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2014,01,08, Wednesday
八郎潟の水田 大豆畑 小麦畑 とうもろこし畑 2013年9月に、公認会計士を中心とする会計人東大会で、「日本の農業発展における公認会計士の役割」という講演会を開き、農林水産省大臣官房政策課の課長に「農業の現状と課題」に関して話をしていただいた。私は、2005年~2009年の間、農業県である佐賀県を地元として衆議院議員となり、地元を廻って農業の振興について考える機会が多かったため、日本はTPPに参加しようとしまいと、農業を強い産業にしなければならず、それには、他産業の経営を多く見てきた公認会計士が、農業の現状を知った上で、農業の経営力向上の為にアドバイスすることが有用だと考えたからである。以下は、その内容を中心として書いている。 (1)農業をめぐる日本の状況 意外に思う方が多いかもしれないが、日本は、世界有数の森林資源、海洋資源を有し、耕作放棄地が2010年時点で39.6万haもある国である。また、2009年度の第一次産業(農林漁業)の国内生産額は11.1兆円で、それに関連する第二次産業(関連製造業)、第三次産業(流通・飲食業)を含めた農業・食料関連産業の国内生産額は94.3兆円であり、これは、国内生産額906兆円の10.4%を占め、わが国最大の産業になっている。そのため、農業が衰退すれば、それだけ国内生産額が減り、失業者が出る。 しかし、日本の2010年度の農業生産額(9.4兆円)は、1990年度(13.7兆円)と比較して、約70%に減少した。これは、減反政策の責任も大きいが、他産業と比較した場合の所得の低さから、次世代の若者が農業に参入したがらず、農業の就業者が減少し続けていることが大きな原因である。そのため、この解決策は、規模を拡大して就業者一人当たりの生産性を向上させ、農産品の付加価値を増大させて、農業を、若い人にとって魅力的で誇れる所得の多い産業にすることである。そして、その政策は、すでに始まっている。 (2)農業をめぐる世界の状況 「わが国は工業製品を輸出し、農産品や食料は輸入すればよい」と考える人が多くいる。しかし、世界の人口が急速に増え、中国やインドも工業化して贅沢な食料輸入国になっていく時、わが国だけが「工業製品を輸出して食料を輸入する」という方式が成り立つわけがない。工業化はそれぞれの国で進み、自国民を犠牲にしてまで食料を輸出する国はなく、食料の輸出国も買値の高い国に輸出する。 そのため、日本が食料自給率を上げることは必要不可欠であり、上のグラフのように、日本と似た先進諸外国の食料自給率は、フランスで121%、ドイツで93%であるにもかかわらず、日本は39%なのだ。 (3)農業分野で行うべき生産現場の強化 1)農地の集約 一番上の写真のように、大規模な機械を使って生産性を上げるためには、細かく分かれて分散し、飛び地となっている農地を、担い手ごとに集約して規模の拡大を行う必要がある。そのため、農林水産省は、今後10年間で担い手の土地利用が全農地の8割を占めるようにする目標を立て、その実現のために、農地中間管理機構が耕作放棄地を借り受け、農地を農地として管理しながら、農地の貸手と借手の間に立って農地の集約化を進める仕組を作ったそうである。また、農業の法人化は、既に可能になっている。 2)農業生産現場への先端技術の導入 現在は、生物学や工学の発達により、品種開発や自動化が加速化している。その一例は、ハウスで一年中いちごを生産し、出荷時には自動選別して一定の品質を持つもののみを出荷したりするもので、「糖度11度以上のいちご」というのは、地域の集果センターにいちごを集め、センサーでチェックした後、自動的に大きさ毎に選別してパック詰めするという具合だ。そのほかにも、ロボット化や自動化ができており、自動運転のトラクターも出てきたのは期待できるが、農業機械の値段が高いのはネックである。 3)第一次産業の六次産業化 農産品を作る(第一次産業)だけでなく、それに加工(第二次産業)や販売(第三次産業)を加えると、地域の雇用が増えるとともに、農産品の歩留まりもよくなり、製造物により大きな付加価値をつけることができる。「1+2+3=6」もしくは「1x2x3=6」で、これを第一次産業の六次産業化と言っているが、私は、高齢化社会で、かつ、多くの女性が働いている現在、六次産業化による付加価値は大きいと考えている。例えば、外食や中食、自宅療養を可能にする介護食品の宅配等が、それに当たる。 4)需要フロンティアの開拓 世界の人口が爆発的に増加し、開発途上国だった国も工業化して贅沢な食を求めるようになってくると、2009年に340兆円だった世界の食の規模は、2020年には680兆円に倍増すると見込まれている。特に、中国・インドを含むアジアだけで考えれば、市場規模は、2009年の82兆円から229兆円へと3倍増になる見込みだ。そうなると、日本は、食料の輸入国どころか、輸出国になるべきなのであり、農業・水産業の分野には、大きな機会が約束されていると言える。 (4)TPP、EPAなどの経済連協定について 1)TPPについて TPP協定交渉では21分野(物品市場アクセス/原産地規則/貿易円滑化/SPS/TBT/貿易救済/政府調達/知的財産/競争政策/越境サービス/一時的入国/金融サービス/電気通信/電子商取引/投資/環境/労働/制度的事項/紛争解決/協力/分野横断事項)の自由化が話し合われている。 そのうちの農業に関しては、衆議院、参議院の農林水産委員会で、「米、麦、牛肉・豚肉、乳製品、甘味資源作物などの農林水産物の重要品目について、引き続き再生産可能となるよう除外又は再協議の対象とする」「農林水産分野の重要五品目などの聖域の確保を最優先し、それが確保できないと判断した場合は、脱退も辞さないものとする」と2013年4月18日、19日に決議されているが、そもそも農業は、重要五品目の関税を堅持すれば足りるというものではなく、TPPに入れば、日本の方が進んでいる食品安全基準も外国に合わせなければならず、ISD条項まであるのだ。 その上、工業製品は、日本国内で生産して輸出するよりも、現地生産を行う方が儲かる経済構造になっているため、TPPが日本の工業に与えるメリットはさほど大きくなく、食料生産に与えるディメリットは膨大であるため、私は、TPPに参加するよりも、丁寧に条件を吟味しながら、それぞれの国とEPAを結ぶ方が賢明だと考えている。 また、政府統一見解でも、供給熱量ベースで平成24年度に39%だった食料自給率は、TPP締結後は27%まで下落し、農業の多面的機能の喪失も1兆6千億円に上ると見込まれているため、ここまで国益に反した意思決定をする政府は、おかしいと言わざるを得ない。 2)EPA(経済連携協定)の現状 わが国は、シンガポール、メキシコ、マレーシア、チリ、タイ、インドネシア、ブルネイ、ASEAN、フィリピン、スイス、ベトナム、インド、ペルーとは既にEPAを締結し、現在、オーストラリア、モンゴル、カナダ、コロンビア、中国、韓国、EU、GCC(湾岸協力理事会加盟国:バーレーン、クウェート、オマーン、カタール、サウジアラビア、アラブ首長国連)と締結交渉中だ。私は、国毎に条件を吟味しながら、丁寧にこちらを築いていく方が国益になると考えている。 (5)今後の農業に必要なこと (1)(2)(3)で述べた基本方針を全力で実現するためには、*1、*2のように、実用化を視野に入れた研究開発が重要である。また、*3のように、使わずに害獣としてきた野生動物を資源化したり、*4の国有財産として登録した離島や耕作放棄地を農業生産に利用したり、*5のように、農業分野で新規事業を立ち上げたりなどの地道な努力が必要なのである。 *1:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20140107&ng=DGKDZO64950530X00C14A1EE8000 (日経新聞 2014.1.7) 強い農業、異分野と育成、農水省、工学・医学部に拠点 自動収穫機やアシストスーツ開発 農林水産省は農業の競争力強化へ向け、異分野との産学連携を後押しする。2014年度に大学の工学部や医学部に農業の研究拠点をつくり、ロボット技術などを農業の現場に生かす。自動車メーカーやIT(情報技術)企業の農業参入も促し、新しい技術や生産システムを開発する。環太平洋経済連携協定(TPP)の交渉妥結を見据え、農業の作業効率を高めて生産コストを引き下げる。農水省は2月に農業の研究拠点をつくる大学を公募する。近く立ち上げる有識者会議を通じて、3月に5つ程度の大学を選ぶ。基準は大学が提供できる研究設備や教員数が中心になる見通し。研究テーマや課題解決に必要な人材の募集などの情報を発信できる体制も評価する。農水省が農業関連以外の学部で研究拠点を設けるのは今回が初めて。13年度補正予算と14年度予算から20億円程度を捻出する方向だ。研究内容では、種まきの際に数センチ単位で種同士の距離を調整したり、衛星からの情報をもとに自動で耕作したりする機械を開発する。