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2016.12.9 教育・科学とカジノについて (2016年12月10、13、26日、2017年1月1、2、9日に追加あり)

   カジノの課題     2011年中核都市の   全国学力テスト順位   平均点の国際比較
2016.12.7西日本新聞  生活保護受給率                   2016.12.6佐賀新聞

(図の説明:カジノとは日本語で賭博のことで、犯罪を起こさせるきっかけになったり、普通の人を破綻させたりするもので、破綻してしまった人は生活保護で救助するしかない。大阪市の生活保護受給率は高止まりしているが、人を仕事で成功させるか、生活保護受給者に追いやるかは、小さいころからの教育の積み重ねによるため、カジノを含む統合型施設に家族で遊びに行き、親がカジノをしているところを子どもに見せるのは、教育上よくない。そのため、カジノを含む統合型施設を建設して一時的に雇用を増やすよりも、子どもの学力を上げ、正道から外れないように教育して、真の産業を発展させることが、本人のためにも日本のためにも重要だ)

(1)カジノ法案とそれを進めようとしている人の品位
 カジノを含む統合型リゾート(Integrated Resort、略称IR)の整備を政府に促す「カジノ解禁法案」が、*1-1のように、自民党・日本維新の会などの賛成多数で衆院本会議で可決されたが、これは、カジノ、宿泊施設、国際会議場からなるIRの整備を推進するための基本法案で、法律の施行後1年以内をめどに必要な法制上の措置を講じることを政府に義務づけるのだそうだ。

 しかし、カジノを含む統合型リゾートに子どもを連れて行くのはお薦めではなく、子連れの客は減ると思われるため、*2-2のように、長崎県がハウステンボスを候補地と想定して客が増えると考えているのは、教育的配慮にも品位にも欠ける。また、カジノを含む統合型リゾートにすれば、学会や国際会議など見識の高い会議の需要はなくなるため、施設全体のレベルが下がると考えた方がよい。

 さらに、カジノ解禁には、①刑法の賭博罪に抵触 ②治安の悪化 ③ギャンブル依存症の増加(パチンコ・競馬などの依存症患者は既に約536万人) ④反社会的勢力のマネーロンダリング(資金洗浄)への懸念 などの問題点があるとされているが、ギャンブルは負ければさらにまり込むものであるため、ギャンブル依存症はギャンブルがある限り対策をとったからといってなくならない。

 にもかかわらず、*2-2のように、観光振興や雇用の拡大に期待する自治体があるが、ギャンブルはゼロサムゲーム(分捕り合戦)であって新しい価値を生み出すものではないため、全体のGDPを押し上げる効果はない。それどころか、賭け事に熱中して働かなくなったり、生活保護受給者や犯罪者が増えたり、その対策に税金からの支出が増えたりする。また、アジアでのカジノ市場の過当競争などを理由に、専門家から地域活性化効果を疑問視する声も出ているそうだ。

 維新の会代表の松井大阪府知事は、「IRは雇用拡大のためにも必要」としているそうだが、大阪府は、まともな雇用を増やすべきなのである。さらに、イベントにすぎない国際博覧会(万博)の誘致を目指しているそうだが、そのようなことに大金を使っては長期的な地域振興にマイナスで、観光客を増やしたいなら、カジノではなく大阪の豊富な歴史・文化・自然・人材を生かす本物を作った方がよいと私も考える。そして、現在も、大阪府の生活保護受給率は突出して高いが、まじめにモノを考えているのだろうか?

(2)教育と経済
 経済政策をどういう方針にするかを決めるのは教育だ。何故なら、人は自分が知っている範囲でしかモノを考えられず、生きる姿勢や判断の尺度も教育によって培われるからである。

 そのような中、*2-1のように、英教育専門誌タイムズ・ハイヤー・エデュケーションの「世界大学ランキング」で、日本の東京大学は昨年の43位から39位に順位を上げたもののアジアでも4位であり、昨年に続きアジア首位を逃したそうで、日本の競争力低下に繋がる懸念があるとしている。そうなった理由はいろいろあるが、*2-2の私大補助も含め、日本は、制度として教育を軽視し、教育・研究人材の育成やその環境整備を疎かにしてきたことが最も大きいだろう。

 しかし、最近の生徒はゆとり教育を脱し、OECDの学習到達度調査結果では、*2-3のように、日本の高校1年生は科学的応用力が2位、数学的応用力が5位、読解力は8位だったそうではある。

 佐賀県の場合は、*2-4-1のように、学力テスト平均正答率がほぼ全国を下回り、佐賀県教育委員会が「家庭学習の時間確保を」とコメントしている。数学で大きな開きがあるのは、先生の方が数学を好きで数学の実力があるかどうかに大きく関わっていると、私は考える。何故なら、数学が好きで数学が得意な先生しか、生徒に数学の面白さや数学的思考法を教えることができないからである。

 ただ、そのように資源が少ない中でも、佐賀県は、*2-4-2のように、県内の小学4年生から中学2年生までを対象にした学力テストを行い、各学年の学力状況を確認している点で頑張っている。ただ、結果を「おおむね達成」「十分達成」の2段階くらいでしか評価・公表しないと、学習に競争(どこにでもある)を取り入れていないため、学習意欲や学習のための動機付けが弱いと思われる。

 なお、佐賀県多久市は、*2-5及び下図のように、小中の区分をなくして9年制の義務教育学校にするそうだ。「義務教育学校」として9年間の一貫教育を行うことにより、私は、中1ギャップの解消よりも、小さな子が手持無沙汰で遊んでいる時間を、有意義な授業に無駄なく使えるのがよいと考える。

   
  多久市の一貫校再編         現在の小中一貫校の風景        フランスの制服  
(図の説明:多久市は、学校教育法第1条の変更に基づいて、平成29年4月1日から小中一貫校を義務教育学校に移行し、9年間を見据えた一貫教育で学力向上に取り組むそうだ《https://www.city.taku.lg.jp/main/8903.html 参照》。その名前に使われている「東原庠舎」は、多久家の四代当主となった多久茂文公が、教育が何よりも大切だと考え、元禄 12年(1699年)に学舎を完成させ、身分を問わず学問を志す者すべてを受け入れた所だ。これからは、学問だけでなくデザインのセンスを磨くことも大切なので、よいデザインで学校に誇りを持てるような制服の方が良く、私は、一番右の写真の一番左の男の子の制服が好きだが、皆で相談して決めるのがよいだろう)

 ノーベル医学生理学賞を授賞する大隅東京工業大栄誉教授は、*2-6のように、「①若い人は興味を持てる分野で、最初に持った素朴な疑問を追究してほしい」「②自分が重要だと思うことにチャレンジすることが大事で、若い人が基本的な疑問に挑戦できる環境整備が必要だ」「③科学が有益な結果を生むのは大事なこと。でもそれだけでなく、社会全体が科学を一つの文化として楽しむことが大切だと思う」と話されたそうだが、私も同感だ。

