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2016,01,26, Tuesday
*1-1より <辺野古の工事計画と工事> <東シナ海周辺で増強を予定されている自衛隊> 石垣島 (1)宜野湾市長選での佐喜真氏の再選について 宜野湾市長選での佐喜真氏の再選について、沖縄タイムスは、*1-1のように、宜野湾市長選挙における出口調査により、「宜野湾市の民意は、普天間飛行場の速やかな撤去であって、辺野古を造成して新基地を作って移設することではない」と分析している。 また、*1-2のように、宜野湾市長選挙を前に琉球新報社が2016年1月に実施した世論調査では、「県外移設」「国外移設」「無条件の閉鎖撤去」が計74.4%に達し、国が進める「辺野古移設」を支持する意見は、12.9%しかないそうだ。この結果からも、宜野湾市長選での佐喜真氏の再選により、辺野古への移設が賛同を得たという曲解は許されない。 沖縄では、*1-3のように、一昨年の名護市長選以来、知事選、衆院選と普天間飛行場の名護市辺野古への移設反対を訴えた候補が勝ってきたが、今回、自民党・公明党の応援で当選した佐喜真市長は、宜野湾市長選挙で「普天間の一日も早い閉鎖・撤去」は主張したが、辺野古移設への賛否は明言しておらず、移設問題を争点化させない戦略をとっていたため、危険な普天間飛行場の閉鎖と撤去のみが宜野湾市民の民意と受け止めるべきである。 しかし、*1-4のように、日経新聞は社説で、「宜野湾市長選で与党が推した現職が勝利したため、安倍政権は同基地の県内移設に向けた作業を加速する方針だ」とし、「普天間移設は2013年に沖縄県の当時の知事が工事に必要な埋め立てを承認した」ということも振りかざしているが、知事が承認できることは知事が撤回できるため、これを争点とした直後の知事選で選ばれた翁長知事の承認取り消しは有効だと考えるのが筋である。そのため、このように歪曲したご都合主義の国の主張を最高裁が認めるようなら、日本国憲法で定められた司法の独立性を信じる人はいなくなる。 (2)政府のこれまでの対応 沖縄県が県を挙げて反対している中で、*2-1のように、防衛省は2015年10月29日に、埋め立てに向けた本体工事に着手し、周辺海域では移設に抗議する人たちのカヌーや警戒に当たる海上保安庁の船などが確認され、シュワブのゲート前でも抗議する多くの県民と警察官がもみ合いになった。 そして、*2-2のように、遅ればせながら一部全国紙も、「埋め立て強行は許されぬ」「民意に耳を傾けよ」と報道している。私も、米国が、在沖海兵隊のグアム移転や、ハワイ、豪州などへの巡回配備で対応を進めており、日本は人権を大切にする民主主義国家である以上、「辺野古移設が唯一の解決策」などという変な固定観念は排除して、日米地位協定と同時に解決できる「第三の道」を考えるべきである。 なお、*2-3のように、辺野古の埋め立ては生態系保護上も欠点が多いため、名護市辺野古の新基地建設など公有水面の埋め立てに使う県外からの土砂や石材の搬入を規制する条例が沖縄県によって制定され、2015年11月1日から施行されている。辺野古の新基地建設で、防衛局は県内外からダンプカー約250万台分に当たる約1644万立方メートルの土砂(岩ズリ)を買い取り、辺野古沿岸部を埋め立てる計画だったそうだが、生態系を含む環境に対して無頓着にも程がある。 (3)米国について 翁長雄志知事が名護市辺野古の新基地建設に伴う沿岸部の埋め立て承認を取り消したことを受けて、*3-2のように、沖縄タイムスと琉球放送(RBC)が、2015年10月16~18日の3日間、電話による緊急世論調査を合同で実施したところ、知事の取り消し判断を「支持する」と答えた人が79.3%に上り、県民の幅広い層が理解を示しているという結果が出たそうだ。 そのような中、*3-1のように、菅官房長官は2015年10月29日、沖縄に駐留する米海兵隊の一部の移転先とする米領グアムを訪問し、グアム選出の米下院議員と会談して埋め立ての本体工事に着手したことを伝え、普天間移設を推進する安倍政権の姿勢を米側にアピールしたそうだが、国内で大きく意見が分かれ、地元では大多数が反対していることについて、先に米国と約束して、「米国と約束したから」という理由をつけて国内で強制することは許されない。 (4)代替案 *4のように、宮古島に陸上自衛隊のミサイル基地候補地があるそうだ。そのほか、尖閣諸島の警備を目的として、上の図のように、奄美大島、石垣島、与那国島等にも自衛隊のミサイル基地や沿岸監視部隊ができるそうで、辺野古に新基地を造った上、これらの離島にも自衛隊を置くのは、悪乗りのやりすぎだ。辺野古の代替案は、人口が少なく、既に滑走路があってあまり工事がいらず、環境に悪影響を与えない離島を一つ探すべきで、環境という沖縄の財産を壊す予算の無駄遣いは許されない。なお、その人口の少ない離島住民のうち望む人には、近くの島や沖縄本島への移住を保障すればよいと考える。 また、尖閣諸島周辺に接近する中国軍にどう対処するかについて、安倍政権は安保法制で(ただし、この安保法制や自民党憲法改正草案を作ったのは安倍首相ではないため、首相が別の人であれば異なる政策になっていたとは思わない)、武装漁民による離島占拠など武力攻撃には至らないが警察力では対応できない「グレーゾーン事態」に対応する法整備は見送ったが、それなら何の為の米軍基地や自衛隊基地なのかわからない。このように、その場限りのちぐはぐな対応で国益を損ねるのは、太平洋戦争勃発時からあまり変わっていないようなのだ。 *1-1:http://www.okinawatimes.co.jp/article.php?id=151185&f=ap (沖縄タイムス 2016年1月25日) 出口調査で浮き彫りになった宜野湾市の民意 ■辺野古移設「反対」57% 「賛成」34% 24日に投開票された宜野湾市長選で沖縄タイムス社と朝日新聞社、琉球朝日放送(QAB)が実施した同日の出口調査で「投票する人を選ぶとき、何を一番重視したか」を聞いたところ、「普天間飛行場の移設問題」が48%で最多となった。米軍普天間飛行場の返還をめぐる問題が最大の関心事だったことが裏付けられた。次いで「候補者の経歴や実績」「経済や福祉政策」がそれぞれ19%となった。普天間問題を重視した人のうち、佐喜真淳氏に投票したのは30%、志村恵一郎氏は70%だった。候補者の経歴・実績と答えた人では佐喜真氏90%、志村氏10%。経済・福祉政策は佐喜真氏71%、志村氏29%となった。普天間飛行場の名護市辺野古への移設については、「賛成」と答えたのが34%、「反対」と答えたのが57%、「無回答」は10%だった。辺野古移設に賛成と答えた人のうち、佐喜真氏に投票したのは93%、志村氏は7%。辺野古移設に反対とした人は、佐喜真氏に24%、志村氏に76%。佐喜真氏は、辺野古移設に反対する人の一部の支持も得た。支持政党は自民党が29%で最も多く、民主党9%、社民党6%、共産党3%、公明党3%の順となった。無党派層と答えたのは41%だった。調査では1263人から回答を得た。 ■投票率68.72% 4.82ポイント増 宜野湾市長選の最終投票率は68・72%(同市選管発表)となり、前回選挙の63・90%を4・82ポイント上回った。米軍普天間飛行場の移設問題をめぐり、安倍政権が推す佐喜真淳氏と、翁長雄志知事をはじめとする「オール沖縄」勢力が支援する志村恵一郎氏が一騎打ちで激しい選挙戦を繰り広げ、関心が高まった。投票当日の有権者数は前回より2600人多い、7万2526人(男性3万4721人、女性3万7805人)。投票者総数は5153人多い、4万9839人だった。期日前投票は前回の2・2倍の1万4256人と過去最多となった。期日前投票が当日有権者数に占める割合は10・3ポイント上昇し19・7%だった。投票者総数に占める割合は14ポイント上昇の28・6%となった。 *1-2:http://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-209783.html (琉球新報社説 2016年1月25日) 佐喜真氏再選 新基地容認ではない 国に「5年以内」閉鎖責任 宜野湾市長選で佐喜真淳氏が再選を果たした。佐喜真氏の1期4年の実績を市民が評価し、今後の市政運営に期待した結果である。ただし佐喜真氏再選で沖縄の民意が米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設容認に変わったわけではない。佐喜真氏は選挙戦で辺野古移設の賛否を明言せず、市民が容認したことにはならないからだ。重視すべきは、佐喜真氏が公約した普天間飛行場の5年以内運用停止を、市民が国に突き付けたことだ。佐喜真氏を支援した安倍政権には5年以内の期限である2019年2月までに運用停止を実現する責任がある。 ●曲解は許されない 安倍晋三首相は市長選を前に「安全保障に関わることは国全体で決めることだ。一地域の選挙で決定するものではない」と述べた。民意をないがしろにする許されない発言だが、翁長県政与党が支援した志村恵一郎氏が落選したことを捉えて、辺野古移設が支持されたとする可能性がある。曲解は許されない。厳に慎むべきだ。宜野湾市長選を前に琉球新報社などが昨年12月末に実施した世論調査で「県外移設」「国外移設」「無条件の閉鎖撤去」は計71・1%に上った。1月調査でもその割合は計74・4%に達した。国が推し進める「辺野古移設」支持は12月調査11・1%、1月調査12・9%でしかない。この結果からしても市民が普天間飛行場の閉鎖と引き換えに、辺野古新基地建設を望んでないことは明らかだ。佐喜真氏は「普天間飛行場の固定化は許さない」と訴えて当選した。選挙結果が示すことは、普天間飛行場によって市民が危険にさらされている状況を、1996年の返還合意後20年も放置する国に対する市民の強い怒りである。佐喜真氏には5年以内運用停止を実現する責任がある。だが、たなざらしにされる可能性は否定できない。中谷元・防衛相は昨年、5年以内運用停止の定義を「飛行機が飛ばないこと」と明言した。菅義偉官房長官が(1)空中給油機能(2)緊急時着陸機能(3)オスプレイの運用機能-の3要件停止だとの見解を示すと、防衛相は「幻想を与えるようなことは言うべきでない」と前言を撤回した。市民が求める運用停止は、飛行機などが飛ばないことである。佐喜真氏も「一日も早い閉鎖、返還を求める」と訴えた。安倍政権が支援したのは佐喜真氏の政策と合致したからだろう。ならば、その実現に全力を尽くすのが筋である。裏切りは許されない。 ●分断策克服を 沖縄は、基地をめぐる対立をうんざりするほど抱え込まされてきた。なぜ沖縄ばかりが市民を分断されねばならないのか。市民の一体感が損なわれれば政策効果が上がらないことは、ロバート・パットナムのソーシャルキャピタル(社会関係資本)をめぐる研究で実証済みだ。沖縄の社会を分断してきた国の罪は大きい。もう分断はたくさんだ。佐喜真氏にはその克服も求めたい。市民の一体感回復へ包容力を持って進んでもらいたい。今、子どもの貧困が可視化されつつある。宜野湾市も例外ではない。子ども全ての生活、学びを保障するのは喫緊の課題だ。親の経済格差を次世代に引き継いではならない。佐喜真氏は有効な手だてを講じてほしい。今選挙では両候補に共通する政策も目立った。学校給食費の無料化、子どもの医療費無料化などがそれだ。子どもをめぐる環境を意識しての政策だろう。これらの実現はいわば最大公約数だ。佐喜真氏は公約を早期に実現してもらいたい。「公約は破るもの」という昨今のあしき常識を、佐喜真氏には打ち破り、政治は信頼できるものだと実感できる結果を示してほしい。18歳選挙権が実現する年の最初の主要選挙の結果として、望まれるのはそのことだ。 *1-3:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12177493.html (朝日新聞社説 2016年1月26日) 宜野湾市長選 「辺野古」容認と言えぬ 沖縄では一昨年の名護市長選以来、知事選、衆院選と普天間飛行場の名護市辺野古への移設反対を訴えた候補が勝ってきた。今回も、移設をめざす政権と、反対する翁長知事の対立構図が持ち込まれたものの、連勝の流れは止まった。翁長知事は、選挙で示された民意を最大の盾として辺野古移設阻止を訴えてきた。それだけに、知事にとって大きな痛手となることは間違いない。とはいえ、「これで辺野古移設が容認された」と政権側がとらえるとしたら、早計である。当選した佐喜真淳市長は「普天間の一日も早い閉鎖・撤去」を主張しつつ、辺野古移設への賛否は明言せず、移設問題を争点化させない戦略をとった。朝日新聞社の出口調査では辺野古移設に賛成の有権者が34%だったのに対し、反対は57%いた。本紙の取材でも、佐喜真氏に投票した人にも「県外に移してほしい」「市民としては普天間固定化阻止、県民としては辺野古移設反対」などの声があった。佐喜真氏を推した公明党県本部幹部も「あくまで辺野古移設には反対」と言う。宜野湾市民の基地負担は重い。市の面積の4分の1を占める普天間飛行場は、市中心部にある。12年前には滑走路そばの沖縄国際大に米軍ヘリが墜落。オスプレイが24機配備され、騒音被害は絶えない。市の「基地被害110番」へ寄せられる苦情は昨年10月、月間で過去最多の100件を数えた。だからこそ普天間の閉鎖・撤去は市民共通の悲願なのだ。辺野古移設に触れず、「一日も早い閉鎖・撤去」を訴えた佐喜真氏への市民の期待を、そのまま辺野古移設支持と受け取ることはできまい。むしろ、身近で危険な普天間飛行場の閉鎖と撤去を願う、市民の意思と受け止めるべきではないか。日米両政府が返還に合意してから今年で20年。本来は生活に密着した諸課題が問われるべき市長選で、米軍基地の県内移設の是非までが問われる沖縄県民の重荷を、一日も早く取り除く責任は日米両政府にある。そのためには、政権はまず「辺野古移設か、普天間固定化か」と県民に二者択一を迫るやり方を改める必要がある。そのうえで、県外移設など早期の普天間閉鎖・撤去の方法がないか、米政府と改めて協議を始めるべきだ。 *1-4:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20160126&ng=DGKKZO96537570W6A120C1EA1000 (日経新聞社説 2016.1.26) 国と沖縄は対話を閉ざすな 米軍普天間基地がある沖縄県宜野湾市の市長選で与党が推した現職が勝利した。安倍政権は同基地の県内移設に向けた作業を加速する方針だ。もっとも、沖縄県は反対姿勢を崩しておらず、移設実現のハードルはなお高い。国と県は対話の扉を閉ざすことなく、問題解決に努めてもらいたい。普天間移設は2013年に沖縄県の当時の知事が工事に必要な埋め立てを承認した。14年の知事選で当選した翁長雄志氏は昨年、承認の取り消しを発表したが、国は「行政には継続性がある」として工事を続行している。日米両政府が普天間返還で合意して今年ですでに20年になる。県内に代替施設を設けることへの沖縄県民の抵抗感は理解できるが、合意を白紙に戻せば返還はさらに遠のきかねない。市街地にある普天間の危険性を一刻も早く除去するには、県内移設が現状における最も現実的な打開策である。埋め立て承認の可否は国と県の間で訴訟になっており、司法の裁きに委ねるしかない。最高裁で国の主張が認められれば、翁長知事は判決に従うべきである。ただ、先の大戦において沖縄県民が被った惨禍や現在に至る過重な米軍基地負担を考慮すると、法理論を唱えるだけでは県民世論を和らげることはできない。代替施設が完成したとしても、周辺住民の協力がなければ円満な運用は望めない。国は県との溝を埋めるため、何ができるかを改めてよく考えるべきだ。沖縄本島南部にある米軍基地の返還の促進は最重要課題である。民主主義は有権者の意向を選挙を通じて行政に反映させるのが基本ルールだが、選挙には衆参両院選もあれば、知事選や市長選もある。政策課題も1つではない。