脳神経などが専門の医学生と連携し、食生活の洋風化が若者のストレス増加につながっているかを研究。結果を公開し、食品会社にコメなど和食の需要促進につながる商品開発を促す。 農業生産法人と一般企業の連携も後押しする。IT企業やロボット開発会社とは、高齢者や女性が長い時間、農作業しても、首や腰に負担をかかりにくくする補助機器「アシストスーツ」を低価格でつくり普及させる。色を識別するセンサーで農作物の位置を確認し自動で収穫するシステムの実用化も目指す。自動車メーカーからは生産管理の担当者を1~2年間、農業法人に派遣することを想定。農産物の生産過程でのムダを探し農業版の「無駄削減マニュアル」を作成する。一般企業の数十社がすでに農業法人との連携を検討しているという。政府は農産物の生産コストの引き下げを目指す。来年度から農地の大規模化を進めるほか、減反政策も18年をめどに終える方針。新しい生産技術やシステムの開発も併せて進めることで農業の効率化を一段と進める。TPPでは農産物の関税率引き下げを迫られる可能性が高く、生産効率の引き上げは急務になっている。政府は成長戦略でコメの生産コストを現在の60キログラムあたり1万6000円から10年後に4割引き下げる方針を打ち出している。 みかん畑 葡萄畑 ひまわり畑 ハウス栽培のイチゴ *2:http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=24954 (日本農業新聞 2013/12/10) 施設園芸に自然エネ活用 佐賀県農研など 佐賀県農業試験研究センターなどは、施設園芸での自然エネルギー活用を探っている。フィルム型や防草シート一体型の太陽光パネルなどで発電。局所加温やヒートポンプ、発光ダイオード(LED)の利用で省エネを進める。これまでに、菊やイチゴの栽培と発電を両立する手法の開発にめどを付けた。 ●ハウスに太陽光パネル 発電兼ねた防草シート 小型で静かな風力発電 イチゴと菊の試験は、それぞれハウス1.2アールで進める。イチゴは「さがほのか」を9~5月ごろまで栽培。機械室の屋根内側に、出力が計2.2キロワットのフィルム型太陽光パネルを設置。フィルム型は自由に曲げられ、ハウスに設置しやすい。屋根内側への設置は簡単に施工でき、耐候性が高い。暖房は、九州電力と開発した温水循環器で局所加温し、ハウス内は無加温だ。高設栽培で、夜間を中心に株元を20度と25度で温めたところ、収量がやや減少。今作は暖房効果を高めるため、土耕栽培で試験している。菊は6~10月に夏秋輪菊を、10~3月に秋冬スプレイ菊を栽培。栽培室に、出力が計4.9キロワットのフィルム型パネルを設置し、展張を調節できる可動式にした。ヒートポンプによる冷房で奇形花の発生が減り、品質が向上した。2012年度は、栽培期間は東側の屋根内側で朝に発電。夏場にパネルを半分展張した状態では、収量は慣行と同程度だが開花がやや遅れた。休作期間は全て展張した。13年度は西側の屋根で夕方に発電している。イチゴ、菊の他に、用水路のり面に設置した防草シート一体型のパネルや、小型で騒音が少ない風レンズ風車でも発電。発電関係のコストは約2000万円だった。発電量は、12年2~11月で3471キロワット時、12年12月~13年3月上旬で559キロワット時だった。イチゴ、菊栽培の両方でLED電照も導入し、生育や収量、省エネの効果をみている。同センターは「やり方やコストなど取り組みやすさを確認し、生産者に示したい」と話す。試験は12~14年度。同県果樹試験場でも、太陽熱温水暖房などの利用法を探っている。 *3:http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=25161 (日本農業新聞 2013/12/21)[鳥獣害と闘う]捕獲鹿を飼育 ジビエに脚光 衛生的で均質、供給安定 北海道 北海道を中心に、野生の鹿を捕獲して、一時的に牧場などで飼育した上で、肉として出荷する養鹿(ようろく)事業に脚光が集まっている。ジビエ(野生鳥獣肉)に消費者の関心が広がり、コンビニエンスストアや生協も販売を手掛けるようになる中、養鹿は、衛生管理が徹底された肉の安定供給につながるためだ。鳥獣害の出口対策としてジビエの普及に力を入れる府県の自治体も、有力な手法の一つとして注目している。北海道釧路市阿寒町に広がる6ヘクタールの広大な牧場。見た目には牛の放牧場と大差ないこの牧場は、建設事業を手掛ける北泉開発の養鹿牧場だ。搬入・搬出する場やと畜場も併設。と畜方法は豚と同様で、餌は配合飼料で牛とほとんど同じだ。「家畜と同レベルに衛生面を担保したエゾシカ肉の出荷ができる。消費者が求めている肉を出荷できる仕組みだ」。同社の曽我部元親常務は胸を張る。同社は2003年に深刻化するエゾシカの農林業被害の解決と地域活性化を目指し、養鹿事業と肉の出荷に乗り出した。囲いわなで年間500頭を捕獲し、耳標をつけて放牧。半年から1年肥育して出荷する。野生のエゾシカを山で仕留めて肉にする方法に比べ、食肉にするまでの出荷体系が整い、衛生的で均質な食肉を安定して供給できる。 ●生協も販売開始 同社などで養鹿した食肉に、近年需要が急増している。コープさっぽろは、10月から、道内6店舗でエゾシカ肉の販売を始めた。これまでは野生動物の取り扱いに慎重だったが、養鹿で安全性が一定水準確保されたことから販売に踏み切った。コープさっぽろ畜産部は「健康状態を牧場で把握できる。納品数量も事前に分かる」と話す。道庁によると、道内で養鹿に取り組むのは6業者で、販売先から需要が高まっているという。エゾシカ食肉事業協同組合では、コンビニエンスストアや学校給食の取引があるが、いずれも養鹿したエゾシカ肉を出荷。この他、本州のホテルや大手百貨店の引き合いもあり、需要が広がっている。同組合事務局は「山で捕獲した鹿は、処理場に入るまでの工程に不安を感じる消費者は多い。今後は、肉になるまでの過程が見える養鹿など、しっかりとした衛生管理がジビエ普及の鍵を握るのではないか」とみる。全国各地の自治体などジビエ普及を目指す地域や企業から、養鹿牧場に毎週のように視察も相次ぐ。対応するため、養鹿牧場にエゾシカや養鹿を幅広く学べる学習館を併設する事業者も出てきた。道内では、エゾシカ肉を供給する事業者が自主的にHACCP(危害分析重要管理点)を導入するなど、高いレベルの衛生管理を徹底する新たな動きも芽生えている。 ●消費拡大の契機 東京農業大学の増子孝義教授は「野生鳥獣の肉であっても、(流通や衛生面の)管理が、担保された肉を求める声が企業などの間で急速に高まっている」と指摘。その上で「養鹿は、狩猟で捕獲して食肉利用するジビエを否定するものではない。ジビエ全般の評価を高め、消費を広げる契機になる」と強調する。 *4:http://www.saga-s.co.jp/news/global/corenews.0.2605356.article.html (佐賀新聞 2014年1月7日) 政府、領海保全へ離島を国有化 / 280の無人島 政府は7日、日本の領海の範囲を決める基点となっている約400の離島のうち、所有者がいない約280の無人島を国有化する方針を固めた。沖縄県・尖閣諸島や島根県・竹島をめぐり中韓両国との対立が生じた経緯を踏まえ、離島が日本に帰属することを明確にして領海保全を強化するのが狙い。現在の領海の範囲に変更は生じないとしている。山本一太海洋政策・領土問題担当相が7日の記者会見で明らかにした。会見で「離島を国有財産として登録し、管理を強める。そのメッセージを(対外的に)発信していく」と強調した。 *5:http://qbiz.jp/article/29501/1/ (西日本新聞 2013年12月24日) 起業支援へ8自治体連携 福岡市や佐賀県など協議会設立 地方発の起業や新規事業を増やすための自治体連携組織「スタートアップ都市推進協議会」が23日、発足した。福岡市の高島宗一郎市長が呼び掛け、佐賀県など全国8県・市が参加。中小企業庁や経済同友会の協力を得て、それぞれのベンチャー支援事業のノウハウや情報を共有して起業支援態勢の充実につなげる。参加したのはほかに、三重、広島両県と千葉、神奈川県横須賀、浜松、奈良の4市。参加自治体はベンチャー企業と大企業や投資家などを結びつけるマッチング事業を協力して実施したり、企業トップを小、中学校に招いたりする予定。都内であった設立総会で、高島市長は「日本の復活を本物にするには、地方が国を引っ張るという気概が必要だ」と主張。佐賀県の古川康知事は「佐賀県は農産物に恵まれている。農業の分野で起業を増やしていきたい」と話した。 PS(2014.1.9追加):*6のように、「岩盤規制」として緩和することが是とされている“改革”があるが、それは、農業関係では、①農業生産法人の要件を「役員の1人以上が農作業に従事すればよい」とする緩和 ②市町村と農業委員会が合意すれば、農地の権利移動の許可事務を市町村ができるようにするという緩和 である。しかし、農地を法人に売却させず50年の賃貸借としているのは、農業を営む意思のない法人が農地を取得して、なし崩し的に乱開発するのを防ぐためであり、農業を営む法人なら50年の賃貸借契約ができ、契約更新も可能であるため、それで十分な筈なのである。