 しかし、人がギャンブルではなく有意義な研究に興味を持つためには、上に書いたような幼いころからの積み重ねが大切だ。また、素朴な疑問は子どもの頃から持つものであるため、子どもに質問された時には、その機を逃さず科学的・論理的に答えられる親や先生の存在が必要だ。さらに、日頃から情報のシャワーを浴びせているメディアの態度は決定的である。そして、これらのすべてが、③の社会全体が科学を一つの文化として楽しむ状況を作らなければならないのだ。

(3)ところで、素朴な疑問だが・・
1)鳥インフルエンザへの対応は科学的か
 どのメディアも同じ論調だったが、*3-1のように、「①鳥インフルエンザで、辛い作業だったが一丸となって24時間態勢で54万羽の鶏を殺処分して鳥インフルエンザを封じ込めた」「②鶏舎の近くでカラスやスズメを見かけることがあったが、あれが発生源だったかもしれない」「③周辺には渡り鳥が飛来する池もあり、農家の心配は大きい。これ以上の拡大がないよう封じ込めに全力を挙げる」「④まん延防止や地域住民の不安解消に努めたい」「⑤県は発生農場の周辺などに6カ所の消毒ポイントを設置、車両の消毒を実施した」と書かれている。
 
 ①②③④から、i)カラス、スズメ、渡り鳥などの野鳥が感染源らしく、数羽の鶏が死んだ ii)鳥インフルエンザの拡大がないよう24時間態勢で54万羽の鶏を殺処分した iii)発生農場の周辺などに6カ所の消毒ポイントを設置した ということがわかるが、カラス、スズメ、渡り鳥などの野鳥が多いことは前からわかっているため、あらかじめ鶏と野鳥が接触しない鶏舎を設置しておくことは必要条件だ。しかし、正確な原因もわからず、ヒトに感染するウイルスに感染しているとも言えない鶏を54万羽も殺すのは、科学的というよりヒステリックで命を粗末にしている。それにひきかえ、消毒ポイントで逆性石けんで靴底を“消毒”したり、土間や飼育舎周囲の消毒に消石灰を散布したりしているのは、ウイルスに効果があるとは思えない。

 つまり、鳥インフルエンザへの対応は科学的ではなく、本当に鳥インフルエンザを封じ込めるのが目的だったのではないように見える。

2)踏切事故の原因がいつまでも解決されないのは何故か
 *3-2のように、佐賀県内で踏切事故が相次ぎ、車が踏切内で立ち往生して列車と衝突し、ドライバーの死亡事故も発生したそうだ。私もJR唐津線の山本駅付近の急カーブで、1時間に1本しかこない列車が突然現れて、ぞっとしたことがある。急なカーブ近くに踏切を作っていつまでもそのままにしておくよりもスマートな解決法はいくらでもあるので、長期間、それができないのはおかしいと考える。

<カジノ>
*1-1:http://digital.asahi.com/articles/ASJD62R7XJD6UTFK001.html (朝日新聞 2016年12月6日) カジノ法案、衆院通過 与党内の対応割れる異例の展開に
 カジノを含む統合型リゾート(Integrated Resort、略称IR)の整備を政府に促す議員立法「カジノ解禁法案」が6日午後の衆院本会議で、自民党や日本維新の会などの賛成多数で可決され、衆院を通過した。慎重論が根強い公明党は自主投票とし、与党内の対応が割れる異例の展開になった。民進、社民、自由の野党3党は「このような拙速な審議、採決は認められない」(6日、民進の山井和則国会対策委員長)との立場から採決に抗議して退席。共産党は反対した。自民は14日の今国会の会期末までに法案を成立させる考えで、参院に送付後、7日に参院本会議で審議入りさせる方針だ。法案は2015年、超党派の「国際観光産業振興議員連盟(IR議連)」所属の自民党、旧維新の党、旧次世代の党の議員8人が提出した。カジノや宿泊施設、国際会議場からなるIRの整備を推進するための基本法案で、法律の施行後1年以内をめどに必要な法制上の措置を講じることを政府に義務づける。同様の法案は13年にも提出されたが、衆院解散で廃案になった。現在の法案もこれまでは事実上、「たなざらし」の状態だった。カジノ解禁には刑法の賭博罪の特例を設ける必要があるうえ、ギャンブル依存症の増加や反社会的勢力のマネーロンダリング(資金洗浄)への懸念が根強かったためだ。しかし、今国会では会期延長が決まるとみるや、自民と維新が審議入りに向けた動きを加速させた。自民は今月2日の衆院内閣委員会で審議時間が6時間に満たないなか、採決を強行。2年前に与野党で合意していた関係閣僚の出席や地方公聴会の開催、参考人質疑を行わなかった。