移設反対派が知事選や衆院選の沖縄の4小選挙区での勝利を根拠に「県内移設は否定された」と主張し、賛成派が今回の市長選で「流れが変わった」と反論する。そんな不毛な言い合いをしても双方の感情的な対立を深めるだけだ。 <政府のこれまでの対応> *2-1:http://mainichi.jp/shimen/news/20151029dde001010074000c.html (毎日新聞 2015年10月29日) 在日米軍再編:辺野古埋め立て着工 沖縄と対立、政府強行 知事「強権極まれり」 米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古沿岸部への県内移設計画で、防衛省は29日朝、埋め立てに向けた本体工事に着手した。辺野古の海に隣接する米軍キャンプ・シュワブ内の陸上部分での仮設資材置き場の整備を始めた。今後準備が整い次第、海への土砂投入など埋め立てを開始する見通し。移設に反対する翁長雄志(おながたけし)知事をはじめとする沖縄の反対を振り切って政府が本体工事を強行。日米両政府が1996年に普天間返還で合意してから19年、移設計画は重大な局面を迎えた。沖縄防衛局によると、29日午前8時ごろ、護岸工事に必要な仮設資材置き場の整備作業などを開始。中断していた残り5地点の海底地盤のボーリング調査に向けた準備作業も再開させた。周辺海域では移設に抗議する人たちのカヌーや警戒に当たる海上保安庁の船などが確認された。シュワブのゲート前でも抗議する多くの県民らと警察官がもみ合いとなった。翁長知事は登庁時に記者団の取材に応じ、「強権極まれりという感じで大変残念だ。国に余裕がなく、浮足立っている感じがする。これからしっかりと対峙(たいじ)していきたい」と述べた。移設計画を巡っては翁長知事が13日に埋め立て承認を取り消したのに対し、防衛局は14日に行政不服審査法に基づく審査請求と取り消し処分の執行停止を石井啓一国土交通相に申し立てた。石井国交相は28日に取り消し処分の執行停止の決定を通知。防衛局は28日に県環境影響評価条例に基づいて埋め立て本体工事着手届け出書を県に提出した。防衛局はボーリング調査が終わった計19地点から埋め立て本体工事を進める方針。残り5地点の調査は来春までに完了させる。届け出書によると、工事は2020年10月31日に完了し、約160ヘクタールを埋め立てる。一方で県は13年12月に前知事が埋め立てを承認した際、本体工事着手前の事前協議を留意事項としていたことから、承認取り消しで中断した協議の再開を28日に防衛局に通知。だが、防衛局は同じ28日に「協議は終了した」との文書を県に提出し、再開に応じない姿勢を示した。承認取り消しが執行停止とされたことに対抗し、県は近く、総務省の第三者機関「国地方係争処理委員会」に審査を申し出る。また、翁長知事による埋め立て承認取り消しに対し、政府は代執行の手続きに入ることも閣議で了解。政府が出した承認取り消し処分を撤回するよう勧告する文書が29日に県に届いた。翁長知事は「恒久的な基地を何が何でも沖縄に押しつけるという政府の最後通牒(つうちょう)だ」と批判するなど是正勧告には応じない姿勢を示しており、その場合には政府は知事に代わって承認する代執行を求めて高裁に提訴する方針。 ◇政府理解求める 世耕弘成官房副長官は29日の記者会見で、本体工事着手について、「事故の危険感や騒音などの被害をなくし、基地の整理縮小を目に見える形でしっかりと進めていきたい」と述べ、理解を求めた。 *2-2:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12041917.html (朝日新聞社説 2015年10月30日) 辺野古、本体工事着手 埋め立て強行は許されぬ 米軍普天間飛行場の移設先、名護市辺野古で政府は、埋め立ての本体工事に着手した。新基地建設に「NO」という多くの沖縄県民の声に耳を傾けようとせず、一連の手続きを強行する安倍政権の姿勢に、深刻な疑問を感じざるを得ない。沖縄県民の人権と民意がないがしろにされている。同時に、沖縄という一地域に過度の負担を押しつける、この国のあり方が問われている。 ■沖縄の「NO」の理由 政府に改めて求める。工事を速やかに中止し、県と話し合いの場をもつべきだ。いま一度、沖縄県民の心情に寄り添ってみたい。太平洋戦争末期、沖縄は県民の4人に1人が犠牲になる痛ましい地上戦を経験した。本土防衛の「捨て石」とされたのだ。その沖縄は戦後、平和主義や基本的人権を保障した日本国憲法から隔絶された。米軍統治のもと、「銃剣とブルドーザー」で土地を奪われ、強権的な支配のなかで米軍基地が広がる。念願の本土復帰から43年。今なお、国土の0・6%の沖縄に全国の73・8%もの米軍専用施設を抱えている。戦後70年たつのに、これほど他国軍の基地が集中する地域が世界のどこにあろうか。度重なる事故や犯罪、騒音などの基地被害に脅かされ続けてもいる。それが沖縄の現実である。それでも、翁長雄志知事は日米同盟の重要性を否定していない。抑止力で重要な米空軍嘉手納基地の返還も求めていない。こうした歴史をたどってきた沖縄に、さらに「新たな基地建設」を押し付けようとする。そんな政府の姿勢に「NO」の声を上げているのだ。辺野古に最新鋭の基地が造られれば、撤去は難しい。恒久的な基地になりかねない。 ■民意に耳を傾けよ それに「NO」を告げる沖縄の民意は、昨年の名護市長選、県知事選、総選挙の四つの小選挙区で反対派が相次いで勝利したことで明らかである。政府にとって沖縄の民意は、耳を傾ける対象ではないのか。着工に向けた一連の手続きにも、強い疑問を禁じ得ない。翁長知事による埋め立て承認の取り消しに対し、沖縄防衛局は行政不服審査制度を使い、同じ政府内の国土交通相が取り消し処分の執行停止を認めた。この制度はそもそも、行政機関から不利益処分を受けた「私人」の救済が趣旨である。防衛局は「私人」なのか。政府と県の対立を、政府内の国土交通相が裁くのが妥当なのか。公正性に大きな疑問符がつく。政府は同時に、地方自治法に基づく代執行手続きにも着手し、知事の権限を奪おうとしている。その対決姿勢からは、県と接点を探ろうという意思が感じられない。埋め立て承認の留意事項として本体着工前に行うことになっている事前協議についても、政府は「協議は終わった」と繰り返し、「終わっていない」という県の主張を聞こうとしない。さらに政府は名護市の久志、辺野古、豊原の「久辺3区」に対し、県や市の頭越しに振興費を直接支出するという。辺野古移設に反対する県や市は無視すればいい、そういうことなのか。自らの意向に沿う地域だけが、安倍政権にとっての「日本」なのか。この夏に行われた1カ月の政府と県の集中協議も、結局は、県の主張を聞き置くだけに終わった。その後、政府が強硬姿勢に一変したことを見れば、やはり安保関連法を通すための時間稼ぎにすぎなかったと言わざるを得ない。 ■日本が問われている 「普天間飛行場の危険性を除去する」。政府はいつもそう繰り返す。しかし、かつて米国で在沖米海兵隊などの整理・縮小案が浮上した際、慎重姿勢を示したのは日本政府だった。96年の普天間返還の日米合意から19年。本来の目的は、沖縄の負担軽減のためだった。そのために、まず政府がなすべきは、安倍首相が仲井真弘多(ひろかず)・前知事に約束した「5年以内の運用停止」の実現に向けて全力を傾けることではないか。米国は、在沖海兵隊のグアム移転や、ハワイ、豪州などへの巡回配備で対応を進めている。その現状を見れば、「辺野古移設が唯一の解決策」という固定観念をまずリセットし、地域全体の戦略を再考するなかで、代替施設の必要性も含めて「第三の道」を模索すべきだ。ひとつの県の民意が無視され続けている。民主主義国として、この現実を見過ごすことはできない。日本は人権を重んじる国なのか。地域の将来に、自分たちの意思を反映させられる国なのか――。私たちの日本が、普遍的な価値観を大事にする国であるのかどうか。そこが問われている。 *2-3:http://www.okinawatimes.co.jp/article.php?id=139619 (沖縄タイムス 2015年11月1日) 辺野古新基地に生態系保護で壁 埋め立て土砂規制条例が施行 名護市辺野古の新基地建設など、公有水面の埋め立てに使う県外からの土砂や石材の搬入を規制する県条例が1日、施行された。特定外来生物の混入を確認できれば、翁長雄志知事が搬入中止を勧告できる。政府は来年秋にも辺野古沿岸部に土砂を投入する計画だが、条例施行で進ちょくに遅れの出る可能性もある。「あらゆる手段で新基地阻止」を掲げる翁長知事を側面支援する狙いで県議会与党が提案し、7月に成立した。新基地建設に歯止めをかける知事権限の一つとして期待する声がある。条例は「アルゼンチンアリ」などの特定外来生物が県外産の埋め立て資材に紛れて県内に侵入するのを防ぎ、沖縄固有の生態系を守るのが目的。辺野古新基地建設、沖縄総合事務局による那覇空港第2滑走路増設が直近の対象になる。1日から、埋め立て事業者は県外から土砂などを搬入する90日前までに、採取地ごとに特定外来生物の有無や防除策を県に届け出なければならない。県は外来生物混入の恐れがあれば現地で立ち入り調査、必要に応じて搬入中止の勧告もできる。従わない事業者名は公表されるが、勧告に強制力はない。新基地建設で、防衛局は県内外からダンプカー約250万台分に当たる約1644万立方メートルの土砂(岩ズリ)を買い取り、辺野古沿岸部を埋め立てる計画だ。この大半を県外から搬入する予定で、沖縄の生態系を破壊しかねない特定外来生物などが紛れ込む懸念が指摘されていた。防衛局の埋め立て申請書では、外来生物の混入を防ぐ具体的な対策が示されていなかった。 <米国について> *3-1:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12042048.html (朝日新聞 2015年10月30日) 辺野古着工、米を重視 約束履行の姿勢、グアムで菅長官強調 日本政府は米政府と1996年に普天間飛行場返還に合意して以来、初めて移設先とする辺野古で埋め立ての本体工事に着手した。安倍晋三首相は2012年暮れに政権に復帰して以来、民主党政権時代に冷え込んだ対米関係の改善を重視。翌年2月の日米首脳会談で、オバマ大統領とは普天間移設を早期に進めることで一致した。今回、辺野古で埋め立ての本体工事に踏み込んだのは、米国に対して約束の履行を訴える狙いがうかがえる。菅義偉官房長官は29日、沖縄に駐留する米海兵隊の一部の移転先とする米領グアムを訪問した。工事着手について、菅氏は「前の仲井真(弘多〈ひろかず〉)知事から埋め立て承認をいただいた。行政判断はもう下っているわけだから、その継続という形で進めている」と記者団に強調した。この日は、グアム選出の米下院議員と会談して埋め立ての本体工事に着手したことを伝えるなど、普天間移設を推進する安倍政権の姿勢を米側にアピールした。一方、翁長氏は批判を強める。29日午後、県庁で記者会見を開き、「法律的に最終的な判断が示されないまま工事が強行された。激しい憤りを禁じ得ない」と非難した。また埋め立て承認取り消しの効力を国土交通相に止められたことを不服とし、国地方係争処理委員会への審査申し出を表明。地方自治体による申し出は全国3例目となる。翁長氏は「基地建設に反対する多くの県民を代弁する知事として、あらゆる手法を駆使する」と訴えた。 *3-2:http://www.okinawatimes.co.jp/article.php?id=137794 (沖縄タイムス 2015年10月20日) 辺野古承認取り消し、支持79% タイムス・RBC世論調査 沖縄タイムスと琉球放送(RBC)は、翁長雄志知事が名護市辺野古の新基地建設に伴う沿岸部の埋め立て承認を取り消したことを受け、16~18日の3日間、電話による緊急世論調査を合同で実施した。知事の取り消し判断を「支持する」と答えた人が79・3%に上り、県民の幅広い層が理解を示している結果が出た。知事の取り消しを「支持しない」と答えた人は16・1%。「どちらでもない」は4・5%だった。国が取り消しを無効化する対抗措置を経て移設作業を再開しようとしていることには、72・3%が「妥当ではない」と答え、国の方針に県民の反発が強い現状も浮き彫りになった。知事は昨年12月に就任以降、約10カ月が経過している。知事のこれまでの県政運営を「支持する」と答えた人は78・6%で、取り消しを支持する層とほぼ同様の割合だった。「支持しない」とした人は15・5%。国の作業再開方針を「妥当だと思う」とした人は20・8%。「どちらでもない」は6・9%だった。一方、裁判で沖縄側の主張が認められることへの期待は「期待できる」が50・1%にとどまり、「期待できない」が33・9%となった。「どちらでもない」は16・0%。調査は16~18日の3日間、県内全域の世帯を対象に、無作為に抽出した番号に電話をかけて、考えを聞いた。有効回答数は793人。有効回答率は9・9%。回答した人の地域別比率は北部11%、中部34%、南部・先島が55%。 <代替案> *4:http://digital.asahi.com/articles/DA3S11842452.html (朝日新聞 2015年7月5日) (現場から考える 安全保障法制)宮古島の牧場「ここに基地が」 自衛隊増強の方針 東京から南西に約2千キロ、沖縄本島からも約300キロ離れた宮古島(沖縄県宮古島市)。北部の海岸近くにある「大福牧場」の牛舎では、名産の黒毛牛が数十頭、草をはんでいた。この牧場周辺の大草原が陸上自衛隊のミサイル基地の候補地だ。防衛省の担当者は「海沿いの高台にあって、ミサイルを置くのに最適地だ」と話す。防衛省は、2018年度末までに宮古島に約800人の陸自ミサイル部隊などを配備する方針だ。宮古島などに配備する部隊は、警備部隊に加え、地対空ミサイル部隊、地対艦ミサイル部隊など本格的な戦闘部隊だ。沖縄の離島に、高い攻撃力を持った自衛隊の部隊が戦後初めて配備されることになる。「部隊が入ってきて訓練でも始めたら、この静かな土地はどうなってしまうのか」。牧場の従業員は不安を隠さなかった。一方、過疎化対策などで部隊配備を歓迎する声も少なくない。安倍政権は宮古島など南西諸島の自衛隊強化を加速する。那覇基地には昨年、「空飛ぶレーダー」といわれる早期警戒機の部隊を三沢から移した。F15の戦闘機部隊も新たに福岡から約20機を移し、約40機態勢に増強する。離島占拠に備え、離島奪還のための「水陸機動団」を新設する。オスプレイや水陸両用車など装備の強化も急ぐ。安倍政権が意識するのは、海洋進出を加速する中国の脅威だ。 ■中、船の派遣常態化 米、主体的防衛期待 中国は2013年11月、自国の防空目的で設ける空域「防空識別圏」を尖閣諸島を含む形で設定した。中国軍は日本列島から台湾、フィリピンなどを結ぶラインを「第1列島線」と呼び、その内側を中国の艦船が自由に往来できる「内海化」する戦略を立てる。習近平(シーチンピン)指導部は、尖閣諸島では公船派遣を常態化させ、南シナ海では埋め立てを進めることで、この戦略を着々と実行に移している。この中国の戦略は、米国の「リバランス(アジア回帰)」政策とぶつかる。米国は、南シナ海では中国の海洋活動を牽制(けんせい)するために沿岸国を支援している。これに対し、東シナ海では、尖閣を含めた日本の離島防衛は、日本が独自に担えるよう能力を向上させようとの狙いが透ける。今年4月に改定された日米防衛協力の指針(ガイドライン)でも、離島防衛は自衛隊が「主体的に実施する」とされ、米軍の関与は「自衛隊を支援し補完する」とした。水陸両用車両を売り、自衛隊の「水陸両用戦」の能力を高めようと支援している。日米中のにらみ合いが続く中で、各国にとって「悪夢」は、自衛隊と中国軍の偶発的な衝突だ。日中は衝突を避けるための仕組み「海空連絡メカニズム」の早期運用開始で合意している。戦闘機や艦艇が直接無線交信するために周波数を決めたり、自衛隊と中国軍の幹部どうしを結ぶホットラインを設けたりするものだ。しかし、尖閣問題の対立先鋭化を避けるため、日中両国の領海、領空は対象にしない方針だ。