そのため、農業を知らない民間議員が①②に固執した政策提言をするのは、食料自給率や雇用、環境など、農業の多面的機能を考えておらず、無責任だ。 *6:http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=25373 (日本農業新聞 2014/1/8) 「岩盤規制に突破口」 農業も念頭 国家戦略特区会議 初会合 政府は7日、国家戦略特区諮問会議(議長=安倍晋三首相)の初会合を開いた。昨年12月に成立した国家戦略特区法に盛り込まれた規制改革項目などとは別に、国家戦略特区で実施する新たな規制改革項目を検討していくことを決めた。諮問会議や国家戦略特区ワーキング・グループ(WG=作業部会)が全国からの提案に基づき検討する。農業分野でも新たな規制改革の検討が進む懸念がある。特区の第1弾は3月に指定する方針だ。特区の進め方について、5人の民間議員が連名で提言を提出。新たな規制改革は、次期通常国会での法改正を含め検討すべきだとした。今後2年間を集中期間として、いわゆる岩盤規制について「少なくとも特区では突破口を開く」と明記した。民間議員を務める慶応大学の竹中平蔵教授は会合後、記者団に対し農業、医療、雇用分野を念頭に「短期目標として2年で全ての岩盤規制に突破口を開く」と規制改革に意欲を示した。会合では国家戦略特区基本方針などを議論した。安倍首相は「今までの提案の深掘りや洗い出しを含め、大胆でスピード感を持った検討を進めていきたい」と述べた。閣僚からは「現場からの規制改革提案は基本的に採用すべきだ」(甘利明経済再生担当相)、「全国展開が望ましい場合は、規制改革会議が必要な検討をして迅速に対応したい」(稲田朋美規制改革担当相)など、規制改革に前のめりの発言が相次いだ。国家戦略特区法は、全国からの規制改革の提案などを基に、昨年12月に成立。地域を限定して、大胆な規制緩和や金融・税制支援を行う。農業関係では、四つの規制緩和ができるようにした。農業生産法人の要件は、役員の過半が販売・加工を含む農業の常時従事者とする要件は維持しつつ、さらにその過半の役員が農作業に従事するとの要件を緩和し、役員の1人以上が農作業に従事すればよいこととする。市町村と農業委員会が合意すれば、農地の権利移動の許可事務を市町村ができるようにする。法律に関する事項ではないが、農業への信用保証制度の適用、農家レストランの農用地区域内の設置容認などの規制緩和も想定している。 下は、講演会で、農林水産省大臣官房政策課の天羽課長に話をしていただいた時の資料で、全部で56ページあって情報量が多いため、詳しく知りたい方はクリックして参考にされたい。
| 農林漁業::2013.6~2014.1 | 02:34 PM | comments (x) | trackback (x) |
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2013,07,05, Friday
スイスの放牧 オーストラリアの放牧 日本(阿蘇)の放牧 (1)輸入飼料による畜産は、わが国の食料自給率には貢献していない 私が衆議院議員だった2005~2009年の間にも、輸入飼料の価格高騰のため、国から補助金を出したことがあった。もちろん、突然の高騰で畜産農家を破綻させるわけにはいかないので、その時の補助には私も積極的だったが、特定の産業の日常のコストを何度も国が補助するわけにはいかない。従って、国が補助している間に、稲わらや国産穀物の利用を進めるべきだったのだ。しかし、*1のように、また同じことを言っているというのは、その後も、全体としては経営努力によるコストダウンがなかったのだ考える。そして、このような理由を建前とするばら撒きは、選挙に利用されている側面がある。 (2)わが国の土地は余っており、工夫の余地は大である わが国には、耕作放棄地が多く、陸地の80%を占める山を使えば広い牧場もできる。そのため、*2のような三圃式農業やスイス式の放牧も可能であろう。そして、そうやって荒れ地を開き、コストダウンしてブランド畜産を行っている農家もあるのだから、いつまでも同じことを言っていないで、畜産飼料は国産や自給を前提に進めるべきである。消費者も、どこの飼料が使われたかを見て生産物の購入を決定したいので、使用した飼料の産地表示はして欲しい。 (3)農業も最新のテクノロジーを使うべきである 田畑、牧場、畜舎などは広いので、太陽光発電、風力発電、小水力発電、地中熱利用設備などを設置して農業の水光熱費を下げ、余った電力を売電することもできる時代になった。また、搾乳ロボットもできているので、世界があっと驚くようなコストダウンや大規模化も可能ではないだろうか。国は、輸入飼料価格高騰の補填より、このような投資に金をまわしてもらいたい。 *1:http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=21641 (日本農業新聞 2013/6/17) 飼料高騰 もう限界 畜産危機現地ルポ (要点)畜産農家が二つの「限界」に直面している。一つが経営努力だ。輸入原料価格の高止まりと円安で配合飼料価格が高騰し、経営を圧迫。自給飼料の利用などによるコスト削減が追い付かず、「もう限界」の声が上がる。価格高騰時に農家に補填する配合飼料価格安定制度の基金も限界だ。 ●肉牛 このままでは共倒れ 酪農 長期的な価格決定を 秋田県由利本荘市の和牛肥育農家・熊谷典夫さん(66)は、配合飼料の高騰分を少しでも補おうと自給の稲わらや牧草を粗飼料に積極的に活用し、飼料代全体の負担を抑えようと必死だ。しかし1頭当たり約37万円と上昇は防げず、採算はぎりぎり。「これ以上のコスト減は無理だ」。地元のJA秋田しんせいの畠山勝一組合長は「配合飼料価格が上がって生産者の負担が増えれば地域の畜産基盤の維持は難しい。政府は早急に対策を講じるべきだ」と警鐘を鳴らす。配合飼料価格の高騰は、北海道の酪農経営にも影を落とす。値下がりの見通しはなく、生産者の不安は切実だ」と強調。急激な価格上昇時に農家負担の急増を抑える現行制度は「長期の高止まりには合わない」と指摘し、制度の抜本的な見直しを要求する。「草地更新や植生改善に向けた基盤整備事業も充実してほしい」と、自給飼料増産への国の後押しも求める。 *2:http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%89%E5%9C%83%E5%BC%8F%E8%BE%B2%E6%A5%AD (要点)三圃式農業は、農地を冬穀・夏穀・休耕地(放牧地)に区分しローテーションを組んで耕作する農法である。農地の地力低下を防ぐことを目的としており、休耕地では家畜が放牧され、その排泄物が肥料になり、土地を回復させる手助けとなった。中世ヨーロッパで行われており、現在の混合農業につながる農法である。三圃式農業は、収穫後の土地を相互に放牧地として利用しあう開放耕地制と、播種時期の差による収穫のばらつきを避けるため耕作地をバラバラに配置する混合地制が併用するものであった。飼料が不足する冬季に家畜を飼うことが困難という欠点があり、18世紀頃より飼料用の根菜植物を導入した輪栽式農業が主流となった。
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2013,06,27, Thursday
*1より 太陽光発電をつけたハウス 地中熱利用の原理 私も、衆議院議員の時、ハウスみかんの産地である地元を廻っていて、ハウス内で作物を育てると、雨風をしのぐことができ、害虫や汚れが付かないので、管理しやすく農薬も少なくてすむだろうと思っていた。また、ミツバチを使って受粉することもできる。そのため、*1の記事は、納得できた。 これに加えて、日本なら、ハウスに、太陽光発電などの再生可能エネルギーや地中熱利用システムをつけて、安いコストで温度や光を調節することにより、より長く収穫できるのではないだろうか。日本にも、広い畑で穀物栽培をすることが難しい中山間地が多いので、最新のテクノロジーを使う形で参考にしたい。 *1:http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=21869 (日本農業新聞 2013/6/26) 北イタリアのベリー類栽培 先進協同組合の取り組み報告 全国ブルーベリー産地シンポから 日本ブルーベリー協会が長野県でこのほど開いた全国産地シンポジウムで、北イタリアでベリー類をブランド化したサントオルソラ協同組合の取り組みについて報告があった。日本と同じような山岳地帯の小規模生産者が、均一な品質、鮮度で勝負し、約60億円を売り上げる。講演したマーケティング責任者のサラ・ベリニ博士は、日本の実態も踏まえ栽培や貯蔵などの重点を紹介。中でも雨よけの必要性を強調した。講演要旨を紹介する。 ●品質・鮮度で勝負 雨よけで収量向上 1972年に設立した生産協同組合で、1160人の生産者で組織する。イチゴ、ブルーベリー、ラズベリー、スグリ類、オウトウなどを扱う。