態となった。九電は14日から発送電を始め、9月上旬にも営業運転に移る。2号機は10月中旬に再稼働させる方針だ。瓜生(うりう)道明社長は「安全確保を最優先に今後の工程を進める」とコメントした。菅義偉官房長官は11日の記者会見で「原子力規制委員会によって、世界でも最も厳しいレベルの新規制基準に適合すると認められた場合は、原発の再稼働を進める」と、安倍政権の方針を改めて示した。これまで規制委に審査を申請したのは、川内を含めて15原発の計25基。関西電力の高浜原発3、4号機(福井県)と四国電力の伊方原発3号機(愛媛県)が主な審査を終えている。高浜原発は福井地裁が運転を認めない仮処分を出しているが、川内の審査や検査手続きは他の原発のモデルとなり、今後の再稼働手続きは加速する可能性がある。しかし周辺地域では、高齢者などが多い医療施設や福祉施設で住民の避難計画が十分に整っていない。防災対策などに対する原発周辺の住民の不安は解消されていない。

*4-2:http://mainichi.jp/select/news/20150812k0000e040221000c.html
(毎日新聞 2015年8月12日) 緊急時放射能予測:政府「不確実」防災基本計画から外す
 原発事故の際に放射性物質の放出量や気象条件、地形などのデータを基に放射性物質の拡散範囲や量を予測する「緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム」(SPEEDI)について、政府は7月、国や自治体の災害対応の基礎となる防災基本計画で住民の避難に活用しないことを決めた。「予測が不確実なため」としているが、住民避難で予測を参考にするとしてきた自治体や住民は反発している。SPEEDIは原発事故時の避難に活用すると位置づけられていたが、東京電力福島第1原発事故では予測の公表が遅れ、住民に無用の被ばくを強いたとして国が批判された。原子力規制委員会は2012年に新たな原子力防災指針を策定。原発から5キロ圏は即避難とする一方、5〜30キロ圏は屋内退避を基本とし、空間放射線量の実測値が毎時500マイクロシーベルトに達したら避難すると定めた。この時点で指針はSPEEDIを「参考にする」とし、同時期、防災基本計画も予測結果を「公開する」とした。だが、今年4月に指針からSPEEDIの記述が消え、7月には防災基本計画からも除外された。原子力規制庁幹部は「放射性物質の流れた方向が予測と異なることもあり不確実だ。実測値の基準では被ばくを完全には防げないが、世界でもスタンダードな方法だ」と説明する。国の「SPEEDI外し」に、新潟県の泉田裕彦知事は7月の中央防災会議で「被ばくが前提の避難基準では住民の理解は得られない」と訴えた。また、11日に再稼働した九州電力川内(せんだい)原発の地元、鹿児島県薩摩川内市などで開かれてきた避難計画の説明会でも、自治体はSPEEDI活用の考えを伝えていた。市内で子供3人を育てる大中美子さん(48)は「被ばくありきの避難計画では引っ越さないと子供は守れない」と国の姿勢に憤る。
◇SPEEDI(緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム)
 事故を起こした原発から送られてくる放射性物質の放出量や気象条件、地形などのデータを基に、放射性物質の拡散範囲や量、大気中の濃度などを予測するシステム。現在は原子力規制委員会が運用し、予測結果は原発の立地する周辺自治体などに送信される。1979年の米スリーマイル島原発事故をきっかけに120億円以上かけて開発され、東京電力福島第1原発事故当時は文部科学省所管の原子力安全技術センターが運用していた。

*4-3:http://digital.asahi.com/articles/DA3S11914937.html (朝日新聞 2015年8月14日) (再稼働を問う 教訓どこへ:下)長期避難、今も想定外 福島の現実反映せず
 7日昼過ぎ、客のいないプレハブ造りの仮設商店にはテレビの音だけが響く。福島県田村市の都路地区で、地元商店主らが経営する「ど~も古道店」。東京電力福島第一原発の事故後、避難先から自宅に戻った人たちのためにつくられ、食料品や雑貨を扱う。開業から1年半近くですでに経営が行き詰まっている。原発事故の復興は国の責任で行う、と進められた目玉施策の一つだった。
■進まぬ住民帰還
 都路地区は昨年4月、原発事故に伴う避難指示を国が初めて解除した。人口約2600人の地区に戻ってきたのは5~6割。今年1月、近くに大手コンビニエンスストアができ、売り上げは6割減った。ど~もの売り上げを支えた除染作業員らを奪われ、地元客の少なさに直面している。共同経営者で古道店長の吉田光一さん(56)は中学2年の長男らと車で約50分離れた仮設住宅に避難している。店が順調なら帰還するつもりだったが「当てが外れた」と気落ちする。昨年10月、一部を除き避難指示が解除された川内村も住民が戻らない。人口約2700人のうち、帰還したのは6割。野菜工場などを誘致したが、働き手が足りない。井出茂・村商工会長(60)は「国の復興策に役場は踊らされている」と言う。7月、都路地区と川内村に、追い打ちをかけるような出来事が起きた。環境省は、汚染稲わらの焼却施設を2地域の境界に造ると決めた。都路の行政区長連合会長の吉田修一さん(60)は「避難指示が解除されても、なぜ苦労し続けなければならないのか」と嘆く。「地域を築くには何十年もかかるが、失うのは一瞬だ」。田村市の冨塚宥けい(ゆうけい)市長は2011年、朝日新聞のアンケートで答えた。アンケートでは、原発周辺自治体の首長15人に地域を維持するために住民がふるさとに戻らなければならない期限を聞いた。10人が「1年以内」と回答した。事故から4年半近く。福島では今も11万人が避難を続ける。避難者数のピークは、事故のあった11年ではなく12年(16万4千人)。避難指示区域の外でも、放射線量が下がらずに不安を募らせた母親らが、新年度にあわせて子どもを連れ自主的に避難したからだ。九州電力川内原発の再稼働を翌日に控えた10日、日本学術会議による復興シンポジウムが福島市であった。事故で悲観し自殺した人など震災関連死の認定に携わってきた今野順夫(としお)・福島大元学長は講演で言った。「原因究明もなく福島をないがしろにしたままの再稼働は、被災者の心を逆なでするものだ」
■計画「体裁だけ」
 原発が重大事故を起こせば一時避難では済まない。福島の教訓だ。しかし、国と自治体は何万人もが何年間も避難先で生活する事態を、今なお想定していない。内閣府によると、全国の原発の30キロ圏にある135市町村のうち、避難計画を作り終えたのは65%の88市町村。100万人近い人口を抱える中部電力浜岡原発(静岡県)、日本原子力発電東海第二原発(茨城県)では、策定済みの市町村はゼロ。避難先を確保するめどが立たないからだ。南海トラフ巨大地震が想定される静岡県は、県外避難先を12都県に打診中だが、協議は難航している。打診された群馬県の担当者は「数万人がいつまでいるか分からないのに、避難先を決められない」という。静岡県が想定する避難期間は約1カ月。「更に延びるようなら国と協議する」(原子力安全対策課)。それ以上のことは未定だ。茨城県でも、避難対象の96万人のうち52万人が向かう県外の避難場所は、決まっていない。東海第二原発がある東海村の村上達也前村長は「真面目に検討すればするほど、避難計画など作れるはずがないとわかる。体裁を整えるだけの計画は不誠実だ」と語る。そもそも国の防災基本計画は、体育館などでの一時避難が長びいた場合の記載しかない。策定済みの市町村の避難計画も、多くは期間の記述はなく、あっても1~2週間がほとんどだ。11日に再稼働した川内原発がある鹿児島県は、国が30キロ圏の病院などに避難計画を求めているのは現実的でないとして、対象を10キロ圏に絞った。長期避難については「必要な情報や支援・サービスを提供する」などとしか定めていない。福島第一原発事故の避難行動を研究する関谷直也・東大特任准教授(災害情報学)は、各地の計画に危惧を抱く。「もう事故は起こらない。そう思っているのではないか」

*4-4:http://qbiz.jp/article/68806/1/
(西日本新聞 2015年8月13) 【原発が動いた日〜川内1号機再稼動】(中)線引き
●“地元”で差渦巻く不満
 九州電力川内原発(鹿児島県薩摩川内市)から南へ5キロ余り。周辺自治体として最も近い、同県いちき串木野市は11日の再稼働をどう受け止めたのか。市役所で取材に応じた田畑誠一市長(75)は「エネルギー政策は国策。国が再稼働の地元同意の範囲を決めるべきだ」と語気を強めた。政府が再稼働を認める条件「地元同意」は、電力会社と立地自治体が結ぶ安全協定に基づく。法的ルールではなく、“地元”の線引きがポイントとなる。川内原発の場合、伊藤祐一郎知事(67)が主導権を握った。総務省出身で「行政のプロ」を自認する手腕を発揮し、九電が同意を得るべき自治体を県と薩摩川内市に限定した。蚊帳の外となった、いちき串木野市は過酷事故が起きた場合に最優先で避難すべき「5キロ圏」からわずかに外れるが、風向き次第で放射能被害を受ける。昨年11月、知事が再稼働に同意する直前、田畑市長は鹿児島県を訪れた宮沢洋一経済産業相を空港まで追いかけ、国主導の同意形成を求めた。だが、国は「各地で決めること」と突っぱねている。
   ◇    ◇
 原子力防災の枠組みから外れた自治体もある。川内原発から北へ38キロの熊本県水俣市。「ホームページをご活用ください」。昨年11月、原子力規制委員会からのつれない回答が、市担当者にメールで届いた。同市は30キロ圏の緊急防護措置区域(UPZ)の外だが、事故時に南隣の鹿児島県出水市から6600人の避難者を受け入れる計画に組み込まれた。そこで昨年9月、物資確保への支援などに関する要望書を近隣自治体と共同で規制委に提出。届いた回答はA4サイズの紙1枚だけ。具体的な説明がまったく書かれていなかった。西田弘志市長(56)は憤る。「国は30キロ圏の外には関心がないようだ。大事故になれば、われわれも被害者となるのに…」
   ◇    ◇
 目に見えない放射能への備えに、歴然と横たわる行政の線引き。関西電力高浜原発(福井県)の5キロ圏に入る京都府は3月、川内原発の再稼働に際し、立地自治体の意見だけが反映された理由を明確にするよう政府に要望した。「周辺の意見も聞いた上で政府が判断すべきだ」との不満の表れで、九電玄海原発から12キロの佐賀県伊万里市も立地自治体並みの安全協定の締結を求め続けている。法的ルールなき地元同意と、30キロ圏外に目を向けない原子力防災−。全国的には“地元”の定義拡大を求める声は強まっている。原発の再稼働にこぎつけながら、多くの関係者に不満と不安を残した鹿児島の「川内方式」は全国モデルになりそうにない。

*4-5:http://digital.asahi.com/articles/DA3S11913190.html (西日本新聞 2015年8月13日) (再稼働を問う 教訓どこへ:上)高線量下、突入誰が 過酷事故訓練、飛ぶ怒号
 事故を起こした原発を止める高い放射線量下の作業をだれが担うのか。福島第一原発事故で日本が直面した難題が、再稼働によって、現実の問題として突きつけられている。「行きたくない。家族がいるんだ。電力の社員が先に行くべきだ」。今年1月、東京都三鷹市にある会議室で怒号が飛び交った。原発の安全対策のため電力会社などがつくった民間団体、原子力安全推進協会が今年から採り入れた過酷事故対策の訓練だ。原発でテロが起き、全電源を喪失。高い放射線量の現場にけが人が取り残されたという想定。救出を命じられた孫請けの若手社員が反発する。どう判断し、命令し、行動するか、参加者が自ら考える。全国の原発から集まった所長の補佐クラス20人ほどが、電力会社、下請け、孫請けの社員役になる。部屋は真っ暗。煙をたいて視界を悪くするなど事故時の混乱と緊張を再現した。一定時間を超えると線量計のアラームが鳴る。どう振る舞うかのシナリオはない。時間が迫る中、ある参加者は思わず「行ってくれ」と部下役に土下座した。
■「福島の検証を」
 福島の事故では、高い放射線量に阻まれて十分に作業できない場面が多かった。国は作業員の被曝(ひばく)線量限度を100ミリシーベルトから250ミリに特例で引き上げたが、事故の進展を食い止められなかった。反省を踏まえ、原子力規制委員会は今月5日、緊急時の被曝限度を250ミリとする法令改正を決めた。事前にルール化しておけば必要な作業が迅速にできる、との考えからだ。原発は、暴走すると手に負えなくなる核物質という脅威を内包した発電技術だ。福島第一の故吉田昌郎所長が「決死隊」と呼んだ高線量下への突入作業は、1986年4月のチェルノブイリ原発事故で現実のものになっていた。炉心の爆発や一帯での火災が起き、消火活動などで消防士ら28人が急性放射線障害などで死亡。軍が出動し、鎮火後も続いた放射性物質の大量放出を止めるのに10日かかった。極限状態の作業がなければ、世界の汚染はさらに広がっていた。日本はこの問題を深く議論してこなかった。「日本の原発では大事故は起きないから」が理由だった。福島の事故から4年余り。ようやく被曝限度引き上げという一つの答えを出した。だが、福島第一の作業員の一人は疑問を持つ。「事故のときは100ミリを超えてしまいそうだから近づけなかった。何もできなかった、ということ。250ミリで本当に事故を止められるのか。だれも福島の検証をしていない」
■限度どう判断
 7月23日の放射線審議会でも委員から質問が出た。「仮に250ミリでは事故が収束できそうもない場合はどういう判断になるのか。諦めて退避するのか」。規制委は、国際機関が勧告する「正当化原則」を使う考えだ。作業員の健康リスクと作業で得られるメリットを比べ、人命救助や広大な国土の汚染の阻止など必要性が明らかに上回るなら、被曝限度を超えてやってもらう、ということだ。田中俊一委員長は会見でこう話した。「事業者としての一つの責任とか、そういう問題になってくる」。原子力災害対策特別措置法は、事故の拡大防止は電力会社の責務と定める。だが、民間企業にどこまでやれるのか。福島の事故では自衛隊や警察、消防も現場に入り、米軍は専門部隊を日本の基地に派遣した。今も福島の検証を独自に続ける新潟県。泉田裕彦知事は昨年11月、高線量下での作業に関する国への要請の中で、外国の事例も参考に、自衛隊の任務に事故対応を追加するなど国が指揮する部隊の設置を求めた。一方、福島第一に放水した部隊を現地で指揮した元東京消防庁警防部長の佐藤康雄さんは「福島の現場に入ったのは特別だった。本来、事故収束は事業者の責任。電力業界が事故時に助け合う組織をつくるべきだ」。
■「覚悟はあるか」
 過酷事故対策の訓練に取り組む原子力安全推進協会は、原発の所長を集め、こんなテーマで討論した。「部下の命を左右する命令を出す覚悟はあるか」。協会の久郷(くごう)明秀理事は言う。「高線量下の作業はある意味、弾が飛んでくる戦争と一緒。自分の犠牲でみんなを守ろうという人も、そこまではできない人もいる。家族や上官のことを思う中で個人で決断せざるを得ない」。九州電力川内原発の再稼働で、日本は再び事故が起きうるリスクを抱えた。次に起きたとき、最後に事故を止めるのはだれか。答えはまだはっきりしない。

*4-6:http://digital.asahi.com/articles/DA3S11911275.html (朝日新聞 2015年8月12日) 安全の確保、どこまで 火山対策に専門家異論・複数の設備未完成 川内原発再稼働
 新規制基準に適合するとして再稼働した九州電力川内原発(鹿児島県)。過酷事故や自然災害への対策は厳しくなったが、火山対策では専門家から異論が出た。設置が義務づけられたものの、猶予期間中でまだできていない設備もある。川内原発の160キロ圏には、活発な活動を繰り返す桜島や阿蘇など39の火山がある。地質調査から、過去に巨大噴火の火砕流が原発近くまで届いていたことも分かった。火砕流は、原発の設計で対応することができない災害にあたる。九電は、稼働期間中に巨大噴火が起こる可能性は十分低く、巨大噴火につながりそうな変化を観測すれば運転を止めて核燃料を運び出すとしている。しかし、火山学者からは「前兆が捉えられるとは限らない」と異論が相次いだ。核燃料の搬出先も未定だ。地震対策で九電は、揺れの想定を引き上げ、規制委も重要施設の直下に活断層がないと認めた。だが、福井地裁は関西電力高浜原発3、4号機の運転を認めない仮処分で、新基準の厳しさそのものを疑問視した。設置が猶予され、未完成のまま再稼働した設備は複数ある。その一つが「フィルター付きベント」だ。東京電力福島第一原発事故では、格納容器が圧力で壊れるのを防ぐため、内部の気体を放出するベントが実施された。フィルターを通すことで、排気に含まれる放射性物質を減らす。福島第一原発と同じ沸騰水型炉では再稼働に必須だが、川内原発などの加圧水型炉は、格納容器が大きいとして猶予されている。九電は来年度に設置する予定だ。事故対策の拠点となる緊急時対策所は当面、別施設で代替する。航空機テロなどへの対策として、電源やポンプを別に備えておく特定重大事故等対処施設も2018年まで猶予されている。


PS(2015/8/15追加): *5-1のように、経産省が原発地元の自治体に渡す交付金も、国民が税金で支払っている原発のコストだ。しかし、原発地元の自治体は、このような後ろ向きの交付金よりも、次のステップに進んで将来は交付金なしでもやっていける準備をするための脱原発促進交付金による支援と各省庁の知恵に依るサポートの方が有り難い。 
 また、*5-2のように、「原発ゼロ」でも電力の需給は安定していたため、原発を再稼働させる意味はなかった。電力各社が老朽化した火力発電所を使用して供給力を高めていたのなら、それを地熱発電や分散型の太陽光発電などに変更すればよく、その方が地球と日本の両方のためになるのだ。

*5-1:http://www.nikkei.com/article/DGXLASFS14H36_U5A810C1EE8000/
(日経新聞 2015/8/15) 原発再稼働、交付金手厚く 送電開始の川内が第1号
 経済産業省は原発が再稼働した自治体への交付金を手厚くする。九州電力川内原発1号機(鹿児島県)が14日に発送電を開始した薩摩川内市などを第1号とし、稼働実績に基づく交付金に加え、再稼働に伴う新たな交付金を上乗せする。一方、原発停止が続く立地自治体は今より減らす方向で検討している。川内1号機は14日から家庭や企業に電気を送り始めた。九電は今月下旬にフル出力とし、9月上旬から本格的な営業運転を始める方針だ。九電は今夏、中国電力などから電気の融通を受けて供給余力を示す予備率を3.0%確保する計画だった。再稼働で5.1%に改善し、他社から融通を受ける必要も無くなる。川内1号機の再稼働に伴い、立地地域に配る交付金には差をつける。政府は「電源立地地域対策交付金」を稼働実績に応じて配っているが、東京電力福島第1原発事故以降は、原発の停止中も稼働率を一律81%とみなして支給していた。16年度以降は算定方法を見直し、再稼働した自治体は稼働実績に応じて配り、原発が稼働しない場合、稼働率の想定を70%前後に減らす方向で検討している。経産省は15年度予算で、原発を再稼働したときなどに立地自治体に配る15億円の交付金を新設した。再稼働後の支援を手厚くすることで地元自治体の理解を得やすくする狙いがある。川内原発がある薩摩川内市の地域対策交付金は15年度で14億6653万円。16年度は8月に再稼働した川内1号機の稼働実績を考慮して決めるが、新たな交付金を加えれば、当面は交付金の総額が増えることになる。一方、原発が稼働しない自治体は稼働率の想定が減る影響で、交付金が減ることになる。交付金への依存が強い自治体からは懸念の声が出ている。