日本は尖閣諸島に領土問題は存在しないという立場で、「中国に尖閣諸島の周辺で連絡メカニズムを使われ、領有権を主張されると困る」(防衛省幹部)。ただ、そうした地域ほど衝突の可能性は大きく、十分な連絡体制になるか疑問視されている。 ■離島防衛「ちぐはぐ」 野党が対案「一番心配なのに」 尖閣諸島周辺に接近する中国軍にどう対処するか。安倍政権は安保法制で、武装漁民による離島占拠など、日本に対する武力攻撃には至らないが警察力では対応できない「グレーゾーン事態(準有事)」に対応する法整備を見送った。公明党が自衛隊の権限拡大に慎重だったのに加えて、警察や海上保安庁が権限縮小をいやがったようだ。この結果、グレーゾーン事態では、電話閣議を導入して自衛隊出動の判断を迅速化するなど、運用の改善で済ますことにした。「切れ目のない法整備というのに、一番の切れ目に手当てをしない。対応がちぐはぐだ」。自民党の防衛相経験者は疑問を呈する。一方、維新の党は今月2日、安保関連法案の対案を決定した。この中で、グレーゾーン事態で自衛隊が海上保安庁に協力する「領域警備法案」をまとめた。民主党も同法案を共同提出する方向だ。同法案は、警察や海上保安庁と自衛隊の関係を強化し、グレーゾーン事態の際に自衛隊が出動する手続きを簡略化するものだ。尖閣諸島周辺を念頭に、国会承認で「領域警備区域」を指定。平時から自衛隊が海上保安庁の警備に協力する。グレーゾーン事態では、閣議決定なしに自衛隊が「海上警備行動」や「治安出動」をできるようにする。ただ、それがかえって軍事衝突を誘発しないか、という議論もある。維新の党の柿沢未途幹事長は3日の衆院特別委員会で「国民が一番心配しているのは尖閣諸島をはじめ離島防衛だ。法整備を政府はなぜ置き去りにするのか」と指摘。中谷元・防衛相は「平時から自衛隊が海上保安庁と警察権を行使することは、日本側が事態をミリタリー(軍事)対ミリタリーにエスカレートさせたとの口実を相手に与える恐れがある」と答弁した。 PS(2016.1.27追加):*5-1のように、現在、日本の外務省は尖閣諸島が日本固有の領土であることは歴史的にも国際法上も明らかだとして根拠を示している。また、太平洋戦争後27年目の1972年日中国交正常化時点で合意された周首相(中国)と田中首相(日本)との間で交わされた尖閣問題棚上げ(一時的に問題を未解決のままにしておくこと)合意は、*5-2のように、「日中国交正常化という大同のために尖閣諸島の領有権問題という小異を次世代に繰り延べる」というものだ。そのため、それから40年以上過ぎた現在でも棚上げを主張するのは日本側の不作為に過ぎず、周首相や田中首相が現在のリーダーであれば、別の対応をすると考える。 *5-1:http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/senkaku/qa_1010.html#q5 尖閣諸島に関する日本外務省の見解 Q1:尖閣諸島についての日本政府の基本的な立場はどのようなものですか。 A1:尖閣諸島が日本固有の領土であることは歴史的にも国際法上も明らかであり,現に我が国はこれを有効に支配しています。したがって,尖閣諸島をめぐって解決しなければならない領有権の問題はそもそも存在しません。 Q2:尖閣諸島に対する日本政府の領有権の根拠は何ですか。 A2:第二次世界大戦後,日本の領土を法的に確定した1951年のサンフランシスコ平和条約において,尖閣諸島は,同条約第2条に基づいて日本が放棄した領土には含まれず,同条約第3条に基づいて,南西諸島の一部としてアメリカ合衆国の施政下に置かれました。1972年発効の沖縄返還協定によって日本に施政権が返還された地域にも含まれています。尖閣諸島は,歴史的にも一貫して日本の領土である南西諸島の一部を構成しています。即ち,尖閣諸島は,1885年から日本政府が沖縄県当局を通ずる等の方法により再三にわたり現地調査を行い,単に尖閣諸島が無人島であるだけでなく,清国の支配が及んでいる痕跡がないことを慎重に確認した上で,1895年1月14日に現地に標杭を建設する旨の閣議決定を行って,正式に日本の領土に編入しました。この行為は,国際法上,正当に領有権を取得するためのやり方に合致しています(先占の法理)。尖閣諸島は,1895年4月締結の下関条約第2条に基づき,日本が清国から割譲を受けた台湾及び澎湖諸島には含まれません。 【参考:サンフランシスコ平和条約第2条】 (b)日本国は,台湾及び澎湖諸島に対するすべての権利,権原及び請求権を放棄する。 (以下略) *5-2:http://vergil.hateblo.jp/entry/20130623/1371997158 [文書名] 田中総理・周恩来総理会談記録 [場所] 北京 [年月日] 1972年9月25日〜28日 第一回首脳会談(9月25日) 周総理: 田中総理の言うとおり、国交正常化は一気呵成にやりたい。国交正常化の基礎の上に、日中両国は世々代々、友好・平和関係をもつべきである。日中国交回復は両国民の利益であるばかりか、アジアの緊張緩和、世界平和に寄与するものである。また、日中関係改善は排他的なものであってはならない。田中・大平両首脳は、中国側の提示した「三原則」を十分理解できると言った。これは友好的な態度である。今回の日中首脳会談の後、共同声明で国交正常化を行い、条約の形をとらぬという方式に賛成する。平和友好条約は国交樹立の後に締結したい。これには、平和五原則に基づく長期の平和友好関係、相互不可侵、相互の信義を尊重する項目を入れたい。日中友好は排他的でないようにやりたい。日中は大同を求め小異を克服すべきであり、共通点をコミュニケにもりたい。 第二回首脳会談(9月26日) 田中総理: 大筋において周総理の話はよく理解できる。日本側においては、国交正常化にあたり、現実問題として処理しなければならぬ問題が沢山ある。しかし、訪中の第一目的は国交正常化を実現し、新しい友好のスタートを切ることである。従って、これにすべての重点をおいて考えるべきだと思う。自民党のなかにも、国民のなかにも、現在ある問題を具体的に解決することを、国交正常化の条件とする向きもあるが、私も大平外相も、すべてに優先して国交正常化をはかるべきであると国民に説いている。具体的問題については小異を捨てて、大同につくという周総理の考えに同調する。 … 第三回首脳会談(9月27日) 田中総理: 尖閣諸島についてどう思うか?私のところに、いろいろ言ってくる人がいる。 周総理: 尖閣諸島問題については、今回は話したくない。今、これを話すのはよくない。石油が出るから、これが問題になった。石油が出なければ、台湾も米国も問題にしない。国交正常化後、何カ月で大使(館)を交換するか? 大平大臣: できるだけ早く必要な措置を講じていくが、共同声明のなかに、何カ月以内にとは書けない。もし1日でもたがえたらよくないことだからだ。総理と私とが中国を訪問した以上、2人を信用してもらって、できるだけ早く大使の交換をやるということで御了承願いたい。 … 会談全体の流れを見れば、日中国交正常化にあたって、尖閣問題を棚上げとすることで両国首脳の合意があったことは明白だ。 <憲法改正について> PS(2016年1月29日追加):*6のように、「憲法“改正”は立党以来の自民党の党是であり、夏の参院選で争点にする」とのことだが、「自主憲法を作る」というだけでは憲法を改正する理由にはならない。何故なら、日本国憲法は、当時の日本人が自主的に変えたものではないからこそ、国民主権、基本的人権の尊重、平和主義などの三大原則や法の下の平等、男女平等、言論の自由など、明治憲法から見れば革命的な国民の権利が定められたものだからである。そのため、自民党は憲法改正を包括的に一括して公約するのではなく、自民党の憲法改正草案を逐条で、①改正したいと考える条項 ②その理由 ③改正したら変化する法的効果 などについて説明すべきであり、野党やメディアも、議員の信頼を落とすようなチクリばかりでなく、正面から自民党の憲法改正草案を逐条で取り上げて質問すべきだ。日本国民は、既にそのレベルに達しており、まともな報道をすれば判断できるのだから・・。 *6:http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201601/CK2016012802000133.html (東京新聞 2016年1月28日) 「改憲、参院選の公約に」 首相、代表質問で明言 安倍晋三首相は二十七日、衆参両院の本会議で行われた各党代表質問で、夏の参院選で争点にする考えを示している改憲について「自民党は党是として、立党以来ずっと憲法改正を掲げており、今後とも公約に掲げ、しっかりと訴える」と表明した。改憲について、おおさか維新の会の馬場伸幸幹事長は「地方自治体が国の意思決定に関与できる仕組みを創設する」として、統治機構改革のために改憲する必要があると訴えた。首相は「御党が具体的な改正項目を検討していることに敬意を表する」と理解を示したが、安倍政権が目指す具体的な改憲項目については「国会や国民的な議論と理解の深まりの中で定まる」とし明確にしなかった。首相は、環太平洋連携協定(TPP)について「署名後、速やかに協定の承認案と関連法案を国会に提出し、承認を求める」と説明した。交渉参加十二カ国による署名式は二月四日にニュージーランドで行われる。米軍普天間(ふてんま)飛行場(沖縄県宜野湾(ぎのわん)市)の移設に伴う名護市辺野古の新基地建設については「普天間の全面返還を日米で合意してから二十年たった。もはや先送りは許されない」と指摘。沖縄県との法廷闘争に関しては「やむを得ない措置だ。対話の窓を閉ざすことは決してない」との考えを示した。二十八日は参院本会議で代表質問が行われる。 <金を使って害になることばかりする理由は何か> PS(2016年1月31日追加): *7-1、*7-2のように、ホタテ養殖などで知られた宮城県石巻市雄勝町では、130億円かけて、高さ9.7メートル、延長3.5キロの防潮堤を築く計画が進んでいるそうだが、高台の集団移転地が完成し、町の従来の中心部に住むのは約80世帯くらいで、住民は「景観を破壊する」と防潮堤の建設には反対しているそうだ。宮城県は道路や再建された水産加工場など保全すべき施設があると主張しているそうだが、その場所は津波の際には水につかることを前提として建設すべきで、それよりも海と陸が切り離され森から海への栄養塩のルートが断たれてホタテの養殖に悪影響を与えたり、景観の悪化で観光客も呼べなくなったりする方が、生活権を侵害される重要な問題だ。 そのため、環境を壊すので地元住民も望まないような防潮堤を造ることは、所得税の2.1%分を復興特別所得税として支払って東北を応援している国民も望むところではなく、環境への親和性が高くて無駄なコストをかけない対応をしてもらいたいのである。なお、この間、国費を使って毎週のように東北に通った国会議員は、何を聞いてきたのかと思われるが、行って話を聞いたというアピールをするだけでは意味がない。私自身は、住居、幹線道路、重要施設は高台に移転し、下は放牧地、田畑、公園などを、津波の際には浸水することを前提として、緑の防潮堤とともに配置するのがよいと考える。 それにもかかわらず、金を使ってこのように害になることばかりしている理由は、政策担当者が、自然、生態系、生物、物理に疎く、何が何でもコンクリート造りの人工物がBestだと考えているからだろう。 *7-1より 問題になっている巨大防潮堤 震災瓦礫を基礎にした緑の防潮堤 (どちらがよいふるさとになるかは、書くまでもない) *7-1:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12186991.html?_requesturl=articles%2FDA3S12186991.html&rm=149 (朝日新聞 2016年1月31日) (東日本大震災5年 現場から考える:上)巨大防潮堤、何守る 宮城・雄勝 ■高台移転、住民戻らず いったい何を守るためなのか。硯(すずり)の生産やホタテ養殖で知られた宮城県石巻市雄勝(おがつ)町。津波で壊滅した町中心部にいま、130億円をかけ高さ9・7メートル、延長3・5キロの防潮堤を築く計画が進む。津波をかぶったまちの跡は、災害危険区域に指定され、もう人は住まない。高台の集団移転地が完成し、町外で仮住まいを続ける人が戻っても、中心部に住むのは震災前の620世帯から約80世帯にまで減る。更地にぽつんと立つ仮設商店街の一室で昨年12月25日、防潮堤計画をめぐり、宮城県と「持続可能な雄勝をつくる住民の会」の話し合いが持たれた。「景観を破壊する」と建設に反対する住民。道路や再建された水産加工場など、保全すべき施設があると主張する県。平行線が続いた。「海と陸が切り離された雄勝では、観光客も呼べない。10年以内に町は衰退する」。硯職人の3代目、高橋頼雄さん(48)は語気を強める。自宅を流されながら、この5年近く、町のホタテ祭りなどを引っ張ってきた。「何とかこの地で皆でやっていけないかと、考えてきたんです」。県の担当者は「まちづくりの様々な会合で説明し、住民合意はなされたと判断した」という。だが決議などをとったわけではない。住民の会事務局の徳水博志さん(62)は「いま一度、地域住民を集めて採決すべきだ」と反論した。地元の市役所も、壁のような防潮堤を望んだわけではなかった。石巻市雄勝総合支所は震災の年、住民団体の議論もふまえ、海沿いを走る県道や国道を20メートルの高さまで移し、道沿いに山をきりひらいて住宅地をつくる復興案をまとめた。それなら防潮堤は、もとの4メートル程度に復旧すればいい。ところが県は、数十年から百数十年に一度の津波に対応する「L(レベル)1」の高さにこだわった。「道路移転は必要ない。費用もかかる」との考えが示され、9・7メートルの計画が動きだしたという。「防潮堤の上げ下げを議論していても、まちづくりは進まない。のまざるを得なかった」と三浦裕総合支所長は振り返る。県は2018年春の防潮堤完成を目標に、年度内の着工をめざす。工事が始まれば、硯職人の高橋さんは雄勝を離れるつもりだ。 * 東日本大震災からまもなく5年。人口が激減する三つのまちから「復興」を考える。 *7-2:http://onion21.cocolog-nifty.com/onion21_kyodo_news_blog/2014/06/post-1460.html(河北新報2014年6月13日)東日本大震災 巨大防潮堤/合意なき「壁」で何を守るのか 沿岸被災地で完成間もない防潮堤に登ってみた。そこでは高さ10メートルを超える「壁」が海と陸をきっぱりと隔てていた。被災3県で整備予定の防潮堤は総延長386キロに及ぶ。既に46キロ分が完成し、各地で工事が本格化している。宮古市田老地区では、巨大防潮堤への過信が被害を大きくしたとの指摘もあった。それでも岩手県は、現況から4.7メートルをかさ上げする。気仙沼市本吉町の小泉海岸に造る防潮堤は14.7メートル。ここから海に流れ込む津谷川の河口堤を含めた完成予想図は、土木工学の専門家が今から難工事を予見するほどのスケールだ。既存の防潮堤は各県横並びでおおむね1メートルのかさ上げが決まった。「既存高プラス1メートル」までなら災害復旧事業の枠内として全額国に負担してもらえるためだ。国の基準を出発点に各県は、防潮堤の整備方針を決定。その後、背後地を土盛りしてインフラを敷設。最後に住民に諮ってまちづくり計画を固める。行政による復興は概略この順序で進められてきた。だが、復興に寄せる被災住民の思いは、行政の手法と逆のプロセスをたどるのが普通だろう。住民はまず「こんなまちで暮らしたい」という理想から対話を始める。次に願いを形にして街並みや施設の配置を考える。そして最後に防潮堤は必要か、必要だとしたら許容できる高さはどれくらいかを決める。防潮堤の建設を復興の入り口とする行政と出口に置く住民では、議論がかみ合うはずもなかった。単なる復旧事業である以上、住民合意も必要としない。