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2024.1.7~12 能登半島地震と気候変動対策としての原発の妥当性(2024年1月13、18、20、21、22、25日に追加あり)
(1)能登半島地震の発生とその規模

 
     2024.1.6 Whether News    2024.1.7日経新聞 2024.1.4日経新聞

(図の説明:1番左の図のように、今回の能登半島地震の震央分布は陸から海に渡って長く、ここに断層のあることがわかる。また、左から2番目の図のように、この地震では、日本全国が揺れた。そして、右から2番目の図で震源が一点であるかのように書かれているのは誤りだが、日本海側の地震は、津波が大陸に反射して共振しながら何度も押し寄せるのというのは本当だ。さらに、1番右の図のように、日本には地震・火事に弱くて「著しく危険な」密集市街地が、関東・関西を中心として《いつまでも》広く分布している)

 今年は元日から、*1-1-2の「阪神大震災」を上回るM7.6の「能登半島地震」が発生し、1月6日20時までに合計1071回(最大震度5弱以上が14回)揺れ、徐々に地震の回数が減少していくとは考えられるが、数週間~数ヶ月後にM5〜6クラスの余震が発生する事例もあるそうだ。

 そもそも、能登半島周辺では2020年から人的被害を伴う震度5強以上の地震が5回起き、地震活動は特に2020年12月から活発化して震度1以上の地震が500回超確認され、2023年5月には地震調査委が「地震活動は当分続くと考えられる」と評価し、国は防災対策の強化を呼びかけていたそうだ。そして、2023年5月5日のM6.5 がこれまでの最大だったが、それでも志賀原発は廃炉にすることなく、使用済核燃料をリラッキングして、もともと1,050体だった使用済核燃料の貯蔵容量を1,749体に増やしており、これはあまりに不合理で驚きなのである。

 今回の能登半島地震では、震度7だったのが石川県志賀町、震度6強だったのが石川県七尾市垣吉町・能登島向田町、輪島市鳳至町・河井町、珠洲市三崎町・正院町・珠洲市大谷町、穴水町大町、震度6弱だったのが新潟県長岡市中之島、石川県志賀町富来領家町・末吉千古、七尾市本府中町・袖ヶ江町、中能登町末坂・能登部下、登町宇出津で、津波の高さは当初は「1.2m以上」と発表されていた。

 しかし、*1-1-4のように、石川県志賀町赤崎漁港は潮位計がないため津波の高さがわからず、建物の外壁に残された津波の痕跡や周辺に流れ着いた漂流物から津波は陸地を4.2mほど駆け上がり、輪島市の鹿磯漁港では約3.9m隆起し、鹿磯漁港から約5km北にある輪島市門前町五十洲の漁港でも約4.1m隆起し、隆起が4mを超えるところも複数あったのだそうだ。

 そのような中、*1-1-1は、①激しい揺れの要因は浅い震源 ②阪神大震災を上回る地震の規模 ③地震調査委は地下深くの水(流体)の関与 ④今回の地震は、北西と南東方向からプレートを押す力が働き、断層が上下にずれる「逆断層」によって引き起こされた ⑤震源が浅いと揺れが地表に伝わり易く、居住地に近いので大きな被害を引き起こしやすい としている。

 しかし、M7.6の能登半島地震は、震度7を観測した石川県志賀町で2826ガルと東日本大震災で震度7だった宮城県栗原市の2934ガルに匹敵し、輪島市では最大4mの地表隆起と約1.2mの西方向への水平移動があり、今回の地震の活動領域は長さ約130kmと広い。

 この地震メカニズムについて、地震調査委は地表面の隆起や震源の移動が確認されているので、水のような地下の流体が関係しているとする。また、東京工業大の中島教授(地震学)も「地下の水が上昇して断層に入り、滑りやすくなって地震が発生した可能性が高い」とするが、地下に流体がある理由は不明である。私は、地下の水でこれだけ広範囲に激しい地震や隆起があるとは思えず、原発の存在を正当化するため原因を過小評価しているのではないかと思う。

 なお、*1-1-3によると、日本海側は地震発生から津波到達までの時間が短く、直後に輪島港で津波第1波とみられる海面変動を観測したが、津波が早く到達する理由は日本海側の断層の位置にあり、北陸から北海道の日本海側にかけて陸と海にまたがる断層や沿岸に近い断層が多いため、こうした断層で地震が起きると陸の近くで津波が発生するからだそうだ。

 また、日本海側の津波は、朝鮮半島やロシア側の大陸で反射して数時間後に再び日本列島に到達するため長時間に及び、波が干渉して次第に大きくなる。東大地震研が文科省の委託を受けて実施した日本海側の地震・津波に関する調査報告書は、避難が難しいため「公共施設の建設・移転の際は、自然災害を考慮したより安全な土地利用を進めていく必要がある」としている。

(2)地震後の対応の遅さと鈍さ
 *1-2-1のように、石川(14ヶ所)・富山(1ヶ所)・新潟(1ヶ所)の3県にある医療機関で、停電や断水などの被害が生じているそうだが、いざという時の最後の砦となるべき医療機関で、またもや停電・断水が起こって機能不全になったというのは、もはや同情できない。

 既にドクターヘリが運用開始されており、自衛隊ヘリもあるため、近隣の県からでも救助の手は差し伸べられる筈だが、それもせずに住民に我慢を強い、何度大災害が起こっても改善せずに同じことを繰り返し、後手にまわっては国民に犠牲を強いるのが、日本の悪い点である。

 また、*1-2-2のように、1月6日午後2時時点で、七尾市の2万1500戸、輪島市の1万戸など14市町の計6万6千戸が断水したまま、全国から給水車が駆けつけても道路状況が悪くて給水に充てる時間が十分に確保できなかったり、電線も切れて石川県内の停電が輪島市約9800戸・珠洲市約7400戸・能登町約3200戸・穴水町約2600戸あるそうで、斎藤経産相は1月5日の会見で停電が続く理由を「道路被害の状況が想定以上に厳しい」とされたそうだ。

 しかし、*1-4-2のように、志賀原発の避難ルートとして「のと里山海道」があり、それが複数カ所で陥没して、一時、全面通行止めになったのである。そして、石川県の激震地である輪島市・穴水町・七尾市は原発30キロ圏内で、近隣住民は速やかに避難できなければならない筈だったが、それもできず、避難計画はやっぱり“絵空事”だったわけである。それでも政府を信頼し続けるとすれば、(それも自由だが)馬鹿と言わざるを得ず、同情も今一つである。

 ちなみに、*1-4-1のように、原子力規制委員会は2023年12月27日に東京電力柏崎刈羽原子力発電所(新潟県)に出していた事実上の運転禁止命令解除を決定し、今後は新潟県等の地元自治体の同意があれば再稼働できるそうだ。そのため、避難が“絵空事”でなければ、新潟県も原発事故時には避難者を受け入れる準備が整っている筈なのだ。従って、災害時に避難者を受け入れることもできる筈なのに、今回の地震で行く場所を失った人は受け入れないのだろうか?

 そして、これは、*1-4-3のように、2023年には原発4基を稼働させている九電とその周辺地域についても、全く同じである。

 今回の能登半島地震では、*1-2-3のように、1週間経っても道路の寸断による孤立状態が各地で続き、ヘリコプターなどで救援物資が複数回搬入されて物資不足の状況は脱したが、電気も水も途絶えて携帯電話も通じないため情報が入らない避難所もあるのだそうだ。しかし、戦争中のウクライナでさえ携帯電話を使えるのに、日本はどうなっているのかと思われた。

(3)日本は主要な活断層を対象外にして、何故、「原発容量3倍」に賛同したのか
 *1-3-1は、①地震調査委員会が1月2日に臨時会を開き、最大震度7の能登半島地震の分析や今後の動向を検討 ②主要な活断層については長期評価を公表しているが、今回地震のあった断層は対象外だった ③委員長は「(長期評価は)慎重にやっており、非常に時間がかかる」「(評価していない断層で大きな地震が起きたことは)非常に残念。もっと早く評価しておくべきだった」と話した としている。

 しかし、(1)で書いたように、2020年から能登半島周辺で人的被害を伴う震度5強以上の地震が5回起き、震度1以上の地震は500回超あり、かつ地震調査委は2023年5月に「地震活動は当分続くと考えられる」と評価していた。

 そして、志賀原発のある石川県志賀町では震度7を観測して2826ガルの揺れがあり、輪島市では最大4mの地表隆起と約1.2mの西方向への水平移動があったのだから、ここに主要な活断層があると認識していなかったのなら、地震学者を止めた方が良いくらいである。つまり、①②③は、科学者として、客観的に、重要性や危険性を警告しなかった(orできなかった)ことの言い訳にすぎないのだ。

 そして、*1-3-2・*1-3-3のように、UAEで開かれた国連気候変動会議(COP28)で、日本は「温室効果ガス排出の実質0を達成する上で、原子力は重要な役割を果たす」とし、「世界全体の原発の設備容量を2050年までに3倍に増やす」との宣言に賛同した(正しくは、米国を通してむしろリードした)のである。

 これに伴って、日本政府はエネルギー政策の中長期の方向性を示す「エネルギー基本計画」(21年閣議決定)の「原発への依存度を可能な限り低減」を変更して「原発回帰」にかじを切り、「脱炭素化のためのGX政策で再エネとともに原発を最大限活用する」として新規建設方針も盛り込み、現在は発電量の10%以下である原発を、2030年度には20~30%に引き上げるとする方針を正当化した。

 そして、これに先立って、2023年5月に成立したGX脱炭素電源法では、根拠もなく原発の60年超運転を可能にし、東電フクイチ事故以降は「想定していない」としてきた次世代原発への建て替えも進める方針を示していたのである。

 政府関係者は、しつこく「原発は脱炭素への安定電源だ」と称する。しかし、今回の地震・津波でも明らかなように、集中電源は電線や変電所が作動しなくなると停電の範囲が広い。そのため、決して「安定電源」ではなく、地震・津波等の災害や戦争の際には最も危険な設備になる。

 さらに、「原発回帰にかじを切ることは、むしろ再エネを遅らせる(NPO法人原子力資料情報室の松久保肇事務局長)」というのは事実であり、このような屁理屈をつけて不合理な現状を維持するため汲々としてきたことが、日本の経済成長を妨げ、(他国とは違って)経済を現状維持に留まらせ、国民負担ばかり増やす羽目になった本当の原因なのである。

 なお、政府は次世代原発開発で他国と連携強化をしたいのだそうだが、次世代原発であっても日本に置く場所はない。そのため、他国のまねをして原発にこれ以上の無駄金を出す余裕は、日本にはないことを深く認識すべきである。

(4)政治資金について
 2023年11月末から、派閥の政治資金パーティー収入のうちノルマ超の部分が、派閥と議員双方の政治資金収支報告書に記載されず、金の流れは、①そのまま議員の手元に残った ②全額を会派に渡した後、ノルマ超過分だけ戻された の2ケースがあると騒がれ始めた。
 
 しかし、その後のマスコミ報道を見ていると、リクルート事件(1985年始めにリクルート社の江副会長がリクルートコスモスの未公開株を、政治家・官僚・経済界・マスコミ界の実力者にばらまいた事件で、リクルートが政治家に多額の献金を行なっていたことや政治家主催のパーティ券を大量に購入していたことをきっかけに、政党助成法が制定され、公職選挙法も改正された)の古い例を持ち出して、それと同じく国会議員を辞職させる意図ある報道が目についた。

 そのため、私は、公認会計士・税理士としての知識・経験と自民党衆議院議員だった経験を基に、ここでは本質をつく議論をしたい。

1)パーティー券収入を裏金にすべき理由は何か?

 
2023.12.4毎日新聞 2023.12.21日経新聞      2023.12.4毎日新聞

(図の説明:左図のように、ノルマを超えた派閥のパーティ券収入を派閥の収支報告書にも議員の収支報告書にも記載しない運用が続いていたが、これは、中央の図のように、使い方によっては、政治資金規正法だけでなく、公職選挙法や税法にも触れる恐れがある。また、右図のように、パーティ券収入は他の派閥にもあり、阿部派と同じ取り扱いをしていた派閥もあるようだ)

 私が自民党衆議院議員時代の2007年に、私も参加して政治資金規正法が改正され、国会議員が関係する政治団体(国会議員関係政治団体)は収支報告書の透明性向上のため、i)収支報告書に明細の記載と開示を義務づけ ii)登録政治資金監査人による政治資金監査も義務化された(https://www.soumu.go.jp/senkyo/seiji_s/kspamph19/index.html 参照)。

 しかし、iii)政治資金に関する会計帳簿は未だに単式簿記のままであるため、収入・支出の網羅性・検証可能性がない iv)そのため登録政治資金監査人の意見表明は会計帳簿・明細書・領収書等・領収書等を徴し難かった支出の明細書・振込明細書・振込明細書に係る支出目的書が保存されていたか否かで留めており、適正意見の表明はしていない v)この義務は国会議員関係の政治団体のみに課しており、地方議員の政治団体は昔のままである 等が、改善されていないため、これらが今後の改善点になる。

 ちなみに、政治資金監査の対象となった事項について、すべて確認できた場合の政治資金監査報告書のひな形は「https://view.officeapps.live.com/op/view.aspx?src=https%3A%2F%2Fwww.soumu.go.jp%2Fmain_content%2F000624899.docx&wdOrigin=BROWSELINK」であり、会社法計算書類における独立監査人の監査報告書は「https://www.saisoncard.co.jp/credictionary/accounting/kansa_71.html」で、計算書類の監査の方が文面は簡単だが、監査証明の中身は濃いため比較されたい。
 
 そのような中、*2-1は、①自民党安倍派の会計責任者が、2023年12月18日に東京地検特捜部の事情聴取で政治資金パーティー収入の政治資金収支報告書不記載を認めた ②「裏金」に関する違法性の認識もあったため、特捜部は派閥側収支報告書不記載で会計責任者を政治資金規正法違反容疑で立件する ③安倍派では当選回数等に応じたパーティー券の販売ノルマがあり、超過分を議員に還流させていた ④還流分は、派閥・議員双方の収支報告書に記載されず、裏金になった ⑤裏金は公訴時効内の2018~22年(5年間)で計約5億円 ⑥現在の安倍派の会計責任者は2018年分からで、2017年分まで担当した前任からの申し送りがあった ⑦政治資金規正法は収支報告書の提出義務を会計責任者に課し、会計責任者との共謀が認められる場合は議員本人も刑事責任を追及される ⑧安倍派にはパーティー収入総額と収支報告書記載額を管理する二重帳簿があった ⑨安倍派では数十人が還流分を収支報告書に記載していない ⑩1人当たりの不記載額は多いケースで約5000万円で、多額となった議員を優先して本人からも事情を聴き、不記載の経緯や認識を確認する と記載としている。

 また、*2-2は、⑪東京地検特捜部は安倍派から約4800万円のキックバックを受け、政治資金収支報告書にウソの記載をした疑いで池田衆院議員と会計責任者を逮捕 ⑫池田容疑者は2018~22年(5年間)に派閥から受け取った約4800万円のキックバックも含めて全部で1億円あまりの収入があったが、柿沼容疑者と共謀して池田容疑者側の収支報告書には5300万円ほどの収入とした ⑬特捜部は2023年12月に池田容疑者が住む議員宿舎や議員会館事務所等を捜索し、虚偽記載の額が突出して多く、証拠隠滅の恐れもあると判断し、逮捕に踏み切った ⑭池田容疑者はこれまでの任意聴取に関与を否定 ⑮安倍派では、ノルマを超えた分の収入を派閥に納めず、中抜きしていた議員も十数人いて、この分も含めた事実上の「裏金」は2022年までの5年間で6億円規模にのぼる と記載している。

 このうち、①②については、政治資金収支報告書不記載の事実があったのだろうが、それが起こる背景は、iii)のように、政治資金に関する会計帳簿が単式簿記で収入・支出の網羅性・検証可能性がないため、意図的な操作が容易にでき、すべての取引を記載する習慣が会計責任者についていないことに依る。これは、私が衆議院議員だった時、私は公認会計士・税理士なので明確に区別して記載するが、(特に男性の)秘書はそうでない人が多くて苦労したため事実である。そして、ここから言える教訓は、会計責任者になる秘書は、会計事務所か銀行出身の女性にすれば、正確な経理をするということだ。

 また、③については、当選回数等に応じたパーティー券の販売ノルマがあることやノルマよりも多く集金した議員にノルマ超過分を還流させることは、法律で禁止されていないため合法である。私の場合は、集金ノルマがあってもそれに到達しない方なので、ノルマ超過分が還流されることもないが、ノルマがある以上は超過できた人はむしろ偉く、超過した人に環流させるのは自然ではないかと思う。

 しかし、何故、ノルマを超過するほど多く集金することができるのか、それは政策立案に反映されているのではないかという疑問は残り、もしそうなら、それが問題である。

 また、④の「還流分は、派閥・議員双方の収支報告書に記載されず裏金になった」というのは、双方が正確に記載しておけば法律上の問題はないのに、何故、記載しなかったのかについては、v)キックバックすると不平等と批判されるかと思った(内部事情) vi)不公平なキックバックをしていた(内部事情) vii)どこが多額の寄付をしたかについて知られるとまずかった(外部への見栄え) 等が考えられる。

 このうちv) vi)については、不公平で意図的なキックバックをしたのでければ、内部で説明すれば文句を言う人はいないため、本来は記載しても問題なかった筈だ。しかし、vii)については、それを明確にするために、政治資金規正法を改正して収支報告書の透明性を向上させたのであるため、これを欺く不法行為である。

 さらに、⑤⑥⑧⑨のように、「不記載にして裏金にする」「二重帳簿を作る」などというやり方は稚拙だが、⑦のように、「会計責任者に責任を課し、共謀が認められれば議員本人も刑事責任を追及される」というのも、自分を基準にして考えれば、「とにかく議員に引責辞任させたい」という意図が見え見えなのである。

 何故なら、私の場合、中央では、本会議・委員会・部会への出席や政策立案等で大変忙しく、地元では、式典や催し物に出たり、挨拶廻りと社会調査を兼ねて1軒1軒要望を聞いて廻ったりしていたため、公認会計士・税理士でも衆議院議員時代に自分の収支報告書を作ったり見たりする時間は無く、会計作業は全て会計責任者である秘書に任せて、その秘書には登録監査人から必要なことをアドバイスしてもらっていたからである。

 なお、⑩の「不記載額の多いケースは約5000万円」というのは大きな金額だが、金額の大きさで不法行為性が決まるものでもない。

2)それでは、どう改革すべきか
 *2-3は、①岸田首相は自民党派閥による政治資金規正法違反事件を受けて、党内に総裁直属機関「政治刷新本部(仮称)」を新設し、月内に中間とりまとめを行うと表明 ②新設機関には外部有識者も招いて議論 ③首相は派閥の政治資金パーティーに党の監査を実施し、収支を現金ではなく原則振り込みにする案に言及 ④「政治資金規正法改正という議論もあり得る」と述べた ⑤同本部の最高顧問に自民党の麻生副総裁と菅前首相を充てる意向 としている。

 このうち①②の政治刷新本部を新設し、外部有識者も交えて月内に中間とりまとめを行うのはよいが、③のように、政治資金パーティーに党の監査を実施し、収支を現金でなく原則振り込みにするだけでは、「刷新したふり」になる。何故なら、「現金ではなく、原則振り込み」というのは、監査証跡を残して自分をはじめ利害関係者を守るのに必要不可欠だからで、今までやっていなかったことが著しく遅れているだけだからである。また、今回の事例に関する「党の監査」は独立性がないため信頼性が低く、公認会計士等の外部監査人による監査なら独立性がある。

 また、⑤の政治刷新本部の最高顧問に自民党の麻生副総裁と菅前首相を充てるのは実行力が高くて良いと思うが、内部者だけでは出る知恵が限られ、信頼性も低くなるため、公認会計士協会の公会計関係理事など会計や監査に詳しい外部専門家を入れるべきだ。

 そして、やるべきことは④の政治資金規正法の改正だが、今回の改正に必要なのは、やみくもに議員を連座させるようにすることではなく、政治資金の会計を網羅性・検証可能性のある複式簿記に変更し、外部監査人に通常の監査をさせて、正確な会計が行なわれる環境を作ることだ。そうすれば、議員や会計責任者が意図的に特定の取引を隠せる土壌がなくなり、正確な会計を行う環境が制度的に整備されるため、政治資金収支報告書の透明性が確保されるからである。

 ところで、私は自分で政治資金パーティーを開いたこともあるのだが、熟練した秘書を多く抱え秘書に全てを任せられる古参議員ならそれも簡単だろうが、新人議員は秘書も慣れておらず数も少ないため議員自身も大きく関与しなければならず、ただでさえ忙しいのに大変だった。

 そのため、政治とは別の世界から多様な人材を集められるためには、議員自身が政治資金集めばかりしていなければならない状況をこそ変えるべきなのである。そして、その民主主義のコストは、政治資金を出してくれた相手に慮って政策を歪められたり、無駄な国費の支出をされたりするより数桁安いことを忘れてはならない。

3)国会議員に支払っている現在のコストとそれに対する世論について
 *2-4は、まず「今回の参議院選挙は自民党が圧勝し、多くのタレント議員が誕生した」と書いている。確かに、参議院全国区は日本全国で有名なタレントが票を集めやすいため、タレント出身の議員が誕生しやすい。しかし、一般人やタレントの視点も有用ではあるが、タレント議員ばかり多くては政策立案は進まない。