*5-2:http://qbiz.jp/article/68916/1/
(西日本新聞 2015年8月15日) 【川内原発再稼働】「原発ゼロ」でも需給安定、再稼働の意味は
 九州電力川内原発1号機(鹿児島県薩摩川内市、出力89万キロワット)で14日に発電と送電が始まったことで、西日本と中日本の電力需給状況は大きく改善に向かう。ただ「原発ゼロ」だったこれまでも全国的に需給は逼迫(ひっぱく)していない。供給余力がさらに増すことで、原発再稼働への疑問の声が高まりそうだ。九電や関西電力、中部電力など西日本と中日本の電力6社は、周波数が同じ60ヘルツ。今夏は九電と関電が、中部電や中国電力などから電力の融通を受けており、6社間でやりくりして電力の安定供給に努めている。西日本、中日本全体でみると、電力需給の余力を示す「予備率」の想定は、川内1号機が稼働する前で4・5%。安定供給に最低限必要とされる3%を上回っていたが、川内1号機がフル出力になれば、5・5%程度まで高まる。川内1号機の出力が高まるにつれて、九電への融通は不要になる。中部電や中国電などは、予備率が3%と低い関電への融通を手厚くすることができ、電力不足の危機は遠ざかる。そもそも「原発ゼロ」でも需給は安定していた。6社とも8月3〜7日にかけて今夏の最大電力需要を記録しているが、省エネへの取り組みや太陽光発電が普及したこともあり、最大供給力に対して10〜20%程度の余力がある状況だ。周波数が50ヘルツの東日本(東京、東北、北海道電力管内)でも、全体の予備率は9・7%。原発がなくても十分な余力を確保しているといえる。ただ電力各社は、老朽化した火力発電所の補修を先送りするなどして供給力を高めており「需給は予断を許さない状況で、安定供給へ原発の再稼働が必要なことに変わりはない」(中国電力)などと主張している。


PS(2015年8月16日追加): 桜島が全島避難になっても、川内原発に火砕流が達する可能性は小さいと思うが、桜島は、*6-1のように、怒りを溜めて爆発することで警告を発しているように見える。また、*6-2のように、原発再稼働への反対は全体で55%だが、女性の方が反対割合が高いのは、①自分も健康被害を男性より早く受けること ②食品の安全性を考えること ③子どもはじめ家族の健康を考えていること 等が理由だ。そのため、ここは、男性よりも反対割合の高い女性の意見を重視すべきだ。

    
2015.5.15東京新聞           2015.8.16西日本新聞

*6-1:http://www.saga-s.co.jp/news/national/10201/219474
(佐賀新聞 2015年8月16日) 桜島の噴火切迫、厳戒続く、鹿児島市が対応協議
 鹿児島市では16日、桜島の噴火警戒レベルが4(避難準備)に引き上げられたのを受け、厳戒態勢が続いた。市は午前、警戒本部会議を開き、火山活動や避難所の現状、今後の対応などを協議した。16日は午前8時までに有感地震が発生していないことや、「爆発的噴火が切迫している状況は変わらない」との京都大防災研究所の報告が伝えられた。市は島の有村町の全域、古里町と黒神町の一部の計51世帯77人に出した避難勧告を維持。山腹の噴火や大きな火砕流の恐れがある場合、全島避難に切り替える方針だ。避難対象の住民は島内に開設された避難所で不安な一夜を過ごした。

*6-2:http://qbiz.jp/article/68949/1/
(西日本新聞 2015年8月16日) 原発再稼働、反対は55% 世論調査
 共同通信社の世論調査では、停止中の原発再稼働への反対が55.3%で、賛成の36.9%を上回った。反対は7月の前回調査に比べ1.4ポイントの微減。政府は、原子力規制委員会の新規制基準に基づく審査に合格した原発を再稼働させる方針だが、九州電力川内原発(鹿児島県)1号機の再稼働後も、依然として根強い慎重姿勢が浮き彫りになった。政党別では、自民党支持層の57.1%が賛成と答え、反対は35.4%だった。これに対し、民主党支持層では反対70.0%、賛成24.1%。与党の公明党支持層でも反対が54.8%で、賛成の41.4%を上回った。反対は維新の党支持層で59.2%、共産党支持層では91.2%に達した。男女別では、女性は反対が62.0%で、賛成は27.9%。男性は反対48.1%、賛成46.6%で意見が二分した。地域別に見ると、反対が最も多いのは四国の60.1%。賛成が反対より多かったのは近畿のみだった。川内原発がある九州は反対が52.2%で、賛成は39.9%だった。


PS(2015年8月17日追加):国民主権の民主主義社会では、国民の意志決定で政策が決まるため、メディアが正確な情報を流すことは必要不可欠であり、メディアの情報の流し方一つで政策も左右される。そのため、①国民がフクイチ事故後に散々被曝させられ ②政府が2030年時点の電源構成で原発をベースロード電源として原発比率20~22%と決め ③川内原発が再稼働した 後で真相を伝えても、(伝えないよりは良いが)遅すぎる。それではメディアの情報が信用できず、これが「メディアの自殺」と言われる理由だ。つまり、適時に真相を伝えることが、本来のメディアの使命であり社会的責任なのだ。
 また、現行憲法下で大本営発表をそのまま書くのは意気地がなさすぎ、外国の報道や放射能測定値を参考にしたり、いろいろな所に取材に行って線量を測ったり話を聞いたりすれば真相はわかる筈で、それが記者の実力と勇気であって言論の自由や表現の自由で守られる価値のある報道だ。私は取材に行けなくても自分が不利になっても、2011年7月25日、27日くらいから、このブログに原発事故に関して真実だと思うことを記載している。

*7:http://qbiz.jp/article/68782/1/
(西日本新聞 2015年8月17日) 原発再稼働、今度こそ「真相」を
 会見の合間を見計らって、記者たちは、航空機のチケットをパソコンで予約していた。2011年3月。東京で日銀を担当していた私は、東京電力福島第1原発事故の取材に加わった。霞ケ関の「原子力安全・保安院」(現在は原子力規制委員会)の会見は、昼夜を問わず、断続的に行われ、その度に、100人近い報道陣が集まった。記者たちの「予約」は、いわば保険のようなもの。東京から避難しなければならなくなったときに備え、「退路」を確保した。当時、ネット上では「福島原発はメルトダウン(炉心溶融)した」「放射性物質をまき散らしている」とさんざん書き込まれ、羽田空港は、自主避難の人たちであふれ返った。会見で質問は「メルトダウン」に集中した。保安院の審議官は「燃料棒の損傷の疑い」と繰り返すばかり。当時の枝野幸男官房長官も「メルトダウンはしていない」「直ちに健康への影響はない」と強調し、新聞やテレビはそのまま「発表」を垂れ流した。しかし、実際は、福島第1原発の1〜3号機すべてでメルトダウンが起きていた。最も早い1号機では地震から約5時間後、原子炉圧力容器が破損していたという。15年8月11日。東日本大震災からちょうど4年5カ月後、九州電力川内原発1号機(鹿児島県薩摩川内市)が再稼働した。震災後に作った新しい規制基準を満たす、初の再稼働だ。「安全神話」の反省から、新基準は事故が起きることを前提にした。菅義偉官房長官は11日の会見で「原子力規制委員会によって、世界でも最も厳しいレベルの新規制基準に適合すると認められた場合は、原発の再稼働を進める」と、原発回帰を鮮明にした。だが、安全に「絶対」はない。規制委の田中俊一委員長は「絶対安全とは申し上げない」と断言。再稼働後、私たちは、事故が起きるかも知れない危険性と隣り合わせとなる。福島第1原発事故では、報道機関は、原発政策を進めてきた国の「発表」を伝えてきた。それでも記者たちが、航空機のチケットを予約していたのは、事故の真相をつかめず、不安に襲われたためだ。私もその1人だった。今も、じくじたる思いがある。「震災前」に戻った日本のエネルギー政策。国や電力会社の「発表」は本当なのか―。今度こそ、真相を伝えていきたい。


PS(2015年8月26日追加): *8-1のように、佐賀県、玄海町、九電間で40年前に結ばれた協定では、原発地元は立地自治体のみとなっているが、過酷事故時には、*8-2のように、近隣住民に被害があるのみならず農林水産業の生産物も汚染されて輸出に影響が出る(実際には、韓国だけでなく多くの国が輸入禁止や制限を行っており、ここで韓国だけをWTOに提訴するのはおかしい)。さらに後で書くように、本当は日本国民が食べている食品の安全性も疑問であり、今では「日本産」は安全ブランドではなくなったのである。つまり、原発事故の被害を受けるのは多くの国民であるため、エネルギーへの原発使用には、それだけをテーマとした全国民の国民投票が必要だ。

*8-1:http://www.saga-s.co.jp/column/genkai_pluthermal/20201/222871
(佐賀新聞 2015年8月26日) 唐津市長、現協定で「原発の地元権利」遂行と強調
 唐津市の坂井俊之市長は25日の定例会見で、玄海原発(東松浦郡玄海町)の「地元」の定義について、「準立地自治体と言ってはいるが、われわれは地元という認識を持っている。九電と締結した安全協定で実質的な権利は得ており、その権利を遂行するだけ」と述べた。今後の再稼働や廃炉に対して現在の協定の枠組みで対応していくことをあらためて強調した。唐津市は福島第1原発事故後の2012年10月、九電と1対1で安全協定を結んでいる。坂井市長は「県と玄海町、九電の間で40年前に結ばれた協定に入ろうと努力したが、なかなか難しかった」と振り返った上で、九電と2年議論して作った協定に関し「事前了解という言葉はないが、九電から説明を受け、こちらから意見を述べるという実質的な権利は取っている」と語った。原発をめぐっては「立地」と「隣接地」の差は大きく、鹿児島県の川内原発再稼働の際は「地元同意」の対象は県と立地の薩摩川内市に限定された。市のほぼ全域が玄海原発の30キロ圏に入る伊万里市の塚部芳和市長は福島第1原発事故後、「立地自治体並みの安全協定」を主張し続けている。

*8-2:http://qbiz.jp/article/69276/1/
(西日本新聞 2015年8月21日) 政府、WTOに韓国提訴 原発事故で水産物輸入規制
 政府は20日、韓国が東京電力福島第1原発事故を理由に、日本からの水産物輸入を規制しているのは不当な差別だとして、世界貿易機関(WTO)に提訴した。福島第1原発事故を受けた輸入規制で政府が他国を提訴するのは初めて。2国間の協議で解決できなかったため、紛争を処理する小委員会(パネル)の設置を要請した。9月までに開かれるWTOの紛争解決機関の定例会合でパネルの設置が認められる見通し。政府は提訴後も、韓国側に規制を撤廃するよう働き掛けを続ける方針。菅義偉官房長官は20日の記者会見で「WTOの結論を待つことなく、規制を早く撤廃すべきだ」と指摘した。韓国は2011年3月の原発事故を受けて、青森、岩手、宮城、福島、茨城、栃木、群馬、千葉の8県のヤマメやスズキといった一部水産物の輸入を禁止した。13年9月には汚染水漏れを理由に、禁止対象を8県の全水産物に拡大するなど規制を強化した。日本政府はことし5月にWTO協定に基づき、2国間協議の開催を要請した。6月の協議では、日本が「科学的根拠がなく、WTO協定に違反している」として規制撤廃を求めたが、韓国政府が反論し、対立が続いていた。協議開催の要請から60日以内に決着しなければ、パネル設置を要請できる仕組みだ。


PS(2015年8月27日追加):写真のように、原発の温排水により瀬戸内海の海水温を上げて漁獲高を減少させ、本来は恵まれている海の価値を減じながら、政府・自治体が資源管理のみを強調しているのは適切でなく、もったいないことである。さらに、*9のように、原発で過酷事故が起きて陸路が使えない場合には、佐田岬半島の住民約5千人は対岸の大分県内18市町村に海路で避難する予定などとしているが、どのくらいの期間、陸海の汚染が続いて漁ができず、平常の生活に戻れないかの考察がない。

    
瀬戸内海の漁獲高推移  資源管理         漁          海中の様子
  
*9:http://qbiz.jp/article/69642/1/
(西日本新聞 2015年8月27日) 大分県に5千人避難も 伊方原発の事故時、国など対応策
 原子力規制委員会が新規制基準に適合していると判断した四国電力伊方原発3号機(愛媛県伊方町)の再稼働を控え、関係省庁と愛媛、山口、大分の3県でつくる伊方地域原子力防災協議会は26日、原発事故に備えた広域避難計画を含む緊急時対応をまとめた。原発から約30キロ圏内の住民約12万4千人の避難経路や受け入れ先、放射性物質の拡散状況を測定するモニタリング体制などを盛り込んだ。原子力災害対策指針に基づき、愛媛、山口両県の5市3町にまたがる約30キロ圏内を重点区域に指定。原発西側の佐田岬半島は5キロ圏内に準じた防護措置を取る「予防避難エリア」とした。原発で電源喪失など深刻な事態が発生した場合、5キロ圏内と佐田岬半島では要支援者を優先して車やバスで避難。5〜30キロ圏内の住民は屋内に退避する。複合災害で陸路が使えない場合、佐田岬半島の住民約5千人は対岸の大分県内18市町村に海路で避難する。ただ予防避難エリアに放射線防護施設が4カ所しかないなど課題も多い。内閣府は「訓練を通じて問題点を把握、対策を講じるのが重要」と継続した見直しを行う姿勢を示したが、再稼働前の訓練実施については明言しなかった。今後、原子力防災会議(議長・安倍晋三首相)を開き、了承を得る方針。


PS(2015年8月28日追加): *10-1で、「女子に三角関数教えて何になるのか」と伊藤鹿児島県知事が言ったのは教育における女性差別だし、「自分自身も使ったことがないから勉強不要」と言うのなら、そのような人だから論理的思考ができないのだろう。また、「サイン、コサイン、タンジェントを社会で使ったことがあるか女性に問うと、10分の9は使ったことがないと答えるから教えなくてよい」のであれば男性にも教えなくてよいことになる。つまり、女性にも数学者や理系の職業人は多いにもかかわらず、鹿児島県知事は、このように女性蔑視が甚だしく、こういう人が総務省出身で知事だから問題なのである。
 ちなみに、国は、*10-2のように、まさにこの日に「女性活躍推進法」を成立させたので、鹿児島県も率先して女性登用の推進に向けた行動計画の策定と公表を行うべきだ。

*10-1:http://mainichi.jp/select/news/20150828k0000e040234000c.html?fm=mnm (毎日新聞 2015年8月28日) 鹿児島知事:「女子に三角関数教えて何になるのか」
 鹿児島県の伊藤祐一郎知事は、県教育委員らが参加した会議で「高校教育で女子に(三角関数の)サイン、コサイン、タンジェントを教えて何になるのか」と発言したことが分かった。28日の定例記者会見で、発言について「自分自身も使ったことがないよねという意味。口が滑った」と述べ、訂正した。発言は、全国学力・学習状況調査の結果が25日に公表されたことを受け、27日の県総合教育会議で知事としての目標設定について問われた際にあった。伊藤知事は「サイン、コサイン、タンジェントを社会で使ったことがあるか女性に問うと、10分の9は使ったことがないと答える」とも述べた。

*10-2:http://mainichi.jp/select/news/20150828k0000e010182000c.html?fm=mnm (毎日新聞 2015年8月28日) 女性活躍推進法:成立 管理職の数値目標設定の公表など
 女性管理職の割合に数値目標の設定などを義務付ける「女性活躍推進法」は28日午前、参院本会議で自民、民主、公明各党などの賛成多数で可決され、成立した。従業員301人以上の企業と、雇用主としての国や自治体は、女性登用の推進に向けた「行動計画」の策定と公表を求められる。数値目標の水準は各企業などに委ね、罰則規定もないが、計画策定と公表の義務付けによって女性登用を進める効果を狙っている。行動計画策定は2016年4月1日に、その他は公布と同時に施行する。集中的に対応するよう施行から10年間の時限立法とした。安倍政権は「女性活躍」を成長戦略の中核の一つに掲げ、「20年までに指導的地位に女性が占める割合を30%にする」との目標を掲げている。人口減少が進む中、女性に活躍してもらい、労働力不足による社会の活力低下を防ぐ狙いもある。行動計画は、(1)採用者に占める女性の割合(2)勤続年数の男女差(3)労働時間の男女差(4)管理職に占める女性の割合−−の各項目の現状把握と分析を必須とした。その上で、改善点や取り組み期間、数値目標などを盛り込むよう求めている。この他、企業側が選択する項目が省令で示される見通しで、育児と仕事の両立支援制度や利用状況、非正規雇用から正規雇用への転換制度の利用状況などが想定される。従業員300人以下の中小企業にも努力義務として課す。施行に合わせ、国は「女性活躍の推進に関する基本方針」を閣議決定する。各企業などの計画策定を支援するためのガイドラインも作る。また、行動計画の内容や達成度などに応じて優良な企業を認定し、国や自治体の公共事業や備品購入などで優遇できるようにもする。法案は昨年秋の臨時国会で提出されたが、衆院解散で廃案となり、今国会に再提出された。衆参両院で、賃金の男女格差の把握と是正、非正規労働者の待遇改善のためのガイドライン策定などを求める付帯決議を行った。14年の日本の女性管理職の割合は11.3%で、米国の43.7%、フランスの39.4%、ドイツの28.6%(いずれも12年)などの主要国の水準を大幅に下回っている。

| 原発::2015.4~10 | 05:40 PM | comments (x) | trackback (x) |
2015.7.31 原発再稼働と環境意識の低い日本のリーダーの判断ミス (2015年8月1日、2日、3日、5日、8日、10日に追加あり)
      
   フクイチ汚染地図      宝島より      川内原発事故時の汚染地図 
            
       
      川内原発を囲む市町村       原発立地交付金   川内原発付近の火山

(1)論理的・総合的にモノを考えられず、臨機応変な意思決定ができない日本のリーダー
 *1-1に書かれているように、4年前の福島第一原発事故(以下、フクイチ)は、国家存亡の危機(まさに存立危機事態)を招いて今でも収束できておらず、汚染範囲は東北から関東まで及ぶ広い範囲であるため、世論調査では半数以上の人が再稼働に反対しているが、経産省は新たな交付金を作ってまで原発再稼働に回帰しようとしており、いずれは日本の電源の2割以上を原発でまかなう目標を立てている。

 しかし、日本が目指すべきは、国内に存在する豊富な再生可能エネルギーを使うクリーンな社会であり、そのツールは既に出揃っているため、安定した投資環境を作って機器を洗練させることが重要なのだ。具体的には、分散型の新しい電力システムに切り替える方向(新送電網の設置、原発は廃炉して核廃棄物は最終処分)に投資を集中させ、収益源だった原発を失う立地自治体には普通の自治体になるための支援を行い、予定外の原発廃止で生ずる電力会社の特別損失には補償が必要である。

 「原発依存度を可能な限り低減する」としながら政権に復帰した自民党は、「原子力規制委員会がOKした原発はすべて動かす」と変化し、規制委は発電所内に限った物理的安全性を見ているにすぎず、立地自治体は国に責任を転嫁しているが、本当はどちらも責任を持っておらず、フクイチの後、栃木県、茨城県、埼玉県、東京都、神奈川県、千葉県は、全く除染されていない。

 それにもかかわらず、経産省は、*1-2のように、自民党の原子力政策・需給問題等調査会で原発立地地域への新しい交付金案を示し、再稼働した原発がある自治体に交付金を重点配分して原発の再稼働を促している。そして、これは、首相を安倍首相から他の人に変えたら変わるというものではない。