冬は生産できないので、南イタリアに組合員を増やし、外国産も別ブランドで扱い周年出荷する。昨年は410ヘクタールで4600トンを生産。国内外での販売量は5500トンだった。30アール以下の兼業農家が多く収入をベリー類が補完する。一般作物栽培が難しい急峻(きゅうしゅん)な渓谷地帯での人口流出を防いでいる。生産者は(1)全量出荷(2)少農薬の総合的病害虫・雑草管理(IPM)(3)出荷物の畑での箱詰め――が義務付けられる。摘み取り観光園は許されない。遮光フィルムでトンネル栽培し、土壌病害を避けるため夏秋イチゴとラズベリーはコンテナやポットで栽培、ラズベリーはポットを冷蔵処理し出荷期を調整する。通路は草生栽培で温度を下げる。品種は1、2品種に絞っている。公立の研究所もあるが、独自の研究開発部門が6ヘクタールの畑を持ち、品種を開発している。大量生産・大量出荷の海外産地に、量では勝てない。鮮度が良く品質のそろった果実が目標だ。果実は畑で収穫、パックに詰め計量する。イチゴは保冷資材を敷く。室温2度、湿度80%で1時間予冷する。果実温が一挙に下がり貯蔵性が増す。コールドチェーンが販売店まで続く。ブルーベリーはピートモスやココヤシピートでマルチする。雨よけは収量が30%増える。品質がそろい、過熟果、ショウジョウバエ、病気の問題がなくなる。雨の日も収穫できる。植栽は列間2.8~3メートル、株間は品種により1~1.5メートルで植える。剪定(せんてい)が重要だ。毎年生産力の高いケーン(主軸枝)を1樹に5、6本残す。ケーンは6年ぐらいが限界だ。若い生産力があるケーンなら収量を持続的に取れ、10アール当たり1.5~2トンになる。レッドカーランツ(赤フサスグリ)は6カ月間、ブルーベリーは3、4カ月間CA貯蔵する。多彩なベリーをファッショナブルに詰め合わせ商品提案し、周年出荷で出荷額を確保している。
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2013,06,22, Saturday
私は、「安愚楽(あぐら)牧場」という名前をつける人を見識が高いとは思わないし、安愚楽牧場とは利害関係もないが、この牧場の破綻に関する報道において、やり手であったらしい女性社長を感情的に叩いているものが多すぎると思ったので、この記事を記載する。その叩き方は、「社長をしているような出たがりの女は性格が悪い」と言わんばかりで、ジェンダーに繋がるものである。 (1)破綻の責任は牧場にあるのか? 2011年3月11日に東日本大震災が発生し、3月12日に福島第一原発事故で1号機が水素爆発し、同14日に3号機が爆発した。そして、5月12~24日にかけて、東京電力は、福島第一原発の1~3号機がメルトダウンしていたことを認めた。これにより、東北、関東が放射性物質で汚染されていることは多くの人の察するところとなった。とりわけ、安愚楽牧場は、線量の高い栃木県那須塩原市にあったため、この地域の牧草が汚染され、一方で牛乳や牛肉の取引価格が落ちたり、取引そのものが減ったりしたことは容易に推測できる。そして、この大規模な牧場の経営が大きく傾いていった時期は、2011年7月なのだから、破綻の責任の多くは、原発事故にあったのではないかと思う。 (2)返金できないと分かっていて誘うのは、もちろんよくない。しかし・・。 もちろん、返金できないことがわかっていながら、「なるべく早く振り込んでくれ」と督促するのは、不誠実で悪いことである。しかし、この時期は、金融等に関する知識の少ない社長やスタッフが、必死で資金繰りをしていたことが想像される。また、埼玉県の男性が2011年7月に投資を始めたそうだが、この時期に、この地域の牧場に投資するというのは、半分は寄付する気持ちがあったのではないのかと思われても仕方がない。そして、督促に対し、不審にも思わず100万円を振り込んだというのだから、投資家としての正当な注意にも欠ける。 (3)この記事は、どういう目的で書かれたのか? この記事は、「海江田万里氏も『広告塔』だった」として、まず、大きく海江田氏の名前を出しているが、この時は、東京都議会議員選挙の真最中で、海江田氏は民主党代表として闘っており、6月23日の開票で、民主党は惨敗した。また、農家出身の実直な男性が、「生き物をネタに人をだます行為は許せない。農業の現場で頑張っている生産者への冒とくでしかない」と強調したとしているが、出資対象が生き物だったことと罪の深さとは関係がなく、これは感情論にすぎない。農業への出資対象は、その殆どが生き物であり、むしろ農地であってはならない。全体として、この記事は、人々の感情に訴えて、海江田氏と牧場の女性経営者を、ことさら貶めているように見える。 (3)それでは、何が足りなかったのか? 以下の点で、東電及び国にも責任があるだろう。 1)原発事故の報道が甘かったため、この時期に、この地域の牧場に投資した人がいたこと 2)わが国には、農業会計がないため、農業主体が農業における資産評価(この場合は、牛などの評価) を正確にできず、経営がどんぶり勘定になること。そのため、出資者に対し、財政状態・経営状況を 正確に開示し、投資リスクを透明にできていない。 (4)これから急いでやるべきこと 1)農業経営を合理化するためには、経営の尺度となる農業会計を速やかに導入すべきである。国際 会計基準には農業会計があるが、わが国の会計基準にはこれがない。 2)大規模に農業を営み、多くの投資家から出資を集める農業主体は、農業会計に基づいて正確な会 計情報を作成し、公認会計士の監査を受けて、公表する必要がある。それにより、投資家は正確な 財政状態・経営成績に関する情報を得て投資することができ、経営者も的外れな必要以上の非難か ら免れることができる。 *1:http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130618-00000046-mai-soci (毎日新聞 2013年 6月18日) <安愚楽牧場>4200億円集金のヤミ 解明求める声 全国の約7万3000人から集めた約4200億円が返されないままになっている安愚楽(あぐら)牧場に18日、ついに強制捜査が入った。「返金できないと分かっていて誘ったのか」「旧経営陣はせめて真相を語ってほしい」。出資者からは、警視庁の実態解明に期待する声が相次いだ。 【海江田万里氏も「広告塔」だった】 埼玉県の50代の男性が投資を始めたのは2011年7月。同牧場の経営が大きく傾いていた時期だった。経済誌の広告が目に留まり、100万円のコースの契約を結んだのは同月24日。その翌日、「なるべく早く振り込んでくれ」と女性の声で督促の電話があった。「月末が土日だからかな」。特段不審には思わず、26日には100万円を振り込んだ。「何だこれ」。8月2日、新聞で安愚楽牧場がオーナーへの支払いを停止したという記事を見た。すぐにクーリングオフの申し出を郵送したが「対応できない」と応じてもらえなかった。結局、100万円は今も戻ってこない。男性は新潟の農家出身。3歳の時、父親が病気で寝たきりとなり、農業と工事現場で家計を支える母を幼少の頃から手伝った。経理関係の仕事に就いてがむしゃらに働き、少しずつ預金を蓄えた。「自分が育った農業に投資できるような商品はないだろうか」。そう考えて投資したのが安愚楽牧場だったという。男性は「生き物をネタに人をだます行為は許せない。農業の現場で頑張っている生産者への冒とくでしかない」と強調した。
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2013,06,04, Tuesday
*1のように、みんなの党や産業競争力会議が、「農業の競争力強化のためには、農業への株式会社参入自由化が必要」と言っているが、これは農業を知らない経済産業省系の人の「えいやっ」という政策で、私は、農業への株式会社参入は大きなリスクを含んでいると思っている。その理由は、例えば、その農業地帯を開発したいと思う不動産会社の子会社がまず農地として購入し、しばらく農業経営をした後に、農業ではやっていけないとして広い面積で耕作放棄し、定年まじかの社長が引責辞任して、住宅地としての開発を始めるというような不正を防ぐことが難しいからだ。そのため、私は、農林水産省の「株式会社には農地はリースしかしない」という規制は妥当で、誰でもいいから新しい担い手さえ入れれば、農業問題が解決するというものではないと思っている。