 また、*2-4は、①憲法49条は国会議員の報酬を「両議院の議員は、・・国庫から相当額の歳費を受ける」、国会法35条は「議員は、一般職の国家公務員の最高の給与額より少なくない歳費を受ける」と規定している ②国会議員の歳費は総額2187万8000円/年(基本給1552万8000円、期末手当635万円) ③文書交通費(現在の名称:調査研究広報滞在費):1200万円/年(領収書公開不要、第2の給与とも呼ばれ様々な用途に使用可、1200万円の所得を一般人が稼ぐには約1700万円の収入が必要 ④議員歳費と調査研究広報滞在費の合計:3887万8000円 ⑤JR特殊乗車券・国内定期航空券交付(北海道選出議員の例:羽田⇔新千歳(ファーストクラスなら往復10万円×月4回×12カ月=480万円) ⑥3人分の公設秘書給与2100万円(政策秘書900万円、第1秘書700万円、第2秘書500万円と仮定) ⑦委員会で必要な旅費・経費・手当・弔慰金等 ⑧政党からの支給 0~1000万円 ⑨会派に対して支払われる「立法事務費」780万円/人(1人会派でも政治団体ならアリ) ⑩政党交付金の一部が各議員に支給 ⑪合計:6000万~7000万円程度 ⑫政党からは役職に応じて黒塗りの車 ⑬議員宿舎の賃料は周辺相場の2割程度 としている。

 しかし、上記は、「国会議員は必要以上に儲けている」という印象を与えようとしている。例えば、①②の報酬については、「公務員」は、国会議員・大臣・裁判官はじめ立法・行政・司法に属するすべての職員を含むが、省庁のトップである大臣が一般職の国家公務員の最高の給与額より少なくない歳費を受けるのは当然であり、そういう役職の人が黒塗りの車に乗るのも普通だが、それは政党からの支給ではなく、各省庁の車だからである。

 また、国会議員については、任期が短期間で当落に関するリスクが高いため、リスクまで考慮すれば、一般職の国家公務員の給与より少なくない歳費を払っても、一般職公務員・一般企業のサラリーマン・研究者・医師・弁護士・公認会計士等から国会議員に転じる人は少ないのが実情だ。そして、国のリーダーになる人のレベルがそれではまずいことは、日本の政策や経済成長率を見れば明らかである。

 さらに、③の文書交通費(現在の名称:調査研究広報滞在費)1200万円/年については、「領収書の公開が不要だから、第2の給与とも呼ばれる」などと書かれているが、それは下衆の勘繰りだろう。何故なら、地元で会合のお知らせビラを全戸に配れば、(選挙区によって戸数は異なるが)最低でも「10円(印刷費)x15~30万件=150~300万円」の費用がかかり、これを1年に4~8回行なえば1200万円はなくなり、活動する議員ほど懐は寂しいからである。しかし、一般人は、そういう儲からない活動はしない。

 そのため、私の場合は、③の文書交通費は全額を自分の政治資金団体に寄付し、事務所費・私設秘書給与・政治活動費に使っていて、全く透明だった。そして、⑥のように、公設秘書は3人しかいないため東京事務所と地元事務所に1~2人配置すれば終わりで、それでは2ヶ所の事務所が廻らないので、どうしても私設秘書が最低2~3 人は必要だったのである。本当は公設秘書の数を10人くらいまで増やし、実体調査をして政策立案までできる必要があるのだが・・。

 また、⑦の委員会で必要な旅費・経費・手当・弔慰金等は、会社で言えば出張旅費のようなものであるため、役にたつ委員会活動の一部である限り、無駄使いではない。

 さらに、⑤の「JR特殊乗車券・国内定期航空券交付(北海道選出議員の例:羽田⇔新千歳(ファーストクラスなら往復10万円×月4回×12カ月=480万円))というのは嘘だ。私は、九州の佐賀県が地元だったので、毎週(金~月曜日、4回/月)地元に帰るのに、飛行機に乗ることが不可欠だったが、使える旅費交通費には20万円という上限があったため、ファーストクラスどころかビジネスクラスにも乗れず、エコノミークラスを使っても足りずに自前で出す部分があった。従って、JR等の他の旅費は、全て自分持ちになったため、出張旅費は、領収書を持って行けば実費で精算してくれる一般企業の方が、社員に負担をかけず合理的だと思っていた。

 なお、選挙の時に公認料として、⑧のような政党からの支給0~1000万円を貰える人もいる。そのため、政党から公認されるか否かは、票だけでなく金の面でも重要なのだ。

 それに加えて、政党政治を推進するためとして、国は政党に、⑨の「立法事務費」780万円/人や⑩の「政党交付金」を支給しているが、これは無所属の人にとっては著しく不利なのだ。そのため、むしろ議員本人に支給し、政党や派閥へは議員から会費として支払うようにすべきで、*2-5は、第1条2項を「前項の立法事務費は、議員に対して交付するものとする」に改正する必要があると思う。

 また、⑫の政党の黒塗りの車は、一般議員の場合は賃料を払って借りており、⑬の議員宿舎は、確かに新しくて便利な場所にあるが、一般企業に例えれば赴任者のための社宅である。そのため、議員宿舎の賃料は、満額ではなく2割程度を支払えば、現物給与には当たらない(https://www.resus.co.jp/topics/554/ 参照)。

 以上により、議員の収入は、⑪の「6000万~7000万円/年」ではなく、②の「2187万8000円/年(これも寄付して政治活動費に使う人もいる)」か、それ以下なのである。 

(5)地球温暖化とその対策 ← COP28を中心として

 
   2023.1.24日経新聞          2023.8.25日経新聞   

(図の説明:左図のように、各国の再エネ発電導入容量は中国が飛び抜けて1位で、日本はブラジル・インド・ドイツ以下の6位である。また、各国の太陽光発電容量は、日本は3位だが、中国はその7倍以上で1位だ。また、中央の図のように、東京都は家庭部門のCO₂排出削減に遅れが目立つそうで、建物の売買に、右図の項目の説明義務を課すそうだ。確かに、そういう内容の保証書がついていれば、選択するのに便利である)

 
   資源エネルギー庁             Zerofit Navi

(図の説明:再エネだけが国内で自給できるエネルギーだが、左図のように、日本の発電に占める再エネ割合は18.0%にすぎず、輸入化石燃料が75.8%も占めている。また、輸入燃料である原子力は東日本大震災後しばらく0%だったが、最近は再稼働する原発もあり6.2%になった。また、右図は、エネルギー自給率の国際比較だが、日本は輸入燃料を好んで使うため、自給率が11.8%にすぎず、34位で、これではエネルギー安全保障にほど遠いわけである)

1)気候変動に対する世界の認識と日本
 *3-1-1は、①国連のグテレス事務総長は「地球のバイタルサイン(生命兆候)は破綻しつつある」と温暖化対策の遅れに危機感を持ち、「世界はパリ協定の目標から何マイルも離れている「1.5度目標達成には全ての化石燃料停止が必要」「再エネは安価になり、利用拡大すべき」と主張 ②チャールズ英国王も「世界の気候変動対策は軌道から大きく外れている」「地球は私たちのためのものではなく、私たちが地球のもの」と強調 ③COP28は、開幕初日の11月30日に、気候変動で被害を受けた途上国支援基金の内容で合意 等としている。

 国連のグテレス事務総長は、①のように、地球温暖化対策の遅れに危機感を持ってくれるので助かるのだが、これに付け加えると、 1gの水の温度を1℃上昇させるのに必要な熱量は1calであるのに対し、0℃の氷1gをとかして0℃の水にするのに必要な熱量は80calであるため、極地に氷が残っている現在は氷バッファーになって海水温の上昇が緩やかだが、極地の氷が減れば減るほど海水温の上昇は激しくなる。

 また、チャールズ英国王は、②のように、「地球は私たちのためのものではなく、私たちが地球のもの」と強調され、キリスト教を信仰し、ケンブリッジ大学で考古学・人類学・歴史学を専攻された人らしい見識だと思うが、私は「生物のいない惑星はいくらでもあるため、地球は人間や生物がいなくなっても全く困らないが、地球環境が変化して生態系が著しく変わると困るのは人間の方である」と思う。

 その手始めに起こった「地球沸騰化」と呼ばれる異常な高温は、日本を含む世界中に影響し、農業や漁業資源の変化を通して食料供給を変え、人間の生存可能性に悪影響を与えている。そのため、③のように、COP28の開幕初日に気候変動で被害を受けた途上国支援基金の内容で合意したのはよかったが、実は、地球温暖化の被害者は開発途上国の人だけではないのである。

 具体的には、*3-1-3のように、日本では、青森県で養殖ホタテが高水温で大量死を起こしたり、京都の「聖護院かぶ」が生育不良になって廃棄処分が増えたりしており、これらはまだ作物の転換や品種改良で回復できる範囲ではあるが、「研究速度が気温の上昇に追いつかない状況」なのだそうだ。

 それに加えて、温暖化で線状降水帯が1.5倍発生しやすくなり、カナダで大規模な山火事が発生し、韓国・インド・リビアで水害が相次ぎ、米国では猛暑で140人以上が亡くなり、太平洋の海水温が高くなって空気中に熱を発散する「エルニーニョ現象」でさらに気温が上がり、世界でも干ばつや豪雨が続いて、ついにIPCCが「今後10年間の選択と対策が数千年先まで影響を持つ」と警鐘を鳴らした。

 なお、COP28に先だち、*3-1-2は、④IEAが「化石燃料の世界的需要が2030年までに減少に転じる」とした ⑤消費国が石油の安定確保に主眼を置いてきた時代は変わったため、日本も政策転換を急ぐべき ⑥IEAは再エネ過小評価との批判もあったが、「電力に占める再エネ比率は30%から50%に増え、移動手段もEVの新車販売が10倍に増える」とした ⑦深刻化する気候危機で化石燃料依存からの脱却は一刻を争い、省エネ・国産再エネが広がればエネルギー安全保障策になる ⑧国内の太陽光発電は東日本大震災後に急増したが、未利用地・住宅・工場・施設の屋根上など設置の余地はまだ大きい ⑨洋上風力発電も海域調査や漁業者らとの調整を進める必要がある ⑩送電網や蓄電設備の充実も急務 ⑪再エネ電力を背景にしたEV転換が次世代の鍵 ⑫経済活動への炭素課金(カーボンプライシング)も有効な手段 としていた。

 このうち、④のIEAの「化石燃料の世界的需要が2030年までに減少に転じる」という主張は世界的には正しいのかも知れないが、日本の場合は、1973年のオイルショックで原油価格が著しく上昇した後も、⑤のように石油の安定確保に主眼を置いて膨大な国富を産油国に流し、エネルギー自給率を下げた上で、今頃になって「政策転換を急ぐべき」とか、⑦のように「省エネ・国産再エネが広がればエネルギー安全保障策になる」などと言っているが、それは、あまりに反応が鈍く無思慮なのである。

 また、⑥のように、IEAは「電力に占める再エネ比率が30%から50%に増え、移動手段もEVの新車販売が10倍に増える」としたそうだが、日本の場合は屁理屈を言って止めていなければ既に再エネ大国になっていた筈で、⑧のように、従来型太陽光発電機器の設置余地もまだ大きく、*3-2-3のように、窓ガラスやビルの壁面で発電する建材一体型の太陽光発電パネルや高性能電池も開発されたため、自然エネルギー由来の再エネの可能性は著しく大きいのだ。

 そのため、日本は、再エネを推進すれば、国富を流出させず、エネルギー自給率を向上させ、エネルギー安全保障も高められる。また、⑨のように、漁業者にとってマイナスになる洋上風力発電に固執しなくても、いやと言うほどある地熱を利用したり、能登半島はじめ半島や山間部に陸上風力発電の適地も多いため、⑩の送電網や蓄電設備を充実させたりして再エネを展開することは容易なのである。

 さらに、今頃になって、⑪のように、「再エネ電力を背景にしたEV転換が次世代の鍵」などと言っているが、日本は1997年12月のCOP3で採択され、2005年2月に発効した京都議定書の時から、再エネ・EVを推進して最初は世界最先端だった。従って、今までもたもたしていた理由を究明して改善することが、産業の再生に最も必要なことである。

 なお、⑫のカーボンプライシングについては、排出権取引のように、企業や事業所が既に「排出枠」を既得権として持っていることを前提としてそれを売買する取引ではなく、CO₂の排出量に応じて環境税を課すことで、CO₂の排出を抑えつつ、環境税収入を自然エネルギー由来の再エネ普及に使うのが良いと、私は2005~2009年の衆議院議員時代から主張していた。しかし、これは、経産省関係者や経済団体の反対で実現されなかったのである。

2)日本が2030年までに再エネを3倍にすらできないのは、何故か?
 上の図の下の段に書いたとおり、再エネだけが日本国内で自給できるエネルギーなのに、日本の発電に占める再エネの割合は18.0%にすぎず、輸入化石燃料が75.8%だ。また、輸入燃料で動く原発は東日本大震災後0%が続いたのだが、最近、再稼働させて6.2%になった。その結果、日本のエネルギー自給率は11.8%にすぎず、いくら基地を増やして武器ばかり揃えても、エネルギー安全保障にも食料安全保障にもほど遠く、原発は武力攻撃に著しく弱いのである。

 また、太陽光発電機を最初に作ったのは日本であるにもかかわらず、上の図の上の段に書いたとおり、各国の再エネ発電導入容量は中国が飛び抜けて1位で、日本はブラジル・インド・ドイツ以下の6位になっている。また、各国の太陽光発電容量も、中国がダントツの1位だ。

 そして、*3-2-1のように、COP28では世界の再エネ設備容量を2030年までに3倍にすることに日本も含む100カ国以上が賛同したにもかかわらず、日本の再エネは2022年時点の約87ギガワットを2030年に2倍程度の約160ギガワットにしかしない見込みなのだ。

 また、石炭火力発電の廃止を目指す脱石炭連盟に日本は加入せず、*3-2-2のように、岸田首相はUAEのドバイで開催されたCOP28の首脳級会合で演説し、アジアの脱炭素化を主導する考えを表明されたが、その内容は、「排出削減対策が未対応の石炭火力について新規の建設を終了する」「既存施設には、アンモニアや水素の混焼しながら石炭を燃やす量をできるだけ減らす」止まりであり、これでアジアの脱炭素化を主導されては困るわけである。

 それでは、何故、日本政府はこういうエネルギーミックスにしたがるのかについて考えると、①意志決定する上層部に文系が多く、物理・化学に弱い ②「エネルギーは熱を介して作るものだ」と思い込んでいる ③太陽光発電や風力発電より、原子力発電や火力発電の方が「メカが複雑だから高度だ」と思っている ④既存の大手企業が従来の方法を使いたいと考えている ⑤環境(生物・生態系に関する学問)については考慮しない ⑥既存の大手企業から協力や政治献金がある などが考えられる。

 そのため、教育段階で、文系の人にも理系教育を決して疎かにせず、日本文化としてもチャレンジ精神を養い、「現状維持が良いことだ」などとは間違っても教えないことが重要である。

 ただし、東京都は、建物の売買時、建物の断熱性能・設備の省エネ性能・再エネ設備の設置状況・EV充電設備の整備状況・建物や駐車場の日当たりに関する説明義務を課すそうで、確かに、そういう内容の保証書が付いて売買価格に反映されていれば、選択が容易である上に、自然と建物の性能が上がる。

 また、*3-2-3のようなビル壁面などで使える建材一体型太陽光発電パネルもできたので、東京都等の都市部や住宅地など、導入可能な立地総数を発電能力に換算すると82.8ギガワットで、現在、国内で稼働している太陽光発電の導入実績の95%に相当する規模になるそうだ。

・・参考資料・・
<能登半島地震について>
*1-1-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20240103&ng=DGKKZO77402910T00C24A1NN1000 (日経新聞 2024.1.3) 浅い震源、激震誘発 M7.6「阪神」上回る、揺れ200回超、地下水関係指摘  輪島で最大4メートル隆起
 能登半島地震は国内7回目となる震度7を観測した。激しい揺れの要因は浅い震源と、阪神大震災を上回る地震の規模だ。震度1以上の揺れは2日午後6時までに200回を超えた。政府の地震調査委員会は同日、地殻変動の状況などを踏まえ「一連の地震活動は当分続くと考えられる」との見解を公表した。能登半島では2020年末から群発地震が続き、地震調査委は地下深くの水(流体)の関与を見方として示している。専門家は今回も同様の可能性を指摘する。「震源が浅く、地震の規模も大きいことで激しい揺れが起きた」。1日の地震発生後の記者会見で気象庁担当者は説明した。今回の地震は、地球の表面を覆う岩板(プレート)内部の大陸側で起きる「内陸型」。北西と南東方向から押す力が働き、断層が上下にずれる「逆断層」によって引き起こされた。内陸型は震源が浅いことが多い。今回の震源は深さ16キロで、04年の新潟県中越地震(13キロ)、1995年の阪神大震災(16キロ)と同じように浅かった。震源が浅いと揺れが地表に伝わりやすいうえ、居住地に比較的近く、大きな被害を引き起こしやすい。規模も大きかった。能登地方でのマグニチュード(M)7.6は記録が残る1885年以降で最も大きかった。マグニチュードが1大きくなると地震のエネルギーは32倍になる。今回の地震は阪神大震災(M7.3)の約2.8倍のエネルギーがあった計算になる。震源の浅さと地震の規模が相まって、大きな揺れに結びついた。地震の瞬間的な揺れの激しさを示す加速度の単位「ガル」でみると、震度7を観測した石川県志賀町の揺れの最大加速度が2826ガルを記録。東日本大震災で震度7だった宮城県栗原市の2934ガルに匹敵する大きさだった。大きな地震であったことは地殻変動のデータからもうかがえる。国土地理院は2日、輪島市で最大約4メートルの地表の隆起を観測したと発表した。水平方向では同市で基準点が西方向に約1.2メートル動いていた。津波が広範囲に及んだのも今回の地震の特徴だ。気象庁によると、今回の地震の活動領域は長さ約130キロメートル。直近3年間に能登地方で観測された地震の領域(30~40キロ四方)と比べて「はるかに広がった」(気象庁)。東京大の加藤愛太郎教授(地震学)は「断層が大きく滑り、海底面付近のかなり浅いところまで破壊されたことで津波が発生した」と分析する。震源の真上は陸地だったが、断層の動きが沖合まで広がったため、日本海側の多くの地点で津波が観測された。能登地方では20年以降、人的被害を伴う震度5強以上の地震が5回起きた。地震活動は特に20年12月から活発化し、震度1以上の地震が500回超確認された。地震調査委は23年5月に「活動は当分続くと考えられる」との評価をまとめ、国は防災対策の強化を呼びかけていた。能登地方の地震メカニズムについて、調査委は地表面の隆起や震源の移動が確認されていることから、水のような地下の流体の移動が関係している可能性を指摘した。東京工業大の中島淳一教授(地震学)は「地下の水が上昇して断層に入り、滑りやすくなったことで地震が発生した可能性が高い」と指摘する。地震波の分析では、深さ20~30キロのところに水がたまっているといい、10~15キロ付近まで上昇すると地震を起こす原因になるとみられる。地下になぜ流体があるのかなど不明な点も少なくない。中島教授も「M7を超える群発地震は世界でも観測事例がほぼないのではないか」と話す。今後も比較的大きな地震が連続する可能性があるとみて警戒を呼びかける。同庁は今後1週間ほどは最大震度7程度の地震の恐れがあるとして注意を求めている。加藤教授は「地震活動は依然として高いレベルにある。今回、流体が断層をすべりやすくして、より大きな破壊を起こした可能性があり、今後も引き続き大きな地震に注意が必要だ」と話している。

*1-1-2:https://weathernews.jp/s/topics/202401/060205/ (Weather News 2024.1.6) 令和6年能登半島地震 地震活動の状況まとめ(6日20時) 回数減少も急に強い揺れ
 1月1日に石川県能登地方で発生したM7.6 最大震度7の地震(令和6年能登半島地震)から5日がたち、地震回数は徐々に減少傾向となっています。一方で、今日6日(土)は3日ぶりに震度5強の地震が発生。過去にあった近い規模の地震では、1か月後に最大余震が発生した事例もあり、油断ができません。
●6日(土)20時までの地震活動の状況をまとめます。
1日(月)16時以降の震度1以上の地震の回数を集計すると、1日が358回、2日が387回、3日が135回、4日が65回、5日が79回、6日が47回(20時まで)となっています(5日までは気象庁の報道発表、6日は速報値による集計)。累計回数は1071回、うち最大震度5弱以上の地震は14回となっています。3日(水)午後以降は震度5弱以上を観測する地震が発生していませんでしたが、今日6日(土)5時26分におよそ3日ぶりに最大震度5強を観測する地震が発生しました。
記事冒頭の図でわかるとおり、震源域は1日(月)の頃から大きくは変わっておらず、石川県西方沖〜佐渡島の西にかけての約150kmの範囲に集中しています。体に感じない地震を含めて集計し、規模と時系列を表した散布図(MT図)をみると、マグニチュード4程度以下の地震は徐々に減少傾向ではあるものの、依然としてM5前後の地震が散発的に起きていることがわかります。
●本震—余震型の傾向か 1か月後に最大余震発生した事例も
 能登半島周辺で2020年から続いている地震活動では、これまでの最大は2023年5月5日のM6.5 最大震度6強の地震でしたが、今回のM7.6の地震はその30〜60倍程度のエネルギーということになります。日本周辺で発生した地震でみても、深発地震を除けば2011年3月の東北地方太平洋沖地震の一連の活動以来の規模といえます。地震活動の状況からは、過去数年間に能登半島周辺で発生していた群発的な地震活動型とは違い、従来から他の地域でもよくみられる本震—余震型の傾向がみられます。今後も徐々に地震の回数が減少していくと考えられます。ただ、強い余震がいつまで続くかは予測することができません。過去の本震—余震型の地震をみても、数週間から数ヶ月たった後にM5〜6クラスの余震が発生しているものもあります。今回の地震の規模に近い事例をみると、1983年に発生したM7.7の日本海中部地震、1993年に発生したM7.8の北海道南西沖地震では、ともに本震のおよそ1か月後に最大余震が発生しています。これまでに建物がダメージを受けていた場合、余震によって倒壊するなどのおそれがありますので、引き続き安全な場所で過ごすようにしてください。
●震源地:石川県能登地方、規模(マグニチュード):M7.6、震源の深さ:16km
●各地の震度(震度6弱以上)
■震度7:
【石川県】志賀町香能
■震度6強:
【石川県】七尾市垣吉町 七尾市能登島向田町 輪島市鳳至町 輪島市河井町 珠洲市三崎町 珠洲市正院町 珠洲市大谷町 穴水町大町
■震度6弱:
【新潟県】長岡市中之島
【石川県】志賀町富来領家町 志賀町末吉千古 七尾市本府中町 七尾市袖ヶ江町 中能登町末坂 中能登町能登部下 能登町宇出津
この地震により、一時は石川県に大津波警報が、北陸地方などに津波警報が発表されていましたが、いずれも時間の経過に伴う減衰により解除されています。観測された津波の高さは、最大の輪島港で「1.2m以上」と発表されていますが、現時点では能登半島周辺の正確な津波の高さはわかっていません。国内で震度7を観測するのは2018年の胆振地方中東部の地震以来で、そのほかには熊本地震、東日本大震災を引き起こした東北地方太平洋沖地震、新潟県中越地震など、いずれも大きな被害をもたらしたものばかりです。石川県内で震度7を観測するのは観測開始以来、初めてでした。
*ウェザーニュースアプリでお天気アラームを設定すると、今いる場所の天気・台風・地震・津波などの情報をいち早くプッシュ通知で受け取れます。