(2)原発に依る健康被害の例
 東京電力福島第1原発事故と甲状腺がんの因果関係について、*1-3のように、福島県の検討委は「現時点で事故の影響は考えにくい」とし国も追認しているが、その根拠は科学的ではないため、原爆被爆者の治療に長年携わってきた東神戸診療所の郷地所長が、「不都合な5つの事実」と題した論考を7月25日に、福岡県久留米市で開かれる日本社会医学会で発表して反論するとのことである。

 郷地所長は、「事故の影響は考えにくい」とする福島県と国の根拠を、①甲状腺がんの発生率は、県が比較した「避難区域」「浜通り」「中通り」「会津地方」の4地域から市町村別に変えると、福島県の西側3分の1では発生がないなど明らかな差がある ②国の測定方法は、本来個人のリスク評価には使わない方法を採用しており不確実性が高い等々、国の根拠のすべてを否定しているそうだ。つまり、福島県と国は何を護ろうとしているのかと言えば、それは国民・県民ではなく国体・県体なのだ。

(3)再稼働ありきで猪突猛進する薩摩川内原発 (ダッシュ
 このような中、*2-1のように、九電は7月24日、薩摩川内原子力発電所1号機(鹿児島県)の再稼働に向けた最終検査を原子力規制委員会に申請し、順調に手続きが進めば、8月10日に再稼働させるそうで、「九電は7月27日から重大事故を想定した大規模な訓練も計画している」とも書かれているが、これは慰め程度にしかならない。そして、日経新聞はこれを、「国内の原発がすべて止まっている状況が約2年ぶりに解消する」と喜んでいるのだ。

 一方、*2-2のように、鹿児島、熊本、宮崎の3県10市町議会は、再稼働前に九電主催の住民説明会を開くよう求める陳情や請願、決議を採択・可決しているが、九電は、これに応じない方針だそうだ。例えば、原発事故時に鹿児島県出水市の避難者約6600人の受け入れ先となっている熊本県水俣市では、「住民への十分な説明がないまま再稼働に踏み切ることは電力事業者として責任ある態度と思えない」などとする決議を全会一致で可決し、市が九電に要望書を提出している。西日本新聞は、東京電機大の寿楽助教(科学技術社会学:文系)の「再稼働は公共性が高い。もっと積極的に説明すべきだ」という言葉で閉めているが、実際の公共性は大きなマイナスだ。

 同じ西日本新聞は、*2-3のように、「どんなに訴えても、再稼働は止まらないのか」「避難計画の不備が相次ぎ指摘され反対世論も根強い中、国や九電は原発再稼働へ進んでいる」「いまだに尾を引く水俣病もフクイチも、国も企業も責任を取らないという意味で同じ構造」「再稼働は住民の命を無視することにつながり、もはや非人道的行為としか言いようがない」などの住民の声を載せながら、薩摩川内市議が原発視察して「安全対策は十分取られていたが、免震重要棟を完成させるべき」という原発へのさらなる投資を導いている。資源を集中して無駄遣いを排除しなければならない時に、情けない話だ。

(4)ドイツ・フランスの原発削減
 ロビンス博士が、*3-1のように、日本とドイツのエネルギー政策について「日本は自らを小エネルギー国と思い込んでいるが、この考えは言葉の意味の混乱によって生まれたものだ」「日本は(天然ガスを除く)化石燃料には乏しいが、太陽・風力・地熱といった自然エネルギーは主要工業国の中で最も豊富」「日本は、ドイツの9倍もの自然エネルギー資源を有しているが、自然エネルギー電力の導入量はドイツの9分の1に過ぎない」「これは、政界との結びつきが強い地域独占の電力会社が競争を拒んで自分たちの利益を守る構造を日本政府が認めてきた結果だ」などと直言しているが、全くそのとおりだ。

 ドイツ政府は、フクイチ後4カ月のうちに、2001年から2002年にかけて産業界と合意した脱原発スケジュールを復活させ、さらに1年早めて実行することを決め、ドイツの原発17基のうち、発電容量の41%にあたる8基を直ちに停止し、残りの9基の原発は、2015年から2022年の間に停止される予定とのことだ。恣意的な数値を示してドイツのこの政策を間違っていたとする日本の報道記事は多いが、私は、このブログに書かれていることが正しいと考える。

 また、原発依存度の高いフランスも、*3-2のように、2025年までに原発依存度を75%から50%に下げることを柱とするエネルギー移行法案を可決し、原発削減に踏み切るそうだ。今回可決した法案は、代替エネルギーとして風力や太陽光などの再生可能エネルギーや廃棄物のリサイクルなどを進め、3年間で10万の雇用創出も盛り込まれており、原発削減と再生可能エネルギーへの転換は正しい。

(5)嫌われる核廃棄物
 再稼働に積極的な薩摩川内市は、*4-1のように、「使用済核燃料で施設内に貯蔵できるのは再稼働10年間で、国は10年の間に最終処分場を建設すべきだ」「薩摩川内市内に最終処分場を受け入れる考えはない」としている。

 福井県知事も、*4-2のように、「福井県は、発電は引き受けたが、処分まで引き受ける義務はなく、県外で処分すべきだ」としている。敦賀市の渕上市長も、最終処分について「原発に協力してきた自治体に最終処分場まで求めるのはいかがなものか」と否定的な考えを示した。

 北海道では、*4-3のように、放射性廃棄物を持ち込まない「核抜き」条例を設けていることから、経産省の資源エネルギー庁が札幌市内で道内市町村を対象とする処分場選定に関する説明会を開催すること自体に反発が出ている。

 長野市でも最終処分地に関する自治体説明会が開かれ、*4-4のように、出席した自治体職員は「(説明会を)非公開にする内容とは思えなかったし、そうするべきだとも思わない」と述べ、別の自治体職員は「説明会に出席するかどうか悩んだ」「具体的な処分候補地の名前などが挙がると困ると思った」「(説明会に)来たくなかったというのが、どの自治体も本音ではないか」とした職員もいたそうだ。

(6)経営を危うくする企業トップの経営判断ミス
 *5-1のように、東芝の不正会計は社長の独断と組織が原因とされているが、もっと奥深い問題は、①リーマン・ショックで利益が順調に伸びなくなり ②フクイチで原発部門が打撃を受け ③米WHの買収のために米企業の出資で買収資金不足をカバーしていた東芝が、その出資株の買い戻しで隠していた損失が明るみに出そうになって ④それらを正直に財務諸表に反映せず、粉飾してカムフラージュしていたこと が根本的な原因だろう。しかし、①②は、東芝だけに起こった問題ではないため、事実を財務諸表に反映して理由を説明すれば済んだ話だ。しかし、東芝は、原発事業については、この上さらに、フィンランドでの原発交渉権も獲得しており、この事業の筆頭出資社である独イーオン社は、既に撤退を表明しているそうで、トップの経営判断にミスがある。

 しかし、原発事業に関する経営判断ミスは東芝だけにあるわけではなく、*5-2のように、日立も英国の原発事業会社ホライズンを買収して海外展開を強化させようとした。これらは、経産省の原発推進の方が世界に通用すると信じた日本企業のトップが、日本国内では原発新設が難しいから海外で事業拡大しようと海外の原発企業を買収し、機を見て原発から撤退しようと原発事業部の売却先を探していた海外企業から高値で原発事業部をつかまされたということであり、いずれも自国でフクイチのような過酷事故を経験した我が国の経営者の環境意識の低さと洞察力に欠ける不明に依る。

 一方、これから利用価値が高くなるため中国が行っているガス田の開発については、日本政府には、*5-3のように、「中国側が一方的な開発を進めていることに対して、我が国から繰り返し抗議をすると同時に、作業の中止を求めている」と言っているだけで、国境線を明確にすることも、共同開発の合意を解消することも、自ら採掘することも、何もしていないという不作為がある。そして、中国がガス田の天然ガス掘削施設を完成させたことを、「一方的だ」として非難しているだけなのだ。

 ここまで政府や経営者が愚鈍で、技術者が、1ミリ、1ミリ進めて必死で稼いでいるものを、バックアップするどころか何メートルも後退させて罪悪感を感じない国はないだろう。そして、これ以上の無駄は許されないため、この愚鈍の根源は徹底して追求し、二度と起こらないようにしなければならない。

<時流を見誤る日本>
*1-1:http://www.asahi.com/paper/editorial.html
(朝日新聞社説 2015年7月30日) 原発再稼働を考える―稼働ゼロの実績を土台に
 東日本大震災後、すべての原発が止まって、まもなく2年がたつ。冷暖房に電気を多く使う夏も冬も、大規模な停電を引き起こすことなく乗り切った。4年前の福島第一原発事故は国家存亡の危機を招き、今も収束していない。原発の怖さを知ったからこそ、不便はあっても原発は止まったままにしたい。各種の世論調査で、半数以上が再稼働に反対しているのは、そんな思いの表れだろう。だが、安倍政権は原発に回帰しようとしている。8月には九州電力川内原発(鹿児島県)を再稼働させて、いずれは日本の電源の2割以上を原発でまかなうことを目指している。なし崩しの原発回帰に、反対する。国民生活に負担がかかりすぎないよう配慮しつつ、再稼働しない努力を最大限、するべきだ。目指すべきエネルギー社会は、再生可能エネルギーが主軸であり、原発が基本的な電源となる社会ではない。
■避けられた電力不足
 朝日新聞は11年7月に社説で「原発ゼロ社会」を提言した。
◆古い原発や危険度の高い原発から閉め、20~30年後をめどにすべてを廃炉にする。稼働させる原発は安全第一で選び、需給からみて必要なものに限る
◆節電・省エネ対策を進めつつ、再エネの開発・普及に全力をあげる。当面は火力発電を強化しても、長期的には脱原発と温暖化防止を両立させる
◆多様な事業者の新規参入を促す電力改革を進め、消費者側の知恵や選択が生きる分権型のエネルギー社会に転換する
 基本的な考え方は、今も変わらない。しかし、この4年間で状況は変わった。最も劇的だったのは、原発による発電がゼロになったことだ。4年前は、全国で原発が動いていた。その後、定期点検のため次々に休止し、一時的に関西電力大飯原発(福井県)が動いたものの、13年9月以降、一つの原発も稼働していない。この間、心配された電力不足は起きなかった。緊急電源をかき集めてしのぐ局面もあったが、節電の定着をはじめ、火力の能力を高めたり電力会社の垣根を越えて電力を融通しあったりすることで、まかなえた。ただし、原発稼働をゼロのまま定着させる環境が盤石になったとは、まだ言えない。大規模発電所から遠方の大消費地に電気を送る集中立地型の供給態勢は、原発事故後もそのまま残る。システムの脆弱(ぜいじゃく)さは克服されていない。電力使用量のピーク時に大きな火力発電所が故障すれば、不測の事態が起きる可能性も消えてはいない。
■システムはなお脆弱
 電力の9割を火力に頼っている現状が持続可能とも言えないだろう。エネルギー源を輸入に頼る以上、為替や価格の変動リスクに常にさらされる。電気料金にしても、国民や日本経済が値上げをどの程度まで許容できるのか。詳細な調査もないままに、値上げが生活や経済活動に深刻な影響を与えることは避けなければならない。国民生活に深刻な影響を与えるリスクはゼロとなっていない。そう考えれば、最後の手段としての再稼働という選択肢を完全に否定するのは難しい。それでも、個々の原発に対する判断は、きわめて慎重でなければならない。「この原発を動かすことで、どんな不利益を回避できるのか」「電力を広域的に融通して電力需要に応えてもなお、再稼働は必要なのか」といった観点から納得のいく説明ができなければならない。原発の安全性が立地条件から見ても十分に確保されていることや、周辺の住民が避難できる手段が整っていることは、当然の前提になる。稼働ゼロの実績は、それだけ再稼働へのハードルを高くしている。こうした状況のもとで、できるだけ早く再エネを育て、分散型の電力システムへと切り替えていく。そのためには、新たな方向へと誘導する政策努力が欠かせない。政府は改革の道筋を立て、送電網の充実、原発のゴミ処分などに資源を集中させる。廃炉を進める態勢づくりや、収益源だった原発を失う立地自治体への支援、原発関連の事業者への経過措置も必要になる。
■原点は福島第一原発
 ところが、安倍政権は逆を行こうとしている。「原発依存度を可能な限り低減する」としながら、原発を維持する方向へ転じて「原子力規制委員会がOKした原発はすべて動かす」と判断を丸投げした。規制委は、発電所に限って物理的な安全性を見るにすぎず、政策全体に責任を負うものではない。立地自治体には「国が責任を持つ」といいながら、具体的な中身はない。川内原発の場合でも住民の安全確保や、火山噴火の問題は積み残したままだ。原発を考える原点は、福島第一原発の事故にある。今、原発は動いていない。この実績を生かすことを考えるべきである。

*1-2:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20150731&ng=DGKKASFS30H8T_Q5A730C1PP8000 (日経新聞 2015.7.31) 
再稼働自治体を交付金で優遇 経産省、立地地域の配分見直し
 経済産業省は30日の自民党の原子力政策・需給問題等調査会で、原発立地地域への支援策の案を示した。九州電力川内原発1号機(鹿児島県)の再稼働を控え、原発がある自治体に一律に配っている今の交付金の配分方式を見直す。再稼働した原発がある自治体に重点配分し稼働停止が続く場合は交付金を減らす。新方式では、老朽化で原発が廃炉となる自治体は交付金が無くなる見通しだ。経産省はこの日、「エネルギー構造転換に向けた地域の取り組みに一定の支援を行う」として交付金に代わる財政支援を継続する方針を示した。ただ、金額自体は減る可能性が高いとみられる。政府は、原発がある立地自治体に「電源立地地域対策交付金」を原発の発電量に応じて支払っていた。東京電力福島第1原発事故以降は、原発の停止中も発電量を最大供給力の81%とみなして、自治体に一律で交付金を支払ってきた。使用済み核燃料を保管する中間貯蔵施設の立地自治体も支援する。経産省は同日、日本原子力発電と東京電力が青森県むつ市に建設した中間貯蔵施設について「環境変化が立地地域に与える影響を緩和する」として、財政支援策などを検討していると明らかにした。さらに、関西電力などが中間貯蔵施設建設の検討を進めていることを念頭に「使用済み燃料を安全に保管するため、使用済み燃料の貯蔵能力拡大のインセンティブとなる措置を講じる」との方針を示した。貯蔵施設の建設などを予算措置などで後押しするとみられる。

*1-3:http://www.kobe-np.co.jp/news/iryou/201507/0008241533.shtml
(神戸新聞 2015.7.26) 福島原発事故「がん無関係」に反論 神戸の医師が論考発表
 地域別甲状腺がんの発生数と市町村別甲状腺がんの発生数  原爆被爆者の治療に長年携わる東神戸診療所(神戸市中央区)の郷地(ごうち)秀夫所長が、東京電力福島第1原発事故と甲状腺がんの因果関係は「現時点では考えにくい」とする国の姿勢に対し、「不都合な5つの事実」と題した論考を25日、福岡県久留米市で開かれる日本社会医学会で発表する。福島県民健康調査によると、検査対象となる事故当時18歳以下の約38万5千人のうち、今年3月までに103人の甲状腺がんが確定している。福島県の検討委は「現時点で事故の影響は考えにくい」とし、国も追認している。郷地所長は、事故の影響は考えにくいとする国側の根拠を(1)放射線汚染度の異なる福島県内の4地域で甲状腺がんの発生率が変わらない(2)チェルノブイリの甲状腺がんは4歳以下に多発したが、福島で5歳以下はいない(3)福島の子どもの等価被ばく線量は10~30ミリシーベルトと低い-など五つに整理した。その上で、国側の主張と矛盾する複数の研究報告を検討。その結果、(1)甲状腺がんの発生率を、県が比較した「避難区域」「浜通り」「中通り」「会津地方」の4地域から市町村別に変えると、福島県の西側3分の1では発生がないなど、明らかに差異がある(図)(2)国連科学委員会の報告では、チェルノブイリ事故で4歳以下の甲状腺がんが多発したのは5年目以降(3)国の測定方法は、本来個人のリスク評価には使わない方法を採用しており、不確実性が高い-など五つの根拠すべてに疑問を投げ掛けている。郷地所長は「福島原発事故は日本人初の経験。先入観や政治的影響を受けず、白紙から研究していくのが科学的姿勢だ」と指摘している。

<川内原発>
*2-1:http://www.nikkei.com/article/DGXLASFB24HBS_U5A720C1MM8000/
(日経新聞 2015/7/25) 川内原発、8月10日にも再稼働 九電が最終検査申請
 九州電力は24日、川内原子力発電所1号機(鹿児島県)の再稼働に向けた最終検査を原子力規制委員会に申請した。順調に手続きが進めば、8月10日にも再稼働させる。東京電力福島第1原発事故を教訓とする新規制基準が導入されて以降、初めての原発再稼働になる。国内の原発がすべて止まっている状況が約2年ぶりに解消する。申請したのは、原子炉を起動させるための最終段階となる保安検査で、8月3日に開始する。原子炉周辺の温度と圧力を運転時に近い状態にし、安全機器に異常がないことなどを、1週間程度かけて確認する。九電は7月27日から重大事故を想定した大規模な訓練も計画。最終検査と合わせて問題がなければ、予定通り再稼働が可能になる。川内原発は昨秋に新規制基準に基づく規制委の安全審査に全国の原発で初めて合格している。

*2-2:http://qbiz.jp/article/67522/1/
(西日本新聞 2015年7月27日) 川内再稼働の説明会要求、3県10市町議会に 九電応じない方針
 九州電力川内原発(鹿児島県薩摩川内市)の再稼働を来月に控え、鹿児島、熊本、宮崎3県の10市町の議会が、再稼働前に九電主催の住民説明会を開くよう求める陳情や請願、決議を採択、可決していることが、西日本新聞のまとめで分かった。こうした動きは3月議会時点では鹿児島県内の5市町だけだったのに対し、6月議会で県外にも拡大。背景には再稼働に対する住民の根強い不安感があるが、九電は応じない方針だ。川内原発30キロ圏では昨年10月、計6回の住民説明会が鹿児島県と各市町の主催で開かれた。当初、説明者が県と原子力規制庁の担当者に限られたことに住民側から批判も出て、追加開催となった最後の日置市だけ九電幹部が出席、説明した。九電が主催する説明会は開かれていない。原発事故時の避難計画で鹿児島県出水市の避難者約6600人の受け入れ先となっている熊本県水俣市では、6月議会で「住民への十分な説明がないままに再稼働に踏み切ることは電力事業者として責任ある態度と思えない」などとする決議を全会一致で可決した。これを受けて、市は九電に要望書を提出している。川内原発から約130キロ離れた熊本県荒尾市議会は全会一致で陳情を採択した。陳情を提出した「原発の再稼働を考える荒尾市民の会」共同代表の浦田修行さん(71)は「放射線に距離や県境は関係ない。川内の次は玄海(の再稼働)もある。九電は誠意を持って対応してほしい」と訴える。これらの要望に対し、九電は「以前から原発の周辺地域に限らず、社員ができる限り対面で説明する活動を続けている。現時点で、当社主催の大規模な説明会を開く考えはない」としている。社員による説明は、公民館などで数人から数十人規模で行い、2014年度は約12万8千人を対象に行ったという。東京電機大の寿楽浩太助教(科学技術社会学)は「九電は反対派と討論する形になる説明会は得策でないと考えたのだろう」と指摘。「再稼働は公共性が高い。再稼働後を含め、もっと積極的に説明すべきだ」と求めた。