また、*2では、担い手がみつからないと書かれているが、ここで言う担い手は、(頭の固いことに)若い男性個人のみを指しているのではないだろうか。老若男女合わせて、パートナーシップ(貢献に応じて、正確に利益を配分する)による農業経営を行ったり、女性の担い手がいたりしてもよい筈である。「女性を担い手として認める」という当然のことをすれば、現在、兼業農家に分類されている農家で、担い手のいる専業農家に分類される農家は多いだろう。 なお、TPPも経済産業省系の政策で、損失あって利益なしであるため、困ったものだ。 そして、脱原発と電力自由化を進め、再生可能エネルギーによる発電割合を増やすというのは賛成だが、これも経済産業省の息がかかってか、目標が低く抑えられている。しかし、このブログの2013年6月3日に掲載した写真のように、日本には、その気になれば、2030年には、再生可能エネルギーによる発電割合を80%にしつつ利益率を上げることさえ可能なツールが揃っているのである。 *1:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20130601&ng=DGKDASFS3104J_R30C13A5PP8000 (日経新聞 2013.6.1) 企業の農業参入自由化など盛る みんな参院選公約案 みんなの党は参院選公約で、農業の競争力を強化するため株式会社参入を原則自由化し、株式会社の農地所有を認める方針を打ち出す。環太平洋経済連携協定(TPP)の推進を明記。脱原発と電力自由化を進め、再生可能エネルギーによる発電割合を2030年に30%、50年に80%にする目標を設定する。 *2:http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=21345 (日本農業新聞 2013/6/3) 複数集落含む広範囲も 人・農地プラン作成単位 担い手確保に対応 人・農地プランの作成単位を見直し、複数集落を含めた広範囲にする動きが増えてきた。1集落に限ると担い手が見付からない場合があるためだ。4月末現在、プラン作成予定数は1万7339。2012年度は2万を超えていた時期もあったが、一部地域がプラン作成の範囲を拡大したことなどが影響し、数そのものは減った。農水省は担い手が確保できるよう、必要に応じて範囲の拡大を促している。4月末現在、7636のプランが出来上がっている。前月から63増えて、作成率は44%となった。農水省は12年度からプラン作成を推進しており、13年度中の作成を目指す。プランは、農家らの話し合いに基づき、農地の受け手や出し手を決めて集積の計画を立てる。農水省は「プランの範囲が小さ過ぎると高齢農家が多くなり、農地の受け手を確保することが難しい場合もある」(経営政策課)と指摘。担い手が見付からないことが原因でプラン作成が難航している地域には、複数の集落でまとまるなど範囲の拡大も提案している。プラン作成に向けて範囲を拡大する市町村が出てきため、作成予定数は減少傾向。12年10月末の2万1129をピークに減り続け、今年の2月末~3月末に1920減った。その後もさらに142減り、4月末は1万7339になった。
| 農林漁業::2013.6~2014.1 | 10:56 AM | comments (x) | trackback (x) |
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2013,04,27, Saturday
*1の呼子港に係留されたイカ釣り漁船 *2より *3より 私が、衆議院議員をしていた2005~2009年の間にも、農業(施設園芸)と漁業が燃油の高騰で廃業寸前になったということで、燃油に補助をつけたことがある。しかし、第一回目は仕方がないとしても、何度も同じことにならないよう、工夫して省エネ化、クリーンエネルギー化しておいてもらいたかったというのが、*1の記事を見た時の私の本音だ。そして、これは、他のどの産業でもやっていることである。 そのため、前回も、①船をハイブリッドにしたらどうか ②水素燃料にしたらどうか 等々、私は、船に関する提案をしたが、その頃は漁船にまだそういうものがなく、漁業者には漁船を交換する余力も残っていないなどのネックがあった。また、イカ釣り船の明かりもLED電球にしたらどうかと思う。そのため、*1を見て、私が思ったことは、まだ改善されていないのかということだった。 川口さんは、イカで工夫して新製品をいろいろと出して来られた方だが、一斉休漁は連休とは関係のない日にした方が、せっかく漁業の6次産業化で協力してくれている古賀さんに苦労をかけずにすんだのにと、私は思っている。*2のように、連休前という稼ぎ時に一斉休漁されても、古賀さんの料理店は、何とかイカ料理を出し続けておられるが、一斉休漁の報道で、売り上げが落ちるだろう。「風が吹けば桶屋が儲かる」式に、いろいろなところに波及するのが経済なのである。 しかし、A重油を使うと港の水を汚し、かつ、原油価格で一喜一憂しなければならない。そのため、*3のように、漁船も、早く省エネ化やクリーンエネルギー化して、燃料費を節約するように進歩すべきだ。そして、わが国の健康によいたんぱく質の自給率を上げている漁業者がやりやすいように、これには、国、造船会社、銀行、リース会社なども協力してもらいたい。 *1: http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20130426-OYT1T01416.htm (読売新聞 2013年4月26日) 燃料高騰に悩むイカ釣り漁船、支援求め一斉休漁 円安の進行による燃油代の高騰に苦しむ全国のイカ釣り漁船が26日、一斉に休漁に入った。イカの生き作りで有名な佐賀県唐津市の呼子(よぶこ)漁港では、日が暮れても漁船がずらりと並んだまま。県内のイカ釣り漁業者団体の川口安教(やすのり)会長(53)は「燃油代高騰で漁師の生活はますます切迫し、もはや死活問題だ」と訴えた。27日までの一斉休漁には、漁が最盛期を迎えた西日本を中心に約1500隻が参加するという。水産庁によると、燃油代は今年4月時点で1キロ・リットルあたり9万6600円で、円安が進む政権交代前の昨年11月時点より1万円以上高いという。国は高騰分を穴埋めする基金を作っているが、漁業団体は一層の支援を求めている。 *2: http://www.saga-s.co.jp/news/saga.0.2444175.article.html (佐賀新聞 2013年4月27日) イカあります、安心して 呼子・唐津の料理店 全国いか釣漁業協議会の要請を受け、唐津・玄海地区のイカ釣り漁業者は26日、一斉休漁に入った。イカの町で知られる呼子などで操業する200隻が終日港に停泊し、27日まで燃油価格高騰に「沈黙の抗議」を続ける。イカ料理店などは一年で最もにぎわう大型連休を控え、事前に多めに仕入れて対応。休漁の影響はない見通しで、関係者は「安心して足を運んで」と呼び掛ける。一斉休漁の計画が発表された23日以降、呼子の料理店や旅館には予約客や旅行会社などから問い合わせが相次いだ。24日までに30件を超えた店もあり、中には「イカがなければ、キャンセルしたい」という電話もあった。唐津上場商工会によると、呼子や近隣の料理店、旅館では今週末分のイカはほぼ確保できているという。同商工会会長で料理店を営む古賀和裕さん(57)は「休漁は2日間だけ。28日からは通常通り漁に出るので、しけがない限り、大型連休後半も問題ない」と話す。2008年の一斉休漁の時には「イカ不足」の風評が広がり、客足が遠のいた。「観光客の目的はイカ。足りないと誤解されれば、呼子は観光の目的地から外れる」と古賀さん。同業者らでいけすに泳ぐイカをフェイスブックなどに掲載し、「生き作りあります。安心して来店して」とPRしている。一方、漁船の燃料に使うA重油価格は23日現在、推定で1キロリットル当たり9万2400円。半年で1万円以上値上がりした。呼子は活魚業者や飲食店と直接取引する漁業者が多く、イカの相場は1キロ2300~2500円という。休漁した呼子の漁業者(51)は「昨日捕れたイカは5・5キロ。これでは油代の半分にもならないが、買い手がいてこその漁師。多くの客が来るこの時期の休漁はつらい」と複雑な心境をのぞかせた。 *3:http://hon-ga-suki.at.webry.info/200805/article_20.html (日本の未来を語りたい 2006年11月22日) 世界初船に水素動力 環境配慮、“廃棄物”を利用 水素を燃焼させた動力を使った船舶水素エンジンの開発を、山口県下関市の水産大学校と同市内の船舶会社などでつくる産学連携組織「水素エンジン船舶研究会」(代表幹事=松浦福太・日本海洋産業社長)が取り組んでいる。水素エンジンは自動車では実用化されているが、船舶では世界初の試み。水素エンジンは燃焼後、水が排出されるため燃料エンジンに比べて、環境に優しいなど利点も多く、海外からも注目されている。同研究会は21日、水素エンジンを付けた船の公開試験をした。同研究会は、燃料の水素は、同県周南市や宇部市などの化学工場がカセイソーダを精製する際に大量に排出される水素の供給を視野に入れている。各工場が酸素と燃焼させて処理している“廃棄物”の有効利用も可能としている。開発中のエンジンは船外型(10馬力)と船内型(20馬力)の2種類。同研究会は2004年4月に発足、2年がかりで開発した。公開試験には、アイスランドの政府関係者や韓国、台湾からエネルギー事業関係者ら約100人が立ち会った。船外型は軽やかなエンジン音を響かせながら海面に滑りだしたが、船内型は構造上の問題から航行できなかった。開発を手掛ける同大の江副覚教授(水産・海洋機械工学)によると、実用化に向けた課題として、水素の安全性の確保やエンジン性能などが挙げられるという。江副教授は「燃料確保などの課題を克服して研究を重ねたい」と話している。