*1-1-3:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20240107&ng=DGKKZO77490270X00C24A1EA2000 (日経新聞 2024.1.7) 津波、1分で沿岸到達 陸と海またぐ断層が影響 日本海特有の備え不可欠
 能登半島地震では2011年の東日本大震災以来となる大津波警報が出た。被害が深刻な石川県珠洲市で地震発生から1分で津波が沿岸に達した可能性がある。日本海側は地震発生から津波到達までの時間が短い特徴があり、太平洋側と異なる備えの必要性が改めて浮き彫りになった。最大震度7の地震は1日午後4時10分ごろ発生。直後に能登地方の輪島港で津波第1波とみられる海面変動を観測した。東北大災害科学国際研究所の今村文彦教授らの研究グループは、国土地理院や米地質調査所(USGS)のデータをもとに津波が押し寄せた状況をシミュレーションした。珠洲市で約1分以内、富山市で約5分以内に津波が達していたとの結果が得られた。早く到達する要因は日本海側の断層の位置にある。北陸から北海道の日本海側にかけ、陸と海にまたがる断層や、沿岸に近い位置にある断層が多く存在する。こうした断層で地震が起きると陸の近くで津波が発生する。東日本大震災のように沖合で発生するケースと比べ、短時間で津波が沿岸に達する。1993年、日本海側で発生した北海道南西沖地震で、奥尻島に地震後まもなく第1波が到達。死者・行方不明者が200人を超えた。能登半島地震をもたらした断層も能登半島から日本海にまたがり、震源は沿岸付近だった。東京大地震研究所の佐竹健治教授は「海岸の真下に近い断層が動き、地震発生と同時に津波が到達したと考えられる」と話す。日本海側の津波は、長時間に及ぶ特徴もある。佐竹教授によると、この地域で規模の大きな津波が起きると、朝鮮半島やロシア側の大陸で反射し、数時間後に再び日本列島に到達する。大陸と日本列島に囲まれている日本海は、太平洋側と比べて津波の「逃げ道」が限られ、長く続きやすい。今回の津波注意報が全て解除されたのは、約18時間後の2日午前10時だった。東日本大震災などがあったことから、巨大な津波は太平洋側という印象を持たれがちだが、日本海側でも十数年に1度の頻度でマグニチュード(M)7程度の地震が発生し、新潟県や秋田県などで津波の被害が生じている。東大地震研が文科省の委託を受けて実施した日本海側の地震・津波に関する調査報告書は、避難が難しい点をとらえ、根本的な解決は難しいとしつつ「公共施設の建設・移転の際には、自然災害を考慮した、より安全な土地利用を進めていく必要がある」とした。津波が早期に襲来しやすいという地域の特性を踏まえ、揺れがあった場合には、津波注意報や警報を待たずに避難し始めるなどの対応が欠かせない。

*1-1-4:https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240105/k10014310811000.html (NHK 2024年1月5日) 石川県 志賀町で津波4m超遡上か 輪島市では4m以上地盤が隆起
 今月1日の能登半島地震で研究者のグループが現地を調査した結果、震度7の揺れを観測した石川県志賀町では、津波が4メートルを超える高さまで陸地を駆け上がったとみられるほか、輪島市の海岸沿いでは4メートル以上地盤が隆起していたことがわかりました。東京大学地震研究所の石山達也准教授らのグループは、地震発生翌日の今月2日から能登半島北西部の沿岸を調査してきました。その結果、志賀町の赤崎漁港では、建物の外壁に残された津波の痕跡や周辺に流れ着いた漂流物から、津波が陸地を4メートル20センチほど駆け上がったとみられることが分かりました。海岸付近の津波の高さは、潮位計がないためわかっていませんが、一般的には駆け上がった高さの半分以下とされています。また、今回の調査では沿岸の複数の地点で地盤の隆起が確認され、赤崎漁港では、25センチほど盛り上がっていました。一方、北に10キロほど離れた地点では隆起した地点が3メートルを超えるところが複数あり、輪島市の鹿磯漁港ではおよそ3メートル90センチでした。さらに、鹿磯漁港からおよそ5キロ北にある輪島市門前町五十洲の漁港では、およそ4メートル10センチに達するなど4メートルを超えるところが複数ありました。大きく隆起した漁港でも津波が駆け上がった痕跡がありましたが、建物には到達していなかったということです。石山准教授は「海岸の隆起が小さかった場所では津波が駆け上がって人家があるところまで達したと考えられる。さらに調査を進めたい」と話しています。

*1-2-1:https://www.nikkei.com/paper/related-article/?b=20240103&c=DM1&d=0&nbm=DGKKZO77402910T00C24A1NN1000&ng=DGKKZO77402960T00C24A1NN1000&ue=DNN1000 (日経新聞 2024.1.3) 医療機関が停電や断水 石川・富山・新潟
 厚生労働省は2日、能登半島地震を受け、石川・富山・新潟の3県の計16カ所の医療機関で停電や断水などの被害が生じていると明らかにした。石川県が最も多く、14カ所に上る。厚労省によると、人工透析ができなくなっている施設もあるようだ。同省は1日の能登半島地震の発生を受け、2日に同省災害対策本部の会合を開いた。武見敬三厚労相は医療機関や社会福祉施設の被害状況の把握を指示した。現地の情報集約などのため同省の職員6人を被災自治体の災害対策本部に派遣する。武見氏は職員に「先手先手の対応をし、被災者の救助に全力をあげて取り組むとともに、一刻も早く国民の生活が回復するよう全力を尽くしてほしい」と話した。

*1-2-2:https://digital.asahi.com/articles/ASS165R1PS16PTIL008.html (朝日新聞 2024年1月6日) 「何をするにも厳しい」水も電気も届かず、長引く避難生活に募る不安
 半島北部にある石川県輪島市の市役所では5日、米谷起代志さん(83)が2リットルのペットボトル5本に給水車の水を入れていた。計10キロとなったバッグをかかえ、約1キロ先のアパートに持ち帰るという。「車を持ってないから、水も食べ物も歩いてもらいに行くしかない。何をするにも厳しい」。県内では6日午後2時時点で、七尾市の2万1500戸、輪島市の1万戸など14市町の計6万6千戸ほどが断水したままで、全国から給水車が駆けつけている。ただ、輪島市で給水車1台を活動させた愛知県岡崎市によると、道路の状況が悪く、大渋滞が発生。補給やガソリン確保の移動に時間がかかり、給水に充てる時間が十分に確保できないという。派遣する複数の自治体によると、特に輪島市や珠洲(すず)市で給水がままならないという。輪島市の坂口茂市長は、避難所の環境について「電気と水がない。暖が取れないし、衛生面も悪い」と窮状を訴える。経済産業省によると、6日午後2時時点で県内の停電は約2万3200戸。輪島市が約9800戸と最も多く、珠洲市約7400戸、能登町約3200戸、穴水町約2600戸など。電線が切れるなどしたためだ。北陸電力は他の大手電力会社の応援を得て約960人態勢で復旧作業を続けるものの、倒木などで入れない地域があり、作業は困難を極めているという。斎藤健経産相は5日の会見で停電が続く理由を問われ、「道路被害の状況が想定以上に厳しい」と強調。病院や福祉施設、避難所の復旧を優先していると説明した。真冬に暖を取るために必要な灯油やガソリンなどの不足も深刻だ。被害が大きい半島北部の6市町では6日時点で、69ある給油所のうち半分以下の28店舗のみが営業を再開。残り41店舗は損壊などで営業を停止していたり、連絡がつかなかったりしている。消防車や救急車などの緊急車両に限って供給する給油所もあり、一般向けの給油所には長蛇の列ができている。道路が復旧した地域では大型車で燃料を運び入れている。石油元売り大手「出光興産」は大型車が通れない道路では、ドラム缶に燃料を詰めて小型トラックで運び、さらに渋滞を回避するため、ヘリコプターを使った物資供給も検討している。国土交通省によると、県内の高速道路や主要な道路は復旧が進むものの、国道や県道の99区間(6日夕時点)が通行止めだ。復旧を担う同省の緊急災害対策派遣隊「テックフォース」は2日時点で31人だったが、日ごとに増やして6日は394人に。ただ、そもそも道路の幅員が狭く、大規模な工事を行うクレーンなどの重機を運び込めていない。半島北部はより深刻で、被災状況の調査すら終わっていないのが現状だ。同省幹部は「復旧の見通しを立てられない」。重機の海上輸送も検討している。道路の寸断などで孤立したり支援が必要だったりする半島北部の集落は6日午後2時時点で、少なくとも40弱。県全体の避難者は約3万人に上り、自宅にとどまって支援を待つ人もいる。馳浩知事は5日の対策会議後、こう強調した。「物資については大体拠点までは届いているが、いわゆるラスト1マイル、そこから先へ十分に届いているか確認が必要だ」
●迫る感染症の影 「今の対策では限界」
 津波で大きな被害を受けた石川県珠洲(すず)市の沿岸部。近くの住民ら約200人が避難する特別養護老人ホーム「長寿園」は、6日午前も電気や水が復旧していなかった。割れた窓ガラスをブルーシートで覆い、布団にくるまったりして寒さに耐えている。頼りは10台ほどの灯油ストーブだけ。「夜は底冷えして、体調不良になる人が日ごとに増えてきた」。職員の竹平佳代さん(43)は避難生活の長期化を心配する。カップ麺や菓子パンなどは届いているが、硬いものを食べられない高齢者も多い。備蓄のゼリーやレトルトのおかゆを手でもみ、軟らかくして提供しているが、それさえも底をつきかけている。断水の影響で、トイレは水が流れなくなった。災害用に設置した簡易トイレは和式で、足腰が弱い高齢者には使えない。今はポリ袋に排泄(はいせつ)してもらい、職員が処理をしているが、水で手を洗うこともできない。感染症対策は備蓄していたマスクと消毒液だけ。「今の対策では限界がある」と竹平さんは嘆く。感染症が広がる心配はすでに高まっている。県によると、穴水町では一つの避難所で新型コロナウイルスの感染者3人が確認された。輪島市内でも体調不良の報告が増えていて、コロナやインフルエンザの疑いのある人が出ているという。想定を上回る人が集まり、物資不足が問題になる避難所もある。輪島市の鳳至(ふげし)公民館には当初、約300人が身を寄せた。備蓄していたおかゆやパンなどは150人分で、1食分を2人で食べてもらうしかなかった。水は500ミリリットルのペットボトルを200本ほど備えていたが、薬を飲む高齢者を優先した。「普段は高齢者が多い地区だけれど、時期が時期だから、帰省してきた家族がまるごと避難所に来た」と館長の七浦正一さん(76)。避難していた女性(67)は「いつまでこんな生活が続くのか。家にも戻れないし、先のことを考えるだけでつらくなるだけだよ」と話した。公民館では6日に電気が復旧したが、断水は続いているという。金沢地方気象台によると、能登地域では7日夕から8日にかけて大雪が見込まれ、避難所では不安が高まっている。珠洲市は支援物資の輸送を増やすよう県に要請。国とは避難所の電気の復旧を優先するよう調整しているが、泉谷満寿裕(ますひろ)市長は「路面状況が悪く、除雪車を出せたとしてもまともに動かせないだろう。ようやく物資を届ける体制が整い始めたが、積雪が妨げになる可能性がある」と懸念する。

*1-2-3:https://digital.asahi.com/articles/ASS1662WNS16PTIL00F.html?iref=pc_extlink (朝日新聞 2024年1月6日) 「孤立集落」で孤独感を増す避難者たち 「自分の状況が分からない」
 能登半島地震では、道路の寸断による孤立状態が各地で続く。石川県が「孤立集落」と公表する地区に5日午後、記者2人が入った。避難所近くで6日朝まで車中泊しながら、身を寄せる人たちの声を聞いた。向かったのは輪島市東部の町野地区。迂回(うかい)路となった県道はいたるところに亀裂や陥没があった。道沿いは倒壊したままの民家が並ぶ。約300人が避難する東陽中学校にたどり着いたのは午後4時ごろ。付近の家屋の倒壊は一段とひどく、瓦や柱、生活用品などが散乱していた。惣田登志樹さん(71)の自宅も倒壊し、1階リビングにいた妻が家屋に閉じ込められた。近くの人に数人がかりで助けてもらったという。「まだ救出できていない人がいるかもしれないと思うと、心が痛みます」と、沈痛な面持ちで話した。市によると、この避難所はヘリコプターなどで救援物資が複数回搬入され、物資不足の状況は脱した。だが、電気も水も途絶え、携帯電話は通じない。多くの人が「情報が入らないのが一番心配だ」と話す。家族5人で避難する男性(35)は「自分たちがどういう状況かわからないのが本当に不安」と口にした。地区の被害は正しく把握されているのか、救助は進んでいるのか――。そうした情報を発信も受信もできない。情報入手はラジオだけが頼りだ。体育館入り口に置かれたラジオの前には、常に数人が集まって耳を傾けていた。5日午後5時ごろ、ラジオのアナウンサーが県内各地で孤立状態となっている地区の名前を伝えていた。その一つに「町野地区」が読み上げられると、「まだ何も変わっとらんのか」「こりゃダメだわ」などと、失望の声があがった。日没を過ぎると、暗闇に包まれた。雨も降り、気温は一気に下がった。学校の外では、倒壊した家屋の木材をドラム缶に入れ、たき火で暖をとる人たちがいた。避難所には灯油ヒーターが数台あるが、体育館全体を暖めるには足りない。50代男性は「たき火の周りで知った顔と談笑すると、ストレス発散にもなる」と話した。午後9時ごろ、多くの人が避難所に戻った。だが、熟睡はできない。余震が一日に何度も襲う。6日午前5時半ごろには大きな余震が。続々と避難者が目を覚まし、建物の外に出てくる。「慣れっこになった人もいるかもしれないけど、私はまだ怖い」。60代女性がつぶやいていた。輪島市内には、7日から雪の予報も出ている。女性(66)は「自宅は全壊は免れたが、傾いている。雪が積もったら潰れてしまう」と嘆く。6日朝、避難者が集まって「ストーブをなるべく使わない」と決めた。使えるのは夜の決まった時間にして、灯油の消費を抑えるためだ。話し合いに参加した女性(77)は「計画停電ならぬ、計画ストーブです」。降雪に備えて雪かきの当番なども決めた。輪島市によると、この避難所は孤立状態を脱したが、復旧に不可欠な大型車両や重機は通れず、住民の不安も募る。娘と一緒に避難する女性(48)は言う。「そもそも『孤立集落』という名称が嫌だ。あなたたちは取り残されている、と毎回言われているように感じて、孤独感が増す」

*1-3-1:https://www.nikkei.com/paper/related-article/?b=20240103&c=DM1&d=0&nbm=DGKKZO77402910T00C24A1NN1000&ng=DGKKZO77402950T00C24A1NN1000&ue=DNN1000 (日経新聞 2024.1.3) 断層、長期評価の対象外
 政府の地震調査委員会(委員長・平田直東大名誉教授)は2日、臨時会を開き、最大震度7を記録した能登半島地震の分析や今後の動向について検討した。国は主要な活断層について長期評価を公表しているが、今回地震のあった断層は対象外だったと明らかにした。平田委員長は「(長期評価は)慎重にやっており、非常に時間がかかる」とした上で評価していない断層で大きな地震が起きたことについて「非常に残念だ。もっと早く評価しておくべきだった」とも話した。世界でも有数の地震大国の日本では各地に断層が存在し、リスク評価が追いついていない側面が浮き彫りになった。今後、政府の長期評価のあり方も問われそうだ。

*1-3-2:https://digital.asahi.com/articles/DA3S15808171.html (朝日新聞 2023年12月3日) 「原発容量3倍」日本も賛同 世界全体 22カ国、COP28で宣言
 アラブ首長国連邦(UAE)のドバイで開かれている国連気候変動会議(COP28)にあわせ、「世界全体の原発の設備容量を2050年までに3倍に増やす」との宣言が2日発表され、日本を含む22カ国が賛同した。温室効果ガスの排出を減らす対策の一環として、米国が呼びかけていた。
賛同したのはほかに、英国やフランス、韓国、COP28議長国のUAEなど。「温室効果ガス排出の実質ゼロを達成する上で、原子力は重要な役割を果たす」とした。世界原子力協会によると、世界の原発は436基。発電電力の約10%をまかなっている。原発は発電時に温室効果ガスを出さず、電源の脱炭素化に期待する声がある。国際エネルギー機関(IEA)は、気温上昇を産業革命前より1・5度におさえるには、50年までに2倍以上の容量が必要としていた。日本は東京電力福島第一原発の事故後、原発への依存度をできる限り低減するとしていたが、岸田文雄政権は「原発回帰」にかじを切った。脱炭素化のためのGX(グリーン・トランスフォーメーション)政策では、再生可能エネルギーとともに原発を「最大限活用する」とし、新規建設方針も盛り込んだ。エネルギー基本計画では、現在は1割以下の発電量に占める原発の比率を30年度に20~22%に引き上げるとする。しかし、再稼働したのは12基にとどまり、到達は難しい。新増設はさらにハードルが高い。政府関係者は、原発が脱炭素への安定電源になることや、輸出による関連産業の振興につながると説明。「賛同しない理由はない」と話した。一方、日本は原発事故を経験し、今も避難を余儀なくされている人がいる。環境NGO「350.org ジャパン」の伊与田昌慶さんは「必要な脱炭素化を加速させるために、危険な原子力を利用する余地はない」と非難した。

*1-3-3:https://mainichi.jp/articles/20231202/k00/00m/030/195000c (毎日新聞 2023/12/2) 「原発3倍」宣言、なぜ日本も賛同? 気候変動に役立たぬと批判も
 アラブ首長国連邦(UAE)のドバイで開催中の国連気候変動枠組み条約第28回締約国会議(COP28)では全締約国による交渉と並行し、有志国が気候変動対策強化に関する独自の宣言などを公表する場面が目立つ。米国は2日、日本など21カ国と世界全体の原子力発電の設備容量(発電能力)を3倍にすることを目指すと宣言した。国際原子力機関(IAEA)によると2022年末時点で稼働中の原発は31カ国で411基で、発電設備容量は約3・7億キロワット。バングラデシュなど途上国での計画が進み、10月公表の予測では50年までに約2・4倍の8・9億キロワットに増えると見込む。日本政府はエネルギー政策の中長期の方向性を示す「エネルギー基本計画」(21年閣議決定)で、原発への依存度を「可能な限り低減する」と明記。だが、5月成立のGX(グリーントランスフォーメーション)脱炭素電源法で原発の60年超運転を可能にし、東京電力福島第1原発事故以降、「想定していない」としてきた次世代原発のリプレース(建て替え)も進める方針を示した。脱炭素社会の実現に向け、運転中にCO2を排出しない原発を活用していく姿勢に転換した。だが、足元では発電電力量に占める原発の割合は5・6%(22年度速報)にとどまる。原発事故を受けた安全対策工事の長期化や地元同意などがハードルとなり、原発の再稼働が思ったようには進んでいないためだ。国のエネルギー基本計画に盛り込んだ30年度の原発比率20~22%との目標もほど遠い。そうした中での今回の有志国による宣言は、政府のエネルギー政策の方向性と符合する。
日本が宣言に参加したことに「原発の導入には計画から20年はかかり、今直面している気候変動への対策として役に立たない。むしろ脱炭素を遅らせる」(NPO法人原子力資料情報室の松久保肇事務局長)など批判は多い。政府は宣言に何を期待するのか。それは、次世代原発の開発などでの他国との連携強化だ。次世代原発の開発競争は欧米を中心に激化しており、国内では三菱重工業が電力大手と革新軽水炉開発に取り組んだり、日立製作所などが小型軽水炉の開発を進めたりしている。電気自動車(EV)の普及や新興国の経済成長などで世界の電力需要は今後急増し、原発市場も拡大が見込まれる。こうしたことを機会と捉え、「日本企業の技術や製品を世界に売り込むことにつなげたい」(経済産業省幹部)とする。経済界も前向きだ。経団連の十倉雅和会長は11月20日の記者会見で、有志国による原発活用について「非常によく理解できる話だ。再生可能エネルギーの普及・開発を図るのは当然だが、変動電源であり、地形的な理由で全ての国ができるわけでもない。原発も全ての国ができるわけではないが、原発を増やしていくのは人類の英知だ」と話した。