*2-3:http://qbiz.jp/article/66269/1/
(西日本新聞 2015年7月8日) 川内原発「再稼働、止まらないのか」 反対住民に漂う悲愴感
 どんなに訴えても、再稼働は止まらないのか−。九州電力が全国の原発のトップを切って始めた川内原発の核燃料装填(そうてん)に抗議しようと7日朝、鹿児島県内の反原発団体が原発前で抗議集会を開いた。避難計画の不備が相次ぎ指摘され、反対の世論も根強い中で、国や九電は原発再稼働へ着々と駒を進めている。住民の訴えには、悲愴感さえ漂った。集会では、参加者が次々にマイクを握った。いちき串木野市でデイサービス施設を運営する江藤卓朗さん(58)は「うちの通所者は事故が起きても逃げられない。再稼働はやめて」と声を張り上げた。施設は原発から15キロ。通所者が長時間の避難や避難所生活に耐えられるとは思えない。排せつの世話やボンベによる酸素吸入が必要な人もいる。「施設の70〜90代の通所者22人はほとんどが認知症だ。事故が起こった場合、どう避難させればいいのか」と日々悩んでいるという。熊本県水俣市の「原発避難計画を考える水俣の会」の永野隆文代表(60)は「いまだに尾を引く水俣病も福島第1原発事故も、国も企業も責任を取らないという意味で構造は同じだ」と述べ、「公害の原点」といわれる水俣病と福島事故の共通点を強調した。120人の参加者からも反対のさまざまな思いが聞かれた。薩摩川内市の自営業川畑清明さん(59)は「再稼働は住民の命を無視することにつながる。もはや非人道的行為としか言いようがない」と語気を強めた。九電鹿児島支社前で毎週金曜日、脱原発の街頭アピールをしている鹿児島市のフィットネスインストラクター白澤葉月さん(50)は七夕にちなみ「原発やめて」などと書いた短冊を結んだササで抗議の意思を表現した。「避難計画は穴だらけで、使用済み核燃料の処分方法も確立していない。たくさんの市民が反対しているのに、何で止められないの」と声を詰まらせた。
◆「安全性は十分確保」薩摩川内市議が原発視察
 九州電力川内原発に核燃料が装填(そうてん)された7日、地元の鹿児島県薩摩川内市議16人が使用前検査を受けている川内原発の安全対策状況を視察した。市議の多くは「安全対策が十分取られていた」として、再稼働に肯定的な感想を述べた。市議会の川内原発対策調査特別委員会による視察で、昨年7月以来、福島第1原発事故後は7回目になる。この日は委員9人に希望する市議7人が加わり、6月末までにほぼ完了した安全対策工事の完工状況などを見て回った。昨年7月時点では未完成だった海水ポンプを津波から守る防護壁や、今年6月に設置した電源車やポンプ車を竜巻で飛ばされないように電動チェーンで固定する装置などを約2時間かけて見学した。16人中13人は昨年10月の臨時議会で早期再稼働を求める陳情に賛成、2人は反対、1人は退席した経緯がある。賛成した森満晃市議は「津波や竜巻などに対し過剰ともいえる安全対策を取っており、一安心した」と評価。川添公貴市議は「何度も原発内を見てきたが、安全性は十分確保されており、当然、再稼働すべきだ。そうした中、核燃料装填までこぎ着けたことは喜ばしい」と歓迎した。一方、再稼働に反対する井上勝博市議は「福島の事故を教訓にするなら、事故時の指揮所になる免震重要棟が未完成なのは決定的な問題だ」と批判した。

<ドイツ・フランスの原発削減>
*3-1:http://jref.or.jp/column/column_20140904.php (自然エネルギー財団 2014年9月4日) 連載コラム 自然エネルギー・アップデート、日本とドイツのエネルギー政策:福島原発事故後の明暗を分けた正反対の対応
<この記事は、ロッキーマウンテン研究所のウェブサイトに2014年7月8日に掲載されたエイモリー・ロビンス博士による“How Opposite Energy Policies Turned The Fukushima Disaster Into A Loss For Japan And A Win For Germany”の日本語訳である>
日本は自らを小エネルギー国だと思い込んでいるが、この国民的な考えは、言葉の意味の混濁によって生まれたものである。日本は、化石「燃料」には乏しいが、太陽、風力、地熱といった自然「エネルギー」については、主要工業国のなかでも最も豊富な国である。たとえば、日本は、ドイツの9倍もの自然エネルギー資源を有している。しかし、自然エネルギー電力の導入量はドイツの9分の1(大型水力発電を除く)に過ぎない。これは、日本の技術力が劣悪だったり、産業界が脆弱だったりするせいではない。政界との結びつきが強い地域独占の電力会社が、競争を拒んで自分たちの利益を守るという構造を、日本政府が認めてきたからだ。日本では、強制的な卸電力市場がないため、約1%の電力しか取引されていない。電力会社はほぼすべての送電線と発電所を所有しているので、自分たちの資産の競争相手となる事業者を、好きなように決めることができる。そのせいで、本当の競争市場なら市場の大半を占めるだろう活力ある新しい電力事業者たちのシェアも、2.3%に留まっている。こうした状況が、日本とドイツの電力事情に大きな違いをもたらしている。2011年3月の東京電力福島第一原子力発電所の事故の前は、ドイツも日本も、電力の3割近くを原発で発電していた。事故後4カ月のうちに、ドイツ政府は、2001年から2002年にかけて産業界と合意した脱原発スケジュールを復活させ、さらに1年早めて実行することを決めた。全政党の賛成を得て、ドイツの原発17基のうち、発電容量の41%にあたる8基を直ちに停止した(そのうち5基が福島原発と同タイプのもので、7基が1970年代から稼働していた)。残りの9基の原発は、2015年から2022年の間に停止される予定だ。2010年、この8基の原子炉による発電量は、ドイツの電力の22.8%を占めていたが、ドイツ政府は、同時に、エネルギー効率化や自然エネルギーやその他の包括的7つの法案を成立させて、脱原発への移行中も完了後も、安定的な、低炭素なエネルギー供給を確実なものとした。ドイツの原発停止は決然と行われたが、これは長年にわたって熟慮された政策展開に基づくもので、福島原発事故の前や後に、周辺7カ国で決められた原発の建設中止や段階的な稼働停止とも整合性を持つものだ。さらに、1980年より前に「エナギーヴェンデ(エネルギー大転換)」という言葉と概念が使われ始めたドイツでは、福島原発事故の20年も前の1991年に自然エネルギーへの移行が正式に始まり、2000年の固定価格買取制度でその動きに拍車がかかった。今では、自然エネルギーの導入量は7000万キロワットをはるかに上回る。この買取制度は、補助金ではなく、自然エネルギーという社会資産に対して、利用者が購入し、事業者が出資・開発するための手段であり、売り手は投資額に応じた相応の利益を期待できる。自然エネルギーのコスト低下とともに固定価格が下落している今は、自然エネルギー事業者が固定価格より高い市場価格から利益を得るのが一般的となっている。こうした統合的な政策枠組みとそれを裏づける確実な分析によって、2011年に原子炉8基が停止し失われた発電量は、その年のうちに、59%の成長率をみせた自然エネルギー、6%のエネルギー使用の効率化、36%の電力輸出の一時的な削減によって完全に補うことができた。2010年と比べた原発発電量の減少分は、2012年までには94%、2013年までには108%が、自然エネルギーの増加で補われている。この調子で自然エネルギーが成長していけば、2016年までに、福島原発事故以前のドイツの全原発発電量を置き換えることができるだろう。間違った報道が拡がっているのとは正反対に、8基の原子炉が停止しても、化石燃料の燃焼量は増加していない。ドイツで自然エネルギー資源が利用される場合は、法的にも経済的にも、常にそれよりコストの高いエネルギー源に取って代わることが求められているため、自然エネルギーによる発電の増加は、常に火力発電の稼働を減少させることになるが、実際のパターンはもっと複雑である。データによれば、2010年から2013年の間に、ドイツの原発による発電量は43.3 TWh(433億kWh)減少し、自然エネルギーによる発電量は46.9 TWh(469億kWh)増加した。その間、発電部門では石炭と亜炭の燃焼量が増加した分だけ、よりコストの高いガスや石油の燃焼量が減少した。エネルギー転換に否定的だったドイツの電力会社の戦略は失敗に終わった。今になって、彼らは、自分たちが長年投資を怠ってきた自然エネルギーのせいで、火力発電所の採算性が悪化し、稼働できなくなったと不平を言っている。大手電力会社が自ら招いたこうした苦難をよそに、ドイツは、効率化・自然エネルギー化を推進し、完全に公正な競争を保障するために、首尾一貫した効果的な戦略をとった。一方日本では、大幅に失われた原発の発電量のほぼすべてを、高価な化石燃料の輸入増加により補った。こうした正反対の政策が、正反対の結果をもたらした。2011年の夏、日本人は見事な団結力で電力不足を乗り切った。うだるような暑さの中、多くの人々が個人的な犠牲を払った。そして、東京では、都の政策により、最大電力需要が1070万キロワット、なんと18%も削減され(大企業では異例の30%減を達成)、東京電力の最大電力需要における原発発電の減少分をほぼ補った。都市部では、東京電力の販売電力量は11%減少した。しかし、ここまでの事例が日本全体で起こったわけではなく、結果として発電所の燃料使用量は増加している。対照的に、電力供給に余裕があるドイツは、電力輸出が輸入を上回る電力輸出国の立場を保ち、原子力が発電の多くを占めるフランスにも輸出を続けている。ドイツによる電力の純輸出は、ここ2年連続して過去最高を記録している。経済においても、日本が低迷するなか、ドイツは活気づいた。エネルギー転換によるマクロ経済的効果の一環として、数十万もの自然エネルギー関連の雇用が生まれた。日本では電気料金が上昇したが、ドイツでは卸電力価格が60%以上下落した。2013年だけでも13%下がり、年間予測価格は8年ぶりの最安値となった。そのために、フランスのエネルギー多消費型企業は、電力価格が4分の1も安いドイツの競合企業には勝てないと文句を言っている。最近流布している「ドイツの産業空洞化」という捏造神話は、まったく皮肉たっぷりの内容だ。というのも、ドイツの大企業が支払っているのは下がり続ける安い卸電力価格であって、その安い卸電力価格を生み出している自然エネルギーへの支払いや、送電網料金の支払いは免除されているからだ。その分の負担は一般家庭にのしかかっているが(電気料金の半分が税金)、供給業者の古い契約が更新されるにつれて、卸電力価格の低下も反映されるようになり、今では一般家庭向けの電力価格も安定してきた。日本による温室効果ガスの排出量は増えたが、ドイツの発電所や産業では、温室効果ガスの増加を抑制している(ドイツでは2013年の発電部門の排出量がわずかに減少した。固形燃料の燃焼量は増えたが、エネルギー効率化が進んだため、発電量の上昇分と比べてわずかに排出を抑制できた)。ただし、正確を期すならば、2012年のドイツ全体の温室効果ガス排出量は厳冬のためにわずかに上昇し、2013年も、ガス価格の急騰、米国市場の縮小による安価な石炭の流入、欧州の温室効果ガス排出取引市場における過当な割り当てという3つの要因によって、石炭火力による電力の輸出が記録的に増加したため、わずかに上昇した。しかし、2014年の第1四半期には、ドイツにおける石炭の燃焼量と温室効果ガスの排出量は再び縮小に転じ、今後もこの傾向が続く見込みである。ドイツの温室効果ガス削減の取り組みは、京都議定書で定められた目標をはるかに超えるレベルで進められており、欧州のなかでもひときわ厳しい条件を達成している。つまり、ドイツの政策は、自然エネルギーに対して公平な送電網へのアクセスを保証し、競争を促し、独占状態を排し、自然エネルギー容量の半分を市民や地域社会が所有できるように支えてきたのだ。2013年、ドイツの原発発電量はこの30年で最小となる一方で、自然エネルギーによる発電量は56%増加し過去最大となった。2014年の第1四半期には自然エネルギーの国内での電力消費に占める割合が平均27%に達し、5月11日には過去最高となる74%の発電を記録した。日本はドイツと比べて、国土が5%広く、人口は68%多く、GDPは74%高く、太陽も風もはるかに優れた資源量がある。しかし、2014年2月に導入された太陽光発電量はドイツの約5分の1に留まり、風力発電に至ってはほとんど導入されていない。2012年、日本の電力のうち、こうした自然エネルギーによる発電が占めた割合は、わずか0.97%(インドの3分の1、世界では29位)で、2013年は1.5%だった。受注パイプラインにあるおよそ4100万kWの電力(その95%が太陽光発電)の大半は、電力会社の形式主義と非協力的な態度によって、合法的に放置されているのだ。日本の政治家は、その日の丸の国旗に示された神聖な太陽以上に、世界市場を支配しつつあるエネルギー源の普及を阻害する旧態依然とした政策を尊重しているようだ。2008年以降、世界で新しく導入された発電容量の半分は自然エネルギーだ。主に風力と太陽光からなる水力以外の自然エネルギーには、2500億ドル(約25兆円)の民間投資が行われ、その導入量は過去3年間で毎年8000万kW以上増加した。世界の4大経済大国のうちの3カ国、中国、日本、ドイツに加え、インドにおいては、今では原発より水力以外の自然エネルギーによる電力量が多くなっている。ここに日本が含まれているのは原発の発電量がほぼゼロだからであり、自然エネルギーに出遅れた先進国であることに変わりはない。ただ、2014年5月に行われた大飯原発の再稼働をめぐる裁判で、安全性を理由に再稼働を禁止する判決が下されたのは意外だった。電力会社の利益より市民の安全が優先された初めての判決である。もしかしたら、これをきっかけに新しい動きが起こり、行政および立法部門によるうわべだけの改革――2016年に実施予定の名ばかりの「自由化」――をしのぐ変化が生まれるかもしれない。世界で最も積極的な原発計画を打ち出している中国でさえ、2012年から2013年にかけて、すでに風力の発電量が原発を上回るものとなった。中国が2013年に導入した太陽光発電量は、太陽光発電の開発国である米国がこれまでに導入してきた全容量よりも多い。しかし、日本は逆の方向へ進んでいる。2012年7月に自然エネルギーの固定価格買取制度が導入され、その後わずか20カ月間で8 GW(800万kW)の自然エネルギーが運転を開始したが、そのうち太陽光が97.5%を占め、風力はわずか1%という状況だ。風力発電、特に最もコストが安い陸上のものは、昔は承認手続きが面倒で時間のかかる独特なものであったために、今では自分たちの地域の送電網に競合企業を入れたくない独占的な電力会社に徹底的に反対されているために、普及が進んでいないのだ。日本風力発電協会は、2050年における陸上風力の市場シェアの目標値として、スペインが3年前に達成したものと同じ数値を掲げている(※2014年6月に新しい目標が発表され、2500万kWから3500万kWへと若干上方修正されている)。こうした事態を生み出した原因を理解するのは難しくない。太陽光発電は、発電コストの高い日中のピーク電力を補うことができるが、その固定価格買取制度の仕組みは、電力会社が得をするようになっている。一方、夜間にも稼働する安価な風力発電が石炭や原子力の代わりに使われるのは、電力会社にとって損となる。電力会社が旧来の「ベースロード」発電所に置き換わるような自然エネルギーの電力を拒否できる権利は、日本の最新の規則でも繰り返し述べられている。電力会社がコストの高い火力発電を使い、運転コストがほぼゼロの風力発電を拒絶しているせいで、世界のなかでも高い日本の電気代がさらに高くなっている。このことを日本の産業界のリーダーたちが知ったら、憤慨するのではないだろうか。2013年後半(ドイツの改革開始から23年後)に日本の衆議院を通過した電力システム改革法案でも、電力会社が安価な自然エネルギーによる電力を拒否することが、理由を問わず認められている。自然エネルギーは送電網の安定性を阻害する可能性があるという人も多い。それでは、2013年の自然エネルギーのシェアが25%を占めるドイツや、47%以上を占めるデンマークの電力が、欧州で最も信頼性が高く、米国と比べても約10倍の信頼性を誇るのはなぜだろうか?この2カ国に加え、2013年の電力の約半分を自然エネルギーで発電したスペイン(45%)、スコットランド(46%)、ポルトガル(58%)の欧州3カ国(どの国も水力発電は多くない)で求められているのは、公平な送電網へのアクセスと公平な競争だけだ。これを必要としていないのは、主要工業国のなかで日本だけである。ドイツではエネルギー利用の効率化も進んでいる。過去3年間、ドイツではGDPが伸びる一方で電力消費量は減少している。1991年から2013年の間、つまり東西ドイツ統一後、ドイツの実質GDPは33%成長したが、一次エネルギーは4%、電力使用量は2%減少し、温室効果ガス排出量も21%減少した。今後、さらに野心的な省エネ計画も用意されている。一方、日本のエネルギー効率化は1970年代には世界トップレベルだったが、その後停滞してしまった。日本の産業は改善を続け、今も11の主要工業国のなかで最も高い効率性を誇る。しかし、産業用コージェネレーション(熱電併給)の導入や商業ビルのエネルギー効率化では10位、トラック輸送分野では8位、自動車では最後から2番目(米国と同位)に甘んじている。実は、日本ではエネルギー価格が非常に高いため、効率化はとても収益性があり、とりわけ、ほとんどの建築物で大きな効果がある。たとえば、京都駅前にある半導体企業「ローム」の本社ビルでは、エネルギー消費量を46%削減、コストは2年で回収した。しかし、東京都の効率化への取り組みなど、いくつかの例外はあるものの、長い間日本の産業を特徴づけてきた「カイゼン」(継続的な改善)が行われている日本のビルはほとんどない。日本の経済と政治の復興には、古い体制を保護するかわりに、新しいエネルギー経済を生み出す自然エネルギー導入とエネルギー効率化への新たな飛躍が必要だ。松尾芭蕉の有名な俳句「古池やかわず飛び込む水の音」に詠まれているように、日本の蛙も飛躍することはできる。だが、いまだ水の音は聞こえてこない。

*3-2:http://www.yomiuri.co.jp/world/20150723-OYT1T50031.html
(読売新聞 2015.7.23) 原発削減法案、仏で可決…依存度50%に
 フランス議会下院は22日、2025年までに原発依存度を75%から50%に下げることを柱とするエネルギー移行法案を可決した。上院は既に通過しており、これで約1年間の審議は終結。世界有数の原発大国は、原発の削減に踏み切ることになる。原発依存度の引き下げは、オランド大統領が12年大統領選で選挙公約として打ち出していた。今回、可決した法案には、代替エネルギーとして、風力や太陽光の再生可能エネルギーや廃棄物のリサイクルなどを進め、3年間で10万の雇用を創出することも盛り込まれた。

<原発地元と核のゴミ処分>
*4-1:http://qbiz.jp/article/65122/1/
(西日本新聞 2015年6月23日)薩摩川内市長、核のごみ「施設内貯蔵は10年間だ」
 再稼働が近づく川内原発が立地する鹿児島県薩摩川内市の岩切秀雄市長は23日の市議会で、川内原発1、2号機の使用済み核燃料の処分をめぐり、「施設内に貯蔵できるのは再稼働後10年間だ。(国内にまだゼロの)最終処分場を国は10年の間に建設すべきだ」と早期建設を促した。市内に最終処分場を受け入れることについては「その考えはない」と明確に否定した。原発から出る高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の最終処分場について、政府は5月、従来の公募方式から国主導で「科学的有望地」を示すように方針を転換した。川内原発の使用済み核燃料の貯蔵率は現在60・4%。岩切市長は処分場の建設は「国が前面に立って取り組むべき国策だ」と強調し、中間貯蔵施設の建設も促す考えを示した。鹿児島県の伊藤祐一郎知事も11日の県議会で「県内に(最終処分場を)立地する意思はない」との考えを示している。