結果、復興の加速化を重視する行政の対応は相当、荒っぽいものとなった。岩手県の説明会では職員が膨大な資料を駆け足で説明し、住民は熟慮する時間を与えられないまま、その場で拍手を求められたという。宮城県の村井嘉浩知事は「私の責任で決断する」との言説を曲げようとしない。仮に、それが住民の命を守る手だてだとの信念で復興事業を推し進めたとしよう。しかし、住民の理解と納得を軽視する形で造った防潮堤によって土地の魅力が減じてしまえば、やがて人々はその土地から去っていく。そうなったとき、巨大防潮堤は一体何を守ろうというのか。防潮堤整備の復旧事業扱いには、自然環境を保全する観点からも問題点が指摘されている。原状回復のレベルを逸脱する工事にもかかわらず、環境影響調査の対象外となるためだ。波打ち際をコンクリート壁で固めることによる生態系や、そこからの恩恵で成り立つ漁業への影響が真剣に検討されてきた形跡は、残念ながらない。過去、幾度となく津波被害に遭ってきた三陸の住民は、しなやかに、あるいはある種の諦観をもって海と向き合い、生きてきた。足元の防潮堤は、そんな精神性までも押しつぶそうとしているように見える。 PS(2016年2月5日追加): 辺野古新基地建設に伴う埋め立て承認取り消しをめぐる代執行訴訟で、福岡高裁那覇支部は、*8のように2つの和解案を示したそうだ。これまでの経緯を見れば、沖縄県地元紙の論調の方が正しいと考える。そのため、国は、ここで環境と財政の両方を考慮した案に変更すべきだ。 *8:http://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-215658.html (琉球新報社説 2016年2月4日) 辺野古和解勧告 問題の本質を見極めよ 辺野古新基地建設に伴う埋め立て承認取り消しをめぐる代執行訴訟で、福岡高裁那覇支部(多見谷寿郎裁判長)が示した和解案2案が判明した。このうち「根本的な解決案」は、県が承認取り消しを撤回する代わりに、国は新基地の「30年使用期限」か「軍民共用」を米側と交渉するという内容だ。これのどこが「根本的」か、理解に苦しむ。沖縄への米軍基地の圧倒的な偏在の上に、なおも新基地を押し付けることに県民は反発している。本土の民意は大事にするのに、沖縄の民意は簡単に踏みにじることの差別性も問うているのである。和解案の通りなら結局、民意を無視して新基地が押し付けられることになる。基地の偏在は微動だにしない。貴重な環境も破壊される。民主主義と地方自治の否定、構造的差別という根源的な問題は放置されるのだ。論外である。使用期限も全くの空念仏だ。1999年当時の移設案の「15年使用期限」に対して政府は「尊重」を閣議決定したが、米側にまともに要求すらせず、2006年には沖縄の頭越しに一方的に廃止した。信用できるはずがない。しかも和解案は米側と「交渉する」だけである。米側が拒めばそれで終わりだ。30年後の返還を裁判所が保証できるわけがなく、いったんできてしまった新基地は半永久的に続くのである。県側は受け入れに否定的だが、当然だろう。半面、「暫定的」な案の方は興味深い。国が代執行訴訟を取り下げて工事を停止し、県と協議する。折り合わなければ、強制力の弱い違法確認訴訟で争うという内容だ。法定受託事務の処理をめぐって国と県が折り合わない場合、取り得る手段はいくつかある。このうち代執行は最も重く、強制的な処分だ。地方自治法は「是正勧告」や「指示」などを経てもなお「是正が困難」な場合に、初めて代執行が可能と規定しているのだ。 一挙に代執行訴訟を提起したことについて、国は緊急性を理由にしているが、選挙期間中は作業を中断するのだから説得力は乏しい。裁判長もそう判断しているのだろう。いずれにせよ裁判所は問題の本質を見極めてもらいたい。この国が法の前に誰もが平等な「法治国家」なのか、それとも政府の恣意(しい)的な法解釈を許し、民意も地方自治も踏みにじっていい国なのか。問われているのはそのことである。
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2016,01,20, Wednesday
蔡(台湾) ガンジー ブット メガワティ 朴(韓国) インラット(タイ) (インド) (パキスタン) (インドネシア) <敬称略> 女性の政治参加率 世界の女性大統領・首相 国会議員に占める 各国の取り組み 女性割合の推移(国際比較) 書くべきことは沢山あるが、今日は、台湾総統選で台湾初の女性総統、蔡英文氏が誕生することについて記載する。 (1)台湾総統選の蔡氏当選について 1)台湾総統選の争点 *1-1、*1-2、*1-3のように、台湾総統選の重要な争点は中国との関係だったが、蔡氏の民進党が総統選だけでなく、立法院選でも過半数を占めた。得票は、蔡氏が約689万票(得票率56.1%)で、朱氏の約381万票(同31.0%)を大きく上回った。民進党は、中国が台湾との交流の前提とする「一つの中国の原則」を認めておらず独立志向だが、今回は、ぎりぎりの妥協である「中台関係、現状維持」を主張して台湾国民はそれを支持したものである。 日本は、1972年の中国との国交正常化時に、中華人民共和国と対立関係にあり、それまで日本と国交があって親日的だった中華民国と国交を断絶した。そして、現在も外務省幹部が、「独立色を強めれば中台関係が緊張して日本経済へ悪影響を与える」などと警戒しているが、台湾にはこのような独立志向の人も多いため、独立国である日本が、「中国との国交=台湾との国交断絶」とする必要はないと、私は考える。むしろ、台湾・中国間の経済取引が少なくなる分は、日本との関係を強くして支持すべきだ。 2)アジア初の世襲でない女性リーダー誕生 *1-3のように、台湾史上初の女性総統である蔡英文氏は、1956年8月に台北市に生まれ、台湾大学を卒業して、米コーネル大修士、英ロンドン大政経学院で法学博士号を取得している。そして、政治大教授、経済部(経済省)国際経済組織首席法律顧問などを歴任し、李登輝総統が提唱した「二国論」の起草に携わって、2000年に行政院(内閣)大陸委員会主任委員(閣僚)に抜てきされ、2006〜07年に行政副院長(副首相)、2008年に民進党主席に就任して、今回の台湾総統選になったものである。 しかし、このような世襲でない女性リーダーは、中国、韓国、日本のような儒教の影響で女性の政治参加率が低いアジアでは初めてだ。日本では、学歴やキャリアのある女性を性格が悪いかのように言うことが多いため、台湾のように本当に優秀な女性が率直に評価されてリーダーになるようなことが起こりにくいが、これは改善されるべきジェンダー由来の女性差別である。 (2)世界の男女平等度 世界では、*2-1のように、「世界経済フォーラム(WEF)」が公表した2015年版の「男女格差報告」で、日本は145カ国中101位で先進国の中では最低水準であり、中国は91位、韓国は115位で大きな差はなかった。首位は7年連続でアイスランド、2位はノルウェー、3位はフィンランドというように、上位は北欧諸国(そのせいか社会保障が充実)であり、米国は28位だ。WEFは「男女間の賃金格差は変わらず、女性の賃金は男性の10年前と同じ水準だ」と指摘しているが、日本ではさらに格差が大きく、これは女性が働くためのインフラ不足やUnfairな女性差別の結果であるため、女性自身の責任では全くない。 そのような中、*2-2のように、2015年8月29日、女性版ダボス会議が東京で始まり、岸田外相が「21世紀を女性に対する人権侵害のない社会とするため尽力する」と述べられたそうだが、何が女性に対する人権侵害にあたるのかは狭すぎず正しく定義してもらいたい。何故なら、そうしなければ、この演説は無意味になってしまうからだ。私が、このようなことを書く理由は、とかく女性労働は高齢化社会を迎える日本の二次的・補完的労働力と位置付けられ、自己実現のために誇りを持って働く女性の権利は、無意識に(?)侵害されているからである。 (3)世界の職場における男女平等(男女差別)例 米軍は1994年の規定で、戦闘任務にあたる前線地上部隊への女性兵士の配属を禁じたが、戦闘経験が軍内部での昇進に繋がるため解禁を求める声が上がり、*3-1のように、女性兵士の戦闘参加を2016年1月から全面解禁するのだそうだ。オバマ大統領は、今回の決定を「歴史的前進」とし、能力のある人たちをより広く集めて軍を強くするものだとしており、もっともだ。 一方、イスラム教国のイランでは、*3-2のように、テヘランで開かれたレスリングの国際大会で、国歌の演奏を予定していたテヘラン交響楽団が、女性奏者がいることを理由に直前に演奏を禁じられたそうだ。イスラム強硬派が男女の接触を嫌って、コンサートが当局の介入で中止される例が相次いでいるそうで、イスラム文化圏の女性差別は徹底している。テロだけでなく、このものすごい女性差別もあって、私は、イスラム文化圏の人が日本国内で増加しすぎることを警戒しており、前後の影響も考えず無責任に、「Welcome.Welcome.」とは言えない。 さらに、*3-3のように、イスラム教の戒律を厳格に守るサウジアラビアでは、今回から女性にも参政権が認められ、2015年12月12日の自治評議会(地方議会)選で20人の女性候補が当選し、女性初の公選議員誕生は同国では画期的なのだそうだ。 *1-1:http://mainichi.jp/articles/20160117/k00/00m/010/104000c (毎日新聞 2016年1月16日) 台湾総統に蔡氏、日台関係改善を期待 政府、手腕注視 台湾総統選で最大野党・民進党の蔡英文主席が当選したことについて、日本政府は慰安婦問題などで強硬姿勢を示してきた馬英九政権よりも日台関係が改善するとみて、おおむね歓迎している。ただ民進党は独立志向が強いことから中台関係が緊張する懸念もくすぶっており、当面は新政権発足に向けて蔡氏の政治手腕を見極める意向だ。岸田文雄外相は「蔡氏の当選に祝意を表する。台湾は基本的価値観を共有する重要なパートナーであり、非政府間の実務関係として協力と交流のさらなる深化を図る」とするコメントを発表した。政府関係者は蔡氏の当選について「日台関係は現状より良くなるのではないか」と期待感を示す。その理由を外務省幹部は「馬政権は尖閣と慰安婦という歴史問題に焦点を当ててしまった」と語る。日本は1972年の日中国交正常化に伴い台湾と断交したが、経済的な結びつきは強く、人的往来も盛んだ。馬政権も日台関係を重視する姿勢を示してきたが、沖縄県・尖閣諸島の領有権を主張し、2012年8月に日台中による資源の共同開発を求めた。慰安婦問題については「人権侵害の重大な戦争犯罪だ」と述べ、日本政府に慰安婦への謝罪と賠償を要求。いずれも歴代政権より主張を強めている。これに対し、蔡政権は「親日的」になると政府内では受け止められている。安倍晋三首相も昨秋の蔡氏来日時に接触したとみられ、実弟の岸信夫元副外相が蔡氏を地元の山口県に招くなど関係を築いてきた。ただ、独立色を強めれば中台関係が緊張する恐れもあり、外務省幹部は「中台が緊張すれば日本経済への悪影響が大きい」と警戒感を示す。蔡氏の政治手腕は未知数で、政府は民進党が政権を安定的に運営できるかどうかを慎重に見極める構えだ。一方、中台関係への影響を巡り、政府内には「馬政権より相対的に中台の緊張感が増せば、その分、中国の東シナ海や南シナ海での動きは落ちてくるだろう」(自衛隊幹部)との見方もある。中国の海洋進出の活発化は、「馬政権で中台関係が安定していたから可能だった」との分析だ。台湾は日本のシーレーン(海上交通路)上にある上、中国にとっても重要な太平洋への出入り口となるバシー海峡に面しており、日米両国にとって安全保障上の要衝に位置している。日本としては、日米同盟をテコにして台湾を引き寄せる狙いで、防衛省幹部は「台湾を日米に引きつけることが中国に対する抑止力につながる」と説明している。 *1-2:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20160117&ng=DGKKZO96215570X10C16A1MM8000 (日経新聞 2016.1.17) 台湾総統に民進党・蔡氏 8年ぶり政権交代、立法院選も過半数 「中台関係、現状を維持」 台湾で16日、総統選挙が投開票され、台湾独立を志向する最大野党・民進党の蔡英文主席(59)が大勝した。中国との融和路線をとる国民党に代わって民進党が8年ぶりに政権を奪回し、台湾で初の女性総統が誕生する。民進党は中国が台湾との交流の前提とする「一つの中国」(総合・経済面きょうのことば)の原則を認めていない。蔡氏は同日夜の記者会見で中台関係の「現状維持」を訴えたが、中国との間にきしみが生じる可能性もある。蔡氏は副総統候補である中央研究院の陳建仁・前副院長(64)とともに5月20日に就任する。蔡氏は記者会見で「両岸(中台)は最大の努力を払い、お互いが受け入れられる交流の道を探るべきだ」と中国に対話を呼びかけた。「両岸関係の平和で安定した現状を維持し、台湾人民に利益をもたらす」と抱負を述べた。対抗馬だった国民党候補の朱立倫主席(54)は「かつてない惨敗だ。支持者の皆さんを失望させた」と敗北を認め、主席辞任を表明した。総統選には3人が立候補したが、事実上蔡氏と朱氏の一騎打ちだった。中央選挙委員会(選管)の開票結果によると、蔡氏は約689万票(得票率56.1%)を獲得。朱氏の約381万票(同31.0%)を大きく上回った。同時に投開票された立法院(国会、定数113)選挙でも民進党が過半数(57議席)を上回り、68議席を獲得した。民進党が政権を握ったものの、一貫して少数与党だった2000~08年の陳水扁政権に比べ、安定した政権運営が可能になる。選挙戦では対中政策や経済政策が争点となった。昨年11月に馬英九総統と中国の習近平国家主席が1949年の中台分断後で初の首脳会談をシンガポールで開き、中国と台湾は不可分の領土であることを意味する「一つの中国」を認め合った。両首脳が中台融和の継続の必要性を演出するなか、台湾住民が総統選でどのような選択をするかが焦点になっていた。蔡氏は台湾独立志向を抑えつつ、対中傾斜も避ける「現状維持」を提唱。中国の影響力拡大を懸念する若者を中心に幅広い支持を得た。経済が低迷するなか、経済格差の解消などを訴える弱者重視の姿勢も支持された。朱氏は馬政権下での経済低迷が逆風となったほか、党内の総統候補選びの混乱で支持者の失望を招いた。中台関係が不安定になるリスクを訴えたが、浸透しなかった。支持基盤が似通う野党・親民党の候補の宋楚瑜主席(73)が健闘し、票が分かれたことも痛手だった。 [*蔡英文氏(さい・えいぶん) 78年台湾大法卒、84年英ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスで法学博士号取得。政治大学教授、立法委員(国会議員)、行政院副院長(副首相)などを経て、08年から12年まで民進党主席。14年に党主席に復帰した。両親が本省人(戦前からの台湾住民とその子孫)で台北市生まれ。59歳。] *1-3:http://mainichi.jp/articles/20160117/ddm/001/030/137000c (毎日新聞 2016年1月17日) 台湾総統選、.総統に蔡氏 8年ぶり民進政権 対中融和見直し 台湾総統選は16日投開票され、最大野党・民進党の蔡英文主席(59)が与党・国民党候補の朱立倫主席(54)と野党・親民党の宋楚瑜主席(73)を大差で破り、初当選した。独立志向が強い民進党が8年ぶりに政権を奪還し、台湾史上初の女性総統が誕生する。国民党の馬英九政権が進めた対中融和路線が見直されることは確実で、中国の出方によっては東アジア情勢が緊張する可能性もある。中央選管の最終確定結果によると、蔡氏の得票率は56・12%で、過去最高だった2008年の馬英九氏の得票率58・45%には及ばなかった。だが、朱氏に300万票以上の大差をつけての勝利を受け、民進党の独自色を蔡氏が今後どう打ち出すのかが焦点となりそうだ。