*1-4-1:https://www.yomiuri.co.jp/science/20231227-OYT1T50075/ (読売新聞 2023/12/27) 柏崎刈羽原発の運転禁止命令、原子力規制委が解除…テロ対策で「改善が見込める」
 原子力規制委員会は27日午前、東京電力柏崎刈羽原子力発電所(新潟県)に出していた事実上の運転禁止命令の解除を決定した。不備が指摘されてきたテロ対策について「自律的な改善が見込める」と判断した。2年8か月ぶりに再稼働に向けた準備が再開されることになり、今後は、新潟県など地元自治体の同意が焦点となる。同原発では2021年1月以降、侵入検知設備の不備や、所員によるIDカードの不正利用など核物質防護上の問題点が相次いで発覚。規制委は同年4月、原子炉等規制法に基づき核燃料の移動を禁ずる是正措置命令を出した。東電は、侵入検知設備の誤作動対策や、生体認証装置の拡充などの対策を実施。同原発内に社長直属の部署を新設し、社員の意識や行動を定期的に監視する仕組みも整えた。規制委は今年5月の時点では、監視体制などで改善が不十分として命令解除を見送っていたが、規制委事務局の原子力規制庁は今月6日、「是正が図られている」とする報告書案を公表。これを受け、規制委の山中伸介委員長らは同原発を視察したり、東電の小早川智明社長から意見を聞いたりして命令解除の是非を議論してきた。東電は今後、同原発の再稼働に向けて、新潟県と、立地自治体である柏崎市、刈羽村の同意を得るとしている。両市村長が再稼働におおむね容認の姿勢を示す一方、花角英世知事は態度を明らかにせず、地元同意の先行きは不透明だ。花角知事は、規制委の命令解除後に再稼働の是非を判断し、県民の意思を確認する流れを示している。県民の意思を確認する方法は、「信を問う方法が責任の取り方としてもっとも明確だ」と繰り返し、出直し知事選の可能性も否定していない。

*1-4-2:https://news.yahoo.co.jp/articles/8a2a49784efa6d034a8f7108de9956ec0136b705 (Yahoo 2024/1/7) 能登半島地震・志賀原発 避難ルート「のと里山海道」は一時全面通行止め 避難計画は“絵空事”だった
 元日に発生した能登半島地震で、北陸電力志賀原子力発電所については当日中に「異常なし」と発表された(後に訂正)。だが、原発事故があった際の避難ルート「のと里山海道」は複数カ所で陥没、一時、全面通行止めになった。石川県の激震地・輪島市や穴水町、七尾市は原発30キロ圏内だ。地震大国・日本で「原発震災」が再び起これば、近隣住民の避難はやはり困難を極める。
  *  *  *
 「志賀原子力発電所をはじめ、原子力発電所については現時点で異常がないことが確認をされております」。1月1日の地震後、最初の会見。林芳正官房長官は現地の被害状況より前に、原発の様子に言及した。地震が起きるたびに、日本、いや世界中の関心が集まってしまうからだろう。
■激震地が30キロ圏内
 能登半島西岸の石川県志賀町に北陸電力志賀原発がある。原発から約9キロ離れた同町内の観測点では震度7、原発では震度5強を記録した。激震地の輪島市や、穴水町、七尾市などは30キロ圏内になる。志賀原発には、東京電力福島第一原発と同じ沸騰水型で、1号機(54万kW、1993年営業運転開始)、2号機(135.8万kW、2006年営業運転開始)の2基がある。2011年の東電の事故後、運転は止まったままだ。2号機は、2014年から再稼働に向けて新規制基準の審査が進んでいたが、まだ合格していなかった。使用済み燃料プールには計1657体の核燃料を保管している。13年近く冷やされ続けているので、すぐに心配になる事態は起きなさそうだ。ただし、北陸電力によると、一部の変圧器で配管が壊れて油漏れが発生し、外部電源の一部が使えなくなっているという。多重の安全策の一部を欠き、安全のレベルは下がっている。2007年に震度7相当の揺れに襲われた東電柏崎刈羽原発で、基礎の杭に損傷が見つかったと同社が公表したのは、地震から14年後のことだった。その後、建屋の建て替えへと追い込まれた。志賀原発も、今後の調査でまだ損傷が見つかるかもしれない。(以下、略)

*1-4-3:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/1172469 (佐賀新聞 2024/1/6) 玄海原発3号機、運転開始40年へ安全運転 再エネ主力電源化へ技術開発を 九州電力・池辺和弘社長
 九州電力玄海原子力発電所(東松浦郡玄海町)3号機は、3月に運転開始から30年を迎える。九電の池辺和弘社長は佐賀新聞のインタビューで、玄海3号機の今後について「40年に向けて安全安定運転を続けていく」とし、延長の方針は現時点で「決まっていない」と述べるにとどめた。家庭向け電気料金に関しては資材高騰をにらみつつ今年も維持する意向を示した。(北島郁男)
●運転開始40年が近づく川内原発1、2号機(鹿児島県)は20年延長による60年運転が認可され、国では原発の60年超の運転を可能にする法律が成立した。玄海3号機の今後の運転計画をどう考えているか。
 これから40年に向けて安全安定運転を続けていく。40年の前には特別点検をし、その結果によってその先どうするかを決める段取りだと思う。まだ先なので(延長認可の申請や特別点検は)何も決まっていない。運転開始から30年の後、改正後の原子炉等規制法が施行される2025年6月までに、新たな規制制度に対応する長期施設管理計画の認可をもらえるよう準備する。
●3、4号機の耐震設計の目安となる揺れ(基準地震動)に関し昨秋、数値を見直した原子炉設置変更許可申請の補正書を規制委に提出した。新しい規制に沿った許可が必要な4月20日までに審査は間に合うか。
 原子力規制委が審査書案を出し、委員から反論はなかったというから、もうそろそろではないか。4月には間に合うと思っている。
●高レベル放射性廃棄物の最終処分場選定に向けた文献調査に関し、長崎県対馬市長は応募しない意向を表明した。使用済み核燃料の処分場が必要な「核燃料サイクル」の道筋がいまだに立っていないことを、どう考えるか。
 23年4月、最終処分に関する国の基本方針が改定され「国が前面に立ってやる」となった。そこがスタートで、これから日本各地で、人口も減っていく中でどうまちづくりをしていくのかという議論が始まり、手が挙がってくると思う。悲観的には考えていない。
●九電としては青森県六ケ所村の再処理工場に使用済み核燃料を搬出するのが前提だ。
 再処理工場の稼働は24年度上期のできるだけ早い時期とされ、それが稼働しないと玄海から持っていけない。現在は(使用済み燃料貯蔵プール内の間隔を詰めて保管量を増やす)リラッキングが3分の2は終わっている。乾式貯蔵施設も設置を計画している。
●23年は九電の原発全4基が稼働した。火力発電の燃料費が抑えられ、24年3月期の連結純利益を過去最高の1300億円と見通す。電気料金の値下げは考えていないか。
 九州は電気料金が全国的に見て安い水準。今後は資材や工事費が上がっていくと思うので、電気料金が上がらないように努力する方が先だ。自己資本比率は15%くらいしかないので内部留保を積み重ねないといけない。一律の料金の値下げは当面ないと思う。
●24年は「再生可能エネルギーの主力電源化」に取り組むとしている。再エネ導入を拡大するのか。
 拡充していく。主力電源化とは技術開発だと思う。太陽光は夜間や雨では発電せず、それで主力電源というわけにはいかない。電池や揚水、風力発電などの技術開発が大事で、これらを通して主力電源化したい。再エネ(23年11月末時点で約267万キロワット)は30年度に500万キロワットの目標に向かって進めていく。
●一方で、原発が稼働し、再エネ事業者に一時的な発電停止を求める出力制御が23年度上半期で60回に上った。再エネを有効活用する手段や構想はあるか。
 オール電化推進や、出力制御防止に向けた料金プランを作ろうと思うのが一つ。(遠隔操作で細かく調整する)オンライン制御や家庭向けのポイント付与などに取り組んでいるが、究極的には企業誘致だと考える。企業が昼間に電気を使ってくれれば捨てなくて済む部分が増える。地方自治体と力を合わせ、佐賀県も誘致活動をいろいろしているので協力したい。安く、二酸化炭素を出さない電気があることをPRしたい。

<裏金にすべき理由は何か?>
*2-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20231219&ng=DGKKZO77067050Z11C23A2CM0000 (日経新聞 2023.12.19) 安倍派パーティー「裏金」 会計責任者、立件へ 、違法性認める供述 地検、派閥側捜索へ詰め
 自民党安倍派(清和政策研究会)の会計責任者が東京地検特捜部の事情聴取に対し、政治資金パーティー収入を巡る政治資金収支報告書への不記載を認めたことが18日、関係者への取材で分かった。「裏金」について「記載しなければいけないと分かっていた」とも供述し、違法性の認識があったと説明しているという。特捜部は派閥側の収支報告書の不記載について、会計責任者を政治資金規正法違反容疑で立件する方針を固めた。安倍派の裏金の規模や慣例となった実態を解明するため、近く派閥側の関係先を家宅捜索する方針だ。安倍派では当選回数などに応じたパーティー券の販売ノルマがあり、超過分を議員に還流させていた。還流分は派閥・議員側双方の収支報告書に記載されず裏金となっていたとされる。裏金は同法の不記載・虚偽記入罪の公訴時効(5年)にかからない2018~22年の5年間で計約5億円に上るとみられる。安倍派の収支報告書の不記載額は収入と支出を合わせて約10億円に達する可能性がある。特捜部はこれまでに安倍派の会計責任者を複数回、事情聴取した。関係者によると、会計責任者は「パーティー収入の一部を不記載としてきた」と収支報告書の収入から除外していたことを説明。記載が必要だったとの認識も示したという。収支報告書によると、現在の安倍派の会計責任者は18年分から務める。関係者によると周囲に「キックバックの手法は長年続いており、引き継がれてきた」という趣旨の説明をしている。17年分までを担当した前任から申し送りがあったとみられる。政治資金規正法は収支報告書の提出義務を会計責任者に課している。会計責任者との共謀が認められれば議員本人も刑事責任を追及される可能性がある。具体的な報告・了承や指示があった場合に限られ、立件のハードルは高いとされる。特捜部は臨時国会が閉会した13日以降に捜査を本格化した。安倍派にはパーティーの収入総額と、収支報告書に記載する額を管理するための二重帳簿があったとされる。こうした客観証拠や会計責任者の事情聴取を踏まえ、不記載額の特定を進めている。安倍派では数十人が還流分を収支報告書に記載しておらず、議員側の事情聴取も進める。1人当たりの不記載額は多いケースで約5000万円に上る。裏金が多額となった議員を優先して本人からも事情を聴き、不記載の経緯や認識を確認するとみられる。

*2-2:https://news.yahoo.co.jp/articles/aa54af4ad9edde84f77dfaa4cec4bf270fdaa86b (Yahoo 2024/1/7) 速報】池田佳隆衆議院議員と秘書を逮捕 “裏金”4800万円めぐり虚偽記載か 安倍派政治資金事件
 自民党・安倍派の政治資金パーティーをめぐる事件で、東京地検特捜部は、派閥から約4800万円のキックバックを受け、政治資金収支報告書にウソの記載をした疑いで、池田佳隆衆院議員と会計責任者を逮捕した。この事件で逮捕者が出るのは初めて。政治資金規正法違反の疑いで逮捕されたのは、衆院議員で安倍派の池田佳隆容疑者と会計責任者の柿沼和宏容疑者の2人。池田容疑者は柿沼容疑者と共謀し、2022年までの5年間に派閥から受け取った約4800万円のキックバックも含め、全部で1億円あまりの収入があったにもかかわらず、池田容疑者側の収支報告書には、5300万円ほどの収入とウソの記載をした疑いがもたれている。特捜部は2023年12月、池田容疑者が住む議員宿舎や議員会館事務所などを捜索しているが、虚偽記載の額が突出して多いことや、証拠隠滅の恐れがあるなどと判断し、逮捕に踏み切ったものとみられている。関係者によると、池田容疑者はこれまでの任意聴取に関与を否定していたという。安倍派では、ノルマを超えた分の収入を派閥に納めず、中抜きしていた議員も十数人いて、この分も含めた事実上の「裏金」は、2022年までの5年間で6億円規模にのぼるとみられている。

*2-3:https://www.yomiuri.co.jp/politics/20240104-OYT1T50150/ (読売新聞 2024/1/5) 政治改革へ自民の新設機関、最高顧問候補に麻生副総裁と菅前首相…首相が意向示す
 岸田首相(自民党総裁)は4日、首相官邸で年頭記者会見に臨んだ。首相は、自民党派閥による政治資金規正法違反事件を受けた政治改革の実現に向け、党内に新設する総裁直属機関で月内に中間とりまとめを行うと表明した。新設機関は「政治刷新本部(仮称)」で来週にも設置し、外部の有識者も招いて議論すると明らかにした。首相は「党の先頭に立って、政治への信頼を回復すべく取り組みを進める」と強調し、派閥の政治資金パーティーに関して党による監査実施や、収支を現金ではなく原則振り込みにする案に言及。「政治資金規正法改正という議論もあり得る」とも述べた。この後、首相はBSフジの番組に出演し、同本部の最高顧問に自民党の麻生副総裁と菅前首相を充てる意向を示した。事務総長には木原誠二幹事長代理を起用する方向だ。年頭記者会見では、能登半島地震への対応について、「避難の長期化も懸念される中、被災者の生活となりわいを支えていく息の長い取り組みが求められる」と訴えた。

*2-4:https://toyokeizai.net/articles/-/604812 (東洋経済 2022/7/22) 国会議員が得る「お金」がどれほどか知ってますか、文書通信交通滞在費の問題は継続して議論が必要
 今回の参議院選挙は自民党が圧勝しました。多くのタレント議員が誕生しましたが、一部の議員には当選後の会見を拒否する姿勢が見られました。公人である以上、自らの言葉で有権者に説明する責任がありますが本人の姿が見えないのは残念なケースです。落選しない限り参議院議員は6年間の職位が保証されます。今回は、あらためて注目される国会議員の報酬について解説します。
●議員報酬は高いのか
 憲法では国会議員の報酬を次のように規定しています。憲法49条「両議院の議員は、法律の定めるところにより、国庫から相当額の歳費を受ける」。国会法35条「議員は、一般職の国家公務員の最高の給与額(地域手当等の手当を除く。)より少なくない歳費を受ける」。さらに、歳費法によって歳費、旅費および手当等の支給についても細かく規定されています。いったい、いくらになるのでしょうか?国会議員の歳費は月額129万4000円と定められています。年額で1552万8000円になります。ここに、期末手当(賞与)として年額635万円が加算されますので、総額2187万8000円が基本ベースです。昨今問題視されている「文書通信交通滞在費」(現在は「調査研究広報滞在費」に名称変更)が1200万円(月額100万円×12カ月)が支給されます。領収書の公開などが不要であるため、第2の給与とも呼ばれさまざまな用途に使用されているのが実情です。領収書による精算が必要ありませんからブラックボックスです。1200万円(月額100万円×12カ月)もの領収書も必要ないお金を一般人が稼ぐにはいくら必要でしょうか。所得税で40%控除されることを踏まえれば、約1700万円(月額141万円×12カ月)の収入が必要になります。次に、「立法事務費」780万円(月額65万円×12カ月)を加算してみましょう。立法事務費は会派に対して支払われますが、1人会派だとしても政治資金規正法上の政治団体として届け出ていれば認められます。また、まったく活動していなかったとしても立法事務費の使い道を第三者が確認する術はありません。使途公開の必要のない月額65万円を一般人が稼ごうとするとどうなるのでしょうか。所得税で40%控除されることを踏まえれば、1296万円(月額108万円×12カ月)程度の収入が必要です。基本ベース2187万8000円+1700万円=3887万8000円(議員歳費+文書通信交通滞在費)に1296万円(立法事務費)を加算すると、5183万8000円となります。さらに、JR特殊乗車券・国内定期航空券の交付や、3人分の公設秘書給与や委員会で必要な旅費、経費、手当、弔慰金などが支払われます。くわえて、政党交付金の一部が、各議員に支給されます。これらを踏まえて国会議員1人当たり、年間にどれだけのお金がかかっているのか試算してみましょう。
●参議院議員A氏(北海道選出)のシミュレーション
○基本給1552万8000円(月額129万4000円)
○期末手当635万円
○文書通信費1200万円(月額100万円)
○立法事務費780万円(月額65万円)
○JR特殊乗車券、国内定期航空券。北海道選出の議員であれば羽田⇔新千歳(ファーストクラスなら往復10万円×月4回×12カ月=480万円)
○秘書給与2100万円(政策秘書900万円、第1秘書700万円、第2秘書500万円と仮定)
○政党からの支給 0~1000万円程度
合計:6000万~7000万円程度と推測
政党からは役職に応じて黒塗りの車もあてがわれます。議員会館の賃料は無料、議員宿舎には格安で居住することができます。2014年に賃料引き上げを行いましたが、周辺相場の2割程度で借りることができます。24時間体制の警備が施されセキュリティーは万全です。部屋から緊急通報のボタンを押せば秒速でスタッフが駆けつけます。
●政治献金はどのくらい?
 政治活動には多額の出費が必要であることから、政治家は政治献金を募ることになります。企業が行う企業献金と、個人が行う個人献金に分かれます。企業献金には癒着につながりやすいという指摘があります。また、政治家個人への献金は禁止されていることから、政治団体(一政治家が1つだけ指定できる資金管理団体や後援会など)を通じて献金することになります。日本国籍を持つ個人献金のみ可能で、一政治団体に対して年間150万円まで可能です。政治資金パーティーによる政治献金もあります。資金管理団体には、個人献金や政治資金パーティーの収益が入り、政党支部には政党本部や企業献金が入ります。日本経済新聞電子版(2021年12月3日配信)によれば、国会議員の資金管理団体と関係する政党支部が2020年に集めた政治資金をめぐり、議員1人当たり実収入の平均額は3103万円で、2019年から28.9%減少したことが明らかにされています。「アメリカ」の下院・上院では支給額にかなりの差が生じます。下院は「議員代表職務手当」が支給されます。この手当から、交通費、通信費、秘書給与その他の経費を支出します。その額は1億2000万~1億8000万円と差があります。アメリカ合衆国議会議事堂があるワシントンから選挙区までの距離、事務所賃貸料等の個人差が生じているためです。上院は「秘書・事務所費用会計」として、事務費から秘書給与までの経費すべてを支出します。その額は約2億4000万~4億円程度です。両院とも秘書給与を流用できますが、充当されるのは、下院で8000万円程度、上院では2億~3億円です。秘書の人数も下院なら5名程度、上院で30~40名と開きがあります。
●不適切な経費請求が発覚し、厳格化されたイギリス
 「イギリス」の上院は貴族院として世襲により構成されてきましたが、現在は削減され無報酬を踏襲しています。下院は基本給に手当が加わりますが、各議員が実費精算することから内容が異なります。英国下院は約1126万円、「秘書雇用手当」が3人で平均約1300万円程度です。手当や使いみちは詳細に公開され、誰でも閲覧できるようになっています。2009年に多くの不適切な経費請求が相次いで発覚しました。イギリスの新聞、『デイリー・テレグラフ』は、全国646人の議員のうち、200人以上の不適切な経費請求を明らかにします。議員は国民から強い反発を受けました。その後、ルールが厳格化され、現在では公開が義務づけられています。「ドイツ」の議員報酬は1466万円で欧州では2位、世界全体でも8位の高額議員報酬です。個人で秘書を雇った場合はその人件費として最大23万9000ユーロ(約3100万円)が支払われます。秘書の数は制限がありませんが近親者の雇用を禁じています。平均6~7名です。「フランス」は1085万円で、これは世界14位のランクです。秘書の雇用に関しては、上院で約952万円、下院で929万円が支給されます。人数は上院6名、下院では5名まで可能で半数はパートです。これらの情報を比較すると、アメリカが突出しているように見えますが、すべて使途明細書の提出がなければ1セントも支払いがされない後払い方式です。アメリカは政党に依存しない個人活動が主流だからです。欧州は政党・会派中心ですが日本もそれに近いと言えます。
●毎回先延ばしになる議員特権議論
 2021年10月31日の衆議院選挙後に「満額」が振り込まれたことにより文書通信交通滞在費をめぐる問題は、連日メディアで報道されました。しかし、「使途の明確化や情報公開」など重要な要点には触れられずに先送りされました。与野党ともに「日割り」にするだけで決着をつけようとする姿勢が強く見受けられました。継続した議論が求められます。前の国会で各党は「使途公開」を口にしていました。ところが成立したのは当選した月の支給額を「日割り計算」にする改正だけです。使途公表や国庫返納はなんら盛り込まれていません。さらに、文書通信交通滞在費から調査研究広報滞在費に費目が変更されただけでした。その後、JR無料パスの違法使用、パパ活疑惑などがあり、国民からは「議員特権を廃止すべき」という厳しい声が上がりました。国民の血税で活動している以上、国会議員にかかる諸費については透明性を持たせる必要があります。しかし、政治家は自らが当選に有利になることでないかぎり前向きには議論しません。政治システムを変える法案を提出することもありません。当然のことながら不利になるシステムに変更されることもありません。実現させようなどと思っていないからでしょう。国会議員の本務は、国会で政策を議論し、必要な法律を策定することです。選挙区のお祭りや盆踊りに顔を出したり、運動会に参加したりすることが本筋ではないのです。議員は国の代表ですから、相応の報酬があることはもちろん理解できます。しかし、税金によって支払われる以上、議員の仕事に見合うかどうかを国民1人ひとりが注視しなければなりません。参議院選挙後の臨時国会は8月3日に召集されます。