*4-2:http://www.fukuishimbun.co.jp/localnews/politics/74558.html
(福井新聞 2015年7月3日) 「核のごみ処分、受ける義務ない」 知事「福井県は発電」と考え強調
 原発から出る核のごみ(高レベル放射性廃棄物)の最終処分に関し、福井県の西川一誠知事は2日の県議会一般質問で「福井県は発電は引き受けてきたが、処分まで引き受ける義務はない」と述べ、県外で処分すべきだとの考えを強調した。国主導で処分場を選定する政府の新方針については一定の評価をしつつも「政府が道筋を明確に示す姿勢は見えない」と苦言を呈した。山本正雄議員(民主・みらい)の質問に対する答弁。処分場選定はこれまで自治体からの応募に頼っていたが進まず、政府は5月、国主導で「科学的有望地」を提示するなどの新たな基本方針を決定した。知事は昨年4月まで、処分場選定のあり方を検討する経済産業省の作業部会の委員を務め、基本方針のたたき台の議論にかかわった。知事は答弁で、新方針を決めた後の国の動きに関し「全国9都市での公開シンポジウムや自治体向けの説明会を開いているが、内容は今回の改定の経緯や趣旨の説明にとどまっている」と指摘。「政府が実行体制を強化し、いつまでに何を行うのか、道筋をはっきり示すなどの積極的な姿勢が見えない」と批判した。最終処分に関しては、敦賀市の渕上隆信市長も6月の定例会見で「原発に協力してきた自治体に最終処分場まで求めるのはいかがなものか」と述べ、否定的な考えを示している。経産省は処分事業を担う原子力発電環境整備機構(NUMO)と共同で5月下旬から、自治体向けの説明会を各都道府県で開いている。経産省は開催日程や出席自治体などは公表していない。福井県では6月26日に福井市の県自治会館であり、12市町の担当者が参加した。福井市、小浜市、永平寺町、池田町、若狭町の5市町は、議会開会中であることなどを理由に参加を見送った。

*4-3:http://mainichi.jp/select/news/20150527k0000m040157000c.html
(毎日新聞 2015年5月27日) 核のごみ最終処分場:持ち込まない北海道条例 国に反発
 原発から出る高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の最終処分場を巡り、経済産業省資源エネルギー庁が6月1、2の両日、札幌市内で道内市町村を対象とする説明会を開催することが26日、同庁などへの取材で分かった。政府は22日、国主導で処分場選定を行う新しい基本方針を閣議決定しており、説明会でこの方針を説明する。道は、放射性廃棄物を持ち込まない「核抜き」条例を設けていることから、説明会の開催自体に反発の声も出ている。自治体向け説明会は日時や会場、出席自治体名などがいずれも非公表のまま開かれる。既に大阪や神奈川など全国で始まっている。同庁は22日付で参加を呼び掛ける依頼文を道内の市町村に送付した。非公表の理由について、同庁放射性廃棄物等対策室は「出席したり、発言したりしただけで、処分場立地に関心があると誤解される恐れがある」と説明している。国内で唯一、処分技術を研究開発している日本原子力研究開発機構幌延深地層研究センターがある北海道幌延町は、情報収集のため職員を派遣する方針。同町は道条例と同じ「核抜き」条例を定めており、町幹部は「立地に動くことはありえない」と話している。同じく出席予定の道環境・エネルギー室も「情報収集のためであり、条例の方針は変わらない」と説明する。これに対し、処分場建設に反対する同町の鷲見悟町議は「条例で処分場が建設できない道内で説明会を開く必要があるのか。道や町の情報収集も必要ない」と国などの動きを批判している。最終処分場を巡っては、政府は従来、地方自治体が受け入れを表明する「公募方式」を取っていたが、選定方式に変更した。

*4-4:http://www.shinmai.co.jp/news/20150630/KT150629ATI090019000.php
(信濃毎日新聞 2015年6月30日) 核のごみの最終処分地 長野で自治体説明会
 経済産業省資源エネルギー庁は29日、原発から出る高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の最終処分地選定についての県内自治体向け説明会を長野市内で開いた。会合は非公開。出席した自治体によると、処分地を地中深くに設ける「地層処分」を予定していることなどの説明があった。自治体側からは説明の内容の確認以外に目立った質問や意見は出なかったという。政府は5月、最終処分地について、自治体の応募を基に選ぶ従来方針を転換し、「科学的有望地」を国主導で示すことを閣議決定。同庁は同月から、処分事業を担う原子力発電環境整備機構と共同で各地で説明会を開いている。詳しい日程などは非公表。この日も出席した自治体名は「処分地の受け入れに前向きだとの誤解を与えかねない」などとして明らかにしなかった。主催者側によると、県内77市町村の半数ほどが出席した。説明会に出席した同庁放射性廃棄物等対策室の渡辺琢也室長補佐は取材に、「放射性廃棄物の処分の必要性や、最終処分の方向性などを説明した」と述べた。科学的有望地については現在、審議会で基準を検討中で、具体的な地域などは固まっていないとしている。出席したある自治体職員は「(説明会を)非公開にする内容とは思えなかったし、そうするべきだとも思わない」と述べた。別の自治体職員は説明会に出席するかどうか悩んだとし、「具体的な処分候補地の名前などが挙がると困ると思った。(説明会に)来たくなかったというのが、どの自治体も本音ではないか」と話していた。

<企業トップの判断ミス>
*5-1:http://blog.goo.ne.jp/thinklive/e/20d7243b72342850a1310991646be684 (THINKING LIVE シンキングライブ 2013年2月27日)東芝の社長交代の異常、赤字業態を黒字にした社長が退任、会長は残る?
 ボクは今回の東芝の人事は、オカシイナーと思っていたが、世間も可笑しいと思っていることが分かった、特に西田会長の交代原因の説明には、ムリがある。この記事は、PC部門が赤字で減収であり、原発事故が原発部門の打撃となったことに触れていない。この記事そのものも、逃げている感じ。原発買収の際に、米企業の出資で買収資金の不足をカバ-、昨年その出資株の買い戻しに応じたことなど、東芝のWH買収にともなう、大ムリの資金繰りの推移についても記者は詳細をご存知のはず、今朝の、日経は東芝がフィンランドの原発交渉権獲得と報じているが、この事業の筆頭出資社の独、イーオン社は既に撤退を表明、160万kwの大型炉から、中型炉に変更も報じられている、さも原発が決定しそうに報道されているが、5000億円が3~4000億円に縮小しても、この資金調達は今のEUでは出来そうもない?
*東洋経済、13/2/27、
 東芝は2月26日、佐々木則夫(63)社長が新設する副会長に就き、後任に田中久雄副社長(62)が昇格する人事を発表した。6月下旬に開催する定時株主総会を経て就任する。西田厚聰(69)会長は留任する。東芝は4年サイクルでの社長交代が恒例となっており、佐々木社長も「自分の社長就任会見の時、4年間で結果を出せるようにしたいと答えた覚えがある」とコメントしたほど。今回の社長交代は既定路線だが、意外な点が2つある。1つ目は、新社長となる田中氏の経歴だ。パソコンの資材調達や生産を担当し、英国、米国、フィリピンと、海外駐在経験は延べ14年と歴代社長の中でもっとも長い。従業員20万人のうち半分が外国で働いている東芝にとって、田中氏の豊富な海外経験が高く評価されたことは納得できる。副社長に就任後は、戦略企画を担当しグループ全体を見てきた経験もある。一方で、花形部門であるPC畑?の西田会長や原発畑?を歩んできた佐々木社長など歴代社長に比べると、田中氏は資材部出身。西田会長は「東芝は34の事業を抱えており、このうち1事業しか経験していない人が経営するのは大変。経営は総合力なので、様々な分野の経験を持つ田中さんを社長に選んだ」とベタ褒めだが、地味な印象がある。西田会長発言、「利益が出ていても売上高が落ちてはダメ」。
*人事についての質問に、答えるのは全て会長、
 しかし、東芝は、09年3月期に3435億円という過去最悪の最終赤字を計上して最大の苦難に直面していた。火中の栗を拾う形となった佐々木社長は、大規模なコスト構造改革で4300億円の固定費を削って事業立て直しに奔走。11年3月期には過去最高益を計上し、黒字体質を定着させている。減収となった背景には、携帯電話や中小型液晶の事業売却や円高も影響している。それでも会見後、記者団に囲まれた西田会長は「利益が出ていても売上高が落ちていてはダメだ。企業は成長しないといけない」と漏らした。副会長の仕事内容は「会長からの特命事項を担当する」であり、具体的なイメージが湧いてこない。*これは全くオカシナ話だ、副会長は会長の、お傍用人?西田会長は1年後、会長を退いて相談役に就くと明言している。東芝には70歳で役員を退くという不文律があり、これに沿う意向だ。副会長ポストはあくまで過渡的なポジションであることを認めた格好だが、西田氏が会長職にとどまる必要性は最後まで判然としなかった。西田会長は経団連の副会長退任後について、「財界活動が減る分、現場を回って社長をサポートしたい」と意欲を語ったが、財界活動を続ける可能性も十分に考えられる。来年5月には、経団連の米倉弘昌会長(住友化学会長、75)が任期満了となる。3年前に西田会長は経団連会長の候補の1人だったが、東芝の岡村正相談役が日本商工会議所の会長を務めていたことから、2つの経済団体のトップを東芝が努めることにトヨタ自動車が異議を唱えたことで見送られた経緯がある。ただし西田氏は経団連の副会長を退任後、佐々木社長へバトンタッチすることで経団連会長就任の芽がなくなったという見方もある。今回の東芝のトップ人事には、さまざまな思惑が絡み合っているようだ

*5-2:http://jp.reuters.com/article/2012/10/30/tk0541891-hitachi-aquisition-idJPTJE89T00B20121030 (ロイター 2012/10/30) 
日立が英の原発事業会社ホライズン買収、海外展開強化
10月30日、日立製作所は、英国で原子力発電所建設を計画している事業会社ホライズン・ニュークリア・パワーを買収すると正式に発表した。写真は日立のロゴマーク。都内で2009年2月撮影(2012年 ロイター/Yuriko Nakao)[東京/ベルリン 30日 ロイター] 日立製作所(6501.T)は30日、英国で原子力発電所建設を計画している事業会社ホライズン・ニュークリア・パワーを買収すると正式に発表した。買収額は6億7000万ポンド(約854億円)。東京電力(9501.T)福島第一原発事故の影響で国内での原発新設が難しいなか、日立は買収により海外での事業拡大を図る。日立は、ホライズンの株式を保有する独電力・エネルギー大手RWE(RWEG.DE)と同業エーオン(EONGn.DE)から全株式を取得し、11月中に買収を完了する予定。RWEとエーオンは買収額を6億9600万ポンドと発表したが、日立の羽生正治執行役常務によると、その金額にはホライズンが保有する現金が含まれており、現金が両社に戻されるため、日立が拠出する買収費用は2600万ポンド下回る。都内で会見した羽生常務は、買収目的について「発電所を建設する場が欲しかった」と説明。また、当初は出資比率が100%となるが、5年ほどかかると想定している許認可取得後の原発建設時には出資パートナーを募る予定で、最終的には過半数の株式を売却したい意向を示した。高額になる原発建設費用を抑えるとともに、日立が現状では事業として関われない電力会社などのパートナーを探す予定。日立は今後、ホライズンの事業計画を引き継ぎ、英国の2カ所での130万キロワット級の改良型沸騰水型軽水炉(ABWR)を計4―6基建設する。このうち最初の1基は2020年代前半の運転開始を目指す。日立は原発建設と稼働後の保守・管理を請け負う方針。原発建設費用は精査中として公表しなかった。原発の建設費は1基5000億円前後とされており、資金調達の具体的な手段については、財務アドバイザー(FA)のみずほフィナンシャルグループ(8411.T)と米投資銀行エバコア・パートナーズと相談中で、政府系金融機関からの調達も検討する。羽生常務は、投資回収には18年程度かかる見通しで、出資と融資の割合は3対7を想定していると語った。ホライズンはRWEとエーオン2社が出資し、英国で原発事業を展開するため2009年に設立した。しかしドイツ政府が脱原発政策に転じたのを受け、今年3月に売却する方針を表明、買い手を探していた。日立は20年度の原子力事業の売上高を1600億円だった11年度に比べ、約2.3倍となる3600億円に増やす目標を掲げている。日立の受注が内定していたリトアニアでの原発建設計画が10月の国民投票で反対多数となるなど、海外での事業環境も先行き不透明感が強まっており、今回のホライズン買収で海外開拓に弾みをつけたい考えだ。

*5-3:http://headlines.yahoo.co.jp/videonews/jnn?a=20150722-00000017-jnn-pol
(JNN 2015年7月22日) 政府、中国のガス田開発で新たな証拠写真公開へ
 日本と中国が共同で開発することで合意している東シナ海のガス田開発を巡り、日本政府は、中国が合意に反し、一方的に開発を進めているとして、その証拠を示す航空写真を22日に公開することにしています。「一方的な開発には抗議してきているので、そうしたことも含めて最終調整をして、現状を明らかにしていきたい」(菅 義偉 官房長官)。東シナ海のガス田開発を巡っては、2008年に当時の福田総理と中国の胡錦濤国家主席との首脳会談を受けて、共同開発を行うことで合意しました。しかし、2010年の沖縄県・尖閣諸島沖の中国漁船衝突事故などで交渉がストップし、その間に中国側が「白樺」ガス田の天然ガス掘削施設を完成させたことなどが判明しています。外務省幹部は「日中関係改善の流れがある中で、一方で、逆の動きがあることは遺憾だ」と中国側に不快感を示しているほか、別の幹部は、写真を公開する理由について「中国側をけん制する狙いがある」と説明しています。中国のガス田開発については21日、閣議報告された「防衛白書」の中で「中国側が一方的な開発を進めていることに対して、我が国から繰り返し抗議をすると同時に、作業の中止を求めている」と説明されています。


PS(2015年8月1日追加): 資源エネルギー庁は、長期の全体見通しを立てて判断をすべきだったにもかかわらず、それをせずに日本のエネルギー自給率を下げ続けてOECD諸国最低にし、うなぎ上りに値段の上がっている原油と高い原発に頼って、単価を下げることが可能な太陽光発電を妨害し、日本のエネルギー価格を高止まりさせた戦犯である。そのため、*6のように、資源エネルギー庁の幹部に、「皆さんの持っている知識を知らしめてください」と言うのは、よほどの東大コンプレックスだろう。しかし、世の中にはいろいろな専門家がおり、「東大法学部卒→官僚」は足元にも及ばない知識を持っている人も多いため、「真実の情報を伝えること」や「言うこと」が勇気のいる大切なことであり、そのようなことにこそ「言論の自由」や「表現の自由」が保障されなければならないのだ。

    
   日本のエネルギー自給率推移と       原油輸入単価と太陽光発電単価の推移
    OECD諸国における位置

*6:http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2015073002000254.html
(東京新聞 2015年7月30日) 反原発コメンテーターを「個別撃破」 大西議員、エネ庁幹部に要求
 自民党の大西英男衆院議員(写真、東京16区)は三十日午前、党本部で開かれた原子力政策に関する会合で、原発に批判的なテレビのコメンテーター(解説者)らに関し「個別にどんどん正確な知識を知らせていくべきだ。各個撃破でいいからぜひ行って、皆さんの持っている知識を知らしめてください」と資源エネルギー庁の幹部らに求めた。大西氏は六月、党の勉強会などで安全保障関連法案をめぐり「誤った報道をするマスコミには広告は自粛すべきだ」などと、報道機関に圧力をかける発言を繰り返し、谷垣禎一幹事長から二度にわたり厳重注意を受けたばかり。昨年は国会で女性蔑視のやじを飛ばして謝罪している。大西氏は会合で「安保法制が一段落つけば、九州電力川内(せんだい)原発がようやく再稼働になるが、こういった(再稼働)問題にマスコミの攻勢が行われる」と指摘。解説者らの発言を「ことさら原発再稼働反対の意思を表示している。一般の人たちが聞くと、あたかも日本のエネルギー政策は間違っているというとらえ方をしかねない」と述べた。


PS(2015年8月2日追加):考えたくないことは考えずに“想定外”と説明してきた東京電力福島第一原発事故だが、*7のように、「高さ15.7メートルの津波が襲う可能性があるという試算は、2009年6月までに報告されたにもかかわらず必要な措置を怠って重大な事故を発生させた」という理由で、東電の元3幹部が強制起訴された。検察審査会は、議決で「原発事業者は『万が一にも』発生する津波、災害にも備えなければならない高度な注意義務を負う」と指摘しており、過酷事故の存立危機事態を招く程の大きさを考えれば、私もそう思う。そして、川内原発も、周囲に活火山が多いため、万が一を考えるべきだ。

*7:http://www.tokyo-np.co.jp/article/feature/nucerror/list/CK2015080102100004.html (東京新聞 2015年8月1日) 東電元3幹部 強制起訴へ 「原発 万が一に備える義務」
 東京電力福島第一原発事故の刑事責任をめぐり、東京地検が二度不起訴とした東電の勝俣恒久元会長(75)ら旧経営陣三人について、東京第五検察審査会は三十一日、業務上過失致死傷罪で起訴すべきとする二回目の議決を公表した。三人は今後、裁判所が指定した検察官役の弁護士が強制的に起訴する。市民の判断により、原発事故の刑事責任が初めて裁判で問われる。選挙権のある国民から選ばれた審査員十一人による議決で、七月十七日付。他に起訴議決が出たのは、武藤栄(さかえ)元副社長(65)と、武黒(たけくろ)一郎元副社長(69)。検審は議決で、「原発事業者は『万が一にも』発生する津波、災害にも備えなければならない高度な注意義務を負う」と指摘。勝俣元会長らを「福島第一原発に高さ一五・七メートルの津波が襲う可能性があるとの試算結果の報告を、遅くとも〇九年六月までに受けたが、必要な措置を怠り、津波による浸水で重大な事故を発生させた」とした。東電は〇七年七月に柏崎刈羽原発事故などを経験し、原発が浸水すれば電源を失って重大事故が起きる危険性を把握していたとも指摘。勝俣元会長らは福島第一原発でも地震と津波による事故発生を予測でき、運転停止や防潮堤の建設などの対策を取れば、事故を避けられたと結論づけた。事故では、近隣病院の入院患者が避難を余儀なくされ、衰弱死するなどした。検審は、原発の建物が爆発した際に負傷した東電関係者や自衛官ら計十三人と、死亡した患者計四十四人を被害者と判断した。被災者らでつくる「福島原発告訴団」は一二年六月、勝俣元会長らを告訴・告発。東京地検は一三年九月、津波は予測できなかったとして、捜査対象の四十二人全員を不起訴にした。検審は昨年七月、元会長ら三人を「起訴相当」と議決。地検は今年一月に再び不起訴とし、別メンバーによる検審が再審査していた。


PS(2015年8月3日追加):*8に書かれているとおり、原発過酷事故の際の被害地元は広大な地域であるため、その地域の人は、その時の対処方法を確認しておく必要がある。しかし、原発の過酷事故は、一時的に避難すればよいというような甘いものではなく、熊本県、宮崎県、鹿児島県に住めなくなったり、農水産物が食べられなくなったり、高天原(@宮崎県高原町)に行けなくなったりするのだということを忘れてはならない。にもかかわらず、鹿児島県と薩摩川内市以外の同意はいらないとするのは、再稼働のための便宜でしかない。