蔡氏は16日夜、記者会見し、「台湾人は1票で歴史を書き換えた」と勝利宣言した。さらに「この勝利は単なる選挙結果ではなく、有権者が台湾を新たな時代に導く政府を求めたことを意味する」と強調した。今後の中台関係については「現行体制における交流の成果や民意を基礎とし、平和で安定した現状を維持する」としつつ「両岸(中台)双方に最大限の努力をする責任がある」として中国側の歩み寄りも求めた。朱氏は台北市内の党本部前で「申し訳ない。皆を失望させた。我々は失敗した」と述べた。さらに敗北の責任を取り、党主席を辞任する意向を明らかにした。また、行政院(内閣)は16日夜、国民党の大敗を受け、毛治国・行政院長(首相)が馬英九総統に辞意を伝えたと発表した。慰留は受けないとしている。同時実施の立法院(国会、定数113)選挙でも、民進党が68議席と大勝し、同党は初めて単独過半数を獲得した。国民党は64議席から35議席に大幅減。大敗を喫した国民党は求心力が低下し、万年野党に転落する危機さえはらむ。争点の対中政策を巡って蔡氏は「現状維持」を掲げる。ただ民進党は、中国と国民党が交流の基礎に位置づける「一つの中国」の原則を確認したとされる「1992年合意」を認めていない。中国の習近平国家主席は昨年11月の馬総統との中台首脳会談で「92年合意の堅持を望む」と強調。民進党の政権奪還を視野に「両岸関係の最大の脅威は台湾独立勢力の(中国の)分裂活動だ」と圧力を強めた。このため、今回の選挙結果を背景に民進党政権が「92年合意」に対して否定的な姿勢を続ければ、中国が一転して強硬な対台湾政策を実行に移す可能性があり、台湾海峡を挟んで中台が緊張することも考えられる。一方で、求心力を増す蔡氏を相手にする中国は、民進党政権が長期化する可能性を見据え、台湾政策の再検討も迫られそうだ。蔡氏の就任式は5月20日で任期は4年。中央研究院の元副院長、陳建仁氏(64)が副総統となる。 <台湾総統選の開票結果> 蔡英文氏 6,894,744(56.12%)=民進党 朱立倫氏 3,813,365(31.04%)=国民党 宋楚瑜氏 1,576,861(12.84%)=親民党 ※投票率66.27%。カッコ内は得票率。台湾中央選管最終発表 ■人物略歴 蔡英文(さい・えいぶん)氏 1956年8月、台北市生まれ。台湾大卒、米コーネル大修士、英ロンドン大政経学院で法学博士号を取得。政治大教授、経済部(経済省)国際経済組織首席法律顧問などを歴任。99年に当時の李登輝総統が提唱した「二国論」の起草に携わる。民進党の陳水扁政権が誕生した2000年に行政院(内閣)大陸委員会主任委員(閣僚)に抜てきされた。06〜07年に行政副院長(副首相)。08年に民進党主席に就任。12年の総統選落選で引責辞任したが、14年5月に再び主席に就任した。 <世界の男女平等度> *2-1:http://mainichi.jp/shimen/news/20151119dde041020070000c.html?fm=mnm (毎日新聞 2015年11月19日) 男女格差報告:格差改善、でも101位 日本、順位3上げる 先進国最低水準 ダボス会議で知られるスイスの「世界経済フォーラム(WEF)」が19日公表した2015年版「男女格差報告」によると、日本は調査対象となった145カ国中101位だった。前年より順位を三つ上げたものの、依然として先進国の中で最低水準であることに変わりはない。報告書では、日本は女性閣僚が増えたことが順位を上げる要因となったと指摘している。首位は7年連続でアイスランド。2位はノルウェー、3位はフィンランドで、上位に北欧諸国が並んだ。米国は28位、中国は91位、韓国は日本より低い115位だった。上位10カ国で欧州以外の国はルワンダ(6位)、フィリピン(7位)、ニュージーランド(10位)のみだった。WEFは「男女間の賃金の不平等は(世界的に)変わらず、女性の賃金は男性の10年前の水準と同じとなっている」と指摘した。男女格差報告は各国の女性の地位を経済、教育、政治、健康の4分野で分析、数値化している。 *2-2:http://www.saga-s.co.jp/news/national/10201/223996 (佐賀新聞 2015年8月29日) 外相「女性の人権侵害根絶を」、国際シンポで演説 政府が世界各国の女性指導者らを招いて女性政策について議論する国際シンポジウム(女性版ダボス会議)の実質的討議が29日午前、東京都内で始まった。岸田文雄外相は冒頭の演説で「21世紀を女性に対する人権侵害のない社会とするため、尽力する」と述べ、政策推進へ意欲を表明した。職場で女性の登用を促す女性の活躍推進法が28日成立、安倍政権は引き続き女性政策重視の姿勢をアピールする考え。岸田氏は演説で「日本は女性の分野で世界の先頭に立とうと決意した」と強調。「超高齢化社会を迎える日本にとって、女性の優れた潜在能力を発揮できるようにすることは喫緊の課題」と指摘した。 <世界の職場における男女平等> *3-1:http://mainichi.jp/select/news/20151204k0000e040139000c.html (毎日新聞 2015年12月4日) 米軍:女性兵士の戦闘参加を全面解禁 16年1月までに ◇オバマ大統領「歴史的前進」、「軍をより強くする」 カーター米国防長官は3日、国防総省で記者会見し、最前線での地上戦闘部隊を含むすべての職種に、女性が就くことを認めると発表した。30日の準備期間の後、実施する。米軍は女性兵士がさまざまな任務に就くことを徐々に認めてきたが、特殊部隊などは引き続き女性に閉ざされてきた。米軍における性別の壁が完全に取り払われることになる。カーター氏は「例外はなくなる。資格を持ち、(軍の)基準を満たす限り、女性たちは以前はできなかったやり方で我々のミッションに貢献することができるようになる」と語った。そのうえで、戦車を操縦したり、歩兵を率いて戦闘したりすることなどが認められるようになるとし、陸軍レンジャー部隊や海軍特殊部隊SEALS(シールズ)などの特殊部隊員にもなることができると説明した。米軍は1994年の規定で、戦闘任務にあたる前線地上部隊への女性兵士の配属を禁じた。しかし、アフガニスタン、イラク両戦争では戦闘地域と非戦闘地域の境目が不明確になり、多数の女性兵士が戦闘に携わった。また、戦闘経験が軍内部での昇進につながるため、参加解禁を求める声も上がっていた。さらに「権利の平等」を重視するオバマ政権の下、2013年に当時のパネッタ国防長官が規定を撤廃する方針を発表し、16年1月までに全面実施するとした。これを受け、既に11万1000のポジションに新たに女性が就くことができるようになった。しかし、全体の約1割にあたる約22万のポジションは依然として女性に閉ざされていた。カーター氏は全面実施を控え、例外を設ける必要があるかどうか検討するよう米軍に命じていた。海兵隊から例外設定を求める意見も出たが、これを退けた。オバマ大統領は声明で、今回の決定について「歴史的前進だ」とし、能力のある人たちをより広く集めることになり、軍をより強くするものだと強調した。米軍の現役兵のうち女性は全体の約15%を占める約20万人。全職種を女性に開放する今回の決定には、有能な人材を男女を問わず確保したいという狙いもあるとみられる。 *3-2:http://www.saga-s.co.jp/news/national/10201/254734 (佐賀新聞 2015年11月30日) イラン、女性の国歌演奏を禁止、強硬派介入相次ぐ イランの首都テヘランで開かれたレスリングの国際大会で、国歌の演奏を予定していたテヘラン交響楽団が、女性奏者がいることを理由に直前に演奏を禁じられていたことが分かった。イラン学生通信が30日までに伝えた。穏健派のロウハニ政権が欧米などとの交渉で核問題解決に道筋を付けたことで、社会の自由拡大への期待が高まる中、イスラム革命の理念を重視する保守強硬派は巻き返しを強化。最近は男女の接触を嫌ってか、コンサートが当局の介入により突然中止される例が相次いでいる。楽団の指揮者ラバリ氏は「なぜ自分たちの国歌を演奏できないのか」と怒りをあらわにした。 *3-3:http://www.saga-s.co.jp/news/national/10201/259458 (佐賀新聞 2015年12月14日) サウジで女性20人が初当選、地方議会、権利拡大へ一歩 イスラム教の戒律を厳格に守るサウジアラビアで12日行われた自治評議会(地方議会)選で、選管当局は13日、20人の女性候補が当選したと明らかにした。AP通信が報じた。女性には今回から参政権が認められた。自治評議会の権限は都市開発の監視など限定的だが、女性初の公選議員誕生は同国では画期的で、権利拡大への一歩となる。男性優位の価値観が根強いサウジだが、今年1月に死去したアブドラ前国王は地方参政権の容認など女性の政治参加に道を開いた。一方、現在のサルマン国王は保守的とされ、今後は女性進出にブレーキがかかるとの観測もある。 PS(2016/1/20追加):*4のように、近年、JAも運営に女性の参画を掲げており、正組合員で女性比率が30%以上、総代で15%以上、役員で3人以上を目指している。これでもわかるように、一世代前は保守的で女性の地位が低かった農業地帯も、最近はベテランが戦後男女共学世代になっていることや女性の方が得意な仕事も多いことから、女性が差別される心配なく算入できるようになりつつある。 *4より <働く農業女子> <働く農業女子> *4:http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=36030 (日本農業新聞 2016/1/20) JA参画を加速 全国女性大会が開幕 第61回JA全国女性大会が19日、東京都江東区のホテルイースト21東京で開幕した。若手メンバーの育成などを掲げたJA女性組織3カ年計画を総括し、JA運営への参画強化をうたった2016年度からの次期3カ年計画を決議した。全国から約600人が集まり、実践に向け意思を結集した。次期3カ年計画のテーマは「JA女性 ふみだす勇気 学ぼう・伝えよう・地域とともに!!」。積極的なJA運営への参画を掲げ、正組合員で女性比率30%以上、総代で15%以上、役員で3人以上を目指す。仲間づくりと次世代リーダーの育成、地域の伝統食の継承など食と農を軸とした地域の活性化にも力を入れる。JA全国女性組織協議会の鈴木春美会長は「女性組織のリーダーは、JA女性役員など多くの場で活躍している。目標達成に向けて女性組織、JA一体となって頑張りましょう」と呼び掛けた。 PS(2016/1/22追加):*5-1のように、国連機関「UNウィメン」のムランボヌクカ事務局長は、東京都内で、「2030年までに世界の女性リーダーの登用比率50%を数値目標に掲げる」と述べているが、日本政府は、*5-2のように、2003年に設定した「『社会のあらゆる分野で20年までに指導的地位に女性が占める割合を30%程度』にする」という目標を「達成できない」という理由で断念した。そして、「リーダーの育成が不十分」などとしているが、リーダーは、男女雇用機会均等法に定められているように、採用、研修、配置、退職等で男女差別しなければ自然に出てくるもので、それこそが機会均等の意味だ。 また、*5-3のように、少子高齢化、労働人口減少社会で活力ある社会を目指すには女性の力が不可欠という理由で、女性活躍推進法は大企業のみに女性従業員の採用、登用に関する数値目標設定等を義務づけているが、①働く女性の半数以上を非正規労働者として男女雇用機会均等法の適用から除外させ、採用、研修、配置、退職で均等待遇にしなかったり ②従業員301人以上の企業のみに女性登用に関する数値目標と行動計画の策定・公表を義務づけたりしていれば、大半の女性労働者は埒外になる。そのため、これは、「働き方改革」以前に、男女の労働者が人間として平等に扱われ、平等に仕事力を育成して平等な評価に耐えうるための土俵づくりを放棄していることになり、厚労省がいまだに女工哀史か蟹工船の時代よろしく「賃金」と「勤務時間」のことしか言わないのは、意識が50年遅れている。 <世界と日本の男女平等への価値観> *5-1:http://www.nikkei.com/article/DGXLASGM28H6A_X00C15A9EAF000/ (日経新聞 2015/9/7) 女性リーダー登用50%へ 国連女性機関の事務局長に聞く 女性の地位向上を目的とした国連機関「UNウィメン」のムランボヌクカ事務局長はこのほど東京都内で日本経済新聞の取材に応じ、「2030年までに世界の女性リーダーの登用比率50%を数値目標に掲げる」と述べた。加盟国政府や企業への働きかけなどを通じ、管理職比率や労働参加などあらゆる分野で男女平等の実現を目指す。日本は20年までに指導的地位に占める女性の割合を現在の11%から30%に引き上げる目標を掲げる。ムランボヌクカ氏は「政府の強力なリーダーシップを評価している」としつつ「30%では少数派のまま。男女の平等を実現するためには、50%が必要だ」と訴えた。14年の世界経済フォーラム報告によると、女性管理職比率は米国43%、フランス39%など欧米で高い。アジアでも48%のフィリピンなどが高いが、同報告で男女の平等指数が104位の日本にとっては達成が難しい課題になりそうだ。UNウィメンは8月、アジア初の連絡事務所を東京都文京区に開設。「男性への教育などで、日本政府や大学などとの連携を深めたい」と話した。「途上国での女子教育や女性への暴力対策などで、日本政府の資金協力にも期待する」とした。 *5-2:http://mainichi.jp/select/news/20151204k0000m040106000c.html (毎日新聞 2015年12月3日) 女性登用30%:政府断念 20年度目標、分野別数値に 政府は3日、第4次男女共同参画基本計画案を男女共同参画会議(議長・菅義偉官房長官)の専門調査会に提示し、大筋で了承された。小泉政権時代の2003年に設定した「社会のあらゆる分野で20年までに指導的地位に女性が占める割合を30%程度」にする目標を事実上断念し、20年度末までに国家公務員の本省課長級に占める女性の割合を7%とするなど現実的な数値目標を盛り込んだ。12年の衆院選では、安倍晋三総裁率いる自民党も、政権公約に「30%目標」を「確実に達成」と掲げていた。国家公務員の課長級は03年の1.6%から今年は3.5%に上がったが、伸びは鈍く、10年以上たっても、女性参画は「依然として進んでいない」(内閣府)のが実情だ。世界経済フォーラムが先月発表した、女性の参画度合いなど男女の平等度を示すジェンダーギャップ指数は、145カ国中101位と世界的にも日本は立ち遅れている。基本計画では、中心施策である「あらゆる分野における女性の活躍」の中で、20年度末までに国や自治体、民間企業などの各分野で指導的地位の女性の占める割合について数値目標を設定。国家公務員は7%(現在3・5%)のほか、市町村の本庁課長級が20%(同14・6%)、民間企業の課長級で15%(同9・2%)とした。指導的地位とは、役所や企業では「課長級以上」と定義される。指導的地位には当たらない国家・地方公務員の「係長級」については30%以上の数値目標が設定された。民間企業の係長級は25%を目標としている。計画作成を担当する内閣府の担当者は「引き続き20年までに30%を目指し、さらなる努力を行うのは当然だが、女性参画が遅れている分野では、現実的レベルで高い目標を設定した」としている。 ◇リーダー育成、不十分 政府が女性の登用に関する数値目標を事実上、下方修正したのは、過去12年の取り組みが不十分だったことを示している。安倍晋三首相は「女性活躍推進」に力を入れてきたが、新スローガン「1億総活躍社会実現」によってその影は薄くなりつつある。2003年の「30%目標」は12年になって安倍首相の下、再び表舞台に登場した。成長戦略の柱に「女性活躍」を掲げ、政府の最重要課題に位置付けた。14年には第2次安倍改造内閣で初の「女性活躍担当相」を設置。