*2-5:https://elaws.e-gov.go.jp/document?law_unique_id=328AC1000000052_20150801_000000000000000 国会における各会派に対する立法事務費の交付に関する法律
第一条 国会が国の唯一の立法機関たる性質にかんがみ、国会議員の立法に関する調査研究の推進に資するため必要な経費の一部として、各議院における各会派(ここにいう会派には、政治資金規正法(昭和二十三年法律第百九十四号)第六条第一項の規定による届出のあつた政治団体で議院におけるその所属議員が一人の場合を含む。以下同じ。)に対し、立法事務費を交付する。
2 前項の立法事務費は、議員に対しては交付しないものとする。
第二条 立法事務費は、毎月交付する。
第三条 立法事務費として各会派に対し交付する月額は、各議院における各会派の所属議員数に応じ、議員一人につき六十五万円の割合をもつて算定した金額とする。
第四条 前条の所属議員数は、毎月交付日における各会派の所属議員数による。
2 立法事務費の交付日において、議員の任期満限、辞職、退職、除名若しくは死亡、議員の所属会派からの脱会若しくは除名又は衆議院の解散があつた場合には、当月分の立法事務費の交付については、これらの事由が生じなかつたものとみなす。一の会派が他の会派と合併し、又は会派が解散した場合も、また同様とする。
3 各会派の所属議員数の計算については、同一議員につき重複して行うことができない。
第五条 各会派の認定は、各議院の議院運営委員会の議決によつて決定する。
第六条 各会派は、立法事務費の交付を受けるために、立法事務費経理責任者を定めなければならない。
第七条 各議院の議長は、立法事務費の交付に関し疑義があると認めるときは、議院運営委員会に諮つて決定する。
第八条 この法律に定めるものを除く外、立法事務費の交付に関する規程は、両議院の議長が協議して定める。

<気候変動対策について>
*3-1-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20231202&ng=DGKKZO76627250S3A201C2NNE000 (日経新聞 2023年12月2日) 国連総長「地球、破綻しつつある」 COP28 温暖化対策遅れに危機感
 アラブ首長国連邦(UAE)のドバイで開かれている第28回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP28)は1日、首脳級会合が始まった。国連のグテレス事務総長は演説で、「地球のバイタルサイン(生命兆候)は破綻しつつある」と温暖化対策の遅れに危機感を示した。(1面参照)
グテレス氏は世界の気温上昇を産業革命前より1.5度以内に抑える2015年のパリ協定に触れ「世界はパリ協定の目標から何マイルも離れている」と指摘。「今、行動すれば最悪の混乱を避けられる」と述べた。1.5度目標を達成するには「最終的に全ての化石燃料の燃焼を停止した場合にのみ可能だ」と主張し、化石燃料の廃止を訴えた。再生可能エネルギーはかつてないほど安価になっているとして、利用を拡大すべきだとの立場を強調した。チャールズ英国王も、世界の気候変動対策が「軌道から大きく外れている」と指摘した。温暖化ガスの排出量が世界規模で増えていることに触れ「COP28が真の変革に向けた重要な転機となることを心から祈る」としたうえで「地球は私たちのためのものではなく、私たちが地球のものなのだ」と強調した。開幕初日となった11月30日には、気候変動で干ばつや洪水などの被害を受けた途上国を支援する基金制度の内容で合意した。初日の会合で参加国が一定の成果を出したかたちだ。欧州連合(EU)のフォンデアライエン欧州委員長は、基金をめぐる合意について「我々は最も脆弱な市民を守るための決定的な一歩を踏み出す」と指摘。「ドバイでの会合が歴史を作ることができると信じている」と強調した。COP28ではパリ協定の目標達成に向けた対策の進捗を世界全体で検証する「グローバル・ストックテイク(GST)」が行われる見通し。GSTは今回のCOPを皮切りに、5年ごとに実施される。このほか、温暖化ガス排出削減などの重要課題で実効性のある合意に至れるかが焦点となる。

*3-1-2:https://digital.asahi.com/articles/DA3S15796373.html?iref=comtop_Opinion_04 (朝日新聞社説 2023年11月20日) IEA報告書 脱化石燃料へ転換急げ2023年11月20日
 化石燃料の世界的な需要が2030年までに減少に転じる――。国際エネルギー機関(IEA)が、そんな見通しを示した。消費国が石油の安定確保に主眼を置いてきた時代が、はっきりと変わりつつある。日本も政策の転換を急ぐべきだ。IEAは50年前の石油危機を受けて、当時の西側先進国がエネルギー安全保障での協力のためにつくった組織だ。各国に石油備蓄を義務づけ、供給不安時に協調する。化石燃料の大半を海外に頼る日本にとっても重要な機関とされてきた。一方で、「再生可能エネルギーを過小評価している」との批判もあった。その組織が先月の報告書で、各国の現行政策に基づく最も手堅い予測として、化石燃料の需要減を見込んだ。エネルギー供給全体に占める割合でも、22年の80%が、30年には73%に下がるという。一方で、電力に占める再エネの比率は30%から50%近くに増える。移動手段でも、電気自動車の新車販売が、10倍に増える見通しだ。深刻化する気候危機をみれば、化石燃料依存からの脱却は一刻を争う。省エネとともに、代替として国産の再エネが広がれば、新たなエネルギー安全保障策にもなる。国内の太陽光発電は東日本大震災後に急増したが、未利用地のほか、住宅や工場、施設の屋根上など設置の余地はなお大きい。洋上での風力発電も、海域での調査や漁業者らとの調整を進める必要がある。送電網や蓄電設備の充実も急務だ。運輸・交通面での脱炭素化も迫られる。日本はハイブリッド車で先行したが、燃費は良くてもガソリンを使い続ける以上、一時的な解決策にとどまる。再エネ電力を背景にした電気自動車への転換こそが次世代の鍵を握ることは、自動車業界も、すでに自覚しているはずだ。社会・産業を広く脱炭素化するには、インフラの整備に加えて、経済活動への幅広い炭素課金(カーボンプライシング)が有効な手段だ。国際水準の炭素価格を設ければ、競争力のある技術の開発や製品化にもつながる。政府が導入方針を示す今の枠組みは、開始時期や予想される価格水準が不十分だ。見直しを求めたい。脱炭素化できるかどうかだけではなく、そのスピードも重要だ。関連投資は急増しており、脱炭素化は制約ではなく、成長の機会にもなる。日本は来年からエネルギー基本計画の改定作業を始めるが、積年の遅れを取り戻さなければならない。

*3-1-3:https://digital.asahi.com/articles/DA3S15808101.html (朝日新聞 2023年12月3日) (COP28)沸騰化、地球むしばむ ホタテ大量死、世界では山火事・水害・干ばつ
 中東ドバイで開催されている国連の気候変動会議(COP28)では、世界のリーダーが集い、温暖化対策を議論している。世界の平均気温が史上最高を更新する今年、「地球沸騰化」とも呼ばれる異常な高温やその影響が日本を含む世界中で爪痕を残している。11月下旬、青森県の陸奥湾に面する蓬田漁港。午前3時すぎ、ホタテ漁師の中川八千雄さん(67)は漁船の上で、ホタテの稚貝をカゴに移し替える作業をしながら、ため息をついた。「3割ほど死んでる。こんなことは初めてだ」。口が開いたり成長が止まったりして「へい死」した稚貝がいくつも見つかった。37年の漁師人生で最もひどい状況だ。原因はホタテが苦手な高水温。稚貝は26度を超えると衰弱して死ぬこともある。今年は、猛暑や海洋熱波により、水温が上昇し始める時期が早く、陸奥湾では7月下旬に水深15メートルで23度を超え、その状態が2カ月余り続いたという。9月上旬には最高水温が平年より4度以上高い場所もあった。県内の生産量の約半分を占める平内町漁業協同組合販売課長の小塚達典さん(42)によれば、稚貝の9割がへい死した地点もあるという。「人間なら熱湯につかっているのと同じ。漁業者から『来年に売るものがない』という声も聞く」。京都の冬の味覚「千枚漬け」にも夏の酷暑が響く。原料となる良質な聖護院かぶの産地で知られる京都府亀岡市。農家の男性(54)は畑の一角を指さして「あの圃場(ほじょう)の収穫は諦めました」と語った。4アール分のカブを生育不良で廃棄するという。今年は暑すぎて発芽が出そろわない。種まきの時期が初めの分は大きく育たず、変色したり、特有の「滑らかな肌」も失われたりした。「欲しい時にカブがなかった」。千枚漬けの老舗「大安(だいやす)」(京都市)によると、例年は9月からの千枚漬けの販売が、10月末までずれ込んだという。九州大学の広田知良教授(農業気象学)によると、長年、品種改良や農業技術によって単位面積当たりの農作物の収量は増えてきた。しかし最近は減少傾向の作物もあるという。「研究速度が、気温の上昇に追いついていない状況だ」。今夏の日本の平均気温は過去最高を更新。気象庁の担当者も「予報を大きく超えた信じられないような高温」と断じた。東京大などの研究チームの解析によれば、地球温暖化の影響がなければ他にどんな悪条件が重なっても、ほぼ起こりえない猛暑だったという。各地で豪雨被害をもたらした線状降水帯も、温暖化によって1・5倍発生しやすくなっていた。世界でも気候災害が相次ぎ、カナダでは日本の半分の面積を焼く山火事が発生。韓国やインド、リビアでも水害が相次ぎ、米国では猛暑で140人以上が亡くなった。さらに、今年発生したエルニーニョ現象によって高温の傾向が強まる可能性が指摘されている。世界的にも干ばつや豪雨が続き、国際ブドウ・ワイン機構のまとめでは、ブドウの収穫減によって世界のワイン生産量は過去60年で最少になる見通しという。11月も例年に比べて高温の状況が続き、欧州連合(EU)のコペルニクス気候変動サービスによると、17日には世界の平均気温が初めて、産業革命前から2度以上高くなったという。国連によると、各国の現状の削減目標を達成したとしても、今世紀末には気温上昇は3度近くになる。深刻な熱波が起きる確率は現状5年に1回程度だが、3度上昇すると5年に4回になるという研究もある。国連気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は、「今後10年間の選択と対策が数千年先まで影響を持つ」と警鐘をならす。

*3-2-1:https://digital.asahi.com/articles/ASRD273TFRD2ULBH00G.html?iref=comtop_7_02 (朝日新聞 2023年12月2日) 世界の再エネ容量、30年までに3倍へ 日本など100カ国以上賛同
 アラブ首長国連邦(UAE)のドバイで開かれている国連の気候変動会議(COP28)では2日、世界の再生可能エネルギーの設備容量を2030年までに3倍にすることに、日本も含む100カ国以上が賛同した。2日まで開かれた首脳級会合では、中東情勢をめぐる波乱もあった。再エネ3倍の目標は、議長国のUAEが参加国に呼びかけていた。誓約書では、気温上昇を産業革命前から1・5度に抑えるためには、再エネの世界全体の設備容量を、現在の約3600ギガワットから、1万1千ギガワットに上げる必要があると指摘。エネルギー効率(省エネ)も2倍にすることをめざす。「化石燃料に依存しないエネルギーシステムへの世界的な移行を、前倒しで推進しなければならない」と主張。各国が再エネや省エネに関する計画をつくり、温室効果ガス削減目標に反映することも求めた。日本も再エネの導入量を引き上げる必要がある。日本の再エネは22年時点で約87ギガワット、30年には2倍程度の約160ギガワットにする見込みだが、世界に対する貢献量は少ない。伊藤信太郎環境相は「各国がそれぞれ3倍ということを言っているわけではない」と話すが、次のエネルギー基本計画の議論に影響を与えそうだ。一方この日は、米国が、石炭火力発電の廃止を目指す脱石炭連盟に加入した。英国とカナダ主導で立ち上げた枠組みだ。米国は中国、インドに次ぐ「石炭火力大国」だが、ケリー米気候変動特使は「世界中で排出対策の取られていない石炭火力の段階的廃止を加速する」とコメントした。日本は加入していない。
●交渉の裏で戦争の影も
 国際協調が必要な温暖化対策だが、前日に再開したパレスチナ・ガザ地区での戦闘は交渉にも影を落とした。COPに参加したイスラエルのヘルツォグ大統領は首脳演説をせずに、インドや欧州連合(EU)などと二国間会談を展開。同氏のX(旧ツイッター)によると、「(イスラム組織)ハマスがあからさまに停戦協定を破った」などと主張したという。イラン国営通信によると、同国のエネルギー相は、イスラエルがCOPに参加することに抗議し、会場から去ったという。2年後のCOP30の議長国となるブラジルのルラ大統領は、温暖化対策費をはるかに上回る巨額の資金が、世界で戦争や軍事に充てられていることを嘆いた。「力を結集すべき時に、世界が戦争に向かっているとは」

*3-2-2:https://www.nikkei.com/article/DGXZQODK01B120R01C23A2000000/ (日経新聞社説 2023年12月2日) アジアの脱炭素へ協力深め世界に貢献を
 岸田文雄首相はアラブ首長国連邦(UAE)のドバイで開催中の第28回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP28)の首脳級会合で演説した。アジアの脱炭素化を主導する考えを表明した。気候変動対策の行方を左右するのは世界の二酸化炭素(CO2)排出量の約6割を占めるアジアの取り組みだ。日本の脱炭素技術や省エネルギーのノウハウを積極的に移転し、削減に貢献すべきだ。アジアは日本と同様、電源に占める石炭火力発電の割合が高い。太陽光や風力の適地が少なく、再生可能エネルギーの大幅な拡充は難しい。首相が触れたアンモニアや水素の活用は日本が技術開発で先行する。現実的な選択肢だ。日本は特殊な国債を出し、世界銀行とアジア開発銀行の信用リスクを補完する。融資余力を合計90億ドル規模ほど広げるという。だがインドや東南アジアだけでも年間5000億ドルが必要とされ、欧米の支援を含めても足りない。民間投資も大幅に増やす必要がある。政府は日本企業の事業展開を促す支援策づくりを急ぐべきだ。アジアでは、補助金や税優遇といった政策も十分ではない。日本が主導するアジア・ゼロエミッション共同体(AZEC)を通じ、政策ノウハウの提供や人材育成を進めることも重要になる。まず何よりも、国内の脱炭素をより進めることが不可欠だ。日本はガソリンや電気、ガスへの補助金など脱炭素に矛盾する取り組みも目立つ。国際社会から二枚舌とみられかねない状況だ。演説では、排出削減対策が未対応の石炭火力について新規の建設を終了することも表明した。既存施設については言及しなかった。世界の潮流は脱化石燃料だ。アンモニアや水素の混焼を使いながらも、石炭を燃やす量をできるだけ減らす姿勢を見せてほしい。日本は2013年度比でCO2を約20%削減した。30年度に46%という目標の半分近くで「さらに高みを目指す」という。しかし、各国の中央銀行や金融当局で構成する気候変動リスク等に係る金融当局ネットワークなどの分析によると、進捗状況は主要7カ国(G7)の中で最も遅れている。最新の空調機器や製造装置への更新、住宅への太陽光パネル設置、建物の断熱性向上など、まだできることは多い。脱炭素技術の普及も進めながら削減実績を積み上げることが重要になる。

*3-2-2:https://www.nikkei.com/article/DGXZQODK01B120R01C23A2000000/ (日経新聞社説 2023年12月2日) アジアの脱炭素へ協力深め世界に貢献を
 岸田文雄首相はアラブ首長国連邦(UAE)のドバイで開催中の第28回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP28)の首脳級会合で演説した。アジアの脱炭素化を主導する考えを表明した。気候変動対策の行方を左右するのは世界の二酸化炭素(CO2)排出量の約6割を占めるアジアの取り組みだ。日本の脱炭素技術や省エネルギーのノウハウを積極的に移転し、削減に貢献すべきだ。アジアは日本と同様、電源に占める石炭火力発電の割合が高い。太陽光や風力の適地が少なく、再生可能エネルギーの大幅な拡充は難しい。首相が触れたアンモニアや水素の活用は日本が技術開発で先行する。現実的な選択肢だ。日本は特殊な国債を出し、世界銀行とアジア開発銀行の信用リスクを補完する。融資余力を合計90億ドル規模ほど広げるという。だがインドや東南アジアだけでも年間5000億ドルが必要とされ、欧米の支援を含めても足りない。民間投資も大幅に増やす必要がある。政府は日本企業の事業展開を促す支援策づくりを急ぐべきだ。アジアでは、補助金や税優遇といった政策も十分ではない。日本が主導するアジア・ゼロエミッション共同体(AZEC)を通じ、政策ノウハウの提供や人材育成を進めることも重要になる。まず何よりも、国内の脱炭素をより進めることが不可欠だ。日本はガソリンや電気、ガスへの補助金など脱炭素に矛盾する取り組みも目立つ。国際社会から二枚舌とみられかねない状況だ。演説では、排出削減対策が未対応の石炭火力について新規の建設を終了することも表明した。既存施設については言及しなかった。世界の潮流は脱化石燃料だ。アンモニアや水素の混焼を使いながらも、石炭を燃やす量をできるだけ減らす姿勢を見せてほしい。日本は2013年度比でCO2を約20%削減した。30年度に46%という目標の半分近くで「さらに高みを目指す」という。しかし、各国の中央銀行や金融当局で構成する気候変動リスク等に係る金融当局ネットワークなどの分析によると、進捗状況は主要7カ国(G7)の中で最も遅れている。最新の空調機器や製造装置への更新、住宅への太陽光パネル設置、建物の断熱性向上など、まだできることは多い。脱炭素技術の普及も進めながら削減実績を積み上げることが重要になる。

*3-2-3:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20240111&ng=DGKKZO77565030R10C24A1MM8000 (日経新聞 2024.1.11) ビル壁面で発電、生産3倍 カネカ 高性能電池、ガラスと一体
 カネカはビル壁面などで使える建材と一体にした太陽光発電パネルの年間生産量を2030年までに現在の約3倍に増やす。都心部ではパネル設置場所が限られており、窓ガラスやビル壁面に潜在需要がある。建材一体型の普及により、現在の国内の太陽光発電能力に匹敵するとの試算もある。ビル群が都市発電所として電源の一翼を担う可能性がある。カネカは窓ガラスなどに使える建材一体型発電パネルを大成建設と共同開発した。自社開発した高性能の太陽電池をガラスに挟んで窓ガラスや外壁材として使える。兵庫県豊岡市の既存工場の生産能力を段階的に高める。新工場建設も視野に入れる。30年に現状の3倍となる年産30万平方メートル(東京ドーム6.4個に相当)に増やす。同社の太陽光パネルは住宅向けが中心で現状の売上高は100億円前後だ。カネカは大成建設との共同開発品以外にも複数の商品発売を計画しており、30年に建材一体型のパネルだけで現在のパネル全体と同等の100億円まで増やす考えだ。インドの調査会社IMARCによると世界の建材一体型太陽光の市場規模は28年までに22年比3倍近い548億米ドル(約8兆円)に達する見通しだ。太陽光パネルは中国メーカーが世界供給の7割を占める。国内勢はカネカや長州産業、シャープなどに限られるが建材一体型のような付加価値商品で先行する。太陽光発電協会(東京・港)によると、今後建材一体型太陽光発電が導入可

<能登半島地震で顕在化した地方の働き手不足>
PS(2024年1月13日追加):石川県の馳知事が、*4-1-1のように、「(能登半島地震の復興に)数兆円規模の補正予算の編成を1カ月以内にお願いしたい」と述べられたそうだが、国民は東日本大震災の復興特別税を2013年から2037年までの25年間も所得税に2.1%加算して支払っており、負担に感じている。そして、そもそも復興とは、既得権のように四半世紀も続けるものではなく、10年以内に2度と同じことが起きない形で行なうべきものである。そのため、*4-1-2の仮設住宅建設も、何度も同じことを繰り返して避難しなくてすむよう、津波や激しい地震が発生する地域は避けるのが税金を払っている国民に対するマナーであろう。そして、今後、同じことを繰り返した場合には2度と補助せず、財源は今後起こる震災まで含めて復興税もしくは一般税から出すようにすべきである。
 なお、*4-1-3のように、石川県はじめ日本各地により安全で人口の減っている地域は少なくないため、金沢・加賀・輪島等が大切であったとしても、“復旧”として同じ場所に同じものを作る必要はなく、これを機会に都市計画をしっかりやるべきだ。また、インフラは全国で老朽化が進み、適切な修繕や補修をしないと災害時のリスクも高まるのは事実だが、本来は普段から補修・代替等をしているべきなのである。予算や人手の足りない市区町村では修繕が必要な橋梁の6割が未着手で、地方のインフラ対策は急務だそうで、その理由は、①高齢化で社会保障費が膨らみ公共事業に回す余裕がない ②市町村全体の25%にあたる437市町村でインフラ整備にあたる技術系職員を1人も確保できていない ③土木部門の職員数の減少率は市町村全体の職員数の減少率より大きい ④専門知識のない事務職員が対応して外部委託費等でコストがかさむ 等と説明されているが、これは自治体の規模・職員の採用方針・給与体系に問題がありそうだ。
 確かに能登半島地震を見ても、避難者には高齢者の割合が高く、ガザ地区で避難している人に子どもの割合が高いのと対照的である。しかし、これは50年も前から生じていた現象で、居住地の仕事・子育て環境が日本の若者にとって魅力的でなかったことによって生じたものである。そのため、その張本人であるドメドメした(domestic:国内しか見ていないこと)おじいさんたちの提言を基に、*4-2-2のように、i)人口動態の基調が変わらない限り、1億2400万人の日本の人口は2100年に6300万人に半減する ii)人口が急激に減ると社会や経済は縮小と撤退を強いられる iii)高齢化率が4割で高止まりする超高齢社会が続いて格差と対立が深刻化する iv)インフラやサービスの機能停止で地方社会は消滅の危機になる v)提言はこうした縮小と停滞を避けるため人口減のペースを緩和させ、8000万人の規模で安定させる必要性を訴えた vi)外国人労働者の受け入れは高技能者に絞る vii)2060年までに合計特殊出生率2.07の必要がある viii)2040年頃までに出生率1.6、2050年頃までには1.8に上昇することが望ましい ix)出生率1.26の日本にとって容易ではないが、決して不可能ではない筈で、政府は提言も参考に戦略を作って欲しい x)子どもを持つか否かは個人の選択で、目標が独り歩きして出産を強要するような風潮が生まれないようにするのは当然 等と言っても、内容に筋の通らないことが多いのである。 
 具体的には、i)は誤りだ。何故なら、生物は直線的に増えたり減ったりするものではなく、ゆとりが増えれば増加したり、減少速度が落ちたりするものだからだ。そのため、ix)のように、出生率1.26である現在の日本は、人の住んでいる場所が混み合いすぎてゆとりがない結果が出ているとも言える。そのため、ii)も誤りで、iii)の「超高齢社会が続くと対立する」というのは、高齢者福祉と少子化対策を二項対立させることによって政府やメディアが作ったものにすぎない。そして、これまで書いてきたとおり、高齢化が格差や対立の原因ではないし、iv)の過疎状態とvi)の外国人労働者受け入れ拒否は、日本における働き手不足の解決や地球の人口爆発と矛盾している。さらに、家畜ではあるまいし、v) vii) viii)のように、人為的に出生率をコントロールすることなどできないし、やるべきでもない。そして、x)はそのとおりだが、記事の論調全体が外国人労働者や移民を廃した上で、日本国民の出産を強要しているのである。 
 それに対し、*4-2-1のOECDの提言は、人口減の日本で働き手を確保するために、定年廃止、同一労働・同一賃金の徹底、年金の受給開始年齢引き上げ、就労控えを招く税制の見直し等により、高齢者や女性の雇用を促すよう訴えており、働く能力や意欲や価値観が生物年齢や性別によって画一的であるわけではないことから、全く尤もである。