*2-2:http://qbiz.jp/article/99578/1/
(西日本新聞 2016年12月7日) カジノ設置 危険な賭け? 法案が参院審議入り(Q&A付)
●依存症、治安 残る懸念、地域活性化に疑問符も
 カジノを中心とする統合型リゾート施設(IR)を巡っては、ギャンブル依存症や治安悪化といった負の側面への懸念が払拭(ふっしょく)されていない。観光振興や雇用拡大に期待する自治体がある一方で、アジアでのカジノ市場の過当競争などを理由に、専門家から地域活性化効果を疑問視する声も出ている。ギャンブル依存症は「病的賭博」の別名通り、賭け事に没頭し自分をコントロールできなくなる精神疾患だ。新たなギャンブル施設ができて患者が増えれば、多くの家族や友人、職場の同僚らが経済的に巻き込まれる恐れがある。パチンコや競馬などの依存症患者は国内約536万人(厚生労働省推計)と深刻な状況で、医師や支援団体が知識の啓発や予防、早期治療などの必要性を訴えている。対策強化を求める付帯決議は可決されたものの、その中身について国会でこれまで具体的な議論はされていない。治安悪化の懸念も付きまとう。警察庁の坂口正芳長官は5日の講演でIR整備推進法案成立後の対応について「地域の風俗環境の保持、少年の健全育成、暴力団等の排除などの対策を講じていく必要がある」と述べた。だが具体策は「施行後1年以内をめど」に策定される実施法に委ねられ、「何も決まっていないのでコメントしようがない」と警察庁幹部は困惑する。暴力団関係者など反社会的勢力の介入を防ぐのは重要課題の一つ。警察庁の担当者は「組員らのデータについて民間の事業者に渡すわけにいかない」としており、今後方策を探ることになる。マネーロンダリング(資金洗浄)に悪用される恐れもあり、別の幹部は「一定額以上になれば、記録の保存や本人確認を事業者に義務付けることが必要だろう」との見方を示す。
    ■   ■
 「IRは雇用拡大のためにも必要だ」。大阪府の松井一郎知事は意気込み、2025年の開催を目指す国際博覧会(万博)の候補地である人工島への誘致を目指す。横浜市は、整備に伴う経済効果を毎年4144億円、市税収入61億円と試算。4万1千人の雇用を見込む。長崎県は大型リゾート施設ハウステンボス(佐世保市)を候補地に想定している。一方、鳥畑与一静岡大教授(国際金融論)は、中国経済の成長鈍化を背景に中国人富裕層の消費が鈍り、シンガポールやマカオなどアジアのカジノ市場は既に過当競争になっていると指摘。「持続可能な地域振興策かは疑問で、採算の取れない巨大施設だけが残ることになりかねない」と警告する。渡辺達朗専修大教授(地域マーケティング論)は「隔絶されたIRの区域内はもうかるかもしれないが、周辺は逆に吸い取られて寂れる恐れがある。地域全体の経済効果は乏しいのではないか」と指摘。「外国人観光客を期待するなら、カジノではなく文化や自然など日本の魅力を生かした集客を図るべきだ」と強調する。
  ◇   ◇
【Q&A】IRって何?
自治体名乗り、国が認定
 カジノを中心とする統合型リゾート施設(IR)整備推進法案が、今国会で成立する公算が大きくなりました。
 Q IRとはどんな施設ですか。
 A カジノ、国際会議場、ホテルなどが一体となっている複合施設のことです。
 Q 法案はどんな内容なのですか。
 A IRの整備に向けた基本的な理念や方針、政府内の体制を定めた上で、整備の推進を政府に促す内容です。法の施行後1年以内をめどに政府が具体的な制度設計を盛り込んだ別の法律を作ることも求めています。その法律が成立すれば、カジノをつくることができるようになります。
 Q どこでもカジノをつくれるのですか。
 A IRを整備したいという自治体の申請を受け、国が特別に認定した区域だけにつくられます。横浜や大阪、長崎などが意欲を示しています。
 Q 賭博を禁じている刑法の規定を変える必要はありますか。
 A 刑法が賭博を禁じているのは、国民が労働意欲を損なったり、犯罪を誘発したりする恐れがあるからです。この基本理念を重視する観点から、法務省幹部は「賭博規定を変えることは想定していない」と話しています。競馬に「競馬法」、ボートレース(競艇)には「モーターボート競走法」、宝くじには「当せん金付証票法」など、刑法とは別の法律を作って賭博・富くじ禁止の例外を定めていることから、カジノについても新たな法律を作ることが想定されています。
  ◇   ◇
●カジノ法案が参院審議入り
 カジノを中心とする統合型リゾート施設(IR)整備推進法案は7日午前、参院本会議で趣旨説明と質疑を行い、参院で審議入りした。質問に立った自民党の上月良祐氏はIR整備に伴う外国人観光客の集客に関し「日本の成長戦略の重要な柱だ」と主張。民進党の小西洋之氏は「違法とされてきた賭博を解禁する法案だ」と反発した。衆院採決で自主投票にした公明党は質問しなかった。参院内閣委員会は本会議後、理事懇談会を開催。自民党は8日の質疑終了後の採決を提案したが、民進党などは拒否。難波奨二委員長(民進党)は「十分な審議時間を取るべきだ」と述べた。

<教育>
*2-1:http://www.saga-s.co.jp/news/national/10201/358466
(佐賀新聞 2016年9月22日) 東大またアジア首位逃す、世界大学ランキング
 英教育専門誌タイムズ・ハイヤー・エデュケーション(THE)は21日、今年の「世界大学ランキング」を発表、東京大は昨年の43位から39位に順位を上げたもののアジアでは4位となり、昨年に続きアジア首位を逃した。THEは日本の競争力低下に懸念を示している。上位980校中、日本の大学は69校が入り数ではアジアでトップだが、上位200位内に入ったのは東京大と91位の京都大(昨年88位)の2校。400位内には東北大、大阪大、東京工業大、名古屋大、九州大、豊田工業大も入り、昨年の6校から8校に増加した。

*2-2:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12566679.html (朝日新聞 2016年9月19日) 国の私大補助1割切る 昨年度44年ぶり、学校増など背景 私学事業団推計
 私立大学の運営費用に対する国からの補助金の割合が2015年度は9・9%になり、44年ぶりに10%割れしたことがわかった。国会では補助割合2分の1をめざすことが決議されているが、財政難に加え、私大の定員増などで学生1人あたりの補助額もピーク時の6割に減っている。その分、授業料が高くなり、家計の負担は増している。日本私立学校振興・共済事業団(東京)の推計によると、私大の人件費や教育研究費、光熱費など大学運営にかかる主要な「経常的経費」の総額は、15年度に3兆1773億円(速報値)だった。これに対し、877の私大(短大、高専も含む)に渡された補助金は総額約3153億円で補助割合は9・9%になった。10%を下回ったのは1971年度以来。同事業団によると、私大生1人あたりでは、国からの補助金は81年度が24万1千円とピークで、15年度は15万6千円だった。一方、81年度から14年度までをみると、私大の授業料の平均額は年額約38万円から約86万円になった。経済協力開発機構(OECD)の13年の調査では、日本の高等教育における私費負担の割合は65%で韓国の次に高く、加盟35カ国中データがある32カ国の平均30%を大きく上回る。76年には私立学校振興助成法が施行され、国会の付帯決議で補助金の割合を「できるだけ速やかに二分の一とするよう努める」とされた。だが、80年度の29・5%をピークに減り続けている。背景には国の教育予算の伸びが低いことに加え、短大も含めた私大の数が70年度の688校から15年度は932校に増加していることもある。さらに、一つひとつの大学をみても情報技術(IT)の導入でパソコンなど設備が高度化し、経費がかさむことも要因だとの指摘がある。私大の統合などを視野に入れた動きもある。文部科学省は4月、有識者会議を設けて私大経営のあり方について検討を始めた。会議では「個々の私学が合併に踏み切るには、国から必要性や制度的な保障を示すことが必要だ」など再編を念頭に置いた意見も出ており、来年3月までの取りまとめに向け、私大再編への具体的な動きが出る可能性もある。

*2-3:http://www.saga-s.co.jp/news/national/10201/383931
(佐賀新聞 2016年12月6日) 科学・数学、日本はトップ水準、高1学力、OECD調査
 経済協力開発機構(OECD)は6日、72カ国・地域の15歳約54万人が参加した2015年の「生徒の学習到達度調査」結果を発表した。日本の高校1年生は科学的応用力が2位、数学的応用力が5位で、前回12年調査からさらに順位を上げ、トップレベルを維持。逆に読解力は平均得点が20点近く下がり、順位も4位から8位に落ちた。算数・数学、理科を中心に学習内容を増やした現行学習指導要領は、今回参加した生徒が小学4年の時に一部先行実施、6年で完全実施された。文部科学省は、科学と数学の好成績を「指導要領に加え、実験や観察に力を注いだ授業の効果が大きい」と分析している。