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2013,02,24, Sunday
*1より アジの群れ サバの群れ 2005年~2009年の衆議院議員時代、社会調査のつもりで挨拶廻りを兼ねて地元佐賀三区を廻り、漁業関係者の意見もかなり聞いたが、その中に、①漁獲高が減った ②燃油の価格が高く、漁に出ても収入が費用をカバーできないことが多い ③次世代がいない などがあった。 ③の「次世代がいない」というのは、漁業が他の仕事より儲かる産業になれば解決するものであろう。また、②については、自動車と同様、漁船を早く電力化もしくはハイブリッド化して重油で動くシステムを変え、省エネ化すれば解決できるはずだが、漁船の世代交代は進まず、漁業者に対する国からの援助も、実際に漁業者の手が届くには程遠かった。 そして、これが核心だが、①については、日本では、アジ・サバは幼魚まで捕獲しないように、網目の大きな網を使うことに規制し、資源管理をした。また、ウニ・鯛・ヒラメなどは稚魚・稚貝の放流、クルマエビ・マグロは養殖というように、いろいろな手段を講じているのであり、これは、今後とも推進すべきである。 そのため、中国の漁船団が日本側の境界線にへばりつくように、“虎網漁船”で乱獲する気持ちはわかるが、とても許せるものではない。そして、これは、日本の漁業にとっては魚介類やその加工品を中国へ輸出するチャンスでもあるため、手段を講ずるべきである。中国には13億人の胃袋があり必死であるため、水産庁が監視を強めるだけでは力不足だろう。外交上、もう一度、しっかりと中国と日本の境界線を確認し、その日本側で漁をしてよい船は、日本国籍のものか、(高い)入漁料をとって「許可済」のマークを与えたもののみとすべきである。 さらに、速やかに国際環境基準を作り、その中に海洋の環境保全を明記して、海洋の生物資源は世界が同一の基準で保護・管理するためのコンセンサスを作るべきだ。 *1:http://www.nhk.or.jp/nw9/marugoto/2013/02/0211.html (NHK 2013年2月11日) 漁業水域の“境界線”激化する攻防 大越 「中国の海洋進出が盛んになる中で、緊張が増す東シナ海。実は、自衛隊や海上保安庁以外にも、日々、中国からの圧力を感じている人たちがいます。漁業に従事する人たちです。」 井上 「日中の間には、水産資源をめぐるもうひとつの境界があります。付近では、中国漁船の集団が大量に操業し、日本の漁業にとっての脅威となっています。」 東シナ海に群がる中国漁船団 先週末、NHKが空から撮影した東シナ海の映像です。「中国漁船が強力なライトを使って海を照らしています。」サバやアジの格好の漁場となる東シナ海。 水産庁担当者 「このかたまりが全部そうです。」 この漁場に群がる300隻を超える中国の大型漁船。水産資源をめぐる攻防が激化しています。 核心:もう1つの“境界”最前線 宇宙から夜の光を撮影した衛星写真です。東シナ海でひときわ明るい光の塊は、中国漁船の集団です。東シナ海の漁場は、日本と中国の主張の違いで境界線が確定していません。そのため、両国が共同で漁をする水域が設けられています。その日本側の境界線にへばりつくように中国の漁船団が。乱獲で魚が減った中国近海から日本側の水域に近づいてきているとみられます。(中略)水産庁が今、特に監視を強めているのが、“虎網漁船”と呼ばれる中国の最新漁船です。 水産庁 漁業取締船 白鴎丸 橋本高明船長 「あのアンカー打って動きがないのが『虎網漁船』だと思う。」 強力な明かりで一気に魚を集めます。資源保護を優先する日本では認められていません。さらに、巨大な網で根こそぎ魚を取り尽くしていきます。漁業者が減り続ける日本。中国側の勢いの前に、共同の水域は中国漁船に事実上独占されている状態です。 第二十八野村丸 吉本洋一郎漁労長 「彼らが密集している海域にはもう入らない。ルールも何もない。めちゃくちゃ、やり方が。結局は泣き寝入りだ。」 漁業の衰退は、境界線を越える外国の船をみつけることも難しくしています。 漁船には、水産庁や海上保安庁に見慣れない船を通報する役目もあります。 井上 「日本ではここ10年で漁業に従事する人は3割減っているということです。」 大越 「現場が懸命に奮闘しても、監視機能の低下が避けらないのが実態です。脅威にさらされる現場がここにもあります。」
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2013,02,23, Saturday
サトウキビ畑 梅畑 レタス畑 (1)農業経営合理化のため、農業会計の導入が必要 *3のように、日本には農業に関する会計基準がなく、農業者は所得税申告目的の経理をしているのみである。しかし、これでは、経営に資する内部管理、融資のための基礎資料、出資者・貢献者に対する正確な利益配分ができない。一方、国際会計基準には、第41号に農業に関する基準が定められており、他国は、これに近い会計基準を使っている(こう言っては失礼だが、スリランカでも使っている)。今後、農業を生産性の高い儲かる産業にするためには、まず、正確な収益と費用の計算を行い、正確なコスト管理と利益配分を可能にしなければならない。そのため、国際会計基準41号を参考にして、わが国に農業会計基準を導入するのは、まったなしである。 (2)農業のコスト低減のためには、規模の拡大とエネルギーの転換などが必要 ①規模の拡大 *1に書かれているように、耕地の規模を拡大して機械化することによって、農業のコスト低減が可能であるため、2005年以降、集落営農や農業法人化が推奨されてきた。このほかにも、パートナーシップ(任意組合)によって複数の農家が集まり、それぞれの貢献度に応じて正確に収益を分配しながら、規模拡大を達成する方法もある。私は、複数の農家が集まって一つの企業体として行動するには、まずはパートナーシップ(任意組合)の方が入りやすいと思う。 ②エネルギーの転換など *2のように、現在では、ビニールハウス等で温度や日照時間を管理して、いつでも作物を出荷できるようにする農業も盛んだ。そして、私が衆議院議員の時に、「燃油の値段が上がって困った」等の陳情が毎年のようになされてきたが、それは、これまで重油で温めていたため、原油の値段に左右されていたからだ。そのため、ここに、地中熱や国産の安価な再生可能エネルギーを使ってしっかりと温度管理を行えば、かなりのコスト低減が見込まれる。そのほか、飼料や有機肥料などに関するコスト低減策もあり、いかに気候を活かし、国産の安いものを使って、質を落とさずにコスト低減を行うかが、今後の農業の鍵となる。 なお、これらについては、製造業やサービス業で監査をしてきた公認会計士やコンサルティング会社に、世界の事例をしっかりリサーチさせて方針案を作らせる方法が、安上がりで失敗が少ないだろう。 注:コスト低減とは、大きなパラダイム変化によってダイナミックにコストを減らすことであり、コスト削減とは、既存のパラダイムの中で改善し続けることによってコストを減らすことである。 北海道のじゃがいも畑 養豚場 養鶏場 *1:http://www.saga-s.co.jp/news/saga.0.2390921.article.html (佐賀新聞 2013年2月2日)税制面でメリット 集落営農法人化で研修会 集落営農の法人化をテーマにした研修会が31日、佐賀市で開かれた。農業経営コンサルタントで税理士の森剛一氏が講演し、法人化を早く進めたほうが税制面で大きなメリットを受けられると解説した。森氏は、任意組合の集落営農は個人に所得税が課税されるため内部留保が難しく、長く続ければ続けるほど法人化は困難になると指摘。法人化の一般的な形態である農事組合法人は消費税の還付を受けられるなど税制上のメリットが大きいことから、「集落営農は早く法人化したほうが得策」と話した。ただ、農事組合法人は事業内容が農業関連に限定され、総会議決が1人1票制で迅速な意思決定が難しいなどの問題点もあり、森氏は「事業内容に制約のない株式会社への組織変更も検討したほうがいい」とアドバイスした。研修会は県やJAなどでつくる佐城地域担い手育成支援チームが主催し、集落営農のリーダーら約200人が参加した。 *2:http://www.nishinippon.co.jp/nnp/item/349300 (西日本新聞 2013年2月21日) 燃料に間伐材 ビニールハウスで重油と併用 福岡県は、新年度から園芸農家のビニールハウスを、木質チップボイラーと既存の重油暖房機を併用して温度管理する「ハイブリッド暖房システム」の実証実験を始める。使い道の少ない間伐材を燃料として利用し、高騰する重油の使用量を減らしコスト削減を図る。担当者は「一石二鳥の取り組み。効果を実証し、福岡方式として定着させて農家の経営安定につなげたい」としている。県によると、冬場にハウスの暖房に使うA重油の1リットル当たりの価格は、2002年の40円台から上昇を続け、昨年は89円にまで高騰し、農家の経営を圧迫している。