*4-1-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20240111&ng=DGKKZO77563200Q4A110C2EP0000 (日経新聞 2024.1.11) 石川知事、能登地震で補正数兆円要請 政府に
 石川県の馳浩知事は10日の年頭記者会見で、能登半島地震からの復興のため政府に「数兆円規模の補正予算の編成を1カ月以内にお願いしたい」と述べた。能登はアクセスが脆弱な半島で、高齢化率が5割を超える地域もある。「こうした要件も踏まえた補正予算をお願いしたい」と訴えた。3月16日には北陸新幹線の敦賀延伸が控える。「金沢や加賀の観光地、人の交流を絶やすことは考えていない。こうした経済活動を通じても石川県を、能登を支えてほしい」と話した。

*4-1-2:https://digital.asahi.com/articles/DA3S15837104.html (朝日新聞 2024年1月13日) 津波は怖い、でも適地がない 仮設着工、くらし再建のジレンマ 能登地震
 能登半島地震の石川県内の被災地で、生活再建に向けた第一歩として、仮設住宅の建設が始まった。建設用地は津波の浸水想定区域に含まれるものの、県は適地がないとして着工。避難生活のいち早い解消のため、災害リスクのある場所に住み続けざるを得ないジレンマが生じている。珠洲市にある小学校2校のグラウンドで12日、仮設住宅の建設位置を決めるため、杭を打ち込むなどの作業があった。市内では計65戸が1~2カ月後の完成めざして着工されたが、水道や電気をいつ通せるか分からず、入居時期は未定だ。この日、輪島市内でも2カ所で計50戸の建設がスタート。2月上旬以降に完成する見通しで、75歳以上の高齢者や障害のある人を優先して入居させるという。ただ、珠洲市は2カ所とも、輪島市では1カ所が、市のハザードマップで津波の浸水想定区域に入っている。建設する県は11日、「両市とリスクについて相談している」と説明。「浸水区域を避けるとなると実際に土地がない。警戒・避難の体制を充実させるなどの対策を講じる」として着工を決めた。仮設住宅が建設される珠洲市の正院小学校に避難している男性(77)は、1人で暮らしていた自宅が倒壊した。「仮設に入れてもらわんと困るわ。津波は怖い。でも、入れてもらえるだけありがたい」と話す。一方、県内17市町では、建設型の仮設住宅とは別に、自治体が民間の賃貸住宅を最大2年間借り上げて提供する「みなし仮設住宅」の入居希望者の受け付けも始まっている。住宅の再建支援に必要な罹災(りさい)証明書の申請受け付けは、すでに始まっている。珠洲市では9日に罹災証明書の申請受け付けが始まると、住民が朝から列を作った。同市若山町に住む谷内田進さん(65)は、自宅が地震で大きく傾き住めなくなった。「住み慣れた土地を離れたくはない。再建に時間はかかるが、できるだけ早く罹災証明書を発行してほしい」と話す。市によると、市内にある約6千世帯のほぼすべてから罹災証明書の申請があると見込まれ、住民からの申請を待たずに、全世帯を対象に調査を実施する方針だ。輪島朝市で大規模火災が発生した輪島市では、すでに罹災証明書の申請受け付けを始めており、全世帯を対象にした調査に近く着手する。ただ、罹災証明書をいつ発行できるかめどは立っていない。市税務課の担当者は「できる限り早く発行したいが、調査を始めても1カ月ですべて終わらせるのは難しいのではないか」と明かす。被災者の生活再建は、住まいに大きく左右される。早急な住まいの再建のため、自治体はどうすればいいのか。関西大の山崎栄一教授(災害法制)は「被災者生活再建支援制度に基づく最大300万円の支援金に加え、復興基金などを生かし、自治体独自の施策として支援金を出すべきだ」と語った。(小島弘之、宮島昌英、岩本修弥、寺沢知海)
■福祉避難所、開設進まず
 高齢者、障害者、乳幼児、妊産婦、難病患者、医療的ケアを必要とする人など特に配慮が必要な人のための「福祉避難所」の開設が進まず、過酷な状態に置かれている。施設が損壊、人手も物資も足りないのが原因で厳しい状況が続く。朝日新聞の調べでは、福祉避難所の開設数(12日現在)は、石川県七尾市3(予定数は24)▽輪島市4(25)▽珠洲市0(7)▽志賀町2(8)▽穴水町1(3)▽能登町2(5)で、予定の2割弱だ。輪島市は福祉避難所を設置する協定を市内25の高齢者施設などと結び、施設の一部に受け入れる計画を立てていた。また、職員不足の時は他事業所からの派遣などで対応するとしていた。特別養護老人ホーム「あかかみ」も協定を結んだ施設の一つ。人員不足で福祉避難所の開設は難しいと判断した。もともとの利用者が95人。職員約120人も被災し、勤務できるのは70人ほど。それでも、認知症といった事情がある高齢者22人を受け入れた。ほかにも十数人から希望があるが、断らざるを得ない。施設長の森下進さんは「家族らが受け入れ先を探しているが、どこも厳しい」と話す。北陸学院大の田中純一教授(災害社会学)は「平時から少ない職員数でぎりぎりの対応をしている地域。一刻も早く国が広域連携体制をとるべきでスピードの鈍さは否めない」と話す。
■高齢者400人、移送へ 石川県内外の病院や施設に
 能登半島地震で被災した高齢者施設をめぐり、厚生労働省は12日、石川県の4市町の入所者400人以上を県内外の病院や他の施設に移送する計画だと明らかにした。同県のほか、愛知、富山両県への搬送を予定。断水の長期化などで災害関連死の懸念が高まる中、大規模な避難を進める。移送を計画しているのは、石川県輪島市、珠洲市、七尾市、穴水町の10施設で、特別養護老人ホームや有料老人ホーム、認知症グループホームなど。同県2市町の障害者施設でも、二つのグループホームから17人が避難を予定している。400人以上のうち、すでに200人以上の高齢者は自衛隊や災害派遣医療チーム「DMAT」が搬送を終えた。同省によると、移送予定人数は11日夜時点の集計という。

*4-1-3:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20240111&ng=DGKKZO77562860Q4A110C2EP0000 (日経新聞 2024.1.11) 老いるインフラ、地方で放置深刻、修繕必要な橋、6割未着手 脆弱な予算・職員響く
 能登半島地震は道路やダムなどの施設に大きな打撃を与えた。インフラは全国的に老朽化が進み、適切な修繕や補修をしないと災害時のリスクも高まる。予算や人手が足りない市区町村では修繕が必要な橋梁のうち6割が未着手で、地方のインフラ対策は急務だ。国土交通省によると、地震の影響により石川県と富山県を結ぶ幹線の能越自動車道で崩落や段差などが生じて3区間が通行止めとなった。国道も9日時点で、富山や新潟など3県の4路線29区間で路面が陥没するなどして通行が再開されていない。車が走行できずに物流網が寸断され、孤立状態になる地区が相次ぐ。河川やダムにも被害が及んだ。新潟や富山など4県が管理する河川では43水系72河川で護岸の損傷や堤防のひび割れなどが確認された。石川県のダム2カ所も損傷した。大規模な地震で地盤ごと崩れれば新しいインフラでも被害は免れないが、老いた施設ほど危険なことに変わりはない。国交省の調べでは、2040年に建設から半世紀以上が経過する施設は橋梁で75%、港湾で66%、トンネルで53%に上る。インフラは建設後50年が寿命とされる。東洋大の根本祐二教授は「適切な時期に修繕や補修などを実施しなければ、災害リスクが高まる恐れがある」と警告する。とりわけ地方のインフラに危機が忍び寄る。全国点検で修繕が必要と判断されたにもかかわらず、着手できずに放置された施設が多く残るためだ。全国の道路や橋などでは5年に1度の点検が義務化されている。国交省が23年末にまとめた調査によると、政令指定都市を除く市区町村が管理する施設のうち橋梁の60.8%、トンネルの47.4%は修繕していなかった。国管理で未着手なのは橋梁だと37.7%、トンネルだと31.5%で、地方の取り組みの遅れが目立つ。海岸や港湾の一部施設も同じ傾向にある。市区町村の堤防・護岸などで修繕に未着手の割合は85.9%で、国管理の78.4%を上回る。道路施設ほどの開きはないものの、深刻な状況だ。地方自治体で必要な予算や職員を確保できず、インフラを維持管理する体制が脆弱になっていることが背景にある。総務省によると、市町村の歳出で道路や橋などの整備に充てる土木費は21年度に6兆5000億円程度で、ピーク時の1993年度から43%減った。高齢化で社会保障費が膨らみ公共事業に回す余裕がなくなっている。インフラ整備にあたる技術系職員も不足したままだ。市町村のうち全体の25%に相当する437市町村は1人も確保できていない。土木部門の職員数の減少率は市町村全体の職員数の減少よりも大きい。広島県の安芸太田町は技術系職員が数十年にわたりいない。担当者は「募集はしているが応募がない」と話す。専門知識がない事務職員が対応せざるを得なく、外部委託費などでコストがかさんでいるという。政府はインフラの損傷が生じてから手を打つのではなく、その前に修繕する「予防保全」への転換を急いでいる。国交省が所管するインフラを予防保全した場合、2048年度の維持管理・更新費は、事後対応より5割ほど縮減できる見込みだ。公共事業で整備するインフラは学校や公営住宅などの公共施設と、道路や橋などの土木施設が半分ずつを占める。東洋大の根本教授は、公共施設は機能集約や統廃合で予算を削減できると主張する。一方で代替できない土木施設は「財源に余裕あるのならしっかり手当てしていく必要がある」と指摘する。

*4-2-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20240112&ng=DGKKZO77599940S4A110C2EA2000 (日経新聞 2024.1.12) OECD、日本に定年制廃止提言 働き手確保へ女性活躍を
 経済協力開発機構(OECD)は11日、2年に1度の対日経済審査の報告書を公表した。人口が減る日本で働き手を確保するための改革案を提言した。定年の廃止や就労控えを招く税制の見直しで、高齢者や女性の雇用を促すよう訴えた。成長維持に向け、現実を直視した対応が求められる。日本の就業者数は今後、急速に細る。OECDは23年に外国人も含めて6600万人程度と推計した。出生率が足元の水準に近い1.3が続けば、2100年に3200万人に半減する。OECDは高齢者や女性、外国人の就労底上げなどの改革案を実現すれば出生率が1.3でも2100年に4100万人の働き手を確保できると見込む。出生率を政府が目標とする1.8まで改善できれば5200万人超を維持できるという。高齢者向けの具体策では、定年の廃止や同一労働・同一賃金の徹底、年金の受給開始年齢の引き上げを提示した。OECD加盟38カ国のうち、日本と韓国だけが60歳での定年を企業に容認している。米国や欧州の一部は定年を年齢差別として認めていない。日本で定年制が定着した背景には、年功序列や終身雇用を前提とするメンバーシップ型雇用がある。企業は働き手を囲い込むのと引き換えに暗黙の長期雇用を約束することで、一定年齢での定年で世代交代を迫った。職務内容で給与が決まる「ジョブ型雇用」は導入企業が増える傾向にある。岸田文雄首相は23年10月の新しい資本主義実現会議で「ジョブ型雇用の導入などにより、定年制度を廃止した企業も出てきている」と述べた。OECDは年功序列からの脱却などを指摘するが、大企業を中心にメンバーシップ型の雇用は根強い。マティアス・コーマン事務総長は11日の都内での記者会見で「働き続ける意欲が定年制で失われている」と強調した。政府の新しい資本主義実現会議では、高齢者がスキルに見合った待遇を受けられることも念頭に、ジョブ型導入の事例集の作成を急いでいる。定年制の抜本的な見直しについては、政府の公の議論の俎上(そじょう)には載っていない。厚生労働省の22年の調査によると、日本企業の94%が定年を設けている。うち7割が60歳定年だ。政府は65歳までの雇用確保を義務づけ、21年度からは70歳までの就業機会の提供を努力義務にした。パーソル総合研究所の21年の調査では70歳以上まで働き続けたいと希望する60代従業員は4割以上おり、就労意欲がある。働き方が変わる中で、定年の仕組みをどうしていくかの議論が重要な局面になりつつある。報告書は、公的年金を支給する年齢水準についても平均寿命の延びに追いついていないと主張した。現在は65歳となっている標準的な受給開始年齢の引き上げを求めた。同一労働・同一賃金の徹底で、正規と非正規の労働者の待遇格差をなくすことにも言及した。女性の就労促進では年収が一定額を超えると手取りが減る「年収の壁」をなくすよう提起した。女性の働き手に占める非正規の割合は5割と、男性の2割に比べて高い。第3号被保険者や社会保険料控除など、女性の就業調整につながる税制などの抜本的な見直し案を示した。外国人労働者の誘致では差別防止や、高い技能をもつ外国人労働者の配偶者が日本で就労しやすくすることを提案した。働き手の減少は日本の経済力の衰えに直結し、社会保障の維持もいっそう難しくなる。政府や企業は問題を真摯に受け止めて早急に対応する必要がある。

*4-2-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20240111&ng=DGKKZO77563480Q4A110C2EA1000 (日経新聞社説 2024.1.11) 人口危機に立ち向かう戦略策定を急げ
 岸田文雄政権は問題提起をしっかり受け止め、すみやかに行動に移すべきだろう。民間有志による人口戦略会議が公表した人口危機に関する提言のことである。三村明夫・前日本商工会議所会頭を議長とする同会議には、経済界、労働界、学識者などの有志28人が参加。人口減が進むなかで持続可能な社会をつくるための提言をまとめ、2100年を見据えた長期的な国家戦略の策定と推進を首相に求めた。人口動態の基調が変わらない限り、1億2400万人いる日本の人口は2100年には6300万人に半減すると推計されている。あまりにも急激な人口減少に直面する社会や経済、地域がはたして持続可能なのか、多くの国民が不安を抱いているはずだ。ところが今の日本は危機に正面から向き合っていない。人口危機への対策を総合的に議論する場すら政府や国会に存在しないのだ。人口が急激かつ止めどなく減り続けると、社会や経済はひたすら縮小と撤退を強いられる。高齢化率が4割で高止まりする超高齢社会が続き、格差と対立が深刻化。インフラやサービスの機能停止で地方社会は消滅の危機に陥る。提言はこうした縮小と停滞を避けるため、人口減のペースを緩和させ、8000万人の規模で安定させる必要性を訴えた。外国人労働者の受け入れは高技能者に絞りつつ、経済全体の生産性を高める改革によって、2050~2100年に年率0.9%程度の実質国内総生産(GDP)成長率を維持する想定だ。実現するには60年までに合計特殊出生率が2.07に到達する必要がある。そのためには40年ごろまでに出生率が1.6、50年ごろまでに1.8に上昇することが望ましいと分析している。出生率1.26の日本にとって容易ではないが、決して不可能ではないはずだ。政府は提言も参考に戦略をつくってほしい。子どもを持つかは個人の選択であり、目標が独り歩きして出産を強要するような風潮が生まれないようにするのは当然のことだ。人口危機に立ち向かう戦略は政官民が問題意識を共有して、長期間にわたって粘り強く推進する必要がある。政府は戦略の立案・推進体制を整え、国会議員は政争の具とせずに超党派で法制化するべきだ。民間や地域も含め、国民的な議論を深めるときだ。

<活断層の長期評価と住民の安全>
PS(2024/1/18追加):*5-1は、①M7.6の能登半島地震の震源となった断層は未知のものではなく、政府有識者検討会が2014年に公表した活断層だった ②政府の地震調査委員会もこの断層を把握していたが、「長期評価」をせず広く周知されていなかった ③少なくとも異なる三つの断層がずれ動き、既知の活断層がずれて周辺の地盤が破壊された可能性が高い ④能登半島沖は産業技術総合研究所の調査で珠洲沖や輪島沖などに数十キロにわたる複数の断層が見つかり、北陸電力志賀原発の安全性を巡る評価で考慮されるなど専門家の間では知られていた ⑤政府の地震調査委は「調査には時間が必要」とする ⑥能登半島地震が既知の海底活断層で起きたのなら、地震調査委員会は存在を把握しながら危険性を地域住民に伝えていなかった としている。
 このうち①②③は、M7.6の能登半島地震が起きた後で、「政府有識者検討会が2014年に公表した活断層だった」「地震調査委員会もこの断層を把握していたが、『長期評価』をせず広く周知させていなかった」などとしている点が、危機管理の基本(最悪の事態に備えること)を忘れている。また、⑤⑥について、政府の地震調査委は「調査には時間が必要」ともしているが、阪神大震災から29年も経っているのに海底活断層が未調査(安全であることも確認されていない)というのは悠長すぎ、未調査なら最悪の事態に備えて原発立地や使用済核燃料の保管も止めるべきだ。その上、④については、「産業技術総合研究所の調査で珠洲沖や輪島沖などに数十キロにわたる複数の断層が見つかり、北陸電力志賀原発の安全性を巡る評価で考慮されるなど専門家の間では知られていた」としているが、*5-4のように、志賀原発は能登半島地震で、i)使用済核燃料プールの水がこぼれた(激しい地震で燃料プールの水がこぼれるのは自然だが、プールに罅は入っていないか?) ii)冷却ポンプも一時止まった iii)外部電源を受ける変圧器が損傷して油が漏れた iv)周辺に自治体や国が設けた放射線量測定設備の一部でデータが送れなくなった v)北陸電力は、地震による津波の影響を「敷地内に海水を引き込んでいる水槽の水位変動は確認できなかった」としていたが、実際には約3メートル上昇していた vi)変圧器から漏れた油の量も最初の発表の5倍以上だった vii)2016年に有識者会合が「敷地内の断層は活断層と解釈するのが合理的」と評価したが、北電の反論で原子力規制委員会が同社の見解を認めていた などの事実があり、北電は活断層や地震・津波のリスクをできるだけ小さく見せようとしていることがわかるのだ。そして、これは、確かに全国の原発に共通する問題である。
 また、*5-2は、⑥政府や石川県は、能登半島地震で震源となった海底活断層を地震動の予測に反映していなかった ⑦海底活断層の影響は他の地域でも殆ど反映されていない ⑧能登半島の北の海底を沿うように走る「F43」「F42」を含む海底活断層は、国土交通省が東日本大震災を受けて平成26年にまとめた報告書等に取り上げられ津波のリスク想定に活用されてきたが、政府の地震調査委員会の「地震動予測地図」には加味されなかった ⑨海底活断層は「陸上に強い揺れをもたらすものではない」というイメージが一部にあり、従来の予測に殆ど反映されなかった ⑩周辺の海底活断層が予測に反映されていないケースは他にもあり、例えば新潟県・佐渡も周辺に海底活断層が集中しているが、地震調査委の長期評価の対象になっておらず、地震動予測にも反映されていない としているが、⑥~⑩のように、海底活断層は地震動の予測に反映せず、国土交通省が東日本大震災後の報告書で津波のリスク想定に活用しても政府の地震調査委は「地震動予測地図」には加味しなかったというのは、非科学的である上、根拠もなく住民を安心させ、何の準備もしていなかった点で、故意か業務上過失致死罪にあたりそうだ。そのため、こういうところも厳しくすべきである。
 さらに、*5-3は、⑪能登半島地震は半島沖の活断層によって引き起こされた ⑫活断層は1995年の阪神大震災で広く知られるようになり、政府の地震調査研究推進本部ができるなど調査・研究体制の整備が進んだ ⑬海域の活断層が起こす地震の切迫度等に関する評価は陸域の後回しとなり、警戒感が高まらないうちに今回の地震が起きた ⑭能登半島沖の活断層は2007年の能登半島地震を機に調査が進み、複数の断層が計100km以上にわたって延びているとの研究成果もあったが、「長期評価」は陸域の活断層から進めて海域はわずかで順番にやっている最中だった ⑮海域の活断層の評価は2022年に公表した日本海南西部(九州、中国地方の北方沖)のみ ⑯地震本部が公表した2020年から30年間に震度6弱以上の揺れに見舞われる確率を示した「地震動予測地図」では、関東から四国地方にかけての太平洋側が26%以上で能登半島は3%程度 ⑰(作成時に)能登半島沖に活断層があるという情報が入っていないので結果的に評価が低くなった可能性 等としている。
 このうち、⑪⑫は事実だろうが、⑬は根拠もなく「海域の活断層が起こす地震の切迫度は低い」としている点で非科学的すぎる。また、⑭の「順番にやっている最中だった」というのも、能登半島の地震の「2018年頃から地殻内地震が増加傾向、2020年12月から地震活動が活発化、2023年5月頃からさらに活発化、2024年1月1日のM7.6の地震」という経過から見て、優先順位が高かった筈だし、評価順や評価速度に関するアドバイスをするのも地震学者の責任であろう。さらに、⑯の地震本部が公表した「地震動予測地図」では、関東から四国地方にかけての太平洋側が26%以上で能登半島は3%程度であり、⑰のように、作成時に能登半島沖に活断層があるという情報が入っていなかったというのは不完全すぎる。そのため、⑮の2022年公表の日本海南西部海域活断層評価も、意図的に不完全なのではないかと思われるわけである。