       
    2015.8.3、7.7      2015.7.8  過酷事故時の汚染地図 
      東京新聞        西日本新聞    (フクイチ、大飯)
*8:http://www.tokyo-np.co.jp/article/economics/news/CK2015080302000117.html
(東京新聞 2015年8月3日) 川内原発 迫る再稼働 鹿児島県外から説明会の要請続々
 九州電力川内(せんだい)原発1、2号機(鹿児島県)の再稼働が迫るなか、九電に公開の説明会を求める声が、鹿児島県外にまで広がっている。宮崎、熊本両県では、四つの市町議会が決議などの形で意志を表明した。だが、九電は求めに応じていない。原発から七十八キロ東の宮崎県高原(たかはる)町。川内原発がある西からの風が吹くことも多く、市民グループが原発近くから風船を飛ばした実験では、三時間後に町内で拾われたこともある。議会は「事故時に原発の風下になれば、町は壊滅的被害を受ける。まさに『被害地元』そのもの」と主張。説明会を求める文書を九電に送った。中村昇町議(63)は「放射能は県境に関係なく飛んでくる。このままの再稼働は許されない」と焦りをにじませる。隣り合う鹿児島県出水(いずみ)市から避難住民を受け入れる計画の熊本県水俣市では、同議会が「(福島では)いまだ十二万人が故郷を奪われたままなのに、原因の究明は中途半端。市民が不安なまま再稼働に踏み切るのは無責任だ」と安易な再稼働を批判するとともに、説明会を求める決議をした。原発まで百三十キロほど離れた熊本県荒尾市と大津(おおづ)町の議会はいずれも、福島の事故当時、政府が二百五十キロ圏まで避難が必要になる最悪のケースを想定していたことを指摘。「川内原発にあてはめれば九州全域がすっぽり入り、全県が避難の対象になる。説明会は当然」などと訴えた。鹿児島県内では三月以降、原発から約百七十キロ離れた屋久島町議会など六市町議会が九電に説明会を求めてきたが、九電は「個別の要請に応じて話はしている」と、公の場での開催を避けている。


PS(2015年8月5日追加): 8月6日のヒロシマ原爆の日直前の8月5日に原子力規制委が川内原発再稼働の認可を行い、8月9日のナガサキ原爆の日翌日の8月10日に九州の川内原発を再稼働するというのは、唯一の被爆国として皮肉なことだ。また、国の存立をも脅かす規模になるため、決して過酷事故を起こしてはならないリスク機器の運転延長を認めるというのも常識はずれだ。さらに、このような場合に「原発事故の確率は0ではない」などと小賢しげに居直るのは、総合的判断力のない馬鹿である。 ぷん

*9:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/215629
(佐賀新聞 2015年8月5日) 川内再稼働「法令違反だ」 脱原発団体、国会内で集会
 脱原発を掲げる各地の市民団体の代表らが九州電力川内原発1号機(鹿児島県)の再稼働反対を訴える集会が4日、国会内で開かれた。参加者は「運転開始30年を超えて稼働する際に必要な認可手続きに不備があり、法令違反だ」と主張し、説明に訪れた原子力規制庁の担当者に、再稼働延期を申し入れた。九電は、早ければ今月10日に原子炉を起動させ再稼働する方針。集会に参加した各団体は5日、原子力規制委員会前で抗議集会を開く。川内1号機は7月で運転開始から31年。集会に参加した「原子力規制を監視する市民の会」の阪上武代表は「30年を過ぎる前に認可を得る必要があるが、まだ認可がなく、法的に問題がある」と指摘。「規制委は再稼働の日程に間に合わせるため、慌てて5日に認可しようとしている。率先して電力会社を手助けしているとしか思えない」と批判した。


PS(2015年8月8日追加):*10-1のように、特定の理論物理の専門家が、「再生可能エネルギーは蓄電技術が不十分なため、千年先を考えると原子力に代わるエネルギー源があるとは思えず、最終的には核融合発電しかない」などとしているのは、畜電技術は水素燃料や蓄電池の改良などが着々と進んでいる中で、お手盛りの論理の飛躍が過ぎる。また、「一般市民は、発作的に脱原発を訴えている」などとしているのも増長し過ぎで、一般市民は素粒子馬鹿ばかりではないため多面的に検討しているのだ。なお、*10-2のように、既に太陽光発電の普及や節電技術の進歩で猛暑でも電力にゆとりが出ており、日本は自然エネルギーの豊富な国であるためドイツよりも条件が良く、数十年単位や千年単位ではなく数年単位で実現可能なのである。

       
     8月5日の各社       2015.8.8朝日新聞  川内原発周辺の  審査中の原発
     電力使用状況         (*10-2)      医療・福祉施設  

*10-1:http://qbiz.jp/article/68518/1/ (西日本新聞 2015年8月8日) 【再考〜原発再稼動 識者インタビュー】(終)京都産業大教授・益川敏英氏
◆現実的視点が不可欠
−原発についてどう考えているか。
 「化石燃料は、あと300年ほどで枯渇する。シェールガスやシェールオイルの開発が進んでも、枯渇時期が100年ほど延びるだけで、いずれ化石燃料に代わるエネルギー源が必要になる。最終的には核融合発電だろうが、技術的問題が残っている。再生可能エネルギーも蓄電技術が不十分なため、安定的に利用できない。千年先を考えると、原子力に代わるエネルギー源があるとは思えない」
−川内原発(鹿児島県薩摩川内市)が再稼働に向け最終段階に入った。原発再稼働についての考えは。
 「福島第1原発事故が起きたように、原発はまだ安心して使える電源ではない。使用済み核燃料をどう処分するか、という難題も抱えている。国内に既にたまっているプルトニウムで大量の核爆弾が製造できてしまうのは、怖いことだ。火山と地震が多い日本で、核のごみを地中に埋める処分方法が適切とは思えない。原発は非常に難しい問題を抱えている」 「それでも、背に腹は代えられないというべきか、原発を再稼働するよりほかに方法がないと思う。ドイツは脱原発にかじを切ったと言われるが、リスクや責任を周辺国に転嫁しているだけだ。最も怖いのは、将来的に原子力の人材がいなくなる事態だ。原子力研究はかつて花形だったが、学生の人気が落ちつつあるようだ。一流の技術者が育たなくなれば、原子力は余計に危なくなってしまう」
−国民世論の多くは脱原発を望んでいる。
 「福島の事故を受け、一般市民が不安を覚えるのは当然の反応だが、多くの人が発作的に脱原発を訴えているのは問題だろう。エネルギーは誰もが使わざるを得ない。長期的な視点とリアリズム(現実主義)が不可欠だ」
−長期的には、再生エネの普及拡大が期待できるのではないか。
 「基本的に電気はためられないことが、ネックになっている。大量かつ安価にためられる電池技術が確立され、太陽光や風力を増やせれば、ある程度の問題は解決できる。だが、エネルギー問題は一筋縄にいかない。民間主導、商業ベースでの技術開発には限界がある。原発にしろ再生エネにしろ、300年後を見据えて課題を抽出し、国家プロジェクトとして継続的な研究に取り組む必要がある」

*10-2:http://digital.asahi.com/articles/ASH875HWYH87ULFA01Y.html?iref=comtop_6_02 (朝日新聞 2015年8月8日) 太陽光発電の普及・節電定着…猛暑でも電力にゆとり
 東京都心で7日、最高気温35度以上の「猛暑日」が過去最長の8日連続となるなど、各地で記録的な猛暑が続くなかで、大手電力各社は比較的余裕のある電力供給を続けている。すべての原発は止まったままだが、太陽光発電の普及や節電の定着で、真夏の電力不足の心配は遠のいている。電力供給にどれだけ余裕があるかは、その日の電気の供給力と、一日で最も電力の需要が多いピーク時を比べた「最大電力使用率」でわかる。東京電力や関西電力の場合、これが90%以上だと電力の余裕が「やや厳しい」、95%以上だと「厳しい」とされる。100%に近づくと、必要な電力に供給が追いつかず、停電の恐れがでてくる。7日までの1週間で、東京、中部、関西、九州各電力の最大使用率をみると、95%以上になったのは1日の中部電だけだった。東電では90%以上が4日あり、あとは90%未満の「安定的」だった。関電と九電は震災前に原発依存度が高く、今夏も綱渡りの供給が心配されたが、この1週間、関電で90%以上となったのは8月3日の1日だけ。九電はゼロだ。やはり猛暑だった2013年、関電は7~8月の2カ月間で90%以上が22日間あり、最大使用率が96%に達した日もあった。余裕ができた背景には、電力供給の変化がある。東日本大震災後、安定した電力の供給源だった原発が止まったことで、電力各社は老朽化で止めていた火力発電所もフル稼働するなどして供給力を維持したが、夏場の電力需要のピーク時の供給には不安があった。だが、再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度(FIT)のもと、太陽光発電の導入量がこの5年間で10倍近くに急増。晴れた日に発電量が多くなる太陽光が夏のピークに対応し、電力供給の安定につながっている。一方で、夏のピーク時の電力需要も、震災前と比べて十数%ほど少ない。LED照明への切り替えなど、企業や家庭で節電の取り組みが広がっているためだ。九電は11日にも、川内原発1号機(鹿児島県)の再稼働をめざしている。猛暑続きでも電力供給にゆとりがある日々が続いていることは、再稼働の是非をめぐる議論にも影響しそうだ。


PS(2015年8月10日追加):*11-1には、「安全か振興か」として、地域の安全と経済や振興が二者択一であるかのように書かれているが、他産業の誘致や移住促進を行うためには安全が前提であるため、地域振興は安全の上にしか成り立たない。それに対し、「原発が停止して、受注減で原発関連会社の経営が悪化した(原発関連業者)」「怖いけど『安全』という九電や国を信じて受け入れるしかない(原発作業員向け民宿の女性)」など地元の原発関係者の再稼働賛成意見が掲載されているが、このように一部の人が自分の利益にしがみつくと、地域全体が先進的な新しい事業を始めたり、次のステップに進んだりするチャンスを逃すのである。
 さらに、*11-2のように、長期間の原発停止で、原発の温排水による生態系の破壊が、磯焼けや漁獲高の減少によって水産業に著しく迷惑をかけていたことが明らかになった。このほか、原発が平時から一定量の放射性物質を排出している公害源であることは、前にこのブログに記載したとおりだ。

    
     *11-1より    2014.3.11東京新聞    2014.12.20そもそも総研

*11-1:http://qbiz.jp/article/68551/1/ (西日本新聞 2015年8月10日) 安全か振興か葛藤なお 再稼働目前川内原発の街 「手放しで喜べない」
 福島第1原発のような事故が、いつか起きるかもしれない。でも原発が止まったままでは、この街の生活は成り立たない−。九州電力川内原発(鹿児島県薩摩川内市)の地元では、11日の再稼働が目の前に迫った今もなお、住民たちが「安全」と「経済」のはざまで揺れている。「手放しで喜ぶ雰囲気はない」。川内原発の安全対策工事を請け負う地元企業の作業員男性(59)は、職場の様子を打ち明けた。原発が停止して4年。受注減で会社の経営は悪化し、ボーナスは減少した。リストラの計画もあった。再稼働は待ち望んでいたはずだった。
 なぜ喜べないのか。男性は「福島事故で、原発の現場でも『事故は起こり得る』と考えるようになったから」と話す。手掛けた工事に自信はあるが、想定外の何があるか分からない。就職して32年。原発のおかげで家を建て、子どもも育てた。安全に疑念を抱いたのは初めてだ。原発の南6キロにある自宅には、父親(91)と母親(88)が同居する。ともに足腰が弱く、事故が起きても迅速な避難は難しい。「原発は絶対の技術ではない。早く自然エネルギーにバトンタッチしないと」。原発の東11キロ。旅館やホテルが軒を連ねる薩摩川内市の中心街で、民宿の女性(83)は「怖いけど『安全』という九電や国を信じて受け入れるしかない」とうなずいた。13カ月おきにある原発の定期検査で全国から来る作業員を見込み、27年前に開業した。検査で1カ月半の間は50人収容の宿が満室になった。運転停止後は1日10人前後。4人のパートを半減させ、貯金も取り崩した。ひとたび原発事故が起これば、福島のように地域は崩壊するだろう。「結局、九電さまさまなんよ。川内は『原発の街』だから」。経営を考えると再稼働に期待するしかない。原発を望む海岸では9日、再稼働反対を唱える集会があり、全国から集まった2千人(主催者発表)が「国民の大半は再稼働に不同意だ」とデモ行進した。参加者で、原発の南東8キロに住む主婦馬場園征子さん(74)は憤る。「地元でも、もろ手を挙げて賛成する住民は少ない。一部の権力者の意向だけで進む再稼働に納得できない」

*11-2:http://d.hatena.ne.jp/TAKAO100000/20140414/1397493520
(元高槻市議会議員 和田たかお 2014-4-14) 原発停止で海の生態系に劇的変化が起こっている
 今、日本国中の原発がすべて止まっている。2014年4月12日のMBS「報道特集」は、原発の長期間停止で、その周辺の海に大きな変化が起こっていることを特集していた。その場所の一つは、6月末にも原子力規制委員会の審査が終わり、8月にも再稼働と「産経」が報じている川内原発の南部、いちき串木野市北西部の海だ。川内原発が出来てから、この地区の羽島漁協定置網漁の水揚げは20年で数分の1になったという。これは海藻がなくなったからだという。ところが、原発が2年半稼働停止になっている間に、海藻が生育できる状況に少しずつ変化が生じ、磯辺でもひじきが生育し始めているという。海水温が原発からの温排水で暖められていたのがなくなったのが原因と推定されている。佐賀県の玄海原発周辺でも事情は同じ。2006年に調査したときは全く海藻が生えていなかったのに、現在では海底に少し海藻が生えてきているという。海藻は暖かい海では生育できないのだ。魚も変化している。原発稼働中は南の海の魚が生き残れることで、色鮮やかな魚やキビナゴなど暖かい海に生息する魚が多かったが、それがいなくなっている。若狭湾の原発でも事情は同じ。ここでは京都大学の益田玲爾准教授が。高浜原発近くの海で10年間潜水調査を継続されていた。益田先生によると、高浜原発稼働停止から数日間で、寒さで息絶えている魚を見たと言われる。また、ここでも現在海藻の一種ホンダワラなどが生い茂り始めている。サザエやムラサキウニなどの原発稼働前に生息していた生物が復活、稼働中に見られたガンガゼ(ウニの一種)も稼働停止後2週間で死に、1ヶ月後には長いとげしか残っていなかったという。原発周辺の海は水温が2度高くなっていたのだ。人間にとって空気中の2度はどうにでも調整できるが、魚にとっては生死を分けてしまう水温なのだという。益田先生は火力発電所でも同じ研究をなさっているが、海に変化は起きていなかった。これらの事実から考えても、如何に原発が自然環境を破壊するものなのかよくわかる。原発を「エネルギー基本計画」の中で、ベースロード電源として位置づけ、再稼働に向けてまっしぐらに進む安倍政権の危険性が示されていると言うべきだろう。

| 原発::2015.4~10 | 02:05 PM | comments (x) | trackback (x) |
2015.7.16 安いと主張されている原発コストの嘘と、原発事故の処理費用、廃炉費用、核のごみ処理費用について (2015年7月17、22日追加あり)
    
2015.5.27 2015.7.2   経産省原発コスト     エネルギー構成  2030年 
朝日新聞   朝日新聞                                コスト予測

    
 2015.7.3   2015.7.7        2015.7.3         2015.7.8
 河北新報    西日本新聞       西日本新聞         西日本新聞

(1)脱原発の方が合理性があること
 上図及び*1-1のように、経産省は2030年の電源構成を、発電量に占める原発の割合が、現在でも0であるにもかかわらず、「①コストが安い」「②CO2を出さない」などの理由で、20~22%と設定した。しかし、太陽光発電は、九電が買取制限をかけるまで等比級数的に伸び、九州だけで現在でも原発5基分に達しており、大量に生産すればするほどコストが安くなる性格のものである。

 しかし、経産省は、「電気料金の値上がりで家庭や企業の負担がさらに増えれば、経済成長にマイナス」とし、原発の発電コストは1キロワット時で10.3円以上とした。これは、i)過酷事故への対応費を過小に見積もり ii)過酷事故が起きる確率を過小に仮定し iii) 建設中のフランスやフィンランドの原発と比較して、原発の建設費を過小に見積もり iv)自然エネルギーの普及を止めて次のステップへの技術進歩を妨害し v)その結果、本当の経済成長を妨害している。つまり、経産省の理由づけは、原発ありきの電源構成を導くためのものなのだ。

(2)川内原発再稼働最終段階 !?
 そのような中、*1-2のように、九電は7月7日、原子力規制委員会の審査に適合すると認められた川内原発1号機(鹿児島県薩摩川内市)の原子炉に核燃料を装填する作業を始め、8月10日頃に原子炉を起動して、8月13日前後に発送電を開始して再稼働する予定で、2号機についても10月中旬の再稼働を目指し、これは電力不足を理由とした政治判断とのことだが、この発想が極めて古いのである。

 しかし、*1-3のように、九電内部では原発再稼働で大幅な収支改善効果が期待できるという安堵感が広がったということであるため、今後(二度目の過酷事故以降)は、過酷事故の損害賠償もすべて電力会社の負担にすべきである。そうしなければ、国民負担で有害な古い技術の補助をして先進的な技術の足を引っ張り、原発再稼働は収益力を強化するという誤ったメッセージが株主や国民に蔓延して公正な競争にもならず、次々と原発の再稼働が進むことになるからだ。

 さらに、*1-4のように、川内原発1号機が昨年7月に運転開始から30年を迎えたが、原子炉等規制法は30年を超えて運転する場合も原発再稼働認可の条件にはしていない。これに対し、市民団体や野党国会議員から認可なしの再稼働に批判が相次いだそうだが、危機管理に対する人の対応の甘さも含めて、日本は原発を使うべき国ではないのである。それでも、政治・行政は迅速で的確な意思決定ができないため、*1-5のような運転停止の可能性もある司法判断が期待される。

 なお、*1-6に、「原発は倫理的存在か」という記事があり、i)使用済核燃料が原発の高い場所に大量に保管されている ii) 使用済核燃料の処理・処分技術すら確立されていない iii)自分で処理・処分できないものを「他人任せ」にして成立している技術だ などが挙げられ、面倒なことは他人に任せで自分だけが利得を得る態度が倫理的問題だとしている。私は、使用済核燃料の問題も非常に大きいが、核燃料は作る時も、運送する時も、使用する時も人間に被曝を強いるため、使わないのがBestだと考える。

 また、*1-7のように、原発の運転開始から30年以上経過しながら、これまで廃炉などの後始末に道筋をつけずに原発を推進し、今になって廃炉のため克服しなければならない課題が山積しているなどというのは、他の技術ではあり得ないことだ。経産省は、*3-4のように、核のごみの最終処分場に追加財政支援の意向を示しているが、そもそも交付金は、電力会社や原発由来の電力を使用する者が負担するのではなく、税金によって将来も長く賄われる原発のコストだという認識を明確にすべきである。
 
 それにもかかわらず、「原発はコストが安いから、再稼働が必要」などと言う人がいるのは勝手極まりなく道徳に反するし、福島第一原発事故による帰還困難区域、遠くの無人島、深海など、問題の少ない候補地は多いにもかかわらず、発電もしない核のゴミを分散して処理し、膨大な税金を投入しようとしているのも、倫理観に欠ける。

(3)原発事故の賠償
 *2-1のように、東電福島第一原発事故を機に、富山県内の主婦らでつくる市民団体「とやま原子力教育を考える会」が、放射線の危険性や事故の歴史を盛り込んだ中高生向けの冊子「私たちの放射線副読本」をまとめたそうだが、*2-2のように、一般には現在でも放射線の人体への影響を過小評価する教育や政策が行われているのは愚かなことである。