一方、成長の途中で伐採される間伐材は、建築木材に適さず需要が少ない。山から運び出すコストも高く、利用が進んでいないのが現状だ。県の推計では、間伐材の9割以上が未利用のまま山に放置されているという。 実証実験は、複数の園芸農家が集まる1ヘクタール規模の園芸団地で行う。木質チップボイラーと複数のハウスを配管でつなぎ、加熱した水を各ハウス内に設けた熱交換器に送り、温風にして室内を温める。一定の室温まではボイラーで上昇させ、これまで各ハウス内に設置していた重油暖房機は補助的に使う。これにより重油使用量を75%程度削減できると見込んでいる。間伐材は、建築木材などに使う木と一緒に山から運ぶことで輸送コストを圧縮し、団地周辺の木質チップ工場で加工する。県は、ボイラー費用など関連事業費約6千万円を13年度一般会計当初予算案に計上した。暖房が必要になる11月の運用開始を目指し、実証実験を行う園芸団地1カ所を選ぶ。15年度までコスト削減効果を検証して実用化のめどを付ける。 *3:http://muses.muses.tottori-u.ac.jp/dept/E/paper/bachelor/policy/nagatoshi.pdf#search='%E6%97%A5%E6%9C%AC%E3%81%AE%E8%BE%B2%E6%A5%AD%E4%BC%9A%E8%A8%88%E5%9F%BA%E6%BA%96' (食料政策学研究室 永利 和裕) 国際会計基準41号「農業」が農業会計に及ぼす影響 Ⅰ.緒論 近年、我が国では経済活動の国際化が急速に進み、その結果として、経済活動を支える会計領域も国際化せざるを得ない状況にある。すなわち、経済活動を国際的に展開するためには、世界的に認められた特定の基準に従って会計処理を行って会計情報が作成されることが必要とされている。このような会計の世界基準として国際会計基準(以下、IASという)が作成された。現在、日本の会計基準はこのIASを徐々に組み込んでいる。このIASの中に、農業経営活動の会計処理に関する会計基準を意味するIAS41号「農業」(以下、IAS41という)がある。早晩、この基準が日本の農業会計に導入されることは明らかである。そこで、本研究では、IAS41が、将来的に日本の会計基準に導入されることを想定して、このIAS41が日本の農業会計にどのような影響を及ぼすかを理論的に明らかにして、今後の農業会計のあり方について検討していく。 Ⅱ.研究・分析方法及び参考文献・資料 まず第1に、IASの必要性と日本に導入されるようになった背景を明らかにする。第2に、IAS41を含め、IASについて詳しく述べる。第3に、IASが日本の会計制度に及ぼす影響について検討する。第4に、IAS41を日本の農業会計に導入する場合の課題について検討する。そして、最終的には、今後の農業会計はどうあるべきかを検討していく。 【主な参考文献・資料】 菊地 泰次『農業会計学』明文書房 1986年 三輪 豊明『国際会計基準入門の入門』PHP研究所 2003年 工藤 賢資『複式農業簿記入門』富民協会 1999年 Ⅲ.研究結果とその考察 以下では、上述した研究方法によって、明らかにした4点について述べたい。 まず第1に、IASの必要性と日本に導入される背景である。その1として、その必要性であるが、国際的な経済活動を行うためには、世界各国の誰(投資家や銀行などの利害関係者)が見ても明らかな会計情報を提示することが必要となる。これがIASの必要性である。その2として、日本に導入される背景であるが、日本においても国際的に経済活動を行う企業、すなわち多国籍企業が増加したことと、日本の会計基準は国際的に通用する基準ではないと指摘されたことがある。 第2に、IASとIAS41についてである。その1としてIASであるが、これは1973年に設立された国際会計基準委員会(IASC)によって作成されたものである。なお、IASは数次の改訂を経て、35に及ぶ基準から成っている。その2としてIAS41であるが、これは①農業活動における会計処理、②関連する財務諸表の表示、③開示について定めたものであり、35に及ぶIASの1つである。この基準の適用の範囲は生物資産、農産物、政府補助金の3つである。また、生物資産、農産物の測定方法は、「生物資産は、当初認識時及び貸借対照表日において、その見積販売費用控除後の公正価値で測定し、農産物は、収穫時点において、その見積販売費用控除後の公正価値で測定しなければならない」とされている。 第3に、IASが日本の会計制度に及ぼす影響についてである。日本の会計制度は商法、証券取引法、法人税法、の3つの法律から成立しており、それぞれの法律を改廃する際には、企業会計審議会により作成された「企業会計原則」を考慮しなければならないとされている。しかし、企業会計審議会により、IASを考慮した新たな会計基準が発表され、今後、日本の会計制度は、IASを中心としたものに移行していくものと考えられている。 第4に、IAS41を日本の農業会計に導入する場合の課題であるが、以下の2つがある。1つ目の課題であるが、日本の農業会計では、農産物を含めて資産の評価は、取得原価主義を採用している。これに対してIAS41を導入すると、見積販売時費用控除後の公正価値で評価されることになり、原則的に活発な市場で成立した市場価格に基づいて評価が行われることになる。課題は、活発な市場が存在しない場合、いかに公正価値を決定するかである。数種類の測定方法がガイドラインとしてあげられているが、測定の信頼性を高めるには、さらに具体的なガイドラインが必要である。2つ目の課題であるが、IAS41では、生物資産は公正価値で評価するが、公正価値の変動分を損益計算書に計上すれば、そこでは未実現の利益が計上される。課題は、このような未実現利益は明記し、他の利益と区分することである。 Ⅳ.結論 IAS41を日本の農業会計に導入するには、上述した2つの課題をいかに解決するかが重要である。また、「企業会計原則」に相当する「農業会計原則」確立も必要であろう。
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2013,02,19, Tuesday
佐賀平野の麦秋 阿蘇山の放牧 アルプス(長野県)の葡萄畑 TPPへの参加を強く主張しているのは、経済産業省及び都市在住者・都市部選出の国会議員が多い。一方、TPP参加に反対しているのは、農業関係者・地方選出の国会議員・農林水産省が多く、これには理由がある。30年以上、東京で公認会計士として製造業やサービス業の監査・税務分野で働き、その後、ふるさと佐賀県を地元として衆議院議員をやった私には、その感覚の違いが出る理由がわかる。 東京などの都市部で製造業やサービス業のサラリーマンとして働いて生活していると、農業以外の産業は補助金をもらっているところが少ないため、農業は補助金(税金から出ている)や関税(輸入障壁となり食料品価格を高止まりさせている)で護っているにも関わらず、いつまでたっても改革も問題解決も進まず、何を甘えたことを言っているのかと感じる。そして、都市部では、食料品はすべて買わなければならないので、「輸入品でもいいから安く買えるシステムにして欲しい」と思うのだ。そのため、TPPの話が出れば、賛成するわけである。 しかし、製造業は、今後、新興国が安い労働力を武器に発展させてくるものであり、日本においては、製造業のために農業を犠牲にすべき時代は終わった。また、国会議員として地元を廻ると、農業補助金も、実際には製造業などの他産業に吸い取られ、現代でも「農家は活かさず殺さず」という方針が貫かれているように見える。しかし、本当は今、地球人口が過剰になる近未来に合わせて、わが国は、食料生産を重視し、食料自給率を向上させ、むしろ食料輸出国になることが重要であり、そのチャンスでもある。そして、護るべき農産物は、当然、米だけではない。 なお、農林漁業に生産性向上の改革をもたらし、環境への農林漁業の役割を重視することはTPPなどとは関係なく、今までも重要だったのである。そして、TPPに参入すれば改革ができるというものではないどころか、今までの改革努力もぶち壊すだろう。そのため、農林漁業が自動車並に世界競争に勝てるようになるまでは、農林漁業を保護・育成しなければ、日本の国益にはならないのであって、オーストラリア、ニュージーランド、アメリカ、南アメリカ諸国にも勝てるほどの強い農業もなくTPPに参加すれば、わが国の食料生産はますます減り、全体として輸入額ばかりが増える。それだからこそ、アメリカをはじめとする他のTPP参加国は、日本のTPP参加を歓迎しているのだ。つまり、国益は逆だということを忘れてはならない。そのため、日本は、地道に、1国毎のFTAを進めるのがよいと思う。 ここで、「農林漁業が自動車並に世界競争に勝てるようになるまでは」などとは非常識だと考えた方もおられると思うが、私は、日本が再生可能エネルギーによる安価なエネルギーを使いこなし、地中熱を利用し、機械化・自動化を行い、その他の先端技術も農業に投入して6次産業化していけば、10年か15年後に多額の農業製品(食品)輸出国になるのは可能だと思っている。 