   国土地理院   2022.3.25地震本部      2024.1.15産経新聞

(図の説明:ユーラシア大陸の一部だった日本列島が大陸から切り離されて日本海ができ、瀬戸内海もできていった経緯を考えれば、海底にも無数の断層があり、その断層が陸地の断層と同じく火山や地震の源となることは容易に想像できる。そして、現在も、日本列島は、左図のように、時々刻々と動いているため、歪みの溜まった地域で歪みが修正される際に地震が起こるのだ。そのような中、中央の図の日本海側の活断層は異常に少なく表示されている上、四国電力伊方原発付近の断層は説明書きで見えない。さらに、右図のように、海底の活断層が起こす地震のリスクが無視されていたのは、地球表面のでき方に関する活きた研究材料が身近にあるにもかかわらず、非科学的すぎる)

*5-1:https://www.tokyo-np.co.jp/article/302805 (東京新聞 2024年1月15日) M7.6は「想定されていた」 能登半島地震の活断層は「未知」でもなかった? 周知や対策は
 最大震度7、マグニチュード(M)7.6を観測した能登半島地震。震源となった断層(震源断層)は未知のものではなく、政府の有識者検討会が2014年に公表した活断層だったとの見方が専門家の間で有力になってきた。政府の地震調査委員会もこの断層を把握していたが、地震の切迫度などを調べる「長期評価」をしておらず、広く周知されていなかった。
*長期評価 活断層で発生する地震やプレートの境界で起きる海溝型地震を対象に、地震の規模や「30年以内に何%」といった発生確率を予測。政府の地震調査委員会が検討し、現在114の主要活断層や6地域の海溝型地震などについて発表している。南海トラフ地震だけ他の地震と確率を出す計算方法が異なり、地震学者らから「水増し」の問題が指摘されている。
◆政府の地震調査委「調査に時間が必要」
 「99%、調べていた断層が動いたと言える」。今回の地震について、東北大の遠田(とおだ)晋次教授(地震地質学)は語る。筑波大の八木勇治教授(地震学)も地震計のデータ解析から「少なくとも異なる三つの断層がずれ動いた。既知の活断層がずれて、周辺の地盤が破壊された可能性が高い」と話す。地震調査委は震源断層は約150キロとするが、既知の断層だったかは「調査に時間が必要」としている。能登半島沖は、産業技術総合研究所の調査で珠洲(すず)沖や輪島沖などに数十キロにわたる複数の断層が見つかり、北陸電力志賀原発(石川県志賀町)の安全性を巡る評価で考慮されるなど専門家の間では知られていた。
◆地震起きたら「M7.6になる」との想定が現実に
 政府の有識者検討会は13〜14年、日本海側全体の海底活断層を調査。海底地形のデータなどから60カ所について、活断層が動いた場合に起こる地震や津波の程度を予測する「断層モデル」をつくり、公表した。今回の震源域には「F42」「F43」という断層モデルがあり、1日の本震後に起きた余震の震源域とほぼ重なる。検討会は、F43で地震が起きた場合はM7.6になると想定していた。地震調査委が発表する主要な活断層の「長期評価」は当初、陸域の活断層に限っていた。17年からは海底活断層も加えて調査している。評価を終えたのは九州・中国地方北方沖のみ。能登半島沖は評価に向けた検討が始まったばかりで、強い地震に遭う確率を色別で示した「全国地震動予測地図」に反映されていない。地震調査委の平田直(なおし)委員長は2日の会見で「もう少し早くに(海域の活断層の)評価をやるべきだった。残念だ」と語っていた。
◆記者解説 住民にとっては「ノーマーク」再び
 政府の地震調査委員会が所属する地震調査研究推進本部は、1995年の阪神淡路大震災の反省から設けられた。神戸周辺の活断層の存在は専門家の間では知られ、地震が懸念されていたが、地元自治体の対策が不十分で、住民にも危険性が伝わっていなかった。能登半島地震が既知の海底活断層で起きたとすれば、調査委は存在を把握しながらも、危険性を地域住民にしっかり知らせることができておらず、反省が生かされたとはいいがたい。日本の沿岸全体で海底活断層の評価が終わるまでには、まだまだ時間がかかる。その間は調査委の情報として周知されず、住民にとっても「ノーマーク」となるリスクをはらむ。調査委が中間評価という形でも、どこに活断層があるかを広く知らせることは急務だ。

*5-2:https://www.sankei.com/article/20240115-XDJ3IXFKTZIGBPAZ5MKBVXJSBM/ (産経新聞 2024/1/15) 見過ごされた海底活断層「F43」のリスク 同種地震の予測にも課題
 最大震度7の強い揺れが観測された能登半島地震で震源となったとみられる2本の海底活断層について、政府や石川県が地震動(地震による強い揺れ)の予測に反映していなかったことが15日、分かった。県の被害想定や対策にも影響した可能性がある。海底活断層の影響は他の地域でもほとんど反映されておらず、専門家は早急な対応を求めている。《冬の夕刻、能登半島北方沖を震源とした地震が発生する》。石川県の「地域防災計画」に挙げられた大地震のシナリオの一つは、今回の地震とよく似ている。だが、被害の想定は実際よりもかなり小さい。県は「ごく局地的な災害」として、死者7人、負傷者数211人と予測していたが、実際の能登半島地震では15日時点で222人の死亡が確認され、千人以上が負傷した。東北大災害科学国際研究所の遠田晋次教授によると、この想定には、実際に震源になったとみられる海底活断層が考慮されていなかった。能登半島の北の海底を沿うように走る「F43」「F42」と呼ばれる2本の海底活断層。F43を震源とする地震は、事前に予想された規模もマグニチュード7・6と、今回の地震におおむね合致する。これら2本を含む海底活断層は、国土交通省が東日本大震災を受けて平成26年にまとめた報告書などに取り上げられ、津波のリスク想定に活用されてきた。だが、全国の地震による揺れを予測・分析する政府の地震調査委員会の「地震動予測地図」には加味されなかった。海底の活断層については、「陸上に強い揺れをもたらすものではない、というイメージが一部にあった」(遠田氏)といい、従来の予測にはほとんど反映されてこなかったという。周辺の海底活断層が予測に反映されていないケースはほかにもある。例えば新潟県・佐渡も周辺に海底活断層が集中しているが、地震調査委の長期評価の対象になっておらず、地震動予測にも反映されていない。遠田氏は「このままでは、同じことがまた起きてしまう。早急に取り組むべきだ」と指摘する。地震調査委は平成29年4月、海底の活断層について将来の地震発生確率を評価するための分科会を設置。令和4年、日本海南西部(九州・中国地方沖)側の海域活断層についての長期評価が公表された。だが、他の地域は未公表のままだ。産業技術総合研究所名誉リサーチャーの岡村行信氏によると、海底活断層は掘削による調査が難しく、活動周期や最終活動時期といった地震予測に必要な情報の信頼性が陸上の活断層に比べ落ちるといったハードルもある。ただ、岡村氏は「難しいが、不可能な話ではない。海底の活断層も当然、予測に組み込むべきだ」と強調した。

*5-3:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/1178396 (佐賀新聞 2024/1/17) 【活断層評価】阪神で注目も海域後回し、能登地震前、警戒高まらず
 能登半島地震は、半島沖に延びる活断層によって引き起こされた。活断層は1995年の阪神大震災で一般に広く知られるようになり、政府の地震調査研究推進本部(地震本部)ができるなど調査、研究体制の整備が進んだ。だが海域の活断層が起こす地震の切迫度などに関する評価は陸域の後回しとなり、警戒感が高まらないうちに今回の地震が起きた。専門家からは「後手に回った感は否めない。早急に進めなければ」との声も上がる。
▽悔い
 「ノーマークではなかったというところが、非常に悔いが残る」。政府の地震調査委員会のメンバーでもある西村卓也京都大教授(測地学)は、こう漏らした。能登半島沖の活断層は、2007年の能登半島地震を機に調査が進み、複数の断層が計100キロ以上にわたって延びているとの研究成果もあった。しかし、地震の規模や発生確率を予測する地震本部の「長期評価」は、陸域にある活断層の評価から進めており、海域の評価はわずかだ。西村氏は「研究者によっては(海域の活断層に)非常に問題意識を持っていたと思うが、順番にやっている最中だった」と話す。
▽批判
 都市直下で起きた地震で多くの被害を出した阪神大震災を機に、活断層の怖さが広まった。研究者は震災以前から活断層に注目していたものの、その危険性が住民に伝わっていなかった。予知に主眼を置いたそれまでの対策にも批判が集まり、調査研究を防災に生かすことを狙いに地震本部は発足した。地震本部はこれまで、主に陸域にある114カ所の「主要活断層帯」と、東日本大震災を引き起こした日本海溝沿いや南海トラフ、相模トラフなど各地の海溝型地震の長期評価を公表。一方、海域の活断層の評価は22年に公表した日本海南西部(九州、中国地方の北方沖)のみだ。
▽先手
 地震本部が公表している、2020年から30年間に震度6弱以上の揺れに見舞われる確率を示した「地震動予測地図」。関東から四国地方にかけての太平洋側が26%以上となっているのに対し、能登半島は3%程度だ。「(作成時に)能登半島沖に活断層があるという情報が入っていないので結果的に評価が低くなった可能性がある」(西村氏)。東日本大震災を受け、プレート境界で起こる海溝型地震に目が向きがちだったと指摘する専門家もいる。日本海側の津波防災に向け、海域の活断層を評価した国土交通省の調査検討会は、能登半島沖に今回の震源とほぼ一致する活断層のモデルを想定していた。東北大の遠田晋次教授(地震地質学)は「津波想定としては良かったが、地震による揺れの予測に用いていなかったのは反省すべき点だ」と話す。遠田氏は「何かが起こるたびにそれが注目されるというのを繰り返している。自然は不意を突いてくるので、先手先手でやっていかなければならない」と強調。「新幹線の線路やビルの真下で活断層がずれることによる被害など、過去に起きたことがないことも想定して対策を検討しなければいけない」と警鐘を鳴らした。

*5-4:https://digital.asahi.com/articles/DA3S15840955.html (朝日新聞社説 2024年1月18日) 地震と原発 幅広い視点で教訓導け
 能登半島地震は、原子力防災にも多くの課題を突きつけた。電力会社や政府、自治体は幅広い視野で検証し、何が教訓か考える必要がある。北陸電力志賀原発では、使用済み燃料プールの水がこぼれ、冷却ポンプも一時止まった。外部電源を受ける変圧器が損傷し、油が漏れた。周辺に自治体や国が設けている放射線量の測定設備の一部は、データが送れなくなった。いずれも原因や影響を詳細に調べなければならない。地震による津波の影響について、北陸電力は当初、敷地内に海水を引き込んでいる水槽の「水位変動は確認できなかった」としていたが、約3メートル上昇していた。変圧器から漏れた油の量も最初の発表の5倍以上だった。相次ぐ訂正に、経済産業省から正確な情報発信を指示された。慎重になるあまり発表が遅れてはならないが、誤情報は住民に不安を与え、被害の過小評価は重大な結果を招きかねない。他の電力会社も含め、教訓にすべきだろう。志賀原発は、敷地内の断層の評価をめぐり、2号機の再稼働の審査が長引いている。2016年に有識者会合が「活断層と解釈するのが合理的」と評価したが、北陸電力が反論し、原子力規制委員会が昨年、同社の見解を認めたところだった。一方、規制委は10日に、今回の地震の知見を収集するよう原子力規制庁に指示した。地震の審査を担当する委員は「いくつかの断層が連動して動いている可能性がある。専門家の研究をフォローし、審査にいかす必要がある」と発言しており、丁寧な分析と検討が求められる。活断層や地震の連動、揺れの想定や施設への影響など、今回の地震が浮き彫りにした課題は、志賀原発にとどまらず全国の原発に多かれ少なかれ共通する。今回の震源の近くには、かつて珠洲原発の立地も検討されていた。教訓を引き出し、規制や防災に役立てなければならない。今回の地震では、道路の寸断による半島の孤立も改めて問題になった。四国電力伊方原発や東北電力女川原発なども半島にある。原発事故が起きた場合に、避難や救援を妨げかねない。家屋の激しい損壊状況をみれば、放射線を避けるための屋内避難もできない恐れがある。規制委は原子力災害対策指針の見直しを検討するというが、緊急対応や避難対策の課題を掘り下げてほしい。地震大国での原発のリスクが、改めてあらわになった。政府は、原発の活用に前のめりの姿勢を改めるべきだ。

<地盤隆起で漁港が消えても、土地の使い道はありそう>
PS(2024年1月20日追加):*6-1・*6-2のように、能登半島地震による地盤隆起で輪島市の黒島漁港では漁港内の海水がなくなって海岸線が波消ブロックより沖に移動し、大沢漁港では水の引いた港内に漁船が残され、鹿磯漁港では約4mの隆起を確認するなど、石川県内の15港で隆起が確認され、能登半島周辺のこの6000年間で最大規模の隆起の可能性があって、海底の断層はもしかしたら6~7mのずれができているかもしれないのだそうだ。しかし、隆起すれば土地が増えるため、道路を4車線にできたり、海抜0m地帯で養殖(例:エビ・カニ・ウ二etc.)をできたりなど、復旧するよりもできた土地を利用した方が良いと思われる。漁港は海に面した先の方に造り直せばよいし、隆起の状況やそれに関する説明も観光資源になると思われる。

  
2024.1.16LivedoorNews   2024.1.12TV朝日      2024.1.16Yahoo

(図の説明:左図は、漁港が完全に陸地となった黒島漁港だが、できた空き地を利用して道路を4車線に拡幅したり、養殖池を作ったりできそうだ。中央の図は、約4mの隆起を確認した鹿磯漁港だが、漁船はひどく壊れているようには見えない。また、右図が能登半島における地面の隆起だが、能登半島はこのような隆起の繰り返しでできた半島なのだそうだ)

*6-1:https://news.livedoor.com/article/detail/25709868/ (LivedoorNews 2024.1.16) 海が消えた漁港、沖に移動した海岸線 能登上空から見た地盤隆起
 能登半島地震による地盤の隆起で、石川県輪島市や珠洲市の漁港に大きな被害が出ている。上空から輪島市門前町黒島町の海岸を見ると、黒島漁港の中には海水がなくなり、海岸線は消波ブロックよりも沖合にあった。同市大沢町の大沢漁港では、水の引いた港内に漁船が残されていた。県によると、15日現在で県内の8割を超える58の漁港に地震による被害が出ており、そのうち15港で隆起が確認されている。漁船172隻以上が転覆したり、海に流出したりした。

*6-2:https://news.yahoo.co.jp/articles/223644639f0d636fdbc26fb813a4880e305bcc8d (Yahoo、テレビ朝日 2024/1/16) 能登半島地震で起きた地面隆起 6000年間で最大か
 能登半島地震で起きた地面の隆起が、能登半島周辺では、およそ6000年の間で最も大規模だった可能性があることが現地調査で分かりました。
○産業技術総合研究所 地質調査総合センター 宍倉正展グループ長
「過去6000年間の3回と比べても今回の地震の4メートルという隆起は最も大きいものであった可能性があります」
 産業技術総合研究所の宍倉正展グループ長らは、8日に、輪島市の鹿磯漁港で調査を行い、およそ4メートルの隆起を確認しました。地震が起きると浅い海底が隆起し、階段状の地形を作ります。去年までの調査で、輪島市の海岸ではおよそ6000年の間に出来たとみられる3段の階段状の地形が確認されていましたが、いずれも隆起の規模は2、3メートル程度でした。今回の地震でできた4段目の隆起量が最も大きい可能性があるということです。
○産業技術総合研究所 地質調査総合センター 宍倉正展グループ長
「海岸の隆起という現象を30年余り研究してますけれども、非常に私も驚きました。沖合で海底の断層がもしかしたら(さらに大きい)6メートル7メートルといったずれができているのかもしれない。それが海岸に反映されると4メートルぐらいになってるのかもしれないと想像してますね」
 宍倉氏は、今後も能登半島北岸の状況を確認して、今回の隆起の全体像を明らかにしたいとしています。

<政治資金規制法改革のポイント>
PS(2024年1月21、22日追加):*7-1は、①派閥の政治資金収支報告書は専門職による監査制度の対象外 ②派閥の代表者に政治家が就く必要もない ③透明性を高めるルール見直しが必要 ④派閥は「その他の政治団体」に分類 ⑤「その他の政治団体」で会計ルールが最も厳格なのは国会議員関係政治団体で人件費を除く1万円超の経費の領収書提出が必要で、第三者の会計監査を受ける義務もある ⑥監査制度は2006~07年に発覚した「事務所費問題」を契機に2009年分国会議員の収支報告書から導入 ⑦(登録政治資金)監査人は公認会計士・税理士・弁護士といった専門職 ⑧政治家が代表を務める資金管理団体は次に厳格な収支報告を求められ、人件費を除く5万円以上の全ての経費について2008年分から領収書添付が義務 ⑨派閥の政治団体は収支報告書では5万円未満の経費の領収書提出は不要で、監査を受ける義務もない ⑩政治団体代表は政治家である必要がなく、安倍派と二階派は事務局職員が代表で会計責任者 ⑪政治資金規正法には収支報告書に不記載・虚偽記入といった問題があった場合、政治団体の代表者の責任を問う規定がある ⑫日大の岩井名誉教授は「トップに事務員を置けば政治家はさらに追及されにくくなる」と指摘 等としている。また、*7-2は、⑬自民党派閥の政治資金パーティー事件は、第三者が政治団体の収支を点検する体制の脆弱さを浮き彫りにした ⑭米英は一定の調査権限を持つ独立機関を抱えるが、日本では権限の弱い監査人による支出のチェックに留まる ⑮自民党刷新本部は、派閥の在り方と政治資金の透明化がテーマ ⑯2007年に「国会議員関係政治団体」として届けられた政治団体を第三者が監査する「登録政治資金監査人」制度が生まれたが、対象は国会議員が代表の政党支部や資金管理団体等に限られ、支出の整合性のチェックが主な業務で、収入のチェックは義務付けられていない ⑰米国は政治資金の流れを「連邦選挙委員会」と呼ばれる独立機関が監視し、政治資金収支報告書の提出後、48時間以内にインターネットで公表する ⑱神奈川大の大川教授は「監査対象の団体や項目を増やすとともに、中長期的には強い第三者性を帯びた組織を整えるべきだ」と話した としている。
 論点をまとめると、①③④⑤⑥⑦⑧⑨⑪⑬⑭⑮⑯は、「政治資金収支報告書のうち監査対象となる範囲」で、現在は国会議員関係の政治団体だけが対象だが、公金の流れるところに監査は必要なのである。そのため、国会議員だけでなく、地方議員や派閥の政治資金収支報告書にも登録政治資金監査人の監査は必要だ。また、有効な監査をするには、網羅性・検証可能性のある複式簿記を用いた会計処理を行い、外部監査人が適正と判断すれば連帯責任を持つ方式にすべきで、そうすれば監査人は代表者に「虚偽記載はしていない」という確認書をもらうため、代表者は監査人にも責任を負うと同時に、適正意見を得ている限りは粗探しによるバッシングから守られる。つまり、改善に必要なのは、適切な会計基準と監査基準なのである。
 また、②⑩のように、派閥の代表者に政治家が就いていない場合、代表者でも会計責任者でもなければ責任追及できないためよく考えたと思うが、⑫のように、「政治家の責任が軽すぎる」とか「連座制にすべき」という主張もある。ただ、私も公認会計士なので「83会」の会計責任者をしていたが、同じく公認会計士の政策秘書に任せて83会の会計は殆ど見ていない。一般の民間企業では、社長より経理部長の方が会計に詳しく、社長が経理ばかりしていれば会社は伸びないのと同様、代表が会計責任者より経理に詳しいわけではないため、不意を突くような非難や責任追及は避けるべきである。そのため、会計責任者が責任を持ち、登録政治資金監査人が政治家に虚偽記載の有無について確認書をとって注意喚起しながら監査をすればよいと思われる。
 さらに、⑭⑰⑱は、「米英は一定の調査権限を持つ独立機関を抱え、日本では権限の弱い監査人による支出のチェックに留まる」「中長期的には強い第三者性を帯びた組織を整えるべきだ」としているが、外部監査人の権限は、会計基準と監査基準を変更すれば強くなる。むしろ、日本で政治家の監査だけを行なう独立機関を作れば、他の業種を知らずに政治の世界だけ見てきた監査人が殆どになるため、政治の世界の出来事が当たり前になって、会計検査院と同様、重要な異常性に気づかなくなるだろう。