 フクシマの場合は、初めての過酷事故だったため国が責任を持つのも仕方がないが、まさに*2-3のように、東電は賠償額を計7・1兆円と見積もり、これは従来の見通しより1兆円程度増額した。しかし、私も、*2-4のように、住民の健康を守るためには予防しかないため、避難指示解除は、年間の追加被ばく線量が1ミリシーベルト以下であることが確認された地域から慎重に行うべきであると考える。そのため、本当に被害がこれですべてであるとは思っていない。

(4)核廃棄物の処理と最終処分場について
 *3-1のように、スウェーデンでは、エストハンマル自治体のフォルスマルク森の地下450メートルに、原発から出た使用済核燃料を埋め立てる最終処分場ができるそうだ。それは、地層処分で、安全なレベルになるまでの約10万年間、地下深くで保管する手法である。また、*3-2のように、原子力大国のフランスでも、人類の難題「核のごみ」を巡る議論が続いており、未解決である。

 そして、*3-3のように、日本でも原発での使用済核燃料の保管は危険であり、既に余裕もないが、処分場の選定は難航している。私は、日本でも地層処分が最も安全だと思っていたが、国土が狭く温暖で地下水が豊富な日本では適地が少ないため、これでは収益を生まないごみの処分にカネがかかり過ぎ、陸上で候補地を探すのも困難であるため、これ以上の核廃棄物を決して出さないという条件付きで、核廃棄物が絶対に外に漏れない厳重な容器に入れ、8000メートル以上の深海の水が殆ど動かない場所に沈める方法もありではないかと考えている。

(5)九電川内原発と地震・火山
 東電福島第一原発は、津波に関する専門家の意見を無視したため、過酷事故を起こし、取り返しのつかない損害を与えた。しかし、*4-1の九電川内原発(鹿児島県薩摩川内市)は、*4-2のように、「地震・火山対策が不十分だ」と、地震・火山学者が懸念を表明しているにもかかわらず、無視している。 

 鹿児島市から12日間かけて歩いてきたリレーデモ隊も、九電側と小競り合いになり、警察が出動してデモ隊を抑制することになっている。原発の再稼働を心待ちにする事業者というのは、どういう事業者かわからないが、地震・火山など50の学会・協会で組織する「日本地球惑星科学連合」が多くの問題を指摘しているのをどう受け止めているのだろうか。

 そのような中、*4-3のように、同じ火山帯に属する鹿児島県口永良部島新岳が噴火し、これは、マグマ噴火だそうだ。マグニチュード9クラスの地震が起きた周辺で火山噴火が多くなるのは世界的な傾向で、東日本大震災で列島の地殻に加わる力が変わったためとすれば、今後も規模の大きいマグマ噴火が起こりうると考えねばならず、九州とその南の沖合では過去、破滅的なカルデラ噴火が繰り返され、7300年前の薩摩硫黄島噴火では、火砕流が九州内陸や屋久島にまで達したとのことである。

(6)地元の範囲と国民の意見
 *5-1のように、宮台真司首都大学東京教授と杉田敦法政大教授を代表として、「原発の是非で国民投票をしよう」と呼びかける署名が16万筆集まり、また、*5-2のように、玄海原発の地元である佐賀県でも、元佐賀大学学長の長谷川照氏を団長として県内外の市民が、国と九州電力に玄海原発全4基の操業停止を求めて訴訟しており、新たに270人が追加提訴して原告数が9396人になったそうだ。

 *5-3のように、ナガサキでも、「さようなら原発1000万人アクション・ナガサキ」などが主催して、「さようなら原発ナガサキ集会」が、長崎市平野町の長崎原爆資料館ホールで開かれ、約300人が再稼働反対の思いを一つにし、「一体何度『ノーモア』を繰り返せばいいのか」と脱原発を呼び掛けたそうだ。

 なお、*5-4のように、伊万里市の塚部芳和市長は、玄海原発の再稼働を同意する際の「地元範囲」に伊万里市など玄海原発から30キロ圏内を含めるよう要望することを明らかにしているが、30キロ圏内のみならず、原発事故で被害を受ける地域に同意権があるのは当然のことである。

 *5-5のように、四国電力伊方原発3号機が新規制基準に適合しているとした原子力規制委員会の決定に、原発から海を挟んで約45キロに位置する大分県で漁業関係者らが不安を募らせているが、魚は「風評被害」ではなく実際に放射性物質を含み、人体に被害をもたらずだろう。原発のために瀬戸内海の海産物や四国・九州の農産物を台無しにしては、食料自給率や輸出どころの話ではなくなるため、日本の大半の食品に核廃棄物のマークがつく前に、考え直すべきである。

<脱原発の合理性>
*1-1:http://digital.asahi.com/articles/DA3S11836647.html
(朝日新聞 2015年7月2日) (教えて!電源構成:1)原発コスト、本当に最安?
 15年後の2030年、私たちが使う電気をどのように賄うのか。政府がまとめた電源構成(エネルギーミックス)案は、発電量に占める原発の割合を約2割とし、太陽光や風力は期待されたより抑える内容でした。そんな政府案の課題を8回にわけて読み解きます。初回は原発の発電コストは本当に安いのか―。
■事故頻度、半減見立て
 電源構成とは、全体の発電量に占める最適な電源の組み合わせをまとめたもので、政府は3~5年ごとに見直している。日本は火力に使う燃料の大半を輸入に頼っており、長期の資源調達や設備投資計画を考えておく必要があるからだ。政府は30年度の電源構成を決めるにあたり、「負担増をできるだけ抑える」方針でのぞんだ。電気料金の値上がりと並んで消費増税などの負担増が本格化しており、家庭や企業の負担がさらに増えれば「経済成長にマイナス」と考えた。経済産業省が電源ごとの発電コストを試算したところ、原発は1キロワット時で10・3円以上となり、主要電源のなかでは石炭火力の12・9円、水力の11・0円より安くなった。ここから、負担増を抑えるには「最安」の電源に頼るしかないという理屈で原発は2割必要と結論付けた。「原発比率を高くすれば、すべてが解決する」。宮沢洋一経産相は6月の会見で強調した。東京電力の福島第一原発事故は、いったん原発で過酷事故が起きれば、取り返しのつかない被害が生じることを世界中に知らしめた。それでも原発が最安とされたのはなぜなのか。からくりのひとつは、大きな事故に備えた「事故リスク対応費」にある。ここに含まれる廃炉や損害賠償、除染などの損害費用は、前回の11年時に試算した5・8兆円から9・1兆円に増えはした。ただ、これは経産省も認める「下限」の金額。事故を収束させる見通しが立たないなかで、実際の損害費用は大きく膨らむ可能性が高い。さらに、震災後の新規制基準に基づいて安全対策などが実施された結果、炉心損傷などの過酷事故が起きる回数は対策前より「ほぼ半減した」と見立てた。前回は、50基の原発をベースに「40年に1回」の頻度で事故が起きるとしていたが、「80年に1回程度」に減る計算だ。経産省が「半減」の根拠にしたのは、原子力規制委員会の審査で扱われた事故の「リスク評価」。震災前からの対策などを除いた状態の原発で、どんな原因で心臓部の炉心が損傷し、どのぐらいの頻度で起きるかを分析。安全対策によって事故の可能性がどれだけ減るかを試算したものだ。九州電力は規制委の審査で、再稼働を目指す川内原発(鹿児島県)の事故を起こす頻度が、一つの安全対策で「6割以上減る」との試算を示していた。経産省はこうした電力会社の試算などから、事故頻度はほぼ半減すると追認した。事故対応費は、損害費用を80年に1回程度という事故頻度で割り、それをさらに年間発電量で割って1キロワット時のコストを計算する。その結果、対応費は前回の0・54円から、ほぼ半減の0・3円になった。だが、事故頻度の試算結果を対応費と直接結びつけることには、規制委内でも「違和感がある」との声がある。専門家の一人は「損害費用がどんなに膨らんでも、半減した事故頻度で割れば、たいした被害ではないと言うに等しい結論になる」と指摘する。
■建設費、甘い見積もり
 建設費などの「資本費」にもからくりがある。経産省が試算した建設費は1基あたり4400億円。東北電力東通原発など国内で比較的新しい原発をベースにしたとはいえ、事故前の仕様だ。海外では、原発の建設費は右肩上がりで、日本原子力産業協会によると、建設中のフランスやフィンランドの原発は1基あたりの見積もりが、当初の2・5倍の1兆円超になっているという。原発に詳しい立命館大学の大島堅一教授は、海外の原発は安全性をより高めた最新型で建設費が高くなったとみる。「少なくとも、海外で原発の建設コストが上がっていることの検証が欠かせない」と指摘する。

*1-2:http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2015070702000273.html (東京新聞 2015年7月7日) 川内原発、7日午後に核燃料装填 検証不十分 最終段階に
 九州電力は七日午後、原子力規制委員会の審査に適合すると認められた川内(せんだい)原発1号機(鹿児島県薩摩川内市)の原子炉に核燃料を装填(そうてん)する作業を始める。その後の検査で問題がなければ八月十日ごろに原子炉を起動し、同十三日前後に発電と送電を開始して再稼働する予定。2号機についても十月中旬の再稼働を目指す。燃料装填により再稼働に向けたプロセスは大詰めを迎える。今後の作業が順調に進めば、東京電力福島第一原発事故を受けて二〇一三年七月に施行された新規制基準に適合した原発として初の運転再開となる。宮沢洋一経済産業相は七日の閣議後の記者会見で「やっとここまで来たかとの思いだ」と述べた。九電によると、川内1号機に入れる核燃料は計百五十七体で、原子炉建屋に隣接する使用済み核燃料プールからクレーンで移動させて原子炉容器に装填する。作業は全て水中で行い、終了までに四日程度かかる見通し。規制委は昨年九月、川内1、2号機が新規制基準に適合していることを認める「審査書」を決定。作業が先行する1号機では今年三月に使用前検査が始まり、今月三日に核燃料の装填に必要な検査が終わった。規制委は燃料装填後も検査を継続し、冷却系配管などの設備に不具合があれば九電に対策を求めるため、再稼働時期がずれ込む可能性もある。九電は今後、重大事故を想定した訓練を実施し、問題がなければ原子炉の起動試験に移る。東日本大震災以降、電力不足を理由とした政治判断で一二年七月、関西電力大飯(おおい)原発3、4号機(福井県おおい町)が再稼働したが、一三年九月の定期検査入り後、国内の全原発が停止している。
◆九電、自治体に説明せず
<解説> 火山の巨大噴火リスクや周辺住民の避難計画の不十分さなどいくつも重要な問題が山積したまま、九州電力川内原発1号機(鹿児島県)が、再稼働に向けた最終段階に入った。川内原発は、桜島を中心とした姶良(あいら)カルデラをはじめ、数多くの火山に囲まれている。九電は何十年も前に巨大噴火の予兆をつかむことができるため対応は可能だとし、原子力規制委員会もその主張を妥当と判断している。しかし、五月に同県の口永良部島(くちのえらぶじま)新岳の噴火が示したように、ただでさえ噴火予知は非常に難しい。巨大噴火の場合は、現代の科学による観測データがなく、どんな過程を経て噴火に至るかよく分かっていない。火山の専門家からはさらに難しいとの指摘が相次いでいる。使った核燃料は自らが高熱を発するため、二年間はプールの水で冷やしてからでないと外部に運べない。にもかかわらず九電は、核燃料をどこにどう緊急搬出するか、いまだ十分に検討していない。鹿児島県や薩摩川内市は既に再稼働に同意したが、屋久島や種子島などで九電に説明を求める動きが広がっている。だが、九電は公の場で反対意見が出るのを避けるため、説明会を開こうとしない。避難計画は、国際原子力機関(IAEA)が定める国際基準の中で、五つ目の最後のとりでとなる。鹿児島県や周辺自治体の計画はできたが、避難住民の受け入れ態勢の協議などはほとんどされていない。計画に実効性があるのか、規制委も含めどこも検証しない。

*1-3:http://qbiz.jp/article/66278/1/ (西日本新聞 2015年7月8日) 【川内原発燃料装填】社長「動かしてみないと…」 九電「4年ぶり」に安堵と不安
 川内原発1号機は7日、核燃料装填に着手したことで再稼働に向けた最終段階に入った。2011年12月に九州電力が保有する原発が全て停止して3年7カ月。大幅な収支改善効果が期待できる再稼働がほぼ確実となったことで、社内には安堵(あんど)感も広がった。「ここまで長かった。ようやくといった感がある」。九電関係者は大きく息を吐き出した。新規制基準に基づく原子力規制委員会による川内1、2号機の審査が始まったのは13年7月。当初は半年程度で終わるとみられていた。だが、新基準下では全国初の審査とあって、九電、規制委ともに手探りの作業だったことに加え、九電が必要書類の準備に手間取るなどしたことで大幅に長期化。審査終了まで2年弱を要した。原発停止は財務に大打撃を与えた。九電が13年春に値上げした電気料金は、同年7月に川内1、2号機、翌年1月までには玄海原発3、4号機(佐賀県玄海町)も再稼働していることを前提に算出。ところが、長期停止に伴い火力発電の燃料費がかさんだ。15年3月期連結決算で純損益が約1147億円の赤字となり、4年連続の最終赤字を計上。東日本大震災前に6千億円以上あった過去の利益の蓄積も底を突いた。川内1号機は工程が順調に進めば8月中旬にも再稼働し、夏の高需要期に間に合う可能性がある。他電力や市場からの調達は大幅に減らせる。2号機も稼働すれば年平均で月間150億円の収支改善効果があるため、料金の再値上げは当面、回避できる見通しだ。4年以上停止している川内1号機。再稼働までの工程が想定通りに進むかは予断を許さない。瓜生道明社長は「止まっている間に総点検を3回やり、不良箇所は直している。ただ、動かしてみないと分からないという若干の不安はある」と打ち明ける。川内1、2号機が再稼働すれば本年度の黒字化が視野に入る九電。だが、16年4月に始まる電力の小売り全面自由化などの変化に対応していくには、強固な財務基盤が欠かせない。収益力強化のため、川内に続き玄海3、4号機の再稼働も急ぐ構えだ。

*1-4:http://mainichi.jp/select/news/20150711k0000m040056000c.html
(毎日新聞 2015年7月10日) 川内原発1号機:30年超の運転 29日にも認可 規制委
 1号機は昨年7月に運転開始から30年を迎えた。原子炉等規制法は、30年を超えて運転する原発に対し、機器の劣化の評価や管理方針を定めることを電力会社に義務付けているが、再稼働の条件には含まれていない。市民団体や野党の国会議員からは認可なしの再稼働に批判が相次いでおり、規制委の田中俊一委員長は6月の記者会見で「法律上の枠組みが一般的感覚としては理解しがたいことはよく分かる」と述べていた。

*1-5:http://qbiz.jp/article/66283/1/
(西日本新聞 2015年7月8日) 【川内原発燃料装填】注目される司法判断、運転停止の可能性も
 原子力規制委員会の審査基準に適合しているとされた九州電力川内原発で核燃料の装填(そうてん)作業が7日に始まり、原発は再稼働の最終準備に入った。今後、稼働の「壁」として立ちはだかる可能性もあるのが司法の判断だ。周辺住民らが再稼働差し止めを求めた仮処分申し立ての即時抗告審で、福岡高裁宮崎支部の判断が早ければ年内にも下される。最大の争点は、原発耐震化の基準となる「基準地震動」の妥当性。再稼働したとしても「想定する揺れは小さすぎる」との判断になれば、再び運転停止となることもあり得る。再稼働が近づく原発の差し止め仮処分をめぐっては4月、差し止め決定が出された関西電力高浜原発3、4号機と、却下された川内原発1、2号機で司法判断が割れた。川内原発については先月末、福岡高裁宮崎支部に審判の場が移った。基準地震動は、周辺の活断層が動いた際に想定される揺れのことだ。この数値が「小さすぎる」となると、原発設備はさらなる耐震化工事と、それに伴う費用負担が求められ、運転は続けられなくなる。住民側弁護団の内山成樹弁護士は、九電の地震動が「地域で過去発生した地震の平均値にとどまっており、最大レベルを想定できていない」と批判した。高浜原発の決定を出した福井地裁も、地震動の推定について「実績のみならず理論面でも信頼性を失っている」と再稼働を認めなかった。内山弁護士によると、抗告審で争点となりそうなのが、地震動を導き出す過程で広く使われている「松田式」(断層の長さから地震の規模を推定する式)。「松田式を使った地震動はあくまでも平均像。安全を重視すれば、基準地震動は今より4倍以上必要になるのは明らか」と訴える。松田式を1970年代に提唱した東京大の松田時彦名誉教授(84)も「式自体に妥当性はあると考えている。問題はその使い方だ。原発は十分な安全性が求められる施設であり、基準地震動を平均値にとどめるなら、安全想定としては低いと思う」と指摘している。原発の規制基準の妥当性そのものが問われているとも言えるが、原子力規制庁は「裁判関連は答えられない」と取材に応じていない。九電は「原発の安全性が確保されているという主張が高裁でも認められるよう対応したい」(事業法務グループ)。巨大噴火への対応や避難計画の妥当性についても争点となっており、あらためて司法判断が注目される。