社会全体に女性の管理職登用増を呼びかける一方、公務員の女性職員の採用・登用拡大を目指すとともに、男性職員の育休取得促進など霞が関の働き方改革を進めてきた。8月には「女性活躍推進法」も成立した。今になって「20年に30%」目標を断念したのは、これまで指導的地位を担う女性の育成が十分でなかったことを意味する。安倍政権で進んだ女性登用に向けた環境整備は、スタートラインに立ったにすぎないとも言える。ただ、「1億総活躍」の登場で「女性活躍は一時的に盛り上がったが、すでに下降気味だ」との指摘もある。早稲田大学非常勤講師(ジェンダー論)の皆川満寿美さんは「新目標は低い。政治のリーダーシップで取り組みを強化し、『20年に30%』を実現させるべきだ」と指摘する。 *5-3:http://www.saga-s.co.jp/column/ronsetsu/224447 (佐賀新聞 2015年8月31日) 女性活躍推進法 ■実効性上げる仕掛け必要 大企業に女性従業員の採用、登用に関する数値目標設定などを義務づける女性の活躍推進法が成立した。少子高齢化、労働人口減少社会で活力ある社会を目指すには、女性の力が不可欠となる。その意味で企業の取り組みを義務化する法的枠組みの整備は大きい。さらに実効性を上げていくために具体的な仕掛けが求められる。新法では、従業員301人以上の企業に女性登用に関する数値目標と行動計画の策定、公表を義務づけた。各企業は女性の採用比率や管理職比率、男女の勤続年数の差や労働時間の状況などを把握し、改善に向けた取り組みを考えなければならない。公表による緊張感が、企業間の前向きな競争を促すと期待されている。ただ新法だけでは、女性の個性と能力が十分発揮できる環境の整備にはつながらない。働く女性をめぐる格差解消への配慮に欠けている点がいくつかある。一つは男女の賃金格差だ。企業が行動計画策定時に把握すべき項目として盛り込まれていない。2013年の女性一般労働者の平均賃金水準は男性の71・3%。厚労省がまとめた男女間の賃金格差解消のためのガイドラインは「男女の平均勤続年数や管理職比率の差異などが要因」と指摘しており、女性の活躍推進の課題そのものが影を落としている。だからこそ企業が把握すべき項目に盛り込むべきだった。さらに働く女性の半数以上を占める非正規労働者の待遇改善の視点も不可欠だ。低賃金の上、育児休業を取得することも難しいと訴える女性は少なくない。13年度の女性全体の育休取得率83%に対し、女性有期契約労働者は69・8%と1割ほど低い。4割近くの女性が第1子出産を機に離職していることも考慮すると、非正規の女性の環境がいかに厳しいか分かる。新法の実効性を上げるには、法律に盛り込まれなかった課題の改善を促す仕組みづくりを進めることが必要だ。衆参両院での付帯決議でも、「行動計画策定時の男女間の賃金格差の状況把握を任意項目に加える」「非正規労働者の待遇改善のガイドライン策定」など検討するよう言及している。政府は指摘された課題対応を急ぎ、施策の具体化を進めるべきだ。努力義務にとどまった中小企業への働きかけも重要課題となる。限られた人員と経営体力で、労働環境と職場慣行を変えるのは大きな負担ではある。ただ経営者の意識と覚悟、そして工夫次第でうまく変えることはできる。佐賀県内のある中小メーカーでは、子どもの行事や家族の看護のための有給休暇取得を促し、職場の掲示板に有給取得届を張り出すことで取得しやすい環境を整備している。社長は「『休まれると業務が滞る』という考えから『納期に間に合うなら休んでもらってもいい』と割り切るようにした」と語り、発想の転換の大切さを示唆した。こうした事例を広げることが肝要だ。新法成立を、女性の活躍促進という単純な見方で捉えるのではなく、「働き方改革」の出発点と位置づけるべきだ。「長時間労働が美徳」という企業風土を改め、男女関係なく成果を上げる労働者を適切に評価する仕組みを作り上げていきたい。 PS(2016年1月23日追加):このブログの2015.3.21に、私は「女性が発言権を持つためには、教育だけでなく経済力も必要であるため、女性が働きやすい産業を立地させるのが良い」「ペルシャ絨毯を見れば、イスラム女性の能力と根気、4大文明のすごさがわかる」と記載したが、*6のように、中国の習近平国家主席が「ペルシャ絨毯は中国の絹糸とイランの技術の融合だ」とイラン紙に寄稿されたのは興味深い。日本も、ガラス、磁器、農業など、イランの得意技を活かしながら我が国の得意技と連携すると面白くなりそうな分野が多いため、この水素の時代に、中東と言えば眼の色を変えて石油や天然ガスを追いかけまわすのではなく、産業で相互協力すべきだ。 正倉院御物 現代イランのガラス製品 ペルシャ絨毯(じゅうたん):絹でできているため、驚くほど軽い イランの農業:日本と同様、大規模化・機械化・現代テクノロジーの採用による生産性向上が課題 *6:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12173282.html (朝日新聞 2016年1月23日) イラン市場へ進出、解禁 8千万人の消費、魅力 日本制裁解除 政府は22日、イランの核合意の履行を踏まえ、日本の対イラン制裁を解除することを閣議了解した。日本からイランへの投資や輸出の障害が取り払われるため、日本企業は新たなビジネスチャンスを模索する。制裁解除により、日本企業はイランの石油・天然ガス分野に新たな投資ができるようになり、2年を超える貿易保険もかけられるようになる。政府は近く、イランとの投資協定に署名し、ODA(政府の途上国援助)も再開して日本企業の進出を後押しする方針。安倍晋三首相のイラン訪問も検討している。関係改善を急ぐ背景には、イランでビジネスを広げたい日本経済界の期待がある。イランは8千万人近い人口を抱える。かつては油田開発への日本企業の投資やイランからの原油の輸入が活発だったが、これからは新たな消費市場としての期待が大きい。イランでの現地生産向けに部品を供給してきた自動車大手スズキの鈴木俊宏社長は「(輸出の本格的な)再開を検討したい。大きな市場だ」と話す。マツダやいすゞ自動車なども部品供給拡大を検討する。一方、油田など資源開発への投資が再び活発になるかどうかは微妙だ。原油価格が下がり、投資の見返りを期待しにくいからだ。イランで日本主導で開発し、「日の丸油田」と期待されたアザデガンの油田開発は、米国の圧力で2010年に撤退。石油元売り各社も調達先の多角化を進めており、日本の14年度の原油輸入のうちイラン産の割合は5%ほどだ。石油連盟の木村康会長(JXホールディングス会長)は「(イランの原油増産で)チャンスは広がるが、ほかの産油国との関係や経済性も考えて対応する」と慎重な構えだ。 ■動く欧州・中・韓 イラン進出を狙う日本勢だが、ライバルは多い。各国首脳に先駆けて、中国の習近平(シーチンピン)国家主席が22日からイランを訪問。「ペルシャじゅうたんは中国の絹糸とイランの技術の融合だ」とイラン紙に寄稿し、親密さをアピールした。中国は米国が制裁を強化し、日本や欧州の企業が事業を縮小した2011年以降も進出のペースを緩めなかった。その間に乗用車から家電、食料品まで安価な中国製品が浸透した。欧州勢も成果を出している。イラン政府は16日、欧州企業のエアバスから航空機114機を購入すると発表。独ダイムラーは18日、トラックの現地生産でイラン企業と合意に達した。韓国も存在感を見せる。聯合ニュースによると政府は21日、プラントなど輸出企業向けの金融支援、イランと合弁の自動車会社設立などイラン市場への再進出策をまとめた。対イラン輸出を2年で倍増する方針。 PS(2016年1月25日追加): 自民党の宮崎議員が、*7のように、育休を取ると宣言して育休規定のない衆院規則の改正に意欲を見せたことについて、私は、国会議員は従業員ではないため、国会と政党に届けを出せば何日育児休暇を取っても自由であって、これは政界の論理とは関係ないと考える。ただし、育児休暇をとった際のリスクは、男女を問わず自営業と同様に自分で負い、代表である自分が育児休暇をとることのメリットとディメリットを自分で有権者に説明して理解してもらわなければならない。私自身は、一般社会での経験に基づいて(例えば、「一般社会で仕事と育児を両立してみて」「一般の仕事をしながら親の介護をしてみて」「環境や経済を改善したいから」「行財政改革をすべきだから」「差別をなくしたいから」など)、変えるべきテーマと問題意識を持つ人が議員になるべきだと思っているが、若い頃から議員をしている人は、一般社会での矛盾への遭遇経験がない又は少ないのが問題なのである。 また、「男性なら、まず短期間でもいいから育休を取ってみる」とも書かれているが、子育ては十年単位であるため、短期間しか育休をとらなかったり、子育ての大半を妻に任せたりしている男性が、「育児を理解した」などと言うのはおこがましすぎるだろう。 世界の出生率と人口 日本の人口推移 先進国の出生率 米国人種別出生率 (グラフの読み方:産業革命に入った国は、急激な人口増加の後に出生率が下がっており、今後、アフリカなどがこれに続くだろう。先進国のうち、米国の出生率が比較的高いのは、ヒスパニックなど移民の出生率が高いからだと言われており、同じ国でも社会的背景によって出生率が異なる) *7:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12176348.html (朝日新聞社説 2016年1月25日) 国会と育休 「くせに」を排し議論を 自民党の宮崎謙介衆院議員が育休を取ると「宣言」し、育休の規定がない衆議院規則の改正にも意欲を見せたことを受け、賛否両論が広がっている。「『育児は母親の仕事』という社会の空気に風穴をあけてほしい」「男性の育児参加を実践し、範を示してほしい」。国会議員、とりわけ男性が率先して育休をとることで、社会全体の意識改革につながるのでは、との期待がある。一方で「民意の負託を受け、特権も与えられているのに、責任放棄では」「育休制度は雇用者と被雇用者との関係であるもの。自営業者に近い国会議員は、自らの裁量で育児参加すればよい」といった批判もある。それぞれに、一理がある。政界の論理に染まり切っていない若手議員だからこそ、投じることができた一石である。ただちに「正解」を出す必要はないだろう。国会議員が果たすべき役割は何か。有権者は国会議員に何を期待しているのか。国会の内と外でじっくり議論を深めるきっかけにしたい。それにしても、民間企業の男性の育休取得率2・3%(2014年度)は、あまりに低いと言わざるを得ない。「男のくせに」「女だから」。社会にまだまだ根強くある、性別役割分業の意識が要因であることは、間違いないだろう。育児は当然、女性だけがやるものではない。男性が育児を担うことへの社会の理解が低いから、男性の育休取得率が上がらない。上がらないから、「そうしたものだ」と流され、社会の意識も変わらない。この悪循環を断つためには、個々人が「一歩」を踏み出し、実践を積み重ねていくことが大事だろう。男性なら、まずは短期間でもいいから育休を取ってみる。そこで得られた気づきを、友人や同僚に話してみる。そして国会議員の一義的な仕事は、そのような動きを支え、男女を問わず、子どもを産み育てやすい社会を築くための法整備であり、制度づくりである。出産と育児をめぐる問題は山積している。妊娠や出産で不利益な扱いを受けるマタニティーハラスメント。経済的な理由で出産をあきらめる若者。出口の見えない待機児童問題……。これらの解決が急務だという認識は、性別や世代、党派を超えて共有できるはずだ。育休問題にとどまらない、国会の主体的な取り組みに期待する。
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2016,01,12, Tuesday
2015.12.17日経新聞 2015.11.27 朝日新聞 家族制度は、夫婦のためだけにあるものではなく、発言権のない子の権利保護も重要であるため、私は、夫婦と子の両方の視点から記載する。なお、当然のことながら、私は家制度を擁護する者ではない。 (1)2015年12月16日の最高裁判決について 1)夫婦の同姓・別姓は男女平等の問題ではないこと 最高裁は、*1-1、*1-2、*1-3のように、①夫婦は同じ姓を名乗るとする民法750条の規定は合憲 ②夫婦同姓は日本社会に定着しており合理性がある ③改姓による不利益は通称使用が広まることで一定程度は緩和される とした上で、④選択的夫婦別姓制度に合理性がないと断ずるものではなく、制度のあり方は国会で論ぜられ、判断されるべき事柄だ としている。 私も、民法750条は「夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫又は妻の氏を称する」と規定されているため女性差別ではなく、妻の姓になった男性にも同じ不便があると考える(実際に、戸籍上は奥さんの姓に変更して通称使用している男性から不便が多いとの苦情を受けた)。しかし、姓というのはFamily Nameであるため、Familyを判別するには同姓である方が便利であり、夫婦別姓を選択した場合には子の姓がどうなるのか曖昧で、夫婦別姓同士の夫婦が子連れで再婚した場合にも家族の姓がバラバラになる可能性があるため、*3の国連改善勧告はあるが、私は法律的夫婦別姓がよいとは思わない。 そのため、婚姻で姓が替わった人は通称使用を可能とし、戸籍謄本で証明すればパスポートや預金口座はじめ、あらゆる法律行為で堂々と通称使用することを可能にすれば、*2-2のようなキャリアの断絶をはじめとするすべての不便が解消され、子の姓の心配をせずにすむ。ちなみに、私が「広津素子(戸籍名:平林)」という旧姓の通称を使って訴訟しようとした時には、佐賀地裁唐津支部の裁判官が、通称使用するキャリア女性に慣れていなかったせいか、偽名(!!)を使っているようなことを言った。つまり、通称使用したために信用が落ちたり、不便な思いや嫌な思いをさせられたりするという差別をやめてもらわなければ、堂々と通称使用することができないのだ。 2)女性だけの再婚禁止期間は女性差別で違憲だということ 最高裁は、「女性に離婚後6カ月間の再婚禁止期間を設けた民法733条の規定のうち、100日を超える部分は違憲」としている。しかし、この規定の立法趣旨である「①子の父親が誰かを確定する」「②父親としての責任を持たせる」という点について、①は、DNA鑑定や血液型などを組み合わせれば、父親をかなり正確に判定することができるため、違憲なのは100日を超える部分だけではない。また、②についても、自分が父親だと名乗り出ている男性がいる場合に、前夫が父親の責任を果たすとは考えられないため、状況を勘案すれば、100日以内でも子の帰属を新夫婦に決めてさしつかえない筈だ。 しかし、女性の方も、出産は子の戸籍が複雑にならない状況の下で行うのが、*2-1とともに、自分の子に幼い時から悲しく複雑な思いをさせないため、必要なことだ。 (2)問題の解決 *3のように、国連の女性差別撤廃委員会が、2003年に「規定は差別的だ」と廃止を求め、2009年にも再勧告した理由は、結婚した時に9割のカップルで女性が姓を変更するという事情に基づいているが、残り一割の養子男性が無視されてよいわけはない。また、現在では、1996年当時とは異なり、通称使用も次第に認められてきているため、この通称使用を不便や差別がないように事務的に徹底させれば、民法を改正して夫婦別姓を認めるよりも、よい解決策になると私は考える。 なお、私は、「家族の一体感が損なわれる」というよりも、(1)で述べたように、Family NameがバラバラではFamily Nameとして機能せず、子にもいらぬ苦労を与えることなどを総合的に考えると、徹底して不便や不利なく通称使用できるようにした方が、あらゆる面で問題が起こらないと考える次第だ。 *1-1:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20151217&ng=DGKKASDG16H72_W5A211C1MM8000 (日経新聞 2015.12.17) 夫婦同姓規定は合憲 最高裁「国会、別姓議論を」 再婚禁止100日超は違憲 夫婦は夫か妻の姓に合わせるとした民法の規定が憲法に違反するかが問われた訴訟の上告審判決で、最高裁大法廷(裁判長・寺田逸郎長官)は16日、合憲とする初判断を示した。離婚した女性は6カ月間再婚できないとの規定を巡る別の訴訟では「100日を超える部分は違憲」とした。違憲立法審査権(総合2面きょうのことば)に基づき、最高裁が法律の規定を違憲と判断したのは戦後10件目。夫婦同姓を法律で義務付ける国は世界の中で日本だけとされ、国連の委員会から是正を求められている。大法廷は社会に定着していることを重視し、合理性があると結論づけた。一方で、職場などで旧姓を使う女性が増えている現状を踏まえ、選択的夫婦別姓制度を採用するかどうか、国会で議論するよう求めた。夫婦別姓訴訟の判決は裁判官15人のうち10人の多数意見。女性3人を含む5人の裁判官が「規定は違憲」とする反対意見を付けた。大法廷は判決理由で、「姓は家族の呼称としての意義があり、1つに定めることにも合理性が認められる」と判断した。現実には、女性が改姓することが多く、アイデンティティーの喪失感を抱く場合があることは否定できないとしつつ「通称使用が広まれば、不利益は一定程度緩和される」と指摘した。選択的夫婦別姓制度に関しては「合理性がないと断ずるものではない」と言及し、制度のあり方は「国会で論ぜられ、判断されるべきだ」とした。再婚禁止期間訴訟の違憲判断は15人の裁判官の全員一致。2人が「100日以内も違憲」と意見を述べた。大法廷は「父子関係を巡る紛争防止のために意義がある」としたが、100日超の部分は「医療や科学技術の発達などで遅くとも(原告が婚姻届を出そうとした)2008年当時は違憲になっていた」と指摘した。賠償請求は「当時違憲だったことが明白だったとはいえない」として退けた。問題となった2つの規定は明治時代から続いている。別姓訴訟は11年に男女5人、再婚禁止期間訴訟は08年に岡山県の女性が国に損害賠償を求めて起こした。 ●最高裁判決の骨子 【夫婦別姓訴訟】 ○夫婦は同じ姓を名乗るとする民法750条の規定は合憲 ○夫婦同姓は日本社会に定着しており合理性がある。改姓による不利益は通称使用が広まることで一定程度は緩和される ○選択的夫婦別姓制度に合理性がないと断ずるものではない。制度のあり方は国会で論ぜられ、判断されるべき事柄である 【女性の再婚禁止期間訴訟】 ○女性に離婚後6カ月間の再婚禁止期間を設けた民法733条の規定のうち、100日を超える部分は違憲 *1-2:http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201512/CK2015121702000118.html (東京新聞 2015年12月17日) 夫婦別姓認めぬ規定「合憲」 最高裁初判断 「家族の姓一つに合理性」 明治時代から家族のあり方を定めてきた民法の二つの規定について、最高裁大法廷(裁判長・寺田逸郎(いつろう)長官)は十六日、初の憲法判断を示した。夫婦別姓を認めない民法七五〇条が憲法違反かどうかが争われた訴訟では、「結婚時に夫または妻の姓(氏)を名乗る」との規定を「家族の呼称を一つに定めることには合理性があり、女性の不利益は通称使用で緩和できる」と、合憲と判断した。女性のみ再婚を六カ月間禁じる民法七三三条をめぐる訴訟では、百日を超える部分を「生まれた子の父の推定には不要で違憲だ」とした。最高裁が法律の規定を違憲としたのは戦後十件目。再婚禁止期間については、国会は今後、百日に短縮する法改正をする。最高裁は夫婦別姓訴訟の判決で、「いずれの姓を名乗るかは夫婦の協議に委ねており、規定には男女の形式的な不平等はなく、憲法違反とはいえない」とした。ただ、希望すれば結婚前のそれぞれの姓を名乗れる「選択的夫婦別姓制度」にも一定の合理性を認め、「どのような制度にすべきかは、社会の受け止め方を踏まえ、国会で論じられ判断されるべきだ」と、国会での積極的な議論を促した。現在の規定が「合憲」との判決は裁判官十五人のうち十人の多数意見。女性裁判官三人は全員が違憲と判断し、「多くの女性が姓の変更による不利益を避けるため事実婚を選んでいる。別姓を全く認めないことに合理性は認められない」などとした。判決は「姓の変更で不利益を受けるのは女性の場合が多いと思われる」と認めたが、旧姓の通称使用が一般的になっていることなどから、「個人の尊厳と男女の平等に照らして合理性を欠く制度とは認められない」と結論づけた。夫婦別姓をめぐっては、法相の諮問機関の法制審議会が一九九六年、選択的別姓制度の導入を盛り込んだ民法改正案を答申した。しかし、自民党などから「家族の一体感が壊れる」といった批判を受け、法改正は棚上げされてきた。訴訟の原告は東京都、富山県、京都府の男女五人。国会が選択的別姓制度を導入するための法改正を行わず精神的苦痛を受けたとして、計六百万円の損害賠償を求めた。二〇一三年の一審東京地裁判決は「結婚後、夫婦が別姓を名乗る権利は憲法上、保障されていない」として請求を棄却。昨年三月の二審東京高裁判決も規定を合憲と認め、一審判断を支持した。 *1-3:http://www.saga-s.co.jp/column/ronsetsu/260642 (佐賀新聞 2015年12月17日) 夫婦別姓と再婚禁止、政治主導で議論深めよ 夫婦別姓を認めず、女性にだけ離婚後の再婚禁止期間を6カ月とする民法の規定について、最高裁が初めて憲法判断を下した。夫婦同姓規定は「形式的な不平等はなく、社会に定着している」などとして合憲と判断、再婚禁止期間は「100日を超える部分は違憲」との立場を示した。ただ夫婦別姓は「国会で論じられるべき」と立法で解決すべきとの意見を付した。政治が主導して時代に合ったあり方の議論を深めるべきだ。民法は、結婚した男女が夫か妻のいずれかの姓を共に名乗るよう定め、子どもの親をめぐる混乱を避けるため女性にだけ離婚から6カ月経過しなければ再婚できないと規定する。「家制度」を尊重した明治民法で設けられた。再婚禁止規定に関しては、期間中に生まれた子は前夫の子と扱われていた。このため出生届をためらって子どもが無戸籍となるケースもあった。現在はDNA鑑定の精度は向上している。こうした医療や科学技術の進歩を挙げて100日を超える部分を「過剰な制約」とした最高裁の判断は、一歩前進といえる。一方、夫婦同姓については、改姓によって「アイデンティティーの喪失感を抱いたり、社会的信用や評価の維持が困難になったりするなどの不利益を受けることは否定できない」と一定の理解を示しながらも、旧姓使用で「緩和される」として原告の訴えを退けた。夫婦どちらの姓にするのかは自由だが、現実的には妻が夫の姓を名乗るケースが9割以上を占める。最高裁が指摘するように、旧姓の使用を認める職場は広がっている。ただ生活の中では、銀行口座や運転免許、健康保険証など戸籍上の姓しか認められない場面が少なくなく、煩わしさを訴える声があるのも事実だ。また改姓によって自分の実家の名前が途絶えることに心痛める女性もいる。こうした煩わしさや苦痛を避けようと事実婚を選ぶケースもある。世界を見回しても、日本以外に夫婦同姓を強制する制度はほとんどない。かつてドイツやタイが夫婦同姓を採用していたが、法改正を進めて選択制を導入している。国連の女性差別撤廃委員会は2003年と09年に、これらの規定を差別的な規定と批判し法改正するよう勧告してきた。科学者らでつくる日本学術会議も昨年6月、選択的夫婦別姓制度の導入や女性の再婚禁止期間の短縮、または廃止などを提言している。こうした意見がある中、世論は割れている。2012年の政府の世論調査では、選択制導入に反対が36・4%、賛成が35・5%だった。ただ男女とも若い世代ほど賛成派が多く、20代が47・1%、30代は44・4%だった。結婚で問題と向き合うことになる当事者の声は重く受け止めるべきだろう。法相の諮問機関の法制審議会が1996年に選択制導入などを盛り込んだ民法改正案を答申したが、保守系国会議員の抵抗で法案提出できなかった経緯がある。女性の社会進出が進み、家族のあり方も多様化している。一つの形に押し込めるのではなく、多様性を認める社会環境をつくることが個人の幸福追求を支えることにつながる。最高裁の判断を契機に社会全体で議論を深めたい。 <姓、アイデンティティー、キャリアの蓄積> *2-1:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20151217&ng=DGKKASDG16H7K_W5A211C1CC100(日経新聞2015.12.17)夫婦別姓願う女性落胆、原告「立法へ新たな議論を」 夫婦や家族のあり方をめぐって注目された2つの司法判断が16日、最高裁で言い渡された。夫婦別姓への期待を膨らませた原告らは落胆したが、判決は姓などを巡る制度は「国会が判断すべきだ」との問題提起もした。多様な夫婦の形と法を巡る議論のバトンは、司法の場から立法府に戻ることになる。「政治でもダメ、司法に訴えてもダメだった。今後どうしたらいいのか」。判決後、東京都内で記者会見した原告の1人、行政書士の小国香織さん(41)の表情は硬かった。2006年の結婚前、夫とともに「姓を変えたくない」と考えていた。入籍をしない「事実婚」の選択肢も頭をよぎったが、「夫が事故や病気で手術が必要な際、家族としての意思表示ができないかもしれない」と迷い、小国さんが改姓した。夫の姓は「丹菊」。きれいな字面が気に入っている。しかし小国香織として生まれ、約30年間過ごしてきた。「丹菊香織は全くの別人」との違和感を抱えながら生きてきた、という。日常生活や職場では小国姓を使い、遺言状の作成など公的書類への署名は丹菊。依頼人から「誰かなと思っちゃった」と言われたこともある。この日の判決では、子供への影響も同姓を合憲とする根拠とされた。保育園児の長女(6)には自身の選択の理由や裁判のことも話している。長女は「結婚しても丹菊のままがいい」と話しているといい、会見で小国さんは「(判決を)娘にどう説明したらいいか」と肩を落とした。原告からは、裁判官5人が違憲としたことを評価する声も上がった。加山恵美さん(44)は「初回の挑戦にしては頑張ったのではないか」と話した。30代の吉井美奈子さんは「訴訟を通じて多くの人に理解を得られたことは前進」と話した。原告団長の塚本協子さん(80)は「別姓は世界では当たり前。認められなくて、つらい」と涙を流しながらも、「婚外子の法律が変わるまで26年かかった。諦めないで引き継いでほしい」と前を向いた。「5人(の裁判官)が違憲と言ってくれた。その違憲に将来を託したい」。判決には国会での議論を促す文言も盛り込まれた。来年2月に国連の女性差別撤廃委員会による3度目の日本の審査が行われることもあり、榊原富士子弁護団長は「ここからが立法に向けた新たなスタートだと感じている」と話した。 *2-2:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20151217&ng=DGKKASDG16H6G_W5A211C1CC1000 (日経新聞 2015.12.17) 働く女性「職場の不便見ていない」「旧姓での業績こだわり」 職場などでは、戸籍上の姓と旧姓を使い分ける女性が増えている。ただ実際には不便さを感じている人も多く、柔軟な制度を求める声があがる。東京・霞が関で働く30代の官僚は2011年に結婚。職場では旧姓をそのまま使ってきた。中央省庁や自治体は「出勤簿」「職員録」などの内部文書で旧姓使用を認めている。ただ公文書を作る場合には戸籍上の名前で署名、押印しなければならない。この女性は「使い分けに不便さを感じることもある」と打ち明ける。近い将来、地方の関連機関に出向する可能性があるという。幹部になれば署名する機会も増える。「出向したら職場の呼称も戸籍名にする。初めての勤務地では呼称と公文書の名前を同じにしたほうが周囲が混乱しない」。都内に住むウェブディレクターの女性(31)は結婚して2年がたつ。「夫の姓を名乗るのは違和感がある」と仕事では旧姓を使い続けている。だが、生活では銀行口座や健康保険証など、戸籍名に変えざるを得ない場面に直面する。そのたびに「女性側が一方的に負担を強いられている」と感じる。判決は国会での議論を促したが「判断を国会に丸投げした。裁判官はきちんと実態を見ていない」と憤った。内科医で、政策研究大学院大学教授の鈴木真理さん(61)の旧姓は「堀田」。国内で論文を発表する時は「鈴木(堀田)真理」と両方を併記する。海外に投稿する論文には堀田しか使わない。旧姓にこだわるのは結婚前の名前で認知されてきた研究者としての業績が途切れないようにするためだ。鈴木さんは「司法の英断がなかったのは残念。手間がかかるけど、もう慣れた」と今後もこれまでのスタイルを続けていく。千葉大病院神経内科講師の三澤園子さん(41)は「医師免許を取った時の名前で医療を続けていきたいという思いから旧姓を使っている」。三澤さんらは千葉大の医局出身の女性医師50人で「立葵の会」を結成し、女性医師が仕事を長く続けていくための支援活動を展開する。その一環として結婚後の旧姓使用などに関するマニュアルも作成した。医師免許は旧姓のままでもいいが、国への登録は戸籍名に変更するなど複雑で、「名前をめぐって悩む女性医師は多い」という。 <国連の勧告> *3:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20151217&ng=DGKKASDG16HBF_W5A211C1CC1000 (日経新聞 2015.12.17) 「差別的」国連が改善勧告 夫婦同姓と女性の6カ月間の再婚禁止を定めた2つの規定は、明治時代の「家制度」に基づいて民法で規定され、戦後の改正でも残り続けた。1996年に法制審議会(法相の諮問機関)が見直しを答申したが、「家族の一体感が損なわれる」などの反対意見で実現しなかった。夫婦別姓に前向きだった民主党政権下でも法務省が法改正を模索したが、法案提出にすら至らなかった。しかし世界的にも珍しい規定に国際世論は厳しい目を向けている。国連の女性差別撤廃委員会は2003年、「規定は差別的だ」と廃止を求め、09年にも再勧告した。それでも日本は動かず、昨年「法改正は国民の理解を得て行う必要がある」と釈明。同委員会は来年2月、日本の次回審査を予定している。別姓を認めなかった今回の判決も踏まえ、あらためて厳しい内容が勧告される可能性もある。 PS(2016年1月14日、15日追加):*4-1のように、「人口減少が経験したことのないスピードと規模で起こり、国が滅びかねない」などと大げさな警笛を鳴らし、*4-2のように、厚労省がインターネットで公開している広報漫画で「女性は年金制度維持のために、結婚してたくさん子どもを産めばいい」などと主張しているのは、政治と行政を挙げての著しい人権侵害だ。そもそも、保育の質と量は、私が聞いて知っているだけでも1960年代から問題視されていたにもかかわらず、厚労省が対応を怠ってきた上に、このようなジェンダー・キャンペーンを行うのは、自己実現したいと思って努力を積む真面目な女性の足を引っ張り、その結果として、彼女らに活躍の舞台として日本を選ばない決断をさせる。また、*4-3のように、知事も結婚支援や出産支援に突っ走っているが、これらは、戦前の「産めよ増やせよ」論を想起させる。そして、このように政治や行政の女性に対する意識が低いのが、我が国の一貫した問題なのだ。 なお、日本の人口は、下のグラフのように、明治維新(産業革命の始まり)の後に急激に増加したもので、明治維新当時の日本の人口は3000万人程度であり、現在では地球上のすべての国にその産業革命が浸透しつつあり、日本の食料自給率は39%しかない。そのため、食料を例にとれば、生産性が上昇しない限り、日本の国土が養える人口は5000万人程度(1.3億人x39%)で、現在は人口の生物学的調整時期ということになる。