    
2023.12.18読売新聞 2024.1.15静岡新聞 2012.2.13日経新聞 2017.6.2日経新聞

(図の説明:国会議員関係の政治団体は、1番左の図のように、提出前に公認会計士・税理士・弁護士等の登録監査人の監査を受けて政治資金収支報告書を提出する。しかし、左から2番目の図のように、網羅性・検証可能性のない単式簿記会計を使用し、かつ、収入は監査の対象外という状況であるため、複式簿記による会計を使用して通常の外部監査を行なえば総務省の調査は不要である。ただし、公表時期も、民間企業や他国と比較してあまりに遅い。なお、右から2番目の図のように、日本は人口100万人あたりの国会議員の数が少なく、1番右の図のように、議員1人あたりの公設秘書数も少ないため、議員1人あたりの公設秘書数を増やし、議員が「寄付集め」に翻弄されずに調査や政策立案に専念できる状態を作った方が国益のためになると思う)

    
   2024.1.19静岡新聞          2023.12.13日テレ

(図の説明:左図の政治資金規正法違反事件は、ノルマ超過分を環流したりプールしたりしたことが問題なのではなく、派閥と議員側がノルマ超過分を政治資金収支報告書に記載しなかったことが問題なのである。また、パーティー等で寄付を集めなければならない理由は、右図のように私設秘書の給料や政治活動費を捻出する必要があるからで、まるで金を横領しているかのように言って国会議員を叩いても、《理由を長くは書かないが》本当の民主主義は達成できない)

*7-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20231226&ng=DGKKZO77259570V21C23A2CM0000 (日経新聞 2023.12.26) 派閥資金、報告制度に緩さ、会計、外部監査不要 代表は政治家に限らず
 自民党派閥の政治資金規正法違反事件は、派閥の会計処理へ監視が届きにくく責任も曖昧な実態を浮き彫りにした。派閥の収支報告書は専門職による監査制度の対象外で、収支報告に一定の責任を負う代表者に政治家が就く必要もない。裏金づくりの慣例は長年表面化しなかった。透明性を高めるためのルール見直しが求められる。政治資金規正法は政治上の主張を行ったり、公職の候補者を支持したりする団体を政治団体と規定する。「政党・政党支部」、政党の資金援助を目的とする「政治資金団体」、「その他の政治団体」の3つに大別される。派閥は政策研究のためにつくられた集団という位置づけで、議員の後援会などと同様にその他の政治団体に分類される。ある議員秘書は「派閥団体は政治資金の処理を巡る規制があまり厳しくない部類に属する」と話す。その他の政治団体のうち、会計ルールが最も厳格なのは国会議員関係政治団体だ。代表者が議員だったり、特定候補者を支援したりする団体が該当する。人件費を除く1万円超の経費について領収書の提出が必要で、第三者の会計監査を受ける義務もある。監査制度は2006~07年に相次いで発覚した「事務所費問題」を契機に、国会議員との関わりの深い団体の資金の透明化を図る狙いで09年分の収支報告から導入された。監査人は一般的に、公認会計士や税理士といった専門職が務める。政治家が代表を務める資金管理団体は次いで厳格な収支報告を求められている。人件費を除く5万円以上の全ての経費について、08年分から領収書の添付が義務となった。資金管理団体の多くは国会議員関係政治団体にも重複して区分されている。派閥の政治団体は特定の議員とつながりが深いとはみなされず、いずれにも該当しない。収支報告では5万円未満の経費の領収書の提出は不要で、監査を受ける義務もない。収支報告の精密さと使途の公開を巡るルールは比較的緩い。派閥は領袖の名前を冠して安倍派(清和政策研究会)などと呼ばれる一方、政治団体の代表は必ずしも政治家である必要はない。家宅捜索を受けた安倍派と二階派(志帥会)の代表は事務局職員だ。2派閥では会計責任者も同じ人物が務めている。規正法には収支報告書に不記載・虚偽記入といった問題があった場合、政治団体の代表者の責任を問う規定がある。会計責任者の選任・監督で相当の注意を怠ったと認定されれば50万円以下の罰金が科される。代表者と会計責任者の兼務は法令上問題ない一方、代表者に選任・監督責任を問う条項は適用されない。日本大の岩井奉信名誉教授(政治学)は「代表者の責任を定めた規定は形骸化している。トップに事務員を置けば政治家はさらに追及されにくくなる」と指摘する。安倍派ではパーティー収入のノルマ超過分を議員に還流させ、派閥・議員側の収支報告書に記載しない運用が続いていた。裏金は18~22年の5年間に約5億円に上る。同派の裏金は東京地検特捜部の捜査を通じて初めて発覚した。規正法は「政治とカネ」の問題が起きるたびに改正を繰り返してきた。総務省によると、規制内容の修正を伴う改正は1990年代以降で8回あった。岩井名誉教授は「規正法は問題が起きるたび対症療法で改正を繰り返してきたが、『抜け道』はなお多い。改正にあたっては第三者機関を設けその意見を反映させるなど、外部の視点を取り入れた抜本的な見直しが必要だ」と話した。

*7-2:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/1177300 (佐賀新聞 2024/1/15) 【政治資金規正法】緩い監視体制、浮き彫りに、米英には独立の調査機関
 自民党派閥の政治資金パーティーを巡る事件は、第三者が政治団体の収支を点検する体制の脆弱さも浮き彫りにした。米英は一定の調査権限を持つ独立機関を抱えるが、日本では権限の弱い監査人による支出のチェックにとどまる。識者は監視の緩さを指摘し、欧米のような見張り役の必要性を訴える。
▽抜け穴
 「国民から疑念の目が注がれ、極めて深刻だ」。11日に自民党本部で開かれた「政治刷新本部」の初会合で、本部長を務める岸田文雄首相が危機感をあらわにした。刷新本部は派閥の在り方のルール策定を主要議題に据える。政治資金の透明化もテーマで(1)パーティー券購入者の公開基準を現行の「20万円超」から引き下げ(2)銀行振り込みの導入(3)違反者への厳罰化を見据えた政治資金規正法改正―といった案が浮上。ただ既に幅広い意見が混在し、着地点は見いだせない。野党からは「全く期待できない」「新たな抜け穴づくりをするだけ」と厳しい声が飛ぶ。
▽片側
 現行の規正法は、政治資金の流れを外部から把握できる仕組みが十分でない点も問題とされている。閣僚らによる不透明な事務所費問題を受け、2007年、「国会議員関係政治団体」として届けられた政治団体を第三者が監査する制度が生まれた。「登録政治資金監査人」と呼ばれる税理士や公認会計士が点検する仕組みだが、対象は国会議員が代表の政党支部や資金管理団体などに限られ、派閥は対象外。加えて、支出の整合性のチェックが主な業務で、収入のチェックまでは義務付けられていない。ある元衆院議員は「収入の不記載に気づくことができない。片側しかチェックしない、中途半端な制度だ」と批判する。
▽網
 米国では、政治資金の流れを「連邦選挙委員会」と呼ばれる独立機関が監視する。違法と疑われる行為が確認されれば、当事者への聴取や現地調査を通じて情報を収集。行政罰としての過料を科すこともできる。情報開示のスピードにも格段の差がある。日本では各年の政治資金収支報告書が翌年の秋に公開されるのが一般的だが、米国では提出を受けてから48時間以内にインターネットで公表される。国会図書館の資料などによると、英国では政府から独立した「選挙委員会」が政治資金の流れをチェックする。違法行為を察知した際には調査を実施。捜査機関への情報提供も認められている。神奈川大の大川千寿教授(政治学)は「日本の制度は緩い。監査対象の団体や項目を増やして網を広げるとともに、中長期的には強い第三者性を帯びた組織を整えるべきだ」と話した。

PS(2024年1月25日追加):*8-1は、①多くの被災者が避難所暮らしの中、政府は生活再建・インフラ復旧政策を纏めるが、過去の災害で巨額の公費が地域再生に直結しなかった例もある ②人口減時代の地震大国・日本の復興のあり方を探る ③政府の支援パッケージは、i)) 避難所などの環境改善や住まいの確保など生活再建 ii) 中小、農林業、観光業など生業再建 iii) インフラなどの災害復旧が柱 ④被害額は暫定2兆625億円で東日本大震災(16.9兆円)・阪神大震災(9.6兆円)に次ぐ ⑤国が巨額予算で復興を後押しして有効活用されたと言い難い事例は、東日本大震災後に計4600億円以上を投じた「土地区画整理事業」で津波被災の土地をかさ上げして整備したが、大規模工事に時間がかかり多くの人が故郷を離れて21市町村で28%に当たる282haの土地が未利用 ⑥「元通り」にした地域も人口減が止まらない ⑦国立社会保障・人口問題研究所の推計では2070年の日本の人口は8700万人で、災害前の姿を前提に復興を進めるべきか問われる としている。
 ①②は⑦を考慮すれば尤もで、地震・津波・雪・豪雨災害の多い地域に住む人は、何度も被災したり、避難生活をしたりしなくてよいよう、安全な場所に引っ越した方がお互いのためである。また、④のように、災害が大きいため白紙の土地となり、復興にも巨額の予算を投じることができる場合は、国・地方自治体は「復旧(災害前の状態に戻すこと)」にこだわることなく、この機会に今後の土地利用計画を示し、将来に向けて模範的・合理的な工事を進めるべきで、そうすれば戻って来る人も、他の地域から移住してくる人も増える筈である。にもかかわらず、⑤の「土地区画整理事業」による津波被災地のかさ上げは、陸前高田市のかさ上げ地のように、かさ上げ高が襲った津波の高さに達しないため多額の金を投じても危険性は除去されず、大きな無駄使いになってしまったのだ。さらに、⑥のように、「元通り」にすれば危険性は全く除去できないため、戻る人が少なく人口減になるのは当然である。
 また、*8-2は、⑧2020年7月の豪雨で実施された「なりわい再建支援事業」を基に中小企業の施設・設備の復旧に1件最大15億円補助する ⑨被災自治体の企業が対象で工場・店舗・生産機械等を復旧させる場合に費用の3/4を補助する ⑩輪島塗など地域の伝統産業の事業再開を後押しするため、災害支援枠を設けて需要開拓・新商品開発・人材育成に助成する ⑪アーケードや街路灯の復旧など商店街の再生も支援する ⑫観光支援は新潟県を含む北陸地方への宿泊費やツアー代金の一部を公費で負担する ⑬心のケアセンターを新設して近親者を亡くしたり、トラウマや孤独を抱えたりした人をケアし、仮設住宅に入居した人の見守り・相談支援にも取り組む ⑭住宅が被災した世帯を対象に最大300万円(全壊の場合)の被災者生活再建支援金を迅速に支給し、被災家屋の解体は半壊住宅も住民の自己負担ゼロで可能とする ⑮住まいの確保に、プレハブだけではなく居住性の高い木造の応急仮設住宅も建設する ⑯廃棄物処理施設の早期復旧に向けた支援や生活ごみ・し尿を離れた地域まで運んで処理する経費を支援 ⑰のと鉄道は国と事業者がバスによる代替輸送の調整をし、自治体が管理する道路・河川・漁港の復旧工事は要請に応じて国が代行 としている。
 このうち⑧⑨の被災自治体の企業を対象とする「なりわい再建支援事業」は必要ではあるが、その補助要件を工場・店舗・生産機械等を“復旧”とすれば、生産性向上の機会を失う。また、⑩の輪島塗・加賀友禅等の伝統産業の事業再開も重要だが、現在の手仕事のままでは高価すぎる上に、食洗機対応ではなく、手入れも非常に大変だ。そのため、せっかく災害支援枠を設けるのなら生産性を向上させて問題解決もした方がよく、そのための機械や人材を導入すべきだ。
 しかし、⑪のアーケードや街路灯の復旧など商店街の再生支援については、震災前には人出が多く、儲かっていた商店街なのだろうか。というのは、現在は日本全国の商店街が閑散としたシャッター街になっており、それには理由があるからで、その理由とは、共働き女性が増えれば駅近や駐車場付きのスーパーなど短時間で買い物ができる場所が便利であり、高齢者が多ければ即日配達してくれるスーパーが便利など、消費者のニーズが変わったからである。そのため、これも復旧ではなく、土地利用計画・都市計画あっての復興をすべきだ。また、⑫の観光支援についても、近場のホテルや旅館に二次避難所を作り、⑮のような作っては壊す仮設住宅建設は最小限に抑え、宿泊費やツアー代金の公費補助をなくした方が合理的だと思う。そうすれば、⑯⑰のように、基礎的インフラがずたずたで、食料や水にも乏しく、不衛生な場所に長期滞在する必要はなくなるからである。また、⑬の心のケアについては、将来の見通しが立って不安がなくなれば解決する実質的・物理的なものが多く、心の問題ではないと思われる。しかし、⑭の住宅が被災した世帯を対象に最大300万円(全壊の場合)の被災者生活再建支援金を迅速に支給し、被災家屋の解体は半壊住宅も住民の自己負担ゼロで可能とするのは必要かも知れないが、高齢者の割合が高いことを考えれば、再度、同じ場所に家を建てることは不可能で不合理だ。そのため、安全な場所に高齢者向きの集合住宅を建てて、現在所有している土地と交換するのがよいと思う。
 これに加えて、*8-3は、⑮のように、「1月中に2023年度予算の一般予備費から1000億円を上回る規模の追加支出を閣議決定する」としている。能登半島地震は2023年度に起こった災害であるため、まず2023年度予算の一般予備費から支出するのは妥当だが、下の1番右の図のように、これまでの無駄使いで我が国の国債残高は次第に高くなり、対GDP比で主要国の2倍以上になっているものの、これ以上の負担贈・給付源は不可能であるため、災害であっても無駄遣いせず、将来に役立つ計画的な支出をしてもらいたい。

 
     2024.1.25、2024.1.25、2024.1.9日経新聞        財務省

(図の説明:1番左の図のように、地域の災害リスクが明らかになった上に産業や住宅の再建が遅れれば、避難していた住民も帰還せず再建困難になるため、リスクを除去して新しい魅力を追加する街作りを迅速に行うべきである。そのため、金や時間の無駄使いをしている場合ではない。左から2番目の図で無駄使いになり易いのは仮設住宅と旅行者支援で、近隣の宿泊施設を二次避難場所にした方が合理的だ。また、「なりわい」も復旧するのではなく、時代の変化に適応した復興をさせなければその産業や地域の魅力が増さず、災害リスクを越えて帰還したり移住して来たりする人は減る。さらに、インフラも復旧ではなく、災害に適応した改善をすべきだ。しかし、財源は、右から2番目の図のように、2024年度も予備費を使うそうだが、その基には東日本大震災で不使用になった復興財源を充ててもらいたい。現在の日本の国債残高は、1番右の図のように、GDP比で飛び抜けて世界最悪で、これ以上の負担贈・給付減はできない状況だ)

*8-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20240125&ng=DGKKZO77936350V20C24A1MM8000 (日経新聞 2024.1.25) 能登地震、人口減下の復興、生活再建など支援策まとまる 教訓生かしニーズ合致を
 能登半島地震の復興が動き出す。多くの被災者がなお避難所暮らしを強いられる中、政府は生活再建やインフラ復旧の政策をまとめる。過去の災害では巨額の公費が地域再生に直結しなかった例もある。人口減時代の地震大国・日本で復興のあり方を探る。政府の能登半島地震支援(総合2面きょうのことば)のパッケージが25日、公表される。(1)生活再建(2)生業再建(3)災害復旧――が柱となる見通しだ。被害の全容は不明だが、野村総合研究所の木内登英氏は23日までの状況をもとに暫定的な被害額を2兆625億円と推計した。単純比較できないが東日本大震災(16.9兆円)や阪神大震災(9.6兆円)の政府試算に次ぐ規模となる。過去の震災で国は巨額予算で復興を後押しした。だが、すべてが有効活用されたとは言い難い。東日本大震災後に計4600億円以上を投じた「土地区画整理事業」。津波被災の土地をかさ上げして整備したが、大規模工事に時間がかかり多くの人が故郷を離れた。国土交通省の調べでは、21市町村で28%に当たる282ヘクタール、東京ドーム60個分の土地が未利用。住民ニーズと施策のズレが浮き彫りになった。「元通り」にした地域も人口減が止まらない。阪神大震災の神戸市長田区の人口集中地区は2010~20年で約7%減少。東日本大震災の宮城県気仙沼市は71%も減った。国立社会保障・人口問題研究所の推計で、70年に日本の人口は8700万人まで減る。過去の教訓を踏まえ、災害前の姿を前提に復興を進めるべきかが問われる。災害時は国や自治体の「公助」に加え、助け合う「共助」、当事者の「自助」も欠かせないが、平穏な暮らしを奪われた被災者にどこまで負担を求めるかは難しい。1998年に成立した被災者生活再建支援法は当初、住宅全壊世帯の「家財道具調達」に最大100万円を補助し、私有財産である個人の住宅再建は対象外だった。2007年の法改正で使途制限を廃止。補助枠も現在は最大300万円だ。納税者が減り、社会保障費がかさむ時代に公費頼みは限界がある。常葉大の重川希志依名誉教授(都市防災)は「手厚い公助は耐震化などの備えを阻害する面もある。まずは地震保険加入など自助を急ぐべきだ」と話す。米国では05年のハリケーン「カトリーナ」被害の際、民間から資金を集めた財団が約1万戸の住宅を再建・提供。寄付文化とも通底する「共助」の仕組みが注目された。「災害列島」と呼ばれる日本。想定される南海トラフ地震の経済被害額を国は最悪220兆円と推計する。兵庫県立大の井上寛康教授は「戦略的な備蓄や代替先の確保などの備えで供給網への打撃を抑え、経済被害を軽減できれば復興の負担も軽くなる」と訴える。

*8-2:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/1181454 (佐賀新聞 2024/1/22) 中小企業復旧に最大15億円、能登地震支援の政府案
 能登半島地震の被災地支援策をまとめた政府の政策パッケージ案が22日、判明した。中小企業の施設と設備の復旧に1件当たり最大15億円補助する方向だ。観光支援では新潟県を含む北陸地方への旅行費用の一部を補助する。被災者の心のケアに向けた取り組みも本格化する。地震発生から3週間。政府は週内にも正式に決定し、復旧・復興を加速させる。石川県によると、地震の死者は22日午後2時時点で233人が確認された。安否不明者は22人。施設復旧への補助金は、2020年の7月豪雨で実施された「なりわい再建支援事業」を基にする。被災自治体の企業が対象で、工場や店舗、生産機械などを復旧させる場合の費用について、4分の3を補助する。輪島塗など地域の伝統産業の事業再開を後押しするため、災害支援枠を設け、需要開拓や新商品開発、人材育成に助成する。アーケードや街路灯の復旧など、商店街の再生も支援する。旅行支援は宿泊費やツアー代金の一部を公費で負担する。3~4月、金額に上限を設けた上で、宿泊費の50%程度を補助する方向で調整している。被害が大きい能登地域は、復興状況を見ながら、旅行客の呼び込み策を今後検討していく。被災者支援では、心のケアのセンターを新設。近親者などを亡くしたり、トラウマや孤独を抱えたりした人をケアする。仮設住宅に入居した人の見守りや、相談支援にも取り組む。住宅が被災した世帯を対象にした最大300万円(全壊の場合)の被災者生活再建支援金も迅速に支給。被災家屋の解体では、全壊だけでなく半壊住宅も住民の自己負担ゼロで可能とする。住まいの確保も「喫緊の課題」と位置付けた。応急仮設住宅は、プレハブだけではなく、居住性の高い木造も建設する。廃棄物処理施設の早期復旧に向けた支援のほか、生活ごみやし尿を離れた地域まで運んで処理する経費を支援する。のと鉄道は、一部区間で運転再開の見込みが立たないため、国と事業者がバスによる代替輸送の調整をする。自治体が管理する道路や河川、漁港の復旧工事は、要請に応じて国が代行する。

*8-3:https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA22AOB0S4A120C2000000/ (日経新聞 2024年1月23日) 能登半島地震:北陸割」で観光需要喚起へ 能登半島地震で政府支援策
 政府は能登半島地震の被災地支援パッケージの原案をまとめた。中小企業の施設と設備の復旧に補助金を出す。1件あたり最大15億円で調整する。観光業の支援は新潟県を含む北陸地方への旅行者向けに割引を設ける。岸田文雄首相が本部長を務める非常災害対策本部で25日にも被災者の生活となりわいを再建するための政策パッケージをまとめる。1月中に2023年度予算の一般予備費から1000億円を上回る規模の追加支出を閣議決定する。①避難所などの環境改善や住まいの確保など生活再建②中小、農林業、観光業など生業再建③インフラなどの災害復旧――の3つを柱として盛り込む。被災自治体の中小企業を対象に工場や店舗、設備などを復旧させる費用を補助する。20年7月豪雨の際の「なりわい再建支援事業」をもとに制度設計する。旅行業の支援は16年の熊本地震の「ふっこう割」を参考に宿泊費などを公費を使って割り引く。金額に上限を設けたうえで5割ほどを補助する見通し。被害が大きかった能登地方は復興状況を踏まえ、より手厚い需要喚起策を検討する。住宅が被災した世帯には最大300万円の「被災者生活再建支援金」を迅速に支給する。全壊だけでなく半壊も含めて住民の負担なしで被災家屋の解体が可能になる。輪島、珠洲両市などの被災地でニーズに沿った応急仮設住宅を供与する。大規模災害復興法に基づく「非常災害」に指定したことを踏まえ、自治体が管理する道路や河川、漁港の復旧工事を国が要請に沿って代行する。

| 資源・エネルギー::2017.1~ | 04:19 PM | comments (x) | trackback (x) |

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