日本の菜の花畑 日本の大豆畑 日本のみかん畑 *1:http://www.hokkaido-np.co.jp/news/editorial/441600.html (北海道新聞社説 2013年2月15日) TPP交渉 許されない見切り発車 環太平洋連携協定(TPP)をめぐり、自民党の調査会が「聖域なき関税撤廃を前提とする限り、交渉参加に反対する」との基本方針をまとめ、きのう安倍晋三首相に申し入れた。基本方針に盛り込まれた内容は、自民党が昨年末の衆院選で掲げた政権公約を踏襲したものだ。安倍首相が順守するのは当然である。首相は今月下旬に予定されるオバマ米大統領との首脳会談で、例外品目の可能性を探る意向だが、TPPの是非は世論を二分したままだ。見切り発車は許されない。政権与党として公約の重みをあらためて受け止めるべきだ。TPPは全品目の関税撤廃が原則である。交渉参加国は米国やオーストラリアなど11カ国で、各国の利害が絡んで交渉は遅れ気味だ。日本が交渉に参加した場合、特に農業に及ぼす懸念は払拭(ふっしょく)されていない。北海道をはじめ地域経済に与える影響は甚大だ。 交渉参加に向けて事前協議入りを決めた民主党に比べ、自民党は慎重な姿勢を示していたはずである。昨年3月、国民の理解を得るための情報が決定的に不足し、政府の改善努力も全く見られないとして、交渉参加の判断基準を打ち出した。それが基本方針にも明記された「国民皆保険制度を守る」「食の安全安心基準を守る」などの6項目だ。政権公約として衆院選に臨んだ経緯をよもや忘れたわけではあるまい。なかでも自民党道連は重点政策としてTPP交渉を「断固阻止する」と訴え、反対する姿勢がより鮮明だった。道内選出議員には責任ある対応が求められる。 TPPを主導する米国は市場開放に対して強硬だ。とりわけ牛肉、自動車、保険の3分野について日本市場の閉鎖性を批判してきた。交渉参加国は全品目を自由化対象とする方針で一致しており、聖域が認められる見通しは立っていない。オバマ大統領との会談に臨む安倍首相の姿勢も気がかりだ。日米同盟の再構築と経済再生を当面の目標に掲げており、米国と国内経済界から要望が強いTPPの交渉参加に含みを残しているからだ。輸出と雇用の拡大を追求する米国の利益が日本の国益と軌を一にするとは言い切れない。米国への安易な追随は避けなければならない。政府は情報開示を徹底し、具体的な利点や対応策をわかりやすく提示する必要がある。なにより国民的論議を深めていくことが不可欠だ。自民党内の賛否も分かれ、意見集約は難航する気配だ。安倍首相は政権公約を踏まえて指導力を発揮すべきである。 *2:http://mainichi.jp/select/news/20130219k0000e010167000c.html (毎日新聞 2013年2月19日 ) 安倍首相:TPP 基本方針を踏まえ交渉参加探る考え示唆 安倍晋三首相は19日午前の参院予算委員会で、環太平洋パートナーシップ協定(TPP)への交渉参加をめぐり自民党外交・経済連携調査会がまとめた基本方針について「重く受け止めている。頭に入れないといけない」と強調した。そのうえで「これまでの協議内容、TPP参加の影響を精査・分析して国益にかなう最善の道を求める」と述べ、基本方針を踏まえながら交渉参加の道を探る考えを示唆した。自民党調査会が13日にまとめた基本方針は「聖域なき関税撤廃を前提にする限り、TPP交渉参加に反対する」など6項目からなり、TPP慎重派の山田俊男氏(自民)が「6項目は選挙公約だ」とただした。首相は山田氏が農業保護を訴えたのに対し「若い人が参入する努力をしないといけない」と規制緩和の必要性を強調した。首相は18日の政府の産業競争力会議で農業分野について「大胆な対策を講じたい」と述べている。
| 農林漁業::2013.6~2014.1 | 11:02 AM | comments (x) | trackback (x) |
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2011,11,11, Friday
TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)は、加盟国間で工業品、農業品を含む全品目の関税を撤廃し、
政府調達(国や自治体による公共事業や物品・サービスの購入等)、知的財産権、労働規制、金融、 医療サービスなどにおいてすべての非関税障壁を撤廃し自由化する協定のことである。2006年5月に シンガポール、ブルネイ、チリ、ニュージーランドの4か国が、域外への経済的影響力を向上させること を戦略的な目的として発効して運用しており、現在は、これに加えて、オーストラリア、ペルー、アメリ カ、ベトナム、マレーシアの5か国が参加を表明している。そして、日本政府が、バスに乗り遅れまいと、 あわててTPPへの参加を検討すると表明したのが2010年11月の管内閣の閣議決定である。日本を 加えた10か国は、小さな国が多いので、10か国のTPPでは、主に日本とアメリカ・オーストラリア・ニュ ージーランドとの自由貿易協定が重要である。そしてTPPという協定は、すべての分野で関税をゼロに し、例外規定は設けないというものである。 アメリカ・オーストラリア・ニュージーランドとの間で、すべての分野が関税ゼロになると、どういうことが 起こるかというと、農水省が、下の理由で、TPP参加により、農産物の生産額が4・1兆円減少し、食料 自給率が14%に低下し、雇用が340万人減少するという試算を出している。 ①「大規模化」しても、米国は日本の平均耕地面積の100倍、豪州は1500倍であり、とても競争できな い。 ②安い輸入農産物との差額を補てんしたとしても、それは最低限の所得保障であるため、食料自給率が 下がり、それでも、差額補填に必要な額は2兆5千億円になる。 私は、これに加え、農産物の安全規制(アメリカなどから非関税障壁と言われる)が緩められる結果、長 くは説明しないが、これまで我が国が守ってきた食料の安全・安心のレベルも下がると断言する。これか ら我が国で増加すると考えられるBSEの検査が、月齢30か月未満の牛に対して廃止されようとしている のは、一例である。 (「チェルノブイリ原発事故と狂牛病の奇妙な関係」 http://tabimag.com/blog/archives/2091 参照) 一方、TPPに賛成しているのは、経済産業省系の勢力であり、トヨタ社長、ホンダ社長、経団連などが、 強く賛成の意思を表しているが、自動車など経済産業省系の国際企業は、すでに貿易ではなく、対外 投資が進んで現地生産をしているため、TPPが成立すれば、現地から日本への輸入関税が0になって 儲かることはあっても(これは、我が国の雇用を失うということ)、日本からの輸出増加では、それほど 利益を受けると思えない。 つまり、TPP推進側の人は、農業や技術の維持・進歩に疎い人たちであり、単純に、「自由貿易を行い、 市場における神の見えざる手に任せていさえすればうまくいく」「地球人口の量と質の変化で、歴史の 必然として、いつまでも比較優位ではいられない現在の輸出産業を、これから貴重になる食料を生産 する農林水産業を犠牲にしてでも、60年1日のやり方で守る」としているのである。これは、経済産業省 の主導であろう。 しかし、この政策は、食糧自給率の向上による安全保障、環境(地球の収容可能人口や環境破壊に対 する回復力の限界まで含む)、地域政策、技術の維持・進歩など、経済学の市場原理が与件として考慮 していない事柄に関し、何の回答も準備していないので、私は反対である。 そして、どこに行くバスかも確認せずに、単にバスに乗り遅れてはならないとする強迫観念を押しつけて 疾走するさまは、我が国の国益にならない上、破壊されたものは元には戻らないため、浅薄すぎる。 それにもかかわらず、国会での議論も国民の合意もないまま、APECで外国に宣言してきたから首相の リーダーシップがあるなどと、言えるわけがないではないか。私は、相手国によって条件を変えることの できる、EPA、FTAを、本当に吟味しながら、2国間から地道に交渉してやっていくべきだと思う。 報道も、「野田佳彦首相は10日、政府・民主三役会議でTPP交渉参加問題をめぐる政府の方針決定 を11日に先送りすることを明らかにした。交渉参加する意向に変わりはないが、民主党内の反対・慎 重論に配慮した。」「藤村修官房長官は10日の政府・民主三役会議後の記者会見で、首相の方針に 変化はないと思うと述べた。」などとしているが、国家100年の計を左右する問題を、子ども騙しのガス 抜きで収まるなどと考えている人は、真剣に国益を考えておらず、有害無益であるから、マスゴミも含 めて、第一線から退いてもらいたい。 そもそも、田んぼがなくなれば、どじょう族の住むところはなくなるが、それからでは、遅いのである。
| 農林漁業::2013.6~2014.1 | 09:44 AM | comments (x) | trackback (x) |
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