*2-4-1:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/361247
(佐賀新聞 2016年9月30日) 学力テスト平均正答率、県内ほぼ全国下回る
◆県教委「家庭学習の時間確保を」
 佐賀県教育委員会は29日、文部科学省が小学6年と中学3年を対象に4月19日に実施した2016年度全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)の県内公立校の結果を公表した。小6の算数Aが全国平均と同じだった以外は下回った。県教委は「授業改善は進んでいるが、家庭学習時間の確保に課題がある」としている。県内と全国の平均正答率を比較すると、小6では、知識を問う算数Aが77・6%で全国と同じだった。これ以外は全国平均を下回り、国語A72・6%(全国との差0・3ポイント)▽国語B56・9%(同0・9ポイント)▽算数B46・2%(同1・0ポイント)だった。中3は全ての項目で全国平均より低く、国語A74・7%(全国との差0・9ポイント)▽国語B64・7%(同1・8ポイント)▽数学A59・3%(同2・9ポイント)▽数学B41・0%(同3・1ポイント)となっている。数学で大きな開きがあることについて県教委は「数式の意味を理解し、根拠を示して説明する活用力に課題がある。複数の条件を読み解き書き表すことができていない」と分析している。学力が伸び悩む要因として県教委は、家庭学習時間を挙げる。平日の1日当たり「1時間以上勉強している」とする割合は、小6で60・7%と全国より1・8ポイント低く、中3は62・6%で5・3ポイントも下回っている。学習習慣の定着には保護者の意識も鍵を握るとして「日ごろの声かけや親子一緒に学ぶ姿勢も大切。PTAと連携して対応したい」と話している。全国学力テストは、県内の公立の小学校165校7474人、中学校93校7735人で実施した。県の総合計画では、19年度の学力テストで全国平均を全科目で上回ることを目指している。

*2-4-2:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/384101
(佐賀新聞 2016年12月7日) 県学力テスト始まる 3万7000人参加
 佐賀県内の小学4年生から中学2年生まで約3万7千人を対象にした「学習状況調査」(学力テスト)が6日、2日間の日程で始まった。小学生が国語、算数(数学)、理科、社会の4教科、中学生はこれに英語を加えた5教科で行い、各学年の学力状況を確認する。県教委独自の調査は4月と12月の年2回で、4月は文部科学省が行う小6と中3対象の全国学力テストに併せて実施している。この日、佐賀市の赤松小では、担任が解答に関する注意点を説明した後、児童が真剣な表情で問題に取り組んだ。結果は最低限到達すべき「おおむね達成」、十分習得された「十分達成」の2段階で評価する。昨年12月の調査では、全ての学年と教科で「おおむね達成」を上回ったが、「十分達成」をクリアしたのは中1、2の英語だけだった。県内5地区別の評価では、地域で学力差が見られた。県教育振興課は「知識の理解はある程度進んでおり、知識の活用力を高めることが課題。記述式の正答率が高まることを期待している」と話す。結果は、来年2月上旬に公表する。

*2-5:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/358529
(佐賀新聞 2016年9月22日) 多久市、9年制義務教育学校へ、小中の区分なくす
 多久市は来年度から、小中学校の義務教育課程の区分をなくし9年間を「義務教育学校」とすることを決めた。改正条例案が21日、市議会で可決された。県内の義務教育学校は本年度からスタートした杵島郡大町町の「ひじり学園」に次いで2例目となる。市教育委員会によると条例の「小学校及び中学校」の文言を「義務教育学校」とし9年間の統一校に改正した。義務教育学校では小学6年間を「前期課程」、中学3年間を「後期課程」と定め、小学校の卒業証書は「前期課程修了証書」として発行する。制度導入で小学校の卒業式が実質的になくなり、6年生の授業が年度末まで余裕をもって組めるという。小中両方の教員免許を取得している教師を弾力的に配置し、中学校に進む段階の心理的、学力的な不安要素となる「中1ギャップ」の解消が進むと、市教委は期待している。多久市は2013年度から小中一貫校となり、児童・生徒数は9月1日現在で中央校が846人、東部小342人、西渓小292人。

*2-6:http://qbiz.jp/article/99634/1/
(西日本新聞 2016年12月8日) 大隅さん授賞式控え記者会見 「素朴な疑問追究を」
 ノーベル医学生理学賞の授賞式出席のためスウェーデンを訪れている大隅良典・東京工業大栄誉教授(71)は7日、ストックホルムのカロリンスカ研究所で公式記者会見に臨み、「若い人は興味を持てる分野で、最初に持った素朴な疑問を追究してほしい」とメッセージを送った。一連の行事に臨む心境を「こういうことに慣れておらず緊張しているが、楽しみたい」とも語った。記者会見後、大隅さんは「細胞内のリサイクルシステム」と題して学生や一般の人を前に記念講演する。大隅さんは授賞理由となった細胞のオートファジー(自食作用)の研究について「役に立つとは思わなかった。でもそういうことが後で有益だと分かるのは科学の歴史ではよくあること」と解説。「自分が重要だと思うことにチャレンジすることが大事で、若い人が基本的な疑問に挑戦できる環境整備が必要だ」と訴えた。「科学が有益な結果を生むのは大事なこと。でもそれだけでなく、社会全体が科学を一つの文化として楽しむことが大切だと思う」とも話した。

<科学の応用>
*3-1:https://www.agrinews.co.jp/p39583.html (日本農業新聞 2016年12月2日) 鳥インフル殺処分 一丸で作業 「つらい」でも「早急に」 封じ込め24時間態勢 新潟県上越市
 高病原性鳥インフルエンザ疑似患畜の発生が11月30日夜に確定した新潟県上越市で1日、23万羽の殺処分が始まった。29日の関川村に続く大規模養鶏場での発生となり、計54万羽と1県の殺処分羽数としては過去最大。地元JAえちご上越は職員延べ80人を投入、24時間態勢で防疫作業を支援する。行政と一丸となって「これ以上、感染を拡大させない」と封じ込めに全力を挙げる。
●職員延べ80人投入 JAえちご上越
 1日早朝。殺処分のための資材や作業員を受け入れる拠点となった市内の体育館には、作業に当たる行政や関係機関の職員、自衛隊員が続々と集まってきた。館内には、京都や福島など1府6県から提供された防護服や足カバーなどが入った災害対応キットの箱が山積み。集まった作業員はそれらを身に着け、厳しい表情で処理手順などを確認した。発生農場の従業員もおり、飼育担当の男性従業員は「家畜保健衛生所からも、レベルの高い防疫体制と評価されていただけに発生は残念。今は早く終息してほしい」と悔しさをにじませた。別の男性従業員は「鶏舎の近くでカラスやスズメを見かけることがあったが、あれが発生源だったのかもしれない」と話した。上越家畜保健衛生所によると県内での同時多発的な発生で、当初は資材不足が懸念されたが「現時点では順調に届いている」と言う。ただ、「作業を進めていくうちに足りないものが出てくるので気は抜けない」と同家保の平山栄一防疫課長。「周辺には渡り鳥が飛来する池もあり、農家の心配は大きい。これ以上の拡大がないよう封じ込めに全力を挙げる」と力を込めた。JAも24時間3交代で続ける防疫作業に職員を投入、「まん延防止や地域住民の不安解消に努めたい」(総務部)と強調した。鶏の殺処分に当たった市役所の男性職員(56)は「最初は暴れるので『かんべんな』と思いながら作業した。いち早い終息のため、途中から無心で作業をした」と、つらい心情を明かした。県は発生農場の周辺などに6カ所の消毒ポイントを設置、車両の消毒を実施した。消毒ポイントを訪れた糸魚川市の60代の養鶏農家は「出荷で近くを通るため立ち寄った。決してひとごとではない」と漏らした。