つまり、問題解決するには、経緯と現状を広い視野で総合的に考えて、まず本質的な原因を把握しなければならないのだ。 日本の人口推移と出生率推移 世界の人口推移 食料自給率推移と国際比較 (*グラフの読み方:日本の近年の出生率は、太平洋戦争後の第一次ベビーブームとその子供世代が出産適齢期を迎えた第二次ベビーブーム以外は一貫して減少しているのに、最近になって急に少子高齢化を言いたてているのは、行政のご都合主義だ。また、日本の食料自給率は一貫して下がっているが、他の先進国はそうではないため、食料自給率低下は産業革命の結果ではなく政治・行政による産業政策失敗の結果と言える。そして、世界は人口爆発の時代に突入しているため、これは大きな問題だ。) *4-1:http://qbiz.jp/article/78567/1/ (西日本新聞 2016年1月14日) 石破担当相が地方創生を語る 九州の企業や自治体の在京責任者でつくる「二水会」(西日本新聞社主宰)の1月例会が13日、東京都内であり、石破茂地方創生担当相が「地方創生の課題と展望」と題して講演した。石破氏は、国内の人口減少を急降下するジェットコースターに例え「経験したことのないスピードと規模で起きる」と説明。地方創生に失敗すると、国が滅びかねないと述べた。政府は全自治体に、人口減対策や将来像をまとめた総合戦略を3月までに策定するよう求めている。石破氏は、行政任せではなく、企業や大学などによる「市民総参加」で作り上げる計画こそ、地域活性化の効果が高いと強調した。JR九州の「ななつ星in九州」の乗客が感動して涙を流したことを紹介し、「九州は魅力にあふれている。地方の創意工夫をどう支援していくかが大切だ」と締めくくった。 *4-2:http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2015020802000124.html (東京新聞 2015年2月8日) 「結婚してたくさん産めばいい」 年金PR漫画 批判集中 公的年金制度の必要性を説明しようと、厚生労働省がインターネット上で公開している広報用漫画の内容が波紋を広げている。登場人物の若い女性が制度維持には「結婚してたくさん子どもを産めばいい」などと発言し、結婚・出産という個人の選択に国が口を挟んでいるように受け取れるからだ。国会でも取り上げられ、関係者からも「出産は制度維持が目的ではない」と反発の声が出ている。漫画は「いっしょに検証!公的年金」と名付けられ、二〇一四年五月から厚労省のホームページ(http://www.mhlw.go.jp/nenkinkenshou)で公開されている。第0~11話で構成され、主人公の姉妹が解説役の女性の話を聞きながら制度の意義や仕組み、財政状況などを理解する内容だ。問題の場面は最後の第11話。少子化が年金制度の維持に影を落としていると知った姉が「あんたが結婚してたくさん子どもを産めばいいのよ!」と妹に発言。別のコマでは、解説役の女性も姉の手を引っ張り「バリバリ働いて今週のお見合いパーティも頑張りましょー!」と叫ぶ場面で終わる。一月三十日の衆院予算委員会では、野党議員が漫画を取り上げ「女性が頑張って子どもを産めば問題は解決するのか」と追及。塩崎恭久厚労相は「上手(な表現)ではない」と釈明したが、今月三日の記者会見で「女性をやゆする意図はない」とこのまま掲載する考えを示した。厚労省年金局によると、インターネット上では一月中旬から漫画への関心が拡大。一日数百件にとどまっていたホームページへのアクセスは、最多で一日約八万九千件に上った。「(戦時中の)『産めよ殖(ふ)やせよ』のような発言だ」「産むか産まないかは個人の自由だ」という批判が掲示板などに書き込まれた。少子化問題に詳しい日本総研の池本美香主任研究員は「国の制度維持のために産むという印象を受け、違和感を覚える」と指摘。「出産には、子育て環境の整備や男性の育児参加の促進など解決すべき問題が多い。女性が産めばいいというように単純化されているのは問題だ」と話した。女性の権利向上に取り組む市民団体「女性と人権全国ネットワーク」の近藤恵子共同代表は「経済的、身体的な事情で、産みたくても産めない人が多い中、配慮が足りない」と批判した。 *4-3:http://www.saga-s.co.jp/news/national/10201/178845 (佐賀新聞 2015年4月20日) 12知事同盟、子育て支援を提言、有志で発足、国に働き掛け 有志の知事12人が20日、「地方創生」関連の政策を提言するグループ「日本創生のための将来世代応援知事同盟」を立ち上げた。当面の課題として、地方での女性や若者の就業や子育ての支援策を検討し、実現を国に働き掛けていく。2016年度政府予算に反映させるため、岡山市で5月22~23日に開く次回会合で、提言案を取りまとめる。宮城、福島、長野、三重、滋賀、鳥取、岡山、広島、山口、徳島、高知、宮崎の各県知事が参加。年齢は40~54歳で若手が多いのが特徴だ。地方大学の強化や結婚支援、子どもの多い世帯の経済的負担の軽減なども議論する。 PS(2016年1月15日追加):*5の松崎市長の「出産適齢期は18歳から26歳を指すそうだ」という発言も、これまでの学説と異なる悪乗りした警鐘だと思っていたが、やはり日本産科婦人科学会が、「学会として『出産適齢期は18歳から26歳を指す』と定義した事実はない」とコメントしている。なお、「妊娠適齢期は35歳頃まで」というのは、「35歳を過ぎるとダウン症の率が上がる」と前から言われているからだが、それでも42歳の母親で2.5%弱しかない。 母体年齢別のダウン症発生率 母体年齢別の妊娠トラブル *5:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12159682.html (朝日新聞 2016年1月15日) 出産適齢期発言、学会が定義否定 浦安市長の「18~26歳」 千葉県浦安市の成人式で松崎秀樹市長が「出産適齢期は18歳から26歳を指すそうだ」と発言したことを受け、日本産科婦人科学会は14日、「学会として『出産適齢期は18歳から26歳を指す』と定義した事実はない」とするコメントを発表した。学会がまとめた冊子では、「妊娠適齢期は35歳ごろまで」としている。 PS(2016年1月17日追加):*6のように、「一億総活躍」と称して不妊治療に助成するのは、「女性は妊娠で活躍してほしい」と言っているようでおかしい。何故なら、上記のように、不妊には生物学的理由が存在する場合が多く、不妊であることを悩ませて無理に妊娠させようとする社会は、個人の生き方を大切にしない人権侵害社会だからである。また、一人親家庭を経済的に支援するため貸付制度を設けるというのも、何を目的に貸付を行い、借りた資金の返済能力があるのか疑問であるため、「一人親でもよいから子どもさえ産めばよい(子どもに対する人権侵害)」というような政策誘導や世論の惹起をやめるべきだ。また、「介護離職ゼロ」は必要だが、それには、介護休業中の給付金を賃金の67%に上げて「(主に)女性は家族介護で活躍してもらう」などという被用者のごく一部しか利用できない政策よりも、介護保険制度を充実して誰でも安心して働けるようにする政策の方がよほど重要である。 *6:http://qbiz.jp/article/75400/1/ (西日本新聞 2015年11月21日) 「総活躍」へ不妊治療助成 ひとり親家庭支援の貸付制度も 「1億総活躍社会」に向けた政府の緊急対策案が21日、判明した。2020年代半ばに「希望出生率1.8」を実現するため不妊治療への助成を拡充するほか、ひとり親家庭を経済的に支援するため貸付制度を設ける。20年代初頭の「介護離職ゼロ」を目指し、特別養護老人ホーム(特養)などの施設整備を加速させ、介護休業中の給付金を賃金の67%に上げる方針も盛り込んだ。政府は、閣僚や有識者による国民会議(議長・安倍晋三首相)を26日に開き、緊急対策を決定する。年内に編成する15年度補正予算案や16年度当初予算案に反映させる。 PS(2016.1.19追加):首都圏の大型団地は、昭和30年(1955年)頃から建設され始め、50~60年経過しているものも多く、住民は高齢化している。しかし、建設当初は、団地の中に保育園、小学校、診療所があり、現在では、交通が便利で環境の良い場所になっているものが多いため、建て替えれば住環境を完璧にできるだろう。そのため、*7-1のように、介護サービス施設などを誘致して地域の医療福祉拠点にするのもよいが、それだけではなく、古い大型団地をバリアフリーの高層団地に建て替えて、これまでの住民だけでなく子育て中の夫婦や独身者、学生も入れるようにし、診療所、訪問看護・介護サービス、家事援助サービス、保育所、学童保育、スーパーやレストラン等を敷地内に設ければ、空き家対策になるだけではなく、全世代の人にとって住みやすい団地となる。何故なら、現在は病児保育も不足しているが、診療所、訪問看護・介護サービスは、高齢者に限らず単身者や病児にも使える上、家事援助サービス、保育所、学童保育、近くのスーパー、レストラン、宅配のような便利な生活ソフトは、共働き家庭や一人親家庭にも不可欠だからだ。なお、*7-2のように、北京は団地の4割で電気自動車の充電スタンドが設置済だそうだが、日本は最初に電気自動車を実用化したにもかかわらず、的外れな政策により出遅れた。しかし、どの自治体にも、このような団地やマンションはあるため、今後の工夫が必要だ。 2016.1.19、2016.1.16日経新聞 都内の古い大型団地 中国最大の太陽光充電施設 *7-1:http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20160119&ng=DGKKASFS18H4E_Y6A110C1EE8000 (日経新聞 2016.1.19) 大型団地を福祉拠点に 住宅10年計画で国交省、高齢化、地域と連携 国土交通省が2016~25年度までの10年間の住宅政策の方向性を示す「住生活基本計画」の原案が18日、明らかになった。独立行政法人の都市再生機構(UR)が全国に抱える大型団地のうち150カ所程度に介護サービス施設などを誘致し、地域の医療福祉拠点に転用するのが柱だ。不動産市場の活性化に向け、中古住宅の流通規模を25年に8兆円(13年は4兆円)へ倍増する目標も掲げる。国交省は住生活基本法にもとづき、同基本計画をおおむね5年に1度見直している。見直し案を22日開催する有識者会議に提示した上で個別分野の詰めを進め、3月にも新計画を閣議決定する。「少子高齢化への対応」と「マンション・団地の老朽化対策」、さらに全国に広がる「空き家をどう抑えていくか」という3つを優先課題にすえる。 ●URの150物件で 高齢化対策では、URが大都市圏に持つ1000戸以上の約200団地について、25年までに150団地程度を地域の医療福祉拠点にする。在宅訪問型の医療や介護サービスを受けやすいように関連施設をUR団地内に誘致したり、近くの既存施設と連携し、高齢者が自立して生活できる環境をつくる。すでに千葉県柏市の豊四季台が東大とも連携して在宅医療や介護予防強化を目指した街づくりに取り組むなど、41団地が福祉拠点化の計画に着手している。新計画で対象の団地を大幅に広げる。これとは別に国交省などが管轄する「サービス付き高齢者向け住宅」(サ高住)のうち、デイサービス施設などの高齢者生活支援施設を併設した住宅の割合を、25年に9割(14年で77%)にする目標も設ける。老朽マンション対策では、マンション建て替え件数(1975年からの累計)を25年に約500件(14年で約250件)に増やす計画だ。マンション建て替えの法的手続きは、代表的な「区分所有法」で所有者の5分の4の合意が必要。規制のハードルが高く、建て替えのペースは鈍いのが実情だ。 ●空き家対策推進 国交省は老朽マンションの建て替えを促すため、今通常国会に提出する方針の「都市再生特別措置法改正案」に、自治体が再開発事業と位置付けると合意条件を所有者の3分の2に緩和する内容を盛り込む。老朽化した中古住宅・マンションの修繕などを進めるには、中古市場を活性化して別の買い手に移して行く必要がある。具体策として、仲介契約時に専門家が老朽化をチェックする住宅診断をおこなうなどして、その内容を購入者に説明する仕組みを検討している。これにより中古物件の流通市場を25年に8兆円(13年で4兆円)に倍増させ、リフォーム市場を同12兆円(同7兆円)に拡大する方向だ。国交省は今通常国会に提出する宅地建物取引業法改正案にこうした内容を盛り込む方針だ。高齢化で増え続ける空き家の対策も推進する。昨年5月に全面施行された空き家対策特措法にもとづき、各地の状況に応じた「空き家等対策計画」をつくる市区町村数を20年に全国の約8割(14年でゼロ)にする。 *7-2:http://qbiz.jp/article/78922/1/ (西日本新聞 2016年1月19日) 団地の4割で電気自動車の充電スタンド設置済 北京 北京市住宅建設委員会はこのほど、2015年11月の時点で、市内の団地総数の4割にあたる2108カ所の団地に新エネルギー乗用車の充電スタンドを設置したことを、公式サイト上で明らかにした。人民網が報じた。電気自動車を購入した住民が居住地の不動産管理会社に充電スタンドを設置してもらうには、駐車スペースの財産権あるいは長期借用権を保持し、居住する団地の電気容量が十分であるという2つの条件を満たす必要がある。今のところ、団地内に設けられている自家用充電ポールは、すでに8312基に達した。北京市住宅建設委員会と北京市科学技術委員会は、駐車スペースの数が少なく、充電スタンドの設置が難しいコミュニティが頭を抱える充電スタンド設置問題を解決するために、「移動充電車の団地進出」プロジェクトを展開した。「移動充電車」は、「カーバッテリー充電器」のように、同設備が設置されている団地では、オーナーが予約して自車の駐車スペースで充電をすることができる。計画によると、北京市は年内に、このような移動充電設備を500台供給する見込み。 PS(2016年9月29日追加):九州の銀行が「女性行員の方、旧姓使用OKです」と言うのはかなりの進歩だが、養子に行った男性も旧姓を使用したいそうだ。さらに、預金通帳は戸籍名しか使えないが、口座を開く時に戸籍謄本などで証明すれば旧姓の通称を使って口座を開けるようにすべきで、そうしなければ通称で給料や年金を受け取ることができない。また、手続を簡単にするためには、旧姓を通称使用する人は戸籍謄本で証明して住民票に使用する通称を記載しておき、どの公文書にも通称を使用することができるようにすべきである。 *8:http://qbiz.jp/article/94904/1/ (西日本新聞 2016年9月29日) 女性行員の方、旧姓使用OKです FFG3行 営業活動に配慮 ふくおかフィナンシャルグループ(FFG、福岡市)は10月から、傘下の福岡(同市)、熊本(熊本市)、親和(長崎県佐世保市)の3行で、女性行員が結婚後も旧姓を引き続き使用できる「旧姓使用制度」を導入する。地方銀行では珍しい取り組みという。銀行では、顧客の生命保険や損害保険の契約書を作成する際、行員の本名も記載する必要があることなどから、女性行員は結婚後、全員が新たな姓を名乗っていた。だが営業部門などで活躍する女性行員が増え「名刺やメールアドレスが変わることで、顧客との連絡などに不都合が生じる」といった女性行員の声に対応した。今後は結婚時に旧姓使用も選べるようになる。FFGは2014年、女性幹部や管理職を18年までに約2倍に増やす数値目標を設定。幅広い分野で活躍する女性行員の増加を目指している。同様の旧姓使用制度は、メガバンクや横浜銀行、北洋銀行(札幌市)などで導入されている。
| 男女平等::2015.5~2019.2 | 01:28 PM | comments (x) | trackback (x) |
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