*1-6:http://digital.asahi.com/articles/ASH775W3CH77UEHF018.html?iref=comtop_list_pol_f01 (朝日新聞 2015年7月7日) 原発は倫理的存在か
東浩紀(あずま・ひろき) 作家・思想家 1971年生。ゲンロン代表取締役。専門は現代思想、情報社会論、表象文化論。メディア出演多数。主著に『存在論的、郵便的』(1998、サントリー学芸賞受賞)『動物化するポストモダン』(2001)『クォンタム・ファミリーズ』(2009、三島由紀夫賞受賞)『一般意志2.0』(2011)。編著に『福島第一原発観光地化計画』(2013)など
■原発は倫理的存在か
 原発をめぐる議論で「倫理」がなぜ問われるかといえば、それは使用済み核燃料の処理技術が確立されていないからである。「トイレのないマンション」とも揶揄(やゆ)されるように、現在の原発は、使用済み燃料の処理を、長期間保管しその危険性が自然に減衰するのを待つか、あるいは後世の技術開発の可能性に委ねることで成立している。いずれにせよ、いまここで処理できないものを、いつかだれかがなんとかしてくれるという「他人任せ」の態度のうえで成立しているのは疑問の余地がない。面倒なことは他人に任せ、自分だけが利得を得る。そのような態度が「よい」ことであるかどうか。原発の倫理的問題は結局はそこに集約される。日本では福島第一原発事故を機にはじめて関心を向けたひとが多いが(筆者自身もそのひとりだが)、この問題は本質的に事故の可能性とは関係ない。経済性とも関係がない。事故がなくても、いくら経済効率がよくても、使用済み核燃料は蓄積する一方であり、後世の自然環境と人間社会の負担は増える一方だからである。そしてそう考えると、上記の問いに肯定で答えることはきわめてむずかしい。面倒なことを他人に任せ、自分だけが利得を得る。そのような態度が、無責任で責められるべきものであることは、文化的な多様性とは無関係に、多くのひとが同意する価値観だと思われる。そうでなければ、そもそも人間社会は成立しない。つまり、原発は(少なくとも現在の技術水準での原発は)、そもそもが倫理に反する存在なのである。わたしたちは、原発を建設し、運用し、その果実を享受することで、日々倫理に反する行動を行っている。しかし、これは必ずしも原発の即時停止や全廃を意味しない。また、わたしたちすべてが深く反省し、罪の意識に沈殿すべきだということも意味しない。なぜなら、人間の行動は倫理のみで測られるわけではないからである。倫理に反する決定が、別の論理に基づいて支持されることはある。たとえば戦争時の殺人のように。あるいは、地球の裏側で何百万人もの飢えた子どもたちがおり、少額の寄付でその多くの命が救われることがわかっているにもかかわらず、ジャンクフードで日々膨大な食料と資金を浪費しているわたしたちの日常のように。それゆえ、わたしたちが考えるべきなのは、原理的には倫理に反するはずの原発が、それでもいまこの時代に存在が許される、そのときの「条件」とはなにかということである。それは便利だから許されているのか。儲(もう)かるから許されているのか。ほかに手段がないから許されるのか。議論はここから具体論に入り、哲学の手を離れる。最終的な結論はさまざまな要素に依存し、不安定な未来予測にも左右される。たとえば、もし近い将来に画期的な技術革新が生じ、使用済み燃料の危険性が安全かつすみやかに除去できるようになるとするならば、たとえいま原発が倫理に反するように見えたとしても、むしろ建設を推進し、革新の到来を早めたほうが倫理的だということになる。あるいは、多くの人文的問題と同じく、その議論もまた再帰的な構造をもつ。たとえば、もし仮に、ある国で原発が倫理に反するものであることを確認したうえで、それでも慎重な議論を経て稼働が不可避だと判断されたのだとしても、その事実そのものがほかの国で安易な建設を促進するのだとすれば、その副作用は議論の最初の前提を掘り崩してしまうことになる。原発そのものが素直に肯定できる存在ではない以上、わたしたちは、その是非について、未来や他者の視線も考慮しながら総合的に判断しなければならない。以上、原発と倫理の関係について私見を述べた。ではそんなふうに言うおまえは具体的にどう考えているのかと問われれば、筆者は、深刻な福島第一原発事故を経験した日本は、ほかの国とは異なる条件を自覚し、原発の管理について特別の倫理的な役割を果たすべきだと考えている。それゆえ、原発の再稼働はしても新設はせず(リプレース含む)、自然全廃を受け入れるとともに、他方で原子力の研究にはいっそうの力を入れ、新設なしでの研究者と技術者の養成を試みるべきだと思う。しかし、その根拠について記すのは、また別の機会に譲りたい。いずれにせよ、わたしたちが忘れてはならないのは、原発というのは、21世紀初頭の現時点での技術水準においては、そもそも倫理に反する存在、つまり「存在しないほうがいい存在」であり、それゆえ稼働や新設をめぐっては慎重な議論が求められるということである。わたしたちは、すべての議論を、まずこの認識から始めなければならない。さきほども記したように、わたしたちはつねに倫理を守る必要はない。しかし、倫理を破るには、つねにそれなりの「言い訳」が必要になる。そして、その言い訳をどれだけ精緻(せいち)に、説得力あるかたちで、そして普遍的な論理に基づいて作ることができるか、そこでこそ人間の知性は試される。その点で言えば、立地自治体と経済界が望むので新設します、というのは、知性のかけらもない判断である。

*1-7:http://digital.asahi.com/articles/DA3S11655467.html?_requesturl=articles%2FDA3S11655467.html&iref=comkiji_txt_end_s_kjid_DA3S11655467 (朝日新聞社説 2015年3月18日) 廃炉の決定 「脱原発」を見すえてこそ
 関西電力と日本原子力発電(原電)が、運転開始から40年を超えた原発3基の廃炉を決めた。中国、九州の2社も計2基の廃炉を18日に決める予定だ。運転期間を原則40年とする、福島第一原発の事故後に設けられた規制が初めて適用される。日本の発電所に48基ある原子炉(商業炉)のうち、20基近くが運転開始から30年以上経過している。延長は1回だけ認められるが、特別な審査に合格しなければならず、追加投資の必要も生じる。今後は毎年のように、廃炉にするのか決断を迫られるようになる。 1963年に原子力発電に成功して以来、日本は後始末に道筋をつけないまま原発を推進してきた。このため、廃炉を進めるために解決しなければならない課題が山積している。これらを克服し「廃炉できる国」にしていくことは、脱原発を着実に進める前提にもなるはずだ。
■未解決のゴミ問題
 廃炉事業で最も深刻なのが、ゴミの問題だ。解体にともなって出る使用済み核燃料と放射性廃棄物の置き場所が決まっていない。使用済み燃料については、全量を再処理する「核燃サイクル」を掲げることで直視を避けてきた。しかし、事業は事実上破綻している。使用済み燃料は原発の冷却プールや乾式キャスクに入れて敷地内に保管せざるをえないのが実情だ。特に関西電力は、福井県と「使用済み燃料の保管・処分は県外で」と約束してきた経緯がある。今回、美浜2基の廃炉を決めたことで、この約束とも直面することになる。放射性廃棄物の取り扱いもやっかいだ。線量の多寡によって分別され、それぞれ地中で管理する方針は決まっている。だが、高レベル廃棄物はもとより、低レベル廃棄物も処分地が決まっていない。埋設にあたっての管理基準もこれからだ。処分のめどが立たなければ廃炉作業自体が滞る。実際、国内の商業炉で初めて廃炉を決めた原電の東海原発(茨城県)では低レベル廃棄物の処分法が確立できないため、一度3年延期した原子炉の解体作業の着工をさらに5年先送りしている。政府は高レベル廃棄物の最終処分場について、立候補を待つ方式を改めて、自ら候補地の選定に乗り出す。どこにも決まらなかった経緯を考えれば、選定は難航が予想される。一方的な押しつけにならないよう手続きの透明性とともに、対話する機会を確保することが何より大切になる。
■必要になる地元支援
 原発が立地する地域にも配慮する必要がある。立地自治体には現在、電気料金に含まれる税金を財源とした電源三法交付金が配られているが、廃炉が決まれば対象外となる。経済的な自立の難しい過疎地域で、自治体財政を原発マネーに依存しているところが多いだけに影響は少なくない。お金を理由に立地自治体が原発の維持や建て替えを望む悪循環は断ち切らなければならない。ただ、いきなり住民生活に支障が出ることは避けるべきだ。当面、何らかの財政支援が必要になるだろう。人口も資源も少ない地域の振興は容易ではない。それでも、事故で大きな被害を受けた福島県は、再生可能エネルギーによる再生にかじを切った。福井県でも地域の資源を見つめ直す動きはある。国は、電力消費地との連携をとりもつなど、原発からの自立を積極的に支えることに注力してほしい。
■自由化に沿うものに
 政府は、電力の自由化を進めている。16年度には電力大手の地域独占を廃し、20年度には発送電を分離する計画だ。電気の利用者は、自由に電源を選べるようになる。一方、廃炉は20~30年かかる長丁場の事業になる。そのコストは一体、誰が負担するのか。今回の廃炉にあたっては会計処理のルールが見直され、必要額を電気料金から回収できるようにしている。廃炉費用の負担が電力会社にとって過大であれば、廃炉自体にブレーキがかかるとの考えからだ。今後についても送電網の使用料の一部として広く国民に負担を求める案が浮上している。だが、政策上増やしていく電源ならともかく、配慮が過剰になれば減らしていくべき原発の温存につながる恐れがある。競争上の公平さからも疑問は残る。詰めの論議が必要だ。廃炉の道筋を整えることは一面で、原発を更新しやすい環境をつくることにもなる。しかし、福島第一原発の事故を思えば、脱原発につなげることにこそ、廃炉を進める意味がある。関西電力は同じ17日、40年前後の原発3基の運転延長を求めて、原子力規制委員会に審査を申請している。脱原発依存を着実に進めるのか。政府はエネルギーの将来絵図を明確に示すべきである。

<原発事故と賠償>
*2-1:http://www.chunichi.co.jp/article/toyama/20150706/CK2015070602000029.html (中日新聞 2015.7.6) 放射線の真実記す 県内主婦ら 中高生向け冊子作製
●危険性、原発事故の歴史…
 東京電力福島第一原発事故を機に、県内の主婦らでつくる市民団体「とやま原子力教育を考える会」が、放射線の危険性や事故の歴史を盛り込んだ中高生向けの冊子「私たちの放射線副読本」をまとめた。県内の全教育施設に無償配布する予定で、代表の道永麻由美さん(62)は「同じ過ちを犯さないよう、真実を正しく伝える手助けになれば」と話す。副読本は、A4判全九十一ページカラー刷り。米国・スリーマイル島やウクライナ・チェルノブイリなど、世界で起きた原発事故の年表や放射線による人体への影響、身の守り方を図や表、写真で紹介している。福島原発事故後の二〇一一年九月、文部科学省が発行した副読本の内容が、「福島原発事故についての記載がなく、責任や原因にも触れていない」(道永さん)として、不満を抱いたメンバーらが集まって独自の副読本作製を企画。放射線の恐ろしさを正しく伝えようと、市民からの協力金など五十万円を集め、一二年四月から三年がかりで今年五月に二千部を完成させた。五日は富山市新富町のCiCビルで、メンバー六人が県内の教育施設五百六十九カ所や図書館六十八カ所への発送作業に追われた。副読本は、一冊五百円(税込み)と郵送料で購入できる。問い合わせは道永さん=電090(7083)8190=へ。

*2-2:http://www.kahoku.co.jp/tohokunews/201507/20150704_13015.html
(河北新報 2015年7月4日) <女川原発>事故時「仙台など高線量の恐れ」
 原発の重大事故に備える避難計画をめぐり、前提となる放射性物質の拡散想定の在り方が問われている。民間のシミュレーションでは、東北電力女川原発(宮城県女川町、石巻市)が東京電力福島第1原発並みの事故に陥った場合、空間放射線量は県内の広範囲で高くなる恐れがあると判明。ただ原発から30キロ以上離れた仙台市などが避難対象に含まれる事態は想定されていないのが実態だ。「放射性物質は『見えない津波』。汚染の広がり方には地形や風向、風速などが大きく影響する」。民間シンクタンクの環境総合研究所(東京)顧問の青山貞一東京都市大名誉教授(環境政策)はこう強調する。研究所のシミュレーションによると、女川原発の事故想定では、風向きなどによっては、仙台市でも1時間当たりの空間放射線量が数十マイクロシーベルトに達する可能性があるという。地形を考慮した結果は図・上の通り。女川町周辺では西よりの風が多いが、陸地への影響が懸念される「東北東」の風を想定し、風速2メートルの場合の空間放射線量を色分けした。原発から数キロ圏は数百マイクロシーベルトと非常に高く、30キロ圏外の仙台市や七ケ浜町なども20~50マイクロシーベルトに上った。100キロ近く離れた白石市や蔵王町などは10~20マイクロシーベルトなどとなり、地形を考慮しない場合(図・下)より、高線量地域が広かった。原子力規制委員会の新たな基準では、毎時500マイクロシーベルトは即時避難、20マイクロシーベルトは1週間程度以内の避難に該当する。一方、規制委が2012年10月に公表した拡散予測では、避難が必要となるのは女川原発から最大18.3キロと試算されていた。女川原発の事故に備える広域避難計画については、立地自治体を含む周辺7市町が策定中だが、宮城県がガイドラインで示した対象はあくまで原発の半径30キロの区域にとどまる。しかも、国は実際の避難は放射線量の実測値を基に判断し、緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム(SPEEDI)は活用しない方針。ただ、30キロ圏で区切ったり、予測を避けたりする傾向には反発の声も出ている。女川原発30キロ圏の登米市の布施孝尚市長はSPEEDIの有用性を指摘し「予測は避難する上で必要な情報だ」と述べている。環境総合研究所のシミュレーションのシステム開発に関わった青山氏は「シミュレーション結果を避難計画の策定などにどう活用するかが重要だ」と訴える。研究所の予測結果について宮城県原子力安全対策課の担当者は「詳細が分からないのでコメントできない」と話している。
[環境総合研究所のシミュレーション]2011年11月~13年4月に開発したシステムで実施。大気汚染研究用などの計算モデルを福島第1原発事故に適用。国土地理院の地形データや気象庁の気象データも活用した。事故の規模、風向、風速などの違いに応じて放射性物質拡散状況を試算、1時間当たりの空間線量を色分けして表示する。約1000パターンをデータベース化。影響が及ぶ人口や事故後に同じ場所に住み続けた場合の積算外部被ばく線量も推計できるという。

*2-3:http://qbiz.jp/article/65547/1/
(西日本新聞 2015年6月28日) 東電賠償、計7・1兆円 時期確定で1兆円増額
 東京電力は、福島第1原発事故による損害賠償の総額を約7兆1千億円と見積もっていることが28日、分かった。近く改定する再建計画(新総合特別事業計画)に盛り込む。政府が避難者への慰謝料支払いなどの終了時期を示したことで、東電が想定する賠償額の全体像がほぼ固まった。従来の見通しより1兆円程度増額した。東電は既に原子力損害賠償・廃炉等支援機構と調整に入っている。両者は週内にも経済産業相に申請し、7月上旬にも認定を受ける見通しだ。政府は12日に決めた福島復興指針の改定版で、避難者への慰謝料に加え、商工業者の営業損害の終了時期を決めた。東電はこれに基づいて、追加の賠償額を計算した。2016年度分で終了する商工業者に対する営業損害や、17年度分で終わる避難者への慰謝料の支払いなどを含めたとみられる。ただ、賠償期間の終了後も営業損害が出たり、政府の目標通りに避難指示が解除できなかったりすれば、賠償総額がさらに膨らむ可能性がある。東電は4月に一部改定した再建計画では、損害賠償の総額を6兆1252億円と見込んでいた。一方、収支見通しに関しては、5月に金融機関に提示した、柏崎刈羽原発(新潟県)が10月から順次再稼働することを前提にした数字を盛り込むもよう。しかし原子力規制委員会による審査の先行きは見通せず、地元の了解が得られるめども立っていない。東電はことし秋から12月にかけて再稼働の時期を本格的に見直し、再建計画を再度改定する方針。

*2-4:http://www.nichibenren.or.jp/activity/document/statement/year/2015/150703_2.html (2015年7月3日 日本弁護士連合会会長声明 会長 村越 進) 避難指示の解除、慰謝料支払の打切りに反対する会長声明
 政府は、2015年6月12日、福島復興加速化指針を改訂し、福島県の居住制限区域と避難指示解除準備区域について、避難指示を遅くとも2017年3月までに解除するとの目標を定めた。両区域の原発事故前の人口は約54、800人であり、避難指示区域全体の7割を占める。また、上記時期までに両区域の避難指示を解除することを前提に、避難指示区域からの避難者に東京電力が支払っている慰謝料について、解除の時期にかかわらず2018年3月分まで支払うよう東京電力を指導することを決めた。しかし、避難指示をいつ解除するかについては、避難指示区域とされている各市町村の実情に応じて判断していくべき事柄であり、上記解除の目標が当該地域の実情を無視して、一律に期限を区切るものであるとすれば、相当でない。当連合会は、住民の健康を守るためには、予防原則を貫徹し、避難指示解除は、年間の追加被ばく線量が1ミリシーベルト以下であることが確認された地域から慎重に行うべきであるとの意見を述べてきた(2013年10月4日付け「福島第一原子力発電所事故被害の完全救済及び脱原発を求める決議」)。政府の原子力災害対策本部が2011年12月26日付けで示した「ステップ2の完了を受けた警戒区域及び避難指示区域の見直しに関する基本的考え方及び今後の検討課題について」においても、避難指示の解除については、①年間積算線量が20ミリシーベルト以下となること、②日常生活に必須なインフラや、医療・介護などの生活関連サービスがおおむね復旧し、除染作業が十分に進捗すること、③県、市町村、住民との十分な協議を踏まえること、の3点を要件として挙げていた。また、解除に当たっては、地域の実情を十分に考慮する必要があることから、一律の取扱いとはせずに、関係市町村が最も適当と考える時期に解除することも可能とするとしていた。両区域の実情を見るに、①除染が未だ進捗していない、②除染後も高い放射線量が測定されている、③インフラや生活関連サービスの復旧の見通しが立っていない、④建築業者の人手不足のため、元の自宅の改修や建て替えをしようにも着工の見通しが立たないなど、あと2年弱で避難指示の解除や帰還の前提が整うとは考え難い地域が多く見られる。避難指示が解除されたからといって、わずか1年間で被害者が元の生活に戻れるものではない。よって、当連合会は、政府に対し、避難指示の解除については、各地域の実情を十分踏まえ、地元や対象住民との協議も十分行った上で、個別に慎重に判断すること、一律に2017年3月までに解除すると期限を区切らないことを求める。また、政府及び東京電力に対し、被害者の被害の実情を十分に踏まえ、避難指示区域からの避難者に対する慰謝料の支払を一律に2018年3月分までで打ち切ることのないよう求める。

<核廃棄物の処理と最終処分場>
*3-1:http://qbiz.jp/article/61427/1/
(西日本新聞 2015年5月5日) 【欧州の脱原発】スウェーデン 核のごみ、共存への覚悟
 日本記者クラブ欧州取材団に参加し、2月、ヨーロッパを訪ねた。使用済み核燃料(核のごみ)の最終処分場の建設計画が進むスウェーデン、脱原発が進むドイツと、再生可能エネルギーでほぼ全ての電力をまかなうアイスランドを紹介する。雪をかぶった針葉樹から木漏れ日が差し、絵本のような銀世界がまぶしく光る。森には希少種のカエルが生息するという。2月、スウェーデンの首都ストックホルムから北約140キロにあるエストハンマル自治体のフォルスマルク。この森の地下450メートルに、原発から出た使用済み核燃料(核のごみ)を埋め立てる最終処分場ができる。着工は2019年で、10年後には国内の原発から出た全ての核のごみが順に運び込まれる計画だ。「心配はしていませんよ。よく調査された結果ですから」。マルガレータ・バイレグレン副市長はさらりと言った。地層処分−。近づけば死に至る強烈な放射線を出し続ける核のごみを、地下深くで保管する手法だ。安全なレベルになるまでに要する時間は、およそ10万年。地域住民は途方もない年月を共存していく。核のごみの処分は、原発を抱える各国の共通課題だ。日本を含む多くの国が地層処分を目指す。ただ、具体的な予定地が決まっているのは2カ国にすぎない。小泉純一郎元首相が視察して話題になった「オンカロ」を建設中のフィンランドと、スウェーデンだけだ。米国とドイツは一度は決めた候補地で住民から反対を受け白紙撤回した。日本は、候補地選定のスタートラインで足踏みを続ける。「私たちは一番安全な場所で処分すべきだと考えている。それがここならば、やるしかない」。副市長は受け入れる理由を話した。事業主体は、国内の電力会社が出資する廃棄物管理会社「SKB」だ。1970年代から適地を探してきた。地層処分に耐えうる地質を持つ地域を選び、地元住民に理解を得るため説明会を重ねてきた。2カ所の最終候補地からフォルスマルクが選ばれた09年には、住民の8割が賛成意見を持つようになっていた。SKBが規制当局に最終処分場の建設許可を申請したのは11年3月だった。福島第1原発事故があった時期と重なる。SKBのクリストファー・エッケルベーグ社長は「事故直後には原子力に否定的な国民が増えたが1、2年で元に戻った」といい、こう付け加えた。「福島の事故が示したのは、核のごみを発電所内のプールに長い間置いておくべきではないということ。ちゃんとした処分場が必要だ」。スウェーデンの首都ストックホルムから南に約340キロのオスカーシャムには、最終処分場の技術を開発してきた「エスポ岩盤研究所」がある。処分場の適地の一つとして1990年に掘削が始まった。最終的に予定地から漏れたが、現在は地層処分の理解を促すため見学を受け付けている。雪で覆われた地上からバスでトンネルに入った。らせん状に約5分下っていくと、地下420メートルに着いた。むき出しの岩盤に水がじわりとしみ出している。「花こう岩に似たもので、18億年前の地層です。最終処分場の建設予定地の地質とよく似ています」。薄暗