*3-2:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/371373
(佐賀新聞 2016年10月29日) 佐賀県内、車立ち往生で踏切事故続発、10月に3件も
■非常ボタン設置は4割
 佐賀県内で今月、踏切事故が相次いでいる。いずれも車が踏切内で立ち往生して列車と衝突しており、ドライバーの死亡事故も発生した。踏切は生活道路の一部だが、場所によって幅が狭かったり非常ボタンが設置されていなかったりするなど危険もはらんでおり、細心の注意が必要だ。小城市三日月町樋口のJR唐津線の踏切では18日夜、乗用車が脱輪して普通列車と衝突した。現場は、踏切を中心にして道路がややS字カーブになっている。小城署によると、乗用車の60代男性は「踏切の左側に寄りすぎていたためハンドルを右に切ったら、逆に右前輪のタイヤが脱輪した」と話しているという。住宅街にある杵島郡白石町東郷のJR長崎線踏切では17日夜、乗用車が対向車と離合する際、左側の脱輪防止の縁石に乗り上げて動けなくなった。踏切の通行幅はぎりぎり離合できる程度の4メートル。乗用車を運転していた20代男性は車を降りて非常ボタンを探したが、設置されておらず、遮断機や警報機が作動してそのまま普通列車が来た。踏切で異常が発生した場合、通行量が多い市街地や線路が複線の区間では、列車の運転士に知らせる非常ボタンが設置されている。国土交通省は「列車の速度や交通量を踏まえ、必要に応じて非常ボタンなどを整備していくことが鉄道事業者の責務」としている。ただ、県内は単線区間や小さな踏切が多く、JR九州によると、県内の踏切約330カ所のうち、非常ボタンの設置率は4割程度にとどまる。くだんの事故現場の踏切にもなかった。松浦鉄道も県内の踏切50カ所で同様の措置を取るのは2割余りとなっている。県警によると、県内の踏切事故は年間数件にとどまるが、今年は10月に3件連続した。小城市牛津町上砥川のJR長崎線踏切では1日正午ごろ、軽トラックが踏切内で止まり、普通列車と衝突して運転していた男性(84)が死亡した。原因はよく分かっていない。JR九州は、非常ボタンがない場合、車に備えられた発煙筒での合図を促している。「ボタンがない場合は、踏切に記している連絡先に通報を」と話す。踏切でのトラブルは、列車の乗客への影響を含めて重大事故につながる恐れがある。県警交通企画課は、ドライバーに対しては一時停止や、横断先にスペースができるまで踏切の手間で待つなどルールの順守を求めている。


PS(2016年12月10日追加):*4は前進かもしれないが、ずっと後ろからの半歩前進だと思う。例えば、生物学的には、一卵性双生児でない限り異なる遺伝情報を持っているため体質や性格は異なる上、一卵性双生児でも兄や姉として育った子と弟や妹として育った子は育つ環境が違うため性格が異なるという実証実験がある。研究分野では、他の人と同じ普通のことをしていれば新しいことを発見できず抜きんでることもできないため、ノーベル賞など思いもよらない。ビジネスの分野でも、どこにでもある普通の財やサービスを提供していれば、付加価値が低くて喜ばれないため儲からない。つまり、どの世界にいても普通でよいことはなく、普通以上だったりとりわけ優れていたりしなければ成功しない。そのため、そもそも「普通がいい(その“普通”の定義も自分勝手)」という教育は間違っており、他のメディアでもよく言われる「普通でない=LGBT」とか「個性=障害者」などというのは、日本に悪影響しかもたらさない。

*4:http://digital.asahi.com/articles/ASJD14608JD1OIPE00R.html?iref=comtop_8_05 (朝日新聞 2016年12月10日) 「ふつう」は違っていい 人権ポスター、ネットで話題に
 人権週間(4日~10日)にあわせ、愛知県が作った人権啓発のポスターが話題となっている。インターネット上では「すごく良い」「押しつけがましくなく、わかりやすい」と好評だ。ポスターに込めた関係者たちの思いは?「わたしの『ふつう』と、あなたの『ふつう』はちがう。それを、わたしたちの『ふつう』にしよう。」。こんなキャッチコピーで締められたポスターは全部で7種。障害者、高齢者、外国人などの人権について、蒲郡市出身の漫画家、大橋裕之さんの優しいタッチの漫画で描かれている。メインポスターの漫画は、こんな内容だ。丸刈り頭の少年を「ひとりだけ丸がり頭だ~!」「仲間外れだ~」とからかう級友に、別の子どもたちが指摘する。「でも、あなただってひとりだけ左利きよね」「きみはひとりだけメガネだよね」。最後は「ほんとだみんな違うじゃん!」と全員で笑う。人権週間を前に金山駅(名古屋市中区)に先行して貼りだしたところ、ポスターを見た人がツイッターに写真を投稿。内容に共感した人々の間に、11月下旬ごろからじわじわと広まった。担当する県人権推進室にはネットメディアからの取材依頼の他、県外から「素晴らしいポスターをありがとう」と電話がかかってきたという。ポスターは毎年、民間からコンペ方式で募集している。今年は「意識の高い人」だけでなく、人権問題にあまり関心のない人にも届くような企画を意識して集めた。初めて性的少数者(LGBT)も取り上げた。ネット上では、ポスターをシェアした人が「身近にありそうな話」「自分も無意識に普通を押し付ける時がある」「人権は自分に関係ないって言えない」といったコメントを寄せている。同室の今飯田将成主事(27)は「人権を自分のこととして考えてもらえている。狙い通りになってよかった」と話す。
■「伝えたいこと」表現
 今回のポスターを手掛けたのは広告会社「中日アド企画」(名古屋市中区)。同社クリエイティブ部の加藤了平さん(40)と、入社3年目の岩田真実さん(28)が担当した。加藤さんは7度目の挑戦で、初めてコンペを勝ち抜いた。これまでは大手の広告会社の作品が選ばれることが多かったという。「うれしかったが、それだけに責任も重かった」と話す。キャッチコピーは、コンペ初参加の岩田さんが担当。文字が多すぎるかもと考えたが、「これこそ伝えたいこと」と、そのまま載せた。ストーリーは2人で考えた。足をけがして松葉杖生活を送った友人や、LGBTの当事者から話を参考にした。「人権問題の被害者、加害者の視点に着目しすぎない話にした」と岩田さん。「普段の生活で何となく選び、考えること。そこに固定観念や偏見があるかも、と気づいてもらいたかった」と言う。デザインは東海のアートや音楽などの話題を発信するウェブマガジン「LIVERARY(ライブラリー)」の編集者、武部敬俊さん(33)に依頼。武部さんが親交のあった大橋さんに漫画を頼んだ。行政のポスターとしては斬新な内容とデザイン。「(漫画だと)ふざけていると思われるかも」と危ぶんだが、コンペでは6社の企画から選ばれた。審査員を務めた県人権推進室の伊藤弘憲室長(55)は「ストーリーのある漫画を使っていたのはこの企画だけ。柔らかい作風が、一般の人に人権を考えてもらうのにぴったりだった」と評価。「見た人の心にここまで届くとは」と想定外の反響に喜んでいた。


PS(2016年12月13日追加):*5の「フリースクールや自宅学習を前提に、保護者が『個別学習計画』を作り教育委員会の認定を受ければ義務教育を修了したと認める仕組み」は、不登校を正当化して教育水準を下げるため賛成できない。何故なら、保護者が創った個別学習計画が一般の教育課程よりも優れている可能性は非常に低く、自宅で学習し続けることは学校に行くよりも困難であるため、結局は子どもの教育を受ける権利を奪うからである。さらに、「つらいときは学校を休んでもよい(→つらいときは仕事も休む人になる)」という教育は、理由もなくつらいから休むのであれば甘やかしすぎだ。また、不登校の小中学生が12万6千人もいるとのことだが、いじめや教育上の問題があるのなら、子どもや親に不登校の理由を聞いて原因をなくすことが必要なのであり、不登校を認めることが解決策になるわけではない。もちろん、学校以外の学びは自由だが、それは公教育の中の位置づけでは限定されたものにすべきだ。なお、*5には、シュタイナー教育などのことも書かれているが、これらは限られた重度障害児を対象にしたもので、障害児と言えども人生におけるさまざまな機会を制限されないためには教育が不可欠であるため、同情的に美化した言葉を使って障害児が普通教育を受ける権利を差別的に奪ってはならない。 

*5:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12702539.html (朝日新聞社説 2016年12月13日) 教育機会法 不登校対策で終わるな
 フリースクールをはじめ、学校の枠にしばられない多様な学びを正式な制度として親や子が選びとる道は、結局認められなかった。残念な結果である。議員立法による「教育機会確保法」が成立した。安倍首相が2年前にフリースクールを訪問し、超党派の議員連盟が法律づくりの準備を始めて機運が盛り上がったはずだった。だが、議論の過程で中身は大きく変わってしまった。当初検討されたのは、フリースクールや自宅での学習を前提に、保護者が「個別学習計画」をつくり、教育委員会の認定を受ければ、義務教育を修了したと認める仕組みだった。ところが「不登校を助長する」などと自民党内から異論が出て、骨抜きになった。かわりに法律に盛りこまれたのは、学校復帰を指導する自治体の「教育支援センター」や特別編成のカリキュラムの「不登校特例校」の整備など、現に行われている施策ばかりだ。単なる不登校対策法といっていい。いまの制度や対策に限界があるからこそ、新規の立法をめざしたのではなかったか。それでも状況を変える芽が、まったくないわけではない。法律は、学校以外の場で行う「多様で適切な学習活動」の重要性を認め、つらいときは学校を休んでもよいと「休養の必要性」を明記した。子の発達や参加の権利を保障する「子どもの権利条約」の趣旨にのっとることも、冒頭で宣言した。文科省はこの法律にもとづき「基本指針」をつくる。どんな内容にするのか。民間団体の意見もていねいに聞きとり、公立だけでなく民間の施設やそこに通う子、自宅で過ごしている子もしっかり支える姿勢を打ち出すべきだ。不登校の小中学生は12万6千人もいる。だがいまの法体系では、子どもが教育を受ける権利は学校で保障するしかない。法と現実との隔たりを放置し続けるのは、もはや許されない。今回の法律制定で終わらせるのではなく、学校以外の学びをどこまで認め、それを公教育の中にどう位置づけるか、引き続き議論を深めねばならない。外国では、芸術の要素を採り入れたシュタイナー教育や、生徒らがルールをつくり、何を学ぶかを自主的に決めるサドベリー教育などが認知されている。そうした場から生まれる多様な価値観は、柔軟でたくましい社会を生む効果をあわせもつ。法律には施行3年後の見直し規定もある。この成立を新たな検討の出発点としたい。


PS(2016年12月26日追加):子どもを、都会のコンクリート・ジャングル(飛行機から見ると、癌細胞のように、無秩序に浸潤しているように見える)の中で、仮想ゲームに浸らせて育てると、自然や生物に関する暗黙知や美意識が育まれず、驚くような価値観の大人ができる。そのため、*7-1のように、中山間地や離島に子育て期の世代が流入するのはよいことだが、子育て期の世代がより抵抗なく中山間地や離島に流入できるようにするためには、その地域における教育内容の充実が不可欠だ。また、*7-2の奥尻高校のように、都内からも生徒を募集して壮大な自然の中で育成するのはよい考えだが、行政も協力して下宿や寮を確保するのであれば、外国からの留学生も募集すればよいと思われる。

*7-1:https://www.agrinews.co.jp/p39759.html
(日本農業新聞 2016年12月26日) 中山間に人口流入 4割以上で30代女性増 子育て世代が“田園回帰” 島根県調べ. 島根県中山間地域研究センターの調査で、2011~16年の5年間に、県内中山間地域225地区のうち4割を超える98地区で30代の女性の人数が増えていることが明らかになった。人口が流入している地区の多くが山間部や離島で、子育て世帯を中心に田園回帰が定着している実態が浮き彫りになった。中山間地域の小学校区や公民館単位の225地区で、11年と16年の住民基本台帳を元に人口動態と将来の人口推計を調べた。4歳以下の子どもが増えている地区は全体の3割以上の69地区、小学生が増えている地区は全体の2割以上の49地区だった。いずれも役場など中心地から離れた「従来は人口減少が深刻とされてきた田舎の田舎」(同センター)で増えている傾向にあった。30代女性が増えている地区は98地区、維持している地区は17地区で、減っている地区(110地区)より多かった。30代男性は、全体の3分の1以上の80地区で増加。維持している地区は27だった。同センターの藤山浩研究統括監は、島根県ではリーマン・ショックが起きた08年以降、若者世帯を中心に地方を志向する田園回帰が広がり、11年の東日本大震災を契機に加速したと分析。その後の状況について「子育て中の女性が地方に向く意思がうかがえる」と説明する。地区の平均は人口1308人、高齢化率は38%だった。同センターによると、全国的にも移住対策に力を入れている自治体や地区は同様の田園回帰の傾向が見られる。藤山統括監は「予測をすると人口安定まで至っていない地区が多いものの、まだまだ伸びしろがある。田園回帰が力強く続いていることが明らかになった」と分析する。ただ、人口予測をすると今後10年間で大半の地区で10%以上の人口減少となり、今後30年間で過半の地区で人口が半減する。しかし、同センターは「平均すれば、人口の1%分の定住が増加すると人口が安定する」と試算する。

*7-2:http://www.tokyo-np.co.jp/article/tokyo/list/201609/CK2016092502000107.html (東京新聞 2016年9月25日) 北海道・奥尻高 初の試み 都内からも生徒募集
北海道奥尻町(奥尻島)の町立奥尻高校が来年度、全国から生徒を募集することを決め、来月二日に都内で説明会を開く。同町は一九九三年七月の北海道南西沖地震で津波の被害に遭い、死者・行方不明者百九十八人を出した。復興は果たしたものの、過疎化の流れは止まらないまま。学校関係者は「若者が増えれば島全体が活気づく。島の未来をかけている」と訴えている。募集するのは、来年四月の新入生の定員四十人のうち半分の二十人。従来は、町内と道南西部の檜山地方の生徒しか受験できなかったが、通学区域規則を改定。全国どこからでも受験できるようにした。地震で壊滅的打撃を受けた町は、移転や盛り土、緊急避難用の高台を整備するなどし、少しずつ、時間をかけて再建してきた。ただ、人口は減り続け、地震前の九三年六月に四千七百十一人だったのが二千八百十人にまで減少。今年一月の六十五歳以上の高齢化率も36・1%と、道全体の28・9%を大きく上回っている。同校でも各学年四十人の定員を割る状況が続き、現在在籍するのは一年生九人、二年生十七人、三年生十四人の計四十人。さらに、町内の中学生は各学年二十人前後しかいない上、半数程度が町外の高校に進学するため、定員が埋まる可能性はほぼなくなっている。こうした状況を打破しようと考えたのが、全国の中学生に受験を呼び掛けること。町が補助金を出して民宿を整備し、二十人分の下宿先を確保。授業内容も工夫し、以前から夏に行っているスキューバダイビングに加え、本年度からは町職員や漁業者、農業者らを講師に招いて一緒に課題の解決策を考えるプログラムを取り入れた。九十分すべて英語で話す「イングリッシュサロン」や、慶応大生がインターネットで受験のアドバイスや学習指導をする時間も設けている。同校の井上壮紀(まさき)教頭は「外から生徒が来てくれれば、小さい頃から同じ人間関係の中で生活してきた島の子どもにも刺激になる。ぜひ説明会に参加してほしい」と話した。
    ◇
説明会は、来月二日午前十時から港区のTKP品川カンファレンスセンターで。問い合わせは同校=電01397(2)2523=へ。


PS(2017年1月1日追加):私は海が澄んでいて美しいので離島が好きで、何とかしようと思って2005~2009年の衆議院議員をしていた間に唐津市の七つの離島に何度も行ったが、離島は、山・田畑・漁場が近接しており、景色も抜群なので、子どもに自然や動植物を体験させるのに大変よいと思う。そのため、地方でも特にコンクリートの街中にいる子どもたちは、一年間くらい離島で授業を行えばよく、そのための学校のリニューアルやインフラ整備があってよいと考える。

*8:http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/391655 (佐賀新聞 2017年1月1日) 子どもの絆で活気呼べ 「島留学」始めます。 唐津・馬渡、加唐島
◆住民ぐるみ受け入れ
 玄界灘に浮かぶ唐津市鎮西町の馬渡島(153世帯)と加唐島(65世帯)は、新年度から小中学生を対象に「島留学」を始める。少子高齢化が顕著に進む離島で「子どもの声を絶やしたくない」との島民たちの切なる願いが事業を後押し。豊かな自然体験や少人数教育、島民とのふれあいを通じて、島の子と一緒に成長する子どもたちを募集している。県内では過疎化による児童数減を食い止めようと、佐賀市富士町の北山東部小が学校の生き残り策として1994年から留学生を受け入れている「山村留学」の例がある。今回はこの離島版と言える取り組みで、島ぐるみでの受け入れ体制をつくる。七つの離島では神集島が小中学校が廃校になり、小学校分校の向島と松島が休校の現状にある。島民や市職員でつくる「からつ七つの島活性化協議会」が3年前から先進地を視察するなどして準備を進め、12月26日に二つの島で実行委員会を立ち上げた。馬渡島は現在小学生15人、中学生14人、加唐島は小中学生3人ずつが在校している。留学期間は原則4月から1年間で、留学は島内の里親宅から通う「里親留学」、家族と一緒に島に住み込む「家族留学」、島に祖父母が住む家庭の「孫留学」の3タイプがある。里親留学は里親への委託料月額6万円を実行委と実親で半額ずつ負担する。家族留学は転入家族に、孫留学では祖父母世帯に、月額3万円の助成金を実行委が出す。原資は公的な補助金を見込んでいる。1月28日に現地で説明会を開く。唐津市の離島地域コーディネーターの小峰朋子さん(47)は「親の思いよりも、『島に行ってみたい』という思いのある子どもに来てほしい」と話している。現在、里親も募集している。問い合わせは唐津市地域づくり課内の同協議会、電話0955(72)9220。


PS(2017年1月2日追加):今から20年以上前にビッグ4で仕事をしていた時、私は、昼に顧客から質問を受けて英語で国際税務に関するアドバイス・レターを書き、帰宅前に社内Eメールでインド事務所に送っておくと、時差を利用して日本時間の夜の間に英文チェックと清書が終わり、翌朝には最終版が完成して顧客に届けられるというような仕事もしていた。そのため、企業側から見ても、現在の日本なら、文書の作成等は環境の良い地方に送り、低コストで迅速に行うシステムを作る方が効率的になるだろう。

*9:http://qbiz.jp/article/100432/1/ (西日本新聞 2017年1月2日) ネット活用 島で都会と同じ仕事 遺跡内施設にテレワークセンター 長崎・壱岐市 定住やU・Iターン 20人目指す
 長崎県壱岐市は、原の辻遺跡内の市関連施設(635平方メートル)を改修し、年度内に「テレワークセンター」を開設する。情報通信技術(ICT)を活用し、離島にいながら都会と同じように仕事をする拠点として整備し、定住や転職によるU・Iターンを促す。総務省の「ふるさとテレワーク推進事業」に採択された。市や富士ゼロックス(東京)、早稲田大のほか、仕事を発注する企業と請け負う個人をインターネット上で仲介するランサーズ(同)など産官学一体で事業を進める。テレワークは、ネットを使って場所や時間にとらわれず仕事をする働き方。子育て中の主婦や島へのUターン組などを対象に、都市部の企業からホームページ作成や情報サイトの記事執筆、翻訳などの仕事を受注し、収入を得る−という仕組みの確立を目指す。開設するセンターには、仕事を請け負う島民ら個人が作業できるスペースを設け、3年間で20人分の受注を目標とする。企業向けのオフィスも設け、富士ゼロックスは研究業務などの一部をセンターでも行う予定。来年度はセンター内にU・Iターン組や島民らが交流できる場所も設置し、一般開放する計画。市は「都市部から壱岐への仕事の流れをつくり、地域活性化につなげたい」としている。


PS(2012年1月9日追加):何歳以上を高齢者(支えられる側)と定義するかは社会の合意に基づくが、日本社会を支えるための労働生産性向上には、*10-1のように、教育水準を上げ、労働者がより付加価値の高い仕事をできるようにする教育が必要で、それにマイナスのことをしているゆとりはない。そのような中、*10-2のように、利点として地域経済や地方財政への寄与を挙げ、統合型リゾート整備推進法(カジノ法)を通し、ギャンブル依存症対策にさらに無駄な予算を使って、ギャンブル依存症対策さえすればよいかのような説明をするのは、思考が浅すぎる。

*10-1:http://business.nikkeibp.co.jp/article/manage/20111226/225625/?rt=nocnt (日経ビジネス 2012年1月6日) 世界で最も教育を軽視している国、日本。特に高等教育への投資はOECD加盟国の半分
 人口の減少と高齢化の進展、自動車・電機といった前時代型の産業を中心とする産業構造、土建業に偏った公共事業頼みの経済政策――これらが示すように、成熟フェーズを迎えた日本の経済は現在低迷を続けている。そして、これからの展望も描けていない。人口が減り、高齢者が増えるということは、働ける人が減少する一方で、社会が扶養・支援しなければならない人の数が増加することを意味する。従って、これからの日本は二重の意味で経済の生産性を高めていくことが不可欠になる。内閣官房が発表した「社会保障に係る費用の将来推計について」は、今後10年間で高齢者の割合が30%を突破し、医療・介護にかかる社会的コストは現在の47%アップとなると予測している。また、労働者人口は10年で約740万人(9.1%)減る。労働者1人当りが負担する医療・介護費用の増分だけでも26.6万円になり、現在より約6割もアップすることになる。
●資本集約型産業に必要な資本が足りない
 となると、国民経済の生産性を大幅に高めることが必要になる。その方法論は2つある。1つは資本集約型の産業を強化すること、もう1つは知識集約型の産業を拡大することである。ただし、資本集約型産業の強化は、今の日本にとっては2つの点で問題がある。第1の問題は、資本集約型産業を次々に立ち上げ、発展させていくのに必要な財政的余裕があまりないことである。1400兆円とも言われる個人金融資産や、200兆円にも上る企業の内部留保資金があると思われるかもしれない。だが、そのほとんどは既に国債の購入という形で国家財政の赤字補填に使われてしまっている。資本集約型産業を新規に立ち上げるためには、国債を売って換金しなければならない。もしそのような大量の国債売却が起きると日本国債は暴落する。場合によっては国民経済が破綻してしまうリスクがあるのだ。
●資本に仕事をさせる産業は人の雇用を生まない
 資本集約型の産業に注力することの第2の問題は、雇用の創出につながらない点である。資本集約型の産業は“資本に仕事をさせる”タイプの産業である。そこで働く労働者1人当りの労働生産性は極めて高いものの、その反面、そうした産業が生む雇用は小さい。例えば、電力事業は資本集約型産業の典型である。労働生産性は2562万円と平均の3.4倍で、産業セクター別で見て第1位である。日本のGDPの2.3%を生み出している。だが、そこでの雇用者数は42.5万人と総雇用者の0.7%にすぎない。足下の円高の影響もあって、大量の雇用を生んできた自動車・電機産業が海外移転を推進している。年々、雇用問題が深刻化しつつある。今後の日本経済において、いかにして雇用を生むかが最重要課題となるのは確実である。こうした状況を考慮すると、資本集約型産業の強化だけで成熟日本を支えるのは無理がある。
●本命の知識集約型産業を支えるのは「教育」
 となると、成熟日本の社会を支えるために必要な経済の生産性を高めるための手段は、もう一方の「知識集約型産業」の強化を本命とするしかない。知識集約型産業は1人当り労働生産性が高いことに加えて“労働集約的”でもあるので、雇用の創出にもつながるからだ。では、どうすれば知識集約型産業を育成・強化し、日本経済の生産性を向上させていくことができるのか。答えは「教育」である。国民経済の生産性を上げるための手段としては、労働者1人ひとりがより高度で付加価値の高い仕事をできるようにするのが正道。そのためには国民の教育水準を高めることこそが王道である。

*10-2:http://mainichi.jp/articles/20170109/k00/00e/010/160000c
(毎日新聞 2017年1月9日) カジノ法、自民がパンフ作成も「何で…」と風当たり厳しく
1枚紙 年末年始に地元回った議員「説明に苦労した」
 自民党が「統合型リゾート(IR)整備推進法」(カジノ法)への理解を深めようと、有権者向けにパンフレットを作成し、所属国会議員や各都道府県連に配布した。ギャンブル依存症対策などを明記し、カジノへの不安を払拭(ふっしょく)する狙い。ただ、年末年始に地元を回った所属議員からは「説明に苦労した」との声も出ている。パンフレットは1枚紙で、IRの利点として地域経済や地方財政への寄与などを挙げた。そのうえで▽立地地域は全国数カ所に限られる▽厳格な入場規制で反社会勢力を排除する--などと説明した。秋の臨時国会で「審議時間が短い」と批判を浴びたことについては、超党派の議員連盟による議論を重ねて法案を国会提出した経緯を記し、理解を求めている。しかし、現場の風当たりは厳しい。若手衆院議員は地元回りの際に、支援者から「何でこんな法律を通したのか」と詰め寄られたという。地方議員らの協力を受けてパンフレットを配っているが、「ギャンブルに対するアレルギーが強く、聞く耳を持ってくれない」と嘆く。  官邸幹部も「民意が付いてきていない。政権に一定のリスクがある案件だ」と神経をとがらせている。政府はギャンブル依存症対策の「関係閣僚会議」を昨年末に新設するなど対策に躍起だが、有権者の理解を得るのは簡単ではなさそうだ。

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